衆議院

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第5号 平成25年11月22日(金曜日)

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平成二十五年十一月二十二日(金曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 林田  彪君

   理事 伊東 良孝君 理事 越智 隆雄君

   理事 菅原 一秀君 理事 寺田  稔君

   理事 御法川信英君 理事 古本伸一郎君

   理事 竹内  譲君

      安藤  裕君    小倉 將信君

      小田原 潔君    鬼木  誠君

      金田 勝年君    神田 憲次君

      工藤 彰三君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    末吉 光徳君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤井比早之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    村井 英樹君

      山田 賢司君    安住  淳君

      武正 公一君    前原 誠司君

      鷲尾英一郎君    坂元 大輔君

      田沼 隆志君    三木 圭恵君

      山之内 毅君    上田  勇君

      岡本 三成君    小池 政就君

      佐々木憲昭君    鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        古川 禎久君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         室城 信之君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    森  信親君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     田中 洋樹君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行企画局長)   内田 眞一君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十二日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     村井 英樹君

  小林 鷹之君     工藤 彰三君

  田畑  毅君     末吉 光徳君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     小林 鷹之君

  末吉 光徳君     田畑  毅君

  村井 英樹君     小倉 將信君

    ―――――――――――――

十一月二十一日

 消費税増税の中止に関する請願(笠井亮君紹介)(第一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二八号)

 来年四月からの消費税増税の中止に関する請願(笠井亮君紹介)(第二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六二号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第三八号)

 同(吉川元君紹介)(第四八号)

 同(桜井宏君紹介)(第五一号)

 同(井坂信彦君紹介)(第六〇号)

 同(藤丸敏君紹介)(第六一号)

 同(中川正春君紹介)(第六三号)

 同(阿部知子君紹介)(第七二号)

 確実な景気回復と庶民の仕事や暮らしに配慮した税制の実現に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第四一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四三号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

林田委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成二十四年十二月七日及び平成二十五年六月七日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成二十四年四月一日以降平成二十五年三月三十一日までの期間につき、六カ月ごとを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を、それぞれ、平成二十四年十二月七日及び平成二十五年六月七日に国会に提出いたしております。

 初めに、管理を命ずる処分の状況について申し上げます。

 日本振興銀行につきましては、平成二十二年九月十日、預金保険法第七十四条第一項の規定に基づき、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分が行われております。

 その後、平成二十三年四月二十五日、日本振興銀行から第二日本承継銀行に事業譲渡が行われ、同年十二月二十六日、預金保険機構より日本振興銀行の最終受け皿に選定されたイオン銀行に対し、第二日本承継銀行の株式譲渡が行われております。

 今回の報告対象期間中には、平成二十四年九月十日、日本振興銀行が解散したことを受け、同行に対する管理を命ずる処分が取り消されております。

 次に、預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び政府保証つき借り入れ等の残高について申し上げます。

 破綻金融機関からの救済金融機関への事業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助は、今回の報告対象期間中に日本振興銀行に対する減額等が生じたことにより二十九億円の減額となり、これまでの累計で十八兆九千八百七十二億円となっております。

 預金保険機構による破綻金融機関からの資産の買い取りは、今回の報告対象期間中に六千三百万円、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 また、預金保険機構の政府保証つき借り入れ等の残高は、平成二十五年三月三十一日現在、各勘定合計で二兆八千三百七十三億円となっております。

 ただいま概要を申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講ずることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国金融システムの一層の安定確保に向けて万全を期してまいる所存であります。

 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

 以上です。

林田委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

林田委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事田中洋樹君、理事雨宮正佳君、企画局長内田眞一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として警察庁刑事局組織犯罪対策部長室城信之君、金融庁検査局長森信親君、監督局長細溝清史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 まず、お配りしております資料一を、麻生財務大臣また黒田日銀総裁初め皆さんにごらんいただきたいと思います。

 これは、二〇一三年七―九のGDPの増減率の内訳ということでございまして、上が折れ線グラフ、そして、下の方がわかりやすいのかもしれませんが、下の実質、名目、両方ともごらんをいただきたいと思いますけれども、実質を見ますと、GDPでは〇・五、年率換算で一・九、前期が三・八でございますので半減、こういうことになったわけであります。

 安倍政権ができましてから、三本の矢ということで、一つは財政出動、つまりは、真水で十兆円余り、事業規模で二十兆円の補正予算をやられました。これがきいているかもしれませんね、公共投資は六・五ですから。住宅投資と公共投資はきいているということです。住宅投資というのは、消費増税前の駆け込み需要ということが出始めているのではないかと思うわけであります。

 財政出動をやった、そして日銀総裁が四月四日、異次元の金融緩和ということをやられている、そして今申し上げた駆け込み需要、世界情勢はまあまあ安定をしている、こういう状況にもかかわらず、これだけ政策的に総動員をしているにもかかわらずこういう状況になっているということ。特に、これだけ円安が百円前後で続いているにもかかわらず輸出がマイナスなんですね。

 こういうことも含めて、政策的な総動員にもかかわらず七―九がこういう状況になっていることについて、それぞれ御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 景気の現状認識ということだと存じますが、少なくとも三本の矢の一体的な取り組みもあって、今言われましたように、前期比の年率でこの七―九では一・九%となっておりますが、昨年の十―十二月から比べてみますと、その前の七―九は三・七のマイナス。したがいまして、少なくともこの間、四四半期連続して景気は緩やかに回復しつつあると認識をいたしております。また、物価の状況につきましても、少なくともコアを見ましても、コアコアを見ましても、デフレ状況ではなくなりつつあるというように認識をしております。

 また、今言われましたように、先行きにつきましては、輸出の面は、こちらの都合だけではなかなかさようなわけにはいきませんので、いろいろ問題はあろうとは思いますが、下振れリスクは決してないと申し上げるつもりはありません。ただ、家計所得や投資の増加傾向などが続いておりますので、景気回復の動きが確かなものになるということが期待をされるところだと思います。

 いずれにしても、これは政策パッケージを実施していくんですが、今言われましたように、一部新興国の需要の減速というものが、輸出というものが三四半期ぶりに減少で、今期はマイナス〇・六になっておりますので、外需がマイナスの寄与ということでした一方で、プラスの公共事業が大きく寄与して、前期比プラスの六・五というふうにしたこと、また個人消費も前期比で〇・一、設備投資もどうにかプラスで〇・二と引き続き増加してきたことなども含めまして、内需は間違いなく堅調に推移しつつあります。

 私どもとしては、外需の下振れ要因リスクというものを抱えていることは間違いないとは思いますけれども、そういったものを含めまして、今、外需を上回る内需の確実なもの、なかんずく、政府支出ではなくて、消費とか設備投資とかいうものが今後伸びてくることを期待いたしておるというのが現状認識であります。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、四月四日にいわゆる量的・質的金融緩和を導入いたしました。その後の状況を見ますと、これも委員御指摘のとおり、外需は見込んでいたよりやや弱目になっております。他方で、内需は当時見込んでいたよりもやや強目ということで、結果的には、おおむね予想したような形で成長が続いている。特に、生産、所得、支出の好循環が起こりつつあるというふうに見ております。

 今後につきましては、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかに増加していくのではないかというふうに見ております。

前原委員 日銀総裁に重ねてお伺いしたいと思いますけれども、OECDが先日、世界経済見通しを発表しました。ごらんになられていると思います。日本につきましては、ことしが一・八%成長、来年は一・五%成長。そして、CPIにつきましては、ことしが〇・二%、来年が二・三%、これは消費税が上がるということで二・三%。コアコアCPIについては、ことしがマイナス〇・二%、そして来年が二・〇%ということで、消費増税分を除くとほぼゼロの見通しを、OECDは下方修正をしているわけであります。

 これは、先ほど麻生財務大臣がおっしゃったように新興国の成長鈍化、それからアメリカのQE3のテーパリングが開始されるのではないか、そういったことも含めて、さまざまな見通しをしているのかもしれませんけれども、これでも、きのうの記者会見でもおっしゃっておりましたけれども、二年で二%の物価上昇は必ず実現できるということでよろしいですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、生産、所得、支出の好循環は今後続いていくというふうに見ております。特に、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくというふうに見ておりまして、その結果、御案内のとおり、今後の消費税率引き上げに伴う駆け込みあるいはその反動という影響を受けながらも、我が国経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長が続くのではないかというふうに考えております。

 こうしたもとでは、マクロ的な需給バランスが改善していきますし、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくということで、両々相まって、消費者物価の上昇率というのは、二〇一五年度までの見通し期間の後半にかけて二%程度に達する可能性が高いというふうに考えております。

前原委員 予算委員会でも繰り返し申し上げているように、私は、二%の物価上昇は求めるべきではないと思っています。一千兆円の長期債務がある中で物価上昇を無理やりやろうとした場合においては、金利上昇リスクというものが高まって、結果的にそれが財政破綻というものを招きかねない状況になるということでありますし、市場は二年で二%を見ていないということになれば、いろいろなマスメディアの報道を見ておりますと、追加緩和期待という言葉がいっぱい出てきます。そうなると、今でも新規国債発行額の七割を日銀が引き受けている、こういう状況の中にあって、さらなる国債を引き受けて量的緩和をするということになると、ますます財政ファイナンスというものに近づいてくるということでありまして、我々は、デフレ脱却は必要でありますけれども、二年で二%というものについては無理やり求めるべきでないということは改めて申し上げておきたいと思います。

 また、日銀総裁が内需が強いとおっしゃったのは、先ほど私が説明をしたように、住宅投資は駆け込み需要が出始めている、そして公共投資なんですね。つまりは、借金をしてお金を使えば内需はふえますよ。ですけれども、それが果たして、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、民需につながっているかどうかというと、私は、それについてはいささか心もとないということを申し上げて、そして、資料二を見ていただきたいと思います。それをあらわすものであります。

 資料二を見ていただきますと、これは日銀から御提出をいただいたものでありますけれども、一番上で伸びていっているものは超過準備であります。これがどんどん伸びていっている。そして、太い、次に伸びていっているのがマネタリーベース。つまり、量的緩和をしているからマネタリーベースはふえていっている。しかし、それに比べてマネーストックあるいは法人向け貸出残高というものは、ほぼ横ばいということで、微増ぐらいですね。これだけマネタリーベースをふやし、そして資金を供給しているにもかかわらず、結局、積み上がっているのは超過準備、ブタ積みだけ、こういうことであります。

 これについて、日銀総裁はこの資料二を見てどう思われますか。マネタリーベースをふやし、しかし超過準備だけは積み上がっていっている、そしてマネーストックあるいは法人向け貸し出しというものがほぼ横ばい、微増ということについてはどう見ておられますか。

黒田参考人 御案内のとおり、量的・質的金融緩和ということで、大量の国債を市場から買い入れるということを通じて、マネタリーベースを大幅に増加させておるわけでございます。それが金融緩和の手法であると申し上げていいと思います。その結果、金融状況は非常に緩和した状況にございまして、貸出金利も史上最低の水準になっておりますし、銀行の貸し出しも、最近では、対前年同月比で見ますと、二%台の前半の伸びになっております。また、マネーストックも四%程度の伸びになっておりまして、これはここ数年の中で一番高い伸びになっております。

 したがいまして、マネタリーベースが拡大するというのは金融緩和そのものでございますし、その結果として、銀行の貸し出しあるいはマネーストックというものも徐々に伸びてきている、これがまた経済の緩やかな回復にもつながっているというふうに考えております。

前原委員 このグラフを見ていただくと、マネタリーベースがふえている。しかし、先ほどおっしゃったようにマネーストックあるいは法人向け貸出残高というのは若干ふえているかもしれませんが、まだ微増ですよね。積み上がってきているのは超過準備じゃないですか。

 それを考えると、今、金利も最低水準にあるとおっしゃったけれども、金利が最低水準にあって、企業が借りやすい状況になっているにもかかわらずまだこの状況であるということを考えると、つまりは、異次元という量的緩和をすることの目的は、結果的には、要は、言ってみれば資産のバブル、為替、そして株高を結局つくっているだけではないかというふうに私は思いますけれども、いかがですか。

黒田参考人 金融政策の結果として、株価あるいは為替に何らかの影響が出るということは十分あり得るわけでございますけれども、私どもの金融政策は、あくまでも国内の物価安定というものを目指して、そのためにいわば政策を総動員して努力しているところでございます。

 現状、特に資産市場でバブルといったものが生じているとは思いませんが、資産市場の状況につきましては、引き続き十分注視してまいりたいと思います。

前原委員 いや、これは完全なるバブルですよ。だって、これだけ円安が一挙に進んだということは、日銀が量的緩和を異次元にやるということのメッセージじゃないですか。

 ということは、裏返せば、これは二年で二%という話で、例えば来年、一般的に言われているように、乖離が出てきたときに追加緩和をするということになったとしても、二年で二%という物価上昇を追い求めるということと、そして緩和を続けなければこの資産バブルがはじけてしまう、そしてまた円高になってしまって株も落ちるということのイタチごっこになるような気が私はしますよ。

 いわゆるこの量的異次元緩和というものは、何がプラスになっているのか。今の時点でいうと、資産バブルを生んでいる、輸出企業を中心に企業実績はよくなっている、後で議論をいたしますけれども。そのことであって、実体経済をよくしていこうということになれば、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、公需から民需へどうやって経済の体質を改善していくのかということを考えたときに、資料二を見ると、要は、量的緩和の規模で円安を進めて、そして株価が上がってという市場に対するメッセージで、これはまさに麻薬と一緒で、続けないと結果的には円が高くなり株が下がるという悪循環になって、やめられないんじゃないですか。

黒田参考人 為替につきましては、委員御案内のとおり、二〇〇八年秋のリーマン・ショック以降、円が異常な高値に行きまして、これが経済にももちろんマイナスになったと思いますけれども、いずれにせよ、行き過ぎた円高というものが是正されてきたということであって、現時点で、今の為替が何かバブル的に異常な円安になっているというふうには考えておりません。

 株価につきましても、企業収益の動向等を反映したものではないかというふうに思っておりまして、現時点で、非常に懸念を感じているということはございません。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、資産市場の状況につきましては、常に十分注視していくということでございます。

前原委員 資料三をごらんいただけますでしょうか。

 これは、主要各社の売り上げ、利益の増減要因というものを示したものでありまして、先ほどお話をしたように、私は資産バブルということをあえて申し上げたいと思いますけれども、量的緩和によって円安、為替に働きかけて、そして輸出企業、関連企業を含めて株が上がっているという状況だというふうに思います。経団連の主要な企業、住友化学というのは皆さん御承知のとおり米倉会長の会社でございますし、そしてまたそうそうたる代表的な会社が、トヨタ自動車も選ばせていただきましたけれども、六つあります。

 さて、これを見ていただくと、特徴的なことがあるんですね。何かというと、売り上げ、営業利益ということで、その判断基準は違うわけでありますけれども、この六社とも為替でもうかっているんですよ、為替で。為替でもうかっていて、実際問題、例えば住友化学、日立製作所、小松製作所、日本郵船、三菱重工業、数量は減っているんですよ。

 先ほど申し上げたように、これだけ円安が進んでいるにもかかわらず売っている数量は減っている。この企業の利益というものは、為替によってもたらされているものが極めて大きいということなんですね。つまりは、円安によって企業の利益が膨らみ、そして実際にその企業の株が上がっているということであって、これを見ても、円安と株高は一体的になっているということはおわかりいただけると思うんですよ。

 でも、問題なのは、先ほどから、マネタリーベースを上げて、そして何をふやさなきゃいけないかというと、企業への貸し出しがふえて、それが設備投資になり、そして物をたくさんつくるようになるというような好循環をつくらなきゃいけないにもかかわらず、むしろ数量が減っている。つまりは、今の企業実績がいいというのは為替要因なんです。これはどう思われますか、総裁。

黒田参考人 個別の企業の決算についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で、日本経済全体ということで申し上げますと、確かに、数量ベースで見た輸出は、持ち直し傾向にはあるものの、勢いに欠けるところがあるというのは事実でございます。したがいまして、輸出企業の決算にもその影響が出てくるということは確かだと思います。

 ただ、輸出の先行きにつきましては、先ほどもちょっと触れましたように、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかながら増加していくというふうに見ておるところでございます。

 なお、最近の各種の統計によりますと、企業の設備投資もようやく出てきておりまして、また、設備投資の先行指標である機械受注の数字も伸びを高めております。そうした中で、鉱工業生産指数もプラスの数字を徐々に高めつつあるということではないかと思っております。

前原委員 日銀総裁と麻生財務大臣に申し上げたいんですけれども、私は、黒田総裁、黒田総裁を責めているような感じですが、日銀だけで全てができるとは全く思っていないわけです。

 例えば、日銀と政府の間で共同文書というのを交わされたと思います。共同文書には、日銀のやるべきことも書かれているけれども、政府のやるべきことも書かれている。つまりは、両方が一生懸命に頑張らないとデフレは脱却できないし、日本の経済はよくならないということなんだろうと思います。したがって、日銀だけに私は責めを負わせているわけではないんですよ。それはまず御理解をください。

 それと同時に、今のような国際環境というのは、私は、黒田総裁も安倍首相も、やはり非常に運のいい方だと思いますよ。今は、国際環境では悪い問題はないですよね。こういうことを言うと麻生財務大臣に失礼かもしれませんが、麻生総理のときは、リーマン・ショックという百年に一度のものが起きている。そして、我々の政権では、東日本大震災あるいはEUの財政危機、金融危機というものが起きて、世界は、大変に波が荒いときが国内も含めてあるわけですよ。あるいは、過去にはSARSとか戦争とか鳥インフルエンザとか。

 こういうような、何かが起きるということも踏まえてやっていかなくてはいけないということになれば、繰り返し申し上げますけれども、日銀だけに責めを負わせるということではないけれども、今は非常にいい状況の中で、しかし、こういった、マネタリーベースをふやしていっているにもかかわらず、それに比べて貸し出しが伸びていない、そしてマネーストックも伸びていない。そして、企業も、結局は為替要因で利益が出ていて、株価が上がっているけれども数量は減っているんだということからすると、先ほど申し上げたように、やはり政府と日銀の共同の取り組みというものをしっかりやっていかないといけないし、まさに第三の矢とか、あるいは日本に期待を持ち続けさせるためには歳出改革なんかもしっかりやらないといけないという問題がいろいろあるんだというふうに私は思います。そういったところもあわせて、どうやってトータルで日本の経済をよくしていくのかということを考えなくてはいけないわけであります。

 やはり海外にかなり生産拠点が移ってしまっているんですよ、残念ながら。トヨタのように、とにかくある一定規模は日本の生産拠点。それはトヨタだって、自動車産業はそうだと思いますけれども、世界に生産拠点を置いた方が会社全体としては絶対にもうかるというのはわかっているけれども、日本の企業として、日本の雇用を守るということで、ある一定の規模を持っているわけですね。

 だけれども、ほかの製造業を含めてかなり移転をしてしまっているということになると、金融緩和だけの、これは総裁とは考え方が違うかもしれませんけれども、資産バブルだけで、企業実績というものではなくて、まさにそれがしっかりと構造転換していくような形にしていかなくてはいけないということを申し上げておきたいと思います。麻生財務大臣も、政府のかなめにおられる副総理としても、ぜひ、これはともに取り組まないといけない話なんだということは申し上げておきたいと思います。

