衆議院

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第2号 平成26年2月21日(金曜日)

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平成二十六年二月二十一日(金曜日)

    午後一時二分開議

 出席委員

   委員長 林田  彪君

   理事 伊東 良孝君 理事 越智 隆雄君

   理事 菅原 一秀君 理事 寺田  稔君

   理事 御法川信英君 理事 古本伸一郎君

   理事 桜内 文城君 理事 竹内  譲君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      小田原 潔君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    神田 憲次君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      桜井  宏君    鈴木 憲和君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      竹下  亘君    津島  淳君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤井比早之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    宮崎 謙介君

      村井 英樹君    山田 賢司君

      安住  淳君    武正 公一君

      前原 誠司君    鷲尾英一郎君

      坂元 大輔君    田沼 隆志君

      三木 圭恵君    山之内 毅君

      上田  勇君    岡本 三成君

      大熊 利昭君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   財務副大臣        古川 禎久君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 昭裕君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     大野敬太郎君

  小林 鷹之君     鈴木 憲和君

  田畑  毅君     桜井  宏君

  竹本 直一君     村井 英樹君

  山田 賢司君     池田 佳隆君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     山田 賢司君

  大野敬太郎君     宮崎 謙介君

  桜井  宏君     田畑  毅君

  鈴木 憲和君     津島  淳君

  村井 英樹君     竹本 直一君

同日

 辞任         補欠選任

  津島  淳君     小林 鷹之君

  宮崎 謙介君     小倉 將信君

    ―――――――――――――

二月十九日

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第九号)

 二〇一四年四月からの消費税増税の中止に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一一六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二三号)

 健全な飲酒環境の整備に関する請願(秋葉賢也君紹介)(第二四号)

 同(安藤裕君紹介)(第二五号)

 同(石田祝稔君紹介)(第二六号)

 同(大塚高司君紹介)(第二七号)

 同(金子恭之君紹介)(第二八号)

 同(河井克行君紹介)(第二九号)

 同(小泉龍司君紹介)(第三〇号)

 同(坂本剛二君紹介)(第三一号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第三二号)

 同(田中和徳君紹介)(第三三号)

 同(赤澤亮正君紹介)(第三四号)

 同(神田憲次君紹介)(第三五号)

 同(森山裕君紹介)(第三六号)

 同(石崎徹君紹介)(第四一号)

 同(牧島かれん君紹介)(第四二号)

 同(石川昭政君紹介)(第五五号)

 同(熊田裕通君紹介)(第五六号)

 同(平沢勝栄君紹介)(第五七号)

 同(藤丸敏君紹介)(第五八号)

 同(古川元久君紹介)(第五九号)

 同(宮川典子君紹介)(第六〇号)

 同(松本剛明君紹介)(第六九号)

 同(石田真敏君紹介)(第八六号)

 同(小倉將信君紹介)(第八七号)

 同(工藤彰三君紹介)(第八八号)

 同(菅原一秀君紹介)(第八九号)

 同(園田博之君紹介)(第九〇号)

 同(西村明宏君紹介)(第九一号)

 同(原田憲治君紹介)(第九二号)

 同(武藤貴也君紹介)(第九三号)

 同(保岡興治君紹介)(第九四号)

 同(菅家一郎君紹介)(第一一〇号)

 同(玄葉光一郎君紹介)(第一一一号)

 同(宮路和明君紹介)(第一一二号)

 同(佐々木紀君紹介)(第一二四号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第一二五号)

 同(津島淳君紹介)(第一二六号)

 同(橋本岳君紹介)(第一二七号)

 同(宮下一郎君紹介)(第一二八号)

 同(井林辰憲君紹介)(第一三四号)

 同(平将明君紹介)(第一三五号)

 同(高木宏壽君紹介)(第一三六号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第一三七号)

 同(渡海紀三朗君紹介)(第一三八号)

 同(馳浩君紹介)(第一三九号)

 同(高市早苗君紹介)(第一四三号)

 同(大見正君紹介)(第一五四号)

 同(とかしきなおみ君紹介)(第一五五号)

 同(中根一幸君紹介)(第一五六号)

 消費税の増税を中止し真の景気回復を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一一五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

林田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官中村昭裕君、金融庁総務企画局総括審議官三井秀範君、監督局長細溝清史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田畑毅君。

田畑(毅)委員 自由民主党、比例東京ブロック選出の田畑毅と申します。

 本日は、質問の機会を与えてくださり、まずもって、委員長初め皆様方に厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 尊敬する麻生大臣とは昨年六月の決算行政監視委員会の分科会以来、本日が二回目の御質問ということでございますけれども、本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。また、私、何分若輩ゆえ、至らぬ質問をさせていただくかもしれないことを何とぞ御容赦ください。

 さて、本日質問をさせていただくに先立ちまして、先日の大臣所信の中にございました諸資料、すなわち、日本再興戦略、それから経済の好循環実現に向けた政労使会議取りまとめ、加えて好循環実現のための経済対策、さらには中期財政計画を改めて自分なりにじっくりと読み返してみたところでございます。

 その中で、私の心に強く残ったといいますか、非常に感銘を受けた部分がございます。それは、中期財政計画の中の一文でございます。引用させていただきますと、「強い経済は、国力の源泉である。強い経済の再生なくして、財政の再建も、日本の将来もない。」このように、中期財政計画の中では、冒頭ですぱっと言い切っていらっしゃるわけでございます。

 我々自民党は、一昨年の総選挙におきまして、日本を取り戻すといったお約束のもと、政権を奪還させていただきました。東北地方の復旧復興が第一、最優先課題だということはもちろんのことでございますけれども、公約の第一は、強い経済を取り戻すだったというように思います。

 私は、この中期財政計画の、強い経済は国力の源泉である、強い経済なくして日本の将来もないというこの一文を読みまして、改めて、政治を志した初心を思い出し、背筋の伸びる思いがいたしたところでございます。

 さて、時間も限られておりますので、具体的な質問に入りたいと存じます。

 まず、先日の大臣所信にございました、GDPに対する評価でございます。

 冒頭、大臣からは、実質GDPが四四半期連続でプラス成長になり、物価についても底がたく推移するなど、日本経済は着実に上向いているとの御発言がございました。

 確かに、今週月曜日に公表されました平成二十五年十―十二月期の実質GDP成長率、第一次速報ということでございますけれども、民間需要が強く牽引をしていくという形で、年率換算ではプラスの一・〇%増、四四半期連続でのプラス成長となったところでございます。

 しかしながら、その内訳をつぶさに見てみますと、海外需要、特に輸出の伸びの鈍化が成長の押し下げ要因となっているやに見受けられるところもございます。

 GDP統計に関しましては、本来は内閣府の所管ということは重々承知しているところではありますけれども、この海外需要に関する大臣の評価と先行きの見通しについてお聞かせください。

麻生国務大臣 田畑先生御指摘のとおり、十―十二のGDPがプラス〇・三、年率換算で一・〇ということになったんですが、これは確かに、その前、十―十二が〇・二と下方修正されておりますので、その意味では、一月―三月、この十―十二でちょうど一年ということになりますが、年換算でちょうど四四半期連続プラスになったということになるんです。

 おっしゃられるとおりに、この数字を見ますと、外需の方は、輸入がふえて輸出はそのまま。輸入がふえたということは、間違いなく、円安で輸入がふえているということは、それだけ経済がきちっと、景気がいいから物を買うということになっているんだと思いますので、そういった意味では、足元は外需でマイナスに寄与しておりますとはいえ、実際問題として、内需がしっかりしているということの裏づけでもあろうと思います。

 ただ、輸出の方はちょっと、新興国とか資源国の需要が減速をしておりますので、そういった意味から輸出量が弱まった動きになっていることなどがありますが、いずれにしても、外需の先行きにつきましては、世界経済が緩やかにではありますけれども回復をしておりますので、輸出が次第に持ち直すということが期待されると思っております。

田畑(毅)委員 ありがとうございます。

 内需がしっかりしていると。外需はいずれ持ち直してくるんだけれども、内需がしっかりしているという御答弁だったというふうに理解をしました。

 この一年ちょっとを比べてみますと、報道をストレートに私は信じるわけではないんですけれども、世の中を見てみますと、やはり明るいムードといいますか状況といいますか、皆さんの表情とかも随分と変わってきたなというのが実感としてございます。

 実際、私もこの年末に実家の方にちょっとだけ帰ってみたんですけれども、古かった冷蔵庫が新しく買いかえられていたりですとか、うちの両親は二人暮らしでもう七十過ぎなんですけれども、孫も何人かできて、風邪を引いちゃいけないのかはわからないんですけれども、エアコンが最新型に、しかも、一台じゃなくて、リビングと寝室と、複数台買いかえられるなど、こういうところも見てとれまして、やはり明るいムードが出てきたよというところが個人消費を刺激しているんだなということを実感しているところでございます。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 明日、明後日とG20が予定されております。先ほど大臣から御答弁がございましたとおり、十―十二月期のGDP成長率を見たとき、輸出の伸びの鈍化が、新興国経済の減退、あるいは最近でいいますとタイの政情不安などもあるのかもしれませんけれども、こうしたことにあるということですので、ぜひとも会合におかれましては闊達な議論をお願いしたい、このように思います。

 さて、G20諸国全体のGDPは世界経済のおよそ九割を占め、まさにG20は金融・世界経済に関する首脳会合、こう呼ばれるわけでございますけれども、そうした中にあって、我が国がこのG20で果たしていくべき役割、これについて大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今週末からオーストラリアのシドニーで、いわゆるG20と言われる会合、蔵相・中央銀行総裁会議というのが開かれるんですが、米国経済が量的緩和を縮小されたから大変だといいますけれども、量的に緩和されたときも大変だった。どっちでも大変ということになっておるのであって、どっちがいいのかといえば、量的緩和が縮小されたということは、アメリカの経済がよくなっているから縮小するわけですから、その意味では、今回の縮小というのは、私どもから見ていると、アメリカの経済が少しずつ確実に上向きになりつつあるということなんだと思って、これは歓迎すべきものなんだと思っております。

 この金融政策について、今までも、ケアフリーカリブレーテッド、注意深く測定し、クリアリーコミュニケート、明確にコミュニケートするという、市場とのやりとりに関して四つのC、ケアフリー、カリブレーテッド、クリアリー、コミュニケートという言葉があるんですけれども、そういった中にあって、やはり新興国とか今台頭してきている国を見れば総じて、過去に高インフレに見舞われたり、また経常赤字がでかいとか、そういったような国内的な問題を多数抱えている国が多いので、そういった国々は、大国のちょっとした話でぽっと振れるような体力ではまずいのであって、ぜひ、そういった問題を是正するという態度をきちんと維持しておかなければならぬのだと思っております。

 いずれにしても、日本としてはこういった状況にありませんので、私どもの場合は金融的にはかなり、世界の中で最も安定している国の一つだと思っておりますので、そういった国に与えられている役目というのはおのずと、そういった、ふらふらするところを、いや、そんなことはない、流れとしてはこの方向ですということをきちんと伝える安心感、メッセージというものが私どもに課せられておる大事なところだと思っております。

 今後とも、きちんとした方向を我々として伝えていき、経済成長と財政再建を両立させるという去年の十月の合意をそのままきちんと続けていかねばならぬと思っております。

田畑(毅)委員 ありがとうございます。

 日本の金融システムの安定性といいますか、それに伴う安心感をしっかりと伝えていくという力強い御答弁、ありがとうございました。

 大臣におかれましては、連日予算委員会等々、タイトなスケジュールの中での御出張ということになると思いますが、ぜひ実りの多い会合となることを心より祈念しております。

 さて、話題はかわりまして、お隣の中国で問題となっているシャドーバンキング、もっと申し上げればいわゆる理財商品のデフォルトに関しまして大臣はどのように見ていらっしゃいますでしょうか、最近ぽつぽつ報道にも出ているようでございますけれども。シャドーバンキングの実態ですとか理財商品の残高等につきましては、中国の中央銀行である人民銀行も正確にはその実態を把握し切れていない、こういった報道もございます。

 もし万が一、仮にその理財商品の一部がデフォルトを起こすといったことが現実になりますと、我が国経済にも再び甚大な影響が生じる可能性というのも否定はできないのかなというふうに思うところでございます。

 この辺についても、大臣はどのような見解をお持ちか、お聞かせください。

麻生国務大臣 シャドーバンキングの実態というのは、中国で金融の引き締めが行われ、中国銀行、人民銀行、農業銀行等々、巨大な中国の銀行が引き締めを行ったのを境に、地方の政府、地方で金を必要としているところに、需要があれば供給がというので、供給がとめられておりますので、そこに起きたのがシャドーバンキングと言われるものであります。まあ無尽みたいなもので始まったものもありますし、その他、個人的な貸し付けでやったのもありますでしょうし、クラウドファンディングとは言いませんが、とにかくいろいろな形で金を集めてやっていった。当然地方の軍隊もそれに関与しているとか、いろいろ言われているのは確かですけれども。

 そういった問題をやっておりますので、基本的に、仮にこれが破綻をしたといっても、それは、直接日本が出資をしているわけではありませんから、我々が直接被害をこうむるという確率は極めて低いだろうと思っております。

 ただ、少なくとも、そういうシャドーバンキングの力を得て企業としてそこそこ回している企業から日本が物を買っていたりなんかしたり、そういうのはないわけではないと思いますので、そういった意味では、どういった形の影響が出てくるか。田畑先生、これはちょっと、なかなかはかり知れぬところだと思っておりますので、注意深く見守っていく以外に方法はない、今のところそう思っております。

田畑(毅)委員 ありがとうございます。

 やはり中国については、私はかの国に行ったことはないんですけれども、はかり知れないところがある、そういう国だなという感じもあります。ただ、ぜひとも、中国経済は大きな、今や世界屈指の経済大国になりましたので、その動向をしっかりと注視していただきたくお願いを申し上げまして、時間も参りましたので、私の質問はこれにて終了とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

林田委員長 次に、小島敏文君。

小島委員 広島県六区の小島でございます。

 麻生大臣、実は私、今から五年前に地方議員をしておりまして、衆議院に出るか出ぬかというときに、実は麻生総理が、(資料を示す)この三段ロケットということで、長年のデフレを克服するということで、本当に思い切った、総額七十五兆円の事業規模を打たれました。

 私はこれを持って、実は選挙区を四百カ所、自民党はこうだということを訴えて回ったんですが、結果は残念だったんですけれども、本当に麻生総理はすばらしいこうした施策を打たれて、きょう、こうしてじかに質問できますことをうれしく思っております。よろしくお願いします。

 本当に不幸な三年間であったわけですけれども、自民党政権にとりまして、アベノミクスが成功しました。いわゆる三本の矢によって、実質GDPは四四半期連続上昇、また有効求人倍率は一倍を超えた、失業率は四%を切りました。デフレ脱却に向けまして、経済は着実に回復しているというふうに見ております。

 一方において、消費税も八%、そして来年十月には一〇パーということで、これからが経済は厳しい、難しい状況判断だろうと思うんです。

 一方で、今、世界の状況を見てみますと、一月から非常に冷やっとするようなことがたくさんあるんですね。一月にはアルゼンチンのペソが大暴落をしましたし、またその後、日経平均株価が、新興国の経済状況を懸念しまして、一日で六百円下がったことがございます。

 また、新興国以外に、先ほども話がありましたけれども、アメリカの金融緩和の縮小、あるいはヨーロッパの政府債務問題、中国のシャドーバンキング、本当に多くの問題があって、このリスクが無視できないというふうに思うのであります。

 世界経済のリスクに備えるためにも、やはり足腰の強い経済構造をつくっていかなければならないというふうに私も考えております。

 安倍総理は、今までと同じやり方では激変している国際経済に立ち向かうことはできないと表明されました。産業の新陳代謝の問題、雇用制度改革、科学技術のイノベーションなどが成長戦略として挙げられております。もちろん、設備投資の拡大、女性就業率の向上などを図っていく必要があります。

 また一方で、どうしても忘れてはいけないことは、政府の過剰債務の問題。これはやはり将来にわたって日本経済にとって極めて大きなリスクだろうというふうに考えておりますが、無駄をなくしながら、同時に成長による増収を図りながら、財政再建も進めていかなければならないというふうに考えます。自民党を信じて一票を投じていただきました国民の方々に対して、期待を裏切ってはいけない、こういうふうに思うんです。

