衆議院

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第16号 平成22年5月21日(金曜日)

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平成二十二年五月二十一日(金曜日)

    午前九時二十分開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 池田 元久君 理事 岸本 周平君

   理事 篠原  孝君 理事 高山 智司君

   理事 中塚 一宏君 理事 後藤田正純君

   理事 竹本 直一君 理事 石井 啓一君

      網屋 信介君    今井 雅人君

      江端 貴子君    小野塚勝俊君

      大串 博志君    岡田 康裕君

      小林 興起君    小山 展弘君

      近藤 和也君    下条 みつ君

      菅川  洋君    鈴木 克昌君

      富岡 芳忠君    豊田潤多郎君

      中野渡詔子君    野田 佳彦君

      橋本  勉君    福嶋健一郎君

      古本伸一郎君    村上 史好君

      渡辺 義彦君    田中 和徳君

      竹下  亘君    徳田  毅君

      野田  毅君    村田 吉隆君

      茂木 敏充君    山本 幸三君

      山本 有二君    竹内  譲君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         菅  直人君

   国務大臣

   (金融担当)       亀井 静香君

   内閣府副大臣       大塚 耕平君

   財務副大臣        野田 佳彦君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁)    安居 祥策君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     江端 貴子君

  鈴木 克昌君     村上 史好君

  山尾志桜里君     中野渡詔子君

同日

 辞任         補欠選任

  江端 貴子君     荒井  聰君

  中野渡詔子君     山尾志桜里君

  村上 史好君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

四月二十六日

 保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七九二号)

 同(笠井亮君紹介)(第七九三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七九四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第七九五号)

 同(志位和夫君紹介)(第七九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七九七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七九八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七九九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八〇〇号)

 消費税増税をやめることなど暮らしと経営を守ることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八二二号)

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第八二三号)

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八二四号)

 納税者の権利を確立し、中小業者・国民の税負担を軽減することに関する請願(鳩山邦夫君紹介)(第八八五号)

五月二十日

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(牧義夫君紹介)(第九四六号)

 同(室井秀子君紹介)(第九四七号)

 同(浅尾慶一郎君紹介)(第九七九号)

 納税者の権利を確立し、中小業者・国民の税負担を軽減することに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第九五五号)

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇七六号)

 税金を大企業と高額所得者に応分にかけ、庶民への減税を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一一〇一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として株式会社日本政策金融公庫代表取締役総裁安居祥策君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小山展弘君。

小山委員 民主党の小山展弘でございます。

 まず初めに、菅財務大臣、亀井金融大臣を初め政務三役の皆様におかれましては、日ごろの政務、まことにお疲れさまでございます。心より敬意を表させていただきたいと思います。

 きょうは質問時間も短いですので、少し早口目で、早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 まず、我が国の金融セクターのビジョン、金融業界の今後の秩序のビジョンについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 改正政策投資銀行法附帯決議第四項に関連しまして、今後の我が国の金融セクターのビジョン、金融業界の秩序についてどのように構想しておられますでしょうか。

 例えば、最大の貯金量を誇ることになりますゆうちょ銀行を金融セクターの中心に据えて展開されるビジョンを描かれていますでしょうか。あるいは、ちょっと違った角度からの質問になるかもしれませんが、業務形態について、一般銀行、ゆうちょ、協同組合金融等、多様な金融業態の存在を認め、それらの共存を図ることを目指しているのでしょうか。今まで以上に金融機関の業態や形態について画一性を求めていくのでしょうか。

 現時点のお考えで結構ですので、お伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 お答えをいたします。

 金太郎あめみたいに画一的な金融業界なんということは考えたこともございません。今後、それぞれが特性を生かしながら、地域のため、日本経済、国民のために、それぞれ力を発揮することを期待いたします。

 ただ、私は、民間金融機関を含めて強く期待したいのは、社会的責任をきっちりと踏まえた業務展開をやっていただきたい。例えば、アメリカ等のいろいろな状況をある意味では他山の石として、また、我が国自体も、やはりそうした意味で、今まで大変な禍根を残すような過去の状況もあったわけでありますから、そのことを強く切望いたします。

小山委員 本当はその今の金融機関のことについてもいろいろお伺いしたいこともあります、私も質問したいこともありますが、次に、郵便貯金のことでお尋ねさせていただきたいと思います。

 一概に比較できない面もありますが、旧郵政省貯金局の時代に、そうはいっても独立採算していた時期に、平成十一年、約一兆八千七百八十五億円の赤字、平成十二年、一兆三千二百三十一億円の赤字を出しております。もちろん、赤字が悪いというよりも、企業ですから、これは赤字を出すこともあるわけですし、また既往の民間金融機関も、まさにバブル崩壊後、赤字を出してきたわけであります。

 先日、原口大臣の演説で、税金を投入しない仕組みをつくることが大事だというお話がございました。しかしながら、これは郵貯の黒字を前提とした議論であります。仮に日本郵政の経営が苦しくなってしまった際に、国の義務であるユニバーサルサービスをどのように国民に提供していくのか、御教示をいただきたいと思います。

大塚副大臣 お答えを申し上げます。

 まず、日本郵政グループのゆうちょ銀行も独立した企業としてこれから活動するわけでありますので、内部留保を持っておりますので、仮にです、仮定の話は余りするべきではありませんが、仮に一時的に赤字になったとしても、それは内部留保の範囲内でしっかりと賄えるべきものだと思います。

 それ以上の経営の悪化ということを想定した議論は、現時点ではするべきではないというふうに思っております。

小山委員 次に、また話が飛びますが、行政刷新会議のワーキンググループのことについてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 行政刷新会議のメンバー、とりわけ農業ワーキンググループのメンバーの選定基準についてまずお伺いをさせていただきたいと思いますが、もちろん、いろいろな角度、いろいろな考え方から議論することは大変大事なことだと思います。しかしながら、前政権の規制改革会議の議長が今回の会議のメンバーにもなっていたり、あるいは民主党のマニフェストの目玉でございました農業者戸別所得補償制度に強く反対する方が新たにメンバーとなっていることなど、私は違和感を感じざるを得ません。

 私は、鳩山新党結党以来、旧民主党から民主党を支持しまして、旧民主党時代、あるいは民友連で合併したとき、最初の学生グループの代表もしておりました。先輩議員がいろいろなお考えをお持ちのことはよく存じ上げておるつもりではございます。

 しかしながら、少なくとも現在の民主党のマニフェストの理念、政策とは、小泉内閣の市場原理至上主義に基づいた政治、弱肉強食、個人主義の行き過ぎを反省し、それらによって生じた格差を是正して、助け合い、共生の社会を目指すものであると考えております。ですから、この会議のメンバーについても、基本的に、マニフェストの理念に共鳴していただける方々をメンバーとしていくべきではないかと思っております。

 また、このワーキンググループ内の議論については、恐らく誤解に基づくものだろうと思われますが、おどしたとか脅威があったとか、特定の委員の発言等からさまざまな憶測を呼んでいるようでございます。

 鳩山総理は、昨年十月、静岡県浜松市におきまして、総理になってから初めて街頭演説を行った際に、応援してもらったとか応援してもらわなかったとかそういうことで政策を判断すべきではない、与党になるということは、たとえ選挙で応援していただかなかった人たちからの要望の声であっても、必要なことであればしっかりと行っていく公平公正な姿勢を持つことでありますと演説をいたしました。私は大変感銘を受けましたし、自分自身の行動の指針としております。

 いろいろな角度から議論することは大事でありますが、誤解を受けかねないような極端な発言があると、このワーキンググループで選挙の報復をしようとしている、民主党は選挙の応援有無で政策を判断するかのような、まさに誤解を受けかねないと思います。どうかそのような誤解を受けることのないよう、よろしくお願い申し上げます。

大塚副大臣 その御質問は規制改革の御質問でありますので、きょうは、この答弁は、枝野大臣のもとで行われております規制改革担当の副大臣として御答弁させていただきます。

 農林中金御出身の委員でありますので、農業のことを大変御心配になっておられるというのはよくわかります。そして私どもも、日本の農業を強くしたいという思いで、今規制改革の議論をさせていただいております。

 そういう中で、まず委員の選定でございますが、これは、前の規制改革会議のメンバーの中におかれても、その蓄積された知見を私どもの規制改革分科会の中で生かさせていただきたいという思いから、何人かは継続をしてお願いをしているわけでございます。

 今、委員御自身が鳩山総理の御発言を引用していただいたように、さまざまな立場の方の御意見も踏まえて議論をすることが大変重要なことだと思っておりますので、私どもといたしましては、逆に、必ず私どもの申し上げていることに全面賛成ということを基準に選定をさせていただいたわけではなく、後藤田先生を初め自民党の先生方も、日本の経済や農業をよくしたいという思いで規制改革会議を継続されてきたわけでありますので、その会議のメンバーの中から何人かは継続していただいて、今回の分科会のメンバーを選定したということであります。

 また、今御指摘のあった、何人かの委員の方の御発言で議事録の中に不穏当なものがあったということで、先般、他の委員会で御指摘をいただきまして、その点は、私がたまたま出席していないときの委員の御発言でありましたので、的確な御指摘、御指導であったというふうに私も思いまして、その直後の委員会において、各委員の皆様方に、公の立場で御発言をしておられることをよく自覚していただきたいということを申し伝えた次第でございます。

小山委員 ありがとうございます。

 大塚副大臣が大変公平公正な視点から御努力されていることは存じ上げております。

 もう一つ、この行政刷新会議に関係することでお尋ねをさせていただきたいと思いますが、この農業ワーキンググループの議論と、本年度策定の閣議決定をされました食料・農業・農村基本計画との整合性についてでございます。

 本年度の食料・農業・農村基本計画は、農水省の役人だけでつくったものではなく、それこそ与党の農水委員会所属の議員、これにはまさに新人議員も活躍しまして、一字一句まで作成、修正にかかわり、私は、総体として、民主党のマニフェストの理念や方向性が体現されたすばらしいものができ上がったと思っております。私は実は余り、意見を申し上げたりということで修正には強くはかかわっていないのですが、本当に農水の同僚議員が頑張ったと思っております。

 こういったマニフェストやマニフェストの理念に沿った形で農業ワーキンググループでも基本的には議論をしていくべきではないかと私は個人的には思っておりますが、今後どのように整合性を図っていくのか、お伺いさせていただきたいと思います。

大塚副大臣 農業基本計画との整合性についても委員の方から御指摘がありまして、私の方からは、議論そのものは基本計画と切り離して行わせていただきますが、もちろん、最終的に議論の結果として出た方向性が基本計画と整合的であるかどうかは調整をさせていただく旨を申し上げた次第であります。

 あわせてぜひ御理解いただきたいのは、日本の農業が現状大変安心できる状況で将来にわたっても不安がないということであれば、今のさまざまな農政にかかわる仕組みを継続すればいいと私も思っております。しかし、現状日本の農業が大変競争力が弱く、そして将来にわたっても不安があるということであれば、どこにその原因があるかということをやはり議論し、是正すべき点は是正をするという姿勢で臨ませていただいているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

小山委員 済みません、最後にもう一つ、郵便貯金銀行に対することで質問させていただきたいと思います。

 ゆうちょ銀行に対する、今度金融庁の所管ということになるわけですけれども、これは国の出資が残るとはいえ、株式会社、民間金融機関になるわけですから、民間と同様の内部管理に対する指導を行うものと考えますけれども、例えば代理店業務を行う小規模郵便局に対する検査について、他の一般金融機関、既往の民間金融機関と異なる特別の検査基準を設けるのかどうか、あるいはこういった小規模郵便局も金融庁の検査対象となるのか。もう一つ、証券外務員の資格の取得を現状義務づけているのか、あるいは今後こういった証券外務員の取得を義務づけていくのか。この点について、簡単にお答えいただければと思います。

大塚副大臣 義務づけるということはございません。

 現状でも、もし外務員登録をしておられない職員の方に問い合わせがあった場合には、実際に登録をしている方につないでいただくという体制になっておりますので、現状の業法の規制をそのまま継承するものでございます。

小山委員 済みません、いろいろ二転三転しております、大変恐縮ですけれども、行政刷新会議のワーキンググループのことでもう一点だけお尋ねさせていただきたいと思います。

 このワーキンググループで議論され、結論づけられることは、どの程度の実行度、拘束力を持つのか、そして、今後政策会議等の会議を開く予定があるのかどうか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

大塚副大臣 これはまた議事録をごらんいただければ、その中でもはっきりと申し述べさせていただいておりますが、分科会で決めている内容はあくまで分科会としての意見でありまして、分科会が何か法的な強制力を持っているものではございません。

 ただし、分科会の委員の皆様は総理大臣の指名でございますので、そこで出した分科会の結論はしっかりと総理にお渡しをいたしまして、その後、その中に盛り込まれたさまざまな施策について、関係省庁の政策会議でも御議論をいただいて、実際に秋以降の施策にするかどうかということを決めていくというプロセスになると思っております。