 最後に、時間があと五分になりましたので、この間の予算委員会で、出口については言及すべき時期ではないということをおっしゃいました。私は、その意見と違って、やはりしっかりと出口の議論もしていかないと、それに対するリスクというのは大変大きくなっていくんだということを申し上げて、聞いたわけであります。

 資料四をごらんいただきたいと思いますが、日銀の方に資料を出してもらいました。

 これは、出口ということではなくて、金融調節手段、つまりは、締めたりあけたりという手段についてはこれがあるということであって、総裁のお口から、これはこの調整機能で使えると、別に、具体的にいつ、どのタイミングでどれをということじゃなくて、一般論として、これは日銀に資料を出してもらいましたので、出口としてはこういったものが使えるということを言及していただけませんか。

黒田参考人 繰り返し申し上げましたとおり、現時点で出口について具体的に申し上げるのは時期尚早だと思いますが、量的・質的金融緩和からの出口の具体的な手段という観点からは、保有国債の償還や各種の資金吸収オペレーションのほか、いわゆる付利、補完当座預金制度の適用金利の引き上げなどが考えられるわけでございます。

 ただ、こうした手段の中で実際にどれを用いるかとか、あるいはどのような順序で出口を進めるかということは、その時々の経済金融情勢あるいは市場の状況などによって変わり得るものですので、早い段階から具体的なイメージを持ってお話しすることは適当でないというふうに思っております。

前原委員 付利金利とか、あるいは長期国債、短期国債の売買、こういったところの言及をされたわけでありますが、もちろん、まだ二年たっていないわけでありますので、これからどういった道筋を通っていくのかということは不透明でありますけれども、私は、繰り返し申し上げているように、出口のこともあわせて議論しなくてはいけないということを改めて申し上げたいと思います。

 黒田総裁に伺いたいんですが、三日前、十九日に、日本経済研究センター、岩田一政理事長のところがシンポジウムを開かれたんですね。そこの中身の一つには、長期国債の借り入れ停止後、金利が上昇すると国庫納付が三年程度停止するということを述べていて、そしていわゆる財政負担が生じるんだということを言っているわけですね。

 これが、どのような経路をこれからたどっていって、どのような出口をとられるのか、とり得るのか。出口に至ったら、私は、それはそれで、先ほど申し上げたように、出口のない緩和を続けなきゃいけないことになったら最悪ですから、出口は必ず来てもらわなくてはいけないわけでありますけれども、出口が来たときにはいわゆる財政負担が生じるということをおっしゃっていることについて、いかがですか。

黒田参考人 個々の論文についての私からのコメントというのは控えさせていただきたいとは思いますが、一般論として申し上げますと、こういった試算というのは、金利のシナリオなど前提条件によって大きく変わりますので、それらの前提とともに理解すべきものではないかというふうに思っております。

前原委員 これで質問を終わりますけれども、先ほどお話をしたように、どのようなリスクイベントが起きるかもわからない。そしてまた、日銀の量的緩和だけで日本の経済がよくなるわけではない。しっかりと政府と連携をとりながら、これは失敗すると、国民に対して相当大きな被害というか、大変な責めを負うことになりますので、うまくいっていただかなくてはいけない。そういう意味で、これからしっかりと、この道筋もこれからまた出ていくわけでありますので、定期的に、この金融政策あるいは制度の取り組みについてはしっかりと質問させていただきたいと思います。

 終わります。

林田委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 質問をさせていただきます。前原委員の質問を受けてということにもなろうかと思います、重複は避けますが。

 冒頭、七―九月期のGDPについての御所見をそれぞれ伺ったわけでありますが、特に、雇用者報酬が七―九はマイナスということでございます。実質はマイナス〇・六、そしてまた名目はマイナス〇・二ということでありまして、変化率などでもやはりマイナスとか減ということでございます。

 かねてより、政府は、デフレ脱却、そしてまた異次元の金融緩和と。そしてまた、日銀総裁も、全てのあらゆることを動員してという中で、雇用者報酬、給与、これを引き上げていくといったことをやはり期待すると。特にまた、来年の春闘ということも総裁は口にされているわけなんです。

 これは、私の地元の建設埼玉といった団体が調べますと、六月で、三千三百三人に聞きますと、平均日額一万四千百六十三円ということで一・五%増、ただ、平均月額は二十九万八千三百十八円ということで九七・一%、マイナス二・九%、こういった結果が出ております。これは、今、国交省の方が建設単価を人件費について一六%上げると言ったにもかかわらず、なかなかそれが反映をされていない、そういった数字でもありますし、あるいは、勤労者の給与が十六カ月連続下がっていることも既に公表されているわけであります。

 雇用者報酬がマイナスあるいは減というこの七―九の現状についての御認識を伺いたいと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、七―九のGDPの一次速報値の数字を見ますと、全体としては堅調な内需に支えられた景気の前向きの動きが続いているというふうに見ておりますけれども、雇用者報酬につきましては、マイナスというのが出ているわけでございます。

 御案内のとおり、名目賃金は、所定内、所定外、それからボーナス等いろいろな要素がございますが、ボーナスその他は増加しているにもかかわらず、所定内賃金は依然としてマイナスを記録しております。部分的には、パート比率が上昇しているとか、あるいはパートの時間が短い人がふえているというようなことで所定内賃金の上昇率がマイナスになっているとは思いますけれども、今後、所定内賃金も含めて、名目賃金全体がプラスを高めていく、雇用は御案内のようにかなり高い伸びできておりますので、名目賃金掛ける雇用といったところで出てくる雇用者所得も今後伸びが高まっていくと思います。

 私どもとしては、名目賃金、なかんずく所定内賃金の動向を注視しておりまして、今後、春闘も含めて、名目賃金が上昇していくということを強く期待しております。

武正委員 名目賃金、所定内賃金が上がっていくことを期待ということではございますが、来年は、春闘と同時期に消費税率の引き上げがございます。これは、前政権で、与野党三党で合意をして法案成立をさせていただいたわけでありますが、この消費税率引き上げ後の経済の下振れについての懸念というのは、政府も、あるいは日銀もそういった懸念を持っておられるということはお聞きをしてきたわけでございます。

 総裁も、八月二十日でしょうか、毎日新聞のインタビューでこの点を聞かれたときに、「それはごく短期的な話。年度で見ればそういうことは想定されない。量的・質的金融緩和は、二年程度の期間を念頭において、二%の物価安定目標実現のために必要にして十分な措置を全部決めた。メインシナリオ通りに行けば追加緩和はない。だが、そうはいっても」「何か起これば、対応するし、ちゅうちょなくやっていく。」こういうふうに述べておられます。

 十一月十二日の内閣府の消費動向調査を見ますと、消費者の態度指数は、前月比四・二%低下、四一・二と最低水準になっております。マイナス幅は一一年四月以来の大きさ、一一年四月というのは震災後ということで、このときは前月比五・三ポイント低下をしておりますので、それ以来の低下ということでございます。台風の影響もあったと言われておりますが、やはり来年四月の消費税引き上げによる負担増への懸念が背景にあるのではないのかと言われております。

 こういった中で、先ほどの「何か起これば、対応するし、ちゅうちょなくやっていく。」というふうに述べておられる。まあ、あの時点は、消費税率の引き上げをまだ十月一日に政府が決定していない時点でありましたので、そういった意味での発言だったのかもしれませんが、既に内閣が決定をし、そして今の消費動向調査などを踏まえて、改めて、来年の消費税率引き上げ前後、追加の量的・質的緩和というものがあり得るのか、お答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 消費者マインドの指数はいろいろあるわけでございますが、御指摘の指数につきましては、最近かなり大きく下落したということは事実でございます。

 他方、消費全体の動向を見ますと、七―九月の実質GDPの一次速報値では、個人消費は、一―三月、四―六月と二四半期連続で非常に高い伸びになった後、七―九月も大きな反動も見られずに底がたい動きを続けたということがございますし、最近の月々のデータで見ましても、自動車販売あるいは旅行など各種のサービスは非常に高い伸びを示しておりますので、基本的には、個人消費は底がたい動きを続けていくものというふうに見ております。

 そう申し上げた上で、委員御指摘のとおり、日本銀行は、二%の物価安定目標を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現することを明確に約束しておりまして、そのために必要な措置をとったわけでございますので、もし仮にそういった方向が乱されるというような、いわば下方リスクが仮に生じたといった場合には、当然、物価安定の目標を実現するために必要であれば、必要な調整措置はとる用意がございます。

武正委員 ちゅうちょなくやっていくということがまた改めて今確認をされたわけでございます。

 二〇一五年に消費者物価指数が二%に達しないとき、それは先ほど前原委員とのやりとりでもあったわけでございますが、そのときには引き続き量的・質的金融緩和をさらに続けていくということの確認を、日銀総裁、既に四月の記者会見のときにも述べておられるようですが、改めて、この二年で二%ということですが、これが達しないときは引き続き量的金融緩和も続けていくということでよろしいでしょうか。

黒田参考人 つい先日の金融政策決定会合後の当面の金融政策運営方針を示しました文書でも引き続き述べておりますとおり、日本銀行では、二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続することとしておりまして、こうした条件を満たしていなければ量的・質的金融緩和を続けていくことになるということでございます。

 また、上下双方向のリスク要因を点検して、物価安定の目標を実現するために必要であれば調整を行っていく方針もはっきりと述べております。

武正委員 きょうの新聞にも、「物価シナリオ実現困難なら 「政策の余地ある」」ということで報じられているのがそのことだというふうに思います。

 財務大臣も、今の意見について、あるいは、日銀総裁の先ほど来の、来年の消費税率引き上げ時の下振れの場合には、あるいはさまざまな外的な要因によっては追加の量的・質的金融緩和措置あり得るといった趣旨、そしてまた今の、二年後に二・〇%に達しないときは引き続き量的・質的緩和を続けていくという発言、これについて同じ意見ということでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 これは基本的には日本銀行の話であって、私どもの直接関与するところではないのですが、先ほど前原委員も言っておられましたように、マネタリーベースが出ている割にマネーサプライがふえていないではないか。すなわち、市中銀行まで金は日銀から来ておるけれども、市中銀行の先に金が出ておらぬということを前原先生は言っておられるんですけれども、そのとおりであります。確実にふえておりますけれども、マネタリーベースよりマネーサプライの方が伸び方が緩やか、それは先ほどの示されたグラフのとおりであります。

 すなわち、民間の資金需要が足りない。民間がいよいよ景気という気の部分は確かによくなってきているけれども、いわゆる企業が、もしくは民間が、借金してまで物を買わない、借金してまで設備投資をしないというところが今の問題でして、これが消えない限りなかなか、デフレマインドというのは、十五年しみついたのが取れ切れるまでには少々時間がかかるのはやむを得ぬところだと思っております。

 したがって、政府の政策がころころ変わることのないようにきちんと一定の方向を示しておくというのは企業側にとりましても大変大事なところだと存じますので、私どもも、マネーサプライがふえる、すなわち民間の設備投資等々がふえるような方向で何ができるかということを両方でやっていきませんと、これはかつて日本銀行が、金融だけ、マネタリーベースをえらくふやしたけれども、全然ふえずに、それを引き揚げたというのはついこの間起きていた例でもあります。

 そういったことの経験則に学べば、我々としては、きちんと、一括償却とかいろいろな形で設備投資が伸びていくような方向で基本的に考えていかないと、消費税を上げる形にしていろいろな形でお願いをしている反面、基本的な景気がよくならないというと、経済の再生、財政の再建もなかなか難しいということを思っておりますので、日銀と重々連絡を密にしながら、御指摘の点を踏まえてやってまいりたいと考えております。

武正委員 お手元の方に資料を配らせていただいております。

 先ほど来のマネタリーベースあるいはまた日銀の長期国債保有残高の実績並びにその見通しの比較に、白川総裁のときの、去年までのマネタリーベースの見通し、これも衆議院調査局財務金融調査室で、下に書いてあるような条件つきでつくっていただきました。確かに、異次元の金融緩和ということで、大変なマネタリーベースの伸び、そしてまた長期国債の保有残高ということがこれを見てわかるわけです。

 ただ、今財務大臣が言われた、市中での貸し出しの伸び方が緩やかだというお話なんですが、二ページをごらんいただきますと、伸び率をちょっとグラフに、これも衆議院財務金融調査室につくっていただきましたが、マネタリーベースの伸びは大変な伸びですね、前年比五〇%というような形での急激な伸びを示しておりますが、総貸出平均残高前年比ということでいきますと、先ほども示されたように、横ばいということで、伸び方が緩やかというか、余りにもこの乖離が激しいといったことも見てとっていただけると思うんですね。

 五ページをごらんいただけますでしょうか。先ほど出口戦略のお話があったわけでありますが、米国とヨーロッパ、それから日本、これも同じく作成をしていただきました、二〇〇八年八月を一〇〇とした総資産、バランスシートの規模。

 これはアメリカが大変な伸びを示しております。QE3ということであります。また、ヨーロッパも同じように、ユーロ危機ということでやってまいったということでありますが、既にそのヨーロッパを抜いている日本の状況、二〇一三年八月ということでありますけれども。

 そしてまた、もうちょっと直近の数字で、十月末現在のGDP比、これは日銀からきのういただきまして、GDP比でいきますと、日本が三八%、米国が二一%ということでありまして、額でいけば、二百十五兆円、それからFRBの額ということでいくと、二倍まではいきませんが、そのような額です。対GDP比でいくと、やはり日本にとっては、大変大きなマネタリーベース、そしてまた総資産の規模の推移を見ているわけです。

 しかも、一ページで見ますと、二百兆円までマネタリーベースをふやしていく、一四年末でいきますとGDP比は五六%ということでありまして、大変なマネタリーベース、あるいは日銀の総資産の規模の推移ということになります。

 バーナンキ議長が、この春先、五月でしょうか、いわゆる出口戦略を口にしたことで新興国の株価が下落ということで、過日、十一月十四日、イエレン次期議長は、議会公聴会で、出口の時期については決まっていないというふうに言っておりますが、ある面、近々やはりアメリカがそうした出口に向かっていくとすると、場合によると、日本が世界的な金融緩和のその役割を担っていくことになるのかなというふうに、このグラフ、これからの一年での先ほどの急増、それが対GDP比大変な額になるといったことで、そうした心配を持つわけですが、この点、日銀総裁、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

黒田参考人 確かに、日本銀行が量的・質的金融緩和のもとで大規模な国債その他の資産の買い入れを行うということで、マネタリーベースを大幅に引き上げていくということになるわけでございますが、他方で、米国が今後、一般に言われていますとおり、資産買い入れを将来縮小していくということになる可能性は高いと思っております。

 こうしたもとで、日本の金融政策が国際金融資本市場に及ぼす影響というものはどのくらいかということは、基軸通貨国の米国と比較するということは非常に難しいと思いますが、いずれにいたしましても、金融政策は、いずれの国においても、世界経済あるいは国際金融資本市場への影響、あるいは、それがまた自国の経済へフィードバックしてくるといったことも考慮しつつ、自国の物価安定の実現を目的として運営されているというふうに思います。

 日本銀行も、我が国経済の最大の課題であるデフレからの脱却を実現するために量的・質的金融緩和を行っておるわけでございまして、この緩和政策を、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで持続していく必要があるだろうというふうに思っております。

武正委員 先ほど、来年の消費税率引き上げ時あるいは二〇一五年に二%が達成できないときについて、それぞれ追加の量的・質的緩和について触れられていたわけであります。また、今改めてそのことを言われているわけです。

 日銀の金融政策決定会合、私も財務副大臣として四回出させていただきましたが、きのう、金融政策決定会合では、これは報道ベースだったり、また日銀からもお話を伺ったわけですが、引き続き木内委員は二年で二%というのは反対、これは報道によるところですが佐藤委員も反対。これは若干ニュアンスの違いはあるでしょうが。また、白井委員と宮尾委員は、下振れリスクが強いということについて触れられて、懐疑的だ、これは報道です。

 九人中四人がそういう反対もしくは懐疑的だというような、これはあくまで報道なんですけれども、金融政策決定会合の委員の中にも、やはりこの二年で二%に達しないときに追加の量的・質的金融緩和、これについての異論があると。

 これは、日銀法改正による議事録とかの開示も含めて、透明性の確保ということで、私はいいことだなというふうに思いますが、こういった意見というものも総裁としてはどのように受けとめておられるでしょうか。

黒田参考人 昨日、一昨日とございました金融政策決定会合におけます議論の内容につきましては、今後、適切な手続に従って公表されていくことになっておるわけですが、昨日、決定会合後の「当面の金融政策運営について」という文書、これは直ちに公表されたわけですが、この中でも、先ほど申し上げたような「二%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。」という文章になっているわけです。

 ここの部分について、木内委員から、「二%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、」云々ということで議案が提出されて、反対多数で否決された。逆に言いますと、九人の委員のうち八人の委員が、先ほど来申し上げているような「二%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。」ということ、それから、「その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。」という点について賛成をしております。

武正委員 あくまで報道でありますが、九人中四人が反対、懐疑的ということで、これから一カ月後には要旨が公開もされますし、その後は議事録の公開ということを待たなければなりませんが、引き続いて、金融政策決定会合は開かれてまいりますので、また注視をしていきたいというふうに思います。

 時間もあと五分程度になってまいりましたので、ちょっと先を急がせていただきます。

 金利上昇の懸念ということで、ちょっと一問飛ばして伺いたいんですが、これも、最近の公表では、企業年金などの機関投資家が国内債から外債など海外資産に資金を振り向け始めた、六週連続で海外の中長期債を買い越し、その買い越し額は累計三・八兆円、企業年金は日銀の大規模緩和で今は超低水準の長期金利が将来上昇して保有国債が含み損を抱える事態を避けているのではないのかと言われております。

 また、国内の長期金利は、日銀の説明では安定していると。五月の時点で、サーキットブレーカーなども含めてはね上がって、住宅ローン金利なども上がりました。私は、やはり分厚い中間層、これが日本の強みであるので、資料でもお配りいたしましたが、特に三十歳代の男性の平均年収ががくっと下がっているといったことから、第一次取得層が住宅ローンをしっかりと三十五年間借りられる、そんなところがやはり日本経済の強みであり、底がたさになっていくのではないかというふうに思っております。

 これは指摘にとどめさせていただいた上で、国内の長期金利もじわり上昇しているということで、新発十年物国債利回りは、十一月初めに〇・五八〇と半年ぶりまで下がっていたが、直近は〇・六二〇近辺に上がっているということであります。やはりこの金利上昇、当然、経済成長率が上がっていけば、それに伴って金利が上がるということは経済の基本原則ということを考えますと、今は低水準でありますけれども、これから上がっていくことも考えるわけですが、これについて、総裁の御所見、金利上昇の懸念について伺いたいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

黒田参考人 委員御指摘のとおり、量的・質的金融緩和を導入直後、五月ごろに、国債市場でその内容と影響について消化するまでに時間がかかって、不確実性が高まるという局面が見られたことは確かでございます。もっとも、その後は、市場参加者と密接な意見交換を行う、あるいはオペ運営の微調整を行うといったようなことで、買い入れが進むことによって金利低下圧力の効果の強まりが見られまして、御指摘のように、長期金利は最近では〇・六%程度で安定的に推移しております。

 今後の金利の予想を云々するのは避けたいと思いますが、日本銀行としては、今後とも金融市場の動向を注意深く点検しながら、弾力的なオペ運営などを通じて国債買い入れを適切に実施して、できるだけ長期金利の上昇を抑制していきたいというふうに考えております。