 そこで、現在の経済の状況、そして今後の経済財政運営の意気込みを、ひとつよろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 今、小島先生のお話にもありましたように、三本の矢、アベノミクスの効果もあって、実質経済成長率が、安倍内閣になってからずっとということになろうかと思いますが、四四半期連続でプラス成長。物価はこれまでマイナス、デフレということになっておりましたけれども、今、十二月の生鮮食品を除きます消費者物価、いわゆるコアと称するものですけれども、これもプラスの一・三%になっておりますし、月例経済報告等々を見ましても、緩やかに上昇しているということになっておりますので、デフレ状況とは言いがたくなってきている、デフレ状況ではなくなってきていると申し上げられると思っております。

 消費税率引き上げによる来年度、平成二十六年度の一番の問題は、何といってもこの反動減に的確に対応していかなきゃいかぬ。それで、補正予算をお願いしたわけです。また、今の景気回復の動きというのを、これまた政府の主導による部分が大きいと思いますので、これが民需主導に変わっていくというようなものにするためには、経済成長が持続的にいかねばならぬということだろうと思います。

 そのためには、まず、平成二十五年度の補正予算が速やかに執行されるということだと思いますが、四月からの消費税の引き上げに伴います、いわゆる景気の下振れリスクと言われるものに対して万全を期すことにしたいと思っております。そのために、ここにお願いしております平成二十六年度の税制改正におきまして所得拡大促進税制の拡充とか投資減税等々をお願いするとともに、政労使会議において、賃上げに向けた共通認識を取りまとめたところでもあります。

 企業収益の拡大が、拡大していた利益がそのまま内部留保だけにとどまっているという状態が長く続いておりますけれども、これが、賃金上昇を通じて消費の拡大、また企業の設備投資等々消費の拡大をもたらして、そしてそれが再び企業収益の拡大につながっていくという経済の好循環というものを目指していかねばならぬのだと思っております。

 こうした取り組みによって、税収などの基盤となっておりますいわゆる強い経済というものを実現しつつ、西暦二〇二〇年までの国、地方の基礎的財政収支の黒字化達成に向けて、これは歳入歳出両方でやらないとできませんで、片っ方だけ減らして財政収支がバランスしても、景気が大不況になったりしたら意味がありませんので、そういった意味では、財政の健全化と景気の回復という両面を同時に達成するという意味で、ハンドルの難しいところをきちんとやっていくのが一番大事だと思っております。

小島委員 どうもありがとうございました。

 私は、政治信条は地方の再生なくして日本の再生はないということで、地方の景気を非常に気にしていますけれども、実は安倍総理は、太宰府天満宮から梅の盆栽を贈られたときに、全国津々浦々に花を咲かせるとおっしゃっています。そういうことで、麻生大臣、ひとつよろしく御指導をお願いいたします。

 次に、金融について質問をさせていただきます。

 地方の経済を活性化させるためには、どうしても地域金融が健全でなければなりません。日本銀行が発表しております資金繰りの判断のDI、また金融機関の貸し出し態度のDIを見てみますと、大企業も中小企業も、どの業種を見ましても総じて改善をしております。アベノミクスを実現するためには、地方銀行がしっかり金融仲介機能を発揮してこそ地域の中小企業の成長につながるというふうに思っております。

 ここ二、三十年間の傾向を見てみますと、銀行の貸し出し伸び率が非常に下がっております。預貸率が低下しておりますけれども、あのバブル期に、預貸率が大体九割以上あったんですね。今、都銀なんかを見てみますと、約六割でございます。また、地銀、第二地銀を見ますと、約七割に低下しています。また一方で、全国銀行協会の統計を見てみますと、銀行の収益構造は貸出利息が全体の五割近くを占めておるわけですね。私は、まだまだ貸し出しが伸びる余地があるというふうに思うんです。

 麻生大臣は、貸し付けの奨励、そして国債のPRという両面を持っておるわけですね。なかなか立場は難しいとは思うんですけれども、麻生大臣はかねてから、金融庁を金融処分庁ではなくて金融育成庁としたいとおっしゃっていまして、そのとおり、昨年九月には、監督方針の中で、中小企業の経営改善、体質強化の支援を金融機関に役割として求められております。同時に、先進的な取り組みを事例集として出されました。本当に前向きに取り組んでおられると思うんです。

 銀行は、何も金を遊ばせているとは思わぬのですけれども、さまざまな経営戦略の中からそういう預貸率が低下しているというふうに思うんです。そうはいいましても、銀行の一番の使命というのは貸し付けであります。

 こういう中で、経済の好循環をつくっていく上で地方銀行に求められる役割ということの御認識を、よろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 おっしゃられるとおり、これから地方経済というものが活性化していくに当たって、今、いろいろなベンチャー企業、いろいろな新しい芽、もしくは中小企業の中でもすばらしい技術を持っていて、その技術だけですごいものがある、これは地方を回ると幾つも出てまいりますので、そういった中にあって地域の活性化というものを図っていく上において、その地域にある地場産業が元気があるかないか、物すごく大きなところだと思っております。

 地域の金融機関、地銀とか第二地銀とかいろいろございますけれども、そういったところに対しては、これは伸びるというものを見る目きき、そういったものを見る目、目ききとかいうものをもっと育てないと、単に貸したから、はい、借りた、担保がこれだけ、何とかというだけでやっていっていると、地価が下がっていればその分だけ担保が不足していますという話だけに行きますけれども、とてもじゃないけれども、その企業の伸びる伸び代なんかに目が行かない。

 結果としては、そういうコンサルティングの機能というものを高めていく意味で、これはいけると思ったら積極的に、むしろこの仕事だったらこっち、この会社のこの部分に技術を少し貸与する、売る、そういったものをしてやったらどうですかとか、つき合いの広い地域の銀行の方の横の連絡でいろいろな形の仕事が出てくるはずなのであって、そういった意味で、どのような工夫をされるか、取り組みをするかというのが、これから銀行に与えられている大きな仕事です。

 今、金融機関とは言いませんけれども、よくやっているのは、大きな商社というのはよくこれをやっているように見えますので、そういった意味では商社金融というものもあろうかと思いますけれども、やはりその地域に一番根づいているのは地域銀行、地方銀行のはずですから、その人たちの持っている情報の方がよほど多い。その目で見れば多い情報を持っているはずなので、ぜひそういったものを積極的に活用していただければと思っております。

小島委員 私も地銀、第二地銀とか回るんですけれども、やはり目ききがいないということを皆言いますね。そういう面で、やはりいろいろな企業がありますけれども、金融庁も、どうぞ、各地銀のそういう目ききを育てるという御指導をいただきたい。よろしくお願いいたします。

 次に、交際費課税の緩和について御提案なりお願いしたいんですが、時間がありませんからはしょりますけれども、全額損金算入、八百万ということになったわけですけれども、昨年のその八百万に続きまして、今回、五〇%となったわけです。

 交際費課税というのは、昭和二十九年から始まって、戦後のいわゆる荒廃した日本を立て直すということから始まっていると思うんですが、今、内部留保あるいはバブル後の処理というのは終わっていまして、実は、平成二十三年度の統計を見ますと、交際費全体は二兆九千億円だそうです。ところが、バブル最盛期には六兆二千億円というんですね。

 やはりGDPの六割は消費ですから、消費をもう少しふやすために、大臣、この五〇パーをもう少し緩和して、拡大して、もっと飲食を通して景気が上がっていく、後押しするというふうにならぬかと私は思うんです。

 モラルの問題があるということはわかっておるんです。ただ、飲食費に限るということでやるならば問題ないんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、ここはいかがでしょうか。

林田委員長 麻生財務大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

麻生国務大臣 小島先生みたいな考え方は大蔵省主税局にはほとんどございませんものですから、したがって、昨年は孤立無援みたいな形で中小企業だけこれをさせていただきましたけれども、昨年の効果がそれなりに認めざるを得ないところまで来ましたものですから、今年は大企業ということをやらせていただいたんですが、大企業というのは額が大きいものですから、取り急ぎ五〇%ということで、五〇%までさせていただいております。

 先生の場合は広島ですか。ぜひ広島で、あそこは大きな企業がいろいろありますので、じゃかじゃか使っていただいて、やはり効果があったということになりますと、来年、一〇〇%を目指したいと思います。

小島委員 ありがとうございました。

 広島県には流川がありまして、非常に有名ですけれども、どんどん使うように奨励します。よろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、安住淳君。

安住委員 きょうは、大臣所信でございますので、大臣の所信の何点かについて質問させていただくと同時に、黒田総裁、どうも御足労いただきまして、ことしもよろしくお願いします。ことし初めてでしたので。

 金融緩和についてお話をしたいと思います。

 さて、先般、大臣がここでお話しになった日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方、これを私も聞かせていただきまして、また読ませていただきましたが、ここからちょっと御質問させていただきたいと思います。

 前半の方はいいとして、二枚目に入るところからなんですが、こうした点を踏まえ、政府としては、国、地方を合わせた基礎的財政収支、今もちょっとお話がありましたが、これを、二〇一五年度までに赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減、二〇年度までに黒字化するという健全化目標を掲げております、今後、これらの目標を着実に達成していくために、引き続き税収を拡大するとともに、各年度継続して歳出を効率化していく必要がありますということをおっしゃっております。

 お伺いしますけれども、私もそうだろうなと思ってやってきたんですが、具体的にはどういうことでございますか。半減を達成するということは、どういうことをやるということになるんですか。

麻生国務大臣 基本的には、これは対GDP比のバランスということになろうと存じますので、経済を成長させることによってGDPを拡大させ、他方、歳出に関しましては、無駄なものは使わない、きちんとするということでやらせていただいて、おかげさまで、GDPがふえた分だけ税収の伸びもありましたものですから、今年度は、四兆円の目標を一兆二千億超えて、五兆二千億という形になりました。

 そういった形できちんとしたものをやっていき続けなければならぬのですけれども、それを今のような状況でやっても、二〇二〇年にゼロにできるかというと、そういった数字がなかなか見えてきていないということで、一層の努力が必要だと思っております。

安住委員 これは実は、二〇一〇年から国際公約をしております。私もG20の席で何度もみずから話をさせていただいて、私の場合は、だから消費税を上げていくということを言ったわけですね。

 今の大臣の話はちょっと抽象的だと思うんです。私が聞きたいのは、二〇一五年というのは未来の話でなくて来年度でございますので、では、来年度半減をするということは具体的にどういうことなのかということを私は伺いたいんです。

 それから、二〇年度に向けてこういうふうにゼロにしていくということをシドニーで多分またおっしゃるのであろうと思いますので、その道筋というのはもっと具体的に描かないと、歳出の削減なんて言ったって、後で聞きますけれども、そう簡単なことじゃないと私は思うんですね。税収を上げると言っても、経済人でいらっしゃるからわかると思いますけれども、戦後、右肩上がりに税収がどんどんふえて、永遠にそれが続いたなんてないんですよ。上がったり下がったりするのが当たり前の話ですから。

 そういう中で、社会保障費がことし、三十兆の予算を組まれましたね。後でちょっと話をしますけれども、来年もまたこれはふえる予想なんですね。追いついていくには何をしないといけないのかとなれば、減税の話ばかり今聞こえてきますけれども、実は、減税なんかをやっていて本当に財政再建なんていくのだろうかということを心配しているものだから、質問をしているんです。どうなさるおつもりなんですか。

麻生国務大臣 これは基本的には、先ほど御指摘のありましたように、まずは、財務省が作成いたしております平成二十六年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算におきましては、現行法にのっとりまして、二〇一五年、平成二十七年の十月には消費税をもう二%、一〇%に引き上げることを織り込んで試算を行ったところでもあります。試算結果の見通しというものは、引き続き極めて財政は厳しい状況にあるということだろうと思っております。

 したがいまして、歳出面では、当然のこととして、歳出カットなどいろいろなことをやっていかないかぬのですけれども、歳入面に関しましても、GDPの比率をより高めていくということだと思いますが、今のままでいっても二〇二〇年までにはまだ一・九%ぐらい足りないということになろうと思っております。そういった意味では、その部分をきちっとした形でおさめるためには、一層の経済成長をやる、医療費の話が出ましたけれどもそういったものの削減を果たす、いろいろな努力をしていかねばならぬと思っております。

安住委員 そこで伺いますけれども、消費税の八%への引き上げは決まりました。もちろん、反動減の心配とかはあるでしょう。しかし、自民党の皆さんがどう思っているか知らないんだけれども、総理まで御経験なさっておられる麻生先生ですから、私は、やはり日本の財政は非常事態ではないかなと思っているんですよ。これは後で黒田さんにもお伺いしますけれども。

 財政再建をするというのは、余り人気の出る政策ではないです。お金をじゃあじゃあ使えなんという景気のいい話は、選挙区でも人気があるからそういうことを言うんだろうけれども、実は、賄うお金をどうやってするのかというと、大変な話ですよ。何せ、後で話しますけれども、社会保障は今の予定でいったら減らないんだから。

 そういう中で、この一千兆を超えた公的債務の中で、今私がちょっと心配しているのは、与党の方から聞こえてくる話は、やはり景気のことが心配だという目先の話を、まあ、あるにしても、法人税の引き下げもそうだし、それから、消費税でいえば、軽減税率の話も出てきましたね。もちろん、私も、弱者と言われる方々に対して何らかの措置は必要だと思って、三党協議を財務大臣のときもやらせていただいて、給付つき税額控除の話もしました。しかし、今はどうも、一〇%に上げる上げないのことで、また与党の中で、また総理も含めて悩んでおられるようなんですけれども。

 私は、財務大臣は、いろいろな会議の議事録を拝見すると、私と同じような考えを持っておられるのではないかなと思うから質問をしますけれども、日本の財政は、決してそんな、いわば減税をどんどんやっていって体力をつけるような状態だけではないんじゃないですか。私は非常時だという認識を持っているんですけれども、いかがでございますか。

麻生国務大臣 やはり、五百兆のGDP、租税収入五十兆で、約二十倍の一千兆の借入金というのは、安住先生、これは非常事態であることは間違いないと思います。倍率で二二七%、OECD試算で二二七%。

 かつて、イギリスが千九百四十何年に二五〇%ぐらいまでに、第二次世界大戦終了間際に二四七%か八%までいったという例があるそうですけれども、そういった例に比べても、それに匹敵するほどの状況ですから、極めて厳しい状況にある、私どももそう認識しております。

安住委員 そのとおりですよ。

 外国の例を今挙げましたけれども、米英も第二次世界大戦後にやはり大変なそういう債務の中で、後でちょっと話をしようと思っていたんだけれども、金融政策で大胆なことをやって、いわばインフレにすることで債務を返していくような安易なやり方をやって、それはしかし事実上増税ですからね、インフレに導いて長期債務を安定するというのは実は形を変えた増税だということも言えますからね。

 だから、やはりそういう意味では私はこれは禁じ手だと思うんだけれども、実は、麻生大臣がおっしゃるように、戦後直後の日本もまさにそうだったんですよ。だって、対GDP比二六〇%の債務がございましたね。それこそ、おじいさんが総理のころなんというのは、そういうことの時代背景で、あの当時はやむを得ないと思いますが、相当乱暴なことをしました。資産課税で九〇%なんということまでやって、そして新円にして、いわば持っている価値をチャラにする形で、国民に犠牲を強いらざるを得ない状況まで来た。

 その当時二六〇%だけれども、今は対GDP比でどれぐらいの累積債務ですか。

麻生国務大臣 OECDの数字で二二七%だと記憶します。

安住委員 大体二四〇%ですから、まあ、正解ですね。

 私は、こういう状況の中で、デフレを解消して、そして財政再建をするということは、国民の皆さんに対して決してうれしくなるような政策でないところがつらいところだと思いますよ。だから、今、政府の中で法人税の話が出てきましたね。私はちょっと気になるので、少しこの話をさせていただきます。

 こういう今の認識に立つと、法人税の引き下げをやると、実は私は二・四%下げたときの大臣なんです、それは余りに高かったので下げた。しかし、震災があったので三年ほど我慢していただいた。それを一年繰り上げる提案をするというから、これは私は反対します。しかし、これからまた議論で法人税を下げると。

