衆議院

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第12号 平成26年6月3日(火曜日)

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平成二十六年六月三日(火曜日)

    午前八時四十五分開議

 出席委員

   委員長 林田  彪君

   理事 伊東 良孝君 理事 越智 隆雄君

   理事 寺田  稔君 理事 御法川信英君

   理事 古本伸一郎君 理事 桜内 文城君

   理事 竹内  譲君

      安藤  裕君    小倉 將信君

      小田原 潔君    鬼木  誠君

      金田 勝年君    神田 憲次君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤井比早之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    山田 賢司君

      安住  淳君    武正 公一君

      前原 誠司君    鷲尾英一郎君

      坂元 大輔君    田沼 隆志君

      三木 圭恵君    山之内 毅君

      上田  勇君    岡本 三成君

      大熊 利昭君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   財務副大臣        古川 禎久君

   内閣府大臣政務官     福岡 資麿君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      赤石 浩一君

   政府参考人

   (内閣府地域活性化推進室次長)          藤原  豊君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  桑原 茂裕君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           藤井 康弘君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     吉田 光市君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     櫛田 誠希君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  鈴木 克昌君     村上 史好君

同日

 辞任         補欠選任

  村上 史好君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

五月十五日

 健全な飲酒環境の整備に関する請願(岩田和親君紹介)(第八一二号)

 同(中川正春君紹介)(第八三九号)

 同(山下貴司君紹介)(第八九二号)

 同(丹羽秀樹君紹介)(第九一〇号)

 同(神田憲次君紹介)(第九七八号)

 同(ふくだ峰之君紹介)(第九七九号)

同月三十日

 健全な飲酒環境の整備に関する請願(熊田裕通君紹介)(第九九二号)

 同(鈴木淳司君紹介)(第九九七号)

 同(宮路和明君紹介)(第一〇〇九号)

 同(桜井宏君紹介)(第一〇三五号)

 同(金子恭之君紹介)(第一〇四六号)

 同(森山裕君紹介)(第一〇四七号)

 同(今枝宗一郎君紹介)(第一〇七六号)

 同(望月義夫君紹介)(第一一〇〇号)

 消費税の増税は中止することに関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

林田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、異次元の金融緩和のもとでの金融機関、機関投資家等の状況把握のため、去る五月二十八日、十五名の委員が参加し、東京都内におきまして金融に関する実情調査を行いましたので、参加委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 まず、全国銀行協会会長行である三菱東京UFJ銀行から説明を聴取した後、金融緩和のもとでの預貸率の動向及び貸し出し方針、銀行業績の動向及び収益確保策、日銀当座預金の増加に対する評価等について意見交換を行いました。

 次に、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人から説明を聴取した後、中期計画目標及び運用の基本的考え方、基本ポートフォリオの見直し状況、AIJ事件等を踏まえた運用受託機関の管理のあり方等について意見交換を行いました。

 最後に、野村証券及び野村アセットマネジメントから説明を聴取した後、最近の金融市場の動向と今後の見通し、個人及び機関投資家の投資戦略、大企業のエクイティーファイナンス及びデットファイナンスに対するニーズ等について意見交換を行いました。

 今回の調査に当たりましては、御協力いただきました方々に深く御礼を申し上げ、調査の御報告といたします。

    ―――――――――――――

林田委員長 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事櫛田誠希君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長赤石浩一君、内閣府地域活性化推進室次長藤原豊君、金融庁総務企画局長桑原茂裕君、監督局長細溝清史君、厚生労働省大臣官房審議官藤井康弘君、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官吉田光市君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林鷹之君。

小林(鷹)委員 自由民主党の小林鷹之でございます。

 本日は、お忙しい中、黒田総裁にお越しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 先日、全銀協、GPIF、野村証券にお話を伺ったところ、黒田総裁の進める金融政策については、おおむね高い評価が下されているというふうに私自身は感じました。ただ、その中で、二%の物価上昇率を達成する時期につきましては、総裁御自身が二〇一五年度を中心とする期間に達成するとおっしゃる一方で、視察先におきましてはやや異論もございました。

 特に、資料一にあるんですけれども、一年フォワードレートを見ますと、市場は、一年、二年先の二%の物価上昇率を織り込んでいないのではないか、そうした指摘がございまして、こうしたマーケットの見方との差を総裁御自身がどのように感じておられるのか、また、物価上昇率二%を達成するための総裁御自身の決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 私の方から直接的に市場参加者あるいは民間調査機関の見通しについてコメントすることは差し控えたいと思いますが、御指摘のように、物価上昇率の見通しに差があることは確かでございます。

 ただ一方で、実質GDPの成長率に対する見通しの差というのは、物価上昇率の見通しの差ほど大きくないということを踏まえますと、基調的に潜在成長率を上回るような成長が続く中で、それが物価にどのように波及していくかというメカニズム、あるいはそのあり方についての見方の違いが影響しているのではないかと思います。

 御指摘のとおり、日本銀行は、四月の展望レポートでも示したとおり、消費者物価の前年比は、しばらくの間一%台前半で推移した後、本年度後半から再び上昇傾向をたどって、二〇一六年度までの見通し期間の中盤ころ、具体的には二〇一五年度を中心とする期間に二%程度に達するというふうに見ております。

 その背景につきましては、まず第一に、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで労働需給が引き締まっておりまして、この傾向は先行きもさらに強まっていくと考えられるということが挙げられます。実際、失業率は、三%台半ばと見られます構造失業率に近づきつつありまして、有効求人倍率も一・〇八倍まで上昇してきております。

 第二に、中長期的な予想物価上昇率の高まりが、実際の賃金、物価形成に影響を与え始めていると見られることが挙げられると思います。具体的には、このところ、従来のいわゆる低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切りかえる動きが見られておりまして、一方、春闘でのベアに見られるように、労使間の賃金交渉においても、物価上昇率の高まりが意識されるようになってきております。

 日本銀行といたしましては、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定の目標を実現するため、量的・質的金融緩和を推進しておりますけれども、今後、何らかのリスク要因によって今申し上げた見通しに変化が生じて、二%の物価安定の目標を実現するために必要であればちゅうちょなく調整を行うということを決めておりまして、二%の物価安定の目標の達成に向けて一層の努力をしてまいりたいと思っております。

小林(鷹)委員 前向きな御発言、ありがとうございました。

 次に、デフレ脱却の観点からは、物価が上昇すること自体は、現象としては極めてよいことだと思うんですけれども、その背景をしっかり見ていく必要があるんだと思います。今まさに総裁がおっしゃったとおり、その大きな要因というのは需給ギャップが減少していくことだと思っておりますけれども、その中で、需要がふえていくことはよいことですが、一方で、供給力すなわち潜在成長力が低下することによってギャップが埋まるのであれば、中長期的な成長は見込めないことになります。

 資料二にございます先日の展望レポートの見通しを見ますと、今回、二〇一三、一四年度の実質GDPを下方修正する中で、物価見通しには変化がありません。これは、我が国の潜在成長率の見通しが下振れしたという見方もできると思うんですけれども、この潜在成長率についての総裁の御見解をお聞かせください。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、我が国の経済の潜在成長率あるいは供給力の伸びというものは、やや低下してきたと見ております。

 これは、趨勢的な人口減少あるいは高齢化、それから長期にわたるデフレのもとで設備投資が十分行われずに資本ストックの蓄積が鈍化してきたといったようなこともあったと思いますが、潜在成長率が低下してきたというふうに見ております。

 それでも、需要が弱い間は、人手不足とか供給制約といった形で問題が表面化することはなかったわけですが、この一年ほどの間に、大規模な金融緩和、財政支出、民間活動の活性化といったことによって需要が高まってきた結果、いわば水面下に隠れていた供給力の問題が顕在化してきたというふうに言えると思います。

 このように、供給面の問題が明らかになるもとで、我が国経済の成長力を高め、持続的な成長を実現するための課題を幅広く議論することは、極めて重要だというふうに考えております。

 この点、政府におかれては、成長力底上げのための政策として、日本再興戦略の実行を加速化あるいは深化させるという方針を示されておりまして、その着実な取り組みを期待しておるところでございます。

小林(鷹)委員 ありがとうございました。

 潜在成長力を高めていくための成長戦略をしっかりやる必要があるということだと思いますので、私自身も、その一助となれるように頑張っていきたいと思います。

 さて、視察先で、国債市場についても御意見をたくさんいただきました。その中で、やはり国債マーケットの流動性が低下してきていることへの懸念がございまして、資料三にもあるんですけれども、四月の十四日には新発十年物国債の取引が成立しませんでしたし、全体としての流動性が低下してきている傾向というのは事実なんだと私は見ております。

 その中で、財政構造が金利変動に対して極めて脆弱な構造である中で、国債市場の流動性を確保していくことは極めて重要な課題だと思います。財政当局として、この流動性確保のためにどのような取り組みをしているのか、簡潔にお答えいただければと思います。

古川副大臣 お答えいたします。

 小林先生が御指摘のとおり、国債の安定的な消化のためには、国債市場の高い流動性を確保することは非常に重要だというふうに考えておりまして、私どももこれまで、国債の発行方法などをいろいろ工夫いたしまして、流動性の確保に努めてまいったところでございます。

 平成二十六年度におきましては、一銘柄当たりの発行額をふやすため、原則リオープン方式の適用拡大、二十年債まで拡大いたしました。また、流動性供給入札の規模の拡大、対象の拡大。二十六年度は、年間一兆二千億円程度、規模を増額いたしましたし、また対象につきましても、新規発行銘柄以外の全銘柄に拡大いたしております。このように、国債発行方法を工夫してまいっておるところでございます。

 今後とも、市場のニーズ、動向を踏まえた国債管理政策を徹底していきたいと思っております。

小林(鷹)委員 ありがとうございます。

 特に日本の国債マーケットは、銘柄が多様であると同時に、銘柄数が多過ぎるという指摘も耳にしますので、今おっしゃった原則リオープン方式を十年債などにもどんどん適用していくことによって、厚みのある市場形成に御尽力いただきたいと思います。

 また一方で、国債市場については、これからどこかのタイミングで出口戦略が出てくること、また最近の経常収支の推移を考えると、安定消化に関する努力、特に保有者層の多様化、拡大というのが極めて重要だと思います。

 その意味で、来年の頭から個人向けの物価連動国債の販売が始まるということは私は高く評価しておるんですけれども、一方で、現在約八%程度の海外投資家の保有割合を上げていくことも必要だと思っています。我が国はホームバイアスが極めて強いので、国債の大半を日本人が保有している、だから国債マーケットは大丈夫との見解もございますが、家計の貯蓄と国債残高の推移を考えれば、そう言っていられない時期というのがやがて来るんだと思います。

 その中で、海外の中銀や年金基金など長期運用を行えるプレーヤーへのIR、あるいは、既にトルコで発行されていて、イギリスでは検討されておりますけれども、イスラム債、いわゆるスクーク形式の日本国債を発行していくことも視野に入れて、成長著しいイスラムマネーを取り込んでいくことも、その制度設計、IRを進めていくべきだと個人としては考えております。

 また、体制面においても、この夏から国債政策情報室が立ち上げられると伺っておりますけれども、さらに強化していく観点からは、各国、各機関のポートフォリオマネジャーとの信頼関係を時間をかけて醸成していくためにも、IR専門の局長、審議官クラスの幹部を増員して、年じゅう世界各国を飛び回っていただくということも手かと思っています。

 こうした点を含めまして、IR強化についての古川副大臣の御見解をお聞かせください。

古川副大臣 委員御指摘のとおり、保有者層の多様化というのは非常に重要な観点だと思っております。

 まず、海外IRを充実する観点から、御紹介いただきましたとおり、国債政策情報室というものを設置いたしまして、情報発信体制を強化することになりました。ただ、さらに踏み込んで、専属の担当を置くかどうかということについては、慎重な検討が必要ではないかな、このように思っております。

 また、イスラム債につきましては、一つのアイデアではあると思っております。しかし、いろいろな制度設計等々を含めまして、さまざま検討する課題がまだ残っているというふうに思っております。

小林(鷹)委員 ありがとうございました。

 財務省の体制については、私は、陣容を含め、さらなる強化が必要だというふうに思っておりますので、また前向きに御検討いただければと思います。

 最後になりますけれども、資料四でございます。現在バーゼル委員会で行われている自己資本比率規制について気になる記事が、この資料四でございます。

 時間の関係上、詳細は省きますけれども、端的に申し上げると、もしここに書かれてあるような規制が強化されるとすると、国債を保有することに対してペナルティーが科されることを意味することになります。これは、国債を、資産運用のためだけではなくて、流動性の確保ですとか、あるいは担保需要への対応という観点から保有している日本の国内銀行にとっては、大きなマイナスの影響が生じてくるんだと思います。

 これから景気回復とともに貸し出しをふやしていくことが求められる中で、銀行にとっては、リスク資産を縮小する、あるいはリスクテークを抑制するインセンティブを生んでくると思いますので、こうした規制のあり方については、国益にそぐわないと私は思っております。

 この点につきまして、岡田副大臣の御見解をいただければと思います。

岡田副大臣 お答えいたします。

 バーゼル銀行監督委員会におきましては、現在、トレーディング勘定との裁定機会の防止といった観点から、銀行勘定で保有する資産、負債全体の金利リスクの資本規制の枠組みについて検討が行われているところです。

 国際交渉中の事項に関する個別具体的な内容についてのコメントは差し控えたいと思いますが、金融庁としては、金融リスクの実態を踏まえた適切な議論が行われるよう、積極的に議論に参画していきたいと考えております。

 以上です。

小林(鷹)委員 ありがとうございました。

 本日は国債の話を中心に議論をさせていただきましたけれども、今、厳しい財政事情のもとで、二〇二〇年のPB黒字化達成に向けて、財政収支が拡散しないような努力というのを、政治家として全力を尽くすというのは当たり前の話だと思いますけれども、一方で、私自身は、本当に二〇二〇年までこの日本の財政がもつのかどうかというような懸念を個人的に抱いております。

 そうした中で、年内に総理が判断されるとされている消費税率のさらなる引き上げにつきましては、麻生大臣そして古川副大臣を初め、ここは責任を持ってしっかりと後押ししていただきたいと思いますし、また、財政健全化のめどが立たない中で日本銀行の出口戦略というのはかなり大きなリスクを伴うと思いますので、黒田総裁としっかり連携をしながら頑張っていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。

 きょうは、黒田総裁にお尋ねをしたいと思っております。

 先日のウォールストリート・ジャーナルを拝見いたしておりますと、黒田総裁が非常におもしろいことをおっしゃっていました。潜在成長率の引き上げが不十分であれば、二%のインフレターゲットは達成されるかもしれないが、実質成長は不十分に終わる可能性がある、それは好ましいことではないという発言をされていまして、なるほど、それはおっしゃるとおりだなというふうに思っております。

 その意味で、よい御指摘だと思いますので、この御発言の趣旨と、また潜在成長率を高めるための改革として何をなすべきかについて、まずお伺いしたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、潜在成長率は、資本ストックや労働投入の伸びに加えて、イノベーションなどの生産性の向上によって決定されるわけでございますので、潜在成長率を高めるためには、企業における前向きな投資を促す、さらには、女性や高齢者などの労働参加を高めることや高度な外国人材を活用することなどを通じて、労働の供給力を高めていくということが必要だと思いますし、また、規制・制度改革を通じて生産性を向上させるということが重要な課題だと思います。

 この点、先ほど来申し上げておりますとおり、政府におかれて、日本再興戦略の実行を加速化、深化させることを通じて、いわば成長力を底上げするということを意図されているわけでございまして、その着実な取り組みを期待しております。

 一方、日本銀行といたしましても、現在、量的・質的金融緩和を推進することで、実質金利の低下などを通じて緩和的な金融環境を提供しておりますし、いわば人々に定着してしまっていたデフレマインドを払拭する、転換するということも図っております。こうしたことは、企業における前向きの投資を促進し、生産性向上に取り組みやすい環境づくりにも資するのではないかというふうに思っております。

