衆議院

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第2号 平成22年10月26日(火曜日)

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平成二十二年十月二十六日(火曜日)

    午後一時三十四分開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 江端 貴子君 理事 大串 博志君

   理事 柿沼 正明君 理事 古本伸一郎君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 後藤田正純君

   理事 竹下  亘君 理事 竹内  譲君

      青木  愛君    網屋 信介君

      五十嵐文彦君    稲富 修二君

      小野塚勝俊君    岡田 康裕君

      川越 孝洋君    木内 孝胤君

      岸本 周平君    小林 興起君

      小山 展弘君    杉本かずみ君

      菅川  洋君    高山 智司君

      中島 政希君    中塚 一宏君

      中林美恵子君    長尾  敬君

      福嶋健一郎君    松岡 広隆君

      三村 和也君    宮崎 岳志君

      吉田  泉君    和田 隆志君

      渡辺 義彦君    竹本 直一君

      徳田  毅君    野田  毅君

      村田 吉隆君    茂木 敏充君

      山口 俊一君    山本 幸三君

      斉藤 鉄夫君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   海江田万里君

   内閣府副大臣       平野 達男君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   厚生労働副大臣      藤村  修君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   政府参考人

   (国税庁次長)      田中 一穂君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     長尾  敬君

  岸本 周平君     渡辺 義彦君

  小山 展弘君     中島 政希君

  中林美恵子君     川越 孝洋君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     中林美恵子君

  中島 政希君     小山 展弘君

  長尾  敬君     松岡 広隆君

  渡辺 義彦君     岸本 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  松岡 広隆君     網屋 信介君

    ―――――――――――――

十月二十日

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(志位和夫君紹介)(第一三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四号)

 消費税を減税し、医療へのゼロ税率適用を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一五号)

 納税者権利憲章の制定ないし国税通則法の一部改正を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一六号)

 国民生活に直結する消費税増税反対に関する請願(宮本岳志君紹介)(第三三号)

 消費税増税をやめ、暮らしと経営を守ることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第四四号)

 同(吉泉秀男君紹介)(第四五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三三号)

 暮らしと経済を壊す消費税率一〇%への大増税反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第五八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三四号)

 税金を大企業と高額所得者に応分にかけ、庶民への減税を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第八八号)

 消費税増税をやめることなど暮らしと経営を守ることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一二〇号)

 庶民増税をやめ、暮らしと経営を潤すための財政確立に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二九号)

 納税者の権利を確立し、中小業者・国民の税負担を軽減することに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一三〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として国税庁次長田中一穂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柿沼正明君。

柿沼委員 民主党の柿沼正明でございます。

 本日は、臨時国会最初の財務金融委員会ということで、トップバッターを務めさせていただきます。理事会等の関係で三十分の質問時間は十分になりますが、精いっぱい頑張ってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 円高で、今、中小企業は塗炭の苦しみの中におります。八月来の急激な円高で、まずは、収入まではいかないんですが、そろそろ親会社からの受注も厳しくなってきている、そんな状況にあるわけでございます。

 そんな中、過日、韓国でG20が行われました。きょうは、私の質問というよりは、このG20について、その協議内容、協議結果の報告を野田財務大臣にしていただきながら、この円高阻止に向けた御決意をまずはお聞かせいただければというふうに思います。野田大臣、お願いします。

野田国務大臣 柿沼委員のお尋ねは、G20の報告をしろということだというふうに思います。

 先週の金曜日、土曜日と、韓国の慶州におきまして、主要二十カ国の財務大臣・中央銀行総裁会議がございました。

 これまでG20は、強固で、そしてバランスのとれた持続可能な成長というフレームワークをつくることであるとか、公的債務の削減を成長に配慮しながら行っていくことであるとか、何回か大きな政策的な合意をやってまいりましたけれども、今回の一番のテーマは、強固で安定した国際金融システムをどうやって、それぞれ黒字国、赤字国あります、あるいは先進国、新興国ございますが、その立場を乗り越えてどうやって合意形成できるかが焦点であった、そういう位置づけのG20でございました。

 その中で、幾つか一定の前進がございましたけれども、まず為替については、経済のファンダメンタルズを反映し、市場を反映した為替レートシステムに移行し、通貨安競争を回避することであるとか、あるいは、これまで為替の過度な変動であるとか無秩序な動きというのは経済や金融の安定に悪影響を及ぼすという認識でとどまっておりましたけれども、これをより、主要通貨を持つ国々が監視をする、そういう合意もされました。

 加えて、世界的なこの不均衡を解消するために、この後いろいろな御質問が出るかもしれませんけれども、経常収支を含めて、参考となるガイドラインをつくりながら、お互いに均衡、リバランスを図っていくということの合意、政策の総動員をしていこうということもございました。

 それから、こうした機能はIMFがいわゆる分析をしたり調査をするわけですが、危機以降IMFの役割は高まっておりますけれども、そのクオータ改革等々の議論も行われました。

 概要は大体そのような感じでございます。

柿沼委員 質問は六問用意したんですが、時間の関係で、最後の一問を、自見金融担当大臣の方にお願いしたいと思います。

 昨年、金融円滑化法案が施行されました。これは来年の三月末に期限を迎えるということであります。今、財務大臣に御質問させていただきましたように、今、中小企業は資金繰りも含めて非常に厳しくなってきております。そんな中、この期限を迎える金融円滑化法案をどうされていくのか、その方向についてお話しいただければということが一つでございます。

 もう一つは、この間の日経新聞にも少し出ました、この金融円滑化法案の施行に伴いまして、金融庁の検査のマニュアルが少し緩和されました。その結果として、全部の銀行じゃないんですけれども、一部金融機関においては、本来なら債務者区分、分類債権、金融緩和債権として当然取り扱われるものが、今回のマニュアルの改定に伴いまして、普通の債権として、分類もされずに残っているというような話も出てきております。

 そうなりますと、この三月末の金融円滑化法案の期限、これは単に延長するということだけではなくて、金融機関の経営の方にも少し問題が出てくる可能性もございます。

 そこで、大臣にお尋ねしたいのは、三月末のこの法案の期限を迎えまして、一つは、中小企業の経営問題、もう一つは、中小を含めた金融機関の経営問題、この辺をどう乗り越えて対応されるのか、お考えをお聞かせいただければと思います。

自見国務大臣 柿沼議員にお答えをさせていただきたいと思います。

 今、議員の中にもございましたように、大変今厳しい経済状況にあるわけでございまして、そういった中で、特に中小企業金融の円滑化を図ろうということで、これは先生御指摘のとおり時限立法でございまして、二回の年度末、二回の三月末と申しますか、それを含めて、当時、つくったときは、二年間すれば景気が回復するんじゃないか、こういった考えもございまして、この法律をつくらせていただいたわけでございます。施行当初から検査監督により、金融機関を通じて円滑な資金供給の確保と財務の健全性の両立に配慮しているところでございます。

 今先生の御指摘にあったように、監督指針及び金融検査マニュアルの改定については、中小企業の特性を考えまして、特に中小企業というのはやはりコンサルタント機能といいますか、そういったことが一般的に非常に弱くて、経営がなかなか弱いところがございますので、そういったところを、例えば経営改善計画等の策定が可能、これは地域の金融機関にしっかり、金融機関というのはある意味で一番情報を持っていますから、そういったことのお力添えをいただいて、コンサルティング的なやりくりをひとつしっかり金融機関からお手伝いいただいて、この経営改善計画の策定を、延ばした場合は最長一年間猶予をするということでございます。

 これは不良債権に相当しないというふうに実は取り扱いされたもので、これが、今先生が言われたように、隠れ不良債権になるんじゃないか、こういう御指摘がございましたが、我々は、中小企業の置かれた現状、あるいはそういった、まさに金融がコンサルティング的な役割をきちっと地域においても果たしていただく、そしてやはり中小企業にはたくさんの従業員が働いておられるわけでございますから、こういった時期、非常に雇用も大事でございますから、そういったことを含めて、必ずしもこういったことが不良債権の指摘には当たらないというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、そういったことを考慮しつつ、中小企業のまさに資金繰り、あるいは金融機関の金融円滑化、そして当然、金融機関でございますから、金融の規律というものも先生御指摘のように大事でございますから、そういったことを総合的に勘案しながら、延長も視野に入れて検討してまいりたいというふうに思っております。

柿沼委員 大臣、ありがとうございます。

 もう時間がほとんどありませんが、この三月末、景気の情勢は非常に厳しい状況であると思いますので、中小企業の経営と銀行の財務内容の健全化に向けて、大臣として、よろしくお願いしたいと思います。

 最後になりますが、これは質問じゃありませんが、財政運営戦略、六月二十二日に閣議決定したものでございます。この三年間で、経費を七十一兆に抑え、そして国債を四十四兆に抑えていくという非常にチャレンジングな戦略でございます。それと同時に、今、新成長戦略、これも政府の方で決定されたわけであります。

 財政健全化と財政再建と経済成長という非常に難しい連立方程式をこれから解いていかなければならない、そんな状況でありますが、この両立、バランスに向けて、野田大臣、自見大臣、ここは日本のため、将来のため、よろしくお願いして、私の質問を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。

 きょうは、野田大臣と初めて議論をすることができますので大変うれしく思っておりますが、ちょっと厳しいことも申し上げますので、お許しいただきたいと思います。また、日銀総裁にわざわざおいでいただきまして、ありがとうございます。

 今、円高がどんどん進んで、そして将来の経済に対する不安が高まっている。来年の経済見通しは、むしろどんどん下げる方向、あるいはデフレはもっと続きますよというような話になりつつありますね。そういうときに、私が非常に懸念を持っているのは、先般、韓国の慶州で行われましたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の声明が出ましたが、これは日本の通貨外交にとって最大の失敗ではないかなというふうに私は評価しているわけであります。そのことを、きょうは少し細かく議論させていただきたいと思います。

 このG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開かれる前に、アメリカのガイトナー財務長官が、経常収支について数値目標を持とうではないかというような提案をしたというような話があります。ガイトナー財務長官から手紙が来たということでありますけれども、まず委員長にお願いしたいと思いますが、その手紙を委員会に御提出願いたいと思いますので、よろしくお願いします。

石田委員長 後刻、理事会で協議いたします。

山本(幸)委員 その上で、ガイトナーさんが言っているのは、経常収支に不均衡があって、これを直さなきゃいかぬという話が前提になっているわけですね。

 野田大臣は、行かれる前に、厳密な数値目標はいかがかと思うけれども参考値程度ならいいのではないかというような発言をされたということでありますが、それはどういう真意ですか。

野田国務大臣 山本委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 ガイトナー氏からの書簡の中には、対GDP比で、赤字幅も黒字幅も含めてでありますけれども、経常収支を一定の幅の中におさめたらどうかという提案がございました。加えて、議長国の韓国から、それを引き取る形で、具体的な数字は二〇一五年までに四%以内、黒字も赤字もというような御提案を受けて議論をしたというのが事実でございます。

 経常収支は、委員も御案内のとおりでございまして、政府の活動のみならず、民間のセクターが幅広く経済活動したその結果出てくる数字でございますし、経常収支の中身には、貿易収支もある、所得収支もある、サービス収支もある、いろいろな収支を四つぐらい重ねたものでございます。ことしの六月、トロントのサミットでは、財政運営戦略等を我々は提示し、諸外国も、二〇一三年までにプライマリーバランスの赤字幅を今よりも半分にするとか、いろいろ数値目標を掲げました。

 財政収支は、これは政府のコントロールのもとで、ある程度実現できるものだと思うんです。だけれども、経常収支は、これは政府のコントロールがきくかどうかというと、民間セクターの多様な動きがある中で、果たしてそれはどうなのかというのが私の意見であります。思い起こしたのは、九〇年代の日米の通商摩擦のときに、管理貿易的な動きがいろいろあって、業界によっては自主規制をお願いするというようなことがございました。そんなことを世界じゅうでやるということがいかがなものかというのが私の意見であって、だから、現実的ではないと意見を申し上げました。

 ただし、このG20、今回は、国際金融システムの強化、安定に向けた何らかの合意が前へ進んでいかなければ、これはもしかすると、決裂すれば逆にドル安を促進するだけだという気持ちもございました。取りまとめに当たって、私の方は、厳格な数値目標はだめだ、一方で、定性的な文章にとどめるべきだという国の間をとりながら、幾つかの参考値としたらどうなのかと。

 結果的には、声明は、参考とすべきガイドライン、日本語ではそうなっていますが、ガイドラインはガイドラインズになっています。経常収支をこれから詰めるかどうかは別として、いろいろな数値を、何か参考となるものをつくっていくことについては合意をしたということでございます。

山本(幸)委員 おっしゃるように、財政については政府がコントロールできますね。経常収支にはできない。そのとおりだと思いますね。だけれども、それを、何らかの合意を得ることができなきゃ通貨安競争みたいな話になりかねないから、しようがないから認めたというようなことでありますが、これもまた問題なんです。これは後からやりますからね。

 ちょっと基本的な経常収支についての大臣の考え方を聞きますが、少なくともこの声明では、嫌々ながらとはいえ、「過度の不均衡を削減し経常収支を持続可能な水準で維持するのに資する、あらゆる政策を追求する。」つまり、経常収支不均衡は削減しなきゃいかぬ、そういう判断に立っているわけですね。

 大臣にお伺いしますが、経常収支の不均衡というのは何ですか。

野田国務大臣 これは、経常収支、完全均衡を果たせという話ではないというふうに思います。過度なという表現があるように、大規模な、例えば収支の黒字があるとか赤字があるとかということを是正していこうという趣旨であって、それぞれの国で完全均衡を求めるという理屈ではないということであります。

山本(幸)委員 大規模だったら黒字や赤字は問題ですか。

野田国務大臣 これを持ち出した理由は、経常収支はいろいろな要素があります。さっき申し上げたとおり、所得収支であるとか何かあるわけです。恐らく、念頭にあるのは、貿易収支の不均衡を是正するための一助にしたいというのが根底にある考え方だったんだろうと思います。

 でも、これについても、やはり、一定の数値目標、厳格な数値目標を掲げることについてはそもそも疑問があるというのが私の立場であって、あくまで参考として、大規模な不均衡が出た場合には、それがなぜそういうことになったのかのいわゆる検証、分析をする、そういうことはいいかもしれませんが、それがあくまで過度の場合ですよ。その幅をどうするかについては、これはドイツも含めていろいろな意見がありましたが、四%だろうが五%だろうが六%だろうが、数字はだめという国もありました。そういう多様な意見があったということでございます。

山本(幸)委員 今の大臣の答弁には二つ問題があります。一つは、貿易均衡を考えなきゃいかぬという話をされました。貿易収支均衡をどうしてしなきゃいけないんですか。

野田国務大臣 これまでのG20の歩みの中で、新興黒字国、赤字国、そして先進国の黒字国、赤字国、それぞれの均衡を、いわゆるリバランスを図っていこうというのがこれまでの会議の流れであります。その中で、その一助として経常収支をどうやってバランスをしていくかということが議論になったということでございます。

山本(幸)委員 答弁になっていませんが、もう一つの問題。経常収支についても、大幅なものがあると問題だというように考えているようでありますが、どうして問題なのか。

 私は、これは、まだ大臣が副大臣のときに、ここで藤井大臣とやりましたよ。経常収支なんて、幾ら黒字になろうが赤字になろうが、問題じゃないんですよ。経常収支なんというのは、その国の企業や個人が自分の最善の選択と思って物を買ったり売ったりする、あるいは、お金を貸したり借りたりする。自分が最善と思っていることを足し合わせたものを、どこから線を引いたらこれは黒字になり赤字になるということで、経常収支が大幅に黒字になろうが赤字になろうが、不健全ということはないんです。これが経済学の教えることですよ。

 だから、少なくとも、貿易収支の均衡とか経常収支の均衡とか、大幅か小幅は関係ない。経常収支について均衡しなきゃいけないというような議論が出てきたら、ばか言いなさんな、そんなことは関係ないんだ、そういう議論をするからおかしくなるんだよと言い返さなきゃだめなんですよ。

