衆議院

メインへスキップ



第18号 平成24年8月3日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十四年八月三日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 海江田万里君

   理事 網屋 信介君 理事 泉  健太君

   理事 糸川 正晃君 理事 岸本 周平君

   理事 竹下  亘君 理事 山口 俊一君

   理事 豊田潤多郎君 理事 竹内  譲君

      五十嵐文彦君    江端 貴子君

      小野塚勝俊君    小原  舞君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      岡田 康裕君    小山 展弘君

      後藤 祐一君    近藤 和也君

      中塚 一宏君    中林美恵子君

      藤田 憲彦君    古本伸一郎君

      三村 和也君    森本 和義君

      若泉 征三君    齋藤  健君

      竹本 直一君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    三ッ矢憲生君

      村田 吉隆君    山本 幸三君

      大谷  啓君    菅川  洋君

      玉城デニー君    佐々木憲昭君

      木内 孝胤君

    …………………………………

   内閣府副大臣       中塚 一宏君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      若泉 征三君

   参考人

   (一橋大学国際・公共政策大学院准教授)      國枝 繁樹君

   参考人

   (株式会社大和総研チーフエコノミスト)      熊谷 亮丸君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           土居 丈朗君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  三谷 光男君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     小原  舞君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     三谷 光男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出第二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

海江田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一橋大学国際・公共政策大学院准教授國枝繁樹君、株式会社大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸君、慶應義塾大学経済学部教授土居丈朗君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず國枝参考人にお願いいたします。

國枝参考人 おはようございます。

 一橋大学国際・公共政策大学院の國枝繁樹でございます。

 本日は、私の考えを述べさせていただく機会をいただきまして、どうもありがとうございます。

 それでは、早速説明に入らせていただきます。

 私は経済学者でございますので、政府の財政政策と特例公債の関係につきまして、簡単な式を使って御説明させていただきます。

 どのような政府も予算の制約式というものに沿って財政政策を進めていく必要がございます。その予算制約式をごく単純な形で示しましたのが、そのスライドのページ二と書いてあるものの真ん中にある式でございますけれども、この等式、イコールの右側に、国債費を除く歳出、それから既存の国債に一と利子率を掛けたものがございますが、これは元利償還分ということでございますので、歳出全体に対して、税収等、この中にはその他収入も入ります、そして単純化のために建設国債を考慮しないでおきますと、新規赤字国債でファイナンスをするということになるわけでございます。

 これを、この式から、すぐ次ページでございますけれども、政府が永遠に借りかえができないという前提を置きますと出てまいりますのが次の関係でございます。現在の国債残高というのは、現在及び将来の税収等の現在価値から現在及び将来の歳出(国債費を除く)の現在価値を引いたものにイコールになりまして、すなわちこれは、現在及び将来のプライマリー財政黒字の現在価値ということでございます。

 式で申しますと難しく感じられるかもしれませんけれども、ここで言いたいのは、国債という借金は全て、いずれ全額返さなければいけない、国民の負担の形で返さなければいけないということでございます。残念ながら、現在の我が国の財政政策のままでは、この等号が成立しておりませんので、その意味で、持続可能ではないということになります。

 この単純な関係から言えることでございますけれども、一つは、増税等によってプライマリー財政黒字を実現しないと財政は持続不可能になるということでございます。これは財政黒字でございまして、バランスさせただけでは足りないということでございます。

 それから、改革を先送りすれば、その分、国債残高が増加いたしますので、将来必要となる増税幅は増加してしまうということでございます。

 それから、その負担を負う中で、現在生きている世代が負担していかないと、その分、将来世代が巨額の負担を負うことになります。既に実は負っております。これは財政的な児童虐待ということで学界では呼ばれている状況でございます。残念ながら、我が国は世界で一番財政的に児童を虐待している国になってしまっております。

 それからもう一つ、現在、投資家が日本国債に投資するのは、我が国が、先ほどの式を満たすように、必要な増税等の改革を実施するという信頼があってということでございます。

 今回は特例公債法の審議でございますので、ではその赤字国債が発行できないとどうなるかということでございますけれども、それは五ページでございますが、先ほどの一番初めの式から赤字国債の発行というのがなくなりますので、そこの(3)式にありますような形になります。これが意味しているのは、歳出、国債費を除く部分と国債費を足した部分全体を税収等で補うしかないということでございます。

 ということは、六ページでございますが、赤字国債を発行できなければ、基本的に即時の増税及び歳出削減で対応するしかないということでございます。

 特例(赤字)公債の平成二十四年度一般会計歳入中の割合は四二・四%ということでございますので、仮に特例公債が一切発行できないとしましたら、今ある税金の税率を全て倍近くにするような増税、あるいは歳出を五割以上カットするという削減をしないと、財政が破綻してしまうということでございます。

 したがって、そういったことは現実的でないということだとしますと、赤字国債、特例公債が必要でございまして、その意味で、特例公債法の必要性は明らかというふうに考えております。

 とはいえ、さまざまな要因で特例公債法の審議が難航した場合、我が国の財政の持続可能性が疑われることになりまして、経済に悪影響を与えるおそれがございます。

 このいわば前例といたしまして、ちょうど一年前ぐらいになりますけれども、アメリカの債務上限引き上げのおくれの影響という事例がございます。七ページでございます。

 アメリカには債務の上限というのがございまして、それを超えて債務を負うことはできないわけでございますけれども、それが、アメリカも財政赤字が多々ございますので、その上限に当たってしまう、それ以上になるとアメリカがデフォルトするのではないかというおそれが出てきたわけでございます。

 それにもかかわらず、米国議会の中で、共和党と民主党が、それぞれ党の思惑もありまして対立いたしまして、その債務上限を引き上げるという合意がなかなかつかないという状況がございました。それでこれが大幅におくれまして、八月二日がタイムリミットだったんですけれども、その直前に合意しまして、ぎりぎりで債務上限の引き上げを行うといった事例がございました。

 この結果、やはり、世界の投資家から見まして、米国財政への信認というのが大きく損なわれる結果になりました。八月五日には、スタンダード・プアーズが米国債の格付をトリプルAから引き下げるという事態が起こっております。

 この格付の引き下げについては、適切だったか議論のあるところではございますけれども、しかし、このニュースは非常に大きな衝撃として世界じゅうに伝わったわけでございまして、米国債の格付の引き下げは世界の金融資本市場に大変深刻なダメージを与えたということがございます。これは米国債ショック等と呼ばれているような状況でございます。

 国会での御審議でございますので、もう一つ資料をおつけしております。八ページでございます。

 こうしたことの結果、米国議会に何が起こったかということなんですけれども、その直後に、アメリカにギャラップ社という世論調査で有名なところがございますが、そこで行った世論調査では、議会に対する支持率が、残念ながら、歴史的に最低水準の一三%に低下するという事態が起こっております。不支持率の方は八四%に上るということでございまして、やはり債務上限の引き上げのおくれを招いた米国議会に対する国民の信頼がそのことによって大きく低下したということがわかるかと思います。

 最後でございますが、そういったことを踏まえまして、日本へのインプリケーション、含意でございますけれども、アメリカのような事態を避けるためには、やはり特例公債法への速やかな対応が望まれるのではないかというふうに思います。

 それからもう一つは、これは御提案でございますけれども、特例公債発行が当面の間残念ながら避けられないという状況の中で、特例公債法を毎年制定する形を続けることが望ましいのかどうか、当面の間の特例公債を認めるような法律の制定というのも検討されるべきではないかというふうに思うところでございます。

 簡単ではございますが、私の意見は以上でございます。(拍手)

海江田委員長 ありがとうございました。

 次に、熊谷参考人にお願いいたします。

熊谷参考人 大和総研の熊谷亮丸と申します。

 本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。

 さて、本日、私は少し厚目の資料を用意させていただきましたけれども、時間も限られておりますので、私からは一ページから六ページ目までのみを御説明させていただきます。その後で、先生方から御質問を頂戴した際に、必要に応じて七ページ目以降の資料を用いて御説明申し上げたいと考えております。

 それでは、お手元の資料の一ページ目をごらんください。

 本日、私からは三点ほど申し上げたいと思います。

 まず第一点でございますけれども、財政規律の維持の重要性ということ。この背景といたしましては、今後、日本の経済そして金融環境というのがかなり、三年から五年ぐらいのタームで見たときに激変する可能性がある、これを第一点として申し上げたい。

 それから第二点といたしましては、財政再建に向けた課題でございますけれども、増税、成長戦略そして社会保障の合理化という三本柱をバランスよくやっていくということが必要である、そして、経済成長もしくは歳出カットのみによる財政再建というのは困難であるということを申し上げたいと思います。

 それから三点目といたしましては、非常に世界経済の不透明感がございますので、こういったもの等に照らしますと、特例公債法案の成立が望ましい、これを三点目として申し上げたいと思います。

 二ページ目をごらんください。

 ここでお示ししているのが、日本経済を取り巻く中長期的な環境変化でございますけれども、左が今までの構造。これは六点セットのようなものがございまして、まず、一番左端のところに、資金需要が低迷して金余りがある。第二点として、貯蓄・投資バランスの観点から巨額の経常黒字が存在した。三点目としては、その結果、円高になり、四点目として、デフレになる。そして、金融機関は金余りの状況でございますから、五点目として、非常に低い金利が続いて、ある種の国債バブルのような状況が生じていた。そして六点目として、この結果、財政赤字に歯どめがかかりまして、これがまた貯蓄・投資バランスの面等から経常収支の黒字へとつながっていくという構造でございます。

 その意味では、ゆでガエル構造と書いてございますけれども、カエルが温かいお湯の中に入って、少しずつ温度を上げていくと、気持ちよくてそのままゆで上がってしまう、こういう非常に長期で日本がじりじりと悪くなっていく構造というものがビルトインされていたということでございます。

 これに対して、今後の動きとしては、右側の図表でございます。まず、高齢化による貯蓄の取り崩しが想定される。そして、私どものシミュレーションですと、二〇一五年から二〇年前後にかけて我が国の経常収支は赤字化の可能性が出る。その結果、円安、そしてインフレというよりはスタグフレーションと言われるような不況下の物価高の可能性、そして、長期金利が非常に大きく上がってしまって、財政赤字が本当にもう発散するような状況になってしまう。そういう意味で、今までのゆでガエル構造が、ちょうどオセロゲームがひっくり返るように一気にハードランディングの構造へと向かってくる可能性がある。

 ですから、その意味では、私は、二〇一五年というのが財政再建のある種のリミットであって、ここまでにしっかりとした財政再建の青写真を示し、実行していくということが必要である、こういう考え方をしています。

