衆議院

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第32号 平成23年7月29日(金曜日)

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平成二十三年七月二十九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 大串 博志君 理事 岸本 周平君

   理事 古本伸一郎君 理事 鷲尾英一郎君

   理事 竹下  亘君 理事 山本 幸三君

   理事 竹内  譲君

      東  祥三君    網屋 信介君

      五十嵐文彦君    石田 三示君

      今井 雅人君    江端 貴子君

      小野塚勝俊君    岡田 康裕君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      木内 孝胤君   菊池長右ェ門君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      菅川  洋君    玉木雄一郎君

      豊田潤多郎君    中塚 一宏君

      長尾  敬君    松原  仁君

      三村 和也君    宮崎 岳志君

      矢崎 公二君    柳田 和己君

      和田 隆志君    今津  寛君

      齋藤  健君    徳田  毅君

      村田 吉隆君    茂木 敏充君

      山口 俊一君    斉藤 鉄夫君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   内閣府副大臣       東  祥三君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   国土交通大臣政務官    小泉 俊明君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      横尾 英博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   櫻田 道夫君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十九日

 辞任         補欠選任

  柿沼 正明君     矢崎 公二君

  勝又恒一郎君     長尾  敬君

  中林美恵子君     石田 三示君

  和田 隆志君     菊池長右ェ門君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     中林美恵子君

  菊池長右ェ門君    和田 隆志君

  長尾  敬君     勝又恒一郎君

  矢崎 公二君     宮崎 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 岳志君     柿沼 正明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十三年度における公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第一号)

 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成二十三年度における公債の発行の特例に関する法律案及び経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主税局長古谷一之君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長横尾英博君、原子力安全・保安院審議官櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。きょうもいつものように正論の直球しか投げませんので、御答弁の方も端的にお願いできたらと思います。

 きょうは幾つか質問させていただきたいと思っておるんですが、もちろん法案に関してもでありますけれども、東副大臣がお忙しいということでありますので、質問通告してあります総合取引所構想につきまして最初にお伺いをさせていただけたらと思います。ちょっと質問の流れが美しくなくなってしまうんですが、公務優先ということで、最初に御質問させていただきます。

 世界におきましては、商品市場についても、他の金融商品と同じように金融所管官庁が監督をしているのが主流というか、ほとんどそうだと思いますが、日本におきましては、歴史的経緯がありまして、商品先物取引法のもとに、経産省や農水省がこの商品について監督官庁となっているのは御案内のとおりであります。

 残念ながら、規制と監督が異なるということがなかなか参入しにくい状況を生んでおりまして、証券会社などが商品市場へ参入することがなかなか進んでいないという現状にあります。こういうことで、シンガポールやマレーシアは、かつては日本と同じようだったんですが、考えを改めまして総合取引所に統一いたしまして、その結果、非常に活性化しているという現状があります。世界の商品市場が二〇〇三年のピークから五倍にも伸びている中で、日本の方は逆に五分の一に縮小しているということでありまして、この改革が望まれているわけであります。

 商品市場の活性化のためには、早急に規制と監督を一元化して、証券会社などが横断的に商品市場にも参入してこられるような、そして、これらの会社を利用する投資家が商品市場に参入するということを促していくことが必要で、そのために、総合取引所、すなわち規制と監督を一元化して一つのところでやっていこう、そういう流れになってきているわけであります。

 現在、きょうお見えの東副大臣、筒井副大臣がメンバーとなりまして、三省庁で検討チームがつくられておりまして、中間整理で昨年の十二月に、遅くとも六月までには方針を固めようということであったようでございますが、大震災がありまして、まだその方針が固まっていないようであります。

 漏れ聞くところによりますと、商品市場の規制と監督について、金融庁のもとに一元化をしようということについてはおおむね異論がないところまで来ているんだけれども、農水省が監督官庁を金融庁に一元化することに反対していてなかなか前に進まないというお話が聞こえてくるわけであります。

 まず、筒井副大臣にお伺いしますが、焦眉の急である規制監督の一元化につきまして、農水省がそういう姿勢でなかなか前に進まないという声が実際に私のところにあるんですが、金融庁に一元化することに農水省として何か問題があるのでしょうか。

筒井副大臣 途中の経過を省略しまして、規制監督の一元化を農水省も目指しております。しかし、一元化される規制監督機関は、専門性と独立性を備えた証券監視委員会的な機関に一元化すべきであるということを農水省としては主張しているところでございます。

 そして、今度、サルコジ大統領の旗振りでG20でもそのことが確認されましたが、一般の金融商品と、食料とか石油とか一次産品、それらの現物に関連する市場とやはり対応が異なるべきであるということが確認をされております。それらの現物を取り扱う市場に直接影響を与える、特に今度米が先物取引として上場されることになったわけでございまして、主食米の市場に大きな影響を与える問題でございますから、専門性と独立性、双方を兼ね備えた機関に一元化することが必要である、こう私たちは考えております。

齋藤(健)委員 そうなりますと、銀行の監督をどうするかという非常に難しい問題も出てくると思うんです。

 東副大臣にお伺いしますが、今の筒井副大臣の御主張がございましたが、証券、金融、商品を横断的に所管する監督官庁というものを金融庁とは別の行政組織にすべきだという御主張だと思いますけれども、この点につきまして、金融庁としてはいかがお考えになられているでしょうか。

東副大臣 まず、齋藤先生の種々の御配慮、ありがとうございます。

 その上で、先ほどお話がありましたとおり、昨年の十月から、昨年六月の新成長戦略に基づいて総合取引所実現のために金融庁、農林水産省、そして経済産業省で検討チームを開始したところであります。そこで、昨年の十二月の二十二日に中間取りまとめで論点を関係省庁の間で確認したところでございます。

 本日の齋藤先生の御質問というのは、ある意味でそれぞれの省庁間における意見の違いを浮き彫りにさせてというところに主眼があるのかわかりませんが、それに対してのコメントはぜひ控えさせていただきたい。三月十一日の東日本大震災がありましたので、ちょっと検討状況に間があいてしまいました。昨日、第十回目の会合を開きまして、その上で随時ヒアリングを行っているところでございます。

 五つの論点のうち、基本的に私の方から申し上げるのは、先生御指摘の点も含めた上で二点に課題が集約されてきているというふうに思います。

 それは、取引所並びに清算機関に関して政治が主導してこれを促していくのか、他方、これは双方とも株式会社でありますから、あくまでも自由な判断に基づいて、またそれを慫慂していけるような政治的な枠組みをつくってあげればいいという、この二つ。それから、もう一つの論点というのは、今齋藤先生が御指摘になっている監督そしてまた規制、これを一元化させるということに関して、金融庁に一元化させるか、あるいはまた先ほど筒井副大臣の方から言われた別の監督規制機関を設けるか、この二つになっていると思います。

 いずれにいたしましても、先ほど先生が御指摘になった問題意識は私は全く共有するところでありまして、政治の判断によっておくれてしまっている日本の金融、証券そして商品も含めた上での総合取引所実現に向けて、できるだけ近い段階で政治的決断をしてその目的実現のために頑張っていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いします。

齋藤(健)委員 今検討中ですので、東副大臣が金融庁としてのみの御意見を表明するのが難しいというのは、よく私も承知をしているわけでありますが、私の質問の趣旨は、この質問を通じて、結果としてこの政治的決断が早期に行われるように、成長戦略というお話もされましたので、ぜひ促していきたいというところにあるわけでありますので、これからも引き続き、質問の機会があれば状況を確認させていただきたいと思っております。

 お忙しいと思いますので、最後に一つだけ御質問させていただいて終わりにしたいと思うんですが、この三省庁の検討チームの中間整理のスケジュールでは、遅くとも平成二十四年通常国会に関連法案を提出し、平成二十五年の総合取引所を実現するというスケジュールになっておりましたけれども、このスケジュールに変更はあるのかないのかということをお伺いしたいと思います。

東副大臣 東日本大震災で若干間があいてしまったんですが、今御指摘のスケジュールに沿って結論を出していきたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員 ありがとうございました。

 東副大臣、それから筒井副大臣も、これで結構でございます。どうもありがとうございました。

 それでは、特例公債法案について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いしますが、国会での審議がこんなタイミングになってしまったというのは、何カ月おくれたかを数えるのもはばかられるぐらいおくれていると思いますけれども、このようにおくれてしまった原因を大臣としてどのように認識されているか、まずその一番大事な点をお伺いできたらと思います。

野田国務大臣 齋藤委員にお答えしたいと思います。

 本来ですと、やはり理想は、ことしの三月末までに、いわゆる予算とあわせて、その財源にかかわるこの特例公債法案が成立をすることが当然のことながら望ましかったのでございますけれども、残念ながらその状況が生まれず今日に至ったことは、私自体、本当に申しわけないなというふうに思っております。

 これは、前も会見で申し上げたとおり、歳出の許容額が、いわゆる財源の裏づけのあるものが四十八兆、そのうち、四月―六月の執行状況とか七―九の見通しを考えると、九月末までには四十二兆を使わざるを得ないという中で、大変ぎりぎりの段階に来ているというふうに思います。

 そんな中で、一つの前提条件という形であった四月二十九日の三党合意に基づく政党間の検討、子ども手当についての検討も、今、実務的にはすり合わせ、そしてこれからは政治判断を求めるような段階になってきているというふうに思います。

 そういう環境整備を進めていただきながら、きょうは、そういう段階の中で、石田委員長のもと、与野党の理事の皆様の御協力、御理解を得て、特に野党の理事の皆様方の御理解をいただいて、こういう形で審議ができて本当にありがたいと思います。丁寧に御説明をさせていただきながら、一日も早い成立を目指して頑張っていきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 いろいろ国会の中での政局的な駆け引きというのも背景にはあろうかと思いますが、おくれた一番大きな理由というのは、皆さんは言葉が気に入らないかもしれませんが、やはりばらまき四Kというものを継続しながら赤字国債を発行し続けるということについての基本的な問題意識というのが我々にあるわけであります。

