衆議院

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第2号 平成25年3月15日(金曜日)

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平成二十五年三月十五日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 金田 勝年君

   理事 逢沢 一郎君 理事 伊藤信太郎君

   理事 木原 誠二君 理事 竹本 直一君

   理事 山本 幸三君 理事 安住  淳君

   理事 桜内 文城君 理事 上田  勇君

      安藤  裕君    伊東 良孝君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      鬼木  誠君    神田 憲次君

      小泉進次郎君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    田野瀬太道君

      田畑  毅君    竹下  亘君

      中山 展宏君    藤井比早之君

      牧島かれん君    松本 洋平君

      御法川信英君    山田 賢司君

      階   猛君    武正 公一君

      古本伸一郎君    前原 誠司君

      西野 弘一君    松田  学君

      三木 圭恵君    山之内 毅君

      岡本 三成君    竹内  譲君

      小池 政就君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   議員           奥野総一郎君

   議員           古本伸一郎君

   議員           松本 剛明君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       寺田  稔君

   財務副大臣        山口 俊一君

   内閣府大臣政務官     島尻安伊子君

   財務大臣政務官      伊東 良孝君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   国土交通大臣政務官    赤澤 亮正君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  森本  学君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    桑原 茂裕君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 福島  章君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           蒲原 基道君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         深澤 淳志君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    西村 清彦君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

三月十四日

 消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案(松本剛明君外四名提出、衆法第二号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案(松本剛明君外四名提出、衆法第二号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君、日本銀行副総裁西村清彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長森本学君、監督局長細溝清史君、外務省大臣官房審議官福島章君、厚生労働省大臣官房審議官蒲原基道君、国土交通省大臣官房技術審議官深澤淳志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧島かれん君。

牧島委員 自民党の牧島かれんです。

 麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信に対して質問をさせていただきます。

 私たち自民党は、デフレからの脱却を最優先に掲げ、財政の立て直しに向けてスピード感を持って取り組んでいるところです。麻生大臣の果たされている役割に心から敬意を表します。麻生大臣のポジティブなマインドが、国民の生活にも明るい兆しをもたらしてくれるものと期待をしております。

 アベノミクスは、国民の間に広がった閉塞感を払拭し、未来への投資を促すものと、国民からも市場からも注視をされております。

 私の地元小田原は、あの、まきを背負って読書をする銅像で有名な二宮金次郎、二宮尊徳の生誕の地です。二宮尊徳は、荒れた町や村を復興させ、社会資本や公共資本を生み出して、そして財政を立て直してまいりました。二宮尊徳は、富や幸福といったものは、善行、よい行いと勤労で積み上げていくものだと述べています。

 日本人はかねてより、勤勉によく働き、経済生活を支え、発展を遂げてまいりました。もちろん働く環境は時代によって変化をしていっているものとはいえ、第二次安倍政権の経済成長戦略、また三本の矢が確実に実行されることによって、日本人であれば、必ずやデフレから脱却できるものと信じております。

 麻生大臣のお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 一番時代が違ってきていることが二つぐらいあると思うんですが、一つは、二宮金次郎まで戻らなくて、ちょっと戦後でいきましても、昭和二十年この方六十八年たちますけれども、これまで日本は数々不況というのをやりましたけれども、いずれもインフレーションでの不況。今回は初めてデフレーションによる不況なんだと思っております。

 これは多分、世界じゅう、先進国でデフレーションによる不況をやった経験者は、少なくともこの六十、七十年間は一カ国もないと存じます。日本の場合はそこが今までの不況と全然違った対応で、我々もデフレを経験した経験者はいませんし、したがって、デフレ対策をやった経験者も、世界じゅう、一人もおりません。したがって、経験者がなければ歴史に学ぶ以外に方法がないということになるんだと存じますが、今回はそこに気がつくのにかなり長い時間がかかったんだと思います。

 株価は、一九八九年の十二月の末で三万八千九百十五円をつけたんですが、それが今、上がったとはいえ、一万二千、三千円。当時に比べれば三分の一以下、一時期七千幾らまで下がっておりましたので、四分の一、五分の一まで下がっておるほど、どんと。土地も同様にすさまじい勢いで、一五%ぐらいまで面積当たりで減ったと思いますけれども。

 それを脱却するのに、我々はいろいろやってみたんですけれども、なかなかうまくいかなく、これで歴史に学ぶということになると、一九三〇年代のあのデフレーションによる不況に対抗するためにやったのは、やはり日本銀行による金融の緩和、それと財政の出動、経済の成長と、三つ一緒に同時にやるという決断をするのが、今回の一番大事なところだったんだと思っています。それをやるにはやはり政治的な力も要りますので、その意味では、今回はそれが一緒にできるようになったということだと思います。

 結果として、今のところではありますけれども、何となく、どうにかなるんじゃないかなという気分だけで、今、株が急激に上がり、日銀との話もできましたものですから、円が安くなったり、いろいろな形をしておりますけれども、問題は三番目の成長というところだと思いますので、この成長にきちんとつなげていくためには実質経済がついてこないといかぬ、そこのところがこれからの最大の問題だと思っておりますので、この点につきましては、今後、さらに一層やっていかないかぬところだと思っております。

牧島委員 ありがとうございます。

 今回のアベノミクスは、恐らく歴史に残る政策になるのではないかというふうに思っております。

 第一の矢、大胆な金融政策についてお尋ねいたします。

 日銀と、そして政府の共同声明の中で、二%の物価目標というものが設定されました。ただ、一方では、物価だけが上がって賃金が上がらないということでは苦しいんだというお声があるのも、また事実であります。ただ単に物価が上がってデフレを脱却すればいいということではなくて、国民の生活に、もう改善されたんだという実感が伴うこと、雇用や賃金の拡大を伴ったデフレの脱却でなければならないというふうに考えております。

 金融政策決定会合にも出られております山口副大臣から、御見解をお聞かせください。

山口副大臣 お答えをいたします。

 ただいま御指摘をいただきましたように、経済成長を伴わずに物価上昇のみが発生をするという場合には、当然、物価上昇の副作用といいますか、これが顕在化をして、結果的に国民生活に悪影響を与えるというふうなことでございます。そのために、日銀による大胆な金融政策にあわせて、先ほども大臣の方からお話がありましたが、政府として機動的な財政政策と成長戦略を実行するというふうなことにしております。

 これらの取り組みを三本の矢として、できるだけ早期に日本経済の実需をつくり出して、企業活動の活性化等を通じて、雇用、所得の拡大につなげていく、この好循環を生み出すことによって、国民の生活に悪影響が出ないようにしてまいりたいと考えております。

 この点につきましては、総理や大臣から、可能な限り報酬の引き上げを行っていただくように、産業界の方に直接要請をさせていただいたところでございます。先般来のマスコミ報道等でももう御案内のとおりで、既に、企業におきましては、この方針に御賛同いただいて、従業員の報酬を引き上げる動きが広がってきておるというふうなことでございまして、今後とも、こうした前向きな動きが続いて、所得環境が改善をしていくというふうなことを期待しておるところでございます。

 以上です。

牧島委員 山口副大臣、ありがとうございます。好循環を生み出していくというお話、また、企業の中で賛同されるところがたくさんあるということは、大変私たちにとっていいニュースだというふうに受けとめております。

 続きまして、第二の矢及び第三の矢について質問をさせていただいております。

 成長を促していくということは大変重要なんだと、大臣からも副大臣からもお話がございました。二十五年度予算そして税制改正においても、そうした大きな柱が今立っているところでございます。

 中でも、教育資金の贈与に関しまして税制の措置を行っていこうということが、今回改めて創設をされました。これに関しては、地元でも大変期待の大きい声が寄せられているところでございます。ぜひ使い勝手のいい制度にしていただきたいと考えておりますが、山口副大臣のお考えをお聞かせください。

山口副大臣 お答えをさせていただきます。

 お話しのとおり、高齢者の資産を若年層に早期に移転させるということとともに、教育、人材育成を支援するというふうな観点から、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置を二十五年度から創設することにいたしております。

 本措置につきましては、経済対策取りまとめ時からマスコミ等でも大きく報じられるなど、大変国民の皆さん方の高い関心を呼んでおるというふうなところであります。

 政府としても、御指摘のとおり、本措置を国民に広く利用していただくために、制度の創設に当たりましては、ゼロ歳から三十歳までを制度の対象とする、銀行、信託銀行あるいは証券会社等を通じて制度を活用できるようにして、利用者の方が税務署に足を運ばなくても制度の適用を開始できるというふうなことにしております。制度の対象となる教育資金の範囲あるいは手続などについても、わかりやすい周知、広報に努めることにいたしております。できる限り使い勝手のよい制度にしていきたいと思っておるところでございます。

牧島委員 山口副大臣、ありがとうございます。広報活動も重要なものと受けとめております。

 持続的な経済成長を進めていくためには、野心的な成長戦略が大事なのだという大臣の所信に対して、私も大変同感をしているところでございます。特に、成長戦略の中でも、海外で展開をしていく戦略、特に国際競争力を持っているアニメなど、日本のソフトパワーが海外に出ていくことによって、私たちにとって大変大きな成長戦略が見込めるのではないかというふうに考えております。

 特に、箱根など、日本にはたくさんの有数な観光地がございます。そうした観点から考えましたときに、海外に日本の魅力をPRしていく、そして、あらゆる国や地域で日本のファンをふやしていく、そして、そのファンの皆さんが、ああ、日本に行ってみたいなと思って観光として訪れていただく、そうした観光立国の考え方もこれから大事になってくるのではないかと思っております。

 ぜひ、ここは麻生大臣に、ソフトパワーについて、また、クール・ジャパンの戦略、さらには観光について、御所見をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 おっしゃるように、今、この三本目の矢のところの一つに、観光産業、その中の一部にアニメ、コンテンツ、いろいろやって努力をしておられるんだと思いますけれども、今までの製造業とは違って、いわゆるコンテンツとかソフトというものを飯の種にして伸ばしていこうという話なんです。

 海外から日本に来る人の観光というところに関して、今、クール・ジャパンという言葉がはやり始めてかれこれ数年たちますけれども、最もクールなジャパンという写真を見たことがあるかと言われたことがあって、あれはNHKでやっている番組だったと思いますが、見たことがあるんです。岩場のところにいきなり自動販売機がぽつんと立っていて、それに金を入れたら出るという写真、これが最もクールなジャパンの写真だというわけです。

 どう考えてもクールに見えないから、何だこれはと思っておりましたら、これはどこだかわかるかと言うから、わからないけれども、これは鬼押し出しかと聞いたら、そうだと。軽井沢の奥の鬼押し出しだと。全く人のいない、ずっと溶岩が続いたところに、いきなりぽつんと自動販売機がある。金を入れたら出ると言うから、当たり前じゃないかと言ったら、いや、金を入れたら出るということは、あの中に金があるからじゃないかと。それはそうだろうと。どうしてとられないんだと言うから、いや、とられないんだ、とったら罪だろうと言ったら、それはアメリカでも罪だ、世界じゅうどこでも罪だと。しかし、この国では、自動販売機が二十四時間、三百六十五日、外に立っている。あなたはいろいろな国に住んだことがあるみたいだけれども、海外で自動販売機が屋外で二十四時間、三百六十五日立っている国を日本以外に見たことがあるかと言われるまで、私は余り気がつかなかったんですが、へえと思って見ていたんです。

 その人はイギリス人だったんですが、全くこういうことは考えられない、しかし、軽井沢でこれを見たときはショックで、写真を撮ったら、これが最もクールなジャパンになったというんだ。

 我々の考えているいいところと、外国人が見たいいところと、多分違うんですね、これは。だから、こういったことは、何がいいのかというのは、むしろ向こうの人たちに聞かないと、こっちがこれはどうですかと言っても、全然興味がなかったりしますので、そういったところはいろいろ考えないかぬところです。

 我々、アニメという話をよくします。このアニメーションというものの中で、ずっと続いて、今でも売れている人気のアニメーションというのは、多分、ポケモン、ドラえもん、ワンピースだと思います。これで今笑えた人は、わかっている人たちなんですよね。この問題を聞いて、多分、笑えない人がいっぱいいるんだと思うんだ。

 ポケモンというものの一番のよさは、一言もしゃべらないんですよ。チュッとキュキュキュしかしゃべらないんですから、ポケットモンスターというのは。でも、言葉がなしでもコミュニケーションはできるという、この文化を世界に植えつけた最初のものだと思いますね。

 ドラえもん、アストロボーイというのは鉄腕アトムのことですけれども、これも同様に、ロボットは人間が困ったときに助けてくれるという概念を日本人に植えつけたがゆえに、日本では世界で一番ロボットが普及した。ヨーロッパでは普及しませんでしたから。ロボットが人間を使うという話になって、普及しなかった。

 ワンピースの方は、これはどう考えても、あれだけのキャラがわちゃわちゃ立っているものなんですけれども、とにかく徹底していることはたった一つで、困ったやつは必ず助ける、仲間は絶対助けるという哲学なんですよ。

 この三つが普及するということは、日本というものの文化がサブカルチャーを通じて世界に広まっていくということなんだと思います。こういったものがいいとして日本に人が来るというのは、少なくとも、活字文化ではなくて、こういったものから入ってくる、それはそれなりに、外国語とか英語とかいうのが余りうまくない日本人にとりましては、絵で通じるというのは非常に大きいので、我々は、昔は絵を描いたり漫画を描いてきたのが、高山寺の鳥獣戯画にさかのぼってありますので、いろいろな意味で、こういったものは今後とももっと自信を持ってやっていくというのが観光等々にもつながっていくんだ、私自身の独断と偏見ですけれども、そう思っています。

金田委員長 牧島かれん君、申し合わせの時間が参りました。

牧島委員 ありがとうございます。

 クールさの奥深さについて、大臣からもっともっとお話を伺いたいんですが、時間になってしまいました。

 被災地の復興など、なすべきことはたくさんありますが、麻生大臣のリーダーシップによって必ずや実現できるものと期待しております。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。

 麻生大臣には、予算委員会、そしてまた本日はこの委員会と、大変毎日お疲れさまでございます。

 限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず一点目、財政健全化目標の件について御質問をさせていただきます。

 大臣は、所信表明でこう述べられています。財政健全化と経済再生の双方を実現する道筋について検討していく。全くそのとおりだろうというふうに思います。また、具体的には、二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランス赤字の対GDP比を二〇一〇年度水準から半減し、二〇二〇年度までには黒字化するとの、現行の財政健全化目標を目指すというふうに述べられております。

 これはそのとおりなんだというふうに思うんですけれども、ただ、先般、財務省から発表されました二十五年度予算の後年度歳出歳入への影響調査では、歳出と経済成長、これで四つの類型に分けて試算がされているんですけれども、その四つあるうちの、歳出は据え置く、そして経済成長は三%、この一つのケースだけでしか二〇一五年度、中間時点での目標というのを達成できない、そういう試算の結果が出ております。

 ここで言う歳出据え置きというのは、歳出項目の中で最も大きい社会保障関係費については、社会保障と税の一体改革で増額をされた部分については加算をしている、ところが、いわゆる自然増と言われる、年間一兆円を超えるようなものについては、全くゼロとして仮定をしています。その他の経費についても、当然、物価が上がっていけばそれなりに支出がふえるということも想定されるわけでありますので、このふえるであろうと想定する部分全部、何らかの歳出の削減によってそれを吸収しなければいけないということになります。

 こう考えてみますと、この目標の達成というのは非常に難しい、高いハードルだなというふうに感じます。これはもちろん、大臣になってから難しくなったわけじゃなくて、そもそも、この目標自体がかなり難しかったというふうに考えているんですけれども、果たして、この目指している目標というのが現実的な目標と言えるのかどうか、その辺、大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 上田先生御指摘のとおり、これはもう極めて高いハードルに設定されていることは間違いない、私どももそう思っております。

 これは、平成二十五年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算というものにおきまして、いわゆる今言われたように、四つのケースを試算しておるわけです。

 上田先生御指摘のとおり、望ましい経済成長に伴い税収が増加するというもとで歳出合理化を行うケース、いわゆるこれが、経済成長三%、歳出据え置き型と言われるものにおいてのみ、二〇一五年度における国の基礎的財政収支赤字対GDP比が二〇一〇年度から比べて約半減すると推定できるという案で、これは経済成長三%のケースと言われているものを今言われたんですが、御存じのように、この試算はもう国が単独かつ一般会計のみを対象にした試算ですので、国、地方の合計、かつ、SNAという、例のシステム・オブ・ナショナル・アカウント、国民経済計算ベースで設定されている財政健全化目標の達成の可否について、これは直ちにこれと直結して結論が出るものではないということは確かです。

 いずれにしても、中長期の財政健全化の取り組みというのを継続していくことが大事なんであって、今言われましたように、財政健全化目標の達成のためには、GDP比、二〇一〇年度の水準から半減させるという目的というものは、今後とも、中長期財政計画について、これはどのようなものなのか、ちょっと、ことし年央までにこれをどのような形になるかを、改めてもう一回きちんと出したいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 大臣は、また所信の中で、日本の財政に対する信認を確保していくことも重要であるというような趣旨も述べられております。全くそのとおりなんだと思うんですね。

 ですから、やはり国の内外で信認が得られるということにするためには、やはりこの財政健全化、単に目標を置くというだけではなくて、それをどうやって達成していくのかという、もうちょっと具体的な計画をやはりちゃんときちっと示していかなければならないし、また、これだけ逼迫をしている中で、今、これから財政の計画を立てるということでありましたので、その辺は、本当に達成できるという信頼感があるような、そういう計画をぜひ構築していただきたい、樹立していただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、金融円滑化法にかかわる問題についてお尋ねをいたします。

 この金融円滑化法は、リーマン・ショック後の厳しい経済環境の中で、中小企業あるいは住宅ローンの借り手を臨時的に救済する目的で、緊急な対策として打ち出されたものでありまして、当時の緊急事態に対処するという意味では非常に有効なものであった、そういう面もあったというふうに認識をしております。

 ただ、その後、なかなか経済情勢が好転をしない中で、数回延長されてきました。やはり、その過程で本来の金融システムの正常な機能というのがゆがめられた面というのもあったんだろう、そのことは否定できない面じゃないかというふうに思っております。

 そこで、この金融円滑化法がこれまで果たしてきました役割について、大臣はどのように評価されているのか、また、今回、今度は再延長しないというふうに御判断をされたわけでありますが、この法律を廃止すると判断した理由について、お伺いをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 この金融円滑化法につきましては、これは実行率が九割を超えております状況であることなどから、こういった貸し付け条件の変更とか、資金の供給に対する金融機関の体制整備とか、また、経営陣やら営業現場の意識改革を推進させるという意味においては一定の効果があったことは確かだ、私どももそう思っております。

 ただ、一方、条件変更を繰り返して行っている借り手が最近では約八割になっておるという状況を考えますと、これは、変更などを受けて助かったんだけれども、その後、経営を改善する計画等々の策定がきっちりできていないというような借り手が増加しているという傾向も間違いないところだと思っております。

 このため、この法律を再々々延長するというようなことではなくて、私どもとしては、中小企業の真の経営改善というものを図ることが喫緊の課題なのではないか、それを直さない限りまた同じことになるという感じがいたしますので、個々の債務者の状況に応じてきめ細かにやらねばならぬというようなことを考えますときには、やはり他の施策というものを考えなきゃいかぬのではないか。

 そこで、副大臣以下を全都道府県に出して、金融庁所管の金融機関においても、いわゆる円滑なつなぎができる状況にあるにもかかわらず切られちゃうんじゃなくて、個々の企業によって内容が違うので、そういったところを、霞が関で見たってわかるわけありませんから、ぜひ個別に見て、その上で、やるべきことはきちんとやるということをやっていかないとだめですという話を、我々の方からも地方の金融機関に対して周知せしめるということで、今、全力を尽くしている最中であります。

上田委員 先ほど申し上げたとおり、この金融円滑化法というのは臨時緊急措置として導入をされたものでありますから、いつまでもこういう状態を続けていくというのはいけない。それを今回、この時点でということで御判断をされた。それは理解をするものでございます。

 ただ、やはり、いろいろなお話を聞いていますと、この法律が廃止をされると中小企業の資金調達の環境が急激に変化をするということを恐れている。せっかく、今、経済がいい方向に向かっているわけでありますから、そうした事態になると、経済が大混乱を来して、足を引っ張ることにもなりかねない。やはりそういった事態は何としても避けなければいけないというふうに思っております。

 我が党のいろいろな御提案も踏まえた上で、金融庁でも、また中小企業庁でも、いろいろと連携をしていただいて、今、大臣からも一部御紹介をいただきましたけれども、この廃止によって中小企業の資金繰りの環境に急激に変化が起きないような対策を講じていただいているところであります。

 また、金融機関にそうした趣旨も随分と丁寧に徹底をしていただいておりますし、また借り手に対しても、金融機関もこういう姿勢で臨むんだということも随分よく周知をしていただいているというふうに考えております。財務局や財務事務所では、相談窓口も設置をして、非常に幅広いいろいろな御相談も受けていただいているというふうに聞いております。

 体制は整いましたので、ぜひ、こうやっていろいろと整えていただいた体制が引き続き円滑に、そしてちゃんと機能するように運用していただきたいというふうに考えておりますが、もう一度、ひとつ大臣によろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 今御指摘にありましたように、少なくとも、窓口を設置するなどというのは、これまで金融庁として直接やったことは一回もないと思いますけれども、貸す側の方だけでなく、借りる側の方にもきちんと話がいかないといかがなものかということで、商工会議所やら商工会やら、いろいろな形で、できる限り、借り手側の方に対しても、こういう施策を講じておりますということは努めて宣伝しているところでもありますので、御心配の点等々、我々としても万全を期したいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。またしっかりと対応していただきまして、やはり、経済が回復していく、それに応じて段階的に、徐々に正常な状態に戻していくということが重要じゃないかというふうに思っております。