 しかし、実際、大臣、どうなんですか。法人税をよく見ると、法人税を納めている会社のうち、国際貿易、流通だとか、例えば国内でもうけている会社でなくて、簡単に言えば外国と貿易、交易をすることによって利益を上げている会社が法人税を納める比率というのは、法人税全体の中で何%か、御存じですか。

麻生国務大臣 法人税収入全体の中で、今法人の中で約三〇%弱の企業しか納めていないのは知っておりますけれども、その中の比率で、今の貿易のところの比率まで正確に細目を知っているわけではありません。

安住委員 実は、製造業で貿易にかかわって法人税を納めているのは、私が確認しているところ、二六%なんです。

 よく国際標準で、競争の中で、日本のいわば法人税が高いから、これを下げないと競争にならない、だから法人税を下げるんだという論理ですけれども、実は日本の国内の法人税を納めている企業の七四%の皆さんというのは、こうした製造業ではなくて、流通とかサービスとか一次産業なんですね、大臣。

 ということは、地方の財源等も含めますと、法人税をただ単に下げて、これは一%が四千億、そういうお金だから、つまり、私も下げられるなら下げた方がいいと思いますよ、それは。しかし、こういう現状の中で、安易に法人税を、ほかの代替財源なり、エリアをもっと拡大するといいますか課税対象を拡大することでという税制改正ならまだわかるんだけれども、もし先ほどの私と同じ非常事態だという意識を持っているのであれば、税収を本当に減らしていくことばかり考えるのは、責任政党ではないんじゃないですか。

麻生国務大臣 法人税減税の話というのは、昨年の末、いわゆる政府税調等々でいろいろ議論がなされ、今、いろいろこの問題について議論がされつつあるところです。

 今言われておるのは、法人税を下げたら税収がふえるという話です。事実、ドイツ、韓国、イギリスはやった、それで成功したじゃないかというお話をよく聞かれるんですが、何でフランスとアメリカという名前は出されないんですか、普通だったら必ず出すじゃないですかと言うと、返事が返ってこなくて、それは、フランスもアメリカも、法人税は下げなかったんですけれども、同じように法人税は伸びております。

 すなわち、下げたところも下げなかったところも、ほぼ同じか両方とも伸びたというのが実態なので、これをどう分析するかというところだと思いますが、安易に下げて、それが必ず伸びるということは一概には言えないのではないか、私自身はそう思っております。

安住委員 そうなんですよ。だから、私は、危機感を持った方がいいと思いますよ。

 政治家はやはりもっと責任を持つべきだと私は思っているんですね、反省を踏まえて。消費税を上げるのに十七年かかったんですね、五%から。それは自民党にも大変な責任があると思いますね。それは政治全体の宿題だったと思いますけれども、そんなことをやっているうちに、これだけの債務を背負ってしまった。

 そういう意味では、私はちょっと気になったのは、第三の矢なんと言っていますけれども、なかなかいい弾が出てこないから、法人税を下げるという減税をいわば人質として差し出すようなことはないでしょうね。これは一番やっちゃいけないことだと私は思うから、この質問をさせていただいているんです。いかがですか。

麻生国務大臣 それは、第三の矢じゃなくて、第二の矢だと思います。

安住委員 そうならいいんですよ。しかし、私が少なくとも感じているのは、なかなか規制緩和や改革のいい弾が出ないから、思い切って企業を減税することで見ばえをよくしようなんということをもし考えているとすれば、私は、それは本末転倒ではないかということを申し上げたいと思います。

 財政再建の取り組みは、国民の皆さんにとっても苦い薬だし、我々にとっても大きな責任があるから、なかなかそういう議論をする方は少ないんだけれども、しかし、私は、自民党が勝って数を衆参で得たということは、ある意味で非常に大きな責任があると思いますから、今こうしてお話をしているんです。

 さて、予算の話だけ少しして、次、黒田総裁の話に移りたいと思うんです。

 今回の予算は、私は、社会保障とか、切り込みをやはりもう少し頑張ってやるべきだったのではないかと。これは、なぜそういうことを言うかというと、私どもが政権にいたときに、さんざん自民党から批判されたからなんですよ。

 一例を出します。特に、生活保護なんですよ。私が財務大臣のとき、当時の自民党の予算委員会のバッターの多くの方々が、生活保護をばらまいていて、こういう予算はよくないということをさんざん言った。例えば、当時の政調会長が質問に立たれて、生活保護を対象にする病院が大阪とかそういうところにたくさんあって、これはまさに金もうけの道具だ、こういうのはもうやめさせろとか、生活保護の受給体質が非常に問題だと。私も、それはなるほどそうだなというところもあったものだから、これは役所も含めて調査をして、やはり適正化をやっていこうということになりました。

 だから、私は、ある意味では、政権交代した後に、生活保護費というのは、どれぐらい削減して、切り込んでいって、需要に対してどれぐらい抑制をしていくのかなと期待をしておりました。しかし、麻生さん、二十五年から二十六年、生活保護費がどれだけ減ったか、御存じですか。

 時間がないから私が言いますけれども、ふえているんですよ。今年度の予算で六百七億円ふえているんですよ。私は事務方にちょっと確認しました、何でこれはふえているのかと。適正化は二百三十五億円やりましたと。つまり、削りましたということですね。ところが、消費税が上がってくるので、これは二百六十億オンをしたんだけれども、純粋にふえたのが六百七億ぐらいあるんだというんですよ。

 大臣、これは言葉を返しますからね、言われた分だけ返すから。ばらまきは自民党の方になっちゃうんですよ、これは。(発言する者あり)いや、倍返しなんて、そんな下品なことはしません。

 生活保護は社会が高齢化するとやむを得ない部分があるにしたって、自民党は景気がよくなった、景気がよくなったとおっしゃっているんだから、論理的に言えば、景気がよくなったら生活保護はどんどん減っていく、効率化をしないとおかしいじゃないですか。しかし、実際はそうでないんですよ、実は。これだけ景気がよくなって税収が上がったと言っているにもかかわらず、失業率も減ったと言っているにもかかわらず、生活保護費をふやす予算をつくっているのはどういうことなんですか。

 財務省に責任があると思って私は言っているんじゃないんです。こういうことを改めていかないと、先ほど大臣がおっしゃった、私も予算編成に携わったから同情申し上げながらも申し上げますが、歳出歳入両面での最大限の努力を行って中期財政計画を達成するなんというのは、絵そらごとに聞こえちゃうんですよ。いかがですか。

麻生国務大臣 これは安住先生おっしゃるとおりで、生活保護というのは、随分と予算の編成の段階でいろいろ議論、かなり口論に近いような、言い合った部分だと記憶をしますけれども、少なくともこういった話は、私どもとしては、もう少しきちっとすべきではないかということで、社会保障の伸びが、少なくとも三十兆を超えるという状況になってきて、これはとてもじゃないが毎年一兆、そんなものはとてもやっておられぬと。

 したがって、これは何とかしなきゃというところの中に、それは医療費もありましたり、いろいろなものもあるんですけれども、この生活保護というものが一つの大きな話題になったということは確かですけれども、今おっしゃるような形で、決着としては残念ながら力不足だったかなと思います。

安住委員 この点について、民主党にばらまきだ、けしからぬというのは訂正してください。

麻生国務大臣 残念ながら、認めざるを得ないところがあろうかと思います。

安住委員 社会保障は、だから大変なんですよ。私も、これはただ削ればいいというものでもないんだけれども、やはり納税者の皆さんの納得を得ながら、特に九州もそうだし私のような東北もそうだけれども、高齢化をして、例えば家を持っておられなくて収入のない方々の中には、年金が少ない場合、どうしても生活が苦しくなって、シフトしていく方もふえていくんですね。

 そういうことでいえば、それは自然増かもしれないんですよ、実は。そういうのをばっさばっさ切らないのはけしからぬ、おまえたちはばらまきだとやった自民党の考え方、これは運動論としてやったかもしれないけれども、私は、それはちょっとやはり理性を欠いた攻撃だったんじゃないですかということです。

 今こうして現実に、皆さんのやり方を見たって、我々と同じような苦しみを味わっているから今私は申し上げたんだけれども、これは単なる一例ですよ。七十二兆六千億円の政策経費の大半はこういう問題を抱えているから、主計官は四苦八苦しますね、予算をつくるのに。

 だから、例えば一兆、二兆を、豆腐じゃないんですから削るなんというのはそう簡単なことでないことは一番わかっているはずですね。だからこそ、税収をふやしていかざるを得ないんじゃないんですか。

 プライマリーバランスの話に戻ると、あなたがここまでおっしゃられて、基本方針をお述べになったから、私はこれを述べているんですよ。私と違うことをおっしゃっているんだったら別なんだけれども、同じだなと思うから。

 ということは、一〇%はやはりやるということになるんじゃないですか。

麻生国務大臣 一〇%の件に関してということですけれども、基本的には一〇%にするということを織り込んでこの計画は立てております。

 この一〇%を織り込んでするためには、例の十八条三項というクローズ条項がついておりますので、あのクローズ条項を考えますと、基本的には、それをできるような経済状況にしておかない限りは、あの条項が働いて上げられないという形になりますので、私どもとしては、景気をきちっとよくしておかねばならぬというところが一番肝心なところだと思って、今年度の予算、また補正予算等々を組ませていただいております。

 基本的には、一〇%というものをやれるような経済状況にせねばならぬと思っております。

安住委員 やらない場合に、結局、プライマリーバランスの問題は、公約を果たせないことになることはもう自明の理だと私は思うんですよ。

 逆に言えば、それぐらい経済が落ち込んでどうしようもないというんだったら別ですけれども、先ほど私が申し上げたように、麻生大臣、だって、社会保障の話は、景気のいい悪いに関係なく請求書が毎年一兆円ずつ来るんじゃないんですか。景気が悪くなったら社会保障のお金は減ると思っていらっしゃいますか。違いますよね。どうやって賄うおつもりですか。国債をどんどんまた発行するということになった場合は、私はこれは大変危機的な状況になると思うんですけれども、いかがですか。

麻生国務大臣 おっしゃるように、社会保障というものは、景気のよしあしに関係なくある一定の比率で伸びていく、そういった傾向値を持った予算だとも思っております。

 なかんずく、この社会保障は、少子高齢化等々に伴って、その比率が高くなったり、またスピードが高くなったりしておりますし、いろいろな意味でその他の社会保障関係のものが大きくなる。非常に大きくなったがゆえに、他の予算が逼迫してくる、他の予算が圧迫されているという状態も確かだと思いますので、経済の成長を図って税収をふやすという方向をあわせて考えないと、財政削減だけではとても賄えるわけがないと私どもも思っております。

安住委員 本当は、景気が上がったからといったって今はそう簡単に税収が上がるような仕組みでないこともやりたいんですよ。

 大体、所得税のフラット化をこれだけして、所得がどんどん上がったって、実際は、五%や一〇%台の所得税を納めている方が非常に多いんです。フラット化をしたから五〇%以上の人がいないわけだから、所得がふえたからといってそう簡単に税収は上がらない仕組みなんですよ。法人税も実はそうなんです。

 だから、今、単純に、景気がよくなったら税収が上がるという考え方は、私はもうおやめになられた方がいいと思いますよ。むしろ、高齢化社会の中でどうやって安定した財源を確保するかということに力点を置いたお考えに改めていただいた方がよろしいのではないかと思いますが、この話をすると黒田総裁との議論ができないので、この辺にしておきます。

 率直に申し上げて、やはり大変なことではあるけれども、予算の、もう少し各省に対してやはり政治が後押ししなかったら、現場はなかなか切り込めないですよ。社会保障の話というのは、皆さんはもっと徹底的にやらないと、民主党はばらまいていたと言うから、私はそうかなと思って言っていたら、逆にふやしているから、どういうことなのかな、麻生さんらしくないなと。まあ、麻生さんは副総理でいらっしゃるから、総理でないのでこれ以上言ったって仕方がないけれども、事実としてそうだということは申し上げておきます。

 それから、税収のことも、非常事態だという意識を私と同じように持っているのであれば、税収を減らすような話や還元する話ばかりしているというのは、率直に申し上げて、無責任ではないかということだけ申し上げておきます。一〇%についての認識は私と同じように考えておられるということなので、その方針に従ってぜひやっていただきたいと思います。

 黒田総裁、お待たせいたしました。

 この話には本当は黒田総裁にもはまっていただかなきゃいけないんだけれども、四月で一年になりますね、日本銀行のこの金融緩和。一三年末で、マネタリーベースで二百二兆、裏を返すように、長期国債の買い入れは百四十二兆。私が財務大臣になったときは白川総裁のときでございますけれども、マネタリーベースで、一二年の末を基準にしても約百三十兆。これが、一四年末に二百七十兆までいくということですね。同時に、長期国債の買い入れも百九十兆までジャンプしていく。わずか二年で長期国債を百兆円ほどふやすわけですから、これは実は本当に異様なことでございます。

 一例だけ出しますが、FEDは、今、イエレンさんにかわりまして、そういう意味では、この一月から、昨年の政策決定を受けて市場からお金を回収し始めているということですが、FEDの例を出すと、〇八年の九月の時点で資金供給が〇・九兆ドル、これが四・一兆ドルということは、百円だとすれば約四百兆です。

 どういうことを私は申し上げたいかというと、日銀の出している二百七十兆という方針は、我が国の経済規模からいうと、アメリカのバーナンキさんがやったヘリコプターからお金をまくようにというのは、日本円で換算して、アメリカの経済規模における四百兆円なんです、麻生さん。予算規模からいったって、我が国の二百七十兆というのは実は大変な異常な話なんですよ。

 その前に、アメリカの水準から見ても、実は私はかなり緩和はしてきたなと思いますが、しかしそれがなかなか効果がなかった。二倍になることでメンタル面での変化を起こしてきたということは認めますけれども、さて、これだけじゃぶじゃぶにして、この先の出口戦略というのはどうなるのかということは皆心配しているんですよ。

 どうも、きのうあたりの議事録を確認すると、インフレ二%を達成しても、当面はこれだけの資金供給は市場から回収しないで、いわば残しておく可能性があると。ということは、多分、激変緩和をしないと、さすがにソフトランディングをしていかないといけないという意識でおっしゃっておられるのかもしれないなと思ったものですから、きょう、お招きをして、事情を聞きたいと思っておりました。

黒田参考人 ただいま委員御指摘のとおり、昨年の四月に始めました量的・質的金融緩和というものは、かなり異例の巨額の金融緩和でございます。

 これまでのところ、その結果として、長期金利は安定的に推移しておりますし、予想物価上昇率も全体として上昇しているということで、実質金利が低下し、民間需要を刺激する、そして貸出残高も前年比二%台半ばまで増加しているということで、そうしたもとで、経済全体も緩やかな回復を続けておりますし、物価も、除く生鮮食品で一%台前半まで来ているわけでございます。

 そういう意味では、現在の政策はやや異例ではありますけれども、二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋をこれまでのところ順調にたどっているというふうに思います。

 委員御指摘の、出口をどうするかということでございますが、この点は、日米欧ともに、いわゆる非伝統的金融政策と申しますか、量的あるいは質的緩和というものを続けてきた当局として、非常に重要なポイントであることは御指摘のとおりでございます。

 米国の場合も、御指摘のように、いわゆるテーパリングと言われていますけれども、月々に購入していく資産の額を少しずつ減らしてきているわけでございます。まだ依然として購入はしているんですけれども、バランスシートはふえているわけですけれども、そのふえるテンポをスローダウンしてきているということでございます。

 日本の場合、まだ二%の物価安定目標へ向けての道筋は道半ばでございます。二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に二%を実現するという目標からいっても、そのタイムスパンからいっても、まだまだ半ばでございます。

 今後、そういった目標が実現される状況になった場合に、どのように出口を探るか、どういった出口戦略をとるかということは極めて重要でございますけれども、その時点の経済や金融情勢をよく見て、最適の形で出口戦略を探るということになると思いますので、具体的にどのようにどういったテンポでやるかということについては、まだ今はそれを具体的に議論するのは時期尚早であると思いますけれども、委員御指摘のとおり、この点は日米欧ともに重要な論点であり課題であるというふうに認識しております。