武正委員 先ほど挙げましたが、二十一日に財務省が発表した対外、対内の証券売買状況の数字でありましたし、また〇・六で安定していると言いましたが、これが〇・五八から〇・六二〇と上がったといったことについて伺ったわけでございます。

 この金利の上昇、金利上昇にはいい上昇と悪い上昇があるというふうに言われておりますが、そうした着実に金利は上昇していくといった上での認識、これがやはり必要ではないかなというふうに思います。

 最後に、先ほども触れましたが、国庫納付金について。お配りしております資料七ページ。

 日銀の国庫納付金が五千億程度できておりますけれども、これがやはり今後どうなるかということで、先ほどの日本経済研究センターが、日銀に預ける当座預金の金利が引き上げられることにより、ピーク時に二・六兆円の利払い負担が日銀に発生すると試算しております。また、翁邦雄さんは、著書「日本銀行」で、日本銀行保有国債の平均残存期間が短い想定で三年間で一・二兆円、長い想定で二兆円という金利負担、先ほど言及できないと総裁は言いましたが、そういった試算もされております。こうした利払い負担に加えて、日本経済研究センターは、国庫納付金が三年間ゼロになるというふうに言っております。

 こういった見通し、当然これは、先ほど来触れております、国の財政規律、財政再建にも影響がある話でありますし、また、日銀の経営にとっても大きな影響を与えるというふうに思いますが、この点について御所見を伺いたいと思います、総裁。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、出口局面の収益面への影響というのは、実際にどのような手段をとるかということによっても違いますし、その時々の金利情勢などによっても大きく変わり得るものだと思います。

 したがって、まだ出口戦略あるいは出口の運営の仕方について具体的に議論するには時期尚早でございますので、御指摘の点についても、具体的にお話しすることは適当ではないというふうに思っております。

武正委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

林田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 おはようございます。みんなの党の小池政就です。

 大臣また黒田総裁、どうもお疲れさまでございます。

 本日は、黒田総裁にお伺いする前に、FRC報告ということもありますので、その点について少し確認をさせていただきたいと思います。

 日本振興銀行につきましては、確かに経営破綻という形になりましたけれども、私たちはこの件を通じて幾つか教訓にしなければならないということを考えておりまして、一点は中小企業に対する融資のあり方、これは後ほど大臣また総裁とともにお話をさせていただきたいと思います。

 その前に、この日本振興銀行に関しましては、審査のあり方、また反社との取引等につながるようなスキームということも含められているということでありますので、それについての対応等も私たちは考えていかなくてはならないと思っておりますので、まず、この点について確認をさせていただきます。

 レクを受けまして、金融庁の方には既にその内容をお渡ししておりますが、報道によりますと、「金融財政事情」の記事になりますけれども、今回の提携ローンの問題について検査を行っていったきっかけというのが、この日本振興銀行の破綻に伴いまして、その中で、商工ローンの債権を買い取って、その中に反社の取引が幾つかあったということを読ませていただいたんですが、まず、この事実確認をさせていただきたいと思います。お願いいたします。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の「金融財政事情」には、こうした提携ローンへの関心を強めたのは、振興銀行の貸金業者から譲り受けた債権に反社向けが多かったということが指摘されておりますが、事実を申し上げますと、反社勢力の排除に向けた対応ということは金融庁は昔からやっておりますけれども、今回の提携ローンの事案は、そうした振興銀行の事案を契機としたものとは理解しておりません。

小池(政)委員 今回の検査に対するつながりというものはないということでありましたけれども、事実関係として、この振興銀行のSFCGからの債権の中に反社の取引はあったんでしょうか。

細溝政府参考人 日本振興銀行は確かに破綻した金融機関ではございますが、その保有していた債権、それは他の金融機関が譲り受けて現在も保有しておるというものでございまして、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

小池(政)委員 他の金融機関が持っているということで、その持っている取引についての反社のつながりというものは公表できないということなんでしょうか。お願いします。

細溝政府参考人 一般に、個社のそうした事情に関しましては、行政処分等を行って、その前提となる事実として公表することはございますが、そうでない場合は、具体的なことはお答えを差し控えさせていただいております。

小池(政)委員 否定もされないということでありますが、この件に関しましては、反社に限らず、かなり不透明な取引というものが多数ありまして、また実際に検査の中でも指摘されたと思いますけれども、二重譲渡等もあったということで、非常にこの件というものは教訓にしなくてはならない問題でもあります。

 そもそもこのSFCGという機関自体も大変問題のあった機関であったという報道はあるんですけれども、このスキームはどのようになっていたか、御説明いただけますでしょうか。

細溝政府参考人 日本振興銀行がSFCGからローン債権を買い取る、そして買い取り代金を支払う、そのローン債権の買い取りに当たってSFCGが保証をするといったスキームであったと承知しております。

小池(政)委員 そうしますと、そもそものローンの際の審査はSFCGが行って、後になってそれを振興銀行が買い取ったということでよろしいでしょうか。

細溝政府参考人 ローンそのものはSFCGが実施をし、それを買い取ったということでございます。

小池(政)委員 審査を第三者が行った、この件について、今回の提携ローンと共通するのはその点でありまして、審査自体は自行ではなくて、それをほかの人がやったということから問題が発覚しているということを、私たちはここはしっかりと注目しなくてはいけない点であります。

 確かに、振興銀行そのものにつきましても経営体制等の問題もありまして、その後の金融庁の行政対応等検証委員会におきましても、金融庁は免許を付与すべきでなかったという反省もされておりますけれども、このようなスキームの中におきまして問題が起こり得る可能性があるんだということをしっかり認識すべきだったと思っております。

 先ほど冒頭に、お答えできないという話でありましたけれども、このSFCGの債権につきましてはかなり、当時、ノンバンクが自分たちの債権を売りに出したい、貸金業法の改正によりまして、それを買ってもらいたいということからほかの金融機関にも渡っていると思うんですが、反社の取引にかかわらず、この債権というものはほかの金融機関にも譲り受けられているんでしょうか。

細溝政府参考人 SFCGが他の金融機関にどういう債権をどういうふうに譲渡したかという詳細は把握しておりませんが、日本振興銀行が買い受けました債権につきましては、複数の金融機関に譲渡されております。

小池(政)委員 SFCGのもともとのローンに問題があるという可能性はあるわけですから、その点もしっかりこれから踏まえて検査等を行っていただいた方がいいと思います。

 また、次に、この日本振興銀行の破綻というのは二〇一〇年の九月になるわけですが、今回のみずほの検査につきましては二〇一二年の末ということであります。その期間、しばらく時間がたっておりますけれども、先ほど指摘しましたように、第三者による審査というもの、自行債権という意識が低かったという点につきましては提携ローンとかなり共通した点があったにもかかわらず、これだけ期間があいたということはどういうことなんでしょうか。

麻生国務大臣 改善命令が出た経緯を聞いておられるわけですね。(小池(政)委員「改善命令でなくて、審査のタイミングの経緯です」と呼ぶ)審査というのは、昨年の十二月にやったという部分に関して。では、これは検査局長から言わせます。

林田委員長 事務方が手を挙げておりますので。

 森検査局長。

森政府参考人 お答えいたします。

 通常、立入検査が終了いたしましてから、検査官の検証が合理的かとか妥当性などを事後的に検査局において審査いたします。そのため、立入検査が終了してから検査結果通知が発出されるまでは一定の時間がございます。

小池(政)委員 二年もあいておりますし、そもそも破綻の際に、先ほども否定しませんでしたけれども、その可能性を見つけられたのであれば、即座にそのような取り組みというものを行うべきではなかったかなと思っております。

 また、大臣にお聞きさせていただきたいのは、業務改善命令が、この検査からしばらく、ことしの九月末まで時間があいて出されているわけでありますけれども、その期間についての御説明をお願いいたします。

麻生国務大臣 今般の提携ローンの問題につきましては、金融庁が昨年の十二月から実施をいたしております、通常の、普通にやっております立入検査の中で、提携ローンにおいて、多数の反社会的勢力との取引を把握していながら、取引の解消、防止のための抜本的な対策を行わず長期間放置していたということなどから、経営管理態勢に重大な問題点があると認められた。これは通常の検査の話です。さらに、報告を徴求しておりますので、その事実関係の確認を行った上で、経営管理態勢の抜本的な見直し及び充実強化を図らせる観点から、九月の二十七日に業務改善命令というものを出したというのがこれまでの経緯であります。

 そして、この点について、立入検査が終了してから、検査官の検証の合理性や妥当性などは事後的に調査をした上で、ことしの六月に検査結果通知を出しまして、銀行法の第二十四条に基づく報告徴求を実施して、一カ月以内に報告を出せということを求めております。七月に提出された報告内容を精査しました上で業務改善命令の発出を行っておりますもので、立入検査から業務改善命令を出すまでの期間というのは、通常の手続を経たものであると認識をいたしております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 今回は、この問題が行内でわかっていながら二年間放置されておりまして、かつ、検査におきましても、当初は取締役会に報告されていたにもかかわらず近年は報告もされていなかったということから、通常のケースには当たらない問題でありまして、これは即座に対応すべきだったということも考えております。

 また、今度は、では入り口のチェックにつきましては、前回、犯収法についての御質問をさせていただきましたが、これについて警察庁の方に確認をさせていただきます。

 本人確認につきましては、提携ローンは本人確認義務が除外されているということでいいんでしょうか。そして、その際に、この除外というのは、そもそも信販会社が対象外なのか、もしくはこのスキームの場合に対象外なのか、どちらなのか、お答えいただけますでしょうか。

室城政府参考人 犯罪収益移転防止法は、マネーロンダリング対策の観点から、事業者に対し取引時確認を義務づけているものでありますけれども、提携ローンにつきましては、現行制度においては、商品等の購入対象物が明らかである、そして顧客の手元に直接現金が渡るものではないということを踏まえまして、取引時確認の対象から除外をされているところであります。

 今後、提携ローンを取引時確認の対象とするか否かにつきましては、FATF勧告やあるいは取引の実態等を十分に踏まえて慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。

小池(政)委員 それでは、このSFCGに関しましては、ノンバンクということでありますから、購入対象物が物ではなくてお金ということですから、これは本人確認の対象ということでよろしいんでしょうか。

室城政府参考人 提携ローンにつきましては、先ほど申し上げたような理由に基づきまして除外ということになっているわけでございますけれども、その他、一般の銀行等の取引については取引時確認の対象ということになっているということでございます。

小池(政)委員 わかりました。

 それでは、ノンバンクは対象で、提携ローンはまだ対象ではないということでありますけれども、今御説明がありましたように、反社チェックが目的ではないとしても、犯収法改正によって、例えば取引時の確認事項をふやしたり等、今取り組みをされているわけでありますが、これが、現在のFATFの基準におきましてまだ日本の基準との差があるのであれば、どの点がこれから改善の余地があるんでしょうか。

室城政府参考人 FATFからは、取引時確認における法人顧客の実質的支配者の確認について、自然人にまでさかのぼって行う必要があるなどの指摘を受けているところでございます。

 このFATFからの指摘や、あるいは昨年二月に策定されました新たなFATF勧告に適切に対応するため、現在、警察庁において有識者懇談会を開催いたしまして、行うべき制度改正の方向性について議論をいただいているところであります。

 今後、有識者懇談会の議論を踏まえまして、FATF勧告に対応した実効性あるマネーロンダリング対策に関する制度を整備するとともに、それが適切に運用されますよう、関係省庁と連携をして取り組んでまいりたいと考えております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、その点についても前向きな対応と、それから振興銀行におきますノンバンクの債権譲渡等の問題についてもしっかりとこれからも確認をしていただきたいということと、また今回の提携ローンにおきましては、信販会社の審査の体制にも問題があるわけでありますから、経産省ともしっかり共同して取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、金融政策の方についてお伺いさせていただきます。

 黒田総裁におきましては、昨日の記者会見につきまして内容を確認させていただいておりまして、それを拝見しますと、先ほどからのお話にもありますように、内需も外需も、現状におきましても見通しにおきましても非常に順調じゃないか、予想された経路を日本経済はたどっているという言葉もおっしゃっていらっしゃいますけれども、懸念というのは今のところないんでしょうか。お願いします。

黒田参考人 現時点では、内需は底がたく、かつ堅調でありますし、外需は、四月に見込んでおりましたときよりはやや弱目ですけれども、欧米あるいは中国などの最近の状況を見ますと、今後、緩やかに増加していくというふうに見込まれますので、量的・質的金融緩和を導入した際に考えておりました日本経済の経路をおおむねたどっており、物価上昇率も徐々に上昇してきて、現在、ゼロ%台の後半というところに来ております。

 ただ、二%の物価安定目標の達成までにはまだ道が遠いわけでございますので、引き続き量的・質的金融緩和を着実に実施し、そのときに上下双方向のリスクというものは潜在的にあり得るわけですし、特に海外経済の状況につきましては、現時点では、先ほど申し上げたように今後緩やかに回復していくというふうに見ておりますけれども、そういった状況も十分注視してまいりたいというふうに思っております。

小池(政)委員 その点について、先ほど武正委員からも御指摘がありました、政策委員の意見とも少し乖離が出てくる可能性もあるわけでありますから、これからの見通しをしっかり冷静に見ていただきたいということと、また、見通しの際に、来年の増税それからアメリカの財政問題等を踏まえても、そのような順調な見通しということで考えていらっしゃるんでしょうか。

黒田参考人 消費税の増税につきましては、たしか昨年夏に、与野党の合意を踏まえて法律が成立しておりまして、三%、二%という二段階の引き上げということに法律上なっております。したがいまして、私どもとしては、それを前提にして金融政策を講じておりまして、また経済の見通しを立てております。

 その現在の経済の見通しによりますと、二度にわたる消費税の引き上げのもとでも、今年度、来年度、再来年度と、実質GDPの成長率は潜在成長率を上回るレベルで推移する、そして、需給ギャップが縮小し最終的にはややプラスになるという仮定で、物価上昇率は次第に上昇していく、また予想物価上昇率も、既にある程度上昇しておりますけれども、これもさらに上昇していくということで、両者相まって見通し期間の後半には消費者物価の上昇率が二%程度に達するというふうに現時点で考えております。

小池(政)委員 それでは、現状認識を踏まえまして、ちょっと前向きな話で、資金需要をどうやって改善するかということについてお伺いさせていただきたいと思います。

 先ほど来話もありますように、マネタリーベースはふやしているにもかかわらず、なかなかマネーサプライ、マネーストックの方がふえていかないということで、会見の中では、銀行貸し出しは微増という形でふえているんじゃないかというお話もありました。ただ、二〇一三年の十月の貸出残高を見ればまた下がっているわけでありまして、四百三十九兆円から四百三十五兆円になっている。また、海外に対しまして、日本の国内での貸し出しというものは大変少ない。また、特に今、中小企業への貸し出しというのはようやく下げどまったところでもあります。

 その際に、会見で、日銀は貸し出し増加支援、その他の特別の施策というものも講じているということを総裁はおっしゃっていらっしゃいましたけれども、そのように国内の資金需要を伸ばすような具体的な施策というものがあるでしょうか。

黒田参考人 現在、日本銀行が行っております量的・質的金融緩和というものには強力な金利低下圧力がございますし、また、いわゆるポートフォリオリバランスの効果というのも徐々に出てきておりまして、それらは貸し出しをふやす方向に作用するというふうに考えております。

 貸し出し自体、若干季節要因がございますので、私どもは前年同月比で見ておりますけれども、それで見る限り、貸し出しは着実に伸びを高めておりまして、現時点では二%台前半ということでございます。また、マネーストックも四%に達しておりまして、これは、過去かなり長い期間をとってみても最高の伸びになっております。

 そうしたことを踏まえまして、御指摘のように、日本銀行は金融機関の貸し出しをいろいろな形で支援していきたいということで、金融機関の貸出増加額について、希望に応じてその全額を低利、長期で資金供給を行ういわゆる貸し出し増加を支援するための資金供給というシステムを導入して、今年度の初めから実際に実行しております。これまで累計で約四兆円と、大変積極的な利用が見られておりまして、これはまだ当分続くわけでございます。

 こうした取り組み、いわゆる全般的な量的・質的金融緩和、さらには貸し出し支援の仕組みなどによりまして、引き続き金融機関が積極的に貸し出しをし、また、企業や家計の前向きな資金需要の増加につながっていくことを期待しているわけでございます。

小池(政)委員 最後に、麻生大臣にも同じ質問をさせていただきたいんです。

 銀行の預貸率が非常に下がっている、なかなか伸びない。銀行全体で見れば六十数%、また地域の信用金庫におきましては五〇%を切っているところであります。特に、企業それから中小企業に対してどのように資金を循環させていくかということについてお伺いさせていただきたいわけでありますが、その際に、例えば最初に触れました日本振興銀行、これは中小向けということで、その意義は確かに私たちは認めるところでありますけれども、ただ、スコアリングでありますとか、もしくは、銀行が貸せないところに、少し高金利で、ノンバンクよりも少し少ない金利で貸すというような手法もありました。それが果たしてどうかなということもあります。

 ただ、一方で、今の状況におきましては、特に中小向けの貸し出しに対して、政府系の機関でありますとか、もしくは信用保証というものが入ったものが多くて、結局、銀行におきましては、それがリスクを持っていないということから、目きき力も上がることがないですし、また、今回のみずほのように自行債権という認識が低いところから、非常にその中身の審査というものもおろそかになってしまう。

 そんなことを前提としまして、いかに銀行から企業、中小企業への貸し出しというものをふやしていくことができるでしょうか。大臣、お願いします。

麻生国務大臣 先ほどから御質問が民主党の方々から続いていましたように、基本的には、日銀がお金をふやしてマネタリーベースをふやしましても、銀行からその先の企業なり個人の方に金が回らぬ、すなわちマネーサプライがふえないというところが今一番問題。すなわち、資金需要がないということです。資金需要がないところに幾ら銀行が金を貸しても、そこから先に行きませんから、その資金需要を起こすためにというところが一番問題なんだと思います。

 今、いろいろやっておりますけれども、その中の一環として、やはり銀行が、新しく企業を起こした新規のものとかいわゆるイノベーションとかいろいろ、何か横文字が使われていますけれども、新しいものを起こしていったときに対して、その新しい事業に、もしくはそれをやっている経営者の才能に応じて金を貸せるだけの審査能力、目ききというものが銀行にあるかといえば、それは少々問題なので、ぜひ、そういったところは、中小企業を主に扱っていますいろいろな各金融機関に対して、金融庁としては、そういうものに関して積極的に資金をつけるということをしない限りはなかなか起きてこない。担保が足りないからとかいろいろなことを言って金融庁が差し込んでくるんじゃないかとか、いろいろなことを考えるより先にまずという話を、私どもとしては指導していかねばならぬところだと思っております。

 いわゆる金融監督庁というような形の金融処分庁的なイメージから金融育成庁というイメージに変わるようにするのがこれからの仕事だという話は、着任したときに一番最初に言ったんですけれども、この九月にもその方向で指針を出させていただいております。少々時間がかかるとは思いますけれども、きちんとそういった方向で事を進めていかない限りは、マネーサプライが増加してくる、銀行貸し出しがふえてくるということにはなかなかなりにくいのだ、私どももそう思って努力をさせていただきたいと思っております。