 つまり、子ども手当を例に申し上げますと、あのマニフェストの中では、一人当たり二万六千円ということをお約束されたわけであります。そして、その二万六千円は、予算にしますと五兆三千億とかそのくらいの規模で、その二万六千円をマニフェストどおり実行しようとすれば、予算がかかるということであります。せいぜい四十兆とかそういうレベルの税収の国が、五兆円も子ども手当だけで使ってしまう。しかも、高額所得者にも子供が三人いれば年間百万円近くをキャッシュで上げますなんという政策をやる余力は、この国にはない。

 したがって、金額を少し下げようという議論をして、今は二万六千円ではない数字にはなっておりますけれども、基本的に、そういうことをやっていいのか、それを前提として赤字国債を発行するというような法案を本当に通していいのかという深刻な、あるいは真摯な問題意識が背景にあってなかなかこれに合意できないというのが、おくれた一番大きな要因ではないかというふうに私は考えているわけであります。

 しかも、その後、震災が起こりまして、復興のための財源も、最近聞くところによりますと、十兆円ぐらいの税制上の措置も必要になろうかということでありますので、こういう政策を前提として赤字国債を出すということはあり得ないというのが我々の主張であるわけなんですが、その点につきまして大臣はいかにお考えになるでしょうか。

野田国務大臣 ばらまき四Kという御指摘をいただきますが、私どもはもともとこれをマニフェストに掲げたときに、これをばらまきとして考えたわけではなくて、いわゆる政策目的、理念のないお金の使い方、無駄があればこれはばらまきだと思いますが、見解の相違はあると思います。子供たちをどう育てるか、社会全体で育てるのか、家庭で育てるのか、そういう理念の違いはあるかもしれませんけれども、特に人生前半の社会保障が手薄であった日本においてこういう手当をつくっていくことは意義がある、政策目的があるという趣旨のもとでスタートした事業でございました。

 ただ、委員御指摘のとおり、三月十一日の大震災の発災があります。やはり、政策の優先順位は変えていかざるを得なくなっているということは事実だと思います。

 そういうことを踏まえまして、政党間の協議を踏まえながら、今その環境整備が進んできているというふうに思います。

齋藤(健)委員 私は、野田大臣はもう昔から存じ上げていて、本当にバランスのとれたすばらしい人だと思いますので、この震災が起こったということを理由にしてというか契機にして、ぜひきちんとした見直しを行っていただいて、財政を守っていただきたいと思います。

 それから、もう一つここで確認をしておきたいんです。

 この特例公債法案、前は六月までに通さなければ大変なことになると随分言われておりましたが、最近はそうでもなくなって、だんだん延びていくような感じがあります。ここではっきりさせていただきたいのは、いつまでに通らなければ実害が出るというそのデッドラインをはっきりおっしゃっていただけたらありがたいと思うんです。そうしないと、審議をどのくらい、どういうふうに進めていいかもわからないので、よろしくお願いします。

野田国務大臣 これまでは予算の執行管理という形で工夫をしてまいりました。一般会計から特別会計への繰り入れの時期を後ろにずらすとか、あるいは各省から出していただく予算の執行計画を、今まで三カ月ごとだったのを一カ月ごとに精査をさせていただくとかという工夫をしながらの管理をしてまいりました。

 そういう中で、冒頭もちょっとお話ししましたけれども、四月―六月の実績、それから七月―九月の各省の要求でいくと、四十二兆、九月末までに予算執行をしていくことになります。一方で、財源の裏づけのあるいわゆる歳出許容額が四十八兆でございます。そうすると、過去、例年のペースでいくと、十月に五兆、六兆の予算執行をやっているんですね。

 ということは、この八月末の会期末までにこの法案が成立しないと、今までは予算の執行管理でしたけれども、予算の抑制という次の段階に行かざるを得なくなる。そうなると、国民生活や経済への影響も出てくるというふうに思いますので、そうならないためにも、そういう事態を避けるためにも、今国会中に一日も早く成立をさせていただきたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員 よくわかりました。この点を踏まえて国会としても対応していかなくちゃいけないなと思います。

 話はかわりますが、次に、円高についてのお話をさせていただきたいと思います。

 御案内のように、今、円高が進んできておりまして、一ドル七十七円。私も長いことずっと経済を見てきておりますが、本当に信じられないようなレート水準に今なっておりまして、このままの水準で推移をすると、本当に日本経済あるいは日本の産業は、とりわけ輸出主導の製造業はどうなってしまうんだろうかと。

 大臣も覚えておられるかもしれませんが、トヨタの社長が記者会見で、やはり自分は日本で生産を続けていきたいんだという発言をしたら、隣で副社長が、でもこの水準では私はそれは無理だという進言を社長にせざるを得ないみたいなのが記者会見でやりとりになっちゃう、そのくらい深刻な状況になっておりまして、そのときよりもさらに円高が進展をしているという状況であります。

 きょう日銀に来ていただいていますので、日銀と財務省、両方にお伺いしたいと思うんですが、今の円高が日本経済にどのような影響を与えるというふうに見ておられるか、その点についてきちんとお話をいただけたらと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 円高の日本経済に対する影響ということでございますけれども、まず、円高につきましては、輸入コストを引き下げるというメリットは一方でございます。それに対しまして、特に今、日本経済は震災の大きなショックから立ち直る途上でございますので、例えば輸出や企業収益を減少させるとか、あるいは企業マインドを悪化させるといった形で経済に悪影響を与える、マイナスの影響を与えるという可能性には十分留意して点検していく必要があろうかというふうに思っております。

 それに加えまして、やや長い観点から見ますと、今委員からも御指摘がございましたが、現在、日本は震災のリスクという認識が改めて強まっております上に、中長期的な電力制約の不確実性も強まっているわけでもございまして、こうした状況下で円高という要因が加わることによりまして、企業の海外シフトが加速しないかどうか、あるいは大変重要な点でございますけれども、企業の中長期的な成長期待、成長予想がさらに下振れしないかどうかといったことについては、目を凝らして点検していく必要があろうかというふうに考えてございます。

野田国務大臣 確かに、最近のマーケットの動きというのは、日本のいわゆる経済の実勢からはかけ離れて、余りにも円が強くなり過ぎているというふうに思っています。一方的に偏った動きになっていると思いますので、マーケットを注視していきたいというふうに思います。

 その影響は、今日銀の理事からお話があったとおりで、輸入価格が減少して企業収益がふえるとか、もちろんメリットはありますけれども、一方で、外需が落ち込んで、特に、先ほどトヨタの事例もございましたけれども、国内における生産拠点を海外に移さざるを得ないという葛藤を抱えている企業が今ふえていることは一番憂慮すべきであり、まさにそういう下押しリスクには十分細心の注意を払っていかなければいけないというふうに思います。

齋藤(健)委員 今の水準が放置できる水準なのかどうか、日銀と財務省、両方にお伺いできたらと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 為替相場につきましては、水準の評価についてはコメントを差し控えさせていただきたいというふうに存じますけれども、私どもとしては、マーケットの変動が非常に大きなものかどうか、また、それを通じまして、先ほど来御議論になっておりますような、企業マインドあるいは物価に対しましてどのような影響を与えるかという観点から判断をしてまいりたいというふうに考えております。

 現段階におきましては、為替の変動はプラスマイナス両方あるわけでございますけれども、現在の状況を踏まえますと、景気に対する影響、あるいは先ほど来御議論のありますような、企業の海外シフト、あるいは中長期的な成長期待の下押しといった観点から注視してまいりたいというふうに考えてございます。

野田国務大臣 私の方も、水準とか相場観についてのコメントは控えたいというふうに思いますが、現状については、さまざまな分野の方から多くの声をお寄せいただいています。そういう厳しい状況を踏まえて、日銀とも連携しながら、適切な対応を図っていきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 もう一つお伺いしたいんです。

 韓国の為替政策について、日本と比較されてよく議論されているわけで、私もこの点は随分気になっているわけでありますが、日本が随分円高が進展しているこの間におきまして、実は韓国のウォンの方はどんどんどんどん下がってきている。ここのところ少し上がってきているわけでありますけれども、長い目で見てみると、例えば二〇〇八年ぐらいからずっと見ておりますと、韓国のウォンというのは随分国際競争力をつける形になっているわけであります。

 私が伺いたいのは、この韓国のウォンが余り高くならない理由をどのように考えておられるか、これも日銀と財務省、両方からお伺いできたらと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ウォンの対円相場を見ますと、リーマン・ショック後の二〇〇八年の秋から二〇〇九年にかけて大幅に円高・ウォン安が進んだわけでございます。当時は、世界的な金融危機のもとで、多少アジア通貨危機の連想もあったんでしょうけれども、韓国の資金調達構造に対する懸念が若干あったということですとか、あるいは全般的に投資家のリスク回避姿勢が強まりまして、相対的に安全資産とみなされる円に対する需要が高まったというようなことも影響したというふうに考えられます。

 したがって、金融危機の前と後ということを比べますと、大幅にウォン安が進んでいるわけでございますが、その後、最近の一年間、最近について見ますと、韓国経済の良好さに対しても市場は目を向けておりまして、対ドルで見ますと、ウォンの上昇幅とドルの上昇幅は大体同じぐらいでございますので、この一年程度を見ますと、ウォンと円の相場はおおむね横ばいの水準で維持してございます。

 したがって、二〇〇八年、九年の大幅なウォン安という点につきましては、やはり金融危機の影響が多かったかというふうに思っておりますけれども、先ほど御質問のありました韓国の為替政策につきましては、韓国は介入の有無については公表してございません。韓国の政府当局が発言されていることや、あるいはマーケットでそうした見方があるということは存じておりますけれども、この点につきましては、コメントは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

野田国務大臣 ただいまの御認識と私も基本的には同じでございまして、二〇〇八年秋に世界的な金融危機が生じた際に、韓国の対外短期債務、これが高水準であったことがリスクとみなされて、それによって韓国ウォンは大幅に下落をしたということです。

 世界経済が金融危機から回復するにつれて韓国ウォンは高くなってきていますけれども、金融危機以前と比較した場合には、対ドル、対円ともウォン安となっているということですが、しかしながら、最近では対ドルで高くなってきており、そのペースはドル・円とほぼ同じ状況であるというふうに思います。また、例えば現在、円・ウォンの為替レートは、一年前と比較してほぼ同水準であるということでございます。

