衆議院

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第23号 平成23年6月15日(水曜日)

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平成二十三年六月十五日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 泉  健太君 理事 大串 博志君

   理事 岸本 周平君 理事 古本伸一郎君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 竹下  亘君

   理事 山本 幸三君 理事 竹内  譲君

      網屋 信介君    五十嵐文彦君

      江端 貴子君    小野塚勝俊君

      緒方林太郎君    岡田 康裕君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      木内 孝胤君    櫛渕 万里君

      小室 寿明君    小山 展弘君

      近藤 和也君    菅川  洋君

      玉木雄一郎君    豊田潤多郎君

      中塚 一宏君    中林美恵子君

      松原  仁君    三村 和也君

      柳田 和己君    山本 剛正君

      和田 隆志君    今津  寛君

      齋藤  健君    竹本 直一君

      徳田  毅君    野田  毅君

      松本  純君    村田 吉隆君

      茂木 敏充君    山口 俊一君

      斉藤 鉄夫君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   経済産業大臣政務官    中山 義活君

   政府参考人

   (内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室審議官)          加藤 善一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   齋藤  潤君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      横尾 英博君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  東  祥三君     山本 剛正君

  中林美恵子君     緒方林太郎君

  吉田  泉君     小室 寿明君

  竹本 直一君     松本  純君

同日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     中林美恵子君

  小室 寿明君     櫛渕 万里君

  山本 剛正君     東  祥三君

  松本  純君     竹本 直一君

同日

 辞任         補欠選任

  櫛渕 万里君     吉田  泉君

    ―――――――――――――

六月十五日

 国税通則法の改悪反対・納税者の権利確立に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一三一八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一四六三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四六四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四六五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四六六号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四六七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四六八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四六九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四七〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四七一号)

 安易な消費税率引き上げ反対に関する請願(城内実君紹介)(第一四六二号)

 消費税の増税に反対し、公正な税制実現を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一四七二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四七三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一四七四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一四七五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四七七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四七八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一四七九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四八〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室審議官加藤善一君、内閣府政策統括官齋藤潤君、財務省主税局長古谷一之君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長横尾英博君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網屋信介君。

網屋委員 おはようございます。

 いろいろと新聞紙上で政局が動いているような話もありますけれども、そんな中で、今回は、政府を初め与野党各党の皆さんがこの法案の提出に本当に御努力をいただいたこと、特に、特例公債法がまだ懸案となっている中で、国民生活に大きな影響のある税法改正案を委員会審議までたどり着かせていただいたことに心から感謝を申し上げます。同時にまた、ちょっと長く開かなかったんですけれども、こういう審議の再開第一号で質問をさせていただくことを光栄に存じております。

 そしてまた、大震災で本当にとうとい命を亡くされた方や被害に遭われた方への哀悼の意を表させていただき、震災、津波、そして福島の原発事故でいまだに避難所生活を余儀なくされている皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 私も三回ぐらい被災地に参りまして、一回はマイクロバスでマスク五万枚とか持っていきましたけれども、いろいろな報道にもありますように、預金通帳やいろいろなものがなくなった方とか、特に、三月末の手形の問題とかいろいろな問題がありましたけれども、そういった災害に関連するいわゆる金融周りの問題につきまして、本当に迅速な手当て、そしてまた税法改正等々、御尽力をいただいたことに心から感謝を申し上げる次第でございます。

 今回、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案という、やたら長い法律案でございますけれども、これについての質問をまずさせていただきたいと思います。

 昨年の十二月だったと思いますが、税制大綱の議論とそれから租特法の議論、ほぼ同じ時期にいろいろな議論をさせていただいて、五十嵐副大臣ともいろいろなディスカッションもさせていただいた記憶はございます。

 一つ、大きなところで御質問させていただきたいのは、本来、民主党の考え方として、この租税特別措置法の大幅な見直しをやろうじゃないか、その中で、租特の一つ一つの項目については見直しをして、本当に必要なものについては本則でカバーをしていく、そして、そうでないものについては時間的経過とともに廃止していく、そういった考えに沿って税制大綱の議論があったというふうに私は記憶しているわけでございますが、今回のこういう法案、いろいろ時期的な問題もあるので、そのとおりにいかない部分もあるのかもしれませんが、そういった考え方に沿っているのかどうか。

 もちろん、つなぎ法案の一部なので全部がそうは言えないと思いますけれども、どういう哲学でこの租特法というのを今後お考えになっていくのか。その辺について大臣の見解をお聞かせいただければと思います。

野田国務大臣 おはようございます。網屋委員にお答えをしたいと思います。

 租特については、平成二十二年度の税制改正大綱におきまして、租税特別措置の見直しに関する基本方針を定めさせていただいております。そして、政策税制措置について、平成二十二年度税制改正から始まる四年間で抜本的な見直しを行うということでございます。

 この基本方針においては、網屋さん御指摘のように、期限の定めのない措置について適時に存続の必要性を判断するほか、「もはや適用状況や政策評価等を踏まえた必要性を判断する必要がなく、かつ、課税の公平原則を逸脱するものではないと明確に認められるものについては、本則化の適否を検討する。」こととしています。

 その歩みがどうかというところに多分御懸念があると思うんですけれども、ちなみに、平成二十二年度には一項目、本則化とさせていただきました。それは、オリンピック競技大会またはパラリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして交付される金品の非課税措置を所得税法に規定したというのがあります。

 こういう措置を、これからも租特の見直しを行っていく過程の中で、基本方針に基づいて対応をしていきたいというふうに思います。

網屋委員 ありがとうございます。

 今回、皆さんの御努力によりまして、所得税法の一部の中でも重要な部分について法案として提出されているわけでございますが、特に私の地域は農林水産業、畜産というのが大変大きなウエートを占めるところでございまして、特にA重油の関連の問題ですとか、いわゆる畜産業の和牛の関連ですとか、それから離島の関連ですとか、非常に大事な関連の法案がたくさん入っているので、ぜひとも何とか皆さんの御努力で成立にこぎつけたいなと思っているところでございます。

 この中で、今回、雇用促進の税制というのが入っております。特に中小企業が対象なんですが、租特法の十条の六、四十二条の十二というところなのでございますけれども、基本的に雇用の促進のためにいろいろな税制で優遇をしていこうじゃないかというのが趣旨というふうに理解しておりますが、これが盛り込まれたことには本当に感謝をいたしております。

 ただ、先ほどの税制大綱の議論のときに、これは懸案となっておりますけれども、法人税の五%の減税、中小企業につきましては軽減税率のさらなる三%の減税という議論が実はあったやに記憶しておりますし、ペンディングの事項としてここに入っております。

 この議論というのは、私の理解では、景気浮揚というのは重要なんですが、それだけではなくて、雇用の促進と、ある意味でセットという理解をしております。というのは、たしか私の記憶だと、菅総理が経団連の会長とお話しになられたときに、法人税を下げるかわりに、工場を外に持っていかないでね、雇用を促進してね、利益の分配をちゃんとやってねというような御依頼というか議論をされたことも記憶に新しいところでございますが、これについて、今後どういうふうに、法人税の減税については議論が今なされているのか、その辺についてコメントをいただければと思います。

野田国務大臣 一月に提出した二十三年度の税制改正法案の中で本当に大きな柱になっていたのは、委員御指摘のとおり、法人実効税率の五%引き下げと中小法人の軽減税率を三%下げるということでありました。

 この目的は、御指摘があったとおりでございまして、一つには国内企業の国際競争力を強めていくということ、それから外資をもっと立地を促進させていこうということと、そして雇用と投資を促進していきたい、そういう意図があったわけでありまして、それに加えて、御指摘があった雇用促進税制であるとか、あるいは総合特区制度とかアジア拠点化推進のためのさまざまな政策税制措置の創設などが合わさった形で政策効果を上げていこう、そういう意図がございました。

 今回は、三党の合意を踏まえまして、平成二十三年度改正案のうち、先ほど申し上げた雇用促進税制の拡充などの政策税制措置は今回入っている、あわせて、先ほど来御議論いただいている租特については、全体の改正案から切り離して今御審議をいただくという形になりました。

 では、そのあとの、所期の大きな目的だった法人税等をどうするかなんですが、これはまさに、言ってみれば、今回の二十三年度の改正案というのは税制の抜本改革に資する緊要な改革に入るんですね。それについては、これから復興のための二十三年度の補正予算の審議の際に各党で御議論をいただく、そういう運びという位置づけになっているというふうに理解をさせていただいていますし、そうした御議論を踏まえて適切に対応していきたいというふうに思います。

網屋委員 ありがとうございます。

 非常に重要な項目でありますので、ぜひとも前向きに我々も議論させていただきたいと思いますし、各党そして政府の皆さんの御協力も含めて、何とか前向きに進めていただければと思います。

 もう一つが、今回の法案にはまだ入っておりませんが、もともとの所得税法等の一部を改正する法律案の中で、いわゆる地球温暖化対策のための税の導入、温暖化税という形の、石石税の割り増しの形になると思うんですが、この議論があったと記憶をしております。

 この部分なんですが、今回の原発の事故に伴って、国内外で国家のエネルギー政策の議論が高まっているわけでございます。御存じのとおり、ドイツだ、イタリアだ、いろいろな動きもございます。また、日本の状況としても、まだまだ確定してはいないものの、ついせんだって、五月末のドービルのサミットでは、菅総理が、二〇二〇年代の早い時期までに自然エネルギーを二〇%を超えるレベルまでふやす、そういうことをおっしゃっただけで、まだその先の具体論までは踏み込んでいないと思っています。これは非常に重要なところでございます。

 しかしながら、昨日閣議決定された原子力損害賠償支援機構法案、スキームが新聞等にも出ておりましたけれども、このスキームの中で考えると、電力料金が、これは入れなくても上がっちゃうんじゃないかという危惧がかなりあります。特に東電はそうですけれども、東電だけでなく、負担金のことを考えると、ほかの電力会社まで電力料金の上昇が考えられる、まだ何とも言えないんですけれども。

 そういう著しい上昇が予想される中で、これまで提案された地球温暖化の税の導入をさらにやっていくというのは、私としては非常に国民負担が重いんじゃないかなというふうに思っておりますが、今後の考え方として、今回の中には入っておりませんけれども、全体の、一部を改正する法律案の中にまだ入っているわけで、どういうふうにお考えなのかということを、ちょっと政府の考え方としてお聞きしたいなと思っております。

野田国務大臣 昨日閣議決定した賠償スキームでは、国民負担の極小化という一つの項目が入っていますので、電力料金を安易に上げていくという路線では必ずしもないということでありますけれども、その上で地球温暖化対策のための税の扱いについての御指摘がございました。

 これはやはり、地球規模の重要かつ喫緊の課題である地球温暖化問題に対応するため、全化石燃料を課税ベースとする現行の石石税に、CO2排出量に応じて税率を上乗せするという内容でございますけれども、先ほど御指摘をいただいた法人税の扱いと同じように、これは税制の抜本改革の一環をなすものでございますので、三党合意において、これは復興のための補正予算を検討する際にあわせて検討するという位置づけになっておりますので、その際にしっかりと御議論をしていただければというふうに思います。

網屋委員 今のお答えの中で、一つだけ私は見解の相違がちょっとありまして、国民負担の最小化ということをおっしゃいましたけれども、これまでの議論の中では、国民負担の最小化は、税金をつぎ込まないことが国民負担の最小化で、きのうの議論では、相互扶助と、とにかく、賠償が出てきたらだれかがどっちにしても払わなきゃいけないわけで、それは、税金で払うのか、電気料金を上げるのか、あとはどこかから打ち出の小づちをこうするか、どれかしかないわけです。

 そうすると、私は、この国民負担の最小化という議論が、これまで税金を使わないという議論にちょっと偏っていたような気がしますので、本来であれば、大臣おっしゃるように、電力なんて使わない人はいないわけですから、電力料金が上がるイコール国民の負担ということは、そういうふうに私はとらまえたのですが、議論はそういうふうになっていなかったような記憶がちょっとあるので、もう一度そこは、きょう、質問の答えはありませんけれども、明確にしていただいた方がいいのかなというふうに感じております。

 もう一つ、今回の法案の中にちょっと、漏れていますというか入っていない中で、短期勤務の法人役員退職金の二分の一課税の廃止というのが、実は議論がありました。これは何かというと、言ってみれば、天下りをした方が、二年三年でちょこちょこ行ってぼんぼこ退職金をもらうんだ、それはわたりの温床じゃないか、だからこれはやめようじゃないかという議論があったやに記憶しております。

 これが、今回、次の方に延びているというのは、ちょっと私も、これこそ結構先にやらなきゃいけない内容じゃないかなと考えているのでございますが、たまには副大臣、ぜひお答えをいただければと思いますが、よろしくお願いします。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 網屋先生御指摘のとおり、特に渡り鳥と言われるような天下り法人役員の、その退職金に対する対策の一つ、決め手の一つになるかなと思っておりますけれども、そもそも、退職金の二分の一課税というのは、長期間にわたる勤務の対価を後払いでまとめていただくということなので、累進性を緩和するために二分の一にカウントして課税をしましょう、こういう制度でございます。