竹内委員 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思うんですね。

 きょうは、さまざまな改革の中に法人税減税が入るかどうかということも聞こうと思ったんですが、これはあえてやめます。

 経済成長のための日銀の金融政策で、今、デフレマインドを払拭するとか、さまざまな緩和的な施策が大事だということをおっしゃったんですが、私も、野党時代ではございましたけれども、いろいろ、日本銀行さんとも意見交換しながら、知恵を出してきたというふうに思っております。もちろん、長期的成長を生み出す上で金融セクターができることは限界があるんですが、しかし、その中でできる限りのことをやっていく必要があるだろうというようなことで、私も、かつての銀行時代の経験も踏まえながら、日銀の皆さんと随分といろいろな意見交換をさせていただいた経緯がございまして、その一つが成長基盤強化支援貸し出しなんですね。

 現在、環境・エネルギー分野とか医療・介護・健康関連事業分野などで多くの成長基盤の創出、強化のために使われていることは喜ばしいことであるというふうに思っております。先日の視察調査でも、現場の金融機関からも大変高い評価をいただいておりまして、日本経済の長期的成長を生み出すためには、金融面からの戦略として、一つの重要な施策であろうというふうに思っているわけです。

 本制度のこれまでの実績と評価について、まずお伺いしたいと思います。

黒田参考人 この成長基盤強化支援資金供給は、金融機関による成長基盤強化に向けた投融資の取り組みに応じまして、長期かつ低利の資金を供給するという枠組みでございます。既に貸出残高が約四・五兆円となるなど、その機能をしっかりと果たしてきていると思っております。

 さらに、日本銀行は、本年の二月に、この資金供給の仕組みにつきまして、受け付け期間を一年延長するとともに、本則の貸付総枠を三・五兆円から七兆円に倍増する、その上で、固定金利〇・一%で四年間の資金供給を受けられるようにするといった大幅な制度拡充を決定して実行しております。

 御指摘のように、金融機関の間では、この制度拡充を受けて、成長基盤強化に資する投融資を一段と積極化する動きも見られておりまして、評価を受けているというふうに感じております。

 日本銀行といたしましては、こうした制度拡充の効果を含めて、今後の成長基盤強化支援資金供給の利用状況、あるいは金融機関の取り組みをよく見ていきたいというふうに思っております。

竹内委員 ありがとうございます。

 最近、金融機関の利ざやがどんどん低下しておりまして、にもかかわらず、長期資金のニーズというのは非常に高い。短期の運用資金じゃなくて、やはり成長基盤ですから、長期の資金を供給するということは非常に重要な使命であると思うんですね。そういう意味で、私どもも、従来から今お話がありましたような制度拡充を提言してきたところでございます。

 ぜひこれは、どんどん使われると思いますけれども、売り込んでいただきたいと思っておりますし、また、さらなる改善の工夫も提案をしておきたいと思うんです。

 金融機関としては、基本的には仕入れの資金として長期の資金を確保するということが非常に大事なことですので、今回は四年固定〇・一、これもすごいことなんですが、しかし、普通、長期資金というのは五年とか七年とか十年ですから、こういう固定金利の貸し付けがなされれば、より超長期の融資というものも可能であろうと思います。

 それからまた、今、銀行の運用を見ていますと、国内もさることながら、海外の投融資のニーズというのが非常にあるわけでありまして、三メガバンクでも十二・三兆円ぐらい融資が去年ふえているんですが、そのうちの八兆円以上が海外の方に使われているわけでございまして、そういう意味では、今後、米ドル特則の拡充なんかも非常にニーズがあるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そういう意味で、今後、さらなる改善の検討をぜひお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

黒田参考人 ただいま御指摘のありました点も含めまして、今後の制度のあり方、あるいは拡充する場合には、その方法等については慎重に検討してまいりたいと思います。

竹内委員 それと、これも非常に難しい、日銀、中央銀行に言うのもちょっと酷な話かもしれないんですけれども、中小企業貸し出しも、昨年に入りましてほぼ二十年ぶりに増加しているという驚くべきことが起こっておりまして、いかにデフレの間が厳しかったか。中小企業への貸し出しが全然ふえなかった、それが昨年に入ってようやく増加に転じたということは、驚異的なことだと思うんですね。

 そういう意味で、中央銀行としてできることは限界があると思うんですけれども、中小企業貸し出し支援のために日銀として何かできることはないか、その辺のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

黒田参考人 現在、日本銀行が行っておりますいわゆる量的・質的金融緩和はいわば三つの効果を期待しているわけでございますが、まず第一に強力な金利低下圧力、それから二番目にポートフォリオリバランス、そして三番目にデフレ期待を抜本的に転換する、こうしたことを通じて、貸し出しが増加するということを期待しておるわけでございます。

 さらに、日本銀行としては、先ほど申し上げました成長基盤強化支援資金供給、また貸し出し増加支援資金供給といった具体的な貸し出しの支援をする仕組みを通じまして、金融機関の一段と積極的な行動、あるいは企業、家計の前向きな資金需要の増加を促しているわけでございます。

 こうしたもとで、委員御指摘のとおり、これまでかなり低迷してきておりまして、減少傾向をたどっておりました中小企業向けの貸し出しにつきましてもプラスに転じておりまして、このところは、中小企業向け貸し出しの増加が、いわば金融機関の貸し出し増加全体に貢献するという形になってきております。

 委員御指摘のとおり、中小企業への貸し出しというのは、全国あるいは各業種、全ての業種に経済活動の増加が波及していくというメカニズムとして非常に重要だと思っておりますので、今後とも、あらゆる機会を通じて、中小企業への貸し出しを後押しするための努力を重ねてまいりたいと思っております。

竹内委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。

 あと二、三分残っていますので、質問ではないんですが、法人税減税についての私の感想をちょっと述べさせていただいて、終わりたいと思うんです。

 法人税減税は、中長期的には我々も必要だというふうに思うんですけれども、大事なことは、企業の力を強化して設備投資を促して、それがさらなる税収にはね返ってくるかどうか、経済成長にはね返ってくるかどうか、その辺が確かかどうかということがやはり一番大事だというふうに思うんですね。その辺の検証と、もう一つは、やはり財政というものがございますから、何でも下げればいいというものでもありませんし、これは世界的な競争の問題ですから、輸出主導で、日本に似たのはドイツなんでしょうから、ドイツなどが日本のライバル国なんだろうなというふうに思うんですね。新興国と何でも一緒にしなければならないということはないだろう。

 そういう意味で、やはりしっかり財源を確保しながら法人税減税を促していくというふうな道筋になるのかなとは思いますけれども、今申し上げたようなことをよく検証する必要があるだろうというふうに思っております。

 政治的には、財源はないけれども法人のためにはどんどん減税する、しかし、財源がなければ個人のためには一円たりとも減税しないみたいなことは、やはり大変批判を受ける可能性もあります。軽減税率の問題もありますけれども。

 そういう意味で、バランスのとれた成長戦略というものが必要なんだろうということを、質問ではございません、私どもの日ごろ考えていることとして申し上げまして、本日の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

林田委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 先日は、委員長のお取り計らいで市場関係者のところに視察に行かせていただいて、大変勉強になりました。その視察も踏まえながら、きょうは質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは、黒田総裁に質問させていただきたいと思います。

 二〇一三年度ですけれども、ほぼ順調に景気は回復しているということで、全ての四半期でさまざまな数値が前期比プラスになってございます。特に、住宅投資でありますとか、公的な需要でありますとか、また、金額水準での輸出なども顕著に伸びを示しているわけでございます。

 そういった数字的なものに鑑みても、デフレマインドからは脱却をして、また、インフレ率も順調に上昇しているというところでもございます、一%台半ばまで安定してきているところであります。失業率も、日銀の推計では、構造的な失業率、自然失業率に近いところまで来ているということであります。

 これはもはや需要不足というものではないという認識なのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 日本銀行がいろいろな推計を示しておりますけれども、御指摘の失業率につきましても、現在の三・六%の失業率というのは、三%台半ばの構造失業率に近いというふうに申し上げてよいと思います。さらには、経済全体の需給ギャップにつきましても、現在、ゼロ近傍に近づいているということで、過去の平均並みになっているということだと思います。

 その意味で、マクロ的に見て需要不足といった状況でないことは御指摘のとおりでありますけれども、需要面の動向というのは引き続き重要である。すなわち、先行き需給ギャップは、日銀が量的・質的金融緩和を続けていく中で、マイナスが減ってゼロになり、さらにプラスになってプラス幅を拡大して、需給面から見た賃金と物価の上昇圧力は次第に高まっていくというふうに見ているわけでございます。

 これは、中長期的な予想物価上昇率の上昇とともに、二%の物価安定の目標を実現していく上で非常に重要な要素であるというふうに考えております。

鷲尾委員 今総裁からもコメントがあったとおり、需給ギャップというのは今解消してきているという話でございました。需要の回復に従ってということなんだと思いますが、展望レポートを見ても、成長率の下方修正にもかかわらず、日銀の言うとおり、物価が上昇していっているというところでありますので、そうすると、供給力の上限が逆に低くなっているよということなんだと思います。

 つまり、長期的な供給制約の問題が顕在化してきているのではないかというところでありまして、今そういう状態にあるのかどうか、その点についてもコメントをいただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、これまた先ほども私が答弁の中で述べましたとおり、潜在成長率が低下してきた状況は、需要が大きく不足しているもとでは問題は顕在化していなかったわけでございますが、マクロ的に見て需給ギャップが非常に小さくなってきて、そのもとで、いわば供給制約の問題あるいは労働力不足の問題といったものが顕在化してきているということは事実でございます。その意味では、潜在成長率あるいは成長力についての議論がさらに重要になってきているということは、そのとおりであると思います。

 なお、先ほど申し上げました需給ギャップの計算につきましては、いろいろな計算方法があるわけですが、日本銀行の計算方式は、労働市場あるいは資本の稼働率などを見て計算しているものでございます。現在の需給ギャップは、先ほど申し上げたとおり、過去の長期平均並みであるゼロ近傍に近づいているということは事実でございます。

鷲尾委員 今の総裁のとおりだと思うんですけれども、一方で、内閣府の試算によりますと、実質成長率二%で、かつGDPデフレーター上昇率一%でも、二〇二〇年にプライマリーバランス黒字化の公約の見通しというのはなかなか立たない状況と思っておりますが、今の潜在成長率がゼロ%近傍というところで、日銀が主張されている消費者物価上昇二%になるとすれば、当然、財政システムも大変な危機をはらんでいると言わざるを得ない状況だと思います。

 今の総裁の発言も踏まえますと、景気刺激策という意味での財政というのはこれ以上拡大するべきではないとも考えられるわけですが、いかがでしょうか。総裁にお聞きしたいと思います。

黒田参考人 財政政策につきましては、私から特に何か申し上げることは差し控えたいと思います。

 あくまでも政府及び国会で議論され検討されていくべきものだと思いますが、その上で、一言申し上げますと、需給ギャップがどんどん縮んでいって、そしてさらにはそれがプラスになっていくというもとで、賃金、物価が上昇し、二%の物価安定目標を実現できるような形になっていくという形で、いわば量的・質的金融緩和を昨年の四月に導入したときに考えておりました道筋をその意味では順調にたどっているわけですが、委員も御指摘のとおり、それから私どももそう思っておりますけれども、潜在成長率がかなり下がっておりまして、ゼロ%台半ば前後ぐらいになっております。その意味では、潜在成長率自体を押し上げるような成長戦略あるいは再興戦略といったものを推進していくことが非常に重要になっているということは、再度強調させていただきたいというふうに思っています。

 財政政策自体につきましては、私から直接的に申し上げることは差し控えたいと思います。

鷲尾委員 ここはコメントはしていただけないんだろうなと思っていました。

 インフレ率が今後、二%となっていくかどうかはともかく、このまま一%台半ばで安定している限り、さらなる追加的な金融緩和は必要ないとお考えでしょうか。

黒田参考人 昨年の一月に政府と日本銀行は共同声明を出しまして、その中で、日本銀行は二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを明確にコミットしたわけでございます。

 ですから、日本銀行といたしましては、あくまでも二%の物価安定目標の早期実現に向けて量的・質的緩和を推進しておりますので、これまでのところ、もちろん二%の目標に向けた道筋を順調にたどってはおりますけれども、委員御指摘のとおり、現時点では一%台の前半あたりでございますので、いわば二%への道筋はまだ道半ばであるというふうに思っておりますし、今後、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じて、二%の物価安定の目標を実現するために必要だということになれば、やはりちゅうちょなく調整を行うということが適切であろう。ただ、現時点では順調に道筋をたどっているというふうに言えると思います。

鷲尾委員 わかったというか、わからないというか、もう少しストレートに言っていただけるとありがたいなと思った次第であります。

 今回の視察で、一様に、第三の矢に非常に期待が集まっておりました。金融政策で当面の時間稼ぎが成功しているのではないかという認識もあったわけでございます。金融政策の現状維持でも、国債、ETFなどの追加的な買い入れをしているわけでありますから、金融政策で景気を高水準で支えているというふうに思われるわけです。

 この点は、総裁はどうでしょうか。支えていると私自身は思うわけですけれども、総裁の認識を問いたいと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、現在の金融政策は景気を支えており、それを通じて物価安定目標達成への道筋を順調にたどっているというふうに考えております。

鷲尾委員 そこで、本当は、短期的な需要政策としての財政出動は、今こういう足元の状況ですから、現状では余り必要とされていないんじゃないかと思っております。そこは総裁にお聞きしても、先ほどの御答弁にもあったとおり、財政政策については話をしていただけないということですので、後ほど麻生大臣に問いたいというふうに思います。

 国債の金利水準についてちょっとお聞きをしたいわけですけれども、今は低位安定ということであります。今後攪乱要因はあるであろう、市場関係者からはそういったコメントも賜ったわけでありますけれども、フォワードレートでございますね、小林委員も恐らく質問されていたと思うんですけれども、配られた資料を見ますと、フォワードレートを見ても、やはりこれも低水準なわけであります。

 日銀の見方が信頼されていない、あるいは織り込まれていないとも考えられるわけですが、総裁としてどのような見解をお持ちか、また、コミュニケーションという問題でも、そういう視点からも見解をお聞きしたいと思います。

黒田参考人 この点はなかなか微妙な点でございまして、長期金利を含めて名目金利につきましては、先行きの経済とか物価の見通しというものが反映されていると同時に、国債を長期保有することに伴うリスクプレミアムというものが加わって全体としての金利ができ上がっておりますので、このうちどの部分がどうなっているということは、数字を見ただけではわからないわけでございます。

 ただ、市場参加者の経済、物価に関する見通しというものはさまざまだとは思いますが、その時々の見通しが全体としていわば平均値的に金利には反映されているというふうには思っております。

 他方で、日本銀行が量的・質的金融緩和のもとで大量の国債の買い入れを行うことによってリスクプレミアムを圧縮しておりますので、その面から金利に低下圧力が加わっている、それが長期金利の低位安定をもたらしている面もあるということも事実でございます。

 両者の面を数字的に分離して申し上げることはなかなか難しいと思いますが、日銀の巨額の国債買い入れが国債金利の低位安定に寄与している面があることは事実だと思います。(鷲尾委員「コミュニケーションについてはどうですか、総裁」と呼ぶ)

 コミュニケーションの点は私ども従来から非常に意を用いておりまして、私のみならず、執行部あるいは政策審議委員の方々等、随時、日本銀行の経済、金融あるいは物価情勢等に関する見通し、考え方というものを示しておりますし、さまざまな対話も行っております。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、市場関係者の方々の持っている特に物価の見通しについて、日本銀行と見通しが若干違っているということは事実であります。こういった状況はそれぞれの時々あるいは各国においても見られるわけでございまして、コミュニケーションは引き続き強力に進めてまいりたいと思っておりますけれども、市場関係者が中央銀行と全く同じ見通しにならなければならないということは、中央銀行の方から申し上げるわけにもいかないということでございます。

鷲尾委員 それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。

 円高の是正は進んだわけでございます。輸出は、金額ベースでは伸びたということでありますけれども、数量はふえていないというのが現状でございます。これは翻りますと、今の景気の状況、国内消費が堅調に推移しているということの裏返しだと思います。

 総裁にお聞きしたいのは、こういった家計の消費が量的・質的金融緩和によってどれぐらい伸びているのか、どういう認識を持たれているのかということについて見解をお述べいただきたいと思います。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、この量的・質的金融緩和というものは、国債の巨額の買い入れによって長期金利に低下圧力を加える一方で、デフレ期待というかデフレマインドの転換を図って予想物価上昇率を引き上げていくという形で実質金利の低下を促しておりまして、これは所期の効果を発揮しているというふうに考えております。生産、所得、支出という前向きの循環メカニズムを伴いながら、日本経済自体が緩やかに回復してきているというのがそのあらわれだと思います。