 唯一、経済学で経常収支不均衡という問題があるのは、それは赤字国。赤字国で、外貨が足りなくて元利払いができなくなっちゃったら、その国は立ち行かなくなるから問題になる。ギリシャなんかはそうかもしれぬ。だけれども、黒字国で、どんなに経常収支の黒字が大きくたって、ほかの国で迷惑している国なんかありませんよ。みんな、自分の一番いいと思っていることを買っているんだから、借りているんだから。

 そこをしっかりしなきゃだめなんだ。それをしないからガイトナーにやられちゃうんですよ。大臣、どうですか。

野田国務大臣 経常収支、日本は黒字国です。ちなみに、今回、四%の枠内という話が出ましたけれども、一番直近で見ると、二〇〇九年で対GDP比で比率は二・八%です。この幅は、別に大騒ぎする話じゃございません。額でいっても、十三兆の黒字のうち、大半が所得収支なんですね。所得収支というのは、海外からの利子の配当等で収益を得ているということであって、これは長い間の経済活動の、ある意味で成果でございます。所得収支が経常収支の黒字に大きく貢献をしている国なんだということを私は日本の立場で説明しました。

 というように、黒字が出る理由、赤字が出る理由、各国一様ではございません。経済の発達段階によっても違う。さっき言ったように、民間セクターのいろいろな活動をやった結果であるということで、だから、厳格な数値目標を掲げるということはおかしいということを申し上げました。

 ただ、経常収支の話が、いわゆる参考となるガイドラインで経常収支がそのままいくかどうかというのは、まだ議論があります。経常収支については、今委員から御指摘のようないろいろなお話もございますが、ガイドラインズの中でどういうものを頭に入れながらこれからやっていくかということが、これからの議論の焦点になるということでございます。

山本(幸)委員 私は、そんなガイドラインなんかをつくるようなことを声明に入れちゃだめだというふうに言っているんです。そこから一歩やられていくんですよ、ガイトナーに。

 私、参考資料を出しましたけれども、経常収支というのは簡単で、国内の貯蓄から投資を引いたもので出てくるんですね。だから、本当に経常収支を変えようと思ったら、一国の全体の貯蓄行動と投資行動を変えない限り動かないんです。だから、簡単に変えられないし、黒字で困る国なんてないんです。

 だから、ここはむしろ中国の応援をしてやって、かつて日本がやられたんだから、そのときに我々は言い合ったんだ。その言い合う議論がちゃんとできなければ、今回みたいな声明になっちゃうんですよ。数値は入っていないといったって、不均衡を削減しなきゃいかぬ、そういう含意をしているんだから。それが、所得収支の方が多いから、そんなことは関係ない。大臣、そこはもう少ししっかり認識をして、これから、今度は総理のレベルのG20になるんでしょう。そのとき、こんなものは外させなさいよ。これをやっていけば円に関係してくるんですよ、次に行きますけれども。

 その次、大臣は、貿易収支の均衡がないといけないよというような発言もされました。それから、経常収支もある程度大幅なものがあっちゃいけないというような発言をされましたが、それは、経常収支の黒字が円高の要因になると考えているからですか。

野田国務大臣 円高云々というよりも、今回は、それぞれの通貨安競争をやめさせて、いかに国際金融システムの強化、安定を図るかというのが大きな議題ではありましたけれども、実は、関係各国ともに、やはり為替の問題、通貨の問題が最大の関心事であります。その中で、その安定性を求めていくために、恐らく、経常収支という為替も含んだ対応でオブラートに包むというか、もっとマクロのところで対応していく中で政策協調ができるか、そういう流れの議論になったというふうに承知をしています。

山本(幸)委員 私の質問にはっきり答えていません。

 私は、大臣は、経常収支の話がこんなふうに出てきたんだけれども、経常収支の黒字というものはその国の通貨高の原因になると考えておられるのかどうかということを聞いているんです。どうですか。

野田国務大臣 私の意見は、直接には関係ないと思っています。

 というのは、思い起こすと、あの一九八五年のプラザ合意、そのときに協調介入をして、そして円の増価が行われました。その後、一たんは経常収支は幅が減っていったんですが、その後はまたふえました。ということで、為替と経常収支とは直接的には関係はないと私は思っています。

山本(幸)委員 おっしゃるとおりで結構だと思います。

 経常収支でその分の外貨が多くなるから、そのバランスで円高になるんだという議論をする人がいますが、それはもう昔の話で、今や経常収支が黒字だったら資本収支は赤字になるんだから。つまり、資本取引がこれだけ大きくなると、経常収支の黒字と為替レートは関係ない。であれば、いよいよ経常収支の均衡みたいな話をしちゃだめなんですよ。

 ガイトナーの頭の中は、黒字国は介入なんかするなよと。特に中国を念頭に置いているかもしれないけれども、元高にしろよと。それを経常収支の話で少しやろうとしているわけでしょう。だから、大臣が経常収支と円高は関係ないということをはっきり理解していることは結構です。そうであれば、いよいよ経常収支の話なんか、今度の総理大臣級のときには落とさせるように努力してくださいよ。

 それでは、次にお伺いしますが、大臣は為替レートというのはどういうふうにして決まると思っていますか。

野田国務大臣 それぞれの経済のファンダメンタルズを評価して、マーケットで決まるべきものだというふうに思っています。

山本(幸)委員 それだとちょっと議論がしにくいので、期間を挙げます。為替レートの動きというのはいろいろありますが、短期、中期、長期、通常はこの三つに分けて考えることがよくわかりやすい。

 短期というのは、いろいろな、おっしゃったようなマクロ、ファンダメンタルズが変わるまでの時間がない、マクロの経済変数が変わらない、ファンダメンタルズが変わらないぐらい短い期間の間に起こる動き、それは短期という。

 それから中期というのは、まさにそのファンダメンタルズが変わる、マクロ経済変数が変わっていく。つまり、そのときは完全雇用が達成されていない、したがって、いろいろな経済政策が行われてそういうファンダメンタルズが変わっていくときに、どういうふうに為替レートが動くかという中期の理論。

 それから長期というのがありまして、中期はせいぜい数カ月から四、五年、長期は五年以上ですね。五年から十年とか、そういう長期です。そのときは、通常は経済政策がちゃんとうまく行われて、完全雇用が達成されて、後は実物的な要因で物事が動いていく。

 そういうふうに整理して議論するのがわかりやすいんですが、そこで、おっしゃったようにファンダメンタルズを反映すればいいんですけれども、ファンダメンタルズが変わらない最近の動き、短期の動きというのは何で決まると思いますか。

野田国務大臣 もちろん投機的な動きもあると思います。それぞれの国のファンダメンタルズの比較の中で、特定の地域、国に将来の不安があるならば、リスク回避で別の国の通貨が買われる、そういういろいろな流動的な要素があるというふうに思います。

山本(幸)委員 短期では投機。投機とは何ですか。

野田国務大臣 前もたしか藤井大臣への質問であったと思いますが、これは短期的に利益を求めての動きだったか、ちょっと正確には忘れました。

山本(幸)委員 よく聞いておいてください、そのとき。あのとき藤井大臣は、投機とは何ですかと聞いたら、投機は投機だと言って、もうそれ以上回答を拒否した。

 そのときに私は申し上げましたけれども、投機というのは為替リスクを負うことですね。つまり、何らかのヘッジをしないで為替リスクを負うことを投機といいますね。

 では、どういう人が投機しているんですか。

野田国務大臣 投機の主体は、それぞれの主体、たくさんあるというふうに思います。

山本(幸)委員 それぞれの主体、たくさんあります。では、どんな人か。みんなやっているんですよ。

 短期の為替レートというのは、ファンダメンタルズが変わらないんだから、それは株価と一緒ですね。アセットとしての価格形成のやり方で決まってくる。そのときに為替リスクはだれが負うかというと、みんなが負っているんです。

 どれだけ負うか。日本の対外純資産ポジション、対外資産から対外債務を引いた純資産ポジションは、今大体二百六十六兆ある。これは、外貨というのは、面倒くさいからドルと円だけで考えますよ。ドル建てで債券を持っている人は、日本人が負っている。それから、非居住者は、外国の円借款とかを借りているような人は、円建てで借りているような人は、向こう側が負っているわけ。

 だけれども、足し合って、その海外純資産ポジションの二百六十六兆円というのは、必ずだれかが負っているんです。だから、それだけの人が投機しているんだ。一番大きいのは輸出入業者、それから対外証券投資、あるいは非居住者で円で借りている人ですね。

 この対外純投資ポジションの二百六十六兆円が、そのときの為替レートでちゃんとバランスするかどうかというときに為替レートが動くわけ。そのときは、市場の期待感がどう変わるかによって動いていくんですね。

 結論からいうと、そこに参加している人がみんな円についてのリスクをとりたくないというような動きが起こると、非居住者は円で借りているものを、今度円買いしますから円高になる。それから、ドルで貸している人も円を買ってヘッジングするわけ。しかし、そういうふうに動くんだけれども、その相手方が必ずいないとそんな取引はできないんだから、必ず常に二百六十六兆円分の投機は起こっているんですよ。

 だから、投機がこれを決めるというのは答えにならない。その市場参加者全員が投機しているんだから。どう思いますか。

野田国務大臣 中期的にはファンダメンタルズを反映するという中で、短期的にはファンダメンタルズが反映されない中の判断の中での動きということはあり得るだろうというふうに思います。

山本(幸)委員 いや、だから、短期というのはそういうものなので。

 そうすると、短期というのは、為替リスクを負っている人が、将来の円の動きはどうなるかということをみんなが予想を立てて動き出すわけだ、株価がどんどん動くように。

 短期では、過度で無秩序な動きをするのが為替レートなんです。だから、大臣がしょっちゅう言っている過度で無秩序な動きをしてはならないなんというのは、短期の為替レートの動きを理解していないことですよ。どう思いますか。

野田国務大臣 日本にとっては、デフレが進行している中で、やはり、円高が長期化する、安定化するということは、日本経済にとって厳しい状況になります。

 その中で、加えて、それが過度な変動、無秩序な動きという形で、もちろん、短期には投機で動くのは当然だというお話がございましたが、それにしても、過度な変動があった場合には甚大な影響が出ますので、それは抑制する観点から対応しなければいけないというふうな判断に立っています。

山本(幸)委員 だって、過度なんて説明できないでしょう。説明できますか。

野田国務大臣 過度は、これは水準だけの問題じゃありません。一つには、その原因等の分析も大事だと思っています。

 短期的に動くには、いろいろな理由があると思うんですね。だけれども、それが一定の余り根拠のないシナリオで動くときには、それを打ち消さなければならないし、その動きに歯どめをかけなければいけないというふうに思います。

山本(幸)委員 根拠のない動きであるなんというのは、だれもわからない。大臣に、わかるというなら教えてもらいたいと思いますよ。

 つまり、これだけ多くの為替リスクを負わなきゃいけない日本の市場なんだ。そこで何か短期的な動きが出たときに、それはなかなか大変ですよ、それを変えようと思ったら。しかも、そのときには、その理由がどうだとか、そういうのがちゃんとわからないととおっしゃっているけれども、本当にわかるんですかね。まあいいや。

 短期はわかっていただいたと思いますけれども、そういうふうに、資産の価値が決まる、株価が決まるのと一緒で、これはどうなるかわからないんだ。常に過度で無秩序な動きをするものだと思って考えていないと、この為替レートについては理解ができない。

 次に、中期ですが、中期はかなりはっきりと説明ができる。中期の為替レート理論というのはいろいろありますけれども、もういろいろ言うのも面倒くさいので書いておきました。今、学界でどこでも言われているのはマンデル・フレミング理論というもので、これはノーベル経済学賞をとったマンデルさんとフレミングさんが開発した理論ですが、要するに、変動相場制のもとでは、景気対策としては財政政策がきかない、むしろ金融政策が二重にきくということを言っているんですね。

 細かい議論は省略しますけれども、このグラフで見てもらってわかるように、通貨の需給均衡式のところは為替レートが入っていませんから、これは垂直。財の均衡を達成するISというのは、為替レートと所得の関係で右上がりの曲線になる。そういう関係があるときに、財政出動をふやすと、ISをISダッシュに下げるということになるんだけれども、これはQがQダッシュになって、つまり円の数値が少なくなって、これは円高になる。円高になって、所得は変わらない。だから景気対策がきかない。円高になるだけ。円高になって、打ち消されて、きかない。

 一方、金融政策は、金融緩和政策をやって、その効果と金利が下がったプレッシャーが働くことによって二重にきくという意味で、LMがLMダッシュに移ると、為替レートは円安になって、上に上がるのは円安ですから、円安になって、所得が上がる。そういうことをマンデル、フレミングさんは言っているわけですね。中期理論というのは、いろいろ今まであったんだけれども、これがポイントですよ。

 そうすると、ファンダメンタルズが変わるときに何が大事かといったら、金融政策。ここで日銀総裁が必要なんだけれども。

 ちょっと日銀総裁にお伺いしましょうか。日銀総裁から私はかつてマネタリーアプローチの話を聞いたことがありますが、マネタリーアプローチの話と、このマンデル・フレミング理論についてどう思っておられるか、お伺いします。

白川参考人 為替レートがどういうふうにして決まるのかということについては、学者が長い間時間をかけて議論してきたわけでありますけれども、残念ながら、今日に至るまでも、これでもって為替レートの動きをかなりの程度で説明できるという理論がやはり打ち立てられていないというのが、私は正直なところだろうと思います。

 一方で、先生御指摘のとおり、いろいろな理論、マンデル・フレミング理論もそうですし、さまざまな理論を使って、ある局面局面の為替レートの動きを理解していくというこの努力は大変大事だと思います。ただ、残念ながら、体系立てて説明する理論はなかなかないなという感じがいたします。

 例えば、今御指摘のマンデル・フレミング理論でございますけれども、確かに、変動相場制、資本移動が活発なもとでの金融財政政策の効果について考えるときに、非常に有益な洞察を与えているというふうに思います。ただ、この理論モデルも多くの仮定に基づいております。例えば、今先生が御指摘のとおり、拡張的な財政政策は効果が一切ないというのがマンデル・フレミングの理論の結論でございます。

 しかし、思い起こしてみますと、一昨年秋のリーマン・ショック以降、これは日本に限らず世界じゅうで財政政策を大規模に展開いたしました。あの財政政策の効果は全くなかった、あの政策をやらなくても経済は落ち込まなかったというふうに果たして言えるんだろうかと思いますと、私はやはりそうは思えない。もちろん、金融政策も財政政策も、あのときは両方を発動して、それで何とか景気の大きな落ち込みを防いだというのが私の実感であります。これは私だけではなくて、多くの政策当局者あるいは学者の方もひとしく感じていることだと思います。

 これは決して、先生が今強調されますマンデル・フレミング理論の重要性を否定するものではございませんけれども、あくまでも、いろいろな前提に立っている、そういう意味で、ある側面についてスポットライトを当てる、しかし、その意味では重要な議論だというふうに認識しております。

山本(幸)委員 私の質問にまともに答えないで、少し焦点をずらしましたが、私も賛成しますよ、財政政策出動して。だけれども、それは、一緒に金融政策をやっているからきくんですよ。金融政策が出なかったら、財政政策だけやったらききませんよ。それは納得されるはずですよ。

 それから、私は、昔、大蔵省の役人をやっていたときに、第一回東京サミットがあった一九七九年、ちょうど日銀総裁がシカゴ大学留学から帰ってこられまして、七八年の暮れから七九年の初めにかけて、あなたがマネタリーアプローチという為替レートに対する考え方を持って帰ってこられまして、大変おもしろいと。あなたに来てもらって、我が国際金融局で勉強会をやらせてもらったことがある。

 そのときにあなたが言っていたのは、為替レートというのは金融政策で決まるんだと。つまり、通貨を多く出せば安くなるし、まあ相対で決まるんだけれども、通貨をたくさん出した方が安くなるし、少なく出した方が高くなる、そういう主張をしておられたんですけれども、あなたは宗旨がえされましたか。

白川参考人 私自身、金融政策が、実体経済に大きな影響を与える、あるいは為替レートにも影響を与える要因の一つであるということについては、これは当時も現在も変わっておりません。今おっしゃったマネタリーアプローチもそうですけれども、これは一つの前提によって成り立っております。