安住委員 やはり、アメリカは非常にドル防衛に対して意識の高い国ですね。私も、バーナンキさんや当時のガイトナー長官とは何度も話をしましたが、多分、アメリカはドルの価値を落とすようなことは絶対にしない。だからこそ、やはり自律してきた経済がわかってくれば、この金融緩和策をやめていく。

 アルゼンチンの話やトルコの話が出てきますけれども、しかし、それは、よくよく考えてみれば、新興国の経済は自律型でみずから改革をしたのかということも問われると思うんですよ。ただ単にドルを少し市場から引き揚げただけで風邪を引くと言ったら変ですけれども、くしゃみをしたら遠くで風邪を引いたなんという、それはまさに改革をしていない証拠でもあると私はあえて野党の議員になったから申し上げる。G20でこんなことを言ったら大変なことになるんだけれども。

 それは、黒田総裁、日本にも言える可能性があるんですよ。ちょっと財政の話をセットでしますと、大胆な金融緩和は財政再建が前提なんじゃないんですか。政府、いわば政治が財政再建の意思をなくして、日銀にこれだけでやってくれというのは、これはあってはならないことだと私は思うんですよ。

 先ほど麻生大臣が戦後の話をしていたので、私もちょっとなるほどと思いましたが、これは、英国なんかはまさにそうですよ。いわば借金を、インフレによって国の債務を減らしていく。しかし、これは実は国民の皆さんには大変な増税なんですよ、インフレだけで。消費税を上げるなんというものでないぐらい、物価の上昇というのは塗炭の苦しみを、特に経済的に苦しい方はする。

 言葉は悪いですが、そうした手口を使うなんということは国としてあってはならないから、大胆な金融緩和に対して疑念の目を持っている人もたくさんおられるわけですね。経済学者はなおさらそうだと思います。

 だからこそ、やはり財政再建をしながら、正しい道、正道を行くことによって、金融政策は景気の底上げのためにやるんだという意識が必要だと思いますけれども、総裁、いかがお考えですか。

黒田参考人 私も、委員の御意見と全く同じでございます。

 御案内のとおり、昨年の一月に政府と日本銀行は共同声明を発表しておりまして、その中で、いわゆる三本の矢といいますか、そういうことがうたわれているわけでございます。

 第一の矢というのが、思い切った金融緩和ということを通じて二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということがうたわれておりますが、それと同時に、政府は、財政運営、短期的には財政刺激、そして中長期的には財政再建、そして、第三の矢として、規制緩和、構造改革等々を通じて成長戦略を大胆に推進する、三つがセットになっているわけでございます。

 そうした意味でも、大胆な金融緩和ということは、デフレ脱却、そして二%の物価安定目標を達成するために必要不可欠であり、二%の物価安定の目標達成に向けて日本銀行としては責任を持ってそれに邁進する所存でございますが、一方で、財政再建は待ったなしであることも事実であり、財政が危機的な状況になったり、財政に対する信認が失われるということになりますと、国債の保有に伴うリスクプレミアムが上昇してしまって、経済の実勢と離れて長期金利が上がってしまうというような事態もあり得るわけでございますので、この点では委員と全く同じ意見でございます。

 政府におかれて、既に、中期財政計画というものもきっちりと決めて、二〇一五年にプライマリーデフィシットを半減する、基礎的財政赤字を半減する、二〇二〇年にこれを解消するということを決めておられますので、それをぜひ強力に実行していただきたいというふうに思っております。

安住委員 つまり、ナローパスだということですよね。人がかわってもこの国にそんなにオプションがあるわけではないんだと私は思うんですよ。

 麻生大臣、今、私と総裁の質疑を聞いておられたと思うんですけれども、金融政策だけに頼って、景気をよくするんだ、よくするんだというのは、私は、裏を返すと、やはりちょっと危険な思想や発想が出始めているんじゃないかと思うんです。それについてどう思われますか。

麻生国務大臣 これは、基本的に一番大事なところは、安住先生もよく御存じのように、日銀が金を刷る、よく言われるヘリコプターマネーという話ですけれども、金を刷れ刷れといって、三十兆、三十五兆まで刷ってためたことがあります。竹中平蔵という人が担当だったと記憶しますけれども、だったって、まだ死んじゃいないから、竹中平蔵さんがおられるころの話。

 結論、景気はよくならなかったんですよ。なぜよくならなかったか。はっきりしています。日銀が金を刷っても、それが行くのは仙台銀行なら仙台銀行まで。そこまでは金が行くんですよ。それから先、金が市中に出回るというのは、経済用語ではマネタリーベースがふえてもマネタリーサプライはふえない、こっちはふえなかった。なぜふえなかったかといえば、銀行に金を借りに行く人がいない。銀行に借りに行く人がいない限りは銀行の金が市中に出回ることはない。したがって、不景気はどうにもならぬ。

 したがって、GDPをふやすのは、政府支出か設備投資か消費か、この三つが基本ですから、そのうち二つが詰まっておりましたので、政府支出が必要というので、私どもは、第二の矢として財政出動ということを申し上げ、第三の矢の経済成長ということをうたっております。

 今お二人の会話を聞いていて、同じだなと思って聞いておりましたけれども、基本的には、いわゆる経済成長というものができてこないと、金融だけで財政を再建するのは不可能です。

安住委員 平たく言えばブタ積みしたという話なんですけれども、それは日本の社会の構造の問題なので、ここで簡単に二分や三分で言える話ではないのでね。

 ただ、私は、今総裁と話をさせていただいたのは、神様、仏様、稲尾様と言ったそうですけれども、それは日銀様じゃなくて、政府にはやることがあるんじゃないのかということなんですよ。やはり長期金利が安定しちゃうと、少しインフレになると、数字がよくなるんですよ、資産の。これが私は危ないと思っているんですよ。黒田総裁、そのことはおわかりですよね。

 そういうことで安易な財政再建の道に、増税がなかなかやりづらいから、小選挙区になって特になかなか苦い薬を飲むのがつらいから、そちらに走ったときはリスクは非常に大きいですよね。そう思われませんか。だから、正しい道を行くべきだということを申し上げているんですよ。

 総裁、このことについて最後に。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、財政に対する信認が失われるということになりますと、リスクプレミアムが拡大し、長期金利が上昇してしまうということで、経済の再建あるいはデフレの脱却ということに対してもマイナスに影響するだけでなく、財政自身のファイナンスも非常に難しくなるということで、非常に重大な問題を生ずるおそれがあるわけでございます。

 現時点では、これは麻生副総理も言われたとおりですが、財政状況は非常に厳しい状況ですが、今のところ、幸いに、財政に対する信認は何とか持ちこたえており、国債も比較的リーズナブルな金利で発行できるということになっておりますし、日本銀行としても量的・質的金融緩和を通じて長期金利の安定に努めているわけでございますが、委員御指摘のとおり、財政に対する信認が失われるということになりますと非常に重大な事態を招きかねないということで、やはり、中期財政計画に沿って財政の再建をきちっと進めていく必要があるというふうに思います。

安住委員 時間がなくなりました。総裁、ありがとうございました。

 きょうは、実は経常収支の話もしたかったんですけれども、これも同じなんですよ。この赤字体質からなかなか抜け切れなくて、さらに赤字が拡大する方向にある。燃料の問題やさまざまな問題があるにしても、我が国というのは、今大きな経済的な変動を起こしつつあるということは数字で明らかです。ムーディーズのことは余り私は言いたくはないけれども、しかし、これも格下げになる材料の一つである。

 だから、そういう点では、こうした危機を直視して、やはり経常収支の問題についても、単に税金を下げるのではなくて、構造改革をやることによって競争力をつけていく、その中から税収を上げていくという意識をしっかり持ってやらないといけないのではないかと私は思うんですが、どうも見ていると、法人税の引き下げとか、安易な方に走るような心配があるので、きょうはそういう議論をさせていただきました。

 引き続き、こうした問題については今国会で議論させていただきますが、きょうはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

林田委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 日本維新の会の坂元大輔でございます。

 今国会でも財務金融委員を引き続き拝命することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほどの安住委員からも御指摘がありましたが、私も、麻生大臣の所信に対して、財政健全化と予算編成のあり方についてというところからまず御質問をさせていただきたいと思います。

 昨年十一月一日、つまり今平成二十六年度本予算、もしくは二十五年度補正予算編成前の臨時国会での財務金融委員会における私の財政健全化に関する質問に対して、「歳出面におきましては、いわゆる要求の時点から施策の優先順位というものを洗い出さないといけませんので、先ほど御質問があったように、うわっと出てくることは十分に考えられますので、そういった意味では、洗い出しをした上で、基本的に、十二月の予算編成に向けて、話し合って無駄をきちんと削減しつつ、歳出の削減に取り組んでいかねばならぬ」という御答弁を麻生財務大臣からいただきました。

 これは当初予算の編成プロセスを指しておっしゃったことかもしれませんが、補正予算に関しても、歳出という意味では同じであります。極力無駄な歳出の削減に取り組まないといけないのは同じであるというふうに思いますが、本会議や予算委員会でも我が党からたびたび指摘をさせていただきましたけれども、今回の平成二十五年度補正予算、トータル五・五兆円のうち、二割を超える約一・二兆円が緊急性のない基金への積み増しや新設に充てられました。

 本当に要求の時点から施策の優先順位を洗い出し、話し合って無駄をきちんと削減したとこれで言えるのでしょうか。まさにうわっと出てきた要求に対して、当初予算に盛り込めなかったからとりあえず補正に積んでおけという形にどうしてもなってしまったのかなというふうにうかがえるんですが、この点、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 坂元先生、基本的に補正予算というのは、通常予算、冒頭の予算と違って、補正を組むにはそれなりの理由があります。

 昨年度は予算編成を十二月の二十九日にスタートしておりますので、普通ですと、そのころは予算がもう上がって、補正の原案ができ上がっている、そのときからスタートをしておりますので、もう予算の編成が通常では間に合わない。したがって、補正予算をとにかく組んでおかないと来年、すなわちことしの四―六がもたないということで、あのときは組ませていただきました。

 その前、私のやらせていただいた五年前になりますけれども、そのときの補正予算は、いわゆるリーマン・ショックの後を受けたので、今回は反動減というものが予測されるということで、どれぐらいの予測ができるんだといったら、一・六とか七とかいう、これは民間の数字がいろいろ出たんですけれども、四十一社の平均で約一・五とか六兆とかいう額でしたので、それに見合って景気が、伸びてきたのがどんと落ちる。その落ちた部分を戻して、そこからまたスタートしていくには遅くて、もとの線のこのラインまでずっと戻すためには七―九を大きく上げていかねばならぬ。七―九を大きく上げる、十―十二はもちろんのことですけれども、そういったことを上げていかないと、今度、平成二十七年の十月から消費税をもう二%上げさせていただきたいというお願いをしております。

 したがって、先ほど安住先生のお話にもありましたように、予算をそこで上げさせていただくということになりますと、来年度の予算編成をやりますときにはどうしても、後半は一〇%で予算編成を考えるべき、来年度は上がっておりますから。しかし、予算編成する一―三月の間、ちょうど一年後の話ですけれども、今のようなころにはまだ上げるというのが決まっていないとすると、上げる前提で、おまえ、何だこれはということになりますので、どうしても、決めるとするならば、これはまず今年中にやっておかねばならぬ。今年度じゃありません。今年中にやっておかないと、予算がおかしな形になりかねぬ。

 しかも、予算というのは、先ほど安住先生のお話にもありましたように、これは三党合意をしておりますので、これができないというのであれば、できないなりの理由と、それに伴う法律改正もせねばならぬということになろうと思いますので、私どもとしてはどうしても、四―六で落ちた分を、七―九、十―十二できちっとした数字を出して、そして予算編成のときにおいては、来年十月には消費税をもう二%上げさせていただきます、またいただけるような状況にしておくということが私どもに今年与えられた仕事でありますので、四―六の反動減というのを極力低く抑えるというのが今回の補正予算の目的です。

 それが私どもの大きな目的なんですが、御存じのように、長期的にかかる分は、幾らがいつまでにわかるかというのは、なかなかわかりづらいところがありますものですから、そういったものに関しましては、七―九で出します分か、もう少し後になる分もありますけれども、子ども手当、何とか手当と、あれはずっと継続していくものですから、そういったものは基本的に基金という形でやらせていただいたということで御理解いただければと存じます。

    〔委員長退席、寺田委員長代理着席〕

坂元委員 我々も、消費税の増税に伴う反動減対策、七―九を上げていかなければならないという点に関しては、全く反論というか否定はいたしません。つまり、補正予算が今回必要だったという点に関してはもちろん同意をするわけでありますけれども、しかし、例えば文科省管轄の革新的プログラムに対して五百五十億円、基金が新設されたり、同じ基金に対して、二十五年補正でも積まれ、また二十六年の当初でも積まれという形もございます。

 つまり、補正予算というのは、そもそも本来緊急的なもの、今回であれば消費税の増税に対する対応というところにやはり限定すべきであって、その他、もう少し長いスパンで見られる基金などの積み増し、もしくは、それが必要であれば、我々も別に革新的なところに投資をすることが全く要らないと言っているわけではございません。ただ、やはり国民の目から見て、どうも本予算と補正予算のあり方というのがわかりにくい、見えにくい部分がどうしてもあるのかなというふうに思います。

 そして、これも同じ十一月一日の私の質問に対しての麻生大臣の答弁なんですが、総じて補正予算の方がチェックが甘くなりやすい傾向にあるというのは、間違いなくそういう傾向にあることは確かだ、これはずっと言えることだ、私どももそう思っておりますので、これは十分注意の上にも注意をしておかなければならぬというふうに、大臣御自身も、補正予算はどうしても、足りなくなったものを補正予算に回せというふうになりがちだということもおっしゃっておられました。

 やはり必要な予算に関してはきちんと当初で積んで、補正予算というのは限定的に、極力、先ほど大臣がおっしゃった、理由をしっかり定めた上で、そこに対して本当に必要なお金というものを組んでいくという、予算の組み方そのものをやはり本来の筋に戻していくというか、補正はあくまでも補正なんだということを達成していかないと、財政健全化というのはまず全てを明らかにすることから始まるのかなというふうに思いますので、当初で計上できなかったものを補正に回そうというやり方では、なかなか財政健全化、やはり無駄を見直していくという点からも難しいのではないかなというふうに考えております。このことについてちょっとお考えを伺いたいのと、もう一点、今私が申し上げた考え方からして、平成二十六年度に関しては、例えば世界的な経済危機であるとか、よほどの緊急性がない場合は補正予算は組まないというふうに理解をしておいてよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のありました最初のお話、補正の方が甘くなりやすいというのは、あくまでも一般論として申し上げておりますので、甘くなりやすい誘因が働く要素があるというのは確かだと思います。時間もないとかいろいろなこともありますので、そういったことがあろうというのは通常言えることだと存じます。

 それから、その次の御質問ですけれども、最初に当初予算で計上できないから補正予算で計上しているというわけではありません。

 補正予算というのは財政法の第二十九条でルールが決まっておりますので、災害の発生とか大幅な景気の下振れ等々、やむを得ざる事情に対応するために必要なものというように書かれておりますので、必要なタイミングで編成してきております。今言われましたように、補正は本予算にのせられなかった分というわけではないというように御理解いただければと存じます。

 加えて、平成二十五年度の補正予算で申し上げさせていただければ、やはり目的は先ほど申し上げたように二つで、何といっても反動減、どんと来る反動減というものに対する緩和、これは御党と同じことを言っているんだと思いますが、もう一点は、やはりこの落ちた分を成長軌道に早く戻してやらないかぬ、それを目的とした施策が緊急に必要との観点から編成をさせていただいたものであります。

 平成二十六年度の補正予算をということの御質問でしたが、これはちょっと、現時点で確たることを申し上げられるわけもありません。これがもしうまくいけば全然やる必要はないことになろうかと思いますが、うまくいかなかった場合にはどうするかということは、私どもとしては、もしかしたらまた何か大きな災害が起きるとか、いろいろなことは常に考えておかねばならぬことだとは思いますけれども、今の時点で、これをやるつもりでおりますというようなことを答えられる状況にはございません。