 ところが、これを悪用いたしますと、マスコミや国民の皆さんの目が厳しいからといって、見かけ上給与は低くしておいて退職金はがっぽりいただくという方々が出てきて、逆に租税回避というか節税になってしまうという面がございます。そこで、最初から短期の就任が予定されている人たちについて、この二分の一課税をやると有利過ぎるということで、これをやめましょうという提案をさせていただきました。

 同時に、自治体の首長さんたちも、これも同じようなことがあって、見かけ上返上しているんだけれども、実際にはもとの本給は下がっていなくて退職金はたっぷりいただくという方々があって、それが選挙費用になると、今度は新人の候補者の皆さんとのバランスが崩れる、選挙の際に。そういうようなこともあるので、これは五年以内の、そこで五年という意味があるんですが、五年以内の短期の法人役員等については、これは二分の一課税をやめましょうという提案をさせていただきました。これは、私は、バランス論からいっても、税の公平性からいっても、本来のあるべき改革だろうと思っておりますので、ぜひ実現をしていただきたい、こう思っております。

 与野党の話し合いの中で、大きな改革の中の一つのこまといいますか分野に入るので、これは第二次補正の財源、復興財源を考える際に一緒に考えてまいりましょうという話になっていますので、先延ばしされていますけれども、野党の皆様にも御理解いただけるものと思っておりますので、近い将来、しっかりと実現をしてまいりたいと、お願いをいたしたいと思っております。

網屋委員 わかりました。ありがとうございます。ぜひとも実現に向けて御努力をお願いしたいと思います。

 続きまして、実は先ほど原子力損害賠償支援機構法案の話をちょっといたしましたけれども、これは東電の賠償スキームということなのでございますけれども、今回閣議決定されたスキームの中には、かなり金融分野への影響の大きい部分もあるというふうに私は思っております。特に、御存じだと思いますが、日本の社債市場の中では、この電力債というのは、八%ぐらいかな、結構大きなウエートを占めるところでございまして、数兆円に及んでいるわけでございます。

 東電について言えば、確かにこういった大きな災害の中でいろいろな努力をされているものの、それなりの責任もやはりあるというのは国民的な理解が得られるものだと思いますが、私の方で御質問したいのは、まず、東電以外の原子力事業者が負担金を払うというスキーム。

 閣議の内容からすると、まず東電が第一義に責任を果たします、次は原子力事業者において相互扶助をします、それで足りない場合に国が支援します、こういうたてつけになったと記憶しております。

 これは実は、この原子力事業者、いわゆる電力会社が国営の会社であるんだったら、別にこれは大した問題じゃないんです。ただ、これらの会社は既に株式を上場して株主がいて、一般にですよ、かつまた社債権者というのがいて、これはもう何万人、何十万人という人がいるわけでございます。そうすると、極端に言うと、これはまだ確定はしていませんけれども、ある日突然上場会社のクレジットががらっと変わっちゃう。例えば一株益ががらっと変わっちゃう。この前の浜岡なんかもそうですけれども、つい先週までは千二百億円の利益の会社が、ある日突然千三百億の赤字の会社になっちゃうということが起こり得たわけでございます。

 政府のこういった、一言という言い方はおかしいけれども、方針によってすぐに上場会社の状況が変わってしまう、これは著しく市場の信用を損なうのではないか。

 例がなかったわけではない。例えば数年前の貸金業の過払いとか、外国会社が株を買ってきたら急に株を買うなとか。要するに、私に言わせれば、ちょっと例は悪いですけれども、マージャンをやっていて東場と南場でルールを変えるような話で、しかも南場になってから東場のチョンボだなんと言われても、いわゆる遡及をしてしまうというような、こういうやり方というのは、外国の投資家から考えると、日本国内への投資をそぐような、そういうことが、金融市場とか債券市場、特に例えば銀行さんにとっても自己資本が急に何か毀損するような、そういうようなことが起こり得るわけなんです。

 この中で、金融庁なり財務省の方で、特に金融庁の方で、この議論にどういう参加をされたのか。もし何かコメントがあればぜひ聞かせていただきたい、そういうふうに思います。

自見国務大臣 網屋議員にお答えをさせていただきます。

 今、市場という、マーケットでございますけれども、動向は、さまざまな要因を背景として市場において決定されるものでございまして、その変動要因等を特に今特定することはなかなか困難であることから、自由主義市場においては、やはりこういったことは金融行政を預かる者としてコメントすることは差し控えたいと思っております。

 また、今先生のお話にございましたが、各金融機関それから個別の企業、といっても、基本的に私が所掌するのは民間金融機関でございまして、電力会社もこれは民間の企業でございますから、この融資等についてもコメントすることは差し控えさせていただくということがやはり自由主義市場における大変大事なルールだ、私はこう思っております。

 いずれにしましても、東京電力の賠償問題については迅速かつ適切な、まず賠償問題ですね。それから、電力の安定的供給などを確保することを大前提としつつ、今先生は社債市場のことも言われましたけれども、当然、金融あるいは資本市場全体の安定に不要、不測の悪影響を生じないことが重要である、こう思っておりまして、引き続き動向を注視してまいりたいと思っております。

 私もこのインナーの一人の大臣をさせていただいておりましたが、金融市場の安定ということを、きちっとそういったことを含めて文章に入れさせていただいております。

網屋委員 ありがとうございます。

 私自身は、国が民間の上場企業のクレジットとかそれから利益の状況を一言で左右するような形を出すのは、非常に好ましくないものだと思っております。

 一つお伺いしたいのは、三月の末に大手の金融機関が東京電力に対して一兆八千五百億円の緊急融資をしています。これについて、金融庁とか経産省は、これらの金融機関に協力要請とかもしくは働きかけとか、そういうことをやられたのかどうか、御質問したいと思います。

自見国務大臣 金融庁といたしましては、融資の要請等を行ったという事実はございません。

網屋委員 ありがとうございます。明快なお答えでございます。

 ということは、私が調べましたら、住友銀行が六千億円、みずほ銀行が五千億円、三菱UFJ銀行が三千億円、その他、三菱信託、住友信託、中央三井信託などが一千億円以上の融資を、いまだ賠償額が幾らになるかわからないような会社に、企業に、しかも、当時のCDS、つまりスワップのレートは七%ぐらいありましたが、〇・一%の金利で各行独自の判断で融資をしたという理解でよろしいですか。

自見国務大臣 それは、あくまで民間金融機関の経営者の御判断されることだ、私からコメントすることは差し控えさせていただきたい、こう思っております。

網屋委員 非常に大事な御発言で、要するに、これについては、各金融機関は独自の判断で千億以上のお金を財務内容がどうなるかわからない企業にも貸し出したという事実がここで出ました。

 それともう一つ、今回の原子力賠償支援スキームの中で、官房長官が金融機関に債務の減免をするような、要するに、ステークホルダーの中で債務をちょっと、やはりそういうものも協力してもらえないかというような御発言を記者会見でやられています。これについて金融庁としてどういうふうにお考えなのか。

 つまり、債務の減免をするということは、いわゆる正常先ではなくなるということですよね。ということは、つまり、金融機関は一定の割合の引き当てをしなきゃいけない。これは東電だけで八十数行お金を出しているわけで、そういった場合に、金融市場の混乱とかいろいろ考えられ得るんですが、金融庁はこれに対してどうお考えなのかというのが、時間も来ていますので、私の最後の質問なんですが。

自見国務大臣 政府支援の枠組みの法定に先立ちまして、関係閣僚で、東京電力がすべてのステークホルダーに協力を求め、とりわけ金融機関から得られる協力の状況について、その結果を政府に報告を行うということを確認しておりまして、その内容の法律案となっております。

 政府といたしましては、さっきから私が述べさせていただいた基本的な考えを踏まえて、やはり東京電力及び東京電力のすべてのステークホルダーが、それぞれの民間の立場で必要な協力について判断するものと考えております。

網屋委員 ということは、政府が要請するのではなくて、民間のステークホルダーが独自の考え方で債務減免なり金利の減免をすることであって、それに対して政府が正式な要請をするものではない。そうすると、実は官房長官がおっしゃっている内容とちょっとそごが出るかなという気もいたしますが。

 ここは大事なところでございますので、金融庁としても、マーケットの状況をよく見ていただいて、金融機関に大きな影響が出て、特に、さっき言いましたように電力会社のファイナンスというのは大きいですから、毎年何兆円というお金ですから、これが滞ったら物すごく大きな影響があるということをぜひとも御考慮いただいて、御指導いただけるようにお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、今津寛君。

今津委員 おはようございます。自由民主党の今津寛です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 先般、ある新聞を見ていましたら、テレビのCMを少しもじりまして、人の心は見えないけれども下心はわかる、人の思いはわからないけれども思惑はわかるというようなことが書いてありまして、これは特定の人のことを指すのだろうなというふうに思いましたけれども、よく考えてみたら、与野党問わず、今の政治全体に言えることではないかというふうに私は思うんです。

 自由民主党の支持率が上がってきませんよね。我々なりにきちっと整理をして国会対策に当たっていますが、とかく、やはり自民党も反対のための反対をしていて、震災の復興よりも政局ではないかというように国民に思われている、そういう節がある、それが支持率の向上につながっていかないということを自責しているところであります。

 本日の新聞なんですが、経団連の会長が菅直人首相について、おやめにならなければ日本没落だと書かれているんです。これは大臣お読みになったというふうに思うんですが、先ほど私が言ったことも含めて、ちょっと御感想をお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 経団連の会長のコメントで菅総理に対する評価については、私は菅内閣の一員でございますのでコメントは避けさせていただきたいと思いますし、菅内閣の一員としてその職責を果たしていきたいというふうに思います。

 ただ、全体の政治状況において、今津先生御指摘のとおり、改めなければいけないのは、やはり思惑よりも思い、下心よりも真心、邪念よりもまさに理念、そういう政治がお互いに求められているというふうに思います。

今津委員 あの記事の中に、経団連の会長が非常に、今までにない、かつてない厳しい発言をしている根拠として、背景には、経済界の考えと異なる政策の乱発、会員企業の不満が非常に強まっている事情があるのではないかと。温室効果ガスの二五%削減、太陽光パネルの一千万戸の設置などを先走って表明する一方、経済界が求めている環太平洋戦略的経済連携協定、TPP、実はこれは私は大反対で、何としても阻止をしなければならぬということで、ここは見解が違います。この交渉参加判断や法人税五%減税は先が見えないというふうに、経団連の存在意義にもかかわる、こういう危機感が厳しい発言になったのではないかということを書かれているんですが、これについてどういうふうに思われますか。

野田国務大臣 さまざまな団体がこの世の中どうしたらいいという提言を出されるということは当然のことだと思います。ただ、そういう団体の意にすべて沿う政治ができるかというと、これはやはり国民全体のことを考えて、いろいろなお立場からの御意見があるわけでございますので、法人税についても、あるいはTPPについても、いろいろと党内にもそれぞれ意見があるかと思います。

 ただ、法人税については、先ほども議論のありましたとおり、この二十三年度の税法の中で本当は位置づけておりました。残念ながらまだこれは先送りという状況でございますけれども、税制改革のまさに抜本改革の一翼をなす大事なテーマだと思いますので、何とか結論を出すように努力をさせていただきたいというふうに思います。

今津委員 ぜひ経済界と連携を密にして、懇談を深められて、政策の整合性あるいは実行、どうぞ、期待をしているところであります。

 一次補正は四兆円、二次補正をできるだけ早くというような待望感、被災地でも、私は五日ばかり、何回か分けて入っているんですが、とにかく早く二次補正、こういう声が強いんですが、二次補正はいつごろ出される予定ですか。

野田国務大臣 きのう総理から閣僚懇談会で御指示がございました。その上でまた夕方、官邸でいろいろと基本方針を詰めさせていただきましたけれども、六月中に二次補正の骨子をまとめさせていただき、七月中のなるべく早い段階に提出できるように努めていきたいというふうに考えております。

今津委員 きょう朝のテレビを見ていましたら、ニュースを見ていましたら、御党の参議院幹事長が、自民党も今の総理のもとでは、復興基本法については協力するけれども、あとは一切、問責決議の提出の時期を含めて非常に厳しい国会運営になる、やめる人がそういう議案を提出しても通りっこないと、御党の参議院幹事長がテレビで堂々と言っているわけですね。平田さんですよ、平田幹事長ですよ。私、きょう見ましたよ。それから、自民党は今言ったような姿勢でいるわけですよね。

 そこのところを整理して、もう一度お伺いしますが、二次補正はいつ出すのでしょうか。

野田国務大臣 本格的な復興のための補正予算というのは、明確に復興の青写真等ができてからだと思うんです。

 今回つくろうという二回目の補正予算というのは、まさに第一次補正予算、今しっかりと着実に執行していこうと思っておりますが、その中でも足らざる部分で、しかも緊急性のあるもの、そういう整理の中で、限定的に事業を絞った中で、限られた財源でありますけれども補正予算を組んでいこうということ。

 例えば、これは各党でいろいろともう御提案が出てまいりましたが、二重ローンの問題等、どういう政権だろうが、だれが総理だろうが、これは間違いなく急がなければいけないものだと思います。そういうものをピックアップして二次補正として、これはさっき申し上げたとおり、時期は七月のなるべく早い段階に国会提出、そういう順番でいきたいというふうに考えております。