 例えば、私が、今の時点で考えてみますと、当時その議論が十分に取り込んでいなかった側面、例えば、グローバルな投資家がさまざまな通貨に投資をしていくというときに、どの程度リスクをとっていくのか、リスクをテークするのか、あるいはリスクを回避するのか、そうしたことを決める理論については、あの議論の中では扱われていなかったわけであります。

 先ほど先生が御指摘になったとおり、まさに今は資本取引が非常に活発になっております。グローバルな投資家がリスクをとっていく、そのリスクをとっていく能力それ自体をもっともっと議論しないと、なかなか為替の議論は完結しないなというふうに思っております。

 そういう意味で、繰り返しになりますけれども、私は、いろいろな理論、それぞれいい面を持っていると思います。そうした理論を総動員しながら、現実の、私どもはあくまでも実務家、政策当局者でありますから、実際の為替レートの動きも含めてしっかり分析し、対応していくということが大事だと思っております。

山本(幸)委員 いろいろな資産のリスクを考える、アセットバランスアプローチみたいな話が大事なことはよくわかりますよ。だけれども、今日、世界じゅうで支持されて、そして、実際に見ても、大きく為替レートの動きを説明しているのは、このマンデル・フレミング理論じゃありませんか。

 つまり、リーマン・ショック以降、アメリカやイギリス、ヨーロッパも含めて、ECBは猛烈に通貨の量をふやした。日本は、日銀はほとんどふやさなかった。だから円高がこんなに進んでいるんですよ。まさにマンデル・フレミング理論が言うとおりだよ。あるいはマネタリーアプローチが言うとおりだよ。それを正さない限り、為替レートは、円高はとまりませんよ。

 ちょっとまだ途中なので、まだもう一個行きますね。

 長期。長期というのは実体面で考えるんだけれども、長期については、長期実質実効レート、長期名目実効レート、これがどういうふうにして決まっていくかということが大事なんだけれども、大きく言えば、交易条件とそれから購買力平価、物価の長期的な水準で決まってくると思ってもいいと思いますね。難しいのは、実質実効レートと交易条件がちょっと違うんで、実質実効レートというのは非貿易財と貿易財の相対価格と考えてもいいし、交易条件というのは輸入財と輸出財の相対価格、だからちょっと違うんだ。そこでずれが出てくる。

 この実質実効レートがどのように決まるかというのはまだよくわからないんだけれども、本当に実物的な要因だけで決まるのだったら、それは交易条件と同じだから何も心配する必要はないんだけれども、どうも貨幣的な動きがこの実質実効レートに影響を与えている。それは、将来的な購買力平価とか、そういう物価の動き自体で定義されるものだから。そこをよく理解しておかないと、今回の円高問題、そしてこの円高に対する対応というのが図れないんです。

 実質実効レートと交易条件の動きをずっと見ていますと、あのプラザ合意以降は実質実効レートも上がるんだけれども、交易条件もずっと上がるわけですね。そこで、輸出業者は高く売れるわけだから、レートも上がったけれども、そんなにめちゃくちゃ企業経営も厳しくなったわけじゃないという状況ができたから、何とかもった。

 ところが、現在は、リーマン・ショック以降は、このところずっと交易条件は下がっている。そういう中で、実質実効レートも下がっていたんだけれども、ちょっと最近上がり出してきているわけですね、ことしの初めぐらいから。これは輸出業者にとっては大変厳しい。私は、一番最後、五のところで、輸出産業の競争力というのは交易条件から実質実効レートを引いたものだと書きましたけれども、それはそういうことを言っているのです。

 そこで、同じように実質実効レートがちょっと上がりかけたのが二〇〇三年から四年にかけてあるんだけれども、そのときはいわゆる溝口介入というのをやって、大介入をやって、この実質実効レートが急速に上がるのをとめた。効果はなかったと言われますけれども、歴史的に見れば効果はありましたよ。その実質実効レートが上がるのがストップして、それから今度は下がり出すわけだから。リーマン・ショックの前まで、実質実効レートは下がってくるわけですね。

 この歴史的な経験というのは非常に大事で、そのことが、今回の、次の通貨の共同声明の話になるんですが、通貨安競争が本当にいけないか。なぜいけないんですか、大臣。

野田国務大臣 実質実効レートが何で決まるかよくわからないというのは、私もそのとおりだと思うんです。加えて、ことしになってそれが高くなってきた、上がってきているということも事実です。今回の参考となるガイドラインの中で、実質実効レートみたいなものも入れたらどうかという意見も、多分これから出てくるかもしれません。この解明というのはよく勉強させていただきたいというふうに思っております。

 通貨安競争がなぜいけないのかというのは、それぞれがお互いの持っている通貨の価値を下げるべく努力して、輸出を奨励させるべく競争をする、そのことによって近隣窮乏策につながって、そして全体的には世界経済が大変厳しい状況になったというのは、一つの歴史の教訓としてあるものではないかなというふうに思います。

山本(幸)委員 それは一九三〇年代の話を言っているのかもしれないが、それはちょっと歴史の教訓としては正確じゃない。

 ちょっとその前に理論的な話をしますが、実は、変動相場制のもとでは各国独自にやるのが一番いいという結論がもう出ているんです。それは、この三のところで、ゲームの理論でお示ししましたけれども、これは厳密に言うと数式を書いてきちっとしなきゃいけないんだけれども、そんなことをやったってしようがないんで、ちょっとわかりやすくダイヤグラムにしました。

 国際的協調というのは、アメリカは、おれのところは金融緩和でドル安やるよ、あんたのところは引き締めてくれ、円高で介入なんかせぬでくれよという意味で解釈して理解していきますと、この右側の上の方の象限になる。そこでは、アメリカは四・〇という利益を得るんだけれども、日本側はゼロ、全然利益にならない。

 逆に、左側の下に行くと、日本だけが勝手にやらせてもらいます、あなたのところは協調しなさいよといって、やめなさいという話になる。これも、一方はいいけれども、他方は悪い。

 では、それぞれ勝手にやろうじゃないか。とにかくおれのところは自分の国のことを考えてやります、自分の国の物価の状況と雇用レベルあるいは経済成長、そういうものに最適だと思うことを勝手にやらせていただきますという選択をそれぞれがした場合に、どうなるかということをちょっと簡単に示したものですね。二・五と二・五で、世界経済全体としては、これが一番よくなるんですよ。

 そういう議論が既に行われているということを御存じですか、大臣。

野田国務大臣 一つの理論としてはこういうことがあるんだろうというふうに思いますが、実際にG20に参加をしている国にとっては、いろいろ立場がありますけれども、例えば、先進国においては、新興黒字国はもっと為替の柔軟化を果たしてほしいというようなことは考えているし、加えて、新興黒字国にとっては、先進国は金融緩和をやるけれども、自分たちはインフレ懸念があるから金融緩和はできない。その結果、その金融緩和でじゃぶじゃぶになった資本、資金が新興国に流れて、それが自分たちの通貨の増価になっているし、あるいはバブルの懸念も生まれているというように、ゲームの理論でいろいろあるかもしれませんが、現状困っていることをお互いが確認し合いながら、どうやって政策協調してまとめるかということは、やはり国際会議としては重要だというふうに思います。

山本(幸)委員 逆で、理論はしっかり理解した上で、その上で、どういう現実的な話ができるかということを考えていかないと、国益を損しますよ。

 僕は、この議論がいつも出て、新聞紙上ではそのレベルの議論ばかりやるので困るんだけれども、金融緩和した国から新興国に資金が流れて、その国の通貨が強くなるというのはわかりますよ。だけれども、その国がバブルになるというロジックはわからない。なぜそうなるんですか。

野田国務大臣 ロジックというよりも、各国が自国の今の現状を訴えるときに、今申し上げたように、自国通貨の増価につながることと資産価格の上昇につながる等々の議論は、今盛んに行われています。

山本(幸)委員 だから、そういう議論が行われたら、それは間違っていると言わなきゃだめなんです。

 なぜかというと、ある日本人が外国に投資したい、外国の証券を買いたいといったときに、実際にはどういう行動をすると思いますか。彼は、別に円をトランクに詰めて持っていって買うわけじゃないんですよ。少しぐらいドルが出ていって、若干ドルが通用する国はありますからそういうのが少しあるけれども、そんなのは大した話じゃない。みんな、それをそういうふうに誤解しているわけだ。何か円を、円札をたくさんその国に持っていって買いまくって、それが散らばって、そしてバブルを起こしているみたいに誤解しているんだけれども、そんなことはあり得ないんだ。

 海外証券投資をするときにどうするか。それは、日本の国内で向こうの証券を持っている人と交換するわけですよ。つまり、日本の銀行システムの中で、私の円口座からその人の円口座に振り込むという行動が行われて、逆に海外では、その人の口座から私の口座にその証券分なりが来るわけです。

 そうすると何が起こるか。国内の円資金の量なんて変わらないんですよ。海外のその国の外貨の資金の量なんて変わらないんですよ。だから、バブルなんて起こりようがないんだ。変わるのは、交換するときの為替レートだけが変わるんだ。

 その議論について、どうですか。

野田国務大臣 委員の御説明を聞くと、なるほどなという感じもいたしますけれども、ただ、一般的にはこれは両方セットで諸外国から言われておりますし、今回はそれを踏まえてのコミュニケの対応になっていました。

山本(幸)委員 だから間違っていると言っているんだ。だめだよ、そんな間違ったことを受け入れて書いたら。それは、その国の責任だと言えばいいんですよ。おまえたち、そんなことを言うんなら、自分の責任だ、ちゃんと自分で管理すればいいじゃないかと。

 なぜそういうことが起こるかというと、彼らは、自国通貨が高くなるのが嫌だから、介入して自分の金を出すからですよ。だから、金がふえてバブル的になる。それは、その国の責任においてやっているわけだ、その国の中央銀行が、あるいは財務省が介入なりで。だから、その国がバブルになるかならないかなんて話は、その国の責任なんだ。別に、日本なりアメリカなりの金利の低いところの責任でも何でもないんですよ。そこをぜひちゃんと理解しておいてくださいよ。

 もう一個言っておくと、変動相場制のもとでは、先ほど申し上げたように、為替レートとか経常収支とかいう拘束条件がなくなるんだから、各国が自分の国の物価、物価イコール、フィリップス曲線で雇用との関係があるという前提に立てば、雇用の安定、これを達成することだけを考えて自由にやれば、世界全体としてはむしろ便益はふえますよと。そういう理論はきちっとできているんだから、その論文一つぐらいは読んで言ってくださいよ。

 だから、そのときに、こういう通貨安競争を回避する協調が必要だなんということを決められていくと、さっきの経常収支の話みたいになってくるんだ。

 ところが、一方、おっしゃったように、それは変動相場制同士の国でそういうことは言えるんだけれども、そうじゃないと違う結論になる、中国とアメリカみたいに。固定相場制、それに近い通貨制度をとっているときには、そんなにいいことにならないんですよ。むしろ、世界全体にとっては不利益になるという結論が出る。

 そこで、もう一つお伺いしますが、この共同声明の中に、為替、通貨安を防止するということで、「根底にある経済のファンダメンタルズを反映し、より市場で決定される為替レートシステムに移行し、通貨の競争的な切り下げを回避する。準備通貨を持つ国々を含む先進国は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視する。」という文章になっています。

 大臣は、この文章、つまり最後の「過度の変動や無秩序な動きを監視する。」という文章が入ったから、これは介入を否定されたものではない、介入してもいいんだというように記者会見でおっしゃられたようでありますけれども、そういうことですか。

野田国務大臣 従来、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済、金融の安定に悪影響を及ぼす、そういうところでとどまっていたものを、今回は、主要通貨を持つ通貨当局が監視をするという形の表現になったということであります。たしか記者会見で、それは介入をすることも含めてかというようなお尋ねがございました。そこまで詰めた議論をしているわけではございません。

 マーケットの動向をよく注視しながら関係各国が適切に協力をする、特に円、ドル、あるいはユーロ、こうした主要通貨を持った国が協力をする。その協力のあり方は、その都度その状況に応じて議論をしながら決めていくということでございます。

山本(幸)委員 円、ドルなりのレートの動きについて協力するなんてどこに書いていますか。

野田国務大臣 監視をするという意味の解釈を申し上げたわけです。監視をするという意味は、マーケットの動向を見ながら関係各国が協力をする。これは準備通貨を持つ主要国と書いてございますので、特に円、ドル、ユーロ等を持った国ということであります。

山本(幸)委員 動きを監視するというのが介入まで含めているというのは、そういう解釈がどうしてできるんですか。

野田国務大臣 介入まで含めてですかと会見で問われました。問われましたけれども、その都度その場で適切に協力をするということであって、介入する云々について言及しているわけではございません。

山本(幸)委員 この部分が非常に大事なんですね。介入についての大臣の姿勢がしっかりしていないとこれから困ることになりますよ。

 そこでお尋ねしますが、ここの部分は、日本語で「動きを監視する。」とあるんですが、英語では「ウイル ビー ビジラント アゲンスト」となっていまして、これは要するに、夜警が危険なことが起こらないように注意して見守る、そういう意味ですよね。そして、しかも受動形で書いてある、ウイル・ビー。この書き方だと、介入なんかできないんじゃないですか。

野田国務大臣 注視する、注目していく、関心を強く持っていくということです。加えて、そこは、だから強目の表現では監視するになるというふうに思うんですね。

 その中には、単なる問題認識じゃなくて、マーケットの動向を重大な関心で見守りながら、その先には適切な協力関係を持っていくということになるというふうに理解をしていますし、それが介入につながらないかどうかですが、先般も、これは我が国単独で介入はしています。状況によっては、必要なときには断固たる措置をとるということは、姿勢は変わりません。

山本(幸)委員 この文章からいくと、受動形をわざわざ使われている。それから、ビジラントという、ちょっと普通は使わないような言葉を使われている意味で、これは、介入なんかしちゃいかぬよ、しかし、おまえらは見られるぞ、そういうふうに解釈されると私は危機感を持っています。

 ところで、ちょっと時間がないのではしょりますが、介入ですね。ここで大事なことは、さっき申し上げたように、実質実効為替レートが高くなっているときにこれを変えようとしたら、どうも普通の金融政策ではなかなか難しい。これは、ちょっときょうは時間がないので、後でまた、いずれ予算委員会なり次のときに日銀総裁にゆっくりやりますが、それはいわゆる流動性のわなに入っているという議論があって、そのときには伝統的政策はきかないんだから、非伝統的な政策でやっていかないかぬ。つまり、短期の証券とキャッシュはほとんど同じなんだ、金利がゼロだから。そんなものをお互いに交換したって、何の効果もないわけですよ。

 だから、日銀は、今回の包括金融緩和で何かやると言っているけれども、あれも、一年かけてゆっくりやります、五兆円。しかも、長期国債とか何か買うと言っているけれども、大体期間は二年以下、短期である。そんなものをやったって効果はありませんよ。

 それと同じように、本当は円のキャッシュと一番違うものを買って、実体経済あるいは実質実効レートに影響を与えるということが一番いいんだ。その一番いいのは為替ですよ、外貨ですよ。外債あるいは外貨そのもの。つまり、円と一番違うんだから。

 日銀がそんなにのろのろしているんだったら、ここは大臣、徹底介入して、二〇〇三年から四年のちょうど実質実効為替レートが上がりかかったときに、それを大介入で抑えた、それを今実現しないと大変なことになりますよ。その覚悟がありますか。

野田国務大臣 まず、日銀の先日の包括的な金融政策は、私はやはり基本的には評価をしています。その効果がしっかり出てくることを、じわじわ出てくることを期待したいという前提の上でありますけれども、これからも日銀と連携して我々のやることをしっかりやっていきます。

 介入については、何度も申し上げているとおり、先般の介入は、過度な変動を抑制する観点から実施をいたしました。大規模かつ長期間に、そして一定の水準を目指すという介入のやり方ではございません。しかし、日本経済にとって、円高の安定そして長期化が本当にマイナスの影響が出てきている状況の中で、さらに過度な変動等が起こって看過できないときには、必要なときには断固たる措置をとっていきたいというふうに思います。

