衆議院

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第3号 平成27年3月10日(火曜日)

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平成二十七年三月十日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 古川 禎久君

   理事 神田 憲次君 理事 土屋 正忠君

   理事 藤井比早之君 理事 御法川信英君

   理事 山田 美樹君 理事 鈴木 克昌君

   理事 丸山 穂高君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      國場幸之助君    柴山 昌彦君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      津島  淳君    中山 展宏君

      根本 幸典君    福田 達夫君

      藤丸  敏君    牧島かれん君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    大島  敦君

      玄葉光一郎君    小宮山泰子君

      古川 元久君    鷲尾英一郎君

      吉田 豊史君    岡本 三成君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    小泉 龍司君

    …………………………………

   議員           古川 元久君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   復興副大臣        浜田 昌良君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   財務副大臣        菅原 一秀君

   内閣府大臣政務官     越智 隆雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  金崎健太郎君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室次長)           若井 英二君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三井 秀範君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 亀水  晋君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (国税庁次長)      佐川 宣寿君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           福本 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山崎 伸彦君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            佐藤 悦緒君

   財務金融委員会専門員   関根  弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     大隈 和英君

  國場幸之助君     石川 昭政君

  田野瀬太道君     助田 重義君

  務台 俊介君     青山 周平君

  玄葉光一郎君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     大岡 敏孝君

  石川 昭政君     國場幸之助君

  大隈 和英君     井上 貴博君

  助田 重義君     田野瀬太道君

  小宮山泰子君     玄葉光一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     務台 俊介君

    ―――――――――――――

三月十日

 関税法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)

 格差是正及び経済成長のために講ずべき税制上の措置等に関する法律案(古川元久君外三名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

古川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及び古川元久君外三名提出、格差是正及び経済成長のために講ずべき税制上の措置等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官金崎健太郎君、内閣府地方創生推進室次長若井英二君、金融庁総務企画局総括審議官三井秀範君、総務省大臣官房審議官亀水晋君、財務省主税局長佐藤慎一君、国税庁次長佐川宣寿君、厚生労働省大臣官房審議官福本浩樹君、大臣官房審議官山崎伸彦君、中小企業庁事業環境部長佐藤悦緒君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 前回に引き続きまして、きょうは八十分という時間をいただいておりますので、じっくりと討論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いたします。

 先般、大臣の所信に関連をいたしまして質問をいたしましたが、それにさらに深掘りする形でまずは質問をしてまいりたいというふうに思っております。

 一つは、今回、法人実効税率引き下げに当たって課税ベースを広げていくというところの観点から、繰欠の控除の制度につきまして幾つか例外を設けておられるところがございます。

 先般も質問をいたしましたとおり、基本的には、所得の平準化の中で、納める税金を調整していくということが継続企業の前提としては求められているところでございますが、政治的にそれを幾つか区分をしているわけでございます。

 その区分をしている一つといたしまして、今回は、再建中の法人につきましては所得の全額を繰欠の控除として認めていくということでございました。ですから、限度額を一〇〇%ということでございます。ただし、再建中の法人の中で、新規上場になる場合につきましてはその適用を除外する、そういうたてつけになっております。

 これにつきましては、過去も、私もこの委員会で質問をいたしました。繰欠の制度につきましては、もう少し柔軟性を持って検討の見直しをした方がよろしかろうということを去年質問申し上げまして、党内からもいろいろな声をいただきまして苦い思いもしたところでございますが、そういう意味では、柔軟に制度設計をしておられるのかなと思っております。

 ただ、新規上場につきましてということになった場合は、逆に経営に対して予断を与えることにならないかということが私は論点としてあると思います。この点、どうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 いろいろ海外からも、このことに関しましては、延ばせ、縮めろ、やめろ、比率を変えろと、まあ大変でした。いろいろ御意見があったのは、御想像のとおりです。

 二十七年度の税制改正において欠損金の繰越控除の見直しということをさせていただいているんですが、大法人向けの繰り越し限度につきましては、現行の所得の八〇%から段階的に引き下げて、五〇%まで引き下げることといたしております。

 他方、新設の法人につきましては、御存じのように、創業段階というのはどうしてもなかなか利益というのが出てきませんので、欠損金を抱えやすいというところから、一定の配慮というものが必要だなと。創業しろ創業しろ、起業しろといって勧めながら、そこのところから取っていくのでは話になりませんから。そういった意味で一定の配慮が必要。

 また、再建中の法人というのがありまして、これは再建のプロセスへの影響も間違いなく出てきますので、そういったところから、これらの法人については、特例として七年間、所得の全額まで控除として認めますということにさせていただいております。

 他方、この特例の対象となった法人が、今おっしゃったように、その後上場に至った場合は、当然のこととして企業の成長とか再建がかなり進んでいる、進んでいなきゃ上場できませんから、進んでいると考えられますので、そうすると、そういった特別な配慮をする必要性が減るということだと思います。少なくとも配慮を小さくしても構わぬのではないかということから、特例の対象とせず通常どおりの控除期間とさせていただいて、所得の五〇%ということを適用させていただくことにしたものです。

 こうした制度設計というのは、通常の大法人と、一旦特例の対象となったがその後再建とかが成功した、JALなんかはそうなんでしょうけれども、そういった法人との間では課税の公平性を確保せないかぬという観点から行っているものであって、何であそこだけまだ払っていないんだとかいうような話がよく言われますものですから、私どもとしては、今、そういった形にさせていただいたというのが背景です。

鷲尾委員 おっしゃるとおりだと思うんですが、ただ、そういう制度によって、では上場自体をもうちょっと先延ばししようか、繰欠をもうちょっと使おうと。これはどうしても、大臣も御承知のとおり、経営上の判断としては十分あり得るだろう。そういうものを促すような制度であってはならないんじゃないかなというふうに思っております。

 またこれは実態に鑑みて適宜改善をしていっていただきたい、そのように考えております。よろしくお願いいたします。

 続きまして、受取配当金の益金不算入の話に移りたいと思います。

 これも先日議論させていただきました。基本的には、受取配当金というのは企業が税金を払った後で配分するものでありますから、税理論上は、そこにさらにまた受け取るときに課税するというのは、二重課税になりますので、基本的には排除するというのが当然なわけでありますが、しかし、これも政策的に今随分と制限を課されているわけであります、従来からそうなわけでありますけれども。

 今回、持ち株比率によってその制限の態様が異なるわけでありますけれども、持ち株比率の態様自体を変えております。五%、二五%を五%から三分の一という形に今度変えています。この理由につきまして、ちゃんと明らかにしていただきたいなと思っております。

麻生国務大臣 鷲尾先生、受取配当益金の不算入というのは、今言われたまさに二重課税ということで、既に税金を払った後配当するわけですから、そこで税金を払っておいたものを、配当して、またそこで税金がといったら、それは幾ら何でもやらずぼったくりじゃないかと。昔はそうやっていましたから、ふざけたことをやってもらっちゃ困りますよと。特に外国からは、皆そうやられていましたから。だから、外国で皆金をためたまま、送ってこないということになっていた状態はどう考えてもおかしいだろうということで、五、六年前か何かにあれをやらせていただいたんだと思います。

 会社の支配というものを目的とするような、五〇%持っているとか持ち株比率の高いというところと、いわゆる支店形態と子会社形態との税負担のバランスというのを考えてみますと、一〇〇%で益金不算入とすべきである、非課税とすべきであるという御意見がある一方で、例えば単なる投資対象として保有している株、五〇とかいうんじゃなくて、数%とか持ち株比率の低い株式会社、債券投資とか、また他の投資とのバランスというのを考えて、一部の益金の不算入、一部課税とするという考え方をとっているのは御存じのとおりです。

 そこで、企業が株式を保有する目的が、会社支配を目的としているのか、それとも単なる投資目的とするものなのかという点は、必ずしも、持ち株比率の数値のみでそれを決められるかというと、実は一律になかなかそうは言えないので、たくさん持っていてもできない場合もありますからそう言えないんですが、税制を設計するという立場に立ちますと、客観的に定めることができるのは、執行面でも安定している基準というので考えますと、持ち株比率の大小により判断しているもの、ほかにちょっと基準がなかなか見当たらぬものですから、そういうふうにさせていただいているんですが、外国の受取配当益金不算入の制度においても持ち株比率に応じて益金不算入というのを定める制度設計になる、私どもの調べた範囲では、他国でもそういうぐあいになっていると理解をいたしております。

鷲尾委員 この議論で明らかにしていただきましたので、結構でございます。

 その上でですけれども、もうちょっと特例がございますね。今回は保険会社のみに特例が設けてございます。この保険会社のみに特例が設けられたということの意味も、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

菅原副大臣 ただいま大臣から受取配当等の益金不算入制度の趣旨、骨子についてお話がございました。

 今、鷲尾先生がおっしゃった保険会社、この保険会社というのは、御案内のとおり、顧客から保険料を集めそれを運用するという会社の形態でございます。したがいまして、投資信託などと同様に、運用業者として顧客のために株式等への運用を行っているという面につきまして、それにもかかわらず受取配当への課税を大幅に強化すれば、結果的に多数の保険契約者に影響が及びかねない、こういう事態も推定されることから、このような特例を設けることとした次第であります。

鷲尾委員 預かっている資産を運用しているので、しかもその運用が、特に保険会社というのは、保険の態様にもよりけりですけれども、一般的に考えたら長期にわたるだろうというところの中で特例が設けられたのかなというイメージでおります。

 イメージでおりますが、運用という断面で現実を切り取りますと、別に保険会社のみならず、運用ということをしている社というのはほかにもあると思うんですね。だから、なぜ保険会社のみなのかなというところは正直言って疑問にまだ思っておりますし、今の副大臣の御答弁でも少し疑問が晴れないところもありますので、また別の機会にさらに突っ込んでみたいなというふうに思います。

 私としては、運用という社は保険会社のみじゃないよねというところが一点ある。それは、例えば長期にわたる運用という部分で見ても、別に保険会社に限らず、証券会社だってほかの金融機関だってやっているところもあるよね、そういう部分については配慮しなくていいのかなと。なぜ保険会社だけなんだろうなという気がいたしております。

 しかも、これは保険会社についてのみ特例があって、五〇%から四〇%に引き下がっているんですね。保険会社の対象自体も拡大されたんですけれども、そもそもの不算入の割合が、五〇%から今度は四〇%に引き下がったんですね。何で五〇%から四〇%にしたのか、ちょっと疑問なんですね。

菅原副大臣 今の御質問の前に、先ほどのお話、保険会社だけなぜかという御質問がありました。

 これは、御案内のとおり、保険会社、この業界は、顧客の保険にかかわる業務遂行でありまして、本来、運用というものではなく、たまたま一業態として運用しているということでありますから、そこをしっかり守っていくという意味での特例、そういう御理解をいただければと思います。

 また、今般の受取配当等益金不算入制度の見直しに当たりまして、先ほど来御指摘のとおり、持ち株比率五%以下の株式からの配当については原則二〇%の益金不算入としつつ、保険会社については四〇%の益金不算入ということになってございます。

 先ほど来お話し申し上げているとおり、ほかの業態と異なりますゆえに、保険会社については、将来の保険金の支払いが大変大事でありまして、この準備金を積み立てることといたしております。保険契約者から保険金をお預かりしているという形態を踏まえまして、保険契約者の取り分として考えられる部分につきましては今回の改正においても課税対象としない、こういう整理をいたしたところであります。

 ではなぜ四〇%なのかという御質問でございますが、これは、保険会社の受取配当が現行で五〇%の益金不算入、こうなっているわけでございますが、保険会社のそうした準備金の額が全資産の八割程度、こうした取り決めがあるゆえに、これを参考といたしまして、五〇%の八割と考えれば四〇%、これが例えば七割であれば三五%、こういうようなくくりで今定めているところでございます。

鷲尾委員 はい、わかりました。ありがとうございます。

 続きまして、結婚・子育て資金の非課税枠につきまして質問させていただきたいと思います。

 限度額一千万円。細かいようですけれども、何で一千万円なのか、ちょっとこの議論の中で明らかにしていただきたいなと思うんです。

菅原副大臣 今、国民資産のうちの七割が五十歳以上、あるいはその六割が六十歳以上、こういう一千六百五十兆の個人資産の内訳があるわけでございますが、そうすると、その額のうち、一千万が高いか安いか、あるいは三千万だったらどうなのか、いろいろと御議論があると思うんですが、これは一つ、科学的といいましょうか、データに基づいて算出をしている、こういう御理解をいただければと思います。

 まず、この非課税制度の目的については、デフレ脱却、経済再生に向けて、今申し上げた高齢者に偏っている資産を若年層に移転させよう、経済の活性化を図ろう、フローのお金を世の中に回していこう、こういう流れ、考え方があるわけでございまして、しかも、晩婚化率が高まったり、あるいは若年層の結婚、子育ての大変な御労苦がある、こうしたものを緩和、解消するという意味において、この非課税制度の基本的な考え方を私どもとして持っているわけであります。

 その趣旨にのっとりまして、非課税措置について、結婚、出産、子育てに必要な平均的な費用を勘案いたしますと約一千万、こういうことになるわけでございまして、これは、結婚及び三人の出産、子育てに関する平均費用をカバーする、その水準として一千万と示したところであります。

 例えば、内訳として、ゼクシィというところの調べによりますと、結婚披露宴が百十三万、新居の住居費、三年分で百七十万ぐらい、保育費、子供が一人から三人、大体生まれてから小学校に上がるまでと考えますと、これが五百六十一万ぐらいかかる、こういうもろもろを含めますと大体一千万ぐらいかかる。こういうことから算出しまして一千万、これを非課税としたわけでございます。

鷲尾委員 よくわかりました。

 やはり根拠を明らかにしていただくというのは非常に大事なことだと思うので、その上で、今副大臣がおっしゃったように、そもそもの制度趣旨としては、デフレ脱却、経済再生というところの中で、高齢者層の資産の若年層への早期の移転を促していくところの視点ということがございました。

 ただ、これは前回の質問でも申し上げましたが、大臣と住宅投資の話でやりとりさせていただきましたが、早期の資産移転ということなんですけれども、基本的に、結婚・子育て費用を一千万ぽんと出せる人は相当限られていると思います。そうすると、マクロ的には各層から各層への資産の移転だという話になりますが、同世代の断面で見ますと、それは格差の固定化というところにもつながっていきかねない問題だろうと思います。

 いろいろな波及効果を踏まえて制度設計をされているんでしょうけれども、どうしても懸念、心配というのも拭えないんじゃないかと思っています。特に若年層は今格差が広がっている、同世代の中でも広がっているという状況において、持てる者から持てぬ者へという資産の移転、これを促す制度でもあるんだというところは、先般、大臣とのやりとりでも、政府としても認識をしているというところでございました。

 その上で、今の私の発言も踏まえた上で、これが期限つきであるということの理由、そして効果がどう発現していくのかということもやはりこの場で、制度をつくった当初のこの委員会の場で明らかにしていただきたいと思うんです。効果をどう判断していくんですか。

 以上二点、質問したいと思います。

菅原副大臣 先般の御質問、きょうの御指摘等々を踏まえまして、厳然たる事実として格差というものがあるとするならば、今御指摘のとおり、一定の所得、資産を持った方と非課税世帯等々を含めますと、それぞれの所得の移転や、あるいは所得がない中での生活をどういうふうにしていくか、これは社会保障的な面も出てくると思うんですが。その意味において、高齢者から若年層に早期に資産を移転することによってインセンティブを与える、その意味において適用期限を設けたものなんです。つまり、適用期限を設けたことによって、ここまでですよ、ここまでに移転すれば非課税になりますよ、そういうインセンティブを働かせるために一定期間、期限を設けたというのがまず一つであります。

 さらに、今、鷲尾先生がおっしゃったとおり、格差の固定化を招かないようにする、あるいはそれを避けるために、一定期間ある意味ではトライアル的にやっているという意味において、平成三十一年の三月までの時限措置として、その効果や影響をよく見きわめて今後の糧にしていく。こういう、いわゆるトライして、またその検証、そしてそれをいかに次の効果につないでいくか、そういう流れを考えてございます。

鷲尾委員 トライアルということでございますね、そうすると。政策効果の判断基準としては、ちょっといまいち今の答弁ではつかめないなというのが正直なところでございます。

 何をもってというところでいきますと、大上段の、要するにデフレ脱却、経済再生というところが目的だ、だからそれに対してどう寄与するかというところを、この制度だけで判断するのはしがたいけれども、トライアルとしてやってみたい、こういうことなんでしょうか、私が何か答弁を補足するみたいで申しわけないんですけれども。

菅原副大臣 今のトライアルだけを切り取られてひとり歩きさせると、私も本意ではございません。あくまでもこれは、与党の税制改正、さまざまな議論があった上で、その大綱を踏まえて政府の税制改正につながって、そしてその上で今回の予算措置や税制改正に今つないで、国家国民のために資していこう、こういう流れであります。

 ですから、トライアルというのはあくまでも、先ほど申し上げたように、一定の期間を設けて、そしてその間懸命に努力をし、さまざまな制度と掛け合わせながら、子育てあるいは出産、結婚といった若年層が今抱えるさまざまな悩み、苦しみというものを解消していこう、こういうことがまず当然あるわけでございます。

 その政策効果という御指摘がございました。これは、目下の少子高齢化の進展に的確に対応して人口減少に歯どめをかけるということが最重要課題であります。

 そのために、平成二十七年度予算におきまして、子ども・子育て支援新制度をことしの四月から予定どおり実施いたしまして、子育て支援の量的拡充と質の向上、合わせて約五千億円以上の取り組みを推進しようとしているところでございます。

 御指摘の結婚・子育て資金に関する贈与税非課税措置につきましても、先ほど来申し上げているように、デフレの脱却、経済の再生、そしてこの中において高齢者からの若年層への資産の移転、このことによって、少子化対策の一環として、将来の経済不安、漠然としたこの将来不安というものから結婚や出産をちゅうちょしている、そういう世帯が数多くいるとするならば、そこをしっかり解消のために導入しようということであります。

 したがって、この少子化対策は、予算、税制、総合的な取り組みを行うわけでございますが、その税制措置だけを取り出して政策効果を判断するということはなかなか難しいということも御理解をいただきたいと思いますし、また、この後の議論になるかもしれません、先ほども触れておられましたが、いわゆる地方創生、まち・ひと・しごと創生総合戦略、これにものっとって推進をしていきたいと考えております。

鷲尾委員 子育てで、経済的な理由でなかなか子供を持てないという層は、恐らくこの制度は関係ないと思うんですね。そこは厳しい現実としてありますので、少子化対策として本当にこの制度がふさわしいものなのかどうなのか。もちろんそういう副次的な効果はあると思いますが、これは大臣もこの間おっしゃっていましたけれども、前面に出てくる効果としたら、やはりマクロ的に見たときの、ある層からある層への資産の移転に伴って経済効果が出てくるというところが正直なところなんじゃないかな。その大義名分の一つとして結婚、子育てというのが理解は得られやすいというところが妥当な線だろう。余り少子化対策でこれと言われてしまうと、むしろミクロな面が出てきてしまうと思いますので、そこはぜひ、そういうことなんだということでこれから御説明いただけると私たちも理解しやすいなと思っております。

 続きまして、ジュニアNISAの話に移りたいと思います。

 これは、ある意味NISAという部分でのトライアルが功を奏しているという認識に基づいてのことだと思っておりますが、先般の質問でもありましたけれども、NISAの開設が随分多い割には買い付けが多くない、こういう実態が明らかでございます。

 そこで、そういう実態であるんだけれども、それに加えてジュニアNISAを創設し、世帯で累積二千万円、そういう非課税枠を設けた。この理由、実際NISAを運用してみての判断に基づいてのことだと思いますので、そこのところを教えていただきたいと思います。

越智大臣政務官 鷲尾委員から、NISAについて御質問がございました。

 まず、NISAにつきましての認識でございますけれども、導入から一年の昨年末の時点で、口座数が八百万件を上回ってまいりまして、買い付け金額が約三兆円に達しております。そういった意味で、多くの国民の皆様から強い関心を集めているというふうに認識をしております。

 また一方で、今御指摘がございましたが、日本証券業協会の調査によりますと、主要証券会社十社に開設されたNISA口座のうち、一年間で買い付けがあった口座数は約四五%ということでございます。

 このNISA口座を利用する、実際にどのように投資を行うかについては、株式市場の動向を初めとしたさまざまな要因に左右され得るものでありますけれども、一方で、金融庁としては、利用率、稼働率を高めるための取り組みにも努めてまいったところでございます。

 具体的には、積極的に広報活動や金融リテラシーの向上に向けた取り組みを進めているほか、平成二十七年度税制改正において、NISAの年間投資上限額を、毎月の定額投資に適した百二十万円に引き上げることを盛り込むなど、投資を行いやすい環境整備を進めているところでございまして、今後ともこうした取り組みを進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

鷲尾委員 このNISAですけれども、ジュニアNISAもそうですけれども、一方で、今るるおっしゃったように、活用が進んでいるんじゃないかと。また、それについては、広報活動等を含めて、さらに活用していただけるように積極的にやっていきたいという御判断だと思います。

 一方で、これも期限を切っているわけですね。

 逆に問うんですけれども、今までやってきた中で、イギリスでは期限なし、日本でそういうことを考えてもいいんじゃないか、もしそこまで積極的に言うのであれば。そういうことも考えるべきだと思いますが、この点はどういうお考えをお持ちですか。

越智大臣政務官 今、鷲尾委員の方から、トライアルではなくて、ある意味では恒久的な制度としてもいいんじゃないかという御指摘、御質問があったと思います。

 この点につきましては、まずは、現時点では、NISAについては、制度のさらなる普及、定着を図るとともに、今後、ジュニアNISAの円滑な導入に向けた取り組みを着実に進めていくことが重要だというふうに考えておりまして、ここも先ほどの菅原副大臣の答弁と同趣旨になりますけれども、制度の趣旨や効果の検証を踏まえつつ検討してまいりたい、現時点ではそういう立場でございます。

鷲尾委員 このNISA、ジュニアNISA合わせて累積二千万円の非課税枠、そして結婚・子育て資金一千万円、それから教育の枠もございます。そして、住宅投資の枠もある。相当な非課税枠が今回ございますね。もちろん普通の贈与税の非課税枠もあります、毎年百十万円。それを合わせますと、相当な非課税枠が今回で大分セットされたなという気がいたしております。

 重ねて申し上げますが、ミクロの面では、それはそれで、持てる者から持てぬ者への移転にほかならないということもございますので、そこはぜひ、政府当局として御留意の上で、いい形で結果を出していただきたいな、そのように思っております。

 続きまして、配偶者控除について伺いたいと思います。

 我々の政権時代も配偶者控除につきましてはさまざまな議論がなされました、御承知のことと思いますが。今、特に安倍政権でも、先ほど副大臣が答弁でもおっしゃったように、少子化対策をしっかりやりたいんだと。そして、安倍総理も、女性の社会進出、もっと女性の活躍する社会を目指したいんだという話をされている。その中で、この税の議論、以前から議論が行われている割にはまだ進んでいないのかなという気がいたしております。

 この辺の大臣の思い入れも含めて、御答弁いただけたらありがたいです。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、もう十年以上これは言われておりますもので、あちらこちらで波及的に出てきていて、アルバイトをしても百三十万円でやめるとか、百三万円になったらとめちゃうとか、御存じのとおりの影響も出るところでもあるので、配偶者控除については、実に、それぞれ、税調に限らず、いろいろなところで御意見が出されてきております。

 今回も同様のように出てきているんですが、これは、家族のあり方とか働き方が変わっているとか、大体、家族、二人で子供二人とか、そんな平均的なことばかり言っているけれども、そういうのが一体何%いるんだとかいう話やら何やらが随分ありまして、国民の価値観にかかわる話なので、うかつに、ちょいとこの内閣で一発、はい、どん、ではこれでいこうやというような、簡単に決めていいのかという話なんかが随分ありました。

 議論の先送りということではなくて、もう少しこれはやらないと、今度、選挙が終わって随分新しい方も入ってきておられますので、そういう方々の意見も一回よく聞かぬと、うかつに事はやれぬのではないか等々の意見が出された結果、今回はこういう形にさせていただいたというのが背景です。

鷲尾委員 おっしゃるとおり、慎重に慎重な議論が求められもしますけれども、やはり看板政策として女性の社会進出ということをおっしゃっている以上は、こういう議論について政治決断をするということも大事だと思います。我が党は我が党でもちろん議論していますけれども、そこは、いろいろな思い入れのある方もいらっしゃいますから議論としてはなかなか難しいところもあろうかと思いますが、そこを決めるのが政治、政府・与党の役割でございますので、ぜひしっかりとした決断を求めたいというふうに思います。

 続きまして、消費税の問題でございますけれども、逆進性対策でございます。

 給付つき税額控除、我々が主張しておりました。そして、現政権では、与党を含めまして、軽減税率の導入を図るということでございます。

 大臣もよくよく御存じだと思いますけれども、それぞれメリット、デメリットというのがあろうかと思いますが、我々としてはやはり給付つき税額控除を推したいし、社会保障と税の一体改革の三党合意の中でもしっかりと検討するという項目が入っている。その検討状況も含めてお聞かせください。

菅原副大臣 まず、軽減税率に関しまして、与党の税制改正の中に、議論すると。今、盛んにやっているわけであります。

 たまたま今ドイツのメルケル首相がお見えでございますが、そのドイツにおける軽減税率、これを簡単に歴史的に申し上げますと、付加価値税が導入をされる前から、いわゆる累積型といいまして、仕入れ額と利益、それに対する売り上げ全体に課税をされる、こういう状況から、累積による税負担の軽減のために一部の食料品なんかは軽減税率をやってきた、こういう経緯があるわけですね。ところが、一九六八年に付加価値税に移行した際に、こうした経緯を踏まえて、食料品等は軽減税率を維持存続、導入が今まで続いている、こういう状況にあるんです。