小池(政)委員 これで終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 日本維新の会の坂元大輔でございます。

 本日は、日本銀行から黒田総裁にお越しいただきまして、ありがとうございます。

 これまでの質問と部分的に重複する部分もあるかとは思いますが、そこは御容赦いただければというふうに、再度確認させていただくこともあるかと思います。よろしくお願いいたします。

 それではまず、黒田総裁に、改めて、今回のいわゆる異次元の金融緩和と言われております質的・量的緩和に関しての基本的な認識を確認させていただきたいというふうに思います。

 もともと、我が党日本維新の会も、この金融緩和には賛成の立場でございます。ただ、これは、あくまでも長年続くデフレを脱却するためのいわゆる特別措置であるという認識を持っております。

 一部エコノミスト等々の間では、現在の日銀が新規国債発行分の約七割に当たる国債を買い上げているという状況は、端的に言ってしまえば、国債の市場が死んでいる、つまり、本来の国債の意味、もしくは、市場の機能である実体経済を映す鏡という役割、日本経済の可能性もしくはリスクを正常に今の国債市場というものが反映していないじゃないかという意見もあると思いますが、繰り返しになりますけれども、我々は、本来国債の市場というのはそういうものであるとは思いますけれども、今の日本経済がデフレを脱却するためにはこの措置は必要だ、ただし特別な措置であるという認識なんですけれども、そのあたりの御認識、黒田総裁はいかがでしょうか。確認をお願いいたします。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

黒田参考人 御指摘のとおり、日本銀行は、量的・質的金融緩和のもとで巨額の国債買い入れを行っております。これは二%の物価安定の目標を実現するために行っているわけでございまして、確かに従来とは次元の異なる大規模な金融緩和でございます。

 したがいまして、その実施に当たりましては、市場流動性への影響を含めて債券市場の動きを丹念に点検しておりまして、また、市場関係者と頻繁に密接な意見交換を行いながら、具体的な国債買い入れその他オペの運営面の工夫を行っております。そして、市場が安定的に推移するように努めているわけでございまして、今後も注意深く点検をし、必要に応じて適切な調整を行っていきたいと思っております。

坂元委員 今の御答弁のとおり、これは非常に繊細な対応というか、本当にどの国もやったことがないレベルの金融緩和ですので、このコントロールというものに対する日銀の役割、責任というものは非常に大きいですし、重大だという認識を共有できたというふうに思っております。

 それでは、引き続き、ちょっと国債に関してなんですけれども、率直に、今これだけ量的・質的緩和を行っていて、さまざまな指標も、差はありますけれども底がたい動きを見せている中で、本来であれば国債の金利というものがもう少し上がってきてもいいのではないかというふうに考えるんです。これは、先日この財務金融委員会での麻生大臣の答弁でも不思議だという表現をされていたんですけれども、率直にお伺いして、国債の金利が上がってこない、直近は少し上がっていますけれども、上がってきていない理由に関してお答えをいただければと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 若干テクニカルな説明になって大変恐縮でございますが、長期金利の形成過程ということを考えますと、先生御指摘のとおり、先行きの経済や物価情勢に関する市場の見通しというのが基本にありまして、それにさまざまなリスクプレミアムが乗っかって形成されるというのが一般的な見方かと存じます。

 このリスクプレミアムというのは、何というか、くせ者でありまして、その中身は、例えば将来の金利変動に対する見方ですとか、財政に対する見方ですとか、海外金利の影響ですとか、いろいろなものが入るわけでありまして、これを腑分けすることは非常に難しいというのは大臣のおっしゃったとおりであるかと存じます。

 一つ確実に申し上げられますことは、私どもの巨額の国債買い入れがこのリスクプレミアムという部分を強力に圧縮する効果が期待されるわけでございまして、目下のところ、その効果がしっかりあらわれているというふうに考えてございます。

坂元委員 ありがとうございます。

 確かに、御指摘のとおり、日銀が安定的に買い入れていることによってリスクが低減されているというプラスの面もあるかというふうに思いますけれども、もう一つ御指摘させていただきたいのが、これまでの、きょうの議論でも上がってきておりますが、日銀が幾らマネタリーベースをふやしても借り手がいない、ある意味、民間金融機関を国債の市場から半ば締め出すような形でほかにマネーを流動させるようにというふうに持っていっても、肝心の借り手がいないという状況、いわゆるブタ積みというふうに言われていますけれども、日銀の当座預金額がどんどん上がっていって、市場に資金が流通していない。先ほどの前原委員や武正委員から提出されている資料を見ても、微増しているとはいえ、なかなか民間に資金が流れていっていないという状況が、ある意味、国債の金利が上がってこない理由の一つなのかなというふうに考えております。

 これを打ち破るためには、まさに民間投資を喚起する成長戦略というものが必要なんですけれども、これまでの各委員会の討論や本会議の中でも我が党はたびたび指摘させていただいていますとおり、この成長戦略が、まだまだ踏み込みが甘い、大胆な規制緩和や既得権益を打破しての産業構造の転換を促すようなレベルまで踏み込めていないというふうに認識をしております。

 いわゆる日本再興戦略に基づく一連の経済政策パッケージを日本銀行としてはどのように評価されているか、率直な御意見をいただければと思います。

黒田参考人 御指摘の日本再興戦略は非常に包括的かつ重要な要素をたくさん含んでいると思いますが、一番肝心なことは、これが実行されるということだと思います。

 政府は、今回の国会を成長戦略の実行が問われる国会というふうに位置づけた上で、この日本再興戦略の中から重要な部分を、その実行を加速して強化するということで進めていると伺っております。

 私も、何よりも大切なことは実行だと思います。既にプランは示されているわけでございますので、成長力を強化するための施策が着実に実行に移されていくということを私どもとしても強く期待したいと思っております。

坂元委員 お答えしにくい場面かもしれませんけれども、プランは示されている、あとは実行だという御認識を今示されたかと思うんですけれども、そのプラン自体がまだまだ甘いのではないかという認識で私はおりますが、そこの点に関して、もう一度、御意見等々があればお願いをいたします。

黒田参考人 日本銀行総裁としてどうかと聞かれるとなかなかお答えしにくいんですが、確かに、日本再興戦略については、まだ踏み込みが十分ではないのではないかという御意見もあるようには伺っております。

 この成長戦略ということを考えますと、基本的には、労働力の量と質をどのように改善していくかということと、労働生産性をどうやって高めていくかということになってくるわけでございます。前者につきましては、やはり、女性の経済活動への参画をどのように高めていくかということが極めて重要だと思いますし、後者につきましては、日本は、製造業の生産性は非常に高いんですけれども、農業とサービス産業、第三次産業の生産性は欧米に比べるとかなり見劣りするわけでございますので、そういったところで、どのように構造改革を行い、競争力を強化し、労働生産性を上げていくかという観点が極めて重要だと思います。

 それらは再興戦略に一応出そろっているとは思いますけれども、個々の項目については、もっと踏み込んだ方がいいという御意見もあろうかというふうに思います。

坂元委員 横に麻生大臣がおられなかったので、前向きな御答弁をいただけたのかなというふうに思いますけれども、御指摘のとおりだというふうに思います。

 確かに、項目としては、テーマとしては挙がっておりますけれども、中身については、まだまだこれから議論が必要、踏み込みが必要だというふうに思いますし、特に挙げられた農業やサービス業の部分、これはまさに、いわゆる岩盤規制というふうに言われている規制を改革していくこと、大胆な規制の緩和や改革が絶対に必要な分野だというふうに、我が党、私も認識をしておりまして、これは、経済産業委員会やその他の委員会を通じて、また我々からもどんどん建設的な提案をさせていただきたいなというふうに思っております。

 今、日銀総裁の立場からはなかなかお答えしにくい部分だとは思いますけれども、ある意味、政府と合意した上でこれだけの金融緩和をやっているんだから、政治の方も、行政の方ももっとしっかりやってくれよという力強い後押しというか、金融側からの力強い期待の声を上げていただければというふうに思っております。

 引き続いて、民間投資を喚起するという点で一つ金融面から大事なことというのは、いわゆる実質金利が低いことだというふうに思っております。現在のところ、予想物価上昇率、予想インフレ率が上がっても、名目長期金利の上昇というのは抑えられておりまして、いわゆる実質金利が下がっている状態です。

 しかし、これだけ国債の金利が低い中で、いわゆる機関投資家からすれば、予想インフレ率が上がってくれば名目金利というのは上がらないと割に合わないという意思が働くのではないか、そうなると名目金利は上がってこざるを得ないのではないかというふうな意見もあるかと思います。

 当然、名目金利が上がってくると、幾ら物価が上がっても、予想インフレ率が上がっても、実質金利を下げる効果というものがなくなってしまうというふうに考えるんですけれども、このあたりに関しての日銀としての認識をお伺いさせていただきたいと思います。

黒田参考人 国債金利を含めまして、長期金利は、先ほど雨宮理事からお答え申し上げたとおり、先行きの経済や物価情勢に関する見通しにリスクプレミアムが加わって形成されるということだと思います。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、経済や物価情勢がさらに改善していきますと、その面からは名目長期金利を引き上げようという動きが出てくることは事実でございますが、他方で、日本銀行は引き続き大量の国債の買い入れを含む量的・質的金融緩和を通じてリスクプレミアムの圧縮を続けてまいりますので、そういった効果を通じて、実質金利は低位で推移する。また、そのようにすることによって経済を刺激し、二%の物価安定目標に近づけていくということだと思いますので、今後とも、こういった大幅な金融緩和、量的・質的金融緩和を続けてまいりたいと思っております。

 なお、足元は、御案内のとおり、景気見通しは改善し、今株価なんかも上昇しているわけですけれども、長期金利は低位安定して推移しておるわけでございまして、そういった意味では、量的・質的金融緩和はしっかりと効果を発揮しているのではないかというふうに思っております。

坂元委員 今の御答弁、そして先ほどからの御答弁のとおり、ひとえに、日本銀行、日銀が質的・量的緩和を継続するということを明確に打ち出しているからというところだと認識をしております。

 ただ、一番最初にお伺いをしたとおり、これは長らく続くデフレを脱却するための特別な措置だというところで、まだ出口戦略に関しては時期尚早だという認識は私も同じなんですけれども、これは必ずどこかで出口というものは見つけていかないといけないですし、当然、いわゆる異次元の金融緩和というのも収束をさせていかないといけないわけで、やはりそのときに、繰り返しになりますけれども、非常に繊細な、かつ大胆なというか、デリケートな対応が求められてくるかというふうに思っております。当然のことながら、市場とコミュニケーションを丹念にとった上でこれをやっていかないといけないというふうな認識を、まだ先の話ではありますけれども、共有できたのかなというふうに思っております。

 それで、少し先の話になるかもしれませんが、異次元の金融緩和が成功した場合、金利が上がるわけです。金利が上がるということは国債の価格が下がってくるというところになると思うんですが、日本国債は中国を初め各国の中央銀行にも当然買われているわけであります。各国の中央銀行が保有する日本国債の価値が目減りすることに関して、外国当局からの懸念は寄せられていないのか、また、それが寄せられてきた場合どのように応えていくのかという部分について御回答をお願いいたします。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

黒田参考人 日本経済が十五年という長期にわたるデフレから脱却するということは、日本経済にとって必要であるのみならず、世界経済全体にも好影響をもたらすというふうに考えております。したがいまして、そのために行っております量的・質的金融緩和については、私も何度も国際会議に参加いたしましたけれども、国際社会でも十分に理解をされているというふうに思います。

 国債価格につきましては、経済・物価情勢の見通しなどによって変動するわけでございますので、そういったことに対して、公的セクター、民間セクターを問わず、適切なリスク判断のもとで投資が行われているものというふうに理解しております。

 なお、そういったことで特別な懸念とかいうことは寄せられておりませんし、引き続き、デフレからの脱却を目指して、量的・質的金融緩和を続けてまいりますし、その点についての国際社会の理解は得ていくというふうに考えております。

坂元委員 国際社会の理解を現時点では得ていて、これからも得られるように努力をしていくというところ、そして、むしろ日本経済の復活に世界からも熱い期待が寄せられている、そのための異次元の金融緩和だというところだと思います。

 繰り返しになりますが、これは本当に世界的にも例を見ない規模の金融緩和ですので、成功させるしかないというか、失敗という選択肢はあり得ないという認識を黒田総裁は持っておられると思いますし、我々もそう思っておりますので、先ほど政治側の話をさせていただきました、経済成長戦略をしっかりと打ち出していくことが本当に一番重要なのかなというふうに考えております。

 それでは、少し話題をかえまして、国債の金利にかかわってくることということで、変動金利型住宅ローンのことをちょっと取り上げさせていただきたいと思います。

 現在、住宅ローンの四割から五割が変動金利型で、固定金利期間選択型というのは三割を下回っております。

 国債の金利が上がってくる、銀行の金利も上がってくる局面になった場合、金利が上昇した場合、ローンを支払えなくなり、大量に不良債権化する可能性が一部で指摘をされております。本当に一部の識者ですけれども、一部識者の間では日本版サブプライムローンになる可能性もあるのではないかというふうな点も言われております。この点に関して、金融庁、どのような見解を持っておられるか、お伺いをさせていただきます。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の米国のサブプライムローン、これは幾つか種類がございますが、当初数年間は金利のみを支払って後に元金も含めた支払い額が急増するといった商品、あるいは、将来の物件の値上がりによる借りかえを見込んで当初数年間の金利を極端に抑えるといった商品がございまして、そうした商品について、住宅価格の上昇の伸びがとまってしまった場合にデフォルトが生じたということでございます。

 一方、我が国の住宅ローンは、通常、住宅価格の値上がりは前提としないなど、アメリカに比べて、借り手の返済計画の合理性を慎重に審査した上で実行されておると承知しております。

 したがいまして、米国のサブプライムローンと同様の事態が生じることは考えにくいのではないかと思っております。

坂元委員 ありがとうございます。

 サブプライムローンとは全く質的にも違うという明確な御答弁をいただけたというふうに思っております。

 ただ、変動金利型住宅ローンの金利が上がってきた場合に、急激に上がってくるようなことというのは起こってほしくはないんですけれども、そういった場合に対する対応策というものが具体的にあれば、お願いをいたします。

細溝政府参考人 変動金利型の住宅ローンにつきまして、多くの金融機関では、適用金利は半年ごとに見直しを行う、ただ、月々の元利返済額は五年間固定するといった五年ルールという形でやっておると聞いております。つまり、金利は変動するわけですが、利息の増減を元本の返済額で調整して、五年間は一定の返済額だと。

 それから、五年ごとに見直される月々の返済額でございますが、これは激変緩和として、それまでの五年間の毎月の返済額の一二五%を超えることはない、上方修正する場合でも二五%増どまりであるといった取り扱いを行っていると聞いております。

 したがいまして、変動金利型の住宅ローンの債務者の利払い負担が直ちに大幅に増加するというものとはなっていないものと承知しております。

坂元委員 今、いわゆる五年ルールと一二五%ルールというものについて御説明をいただきました。

 金利が極端に上昇してもそれが直ちに返済額にはね返ってくるわけではないというところなんですが、とはいえ、元本で調整をしていくという部分ですし、金利が上がれば上がるほど当然元本は残っていく形になりますので、国債の利率であったり金融政策というのは、当然のことながら、さまざまな国民の生活にいろいろな部分で、この変動金利型住宅ローンというのは一例ですけれども、影響を与えてくるわけでございますので、たびたびのお願いになりますけれども、大胆かつ繊細にデリケートな対応を、市場とよくコミュニケーションをとって、引き続き行っていっていただきたいということをお願いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林田委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。

 日銀の黒田総裁、わざわざおいでいただきまして、ありがとうございます。

 異次元の金融緩和ということで、実行に当たっては非常に難しい繊細なオペレーションが必要になる。先ほどの御答弁の中にもありますように、適正な調整によって今実行に移されて、それが現段階では非常に大胆な金融緩和ということで注目を浴びているところではございます。それに驚きと感嘆の声も上がっているところであるというふうに認識しておりますし、また逆に、一方で、これが頓挫すればどうなるんだろうという心配と一抹の不安を皆さん覚えているというのも実際のところであるというふうに認識をしております。

 それで、各委員から多く質問をされていることだとは思うんですけれども、日銀の方では、消費税の引き上げを除くベースで物価上昇率の方を二%、二年で実現するという公約になっていらっしゃいますけれども、それが本当に達成できるのかどうかということがまず一点、質問でございます。

 二%の物価上昇の実現には二年続けて五%もの需給ギャップの改善が必要と言われておりまして、来年の消費税導入後の消費の落ち込みについては、政府の方では五兆円規模の経済対策等により景気の腰折れを防ぐというふうにおっしゃってはおりますけれども、その効果は今のところまだ、やってみなければわからないというところで、定かではないと思います。仮に需給ギャップの改善を実現できたとしても、その効果による物価上昇までには数カ月時差があることを考えると、二年以内に二%のインフレが実現することは非常にハードルが高いというふうに考えております。

 民間調査機関もはるかに日銀よりは慎重な見方を示しておりまして、日銀の見通しは少し強気に過ぎるのではないかというような意見もあるようでございます。例えば、みずほ総研は、消費税増税の影響を除くベースで見た二〇一四年度のCPI、生鮮を除くですけれども、上昇率をプラス〇・五%、日本総研はプラス〇・八%としておりますけれども、その点についての御見解を黒田総裁にお答えいただければと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行は、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定の目標を実現することを目指しておりまして、そのために量的・質的金融緩和を導入し、実行しているところでございます。

 これまでのところ、量的・質的金融緩和は着実に効果を発揮しておりまして、私どもは、日本経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋を順調にたどっていると判断しております。消費者物価の前年比も、六月にはプラスに転じ、九月にはプラス〇・七%までプラス幅を拡大しております。

 なお、御指摘のとおり民間調査機関の見通しはさまざまでありまして、直接コメントすることは控えたいと思いますが、全体として実質GDP成長率の見通しにおける日本銀行との差が物価上昇率ほどに大きくないということを踏まえますと、実質GDPの成長あるいは需給ギャップの縮小といった点についてはそれほど大きな差はないのですが、物価上昇率についての見通しにやや差があるということは、期待の転換による予想物価上昇率の高まりについての見方の違いが影響しているのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、これまでのところ着実に二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋をたどっておりますし、二年程度でこれを実現するというコミットメントは着実に果たしていきたいというふうに考えております。

三木委員 今、期待の違いということを総裁の方からおっしゃっていただきました。

 二%の物価目標達成というのはやはり相当ハードルが高いと見ている向きもあり、黒田総裁が今、それは着実に実行に移されているので、そこに向かって頑張っていくんだという答弁のとおり、いろいろな見方があるとは思うんですけれども、持続的な物価上昇を達成するためには、金融財政政策だけでは不可能になってくる部分があるというのを期待の違いだということでお答えいただいたんだと思うんです。

 一言、企業や国民の期待成長率をやはり高めなければいけない、高めなければこの物価上昇率二%というのは実現しないというふうに考えているんですけれども、その点はいかがでしょうか。

黒田参考人 今申し上げましたとおり、量的・質的金融緩和が着実に効果を発揮する中で、日本経済は二%の物価安定の目標の実現に向けて順調にその道筋をたどっていると考えておりますけれども、もとより、企業や国民の期待成長率が高まるということは、よりスムースに物価安定の目標を達成することにつながるというふうには考えております。