山本(幸)委員 最初から申し上げているように、過度で無秩序な変動というのは起こるんです。そんなものを直すためにやっているんだったら、そんなものはすぐ消えちゃいますよ。

 そうじゃなくて、実質実効為替レートが、交易条件が下がっているときにこれが上がるということについて、介入という貨幣的な手段で思い切ってやらなければ、これは変わらない。だから、僕は、実質実効為替レートというのは、どう決まるか難しいんだけれども、どうも過去の経験からいくと、貨幣的な、そういう介入ということによって変わり得る、それを今やらないとだめだ。

 今、ちょうど九五年と同じような状況ですよ。九五年には七十九円まで行った。そのときはアメリカは大幅に金融緩和したんだ、あのときに。そこで行っちゃったんだ。今、十一月の初めにアメリカは思い切った金融緩和をやろうとしている。ところが、日本は、包括緩和というプログラムは示したけれども、まだ何も動いていないし、それはあと一年かけてやればいいでしょうとのんびりやっているんだから。

 この状況を、徹底介入で実質実効為替レートに影響を与えるという覚悟を財務大臣が持たなかったら、これは九五年のときの七十九円を確実に割りますよ。予測しておきます、私は。アメリカが大幅緩和するんだから。そのときに日本がそれをやらなかったら、確実に終わりますよ。

 最後に、その点についての覚悟をいま一度。

野田国務大臣 介入をやるかどうかとか、介入の規模をどうするかとかということは、やはりマーケットへの影響がありますから、コメントはできません。今まで申し上げているとおり、必要なときには断固たる措置をとるということでございます。

山本(幸)委員 時間をとって申しわけありませんが、では、きょう指摘したことの少し理論的な、理論武装をしてもらいたい。そして、徹底介入してもおかしくないんだとアメリカにちゃんと言えるように、今度首脳会合を行ったときにも、日本の国益を縛られることのないように、交渉して、そういう文言にして、本当は介入すると言えばよかったんだ、そして堂々と主張してもらうようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、後藤田正純君。

後藤田委員 きょうは、財務金融委員会、この臨時国会初委員会ということで、全般的には財政健全化、財政規律の問題、そして同時に、国家戦略、成長戦略についての各大臣の所見をお伺いしたいと思います。

 今の日本の置かれた状況は、いかに将来に借金を残さないか、今ある我々が責任を持って何をすべきか、このことが、国、つまり立法府、行政府を含めて、一番問われていることだと思っております。そのためにも、今皆様方が仕分け等々でやられている作業も、いいところもある。我々も小泉内閣のときに、プライマリーバランスの黒字化に向けて、赤字幅約四兆円まで相当ごりごりやりました。これは歳入歳出一体改革の中で、無駄撲滅という以上に、痛みを伴う歳出削減、こういうことも行ってまいりました。

 やはり、財政を健全化し、将来に禍根を残さないためには、削減するものは我慢をしていただく、そして同時に、持続可能な経済成長によって税収をふやしていく、これに尽きるんだと思います。そのことについて、きょうはお伺いしたいと思います。

 まず、きょう理事会において、各委員の方には三十分おくれで御迷惑をかけましたが、私は、財務大臣、金融担当大臣のみならず、経済財政担当大臣、そして行政刷新の蓮舫大臣、また玄葉大臣にもお越しをいただきたいというお話をいたしました。経済財政担当大臣においては、財政という名前がつくわけですから、ここに出てこられないのであれば経済大臣で結構なんです。そのことで紛糾をいたしましたが、御出席いただきまして、ありがとうございます。

 本来ならば、行政刷新大臣も国家戦略担当大臣も、極めて財政の健全化、財政運営に責任を持たれた大臣だと思います。先般、皆様方が出された中期財政運営は、基本的にはどの方が担当大臣でしょうか。財務大臣、お聞かせください。

野田国務大臣 お尋ねは、財政運営戦略……(後藤田委員「中期財政運営はどなたが担当されていますか」と呼ぶ)中期財政フレームですね。

 中期財政フレームは、向こう十年間の財政健全化の道筋の財政運営戦略の中で、向こう三年間が中期財政フレームという位置づけになっています。その財政運営戦略自体は、これは戦略物でございますので、新成長戦略同様に、中心的にまとめたのは当時の荒井国家戦略担当大臣でございました。(後藤田委員「現在」と呼ぶ)現在は国家戦略担当、この種の戦略物をまとめるとするならばです。ただ、今はもう実現の過程でございますので、財務は財務で担当するということになります。

後藤田委員 今お話がありましたとおり、まさに財政運営戦略の中期財政フレームも国家戦略担当大臣が本来まとめたということですね。しからば、本当は玄葉大臣がこの場に出てくるということも当然、しかるべきことだと思います。

 よく見てみますと、皆様方の政権は、本当は蓮舫大臣に聞きたかったのですが、本来、大臣の仕分けをもう一回した方がいいんじゃないか。つまり、屋上屋の大臣ポストが多過ぎる。SPがついて、車がついて、秘書官がついて、それこそ仕分けをした方がいいんじゃないかな。我々のときは、経済財政担当大臣をつくったときには、やはり財政のフレーム、歳入歳出一体改革、それを政治主導でやろうということでつくりましたが、そのときには、国家戦略担当大臣もない、行政刷新担当大臣もなかったんですね。しかし、今回、皆様方の政権では、屋上に屋を重ねて、そのような大臣をおつくりになった。だから、どこがどう司令塔だかわからなくなっちゃうんです。これは多分、役人さんもそうだと思いますよ。

 そういう中で、海江田経済財政担当大臣にもお越しをいただきましたが、一体、この財政運営、そして財務大臣、国家戦略というのは、これはどういう皆様方の仕分けといいますか仕切りになっているのかということを、ちょっと頭の整理として、これは皆さん、まさにその分担は明確に総理から指示されてやっていらっしゃると思うので、簡単な質問だと思うので、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

海江田国務大臣 後藤田委員にお答えをいたします。

 まさしく私は経済財政担当の大臣でございますから、財政の中期的フレームなどにつきましても当然発言をする権限もございますし、それから、そのような形でしっかりと議論に加わって、しかも議論を引っ張っていきたい、かように考えております。

後藤田委員 そういう意味では、海江田大臣はアドバイザー的な大臣なんですか。それとも、その権限はどこまでおありになるんでしょうか、経済財政担当大臣は。

 我々のときには、経済財政担当大臣が、諮問会議で、その会議をまとめ、進行し、いわゆる歳入歳出の一体改革も含めて、骨太の方針も含めてやったわけであります。先ほどの野田大臣の話を聞くと、それは国家戦略大臣がやっているという話を今御答弁いただきましたけれども、経済財政担当大臣と国家戦略担当大臣は何がどう違うんですか。

海江田国務大臣 私も、就任に当たりまして、私の職務権限がどこに及ぶのかということを私なりに調べてみました。その中で、財政政策全般にわたってしっかりと仕事をするようにという項目がございましたので、そのつもりでおります。そして、アドバイザリーなのかどうなのかということでございますが、私はむしろ、アドバイザリーというよりも、アドバイスをする立場というよりも、総合的に調整をする立場だと思っております。

 それから、先ほどお話のありました経済財政諮問会議でございますが、これは法律はまだ生きております。しかし、今その具体的な人選はいないわけでございまして、そして、むしろ私どもの内閣では、成長戦略、とりわけ今は新成長戦略ということでございます。ことしの六月に策定をいたしました。この新成長戦略を実現するということが経済財政政策の上で大変大きなウエートを占めておりますので、今その新成長戦略実現会議というものを、これは日銀総裁、あるいは各種の経済団体の長なども入っていただきまして、そこで議論をしているところでございます。

後藤田委員 今の御回答はございましたが、やはり各大臣が本来、国家戦略、成長戦略というのを本当は練らなきゃいけないんです。そしてまた、財務省が査定をして、無駄もなくして、行政も改革していく。総合調整と今おっしゃった機能は、今まで、我々が経済財政諮問会議を立ち上げる前は官房長官がやっていたんですね。それを改めて、経済財政諮問会議担当大臣をつくった。さらに皆さんは、国家戦略担当大臣をつくり、行政刷新担当大臣をつくり、そして経済財政担当大臣と。本当に大臣ポストの安売りなんですよ、これは。副大臣も政務官もいるんですからね。

 こういったことは、私はいささか、今の政権に対して、大臣、閣僚こそ蓮舫さんに仕分けをしていただきたい、それで、本当に司令塔がだれなのかということをきちんと示していただきたいという思いがございます。

 次に、これは本当に質問をするのも大変情けないことでございますが、きょうお越しをいただきました海江田大臣、前財務金融委員長。前々は玄葉委員長。財務金融委員長ポストというのは、立派な閣僚になる登竜門のように、皆さん大臣になられていきます。しかしながら、昨今マスコミ等でも騒がれている、先般、八月ですかね、財務金融委員会の視察、これについて国民の皆様が怒っています。世論が怒っております。それはなぜか。委員会視察において、一議員が、大使館の夕食そして移動の車に、家族を一緒に同行した。これは本当に情けないというか、公私混同甚だしいと思います。

 その当時の委員長は海江田現大臣でございました。報道によりますと、休みだから大丈夫だろうと。私も、一緒に行った野党議員にもお伺いしたところ、これはおかしいのではないかと委員長に申し入れたと。その際、委員長は、休みだからいいのではないか、そういう発言をされたということですが、これは事実ですか。

海江田国務大臣 休みだからという表現ではないと思います。日曜日だということで私はお話をした。そして私が、そういう申し出がありましたので、諾といたしました。

後藤田委員 日曜日だと、家族も国の税金を勝手に公私混同してよろしいんでしょうか。

海江田国務大臣 私はそのようなことを申し上げているわけではありません。(後藤田委員「今の質問に答えてください」と呼ぶ)それは、日曜日だからといって許されるものではない。

 ただ、ここで私は細部を争うつもりはございません。しかし、一つだけ皆様方にお訴えをしておきたいことは、私も、ちょうど後藤田委員の質問でございますが、政治家として、大おじに当たります後藤田正晴先生からいろいろ御指導をいただきました。そして、後藤田先生の御本の中で、「情と理」という本がございます。私は、政治家として、情と理のバランスをしっかりととることが大切だと考えておりました。

 しかし、今御指摘のありました八月の二十二日ですか、日曜日、私どもがギリシャにおける視察をする際、二名、奥様とお子さんを同乗させたというその場面において、私がそれで構わないということを言った、こういう事実がございます。

 そして、それを今つらつら考えるに、やはり情と理のバランスで、情が少し勝ち過ぎていたんじゃないか、情にバランスが傾いていたんじゃないだろうか。財務金融委員長でありますとか、あるいは今私は経済財政の責任者でございますが、そういう立場にある者は、やはり情を殺してでも理の方に重きを置かなきゃいけないときがある、そのように自戒をしているところでございます。

後藤田委員 今、私の身内の「情と理」を引用されたんですが、甚だ失礼千万でございます。これが情という整理で片づくものではございません。皆様方が政権交代するときには、国民目線で、国民生活が第一と言って戦って、政権交代されたわけですよ。これと情と、今の発言は、逆に大臣の資質を疑う、私はそういう発言だと思います。

 加えて、大臣も御記憶にあると思いますが、当時この視察を決定する際、理事会で私は反対いたしました。なぜなら、きょうお手元にお配りいたしておりますが、欧州の視察団の構成メンバーと日程でございます。今、財政が困窮している中、一般国民は海外にも旅行ができない、経済生活も景気も悪い。こんな中で十日間行くというのは、国民の税金を使っていかがなものか、そして特に土日を挟んで行くのはおかしいではないか、こう私が理事会で申し上げました。これは皆さん御記憶いただいているようでございます。

 金曜日の夜に入って、土、日と、フランクフルトからアテネに着いて、日曜日の二十二日は視察。何を見ているんですか。本来ならば、こういう財政状況の中で本当に財政運営の視察、勉強をするのであれば、月曜日に到着して、それから一週間いろいろな方の意見を聞く、こういうのが当たり前なんですよ。そのことを私は当時から理事会で申し上げました。案の定、こういうことになっているんです。

 そして、日曜日だから家族も一緒でいいではないかと。こんな方に大臣をやっていただく、こんなことは国民は許さないと私は思いますよ。

 もう一度、このことを踏まえて、陳謝されるなら陳謝してください、国民の前で。

海江田国務大臣 ちょっと具体的な事実関係をお調べいただきたいんですが、私の記憶では、これは金曜日に実はフランクフルトに入りまして、日本を出発いたしましたのは木曜日でございます。そして、金曜日一日、フランクフルトで、ブンデスバンクの総裁の方でしたか副総裁の方でしたか、あるいはヨーロッパの中央銀行の役員の方でありますとか、あるいは貨幣銀行でありますとか、そういったものをつぶさに視察いたしました。そして土曜日に移動をいたしまして、その土曜日の夜七時ぐらいにたしかギリシャに到着をいたしましたが、このギリシャで、まずまず、大使から、しかもこの大使というのは御案内のように某証券会社で副社長をやっておられた方で、まさに金融や財政の問題あるいは市場の問題に大変明るい方でございますので、かなり夜遅くまでその方のレクチャーを聞いて、そして翌日が日曜日でございました。

 もちろん私どもは日曜日もアポをとりたかったわけでございますが、それはやはり相手の皆さん方のこともございますので、そして、ギリシャではやはり観光の問題もございます。ギリシャ危機によって観光の問題も大きく落ち込んでいるというような話も聞きましたので、そういうところも視察してきたつもりでございまして、一週間ございました。

 一週間ある中で、土日を抜きにしたら、土日のない一週間というのが残念ながらないんですよ、これは。ですから、先生の御指摘もいただきまして、私どもは、土日に出るのではなしに、当時いろいろな私どもの党の問題もございました。ですから、本当は土曜、日曜に出るのがいいのですが、それでは余りにも、先生の御指摘もありましたものですから、木曜日のたしか夜に出ましたか、そして金曜日から、着いてすぐ働いたということでございます。

後藤田委員 今の答弁で、国民の皆様の本当に貴重な税金を使ってこういう日程、本当に情けなくなります。

 ギリシャ日程を見ると、月曜日も、十時、十二時、五時。二十四日火曜も、十時半、四時半。こんなものは、大使の説明なんか幾らでも聴取する時間はあるんですよ。わざわざ土日で行く必要はないんですよ。やはりもう一度皆さんは結党の精神、政権交代の精神に戻らないと、このようなことをしているようでは経済財政をつかさどる大臣としては本当にふさわしくない、私はそう思います。

 もうこの件については、余りに情けない議論なので、この辺にいたします。海江田大臣からはもう答弁は結構です。

海江田国務大臣 今、このようなことをしている大臣ではというお話がありましたけれども、具体的におっしゃっていただきたい。

 それから、先ほどお伝え申し上げましたように、土日にスタートをしたわけではございません。先生の御意見も拝聴して、そして日程を変えて、そしてちゃんとウイークデーに出て、どうしてもやはり、やむを得ないので日曜日が挟まってしまう。これはもういたし方のないことでございます、一週間の予定で出れば。一週間の予定で出て土日がないようにするのは、これは無理でございますから、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

後藤田委員 それは幾らでも日程は調整できます。そもそも十日間という日程が長い。五日でもいいんですよ、六日でもいいんですよ。それを、一週間丸々とる前提で土日があるからしようがないんだという理屈は、これは国民の皆様には通用いたしません。

 この件については、もう本当に情けない限りでございますので、ぜひ、行政刷新担当大臣は来ていませんが、行政刷新をやられている副大臣、これはやはり委員会視察のあり方とか、そしてまた大使館の接待のあり方とか、こういう問題については行政刷新としていろいろ検討課題に上っていますか。上っていれば教えてください。

園田大臣政務官 後藤田委員にお答えをさせていただきます。

 国会での委員会の視察の件でお尋ねでございますけれども、これは議院、ハウスの、立法府としての問題であろうかというふうに思っておりますので、私ども、政府の行政刷新の担当としては、このことに対して何か物申すということではないというふうに考えております。