 こうしたもとで、個人消費につきましても、確かに消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減という振れを伴いつつも、基調的には雇用・所得環境の改善に支えられて底がたく推移しているというふうに見ております。

 GDPの個人消費は、この一―三月期まで六四半期連続で増加しているわけでございます。四―六月には恐らく反動減で消費はGDPベースでマイナスになると思いますが、先ほど申し上げたようなことで、駆け込み需要と反動減を伴いながらも、基調としては底がたく推移していくというふうに見ております。

鷲尾委員 ちょっと先が長いので質問を急ぎたいと思います。

 一般的に、財政出動は常に有効ではない、つまり、景気の押し上げ効果として有効だとは限らないわけであります。ただ、特に、こうした消費増税が予定されておった時期、そして実際実施された時期でもあります。

 そういった中において、財政政策が経済に与える影響は、常に景気に対してプラスではないけれども、増税が予定され、かつ実施されたこの状況にあってどういう影響を与えたか、この点についてもコメントをいただけたらと思います。

黒田参考人 財政政策につきましては、本来、政府、国会で議論されるものでありまして、私から具体的に余り申し上げることはいかがかと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、例えば消費税の増税というものがどのような影響を与えるかといいますと、消費税の場合は、どうしても、消費に対する課税でございますので、家計の実質所得にマイナスの影響を及ぼすということがあると思います。

 これは、駆け込みそれからその反動減といったものを除いて、基調的に、増税が経済、あるいは、消費税の場合は消費に与える影響というものを考えていく必要があると思いますが、他方で、委員も御指摘のとおり、財政出動というものが同時にありまして、この反動減の影響を緩和するような措置もとられました。これはこれでポジティブな効果を持ったと思いますし、より長期的に申し上げますと、財政あるいは社会保障制度に関する家計の将来不安を和らげる、財政が健全性を増し、持続性を増し、社会保障の持続性も高まっていくということによって将来不安を和らげるという効果も中長期的にはあろうかというふうに思っております。

鷲尾委員 今の総裁の発言にちょっと付言させてもらうと、確かに、将来不安が抑えられたというところは非常に大きいと思います。税と社会保障の一体改革があったればこそ、今般の財政政策もきいたところがあったんじゃないかというふうに思っております。

 一つ飛ばさせてもらって、質問を先に進めます。

 続きまして、実質賃金を決める三つの要因として、労働生産性、GDPデフレーター、労働分配率がありますけれども、GDPデフレーターと消費者物価の変化は、そのほとんどが交易条件の変化で説明されるわけでありますが、日本の交易条件の悪化、それから実質賃金が下がり続けている関係について、これについても総裁からコメントをいただきたいと思います。

黒田参考人 交易条件は、輸出価格と輸入価格の比率でございます。この交易条件は、特に日本はエネルギーその他原材料を輸入しておりますので、こういった国際商品市況、さらには為替相場の動向によって動くわけでございまして、このところ、日本の交易条件は悪化傾向にございます。このこと自体、我が国経済の実質的な購買力を悪化させる方向に作用しているのは事実でございます。

 一方、実質賃金は、交易条件だけでなく、その時々の景気あるいは労働需給、労働生産性の動向など、さまざまな要因の影響を受けているわけでございます。

 最近の我が国経済の動向を見ますと、堅調な内需を背景に緩やかな回復を続けておりまして、交易条件の悪化にもかかわらず、企業収益は大幅に増加しております。失業率も、先ほど申し上げたとおり、構造失業率近傍まで低下するなど、労働需給も着実に引き締まってきております。そのもとで雇用者所得は着実に増加しておりまして、これが個人消費の底がたさを支えているのではないかというふうに思っております。

 こうしたことから、我が国経済は、生産、所得、支出の好循環が作用してきているというふうに見ております。

鷲尾委員 ですので、やはり第三の矢というか、成長戦略というのが大事になってこようかなというところでございます。

 続いての質問ですけれども、量的・質的金融緩和によって、民間銀行に運用対象の変更、リスクをとった運用を促そうとされたわけでありますけれども、満期までの平均残存期間を約七年まで延長するという形で日銀も取り組まれておると思いますので、今のところ、民間の金融機関が売却した長期国債の代金というのはそのまま準備預金に積み上がっているのではないかと思っておるところであります。

 そういう意味で、ポートフォリオリバランス効果、これがどこまで出ていると認識をされているのか。日銀の目標は達成されたとしても、経済に与える影響というところから見ていかがかと思っておりますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 ポートフォリオリバランス効果というものは、量的・質的金融緩和における大変重要な波及経路の一つでございまして、私ども、常にこの動向を注視しております。

 実際、量的・質的金融緩和を進めるもとで、大手行などでは保有国債を売却して貸し出しをかなり積極化させておりまして、また、株式等への投資も増加するという動きが見られております。

 銀行全体を見てみますと、貸出残高の前年比が二%台前半のプラスということで推移しておりますし、中小企業向けの貸出残高もプラスになって推移するということで、業種や企業規模にも広がりが見られていることは事実でございます。

 今後とも、このポートフォリオリバランスの効果が、大手行のみならず、地域行、あるいは生命保険会社、さらには年金基金等も含めてどのように出てくるのか、貸し出しのみならず、その他のチャネルも通じて、ポートフォリオリバランスが十分な効果を発揮するようにしてまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 では、総裁に最後の質問でありますけれども、金融緩和の必要性が、目標が達成されてなくなったんだ、そういった時点で、同時に、そのときに財政健全化のめどがついていないと、これは円滑に出口戦略をとることができないんじゃないか。具体的に言うと、金利が急騰してしまったり、インフレ高進を余儀なくされたりというところもございます。

 そういった状況になったときに、日銀としてはどういった政策をとり得るのかということを聞いておかなきゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。

黒田参考人 この点につきましては、当委員会におきましても何度か御質問いただきまして、お答えしているわけでございますが、現在、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するように最大限の努力は行っているわけですが、まだ道半ばといったところでございますので、今から出口戦略を具体的に議論するというのはやはり時期尚早であろうというふうに思っております。

 それは、出口ということに向けた対応、あるいは、その際の方法、その後の政策運営のあり方といったことは、その時々の経済・物価情勢、あるいは特に市場の状況などによって変わり得るものでございますので、早い段階から具体的なイメージを持ってお話しすることは、市場との対話という観点からもかえって混乱を招くおそれが高いのではないか、これは諸外国の例等にも鑑みてそういうふうに思っておるわけでございます。

 当然、二%の物価安定目標を実現し、それを安定的に持続できるようになった段階では、今御指摘の出口といったことについて具体的な議論が必要になることは御指摘のとおりでございますが、今の段階で具体的なイメージを持ってお話しすることは適切ではないというふうに考えております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 それでは、麻生大臣にお話をお聞きしたいと思います。

 日銀の推計は、今ほど黒田総裁にいろいろな認識を問いただしましたけれども、デフレギャップはほぼ解消したという認識でありましたけれども、大臣はどのような御意見ですか。

麻生国務大臣 内閣府の推計によれば、ことしの一―三月のデフレギャップはマイナス〇・三%、日銀による試算と同様で、これは解消の方向に向かっているということだけは言えるんだと思っております。

 日銀の方のあれは、たしか、ことしの三月期は出しておられないと思いますが、昨年の十―十二月期で〇・一と推計をしておられますので、両方とも、ほぼ誤差の範疇と言えるかもしれません、大体同じ方向なんだと思っております。

 この背景というのは、多分、アベノミクスの効果で、四半期でいえば、六四半期連続でGDPがプラスになったとか、また、駆け込み需要でいえば、一―三月には、消費税引き上げ前の駆け込み需要ということもありまして、これは五・九%で高い成長率であったことなども考えられると思っております。

 ただし、デフレから脱却をしているかということにつきましては、これは、デフレ脱却というだけじゃなくて、いろいろな数値というものを総合的に考えないといかぬところなので、慎重に判断を必要とするところで、もうデフレではありませんと言えるような状況かといえば、何となく、私どもとしては、まだもう少しよく見ないと、この四―六の反動減とかいったようなものがどういった形でその後出てくるか等々につきましては慎重を要すると思いますが、基本として日銀との意識の差に大きな差はない、そのように考えております。

鷲尾委員 最後に大臣が余り認識の相違はないとおっしゃっていた、そういうことなんだろうと思わせてもらいました。

 先ほど総裁にもお問い合わせしたところでありますが、やはり長期の成長力、供給力の問題が今の制約になっているのではないかという問題でございます。

 そうなったときに、長期の成長力、供給力の問題でありますから、逆に、今、それこそ短期の財政出動はもうちょっと見直された方がよろしいんじゃないかと思いますけれども、大臣の認識を問いたいと思います。

麻生国務大臣 長期の供給力、確かに、この二十年間ぐらい、民間としては設備投資をかなり控えておられますので、その意味では、機械が古くなっている等々幾つかの問題点は間違いなく存在しているだろうと私自身は思っております。国全体として供給力を強化していくということは今後においても極めて重要な問題なんだ、私どもはそう認識をいたしております。

 御指摘のように、財政出動による需要創出というのは限定的なものになりますので、そういったものが永続できるわけではないというのははっきりしております。したがいまして、私どもとしては、財政出動によって、いわゆる景気刺激によって民間の競争力というものが強化されるのはもちろんなんですけれども、これはあわせて、供給力の強化というものも経済成長を実現していく上では長期的に見て極めて大事なことなんだ、私どももそう思っております。

 したがって、今回の第二次安倍内閣におけます予算編成の中におきましても、成長戦略の策定につきましては、財政の機動的出動というのを行いつつも、同時にやらないかぬことは、民間の設備投資や何かにつきましては即時償却を認めるとか、いろいろ減税措置をやらせていただいたり、また、働き手の確保ということも大事なことで、民間の競争力の強化ということを考えた上においてはこの働き手の確保というのは非常に大きな問題だろうと思っております。

 いろいろな意味で供給力を向上させていく上で、私どもとしてはいろいろなことを試みつつあるというようなところだと御理解いただければと存じます。

鷲尾委員 財政出動がうまくいっているということだと思うんですけれども、だからこそ、需給ギャップが縮小していって、それが別の問題を生じさせている。財政出動が常にうまくいくわけではない、今の大臣のコメントもそうではあると思うんですが、依然、やはり景気刺激的ではあろうかと思うんです。

 東京、大都市のサービス業と地方の建設業、これはもう本当に人手不足ですし、構造的な改革というのはするべきだと思うんですけれども、追加的な公共事業という部分でいくと、復興関連を除けば、やはり少し抑制的であるべきではないかというふうに思います。

 また、法人税率の引き下げでございますね。先ほど竹内委員からもコメントがございましたけれども、このためにはやはり歳出を削減するということもお考えになったらいかがかと思うわけですが、どうでしょうか。

麻生国務大臣 これは、中期的、長期的といろいろな表現があろうかと思いますが、少なくとも、今、内閣府の中長期試算を見ますと、消費税率につきましては、現行を踏まえて、一〇%に引き上げるということをある程度前提にして想定しながら、歳出の方につきましては、社会保障等々の問題は、高齢化の比率の要因などである程度避けがたいところもありますので、そこで増加いたしますが、それ以外の一般歳出は物価上昇並みに抑制するということを前提として、私どもは、成長戦略の成果によって名目成長率が三%というような高い成長率が仮に続いたとしても、二〇二〇年度においてはまだ十二兆円のマイナスということになっております。

 そういった意味では、我々としては、財政収支のバランスというのには一層気を使っておかないと、二年間に各年度四兆円、ことし、内容がよかったというので予定より多目に返すということができておりますけれども、これを直ちにいわゆる経済刺激策に使うということではなくて、二〇二〇年度の財政のバランスのことを考えたら、上振れした部分につきましては、きちんとした形で、借入金の返済等々、そういったようなものを考えて、財政のバランスの方に使うということを考えておかねばならぬ、私どもはそう思っております。

鷲尾委員 次の質問に移ります。

 大臣と以前やりとりをさせていただいたときに、輸出が数量としてはふえていない、金額はふえているけれども輸出の数量がふえていないという話でありました。大臣もそこはお認めになっておられました。

 その際に、企業が、利益を出すために、値段を下げずに利益をとっているんだという話をちょうど大臣がされておったわけであります。そうしますと、確かに利益は出るのかもしれませんけれども、やはり、輸出の数量がどんどんふえていくことによって国内の生産も拡大をしていく、そういった形での波及経路、これがそもそもだめだということを言っているに等しいかと思うわけです。

 そうしますと、今のそれこそ大企業で利益が出ているといったその成果が、本当に地方経済、地方の現場にまで果たして至るのか。そういう部分で、大臣のコメントを聞くと、随分懐疑的に思えてきてしまうわけでありますが、国内経済への影響は限定的だと思うわけですけれども、その点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 足元の輸出につきましては、先ほど御指摘のありましたように、先般の質疑のときにも申し上げましたが、これまでのところは、少なくとも、円安の方向にもかかわらず、日本におきます国内企業のいわゆる輸出先での販売価格を余り下げていないというだけでなくて、これまで輸入が盛んだった新興国等々、また資源国の需要がかなり減少しているということもありますし、また、これまでの間、約二十年間の円高のおかげで、かなりの企業が国内の生産拠点を海外に移しているという実態もございますので、結果として横ばいにとどまっているんだと思っております。

 三月期の企業収益は前年比で一五・〇%になっております。これは、間違いなく為替相場の円安方向の動きということもあるんだと思いますが、全体的には景気にプラスの影響を与えているということは考えられますが、一方で、輸入物価の上昇ということもあります。ガソリンとか輸入の食料品等々が上昇しているという部分もありますので、家計とか企業の資材の部分につきましてはさまざまな影響があろうと思いますので、これは、引き続き注視をしていかねばならぬという問題だということ。これは、円安といえば全ていいなんということはないのであって、両方バランスを見て考えておかねばならぬところだと思っております。

鷲尾委員 地方経済というのはやはり期待するところ大なわけですけれども、そこに本当に波及してくるのかというところが、いまだ私の地元でも懐疑の声も上がっておりまして、そういったところにぜひ目配りをしていただきたいなというふうに思っているところであります。

 ちょっと準備していた質問をする時間が少しないので、幾つか飛ばさせていただいて恐縮ですけれども、あと二つだけ質問させてもらいます。

 今回、GPIFにお伺いしたんです。GPIFにお伺いして、いろいろ不祥事も、GPIFの不祥事ということではなくてAIJ等の問題もあったものですから、内部統制の状況はどうかという話を聞いてきました。

 率直に言うと、大丈夫ですという話をされていたわけですけれども、これからポジティブにいろいろな物事を運用しようとしているときには、やはりそれに即した内部統制組織のあり方というのを考えていかなきゃいけないというふうに思います。この点は、大臣はどう考えますか。(麻生国務大臣「これは厚労省だろう」と呼ぶ)厚労省でした。失礼しました。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 年金積立金の管理運用につきましては、厚生年金保険法等に基づきまして、専ら被保険者の利益のために、安全かつ効率的に行うものとされてございます。

 経済状況が変わっていく中で、運用環境につきましても変わりつつございまして、その中で、年金財政上必要な利回りをしっかりと確保しながら、リスクを抑えていく運用が重要であると考えております。

 そうした中で、御指摘のとおり、法人の業務の質を向上いたしますために、業務の有効性あるいは効率性、法令等の遵守、資産の保全、また財務報告等の信頼性を目的といたします内部統制の強化が重要だというふうに考えてございます。

 GPIFにおきましては、内部統制の基本方針を策定いたしますとともに、これに基づきまして、経営管理会議あるいはコンプライアンス委員会、運用リスク管理委員会等の内部組織を設置するなど、内部統制の強化を図ってきておりまして、今後とも一層の強化に努めてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 大臣、この点は、コメントは何かございますか。

麻生国務大臣 他省庁の所管の話ですので、差し控えさせていただきます。

鷲尾委員 それでは、大臣の所管の話で、IFRSの普及状況についてちょっとお聞かせいただきたいなというふうに思います。

 これは、国際財務報告基準ということで、G20でも話がされていますし、また、金融庁として、今後の方向性をやはりそろそろ打ち出していかないといけない。これは、日本がIFRSの基準づくりにある程度関与していく、ルールづくりに関与していかないと、いつの間にか決まった物事が押しつけられるということになりますから、この点からいっても、今後の方向性は重要だと思うんです。