小山委員 以上で質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 民主党の福嶋健一郎でございます。

 この一カ月間、世界の経済を見ますと、ギリシャに端を発した経済危機というものがございます。せっかくリーマン・ショックからやや立ち直ってきた、そういう兆しがある中で、こういう事象というのは本当に世界経済に大きな影響を及ぼすわけでございます。

 EUを初めとして、今さまざまな施策、支援策等が検討、実施されていますけれども、本日は時間が短いですのでこのことについての質疑はいたしませんが、菅大臣そして亀井大臣、財政面あるいは金融の面からしっかりと各国と連携をとっていただいて、やはり世界の主要国全体でこういう危機を封じ込めるということでぜひお願いをしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 一方で、国内に目を転じてみれば、きのうの衆議院本会議でもございましたけれども、口蹄疫の問題がございます。宮崎県では、この一カ月でどんどん被害は拡大して、きのう時点で牛、豚合わせて十三万頭超の被害が出ておりますし、鹿児島県、そして私の地元でございます熊本県でも、今、地域の大事な産業でございます畜産農家は本当に被害を受けて、将来に対する、生活に対する不安、悲しみ、こういったものは筆舌に尽くしがたいものがあると思います。

 政府は対策本部を立ち上げまして、今いろいろな手を打たれております。これについては速やかにやっていかないといけないと思いますけれども、例えば道でも、県境の道が全部二十四時間消毒をされているかというと、まだそこまでは至っていません。あるいは、野生のシカが、場合によっては感染したのがうろうろ道なき道を動いているなんということも、可能性としては十分あるわけでございます。

 こういう面からも決して予断を許さない状況であり、我々は、原因究明とそして再発防止は当然のことでございますけれども、やはり畜産農家の皆さんの生活の不安を払拭しないといけない、立て直していかなければいけないということが急務であると思います。農水委員会を初めとしていろいろな委員会で御議論されていると思いますけれども、きょうは財務金融委員会ですので、財務とか金融という面から幾つか質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、財務大臣にお伺いをいたします。

 この口蹄疫対策において財政面で具体的にどのような対応をされるのかということにつきまして、大臣の口蹄疫に対する決意というものとともに、この具体策について伺いたいと思います。

菅国務大臣 まさに大変な大きな状況が生まれていることは共通の認識だと思います。

 改めて申し上げますと、宮崎県で発生している口蹄疫の対策については、十九日、全閣僚が参加する口蹄疫対策本部を総理の本部長のもとで立ち上げました。そして、今問題となっている地域を中心として十キロ圏内はすべての牛、豚を対象にワクチン接種と殺処分を実施する、十キロから二十キロの間の圏内は早期出荷を促進することをこの本部で決定いたしました。そして、患畜等の殺処分に当たり、家畜伝染病予防法に基づく手当金の交付の迅速化などのための措置を講じることといたしております。

 この手当金を含むいろいろな費用については、予備費からの支出が法律上可能となっておりますので、その予備費をもって充てることを、財務省、私としても進めていきたいと考えております。

 なお、この手当金の交付の迅速化ということについては、いわゆる標準評価額を用いた概算払いを実施し、殺処分の評価額と手当金の差額を宮崎県が負担した場合には、特別交付税を措置する。

 そういった形を含めて、資金的な面で、何か作業やいろいろな拡大防止策が停滞することがないように全力を挙げていきたい、このように考えております。

福嶋(健)委員 今までのそういった枠組みを超える対策をするということでございますので、当然、今大臣が御答弁されたさまざまなことをやるとお金がかかるわけでございます、一言で言いますと。ただ、こういったものについては、やはり迅速な姿勢を見せておかないと、最終的にはお金は出たけれどもえらい遅くなったというふうなことでは余り意味がないわけでございまして、この点につきましても、農水省を初め各省庁と連携していただいて、とにかく思い切った財政対策をとっていただきたいと思います。

 今大臣がおっしゃられた家畜伝染病予防費、これは農水省の予算では約三十六億円です。足りません。そういう意味では、今大臣がおっしゃったように、同じ費目で財務大臣の裁量で予備費を使えるというふうな財政法上の手だてになっておりますので、この部分につきましても、まさにそういったときのための予備費でございますので、迅速な対応、柔軟な対応をぜひよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、金融面のお話なんです。

 当然のことながら、農家の皆様方も、農協であったり、あるいは信金、信組であったり、銀行であったり、金融機関のお取引というのはあるわけでございます。こういう中で、今回の口蹄疫の状況の中で非常に厳しい資金繰りを多分とられているのかなというふうに思いますけれども、昨年施行されましたいわゆる中小企業金融円滑化法案、これについてなんですが、農家の皆さんというのはこの対象に含まれているんでしょうか。このことについて教えていただきたいと思います。

亀井国務大臣 当然含まれております。

福嶋(健)委員 ありがとうございます。その言葉を聞いて安心する農家の皆さんはたくさんおられると思います。

 実は、きょうは資料としてお出ししていないんですが、金融庁さんがつくられたパンフレットがございます。「中小企業金融円滑化法について」というパンフレットでございます。こういったものの中を見ても、農家という文字は残念ながら出てきませんし、こういう絵でかいてありますけれども、大体、中小企業の経営者の皆さんあるいは自営業の皆さんということで、農家の姿をされている絵はないわけですね。だから、そういう意味におきましては、今大臣に御答弁をいただきまして、農家の皆さんは本当に安心をされるのかなというふうに思います。

 それを受けて、今回の口蹄疫の発生に対して、いわゆる金融面ではどのような対策をとられてきたのか、そしてこれからどういうふうな対応をとっていかれようとするのかということについて伺いたいと思います。

亀井国務大臣 いわゆるモラトリアム法案の施行に当たりましても、農家についても特段の配慮をするということを金融機関に強く要請しておったわけでありますが、このたび重ねて十八日の日に、被害の農家に対して遺漏なきようきっちりと対応してくれということを、金融機関に対してまた緊急にお願いをいたしております。

福嶋(健)委員 今大臣の御答弁がありましたように、これは金融庁のホームページにも掲載されておりますけれども、五月の十八日付で、金融庁の監督局長の名で、全銀協を初めとして、諸団体に対して要請がなされておるやに聞いております。

 ペーパーを一枚出すことは非常に大事なことなんですけれども、受け取った側も、きちんとその隅々の、やはり地域の金融機関にその趣旨、思いが伝わっていかなければ意味がございませんので、これは先ほど申し上げましたように、農家の皆様方への周知徹底とあわせて、金融機関に対してもさらに周知徹底をしていただきたいというふうに思います。

 このペーパーに「借り手の状況を丁寧に把握した上で、コンサルティング機能を十分に発揮しながら、」という文言が書いてあります。これは実は、先週、亀井大臣が国民新党の代表として熊本にいらっしゃったときに、私もおったんですが、そこで同じことをお話しになられました。

 やはりこういうふうなところで、まあ言うとお役所の文書で、きちっとコンサルティング機能ということを明確化しているというのは非常に評価できるというふうに僕は思っております。私も銀行出身でございますので、こういうふうなことがあると、やはり本気なんだなということでございますので、銀行に携わる人にとっても大きな力になると思います。そういう意味では、先ほど申し上げましたように、いろいろなフォローの方をお願いいたします。

 中小企業金融円滑化法案については、前回の質問のときにも同じことを言いましたけれども、この第一条で、中小企業者等に対する、今回、農家の皆さんはここに入ってくるんですが、金融の円滑化を図り、それにより、事業活動の円滑な遂行、雇用安定を通じ、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を目指すというふうなことが文言で書いてございます。

 施行されてもう半年がたつわけでございまして、五月の十五日ぐらいですか、一回しまって、そういう意味では今、集計作業をされているところだと思います。これにつきましては、実はもう時間が余りないんですけれども、大手主要行等々でもいいんですが、数字のところなので副大臣にお伺いできればと思うんですが、よろしくお願いします。

大塚副大臣 三月末までの実績の御下問だと思います。

 全国の国内銀行百四十七分の集計でありますが、百四十七行で、対象期間内に申し込みが二十七万六千三百八件、金額にいたしまして九兆一千四百四十五億円、そのうち実行されたものが二十万六千三百八十一件、七兆二千四百三十九件。まだ審査中のものもございますので、審査中のものを除くベースで実行率は九八%であります。

 今のが企業向けでありますが、住宅ローンに関しましても、実行率は九三・八%になっております。

福嶋(健)委員 そういう意味におきましては、全部の数字が集計されてから、立ち上がりの実績に対する評価については、また亀井大臣の方に、次の質問の機会にじっくりとお話を伺いたいというふうに思います。

 いずれにいたしましても、きょう最初に申し上げましたが、海外ではギリシャ危機、最近ニュースには余り出てきませんけれども、こういったものもある。そして、国内でも、今申し上げましたように、口蹄疫を中心としてさまざまな問題がございます。こういう中で、政務三役の皆さん、そして私たち立法に携わる人間として、一緒になって、とにかく、先ほどのコンサルティング機能ではないですが、知恵を出し合っていかなければいけないというふうに思っております。このことがやはり国民の皆さんの生活不安を払拭するというふうなことでございますので、ぜひよろしくお願いします。

 本日は、このことをお訴え申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、竹本直一君。

竹本委員 ギリシャ問題から入ります。

 最近いろいろ起こっております事象に関しまして、実は二時間ぐらい時間をいただいてやろうと思っていたんですけれども、そういうわけにもいきませんので、三点ほど絞って質問をさせていただき、また両大臣のお答えをいただきたいと思います。

 まず、きのうのニューヨークの終わり値が一万六十八ドル余りでした。一万ドルを割りそうな雰囲気であります。

 実は、随分前に、初めてダウ平均が一万ドルを達成したその日に、私、ニューヨークに同僚議員、先輩議員とともにいたことがありまして、ウォール街の投資銀行の社長さんたちを日本クラブへお呼びして、そして聞きましたら、あのときの元気よさはいまだに如実に覚えているんですけれども、次は十万ドルだと。もう五人も六人もそう言うわけですよ。

 当時、そのときの日本の株価は一万五千円でした。ですから、その一万五千円が今一万円になり、そして一万ドルがもとの一万ドルに返ってきているわけですから、いかにデフレというか、証券業界、もう一つぱっとしないという感じを如実に感ずるわけであります。この原因は何かというと、やはりギリシャ問題なんですね。

 それで、実は、最近ですけれども、ニューヨークの投資銀行の幹部三、四人とお会いいたしました。名前は言いませんが、中の一人は、このギリシャ問題は非常に深刻だ、EUは、ユーロを共有しているのは十六カ国ですけれども、非常に深刻だと。

 例えば、まあ笑い話に近い話なんですけれども、ギリシャの政府がまずうそをついていたわけですね。それがばれて、こういうギリシャ不信になった。同時に、国民もうそをついているとこの人は言うんですね。どういうことかというと、家でプールを持っている人はお金持ちです。それには固定資産税がかかる。ギリシャ市内でプールの数を数えたら、五百個ぐらい登録がある。ところが、ギリシャの町の上をヘリで飛んで数えたら一千六百ぐらいあった。みんな、固定資産税も適当に申請をしている。このように、政府もうそをつき、国民もうそをついている。

 そうしますと、そういう人たちが起こした債務の問題を、一生懸命汗を流して働いているドイツ人やフランス人、こういった人たちが背負うというのは何てばからしいことだという感情があるんだ、こういう率直な話を聞きました。

 どこまで事実かどうか、私はもちろんわかりませんけれども、そういう同胞としてやっていくのに、これはたまらぬという問題があるし、今回、ギリシャの問題で十三兆円ぐらいの債務の援助を仰いだわけでありますけれども、全部返済し切れるかどうか極めて不安だ、こういう感じでありますし、あのようなギリシャの状況が、PIIGSと言われるようなほかの国でも当然発生する可能性がある。

 ギリシャの場合は、EUに占める割合はたった二%、経済力は二%ですけれども、スペインの場合は一二%であります。ですから、ギリシャだけで済むのならともかくも、また連鎖してそういうことが起こるとなると、非常にEU内で分裂が起こるのではないか、グループA、グループBに分かれるんじゃないか、こういう話をする方もおられました。

 ですから、こういう欧米の、特に欧州の金融不安が非常に世界経済に厳しい影響を与えるだろうと思っております。

 今いただいたんですけど、けさの日経平均、九千七百六円九十三銭、こういうことでありまして、三百二十三円落ちております。ですから、こういう状況を踏まえて、これから日本の景気、財政運営をやっていかなきゃいけない。これはもう大変な問題であります。

 そこで、このギリシャの財政赤字は幾らかというと、一二・何%、累積債務でGDP比一一一%。日本の場合は、財政赤字が単年度でマイナス八・三%、もちろん、累積債務は二〇〇%近い、こういう状況であります。日本の方が、少なくとも累積ではひどいわけであります。ですから、ギリシャの状況を他人事としてほっておくわけにはいかない状況になっているのではないかというふうに思います。