後藤田委員 ハウスの問題と言いますが、これは税金ですよね。いかがですか。

園田大臣政務官 おっしゃるように、国民の税金であることは先生のおっしゃるとおりでございます。したがいまして、一般論として、私どもの考え方として、国民が納めていただいた税金、これが無駄に使われるということがあってはならないというふうに行政刷新としては考えております。

 ただし、この国会の運営の中においては、与野党の合意の中で進められるものだというふうに考えております。

後藤田委員 今の答弁を聞いて、皆様方は身内に甘い。まさにこれは聖域がないんですよ、皆様方、行政刷新というのは。これは我々野党も含めてでありますが、まず、そのような認識でいるということはよくわかりました。

 加えて、行政刷新、きょうは蓮舫大臣がお越しいただけませんでしたが、先般、報道ベースでも、まあ皆様方というのは役人をたたくのは公開処刑するけれども身内に甘いという、今の答弁のとおりでありますが、農道予算について、皆様方が一度廃止した、これが地方交付金でまたそれを上回る額で復活されているという報道が出ました。これは事実関係はどうですか。

園田大臣政務官 農道に関する事業仕分けの結果について、それから二十二年度の予算について、お問い合わせがございます。

 まず、事実関係としてお答えをさせていただきたいんですが、昨年の秋に行われた事業仕分け、これは第一弾のときでございましたけれども、農道整備事業が対象として取り上げられました。その際に、農道整備事業を単独の事業として行うという歴史的意義は終わった、まずこれが第一点目の事業仕分けの理由として判断がされました。そして、農道を一般道と区別する意義は薄いのではないかということで、廃止という評価結果を出させていただいた、まずこれが去年の第一弾で行われました。

 これを踏まえて、二十二年度予算においては、新規事業というものは、まずこれは廃止をさせていただいております。ただし、経過措置として、継続事業については、新たに創設する交付金という形で統合されたというふうに承知をいたしております。

 この経過措置の部分についての、継続するか否かについては、これは委員御案内のとおり、各自治体にゆだねられているわけでございますので、今までは補助金、補助金、補助金という形で、個別につけられていたものでありますけれども、これは交付金という形で統合されて配分をされているというものとして私どもは見ております。

 いずれにしても、事業の無駄が継続していかないようにということで対応していくということは、私どもとしては大変重要なことであるというふうに思っております。

後藤田委員 でも、事実関係としては、テレビで、皆さんの前に、拍手喝采で、農道と一般道というのは余り変わらないではないか。現に事実、農道の方が広い道路とかも地方にはあるんですよ。これは我々、政権与党のときにも、やはり私は責任の一端はあると思います。

 ただ、皆様方が仕分けで廃止をして、結果的には同じ道路がつくられているというのは、これは仕分け詐欺じゃないですか。どうなんですか。

園田大臣政務官 仕分け詐欺というお話でございますけれども、ただ、私どもとしては、先ほども答弁をさせていただきましたが、国として、農道をつくるための補助金というものを、今まで、所管であります農林水産省の予算の中で、これが補助金として使われてきたということがございます。したがって、もうそういったことは一切やめにしようではないかということで、事業仕分けとしては廃止を、評価結果として出させていただいた。

 その廃止ということを受けて、政府として、今般の二十二年度予算というものが、では、農水省の農道という形でつくるのはいかぬ。そして、それがすなわち、では、地方自治体として有益な事業というものを考えてもらうためにはどういうふうにしたらいいのか。これは、農道に限らず一般道も含めて、あるいは他のさまざまな施策も含めて、交付金という形でいくならば、それは各自治体の判断にゆだねられるものであるということになったわけでございますので、その結果としてどういう形が出てきたのかということに関しては、それは自治体の状況状況による判断が最優先されたものではないかというふうに理解をいたしております。

後藤田委員 私も、報道ベースですが、当時仕分けに加わった方が、がっかりしているというコメントを残されているんです。では、そもそもあの仕分けは、農道自体が要らないじゃなくて、必要だという結論のもとに廃止したんですか。それを、ただ、地方の裁量で、地方交付金でやることは問題ない、農道自体、そこに道路をつくること自体は問題ない、そういう仕分け人の方々の結論ということでよろしいんですね。それは参加者との整合性を問われますよ。

園田大臣政務官 もう一度お答えをさせていただきます。

 昨年の事業仕分け第一弾のときの評価結果というものは、先ほど申し上げましたように、農道整備事業を単独の事業として行う、このことの歴史的な意義はもう終わったのではないかという御意見、そしてさらに、農道を一般道と区別する意義は薄いのではないかという、この二つの理由から廃止という評価結果が出たものでございますので、その評価結果を踏まえての今般の、いわばお金の流れというものも含めて、きちっと交付金という形で再度組み直したということではないかと思います。

後藤田委員 これは国民から見ると、何かだまされたようなイメージがありますよね。これに限らず、これからまたどんどん聞いてまいりたいと思いますが、何か復活折衝みたいな感じで、表向きでは廃止しましたと言って都会の方にはいい顔して、裏では、当時小沢さんが動いたか何だか知らぬけれども、やはり予算つけまっせと。これはやはり詐欺だよ。

 このような案件、例えば皆さんが廃止したけれども、別の、地方の裁量に任せたということでも結構ですけれども、同じ事業費が出たものというのはこれ以外にありますか、ありませんか。

園田大臣政務官 これまでの事業仕分けにおいて、さまざまな分野に切り込んでまいりましたけれども、例えば、委員御指摘のように、廃止という評価結果が出た事業に関して別事業として復活をしたという例、あるいは、本来削減すべき部分に手をつけずに別の部分を削減して帳じりを合わせたりといった疑いの例というものは、委員御指摘のように、指摘をされているところでございます。

 したがって、昨年の事業仕分け第一弾、それからことし行われた第二弾、そしてまた各省における行政事業レビュー、国丸ごと仕分けというふうに私どもは呼んでおりますけれども、そういったことを通じまして、評価結果や指摘事項が二十二年度予算、あるいはまた来年度の、二十三年度の予算概算要求に的確に反映されているかどうか、これを今まさしく再検証しているところでございます。そして、問題があるという部分に関して、各府省に対して確実な見直しを求めていくというふうに考えておるところでございまして、今実施しております再検証の中で問題があるということであるならば、来月行われます事業仕分け第三弾の再仕分けという部分の中で取り上げてまいりたいというふうに考えております。

後藤田委員 これは極めて予算に関係しますので、大臣は出てこられないということでありますが、当委員会でも、その状況についてぜひ委員会に御報告をいただきたいと思いますが、委員長、どうですか。

石田委員長 ただいまの件につきましては、後刻、理事会で協議いたします。

後藤田委員 続きまして、先ほど我々は、覚悟を持って財政健全化責任法を提出してまいりました。我々は、やはり今の我々の時代の不作為だとか怠慢によって後世の子や孫にこれ以上財政の悪化は先送りできない、こういう思いのもとに財政健全化責任法を提出いたしました。

 諸外国の例を見てみましても、資料にはないですかね、イギリスにしましては、皆さんも御承知のとおり、つい最近、約十兆円の収支改善、八兆円の歳出削減、そしてまた二兆円の負担増ということで、これは法律に基づいているから、先進国の立法府、行政府はそれを推し進めているわけであります。ニュージーランドも同じように財政責任法というものがございます。

 翻って日本はどうかといいますと、大臣にお伺いします。今の日本において、将来の子や孫のために財政に責任を持つべしという憲法なり法律はございますか。

野田国務大臣 将来の子供たちをおもんぱかって財政に責任を持てという趣旨の法律ということでございますか。直接にはないと思います。

後藤田委員 今申し上げたように先進国は、先般大臣もトロント・サミット、G20でも中期財政計画を履行するということも御発言されているようでございますが、先進国は法律をしっかりつくって、それを確実に実行に移しております。しかし、今大臣がおっしゃったように、憲法にも法律にも、日本はないんですよ。

 憲法の「財政」という条項がございます。これには残念ながら、財政法定主義、単年度主義、その他の細かい事項しか書いていないんです。これは、皆さん国会議員ですから、憲法をよく御存じだと思います。強いて解釈をするならば、憲法第二十五条、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」そして社会保障をしっかり確実なものにしなくてはいけないという条項がございます。

 私は、これをもってして、やはり財政健全化の中期財政運営並びに持続可能な社会保障制度を確立すべく、消費税を含む税制抜本改革は法律としてしっかり位置づけるべきだと再々この委員会でも申し上げております。菅元財務大臣時代も、この趣旨に御賛同いただける御答弁もいただきました。

 野田大臣は、国際公約をしているから問題ないんだと。国際的に公約をしても、国内的に皆様方はどういう法律で中期財政計画、皆様方も御承知のとおり、我々の財政健全化責任法と皆様方の中期財政運営はほとんど変わりないですね、大臣。変わりないのであれば、やはり諸外国がやっているように法律でしっかりと位置づけて、そしてどの政権がやろうとも、法律で縛られる。選挙があると、みんなやらないんですよ。それでずるずるずるずるいってきた。我々も財政構造改革法というのを以前つくりました。しかし、翌年停止したんです。しかし、そのとき以上に財政は悪化していますね。

 ですから、やはりどの政権が政権にいようとも、これをやらなきゃいけないんだ、こういう法律をつくるべきです。民主主義というのは、私は社会システムとして極めてすばらしいものだと思います。しかし、ハイエクが「隷属への道」で書いてあるように、あらゆる国民の大きな声、小さな声を聞いていくと、そのすべてに隷属してしまうと、まさに地獄の道は善意で舗装されている、そう書いてあるように、財政はおかしくなるんですよ。

 だから、これをどうやって憲法なり法律なりに規定するかということが今必要なんだと思いますし、諸外国もやっております。野田大臣、大臣の所見をお伺いしたい。

野田国務大臣 六月に財政運営戦略をまとめました。その問題意識は、平成二十一年度、そしてこの二十二年度の予算執行もそうですが、国の財政の大半を国債に依存している、税収よりも借金に頼っているという状況は、あの戦後の、まさに敗戦の後の、産業も国民生活もぼろぼろになった後の状況であります。加えて、国と地方の長期債務残高が対GDP比で今年度末には一八〇%を超えるという大変厳しい財政状況の中で、経済成長と両立をさせていくためにきちっと道筋をつくっていかなければならないという問題意識で、財政運営戦略をまとめました。

 きょう財政健全化責任法を、もう提出されたんでしょうか。中身は前と変わりませんか、百七十四回国会と。(後藤田委員「ほとんど変わりません」と呼ぶ)ということならば、問題意識はこれは共有するものでございますし、中身ですね、今年度の基礎的財政収支、プライマリーバランスを、二〇一五年までに半分にする、二〇二〇年度にはこれはもう黒字化へ図っていく、それから安定的にストックも縮減させていくという、この方向は同じですし、加えて、抜本的な税制改革をやらなければならない、あるいはペイゴー原則等々、共通点はすごく多いと思います。

 違いがあるならば、中期フレームが、我々は三年ごと、自民党案が五年で、しかも国会承認を得るというところがあったと思います。あと、国と地方を我々考えて、両方考えていますが、特に国分の目標も掲げているところが若干違うということはありますが、問題意識はかなり共有をしていると思います。

 問題意識を共有している以上、国際公約はもちろん重たいわけで、この戦略に基づいて二十三年度の予算編成をやっていきたいと思います。でも、法律で縛った方が効果があるというか、責任が生ずることは間違いありません。今回、自民党から御提案があるということでございますので、既に提出されたということでございますので、しっかりと受けとめて議論をさせていただきたいというふうに思います。

後藤田委員 今大臣からペイ・アズ・ユー・ゴー原則の話もありました。これは恒久支出には恒久財源をということでございます。そうなれば、皆様方のマニフェスト、多々ございますね。子ども手当、高速道路無料化、その他たくさん、皆様はばらまき予算といいますか、マニフェストをうたったわけでありますが、それもすべてペイ・アズ・ユー・ゴー原則でやられるということでよろしいですか。

    〔委員長退席、鷲尾委員長代理着席〕

野田国務大臣 まずは、子ども手当とか高校無償化という私どもの掲げたマニフェストは決してばらまきではございません。ばらまきというのは、こうした新しい政策をやろうとするときに、しかもしっかり財源を確保しないで国債に頼るようなやり方などは、ばらまきだと思います。やり方についての御疑問はあるかもしれませんが、我々はこれは日本にとってプラスであるという確信を持って選挙を戦ってきた柱でございます。

 今は二十二年度の予算を執行しておりますけれども、マニフェストの主要事項については、効率的な実施という形になりましたが、しっかり財源を確保しながらその実施に当たっているところでございまして、二十三年度についても同じように、安定した財源を確保しながら、マニフェストでお約束をしたことを確実に実行できるように頑張っていきたいと思いますし、それがかなわないならば、できなかった場合にはそのことの説明を皆様にさせていただきたいというふうに思っています。

後藤田委員 先ほど、我々の法律をしっかり見させていただくと。これは菅さんのときもそうだったんだけれども、ぜひ自分たちがどうするかということを、今政府なんですよ、我々野党なんですね。野党というのは、消費税といったら反対とか、何やっても反対と言っていればよかった時代がありました。我々は覚悟を持って国民の皆様に負担も伴う財政健全化の法律を出したんですよ。皆様方が政府として出すのかどうか。

 現にもう一つ、皆さんも御承知かと思いますが、ある法律で縛られております。それは所得税法等の一部を改正する法律案の附則百四条であります。

 これは各委員も御認識があろうかと思いますが、ここには「段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と書かれております。その他、その後段にも「二千十年代の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするもの」。その下にも消費税を含む税制の抜本改革の項目がございます。

 このことは、大臣、御認識ございますか。これをやるためには、少なくとも来年度、つまり再来年の三月三十一日までが限度ですね。これまでに法律を政府として出すということが縛られていますね。そのことについて改めて、今でも結構ですが、それを先送りするのか、今我々が出した法律と一緒に議論するのか、それともみずからちゃんと法律を出すのか、その考えをお聞かせください。

野田国務大臣 お答えいたします。

 附則百四条はもちろん存在をしているわけですから、政府としては基本的に守っていくということであります。これは当然だというふうに思います。

 中身は、委員御指摘のように、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずるということでございますので、平成二十四年三月までに税制の抜本改革を、案をつくるならば、それを提出するということが義務づけられているというふうに思っています。

 そういう中で、今、民主党の中でも社会保障全体のあり方を議論し、それと一体となって、消費税も含んで、税制でどういう形で改革を行っていくのかということを、一体的な議論を行っています。その推移を見守りながら抜本改革案は政府としてもまとめていく作業に入っていくということでございまして、二十四年三月までにそうした結論を得るように努力をしていきたいと思いますし、今はそういう検討段階であるということでございます。

    〔鷲尾委員長代理退席、委員長着席〕

後藤田委員 皆さんは政権交代して一年以上たつけれども、いつも検討、検討、検討なんですよ。まないたを磨いて包丁を研いで、なかなか料理が出てこない。中期財政計画だってもう出ているんですよ。それをそのまま我々は法律にしているんです。来年度の三月三十一日までなんて言っている暇はないんじゃないですか。そのような認識で今の財政問題を財務大臣はお考えなんですか。すぐにでも出さなきゃいけないんじゃないですか。

野田国務大臣 自民党が御提示をいただいている財政健全化責任法も、この附則をどうするかという意味では、平成二十四年三月までに結論を出すことになっているんじゃないでしょうか。

 だから、今その責任法のお話をやらなくても、二十四年三月まで、どっちにしろ、そういうめどになっているわけでございます。そのためにしっかりとした議論を社会保障と一体となってやっていくということでございまして、今どうのというんじゃなくて、間違いなく二十四年三月までという見通しの中で結論を出すべく努力をしていきたいというふうに思います。だらだらやろうというつもりではございません。

後藤田委員 繰り返しますが、内容が一緒なものを、必要な法制上の措置というのを、まさに我々は法律で出したんです、財政健全化責任法。その法律をなぜ来年度の三月三十一日まで延ばすんですかと聞いているんです。今、政府がなぜそういう閣法なり、国際公約をしているけれども国内的には法律の根拠がない中期財政運営、中期財政フレームでよろしいんですかと聞いているんです。