 大臣からコメントをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 IFRSと言っても、通じない方の方が多いんだと思います。これは、インターナショナル・ファイナンス・リポーティング・スタンダーズというものを略してIFRSという言葉が今使われていますが、国会議員でも知っている人はほとんどいませんから。よっぽど、この話をして、IFRSって何ですと言って、ファスナーと間違えられた人もいたぐらいでしたので。国際会計基準ということが正式な訳なんだと思いますけれども。

 これは、昨年の六月に企業会計審議会で取りまとめた当面の方針というのに沿って、IFRSの任意適用の積み上げに向けて、その任意適用要件の緩和等々、必要な施策は講じてはおります。その結果、現在、IFRS任意適用企業数が約四十社になっているんだと思いますが、この四十社の時価総額が約五十四兆円でありますので、全上場企業に占める割合でいうと一二、三%ということになるんだと思います。

 引き続いて、とにかくこの任意適用の積み上げに向けて努力をしていきたいと思っておりますけれども、いずれにしても、鷲尾先生、この種のインターナショナルなスタンダードというようなもの、これはデファクトなスタンダードとして押しつけられる前に、そういったスタンダードをつくるときにはこちらも最初に入って一緒にやっていくという努力を、残念ながら我が国は、別に銀行に限らず、何でも、余りしないんですよね、そういったものの重要性というものをわからないので。

 やはり自分の国にとって都合のいいようにみんなつくろうとするわけですから、そういったのに対してちょっと待てという話を最初のうちからしておかないと、後からでき上がった基準が不利な条件になって、国際的に多数決か何かでやられると非常に割を食うということは国益を甚だしく損ないますので、十分に注意した対応をはなからやっておかねばならぬ、私はそう思っております。

鷲尾委員 大臣、最後のポイントは本当におっしゃるとおりでして、今、大体百五カ国で強制適用になっています、アメリカでも五百社適用されています。日本の状況はちょっとお寒い状況で、このままだと、どう適用しているかどうかが発言権にもかかわってきますから、その点、本当にこれが結果として、今、積み上げが図られていると言いますが、それで十分なのかどうかというところはぜひ検討をお願いいたしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 日本維新の会の坂元大輔でございます。

 日本維新の会所属議員としては、もしかするとこれが最後の質問になるかもしれませんので、今までにも増して気合いを入れて御質問させていただきたいというふうに思います。

 先週、当委員会で視察に行かせていただきました。林田委員長初め関係各位の御配慮、そして視察を組み立てていただきました委員部の皆様にまず感謝を申し上げたいと思います。

 まず、その視察関連の御質問をさせていただきます。

 きょうは、黒田総裁にもお越しをいただいております。ありがとうございます。

 まず、国債について伺わせていただきます。

 この国債の件に関して、視察先が三カ所ありましたけれども、三カ所全てでお話に挙がりました。

 まず、三菱東京UFJ銀行では、今、日銀が量的・質的緩和によって、これは以前に私も質問をさせていただきましたが、実質的に日銀以外の主要なプレーヤーを国債市場から締め出しているような状況の中で、担保としての役割もあるので国債の位置づけは変わらないというふうな見解を伺いました。

 また、野村証券では、国債市場の流動性は明らかに低下しているという指摘がございました。

 そして、今非常に注目を集めておりますGPIFでは、厚生年金保険法第七十九条の二にある、「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な視点から、安全かつ効率的に」運用してまいりますというお答えがありました。つまり、日本経済の状況等を考えて、無理に国債を買い支えるというわけではなく、純粋に投資家の視点で運用していくというような趣旨のGPIFからの発言もございました。

 つまり、何度も当委員会で質問に出ておりますが、異次元の金融緩和の出口局面、時期について申し上げるのはまだ尚早だというふうに総裁は何度も御発言をされていますけれども、時期はともかく、この異次元の金融緩和の出口局面において、現在、日銀が新規発行分の約七割の国債を買い上げているわけですけれども、今、日銀が買い上げている国債を、では、どのようにほかのプレーヤーに改めて移していこうというふうにお考えでいらっしゃるのか、まずお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、寺田委員長代理着席〕

黒田参考人 現在、二%という物価安定の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を行っている最中でございまして、出口戦略を議論するのはやはり時期尚早であるというふうに思います。

 なお、出口に向けた具体的な手段としてはさまざまなものが考えられますけれども、国債買い入れの取り扱いを含め、実際にどのような手段を用いるのか、またどのような順序で出口を進めるのかといったことは、その時々の経済・物価情勢あるいは市場の状況などによって変わり得るものだと思っております。したがいまして、早い段階から具体的なイメージを持ってお話しすることはやはり適切ではなくて、市場との対話という観点からもかえって混乱を招くおそれが高いと考えられます。

 したがいまして、時期尚早であるということは前から申し上げているとおりでございますが、先ほど申し上げたように、具体的な手段としてはさまざまなものが考えられ、その時々の状況に合わせて、最適な形で出口戦略を実施していくということになろうかと思います。

坂元委員 ありがとうございます。

 総裁は何度もこれまで市場との対話ということを強調されて、実際に行ってきておられるわけですが、やはり出口局面において、より一層それが求められるのかなというふうに思います。

 今回の異次元の金融緩和以前は、ある意味絶妙のバランスで国債の購入が行われてきたわけですので、市場関係者とよくよく、本当に密にコミュニケーションをとられた上で適切な御判断をぜひともお願いしたいというふうに、まだ先の話ではありますけれども、改めて申し上げます。

 続いて、追加金融緩和に関してであります。

 これもやはり非常に注目を集めておりまして、野村証券での意見交換では、具体的に、現在のマネタリーベースが年間約六十兆から七十兆円に相当するペースで今金融緩和を行っているわけですけれども、これを、一・五倍という数字が出ました。これは、今現在一・五倍にする、つまり百兆規模にするということではなくて、総量として一・五倍にする、期限を延ばすことは可能なのではないかというふうな具体的な話も挙がっていたわけです。

 この追加の金融緩和に関しては、日銀の審議委員の中にも肯定的な意見をおっしゃっておられる方もいらっしゃいますが、具体的にちょっと数字が挙がりましたので、伺わせていただきます。この追加の金融緩和、一・五倍程度までという見方に関して、日銀総裁としての御感想、御意見を伺いたいと思います。

黒田参考人 たびたび申し上げておりますとおり、二%の物価安定の目標の実現に向けての道筋を今のところ順調にたどっておりますけれども、まだ道半ばということでもございますし、さらに今後のリスクということもあり得ると思いますので、常に物価安定目標の実現に向けての道筋を適切にたどっているかどうかを点検し、仮に、何らかのリスク要因でその見通しに変化が生じて、二%の物価安定の目標を実現するために必要だということになれば、ちゅうちょなく調整を行う方針でございます。

 その場合の具体的な手段につきましては、物価安定の目標を実現するために必要な施策を講じるということに尽きるわけでして、その手段には限りがあるとは考えておりません。

坂元委員 ありがとうございました。

 ここも、確かに本当にデリケートな対応が求められるところでありますので、今、軽々しく御発言はいただけないということは十分理解をしておりますけれども、これだけある意味異次元の緩和をやっている以上、そのリスクをいかに軽減させながらソフトランディングしていくかというところになりますので、本当に責任の重いところでありますけれども、総裁としての的確な御判断をぜひともお願いしたいというふうに再度申し上げます。

 続いて、少し違う質問になりますが、同じく野村証券での意見交換で、一方、消費の持続性には少し懸念がある、それは潜在成長率が落ちている可能性を否定できないからですというふうな見方がございました。

 私も、二月二十一日の当委員会において、GDPギャップをどう見るかということについて麻生大臣に御質問をさせていただいた際に、需要不足が成長期待の低下と供給構造の潜在的需要構造への不適合、つまり、需要はいわばサービス業であるとか医療、介護、そういった分野に移っているにもかかわらず、相変わらず供給側が製造業中心の供給構造、わかりやすく言えばなんですけれども、そこから変化できていないのではないかという指摘をさせていただいたわけでありますが、この点について、改めて日銀総裁としての御意見、御見解を伺えればというふうに思います。お願いします。

黒田参考人 ただいま御指摘になった点は、極めて重要なポイントだと思います。特に、今回の景気回復が内需中心で回復している。したがって、製造業よりも非製造業に需要がかなり集中して回復しておりまして、そこの部門で労働力不足とか設備の不足感が非常に高まっている。これは、日銀の短観などでも観測されるところでございます。

 ただ、そういったことを含めて、全体として、マクロ的に見て日本経済の潜在成長率を高める、供給力の伸びを高めるといったことは、いずれにせよ重要であるというふうに思います。

 その意味で、企業における前向きの投資を促す、あるいは規制・制度改革を通じて生産性を向上させるということが非常に重要な課題になると思いますし、さらには、労働力の面で、先ほど来申し上げておりますとおり、女性あるいは高齢者などの労働参加を高める、さらには高度な外国人材を活用するといったことを通じて労働力をふやしていくということも必要だろうと思っております。

 この点は、先ほど申し上げたとおり非常に重要なポイントでありまして、今後とも、政府及び日銀におきまして努力を重ねていく必要があるというふうに思っております。

坂元委員 ありがとうございました。見解が一致して、大変うれしく思います。

 私も全く同意見でありまして、やはりポイントは、いわゆるアベノミクス第三の矢、経済成長戦略の中で、これは何度か指摘をさせていただいておりますが、これが成長産業ですよというふうに国がターゲットを絞って決めるのではなく、規制改革、特に労働基準規制の改革によって経済を活性化させていく、つまり潜在的な需要がある方向に供給をシフトさせていくことが必要なのではないかというふうに改めて指摘をさせていただきます。

 黒田総裁、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 続きまして、五月の三十日に発表されました、財政制度等審議会、いわゆる財政審の提言について、ここからはお伺いをさせていただきます。

 私もこれは全部目を通させていただきましたが、非常に厳しい指摘が並んでおります。一部読ませていただくと、「政府の財政健全化目標である二〇二〇年度までの国・地方PB黒字化は持続可能な財政構造の構築に向けた一里塚に過ぎないことを強く認識すべき」だというふうな指摘がなされております。

 まず、この指摘に対する御感想と、つまり、私は、消費税一〇%への引き上げは必須条件である、この指標においてももう織り込み済みですから、必須であるというふうに考えておりますが、副総理・財務大臣としての消費税一〇%に対する御決意も含めてお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、財政制度審議会、吉川先生のところから五月の三十日の日に報告書を手渡されておりますが、内容は、坂元先生今御指摘のとおりで、二〇二〇年度で仮に黒字化を達成したとしてもそれは一里塚ということが、一番端的にここ数年間の話として出ているんだと思っております。

 そのために、我々としては、GDP比の来年度までの半減の話と二〇年度の黒字化目標というのをまずは目指して、その後、さらに政府の借金の規模を対GDP比で安定的に引き下げていくという財政健全化目標というものを掲げております。

 この黒字化の目標自体の達成も、これはまだ絵に描いているだけで、掲げているけれども、二〇二〇年度はまだ十二兆円の赤ということになっておりますので、そういった状況を考えますと、政府の借入金の対GDP比の引き下げというところまできちんと見据えておきませんと、基礎的財政収支の黒字化というのは単なる一里塚の話なんですよというところなんだと思います。

 したがって、今お尋ねがあっておりました消費税の一〇%への引き上げにつきましても、これはかねてから総理も述べておられますように、税制抜本改革法附則の第十八条の三項でしたか、あれに沿って私どもとしては経済状況というものを総合的に判断した上で適切に判断していくんですが、きちんと一〇%になれるような状況にことしじゅうにしておかねばならぬというところが、私どもにとって一番大きな大事なところかと思っております。

    〔寺田委員長代理退席、委員長着席〕

坂元委員 ありがとうございました。

 先ほど日銀総裁からも、経済は今のところ順調に来ています、消費税増税の影響もありますけれども食いとめられるのではないかという御見解もありましたので、ここは、ちゅうちょのない判断をぜひともお願いしたいというふうに申し上げさせていただきます。

 続いて、予算に関してでございます。

 同じくこの財政審で、「国・地方PB赤字対GDP比の半減目標の達成年度である来年度の予算編成において、前年度同様に「中期財政計画」を上回る規模で収支改善を図るべきである。」そして「当初予算同様、補正予算についても厳しく規律していくべきである。」というふうに指摘がなされております。

 この確認でありますけれども、やはり来年度の予算編成においても中期財政計画を上回る規模の収支改善を行うというふうに理解をしてよろしいでしょうか。また、補正予算について、これは何度も私も御指摘をさせていただいておりますが、よほどのことがない限りは今年度は組まないというふうな認識でよろしいでしょうか。確認をさせてください。

麻生国務大臣 来年度の予算編成につきましては今後検討していくことになろうかと存じますが、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化目標というものに対しましては、今の内閣府試算でも、先ほど申し上げましたように約十二兆円程度の赤ということになっております。したがいまして、二十七年度におきましてもできる限り収支改善を進めて、今年度は約四兆円のところがもう少し行きましたので、中期財政計画における目標は二年間で各年度四兆円前後だったんですが、これを上回る収支改善というものをやっていきたい、基本的にはそう思っております。すなわち、上振れした分をほかのところに回すということではなくて、こちらの方に充てたいということです。

 また、補正予算についてのお尋ねもありましたけれども、これは、財政法の第二十九条でしたか、あれにのっとって、基本的には、我々としては、義務的経費の不足を補うとかいろいろな意味で、特別なことがない限りはやらないということにしておるんです。現時点でまだ半年も、大分先の話ですので、今の段階で申し上げることがなかなかできないとは思いますけれども、こういった予算の重点化、効率化というものは、私どもにとりまして国債の信用というものは非常に大きなものなのであって、この信用をきちっと維持していかないと、日本の財政というものが極めて不安定、不健全なものになりかねぬということを常に頭に置いて対処していきたいと考えております。

坂元委員 ありがとうございました。

 そうですね。今大臣の御答弁があったとおり、やはり財政健全化というのが本当に大事になってきますので、ぜひともこの点はお願いを申し上げたいと思います。

 国有地のあり方について少し御質問しようと思っていたんですけれども、質問の時間がなくなりましたので、またお伺いさせていただくといたしまして、本日は、私の質問はこれにて終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林田委員長 次に、山之内毅君。

山之内委員 日本維新の会の山之内毅でございます。

 先日、三菱東京UFJ銀行、GPIF、それから野村証券へ視察に行かせていただきました。

 いずれにしろ、長期的な目標としては、日本としてはやはり財政健全化を目指す、その方法は、端的に、シンプルに言えば、歳入をふやして、なるべく支出は抑えるということだと思っております。

 先ほど来、各委員の方々からお話ありました。当然、当初目標としていた、二〇一五年度の国、地方のプライマリーバランスの赤字対GDP比の半減目標、そして二〇二〇年度には黒字達成目標ということがあったと思います。

 私も、まだまだ若輩ではございますが、この財政健全化、まさに日本の次世代を担う方々に借金を残さない、もしくは減らしていくめどを立たせる、これは極めて重要な視点だと思っております。私も鹿児島が地元ではございますが、地元の西郷隆盛さんは子孫に美田は残すなと言いましたけれども、やはり借金は残してはいけないと私は当然思いますし、その道筋を与えて、日本はこの先よくなる、さらに活性化していくんだというのは、やはり若者の活力に期待したいと思うところが私はあります。

 その中で、今回も視察させていただきまして、この財政健全化、先ほど麻生大臣も言われていました、二〇二〇年度もまだ厳しいと。歳入面、歳出面があると思います。歳入を伸ばす、そして歳出はある程度下げる、これについて、もし今の時点で具体的にこれをこうした方がいいというお考えがありましたら、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、通告がなかったので、私の基本的な考え方というか、思いつきでしゃべっておられるのかどうか知りませんけれども、いきなり聞かれましたので、こちらも資料なしでお答えするということをあらかじめお断りしておきます。後で細かいところが違っているなんて言わないでね。よろしくお願いします。