 そういうときに、先般、IMFのリプスキー筆頭副専務理事が日本の財政について、財政の安定性が確保されることが消費者や企業に安心感を与え成長につながるから、したがって、財政の安定性についてしっかりとした措置をとるべきだという趣旨の発言をいたしております。

 ところが一方、現在の鳩山政権は、消費税は四年間上げない、こう言っています。消費税を上げずに、この大変な累積債務及び毎年生ずるであろう財政赤字、これに対してどういう財政運営をこれからやっていこうとしておられるのか、財務大臣にまずこの点をお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 ギリシャの状況については、私も、財務大臣になった最初、二月の初めにカナダでG7があり、その席でも、ヨーロッパのメンバーが多かったせいか、八割、九割の議論は実はギリシャでありまして、その後、四月にワシントンであったG7、G20でも、特にG7の方ではかなりやはり対応がおくれたということを言っておりました。

 さらには、今月に入って三度、四度ですか、電話会談というのがありまして、その中で、御承知のような、最終的には、ギリシャについては千百億ユーロ、全体について、それに加えて七千五百億ユーロのいわば枠組みが決まって、これで若干マーケットが安定するのかなということを期待したわけでありますが、まさに、きょうの状況を含めて、なかなかそこまで安定はしていない状況にあります。

 今、IMFの筆頭副専務理事が来られての話、私個人としては、その認識はかなり共通にしております。つまり、客観的に見ると、先ほど竹本議員みずからおっしゃったように、単年度の財政赤字の幅もそれぞれ大きいわけですが、累積幅は先進国で断トツに日本が多いわけでありまして、そういうことを考えますと、やはりしっかりした財政健全化の道筋を固めて進めていかなければならないと。

 この六月には国家戦略室を中心に、中期財政フレームという三年間ぐらいの枠組みと、財政運営戦略という十年ぐらいの枠組みをきちっと国民の皆さんに示すということになっております。もちろん、その中で税についてのいろいろな議論も、昨年の税調の大綱の中でも、消費税も含めた議論そのものはやりましょうということで、既に専門者会議の皆さんにもいろいろな議論を、所得税、法人税、消費税含めてお願いいたしております。

 そういうものの中から、六月にはある方向性を打ち出さなければならない、こんな状況にあるということを御報告しておきたいと思います。

竹本委員 そうしますと、鳩山政権がマニフェストで約束しました消費税を四年間上げないという方針は変わる可能性がありますか、ありませんか、それをお答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 この約束というのは、特に三党で政権をつくる段階で、現在の政権の期間、つまりは衆議院選挙から次の衆議院選挙までの間については消費税は上げない、そういう形になっております。

 そういう意味で、その約束は、三党合意ということもありますし、総理としても守っていこうという線でありますので、そういうこととの整合性も維持しながら、どういう段階でどういう形が必要か、まさに議論を今それぞれの場で進めている、あるいは進めていただいている、そういう状況にあります。

竹本委員 選挙のとき、民主党のマニフェストで四年間消費税は上げないという国民に対する約束、そして連立政権を組むときも、今大臣からお話あったように、三党で四年間は上げないという合意をしたということでありますが、六月に出す方針の中でこの方針が変わる可能性があるのかどうか、もう一度お聞きしたいと思います。

菅国務大臣 こういう大きな問題を私一人が簡単に物を言えるわけではありませんが、基本的には、お約束をしたことについては約束は守っていくという方向で議論しております。

 ただ一方で、今の財政状況がどうであるかということは、竹本議員が言われたように、これは短期的だけではなくて、十年、二十年にわたってある意味で大きな債務が蓄積しているわけですから、そういった議論は当然ながら、どういう段取りでどの段階からやっていくかというのは、必ずしもこの政権の次の選挙が終わってから議論するわけではなくて、その前にも議論をして、実施時期云々についてどの段階になるかというようなことは、そういうお約束との整合性を考えながら進めていかなければならない、こう思っております。

竹本委員 亀井大臣にも、この辺の変化の可能性はありやなしやをちょっとお答えいただきたいと思います。

亀井国務大臣 これは、民主党の公約もさりながら、三党の合意でありますから、鳩山政権の次の選挙まで消費税が上がることはあるはずがございません。これは当たり前のことを言っておるわけであります。

 また、消費税を上げればすべてが解決するという問題じゃないということも、もっと私は真剣に考えなければいかぬと思いますよ。

 経済が弱り国力が弱っていく中で、税を取り上げることばかり考えて、では税収が上がるのかという深刻な問題がありますよ。国民生活が弱った中で税率だけ上げて、それで税収が上がるなんということはあり得ない。また経済が弱っていくという悪循環をとった場合は、これは大変な話になっていくわけであって、今税収が上がらないからすぐ消費税という議論に飛びつくのは間違い。我々は深刻に、自公政権の間違いをここで検証しなければいかぬと思う。

 形式的、数量的な目先のことにとらわれて、結局、抜本的に国力を強化していく、経済を活性化していくことを怠ったこの十年間のことを検証した上で、それを反面教師として今後の財政経済運営をやらないと、財源が足らないから税収を上げるためにすぐ消費税なんという、そんな野党の無責任な議論に与党が飛びつくことはない、このように考えております。

竹本委員 正直なお答え、ありがとうございました。

 さてそこで、日本の景気をどのようにして回復させるかということなんですが、これは平たく言いまして、私はどの国にも得意わざがあると思うんですよ。得意わざを生かして金をもうければいいんですよ。それは何かというと、日本の場合はやはり外需、輸出なんですよね。輸出がもうひとつうまくいっていない。その理由は何かといったら、それは何といってもやはり法人税が一番きつい。四〇%あります。アメリカも四〇パーですけれども、ただ、近隣のアジアの諸国はほとんどが二〇%台。

 結果としてどうなっているかというと、アフリカにおける電気製品の売り上げを見てみましたら、韓国のサムスンですか、あそこが、テレビ、洗濯機、こういうものの約半分を売り上げている。日本はもっといいものをつくっているんですけれども、それが全然太刀打ちできない。これが現実なんです。

 そして、結果として韓国は、ウォン安もあるんでしょう、しかしながら、税も安い、ウォンも安いということで、実は大もうけをしているわけですね。それを指をしがんで眺めていなきゃいけない。日本の電機業界全部合わせても、その倍ぐらいサムスンはもうけている。三年前まであんなに景気が悪かったのに、どうしてこんなによくなったのかと本当に不思議なぐらいで、もっと僕は研究をしたいなと思うぐらいなんですけれども。

 いずれにしろ、日本はお金が入ってきません。したがって、我々自民党は、四〇%を二〇%台まで法人税を下げるべきだ、こう言っております。中小企業は一八%ですが、これも半分ぐらいの九%にしたらいいんじゃないかという議論を、今、うちの党の内部で私はしているんですけれども、それぐらいまず税を下げて、輸出をどんどん振興する、そしてお金をもうける、これが国としてやるべき第一ではないかなというふうに思います。

 それに対して民主党さんは、非常に慎重なのかどうか知りませんけれども、四〇パーを五%ぐらい下げるというお話をしておられるというふうに聞きますけれども、その程度だと輸出の抜本的な促進ということにならないんじゃないかというふうに思うんですが、この点についてお答えいただきたい。副大臣で結構です。

野田副大臣 法人税の引き下げについて自民党内でいろいろと御議論、御提言があるということは承知をしていますが、今、民主党が五%程度下げるというお話がございました。経産省の関連の産業構造審議会の中でそういう数字が出てきたとは承知をしていますが、これは政府全体の方針ではありません。

 現段階は、平成二十二年度の税制改正大綱で書いていることがすべてでございまして、租税特別措置の抜本的な見直しを行い、課税ベースを広げるということの中で、確かに、国際標準からすると実効税率が高いことは事実でございますので、国際競争力の観点とか、あるいは、これからまとめる新成長戦略との整合性等を踏まえて法人税の見直しをやっていくというのが現段階における政府の方針でございまして、これは今いろいろ議論があると思いますが、最終的には政府税調で決めていくということになります。

竹本委員 結局、私は、要するに外需を振興して国全体としてもうける。そして同時に、そのもうけた金で、国内には仕事がないんだから、それは政府が仕事をどんどん出してやればいい。仕事に国民がつくことによって、汗を流して働き、そして得た利益で消費をする、これが健全な国のあり方だと思っております。

 ですから、そういうふうにすればいいのに、仕事を出すということにおいては民主党政権は、残念ながら、我々がつくりました十五兆円の補正予算も三兆円ぐらい削って、そして、せっかく地方の地道な、小規模な公共事業なんかいっぱいあったのに、みんなそれをストップしてしまって非常に残念ですが、ともかく、今国民が一番望んでいるのは、仕事を出せ、仕事を出せということです。単に新卒の者が二割ぐらい仕事につけないというだけの話じゃない。現に、仕事がなくて中小企業はやるものがないんですよ。だから、幾ら融資をしてもらっても仕事がないから使いようがない。このフラストレーションが物すごく蔓延しているんですよ。

 ですから、これに対して手を打つのは、国内においては仕事を出すことだと思いますが、財務大臣、この辺はいかがでしょうか。

菅国務大臣 仕事というものの言葉の幅はありますけれども、基本的には全く同感です。昨年の十二月に出しました新成長戦略(基本方針)の中でも、つまり需要、別の表現とすれば、仕事を生み出し、そこから需要を新たに発掘して、そして経済を成長させていく、そういうことを柱に置いております。

 例えば、確かに、選択と集中でやらなければならない公共事業にもそれは必要だと思いますし、場合によっては、介護とか医療といったような分野で潜在需要がある、あるいは子育ての分野でも潜在需要がある、しかし結果として、人件費が安過ぎて、そういう需要を、ある需要を顕在化できていない。こういう分野には、ある意味で、集中的に財政を投入することによって雇用を生み出し、そしてその中から経済の成長を生み出していく、こういうことは大いに考えなければならない。

 今、六月に向けて新成長戦略の具体的な肉づけをやっておりますので、その中でより明確にしていきたいと考えております。

竹本委員 まだまだこの問題について聞きたいことはたくさんあるのですが、時間もございません、次の話題に移りたいと思います。

 政府系金融機関の役割について質問いたします。

 まず、国内の問題についてでございますけれども、政府は、企業再生支援機構を使いまして日本航空の再生に乗り出しております。現在の航空市場を見ますと、官の力を背景に今までよりも価格ダンピングを行う日本航空と、それを何とかしのぐ全日空との不公平な市場に映って仕方がないわけであります。

 どういうことをやっているかというと、航空運賃は法律で、普通運賃は下げられないわけですけれども、国内のバースデー割引、あるいは海外においてはパック旅行の運賃の大幅キックバック、こんなことをやっているのですが、やり出したのが、公的資金を受けてからやり出しているんです。

 だから、これが公的資金を受ける前にやっておるなら僕も何も言わないのですが、受けてからこういうことをやり出す。そうしますと、片方でたくさんの支援をもらって、そしてこういう割引をしてお客をとる。そうすると、一切の支援がない競争相手は、何という不公平な扱いだろうと思うのも仕方ないというふうに思いますが、この現実についてどのように見ておられますか。まずお聞きしたいと思います。

野田副大臣 公平な競争状態を保つための実質的な担当はやはり国土交通省だというふうに思いますけれども、国交省においては、公的資金を投入して行われる日本航空の再生に向けての取り組みが、航空会社間の公正な競争環境や日本航空の構造的な改革を阻害するものとならないよう、指導監督を行っていく旨の文書を二月五日に日本航空に発出しているというふうに承知をしています。

竹本委員 その文書があるのでしたら、その文書どおりにやっているかどうかはやはり、財務省の仕事じゃないかもしれませんが、国交省にもチェックをするように連絡をしていただきたい、このように思います。

 さて、具体的な問題ですけども、JALがああいうふうになりまして、恐らく株主も三十万、四十万とおられたと思いますが、それも全部、財産が無価値になりました。大変な政治責任だと思いますけれども、それはともかくとしまして、この日本航空を救うためにつなぎ融資をやりました。つなぎ融資が約七千三百五十億円と聞いておりますけれども、それだけの枠をやりまして、そして、実際JALが使っている額は三千六百億円という状況のようであります。そして、内訳を見ますと、八百億円は既に返済をしている、こういう状況であります。

 そもそも、つなぎ融資というのは、こういう企業が倒れてしまうという緊急時の対応のために、いろいろな混乱に対処するためにつなぎ融資をしたはずなんです。もうその混乱はほぼ終了に近いんじゃないかと思っておりますが、そうなりますと、このつなぎ融資を引き揚げた方が、いわゆる公正な競争条件の確保という意味では必要なことではないかと思いますが、いかがでしょうか。