 ところが、諸外国における、OECDのレポート等におきますと、メリットとして、生活必需品への適用に関しては、低所得者への恩恵が認められるということがある一方で、実際に高額所得者も同じように軽減税率は当てはめられますから、この辺がどうなのか。あるいは、対象品目の線引き、標準と軽減の線引きは非常にセンシティブな面があることは、委員も御案内のとおりであります。

 あわせて、税収が全体的に毀損、税収が減る、こういうことを含めまして、実際にさまざまな議論が今行われておりまして、これはもうちょっとまだ時間がかかるのではないかと思いますけれども、それをしっかりと見詰めていきたい、こういうふうに今考えております。

 軽減税率のところだけでよろしいですね。税額控除について……(鷲尾委員「税額控除もお願いします」と呼ぶ)

 といたしますと、例えば給付つき税額控除、これは御提言等がございますが、例えばアメリカにおきましては、低所得者層への財政的な支援、これはもちろんのことなんですが、いわゆる就労インセンティブを促進する、こういう観点から、一九七五年に勤労所得税額控除が導入されて今日に至っております。

 この勤労所得税額控除につきまして、メリットとしまして、今申し上げたような低所得者層を中心に就労を促す、こうした効果がある一方で、デメリットといたしましても、給付額、いわゆる控除額を正しく決定するためには、必要となる所得、あるいは家族構成等の把握がなかなか困難である。

 オバマケアの問題も今アメリカで起こっておりますけれども、やはり所得の把握や、家族状況や、家庭の真の状況というものを把握することはなかなか困難である。そういう意味では、過度に支給したりあるいは少な目に支給したり、こういう過誤支給、あるいは、場合によっては所得把握等ができない、なかなか難しい、その中で虚偽の申請をしたりして不正の受給が行われる、こんなこともあります。

 いずれにしても、この軽減税率の議論、あるいは今のお話の税額控除等々、まさに今、我が国においてもさまざまな議論がされている、これをしっかりと捉えていきたいと思っております。

鷲尾委員 軽減税率の議論が進んでいるというのは何となくうかがい知れるところがあるんですけれども、給付つき税額控除についての議論というのは、国内でなされている、進められている、どんな状況にあるんでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の給付つき税額控除につきましては、もうこれはよく御存じのところなので、低所得者に絞ってこれがやれる、支援が可能というのが一番よく軽減税率と対極的に言えるところだと思っておるんです。

 所得とか資産の把握が可能かと。どれぐらい可能かというと、マイナンバーみたいなものが入ってきたりなんかすると将来は大分違ってくるんじゃないのという点がありますし、また執行面での対応の可能性というのがあります、これは地元で結構調べないかぬというところがありますので。そうすると、御指摘の財源のもととかいろいろあるとは思いますけれども、消費税引き上げに伴います低所得層への配慮ということに関して、軽減税率とかいろいろ今言われておりますけれども、政府としては、しばらく与党の議論を見守っていかないかぬところだと思っております。

 どちらの方がというと、何となく軽減税率の方がよく新聞には出ますけれども、与党の中でも、給付つきの方が現実的じゃないか、こっちの方がと言われる意見もかなりありますので、正直なところ、目下どれくらいの比率か、ちょっと比率までとったことはありませんけれども、結構、いろいろ今、最近よく言われるようになりつつある意見の一つだと思っております。

 やはり線引きが難しいというのと、もう一個は、書類を提出せないかぬという、中小の方々で、今まで消費税を払っていない、売上高が額を満たしていない方々にとっても、皆全く新たに書類を出してやらないかぬという問題を抱えるから反対という方は、私らの地元でも、商店街の売り上げの余り大きくないところの方からよくこの話を聞くようになっているのが最近の傾向かなという感じはいたします。

鷲尾委員 大臣がおっしゃるとおりだと思うんですね。

 やはり、余り社会的なコストがかかるような制度ではなくて、さっきもおっしゃったように、中小の事業者の皆さんは、本当にこれは大迷惑な話だと思います。そこは麻生大臣の最もお得意な面だと思いますので、そういう部分で、その思いをまた政府・与党の議論の中でぶつけていただけるとありがたいな、そういうふうに思っております。ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、私が前々から少し議論をさせていただいている問題の一つとして、ビール税の話に移りたいと思います。

 ビール税制につきまして、極ZEROという商品があるんです、サッポロビールが出しているんですけれども。第三のビールと言われていまして、第三のビールというところのリキュール系新ジャンルというものでございます。

 何で今こういう話をするかというと、国税庁から、これは第三のビールに該当しないじゃないか、こういう指摘がありまして、サッポロもそれをのんで、発売開始から今まで売れた分の差額の税、差額分で百十五億円に延滞税一億円だそうでございますが、これを国税庁に納税して、新たに発泡酒として、分類を変えて、それで売り出したということでございます。

 ただ、ことしに入って、やはり極ZEROは第三のビールだった、リキュール系新ジャンルなんだということを主張いたしまして、国税当局に追納した税金を返せ、今こういう争いになっているわけです。

 国税としては、サッポロに対して製法に関する疑義を指摘した、こう言われておりますけれども、それでいいかどうか、論点も含めてちょっと開示してください。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のサッポロビールの極ZEROの話でございますが、サッポロビール株式会社が昨年六月四日のニュースリリースにおきまして、極ZEROの税率の適用区分に言及しながら、極ZEROリキュールを五月下旬製造分をもって販売を終了し、新たに発泡酒として七月より発売する旨を公表したということは承知しております。

 それから、今の納税のお話でございますが、さらにその後、六月二十日でございますが、同様にサッポロビール株式会社がニュースリリースにおきまして、極ZEROの税率の適用区分に言及した上で、自主的に修正申告する旨を公表したということは承知しております。

 ただ、いずれにしましても、我々国税当局としましては、個別の会社の課税に関する事項でございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいということを御理解賜りたいというふうに思います。

鷲尾委員 国会でビール税制の議論をさせていただきたいなと思っている中で、個別の案件についてはお答えできないといつも言うんですけれども、これは百十五億円ですよ。国民的課題になっています。ここは国会ですから、ここで個別案件だからお答えできないと言うのはどういうことだと私は思っているんです。もう一度聞きたいです。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 税務行政全般にかかわるお話になりますが、税務職員の守秘義務は、申告納税制度のもとで税務の執行を円滑かつ公正に行うに当たり、納税者の信頼と協力を得るために必要なものであると考えております。

 したがいまして、個々の納税者の調査あるいは申告状況などにつきましては、従来から答弁を差し控えさせていただいているということを御理解賜りたいと思います。

鷲尾委員 この国民的なビールという問題、そしてこれだけ巨額な問題が、しかも税制によって、この後議論しますけれども、税制によってこういう状況になっているんですよ。やはりその題材をある程度提供してもらわないと、こういう事態を今後防ぐことができない。後でちょっと議論しますけれども。

 個別案件はお答えできないという回答、これは我々国民の代表者である国会に対してちょっと不謹慎なんじゃないですか。しっかりと答えるべきだと思いますよ。委員長、もう一度お聞きしたい。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しました守秘義務でございますが、税務職員には、国家公務員法上の守秘義務とともに、国税通則法によりまして、国家公務員法よりもさらに重い守秘義務が課されておるところでございます。したがいまして、仮に税務職員がその職務上知り得た事項を漏らした場合には、納税者と国税当局との信頼関係が損なわれ、税務行政の上で重大な支障を来すということにもなりかねないと考えております。

 したがいまして、従来から、個々の納税者の調査あるいは申告の状況につきましては、答弁を差し控えさせていただいております。

鷲尾委員 では、もうこれ以上は言いません。

 我が国のビール税というのは、二十世紀初頭から導入されていますけれども、最初は戦費調達が目的だったと聞いております。そういう経過があったので随分高い税率が課されてきているというふうに思っております。

 麦芽比率六七%以上のものだったビール課税が、九〇年代に入って、麦芽比率六五%といういわゆるビール風飲料、発泡酒が登場したわけであります。この麦芽比率六五%というビール風飲料、発泡酒が登場したので、翌々年の九六年に、当時の大蔵省は、今度は麦芽比率五〇%以上六七%未満という製品の酒税をビールと同額に引き上げるという措置を行いました。そして、それにまたメーカーは対応しまして、麦芽比率を二五%未満とした新たな発泡酒を発売していくわけです。かなりイタチごっこが続くわけでございます。そして、二〇〇〇年代に入ると、麦芽を使用していないビール風飲料まで登場する。

 我が国のビールメーカーは、事ここに至って、税制、税務当局とのイタチごっこの中で、麦芽比率の低い、あるいは麦芽を使ってさえいないようなビールづくり、ビールというかビール・クエスチョンのビールづくりの競争に今陥っているんじゃないかというふうに思っているんです。

 そして、今回のリキュール系新ジャンルであります。麦芽比率は二五%以上五〇%未満で、本来発泡酒の税率が適用されるべきものに大麦リキュールをちょっと垂らす。ちょっと垂らすとリキュール系新ジャンルになるということでありまして、これは一部から、ちょっと脱法行為なんじゃないか、こういう声まであるわけでございます。

 ちなみに、今申し上げた経過の中で、平成十六年当初、政府税調の会長である石さんは、最近の、例えばビール風のビールみたいなものができていますね、発泡酒より一段と進んだ形の、まがいものと言っては失礼かもしれないけれども、出てきている、これはメーカーの低価格競争を誘いつつ、ビール本来の味を忘れさせている、酒文化にえらい影響があると。これは石先生の言葉ですよ。最近飲み比べましたけれども、酒の文化を損なっているのではないかという気はしますね、低価格競争というものが税率によって引き起こされているならば、税のディストーション、つまりゆがみですね、典型的ではないか、課税の公平中立を旨とする税調としては問題ではないかという指摘が、十年前にもう既にされているわけであります。

 残念ながら、今のビールづくりの現場は、ちょっとビール・クエスチョンなビールづくりの現場になり、そしてそれはビールのゆがんだ税制にあるんじゃないかということが私の主張したいところであります。その延長線上でこの極ZERO問題が生じているだろうということなんですね。

 こういう税制のゆがみというのは十年前からもう問題になっているわけですから、いいかげん改善すべきだと思います。生産現場にも、そして酒の文化にも影響を与えている。いかがですか。

菅原副大臣 昔、缶ビールをグラスに入れると、その泡の分が酒税だというふうに教わったんですが、全く科学的根拠がなくて、御案内のとおり、三百五十ミリリットルの缶ビールの酒税部分が七十七円、発泡酒が、先ほど先生御指摘のとおり四十七円、新ジャンルと言われる麦芽〇%であっても二十八円、五〇%未満同様、こういう状況にあるんです。

 税制上の規定によりますと、ビール系飲料の酒税については、一キロリットル当たり、ビールが二十二万円、発泡酒が十三万四千二百五十円、新ジャンルが八万円、こうやって酒類によって異なる税率が現行としてございます。

 平成二十七年度与党税制改正大綱におきまして、同一の分類に属する酒類間の税率格差が、商品開発や販売数量に影響を与え、酒税の減収にもつながっていると。今後とも、それにのっとりまして、財務省としても、同様の問題意識をしっかり持ちながら、今後、与党における議論を踏まえつつ、酒税の見直しについて検討してまいりたい、このように今考えております。

鷲尾委員 それこそ今の自民党の税調会長の野田先生も、この問題につきましては、消費者としては、本来は本物のビールを飲みたいのに、値段が安いので発泡酒や第三のビールにシフトしているとおっしゃっているわけですね。これは野田税調会長がおっしゃっている。

 結局、先ほど申し上げました、ビールを飲む、本物のビール、それに対するニーズを、ただ税制があるがゆえに違うものがつくられることによってそこに国民を促すような税制というのは、これはよくないと私は思うんです。

 ですから、ビールメーカーごとで当然ジャンル、強み、弱みとかはあると思います。私も業界の話を聞きますのでよくわかりますけれども、やはりこれは国民目線で、国民が本当のビールを楽しむ、そういう税制をつくっていくべきだと私は思います。ちょうど今ゆがんでいますから、ゆがみを直せば場合によっては税収もふえるんですから国庫も助かる、そういう形でうまくつくっていくべきだと私は思います。

 今、意気込みは副大臣から伺いましたけれども、もうちょっと具体的に、いつまでにやりたい、こういうところまで話してほしいですね、毎年毎年これは議論になっているので。

菅原副大臣 確たる、いつまでというのはなかなか申し上げにくい現状にありますが、いずれにしても、鷲尾先生の御指摘も踏まえ、そしてまた昨年来の与党税調あるいは政府税調、さまざまな議論の中で、同一の分類に属する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている、このことを問題といたしまして、この税率格差を縮小、解消する方向で見直しを行うということ、速やかに結論を得るという方針が出されておりますから、それにのっとって、しっかりその御議論を踏まえて検討、そしてまた対応していきたいと思っております。

鷲尾委員 速やかというのは、普通で考えたら二、三年ということじゃないですよね、速やかなんだから。来年も同じ質問をしたくないですね、私は。

 では、副大臣、お手を挙げていらっしゃるので。

菅原副大臣 可及的速やかに頑張っていきたいなと思います。

鷲尾委員 可及的ということをおっしゃっていただいたので、よしとしたいと思います。

 私は、本来、このビールの税金は高いと思っています。さっき言ったその由来もありますので、もう少し引き下げていくべきだとも感じています。もちろん、アルコールを低価格で飲酒するから、そういう反論もありますけれども、できれば、あわせてビールの税金も少し下げていくという方が望ましいんじゃないかというふうに私は思いますけれども、当局としていかがでしょうか。

麻生国務大臣 鷲尾先生、たしかビールというのは明治三年に日本に初めて輸入されたんだと習った記憶があるんですが、基本的にこのビールは、簡単に言えば、洋酒という分類でスタートしていますものですから、輸入品として高いということになって、傍ら日本酒の方は安いということで、別に日本酒を保護するとかそういうことではなくて、輸入ということで洋物を多分ぼんと高くして、税率として高いことになっているんです。

 今、現実問題として、この財政事情の厳しい中で、酒類だけで年間一兆三千七、八百億円かな、そのぐらいあるんだと思いますが、ビール関係のものでいくと約九千億円で、発泡酒は別にして、純粋ビールだけで約六千億円ぐらいありますから、簡単に言えば、酒税の半分がこれですよ。

 したがいまして、ビールというのは極めて、日本の国税収入の中に占める位置としては、単品としては物すごく高い値打ちがあるものになっているので、財源の確保というのを考えないと、これをちょいと下げるというのはなかなか簡単にはいかないということだと思います。

 いずれにしても、平成二十七年度の与党税制大綱の中に書いてあるんですが、「同一の分類に属する酒類間の税率格差を縮小・解消する方向で見直しを行うこととし、速やかに結論を得る。」というのがことし入っているんです。この「速やかに」がちょいと大丈夫かと正直……(鷲尾委員「可及的ですからね」と呼ぶ)そう。そういう話が出たので、今、可及的ということを言われているんですけれども、それは確かに「速やかに結論を得る。」とあのとき書き込まれたものですから、こちらとしては、ちょいとこれは、よほどほかに埋めるものが出てこないと簡単にはいきませんよということを申し上げているんです。

 いずれにいたしましても、これはちょっと額が大きいものですから、必ずやりますとか、うかつなことを申し上げるわけにはいきませんけれども、これはきちんと結論を得ないと、もう長い時間かかっている話でもありますので、検討せねばならぬ問題だと思っております。

鷲尾委員 円高のときにビール会社も海外の会社を買収して、これからそれを利益に変えていくという局面になっています。その国内で、ビール・クエスチョンのものではなくて本物のビールを国民と一緒に、国民に対して提供しながら、それでやはり利益を得ていただきたいですね。本物のビールを楽しむというところを通じて税収も上がってくるかもしれないという側面も、ぜひお感じになっていただけたらありがたいなと思っております。

 あと二十分ございますので、あと二十分、ちょっと違う話題をさせていただきたいと思います。

 私がきょう財務金融委員会で話題にさせていただきたいと思っていますのは、今後の水道料金の高騰の可能性と、それに伴う財政負担の懸念についてでございます。財政負担に絡めてちょっとこの問題を取り上げたいというふうに思っているわけであります。

 というのは、水と安全はただだと思っている日本人が多いわけですけれども、水道料金が今、値上げの危機なわけであります。

 というのも、日本創成会議が消滅可能性自治体として、分析結果が出て世間に随分衝撃が走りましたが、そこで用いられた人口増減率の推移データを用いますと、人口減少や節水の影響で、二〇四〇年までに九八%の自治体で水道料金の値上げが必要だということでございます。全体の約半数の六百の自治体で三〇%以上の料金改定が必要になるというものでありまして、私の地元でも、二割から四割、あるいは五割になんなんとする金額を将来、二〇四〇年までに値上げしなきゃいけなくなるということが明らかになってきております。また、それこそ地方の過疎化の実態に鑑みますと、北海道、東北地方などは、月の水道料金が一万円を超える自治体も出るんじゃないかという推計結果が出ているわけであります。

 なぜ水道料金の話をするかというと、この後また少し議論しますが、ここに財政負担も絡んでくるということなんですね。

 インフラの維持にはお金がかかるということでありますけれども、今、地方の生活は非常に厳しいというところの中で、さらに水道料金という生活のインフラにコストがかさむということは、ますます地方が住みにくくなってくるということでございます。

 ですから、そういう意味でも、広く、地方の財政、税負担の問題、それから、今、与党でも取り組んでおられる地方創生についても非常に問題になってくるのではないかというふうに思っております。

 そこで、きょうは厚労省、総務省にも来ていただいておりますので、このままでいくと、水道料金の値上げ、そして財政負担が不可避であろうかと思っていますけれども、今後の水道料金の値上げの傾向、間違いないかどうかというところを御答弁いただきたいと思います。

福本政府参考人 御回答申し上げます。

 今後の水道料金の値上げについての考えはどうかということでございますけれども、まず、過去のトレンドについて申し上げますと、水道料金の全国平均値でありますけれども、二十立方メートル当たりの家庭用水道の料金で見まして、過去十年間、大体三千百円前後で推移をしております。横ばいの状況でございます。直近値という意味では、平成二十四年度、三千九十二円という数字でございます。

 今後の見通しについてはどうかというお尋ねでありますけれども、端的に今後の料金について推計したようなものは我々国としては持ち合わせておらないわけですけれども、取り巻く環境について申し上げますと、その認識について申し上げますと、まず、水道の供給面におきましては、我が国の水道は、高度経済成長期以降に整備をしてきました施設が今後更新時期を迎えてまいります。そのことによって、施設の老朽化というのが現在進んでおりますので、水道施設の老朽化対策ということで費用がかさんでいくだろうということが一つ、供給面としては言えます。

 それから、一方、需要面でありますけれども、これは、先生御指摘になりましたように、今後、人口減少が進んでいく、世帯数が減っていくというようなことの中で、水道料金が今のままの状況でありますと、自治体に入ります水道料金の収入が減少していくというような環境下に置かれているのではないか、そういう状況にあるのではないかというふうに認識しておるところでございます。

鷲尾委員 料金収入が減少していくということは、当然それに伴って料金を値上げしなきゃいけない、そういうことだと思うんですね。今後、今おっしゃったようなインフラの維持費、我々の負担がふえていくということは、かなり生活に直結する重要な情報だと思っております。

 各事業体において個別に推計した将来の事業コストだとか料金水準などを国民にもっと開示していくべきだと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 水道が国民にとってかけがえのない生活インフラであることは申し上げるまでもないと思います。その取り巻く環境は先ほど申し上げたとおりでございますけれども、人口減少等で料金収入が減少していく一方、施設の老朽化で更新需要が増大していくということが想定される中で、それぞれの水道事業は各自治体が営んでおりますので、それぞれの自治体ごとに水道事業によって経営されているその水道事業体が、今後の事業費がどうなるのか、あるいは料金収入を含めた財源確保の見通しがどうなのかということを的確に立てて、水道利用者の方々に開示をして、今後の水道事業の持続性を確保するための取り組みをどうするかということについて理解を得ていくことは重要なことだろうと考えております。

 我々国、厚生労働省におきましては、まずは、各自治体、水道事業体がそういう見通しを的確に立てられるために、今後、水道事業の運営に必要となる費用、それからそれを確保するための財源を将来にわたって見通しを立てる、いわゆる資産管理、アセットマネジメントでありますけれども、そういうアセットマネジメントを普及させていくということが必要だと考えておりまして、かねてから、一つ、アセットマネジメント、資産管理の手引を国において策定いたしました。それから加えて、簡易に計算ができるような、簡易な計算ツールというものも国においてつくりますとともに、その使い方の講習会等も行ってきております。

 こういうことを通じて、各事業体が将来にわたる経営に関する情報を的確にみずから把握するとともに、市民の方々に情報提供していくための取り組みを促していくことが我々としても重要だと認識しておるところでございます。

鷲尾委員 開示していくということは重要だと今最後におっしゃっていただいたので。やはり徹底していくべきだと思いますよ。全体としての推計のデータを持っていないということですけれども、やはりそれはいろいろな情報収集をしていただかないといけない。いや、全体はわかりませんでは困るなと。そのこと自体が私は構造的に問題じゃないかなというふうに思っているところであります。

 水道事業と簡易水道事業への一般会計の繰り入れの状況がどの程度か、そのうち赤字補填に当たる部分というのはどの程度なのかということを教えてください。

亀水政府参考人 お答えいたします。

 水道事業における一般会計等からの繰り入れについては、水源開発施設などの設備整備による資本費負担の軽減などを目的に行われているものでございます。平成二十五年度決算における繰入金の額は、上水道事業については千三百五十二事業で千四百七十七億円、それから簡易水道事業につきましては七百六十事業で六百八十億円となっているところでございます。

 この一般会計繰入金につきましては地方財政法におきまして定めがございまして、それを受けまして総務省の方で繰り出し基準を定めております。その中で、水源開発に要する経費、あるいは高料金対策に要する経費などの資本費負担の軽減に充てる場合、あるいは消火栓や公共施設における無償給水に要する経費などにつきましては一般会計において負担するということにされているものでございまして、このようなそれぞれの目的に従いまして一般会計より繰り入れをされているものでございますので、これらは、単に赤字補填ということではなくて、それぞれの目的に従って繰り入れをされているものというふうに考えております。

鷲尾委員 単なる経常赤字の補填ではない、今そういう理屈をおっしゃったんだと思うんですけれども、資本的支出も含めた中で事業の採算がとれなくなる現実に対して一般会計から補填をしているという現実なわけであります。そうなれば、やはり事業の料金収入がこれから下がってくるという環境の中で、今ほどおっしゃったような資本的支出というのはこれからもっと伸びていく傾向にあるわけですから、そこにかなり今後の問題が潜んでいるんじゃないかというふうに思っているんです。

 結局、地方自治体の方で、事業者の方で料金を改定していかなければ根本的な解決にならないわけですけれども、料金の改定というのは、各事業体が行うにしろ、先ほど全体の状況を推計はしておりませんという話がありましたけれども、もう少し国として全体の状況を見きわめるような、あるいは料金改定を促すような、そういう大きな枠組みも、今後、こういう各地方自治体の水道事業について、場合によっては地方の住民の皆さんの負担がどんどん上がってくるという現実に鑑みれば、私は大きな制度設計はしていくべきだと思っているんです。

 その点、どうお感じになりますか。

福本政府参考人 お答えいたします。

 水道事業を取り巻く環境は、先生からもるるお話がありましたし、私からも今まで答弁申し上げたとおりでありますけれども、まず、水道事業、基本は独立採算で、料金で行うということでありますが、取り巻く環境としては、人口減少が進むことにより料金収入が減少していくこと、あるいは、費用という面では、更新費用の増加が見込まれるという中で、今後の水道事業の持続性確保ということについては課題が、今後新たなものが出てくるのではないかというふうに思っております。

 そのためには、各自治体の事業でありますけれども、国全体としても、自治体の取り組みを促進する、あるいは的確なものにしていくという観点から、一つには、将来にわたる事業の費用それから財源確保をどうするかという点で、資産管理、アセットマネジメントをきちっと計算するということと、それができた暁には、今度は先に進んで、それぞれの事業体で事業のあり方を考えていく必要が出てくると思います。

 例えば、施設を統廃合していくとか、ダウンサイジングすることによって更新費用を将来減らす方向があり得るのかどうかでありますとか、あるいは、収入の確保という点では、料金の改定を将来にわたりどうするのかというようなことが行われる必要があると思いまして、国としては、水道事業体においてそういう検討が行われるように促しているところでございます。

 さらに加えて、今後の水道事業のあり方という点では、市町村それぞれが単独で経営をしてきておるところが多いわけですけれども、今後の大きな課題ということになりますと、従来のやり方では難しいところも出てくるかもしれないと認識をしております。

 その意味では、水道事業の広域化、従来の事業の主体を越えて水道事業の広域化も進めていくというようなことも必要ではないかというふうに考えておりまして、こういうようなことも含めまして、水道事業が将来にわたって継続的に持続できるような取り組みを促してまいりたいと考えておるところでございます。