 三ページ目をごらんください。

 先ほど申し上げました、日本の国債が下落する可能性でございますけれども、この三ページ目の下の部分に書いてございますのが、南欧諸国、ギリシャだとかスペインと比べると、今までは日本の国は二つの面で違っていた。

 第一点目として、彼らは双子の赤字でございますが、日本は経常収支は黒字であった。その結果、第二点として、外国人に国債を持ってもらっているわけではなくて、外国人の保有ウエートはわずか八%しかない。ですから、とりあえず九二%の日本人が日本を信頼する限りにおいては、すぐに国債が暴落する状況ではないということでございましたけれども、この仕組みが、二〇一五年から二〇年にかけて経常収支の赤字化が視野に入ってくる中で、大きく変わってくる可能性がある。

 まず、左上のグラフがイギリスの一九三〇年代の事例、右上のグラフがアメリカの一九七〇年代の事例でございますが、いずれも、経常収支の赤字化が視野に入ってきますと、海外から資金を呼び寄せる必要が出てきますので、長短スプレッド、長期金利と短期金利の差が拡大するような形で、かなり国債の暴落のようなことが起きている。

 こういう観点に照らしますと、私は、やはり二〇一五年前後までにある程度財政再建のめどをしっかりとつけていくということが必要であるという見方をしております。

 第二点としては、今後の財政再建の課題でございます。

 四ページ目をごらんください。

 ここでお示ししているのが、二〇二〇年度のプライマリーバランスのGDP比のシミュレーションでございますけれども、横軸が経済成長率、縦軸が社会保障の伸び率ということで、御注目いただきたいのは、左下の隅の部分に一カ所だけピンク色でプラスの〇・二と、このシナリオだけが、二〇二〇年度にプライマリーバランスが黒字に転換するシナリオです。

 具体的には、三つの条件がございまして、第一点としては、まず、横軸の経済成長については、名目三%の上げ潮の高成長を達成する。第二点として、消費税については一〇%まで上げるということをこの試算では織り込んでいます。第三点として、縦軸の社会保障でございますが、年率四%程度のペースで削っていく。この三つの条件を全て達成したとして、ぎりぎり二〇二〇年度に我が国が財政再建の入り口のところに立てるということでございます。

 現在、消費税増税法案、衆議院で可決をいたしまして、参議院で審議されている途中でございますが、仮にこの法案が成立する方向性ということであれば、私は、消費税の増税までにまだ一年半あるわけでございますので、この一年半の間に、しっかりとした社会保障の合理化と成長戦略、この二つをやっていくということが今後の国民的な課題になるのではないかという考え方をしております。

 五ページ目をごらんください。

 今の点との関連で一つだけ申し上げますと、経済成長をしただけで財政再建というのはなかなか難しい。具体的には、ドーマー条件、名目成長率が長期金利よりも高い、これを満たしていれば、プライマリーバランスだけを均衡させれば自動的に財政収支は改善するわけでございますが、これを実は日本はほとんど歴史的に満たしてこなかった。

 例えば、左のグラフの右上の部分に勝率がございますが、七一年からの四十年間では、ドーマー条件の勝率はわずか二五%しかない。そして、八一年からの三十年に限れば、勝率はわずか一〇%、三十年間でわずか三回しか満たしていないということですし、また、右のグラフでございますけれども、国際的に見ても、七〇年代、金利が自由化する前は、ドーマー条件を満たすというのが一般的であった。ただ、八〇年以降は、金利が自由化しましたので、よほどのバブルでも起きない限りは、このドーマー条件というのは国際的に満たさなくなっているという状況です。

 最後に、六ページ目でございますけれども、ここでお示ししたように、私は、日本経済は復興需要に支えられて緩やかな景気の拡大をすると想定いたしておりますが、ただ、四つほどのリスク要因、ヨーロッパの悪化、原油高、円高、そして原発の停止、これらの、言ってみればいろいろなところに地雷が埋まっているような状況でございますので、こういった下振れリスクを勘案した上で、私は、国民経済の観点から見れば、特例公債法案をやはり通していくということが望ましいと。非常に国民経済に多大な打撃が出てくる可能性がございますし、あわせて、マーケットに対して、日本が国の債務を返済していく意思、またそのことに対するマーケットの信頼をしっかりと保っていくという意味で、この法案の成立が望ましい。やや僣越ながら、ある意味で、これは日本の政治のあり方ですとか信頼そのものに関連する非常に大きな問題ではないかというふうに考えております。

 私からの御説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

海江田委員長 熊谷参考人、ありがとうございました。

 次に、土居参考人にお願いいたします。

土居参考人 慶應義塾大学の土居でございます。

 本日は、本委員会におきまして、私の発言の機会をいただきましたこと、大変うれしく思っております。お手元にございます参考資料に沿いまして、お話をさせていただきたく存じます。

 本委員会で、ただいま特例公債法案が審議されていると伺っております。私の特例公債法案に関する意見は、この二ページ目に書かれているとおりでございます。もちろん、公債発行に依存するような財政状況はできるだけ公債に依存しないようにしていくことが望まれるということではございますが、いろいろな意味で税収が不足する現在の財政状況におきましては、社会保障の給付等々行政サービスのためには、財源を確保するためにやはり特例公債の発行をしっかり法的に担保するということが重要であるというふうに考えております。

 もし特例公債法案が成立しなければ、市中における公債発行が円滑にできないということになります。財務省証券という短期的な資金繰りの債券によって資金繰りを何とかつなぐことはできるというような意見もあるやに聞いておりますけれども、やはりそれは、本来あるべき姿ではないという意味において不適切であり、かつ、予算総則において財務省証券の発行上限が定められているということからいたしましても、それが、年度末までもつというような意味で持続可能であるとは私は思いません。その意味でも、一日も早く特例公債法案が成立することを私は望んでやみません。

 特例公債法案が成立しないということになりますと、国債市場における疑心暗鬼の増幅によって、突発的な国債金利の上昇というものが予期せぬ形で起こるという可能性もあるというふうに私は思っております。

 もちろん、国債金利が上昇するという話は、オオカミ少年とか、いろいろな言い方でこれまでにも言われてきました。私も、財政健全化をしなければいつ国債金利が上昇してもおかしくないということをこれまで述べてきましたが、御承知のように、実際は、国債金利はそこまで上昇したことはありません。

 しかし、全く上昇しないで今後も十年間、二十年間安泰でいられるというような日本経済、日本財政の状況であるかというと、むしろ日々刻々そうでない方向に動いているように私は思います。そういう意味では、今までなかったから国債金利の上昇は今後もないと言い切れるような状況ではないというふうに私は思っております。

 先ほど國枝参考人もお述べになられましたけれども、アメリカの連邦予算の例を引きますと、お手元の資料の三ページですが、昨年の八月の話は國枝参考人のお話にありました。実は、ことしの七月末にアメリカの与野党は既に二〇一三年度に関して六カ月間の暫定予算を可決させる方向で合意しておりまして、ことしは未然に、昨年のような債務上限の危機というものに直面しないように政治的な配慮がなされているということであります。私は、このアメリカの連邦予算の例に沿って、与野党による合意が不可欠なのだろうというふうに思います。

 金利上昇については先ほど触れたとおりでありますけれども、四枚目にその資料を載せておりますが、ますます我が国の国内で国債が消化し切れるというような状況ではなくなりつつあるということであります。

 国債発行は、御承知のように、毎年のようになされておりまして、国債残高は累増しております。その一方で、高齢化ないしは経済の低迷ということも相まって、家計の金融資産は伸び悩んでおります。そういう意味で、いつ国内で消化できなくなるかわからないというような懸念があります。

 もちろん、国内での消化が円滑に行われなくなったということだからといって、いきなり財政が破綻するわけではありません。しかし、国際的な金利裁定がより働く、つまり、海外の投資家が保有する割合がより多くなることを通じて、海外の投資家の影響が日本国債の金利により大きく作用する、その可能性が高まっているという意味では、今までのような状況にはないということだと思います。

 それからもう一つ、日本の財政構造について、利払い費の増加が懸念されます。もちろんこれは杞憂であってほしいわけですけれども、もし国債金利が予想以上に上がった場合に、それがどういう形で財政構造に響いてくるかということで、これは財務省の試算ではありますけれども、経済学的な、より精密な分析でも同様の結果が得られておりますけれども、五ページにありますように、仮に、よい形で経済成長が促されて名目成長率が上がるということがあったとしても、自然増収だけでは、残念ながら、利払い費の増加をカバーできないという日本の財政構造があります。

 これを避けるには、もちろん、無駄な歳出を削減するということによって収支を改善するということ、それから、税制を改革することによって税収を確保する、その二つが不可欠だろうというふうに思います。

 続きまして、七ページに参りまして、ただいま本委員会で審議されております法案の中には、年金特例公債に関する部分もございます。年金特例公債は、まさに、基礎年金国庫負担の財源を確保することとして発行される特例公債ということだと聞いております。

 その法案には、その償還財源を消費税とすること、それから償還期限を明示しているという点では、私はこれは高く評価しております。やはり、財政規律を維持するという観点からしても、財源を明示し、かつ、いつまでに償還する、いつまでも借り続けるわけではないということを内外に示すことによって財政規律を維持する姿勢を政府が示すということは重要なことだろうというふうに思います。

 さらに、当然のことながら、償還財源を消費税とするということであるとすれば、これは消費税に関連する法案も同時に成立するということが不可欠なわけでありまして、二〇一四年度以降の基礎年金国庫負担の財源確保、さらには年金特例公債の償還財源の確保ということについても、二〇一四年、二〇一五年に予定されている消費税増税ということは不可欠だろうというふうに思います。

 もちろん、デフレの中で消費税増税を行うということについては懸念が示されておりますし、増税を行うと経済成長を損ねるのではないかという懸念もあるやに思います。ただ、私が思うには、もはや、デフレが終わるまで増税を待っているわけにはいかないという状況にあるのだろうというふうに思います。

 八ページに記しておりますけれども、経済成長も財政健全化も、これをともに両立させていくという方策が求められるというふうに思います。経済成長を先にするということで増税を後にするというほど、日本の財政状況は強固ではありません。むしろ、増税をしてもなお経済成長が損なわれないような方策というものが不可欠であり、経済成長にまつわる成長戦略も重要なことだろうというふうに思います。

 デフレの中で増税を行えばもっとデフレが深刻になるのではないかという意見がありますが、私は、そうではないというふうに考えております。

 九ページのスライドにお示ししておりますけれども、基本的に、消費税の増税というのは物価を上げるということであります。もちろん、一時的な物価上昇ということですから、消費税増税をしたときだけ物価が上がり、消費税増税をそのまま据え置いた次の年には物価の上昇はなくなるということにはなります。