野田副大臣 竹本委員御指摘のとおり、本年一月十五日に政投銀が千四百五十億円のつなぎ融資を実行しておりますけれども、こういうケース、これまでもいろいろありましたが、企業からの融資等の申し込みがあった場合、基本的には、日本政策投資銀行は、金融機関としての十分な審査を実施するとともに、適切なガバナンスのもと、しかるべきプロセスを経て判断をしているものと承知しています。

 その後どうするかという話は、これもまた一つの経営判断であろうというふうに思います。

竹本委員 いずれにいたしましても、特定民間企業を支援しているわけですから、同じように競争場裏に立つ企業から見れば不公平ではないかと思われるようなことは、できるだけ避けた方がいいと思います。したがって、適切な対応をぜひともお願いしたいというふうに思います。

 さて、日本政策投資銀行やメガバンクは、借りかえに応じる条件として、要するに今のつなぎ融資を今度借りかえるわけですけども、政府保証を求めております。政府保証がなくては銀行が貸せないようなリスクの高い再建計画では、日本航空の二次破綻の懸念があるんじゃないか、このようなうわさが立つわけであります。そしてまた、きちんとした再建計画があるのであれば、政府の保証を求める必要は全くないんだろうと思います。

 したがって、銀行がきちんとした再建計画と認めるまで、政府保証を出す必要はないと思いますけれども、財務大臣、いかがでしょうか。政府保証は必要でしょうか。

菅国務大臣 私も、直接の毎月毎月の状況については、主に国交大臣が所管されているということで、必ずしも現状を細かく知っているわけではありません。ただ、若干、過去のこの数カ月のことでいえば、直接的な政府保証という形は、当初いろいろありましたけれども、当初の段階ではとらないで、企業再生支援機構による保証という形をとっている。もちろん、それは最終的には国の責任ということになりますけれども、そういう扱いだというふうに、少なくともある段階まではそういうふうに認識しております。

 それから、これも余り論争する場ではないかとは思いますけれども、JALの問題もこの半年間で起きた問題ではなくて、長く、いわゆるナショナルフラッグを持つ航空会社として、政投銀からの融資もたしかかなりの額がそれ以前から行われている中で、どういう対応をするかと。

 私が知る限りでは、かなり厳しい対応をしたと思うんです。先ほど、株がゼロになったということも言われましたが、つまり、株主にも責任をとってもらい、相当多くの金融機関にも債権を放棄してもらい、そのかわりには、JALの従業員にも年金の問題等を含めてかなりの人員整理をしてもらい、そういう中での再生を図っていくという今の段階ですので、確かに、個々の状況ではいろいろな議論があることは知っておりますけれども、私は、そういう中での、もちろん同業他社との公平性もしっかりと見ていく、そういうことは主に国交大臣の仕事かなとは思っておりますが、そういう姿勢は必要だと思います。

 かなり厳しいところから、救済スキームといいましょうか、それは始まって、今日もそういう原則は保たれている、このように理解しております。

竹本委員 私が申し上げたいのは、おわかりいただいているとは思いますけれども、何ゆえに国民の税金を特定企業のために使うのか。そこがはっきりしないと国民は非常に疑念を持つと思います。だから、そこをはっきりさせないといけない。したがって、このつなぎ融資の使い道についても透明性を確保しなきゃいけない。どこにどういうふうに使ったのかということが公表されてしかるべきだと私は思います。そういった点、ぜひよくウオッチをしていただきまして、やっていただきたい。

 私は、JALを救うのに、JALは恐らく、九十八ある国内空港のいろいろなところに、頼むから地元へ路線を出してくれ、こういうような要請をいっぱい受けてやっているんだろうと思っておりました。調べてみますと、過去十年の間で約九カ所の新空港ができているんですけれども、その中でJALが就航しているのは一つだけです。但馬空港だけなんです。ほかは就航していない。つまり、ほかの外国の便が入っているのかあるいはANAが入っているのかよく知りませんけれども、そういうことでありますから、地方の、国の犠牲になってこんな負債を抱えたということではないような感じがするわけです。

 だから、そういったことも含めて、なぜJALにこれだけの支援をするのかということは、やはり国民にわかりやすく、透明性を確保していただかないといけないというふうに思います。

 国内の問題はこれで終わります。

 もう時間がありませんので、最後、今度は海外の問題に移りたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、日本の一番得手なところというのは、日本で優秀ないいものをつくり、それを海外に輸出する、そして金を稼ぐ、これがやはり一番大事なスタイルだと思います。輸出立国と言われますけれども、まさにそれこそが日本の生命線だと思います。

 鳩山政権が成立して、内需振興ということを言われましたけれども、内需振興といったって、少子高齢化で人口がどんどん減っていく中で、なかなか内需の振興というのはそんなにたくさん出るわけがないんですね、現実に。したがって、内需も外需も大きくしなきゃいけない、これが本来の政治目標であるべきであって、我々自民党は次の参議院選挙で、内需も外需も二兎を追う、こういう趣旨を強く主張しようと考えているわけであります。

 さて、今海外に出ますと、日本の存在感が非常に低い。この間ブラジルへ行ってまいりましたけれども、ブラジルでは、リオとサンパウロとの間の新幹線プロジェクトが大きい話題になっておりまして、中国も韓国も手を挙げて、日本も手を挙げているということですけれども、恐らく中国に行くんだろうというのが当時の地元の評判でありました。

 まだ結果はわかりませんけれども、なぜ中国なのかという話を聞きますと、技術は、日本の技術を中国は使ってやろうとしている。だから、日本の方が優秀であるのは言うまでもないんです。言うまでもない。しかも、誠実に契約を履行する日本の施工能力の完璧さ、これはもう世界一なんです。しかし、それでも仕事がとれない。なぜか。それは、一番大きい理由はファイナンスなんですね、ファイナンス。ブラジル政府も即払う金がない。後に述べますけれども、アメリカの新幹線だってそうです。即払う金がない。したがって、即払う金がなければ、我が方でその金を手当てしましょう、こう中国はオファーしているんだろうというふうに言われております。ですから、そういうことが我が国においてできるのかというと、それがなかなかできない。

 ここから両大臣にぜひお聞きしたいところなんですけれども、この新幹線、あるいは原子力発電所、これから千八百ぐらい全世界で発電所をつくられていきます。しかも、原子力発電の技術については、つくる技術は日本が最先端です。そういう技術がありながら、その仕事がほとんどとれていない。どうしてか。中東で原子力発電所の発注がありました。これは韓国がとっていきました。

 結局、技術は日本がナンバーワンだけれども、後のオペレーションをどうするか、そして、事故が起こるかもしれない、その対応をどうするか、そんなものを一切合財全部私がやりますと言い出したのが韓国なんですね。大統領が前へ出てきて言ったらしいです。そして韓国へ行った。

 日本の企業の連合体でそこまでの保証といいますか約束ができるかというと、実際上なかなかできない。私は、そこに政府が一枚かんで、そしてまとめて、官民一体となってこういう大きいプロジェクトをとっていかないといけないんじゃないかと。

 かつて池田勇人さんは、トランジスタの商売人などと言われました。トランジスタをフランスに売りに行くんだと言われました。あのような気概が、今経済で傾きかけているこの日本、これを再生し尽くすためには、どうしても政府の力が必要だと思います。

 ところが、その金融支援をやる政府組織は何かというと、当面考えられるのは国際協力銀行であります。政策金融公庫にはなりましたけれども、しかし、基本的には途上国相手であります。政令で指定してこういったものは、原子力発電所とか新幹線はできるようになると思いますけれども、そういったことは当然やりますが、やはり、今までの運用の実態から見ても、もっともっと抜本的な弾力的な、そして官民一体の姿勢を強く示すことこそが、こういう海外における巨大プロジェクトをがっちり手にする一番の方法だと思います。

 したがって、ここは自民、民主の理論が分かれるところじゃありません。これは党派を超えた話でありまして、ぜひ、そういったことで成功するためにはどういう工夫があるかということについてお答えを大臣からいただきたい、このように思います。

 以上です。

菅国務大臣 この点についても、竹本議員の議論を私聞いていて、全く同感であります。

 ただ、あえて、私もこの半年間いろいろ動いてみて、なぜそうなったんだろうかということを考えてみると、例えば中国も、今ヨーロッパ勢が物すごく入っていて、日本はなかなかその下請しかとれないような状況が出ています。

 それは一つは、ちょうどODAが、日本が中国に提供することが終わった後に、まさにJBICを含めて、それにかわる体制、あるいはトップセールスといったようなことも、当時は小泉政権でありましたので、かなり政治的にもいろいろあって、そこでせっかくの中国の急激な成長のスタートのところでやや足踏み状態が日本にあって、その間にヨーロッパを含めたところがどんどん進んでいった、私はこのように思っております。

 そこで、今おっしゃったような金融の問題、これも御承知のように、小泉政権のもとにほとんどの政府系金融機関をまとめました。まとめること自体、私は必ずしも反対ではありませんでしたが、結果として、かつての輸銀を国民金融公庫等とまで一緒にしちゃったために、機能そのものが必ずしも十分に発揮できない状況に立ち至ったというふうに過去の状況を見ております。

 そういった点で、今全力を挙げてそれぞれの、竹本先生が今御指摘されたようなこととほとんど同じ意識を持って対応を始めようとしております。

 例えばJBICについては、国家戦略室が中心ではありますけれども、直接的には財務省の所管でもありますので、このJBICを今のような日本政策金融公庫の一部という形でいいのか、場合によったらそれをもう一度分離させて、もっとファイナンスの力を持たせることが必要なのか。

 一部については、御承知のように、既に政令改正などを行って、高速鉄道などに対する対応ができ、さらには水ビジネスとか高効率の石炭発電等についても、こういうことに対応できるようにしていきたいと思っております。

 また、先ほど言われたアブダビの原子力の問題も、今そういう、民間機関だけで六十年という運転保証ができにくいようなものについてどういう体制をつくればいいのか、これは経済界とも話をしながら、主にここは経産省になるかと思いますけれども、何らかの対応をつくっていきたい。

 また、水ビジネスなどにおいても、日本は自治体が中心でありますから、それを、たしか産業革新機構でしたか、そういうところで、民間的な形にそういう自治体のノウハウを受け入れて外国に売り込んでいく、こういうこともやろうとしております。

 私自身もせんだって、ウズベキスタンでありましたASEANプラス3、さらにはインドなどを含めた会議に出まして、インドの財務大臣とも話をしたり、あるいは、アジア開発銀行はアジアの中では非常に評価をいただいていて、我が国とアメリカが一番の出資国で、総裁は日本人が歴代総裁をやっておりますので、こういうところをより強化し、より積極的な対応をアジアとの関係で進めていく。

 そういう点では、いろいろとまたお知恵をおかりして、全く同じ気持ちでやっていきたいというふうに思っております。

竹本委員 ぜひその方向で頑張っていただきたいと私は思います。

 というのは、小泉政権下で統合の案が出ましたとき、私は、JBIC、JICAの名前は絶対に残すべきだと強く主張した人間です。と申しますのは、外国を歩きますと、もうJICAカルチャー、JICA文化というのは定着しているんですよね。JBICもそうです。ですから、今さらそこで名前を変えたら、これは何だという話になって、せっかく百億も一千億も出してあげても感謝の気持ちもない。JICAというと日本だと皆思っているんです。ですから、ぜひ、長年築き上げたある種の名声を無駄にしないようにやっていただきたい、このように思います。

 戦後の日本の海外プロジェクト取得のためのいろいろな努力というのは、非常に苦労惨たんなものが実はございまして、昭和五十二、三年ごろは、借款を条件とした工事で、世界で受注が五百億ぐらいだった。それで何とか、当時はオイルダラーがいっぱいありまして、そこにわんさと押しかけたんですが、なかなかとれない。しかしながら、結局三年間で六千億ぐらいになりました。今一兆数千億になっていると思います。これは民間だけでやっているんですよね。だから、もしきょう議論しておりますような官民一体の体制がとれるのであれば、もっともっとチャンスがふえてくるんじゃないかなというふうに思います。

 特に、財務大臣もおられますし亀井大臣もおられますからあれですけれども、やはりファイナンスの条件という意味において、もともとプロジェクトをとるときにはバンクギャランティーを要求されるわけです。ところが、日本の昔の銀行はそんなにメガじゃなかったから、おっかなびっくりでなかなか金を出さない。また、バンクギャランティーが無理であればボンドを積みなさいと言われる。ところが、ボンドなんて余り聞いたこともないというような現状だったんです、当時は。今は、そんなのはみんなわかっていますけれども。

 こういったファイナンスの条件をきっちりクリアして、発注者に安心感を抱かせる、そして、すべてあなたに任せたよと言われるような状況の中で仕事に日本の技術が生きていけば、一番すばらしい結果を生むんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 日本の財政力、いろいろ借金が多いから言われますけれども、やはり海外で稼いで日本を豊かにすれば、この借金も返していけるわけであります。それだけに、最後はどうしてもやはり苦言を申し上げたいのは、今年度の予算、あるいはこれから組むであろう来年度の予算におきましても、今年度は九十二兆円ですよね。いろいろ、子ども手当二万六千円なんかも、来年もそれもきっちりやれるのかどうか、そういったことも私は気にしております。