 という基本的な認識は、日銀と同じでございます。

齋藤(健)委員 実は、きょうの委員会の質問がきのう急に決まったもので、残念ながらよく詰められていないまま質問させていただいて申しわけないんですけれども、報道によりますと、韓国は為替の介入などでウォン高を牽制する姿勢を鮮明にしているのではないかと。例えば、企画財政大臣が、相場の急変動を緩和する措置をとるのが基本的立場だ、緩和する措置をとるというようなことを明言されているようでありますし、一方で、海外からの資金流入規制も導入したり、それから外国金融機関による韓国企業への融資や外貨建て債の引き受けも規制し始めたという報道があります。

 要するに、韓国は国の意思として、このウォン高をとめるという強い意思で動いているような気がするんですが、一方で、日本政府は、これだけ円高になっていても、今お話を伺っておりましても、注視をするとか適切にということで、韓国政府に比べてメッセージが非常に弱い、私にはそう感じられてならないわけであります。

 韓国が国の意思というか政治の意思としてそういう強いウォン高是正に動いているという認識がまずあるかどうか、お伺いできたらと思います。

野田国務大臣 齋藤委員御指摘のとおり、韓国は、いわゆる過度な資本流入を抑制するために、二〇一〇年からマクロ健全性規制という政策をとっていることは事実です。

 ただ、為替への対応は公表していない国なのでいかんともしがたいところはありますが、新たに就任をした朴長官が委員御指摘のような会見をされています。それは、日本の言っていることと同じであって、過度な変動あるいは無秩序な動きがあれば断固たる措置をとるという日本の立場と韓国の長官がおっしゃっていることは、これは同じことを言っているというふうに思います。

齋藤(健)委員 私が申し上げた資金流入規制や、それから外国金融機関による韓国企業への融資や外貨建て債の引き受けを規制し始めたという点についてはどのように評価をされていますでしょうか。

野田国務大臣 先ほど申し上げたとおり、過度な資本流入と短期債務の増加を抑制するための各種のマクロ健全性規制を導入している、こういう国は新興国にございます。ブラジル等々、多いんですね。それは一つの、それぞれの国のいわゆる政策だというふうに思いますが、先進国ではなくて、新興国でこういう傾向があるということだと思います。

齋藤(健)委員 それでは、韓国でそういうことをやることによって、日本と韓国企業の競争力に大きな差が出てきて、ただでさえ、さっき日銀の方からも懸念が示されました空洞化の危機が高まっている中で、もし日本がこういうことをやったとしたらアメリカから大変な弾が飛んでくるんじゃないかと、自分が日米交渉をやっていた経験から私は断言できるわけでありますが、日本政府としては、こういう動きについて何も注文をするつもりはないということでよろしいんでしょうか。

野田国務大臣 マクロ健全性の政策はG20の中でも認められているんです、そういう措置をとることを、特に新興国がとることを。だから、それを隣の国にだめよと言うことはルール上できないと思います。ただ、国際交渉の中で、お互いについて、これはウイン・ウインの関係になっていかなければいけないわけですから、率直な意見交換はしなければいけないと思いますけれども、そういう政策そのものを否定するようなことはできないと思います。

 ただし、日本の場合も、先ほどからマーケットの動向を注視という話しか今できていませんが、やはり過度な変動等があれば断固たる措置をとるという日本の姿勢は明確であります。そういう意味で、この状況がいつまでも放置できる状況なのかは、よく検討をさせていただきたいというふうに思います。

齋藤(健)委員 日本の製造業にとりまして決定的な局面に入りつつあると思いますので、この場で申し上げにくいことはよくわかりますが、うまくやっていただきたいと思います。

 それからもう一つ、この際、これだけ円高が進みまして、それから電力料金の上昇も見込まれ、電力の供給も残念ながら不安定になりつつある中で、私は従来から申し上げている、これは自民党がずっと言っている話でありますが、民主党のアンチビジネス政策、これを一時的でも取り下げるべきではないかという主張をきょう大臣に申し上げたいと思うんです。

 我々が従来から主張しておりますのは、製造業への派遣の禁止、最低賃金は千円にしなさい、それからCO2は一九九〇年比で二〇二〇年二五%削減ということですが、二〇〇五年ぐらいから見ますと、十五年で三〇%削減しなさいというような目標を掲げているわけであります。それから、法人税の問題もあります。これはちょっと、いろいろな要素が震災で加わってきていると思いますけれども。

 一つ一つはそれなりの理由があると私は思いますけれども、そういったものがこれだけ重なってきて、しかも一ドル七十七円だ、電力も不安定だということになってきた場合には、これらの民主党の主張を、やめろとは言いませんが、一時的にでも留保する、このアンチビジネス政策を、どう呼ぶかは別にしまして。空洞化を促進するような懸念のあるものを、製造業が出ていくか出ていかないかの決定的なこの局面においては一時留保をすべきだと思います。

 大臣の所管じゃない部分も多いかもしれませんが、大臣御自身、空洞化には大変懸念を感じていて同じ思いだという答弁をされておりますので、大臣のそういう思いの中での具体的なお話を聞かせていただければと思うんです。

野田国務大臣 空洞化の回避というのは本当に大きな課題だと思っていますし、その要因としては、今回の震災によるサプライチェーンの寸断の問題とか、あるいはさまざまな脆弱性、電力制約とかいろいろな問題があります。そういうものを一つ一つ乗り越えていくことが当面大事だろう。特に、企業にとっては見通しがどうなのかというのが一番の判断基準だと思いますので、電力も含めて、その見通しをしっかりと明らかにしていくということの基本的なところからスタートしなければいけないと思います。

 そこで、今、アンチビジネスというお話でございました。決してアンチビジネスではなくて、それもそれぞれに政策目的があったんです。例えば、CO2の二五%削減というのも、これからのエネルギーの需給、基本計画をどう考えるかによって、それと整合的なものでなくてはならないだろうと思いますので、アンチビジネスではなくて、こういう状況変化によってどういう対応をするのか。

 したがって、マニフェストについては、本来は折り返し点の九月までに全般的な検証をすることになっていましたので、そういう検証は基本的にはやらざるを得ないだろうというふうに思います。

齋藤(健)委員 残り時間が短くなってきましたが、そんな中で、一つは、昨日本会議を通過しまして衆議院を通った、東京電力の賠償を新しい機構が支援するスキームというのがこれからできていくわけであります。

 これは、たしか前々回の私の質問でも取り上げさせていただいたんですが、政府が財政負担をする局面というのが本当に最後の最後の最後の最後になっておりまして、それよりも先に、事故を起こしていないほかの電力会社がお金を負担しなければならない、一言で言うとそういう仕組みになっております。

 つまり、東京電力による補償がどれだけ積み上がっていくかまだわからないところがあるわけでありますが、いずれにしても、東京電力で払い切れる金額ではないだろうというのはだれでもわかるわけであります。そうなりますと、東京電力、あるいはほかの電力会社が払うにしても、最終的には、払い切れないものは電気料金でやるしかないということになるわけであります。そのほかに方法はありませんので。

 そうすると、前回も議論させていただきましたが、絶対払い切れない部分については、電気料金で払おうと、財政が出て税金で負担していただこうと同じ国民負担であるにもかかわらず、今回通った法案では国は最後の最後になっていまして、基本的には電気料金で賄えという仕組みになっているわけであります。

 さっきから何度も申し上げておりますように、同じ国民負担であるにもかかわらず電気料金の方に寄せてしまうと、さらに産業空洞化を加速していくことに、またもう一つアクセルを踏んでいくということになりかねないので、私は個人的には、同じ国民負担であるならば、薄く広く国民が負担することを考えた方がいいのであって、電力多消費型産業にどっとしわが寄るような負担のあり方は、こういう局面においては本当に望ましくないと思うんですけれども、このスキームについて、いろいろ見直し条項があるので私は法案としては賛成をしたわけであります。

 こういう形で、ほとんど全部電気料金に寄せていくのが補償の仕方としていいんだということについて大臣はどうお考えになっているのか、御見解を承りたいと思います。

野田国務大臣 昨日、衆議院で多くの党の御賛同をいただいて成立をした原子力損害賠償支援機構法案でありますが、その附帯決議に大事なポイントが示されておりました。

 それは、今回の原子力事故に基づく損害賠償に際しては、原子力事業者各社の経営効率化努力などにより、事業者負担に伴う電気料金への転嫁の回避など、国民負担の最小化を図る必要があるということでございます。したがって、税金にしろ、あるいは電気料金にしろ、国民負担でありますので、その最小化を図っていく努力をしなければいけないだろうというふうに思います。

 仮に、事業者の経営効率化等が最大限行われた上でなお賄えないコストが存在する場合には、電力料金に上乗せをされることになるということだと思いますけれども、その際も、その上げ幅であるとか、事業者と家庭間の引き上げ幅の配分等々、あるいは景気に対する影響、産業空洞化に対する影響といったさまざまな課題があることは事実でございますので、経済状況を注視しながら適切に課題に対応するということが必要になってくるだろうというふうに思います。

齋藤(健)委員 きょうはこれ以上御質問しませんが、野田大臣には、電力料金にすべて寄せ切るというのが本当にいいのかどうかという問題意識だけお持ちいただければありがたいなと思います。

 お待たせをいたしましたが、最後に近藤副大臣にお伺いしたいと思うんです。

 私は、しつこくしつこくCO2の二五%削減問題をあらゆる委員会でやらせていただいていて、もういいかげんにしろということかもしれませんが、これだけ状況が変わりまして、二〇二〇年までに、原子力がどれだけ使えるかわからない状況のもとで、二五%削減目標を依然としてやるんだと世界に言い続けるということは無責任なんじゃないかと。少なくとも、一たん取り下げて検討させ直してくれ、もう一回検討させてくれ、その上で、しっかりした、しかも意欲的なものを日本として提案するから、一回取り下げさせてくれと言うのが、私は誠意ある、世界の信頼をかち取る方法なんじゃないかと思うんですが、何度国会で聞いても、原子力がどうなろうと、二五%削減は目標として掲げていくんだということをおっしゃるので、世界の国はそんなものを信じないんじゃないかと心配をしているわけであります。