 次に、財務省では、先般、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書というのを公表いたしました。財務省を初め、本当に関係省庁の方々、莫大な労力を費やした調査じゃないかというふうに思っております。報告書も千三百ページに近いものでありまして、きょうお持ちしようと思いましたけれども、何せ重たいので持ってきませんでしたけれども、そのような、非常に力作でございます。数多く設けられている租税特別措置がどれだけ使われているのか、あるいはどのような業種にどのような規模の企業で制度が活用されているのか、そういったことが明らかになって、非常に貴重な資料であるというふうには思います。

 それを見てみますと、そうした租税特別措置の中には、適用件数が全くない、あるいは数件しかないというものもあります。それが直ちに政策の目的が完全になくなっているということは断定できないわけでありますけれども、全然適用がないとか非常に少ないというのは、これはやはり何らかの問題があるんじゃないかというふうに考えるのがごく自然なんじゃないかというふうに思います。実際のニーズに合っていないのか、使い勝手が悪いのか、あるいは内容、よくその辺を調べてもらって、必要な見直しを行うべきではないかというふうに思います。

 せっかくこれだけ労力を使った調査でありますから、この調査をぜひ有効に使っていただきたいと思いますが、今後どのように活用されていく考えか、大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘にありましたように、今般の調査でゼロもしくはごく少数の政策税制が見受けられたところでもありますので、これらのことにつきましては、二十五年度から、有効性の乏しいものはもうやめるとか縮小するとかいうのが一つ。それから、政策目的の見直しを行った上で新たな制度に改組する。そして三つ目が、実態を踏まえた上で要件緩和する等々、拡充を行うとか、各制度のいろいろな状況に応じて今やっているところなんです。

 このような調査結果により得られた何十万件という情報がありまして、租税特別措置の効果の検証というのは極めて有用だと思っております。今後、年々蓄積してまいりますので、その調査結果を今後とも有効に活用させていただきたいものだと思っております。

上田委員 終わります。

金田委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 きょうは、白川日銀総裁にお越しいただいております。早速御質問させていただきます。

 もうすぐ御退任が近づいてきました。この五年間、日銀総裁になられてから政権交代が二回あったということで、政府との関係、政治との関係についてはいろいろ苦心されてきたのではないかと思っております。

 日銀の独立性ということが日本銀行法上定められておりますけれども、そもそも、この日銀の独立性ということをどういうふうにお考えになるのか。いろいろちまたでお聞きしますと、日銀の独立性とは、目標については、これは政府と一体となって変えていくから、いわば政府の方針が変われば柔軟に変更し得るものというふうに理解されるような言い方もされますが、私は、日銀の独立性といった場合に、目標についても、やはり従来からの日銀の金融政策と一貫性がとれるようなことを貫いていかなくてはいけないと思っております。

 その目標について、政府の方針が変われば、あるいは政権がかわれば柔軟に変更し得る、政府の方針に対応していくというのは日銀の独立性に反しないのかどうかというのをまず確認させてください。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、中央銀行の独立性でございますけれども、金融のコントロール、お金のコントロールは、やや長い目で見て経済の安定を目指して運営しないと大きな混乱が生じるという歴史の教訓に基づくものでございます。私は、日本銀行法に定めました日本銀行の独立性といいますか自主性ということを十分に尊重して、この精神に沿って金融政策の運営に努めてまいりました。

 今御質問の件でございますけれども、金融政策の目的、これは日本銀行法にはっきりと定められております。これは、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。この目的自体は、これはもう法律にしっかり、国会で決められて書かれてございまして、この目的に沿って日本銀行は政策を行うということでございます。

 先生の御質問は、その目的の中で、今度は具体的な目標、具体的な数字ということでございます。

 日本銀行は、現在、物価安定の目標を二%というふうに定めました。では、この目標というのは、短期的に、頻繁に変わっていいのかというと、これはそういうものではございません。多くの中央銀行で物価安定目標を持っておりますけれども、この目標は、一旦定めますと、ほとんどの中央銀行で、ずっとこれは変わらずに存在しております。

 これはなぜかと申しますと、先ほどの、目的のもとで具体的な数字を考えていくというのは、その経済の置かれた状況に即して、経済の安定と持続的な成長と整合的な数字は何なのかというのを考えてみた場合に、おのずと数字は決まってくるわけでございます。したがって、これはころころ変わっていくというものではございません。

 そういう中で、日本銀行は、しっかりとこの物価安定目標の実現に努力していきたいというふうに思っております。

階委員 今確認したんですけれども、物価の目標というのはころころ変わらないということも日銀の独立性の中には含まれるんだということでした。

 そこで、今回、政権がかわった後、物価安定目標なるものを政府と共同声明を出されたわけですね。

 我々の民主党政権時代は、日銀が目指す物価上昇率というのはどういう表現だったかというと、まず、「中長期的な物価安定の目途」という表現をとっていました。そして、具体的には、「消費者物価の前年比上昇率で二%以下のプラスの領域」にあり、「当面は一%を目途とする。」としていらっしゃいました。さらに、この一%が見通せるようになるまで強力な金融緩和政策を続けるとしていました。

 一方、今回、政権がかわった直後の共同声明では、まず「物価安定の目標」という表現に変わりました。目標数値も二%に変わりました。そして、二%目標に向けて「金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。」というふうに変わりました。

 このような変化なんですが、一方、経済金融環境、この間に大きな変動はなかったように思います。金融緩和を正当化するような経済の悪化というか、そういうことではなくて、むしろ、経済は底打ち傾向にあったのではないかと思っております。

 このような方針変更を行ったというのは、安倍政権のプレッシャーが大きかったからというふうにも考えられるわけですけれども、もしそうだとすれば、日銀の独立性から問題があると思います。もし日銀の独立性が保たれたというのであれば、この方針変更の理由を御説明ください。

白川参考人 お答えいたします。

 物価安定の目標について、二つの論点があると思います。一つは、一という数字と二という数字、それから、めどという表現と目標という表現でございます。

 まず、後者の点から申し上げますと、日本銀行として、物価安定の目標につきまして、これまで、これは機械的な運営である、つまり、ある数字を掲げますと、その目標に従って機械的にとにかく運営していくんだという誤解が一部にあったということを私どもは懸念しておりました。金融政策には柔軟性が必要であるということを訴え続けてまいりました。この一年間、そうした点についての理解は随分広がってきたというふうに思います。そういう状況を前提にしますと、日本銀行が目指す物価安定の姿について、これは目標という形で表現した方がわかりやすいというふうに判断いたしました。

 一方、二%の数字でございます。

 先生御指摘のとおり、日本銀行は、二%以下のプラスの領域で、当面は一%を目指すというふうに言っておりました。と同時に、成長力の強化に向けた取り組みが進展していけば、この一という数字がだんだんに上がっていくということもはっきり申し上げておりました。

 昨年秋とことし一月の状況の変化ということでございますけれども、一つ、物価上昇率の見通しも少しずつ上がってまいりました。今回、一月に発表した数字は、〇・九%という数字でございます。それから、従来は、物価の下振れリスクと上振れリスクを勘案した場合に、やはり下振れリスクの方が大きいというふうに判断していましたけれども、今回、一月は、この上振れ、下振れがほぼバランスするという形になってきたというふうに判断しました。

 そうしますと、では、一%を超えた後の姿はどういうふうに考えられるのかということをはっきり示す必要がございました。加えて、成長力の強化にしっかり取り組んでいくということでありますと、私どもとして、一%以降の姿について示す必要があるというふうに判断しました。そういうことを判断した上で、日本銀行の主体的な判断において、二%という数字を掲げさせていただきました。

 一方、政府においても、私どもがこの二%の物価目標を追求する上で必要な成長力と競争力の強化に向けた取り組み、これに取り組んでいくということを明らかにしていますし、それから、中長期的な財政規律の維持に向けてもしっかり取り組んでいくという姿勢を明らかにされております。そういうもとで、日本銀行としてしっかり努力をしていきたいということでございます。

階委員 日銀独自の判断で今回の方針変更に至ったということであります。

 お聞きしていてやや心外なのは、政府の方でも競争力の強化、成長力の強化に取り組んでいくから二%というふうに変えられるんだということをおっしゃっていましたけれども、我々が民主党政権のときは、逆に言うと、競争力、成長力について配慮してこなかったと言っているようにも聞こえますけれども、それは、政府の方針が変わったということをおっしゃっているわけですか。成長力、競争力の強化についての政府のスタンスが変わったということをおっしゃったのであれば、ちょっと私は心外だと思いますが、その点についてお聞かせください。

白川参考人 そうした趣旨で申し上げているわけではございません。

 物価の上昇率の見通しが少しずつ上がってきている、それから、上振れ、下振れリスクのバランスが変わってきた、そういう中で、日本銀行として、一%を超えた先の世界についてしっかり説明する義務があるというふうに判断して、今回の共同声明に至ったものでございます。

階委員 独立性に関しては、ちゃんと貫いてほしいと思っております。

 次の質問ですけれども、私は、最近のというか、ここ十年来の金融環境を見ておりまして、そもそも、日銀の金融政策によって物価の上下変動を制御できるのだろうかという疑念を持っております。金融緩和というのは大事ですけれども、それによって物価上昇あるいは物価の下落をコントロールするということに過度に日銀が責任を負うのは、かえっておかしいのではないかなと思っております。

 総裁の、ちょうど解散直前の講演録を見させていただきました。十一月の十二日、きさらぎ会というところでの講演録。ここでおっしゃっているのは、マネーをふやせば物価が上がるという貨幣数量説は、一見わかりやすいですが、近年の日本や米国のようにゼロ金利が続く経済では、現実を説明できないというふうにおっしゃっています。また、実際のところ、この間のリーマン・ショック直前のサブプライムローンの問題にも象徴されますように、近年では、金融緩和で貨幣をふやしても実体経済に回らずに投機に回っている、こういう状況もあって、必ずしも物価を制御できないのではないかというふうにも思います。

 そういう中で、どのようにして二%の物価安定目標を達成できるのだろうか。かつ、もし達成できたとしても、過去十年来デフレ脱却を目指して金融政策にいろいろ取り組んできたにもかかわらず、なかなかそれが思うように果たせなかった中で、今度は、その二%に達した後、さらにそれが上振れすることを防ぐようなことを有効になし得るのかどうか、これも疑問に思っています。

 どのようにして二%目標を達成していくのか、また、達成した後、上振れを防ぐためにどのようにしていくのか、この二点についてお答えください。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、今、物価の上昇率が低いわけでございますけれども、これをどうやって高めていくのかということでございます。

 現在、日本を含めて先進国の多くは、ゼロ金利でございます。したがいまして、お金を供給しても、そのお金を保有することのコストはほとんどゼロでございます。したがいまして、いわばのれんに腕押しという形で、お金は供給されますけれども、そのお金をそのままみんながいわば保蔵してしまうという状況になっております。したがいまして、単純な貨幣数量説は成立していないということでございます。これは、日本に限らず、アメリカを見ても、この数字、中央銀行の供給する通貨の量と物価の関係を見ると、この関係は一目瞭然でございます。

 そう申し上げた上で、それでは金融政策に役割がないのかというと、そういうことではございません。今、日本銀行が行っています包括緩和は、長目の金利を少しでも下げる、あるいは国債の金利に上乗せされている、いわゆるクレジットスプレッド、プレミアムというものを少しでも下げるということを通じて、つまり金利に働きかけて景気を刺激していくということを行っております。

 ただ、これだけで物価が上がるのかという先生の御質問の趣旨だと思いますけれども、この点では、競争力と成長力の強化に向けた取り組みが進展していけば、同じお金であっても、あるいは同じ金利であっても、これが大きな効果を持ち得るということでございます。そういう意味で、日本銀行による強力な金融緩和と、それから政府を初めさまざまな主体による競争力、成長力の強化に向けた取り組み、この両方が不可欠であるということを申し上げている次第でございます。

 一方、今度、物価が上がってきた場合に、これを本当にその二%の中におさめ得るのかということでございます。

 私どもが今回発表しましたこの二%の物価安定の目標は、これを発表することによって、予想物価上昇率の過度な上昇を防ぐ、いわゆるアンカー効果といいますか、物価安定効果があるというふうに考えております。

 ただし、そうした効果が働くためには、二つの重要な前提条件が満たされる必要があるというふうに考えております。

 一つは、先ほど先生から御指摘のあった中央銀行の独立性でございます。アンカー効果が働くのは、仮に予想物価上昇率が急速に高まる場合であっても、市場参加者や国民は中央銀行が金融政策を引き締めるというふうに予想し、また、実際に中央銀行が金融政策を引き締めるからでございます。しかし、不幸にして、中央銀行の独立性が十分でないというふうに市場参加者やあるいは国民が認識する場合にはそうした効果は働かないということになってまいります。

 それから、第二は、財政の健全性であります。一旦、財政に対する信認の低下によりまして長期金利が上昇してしまいますと、どのような状況であれ、中央銀行のとり得る政策の余地はおのずと限られてまいります。長期金利が上がる、つまり金融機関が多額に保有する国債が値下がりをしてくるとなりますと、金融システムに悪影響が出てまいります。そうした事態を防ぐ必要があるというふうにやはり中央銀行は考えるわけでございます。

 つまり、中央銀行は、物価の安定と金融システムの安定、この両方を追求しているわけでございます。そういう意味で、そういう状況になってしまうと、もうおのずと選択の余地は限られてまいります。そういう状況を、経済学者、エコノミストは、英語ではフィスカルドミナンス、日本語で言いますと財政従属という言葉で呼んでおります。

 大事なことは、中央銀行がしっかり独立性を持つと同時に、そもそも、そういう今申し上げたような状況に陥らないようにすることが大事である。つまり、規律が大事であるということであります。中央銀行の独立性と財政の健全性、この二つがやはり、しっかり二%を守っていくための条件だというふうに思っております。

階委員 今重要なことをおっしゃったと思います。二%の物価安定目標、これがオーバーシュートして経済に悪影響を及ぼさないためには我々政治家の責任が重要だと。つまり、日銀の独立性を堅持すること、それから財政規律を守ること、この二点を我々は意識しないと大変危険なことだ、日銀の力ではどうにもならないということをおっしゃったと思います。

 そこで、具体例でお聞きしますけれども、今ちょっとそういう傾向が出ていると思うんですが、仮に、物価自体は上がらないで資産価格が上がってきた場合、過去にバブルというときがありましたけれども、そういう状態になった場合、日銀は、物価安定目標、二%はまだ達していないわけですけれども、こういう場合はどういう対応をとるんでしょうか。

白川参考人 まず、現状の判断でございます。

 確かに、資産価格は、例えば株価が少し上がってきているということは事実でございますけれども、しかし、現在がバブルというふうな状況ではまだございません。

 過去を振り返ってみますと、バブルが……(階委員「仮定のことで聞いています。今の状況ではありません」と呼ぶ)わかりました。

 仮定のことで申し上げますと、一般論で言いますと、資産価格の上昇であれ、あるいは下落であれ、大きな変動は、経済、金融を考えていく上で非常に大きな要因の一つでございます。したがいまして、日本銀行としては、資産価格の動きの背後にあるさまざまな要因を注意深く点検してまいります。

 仮に、物価は安定しているけれども、しかし、資産価格が上がっていくとかあるいはバブルが生じるという場合に中央銀行はどう行動するのかということでございます。

 今回発表しました政府との共同声明の文書の中でも、日本銀行は、強力な金融緩和を進めていくに当たって、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」ということをうたっております。現在そういう状況にあるということではございませんけれども、そうした点検を行いながら適切な金融政策を行っていくというのが一般論でございます。

階委員 ぜひ、過去のバブルの教訓も踏まえて、物価が低位安定しているからといって金融政策を何ら変更しないというのは、バブルのその後の崩壊という危険もありますので、そこは注意深くやっていただきたいと思っております。

 それからもう一つ、今度は逆に、物価が上がって二%の目標を達成した場合であっても、名目GDPが伸びなかったような場合、こういうときはどのような対応をとるべきとお考えでしょうか。

白川参考人 二%の物価目標を達成して、なおかつ名目GDPが伸びないというケースでございます。これは、実質GDPが伸びない、つまり、実質的な経済の力がなかなかついてこないということでございます。

 短期的にはともかく、ある程度の期間をとってみますと、実質GDPの伸び率は、就業者の伸びと就業者一人当たりの付加価値生産性の伸び、この両方の和で決まってくるわけでございます。

 今、日本の経済を考えてみますと、就業者は年率〇・六%というペースで減少しております。これが二〇一〇年代の数字。二〇二〇年代は、これは年率〇・八%減少する。大変な逆風が吹いておるわけでございます。一方、付加価値生産性の伸び率の方は、G7諸国の平均を上回っております。しかし、この両方を足し合わせますと、潜在成長率は一%以下になってしまうというのが冷徹な現実でございます。

 そういう意味で、この実質成長率を高めていく努力、つまり、潜在成長率を高めていく努力が必要であるというふうに思っております。もちろん、金融政策の方もしっかり運営してまいりますけれども、しかし、実質的な経済の力を強めていくということには、やはり実態的な努力があわせて必要だというふうに考えております。

階委員 そろそろ総裁の時間も迫っているので最後の質問にさせていただきたいと思います。

 私は、二%の物価安定目標について、今回の合意の文書によりますと、これは急いでやるということですね。正確に言うと「できるだけ早期に実現する」というふうに書いていますけれども、これは、今回新しく日銀の幹部になられる方は二年以内というふうにおっしゃったりしていますけれども、できるだけ早期にやることによって、リスクも大きいのではないかと思っております。

 先ほど御紹介した総裁の講演でも、「単に物価が上がりさえすれば良いということではなく、企業収益や雇用の増加、賃金の上昇など、経済そのものが全般的に改善し、その結果が物価の緩やかな上昇として現れる状況を目指して」いるんだ、あるいは同じ講演の中では、「賃金が上昇し、支出と所得の好循環が働き始めれば、人々は緩やかな物価上昇を自然な形で受け容れていくようになります。」と。

 これがまさに、物価観の変化、すなわち、インフレ予想の上昇が生じる現実に即した道筋であり、経済がデフレから脱却していく基本的なメカニズムだということで、物価目標ありきで目標達成を急ぐのは私はおかしいと思っていますけれども、どのような御見解でしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 私どもとして、二%の物価安定の目標を達成することは、これは大変重要な責務であるというふうに考えております。

 そう申し上げた上で、今の先生の御質問についてお答えしたいと思いますけれども、物価上昇率が単に上がるだけですと、これは、国民から見ますと、自分の給与は二%ふえるけれども、しかし物価も二%上がる、つまり、実質的な生活水準は何ら変化しないということになってまいります。そういう意味で、我々が実現したい姿は、実質的に生活が豊かになる、つまり、実質的な成長率を高めていき、その結果として物価も緩やかに上がっていくという状況が、我々が達成したい姿でございます。

 それはまさに日本銀行法に規定されていることでございまして、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というのが金融政策の目的でございます。それからあわせて、日本銀行は、金融システムの安定、これにも責任を有しているんだということが書かれております。この二つを通じて経済の安定を実現していくというのが日本銀行に課せられた使命でございます。実はこの点は、今回政府との間で発表しました共同声明にも盛り込まれております。

 したがいまして、そういう精神のもとでできるだけ早期に実現していきたいということで、物価ありきということでなくて、そういう日銀法に規定された根本の目的に照らして、できるだけ早く実現していきたいというのが我々の思いでございます。

階委員 最後にもう一点だけ。

 そうすると、二年間というのは、これは日銀としてこだわることはないという理解でよろしいでしょうか。

白川参考人 日本銀行としては、先ほど申し上げた精神のもとでできるだけ早期に実現していきたいということでございます。

階委員 ありがとうございました。御退席ください。

 それでは、財務大臣に引き続きお伺いいたします。

 先日の所信のお話の中で、プライマリーバランスが着実に改善しているというくだりがございました。大臣所信の中で、二十五年度予算の説明のくだりの中でそういう表現がございました。

 しかしながら、きょうお配りしている資料の資料一というのをごらんになってください。

 これは、国と地方のプライマリーバランスそれから国のプライマリーバランス、いずれにおきましても、二〇一二年から一三年にかけてむしろプライマリーバランスは悪化しております。ですから、私はこの所信表明のくだりは間違いではないかと思っています。この点、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 階先生御存じの上で聞いておられるんだと存じますが、これは内閣府の試算、内閣府の資料だと思いますが、内閣府の試算というのは、この試算をやるときに、例のシステム・オブ・ナショナル・アカウント、通称SNAというんですけれども、計算方法なんですけれども、予算の計算の方が、それを計上する計上年度ではなくて、実際にお金が使われた、支出された年度でプライマリーバランスが計算をされております。これがまず、我々の予算の計算の仕方と全く違うのが一点。

 それから、一部の特別会計や独立行政法人のあれもこの中に含まれておるということがありますので、こうした要因が重なりますと、平成二十四年度に比べて二十五年度のプライマリーバランスが悪化するとの試算結果になっているというのは、この紙に書かれている、これが間違っているというわけではございません、この計算方法でいきますと、こういうことになろうと存じます。

 その上で、私どもが所信で申し上げましたのは、二十四年度当初予算と二十五年度当初予算を比較したものですから、したがいまして、一般会計ベースでは、二十四兆九千億円という赤字から二十三兆二千億の赤字へと着実に改善をしておるということを申し上げたわけであります。

 したがいまして、こういったものは中長期的に持続可能な財政構造を確立していかなければなりませんので、まずこうした当初予算での取り組みが重要なんだ、私どもはそう考えております。