今津委員 きょう各紙に出ております補正予算についての記事、大臣も副大臣もお読みだというふうに思いますが、中身については、今大臣も大まかなところをおっしゃいましたけれども、大体新聞に出ているような内容で今考えているということでよろしいんですか。

野田国務大臣 昨日の総理指示、これはきちっと明確に言わなければいけないと思いますけれども、当面の復旧対策に万全を期すため、原子力損害賠償法及び原子力賠償機構法案関係経費、今私が申し上げたとおり二重ローン問題対策及び被災者生活再建支援、これは、今百万円をお配りしていますが、加算部分の二百万円がまだないものですから、それを予算化するというような緊急を要するもの、それから東日本大震災復旧復興予備費の創設、地方が自由に活用できる財源としての交付税の増額、こうした内容のもので、財源は国債に依存せず、二十二年度決算剰余金等の既存の財源により賄うこと、こういう方針を出していただいております。

今津委員 これは、しかし、野田大臣からは今まで、このような時期、内容を含めて具体的なお話は一度もなかったですよね。

 浜岡原発のときも、経済産業大臣が全く知らなかった。今回の補正予算も、まことに、現下の政治状況の中で、国民から見れば、私どもから見ても、この補正予算が総理の延命の一つの材料に使われているのではないか、そういう疑惑を持たれる。しかも唐突に出てくるということについては、極めて遺憾だというふうに思います。

 ところで、第一次補正予算等が通るときに、三党の合意がありますね。民主党、自民党、公明党の政策調査会長の確認書があるのですけれども、第一次補正予算等に関してというその合意、それから、民主党から自公、私たちに提案をされた平成二十三年度第二次補正予算に向けての考え方、この三党合意の基本となっている解説書みたいなものなんですけれども、これと、今大臣が御説明になられた中身とは全く違いますね。

 例えば、子ども手当の制度的なあり方や高速道路料金割引制度を初めとする歳出の見直し及び法人税減税等を含む平成二十三年度税制改正法の取り扱いについて、各党で早急に検討を進める、また、平成二十三年度第一次補正予算における財源措置として活用した年金臨時財源、二・五兆円ですね、これについては、平成二十三年度の第二次補正予算の編成の際にその見直しも含め検討を行う、そして二番目に、既存歳出の削減、こういうことを明示されているんですが、この第二次補正予算に向けての考え方、この御党が出されたものと今度の中身とは全く違うのではないですか。

野田国務大臣 三党合意は、自民党さん、公明党さん、そして私ども民主党、三党の政策責任者によって覚書を交わした合意でございますので、これは大変重たいものだと受けとめております。それとこれからつくる二次補正、これは整合的でなくてはいけないと考えております。

 財源の話は、たまたま今、決算剰余金を申し上げましたが、既存予算の見直しは、マニフェスト事項も含めて、どこまで出せるかという努力はやらせていただきたいというふうに思いますし、本格的な復興予算のときにそれを生かすのか、この二次に生かすのかを含めて、これは党内でも調整をしていただいているというところでございますので、三党合意を重く受けとめながらの対応と御理解をいただきたいというふうに思います。

今津委員 それはやはり違うと思うんですよ。第一次補正予算を通すときに三党で合意した内容になっていないわけだから、これは約束違反でしょう。それから、国民に対しても説明がつかないと私は思いますね。

 一体、この合意というのは何だったのかという率直な疑問があるんですね。しかも、その中の既存歳出の削減ということについては全く、今回、大臣のお話の中には含まれていませんね。これは全く三党合意とは異なるものではないですか。

野田国務大臣 先ほど財源で申し上げたのは、新たに国債を発行しないということで、一つの考え方で決算剰余金等があるということです。

 その上で、既存の予算の見直しというのは当然やっていくということが前提になっております。

今津委員 二次補正の中の財源として、復興のための復興債、しかし、既存歳出の削減というのをはっきりうたっている。そこのところが与野党で全然調整されていないし、予算の中に入ってきていない。これはやはり違うんじゃないですか。

野田国務大臣 既存歳出の削減でも、例えば公務員の人件費をどうするか、法律にかかわる問題もあります。加えて、今マニフェストの事項で見直しているものがあります。それが間に合うかどうかというのもありますが、作業はやっていますので、御指摘のことを全く無視しているということではございません。

今津委員 通告になかったことを聞いたんですが、非常に大事なことなので、急遽聞かせていただきました。全く納得できないと。

 それから、我が党は明快に国民の前に、基本法だけは協力をする、菅さんのもとではほかの審議には一切応じない、こういうことを明言しておりますから、ぜひそういうことを勘案の上、国会対策あるいは補正予算等、一体何が国民のためになるかということを総合的な考えの中でお進めいただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、ちょっと時間が半分ぐらいになりましたので、財政再建についてお伺いをしたいというふうに思います。

 国、地方を合わせてかなりの借金になってきていて、財政再建はどうしても、どの内閣においても取り組まなければならない緊急課題だというふうに思うのですが、この財政再建について、今、国、地方を合わせてどれぐらいの国債、借金があるのか、それをどのように解消していこうと思っておられるのか、お聞きをしたいと思います。

野田国務大臣 まず、御質問の最初の長期債務残高でありますが、これは、国と地方を合わせまして平成二十三年度末で八百九十二兆円、対GDP比でいいますと約一八四%を見込んでおります。これは主要先進国の中では残念ながら最悪の水準になりますので、どの内閣もこの財政健全化というのは避けて通れない、そういう大事なテーマだというふうに思います。

 その上で、どのように対応していくかでありますが、昨年の六月に財政運営戦略を閣議決定させていただき、加えて、これはG7やG20でも日本の取り組みとして御説明をし、ある種、国際公約になっています。

 その考え方は、二〇一五年度までに、プライマリーバランス、基礎的財政収支を、対GDP比で赤字を半分にしていく、二〇二〇年度からプライマリーバランスを対GDP比で黒字化して、二〇二一年度からその債務残高が安定的に縮減をしていくということが基本的なシナリオというか、財政運営戦略です。

 そのために、三年ごとに中期財政フレームをつくって対応していって、その中期財政フレームについては、毎年、年央、年の半ばに、きちっと目標達成できるようにローリングをしながら見直しをしていく、そういうやり方で対応していこうというところでございます。

今津委員 国債残高が六百六十八兆円で、国民一人当たり五百二十四万円の借金。そして、利払い費と金利の関係でありますが、本年度一般会計の利払い費は九・九兆円で、一日当たりで二百七十二億円、一時間当たりで約十一億円、一分当たりで千八百八十八万円ということであります。

 なぜこれだけ債務が多くなったかということなのですけれども、それについてはどのように思われますか。

 例えば、具体的にお聞きをしますと、一時、税収は六十兆を超える時期もありましたよね。今四十兆円ですか、ことしの予算で。昨年が三十六兆円か七兆円だったと思いますけれども、この二十兆円の差というのは私は非常に大きいと思います。

 これが、本来の税収があれば、消費税等の問題についてももう少し柔軟に考えられることになるというふうに思うんですが、税収がここまで落ち込んできた、これについては、どういう理由でこうなったというふうにお考えになっていますか、税収の問題。

野田国務大臣 今津委員御指摘のとおり、税収のピークは平成二年で、これは六十・一兆までいっています。これがピークです。その後、バブル後の景気低迷により五十兆円前後に推移をして、特に平成二十年度以降は、景気の低迷で四十兆円台。だから今は、六十兆から四十兆と、この約二十年で三分の二ぐらいに税収が落ち込んでいるということなんです。

 理由はいろいろあるかもしれませんけれども、一つには、平成二年度以降の税制改正において申し上げれば、例えば平成七年には所得税の税率構造の累進緩和を含む制度減税、平成十年度及び十一年度には法人税率の引き下げ、平成十六年度以降には地方への税源移譲など、累次の減税を含む制度改正も行っており、こうしたことも税収の減少につながっているだろうというふうに思います。

今津委員 大臣、それに加えて、私はあると思うんですよ。これはよく言われているところの円高、デフレ、株安、それに今回の震災も加わるんでしょうね。ある新聞なんか、マニフェスト不況なんてことも書いてありますよ。民主党のばらまき予算編成、新聞によってはそういう厳しい批判もしているんです。

 まず最初に、その中での円高の問題なんですけれども、時間がない関係で簡単に言いますと、各企業が採算を確保できる為替レートは全体平均で一ドル九十三円四十三銭だった。中小企業の集まりである日本商工会議所の岡村会頭は記者会見で、適正水準と我々が想定しているのは一ドル九十五円というレベルだというふうに言っていますね。

 その九十五円、今八十円ちょっとでしょうか、十五円の大きな開きがあって、これは輸出産業、生産と雇用を外に出しているという原因に私は大きくなっていると思いますが、これについて、どうやって円高対策をやられるおつもりでしょうか。

野田国務大臣 基本的には、為替というのはそれぞれの国の経済のファンダメンタルズが適切に反映されることが望ましいというふうに思います。その上で、無秩序な動きがあったり過度な変動があったときには、これは断固たる措置という形で、私自身も昨年の九月に単独介入、ことしの三月十八日に協調介入させていただいておりますけれども、やむを得ない措置はやってまいりました。引き続きマーケットの動向を注視していきたいというふうに思います。

今津委員 経済界の人はこれぐらいが適正だということは言えるんでしょうけれども、大臣のお立場ではなかなか言えないというふうに思うんですが、しかし、円高はやはり日本の経済、景気に非常に大きな影響を及ぼしている、こういう認識でよろしいんでしょうか。

野田国務大臣 水準の話はいろいろ影響がありますから、委員が御理解をいただいたとおり、これは私から言えませんけれども、まさに円高、これは両面あると思います。

 輸入価格の低下によって企業収益の増加要因となり、国内投資家、消費者の購買力の増加につながる等のメリットも、もちろん、なくはありません。一方で、外需の減少とか、設備投資や雇用の停滞、さらには、委員御指摘のあった海外への企業の移転等々、それぞれいろいろな影響があると思います。そこをよく勘案しながら、きちっとした対策を講じていかなければいけないと思います。

今津委員 あわせて、デフレの問題ですよね。

 国家公務員の給料を下げますよね。自衛隊の方は、時期的には少し遅くするという判断であったようですけれども。我々はそれにも反対しているんですけれどもね。

 給料を下げる、人を減らすという政策はどうなんでしょうかね。当然、購買力が減りますよね。お金を使わなくなりますよね。デフレにつながっていきませんか。だれであったとしても、例えば国家公務員から地方公務員、我々議会も、お金を減らせ、電気もともすなということになって、景気が上向くわけはありませんよね。ことしの一から三までですか、これも過去最悪の状況ですよね。

 このデフレについては、どういうふうにお考えになりますでしょうか。

野田国務大臣 国家公務員の給与については、これは五月十三日の閣議におきまして、総理から、我が国は厳しい財政事情にある、特に今般の東日本大震災への対処を考えれば、さらなる歳出削減は不可欠であり、国家公務員の人件費についても例外ではないとして、引き下げの方針が示されまして、これを受け、国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案を六月三日に国会に提出したところであります。

 一般論で言えば、公務員の給与を引き下げる、あるいは、一次補正の財源とさせていただきましたけれども、国会議員の歳費も下げました。こういう取り組みは、もちろん所得が下がるわけですから、おのずとそれは個人消費が減少する一つの要因ではあると思います。そういう御懸念は当然のことながらあると思いますけれども、こういう公的セクターにかかわる人たちが身を切る努力をしながら震災のために生きたお金を使っていこう、そういう思いでやるということでございますので、むしろそれをプラスに転化していかなければいけないのではないかなというふうに思います。

今津委員 去年かおととしに、僕は新聞で見た経験があるんですけれども、G20の中でデフレと言える状態というのは日本の国だけだ、こう書かれてあったのを覚えているんです。今、何年かたったんですけれども、日本だけだという状態はまだ続いているのかどうか。

 それから、需要と供給のギャップですね。これは、一時三十五兆円ぐらいあったと思うんですけれども、今はどれぐらいになっているんでしょうか。ふえているんでしょうか、減っているんでしょうか。

野田国務大臣 まず、前段の御指摘でありますけれども、デフレの定義は、必ずしも国際的には統一された基準などがありませんけれども、例えば国際決済銀行、BISによるデフレの定義は、デフレーションは、消費者物価指数が少なくとも二年間下落する状態として定義される。いろいろありますが、G20の中でいろいろ見ていく中で、例えば二〇一〇年の消費者物価上昇率がマイナスになった国は、G20においては日本以外にはないというのが事実でございます。

 それから、需給ギャップの話がございました。これは、たしか今、約二十兆円だったというふうに思います。

今津委員 原子力安全・保安院は来ていますか、来ていませんか。経産省は来ていますか。来ていない。それじゃ、いいですけれども。

 例えば、今回の節電対策なんです。私は異論があるんですね。これは、大口需要も小口需要も家庭も、一律一五%ですね、節電。そうですね。

 私は、先ほどから言っていた状態からいえば、大口に対しては、いわゆる人が働いたり、それから物を生産するとか、そういうところにおいてはできるだけ電力をカットしない、そのかわり、家庭とか事務所とかそういうところはできるだけ節電をするように努力をする、こういうふうに、やはり景気対策、それから雇用、これを確保するということは、その方がいいというふうに思うんですが、どうでしょうか。

