衆議院

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第9号 平成25年5月21日(火曜日)

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平成二十五年五月二十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 金田 勝年君

   理事 伊藤信太郎君 理事 木原 誠二君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 幸三君

   理事 安住  淳君 理事 桜内 文城君

   理事 上田  勇君

      安藤  裕君    伊東 良孝君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      鬼木  誠君    神田 憲次君

      小泉進次郎君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    田野瀬太道君

      田畑  毅君    竹下  亘君

      中山 展宏君    福田 達夫君

      福山  守君    藤井比早之君

      牧島かれん君    松本 洋平君

      御法川信英君    山田 賢司君

      階   猛君    武正 公一君

      古本伸一郎君    前原 誠司君

      西野 弘一君    松田  学君

      三木 圭恵君    山之内 毅君

      岡本 三成君    竹内  譲君

      小池 政就君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        山口 俊一君

   内閣府大臣政務官     島尻安伊子君

   財務大臣政務官      伊東 良孝君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   厚生労働大臣政務官    丸川 珠代君

   農林水産大臣政務官    長島 忠美君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  森本  学君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      岳野万里夫君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            守本 憲弘君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     福田 達夫君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 達夫君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     藤井比早之君

    ―――――――――――――

五月二十日

 消費税増税中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六三〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六三一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七六九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七七四号)

 税務行政の強権化反対、納税者の権利憲章制定に関する請願(笠井亮君紹介)(第六五八号)

 消費税の増税を行わないことに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第六六五号)

 消費税一〇%へのアップ中止に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第七二二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七六〇号)

 消費税増税の中止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七二三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七二六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七三七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七四五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七五三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七五九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七六八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七七三号)

 消費税増税を中止することに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七二四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七二七号)

 消費税増税の中止を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七三八号)

 消費税増税の実施中止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七四四号)

 中小業者の営業を破壊し、景気を悪化させる消費税増税反対に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七五二号)

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七七〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七七五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りをいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長森本学君、監督局長細溝清史君、証券取引等監視委員会事務局長岳野万里夫君、中小企業庁経営支援部長守本憲弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小倉將信君。

小倉委員 自民党、新人の小倉將信でございます。

 本日、財務金融委員会で初めて質問に立たせていただきます。委員長、理事、委員の皆様には、このような機会を与えていただき、大変感謝をいたしております。

 私は、大学卒業後、日本銀行で国際金融や銀行、証券のリスク管理に携わってまいりました。しかしながら、奉職期間はわずか七年半でございまして、今三十一歳の私には、バブルの時期も知らなければ、その後の日本におけます金融危機のときもまだ高校生でございました。その意味では、本日は、大先輩方に胸をおかりするつもりで質問をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。

 さて、今回の法改正は、五つの柱がございます。その内容も、金融市場の信頼回復、金融機能の強化から金融危機対応まで、多岐にわたります。規制強化もあれば規制緩和もあります。三十分の質問時間で、できる限りさまざまな角度から質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、規制緩和の部分、銀行等による議決権保有規制、いわゆる五%ルールの見直しについて質問をさせていただきます。

 銀行による株式保有の制限は、国際的に見ても強化されてまいりました。アメリカでは、大恐慌の後、グラス・スティーガル法が施行され、銀行と証券の業際規制が導入をされました。そして、リーマン・ショックの後は、ドッド・フランク法等の導入により、銀行が融資業務以外の業務に手を広げることを制限する方向で規制が強化をされております。

 そこで、そもそも論として、なぜ銀行が株式を大量に保有することがいけないのか、その理由をお聞かせください。また、今回、このタイミングで銀行の株式保有制限を緩和する理由をあわせてお聞かせいただけますでしょうか。お願い申し上げます。

森本政府参考人 お答えいたします。

 我が国におきます銀行の株式保有は、銀行の業務の健全な運営を確保する観点から、平成十三年のいわゆる株式保有制限法によりまして、自己資本、ティア1の額以下に制限されておるところでございます。

 こうした枠組みのもとで、我が国の銀行の株式保有は着実に減少しておりまして、平成十三年三月のティア1比率一五〇%から、二十四年三月には二六・五%と、大幅な減少を来しておるところでございます。

 今般の金商法の改正によります五%ルールの見直しは、こうした銀行の一般の株式保有を促す趣旨ではございませんで、地域経済に資本性資金の出し手が不足している現状に鑑みまして、事業再生や地域経済の再活性化に資する効果が見込まれる場合に限りまして、柔軟に資本性資金の供給ができるようにするという狙いのものでございます。

小倉委員 御答弁ありがとうございました。

 アベノミクスの第一の矢であります大胆な金融緩和は四月の頭に放たれました。株価も、今一万五千円を超える水準まで上昇しております。資産価格が上昇しただけで実体経済の好転を伴っていないと批判する向きもありましたが、株価を初めとする資産価格の上昇が資産改善効果を通じて個人消費等の拡大をもたらしまして、ことし第一・四半期のGDPはかなり高い水準となっております。第二の矢であります財政出動、第三の矢であります成長戦略の効果もこれから実体経済に及んでくるはずであります。

 ここまでは順調に進んできていると思いますが、このよい流れをさらに持続させるためには、麻生大臣が常々述べられておりますとおり、日銀が供給した資金を銀行が目詰まりさせることなく貸し出すようにならなければならないと私も思っております。そのためにも、今回の株式保有の緩和により少しでも銀行の与信量がふえれば幸いであると思っております。

 しかしながら、株式保有の要件を緩和し過ぎると、銀行が過度にリスクをとってしまう。かといって、要件を絞り過ぎると、制度があっても効果が限定をされてしまう。これらのバランスをとるのが非常に難しいものだと思いますが、一言申し上げておきたいのが、金融業界は、全行右へ倣えで、仕方がないから政府におつき合いをするというような慣行があります。経済原則や企業の実態を無視した形でこの制度が利用されることがないようお願いを申し上げたいと思います。

 先ほどの御答弁にありましたとおり、私も、あくまでも銀行の本業は融資であると思っております。銀行の目きき力を高めて、この数年で大きく減少してしまった中小企業の融資残高をふやしていくことこそ私は王道であると思っておりますが、いかがでしょうか。

 先日の委員会では、金融庁を金融処分庁ではなくて金融育成庁にしなければならないというような麻生大臣の頼もしい答弁もございました。銀行の融資能力を高めていくために政府ができる支援策はありますでしょうか。お聞きしたいと思います。お願いします。

島尻大臣政務官 お答えを申し上げたいと思います。

 今委員が御指摘のように、日本経済がデフレから脱却をして、力強い成長を実現していくために、企業の育成、成長を強力に後押ししていくことが求められていると思っております。そのためには、金融機関が、企業の経営改善、事業再生の支援のみならず、これも今まさに委員が御指摘いただきましたけれども、目きき力を発揮して、適切なリスク管理のもとで新規融資を含む積極的な資金供給というものを行うことが重要であるというふうに考えております。

 こうした観点から、先般、四月三十日でございますけれども、監督方針及び検査の基本方針、これを改正いたしまして、その旨を明記しておりまして、今後の検査監督において重点的に検査することとしております。

 こうした取り組みを通じて、金融機関による新規融資の積極的な取り組みを促してまいりたいと思っております。

小倉委員 頼もしい答弁、どうもありがとうございます。

 ぜひとも、銀行の手を無理やり引っ張るんではなくて、そっと後ろから背中を押してあげるような、そういう政策をお願いしたいというふうに思います。

 ところで、私も麻生大臣と同じように漫画が大好きでありまして、この世界に入る前は、日がな漫画喫茶にこもって漫画を読みふけっていた時期もかつてはございました。

 私の好きな漫画の一つに「ナニワ金融道」という漫画がございまして、消費者金融の社員が主人公でありまして、最近のストーリーの中には、維新の会の共同代表とおぼしき市長も登場されておりまして、私としても非常に興味深く読めるような内容の漫画となっております。

 この漫画の定番の展開が、個人保証で銀行からお金を借りている中小企業の経営者が資金繰りに窮して町金や闇金に手を出して、その結果、最終的に、悪徳業者によって経営者や、それだけじゃなくて、その家族のなけなしの資産を身ぐるみ剥がされてしまう、そういう話でございます。

 このような悲惨な話は漫画の中だけではございません。実際に、私も両親が自営業を営んでおりまして、個人保証つきでお金を借りておりました。随分両親が苦労しているのも、子供ながら、後ろ姿を見てまいりました。

 五月の二日に、中小企業における個人保証等の在り方研究会の報告書が公表されたと思います。個人保証がなければ銀行はさらにお金を貸さなくなってしまうと危惧する声もあるのも事実ですが、一方で、個人保証をとれば債権を回収できるという安易な姿勢が、先ほどおっしゃったような銀行の目きき力の強化を阻んで、また、企業においても、経営者の資産との分離が曖昧になることで企業のガバナンスが緩くなってしまうというような指摘もございます。さらには、「ナニワ金融道」の登場人物のように、企業倒産のたびに悲惨な思いをする家族を生み出し、一方で、経営者の再チャレンジや事業再生の意欲をそいでしまっているのも事実であります。

 さまざまな抵抗もありますでしょうが、ぜひ、麻生大臣のイニシアチブで、中小零細業者の経営者に過度なしわ寄せが行く今の個人保証の体制を見直していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お聞かせ願えますでしょうか。お願いします。

麻生国務大臣 「ナニワ金融道」ね。ほかにも、この「ナニワ金融道」に限らず、こういうサラ金とか裏金融とか闇金融の話を話題にしたものが漫画の外題として上がってくる事態というのは、昔ではちょっと考えられない。時代がやはりそういうものを感じているからああいった漫画が出てくるんだと思います。

 いずれにしても、小倉先生御指摘のとおり、五月の二日、中小企業における個人保証等の在り方研究会において報告書を公表されております。その内容は、もう既に御存じのように、ABLの話やら何やら、ずらっと出ていると思います。

 この報告書において、個人保証に関して、契約するときとか履行するときに当たってのいわゆる解決策の方向が示されているんですが、これは中小企業だけがと言われますけれども、大企業も個人保証をしておられます。大会社の社長さんでもみんな個人保証をしております。失礼ですけれども、あなたの個人保証でウン兆円払えるわけないでしょうがと僕は何回もからかったことがあるぐらいなんですけれども、これはみんなしておられます。銀行の融資を受けられるときに、自分で最後にサインをするときのあの緊張感というのは、これがなくなったら俺は身ぐるみなくなるなという感じでサインをされる。これは、どの大会社の社長も同じ経験をしておられるはずです。

 そういった意味では、日本の場合は、先進国の中では最もこの個人保証の部分が多い国の一つだ、そんなに他国を正確に知っているわけではありませんけれども、そう思っております。

 保証人の負担の軽減といわゆる中小企業経営者に対する円滑な資金調達の確保というのは、ある程度うまいことバランスをとってやらないと、先ほど御指摘になったところになろうと思いますので、これはどの程度にするかというのは、ちょっと今、私一人の結論でおろせる話のものでもありません。

 できる限り早く結論が得られるように、この問題についてのバランスのとり方、個人保証の限度等々につきまして、いわゆる身ぐるみ剥がれて抜かれるものだからとてもできないからというので、家族をまず離散させて何をさせて、離婚の手続をとって何をとってと、ありとあらゆる悲惨な話につながりかねぬということになって、その人が再び立ち上がるチャンスをも失うというようなことになっておりますので、その結果、さらに引き延ばすことになりますものですから、借金がさらにふえるということになっていくような問題は、経営者の判断とはいえ、なかなか難しいのが実態でもありますので、そういった問題に関しまして、このいただきました報告書をもとに、今後さらに検討を進めさせていただきたいと存じます。

小倉委員 大臣の力強いお言葉を賜りまして、非常に心強く思います。

 私も、企業が倒産していながら依然として大邸宅に住んでいるというのもやはり納得できない話でしょうし、大臣がおっしゃったように、企業が倒産してしまえば、例えば、一家六人、四畳一間に住まなければいけない、こういう悲惨な思いをするのもいかがなものかと思いますので、そこはぜひ、皆さんが納得するような形で決着をしていただきたいと思います。

 特に、今、ベンチャー企業の活性化ということで、いかに開業率を高めるかという方向ばかりに議論が進んでおりますが、私は、一方で、閉業率も重要だと思っております。やめたいと思っている企業の経営者がいかにスムーズにやめられるか、足を洗えるか、そういったこともやはり政府としてきちんと考えていかなければいけないというふうに思います。

 続きまして、金融機関の秩序ある処理の枠組みについて質問をさせていただきます。

 この枠組みは、リーマン・ショックの教訓を踏まえて、国際的な議論の中でつくられたものと理解をしております。

 まず、リーマン・ブラザーズの破綻処理のどこに問題があったのか、私なりに整理をさせていただきたいと思います。

 第一に、当時のアメリカのポールソン財務長官は、大き過ぎて潰せない、いわゆるツービッグ・ツーフェールでございますが、そうであることをよいことに、金融機関の経営者がリスクを度外視して放漫経営を行うことに当初は厳しい姿勢で臨んでいたと思います。しかし、その彼が、最初、巨大投資銀行でありますベアー・スターンズが破綻しそうになったときに救ってしまった。そのことで議会や世論から厳しい非難を浴びたため、今度は一転して、リーマン・ブラザーズを潰すという決断を下してしまった。このような監督当局の場当たり的な決断、判断が、市場関係者の疑心暗鬼を生み出して、市場不安を増幅させてしまったという面が私はあると思います。

 第二に、リーマン・ブラザーズを買収しようとした他の金融機関も、同社の資産取引状況が余りに不透明だったため二の足を踏んでしまって、その結果、リーマン・ブラザーズはどこからも助けられることなく破綻することになりました。現在の複雑な金融商品や取引関係のもと、加えて金融危機のもとでは、短期間で市場価格が大きく変動しますので、金融機関の資産状況を短期に把握することは私は困難だと思います。

 第三のポイントが、リーマン・ブラザーズが破綻した後に、その複雑な証券化商品や市場取引を通じて瞬く間に他の金融機関にも損失が膨らんで、監督当局が当初想定し得なかった危機が伝播をして、システミックリスクが米国内に生じてしまった、これも問題だと思います。

 第四に、これは報酬の問題なんですけれども、例えば、リーマン・ブラザーズの当時のファルドCEOは、五億ドルの報酬をそれまで受け取っていました。退職するときには三億ドル、三百億円ですね。このような多額の報酬を受け取っていながら、経営を失敗したときに、アメリカ政府から多額の公的資金を注入してもらった。このような高額な報酬を受け取っていた傲慢なバンカーが放漫経営をしたツケを国民が払ったことに大きな反発があったわけであります。

 以上の四点を踏まえまして、今回の破綻処理スキームが本当に市場型金融危機に対応できるものなのかどうか、四点ほど確認をさせていただきます。

 第一に、救済する金融機関と処理をする金融機関の間で、先ほど申し上げたような監督当局の恣意性が働くことはないんでしょうか。

 第二に、金融機関を処理するに当たって、金融機関の資産状況や取引状況を素早く査定して、債務超過か否かの判断を当局なりその他の金融機関が下すことはできるのでしょうか。

 第三に、複雑な金融機関や市場取引を通じて、リーマン・ショックがそうであったように、金融機関の処理が、想定しない形で他の金融機関に伝播する可能性はないのでしょうか。

 そして、最後の第四点でございますけれども、万が一損失が発生した場合、今回のスキームでは、原則として金融機関等から事後徴収をするとされておりますが、一方で、例外的に政府も補助を行うというような規定もございます。ここで言う政府の補助とは具体的にどのような局面を想定しているのか、お聞かせください。お願いします。

森本政府参考人 お答えいたします。

 一点目の、救済する金融機関と処理する金融機関との問題でございますが、リーマン・ショック当時は、いわゆる金融機関の実効的な破綻処理の枠組みが、各国におきましても、また国際的な合意も存在しなかった、こうしたことが金融危機が拡大する一つの要因になったというふうに考えられております。今般、そうした経験を踏まえまして、G20におきまして、国際的に金融機関の秩序ある処理の枠組みが合意されたわけでございます。

 我が国におきましても、こうした枠組みを踏まえまして、金融機関の秩序ある処理のルールや手続を明確化するわけでございます。そうしたことによりまして、今先生御指摘のような、当局による場当たり的な対応といったものは防ぐことができるのではないかというふうに考えております。

 二点目の、資産、負債を迅速に査定することができるのかといった点につきましては、まず、金融機関みずからのエクスポージャーの把握の上に立ちまして、金融庁の検査監督あるいは預金保険機構の報告徴求等によりまして、迅速に資産査定、確認が可能になるものというふうに考えております。

 三点目の、金融機関の破綻処理を行う場合に、何らかの理由で他の金融機関に危機が伝播してしまう可能性があるのではないかという点につきましては、まず、この破綻処理の眼目であります重要な市場取引等を的確に把握しまして、それを履行させるということが基本でございますが、そのほかにも、例えば、デリバティブ取引等につきまして、早期解約条項というものがございます。この条項が発動されますと、確かに、別の経路で危機が伝播する可能性がございますので、本法案におきましては、そうした条項の法的効果を一時停止することができるといった条文も盛り込んでおりまして、そうしたことによりまして市場における危機の伝播を防ぎ得るものというふうに考えております。

 最後に、費用負担における政府補助の問題でございます。

 この費用負担は、原則として金融機関が事後負担するということになっておりますが、そうした事後負担をかけますと金融機関の財務状況を著しく悪化させまして我が国の金融市場その他の金融システムの著しい混乱を生ずるおそれがあるという例外的な場合には、政府補助が可能ということとさせていただいております。

 以上でございます。

麻生国務大臣 これは、小倉先生、物すごく大事なところだと思います。

 基本的には、国は、財政のバランスとしては国債比率がGDP比の二〇%以下ぐらいであったアイルランドが、市中銀行が、デリバティブとは言わぬけれども、サブプライムローン等々何となくちょっと怪しげなものに目がくらんで、みんな手を出した。その額が物すごいものになって、取りつけ騒ぎが起きた途端に、アイルランドじゅうの銀行が全部破綻。それはアイルランドの国民に多大な迷惑をかけるので、そのアイルランド銀行の負債というか、しょい込んだ分をアイルランド政府が払った。それによって国民の生活は維持した。しかし、アイルランド政府は多額の借金をしょい込んだという形であれを救った。多分、あれが一番極端で、わかりやすい例だと思います。

 日本の場合は、その種の話に今回余りひっかかる人はいなかった。おいしい話に聞こえたんだと思いますよ。しかし、幸いに、日本の銀行は余り英語のできる人がいなかったものだから、あれはひっかからなかったんですよ、正直なことを言うと。それで結果として日本は助かったと思います。今回の二〇〇八年のリーマン・ショックの後の被害というのは、割としては日本が一番少なかったと思います。しかし、アイルランドというのは、国債とGDPの比率からいったら日本よりはるかにいい。ところが、一挙に一国潰れちゃうんですから、財政破綻で。

 そういったようなことになりかねないということがありますので、銀行をある程度監督しながらも、なおかつ、抜けたときには、それはある程度負債を覚悟するということを決めておかないと、国民としては、大丈夫かということになって、金融収縮を促進することになりかねぬというところが私どもの一番心配しているところで、先ほどのような条項がついたと御理解いただければと存じます。

小倉委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 この金融危機対応というのは、私は震災と通ずるところがあると思っておりまして、起きないだろうと思っているときに起きてしまう、起きたときの被害が甚大なので、みんな目を背けてしまうということがあろうかと思います。

 金融危機は常に形を変えてやってくるという言葉もございます。そういう意味では、今回の制度が、次、金融危機が起きたときに実際に役に立たない、あるいは、制度があるがゆえにかえって危機を増幅してしまうことにならないように、これも防災訓練と同じだと思いますけれども、事前にあらゆる局面を想定して、細部を詰めて、きちんとこの制度がワークするように検討していただきたいと思います。

 次に、金融取引税、これはまだ余り関心が出てきていないと思いますけれども、質問させていただきたいと思います。

 EU加盟国十一カ国、この中にフランスとかドイツとかイタリア、スペインといった大きな国も含まれているんですけれども、金融取引税の導入を目指して、ことしの一月より議論を続けております。投機的な金融取引により生じた前回の金融危機を受けて、先ほど大臣がおっしゃったように、政府が多額の公的資金の注入を行う羽目になったために、その穴埋めの財源を金融取引の当の当事者たちから徴収しようというのがこの金融取引税の趣旨です。

 EU域内のことだから日本は関係ないかというと、実際にはそうではございませんで、議論のたたき台となるEUのディレクティブス、指令案を素直に読むと、この取引税は、例えば、邦銀のみずほが日本国内でフランスのルイ・ヴィトンと株取引をする場合、あるいは、みずほ銀行と三井住友銀行、すなわち、邦銀同士が東京でルイ・ヴィトンの社債を売買する際に、いずれもこのヨーロッパの金融取引税が課税されてしまうわけです。さらには、証券会社は、通常、レポ取引と呼ばれる証券貸借取引を繰り返して資金調達をするんですが、悪いことには、取引のたびに課税されてしまうと、一回当たりわずか〇・一%でも、最終的には雪だるま式にこの課税が膨らんでいって、調達コストが物すごく膨らんでしまう。