 例えば、今、基準年になっている一九九〇年で、日本はCO2を年間十二億六千百万トン出しておりました。五十四基ある原発が全部とまりまして、それを全部火力で置きかえますと、それだけで二億トンCO2は増加をします。増加分が二億トンです。そういう状況であるにもかかわらず、二〇二〇年に二五%削減するんだということを世界に言い続けるというのは、だれが見ても無責任にしか見えないんです。しつこいと言われるかもしれませんが、それでもなおこの目標は取り下げないということなんでしょうか。

近藤副大臣 齋藤委員におかれましては、この問題に大変に御関心をいただき、熱心に御質問いただいていることを感謝申し上げたいと思います。

 御指摘の中期目標でありますけれども、今御指摘がありました原発の稼働、新増設の見込み、もちろん大変に御懸念をされている経済活動の影響、こうしたことを見定めていかなくてはならない、これは当然のことだと思っています。ただ一方で、省エネ、再生可能エネルギーを促進する機運はこれまでになく高まっているところでありますし、御承知のとおり、電力の買い取り制度、再生可能エネルギーの買い取り制度というものの審議も始まったところであります。私は、こうしたさまざまな影響と、そしてまた今社会に起こっていること、こうしたことをすべてしっかりと検証していく、このことが大切だと思っております。

 また、日本は、環境産業、環境にかかわる産業いうものをしっかりと進めてきた。排気ガスについてもそうであります。こうした観点から考えますと、しっかりとした高い目標を掲げていくということ、また、この二五%は国際公約をしたことであります。そういう意味では、さまざまな観点から議論をして、そして率先してこの二五%を推進していく、このことが日本の産業の振興にも役立つと思っております。

齋藤(健)委員 私も二十数年間役人をやっておりましたが、これほど裏づけのないものを世界に約束するというのは、過去、寡聞にして承知をしておりません。裏づけのないものを世界に約束するというのは、日本政府のあり方として断じてあってはならないと私は思っておりますので、引き続き国会でもやらせていただきたいと思います。

 きょうは、かなりいろいろな問題意識を表明させていただきましたが、これは足を引っ張るということじゃなくて、こういう問題意識を少しでも共有していただいて、策を講じてほしい、そういう思いで質問させていただいているわけであります。次回以降もこの精神で質問を続けていきたいと思いますので、大臣におかれましては、私の思いを真摯に受けとめていただきまして、一歩でも二歩でも前進をさせていただけたらと思います。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。竹内です。野田大臣とも何回も質疑をやっておりますので、もう顔も見たくないというぐらいに思われていると思いますけれども。

 財政というものは経済との関係が深い、経済はまた、今はやはりエネルギー問題と関係が深い、このように思っております。その意味で、きょうは最初に、ちょっと違う方向から質問をさせていただきます。

 今回のこの福島第一原発の問題、大変な大惨事になったわけでありますが、一方で、福島第二原発というのがすぐ近くにあるわけですね、これは何とか惨事を免れた。それから、女川原発も惨事を免れているわけです。これも震源地に近いわけですよね。それから東海第二原発、これも津波を受けたにもかかわらず大惨事を免れている。

 ここの違いは何にあったのかということをやはりまずよく検証する必要があるんじゃないかというふうに私は思っているんですね。そういうきちんとした検証なしに、いきなり、思い込みで脱原発と言っても意味がない。やはり、事実関係をきちっと再検証して、どこに原因があったのかということを突きとめていく必要があると思うんですね。

 そこで、まず、きょうは、事前通告をしております、この福島第二原発、また女川原発、さらに東海第二原発が大事故に至らなかった理由につきまして御説明をいただきたいと思います。

櫻田政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所につきましては、地震によって原子炉が自動停止して、その後、外部電源も喪失したということがございます。また、津波が参ったことによって非常用ディーゼル発電機や電源盤、冷却用の海水ポンプなどが被水したり冠水したりということがございまして、すべての交流電源が喪失したということによって原子炉を冷却する機能が長期間失われるに至りまして、今回のような事態になったというふうに考えてございます。

 他方、御指摘のございました福島第二、女川、東海、これらの発電所におきましては、原子炉の自動停止があったわけでございますけれども、その後の津波などによってすべての交流電源が失われるということにはなってございませんで、外部電源または非常用電源の存在によって一部の交流電源が維持されていたので原子炉を冷却することができたということで、この辺が違っていたということでございます。

竹内委員 私どももいろいろ資料をいただいて確認をしたんですが、福島第二原発は津波を受けました。しかし、外部電源は、全四回線あったんですが、辛うじて一回線はつながっていた。それから女川原発も、五回線あったんですけれども、地震があったにもかかわらず、何とか一回線はつながっていた。そういうことで、この二つにつきましては、その後、非常用発電機も残っていまして、一部浸水しておりましたけれども、電源喪失に至らなかったということで、大惨事に至っていない。

 一方で、東海第二は、地震によって、外部電源、全三回線あったんですが、これがだめになっているんですよね、三回線とも。そうすると、当然、福島第一のようになるはずだったんだけれども、しかし、非常用発電機が機能した。これがきちんと機能したので電源喪失に至らなかった。ここも被水、津波をかぶっていたんですが大丈夫だった、こういうことですよね。

 そういうことで、この違いというものをよく考えておかなければいけない。

 もう一つ、津波の高さですが、同様の質問ですが、津波を受けて、福島第一は、そもそも、主な建屋の高さというのは、敷地高、OPプラス十メートルというものに対して、津波はそれを少し上回る十一・五メートルから十五・五メートルが来た。それで失われたんです。一方で、福島第二原発は、同じように、主要建屋のエリアは、敷地高、OPプラス十二メートルという基準に対して、津波は十二から十四・五ということで、それを少し超えていたんですよね。超えて津波は来たけれども、福島第二は非常用発電機等も何とか作動したので残った、こういうことですね。

 そういう事実等を勘案していくと、福島第一とそれ以外とは本当にわずかの差であった。だから、ある意味でいうと、今申し上げた三つの原発も同じような大惨事になっていたかもわからない。しかし、逆に言うと、福島第一は津波対策をもう少しやっておけば免れた可能性がある。それから、非常用発電機等、この辺のバックアップも、もう少し訓練等も含めてやっておけば辛うじて免れた可能性が高いというふうに思うんですけれども、その点につきましては、政府としてはどのように認識していますか。

櫻田政府参考人 委員御指摘のとおり、東京電力福島第一原子力発電所の事態を悪くしてしまった大きな原因が津波の対策であったということでございます。

 特に、先ほど申し上げました電源の維持、あるいは冷却機能の維持、こういったところが失われると原子炉の安全性が確保できなくなるということが今回の教訓でございますので、私どもといたしましても、緊急安全対策というものを各発電所に要求することが必要であろうというふうに考えまして、電源車の配備あるいは外部電源の信頼性の強化、それから冷却系につきましても、ポンプ車を配備するとか仮設ホースを配備するといったような対策を講じることを今求めております。

 今回の事故に伴う教訓を踏まえて、さらに原子力発電所の安全性を向上させるべく対応してまいりたいと考えてございます。

竹内委員 繰り返しますけれども、結局、福島第一でも、津波十五メートルとかを全部かぶったわけじゃなくて、ある程度高いところにあって、それを超えた一・五メートルから五メートルぐらいの波が入ってきた、こういうことですよね。一方で、福島第二も、少し超えたんだけれども、二・五メートルぐらい超えただけだったんだけれども辛うじて免れた、この違いですよね。

 これは一つの推論ですけれども、そういう意味でいうと、やはり安全対策をもう少し強化していけば十分原発の安全性は確保できるのではないかというふうに思うんですね。

 そこで、次に、福島第一原発の被災の理由について、津波ではなくてそもそも地震によるものだという説が最近ありますけれども、この点につきましてはどのように考えていますか。

櫻田政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力安全・保安院といたしましては、東京電力から、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する運転記録、事故記録等に関する報告、また、原子炉施設の安全性への影響の評価結果に関する報告を受けておりまして、その内容を評価いたしました。

 その結果でございますが、お尋ねの、地震の発生の影響によって何があったかということでございますけれども、外部電源が喪失したと先ほど申し上げましたが、そういったことがありました。ただ、その後、運転中の一号から三号の原子炉については、制御棒がすべて挿入されて正常に停止した、あるいは津波が到達するまでの間は非常用ディーゼル発電機が正常に自動起動していた、また原子炉の冷却等に必要な機器が作動していた、こういったことがわかっておりまして、冷却機能も働いていたということが確認されてございます。

 したがいまして、現在のところは、地震による被害は、外部電源系のものはございましたけれども、原子力施設の安全上重要なシステムや設備機器の被害は確認されておりません。ということで、津波の到達に至るまではプラントは管理された状態にあったのではないかというふうに考えているということでございます。

竹内委員 この点はさらに詰めていただきたいと思いますが、いろいろな民間の学者の方々もおっしゃっていますので、国民に対してもわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

 それから、今後の原発再稼働の条件、それからいわゆるストレステスト、これについて改めて説明を願いたいと思います。

櫻田政府参考人 原子力発電所の再起動とストレステストの関係というお尋ねでございますが、政府におきましては、原子力発電所のさらなる安全性の向上と、国民、住民の方々のさらなる安心の確保のために、ヨーロッパの諸国で導入されておりますストレステストを参考にして、新たな手続、ルールに基づく安全評価を実施することとしてございます。

 この中で、一次、二次というふうに分けてございますが、お尋ねの再起動の関係でございますと一次評価でございますが、これは対象の発電所を定期検査中で起動準備が整ったものというふうにしてございまして、また評価の方法も、確実に機能や健全性が維持できるという範囲で安全の裕度がどのくらいあるかということについて事業者に評価を行わせて、それを原子力安全・保安院に報告させるということにしてございます。