 基本的に、今の状況で、経済というのは生き物ですから、山之内先生、何が起きるかようわからぬということは常に頭に入れておかねばならぬと思っております。

 少なくとも、リーマン・ショックを予想した人というのは、私の周りでもほんの数十人しかいなかったと思っております。そういった意味では、あれぐらい後になってみれば明確じゃないかと思っていることでも、その当時はなかなか見えないということになっておりますので、なかなか難しいとは思いますが、今のような状況の中で、経済というのを確実に伸ばしていくということをやった場合、幸いにしてアメリカの景気の内容というのは、シェールガスのおかげもこれありで、かなり上向きになってきておりますので、この点は、私どもとしては、ここ数年間、極めて計算に入れられるところだと思っております。

 反対、中国の方の部分に関しましては、いろいろなうわさが飛び交っておりますし、外に出てくる情報は極めて不明瞭、中がなかなか見えませんので、よくわからぬという部分がありますので、こちらの分と差し引きでよく計算しないといけません。

 幸いにして日本の場合は、GDPの中に占めます輸出の比率が、ドイツみたいに五〇%とか、お隣みたいに四〇%、三〇%なんてことはありませんので、二〇%どころか、今、一五、六%、そんなものだと思っておりますので、内需に支えられている部分が極めて大きいというのも実態であります。

 そういった意味では、国内にあります千二百六十兆円を超しますいわゆる個人金融資産とか、企業が抱えております三百四兆円の内部留保とか、そういったようなものが国内で回っていくということを基本的に考えていかないと、安定した財政再建というのはなかなか難しいんだろう、私どもはそう思っております。

 財政出動によるのは、最初の導入部分はそうかもしれませんけれども、その後、それが健全に回って好循環をしていくためには、どうしても民間の設備投資、個人の消費、そういったものが確実にふえていくということにならないと、GDPの中の七割、八割を占める部分が動いていかないということになるんだと思って、だから、そこがきちんと動くような方向で考えていくのが筋かなというのは、突然の御質問ですけれども、今考えておるところの一端です。

山之内委員 ありがとうございます。

 先般、安倍首相も、一月二十二日、ダボス会議の方に行かれて、それで、外国人投資家の方が特に注目されている点は、やはり法人税の減税、それから規制改革、ある意味特区も含めたものだと思います。それから、GPIFということをおっしゃられる専門家の方々もいらっしゃいました。

 今、野村証券の方へ行かせていただいたときもそうだったんですけれども、アベノミクスが始まったとき、国内というよりも、どちらかというと外国人投資家の方が投資していただいた。それから、最近になってくると、外国人投資家の方からやや国内の方になってきているという認識をおっしゃられていました。

 その中で、私は、ここで、外国人投資家の方にある意味試されている一点なのかなと思っております。法人税の減税をする、規制改革、ある意味特区というものもそうだと思います、それからGPIFの運用、百二十兆円あるものをどうしていくか、これによって、約十数兆円あると言われている外国人投資家の方々が投資していただけるかどうか、こういった視点が大きな一点であると思います。

 それと同時に、先ほど大臣も言われた潜在成長率、こういった日本国内のものも高めていかなきゃいけないと思います。

 いずれにしろ、まず、先ほどの、法人税の減税、それから規制改革、特区、GPIF、こういったものについて外国人投資家の方が今注目している、こういった現状認識について大臣はいかがお考えでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 外国投資家は、山之内先生御存じのように、短期、長期、ファンドを含めても、怪しげなファンドから極めて健全な投資から、いろいろで、投機と投資とを分けて考えろとかよく言われる話のとおりなので、なかなか一概に言うことは難しいんですけれども、今、世界で行われております話でいけば、税率論の議論、税金の率の論でいけば、世界の流れとしては、課税ベースというものを拡大しつつ税率は引き下げるという話です。

 したがって、法人実効税率を下げるという話は、先ほど御質問になっていたいわゆる財政立て直しの面からいったら、その分は穴があくわけですから、その分を補うものが出てこないとならぬ。それは、景気がいいからとかいうような、上振れしたような分というのを当てにすると、数年すると今度は逆に下振れするかもしれませんから、そういったものは当てにならぬ。一回引き下げますとずっと恒久的にそういうことになりますので、基本的には、財源をきちんと手当てしておかないと信用は得られない、また国債の信用も得られないということになろうと思います。

 私どもは、恒久的な減税というのを考えておくのは非常に大事なことなのであって、ほかの国の投資家から見ても、日本はそういったところはきちんと見てやっておる、思いつきなんかでやっているわけじゃないんだ、ちゃんと、きちんとしておるということです。

 我々が昨年の初めごろ財政出動というようなことをやったときも、おまえら、財政は大丈夫かと言われる話が一斉に国際会議でやられましたけれども、俺たちは少なくともおたくらの国と違って民主主義が成熟しているから、我々は、与野党が衆議院、参議院でねじれていても、財政再建ということが大切だということを前提にして与野党は合意して、自公民で消費税を三%上げるということを既に決めて実行しつつある段階に来ています、おたくらとは違いますと。以後、この種のことに関する質問は一切ありませんから。そういったものをきちんと発信しておかないと、あらぬ話になって、やたら売られてみたりなんかするんだと思います。

 きょう、また百円上がって一万五千円ぐらいになっていると思いますが、そういった形のもので、私どもとしては、日本という国の内容というものを正しく伝える義務、置かれている状況を正しく伝えるというのも我々に与えられている大きな仕事であろうと思っております。

山之内委員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃられたとおり、当然、歳入をふやして、歳出をある程度考えていかないといけない。ある意味、人類史上最大という人口比率で少子高齢化が進んでいくだろう。この人口比率に至っては、どの指標を見たって明るい兆しは余りない、むしろ人口は減っていく、そういった状況で、歳入はふやしたいけれども、法人税を減税すれば当然その分は歳入が減るということで、穴埋めはしないといけない、今大臣がおっしゃられたとおりだと思います。

 その中で、いろいろ報道等でもあるように、法人実効税率を二〇%台にすべきだとか、さまざまな議論があると思います。そういった中で、これは、今後当然検討していくものなのかどうか、ある程度視野にあるのかどうか、現時点でもしありましたら、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 今、法人税を二〇%台にというお話はよく聞かれる話で、あっちゃこっちゃでしておられますが、私ども、党税調で主にこの審議をしておられると存じますし、政府税調でもこれをやっておられるんだと存じますので、今から十二月まで大分時間がありましょうけれども、その間にいろいろ御検討いただけることになろうかと存じます。

山之内委員 ありがとうございます。そちらの方は検討を進めていただけるということだと思います。

 そこで、私はこの委員会でも、うるさいぐらい、やはり東京一極集中の状況はいかがかということを発言させていただきました。別に東京が嫌いなわけでも何でもないですけれども、国益を考えた場合に、そういったものは検討するに十分な課題だと思っております。

 先般、報道でもありましたけれども、総理も今度、東京一極集中に対して、各所管庁、厚生労働省さん、総務省それから経済産業省、それぞれ検討して、人口減少の問題それから地域の活性化の問題、それは国と地方の自治のあり方だと思いますけれども、それを総合して検討すべきだとされたと私も聞いております。

 その中で、今回、これは三菱東京UFJさんに行かせていただいたときだと思います。今、各地銀それから信用金庫、そういったところが国債を購入している。二〇〇八年あたりからすると、都市銀行はある程度、国債の引き受け、買い受けが上がって、下がった。地方銀行は、二〇〇八年からすると、やはりちょっとずつ上がってきている。信用金庫さんもやはり上がってきている、もしくは横ばい。この先、理想論を言ってしまえば、地方の各銀行が、国債ではなくて投資、まさにアベノミクスがしている実需を喚起するような方法、特に貸出先があればそちらに出していく。悲しいかな、現状はなかなかそういったところが少ないものですから、そういった優良先に貸したいけれどもなかなか簡単には貸せないという現状は、確かに地方中の地方では多いと思っております。

 今の現状、地方銀行が国債の買い受けがちょっと増加傾向、もしくは横ばいから増加傾向にあるんじゃないか、こういう御認識もあったと思うんですけれども、これについて、大臣、今いかがお考えでしょうか。現状のままでいいのか、それとも、こういった方向性がいいんじゃないかとか、もし御認識があればお答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 鹿児島でどれくらい人口が、先生の場合は鹿児島市内ですから、薩摩とか大隅の方に行くと物すごく人口減少の率が激しいんだと思いますが、地域によって、人口が減ってきたら、地銀、第二地銀、信用金庫等々は、貸し出す相手がおりませんので、基本的に成り立たないことになってくるという実態は、その経営をされる方々が適切に判断をしていただかないかぬところなんだと思います。

 その上で申し上げさせていただければ、信用金庫に占めます総資産の中で、今、貸し出す相手がいないからということで、国債の割合というのは、平成二十六年の二月末で約五十兆三千億、一〇・六%ぐらいでありまして、前年度比で、一一%ぐらいですから、若干減少している、その分だけ貸し出しがふえているということになるのかもしれません。

 いずれにしても、金融庁としては、こういった状況が変化してきた場合には、地域の金融機関の国債保有に伴いまして、金利リスクというのは、確実になる分と利益が出ない分といろいろあろうかと思いますので、これはチェックしていかないかぬところだと思っております。

 いずれにしても、今後、地方銀行なり第二地銀なり金融機関等々が、地方において企業が資金を必要としているか否かということに関してやはりアンテナをしっかり立ててよく見ておかないと、土地を担保でしか金を貸す能力がないとか才能がないなんて銀行はだめです。間違いなく、その企業の経営者の能力なり、その企業の持ってきた事業計画なりというものをきちんと審査した上で融資ができるというような目ききを養成する、育て上げるということをしていかない限りは、なかなか役にも立たぬということになろうかと思いますので、ぜひ、顧客というか、企業の育成とかそういったようなものをよく見て、成長を押し上げていくということをやっていってもらわないかぬのだと思います。

 いずれにしても、金融業者に対しては、金融庁から、いわゆる金融監督庁というより金融育成庁みたいなつもりで指導していかないと、今後、デフレからインフレに変わっていく今の状況においては、これは非常に重要な要素なんだという点だけはよくよく申しているところであります。

山之内委員 ありがとうございます。

 まさに、デフレからインフレに向かっていく中においては重要な視点だ、おっしゃるとおりだと私も思います。

 今、十年国債の金利が約〇・六。出口戦略というのがいつになるか。約二年後だとか何年後だとかあると思いますけれども、当然、CPI、物価は上昇します。当然、金利も多少追いついてくる時期があるのかもしれない。そういった時期になると、やはり地方銀行が、どうしていくべきか、このような状況でいいのか。大臣もおっしゃられたとおり、ちゃんと目ききをして、そういった地方に、やはりちゃんと企業と向き合って貸し出しをしていただかないといけないと思っております。

 そこで、先ほども言っていました、では、果たして地方にそういった先があるのかどうか。そういったものも、先ほどの人口減少の中、ベンチャー企業をするだとか、若手、若者、活力ある方々が、どうしてもその風土がその地方にないものだから、同じビジネスをするにしても、東京だったら成功する、もしくは大阪、福岡だったら成功するかもしれない、でも地方中の地方だと、そもそも客単価が少ない。同じカフェでも、一緒だと思います。単純に所得が低い、一個の商品を安くしないといけない、人数も少ない、そもそも若者がいないからそういったビジネスが成り立たない等、いろいろ課題はあると思います。

 そういった中で、日本全体の潜在成長率という話がありました。これも野村証券だったと思いますけれども、まず、アメリカも潜在成長率が落ちてきているんじゃないか、名目成長で四・五ほどあったものが今は三・五ぐらいじゃないだろうかと。そして、日本も、これは成熟国家のもしかしたら宿命の一つなのかもしれないですけれども、潜在成長というのは落ちてきているのかもしれないと。

 実際、私も今、手元に資料をいただきました。八〇年代、九〇年代からすると、やはり大分落ちている。人、物、金といいますか、今のこの資料だと、労働時間、就業者数それから資本ストック、あとはTFP、いわゆる人間の知恵というか努力というか、そういったものに頼って、結局、潜在成長率は、極めて日本は、現状、残念ながら落ちている。この表を見ると、ほぼTFP、企業の知恵といいますか、人間の知恵で何とか支えているようなものだというような状況になっていて、潜在成長率は日本においてもかなり厳しいような状況になってきていると思います。

 これを当然上げていかなきゃいけないんですけれども、麻生大臣、今後、どうこの日本の潜在成長率を上げていけばいいのか、もしくは、簡単には上がらない、そういった現状認識をお答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 潜在成長率は、この一―三月というのは〇・七%という資料が出ていますので、その話をもとにして言っておられるんだと思いますが、労働力と言われるのは、若者が減るとかいろいろな表現がありましょうけれども、昔だったら五十五で定年ですけれども、今は六十五、大分変わってきていますので、労働力の定義もなかなか難しいんです。

 いずれにしても、我々として、潜在成長力というのは、一つは人口、もう一つは、先ほどちょっと述べましたように、約二十年近くデフレーションが続いたおかげで企業は設備投資というものを怠ってきた、もしくは慎重であったということを背景として、長らく低下傾向にあったということは間違いないんだと思います。

 今後、成長戦略というものを着実に実行していくという意味においては、民間のいわゆる力というものを引き出して、民間の投資の拡大とか、また労働生産性を高めるとかいろいろなことがあろうと思いますが、少なくとも日本の場合は、そういった意味での課題というもののある意味先進国でして、環境問題にしても高齢化の問題にしても、我々はそういった問題を先頭切ってやっていかざるを得ないというのでこれまでもやってきたわけです。

 いずれにしても、今の時代、日本だけで事は解決するわけではありませんで、環境問題も、隣からいろいろなものが風に乗っかってこっちへ飛んできたりするわけですから、我々としては、グローバル化というものを生かした上で、人、物、金等々が自由に行き来できる環境というものの中で考えていかないと、日本だけで考えていくと、なかなか話が込み入ってきつつあるのではないかという感じだけはしております。

山之内委員 ありがとうございます。

 やはり日本だけで考えるのではなくて、当然グローバルな中で、日本がどういった立ち位置で、ある意味どう稼いでいくかということも考えないといけないと思っております。その中で、今、日本は、経常収支が赤字ですね。こちらの「財政健全化に向けた基本的考え方」の中にもありますが、残念ながら、いわゆる双子の赤字というような状況になってきたと。今はどちらかというと所得収支の方が上がってきて、ある意味、もしかしたら稼ぐ力が弱くなってきているんじゃないかというようなものもあって、私としては、どんどん積極的に外需をとりに行くぐらいの稼ぐ力と同時に、所得収支だとかそういったものもあると。

 いずれにしろ、さまざまな原因があると思いますけれども、経常赤字を黒字に変えていかないといけないということは、皆さん共通の認識だと思っております。

 そんな中で、先ほど冒頭申し上げました、いわゆる外国人投資家が期待されているのが法人税の減税と特区、規制改革、それとGPIFの運用状況だと思いますけれども、その中で、特区ということです。

 先般報道でもありましたが、関東、関西、それから新潟は農業でしたか、福岡はいわゆる解雇規制特区といいますか、福岡市の方で特区が認定された。趣旨は、さまざまなベンチャー企業が日本一起業しやすい地域にするため、ある意味解雇特区、ある程度ベンチャー企業の方々がされる土壌をつくってあげる、その中で、法人実効税率も特区内において引き下げを検討しているというお話もお聞きしました。

 この福岡の特区について、法人税減税というのがあります。これについてどういった御認識があられるか、麻生大臣、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘のありました、これは主に福岡市ですが、国家戦略特区ということを言うときに、市長さんにも申し上げておりますけれども、これは、岩盤規制と言われるようなものを打ち砕いて改革をしますというようなきちんとした事業を出し切れるか、反対する団体は少なくともあなたを支援している団体ですよ、その票を全部捨てる覚悟をしてもらわないとなかなかできませんよ、その上でやり切るという覚悟をしてもらわないとなかなかできる話じゃないんですと。だから、歴代は皆できなかったんだから。

 そういった意味で、こういったことは、どういった具体的な事業計画を立てておられるのかというのをきっちり示してもらわないかぬということを、私どもとしては申し上げたところでもあります。

 しかし、いずれにしても、こういったようなことをやろうとしている方向は決して間違っている方向ではないのであって、今のままじゃじり貧になっていくんだったらここでという切り口としては正しいと私ども思っておりますので、できる限りこういった話に関しては応援をしてまいりたいと考えております。

山之内委員 時間が終了いたしました。

 いずれにしろ、日本のそういった諸課題、財政健全化、これのアイデアを出して、それから民間の方々もそうですけれども、財政健全化をしていくと同時に、やはり日本の経済も活性化していく。難しい道のりだと思いますけれども、このことを私も一国会議員として頑張ります。それから、引き続き、大臣におかれましてもそういった方向性で頑張っていただきたいと思いまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