階委員 まさに大臣もおっしゃるとおり、私も、そのSNAを前提とした計算である、そして、予算に計上されたときではなくて、実際に支出されたときを基準にプライマリーバランスを計測しているということで数字が変わってくるということは理解した上で言っています。

 ただ、その上で、なぜ先ほどの資料をお示ししたかというと、国際公約になっているプライマリーバランスというのは、まさにこのSNAベース、そして支出年度ベースではかるわけですね。ですから、プライマリーバランスが改善したかどうかというのは、一義的には、私は、こちらの内閣府の試算でもって判断すべきではないか、表現すべきではないかと思っておりましたので、財務省の立場でいうと所信表明のような表現になるかもしれませんが、これは、財政の規律を維持するという面でいうと、もうちょっと実態を直視した方がいいのではないかと思っております。

 まずそのことを御指摘申し上げた上で、実態を直視するという意味では、先ほど上田先生の御質問でも出ていましたけれども、財務省の後年度影響試算についてです。この資料の二というのをごらんになっていただければと。

 これは、プライマリーバランスの計算の前提となる経済指標をるる挙げておりますけれども、私が注目したのは、試算A1、B1、一番上の二行でございます。下に説明書きがありますけれども、「政府が目指す経済の姿を考慮して、本試算の推計期間最終年度(二十八年度)に名目経済成長率三%、消費者物価上昇率二%が達成されると仮定した上で、機械的に設定。」と書いております。

 まずここで気になるのは、先ほど日銀総裁とも議論しましたけれども、二十八年度、二〇一六年度に物価上昇率が二%になっているという前提を置いているということなんですね。この点について、政府の方針と整合的なのかどうかということをお尋ねしたいと思います。

 私は、この数字が、目先の長期金利の上昇を低く見積もるために、あえて物価上昇のスピードをおくらせているのではないかというふうにも見てとれるわけですけれども、この二〇一六年度に物価上昇がやっと二%になるということが今のアベノミクスと言われる政府の方針と整合的かどうかということをまずお答えください。

麻生国務大臣 この物価上昇率について、経済成長三%のケースというものの御質問なんだと思いますが、先般、政府と日本銀行で取りまとめた共同声明におきましても、日本銀行が物価安定目標というのを二%と設定したことを踏まえた上で、この本試算の推計の期間中に消費者物価の上昇率が二%に到達するものという前提でその道筋を機械的に設定したものであります。もうこれは御存じのとおりです。

 また、金利につきましては、物価上昇率とは全然別に独立して、経済成長率三%では、二十五年度予算換算金利で大体十年国債金利一・八%というものを土台にしているんですが、今は、おまえ、〇・六じゃないか、〇・八じゃないかと言われれば、ちょっとそこは、前提はもう随分違ってきておりますけれども、二十六年度以降は市場に織り込まれております金利の将来予測をある程度加味して設定をしておりますので、経済成長が一・五%のケースでは、二十五年度の予算の積算金利で横置きして、そのまましておるというところが御理解をいただきたいところだと存じております。

 その上で、試算を行うに当たりましては、これは何らかの経済の前提というのを置かなけりゃできませんので、そういった意味で、消費者物価上昇率につきましては、試算期間最終年度、いわゆる平成二十八年度になりますが、物価安定目標の二%に到達するとの道筋を機械的に仮置きをして計算いたしております。

 したがって、財務省として、日本銀行の物価安定目標の実現時期というものに関して、我々としては、予断を持ったものではなくて、また、将来の物価変動に対しても、何ら、予断を持ってこうなんじゃないかとかああなんじゃないかと考えずに、機械的にはめ込んでいった結果と御理解いただければと存じます。

階委員 そうすると、この注意書きには、「政府が目指す経済の姿を考慮して、」と書いています。ただ、今大臣は機械的にとおっしゃっていました。これはちょっと矛盾しているような気がするんです。

 大臣がおっしゃりたいのは、二%に達するのが二〇一六年度、これは別に政府方針ではないですよということをおっしゃりたいんですか。それとも、政府方針は二〇一六年度二%でいいんですか。どちらですか。

麻生国務大臣 これは物価目標と成長率の違いなんだと思いますけれども、名目経済成長率につきましては、政府の経済見通しにおきまして平成二十五年度の名目成長率二・七%というのを発射台にしておりますので、政府が目指す経済の姿を考慮して、この試算の推計されます期間中に名目経済成長率が三%に達すると仮定してその道筋を機械的に設定したものでありまして、この点につきましては、そもそも、後年度影響試算は、一定の経済前提等々を置きました上で歳出歳入というのを機械的に積み上げ計算を行っていったものでありますから、内閣府のマクロ計量モデルというような形で、経済や財政の相互関連というものを考慮したものではないということだけは御理解いただければと存じます。

階委員 日銀の方では二%に二年間で持っていくというような話も出ている中で、こちらの財務省で出しているのは消費者物価上昇率二%が二〇一六年度ということで、そごがあるのではないかというふうに思います。

 今の御説明だと、機械的な計算で、まず、経済成長率が二十八年度、二〇一六年度に達成されるということも加味しつつ、二・〇%がいつになるかということを考えたというような御説明でございました。

 そこで、経済成長率が二〇一六年度に三%に達するということなんですけれども、今も御説明ありましたように、これは非常にざっくりした計算で、二〇一三年度、来年度の政府経済見通し二・七%が、機械的に、線形的にといいますか、〇・一刻みで単純にアップしていって二〇一六年度には三%になるということなんですが、そもそも、出発点の二・七%というのは、先ごろの補正予算のGDP押し上げ効果を織り込んだものでございます。でも、麻生大臣もおっしゃっているように、こういう補正予算というのはいつもやっていくわけにはいかないんだということですから、GDP押し上げ効果は、その翌年度ぐらいには滑落してくると思います。

 そうなってくると、きのう聞いたところでは、二・七%の中で、GDP押し上げ効果というのは一・数%ぐらいこの間の補正予算の分があるということですから、二・七を発射台にして、そこから同じペースで上がっていくという計算の仕方も私はおかしいのではないかと思っていますが、この点はどうでしょうか。

麻生国務大臣 繰り返すような形になろうかとは思いますが、政府の経済見通しにおきます二十五年度のいわゆる名目成長率二・七%を発射台としてということで、それをずっと試算していったわけですけれども、これでいくと、そういうことのほかに、いろいろ経済効果も、これによって給料が思ったより上がってみたり、その結果、消費が伸びてみたりと、いろいろないい効果もある程度期待もしないと、我々としては、三本目の矢としてこういったものはやっていけるわけではありません。

 そういった意味では、政府が期待する経済の姿を考慮して、本試算の推計しております計算中に、少なくとも名目経済成長率が三%に到達するというように我々としては仮定をして、その道筋を機械的に設定しておるというように御理解いただければと存じます。

階委員 もし、もうちょっときめ細かくやられるんだったら、こういう〇・一刻みで単純にアップしていくということにならないと思うんですね。多分、二〇一四年度、二〇一五年度は少し下がって、それからまたアップしていくみたいな、V字傾向をたどったりとか、もうちょっときめ細かいやり方だと数字は変わってくると思うんですね。

 そういうところが私はちょっと恣意的ではないかと思いますし、先ほど、上田先生の御質問の中で、この後年度影響試算で、四つのシナリオの中で一つしか目標達成できていません、二〇一五年度の目標達成できていませんというくだりがございました。

 しかし、私はそれはちょっと違うと思っていまして、実は、上田先生がおっしゃったのは、国、地方合わせた目標三・二を前提にして、それには四分の三のシナリオで達成していないということなんですが、国だけの目標でいうと、実は三・二じゃなくて三・四で足りるんですね。三・四という目標との関係でいいますと、今回の後年度影響試算は、見ますと、四つのシナリオのうち三つ達成できることになっています。

 ということは、私が言いたいのは、今回の後年度影響試算というのは、予算審議等もありますので、そういったことへの悪影響を考慮して、意図的にいい姿を見せようとしたのではないかと思われるんですけれども、どうですか。

麻生国務大臣 平成二十五年度の後年度歳出歳入への影響試算というので、これは一定の経済前提を置いた上で、平成二十五年度予算における制度、施策を前提とした場合にという前提条件が、この種の話には常に前提条件がつくんですが、平成二十八年度までの三年間の歳出歳入がどのような姿になったかについて機械的な計算を出しただけのものだと申し上げたんですが、今年度の試算というものにおきましては、名目経済成長率と消費者物価の上昇率が、試算期間の最終年度に政府が目指す名目経済成長率三%、そして消費者物価上昇率二%へ到達するとの機械的な仮定を置いたケース、これはいわゆる経済成長三%ということになるんですが、これに加えて、今申し上げた前提より、より厳しい姿を前提とした、いわゆる経済成長率一・五というケースについても試算をさせていただいて、経済前提の違いが財政にどのような影響を与えるかについていろいろ検討する手がかりをお示ししているというつもりであります。

 したがって、予算審議への影響等々を考慮して実態より財政状況をよく見せようとしておるというわけでは全くありません。

階委員 外からどう見えるかということを考えていただきたいと思うんですよね。やはり、正直言って、この計算は非常に雑駁な計算だと思っていまして、機械的にという言葉を先ほど来何度も使われています。

 私は、財政規律がこれだけ重要な時代になってきますと、こういう雑駁な計算で国会の中で議論するということ自体いかがなものかと思っています。もう少し、中立的な機関が専門的な知見を活用して、将来の財政見通しを国会に出して、それに基づいて議論すべきではないか。既に先進諸国ではそういう取り組みが行われているわけですね。

 もう御存じだと思いますけれども、アメリカでいえば議会予算局、CBO、それからイギリスでいえば、これは最近できたわけですけれども、予算責任局、OBRといった、独立性のある財政見通しを行う機関を設けるべきではないか。政府に置くか国会に置くかという議論はありますけれども、ポイントは、独立性があって、そして専門能力があるということ。こういう評価機関は、先ほど、日銀が通貨の番人と言われましたけれども、要は、財政規律の番人的な役割です。

 それから、会計検査院というのが独立した機関としてあるわけですけれども、こちらの会計検査院は、決算の方をチェックする、事後評価です。そして、どちらかというと、法律に合っているか、正確な事務処理が行われているか、テクニカルな話です。

 今回の財政評価機関というのは、決算よりもむしろ予算をチェックする役割、それから、将来の見通しをつくる役割、財政が持続可能かどうかということを評価する役割、こういう機関の重要性が今高まっていると思います。ぜひこれはつくるべきではないかと思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 CBO、それからイギリスのOBR等々、いろいろそういった機関があるのは存じ上げておりますが、日本において、政府から独立した機関ではなくて、いわゆる政府の一機関である内閣府が経済見通しの策定や財政健全化目標の達成に向けた進捗状況の評価なんというのを主に行っているんですが、議員の今言われた御質問の、見通しが内閣府試算で示されていないじゃないかというために、内閣府のほかにこういったものの試算を行う機関というようなものが必要なのではないかということを言っておられるんだと存じますが、内閣府においては、今年初に経済財政の中長期試算の策定というのを行い、公表は行っておりませんが、これは成長戦略や中期財政計画などの検討を踏まえた上で策定するということにしたためであると承知をいたしております。

 また、諸外国の独立財政機関の経験を見ましても、例えばアメリカの場合であっても、信頼ある財政運営が独立した財政機関によって担保されているかというと、今の情勢を見ますと、必ずしも一概にはそう言いがたいのではないかということで、こういった財政機関というものを、イギリスにもある、アメリカにもあるからということで、この議論を始めて設立するとかつくるということは、ちょっと今、適切ではないんじゃないかなと。むしろ、それより、財政健全化の目標に向かって具体的な検討を行っていくことの方が今の日本における段階としては重要なんじゃないかなという感じが私自身はいたします。

階委員 内閣府で同じようなことをやっていると私も聞いております。今現在では二〇一五年度とか、将来にわたっての見通しは出していないけれども、夏にかけて出すだろうということも伺っております。

 ただ、内閣府が果たしてどの程度政府から独立して、かつ専門的な能力を持っているかどうかというところを私は気にしていますし、また、財政というのは肥大化しがちですから、不断のチェックというのは予算についても必要だと思っております。それは国民の負託に応えることだと思っています。ぜひこういうことも御検討いただければと思っています。

 金融の話に移ります。

 金融について、最近、私も地元でお話を聞いたりするんですけれども、高齢者との取引についていろいろ問題が生じている。

 高齢者との取引で、例えば、ちょっとお年を召されて物忘れがひどくなってしまった、自分がどこに通帳とかキャッシュカードとか印鑑を置いたのかわからなくなった、そういう方が、口座の引き落としの残高が足りなくなって公共料金が未納になってしまったと慌てて窓口に行くわけですね。窓口に行って、金融機関の方に何と言われるかというと、御本人だということは確認しましたけれども、通帳とかキャッシュカードがなければ御入金をそのまま受け入れることはできません、ついては振り込みの手続をとってくださいということで、本人の口座であるにもかかわらず、わざわざ振り込み手数料を払って自分の口座に振り込みをする、それによって、入金、残高をふやすということをやっているケースがあるようなんです。

 これは、金融機関に聞いても、それほど画一した扱いではないようなんですけれども、もしそういうことが広く行われておりますと、これから高齢化が進んでいく中で、高齢者にとってみると甚だ不都合な事態ではないかなというふうに思っています。

 まず、そのような高齢者の不都合がないような取り組みについて、金融庁としてどのようなことをされているか、お願いします。

細溝政府参考人 通帳やキャッシュカードをなくされたお客様が銀行での取引をしたいという場合は、通常、再発行の手続をされることが一般的であると承知しております。

 他方、今おっしゃいましたようなケースで、再発行を行うことなく直ちに入金をしたいというようなお客様に対してどう取り扱っているかは、先生御指摘のとおり、銀行によってまちまちでございます。口座開設店であれば、本人確認を行った上で入金手続を行うといった銀行もございます。ただ、直接口座入金ではなく、振り込みとして処理する銀行もあるというふうに聞いております。

 顧客の利便性、顧客目線に立った業務を行うようにということは当然のことではございますが、正確にその事務処理をするということも一方求められております。そういったことで、銀行によってそういった判断をやっておるものと考えております。

階委員 大臣にお伺いします。

 これから高齢化が進んでいくとともに、今言ったようなケースだけではなくて、例えば、高齢の方が頻繁にATMにお金を引きおろしに来るようなケースもあるそうなんです。そういうときに、金融機関の人は、何か危険だなと思いながらも、どこまでそういう方にお声をかけて取引を思いとどまるようにしたらいいんだろうかというふうなことで迷ったりとか、多々、これから高齢化社会の中で、御高齢の方の金融機関との取引についていろいろ悩みが深いケースが出てくると思うので、こういった問題について、金融庁として、例えば取引のガイドラインを定めるなり、対応したらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 階先生、今、山口副大臣と、高齢者じゃなくてもほぼ似たようなことになっとりゃせぬかと二人で話をしていたところだったんですけれども。

 少なくとも、ATMを自分で扱える高齢者はまだ大丈夫なところなのであって、最近多くて、よく偉い方に伺うのは、全国の銀行で時々、わしじゃがと電話がかかってきて、まず、わしじゃがよくわからないんですけれども、支店の人は、その人の声を見て、何とかじゃと言われると、通帳がない、実印がなくなったんだ、だから我のところの番号を教えてくれと言われても、そんなの当然教えられぬから、だけれども、預金通帳を見ると物すごく多いものだから、慌ててその支店の人が誰かそこに行く。本人確認できました、どこを探しても何にもありませんと。まさか一緒に探すわけにもいかぬから、まあと言っていると、奥さんが死んじゃって全然わからぬと。何でそれが要るんですかと言うと、早い話が、株が上がったらしいから株を買いたい、ついては金を引きおろすから何とかその番号をわかるようにせいというような話というのは、一日に一回ぐらいあるんですって、正直なところ。ある銀行の頭取、全国の支店で。

 そういうような状態というのは、ちょっと正直、今まで想定をしておりませんから、そういったことを考えると、これは、おれおれ詐欺に振り込んだというような話とは違って、悪意なく、金はある、間違いなく預金を見ればあるんですが、本人の確認さえできれば、その引きおろす方法なりなんなり、再発行するなり、そういった高齢者の方はまたそういうことが起きる可能性があるわけですから、そういったことも考えてやるという、サービスとしてこれを何とか考える、規則じゃなくてサービスとしてこれを何とかやるということを考えた銀行は、あの銀行はサービスがいいということになって、そっちの銀行に預金が移るとかいうことになるぐらい考えられたらどうです、その頭取にそう申し上げたことがあるんです。

 そういうことをしないと、私は、福岡のかなり都市部でないところにいる方とつき合いが多いせいもありますけれども、こういった方というのは、実は、病院に長期に入院しておられる患者の中にはこの関係の話が物すごくふえてきているのはこの数年顕著だと思います。

 これは、看護婦が実印を預けられても、看護婦は、落としたりすると自分の責任になりますから迷惑この上ないなんという、本当に、実際問題としては結構深刻な話になりつつあると私自身は思っておりますので、ちょっとこの種のサービスとして考えてみる必要があろう、私どももそう思います。

階委員 最後に、今ちょっと大臣からも話題に上がった振り込め詐欺の話です。

 振り込め詐欺の救済法というのを、実は、二〇〇八年、二〇〇七年の終わりだったでしょうか、私が一年生の議員のときに、民主党からも対案を出したりして、成立させたというのがあります。

 振り込め詐欺の救済法は、振り込め詐欺で振り込んだお金、これが犯人によって引き出される前に口座を凍結したケース、口座を凍結して、被害者が返還を求めてくればそれは当然返してあげるんですけれども、中には、金額が少額だったり、何らかの事情で被害者が返金を求めてこないで、凍結した口座にそのまま滞留しているケースがある。このお金が五十億円ぐらい今たまっているんだそうです。

 五十億円たまっているものを何に使うか。これは法律をつくるときに考えました。こういうものは犯罪被害者の支援とか公共のために役立てようということで、民主党政権のときに、当時の金融庁の和田政務官などが中心となって、今ようやくそれが動き出しています。

 何に使うかというと、一つは、犯罪被害に遭って御両親等を亡くされた子供たちが奨学金としてこれを活用する、もう一つは、犯罪被害者の支援を行う団体について援助をしていく、こういうことをやろうということで、この間、一月三十一日に第一回の募集を締め切りました。

 そこで、募集に応募した状況などについて、二つに分けて簡単にお答えをお願いできますか。

森本政府参考人 先生御指摘の支援事業の現状についてお答えいたします。

 振り込め詐欺救済法に基づきます犯罪被害者等の支援事業につきましては、募集の窓口であります日本財団におきまして、昨年十二月に募集を開始したところでございます。

 先生御指摘の二事業、それぞれ申請がございまして、奨学金の貸与は四十七件、犯罪被害者等支援団体に対します助成の申請は百三十五件出てきております。現在、日本財団におきましては、新年度からの支給に向けまして、その審査を行っているところでございます。

 金融庁といたしましては、今般始まりました支援事業が円滑に運営されるように努めてまいりたいと考えております。

階委員 この制度、まだ始まったばかりですので、応募もまだそんなには多くないということなんですが、これは非常に重要な取り組みだと思っております。犯罪被害で理不尽な目に遭った方たち、この方を救うということは、私も弁護士時代からずっと取り組んできました。

 振り込め詐欺の被害を救済するということがこの法律の第一義的な目的であったわけですけれども、副次的な効果として、被害金の中から社会的に還元していく、犯罪被害者の救済に充てていく、こういうことは非常に重要なことだと思っております。

 大臣におかれましても、ぜひこのような取り組みを強化し、そしてさらに広く活用を促していくように、広報活動などについても積極的に取り組んでいただきたいと思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 振り込め詐欺救済法に基づく預金保険機構への納付金というのを犯罪に遭われた方々のために活用すべく、今言うような具体的な事業を初めて伺いましたけれども、これはすごく意義のあることだと思いますので、犯罪被害者のために有効に活用されていくということを今後とも期待をしております。

階委員 金融の話、それから財政の話について、またきょうも提案も含めていろいろお話しさせていただきました。

 我々は対案を積極的に出していきます。また、改革は継続していかなくてはならないと思っています。民主党政権の時代には、お金の使い方について見直そうということで仕分けなどもやりましたけれども、やはりこれから財政規律をより大きな視点から捉えて、そして改善していくためには、先ほど申し上げましたような、第三者的な、専門的な財政評価機関というのが重要だと思っておりまして、ぜひそうしたものの活用もお願いできればと思っています。

 金融機関におきましては、今の振り込め詐欺の救済についても、本当にこれは協力していただいて、制度がうまく回ってきたところでございます。

 高齢者のサービスについても、何がしか、いい提案ができればというふうにこれも思っていますが、ぜひ政府の方でも、こうしたことについても取り組んでいただければと思います。

 きょうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、お諮りをいたします。

 両件調査のため、政府参考人として金融庁検査局長桑原茂裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 次に、西野弘一君。

西野委員 今の階先生の話、感動しました。ぜひやりましょうよ、ほんまに。やはりさすが国会やなと。先輩諸兄の、先輩の先生方のお話を聞いて、やはり、ああすごいな、やっと僕もこの場に立たせていただくことができたなと思って、本当に今、感慨深いものがあります。

 私は、東大阪、大阪十三区から選出をいただきました、日本維新の会の西野弘一でございます。きょうは、麻生大臣にいろいろと御質問させていただきます。

 私は、学生のときに自由民主党の青年局からスタートいたしまして、おやじがついこの前まで自民党でいろいろとお世話になっていました西野あきらでございます。スタートいたしまして、その後、寺田副大臣、もうどこかに行かれたみたいですけれども、補欠選挙のときなんかも、私は三週間ぐらい広島に入りまして、いろいろと応援をさせていただいたり、そういうことをしながら、平成十八年に大阪府議会議員に当選させていただいて、三期務めさせていただきました。