 そういう意味では、これは、邦銀、邦証にとって対岸の火事ではないと思います。来年の一月にもこの金融取引税を導入予定ということですが、この金融取引税が日本の金融機関や金融市場に不測の損害を与えないようにぜひ注視していただきたいと思いますが、御意見があればお聞かせください。

島尻大臣政務官 お答え申し上げます。

 さすが小倉委員、専門的に、細かく御指摘をいただいているというふうに思っております。

 EUのこの金融取引税構想については、EUの一部諸国、十一カ国が共同で導入を目指しておりまして、現在、EU内において、その内容に関する議論が行われているということは、承知をしております。

 EU事務局が、現在、議論のたたき台として、EU指令案、今御指摘あったものでございますけれども、これを公表しているところでございまして、仮にそのとおりに導入されるようなことがあれば、今委員御指摘のように、EU域外の金融取引にも幅広く影響が及ぶものであるということでありますので、EUにおける今後の議論を十分に注視してまいりたいと思っております。

小倉委員 どうもありがとうございます。

 リーマン・ショック後、国際的な場で活発な議論が行われておりまして、先ほどの破綻処理もそうですけれども、金融規制改革が海外から、国外から日本におりてくる状況が続いております。しかし、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、リーマン・ショックの震源地は日本の金融セクターではありません。でないにもかかわらず、今、欧米の金融規制強化論に日本が追随させられて、結果として、増大した規制対応コストの負担を日本の投資家や消費者が負うということになろうかと思います。これもちょっと納得いかない話だなというふうに思います。

 金融の安定性を高めるために規制改革はしっかりと行うべきだと思いますが、それが日本の実情やあるいは日本のユーザーの実益を反映したものであるとしっかりと国際的に主張していただきたいというふうに思います。

 続きまして、投資信託やJ―REITをめぐる法改正についてお聞かせください。

 貯蓄から投資へ、これは私は非常に重要だと思いますが、さらに重要なのは、貯蓄から長期投資へだというふうに思っております。国民にとって、資産を長期間投資することによって、老後の生活や不測の事態にも備えることができるからです。また、日本の企業にとっても、長期間安定して投資してもらえる資金の存在は非常に頼もしいものでもあるからです。

 しかし、残念ながら、日本の投資信託の現状を見ると、そのようになっておりません。

 日本の証券会社の収益は販売手数料に支えられております。したがって、証券会社は、顧客に一つの投資信託を長期間保有することを勧めるよりも、新商品を次々と目くらましのように販売して、それを顧客に勧めることに躍起になってしまっております。結果として、これは証券会社にとっても損をしている話でありまして、投資信託がこういう小口化をして、そして、その維持コストが増嵩することによって、証券会社自体の首を絞めることにもつながっております。

 こうした販売手数料重視の姿勢が、日本の資産形成や投資信託市場の成熟化の妨げになっていると思いますが、この点、いかがでしょうか。政府としてサポートできる手段はあるのでしょうか。お聞かせください。

島尻大臣政務官 まさに、委員御指摘の貯蓄から投資へ、しかも長期投資へというのが重要なポイントだというふうに思っております。もう十分御理解いただいていると思いますけれども、少額の投資で分散投資、国際投資が可能な投資信託というのは、重要な金融商品だというふうに思っております。

 他方で、御指摘のように、証券会社が次々に新しい投資信託を進める流れというか、そういう文化がありまして、長期投資というものに基づく資産形成が進まないという御指摘があるということも承知をしております。この点、証券会社等による投資家の特性やニーズを踏まえた商品の十分な説明を通して、投資家の理解が進んで、適切な投資判断ができるようになることが一方では重要だというふうに思っております。

 こうした観点を踏まえまして、今般の改正案では、投資家に交付される運用報告書のうち、特に重要な事項をわかりやすく説明する交付運用報告書というものを創設いたしまして、運用内容等についての投資家の理解を一層進めるよう措置させていただく予定でございます。

金田委員長 時間が参りました。

小倉委員 はい、わかりました。

 どうもありがとうございました。

 アベノミクスで金融というと、どうしても金融緩和が前面に出てしまいますが、本丸は金融資本市場の改革で、いかに千五百兆円の個人金融資産をうまく活用して日本の経済の成長につなげるかだと私は思っております。ぜひ、麻生大臣の強力なリーダーシップで、この点について、前に政策を推し進めていただきたいと思います。

 私の質問は以上でございます。どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、このような質問の機会を頂戴いたしまして、委員長以下関係者の皆様、本当にありがとうございます。

 まず初めに、今回の法改正、五本の大きな柱から成っておりますけれども、本日は、時間も限られておりますので、特に、日本の経済の再生のために重要だと思われます四本目の、銀行等によります資本性資金の提供の強化につきまして、中心的に質問をさせていただければと思います。

 まず、この法改正がいつごろ検討が始まったかということをお伺いできればと思います。

 といいますのは、私の認識ですと、本年三月に終了いたしました円滑化法を、マーケットに対する影響を小さくするという目的でこの法改正の検討が始まったという認識を持っておりますけれども、事実関係を教えていただければと思います。

島尻大臣政務官 岡本委員に御答弁申し上げたいと思います。

 五%ルールの見直しについては、事業再生や地域の経済の再活性化に資する効果が見込まれる場合に限って、銀行がより柔軟に資本性資金の供給ができるようにするためのものでございます。もう十分おわかりいただいているというふうに思いますけれども。

 御質問の、今般の見直しに関しましては、円滑化法の期限到来後の対応策として行うものではございませんが、事業再生や地域経済の再活性化に資するという意味では、円滑化法の期限到来後の諸施策と共通した目的を有しているということも考えておりまして、御質問の、いつからということで、円滑化法との関連については今申し上げた次第でございます。

岡本委員 ありがとうございます。

 三月末で円滑化法が切れたわけですけれども、東京商工リサーチによりますと、四月の企業の倒産件数は、前年の同月比で比べますとマイナスの一〇・四%、八百九十九件で、これは六カ月連続で前年同月比を下回っております。したがいまして、政府が金融機関に要請をしておりますように、直ちに返済を迫るようなことがないようにということは実際に運用されているのではないかなというふうに認識しております。

 ただ一方で、返済条件の緩和を受けた企業の倒産の件数も実はふえておりまして、こちらは四月でいいますと四十一件が倒産をしておりまして、こちらも七カ月連続で倒産の件数がじわじわふえている状況でありますけれども、金融庁といたしまして、四月以降の中小企業を取り巻く金融の動向全般に対してどのような御判断をしていらっしゃるか、教えていただければと思います。

島尻大臣政務官 金融庁として、関係省庁が各業界、借り手側に対して行ったヒアリング、あるいは金融機関に対して行ったヒアリングによりますと、金融機関の融資姿勢や貸し付け条件の変更等への対応姿勢について、三月末までと四月以降とで大きな変化は見られないという見解でございます。

 いずれにしても、引き続き関係省庁とも連携しつつ、中小企業の金融等の実態をきめ細やかに把握していきたいというふうに考えております。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

岡本委員 初めにこのような質問から開始をさせていただきましたのは、今回のこの法改正の目的が、地域の経済を活性化するということを主眼に置いているからであります。

 その中で、二つ大きな解決策といたしまして、今回、いわゆるデット・エクイティー・スワップの要件、年限を拡大していくということに加えまして、銀行等の子会社、投資専門会社を通して積極的な投資、資本性の資金を地域に供給していこうということなんだと思うんです。

 一つ目のデット・エクイティー・スワップに関しましては、御存じのように、デット、つまりローンをエクイティー、株式にかえるということですから、金融機関の立場からしますと、ローンを出しているお会社が金利が払えなくなると倒産になりますので、これでは再生ができないということで、資本にかえます。資本にかえますと、配当は払われなくても倒産にはなりませんので、そこで、ある意味延命をしながら支援をしていこうということになっていくわけですけれども、いわゆるそのお会社は倒産間近な会社なわけです。一方で、こういうお会社を助けるのも大切なんですが、地域経済をより活性化させようと思ったら、今後成長していくような新しい芽、スタートアップにも投資をしていくことが非常に重要になってまいります。

 五%ルールで金融機関の経営の健全性を維持していこうという趣旨はよくわかるんですけれども、大臣がこの委員会でもよくおっしゃっているように、いつも不動産担保ばかりのローンであれば目ききの力は養われない。一方で、アセットベースローンのような、本当の目ききの力をつけていくことが金融機関の力もつけるし地域経済も発展していくということになれば、株式を出資していくというのは目ききの上では最も重要な目ききの力が必要になるわけですから、中長期的にその地域金融機関の力を上げて、地域経済を活性化させていくというふうに思うんですね。

 その意味では、今回の、投資子会社を通じた積極的なスタートアップへの投資というのは、法改正としては、十分にその地域金融機関にインセンティブを与えるようなものになっているかどうかということは私疑問に思っているんですが、その効果をどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

島尻大臣政務官 今般の見直しに当たっては、現行規制の枠組みを維持しつつ、事業再生や地域経済活性化等に資する効果が見込まれる場合に、銀行等がより柔軟に資本性資金を供給できるよう規制を見直すこととしているところでございます。これによって、銀行等の健全性を確保しつつ、資本性資金の供給主体としての銀行等の役割が発揮され得る環境が整備されることとなるということを考えております。

 岡本委員御指摘のように、やはり金融機関も目きき力を発揮しつつ、資金を供給しやすい環境というのは、やはりやっていかなければならないというふうに思いますが、大きな変化ではなくて、着実にその方向に進むようなものが望ましいのではないかというふうにも考えております。

麻生国務大臣 これは、岡本先生、おわかりのところなんですが、基本的に、おい、俺、会社をやるから、岡本、金貸せと。大体、日本、ドイツ、韓国、皆そうですよ。おい、麻生、俺、会社やるから、おまえ、ちょっと出資しろと。これはイギリス、フランス、大体そう。この差は多分、戦勝国と敗戦国の違いというのも大きいんですが、基本的に金を持っているか持っていないか、個人金融資産を持っているかなんですよ。

 金を借りた場合においては、これは御存じのように、利益は出さなくても金利さえ払っておけば文句は一応つけられないわけですね。ところが、資本を出した場合は、間違いなく配当をしない限りはそれは払えませんから、そうなってくると、その会社の経営内容を黒にしてもらわない限りは金が返ってこない。

 したがって、大丈夫かということを調べるために、戦勝国というか、アメリカとかイギリスとか、そういったところにおいては公認会計士が発達したんだと思うんですね。日本とかドイツの場合は、金利を払いさえすれば別に配当しなくてもええということになりまして、いかに税金を払わないで金利をということを考えますから、当然税理士が発達したんですよ、日本の場合は。ドイツの場合もそうですけれども。

 そういった歴史がありますので、私どもの国の場合を例に引けば、今島尻政務官からも申し上げましたように、基本的に、会社としては、借金返済が滞らない程度に、金利が払える程度に利益を出すということになる。貸している方は貸している方で、その会社が潰れない程度にとなれば、一番かたいのは、土地がずっと右肩上がりでしたので、土地の担保さえそこそことっておけば間違いなく、土地の値上がりを見込んで、五年、十年すれば必ず借金は取りっぱぐれない。目ききができるわけがありませんよ。

 基本的にそういう背景が目ききを育てなかったのであって、日本に目ききがいないんじゃない、目ききを育てる環境がなかったんだ、私はそう思っています。

岡本委員 大臣、ありがとうございます。

 私、今回の法改正はいいバランス感覚だと思っているんです。つまり、五%ルールの基本的な哲学というのは、銀行が余りにも直接的に株式の出資に積極的になってしまいますと、預金業務を行っている銀行の経営の健全性を損なうリスクがありますし、一方で、加えまして、企業支配につながるようなこともあってもいけないと。ただ、今のような日本の景気の状況を考えますと、特に地域に資本性資金が必要だということで、この両方をバランスをとった上での、いい法改正のバランスだというふうに思っているんです。

 なぜここにこだわっているかといいますと、私、欧米で金融機関で長く働いておりまして、欧米でいわゆる出資をする成功例が多く見られますのは、出資をすると、その会社がもうからないと配当金も株式の上昇もないんですね。一方、ローンだけに終わりますと、極端な言い方をすれば、その会社がもうかる、もうからないは全く関係ないです。ずっと赤字が続いていても、キャッシュフローさえ回っていれば、金利さえ返してもらえれば文句がないので、要は、その会社のことを本気で育てていこうという気持ちになかなかなりづらいという現実もあります。

 ですから、出資をした場合には、ほとんどのケース、あるときはその会社の営業部長となって営業先を一緒に探しに行ったり、あるときは経理部長になって会社の経理を一緒に徹底的に改善したりするので、お金の質が問題なのではなくて、その後にやる経営支援の集中の仕方に全く次元が異なってくるものがあるので、今まで以上に、今この地域経済を活性化させようと思ったときには資本性の資金が必要だというふうに思って、こういう質問をさせていただいています。

 その上で、今回、五%ルールを守っていますので、大きなポイントは、二つ目にあります、投資の専門子会社等を通じて出資をしていくことによってこの地域経済の活性をしようということになっているんですが、実は、日本に金融機関は五百以上あります、地域金融機関だけで五百三十二社ありますけれども、この五百三十二社の中で、投資の子会社を持っているのはたったの五社です。つまり、この法改正を行っても、そのチャンネルを持っていないこの現状の中で、どういうふうにしてこの法改正を実際の景気の拡大につなげていこうというふうに思っていらっしゃるか、御答弁いただければと思います。

麻生国務大臣 これは質問の通告があっておりませんと思いますので、私の方から。

 五社しかないのは確かですから、これがどれくらい育っていくか、また、法改正になりましたので、新たに投資の会社をつくっていこうとするかは、ちょっとこれから先を見ていかぬとわからぬと思います。

 ただ、幸いにして景気が、今、第三の矢が放たれつつあるところですけれども、これがきちっとした形で二、三年して定着していったというものが見え、いわゆる物価上昇率を含めてそういったものになっていったときに、再び景気が上向きになってきたという状況が定着したという前提に立ったときには、銀行系列というか金融にしてみれば、これはこういう会社を持った方がいいなと思えば会社をつくっていくんですよ、そういうところは物すごくはしっこいから。僕は、そこらのところは期待するところなんですけれども。

 いずれにしても、土地神話に頼って土地だけに担保をつけて出しておくという時代ではとてもやっていけなくなってきた、金融機関というのは。この十数年、デフレーション、正確には資産のデフレーションによって痛い目に遭いましたので、銀行側も。

 そういった意味では、やはり銀行もいろいろな意味で、これまでの体質ではなくて、こういった、地域に密着したとかいろいろな形のものを新たに創造していかないと、金融業としての存続にかかわってくるという意識が働いてくれば、今言われたような方向に動き出す可能性はあると思っております。

岡本委員 大臣、ありがとうございます。

 大臣の御意見に全く賛成でございまして、つまり、今回の法改正が、地域金融機関にとってビジネスチャンスだと思っていただけるようなインセンティブを与えていく必要があると思うんです。そういうことを考えれば、投資専門子会社等も創立されていくだろうというふうに思うんですけれども。

 その意味で、何ゆえに今までこのような資本性の投資が少なかったかの理由の一つとして、経営者として見れば、リスクに対してリターンが見合わないというような御判断があったんだと思うんですね。

 今年度の予算の中でも、例えば企業に設備投資を促したいときには、設備投資のための減税を予算で措置しております。また、賃金を上げていただきたいということで、賃金上昇分の一部に関しても法人税の減税をしておるように、やはり政府としてその政策に対して、民間にインセンティブを与えるために、大きなインセンティブを与えるということは非常に重要だというふうに思うんですけれども、投資をする立場の金融機関からすれば、減税を含めましたインセンティブが私は足らないんじゃないかなと思っているんですね。足らないがゆえに今まで十分に投資がなされていなかったわけですので、さらにインセンティブを与えるというようなことを、今後御検討されるようなことはいかがでしょうか。

島尻大臣政務官 委員がおっしゃっておられること、十分理解し、同じ気持ちではあるんですけれども、銀行の方がみずからの経営方針とか経営環境を踏まえて判断をしていくということが、まず第一義的にというか基本であるということは、ぜひ御理解を賜りたいというふうに思っております。

 委員が御指摘のインセンティブなんですけれども、銀行等にインセンティブを与えるということが、銀行側の方が本来望ましくない出資を行うことにつながりかねないということもあって、これは慎重に検討する必要があるということでございまして、一方で、業界からの要望は今のところないというふうに伺っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 業界からの要望がないことが私は問題だと思っているんですが。つまり、本気で取り組んでいないんじゃないかなというふうに危惧をしてしまうんですけれども。

 確かに、望ましくないような、本来であれば出資ができるような状況じゃないところに出資をしてしまうようなリスクを醸成させてしまうことはいけないわけですけれども、まさしくこれはデフレをインフレにしていこうという議論と一緒で、総理のお言葉をかりれば、バンカーからまだ上に乗っていないのに、次、パットを外したらどうしようと思っているのと全く同じことで、まずは出資をしていこうというインセンティブをどんどん与えていくことは本当に重要だというふうに思っております。今のままで十分だというふうには、私は全く思っていません。

 ただ、ここの中で明らかにしたいのは、例えば設備投資減税をしたときに、その中小企業をただ助けるためだけではなくて、その設備を売っている会社であったり、その恩恵が広がる、また、賃金を上げるときの減税というのは、その中小企業だけではなくて、そこで働いていらっしゃる方々に恩恵が行くというように、銀行に与えるインセンティブは銀行を潤しているわけではなくて、その地域の企業がその恩恵を十分に受けていきますので、今でも十分な税制措置等はしていらっしゃるという御判断もあるかもしれませんけれども、さらに何かインセンティブを与えるような知恵がないかどうかというのは継続的に御議論をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、AIJ事案に関する今回の法規制について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 昨年のAIJの事案、ほぼ詐欺に近いような事案だと私は思っておりますけれども、金融庁として、このようなことを事前に防止することができなかったのかどうかというような御議論はされましたでしょうか。

島尻大臣政務官 AIJ事案について、昨年の行政処分に係る一連の対応まで不正の端緒をつかむことができなくて、中小零細企業の役職員等の年金資金が毀損したということは、まことに遺憾だというふうに思っております。

 同事案を受けて、金融庁、証券取引等監視委員会においては、投資一任業者に対する一斉調査や集中検査を行ってきたほか、御審議いただいている金商法の改正法案等々、さまざまな再発防止策を講じさせていただいているところでございます。

岡本委員 今回の法改正の中で、年金運用等に関するさまざまなステークホルダー、関係者が、規制強化というような規制を受けます。実は、今回の改正の中で、投資会社も監査法人も信託銀行も、規制の強化を受けながら、さらに健全なマーケットにするために働いていくわけですけれども、一つだけ規制を受けていないエンティティーがありまして、それは販売証券会社であります。

 今回も、販売証券会社の責任は大きいというふうに私は思っておりまして、欧米の、日本も含めまして、主要な金融機関であれば、販売会社には社内規制でスータビリティーチェックというものがあります。

 スータビリティーチェックというのは、その商品をその投資家に売っていいかということを事前に、販売、勧誘する前に社内で検討するということなんですね。例えば、投資に対して非常に経験豊富な方に対しては少々複雑なものも売っていいけれども、投資に対して余り経験がないところ、またはその資金がリスクにさらされてはいけないような資金であれば、それに見合ったような安全な資産しか売らないというような、販売会社の自主規制があるわけです。

 今回はそこにガバナンスが働いていなかったということも重要な問題だというふうに思いますが、この証券会社に対するスータビリティーのチェックの強化につきまして、御答弁をいただければと思います。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

島尻大臣政務官 金商法におきまして、投資者保護を図る観点から、証券会社を含めた金融商品取引業者等に対して、販売、勧誘行為などに係る行為規制を設けているということは、委員も御承知のことだというふうに思っております。

 当該行為規制の一つといたしまして、いわゆる適合性の原則、御指摘のスータビリティーチェックでございますけれども、これが規定をされておりまして、金融商品取引業に係る皆さんは、顧客の知識、経験、財産の状況等に照らして不適当な勧誘を行ってはならないというふうにされているところでございます。

 この適合性の原則は、いわゆるプロ投資家、先生御指摘の特定投資家についてでございますけれども、適用が除外されることというふうになっておりますけれども、この点についても、AIJ事案を踏まえた今回の改正法案におきまして、厚生年金基金の特定投資家への移行を、運用体制の整備された基金に限定することとしております。

 いずれにいたしましても、こうした再発防止策を着実に実施することによりまして、本件のようなこういった事案の再発防止に努めてまいりたい、こういうふうに思います。

岡本委員 ありがとうございます。

 AIJ事案の投資家サイドからの現実は何だったかというと、実は、あの詐欺にひっかかった大手の企業年金はただ一社だけです。そのほかの投資家というのは中小のものであり、つまり、運用担当者がそれほど経験がなかった方が、残念ながらあの詐欺にひっかかってしまったわけで、ある程度経験がある投資担当者は、その過去のトラックレコードを見たときに、これはおかしいと思ったわけです。こんなこと、普通はあり得ないと思いましたので、やはり相手方に対する、投資家に対する適切なスータビリティーチェックをさらに強化をいただけるように、御検討、運営をいただければと思います。