林田委員長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日もよろしくお願いいたします。

 先週の調査、視察、私も大変有意義な機会を頂戴したというふうに思っております。その中で出てきた議論を、きょう、日銀あるいは政府の皆様方にお伺いさせていただきたいと思います。

 一問目、日本銀行さんにお伺いしたいと思うんですが、先週の議論でも、いつかはわからないけれども、いつか債券市場のショックが来るのではなかろうか、そういう議論がございました。当然、いつ起こるかというのは誰にもわからないわけでございますが、しかしながら、起こったときのインパクトはどのぐらい、防災じゃないですけれども、予測をしているのかということ。

 それからまた、そういったショック、ショックというのは、例えば同じ金利が一%、二%上がるといっても、急激に上がる、こういった分野の専門のお方の表現ですと、いわゆるジャンプ過程というものですね、こういったことが起こる、これがショックなわけですね。

 リスク管理を、例えば一九九八年のLTCMのショックだとか、あるいは直近ですとリーマン・ショックがございましたね、例えばLTCMのときも、統計的な手法を使って、バリュー・アット・リスクと呼ばれる手法でもって、これは物理学者、数学者を総動員して、大丈夫だと。しかも、あのファンドはそういう方々がやっていたファンドなわけですから。ブラック・ショールズの公式をやっていた方がたしかファンドマネジャーでいたんじゃないかと思う、違っていたら訂正いただきたいんですが。でも、LTCMショックというものが起きてしまったわけでございまして、それを反省したかと思えば、やはりまたリーマン・ショックというものが起きましたよということで、では、来るべき債券ショックにどういう対応を、人間は進歩したのかというところですね。

 インパクトをどのぐらいと見積もっているのか、それからリスク対応は進歩しているのか、二〇〇八年から今六年たちましたが、どうなのか、この二点をお伺いしたいと思います。

櫛田参考人 お答えいたします。

 日本銀行におきましては、年二回、金融システムレポートというレポートを公表いたしておりまして、そのもとで、銀行及び信用金庫の保有債券につきまして、今先生のおっしゃった、金利が急激に上昇した場合の時価の変動による損失額を試算いたしまして、公表いたしております。

 この試算によりますと、昨年十二月末時点の状況におきまして、仮に債券の全ての年限の金利が一律に一%上昇した場合、いわゆるパラレルシフトというふうに呼んでおりますけれども、その場合の債券の時価の損失額は、銀行及び信用金庫の合計で七・五兆円ということになります。また、長期ゾーン、十年物金利が一%上昇して、短期ゾーンの金利はそれに比べると余り上昇しないという、いわゆる利回り曲線がスティープな形状になる場合の金利ショックが生じた場合の損失額につきましては四・七兆円となる、こういった試算結果でございます。

 金融機関におきましては、こうした金利が急激に上昇した場合のリスク管理につきましては、みずからの自己資本の状況とかそういったものに照らしながら、金利が相応に上昇したとしても金融機関の経営に深刻な影響が生じないような、そういった金利リスクの運営を常日ごろ行っている、このように承知いたしております。

大熊委員 直近の十二月というのはそうだったということで、わかりました。

 ちなみに、これはもし具体的にデータがなければ後ほどでも結構なんですが、リーマン・ショックのとき、同じように多分こういったレポートを用意されていた、やっていたと思うんですね。リーマン・ショックのときの二〇〇八年九月の直近で出たものに対して、これは金利リスクだけじゃなかったですよね、株も下がる、不動産も下がる、いろいろなものが下がったわけなんですが、実際起こったことはどうだったか。この差について、できれば今、そうでなければ後ほどでも結構なんですが、たとえ日銀さんといえども実際に起こることが全て予測できるわけじゃないので、あのときどうであったかというのをちょっと教えていただけませんでしょうか。

櫛田参考人 お答えいたします。

 今、手元に資料がございませんので、詳細は後ほど資料を届けさせていただきたいというふうに思いますけれども、今申し上げました金利リスクの一定の試算、これは金利が急激に上昇した場合に起こる時価の変動ですから、これについては、それが過小なリスクの見積もりということはございません。

 ただ、今先生がおっしゃったような実際の金融ショックが生じるときというのは、金利リスクだけではなくて、信用リスクとかさまざまなリスクが相乗的に発生する状況でございますので、そうした状況に備えるという観点から申し上げれば、金利リスクのみに着目して銀行の経営状況の保全を図るというよりは、そうしたトータルな、さまざまなリスクに備えた銀行経営を図っていくことが重要だというふうに感じております。

 以上でございます。

大熊委員 最初の質問の後段のところに必ずしもお答えいただいていないんです。例えば、去年の十二月のレポートでもって、一%パラレルシフトした場合、それからスティープ化した場合という二通りお話があったわけなんですが、そういった事柄が、連続的にではなく、急激にというふうにはおっしゃっているんですが、いわゆるジャンプ過程が起きたときに一体どうなるのか。このときは単に金利がこう上がったから債券の価格がこうなりますじゃなくて、流動性の危機の問題が出てくるわけですね。売りたくても売れない。かつてのロシア国債ですかね。LTCM危機のときにありましたよね。

 流動性危機になってくると、それでジャンプ過程だから分析が難しいというふうに多分一般的にされているんだろうと思いますが、この辺のリスク分析というのはどういうふうになっているんでしょうか。

櫛田参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、実際の危機の過程におきましては、金利リスクのみならず、流動性の問題も含めて、さまざまな危機の様相がございます。こうした危機の場合においても、一定の金融システム面での安定が確保できるかどうか。これは日本銀行だけではございませんが、世界の中央銀行は、さまざまなリスクシナリオを想定いたしまして、経済メカニズム全体の中でリスクがどのように伝播するか、こういったこともできるだけ把握して、将来の危機の際の金融システムの対応力に備える、こういった観点から研究及び検討を進めている、こういう状況でございます。

 日本銀行においてもそうしたプロセスにございまして、先ほど御紹介しました金融システムレポートにおきましても、幾つかのマクロシナリオを想定しまして、計量モデルを駆使して、できるだけそうした実際の危機の様相に迫り、その場合の金融システムの状況はどうか、こういった検討を進めている、こういう状況でございます。

大熊委員 こればかりやっていると、ちょっと時間があれなので。

 ぜひ、よりストレスをかけたシナリオで、なおかつ、今般の異次元の金融緩和でもって債券そのものの流動性が一部難しくなっている部分もあるわけです、もともと平時でも、つまり今でも、今は改善されてきたかもしれませんが。もともとを言えば、日銀さんが買い支えることによって債券の流動性というのが失われている側面があるので、余計に難しくなっているわけですよ。

 二〇〇八年から二〇一四年の今日、六年間、リスク管理手法が進歩したとはいっても、問題設定自体がより難しくなっているわけですね、流動性の問題からして。だから、手法が進歩したとしても、対応しなきゃいけない事柄がより難しくなっているので、ぜひともその辺のところをしっかりと、専門家はたくさんいらっしゃると思うので、お願いしたいというふうに思います。

 次に行きたいと思いますので、日銀の理事の皆様方、これで結構でございます。

林田委員長 では、日銀関係の方、退席して結構です。

大熊委員 続きまして、これまでも出てまいりましたGPIFの運用について、私も注目をしているわけでございます。

 要は、なぜ今ポートの見直しなのかというそもそも論がちょっとまだ、報道ベースで幾つか聞いたりもしている、あるいはGPIFの皆様方もそれなりにコメントをいただくんですが、そもそもなぜ今なのか、去年ではなく、あるいは来年でもなく。実際にポートそのものが変わっていくというのは、秋だとか、以前の四月の大臣の御発言ですと六月からいろいろな動きが出てくるということもありましたが、これからなんですが、でも、見直しの検討というのが今されている。なぜ今なのかについて、そもそも論をちょっと御教示いただければと思います。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 年金積立金の管理運用につきましては、厚生年金保険法等によりまして、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたって、厚生年金保険事業等の運営の安定に資することを目的として行われるものでございます。

 この基本ポートフォリオと申しますものにつきましては、こういった規定に基づきまして、運用に特化した専門の法人でございますGPIFにおいて策定されることになっておりますけれども、基本的には、五年に一度の年金制度全体の財政検証に合わせて見直しをすることとしてございます。

 本年はその財政検証の年に当たっておりまして、その結果が出てまいりますれば、それを踏まえまして、資金の管理運用に関し、一般的に認められております専門的知見等に基づきまして、GPIFにおいて基本ポートフォリオの見直しが検討されるということでございます。

大熊委員 念のため確認なんですが、五年に一度の財政検証がある、そのタイミングなので見直す検討に入っている、こういうことでよろしいですね。

藤井政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

大熊委員 ところが、GPIFの皆様方から直接伺ったのは、私が質問したからなんですが、ポートの見直しは投資家のためにやる、投資家のためだけにやるとおっしゃったんですね。ということは、この五年に一度の財政検証の見直しは、全て投資家のため、まあほかのためもあるんでしょうが、投資家のため以外の部分はないんだということが前提になる話だ、理屈で考えますと。三年に一度でも毎年でもなく五年に一度というのは、どう金融環境が変わろうとも、常に投資家のためである、こういう論理的なことになりますよね、今の審議官のお話とGPIFの皆さんの話をつなげますと。

 つまり、金融環境が、先ほどのショックみたいな金融ショックが起こったときには機動的にこの財政検証を見直し、投資家のためにポートを見直すじゃないんですよ。リーマン・ショックが起ころうが、LTCMショックみたいなものが起ころうが何だろうが、五年に一遍なんです。そうですよね。違うんですか。機動的に見直すんですか、金融ショックがあった場合、この検証は。

藤井政府参考人 確かに、経済環境が変わりまして運用環境が大きく変わるような場面になってまいりますと、例えば昨年、二十五年の六月にポートフォリオを見直しておりますように、そういったことも考えられるところでございます。

 ただ、GPIFが現在あるいはこれから検討してまいります基本ポートフォリオの見直しと申しますのは、五年に一回の財政検証を踏まえたものになるというふうに考えております。

大熊委員 多少のアローアンスは、資産アロケーション分の幅がありますので、多少の幅の中で動かすことはもちろん可能なんですが、例えば、根底から、金融市場の何か大きな混乱があって、いい意味での混乱という部分も含めて、要は世界の資本市場が変わってしまうというような事態が起こったとしても、五年に一遍というのは守り切るんだ、五年に一遍は変えないんだ、こういうことでよろしいですか。

藤井政府参考人 先ほども申し上げましたように、経済環境、運用環境が大きく変わっていくような状況になりますれば、機動的な対応も必要であるというふうに考えております。

大熊委員 機動的な対応というのは、財政検証をそのとき対応してやり直すということも含めて検討できるという意味じゃないんですよね。そういう意味なんですか。

藤井政府参考人 財政検証そのものをやり直すということではございませんで、私が申し上げましたのは、経済環境、運用環境の変化に応じまして、必要な収益をできるだけ低いリスクで上げられるように、ポートフォリオ等運用のあり方を見直すということでございます。

大熊委員 アローアンスの範囲の中で、ごく部分的に見直すというふうな理解をいたしました。

 私の意見としては、こういったものをどうしてしゃくし定規に五年に一遍と金科玉条、憲法で決まっているわけでもあるまいし、昨今ですと、憲法で決まっているものも直せるんじゃないかという議論もございますので、そこは、投資家のためというふうに断言していらっしゃる現場の意見からすると、どうなのかなという疑問を申し上げます。

 続いて、関連でもあるんですが、では、そこで、わかりました、見直しますというのが今だと仮にした場合に、これは日本株をふやすという可能性があるやに報道等で、あるいは現場の皆様方のお話でもあったんですね。本当にふやすかどうかはあれですが、そういう検討をしていますよ、単位リスク当たりのリターンを最大化するんです、こういうお話だったんですが、そもそも、日本株をふやすといった場合に、日本企業は大丈夫か。

 これはあえて申し上げますが、次の質問にも関連するんですが、日本企業のガバナンスの問題を放置したまま日本株の資産アロケーションをふやしていくことにはならないか、今ふやすと、去年買った外人のヘッジファンドのエグジット先、格好の利益確定のお客さんにならないか、なるんじゃないかと思うんですが、この二点についてはどうでしょうか。

藤井政府参考人 先生御案内だとは存じますが、GPIFの基本ポートフォリオにおける各資産の構成割合につきましては、適切に分散投資を行ってまいります観点から、各資産ごとのリスク、リターンの見通しのみならず、資産と資産の間の相関係数等の要素を含めまして、今後、GPIFにおいて、年金財政全体を考えまして、最も適切な組み合わせが算出されるものというふうに理解をしております。

大熊委員 今、相関係数というキーワードが出てまいりました。こういった一種の統計的な数字といったものを見て使っていく前提というのは、ちゃんと企業開示が行われていて、要はガバナンスがしっかりしているということが大前提なんです。

 幾つか先の質問とも関係するんですけれども、最近でもユニチカという会社が、あるいはちょっと前だとオリンパスとか、東京電力もそうですね。こういった会社が、三時半に終わって、夕方ぐらいに、急に、債務超過になりました、こう開示をしてくるわけですね。そうすると、翌朝、株価が三〇%も下がって寄りつく。いまだに、こういう事態が日本企業の間では頻発をしているんじゃないかという認識を持っているんですね。

 そういった中で、単純に数字上、相関係数によって、まあ相関係数によってとお答えになられたのは、要するに私の通告がこう書いてあったからではないかと思うんです。日本株というのは外株に比べましてリターンが低くてリスクが高いという資料をGPIFからいただいていて、それで何で日本株をふやすんですかと。もう一回申しますと、株をふやすと仮定したとしても、外株の方がリスクが低くてリターンが高い、日本株の方がリスクが高くてリターンが低いというデータをGPIFからいただいています、その中で何で日本株をふやすんですかという質問通告をしたんですね。

 それに対する回答は、おっしゃるように、相関係数によっては、リスクが高くてリターンが低いものを入れても、ポート全体としてはパフォーマンスは上がり得るということも確かにある、それは御答弁されたとおりなんです。でも、そういったことというのは、ガバナンスがしっかりしている、つまり、翌朝目が覚めたら三〇%下から始まるみたいなことが起こらない市場で初めて成り立つんですが、そういったことが起こっている市場で何で日本株をふやすのか、教えていただきたいと思います。

藤井政府参考人 実際、見直し後にどのようなポートフォリオになるかというのは、先ほど申し上げたような、各資産のリスク、リターンの見通しでございますとか、あるいは相関係数等を踏まえ算出をしてまいるところでございますので、今後のことでございます。

 基本ポートフォリオを見直すに当たりまして勘案しておりますリスク、リターン、あるいは相関係数等々は、やはり当該資産全体としての数字を見通しつつ計算をしていくものでございますので、先生がおっしゃっています個別の銘柄についてどう対応するのかというところとはちょっと視点が違いまして、実際、GPIFは、株式投資につきましては、アクティブもパッシブもそうですが、全て委託をして運用してございますので、GPIFのポートフォリオの見直しにつきましては、あくまで先ほど申し上げたような計算をしてやっていくということでございます。

大熊委員 別に個別の銘柄の入れかえが云々という話をしているわけじゃなくて、市場全体として、ガバナンスの悪い市場に何で突っ込むのか、そういう質問をしているわけでございます。例えばということで、直近で出たからユニチカという例を挙げたのであって、その前にオリンパスとか東電とかいろいろありましたね、相変わらずですねということを申し上げて、そういった文脈の中でお伺いしたわけでございまして、個別の銘柄のことを伺ったわけじゃないんですね。

 それでは、これはまた引き続きさせていただくことにしまして、この関連でもあり、企業ガバナンスの関連なんですが、相変わらずそういうことで、今の例ですとユニチカですね。債務超過に急になりました、責任をとって社長は辞任しますといったらどうなるかというと、取締役相談役になる。つまり、取締役そのままなんですね。では、次の社長さんは誰かというと、取締役常務執行役員の方が社長になる。

 要するに、取締役会、政府でいえば内閣、総務大臣の方が総理大臣になって、総理大臣が何とか大臣になるみたいな人事、これで責任をとったかのようなこと、これは恐らく六月の末の一斉総会でもって承認されちゃうんじゃなかろうかというふうに懸念を持っています。