 当時はもちろん自民党から出馬をいたしましたけれども、当時の大阪の自民党、国会の自民党はそんなことはなかったと思いますが、もうこれを何年やっても、二十年続けても何にも変えることできへんのちゃうかなというような、物すごく閉塞感を感じまして、自民党を一回外から変えないかぬなという思いで、大阪維新の会というのを立ち上げまして、今日の活動につながっているのかと思います。

 その自民党の中でいろいろと見てきました。自民党のいいところも悪いところも、本当の雑巾がけの中から見てきました。その中で、二回、自民党はやはりすごいなと思った瞬間があるんです。

 一回目は、きょうは小泉進次郎先生がおいでですけれども、小泉内閣のときに、自民党をぶっ壊すんや、それまでの自民党の悪弊を断ってやると。その中で、私は、おやじの秘書でこっちにおりましたけれども、あのときの、何というか、どんどんどんどん変わっていくというダイナミズムというのを感じながらやったときは、本当に秘書冥利に尽きるときでした。それが一回目です。

 二回目のときは麻生内閣なんです。あのときは、何をやっても悪いことしか言われへん中で、でも、本当にあの状況の中で大臣はすごくやっておられて、結局、今この国が何とか息絶えるところまで行かずに持ちこたえたのは、あのときのいろいろな施策の貯金というか余裕で、バッファーで、多分、今のこの国があるんじゃないかな、僕は本当にそう思っています。だから、そういう大臣にきょう質問させていただけるというのは本当に感慨深いものがあるんです。

 また、私はJCの出身でもありますので、JC、青年会議所では麻生大臣はカリスマですから、神様にきょうは質問するようなものですから、本当にそんな気持ちで、質問というか、何か私の自己紹介で終わってしまうのかなというふうにも思ってしまいますが、質問させていただきたいと思います。

 今回、所得税法等の改正案ということで出されていますが、正直、その中に貫かれている何か理念というものが、私、新人議員なんですかね、よくわからないんです。ですから、この法案に貫かれているというか、法案のもとになっている理念というか、やはり税というのは、この国をどういうふうにこれから変えていくのかというところの信念があってつくられていくものだというふうに思いますので、その信念というか理念というものをぜひお聞かせください。

麻生国務大臣 今まで聞いた質問で一番格調が高いですよ。

 この話は最も難しい。税は国そのものですから、その意味では、これは、広く薄くとか、かなり所得格差のあるときにはなるべく所得をこうとか、いろいろな、その時代によって感覚が違ってくるというのはあり得るものだと思っております。

 したがって、今のような状況を考えたときに、やはり、デフレーションという状態が二十年間も続くというのは過去一回も経験がない。その中において、いろいろな意味で、より金持ちと貧しい人の差が急激に開いたアメリカ、一対九九とかいろいろな表現がありますけれども、日本は格差が開いたとはいえ、アメリカというほどのことはないというような状況。

 傍ら、デフレーションが続いたために、一般的には、デフレが続いているというより、不況が続いていると感じている方が普通の方だと思います。デフレの不況だ、インフレの不況だなんとわかっているのは、この辺の、顎が先に立つ方ばかりがそういう難しい話をしますけれども、普通は不況ですよ。僕は、実際的に、普通の方に聞いたら、デフレによる不況かインフレによる不況かなんという意識はほとんどないと思いますね。だから、不況なんだと思います。

 したがって、その不況に当たって、まずは、景気をよくするためには財政出動というようなことになるんでしょうけれども、今の中で考えられることは、哲学としていえば、不況脱出、そのためには、全体として底上げを、デフレで落ち込んだ分だけ全体の経済所得を引き上げにゃいかぬということになって、今回の場合は、少なくとも、我々としては、引き上げていかないと、いわゆる貧しい低所得者層のところとか、生活保護を受けにゃいかぬほどとか、そういったいろいろなところにも幾つかの問題が出てきている。失業率がえらく、いろいろな、数え上げれば切りがないほどあります。

 そういったものをやるためには、済みませんけれども、ある程度所得の高い方からは少し出していただきます、また消費税も、景気は確実によくしますから、景気をよくした上で、消費税を今までより多目に払っていただけませんかというような形で、みんなで分けてみんなで支え合っていくという形を今つくり上げようとしておるというように、税の面からいったらそういう感じになろうかと思っております。

西野委員 さっきのどなたかの質問の答弁の中で、東大阪というのは物づくりの町ですので、ロボットをいっぱい使っているんですよね。そのロボットが、まさかドラえもんのおかげでロボットは人を助けるものだという、ああ、そうなんやと思って、改めて、すごいな、そういうことやったんかと思っていましたけれども、そういう町ですから、今大臣がおっしゃっているような不況という感覚、それはすごく私も町を歩いていて感じます。

 ですので、恐らく、今の大臣の御答弁から思うのは、今回の改正というのはあくまでも再配分機能を高めるということだと思うんですが、実際に、では再配分機能を高めようということでずっとこれからこの国をやっていったときに、一方で、安倍総理の所信の中でも、麻生大臣の所信の中でもありましたけれども、額に汗をかいて頑張っている方が報われる社会との、政治の世界ですから一〇〇、ゼロはないと思うんです、どちらかが一〇〇でどちらかがゼロという政策はあり得ないと思うんですが、そことの整合性をどうやって図っていかれるのかなというところが難しいところだと思うんですが、そのあたりのところはどうお考えになっているんでしょうか。

麻生国務大臣 確かに、おっしゃるように、この世界で一〇〇、ゼロということはありませんし、また答えも、みんながハッピーになるという政策もありません。必ずどちらかがよければどちらかが悪いという、どの辺でというところのバランスをとるのが政治の世界で最も難しい感覚なんだと思います。政治感覚とかいろいろな表現がありますけれども。

 そういった意味では、今言われたように、額に汗するという表現は、主に、昔の表現として言えば、いわゆる製造業、東大阪のような製造業が多かったところは額に汗するという表現がぴったりくるところでしょうし、農家も同じようなものだと思いますが、金融でばあっとやっている世界で、あれを見ながら、額に汗しているのかねと言われれば、脳が汗をかいているかもしれませんけれども、額には汗していないんじゃないかなと思うような、あの雰囲気を見られるとわかると思います。

 そういったものが、巨額な金が動いて、一言言っただけでドルがちょいと下がった途端にばっともうかる人がそこにいるという時代の中で、やはり情報技術が進んだおかげで、ICTが進んだおかげで、コンピューターが進んだおかげで、いろいろな表現がありますけれども、働く形態が変わってきているんだと思います。

 しかし、少なくとも、真っ当に働いている人にはそれなりの対価があるという形でないと、真っ当に働いても対価が全然上がらない。今回の給与で、今、春闘をやっていますけれども、この中で労働組合の連合が何をしておられるのかよく知りませんけれども、少なくとも団体交渉で給与の賃上げをやっておられるはずですよね。今は自民党がかわりにやっているみたいなところがありますけれども。そういった結果、トヨタが満額回答しました、どこどこも満額回答です、五カ月プラス三十万円とか、そういった満額回答がずっと製造業の方から出てきている。それから、いわゆる物流の方でもローソンがというような話が出ますけれども。

 そういったようなものが出てくるということは、やはりみんながある程度分かち合って、内部留保がどんどんふえているだけじゃなくて、ちゃんとその内部留保を給与に、設備投資に、配当にというような形で、ある程度みんなで助け合って回していくという考え方になっていく、これは経営者の方もそういった形、企業の方もそういう形になっていくというような形で、全体が動いていくという形にまでしていかないと、今のような御質問に対する答えというのは、そこがまず出てこないとなかなかしにくいなという感じが私の率直な実感です。

西野委員 いや、本当、そのとおりだと思います。次の参議院の選挙対策を僕も党の中でさせていただいていますけれども、民主党さんは大変やろうなと思います。多分、次の選挙は組合は全部自民党を応援すると思いますから、大変やろうなと思いますけれども。

 それはさておきまして、でも、本当に、格差がどんどん出てきた中で、できるだけその配分機能を高めていくということは大事だと思うんですが、僕は、それは別に税制でやらなくてもいいと思うんです。むしろ、福祉の部分であったりとか、そういうところで再配分をしていけばいいと思うんですね。

 僕もそうですし、もちろん党の考え方もそうですが、将来、長いスパンでフラットタックス化していきたいということを訴えているんですけれども、その思いというのは、要するに、努力が報われる社会をつくっていこうと思ったときに、頑張った分だけやはり収入がふえぬといかぬわけですよね。でも、なかなか、所得が上がれば上がるほど税率が高くなっていくというところに、何となく、頑張った人の中で不公平感を感じるわけですから、究極的には、一円の所得でも所得税を取ればいいと思うんですよ。

 そのかわり、生活に困るぐらい所得が低い方に対しては、福祉の部分でしっかりと現金給付か何かでお返しすればいいと思うんですね。それも、保育所をやたらつくるとか介護施設をつくるとかではなしに、現金でお渡しすればいいと思うんです。今は全部サービスの供給側にお金を突っ込んでいますから、そうではなしに、サービスを受ける側に直接入れれば、サービスを受ける側でいろいろな選択もできますから、そういうふうな再配分機能を福祉の部分でつくっていけばいいと思うんです。

 そういう中で、今回、この改正案の中身を拝見しまして、ちょっと、所得税が四〇パーのところが四五パーに上がるとかいうところがあって、逆にそういう意味では我々の考え方とは逆行するところがあるのかなとは思いつつも、ただ、相続税の部分では、むしろたくさんの、より多くの方から、相続税を取る範囲が広くなりますから、そういう意味では近いのかなと思ったりもしますので、そのあたりのところは、またこれから議論を深めさせていただきながら、いろいろと考えさせていただきたいなと思います。

 再配分機能もそうですけれども、もう一つ大事なことは、やはり、税金を払っている方々が、国民の皆さんが、自分がどれだけの税を納めてどれだけのサービスを受けているのかということがわかる税制じゃないといけないと思います。要するに、簡単な税制に変えていく必要があると思うんですけれども、大臣は、税制というのは、これから方向性としてより複雑化していく方がいいのか、簡単にしていく方がいいのか、どちらだと思いますか。

麻生国務大臣 これは、たしかイギリスの偉い、ロード・ツー・サーフダムという、例の「隷属への道」という本を書いた人の本ですけれども、イギリスの国税庁等々で、税金は一律一〇%、一億稼いだら千万円払え、百円稼いだら十円払え、これを全部やってくれ、例外なく、それさえしてくれれば全て国税は賄える、それでもしだめだったらそれは使い過ぎなんだ、それ以内におさめろというのを書いた人がいます。

 この人の本を読んで、マーガレット・サッチャーという人は政治を志すようになったと言われ、事実、その人に影響を与えた本としてもらったことがあるので読ませていただいたことがあるんですが、一律一〇%、だから超単純なもので、税理士なんという職業が成り立たないぐらい、もう完全に。そのかわり、もしそれで脱税した場合は極刑に処すというような形になっているんですね。これは一つの考え方、これは極端な方法です。

 片っ方は、北欧なんかの方は、所得税等とかは七割だ、何割だという話がありますので、これはどちらがいいかというのは最終的には国民の選択なんだと思いますけれども、日本の場合は、今の雰囲気からいったら、小さな政府、大きな政府という表現とか、いろいろな表現がありますけれども、僕は、福祉はやはり中福祉・中負担ぐらいなんじゃないか、世界の百八十三カ国、百九十カ国ぐらいで見れば。ヨーロッパの方が高福祉・高負担、アメリカの場合は低福祉・低負担ということになるんだと思いますが、日本はそれからいけば中福祉・中負担ということになると、今の税のやり方も、直接税というものの比率を下げて、もう少し間接税を上げた方がより公平なことになりゃせぬかと、いろいろなことを私どもとしては考えます。

 しかし、現実問題として、今の世の中でいきますと、やはり税金というのが余りにも難しくなり過ぎていて、とてもじゃないけれどもわからぬということになっておるように思います。

 これは、片っ方は会計士が発達して、何でこっちは会計士が発達しなかったのかという話のところまでいっちゃうんですけれども、これは、基本的には、戦勝国と言われる国々においては会計士が発達して、敗戦国だった日本とかドイツの方は税理士が発達した。これは、仕事をするときに、おい、麻生、俺、仕事をするから金を貸せという方が敗戦国の方に多い傾向で、おい、麻生、俺、仕事をするから投資しろというのとの違いなんだと思うんです。

 投資しろという方は、当然、投資した分だけの金をもらうためには配当しかありませんから、配当する場合には、その会社をちゃんと黒字にしない限り配当はできません。しかし、借金だった場合は、赤字でも何でも金利さえ払えば別にいいじゃないのということになりますので、どうしても、税の形として、税理士が発達した敗戦国、会計士が発達したアメリカ、イギリスということになる、こういう差がすごく出てきているんだと思います。

 それにしても、税というのは物すごく、税理士試験を通るのにえらい大変で、司法試験に通るか、税理士試験に通るか、えらい騒ぎになるほど大変なんだそうですけれども、ぜひ、そういった意味では、税というのは、少なくとも、より簡素にする方向に行くべきが筋だ、私はそう思います。

西野委員 そうなんです。税が複雑になると、税理士さんが大変なだけでなくて、もう一つの弊害があると思うのは、無意味に政府を大きくしてしまうことだと思うんです。

 極端な言い方ですけれども、今、消費税の複数税率とかいうこともいろいろ議論されているようですけれども、これは絶対やらぬ方がいいですよ。やれば必ず、では、天然のハマチはぜいたく品で養殖のハマチは生活必需品やから税率を変える、だから、天然と養殖を見きわめる農水省か何かの外郭団体ができたり、では、うな丼はいいけれども、うな重はあかんのかとか、そういう話に必ずなるので、私は、税を複雑にすればするほどいろいろな権益というものが大きく広がってしまいまして、逆に無意味に、先ほどの話じゃないですけれども、一〇〇、ゼロはないので、小さな政府か大きな政府かという、この極論はないと思うんですよ。だから、常に中ぐらいの政府なんです。その中の程度がどっちに偏っているかということを見きわめていくのがまさに政治のやることだと思うので、そうなんですが、無意味に大きな方に振れさせてしまうと思うんですね。

 だから、できるだけ税というのは簡素にしていかなければいけないと思いますので、自民党の中でも、与党の中でも、そういう消費税の問題でそのあたりのこともいろいろと議論されていると思うんですけれども、これはできるだけ簡素に、税率一本でやってもらうような方向で議論いただきたいなと。これはもう御答弁、もしいただけるんだったらお願いします。

麻生国務大臣 複数税率の場合は、おっしゃるように、これは、インボイスがとか、いろいろ手間がかかります。昔に比べてコンピューターが発達したとはいえ、中小零細・小規模企業のところにおいては、手書きとか電卓とかいうのでやっておられるところが多いので手間がかかることになりますので、インボイス等々の手間がかかる、それをチェックするためにまた人が要るというようなことになりますので、これは間違いなく、複雑イコール大きくなっていくということになろうと思います。

 基本的には、イギリスなんかの場合は、あれはたしか、今言われたのと同じで、スコッチが高くて何でサントリーは安いんだとか、いろいろ税率がむちゃくちゃにありましたものですから、私は、当時学生で行ったとき、何というところだと思ったんですが、ある日突然に全部ゼロにしたんですね。口の中に入るものは、キャビアでもあんパンでも、皆ゼロ、同じということでやらないと、早い話が、とてつもない数の役人がふえ上がってどうにもならぬというので、イギリスはばっさり切ることをやったんです。

 やはり、そのかわり、当時、消費税というか、あそこはたしか付加価値税と呼んだと思いますが、一七%ぐらいを、いきなり食料品はゼロということをやるんですね。高級品でも何でも全部ゼロということにしてすっきりしちゃうというところがイギリス人の考え方なんだと思いますけれども、日本でそれが通じるかと言われれば、確かに、同じノリでも、何とかノリはいいけれどもこっちはゼロだとかなんとかと言われると話が込み入ってどうにもならなくなりますので、税は、しかるべき、簡素なのにこしたことはない、私は基本的にそう思っております。

西野委員 ぜひその方向で御議論いただいて、消費税、そういう議論もあるようですけれども、できるだけ簡素な、単一の税率にしていただく方向でお願いしたいなと思っています。

 最後に、もう五分も切りましたけれども、今度、モラトリアムが切れます。あれは僕は、今までの法律の中で史上最悪の法律だと思っていますけれども、まあ、あれは切れるので別にもう議論もいいかなと思っています。本当はきょうはそれもやるつもりだったんですけれども、時間がないので。

 ただ、一方で、今度、動産とかの売掛金を担保にして融資を受けられるようにやっていこう、ABLを積極的に利用できるようにということで打ち出されています。私、それこそ中小企業の町出身ですから、これはすばらしいなと思っているんです。

 ただ、現在どういう状況かというと、実際は、不動産担保が九割で、残りの一割だけなんですね。これを、大臣、どれぐらいの割合に変えようという意気込みをお持ちなのか、ちょっとお聞かせください。

麻生国務大臣 いわゆるアセット・ベースト・レンディングというんですが、これはまず、今一割もあるのかねと思っていたぐらいでしたから。正直申し上げて、日本の場合は、不動産以外に審査能力が銀行にはないんじゃないかと。

 不動産で、二十年前、地価の暴落は九二年から起きましたものですから、あれまで僕は、銀行というところは、土地さえ担保にとれば、あとは本人の能力とか事業計画なんかよりは担保やというようなもので土地という神話があったんだと思いますが、それが全然できなくなったのがこの二十年。私は基本的にそうだと思います。

 したがって、中小企業は大企業に売り掛け債権がある、それの手形三カ月分をこちらで、まあ簡単には手形を割るという話ですけれども、それを担保に金を借りるということが認められることになるというのは、僕はすごくいいことだと思いますけれども、まずこれを理解させるところからスタートしていかないかぬのかと思います。

 今は、銀行側の方が過剰貯蓄になっていますから、預金が多過ぎることになっていますから、少なくとも、いい企業には貸したいという気が強い、金利が高いから、国債を買っているよりはるかにいいから。

 そういった部分がありますので、その面からいくと、今言われたように、私どもは、これは当分いかないかなと思っておりますけれども、現実問題として、いいところの手形が三カ月出ました、半年出ましたというんだったら、ばっとそれを担保にとる確率は高いから、今のものがすぐ、一割だというんだったら二割ぐらい、倍ぐらいにいくのはそんな難しくないかなという感じはしますけれども、土地がまたある程度上がってきたりなんかすると、やはり土地だということになったりしますので、何%ぐらい、何割ぐらいいくかというのは、ちょっと今、私どものレベルで読み切れているわけではありません。

西野委員 ABLの話というのは、私が秘書をやったのがもう二十年ぐらい前ですから、それぐらいのときからいろいろ出ていたんですよね。

 役所の方でいいので、これまで何もやってこなかったんですかね、ちょっとお答えいただけますか。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 アセット・ベースト・レンディング、ABLは、今、私どもも非常に積極的に活用しようと思っておりますが、一方で、例えば動産ですと、売掛金もしくは在庫は日々変動いたします。そういう意味で、債務者からすると、金融機関に定期的にレポートしなくちゃいけない、非常に手間がかかります。

 また、動産の場合は、夜逃げリスクと申しますか、不動産の場合は夜逃げリスクはございませんけれども、そういうようないろいろなリスクがあって、そういうところもあってなかなか普及が進んでこなかったというのが実情だと思います。

西野委員 ここで、最後に大臣にお聞きしようと思って……

金田委員長 今ちょっと外しています。すぐ戻ります。

西野委員 では、戻るまで話しておきます。

 要は、何が聞きたかったかというと、このABLの積極活用にもそれなりに取り組まれてきたと思うんですよ。何年も前から取り組まれてきたと思うんですが、結局、結果は、何をやっても効果が出ていないということですね。今九割が不動産担保で、一割にも恐らく満たないですよ、これは推計で九割ですから。だから、そういう意味では、何か今までのやり方と変えないといかぬと思うんです。

 何を変えないかぬかというと、もうこれははっきりと、国家として、政府として、ABLをしっかりやっていくんやと。今九割が不動産ですけれども、これは違うんだ、これを八割に減らす、七割に減らすということを、具体の数字を挙げて、インフレターゲットじゃないですけれども、具体のターゲットを決めてやらないといけないと思うんですよ。

 ここで大臣に聞きたいんですけれども、まだお帰りじゃないので、もう少し話します。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、ABLは、いろいろな弱点と申しますか、不動産担保に比べてそういうことがあると申しましたが、しかしながら、私どもの中で、できることはないのかということをもう一回洗い出しました。金融機関にも、どういうところがネックになってABLがなかなか進まないかということを、かなり綿密にヒアリングしました。

 例えば、そういう中で問題が浮かび上がってきました。

 私ども、検査マニュアルというのをつくっておりますけれども、その中で、ABLが一般担保として認められる要件というのを書いてあります。しかしながら、これがなかなか抽象的だったので、それが、金融機関からすると、一般担保に本当に認められるかどうか不安だという声がとてもありました。仮に一般担保として認められますと、債務者が破綻懸念先以下の場合は貸倒引当金を本来積まなくちゃいけないんですけれども、一般担保の部分は積まなくていいというような効果がございます。そこで、私ども、例えば一般担保の要件を、今回明確化することといたしました。

 そうはいっても、本当に検査に行ったときにそれを認めるのかという御懸念もまたございました。そこで、ある程度の形式的な要件が整っていれば、検査においても金融機関の対応を認める、これも明確化いたしました。そういう金融機関の感じていらっしゃる支障を今一つ一つ取り除いて、ぜひとも普及を図っていきたい、そういう状況でございます。