 続きまして、このAIJの事案の後に、矢継ぎ早にMRIインターナショナルという別の詐欺事件も行われておりまして、御案内のように、千三百億円を日本国内投資家から集めまして、運用とは全く関係のない別のところに資産を流用していたという事案でありますけれども、今回のこの法改正によりまして、MRIインターナショナルのような事案に関しても防ぐことができるような法改正になっているというふうに認識をしていらっしゃるかどうかということに関して、御答弁をお願いいたします。

島尻大臣政務官 本法案は、AIJ事案に鑑みて、年金基金等の資産運用を行う投資運用業者等の不正行為に対する罰則を強化するものでございます。

 他方、先生御指摘のMRIインターナショナルの事案でございますけれども、これは、犯則調査を通じて解明されていく当社の実態等も踏まえつつ、本件の発生原因を分析した上で、再発防止策についてもしっかりと検討していく必要があるというふうに考えておりますので、つまり、今回はこのMRIインターナショナルの事案ではなくて、あくまでもAIJ事案に鑑みたものであるということでございます。

岡本委員 ありがとうございます。

 実は、AIJとMRIインターナショナルの最大の違いは、AIJは日本国内の事案であったということですけれども、MRIインターナショナルの場合は、日本の投資家から集めたお金を海外で運用するというような仕組みになっておりまして、他国籍の中での運用事案であり詐欺事件だったという認識をしております。

 今後、このような事案を未然に防ぐということを考えますと、金融規制当局、例えば海外の、アメリカであればSEC等と金融庁の連携をした規制等が重要になってくるというふうに思うんですけれども、海外の規制当局との連携につきまして、現在どのようにやっていらっしゃるか、今後どのように改善をしていくかということに関して、御答弁をいただければと思います。

麻生国務大臣 今御指摘ありましたように、証券取引等々が国際化していく中にありまして、個別事案への対応に当たっては、情報収集、情報交換の枠組みというものがきちんと活用されないと、迅速に海外の必要な情報が入ってこないということになるんだと思うんです。

 したがいまして、それは不利ということにもなりますので、そういった意味では、監視委員会としては、引き続き、海外の証券規制当局と連携というものを今まで以上に密にして、国境を越えた不正な取引というものに対して、取引の監視というものをさらに強めていく方向でかじを切りつつあるということだと理解しております。

岡本委員 ありがとうございます。

 最後に、きょうの一番初めに申し上げましたように、成長戦略を実現するためには、地域の経済の活性化というものが外せないというふうに思います。その中で、地域金融機関、これはメガバンク等も含めてですけれども、銀行は、銀行法上、免許をもらって活動しているわけですから、当然、権利もある一方で、社会的な責任も負っているというふうに思います。

 ですから、きょうは、インセンティブをもっとということをお伝えいたしましたけれども、一方で、ただもうかる、もうからないだけではなくて、免許の中で働く、その社会的な責任を果たしていくというようなことに関しても、政府として、金融機関または協会に対して御依頼をしていくということも当然の権利だというふうに思うんですね。例えば、今回の新政権になりまして、経済界に対して、賃金を上げてくださいと、これは何も、命令といいますか指示をできる、そういう関係にないわけですけれども、お願いをしていくというのは、当然の政治家の役目だと思います。

 したがいまして、地域金融機関に、今の時点では十分にリスクに対するリターンは見合わないという御判断があったとしても、日本の経済の再建のために力を合わせてやっていきましょう、どうか資本性資金の積極的な提供をお願いしますというような、政府としてのメッセージを今後十分に発していただければと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これまで、金融庁ができてこの方、金融処分庁というような悪評が広まっていた、私はそう理解をしておりますが、少なくとも、私、金融担当になって、政権がかわったこともこれありですけれども、少なくとも金融というものは、これから日本の経済が活性化を取り戻すというときに当たっては、中小企業、零細企業の活力を取り戻すためには、その後ろで押してやるのは金融ですから、金融は、その地域にあります中小零細企業等々と一緒になって、ある程度のリスクをとって育ててやる、金融育成庁というようなイメージに自分たちの気分を取りかえる、マインドをリセットするというような方向で事を進めていかねばならぬ。

 たしか金融庁を担当するということになった最初の日の発言がこれだと思いますけれども、いずれにしても、何となく、これまで金融機関が倒れていくのをいかに倒れないようにするかという状況とは違うと思っておりますので、今申し上げたようなことを最初の日に言って、次第にそういう方向でこの五カ月間動きつつあると思っておりますので、御発言の趣旨をよく理解しておりますと思っております。

岡本委員 ありがとうございました。経済成長のために金融庁の役割は非常に重要だと思いますので、ぜひ前向きな政策の実現をお願いできればと思います。

 以上で終了いたします。ありがとうございました。

金田委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 本日は金商法等の一部を改正する法律案ということですが、私の手元に法案の資料がありますけれども、このように大変分厚いわけです。私も、六年前、国会に参りましたけれども、当時、ちょうど金商法ができるということで、議員になる前は証券会社の社内弁護士で、金商法ができるということで物すごく勉強した記憶があります。また、今回、金商法、このような分厚いものが出てきたわけですけれども、弁護士時代と違ってとてもこれ全部について勉強することはできませんが、特に重点的なところ、重要なところに絞って、幾つかお聞きしたいと思っております。

 お手元にお配りしている資料なんですけれども、まず、資料の一ページ目をごらんになってください。

 今回、インサイダー取引規制を強化するということで、情報伝達・取引推奨行為に対する規制を導入したということですね。今までは、取引をしないで情報を伝達しただけの人については、刑法の教唆犯とか幇助犯が適用される余地はあったということですが、基本的には処罰を免れていたということで今回の規制に至ったわけです。

 ただ、私、気になるのは、まず、この一ページに書いていますけれども、規制内容の2という、真ん中あたりを見ていただきたいんですが、公表前に取引させることにより利益を得させる目的が必要だということと、あと、当該行為により公表前の取引が行われた場合には刑事罰、課徴金の対象になるということですね。目的ということと結果ということ、両方要求されたわけです。ここまで要求するのはちょっと厳格に過ぎるのではないか、教唆犯、幇助犯と大差なくなってしまうのではないかというふうに思います。

 インサイダー取引というのが実際に行われたのに、利益を得させる目的がなかったという弁解を行為者に認めるのは、私は不合理だと思っていまして、かつ、二ページ目にありますように、他国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの動向を見ますと、今回、日本も、バツが三角とか丸になるということなのかもしれませんが、そもそも、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツでは、取引を行った場合に限って処罰するということもありますけれども、基本的には情報伝達行為そのものを処罰するということだと思います。

 こういった他国との比較や、先ほど申し上げました教唆犯、幇助犯だけでなく新たな処罰類型を設けるということであれば、規制の実効性を高めるという意味でも、このような要件は厳格に過ぎるのではないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。

麻生国務大臣 資金調達とか業務提携をする際に、関係者が内部情報を含みます意見交換をするというのは必要なことなのであって、そういった意味では、一切の情報伝達や取引推奨というものを規制した場合においては、企業などの通常の業務とか活動に支障が生じることが出てまいります、一切禁止した場合は。そのために、この情報伝達とか取引推奨に関しまして規制を設けるに当たりましては、目的要件とか取引要件を設けて、不正な情報漏えいのみを処罰の対象とする必要がある、基本的にそういう考え方で臨んでおります。

階委員 私は、仮にその二つの要件を設けるとしましても、実際にもう情報伝達行為があってインサイダー取引が行われてしまった、結果が生じたという場合には、そこから翻って、取引をさせる目的があったというふうに推認されるのが普通であって、不合理な弁解を認めるのはおかしいと思っています。

 ですから、法律の文言はこのようになっているかもしれませんけれども、せっかく教唆犯、幇助犯じゃ足りないということで新たな規制を設けるわけですから、そこは実効性があるように運用していただきたいと思っています。

 大臣の見解を改めてお伺いします。

麻生国務大臣 これは実効を上げないといかぬわけであって、本来の目的は罰則が目的なのではありません。本来の目的は、この種の話の取引をきちんとした規制のもとに置いて、不利益をこうむるという被害を最小限にとどめるというのが本来の目的ですので、実効あらしめないと話にならぬという御指摘は全くそうだと思います。

階委員 ぜひ、法律を生きたものにするようお願いいたします。

 次のテーマに移りますけれども、今回、金融機関の秩序ある処理ということで、危機に瀕した金融機関、あるいは危機に瀕していない金融機関も含めて、マーケットの取引に支障がある場合に、その取引を円滑に進めるために新たな仕組みを設けたということなんですが、先ほどもお話でどなたかおっしゃっていましたけれども、日本の場合、リーマン・ショックのときでもそんなに金融秩序が混乱するようなことはなかったんですね。

 つまり、今回、金融機関の秩序ある処理の枠組みを設けるということなんですが、処理する以前に、日本の場合は金融機関が秩序立って行動していたわけです。

 そういう中で、あえてその処理の場合を想定して枠組みを設けるというのは、かえって、いざとなれば取引の安全が保護されるという安心感から金融機関のリスク管理が甘くなって、金融機関の今までのような秩序ある行動が失われるような気がするんです。

 この点について、大臣いかがですか。

麻生国務大臣 これは、先ほど、岡本さんの御意見だったか御質問だったか、その前の方の御意見だったか忘れましたけれども、基本的に、金融機関が負債を抱えて倒れるというような話ではなくて、いわゆる不良債権問題、正確にはサブプライムローンというのが一番明確な商品名なんでしょうけれども、金融危機でも、従来型の、不良債権を抱えて倒産するというのではなくて、極端なことを言えば、いわゆる全銀行を巻き込んで金融市場が機能不全というような状況になって、市場型の金融危機というものが起きたのが多分あのリーマン・ブラザーズというもののときだったんです。

 御指摘のように、この金融システムの危機が起きたときには、幸いにして日本の場合は、これに巻き込まれてサブプライムローンなんという何となく怪しげな商品を買っている日本の銀行は相対的に少なかった。もうこれは間違いない事実でありまして、あのとき、与謝野担当大臣が、うちはそんなに痛いことはないと言われたのは正しいんだと思います。

 しかし、各国、特にヨーロッパとアメリカの場合は、市場型の金融危機の経験から、明らかになってきたいろいろな問題に対応するために、全部で国際的な金融規制改革の検討が必要なのではないかということから、その一環として、G20、またG7を含めまして、市場型の金融危機に対して対応するようなシステムの安定というものを図る必要があるのではないかということで、今回、金融機関が破綻する事態となった場合にも秩序ある処理を可能とするためという目的で今回の枠組みを設けることになったのであって、これはある程度国際的なものの中であって、日本がどうしてもこの中にいかなきゃならないという点では日本だけはむしろ例外だったかもしれませんけれども、これは国際的に金融市場システムが破壊されるというような事態を防ぐというために、みんなでこれを合意したというように御理解いただければと存じます。

階委員 今まで、比較的日本の金融機関というのはリスク管理をしっかりやってきたわけでありまして、それが今回の法案ができることによって甘くならないようにということを私は考えるわけです。

 その関係で、取引を保護するといいましても、どの程度の範囲で保護するのか、どういった種類の取引を保護するのか。ポンチ絵では「システム上重要な取引」という表現がありますけれども、このシステム上重要な取引の中には、過去の金融危機で問題となった証券化商品、ABSとかクレジット・デフォルト・スワップ、CDSといったものは含まれるかどうか。これは参考人の方で結構です。

森本政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の、重要な市場取引でございますが、これは市場参加者間の信用不安の連鎖を回避するのに必要な取引でございます。

 具体的な範囲といたしましては、金融取引の内容を毀損した場合の第三者に与える影響、金融機関相互の資金関係等を踏まえまして、その時点で判断することとしております。

 なお、この範囲をあらかじめ確定させておきますことは、かえって市場取引におけるモラルハザードを招くおそれがございますので、あらかじめこうした取引は必ず入るといったものではないというふうに考えております。

階委員 リスクの高い取引が入るかどうか、現時点でははっきりすることはできないというわけですけれども、それが果たして法のあり方としていいのかどうか、ちょっと私も今にわかに結論が出ないんですけれども、この点については、もしまた異論があれば述べさせていただきたいと思います。

 もう一つ、金融機関の秩序ある処理と言っていますけれども、その対象金融機関は、預金取扱金融機関だけではなくて証券会社等も含まれます。金融機関として、リスクの高い取引を行って経営破綻した証券会社などにも公的資金が投入されるということは、先ほどの御答弁、どの程度の金融商品を含むのかはっきりしないということですけれども、今申し上げたような、リスクの高い取引を行って経営破綻した証券会社に公的資金が投入されるということもあり得るのではないかと思っています。そうだとすると、従来の公的資金投入というのは一般預金者の保護という大義名分があったわけですけれども、それにかわる大義名分というのが何なのかということも私は考えるわけです。

 そういうリスクの高い取引を行って経営破綻した証券会社等に公的資金が投入されるということについて、どのようにお考えになりますか。

麻生国務大臣 これは、階先生、金融機関の秩序ある処理の枠組みということでありまして、G20の合意なども踏まえた上で、市場型の金融危機に対して、金融システムの安定というものを図っていくために制度を整備するというのを目的としております。

 したがいまして、この枠組みは、金融市場や実体の経済の混乱を防ぐということから、金融機関というものの秩序ある破綻処理というものを行うものでして、基本的に金融機関の救済といったような目的としているわけではありません。

 また、その費用負担ということになりますけれども、これは現在の金融危機対応措置のときと同様に、金融業界と関係業界の事後負担を原則としております、この法律の考え方としては。

階委員 原則は業界の負担だということは私も存じ上げております。

 ただ、最終的に、その金融機関は破綻するかもしれませんけれども、取引を保護するために公的資金が投入される場合もあるわけですね。それが戻ってこないということで、最終的に国民の負担になるということはあり得るのではないですか。

麻生国務大臣 国会答弁で仮定の質問というのはなかなかお答えできないところなんですが、今の話が全部ということになれば、可能性はありますとしかお答えのしようがないと存じます。

階委員 私は、金融機関の秩序ある処理というのを余り範囲を広げ過ぎない方がやはりいいと思っています。

 と申しますのも、個人的なことで恐縮なんですが、私も昔、長銀に勤めていまして、長銀が破綻するときに、公的資金をどこまで導入するかというのが国会でも大議論になったんですね。当時は、金融機関の自己責任だという議論もかなり高かったです。そういう中で、一般預金者の保護ということを考えた場合に、限定的に公的資金の投入を認めましょう、こういう話で進んできたと思います。

 何か、その枠を大きく乗り越えるように公的資金がどんどん投入されるというようなことがあってはならないと思っていまして、そこは大臣もしっかり問題意識を持って取り組んでいただきたいと思います。何か御見解があれば。

麻生国務大臣 これは全く御指摘のとおりだと存じます。

 あのときに、少なくともこの対処方法についていろいろな御説があったんですが、御存じのように、あの中南米の危機のとき、FRBのボルカーという人がやったときに、時間をかけてこの問題を解決したのと同じように、日本もこれはかなり時間をかけてやっていこうという方法でやって、当時、資金の導入を受けた銀行は、あと残り四行を残して全て完済、そのうち三行もほぼ完済のめどが立っております。株が上がったという理由もありますよ。それは本人、銀行だけのせいじゃない、間違いなく、株が上がったから返せるようになったということもありますが。今まだめどが立っていないのは長銀だけぐらいかな。あとはそんなものだと思います。大体そこはいけるようになりつつあるんだと理解をしています。こんなこと言っちゃいかぬのかもしれないけれども、大体、現実問題としてはそれぐらいになりつつある。

 そういった意味で、基本的には、皆さん、いろいろ失敗をされた責任は自分で時間をかけて確実に払ってこられたのであって、政府として、一応、資本増強をした分というのは、これは公的資金を使って資本増強させていただいておりますので、その資本増強した分はほとんど回収が終わりつつあるという段階まで来ました。

 したがって、対応の仕方というのは、本当に自己責任というところをきちっとしておかないと、今言われたような危険というものは常に考えておかねばならぬところだと、私ども行政を担当する者としては心がけておかねばならぬところだと存じます。

階委員 あともう一つだけ、金商法等に関してお伺いします。

 デット・エクイティー・スワップ、先ほども岡本先生が取り上げていましたけれども、これは政府参考人からで結構です。二点お伺いします。

 金融機関がこの規制緩和を利用してデット・エクイティー・スワップを活用してもらえればいいなと私は思っています。

 先ほど麻生大臣からは、日本は資本よりも貸し金を資金調達の柱にしてきたということなんですが、実際には、資本的な貸し金といいますか、根雪とよく言いますけれども、ほとんど滞留していて、期限が来ればロールオーバーして、ずっと貸し金がそのまま貸し付けたままになっている。私は、こういうものについてもデット・エクイティー・スワップにすることによって、経営の規律についてより金融機関がコミットするようになる、あるいは、事業者の側も、資本勘定がふえることによって経営の安定化に資するということだと思っています。

 ただ、そのデット・エクイティー・スワップの活用を進める上で、三年とか五年という期間では短いのではないかという御議論があったり、あるいは、もし三年、五年たっても、エグジット、つまり売却等ができなかった場合にどうなるんだろうかというような不安の声もあります。この点について、参考人の方から、どういう対応を考えているのか、お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 銀行等がデット・エクイティー・スワップに伴いまして取得、保有いたします株式は、従来は保有期間を原則一年としておったところでございます。今般、それを見直しまして、三年から五年といたしますのは、経営再建計画の計画期間は、一般的に、これは金融検査マニュアル等においてもそうなんですが、三年から五年となっております。そうしたことも踏まえまして、原則三年、中小企業においては五年までということとさせていただいております。

 なお、その保有年限内に処分ができない場合でございますが、そうした場合には、やむを得ない事情があるケースにおきましては、当局の承認を受けて保有の延長が認められるといった取り扱いになっております。

階委員 ありがとうございました。

 なお、金商法の今回の法案では、AIJ事案を含めた資産運用規制の見直しという、もう一つ大きな柱があります。この点については、民主党政権のときにAIJの事件が発覚しまして、民主党政権としましても、このような悪質な業者の再発を防ぐためにどういう規制を設けたらいいかということを議論しまして、それを今回法案に反映させていただいたということで、これはありがたいことだと思っています。ぜひ、この点についてもよろしくお願いします。

 次に、法案を離れますけれども、昨今の重要なテーマということで。

 金融円滑化法が三月末で終了したということでありますけれども、今、金融円滑化法終了後のいろいろな対策を進められている。これも民主党政権のときに、去年の秋から取り組んできたものでございまして、金融円滑化法を使っている中小企業、小規模事業者が大体三十万から四十万社あったそうですが、そのうち特に事業再生等が必要な事業者が五万から六万社あって、そういった会社をおおよそ、大、中、小というような規模別に分けて、大のところは地域経済活性化支援機構による支援、それから、中のところは再生支援協議会による支援、小のところは認定支援機関による経営改善計画策定支援ということで進められている。今までのところは大過なくそれが進んでいるようなので、これはいいことだと思っています。

 ただ、私が気になっているのは、金融円滑化法終了後、個人の方はどうなるのかということです。個人の債務者ですね。住宅ローンを借り入れたり、あるいはアパートローンを借りている大家さん、こういったことについて、金融円滑化法が終了した後どのような配慮をしていくのか、これは大臣、お答え願います。

麻生国務大臣 これは、階先生、確かに、中小の場合、個人保証等々を含めまして、これは住宅とか住居等々が、簡単に言えば担保に入っているみたいな形になっておりますので、その個々の借り手の状況というのを考えておかないと、貸し付け条件の変更とか、それから円滑な資金の提供とか、そういったことに努めるべきということは、円滑化法が切れる前も後も、これは変わらずやってもらいますよということでずっと指導をしてきたんですが、この点は、この三月に改正をしております金融検査マニュアルとか監督指針におきましても、この住宅ローンとかいうものはきちんと書いて、徹底をしておるところであります。

 また、私ども財務省でいきますれば、全国の財務局の窓口にいわゆる相談窓口を置きまして、住宅ローンの借り手というのも含めて、いわゆる相談に乗るということをきちんとやらなだめですよということもしておりまして、いわゆる円滑化法の期限到来後というものも、この点が、むしろ企業よりもこっちの方がかなり問題になるということを申し上げて、今までのところはそれなりに動いておると思っております。

階委員 住宅ローンも、最近は変動金利で借りていらっしゃる方が多くて、今のところ、変動金利の基準となる短期のレートというのはそんなに変わっていないようですけれども、これを最近、ちょっと長期金利のマーケットが不安定になっていまして、その変動金利の基準となる短期のレートも上がってきたりして、そうすると、債務者としては返済に窮する、その場合にどういうふうに金融を円滑化していくか、これが本当に重要な課題になる可能性があるので、備えあれば憂いなしですから、そういったことについてどう対応するのかということも、しっかりとお考えをまとめておいていただければと思います。