 しかし、今、国会で審議されております消費税増税法案は段階的な引き上げということであり、かつ、しかもそれが予告されているということになりますので、国民には広く事前に消費税が上がるということが知られて、それをもって国民が賢明に消費活動を行うということなのだろうというふうに思います。

 そういたしますと、物価が上がる前にある程度買えるものは買っておこう、特に耐久消費財を買っておこうというような動きは出てまいります。そういたしますと、駆け込み需要ということで、消費税増税前にそれなりの需要喚起が行われる。

 もちろん、一度限りの消費税増税ですと、消費税が上がった後、いわゆる買い控えということが起こり、そこによる需要の減退というものがあるかもしれません。しかし、段階的に引き上げられるということになりますと、一年半後にまた消費税が引き上げられるということを知っている国民、消費者は、いつまでも買い控えてばかりはいられないということになりますので、当然のことながら、二〇一四年四月から二〇一五年十月までの間に、しかるべき買い控えを抑えるような行為が起こる。別の言い方をすれば、消費の前倒し効果というものが起こるだろうというふうに思います。

 もちろん、二〇一五年十月以降には何も消費税の増税については決められておりませんから、その後は、何もしなければ、物価はもとに戻るといいますか、物価上昇率がもとに戻るということになります。私は、そのころまでには、金融政策なども連携しながら、経済成長戦略も連携しながら、デフレが恒常的に脱却できるような体制をこの消費税増税とあわせて同時並行で行っていけば、デフレ脱却という問題は解決するのではないかというふうに考えております。

 さらに、日本経済をただいま悩ませております円高の問題との関連で、十ページに記しておりますけれども、円高と消費税増税の関連は、むしろ、消費税増税を含む財政収支改善は円安要因になるということであります。

 どうしてかと申しますと、消費税増税を初めとする財政収支の改善策というのは、国債発行額自体を抑制する、減少させるということになります。そういたしますと、日本国債の増発が抑えられる分だけ日本国債の金利上昇圧力が弱まるないしはより低下する要因になるということになりますので、国際的な金利裁定を考えますと、円をドルにかえる、つまり、円が、金利が下がっているということで、ドルにかえる取引がむしろ促されるということを通じて円安になるということであります。もちろん、為替レートはこの一つの要因だけで決まっているわけではありませんから、ほかの要因があるという点は無視できませんけれども、消費税増税と為替レートの直接的な関係ということで申しますと、そういう対応関係があるというふうに思います。

 その意味では、円高それからデフレという懸念、当然、日本経済はこれを克服していく必要があるとは思いますけれども、消費税増税が大幅にこれらを邪魔するというようなものではなくて、むしろ共存して、デフレ脱却と経済成長と財政健全化の両立というものが可能になるのではないかというふうに思っております。

 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

海江田委員長 土居参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

海江田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。公明党の竹内譲でございます。

 三人の先生方には、大変お忙しいところ、急な要請にもかかわらず来ていただきまして、また貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 本当に、今お話をお伺いしまして、全くそのとおりだなというふうに思った次第でございます。

 このたび、今参議院の方で社会保障・税一体改革の関連法案をやっておりまして、私どもも、さまざまな議論がありましたけれども、現在の日本の経済や財政の状況とか社会保障の現状を鑑みたときに、政治的な駆け引きばかりやっているのではなくて、本当に日本のためにここは腹をくくらないといけない、やはり切迫している、そういう思いから英断を下したというふうに思っております。そういう意味で三党合意に至ったわけでございます。

 本日は、赤字国債、特例公債の質疑の参考ということでございますけれども、さまざまな分析を私どももしております。財政再建のために何が必要か。残念ながら、民主党さんの政府予算、この三年間見てまいりましたけれども、意外にも、子ども手当などを除いたとしても、自公政権のときよりも歳出が水膨れしている、平均で約八兆円ぐらい水膨れしているという分析を私どもはしているんです、意外に思われるかもわかりませんけれども。

 そういう意味では、この赤字国債法案のもととなるのは歳出予算ですから、ここにやはりきちっとした切り込み、構造的な歳出の抑制のシステムというものが組み込まれていないとなかなか難しいな、いろいろな意味で、公債発行、赤字国債を発行することにおいても、また財政再建においても、やはりなかなか難しいなと思っているんです。

 そこで、まとめて三人の先生方にお伺いするんですが、究極的には、財政再建のためには、一つはやはり経済成長が必要だと思うんですよ、一番目には。イタリアのように、PB、基礎的財政収支はやや黒字傾向にあるけれども、経済はがたがたで借金を繰り返しているというのではだめですし、そういう意味では、やはり経済成長は大事だと思っています。二つ目には、今申し上げたように、歳出の構造的な抑制システムといいますか、そういうものが必要だというふうに思います。それから三つ目には、それでもどうしても恐らく足りないでしょうから増税。究極的には、この三つのバランス、調和の上に財政再建というのは成り立っていくんじゃないか。

 そういう意味で、先生方のさまざまな理論とかそういうものを参考にして考えた結論として私どもはそういうふうに思っておりまして、三人の先生方から、残り時間、今お話のあった点を含めて、さらに強調したい点とかございましたら、お一人ずつ御意見を拝聴したいと思いますので、よろしくお願いします。

國枝参考人 お答えいたします。

 今委員より御指摘がありましたように、経済成長それから歳出、特に社会保障ということになってくると思いますけれども、その合理化といったもの、そして増税、この三本の柱があるわけでございますけれども、どれも大切ということは、まさに委員御指摘のとおりかと思います。

 その際、必要なこととして、これはほかの参考人のお話の中でもありましたけれども、どれか一つを、例えば経済成長ができなければ増税はいけないとか、そういうことではなく、この三本柱を同時に進めていかないといけない。それだけ日本の財政というのは危機的な状況にあると思いますので、この三つを同時に進めていくことが必要かというふうに思います。

熊谷参考人 今先生がおっしゃったことにもうつけ加えることもないほど全面的に賛成でございますが、結局、今日本の課題は三つのことをやはり同時にやらないと、先ほどシミュレーションで、名目成長率三%、それから社会保障を中心に、社会保障は年率四%のカット、そして消費税は一〇%というような、この三つを組み合わせたとして、やっと二〇二〇年度に我が国は財政再建の入り口、プライマリーバランスの黒字をようやく達成できるような状況でございますので、これをやはりバランスよくやっていくということが必要である。

 よく増税の前にやることがあるという議論があるわけでございますが、実は、私が調べてみると、これは一九七九年の大平内閣のときから全く同じ議論が三十年間以上にわたって繰り返されてきた。ですから、確かに増税の前にやることがあって、例えば、歳出のカットですとかもしくは成長戦略、それは確かにあたかも正論のように聞こえる部分はございますけれども、ただ、現実問題としては、ある意味で論点をずらすことによる先送りの効果というものが働いてきて、要するに、増税をやれと言われたときに、その前に歳出カットだ、その前に成長だということで、この論点をずらすことによって三十年以上にわたって問題の先送りが行われてきた。

 その結果、今、日本の財政状況は第二次世界大戦末期と同じぐらいの世界最悪の状況になっているわけですから、私はそれぞれやるべきだと思っていまして、まず成長の面では、一つ大きな柱として、日銀がもっともっとしっかりと金融緩和をしていくということが必要である、それから社会保障についてもやはり支給開始年齢の引き上げ等々を含めてもっと持続可能で合理的な仕組みをつくっていく、これら三つを一体としてやったとして、ぎりぎりで財政再建の入り口のところに立てる。先生がおっしゃるとおりの共通の認識でございます。

土居参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、経済成長、それから歳出構造の見直し、そして増税を含む税制改革ということは重要なパッケージだというふうに私は思っております。

 これに、強いて私としてつけ加えさせていただきますと、ある意味では政治に期待することということでもあるわけですが、できれば、歳出構造の見直しというところについては、八方美人にならないようにターゲットを絞ってやっていただきたい。むしろ、積極的にその党が推す、ないしは、そういう支持をされる有権者に向けた政策ということとして、極端に言えば、支持しない人たちは相手にしないというぐらいの毅然とした態度も時にはなければ、八方美人的に歳出を振る舞うが余り、つまり、政治的に支持を与える有権者層とそうでない有権者層と皆に配ってしまうということになれば、まさにばらまきの財政政策になってしまうということなのだろうというふうに思います。

 もちろん、国民の側からすれば、どういう政権であれ、政府には、財政政策なり、きちんとした政策をしてほしいという気持ちはあるかもしれません。それは、あくまでもベーシックな部分についての行政サービスというところは、最低限、国民各層にきちんと手当てできるようにしなければならないというふうには思います。

 しかし、全ての各層に同じように財政支出を手厚くしてしまうということになれば、これはもはやばらまきと言わざるを得ないということになってしまいますので、そこにはやはりめり張りが不可欠だろうというふうに思います。そういう意味では、どういう財政支出により集中的にお金を投じるかという議論を積極的にやっていただきたいなというふうに私はまず一つ思います。

 それから、もう一つは経済成長に関するところでありますけれども、経済成長を促すということについては、これを否定する人はほとんどいないと思います。できるだけ経済が伸びていく、できれば苦労なく伸びていく経済であれば、それにこしたことはないというふうに思いますが、私が思うには、やはり、汗をかかなければ、ないしは非常に歯を食いしばって努力しなければ経済成長が促せない、そういう側面もあると思います。場合によっては、短期的な痛みを伴う場合もあるかもしれない。

 だけれども、先憂後楽、後に明るい未来が開けているということでもって歯を食いしばって努力をし、そして五年後、十年後には今よりも明るい日本経済になっているというような、そういう道筋を考える必要があるという意味では、基本的には、努力が必要であり、しかるべき切磋琢磨が必要なのだろうというふうに思います。

 そういう意味では、バラ色の成長戦略といいましょうか、苦労をせずとも成長するような成長戦略というものは私はないというふうに思っておりますので、ぜひとも、成長戦略に対する理解、こういう形で努力をすれば報われる、そういう道筋を国民各層に説得する、そういう役目として政治が機能してもらえるとよいのではないかというふうに私は思っております。

 以上です。

竹内委員 もう時間がそんなにないわけでございますが、非常に参考になりました。

 やはり民主主義というのはどうしてもポピュリズムというか大衆迎合に陥るという欠点を持っておりますので、財政悪化しやすいんですね。

 そして、イタリアなんかでは今、首相も閣僚も全部民間人にかえて大改革をやっていますよね。固定資産税も余り取っていなかったというんですから、驚く国だなと思いますけれども。

 そういう意味で、日本としては、民主主義を保ちながら、やはり我々は、支持者のいろいろな要望もあるけれども、あえて、今おっしゃったような、つらいこともきちっと説得して、ここは大局的にはこうしなければだめですよということを言っていく、その政治的力がないとだめだなと、改めて、今身にしみて思っているところでございます。