金田委員長 申し合わせの時間が参りましたので、質問、最後に一言。

西野委員 ということでございますので、また火曜日にもチャンスがあるということでございますので、火曜日にまたこのことも含めてお聞きします。

金田委員長 よろしいですか。大臣に一言、いいですか。

西野委員 では、最後に。

 取り組まれていることはよくわかりました。よくわかりましたので、あとは意気込みだけだと思います。

 銀行が唯一言うことを聞くのは麻生大臣ですから、一言でいいので、今九割のところを八割にすると、ちょっと一言言っていただけると。

麻生国務大臣 これは、金融機関と担当しておられる企業との間の信頼関係で成り立っていますので、おまえ八割にせいとか何とか言ったって、それはなかなか動くわけではありませんけれども、少なくとも、でき上がったシステムなので、また金融庁が気が変わったから認めないとかいうことになったらたまらんなという部分が銀行、金融機関側にはあるというのは十分考えられますので、今局長から答弁いたしましたように、そういったような懸念がないように一つ一つきちんと潰してまいりたいと思いますので、金融庁としては、このABLのパーセントをふやしていく方向でやりたい、そう思っております。

西野委員 ありがとうございました。

金田委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は、西野議員とは違いまして、たちあがれ日本から、四日間だけ太陽の党になりまして、その後、合流で日本維新の会となりました。きょうが委員会での初質問となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、新人議員ということで、国民の目線から麻生大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 麻生大臣の財務金融委員会における所信のお話の中で、「一方、歳入につきましては、租税等の収入は四十三兆九百六十億円、その他収入は四兆五百三十五億円を見込んでおります。また、公債金は四十二兆八千五百十億円、年金特例公債金は二兆六千百十億円となっております。」とあったんですけれども、なぜ公債金の中に、年金特例公債金を含んだ額で公債金の計算をしないのか、それをまずお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは三木先生、年金特例公債という勘定科目というものは、基礎年金国庫負担の二分の一を引き上げるために恒久的な財源が要るということで、平成二十六年四月、消費税率を引き上げるまでの間に、いわゆる税率引き上げ、今極めて不確定ですから、そういった中で、確保できない状況において、二十四年度及び二十五年度の財源を行うために発行される、そういう、同じ公債でもちょっと特殊な公債ということで、平成二十六年度、税率が引き上げられた後、その増収分を充てて償還するというものですから、ほかの特例公債とは全く違う種類で、年金のためだけにつくられた公債ですから、ほかのものとは全然扱いが違うということで、いわゆるつなぎ公債とかいろいろな表現をいたしますけれども、そういった意味で、将来に負担を先送りするものとは全く違いますし、また財政規律を損なうものでもありません。

 そういった意味では、こういった、従来の建設公債とか赤字公債とは扱いが全然違う形にしているというのが、この間の私の所信の中でそこだけ別に申し上げた背景は、そういう背景であります。

三木委員 今麻生大臣に御答弁いただいたんですけれども、償還の財源がはっきりしている、また、一般会計とは、特例公債なので、全く会計も別である、そういうお答えだったと思うんです。

 まず、普通の一般国債と特例公債というのは、額面に別に違いはございませんし、お金に色がついていないのと一緒で、国債にも別に色がついているわけではございませんので、ここは、国の財政として大きく見た場合、やはり国債費というところに上げていくべきではないのかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、いわゆる一般公債とかいうのとは違って、確実に年金の二分の一というのをどうしてもやらねばならぬというところで決められておられましたので、二分の一にするというのが大前提。その二分の一にするときに、今後とも赤字公債とか別の公債でやるというのでは、何となく、もらう方も極めて不安定ということになりますので、そういった意味では、きちんとした形で担保されているものがあるということがあるのとないのとでは、年金を受け取られる方々も随分気分も違うと思いますので、私どもとしては、これはきちんと別にされてしかるべきものだと思っております。

三木委員 今のこの現在の時点で年金のお金がしっかりと担保されているのであれば、消費税の増税というのは必要ないんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 担保されているのは、消費税が上がる、五%が八%ということに今言われておりますけれども、この五%が八%に上がった分というのは、約一%で二兆五千億ということになりますが、上げる、上げないはことしの十月に合意することになっておりますし、実際に上がりますのは来年の四月以降ということになりますので、今担保されているかといえば、上げる、上げないもまだ決まっておりませんし、来年の四月にならぬと事は動き始めませんので、そういった意味では、今入っているわけではないということで、担保されているかといえば、法律が通らないとなかなか担保されないからそういう形になっておるということであります。

三木委員 ですので、消費税増税法案は通りましたけれども、やはり景気附帯条項というものがある以上は、今それが担保されているというふうには言い切れないと思うんですね。

 ですので、会計上、別の会計だということは理解をいたしますけれども、四年ぶりに税収が公債金を上回る状態で、プライマリーバランスを着実に改善させて、その第一歩になるという表現と、公債金の額とでいいますと、やはりここは、国民の目線からいうと、二つとも赤字の国債発行じゃないのかというような国民の感情になると思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 繰り返しになるかも存じませんが、税収と公債金との比較においては、年金特例公債につきましては、いわゆる財源を確保せずに将来世代に先送りしちゃうというようなこととは違って、間違いなく、こういったものを年金特例公債としてきちんとしているということは、少なくとも、単純に合計しちゃうというのは極めて妥当ではない、適当ではない、我々はそう考えております。

三木委員 麻生大臣、単純に合計しろということではなくて、国民の目線から見た場合に、国の財政が今どうなっているんだろうということは、非常に関心の高いところでございます。

 それで、公債費の中で四十二兆八千五百十億円、そして年金特例公債金は二兆六千百十億円と分けて言われて、その公債費の中に年金特例公債金というものが入っていない状態で、プライマリーバランスが着実に改善するという表現が誤解を与えるのではないかなというふうに私の方は考えます。

 それで、これは水かけ論になってしまいますし、麻生大臣のお気持ちや、今の政府の会計上の規律の問題であるとか、そういう部分を鑑みますと、こういう表現になるということは、今、麻生大臣の御答弁の中で、一定の理解はさせていただきました。

 しかし、中身をよく見ますと、七年ぶりに実質減額予算として、四年ぶりに税収が新規国債発行額を上回ると先ほどの部分でおっしゃっているんですけれども、例えば、国債の市中発行額の圧縮、国債整理基金の特別会計の残高七兆円の取り崩しとか、経済危機対応予備費の計上見送りなどが計算されておりませんので、国の借金、公債金というのが四十二・九兆円で、二十四年度当初予算よりも借金は小さくなったとされているんですけれども、そういったものをあわせて考えると、決して改善されている状態ではないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今言われました、具体的な例として、基金残高、いわゆる圧縮分七兆円という話がございましたけれども、これは、全額を圧縮した上で国債の償還にこの七兆円は充てます。

 これは、従来は十兆円積んであった分を七兆円圧縮させていただいたんですけれども、そういったもので七兆円になったというのは、今まで何でそれができなかったんだと言われれば、日本銀行との間にその種の話ができていなかったというだけのことだと思います。日本銀行との間に、七兆円の問題について、オペレーショナルリスクというものを、我々はきちんと、日銀から、その種のことが起きた場合にはという約束ができましたので、これを圧縮することができるというようなことをやらせていただいているので、形としては、償還しているということは事実だと御理解いただければと存じます。

三木委員 今回の予算では、プライマリーバランスが改善されて、財政健全化目標の達成に向けた第一歩になる予算だというふうに麻生大臣はおっしゃっているんですけれども、平成二十四年度補正予算と合わせた十五カ月予算としては、平成二十四年度補正で七兆八千億円以上の公債金を歳入予算に措置して、二十五年度予算案の公債金四十二・九兆円と合計すると、五十三兆三千億円もの巨額の借金となる。さらに、九千百億円の予備費をカットして、約四千二百五十億円の地方交付税交付金の負担をそのまま地方に負担させている。国債の利払い経費も低く見積もるなど、そういうものも入っている。実際には五十二兆二千百億円もの公債金が歳入とされているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

山口副大臣 お答えをさせていただきます。

 確かに、二十四年度補正予算の公債金五・二兆円、それと二十五年度予算の公債金四十二・九兆円、これを単純に合計しますと四十八・一兆円ですか、二十四年度の当初予算を上回るというふうなことは確かに事実でありますが、しかしながら、二十四年度の補正予算と二十五年度の当初予算というのは、予算としての性格がまず違います。

 つまり、二十四年度の補正予算というのは、当時かなり経済の落ち込みというか底割れが心配をされまして、どうしても経済の再生が喫緊の課題という中で、当面の経済を押し上げて、成長につながる施策を総動員したというふうなことによるものでございまして、その財源を調達するための公債発行ということで、一方、二十五年度の当初予算は、来年度の財政需要に対応するというふうなことで、十五カ月予算というのは、二十四年度補正におきまして十分な額を確保して、これを二十四年度から順次執行していくというふうなことで、二十五年度にかけての経済運営に万全を期するというふうな意味でございまして、性格の異なる二つの予算を単純に足し合わせるというのは適当ではないのではないかなというふうなことでございます。

三木委員 代表質疑などでも、この問題は、各党から大変いろいろ、十五カ月予算にしたから、二十五年度の予算が小さくなって、二十四年度補正で膨らませているんじゃないかというような御指摘というのは多々あったと思うんですけれども、国民の目線から見た場合、非常にわかりにくい予算になったのではないかな、足す、引くという単純な計算の上では、わかりにくい予算になったのではないかなというふうに感じております。

 そして、もう一つプライマリーバランスの問題をお伺いしたいんですけれども、プライマリーバランスの改善といったときに、一般会計ベースで改善した、改善しないというようなお話をされていると思うんですが、これは、復興特別会計の分も含めまして、国として、全て合わせて、復興会計と一般会計と合わせて、公債費はどれぐらい発行しているのか、それでプラスマイナスを見て、プライマリーバランスというものを見ていかなければいけないのではないかなというふうに感じます。

 それで、一般会計だけのプライマリーバランスを見て財政の目標をそこに定めることが果たして適当なのかどうなのか、そういう根本的な問題も含めて、御答弁いただけたらと思います。

山口副大臣 お答えをさせていただきます。

 先ほども議論にありました、プライマリーバランスというのは、いわゆる後年度試算ではなくて、SNA、内閣府が出しておる、ああいうものを基準にして実はやるわけであります。ですから、いわゆる二〇一五年度、二〇二〇年度というもののプライマリーバランス、この健全化目標でありますが、この対象には、実は、一般会計のほか、一部の特別会計とか、あるいは独立行政法人等も含まれておりまして、ただいま御指摘をいただきましたように、既に特別会計なども含めて財政運営を行っておるというふうなところでございます。

三木委員 先ほど民主党の階議員にお答えになっていたのは、財務省はこういうやり方をやっている、SNAは違う、そのようなお話だったと思うんですけれども、今回の場合は、財務省もそのようなやり方をして指標を出しているんでしょうか。

山口副大臣 いわゆる財政運営の状況等、これをしっかり見た方がいいだろうということで、財務省としては後年度試算というのをやっておりますが、プライマリーバランスというのは、あくまで内閣府等がお出しになっております。いわゆる国際標準でもある基準にのっとってということでありますから、先ほど申し上げましたように、一部の特会あるいは独法等も含めて、全て全体で見るというふうなことであります。

三木委員 麻生大臣の所信表明の中ではそのようにはなっていないのではないかと読み取れるんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 どの部分を言っておられるのかよくわかりませんけれども、私の場合、一般会計として申し上げているというところであって、別にSNAを否定しているわけではございません。

三木委員 ですので、やはり一般会計だけでおっしゃられているということで理解してよろしいんでしょうか。今、副大臣のお答えですと、違ったというような、全部を勘案して指標として出しているというふうにお答えされたと思うんですけれども。

山口副大臣 恐らく、大臣の所信表明等というのは、例えば、補正予算につきましては、現下の経済状況を考えてああいうふうにしましたが、二十五年度の予算につきましては、やはり、これまで三年間続いてきましたが、税収を借金が上回るということがないように、相当財政規律に配慮をした二十五年度予算にしました、結果として、二十五年度予算につきましてはプライマリーバランスが改善をされたというふうなことの所信表明だったと思います。

 そして、プライマリーバランスというのは、先ほど私が申し上げましたように、やはり特別会計等も含めて、全体で見ます。ただ、SNAというのは、支出ベースですから、今回の補正予算が大方繰り越しをされるだろうというもとでの支出計算をしております。ただ、これも、後年度、修正をされていくものだと思っております。

三木委員 ですので、大臣の所信表明は、一般会計のみで所信表明をされておられますよね。ですが、その大臣の所信表明の中にプライマリーバランスという言葉が入っておりますよね。プライマリーバランスという言葉が入っている以上、そのプライマリーバランスの指標というのは、一般会計だけではなくて、今の御説明だと、復興特会も入って、いろいろな独立行政法人とかそういうものも入った会計だというふうに理解してよろしいんですか。

麻生国務大臣 今の三木先生のところは、「四年ぶりに税収が公債金を上回る状態を回復させるとともに、プライマリーバランスを着実に改善させ、財政健全化目標の達成に向けた第一歩となる予算といたしております。」この部分のことを聞いておられるんでしょうか。

三木委員 それと、「二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減し、」云々というところもプライマリーバランスという言葉が入っておりますし、国、地方のプライマリーバランスというのであれば、先ほどの階議員の質問の中にありましたSNAのプライマリーバランスというふうに考えるというのが、考え方としては合っているのではないかと思うんですけれども。

麻生国務大臣 今のところは、その前段の部分だと思いますが、社会保障・税一体改革を継続するとともに、国、地方のバランスということが書いてある、このくだりだと思いますけれども、今私が申し上げたところは国だけの部分を申し上げているので、この前の部分は国と地方の両方を述べている表現、こちらの方は国だけを述べている表現になっております。

 国の一般会計の平成二十五年度のプライマリーバランスはマイナス二十三・二兆円となっておりますので、平成二十四年度当初予算の二十四・九兆円に比べてみますと着実に改善をしているということを申し上げております。

三木委員 済みません。話がややこしくなりますので、後ろの部分だけで。

 四年ぶりに税収がという部分のプライマリーバランスということであれば、一般会計だけではなくて復興特会の方も入れた方がいいのではないかという質問の趣旨です。

麻生国務大臣 そういう御希望があるということは伺いますけれども、私の方は、あくまでも一般会計としてお答えをさせていただいております。

三木委員 私の方は、一般的な国民の目線から、そのような会計ではなくて、ぜひ、一般会計と特別会計、その他連結させて国の財政がどうなっているのか、プライマリーバランスというものが改善するのか改善しないのかということをお知らせいただけたらなというふうに思います。

 それと、次の質問に移らせていただきたいと思うんですけれども、その中で、先ほど私が少し申しました、九千百億円の予備費をカットして、また、約四千二百五十億円の地方交付税交付金の負担をそのまま地方に押しつけているということで、地方の方では悲鳴が上がっているんじゃないかなというふうに感じるんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

 今申し上げたのは、地方公務員給与に充てる部分について、国家公務員の減給に沿った措置との理由で地方交付税の方が削減をされております。その部分の質問でございました。

麻生国務大臣 地方の公務員の給与の話に関係してのお話なんですね。(三木委員「そうです」と呼ぶ)

 地方公務員の給与の件につきましては、一千八百市町村ございますので、いろいろ、その事情によってそれぞれに違います。しかし、国とのいわゆるラスパイレス指数等々を勘案しますと、国が一〇〇に対して一〇六とか一一〇とか、いろいろ地域によってすごく差があろうと思っております。自分の地域がどういうところか、県によって全然違いますので。低いところもあるんですよ、岡山とか北海道とかは低いと思いますが。そういったところに比べて高いというところもありますので、そういったところは、ぜひ、少なくとも国と同じようなものにしてもらいたいというのが我々のお願いであって、国家公務員の方は押しなべて七・何%か減額をいたしておりますので、地方の公務員にもぜひ協力をしてもらいたいということであります。

三木委員 私は地方議会の出身でございまして、実は、地方の都市では行革というものを非常に厳しく行っております。ですので、いろいろな首長から、うちはもう地方公務員の給与に関しては行革プランの中で年々下げているんだ、だからラスパイレス指数は適正な額になっているんだということで、今一律に下げていかれるというのは、結局、地方に対する負担の押しつけではないかというような声が上がっております。

 次の質問に移らせていただきます。

 経常収支について御質問をさせていただきます。

 今、三カ月連続で経常収支の方が赤字となっておるんですけれども、国内の投資資金需給が逼迫していると思いますが、これに対して麻生大臣のお考えはいかがでしょうか。円高が進むと金利が上昇していくのですけれども、日本は経常黒字の中で成長してきた国でございます。貿易収支が悪いという状況はどのように日本の国のあり方に影響を及ぼすのか。

麻生国務大臣 日本におきます近年の経常収支の動向ということだと思いますけれども、貿易収支は、御存じのように、特に石油、ガスの輸入が急激にふえております。原発がとまっておりますので、その分だけ急激に買った、それが大きく変わってきているんですが、所得収支にもその影響が出てきて、貿易収支は縮小。経常収支は黒字というのが日本の最近のこれまでの傾向だったんですが、そういった状況が明らかに変わってきつつあるという状況にあろうと思っております。

 これまでは貿易収支が大黒字でありましたので、我々は、これまで七十五円までいきました円高にも耐えられて、結構やれてきたけれども、少なくとも、貿易収支がこれだけ赤で、経常収支も赤だったら、当然のこととして、円というものも円安の方に振れていく、これは自然の摂理だと思っております。

 そういった意味で、私どもとしては、今後、こういった状況を考え、当然のこととして、貿易収支がよくなってくる、リーマン・ショック前は百八円が、今ずっと下がってきておりまして、七十五円ぐらいまでドルが下がりましたので、それが今また円安に振れてきておりますので、その分だけ、我々として見れば、貿易がしやすくなってきたことは事実です。

 そういった意味では、経常収支の赤、貿易収支が赤の分はかなりそれで補ってこられることは確かだと思いますが、いずれにしても、産業というものを考えたときには、今後いろいろなもので、これまで投資してあった分のところから返ってくるいわゆる配当、金利、特許料、そういったようなもので、グロス・ドメスティック・プロダクトではなくて、グロス・ドメスティック・インカム、方向としては、そういったような方向で、かなり国の体質としては変わってくるだろうなという感じはいたしておりますけれども、まだ正確に為替の動き等々がきちっとしたわけではございませんので、今の方向としては、両方でいかないかぬということだろうと思っております。

三木委員 今貿易収支のお話で大臣から御答弁をいただいたんですけれども、日本というのは、もともと物づくりの国で発展してきた国だと思います。貿易収支の方を見てみますと、投資収益の方が黒字になっていると今御答弁の中にもあったんですけれども、長期的に見て、海外投資で食べていく国になっていってしまうのか、物づくりを大切にしていく国であり続けられるのかというのは、産業の空洞化なども含めて非常に大切な問題であると思っておりますし、私としては、日本の高い技術を、このまま日本の国内で生産していけるような国であってほしいと思っております。

 その点を大臣にお願いを申し上げて、ちょっと質問の時間が短いので、済みません、持ち時間が少なくなっておりますので、次の質問に移らせていただきたいんです。

 今度は、中国に対するODAについて質問をさせてください。

 対中ODAは、一九七九年に中国の経済成長を助けるための制度として始められて、その後の中国のGDPの伸びを踏まえて、八年度に円借款、有償資金協力は終わっております。しかし、無償資金協力と、研修員の受け入れ、専門家の派遣などを目的とする技術協力は依然続いておりまして、これまでに三兆六千億円がつぎ込まれております。

 外務省によると、一〇年度の無償は約十四・七億円、技術が約三十四・七億円でありますけれども、一一年度のそれぞれの金額と累計額は幾らになるのか。簡単にお願いいたします。

福島政府参考人 お答え申し上げます。

 中国に対する我が国ODAの二〇一一年度の実績でございますが、無償資金協力が七億二千三百万円、JICAが実施しております技術協力につきましては三十億五千五百万円となっております。

 それから、対中ODAの供与累計額でございますが、二〇一一年度末時点で、おっしゃいましたように、既に停止しておりますけれども、新規の供与はしておりませんが、円借款が約三兆三千百六十五億円、無償資金協力が約千五百六十五億円、技術協力が約千七百七十億円となっております。

金田委員長 小池君、時間が参りました。一言……(三木委員「三木です」と呼ぶ)三木君、時間が参りました。三木圭恵君、お願いします。

三木委員 委員長、名前を間違えたということで、ちょっとだけ時間を下さい。済みません。

 ODA以外にも、今いろいろ、中国には、多国援助としまして、資金を投入しております。私の調べたところでは、円借款の額と近似して、ADB、アジア開発銀行から融資をされているようです。新たな援助の受け皿になっていると問題にもなっております。

 ODAというか、開発被支援国に対して支援をすることというのは大変大切なことだとは思うんですけれども、せめて対中に対しては、尖閣の問題もございますし、いろいろな日本の対中感情もございます。その中で、外交の切り札のカードとして使えるような、日本人の血税を大切に使えるような、そういった使い道というのをぜひ検討していただきたい、そのように考えております。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党、新人の小池政就です。これから時間をいただきます。

 西野委員からも話がありましたように、私の父親も実は元自民党でして、ただ、地方議員だったんですが、私ははねっ返りで、党も違うところで、また、選挙区も少し離れたところで、今回初当選をさせていただきました。このような委員会で、私たちの世代、また次の世代にとっても、本当に、今一番重要な課題であります財政問題、金融問題の議論をさせていただく、また、麻生太郎大臣と議論させていただくということで、大変光栄に思っております。