 したがって、マニフェスト違反をしてでも現実に沿うことにするのか、あるいは、そこは約束どおりやるのか、そういったことを非常に、正直なところ、板の間に挟まって困っておられるんだろうと思いますけれども、ぜひ国民の生活を第一に考えて、景気をよくする方向で対応していただきたい。

 そういったすべてのことを含めまして、最後に財務大臣の御見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

菅国務大臣 私、よく亀井大臣と、議論というか、こういう場でともにするんですが、今竹本先生からもお話がありましたが、やはり成長ということをしっかり求めていかなければならないし、そのためには、先ほど池田総理の名前も出されましたが、まさに、当時からだんだんと日本株式会社とやゆされる、しかし見ようによっては、それによって世界第二の経済大国になったわけですが、その後、やや日本が、経済は経済、政治は政治という形で、日本株式会社が逆に韓国株式会社になったり、場合によったら他の国がそういう、日本をいい意味での参考にしてどんどん始めた。ここでもう一度、日本においてもそういう体制をつくっていかなければならないと私は思っております。

 それから、予算の問題も、できれば余り緊縮的な予算でない形にしていきたいと思っておりますけれども、一方で持続可能でなきゃいけないというまさに冒頭言われた問題。つまり、借金をどこまでふやしていいのかという問題と、では税はどうするんだという問題。確かに、おっしゃるとおりなかなか頭が痛いわけです。

 ただ、この問題は、もう言うまでもありませんが、私が頭を痛めるのは当たり前かもしれませんが、まさにこれこそ、与野党が真剣に考えざるを得ない今日的な状況は、まさにこの十年、二十年の中で生まれているわけですから。そこは、政権を担当されてきた経験のある現在の野党の皆さんにも、ぜひ積極的に、場合によったらこのくらいは消費税を上げてもいいじゃないかという提案があるならしっかりと打ち出していただければ、私たちも大いに参考にさせていただきたい、このように思っております。

竹本委員 これで終わります。ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、徳田毅君。

徳田委員 自由民主党の徳田毅です。

 本日は主に、財政健全化へ向けた取り組みについてお伺いしたいと思いますが、その前に、今大きな問題となっている口蹄疫について、二、三質問させていただきたいと思います。

 この口蹄疫、四月二十日に第一例目が確認をされて約一カ月になりますが、今や発生戸数が百四十六戸、そして殺処分の対象が十二万五千二百二十六頭にまで、まさにパンデミックと呼べる状況にまで感染が拡大しています。私は地元が鹿児島でありまして、宮崎と同じ畜産県であります。二〇〇一年にイギリスでこの口蹄疫が発生した際には、六百万頭を超える家畜が殺処分され、一兆円を超える損害を出した。そういう教訓からも、私たちはこの口蹄疫に対して強い危機感を持っておるわけです。

 そうした中で、ここまで感染が拡大した大きな原因として、やはり初動において十分な対策が行われなかったのではないか。または、ゴールデンウイーク、連休というのはある意味では一つの大きな正念場だったということを思いますが、その間に赤松大臣が外遊に行かれていた。正直申し上げて、私たちの感覚からすれば絶対にあり得ないことなんです。あり得ないにもかかわらず、赤松大臣は国際会議でもないのに視察に行かれていた。これは問題があると指摘されてもおかしくはないんだということを思います。

 今宮崎では、大変な被害を出され、そして本当に毎日のように農家の方が消毒作業に当たり、またはこれから殺処分される牛に一生懸命えさを与えている、そういう思いをされている中で、まず一つ、菅大臣に、これまでの政府の対応についてどう思われるか、またこの口蹄疫の問題についての御所見をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 現在の状況は、もう徳田議員よく御承知のように、総理を本部長とする本部をつくって、十キロ圏についてはすべてを、ワクチンを投与するしないを含めても殺処分にする。十キロから二十キロ圏のものについては早期に出荷をして、それ以上の拡大を何としても防ぎたいということで、自衛隊あるいは警察あるいは他の県の獣医さんも含めて、とにかく全力を挙げて拡大を防止するということに最大の努力をし、また財政的に必要なものについては予備費からの提供で、財政的なレベルでおくれがないようにという対応をとっているところであります。

 当初の政府の対応についていろいろ御指摘があることは私も承知をしておりますけれども、その部分についてどうであったかということを、私の中で細かい経緯が頭には必ずしも入っておりません。

 ただ、一般的に言えば、やはり結果としてこれだけの拡大を招いたことについて、責任があるなしということを超えて、やはり政権を担当する、あるいはこういう問題を担当するそれぞれの部局がもっと努力する余地があったのか、そういった指摘があることは厳しく受けとめなければいけない。ただ、今の段階では、とにかくまずはこれ以上の拡大をとどめるところに全力を挙げていきたい、このように考えております。

徳田委員 ありがとうございます。

 ここで、赤松大臣が外遊に出られていたことも含めて責任を追及するつもりはありませんが、しかしながら、もはや激甚災害と呼べる状況にまで被害が発展している。こういう状況で、やはりもう少し強い危機感を持っていただきたかった。外遊に行かれていて、地元の農家の方が、本当に政府が一生懸命やってくださっているとはとても思えないわけです。

 きのう本会議でも、赤松大臣は何度か答弁をされました。その中では、おわびどころかお見舞いもなかった、私から見て、赤松大臣の表情の中にです。日夜不休不眠で取り組んでおられる東国原知事のような憔悴感や必死さというものはとてもじゃないけれども伝わってこない、これは大きな問題だということを私は思っております。

 そして、五月十九日には政府から、口蹄疫に対する防疫対応等についてという文書が発表されました。この中には、先ほど菅大臣の方からもありましたとおり、十キロ圏内のすべての牛、豚を対象にして殺処分を前提としたワクチン接種を行う、また、十キロ―二十キロ圏内においては早期出荷を行うこととなり、早期出荷の価値の低減分、経営再開支援金を交付するということなども記されています。

 この新しい方針については、関係省庁として財務省も一緒に協議をされたのか、菅大臣自身も赤松大臣と直接協議をされたのか、教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 特にこの費用の点について、協議といいましょうか、いろいろ要請がありました。

 もう御承知だと思いますが、予備費の支出の場合、あらかじめ閣議の決定があれば財務大臣の判断で支出できるということで、この項目の中に家畜伝染病予防費ということが既に入っておりますので、少なくともこの範疇にかかわる費用であれば私の判断で出せるということで、私からも、総理も含めてですが、つまり、財政的な面で物事がおくれることがないように、そこは財務省としてもしっかり対応しますからということを申し上げました。

徳田委員 今、半径十キロ圏内のすべての牛、豚を対象として殺処分するということが発表されておりますが、これになると二十万五千頭が殺処分されることになります。また、殺処分された、被害に遭った農家だけが対象ではなくて、これから、関係して損害をこうむっている農家に対する支援、また終息後の地域の再生などについてもやはり政府として取り組んでいただくべきだということを考えています。

 例えば、今、競りがとまっているのは宮崎だけではなく、鹿児島でも熊本でもとまっている。今の状況では、農家の方たちは何の収入もありません。子牛を出す場合、二百八十日というのが出荷する適齢期でありますが、それが三百二十日、三百五十日となれば、もちろん価格が下がっていく。しかしその一方で、今は出せないものですから、その間の経費もかさむ。まさにダブルパンチです。

 こうしたところにもしっかりと支援をしていただきたいと思うのですが、政府として大体どれぐらいの予算を想定されておられるのか、お伺いしたいと思います。

菅国務大臣 先ほど申し上げました家畜伝染病予防費という範疇で出せるものと、今徳田議員からお話がありましたように、ある意味ではそれを超えて、将来の再建、あるいは現在の生活の維持、地域にいろいろかかる費用の補てん、そういったことが必要になるという認識は持っております。

 それらについては、直接には農林省でありますが、現在、県や市、自治体からもいろいろな形で要請が、現地対策本部あるいは本部の方にも上がってきていると認識をしております。

 ですから、今の段階で、財務省、私の立場からこの程度ということはまだ申し上げる段階まで来ておりませんが、そういった自治体、地元からの要請を含めて、しっかりと受けとめて対応していきたい、基本的にはそのように考えています。

徳田委員 一部報道では、今月十七日に鳩山総理と赤松大臣が会談した際に、総理が予備費から一千億ぐらい使っていいということを明かされたということがありましたが、その後、財務省政務三役のお一人が、財務省には指示はない、せいぜい百億ぐらいだとおっしゃられたという報道がありました。

 新聞報道を前提にここで質問をするつもりはありませんが、もし実際に百億程度だと言われたのであれば、それは余りにも危機意識が希薄なのではないかということを思います。例えば、BSEについてもやはり三千億ぐらいかかっているんです。この口蹄疫についても、決して終息したわけではなく、現時点においても感染拡大が進行中ということもあります。

 この額というのは、多ければいいというものではないかもしれませんが、しかしながら、これが、皆さんが持っている危機意識がどれぐらいのものかということを農家の人たちに対して示すものだということは思います。

 私は、改めて、この口蹄疫の問題について、どこまで地域を、農家を支援すべきなのかということを政務三役の方からお伺いしたいと思います。

野田副大臣 予備費で一千億という報道が出まして、その日に会見をしたのは私でございます。一千億という御指示は総理からいただいてはいないという事実関係は申し上げました。妥当な額は百億と言った記憶はありません。一千億という指示はないという会見をさせていただきました。

 基本姿勢は先ほど大臣の御答弁のとおりであって、防疫対策あるいは経営安定対策を含めて、必要な所要額については、財政が制約になることのないように万全を期していきたいというふうに思っています。

菅国務大臣 認識は同じでありまして、特に総理の方から、あるいは官邸の方から、具体的な額が何か言われたということはありません。

 今、副大臣からの答弁のとおり、財政的な制約で対応がおくれることがあってはいけないと思っておりますし、今後のことについても、いろいろな試算はあり得るとは思いますが、どちらかといえば、財務省が試算するというよりは、やはり現場なり農水省の方が、先ほど言われた二十万頭の問題、時期の問題等を含めて考えていただく中で対応していくということになろうかと思っております。

徳田委員 今、公明党さんや私どもでも家畜伝染予防法の改正または特別措置法についても検討をしておりますし、民主党さんの方でも考えていただいているということでありますので、実際に地元の声をしっかりと聞いていただいて、どういう支援が本当に必要なのか、そういうところまで含めて、どうか手厚い支援をお願いしたいと思います。

 それでは、財政健全化についての質問に移りたいと思います。

 先ほどからも議論にありましたとおり、やはり日本の財政状況について、菅大臣初め皆様が強い危機意識を持っていらっしゃるということは私も理解をしております。ギリシャの問題も取り上げられましたが、日本の債務残高がGDP比で一八九・三%と、ギリシャの一一四・九%に比べてもはるかに大きい数字だ。ギリシャとは、長期金利や国債の国内消化割合、または経済規模についても、さまざまに状況は異なるんですが、やはりこれは決して他人事ではないんだということを思います。そして、それほど厳しい認識を持っていらっしゃるからこそ、中長期の財政の方向性をやはりしっかりと政府として示すべきではないかということを思います。

 先ほど竹本委員からの質問の中でも答えておられましたが、六月には国家戦略室を中心に中期財政フレームと財政運営戦略というものを打ち出すということでありますが、その目的、趣旨についてお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 申し上げましたように、この直接の担当は国家戦略室、仙谷大臣が担当されております。

 私が理解しているところでは、中期財政フレームというのは、どちらかといえば三年程度、もともとは私が国家戦略担当のころに、イギリスなどでは三年ぐらいの見通しで予算を考えて、そして順次ローリングしていくというやり方をとっている、そういうことも含めて、三年程度ということで中期財政フレームを考えております。

 それに加えて、十年程度の長さで財政運営戦略というものを、あわせてきちっとした案をつくって出していく、そういう位置づけになっていると認識しております。

徳田委員 今、諸外国では、世界経済危機の出口戦略の観点からも、法制化を含めて方針を明らかにされています。

 この六月に出す中期財政フレームと財政運営計画については戦略室を中心にということでありましたが、菅大臣もこの法制化については大変前向きだったと私は受け取っておりますが、今の段階で、それは断念されたのか。それでは、これをどのように規律づけをされるのか、法制化なのか閣議決定なのか、それとも、報道でも出ていますが、政権公約として打ち出されるのか、教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 いろいろな国が出口戦略、あるいはギリシャ問題を含めた財政健全化ということで、法律、中には憲法で規定するという国も出ていることは承知をしております。