 つまり、誰も何も責任をとっていない。それで、いきなり債務超過になって、銀行から三百数十億ですか、もうちょっと違う金額かもしれませんが、第三者割り当てで資本増強しますと。でも、誰も何も責任をとっていない中でやるんだと。しかも、それが総会で通ってしまう。

 では、その総会というのは何なんだというと、これは株式持ち合いがあるからそういうことが起こるんだと思うんですね。先ほどから、前回からもずっと申し上げている。

 これはやはり日本企業のガバナンス構造、社外取締役を義務化とか複数、こういった方向も私は大事だと思うんですが、一方で、株式持ち合いの構造、御存じのとおり大分減ってきたんですよ、減っているとはいえ、でも、ここを、例えば具体的に言うと、持ち合い株については議決権を停止するとか、さっき申し上げたユニチカについて言うと、総会にかけたらそれは否決されて、外から社長を持ってきなさいよ、政権交代だよと。政治ですら政権交代が起こるわけですから、これは企業も政権交代だよと。

 日本企業というのは本当に、政権交代がめったに起こらない。こういう債務超過になった、株主の財産を全部食ってしまっても政権交代が起こらない。オリンパスの例で言うと、会社の不祥事を暴いても、自分が首になって終わりと。

 これを支えているのは株式持ち合いじゃないかと思うんですが、ここを何とかしていくという政策、方向性、考え方、方針、その他、何か一言でも大臣からいただければと思いますが、いかがでしょうか。

岡田副大臣 ユニチカの事例のように、社長が辞任後も会社に取締役として残ることについてどのように考えるかというお尋ねかと思いますが、個別の企業のガバナンスの状況について、その評価を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論として申し上げることについても、個別の具体的な状況により、さまざまに事情が異なり得ると考えられることから、一概にその是非を申し上げることも差し控えたいと思います。

 企業がコーポレートガバナンスの強化を図っていくことは、大変重要な課題だと認識をしております。

 以上です。

大熊委員 質問がたくさん残ってしまったんですが、終了ということなんです。

 やはりこういった問題にもっと方向性を出していかないと、相変わらず日本は企業ガバナンスが悪いままで、そこに年金のお金を突っ込んでいくと、本当に外人のエグジット先、利益確定先になるだけに終わると思いますので、そういったことを申し上げて終わりたいと思います。

 以上でございます。

林田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私も、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人、その資金運用に関連してお聞きしたいと思うんです。

 まず、前提としまして確認したいのは、ことしの株価動向であります。ことしの初めと直近の日経平均株価、この数字を示していただきたいと思います。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 日経平均株価の本年の終わり値での最高値は、今先生がおっしゃいました年初にございまして、一月八日、一万六千百二十一円でございます。直近の値につきましては、昨日の終わり値で、一万四千九百三十五円となっております。

佐々木(憲)委員 ことしに入って株価がじわじわと下がってきているわけであります。

 なぜこうなったのかという点ですけれども、一昨年末からの株高というのは外国人投資家によってつくられていて、当初は買い越しになっていたんだけれども、昨年半ばぐらいからは売り越しになっている。

 先日の当委員会の視察で、野村証券でお話をお聞きしますと、ヘッジファンドというのはさっと来てさっと帰っていく、こう言っていたのが大変印象的でありました。

 大臣の認識をお聞きしたいんですが、外国人投資家、とりわけヘッジファンドの売買が、この間、株価に大きな影響を与える要因となったのではないかと思いますけれども、どのように把握しておられますか。

麻生国務大臣 これは、佐々木先生、株価が、昨年一万六千円が、きょう、前場で一万五千円に行きましたかね、一万五千円ちょっとぐらいになっていると思いますが、この株価の指数について、これは、昨年一年間で大幅に株が上昇したことに対して調整が起きているんだという意見とか、また、第三の矢というようなものの内容が出るまで手控えているとか、いろいろな話を皆さんがしておられますので、これはどういうもので動くかよくわかりませんし、また、金融担当大臣やら何やらやっていると、こういったものにうかつに言うと話がまた込み入ってきますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにしても、こういった株というものは、日本の企業の内容がやはりきちっと、デフレから脱却してインフレ傾向になり、企業の内容がしっかりしてきた等々してこないと、これは思惑だけで動かれたのでは話になりませんので、会社の実体がそれに伴っていないと安定したものにならぬ、そう思っております。

佐々木(憲)委員 直接お答えにならなかったんですけれども、確かに、株価は、実体経済がどうなるか、これによって最終的に決まると言っていいと思うんですね。

 この間の、ことしに入ってからの株価低迷の背景にあるのは、考えてみると、四月から消費税の増税があった、あるいは年金が給付が下がったとか、そういうような要因によって家計消費が四月以降大幅に減っております。内需がどうなるか、これが非常に不安定要因として、あるいは将来見通しを暗くしているということで、それを反映しているのではないかと私は思うんです。そういう状況で株価そのものを無理やり外側からいろいろな形で引き上げようとしても、これは一時的な株価操作であって、これはもとに戻ってしまう、そういうものであると思うんです。

 麻生大臣は、四月十六日の当委員会で、GPIFの動きが六月以降出てくる、そうした動きが出てくるとはっきりすれば外国人投資家が動く可能性が高くなる、こう答弁されたわけであります。

 先日の視察でGPIFにも行ったんですけれども、厚生年金と国民年金の積立金約百三十兆円を有する世界一の公的な年金資金運用機関であります。

 六月以降出てくる動き、この意味をちょっと説明していただきたいと思います。

麻生国務大臣 GPIFについては、先ほども御質問があっておりましたが、昨年の成長戦略を受けましてことしの一月に閣議決定をされております実行計画において、財政検証の結果を踏まえた新しい基本ポートフォリオを決定するなど、所要の積極的な対応を行うと規定をされております。

 したがって、これを踏まえて、今月中に行われる予定の成長戦略の改訂版の策定等々を初めとして、私どもとしては、種々の作業の中でGPIFの資産の運用のあり方についても議論されるものだ、そういうふうに考えておりますので、御指摘の発言はそのような意味で申し上げたというふうに御理解いただければと存じます。

佐々木(憲)委員 出てくる、こういうことは、株価に関連して言うと、株式にGPIFの資金が出てくる、そういう意味だろうと思うんですね。それが果たして国民にとってプラスなのかどうか、こういう問題になると思うんです。

 まず、基礎的なことですけれども、厚労省に確認したいのは、二〇一〇年の十二月に出されたGPIFの運営のあり方に関する検討会報告というのがありますね。そこでこのように書いているわけです。「年金積立金の原資となる保険料は投資を目的として徴収されたものではなく、年金積立金は老後の給付に充てるために一時的に国が預かっているものであることから、安全運用が基本である。また、運用目標を大幅に下回った場合には、国民の負担増加に直結する重い問題である」そういうふうに書かれているわけです。これは間違いありませんね。

藤井政府参考人 御指摘の、平成二十二年の十二月二十二日に取りまとめられました、年金積立金管理運用独立行政法人、すなわちGPIFのことでございますが、これの今後の運営のあり方に関する検討会の報告書におきましては、さまざまな御意見が報告をされてございますが、その中の一つとして、議員御指摘の御意見も記載されているものと承知をしております。

佐々木(憲)委員 これまで政府も、国民の財産である、したがって運用は安全確実に、こういうことを言われてきたと思います。ところが、安倍総理が最近、運用対象の多様化について検討していく必要がある、こういうふうにおっしゃっているわけですね。

 国民の財産の安全確実な運用を行って国民に損害を与えてはならないというのが基本だと思うんですが、それを多様化というようなことになっていきますと、これは今までの基本原則とまた違ってくるのではないかと思いますが、そういう方向転換ということを政府として考えているのかどうか、麻生大臣に確認をしたいと思います。

麻生国務大臣 今のお話ですけれども、まず一番大事なところは、先ほどGPIFの話に出ていましたけれども、これは佐々木先生も御存じのように、加入している人たちの安全と、それに対する利益が少しでも多く確実になるように運用しているのであって、先ほどの答弁と、少し私の意見が違うのかもしれませんけれども、何となく、少し一番肝心なところが忘れられた話になっているような気がして聞いておりました。

 いずれにしても、これは専ら被保険者の利益のために行うということになっているはずですから、したがって、資金の運用というのは、これは株価維持を目的とするものではないということははっきりしておる、私もそう思っております。

 したがいまして、私どもとして注意しておかないけませんのは、一昨年の四月―九月でしたか、上半期のところは、たしかあれは一・五兆円ぐらいのマイナスになったんだと思いますが、年金というのは極めて運用がうまくいっていなかったと思いますが、それが、一昨年の十月からことしの三月ぐらいまで約十八カ月の間に約二十数兆円の黒字になっておるということは、どうしてそんなことになったんだといえば、これは失礼ですけれども、厚生省の年金運用課長がそんな有能なやつが来たなんて話は考えられませんから、常識的には、単に株価が上がって、持っている株の価値が上がったから運用資金の額がふえたというだけの話なんだと思っております。これは、うかつにそういった才能のある人が出る方がむしろ危ないので、確実に運用させておくというのは大事なところで、それをどの程度の確実なものにするかというところが意見の分かれるところかなとは思います。

 いずれにしても、一番肝心なところは、加入者、そういった方々の持っておられる資産、そういったものが確実に保証されていくというのが一番肝心なところだと思います。

佐々木(憲)委員 株への依存度が高まるということがいいことか悪いことかというのは見解が分かれるところだと思いますね。

 株に余りにも、年金基金百二十九兆という膨大な資金をそちらにシフトすることによって一時的に株価が上がるかもしれないけれども、しかし下がる場合もありますから、下がって大変な穴をあけた、今おっしゃった、そういう時期もあったわけですね。まだ取り戻していないんですよ、全部。そういうようなことを考えると、これは果たして正しいやり方なのかどうか、根本的にここは考えなければいけないと思います。

 そういう点でいうと、昨年十一月に有識者会議の報告書というのが出されまして、これは、いわば安倍政権の、アベノミクスの一環としてこの運用を考えていく、そういう立場で報告書が書かれているわけです。果たしてそれがいいのかどうかですね。今、安全確実にということで、国民の財産を毀損してはならない、これがやはり大事な点だと思うんですよ。それが、今回の有識者会議の報告書を見ますと、どうも、株式の方にずっと力点を置いて、軸足をそっちへ持っていこう、こういう報告書になっている。

 そもそも、この報告書を見ますと、外国でもやっているんだというような表がありますね。ところが、本当にそうなのかという点なんです。

 例えば、ノルウェーの政府年金基金グローバル、GPFGというのがその表に載っております。これは、年金という名前がついていますけれども、そもそも年金制度と直接関係がなくて、産油国ノルウェーの固有な財政システムの一環ではないか、こう言われているわけですね。それから、アメリカのカリフォルニア州職員退職制度、カルパースと言われるものですけれども、それとオランダ公務員総合年金基金、ABPは、いわば上乗せ部分の年金なんであります。

 したがって、例として挙げられているこれらは、いずれも、運用した結果が公的年金の給付水準に直接影響を及ぼすことにはならない仕掛けになっている、そういう制度だと思いますけれども、確認をしておきたいと思います、内閣府に。

赤石政府参考人 お答えさせていただきます。

 お尋ねの有識者会議、これは資産運用の観点から、海外の年金基金の運用等について検討を行ったものでございまして、それぞれの国の年金制度自体について調査を行ったものではございません。

 ただ、そうした中で、一般論として申し上げますと、御指摘のノルウェーの政府年金基金グローバルは、石油価格が下落した場合あるいはノルウェー経済が収縮した場合に、財政政策を調整する余地を残すために、政府の石油・ガス事業からの収入を積み立てている基金であると理解しておりまして、専ら年金給付のための運用をされているものではございませんが、将来の年金支出へ備えることも運用目的の一つに含まれているというふうに理解してございます。

 それから、もう二つ御指摘がございました、カリフォルニアのカルパース、それからオランダ政府のABP、これらにつきましては、カリフォルニアであれば、州政府の職員を対象として積立金を運用する年金基金でありまして、おっしゃるとおり、全国民を対象とした基礎的な年金部分に当たる社会保障信託基金の給付に上乗せする形のものでございまして、ABPも似たような仕組みのものである、そのように理解してございます。

佐々木(憲)委員 ですから、年金水準に直接影響を及ぼすような運用はしていないわけなんですね。

 それから、カナダの年金プラン投資理事会、CPPIBというんですか、それとスウェーデンの国民年金、APファンド、この二つの基金は公的年金積立金の運用機関ではありますが、日本と違うのが、いずれの国も、一階と二階で構成される公的年金制度のうちの二階部分の積立金の運用なんですね。ですから、最低保障機能を担う一階部分には影響を与えない、そういう仕掛けになっていると思いますが、確認をしておきたいと思います。

赤石政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のカナダのCPPIBは、御指摘のとおり、基礎的な年金部分に当たる老齢所得保障に上乗せする形で給付を行う報酬比例年金部分の積立金を運用する年金基金でございまして、スウェーデンのAP基金も報酬比例年金の積立金を運用する年金基金でございます。

 したがいまして、カナダのCPPIBにつきましては、基礎的な年金部分に当たる年金基金とは別に運営されているほか、スウェーデンにつきましても、所得比例年金による給付が一定水準に満たない者に国庫負担で一定額の年金給付を保障する仕組みでございまして、いずれの場合も、運用状況が基礎的な年金部分あるいは最低保障部分の給付の水準に直接の影響を与えるものではない、そのように理解してございます。

佐々木(憲)委員 アメリカの公的年金基金、OASDIは全額非市場性国債で保有している、これはもう公知の事実であります。

 このように考えますと、日本のGPIFの積立金の運用の仕方というのは、国際的に言って極めて特異といいますか、全財産を丸々運用する、その運用の仕方も丸々株式等々にポートフォリオを振り分けていく、こういうやり方をしているわけなんです。したがって、毀損をしたら、年金の基礎的な部分も全部影響される、年金の給付水準に影響が出てくる、こういう問題を発生するわけです。

 これは、やはり制度としても私たちはよく見きわめておかないと、ほかの国も株で運用しているからいいんだ、日本でもやろうじゃないか、これは仕掛けが全然違うわけです。ほかの国の場合は、基礎年金、基礎的なところに影響は及ばないような、そういう運用をやっているわけですね。しかも、損失が出た場合に、スウェーデンの場合とかカナダの場合は即座に処理する仕組みが備わっているということであります。

 そういうふうに考えていきますと、私は、今のGPIFの基本ポートフォリオの仕掛けを変更して株式の方に軸足を移していくということは、麻生大臣が言われたように国民の財産そのものを預かっているわけですから、それを毀損するようなことにつながる、非常にそういう危険性をふやすということになるわけでありまして、我々は到底これを認めるわけにはいかないわけです。

 そこで、今度は、今回、人事で、その運用のための体制を変えていますね。それはどういうものかというと、運用委員会、これは四月にほぼ総入れかえになっているわけですけれども、この運用委員会のメンバーがどうかわったか、説明をしていただきたいんです。

 新しいメンバーの中で、金融機関の出身者は何人いるのか、また、有識者会議のメンバーだったのは何人なのか、お答えいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 GPIFの運用委員につきましては、十名中九名の方の任期満了に伴いまして、四月二十二日付で七名の方を任命したところでございまして、現在八名というふうになってございます。

 現委員、その八名のうちでございますが、内閣官房の有識者会議の委員であった方が三名いらっしゃいまして、また、先生お尋ねの、これは各委員から提出をされました略歴等によればでございますが、民間金融機関に在籍したことがある方は三名というふうになってございます。

佐々木(憲)委員 今、報告がありましたように、八名中、株式で運用すべきだという報告書を出した有識者会議のメンバーが三名、それから、運用によって利益を上げるという現場に近いところにいた方が三名。これは、今までの構成とはがらりと変わっているんですよ。これは、余りにも株式投資に軸足を移している人事だと言わざるを得ない。安倍内閣の人事がいろいろ言われておりますけれども、こういうところにもそれがあらわれていると言わざるを得ないですね。私は、年金の加入者、国民から見て、これでは余りにも危ないなと言わざるを得ないですよ。

 政府全体の方針が多様化という方向。ポートフォリオを今回見直して株式に軸足を移す。しかも、日本の年金は丸々、その財源として活用されていく。外国と比べても全く危ない橋を渡ろうとしているわけです。しかも、それを運用していくことを決めていく人事が、株式運用の方に軸足を移すという発言をされている方、そういう考えの方が多数を占めるような状況になっている。