野田国務大臣 経産省がいれば、そちらからお答えがあればと思ったんですが。

 電力不足が日本の震災後の中の経済の落ち込みの一つの原因になっていることは、これは間違いございません。それを乗り越えていくために、しっかりと対応する中で、今、一五%のお話が出てまいりました。その中でも日本の経済が力強く回復するためには、やはり生産活動が旺盛になっていくということ、それは当然雇用にもつながるわけでございますので、そこには十分いろいろな配慮はあってしかるべきだということは、委員の御指摘のとおりではないかと思います。

今津委員 先ほど円高の問題、それから、質問しませんでしたけれども法人税等の問題もあって、このごろ海外へ生産の拠点を移す企業がある。さらに加えて、電力が十分に使えないという状態の中で、また海外に生産を移していくという動きがさらに加速するのではないかという心配をするわけですね。

 例えば、ルネサスエレクトロニクス、米国や台湾企業への生産委託量を拡大する、信越化学工業、シリコンウエハー生産を国内外に分散検討、リコー、高精彩な印刷ができる何とかかんとかと、こういうことなんですけれども、やはりできるだけ景気回復、まずは景気だということを考えれば、生産を弱めるようなことは政策的に私はまずいというふうに思うんですが、どうでしょうか。

野田国務大臣 基本的には議員の御指摘のとおりだと思います。その意味では、法人実効税率の引き下げを含む税制、先送りしている部分がございますが、この御議論でもぜひ結論を得たいと思いますし、特に、震災、被災をしている地域においては、特区制度なんかを利用しながらむしろ生産活動が旺盛になるような、そういう仕掛けというのもあるのではないかと思いますので、そういう知恵をこれから出していきたいというふうに思います。

今津委員 終わります。

石田委員長 次に、齋藤健君。

齋藤(健)委員 おはようございます。自由民主党の齋藤健でございます。

 生まれて初めて財務金融委員会で質問をさせていただきます。これから委員として何度か質問に立つこともあろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私は、当選以来これまで、いろいろな委員会で質問させていただいておりますけれども、どの委員会でも心がけてきたことでありますけれども、揚げ足をとるような質問は一切いたしませんし、常に正論の直球しか質問をしない、そう心がけておりますので、答弁の方も、簡潔に、直球でお願いできたらと思っております。

 本日は、まず、今提案されております法案に関連しまして少し質問をさせていただき、後半は、原子力事故の救済、補償制度につきまして、本日は時間も限られておりますので、財政出動のあり方、そういう観点に絞りまして、基本的なことを野田大臣にお聞きできたらと思っております。

 その前に、一言だけ野田大臣にお伺いしたいんですが、先日、国会で菅総理が野田大臣についてコメントを求められまして、民主党には有為な人材がたくさんいて、その中の一人である、そういう趣旨の発言を総理がされておりましたが、野田大臣は、菅総理の人柄、人物についてどうお考えになっているでしょうか。

野田国務大臣 私が初めて菅総理の存在を知ったというのが、たしか学生時代から社会に出る前後、「市民ゲリラ国会に挑む」という本がありました。御自身が国会議員を目指してのいろいろな活動が書いてある。あの当時は、まだまだやはりいろいろ基盤のある方が政治家になるという、政界へのリクルートが固定化されているときに、無名の若い人がこういうやり方で国政を変えようという意欲を持ち、そしてそれが実現できるということに対して大変注目をいたしましたし、それ以後も、菅総理の歩みは私なりにずっと着目をしてまいりました。

 これまでの歩みの実績等は委員も御案内のとおりでございます。その意味では、歴代の総理とは、今までとは違う、別のタイプの、新しいタイプの総理大臣だと思います。その感性を存分に生かしていただければ大変ありがたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 未曾有のこの国難を乗り切る日本のリーダーとしてふさわしいとお思いになられるでしょうか。

野田国務大臣 私は、個人としてのリーダーシップは持っていらっしゃると思います。むしろ、その周りのフォロワーシップもしっかりしなければいけないという自覚を持って対応していきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 無難な御答弁、ありがとうございました。

 次に、法案につきまして質問をさせていただきますが、内容につきまして私は異論はありません。ただ、問題は、この経緯にあろうかと思います。

 まず、経緯の一つ目の問題点は、歳入がはっきりしないまま三月の末に予算案が通るという非常に未曾有の出来事になったということ、これが一つ目の問題であります。

 二つ目は、百歩譲ってやむを得なかったとしても、三月末の時点で今回提案されているような措置を講じておくべきではなかったのかということが二つ目であります。

 そして三つ目は、今回も、六月末に暫定措置の期限が迫っているというのに、政府からの働きかけは極めて弱くて、むしろ、心配した野党の方が動いて事態打開を図ってきたということであります。

 政府の責任というものは、野党もなかなか一筋縄でいかないのは私もわかりますし、時には反対のための反対というのもあろうかと思いますが、それでも、忍びがたきを忍びながら、時には首をかけてでも歳入関連法案は国会を通していかねばならないというのが政府の使命ではないかと私は思います。

 過去、予算を通すため、あるいは税制改正をなし遂げるために、首を差し出した総理や大臣は何人もおられます。それが政権を担当する者の重い宿命だと思います。もっと言えば、それができないなら政権政党の資格はないと思います。

 それを今回は、野党の方から心配してもらって処理してもらっている。政権の宿命を背負った気迫が、今回、全く見えませんでした。実に情けないと思います。与党、野党ということではなくて、この愛する祖国の政府の姿として大変残念に思います。私が長く存じ上げている野田大臣らしくないなと思います。

 今回のこの税制改正の経緯について、反省されるべきことはないか、それとも、こんなものでいいんだ、そういうふうにお思いになっているのか、大臣の見解をお尋ねしたいと思います。

野田国務大臣 三月は一つの山、今回はまた各党のお知恵をいただいて、別法案という形で御審議をいただいております。それは心から感謝申し上げたいと思いますが、本来は、委員御指摘のとおり、予算の裏づけとなる歳入については、特例公債、そして税制、しっかり裏づけをあわせて御審議いただいて成立させるのが私の責任だったというふうに思います。したがって、それができていないということは、御批判は甘んじて受けなければならないというふうに思います。もし、私が首を差し出してそれが成るなら、私はそうしてもいいと思います。

 本当に、特例公債は全体の歳出の四割を占めています。これが通らないというのは本当にしんどいことです。税制については、こういう形、別法案という形で、若干先送りがありますけれども、引き続き丁寧な御説明をしながら御理解をしていただくということに尽きるかと思います。その責任を今は果たしていきたいと考えております。

齋藤(健)委員 今の御発言は重く受けとめさせていただきたいと思います。

 話はがらっとかわりますけれども、野田大臣は、副大臣時代から数えますと一年九カ月も財務省暮らしをされているわけでありますけれども、財務官僚の皆さんのよいところ、悪いところを、大臣はどのように認識しておられますでしょうか。

野田国務大臣 光り輝く山本先輩を中心に、与野党のOBの方がたくさんいらっしゃるので大変言いにくい部分もありますけれども、いいところは、税制改正でも、あるいは予算編成でも、その時期になると超過勤務が月三百時間を超えて、ふらふらになるまで仕事をしている姿というのは、まさに国のために一生懸命仕事をしているなということは、これはむしろ感動を持ってよく見る場面であります。

 悪いところというのは、今ちょっと組織のトップですからそんなことを言ったらいけないなと思いますが、まあ、これはよく言われることで、何でも財務省陰謀説というのがよく出てきます。やっていることもあるかもしれません。でも、やっていないことも、間違いなくやっていないことも含めて批判をされるという不徳のいたすところはあるなと、そこは気をつけなければいけないなというふうに思っています。

齋藤(健)委員 無難な御答弁、ありがとうございます。

 私が見るところ、財務官僚の皆さんのいいところは、一つは、予算とか税制を通じまして、各省、全省のことを万般把握されているということにあろうかと思います。したがいまして、どの省の案件につきましても、財務省に聞けばそれなりの対応策が返ってくるということだろうと思いますので、政治家にとりまして、こんなありがたい役所はないと思います。

 二つ目は、そのこととも関連してきますけれども、全省のことを把握しているわけでありますから、国全体をどうしていくかとか、そういう経綸、志を曲がりなりにも持っている職員が多いということでありまして、私の知人にもそういう方がたくさんいます。

 私は、この二点が、ほかの役所にない、財務官僚がすぐれた点ではないかと思いますが、一方で、その悪いところは、こういうことだと思います。

 いわば財政を預かる者のさがとしてと言ってもいいかもしれませんが、余りに財政がきついものですから、時としてではありますけれども、今国庫さえ助かるのであれば国民経済的には好ましくないこともやりかねない、そういう政策判断を、時としてではありますが、しがちであるということであります。

 私は、財務省相手の政治のあり方としては、その点にこそ、政治が政治主導でしっかりと是正していかねばならない政治の出番がある、そう考えております。

 私は、こういう考え方のもとでしっかりとした政治主導の国会にしていきたいというのが、この財務金融委員会での私のテーマとしていきたいと思っておりますが、きょうはまず手始めに、私が最近この財務官僚の皆さんの悪い傾向が出てきているなと思います東京電力による補償スキームについて、問題提起をさせていただきながら、質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、大臣にお伺いしますが、大臣は、今回の東京電力の福島の原発の事故によって負うべき責任というものについて、株主あるいは債権者と、国と、どちらの責任の方が重いとお考えになっていますでしょうか。

 当然のことながら株主責任というものもあると思いますが、ただ、東京電力の株を買った方々というのは、念のために申し上げますけれども、私は一株も買っておりませんので。国が安全だと言うから、そういうものとして株を買ったり、お金を貸したりしていたわけであります。国の言うことを信じたのが悪いんだ、だから責任をとれというのがないとは私は言いませんけれども、ただ、安全だと言って、結果として株主や債権者をだますことになった国と、いわば国の言うことを信じてだまされた形になってしまった株主や債権者と、どちらの責任の方が大きいと大臣は思われますでしょうか。

野田国務大臣 原子力損害賠償法、この法律に基づく解釈というと、事業者が責任集中の考え方のもとで一義的な賠償責任を負うということです。

 一方で、委員が御指摘のとおり、原子力事業者と共同して原子力政策を推進してきた国の責任というのは、これはもうまさに社会的責務として大きいものがあると思います。そのことと個人の株主等々との、これは比較の問題ではないと思います。株主を含めステークホルダーについては協力を求めていくということが大事だと思いますが、責任は、第一義的に賠償については事業者。そして、原子力政策を推し進めてきた政府としての責任は、そういう賠償が適切にできるように万全を期していく、そういう大きな責任を持って対応するというふうに理解をしています。

齋藤(健)委員 私が質問をしておりますのは、政府の方で株主責任ですとか貸し手責任だとかいう言葉を使われるものですから、それなら、その責任はどちらの方が大きいんだと。安全だと言ってきた方が責任が重いのか、それを信じてしまった方の責任が重いのか、そういうことを、皆さん方がそういう言葉を使われるから伺っているわけでありますが、これ以上お話を伺っても多分余り生産的ではないと思いますので。

 私の考えは、国の責任の方が大きいと思わざるを得ないと思います。国の言うことを信じた株主や債権者がばかだったというような日本社会の雰囲気にしては断じてならないと思うものですから、当然、国の責任の方が大きくなければならないと考えます。また、特に、我が党が原子力発電を推進してきたわけでありますので、この点は特にそう思うのかもしれませんが。

 そして、きのう、この原子力損害の賠償制度を定めた法案が閣議決定されましたが、この法案は、さまざまな重要な論点がある法案でありまして、国民的な議論が本当に必要な法案だと思います。

 そういう意味では、これからも恐らくさまざまな議論をこの委員会で深めていかねばならないわけでありますが、きょうは、国の責任あるいは財政的な責任という点について、財務省の皆さんの悪いところが出ているんじゃないか、そういう懸念を感じるので、少しだけ質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、現在の福島の事故におきまして、多大なる費用がかかってまいります。まず、原子力発電がとまりましたので、とまった分、石油ですとか石炭ですとかLNGですとか、化石燃料をまず調達して、それを燃料として電気を発電していかなくてはいけませんので、新たにその燃料の調達費用というものが、恐らく膨大なものが必要になってくるのではないかと思います。

 また、二つ目のコストは、今、福島第一原発の現場では本当に皆さんが必死で事故の拡大防止に努めておられると思いますけれども、この事故の収束を図るための費用ですね。最終的には廃炉にまで持っていかなくちゃいけないと思いますが、そのためには恐らく膨大な費用がかかってくるのではないかと思います。

 そして、三つ目に必要となる費用といたしましては、被害を受けられた方の補償、これも膨大な額になるのではないかと思います。

 この必要となる燃料の費用、それから事故の収束の費用、そして補償の費用、この三つの大きな費用がこれから必要になってくるわけであります。

 そこで、まず、これから議論を進める前提といたしまして、この余計に必要となる燃料費、あるいは事故の収束費用、あるいはこれから必要となる補償のための費用が、それぞれ大体で結構ですので、今見きわめるのは難しいというのは私もわかりますので、ただ、大体幾らぐらいかかるかというのがわからなければ制度の議論もなかなか進めにくいと思いますので、この点につきまして御見解を賜れればと思います。