 この報告されたものにつきまして原子力安全・保安院が確認し、さらに原子力安全委員会がその妥当性を確認するということを考えてございまして、その上でこれらの発電所の安全裕度、それから脆弱性の分析の結果やその克服の対策、こういったものを踏まえて、国民や住民の方々の安心、信頼が確保されるかどうかを見きわめて、内閣総理大臣を含む四人の大臣の方々が再起動の是非を判断することとなるということでございます。

竹内委員 再稼働の是非は最終的には四人の政治家が決める、こうなっているらしいんですが、しかし、それは法律に定められたことでもないし、非常に政治的な判断ですよね。本当にそういうものでいいのかどうか。しかも、大丈夫かどうかというのは客観的真理に近い話だと思いますので、今後、この辺を、だれが責任を負うのかということをやはり明確にしておく必要があるというふうに私どもは思っております。

 そこで、次に移りますけれども、すべての原発を順次停止させていく、かつ政治判断等も含めて結局再稼働できないとなった場合、電力不足はどのぐらいと想定していますか。

横尾政府参考人 原子力発電所がとまった場合の電力不足の状況でございますが、まず、この夏、原子力の再稼働が行われないということで、既に、火力発電所の補修時期を変更したり、あるいは自家発を活用するなどで供給力を電力会社で積み増しして、他方で需要面、東京、東北管区は一五%、関西は一〇%以上、その他の西日本の地域は一般的な意味での節電に取り組むということで取り組んでございます。

 今委員御指摘のとおり、この先、原子力発電所が十三カ月の運転で定期点検に入っていきますので、定期検査に入って、他方で再稼働ができない状況というのは大変厳しくなるものと想定をしております。これが、この冬なり来年の夏、どのような電力需給になるかというのは、政府のエネルギー・環境会議で検討してございます。

 いずれにしましても、この会議での議論も踏まえ、需給両面で対策を講じていく必要があろうかというふうに考えてございます。

竹内委員 ある程度のデータは私どもも入手をしているわけですが、再稼働できなかったら、ほとんど日本は終わりという感じですよね、経済状況におきましても。本当にどうするのか、深刻な問題になっているわけであります。

 そういう意味でも、先ほどから申し上げているように、客観的な事実を積み上げて、本当に安全性というのはどうなのか、単純な思い込みとか思いつきではなくて、やはりきちんとした事実に基づいてエネルギー政策を決める必要がある、このように思います。

 そこで、原発をすべて停止させた場合のマクロ経済に与える影響について、どのように試算していますか。

横尾政府参考人 エネルギー不足、とりわけ電力不足が日本経済に与える影響でございますが、企業の生産活動ないし家計の消費活動の低下等が懸念されてございまして、民間機関の試算でございますが、我が国のGDPを一定程度押し下げる可能性があるということで、例えば、日本経済研究センターではマイナス一・六%程度の押し下げ効果、あるいは日本総合研究所でも同様の押し下げ効果があるというふうに試算してございます。

竹内委員 原発のエネルギーが電力の中に占めているシェアは現在三〇%ぐらいだというふうに言われているわけですけれども、それが再稼働できない場合は本当にその程度で済むのかどうか、非常に心配をしております。

 今回の大震災は非常に不幸なことで、本当に心からお見舞いを申し上げる次第でありますけれども、しかし、逆に、こういうピンチをチャンスに変えないといけないというふうに思うんですよね。そういう意味では、復興需要というものが今後出てくるわけでありますから、先日来申し上げているとおり、もしも供給力がきちんとしておれば、やはり復興需要とともに経済が成長して、いよいよデフレからようやく脱却できる可能性がある、このように思っておったんですけれども、そこで、菅総理のエネルギー政策が非常に混迷をしているというふうに思われるものですから、そういう意味では、ますます経済の先行きは不透明になってきたというふうに思うんですね。

 需要は盛り上がってくるけれども、電力がないから日本で投資ができない。産業、サプライチェーンを初め、さまざまな商品をつくって復興需要のために充てようと思っていた企業はたくさんあると思うんですよ。ところが、結局、電力がないから日本で生産できないということですよね。ということは、日本での投資ができない、それに関連する消費もふえない。当然、これは、先ほどからお話があったように海外へ行ってしまうというようなことで、せっかくのチャンスがあるにもかかわらず、日本は、片方で盛り上がりながら片方で沈んでいく。こういうことで、日本全体としては、いつまでたってもデフレ状況を脱却できない状況が続くのではないかなというふうに思うんですね。

 そこで、次の質問に移ります。

 これも前回も質問いたしましたけれども、復興会議の提言、そして第三次補正の財源ということで、報道等によりましても、十兆円程度の増税案というのが報道されている。これを五年から十年で償還するという話ですけれども、先日申し上げましたように、私どもは、もう少し緩やかに考えてもいいのではないかと。

 例えば、具体的に申し上げますが、十兆円を仮に二十年で償還するとすれば毎年五千億円ぐらいでいいわけでありますから、五千億円ぐらいであれば、法人税といいますか、広く税率を引き上げなくても、ある程度、エネルギー関係とか、さまざまな工夫によって課税の仕方を考えれば、十分、五千億円程度の財源は積み立てられるんじゃないかなというふうに思うんですよね。ことしの税制改正案、政府案を見ても、そんなに国民に迷惑をかけずにその財源は十分確保できるのではないか、このように考えておるんですが、財務大臣はいかがですか。

野田国務大臣 今月中に復興の基本方針を取りまとめるようにという総理の御指示がございました。それを踏まえまして、今の財源の問題も含めて、政府内そして与党内で活発に御議論をいただいている最中でございます。

 その中の焦点としては、その償還期間をどれぐらいに見るのかということも、これは大きなテーマになっています。委員の御指摘のような御意見もございます。ある大先輩は、千年に一度なのだから償還期間五百年だったらどうかと、極端な御意見もございました。一方で、復興のつち音が聞こえるときに、国民の連帯意識が高まっているときに償還をすべきではないかという御議論等々、いろいろな御議論が出ているというところでございますが、例えば復興構想会議の提言ですと、「国・地方の復興需要が高まる間の臨時増税措置」という位置づけの提言も出ています。こういうさまざまな観点から、結論が出るように努力をしていきたいというふうに思います。

竹内委員 その辺、よく考えていただきたいというふうに思います。

 復興構想会議の提言では、「被災地以外の地方公共団体の負担にいたずらに影響を及ぼすことがないよう、地方交付税の増額などにより確実に財源の手当てを行うべきである。」このようにあるわけであります。一見もっともなんですけれども、一方で、構想会議の提言では、「今を生きる世代全体で連帯し、負担の分かち合いにより確保しなければならない。」このようにもおっしゃっているんですね。

 だから、今を生きる世代というのは、中央もあれば地方もある、被災地もあれば被災地以外のところもある。そういう意味では、ある程度、被災地以外の地方もやはりそれなりに努力をしていただく必要があるんじゃないのかと私は思うんです。

 いつも地方は、全部、地方交付税の要求ばかりする、それでないと我々はやっていけないということばかりおっしゃる、一方で、地方分権だということで、自立だ、自主独立だとおっしゃる。非常に矛盾していると思うんですよ。

 こういう被災地が大変なときなんですから、国も努力をしますけれども、被災地以外の地方もそれなりにやはり御負担を甘受していただくという発想、考え方が必要なのではないかなというふうに思うんですね。そういう意味での努力をすべきではないかと思うんですが、財務大臣、いかがですか。

野田国務大臣 全く同感です。

竹内委員 それはやはり、同感しているだけじゃなくて、具体的にアイデアを出して行動していただきたいんですよね。そして地方を、なかなか、うるさ型というか、勢いのある知事さんが多いですから、そういう方々を説得していただくというふうに、ぜひリーダーシップを発揮してください。

 そこで、次に移りますが、子ども手当の話に参ります。

 現在、直近、三党の幹事長、政調会長の間で調整されつつある案があります。財務大臣も御存じだと思います。財務大臣としては、直近のこの提案についてどのように考えていますか。

野田国務大臣 今週の水曜日の三党の実務者協議におきまして、民主党の城島議員から、ゼロから二歳まで一・五万円、三歳から小学生、これは一万円、このうち第三子以降は一・五万円、中学生一万円、所得制限世帯については、所得控除の廃止による減収に対する必要な税制上、財政上の措置を検討するなどを盛り込んだ見直し案を提示されました。

 実務者間でそのすり合わせが終わり、今は、委員御指摘のように、政調会長あるいは幹事長、政治判断を伴うところのレベルでどういう合意ができるかというところを注意深く見守っていかなければいけない段階だというふうに思っています。私は、各党間で早期に合意をされることを強く期待したいというふうに思います。

竹内委員 それで、年金積立金の流用が二・五兆円ありましたけれども、これはどのようにするおつもりですか、財務大臣は。

野田国務大臣 これは、第一次補正の財源として、震災対処の財源にさせていただきました。その後、法律の改正が行われて、二十三年度の国庫負担割合は二分の一であることを明記すること、二十三年度の二分の一と三六・五%の差額は税制抜本改革により確保される財源を活用して年金財政に繰り入れることということになっています。

 これは基本だというふうに思いますけれども、それについては、これも三党合意の中で、当時、言葉は二次補正と書いておりましたが、本格的な復興予算を検討する際に、例えば復興債を充てるというようなことなども含めて検討するということがあったと思います。今これも、これは政調会長レベルだと思いますが、三党間で御議論をいただいている最中だというふうに思います。

竹内委員 党任せではなくて、財務大臣としても、やはり党に対して、こうしてもらいたいとかこうすべきであるとか、そういうことを発言なさった方がいいと思うんですよね、責任者ですから。

 その意味で、さらに、三党合意の中では、子ども手当以外の歳出削減努力もするというふうに書いてあるんですね。そういう歳出削減努力はどのようになされていますか。

野田国務大臣 マニフェストの主要項目については、今、子ども手当の御議論がございましたけれども、こういう形で三党間の合意を踏まえて御議論いただいている最中です。

 加えて、そのほかの歳出削減についても、例えば、復興財源を確保する際にも、あるいは来年度の予算案で、当然のことながら、社会保障は自然増が出てくるわけですから、それをのみ込むための歳出削減等々も含めて、これは不断の努力でやっていかなければいけないというふうに思っております。