野田国務大臣 だから、必要な法制上の措置は税制の抜本改革をやることによって実現をするわけでございますから、そのための議論をこれからしっかりやっていくということでございまして、それを無視するとかと言っている話ではございません。

 法律上の云々でありますが、財政運営戦略は、閣議決定をして、G7やG20でも説明をしてきていることでございます。世界がそれぞれ財政健全化の道筋を、法律でつくっているところもございますけれども、それぞれが努力をしているときに日本がそのラインから逸脱するということは、国際社会から考えても、考えられないことでございます。

 法律をつくることは強い担保になるかもしれません。また、そのためにも、自民党からの御提案は真剣に受けとめたいと思いますが、財政運営戦略だけだからこれをおろそかにするということではないんです。

後藤田委員 今いみじくも大臣は、法律というのは強い拘束力があるとおっしゃいました。

 我々野党が、強い拘束力で財政責任そして財政の健全化を求めているのに、なぜ、今まさに政権を担っている皆さんが、国際公約したから、閣議決定したからと、そういうあいまいな、これは皆様方も変更されることだって十分あり得るじゃないですか。マニフェストを実行するために、マニフェストを優先するがゆえに、中期財政計画を変更するということだって十分あり得るんですよ。皆様方のマニフェストと中期財政フレームというのが必ず矛盾してきますよ。この点について我々は法律でしっかりやれと言っているんですが、皆さんはやらないというのは、まさにマニフェストに縛られ、法律が出せないと大臣がみずからおっしゃっているのと一緒であります。

 野党第一党が法律にしているのに、なぜ皆さんはそうやって逃げるんですか。自分たちで閣法で出してくださいよ。

野田国務大臣 全く逃げも隠れもしておりません。

 中期財政フレームは、向こう三年間、二十三年度から二十五年度までを念頭に置いていまして、歳出の大枠七十一兆円、国債の発行四十四兆です。これは毎年、年央にその経済状況とか財政状況を見ながらローリングをさせていき、来年は平成二十四年度から二十六年度の中期財政フレームをつくっていくわけです。

 マニフェストをどうするかという議論ももちろんありますけれども、中期財政フレームというのは、二〇一五年までにプライマリーバランスの財政赤字を半減するための、そのための位置づけのフレームです。二〇二〇年までに黒字化するためのフレームです。それを責任を持ってやっていくということでございまして、閣議決定は、政府としては重たい決定です。野党が法律を出しているんだからとおっしゃいますが、政府の閣議決定は極めて重たいというふうに思っています。

後藤田委員 政府の閣議決定よりも法律の方が、どの政権が政権をとっても重たいんですよ。私どもは野党であっても出すし、与党になってもそれを責任を持って履行していきたい。総理がかわったり、皆様方もそうでしょう、小沢さんと菅さんの、万が一小沢さんが勝っていたら、そんなものは、閣議決定なんかすぐほごにされるじゃないですか。そんなことでいいんですか。

 だから、法律で国会議員を縛りましょうよ、立法府も行政府も縛ろうと言っているんであって、この議論は平行線になりますので、もうこの辺にしますが、私どもは、政府にもっと責任ある行動をしていただきたいということを申し上げたいと思います。

 次に、国家戦略、成長戦略についてお伺いをいたします。これは本来は玄葉戦略担当大臣にもお越しいただきたかったわけでございますが。

 さきの国会でも、当委員会でJBICの問題について附帯決議で、将来的にJBICは、政策金融公庫の統合の中で一緒になりましたが、性格的にやはり違うのではないか。

 また同時に、今、国内における産業、特に造船業を初めとする企業が国際競争力の中で大変厳しい状況にある。これは、今ある法律の中でなかなか政策金融公庫から金が出ない、借りられないというようなことで悲鳴を上げているということでございます。

 これは本当は国家戦略大臣に聞きたかったんですけれども、来ないとおっしゃるので、しかるべき答弁を財務大臣はしていただけると思いますが、この点についてはどうお考えですか。

野田国務大臣 JBICの投資金融、日本政策金融公庫から海外部門を分離、そういう考え方の中で、いかにJBICの機能強化をしていくかということは今議論していますし、特に、パッケージ型インフラ輸出のための関係閣僚会議などもつくり、その中で、JBICを積極的に活用していこうと。加えて、六月に決定した新成長戦略の中でもJBICを積極的に活用していくという方針が出ておりますので、これを、もっと機動性そして専門性、対外交渉力を持てるように、その改革を進めていきたい、基本的にはそういうふうに思っております。

後藤田委員 大臣、これは一刻を争う話ですから、ぜひこの臨時国会でもしっかりと、出していただければすぐ議論に応じますから、ぜひそこら辺は真剣にお取り組みをいただきたいと思います。

 金融担当大臣にもお越しいただいています。御質問いたします。

 今、消費者金融問題で一連の倒産劇がございました。これはしっかりと認識を共有しなきゃいけないのは、全会一致で通した貸金業改正法案、これはまさに、その施行から未来にわたって、しっかりと市場を守り、消費者を守り、また業界も健全に運営をするということでございますが、過払いという最高裁判決、つまり、これは投資家からすると首をひねるリーガルコストですね。いきなりさかのぼって遡求されて、お金を返還しなくてはいけない。日本の経済の中でこのような事態が起こるというのは、経済の観念からすると非常におかしいなというふうに感じます。

 貸金業法改正法と最高裁判決の過払い返還とは別の議論でございまして、これはやはり立法府の不作為もありました。また、行政もその当時、グレーゾーン金利において貸し出しをしているところにしっかりと金融庁が指導をしていれば、問題はなかったはずなんですね。最高裁も早目に最高裁判例をしっかりと出していれば、業界も健全な経営をしていたと思います。

 これは、大和都市管財事件でもそうであります。当時の近畿財務局の指導がおくれて、一千億を超える消費者被害が出てきたわけでございます。これはこれからいろいろな委員会で議論が出てきますが、そのときの裁判書類に、当時の近畿財務局にいた、総務省の出向した方が裁判に出廷をいたして、そのときの裁判記録が出ていまして、そこに、仙谷議員から電話あり、そういう自筆の紙が法廷の資料として出されております。

 そういう意味で、極めて、金融庁の指導というものがおくれることによって、業界が今、大変なことになっているということですが、しかし、私どもはやはり市場を守らなきゃいけない。いまだに引き当てが確定しない中で経営を余儀なくされる、その中で、市場や貸し手が不安定な中でいることは、今、日本の経済はやはり個人消費でもっていますよ。貯蓄率は過去最低になって、個人消費というものをしっかりと守らなければ、経済全体がおかしくなる。

 そういう中で、金融担当大臣として、ここはやはり知恵を絞らなきゃいけないと思います。その点について、大臣の御見解をお聞かせください。

自見国務大臣 後藤田議員にお答えをいたします。

 先生も御存じのように、今、貸金業者に対する過払い金の返還請求権については、今先生のお話にもございましたように、借り手と貸し手の間の民事上の権利関係の問題として、最終的に司法判断により決定すべきものだというふうに考えています。

 今先生のお話もございましたように、最高裁の判例が出たわけでございますから、現下の法制下において過払い金の返還請求の権利が借り手に認められる場合、これを国が後から事後的に制限することは、憲法の問題もこれあり、先生もかつて金融庁の大臣政務官をされたというふうに私はお聞きをいたしておりますけれども、そういった点もございまして、これは留意が必要であるというふうに、なかなか難しい問題であるというふうに考えております。

後藤田委員 完全施行までに期間があって、政治主導というものに任せていると、やはり、そういう市場のいろいろな問題を専門的見地から検討できずに、何もやらないという政治主導に終わる。これは尖閣諸島もそうであります。

 我々のときは、平成十六年に尖閣諸島に活動家がおり立ったときに、朝六時半から、第一発見から分単位で、関係省庁課長会議、局長会議をやり、いわゆるプロである公務員、役人の方々の意見を全部集約して、最終的に国益に反しない判断をする、そして入国管理法で強制退去させた。これを今回、当時の官邸はそれをやらずに、おかしな形で逮捕をして処分保留で釈放する。このような間抜けな対応、これと一緒なんですよ。

 やはり政治主導といっても、そういう役人の知識、プロフェッショナルの知識と、そしてまた業界、消費者、こういうものの声を聞いてしっかりと政策を練らないと、本当の意味での政治主導じゃないんですね。

 政治の不作為でまたおかしなことにならないように、ぜひ自見大臣、この件はしっかりと担当に指示をして、個人消費の市場が壊れないようにしっかりと知恵を出していただきたい。答弁は結構でございます。

 最後、もう時間もあれでございますが、今の危機管理という問題、政治主導というものの本当の意味、政治がいろいろな意見を聞いて最終的な判断をするということでございますが、先般、G7、G20と出てこられた。先ほどもいろいろ為替の議論がございましたが、円高を阻止する、経常収支をウオッチするという話がございましたけれども、民主党政権になって、財務大臣、藤井さんがまず円高容認発言をされました。そして官房長官が、八十二円がボーダーラインであるかと言ったときに、そうだという会見をされた。これもいかにも危機管理能力が足りない。手のうちを明かしてファンドにあざ笑われる。このようなことは、財務大臣、今後一切ないようにできますか。

 藤井大臣の発言、仙谷大臣の発言について、財務大臣の御感想をお聞かせいただきまして、質問を終わらせていただきます。

野田国務大臣 直接そのお尋ねの前に、東シナ海の海洋権益、尖閣諸島をめぐる問題で、これまでの政権がそんなに立派なことをしてきたとは私は思っていません。私どもがやったことが国益を損なうという判断も、それは早急過ぎると思います。

 その前提で、藤井大臣の当時の御発言は、通貨安競争はいけないという意味で言ったわけで、それが円高容認と受け取られましたけれども、本質はそこにございました。今回、仙谷官房長官のお話がございましたが、記者の方が八十余円が防衛ラインかと言われたことについて、直接言及しないで、財務大臣が相場を見ながら判断したんでしょうと言ったのが、それが答えであって、防衛ラインに言及しているわけではございません。

後藤田委員 終わります。

石田委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内でございます。

 それでは、主に野田財務大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、細かくは質問通告しておりませんので、基本的な事柄につきまして簡明にわかりやすく質問をしたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、デフレの問題から入りたいと思います。

 まず、日本のデフレが続いておるわけですが、この日本のデフレの原因について、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。

野田国務大臣 基本的にはやはり需給ギャップだというふうに思います。需要が不足をしている部分の掘り起こしをしっかりとやっていくということが原則だというふうに思います。

竹内委員 デフレ、政府の一般的見解は需給ギャップだということで、GDPギャップが大きいからだというふうにおっしゃっているわけです。

 先ほど日銀総裁もおっしゃっていましたが、本当にデフレに関しては、やはりさまざまな角度から実態をつかまえていかないといけないだろうというふうに思います。その意味で、大きくは需要面とそれから供給面というような角度から分析することが多いわけですが、わかりやすくすれば、需要面の中でも財政と金融とがある。そういう意味では、主には三つの側面からのアプローチが必要だというふうに思っております。

 そういう意味では、これまでも言われているように、一つは、政府による財政支出の拡大ができるかどうか。それから、金融面からいうと、日銀によるゼロ金利政策であるとか量的緩和政策、これもされましたけれども、それから、よく言われているインフレターゲットの導入であるとか円安誘導であるとか、こういうことが金融面からは言えるのでしょう。

 それから、もう一つ私が重要だと思うのは、供給面からやはり言わなければいけないんじゃないか、分析が不可欠だというふうに思っていまして、これは、何といってもこの十年来のデフレの原因として供給面から言えるというのは、やはり、中国や韓国、新興諸国の供給能力が増して、非常に日本に近い製品が大量に安く生産されてきた、こういうことから、必然的に日本の製品の付加価値との差が狭まって、物価も下がってきた、こういう側面はあると思うんですね。

 そういう意味では、一般的には政府であるとか日銀とかの責任ばかり言われますけれども、やはり企業サイドのイノベーションの必要性というのはあると思うんです。その点につきましては、大臣はいかがお考えでしょうか。

野田国務大臣 デフレからしっかりと脱却していくために、政府として、例えば財政政策においてどれぐらいのことができるのかどうか。

 今回も、新規国債発行をせずに、そのための手だてとして、約五兆円を超える経済対策の補正予算を、きょう概算の閣議決定をし、二十九日に国会に提出をする予定でございますが、こういう取り組みを、特に需要・雇用創出効果の高い政策、御党の経済対策も随分参考にさせていただきましたけれども、そういうものをしっかりと実施していくということと、日本銀行の金融政策によって、こうした経済を下支えする試みも引き続きやっていくということと、あらゆる政策の総動員で、特に今、供給面の分析もされましたが、そういうことも含めて、一日も早くデフレから脱却をするということが大事だというふうに思っています。

竹内委員 そこで、基本的には、供給面の主役を担うのは、私は企業だと思っているんですけれども、企業のイノベーションが必要だと思うんですが、それをサポートする意味で、政策的には、法人減税をどうするかという問題が今言われています。

 そこで、財務省、内閣府にお聞きしたいんですが、まず、五%の法人減税をした場合に、税収はどのぐらい落ちて、逆に今度は、景気はどのぐらい浮揚するのか、これについてお答え願いたいと思います。質問通告をしております。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 五%の法人税引き下げの影響でございますけれども、税収が順調なときと低調なときとがございます。それをそれぞれ平均をとり、さらにその中で、幅がありますけれども、大体一・四兆円から二・一兆円減収があるということで、平均をとりますと一・七兆円程度になるかなと思います。

 それから、それによる効果については、まだわかっておりません。

竹内委員 この景気浮揚効果がどのぐらいあるかというのがわかっていないというのは、非常に意外な感じがするんですよね。これだけ話題になっていて、さまざまな、予算委員会等でも必要性が叫ばれながら、その試算をしていないというのはちょっとおかしいんじゃないかなと思うんですが、これはやっている途上なのか、手をつけていないのか、この辺はいかがですか。

五十嵐副大臣 経済産業省の方では随分大き目の予測をされていると伺っておりますけれども、さまざまな要素がございますので、財務省としては、幾ら、必ず経済効果があるということは言えない、そう思っております。

竹内委員 これは、しかし、財務省が経済効果を試算するというのはおかしな話だというふうに思うんですよね。内閣府の仕事じゃないんですか、これは。内閣府の旧経済企画庁がしっかりこれをやらないといけないんじゃないんですか。内閣府、どうですか。

和田大臣政務官 お答えします。

 政府として、決まった政策についてきっちりとそういった試算をやっていくこと自体、各省庁の分担部分に応じていろいろな要素を出していただきながら、内閣府において取りまとめていく、こういったことはあるべき姿ではあろうと思いますが、今、具体的にそういった政策を確定しているわけではないことに基づきまして、現在そういった作業を行っていないということでございます。

竹内委員 私は、個人的にはおかしな話だと思いますね。やはりこの辺は、どなたが経済の司令塔なのかよくわからないんですけれども、先ほどからお話もありましたけれども、しっかりとこれはリーダーシップを持ってやってもらいたいと思います。

 それで、もう一つは税制改正の話が出てくるんですが、大臣にお聞きしたいんですが、ナフサ、今免税されています。これについてはお考えがございますか。

野田国務大臣 先ほどの法人実効税率の引き下げに関連する議論も踏まえての話をちょっとさせていただきたいと思いますが、これは新成長戦略にも位置づけられておりますので、税調でもしっかり議論をしていきたいと思います。

 それは、課税ベースを広げて、しっかりと財源を確保した上で実行する。まだ戻りを回しという段階じゃございませんけれども、国内の雇用やあるいは設備投資がどれぐらい増加するのかとか、我が国企業の海外流出を抑制できるのかとか、あるいは海外企業の我が国への立地の増加ができるのか、その効果の観点もしっかりと踏まえながら議論をしていくということでございます。