    〔寺田委員長代理退席、委員長着席〕

坂元委員 もちろん、今の時点で、やります、やりませんということを明確にお答えはいただけないというのは理解をしております。ただ、繰り返しになりますが、やはり補正というのはあくまでも緊急時に組むものだというところはしっかり認識を共有したいなというふうに思いまして、この質問をさせていただきました。

 予算委員会や本委員会でもたびたび指摘が出ておりますが、やはり中期財政計画を達成していくために、二〇二〇年度、今の内閣府の試算では、経済再生ケースであっても、プライマリーバランス、基礎的財政収支の黒字化というのは今のところ厳しいというデータも出ておりますので、そういった点からも、財政というものを極力明らかに、見えるようにしていって、一つの箱の中でしっかり歳出削減に関して議論をしていければなというふうに思っておりますし、我が党からたびたび申し上げておりますが、財政健全化責任法案というのを維新の会は出させていただいております。やはりそういう法的な部分でも健全化というものをしっかり定めていくことも重要ではないかというふうに思っておりますので、この件も引き続きまた議論をさせていただきたいというふうに考えております。

 続きまして、財政面から見た社会保障の捉え方という点に関してお伺いをさせていただきます。

 今回の麻生大臣の所信の中でも、「消費税率を引き上げることにより、社会保障の安定財源を確保しつつ、」というふうにありますが、実は、社会保障給付費全体の増加に対する補填というものは、消費税率引き上げではとても追いつきません。国費からの分は一兆円ですけれども、当然、国、地方を合わせた社会保障の増加というのはそれ以上、約四兆円でございまして、社会保障制度の赤字、つまり保険料収入と支出の差、これは国、地方を合わせてですけれども、その額は新規の公債発行額とほぼ同額というふうに言われております。

 つまり、実は、社会保障の不均衡、収入と支出の差というのが財政健全化のポイントであると言っても過言ではない。先ほど安住委員からも社会保障の問題の指摘がありましたけれども、日本の財政問題はつまり社会保障問題だというふうに言っても過言ではない、数字的に見れば言えると思います。

 昨年プログラム法ができまして、今後、安倍内閣として具体的な改革を進めていくということになるわけですが、財政を預かる財務大臣として、財政という視点から社会保障制度改革への強い働きかけを、なかなかこれは、先ほども議論があったとおり、不人気な指摘になると思います、出していたものを削減するという話になりますので。ただ、やはり財政健全化ということをやっていくためには、どうしてもこれは避けては通れない部分だというふうに思いますので、財政を預かる財務大臣から、この社会保障制度改革への働きかけに関して、決意を伺えればというふうに思います。お願いします。

麻生国務大臣 坂元先生、昭和三十四年、岸内閣のときに国民皆保険制度というのができております。以来今日まで、世界に冠たる皆保険制度だ、我が国が自慢できる制度の一つだと自負しておりますけれども、この社会保障制度そのものは、社会保険方式だけで成り立ってはおりません。御存じのように、今御指摘のあったように、保険料負担とは別に、公費の負担がその中に入っておる。しかも、今おっしゃるような巨額の額が入っております。

 この公費負担の財源というのは何かといえば、将来世代への負担の先送りということになります特例公債に頼らざるを得ないというのが今の実態だと存じます。したがいまして、御指摘のとおり、財政状況の悪化の最大要因はこれか、多分後世、人はそう言うのではないかと思いますが、百十・六兆か何か、巨額の額だと思っております。

 したがいまして、今後、社会保障制度改革に当たっては、昨年成立いたしましたプログラム法に沿って、受益と負担の均衡がとれた制度というものへの不断の改革を進めていくというのが極めて重要であると同時に、こうした社会保障制度の改革に加えて、毎年の予算編成過程におきまして少なくとも社会保障費の自然増というものを最大限に取り組んでいきませんと、少子高齢化という社会現象が、結果として、一人の六十五歳以上を六十四歳以下十五歳以上が六人、四人で一人、三人で一人ということになってきて、行く行くは二人で一人とかいうことになる状況になってきておりますから、そういったことも考えてこの問題に取り組んでいかなければならぬ、非常に大きな問題だと思っております。

坂元委員 そうですね。大きな問題だという認識は共有はできているんですけれども、今後、安倍内閣としてもこれは最重要課題の一つであるというふうに思いますので、財政を預かる財務大臣、そして副総理として、この問題に対して積極的に財政面から御指摘、関与をいただければというふうに再度お願いをさせていただきます。

 続きまして、黒田日銀総裁に本日は来ていただいております。

 いわゆるアベノミクス第一の矢、大胆な金融緩和について、いま一度確認をさせていただきたいというふうに思います。

 これは私の理解かもしれませんが、今回の金融緩和が、額は別にして、異次元というふうに呼ばれる理由なんですが、つまり、ゼロ金利制約下において、名目金利の低下余地が乏しい中で、インフレ期待を高めていくことで実質金利の低下を促す。先ほど麻生大臣から、借り手がなかなかいない、いないからお金が市中に回らないんだというお話がありましたが、経済政策によって借り手をつくっていくことと同時に、やはり実質金利を下げることでさらに借りやすくすることも大事かというふうに思うんです。そういうことを金融緩和によってやろうというのが、今回の取り組みが異次元だというふうに言われる理由の一つなのではないかなというふうに私は捉えております。

 しかし、このゼロ金利制約下において、貨幣乗数メカニズムも貨幣数量説も基本的に成り立たない前提があるというふうに私は捉えているんですが、では、実際、本当にインフレ期待というものをどういうふうに高めていくのかという部分に関して、黒田総裁の御認識を伺えればと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、量的・質的金融緩和の効果の波及チャネルとしては、期待に働きかけるというのが重要であることは言うまでもございません。

 ただ、昨年、この新しい金融緩和措置を発表した際にも申し上げましたけれども、名目金利を引き下げる余地が限られていることは事実でございますが、特に、ゼロ金利制約というのはまさにそのとおりで、短期金利はほとんどゼロのところに近づいているわけですが、中期あるいは長期、超長期の金利はイールドカーブはまだある程度立っておりますので、この量的・質的金融緩和の中で、年間五十兆円ずつ国債保有残高をふやしていくという形で、長期国債を大量に買うということで、長期金利の抑制に努めるという効果もございます。

 それから、もう一つは、そうした形で大量に国債その他の資産を市場から吸収いたしますので、そういったものに投資していた金融機関あるいは企業、個人等は、ほかのものに投資をするという形で、いわゆるポートフォリオリバランスという効果もございます。

 それに加えてというか、まさに御指摘のとおり、期待に働きかけるというものがあるということは、そのとおりでございます。

 それで、どういうふうにそういうことが進んできているかと申しますと、何と申しましても、四月四日に量的・質的金融緩和を導入した際に、人々の期待をできるだけ早期に抜本的に転換するという観点から、二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するということを強く明確にコミットメントを行いまして、そして、それを裏打ちするように、量的にも質的にも従来の次元と異なる金融緩和を行って、それを毎月実行してきているわけでございます。

 さらに、先行きの政策スタンスにつきましても、二%を安定的に持続するために、必要な時点までこの量的・質的金融緩和を継続するということを明確にコミットしているわけでございます。

 こうした日本銀行のコミットメントと、実際の具体的な大量の国債等の買い入れといった行動によって、企業や家計に定着したデフレ期待を抜本的に転換して、人々が考える予想物価上昇率を高めていくことができるというふうに考えておりまして、実際、予想物価上昇率は、いろいろな指標がございますけれども、全体として上昇してきております。

 さらに、消費者物価の前年比が、先ほど来出ておりますように、プラス幅を拡大してきており、しばらくの間、一%台前半で推移すると見込まれますので、こうした実際の物価上昇も予想物価上昇率を引き上げていくということになろうと思っております。

坂元委員 この点に関してはまた議論させていただきたいと思うのですが、私の理解では、つまり、日銀が気合いを見せれば市場は動いてくれるはずだというところなのではないかなと。実質、昨年はそうだったと思っております。なので、上がってきたという部分もあると思うのですが、やはり二年目以降、実体経済を回していかないと本当の物価上昇というのはなかなか見込めないのではないかというふうに思っております。

 黒田総裁、御退室いただいて結構です。ありがとうございました。

 もう一問だけ。その点とも絡んでくるんですが、近年のGDPギャップというものを一体どう見るかというところで、基本的に、このGDPギャップは、いわゆるバブル崩壊以降、数年を除いてマイナスが続いてきたわけなんですが、アベノミクスは、私の理解では、つまり、需要が少ないからだというところで、この需要不足の克服というものを第一の矢と第二の矢で達成しようとされているのかなというふうに捉えています。

 しかし、この需要不足が実は、残念なんですけれども、成長期待の低下と供給構造の潜在的需要構造への不適合、つまり、今まで工業型だった社会がだんだんサービス型にシフトしていって、福祉や介護やそういったところに需要が生じているにもかかわらず、なかなかそちらにシフトしていっていないというところがポイント、問題なのではないかなと思っております。つまり、供給サイド側の改革も不可欠だ、やはり鍵は三本目の矢、成長戦略にあるのではないかなというふうに考えております。

 そうした視点から見ると、アベノミクス成功のポイントというのは、財政健全化に取り組み、日本に対する国内外の信頼を確保しながら、産業構造の変化に対応して、国がターゲティング政策をとるのではなくて、労働市場の改革を中心とした改革を行っていくことで労働生産性を高めていくことが一番重要なのではないかなというふうに考えておりますが、この点に関して、大臣の御見解を最後に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 労働生産性のその最後のところが一番の御質問ですか、ちょっと時間がないようなので。労働生産性のところが一番御関心がおありだと。

 労働生産性の話は、確かにおっしゃるように、これは結構大きな問題なんだと思いますが、第一の矢、第二の矢の間にギャップがある、市場と、需要とのギャップがある、間違いなくそのとおりだと思います。

 したがって、市場でお金を借りたい、だって、金利がゼロでお金を借りたい人がいないという前提で経済学というのを学校でも習ったことはないと思いますね。我々はそういう異常事態に今いるんですから。間違いなく、世界で誰も経験したことがない状況、我々は今、その真っただ中におります。

 そういった中にあって、需要というものができてこないときに、日本の場合、一次産業、二次産業、三次産業、いろいろありましたけれども、人口からいきますと、一次から三次へ大量に人が二十何%移っておりまして、一次産業が約三割だったものが約五%ぐらいになり、三次産業が七十何%まで膨れ上がり、二次産業はそこそこ、二七、八%かな、今それぐらいまでいっているんだと思います。

 やはり日本としては、その三次産業のサービス産業とかいろいろなもの、それは漫画を含めアニメーション、ありとあらゆる、病院やら何やら、今から世界の中で金を稼いでいけるものもいっぱいあることは確かですけれども、二次産業を同時に大事にしていきながらということを考えて、労働生産性ということで考えれば、やはり製造業というものをきちんと維持していくという姿勢は、我々としてはとり続けておかなければならない方向性だと思っております。

坂元委員 終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、消費税増税、五%から八%が決定されたのは昨年の秋ごろだと思いますけれども、決定されるに当たりまして、景気附帯条項、先ほど麻生大臣もおっしゃっておられましたけれども、経済の状態を見て消費税増税を決めるということで、どのような指標を使われたのか、お伺いいたします。

麻生国務大臣 三党合意によってでき上がりました、いわゆる税制の抜本改革法というものの附則十八条の三項にいろいろな指標が書いてある。その中の指標は、いわゆる物価動向、経済成長率その他、デフレ脱却、経済、とにかくいろいろな指標が書いてあるんですけれども、そういった中にあって、複合的に勘案してそういったものを考えさせていただいたんですが、三本の矢、三本の政策によります効果もあって、景気は緩やかにではあるけれども確実に回復しつつある、それから物価の動向についても、デフレと言えるような状況ではなくなりつつあるということも確認をされたと思っております。

 したがいまして、私どもは、このような中で、消費税の引き上げに伴う反動減のリスクというものをどうやって緩和するかということを頭に入れなければいかぬということと、成長率を、四―六で下がったものを七―九で戻す、そういった底上げを図るということを考えて経済政策パッケージというものを果断に実行していくこともあらかじめ決めておいてもらわない限りは、上げるだけ上げました、後は知りませんじゃとてもできませんよというお話をさせていただいたりなんかして、昨年の十月一日に決定をさせていただいたという経緯であります。

三木委員 御説明ありがとうございます。

 私が聞きたいのは、実際に、GDP比であるとか、その景気附帯条項のところにも、経済指標を幾つか見る等、それ以外にも見ていくということでしたので、前回の質問の折に、ぜひとも労働者の方のお給料、賃金が上がっているかどうかということも勘案して消費税の方の増税を決めていただきたいということもお願いを申し上げたわけでございます。その中で、GDPとかいろいろ書いてある以外にどんな経済指標をもって決定されたのかということをお伺いしております。

麻生国務大臣 経済指標というのはすごくいっぱいありまして、有効求人倍率とか失業率とか民間企業何とか率とかいろいろございますので、そういったもの全てを複合的に勘案して、総合的に勘案して考えたということでして、資料の数字だけでも、ちょっと何行か忘れましたけれども、本当にすさまじい、たくさんの資料を参考にさせていただいたと記憶します。

三木委員 では、そのうちの一つだけ、私がもう去年からお願いしておりましたお給料のベースアップといいますか、相対的に、労働者の方々がお給料をいただく、デフレから脱却するわけですから、消費者物価指数が上がっていく、そして消費税も増税になっていく、その中でお給料が上がっていることがやはり前提条件になるんじゃないかということを申し上げまして、麻生大臣もそのときには、それはそうだというような御答弁をいただいたと思うんですけれども、賃金の方の査定は、厚生労働省のホームページを見ると、二十五年で、前年度と同じ水準という結果が出ておりますので、そのことについて勘案されたのかどうかということをお伺いしております。

古川副大臣 賃金についても見ております。

 消費税率を八%に上げるということの決定は、昨年の十月一日でございました。その十月一日時点においてわかっております賃金に関するデータというのは、七月ぐらいまでのものがその当時最新のものだったわけで、当時はいわば横ばいといいますか、必ずしも十分な水準ではないのではありますけれども、しかし、この十月一日に同時に公表しました経済政策パッケージにおきまして、例えば政労使会議において共通の認識の醸成を図る、あるいは所得拡大促進税制を拡充する、足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に復興特別法人税の一年前倒しでの廃止を検討するというふうに、企業収益の拡大を賃金上昇につなげる取り組みというものをたくさんここに盛り込んでおります。こういう対策を打つことによって、ここはたえ得るというような判断をしたわけでございます。

三木委員 今御説明いただいたのは、企業に勤めている正社員の方のことかな、企業の収益も含めて、正規労働者のことかなと思っております。

 同じように、私も少し調べておりました。一月から九月までの統計の中で、正規雇用の正社員と言われる方は四十五万人減少している、非正規雇用の方が百十七万人増加しているという中で、いわゆる失業率がよくなった、そういうのも全部、非正規雇用の方が非常に多いわけですね。

 今、副大臣がおっしゃった対策というのは、正規雇用の方にはきくかもしれないけれども、パートで働いている方々にはそういった波及がなかなか行かないんじゃないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

古川副大臣 確かに、おっしゃるとおり、正規は上昇傾向だったわけですけれども、パート等についてはむしろ減っているというような数字が出ておりました、その当時、去年の七月ぐらいですけれども。

 しかし、先ほど申しましたような取り組みを通じて、企業の収益が伸びることによって雇用あるいは所得の環境が整うことによって所得がふえていくということを期待する、その取り組みを総合的に打ち出すということですので、そういう意味では、正規社員であっても非正規社員であっても、そういう恩恵はつながっていくわけです。もちろん、さまざまな労働法制等々というものも全て総合的に力を合わせてその政策効果の発現に努力をするということですけれども、あくまでも、一般とパート職員の給与の水準の違いというものは、要するに、企業の収益の拡大を通じて所得を上げていくということを狙ったものでございます。

三木委員 残念ながら、二十五年内、一年内のパートタイム労働者の現金給与総額は〇・六%減になっております。正規社員の方は〇・七%増ですので、こういったことをあわせて考えていっていただきたいなと思っております。