 別途、また円滑化法の絡みでお尋ねしますけれども、先ほど申し上げましたように、事業者の方は、大中小に分けて、小のところは認定支援機関という、これは弁護士であったり会計士であったり、あるいは地元の金融機関であったり、さまざまなところ、今全国で八千以上あると伺っていますが、そうしたところが経営改善計画の策定を行うということで伺っています。

 ただ、この認定支援機関が、これは中小企業庁の所管なんですけれども、もう一つ重要な役割をしていまして、この間、一千億ですか、ものづくり補助金というのが補正予算で手当てされました、この補助金を申請するに当たって、今申し上げました認定支援機関が事業計画書の妥当性について確認をする、判こを押すということになっています。

 お配りしている資料の、これは手書きの番号でいうと十ページにそのフォーマットがありますけれども、認定支援機関が一番上に判こを押す欄があって、「下記の事業者が作成した事業計画書について、以下のとおり競争力強化に資することが見込まれることを確認します。」ということです。

 例えば、ここの認定支援機関が金融機関であった場合に、ここに判こを押したことによって、新たな責任を負わされるのではないか、例えば、融資を実行したりとか、ものづくり補助金が目的外に使われていないかどうかチェックしたりといった、申請者に対する責任を負うのではないかという懸念もあるようですけれども、この点について、これは中小企業庁の方から、そういう責任を負うのかどうかということについて、御答弁をお願いします。

守本政府参考人 お答え申し上げます。

 認定経営革新等支援機関につきましては、中小企業経営力強化支援法に基づきまして、一定レベル以上の税務、金融等の知識あるいは実務経験を有し、中小企業の経営状況の分析、事業計画の策定、実行支援を行う者として国が認定するものでございます。現在、税理士等の士業を初めとしまして、地域金融機関、商工会、商工会議所等、約八千二百の機関が認定を受けてございます。

 平成二十四年度の補正予算で措置しました、ものづくり補助金の申請に当たりましては、ものづくり中小企業がどのように他社と差別化し競争力を強化するかについての事業計画を提出し、その実効性について、この認定経営革新等支援機関が確認をすることを要件とし、また、その認定支援機関には、事業計画が円滑に実行されるよう、進捗状況の把握、あるいは定期的なフォローアップを求めております。

 しかしながら、御指摘の点につきましては、まず、計画の確認を行っていただく認定支援機関は、金融機関には限定をしておりません。また、補助金の目的外利用といった執行の適正性の確認、これは、会計法上の責任を補助金の採択を行う事務局が負うということになっておりまして、認定支援機関に過度の負担を負わせることは想定をしてございません。

 中小企業庁としては、認定経営革新等支援機関に対して中小企業支援施策の情報提供を積極的にやっておりますけれども、今後とも、御懸念のような誤解を生じないよう、積極的に広報をしていきたいというふうに思ってございます。

階委員 認定支援機関が金融機関である場合にも、そのような重い責任は負うものではないというふうに確認しました。

 次に、消費税についてお尋ねしたいと思います。

 資料六を見てください。これは新聞記事ですけれども、先週、一―三月期のGDPが公表されました。実質は年率三・五%のプラス、名目は年率一・五%のプラス、GDPデフレーターは前年同期比でマイナス一・二%ということになっています。

 他方、昨年、いろいろなすったもんだのあげく成立した抜本改革法の条文、次の十二ページに掲げておりますけれども、十八条の三項、一番下の固まりをごらんになっていただきたいんですが、要するに、八%とか一〇%に引き上げる前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案した上で、執行停止を含む所要の措置を講ずるとなっております。

 ここにあえて物価動向とか名目及び実質の経済成長率ということを書かれているわけですけれども、先ほど申し上げたように、確かに実質では高い伸び率なんですが、名目は低迷して、デフレーターも非常に、まだデフレから脱していないという数字であります。こういう状況が続いたとしても、この十八条三項に照らして消費税は上げられるかどうか、この点についてお答えください。

麻生国務大臣 これはもう階先生よく御存じのように、今回の一体改革というものに関して、いわゆる消費税の引き上げは、増大していく社会保障の整備に対する持続性と安心というものの確保を考えて、国が信任を得るために行うものであって、昨年の八月に、三党合意というのができました抜本改革法におきまして、来年四月に税率を八%に上げるということを決めておられます。これは三党の合意の上で。

 与野党でこの種の法案をやってのけた、少なくとも、先進国で皆悩んでおりますこの問題を、三党、与野党合意でやってのけたというのは、日本の民主主義の成熟度合いを世界に示した冠たる例だ、私どもはそう正しく評価をしております。

 民主党は、この点はもうちょっと、俺たちがやったと言ったっておかしくないだろうと思うし、私どももそれに協力しましたよと言っても、三党合意でやったということは、これはどこの国に行っても、みんな、えっという顔をしますから。言っておきますけれども、これはうちだけがやったんじゃない、みんなでやったんだ、おたくらもやったらどうです、共和党と民主党でというようなことを言うと、みんな反応してこないぐらい、この問題はそれぐらい大きなインパクトがあったものだと思っております。

 いずれにいたしましても、政府としては、これは、民間企業の契約の場合を考えました場合は、国民生活への影響というのがかなり大きなものになりますので、少なくとも引き上げの半年ぐらい前まで、簡単に言えばことしの十月ぐらい前までにきちんとしたことをやらなきゃだめですよといって、附則十八条というのは今言われたところに書いてあるところなんですが。

 それで、特定の経済指標だけじゃありませんよということで、実質だ、名目だ、経済成長率を入れて、物価動向などなど入れておりますが、ほかにもCPIとかいろいろなものがあるんだと思います。こういった種々の経済指標というものを確認した上で、経済状況等というものを総合的に勘案した上で決めるというのが、難しいことが書いてありますが、早い話が、景気がよくならない限り上げないと書いてあるというか、わかりやすく言えばそういうことが書いてあるんだというぐあいに理解しております。

 したがいまして、GDPのデフレーターがマイナスであったらどうするというのが御質問なんだと思いますけれども、特定の経済指標に着目して、この一点でということで答えるというようなことはできないんだと思います。

 いずれにしても、消費税率を引き上げていくことによって、いわゆる社会保障とか年金とか、いろいろなものに対しての安定感、信頼感というものを確保していくためにこの消費税は上げねばならぬ、その上げるためには、少なくともその前の経済なり景気なりというものを確実にいいものにしておかねばできないということだったということで、そのために、この三本の矢を初め、これに全力を挙げているのであります。

 私どもとしては、とにかくこの経済再生というものに全力を挙げて、残りまだ数カ月ありますので、その間に判断する材料をきちんとしたものにそろえる、よく経済活性化に最善の努力を払ってまいりたいと考えております。

階委員 今ごらんになっていただいている十八条の一項で、政府の目標は名目成長率三%で実質成長率は二%、GDPデフレーターはその差額でありますから、プラスの一というのを目標にしているわけですね。マイナス一・二というのはちょっと乖離が大きいのではないかと思いまして、そういうもとでも消費税は引き上げるかどうかということをお尋ねしました。

 ちょっと素朴な疑問として、今の政府の目標は、申し上げましたように、GDPデフレーターでプラスの一%です。過去のデータをさかのぼってみますと、大体GDPデフレーターに一%上乗せすると消費者物価指数、総合となるわけです。ということは、GDPデフレーターの一%というのと消費者物価指数の二%というのはほぼ同値なんですね。

 今、物価目標ということで二%ということを掲げられておりますけれども、なぜあえて物価目標二%。もともとGDPデフレーターでいえば一%という目標があるんだから、それと同値なことを言う必要はないと思うんですけれども、なぜそういう目標をあえて掲げられたのか。物価安定目標を掲げている理由をお答えください。

麻生国務大臣 CPI、消費者物価指数の総合の前年比上昇率で二%の物価安定目標は、これは金融政策の目標として、日本銀行、当時は白川さんだったんですが、白川日本銀行総裁等々の日本銀行がみずから設定されたものでありますが、政府が目指しております望ましい経済成長、名目で三%、実質で二%との整合性を考えていろいろやらせていただいたことは事実です。

 政府が目指す望ましい経済成長とは別に、この二%の目標を設定した理由についてのお尋ねがあっておりましたけれども、これは、諸外国というか、欧米先進国とかOECDとか、そういった先進国等々、OECD加盟国等々が金融政策の目標として設定しております目標がGDPデフレーターではありませんで、いわゆるCPIであるということが、全てとは言いませんよ、多いということが一つ。

 それから、GDPデフレーターは算定とか公表をされる間隔が大体三カ月ぐらいで、ステージが長くなりますので、公表までのタイムラグがありますので、そういった意味からいきますと、政策の運営の基準としては迅速性、スピード感を欠いているんじゃないかな、基準としては不便じゃないかなと思って、CPIの方は大体一月から一月半ぐらいで出てまいりますので、そう思っております。

 また、原油価格等々、輸入物価で上昇した場合にはGDPデフレーターの押し下げ要因ということになりますので、そういった意味にとって、国民にとっての生活実感と離れている面もあるのではないかなどなどの事情を踏まえて、消費者物価指数、総合がターゲットとされているもの、そのように承知をいたしております。

階委員 あと、抜本改革法の一条なんですが、今るる御議論させていただいた消費税引き上げの条件として、第一条の二行目から三行目ぐらいに「社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ経済状況を好転させることを条件として行う税制の抜本的な改革」云々というくだりがあります。

 そこで言っている「不断に行政改革を推進することに一段と注力」するということに関する取り組み状況、それから、今後どのように消費税引き上げまでに取り組んでいくかということについて、大臣、お答えください。

麻生国務大臣 行政改革、これはもう社会保障・税一体改革とともに、どうしてもやり遂げなければならぬ大きな課題と私どもも考えております。このため、第二次安倍内閣におきましては、総理を本部長として、全閣僚から成ります行政改革推進本部を設置して、行政改革を政府一体となって積極的に推進することといたしております。

 例えば行政事業レビュー、これは民主党政権において取り組みを開始されたものだと記憶しますが、現内閣としても、より効果的、効率的な取り組みとなるように見直しを行った上で、無駄の撲滅に向けて着実に実施をいたしているところであります。

 また、独立行政法人改革や特別会計改革につきましても、過去の改革関連法案が昨年末の衆議院解散に伴って廃案となったということを踏まえまして、これまでの取り組みについて、総括、点検等々を行わせていただき、現政権として、引き継ぐべきものはさらに引き継ぎ、さらに取り組みを進めていかねばならぬと思っておりますので、消費税の引き上げに当たりまして公的部門みずからが身を切るという改革を考えておりまして、引き続き、行政改革推進本部を中心として行政改革に取り組んでまいりたい、そのように考えております。

階委員 消費税を引き上げても、せっかく税収がふえた分が無駄遣いされたのでは、穴のあいたバケツに水を注ぐようなものですから、私は、その行政改革をしっかり進めることが国民の信頼を得る最大のよすがになると思っています。

 また、行政改革については別途御質問させていただきたいと思います。

 最後、長島政務官にお越しいただいていますが、今回、経済成長の柱として、先週、安倍総理の方から、農業、農村の所得倍増目標というのが示されました。

 ところで、報道等を見ておりますと、数字として、幾らを幾らにするかというときに、三兆を六兆にするみたいなことがどの新聞にも書かれていますが、この三兆というのは、生産農業所得ということでありまして、安倍総理が言っていたのは、農業、農村の所得ということであります。農業、農村の所得は三兆ではないと思うんですが、農業、農村の所得という意味で考えると、これは現在幾らになっているんでしょうか。

長島大臣政務官 先生の御質問に、私の方からお答えをさせていただきます。

 先生御指摘のとおり、現在、農業、食料関連産業全体の生産額は約百兆円でございます。そのうち農業生産額は約十兆円、農業所得が三兆円になっております。今後、経済成長二%の前提で、十年後の農業生産額は約十二兆円。これから規模拡大、農地集積、水田フル活用、流通合理化、高付加価値化等を図って施策を総動員した上で、農業の生産拡大、高収益化を促進して、農業所得の伸びを約四兆円に見込みたいというふうに思っております。

 一方、六次産業の市場規模は、現在約一兆円でございます。関連所得は約〇・二兆円と見込まれているところでございますので、今後、輸出倍増、付加価値の増大、観光業や医療、福祉産業との連携など、六次産業化を推進し、十年後に六次産業の市場規模が十兆円に拡大をして、関連所得が二兆円になることを実は見込んでおります。

 具体的施策などについては、御指摘の、本日官邸に設置された農林水産業・地域の活力創造本部で検討されることになりますが、それらの施策を総動員して、農業所得四兆円プラス六次産業関連所得二兆円ということで、現在の三兆円から六兆円に倍増したいと見込んでいるところでございます。

階委員 質問の趣旨は、三兆を六兆にふやすということではないのではないかと。三兆というのは生産農業所得ですから、総理が言われていたのは、農業所得だけじゃなくて農業、農村の所得ということですから、三兆ではないのではないかと思うんですね。もっと金額が大きいのではないかと思うんですが、あくまで発射台は三兆だというふうに受けとめてよろしいんでしょうか。

長島大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 先ほど説明をさせていただいた農業所得三兆円プラス〇・二兆円の六次産業化、三・二兆円が農業所得というふうに考えております。

階委員 そうすると、発射台は三・二兆円ですと。

 これを十年かけて六・四兆ぐらいに伸ばすということなんでしょうけれども、十年で所得を倍増するというと、算数でいいますと、年率で七、八%ずつ所得を向上させていかなくちゃいけないということで、なかなか、これ、大変な話なんですけれども。

 私は、そういうことを言うのであれば、所得倍増に向けた具体的な工程表なりつくるべきだと思いますけれども、この点についてはいかがですか。

長島大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 工程表をつくるか否かも含めて、具体的成果などについては、本日付で官邸に設置された農林水産業・地域の活力創造本部で今後検討されることになると思いますが、一方、明確な目標を示すということについて、私も農家の一人として、期待をするとともに、参加意識を高揚させるものだと思っていますし、明確な目標に向かってやはり到達できる可能性を示していくことがまさにこれからの施策だと思っております。

階委員 最後に、一問お聞きします。

 今回の所得倍増という場合に、TPPでもし関税が撤廃された場合に、農業所得、農業関連の所得が減ると思うんですが、そのあたりは見込んでいないと思うんです。その理由は何なのかということと、仮に参加した場合は、所得倍増目標というのは見直すのかということをお聞かせください。

金田委員長 時間が参りましたので、簡潔にお願いします。

長島大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 農業、農村の活性化については、TPPの交渉いかんにかかわらず進めるものでありまして、農業・農村所得倍増目標にはTPPの影響を織り込んでおりません。

 一方、TPP交渉は途中段階にあり、我々は聖域の確保に向けて交渉に全力を挙げることとしているところであります。目標の目標については現在論ずべきではないと考えておるところでございます。

金田委員長 時間が参りました。

階委員 どうもありがとうございました。終わります。

金田委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学でございます。

 きょうは金融商品取引法の議論でございますが、その前に、金融というのはマクロ経済と大変密接な関連がある、アベノミクス三本の矢ということとの絡みで、ちょっと、金融の議論に入る前に、いろいろと大臣のお考えもお聞きしたいと思いまして、御質問させていただきたいと思います。

 デフレの原因というのは、いろいろな諸説があって、大変複合的だと思います。総理は貨幣的現象というふうに答弁なさっているんですが、貨幣的現象といっても、単に日銀がバランスシートを膨らませるということがその解決かというと、恐らく、マネーサプライというのは、むしろ日銀よりも銀行の信用創造とか、そちらの方で貨幣というものは、マネーサプライ、決まってくるという観点が非常に重要だと思うんですが、そういった意味での貨幣的現象というふうに捉えて、デフレ対応を考えていかなきゃならない。そのときに金融機関がきちっとリスクテークするような環境をいかに整備するかというのが恐らく今の金融行政の一番の課題ではないかと、私は認識しております。

 そういった意味で、デフレの原因についていろいろな議論があるんですが、よく見られるのが、九七年のときに消費税を三%から五%に上げて、あれがその後、日本経済をデフレに陥れたんだという議論が巷間よく聞かれて、安倍総理も、野党だったときに、講演会でそのような議論をされていたことを私、記憶しておりますし、また、麻生総理も国会答弁で、消費税を上げたところで税収が減ってしまったというのはかえってよくないという、何となく消費税がその後の不況の原因であったような、これ、いろいろな説があって、なかなか簡単でないのはよくわかっているんですが。

 確かに、GDP成長率が九六年度に実質で二・二%あったのが、消費税を引き上げた九七年度はゼロ成長になって、翌年度、九八年はマイナス成長になっている。これだけ見ると、何となく消費税との因果関係が強いように見えるんですが、この辺の因果関係についての大臣の御認識をちょっとお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 二つ御質問をいただいているんだと思いますが、一点目の方の、なぜデフレが起きたかといえば、私は、これは資産のデフレーションが一番でかかったと思っております。

 端的な例で、株は、当時、一九八九年十二月の末でしたから、二十八日か、あの日に三万八千九百十五円をつけておりました。それが、翌九〇年からだっと落ちた。土地は、まだ九〇年、九一年と上がっておりましたが、九二年を境に土地という名の不動産という資産もどんと落ちました。坪百万円が坪十五万円とか十四万円ぐらいまで落ちたとよく言われます。

 この二つの資産デフレによって、いろいろな形でこれまでとは全く違った経済状況が起き、簡単に言えばデフレーションになるという、戦後初めて、少なくともさきの戦争で負けてこの方初めてのデフレーションというのに直面して、残念ながら、日銀も財務省もマスコミ等々皆経験がありませんでしたので、この対応を全く間違えた、私はそう思っております。その結果、デフレーションによる不況が長引くことになったんだと思っております。

 次に、九七年の話に移りますけれども、この九七年の話は、私は、あの前に起きましたのは、いわゆる金融関係でいきますと、三洋だ、山一だ、先ほどの長銀だ、何かいろいろいっぱい出ましたけれども、あのときに、金融機関がばたばた倒れる、いわゆる金融危機というので国会も開かれた、そういう時代だったと記憶します。

 その時代の中にあって、少なくとも、消費税を上げるということによって、あのときは三を五だから、二%として約五兆円ぐらいの増収を見込んでおったものが、九七年の三税、所得税、法人税、消費税、三税が四十一兆円ありましたものが、九八年度には三十七兆、約四兆円減っておりますので、プラスマイナス九兆円の誤差が出たという事態になりました。

 それは、消費税を上げたことによって消費が落ちたという話は、現象面としては確かにそうありますけれども、そのほかにも、今言われましたように、消費税以外の部分の要素として、先ほど申し上げましたように、山一とか三洋とか北海道拓殖銀行等々の倒産もこれありました。

 また、御存じのように、駆け込み需要がどんと後ろに大きく回った部分もありまして、あの年はたしか輸出も急激に落ちたりなんかして、いろいろなものが重なって起きておりますので、翌月、四―六はともかく七―九はまた上がってきておりますので、消費税だけで全てのマイナスになったという理解をしているわけではありません。いろいろなものが複合的に絡まって、アジア通貨危機が大きかったと思いますけれども、そういったものも含めて不安定なものにさせた結果が、あのような形になっていったように理解をいたしております。

松田委員 お手元に資料をお配りしておりますが、当時のGDPの統計であります。

 今大臣もおっしゃいましたが、消費税を引き上げる直前の九七年一―三月期、これは実質国内民間需要で見るのが私は正しいと思って、輸出とかそういうのはちょっと度外視して見ますと、駆け込み需要もあってその前までそこそこの伸びをしていたのが、確かに、四―六月期に消費税を上げて落ち込んで、その次の七―九月期ですが、実質国内民間需要の季調済み前期比〇・七%、これは年率換算すると二・五から三%の間ぐらいの、そこそこ高い成長軌道を取り戻しているわけですね。

 これを見ますと、消費税の影響というのは、単純に考えればここの時点でもうほとんど終わっていて、逆に、その次の第四・四半期から経済は非常にマイナス、実質国内民間需要はその後ずっとマイナスを続けていく、いわゆる前期比でですね、という悲惨な状況に入っていったわけです。

 このときに、では何が原因だったかというと、今大臣がおっしゃったとおり、大手金融機関の破綻というのがこの年の十一月にあって、そのころからいろいろな経済指標が急速に悪化していく。もちろん、その前からアジア通貨危機がありましたので、多少景気の足を引っ張っていたのですが、やはり、根本的な原因は信用の方にあった。信用の喪失というのを私は当時思っていたんですが、まさに、金融というところから信用がなくなる、マネーが萎縮していくということがこのあたりから急激に起こってきたわけですね。

 そのときに、私もちょうど、当時は大蔵省の機構改革、金融監督庁をつくったりとか、そういう仕事をやった。行政改革というのが、当時、橋本行革が行われていまして、財政、金融分離とか、いろいろなことが大変言われている中で、たしか、私の記憶では、三洋証券の救済スキームとかがあったにもかかわらず、これ以上保護行政をやるということに対して、これはもう行革の雰囲気の中でとてもできないということで、急にあのころから大蔵省の金融行政は百八十度転換して、市場からとがめを受けたものは破綻するしかないんだというような記者会見をされた証券局長もいらっしゃったというふうに記憶しています。