 ということで、まだその数字は、特に今、経産省が要望をされてきていますので、では、その財源をどうするのかというところを経産省に投げかけているという状況の議論のプロセスであるということを御理解いただきたいと思います。

 そこで、ナフサの話が出てきましたけれども、これは、税制改正を行っている租特のPTの中で、財源としてこんなものもあるよという議論が出てきたとは承知をしていますが、それはまだ定まっているわけではございません。

竹内委員 政府税調でナフサの見直しの話が出ているとか、それから、そのほかにも加速度償却の見直しが出ているとか、研究開発減税の見直しの話が出ているとか、いろいろ情報が漏れ伝わってきているわけですけれども、私どもの主張は、ナフサなどの免税をなくすと大変なことになるだろうというふうに思います。

 それから、設備投資の加速度償却等、これもアメリカなんかは、御存じだと思いますけれども、非常に今景気が減速して、オバマさんが追加の経済対策を発表されて、その柱の主要項目はやはり設備投資減税ですよね。二年間で一〇〇%償却する、認める。二千億ドルもの減税規模だ。すごい規模ですよね、二千億ドル、二十兆円ですからね。それから、研究開発減税も十年で千億ドルやる、税額控除を二〇%拡大して恒久化する。そのぐらい思い切ったことをアメリカでもやろうとしているわけでございます。

 新興国に追われて今デフレが進行している中で、やはり日本としては、もっと研究開発部門、それからそれに関連する設備投資を促進するという税制面での誘導といいますか、そういうことこそ求められるわけだと思うんですよね。そうやってやはり日本の付加価値を高めていかなければいけないというふうに思うわけでございます。

 そういう意味では、単純にどの会社も五%引き下げるというようなことよりも、やはり、そういう研究開発減税であるとか設備投資の加速度償却を認める、引き続き継続、また拡充するとか、こういうことこそデフレ脱却のためには必要だと思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。

野田国務大臣 先ほど来出ているナフサであるとか償却の問題とかを含めて、これはPTの中の自由な議論の中でいろいろ話が出ているということでございますので、まだそれが定まっているというわけではございませんが、課税ベースを広げるという一つの項目として、自由な議論から出てきているということでございます。

 その上で、法人税を例えば、これは経産省の要望は五%引き下げですよね。それをどうするかということは課税ベースで判断するんですが、法人税を引き下げるということによって、これは要は、欠損企業にとっては影響がないことで、黒字企業にとってはプラスでありますが、企業においても、大変内部留保を抱えたり、手元現預金が多くて、法人税を下げても、研究開発とかそういうところに行かないんじゃないか、設備投資に行かないんじゃないか、内部留保や借金を返すだけではないか、そういう分析もあります。

 したがって、その効果をよく見ていかなければならないと思っていますし、だから、研究開発とか設備投資にアクセルを踏ませるような、そういう税制改正の方がいいのではないかという御意見もあります。

 そういうことも含めて、政府税調の中でしっかり議論をしていきたいというふうに思っています。

竹内委員 ぜひ我々の意見も参考にしていただければありがたいと思っております。

 それで、G20の話にもう一回戻りますが、結局大事なことは、各国の通貨安競争を防ぐにはどうすればよいのか、こういうことだと思うんです。私は個人的には、この点については、まず、少なくとも、通貨の競争的な切り下げを回避するというふうにしたことは、一応評価したいと思っています。

 ただし、アメリカのガイトナー財務長官が会見で強いドルを掲げながら、ところが、他方でアメリカは、これまで事実上弱いドルを容認して、五年で輸出を倍増する政策を推進してきたのではないかというふうに思います。しかも、この十一月上旬のFOMCで、国債の買い取り拡大を軸にした追加的な金融緩和に乗り出すことが、もう既定路線というふうに言われております。これではやはりドル安が進むんじゃないでしょうか、御承知のように。

 今回のG20は、他国に通貨安競争を禁止しながら実はドル安を誘導するアメリカに、うまくやられた会議ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

野田国務大臣 今回のG20で、強固で、そして安定した国際金融システムをつくるということに対して、利害はいろいろ錯綜しておりましたけれども、一定の合意がなかったときには、私はもっとドル安は加速しただろうというふうに思います。その中で一定の合意形成ができたということは、私は前進をしたと思いますし、委員御指摘のとおり、通貨安競争を回避するということも改めて確認をされました。

 あわせて、ガイトナーがその会議の後に、アメリカの政策は強いドルを支持するということも表明をしています。それはそのまま受け取るべきだろうというふうに思っています。

 FOMCの追加的な金融緩和の動きについての予測をされましたけれども、これはまだどうなるかわからない話でありまして、その状況はよく注視していきたいというふうに思います。

竹内委員 マーケットはFOMCを織り込んでいるような動きをしているというふうに私は見ております。

 それで、もう一つのテーマが、世界経済の不均衡是正にあると思うんですね。これは、端的に言えば、アメリカと中国の問題ではないのか。アメリカに製品を大量輸出する中国に黒字がたまる一方で、中国からの輸入がふえたアメリカでは赤字が膨らんでいる、こういう問題だと思うんですね、端的に言えば。

 この不均衡解消には一般論としてどういう方法があると大臣は思われますか。

野田国務大臣 不均衡解消については、新興黒字国、赤字国、先進国の中の黒字国、赤字国、それぞれ何をすべきかという取り組みについては、フレームワークの中で、お互いに提出をして、それを相互監視していくという仕組みになっています。その状況をしっかり的確に実行することが大事だというふうに思っています。

 先ほどの経常収支の話でございますが、ずっときょう議論をさせていただいたとおり、二〇一五年までに四%以内に赤字幅、黒字幅を抑えようという議論がございましたけれども、結果的には、参考とするガイドラインをこれからつくるという中で議論を詰めていくことになっています。ストレートに中国とアメリカと言ってしまっては、これはおしまいの話であって、例えば四%の黒字を超える国はほかにもあります。赤字を超える国もあります。そういう世界全体、マクロの中での議論があったということでございます。

竹内委員 そこで、不均衡解消は、経常黒字国が内需主導経済への転換を進める、内需を拡大するということが一つ、もう一つは為替相場による調整というのが一般的には言われているわけでございますが、おおむね、今お話がありましたように、今回の声明は全体的にはこういう方向でまとめられたんだろうと推測しているんです。

 しかし、よく考えてみると、今回、結局、中国など経常黒字国へのプレッシャーをかけるという側面があったと思うんですよ。中国は元を切り上げてもらいたい、はっきり、ありていに言うと。また、日本など他の経常黒字国は内需拡大をしてもらいたい、こういうことだと思うんです。

 もちろん、これは合理性があると思うんですが、逆に、世界経済の不均衡のために、アメリカなど経常赤字国がなすべきことは何か、この点が抜け落ちているんじゃないかと思うんですね。経常黒字国としての責務ばかり言われて、経常赤字国がやるべき議論というのがなされたのかどうか。ここが非常に大事だと思うんですけれども、いかがですか。

野田国務大臣 だから、経常収支を一つの参考とするガイドラインになるかどうかはこれからの議論ですから、その議論が今回G20で行われたということは、黒字で四%を超えているところ、赤字で四%を超えているところ、これはもっとそれぞれ努力してほしいという意味の、指標が欲しいという意味で、問題意識から始まった議論で、当然、経常の赤字国、先進国の赤字国についても、これは議論の対象となっておりました。

竹内委員 ぜひ今後の、財務大臣にはまだ首脳会議がありますので言ってもらいたいんですけれども、つまり、ガイトナーさんが言うように、ドルを強くしながらどうやって経常赤字を減らすのか、アメリカはこのことをやはりしっかりと考えて、明言しなければならないと私は思うんですよ。ドルを強くしながらどうやって経常赤字を減らすのか。このことは、ぜひ強く思っていてもらいたいというふうに思います。

 何か黒字を出している方が悪いかのような議論というのはおかしいと思うんですよ、先ほどからお話がありましたように。経常赤字国こそ問題なんじゃないかというふうに思うんですよ。そういう意味で、通貨安競争を回避しながら、それぞれ、経常赤字また経常黒字をうまく解決していく、こういう方策をぜひとも探っていただきたいというふうに思います。

 そこで、先ほどからも、話が飛んでガイドラインの話がどんどん出ていますけれども、ガイドラインの中身についてどのぐらいの内容までコミットされたのか、そしてまた、このガイドラインは次のG20首脳会議までにある程度のものを出す予定なのかどうか、この二点をお答えください。

野田国務大臣 厳格な数値目標を掲げることは現実的ではないという立場がずっと私の立場でございました、特に経常収支などは。そこで、どうしてもある程度数字的目安というか参考となるガイドラインが必要ならば、そういう表現をすればいいのではないかという議論を、これはむしろ主導したというふうに思っています。

 ある程度の数値目標を掲げろという意見と、定性的な文章でいいじゃないかという議論との間をむしろとったような形でありますけれども、経常収支がいいのかどうかというのは、もともと引き続き議論が必要だと思いますが、そのほか何らかの数字を参考にしながらお互いに努力をするというようなことが可能かどうかということを、参考となるガイドライン、ラインズという複数形のところであらわしているということですが、それは、次のソウルで開かれる首脳会議までに何か結論を出さなければいけないということではございません。引き続き議論をするということでございます。

竹内委員 引き続き質問をいたします。

 今後、まだ円・ドル相場は変動があると思います。今回の会議、G20によって、為替介入は今後も一定合意を得たと考えるのか。それからもう一つは、先進国の金融緩和による金余りが途上国の投機を生んでいるとの問題は当面不問に付されたと考えるのか、この二点についてお答えください。

野田国務大臣 第一点目で、介入云々という話は、直接今回議題になっていませんし、口頭のいろいろな会話の中でも、介入云々という議論ではありません。

 委員御指摘のところは、準備通貨を持つ国々を含む先進国が、為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視する、監視するという意味合いの中で、それは介入が入るのかどうかといういろいろ議論がありますけれども、マーケットの動向を注視しながら、そして適切に協力をしていく。適切に協力をしていくというところまでの合意をしていて、それは、その都度、何が起こるかによって対応の仕方は違ってくるだろうと思います。

 それから、インフレ懸念がある新興国では、先ほどもちょっと議論をさせていただきましたけれども、金融緩和ができないという状況で、先進国が引き続き緩和を続けていることによって資金が流れていることについての懸念は、新興国から説明がありました。

 それに対して、さっきの過度な変動や無秩序な動きを監視するという先進国のこの姿勢は、むしろこういう新興国における過度な、これは一部に起こっていることだと思いますけれども、新興国における資金の流入を抑制する効果もあるのではないかというふうに思っています。

竹内委員 それでは、中国のことについてお伺いしたいと思いますが、今回のG20の合意で、中国は引き続き元の切り上げと内需拡大による経常黒字圧縮について了解したのかどうか、了解したと考えるのか、今後の中国の動向をどのように推測しているか、お答えください。

野田国務大臣 中国も含んで、今回、もちろんのことながらコミュニケは合意形成されております。その中には、さっき申し上げたように、幾つか、通貨安競争はしない、回避することであるとか、ファンダメンタルズが反映される市場によって決まる為替システムに移行することであるとかということの確認事項はございますけれども、これまでも、例えば、新興黒字国は為替の柔軟化に努めてその改革を加速するということなどもトロントでも合意をしていますし、その前のピッツバーグでは中国という名前も入れて同様の声明を出しています。

 この一連の動きの中で、為替の柔軟化については基本的には合意をし、それに努める姿勢にあるというふうに理解をしています。

竹内委員 時間がだんだんなくなってきているんですが、短期的な、急激な円高の原因については、先ほど議論がありましたので質問いたしません。

 それで、中長期的な視野についても御指摘ございましたけれども、私なりに思うのは、IMFが各国の為替相場について、為替の水準について評価をしています、御存じだと思いますけれども。その中では、円評価は大体適正であると。ドルは過大評価だ、元は過小評価、ウォンは過小評価というようなことをIMFが既に出しているんです。

 相場の水準について大臣が云々することはできませんけれども、私は、元とかウォンの対ドル相場がやはり低過ぎる、過小評価だというふうに思います。結局、ここが低いために供給増を通じて日本のデフレにつながってきているのではないか、こういうふうに個人的には思っています。

 そういう意味で、これらの新興国の通貨が、やはり、今回の声明にあったように、経済のファンダメンタルズを反映して市場で決定されるシステムに移行されることがぜひとも必要だというふうに思います。高い成長力を持つアジア諸国に、ぜひ経済成長の軸足を外需から内需へと移してもらって、先進諸国がつくる物やサービスを輸入してもらえるような環境をつくっていく。こういうことが、やはり日本のデフレなどの景気後退リスクを引き下げられるのではないかというふうに思っておるわけでございます。

 そういう意味で、このアジア通貨が良好な経済実態に合わせて今後着実に上昇するように日米欧が協調して促していく、そういう議論を進めていくということが、やはりG20の目的だというふうに思っております。そういう意味では、この首脳会議の役割は非常に大きいというふうに思っておりますので、短期的な円の介入よりも、やはり日米欧の協調によって、今申し上げたような新興国の為替の問題を適正にしていくということが非常に重要だと思っています。

 ぜひともそのあたりの決意を大臣に語っていただきまして、質問を終わります。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおり、IMFの四条協議レポートではおっしゃるような評価になっています。加えて、年初以来、円とアジアのさまざまな通貨とのバランスを調査してまいりましたけれども、人民元、韓国ウォンのみならず、ベトナム、マレーシア、シンガポール、いろいろな国々の通貨と見て、全体的に円が増価をしています。

 ということも含めると、やはり、新興黒字国等の為替の柔軟化に向けて先進国が協調しながらそれを促していく、それを新興国にも理解してもらうという作業は、引き続きやっていきたいというふうに思います。

竹内委員 終わります。

石田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。まず自見大臣に、銀行の現状についてお聞きをしたいと思います。

 日本の銀行は、金融危機の際に、公的資金、つまり税金を三十八・八兆円投入されました。そのうち十一・二兆円は返済されず、国民負担が確定しております。残りはまだ全額返済されてはおりません。しかも、三大メガバンクはこの十年来、法人税は一円も払っていない。

 与謝野元金融担当大臣は、このような現状を見まして、銀行はまだ一人前ではない、こういうふうに述べたことがございますが、自見大臣はこの現状をどのようにお感じでしょうか。

自見国務大臣 佐々木議員御指摘のとおり、銀行の中には、現時点においても早期健全化法等に基づく公的資本の増強を引き続き受けているものや、また、過去の損失により税務上の繰越欠損金が発生したために法人税を払っていないものがあることは御指摘のとおりでございます。

 一方、近年においては、各行の収益が一定の回復を見せており、そのような中で、公的資金の返済、欠損金の圧縮に向けた取り組みも進められているというふうに認識いたしておりまして、先般も、ある銀行が公的資金を返済に来たわけでございます。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましても、各行が適切なリスク管理を行いつつ、積極的なリスクテークと一層の金融仲介機能の発揮を通じて、収益を適切に確保し、さらなる公的資金の返済や欠損金の圧縮を進めることを期待させていただいております。

佐々木(憲)委員 リーマン・ショック以降、金融機関のモラルが問われておりまして、アメリカでは、CEOなど経営陣の高額報酬が批判の的になったわけです。日本でも年間の報酬が一億円以上の経営者は公表される、こういうことになりました。

 そこで、お聞きしますけれども、主要銀行で一億円以上の報酬を受け取っている経営者は何人いらっしゃいますか。

自見国務大臣 お答えをいたします。

 各銀行及び銀行グループが開示をしております平成二十二年度三月期の有価証券報告書によりますと、一億円以上の報酬を受けている者は十五名であると承知しております。

佐々木(憲)委員 そのうちの主要銀行は十三人でありまして、内訳は、三菱UFJフィナンシャルグループが三人、みずほフィナンシャルグループが六人、新生銀行四人というふうに聞いていますが、間違いありませんか。

自見国務大臣 間違いございません。

佐々木(憲)委員 銀行は、税金を投入してもらって経営の困難から救ってもらったという面があります。その上に、不良債権処理で生じた損失、これを理由にして法人税はまともに払わない、その上で、今度は経営者の方は一億円を超える高額な報酬をがっぽり懐に入れる。私はこれはちょっと異常な事態ではないかなと思っております。銀行にはきちんと社会的責任を果たしてもらわなければならぬ。