中山大臣政務官 ただいまの御質問で、原発がとまればどのくらいの燃料がかかるか、これは大体、石油だとかLNGとかいろいろ入れまして、約七千億円ぐらいはかかるだろう、このように試算をいたしております。

 それからもう一つ、第一ステージ、第二ステージがありますが、収束に向かってですが、二十二年度の三月の決算当時試算したのは、四千二百六十二億円相当でございます。

 それから、最後の賠償額に関しては、まだどの範囲というか、賠償の範囲もまだ完全には決まっておりませんので、これから審査会でそういうところも詰めまして、賠償額については出てくるというふうに思います。ただ、一つは、国が責任を持つ、仮払いでも何でも早く払ってくれ、こういう要求は続けているところでございます。

齋藤(健)委員 今、中山政務官がお答えになった燃料の七千億円というのは、これは確認ですが、年間の費用でございますか。

 それからもう一つ、収束費用の四千二百六十二億円というのは、これは今後見通す、見積もりなんでしょうか。それとも、今回かかった費用なんでしょうか。その辺を御教示いただけたらと思います。

中山大臣政務官 一年間で約七千億円という費用がかかる、こういうことでございます。

 それから、冷却で、冷温停止をさせて、きょうの新聞発表等で、囲いを今までの建屋みたいにつくって放射能の飛散をできる限り防ぐ、こういうようなことも含めまして、概算だということだと思います。まだ、水の問題、台風等でまた水があふれてきてはいけないということで、今回建屋みたいなものを仮につくりましたけれども、いろいろな費用がかかってくることも当然あるというふうに思いまして、これはあくまでも概算としてとっていただきたいと思います。

齋藤(健)委員 補償費用が今の時点で見通せないというのはそうだと思いますが、補償金額が結局膨らんで、現状の東京電力の財務状況、体力では当然支払い切れない、逆立ちしても支払い切れないということも、当然あり得るということで理解してよろしいでしょうか。

加藤政府参考人 御説明いたします。

 今回閣議決定いたしました原子力損害賠償支援機構法案におきましては、機構は、必要がある場合には、事業者、この場合は東京電力になると思いますけれども、その経営合理化等を内容といたします特別事業計画を事業者と機構が共同して策定いたしまして、主務大臣の認定を受けます。その上で、政府が交付いたします国債を償還して、その事業者に援助を行うことができることになってございますので、その形で東京電力が賠償を行うという形になると思ってございます。

 以上でございます。

齋藤(健)委員 政府の支援策としては、さまざまなものがこの新制度のもとで用意されている、今交付国債の話もされましたが、用意されているわけでありますが、この法案の第六十五条以外は、この六十五条というのは、政府が、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、必要な資金を交付するというふうにされているのが第六十五条でありますが、この六十五条以外の政府の支援策といたしましては、交付国債によるにせよ、政府保証によるにせよ、すべて返済されるべき支援策というふうに考えてよろしゅうございますか。

加藤政府参考人 交付国債を交付いたしまして、それをその機構が償還いたしましたものにつきましては、同額まで国庫に返還されるということでございます。

 以上でございます。

齋藤(健)委員 ということは、六十五条以外はすべて返済されるべき支援というふうに考えていいということですね。

加藤政府参考人 そう考えていただいて結構だと思います。

齋藤(健)委員 返済をするということは、東京電力の収入から返済をするわけでありますので、電気料金で賄うしかないということになろうかと思います。つまり、今回の提案されている新制度は、補償の原資というものは電力料金で行えという基本的な発想に立つものであります。

 ところで、東京電力が、鼻血も出ないといいますか、もうこれ以上リストラもできないし、資金を吐き出すこともできないというところまで責任を果たして、賠償するということは当然でありまして、私はそこを言っているわけじゃありませんが、そういうことをしてもなお補償金額が大きくて支払えないという場合には、今、加藤審議官がおっしゃったように、一時的にお金を借りて後で電力料金で回収をするか、あるいは政府が出ていくか、支払い能力を超えた場合にはこの二つの方法しかないと思いますが、そういう理解でよろしゅうございますか。

加藤政府参考人 負担金と電力料金の関係につきまして御説明いたします。

 電力料金に関しましては、東京電力が今回のスキームにおきまして機構から特別な支援を受けた場合、これは賠償に関しまして特別な支援を受けた場合において、納めることとなります負担金、これを特別負担金と申してございますけれども、それにつきましては、まずは、おっしゃいましたような東京電力の経営の合理化、その事業収益によって賄うべきものでありますので、電気料金の原価として上乗せされることはないと考えてございます。

 また、機構をつくりまして、機構の運営に要する費用につきましては、原子力発電のコストということとして事業コストに含まれますので、電気料金に付加されることになりますけれども、まずは各社が経営効率化等の努力をなされて、極力電気料金の値上がりが抑えられるようになることを期待してございます。

齋藤(健)委員 私が申し上げているのは、そういうあらゆる努力をしてもなお足りないものについては、電気料金にはね返るか、あるいは国が支援をするか、その二つに一つしかない、それしかないということであります。その途中の経過を聞いているのではありません。すべてやった後でなお足りない場合には、料金か、国が出るかしか賠償する方法はないと思います。

 時間があればこの点についてやってもいいんですが、きょうは時間がないので、この点だけ申し上げて、質問を続けさせていただきます。

 そういう意味でいうと、今回提案された仕組みは、税金で結局財政出動して補償をする場合も、電気料金で補償原資を出す場合も、いずれも国民負担という点では変わらないわけであります。もちろん、東京電力やほかの電力会社の負担金も含めて、電力料金に反映できないぎりぎりの努力をして、なおかつ足りないものはその二つの方法でやるしかないわけで、そして今回の提案は、あくまでも電気料金でやれ、そういう仕組みになっているわけであります。

 その結果、そういう事態が起こった場合には、まずは東京電力の電力料金が上がるということになります。しかも、東京電力の電気料金だけが上がるということになるわけであります。同じ国民負担であるにもかかわらず、その国民経済に与える影響というものは異なるわけであります。電気料金に寄せ過ぎた対策をとった場合には、産業の空洞化といいますか、企業の電気コストというものが相当に膨らんでいくことになります。

 そうでなくても、私が心配しておりますのは、今の民主党政権の政策というものは、製造業への派遣は禁止しようとか、最低賃金は千円にしなさいとか、法人税は下げても五%だけだ、CO2は十五年間で三〇%削減をしろ、そして一ドルは八十円だ、この五重の苦しみで、企業は今、戦後最大の空洞化の危機にあると思います。これだけ重なりましたら、それでも国内でやり続けられる製造業というのが一体幾ら残るというのでしょうか。私は慄然とせざるを得ない思いであります。

 今や、素材産業までが海外へ出ていこうとしております。素材産業が一回海外へ出ますと、戻ってきません。なぜなら、素材産業はインフラまで整備をしてしまいますから、簡単にはもう戻ってこれません。トヨタの豊田社長や経団連会長が、何度も何度もこの大変深刻な産業空洞化の警鐘を鳴らしているではありませんか。

 今この瞬間、海外に雇用が流出する、戦後最大の危機を日本は迎えていると私は思います。この危機感が今の政権には極めて希薄だということを私は大変残念に思っております。野田財務大臣には、ぜひこの点についてセンシティブになっていただきたいと思います。

 このような事故が起こった場合、原子力事故が起こった場合、海外ではどうしているかといいますと、アメリカでは企業の賠償責任の上限を設けておりまして、それを超えれば国が出ます。ほとんどの国では企業の負担には上限を設けまして、国が前面に出ております。原子力先進国のフランスでも、イギリスでも、あるいは中国や韓国でも同じ仕組みになっております。

 国民の目から見ますと、同じ国民負担であるにもかかわらず、産業空洞化の危険、それを冒してまで、なぜそこまで電力料金だけに寄せていくことにこだわるのか。他国ではほとんど国が出ることを仕組みとしているのに、理解に苦しむところなんです。

 電力料金での負担と国庫での負担のあり方には、適切なバランスというものが私はあるのではないかと思います。国庫大事の余り、将来の税収を生む企業を海外へ押し出してしまうという結果になるのでは、まさに角を矯めて牛を殺すことになりかねないと私は大変危惧しております。

 私は、この点に、国民経済的な視点よりも、つまりは、国内の産業や雇用を守らなくちゃいけないという視点よりは、国庫を守ることを優先している財務官僚の皆さんの悪い点が出てきているのではないかと思えてならないわけであります。

 そこで、本件にかかわる財政出動のあり方の問題として大臣にお伺いしたいと思いますが、電気料金で支払おうと、財政出動で、最終的には税金で払おうと、同じ額を国民は負担しなくてはいけないのに、電気料金に寄せていった方が国民経済的にはいいんだという理由を教えていただけたらと思います。国庫が助かるということではなくて、国民経済的に見てその負担の方が適切なんだ、そういう理由を教えていただけたらと思います。

野田国務大臣 いずれにしても、これは国民負担になるわけです。その際に、今の法律の枠組みの中で、一義的にはまず責任は事業者にあって、さっき申し上げたように、原子力政策を進めてきた政府として、まさに、社会的な大きな責任を持ってその補償に万全を期していくという役割の中でつくっているスキームであるということです。

 その意味で、電気料金も上がれば、もちろんいろいろな影響があります。私自身が一番心配しているのは、今、委員、産業の空洞化のお話をされました。これは、東電にかかわることだけではないと思うんです。今、いろいろな知事さんからお電話をいただいてするのは、いわゆる点検をした、再稼働させるために知事がお墨つきを与えなければいけないけれども、きちっとした国の指針なり基準がないと進められない、むしろ背中を押してくれるようなことをしてほしい、そういう御指摘が多いんです。

 だから、東電の問題だけではなくて、この問題は、今、全国で電力不足が起こる懸念がある、その中でどういう対応をして、まさに産業の空洞化を防いでいくか、そういう大きな視点で対応していかなければならないというふうに思います。

齋藤(健)委員 一応御見解は承りましたが、ちょっとまだよく理解できないところがありますので、引き続きこの委員会で議論させていただきたいと思います。

 私は、国民経済的視点よりも、ややもすれば国庫を守ることを優先するということが時にあるという財務官僚の皆さんの思考の背景には、政治家は、歳出のときには熱心に議論するけれども、財源のことになると無責任だから、おれたちが何があっても国庫を守っていかなくてはならないという彼らなりの使命感があるのは、それは多としたいと私は思います。

 その点、政治家も反省しなければならないと思いますが、事この東京電力の補償の問題につきましては、国が原子力発電を安全だ安全だと言いながら強力に推進してきたわけでありますから、国の責任は極めて重いと思います。そして、産業空洞化を可能な限り阻止し、雇用を守るという視点も、国民経済的に見れば極めて重要な視点だと思いますので、ぜひ野田大臣には虚心坦懐にお考えをいただきたいと思います。

 きょうは、時間がなくてジャブ程度で終わってしまいましたが、今後、この委員会で、行政の姿勢を正す、あり得べき国会での議論というものを私なりに追求していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 終わります。

石田委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 前回は私、野田大臣を評価する発言をいたしましたけれども、きょうは、事前通告もしておりますけれども、いろいろ疑念をたださなければならない点がある、このように思っておりまして、まず最初にお伺いいたします。

 報道によりますと、脱税疑いの会社の社長さんから野田財務大臣が献金を受けていた可能性があるという報道が最近なされております。

 報道によりますと、財務大臣が代表を務める「政党支部「民主党千葉県第四区総支部」に平成十五、十七年の二年間で計五十万円の企業献金をしていたソフトウエア会社の男性社長が、税務当局の強制調査(査察)を受けていたことが十日、関係者への取材で分かった。社長側は約一億円を脱税した疑いがあり、税務当局は法人税法違反での告発も視野に入れているとみられる。」「関係者によると、社長は実質支配する関連会社を使い、取引先に社員寮の建設費を水増し発注するなどして数億円の所得を隠し、法人税約一億円を免れた疑いが持たれている。 水増し分の資金は還流させ、知人女性の生活費などに充当。社員寮は約十年前から次々と建設されており、同様の方法で継続的に資金を捻出していたとみられる。」

 また、別の報道でも、野田大臣の事務所は報道の取材に対して、強制調査を受けていることは取材を受けて初めて知り、びっくりしている、「野田氏はこの会社の社長と面識があり、年に二回ほど食事をするという。」

 こういう報道がなされているわけでありますが、このことは事実でしょうか、大臣。

野田国務大臣 一部の報道からそういう御指摘がございました。二〇〇三年二十万円、二〇〇五年三十万円。

 恐らくこれは、それぞれ選挙の年だったので、陣中見舞いとして私の総支部で受け取ったということで、過去の記録は今事務所にありませんが、恐らく報道は、蓄積が、データがあると思うので、御指摘は正しいと思いますし、私自身もそういう記憶はございます。

 また、社長と面識があって、年に二回ぐらい会食するということも事実でございますが、ただ、どういう内容で査察が入ったのかどうかとか、そういう経緯は全くわかりませんというのが事実関係でございます。