三木委員 企業や国民の期待成長率が上がっていかなければ景気というのはもちろん上がっていかないと思いますが、仮にその二%の物価上昇率が実現した場合、先ほど坂元委員の質問の中にもあって、金利が上がらないのは不思議だというふうに麻生大臣も御答弁いただいたと記憶をしておりますけれども、通常は長期金利が二%をはるかに上回る水準まで上昇することが予想されるんじゃないかとマーケットでは一部見ている向きもございまして、そうなれば、景気にマイナスの影響が及ぶだけではなくて、国債の利払い費が急増する。

 これまでは、超低金利政策により、国債の残高の大きさに比して利払いを低く抑えられてきた、これは当たり前のことなんですけれども。今、国債残高というのは約七百五十兆円でございまして、一%金利が上がれば七・五兆円増加するということに、単純に計算すればそうなりますね。単年度の予算に照らすと、これは非常に大きな金額になるんじゃないか、消費税三・五%分にも相当するんじゃないかというふうに考えております。その結果、財政再建が中長期的に頓挫する可能性については、いかがお考えでしょうか。

黒田参考人 私どもといたしましては、当然、二%の物価安定目標、これはいわば国際的なスタンダードになっていると思いますけれども、これをできるだけ早期に実現するということのために引き続き量的・質的金融緩和を実施してまいりたいと思っておりますが、他方で、持続可能な財政構造を確立するということは、日本経済が持続的な成長を達成していく上では必須の前提でありまして、日本が国全体として取り組まなければならない課題であるというふうに考えております。

 政府は、一月に公表しました日本銀行との共同声明においてもこうした取り組みを進めていくということを明確に述べておられますし、日本銀行としては、政府による財政再建への取り組みの着実な推進を強く期待しているところでございます。

三木委員 日銀と政府の考え方からすればそのような御回答になるかと思うんですけれども、日本の国債というのはボラティリティー、変動率が比較的落ちついているということで、メガバンクを初め銀行は、国債を保有することによってある程度、一定の安定した利益というものを、預金者の方にも安心感を与えつつ運用してきたという背景があると思うんです。

 保有債券評価損というものが、国債の金利がもし一%上昇すれば、大手銀行では二・九兆円、地域銀行では三・二兆円の合計六・一兆円発生してしまうということになります。金利が二%上昇すれば、同じく大手行は五・二兆円、地域銀行が五・五兆円の合計十・七兆円が値下がりして、損失をかぶるおそれがある。

 現在の各機関の国債保有状況は、国庫短期証券、国債、財融債の合計が、本年六月及び九月末の数字で、上位ですと、ゆうちょ銀行が約百三十七兆円、日銀が百五十兆円、海外の投資家が八十兆円、三菱東京UFJが約四十兆円、三井住友フィナンシャルグループが約十五兆円、みずほが約二十五兆円となっております。

 資産は評価損ではありますけれども、現在の制度上、金融機関は、満期保有目的に分類した国債は、売買目的等に振りかえたり償還期限前に売却するとペナルティーが科せられるという自己資本規制の壁というものもございますので、その多くを流動性のあるその他としているため、実際には国債を満期まで持ち切ったとしても、保有期間途中の下落による評価損が生じれば、その時点で銀行の自己資本比率が低下するということもあり得るというふうに考えております。

 そのように、金融機関の保有国債の評価がもし万が一下がった場合、金融危機が発生するおそれについてはいかがお考えでしょうか。

田中参考人 お答え申し上げます。

 金利の上昇が金融機関の経営あるいは金融システム全般にどのような影響があるかというお尋ねだと思いますけれども、先生の御質問の中にございましたとおり、金利が上昇いたしますと債券の価額が下がるということでございますので、金融機関が保有する債券の価値を下落させる方向に働くというのは事実でございます。

 ただ、金利の上昇の背景といいますものが経済情勢の改善を伴うというものでございますれば、利ざやの改善でございますとか、あるいは貸し出しのボリュームがふえるということなどを通じまして、金融機関の収益にはこちらの方はプラスの方向に働くということでございますので、金利の上昇が金融システム全般に与える影響というのは、プラスマイナス両面を総合的に考えていく必要があろうかというふうに思っております。

 また、私どもの方で定期的に、金融機関の金融システムにおける体力といいますか耐性といいますか、どれぐらいの金利上昇に耐えられるかということをチェックいたしておりますけれども、私どもが分析しているところによりますと、債券の保有状況でありますとか、あるいは自己資本の充実度というのに照らしますと、金利が上昇いたしましても、金融機関経営や金融システムの安定に大きな影響が及ぶというふうには現時点で考えてはおりません。

 いずれにいたしましても、金融システムの安定性というのが維持されることが経済成長の前提でございますので、日本銀行といたしましては、金融環境の変化が金融機関の行動に与える影響を注視しながら、金融機関に対して、必要に応じ、適切なリスク管理が確保されるよう促してまいりたいと考えております。

三木委員 非常に対話を密にしながらそれを進めていくので、両面があるから大丈夫だというような御答弁だったと思うんです。

 先ほどから、金利が上昇するのではないかということに関して、リスクプレミアムを圧縮しているので金利の上昇は抑えられているんだという御答弁もあったと思うんですけれども、実際にメガバンクの中には、日本の国債を保有することによって、運用方針とか、今までの国債保有とは違って、抱えることによるリスクとかをやはり考えるようになってきていると思うんですね。メガバンクの中でも、例えば三井住友とかは、国債の保有から株式であるとかいろいろなものに振りかえて、国債の保有残高を少しずつ減らしてそちらの方に振りかえていっているということで、いろいろ雑誌とかにも書いてあるんです。そういった場合に、国債を保有することによって安定的に運用をしていた銀行が違うものの投資に振り分けていくことというのは、リスクプレミアムを圧縮するということとある意味相反するようなことを銀行自体が行っているんではないかというような懸念があると思うんです。

 国債を保有して安定的な運用をしていたことから、流動的に資金がそういう方に流れていくことに関する見方というか考え方というのをちょっと教えていただければと思います。

田中参考人 お答え申し上げます。

 金融政策の変更等による金融環境の変化を受けまして金融機関がどういうようなポートフォリオ運用をするかというのは、基本的には、個別の銀行が自分たちの相場観といいますか、先行きの経済、金融の動向あるいは株がどうなるかということをある種判断しながら、同時に、他方で、自己資本というものをベースにしてどれぐらいリスクがとれるのかというのを時間軸の中で考えていくということであろうというふうに思っております。

 私どもの立場から個別の銀行の投資行動について解説するわけにはまいりませんけれども、全体として見て、私どもとしては、金融機関に対して常々、適切なリスク管理のもとでの投資行動をやってくださいということを、いろいろな場を通じてお願い、指導しておりまして、その大枠の中から現状は外れているというふうには全く考えてございません。

三木委員 自己資本の中でポートフォリオをどういうふうに構築するかは金融機関のそのときそのときの判断であって、日銀としては適切な金融投資をするようにというアドバイスで対処しているというふうに、私ももちろんそれは理解はしているんです。ですから、国債の金利が異常に上がってしまうんじゃないかというふうな懸念がもしまだあるとすれば、物価上昇を目指す政策自体がどこかで間違っているんじゃないかというような心配の声もあるんですけれども、それはいかがお考えでしょうか。

田中参考人 金利の上昇をめぐる政策に関する議論については本委員会で総裁からいろいろ御答弁申し上げていることだと思いますけれども、いろいろ金利の上昇が金融機関経営に与える影響というのを考えるときに、普通は、その他の条件を一定にいたしまして、金利が一%上がったとき、二%上がったときに債券価額の下落の影響がどうなるんだというのは分析の出発点として重要なものだというふうに考えておりまして、私どももそのような分析を実際にいたしておるわけでございます。

 ただし、金利が上昇する局面といいますのは、普通に考えますと資金需要の方が供給よりも強いという場面でございますので、皆さん、お金が欲しいという局面だと思うんですね。そういうことでありますと、民間金融機関の貸し出しがふえたり、あるいは資金の利ざやが拡大したりということでございますので、その点は金融機関の収益にとってはプラスの方向に働くということであろうかと思います。

 したがって、大事なことは、今後の経済、金融全体がデフレ脱却という方向に向けて進んでいくかどうかということが重要でございまして、金利の上昇というだけを取り出していろいろ分析しても、なかなか金融システム全体への正しいインプリケーションというのは導き出せないのかなというふうに考えてございます。

三木委員 今のお答えの中で金融機関の利益の話も出たんですけれども、先ほどから、国債の大規模な購入によって当座預金の額がそのまま積み上がっている状態だということを、坂元委員初めほかの委員の皆様も御指摘されているところだと思うんですけれども、マネタリーベースで十月末の残高が約百九十兆円と、三月末から四十四兆円の増加となっています。しかし、同じく日銀当座預金の残高の増加分は四十三兆円となっており、マネタリーベースと同等であると思います。

 日銀の当座預金に残高が残っているとか、残高をふやしていくことを目標に政策を打っていくということ自体は間違ってはいないと思いますし、黒田総裁がお考えのとおり実行されているということだと思うんですけれども、実際に供給マネーが経済の拡大に供されていないというふうに考えられるのではないか。今言った中小企業に対する貸し出しであるとか、そういうものに対して振り分けられていないのではないか。マネーストックの伸び率が十月時点で前年比三・三%で、マネタリーベースや日銀当座預金残高の伸びに比べると非常に小さい状況にあるというふうに思っているんですね。

 日銀が緩和しただけでは、機能不全を起こしている日本経済の回復には至らない。金融機関は既に資金が実はあり余っている状況であって、固定金利オペレーションの札割れが常態化していることを見てもこのことは顕著である。つまり、既にあり余るほど供給された資金をどう民間へ、実体経済へと転換していくのかが大きな課題となっているのは、もう皆さんの御質問の中で示されていることだと思うんですけれども、実際には、金融機関は十数年間、貸し出しを抑制したままであって、資金供給を切望している中小零細企業などには厳しい状況が今続いているわけでございます。

 過去より、金融機関から民間への資金還流が景気浮揚の本質的大きな課題となっておりますけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 だからデフレなんだと思います。簡単に言えば、それが全てです。デフレだからこうなる、こうなってきたということであります。

 したがって、デフレというもの、正確には資産デフレによる不況、デフレだから好況とも限りませんし、不況とも限らない。これは、インフレだから好況とも限らない、不況とも限らないのと同じことだと存じます。

 我々は、とにかく、過去六十七年間でデフレーションというものをやったことがありません。したがって、ここにいる人を含めて、日本じゅう、デフレ経験者はゼロです。したがって、デフレ対策はもちろんやった経験者もゼロ。間違いなく、第二次大戦後、そうなってきております。世界じゅう、デフレを経験した国は一つもありませんので、そういった意味では、この二十年間近く、我々はデフレ対策というものをやらずにインフレ対策で不況に対処してきた、後世、歴史家からそう非難されてもやむを得ない、私どもはそう思っております。

 したがって、何としてもデフレから脱却していくためにはどうするかというので、今回、異次元のとかいろいろな表現を使っておりますけれども、そういったことをさせていただいておるということだと思っております。

 もう一点は、幾ら銀行に金が日銀から来ても、日銀当座預金に金がたまるだけで、それから先に出ていかない、マネーサプライがふえないということは、簡単に言えば、デフレで企業が、民間が貯金をしても、金を銀行から借りて物を買う、投資をするということをしないところが最大の、今、需要が起きてこない、その需要をどうやって起こすかというところが一番の問題なんだと思っております。

 もう一点やはり考えておかにゃいかぬのは、そういった融資をもらいたいという企業が仮にあったとしても、そういった融資を希望するところは総じて新興、新しい企業というので出てきた場合には担保物件が不足している、または融資の対象としてはいかがなものかというようなところに関しては、中小零細企業に対する金融という面は、いろいろな意味で、金融側もそういった企業を育成するというような観点に立って、銀行としては企業育成の観点からもやっていかねばならぬということを私どもは考えております。

 新規の融資につきましては、新規需要の掘り起こしを、企業の側に立って、銀行もそういったものを地場でやって、またこの十月には、金融機関によります先進的な取り組みの事例というものも、既に事例集としてまとめて公表もさせていただいておりますので、いろいろな意味で、金融機関としても、今後、創意工夫を凝らして、新規の融資、すなわちマネーサプライがふえていくような形で、それが結果として景気に影響を与えるように、我々としては努力をさせていただきたいと思っております。

三木委員 デフレという言葉は非常に便利な言葉だなというふうに思うんです。デフレだから、まさに借りる人が少なくなってきているんだ、中小企業は規模を縮小したんだ、日本はそういう経済状態だから海外に進出していったんだ、そういう企業がたくさんあるから、今まだその貸し出しに二の足を踏んでいる企業が多くあるんだと。また、それと、経済が悪化してきたことから、銀行が企業に貸し渋りをしてきた側面がやはり否めない。それを防ぐために今麻生大臣がおっしゃったような政策が次々と打ち出されているという今の現状は私も理解をしておりますけれども、国内企業の中で、内部留保金が十年間で百兆円も増加しているというような状態が引き起こされているわけでございます。

 つまり、何があるかわからないから、いざというときにはこのお金を使って会社の救済に当たろうと。要するに、引き締めの部分がまだまだ続いていて、この金融緩和という政策をとっても、先ほど私も述べました、麻生大臣もおっしゃっていただきました、黒田総裁もおっしゃっていただきました、マネーサプライというものが伸びていかないんだというふうなことになっているんだと思うんです。

 今、日本の中にある中小企業に対する対策というものは、今麻生大臣がおっしゃったように政府が打ち出されていると思うんですけれども、一つ私が聞きたいのは、例えば、日本の中で経営が難しい、人件費も高いしということで海外に進出していった企業などに、また国内に戻ってきて経営をしたらどうだというような優遇措置であるとか、そういった政策を打ち出すお考えというのは、打ち出すというとおかしいですけれども、そういうお考えは麻生大臣の方ではお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 これは企業にとりましては、下手な言い方をすると経営権に対する介入になりますから、うかつなことは言えませんよ。おたくは閉めて愛知県に戻ったらなんて、それは言えるわけがないでしょうが。トヨタだってそんなことはやりませんよ、傘下企業に対して。僕はやらぬと思いますね。大体、余計なお世話だ、俺たちの経営判断でということを言うのが普通の、まともな経営者だったらそう言うと思う。

 しかし、今、状況として、帰りたいというのであれば、それは基本的に、JICAだったりいろいろ、金をこれまで借りていた経緯やら何やらというのはありますでしょうから、そういったものをやっていく。

 また、人件費を見ましても、人件費が安いからと思って中国に行ったけれども、人件費はこの間ぶわっと上がってきておりますから、とてもじゃない、人件費でやれないからほかのところにといっても、行くところがないから日本に一回帰りたいとか、いろいろありますよ。

 そういったものに関しての対応というのは、今、出先機関で、JICAやらジェトロやら銀行やら、また海外に進出しておられる銀行あたりがそれの相談に乗っておられると私どもは理解しております。

三木委員 余計なお世話ということかもしれませんけれども、実際に中国に進出している企業なんかは、人件費のこともありますけれども、今、非常に大気汚染も進んでいて、日本企業というのは非常に苦慮している。ある意味、日本企業を国内に、麻生大臣のお考えとは違うかもしれませんけれども、呼び戻すチャンスではないかなというふうに思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 その国の情勢等々、元が高くなった、円は安くなった、人件費は、日本の方がこの十年間の間ずっと上がらない分だけ、他国は上がっております。したがって、人件費の差がなくなってきた等々、いろいろな条件は十五年前とは随分変わったものになったというのは、進出した企業の現場に行かれたら、皆よくわかられるところだと思っております。

 今後、それらの国がどうなるかという先行きのことを考えておかなければならぬ。今、多分、中国進出企業が一番揺れているというのは事実ですな。私どものところにお見えになる方々も総じてそういった方が多い。だから、それをやめてミャンマーに出ました、ベトナムに行きました、カンボジアに行きました、ああいった企業というのは、大きな企業でも工場を移転しているところは幾つもあります。そういったところがあるので、もしそういった企業が日本に戻るといった場合は、日本にとってのメリットといえば、それは、間違いなく日本で雇用がふえるということなんだと思いますね。

 したがって、この二十年ぐらいの間、先ほどトヨタの例が出ていましたけれども、トヨタは、極めて厳しい経済状況に円高のおかげでなりながらも約六十三万人ぐらい国内の雇用を維持したと思います。出て行った日産は国内生産比率を二十何%まで落としたけれども、トヨタは四十何%を維持しましたものね。結果として、雇用人口の差に大きな差が出て、今日になってこういう状況になると、今度は急激にトヨタがよくなってきているというのが今言えることだと思います。

 それは、その場その場において経営判断、運もあるでしょうし、いろいろなことを考えてやらねばならぬところだと思いますけれども、国としてどちらの方がというのであれば、今の状況がずっといくという保証はありませんから、我々としてはずっといかせたいと思っていますけれども保証はありませんし、そういった意味では、経営の判断によるところに介入するというのは、なかなか難しいところかなとは思います。

三木委員 大変、麻生大臣の見識の高さをお聞かせいただきまして、質疑持ち時間が終了いたしました。

 確かに、経営権に介入するということは政府としてはいかがなんだという部分もございますけれども、実際、大気汚染が進む中では、やはり日本人の健康に配慮してというような、ある意味もっともな理由がつくと思いますので、ぜひそういう点も、マネーサプライを引き起こす、そして雇用を増大させるために御検討いただければ幸いでございます。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

林田委員長 次に、中山展宏君。

中山(展)委員 自由民主党の中山展宏でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、かつて証券会社に勤めておりまして、債券の市場で主に自己売買をさせていただいておりました。その後、日本銀行の理事であられました鈴木淑夫元衆議院議員の秘書になりましたことが、国政へのきっかけでございます。ですので、本日、黒田総裁への質問を大変待望しておりました。何とぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、この一月にインフレターゲットを明示して約十カ月、そして、異次元の緩和政策を導入して約半年がたちました。二年間程度を念頭に物価安定目標を実現するというその四分の一の時間が過ぎたわけでございます。きのうの記者会見でも、道筋を順調に進んでいるとお答えになっておられますが、改めて、目標に対しての進捗状況、また、当初描かれたシナリオに対して順調かどうか、お尋ねをいたします。

黒田参考人 我が国経済の状況を見ますと、量的・質的金融緩和はその効果を着実に発揮してきているというふうに思います。

 すなわち、金融市場では、株価が上昇している一方で、長期金利は、日本銀行の巨額の国債買い入れもあって、安定的に推移しております。この間、予想物価上昇率は全体として上昇していると思いますので、結果的に実質金利は低下をしており、民間需要を刺激している。そのもとで、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働き出しておりまして、我が国経済は緩やかに回復に向かっているということでございます。

 物価面を見ますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、石油製品などエネルギー関連の押し上げだけではなく、景気が緩やかに回復を続けるもとで、上昇品目の広がりを伴いながらプラス幅を拡大しておりまして、九月にはプラス〇・七%となったことは御案内のとおりでございます。

 このように、我が国経済は、量的・質的金融緩和のもとで好転の動きが幅広く見られておりまして、二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋をこれまでのところ順調にたどっているというふうに考えております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 この九月の消費者物価、コアCPIが〇・七%、そしてコアコアが〇・〇%ということで、順調に上昇しているということであると思います。