鷲尾委員 今おっしゃっていた広域化というのは一つのアイデアだと思うんですね。

 もう一つは、当然、広域化をするに当たってという視点でもいいですし、今の事業体の状況の中でもそうなんですけれども、やはり経営状態をうまく評価していくということも大事だと思うんです。どういう経営のあり方をしているのか、これだけ迫り来るいろいろな環境の変化の中で、ただ漫然と今までのようにやっていったらどうなのかなと。

 そこは、やはりプロの経営者なり、経営状態を評価する第三者なり外部の人材を入れるということも、私はこの水道事業については有効な手だと思っています。まだ、そういう手を打てば、持続可能な事業として成り立つし、かつ、地方の住民の皆さんにも低価格な水道料金で供給できるんじゃないかというふうに思っております。そういう外部からの経営状態の評価が私は必要だと思っていますけれども、その認識について問いたいということが一つ。

 もう一つは、公営企業への資金供給。公営企業へは資金供給しているんですよね。総務省もしているし、あるいは財務省も財投を通じてしています。こういった、外部からの資金供給者としての規律づけも、経営環境、経営状態をチェックするという部分で一つ重要な点だと思っています。

 ですから、外部の経営状態の評価を一つ質問したいのと、それから資金供給者としての規律づけ、今どういうことを行っているか、今後役割が大きくなってくるんじゃないかというところの認識、この二点について問いたいと思います。

亀水政府参考人 お答えいたします。

 答弁に先立ちまして、先ほどの答弁の中で、私、一般会計繰り出し金の根拠につきまして、地方財政法と申し上げましたが、地方公営企業法の誤りでございまして、その中で、その性質上企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費、さらには、その公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費につきまして、一般会計が負担をするということにされているところでございます。

 続きまして、外部からの経営状況評価という点についてでございますけれども、水道事業を将来にわたりまして安定的に経営していくためには、地域の実情を踏まえた中長期的な経営戦略を策定し、施設の統廃合、長寿命化等による投資の水準の見直し、必要な投資額を賄うための財源の確保等、徹底した効率化、経営健全化に取り組むことにより経営基盤の強化を図っていくことが求められると考えております。

 このため、総務省におきましては、平成二十六年八月に公営企業の経営に当たっての留意事項という通知を発出いたしまして、公営企業に対しまして、経営戦略の策定と、それに基づく徹底した効率化、経営健全化の取り組み等を要請しているところでございます。

 また、この通知におきまして、経営戦略の策定や事後検証、更新等に当たりましては、議会、住民に対して適切な説明を行い、理解を得るとともに、外部有識者の知見を活用することが望ましい旨を示しているところでございます。

 総務省といたしましては、中長期的な視点に立った効率化、経営健全化の取り組みが進むよう、今後とも必要な助言、情報提供の支援を行ってまいりたいと考えております。

 それから、資金の貸し手としてのチェックということでございます。

 地方公共団体が地方公共団体金融機構の資金を借りて地方債を発行する場合には、まず総務大臣または各都道府県知事の同意または許可が必要とされておりまして、その際に、事業計画や借り入れの適法性とともに、経営状況等の確認がなされているところでございます。

 さらに、地方公共団体金融機構におきましては、このことを前提といたしまして、経営状況等を把握するために、決算情報等に基づきヒアリングを行うとともに、貸付事業の実施状況等を確認するため、実地調査を実施しております。

 また、貸付先として特に経営状況が厳しいと考えられる経営健全化企業等に対しては、経営健全化計画等の内容を確認し、決算データ、貸付残高による財務分析等を行った上で、経営健全化の取り組みを確認しているところでございます。

 また、総務省といたしましては、地方公共団体に対しまして、水道事業の経営の健全化を進めるために、水道事業経営指標等を活用してみずからの経営状況の把握等に努めるとともに、経営戦略を策定して計画的な経営基盤の強化等に取り組むことを要請しているものでございます。

菅原副大臣 今、総務省からお答えがありましたとおり、地方債制度を所管する財務省といたしましても、公営企業、地方公共団体の財務状況をしっかりと把握した上で、財務の健全性確保の観点から、適時適切な助言を行っていきたいと思っております。

 ちなみに、平成二十七年度当初予算においては、この水道事業に関しまして、財政融資資金、二千三百三十七億円計上いたしております。

 あくまでも債権者という財務省の立場からすると、水道事業を初めとした公営企業の経営状況を把握するために、地方公共団体に対する実地監査を行い、かつ、地方公共団体の財務全般の健全性を確認するためにも財務状況の把握を行っております。

 いずれにしても、この財政融資資金、償還確実性というものをしっかり確保するとともに、公営企業の経営管理の効率化や地方公共団体の財務の健全化に関するアドバイスを行うなど、適切なコンサルティングを実施していきたいと思っております。

鷲尾委員 こういった水道事業は、将来的に大変な状況になるのではないかと言われておりますので、そこは政府としてしっかり取り組んでいただきたいし、今申し上げたように、さまざまな経営状態のチェックをやっていただきたいなというふうに思っております。

 先ほど総務省から答弁がありましたけれども、こういう公営企業の性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費については補填が認められてしまうので、やはり不断の努力が大事であるし、そういったところをコントロールしていかなければ、結局は財政負担がふえてしまうというのが厳しい現実なのかなと思っております。

 ぜひ、そういうコントロールを含めて頑張っていただきたいなと思っておりますが、一言、大臣からコメントをいただいてもいいですか。

麻生国務大臣 鷲尾先生御存じのように、一義的には、水道事業というものは市町村が経営する。これは水道法に書いておるんですから、厚生省とか我々みたいなのが直接関係しているわけでもありませんから、これは間違いなく経営をやる。市町村長にそんな経営能力があるかというのは全然別の話なんですよ、これは。物すごく難しい話ですよ、これは。

 今まではそんなことは考えなくてよかったけれども、だんだんこれから考えなくちゃいけなくなります、人が減るんだから。配管は古くなってくるわ何はする、一体どうするんだよといって、では、町村合併をやってちゃんと水道事業だけうまくやるかというようなセンスがあるかといえば、そんなセンスのあるやつは、じっと町長になんかいなくて大体国会議員に出てきちゃったりするものだから、そういうのがいなくなっちゃうんですよ。蒲郡なんというところにいれば、蒲郡の水道は立派だったんだろうけれども。これはすごく大事なところです。

 しかし、私がもっと気になりますのは、水道事業というのは、ちょっと話が脇道にそれるようで恐縮ですけれども、すごく日本の水というのはいいんですよ。だからウォシュレットがこれだけ発達したんですよ。アメリカだってどこだって、ウォシュレットが発達しない最大の理由は、水道の水が悪いからでしょう。日本の場合は、水がよ過ぎるぐらいいいものだから、上水道に使えるぐらいいいものだからウォシュレットがこれだけ普及した。はっきりしています。

 その水道の質がどんどん悪くなっていったら非常に大きな問題なのであって、私どもとしては、これはきちっと経営というセンスを入れないかぬという感じになりつつあるというのは間違いないことかなと思って、関心を持って見ていかねばならぬところだと思っております。

鷲尾委員 大臣の御答弁を聞きまして、我が意を得たりというところでございますので、ぜひしっかり取り組んでいただけたらなと思っております。

 質問を終わります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木でございます。

 以前、しばらくの間は、生活の党の鈴木で質問させていただいたわけでありますが、古巣に戻って、また初心に返って、しっかりと頑張ってまいりたいというふうに思います。

 議題となっております所得税法等の一部を改正する法律案、そしてまた衆法で出されております格差是正及び経済成長のために講ずべき税制上の措置等に関する法律案、この二案について御質問させていただきたいと思います。

 話はかわりますけれども、きょうは、七十年前、東京大空襲と申しますか、十万人の方々がお亡くなりになったという日でもあります。それからまた、あすは御案内のように東日本大震災の発災ということで、本当に多くの方々の犠牲があったわけであります。そんな中で、今、私たちはこの法律案を審議しておるわけであります。

 七十年前ということでありますけれども、本当に、どういう思いでお亡くなりになった方の気持ちを考えていけばいいのか。それはやはり、これからの七十年と言わず百年先を考えて、この国家が将来にわたって安寧な国であるということに持っていくのが我々の責務ではないのかな、このように思っておるわけでございます。

 今国会と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、予算審議の最大のポイントというのは、幾つかありますけれども、その中の一つはやはり消費税ということになるというふうに思います。冒頭、その消費税について少しお話をさせていただきたい、このように思っておるところであります。

 まず、消費税収の使い道、それからその実効性の確保というところで質問に入ってまいりたいと思うんです。

 民主党の対案でありますけれども、消費税の収入については、地方交付税法の定めるところによるほか、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するために要する経費のみに充てるということを明確にする、このようにされておるわけであります。もちろん、現行の消費税法でも同様に規定されておるわけですが。

 この二つの法案の大きな違いというのは、先ほど少し声に力を入れて申し上げました、のみという、それ以外に使わないという強いところが、字数でいえばたった二文字でありますけれども、私はこれは非常に大きな意味がある、このように思っておるわけであります。

 現行の消費税は、国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等からというふうに書かれておりまして、社会保障目的税化が図られているのは御案内のとおりであります。つまり、消費税収の全額を社会保障費用に充てるということを約束した上で国民の皆さんに御負担をいただいておる、こういうことなわけであります。したがって、私は、その約束をたがえるといいますか、間違えることは絶対に許されない、こういう観点であるわけであります。

 さはさりながら、消費税増税分というのは不要不急な公共事業などに充てる、現実はそういうふうにされておるわけでありますけれども、それが果たして無駄なく使われておるのかどうか、ここのところがやはり国民の、納税する側のポイントになってきておるのではないのかな、このように思います。

 こうした国民の皆さんの不信感を払拭するためにも、民主党の対案は、先ほどから言っておりますように、社会保障のみに使うという目的をより明確化されておる、このように思うわけでありますが、社会保障の安定財源確保や財政健全化のための施策に係る歳出以外の歳出を増加させることのないようにしていかなくてはならない、このように思います。

 そこで、民主党の改正案の実効性を確保するための具体的な方策について衆法の提出者にお伺いをさせていただき、その後、大臣から御答弁をいただきたいと思います。

 先に、提出者、お願いします。

古川(元)議員 お答えいたします。

 我々が提出をいたしました対案におきましては、今、鈴木委員から御指摘がございましたように、消費税法の第一条の第二項を改正しまして、消費税収は社会保障四経費のみにしか使えない、のみという二文字でありますけれども、そこを明確化する。同時に、さらにそれを法制上、もう一つたがをはめるという意味で、十二条におきまして、消費税引き上げによって生じた財政余力によって、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化のための施策に係る歳出以外の歳出を増加させてはならない、そういう規定も置かせていただきました。

 この実効性の担保というのは、私どもはやはり、法律でこのようにきちんとたがをはめる、明確化するということが、私は最も大きな実効性の担保になると思います。

 委員もちょっと思い出していただきますと、私どもの政権で社会保障・税一体改革に踏み出した。そのまさにきっかけは何かといえば、ここにお座りになっていらっしゃいます麻生財務大臣が総理のときに出されました改正所得税法の附則百四条で、一一年度までに消費税を含む税制の抜本的な改革についての必要な法制上の措置を講ずるという、この規定があったわけでございます。これは、我々の政権ではなくて、自民党政権のもとで定められた法律ではございましたけれども、行政というのはやはり法律に基づいて行わねばいけないということであります。

 私ども、消費税については、選挙のときにマニフェストで約束したものではなかったわけでありますが、しかし、法律で規定されているということは、政権を担当している者としては、やはりそこは法に基づいて行政というものは行わねばいけない、そうした視点、そうした立場に立ちまして、この法に基づいて社会保障・税一体改革に取り組んで、そして消費税の増税を含む税制の抜本改革と社会保障制度改革、この一体改革というものが最終的には三党合意という形で与野党の合意を得て実現に至ったわけであります。

 そういった意味では、やはり法で規定するというのは極めて重い意味でございまして、この安倍政権になってから、先ほど委員の御指摘にあったように、消費税の増税分が公共事業等に回っているんじゃないか、そういう疑念も国民の間に多く持たれているところであります。そういった意味でも、そういうことがゆめゆめないように、法でこのような形で明確化し、かつ、もう一段のたがをはめるということは実効性の担保という意味で極めて重要なものであるというふうに考えております。

鈴木(克)委員 大臣、先ほど、国民の不信感とか、不要不急な公共事業に使われているんじゃないか、こういうことを申し上げたわけでありますけれども、いや、そうではないんだということであるなら、やはりそこのところの国民の不信感を払拭する、させるためにも、ぜひひとつ大臣の今のこの議論に対するお考えをいただきたい、このように思います。

麻生国務大臣 御存じのように、消費税率引き上げによります増収分は全額社会保障財源化し、社会保障の充実、安定化に充てる。消費税収の使途は、法律や予算総則に明記することによって既にこのことを明確にしておりまして、社会保障以外の使途に充てるということはないということであります。

 したがって、消費税の社会保障目的税化につきましては、もう既に制度上担保が十分なされている、我々はそう考えております。事実、そのように使っておりますし。今後も、消費税収の使途につきまして、御指摘のありましたように、国民の理解が得られるように丁寧な説明を行うということは努めていかねばならぬところだと思っております。

鈴木(克)委員 いずれにしても、ここの若干の見解の相違というか、国民の側に立ってみると、約束どおり社会保障に全て使われていないんじゃないかという、いわゆる不信感というものが私はやはりあるんじゃないかなと思います。

 そこで、今大臣がおっしゃったように、まさにそこのところをきちっと国民に対して丁寧に御説明されて、そして国民の納得をもらうべく、本当にこの消費税というのは大きな問題でありますので、さらに御努力をいただきたいというふうに思っておるところでございます。

 では、これはこのぐらいにしまして、次に、先ほどもちょっと鷲尾委員の方からありましたけれども、逆進性の緩和策ということで議論をさせていただきたいと思うんです。

 民主党の対案では、消費税の逆進性を緩和する観点から、給付つき税額控除の導入について検討を加えた上で、必要に応じ、複数税率などの施策の導入について検討を加える旨が規定されておるというふうに見ております。つまり、従来から民主党が主張してきたとおり、消費税の還付措置である給付つき税額控除を優先的に検討すべきであるということだと理解をしておるわけであります。

 先ほど大分議論がされたわけでありますけれども、与党で検討されている軽減税率について、幾つかの課題があるというふうに思うんです。

 一つは、高所得者ほど負担軽減額が大きくなる。それから二つ目が、対象品目の線引きが困難で、利権発生のもとになる可能性がある。三つ目に、中小事業者の負担が増加する、先ほどお話があったとおりであります。四つ目に、巨額の財源の穴埋めが必要になり、標準税率が高くなる可能性があるというような、さまざまな問題が指摘をされておるわけです。

 ただ、一方で、給付つき税額控除も完璧な制度というわけにはいかなくて、例えば、軽減税率制度と比較して仕組みが複雑になる可能性がある。二つ目として、対象となる方の範囲や給付水準をどのように設定するのか。それから三つ目として、対象となる方の範囲が決まったとしても、その方の所得などの把握には限界があるのではないかというようなことも指摘をされておるわけであります。

 しかしながら、来年から利用開始が予定されております番号制度というのは所得把握の状況をより向上させることになるのではないかなというふうに思っておりますし、期待をしておるわけであります。つまり、より効果的な逆進性緩和策を選択することが政治の責任だというふうに思うんですが、この軽減税率を単にわかりやすいという理由で選択するのはいかがなものかなというふうに思っております。

 ここで、消費税の逆進性緩和のあり方について、提出者の方から御答弁をいただきたい、お考えをお示しいただきたいと思います。

古川(元)議員 お答えいたします。

 消費税の逆進性対策につきましては、私どもも、消費税というのが、消費者の人たち、国民からしますと、低所得の人の方がその支出に占める税負担の割合が高所得の人たちよりも多いという意味で逆進性がある、やはりその逆進性の緩和策は行っていかなければいけないという立場であります。

 しかし、その逆進性の緩和になる策として、三党合意でまとめました社会保障・税一体改革の抜本改革法の中では、低所得者対策として、給付つき税額控除と複数税率、この二つの両方を検討することが法定化されております。

 委員から御指摘がございましたように、その両方の制度にさまざまな利点、そしてまたデメリット、問題点もあるというのは事実でございますので、そういった意味では、この両者を均等にきちんと検討して比較考量した上で、どちらがこの逆進性対策という趣旨に合うのか、やはりそうした視点から考えるということがまず非常に重要なことだと思っています。

 そうした視点から考えてみますと、先ほど委員からも御指摘がございましたように、実は軽減税率、複数税率というものは、聞いたところだけでいいますと、低所得者に優しいように聞こえるんですけれども、実際には、これはむしろ軽減税率の物品を入れることによって、それから恩恵を受けるのは、やはり高所得者の方が結果的に恩恵が大きくなってしまう。ですから、実質的な逆進性対策。ある試算によりますと、軽減税率、複数税率を入れることによって各所得階層の消費税負担割合がどう減るかというふうに見ていきますと、複数税率の場合には各階層が均等に減るような形になって、負担割合でいえば、高所得者の人の負担の減る割合の方がむしろ低所得者よりも大きくなっている、そういう試算もございます。ですから、こういう試算も含めてやはり検討していかなければいけない。

 私どもが申し上げております消費税還付措置、いわゆる給付つき税額控除でございますが、これは、低所得の人たちを中心に実質的に給付を行うということでございます。今行われています簡素な給付措置、これをもう少し拡充するような形で行う。納付すべき税額がある人については、税額分は引いて、残りがあれば給付する。だからこそ給付つき税額控除というふうに言っているわけでございまして、そういった意味ではこれは給付措置の延長線上にあるということが言えるわけでございますから、そういった意味で、限られた財源の中で低所得者を中心にその負担割合を減らすという効果が、私どもは、消費税額還付、いわゆる給付つき税額控除の方が大きいのではないかというふうに考えております。

 また、もう一つ考えていかなければいけないのは、複数税率を入れるということは、消費税の仕組みそのものを根本から変えることにつながってまいります。

 もともと、消費税の導入に至る経緯の中では、消費税導入以前に課税されておりました個別の間接税、これが当時はいわゆるぜいたく品というものに課税するという形で課税されておったんですけれども、何がぜいたく品かというのが、価値観が多様化してくる、豊かになってくる中でそれが非常に困難になって、ぜいたく品かどうかというところで課税するかしないかを決めるのは、むしろ税制をゆがめて、また不公平になる、そうしたまさにこの個別間接税の限界が、ぜいたく品かどうかということではなくて、やはりこれは価格に応じて負担をしてもらう、そういう消費税の導入に至ったということであります。

 今議論されております複数税率というのは、今度はぜいたく品ではなくて生活必需品という概念で、それを軽減するということを言っているわけであります。言葉はぜいたく品か生活必需品かというふうに違いますけれども、何が生活必需品か。今、与党などでは米、みそ、しょうゆという話があったりするようでありますが、米が出れば、ではパンはどうだとか、パンがどうならうどんはどうかとか、そういう話になってくるわけであります。

 やはり、そういった意味では、個別間接税ではもう対処し切れない、不公平になるということ、これが消費税の導入に至ったということとまさに同じ問題が出てくるわけでありまして、これは消費税の仕組みそのものを根本から大きく変えることにつながってしまう、極めて慎重な検討が必要じゃないか。

 私どもが提案しております消費税額還付、いわゆる給付つき税額控除は、所得税の世界の中で、今は所得控除がございますが、これに給付つきの税額控除を導入するという仕組みでございますので、消費税の仕組みそのものに変更を加えるものではございません。そういった意味では、消費税導入の趣旨にもこれは適しているものであって、そうした観点からも、先ほど委員からほかにも御指摘がございましたさまざまな観点、これをしっかり、両方を法律に基づいて検討する、そのことをこの国会の場でもしっかりやって、国民の皆様方に、両案のどちらが本当にいいのか、そして、将来に禍根を残さない、先人たちがこの消費税導入に費やしたその汗と労苦、やはり先人の方々のそういうものをしっかりもう一度私どもは今ここで検証した上で、その上で後世に憂いがないように、ここでしっかりとやはり私どもは検討する必要があるんじゃないか、そのように考えております。

鈴木(克)委員 提出者の逆進性対策に対する考え方はよくわかりました。

 それに対して、政府の方のこれに対する考え方をお示しいただけたらと思います。

麻生国務大臣 消費税の軽減税率制度については、御存じのように、さまざまな御意見がある中で、例えば、昨年の与党税制協議会における各団体からのヒアリングの中におきましては、痛税感を緩和するといった御意見が確かにある一方、高所得者にも恩恵が及ぶのではないかという御懸念の声が上がったものだと承知をいたしております。

 他方、給付つき税額控除につきましては、間違いなく低所得者に絞った効率的な支援が可能になるという議論がありますのは当然ですが、他方で、所得や資産の把握というものの問題、また執行面で対応せないかぬ、各市町村でやりますので、市町村での対応の可能性などの課題があるものだと私ども承知をいたしておるところであります。

 当然のこととして、背番号とかいろいろな表現がありますが、マイナンバーというものが入ってまいりますが、入ってきた後も、海外での所得とか、また無記名の金融資産、そういったものなど、所得とか資産の把握というのは、一定の限界が残ることははっきりしておると思っております。

 したがいまして、この消費税率引き上げに伴います低所得者への配慮というものにつきましては、与党において軽減税率の話が進められているところでもあり、給付つきの話、いろいろやっておられるのはよく知っておるところでありますが、いずれにいたしましても、今、与党の議論の最中だと思っておりますので、その内容を見守ってまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 今、お二方の御答弁を聞いておって、やはりこれは、今後相当しっかりと議論をしていく、ある意味では非常に重要なポイントであるというふうに聞かせていただきました。これからも、この委員会も通じ、また国会を通じてこの議論をしっかりさせていただきたい、このように思っておるところであります。

 それでは、提出者は、もう一問伺って、御退席いただいて結構ですが、法人税改革についてお尋ねをしたいと思います。

 政府提出の所得税法等改正案は、言うまでもありませんけれども、法人税の現行税率を二五・五%であるのを二三・九%に下げる、それから、それにあわせて地方税の法人事業税も段階的に下げていく、その結果、法人実効税率が現行の三四・六二%から平成二十八年度には三一・三三%となるということであります。

 一方、税率引き下げに伴う財源確保については、欠損金の繰越控除、受取配当等益金の不算入、それから租税特別措置の見直し等を行うというふうにされておるほかに、地方税の外形標準課税の見直しを行う、こういうことであります。

 そもそも法人税改革はどのような趣旨で行われているのかということでありますが、与党の大綱では、「より広く負担を分かち合い、「稼ぐ力」のある企業や企業所得の計上に前向きな企業の税負担を軽減することで、企業の収益力の改善に向けた投資や新たな技術開発等への挑戦がより積極的になり、それが成長につながっていくように、法人課税の構造改革を行うものである。」このようにされておるわけです。

 問題は、果たして成長につながる改革になっていくのかどうかということであります。

 先ほど来お話をさせていただいておりますように、いわゆる課税ベースの拡大、税率引き下げによって、負担原資を上回る、負担増が生じる懸念もある、さらに、外形標準課税の拡大というのは雇用の維持拡大に悪影響を与えるおそれがある、それから、企業収益の増加を雇用拡大に結びつけるとしてきたアベノミクスとは矛盾するんじゃないかというような考え方があるわけであります。

 そこで、民主党の対案で、復興特別法人税の一年前倒し廃止の政策的な効果を検証した上で、雇用及び国内投資の拡大の観点から、法人の実効税率の引き下げ、社会保険料に係る事業主の負担のあり方等について検討を行うものというふうにされておると思います。

 このことについて、提出者の見解をお伺いしたいというふうに思います。

古川(元)議員 お答えいたします。

 私どもの基本的な考え方は、法人実効税率、これは、できることであれば、できるだけ引き下げていきたいという考え方には立っております。実際に、私どもの政権のもとで、法人実効税率の五%引き下げ、そうした措置もとらせていただいたわけでございます。

 しかし、現時点におきましては、ちょうど、復興特別法人税の前倒し廃止によって、私どもで決めた五%の引き下げが行われたばかりのところでございます。今まさにそういうシステムが始まったばかりでありますから、この法人実効税率の引き下げによってどれだけの効果が出てくるのか、やはりまずはその推移というものをちょっと検証する必要があるんじゃないか。

 まだ検証もないうちに、今回、外形標準課税の拡大や研究開発税制の圧縮あるいは受取配当の益金不算入割合の縮小を行うということは、むしろ企業の活動の足を引っ張ることになって、今、経済成長をまさに国を挙げて目指していこうというときに本末転倒になるんじゃないかという委員の御指摘のとおりのところから、まずここは、五%引き下げの効果というものを見据えた上で、同時に、やはりもう少し法人税のあり方そのものを検討していく必要があるんじゃないか。

 法人というのは雇用の場を提供するわけであります。今、日本の法人は、中小法人ですと七割を超えるところが赤字と言われておるわけでありますけれども、こういう法人をどう黒字化していくか。

 これは税制だけじゃなくて、ほかの問題としてやっていかなきゃいけないことだと思いますけれども、黒字化を促進するための措置であるとか、あるいは、新しい起業を促進して、新しい起業の方が新しい雇用を生み出す力も大きいというのは統計的にも明らかになっておりますので、雇用をつくり出すということでは、新しい起業をどうつくり出していくかということ。あるいは、今、オーナー企業を中心に、事業承継というものが大きな問題になっております。事業がきちんと承継されるような仕組みをつくっていくことによって、事業が安定的に継続できる、そのことによって雇用も守られる。

 やはり、そういった意味では、単に法人実効税率の引き下げだけではなくて、税制のみならず、企業活動をめぐるトータルな、そうした施策を包括的に行っていく必要があるだろうと考えております。