 我々も、ここだけでしゃべっているわけじゃなくて、皆さんそうですけれども、現場に帰れば、支持者に説得しているわけですよ、本当にいろいろな御批判を受けながら。その役目がやはり我々の使命だなというふうに改めて感じた次第でございます。

 きょうは、先生方、大変ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

海江田委員長 次に、藤田憲彦君。

藤田(憲)委員 民主党の藤田憲彦でございます。

 本日、参考人の皆様から大変参考になるお話を伺いました。率直に言うと、私もごもっともだというところでありますけれども、参考人の皆様方のお話で共通しているのは、この特例公債法案の成立が必要不可欠であるということと、それから、経済成長、歳出削減、そして消費税の増税を含む歳入改革、これらを同時に行う必要があって、特に、先ほどの質疑の中で熊谷参考人の方から、いわゆる増税の先送りというような議論が繰り返されているという状況では現状を打開できないということであると理解をいたしました。

 その中で、熊谷参考人と土居参考人の説明の中から、國枝参考人にお伺いしたいと思うことがあります。

 といいますのは、増税をしなくても、経済成長があれば、財政改革、いわゆる財政再建が実現できるんだというような見方が繰り返し示されてきていて、それを熊谷参考人と土居参考人は、いや、それではだめなんだというお話があったと理解をしております。この点におきまして、國枝参考人はどのようにお考えになるか、伺いたいと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 今御指摘ありましたように、経済成長と財政再建の関係でございますけれども、もちろん経済成長は望ましいことではございますけれども、現在の日本の置かれている状況というのは極めて厳しい財政状況でございまして、ちょっとぐらい経済成長が上がったところで、とても足りない状況でございます。

 先ほど私の説明の中で式で示しましたように、現在たまってしまっている国債、借金は、これはいずれ返さなければいけないわけでございますけれども、巨額でございますので、経済成長を上げることは望ましいことでございますけれども、それだけで財政改革ができるということは、まず考えられないというふうに思います。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 それにまた関連をいたしまして、さはさりなんと、しかしながら、国債をもっと発行しても大丈夫だというような議論もまた繰り返されております。熊谷参考人の資料の中に、日本の国債の海外の保有比率が八%というような記述がありましたが、これもよく言われる話でありますが、日本の国債は海外保有の比率が非常に低いのであるからギリシャのようにはならないというような見方が示されておりますが、この点の真意につきまして、これは熊谷参考人と土居参考人にお伺いしたいと思います。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに、今までは外国人の国債保有比率が八%程度。その背景としては、日本は経常黒字国でございましたので、今まではとりあえず、日本の国民が日本の政府を信頼する限りにおいては、すぐに国債が暴落するということは、それほど大きな蓋然性ではなかった。ただ、やはりここに来て、ヨーロッパのソブリン危機の問題というのが世界的に今飛び火をして、要するに、例えばギリシャだとかイタリアだとか、そういうところの次に海外の投機筋がどこの市場に狙いをつけるかということで考えている。

 実際、ギリシャで財政危機が起きる直前、二〇〇九年の秋口、その直前の段階のCDSのスプレッド、これは国債がデフォルト等になったとき元本等を保証する取引でございますが、この五年物のスプレッドが危機の直前で一・二%であった。日本も、今は足元は少し下がっていますが、大局的にはこのCDSスプレッドは一%から一・五%でございます。

 やはり信頼というのは、一瞬に崩れてしまうと、それはもう滝が落ちるように一気に投機筋が攻撃をしかけてくる。しかも、現物の国債は外国人は今それほど持っていませんが、この先物の市場では、外国人の売買ウエートが大体三割から四割程度ございます。

 結論としては、私は、今の日本の国債は決して盤石の状況ではない、しかも、二〇一五年から二〇年にかけて経常収支の赤字化の可能性が出るということを勘案すると、やはり二〇一五年前後までが財政再建のある意味のタイムリミットになるんじゃないか、こういう考え方をしております。

土居参考人 お答えいたします。

 まさに、委員おっしゃったように、そういう意見がある、つまり、国債を発行してもまだ大丈夫なのではないか、むしろ、あえて国債を発行していろいろと政策を施すことができるのではないかというような考えもあるということは承知しております。

 しかし、国債を発行してもまだまだ大丈夫だということの意見の背景には、こう言ってしまうと身もふたもない言い方かもしれませんが、国家財政としてネズミ講をやっていっても大丈夫だ、そういうことと等しいことを言っておられるということなのだろうと思います。つまり、後世に借金を次々とバトンタッチするように世代を超えて受け継いでいても、その借金はちゃんと回るのだ、つまりまさにネズミ講ということであります。

 先ほど熊谷参考人からあった話は、ドーマー条件というのは、ネズミ講でも回せるのかどうなのかということがまさに経済学的に知られていることでありまして、ネズミ講式には回らないんだから、何かほどほどのところで財政収支を改善し財政健全化努力をするということがないと財政は持続可能でないですよということがドーマー条件、小難しく言うとそういう話になる、こういうことだろうと思います。それがまず一点であります。

 それからもう一つは、ヨーロッパの財政危機のような、一旦火がついてしまうと火消しが大変だということであります。願わくば、そうなる前にそういう憂き目に遭わないような対策を講じるということが必要だ。

 確かに、そこまで苛烈に財政健全化をやらなくても火がつかなかったではないかというふうに言われるかもしれませんが、やはり、バッファーといいましょうか、いつ火がついてもおかしくない、すれすれのところ、何とかボーダーラインで踏みとどまって助かったというよりかは、ある程度安全策を講じて、国債増発を抑制しながら財政運営をやっていくということが必要だ。

 それからもう一つ、国債を発行しても大丈夫だ、もっと国債を増発していいんじゃないかということに対する私の懸念は、世代間格差を助長する可能性があるということであります。

 仮にネズミ講がうまくいったとしても、本来負担をすべき年配の方々が、その負担をせずに財政支出の便益だけを受けて、そして借金を後世に残すということになると、その借金を返済しなければならないのは後世の人たちだということになりますので、やはり本来、財政支出の中で、応益負担でお願いしたいという部分についてはきちんと応益負担で財源を賄う、そういう部分があってしかるべきでありまして、そういう意味では、公債に依存するということで果たして本当によいのかという面があろうかというふうに思います。

藤田(憲)委員 重要な御指摘をいただいたと思います。

 熊谷参考人の方から、二〇一五年がタイムリミットだと。これはやはり、国債の金利上昇でありますとか社会保障の増大でありますとか、そういった状況というのは、残念ながら、一般の生活をしている中ではイメージがしにくい。そこからこの緊急性、すなわち待ったなしであるという状況が、野田総理も、これは繰り返し繰り返し待ったなしの状況だということを表明しておりますけれども、それが実感を伴わないんだということであろうと思います。

 しかし、現在私たちが行っていることというのは、厳しい御指摘とも理解をいたしますが、ある意味国家的なネズミ講に近い状態であり、それが、國枝参考人のお言葉をかりれば、財政的な児童虐待になっている。それはすなわち、将来世代における先送りが世代間の格差も拡大をさせているという深刻な状況につながっているんだと思います。

 しかしながら、にもかかわらず、ここで政治が決められないという状況では、さらに状況を悪化させてしまうという中で、しかし、ここがまた問題がなかなか進まないという非常にもどかしい思いも今しているわけでございます。

 國枝参考人のお話、きょうのお話ではなくて、いろいろ書かれている著書等々のお話でいうと、やはりこういった議論の根底にあるのは、國枝参考人のお言葉をかりると、魔術的経済政策、いわゆる、増税しなくても大丈夫なんですよ、あるいは国債をもっと発行しても大丈夫なんですよというような議論が繰り返し行われる。

 私は、その中で一点、きょうのお話にはなかったんですけれども、國枝参考人にお伺いしたいと思うことがあります。

 無税国債というものがある。これは、利子あるいは相続税がかからないというような国債であって、無税国債を発行することによって財政再建に資するんだというような議論が行われていますが、國枝参考人の著書の中でいうと、こういったものは既に論破されているにもかかわらず必ず繰り返し起こって、これが一種のトンデモ経済学の焼き畑農業だというような表現もなされておりますけれども、この点、ぜひ國枝参考人に補足をお願いしたいと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 私がほかで書いたものをお読みいただき、どうもありがとうございます。

 無税国債の話でございますけれども、無税国債のメリットとして言われるのが、税がかからないことで、金利が安くても国債が売れるという話になっているわけです。それで国の財政的な負担が減るじゃないかという話があるわけですけれども、一方で、そういう国債を買っている方が支払われる税金がもちろん減るわけでございます。ですから、片手で利払いが減っているけれども、片手の方では税収が減るということでございますので、財政再建には残念ながら何ら効果はないということかというふうに思います。

藤田(憲)委員 ありがとうございます。

 やはりそういった議論をきちんと私たちも、いろいろ有権者の皆さんに説明する中で、きちんとそこは打ち返していけるようにしないといけないという思いを強くいたしました。多少専門的な内容がありながらも、そこは常識的な言葉を使って説明していくのが私たちの役割でもありますし、そういった中で、最終的には各党間の合意をいただいてこの特例公債法案を成立させることがまずは喫緊の課題というふうに思っております。

 一方で、残された時間の中で、今回、特例公債法案を成立させることを私たちは今目指しているわけでありますけれども、それに付随するさまざまな政策においても実施をしていかなければいけないという御指摘もあったかと思います。

 そこで、まず熊谷参考人の方にお伺いしたいのでありますが、熊谷参考人のこれまでのお話の中で、歳出削減の中で社会保障の合理化も必要不可欠であると。これは、私たち政治の立場からすると、これもなかなか言いづらいものがありまして、歳出削減というと、総論でいえば皆さんもろ手を挙げて賛成なのでありますが、その歳出削減の中身が社会保障という中身になってきますと、これはみずからの所得を減らすという効果がありますから、増税と所得の減収というダブルパンチになってくる。

 そこで、社会保障の合理化といっても、きちんとこれを詰めて考えて、どういったところを合理化していくべきだということを私たちが今後議論していかなければいけないと思っておりますが、この社会保障の合理化のあり方について、熊谷参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。

海江田委員長 そろそろ時間が来ていますので、なるべく手短にお願いします。

熊谷参考人 基本的な考え方としては、拠出と給付のどちらかを固定して、他方は経済状況だとか出生率などに応じて変動していくような、これが自動的にサステーナブル、持続可能になっていく仕組みである。