 今のところ、こういった物価上昇に何が寄与しているのか。これは、円安、エネルギー価格によるコストプッシュが主因という話も出ておりますが、これからの展開も含め、どのようにお考えか、お示しいただきたいと思います。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、生鮮食品を除くベースでプラス〇・七%になっているわけですが、その中で確かにエネルギー価格などの寄与があったことは事実でございますが、他方で、幅広い品目で改善が見られておりまして、委員御指摘のとおり、コアコアでも、ほぼ五年ぶりぐらいだと思いますが、マイナスがゼロのところまで来ているということでございます。

 確かに、円安あるいはエネルギー価格の上昇といったものが、当初、物価の上昇に、あるいはマイナスが消えていく過程で寄与したことは事実でございますが、今や、かなり幅広い品目で改善が見られるところから申し上げましても、やはり、底がたい内需が経済成長率を引き上げているということから見ましても、物価の上昇へ内需の寄与が出てきているというふうに思いますし、今後を見通しますと、内需を中心とした成長が引き続き持続するというふうに思っておりますので、物価上昇率も次第に高まっていく。ただ、一本調子でいくということではなくて、若干の振れを伴いながら徐々に上昇していくというふうに見ております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 日本銀行は、金融緩和による物価上昇への波及経路を三つ示しておられます。その三つの経路が物価安定に寄与するまでには、それぞれの経路によって時間差があるとは思います。

 一つ目の、資産価格のプレミアムに働きかけ、これは感応度が高く、瞬発力もよかったと思います。

 そして二つ目の、貸し出しやリスク性資産にシフト、ポートフォリオリバランスの話ですが、これは後ほどちょっとお伺いをさせていただきます。

 三つ目の、市場や経済主体、企業や家計の期待の転換についてお伺いしたいと思いますが、BEI、ブレーク・イーブン・インフレ率は上昇基調をたどっておりますが、一方で、国債の、JGBの五年のフォワード五年レート、金利は一%を下回るという低い水準にあります。これは、ちょっと跛行色があるというか、ちぐはぐな状況であろうかと思いますが。

 日本銀行が意識しているフィリップス曲線、需給ギャップと物価上昇率の関係を示したフィリップス曲線のシフトアップであったり、また、傾き、スティープしているかどうか、そういった兆しが見えているのかどうか、期待インフレ率の動向について、マインドの変化や期待の高まりについてどう受けとめておられるか、お示しをいただきたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、この予想物価上昇率というものは、直接的にはデータで示すことはできないわけでございますが、各種のアンケート調査、あるいは、いろいろな物価連動国債を用いたブレーク・イーブン・インフレーション・レートその他間接的に計算される指標もあるわけでございますが、それらを全体として見ますと、徐々にインフレ期待は高まっているとは思いますが、二%のところに達しているわけでは全くございません。

 さまざまな指標を見ますと、一%前後のものも多いようでございますし、いわゆる物価連動国債を用いたブレーク・イーブン・インフレーション・レートですと一・五%前後ぐらいになっていると思いますけれども、いずれにせよ、予想物価上昇率はさまざまな指標がありますので、そういったものを全体として見ていくということしかないのかな、そういうものを全体として見ると予想物価上昇率は上昇してきているというふうに考えております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 続きまして、消費税引き上げの影響について伺います。

 安倍総理は、十月一日、日銀短観で景気動向を最終確認した後、来年四月からの消費税率三%引き上げを予定どおり実行することを表明いたしました。その際、二〇一三年四―六月期のGDPの成長率は高かったというのもありますし、また、財政規律を堅持する姿勢を示し日本の財政や国債に対する信認という観点からも引き上げは不可避であるという見方と、その一方で、景気回復に水を差す腰折れの懸念という見方もございました。

 そこで、お尋ねをいたします。

 九七年の消費税引き上げ時の経済環境と現在の経済環境との比較並びに来年度、消費税引き上げ後の景気見通し、特に景気の下振れ要因がございましたら、お教えいただきたいと思います。

黒田参考人 私も個人的に、一九九七年の消費税率引き上げの際には大蔵省で国際金融局長をやっておりまして、よく覚えておりますけれども、消費税が引き上げられた直後には、特に四―六月は成長率が一旦大きく下がったわけですけれども、その後は回復の兆しを見せておりました。

 ただ、そのやさきに、八月に御承知のアジア通貨危機が起こりまして、さらには十一月に日本の大手金融機関がほとんど毎週のように破綻するというようなことが起こりまして、我が国の景気は一気に悪化していったわけでございます。

 この時期の景気悪化の原因については、エコノミストがいろいろ分析しておりますけれども、こうしたさまざまな要因が影響したのではないか、特に、十一月に起こりまして、その後日本の金融システム全体についての疑念が生じ、金融機関の状況が非常に悪化したということが相当影響したのではないかというふうに言われております。

 翻って、足元の状況を見ますと、日本の金融システムは安定性を維持しておりますし、また海外経済は徐々に持ち直しに向かっているほか、新興国は以前に比べますと対外的なショックへの耐性をかなり高めておりますので、九七年の状況とは相当違っているというふうに思います。

 日本のこの経済状況その他を踏まえまして、日本銀行としては、消費税率の引き上げを前提とした上でも、景気の前向きな循環が続き、基調的に潜在成長率を上回る成長を続けるというふうに考えておりますので、もちろんリスク要因としては海外経済動向とか雇用、所得の動向などについて引き続き注視していきたいと思っておりますけれども、基調的には、潜在成長率を上回る成長を続け、物価上昇率は徐々に二%へ向かっての道筋をたどっていくものというふうに考えております。

中山(展)委員 ありがとうございました。

 黒田総裁のお答えは、消費税の引き上げに、景気への影響の面からも、財政の持続可能性に対する信認の面からも賛同していただいているものと理解をさせていただきました。

 もう時間がございませんので最後になりますが、物価安定目標の実現の蓋然性が高まれば、長期金利は織り込んでいく、上昇していくことになろうかと思います。しかも、そのときは、目標達成に懐疑的な方もいますので、かなりボラタイルな相場になるのではないかと思いますが、総裁におきましては、市場と親和性を高くコミュニケーションをお図りいただき、日本経済が成長軌道を巡航速度で進んでいく明るい環境のもとで異次元からの出口を示唆される日を御期待、お願い申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

林田委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 また、黒田総裁を初めといたしまして日銀の方々には、日々の激務、本当にありがとうございます。

 私は、今回の大胆な金融政策緩和というのは、高いレベルで功を奏しているというふうに思っております。そして、実はその成功要因のかなめは、政府と日銀が同じ目的意識を共有することによって、お互いに要望し合っている関係を築けたことだと思っているんですね。ともに日本経済の健全な発展に貢献をするという大目的を掲げて、それまではお互い、独立性を担保するという意味で、本当はお願いしたいこともお願いしなかったような歴史があったわけですけれども、手段に関しては独立性は担保するけれども、お互い要望し合うことは要望し合って、同一の目的に向かってパートナーとして歩むというようなことが、今回のキー・サクセス・ファクターだというふうに思っております。

 したがいまして、きょうのこの質問を通しまして、景気回復というお互いの目的のために政治家として日本銀行にさらにお願いしたいことを申し上げて、同様に、この目的達成のために日銀として政治にアドバイスをいただけるようなことが明確になればいいなというふうに思っております。

 その意味で、一点目に、きょうの委員会でも議論に出ていますけれども、出口戦略に関しましては、この時点で議論をする、質問をすること自体が不適切だというふうに私は思っているんですね。それは、今回のこのデフレ脱却に向けた手法というのは、市場や生産者やそして消費者の期待に働きかけているわけで、まだデフレ脱却が実現していない中で出口をちょっとでも議論すること自体が、その期待に対する働きかけをおくらせてしまう、マイナスの影響を与えるから、ここの時点でそのことを議論すること自体が非常にマイナスの影響が大きいと思っています。

 しかしながら、出口戦略が確実に行われるということを市場に確信させることも、デフレを脱却するためには非常に重要な一つの手法であります。

 したがいまして、その手法やタイミングについては、そのときの状況で順番も違うでしょうし、やり方も違うわけですけれども、大切なことは、ここで日銀総裁として、どのタイミングか、どういう手法かはわからないけれども、そのときの状況に倣って確実に適切な出口戦略を行っていく自信がありますと宣言をしていただくことが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、現在は、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を行っているところでございますし、足元の生鮮食品を除く消費者物価指数の動きもプラスになって、〇・七%ぐらいになったところでございますので、現時点で出口に向けた具体的な議論をするというのは時期尚早だと思います。

 ただ、その中で、御指摘のように、出口に際して、経済・物価情勢あるいは市場の状況を踏まえて最適な方法をとるということは当然重要なことでございますし、私からも、そういった経済・物価情勢、市場の状況を踏まえて最適な方策をとるということは申し上げられると思います。

岡本委員 御答弁が自信満々でいらっしゃいましたので、自信がおありになるというふうに受けとめさせていただきたいと思います。

 次に、消費税上げに伴いまして、一部マスコミでは景気の腰折れ懸念が言われておりますけれども、そういうことが万が一にも起こらないように、政府といたしましても経済対策を打つわけですけれども、四―六のGDPが発表されるのが八月の末だということを考えますと、ある程度影響が出た後に手を打つのでは遅過ぎると思うんですね。そういうことが万が一にも起こらないように先手先手を打つということが政府にも日銀にも求められているというふうに思うんですけれども、必要があれば、早いタイミングで、先手先手で十分な追加的緩和措置をする準備があるということをぜひ御答弁いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

黒田参考人 前々から申し上げていますとおり、日本銀行としては、消費税率の引き上げに伴う駆け込み、それから反動減といった振れは予想しておりますけれども、我が国経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋をたどっていくというふうに見ておりますので、現時点で何か追加的な政策をとるということは考えておりません。

 ただ、今後、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じて、二%の物価安定の目標を実現するために必要であれば、ちゅうちょすることなく調整を行っていく方針でございます。

 その際、物価の先行き見通しを考えるに当たっては、これまでと同様、GDPだけではなく、さまざまな情報を活用し、適時適切に判断してまいりたいというふうに思っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 結果を見た後の事後的な対応ではなくて、適切に先読みをしながら適切な金融運営をしていただけるという御答弁、大変心強く思います。

 続きまして、一番初めに前原委員からも御指摘があったように、理由はどうであれ、公共投資と住宅投資については調子がいいわけですから、確実な景気の拡大を見通す上では、個人消費と設備投資が重要になってまいります。

 その意味で、まず、個人消費を左右する賃金についてお伺いをしたいんです。

 安倍政権が始まりました後に、個人消費の多くは実は株価と連動しておりまして、この一年間の株価の推移と個人消費の推移を回帰分析いたしますと、非常に高い相関関係が示されております。したがいまして、株価の上昇が資産を持っている方の消費を誘発してきたという面は大きいと思うんですけれども、ただ、結果的に、その消費をされた分が株を持っていない方への生活へも好影響を与えておりますので、このことは悪くないと思うんですね。

 次は、資産を持っていない方も消費に刺激が与えられるような、つまり、賃金の上昇をどのように促していくかということだと思うんですが、総裁もさまざまなインタビューでおっしゃっているように、そこにはある程度の時差は起こりますけれども、景気のマクロ拡大というのは確実に賃金の上昇につながっていくというふうに私も思っております。ただ、しかしながら、この状況では、残念なことに、実感できるような賃金の上昇というのはほとんどの国民の方にまだ起こっていないんですね。

 しかしながら、将来、例えば来年か再来年、確実に賃金、所得が上昇するというふうなことが確信できれば、今の貯金のレベルを下げてでも消費しようという気持ちになります、その安心感が。そして、その消費が本当に実体経済を押し上げるような好循環になりますので、日本銀行総裁として、将来の賃金の上昇は確実視している、自信を持っているというふうなことをお述べいただくことが非常に重要だと思うんですけれども、改めまして、賃金の上昇の確実性についてお伺いしたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、雇用状況は顕著に回復しておりまして、失業率や有効求人倍率は、ほぼリーマン・ショック前の水準まで戻っております。その意味で、労働需給は改善をしているというふうに思います。

 また、企業収益も改善しておりまして、その中で、夏のボーナスは三年ぶりに前年比プラスになるということで、名目賃金は全体としては下げどまりつつあるわけですが、先ほど申し上げたとおり、所定内賃金はまだ若干のマイナスを残しているという状況でございます。

 私は、今後も、経済が緩やかに回復して、経済活動の水準が高まっていき、労働需給がさらに改善していくということは続くと思いますので、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくというふうに考えております。

 また、現在行われている政労使の連携による取り組みも賃金上昇の後押しとなるということを期待しておりまして、御指摘のように、今後、雇用者所得は増加していくというふうに見ております。

岡本委員 ありがとうございます。

 続きまして、設備投資について質問をさせてください。

 申し上げるまでもなく、景気の拡大循環をつくる上で非常に重要なんですけれども、加えまして、日本の場合、設備投資の発注をかけますと、ほとんど日本の国内生産者に注文を出しておりますので、中小企業に対する受注効果が非常に大きいという意味で、さらなる乗数効果を生んでいます。

 しかしながら、残念ながらこの数字は伸びておりませんで、経営者としてみれば、将来に対する販売の伸びが見通せない、確信できないとなれば、設備投資のタイミングをおくらそうという心理は当然なんですけれども、非常に重要な設備投資を判断する一つの基準に、やはり金利の水準はあると思うんですね。

 特に、多くの中小企業は、借り入れをしながら、それで設備投資をされていくわけです。現在、三年の金利が国債で〇・一%、五年で〇・二%、十年で〇・六%というのは、歴史的に、イールドカーブのフラットからいっても、絶対水準からいっても、非常に低い水準です。

 しかし、今後、確実に二%程度のインフレが起きてくるとすると、景気がよくなった、いい金利の上昇として金利が上昇する可能性が高くなるわけですから、私も政治家としてよく企業経営者の方に申し上げているんですけれども、ぜひ日銀総裁からも、金利の水準を考えたときに、経営者の皆さん、今がチャンスです、チャンスなんですというふうなメッセージを送っていただければと思いますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、量的・質的金融緩和のもとで、長期金利が非常に安定しておりまして、また、新規の貸出金利は既往最低水準まで低下してきているわけでございます。

 一方で、先ほど来申し上げていますとおり、予想物価上昇率は徐々に上がってきておりますので、実質的な資金調達コストは極めて低い水準まで低下してきております。したがって、企業の設備投資を後押しするという意味で、金融環境の緩和の度合いは着実に強まっているわけでございます。

 今がチャンスですよというふうに私も申し上げたいと思いますが、ちょっと日銀総裁として余りそういうことを申し上げるのもいかがと思いますが、現時点の実質的な資金調達コストの低下、金融環境の緩和度合いというのは、これを活用して設備投資をするというのには非常に適しているというふうに思います。

 ちなみに、設備投資も、これまでは非製造業中心に伸びてきていたんですが、ここに来てようやく製造業も伸びを高めておりまして、先行指標の機械受注も改善傾向がはっきりしているということで、私は、設備投資は持ち直してきているというふうに考えておりますし、日本銀行としても、企業がこうした緩和的な金融環境を積極的に活用することを期待しております。

岡本委員 ありがとうございます。

 続きまして、金融庁に一つだけ質問をさせてください。

 銀行の融資は、全体としては伸びておりますけれども、メガバンク、地方銀行は伸びておりますが、実は信用金庫は下がっております。もちろん、信用金庫がお客様として対象にしている小規模企業、中規模企業の企業経営者のマインドが十分に温まっていないということ、借り手側の気持ちが十分ではないということが大きな要因の一つだと思いますけれども、一方で、信用金庫を初めとした地域金融機関の方々の目きき力にも改善の余地があるのではないかなというふうに思っております。

 申し上げるまでもなく、金融機関は、免許を取って、ある意味公的な役割も担って、その地域経済の発展を担っているわけですから、本来であれば、信用リスクが低ければ低い金利で貸す、信用リスクが余りにも高過ぎれば貸し出しをせずに貸し倒れを防ぐ。しかしながら、ある程度の信用リスクであれば、その分のクレジットプレミアムを乗せて適切な金利で貸していくというこの真ん中のところが全部そげ落ちてしまっているような印象を持っているんです。

 このような状況を背景といたしまして、地域金融機関が実際に信用創造を起こしていくような御指導をこれからどのようにされるかということを御答弁いただければと思います。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、信用金庫は、顧客企業との距離が近い、地域に密着した協同組織金融機関でございます。

 したがいまして、それぞれの地域における中小企業のニーズに的確に対応して、金融仲介機能を発揮していくということを期待しております。

 そうした特性があるわけですので、顧客企業との日常的、継続的な接触を行いまして、目きき能力を発揮して、借り手企業の事業価値を的確に見きわめる、担保、保証に過度に依存するのではなくて、きちんとした新規融資の取り組みを行っていくことが求められております。

 こうした観点から、従来から監督指針にこうした観点を盛り込んで指導しておりますし、ことしの十月に公表いたしました金融機関の新規融資に関する参考事例集の中で、信用金庫における比較的リスクの高い先に対する融資の取り組み事例、こういうものも紹介しております。

 こうした事例をも参考としつつ、各信用金庫それぞれ創意工夫を凝らした取り組みを促してまいりたいと思っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 最後に、日銀総裁にもう一つだけ質問させてください。

 万が一にも景気の腰折れがあってはいけないということで、政府・与党といたしまして五兆円の経済対策を考えておりますけれども、この中身等につきまして、何か要望、アドバイスがあれば、同じ目的を共有するパートナーといたしまして、前向きで建設的なアドバイスをいただければと思いますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘の経済政策パッケージの中で、成長力の底上げ、あるいは政労使の連携による経済の好循環の実現、なかんずく消費税率の引き上げによる反動減の緩和のための政策などが、十月に公表された全体のパッケージで示されているわけでございます。

 伺うところでは、総理も、このパッケージは、目先の経済を押し上げるだけの一過性の対策でなくて、将来にわたって投資を促進し、賃金を上昇させ、雇用を拡大する、そういった意味で、未来への投資であるというふうに述べられているように伺っております。

 私も、こうした長期的な視点というのも非常に重要だと思いますので、一面で、消費税率の引き上げによる反動減の緩和ということも重要ですけれども、あくまでも長期的に経済を押し上げていくといった面が極めて重要であろう、そういう意味でこうした政策が着実に実施されていくことを期待しております。

岡本委員 前向きで誠実な御答弁、ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

林田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時三十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

林田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、麻生財務大臣に確認をしたいと思います。

 読売新聞の十一月十六日付に、一面トップですけれども、「特区で企業本格減税」、こういう記事が出ておりまして、国家戦略特区で七項目の減税、免税策が盛り込まれた減税原案というものが作成されたというふうに報道されておりますが、この中身は事実でしょうか。

麻生国務大臣 この「特区で企業本格減税」、これは十一月十六日の読売新聞。この内容は、与党の内閣部会の国家戦略特区における減税策に関する要望内容というものをそのまま丸写しにしてあるというような感じの記事だと存じますが、現段階でこのような減税策というのは導入が決まっているわけではありません。

 これらの部会の要望内容というのは今から精査することになろうと思いますけれども、どのような税制を講ずるべきかにつきましては、この年末に向けて検討させていただくことになろうと存じます。