竹内委員 それでは、大臣としては、今後どのように対処をされるおつもりですか。

野田国務大臣 いただいた献金ですから善意のものと受けとめて、そして、だから政治資金の収支報告書に記載をして、適正に処理をしたということでございます。

 その上で、まだ何かの疑いの段階だとか、その事実関係は確認のしようがないものでありますから、まさに法令違反があったのかどうかというのも、まだ今継続中ということでございますので、推移を見守っていきたいというふうに思います。

竹内委員 野田大臣は、前回も私指摘したことがありまして、別の事案ですが、三月に別の巨額脱税事件で有罪判決を受けた男性の関係企業からの資金提供が発覚しておりまして、それについては事実を認めて返済された、こういうことでありますね。またこれで二回目で、二回目というか類似した事案が報道された、こういうことであります。

 ここからは、大臣が事実関係を精査するということでありますから、ぜひこれは精査をしていただきたいというふうに思います。今後、この査察によって告発された場合は、これは当委員会において報告をされる必要があるし、また、私も質問しておりますから、その後の対処についても、もしもそういうことになった場合には、きちんと報告をする必要があるというふうに私は思います。

 そういう意味で、財務大臣たるもの、やはり税金に関していささかの疑念も持たれてはいかぬというふうに思います。大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 御指摘のとおりであります。

 財務というこういう仕事をしている上で、やはり社会通念上問題になるようなことがあってはいけないなと。もちろん法令違反をやっているつもりは全くありませんけれども、社会通念として、疑義が出るようなことはあってはいけないという意味で、わきを締めていかなければいけないというふうに改めて思っております。

竹内委員 それでは、次に、質問の順番を変えまして、二重ローン問題について質問いたしたいと思います。

 我が公明党も、この二重ローン問題への対応策をまとめたところでございます。これで民自公の三党案がまとまっておりまして、簡単に、大きくかいつまんで言うと、私どもの認識ですが、民主党案は、既存の制度を使って被災者を救済していこうというふうにお見受けをしております。それから、自民党と公明党は、新設する債権買い取り機構などを通じて、中小企業のほか、農林水産事業者などの債権を幅広く買い取り、返済負担を軽減していこうというものであります。

 また、我が党は、リース債権も対象に考えているところであります。さらに、公明党案としては、二重ローンになる場合には、法人も個人も既往債務を十年程度支払いを猶予して、その間、利子補給をする基金を創設するという案も出しております。

 この三党の案につきまして、野田財務大臣、自見金融担当大臣から御見解を承りたいと思います。事前通告をいたしております。

野田国務大臣 二重ローン問題については、御党も含めて、自民党、そして我が党、それぞれ今考え方がまとまってきたということで、今その中身を参考にさせていただきながら検討させていただいているところであります。

 総理から、きのう、二次補正予算の御指示がございました。その中には、二重ローン問題への対策についても予算化をするということになっています。

 ということで、もともと政府内でも、金融庁や経産省や農水省、国土交通省等々、関係省庁と協議をしてまいりましたが、三つの党からの御提起を含めて、精力的に大詰めの検討を進めさせていただきながら予算の中に生かしていきたいというふうに考えております。

自見国務大臣 竹内議員にお答えをさせていただきます。

 いわゆる二重ローン問題、二重債務の問題でございますけれども、この委員会でも、またいろいろな委員会でも大きな問題になったわけでございますが、今回の民主党さん、それから自民党さん、また公明党さんも対応策を取りまとめられたということは、大変私は時宜を得たものだというふうに考えておりまして、竹内委員を初め、取りまとめられた委員の方の努力にも敬意を表したいと思っています。

 この問題は、私はたまたま民間金融機関を主に所掌しておりますが、これは非常に大きな問題でございますので、今、財務大臣から話がございましたように、官房を中心に、各省庁でよく連携して、しっかり物事の解決に当たるようにという総理から指示も出ておりますし、またそういった意味で、政府としても、各省の大臣と力を合わせて、政府全体の問題として検討をしてまいりたいというふうに思っておりまして、そのときに、当然、皆様方が本当に御努力してまとまりました各党の御意見も参考にさせていただきながら、よりよい、本当に被災地の方々の役に立つ、しっかりした法律、あるいは予算の裏づけを持ったものにしたい、そういうふうに思っております。

竹内委員 この対策の中でも、焦点は、買い取り機構をつくるのかつくらないのか、ここになると思うんですけれども、自公はやろうと言っている。もしこれをやるとしたら、大変お金もかかるわけでありますけれども、またその買い取り価格等の基準も含めて、これはなかなか論議を呼ぶところであります。

 我が公明党は、それとプラス、実は十年間の利子補給制度というのを提案しております。これは、今なかなか、二重ローンになった場合、支払いが難しい。現実に、住宅ローン債権が一兆円仮にあったとしても、十年物の住宅ローン金利は一・七%程度なんですよね。これを利子補給した場合、年間百七十億円だ、十年でも千七百億円の利子補給で済むわけでありまして、割合これは現実性があるんじゃないか。

 二重ローンで非常に苦しむ方々にとっては、これは負担の軽減になりますし、また財政当局としても割合現実性がある案だというふうに思っておりますが、野田財務大臣の見解を伺いたいと思います。

野田国務大臣 住宅ローンへどう対応するかというのは、とても大事な観点だと思うんです。その中で、まず一番最初にやらなきゃいけないのは、災害公営住宅への入居を推進して、新たなローンを重ねて借りずに、居住の安定の確保を図ることが重要だと思います。加えて、住宅を再築される方については、これは一次補正でも措置をさせていただいておりますけれども、住宅金融支援機構による新旧ローンの負担軽減措置を講ずるということも、これは対策として重要と位置づけて、今取り組んでいるところであります。

 その上で、利子補給についての御提起がございました。これは最終的には、自己資金で購入した住宅が全壊をした被災者と、住宅ローンで購入した住宅が全壊した被災者について、損害自体は同じ中で後者のみに財政資金を投入することについての公平性の観点からも、ちょっと議論を深めなければいけないのではないかなというふうに思います。

竹内委員 この公平性の議論というのは常にあるんですね。阪神・淡路のときは、新規のローンに対して利子補給をやっているんですね。ですから、今回の二重ローン対策をどう考えるかという意味で、やはり過去の歴史も踏まえて、そしてなおかつ、今回の大変な特殊性というものを考えた場合、このぐらいのことは当然やらないといけないんじゃないかなというふうに私どもは思っております。

 それから、二重ローンの三党協議がきょうから始まるんですね、やっと。先ほど、追加補正でこれを、まとまったものを盛り込むとおっしゃっていますが、七月上旬までにとてもまとまるかな。急がなければなりませんけれども、内容は相当対立をしておりまして、債権買い取り機構一つをめぐっても、これはなかなか、溝は埋めがたいところもある。

 債権買い取り機構をもしやるとなったら、債権は最低限一兆から二兆円もあるわけでありまして、とてもこの追加補正の財源では足りないんじゃないかなと思いますが、大臣としては、そういう、私が今指摘したような認識はありますでしょうか。

野田国務大臣 三党の真摯な御協議を見守りながら、なるべく早く結論を出していただいて、追加補正に間に合うようにお考えをいただければ大変ありがたいと思いますし、そのことを受けとめて対応していきたいというふうに思います。

竹内委員 被災者のためですから、できる限りのことはいたしますけれども、少なくとも、菅総理の延命のためにやるというのでは困るというふうには思っております。

 それから、次に、今回の税制改正二法案につきましては、基本的に同意をしておりますので、異論はありません。

 その上でお尋ねしたいのは、復興構想会議の第一次提言素案についてであります。特に、復興債の発行とその償還財源を確保するため、基幹税を中心に臨時増税を検討するとしている点でございまして、私どもといたしましては、増税での償還を原則にするのは反対であるということを明確に申し上げておきたいと思います。倫理の問題と経済の問題を混同しているのではないかというふうに思う次第であります。また、初めに増税ありきという財政当局の思惑がありありと見える。

 今回の大震災による経済の危機はいかなる性質のものであるか、その正確な認識が不可欠であるというふうに思っておりますが、まず、この点につきましては、経済のプロである内閣府に、どういう認識か、今回の大震災による経済危機の本質は何か、この点をお答えください。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の震災による経済危機の本質についてのお尋ねでございますが、そうした観点から今回の震災の特徴について申し上げますと、我が国の供給サイドに三つのショックを与えたことにあるというふうに考えております。

 三つのショックの一つ目は、地震、津波によって資本ストックに直接的な被害を与えたというショックでございます。それから二つ目は、サプライチェーンの寸断をもたらしたというショックでございます。東北地方の生産拠点が被災したことによりまして、重要な部品等の供給が滞ることになりました。それから三つ目は、原発事故に伴いまして電力供給の制約が顕在化したというショックでございます。これによりまして、例えば一時的に計画停電が導入されたというようなこともございました。

 これらの供給側へのショックによりまして、震災後、我が国の生産活動は大きく低下することになりました。これにマインドの悪化等の影響も加わったために、我が国の景気は、震災後、弱い動きを示すに至ったものというふうに考えております。

竹内委員 そうですよね。今回の危機は供給ショックですよね。特に電力ショックだというふうに思うんですね。サプライチェーン云々の話もありましたけれども、これはいずれ回復してくるわけですが、電力の場合は原子力問題もあって、これは世界的に非常に制約がかかる可能性がある、そういう意味では大変深刻に受けとめているわけであります。日銀総裁も先ごろそのような発言をされておられます。

 過去の供給ショックにはどのようなものがありましたか。戦後を挙げてください。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 供給ショックとしてはいろいろあるかと思いますが、代表的なものを挙げるとすれば、一つは、戦争によって大きな供給ショックがあったという戦後の問題、それからもう一つは、第一次石油ショックのときだというふうに思います。

竹内委員 それでは、戦後復興と石油ショックのときにどのような政策をとったのか、またその評価についてお答えください。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、戦後の復興期についてでございます。

 終戦直後に、我が国においては極めて大量の資本ストックが失われました。その結果、生産力が大幅に低下することになりました。いわゆる物不足に陥ったわけでございますが、そうした時期に、同時に、復員手当あるいは戦時補償などの支出が大幅に増加することになりました。この結果、我が国は終戦直後から急激なインフレに見舞われることになったわけでございます。

 こうした状況に対応するために、政府は、一九四六年以降、さまざまな対応策をとることになります。まず、需要面からは、不必要な預金引き出しを禁止する預金封鎖などを実施し、過剰購買力の抑制が図られました。それから、供給面からは、石炭や鉄鋼等に生産資源を集中するいわゆる傾斜生産方式、これが採用されまして、生産力の拡大に取り組んだわけでございます。さらに、一九四九年には、いわゆるドッジ・ラインに沿った超均衡予算の編成なども行われております。

 こうした努力の結果、終戦直後のインフレはようやく収束するに至ったというふうに承知をしております。

 それから、第一次石油ショックについてでございますが、第一次石油ショックにおきましては、原油価格がそれまでの四倍に引き上げられたということになりました。このとき既に、我が国におきましては、日本列島改造ブームなどがありまして、それを背景にしましてインフレ圧力が高まっておりました。その結果、第一次オイルショックを契機に、消費者物価が前年比で二〇%を超える上昇率を示すに至ったわけでございます。これがいわゆる狂乱物価と言われるような状況で、そうした状況を呈することになったということでございます。

 こうした状況に直面しまして、政府はこの時期を高度成長から安定成長への調整期というふうに位置づけまして、インフレ抑制のための措置として、例えば公共事業の抑制等を内容とする厳しい総需要抑制政策を実施いたしました。また、基礎物資、生活関連物資の価格抑制策、あるいは石油、電力の使用節減に関する行政指導等を行ったわけでございます。また、日本銀行におきましても、インフレ抑制のために公定歩合を九%まで引き上げるという措置を講じております。

 こうした対応策の結果、七四年には戦後初のマイナス成長を記録することになりましたけれども、物価の上昇は徐々に鎮静化に向かったというふうに理解をしております。

竹内委員 主な、戦後復興と第一次オイルショックの二つの供給ショックの話を聞いたんですが、きょうは時間の関係もありますのでオイルショックの話をまずしたいんですが、私なんかも子供のころでありました。よく覚えております。

 当時の自民党の田中角栄総理が、日本列島改造論、華々しいころでありましたから、そこにオイルショックがぶつかった。いろいろ調べてみると、当時、田中角栄総理に任命されて大蔵大臣に就任されたのが福田赳夫先生であります。そのときの就任の条件は、日本列島改造論を捨てることを条件にしたというふうに言われております。編成途中だった七四年度予算の公共事業費などを中心に大幅に圧縮されて、今お話がありましたように、公定歩合も九%まで引き上げられた。また、当時、円高も許容して、輸入による供給拡大を実現した。こういう経緯であります。

 そこで、現在の日本でございますが、最近まで、御存じのように、日本は、需要不足から企業の投資はふえておりません。そのため、銀行の貸し出しは減少。そのかわりに、銀行がどんどん国債を買い続けた。おかげで、幾ら国債を増発しても順調に消化され、金利も低くとどまっておりました。