 私どもは、そうしたところも念頭に置きながら、法人の活動が活発になって、もうけている企業がふえて、雇用の場もきちんと確保されて、働く人たちがちゃんと十分な賃金をもらって、給料をもらって、そして消費に回せる。やはり、そうした状況をつくっていく、そうした視点から、私どもは法人税改革を行っていくべきであるというふうに考えております。

鈴木(克)委員 提出者の法人税改革についての考え方はよくわかりました。では、これで、お約束の時間でございますので、御退席いただいて結構でございます。

 続いて話を進めさせていただきますが、今度は、大臣初め皆さんに伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず、法人実効税率の先行減税がなされるわけでありますけれども、この効果について順次伺っていきたいというふうに思います。

 安倍政権は、法人税改革を経済の好循環確立のための重要な柱として位置づけられて、与党大綱では、「平成二十七年度を初年度とし、以後数年で、法人実効税率を二〇%台まで引き下げることを目指す。」というふうにおっしゃっています。

 政府提出の所得税法等改正案では、その第一段階として、法人税率を二五・五%から二三・九%に引き下げるとともに、その財源確保のための課税ベースの拡大として、欠損金繰越控除の見直しや租税特別措置の見直し等を行うというふうにされておるわけであります。その結果、二年間で二千億円の先行減税にはなりますが、多年度税収中立を何とか確保した形となっているわけであります。

 与党大綱では、経済の好循環の実現を力強く後押しするために税率引き下げを先行するとしていますが、先行減税分が企業の収益力の改善に向けた後押しや技術開発または積極的な賃上げに向かうかどうかは非常に不透明であります。

 そこで、先行減税の規模を二年間で二千億円とされたこの金額の根拠、それから先行減税による経済の好循環の実現の実効性、このことについて政府としてはどのようにお考えになっているのか、また、どのように見積もってみえるのか、お示しをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 御記憶のように、前回の民主党政権のときにも法人税率の引き下げを行われておりますけれども、その際にはたしか財源の確保が十分でなかったんだと記憶しますが、今回の二十七年度の税制改正では、財政健全化の取り組みの整合性を踏まえないかぬということで、欠損金の繰越控除の見直しとか法人事業税の外形標準課税の拡大といったことなどによって、税率引き下げの財源というものをまずはしっかりと確保いたしております。

 他方、大企業向けに欠損金の繰越控除の限度の引き下げを行うこととしておりますが、負担増となります企業への影響にも配慮して、段階的に見直しを行うということとしておりまして、この改革によって財源がフルに確保されることになりますのは平成二十九年度以降ということになります。

 二十七年度の税制改正では、このような形で財源が確保されていくことを前提に、経済の好循環を早期に実現することを目指して、税率引き下げを二十九年度を待たずに先行的に行うということとしたものでありまして、その差し引きの結果として、企業部門に対し、二十七年度、二十八年度において、各年度、約二千億円の先行減税になると見込んでいるものであります。

 なお、二十七年度予算に関しましては、こうした先行減税の影響というものを織り込んだ上で、歳出全般にわたって徹底的な見直しを行うことによって、二〇一五年度の財政健全化目標、プライマリーバランスの半減目標を達成するという予算としたところであります。

 以上です。

鈴木(克)委員 二年間二千億円とされた根拠がそこにあるというお話でありました。このことはわかったわけでありますが、問題は、本当に経済が好循環に入っていくのかどうか、そこのところにかかってくるということだと思っております。また、好循環に入るように最大限の御努力をいただかなきゃいけないというふうに思っておるわけであります。

 次に、法人税改革だけでの財源確保の限界というものについて、少し議論をさせていただきたいと思います。

 与党大綱では、「第二段階として、平成二十八年度税制改正においても、課税ベースの拡大等により財源を確保して、平成二十八年度における税率引下げ幅の更なる上乗せを図る。」「その後の年度の税制改正においても、引き続き、法人実効税率を二〇%台まで引き下げることを目指して改革を継続する。」このように言われておるわけであります。

 したがって、法人実効税率をめぐる議論においては、今後も税率引き下げの財源確保策が大きな焦点の一つとなるというふうに思われるわけでありますが、問題は、先ほどのお話のように、その財源を十分に確保することができるのかということであります。

 例えば、与党大綱で示されている課税ベースの拡大等の今後の検討としては、外形標準課税のさらなる拡大のほか、所得拡大促進税制や研究開発税制など租税特別措置の見直しや、減価償却の定額法への一本化等が挙げられておるわけであります。

 外形標準課税については、税源の偏在と地方法人課税の見直しの中でどのように位置づけをされていくのか、中小法人への適用の拡大の問題等があるわけであります。研究開発税制は、法人関係租税特別措置としても最も減税額が多く、それだけ利用されているということでありますから、見直しは容易ではない、このように思うわけであります。

 このように、税率引き下げのための恒久財源確保の策定については相当な困難が見込まれるというふうに思われるんですが、政府は、法人実効税率引き下げの財源は法人課税の改革のみで捻出されるおつもりなのか、それとも他の税目も視野に入れて確保されるおつもりなのか、また、財源が確保できるならば、法人税率はどの程度まで引き下げたいというふうにお考えになっておるのか、その点をお示しいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今回のいわゆる法人税改革に当たりましては、制度改革を通じた課税ベース拡大によって税率の引き下げの財源をしっかりと確保することとしておりますが、基本的に、法人税に係る制度改革による財源の確保を念頭に置いております。

 来年度以降の税制改正におきましても、税率の引き下げ、また財源の確保に向けて、例えば、大法人向けの法人事業税について外形標準課税をさらに拡大させていただきたいとか、また特別措置の見直し、いわゆる租特の見直しとかを進めさせていただきたい等々いろいろ申し上げておりますけれども、幅広く検討を進めてまいりたいと考えております。

 税率の水準につきましては、現行では、国と地方を通じたいわゆる法人実効税率の水準というものは御存じのように三四・六二%であろうと存じますが、今回の二十七年度の改正におきましてこれを三二・一一%、二十八年度には三一・三三%への引き下げを行うということを決定しておりまして、今後数年で法人実効税率を二〇%台まで引き下げることを目指して、これからさらに取り組んでいかねばならぬところだと思っております。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 法人税改革の最後として、税制改革による財源確保の限界というものについて伺ってまいりたいと思うんです。

 仮に法人税以外の税目での財源確保を図るとしても、所得税については最高税率の引き上げや高所得者の給与所得控除の段階的引き下げが行われ、相続税についても最高税率の引き上げや基礎控除の縮小などが本年から始まっており、さらなる負担増についてどのようにお願いをするかが問題となっているところであります。

 また、消費税は福祉目的税化が図られていますので、法人税減税の財源としては使えないわけであります。それどころか、軽減税率を導入するということであるならば、対象品目の線引きいかんで、どのように線引きをするかということで、一%当たり最大六千六百億の減収額が生ずるというふうに試算をされておるわけであります。こうした財源確保の問題も生ずるわけであります。

 このように考えていくと、今後、法人実効税率を引き下げることができるとしても、引き下げ幅はわずかな水準にとどまり、国際的競争力のある法人実効税率水準に引き下げるためには、社会保障政策などで恒久的な歳出削減を行うか、国債の発行などに頼らざるを得なくなるのではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。大臣の見解をお伺いします。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、法人税改革を今後とも継続していく、これが本当に継続していくことになるのかどうかというのは、世界的に見ますと法人税は引き下げ過ぎた、みんなで引き下げ競争をやっても意味がない、みんなでそろそろ考えないかぬではないかという意見がいわゆるOECDとかG7でいろいろ出てきておりますので、今後とも続くかというのは、単純にそう続くだけとは思いません。

 いずれにいたしましても、仮に法人税改革というものを継続していくということになりました場合は、税率引き上げの財源につきましては、制度改革を通じた課税ベースの拡大というものをやってしっかり確保していくというのは先ほど申し上げたとおりですが、御指摘のように、社会保障改革により確保されておりますこの財源を法人実効税率の引き下げの財源にするとか、また、確たる財源の確信も持てずに、安易に赤字国債を発行して法人実効税率を引き下げるなどといった考え方だけは全くありません。

鈴木(克)委員 いずれにしても、このことも今後しっかりと議論をしていく必要があるというふうに思っております。

 次に移らせていただきますが、地方拠点強化税制について伺います。六点にわたって順次お伺いしたいというふうに思っています。

 いずれにいたしましても、この制度は、御案内のように、企業がその本社機能を東京圏から地方に移転したり、地方においてその本社機能等を拡充する取り組みをする場合の税制上の措置として創設が提案されているものと承知をいたしております。

 まず、改めて、本税制措置の創設に至った背景、経緯、そして制度の趣旨についてお伺いをしていきたいと思います。

若井政府参考人 お答えを申し上げます。

 東京一極集中を是正し、地方での安定した良質な雇用を確保するためには、本社機能の東京からの移転を含む企業の地方拠点の強化を促進する必要がございます。また、企業側におきましても、優秀な人材を採用したい、研究所を工場と併設することで効率化を図りたい、防災の観点から拠点を分散したい、こういった理由によりまして地方の拠点を強化する動きが見られているところでございます。

 このため、今次国会におきまして地域再生法の改正案を提出し、各地域の計画的、戦略的な企業誘致の取り組みとあわせて企業を支援する枠組みを整備することといたしたいと考えてございます。

 その一環といたしまして、都道府県知事が認定する企業の地方拠点強化に係る計画に基づいて、事務所、研修施設等の本社機能の移転、新増設を行う事業者に対して、オフィス設備に関する設備投資減税ですとか雇用促進税制の特例等の措置を講じることといたしてございます。

 本税制措置によりまして、企業の東京からの移転を促す契機とするとともに、東京一極集中を是正し、東京から地方への新しい人の流れを生み出すことを目指していくことといたしてございます。

鈴木(克)委員 この問題の背景とか狙いというのはよくわかったんですが、今おっしゃったように、そのように本当に東京の一極集中の排除が成功するかどうかということを見ていくと、幾つかの問題があるんですね。

 そこで、順次お尋ねをしたいというふうに思うんです。

 今お話がありました、都道府県の知事の認定を受けるために地方活力向上地域特定業務施設整備計画を作成する、こういうことであります。これは読むのも大変なぐらい長いわけでありますけれども。まず、この認定計画の作成を小規模企業者が本当にやろうというふうに思った場合は、人材そして事務負担能力という意味で私は非常に問題があると思うんですよ。したがって、本制度の利用というのは、やはり、認定計画の立案能力がある、ある一定規模以上の企業に結果的には限定されてきてしまうというふうに思うんですね。

 そこで、もう一点伺います。

 制度利用の容易さや利用の広がりという観点から、税制支援策の前提となる地域再生法の仕組みのあり方について、本当に今言われるように、東京一極集中を排除して、理想どおりこのことが進んでいくかどうか、私は非常に疑問を持っておるわけでありますけれども、その点についての御見解をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、鈴木先生、御自分で蒲郡でいろいろ企業誘致もされたんだと思いますのでよくおわかりと思いますが、税金を変えたぐらいで企業が本社を移転するなんて、そんなことはないですよ。そんなに企業をなめてもらっちゃ困るので、そんなものぐらいでちょこちょこやって、企業なんて行くわけがありませんよ。ちゃんと、しかるべき理由がなければ行けないです。よくよく計算してみたら東京にいるよりは地方にいた方が安く済むとか、地方にいてもインターネットとか交通手段とか通信網の発達でいろいろなものがオンでできるようになったとか、いろいろなものがあろうと思いますので。

 少なくとも、地方において、その地方自治体が、この企業に、ぜひこっちへ移ってきてもらいたい、そのためにうちにはこういうものがあるというような、工場誘致をするのと同じように、企業が出てきやすいようにその自治体が営業をする。企業に、ぜひ本社を、ここに出てきてもらいたいという営業をする。地方拠点強化にかかわるものは、きちんとした計画を、その企業と地方自治体と一緒にならなきゃできるわけがありません。それは、私らも何回もやったことがありますからよくわかります。そこの首長さんとの話は、よっぽどしっかりしたものができないと簡単にはできませんし、首長なんてまたすぐかわるかもしれぬから、これは当てにならないから、その下にいる助役ときちっと話ができる、ちゃんとそこまで詰めた上でやってくるんですよ。そういうことをしない限りはできない。

 私どもは、新増設を伴う企業が都道府県知事の認定を受けた場合とかいろいろ言っておりますけれども、こういったものに対して設備投資やら何やらいろいろするのは全然やぶさかじゃありませんが、企業がその気になってくれるかというところが一番大きな問題であり、地方にいる方も、うちはこのままいったら過疎化でどうにもならぬ、したがって思い切ってやるということをやらせていただくと、いろいろな意味で企業が出てきた。そういう面に関しては、交通網もよくなった。

 いろいろな理由でやらせていただいて、私らも自分の選挙区でやりましたからよくわかりますけれども、やっと人口が、企業が四つ出てきた、工場が進出してきた、でき始めたのはついこのごろの話なのであって、そういったことができますまでにはかなりの努力というものを自治体も挙げてやらないかぬし、町もやらないかぬし、そして、その企業に熱心に通っていろいろ話をして、その企業の希望に応えるというようなものがあった上に、税金その他のいろいろな補助というようなものがついてくるのじゃないか。そんな簡単なものではないというのは、御心配の点は、私らもよくそう思います。

 ただ、各自治体はいよいよ過疎化のためにもこれありで、だんだんだんだん人口十万を割りそうな町ということになってくると、これはかなり一生懸命になってきておられるように感じますので、私はそれはいいことなんだと思って、今がそのチャンスなんだと思って、ぜひこれを進めさせていただければと思っております。

鈴木(克)委員 大臣のおっしゃることは私もよくわかるんですね。最後におっしゃった、今がチャンスだということも本当にそのとおりだと思います。であるがゆえに、仏つくって魂入れず、形だけつくってこれはよしということでは私は許されないと思うんです。

 先ほど申し上げました、まず整備計画をつくる、これは、よっぽどきちっと、先ほど、首長もしっかりしておって、企業のトップもしっかりしておってというお話をされたわけでありますけれども、中小企業ではそれだけの計画をつくっていくだけの能力は、やはり残念ながら、ないというふうに私は思うんですね。したがって、そういう意味で、県知事の認定といっても、恐らくそこへ行くまでに投げてしまう、途中で頓挫してしまうという状況になってしまわないかなというふうに私は思って、心配をしておるわけであります。

 ただ、本当にもう最後のチャンスだということも事実でありますので、仏をつくった以上、しっかりと魂を入れていただいて、使い勝手のいいものにしていただく必要があるというふうに思うんです。

 そういう観点から、またちょっと具体的に伺っていきたいと思うんです。

 この対象となる地域から東京、中部、近畿の三大都市圏が除かれていますよね。この理由は、そういったところに本社機能が集中しておる、だからそこを除くんだということは、ある意味ではそのとおりかもしれませんけれども、しかし、この三地域の中でも、やはり自治体によっては一生懸命企業誘致をやろうとしておる自治体があるわけです。そういうところに対して、三大都市圏を除くということを最初から決めてしまえば、もうそこは努力のしようがないわけでありまして、その辺のところをどういうふうにお考えになっているのか、一遍、御担当から伺いたいなというふうに思っています。

 それから、複数の自治体に係るような場合はどのようにしていくのか。例えば、人口が一定規模なければいけないというような制約があるのか。いろいろと、入っていくと、かなり問題があるというふうに思うんですが、その辺のところを一々あれしませんけれども、本制度が地方創生の枠組みのもとで措置される税制上の支援措置でありながら、かえって地方の発展を阻害し、格差を拡大する可能性というものがあるのではないかというふうに思えてなりませんので、その辺のところ、少しお示しをいただきたいというふうに思います。

若井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど来、先生より、中小企業、小規模企業、こういった計画を策定する上に当たってなかなか難しいのではないか、こういうような御指摘もいただいてございます。

 私ども、地方創生を進める中におきまして、各自治体、地域の相談に乗る政府の職員といたしまして、地方創生コンシェルジュというものを八百名以上任命いたしてございます。こういった人員が、自治体の相談にしっかりと乗りながら計画をつくり、なおかつ中小企業についても御相談に乗るという点、しっかりと進めてまいりたいと思ってございます。

 それから、今御指摘のございました、三大都市圏を対象から除外しておるということでございます。

 先生の方からも、既に一定の集積があるからということではないかという御指摘もございました。私ども、今回の制度を設計するに当たりまして、具体的に、こういった東京圏、それから近畿圏中心部、中部圏中心部にどの程度事業所が集積しておるかということについて調査をいたしました。調査をいたしましたところ、やはり周辺の地域に比べればまだまだ人口、産業ともに集中している、こういう状況でございますので、したがいまして、こういった地域に新たに企業の本社機能を移転するということについて、あえて国が支援をするということについては必要がないのではないかということを判断いたしまして、今回の制度の設計をしたということでございます。

 もちろん、各自治体がそれぞれに企業の誘致を行う、こういったために自治体独自の制度を設けていただくことを何ら排除するものではございませんので、そういった形で地域の活性化を進めていただければよいと考えてございますし、それが東京一極集中の是正につながるのではないかと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 当然そういうお答えになってくるのかなと思うんですが、まだまだ幾つか問題があるというふうに私は思っていまして、移転対象拠点を本社機能に限定するというふうに書かれておるわけですよね。この部分について少しお話を伺いたいんです。

 さっき言ったように、地域再生法の特定業務施設であるということが要件とされておるわけですね。もちろん、整備計画に記載されておるということが前提ですけれども。このことは、本社機能ということでありますが、逆に、本社機能ではなくて、地方の雇用の創出効果を期待するということであるならば、工場設備も含めて幅広く地方へ移転するというふうにさせた方がより効果があるのではないかなと思うんです。

 なぜここで本社機能の移転にのみ対象を絞ったのか、そのところの理由を御説明いただきたいと思います。

若井政府参考人 お答えを申し上げます。

 工場設備について、地方への分散について支援をすべきではないか、こういう御質問でございますが、実は、工業再配置法、テクノポリス法、集積活性化法、そして企業立地促進法という法律、過去のものもございますけれども、政府といたしましては、従来から、こういった手段によりまして、工場等の地方での整備を推進してきたところでございます。これらの施策の結果として、既に、工場につきましては、ある程度地方で整備されてきたのではないかというふうに認識をいたしておるわけであります。

 他方、本社機能につきましては、都市部に集中しているといった現実がございますので、今回の制度をもちまして、地方における良質な雇用の創出を図り、地域の再生や地域の活性化を目指してまいりたいというふうに考えてございます。

 したがいまして、このため、本制度の対象となる施設を、本社機能を有する事務所、研究開発施設及び研修施設といたしまして、工場については除外してございます。

 ただし、工場立地を支援する制度といたしましては、既にございます企業立地促進法による支援制度というものがございます。そして、設備投資、生産設備の投資ということにつきましては、生産性向上設備投資促進税制、こういったものがございまして、これを活用していただくことができるというふうに考えてございます。

 こういった制度が相まって、企業の地方における拠点の強化を促進し、東京から地方への新しい人の流れを生み出すことが可能であるというふうに考えておるところでございます。

鈴木(克)委員 もう一遍、先ほどの大臣の御答弁をよくかみしめてもらいたいなというふうに僕は思うんですよ。

 本当に、移転をしようというと、人、物、金ですよね。企業にとって、これはもう大変な決定なんですよ。生半可なことじゃないですよね、一つ間違えば会社をぶっ潰すことになってしまうわけですから。そういう中で、私は、どれだけ政策的な効果があるのかなというふうに思うんです。移転をしようと考えておる企業の後押しぐらいにはなるかもしれませんけれども、新たなそういう意欲を起こさせるようなものではないんじゃないかなというふうに思えてなりません。

 本当にこの潜在的なニーズを掘り起こすという効果が期待できるのかどうか、また、この制度の利用をどの程度見込んでおるのか、その辺のところをちょっとお示しいただきたいと思います。

若井政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、先生御指摘のように、先ほど、地方拠点強化税制、この税制の政策効果だけで企業の移転が起こるわけではないという御指摘でございましたが、私どももそのように考えておるわけでございまして、これはやはり企業の、さまざまな地方公共団体が行うような環境整備でありますとか、そういったものと相まって効果を生じるものというふうに思ってございます。

 ただ、今回の地方拠点強化税制については、東京から移転するもののみならず、地方において本社機能を強化する、こういったものにつきましても対象としているところでございますので、そういう意味では、さまざまな形態があり得るものというふうに考えてございます。

 そして、利用の見込みについてということでのお尋ねでございました。

 そういった観点からいたしますと、税制の効果だけということではないわけではございますが、昨年十二月に閣議決定いたしました、まち・ひと・しごと創生総合戦略の中では、こうした企業の地方拠点強化に関する今後五年間の目標といたしまして、拠点の強化の件数として七千五百件、雇用者数については四万人の増というものを掲げておるものでございます。

鈴木(克)委員 もちろん期待をしておるから、大丈夫なのか、こういう問題もあるんじゃないかということを繰り返し言っておるわけでありますけれども、私は、足を引っ張るというか否定をするばかりではなくて、ぜひやってもらいたいということを提案したいんですが、それは自治体と企業とのマッチングなんですね。

 企業がどういうようなものを望んでおるのか、それからまた自治体がどういう企業を望んでおるのか、企業がどういうことを考えているのか、そのところを要するにマッチングさせなければ、これは本当に、申請しました、計画をつくりました、知事が認可しました、だけれども、私は結果的には成功しないということになると思います。全国で何例かは出てくるでしょうけれども、私は、何十例、何百例と出てくるような制度にはとても成長できないんじゃないかなというふうに思って、こんなことを言っておるわけであります。

 いずれにしましても、両者のニーズをマッチングする仕組みを構築するということは、地域再生法の活用はもとより、本特例措置の利用促進のためにも有効だ、このように思うわけでありますけれども、こういった仕組みをつくるお考えがあるのかどうか、それについてはどういうふうな対策を立ててみえるのか、そのところをお示しいただきたいと思います。

若井政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど、既にある仕組みといたしまして、工場立地を支援する企業立地促進法という法律があるということをお答え申し上げました。この法律におきましても、地方公共団体が計画をつくって企業誘致をするということでございますが、やはり、基本計画をつくるということによりまして、自治体としてどういう方針で企業誘致を進めるか、もしくは、そのための環境整備を図るかというようなことを、ある種、企業にアピールする効果が実際に出ているものというふうに認識をしてございます。

 例えば、本社の事例で申し上げれば、ある建設機械の製造企業が、本社機能を、一部でございます購買本部や従業員の研修施設を東京から石川県に移転をした例がございます。それに合わせて新工場を石川に建設し、現地採用を増加させたということでございます。この結果によりまして、地域での雇用がふえたということもありますが、その会社の女性社員は、結婚、出産、子育てを非常によい環境のもとで行うことができるようになったというようなことでございます。

 そういった事例というものを、これは一つの事例でありますけれども、まさに、そういった社員に対する生活環境の整備も含めて企業にアピールする、当然、事前にさまざまな御相談があったものと思いますけれども、そういったことを進めることによって、企業と自治体のマッチング、そして自治体から企業への情報発信というものが行われていくのではないかというふうに思ってございます。

 いずれにいたしましても、このような先行事例、好事例がこれからも生まれてまいりますように、国としては、税制上の優遇措置、税制については、しっかりと魂がこもるように進めさせていただきますけれども、自治体の側においてもしっかりと情報発信を進めていただくように、先ほど地方創生コンシェルジュの話もさせていただきました、こういった制度なども通じながら、自治体からの情報発信にもしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思ってございます。

鈴木(克)委員 時間も迫ってまいりますので、この問題は、最後に国家戦略特区との整合性についてお伺いをして、終わりたいと思います。

 地方拠点強化税制というのは、大都市圏から地方へ企業の移転を促すものだということであります。地域指定を活用した類似の制度として、国家戦略特区に係る税制上の措置が税制改正で創設されておりますよね。国家戦略特区の区域というのは、東京圏、関西圏など、地方拠点強化税制では対象外になる地域が指定をされておるわけです。

 ここで、一方では国家戦略特区ということで大都市圏への事業の集積が期待をされておりながら、今度の制度は、先ほど言ったように、逆を行っているわけですよね。この地方拠点強化税制といわゆる国家戦略特区との整合性ということ、このところをどういうふうにお考えになっておるのか、お示しをいただきたいと思います。

菅原副大臣 先ほど来、鈴木先生がお話しの地方拠点強化税制につきましては、まち・ひと・しごと創生法における東京圏への過度の集中の是正という政策目標、そして人口や産業が集中している地域へのさらなる集中を防ぐという観点を踏まえまして、東京圏、近畿圏中心部、中部圏中心部以外の地域を支援対象とした上で、そうした地域に本社機能などを移転したり拡充しようとする、そういう企業を支援するものであります。

 一方で、お話にありました、二十六年度税制改正で創設されました国家戦略特区関係の税制は、御指摘の東京圏、関西圏、新潟、沖縄、兵庫、福岡、こうした六つの特区を対象とした上で、産業の国際競争力の強化といったものを行うため、それのための企業を対象として設備投資減税などの税制上の支援を行う、こういうことでありまして、似て非なるものでありまして、人口や産業の集中を是正する観点から国内における地方への企業移転などを支援すること、あわせて、国際競争力を高める観点から地域や事業を絞って集中的な支援を行うという意味においては、政策の方向性としては両立するというふうに考えておりまして、真逆という御指摘は当たらないというふうに私どもは考えております。