 私は、こういうやり方というのは余りにも危ない橋を渡ることであって、こんなやり方はやめるべきだということを申し上げたいというふうに思います。

 時間がもうちょっとありますので、最後に大臣の見解をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 これは厚生省所管の話なんですが、このGPIFの改革については、ことしの一月に閣議決定がされております産業競争力の強化に関する実行計画の中にあったと思いますが、デフレ脱却を見据えた資産運用の見直し、現在のポートフォリオの見直し等々を含め、リスク管理体制のガバナンスの見直しなど、これは合議制の体制とか専門人材の確保などなど、いろいろと書かれているところなんですが、有識者会議の提言というのが出されておりますので、私どもとしては、長期的な健全性というものに十分に留意しつつ、引き続き、専門家を中心にしっかりとした検討が進められていくことを期待いたしております。

佐々木(憲)委員 私はこういうやり方は非常に危ないと思っておりまして、また、手数料ももっと上げなさい、そういう報告書も出ているんですね。これでは国民の財産を食い物にするようなもので、ばくちに財産を使っちゃいけない、ちょっと言い方がどうかは別として、そういうふうに思いますので、再検討していただきたい。

 以上で終わります。

林田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党、鈴木でございます。

 私は、最初に、黒田総裁に二、三お尋ねをしてまいりたい、このように思っております。

 日銀は二%の物価安定目標の実現に向けて今いろいろと御尽力をいただいておるわけでありますが、先ほど小林委員の質問に対しても総裁はお答えになりました、四月三十日の展望レポートに対しての質問で、消費税率の引き上げの直接的な影響を除く数値としてではあるけれども、しばらくの間一%の前半で推移した後、二〇一五年度中には二%に達する可能性が高いというような御見解を示されておるわけであります。

 私は何がここでお伺いしたいかということですけれども、現在の物価上昇に対する日銀の見方、これを改めて総裁にお伺いをしていきたいというふうに思うんですね。

 私はこれまで、今のいわゆる物価上昇の主な原因というのは円安だ、この円安によって非常に多くの中小零細企業が苦しんでいるということをずっと申し上げてまいりました。先週末に発表された四月の消費者物価指数は、先ほどの消費税増税分を除いても前月より上昇して、今後、原材料価格の上昇を受けて、例えば粉ミルクやティッシュなどの日用品の値上げの動きが見込まれている、こういうことが言われておるわけです。

 そんな中で、実は岩田副総裁が五月二十六日の講演で、「「量的・質的金融緩和」以降のインフレ率の上昇は、実質GDPの拡大と雇用の改善を伴うディマンド・プル型だ」こういうふうにおっしゃったわけであります。しかし、本当にそういうことが言い切れるかどうかということであります。

 私は、先ほど言ったように、異次元緩和による物価上昇というのは、円安による輸入物価の上昇というのが非常に大きな影響を与えているというふうに思うんですが、副総裁は、そうではない、それには依存していない、こういう意味合いのことをおっしゃったわけであります。私は、冒頭申し上げましたように、中小零細企業の状況や国民生活への影響、そういうものをある意味では軽視した発言ではないのかな、このように思っておるわけであります。

 もちろん、総裁自身の御発言ではありません、岩田副総裁の発言ではありますけれども、ぜひ、副総裁の発言に対して総裁はどのような御認識であられるのかということをまずお伺いすると同時に、異次元緩和のもとで円安が物価に与えた影響について日銀としてそもそもどう分析をされておるのか、この二点について総裁のお考えを聞かせていただきたいと思います。

黒田参考人 岩田副総裁の発言について詳細にコメントする立場にはありませんけれども、基本的に、最近の物価上昇の要因について、いわば理論的に整理したものではないかと思います。

 すなわち、専ら円安による輸入物価の上昇を背景としたコストプッシュ型インフレであれば、実質GDPは減少し、失業率も上昇するはずだけれども、実際には実質GDPと失業率の改善を伴った物価上昇であるため、ディマンドプル型と整理できるのではないかというふうに述べたのではないかと理解しております。

 ただ、この点については、委員御指摘のとおり、コストプッシュ型かディマンドプル型かということについては、いろいろな議論もあるところでございます。

 実際の物価動向を見てみますと、量的・質的金融緩和のもとで、消費者物価、除く生鮮食品の前年比がプラス幅を拡大しておりまして、御指摘のように、この四月には消費税の直接的な影響を除くベースでプラス一・五となっているわけであります。

 こうした物価上昇率の高まりの背景として、為替円安を受けたエネルギーを中心とする輸入物価の押し上げが影響していることは事実でございますけれども、より基調的な要因として、第一に、雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで労働需給が逼迫してきているということや、第二に、中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金、物価形成に影響を与え始めているということの影響も大きいのではないかと思っております。

 御指摘の輸入物価の上昇が中小企業等に対して与えている影響については、十分考慮していく必要があるとは思いますけれども、全体として、コストプッシュ型あるいは円安による輸入物価の上昇だけで物価が上昇しているわけではなくて、内需を中心とした国内の需要の増加というものも寄与して、しかも、それが今後さらに強くなっていって物価が徐々に上昇していき、二〇一五年度を中心とした期間に二%の物価安定目標に達するのではないかというふうに見ているわけでございます。

鈴木(克)委員 今、総裁は、中小企業や国民への影響を考慮する必要がある、こういう意味合いのことをおっしゃいました。ある意味では私もそのとおりだというふうに申し上げたいわけであります。

 いずれにしましても、中小零細企業や国民の生活への影響がやはり明らかにあるわけですよね。ここを、そうではないと言い切らないまでも、いわゆるディマンドプル型であるというふうにぱんと言い切ってしまうところに、今までの論理を整理されたということはわからないではないんですけれども、しかし、それではやはり済まないというところが、国民生活の、そしてまた中小零細企業の置かれている、大変つらい、消費税のアップも受けながらやっているところだということを、ぜひ私は、総裁にもさらに御理解いただきたいし、そういう思いを常に忘れずに金融政策をやっていっていただきたい、このことをお願いしたいというふうに思っています。

 それから、またかというふうに言われるかもしれませんが、出口の話をさせていただくんです。物価上昇に伴って長期金利がいわゆる急騰していくリスクがあるというふうに私は思っていまして、重ねてここのところを伺ってまいりたいというふうに思います。

 私の懸念を言うまでもなく、物価安定の目標の達成、そしてまた、もしくはそれに近づいたときに長期金利がいわゆる高騰する、急騰する可能性といいますか危険性といいますか、それが間違いなくあるというふうに私は思っておるわけですね。

 日銀のシナリオどおり物価が上昇していくならば、日銀が異次元緩和の縮小、すなわち出口に向かっていくのではないかとして、大口保有者が国債の売りに回るというようなことで、長期金利が急騰する可能性が非常に高まる、こういうことを私は申し上げたいわけであります。

 現在は、異次元緩和によって利回りは低く保たれております。それから、金融機関同士での取引が減った結果、いわゆる国債市場の流動性が低下をしておる、これは事実だと思います。このような現状は、異次元緩和が市場にある種のゆがみを生じさせているということではないのかなというふうに私は思うわけです。そして、このような状態は、長期金利が乱高下しやすい、そういう大変危険な状況にあるのではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。

 この点も踏まえて、物価上昇に伴う長期金利急騰のリスクについて、総裁とそれから大臣の御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

黒田参考人 一般的に、名目の長期金利というものは、先行きの経済・物価情勢に関する見通しと、国債保有に伴うリスクプレミアムが組み合わさって金利が形成されているというふうに考えられます。したがいまして、御指摘のとおり、経済・物価情勢の改善に伴って長期金利には上昇圧力が加わってくるということは事実だと思います。

 ただ一方で、日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続するということをはっきり明言しておりまして、それに基づいて巨額の国債買い入れを行っている結果、金利上昇をいわば抑制しているわけでございます。

 これを不自然と見るかどうかということですが、金融政策自体が、経済の動向に合わせて適切な金融状況あるいは金利状況を実現するということを目指しているわけでございまして、現時点では景気は回復しておりますけれども、二%の物価安定目標への道筋のまだ道半ばというところでございますので、当然、現在の量的・質的金融緩和を継続するということでありまして、その結果、金利上昇は抑制されているということだと思います。

 それでは、先行き、長期金利がどうなっていくかということであります。

 これは、一方で、経済・物価情勢についての市場関係者の見通し、それから、そのもとでの金融政策の運営のあり方に依存いたしますので、具体的な水準について今から申し上げることは適当でないと思いますが、国債市場の流動性その他の問題につきましては、私どもも常に配意しておりまして、タイムリーでないような金利の上昇とか、あるいは変動とか、そういったものに対しては、そういうことが起こらないように十全の措置を講じ、また、常に金融資本市場の動向を注視しつつ、市場関係者との対話も重ねて、適切な金融政策運営に努めてまいりたいというふうに思っております。

麻生国務大臣 これは鈴木先生も御存じのとおりに、金利ばかりは、内外の経済情勢とか、また財政状況など、さまざまな要因によって決められますので、金融政策とか物価上昇率だけで、その関係だけで一律に論ずるということは困難だというのは十分御存じの上だと思います。

 そのことを申し上げた上で、きょう、また下がって〇・五八ぐらいになっていますか、仮に金利が急上昇するということがあれば、これは国債の利払い費が増加することにもなりますし、財政収支が当然のこと悪化する、また、企業側からいえば、企業の資金の調達というものを妨げることにもなりますし、景気回復に足かせになる、そういったようないろいろな状況が出てくることははっきりしておると思います。

 したがいまして、政府としては、今後とも、国債というものが安定的に消化されていくようなことを確保するとともに、国債の管理政策というものに努めていかねばならぬのは当然のことですが、中長期的には、いわゆる持続可能な財政構造というものを確立して市場の信認というものを得るためには、今言われております中期財政計画等々に沿って、財政健全化の取り組みというものに関しましては、引き続き着実に進めていかなければならぬというのは当然のことと思います。

 また、今、日本銀行からお話があっておりましたように、日銀としても、経済や物価情勢につきましては、上振れも下振れも含めまして、上下双方向のリスク要因というものを点検して、必要な調整というものを行おうとしておられるのは十分承知をしておりますので、当然のこととして、市場とのコミュニケーションというものを図りながら、適切な対応をとっていかれるということであろうと期待をいたしております。

鈴木(克)委員 総裁は、安定的な二%の時点まで現在のあれを続けていくということをおっしゃいました。タイムリーでない金利上昇や変動があれば、それに対しては対処していかなければならない、こういう御趣旨だったと思います。それから、財務大臣は、中長期的な財政健全化ということをきちっとやっていかない限り、そういう可能性が出てくる、金利が急上昇するような可能性が出てくる、その弊害は非常に大きいものがあると。こういうお二方のお話だったというふうに理解をします。

 そこで、だからこそ、私は、やはり早い段階で出口戦略というものを表明するというのか、考えていく必要があるのではないのかなということを申し上げたいわけであります。

 展望レポートにも明記をされましたように、設備投資や個人消費、物価等について、ある意味では堅調に推移をしておるということであります。

 しかし、私は、それをそのとおりというふうにはなかなか見れないわけです。本当にそうであるならば、順調であるならば、私は、やはり出口戦略をある程度明らかにされてもいいんじゃないのかというふうに思うわけでありますが、かたくなに出口戦略をおっしゃらないというのは、逆に言えば、まだ今そういう状況に至っていない、非常に先行きに問題があるというふうに、大変うがって見ていきたくなるわけであります。なぜここまで出口戦略をおっしゃらずに来ておるのかということです。

 ちなみに、FRBは、昨年の十二月に御案内のように出口戦略を表明して、本年の一月から徐々に量的緩和縮小ということで動き出しております。これは、やはりある意味では、先の景気に対して自信があるからそういうことができるということだと思うんですね。

 我が国が、総裁がどうしても出口戦略をおっしゃらないということは、そういう意味ではまだまだ非常に大きなリスクがあるというふうに私はとるわけでありますが、そのとり方がそれでいいのかどうか。くどくなりますけれども、出口戦略をどの時点でおっしゃっていくのか、そしてまた、その時期は、時期尚早ではないという時期はいつになっていくというふうにお考えなのか、ぜひひとつ具体的にお教えをいただきたい、このように思います。

黒田参考人 確かに、これまでのところ、我が国経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋を順調にたどっておるわけでありますけれども、まだ二%への道筋はなお道半ばであるわけでございます。したがいまして、量的・質的金融緩和は二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するということを、昨年の四月に量的・質的金融緩和を導入したときから一貫して申し上げているわけでございます。

 FRBの政策との関連というか、対照に触れられたわけでございますが、御承知のとおり、米国の場合は、物価安定目標自体については比較的安定的に達成をされておりまして、特に物価上昇期待は二%近傍で非常に安定的にいわゆるアンカーされている状況にあるわけでございます。他方で、日本の場合は、十五年続いたデフレのもとで物価上昇期待自身も非常に低いところでアンカーされていたわけでございまして、実際の物価上昇率自体も、そして物価上昇期待も二%に向けて引き上げていくという過程にあるわけでございまして、まさに道半ばであるということが適切な表現であろうと思っております。

 もとより、先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標の達成は十分可能であるというふうに思っておりますけれども、今後とも上下双方向のリスクが残っていることは事実でございますので、その時々の金融経済情勢を点検して、必要があればちゅうちょなく調整するという考え方も変わりはございません。

 そうしたもとで、先行きの政策運営につきましては、その時々の経済・物価情勢や市場の状況に応じて適切な情報発信を適切なタイミングで行っていく必要があろうというふうに思っておりますので、委員御指摘の点は十分理解しつつ、今後、適切なタイミングで適切な情報発信を行ってまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 適切なタイミングで、適切な時期に、こういうことをおっしゃり続けているわけですよね。私は、具体的に、総裁がどの辺でというふうな自信を持っておみえになるのか、そこが聞きたかったわけでありますが、今回も、残念ながらそれはお聞きすることができなかったということであります。

 最後の質問になると思うんですが、私は、日銀がここまで出口戦略に言及しない理由は、今国会、最初の大臣所信に対する質疑でも申し上げたんですけれども、この異次元緩和には出口というのはないんじゃないか、こういうことを申し上げたわけであります。そうでないということであるならば、やはりいつごろということはある程度明確にされる必要があるんじゃないかなというふうに思います。順調にいっているよ、しかし、いつになるかわからないよ、ずっとこの繰り返しで、私も出口戦略を何回ぐらいこの委員会で総裁にお伺いしたか、大臣にお伺いしたかちょっとわかりませんけれども、ぜひひとつお願いをしたいというふうに思うんですね。

 問題は、一つ違った視点で御指摘したいんですが、現在のようなインフレ下での低金利が続くと、国民の資産が目減りをするということであります。長期にわたる低金利政策で、国民が金利収入の機会を喪失してきた、逸失してきたというのは事実だというふうに思うんですね。これは、やはりある意味では、国民の側にとってみれば非常に大きな問題であるわけです。

 したがって、そういう意味でもう一度総裁に御答弁をいただいて、私の質問を終わりたい、このように思います。

黒田参考人 具体的には、一九九〇年代の終わりごろ、九八年ころからデフレに陥り、それがずっと十五年ぐらい続いてきたわけでございます。そのもとで、金利が非常に低下し、名目金利が、短期でいいますとゼロに近いところでずっと来たということであります。

 そのもとでは、当然のことながら、預金金利であるとか国債金利も比較的低いところで推移してきたということはそのとおりでありますが、さまざまな資産選択の中では、むしろ、そういった固定金利の資産の実質的なリターンは高くなり、株式等のリターンが低くなっていたわけでございまして、一概に、デフレのもとで貯蓄者が非常に損を受けたということは言えないのではないか。

 むしろ、問題は、デフレのもとで、投資が行われない、あるいは賃金の引き上げが行われない、イノベーションが行われないということで経済が低迷するということが一番大きな問題だったと思いますので、そういったデフレから脱却し、安定的な成長を続けられるようにするということが、やはり経済政策の大きな課題であったと思います。

 日本銀行としては、何としてもデフレから脱却し、そして二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということが最大の使命でありますので、それに向けて最大限の努力を払っており、その実現に対しては責任を持って対処しなければならないというふうに思っております。

鈴木(克)委員 終わります。

林田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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