佐々木(憲)委員 この記事を見ますと、外資系企業それから新興企業の進出を促したいということで、外資系企業だけを特別優遇する減税を行うということが書かれておりますけれども、この外資系企業を優遇する法人税制というものを容認されるのかどうか、この点はどうでしょう。

麻生国務大臣 先生の場合、これは御存じだと思いますけれども、外国企業というものを誘致するためというか、それを目的として、東京都からの提言だと思いますが、外国企業のみにいわゆる持ち株会社などの優遇税制というものを与えるということに関しましては、これはOECDでよく議論されております有害税制に該当するということははっきりしておりますので、この御提言を採用するのは基本的には困難、これははっきりしておると思います。

 また、こうした点も踏まえつつ、国家戦略特区についてどのような税制を講ずるかというのはまた全然別の問題だと思いますが、年末に向けてその点につきましても検討させていただきますが、外国企業だけこういった優遇をするということは、OECDの関連からしても、これは基本的には無理です。

佐々木(憲)委員 わかりました。

 東京都の国家戦略特区提案書というのを見ますと、外資系企業を誘致するために特区内に新設される多国籍企業の日本法人に対する法人税の減免として、設立後五年間、軽減後の法人実効税率二〇・二%にするという本当に大変な減税を行うというわけでありまして、今、こういう制度そのものについては、有害税制ということで、認める立場はとらない、はっきりと答弁をいただきました。

 さて、それでは次に、自民、公明の税制改正大綱、これを確認したいと思いますが、生産性向上設備投資促進税制の創設(案)というところがありまして、それを見ますと、機械装置などに加え、建物、構築物でも即時償却を可能としております。

 東日本大震災の復興特区ですら、建物、構築物の特別償却は二五%で、即時償却ではないわけでございます。こうなりますと、復興支援よりも企業支援の方がえらい手厚くなってしまうということになりはしないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 佐々木先生の御指摘のあっております復興特区の税制に関しましては、これは、被災地の再建を促進する事業の用に供する建物などについて、いわゆる生産性向上の要件等々を付さずして、幅広く二五%の特別償却並びに八%の税額控除をしてきたところであります。

 一方、先般の与党税制改正におきましては、投資減税として、長期のデフレの中で消極的な投資マインドから抜け出せない企業経営者のマインドを反転させ、そして、利益を内部留保ではなく投資に結びつけさせるため、特に大胆な政策が必要という認識から、その認識自体間違っているわけではありませんが、即時償却制度を導入するということにしたところであります。

 ただし、今回の投資減税におきましては、日本の産業競争力を高めるという観点から、生産性の向上などにつながる建物であるといった要件を付しております。そして、税額控除については、八ではなくて三%ということにしている面もありまして、必ずしも復興特区の税制に比べて優遇されているとは言えない面もあろうと思います。

 さらに、今回の投資減税は、全国一律に適用されるものであります。したがって、復興特区におきましては、復興特区の税制と今回の投資減税の両方を活用していただけるという意味では、復興特区の方が優遇されているということになろうと存じます。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 先日の当委員会で、私は、国の補助金、助成金と比べて復興税制が不十分なために、震災後に立ち上げた漁業生産組合の問題を取り上げました。その場合の法人税の課税が発生しまして、経営が非常に困難になっているという事例でございます。そのとき、麻生大臣は、圧縮記帳の制度は支援金は対象とならない、支援金のみを特別扱いしろというのはなかなかできないんだ、こういう御答弁でありました。

 しかし、この日本再興戦略に基づく国家戦略特区法案あるいは産業競争力強化法案などでは、これまで以上に踏み込んだ法人税の軽減、免税措置をやろうとしているわけであります。建物、構築物の特別償却、この部分を見ても、被災地支援の復興特区よりも、民間投資活性化等のための企業への軽減税制の方がやはり優遇されていると言わざるを得ないわけであります。被災地の復興よりも民間投資を優先する、これはちょっとアンバランスだと思うんですね。

 やはり、今大変な事態にあるこの漁業生産組合がしっかりと生産を維持し、その地域の、地場の生産力として発展するように、そういう支援をきちっと行う、この投資減税という発想から見てももっとしっかりと支援を行う、こういうふうな姿勢はないんでしょうか。

麻生国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、今回の分につきましては被災地も使えることになりますので、そういった意味では、決して今度の方が優遇されているということにはならず、全国一律だと思っておりますので、そういうぐあいに思います。

 また、被災地において新しく企業を起こされるということになりますと、その分に関して外からの支援で丸々という、先日の御質問に関して、被災地に対する支援というものが、これまでのあれとは全然別にやったときにはというお話だったので、先生、それはちょっとなかなか区別が難しくなりますと申し上げたと思います。

 我々としては、被災地というものを十分に常に頭に入れておかねばならぬ、被災地の復興なくして、日本のほかのところは景気がよくなって東北三県だけが全然というようなことはとてもデフレ脱却とは言いがたいということになろうと思いますので、十分に配慮してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 この漁業生産組合で法人課税が突然発生するというような事態はぜひ避けるようにしていただきたいというふうに思います。今、復興の方が大切だ、こういうふうにおっしゃいましたので、そこはしっかりとやっていただきたいと思っております。

 次に、黒田日銀総裁に質問したいと思います。

 まず、国債の買い取りと保有の問題でございます。

 アベノミクスの柱と言われる異次元の金融緩和の一環として、日銀は、市中から国債の買い取りを大変ふやしております。数字の確認をまずしたいと思いますが、ことし三月末と直近の数値で、残高と構成比、それぞれ示していただきたいと思います。

内田参考人 お答え申し上げます。

 資金循環統計で見ました日本銀行及び銀行等の長期国債の保有残高及び全体の残高に対する構成比で申し上げますが、まず、三月末時点では、日本銀行の保有残高は九十三・九兆円、構成比で一一・六%、銀行等の保有残高は三百十四・六兆円、構成比で三九・〇%となっております。次に、六月末時点でございますが、日本銀行の保有残高は百十二・〇兆円、構成比は一四%、銀行等の保有残高は二百九十二・九兆円、構成比は三六・六%となっております。

佐々木(憲)委員 今、日銀の保有と銀行の保有と両方の数字を答えていただいたわけであります。

 ここではっきりとしておりますのは、わずか三カ月で日銀の保有が急増しているわけです。大体十八・一兆円ほど伸びていると思いますけれども、この理由を説明していただけますか、総裁。

黒田参考人 いわゆる量的・質的金融緩和というものを四月四日の金融政策決定会合で導入を決めたわけでございますが、このもとでは、長期国債の保有残高が年間約五十兆円に相当するペースで増加するように買い入れを進めるということになっておりまして、量的・質的金融緩和の一環として、日本銀行の保有国債残高が増加しているということでございます。

佐々木(憲)委員 銀行の保有残高が同様に減っておりまして、ほぼ同じぐらいの金額が日銀がふえているわけですね。

 これを見ますと、日銀が銀行から買い取っているということは明らかでありまして、これは直接引き受けるわけじゃないんですけれども、限りなく直接引き受けに近い状況になっているのではないかと思いますが、どういう認識をお持ちでしょうか。

黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、量的・質的金融緩和は、日本経済が長らく陥っておりましたデフレ状況から脱却して、消費者物価上昇率二・〇%という物価安定目標をできるだけ早期に、二年程度を目途に達成するべく導入された金融緩和措置でございます。

 したがいまして、その内容としては、先ほど申し上げた、年間約五十兆円に相当するペースで長期国債の保有残高をふやしておりまして、その結果、私どもとしては、三つの効果を期待しております。

 一つは、国債を含めたさまざまな金融資産に対してリスクプレミアムを圧縮し、金利の上昇を防ぐということで、経済に刺激的な効果を与えよう。二番目が、金融機関を含めた投資家のいわゆるポートフォリオリバランスという形で、国債以外の金融資産、貸し出しであれ、株式であれ、あるいは海外への投資であれ、そういったものを促進していく。三つ目には、こういった思い切った金融緩和を打ち出すことによって、人々の期待を転換させ、デフレ脱却に役立てたい。

 こういうことでございまして、以上三つの中の二つ目のいわばポートフォリオリバランスというものが徐々に進んでいる一環であるというふうに理解しております。

佐々木(憲)委員 間接的ではありながら、市中を通じて国債を大量に買い込んでいくと。

 今言われたのは黒田さんの考え方でしょうけれども、大きく言いますと、日銀ルールというものを中止して、そして、財政のいわば財布がわりに日銀が使われる、そんなことになっては原理原則がどこかに行ってしまいますので、注意をしていただきたいと思っております。

 そこで、大量の国債を買い取る形で、当然、マネタリーベースはふえていくわけであります。マネーストックのふえ方については、午前中に他の議員からいろいろ質疑がありました。

 この間、例えばマネタリーベースでいいますと、三月と十月を比べますと、百四十六兆円から百八十九・八兆円、前年比でいっても五割近く増加しております。マネーストックの方は、逆にそんなに伸びておりませんで、八百三十四兆円から八百五十二兆円ということで、約四%しか前年比で伸びていない。

 これはどういうことを意味するかといいますと、結局は、日銀からたくさん通貨が供給されていることは事実であります。それはマネタリーベースが急増しているということにあらわれているわけですけれども、問題は、銀行から先にお金が流れない、先ほど麻生大臣の御指摘ありましたとおりでございます。

 したがって、このままじゃぶじゃぶと資金を供給するということで、マネタリーベースは確かに、ことしの年末には二百兆円を目標にしている、さらに来年末には二百七十兆円だ。こういうことでどんどんとふえているのは、それはふやせるからそうでしょうが、問題は、そこから先のマネーストックの部分がふえていかない。これをふやさない限りは、日本経済の活性化につながっていかないわけであります。これはなぜそういうふうにならないのか、理由を説明していただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、マネタリーベースは非常なスピードで増加をいたしております。

 私どもの量的・質的金融緩和のもとでは、年間六十から七十兆円増加するペースで毎月毎月の金融調節を行っております。その内容として、先ほど申し上げたように、国債保有残高を年間約五十兆円ふやすようなペースで国債の買い入れを進める等々の措置を講じているわけでございます。

 その結果、先ほど申し上げたように、長期金利の低下圧力、それからポートフォリオリバランス、そして期待の転換ということが起こっておりまして、金融市場は極めて緩和された状況にございますので、十年物国債をとっても長期金利が〇・六%程度で推移しておりまして、非常に安定している。貸出金利もずっと低下してきておりまして、既往最低水準まで低下している。銀行貸出残高は、確かにまだ二%台前半の伸びでございまして、緩やかな増加にとどまっております。これは、日本経済全体として景気が回復しつつあるわけでございますけれども、企業の設備投資が、ふえてきてはいますけれども、特に製造業の設備投資はようやく出てきたところでございまして、まだ銀行貸出残高は全体としては緩やかな増加にとどまっているということでございます。

 そうしたことを背景に、マネーストックの増加も、御指摘のように、マネタリーベースが非常なスピードで伸びているのに対して、マネーストックは四・一%ぐらいの伸びでございますのでまだまだ低いわけですが、これでもたしか一九九九年以来ぐらいの伸びでございまして、銀行貸し出しも緩やかながら増加しておりますし、マネーストックの伸びもだんだんと加速してきているということで、全体として、量的・質的金融緩和のもとで金融が緩和した状況になり、徐々に経済も回復してきているということではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 今の説明ですと、なかなかこれは明るい展望につながるような感じがしないわけであります。資金需要が非常に低迷している。低迷しているのは、設備投資もありますし、全体としては投資を喚起する市場の広がりというのが非常に少ない。その一番基本にあるのはGDPの六割を占める家計消費だと私は思っておりまして、家計消費が急速に上向く、そういう状況にないわけです。

 したがって、そこに力点を置いた政策に変えるというのが私は大事なことだと思うんですけれども、どうも政府がやっているのは、今度は負担をふやす方を四月から実行しようと。それを打ち消すためにいろいろな対策を打ってはおりますけれども、やはり不安の方が国民は今大きくなっておりまして、駆け込み需要といってもそんなに大きくはないですね。

 したがって、このままじゃぶじゃぶ日銀がお金をふやしても、先にずうっと流れていかないという大変危険な事態に逆に今度は陥る可能性があるという感じが私はしているわけです。

 もう一方では、物価が上昇しつつある。その物価上昇は二年で二%という目標を掲げていますけれども、やはり庶民の生活を直撃するような物価上昇が今あらわれているんじゃないか。

 そこで、物価上昇に寄与した品目について、多い順番に五つか六つ、紹介していただきたいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

内田参考人 生鮮食品を除くベースの消費者物価指数の前年比に対する寄与度ということで、ことしの九月それから三月を比較してみた場合で、寄与度の拡大幅が大きい順に申し上げますと、ガソリン、電気代、テレビ、ルームエアコン、それから任意の自動車保険料、都市ガス代のようになっております。

佐々木(憲)委員 これは、やはり生活に極めてかかわる部分の物価が上昇している。ガソリン、電気代、都市ガス代、こういうわけですから、これは日常我々が生活をする上で必要な公共料金、あるいはそれに近い部分がぐうっと上がっている。これは、輸入物価が上昇し、とりわけその中でも石油製品、こういうものが、燃料が上がっているというのが根本にあると思うんですね。

 こういう状況で、庶民の暮らしは大変厳しくなっておりまして、消費者はもちろんそうですけれども、中小業者の場合は、原材料が非常に高騰しておりまして、しかし余り売れ行きはよくない、経営がなかなか厳しくなって、倒産ですとか廃業とか、そういうところに追い込まれているというのが実態だと思うんです。

 日銀としては二%を目標に上げると言いますけれども、その中で、生活関連の方はもっと上がっているわけです、実際上。同時に、消費税の増税が来年の四月以降加わりますから、これが加わったら四%の物価上昇、大ざっぱに言いますと。そうなると、当然、それを上回る所得の上昇がなければ、庶民の暮らしは下がっていくわけです。

 これは大変なことになるのではないかと思いますが、所得の伸びと物価上昇をどのように展望されているのか、総裁の見解を伺いたいと思います。

黒田参考人 まず、中小企業などを中心に、仕入れ価格を販売価格にどのくらい転嫁できるかということが、輸入品の値上がり、あるいは来年の消費税の導入の際に議論になるところでございます。

 具体的にどの程度転嫁できるか、特に輸入物価が上がった部分を、どのように仕入れ品の価格を製品価格に転嫁できるかということは、基本的にはやはり当該製品に対する需給動向に依存すると思いますので、景気が回復して需要が高まる中で仕入れ価格が上昇している際には、販売価格への転嫁も行いやすくなっていくというふうに考えております。

 私どもが目指しているのは、あくまでも日本経済が全体として成長する中で物価が上昇するということでございます。

 賃金につきましても、過去の統計データを分析いたしますと、賃金の上昇と物価の上昇とはほぼシンクロナイズした、若干タイムラグを伴ったりはしますけれども、基本的には似たような動きをしております。

 賃金、雇用者所得につきましては、午前中も申し上げましたとおり、現時点では所定内賃金はまだ若干のマイナスを残しておりますけれども、そのほかの項目はプラスになっておりますし、労働需給のタイト化に伴って、所定内賃金も含めた名目賃金がさらに上昇していくのではないかというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 黒田総裁のお話を伺っていると、何か漠然と夢を見ているような、そういう感じしか伝わってこないんですよ。

 つまり、景気が上昇する場合は転嫁がやりやすくなると。だけれども、まずは上昇するのかどうかが問題なんです。今のような政策でいきますと、所得は物価よりも上がるという保証はありませんよ。賃上げ四%以上になりますか。これは、現実にはなかなかそうはならないでしょう。厳しい状況ですよ。

 だから、我々は、国民の負担をどう軽減するかということをもっと考えないと、このまま消費税も増税します、景気もよくなるでしょうって、そんなふうにはならないですよ。消費税増税したら、もっと景気は悪くなる。だから、景気対策をやろうとしているわけでしょう。景気対策だって、本当に国民の所得が四%以上上回るような景気対策になっているかというと、決してそうはなっていない。

 私は、こういう点で言いますと、今アベノミクスで金融緩和を異次元でどんどんやっているといいますけれども、これは極めて一部の、日銀と銀行の間で過熱しているだけで、あとの国民の圧倒的多数の市場は冷え込んでいる。この冷え込んでいるところに、てこ入れをするようなことをやらないで、また同じようなことをやったら、これは失敗を繰り返すだけだと思うんです。

 この点では、もう時間がありませんからまた議論したいと思いますけれども、日銀と政府のやっていることは、どうも国民の暮らしを引き下げる結果をもたらすしかないんじゃないか。私たちは、根本的な政策の転換をこれからも求めていかなきゃならぬ、そういう確信をいよいよ深めてまいりましたので、これからも議論していきたいと思います。

 以上で終わります。

林田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 質問の最後になりました。それでは、私の観点から、数点にわたって御質問させていただきたいと思います。

 まず黒田総裁に御質問をし、最後に大臣の方でまとめの答弁をお願いできたら、このように考えております。

 黒田さんが日銀の総裁に御就任をされて、異次元緩和を始められて半年がたちました。現在のところ、全体としては、アベノミクスの成果は上々、こういうことであろう、またそういう評価が多いということは事実かもしれません。ただ、私は元来心配性でございますので、やはりいろいろと心配なことが実は出てくるわけですね。

 そこで、何点か総裁にお伺いをしたいんです、まだ質問ではありませんけれども。

 五月の二十日前後だったと思いますが、ある調査がありまして、アベノミクスといいますか、異次元の緩和の出口をどういうふうに考えますかというような質問に対して、今、これをちょっと私持ってきたんですが、非常にさまざまな意見があります。と同時に、やはり非常に心配をしておる意見も多いんですね。その辺で順次質問をさせていただきたいと思うんです。

 そういった意見の中で、ちょっと二、三だけ御紹介をさせていただきますと、釈迦に説法かもしれませんけれども、まず一番大事なのは、出口のときの戦略として、国債市場への影響を回避する、ここが最大の命題だろうということをおっしゃっておりますね、世間では。それから、買い入れた国債を再び市場に売り戻すという意味での出口は国債市場に動揺が走りかねず、不可能ではないのか、それから、保有国債の自然償還を待ちながらゆっくりとバランスシートの縮小を図るべきではないかとか、早過ぎる出口政策と遅過ぎる出口政策のプラスマイナスを勘案して判断すべきとか、さまざまな御意見があります。そこでちょっと私が気になったというか、ああ、なるほどなと思ったのは、アメリカの金融緩和の出口の方が先に来るので、アメリカの動向、戦略をよく見ながら進めていくといいんじゃないか、実はこういう意見もそのたくさんの中にあったんですね。

 そこで、前段は、そういう意味で、FRBの状況を踏まえて、総裁のお考えを少しお伺いしていきたいな、こういうことで質問に入らせていただきたいと思います。

 ちょうど総裁が御就任をされてしばらくしたときに、アメリカで、例のバーナンキさんの出口戦略というか、いつかはやはり出口が来るんだというような発言が引き金となって長期金利が乱高下するという状況がありましたね。それで、我が国も少なからずその影響を受けたわけであります。

 そこで、バーナンキさんの後任に、一月までですから、今度はジャネット・イエレンさんが就任をするということです。この方をいろいろと資料で調べますと、非常に雇用問題の専門家なんですね。

 イエレンさんは公聴会で、力強い景気回復のため、やれることをやる必要があるとして、雇用を本格的に改善するため、量的緩和を続けるという趣旨の証言をされたわけであります。そこで、市場は、イエレン新議長のもとでFRBの量的緩和が当面続くのではないかというような、ある意味での好感を持っているという状況なんですね。