鈴木(克)委員 六点にわたって地方拠点強化税制について質問してきました。

 私は、まさに麻生大臣が冒頭言われた、中途半端な気持ちで、ただ税制の若干甘い水があるよという程度のことで企業が動くというようなことは毛頭あり得ないと思います。であるならば、そういった企業に対してよっぽどしっかりとした方針なり指導なりをしていかなければ、何遍も言いますけれども、仏をつくって魂を入れずというか、形だけで終わってしまう。本当に、何百例とか何千例とかいう形で出てきたときに、初めてこの制度の意味があるわけであります。ぜひひとつ、そういう意味で、本腰を入れて頑張ってやっていただきたいなというふうに思います。

 それでは、恐らく最後の質問になるかと思いますが、個人所得課税と資産課税のあり方について話を進めたいと思います。

 民主党の対案で、今、提出者はいませんけれども、国民の勤労及び資産の形成の意欲を著しく阻害することのないよう配慮しつつ、経済的格差の固定化の防止、税負担の公平性等の観点から、個人所得課税及び資産課税の改革について早急に検討を加え、その結果に基づいて必要な税制上の措置を講ずるものというふうにされておるわけであります。

 個人所得課税については、ことしから最高税率の引き上げが実施されております。それから、資産課税についても、ことしから基礎控除の引き下げや最高税率の引き上げを含めた税率構造の見直しが実施されております。これらの改正は、所得税や相続税の再分配機能の回復や格差の固定化防止などの観点から実施されたものであると承知をしております。

 一方、政府提出の所得税法等の改正案におきましては、個人所得課税の関係では、若年層への投資の裾野拡大等を図るためのジュニアNISAの創設やNISAの年間投資上限額の引き上げなどを行うとされておるわけであります。資産課税関係では、高齢者層から若年者層への資産の早期移転を通じた住宅需要の刺激や、結婚、子育ての後押しなどのため、住宅取得資金や結婚・子育て資金の贈与に係る贈与税の非課税措置などが盛り込まれておるわけであります。

 このような政府の改正案を見てみますると、またこれはいろいろと見解の相違があるかもしれませんけれども、結局富裕層のみが恩恵を受けるということで、結果、格差の拡大を助長するものではないのかというふうに思えるわけであります。その点について御所見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 ジュニアNISAの創設とかNISAのいわゆる投資上限額の引き上げというものは、これは家計の安定的な資産形成を支援するというのが目的でありますし、今、経済成長に必要な成長資金というものが、基本的には、個人金融資産の中で、一千六百二、三十兆円ありましょうか、そのうちの八百五、六十兆円は現預金ですから、全金融資産の半分を現預金でじっと持っているなんという国民は日本ぐらいなもので、それだけ株屋が信用ないのか、どうしてそうなったんだか知りませんけれども、とにかく全く、現金が一番頼り。株屋なんかの言うこと、口車に乗ったらろくなことはない、これは田舎ではみんなそうですよ。蒲郡も例外じゃないと思いますよ、俺の飯塚なんて間違いなくそうだから。誰に言ったってだめですよ、もう全くだめ。だから、そういうのが移動せぬことには、その金はじっとそこに寝ているだけですから。そこで、経済成長に必要な成長資金というものを確保するために、このジュニアNISAというのを考えさせていただいております。

 また、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の話ですけれども、これは、九十の人が六十五の人に相続されても、受けた人の方がまたそれをそのままじっと持っていて、早い話が、雪だるま式にそれがずっとふえていくだけで何にもならぬというのであれば、一つ代を飛んで、もう少し金が要る、結婚したい、子育てにお金がより必要という世代にお金が行くということを考えるというので贈与税の非課税措置を考えて、結婚とか子育てとか教育とかいうことをいろいろ考えさせていただいているわけでありまして、子や孫の結婚、出産、育児を後押しするということで、消費意欲の高い若い人たちにぜひそういったことをと考えておる。

 いずれにしても、こういった施策というものは全てデフレ脱却が目的ですから、デフレ脱却、経済再生の実現というのが目標、そのための手段ですから、そういった意味で、格差の固定化というものを招かないように、これは時限的に、時限を切っておるというのがその背景です。

 また、税制における再分配ということにつきましても、私どもとしては、今御指摘になった点からいえば、所得税の最高税率を引き上げさせていただきましたし、また、相続税の見直しというものを、五千万円から三千万円に引き下げておりますし、最高税率も引き上げさせていただくなどなどの策を講じてきておるところでありまして、そういった、固定化というような形にならないように努めてまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 これで私の質問は終えさせていただきますが、冒頭申し上げました戦後七十年の話にまた戻るわけでありますけれども、今後七十年どころか百年先を考えた国家観というものを構築しながら、それはやはり、税は国家なりという言葉もあるわけでありますので、税にかかわる我々としてはそういったことを踏まえて日本の将来をしっかりと議論していかなくてはいけない、このように思っておるわけであります。

 またこの委員会を通じて、いろいろと私も考え方を御披露させていただきます。御指導いただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

古川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 私からも、引き続きまして、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして質疑させていただきたいと思います。

 本日もかなりの長丁場、十三時から十九時までということで、大変お疲れだとは思いますけれども、もうしばしおつき合いいただきまして、充実した議論にさせていただきたいと思います。

 私からは、先般、大臣所信の質疑では少し大き目のお話を伺いましたので、少しテクニカルな部分も含めまして、細かい話がきょうは多うございますので、そのあたり、もちろん大臣のお答えでなくて事務方の方のお答えでも結構でございます。むしろ、細かい部分に関しまして、国民の皆様からもう少し詳しく聞きたいというお声を数多く伺っておりますので、そうした観点から御質問させていただければと思います。

 まずは、NISAの制度についてお伺いしていきたいと思います。

 この制度開始から一年が経過いたしました。今の最新の口座開設数とか稼働率についてどうですかというのを、きのうその話を伺ったら、きょうの昼ぐらいの報道でも幾つか数字が出ていましたので、関連して調べていただいたのか、たまたま重なったのか、ちょっとそのあたりはわからないんですけれども、まず、事務方の方で構わないんですが、このあたりの最新の口座開設数とか稼働率についてお伺いしたいんです。

三井政府参考人 失礼します。

 NISAの口座開設数でございますけれども、直近では八百万件を上回っておりまして、先生御指摘のありました買い付け金額でございますが、三兆円に若干届かない程度、約三兆円程度でございます。昨年末時点でございます。

 以上です。

丸山委員 済みません、稼働率はわかりますか。

三井政府参考人 失礼いたしました。

 稼働率でございます。

 日本証券業協会の調査でございますが、主要な証券会社十社に開設されましたNISA口座のうち、昨年末に買い付けのありました口座は約四五%でございました。

 以上でございます。

丸山委員 今のお話と、きょうの昼ごろの報道をあわせますと、恐らく、数字が間違っていたら教えていただきたいんですけれども、最新の口座開設数が八百二十四万口座ほど、そして金額では二兆九千七百九十七億円という額に上り、ただ、稼働率が、今お話にあったように、十社だと四五%程度というのが現状の数字でございます。かなり大きな額に膨らんでまいりましたし、この半年で二倍ぐらいになっているんじゃないかなというふうに思うんですけれども、それについて財務省の見解をお伺いしたいんです。

 どういう見解を聞きたいのかといいますと、私は、開設数の割に、今稼働率のお話もありましたけれども、実際の金融商品の購入を含めまして、稼働率が上がるという状況に至っていないんじゃないかなという問題意識があります。以前の議事録等を見ますと、現状では商品を選んでいる段階にあるんじゃないかという政府の方の御答弁がございましたが、もう一年たっているところでございますので、そろそろその話を言っている期間は過ぎたかなというのが思うところです。

 お話を聞きますと、私もいろいろな銀行等に行くときに見たら、やはり銀行さんから勧誘がすごく多くて、例えば、口座をつくりましたら漏れなくお幾ら還元しますみたいな勧誘がすごくあって、そういうこともあって恐らくこの八百万口座というのが開かれているんだと思います。

 ただ、そうした中で、実際のお声を伺うと、一つは、選択肢が多過ぎて、例えばJ―REITにしろETFにしろ株式、どれを買うにしろ、つくった方は、勧誘されたはいいけれども、商品は何を買っていいのかわからないということから始まって、つくったはいいけれども、額も膨らんでいるはいいけれども、先ほどの大臣のおっしゃったような、資金が寝ているだけじゃだめなので、そういうことになりかねないんじゃないかというのが私の問題意識として非常に今危惧するところなんですが、このあたりについて、財務省としての御見解を、大臣、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 丸山先生がおっしゃるとおりなんだと思うんですが、これは大体、百万円として、今百二十万円になりましたので、月々十万円の積立預金とほぼ意識が変わっていないですよ。僕は田舎の人を見ていてそう思います。私の地元の人は大体同じようなことしか言わぬから。だから、いやいや、あなた、これは投資をするのであって、貯金をするんじゃないんだという話からしないと、区別が余りついていないと思いますね。これが一つです。

 もう一つは、やはりこのところ変わってきた、ことしに入って変わってきたかなと思っていますのは、株が少なくとも着実に上向いてきているなという意識と、選挙が終わって政権が安定したせいもありますけれども、経済政策が猫の目みたいにころころしない、確実に経済政策がいくという流れが見えてきたので、何となく、御年配の、私よりもうちょっと上の方々のおっしゃる話も、あんたの言っておった、ほら、Nが何とかいうのがあったじゃないかと言うから、ああNISAですかと。あれの話だが、少しは買うと言って、どういうのがいいんだと。あのね、俺に聞いて、俺がしゃべると問題になるから、だから、ちょっとあなた、自分でそういうのは考えなきゃだめですよといっていろいろな話をすると、結構そういった話がことしに入ってから聞かれるようになりつつありますので、まだまだ時間がかかりつつあるのが一つ。

 やはりバブルのときに痛い目に遭った思い出がまだしっかりトラウマとして残っておられる方も随分おられますから、少し時間がかかるかなと思いますけれども、これが一つのきっかけになれば我々としては大変ありがたいなと思っておりますので、もう少し広報を含めてやらせるということをやっていかぬとだめだろうなと思っております。

丸山委員 今の大臣のお話だと、どちらともとれるかなというふうに思っていまして、一つは、まだ時間がかかるという観点ということと、もう一つは、やはり具体にきちんと広報していかなければ、このままじゃまずいということなんですけれども、どちらという御認識でいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 両方だと思いますけれども。私は、前に比べたら少しスピードが上がってきているかなと思っていますので、最初スタートしたときは何これというような感じだったのが、つき合いで一口だけ入りましたとかいうのが、何となく、そういうのが入ってきたのはことしに入ってからかなと思いますので、大分スピードが上がってきたと思っております。

丸山委員 具体的に何かこの辺の広報、広報というよりは恐らく仕組みか、もしくは金融機関に対することだと思いますけれども、このあたり、具体的にやられることは検討されているのか、それともまだそこまでは至っていないのかという点を、事務方の方でも構いません。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 金融機関あるいは証券会社につきましては、当方の監督指針などにおきましても、NISAに適した商品設計、あるいはNISAの制度趣旨にそぐう勧誘なり説明をするように昨年来お願いしているところでございます。徐々に進みつつあるところだと思いますが、さらにその点についてしっかり監督上も見ていきたいと思っております。

 また、広報につきましてでございますけれども、業界関係者、あるいは教育や、こういったものについての広報を専門にやっていらっしゃる方々と、資産形成プロジェクトとか、あるいは金融広報委員会などの集まる場を通じまして金融経済教育の取り組みを一層進めているところでございまして、さらに努力してまいりたいと思っております。

丸山委員 本当にしっかりこれはやっていただきたいですし、大臣がおっしゃるように、貯金ではなくて、やはりこれを成長の資金に充てていただかなければ、全くもってこの税制の意味がなくなってまいります。その意味で、恐らくまだ一年ということで、今のような前半の御議論も出てくるんでしょうけれども、これがもし一年半後、二年後となってくると、また同じことを繰り返しては何の意味もありませんので、ここはもちろん財務省さん、担当の方も危機感はお持ちだとは思いますけれども、しっかりこの場でも私、見てまいりたいと思いますので、やっていただきますようにお願い申し上げます。

 そういった意味で、NISAに関連して、今回、ジュニアNISAの新設の話を入れられていると思います。私も若い世代で、こういったものはどうかなというのは、いろいろな観点から考えているところなんです。

 一方で、今回のジュニアNISAなんかは特にそうなんですけれども、実質的に口座を開設される方と、そしてその御子息なり子孫の方、払い出しされる方が異なるという点が非常に私は気になっておりまして、例えば私にしても、私は十八歳以上なので今からはできないですが、もし自分がそのときにその口座があるよと言われて果たしてわかるかどうかと思うんですね、払い出しのときの話なんですけれども。

 これをつくった人は、もちろんそのときに説明を受けます。しかしながら、それを払い出す者が違うので、このあたりの周知にしても、先ほど周知の話が少し別の観点からありましたけれども、ジュニアNISAはもっとやらないと、それこそ話が伝わらず誤解が生まれていく。根本の部分の制度設計から気になるところなんです。

 このあたり、今の段階から、払い出しの子世代への制度周知の話はどのように検討されているのか、お答えいただけますでしょうか。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、ジュニアNISAにつきましては、一般的に、親などの親権者が、NISA口座の開設者である子供を代理しまして子供のために投資判断を行って投資を行う、こういうことになります。その上で、時間がたちまして、その子供が成人いたしますと成人のNISA口座というものに自動的になりまして、その時点以降、成人された子供自身の方が投資や払い出しのことを行っていく、こういうことになろうかと思います。

 ということでございまして、開設時点、一定以上の歳になりますと、御本人の意向なども金融機関が何らかの形で見ていくとか、あるいは成人になってから子供がみずから的確な投資判断を行える、こういうことが大変大事であると思っていまして、こういうことになっているということの制度の周知につきまして、政府としてもしっかり努めてまいりたいと思います。

 また、このジュニアNISAのターゲットとなります若年層の金融リテラシーの向上ということが重要だと考えておりまして、こういった面につきましても、基礎知識あるいはこの考え方につきまして、政府のみならず、口座開設に当たる金融機関からもしっかり情報提供、説明をするように、金融機関と十分に連携してまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 政府としてはそういうお答えになるんだろうなというのはわかっておりました。ぜひしっかりやっていただきたいんです。

 現実面として、親世代にはもちろん説明はできるんですけれども、その子世代、知らない人に対して、もちろん、親がつくったから知らない方もいるという可能性も、知らないことはないか。具体的な事例を挙げると変になっていくんですけれども。意識の違いがある中で周知をしていくというのは非常に難しいところだと思いますので、ここはまた恐らく、おいおいこの制度の中で問題になってくるんじゃないかなと今から考えてもわかるところなので、しっかりやっていただきたいんです。

 そういった意味で、このジュニアNISAは、今から考えても若干問題になってくるだろうなというところが幾つもあるような気がしています。

 というのは、この制度は、先ほど申し上げたように、自分がもし親世代から口座をつくってもらってという世代だと考えたときにどうかなというのを常に考えているんですけれども、そうしたら、今回のジュニアNISAに関しては、十八歳まで払い出しの制限があるということなんです。

 一方で、例えば何年もやっていれば、もちろん居住地が変わって金融機関をかえたいという話も出てくるでしょうし、新商品だって、どんどん新しいものが恐らく出てきて、その投資の状況はどうかというのを考えたときに、利便性の問題がまずすごく問題化してくるなということ。

 そもそもそれを考えたときに、では、果たしてやろうという方がどこまで出てくるのか。出てきたとしても、先ほど申し上げた利便性の点で問題化していくことがすごく明確に見えてくる、今から考えられるところなんですけれども、この点、財務省さんはどのようにお考えでしょうか。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘の点でございますが、この払い出し制限を設けておる趣旨でございますけれども、ジュニアNISAの導入に当たりまして、親あるいはおじい様、おばあ様が子供や孫の名義を借りて口座を開設するといったことによりまして、実質的におじい様、おばあ様の自己の非課税枠をふやすような結果にならないというふうな観点から、十八歳まで払い出しを非課税ではしない、こういう仕組みにさせていただいて、ジュニアNISAが子供や孫の将来の資産形成に用いられる、こういうことを担保しようという趣旨でございます。

 その意味で、確かに払い出し制限がかかるということで一定の制約はかかるわけでございますが、他方、今後、制度が、法律が施行されたところでしっかり金融機関、証券会社とも連携しつつ、例えば子供本人に成人になった時点で非課税口座の存在をしっかり認識してもらうこと、そういった手だてを事実上講じていくなどによりましてそこのところが適切に行われるような、そういったことを関係の金融機関の方々ともしっかり連携してまいりたいと思っております。

 いずれにしましても、ジュニアNISAの導入後の使用状況や利便性を含めた現場の状況については、しっかり目配りをしてまいりたいと思っております。

丸山委員 その辺はしっかり、金融機関の方は年齢をわかっていますので、そういった意味で、二十になるときにきちんと、十八歳ですかね、通知をしていただくというのは大事だと思うんです。

 そういった意味で、このNISAの制度は非常にまだまだ議論、検討していかなきゃいけないし、恐らく今後、運用の中で問題があれば柔軟に変えていく必要があるというふうに私は思っているんです。その認識は政府も共有されている、もちろん税制改正がありますので、その中での議論を踏まえた上で、問題があれば柔軟に変えていくということでよろしいんですね。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、制度の施行状況をしっかり私どももフォローアップしながら、利便性を含め、不断に見直しを行ってまいりたいと思います。

 ことしの制度改正におきましても、制度導入後に、毎月の積立額が十万円といった切りのいい額になるような制度改正、あるいはその前の時点ですと金融機関の変更ができるようにする、こういった手直しをお願いしたりしてきておりまして、引き続きそういった努力をしてまいりたいと思っております。

丸山委員 しっかりよろしくお願いを申し上げます。きょうは質問をたくさん用意させていただいているので、時間の都合でこれはこのあたりにさせていただいて、しっかりお願いしたいと思うんです。

 次に、住宅関連の税関係をお伺いしていきたいと思います。

 午前中、予算委の分科会で国交のお話をする機会がありまして、国交省として今般の住宅着工動向をどのように捉えられているかという話を伺ったところ、国交省さんは、厳しいという言葉もお使いになりながらも、若干戻しているという、私としては甘い感じに捉えられるような御発言をされているのが少し気になっておりました。

 私の認識では、もしくは多くの方はそうなのかもしれません、財務省さんが違うかどうか、ちょっとお伺いしたいんですけれども、今でも、消費税増税以降、春以降の住宅の着工件数の戻りはかなり鈍いというふうな認識でいるんです。

 そうした中で、今回、消費税を延長するのも含めて考えた上で住宅ローン減税の延長も入れられていますし、また住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置も入れられているということで、その辺も考慮された上でだというふうに考えてはいるんです。

 一方で、四月に八%に消費税増税、上がった前後の波というのはこの制度導入後にもかかわらずやはり出てきていて、現状、住宅の着工件数の戻りも鈍いという中で、この辺の検証をきちんとした上で、そしてさらには二十九年四月に必ずされるとおっしゃっている消費税増税を見据えた上でこの制度を考えていかないと、結局、この後お伺いする延長措置も、その期限の分け方で少し考慮されているとは思うんですけれども、一方で、私としては、この点、消費税増税のことをきちんと考えられている、十分なのかなというのは少し気になっているところです。

 二十九年四月にまた同じように、需要が上がって、そしてどんと落ちて、しばらくずっと低迷している、こういうことをなるべくなくしていくための見解といいますか、今後の長期的な見通しも踏まえた上での政府の御見解をもう一度きちんとお伺いしておきたいんです。

麻生国務大臣 消費税率八%後の住宅市場のいわゆる反動減といったものの状況を見ますと、やはり経過措置が終了いたします平成二十五年九月末にかけて駆け込み増、そして経過措置終了後一年間程度は反動減の影響が極めて大きく、その後下げどまりに向かうが、しばらくは反動減の影響が残るという状況なんだ、私どもとしてはそういうぐあいに思っております。

 現行の住宅ローン減税というものを見ましたときに、消費税率の二度の引き上げ、二度というのは五%から八%、八%から一〇%ということですけれども、それに伴う駆け込み需要とその反動減を見越した対策というものをやっておかねばなりませんので、平成二十五年度改正で手当てをしたものであります。

 今回の消費税率一〇%への引き上げ時期の変更、十八カ月延ばしましたので、現行制度を平成三十一年六月三十日まで一年半、十八カ月延長することとしております。これによって一〇%への引き上げを挟むいわゆる駆け込みまた反動減に対応するといったようなことができると考えておりまして、制度の拡充というものを今考えているわけではございません。

丸山委員 ちょっと次の質問に絡めてお伺いをしていきたいんですけれども、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の方で、今般の改正で、贈与を受けた年じゃなくて住宅用家屋の取得に係る契約の締結日で非課税の限度額が変わっていると思うんですけれども、このあたりは消費税を受けての変更ということでよいのか。また、これが変わることによって結構混乱される消費者の方もいらっしゃると思うんですけれども、このあたりはどういう思惑でやられて、そしてその周知方法をどのようにお考えか。まず事務方にお伺いします。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅取得資金の贈与税の非課税措置でございますけれども、御案内のとおり、住宅市場が、裾野が非常に広くて経済波及効果が大きいということで、足元の市場、なかなか振るっておりませんので、それに対する活性化という視点と、消費税率一〇%へ引き上がっていくその前後、駆け込みもございますし、また反動減も出てまいりますので、そういった動きというもの全体を見渡しまして、全体として延長、拡充をする、こういう趣旨でございます。

 特に、今申し上げましたように、数年間の住宅市場を見渡しますと、やはり消費税一〇%への引き上げに伴います変動というのが結構大きく想定されるということで、それでは、的確な時期に住宅需要が出るようにするにはどうしたらいいか。こういう観点から考えたときに、それをしっかりやることで住宅需要を平準化できるではないかという考え方に基づきましたところ、今までのような贈与を受けた年ではなかなかピンポイントで需要が発生いたしませんので、今回は、住宅用の家屋の取得を行いました契約日、例えば注文住宅の場合でありますと工事請負契約の日でありますし、建て売り住宅の場合には売買契約の日ということによって非課税枠の大きさが変わる、こういう仕組みにさせていただいたということでございます。

 今先生から御指摘がございましたように、仕組みを若干変更するものですから、当然これをしっかりと利用者に理解していただくような広報が重要だと考えておりまして、財務省、国税庁はもとより、国土交通省、関係業界の協力を得て周知徹底を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

丸山委員 この視点は率直におもしろいですし、すばらしいなというふうに考えます。やってみなければわからないところもあるとは思いますけれども、やるべき一つの手だろうなというふうに考えています。

 今般、どうしても、消費税を上げる上で駆け込み需要が起こるのはしようがないことだと思います。その後に必ず、山の次に谷が来るのは仕方がないけれども、やはり税制の設計上、これをなるべく平準化した上で、落ち込んだときにショックが来ないというのが一番の腕の見せどころだと思いますので、そういった意味で、今お話のあったような仕組みは大事だと思うんです。

 一方で、先ほどお話をさせていただいたような減税の措置は、消費税を八%に上げるときも含めてずっと行われているわけで、そうした中で、こちらの方も税率も含めて少し柔軟に、恐らく経過を見たときに考えていかなければならないんじゃないかなというのが私は思うところなんです。

 昨年四月に上がったときから今一年たっていないんですけれども、この数カ月間の動きを見て、やはりまだまだ戻りが鈍いということがわかるわけですね。ただ、その税制を今からやろうと思っても、次の、来年の税制を今議論しているわけで、多分に遅く、制度がワンテンポおくれていってしまうところですけれども、そのあたり、早目早目に、恐らく、二十九年の四月に増税の話をするならもう少し前、起こる前に考えておかなければいけないと思うんです。

 このあたり、今回、八%のところの検証をされたりして、その辺を柔軟にお考えになるおつもりはあるのか。もちろん、必ず変えろという意味ではないんですけれども、その辺についてお伺いしたいんです。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 住宅に絡みます税制、かなり、住宅ローン減税を延長いたしますとか、今申し上げましたような贈与税の非課税措置なども講じてございます。この効果をしっかり見きわめるということがまず大事だと思います。

 その上で、全体としての住宅市場の動きなどが思惑どおり動くかどうかよく検証しながら、本当に必要であればその見直しをすればいいということでございます。とりあえず、今のところはまずこれをしっかりと広報しまして、しっかり使っていただくということが重要かと思っております。

丸山委員 税制改正は毎年行われますので、そのあたりはもちろん柔軟にやっていただけるんだと信じております。今、少しマインドのお話、消費者動向のお話がありましたけれども、やはり着工動向を見ても、持ち家、いわゆる注文住宅の減少がかなりきついかなと。消費のマインドの影響を一番受けるところがまだまだ冷え込んでこの数字だろうなというのが数字からも見えてくるので、ここはやはり柔軟に税制によってバックアップ、フォローできるところだと思いますので、しっかりとここをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、先ほど少しお話のありました、いわゆる贈与税の非課税措置の関連でお伺いしていきたいんです。

 先ほど、鷲尾委員だと思うんですけれども、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の上限一千万、なぜ一千万なんだというお話があって、ゼクシィの話が挙げられて、幾つか細かい数字を重ね合わせてこの一千万だというお答えがありました。

 ちょっと問いが飛んで、でも同じ更問いで書かせていただいた話なんですけれども、重ねて同じような贈与税の措置があると思います。

 一つは、先ほど申し上げた結婚、子育ての観点。次に、教育資金に係る一括贈与の贈与税非課税措置、これは上限一千五百万円でございますね。そして、今回はもう一つ、住宅取得等資金の贈与の非課税措置、これは最大三千万まで引き上げるということですけれども、このあたりの数字の根拠。結婚の話はありました。重ねていただいても構いませんが、詳しくお答えいただけますでしょうか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの贈与税の非課税措置の非課税枠の限度額の考え方でございます。