 そういったところから、市場でも不信感が大分増幅して、山一とか北拓なんかも、債務超過で倒産したというよりは、むしろ市場で、今回、法案で市場型と言われていますが、あれに近いような感じで、要するに、そういう金融行政当局に対する不信感とかいろいろな要素があって金融がこういうふうになって、結局、デフレが十五年続いていると言いますけれども、やはり、あの金融危機がきっかけとなって日本がデフレ経済に入っていったというふうに捉えるのが正しいのではないかと思っております。

 そこで、麻生大臣は財務大臣と金融担当大臣を兼務されておられます。時々麻生大臣が財務省を大蔵省と言い間違えていると、ほかの何か国会の場でそういう指摘があったようですが、昔から、財政、金融分離とか一体とか、いろいろな議論はあるんですが、実際、兼務をされて、その辺についてどんなふうな思いを持たれているか、お聞かせいただければと思います。いかがでしょう。

麻生国務大臣 何となく、子供のときから、通産省とか大蔵省とか、こう残っておりますので、ある日突然に経済産業省、経産省とか言われても、なかなか切りかえができていないんだと思って、ちょっと高齢化してきて、頭のかたさの一部かなと思っているんですが。

 今おっしゃいました財金の分離というのは、たしか橋本行革だったかな、あのときに、中央省庁等改革というので、とにかく何でもかんでもみんなくっつけろというので、金融庁は逆に財務省から分離したり、あちらこちら、総務省に郵政省と自治省と行管庁とを一緒にしちゃったり、とにかく、よく理屈がわからぬような形で、当時、政調会長だったか何かしていて、これはおかしいんじゃないですかと随分反対した記憶があるんです。

 いずれにいたしましても、市場の規律と自己責任原則というものを基軸とした、明確なルールに基づく透明な金融行政をやるとかなんとか、そんな理屈だったと思いますけれども、そういった観点から、金融機関の検査監督、また、金融制度の立案企画の、金融行政を担う機能を財政当局から移管していった、そして、最終的に平成十三年に、現在の金融庁とあれと分離されたということになっております。

 私自身の人事について、みずからのコメントをすることはちょっと差し控えたいと思いますが、安倍総理の判断として、とにかく、欧州の財政金融問題などの不透明な国際経済情勢、これはかなり金融が絡んでおります、また、我が国の金融経済の安定性確保の観点、そしてG20、皆これは金融と財政が一緒になっておりますので、そういったものの対応を含めて金融庁と財務省が密接に連携する必要があるということで、時宜にかなったものであるというお話で、いきなり最初、財務省と言われて、次に金融庁ときて、ああ、財務省をやめて金融庁かと思ったら、いや、両方ですと言われたのがちょっと記憶に残っております。

 いずれにしても、職務の遂行に当たりましては、これは各法律が、設置法やら省令やら、いろいろ違っておりますので、関係法令に従って所管官庁の適切な運営というのに努めていかねばならぬと思っておりますが、財政と金融というものは、各国皆、非常に密接につながってきているのが、昨今の傾向ははっきりしているかなと思っております。

松田委員 今さら財金分離論を蒸し返すつもりはございませんが、ただ、今大臣が御答弁されたとおり、財政と金融というのは、やはり、かなり一体でやらないと、国際的な場でも対応できませんし、その思いは、私も、実はずっと個人的には持っているんです。

 ただ、一方で、役所の側から見れば、やはり組織を分けたからこそ、今おっしゃったような透明かつ公正な金融行政というのも、よく考えてみると、昔、大蔵省時代は、裁量行政、行政指導とか言われていたんですが、あれも、当時の法令面でのインフラ、金融のいわゆる監督のインフラというのが必ずしも十分ではなかった、だから裁量をやらざるを得なかったという面は相当あったように思うので、それがだんだんと金融庁ということに整備されてきたというのは、非常に私も分けるという意味のメリットもあると。

 そこをどうしていくかというのはこれからも課題だと思いますが、ただ、金融監督庁をつくった当時の私の感じで言うと、かなり金融機関の財務の健全性、当時の状況もあったんですが、専らそこに余りも焦点が当たり過ぎて、先ほど大臣は金融育成庁とおっしゃいましたが、どうもそれと全然違う方向の行政が結構長くとられてきて、金融機関も相当それによって保守的な態度を強めていって、それが金融危機の後もデフレを長引かせる一つの原因になったんじゃないかという見方もあると思いますが、これについては、大臣はどんな御見解でしょうか。

麻生国務大臣 デフレーションによる不況が長期化したという背景には、やはり長いこと、高度経済成長を含めまして、成長に対する期待というものががたっと低下した。何といったって、これはあしたになればまた下がるかもしれぬと思ったら、なかなか消費が進まないということになるんだと思います。その上では、企業の部分におきましても家計の部分におきましても、資金需要等々いろいろなものが減ってきましたので、先ほど言われましたように、日銀がマネタリーベースのところまでは行ってもマネーサプライのところへは行きませんよというお話をしておられましたけれども、そのとおりになっておるんだと思います。いずれにしても、金融当局としては、その時代時代、時々に応じて、金融機関の健全性の確保と円滑な金融の確保のバランスというのを常にとっておくことを考えておかないといかぬのだと思っております。

 いずれにいたしましても、足元では、日本経済がデフレ不況から脱却して再び力強い成長というものを実現していくためには、金融機関というものが、業況が悪化した企業の経営改善とか再生支援だけじゃなくて、ある程度リスクをとってその上でやらないと、とにかく自分の金融機関が潰れないことだけ考えて、国債だけを持っていて、とにかく低金利でずっと回していく、それは金融機関の本来のあれとしては私はいかがなものかと。

 したがいまして、新規融資を含みますいろいろな資金を積極的に提供していくということが必要なんだと思っておりますので、先般、たしか四月の末だったと思いますが、監督方針及び検査方針というものを改正して、その旨を明記して、今後きちんとその方向で、金融育成庁の方向でかじを切らないとだめですよという話はいたしておりますが、これは徹底しておりていくまでにはまだ少々時間がかかるので、きのうきょうで、いきなり一月やそこらでぽっと変わるなんということは、松田先生、なかなか考えにくいところだとは思います。

 少なくとも方向としてはその方向できちんとして、地方の中小零細企業を育成する方向で、地方の金融機関もその方向で一緒に歩んでいってもらうということをしない限りは、日本の経済成長というものはなかなか難しいんだ、私はそう理解しております。

松田委員 当時、財政、金融分離のときに、大蔵省に破綻処理制度の企画立案だけ残すということで、まさに今回、法改正の中に破綻処理制度の改正というのがあるんですが。

 破綻処理の歴史を振り返ってみますと、最終的には公的資金という話にどうしてもなって、住専のときに六千八百億円の公的資金の話が出たときに、これは住専を救済するためのものだという誤解が相当あって、いやそうじゃなくて、最終的には預金者保護なんだ、住専を潰すけれども、それが預金者保護を害さないようにするためのものなんだという理解がなかなか得られず、ただ、その後、まさに九七年以降の金融危機の中で大変な事態が起こって、ようやくその百倍の、枠としては全部で七十兆円ぐらいですかね、当時そういう計算をした記憶があるんですが、そこでは世論の反発もほとんどなくそういう枠がつくられて、いろいろな話が進んでいくようになったという経緯があったように記憶しております。

 こういった経緯を考えてみますと、やはり事態が悪化する前に一つの大きな枠組みをつくって、例えば、政府が何かするときにはこういう理屈でやるんだということをきちっと国民に対しても説得力のある形で示しておけば、もしかするともっと早くああいう手当てができて、今日のデフレも相当防げたんじゃないかなという思いがしないわけではありません。

 そういう意味で、破綻処理制度をしっかりさせるというのは極めて重要だと思うんですが、当時からいろいろ批判されていた公的資金ということで、結局、国民はほとんど忘れていると思いますが、あれだけ批判されたんですが、血税につながると言われていながら、一体その辺はどうだったのか、全体的にわかりやすく少し整理して、御当局から御説明いただければと思います。

細溝政府参考人 平成四年の四月から二十四年の九月までの間でございます。預金保険機構がいろいろな種類の公的資金を出しておりますが、まず、預金者保護のための金銭贈与といたしまして十八・九兆円でございます。それから資産の買い取りで九・八兆円、資本増強で十二・九兆円、その他六・三兆円。これらはそれぞれ性格が異なっておりますので、単純に合算するのも必ずしも適当ではございませんが、これを単純に足し合わせれば、四十八・一兆円ということになっております。

松田委員 結局、国民負担に結びついたかというと、私は必ずしもそうでないというふうに思っているんですね。これだけのお金が税金投入だというふうに、すぐ単純につながってしまうというのは、その辺の説明ももう少ししっかりした方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

細溝政府参考人 現時点におきまして国民負担として確定しておりますものは、ペイオフコスト超の金銭贈与に用いられました交付国債償還額、約十兆四千億円でございます。それ以外の額につきましては、預金保険機構におきまして、現在、例えば資産の処分等により回収が図られていることから、現時点で最終的な国民の負担額は確定しておりません。

松田委員 今回、金融機関の秩序ある処理の枠組みということで、本質的には、金融にも有事立法というか、有事に対する対応というか、有事法制をしっかりしなきゃいけないという意味で、これは一歩前進しているんだろう。そういう有事の際は、当局とか預金保険機構とかいろいろなところが、平時ではできないような対応を、弾力的に、機動的にできるようにする、恐らくその辺が重要な点なんだろうというふうに理解しております。

 また、セーフティーネットというのをしっかり充実させればさせるほど、より金融自由化とか、あるいはリスクテークもしやすくなる。車の両輪みたいな関係もあるんじゃなかろうか。その意味でも大事なことだと思っております。

 ただ、日本はこれまで、九〇年代以降、長い年月をかけて、大変な経験もしながら、破綻処理法制とかそういったものを整えてきた国であるわけで、そういった意味で、今回、リーマン・ショックの後に、国際的な議論の場で、急にほかの国も慌ててやらなきゃいけないというふうになったんだろうと思いますけれども、日本の今までの経験というか教訓というのがそういった場で十分に生かされて、あるいは日本がその面で指導力を発揮して、こうした方がいいんじゃないかとかいうような、その辺は大体どんな感じだったのか、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 これは松田先生御指摘のとおり、先ほど言われたのであれば、九七年のアジア通貨危機等々、あの前後の話の、金融国会が開かれた、あのころになりましょうけれども、こういった経験を踏まえて、預金保険制度とか、また現在の金融危機対応措置、預金保険法の第百二条か、ああいったようなものを整備してきたんだと思っております。

 その後、リーマン・ショックに端を発しまして、金融危機を受けまして、二〇〇八年の十一月、ワシントンのサミット以降、国際的な金融規制改革に関する議論が数々行われてきて、今でもまだ行われておるんですが、そのような場において、いろいろな提案が出されたときは、日本はもうそれは既に終わっておりますと。えっという顔をされることもよくありましたけれども、少なくとも今回でも同じような場がありますので、そういった意味では、二〇一一年のカンヌ・サミットで、市場型の金融危機に対応するためということで、日本の経験を踏まえつつ、金融機関の実効的な破綻処理というものに対する新たな枠組みが合意されるに至ったというのがその経緯だと思います。

 かなり日本は、この金融の部分については課題先進国的なところというのは、従来は産業の方だったんですけれども、最近は金融の方がむしろその部分を発揮しつつあるのか。これは、日本がよくなっているのか他国が悪くなっているのか、どちらがどうかと言われるとちょっと難しい問題だとは思いますけれども。少なくとも、数多くの先進国が課題を抱えて押している中で、日本の中央銀行初めかなり安定したものになって対応しているのが、国際金融における現状と存じます。

松田委員 大変心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 要するに、システミックリスクが発生するおそれがある場合は金融危機対応会議を開いて、これまでも、それをやることによって、預金保険法の第百二条の第一号措置、資本増強とか、あるいは第二号措置、ペイオフコスト超の資金援助とか、あるいは第三号措置としての一時国有化とか、そういうスキームがあったわけですね。そうすると、結局それを預金取扱金融機関でない保険会社とか証券会社にも広げていくというところが、この市場性、市場型の破綻処理、金融危機に対応するというか、そういった趣旨なのか。従来と本質的にどこが違うのか、ちょっとわかりやすく御説明いただければと思います。

麻生国務大臣 既存のスキームになっております金融危機対応措置、今言われました預金保険法の百二条等々は、これは不良債権型の金融危機、一号とか二号とか、不良債権型の危機に対して銀行の全債務というものを保護するという形から、預金者の信用不安というものによって取りつけ騒ぎが起きるとか、そういった問題を解消して、健全な借り手というものを保護するというものだろうと存じます。

 今回の新たな試みであります金融機関の秩序ある処理の枠組みは、これはリーマン・ショックが多分一番直近のあれだと思いますけれども、これが市場型の金融危機とよく訳されておりますけれども、重要な市場取引というものを履行するに当たりまして、市場参加者の間で連鎖が起きて、オーバーナイトコールが五%もするとか三%もするとか、とてつもないような形になってきておりましたので、そういった金融市場の機能不全というものをきちっと防止するためであって、金融システムの安定を確保するというのが、この法律というか、この市場型の金融危機スキームに対するもとであります。

松田委員 諸外国で、今回、リーマン・ショック後の金融破綻に対して相当の財政負担で解決して、もうこれは懲り懲りだというので、恐らく、民間の間で、関係者の間で負担せよという一つの大きな命題があったんだと思いますので、今回も、スキームでは政府の補助というのが、例外的というか、場合によっては行われ得るような書き方がされているんですが、ただ、基本的に、金融のシステムの安定性というのは、国家がバックにいて、国家の信用で維持されているという面もあるので、この公的資金の問題というのは最終的に避けて通れないということは、もう少しはっきりと言った方がいいんじゃないかという気もしないでもありません。要するに、経済社会の重要なインフラが金融システムですから。それが一点。

 それから、当事者の間で、民間の間で負担するといっても、それぞれ、預金取扱金融機関もあれば証券会社もあれば保険会社もある、そういうところで一体どういう分担のルールがつくれるのかというのもなかなか見えにくいんですが、その辺についてちょっとお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 金融市場において、極端に流動性がない、枯渇しているとかなくなっているというような状況などにおきまして、現在の金融危機対応措置と同様に、預金保険機構が政府保証により調達した資金の貸し付けを行うということにいたしております。

 また、その費用負担につきましては、金融業全体でセーフティーネットを構築してくださいということで、そういう考え方のもとで、現在の金融危機対応措置と同様に、万一損失が生じた場合は原則として金融業界が事後負担してもらいますよと。事後負担を行うということにしておかないと、これは全部ということになると、それは違いますよということであります。

 その上で、この負担によって、金融機関の財務状況というのが、とても負担に耐え切れぬとかいうことで、ごとんと悪化するということになりますと、これは国内の他行にも影響しますので、その場合は日本の金融システムを著しく毀損させて、混乱が生じるおそれがないわけではありません。そういった例外的な場合においては、現在の金融危機対応措置と同様に政府の補助も可能だということを申し上げているので、この保証がないと、なかなかできない。やはり、金があるとわかれば借りに来ないのと同じで、金がないと一斉にわっと来られるのはどこの世界でも同じでありますので。

 このように、今回の仕組みも、原則、金融業で負担してください、事後負担をしていただきますよということになって、最終的にそれが国の信用を背景としておるという点で、少なくとも、そこの部分が最小限な形で抑えられればと思っております。

松田委員 考え方については理解いたしました。

 有事対応をするためには平時の行政というのがしっかり機能しなきゃいけないと思うんですが。その面で見て、私も預金保険機構に出向していたことがあるんですが、例えば、預金保険機構にこれからさらにいろいろなことをやらせるということになっているんですけれども、権限というのが必ずしも十分ではなくて、例えば、金融庁がやっているような金融検査をすることはできないわけですね。

 この間も日本振興銀行の破綻処理がありましたが、あのときの準備においても、破綻に備えていわゆる練習をしなきゃいけないんですが、それに必要な情報というのは、預金保険機構の検査部というのはありますけれども、必ずしも十分集められるものではない。

 そういった面で、もう少し有事に備える、さらに預金保険機構的な役割をいろいろなところに持たせていくのであれば、アメリカのFDICなんというのは相当な権限を持っているといいますけれども、もちろん、機構が大きくなるのがいいというものでもないんですが、その辺、どういう体制整備をしていくべきとお考えか、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 預金保険機構のことでもありますので、私の方から預金保険機構のあれについて申し上げる立場にはないんですが、少なくとも、人員の強化というのがある程度図られないと、新しい仕事がどんどんふえるわ、人は全然ふえないわという形になりますと、これはとても対応がし切れない。もし何か起きたときに、異常事態に対応できない。ちょっと他省庁とかから借りてきてできるような仕事では全くありませんので。税務署とか、こういう金融とか、そういったお金を直接扱う仕事だと思いますので、そういった状況になろうと思います。

 ただ、これは財政事情にもよりますので、なかなか人が出せないんですが、例えば金融庁だけ私らが見ましても、金融庁というのは、御存じのように、財務省と違って八分の一ぐらいしか人数がおりませんので、そういった意味では、緊急事態に対しての人材確保に当たりましては、これはアメリカなんかの場合のあれで見ますと、百万人当たりで五十三人ぐらいおりますけれども、日本の場合は十二、三人しかいないという比率になっておると思います。ただ、こちらの方が人口は三分の一ですから、それはまた少し計算して考えないかぬところだとは思います。

 いずれにしても、緊急事態が起きたときの対応人員ということに関しましては、いささかちょっと人数的には緊急の対応にはなかなか難しいかなという感じは正直な実感がある。他の機構の話ですから、ちょっといかがなものかとは思いますけれども、そんな感じがして見ております。

    〔委員長退席、竹本委員長代理着席〕

松田委員 大臣の貴重な御指摘ということで伺わせていただきました。

 あと、預金保険機構に関して若干言いますと、これは預金保険機構のことだと言われるかもしれませんが、今回の法改正でも、最近どうも、このところ破綻が起こっていないので預金保険機構のお金が余っているというので、預金保険料を返すというか、そういう議論が結構ありまして、法律でも今回そういうようなことがどうもうたわれているようなんです。こういう仕組みをつくるのであれば、将来に備えてむしろ、還付するんじゃなくて、プールした方がいいんじゃないかという気もしないでもありませんし、どうもその辺の理屈がよくわからないというのが一点。

 それから、これは私も預金保険機構にいたときにいつも聞かれては答えに窮していたんですが、外国銀行の支店が預金保険制度の対象になっていないというのももうそろそろ見直すべきだ、どの国もそうなっているというふうに聞いていますので、この二点について大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたように、預金保険料ということにつきましては、二十四年度の預金保険料ということで、これはいろいろ欧州の、アメリカよりは欧州の厳しい財政状況とか金融情勢を考えて、日本の金融システムに及ぼす影響というものもある程度勘案して検討をされたというように理解しております。その結果、預金保険料率というものは実効料率で〇・〇八四を維持するということにはしたものの、年度内に金融機関の破綻がなかった場合は翌年度速やかに〇・〇一四部分を返還します、ただし何か破綻があった場合は返還しませんという形にさせていただいて、二十四年度に関しましては金融機関の破綻がありませんでしたので〇・〇一四部分を返還したものというので、特に問題があると考えているわけではありません。

 もう一点、外国の話が出ましたけれども、これは将来的な制度のあり方としては、外国銀行支店の預金を預金保険の対象とするということは十分考えられるんだと思っております。日本の場合は、ちょっと近隣諸国と違って、自国銀行の力が非常にありますものですから、この種の話はなかなか目に見えてこないところだったと思いますが、ビジネスモデルや内部管理体制が日本とは違って相当程度多様なものにずっと広がっておるのが一点。また、資産の国内保有の一律義務づけなど、健全性の確保のための規制を課すということは、これは国際的な協力というものが要求されますので、そういった現状を踏まえて、少々課題があるかなと考えております。

 したがいまして、預金保険制度への加入につきましては、これは将来の課題としては十分に検討しておかなきゃならぬ問題なのであって、引き続きこの問題を検討すると同時に、今般、預金保険の対象外であることなどによって説明義務を課すことなど、預金者の保護というものを外国銀行の預金者に対してきちんと説明義務を課すということだけは、今の段階としてさせていただいております。

松田委員 長期的方向性をできるだけ早く実現していただければと思っております。

 あと、今回の法改正で、インサイダー取引関連、あるいは、AIJ問題に原因があります、年金に原因があります、いわゆる投資一任業者の問題、いろいろ規制を強化する法改正があるんですが。例えば証券取引等監視委員会を見ましたが、アメリカのSECは人員だけでも三千七百八十五人、日本の証券取引等監視委員会が三百九十二人と、やはりゼロが一つ少ない。これは多分金融検査官もゼロが一つ少ないんじゃないかという状況でありまして、日本の金融全体について、やはり諸外国に比較して、事後チェック型行政という割には、その体制がまだまだ不十分であるということは否めないと思います。

 そういった中で、やはりいろいろな問題が起こっては、ではこれも規制しなきゃいけない、あれもやらなきゃいけないという形で、その都度、では予算要求して、またさらに人員もふやしていくということを繰り返していて、どうも、体制がそもそも不備なのが、いろいろな問題の発生をちゃんと防止できない、場当たり的に何か拡大していくような、そんなイメージがどうしてもあるんですけれども、この検査監視体制というのは、行政改革、日本維新の会も大きな政府には賛成していませんが、ただ、量的に大きな政府、小さな政府と、やはりきちっと機能する政府という議論も一方で必要ではないかと。