 具体的には、例えば、年金支給開始年齢の引き上げですとか、もしくは年金の所得に対する所得税を課税していくこと、そしてマクロ経済スライドを実施するですとか、高齢者の方の医療費の自己負担を法律どおり二割にしていく、これらのことを組み合わせて、経済状況だとか出生率が変わったとしても、それが持続可能な仕組みであるということが極めて重要であると思います。

藤田(憲)委員 あと二分ほどありますので。

 まさに、この社会保障の合理化というのは、これから各論において非常に重要な議論になってくると思います。増税の議論ばかりがなされている印象がありますけれども、ここもきちんと詰めていかないと最適化が図れないという御指摘だろうというふうに理解をしております。

 最後、土居参考人に、残された時間でお伺いしたいんですが、一方で、日銀のいわゆる金融緩和策の必要性について、今般、日銀は二月にインフレターゲットというような政策目標も打ち出しましたが、この必要性と、あるいは土居参考人自身のお考えがあれば、最後に伺いたいと思います。

海江田委員長 恐縮ですが、手短にお願いします。

土居参考人 お答えいたします。

 少なくとも、日銀には、今よりももっとコミットメントをきちんと示した形での量的緩和政策を求めたいというふうに思います。

 ただひたすら、緩和していますと言うことだけではやはりアナウンスメント効果に限界があるし、物量的にもなかなかきかないということがあると思います。来年までには必ずやデフレをとめてみせますという覚悟、いわゆる専門用語でコミットメントと呼んでおりますけれども、このコミットメントをいかに担保するかということが不可欠。

 もう一つ政治に私がお願いしたいのは、裁量的に、予見できない形で日銀に対して政治的に介入するということを差し控えていただく。一旦任せたからにはそれでやってもらう。ただし、委員を国会で同意するとか、そういうところではきちんと約束させるといいましょうかコミットさせる。事前には政治が日銀にコミットさせる、コミットした後ではそこに対しては政治は日銀に信頼を置く、こういう関係が大事だろうというふうに思います。

藤田(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

海江田委員長 次に、丹羽秀樹君。

丹羽委員 自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 きょうは、参考人の先生方、本当にお忙しい中お越しいただきまして、また、それぞれの御意見を拝聴させていただきましてとても参考になりました。

 拝聴させていただいた中で、御質問させていただきたいと思います。

 今回の特例公債法案の修正案の中身で、まず國枝参考人に御質問したいと思います。

 國枝参考人の資料を拝見させていただきまして、七ページ目に、昨年の夏の米国債の債務上限のおくれとその影響という話がございましたが、例えば、我が日本の国でこの修正案がおくれた場合、我が日本の国の国債の格下げ等もあり得るんでしょうか。御見解をお願いいたします。

    〔委員長退席、糸川委員長代理着席〕

國枝参考人 お答えいたします。

 具体的に格付会社がどうするかということは、残念ながらちょっとお答えできませんけれども、やはり、議会の中の対立で誰が考えても必要だろうと思われるような法律あるいは予算がなかなか成立しないという状況がある場合には、市場あるいは投資家から見て、本当にこの政府あるいはこの国は財政再建をする気があるのだろうかという疑念を持たれるというおそれは十分あるかというふうに思います。

丹羽委員 ありがとうございます。

 そこで、次に、土居参考人にお尋ねしたいと思います。

 土居参考人の資料の七ページで、基礎年金財源の確保の御説明がございました。例えば、消費増税の財源を充てるという参考人の話が書いてございますが、消費増税の方が否決されたら、実際、財源が確保されないわけですよね。どのようにお考えでしょうか、御答弁をお願いします。

土居参考人 お答えいたします。

 私が承知しているところでは、この法案では、消費税増税法案が成立しない場合にはこの償還財源の規定はない、ないしは年金特例公債というものが成立しないということであるというふうに聞いております。

 そういう意味では、本来は基礎年金の国庫負担の財源というのはきちんと税で賄われるべきということですので、消費税が増税されないということになりますと、別の税ないしは別の歳出を削減した形でその税収を基礎年金の国庫負担に充てる、こういうような努力がまずは求められ、かつ、願わくば、年金が高齢者の自然増によって増加するということがありますので、それと連動するような形での税制改革を伴う税収確保が私は必要であろうというふうに思います。

丹羽委員 御答弁ありがとうございます。

 まさしくそのとおりだと私も思っております。例えば、これは我が日本の国ですけれども、民間企業がこんなことをやっていたらもう破綻状態だと私は思います。

 そういった中で、もう一度土居参考人にお尋ねしますが、三ページ目の資料にアメリカの連邦予算の例が挙がっていました。六カ月間の暫定予算を可決させる方向で合意という話がございました。

 米国はさまざまな工夫をしていますが、予算とこの特例公債、本来であれば一体で通すべきものだと私は思っておりますが、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

土居参考人 国会という場でこのような意見を申し述べてよいかどうか、冒頭、委員長から忌憚なくと言われましたので、あえて忌憚なく申し上げますと、私の意見は、予算関連法案も同等に衆議院の優越を認めるべきであるという考えを持っております。したがいまして、予算案そのものとともに、予算関連法案も同等の衆議院の優越を認めるということだろうと思います。

 もちろん、それは、本当にそこまでやれるのかどうかという政治的実現可能性ということは、極めて厳しいものがあります。しかし、私の理解では、これは決して憲法を改正するほどの大げさなものではないというふうに思っております。まことに僣越でございますが、衆議院や参議院の議事の運営の仕方ないしは規則、そういったものでそういう優越を担保するような仕組み、それができるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、特例公債法も含めて、予算とともに成立させられるような、そういう仕組みづくりが不可欠だろうというふうに思います。

丹羽委員 ありがとうございます。貴重な御意見だと思っています。

 我々が、自民党が与党時代、かつて、約二年半前、この特例公債法で、毎回毎回政争の具にされて、本当に、三月末の時期になると、我々も各委員会張りつきで担当させていただいておりましたが、それでも何とか予算と一体として可決しなきゃいけない、そういう思いで我々はやってきたわけであります。

 そういった中で、今の民主党さんに対して悪く言うわけじゃないんですが、まだその工夫がやはり足りなかったんじゃないかな。我々の与党時代は、そこの工夫をして、さまざまな妥協も兼ねていろいろな経済対策を盛り込んだりしてやらせていただきました。

 経済対策の方の話をお伺いさせていただきます。

 熊谷参考人にお聞きしたいと思います。

 実はきのう、私の地元の小牧の法人会で、さまざま、いろいろな経営者と、夕方、懇親会の方に出席させていただいて、話を聞いてまいりました。売り上げが伸びても利益が上がらない、内部留保はまだあるけれども新しい設備投資をしようという気がない。それはそうですよ。あれだけバブルのときに痛手を食らって、ここでまた借金して新たな投資をしようなんて、これは反省しない経営者ですよ、もしそんなことをやろうとする経営者がいたら。新たな投資をするには、やはりばらまきよりも、熊谷参考人がおっしゃるように、何か集中的な投資が必要だと私は思っています。

 我々が学生時代に学んだ経済学がもう今の日本の経済では通じなくなってきているんじゃないかと思っていますが、成長戦略の中身で、集中投資という分野では、これからどういった分野が成長戦略にあるんでしょうか。お尋ねしたいと思います。

    〔糸川委員長代理退席、委員長着席〕

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 それでは、ちょっと資料の中で一つ図表を使って御説明をしたいと思いますので、二十二ページをごらんください。

 ここでお示ししているのが、我が国の産業構造でございますけれども、縦軸が労働生産性、横軸が乗数効果、その産業で一単位生産等が伸びたときにどれぐらい他産業に波及するかということでございますが、柱としては、まず右上のところにある電機、化学、輸送等を中心としたいわゆるグリーンという環境関連のところ、ここは、非常に生産性が高い上に、他産業に対する波及効果が大きい。

 もう一つ注目すべきは、左下の部分ですが、これは医療・介護を中心としたサービス業でございまして、生産性、乗数効果等は高くないわけですけれども、ここで、丸の大きさが雇用の吸収力を示しています。ですから、雇用を吸収するという意味では、この左下のいわゆるライフと言われる医療・介護等のところ、恐らく、今後の日本の産業構造を考える上では、この両面を、生産性とか効率を引っ張るグリーンと、それから雇用を吸収するライフ、これらをバランスよく刺激していくということがやはり必要ではないかと考えております。

丹羽委員 ありがとうございます。

 バランスよくやるということは非常に大事だと思っていますが、全体的に景気をよくしようというのは、なかなかこれは難しいことだというふうに思っています。

 先ほど、熊谷参考人、日銀の話もされましたが、我々が学生時代に学んだ経済は、日銀がマネーサプライを誘導すれば自然と上向きになってくるということを学んだんですが、今、日銀は随分やったんですが、なかなか景気は上向いてこない。そこで、財務省を中心として公共事業を含め財政投資を随分行いました。それによってバブルの影響というのは、マイナス影響から随分軽減されたんじゃないかというふうに私は考えております。

 そういった中で、今回のこの消費税の議論はもちろんそうでありますが、増税、成長戦略、社会保障の合理化、三つをバランスよく行う場合、お三人の参考人に、財政再建のためのデフレ下の増税の影響、また時期についてお尋ねしたいと思います。お願いいたします。

國枝参考人 お答えいたします。

 デフレ下の増税というお話でございます。

 一つは、デフレというものをどう捉えるかということだと思うんですけれども、もしデフレを物価が継続して下落するということに限定して考えますと、先ほど土居参考人の方から話がありましたように、ほかの増税とは違って、消費税増税というのは、物価が上がることによって国民に御負担いただくという税でございますので、むしろインフレ要因になるのではないかというふうに思います。

 ただ、そういう限定した意味ではなく、景気が低迷しているところで消費税増税はどうなんだというお話であるとすると、もちろんそこは配慮が必要だと思いますけれども、一方で、日本の財政状況からしますと、いつ金利が突発的に上がってもおかしくないというような状況がございます。破綻を招かないということも中長期的には非常に重要な成長戦略だと思いますので、その意味では一定の配慮は必要かとは思いますけれども、増税を含めた改革を先送りするような状況にはないんだろうというふうに思います。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、増税の日本経済に対する影響でございますけれども、これは私の資料の十二ページのところにございますが、一三年度の日本の実質GDP成長率を一%程度この駆け込み需要によって押し上げる、そして一四年度にこの反動が出て一・七%程度下がって、一五年度は小康状態でプラスの〇・二%ということでございます。

 ですから、その意味では、一定のこの駆け込みとその反動減というのはございますけれども、よく日本で、消費税を上げると日本経済は壊滅的な打撃を受けるというような話がございますが、これは、諸外国の事例などに照らしても、ある意味で日本の常識は世界の非常識であって、そこまでの壊滅的な打撃ではない。