 しかしながら、今後、この巨大な復興資金需要が高まってくると、企業は一転して借り入れをふやす可能性があります。そうすると、金利が上昇してくる可能性が高い。金利上昇が始まると、住宅や投資の復興がおくれて、国債の消化にも重大な支障が生じるかもしれません。金利が上がると円高が進む。そうすると、今度は輸入物価が安くなって、電力不足による国内生産の制約を輸入で補うことができるようになる。つまり、円高は、輸出マイナス輸入、輸出引く輸入というものを減らすことで、復興需要と見合いの需要を抑制することになってくるわけでございます。

 一方で、先ほどから御指摘ありましたように、円高は日本の輸出産業にダメージを与えるので、強い嫌悪感が存在することも周知の事実であります。

 そこで、改めて整理すると、今回、恐らく復興のために投資がふえてくると思うんですね。これは間違いなく大きな需要がありますから、投資がふえる。しかし、今回の危機の特徴は、原子力発電を中心とした電力危機という供給制約がある。したがって、今回のように供給制約のもとで復興を進めようとすると、何らかの需要を抑制する必要が生じてくると思うわけであります。

 その方策としては、今申し上げたように、金利上昇、円高を許容するか、あるいは、第一次石油ショックのときのようにかなりの総需要抑制策をとるか。もちろん増税という手段も考えられます。

 今回の大震災の対応策としては、私は、まずやはり戦後のオイルショックを参考にして、需要を抑制する。そういう意味では、総予算を見直すしかないんじゃないかというふうに思うんですね。

 野田財務大臣の見解を承りたいと思います。

野田国務大臣 今般の震災による経済に対する影響は、先ほど来御答弁があったとおりだというふうに思いますが、その中で、政府としては、五月十七日でありますけれども、政策推進指針というものを閣議決定いたしました。大震災がもたらした制約を順次、確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう取り組むことが重要と考えておりまして、一次補正予算の速やかな執行等により、震災からの早期立ち直りを図っていきたいと思います。

 その上で、総需要を抑制するというお考えでございましたけれども、まずは震災対応に全力を挙げることを第一としながら、需要抑制というよりも、今は二十三年度の予算の執行に当たって公共事業そして施設費について五%を一つのめどとして執行を一たん留保する、そういう形で必要な事業を見きわめて対応しよう、今そういうスタンスであります。

竹内委員 やはり、いわゆる四Kと言われるものをまず見直す必要があるんじゃないか、ここをしっかりしないと次の段階に進まないと思うんですが、財務大臣、いかがですか、ここは。

野田国務大臣 余り四Kという言い方は私どもはしていないんですけれども、マニフェストの主要事項も含めて既存の政策を見直していくということは、震災の後はやはり大事だというふうに思っていますし、加えて、先般の三党合意にもこういう合意事項がございますので、きちっとした対応をしていかなければいけないというふうに考えています。

竹内委員 それから、金利上昇、円高、これはどうされますか。金利上昇、円高になっていますよね。自然な流れでありますが、これを容認するのかしないのか。ここはいかがですか。

野田国務大臣 まず、為替でありますけれども、余り水準について言及することは控えたいと思いますが、少しアメリカ経済に対する見方というものが影響をしているなという意味では、毎日マーケットの動向を注視していますけれども、そういう観点で今見ているところであります。

 金利についても、これは同様にしっかりと注視をしていきたいというふうに考えております。

竹内委員 それから、次に、いわゆる四Kと言われるもの以外も、私、再三申し上げてきているように、こういう非常時でありますから、地方の方々も、地方交付税交付金を満額下さいというのはいかがなものか、やはり多少は地方の皆さんにもここは御辛抱いただくような場面があってもいいんじゃないかというふうに思うんですが、財務大臣、いかがですか。

野田国務大臣 国と地方の協議の場であるとかいろいろな場面で、六団体の皆さんを含めて意見交換をさせていただいておりますけれども、委員の言うようなそういう後押しを言ってくれれば大変ありがたいなというふうに思います。

 地方交付税のみならず、あらゆる政策分野を聖域化することなく不断の見直しをするということが私は大事だというふうに思います。

竹内委員 大変な国難と言われているわけですから、相当、地方交付税だけじゃなくて、社会保障とか防衛費などもいろいろ考え直さないといけないときだと思うんですね。増税の前にまずやるべきことは、この辺、こういうときでありますから、時限的に、ことしだけは辛抱してくれとかいうことぐらいは、やはり総理がリーダーシップをとって言わないといけない。まあ、その総理が問題なんですけれども、このぐらいにしておきます。

 復興基本法案では復興債につきまして、「その他の公債と区分して管理するとともに、」と書いてあり、さらに「償還の道筋を明らかにする」としておりますが、これは何も増税を意味しているわけではないというふうに思うんですね。

 やはり復興債をつくって、復興整理基金なるものをつくったらいいと思うんですよ。そして、きちっと一・六%の割合で積み立てていけばちゃんと六十年で返せる。仮に十兆円ぐらい復興債を出したとしても、毎年の積立金というのはわずかですよね。初年度、私の計算では千七百億ぐらいで済むと思いますけれども、復興基本法案のこれらの文言につきまして、大臣はどのように認識していますか。

野田国務大臣 基本法案の八条、九条で、区分管理とそして透明化ということについて、これは各党が完全に一致して規定をしたというふうに聞いております。ということは、それを踏まえて対応するというのが私どもの役割だろうというふうに思います。

竹内委員 各党ここは一致して書いたんですが、思惑は全然違っていまして、我が党は別に増税を意味しているわけではないんですね。きちっと管理せよということでありまして、やるべきことはいっぱいあるということを申し上げておきたいと思います。

 また、復興債は、私、全部国債で賄う必要もないと思うんですね。前から申し上げているように、そしてまた、けさの日経新聞にも茨城県のレベニュー債発行の記事が載っております。産廃の処理施設、売上高、年間三十億円ぐらいあるんですけれども、これを地方の第三セクターが、SPC法を使ってレベニュー債を発行して、民間資金で全部やっていく、そして三十四年で収益を得ながら返済していく、こういう記事がきちっと載っております。

 前回質問したとき、大臣は研究するというふうにおっしゃっていましたけれども、その後の研究、検討はどのようになりましたか。

野田国務大臣 きょうの茨城の報道はちょっとわかりませんでしたので、私も調べてみたいと思いますが、青森でもそんな、検討するというのがあったというふうに思います。それがどうなっているかも含めて、その各地の動き等も踏まえていきたいと思いますが、いわゆる民間資金を活用していくという発想は大事な観点だというふうに思います。

竹内委員 ここは大事なことなので、私、国土交通省にも言っておるんですけれども、要するに、これは地方政府が保証しないんですよ。だから地方債の範疇に入らないんですよね、このレベニュー債というのは。もしも国がやる場合は、国が保証する必要はないんですよ、事業収益で返していくんだから。これはアメリカでは結構やっているんですよ。ですから、これまでのように、すべて何か国債や地方債で丸抱えでやっていかないといけないという発想は捨てた方がいい、PFIの一種ですけれども。

 そういう意味では、この復興に当たって財務省もこういうことを考えろと。今後の復興に当たっての、各省に対して、あるいは復興庁ができますけれども、その中でやはり新しい資金調達方法を考えるべきである。そうすれば、中長期的には財政再建につながってくる。

 増税をすぐに云々する前にそういうことが可能であると私は思うんですけれども、財務大臣、もう一度答弁をお願いします。

野田国務大臣 アメリカの実例等は、ある程度、資料としては少しは目を通させていただいております。その上で、日本で活用する場合に、発行コストの問題とか信用力の問題等々、引き続き検討させていただきたいというふうに思います。

竹内委員 これは日本で茨城県がやりますから、そんなに金利が高くないことも事実なんですね。せいぜい一・八ぐらいですか。まず、やはりこの辺を学ばないといけないと思いますね。そういう意味で、ぜひとも増税につきましては慎重に考えてほしい。

 増税は、確かに一気に総需要を抑制する力がありますけれども、強い権力の行使でありますから、一度始めたらなかなかやめられない。また、消費税は、あくまでも社会保障等の一体改革の中で進めるべきものであると考えております。

 今回、消費税は被災者にもひとしくかかるという問題がありますし、また、東北地方だけを免税にもできませんし、還付も困難であります。他方、法人増税は、世界と勝負する企業の活力をそぎますし、所得増税は、金持ちから取るべきだという倫理上の要請が強過ぎると思うんですね。しかも、そこからの税収はたかが知れておるわけであります。

 そういう意味では、総合的によくよく考えて今回の復興財源を調達してくる。今回指摘させていただきましたさまざまな方法を、ぜひともよく御検討いただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案された法案の中には、賛成できるものも含まれておりますし、賛成できないものも含まれております。

 例えば、賛成できるものとしては、中小企業の法人税引き下げ、漁業、農業で利用するA重油の石油石炭税の免税措置、雇用促進税制、NPO税制、こういうものは賛成できると思っておりますが、しかし、どうしても賛成できないのが含まれておりまして、詳しくは後で討論で触れますけれども、その一つに、証券優遇税制の再延長、これが入っていることであります。

 株式の譲渡益、配当益に対して二〇%の税率で課税すべきところを、特別措置として一〇%に下げているわけであります。本来なら、この優遇措置というのはことしの十二月で期限切れになるものでありますが、それをさらに二年間延長する、こういうことでありまして、これは我々から見ると賛成できない大変大きな問題であります。

 もともと政府税調では、十二月末で一〇%の軽減税率を本則の二〇%に戻すという方向で議論が行われていたのではないかと思いますが、野田大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 佐々木委員御指摘の上場株式の配当、譲渡益等に係る軽減税率については、金融庁からの延長要望を踏まえて、昨年の税制調査会においてさまざまな議論が行われました。

 御指摘のとおり、公平性、金融商品間の中立性の観点から、二〇%、本則税率に戻すべきとの議論も行われたところでありますけれども、最終的には、自見大臣とも協議をさせていただく中で、景気回復に万全を期すため二年延長することとしたということでございます。

 なお、この本則税率化については、二十三年度税制改正大綱において、「経済金融情勢が急変しない限り、確実に実施すること」となっております。

佐々木(憲)委員 金融庁の要請だということで、自見大臣に聞きますけれども、大震災の被災者は依然として深刻な事態にあります。そういう中で、なぜこういう減税を続けるのか。これは金持ち優遇税制ではないのか。いかがですか。

自見国務大臣 今、財務大臣からも、最終的には財務大臣と私の間で話をさせていただいたわけでございますけれども、景気の維持、回復ということが大事だということを言われました。

 今、被災地との関係いかにという話でございますが、災害の復旧復興、被災者の再生支援は重要な課題でありますが、他方、現下の内外の厳しい経済金融情勢や今般の震災を受けての日本経済の状況、あるいはまた株式市場の動き等を踏まえると、景気の維持、回復、あるいは株式市場の活性化も私は極めて大事な政策課題だと思っております。

 以上を総合的に勘案すると、今般の震災による景気の腰折れを招かないためにも、証券の軽減税率については、期限切れを迎える平成二十三年末以降も継続をすることが、今の現下の状況を考えたら適当であるというふうに考えています。

 なお、参考までに申し上げますと、総務省の家計調査によれば、軽減税率導入後、株式、株式投資信託の保有額の伸び率が高いのは、高所得者ではなく中低所得者層となっていることなどから、今回の延長について、金持ち優遇という御指摘は当たらないのではないかなというふうに私は考えております。

佐々木(憲)委員 軽減税率導入後、株式と株式投資信託の保有額の伸びが高いのは中低所得者だ、そういう答弁が今ありました。

 しかし、中低所得者の保有額がふえたのは軽減税率があったからと言えるのか。例えば投資信託がふえたのは、銀行あるいはゆうちょ銀行の窓口販売が解禁された、こういう問題もある。インターネット取引がふえた、あるいはゼロ金利のもとで投資信託が選択される、いろいろな要因があるわけです。それを何か軽減税率のおかげだというのは、これは我田引水も甚だしいと言わざるを得ない。

 今回は、減税の対象から外す大口投資家の範囲を少し広げております。これも非常に微々たるものでありまして、これまで上場企業の発行済み株式の五%以上の大株主、それを三%以上というふうに広げて減税の対象外にしているわけですが、どれほどの効果があるかということです。

 具体的にお聞きしますけれども、上場企業の発行済み株式の五%以上を保有している大口株主は何人いるか、三%以上に変えると何人にふえるか、お答えいただきたい。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 直接、株式保有割合ごとの株主数というのをとらえるデータはございませんで、昨年の政府税調での議論の際に、私ども財務省の方から、会社四季報をベースに、配当のある会社分のサンプル調査に基づきまして推計を行いました数字をお出ししてございます。

 それによりますと、保有割合五%以上の人数は千四百九十八人、保有割合三%以上になりますと二千八百三十五人ということでございまして、五%から三%に引き下げることによりまして千三百三十七人増加するという試算を提示してございます。

佐々木(憲)委員 それでどれだけ効果があるかという点ですけれども、ここに、皆さんにお配りしてありますが、国税庁の資料で、申告納税者の所得税負担率の図があります。

 所得金額が一億円のところでピークになっておりまして二六・五%、それより所得がふえると急速に税負担率が低下しているわけです。十億円の所得の場合は二一・六%、百億円では一四・二%。その主な要因は証券優遇税制にあるわけです。