 特に、事前指導型行政の方が、恐らく、戦後システムと言われる官民協調の中で、小さな政府で済んでいたと。これをやめるのであれば、それにふさわしいインフラをつくるのであれば、やはり、そういった考え方のチェンジもしていかなきゃいけない面もあろうかと思います。その辺についての大臣のお考えをちょっとお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 これは、小さな政府、大きな政府、いろいろ表現があろうと思いますが、これは片っ方が善で片っ方が悪ということは常にありませんので、規制を緩和してといって、規制を完全に緩和したら、交通規制なしで交通ルールが守れるかと。そんなことはありませんので、やはり交通規制はきちっとせないかぬ等々、規制と緩和の話というのは、常に両方で考えてはいかぬところだと思っております。

 いずれにしても、今後、投資者の保護ということを考えませんと、日本の場合も、フローからストックの部分がどんどんふえてきておりますので、したがいまして、いわゆるお金を投資するという方がふえてくるということになってきますと、いわゆる金融庁の証券取引等監視委員会が持っている役割というのはかなり重要性を増してくるんだと思っております。

 したがいまして、これの強化を図っていくということを、この種の話が起きるたびに皆言っておられますけれども、何となく、肝心の人間の絶対量が不足しているんだと私らはそう思っております。いろいろな意味で、機械化が進む、電子化が進む、IT化が進むといっても、最後のところは人間がやらねばならぬ。しかも、その人間はかなり経験者でないとやれないということになってきておりますので、そういった意味では、人材の登用とか育成とか、また検査とか監督の手法とか、いろいろ手が込んだものにさらになっていくんだと思いますので、そういったものに対する予防の開発等々を図っていくためには、これは最大限の努力をしていかねばならぬと思いますが、いろいろな意味で、今後とも、問題点は幾つかあるのは私どもとしてもよく承知をしているところですが、そういったところも含めて、これは真剣に、人材育成、人材確保というのはかなりの要素を占めるというように私も理解しております。

松田委員 だんだん時間がなくなってきたので。

 お手元の資料をちょっとおめくりいただきますと、二枚目でございますが、これは日銀のいつも出している資金循環統計の中からなんですが、日本のいわゆる個人金融資産、ちょうどこれは、十二年十二月末で千五百四十七兆円。これがよく言われている数字なんですが、ほかにも民間非金融法人、一般政府、それぞれ金融資産を持っているんですが、やはり、日本のこの資金のメーンの流れというのは、家計の現金、預金、八百五十四という数字がありますが、それが金融機関に、預金取扱金融機関に預けられて、それが、一般政府、証券、多分国債ですね、そこに流れていくと。

 国民がせっせと貯蓄をして、そして結局は国債に最終的に運用されている、こういう姿。これは、千五百兆円の金融資産といっても、ポートフォリオのあり方として本当にいいのだろうかと。国債というのは、要するに将来の税金で返す、建設国債というのは将来に資産を残しますけれども、赤字国債というのは何も残さない。将来の富を先食いしているような運用をしていると。これが非常に日本経済を弱くしているというか、ばかばかしい状況を導いているというのが私のかねてからの認識で。

 そこで、よく貯蓄から投資などといいますけれども、次のページは、家計資産構成、日本は現金、預金の比重が高いと。この実態からすると、ほとんど家計の貯蓄が、やはり銀行に行っている。その銀行が、もう少し、何といいますか、この世の中の金融の実態に合わせて生産的な分野に投資していくというのがないと、いつまでたっても国債という非常に非生産的な、将来の富を先食いするような運用に消えてしまうという、この状況からいかに脱却するかというのが、私は日本経済最大の課題だと思うんですが。そういった意味で、AIJ事件の背景にも、実は、予定運用利回りを確保できるような金融メカニズムがなかったとか、例えばベンチャーキャピタルが不足していた、プライベートエクイティーが不足していたとかということがあると思います。

 それから、もう時間がないのでまとめて言いますと、今回、五%ルールについて、弾力化措置はリスクテークという意味で私も大変評価していますけれども、エクイティー型のファイナンスというのが、銀行が直接いろいろな事業にかかわりながらやっていく、単に、第三者的なところに融資して、金利を取るために銀行があるというのではなくて、やはり、事業に自分もかかわっていくということをやっていくというのも時代の流れだと思いまして、そういった意味で、私は、むしろ、グラス・スティーガル法自体の、銀証分離の基本的な枠組み自体もそろそろ議論しなきゃいけないかなという気がしております。

 こういった点を含めて、最後に、大臣にこれからの日本の金融の未来像みたいなことを語っていただきたいと思っております。よろしくお願いします。

麻生国務大臣 今、二つ、三つ、ばたばたと言われましたのであれですけれども、一般論として、ベンチャーキャピタルとかプライベートエクイティーみたいな話のような、いろいろな形の資金供給が出てきて、リスク性のある資金を提供するものが出てくるということは、持続的な経済成長を進めていくためには、先ほど頂戴した、個人金融資産で一千五百兆、現金、預金が五五%というのは、どう考えても、よほど株屋が信用されていないのか何か知りませんけれども、ちょっと極端だなという感じが、正直、どなたでもそう思われるんだと思いますが、この十数年デフレですから、金の力が上がっていますので、少なくとも、物を買うよりは現金を持っていた方が金の価値が上がったということであろうとは存じますけれども。

 こういったようなことでありますので、所管外なので、運用先についてあえて申し上げるということは控えさせていただきますけれども、いずれにいたしましても、私ども金融庁として、経済の成長を促していくためには、金融行政が産業とか零細企業、中小企業の背中を押してやるというような取り組みを強化しない限りはなかなか難しいんだと思うんです。自分のところの債権保全に走られたら、とてもじゃないということだろうと思いますので。

 いずれにいたしましても、利用者保護ということはもちろん大事にしていかねばならぬところだと思いますが、経済の成長に資するというところもあわせて考えていかなきゃならぬので、こういったところのバランスというもの、金融庁としては、金融機関に対してこのバランス感覚を常に持ち続けるように指導するなり対応していかねばならぬと思っております。

    〔竹本委員長代理退席、委員長着席〕

松田委員 どうもありがとうございました。

 以上です。

金田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党の小池政就です。

 先週の金曜日以来の質問になりますけれども、うちの党も今ちょっとばたばたしておりますけれども、あくまで現場は政策についてしっかりと取り組んでいきたいということで、今回は、この分厚い法案に関しまして、最初の審議ということもありますので、主に内容を確認させていただくような質問をさせていただきたいと思います。

 全体的には、法案の方向性というのは、世界標準の流れでいいとは思うんです。ただ、明確になっていないような部分がありまして、結果として、もしかしたら市場の信頼回復とか活性化という目的とは逆の結果を生み出してしまうかもしれないという懸念を持って、今回、確認をさせていただくという観点から、幾つか内容を確認させていただきます。

 まず、インサイダーの事案に関しまして、今回、情報伝達行為でありますとか取引推奨行為が規制の対象になっているわけでありますけれども、では、これは例えばどういった行為、もしくはセールストークというものが犯罪行為に当たるのでしょうか。細かい規定というのは今考えられているのでしょうか。

島尻大臣政務官 御答弁申し上げたいと思います。

 今般の改正法案では、企業の通常の業務、活動に支障が生じないように留意をしながら、不正な情報伝達・取引推奨行為が規制の対象となるように、重要事実の公表前に取引させることにより、利益を得させる目的を持った情報伝達・取引推奨行為を規制対象としているところでございます。

 この目的があるか否かは、行為者の主観的な要素でございまして、行為者自身や関係者の供述、伝達、推奨を行った経緯、状況、取引の資金あるいは取引利益の流れなどに基づいて、総合的に判断されることになるということを考えてございます。

 先生の御指摘でございますが、違反行為となるか否かをあらかじめ定めるガイドラインを設けることについてでございますが、この目的があるか否かは総合的に判断されるものでございまして、先ほどセールストーク云々の御指摘がありましたけれども、そういった行為態様などに基づいて一律の基準を設けることになじまないのではないかということ、仮に一律の基準を設けた場合に、それを逆に悪用した規制の潜脱的行為のおそれがあるということを踏まえますと、慎重に考える必要があるのではないかということでございます。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、企業の通常の業務、活動に支障が生じることのないよう、この法案の趣旨の周知に取り組んでまいりたいと思っております。

小池(政)委員 ガイドラインの話はちょっと後でしようと思っていたんですけれども、答弁をいただきましたので、それを踏まえてという形で質問をさせていただきます。

 ただ、今回、法案にありますような、実際に利益を上げるような意図ということを明確に判定することができるのかというのは、非常に難しいと思うんです。

 これは、裁判の際には主に自白や情況証拠等に頼ることになると思うんですが、例えば、昨年の日興コーディアル証券の件におきまして、情報伝達者の元役員が未公表のTOB情報を漏らしたという案件がありましたけれども、これも結局は、判決は、この元役員が株購入の判断に関連していなくて、また株の売買益も受け取っていないということから、共犯性が否定されております。

 また、このときに和仁亮裕弁護士という方が述べているんですけれども、このインサイダーの件に関しましては、動機の立証が非常に難しいということもあり、インサイダー取引の教唆や幇助で有罪となった例はほとんどないという指摘もあるところであります。

 ということから、動機の判定というのは非常に難しく、今回の改正でも、利益を得させる等の目的をもってということがあるんですけれども、現状は、実際にはなかなか有効に機能しないのではないかなということを考えているんですけれども、いかがでしょうか。

島尻大臣政務官 この目的、機能しないのではないかということでございますが、今般の改正法案では、やはり、一歩進んでというか、一歩踏み込んだ改正ということを金融庁としては考えていることでございまして、繰り返しになりますけれども、今申し上げたようないろいろな、供述だとか、それまでに至った経緯とか状況だとか、それを総合的に判断されることというふうに考えているところでございます。

小池(政)委員 当件は、可能性としては、自白とか情況証拠ということから、もしかしたら冤罪を生み出すような犯罪構成要件になりかねないということだったりとか、また、企業活動が萎縮する可能性があるということで、質問主意書でも少し御確認をさせていただきましたけれども、マーケットからもそういう声が出ている中で、先ほど、悪用につながるのではないかとか一律のガイドラインを決めるのはちょっと難しいという話がありました。

 ただ、こういう件というのは、やはり方向性をある程度明確にしないと、なかなか市場は、うっかりインサイダーという言葉もありますように、それを過度に自分たちで監視してしまうというか、もしくはそれによって萎縮してしまうという可能性がありますので、その件をぜひ検討いただきたいと思います。

 また、公募増資インサイダーにおきましては、例えば情報管理体制につきましても、今回の法案がどのような機能もしくは有効性を持っているかということをお聞かせいただきたいと思うんです。

 例えば、野村証券の事例になります。こちらは、証券取引等監視委員会からチャイニーズ・ウオールが崩れているという指摘がなされ、その後の内部調査によってもその事実を野村証券が認めています。記事でも、野村証券が部ぐるみで情報を漏えいしていた、また、抜け穴は恒常的だったというような分析もあるところで、今回の法改正によって、このような事案というものに果たして対処することができるんでしょうか。

麻生国務大臣 ちょっと、裁判の内容というか、事案の内容を詳しくあれではありませんが、今、証券会社が今般の改正法に基づく規制に仮に明確に違反した場合は、これは、業務改善命令だけではありません。明確に刑事罰と課徴金の対象ということになります。

 まず、刑事罰については、情報を漏えいした行為を行った者に対しては、五年以下の懲役刑の対象となります。また、証券会社自体が責任を認められるという場合には、証券会社も五億円以下の罰金ということを対象といたしております。

 また、証券会社に対する課徴金としては、証券会社が情報受領者から受け取った仲介手数料の三カ月分に相当する額、さらに、増資の引き受け業務にかかわった場合におきましては、上述の仲介手数料の三カ月分に加えて、発行会社から受け取った引受手数料の二分の一に相当する額の課徴金納付命令の対象とするということにいたしております。

小池(政)委員 この件は、野村証券、法人の方は、業法による行政指導によって、業務改善命令という形で指導がされている一方で、個人の方は、たしか罰則が与えられた案件だったと思うんです。これから、このような事案のように、法人が主導なのか、もしくは個人が主導なのかというような規定というものもある程度明確にしていかなければならないと思っておりますので、その点もぜひ検討をお願いいたします。

 次に、いわゆる五%ルール、議決権保有規制の緩和についてでありますけれども、こちらは、資本性の資金の供給者が乏しいということからこのような緩和の形になったという背景を確認させていただきました。

 確かに、今回の規制の緩和というのは、業界内で大変注目されているようであります。といいますのは、日銀の金融緩和で国債が日銀に買われてしまって、また、BIS規制のもとでは海外になかなか打って出ることができない、銀行が貸したくてもなかなか貸せるところがないというような状態の中で今回の緩和が行われたということ、また、肯定的なほかの意見としまして、銀行もOBを送り込むような形になって、当然、その縁でその企業を支援する、また、OBがいるから経営者に物を言うこともできるので企業側が暴走することもないというような意見も聞いております。

 この法案については、金融機関は、本体による事業再生の見込みがある場合、また、投資専門子会社による地域の再活性化に資するという場合が緩和の条件になっておりますけれども、先ほど岡本委員からの指摘にもありましたように、事業再生に関しましては、新陳代謝を妨げるんじゃないかという懸念も確かにあると思いますし、また一方で、地域の再活性化についても、この範囲とか、もしくはその認定をどうするかということによっても非常に恣意性が残ると思われるんですが、この地域の再活性化の件について答弁をお願いいたします。

島尻大臣政務官 今般のこの見直しに当たりましては、現行規制の枠組みを維持しながら事業再生や地域経済活性化等に資する効果が見込まれる場合に、銀行などがより柔軟に資本性資金を供給できるように規制を見直すこととしております。

 事業再生会社については、事業を再構築する必要のある企業に対して、今まさに委員から御指摘がありましたけれども、銀行等が一定の株式を直接保有した上で企業の再生に積極的に関与することが有効になることもあることから、銀行等本体による保有を可能とすることとしたものでございます。

 また、地域経済の面的再生事業会社については、地域経済が混迷する状況においては、個々の企業の再生を図るだけでなくて、地域における事業を面的に捉えて再生していくことが重要でございますが、銀行などのほかに資本性資金の出し手が不足しているという状況にあることから、そうした企業を五%ルールの例外の対象とすることとしたものでございます。

小池(政)委員 例外の対象とするプロセス、その認定のプロセスというのはどうなるんでしょうか。

島尻大臣政務官 五%ルールの例外とする要件、先ほどは例外のその理由を述べさせていただきましたけれども、この要件でございますけれども、今般の見直しにおいて五%ルールの例外となる事業再生会社と地域経済の面的再生事業会社については、銀行等の健全性確保の観点から、それぞれに一定の要件を設けさせていただいております。

 具体的に申し上げますが、銀行等本体が保有する事業再生会社については、裁判所が関与する案件など、銀行等が投資専門子会社を通じて保有する地域経済の面的再生事業会社については、地域経済活性化支援機構と共同で地域活性化ファンドを設立して行う出資や、同機構との業務提携、業務委託等により事業再生計画を策定する案件を要件とすることとしております。

小池(政)委員 今の答弁も要件の内容だったと思うんですけれども。

 それでは、自己判断という形になるんでしょうか。

森本政府参考人 今御答弁申し上げました、五%ルールの例外となります要件は、ある程度客観的なものでございます。そうした要件に合いますものを銀行が五%ルールの例外として出資できる。これについては、金融監督当局として、これを検査監督でチェックしていくということになろうかと思います。

小池(政)委員 それでは、理解としましては、最初に認定されるということではなくて、自己判断で行って、後から確認するというようなプロセスであるということを確認させていただきましたが、それでいいでしょうか。

島尻大臣政務官 それで結構でございます。

小池(政)委員 その件も含めて、ちょっと心配なのは、今のプロセスに加えまして、今回の地域の再活性化という要件が、捉え方によってみれば、何でもありに捉えられてしまうんじゃないか。必ず、企業の活動というのは、雇用であったりとか、もしくはサービスそのものであったりとか、地域に何かしら貢献したり影響していますので、結局、この要件というものが制約に当たらないんじゃないか、そんな見方を今させていただいております。

 それが進んでしまいますと、例えば、もともとこの五%ルールを規定していた銀行が、本業以外の、ほかの事業に進出していって財務とか経営の健全性を損なうということでありますとか、また、銀行が経営を支配していた会社の負債の責任を負って金融危機になってしまったという母体行責任とか、そういうものがまた拡大してしまう可能性があるということも読み取れるんですけれども、そういう問題についての対処、もしくは、それについての対策というものをどう考えていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、小池先生、今回のこの五%ルールに関しまして、基本的に、銀行の一般的な株式保有というものを促進するというのが目的ではありません。

 したがいまして、これは幾つか条件がつけられておりますが、いわゆる事業再生会社については、例えば、裁判所が関与している案件とか、また、地域経済活性化支援機構と共同でとか、また、事業再生計画を作成する案のいわゆる要件としていろいろな業務提携等々というのをやった上で、今回、銀行に対して、一般的な株式保有をするに当たっては、再活性化に資するという効果が見込まれる場合に限ってという条件で資本性資金の供給ができるようにするためのものであります。

 したがいまして、事業再生会社などを五%ルールの例外とする場合でも、一定の保有期間が設けられておりますので、今般の見直しが株式持ち合いの増加ということにつながって先ほど御懸念をしておられるようなことにはなかなかなりにくいと思っております。

 また、銀行による株式の保有につきましては、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律におきまして、自己資本を超える株式の保有が禁止をされておりますので、この規制の枠組みのもとで、銀行の株式保有というものは、現在、この十年ぐらいを見ましても、着実に減少してきておるというようなものが今の流れだと存じております。

小池(政)委員 それでは、ちょっと時間がないので、AIJ関連の中身について質問させていただきます。

 この中身につきましては、今回、特定投資家になるための要件が改正されているところでありますが、この要件について、誰がどうやって認定するかということを明確にした方がいいんじゃないかということを、ちょっと時間がないので、指摘だけをさせていただきます。

 AIJにつきまして、そもそも、厚生年金基金のこれからについても非常に重要な事案だと思うんですけれども、きょうは丸川政務官に来ていただいておりますので、今国会におきましてその法案が今出されているところでありますけれども、確認としまして、厚生年金基金、これから新設は禁止、また、基金自体も将来的にはだんだんと廃止していくというような方向性でいいんでしょうか。

丸川大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、基金の新設は、これは認めないということになります。

 それから、五年を置いて後以降は、責任準備金というのがございますけれども、こうしたものについて、割り込んでいく、財政状況が悪くなっていくという中では、厚生労働大臣等から第三者機関に意見を聞いた上で解散を命じることができるというふうにして、非常に出口の方を厳しくさせていただくことになっております。

小池(政)委員 今審議中だと思いますけれども、我が党も、将来的にはだんだんなくしていくべきだ、廃止していくべきだという修正案も今出させていただこうとしておりますので、ぜひ方向性を示していただけますようにお願いいたします。

 今回のAIJに関連した事案としまして、MRIインターナショナルにつきまして、先ほどもほかの委員から少し指摘がありましたけれども、今回、一千三百億円以上の大半が消失しているのではないかということで、金融庁から登録取り消しがなされております。

 これにつきましては、そもそも、アメリカでも同じようなスキームで事業をしていまして、日本でも、年六から八・五%、非常に高い利回りをうたって投資家からお金を集めていた。

 この件に関して、日本における登録に関して、審査というものは行われなかったんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、基本的には、金融商品取引業の登録申請というものを受けた場合は、金融商品取引法にございます登録拒否要件に該当するかしないかをまず当然調べるんですが、今の御質問は、個別業者に関する具体的な審査内容についてコメントすることは差し控えさせていただきますが、MRIインターナショナルにつきましても、こうした金融商品取引法の手続に基づき審査し、登録したものであります。

小池(政)委員 レクの中では、拒否事項がなければ原則登録はなされるというような説明であったんですけれども、そのとおりでいいんでしょうか。

麻生国務大臣 今回の場合、残念ながらそのとおりです。

小池(政)委員 その際に、例えば、日本中央行政書士事務所でありますとか、行政書士法人などのホームページを検索しまして、ファンドの登録申請の要領などを見ますと、かなり細かく登録前にファンドスキームなどを財務局に口頭で説明する必要があると書かれているんです。実態は、このようなヒアリング等をされているんでしょうか。

細溝政府参考人 あくまでも一般論で申し上げたいと思いますが、金融商品取引法におきまして、人的構成要件というものがございますが、これが登録拒否要件の一つとされております。これは、金融商品取引業者に関する監督指針に基づきまして、業務に関する十分な知識及び経験を有する役職員の確保の状況など、提出された登録申請書により審査を行っているところでございます。