 結婚・子育て資金につきましては、先ほど御説明申し上げましたので重複を避けますが、結婚ないしは子供を育てていく際に必要なものの平均的な費用として積算して、一千万ということを想定したわけでございます。

 教育資金は、御指摘のとおり千五百万円と設定しております。これは、幼稚園から大学まで私立学校に在学した場合に学校に支払います入学金、授業料などの諸費用のいわば平均額を想定いたしまして、一千五百万という数字で設定させていただいております。

 それから、住宅取得資金でございます。最大三千万という枠でございます。これは、反動減が最も大きくなると思われます期間に住宅需要を十分に喚起できるという、そこを狙ってしっかりと喚起できるようにということで、そこに思い切った措置が必要だという発想で大きな数字を計算したわけでございます。

 想定いたしましたのは、住宅の主な取得者層が大体三十代の方、その方が住宅購入を希望している場合に、全国の平均価格の住宅を購入しようとしたときに、例えば住宅ローンの借り入れ可能額、それから手元の平均的な貯蓄額などでは足らない資金不足、要するに不如意な部分というのがあろうかと思います。それを試算いたしまして、大きく見て三千万ということでございますので、先ほど申し上げました、反動減の時期にピンポイントで需要を喚起するという目標に合わせまして、思い切って三千万ということを設定したということでございます。

丸山委員 一つお伺いしたいのが、ちょっと聞き取りづらかったので、教育資金の方は、私立、市立、どちらかというのをもう一度お伺いしたいのと、もう一つは、若干、三つ目だけ、財務省さんにしては詰まっていないと言ったら怒られますけれども、積み上げが大ざっぱだなという印象を受けたんですけれども、思い切って三千万というところをもう少し詳しくお伺いできますか。

佐藤(慎)政府参考人 教育資金の関係でございます。繰り返しで恐縮でございます。幼稚園から大学まで私立です。私立の学校に在籍した場合の入学金等を想定した数字でございます。

 それから、住宅資金の三千万。やや情緒的な表現をしてしまいましたけれども、三千万というのは先ほど申しましたような政策的意図を前提として積み上げた数字でございますが、内訳を申し上げますと、全国平均の住宅価格、大体四千七百万円という数字が念頭にございます。それに諸経費を加えたところで、五千二百万ぐらいが住宅取得のための費用であろう。その上で、まず、三十代が無理なく返済できる住宅ローンの額、大体一千九百万円ぐらい。三十年間、金利二%で、平均年収の二〇%を返済するという想定ではじき出した数字が一千九百万。それから、平均貯蓄額が二百万円ぐらいということでございますので、五千二百万から一千九百万を引き、二百万を引きました残りが大体三千万ぐらいということでございます。

 本来ならば、制度をつくるときにこの三千万を丸々措置する必要はないのでありますけれども、この際、こういうふうな状況に合わせて、そのところに焦点を合わせて三千万としたということでございます。

 ただ、この時期を乗り越えた後はむしろなだらかにその額を軽減させるというやり方にしてございまして、反動減が大きく生じる時期に集中的に、ピークが来るように制度設計をしたという工夫もしているところでございます。

丸山委員 二回目の説明で非常にわかりやすくなりましたし、財務省さんらしいというか、わかりやすかったと思います。

 そういった意味で、制度設計は先ほど申し上げたように非常によい試みだと思いますし、やってみて問題点も出てくるかもしれませんが、やはりここの波をどうにかするというのは非常に大事な観点だと思いますので、ぜひやっていただきたいんです。

 一方で、これを聞いて思うのは、ちょうど私がその世代でございますので、残念ながら私はまだ独身なんですけれども、三十代で結婚する人も多いですし、そうすると、子育ての資金、教育の資金、さらには家、新しい家庭を持とうかということで、ばらばらでこの非課税措置を受けられる方はもちろんいるでしょうけれども、恐らく一括で受けられる方も多分にあると思います。

 そう考えたら、先ほど、教育資金が一千五百万、結婚、子育てで一千万、そしてさらに住宅、一時的ではありますけれども三千万。合計しますと五千五百万円、一人当たりの非課税贈与となってくると、非常に大きな額だなと率直にまず感じますし、そうすると、やはり懸念が出てくるのは、これを非課税で贈与できる世帯というのは本当に限られているんじゃないかなというのが率直に思うところです。

 先ほど民主党の委員から御質問がありました。私も、格差、格差と何でもかんでも言うのは余り好きではないんですけれども、一方で、ここまで大きい額だと、少しそこは気になってきます。これができる家庭がすごく限られていると考えられる中で、非課税水準の公平性といいますか、今般、この一月から、相続税は課税のかかる部分がかなり広くなっています。

 そういった意味で、こんな五千五百万も贈与がぽんとできる世帯より少し資産の少ない世帯は相続税がふえる形の世帯も多いと思いますけれども、一方で、このようないわゆる富裕層の方々はぽんと非課税で子供たちに贈与ができる。ここはすごく公平性を欠いているんじゃないかなと考える人は多いと思いますし、私もその一人なんですけれども、この点、どのようにお答えになられますか。

菅原副大臣 結婚・子育て、教育資金、住宅、まさにトリプルで非課税五千五百万という方が果たしてどれだけいるか捕捉をしておりませんが、それぞれ、今、三つの非課税措置、これを平成三十一年三月、住宅だけ六月ですけれども、約四年間でそうした政策をやることによって、まさに今の安倍政権におけるデフレ脱却、経済再生、このアベノミクスをしっかり進めていく上で、需給ギャップを解消する、そのためのいわばフローのお金を回していく、そういう一環であるというふうに捉えております。

 いずれにしても、高齢世帯から若年世帯に資金の移転を早く、そしてまたある意味では限られた年限において進めることによってその移転を進めていく。三つとも、子供だけじゃなくて孫にもいけるんですね。子供には贈与したくないけれども孫にはしたいなんというおじいちゃん、おばあちゃんも結構いるわけでありまして、そういうことも含めますと、あらゆるアラカルトも大切なのかなと思っております。

 いずれにしても、高齢者、昔、きんさん、ぎんさんがいて、テレビに出て、出演料はどうしますかと言ったら、老後に備えると言ったんですけれども、そういう感覚から、やはり所得、資産を移転させる、ここを限られた期間でやっていくということが大事だと思いますし、各措置の効果あるいは経済状況というものをしっかり検証することをお約束していきたいと思っております。

丸山委員 おっしゃっていることは非常に同意するところで、うちの地元も、お宅にお伺いしてお話を伺っていても、お子さんの話になるとすごく厳しいお話をされる方が、お孫さんの話になると非常に甘い優しい顔でお話しされる方が多いので、非常にわかるところなんです。

 副大臣、そういう方々の資産の移転を促すという点は私は同意しているんですけれども、一方で、公平性の観点について、余り副大臣からそのお話はなかったと思うんですけれども、この点をもう一度お伺いしてもいいですか。

 要は、高額を贈与できるような方々にとってはいいかもしれないけれども、一方で、それ以下の方々は今般相続税の増額になっていらっしゃる世帯ももちろんいらっしゃる。そうした中で、そもそも、回っていても、そんな相続税を払えるだけの資産はないでという方もいっぱいいらっしゃる。その中で今回の優遇策をこれだけ出されるということは、公平感について、非常に不公平感を覚える方は多いと思うんですけれども、この点をもう少し、言及がなかったので、お答えいただきたいんです。

菅原副大臣 今、丸山先生がおっしゃった非課税水準の公平性というのは、非常に大切な論点だと受けとめております。

 その上で、高齢者の資産保有においても、例えばこつこつ預金をためてきた方もいれば、ここ数年で、アベノミクスの効果もあって、金融資産あるいは株式等で一定の所得を得た方、いろいろいらっしゃると思うんです。では、どういう方が子や孫に贈与するかというのは、はかり知れない部分があります。

 ただ、ではこの非課税措置を漫然と二十年、三十年先までやるよというのではなくて、平成三十一年三月まで、あるいは住宅は六月までという年限を区切って、そしてまたそれを進め、延長し、そこまでの約四年間で、進める政策そのものを検証、そしてまた効果をしっかり見きわめていきたい。

 いずれにしても、丸山先生の御指摘の格差という、固定化につながらないようにしていくことが最も大事だと思っております。

丸山委員 今の話であれば、格差、公平性の話、もちろん御懸念はお持ちなんですけれども、まずこれは時限的に、つまり若い世代に対して資産の移転を進める上での一つの施策としてやりたいし、そのほかの分野も含めまして、この格差の是正に対しては問題意識は共有しているのでやっていきたいという認識でよいのでしょうか。

菅原副大臣 その御指摘のとおりだと考えてよろしいかと思います。

丸山委員 今回、時限措置ということもあるので、やってみないとわからないというところももちろんわかるんですけれども、こういう金融リテラシーの高い方は、もちろんお金を持っていらっしゃる方も多くて、この条件に当てはまる、最大上限まで贈与できるような方が多いのかもしれませんけれども、一方で、時限的なものかどうかは別にして、この措置を見られた多くの国民の皆さんがどう考えられるかという視点をやはり政府としては持っていただきたい。

 恐らく、殊さらに格差、格差とも言いたくないんですけれども、でも、やはりこれを見たらそのように考えるのは、私でもそう思います。残念ながらうちにはこんな五千万も贈与できるだけないので、そういう意味でうらやましいなという言葉も含めて、そういうのもあるのかもしれません。麻生大臣のところであれば、こんなもの考えないでいいほどの財産をお持ちなので、逆に言えば、そういうのもあるのかもしれません。

 でも、やはりこれを見たときに、どういうふうに一般の国民の皆さんが考えられるのか。その先の、どうしていくつもりで今のこの制度があるのかという御説明がなければ到底納得いただけるような形にはなっていかないと思いますので、今お話を聞いて、ある部分は納得しましたが、ある部分は私の中でまだ腹に落ちていないところがありますので、この観点は引き続き今国会を通じて伺っていきたいと思います。

 時間もありますので次の論点に移っていきたいんですが、次は、先ほど来お話にありましたが、法人実効税率の引き下げのお話に移っていきたいと思います。

 これも公平感の話につながるんですけれども、今般、この税率の議論の中で多くの方が御指摘されているところですが、欠損法人も現実面として多い中で、かなりこの恩恵に浴する企業もまた限定的なんじゃないかなというのが、見た率直な意見です。下手すると、今回、課税ベースが拡大されますので、そういった意味で、負担増となる企業も多く出る中で、このあたり、まずは、どれぐらい増税になる企業がふえて、どれぐらいが変わらなくて、どれぐらいの企業さんが減税となるというふうに捉えられてこの制度設計をされているのか、それをまずお伺いしたいんです。

菅原副大臣 まず、今般の法人税改革は、先ほど来御議論がありますように、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げることによりまして、一部の法人に税負担が偏っている状況を改善し、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減してより広く負担を分かち合う、そういう構造にすることを目指しております。したがって、御指摘のとおり、全ての企業に対する減税を行うものではない、こういう御理解をいただきたいと思います。

 その上で、まず、全企業の九九%を占める中小企業、全国で今約二百五十万社というふうに言われておりますが、この影響について申し上げますと、二十七年度改正におきましては、課税ベースの拡大等として、欠損金の繰越控除の控除制限の見直しや法人事業税の外形標準課税の拡大を行っておりますが、資本金一億円以下の中小企業は対象としておりません。

 また、中小企業向けに、所得八百万円以下の部分には一五%の軽減税率を適用しておりますが、これも今後とも継続をする方向となってございます。このために、中小企業の約七割、百八十万社は、よく言われますが、赤字企業ということになりますが、そこの部分に新たな負担が発生することはございません。

 あわせて、中小企業の約二割、五十万社と言われておりますが、ここは、黒字企業であるけれども所得が八百万円以下という中小・小規模事業者も多いわけでございますから、税率は変わらず、税負担が大きく変わるものではないというふうに御認識を賜りたいと思います。

 そうすると、残りの約一割の中小企業は約二十万社ございますが、所得八百万円を超える黒字企業に関しましては、そこは、法人税率の引き下げによって基本的に負担減になるというふうに捉えております。

 次に、大企業約二万三千社、ここの約三割、八千社が赤字でございます。今回、法人事業税の外形標準課税の拡大を行うことによって、一定の負担増が生じるわけでございます。残る七割、約一万五千社が、税率引き下げによる負担減。

 そして、課税ベース拡大等による負担増の影響のどちらが大きくなるかは、それぞれの企業の経営状況や各制度の利用状況、その企業によって使う制度が違ってきますので、そこは、今現状で一概に申し上げることはできないわけであります。

 ただ、例えば欠損金の繰越控除の利用状況なんかを見ますと、資本金百億円超の企業あるいは連結納税を行っている企業を合わせて全国で大体二千社あるんですが、その大半を占めておりまして、これら企業の一部においてそれなりに負担増が生じる可能性はございます。

 しかし、これらの企業におきましても、アベノミクスの効果をもって、早く収益力を高め、黒字転換を果たして、税率引き下げのメリットを享受できるように、つながるようにしていければ、このように考えております。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

丸山委員 これは、そうすると、差し引きに関してはマイナスで、この代替の財源が要るという認識でいいんですね。今回の法人税の減税措置を踏まえた上で、税がふえる部分と減る部分がある、今、幾つか数字を挙げて言っていただきまして非常にわかりやすいんですけれども。一方で、全体としては、逆に言えば、代替の財源が必要になってくる、同じ額を確保しようと思ったら必要だということでいいんですか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 課税ベースを拡大しながら税率を引き下げていくという考え方でございますので、基本的に、全体のマクロとしてはプラス・マイナス・ゼロということでございますので、全体としてはまさにプラマイ・ゼロでございますが、それを個社ベースで見た場合に、当然、ネットで減税になるところもあれば、ネットでプラスになるところもあるという構造になろうかと思います。

 それで、今の副大臣からの御説明の中で、例えば中小法人分、中小法人に限って見ますと、先ほど申し上げましたような説明から、基本的には、全体としてネット減になっておりまして、大法人という固まりで見ますと全体としてはプラス、ネット増になっておりますが、それは、それぞれの企業がどの程度、例えば欠損金繰越控除を使っているのか使っていないのか等々によりまして事情が違いますので、また個社ベースになりますと事情がそれぞれ出てまいりますけれども、マクロとミクロ、大きくはそういう関係になっているということでございます。

菅原副大臣 普通、細かいことは役所から言うんですが、逆になりまして。

 先ほどの補足をいたしますと、法人税率の引き下げに関しまして、二十七年度の法人税改革のフレームによりますと、この引き下げによって六千六百九十億マイナスとなるわけですね。一方で、課税ベースの拡大によってどうふやしていくかということに関しては、欠損金の繰越控除の見直し、受取配当等の益金不算入の見直し、租特の見直し、これを合わせると六千六百八十億。そうすると、プラスマイナスで十億マイナスとなりますが、いわばここは、あとは景気回復等を含めて、法人税等の税収等を含めると、とんとんになる、こういうふうに私たちは今見込んでおります。

丸山委員 済みません、もしかしたら私が誤解して大綱も含めて読み込んでいたのかもしれないんですけれども、私の理解では、今後の実効税率の引き下げも含めて、代替となるような財源も必要になってくるという認識だったんですけれども、今のお話だと、そこまでの必要性がないと。

 例えば、大綱だと、次の問いにも入るんですけれども、生産性向上設備投資促進税制だとか研究開発減税を縮減していくという話が出ていますけれども、これはそういった意味での縮減ではないということなんですか。

佐藤(慎)政府参考人 先ほど御説明申し上げましたのは、平成二十七年度税制改正におきまして、法人税改革を行う場合に、税率引き下げ、トータルで六千六百億程度の減税となる一方で、ほぼ同額の課税ベースを拡大して増収を稼ぎまして、トータルで大体プラマイ・ゼロになったということでございます。

 先生今御指摘があった話は、二十八年度以降、今後どうするかということについては、例えば外形標準課税を引き続きどうするのか、それから租税特別措置の中にもさまざまな措置がございますので、その見直しをどうするのかという次の時点での御議論になっていくということでございますが、基本的な思想は、課税ベースを拡大して税率を引き下げていくという、大きなフレームワークのもとでそのような対応を今後していきたいということでございます。

丸山委員 よくわかりました。

 そういった意味で、今後の話につながっていくんですが、先ほど申し上げたような、特に研究開発税制縮減を今回盛り込まれています。一方で、先ほど申し上げたような、大綱では生産性向上設備投資促進税制の話が触れられたと思うんですけれども、今回はたしか入っていなかったと思うんです。

 この辺、私、見ていてびっくりしたのが、安倍内閣はむしろ逆に、企業の競争力を強化するとか経済を再生する、研究力を上げていく、企業力を上げていくという点に関してどんどん支援をしてやっていこうという政権だと考えていたんですけれども、一方で、この点、もし今後やらなきゃいけない、やっていくということであれば、今回も研究開発税制を挙げられていますけれども、これは逆行しているんじゃないかなと思うんですけれども、これはどういうふうに御回答いただけますか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは、今の内閣において、二十五年と二十六年の税制改正において、生産性向上設備投資促進税制とか研究開発税制などの企業の設備投資や研究開発投資、さらには賃金のアップ等々を促進するために、租特の創設、拡充というのをかなり大胆に行っているところであります。そうした取り組みによって、例えば企業の設備投資は、二十五年度当初、前回、同期比で見ますと七期連続で増加をするなど一定の効果が出ている、私どもそう思っております。

 他方、今回の法人税改革で、税率の引き下げに向けて課税ベースの拡大ということによって財源をしっかり確保することとしておりますので、その一環として、既存の租税特別措置、いわゆる租特につきましても、各制度の名目をいろいろ勘案してみますと、余りよく使われていないものとかいろいろございましたので、そういった意味で、必要性や政策効果をよく見きわめた上で、率直なところ、必要な見直しを行っていく必要があると考えております。

 今後、法人実効税率を数年で二〇%台、台というところがみそで、九・九%差がありますので、そこはちょっと言い方が難しいところなんですが、二〇%台まで引き下げて、国際的に遜色のない水準にまでしていくことを目指して改革を継続してまいりますけれども、御指摘のありました研究開発税制とか、また生産性向上設備投資促進減税を含めて、いわゆる租特の扱いにつきましては、それぞれの適用期限とか、また経済の好循環の定着状況というのを踏まえて、これがうまく回り始めたら、もうそれ以上はということで、取り扱いを検討していく必要があるというように考えておるところであります。

丸山委員 つまり、財務省さんとしては、今回挙げられたこの研究開発税制の縮減に関しては、うまく回り始めたから今回落とすという理解でよろしいですね。

 大臣はうなずいていただいたんですけれども。なるほど、うまくいったからというところに関しての言及を初めて。

 では、補足をよろしくお願いします。

佐藤(慎)政府参考人 二十五年度、二十六年度に講じましたさまざまな措置などを含めまして、好循環が始まりつつあるという認識ではございますけれども、研究開発減税のところだけ今年度縮減したように見えるところについてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、研究開発減税といいますのは三種類の制度から成っておりまして、今回、総額型というものがちょうど期限が到来したわけでございます。その中で、その内容の精査をしたところ、いわゆる総額型といいますのは、研究開発投資をした分から税額控除をするということですので、一種のいわば補助金のようなものでございまして、質を問うということには必ずしもなっておらないということで、やはり研究開発といいましても、より質の高いものに促していくということが必要であろうということで、オープンイノベーションというような概念を入れながら、全体として組みかえるというような思想で今回はやっていったということでございます。

 もちろん、こうした研究開発の見直しの効果がどんどん出ていくことも期待しておりますというようなことでございますが、今回の趣旨はそういうことでございます。

丸山委員 研究開発の全体の縮減というわけではなくて、その中の一部に関して、政策的効果を見きわめた上で、落としてもいいんじゃないかという御判断でたまたまこれが落ちているだけで、全体としてそういう趣旨じゃないということですね。わかりました。そういうことであれば非常にわかりやすいとは思いますけれども、これはかなり誤解を招かれやすいと思いますので、きちんとこれは御説明いただいたのでわかりましたけれども、しっかりやっていただきたいと思います。

 重ねて、少しこれもお話が出ましたが、法人課税における地方拠点強化税制を今般創設される、これについてお伺いしていきたいと思います。うちの維新の同僚議員が予算委の方でも少しこれをお伺いさせていただいたんですが、ちょっと違った観点からもお伺いしていきたいと思います。

 観点が二つあって、一つは、同僚議員もお話しさせていただいた、大阪や名古屋とか、いわゆる東京一極集中じゃなくしていこう、できれば二極目、三極目をつくっていこうという都市がどうして省かれているんだという視点が一つ。もう一つは、今回の税制で、本当にそんなに地方に企業さんが行くかなと。特に、インフラも整っていない例えば小規模の自治体に恩恵がそこまで行くのかなと。二点あるところなんですね。

 まず、済みません、順番が逆になるんですけれども、後段の方からお伺いしていきたいんです。

 先ほど来議論を聞いていますと、税制のみで企業が移転するんじゃないという御認識は政府もお持ちなのはよくわかりました。ただ、そうすると、それこそ、この税制だけで本当に大丈夫なのかという問いが返ってくると思うんです。インフラの整備、私も、地元が必ずしもインフラがきちんと隅から隅まで整っていると言えるような地域ではないので強く感じるんですけれども。

 今回の税制をつくったからといって、大企業さんじゃなくてもいいんですけれども、企業さんが果たして、うちの地元も含めまして、小規模の自治体に来てくれるのかということは甚だ疑問を感じますし、地元の自治体を含めまして、ほかの自治体に聞いても、どうだろうという声が返ってきます。

 この辺、まず、政府としてどのようにお答えになりますか。

若井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の税制におきましては、先ほども御説明をしたわけでありますが、東京からの移転ということに加えまして、地方における、既に地方に根づいている企業が本社機能の強化を行う、その双方について支援をするということでございます。

 確かに、先ほど副総理から御答弁もございましたが、企業が拠点を移転するということについては相当なコストもかかりますし、そういう点について、税制のみならず、さまざまな環境が整わなければいけないということは承知をいたしております。そういう点におきまして、私ども、東京からの移転だけではなくて、地方における企業の拠点の強化ということについても相当期待をしてございます。

 これはかなり中小企業や小規模企業でも利用ができる制度であるというふうに考えてございますので、その両方相まって今回の税制が効果を発揮する、そして地方で新しい仕事が生まれてくるという効果を生み出すことを期待しているものでございます。

丸山委員 少し私は楽観的かなという気がしていまして、現実に企業さんが来るかという論点ももちろんあるんですけれども、日本全体を考えたときに、果たして全地区に、うちの地元も含めまして、別にうちの地元に、もちろん来ていただきたいのはやまやまですけれども、果たして国全体として、ばらばらに企業が集積せずにいてるのがよいのかという点は、やはり議論しなければいけないと思います。

 うちの党は大阪の維新の会が発祥なので大阪の意見が国会でも多いんですけれども、東京だけじゃなくて、では、次に海外から見ても魅力的な都市はどこかというのを日本もつくっていかないと、それは大臣の御地元の福岡の方ももちろんそうだと思いますし、大阪もそうでしょうし、名古屋もそうだと思うんですけれども、そういった極になる、核になる都市を恐らく東京以外にも次につくっていくことが国家としての進むべき道なんじゃないかというのが私の持論なんです。そういった意味で、今般の政策は、逆に、ばらばらといろいろなところにまずやってしまうみたいなことになりかねないかなと。

 ステップとしてその先にそれがあるのはもちろん大事だと思っているんですけれども、一方で、いきなりそんなばらばらに各地方にというのは現実的ではなくて、やはり先ほど言ったような二極、三極をつくっていくというのがすごく大事だと思うんです。

 この目標値について政府に伺っていきますと、去年閣議決定されたということなんですけれども、今後五年間で拠点強化のための件数七千五百件と、雇用四万人を目指すというお話がありましたけれども、この辺は、数字化されているようで、客観的であるようで、逆に大ざっぱかなという気もするんです。

 先ほどの三千万のお話ではかなり細かいところまでお詰めになっていてさすがだなと感じたんですが、例えば地域ではどういうふうに考えているかとか、どういうふうな算出の方法でこれが出てきたかとか、このあたりの中身の詳細をお伺いしたいんです。

若井政府参考人 お答え申し上げます。

 この一年間千五百件、そして年間八千人の雇用増という目標につきましては、経済センサスなどをもとにいたしまして算出をしたものでございます。

 ちなみに、大体年間で、今回の対象、支援の対象となっておらない地域における事業所の新設というのは千三百件程度ございます。そして、それ以外に今回支援の対象となっておらない地域で千八百件程度の事業所の新設が行われている。こういうことでございますので、地方における事業所の新設については拡充の対象となり、そして、一定の、支援の対象となっていない地域から支援対象となっている地域に移転して拡充をされるようなものも見込んだ上で千五百件というふうに考えておるわけでございます。

 こうしたそれぞれの事業所についての一般的な平均雇用人数を掛けまして大体八千人というのが、年間の地方拠点強化の見通しということで閣議決定をした数字の根拠でございます。

丸山委員 七千五百件と四万人じゃなかったでしたか。

若井政府参考人 済みません。答弁が不十分で恐縮でございました。

 七千五百件そして四万人というのは五年間の累計でございますので、したがいまして、年間当たりにいたしますと、事業所数で一千五百件、そして雇用者数八千人の増加ということでございます。