竹内委員 これで最後にいたしますが、我々は、党においてもさまざまな提案もしておりますし、この審議も積極的にやりたいというふうに思っております。あとは政府と与党がしっかりとまとめていただくしかないという感じなんですよね。事態がもうそこまで来ている。その意味で、我々は、積極的にこの審議に協力をしていきたいということを最後に申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 公債特例の審議に入っているわけですけれども、なぜこの法案の審議の再開が行われているかといいますと、自民、民主、公明の三党の実務者の間で一定の合意があった、こういうことなので審議を進めたいということで進んでいるということらしいですね。

 そこで、その合意というのはどういう内容なのか、まずポイントを説明していただきたいと思います。

野田国務大臣 七月二十七日の三党の実務者協議におきまして、我が党から、ゼロから二歳一・五万円、三歳から小学生まで一万円、このうち第三子以降一・五万円、中学生一万円、所得制限世帯については、所得控除の廃止による減収に対する必要な税制上、財政上の措置を検討する、こうした内容を盛り込んだ見直し案を提示させていただきました。

 合意に至ったかというと、必ずしもちょっと、それぞれの実務者のコメントが違うんですが、すり合わせは終わった、すり合わせをしたということでございまして、先ほど申し上げたとおり、この後は、政治判断も含むレベルになってくるということで、政調会長クラスの協議が始まるものというふうに認識をしています。

佐々木(憲)委員 城島さんの発言によると、実務者のすり合わせの合意内容だ、そんな発言をしておりますので、合意したのかなと思ったんです。

 それで、今回は、所得制限について、その前は一千万円だったんですが、さらに下げて八百六十万円、こういうふうにされているようであります。児童手当並みの数字になったということなんですね。二週間前には一千八百万円だったのが、どんどん下がっていってそうなったと。

 この八百六十万という数字は、民主党の側から提案した数字なのか、それとも自民党、公明党の側から提案されたものなのか、どちらでしょうか。

野田国務大臣 八百六十万円については、民主党の側から見直し案として提示をしたというふうに聞いております。

佐々木(憲)委員 それで、所得制限の対象になる世帯、その前の段階では九千円の一律配分という話でありましたが、これは同じなんでしょうか。もうなくなったんでしょうか。

野田国務大臣 民主党で提示をした具体案の中には、所得制限世帯における所得税及び住民税の扶養控除、所得控除の廃止による減収に対する必要な税制上、財政上の措置を検討し、平成二十四年度から所要の措置を講じるものとする、なお、当該措置は、所得税率二〇%の者に係る従前の所得税、住民税の扶養控除による軽減額相当額を目途とするという表現で出てきております。

佐々木(憲)委員 要するに、増税分を解消する、そういう水準で手当てする、こういうことですね。

野田国務大臣 そういうことでございます。

佐々木(憲)委員 それは、配分によって解消するというようなことなのか、増税分を減税することによって解消するのか、どちらでしょうか。

野田国務大臣 それは、今後の検討ということだと承知をしています。

佐々木(憲)委員 これは、どちらをとるかによって、この制度の性格が変わってくるということだと私は理解しております。手当の延長線上でこの増税分の解消というものを配分するとしますと、それは子ども手当の理念の範囲内におさまる。しかし、その増税分を減税によって解消する、こういうことになりますと、この分は子ども手当から離れて児童手当に近いものになる。

 ですから、ここは玉虫色になっているのではないかと思うんですが、五十嵐副大臣、どう思いますか。

五十嵐副大臣 一部分、おっしゃるとおりだと思います。所得の高い層だけ減税するという話になりますので、全体的な制度設計が変わってくる、そう思います。

佐々木(憲)委員 ですから、まだこれは合意といっても固まってはいない、先ほどすり合わせをしたものであると言われたのは、そういうことだろうというふうに理解をしたわけであります。

 そうしますと、これをこれから政調レベルに引き上げて、その段階でさらに合意するのかしないのか、どういう中身にするのか詰める、そういうことになると思うわけです。

 石破政調会長は、報道によりますと、合意という報告は受けていないということで、所得制限も高いという発言をされている。それから、公明党の幹部も、実務者案で最終合意しないだろうと言っているわけですね。

 したがって、今回の三党の実務者のすり合わせの内容というものは、そこの中身が固まってきちっと整理されたわけでもない。それを政調レベルでもこれからの検討ということですから、合意されるかどうなのかということがまだはっきりしない。三党の間の、最終的には幹事長レベルになるんでしょうか、そういうところにも行くかどうか、それもまだわからない。そういうレベルのものだという理解でよろしいですね。

野田国務大臣 協議内容は先ほど申し上げたとおりで、それがいわゆる実務者間の合意という言葉でいいのかというと、先ほどの、我が党でいえば、城島さんの言葉をかりれば、すり合わせということだったというふうに思います。

 そのすり合わせの段階から、一定程度政治判断が求められる段階になってまいりますので、基本的にはその上、やはり政調会長レベルの御議論、御協議がこれから実務者レベルの議論をベースにしながら行われるだろうというふうには認識をしております。

佐々木(憲)委員 私は、今の協議の中身を聞いて、あるいは報道を見ておりますと、これは民主党自身の掲げてきたものの魂がどんどん抜けていって、何かもぬけの殻になってきているんじゃないかな、こういう感じを持っているわけです。

 これは公債特例との関連で取引が行われているということだと思うので、私は、本来国民に対する約束というものはそう簡単に、何かを通すためにこの中身を全く換骨奪胎するようなやり方というのは果たしてどうなのかなと。それは、自分の党ではありませんので、民主党の話ですから、民主党自身の判断だろうと思いますし、民主党の中でもいろいろな議論があるんじゃないか、そういうふうに思っております。そう簡単ではないというふうに思います。

 私は、国民の利益をまず第一にというなら、そこから出発した政策的なすり合わせというものが行われるべきだ、こういうふうに感じております。

 次に、復興財源の問題ですけれども、今、法人税と所得税というのが対象になるという報道がされておりますけれども、場合によっては、たばこ税ですとか酒税ですとか、そういうようなものも対象になると。何かおやじ狩り増税じゃないかという話まである、そんなことをやゆされているような事態でもありますが、これはどういう内容を今検討対象にされているんでしょうか。

野田国務大臣 復興基本法において、復興債の発行については、あらかじめその償還の道筋を明らかにする旨を規定しております。

 これを踏まえて、復興の基本方針を策定する中で、復興財源のあり方についても検討しておりますけれども、復興財源はいろいろな御議論がありますが、具体的な税目の話を今やっているということはありません。報道ではいろいろな税目が出てきていますが、具体的な税目をどうするという話までは行っていません。

 もし復興財源に臨時の税制上の措置をとるということならば、それは政府税調で議論をすることになりますし、そのときからその本格的な税目の議論になりますが、現段階で何かを見定めてやっているということはありません。

佐々木(憲)委員 私は、税目を検討する場合には、負担能力のあるところにきちっと負担をしてもらうという角度でやらなければならないというふうに考えておりまして、例えば法人税の増税というようなことを検討されているようですけれども、これは大手企業の利益に対して、黒字の企業に一定の負担を求めるというのは当然あっていいと思うんですよ。それから、これは延長しましたけれども、証券優遇税制はもうやめて、もとに戻して、きちんと払ってもらうというようなこと、庶民負担にできるだけさせないような、つまり現地の被災者に負担を負わせるような形での増税ではなくて、別なやり方を考えなければならない、こういうふうに思っております。

 それで、連結納税制度の話ですけれども、実は、大企業に対するいろいろな減税措置の中に連結納税制度というのがあります。これはグループをつくっている大手企業の中で、その個別企業の中には赤字の企業もある、黒字の企業もある。以前は、赤字企業は税を払わない、黒字企業はその黒字に応じた税金を払っていたわけです。それを相殺して、全体としてグループとしての赤字を相殺して黒字分を課税対象にする、そういう制度にしたものですから、これは非常に大きな減税になってしまっているわけです。私は、これこそ大企業優遇税制の典型であるというふうに思っているところであります。

 平成二十一事務年度の申告状況から計算いたしますと、二兆一千十一億円の所得が軽減されている。そのために、約六千三百億円の減税となっていると思いますが、間違いありませんか。

古谷政府参考人 国税庁の調査によりまして、御指摘のとおり、連結納税制度による所得の減少額は二兆一千十一億円でございます。それに二十一年度に適用されておりました基本税率三〇%を掛けますと六千三百億円ということで、御指摘のとおりの計算だろうと思います。

佐々木(憲)委員 例年十月に国税庁は、○○事務年度における法人税の申告事績についてという、その年度の法人税の事績を公表しております。ところが、昨年十月公表の、平成二十一事務年度における法人税の申告事績についてによりますと、連結法人数の状況、連結法人の申告の状況がそれまで載っていたんですけれども、これが欠落しているんですよ。なぜ公表事項からこれを除いたのか、私はおかしいと思っているんですが、その理由を説明していただきたい。

野田国務大臣 平成十四年度の税制改正により導入された委員御指摘の連結納税制度については、制度導入後の申告の状況等について国民各層に情報提供を行うとの観点から、平成十五年から法人税の申告事績の記者発表の際に、連結法人の申告状況等についても公表してきたものと承知をしています。

 昨年の記者発表においては、制度の導入から一定の年数が経過したことから、制度が定着したものと考え、御指摘の連結法人の申告状況等については発表資料に含めなかったものと承知をしています。ただし、記者発表の内容については、今後検討することになりますけれども、発表内容とは別に、御指摘のような資料については御要望があれば提出をしたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 定着したからもう表に出さなくていいというのはおかしいと思うんですよね。定着しても、その前のものと比較してどういう現状になっているかを国民に明らかにする、これは透明性を確保するという意味では当然必要なことなのです。民主党は透明化法案というのを出しましたよね、税制に関して。その趣旨も、国民に実態を明らかにするということが目的で、できるだけ詳細な中身を公表するというのが原理原則だったはずであります。