 私がこの法案を準備しようということになった経緯は、まさに自民党の皆さんが財政健全化責任法を出されて、それを踏まえた質疑が何度かありまして、私も拝見させていただいて、方向性としては共通する部分もあるし、やはり国会という場でまさに与野党を超えての議論には、政府からも、あるいは与党からもそういうものを出した方が議論がより深まることも十分あり得るということで、準備をある段階までいたしました。今でもあきらめたわけではありません。

 ただ、率直に申し上げて、国会の会期の問題等々、重要法案がまだまだ山積している中で、なかなかこれを出していこうということが必ずしも合意のところまで十分に行きませんで、そういう意味で、今、いわゆる法案そのものの作業としての準備はしておりますが、やや足踏み状態にあるというのが率直なところです。

 ただ、だからといってこの議論をやめるわけではもちろんありませんで、いずれにしても、六月には中期財政フレームと財政運営戦略を出しますので、それは一般的に言えば閣議決定ということになる種類のものでありますので、いずれにしても、そういったもの、さらには参議院選挙を前にして、今、党と内閣を含めて、それに関連する一つのマニフェストの表現も議論をしていただいておりますので、そういう中で大いに議論を進めていきたいし、お願いしたいと思っております。

徳田委員 政府または財務大臣が財政再建に向けてどれほど強い姿勢を示されるかというのは、市場も注目しているところであると思います。

 これから、民主党さんが公約で示された子ども手当、農家の戸別所得補償、高速の無料化、暫定税率の廃止、これらの諸政策を実行した場合、マニフェストの中では十六・八兆円という歳出増が見込まれるということがありましたが、六月に決定されるこの財政ルールと共存可能なのか、どちらが優先されるのか、教えていただきたいと思います。

菅国務大臣 まさに、どちらが優先という以上に、整合性を持った形にしなければならないと関係者はだれもが思っていると思っています。

 そういう意味で、子ども手当の今後のあり方の議論も、党ないし内閣の方でも議論をしていただいていますし、そういうものと、中期的な財政の、いわゆる税収の問題、成長の問題、さらには国債発行の問題等を含めて、整合性のある形にする努力を今それぞれの立場でやっている、こういう状況です。

徳田委員 整合性をとる形というのは抽象的でして、どちらが優先されるのか。公約に示されたことが優先されるのか、それとも、これからしっかりと打ち出していくという六月のこの中期財政フレームであったり財政運営戦略であったりということが優先されるのか。これはしっかりとやはり示していただかなければならないんだということを思います。

 そして、財務大臣は五月十一日の記者会見において、来年度の新規国債発行額について、今年度予算額四十四兆三千億を超えないで済ませるように全力を挙げるという考えを示されました。これについても、どういう意図を持って、この意義をちょっと御説明いただきたいと思います。

菅国務大臣 まさにそこで申し上げたように、今年度の国債発行四十四兆三千億それ自体も、よく野党の皆さんから、税収よりも多い国債発行を当初予算で出すのは昭和二十一年以来のことであって、ばらまき的な要素が強いというようなことの御指摘をいただく場合もあったり、いろいろな立場のいろいろな御意見がある中で、やはり来年度の予算を考えたときに、国債発行を今年度よりも超えないように最大限の努力をする、そういう姿勢が私は必要ではないか。

 いろいろな意味でという言い方をするとちょっと抽象的になるかもしれませんが、つまりは、財政規模と税収と国債で、大きい項目は決まるわけです。そうすると、少なくとも、今のような、ソブリンリスクが注目されているギリシャやヨーロッパの状況を見れば、やはり、ぎりぎりそこは、マーケットの信認を考えたときに、今年度を最初からもう超えても仕方がないという姿勢ではなくて、何とかその範囲内に抑えるという姿勢が重要ではないか。そういう思いを率直に申し上げたわけです。

徳田委員 四十四・三兆円というのは国債発行額としては過去最大でありまして、これは、ある意味では物すごく甘い目標設定だと言わざるを得ません。

 それでは、この低い目標設定が、これほど強い危機感を持たれている財政再建においては本当に有効だとお思いでしょうか。

菅国務大臣 おっしゃる意味はわかりますが、私の気持ちもおわかりいただきたいと思いますが、四十四兆三千億におさめれば順調に日本の財政が健全化するとは全く思っておりません。

 御承知のように、これでも、六十年ルールで償還の部分を除いても、多分三十兆以上の国債が積み上がりますから、それを三年間続ければ百兆積み上がって、そうするとGDP比二〇パー積み上がるということになって、二〇〇パーという大台を超えかねない、そういうところまであることも十分認識しております。そういう認識をしながら、ぎりぎり、今日の段階で、私の立場で、そういうことも念頭に置きながら、少なくともこれぐらいのところにおさめる努力はしなきゃいけないのではないか。

 これを超えていくとなれば、当然ながら、税制度の問題にもかかわり得るわけでありまして、私も税調会長をやらせていただいておりますので、税制度は税制度で今、税調の専門委員会を中心にいろいろ議論をいただいております。そういうことを含めて申し上げたということです。

徳田委員 本当におっしゃるとおりでして、だからこそ、四十四・三兆では甘過ぎるのではないかと言っているのではありませんか。

 ギリシャの例を見ても、破綻をすれば、これほど大きな経済危機を迎えれば、国民生活全体に本当に多大な影響を及ぼすことは明らかでありまして、そうしたことを何が何でも避けなければならないからこそ、みんなで財政再建に取り組んでおられる。しかしながら、四十四・三兆よりは抑えるなんということが本当に有効かといったら、だれもそんなことは思わぬわけです。

 そして、改めて申し上げたいと思いますが、私は、民主党の中で、この四十四・三兆円ということに対してもいろいろな声があるということを報道でお聞きしました。衆議院選挙ではばらまきを公約してたくさん勝ったのに、参議院選挙では抑えるのかという話もありましたし、また、輿石さんが、マニフェストの実行を後退させる議論かという発言もあったそうです。

 財政再建の問題と、本当に超短期的な選挙対策というもののどちらが大切なのかな。皆さんは財政再建について強い意識を持っておられるかもしれませんが、民主党全体としては、口蹄疫と同じように、本当に強い危機意識を持っておられるのか、大変疑問に思うところであります。先ほど、法制化の話も後退しているとありました。それも、はっきり言えば、党内の抵抗があったからではありませんか。

 それでは、財務大臣として、民主党のそうした危機意識の希薄さ、欠如というものに対してどう思われているのか、お答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 私も、ギリシャの状況を見ている中で、ああいう状況、マーケットが国債の消化をしなくなった状況の中で、ユーロ圏、IMFが、ああいう形の救済スキームを提示する一方では、非常に厳しい財政運営のメニューを提示しています。言いかえれば、国家主権とも言える税制度を決める権限が、自分の国の中で決められなくなるという、つまりは、単に厳しい要求というよりも、国が国として自律できなくなる状況が財政破綻という状況だということを、私は目の当たりにした思いを持っております。

 率直に申し上げて、この問題は、最終的には国民の皆さんの理解を求めなければなりません。そして、選挙のためかということを言われましたけれども、政治家が選挙を考えないといえばうそになりますし、選挙を考えるわけですが、逆に言えば、そういう理解があった中で、選挙のある結果が出れば実行できますけれども、逆に言うと、幾ら主張してもそれが国民の皆さんの理解を得られなくて、結果としてその主張が実行できないような結果になるとすれば、それは結果としては言ったことが実行できないわけです。

 今の状況は、もちろん、党内のいろいろな議論もだんだんと深まっておりますが、私は、もっと国民的な議論を広げていく必要があるし、それには、まさに与野党を超えての議論があることが望ましいと今でも思っております。

 ですから、法案については、先ほど申し上げたように、幾つかの理由で足踏み状態にはありますけれども、場合によっては、この国会でない段階でも、そういう議論を続けなければならない時期はまだまだあると思いますので、何らかの形で、国会という場で議論することもあり得ると思っておりますので、あきらめているということでは全くありません。

徳田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一です。

 私の方も、財政健全化、特に来年度予算編成の課題等を中心に質問をいたしたいと思います。

 ただいまの質問にもございましたが、大臣は五月十一日の記者会見で、来年度の予算編成に当たっては、新規国債の発行が今年度の四十四・三兆円を超えないように全力を挙げる、こういう旨の発言をされていらっしゃいます。一方で、その日総理は、その財務大臣の発言というのは財務大臣の思いを述べたということで、決してそれが私の考えであるというものではない、こういうふうに記者団にお答えになっていらっしゃいます。

 私は、大臣がこういう重要な御発言をされるからには、政府内で調整がされているかと思っておりましたけれども、総理はどうもそういうお考えではないということですが、四十四・三兆円を超えないように頑張るというのは、政府内での調整はどういうふうになっているのでしょうか。確認をいたしたいと思います。

菅国務大臣 特に総理との間では、比較的しばしば、現在の財政の状況、あるいはギリシャを含む国際的なソブリンリスクの状況なども意見交換をいたしております。

 私が五月十一日に発言したのも、ちょうどギリシャ問題というかヨーロッパ問題が、七千五百億ユーロという大きな枠組みの中で一応一つの山を越える、結果としてはまだいろいろ残りましたけれども、越える段階で、やはりそういう認識のもとで、我が国においてもせめてこのくらいのことは努力しなければという趣旨で申し上げました。

 総理には、個別には事前に、こういうことを言いますということは申し上げてはおりません。終わった後に少し説明をさせていただきました。

 これはいろいろな見方があると思いますが、私の財務大臣という所掌の中で多少、より強い危機意識を感じておりましたので発言をさせていただいた。必ずしも、そういう発言をするしないをそういうところで議論して、発言をしにくくなるよりも、私の責任のもとで発言をし、そして総理にもその後御説明を申し上げた、これが経緯であります。

石井(啓)委員 そういたしますと、今後、来年度の新規国債発行額を四十四・三兆円に抑えるということについては、政府の方針とするおつもりなのか、あるいは大臣の個人的なお考えにとどめるおつもりなのか、いかがでしょうか。

菅国務大臣 これも先ほど来申し上げていますように、今、中期財政フレームあるいは財政運営戦略という、三年、十年という財政の展望を、国家戦略室を中心に六月に取りまとめて発表することになっております。ですから、その中身は閣議決定を予定しておりますので、当然ながらその中で、どのような表現になるかはわかりませんが、少なくとも、財政健全化の一つの方向性は内閣として決めることが前提になっております。

 それに加えて言えば、今同時に、参議院に向かってのマニフェストの議論も、党と内閣、相互乗り入れでいろいろ議論しておりますので、これもどなたかの御質問に答えたように、やはりそれらが整合性を持った形で決められていかなければ責任ある姿勢とは言えないと思っておりますので、そういう段階で一つの整合性ある形のものを出すべきだ、また出さなければならない、こう思っております。

石井(啓)委員 それでは、来年度予算編成の課題でございます。

 これは、ことしの当初予算の審議の折に予算委員会等で私も指摘をさせていただいていますが、財務省が二月に出された後年度影響試算を見ても、来年度の予算編成は実は大変難しい予算編成になる、もう大臣も御承知のとおりでございますけれども。

 まず歳出を見てみますと、後年度影響試算によりますと、社会保障の自然増、それから国債費、これは残高がふえていきますから当然歳出の国債費もふえていくということで、ほかの新しい施策をやらなかったとしましても、今年度歳出九十二・三兆円が九十三・九兆円まで一・六兆円伸びる、こういうふうになっております。ほかの全く新しいことをやらなかったとしても、一兆六千億円歳出は伸びる。

 さらに、これに民主党のマニフェストがどうなっていくのかということですね。マニフェストの工程表を拝見しますと、マニフェストの工程表では、二十二年度七・一兆円、これは満額はできませんでしたけれども、二十三年度は十二・六兆円。この七・一兆円と十二・六兆円の差額をとると、工程表どおりやったとしても、二十二年度から二十三年度は五・五兆円ふえるということになります。

 そうしますと、マニフェストをしっかりと実施して、なおかつ歳出の自然増等を踏まえると、歳出増というのは七兆円以上に及ぶ可能性があるわけですね。この歳出増の圧力をどういうふうに抑えていくのか、これについてまず大臣にお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 そこが頭の痛いところでありまして、昨年の予算編成のときから、次の年が一番大変だなということは私なりには認識しておりました。

 ですから、いろいろなことを同時並行的に議論していただいております。もちろん税制についても、税制調査会、特に専門家委員会の方を中心にやっていただいていますし、成長戦略も、六月にはより中身の濃いものを提起することで議論していただいておりますし、若干間接的かもしれませんが、いわゆる番号の問題の議論、さらには年金のあり方の議論、こういった、基本的に財政にかかわるインフラ的なものの議論も同時並行的に進めていただいております。