丸山委員 ということは、省かれている大阪市内や名古屋市内等は入っていないということでいいですか、その積算の部分には。

若井政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、この七千五百件そして四万人というのは、今回支援の対象となっていない地域は含まれてございません。

丸山委員 私の選出の地域も、大阪とはいえ市内ではありませんので、含まれていないという意味では、別に、大阪は何で入っていないんだという意味で言うのではないということをまず最初に申し上げなきゃいけなかったんだと思うんですけれども、そういった意味で、やはり少し検討いただきたいなと思うのは、ばらばらにつくっても意味がないと思うんです。

 都市間競争の激しくなっている中で、隣のソウルにしてもシンガポールにしても、法人実効税率だけではるかに先を行かれているところに、さらに都市間競争になっているということで、東京ばかりという声を地方でよく聞きます。

 では、その先に、どうすればこの状況を打開できるのかというときに、この税制では私はできないと思うんです。もちろん、これだけでやるんじゃないよというお声は聞こえてくるとは思うんですけれども。

 でも、どういう国にしていきたいのか、どういう未来をこの国の都市としてつくっていくのかというのをやはり描いた上で政策をぜひやっていただきたいというのが、うちの党が常々大阪という声を上げていますけれども、その根本の部分にあるところでございます。

 そういった意味で、ここで申し上げてもお答えは同じように返ってくると思いますので、余り申し上げるつもりはないんですけれども、もう少し先を見据えた上で、現実的に考えたときに、場当たり的に、では地方にも企業を移すためにこの税制をしようというのではなくて、どうしたら具体的にそこに近づくかというときに、二極目、三極目という視点をもう少し政府の方でも持っていただければ、より具体的になりますし、日本の未来を考えても私はその方がよいと思いますので、ぜひそれはお願いしたいと思います。

 次に、時間もなくなってまいりましたので少し足早に参りますけれども、もうこれも少し触れられた委員の方がいらっしゃいましたので多くは申しませんけれども、給付つき税額控除の導入について、こちらが軽減税率よりも進んでいないなというのは本当に私も感じるところなんですけれども、これの政府の見解と検討状況を、もう一度になってしまうのかもしれませんが、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 丸山先生の前にも御指摘があっておりましたけれども、給付つき税額控除につきましては、低所得者に絞った効率的な支援、このやり方の方が可能性が高いということではないのかという議論が傍らにあります。傍ら、こっち側に、しかしそれは所得とか資産とかいうものの把握が極めて難しいんじゃないか。マイナンバーが入る。マイナンバーが入っても、海外の所得とか海外の資産とか、そういったようなものはなかなか捕捉がしにくい。それからまた、執行する面においては、これは地方の役場でやらないかぬことになりますので、そういったものを執行する意味での対応の可能性というものに課題がある。両方ともいろいろ意見があります。これは自民党の中でもいろいろ意見がありますし、与党の税調の中でもいろいろ意見があります。

 今、軽減税率等々いろいろ進められておりますけれども、軽減税率のほかにこれがあるというのは、だんだん時間がたつとともに、皆さん方はいろいろ、ああ、そうか、何となく面倒くさいなと。軽減税率というのは、何といったって私は軽減税率を上げられるときにイギリスに住んでいましたから、あの面倒くささはちょっと、正直、消費者としても迷惑しましたので、あれはすごく印象が悪いところもあるんです。

 いずれにしても、しばらく、これはまだ与党の議論が今始まったばかりのところだと存じますので、それをよく見守った上で、我々としては結論を出していかねばならぬと思っております。

丸山委員 重なるので余り申しませんけれども、軽減税率に関しましては、かなり公明党さんが与党の中で推していらっしゃるので進みやすいと思います。

 でも、一方で、こちら側の給付つきの話は、この後申し上げるマイナンバーも若干おくれているんじゃないかという点で、すごく危惧をしております。きちんと議論しないまま、軽減税率だけ先になったというのは、やはり私としては政府の方針と少し違うじゃないかと言わざるを得ません。検討を進めるという形でございますので、しっかりこちらの方も忘れずにやっていただきたいというのを我が党からも申し上げたいと思います。

 そういった意味で、マイナンバー制度、大臣がおっしゃったように非常に大事なんですけれども、いろいろなニュースを見ていますと、特にシステム開発のおくれ、制度を進めるに当たって、マイナンバーを管理するシステムが必ず必要だと思いますけれども、このシステム開発のおくれのニュースが多々出てきていて、非常にここに対する不安をおっしゃる関係者の方が多いんです。

 このあたり、現状はどのようになっていて、それに対する見解、政府としてどのようにお考えなのか。財務省ではないと思うんですけれども、政府の担当者の方、お答えいただけますか。

金崎政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバー制度につきましては、来年一月からのマイナンバーの利用開始、そして再来年の一月から国の機関間での情報連携の開始、さらには同年七月からの地方公共団体間も含めた情報連携の開始、これらに向けまして、現在、関係機関でシステム開発等の準備を進めているところでございます。

 マイナンバー制度の導入に向けましたシステム整備につきましては、一部に、当初計画していたスケジュールからのおくれが生じているというのは事実でございますが、現時点で、全体のスケジュールに影響を及ぼすほどのおくれではないものと承知をしております。

 今後とも、予定どおり制度が導入されるよう、関係機関一丸となって取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

丸山委員 一部おくれているというのは、国の方ということでいいんですか。地方自治体のものでしょうか。

金崎政府参考人 国の方で整備をしております地方自治体向けの中間サーバーの開発が、当初予定していたスケジュールよりも三カ月程度おくれて完成する見込みとなってございます。

丸山委員 もう危機感を持っていただいていると思うので、言うまでもないのかもしれませんけれども、やはり地方自治体の方でも、担当者の方々からこれはどうなっているんだという話はよく伺うところですので、地方自治体のシステムの方がよりいろいろなトラブルが恐らく予想される中で、国の方がこの状況であれば、より不安をあおることになります。ただ、システム開発を急いでやってしまって失敗してしまったら元も子もありませんので、急ぐことは必要なんですけれども、慌てる必要はないと思います。

 ここを常々、自治体や国民の皆さんからどうなっているんだとお叱りを受けていらっしゃるかもしれませんが、我々野党としてもこれは気になっていますので、足を引っ張るわけではなくて、しっかり応援したいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 現状はわかりました。やはりマイナンバーの進捗状況も給付つき税額控除の導入の話も、若干後ろ向きになり始めているかなというのが率直な印象です。そういった意味で、麻生大臣はイギリスの御経験のお話を今おっしゃっていただいたので、軽減税率の問題点という点も体でお感じになっているということですので、そのあたり、きちんと議論を進めていただく方向でこちらの方もやっていただくように重ねてお願い申し上げます。

 次に、時間も押してまいりましたので、お話ししたいのは、たばこ税のお話でございます。

 麻生大臣もたばこをお吸いになるというふうに伺って、葉巻がよく似合っていらっしゃるのをよく映像等で拝見して、格好いいなと思っているところなんですけれども、一方で、今回のたばこ税の引き上げの対象の銘柄は、葉巻というよりは、いわゆる旧三級品のわかばとか、そういったものだというふうに伺っているんです。

 まず、この銘柄はどういったものだったかということと、これらの税率を変える理由につきまして、事務方で構いませんので、お伺いできますか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 銘柄でございます。

 旧三級品の紙巻きたばこということで、国産六銘柄、わかば、エコー、しんせい、ゴールデンバット、ウルマ、バイオレットという六銘柄のみでございます。

 今回改正をお願いしている趣旨のお尋ねでございます。

 今申し上げました旧三級品の紙巻きたばこにつきましては、昭和六十年に、たばこの専売納付金制度を廃止いたしました際に、たばこ税を創設いたしました。そのときに、この旧三級品の紙巻きたばこは主に高齢者に消費されていたという事情がございまして、当分の間の経過措置ということで、特例的に一般的なたばこよりも低い税率を適用するという経緯があったものでございます。

 今般、これを段階的に縮減、廃止していくということでございますけれども、事情が二つございます。

 一つは、平成二十二年度のたばこ税率の引き上げ以降、紙巻きたばこ全体の消費量が減少する中で、この旧三級品、低価格であるということかと思いますけれども、消費量が急増しておるといったような状態になっているということ。

 それから、制度的に、冒頭申し上げましたように、国産六銘柄だけに適用される特例税率ということでございまして、WTO協定の内外無差別の原則に違反しているのではないかというような指摘もあるということで、対応するということにしたものでございます。

 ただ、対応に当たりましては、喫煙者への急激な影響回避が必要ということで、廃止まで四年をかけまして、段階的に税率を引き上げていくというような配慮も行っているところでございます。

丸山委員 二つ理由を挙げていただきまして、後半の部分は、きちんと議論をしなければ、外からも言われてしまうことですので、やらなければいけないと思います。WTOの関係ですね。

 一方で、前半の、特に前回引き上げ時以降、かなり吸っていらっしゃる方がふえた銘柄だという指摘は非常に大事なところだと思うんです。値段を見ても安いので、お金持ちの富裕層の方々というよりは、やはり少し所得も低くてという方が吸っていらっしゃる割合が高いというふうに伺っております。

 では、そうした方々からすれば、もちろん、たばこに対する健康の害という形で今般言われておりますので、そういった意味で風当たりも厳しい中でございますが、ただ、日本国では、きちんと購入して吸うことができる嗜好品でございますので、そういった意味で、そういうものを奪うのかというお声も出てくると思いますけれども、そういった点に関して、どのように政府としてはお答えになられますか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 この国産六銘柄に限ります特別の税率ということが、WTOの規定上の問題として、なかなか放置することは難しいであろうということで、廃止をするというふうなことでお願いをしているものでございます。

 ただ、先ほど申し上げましたように、あるいは先生から今御指摘がございましたように、この旧三級品を購入している方そのものへの影響というのもやはりあります。したがいまして、その急激な影響を緩和する必要があるだろうということで、一挙に税率を引き上げるということではなくて、四年をかけて段階的に少しずつ上げていくというような形で、ならすような配慮をさせていただいたということでございます。

丸山委員 直接的なお答えではないとは思うんですけれども、一方で、段階を踏むことで配慮ということはわかりました。

 先ほど自分でも申し上げましたように、たばこが抱える健康の話は今般風当たりが強くなってきているのは事実でして、そうした中で、たばこ税というのは、長期的に見てもどんどん上がっていくのかなというところはいたし方がないかなと思うところではあります。そのあたり、財務省さんとして、長期的にたばこ税をどう思われているかというのを伺いたいなというのがあるんです。

 せっかくなので、通告がないのでもし大臣がだめだとおっしゃるならほかの方でもよいのですけれども、大臣も普通のたばこを吸われるのかもわからないんですけれども、例えば一本二千円、三千円の葉巻で、かなり税の割合が高い、ある意味、吸っていらっしゃる方は、たばこ税という形で国に納めてくださっている方でもあると思うんですね。でも一方で、健康被害という点も含めて風当たりが厳しくなっているのも事実です。

 たばこ税は今後上がっていくという認識を皆さんお持ちだと思うんですけれども、どういうふうに大臣として認識をお持ちなのか、また、御自身も喫煙者でいらっしゃるということなので、その辺の感情も踏まえて、少しお伺いしたいなと思うんです。

麻生国務大臣 当選したころ、たばこは三千億本かな、男子七八%が喫煙者。今は四〇を切った、たばこは二千億本まで減った、大体そんなものでしょう。がんは三倍にふえた。だから、僕はああいう話をはなから信じていないから。がんがふえるから何とかとみんなよく言われるし、うちも病院をやっているので医者が言うけれども、吸っているやつの方が長生きしているし、関係ないと。だから、僕は、ずっと納税者としてあり続けたい、そう思ってやっているんです。

 少なくとも、こういったようなものは嗜好品ですから、納税している割に扱いが悪過ぎるんじゃないか、私らはそう思っています。たばこ税の中からJRなんか随分補填しているのに、JRは喫煙なんてふざけているじゃないかと。何を考えているんだといって、私らはそう思わぬでもありませんよ。多分、喫煙者は皆そう思っているでしょう。

 だけれども、流れとして、今はそういった嗜好品ですから、そういった話で、たばこを吸う人というのは皆私とほぼ同じようなことを思っているんだけれども、面と向かって言わないだけで、そういうぐあいに思っておられるんだと思います。

 僕は、税金というのはある程度、今は嗜好品という形になっていますので、少しずつ少しずつ上がってきているということに関して、甚だおもしろくないと思いながらも、まあこの程度なら我慢するかなと。やめるか、払うかというところで考えて、やめられる方もいらっしゃいますし、喫煙を続行される方もいらっしゃいますしというところなんだろうなと思って、私自身はそう思っております。

 ただ、松沢とかいう神奈川の方、全県全部規制したとかいうのを得意そうに言っておられた方がいらっしゃいました。その方に質問されたんです。麻生さんはどうされるんですかと言われて、そういうような方とはつき合わないようにしていますと。

丸山委員 通告なしに伺ったにもかかわらず、お話をありがとうございました。

 非常に喫煙者の方は同意されることだと思います。でも、一方で、吸われない方の御意見もあると思いますので、一概に言えないのはもちろんわかっておりますので、大臣の御意見であるとともに、個人的な御意見としても承りたいと思います。

 時間もなくなってまいりましたが、次の御質問にさせていただきたいと思います。

 今般の改正で、国境を越えた役務の提供に関する消費税課税の見直しが入っていると思います。これは非常に大事な観点で、例えば私も電子書籍などをアマゾンとかでよく購入したりする一人でございますので、興味のあるところで、非常に注目しているところでございます。

 まず、この課税は今どれぐらいの取引量でされていて、本改正によってどれぐらいの税収増を見込んでいらっしゃるのか、その点、事務方の方で構いません、お答えください。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の見直しの対象となります、国外の事業者が国境を越えて行う電子商取引ということになります。

 この市場規模でございますけれども、経済産業省の試算によりますと、約五千百億円程度だということでございます。このうち、税収増につながりますのは消費者向けの取引ということになりますので、これがそのうち一千百億円程度ということでございます。この試算をもとに増収額を計算いたしますと、平年度ベースで、国税、地方税合わせて、消費税収八十九億円という数字でございます。

丸山委員 額にすると、若干、なるほどそれぐらいかというふうな、率直な感想としてはそうなんですけれども、一方で、不公平感があるというのは事実であります。ユーザーからすれば、電子書籍は安いのでありがたいのはありがたいんですけれども、でも、公平感という点では、税は非常に大事だと思います、そこに対して何かということではありませんが。

 一方で、先ほど、消費者向けに対しての課税だというお言葉がありましたけれども、難しいなと思うのは、事業者向けと消費者向けの電気通信利用役務の提供というのは、これをどう判断するのかというのは非常に難しいんじゃないかというのを懸念しております。特に、混在する場合もあると思うんです。たしか、事前に伺ったお話では、混在する場合には消費者向けという認識だと思うんですけれども、この辺、例えば税務署ごとに判断が違ってしまったらかなり混乱のもとだと思うんです。

 このあたりをどのようにお考えでいらっしゃるのか。できれば統一的な判断とかガイドラインみたいなものをおつくりいただかないと、必ず混乱のもとになると思うんですが、このあたりの見解をお伺いしたいと思います。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の新しい仕組みにおきまして一つのポイントは、事業者向けの取引がいかなるものかということをしっかりと確定させることかと思います。それ以外のものであれば消費者向けの取引になるという概念整理であるがゆえに、そういうことになります。

 それで、事業者向け取引の定義でございますけれども、これは、提供されますサービス、役務の性質や取引条件などから、役務の提供を受ける者、すなわち顧客が通常事業者に限られる取引ということに定義をしてございます。例えば、広告配信のような場合は、通常、顧客が事業者に限られるものでございますので、これは事業者向け取引に該当するであろうということでございます。

 ただ、先生がおっしゃいましたように、それが逐一どういうふうになるかということについては、やはりしっかりとしたガイドラインというか指針というか、そういうものを示さなければならないだろうということはおっしゃるとおりでございまして、我々としては、通達のような形でしっかりと提示をする、国税庁とも十分相談をするとともに、その辺の説明につきましてもしっかりと周知徹底するというふうに準備をしようとしておるところでございます。

丸山委員 ぜひしっかりやっていただきたいんですけれども、それはスケジュール的にはどのようにお考えですか。もし法改正ができれば、すぐに取りかかるという認識でよろしいんですか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 この制度は、法律改正で成立させていただきました場合には、施行が二十七年の十月からということでございますので、半年ほど時間がございます。既に、この措置につきましては、ここ一年ほどの間にさまざまな形で関係業界から私どもも勉強させていただいておりますので、コミュニケーションルートは随分できておりますので、そういうルートを活用しながら、半年間の間に、十月一日にスタートするときに、紛れのないような形で進めていきたいというふうに思っております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 ある役務に関して、ある税務署ではこれはだめだと言われた、こちら側だと言われたのに、逆に、あるほかの税務署では違うということであれば非常に問題が生じますので、やっていただけるということですので安心しましたが、しっかりやっていただきたいと思います。

 次に、時間がもうなくなってまいりましたので、お伺いしたいのは、ちょっとはしょってしまって恐縮です、今回、新たに財産債務調書を出せという制度になるということなんですけれども、現行の制度との違い等、その変更趣旨についてお伺いしたいんです。質問が短縮で恐縮なんですが、役所の方、よろしくお願いします。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、所得税につきまして、所得が二千万円超の納税者につきまして、財産債務明細書の提出が義務づけられておるという制度がございます。

 ただ、この現状を見ますと、例えば保有財産の記載内容が、ただ単に株式とか、ただ単に土地というような形で、非常に概括的な記述であったり、金額がどれぐらいかという記載もないということで、内容の検証にはなかなか役立たない。それから、提出率そのものも四割にとどまっているというようなことで、現状、やはり課題があろうかと思ってございます。

 それからもう一点、今回の法案において御審議をお願いしております、国外転出時におけます譲渡所得課税の特例の創設ということがございますが、これとの関連におきましても、保有する有価証券の情報把握が必要ということでございまして、現在の財産債務明細書では、時価等が非常に不明確なケースも多くて、必ずしも十分ではないといったような現状でございます。

 したがいまして、今回、所得税や相続税の課税の適正、公平を図っていくという観点から制度の整備をしようということで、財産債務明細書の見直しを行うということで、三点ございます。

 まず一点目は、現在の提出基準、冒頭申し上げましたように、所得基準が所得二千万円超の者ということでございますが、これに加えて、資産基準、すなわち総資産が三億円以上または有価証券等が一億円以上という基準を追加いたしまして、対象者をむしろ絞った上で、二つ目でございますが、保有財産の詳しい内容を原則時価で記載していただくなど、記載内容を充実していただく。それから三つ目でございますが、結局は提出していただかないといけませんので、適正な提出とか記載を担保するために、加算税の加減算によるインセンティブ措置というものを改めて講じるといった工夫をすることで、今回整備をしようとしているところでございます。

丸山委員 対象者が絞られるということですけれども、非常に手間はふえると思うんです、聞いていると。その意味で、周知もそうなんですけれども、この辺の手間の増加に関してどのようにしていくかというのは非常に大事な観点だと思うんです。このあたり、どのようにお答えになりますか。

菅原副大臣 今、丸山先生がおっしゃったように、提出者にとって大変負担がふえる状況が出てこようかと思います。このために、今般の税制改正大綱におきましても、「財産債務調書の記載に係る事務負担が過重なものとならないよう、運用上、適切に配慮する」こういうふうに記されております。

 具体的には、調書に記載する財産の価額については、厳密な時価だけでなく、簡便な見積価額による記載も可能とする旨を規定する予定でございます。

 この見積価額における運用上の手当てといたしましては、例えば、土地建物につきましては地方税務当局から提出される固定資産税評価額や、非上場株式については直近の貸借対照表上の純資産額を単純に株式数で割ったもの、こういったものを簡便な方法で今度記載を認めるということとしておりまして、提出者の事務負担が過重にならないように手当てをする方向で検討しております。

 国税庁としましても、日税連とも協議をしながら、こうしたことを進めてまいります。

丸山委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、方向性としては事務負担が減るようにというお言葉はいただきましたので、またやっている中で問題点が見えてくるところもあると思いますので、柔軟に対応いただきますようお願い申し上げまして、私、丸山穂高の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

古川委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 維新の党から参りました、富山県富山市出身の吉田豊史と申します。

 初質問でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年の補正予算そして二十七年度の本予算と、予算委員会におきましては一番隅っこの方に座りまして、ずっと委員会の流れを拝聴、勉強させていただいております。

 その中で、麻生大臣が非常にわかりやすく、そして明晰な答弁をされるのを聞いていて、すばらしいなと思って、政治家としては本当に雲の上の方やなと思っておるところなんですが、その中で、何か一つでも大臣と共通点が私にないかなと考えて、きょうは参りました。

 それで思いつきましたのが、大臣はセメント屋ということでございますけれども、私は大学を出てから自分で小さな有限会社をつくりまして、喫茶店、それから花屋ですとか居酒屋とかいろいろな商売をやって、やっては潰し、やっては潰しやって、最後にたどり着いたのが豆腐屋でございます。豆腐屋を創業してやったんですけれども、考えてみますと、セメントも豆腐も固めるというところでは一緒だということで、また御指導いただきたい、こういうふうに思っておるところでもございます。

 なぜこの話をしましたかというと、私はこの間の選挙のときに、市民目線という言葉で選挙を戦ってまいりました。市民目線という言葉を選んだときも、おまえ、国会議員になりたいのなら国民目線だろう、そういう厳しい言葉とかもあったりした中なんですが、市民目線というのは、常にやはり一人一人暮らしている現場があって、そしてその中での問題を解決していく、そのために政治があるんだ、こういう原点に返る言葉として選ばせていただきました。

 きょう、質問を幾つか考えてまいりましたが、たかだか五時間ここにおっただけですけれども、私が聞こうとしていたことは、もっと詳しく諸先輩方が質問されました。それで重複することばかりになりますけれども、改めて、市民目線といいますか、庶民の感覚でわかる言葉で御答弁を頂戴して、そして私もまた地元に帰って報告会で、本当に国を動かしている中枢の委員会のこの場所ではこういう言葉があったよと、そういうのを持ち帰っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 一つ目は、平成二十七年度、消費税を引き上げないということが決まっております。今後は、しかし消費税は一〇%に引き上げる、これも決まっている。そういう中で、消費税が上がるということがやはり納得のいく話として私は説明したい、こう思っています。

 一つ具体的に、消費税の増収分は社会保障に振り分けていくことになっていますけれども、これをもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 私も三十五年前はあなたぐらい初々しかったんですが、だんだんすれて、何となくふてぶてしくなって大変恐縮なんですが。

 今、消費税率の引き上げによる増収分の話というのが出ておりましたが、これは、民主、自民、公明三党で、社会保障というものを今後とも充実させていかないと、少子高齢化というものは、この日本として、しばらくの間、その流れが変わらぬと。そうすると、働く人が減って、受け取る人の方がふえて稼ぐ人の方が減ってくるという比率になりますので、どう考えても、働く人の方、少ない方で全部賄うというのは無理。昔は六対一ぐらいだったんですが、今、三対一ぐらいになってきていますので、半分ということになりますと、もうちょっとで二対一ということになると、とてもじゃありませんということで、これはみんなで負担し合う以外に手がないということで、社会保障という面を考えたときに、消費税で賄う。これは、働いている人以外の人も入りますので、所得税ではなくて消費税をということで、いわゆる将来世代に先送りはしませんとか、いろいろな表現はありましたけれども、そういったことでやらせていただくことになりました。

 そして、一〇%に引き上げるというものの効果が平年度化する。そうすると、二〇一八年になりますけれども、平成三十年度において、消費税五%からの増収分が十四兆ということになります。国と地方と突っ込みですよ。国と地方について。

 そして、社会保障の充実ということになりますと、国と地方を足しまして、消費税率一%相当の二・八兆円程度。それから、基礎年金国庫負担割合の二分の一引き上げというものに約三・二兆円。これは国のみです。地方はないです。それから、消費税率引き上げに伴います社会保障の四経費、公経済負担とかいろいろな表現をしますけれども、それに〇・八兆円程度。これは国と地方、両方です。そして、後の世代への負担のツケ回しの軽減ということに七・三兆円程度、国と地方。それぞれに向けるということにいたしております。

 それまでの間において、消費税増収分を、まずは基礎年金国庫負担の二分の一というものを、これは今まで税金でやっていましたのでその分を引き上げて、きちんとした上で、その残りの分を平年度、平成三十年の配分比率に沿って、そして消費税増収分の増加に応じて比例的に、消費税が伸びたらそれに合わせて増加させていくということにいたしておりますので、私どもとしては、こういった方向できちんと合意の上でやらせていただくということにしたいと思っております。

吉田(豊)委員 非常にわかりやすく、ありがとうございます。

 大臣が最初に説明のときにおっしゃったのが、やはり少子化に対しての対策をしていかなくちゃいけないと。私は、ここのところは非常にこれからの世代が、私たちを含めていろいろな人間が消費税を払っていく中にあって、どれだけが、一〇%がマックスなのか、あるいはもっと上がっていくかもしれないという、ある意味の覚悟をしていかなくちゃいけないことだと思うんです。

 当然、その中で、今のこのすばらしい日本をつくってくださった先輩方のためのケアをしていくということにお金を使われるのもわかる。だけれども、今おっしゃったように、どんどん下の世代が細っていくというところ、これについても、きちっとした、消費税を増税している分がそこについての計画にもなっていくんだよというところの、もう少し具体的な計画とかあるいは配分のことですとか、そういう考えというのは既に決まっているんでしょうか。