 そこで、中小企業金融円滑化法についてお聞きしますけれども、中小企業向け金融を確保するために、前任者の亀井大臣、このときにつくられたものであります。その実績を自見大臣はどのように評価されておられるか。

 それから、来年三月で期限が切れるわけですけれども、先ほど延長を視野に検討するというふうにおっしゃいました。これは延長するということで理解してよろしいか。

 それから、中小企業向け金融、貸し出しがどんどん減ってきているわけです。これを何とか回復する、こういう方策をどのように考えておられるか、お聞きしたいと思います。

自見国務大臣 佐々木議員から、中小企業円滑化法案の実績やいかに、こういう御質問でございます。

 私も、こういった厳しい経済の中でございますが、やはり、中小企業金融円滑化法案を国会の御同意をいただきまして成立させていただいて、私は効果があったというふうに思っております。

 それから、昨年は厳しい経済環境の中で、御存じのように、これは中小企業に対する金融の円滑化を図る臨時の措置でございまして、二回の年末、二回の年度末、二回ずつを含めるということで、先生今御指摘のように、来年三月には、これは時限法でございます。

 先般も私、名古屋と大阪、大阪は特に中小企業の多い町でございますが、そこで、中小企業四団体あるいは地域の金融機関の方にもお集まりいただきまして、いろいろ話を聞かせていただいたわけでございます。

 やはり金融機関の方も、一定の効果があるし、特に私の印象に残ったのは、協調融資というのがございます、小さい金融機関とメガバンクといいますか。その協調融資をする場合、以前、この法律ができない場合は、地元の中小の金融機関が中小企業に協調融資しよう、続けようと言っても余り相手にされなかった。それが、きちっと必ず相手にしてくれるようになったという声を聞きました。そういった意味でも、特に中小四団体からは、円高もあっていよいよ厳しいから、ぜひこれは延長してくれという強い声がございました。

 同時に、金融でございますから、やはり金融の節度というものも必要でございますから、金融機関のそういったことも含めながら、きちっと、今私が申しました、我が国の経済、中小企業の資金繰り、あるいは金融機関の金融円滑化に向けた取り組み、進捗状況を見ながら、今先生言われましたように、延長を視野に入れつつ検討していきたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 延長をぜひやっていただきたい。私も一定の効果があるというふうに理解しておりますので、そのことを要請しておきたいと思います。

 では次に、税制についてお聞きしますが、法人税の減税というのが議論になっておりますが、減税が雇用や設備投資に効果があるのかどうなのかという点であります。

 基礎的なことをまず確認したいんですが、国税庁の会社標本調査というのがあります。これによりますと、一番新しい統計は二〇〇八年度分で、法人数、会社の数が二百六十万社ということになっております。そのうち赤字の会社はどの程度あるのか。

 資本金十億円以上の企業と一千万円未満の中小零細企業を分けて、それぞれお答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 御指摘の国税庁が行っております平成二十年分の会社標本調査におきまして、資本金一千万未満の内国普通法人につきましては、全体、約百五十万社ございますけれども、欠損法人数は百十四万社で、その割合は七六%になっております。それから、資本金十億円以上の内国普通法人につきましては、全体約七千社のうち欠損法人は約三千社で、割合が四九%になっております。

佐々木(憲)委員 今、数字で確認しましたが、大企業、資本金十億円以上の大企業の場合は、赤字企業は約五割、半分が赤字だと。ところが、中小企業は八割近くが赤字であります。これはちょうどリーマン・ショックの影響も若干あると思いますけれども、そういう状況なので、減税といいましても、黒字の企業には減税でありますが、赤字のところはもともと税金を払っていないんですから、減税の対象にならない。

 したがって、今数字で明らかなように、法人税を減税するということは、大部分が黒字の大企業の側に回る、赤字の中小企業には回らない。これは当然のことだと思いますが、そうですね、大臣。

野田国務大臣 佐々木委員の御指摘のとおりでございます。

佐々木(憲)委員 政府税調が、十月六日、雇用促進税制等プロジェクトチームを立ち上げたそうですが、座長に五十嵐財務副大臣が当たっておられるそうですけれども、日本の中小企業は、企業の数でいいますと、九九・七%が中小企業なんです。従業員は六九%、約七割の労働者がそこで働いているわけであります。その多数が、今言ったように八割が赤字、こういう状況ですね。それをどうするかという問題なんですね。

 つまり、減税をしたら雇用がふえる。それがどういう理屈でそうなるのか。例えば赤字の中小企業には減税の恩恵は行きませんので、赤字の中小企業には雇用効果は発生しないというふうに思いますけれども、これはどういう考えで雇用をふやそう、ふえるというふうに見ているのか、説明いただきたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 確かに赤字法人には減税の効果は及びません。ただ、黒字法人、中小企業の中にもおありになるわけですけれども、まさに今黒字を出している法人は伸びているということでございますので、さらに雇用をふやしていただく。

 また、中小だけではなく大法人にもふやしていただきたいわけですけれども、法人税全般でそれをやるということもあるでしょうけれども、それよりもむしろ、雇用創出の中に、正規雇用化あるいは育児支援、障害者雇用等の視点を加えまして、どういう税制措置をつくれば雇用拡大につながるのかということをただいま検討している最中でございます。

佐々木(憲)委員 要するに、黒字の大きな会社が中心ですけれども、そういうところには支援が行くけれども、またそこで若干雇用の可能性も生まれる、可能性ですよ。しかし、中小企業が圧倒的な多数であって、労働者も圧倒的に多いわけですが、そこには及ばないわけだから、何らかの別な対応が必要なんですね。税制だけではこれは無理なんです。

 今おっしゃったように、大きな会社の雇用を、非正規雇用をどんどん切るとか景気の安全弁に使うような、そういう体制そのものを変えるということが一つ。それから、賃上げをしっかりやるためには底上げを最低賃金などで支えていくとか、そういういろいろな面が必要なわけであって、何か減税で雇用がふえる、これは単純な議論だというふうに私は思います。

 次に、黒字の大企業、この部分の利益というものがどのように処分をされてきたのか、この点をまず確認したいんですけれども、これは例えば、法人税として払う部分、それから配当で株主に払う部分、それから社内に残す社内留保、この三つを取り出していただきまして、この利益の処分の実績、これを確認したいと思います。

 二〇〇八年と、十年前の一九九八年の数字をそれぞれお答えいただきたいと思います、数字だけ。

田中政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど御指摘のありました同じ会社標本調査でございますけれども、利益を計上している法人の益金の処分金額のうち、支払い配当に回りましたもの、それから法人税額に回りましたもの、社内留保に回りましたもの、それぞれお答えをしたいと思います。

 支払い配当につきましては、平成十年分、約十年前でございますが、金額で約四兆円、全体の割合で一一・四%。平成二十年度分、金額で約十兆円で、割合で二三・七%となっております。

 法人税額におきましては、同様な調査におきまして、平成十年分について、約十一兆円、割合が三一・九%。平成二十年度分、金額で約九兆円、割合が二〇・四%となっております。

 社内留保につきましては、平成十年分は約十三兆円、割合で三六・三%。平成二十年度分、金額で約十八兆円で、割合で四一・一%となっております。

佐々木(憲)委員 今、細かな数字を言っていただきましたけれども、全体としていいますと、野田大臣、この十年間で株主配当は六・三兆円ふえているんです。社内留保が年間五・二兆円ふえたわけですが、それよりも株主の配当の方がふえ方が多いわけですね。ところが、税金の支払いはどうかといいますと、法人税の支払いは二・三兆円マイナスなんです。法人税の負担は減ったけれども、その分、社内に内部留保でたまる部分がふえ、株主の配当がもっとふえた、こういうのが現状なんですね。

 この現状について、野田大臣はどういうふうに認識されていますか。

野田国務大臣 ここ十年の推移は委員の御指摘のとおりでございます。

佐々木(憲)委員 そこで、法人税を下げる、そうすると、一体それがどう使われるかというのが問われるわけですよ。

 過去、法人税は最高税率四二・何%からずっと下がって三〇%、これは表面税率ですね。ところが、下げたけれども、景気の後退ももちろんあったかもしれない、しかし、株主の配当に回り、内部留保がふえるというところに使われていて、本当に労働者の賃金引き上げに使われたかというと、賃金はどんどんどんどん下がり続けております。それから下請単価も、この間どんどんたたかれて下がってきているということでありますので、私は、自動的に、減税をすれば雇用に回るとか、あるいは減税したら下請に行くとかということではないと思いますね。したがって、具体的に、ではどうするかということをもっと突っ込んで考えなければいけないわけであります。

 総理が、十八日に開かれた国内投資促進円卓会議、ここで、法人税を下げてもそのお金がため込まれるのでは効果が薄いと語ったと報道されております。野田大臣も多分この会議に出席されていたんじゃないかと思いますが。

 法人税を減税したら投資に回るのかというと、そうはならないところに問題の深刻さがありまして、この前のこの財務金融委員会で私、白川総裁にお聞きしましたら、大企業の手元資金は今非常に潤沢だ、この資金を使う場所がないということを金融機関の経営者からも企業経営者からもしょっちゅう聞きますというお答えだったんです。九月八日のことです。

 この日銀総裁の考え方、問題のとらえ方というのか、野田大臣も同じような考え方に立っておられるかどうか確認をしたいと思います。

野田国務大臣 企業の手元現預金、内部留保は相当あるという状況の中で、例えば法人実効税率を引き下げても本当に効果があるのかというのは、やはりこれは議論の余地が相当あると思っていまして、いろいろなアンケート調査でも、借金を返すとか内部留保に使うとかで、研究開発とか設備投資には直接行かないようなのもあります。

 そうはいいながらも、一応新成長戦略の中で法人の実効税率は検討することになっておりますので、今の国内の雇用や設備投資の増加につながるかどうかという観点からの検討もしたいと思いますし、一方で、やはり法人税が今のこの実効税率では国際競争力の観点からどうかという議論もあるので、それによって海外へまさに拠点を移すようなことはいけない、そのための効果があるのかどうかとか、あるいは法人実効税率を下げることによって海外から企業を呼び込む、立地を促進するということは可能なのかどうか、そういう観点から議論を進めていきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 経済産業省出身で京大の助教をされている中野剛志さんが日経ヴェリタスというものの中でこういうふうに言っているわけです。今の日本経済は需要不足で、マネーが投資に向かわない貯蓄過剰、金余りだ。その過剰な貯蓄は専ら法人部門にある。法人部門に金はあっても投資先がない。需要のない中での法人税減税というのは、この法人部門の貯蓄をさらにふやすだけで国内投資を促進しない。むしろ減税分だけ政府支出がふえるわけですね。そうすると、政府の財源が減らざるを得ないから、経済全体の需要はむしろ縮小する。こういうふうに言っているわけです。

 つまり、法人税を減税するためには財源が必要ですから、支出がその分ふえるから、全体として政府の財源というのは狭まっていく。そのかわり大企業に渡しても、大企業は内部留保を膨らませるだけで実際には効果があらわれない。それは需要がないからだ。こう言っているわけです。

 この見解、どのように思いますか。

野田国務大臣 そういう見解もあるだろうと思うんですが、法人実効税率の引き下げの観点というのは、国際競争力云々というところが一つあります。それは社会保障の事業主負担とあわせれば云々という議論もあります。

 さっきの、雇用につながるのか、設備投資につながるのかとか、あるいは生産拠点を移すようなところを歯どめがかかるのかとか、あるいは海外からもっと投資を呼び込むような、あるいは企業を立地させるようなことができるのかとか、いろいろな観点から議論したいと思いますが、単純に法人実効税率を下げるのではなくて、当然それを下げれば減収になります。さっきも議論がありました、一兆円なのか、一兆数千億なのか、二兆までいくのか。そこをよく見きわめながら、課税ベースを広げながら、財源確保をしていくというのが、今回、予算編成過程で、税制改正過程で行われるということでございます。

佐々木(憲)委員 競争力の角度から、日本の税金を下げないと海外に出ていく、そういう議論が行われていますが、私はそれは違うと思っております。

 といいますのは、海外に企業が出ていく理由は、税金が高いからという理由はほとんどないんです。一番大きな理由は、海外の市場の中に設備をつくりたい、それから、その進出先の低賃金の労働力を利用して低コストで製品をつくりたい、これが最大の理由なんですね。税金の問題はずっとずっと下の方にあるわけです。

 したがって、幾ら法人税減税をやっても、海外進出はとまりません。ですから、私は、別な角度からその問題は考えないと、税金だけで議論をしていくと、違う方向に行ってしまうような気がするわけです。

 日本経団連は盛んにそれを下げろ下げろと、ずっと一貫して言っていますけれども、肝心の担当者の話を聞いてみると、いやいや、日本の税金は決して高くはないんだよと。いろいろな負担も含めて、実際にはそんなに高いわけではないんだと自覚していながら、どんどんどんどん同じことを言っているわけです。そういうことを真に受けないで、客観的な状況をよく考える必要があると私は思います。

 そこで、民主党の税制改正プロジェクトチームというのが開かれているようで、この出席者から、税率を下げても企業の内部留保がふえるだけで意味がないとか、いろいろな御意見があったようでございますが、問題は、この内部留保というものをどう国民の側に還流させるか。つまり、内需の側に還流させて最終需要をふやしていく、その方向で根本的にかじを切りかえる、これが必要だと私は思うんです。

 そのためには、幾つかの手法が私は必要だと思う。

 一つは、たまりにたまったこの内部留保を公的な部門、つまり、まず財政の方に吸い上げてくる。つまり、法人税減税ではなく、応分の負担を大企業に求める。

 その際には、累進課税が私は必要だと思います。中小企業に迷惑はかけず、たまっている部分について一定の負担を求めていくことによって国の財政を確保し、それを原資として、今度は、社会保障、医療、こういう分野に回していく。つまり、大きく言いますと、所得の再分配機能をしっかりと再構築するというのが一つです。

 それから二つ目は、賃金を引き上げるということ。

 その場合、最低賃金の引き上げはもちろんですけれども、大企業に対して求めなきゃならぬのは、非正規雇用をばんばん雇用してどんどん切っていくような、これが一番激しいんですよ、大企業の場合は。中小企業の方は割合安定しているんですけれども。こういう、安全弁として大量の首切りをやるような、そういうシステムに歯どめをかけて、安定した雇用に切りかえていく、そのためには法整備が必要なんです。

 そのために、やはり規制緩和をやり過ぎていますから、労働法制の規制を再構築するということ、これが大事です。そうしないと、企業は義務づけにならないので、やりたい放題、今はびこっていますから、その点を直していく、これが二点目です。

 それから三点目は、例えば下請に対してもしっかりとした単価の引き上げを求めていく。

 これはいろいろな具体的な方策を我々は考えていますけれども、そういうふうな方向に、つまり、大企業の内部留保をどのようにして社会に還元して国民に還元するか、そのことによって最終需要をどうふやすか、ここに政策の基本を切りかえないと、幾ら雇用雇用と叫んでも、現実にはなかなかそういうふうにならない。そこの根本切りかえが十分じゃない、あるいはそうはなっていないというふうに私は思うわけです。

 この点について、最後に野田大臣に御意見をお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 さっき、雇用促進税制のPTをつくったというお話をしました。それはまさに、ため込んだ内部留保を社会のために還元してもらう一つのきっかけになる可能性もあるだろうと思っていて、今雇用のお話をされましたけれども、非正規雇用から、そうじゃなくて正社員でちゃんと雇う正規雇用に変えていくとか、障害者を雇用していくとかというところにいわゆるインセンティブをつける、呼び水になるようにするということで、今おっしゃったように、いろいろな具体的なものを好循環にしていくきっかけにぜひしていきたいと思っておりますし、問題意識としては、財政政策だけで何か物を動かせる、もちろん一生懸命生きたお金の使い方をしたいと思いますが、企業のそういう内部留保をうまく還元できるような知恵というものも、御指摘のように、必要だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十六分散会


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