 今後、今回はもう八%に上がるということが決定しておりますので、次、一〇%に上がるときには、こういった非正規雇用者の労働環境であるとか、現金給与総額、現金給与額というものもぜひそういった指標の中に入れていただきまして、十分な配慮をしていただけたらなと思いますが、いかがでしょうか。

古川副大臣 先ほど大臣からも答弁させていただきましたように、この引き上げに当たっては、名目それから実質の経済成長率ですとか物価動向、さまざまな経済指標全てを見渡して総合的に判断するわけですね。ですから、賃金についても、必ずしもいい状況ではないにしても、今後の見通しを含めて、総合的に勘案して決定をしたわけですね。ですから、次回の判断をするという場面においても、当然、そこはきちんと見てまいります。

三木委員 では、大臣の方にも同じようにお答えいただきたいんですけれども、私、予算委員会の中でも、女性の生き方とか、そういうことに関していろいろ質問をさせていただきました。

 安倍内閣では、女性が輝く社会というものを目指していろいろと施策を打ち出していただいておりますけれども、女性労働者はパートタイムに従事している方も多いので、ぜひ、一〇%に引き上げのタイミング、またそれを考慮される際には、女性の労働力といいますか、そういったものを十分に引き出す、日本の経済全体を底上げしていこうと思われるのであれば、そういったことも考慮に入れていただいて、一〇%への引き上げ時の指標に加えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 女性の輝ける社会とか、いろいろ表現しておられました。

 御存じかどうか知りませんけれども、去年、金融庁は上級職を十六人採用しておりますけれども、女性職員はどれぐらいいると思われますか。(三木委員「新聞に出ていましたが、はっきり覚えていません」と呼ぶ)五〇%ですよ。八人が女性、それが実態です。私ども大蔵省でも毎年一人や、このところ四人とか五人とか、私はそれをどうのこうの言うつもりはありません。しかし、現実問題として、大蔵省とか金融庁とかいうところですらそういう傾向になってきておるという実態。これは何も自民党だからと言っているわけじゃありませんよ。そういったものになりつつあるんだと思っております。

 事を荒立てなくても、基本的には女性の比率は上がっていかざるを得ないというのが社会的情勢になりつつあるので、それができるような環境にするために、少なくとも、女性で働いている人、既にやめた人に対して、一回やめてもう一回復帰するときに、子供のためにというので保育所を会社の中につくっている。私のところも大量におりますので、そういうのをつくって、復帰した社員というのを、もう前に一回やっておりますから、それを大量に採用して、その方がよほど話が早く、現場も知っておりますので、そういった形でやらせていただく。企業によってそういった採用をしているところも実はいっぱいあるという現実も、私どもは知らないわけではありません。その上で、今のお話を伺わせていただきます。

三木委員 予算委員会では麻生大臣の前でも質問させていただきまして、女性が輝ける社会づくりということで取り組んでいただいているのはわかっております。ただ、上場企業とか国家公務員ですとか、そういったいわゆる一流大学を出てエリートと言われるような女性だけじゃなくて、一般の女性、一生懸命働いているお母さん方とか、パートに行って働いている女性の方とか、そういった方々に配慮をしてくださいというお願いであって、女性の地位向上をお願いしているわけじゃないんです。

 これは、もう時間がありませんので、副大臣の方に御答弁いただきましたので、ぜひ、どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、政府予算案作成時の前提となっております二〇一四年度の経済成長率は、実質で一・四%、名目で三・三%でございます。民間調査機関の名目成長率の予測の平均は二・三三%でありますけれども、本当に達成できるのでしょうか。

古川副大臣 その民間機関の試算が、どのような方法でその試算が行われているのかという詳細がわからないものですから、その民間の予測値と政府の見通しとの数字の誤差がどういうものかというのはちょっと、直接は説明はしにくいんですけれども、ただ、政府の経済見通しにおきましては、二〇一四年度の経済については、四月一日から消費税が上がりますけれども、その駆け込み需要そして反動減、ここにはちゃんと留意をしておかなきゃいけないんです。きちんと留意をしておかなきゃいけないんですけれども、好循環実現のための経済対策を含む経済政策パッケージをしっかり着実に実行していくことによって、年度を通して見ると、前年度に続きまして堅調な内需に支えられた景気回復が見込まれますので、経済の好循環が徐々に実現していくだろうというふうに考えております。

 今回の政府経済見通しの実質GDP成長率というのはこうした見方を反映したものでございまして、いずれにしても、申し上げましたように、この好循環実現のための経済対策を迅速かつ着実に実行して、全力を挙げて取り組んでいきたい、こういうことでございます。

三木委員 では、名目三・三%目標達成が一応あるということで予算を組まれているというふうに理解をさせていただきました。

 では、次の質問に入らせていただきます。

 社会保障の問題についても聞こうかと思ったんですけれども、皆さん聞いていらっしゃいますので、少し別の視点から、新成長戦略についてお伺いしたいと思います。

 消費税増税後に消耗した消費者が再び財布を閉じる、先ほどもおっしゃったように反動減があるんじゃないかということで、一時的に税収が落ち込むことが予想されているわけですけれども、安倍政権は、昨年十二月、消費増税後の反動減に備えて、国費で約五・五兆円の経済対策を閣議決定されております。三%増税で七・五兆円の税収増が見込まれておりますけれども、そのうち五・五兆円を還元するということでございます。経済成長が大規模政府支出頼みになっているんじゃないかということを心配される面もございます。

 短期的には財政出動と金融緩和によって景気が持ち直してはおりますけれども、中長期的には抜本的な構造改革を行わなければならないのは、先ほどからいろいろな委員の先生方が質問されていることで明らかになっておるわけでございます。

 第三の矢と言われておりますけれども、その姿がいまだはっきり見えてこないということが言われています。本年の六月に構造改革を推進するための新成長戦略をまとめるということでございますけれども、財政再建に有効と考えておられるその内容と検討状況についてお伺いいたします。

小泉大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今、第三の矢と言われる新成長戦略についての、既得権益に対する切り込みがどこまでできるか、そういった思いもあっての三木先生の質問だと思いますが、総理はみずからをドリルと例え、しっかりと、今まで切り込むことができなかったところまでも、自分がドリルとなって岩盤を砕いていく、そういった決意をダボスの方でも訴えたところであります。

 具体例としましても、昨年六月の成長戦略の策定以降、例えば電力市場の自由化に向けた改革、そして再生医療を産業化するための改革、四十年以上続いた米の生産調整の見直しなど、こういった取り組みを実現してまいりました。

 そして、これからがまさにその正念場であるわけでありますが、先日、産業競争力の強化に関する実行計画を閣議決定して、成長戦略関連施策の実施時期と担当大臣の明確化を行ってまいりました。

 そして、今御言及のありました、年央に予定している成長戦略の改定に向けては、先月、一月に成長戦略進化のための今後の検討方針を踏まえて、働く人と企業にとって世界トップレベルの活動環境の実現、医療、介護、農業の新たな成長エンジン化、そして成長の果実の地域や中小・小規模事業者への波及、こういった観点からさらなる構造改革について検討を進め、改定に反映させたい、そういった状況であります。

三木委員 今いろいろと御答弁をいただきました。要するに、民、官に存在しているさまざまな既得権益に対しても分け隔てなくメスを入れていくということでよろしいんでしょうか。

小泉大臣政務官 冒頭お話をしたとおり、安倍総理の言葉に全てが物語られていると思います。今まで歴代の総理の中でも、恐らくみずからのことをドリルと例えた方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか。そして、そのドリルから無傷でいられるところはない、そういったことも安倍総理本人がおっしゃっていますから、今、政府一丸となって、これから、できるわけがない、そう言われたような改革も、先ほど言ったようにさまざま進めてきたところでありますから、まさに三本の矢が問われている中で、三本目の矢がしっかりと中身あるものにできるように、協力をして支えていきたいと思います。

三木委員 大変力強い御答弁をいただきました。では、ぜひ頑張ってやっていただきたいなと思っております。

 ドイツで、シュレーダー改革と言われる大胆な構造改革が行われたわけでございますけれども、ドイツでは、雇用制度と社会保障改革を柱に据えて、それまでのドイツ社会に古くより根づく風土、既成概念であった過度な雇用規制の緩和、生活保護支給期間の短縮、失業率回復のための就業訓練の拡充、それから税制改革、規制緩和など、国民と大きな痛みを分かち合う改革を断行されたわけでございます。

 その結果、残念ながらドイツでは次の選挙に惨敗してしまったわけでございますけれども、そういったことに恐れをなさずに、ぜひともその改革を進めていっていただきたいと思います。

 いろいろとほかにもお聞きしたいことがあったのでございますけれども、質疑時間が終了いたしましたので、これにて私の質問を終えさせていただきます。ありがとうございます。

林田委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。

 今国会から、こちらの財金委員にさせていただきました。大臣、皆様方、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 最初にお尋ねを申し上げますのは、いわゆるアベノミクスと言われる政策が成功していった場合、あるいは成功していかない場合でも、場合によっては長期金利が上がっていくと思います。

 財務省から、事前に事務方から資料をいただきました。五年後に大体二・四%ぐらいというような数字、あるいは別の観点で、これはちょっと別のときにいただいた資料ですと、平成三十五年で二・六五%程度になる。現在、新発の十年債で〇・六パーとか〇・七、六〇とか七〇ベースぐらいですけれども、つまり、二%弱上がっていく、こういうことになるわけでございます。

 そうした場合の、民間セクターと公的セクター、それぞれの金利リスク、あるいは、もうちょっと違う言い方をすると金利の感応度、これはどのように見積もられていらっしゃるか。民間セクター、公的セクター、それぞれについて教えていただければと思います。

古川副大臣 まず、公的セクターについて、私の方からお答えさせていただきます。

 財務省がことしの一月に公表しました後年度影響試算によりますと、仮に平成二十七年度以降金利が一%上昇した場合には、国債の利払い償還費である国債費が、平成二十七年度に一・〇兆円、平成二十八年度に二・五兆円、平成二十九年度に四・一兆円増加するものとしております。

 引き続き、市場の信認を維持しまして、金利上昇による財政への影響、これは甚大なものがありますので、これを抑制するためにも、中長期的な財政健全化に取り組むことが重要だ、このように考えています。

岡田副大臣 お答えいたします。

 我が国の民間セクターにおけるアベノミクスに伴う長期金利の上昇リスクについてでありますが、長期金利の上昇が金融機関に与える影響については、一般的に各金融機関の保有有価証券や貸出債権等の状況がまちまちであることから、断定的なことを申し上げることは困難でありますが、各銀行等においては、長期金利が上昇した場合の影響の分析等を含め、多角的な視点からリスク管理を行っていると承知しております。

 また、日本銀行が公表している金融システムレポートではさまざまな報告がされております。例えば、平成二十五年六月末時点で仮に金利が一%ポイント上昇したと想定した場合、銀行等の保有する債権の時価は約七・九兆円減少すると試算されておりますが、こうした損失見込み額は今年度に入って低下をしております。さらに、銀行等の資本基盤は全体として充実してきており、損失吸収力は高まっているとされております。

 金融庁としましては、引き続き、銀行等に対するヒアリング等を通じ、銀行等の抱えるリスクを的確に把握し、適切な監督を行ってまいりたいと考えております。

 以上です。

大熊委員 ありがとうございました。

 ただ、今、民間セクターの中で、公的セクターは後で伺いますが、お話しになっていないところがありますよね、金融機関、非金融機関。もっと具体的に言いましょうか。住宅ローンですね。これはすごく大きなリスクですね。住宅ローンのリスクをどのぐらい、公的セクターでいくとフラット35というのがありますよね。ちょっときょうは個別にいきませんけれども。公的セクターで、機構の方が物すごい。要するに、金利を固定で貸しちゃっているわけですから、あるいは保証をしちゃっているわけですから、保証料を取っているわけですから、オプションを売っているようなものですよね。金利が上がっていくと、膨大な損、損失が無限大にいくわけですよ。

 住宅ローンの金利リスクをどんなふうに見ていらっしゃいますか。借りている方ですね。今言われたのは金融機関ですよね。そうじゃない、借りている方ですね。教えてください。

岡田副大臣 一般に、固定金利型の新規住宅ローン金利については、各金融機関が長期金利の動向も参照しつつ決定することが多いことは承知しておりますが、住宅ローン金利の変動が顧客に及ぼす影響については、期間の長短あるいは顧客の属性などさまざまな要因に上るため、一概に申し上げることは困難であると思います。

 いずれにせよ、各金融機関においては、住宅ローンなどの融資商品に関連し、金利変動の影響も含め、顧客に適切な説明を行ってもらいたいと考えております。

 以上です。

大熊委員 きょうは所信に対する質疑ということで具体的にいきませんけれども、問題提起だけなんですが、これは下手をすると日本版サブプライムローン問題になり得ると思っているので、ちょっとこれは個別に、いろいろまた機会を見て質疑をさせていただきます。

 次に行かせていただきますと、総理が、バイ・マイ・アベノミクスというふうにいろいろなところでお話しになっていらっしゃると思うんですけれども、これはちょっと、なかなか危険な要素があるんじゃないかなと思うんですね。

 よく麻生大臣は、先日の予算委員会の質疑でも、相場の水準については答弁できるわけないでしょうというふうにおっしゃる。そのとおりでいらっしゃるんですね。ところが、バイ・マイ・アベノミクスということで、その時点で相場の水準をおっしゃっているわけですね。つまり、割安である、バイだと、内閣総理大臣が。

 ふだんの麻生財務大臣の発言の趣旨からすると、これはちょっといかがなものなのかなというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

麻生国務大臣 総理の発言は、投資家等々含めまして幅広い市場関係者が聞いていたわけですので、日本の三本の矢、三本の矢というのはどれぐらい通じているかというのはよく言われるところで、日本人から見たら三ッ矢サイダーと間違えられるからやめろとかいろいろ御意見があったのを記憶しますけれども。三本の矢というのは、間違いなく成長していくんだということで、日本に対する見方、二十年間ぐらい続いた見方を変えてもらいたいということで、成長していく日本に投資をしていくべきだという趣旨で行われたものだ、私自身はそう承知をしておりますし、英語でそういうような感じのニュアンスにもとれましたので、私どももそう思いました。

 他方、金融商品取引法というので出てくる、いわゆる風説の流布という条項があるんですけれども、これは、有価証券の売買などを自己または第三者が有利に行うため、または有価証券の相場の変動を図る目的をもって風評を流す行為と解釈をされております。したがって、総理の御発言そのものを見ますと、第三者の証券取引が有利に行われるために行われたものでないこともはっきりしておりますし、有価証券の相場の変動を図る目的をもって行われたものでもないと思っておりますので、風説の流布というふうな話を言っておられた方もいらっしゃいましたけれども、この説は当たらないのではないか、私自身はそう思っております。

大熊委員 麻生大臣のような、成長なんだと、そういうことであればいいと思うんですけれども、バイというのはちょっと危険な表現なのではないか。これは私なんぞが申し上げるものでもないわけなんですが、麻生大臣の方から総理に、バイとかセルとか言うのは、相場に影響を与え得るよということで、ちょっと控えた方がいいんじゃないかとお話しになられたらいかがかなというふうに意見だけさせていただきまして、次に行かせていただきますが、済みません、一言だけ。

 もしバイとおっしゃるなら、これは、私が思うには、バイ・アンド・ホールド・マイ・アベノミクスと言うべきであって、バイと言うと当然セルが連想されるわけですから、ヘッジファンドなんかバイだけやっているところはあり得ないわけで、バイだけ言うのではなくて、もし言うんだったらバイ、ホールドというふうにおっしゃるべきではないかなというふうに、一言意見を申し上げさせていただきます。

 次に行かせていただきますと、四月から消費税が上がるわけなんですが、私どものような国会議員の歳費の削減措置もなくなるわけなんです。公務員の、震災対応の七・八%の給与減というのもなくなる。

 これは、地元に戻りますと、あるいは地元の方だけじゃなくて金融業界の人たちなんかも、この辺はちょっと不公平感が強いよねというような意見が結構あるんですけれども、この点について、一言、大臣の方からいただけませんでしょうか。