 私の地元は三島ですが、今回、静岡の選挙区で立たせていただきました。静岡でも麻生大臣の高名が伝わっておりまして、特に私の支援者の中にも、麻生大臣の自称子分だという方がいらっしゃいます。自称誰かの親分ということで威張る方は多いんですけれども、自称誰かの子分ということで胸を張るという方がいらっしゃるのは初めてでして、さすが麻生大臣だなということで、実は尊敬しておりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、所信に対する質疑ということで、大きな姿勢を問わせていただきたいと思うんです。

 まず、先ほど来お話のありました、日本が二十年間大変困難な状況にある、その一つの状況、また原因がデフレであるということをおっしゃっておりましたけれども、大臣のデフレに対する要因、また対応について、所信をお聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 デフレがどのような状況になって起きるかということに関しては、これはインフレと違って、余り正確な学問的なものは正直言って存在していません。ただ、物が余ってあれが少なくなるというような話で、金の値打ちが上がってとか、いろいろな表現がありますけれども、基本的にはわかっていないんですが。

 ただ、小池先生、現象面として我々のところで見えることは、これは二十三年前、一九八九年十二月の二十九日だったと思いますが、この日に東証の株価の終わり値は三万八千九百十五円だったんです。三万八千円ですよ。今、上がった、上がったと、一万二千円とか三千円とか言っている時代に、当時は三万八千円をつけておりました。それが翌日からどんと下がって、一番低いところで七千何百円まで下がるんですが、土地はまだ上がっておりまして、九〇年、九一年と上がっていたんですが、九二年からいきなり土地もどんと下がってということになって、バブルがはじけるということになったんだと存じます。

 バブルがはじけた結果何が起きたかといえば、基本的には、リチャード・クーの言葉をかりれば、バランスシート不況という状況に陥りまして、企業は、デフレーションになったものですから、幾ら売り上げても資金繰りがついていかない。なぜなら、自分の持っている動産も不動産も下がったものですから、全く資金繰りがつかない。会社用語でいえば債務超過になりましたものですから、企業は、利益の最大化というのをやめて債務の最小化を図るという方に大方針転換をして、十数年続いたんだと思います。

 銀行は金を貸すのをもってなりわいとしておりますが、それを誰も借りなくなって、みんながお金を返すという状況になりましたために、銀行は多大な返済金というようになったのが、結果として、土地をまた売るというような形で、物をどんどん下げていったというのが多分一番大きな理由で、債務超過による不況というのは今回一番大きな背景だった、多分歴史家はそう言うんだと思いますけれども、今の段階でそれがきちっと解明されているかといえば、私自身もそれまできちっと解明できているわけではありません。

小池(政)委員 おっしゃるとおり、大臣は、二〇〇七年の御自身のホームページにおきましても、資産デフレという形のお話をされておりまして、また、その中では、当時、二〇〇七年、与党だと思いますけれども、過去の政府の対策に対して、デフレには有効に働かなかったということも述べていらっしゃいます。

 今回は、それまでの政府の失敗に立って、次元の違う政策を導入されるということをおっしゃっていますけれども、過去の政策と今回が違う点をお伝えください。

麻生国務大臣 少なくともこの二十年間ぐらいの対策を見ると、まず、日本銀行は金さえ刷ればいいんだという意見というのは結構ありました。今でもあります。しかし、現実問題として、お金を刷っても、そのお金は市中銀行まで行きます。マネタリーベースという言葉がありますけれども、それは確かにふえます。しかし、問題は、その市中銀行から、小池工業はお金を借りるかとか、麻生産業は金を借りに行くかというと、誰も借りない。ということになりますと、単なる日銀の当座預金が市中銀行にたまっていくだけで、二十兆刷ろうと三十兆刷ろうと、お金は市中には回らず、市中銀行にとどまるという状況にありました。

 したがって、お金を緩めるだけではだめ。どうしても、そのお金を引き出して使ってくれる人が要る。そのためには、どうしても企業がということになるんですが、企業が使う前に、政府が間違いなく景気をデフレ脱却の方向に確実にやりますという方向を示して、そして、財政も出動します、財政均衡でこうするのではなくて、財政も出動させますと言って、公共事業とか、その他いろいろなインフラの整備とか、雇用とか、学校の耐震化とか、そういった必要なところで、このところずっと一時期十四兆ぐらいありましたものを、絞りに絞って五兆円ぐらいまでに絞った公共工事等々を、絞ったためにいろいろ不都合が起きているわけですから、そういったものをやる。

 そして、三つ目が、その結果として地方にもいろいろ仕事が出てくる。かつ、それに合わせて企業が設備投資をする、物を買う。個人も同じように、亭主の給与が上がるらしいからということで消費する、そういったところに回っていく。

 三つ同時にやるということが、今回の政策が今までと一番違うところだと存じます。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 それでは、デフレの中で、賃金デフレというものもありますけれども、経済統合が他国と進んでいく中で、やはり、同じものをつくっていけば、その賃金はだんだん平準化されていくということもデフレの一つの現状ではないかなと思いますけれども、それに対する理解と、またそれに対する対応を教えてください。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

麻生国務大臣 この二十年間、間違いなく日本の給料というものは下がりました。連合は頑張ったんですが、下がりましたよ。これは認めないとおかしいんですよ。給料は間違いなく下がっています。物価も下がりましたよ。しかし、給与も下がった、手取りも下がりましたから。かつて、アメリカに比べて高いとかなんとか言っていましたけれども、今の時間当たりの手取りから見たら大差なくなってきたというほど、日本の給料というのは下がったんですよ。かつ、新興国の給料は中国を初め皆上がり始めたという形で、かなり平準化してきているという状況の中にあって、物価が下がっても、給与はこのまま下がり続ける。

 円が安くなって輸出しやすくなった。株価も上がって含み資産もふえた。含み資産だけで五兆円もふえたでしょうというような状況になったときに、企業が、サラリーとして、給与として、対価として払うことをしないで、今までどおりずっと企業の内部留保だけため込んで、設備投資はしない、株式配当はしない、給与も上げないというような状況を企業がそのままにして、二百何十兆円も企業の内部留保をため、今、一部上場企業と言われるものの四三%は無借金になっているという状況は、明らかに、これは形としてはいかがなものかと言われる状況だと思いますね。

 ぜひ給与をという形を我々としては申し上げておるんですが、少しずつではありますけれども、いろいろな形で、トヨタ自動車は第一次交渉で満額回答とか、いろいろな形が少しずつ出てきていますので、それが出てきますと、今度は消費がそれに回りますので、その消費の部分が動いてくると、全体としての底上げになっていくということを期待しております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 私たちは、政府が上から、企業に対して賃金を上げろということではなくて、やはり市場の規制緩和でありますとか、また構造改革を通して、より付加価値の高い産業というものにシフトさせていくということが大事だと思っておりますし、また、大臣自身も、所信の中では、規制改革が重要だということを、本会議でもこちらでもおっしゃっております。

 その規制改革につきまして、具体的な方針というものはありますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、小池先生、私の担当ではないので、他省庁にかかわる話なので、甘利大臣とか茂木大臣の管轄だったり、厚生省だったら田村先生の所管だとは思いますけれども、いろいろな意味で、規制のあるおかげでなかなか事が動かない。TPPに限るわけではないので。

 そういった意味では、他省庁で、例えば、そうですね、医療用ロボット。医療用ロボットの開発というのをやっていますけれども、遅々として進んでいるという感じですな。遅々として進んでいる。もっとすんなりいくはずが、私らのときに、三年前にこれを言ったはずでしょうがというのが、今でも全くというほどなっていない。

 これは、薬事法でこのルールを決めているからだと思います。薬事法をロボットに適用しているという状況は変えられたらどうですかと、何で言わないんですかね、民主党は。何で言わなかったんだろうか。私たちのときにやっていたんだから続けてやってくださいよと、二人ほど申し上げたんですけれども、御理解をいただけませんでした。残念ながら、進みませんでした。

 しかし、今、こういったものはやられたらどうですというのをやろうとしていますが、これは言っておきますけれども、抵抗はすごいですよ。それはもう大変な抵抗。だから、その抵抗を押し切ってやっていくということをやらない限りは医療用ロボットが進むことはなかなか難しいんだと思いますが、現実問題、現場で介護している人たちにとっては、つければ楽々上がるものが、高齢者によります高齢者の介護、老老介護とかいろいろな表現がありますけれども、それが現実ですから、そういったものを少なくとも補助するというような意味でロボットが使われるというのは、すごく大きい効果が出てくる、私どもはそう思います。一つの例です。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 ぜひ多方面で進めていっていただきたいと思いますが、大臣は、先ほどの二〇〇七年のブログの同じ文章の中で、当時の竹中平蔵元大臣の方針というものを必ずしもよく思っていないという言及がありまして、経済現場のわかっていない人ということをおっしゃっておりまして、当時の大臣のその上の首相の話には触れてはいなかったんですけれども、やはり構造改革、また規制緩和、大事だと思いますので、ぜひ進めていっていただきたいと思います。

 次に、金融行政についてお尋ねをさせていただきます。

 やはりデフレの脱却におきましては金融緩和というのが大事でありまして、私たちも前から訴えているところであります。

 ただ、金融につきましては、やはり、継続的で、また、ある程度責任を持った金融の緩和の方針というものがこれから続けられていくということが大事だと思うんですけれども、みんなの党は、そのコミットメントをより強くするために、日銀法の改正案というものを出させていただいております。こちらでは、雇用の最大化、また、総裁以下、役員の解任権まで含めているということで、その中で、しっかりと政策目標を定めて、日銀には目標達成していただきたいということを訴えております。

 先日の議運での黒田候補者の話とかも聞いておりましたけれども、ただ、日銀の総裁の責任につきましては、今の日銀の政策決定というものが合議制でありまして、総裁一人で決められるものではなくて、委員の多数決で決めなければならないという中で、今回、三月七日の追加緩和の方針に対しても、多数決の決定によりまして結局それが見送られたわけです。総裁一人、またその下の副総裁の方々が、大臣と同じような方針、また政府と同じような方針を持っていたとしても、やはり委員会そのものが同じ方針を持っていなければ実行されることはないという現状であると思います。

 そのような点も踏まえまして、日銀がこれからこの金融緩和を継続的に進めていかれるための臨むべき体制というものはどのようになっているか、お聞かせください。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 今回のいわゆる共同声明の中に、基本的には三点だと思うんですが、二%という目標。それから、オープンエンド、完全にやれるまでやりますというお金の出し方。通称オープンエンドとあの業界では言うんですけれども、オープンエンド。三つ目が、多分、できるだけ速やかに。できるだけ速やかとか前向きに検討しますというのは、大体信用してはいかぬ用語の一つだ、私はそう思っているんです。それは英語では、アズ・スーン・アズ・ポシブルなんてそういう言葉じゃなくて、アット・ジ・アーリエスト・ポシブル・タイム、きちっと明確に、できるだけ速やかにやりますというような表現になっておりますので、そっちの英語。この三点が、あの共同声明の中の一番の核だと存じます。

 少なくとも、白川総裁等々、それにサインをしておられますので、そういった意味では、明確に方針は規定をされております。黒田総裁という方も、同じように、金融緩和というのを前から言っておられる方でもありましたので、方向としてはその方向。ほかの方、総裁以外八人おられます、副総裁が二人、残り六人おられるんですが、その方々も、少なくとも、この総裁の方向プラス共同声明というもののことを考えますと、その方向に事が進んでいっている間、我々としては、日本銀行に対して、法律を変えて、日銀法の改正だということを今すぐ申し上げるというような状況にはないということで。

 いわゆる日銀法の改正というものは、きちんと法律で決まる話でもありますので、選択肢の一つとは思っておりますけれども、今すぐそれを実行に移すというようなタイミングではない、私どもはそう思っております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 日銀法の改正の中に、雇用の最大化ということも日本銀行に目標を持たせるということを明記しておりますけれども、そちらについてはどのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 雇用につきましては、これは時代とともに、景気がよくなれば間違いなく雇用がふえるというのが、今は随分、ロボットになってみたりコンピューターになってみたり、いろいろなものになっていますので、雇用に直接というのが、昔と違ってかなり計算がしにくくなった、そういう時代ではあろうと思います。

 また、雇用も、国内ではなくて海外でとかということになるとなかなか統計に載りにくいとか、いろいろな形になってきておるので、なかなか一概には言えないとは思いますけれども、日本銀行としては、物価に一番の責任を持つのは一義的には日本銀行でありますので、その意味では、雇用というものも非常に大きな要素だと、私どもはそう思っております。

小池(政)委員 統計につきましては、また、日銀総裁が新しくなりまして、こちらに迎えて審議をされる予定だと思いますので、お聞きをさせていただきたいと思います。

 次に、財政規律の問題についてお聞きしたいと思います。

 二十五年度当初予算では、中期財政フレーム、これは大臣は否定的な発言をされていますけれども、四十四兆円の国債発行限度を守ることができたんじゃないかと評価されていると思いますけれども、この発行制限というものは当初予算だけなんでしょうか、補正も含めた通年ということなんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、小池先生、御記憶かと思いますけれども、最初、補正等々、予算を編成するに当たっては、私は、四十四兆円にはこだわらない、景気浮揚が一番なのであって、四十四兆円なんというものにこだわるつもりはありません、そう申し上げたんですが、結果として四十四兆ぎりぎりでおさまったという形にはなっております。

 したがって、こだわらないと申し上げたけれども、結果としてなったという形だというふうに御理解いただければと存じます。

小池(政)委員 その国債発行限度の問題なんですけれども、それが当初予算だけではなくて、補正も含めた通年の目標という認識でよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 国債の発行限度は、基本的には補正とは関係ない形になっておりますので、当初予算のシーリングというのが基本的な物の考え方であろうと存じます。

 したがいまして、今言われましたように、我々は、このままうまくいけば、うまくいけばですよ、景気ですから水ものでよくわかりませんけれども、うまくいけば、間違いなく今年度は補正を組まずに景気が浮揚していくということを期待しております。

 ただ、これは対外情勢、アメリカは間違いなく、住宅事情等々、都市はともかくとして、個人住宅需要というのは一カ月、二カ月ずっとふえ、雇用も間違いなく、失業率ががたっと下がっております、二十万人ふえたりしておりますので。

 そういった意味で、アメリカはよくなってきていると思いますが、アジア、また中国、ヨーロッパがよくわかりませんので、ここらとの連携がよくまだ見えておりませんので、どれくらいそれが我々に影響を与えるのかというのは、今年度の、前半まではそこそこですけれども、後半がよく見えていないので、補正を組まねばならぬことになるほどまた落ちるのかといえば、いかずに済めばなと思っているのが正直なところです。

 したがって、今の段階できちんとしたお答えを申し上げることはできませんけれども、我々としては、財政規律というものをきちんとしておかないと、財政の信用、日本という国の国家の貨幣の信用が失われるというのは、これは日本の国家としての損失になりますので、そこのところは常に頭に置いておかねばならぬと考えております。

小池(政)委員 私は、今回、国会議員になって初めて国政の審議に参加させていただいたんですけれども、正直驚いたのは、これだけの大きな予算が、非常に短い時間の中で、あっという間にまさに国会を通過していくということに対して、こんなに中身が精査されないまま国会を通ってしまうということに対して非常に大きな危機感を今抱いているわけなんです。

 借り入れの国債に対するシーリングを通年に設定するということとともに、今これだけの財政が厳しい中で、歳出の通年のシーリングというものも考えるべきではないかなと思っております。また、それが単年度であれば、例えば、キャップ制を導入して、ペイ・アズ・ユー・ゴーという形で、どこかがふえたらばどこかを下げるという形のやり方を考えたり、また、スウェーデンのように、複数年でシーリングを考えるということも一つの案ではないかなと思っているんですけれども、大臣のお考えはどうでしょうか。

麻生国務大臣 今の中で、予算というのは全て単年度でなっているところには問題がある、これは私どももかなり前からそう思っておりました。

 例えば、少なくとも一年間ででき上がらないようなもの、大きな船とか大きな何とかとかいうようなものは一年ででき上がりませんから。それを毎年度の入札でやりますといったら、船を一個つくるのに、この部分は三菱重工で、真ん中の部分は石川島播磨で、こっちの部分は何とかと、そんなになったらとてもじゃないからというので、通年度でやった方が、受ける方だって、安くしますよ、当たり前でしょう、物づくりしていたら誰だってわかりますよと言うけれども、できません。できないんですよ、約束上は。そういったようなところはいろいろ考えていったらいいのではないか、私自身はそう思います。

 それから、今、予算の間にこんな短期間にと、それは全くおっしゃるとおりなんですが、基本としては、そこに至るまで、国会で審議する前に与党は、この三年間、民主党は民主党の中だけで一生懸命予算の編成を長いことやってこられたはずですよ。そこの党の中でいろいろ、与党として政府が出すのは、予算編成権というのはいわゆる与党の一番大きな責任の一つですから、安住大臣なりなんなり、みんなそれを担当されて一生懸命やってこられたんだと思います。そこの部分は国会では見えない部分だと思いますので、そこの部分も計算にある程度入れておかれて。

 たった一月ぐらいでぽいとできたと、そんな簡単なものじゃありません。

小池(政)委員 当件は、与党議員の中にも、先ほど三木委員がおっしゃったような、やはり本予算でなかなか入れられないから補正にそれを含めて膨らますんだという問題点も上がっているところでありますから、ぜひ御考慮いただきたいと思います。

 また、もう一点、財政規律に関しまして、予算に関しまして、予算の審議のプロセスなんですけれども、今回拝見したのは、一方的に政府の方から予算案が出てきて、それに対して私たちは、時間もない中で、それが必要か必要でないかという、結構二元論の中で審議しなければならない。

 その中で、例えばアメリカは、行政府側だけではなくて、議会側に議会予算局というものがありまして、その中である程度、彼らが恐らく政府とは異なる将来の設計等に基づいて予算を作成して、それを議会の中で両方見ながら審議をしていると思うんですけれども、そのようなあり方というものも考慮すべきではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じだと思いますが、日本の場合は、憲法で、予算は内閣と決められておりますので、それが一つの大きな要素なんだと思います。

 加えて、今、当選一回なんだと思いますが、今回の予算は、例年に比べたら異常ですよ。なぜ異常かといったら、だって、予算編成をスタートしたのは十二月二十何日なんですから。普通は、十二月の二十何日は、もうでき上がる日。その日にスタートしているわけです。

 それは何でかといえば、選挙で状況が全く違って、通常ですと、八月に概算要求が終わって、それから九月、十月、暑い真っ最中ずっと積み上げてきて、いよいよ十一月ぐらいになってきてというような話になりますのが、今回は、通常三、四カ月かかるところ、一月で全部ということになりましたので、かなり小池先生から見られて、何やえらいことになっておるな、多分そう思われたんだと思いますけれども、通常はそんなことはなくて、大体四カ月ぐらい、大体そんなものだと思いますので、それぐらいかかるものだと御理解いただければと思います。

小池(政)委員 それでは、少し時間がなくなってきましたので、最後、一点だけ。

 年金に関してですけれども、今回、物価を調整という形で、三年間、年金の減額が行われます。これから消費税が二段階で増税されていった結果、その増税分はやはり間接税という形で物価に反映されて、またその物価分が、今度、物価スライドという形で年金にも反映されると思うんですが、その分の年金の負担の増加分というものはどのくらいになりますでしょうか。

蒲原政府参考人 お答えを申し上げます。

 消費税が上がった場合の年金額でございますけれども、基本的には、年金額は、物価あるいは賃金の上昇率と、いわゆる長期的安定の観点から設けられてございますマクロ経済スライド、こういうもので改定されるということになってございます。

 ただ、委員先ほどお話しのとおり、現在の年金額は、過去、物価が下がったときに下げなかったという経緯を踏まえまして、現在、二・五%程度、少し特例的に高い水準になっている、こういうことでございまして、現在、これを今後引き下げていく、こういう段階にございます。

 その観点でいいますと、この特例水準が解消されるまでの間は、年金額は物価が上がっても上がらない、こういうことになっているわけです。

 ただ、特例水準解消後は、原則、物価が上昇したときには年金額が上がる。ただ、この場合でも、先ほど申しましたマクロ経済スライドという一定の仕組みの中で、一定の調整額がかかって改定される、こういう構造になっているというのが年金額の設定でございます。

金田委員長 時間が参りました。

小池(政)委員 私の懸念は、これから長期的にその分が年金の負担としてふえていった結果として、消費税の増税分を食ってしまうんじゃないかということを懸念しております。

 また、これから審議の方でさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

金田委員長 午後一時から委員会を再開することとしまして、この際、休憩をいたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、大臣所信に対する質疑ということですので、基本的な問題からただしていきたいと思います。

 麻生大臣は、所信表明で、「長きにわたりデフレが継続いたしております。」こういうふうな認識をお述べになりました。

 そこで、改めて、デフレとは何か、インフレとは何か、この定義をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 公式的には、物価の持続的下落がデフレと定義をされております。インフレの方は、持続的な物価の上昇というようなことになるのではないかと思っておりますけれども、一応、政府見解としては、持続的な物価の下落をもってデフレと定義をいたしております。

佐々木(憲)委員 そこで、その持続的な物価の下落ということが一体なぜ起こるのか、その原因を我々は究明しなければ、対応も出てこないと思っております。

 大臣は、この所信表明の中で、「賃金の下落が続き、消費や設備投資が伸び悩む中で、」というような発言をされております。つまり、需要面の落ち込みというものがその背景にある、こういう認識でよろしいですか。