 最終的には予算編成という秋の段階になろうかと思いますが、そういうことを念頭に置きながら、五月十一日は国債発行について申し上げたわけですが、まさに今石井委員が言われるように、財政規模をどの程度にするのか、それから、現在税収が、一時的な落ち込みと制度的なこの十年間のいろいろな変更によって、全体として非常に税収が少なくなっておりますので、どういう形でそれに対応できるのか、ありとあらゆることを含めて考えて、最終的には一つの形にしていきたい、こう思っております。

石井(啓)委員 それは当然、最終的には一つの形にしないと予算は組めませんから、どういう形にしろ、それはそうなるんでしょうけれども。

 歳入の方は後ほど聞きますけれども、今指摘しましたように、歳出だけでも相当の歳出増の圧力がある。社会保障の自然増や、あるいは国債費の増加というのは、なかなかこれは政策的にコントロールしにくいところですけれども、少なくともマニフェストについては、これは当然見直さなければいけないということに必然的になるのではないでしょうか。大臣、いかがですか。

菅国務大臣 現在まさに、マニフェストを議論する党と内閣の共通の土俵ができております。三つのそれぞれのテーマごと、プラス政治改革という場があり、そして企画委員会という場があり、最終的には、総理、さらに党から幹事長も出席をされる、私も出席をする政権政策会議というものがあって、その中で、マニフェストを含めてどういう形で国民の皆さんに提示するかという段取り、形はできております。

 まさに今、それのかなり煮詰まった段階にありますので、その中で、今御指摘の問題もそれぞれ頭の中にしっかり入れながら、一つの形をそう遠くない時期には国民の皆さんに提示していきたい、こう思っています。

石井(啓)委員 民主党さんも随分悩まれていらっしゃるようですけれども、例えば子ども手当、満額実施しようとすると、五兆三千億から四千億ぐらいの財源が必要なんでしょうか。これは、新規財源を見出さない限りとても無理だというふうに思いますね。

 これについては、野田副大臣も大分いろいろ御発言されているようですけれども、満額実施は無理なんじゃないですか。野田さん、どうですか。

野田副大臣 平成二十二年度においても、マニフェストの主要事項というのは国債発行に頼ったわけではなくて、子ども手当月額一万三千円分含めて、三兆三千億円の新しい財源をつくった中で手当てをさせていただきました。基本的にはそういう姿勢で、財源も確保しながらマニフェストの着実な実行を図っていくということになると思います。

 二十三年度編成については、まさに先ほど大臣がお答えになったように、中期財政フレームとか財政運営戦略とか、フレームや戦略に基づいて作業をすることとなりますので、それ以上具体的には今申し上げる段階ではないというふうに思います。

石井(啓)委員 中期財政フレームなりあるいは財政運営戦略、そういうものが六月に出てくるということのようですけれども、そうすると、当然、来年度の概算要求の指針においては、この歳出をどう抑え込むかというのは、やはり具体的な指針として出てくるわけですね。

 従来のシーリングというやり方をそのまま踏襲することはどうもお考えではないようですけれども、ただむやみに各省から要求を受け取るということもお考えでないようでありますから、そこら辺は何か工夫されて、概算要求時点においても歳出を抑制するような工夫はなされるおつもりでいらっしゃいますか。

菅国務大臣 先ほども申し上げたように、いずれにしても、予算というのは歳出と歳入とがあってでき上がるものですので、今は歳出についての御指摘ですが、まだ細かい段取りまでは決めてはおりませんが、私なりのイメージでいえば、昨年は、選挙が終わった翌日が前の政権の概算要求の締め切り日になっておりまして、それを事実上白紙に戻して、改めて概算要求を受けるときに、シーリングという考え方はとらないと。

 どうしても、シーリングだと狭い幅での調整以外はできないので、逆に言えば、優先度の高いマニフェストとかそういうものについてしっかり予算をつける一方で、低いものは思い切って削る。それは皆さんの目から見れば、まだまだできなかったという面もあるかもしれませんが、少なくとも、公共事業費を大きく削減する等の、従来の政権ではとてもそういう幅の変更はできなかった大きな幅の変更ができたことも、私はこれは客観的な事実だと思っております。

 そういった意味で、来年度の予算の場合に、ある程度そういう、政治主導という言い方がいいのかどうかわかりませんが、基本的な考え方に沿って予算要求をしていただくことになると思います。

 ただ、シーリングという手法を部分的には活用することもあり得る。つまりは、とにかく何が何でもいいから削ればいいという意味で使うことは必ずしも望ましいことではないけれども、ある範囲の中で優先度をつけて、この範囲でおさめてくれということはあり得ることかな、このように思っております。

石井(啓)委員 それでは、歳入の方に移ります。

 来年度の歳入も、これは本当に厳しくなっていきますね。やはり財務省の後年度影響試算によりますと、その他収入が、二十二年度十・六兆円に対して二十三年度は三・九兆円しか見込まれないというふうになっています。二十二年度は財投特会の積立金がございましたけれども、積立金が枯渇するということもございますし、それから、外為特会の剰余金も減少していくということで、ここだけで実に六・七兆円も減ってしまう。

 一方で、税収は、今年度三十七・四兆円に対して来年度は三十八・七兆円しか見込まれておりません。二十三年度名目経済成長率一・七%というふうに見込んでも、一兆円ちょっとしか税収はふえないということでございますから、税収とその他収入を合わせて、二十二年度四十八兆円に対して二十三年度四十二・六兆円、五兆四千億円も減ってしまう。これが財務省自身が出された影響試算でございます。

 この歳入の減少にどういうふうに対処されるおつもりでしょうか。

菅国務大臣 この後年度の影響試算というのは、その都度申し上げていますように、いろいろな考え方を固定して機械的に計算をしたときの試算という位置づけであります。

 ですから、それはそれとして一つの重要な試算であることはそのとおりですが、税収にしても、経済の、景気の状況が若干明るくなっているということがどう影響するかもありますが、同時に、昨年暮れに税調としてまとめた大綱の中でも、幾つかの税についての検討を行うことにして、現在も行っております。そういった税制改正というものが、どの程度のものがどの形でできるのかということもありますし、また、税外収入も、いろいろまだ議論がある部分もあります。

 さらに言えば、最も期待したいのは、現在行われている行政刷新会議を軸とした事業仕分けの第二弾、さらには特別会計を含む第三弾等々、そういったことも、昨年は、必ずしも十分な時間がなくて制度論まで入れなかったわけですが、今回はかなり制度論にまで切り込んだ形の努力が進んでおります。

 そういったことを含めて、歳入についても、そう手放しでどんとふえるというところまでは言えませんが、この水準よりはもう少しは期待できるのではないかな、このように思っております。

石井(啓)委員 税外収入で、今事業仕分けで、独法やあるいは公益法人の基金等の取り崩しもある程度期待ができそうでありますけれども、ただ、今申し上げたような五兆四千億円もの歳入源を確保するような大きな額にはどうもなりそうにありません。

 そこで、ちょっと今大臣がおっしゃった、その他収入、税外収入についてはいろいろな議論があると。ちょっと、そのいろいろな議論というのが私は非常に心配なんですね。

 この委員会でも何回か指摘を申し上げましたけれども、この税外収入をふやすためにいわゆる禁じ手を使ってくるのではないかと。すなわち、外為特会の積立金の取り崩しやあるいは国債整理基金の取り崩し、こんなところに手をつけるようなことがあると、これはかえって、日本の財政はそんなに大変なことになってしまうのかという、物すごく悪いメッセージを発することになりかねない。

 私は、これはやるべきではないというふうに考えているんです。大臣、こんなところまで手をつけるようなお考えはあるんでしょうか。

菅国務大臣 もうよくおわかりでおっしゃっているんだと思いますが、いろいろな勘定がある中で、歴史的にもいろいろな、操作と言っていいのか、その都度いろいろな対応をしてこられた経緯もあります。

 ですから、その中には、禁じ手と言われましたけれども、何といいましょうか、比較的筋のいいものと筋が必ずしもそうよくないものともあるわけでありますが、今から何か、これとこれは一切考えないというのではなくて、やはり先ほど申し上げたように、いろいろな意見があるというのは、いろいろな考え方について十分議論としてはお聞きをしようと思っています。

 それに加えてあえて申し上げれば、これは与党の皆さんもいろいろな中で言われていることですが、その後の税制改正の時間的な段取りも含めて、ある程度明確にすることができれば、その間のつなぎというものを考えるときに、マーケットの信認とかそういったことを含めて、この段階からはこういうふうにきちっと税制改正でもって対応するので、その間については若干の経過措置的なことを認めてほしいというような場合も、これは与党の中でも、従来のいろいろな財政に絡む法案やあるいは予算総則などにも盛り込まれたわけでありますから、そういうことも含めて、ありとあらゆることを考えながら何とかしなければと思っております。

石井(啓)委員 今の御発言は非常に重要な発言というふうに受けとめました。

 それはあれでしょうか、一一年度増税をやる、ただ、増税というのは、一一年度、税収はすぐ入ってきませんから、増税をやるということを確定した上でつなぎの資金をどこかから調達するというようなこともお考えにあるということなんでしょうか。

菅国務大臣 例えばの例でいいかどうか知りませんが、今自民党が出されている財政健全化責任法では、五年後までにプライマリーバランスを半分赤字にし、十年後までにゼロにするという中身が例えば入っております。そのことが即来年度の予算にどうなるということの幅はありますけれども、少なくとも、これまでの経緯でも、景気が立ち直ったときにはそういった税制についても手をつけるといったようなことも、かつての自公政権の中でも提起をされてきた経緯があると思っております。

 ですから、余り確定的に、例えばこういうことですかと聞かれてしまうと、それは、今の段階でそうですとかそうではありませんとは言えませんけれども、つまり考え方として、ある段階からの税制改正というものを考えながら、一方で、そうはいっても、リーマン・ショック等あって、まだまだ日本の経済、回復的傾向にはややなっておりますが、まだ私は本格的な回復と言うにはちょっと難しい状況だと思っておりますので、その狭い道を探っていく上でいろいろな可能性を考えるということで申し上げたので、余り確定的に決めつけていただいても、ちょっとそれにはお答えしかねます。

石井(啓)委員 大臣は、増税しても使い道を誤らなければ景気はよくなるんだという発言もされていらっしゃいますね。ある意味で、増税に対する地ならしを始められたのかなというふうにも思うんですけれども、これはどういう趣旨でおっしゃっているのか伺いたいと思います。

菅国務大臣 三月の二十四日、本年度予算が成立した夕方の記者会見で、その記者会見では増税という言葉は使っておりませんが、私が申し上げたのは、現在のデフレ状況というのを、ある見方でいえば、お金はあるんだけれどもそれが循環していない状況だ、個人の皆さんも企業も、何か新しい車や新しい家や新しい工場建設にお金を使うよりも、お金のままで持っていたいという、何といいましょうか、お金に対する志向がシフトしていることがデフレの一方の見方だということを申し上げた中で、そうすると、そのお金をどうかして使わなきゃ日本の経済は回らない。

 使い方は二種類あるわけでありまして、一つは、これまでのように国債を発行してその流れないお金をお借りして使う、一方では、税でもってそのお金をいただいて使う、そういうことになろう。ですから、デフレ状況の中では、そういう形でお金を循環させるということは、やはり政府としてはやらなければならない役目であろう。

 ただ問題は、その使い方によって、それが経済の成長に効果のある使い方と、必ずしも効果のない使い方がある。私は、無駄というのは、たまっている無駄もありますけれども、まさに効果のない使い方という意味での無駄というものをなくすることが極めて重要だと思っております。

 そういう意味で、効果のある使い方は何かといえば、端的に言えば、今の日本の状況でいえば、雇用を生み出し、仕事を生み出し、そしてそれが結果として所得になり、サービスも含めた生産につながっていく、そのことがデフレ回復の道筋でもあり得る、こう思っております。

 そういう意味で、増税という言葉をその場では使ったわけではなくて、税と財政出動という表現をいたしましたけれども、まさに、いずれにしても、財政の中身によっては、例えば税でいただいたものを方向性を間違わないで使っていけば経済の成長にもつながっていく。

 あえて言えば、この間増税をしたときに、それが契機で景気が悪くなったという見方が一般なんですが、現在、私の足元にある経済財政部門のいわゆる旧経企庁とかいろいろなところに、過去のそういう事例をもう一回全部洗い出してみてくれと言っておりますが、今出てきている見方でいえば、必ずしも、増税をしたから景気が悪くなったということにはなっていない。これはヨーロッパの例も含めて検討させておりますが、確かに消費税の場合は、上げれば一時的には駆け込み需要があって、その後落ち込みますけれども、それをならしてみたときに、必ずしも、増税によって景気が悪くなっているということは言えないというのが大体専門家の皆さんの考え方でもありまして、そういうことも含めて検討しているということであります。

石井(啓)委員 最後の質問にいたします。

 先ほどの質疑の中で、消費税の増税については次の選挙まで、公約もあり慎重な言いぶりでいらっしゃいましたけれども、実施時期はともかく、検討を早目にやるというお考えはございますか。