麻生国務大臣 公務員給与の特例減額のお話なんだと存じますが、復興財源確保のために、臨時異例の施策として、平成二十四年度、二十五年度に限って講じられております。公務員の労働基本権を制約する代償としての人事院勧告制度を尊重する、それが政府の基本姿勢ですので、法律の規定どおりに終了することはやむを得ないところだと考えております。

 一方で、公務員を取り巻きます諸課題に対しては、恒久的な制度改革を実行に移すことで的確に対応していくということとしておりますが、具体的には、地域、民間の実態に合わせて、能力、実績が一層反映されるように、給与体系の抜本改革に取り組むとともに、定員管理の徹底、そして既に決定をしております退職手当の引き下げなどを通じて、公務員が使命感や誇りを持って職務に取り組める環境というものをつくりつつ、総人件費の抑制を図っていくということが大事なことだと思っております。

 国家公務員の中には特別職国家公務員であります国会議員も含まれているとは存じますけれども、この点に関しては、国会で御議論していただくべき筋のものだと思いますので、私の方からのコメントは差し控えさせていただきます。

大熊委員 これは、私の選挙区の方々だけではなくて、日本じゅうの皆さんが、特に民間の方は不公平感があるなということだけ一言申し添えさせていただきまして、次に行かせていただきます。

 ちょっとNISAの関係は、法案審議のときもありますので、済みません、時間の関係で飛ばさせていただきまして、外貨準備の関係をお伺いいたします。

 いわゆる外為特会、百三十兆円、この金額を見て私は腰を抜かしたんですけれども、これは通常、為券というんでしょうか、短期の国債でもって調達をしているわけでございますが、これまでも、例えば二〇一一年八月の円高緊急ファシリティー、あるいは二〇一三年四月、海外展開支援融資ファシリティー、これはJBICによる民間等への貸し付けということで、残高が、本日現在でしょうか、大体四百七十四億ドルということになっているわけでございます。さらに、四月から、これら以外に、運用を民間に委託してやるんだ、こういうふうな発表、報道があるというふうに承知をしているんですが、まず、この認識で間違いないかどうかだけ、一言お願いをいたします。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

古川副大臣 結構でございます。

大熊委員 しかしながら、先ほど申し上げたように、調達の方は短期でやっておりまして、運用は長期でやるんですよね。これは、ALM的な観点から、全然おかしくないですか。

古川副大臣 外為特会の運用については、あくまでも外為特会の存在意義というのがまず優先しますので、そして、そこを侵食しない範囲において運用するということになっておりますので、通常の一般の資金の運用の仕方と必ずしも一致するものではないというふうに考えております。

大熊委員 いや、伺っているのは、調達は短期、運用は長期になるでしょう、それはおかしくないでしょうかと。通常、調達を長期、運用を長期、これなら簡単に言うと一致していますよね。調達は短期、運用が長期、これは普通は考えられない事態というかオペレーションなんですけれども、おかしくないんですか。

古川副大臣 外為特会の運用については、安全性及び流動性に最大限留意した運用を行うこととするというふうに運営方針が決まっております。それに従って、このような運用になっております。

大熊委員 質問と答弁がかみ合っていないようですね。期間の問題を伺っているんです。きょうは問題提起だけということで、余り突っ込みませんけれども、期間が食い違っている、そういう御質問なので、後ろの方と御相談の上、後日またもうちょっと突っ込んで御質問させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 もう一つ、外為特別会計について、これは事務方にお伺いしたんですが、保有有価証券はどんなものを持っていますかと聞いたところ、出せませんと。なぜならば、いつも麻生大臣がおっしゃっているように、マーケットに影響を与えるからだと言っているんですね。これは、本当にそうか。

 要するに、これを持っていますというふうに開示がだめだったら、では、例えば、金融庁が所管していらっしゃいますが、有価証券報告書の中で、少なくとも単体については、上場会社が何を持っているかと、有価証券を開示しますよね。これが矛盾することになるじゃないですか。では、東京三菱銀行はこんな株を持っていますと。東京三菱銀行がこういう株を持っていますと出したら、それはマーケットに影響を与える、だから出せない、こういうふうに政府の場合はおっしゃっているわけですね、この特会も。保有有価証券を出せない、明示できない、これはおかしくないですかね。

 もう一回言いますけれども、民間の適時開示、上場会社の適時開示、金融商品取引法上の適時開示では求めている。ところが、特会の保有有価証券は明細を出せないと。外国国債とそれ以外という二種類だけ書いてありますが、膨大な金額なんですね、一個で十七兆円とか。十七兆円ですからね。十七億円じゃないですからね。膨大な金額なんです。何をどう持っているかというのはやはり、これは質問通告にも書きましたけれども、まさかと思いますが、これは特定秘密なんですかね。

麻生国務大臣 まず、基本的に、これは国家の資産の安定、通貨の安定に資するのが目的であって、民間銀行と一緒にしていただいては困ります。

 外国為替資金特別会計につきましては、同特別会計が保有します外貨資産の運用方針というのを公表しておりますので、主要な外貨資産の内訳などについて公表するなど、可能な限り情報は公表してきていると存じます。

 その上で、同特別会計が保有しております有価証券の詳細な内容を明らかにするということは、今、何回となく申し上げておりますが、金融とか為替市場に不測の影響を与えるおそれがあるということなので、非公表とさせていただいているところであります。

 特定機密に関する事項という御質問もありましたけれども、これは、防衛に関する事項、外交に関する事項ということなど、特定秘密保護法において限定列挙された事項にかかわる情報のうち、特に秘匿を要するものを指定することとされております。したがって、外国為替資金特別会計の保有する有価証券の明細が特定秘密に指定されるということは考えられないと存じます。

大熊委員 おっしゃるとおりだと思います。だからこそ、公開しても別に問題はないのではないかというふうに申し上げているわけでございます。

 何を持っているかということ、例えばそれを買いますとか、あるいは、昔、橋本龍太郎総理ですか、米国債を売りますとかそういうことを言われれば、それはマーケットに大きな影響を与えますよ。だけれども、これを持っていますとディスクロするだけ、これはむしろ逆にやった方がこの特会の、民間企業と違うとおっしゃいましたけれども、その趣旨からしても、逆に公開をしていった方が情報公開という観点からもよりリスクを下げるんじゃないかというふうに私は強く思いますが、違うとおっしゃるということであれば、一言いただけますか。

麻生国務大臣 別の視点からの質問だと思いますけれども、答えは、先ほどお答え申し上げたとおりです。

大熊委員 では、きょうは、これも問題提起ということで、また後日させていただきます。

 最後に、これはちょっと法案審議絡みでもあるんですが、国際間の課税、今度、総合主義から帰属主義への見直しというのが入っております。

 結論だけ言いますと、この帰属主義、外国企業と外銀を使って租税回避の行為が可能になるスキームを私は考えてしまったんです。このスキームで租税回避行為ができてしまうぞというのを私はちょっと考えてしまったんですね、こういうことを考えるのを別に金融機関のときに仕事でしていたわけじゃないんですが。なので、ちょっとこれはまた事務方と御相談をさせていただいて、こういうことを事前に防がないとおかしなことになってしまうので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

菅原委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 消費者物価と賃金の関係について、麻生大臣と黒田日銀総裁にお聞きをしたいと思います。

 昨年の六月十四日に閣議決定をされました「経済財政運営と改革の基本方針について」という文書があります。以前はこれは骨太方針と呼んでいたものでありますが、そこにはこのように書かれております。

 「今後、物価の上昇が想定される中、賃金や家計の所得が増加しなければ、景気回復の原動力となっている消費の拡大は息切れし、景気が腰折れすることにもなりかねない。」「二%の物価上昇の下、それを上回る賃金上昇につなげることで、消費の拡大を実現し、所得と支出、生産の好循環を形成する。」このように書いてありますけれども、麻生大臣、これは間違いありませんね。

麻生国務大臣 委員御指摘のとおりです。

佐々木(憲)委員 ここで、物価上昇を上回る賃金の上昇につなげると書いているのがポイントであります。その点は後で議論をしますが、前提として、物価の現状について、日銀の黒田総裁に確認をしておきたいと思います。

 アベノミクスと言われて既に一年たちますけれども、この間、消費者物価は上昇し始めております。現時点でどの程度上昇しているのか、また、その上昇した要因をどのように見ておられるか、お答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 消費者物価、いわゆる除く生鮮食品の前年比を見ますと、量的・質的金融緩和の導入前の昨年三月はマイナス〇・五%であったわけですが、六月にプラスに転じた後、十一月にはプラス一・二%、直近の十二月にはプラス一・三%となっておりまして、一%台前半で推移しております。

 こういった状況の原因というか理由としては、景気が緩やかに回復を続けるもとで、需給ギャップも少しずつ縮小してきているということを受けて、消費者物価がプラス幅を拡大しているのではないか、現にこの間、上昇品目も広がってきているというふうに見ております。

佐々木(憲)委員 そこで、その上昇している消費者物価でありますが、円安要因、これはどの程度の割合なのか、総裁の見解をお聞きしたいと思います。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が一%台前半まで上昇してきているわけでございますが、この物価上昇の背景を見ると、円安やそれに伴うエネルギー関連の押し上げが相当に影響していることは事実でございますが、景気が緩やかに回復を続けるもとで、需給ギャップが縮小しているということを受けまして、幅広い品目で改善の動きが見られたことも影響しております。

 こうした改善の広がりというものは、いわゆるコアコア、食料、エネルギーを除いた消費者物価の前年比がプラス〇・七%まで上昇してきているということ、それから、先ほど申し上げたとおり、上昇品目の割合が下落品目の割合をかなり上回ってきているということを見ても、はっきりとあらわれているのではないかというふうに思います。

佐々木(憲)委員 そこで、配付した資料を見ていただきたいんですけれども、これは日銀に作成をしていただいたわけですが、物価上昇に寄与した品目ということで、消費者物価指数、昨年三月それから昨年十二月の前年比、それぞれこれを比較して、大きな品目は何かということであります。

 まず、電気代、これが非常に上がっているわけですね。それから、ガソリンあるいは灯油、都市ガス、こういうものが上位を占めておりまして、確かに、輸入の原燃料、これが上がっているということの反映だと思うんです。

 それから、ルームエアコンですとか携帯電話、カーナビ、パソコン、こういう電気製品が上昇しておりますが、これらはアジアの生産拠点から輸入している逆輸入というような製品が大変多いわけであります。これが円安で上昇しているということですね。例えば、パソコンの場合は七割が輸入でありまして、テレビは九割が輸入であります。その反映だと思うんですね。

 この中で保険料の上昇というのがありますけれども、これは特殊要因でございます。

 こういう状況を見ますと、現時点で消費者物価を押し上げている要因のかなりの部分、これは円安にあるというふうに言えるのではないかと思いますが、いかがですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、円安が特に輸入エネルギー等を通じて消費者物価の上昇に寄与していることは事実でございます。それから、御指摘のような一部の逆輸入製品の価格というものに対する影響もあろうかと思います。全般を通じて二つの点が重要だと思います。

 一つは、そういった輸入物価の上昇、為替とかあるいは国際商品市況等の理由によるコストアップというのがあったとしても、需要の状況がよくなければ、それを価格に転嫁するということが非常に難しいわけです。したがいまして、輸入品であっても、そういったものの価格が上がるということは、やはり全体的に内需を中心に経済が緩やかに拡大しているもとで起こっているという面も留意する必要があるだろう。

 それから、先ほど申し上げましたとおり、いわゆるコアコア、消費者物価に輸入価格の上昇が比較的転嫁されやすい食料品とかエネルギーを除いた指標で見ましても、プラス〇・七%。これはたしか一九九八年来ぐらいの上昇率だと思います。

 そういったことも踏まえて見ますと、御指摘のとおり円安が影響していることは事実でございますが、次第に国内の需要がタイトな方向に向かっているもとで、幅広い品目で消費者物価が緩やかに上昇してきているということではないかと思っております。

佐々木(憲)委員 しかし、公共料金的な面がかなり大きいんですね、電気代とかガス代というのは。これは、需要があるから価格が上がるというよりも、コストが上がるから価格を上げるということで、別に需要は変化があるわけじゃありません。そういう状況があるものですから、国民の方は大変苦しんでいるわけでございます。

 商工中金の一月十六日付のレポートによりますと、こう書いております。「最近の物価上昇の要因をまとめると、エネルギー価格が上昇していることに加えて、耐久消費財価格の下げ止まりや保険料の引き上げによる所が大きい。ただし、これらは為替が円安となったことや保険会社の特殊事情を背景としており、需給ギャップの改善を裏付けるものではない。」

 昨年十―十二月期の生鮮食品を除く総合指数は一・一%上昇しております。この点について、第一生命経済研究所の試算によりますと、為替要因がそのうち〇・六ポイント分押し上げていると。半分以上が円安要因、こういう指摘でありますが、これが実態ではありませんか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、需給要因その他がいわば絡まって物価が上がっておりますので、何か、機械的に円安要因とそれ以外の要因を分離するというのは非常に難しいとは思います。

 先ほど申し上げたとおり、いわゆる輸入物価の上昇が価格に比較的転嫁されやすい、そういった意味では、諸外国でもしばしばそれを取り除いたところで消費者物価上昇率を見るコアコア、食料、エネルギーを除いたものでもプラス〇・七%になっている、生鮮食品だけを除いたもので見ると一・三%ぐらいになっているということです。

 それを、半分強ぐらい円安要因以外であるというふうに言うこともできるかもしれませんが、先ほど申し上げたように、さまざまな要因が重なっておりますので、一概に、半分くらい円安要因で半分強ぐらいが円安以外の要因というふうに割り切ることも難しいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 どのぐらいかというのはいろいろな計算の仕方があると思いますけれども、相当な要因を占めているというふうに思うんですね。

 そこで、物価の上昇率、二〇一四年度の終わりから二〇一五年度にかけて達成する、つまり二%上昇ですね、そういうふうに言われておりますが、今後どうなるかということです。

 次の資料を見ていただきたいんですが、日銀の政策委員が、それぞれ、二〇一三年度、一四年度、一五年度の物価の上昇見通しを出しております。その中央値を見ますと、消費税増税の影響を除いたケースで、二〇一三年度〇・七、二〇一四年度一・三、二〇一五年度一・九%のそれぞれ伸びでありますが、消費税増税を入れますと、〇・七%、三・三%、二・六%、こういう上昇になるだろうというふうに予想しているわけですね。

 これは、経済財政諮問会議で黒田総裁がつい最近出した資料のベースになっていると思いますが、間違いありませんか。

黒田参考人 そのとおりでございます。

佐々木(憲)委員 それで、二〇一二年度を起点として二〇一五年度までに物価は何%上昇するか。それを見るために上昇率を単純に足してみますと、六・六%ということになるわけです。つまり、三年間で消費税を含む消費者物価の上昇率は、二〇一五年度には六から七%程度の上昇、そういうふうに見てよろしいでしょうか。

黒田参考人 二〇一三年度から一五年度までの消費者物価の上昇率について、御指摘のような政策委員の見通しの中央値を単純に足し上げていきますと、委員御指摘のような数字になると思います。

佐々木(憲)委員 これは、安倍内閣の想定とほぼ同じだと考えてよろしいですか。

麻生国務大臣 黒田総裁が述べられましたとおり、日本銀行において御指摘のありましたような物価上昇を見通しておるということは承知をいたしております。

 すなわち、今年度〇・七%程度、来年度三・二%の上昇、そのうち消費税率引き上げの影響を除くと一・二%の上昇を見込んでおるということで、二〇一五年につきましてはまだ数値が示されておりませんから、政府としては二〇一五年までの三年間の物価上昇率をお示しすることはできませんけれども、私どもとしては、基本的に、内閣府による中長期試算の経済再生ケースにおいて、消費税率の引き上げによる影響を含め、二〇一五年度までの三年間の物価上昇率は六・六%になってくると承知をいたしております。

佐々木(憲)委員 そこを押さえた上で、昨年六月十四日の閣議決定の骨太方針、最初確認したように、物価上昇を上回る賃金上昇を達成しなければならないという閣議決定なんですね。

 物価上昇は六%から七%、こうなりますから、三年間で賃金の上昇率がそれを上回らなければならないんです。そうしなければこの閣議決定に反する。賃金を七%上げるということは、賃金月額三十万の場合は二万一千円、五十万の場合は三万五千円上げなきゃならない。