麻生国務大臣 この原因につきましては、さまざまなものが複合的に重なり合っておりますので、貨幣価値の下落とか物価の下落だけとは、これは言いにくいと思っております。

 特に、今回の場合は、少なくとも今までにないほど急激に土地と株というものが下落をしたことによって、株は九〇年から、土地の方は九二年から急激に下落をしておりますので、企業にしてみれば、自分の持っております資産、動産という株、不動産という土地、こういった資産価値が急激に下落したために、会社の勘定からいくと債務超過という状況に陥って、企業としては基本的には債務超過を解消する必要に迫られた。

 そのために、株は売る、もしくは土地を売る。結果として、またさらに下がるということになっていって、それでも、バブルのときにたまった借入金の返済をしない限りは、物価が下がろうと何だろうと、金利はそのままずっと残りますので、企業としては、しゃにむに借金の返済をすることを優先した。

 経済用語でよく使われる、利益の最大化をやめて債務の最小化を図ったという結果が、回り回って今回の大きなデフレを長引かせたもとだと思っております。

佐々木(憲)委員 今の説明は、バブルのはじけた経過をどのように見るかというお話でしたが。以前、麻生大臣は、二〇〇一年三月に経済財政担当大臣として記者会見をされておりまして、そこで記者からこう聞かれているんですね。今の不況の中で、需要不足によって物価下落が続いているというようにお考えですか、こう聞かれまして、そうですというふうに明快にお答えになっているわけです。

 物価下落の要因として、需要不足、これが一番大きいと私は思うんですけれども、認識としては、当時と今と、同じでしょうか。

麻生国務大臣 需要の下落、間違いなく、デフレーションにつながった一番もとのもとは、多分そこになると思います。

佐々木(憲)委員 そこで、需要のことでありますが、例えば、GDPの中で一番大きな比重を占めるものは家計消費でありまして、最近の統計を見ましても、六割、五九%であります。これがやはり全体の景気動向あるいは需要そのものを左右する、内需を左右する大きな要素である、そういう位置づけだという認識はお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 GDPの中に占めます大きなもの、政府支出、設備投資、個人消費、この三つだと思いますが、比率の一番大きいのは個人消費、はっきりしておると思います。

佐々木(憲)委員 そのとおりでありまして、これは二〇一〇年度前期の名目GDPの構成ですけれども、個人消費は五九・〇%、設備投資が一三・四、政府消費が一九・七、こういうふうになっているわけでありまして、やはり個人消費というのが非常に大きいわけですね。

 そこで、問題は、需要の中心である家計、この家計消費の部分がずっと低迷している。これが、全体として、デフレ不況の大もとにあるというふうに思うんです。やはりこれは、可処分所得が減るということと連動していると思うんですね。

 可処分所得というのは、手持ちの自由に使える資金が家計の中でどれだけあるかということでありまして、一番基本は賃金ですね。賃金がふえないと可処分所得もふえない。それから、税、社会保障の負担、これが重いと、なかなか手元の資金が厳しくなってくる。こういうような関係にあるわけです。

 この手元に残る可処分所得というものがなかなか伸びない、そういう状況にあるのではないかと思うんですが、大臣はどう認識されていますか。

麻生国務大臣 全て給与というわけではありませんが、所得は、株の配当であったり、貸した金の金利であってみたり、土地代であってみたり、いろいろなもので別に所得がふえているところもあろうと思いますので、給与というものだけで一律に言えませんし、退職しておられる方々にとりましても、少しまた違う論理だとは思いますけれども。

 いずれにしても、入ってくる収入に対して、それが一定であるという前提に立てば、物価が下がり続けていけばともかくとして、基本的には、給料がふえない限りは可処分所得はふえないということに、常識的にはなります。

佐々木(憲)委員 その給料が、この間、例えば十年間をとりますと、二十一兆円減っているんですね。

 それから、これは負担の問題がもう一方にありまして、小泉さん、安倍さんの時代に、我々が計算しますと数十項目ありまして、十二・七兆円の負担がふえたんですよ。所得税、住民税の増税もありましたし、年金の負担もふえた、給付が減った、そういうふうなことがいろいろあります。それがかなり国民の負担感を増したというのは、要因として大きいと思いますね。

 そのために、かなり自民党に対する批判がわあっと強まった。麻生さんが総理になられたときは、その批判が非常に強い中で総理になられたんですけれども、そのときに、何とか需要を拡大しよう、個人消費をふやそうということで、定額給付金というのをやったと思うんです。その発想というのは、個人の消費を伸ばそうというのがその背景にあったと思うんですが、まずそこを確認しておきます、考え方ですね。

麻生国務大臣 あのとき一番大きかったのは、佐々木先生、やはりリーマン・ブラザーズですよ。あの影響がやはり一番大きくて、とにかく、銀行は倒産する、企業は倒産するなんとかというような感じで、事実、アメリカの方も、ファニーメイなんというああいった住宅公社みたいなものまで潰れる時代でしたので。そういった意味では、それの余波がどれだけこっちへ来るかというのが一番問題でして、銀行の救済というようなことで、思っておりました。

 幸いにして、いわゆるサブプライムローンというものにひっかかっている銀行は日本の場合は少なかったものですから、ゼロじゃありませんけれども、絶対量が少なかったものですから、ヨーロッパとかアメリカの銀行ほどひどい目に遭わずに済んだというのは大きかったと思います。

 いずれにしても、一挙にえらいことになったというオーバーリアクションみたいなものは大きく出ましたものですから、これで企業が引いた上に、とにかく、民間の、いわゆる消費の六〇%を占めるその部分が縮こまるというのだけはちょっと、これまでいったらもう日本のGDPはマイナス成長どころの騒ぎじゃないという危機意識がありましたので、政府支出と民間企業の設備投資が伸びないというのであれば、いわゆる個人消費を刺激する、そういった要素というものを考えないとこれはえらいことになるなという意識がありましたので、個人消費を何とかという意識が強かったと記憶しています。

佐々木(憲)委員 麻生大臣は、今まで答弁を聞いておりますと、デフレ不況の要素としては非常に重要な鍵になるのは個人消費にあると。これを刺激して、ふやすように持っていかないと、全体として景気は底上げしないのだという基本的な原理のところは、共鳴する面が我々はあります。ただ、その内容がいろいろあると思いますけれどもね。

 それで、確かに、アメリカのバブル崩壊で大変な金融危機が広がったというのはありました。しかし、その前に、先ほど述べましたように、それまで国民負担がじわじわじわじわふえてきたということもあります。賃金も下げられてきた。そういうときにあのショックが起こったものですから、これは大変な事態だということはありますね。それは、一時的にこの給付によって何とか刺激しようとされたんだと思います。あのときはそのやり方についていろいろな議論が起こって、非常にいろいろな論争が起こったんですけれども、それはさておき、需要というものが大事であるという認識がベースにあるというのを確認いたしました。

 もう一つ、私は、その上に、金融の面は一体どういうふうに位置づけるのか、これをただしたいと思うんです。

 それは、安倍内閣が二%のインフレターゲットを設定するということで、金融面から今度は物価を押し上げる、そういうことで、日銀に重い役割を担ってもらって、それを実行させよう、こういうことのようです。

 そこで、まず前提として数字を確認したいんです。

 日銀にお聞きしますけれども、マネタリーベース、マネーストックのそれぞれについて、二〇〇七年から今日までの変化を示していただきたいと思います。

西村参考人 お答えさせていただきます。

 マネタリーベースですが、これは実額を平残ベースで見ますと、二〇〇七年の一月は約九十兆円であります。これに対して、二〇一三年の二月は約百二十九兆円です。すなわち、この六年間で四四%増加いたしました。この間、マネーストックですが、これは、M2の実額の平残ベースで見ますと、二〇〇七年の一月は約七百十五兆円、二〇一三年の二月は八百二十八兆円であります。つまり、この六年間で大体一六%増加したという形になります。

佐々木(憲)委員 マネタリーベースというのはどういうものか、それからマネーストックというものはどういうものか、簡単に説明していただけますか。

西村参考人 マネタリーベースというのは、日本銀行に存在している銀行の預金と、それから市中に存在している紙幣、貨幣、その総和を大くくりにしたものであります。

 マネーストックというのは、これは銀行に対する預金が基本的なもので、それと市中にある貨幣とかそういったものを全部含めた、そういう経済活動に対応する貨幣量という形になります。

佐々木(憲)委員 今御説明がありましたように、マネタリーベースというのは、いわば日銀と銀行の間の底にたまっているお金ですね、簡単に言うと。それから、マネーストックというのは、どちらかというと銀行から先のお金のありようでありまして、預金されていたり流通していたり、そういう部分ですね。この二つを明確に分けて考えるということが大事だと思うんです。

 そこで、先ほどの数字のお話ですけれども、マネタリーベースでは四四%ふえているんですよ。要するに、金融緩和をやって、じゃぶじゃぶとお金を出したと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、日銀としてはそれを供給した。

 ところが、問題は、銀行から先になかなかお金が流れない。マネーストックでいうとわずか一六%ですから、かなり低いですね。これは、実体経済、需要面のいわば経済が活性化しない状況の中で、資金需要というものがそんなに大きくならなかったということだと思うんですけれども、大臣、どういう認識でしょうか。

麻生国務大臣 これは、当時意見のすごく別れたところだと記憶しています。

 日本銀行は余りやる気がなかった。なぜなら、マネタリーベースをふやしても、少なくとも、それから先のマネーサプライになっていくという保証が全くないと日本銀行は思っておられましたから。

 私どももそう思っておりました。しかし、当時、閣内でいろいろ意見が分かれて、当時はヘリコプターマネーなんというわけのわからぬ言葉がはやっていましたけれども、日銀が金を刷りさえすりゃ回るんだみたいな話をしていた人もおられましたけれども、現実問題、日本銀行がお金を刷っても、市中銀行に、あなたは日銀に当座預金としてこういう預金がありますよという額が示されるだけで、別にそれから先に、市中に回るわけではありませんので、少なくともマネーサプライはふえないということになります。

 したがって、幾ら刷っても意味がないという日本銀行の当時の御意見に、私は当時総務大臣だったかな、何かしていましたけれども、僕、賛成しますと言って、結構、当時の竹中平蔵と正面からぶつかった記憶があります。残念ながら、私の方が負けましたので、そのままふやされたんですけれども、結果的には全然ふえなかったと記憶をしています。

 したがって、今回のアベノミクスの中においては二番目、三番目の矢が大切なのであって、日銀がマネタリーベースをふやすということをしていただいても、それから先の需要をつくり出すのは、これはどう考えても政府であり民間の仕事であって、そこのところの保証がなければ日本銀行も二%なんて安易に書けないというのは当たり前の話なので、二%のお話を日本銀行とさせていただくときに一番、これは信頼関係にも基づきますので、そこのところは我々もきちんとやりますということを申し上げて初めて、あの共同声明ができたというように思っております。

佐々木(憲)委員 実際に需要の方が伸びていくかどうかというのは、我々はちょっと疑問に思っております。それは後でまたやるとして。

 そこで、もう一つ数字を確認したいんですけれども、国内銀行の貸出残高がどうなっているか、二〇〇一年三月から直近までの変化ですね。特に、国内銀行全体と中小企業に分けて説明をしていただけますか。

西村参考人 お答え申し上げます。

 まず、国内銀行の貸し出し合計につきましては、末残ベースで見ますと、二〇〇一年の一月は約四百七十兆円ありました。それが、二〇一三年の一月には約四百二十二兆円となっております。すなわち、この十二年間で約一〇%減少いたしました。

 中小企業向けの貸し出しについては、二〇〇一年の一月は約二百三十兆円ございました。それが、二〇一三年の一月には約百六十八兆円となりました。すなわち、この十二年間で約二七%減少いたしました。

佐々木(憲)委員 資金需要といいますか、これが非常に低迷しているというのは、今の数字でもわかるわけです。需要がないということは、要するに、経済が低迷しているということでありますから。

 この状況というのは、非常に大変な事態だと思います。つまり、中小企業は、新しいことをやりたいという意欲はかなりあるわけですけれども、しかし、実際にその商売が成功するかどうかというのは、何をつくっても、それが売れる見通しがなければ設備投資もできないし、あるいは大企業にとっても、その商品が売れる見通しがないのに、設備だけつくるわけにはいかぬ。したがって、最終的には、個人消費、家計消費をベースとした内需というものが全体としてふえない限り、貸し出しもふえない。ここがやはり基本だと思うんですね。

 今、そういう意味では、麻生大臣が以前に、単に緩めただけではお金は下に行かないと思いますという発言もされています。先ほども似たような御発言でした。やはり、金融緩和という場合、最終的な需要がどのように起こっていくかということを同時にやらないと、これは幾ら緩和したって、先にお金は流れないわけですね。

 ところが、どうも、私は今見ておりますと、これから消費税というものが上がるわけですね。経済状況によって、この秋どのように判断するかということは言われていますけれども。これが仮に上がるとなりますと、十三・五兆円、新たに庶民の負担がふえるわけです。これは家計消費にとっては非常に大きなマイナスです。それから、さらに年金ですとか、そのほかの負担がかなりふえていくわけですね。そうなっていきますと、これを合わせますと、負担増。これは、この前、民主党政権のときにも私は予算委員会で確認しましたが、これから三年ぐらいの間に、約二十兆円負担がふえるわけですよ。

 最初に申しましたように、その負担がふえていきますから、賃金がちょっと上がっても、これは可処分所得の方がずっと減ってしまうわけですね。特に、高齢者の場合は年金が下がり続けます。そういう中で、消費税は上がる。一体どうやって暮らしていいのか、こういう話になるわけですね。

 したがって、先にお金が流れる、これは、成長戦略ですとか、あるいは財政出動とか、そういうことも考えておられると言いますけれども、実際に家計にお金が回らない限りは、どんなことをやったって全体の経済は上向かない、こういうことになると思うんです。

 したがって、私は、これまでの政策の延長線上で、つまり、三本の矢と言われているそのやり方ではうまくいかないのではないか、そう思います。これは負担が大変重くなっていくからです。

 賃金が上がるという点は、これは我々も提起して、そして今、春闘の時期ですから、若干の前進も見られるかのように思いますけれども、まだまだそれでも、負担増ということを考えると、この程度のことでは間尺に合わないという感じがするわけです。

 こうなりますと、金融緩和の方がずっと先行していきます。財政出動といっても、公共投資はGDPの四%です。四%を幾ら膨らませても、倍にしたって八%ですね。そこまでいくかどうかは別として。そうなりますと、金融緩和だけがどんどんどんどん先行していって、つまり、お金がじゃぶじゃぶあふれる。日銀から銀行の方に行く部分だけがふえるだけで、また結局は内需の方に回っていかない、そういうことになるのではないかと思いますが、麻生さん、どうですか。

麻生国務大臣 マネタリーベースとマネーサプライの件でいけば、少なくとも、消費税の引き上げ分というものは、基本的にはこれは社会保障に充てられるということが決められておりますので、その分に関しましては、今の中では影響が少し違うのではないかと思います。一つの例ですけれども。

 ただ、基本的には、今、佐々木先生が言われるように、この種のものがインフレ傾向に出てきたときに、一番最後についてくるのが給与ですから。給与は一番最後に来る。これは、世界じゅう皆同じになりますので。その意味では、ある程度遅くなってくる。

 しかし、今回の場合は、少なくとも、各単産ごとの話ではありますけれども、春闘の答えを見ていると、満額回答が一発で出されたりしているというのは、気分が違ってきているんですよね、もう既に。これは物すごく大きな部分だと思っておりまして、景気の気の部分が全く去年までとは違ったものになってきているというのが一番大きな例で、既に、デパートの売り上げやら何やら、消費が少しずつふえてきたり、もう顕著に出ています。

 そういったところが回り回って、さらにシナジー効果とか波及効果とかいうものを生んでいくようなものにしていかないかぬところなのであって、やはり一発目だけの、いわゆるマネタリーベースがふえるだけではだめというのは、これをやったら十年前にやったのと同じことになりかねないという御懸念は全く当然の御懸念なのであって、そういうことがないようにするために、第二、第三のところをやらせていただいたというように御理解いただければと思って。

 特に三番目のところが一番肝心なところだと思って、私ども、ここが一番大きな勝負だと思っております。

佐々木(憲)委員 そこで、財政との関係で、金融緩和をどんどんやるというふうになっていきますと、日銀としては、資産の買い入れ、その他の手段をいろいろ使うということになってきますね。そうすると、政府としては国債をどんどん発行する。三年間は国会のチェックがなくてもやれる、こういう話ですので、予算が組まれる限りは幾らでも発行できる。

 そうなると、結局、日銀が間接的に引き受けるような市中からの買い入れが行われて、基金もつくられて、その基金の規模がどんどん膨らんでいく。さらに金融緩和をやっていくと、その規模も膨らんでいく。短期国債から今度は長期国債だ、こんなふうになっていきますと、これは財政法との関係で非常に問題が出てくるんじゃないか。

 財政法第五条は、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」こういうふうに規定されているわけですね。

 一体どこまで日銀に国債を引き受けさせるつもりなのか、その限界をどのように意識しているのか、その辺はどういうふうに考えておられますか。

麻生国務大臣 日銀の国債の買い入れというものは、基本的には、金融緩和のために資金を市中に供給するということを目的とするものであります。したがって、国債を含めた、どのような金融資産を幾ら日本銀行が購入するかということにつきましては、具体的な手法等々につきましては、基本的に日本銀行の権限、範疇で決められるということになっております。

 したがって、日銀のいわゆる国債の買い入れというのをもって、これは財政ファイナンスに当たるのではないかというのは、少々これは適当ではないのであって、これは日本銀行にかかって、その権限は委ねられているんだと思っております。

 したがって、政府としても、日銀に政府が財政ファイナンスをさせているんだという疑念を持たれることイコール日本の国債の信用、国家の信用にかかわってきますので、これは今後、日本の持っております国債のランクにかかわってくる話でもありまして、ここのところは極めて慎重にやらなければならぬと思いますので、そこはおのずと、どの程度のものかというところは自然とわかってくるところだろうと思います。

 これをしゃにむにやれば、全部戻って、ランクが下げられてみたりいろいろするということは、国債の金利がえらい上がったりすることにもなりますので、そこは慎重にやっていかねばならぬのは当然と思っております。

金田委員長 時間が参りましたので、まとめてください。

佐々木(憲)委員 時間ですので、もう終わります。

 結局、我々としては、国民の消費の拡大、生活の安定というものが第一である。そうしないと、金融緩和が先行していくと、物価が上がって逆に生活が落ちてしまう。こういう危険がないか、この辺はこれからもきちっと注視していきたいというふうに思っております。

 以上で終わります。

金田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木でございます。

 きょうは、大臣所信に対する質疑ということでありますので、財政、そして金融、税制、三点について大臣にお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 まず最初に、財政なのですが、大臣は、この二十五年度予算について、引き締まった予算である、それから、財政健全化目標の達成に向けた第一歩である、こういうふうにおっしゃっておるわけですね。確かに、見ようによっては公債金よりも税収が上であるということで、そういうふうにおっしゃられたいのもわからないわけじゃないんですけれども、本当にそうでありますかというところを、ちょっと二、三、ただしてまいりたいというふうに思います。

 まず、一番肝心なのは、この二十四年度の補正予算と二十五年度本予算といいますか、これはあわせて見ていかなきゃならない。政府の方も十五カ月予算ということをおっしゃっておるわけですから。そういうふうにして見ていった場合に、本当に先ほど言われたような予算であるかどうかということなんです。当然、この数字のもとは、SNAで私は申し上げてまいるわけでありますけれども。

 まず、二十五年度のプライマリーバランスについてですが、国、地方の合計では三十三・九兆円、対GDP比で六・九%、こういうふうになっております。国単独では三十五・八兆円、対GDP比で七・三%ということで、これも予算委員会で、私、ちょっとお伺いをしたんですが、財政健全化目標の二〇一〇年をベースとして見ていった場合に、半減に近づくということよりも悪化していっておる、このように私は思います。

 したがって、先ほど申し上げましたように、引き締まった予算であるとか、財政健全化目標の達成に向けた第一歩というような、そういう予算ではなくて、二十四年度の補正を、言い方は悪いんですが、膨らませておいて、そして、見せかけ上こういう形をとられて、しゃにむに財政健全化であるというふうな形をつくられておるのではないのかなと。

 第一点目に、まずその点をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 基本的に、二十四年度補正予算の公債金五・二兆円と二十五年度の公債金四十二・九兆円を単純に合計いたしますと、今言われたように四十八・一兆円ということになって、二十四年度当初予算を上回ることは事実だと存じます。しかしながら、二十四年度の補正予算と二十五年度の当初予算、これは予算としては全く性格が違うのであって、二十五年度の本予算と二十四年度の補正予算というものは、本来として全く性格が違うものだ。

 ただ、御存じのように、予算の編成が少なくとも大幅にずれて、十二月末から予算編成をするという形になったものですから、全ておくれて、我々としては、当時、このままでいくと四―六はえらいことになる、一―三も厳しい状況になるのではないかという懸念がありました。少なくとも、その前はマイナス三・五%、GDPは年率換算で減っておりますので。

 その当時、これはえらいことになるというので、二十四年度は補正予算を組んで、景気を間違いなくきちっとしたものにしないと、一回折れたものをまたもとへ戻すというのは大変なことになりますので、少なくともならすという形でいかねばならぬというので、二十四年度は補正予算を組ませていただいた。したがって、性格が全く違うということなんだと思っております。

 したがって、その意味で、財源を調達するために公債金を発行させていただきましたが、一方、二十五年度の当初予算の方は、これは来年の財政需要に対応するためのものということになります。

 したがって、十五カ月予算とは、二十四年度補正において十分な額を確保して、これで二十四年度から順次執行していきます、もうできるところから早くやっていきますということで、二十五年度にかけて経済運営には万全を期したいというのが我々の考え方であって、二つ性格の異なります予算を単純に一緒にされても余り意味がないんだと思っております。