菅国務大臣 消費税については既に、昨年の税調の大綱の中でも、社会保障の問題と含めて大いに議論しようということになっておりますし、現実にも、現在は税調の専門家委員会という専門家の皆さんにお集まりいただいた中では、所得税、法人税と並んで消費税についても議論をいただいております。

 そういう意味では、議論そのものはもちろんやらなければいけないし、既に始まっているという状況です。

石井(啓)委員 終わります。では、また改めてしっかり聞かせていただきます。

玄葉委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 中小企業金融についてお聞きをしたいと思います。

 中小企業金融円滑化法が制定されまして、それに伴い、金融検査マニュアル、監督指針の見直しが行われました。

 お手元に配付しております資料は、金融庁が作成をしたものであります。「中小企業の事業主の皆さんへ!」、これが表紙でありますが、それをあけますと、条件変更を行う際に経営改善計画等がなくても、最長一年以内に計画等を策定することができる見込みがあれば不良債権とみなしません、開きますと、こういうのが右上に書いてあります。中面の左の下の方に「先に返済条件を変更し、時間をかけて一緒に計画を作っていきましょう!」、こういうふうに銀行の職員が声をかけているわけです。これこそまさに私はコンサルティング機能だというふうに思うわけです。

 亀井大臣に確認しますけれども、これですべての金融機関に対して徹底するということだと思いますが、そういうことですね。

    〔委員長退席、中塚委員長代理着席〕

亀井国務大臣 全くそのとおりであります。鋭意徹底をさせております。

佐々木(憲)委員 これは民間金融機関を想定したパンフだとは思いますが、当然、政府系金融機関あるいは信用保証協会等も同等の対応が求められていると思うんです。

 昨年の財務金融委員会、十一月二十五日でありましたが、私が亀井大臣に質問をしたときに、大臣はこうお答えになっているんです。「政府系金融機関の果たしている役割というのは、民間金融機関と同様、あるいは、場合によってはそれ以上の重要性がある」「政府系金融機関も、職員を徹底的に、本当に徹底的に鍛え直すということをぜひやっていただきたい。」「コンサルタント的な機能を果たしておるかどうかということが今後の金融検査の、これが眼目だ」、非常に力強いことをおっしゃっているわけであります。

 政府系金融機関も当然この立場からコンサルティング機能を発揮するよう指示していると思いますけれども、政策金融公庫の所管は財務大臣なんです。菅大臣も当然こういう立場で指導なされていると思いますが、確認をしたいと思います。

菅国務大臣 日本政策金融公庫を財務省が所管しているということはそのとおりでありまして、財務省としてはこれまでも、経産省等とともに、公庫等の政府系金融機関に対し、中小企業金融円滑化法の趣旨にかんがみ、条件変更へのより一層積極的な対応や相談体制の整備等を図るとともに、これまで培われてきた経営支援や財務アドバイスの知識、経験も存分に活用して、万全の体制で中小企業等の経営支援に臨むように求めてきたところであります。公庫においても、これらを踏まえて条件変更の積極的な対応などに努めていると承知をいたしております。

 今後とも、引き続き、中小企業などへのきめ細かい配慮を要請してまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 では、日本政策金融公庫の総裁にお越しいただいておりますので、お聞きをしますが、こういう中小企業に対してのコンサルタント的機能、これをどのように公庫として実施されているのか、職員に対してどのような指導を行っているのか、確認をしたいと思います。

安居政府参考人 現在、いろいろな中小企業診断士の勉強等も、昔からですけれども、さらに加速して進めておりますし、各店ではお客様に、当然、政府の機関として、ただお金を貸したりということじゃなくて、コンサルティング機能を従来から進めております。そういう意味で、今、教育も両方、一緒になって進めているところでございます。

佐々木(憲)委員 実態をいろいろ私ども聞いておりますと、必ずしもそれが徹底されていないというふうに思います。

 例えばこんな例がありまして、ある業者が相談に行きました。その業者に対しまして公庫の職員はこういうふうに答えた。とにかく二、三カ月売り上げを上げて、返済日にきちんと支払いができて、誠意を見せてくれれば相談に乗りますよ、こういうふうに言われた。こういう態度はコンサルティング機能の発揮と言えるでしょうか、総裁。

安居政府参考人 お客様からの相談に対しましては、私ども、財務内容の分析とかあるいは今おっしゃったお話ということですべてを決めるということは一切いたしておりませんで、お客様のお話を伺ったり、あるいは事業現場を見せていただいたり、経営の実態を全体的に把握して、いろいろ判断をしているということでございます。

佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、二、三カ月売り上げを伸ばして、支払い日にきちんと支払いができて、誠意を見せてくれれば相談に乗ります、こういう対応の仕方はコンサルティング機能を発揮しているやり方だと言えるのかと聞いているんですよ。

安居政府参考人 今おっしゃった、返済が、あるいは売り上げがという問題については、そういうことはよくないと思います。

佐々木(憲)委員 具体的な事例はいろいろ聞いておりまして、例えば具体的に言うと、愛知県の日本政策金融公庫に相談に行ったある中小業者、Aさんと言ってもいいんですが、そういう対応をされたんですよ。二、三カ月売り上げを上げる。上がらないから相談に行っているわけですね、リーマン・ショック以降こんなに景気が悪くなって、努力しても売り上げが伸びないという状況で。だから、返済条件の変更も含めて何とか相談に乗ってもらいたい、そういう相談に行ったら、いや、売り上げを伸ばしてくることが条件だ、こういう対応をされる。

 それから、公庫から言われて、例えば店舗家賃の領収書はどうなっているか、これもわざわざ取り寄せて持っていった。そうしたら、それはもう要らない、こういう対応をされた。こちらが提出した資料も、持って帰りたい資料があったら持って帰っていいよ、こちらはもう要らないから後は捨てるだけだ、こういう人をばかにしたような態度をとったというんです。

 職員に対して、総裁、このような態度を指示しているとは私は思えませんけれども、先ほど教育をしていると言いますが、どんな教育をしているんですか。こういうことをやるということが現に起こっているわけだから、徹底していないということじゃないんですか。

安居政府参考人 今おっしゃった個々の案件はちょっと私承知しておりませんが、例えば、現実にセーフティーネット貸し付けとかあるいは条件変更というのは非常に大きく伸びております。したがいまして、全体的に私は、今それぞれの従業員に対して、お客様をきちっと大事にするということは徹底しておると思っております。

佐々木(憲)委員 そうしますと、こういう態度は基本的な公庫の態度とは違う、もしこういう態度をとっていれば、それは当然是正すべきものである、こういうことですよね。

安居政府参考人 今おっしゃった、売り上げが二、三カ月減ったということだけで判断した、あるいはそういうことであればおっしゃるとおりだと思いますが、私は、そういう、ただ二、三カ月だけ売り上げが減ったということで……(佐々木(憲)委員「上がることを条件にと言っているんです」と呼ぶ)売り上げが上がるということ、そういう意味では、私は、きちっと教育しておりますし、それだけでは判断していないと思っております。

佐々木(憲)委員 だから、現実にこういう対応をしているということに対して、そんなことは知らないとかしていないとかと今言われても、実際にそういうことを言われている業者がいる。

 では、もう一つ挙げますけれども、例えば八年間を超えて返済期間がある、そういう中でたまたま二、三回返済がおくれた、しかし二日以内にすべて返済しているんですよ。一、二日おくれたということですね。こういう債務者に対して、こういうふうに言われたというんですよ。返済日がおくれることが二、三回あったね、このようなことは信用にかかわり、融資は難しいですねと。

 これはパンフに書いていることと全く違うわけでありまして、公庫では一般に、返済日が二、三日おくれた、例えば八年、十年返済の期間があって、二、三回そういうことがあった、それだけで融資ができない、信用力がない、こういう判断をするという基準があるんですか。

安居政府参考人 私どもは、先ほども申しましたように、一つのことだけで判断はいたしておりませんし、今おっしゃった、二日、三日おくれたからいけないというルールはございません。

    〔中塚委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 そうすると、こういうことを具体的にやっているとすれば、これは基本方針から外れた間違った対応である、こういうことになりますね。

安居政府参考人 今おっしゃった、単に二日、三日返済がおくれたということだけでそういうことを申し上げたとすれば、これはルール違反でございます。

佐々木(憲)委員 それから、こういうこともあるんです。売り上げが落ちているところには融資はできませんよと。公庫の職員は、不況で落ち込んだ場合にはもう融資はできないんだ、つまり、新規融資の謝絶の理由として、売り上げの落ち込みということを言っているわけです。これも基本的な方針とは違いますね。

安居政府参考人 私どもは、お客様からの御相談に対しまして、先ほどもちょっと申しましたように、財務内容の分析だけじゃなくて、お客様から事業のお話を伺ったり、いろいろな分析あるいはお話を伺って、できるだけ融資の可能性を追求するという姿勢で融資判断を行っております。

 したがいまして、売り上げが落ちているお客様でありましても、その原因や改善のための対策を行い、今後の事業見通しが立ち、御返済力が認められるお客様には積極的に融資に応じるところでございまして、売り上げが少し落ちているということだけをもって一律にお断りするようなことはいたしておりません。

 また、追加の御融資が難しい場合でも、既往融資の返済条件緩和の御相談をお受けして、少しでも資金繰りを緩和できないか、そういう可能性を追求するように努めております。

 私どもとしましては、お客様の御相談に親切に、丁寧に、迅速に対応するように心がけている次第でございます。

佐々木(憲)委員 総裁がそういうふうにここできれいなことを言っても、現場ではそうなっていないというのがあちこちの実態なんですよ。

 例えば、こういうこともあるんですよ。信用金庫か大手銀行に融資を受けてもらってはどうですか、うちではもう対応しませんと。そんなのは政府系金融機関じゃないでしょう。

 本来なら、民間の金融機関が貸せない、そういう中小零細業者に対して、駆け込み寺としての公庫の役割というものがあったはずなんです。私も何度も、政府系金融機関の再編の際に、そういう機能はなくならないんですねと確認したんです。そうしましたら、それはもう、引き続きそういう役割を果たすのが公庫の仕事ですと。ところが実際に、民間に行きなさい、うちには、売り上げが落ちたり返済が二、三回おくれたのはだめだ、こういう態度をとっているようでは、駆け込み寺ではないですよ。

 このチラシを見ますと、一枚目の一番最初に書いてありますね、店の売り上げが落ち込んでおります、返済の相談に乗ってもらえませんか。そうしたら、もちろんです、返済の御相談に従来以上に前向きに応じております、経営改善の見通しを立て、返済の計画を見直しましょう、相談に乗ります、こうやっているわけですよ、こっちの方は。

 これ以上のことをするというのが亀井大臣の答弁なわけだから、実際にやっていることが全然違う、こういうことでは公庫としての役割を果たしていないと私は言わざるを得ない。基本的な、少なくともこのパンフレットに書かれている内容を現場の一人一人の職員に徹底する、まずそういう約束をしていただきたい。

安居政府参考人 先ほどおっしゃいました、公庫で融資できないから民間機関に相談に行くようにというような対応は、私どもはしておりません。

 それから、当然、政策の実施機関でございますので、我々は、きちっと政府の指針、指示に基づいて、これからもますますきちっとお客様に対応するように努めてまいりたいと思います。

佐々木(憲)委員 しておりませんと言っているけれども、しているんだから、実際に。

 では、調査してください。愛知県の日本政策金融公庫でそういうことをやっていないかどうか調査の上、もしあったら是正すると、はっきり言ってください。

安居政府参考人 個々の話は私はここではちょっと申し上げられませんが、できるだけ、もしおっしゃることがございましたら、調べまして、もし何かございましたら是正するというふうにしたいと思います。

佐々木(憲)委員 亀井大臣に最後にお聞きしますけれども、大臣は、現場の職員を一人一人徹底的に鍛え直さなきゃならぬとこの場でおっしゃいました。私は、これはもうしっかりした腹構えを示していただいたというふうにその場で思いました。

 実際のこの政府系金融機関の対応というのは、どうも極めて官僚的で、非常に冷たい。民間金融機関よりも冷たいという声も上がっております。公庫の総裁が今このようにおっしゃいましたが、行政の側としても、こういう問題は、本当に一人一人の業者の気持ちを受けとめて、人情ある対応をするというのが新しい政権の担当の大臣の仕事だと思いますが、大臣としては、最後にその決意をお聞かせいただきたい。

亀井国務大臣 私はもちろんでありますけれども、財務大臣も経産大臣も、鳩山政権の友愛精神、言葉だけではなくて、職員並びに関係先、監督指導下にあるところがそれを実行してくれるように、大臣としてそれぞれ全力を挙げておるつもりでございますので、今後とも私は、財務大臣も経産大臣もそれをされていかれるだろう、このように確信をいたしております。

佐々木(憲)委員 終わります。

玄葉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十二分散会


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