小池(政)委員 先ほどの行政書士法人のホームページからは、「ファンドのスキーム自体に違法性があれば、財務局は受け付けてくれません。それどころか、違法であることは、法律を知らない印象を与えてしまい、修正して書類を持ち込んでも、よい顔をされません。」というようなことがあり、そのようなプロセスがある一方で、このような問題が起きてしまったということを大変懸念しているんですけれども、それは、恐らく、遠因として、審査の質と、また体制の問題というのもあると思うんです。

 質につきましては、このMRIに関連した、例えば産経新聞の四月二十八日の記事の中でも財務局担当者が述べておりますが、「記載漏れや書式があっているかを見るだけで、データを突き合わせて調べる陣容ではない」というようなコメントもありますし、また、今回の担当でありました関東財務局、第二種金融商品取引業の担当がたった四人しかいないというような陣容でもあります。

 先ほどは、松田委員の方からアメリカとの比較ということも述べられましたけれども、イギリスも約四千人近くが取り締まりを行っているという中で、やはり体制としても非常に不十分じゃないかなというような感じがいたしますし、これは、恐らく与党の中にもそのような意見というのは強いと思います。

 例えば、昨年六月十五日の財務金融委員会、今はちょっといらっしゃらないんですけれども、自民党の竹本議員から、証券取引等監視委員会につきまして、「人数が非常に少ない、四百人ぐらいだ。アメリカは数千人いる。これではなかなか手に負えない。そうなんでしょう。だから、人員、スタッフの充実も非常に必要なんです。」というような言葉がこの委員会の中でも発せられております。

 そのような体制また質についてもやはり再考すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、行政経費との兼ね合いもありますので、なかなか簡単な話ではありませんし、傍ら、国家公務員の数を減らすという方向に今ありますときに、なかなかここだけふやすかという話になりますけれども、先ほどの質問にもありましたように、人数だけ集めてくればいいというものじゃありませんし、国税庁とか金融庁とか、こういった特殊な仕事を扱うにはそれなりに人員を養成もしておかなければなりませんので、こういったような事案がこれからもっともっとふえてくるとか、自由化に伴って急激にふえてくるというような事態になれば、それは、それなりの対応を改めて別に考えねばならぬと思っております。

 ただ、今少ない人員だからといって手を抜いているわけではないので、少ない人員でやるから手間がかかっているということは確かで、あれが遅いとかいうのは、そういった反面、我々としては、その種の非難を受けていることも知った上で、今懸命に対応していかねばならぬと思っております。

小池(政)委員 少ない人員で頑張っているという話ですけれども、少ない人員でも、やはり質とそれから審査のプロセスも考えなければいけないというのが今回の事案からも浮き彫りになっておりまして、それをしっかりしないと、先ほどの話でもありました、海外との連携以前の話だと思いますので、そのような取り組みを、やはり規制を強める一方でそこができなければ全く意味がなくなってしまいますので、ぜひまた前向きにこれからも取り組んでいただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 この際、暫時休憩をいたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十八分開議

金田委員長 休憩前に引き続きまして、会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 この提案されている法案の内容は大きく五つあるということですが、それぞれ別の内容なんですよね。破綻処理は預金保険法の改正でありますし、資本性資金の供給強化というのは銀行法の改正でありますし、インサイダーや資金運用規制などは金商法の改正であります。別々に本来なら出すべきものでありまして、十把一からげでこういう形で出すと。

 これは、大臣、何でこんなに一つにしちゃったんですか。

麻生国務大臣 どういう理由で一緒にしたか。皆さん方の審議を促進させるためだと思いますが。

佐々木(憲)委員 つまり、まともな質問をやらずに、すいすい通そうというような意図があったとしたら、これは非常に重大な問題ですよ。こういう重要なものが五つ入っているものを一本にするのが何か効率がいいかのような、これはちょっと問題だと思います。

 何かありますか。

麻生国務大臣 提案理由を説明したときにおられたと思うんですけれども、あのときにきちんと御説明申し上げたと思います。「喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、」と言って、きちんと提案理由のときに説明を申し上げたので、改めて聞かれましたので今のような答弁をさせていただいたのであって、何となく、今のとり方によると、妙にひっかかってこられるなと思いましたけれども、申し上げたとおりであります。

佐々木(憲)委員 この出し方にひっかかったものですから、そういうふうにお聞きしたんです。

 これは、本来なら、きちっと一つ一つ時間をとって質疑をして、内容を吟味した上で、その上で採決をしていくというのが筋だと私は思っております。

 まず、金融機関の秩序ある処理の枠組みという柱であります。

 これまでの金融機関の危機対応のための仕組みとして預金保険というものがありますが、金融機関が負担する保険料で成り立っております。預金保険の責任準備金の残高は今幾らになっているか、確認をしておきたいと思います。

細溝政府参考人 手元に資料がございませんが、約一兆円前後だったと記憶しております。

佐々木(憲)委員 たしか、一兆円を超えているはずですね。

 預金保険の対象となってきたのは、これまでは預金取扱金融機関だったんです。銀行だったわけです。今度の法案では保険会社、証券会社にその対象を広げるということでありますが、そういう理解でよろしいですか。

島尻大臣政務官 はい、そのとおりでございます。

佐々木(憲)委員 預金保険の対象が広がると。つまり、預金者を保護するための金融機関の保険制度が、今度は証券会社の破綻処理、こういうものに使われる、あるいは金融商品取引業者の破綻処理に使われる。

 例えば、証券会社の破綻が仮にあった場合に、なぜ銀行とか預金者が負担しなければいけないのか。その理由はどこにあるんでしょうか。

島尻大臣政務官 金融機関の秩序ある処理に伴う費用負担については、金融市場、金融業全体でセーフティーネットを構築するという制度の基本的な考え方のもとで、万一損失が生じた場合の負担は金融業界の事後負担というものを原則としているところでございますが、これは現在の金融危機対応措置と同様でございます。

 金融機関の具体的な費用負担については、現在の金融危機対応措置における費用負担のあり方を参考にしつつ、今後詳細に検討していくことでございますけれども、制度の基本的考え方を含めて、銀行等からも理解されているものと考えております。

 なお、金融機関の秩序ある処理において、銀行預金に係る預金保険料が充当されることは現時点では想定しておらず、銀行の預金者からも理解されるものと考えております。

佐々木(憲)委員 今回の法案は、預金保険機構による資金調達に政府保証を付すとしておりますが、これはどんな事態を想定しているんでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 金融市場が危機的状況にある中で、預金保険機構が、政府保証によりまして資金調達をし、その措置の対象となっている金融機関に流動性供給や資金援助を行うことによりまして、重要な市場取引等を履行させるということを考えております。こうしたことによりまして、市場を通じた連鎖的な危機の伝播を防ごうとするものでございます。

佐々木(憲)委員 本来なら、金融機関、銀行業界、それから証券とか保険もそうかもしれませんけれども、そういう業界の中で相互扶助的に負担をしてそういう事態に備えるというのが基本でありますが、その中に、この政府保証ということになっていきますと、最終的には税金で面倒を見るということにつながるわけでありまして、私どもは、この仕掛け自体が非常に問題だと思っております。

 それから、流動性供給、資金援助等の措置ということでありますが、これはどういうことを想定していますか。

森本政府参考人 金融機関が債務超過でない場合につきましては、預金保険機構が流動性を供給いたしまして、重要な市場取引を約定どおり履行させるということでございます。

 一方、金融機関が債務超過等である場合は、重要な市場取引等を承継金融機関等に迅速に引き継ぎまして、そこに対しまして資金援助を行うことによりまして、当該債務を履行させる。これによりまして、市場型の金融危機を防ぐということを考えております。

佐々木(憲)委員 これは、財政負担ということも、その中には、最終的にはあり得るということなんでしょうか。

森本政府参考人 こうした措置をとりますと、損失が発生する可能性もあるわけでございます。そうした費用負担につきましては、金融業界によります事後負担、これを原則としております。

 ただし、例外的に、事後負担の徴求をいたしますと金融機関の財務状況を著しく悪化させまして我が国金融市場その他の金融システムの著しい混乱を生ずるおそれがあるといった場合には、現在の危機対応措置でも同様でございますが、政府補助も可能であるというふうにしておるところでございます。

佐々木(憲)委員 これは、これまでも、金融危機以降、我々は、銀行を救済するというような形で税金を投入することになるということで、批判的な態度をとってまいりました。今回のこの措置も、それをさらに拡大するということになっておりまして、非常に内容的に問題だと思っております。

 債務超過でない場合、必要に応じ、資金増強も可能だと。これは、要するに、金融機関に経営不安が若干ある、それが金融システム全体に影響を及ぼす可能性がある、つまり、破綻する前の段階でそういうものを見て資金増強を行うというものでありまして、そうすると、最終的な負担が国の財政の方に回ってくる、そういう危険が私はあると思うんですね。しかも、政府補助を行うことが可能になるとなっております。

 麻生大臣、この政府補助というのは、これは財政負担、税金投入、こう理解してよろしいでしょうか。そういう場合は、当然、予算計上しなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、金融機関の秩序ある処理ということに伴う費用負担につきましては、これは金融業界全体でセーフティーネットを構築するというのが制度の基本的な考え方であります。したがって、現在の金融危機対応措置と同様に、万一損失が生じた場合の負担は、金融業界の事後負担ということが原則ということにいたしております。

 ただ、事後負担の徴収等々によって金融機関の状況というのを著しく悪化させ、日本の金融市場その他金融システムに著しい混乱が生じるおそれがあるといった例外的な場合には、現在の金融危機対応措置と同様に、政府補助も可能としていることであって、かつて、これはアイルランド等々で似たような状態が起きて、国の財政状態は極めてよかったにもかかわらず、銀行の破綻によって全銀行が破綻し、国民のいわゆる預金等々全てという状態になって、アイルランドの政府が介入し、アイルランド政府が財政破綻ということに至るちょっと寸前まで行った、御記憶のとおりであります。

佐々木(憲)委員 これは、予算上はあらかじめ計上するんですか、それとも、そのとき対応するという形になるんでしょうか。

麻生国務大臣 今からあらかじめ、どの銀行がどれだけの破綻を来すであろうということを予想しているわけではございませんので、今のうちから予算を計上しているわけではございません。

佐々木(憲)委員 このスキーム全体として、私は、銀行だけではなくて、さらに証券会社、保険会社、そういうところにまで最終的には財政的な支援も含む支援措置を決めるものであるというふうに思っておりまして、これは、至れり尽くせりであり、ちょっとやり過ぎだと思っております。

 リーマン・ブラザーズから学ぶべきことは、これまでの欧米それから日本、各国で金融緩和が行われて、例えば銀行、証券の分離の原則というものが形骸化する、そういう中であのようなバブルの発生、新しい金融商品の開発等々が行われて、大変な金融危機に陥ったわけであります。

 したがって、投機的な金融市場にならないように、どのようにルール化し、規制するかということが大事でありまして、そちらの方は余り見えてこないんです。ところが、それをやらないで、銀行から保険から証券にまで破綻処理したときの公的資金投入のスキームをつくる、これはちょっと本末転倒だというふうに私は思います。

 次の柱は、インサイダー取引の規制の問題ですけれども、インサイダー情報の伝達・取引推奨行為に対する規制でありますが、他人にインサイダー情報を漏らして取引させて利益を得させることを規制するものだということですが、今回の法改正で果たして効果があるのかどうか。

 処罰の対象となるのは、利益を得させたり損失を回避させる目的をもってインサイダー情報を漏らし、取引の推奨を行うことだということでありますが、そういうことですか。

森本政府参考人 先生御指摘のような、重要事実の公表前に取引をさせることにより利益を得させる目的で情報伝達・取引推奨を行った場合を規制の対象とすることとしております。

佐々木(憲)委員 ということは、単にインサイダー情報を伝達する、あるいは取引推奨行為がある、それだけでは処罰の対象にはならない。

 つまり、目的を持っているかいないか、これが肝要であって、そういう目的を持っていれば刑事罰や課徴金の賦課の対象になる。しかし、目的は、そういうものを証明はできないんだけれども、あるいは目的を持っていないということがあれば、単なるインサイダー情報の伝達・取引推奨行為があったというだけなら処罰の対象にならない、こういうことですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 企業は、資金調達でありますとか事業提携等を行います場合に、内部情報を含む情報について意見交換等を行う必要がございます。

 したがいまして、結果として、伝えられた情報に基づいてインサイダー取引が行われた場合に、さかのぼって今申しましたような正常な企業活動等に基づいて情報伝達が行われた場合も、これは規制の対象だということになりますと、経済活動を阻害するおそれがございますので、そうした観点から、先生御指摘のような目的要件を設けておるところでございます。

佐々木(憲)委員 これはなかなか判断が困難だと思います。

 つまり、利益を得させたり損失を回避させるという目的を持ってやっているのかいないのか、情報を流すときに利益を得させようとして情報を流しているのかどうか、それは主観的なことであります。それは至難のわざじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 利益を得させる目的であるか否かにつきましては、行為者自身の供述のほか、関係者の供述、それから伝達、推奨の相手方との関係、あるいは伝達、推奨を行った経緯、状況、取引資金、取引利益の流れなどに基づきまして、総合的に立証していくものと考えております。

佐々木(憲)委員 それがなかなか難しいんです。

 目的を持ってやっているのかいないのかというのは、その人の主観的な問題であって、それをどのように客観的に評価できるか。本人は、いや、そんな目的はありませんよ、通常の意見交換あるいは情報交換でありまして問題ないんだ、こう言ったときに、いや、そうではない、目的があっただろうと。一体どうやってそれが証明できるか。

 これは、こういう目的を持っているかいないかということで判断をするということになりますと、ほとんど証明が難しい、すり抜けになる可能性があるというふうに思います。

 しかも、その上に、情報伝達・取引推奨が投資判断を促して実際に取引が行われたことを要件とする、こうしているんですね。つまり、インサイダー情報を伝達したり取引を推奨するという行為があっても、実際に取引が行われていなければ処罰の対象にはならない、こういうことですか。

島尻大臣政務官 お答え申し上げます。

 情報伝達・取引推奨行為に対する規制はインサイダー取引の未然防止を図るものであることを踏まえれば、実際にインサイダー取引に結びついた場合に処罰対象とすることが適当だと考えられます。

 また、実際にインサイダー取引に結びつかないような場合にも処罰の対象となり得ることとした場合には、企業の通常の業務、活動に萎縮効果が生じ、本来必要な情報の流通に支障が生じるという指摘も実際にございました。こうしたことから、今般の改正法案では、取引要件を設けることとしたところでございます。

 なお、証券会社に対しては、業規制において未公表の法人関係情報を提供した勧誘が禁止をされておりまして、こうした業規制と今般の規制案がお互いに相まって、適切に違反の抑止が図られていくものと考えております。

佐々木(憲)委員 要するに、企業の活動を萎縮させないというような理由でこういうふうに、私から見ると、これは抜け穴をたくさんつくっていると思わざるを得ないんです。

 このワーキング・グループにおける議論では、情報伝達・取引推奨行為自体が一般投資家の市場に対する信頼を害するものであるということで、取引と結びつかない情報伝達等であっても処罰の対象にすべきである、こういう意見も出ていたはずであります。しかし、この意見は採用されずに、主観的要件あるいは取引要件を規制の条件に盛り込んでいるわけですね。私は、これはほとんどすり抜けになってしまうと思ってしまいます。

 規制が厳密になると証券会社が必要な情報をやりとりできなくなるというような声もあるということでありますが、しかし、処罰の対象は、インサイダー取引をさせる目的で情報を漏らし、情報に基づいた不正取引が実際に起きた場合に限るわけだから、インサイダー情報を流したとしても、あるいは、この取引、どうですか、ぜひやってくださいよ、本人は情報を持っていてそういうことをやっても、ほとんどこれはひっかかってこないんですよ、こんなことになっちゃったら。だから、これは実にざる法でありまして、こんなことじゃどうしようもない、規制強化でも何でもないと私は思います。

 去年十二月二十六日付の読売新聞によると、弁護士の田島優子氏は、「立証のハードルが高く、実効性が乏しい」、こういうふうに指摘をしております。

 ヨーロッパでは、EUの市場行為阻害指令を受けて、各国で職務の適切な遂行を行う場合を除き、インサイダー情報を第三者に漏らす行為自体が禁じられているわけであります。また、証券会社等がインサイダー情報に基づいて取引推奨を行うことも禁じられております。アメリカでは、情報伝達者がインサイダー取引の共犯として処罰される可能性がある。そのほか、証券取引委員会の公正開示規制によって、上場会社やその経営者がインサイダー情報を証券会社のアナリストや機関投資家のファンドマネジャーに漏らす行為が禁じられております。

 これが欧米の実態ではないかと思いますが、いかがですか。

島尻大臣政務官 欧州では、規制上、情報受領者が取引を行ったか否かにかかわらず、情報伝達・取引推奨行為を規制対象としてはおりますが、フランスやドイツにおいては、実務上、情報受領者が取引を行った場合に限り制裁等が行われているものと承知をしております。なお、米国では、情報受領者が取引を行った場合に限り情報伝達行為の規制対象になるものと承知をしております。

佐々木(憲)委員 日本よりもきついということは今の答弁でも明確でありまして、何で日本だけがこんなに穴だらけにしちゃうのかなと思います。

 次に、AIJ事案を踏まえた資産運用規制の見直しについてお聞きします。

 AIJ事件というのは、デリバティブ取引等における運用の失敗を隠して、虚偽の基準価額あるいは運用利回りを報告して、順調な運用を行っているんだと装って、顧客である厚生年金基金の被害を拡大したわけであります。

 虚偽の報告書を使って順調な運営を装うということができたのはなぜなのか。証券取引等監視委員会、金融庁の監督検査体制、このどの辺に問題があったというふうに思われますか。

島尻大臣政務官 監督当局といたしましては、さまざまな情報の収集、分析を行うことにより、投資一任業者の業務の状況を適切に把握するように努めております。また、こうして把握した情報を検査当局に提供するとともに、検査当局において、リスクベースで検査対象先を選定し、検査結果を監督業務に適切に反映させ、必要に応じて、行政処分等の監督上の措置を講ずることとしております。

 しかしながら、AIJ事案においては、昨年の行政処分に係る一連の対応まで不正の端緒をつかむことができず、中小零細企業の役職員等の年金資金が毀損したということについては、まことに遺憾でございます。

 今後、検査、監督、双方において、限られた人的資源を的確かつ有効に活用しながら、情報収集能力、そして分析能力やリスク感度をより一層高め、再発防止策を徹底してまいりたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 平成十七年以降、AIJ投資顧問株式会社に関する情報は、証券取引等監視委員会の情報窓口に四件提供されていたということであります。検査に入ったのは二〇一二年になってから。なぜこの情報が見逃されていたのか。

 再発防止策としてとられた今回の措置、これは内閣府ガイドラインもしくは法改正でありますが、この教訓をどのように生かして万全の体制をとろうということになっているのか、その辺をもう少し具体的にお答えいただきたい。

岳野政府参考人 検査を担当しております監視委員会事務局より御説明を申し上げます。

 証券取引等監視委員会は、金融商品取引業者等の検査を行っておりますが、検査対象先数が多数ある中で、どのように個別業者の検査実施の優先度を判断しておるかと申しますと、業態ですとか規模、あるいは顧客の特性、その時々の市場環境等に応じまして、検査対象業者に関するさまざまな情報を収集、分析いたします。個別業者の市場における位置づけや抱えている問題点等を総合的に勘案して、リスクベースで検査対象先を選定することとしております。

 先生から今御指摘のございました、私どもの情報受付窓口に外部から四件の情報が寄せられていたではないかという点についてでございますが、外部から寄せられる情報、私ども、検査、監視のためには多数の情報をいただきたいということで、情報をたくさんいただいております。一つ一つの情報は大変貴重でございまして、そのありがたさに差はないと思っておりますけれども、実際に個別業者の検査実施の優先度を判断する際の重要性、有用性の程度、個々の情報の評価ということになりますと、大きな差があるのが実情でございます。

 先ほど先生から、四件の情報を見逃していたのではないかという御指摘がございましたが、決してそういうことはございませんで、私どもとしては、一つ一つの情報を見ながら判断をしていたということでございます。

 結果として、検査に入るのが昨年の年初であったではないかという点でございますが、この点については、先ほど申し上げましたような、私どもの検査の取り組みに当たってのいろいろな要素、外部からの情報だけではございませんで、その業態の特性だとか顧客の特性、これは個人投資家なのか年金基金なのか、そういったような問題、あるいは、取引がケイマン籍の海外私募投信というスキームでございまして、こういった金融商品取引のリスクについてどのように見ていたかなどなど、総合的な事情がございます。

 私どもとしては、ただいまの先生の御指摘についての再発防止策、監視委員会みずからの再発防止策といたしまして、情報の収集、分析体制の強化が重要でございます。一方的に受け取るだけではなくて、とりに行かなければいけない、そういったことを考えまして、昨年、年金運用に関しましては、年金運用ホットラインというものを開設いたしまして、そこには、任期つきで採用いたしました……

金田委員長 時間が参りましたので、まとめてください。

岳野政府参考人 一言。年金運用ホットラインで質の高い情報収集に努力するということが、私どもの現場での再発防止策として行っているところでございます。御理解いただければと存じます。