 我々としては、二十四年度補正と二十五年度とあわせて見れば、経済の再生と財政の健全化の両方を視野に入れつつ編成したものであって、財政の規律に配慮していないとか、何か見せかけにしているというような御指摘は当たらないと存じます。

鈴木(克)委員 当然そういった御答弁があるのではないかなというふうに思ったんですが、十五カ月予算ということをおっしゃっているのは政府なんですね。そうすると、当然のことながら、要するに二十四年度の補正と二十五年度の本予算とあわせて分析をしていくというか、見ていくというのは、私は当然のことだというふうに思います。しかし、答弁としては、当然そういうふうにおっしゃるのではないかなというふうに思います。

 そこで、二つ目の質問なんですが、年金特例公債についてお伺いをしたいと思うんです。

 これは、三木議員からも午前中にありました。今おっしゃったように、二十五年度予算の公債金は四十二・九兆円ということであります。そこには年金特例公債の二・六兆円が含まれておりません。年金特例公債を含めれば、公債金は四十五・五兆円であり、いわゆる公債金が税収を上回る、こういうことなんですね。

 答えを先に言っても仕方がないんですけれども、年金特例公債についてはあらかじめ償還財源が手当てされているから他の公債とは違うんだ、当然こういうことをおっしゃりたいというふうに思うんですが、ここが問題なんですけれども、それは過去の説明と一貫していないんですよ。

 では、どういうことなのかというと、例えば、いわゆる二十三年度の復興費は財源が確保されていました、にもかかわらず、きちんと公債金に分類されているんですね。

 それから、もう一つ。きょう資料を配らせていただいたんですが、資料をごらんになっていただきたいんですけれども、これは、二枚目が二十五年度の当初予算、三枚目が二十四年度の当初予算。これは個別に見ると全く問題ないように見えるんですが、一ページ目に二つ並べてみました。そうすると、明らかに、これはまた、からくりと言うと大臣に叱られるかもしれません、何がからくりだと怒られるかもしれませんが、本当にからくりがあるんですよ。そのところを私は申し上げていきたいというふうに思います。

 過去のグラフでは、一般会計で発行した普通国債を全て記載しておりました。しかし、今回のグラフでは、償還財源が確保された公債をわざわざ過去にまでさかのぼって除外をしているんです。問題はここなんですね。

 どういうことなのかといいますと、一ページ目を見ていただくとわかるんですが、二十四年度の当初予算の資料の方を見ていただきたいんですが、平成二年に湾岸危機で一兆円発行したんですね。それは表に載っています。それから平成六年、七年、八年、この三年の数字を見ていただくと、四・一、四・八、十一・〇ということになっていますね。ところが、二十五年度の予算の資料を見ていただきますと、平成二年のところには、この一兆円、もう消してあるんです。それから六年、七年、八年には、先ほど言った数字は修正されているんですね。

 それで、左の表の二十三年度のところを見てください。ここに斜線の部分がありますね。ところが、二十五年度の予算の資料のところでは、二十三年のところを見ていただくと、ここに載っていないんですよ。

 これは明らかに、さっきから言っておるように、何としても、要するにバランスをとりたい、健全予算だ、いわゆる引き締まった予算だということを言いたいがために、過去の表までさかのぼって修正をしておるということですよね。

 これは、大臣、どのように思われますか。

麻生国務大臣 御指摘の資料につきましては、平成二十五年度の予算案の策定時のときには、確かに、復興債の、いわゆるつなぎ公債の発行額を公債発行額に含めていないというのは事実です。

 つなぎ公債は、これは御存じのように、償還財源を確保した上で発行されておりますいわゆる公債ですから、その意味で、将来に負担を先送りさせる、先の方に借金を送っちゃうというのではなく、財政規律を損なうものでもありません。したがって、皆さんに財政の実情をお伝えする、正確にお伝えするという、御指摘のようなこういう資料におきましては、これは、財源確保をせず将来世代へ負担を先送りするというような通常の公債とは明確に区別して、その上で公債発行額から除いてお示しをしたということだと思っております。

 このように、今般の資料の見直しは、つなぎ公債というものの性質を踏まえたものでありまして、公債発行額を少なく見せるというような意図で行ったものではない、それだけははっきり申し上げておきます。

鈴木(克)委員 今、大臣は、これは見直した、こういうふうにおっしゃるんですけれども、しかし、明らかに、過去にまでさかのぼって資料を、いわゆる、まあ、偽造と言うと叱られますし、何といいますか……(発言する者あり)改ざん。改ざんというアドバイスがありましたけれども、これは、大臣、そういうことを今回御承知でしたか。いわゆるそういう指示を財務省に対してされたんでしょうか。

麻生国務大臣 改ざんとかいう言葉を指摘されてそのまま使われるようじゃ、ちょっとまた値打ちが落ちるから、余り使わぬ方がいいです。

 いわゆるつなぎ公債というものにつきましては、平成二十三年度における復興債と、それから平成二十四年度、二十五年におけます年金特例公債、これを足元に置いて、三年連続でずっと発行してきております。御存じのとおりです。

 平成二十五年度の予算においては、過去二年と異なって、当初予算においてつなぎ公債を発行する、当初予算でつなぎを発行するということになったため、改めてつなぎ公債の取り扱いについては整理する必要があるのではないかというのが、いわゆる主計局、主税局の、財務省の総意としてこういった形になったと御理解いただければ幸いです。

鈴木(克)委員 御理解いただければ幸いと言われても、この数字を見せられて、要するに、今、大臣が御説明された話で、ああ、そうですかというわけにはやはりいかないというふうに私は思います。悪く言えば、また叱られるかもしれませんけれども、国民を欺く一つの手法だというふうに思いますよ。だって、ことしになって過去のデータまで、まあ、改ざんと言ってはいけない、訂正をするというのは、これはやはり私は、本当に、何が何でも、引き締まった予算で、財政健全化目標への第一歩だという、それに集約をしてやったことが今回のこのデータだというふうに私は思っております。

 そこで、大臣、来年はこれをもう一遍戻すというふうにお考えになりませんか。やはり、今までのデータはそういう形でずっとつくられてきたわけですからね。ことしになってデータを、改ざんと言うと叱られますので、見直されたわけですね。新しい方針のもとにつくられたわけですよ。だけれども、今までずっと数字を、データを見せられてきた国民にしてみれば、これは一体全体どういうことかということになると思うんです。

 したがって、やはり、去年、おととしあたりのつくり方にもう一遍戻すというお考えはありませんか。

麻生国務大臣 せっかくきちんとしたものにしたものを、またもとに戻すなどという気はございません。

鈴木(克)委員 いやいや、きちんとしたものではないから、私はこうやって言っているんですよ。

 平成二年からずっとやってきたことを、ここへ来て、それは私の言っておるのは邪推かもしれません、大臣が、何遍も言いますけれども、引き締まった予算で、健全化への第一歩だという形をとりたかったと。そうなると、やはり財務省の方は、こういう形でデータをつくりかえて、そうしてつじつま合わせをするしかないんですよ。

 だから、私は、そうではなくて、今まで、平成二年以来ずっとやってきた同じ手法でもう一遍来年からはやると。せっかくよくなったものをまたもとへ戻すのかと、そういう話じゃ全然ないんです。実態はどうなのかということを、私はやはり国民に広く知らせていくべきだというふうに思うんですね。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、つなぎ公債の性格を考えてみた場合には、税収の当てがあるという公債と、借金を将来に先送りする公債とを区別して書くというのは、少なくとも国民にもわかりやすいと我々は考えております。

鈴木(克)委員 くどくなりますのでこれで終わりますけれども、だって、過去のデータまでなぜ直すんですか。過去はこれで来たわけでしょう。それを、ことしになって、過去のデータまでさかのぼって直すというのは、改ざんと言うと叱られますから、直すというのは、これはおかしいじゃないですか。(発言する者あり)いやいや、国民は今までずっとこのデータを見せられておったわけですからね。

 だから、きちっとそういうことを、こういうことで、では変えますよということを国民に納得するように話をされるならいいですよ。これは、でも、私がこのデータを今お見せして、恐らく多くの議員の皆さんは、もう御存じだったんですかね……(発言する者あり)だから、ことしは間違っていましたと。今からでもつくり直すことはできるわけですよ、データはあるわけですから。(発言する者あり)いや、大臣に聞いていますから。

金田委員長 静粛にお願いします。

鈴木(克)委員 大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 先生の持っておられる資料もこの資料なんだと思いますので、その資料の下の行、注の二というところを読んでいただくと、大体それは全部書いてありますでしょう。表にはなっていないだけで、そこにはきちんと書いてありますので。いかにも、だましたかのごとく、改ざんしたかのごとく言われますけれども、この部分ではきちんと説明してあるというのは、もう少し字を大きくしろとか、もっとわかりやすくしろと言われる御注文ならわからぬわけではありませんけれども、きちんと説明はしてあるということだけは理解をしておいていただければと存じます。

鈴木(克)委員 最後にしますと言ったので、これぐらいでこのことについては終わっておきますけれども、国民に広く、こういうふうに考え方を変えますからということを、やはりきちっとされるべきだと私は思いますよ。せっかく安倍さんがこうしてアベノミクスで、景気も株も、そして円安も始まってきて、本当に、今から再生をしていこう、日本がしっかりやっていこうという矢先じゃないですか。そのときに、残念ですよ、こういう形で資料が間違っているということは。私はやはり素直にお認めになった方がいいと思います。答弁は要りません。これで終わると言ったんだから。

 それでは、次を申し上げます。

 まず、予算の具体的な中身についてお伺いをしたいんですが、歳出面と税収、入りと出を比べていきたいというふうに思います。

 歳出面の減少要因としては、これも先ほど出ましたけれども、まず想定金利を例年の二%から一・八%に引き下げたことによって、いわゆる国債費が三千億円減少したんですね。これは御案内のとおりです。それからまた、経済危機対応・地域活性化予備費の計上見送りによる九千百億円、約一兆円の減少がある。そうすると、この国債費と予備費で一・二兆円の歳出削減の効果があるわけですよ。

 この削減は、内閣として特別に何かやったとかなんとかじゃないんですね。また、言い方が悪いかもしれませんけれども、これは紙の上で書かれただけなんですよ。そんな具体的にあれをしたわけじゃないんです。パーセント、利息を変えてみたり、それから、予備費をこう直しただけですからね。これがいわゆる歳出面での引き下げ。

 もう一つは、今度、税収について申し上げます。

 二十五年度では四十三・一兆円で、二十四年度の四十二・三兆円から七千五百億円増だ、こういうふうに説明をされております。

 しかし、この税収は税制改正によって確保されたわけじゃないんです。二十五年度税制は、増収どころか、初年度二千三百六十億円の減収要因であると。にもかかわらず、二十五年度に七千五百億円の税収増を見込んでいるのは、いいですか、高目の名目成長率を想定するということで、自然増などで一兆円程度の増収を見込んでいるということであります。これもまたいわゆる紙の上だけなんですね。言い方は悪いかもしれませんけれども、私はそう思います。

 そこで、今言ったことについては、具体的に政府が努力をされてそういう効果が出てきているわけじゃないわけですけれども、これについて、くどいようですが、まだ大臣は二十五年度予算が引き締まった予算だというふうにおっしゃるんですか。その点をお聞かせください。

麻生国務大臣 今、三点御質問だったんだと思います。

 まず、この二十五年度の予算の金利の話につきましては、これは予算の編成をされるときの足元の金利というものが、大体これは十年債ですよ、国債の十年債のものでおおむね一%で推移をしておりますというのが最近の事情であります。平成十年度以降、予算編成直前の金利に対し、翌年度の平均金利は、一番大きく動いて、〇・八%上昇したというのが過去の例です。

 したがいまして、今回は、一%プラス〇・八という形で総合的に設定したものでして、足元の金利水準というのが低下したからであって、これはおまえらが努力したわけじゃないと言われれば、それまでですよ。しかし、いわゆる金利というものが、今もっと下がって、〇・六とか七とか言っていますけれども、とにかくあのときには一%でしたので、それプラス〇・八%にしたというのがこの背景であります。

 続いて、予備費につきましては、これは御存じかと思いますが、この経済予備費というのは麻生内閣のときからできたんですから。それまではありませんから。あのときにリーマン・ショックに合わせてつくったわけであります。それ以後やっておられるんですが、これは経済危機に対応するための予備費でつくってありますが、今回、二十五年度予算におきましては、そのような事態というものは、正直言って、今の状況では少々考えにくいのではないか。それに対応するための補正もきちんとしてありますから。

 そういった意味では、今は九千億を計上までしておく必要はあるであろうかといえば、これはむしろない。予備費はちゃんと別にありますよ、通常の予備費は。そういったものをおいて、意図的にわざと小さく見せようとするために九千億を外したのではないのであって、四年前につくった私から見て、今はそういう状況にはないと判断をさせていただきました。

 それから、次の七千五百億円の話ですが、平成二十五年度の日本経済というのは、世界経済が、御存じのように、アメリカなんかは、土地というか住宅の値段が上がり始めております。給与は上がっていませんけれども。つまり、住宅やら何やらの土地が上がり始めておりますので、そういった意味では、この間の失業率も下がったりして大幅に、二十万人も変わってきております、そういう状況でありますので、国内の需要回復が主導で進んでいくであろうということを考えております。

 したがって、平成二十五年度の経済見通しにおきましても、こういった見方を反映して、経済のいわゆる成長率は、御存じのように名目で二・七ということにさせていただいております。

 したがって、平成二十五年度の税収というものは、平成二十四年度補正後の税収、四十二・六兆円をもとにして考えますと、政府の経済見通しは、平成二十五年度の税制改正後のいわゆる影響を考えた場合は、平成二十四年度補正後の税収から〇・五兆円、約五千億円増加して、四十三兆一千億円になると見込んでおりまして、これは極めて適正な見積もりではないか、私どもとしてはそう考えております。

鈴木(克)委員 今、大臣は、ゆえをもって財政健全化の第一歩なんだ、そして、引き締まった予算なんだ、こうおっしゃっておると思うんですけれども、やはり内容をよく精査していくと、かなり無理をして、つじつま合わせという言い方をするといかぬかもしれませんけれども、私は、そういうような予算になっているのではないかなというふうに思います。

 時間ももうあと、あれですので、最後の質問になろうかと思いますが、金融関係で少し、二、三点お伺いしたかったんですが、一点しか聞けないんじゃないかなというふうに思っています。

 要点を申し上げますと、金融緩和の効果に対する大臣の御所見をお伺いしたい、こういうことなんです。

 二月十八日の参議院の予算委員会で、「金融緩和というのをやらせていただいた小泉内閣のとき、二十兆、三十兆の金融緩和をやりましたけれども、日本銀行がお金を緩和しても日銀当座預金に金がたまるだけで、それから先の実需につながっていかなかったのが歴史だったと思います。」こういうふうに答弁されておるわけですね。

 結局、これを聞くと、いわゆる量的緩和の効果に、大臣はある意味では懐疑的なのかなというふうに私は思ったわけです。これはぜひ、そういうことで御答弁をいただきたいというのが一点。

 もう一点は、量的緩和、金融緩和というものを、どこまでこれが効果があるものなんだというふうに大臣が考えてみえるのか。その二点、お聞かせください。

麻生国務大臣 これは、先ほどの佐々木先生の御質問と基本的なところでかぶるところがあるんだと思いますが。

 日本銀行が量的緩和政策というのをやっておりました小泉内閣の時代、平成十三年から十八年ごろ、このときは、二十兆、二十五兆、三十兆、最高は三十五兆までいったんだと記憶しますけれども、あのとき、バブルが崩壊した後の、いわゆるバランスシート不況という言葉がよく使われるようになりましたけれども、バランスシートの調整がすごい長引いている時期だったと思います。需要不足がずっと続いていたものですから、幾ら金を刷っても、基本的に、市中銀行の日銀当座預金まではその金が行きますけれども、市中銀行から貸し出しという形で市中に金が出回ることはなかったというのが、あのときの歴史です。歴史というほど古くありません、十年以下の話ですから。そういったもので、金融緩和だけではデフレが完全に脱却できるというような有効なものになり得ないというのは、もう十年前にやっていますから。

 そういった意味では、今回は、何としても二本目、三本目の矢というものできちんとしないと、日本銀行だけに責任を負わせて、二%、二%やらないんだといったって、お金だけ刷って、出てきた金が土地だけに回って、土地のバブルにでもなられたら何のこともありませんので。そういった意味では、今回は実体経済において実需というものをつくり出さない限りは、今回も二の舞になりかねない、したがって、三つ同時にやるということが一番肝心なんだ、私どもはそう思っております。

 今回は、前回のああいったことにならないように、二本目、三本目の矢がきっちり作動するように、我々としても、これは主に政府の仕事になろうかと思いますが、政府がやって、その後、民間の実需が出てくるところにつながってくるのは、民間の経済に対する意欲とか気とか、そういったものが非常に大きな要素になろうと思いますが、大胆な金融政策でまずスタートをしていただいておりますので、それに応えていく義務というのが我々にあろう、そう思っております。

金田委員長 時間が参りました。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、終わります。

 金融関係では、インフレが中小企業に及ぼすその副作用とか、それから中小企業の金融円滑化法の後どうなるか、そういうところをお伺いしたかったんですが、また次回に質問させていただきます。

 委員長、ありがとうございました。

金田委員長 以上で、大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

金田委員長 次に、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案並びに松本剛明君外四名提出、消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案

 関税定率法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、所得税法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 政府は、現下の経済情勢等を踏まえ、成長と富の創出の好循環を実現するとともに、社会保障・税一体改革を着実に実施するなどの観点から、国税に関し、個人所得課税、法人課税、資産課税、納税環境整備等について所要の措置を講ずるため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明させていただきます。

 第一に、個人所得課税について、所得税の最高税率の引き上げを行うほか、公社債等に対する課税方式の変更及び損益通算の範囲の拡大、住宅借入金等に係る所得税額控除制度の適用期限の延長及び最大控除可能額の引き上げ等を行おうといたしております。

 第二に、法人課税について、試験研究を行った場合の税額控除制度の控除上限額の引き上げ、生産等設備投資促進税制及び所得拡大促進税制の創設、避難解除区域等に係る税額控除制度の拡充等を行うことといたしております。

 第三に、資産課税について、相続税の基礎控除の引き下げ及び最高税率の引き上げ等の税率構造の見直し並びに贈与税の税率構造の見直し及び相続時精算課税制度の拡充を行うとともに、非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予制度の見直し及び教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の創設等を行うことといたしております。

 第四に、納税環境整備について、延滞税等の見直し等を行うことといたしております。

 第五に、土地の売買等に係る登録免許税の特例等既存の特例について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。

 このほか、附則において、寄附金税制、特定支出控除、交際費課税及び贈与税に関する検討規定を設けることといたしております。

 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 政府は、最近における内外の経済情勢等に対応するため、関税率等について所要の措置を講ずるほか、適正な課税のための規定の整備を図ることとし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につき、御説明を申し上げます。

 第一に、暫定関税率等の適用期限の延長であります。

 平成二十五年三月三十一日に適用期限が到来する暫定関税率等について、その適用期限の延長を行うこととしております。

 第二に、適正な課税のための規定の整備であります。

 輸入貨物の課税標準となる価格の決定に係る規定について明確化を図るほか、延滞税及び還付加算金の割合の特例を見直すとともに、更正等に関する期限に係る規定の整備を行うことといたしております。

 そのほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、所得税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

金田委員長 次に、提出者奥野総一郎君。

    ―――――――――――――

 消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

奥野(総)議員 私は、提出者を代表いたしまして、消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案の趣旨を説明いたします。

 民主党、自民党、公明党は、社会保障・税一体改革の残された課題について、年明け早々より、二十五年度改正の項目も含め協議を行ってまいりました。与党側は、民主党が主張する消費税の引き上げ対策に関し、平成二十五年度改正で一部は対応しつつも、残された課題は平成二十六年度改正に先送りとしたため、対策は不十分なままとなっております。

 消費税引き上げによる国民生活及び経済への影響を考えれば対策は急務であり、残された課題を解決する観点から、本法案を作成いたしました。

 以下、その概要を申し上げます。

 本法案は、税制抜本改革法第七条に定める改革及び関連する諸施策のうち、特に、逆進性対策、医療、住宅、自動車への対策について、その期限、方向性を明確化するものであります。

 第一に、逆進性対策については、所得の少ない世帯ほど家計において消費税として支出する額の所得の額に対する割合が高くなる傾向にある消費税の逆進性に鑑み、平成二十六年度以降本格的な対策導入までの間は簡素な給付措置で対応し、平成二十六年度までに本格的な対策の結論を出すこととしております。

 第二に、医療機関の損税問題については、医療機関等における高額投資にかかる消費税の負担に係る措置等について、平成二十五年末までに結論を出すこととしています。

 第三に、住宅対策については、取引価額が高額であり、消費税率の引き上げに伴う税負担が重いこと、経済への影響が大きいこと等に鑑み、住環境の変化及び住宅に対する需要の変化等も踏まえつつ、中低所得者の負担緩和のための給付措置等について、速やかに対象者、金額等の具体化を行うこととしています。

 第四に、自動車対策については、取引価額が高額であり、消費税率の引き上げに伴う税負担が重いこと、経済への影響が大きいこと等に鑑み、平成二十六年三月末に自動車取得税を廃止する、平成二十六年三月末に自動車重量税の当分の間税率を廃止するとともに、自動車重量税をさらにグリーン化する、都道府県及び市町村の財政に影響を与えないよう措置を講ずることとしています。

 第五に、これまで述べました項目以外で、税制抜本改革法第七条に定められている措置については、できる限り早急に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとすることとしています。

 以上が、本法案の概要であります。

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午後二時十分散会


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