 加えて、我が国では、やはり将来不安があることによって、私どもの計算ですと、一九八三年からの累計では貯蓄率が五%程度押し上げられている。ですから、社会保障を合理化して、その持続可能性に対する安心感、もしくは、財政の持続可能性に対する安心感が出てくれば、将来的には、五%程度貯蓄率が下がって消費が出て、日本経済をむしろ支える効果、これは非ケインズ効果と申しますが、そういったものも一部は期待できるのではないかと考えております。

土居参考人 お答えいたします。

 先ほど私の意見陳述でも申し上げましたように、基本的に、デフレ下であっても消費税増税を先送りするということは望ましくない。しかも、先ほど御説明させていただきましたように、デフレを助長するということには必ずしもならない。

 もちろんそれは、消費税増税一本やりで、ほかに経済成長を促す取り組みとか金融政策を全くしないでも大丈夫ということではありません。もちろん、経済成長を促し、デフレを克服するような金融政策も同時に消費税増税とともに連動して行うということによって、消費税増税が引き起こす悪影響を最低限に食いとめることができるということですので、願わくば、消費税増税をするということにより財政をうまく立て直すとともに、経済を立て直す別の経済成長戦略それから金融政策、これを連動して行うということであれば、二〇一四年、一五年あたりでも、消費税増税を行うということは決して悪くないということだと思います。

丹羽委員 時間の方も参りましたが、実はもう一点質問がありまして、回答は結構でございます。

 私の残された最後の質問は、今参議院でやっている消費税増税の審議が先に採決される方が大事なのか、この公債特例が先に採決される方が、どっちが大事なのか、このことを参考人に聞きたかったんですが、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

海江田委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 国民の生活が第一の玉城デニーでございます。

 きょうは、お忙しい中、三人の参考人に御出席をいただき、ありがとうございます。

 基本的に私は消費税増税に反対の立場ですので、きょうは、三人の参考人の意見、大変重要参考にさせていただきながら、少しずつ、私が考えていることについても見解をぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。

 なぜなら、今回のこの年金つなぎ国債、消費税増税が前提になってその財源を確保するということで、政府の修正案が衆議院で承諾されました。私は反対した立場から、そのことも含めてお話を聞かせていただきたいと思います。

 私は、沖縄県の選出の国会議員でございます。ですから、沖縄県というところは大変状況も厳しい中で、消費税増税に対しては、まだまだやるべきことが先にあるという、そういうことをやってほしいということが政府への大きな県民からの願いなんですね。

 そこで、少しお三方から、参考人からお話を聞かせていただきたいと思います。

 沖縄県も、約九九%がいわゆる中小零細企業です。これは日本の法人の比率とほぼ一緒なんですが、その中小零細企業は、現在、消費増税分を商品に転嫁できないという大変重たい現実があります。それに加えて、下請、孫請というふうな形の産業構造の中では、どうしても消費税分も売り上げの価格に内税として入れなければいけない、つまり請求できないということも現実の話として聞いております。

 平成二十年度国税滞納のうち約四六%が消費税の滞納だという現実も含めて、中小零細企業や個人事業主は現在でも税負担が重くのしかかっていますが、このことについて、一〇%に消費税が増税された場合の影響について、三人の参考人から御意見、御見解を伺いたいと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 消費税が増税された場合の中小企業の方々への影響ということかと思いますけれども、御懸念はもちろんよくわかるわけでございますけれども、これは、消費税が最終的にはきちんと消費者に転嫁されるかどうかということかと思います。

 それにつきましては、新聞報道で読んでいるだけでございますけれども、政府の方もいろいろ対策を考えているというふうに伺っておりますし、過去の消費税導入それから引き上げの際にもやはりそういう懸念があったわけでございますけれども、種々の対策がとられて、少なくとも、データで見る限りは、消費税増税に対応しただけ消費者物価が上がっているといったことがございます。

 そういう意味では、円滑な転嫁について配慮が重々必要だとは思うんですが、沖縄県の方々の社会保障、あるいはその他の予算措置のためにもやはり財源が必要かということだと思いますので、円滑な転嫁を確保した上で、消費税増税というのは必要なのではないかなというふうに思っております。

熊谷参考人 まず、消費税を考える際に、今御指摘のようないわゆる損税問題もしくは益税問題ということは非常に大きな問題ではあるわけですけれども、他方で、そもそも消費税には非常に大きな長所がある。この長所と短所をバランスよく比較考量していくということが必要ではないか。

 まず、長所の部分では、やはり水平的な公平性ですとか世代間の格差の是正に資するということ、そしてまた、貯蓄に対する二重課税の問題がございませんので、経済活動に対する中立性が存在する、また、高齢化社会の中で安定財源がこれによって得られるということですから、私は、こういうメリットとデメリットを比較考量すれば、やはり相対的にメリットの方が大きいという考え方です。

 それでは、御指摘の損税問題でございますけれども、例えば、今、中小企業の方々に値上げのカルテルを認めるような方向性がございますので、こういう独禁法制とか弱者救済法制等によって手当てをしていくこと。

 また、将来的な課題としては、私はインボイスの導入が必要だと思っております。例えば、ヨーロッパではインボイスが導入されているわけですから、こういう国際標準の消費税制度が実現されれば、ヨーロッパではそもそも益税、損税という言葉自体が存在しない。ですから、私は、将来的な課題としてはインボイスを導入していく。

 また、さらには、逆進性自体の全体の問題としては、これは消費税だけを切り取って問題視するのではなくて、やはり歳入歳出構造全体、例えば所得税の再配分機能が空洞化している問題ですとか、もしくは、真に困っている人たちに対して必要な歳出が行われていない、そういうようなところを含めて、税制、歳出構造全体の中で捉えていく問題ではないかと考えております。

土居参考人 お答えいたします。

 私が用意させていただきました九ページに今の御質問に対する答えを載せさせていただいております。

 基本的に、委員御指摘のとおり、中小企業の価格転嫁が困難である状況を打開する必要があるというふうに思っております。これは、価格転嫁が困難であるということは別に消費税の問題に限ったことではないということで、私の九ページのスライドのところに記させていただいております。原材料価格が高騰しても同じような問題に直面するということですから、この消費税増税という絶好の機会に、構造的に価格転嫁が困難であるという問題を解決するということが、むしろ解決策としては望ましいのではないかというふうに考えております。

 そういう意味では、下請法の改正とか、もちろん消費税増税そのものに伴う価格転嫁の監視とか、そういうような対応できちんと価格転嫁がなされるということを私は願っております。

 むしろ、きちんと消費者が税金を負担するということを通じて初めて、社会保障の財源を国民で分かち合うという発想、これが実現いたします。そういたしますと、今度は低所得者ないしは年金生活者の方々がこの価格転嫁に直面して大変ではないかという話がありますから、ここは、低所得者対策というものを別途講じることを通じて価格転嫁がきちんとなされ、基本的には、きちんと負担ができる消費者が負担をし、そして、仕事に従事する方は、価格転嫁の問題が不備であるがゆえに仕事ないしは利益が損なわれるなどというような問題から解放される、こういうふうに思います。

玉城委員 やはり、消費税は、増税の前に、税制の見直しですとか、財政全体を、その機能を健全化させていくということが大きな方法、目的ではないかというふうに、参考人からもその御意見をいただけたと思います。

 さて、熊谷先生、インボイスの件については私も賛成でございまして、共通点ができてよかったなと思います。

 先生の資料をちょっと見させていただきたいんですが、先ほど十二ページのところでグラフで説明をしていただきました消費税増税の実質民間消費への影響の部分なんですが、耐久財の駆け込み需要や半耐久財の駆け込みと反動ということは幾分上向きにはなるんですが、可処分所得減少による消費減というのが明らかになっていると思います。それが八%、一〇%になると、この減収がどのぐらいのものになっていくのかについてお聞かせください。

熊谷参考人 今度の消費税率の引き上げ、もしくはその他の社会保障の負担等々、社会保障関連の負担増などを含めた上で、どれぐらい家計の負担がふえるかという試算を私ども大和総研が行っておりますけれども、まず消費税の引き上げによる影響は、年収五百万の世帯ですとマイナス十六・七万円、そして年収八百万の世帯ですとマイナス二十四・九万円、こういう結果でございます。

 その他、いろいろと流動的なところはございますが、その他のいろいろな負担を全部合わせますと、五百万の世帯で大体三十二万九千円程度、そして八百万の世帯で四十三万円程度、こういう形で私どもは試算をしております。

玉城委員 今の試算にもありましたとおり、本来ならばもう少し中間から下の部分の三百万、二百万がどのぐらいの負担になるかということを聞かせていただければ、その逆進性についても少しお話をさせていただけると思うんです。

 さて、この消費税は、いわゆる所得に応じて累進課税となっていない一律課税ですね。ですから、いろいろなところに負担が一律になってしまう。これを少し注目してみたんですが、特に若年層における税負担はかなり大きいものがあるのではないかと思います。これは、高齢化はもちろんですが、少子化をさらに助長してしまうような大きな問題になるのではないかと思います。年金など社会保障で負担を負わされている世代間弱者と言われている若い世代は、消費税でさらに負担を求められてくると思います。

 少しここで、総務省のデータの失業率をちょっと見てみたいと思います。

 二〇〇八年のデータですと、年齢階層十五歳から二十四歳が七・二%の完全失業率、二十五歳から三十四歳が五・二%、三十五から四十四歳が三・四%なんですが、沖縄県における完全失業率、この十五から二十四歳という最も若い年齢の最新値を見てみると、全国平均七・二に比べて、一〇・八%あります。一〇・八%あるということは、仕事についていない方々、百人中十人は、消費税が上がることによって、もうお金を使うことができない、貯金を取り崩しても、これ以上もう取り崩せないということが顕著になっているわけですね。

 ですから、消費税は、年金受給世代よりも、結婚する、子育てをする、あるいは、みんなで飲んだり遊んだりしてお金を使うという若い人たち、つまり、定期に収入がある世代ほど負担が大きいということを考えると、むしろ高齢者より多大な負担をかける、一層、耐久消費財とかいろいろな、車を買ったりコンポを買ったりとか、そういうところが伸び悩んでいくということが予想されると思いますが、このような逆進性の強い消費税について、特に若い世代に与える影響がどのようなものか。これはぜひ熊谷参考人に伺いたいと思います。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 そもそも、今回、やはり、消費税を上げていこうということは、これはむしろ若年層に対する負担を減らしていこう、私はこういう方向性だと理解しています。