 ただ、一方でイエレンさんは、中央銀行のバランスシートが大規模になることはコストとリスクが伴い、量的緩和の実施期間が長くなればなるほどリスクを懸念する必要性が高まる、こういうこともおっしゃっておるわけです。

 このような点を踏まえて、総裁は、今後のFRBの金融政策について、どのような点に注目をされてみえるのか、そして、特に量的緩和の縮小、すなわち出口戦略の動向が我が国の経済に及ぼす影響をどのように注視されているというか見てみえるのか、御答弁をいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘のFRBの金融政策につきましては、余り具体的に私からコメントするのはいかがかと思いますけれども、御質問のとおり、ことしの五月にバーナンキ議長がかなり具体的な発言をされて以来、市場がやや乱高下したことは事実でございます。ただ、米国の金融政策が出口に差しかかるということ自体は、米国経済が回復をしているということの反映でもありますので、それ自体は世界経済にとって多分プラスであろうと思います。

 ただ、この間、国際金融市場は、いろいろな思惑から神経質な動きが見られておりまして、特に経常収支の赤字を抱える新興国の通貨安とか株安がかなり進んだといったこともございまして、米国の金融政策の動向については、特に新興国市場に対する影響あるいは国際金融資本市場全般に対する影響といった両面から、十分注視していきたいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 十分注視をしていきたいと。どこに注視をされていくのかということを聞きたかったんですが、それはともかくとしても、今お話にもありましたが、十九日にバーナンキさんがワシントンで講演をされました。それは、経済は望ましい水準にはほど遠く、政策正常化には時間がかかるということを言われて、金融緩和策を当面維持する考えを強調されました。

 このように、FRBが市場との対話にある意味では苦しんでいるわけですね。そういう状況を見ますると、果たして日本が現在の異次元緩和の出口にすんなりと入っていけるのかどうか、このことを心配性の私は考えるわけなんですね。

 総裁はこれまで、私もこのことを何遍もお伺いしました、出口、出口ということを聞いたわけですが、時期尚早だ、こういうことを繰り返して御答弁されておるわけです。本当に全く考えていらっしゃらないのかということです。先ほど岡本委員には非常に力強く、持ち合わせておる、出口戦略はあるんだ、こういうことをおっしゃいました。したがって、当然おありになるわけでしょうけれども、FRBの出口戦略に向けた動きを踏まえて、いま一度、出口戦略についてどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

黒田参考人 現在、日本銀行は二%という物価安定の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を行っている最中でございますので、しかも、まだ足元は消費者物価上昇率が〇・七%になったというところでございますので、出口戦略を具体的に議論するのは時期尚早だと思います。

 特に、出口に向けた対応については、その時点での経済・物価情勢あるいは市場の状況などによって変わり得るものですので、現時点で具体的なイメージを持ってお話しすることは適当でないと思いますが、御指摘の、FRBが出口戦略についていろいろな動きをしているということは、私どもとしても、将来十分参考にさせていただけるだろうというふうに思っております。

鈴木(克)委員 ぜひ、FRBの動き等も注視をしながら、まさに冒頭申し上げました、多くの識者は、大変御無礼ですけれども、入り口というのは入っていけるんだけれども、出口を探して、しかもまたしっかりと出ていくというのは本当に難しいと。これは本当に多くの方が言ってみえるわけですから、そこのところは、少なくとも入り口の段階、少し入ったというところかもしれませんが、比較的順調に来ておるところだと私も思います。だけれども、逆に、それだけに出口は非常に狭いし大変だということを繰り返し申し上げ、そしてFRB等の動きをしっかりと注視しながらやっていただきたい。

 また次の機会があったら、もう少し具体的にこういう方式を私は考えておるということぐらいを出していただくと、まさに世界が、ああ、なるほど、日本の金融はそういうことを考えているのか、だったら安心だなということになってくるというふうに私は思いますので、そのときにならないとわからないということだけではなくて、いつかの段階で力強い方針を出していただいて世界の経済をリードしていってもらいたい、それぐらいの御方針をひとつお願いしたい、このように思います。

 さて、少し物価と雇用の話に入っていきたいわけですが、イエレンさんは、まさに雇用の専門家だということを申し上げましたけれども、先日の公聴会で、アメリカの失業率は依然として高過ぎる、長期にわたる失業は家計にとって何よりも大変な痛みだ、職を失った人、長い間職につけない夫婦やその家族に多大な苦労や負担を強いている状況に留意している、そのように述べられて、雇用問題に対して非常に強い懸念を持ってみえるわけです。

 FRBは、雇用の最大化と物価の安定が使命なんですね。したがって、この二つの実現が両立をしなきゃならないということですが、一方、日銀の場合は、FRBと違って、雇用の最大化というようなことは、法律上明確には使命という形ではうたわれていないわけであります。しかし、今まで総裁初め日銀の皆さんは、当然、雇用状況を含めて国民経済が健全に発展するような状況を目指している、こういうことをおっしゃってみえたわけですね。そういう説明をされてきたわけです。

 そういったことを踏まえていくと、黒田総裁の金融政策は、イエレン氏とは違う意味での懸念を持たれる危険があるのではないかというふうに思うわけですよ。要するに、物価上昇への働きかけばかりが重視をされて、雇用や、失業というのはあれかもしれませんが、賃金の問題に対する目配りが小さく、欠けているのではないかというふうに思うんですけれども、そのことについて総裁はどのようにお考えになっているでしょうか。

黒田参考人 二%の物価安定の目標の実現に当たりましては、単に物価が上がればいいというわけではなくて、我が国の経済が、生産、所得、支出という好循環のもとでバランスのとれた形で成長するということが望ましいわけですので、当然、そのもとでは、企業収益あるいは雇用、賃金、そういったものの増加を伴いながら物価上昇率が次第に高まっていくという状態をつくり出すことが重要であるというふうに思っておりますし、私どもはそういうことを目指しております。

 なお、御指摘のように、FRBは、物価の安定と雇用の極大化という二つの目標が法律で定められておりまして、世界の中央銀行の中ではやや異例な形でございます。世界の中央銀行は、基本的に物価の安定ということが最大の目的になっているわけでございます。

 そういったもとで、特に米国の場合は、リーマン・ショック後、非常に失業率が高くなって、その引き下げが非常に重要な課題になってきたわけでございます。

 他方、日本の場合は、失業率とか有効求人倍率を見ますと、実はもう既にリーマン・ショック前のところまで来ているわけでございますが、賃金が、特に所定内賃金がまだ依然としてマイナスを示しているというところが非常に課題になっているわけでございまして、先ほど申し上げたように、今後、労働需給がタイトになっていく中で、名目賃金がさらに上昇のテンポを高めていくということが期待されるし、また、そういった形で経済のバランスがとれた形で物価上昇率が次第に二%に近づいていくということを目指していきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 総裁、先ほど佐々木委員もおっしゃいましたけれども、夢のような話とは、そこまで私は申し上げないわけですけれども、期待感なんですね。景気がよくなれば賃金は上がるだろう、賃金が上がれば消費もふえていくだろうという期待感です。そこをどうやって本当に積み上げていくかというところが最大の問題なわけですね。

 現実に、悪い物価上昇というのはもう既に始まっているんですね、所得がふえていないけれども物価だけは間違いなく上がっているということですから。そのところを、先ほど所定内給与の話をされましたけれども、まさに現実は減っているんですね。同じ数字じゃなくて、減ってきているわけです、去年と比べたって。そういうことで、非常に難しい状況です。だから、政府は経済政策パッケージだということをおっしゃっておるわけです。

 いずれにしましても、賃金が伸び悩んで、悪い物価上昇が先行して、消費が冷え込んで、景気が腰折れをしてしまう可能性が一面ではあるんじゃないのかなというふうに、私は非常に危機感を持っております。

 そこで、お伺いをしたいんですが、安倍総理が、来年の消費税の増税の実施についての集中点検会合という、民間の方を集めて意見聴取を行いましたよね。そのときに黒田総裁は消費増税を先送りすべきではないと強く主張された、このように聞いております。

 私は、この記事を見たときに、金融政策を独立して担当しておる日銀の総裁が政府の担当分野である財政運営に口を出すというのは極めて異例なことじゃないのかな、このように実は感じました。

 それから、消費税で景気が腰折れするような状況になったら日銀として必要な施策を行っていく、つまり追加緩和策の可能性にまで触れて、消費増税の決断を促したというふうに新聞で拝見したわけですね。

 さっき申し上げましたように、金融政策の日銀として、政府の担当分野にまで口を出され、しかも、腰折れをした場合には追加対策を打つというところまで言われた。しかも、確率は低いかもしれないが、起こったらどえらいことになると。これは、私が言っておるわけではなくて、新聞に書いてあるわけですよ。

 ここまで総裁が消費増税を予定どおり実施すべきであるとお考えになっておる理由はどこにあるのか、ぜひひとつ国民に、だから私は消費増税が必要なんだということをはっきりとわかりやすくお伝えいただけませんかね。

黒田参考人 御指摘の集中点検会合で私が発言いたしましたのは、実は、毎回七、八名、民間のいろいろな方々が話されるのを私はずっと伺うという立場で出席しておりました。

 その際、ある一人の参考人の方が、消費税率を引き上げた場合、あるいは引き上げない場合のリスクについてどう考えるかというふうにお聞きになったものですから、私から申し上げたのは、当然、消費税については、もちろん政府がお決めになることですけれども、予定どおり引き上げた場合と先送りした場合、それぞれリスクはあるでしょうと。

 その中で、予定どおり引き上げられたとしても、私ども日本銀行の政策委員会の大方の経済見通しをごらんになっていただきますとわかりますように、来年度、再来年度と、潜在成長率を上回る成長を続ける可能性が高い、景気の下折れの可能性は低いというふうに見ておるということを申し上げました。その上で、もしそのような見通しに反して経済・物価情勢が予想外に悪化した場合でも、そうした場合には、政府も財政面からの対応の余地があるでしょうし、日本銀行も、物価安定の目標を実現するために必要な場合には当然、ちゅうちょなく政策の調整を行いますと。

 他方で、先送りして、その結果、財政運営あるいは国債に対する信認が市場で失われるという可能性は、直ちにそういうことがあるという可能性は低いと思われますけれども、仮にそういう状況になった場合には財政政策でも金融政策でも対応のしようがないということになるという意味で、可能性とその影響ということを総合勘案した上でのリスクという意味では、予定どおり引き上げた場合の方がリスクが少ないのではないかということを、質問に答えて申し上げた次第でございます。

 一月の政府と日本銀行の共同声明にもありますように、財政の持続可能性を高めて財政運営に対する信認をしっかりと確保することはもちろん国全体の課題でございますけれども、金融政策を担当する日本銀行としても、財政ファイナンスの疑いを持たれないという意味でも、それから日本経済、財政の持続可能性を高めるという意味でも財政再建、財政の持続可能性を高めるということは非常に重要だというふうに思っておりまして、今回の消費税引き上げの決断というのは大変大きな意義があったというふうに思っております。

鈴木(克)委員 いずれにしても、先ほど申し上げましたように、政府から独立して金融を担当されている日銀として、消費税を上げる上げないの問題やら、それからまた、先ほども言ったように、腰折れをした場合には追加の財政措置もとりますよというところまで、私は、ある意味ではかなり踏み込んで総裁はお話をされているなと。

 それがどうであるか。それは国民の皆さんの判断ということになるでしょうけれども、私は、かなり踏み込んでおっしゃっているなと。善意に解釈すれば、それだけ日本経済を何としても立て直したいんだという強い御意思かもしれませんけれども、ある意味では、逆に、何も金融担当の日銀がそこまで踏み込む必要はないじゃないかというふうにお考えになるかもしれません。それは、私はわかりません。

 いずれにしましても、今のお話で、新聞記事が事実であったことは確認をさせていただくことができたということだと思います。

 それでは、時間も最後ですので、大臣にお伺いをしたいと思います。

 冒頭申し上げましたように、日銀総裁に黒田さんが就任をされて以来半年がたって、現在のところ、アベノミクスは順調というような評価が多い、これは事実だと私は思います。

 そこで、逆に、私は、政府を助けるというのはちょっと語弊があるかもしれませんけれども、日銀は非常に、長期金利の安定を初め、ある意味では綱渡りのような金融政策運営を余儀なくされているという気がしてならないわけです。

 私たち生活の党は一貫して、デフレ下における消費税増税には反対、それからアベノミクスによる行き過ぎた金融緩和にも警鐘を鳴らしてまいりました。その上、消費増税強行による経済の落ち込みに対して日銀が追加緩和という手段に出ざるを得なくなってしまったら、現在の異常とも言える金融緩和の出口はさらに遠のくことになると思うんですね。

 先ほど申し上げましたように、アメリカでも、政府債務の上限をめぐって政府機関の閉鎖騒動がありましたね。ああいうようなこともありましたし、議会がFRBの足を引っ張ったというような出来事もあったわけであります。具体的には、雇用統計の発表がおくれる、そういう意味ででありますけれども。金融不安が続くユーロ圏でも、ECBのドラギ総裁の政策がドラギ・マジックと呼ばれるなど、何が言いたいかというと、主要国は軒並み中央銀行に頼っているというような状況が今あるわけですね。

 安倍政権も、このままでは、日銀頼みの経済政策と言われても仕方がないんじゃないかなというふうに私は思うんですね。デフレから脱却して、国民一人一人が豊かになるような経済を実現するために政府が結果を出していかなきゃならない、まさに釈迦に説法かもしれませんけれども、そのように私は思うんです。

 そこで、最後に、麻生大臣の決意というか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 大分前の話のようですけれども、一月の話ですから御記憶のことと思いますが、日銀との共同声明というのは、政府が日本銀行と話をして、日本銀行の政策を政府の案に近づけてもらったというまず最初を忘れて後の話だけしてもらうとちょっと困りますので、そこのところをもう一回思い出してみてください。

 あの共同声明に至った経緯等々はよく新聞に出ていたことなので御存じのところかと思いますが、あれからもともと正式にスタートしたのであって、三本の矢は、まず最初は日銀の金融緩和ですから。このスタートは、日銀に金融緩和をしてもらう方向で、日本銀行と共同声明をそのためにしたということで、最初から日本銀行の方から金融を緩めますなんて言ったことはありませんから。忘れてもらっては困りますよ、ここのところは一番最初のところですから。

 したがって、政府主導じゃなかった、日銀が最初から先頭を切って金融緩和をやってくれだなんということを言うような、聞こえるような話とは全然違います。

 二つ目には、こういうものは結果論ですから。少なくとも今年のGDP等々が、マイナスではなくなって、この一月以降、三%や四%、約二%台からずっとずっと来ているという事実は、GDPがこれまでずっとこの三年間マイナスでしたし、いろいろな意味で長いことデフレが続いていましたのがプラスに変わってきているという事実は、間違いない方向だと思っております。

 設備投資というものが大事なんだというので、先ほどいろいろな方の議論もありましたけれども、マネタリーベースがふえてもマネーサプライがふえていないというのは、民間に資金需要がない、すなわち銀行から金を借りてまで設備投資はしない、銀行から金を借りてまで物を買わないというところが今一番の問題なので、金を借りるようになるところまでが大事なんだと思っております。

 いずれにしても、そういった設備投資の先行指標であります機械受注というものは四―六、七―九とふえてきておりますので、これは大体六カ月から八カ月ぐらいの先行指標ですから、そういった意味では、設備投資が今後ふえてくる方向になってきつつあるということは事実だと思っております。

 同時に、銀行に金を借りなくても、企業はこのところ、今三百兆を超える内部留保を多分一部上場企業で持っております。これは、全企業の大体四三%が実質無借金ということを意味しますので、そういった意味では、かつて自己資本比率がどうたらこうたらとか言われた日本の企業とは、今は全くその姿は違ったものになってきた、はっきりしていると思っております。

 問題は、その三百兆を超す内部留保なり、また一千六百兆と言われるような個人金融資産が、回らず、銀行で寝ているみたいにじっとしているところが問題なのであって、この金が回らにゃいかぬというところが一番、企業にとっても個人にとってもですけれども、国家にとりましても、これが回らないと、結論、金は新しいものは生んでいきません。

 私どもとしては、その三百兆お持ちのものを設備投資に回していただいた方々に関しては償却を、何年のものを一括で認めてもいいですとか、借金をしてこられてまだ赤字の会社に関しても、そういった設備投資をされるなら補助金を出してもいいですとか、いろいろな形で今そういった政策をやって、来年の四月、消費税が三%上がったときの落ち込みというもの、また、その前にある駆け込み需要等々のものをなるべくなだらかなものにしてやっていくというのが、基本的に二%の物価上昇につながり、経済成長につながり、いろいろなことにつながっていくんだと思っておりますので、少なくとも、その方向でやろうと私どもとしては思っております。

 同時に、デフレのときに消費税の値上げをすべきではない、それは基本的に正しいですよ、おっしゃっていることは。しかし、同時に我々は考えておかにゃいかぬのは、そのまま消費税を、三党合意で昨年合意したものを、これだけ景気がよい指標が上がったにもかかわらず、何もしないでこれを一年延ばすということになったときの国の信用というものからいきますと、私どもは、その国の信用が、日本の国債は当てにならぬとかいうようなことになって、一挙に売り浴びせられるとかいうことによって株価に影響する、また通貨の交換率に影響するというようなことになるとこれははかり知れぬのであって、景気が落ち込むならまだしも、もとのもとが信用がなくなるということになったときの被害ははかり知れぬということを総裁として危惧されるのも、私どもも同じ意見であって、これは非常に大きな問題を喚起しかねない問題だったと思っております。

 おかげさまで、一応そういった形で動き出しておりますので、あとは、この落ち込みをいかに浅くして、そして、経済成長のラインをもともとのラインまで乗せるかというところが今一番肝心なところだと思いますので、今後とも、そういった方向を見据えながらやっていかなきゃいかぬと思っております。

 おかげさまで、失業率が下がってみたり有効求人倍率が上がったり、いろいろな形で数字の上では随分上がってきておりますが、最後に言われておりました、企業の中における労働分配率の話が、もう一点、最後に残っているところだと思います。

 労働分配率を上げてもらいたい、簡単に言えば賃金を上げてください、これは私ども政府の仕事かね、いつもそう思いながらお願いするんです。これは組合のやられる仕事なんであって、連合のお仕事であって、私どもの仕事じゃないんじゃないか、僕は間違いなくそう思っていますよ。連合の方にもそう申し上げました。連合の運動費を私らに回していただいてもよろしいんじゃないですかと。選挙は民主党、陳情は自民党と、俺たちはそんなに人はよくないですよと、それも申し上げたことが何回かあります。それが言い合えるぐらい仲がいいので、べちゃべちゃしゃべるんです。

 そういう話を申し上げてきて、ここまで、今一応、給与やら何やらの形で少しずつでき上がりつつありまして、来年の春闘でどんな形になってくるかはちょっと私どもとしては、企業によって内容が、トヨタはいいでしょうけれども、ほかの企業はどうなるかというのは、全部が全部知っているわけではありませんので、正直、今のところ、鈴木先生と同じように、我々も、この点は本当に注意して、心がけていかにゃいかぬところだ、そう思って、頑張りたいと思っております。

鈴木(克)委員 終わります。

林田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時八分散会


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