 だから、私は、最初から出さないというんじゃなくて、前と同じように出す、せめてそのぐらいやるのは当たり前じゃないですか。大臣、これからそういうふうにしてくださいよ。

野田国務大臣 先ほど申し上げたとおり、別に隠すつもりではなくて、例えば御要望があった記者さんにはお配りをしましたし、佐々木先生にも資料を提出したと思うんですが、次の十月の記者発表の際には、佐々木委員の御指摘も踏まえ、適切に検討させていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。

石田委員長 次に、三村和也君。

三村委員 財務金融委員会で今通常国会二度目の質問に立たせていただくことになりました。機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 前回の質問の際にも申し上げましたけれども、この日本という国の、国家のマネジメントという観点からは、今我が国の財政は、非常に残念なことに収入の四割を国債に頼っているというのが現状でありまして、この四割の赤字国債の発行を可能にするという特例公債法が、今年度が始まって約四カ月ですけれども、四カ月経過してもなお成立をしていないというのは異常な事態であります。この特例公債法の成立ということは菅総理の辞任の三条件の一つにも挙げられていますけれども、総理がやめようがやめまいが、国会に身を置く私たちの責務として、成立させなければいけない法律であると考えています。

 その特例公債法の審議の再開にたどり着いたということで、石田委員長、また山本幸三先生を初めとして与野党の理事の先生方の御努力に大きな敬意を表したいと思います。

 さて一方で、四十兆円を超える国債を毎年新規で発行しているというのは、だれが考えても異常な事態でございます。さらに、今後五年間で、東日本大震災の復興のために、政府は十九兆円という数字を出しましたが、約二十兆円規模の事業費が必要という事態になっているというわけであります。私たち政治に身を置く者として、政治というのは、東日本大震災からの復興のために、全力で最大限のことを、できる限りのことをすべてしなければいけないということはありますけれども、一方で、震災があったからといって、野方図に借金をふやしていいというわけでもありません。この莫大な財政赤字を引き継いで政権を担っている私たちは、財政再建についても逃げずに真正面から取り組まなければいけないということであると思います。

 そこでまず、きょうは最初に、財政再建について伺いたいと思います。

 中期財政フレームの件であります。年央にことしも改定をするということになっていますが、これは震災の復興の関係でおくれておりますけれども、この中期財政フレームでは、遅くとも二〇一五年までにプライマリーバランスを、二〇一〇年度から半減する、遅くとも二〇二〇年度までにプライマリーバランスを黒字化するということになっています。率直に申し上げて、今の経済状況では、この目標を達成することは極めて厳しいという状況があると思いますけれども、いずれにしても、これは政府として堅持をしなければいけないということには変わりないと思っています。一方で、先ほども申し上げたように、震災復興がある。震災復興に大きな予算を、これから五年間で事業費で約二十兆円かかるということがあるわけです。

 最初に、この震災復興に係る予算と財政再建、中期財政フレームということの関係について、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 財政に対する危機意識という点においては、私も三村委員と全く問題意識は同じでございます。

 かつて、アメリカの第三代大統領のトマス・ジェファーソンは、子供たちにたくさんの借金を残すような財政運営は詐欺と同じであると言ったことがあります。この言葉をかみしめなければいけないだろうと思います。もちろん家計も国も、一定の範囲の中で借金をしながら運営するということはあり得る話ですが、最近は、三十兆、四十兆と当たり前のように借金をすることが常態化しているという状況は異常だろうと思います。

 その意味からも、昨年の六月に財政運営戦略をまとめて、おっしゃるとおり、二〇一五年までにプライマリーバランス、対GDP比を半減し、二〇二〇年までに黒字化する、そういう戦略目標を掲げました。

 それを、今御指摘いただいたように、三年ごと、三年見通しの中期フレームを年央に見直しするという作業は、これは本来は、年央ですから、もうそろそろ年の半ばでございますのでやらなければならないんですが、今回は、復興のための基本方針とその財源の話もあります。その議論を終えた後に中期フレームの改定についての結論を出していきたいと思いますし、中期フレームがないと来年度の予算編成の基準がないものですから、そういう作業を速やかに進めていきたいというふうに思っております。

 これは、やはり大震災があったから財政規律を緩めていいという話ではなくて、さまざまな国際会議にも出ておりますが、むしろ、震災以降、日本に立ち直ってほしいけれども、その一方で財政規律は緩まないのかどうかということを非常に注視しているということを私どもはかみしめながら対応していかなければいけないだろうというふうに思います。

三村委員 ありがとうございます。

 震災復興をするということと財政再建というのは非常に両立が難しい問題だとは思うんですけれども、ぜひとも野田大臣に主導していただいて、この難しい財政運営を進めていただきたいと思います。

 その財政再建なんですけれども、この委員会でもよく議論をされていますけれども、財政再建のために何をしなきゃいけないか。もちろん、増税が必要ということもあるんですけれども、増税よりも、経済成長をする、経済成長をすることによってGDPをふやすということが財政再建に効果が大きいということは、これは経済学的に正しいと思うんですね。だから増税は必要ないんだと言うつもりは私はないんですけれども、増税を否定するわけではないんですけれども、成長戦略がより重要である。増税する、増税すると言うんじゃなくて、成長戦略を政府として真摯に、真剣に取り組まなければいけないということは正しいと思うんですね。

 そこで、ぜひ、私から言うのもなんですけれども、次期総理の呼び声も高い野田大臣に、野田大臣の考える中長期の我が国の成長戦略について、その一端でも御披瀝をいただきたいと思うんです。よろしくお願いします。

野田国務大臣 ちょっと今一定の前提がありましたが、それは別として、お答えをさせていただきたいというふうに思います。

 御指摘のとおり、成長と財政健全化の両立は必要です。だから、昨年の六月、さっきは財政運営戦略のお話をさせていただきましたけれども、新成長戦略も同時に閣議決定をしています。まさに成長と財政健全化の両立を図っていこうというのは、私どもの基本的な姿勢でございます。

 その新成長戦略については、大震災があって、今、さまざまな見直し、工程を見直さなければいけない、内容も見直さなければいけない。例えば観光立国的なものがあったけれども、今、観光は非常に厳しい状況ですね。そんなものを踏まえて政策の推進方針の見直しを今やっているところでございますので、政府の一員でございますので、その新成長戦略のバージョンアップというものを全体でやはりつくり上げていかなければいけないと思います。

 ただ、あえて私見を言うならば、今回はエネルギーの問題が大きな問題になってまいりました。そのときに、例えば自然エネルギーをこれからどんどんと大々的に普及していくという観点を、これはどなたも反対はしないだろうと思うんですが、こういう困難なエネルギー状況の中で、むしろ革新的な技術革新をどうやって果たしていくか。それによって産業と雇用というものが生まれてくるのではないかというふうに思います。

 ボトルネックを乗り越えることによって、そのことによって革新的な技術を発明するというのは日本は得意でございますので、その分野にむしろ集中的な投資をすることが必要ではないか。例えば太陽光であるとか風力であるとか、そういうものをきちっと蓄電できるかどうかが大事だとすると、スマートグリッドの話であるとか。

 同じようなことをエピソードで申し上げると、関東大震災の後に豊田佐吉翁が、まさにトヨタ自動車の、あのトヨタの創業者でありますが、蓄電に注目をされておりました。蓄電の技術開発をぜひやろうということで、御自身で、だから一九二四年ですか、百万円の寄附をされています。百万円ということは、今でいうと数十億円だと思います。その条件は、発明者は日本人に限るということでした。蓄電の技術をつくることによって世界に冠たる工業国家をつくっていこうということですね。私は、こういう発想が必要ではないかなというふうに思っております。

三村委員 ありがとうございます。

 続いて、復興財源の話に移りたいと思うんですが、今、党で復興財源について、増税でやるのかどうするのか、国債でやるのか、埋蔵金をやるんじゃないかといったような議論が盛んに行われております。

 私は、復興に要する資金は超長期でバランスをするというのは正しいんだと思いますけれども、やはりお金に色はついていないので、この厳しい財政を引き継いだ中で、約四十五兆円の国債を毎年新規に発行しているという厳しい財政状況にかんがみれば、さらなる資金を補うために臨時の増税を考えるというのは、責任政党として、やはり政府としては真摯に考えなければいけないというふうに思います。

 そこで大臣に、実は二週間前ですか、七月の十六日に、私の選挙区は横浜なんですが、横浜にお越しをいただいたんですね。それはある経済団体のシンポジウムだったんですけれども、そこで、先ほど佐々木委員からの質疑にもちょっと出ましたけれども、たばこ税とか酒税というのは税制を通じたおやじ狩りみたいなものだというような御発言が報道されて、それを、野田大臣はたばこ税とか酒税の復興財源としての増税に否定的な見解を示したという報道がされたんですが、私は、多分大臣はそういった文脈でされたわけでもないし、特に特定の税目を挙げて、これは増税すべきだとかすべきでないということをおっしゃったわけではないと思うんです。

 そこで、改めてこの場をおかりしてお伺いをしたいんですけれども、先ほどの佐々木委員との御議論でもありまして、なかなか具体的なことはおっしゃれないと思うんですけれども、臨時増税とか復興財源のあり方について、具体的な税目をどうこうというよりも、そのあり方についての大臣の御見解を教えていただきたいと思います。

    〔委員長退席、鷲尾委員長代理着席〕

野田国務大臣 やはり議論の基本になるのは、本当に各党の御賛同をいただいて成立した復興基本法だと思うんです。これはみんなで賛成して通したわけですから、その法律の趣旨にのっとった対応をすることが基本ではないかというふうに思います。

 その復興基本法においては、復興関連以外の施策に係る予算の見直しによる歳出の削減や財投資金及び民間資金の積極的な活用を図ること等により資金の確保に努めるとともに、これが大事なことなんですが、あらかじめ償還の道筋を明らかにした上で復興債を発行するということになっています。その復興債を発行するための道筋の一つとして、どういう税目を充てていくかという議論はこれから大事な議論だというふうに思っておりますし、この法律に基づいて、各党の御意見も伺いながら検討を進めていきたいというふうに思います。