 というのは、そもそも高齢者の方で所得のない方々というのは、実は大きな金融資産を持たれている方などもいらっしゃると思いますが、要するに、消費税というのは、そういう方々も消費に応じて負担をしていただくということでございますので、世代間で見れば、若い方々の負担を減らしていき、むしろ高齢者の、今まで所得税を払っていなかった方々にある程度の消費に応じて負担をしていただく、こういう方向性だと理解をしております。

 そして、御指摘の点で、確かに沖縄県、雇用情勢等が厳しいということはございますが、私は、雇用の問題は税制とは切り離して基本的には考えるべきであって、今まで、どちらかといえば少し痛みどめ的な、受動的な雇用政策が行われてまいりましたが、例えば、もっと労働者の方のエンプロイアビリティー、働く力を上げていくような形で能動的な雇用政策を行う、もしくは、本質的なところでは、派遣労働の方々に対する対応としては、同一価値労働同一賃金の原則、これをしっかりとやはり貫いていく、そういうような労働法制の部分でそういった失業の問題については対応していくべきではないかと考えております。

玉城委員 どうもありがとうございました。

 やはり消費税は、増税の前に、労働法制にしろ税制にしろ、問題が山積みだということをもっと国会でしっかり議論すべきだということを改めて確認させていただきました。

 ありがとうございました。

海江田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 大変お忙しい中、緊急の参考人招致ということで御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私の問題意識を申し上げますと、消費税の増税と財政健全化との関連なんですけれども、増税をしたら必ず財政が改善するのかどうか、これがまず第一点の問題意識です。それから、第二点目は、増税した場合、当然、国内消費にマイナスの影響が出ると思うんですが、その場合、景気の後退を招く、この点をどの程度と理解するか。この二つが私の大きな問題意識であります。

 そこで、最初に三人の参考人の方々にそれぞれお聞きしたいんですけれども、消費税率が三%から五%に上がったとき、それ以後の財政状況を見ますと、一九九六年度の税収総額は九十兆円でありました。二〇一〇年度は七十六兆円に減っております。十四兆円のマイナスですね。その原因は、私は、消費税の増税、それから負担増によって国民の消費が落ち込み、その結果、税収にマイナスが生まれた、とりわけ法人税と所得税のマイナスが大きかった。したがって、消費税が若干ふえても、マイナスの方が大きいものですから、税収全体として減ったわけであります。

 このことについて、三人の参考人の皆さん、どのように認識をされておられるか。そしてまた、今回消費税を増税した場合、また再びそのようなことが起こらないというようにお考えなのかどうなのか。この点、それぞれお聞きしたいと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 消費税の三%から五%への引き上げ、その後の税収への影響ということなんですけれども、これは、確かによくそういう指摘をなさる方がいらっしゃるわけなんですけれども、税収というのは、もちろん税率と課税ベースから決まってまいります。確かに、税収が減っているかもしれませんけれども、それは、別に日本経済が、低迷はしたにせよ、縮小したわけではなくて、実はその間に税率の引き下げが行われているからでございます。

 税率が引き下がって減収になっているというのはむしろ当然のことかと思いますので、それをもって消費税を引き上げると税収が減るという議論にはならないのではないかというふうに思います。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 今、國枝参考人からお話があったのと基本的には同じ認識でございますが、結局、消費税を上げた後でなぜ税収が減ったかというと、これはたしか、小渕総理のいわゆる小渕減税と言われるものが私の記憶ですと六兆円程度、それから地方への税源移譲が三兆円程度行われていると思いますので、それらのものを全部取り除いて考えたときには、リーマン・ショックの前の段階で、九七年の消費税を上げる前の税収のレベルというのは回復していたと私は認識しています。

 それから、あと、ちょっと今の御質問の点とは若干ずれるかもしれませんが、私は、消費税を上げることによって日本経済が壊滅的な打撃を受けたかといえば、それは事実関係として少し違うのではないかと思っています。

 消費税を三%から五%に上げたときに日本経済が悪くなった主因は、当時の金融システム、山一、拓銀ショックと言われる問題、それからアジアの通貨危機、この二つが主因でございますので、ですから、その意味では、もちろん時期的に少し適正ではないときに結果論として上げてしまったということはあるわけですが、消費税を上げたことによって日本経済が壊滅的な打撃を受けた、もしくは税収が物すごく減ったというのは、これは事実認識として少し違うのではないかと考えております。

土居参考人 お答えいたします。

 日本で消費税を引き上げたという経験は、一九九七年のときのみであります。一九九七年のときの状況は、先ほど熊谷参考人もお述べになられたように、やはり金融危機があったということは、これは外せないことだと思います。

 そういたしますと、九七年のときに消費税が増税されたからその後の日本経済の低迷をもたらしたということではむしろなくて、一九九七年のときの金融危機によって金融システムが大きく毀損したことによってかなり日本経済がダメージを受けたということによる影響が大きいということだろうというふうに思います。

 特に、消費税の増税にまつわる部分は日本では一度しか経験したことがなくて、しかも、不幸なことに、金融危機が起こった一九九七年にしか経験がないということで、とかくそれがトラウマのように捉えられることがあるわけですが、ヨーロッパ諸国の例を見ても、決して、消費税の増税というものが、ないしは、ヨーロッパ諸国では付加価値税と呼んでおりますけれども、付加価値税の増税が直ちにヨーロッパ経済を疲弊させたというわけではむしろありません。

 私が用意させていただきました資料の十一ページにその点について触れておりますけれども、もちろん、これはヨーロッパ経済が二〇〇〇年代にそれなりに好調であったということが背景にありますけれども、決して、消費税率が高いから経済成長が低い、そういう関係ではむしろないということであります。

 ほかの政策が伴って初めてこういうことが実現するということではあるのですが、消費税率がほぼ二〇%前後であるヨーロッパ諸国は、二〇〇〇年代には、これはリーマン・ショックの影響も含んだ上での経済成長率でありますけれども、実質経済成長率がほぼ三%前後であったということからいたしますと、うまく経済運営を行うことによって、それなりに高い消費税率と共存して税収を確保するということはできるのではないかというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

 私は、消費税の増税プラス社会保障、とりわけあのときは医療の負担が急に上がりまして、消費が低迷したというのが一つの要因だと思います。非常に大きな要因だと私は思っております。もちろん、金融危機の影響もありましょう。それから、法人税の引き下げというのもあったと思うんです。

 したがって、今我々が考えるべきことは、消費税の増税によって消費を冷やし、低迷させるということではなく、むしろ、税収ということを考えるなら、今まで減税し過ぎてきた法人税の方を見直す、あるいは、高額所得者に対する応分の負担を求める、無駄な大型公共事業を見直す等々、財政全体の財源の確保をどう考えるか、その質の面をよく検討する必要があるというふうに思っております。したがって、今回、法人税の税率を下げるということとセットに消費税増税ということをやることは、これはまた同じ道を歩んでいるな、私はそういうふうに感じているところでございます。

 さて、それでは次に、國枝参考人にお聞きします。

 資料の最後の九ページのところですけれども、この特例公債の問題ですが、毎年制定するのではなく、当面の間、特例公債を認めるような法律の制定も検討されるべきではないかという御提言をいただきましたが、予算は言うまでもなく単年度主義でありまして、その予算の裏打ちとして、税収等と国債の発行、こういうものが歳入面としてあるわけですね、ワンセットであります。

 これを、借金の法律だけが、一度決めたら数年間、どの程度かはわかりませんけれども、それでできますよ、こうなりますと、一つの問題は、財政上の規律が完全に緩んでしまって、歳出に見合って国債は幾らでも発行できるというようなことになりますと、これは大変なことになるんじゃないか。それから、歯どめは一体どのように考えているのか。この点、お聞きしたいと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、私、説明の中で、数年間にわたる形の特例公債の発行を認めてはどうかということを書かせていただきましたが、ちょっと説明をつけ加えさせていただきますと、もちろん、その前提としては、今後の財政再建のあり方につき、きちんとした姿勢を示して、どうやってその特例公債の発行を今後減らしていくのかということを示し、それに沿って財政運営がなされていくということが当然の前提でございます。それなしでは、もちろん財政規律がどうなるのかという御懸念は出てくるかと思いますので、私の提案の中では、あわせて、財政再建の姿をきちんと示していくということも含む必要があるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 熊谷参考人にお聞きしますけれども、大和総研のレポートについては、私もいつも興味深く拝見をして、国会の質問でもそれを引用させていただいているわけですけれども、例えば、ことしの税制改正関連で試算が発表されております。

 昨年十二月十六日のレポートですけれども、先ほども少し御紹介があったと思うんですが、家計を見まして、二〇一一年と二〇一五年を比較されているわけです。五類型の家計を想定しまして、その実質可処分所得、これがどうなるかという試算をされているんですね。それによりますと、全ての世帯でマイナス四・七八%から九・二三%可処分所得が落ち込むというふうに試算されているわけです。これは、今回の一体改革というものを実行したらそういうふうになってしまうということなんですね。これは当然、GDPを押し下げてマイナス成長という方向につながっていく危険性があると思います。

 そこで、参考人がお示しいただいた四ページのシナリオですけれども、これを見ますと、社会保障の削減というのがマイナス四%のとき、そして、消費税の増税がもちろん前提になっていて、これをやりますと、当然家計消費が冷えますので、景気を後退させる要因になりますよね。それなのに、なぜ名目成長率が三%、実質成長率二%、こういうことが想定できるのか、この点がよく理解できないんですけれども、説明をしていただきたいと思います。

海江田委員長 もう持ち時間がほとんどありませんので、短目に。

熊谷参考人 それでは、端的にお答え申し上げますと、基本的には、要するに非ケインズ効果的なものが一部で働くだろう、そういうことを一つは考えております。そのあたりは十五ページのところにございますが、今まで将来不安で貯蓄率が上がってきた、その部分で、消費が中長期で活性化する部分があるということ。加えて、日本銀行の政策ですとか政府のサプライサイドの政策がうまく軌道に乗ればそういうことも想定し得る、そういうふうに考えております。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

 将来不安が解消されるかどうかという点については、私は見解が違いまして、政府の今の政策をやると将来不安が広がると思っておりますので、そこは見解の違いということです。

 ありがとうございました。

海江田委員長 次に、木内孝胤君。

木内委員 改革無所属の会、衆議院議員の木内孝胤でございます。

 四月二日に民主党に離党届を出すまではあちらに座っておりまして、五月八日にそれが受理され、先般七月十九日に新しい会派、改革無所属の会というものを立ち上げました。その後一人ふえまして、現在四名で活動をしております。

 四月二日に離党届を出した直接的なきっかけは、消費増税の閣議決定に反対をして私は離党いたしました。そう申し上げますと、私は消費増税にもともと反対のように思われていらっしゃるかもしれませんが、私は、二〇一〇年代半ばぐらいにはもう消費税率は恐らく一五%ぐらいにしなければならないだろう、そのように思っていたわけでございます。