 失礼いたしました。

佐々木(憲)委員 答弁が長過ぎます。もう時間がオーバーしちゃって、これで質問が終わりと。

 したがって、次回に回しますので、以上で終わります。

金田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木です。

 私も、今の佐々木委員からの質問にさらに追加をする、そういう立場で少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回の金商法の改正には、先ほども話があったんですが、実にたくさんの内容が盛り込まれております。その中でも、私は、特に消費者保護そしてまた投資家保護の観点に立って、そこに絞って御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほど議題にもなっていましたAIJの再発防止策。いろいろと答弁を伺っておっても、本当にこれで再発がきちっと防止できるのかどうか、私は甚だ疑問でありますので、再度そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、信託銀行等によるチェックの実効性という観点でお伺いをいたします。

 AIJ問題が発覚をしてから、この財務金融委員会でも、浅川社長を初め関係者の参考人質疑そして証人喚問と、何度も厳しい追及を行ってまいりました。

 その中で特に私が気になったのは、AIJが基金の資産を運用していたファンドの価額、基準価額を偽って、非常に高い利回りでの運用実績を顧客や資産管理をしている信託銀行に報告していた、そして、それがなぜ誰にも見抜けなかったかということであります。

 これまでの調べによると、AIJファンドの価額の算出者は海外の信託銀行であり、そこからファンドの管理会社であるAIAに通知されていた。ですが、このAIAとAIJはほぼ一体でありまして、ここで本当の価額を隠して、アイティーエム証券を通じて虚偽の価額を信託銀行に伝えていた、こういうわけであります。

 この場合、信託銀行は基準価額が虚偽であることを知り得る立場にあったかどうかという点が国会でも議論になりました。被害に遭った基金からは、信託銀行も同じ数字を言っているのだから、それがうそだと思うわけがない、こういう声も聞かれておったわけであります。

 このような中で、金融のプロである信託銀行が、幾ら一方的に伝えられる立場であるとはいえ、これは不自然だなと思う可能性はなかったんだろうか、信託銀行に何か注意義務違反はなかったのか、そのことをお伺いするとともに、今回の改正案では、信託銀行がAIJのような虚偽に気づくためにどのような方策を設けているのか、お伺いをいたします。

森本政府参考人 お答えいたします。

 個別の事例に関しまして、信託銀行が善管注意義務違反に当たるか否かについては、コメントすることを差し控えさせていただきたいと思います。

 一方で、AIJの事案は、先生御指摘のように、基準価額を改ざんしていた、それが結果として信託銀行のチェック機能を妨げていたということが大きな問題点だというふうに私どもも認識しております。

 そして、再発防止策の一つといたしまして、これは本法案ではございませんで、昨年十二月の内閣府令の改正でございますが、信託銀行が第三者として基準価額のチェックを行うことができるようにするための改正を行ったところでございます。

 具体的には、信託銀行がファンドの基準価額や監査報告書を直接入手できるようにする、第二に、信託銀行が、投資一任業者が顧客に渡した運用報告書の基準価額を入手できるようにする、この両者が相まちまして、信託銀行がこれらを突き合わせて、その結果を顧客に通知するといったことをすることとしております。

鈴木(克)委員 今、その問題点は認識している、そしてまた、防止策を講じておる、こういうお話であったわけであります。

 そうすると、今言われたのは、今後は、信託銀行がファンド価額の真の算出者に直接確認する仕組みを整える、こういう意味合いだというふうに思ったんですが、AIJのような外国籍のファンドの場合は、信託銀行にとって非常に手間だけがふえるわけですよね。結局は、形式的な、実効性のないチェックになってしまうのではないか、こういうふうに思うんですが、その点はどのようにお考えになっておるんでしょうか。

島尻大臣政務官 本事案は、基準価額のチェックを機械的に行うことが困難な外国籍ファンドに関して生じたものでございまして、その再発防止策として、信託銀行が第三者として基準価額のチェックを行うこととしたものでございます。

 このため、外国籍ファンドについては、信託銀行と基準価額算出者との間で、メールとかほかのいろいろなツールを活用することで、基準価額の確認を直接行うこととしているものでございます。

 なお、こうした再発防止策については、金融実務に及ぼし得る影響を踏まえながら、実効性のあるチェックが行われるように、信託銀行等からも意見を聞いた上で策定したものでございまして、信託銀行に過大な負担を課すものではないというものでございます。

 金融庁といたしましては、今回のこの改正事項を着実に実施していくことによって、本事案の再発防止を図ってまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 今、政務官は、過大な負担を強いるものではない、こうおっしゃったんですが、現実には、今おっしゃったように、メールとか電話とか、そしてまたホームページの上で確認をするということをしていかなきゃならぬわけですよね。

 したがって、それはやはり非常に信託銀行にとって負担を強いられることになる、このように私は思っておりますけれども、その辺のところを今後ひとつぜひ御検討いただきたいというふうに思います。もちろん、ではどうすればいいかという問題はありますけれども、信託銀行に余り過大な負担をかけていくということはいかがなものかな、このように思っております。

 では、次に、ファンドの監査報告書の隠蔽と証券会社の責任という点で御質問をさせていただきたいと思います。

 言うまでもありませんが、AIJが流した価額が虚偽だとわかる書類がもう一つあるんですね。AIJのファンドは、外国の監査事務所から監査を受けており、正しい監査報告書が、先ほど名前が出ましたAIAと、ファンドの販売会社であり、名義上のファンド受益者であるアイティーエム証券のところに届いていました。AIAはAIJと一体ですから、どうしようもないということにしても、アイティーエム証券は、AIJの浅川社長の指示で、中身を確認しないでその監査報告書をAIJに届けていたということであります。

 ここで、私が問題だというふうに思うのは、アイティーエム証券のモラルの問題です。アイティーエム証券の背景には、AIJに実質的に支配されていたという特殊事情はありますけれども、基金にしてみたら、証券会社が販売しているファンドなら安心だと考えるのが普通だ、このように思います。

 今回の金商法で、増資インサイダー事件への対応もとられるということになっておりますが、増資インサイダーも、主幹事証券会社からインサイダー情報が漏れたことで問題化をしたわけであります。

 最近の証券会社のモラルは一体どうなっているのか。金融庁は、そのことをどのように認識をされて、そしてまた、どのような姿勢で監督をされるおつもりなのか、お聞かせください。

島尻大臣政務官 証券会社は、市場仲介者として公共的な役割を担っておりまして、高いコンプライアンス、あるいは内部管理体制を構築し、適切な業務運営を行うことが極めて重要でございます。

 昨年、証券会社から公募増資に係るインサイダー情報が漏えいをいたしまして、インサイダー取引が行われたことが発覚をし、行政処分が行われる事態に至ったということは、極めて遺憾でございます。

 金融庁といたしましては、こうした問題の発生を受けて、法人関係情報の管理体制を監督上の重要事項と位置づけまして、管理体制の検証を行っているところでございまして、今後とも、仮に問題が認められる場合には、法令にのっとり、適切に対処することとしております。

鈴木(克)委員 まさに、内部管理そしてコンプライアンスというのは、証券会社にとって生命線だと私は思っておりますが、いずれにしても、こういうような問題が現実に起きているということであります。それはやはり、監督官庁である責任というのは非常に重いものがあるというふうに私は思っておりますので、ぜひ、まさに再発のないように、徹底的な管理、指導をお願いしていきたい、このように思っております。

 では、三番目に、証券取引等監視委員会の検査についてお伺いをしていきます。

 先ほどの佐々木委員に対する監視委員会の答弁というのは、もちろん、長かったということはともかくとしましても、極めて私は不満足であります。

 もう一度お伺いをしたいというふうに思っていますが、AIJのような投資一任業者に対する検査は、証券取引等監視委員会の体制ももちろん限られておるということはわかります。しかし、一律、定期的な検査ではなくて、各情報による検査が行われていた、先ほどのお話のとおりです。

 AIJについては、平成十七年度以降、監視委員会の情報受付窓口に四件の情報が入っていた、先ほどのお話のとおりでありますが、そして、検査に入ったのは平成二十四年になってからということでありまして、誰が見ても、これは遅きに失しております。

 先ほどの答弁では、遅くなかった、そして、適正であったというようなニュアンスの答弁であったわけでありますが、これは、全く反省をしていない、そんな態度ではこれからもそういう事案が発生する可能性があるな、このように私は思っております。

 一方、アイティーエム証券には、二〇〇六年と二〇〇九年に定期検査に入った、このように伺っております。特に、二〇〇九年は、年金運用の情報誌に、社名こそ伏せてあったわけでありますが、AIJについて警告したと思われる記事が掲載されました。

 そんなことがあっても当局はいわゆる不正に気づかなかった、結果的にはそういうふうに言えるんじゃないかなと思います。AIJは、当局からお墨つきを得た、逆に、それをいわゆる売り込み材料にした、こういうことも聞いておるわけであります。

 当局の検査が不十分で逆に被害を拡大させた、そういうような責任は感じてみえるのかどうか、そこについて御答弁をいただきたいと思います。

岳野政府参考人 AIJの事案が、結果として、これまで長年にわたり発見できませんで、中小零細企業の役職員等の年金資金が毀損したことは、検査部局でございます証券取引等監視委員会といたしましても、まことに遺憾でございまして、残念に思っているところでございます。

 この事案を受けまして、私どもも反省すべきことは反省するという思いでおりまして、まず、投資一任業者につきましては、金融庁による一斉調査の結果等を踏まえまして、集中的な検査を行うこととし、現在も継続中でございます。

 それから、二番目でございますが、情報の問題につきまして、先ほど佐々木先生にもお話ししたことになりますけれども、年金運用に関する情報の収集、分析体制を強化したいと思っております。四件の情報があったから、なかったから検査がどうのというのではなくて、私どもとしては、やはり年金の機関投資家の運用のところの情報が十分でなかったというふうに反省をしておりまして、年金運用ホットラインを開設し、専門家による積極的かつ質の高い分析を行って、投資一任業者の検査に反映させるという取り組みをしているところでございます。

 いずれにいたしましても、監視委員会といたしましては、今後とも、限られた人的資源を的確かつ有効に活用しながら、より一層、情報収集、分析能力やリスク感度を高めていく方針でございまして、こうした取り組みにより投資者保護の万全に努力をしてまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 今御答弁いただいたんですが、四件の通報といいますか、情報があるなしにかかわらずというお話であったわけですが、あったにもかかわらずそれができなかった、こういうことですから、それは本当に、文字どおり、二度とこういうことのないようにしっかりやっていただかなきゃいけない、このように思っております。

 さて、続いて、MRI事件と投資家保護という観点で御質問をさせていただきたいと思います。

 最近も、まさに先ほどのAIJをほうふつさせる事件がありました。四月二十六日に行政処分を受けたMRIインターナショナルはアメリカの会社でありますが、日本でも第二種金融商品取引業の登録をして、主に個人投資家向けに販売、勧誘したファンドの資金の大半が消失した可能性があるということであります。

 こんな事件がなぜまた起こったのか、それから、事件の概要、現時点で判明している事実、被害回復の状況、これまで検査に入った時期について詳しく説明をいただきたいと思います。

岳野政府参考人 MRIインターナショナル社についてお尋ねがございました。

 MRIインターナショナル社は、アメリカのネバダ州ラスベガス市に本店を置きます法人でございます。

 まず、端的な御説明をさせていただきますと、MRIインターナショナルのような、こういうファンドを販売する第二種金融商品取引業者につきましては、もともとは証券取引法上の業規制はなかったわけでございます。平成十九年の金融商品取引法制定時に新たに規制対象となってまいりまして、その後、金融庁証券取引等監視委員会といたしましては、限られたマンパワーのもとではございますが、検査監督に努めてきた業態でございます。

 こうした中で、MRI社につきましては、昨年の十二月にMRI社の投資家から、当社の配当が遅延しているという、当社の運営状況に係る具体的かつ重要な情報が監視委員会に寄せられたわけでございます。これを踏まえまして、監視委員会と監督当局は緊密に連携いたしまして、直ちに検査に向けた準備を行いました。また、アメリカの法人でございますので、アメリカのSECにも協力を求めつつ、本年三月四日に監視委員会として初めて立入検査に入ったわけでございます。

 検査の結果、顧客に対する勧誘におきまして、出資金の使途等について虚偽の説明をするなどの重大な法令違反行為が認められましたことから、監視委員会といたしまして、四月二十六日、行政処分を行うよう金融庁に勧告を行いました。その後、金融庁では、同日、直ちに当社の登録を取り消したところでございます。

 また、私ども証券取引等監視委員会は、同じく四月二十六日、金商法違反の嫌疑で強制調査に着手しておりまして、今後、刑事告発を視野に犯則調査を進め、事案の実態解明に全力を挙げていく所存でございます。

 なお、被害回復についてでございますけれども、民事の手続で解決が求められる事項でございますが、五月二日に被害者弁護団が結成されたと承知しております。

鈴木(克)委員 詳しく御説明をいただきました。

 いずれにしても、今後、きちっとした解明を進めていただきたい、このことをお願い申し上げます。

 続いて、今回の金商法の改正案では、AIJの再発防止策として、投資一任業者等に対する罰則が幾つか強化をされておるわけであります。MRIの事件についてはまだ究明中だということでありますけれども、今回、金商法で強化する罰則のうち、MRIのような第二種金融商品取引業にも適用するものはあるのか、ここをお示しいただきたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案では、AIJ事案に鑑みまして、年金基金等の資産運用を行います投資運用業者等の不正行為に対します罰則を強化することを盛り込ませていただいております。したがいまして、第二種金融商品取引業者を対象としておるものではございません。

 なお、MRIインターナショナルの事案につきましては、今後、犯則調査等を通じた実態解明、さらに発生原因の分析を踏まえまして、再発防止策につきましてもしっかりと検討していく必要があると考えておるところでございます。

鈴木(克)委員 今、御答弁の中で、MRIのような第二種金融商品取引業について適用するというところはないという御説明であったわけですね。

 やはり、こういったピンポイントの対応ではだめなんですよ。私は、かつて、この委員会でオレンジ共済をかなりしつこく追及いたしました。無認可共済のことですね。あれと今回の事案とはもちろん違うことは承知をしておるわけですけれども、あの事件は、銀行、証券、保険のいわゆるすき間を狙った事案であったというふうに思っています。今回は、すき間はある程度その後の法律で埋めてきたということでありますが、今度は、逆に、すき間ではなくて、金商法自体の欠点を狙われたというふうに理解をしておるわけです。

 今御答弁がありましたように、第二種については、私は、これは全く役に立たないという言い方はおかしいんですが、今回対象にならないということは非常に問題があるというふうに思っています。

 先ほど言ったように、ピンポイントの対応でということをやっておるとこういうことになるわけでありまして、いわゆる検査に入るのも遅い、そして、事件を起こした業態しか追加調査もしない、規制強化もしない、罰則も引き上げない、そんなことを繰り返しておっても、結局、規制や罰則の緩い業態を常に彼らは狙っておるわけですから、そういうところに、俗に言う悪質業者が流れていくということなんですね。

 だから、本当にそのところを、ピンポイントの対策ではなくて、これを考えるのはやはり金融庁であり、皆さん方の役目だというふうに私は思っています。国民はそこに期待をしておるわけですから、ぜひひとつ、そういう観点でやっていただきたいというふうに思います。

 MRIはアメリカの会社なのに専ら日本で資金を集めていたということなんですが、日本の証券市場は緩い、当局の監督も甘い、このように思われて日本の投資家が標的にされた、これは、言いかえれば、私はそういうことだというふうに思うんですよ。これはやはり担当にしてみれば許しがたいことであります。そして猛烈な反省をしなくてはならないことだというふうに思っています。

 大臣、さらにこれから経済が活性化してくると、やはり投資絡みのトラブルというのはたくさん出てくるというふうに思うんですね。したがって、やっと景気が上向いてきたな、そして大事に蓄えてきた資金をいわゆる投資トラブルで失ってしまう、そんなことにならないように、さっきから繰り返しておりますけれども、徹底的な、いわゆる罰則の水準を上げるとか、すき間を狙われないような、そういう体制を講じていただきたいというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、投資運用業者にかかわる罰則というのは、今回、虚偽記載は従来の懲役六カ月から三年以下とかいうように、大幅に変わってきているのは御存じのとおりです。

 ただ、鈴木先生、一般に、罰則の水準というのは、類似性のあります違反行為の悪質的なのが一つ、また違反行為に対するある程度の抑止力、こういったものなどを考えて、ほかにいろいろあります規定とのバランスを考えてやっていかにゃならぬというのは当然なことなのであって、罰則全体の水準をぼんと引き上げるに当たりましては、他の法律との関係も考えてやらぬとなかなか難しいというところがあるので、これは当然、慎重に対応しないと、この行為だけがというのはいかがなものかということになろうと思っております。

 したがいまして、金融庁としては、情報の収集とか分析能力とかリスク感度というものを高めていくと同時に、問題のいわゆる未然防止とか、ある程度の抑止力、また早期発見、それから早期の対処などなどに努めてまいりますが、適切な検査とか監督とかいうのを通じて、いわゆるこの種の金融商品取引業者の、悪質なものの不正防止に努めてまいらねばならぬと思っております。

 なお、このMRIインターナショナルの事案については、国際的なものもあったこともあろうと存じますが、犯則調査を通じて解明されていくと思われます当社の実態なども踏まえつつ、発生要因というものを分析した上で、再発防止についてもしっかり検討していく必要があるので、今こういうふうにでき上がっておりますけれども、さらにこういった方法がある等々、いろいろあろうと思います。

 追いかけっこみたいなところになっているところも確かだと思いますが、よりいろいろな技術というか、インターネット等々の技術の進歩等々によりまして、こういったようなものに対して、いわゆる罰則、取り締まり等々が追いついていない部分はあるんだということを常々反省しながら、そういった気持ちを持ちながら対応していかねばならぬものだと思っております。

鈴木(克)委員 最後の質問になってしまうのではないかなと思うんですが、タコ足分配ということで最後に御質問していきたいと思うんです。

 我が国では、毎月分配型と呼ばれるタイプの投資信託に人気が集まっておるわけであります。毎月分配型というのは、毎月決算をして、投資家に対して基本的には毎月分配金を払うということなんですが、結局、分配ということですから、運用の結果、利益が上がってその部分が分配をされるというふうに普通は思うんですけれども、実際は元本の払い戻しも含めて分配をしておるということです。

 例を申し上げますと、新聞に載っていた例なんですが、一年間で二一・四%の分配金を分配していたある信託が、運用成績はマイナス八・八%だったということだったそうであります。結局、分配金がいいものだから喜んでおったら、実は、三〇%も元本が減っておったということであります。

 これは、今やはりそれをとめる法律はないにしても、明らかに、誰が考えても、分配という以上、収益を分配するというふうに思っておるわけですけれども、元本まで一緒に分配をされるということで、あれでございます。

 それで、いわゆるトータルリターンという制度を今お考えだというふうに聞いておりますが、いずれにいたしましても、金融庁もしっかり注視をして指導してもらいたいというふうに思っておりますが、御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 これは、元本はそのままにしてやるのと、元本も一緒にというのと、いろいろ商品としてありますというのはもう御存じのとおり、そういう商品があることはもう間違いございません。

 ただ、いわゆる投資をした人のレベルによって、それが理解できている人と理解できていない人、これはなかなか、お客のレベルに合わせてと言われたって、そのお客はどの程度のレベルかわかりませんし、意図的にそれをやろうと思っているかもしれませんし、そういった意味では問題があろうと思いますので、今般の制度改正を契機に、分配金の累積額と元本の変動、していればキャピタルゲインになったりキャピタルロスになったりしますけれども、そういったようなものと合わせた全体的なもののいわゆるトータルリターン、最近みんな片仮名が多いんですが、簡単に言えば、全体の投資損益を投資された各投資家にきちんと通知するという仕組みを導入する予定であります。

 すなわち、煩雑に配当をするところも、ちゃんと全体としてはこうですよというトータルリターンの話をさせていただく、そういう仕組みの詳細を業界全体として検討しておられるようですけれども、いわゆる健全な投資信託というものが発展するということは、今後日本がいわゆるフローからストックへというような感じで、一千五百何十兆も個人金融資産を持って、そのうち、先ほどの佐々木さんの資料だと八百何十兆も現預金があるというような話になりますと、それがこういった投資信託等々に回っていくのは自然の流れだと思っております。

 そういった流れになっていくに当たって、今言われたような、何となくいかがわしい、怪しげな投資信託というようなものがはびこる等々によって、善意の第三者というか、そういった方々がせっかくためたストックを丸損するとかいうような形になるのを断固避けるという意味で、先ほど言われたように、きちんとしたものがあらかじめわかるということが大事で、何となくそういうことがわからぬからみんな結果的に現預金だけが一番確実ということになるんだと思います。

 そういったようなものの信用をこれからさらに上げていくことを考えるのは、これは業界の方も努力してもらわぬと、取り締まる方だけが幾らやったってきちんとしたものにはなりゃしないのであって、投資信託会社も努力してもらうというのは大事なところだ、私どもはそう思っております。

金田委員長 時間が参りました。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。終わります。

金田委員長 次回は、明二十二日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会をいたします。

    午後二時三十三分散会


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