 昨年はどうだったかといいますと、厚労省が二月十八日に発表した昨年十二月の毎勤統計によりますと、基本給と残業代を合わせた決まって支給する給与は、前年同月比で〇・二%マイナス、十九カ月連続して前年同月を下回っているんです。二〇一三年の平均で見ましても、現金給与総額は、前年とほぼ同水準、上がっていないんですよ。決まって支給する給与は前年比〇・五%の減、所定内給与は〇・六%の減であります。これは、いわばマイナスからの出発、こうなりますね。

 そうしますと、二〇一五年度までに七%の賃上げということは本当にできるのかということになるわけです。麻生大臣、本当にできるんですか。

麻生国務大臣 政府といたしましては、景気の好循環の実現に向けて、今言われたようなお話を目指して、平成二十六年度の税制改正において、所得を拡大していただいた方々に対しての促進税制の拡充、また、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止を行うとともに、政労使において、昨年の十二月の二十日、共通認識を取りまとめていただくなど、企業による賃上げのための環境整備に取り組んできたところであります。

 具体的な賃金水準というのは、これは会社の個別の、労使間の交渉を通じて決定されるものであって、政府が介入するというのは、我々のやっている自由主義経済、資本主義では考えられませんけれども、政府としては、引き続き、賃金上昇を伴います経済の好循環が実現をしていくように最大限の努力をして取り組んでいかねばならぬと考えております。

佐々木(憲)委員 政府は環境整備と言うわけでありますが、私どもから言わせると、その環境整備はなってないと思いますよ。

 なぜなら、非正規労働者がどんどんふえて、賃金水準が下がっているんですよ。その問題に対して、正規労働者を希望する方々にそれを保障するという政策は出ていないし、これはまた逆行する方向しか出ていないんですね。あるいは、最低賃金を引き上げるのか。政府がやるべきことは、そういうことをやらなきゃならぬのに、抜本的な引き上げ策はほとんど出ていないんですね。

 ですから、環境を整える、自由主義経済だ、お任せします、しかし旗だけは振りますよ、これでは、実際に実効ある賃上げ政策にはならない。したがって、このままいったら、これは閣議決定にありますように、賃金や家計の所得が増加しない場合には、消費の拡大は息切れし、景気が腰折れすると書いてある、そのとおりになるんじゃありませんか。

 今やっている方向というのは国民の暮らしをどん底に突き落とすようなことになるのではないか、私はそこを非常に危惧しているわけであります。むしろ、消費税増税はもうやめて、しっかりと家計を支える、そういう方向にきちっと転換をしないとアベノミクスは破綻する、それはもう目に見えている、そう言わざるを得ない。

 時間が来ましたので、以上で終わります。

林田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木でございます。

 財政及び金融に関する件で、大臣の所信に対する質疑を時間の範囲内でさせていただきたいと思うんですが、きょう、私は、通告のように、財政健全化、それから歳出削減の必要性、そして財政健全化と税制改正、この三つの点からお尋ねをしていきたいというふうに思っております。

 質問に入る前に、これは資料も配っておりませんし、お聞きいただくだけでいいんですけれども、実は、ヨーロッパ、特にギリシャの破綻の後、どういうような財政再建計画がつくられたかということを、ちょっとある方から聞いてまいりました。それで、後から御質問に入るわけでありますけれども、まず歳出削減と、それから歳入の強化策と、それから構造改革、この三つでギリシャは今再建をしておるということなんですが、歳出の削減の中身を見ますと、国防費や公共投資の削減、それから医療費の削減、年金支給額の削減、公選の全職員への一カ月間の賃金カット、一二年度中に一万五千人の減員、そして一五年度までに十五万人の公務員等の削減、それから官公庁の解体や統合、ずっと挙げれば切りがないんです。

 そうすると、今の我が国で本当にこんな状況になったときに、こういうことが、それは国を救うためにはやらなきゃならないということですけれども、どなたがこういう事態に直面をするのかということであります。それは十年先なのか、永久にならないのか、場合によっては三年先なのか、わかりませんけれども、こういうふうな状況にならないために、これは私の悪夢ですから、おまえが夢を見ておるぐらいならいいじゃないかと大臣はおっしゃるかもしれませんけれども、本当に国民がこういう状況に遭遇したときに、またそれをいわゆる担当されておる内閣、特に総理とか大臣とか、そういった方々のことを思うと、これは本当に大変なことだなというふうに思っております。

 したがって、前置きがくどくなりましたけれども、そうならないために、まず第一点は、財政の健全化というところからお尋ねをしていきたいというふうに思っています。

 もう、各党から、それぞれお話が出ております。第一点は、いわゆる国、地方のプライマリーバランスということなんですが、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べて対GDP比で赤字を半減する、それから二〇二〇年度までに黒字化をする、そしてその後は債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを図っていく、こういうことになるわけであります。

 それで、私は前にも御指摘をしておると思うんですが、内閣府の中長期の経済財政に関する試算によれば、二〇一五年の半減目標、これは二〇一三年度から今後十年の平均成長率が実質二%程度、名目三%程度、こういうふうになっておるわけです、これは本当に大丈夫ですかと。私は、ある意味では、冒頭のギリシャの話ではありませんけれども、甘い見通しじゃないんですかということを繰り返し申し上げてきたわけであります。

 きょう特にお伺いしたいのは、問題は二〇二〇年度の方でありまして、その内閣府の試算では、十一・九兆円の赤字が残るというふうにされております。したがって、これは、黒字化するということであるならば、さらに収支改善の努力が必要だということなんです。

 私は、一月二十九日の本会議で、安倍総理に質問をいたしました。黒字化の目標を達成するためのいわゆる道筋といいますか、どういうふうに歳出削減を含めて考えてみえますかというふうに御質問をしたら、総理の答弁は、「今後、二〇一五年度における財政状況等を踏まえて経済、財政を展望し、その後五年間について、さらに具体的道筋を描いてまいります。」ということでありました。

 これは、聞きようによってはというか、私は、二〇一五年度までは道筋を示さないよ、一五年度以降にいわゆる財政健全化の道筋を示すというふうにとったわけであります。私のとりようが間違っておるとまた大臣に叱られるかもしれませんけれども。

 やはり、冒頭申し上げたように、今、我が国には巨額な公的債務があるわけです、残高が積み上がっておるわけです。ここを踏まえていくと、やはり、黒字化を達成するための道筋というのは一日も早く、一刻も早く国民に示して、そして、共有の意識として、今こういう状況だから、ここを何とか国民の皆さん一緒に乗り切っていきましょうというようなことを私は示すべきだというふうに思っておるんです。

 そのことについて、まず大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、日本の財政のいわゆる対GDP比、約二倍、OECDの試算ではたしか二二七%と記憶しますけれども、こういった巨額の公的債務というものを抱えておりますということは、大変厳しい状況であるということはもうはっきりしております。

 そうした中で、政府としては、財政の健全化といわゆる経済の再生というものの両立に向けて取り組んでおるところでありまして、昨年八月に中期財政計画というのを策定して、その道筋をお示ししたところであります。

 おかげさまで、中期財政計画では、二〇一五年のところまでは約八兆のプラスマイナスの差があったところを各年四兆ということで目標を立て、昨年は、一・二兆上回っておりますので、五兆二千億、返済というかバランスをよくすることに成功しております。

 これが、二〇二〇年度までの計画を立ててみますと、今のとおりきちんとやっていっても、二〇二〇年度までにそこに達成するかどうかは極めて難しい、あと一・九%ぐらい差があるということになっております。それを、どういった形でGDP比の低減というものを図っていくかということで、我々としては、今後とも、歳入の伸びと歳出の削減と両方やっていかないかぬなと思います。財政状況を踏まえてという話が総理の方からあっておりますけれども、まず、私どもは、二〇一五年度まできちっとしたものをやります過程で、次の二〇二〇年度までの計画を立てていかねばと思っております。

 もう一点、ギリシャの話があっておりましたけれども、先生、ギリシャと日本の一番違うところは、ギリシャの借入金はほぼ外債であります。日本の場合は、国債が、外人の保有率約一四%ぐらいだと思いますけれども、外国人の日本の国債も全て円建てでありますので、日本の場合は国債発行を全て円でやっておるということがギリシャと一番違うところだと存じます。

鈴木(克)委員 ギリシャのお話は、当然そういうような、日本とギリシャとは根本的に違うんだというお話が出てくるというふうに思ったんですが、少なくとも、財政再建計画というものはやはり日本であろうとギリシャであろうと基本的には変わらないというふうに私は思うものですから、私が見た悪夢をきょうここで皆さんにお話を申し上げて、本当にこれだけのことがやれるんですか、これをやる覚悟があるんですかということを私は申し上げたかったということであります。

 したがって、財政健全化ということになると、その次は当然、歳出を削減しなきゃならないということであります。この歳出削減について少しお話をさせていただきたいというふうに思うんです。

 結局、先ほどもちょっとお話がありましたが、来年度の一般会計予算の基礎的財政収支対象経費を見てみると、七十二・六兆円ということで、ことしの予算より二・二兆円増になっておるわけですね。

 財務省の後年度歳出・歳入への影響試算ということを見てみますと、二〇二〇年度までの仮計算というのがついておるわけでありますが、それによりますと、一般会計の基礎的財政収支は、歳出効率化の場合と歳出自然体の場合で、二〇二〇年度経済成長率三・〇の場合では二・八兆円、経済成長率一・五%の場合で五兆円の差が出てくる、こういうふうに示されておるわけであります。

 そうすると、いわゆる社会保障関係だけでも毎年一兆円ずつ伸びていくという我が国の状況で、本当に今のような形の展開で、果たして歳出削減というのは、もちろん十分ではないまでも、いいのか、これまた心配性の私は申し上げたいわけであります。

 その辺のところを、この歳出削減というものに対して大臣の見解を改めてここでお聞きしたいということであります。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、財政の健全化目標の達成に向けましては、これはもう当然、経済成長によります税収の増というものを図ると同時に、歳出面におきましても引き続き削減に対する不断の取り組みが必要、これは鈴木先生おっしゃるとおりで、全く異論があるわけではございません。

 具体的には、先ほど安住先生の御指摘にもあっておりましたけれども、社会保障というものの比率は極めて大きい、今おっしゃいましたように毎年一兆円というような話になりますので、昨年成立をいたしましたプログラム法に沿いまして不断の改革というのを進めていかねばならぬ、これははっきりしておると思っております。毎年度の予算編成を通じまして、今後、社会保障制度全体の効率化、または自然増の抑制というものに取り組んでいくことが絶対必要だろうと思っております。

 また、その他の歳出におきましても、予算の編成に当たりましては、民間に移管するとか売却とかいろいろなものを含めまして、洗い直しや重点化、また予算の執行調査など、最近はやりの言葉で言えばPDCAを使いまして、きちんとした取り組みをやっていかねばならぬ。

 これは、歳出削減と経済成長による税収増等々、両方を真剣にやっていかないと改革というものは立てられるわけではないので、二〇二〇年で、今のところいったとしても、それは金利がその中に入っておりませんから、金利を入れたところでやらぬと、財政収支がきちっと黒になって、元本を返すというところまではいきませんので。そういった意味では、二〇二〇年の、今までのところが仮に達成できたとしても、さらに金利だけはふえていきますので、その金利分を減らす作業というものを引き続き行っていかねばならぬということだろうと存じます。

鈴木(克)委員 またギリシャの再建計画を引用させていただきますと、歳出削減策と歳入強化策と構造改革、この三つの種類があるということなんですが、その中で、時間ももうあれですので、恐らく最後の御質問になるかというふうに思うんですが、今、法人実効税率の引き下げをやることが景気を上げるんだということをおっしゃっておるというふうに思います。

 そこで、きょうの新聞をちょっと持ってきたんですが、経済財政諮問会議の民間議員、それから与党と財務省というのが非常に違った議論をしておるわけですね。

 これは、先ほど大臣もおっしゃいましたイギリス、ドイツ、韓国を例にとって、要するに、税を下げることによって税収は減るかもしれないけれども、最終的には景気が回復をして税収増になっていくという考え方。一方は、麻生大臣がたしか、「麻生太郎財務相は今回の分析に、税率を下げずに法人税収が増えた米国やフランスが含まれていないことを指摘した。さらに「財政健全化の目標との関係をどう整理するのか」」こういうことをおっしゃったということであります。

 総理は非常に前のめりに、法人税を下げるんだということでありますが、率直に大臣にお伺いするんですが、大臣は、ここでおっしゃっているように、税率を下げずに法人税収がふえたというところにくみしてみえると思うんですけれども、新聞から見ますと。私は、これは新聞ではそう書いてありますけれども、大臣自身が、本当に今の状況下において、どちらにというか、どういうふうな判断をされておるのか、改めてぜひ聞かせていただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 新聞に書いてあることをうのみにしないという感性は正しいです。

 これは、後で資料を差し上げてもいいと思いますけれども、ほぼ同じ時期にイギリスとドイツと韓国は法人税を下げて、結果として法人税はふえたということになっておりますけれども、ほぼ同じ時期にアメリカ、フランス、ノルウェーはいずれも法人税を下げずに、多額の法人税が伸びております。

 したがいまして、これは何によって伸びたかというものの分析をきちんとやらないと、こういったものは、片っ方は下げたらこんなに上がりましたよという話だけではちょっと、反面もよく聞いておかないとならぬところだと思います。

 私どもとしては、当然のこととして、この種の話はそんなにうまいこといくような話ばかりじゃなくて、事実、アメリカの場合は、法人実効税率をレーガンの第一期目に下げましたけれども、一期目に下げたときにはいわゆる双子の赤字に転落、御存じのとおりです。二期目に上げて、結果として法人税収はその後伸びて、一番いいところは、その後のビル・クリントンの時代に一番収入がふえた、税収がふえたという経緯もあります。

 これは、いろいろな国の比較を、よく内容を詰めた上でないと、私どもは、産業構造の改革を含めていろいろなことを考えた上でやっていきませんと、課税ベースをどういう対象にするのかとか、この法人実効税率というものをどうするかにつきましては、上げるにしろ下げるにしろ何もさわらないにしろ、これはよくよく、他の項目で何で税収がふえたかということでありまして、税収がふえるということは景気がよくなっているということですから、そうじゃないと税収は上がりませんので、そういった意味では、広く対象を見た上で決めねばならぬというのが基本的な姿勢であります。

鈴木(克)委員 あと二分ありますので、最後、もう一度確認をしたいというふうに思うんです。

 これも、先ほどの御質疑の中で出てきたんですが、大臣は、日本は欠損法人の割合が約七割だ、したがって、こういう状況で税率を下げても効果はない、そういった趣旨の御発言をされておるわけであります。ただ、安倍総理の方は、レベニュー・ニュートラルというんですか、その考え方にはこだわらないといった趣旨の発言を行ってみえるわけであります。

 したがって、もう一度大臣にお伺いをしたいんです。このような安倍総理の前のめりの姿勢に対する麻生大臣のお考えをもう一度ひとつ聞かせていただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 前のめりとか後ろのめりとか、いろいろ見方によって違いますので、私から見ると、いろいろな意見が出てこなければその内閣はおかしいのであって、これが、下手するとすぐ、何となく閣内不統一とか不一致とかいうことが言いたいんでしょうけれども、なかなか、そういうぐあいに言われないように我々も努力をしておかないといかぬところだと思っております。国民が迷惑しますので。

 基本的には、私どもとしては、この種の話は、先ほど申し上げましたように、どれが最も景気がよくなり、税収がふえる、それによって法人実効税率の収入が我々にとってはふえ、同時に景気もよくなり、といって、傍ら、こちらの方は歳出面の削減をやりということをきちんとやっていかないといかぬところだと思っております。

 この問題につきましては、今から、いろいろな意味でアカデミックなアプローチというものをやっていきませんと、何となく法人実効税率を下げればという、そんな単純な話ではないのではないかと思っております。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、この法人実効税率の引き下げについては、総理は非常に積極的であるし、大臣は少し違った数字データで進めていくべきだ、こういうようなお考えだったように勝手に解釈をさせていただいて、私の質問を終わります。

林田委員長 以上で大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時八分散会


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