 私は、消費増税には二つあると思っています。一つはいい消費増税、もう一つは悪い消費増税です。

 悪い消費増税が何かというと、先ほど先生方からもいろいろお話ございましたけれども、改革を先送りするための消費増税、既得権益を守る消費増税、これが一つ。そして、本来であれば社会保障の将来図等があるんだと思いますけれども、今回は、社会保障の将来図もない、そういうような悪い消費増税だと思っております。それに加えまして、今回の消費増税で財政再建はできないというふうに明確に私は考えております。

 はたまた、いい消費増税というのは、例えば、熊谷さんおっしゃいました社会保障改革、どのようにしてここの歳出を少しでも減らしていくかというような構造に切り込むということ。そこには一切触れていない。あるいは、経済が非常に伸びているときに、経済を安定化させる、過熱した経済を冷やすような効果を持つような消費増税。例えば、二〇〇五年ぐらいであれば、小泉内閣のころ、あのタイミングに消費増税をしているということだったら、当時は明確に私は賛成をしたと思います。

 こうした中で、まず熊谷先生にお伺いをしたいんですけれども、先生のレポートの中に、三本の矢に支えられて緩やかに景気が拡大するというお話がございました。先ほども、日銀の追加緩和がいいのではないかというお話がございましたけれども、こちらの委員会でも、追加金融緩和をするべきという話と、逆に、慎重といいますか、過去に随分やってきていて、資金需要がない中でやっても余り効果がないという二つの大きな意見の相違がございます。

 熊谷先生のお立場から見て、追加緩和をやるべきというふうに書いていらっしゃいますけれども、どの程度の規模をやるべきだというふうにお考えでいらっしゃいますか。そして、当然効果があると思われているんだと思いますけれども、効果をどういうふうに見込んでいらっしゃいますでしょうか。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、私の全体的な立場から申し上げますと、一部で、日銀が金融緩和だけをすればそれで大丈夫だという議論の人がいますが、政府は政府で、やはりサプライサイドの政策を中心にまだまだやることがある。これはやはり、規制の緩和ですとか、もしくは法人負担の軽減ですとか、科学技術の推進。ただ、他方で、日本銀行はまだやるべきことを十分にはやっていない。両者がしっかりとやるべきことをやっていくということが必要である、基本的にはこういう考え方です。

 それで、具体的には、やはりマーケットの期待に働きかけていくような政策。ですから、その意味では、例えば、今、インフレのめど、ゴールが一%ですが、これを二%まで上げていく、もしくは外債を買うオペレーションをやっていくですとか、将来的には、私は、インフレターゲット、これに賛成でございまして、ある程度日銀が責任を持つ形で、時期を区切ってインフレターゲットを導入する。これらをやることで、これがストレートに経済にきくというよりは、為替市場や株式市場を通じて、最終的に実体経済の貸し出しの増加などにつながっていく、こういう考え方をしております。

木内委員 今先生がおっしゃった、日銀がインフレ目標を持つというような考えに私も賛同しているわけでございますけれども、先生のおっしゃったとおり、日銀が緩和さえすれば全てがよくなるとか、あるいは経済成長さえすれば増税は必要ない、そういうような立場には決して立ちませんけれども、一方で、私は、現在の金融緩和の水準というのは余りにも規模が小さ過ぎると考えております。

 こうした中で、日銀法を改正するべきというお話がございますけれども、それについて、國枝先生あるいは土居先生の御意見というのをお伺い申し上げたいと思います。

國枝参考人 金融政策、特に日銀の金融政策と日銀法の改正ということかと思います。

 日銀の金融政策のあり方については、二つの側面から議論する必要があって、往々にして混同されていることが多いと思うんです。

 一つは、今、デフレなわけで、これが望ましいというふうには考えていないわけですので、このデフレからどうやって脱却するかという意味での積極的な金融政策。それから、これは先生、御意見が違うんだろうと思いますけれども、税収のかわりに日銀がどんどん国債を引き受ければいいのではないかという、いわゆるマネーファイナンスとしての金融政策という考えがありまして、後者でやるとすると、これは必ずインフレにつながってしまいますので、これは避けなければいけないということかと思います。

 その上で、ここの部分の議論がきちんと区別された上で日銀との関係というのを考えていかないと、少し危ういところがあるのではないかと思いますし、現行の日銀法の枠組みの中で、これはもちろん日銀自体の御努力というのも必要だと思いますけれども、まだまだやることがあるのではないかというのが私の感想でございます。

土居参考人 お答えいたします。

 私は、次のような形で日銀法が改正されるということであれば賛成ということであります。

 それは、先ほども申し上げましたけれども、今の日銀法では弱い日銀の政策に対するコミットメントを強めるということと、政治的な、裁量的な介入を阻止するということがセットであるならば、そういう形での法改正は私は賛成ということであります。

 と申しますのは、今の状況では、ある種、無制限に日銀の独立性が認められているような状況というのが現行法という理解をしております。つまり、一旦国会で同意されれば、任期中であれば、もちろん、国会でいろいろ意見を述べなければならないということは日銀総裁を含めありますけれども、途中で特段の責任をとらなければならないというようなことはないというような状況になっている。しかも、それに対して、何をもって日銀総裁は立派な仕事をしたかという評価、これが実は日銀法の中に今は何も規定されていないということであります。

 インフレターゲットが万能だとは思いませんけれども、例えば、一つの尺度として、インフレ率というものが日銀総裁の業績評価の尺度になり得るということであるならば、そういうものを法律に明記した上で、日銀総裁が任期中にどれだけの業績を上げたかということでもって日銀総裁の業績評価をし、場合によっては給与を連動させるというようなこと。もちろん、これは、日銀総裁一人が金融政策の責任をとっているものではないということであれば、政策委員会連帯責任というふうにしてもいいわけですけれども、少なくともそういうことをする。

 ただし、責任を明確にした上で、裁量的に任期途中に首にするとか、そういうようなことを政治的に行うということになりますと、これは、日銀ないしは中央銀行の政策手段の独立性というものが失われてしまうということになりますので、一旦、任期の初めのところで同意する段階でコミットメントをさせた上で、任期中には裁量的な介入を政治はしないという、ある種のアコードといいましょうか、そういうものが取り決められるということであるならば、そういう仕組みが望ましいのではないかというふうに思います。

木内委員 今、土居先生がおっしゃったとおり、日銀の独立性を十分に担保した形での日銀法改正というのも十分に検討するべき話だと私は思っております。

 その上で、熊谷先生のレポートの中に、二〇一二年度、一三年度のインフレ予測というのが出ておりました。これが、〇・一%、二〇一三年度が〇・二%と、さすがにマイナスと目標を立てられないから渋々とこういう数字にしたのかなと思うぐらい、まだまだデフレに近い状況が続くのかなと思っております。

 先生方のレポート等は日ごろから拝見させていただいておりますけれども、きょう、非常に違和感があったのは、デフレを脱却することを待っていたらいつになっても増税はできない、さまざまな歳出改革等は、確かにそういう側面はあるかと思いますけれども、デフレを放置したままで、それでも構わないから増税をされるべきだ、私の理解ですと、お三方ともそういうふうにおっしゃったのではないかと思うんです。

 ここで一つ、ちょっと違和感があったので申し上げますけれども、こういう議論をするときというのは、通常、増税賛成派と反対派というか、ある程度バランスのとれたお三方がそろうのかなというのが私の感覚なんですけれども、こういう言い方をするとあれですけれども、お三方ともかなりの積極増税論者なのかなという感じを持っております。

 私、前の、これは民主党の中の話ではございますけれども、消費税の事前審査をしていたときも、例えば、座長を財務省出身の方が務め、司会者が財務省出身の方、そして、答えの七割は財務省出身の方が答える。私は、見ばえというのも非常に大事な話だと思っているんですね。

 そうした中で、きょうもずっと聞いていましたら、別に、私は増税がだめだということもないですし、レポートの中身なんかを見ていますと非常に的確な、いい分析をされているにもかかわらず、何か、でも最後はどうせ政治的にできないんだから増税やむを得ないじゃないかというような、ちょっと最後だけ乱暴なように聞こえてしまったんですけれども、そこについて一言ずつコメントいただければと思います。

海江田委員長 それは、もう私どもに一任をいただきまして、そして、理事会でお諮りをして決めたことでございますので、僣越ですけれども、何か別な角度で御質問いただいた方がよろしいかと思います。

木内委員 では、要するに、デフレが続いていても増税がやむを得ないとおっしゃったというふうに理解したんですけれども、ちょっと再確認の意味で、それはやむを得ないというふうにお考えなのかどうか、お三方からコメントいただければと思います。

國枝参考人 お答えいたします。

 先ほどもちょっとお答えをしましたが、ほかの税と違って、消費税というのは実はインフレ要因で、物価が実際に上がる増税でございます。ですから、デフレ下だから消費税増税はおかしいということではなくて、むしろインフレ政策の一つである。

 先ほどの日銀の話との関係でいいますと、実は、金融緩和してもなかなかそれが浸透しない理由の一つとして、金融緩和しても需要がないんですという話があるわけですけれども、消費税が上がれば、それだけ当然取引需要がふえますので、需要が出てまいります。

 そういった意味でも、消費税の増税と、それから、確かに金融緩和によるサポートが必要になってくるとは思いますけれども、デフレ下だから消費税増税をするべきではないというのはちょっと違うのかなというふうに思っております。

熊谷参考人 御質問ありがとうございます。

 簡潔に三点ほど申したいと思います。

 まず一点目としては、もう先送りは許されない。要するに、論点をずらすことによる先送りの政治というのはやめるべきだということが一点目。

 二点目として、増税までにまだ一年半あるわけですから、そこまでに徹底的な成長戦略と社会保障の合理化をやることが最大の政治課題であるということが二点目。

 三点目として、高成長を目指すことは政策目標としては重要ですけれども、それを財政再建の前提に組み込むということではいけない。というのは、ヨーロッパなども楽観的な前提で財政再建計画を立てると市場の信認が得られないということがありますので、前提条件は保守的に、他方で、高成長は政策目標として目指すということだと思います。

土居参考人 私も、基本的にはデフレ脱却を待って増税というのでは遅いというふうに思います。

 國枝参考人もおっしゃったように、もちろん消費税増税は物価を上昇させる要因になるということ。

 それからもう一つは、金融政策をさらに講じるということでもって消費税増税前にデフレ脱却ということは、方法によっては私はできるのではないかというふうに思っておりますので、むしろ消費税増税が目前に迫っているからこそ、なおさらデフレ脱却に熱心になるということもあり得るのではないかと思います。

木内委員 ありがとうございました。

海江田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.