 今回、五%から三%のように変えましたが、今度の措置でこのカーブはどれほど変わるんでしょうか。

野田国務大臣 佐々木委員御指摘の申告所得税の負担率を示すカーブは、申告納税者について所得階級に応じた所得税負担率をあらわしたものでございますけれども、一定の所得水準から所得税が累進性を失っている、確かにこのグラフのとおりだと思いますが、その原因の一つとしては、分離課税としている金融所得に対して低い税率が適用されていることが考えられるというふうに思います。

 今回の措置によって、所得税の負担率を示すカーブがどのように影響を受けるかについては、個々の納税者が有する配当所得の分布であるとか、あるいは配当以外の所得をどの程度持っているかなどが明らかではないために、正確なところは不明ではありますけれども、一定の所得水準から所得税が累進性を失っているという状況の改善に資するものと考えています。

佐々木(憲)委員 改善に資するといっても極めて微々たるものでありまして、基本的傾向はほとんど変わらないんですよ。

 自見大臣は、株式を三世帯に一世帯、つまり千六百万世帯の方が持っている、こういう説明を国会でされましたね。いかにも多くの人が株式を保有しているかのように言いますけれども、千六百万世帯、これはどこから出てきた数字ですか。

自見国務大臣 三世帯に一世帯、千六百万世帯の方が株式を持っているという数字は、これは総務省あるいは証券保管振替機構、一般に保振と申しますけれども、それから東京証券取引所が公表するデータをもとにしまして、一定の仮定のもとに金融庁が算出したものでございます。また、ちょっと先に飛びますけれども、平均年収五百万未満の方が七割という数字も、これは日本証券業協会が全国の個人投資家を対象にして行った調査結果に基づくものでございます。

 いずれにいたしましても、既存のデータを可能な限り活用してできる限り実態を把握しようということでございまして、引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 千六百万世帯と言われますけれども、証券保管振替機構の統計情報によりますと、株主等通知用データ、これは件数なんですよ。そうじゃありませんか。

自見国務大臣 これはもう御存じのように、総務省のデータといえば、税金で成り立っている役所のデータでございますけれども、ほかのデータは、やはり民間のデータもいろいろありまして、これはいろいろな考え方、ですから、私は一定の仮定のもとにという話をさせていただいたわけでございまして、そういった意味で、正確に、何千何百何世帯という数字を見て、大体こんなところから、先生御存じのように、何分の一なのか、そういう大づかみの数字もまた、一般国民に対する御理解のためには私は政治家として必要だというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 それが余りにも乱暴過ぎて、でたらめな数字になっているわけです。

 証券保管振替機構の統計によると、ことし二月のデータで千六百四十二万六千二百九十九件なんです。東証の調査で、その九七%が個人投資家であると言われておりまして、そうしますと、約千六百万人ということになるわけです。

 世帯だったら、千六百万世帯だったら三世帯に一世帯という比率になりますけれども、千六百万人なんですから、人口は一億二千八百万人ですね、有権者の数だけでも一億人です。千六百万人だと、全体の中で一六%ということになるんじゃありませんか。

自見国務大臣 いろいろな御意見はしっかり、佐々木先生、拝聴させていただきますけれども、私も自然科学系の研究者をいたしておりました。そのときは、まさに数字といいますか、自然現象あるいは生物現象を統計上出すのは、これは極めて正確で、地球上で再現性がなければ、科学者として葬り去られることもしばしばあるわけでございますので、そういったときはしっかり、やはり出てきた数字の根拠あるいはそれが出てきたベースというのは非常に大事でございますが、私は政治家にならせていただいて二十六年、やはりこういったところ、一世帯で奥さんも御主人も株を買うという、それはそういう家庭もあるかもしれませんけれども、そこら辺は、大変いろいろなデータを組み合わせて、今先生言われましたように、千六百万世帯だというふうに表現をさせていただいたわけでございます。

 それが三千万だとか四千万だというんじゃなくて、大体三人に一人は株式を持っていますよ、思ったよりずっと、株式を持っている世帯というのは、やはり日本は一億総中産階級国家をつくろうと目指してきたわけでございますから、そういった意味で、そこら辺は御理解をいただければありがたいなというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 科学の世界では正確でなきゃならぬ、そうでなければその世界からほうり出される、政治の世界はいいかげんでいい、そういうことになるんですか。

 三世帯に一世帯というのは大体、三〇%を超えているわけですね。しかし、正確な数字からいうと一六%なんですよ、人口の中では。いかにも、数字が大きいものがいいことだということで適当にすりかえて、件数を世帯数にすりかえて、それで、株をたくさん持っているんだ、庶民が持っているんだということを言おうとする、これはもうでたらめだと言わざるを得ない。

 それから、平均年収五百万世帯の方が七割を占めていると。一体どこからとった統計ですか。

自見国務大臣 私の手元の資料だと、年収五百万未満の個人投資家、約七割ということでございますが、これの出典は、日本証券業協会、個人投資家の証券投資に関する意識調査報告書の結果だというふうに理解をいたしております。

佐々木(憲)委員 その調査が、回答者は九百九十二名、極めて分母が少ないんです。統計の質に私は問題があると思う。

 回答者の約半数、四六・五%なのですが、六十歳以上の高齢者、年金者になるということなんですが、そうじゃありませんか。

自見国務大臣 今初めて聞かせていただいたんですが、先生、サンプル数が千ということだったと思いますけれども、世の中の世論調査でも実は大体千ぐらいの抽出でございまして、私は生物統計をやっておりましたので、あそこは、ランダムネスといいまして、無作為性を確保することが非常に大事でございまして、非常に無作為であれば、一億人の中でランダムにとった千のサンプルでも、ある程度のことはわかるのでございます。

 私は、具体的に日本証券業協会がどういう調査をされたか、詳しいことは知りませんけれども、少なくとも千サンプルあれば、非常にランダムネスをきちっと確保すれば、ある程度のことは統計上、推計学上出てくるというふうに理解いたしております。

佐々木(憲)委員 まあ、でたらめな答弁と言わざるを得ない。大体回答する人は、時間のある人が回答する傾向があるわけでありまして、こういうことを何か根拠にして低所得者が株を持っているかのように言うのは、本当に私は問題のすりかえだと言わざるを得ない。

 一番問題なのは、富が偏在しているということなんですよ。株式の譲渡所得の表、これを見ていただきたいと思うんですが、次のページです。

 所得の低い六六・一%の方々は、手にしている譲渡所得は全体の六・一%なんですよ。ところが、わずか二・六%の人々が譲渡所得の七二・五%を占めているんです。百億円を超える譲渡所得を手にしている人は十人おります。一人平均百四十五億円、十人で全体の一四・八%を独占している。

 もちろん、このすべてが上場企業の株式とは限りませんし、対象外の大口の方も含まれているとは思います。しかし、富の偏在というのは非常にはっきりしているわけです。

 そこに減税してやるんですから、これは金持ち優遇税制と言われて当然じゃありませんか。

自見国務大臣 今、佐々木先生も御質問の中で説明しておられましたけれども、証券税制は、御存じのように、今さっき言いましたように、大口投資家は五%から三%に制限をさせていただきましたし、それから非上場株式による益は軽減税率を受けることはできませんから、そういった意味で、軽減税率が金持ち優遇税制には必ずしも当たらない、私は株式の面を通じてそういうふうに思っております。

 しかし同時に、私、政治家として申し上げれば、やはり世の中には自由と平等ということがあると思います。確かに、現実の世界には貧富の差というのがあるわけでございますが、私はやはり、自由と平等をどのようにバランスしていくかということが政治家の大変大事な仕事だなと思って、二十六年生きてきました。

 そういった中で、やはり自由にやりますと、能力のある人やチャンスのある人は非常に、確かに富を得ることができる傾向が強いんです。しかし、私が二十七年前に国会議員になったとき、超累進課税日本でございまして、九千万円以上所得のある人は、所得税が七〇%、地方税が一八%で、八八%、租税を取っておりまして、一億円ぐらい所得のある人は大体千二百万円しか手元に残らなかった、そういう時代もあったわけでございます。やはり、そういった意味で、累進課税というのをどうしていくのか。

 しかし、富の偏在が起こるから、全部強制的に平等にしなさいと私が言うと、今度はすさまじい権力の施行によって、言うなれば、ソビエト社会みたいにならざるを得ないことにもなるわけでございますから、そこら辺を、私は政治家として、やはり自由と平等をどこできちっとバランスをとっていくのかということをしっかり見ていくこと。

 それから、全体として、個人も社会も富をどうしてつくるかということ、分配も大事でございますけれども、分配と同時に、やはり国富をどうしてつくっていくかということも政治家としては大事だというふうに私は思っております。

佐々木(憲)委員 全くでたらめな答弁で、大体、平等じゃないと言っておるわけですよ、私は。富が偏在しているじゃないか、これは統計によってちゃんと証明されているわけだから。そういう大金持ちのところに減税がいくんですよ、集中して。それが証券優遇税制の延長なんですよ。何も、富を全部取り上げてどうこうなんということを一言も言っていない。そんな極端な議論をしているようでは、大臣として失格ですよ。

 大体、総合課税に戻すというのが一番必要なことだと思いますけれども、少なくとも、軽減税率の一〇%から、本則が二〇%なんですから、本則に戻せば、高額所得者のところで所得税負担率が二〇%以上に収れんしていくわけですね。本則二〇%の回復は、高額所得者の負担率が少しだけ上がる改正なんだけれども、今財政が厳しい中、この程度の財源調達機能の回復もできないようではどうにもならぬと私は思うわけです。

 そもそも、高額所得者も含めた軽減税率一〇%の優遇税制というのは、国際的に見ても異例なんです。海外での証券優遇税制について確認したいんですけれども、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、これと日本ですね。例えば上場株式の譲渡所得が一億円あった場合の税率は何%になるか、それを示していただきたい。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 委員が提示しておられる三枚目のデータ、二〇一〇年五月時点と書いてございますが、足元では、イギリスが一八の上に二八という税率ができております。それから、フランスが一八%から一九%に引き上げられておりまして、ドイツは、この二五%のほかに連帯付加税というのが乗っております。それから、フランスはさらに、個人所得課税で社会保障関連の税制がございますので、それも加味した上で、今の一億円についての試算をお話ししたいと思います。

 一年超保有した上場株式の売却によって譲渡益一億円を得た単身世帯で、他の所得がないという仮定で計算をさせていただいておりますけれども、税額と平均的な税負担率は、アメリカ、ニューヨーク州の場合は約二千六百四十四万円、二六・四四%。イギリスでは二千七百十二万円、二七・一%。フランスは三千百三十万円、三一・三%。ドイツは二千六百三十五万円、二六・四%。日本は一千万円、一〇%でございます。

 もちろん、前提の置き方によって変わりますけれども、先生から御提示いただいた仮定で計算いたしますと、以上でございます。

佐々木(憲)委員 ですから、日本の場合は余りにも低過ぎるわけです。アメリカは二六・四四、イギリスは二七・一、ドイツ二六・四、フランス三一・三、日本は一〇。こんな状況で、何で被災者の財源ができるんですか。

 私は、こういう証券優遇税制のような金持ち優遇税制はすぐ改めて、そういう財源は被災地に回す、こういうことをすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

石田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。

 反対する第一の理由は、研究開発減税の延長や産業活力再生法、企業立地促進法などに基づく減税措置が、一部大企業に多大な恩恵をもたらす大企業優遇措置となっているからであります。二百五十兆円という空前の内部留保をため込んだ日本の大企業に、税制の支援は必要ありません。リーマン・ショック後の経済危機から立ち直るその間もなく、大震災によって経営に甚大な被害をこうむった中小零細企業や個人にこそ、税制の支援を強めるべきであります。

 第二の理由は、大資産家に恩恵が集中する証券優遇税制をさらに延長しようとしていることです。そもそも民主党政権は、所得税制の改革によって所得再分配の機能や財源調達機能を回復させる、こういう方針を持っていましたが、一体それはどこに行ったんでしょうか。

 所得一億円を超えると所得税の負担率が大きく低下するなど、所得税の累進構造は崩されてきましたが、その主な要因が、株の配当や譲渡益の税率を軽減してきた証券優遇税制にあることは、政府も認めてきたところであります。国際的にも例を見ない大資産家優遇となっている証券優遇税制は、本年十二月の期限をもって予定どおり廃止すべきであります。

 第三の理由は、納税者の権利を侵害する罰則の強化が盛り込まれているからであります。故意の申告書不提出あるいは消費税等の不正還付の未遂などが刑罰の対象とされますが、それを認定するのは税務署の側です。極めて恣意的な判断で、納税者が犯罪人にされる懸念があります。このような税務署の権限を一方的に強める罰則強化には反対であります。また、事業設立後の消費税免税業者の要件を厳しくする改悪も、合理的な理由はなく、賛成できません。

 他方、法案には、中小企業に対する法人税率引き下げ措置、漁業、農業で利用するA重油の石油石炭税免税措置、雇用促進税制、NPO税制の拡充など、賛成できる内容も含まれております。

 しかし、以上述べた理由から、本法案には反対をいたします。

石田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

石田委員長 これより採決に入ります。

 現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

石田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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