三村委員 ありがとうございます。

 続いて、来年度予算編成についてに話を移したいと思います。

 震災が三月にありまして、一次補正がゴールデンウイークに成立をした。先日、二次補正が成立をしたということで、またさらに三次補正という指示が出ているようですけれども、私も役人をやっていましたけれども、一年で三回、補正予算を編成するというのは大変な作業だと思うんですね。多分、財務省の主計局もそれから各省も、年がら年じゅう予算編成作業をやっている。これは極めて大変な作業であると思うわけですけれども、一方で、来年度予算の編成を当然しなきゃいけないわけで、本来であればというか、そもそもは、大体、霞が関の年中行事のスケジュールでいうと、八月三十一日が概算要求の締め切りになるということなわけですね。

 私は、もちろん、一次補正で応急の措置を、例えば仮設住宅とか瓦れきの撤去とかということをやらなきゃいけない、それから二次補正で原発事故対応でいろいろなことをやるといって、またさらに三次補正も必要だと思うんですけれども、本来は、やはり来年度の本予算を真の復興にシフトした予算編成として、この政権で正面から取り組まなければいけないと思うんですね。

 この復興シフトの予算というのは、私たちが、政治家として、政治として、復興に向けて全力で取り組む、できることをすべてやるということと同時に、一方で、復興にシフトしなければいけないから、その他のところを削る。もちろん必要なものもあるかもしれないけれども、その他の政策分野の予算をできる限り切り詰めるということは、私は、来年度本予算で正面から取り組んでいかなければいけないということだと思うんですね。つまり、復興と財政再建を両立させる予算編成というのを来年度本予算でやらなければいけない。その編成作業も、まさに今やらなければいけないということだと思うので、その意味では、その編成作業にこそ財務省、財務大臣のマンパワー、力を注力していただきたいと思うんです。

 来年度予算編成は、先ほどの御議論の中でも、中期財政フレームを改定して、その上で編成方針を出すということになると思うんですけれども、中期財政フレームで大枠を決める、上限を決めるということだけでは私は足りないと思っています。大枠を決めた上で、やはり各省、各分野ごとにめり張りをつけて、各省の予算編成の作業の前に、いわゆる昔あった骨太の方針というか大臣としての方針を決めて、この分野は減らす、この分野はここまでだというような方針を、各省が予算編成の作業に着手をするできる限り前に示すということが私は必要であると思うんですね。

 そういう意味では、三次補正の予算編成の作業もあって大変だと思うんですけれども、それと並行して、今からぜひともそういった検討を、財務省内でもされていると思いますけれども、より積極的にしていただきたいと思うんです。そういう意味で、来年度予算編成に向けての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 御指摘のとおり、実務的にはずっと、ことしに入って、予算をつくるという作業が続いてまいりました。こういう事態、状況ですからやむを得ませんけれども、私も、二十三年度の本予算と第一次、第二次補正予算と、三回も財政演説をするというめったにないことを経験させていただきました。

 その上で、今、復興の基本方針を今月中にまとめて復興財源についても見通しを立てるということを踏まえて、あるいは被災地における防災計画なども踏まえて、第三次補正予算の作業を速やかに進めていきたいと思いますし、この第三次が本格的な復興予算でございますので、それを早期に成立させられるように、早く国会に提出できるように頑張ります。

 あわせて、委員御指摘のとおり、中期財政フレームを改めて改定し、その中で歳出の大枠を決める。そういう枠組みができて初めて大事な来年度の予算編成ができるんですが、そのためにも、骨太の方針というお話がございましたけれども、各省から要求を出してもらう前に、組み替えの基準というものをしっかり打ち出すことが大事でございます。その作業も同時にやりながら、来年度予算についても、第三次補正予算の編成とむしろ同時ぐらいのつもりで準備をしていきたいというふうに思います。

三村委員 政治状況というか政局的な動きも非常にあると思うんですけれども、だれが財務大臣であっても、だれが総理であっても、やはり、来年度予算編成の方針をしっかり、この時期にというか、多分、今でも若干おくれているというのがあるんですけれども、この時期に決めておくということは、国家の運営上極めて大事な、重要なことだと思いますので、ぜひともそのことを進めていただきたいと思います。

 財務大臣に最後にちょっと円高について、一番最初の齋藤議員の議論でもあったんですが、私からも一問だけお伺いをしたいんです。

 一ドル七十七円という高水準である。これはドル安という側面も確かにあると思うんですけれども、いずれにしても、輸出企業を中心に、日本企業にとっては痛恨の事態だと思います。

 これまでも介入の御努力をされていると思うんです。震災の直後にも協調介入をされたというわけですけれども、やはり協調介入であっても介入の効果というのは限定的であるというのが、今の一ドル七十七円とか八十円を切る水準の円高という状況がその証左だと思うんですね。根本的には、日本がデフレで、日本円の貨幣の価値がこの二十年間非常に上がっている、高どまりをしているということが根本的な原因であって、やはりこの円高の是正のためにも金融政策をより積極的にやらなければいけないということであると思うんですね。

 山本幸三先生はまたいらっしゃらなくなっちゃいましたけれども、山本先生の御議論をいつも傾聴させていただいております。日銀による国債の直接引き受けということまでいかなくても、もちろんそれは最終的にあるかもしれませんけれども、そこまでいかなくても、例えば銀行券ルールというのがありますけれども、それを超えて市中の国債を日銀が保有するとか、そういう方策は幾つもというか、やはりまだまだできることはあると思うんです。

 この円高という観点から、日銀の政策ということに限らず、この円高に対する対策ということについて、そういう金融政策も含めて、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 私、財務大臣になって、昨年の九月に六年半ぶりの単独介入をやりました。ことしの三月、大震災発災の一週間後に十一年ぶりの協調介入を行いました。そういう、為替に本当に真剣に向き合い、取り組むという運命なのかなと思う時期に、また一方的な動きが出てきています。

 当然のことながら、一時的には介入というのは私は一定の効果があると思うんです。ただ、これは、為替の過度な変動であるとか無秩序な動きということで、水準の話ではなくて、やはり対応するということが基本だろうと思います。

 本格的な対策というのは、これはデフレとの関連、私も同じように強くあると思います。だとすると、金融政策でできること、加えて、例えば、これは雇用労働政策にもかかわる部分があると私は思います。そういうものをパッケージとしてしっかり実行することが大事ではないかというふうに思います。

三村委員 ありがとうございます。

 野田大臣、お忙しいと思いますので、これで大臣への御質問は終わりますので、どうぞ御退席をいただければと思います。

 それで、きょうは国交省の小泉政務官に、済みません、先ほどの来年度予算編成の関係で国交省への御質問をお願いして、お越しをいただいて、ありがとうございます。

 最近、ワイドショーでUターン族というのが取りざたをされています。このUターン族というのは、先生方御承知かと思うんですけれども、東北地方の高速道路のみを無料化した、被災地の方と、また被災地を通るトラックを無料化しているという制度であります。

 この制度があるので、東京から九州方面に行くトラックが、東北地方、水戸まで入っているので、東京から水戸インターを経由して九州に行くとほぼ無料で高速が通れてしまうということで、わざわざ水戸まで東京からトラックが行って、そこでUターンをして西日本方面に行くという問題なんです。このトラックの運転手の方々は制度の趣旨に反してこの制度を利用しているというものの、これは違法ではないわけですね。やはり制度に問題があるというふうに思うんです。

 先日、数日前に、国交省の方でも、これはしっかり対応するということを会見でおっしゃられていたと思うんですけれども、この問題に対しての対応をどういうふうにされているのか、政務官にぜひお伺いをしたいと思います。

    〔鷲尾委員長代理退席、委員長着席〕

小泉大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今回のトラック、バスの無料開放は、御案内のように、甚大な被害を受けました東北地方の一日も早い復旧復興のために緊急で実施をさせていただいたものであります。このため、料金システムの改修によらずに、東北以外の走行分も無料としているところであります。

 ただ、今委員御指摘のように、この復旧復興支援という趣旨に反してインターチェンジでUターンをするなどの行為が、現実に、今調査しましたら約一四%ほどあるという報告をいただいております。これはやはり看過できない行為でありますので、このため、現在、Uターン禁止の規制や生活道路への進入を抑制する看板を設置させていただいておりますとともに、業界団体を通じまして、Uターン走行を行わないよう全国のトラック事業者に周知徹底等の対策を具体的に講じているところであります。

 引き続き、現地において状況を調査し、必要な対策を講じてまいりたいと思います。

三村委員 ありがとうございます。

 ぜひともしっかりとした対応をしていただきたいと思います。一四%がそういった利用ということでありますので、しっかりと対応をしていかなければならないと思います。

 この問題をなぜ取り上げたかというと、これは被災地のためではあるけれども、これにも予算がかかっているから、被災地のためによかれと思ってつくった制度で弊害が出ているのであれば、それはまた直す、修正をするということも恐れずにやっていいし、厳しい財政状況の中で、より復興の事業に予算を回すためには、来年度以降はこの制度はどうするのかというのを考え直さなきゃいけないんじゃないかという問題意識で取り上げさせていただいたんですけれども、私も不勉強で、この東北地方の高速道路の無料化というのは、予算がかかっていないんですね。予算措置はないということでありました。

 ただ、当面は、これは輸送のトラックがことしの八月末まで、また被災地の方の利用の無料化は六月から始めて一年間、来年の六月ということをお伺いしていますけれども、これを今後もずっと続けていくということになると、これは東日本高速道路株式会社、NEXCO東日本が実質的にはその負担をしているということであって、予算措置も生じるわけですので、やはり過大な負担が生じないように留意をすべきではないかと考えます。

 今後、今の、ことし八月まで、また来年六月までという制度が終わった後の運用というか制度についてはどのようにお考えなんでしょうか。

小泉大臣政務官 今お尋ねいただきました点でございますけれども、今後の取り扱いにつきましては、あくまでも、やはりまず、歴史的な甚大な被害を受けました被災地域の要望、そしてまた交通状況等を勘案して検討してまいりたいと思っております。

三村委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時五十九分散会


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