麻生国務大臣 その後については、例えば子ども・子育て支援等々、あれが社会保障の中に入っておりますので、大体今、国家予算がアバウトで九十兆、そのうち社会保障関係が、約三十兆になりますので、三三%ぐらいになろうかと思いますが、そういったものの中に、高齢者の今申し上げた部分と、若者の子育てとか待機児童とかいろいろな表現がありますけれども、そういった部分とに分かれておりますので、こちらの方に行く比率があるのは当然なので、ちょっと今そのパーセントまで申し上げられませんけれども、そういったものは当然この中に入っております。

吉田(豊)委員 そうすると、今ほどおっしゃった、当然これからの世代のための、少子高齢化に対する部分の施策についてのお金も入っている、だけれども、これがどういう割合になっていくかということについては、やはり今後いろいろな状況を見て変わっていく、そういう考え方でよろしいわけですか。

麻生国務大臣 全体の流れとして、今まではやはり高齢者に対応する比率が高かったんだと。なぜ高かったんだといえば、そっちは票があったんだと思いますね。子供には票がなかった。簡単に言えばそういうことですよ、物すごく突き放したような言い方で恐縮ですけれども。だから、どうしたって偏ったんですよ。

 しかし、それはどう考えてもおかしいでしょうということで、今、こっちに若い人の票がというのは、ここにいるバッジをつけた方は、そこそこ皆何となく、それはそうやなという方向にこの数年間で変わってきたかな、私自身はそう思っておりますので、今のそういう流れは変わらぬと思っております。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 次の質問に行きます。

 今回の法人税の改正において、きょうの委員会でもお聞きしていましたけれども、財源を確保しつつ、そして税制的には中立で行うというふうなことを理解しました。

 その上で、税制中立であるからこそ、そうすると、いろいろな意味で中の変更を行ったという考え方だと思うんですけれども、それをやる狙いといえばいいか、目的を確認させてください。

菅原副大臣 今、吉田先生から、税収の中立という大変大切なお言葉が出ました。

 やはり法人税先行減税をやるにしても、一定の財源確保、それを複数年度にわたってしっかり確保し、さらに恒久的なものにしていければ大変有効であると思っております。

 今回の法人税の改革につきましては、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるということによりまして、一部の法人に税負担が偏っている現在の状況を改善して、そしてより広く負担を分かち合う構造とするものとなっております。

 具体的には、二十七年度改正におきまして、法人事業税の外形標準課税の拡大や欠損金の繰越控除の見直しといった課税ベースの拡大等に取り組むことによりまして財源をしっかり確保しつつ、法人実効税率を引き下げるものであります。現在、二十六年度で三四・六二%を、二十七年度に二・五一%下げて三二・一一%とし、二十八年度にはさらに三・二九%下げることによって三一・三三%、このようなことを実効あらしめるように目指してまいります。

 こうしたことによって、稼ぐ力のある企業、稼ぐ力というんですが、本来稼げる力がある企業ということも含め、そしてまた、本来この法人税改革は大企業の改善に向けて資するものでありますが、さらにこれを全国津々浦々まで、中小企業にも敷衍できるようにしていきたいと思っています。

 このように、企業が収益の改善をする、あるいは、その方向に向かってインセンティブが高まっていけば当然収益力が高まり、収益力の改善がさらに次なる投資、研究開発につながるわけであります。

 また、麻生大臣からもるるお話がありますように、政労使の協議によって、これがまた賃金につながる、そしてまた所得拡大税制、こうした税制をやることによってさらなる賃金アップが景気全体、いわゆる経済の好循環につながっていく、こういう流れをつくっていけば、下請企業の価格転嫁の円滑化といった取り組みにもつながると思っております。

 さらに、二十七年度改正では、企業が賃金アップしていけるように、かつまた、成長志向型の改革という意味合いを持っている法人税改革でありまして、海外あるいは欧米等の流れを見ればコーポレートガバナンスの強化、あるいは先ほどお話し申し上げたように政労使会議、こうした連携と相まってその効果が発揮される、このように考えております。

吉田(豊)委員 そういう法人税の改正を行う流れの中でどういうふうにやっていくかということの説明を私もお聞きしたんですけれども、二十七年度、二十八年度という年度について、二千億円程度の先行減税になるという話をお聞きしました。

 先行減税ということはやはり何かの狙いがあってそうするんだろうと思うんですけれども、これについて少し、具体的な狙いを改めて教えていただけますか。

菅原副大臣 一昨年の暮れから第二次安倍政権が始まって、三本の矢を放つ中に、アベノミクスの効果をより、大企業のみならず中小企業にも、全国津々浦々までその流れをしっかりつないでいきたい、こういう思いの中で、デフレ脱却、経済再生、その一環としてのこの法人税改革であります。

 その法人税改革につきまして、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる、そして、稼ぐ力のある企業の税負担を軽減することによって継続的な賃金アップやあるいは下請企業の価格転嫁の円滑化、こうしたことにつないで、経済の好循環を目指すものであるということは先ほども申し上げたわけでありますが、ここに、二十七年度改正において、欠損金の繰越控除の見直しなどによって、二十七年、二十八年、二十九年度にかけまして段階的により法人税率を引き下げていく、そのための財源をしっかり確保するということは銘打っております。

 しかし、まさに経済は生き物でありますから、ここで間髪を入れずに、しっかりと好循環をつくり出していくためにも、二十七年度から税率引き下げを先行させることによりまして、結果的に、二十七年、二十八年度の二年間にわたって、企業部門に対しまして、各年度二千六十億円程度の先行減税ということになるわけでございます。

 いずれにしても、こうした減税によって収益が上がることによって賃金がアップする、また賃金アップにつながるように所得拡大促進税制、こうしたものを使っていくんですが、なかなかこの要件もまだまだいろいろな方面からお声もいただいていますから、そうした緩和といった対応も含めながら、さらに企業が賃金アップに踏み込む、一歩でも二歩でもそういう後押しとなるようにすることが大切だ、このように考えております。

吉田(豊)委員 その二千億円というものの、使ってほしいという使い道の考え方は理解するんですけれども、先ほど申し上げたように、私なんか小さい商売をやっていたところから考えると、では、少し利益が出たとか、あるいは払うべきものが払わなくてよくなったというときに、それをきちっと前向きの、次の方に使うかというと、必ずしもそうならないで、何かあったときのためにとっておこうかとか、企業とすればそういうようなことも一つの考え方だと思うんです。

 これを、今の先行減税のみで、例えば賃金のことですとかじゃないとは思うんですけれども、それについての何かプラスアルファですとか、その考え方というのがあれば教えてください。大臣、お願いします。

麻生国務大臣 税金、法人税が下がって、簡単に言えば、純利益というか、経常でもいいですよ、利幅がふえる、そのふえたものを何に使うかというのは、経営者の一番大事なところです。賃上げに使うか、配当に使うか、設備投資に使うか、基本的にはこの三つです。ほかにもありますけれども、基本的にはこの三つ。

 長いこと、デフレーションというものによる不況を日本はやりました。ことしは戦後七十年というんですが、この七十年間でデフレーションで不況をやった国というのは、世界じゅうで日本だけです。デフレーションのとき不況になったらどうすればいいかという経験則は、日本にはありません。世界にもちろんありません。経験者はゼロですから、したがって、我々は歴史に学ぶ以外にほかに方法がありませんので、歴史を見れば、一九三〇年代にその歴史がありますので、我々はそれに切りかえていかなきゃならない。

 我々の方はそれを動かす立場にいるんですが、やっている経営者の方は、二十年間やっていれば、じっと金を持っていれば、金の値打ちが上がって物の値打ちが下がっていくわけですから、何もしないのが一番よかったというのが長く続けば、頭の回路はそっちの方に行くのは当然です。それを、インフレ二%にしますと言われて、本当かといったって、そんな簡単に切りかえなんかできませんよ。

 したがって、どうなったのかといえば、企業の中における内部留保は、おととし三百四兆円、去年の三月が、あれは一年に一遍しか出ないんですが、三百二十八兆円。二十四兆円、一年間で内部留保がふえておる。ということは、月割り二兆円。さらにまた税金を安くして、それで何をするんですかということが、大きな話として、今言われたところを、お豆腐屋の話を日本経済に置き直すとそういう話になります。

 それをやってもらうために、コーポレートガバナンスです、スチュワードシップ・コードですということを言って、中にいる人たちに株主が、ありがとうございましたと言って黙っているサイレントのストックホルダーから、ノイジーストックホルダーというんですけれども、早い話がうるさいストックホルダーとして中で、これはもっとこっちに使えとかあっちに使えと発言する。これをスチュワードシップ・コードというんですが、そういったものに切りかえてもらわないかぬというので、我々は、法人税を下げるなら、その分だけ、社外重役を入れていただきますとか、また資本利益率を上げてくださいとか配当をふやせということ、そういったようなことをやってくださいということをずっとこの一年間いろいろやらせていただいて、いずれも、そういったようなことをのんでいただけるようになりつつあるというのが現状です。

 今言われましたように、その点は全く同じ発想で、そこのところをきちんと対応しないと、何となく、法人税が下がってその分だけ企業の中が温まるだけでは全く経済に効果が上がらぬ、私どもそう思って対応させていただきたいと存じます。

吉田(豊)委員 非常によくわかるところでして、私も、アベノミクスというのは、まずは力のあるところによりてこ入れしてスタートしようよという話で理解していたんですけれども、そうすると、大きいところが最初によくなった、ではそれでいいのかというと、そうではなくて、この税制一つをとっても、よくなったところが今度は自分たちで本当の意味での牽引力を発揮してもらわなくちゃいけない。そういう発想での税制改革ということであれば私自身も個人的にも大賛成ですし、今のお話というのは、やはりどう考えても小さな豆腐屋にはつながらない話なんですね、豆腐屋の現状ということからすると。それはもちろん株主会議もないし、サイレント何とかというのもないですし。

 ですから、そういう中での今回の法人税の改正というものが、大きなところの部分についてのきちんとした流れをまずつくるんだという位置づけだということが非常に理解できてよかったです。ありがとうございます。

 それで、もう一つ質問があったのが、今回の法人税改革、改正が、中小企業の税負担になって、大企業の税負担を軽減するものではないか、そんな単純な誤解みたいなものもあったんですけれども、もちろんそうではなくて、どちらかというと、大きいところにこそいろいろなものを求めていく、こういう理解でよろしいということで、少し質問を省かせていただきます。

 次に、この改正において、地方創生という言葉とのかかわりを教えていただきたい、こう思います。

 地方創生という観点から、この改正が具体的にどのように資するのか、どのような措置があるのかということについて、副大臣にお聞きします。

菅原副大臣 まち・ひと・しごと創生法にも掲げられておりますように、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保するとともに、急速な少子高齢化の進展に的確に対応して、人口の減少に歯どめをかけるということがまず大切なことであります。

 また、この法律を踏まえまして、二十七年度の税制改正におきましては、人口の過度な集中の是正、あるいは若い世代の結婚、子育ての希望の実現、こういったものを通じて、地方の創生に向けて地方拠点強化税制の創設、また外国人の旅行者向けの消費税の免税、こうした制度の拡充、先ほどの結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設、このような施策を盛り込んでおります。

吉田(豊)委員 最後の方に出てきました結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置というところですけれども、これが少子化対策の観点から資するものだということなんですが、もう少し具体的に説明いただけますか。

菅原副大臣 吉田先生の御指摘の、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置というのは、祖父母や両親の資産を、年限を区切って早期に次の世代に移転させることによって、子や孫の結婚、出産、育児あるいは不妊治療なども後押しをする、そういう構図となってございます。

 このことによって、結婚、子育てということを考えたときに、将来不安になるとか、将来このお金が必要である、しかしながら手元にそうした資産がない、こうしたことを、前もって一括して非課税で贈与することによって、将来の資金手当て、こうした不安を和らげていけるものと思いますし、また、このような方々が結婚や出産に踏み切る、そういう流れができれば、このように考えております。

吉田(豊)委員 きょうの委員会の議論の中で、私は聞いていて、これは非常にいいことだろうとは思っているんですけれども、どうしても、お金を持っている人に対しての一つの方法だろうということを私の中の理解として感じました。

 これが税制として、少子化対策ということの観点で、そうではなくて、お金をそんなに持っていない、あるいはお金がそんなにないからこそ、子育てのところとか、子供を産み育てるところに踏み込めない方々というのも当然たくさんいらっしゃるわけです。そういうことについてのこれからの何かお考えというものを、既にあるのであれば教えていただきたいなと思うんですけれども、今の税制改革の中ではそこまではないという感覚でよろしいでしょうか。

菅原副大臣 この贈与税の非課税措置は一つの政策であります。仮に手元に資産や資金やお金がないからといって結婚や出産を諦める、そんな国にしてはいけないと思いますので、そこは社会保障や福祉的な政策、さまざまな政策を掛け合わせてやっていくべきものだと思っております。

 いずれにしても、その考え方の中で、今回のこの税制の非課税措置は一つの政策だ、こういう御理解をいただきたいと思います。

吉田(豊)委員 おっしゃるとおりだと思います。

 きょうもずっとお話をお聞きしていて、話がちょっと変わりますけれども、国会に来まして私が一番思いましたのは、横文字が多いなということなんです。インセンティブという言葉、私も一応学校は出ていますので知ってはおりますけれども、インセンティブというのは何ですかと聞いたら、役人の方は動機づけとか言いますという言葉で、もうちょっと具体的に言うとあめとかニンジンですかと言うと、そういうふうな感覚ですと言う方もおられました。

 考えてみますと、税というものこそが、これから政策とかいろいろなことを方向づけていくときに一番大切な動機づけになる、政策をつくっていく武器なんだろうというふうに私は理解しております。

 その意味で、きょうお話をお聞きした中では、今回の税制改正全体を見た中でですけれども、どうしても、私が最初に申し上げた、市民感覚ですとか、庶民だ、あるいは現場だという方々にとって、ああ、そうだなと思っていただける、応援をしているなというふうに感じる税制改正というものはそんなに多くないんじゃないかなと私は今感じているわけです。

 実際、大臣からいただいた話の中で私はよかったのは、大企業に対してなぜそれを、一見後押ししているように見えるけれども、実はそうじゃなくて、そこがきちっと動くことによって、当然それから中小零細あるいはその地域に対して、裾野のところに対しても影響を持っていくんだという、その一歩目として今これをやっているんだよということの御説明でしたので、非常に心強く思いましたし、私はそれこそ初めてここに来た人間でございますから、これからの委員会での議論ということも勉強させていただく中で、本当の意味での少子化対策になる直接のインセンティブというものが、自分自身の中にアイデアが出てくればぜひそれを皆さんにお伝えして、そしてまた御判断いただいて採用いただけるとか、こういうところまで進んでいきたいな、こういう大変生意気なことも思わせていただきました。

 ちょっと時間が切れますけれども、切りがいいので、これできょうの初めての質問は終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

古川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私も、財務金融委員会ではきょうが初質問ということでありますので、ひとつよろしくお願いしたいと思っております。

 まず、あすで東日本大震災の発生から四年となります。とりわけ原発事故による被害を受けた福島では、いまだに十二万人が避難し、避難指示区域からの避難者が約八万人となっているわけです。

 安倍首相は、福島の復興なくして被災地の復興はない、そして被災地の復興なくして日本の復活もない、事あるたびにこうおっしゃるわけでありますけれども、本当にそのとおりやっていただけるのかということが現場の声だと思うんですね。

 最初に、福島の業者の方々が今直面している営業損害の賠償金への課税問題について、幾つか質問したいと思うんです。

 きょうは復興庁にも来ていただいておりますが、福島復興再生基本方針が示す復興復旧の基本的考え方、この根底には、原発事故から避難している人たちで帰還を望む人たち全てが震災前に住んでいた地域に帰還することが大前提になっている、こう思いますけれども、まず、この基本方針の内容を御説明いただけますか。

浜田副大臣 福島復興再生基本方針は、福島復興再生特別措置法に基づきまして、原子力災害からの福島の復興再生に関する施策の総合的な推進、これを図るための政府の基本的方針でございます。

 第一には、原子力災害からの福島の復興再生、第二には、避難解除等区域の復興及び再生、そして第三には、福島全域の復興再生をその内容としております。

 特に、御質問いただきました避難解除等区域の復興及び再生につきましては、国が原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任を踏まえ、この区域の市町村の復興再生を責任を持って進めるという基本的考え方のもと、福島の復興再生の実現に向けた具体的道筋などを明記しております。

 政府としては、この方針に基づく施策を確実に実施し、福島の復興再生を着実に進めるため、引き続き全力で取り組んでまいりたいと思っております。

宮本(岳)委員 自営業者にとっては、帰還というのは、単純にその地域に戻るということではありません。震災前と同じように、仕事が、営業が、御商売が再開できることが本当の帰還ということになります。

 例えば、帰還困難区域の復興が始まっても、商店街を中心ににぎわっていた町並みが、郊外の国道沿いにできるイオンのような大型スーパーに取ってかわられ、老舗のおすし屋さんが、あるいは小料理屋さんが、マクドナルドなどのファストフードやファミレス、回転ずしにかわって、中心街が寂れていったというのでは、とても福島の復興復旧とは言えません。

 以前からその町で営業していた中小零細業者が、その地域に戻って、町の復興の中心にいて頑張れることが、基本方針の言う帰還ではないかと私は思います。また、基本方針は、それを実現するのが国の責任だと書いてあるんだと私は思うんですけれども、これは、麻生大臣、そういうふうに受けとめてよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 これは、おっしゃるように、被災をされた方々、例えば、今言われた、多分、自営業者なんだと思いますが、そういった方が再び事業を再開できるという話をされる方は多いんですけれども、それは全然間違っていて、再開しても客がいなかったら、再開したって意味がありませんから。だから、そういった意味では、再開できるということは、再開した商売が成り立つだけの、なりわいとしてやっていけるだけの人口なり客というものがないとやっていけないということだと思います。これはなかなか簡単な話じゃないのであって、地元に戻れた、ただ自宅に戻れただけではなかなかということだと思っております。

 政府としては、いわゆる仮設店舗をやってみたり、工場を誘致してみたり、道路を通してみたり、中小企業グループ補助金を出してみたり、いろいろなことをさせていただいておりますが、いずれにしても、被災者に対して、地元の仕事として、自営業なら自営業がなりわいとしてやっていけるように支援をしていくということが一番肝心なところかと思っております。

宮本(岳)委員 おっしゃるとおり、これは本当に簡単でない課題だと思うんですね。

 帰還困難区域から避難している多くの自営業者は、いつ帰還できるのか、本当に事業を再開できるのか、まだまだ先も見えないという中、不安を抱えて日々生活をしております。

 にもかかわらず、国税の申告期限の延長措置が今月末をもって終わるわけですね。福島の十二市町村だけが、ここまで申告期限の延長を行ってまいりました。その理由と、今回延長を打ち切る理由について、お述べいただけますか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 国税通則法上、国税庁長官は、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から二カ月以内に限り、地域及び期日を指定して申告、納付等の期限を延長することができるというふうにされております。

 それで、その災害その他やむを得ない理由のやんだ日でございますが、具体的には、指定地域内の納税者の多くが申告、納付等の行為をするのに差し支えないと認められる程度の状態に復した日として取り扱っているところでございます。

 今般、今委員がおっしゃいました延長期限の期日を指定した福島県下の十二市町村、まだ多くの被災者の方がなお仮設住宅での生活をされている状況にはございますが、当該十二市町村におきまして、まず、既に多くの方々に自主的に申告、納付等を行っていただいております。

 それから、期限延長の長期化によりまして、納税者の申告、納付等の負担がますます大きくなってまいりますことから、いろいろ議論を交わしまして、そうした地元自治体の意見、要望を踏まえた上で、平成二十六年一月三十一日付の国税庁告示で、平成二十六年三月三十一日を延長期限の期日としたところでございます。

 その際、この延長期限の期日の指定によりまして、当該十二市町村の納税者の方々が複数年分の申告、納付をしなければならないということでございまして、そういう点も考慮しまして、一年間の手続期間を設けまして、ことし、平成二十七年の三月三十一日までに申告、納付等の手続をしていただくこととしているところでございます。

 また、平成二十七年、ことしの三月三十一日までに申告、納付をすることが引き続き困難な被災納税者につきましては、申請によりまして、さらなる期限延長を行うこととしているところでございます。

宮本(岳)委員 七、八割が申告するように戻ったというんですけれども、多くの住民は、税務署が怖いから、仕方なしに申告しているだけだと思うんですね。原発事故からの避難者の帰還のめどは全く立っていないという状況のもとで、申告の延期が終了できる状況にはない。今お話しになった、災害その他やむを得ない理由が解消されたと到底言える状況ではないと私は思います。

 それで、自営業者に再建する費用がなければ、基本方針が言う帰還を町の復興の中心に位置づけることは到底できません。帰還や再建を真剣に考えれば考えるほど、再建するための費用について自営業者たちは悩んでおります。できるだけ再建資金をためようとするのは当たり前だと思うんですね。だから、補償されたお金についてもできるだけためようとしている。これは当たり前の心理だと私は思うんですけれども、財務大臣、そう思われませんか。

麻生国務大臣 基本的には、今言われることのとおりだと思います。

 これは、同じ地域の中にあっても、運のよしあし、同じ地域の中でも東はよかったけれども西の方はとか、地域によってもいろいろ差がついていると思っておりますので、それはそれぞれの事情をよく踏まえた上で対応しないといかぬところになるんだと思っております。一律にといったって、なかなかそんな簡単にいかないだろうなと思います。

宮本(岳)委員 そもそも、東電から現在支払われている、事業のための資産の賠償あるいは営業損害の賠償について、一方的な査定が行われ、非常に不満を持っているという方も少なくないんですね。普通の事故のように、すぐに再建できる、また被害の実額がすぐに確定できるような災害であれば、その実費をもって資産の賠償の交渉もできるでしょう。

 しかし、大臣がお答えになったように、今回の原発事故では、帰還は一体いつになるのか、同じ状態に戻すのに一体どれぐらいの賠償額が要るのか、これは本当に簡単には判断できないわけですよ。そのために、多くの自営業者は、営業損害の賠償として支払われている賠償金も、帰還した際の事業の再建費用ということでためているという状況があるんですね。

 国税庁は、この実態を見ずに、営業損害の賠償を逸失利益だと見て課税するということをやっております。なぜそんな課税をするのか。賠償金を支払う側の東電の言い分だけで判断しているのか。いかがですか、国税庁。

佐川政府参考人 お答えします。

 東京電力が支払います賠償金につきましては、所得税の課税上、精神的損害に対するものを初めとしまして、幅広く非課税とする取り扱いになっているところでございます。

 他方、今御指摘の、避難指示等による営業不能、あるいはいわゆる風評被害などによる減収分に対する営業損害に係る賠償金につきましては、仮に被災がなかった場合には、本来課税対象となるべき収入を補填するものでありますことから、事業所得上の収入金額としておるところでございます。なお、その収入金額からは、必要経費あるいは各種控除を差し引くということができるわけでございます。

 いずれにしましても、国税庁としましては、個々の事実関係に基づきまして、現行の法令に照らして判断しているところでございます。

宮本(岳)委員 本来被災がなかったらと言うけれども、私が今取り上げているのは原子力災害ですよ、原発事故の災害ですよ。そしてそれは、冒頭述べたように、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任を国が認めて、それは専ら国の責任で起こっている、そういう前提から始まっている話じゃありませんか。だからこそ、私は、こういう無慈悲なやり方はおかしいということを申し上げているわけですよ。

 帰還の責任は政府にあるというのが基本方針なんです。帰還が可能な状況になったとき、再建費用がなければ自営業者は帰還できません。復興計画は絵に描いた餅になってしまいます。

 政府と東電は、自営業者の帰還と営業再建に最後まで責任を持って費用負担を支援するということになっているんですか、復興庁。

浜田副大臣 中小企業や小規模事業者の事業再開につきましては、被災地域の復興にとって大変重要でございまして、国として強力に支援しております。

 まず、中小企業グループ補助金によりまして、施設等の復旧や帰還の場合の業態転換を支援しております。これとあわせて、特別貸し付けや二重ローン対策も実施しております。

 委員御質問いただきました基本方針におきましても、避難解除等区域への住民帰還に当たっては、住民の生活と密接に関係する小売業等の関連産業が地域内に適切に立地することが必要であり、国はその達成に向けて必要な措置を講ずると書いてございます。

 よって、仮設店舗の整備を進めるとともに、津波・原子力災害被災地域企業立地補助金に商業施設復興整備事業を設けまして、商業施設の整備を支援しております。また、一定の避難指示区域における事業者の事業を再開支援する税制上の特例措置の創設等を内容とする福島復興再生特別措置法を一部改正する法律案を、先日、この国会に提出したところでございます。

 復興庁といたしましては、こうしたさまざまな支援策を活用することによりまして、避難指示のあった区域における事業再開を支援し、福島の復興再生に取り組んでまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 東京電力と政府は、この営業損害の賠償を打ち切ろうとしております。報道によれば、浪江町の商工会では、避難先などで事業を再開する再開率三五%、飲食業や小売業に至っては二〇%であります。営業損害の賠償が終われば二割程度が廃業する、こう答えております。賠償は打ち切るわ、賠償には税金をかけるわでは、どうやって帰還するのか、どうやって再建ができるのか、こう言わなければなりません。

 帰還費用を政府や東電が責任を持つかどうかわからない、復興は自助努力でしろというふうな状況のもとで、少なくとも、自衛の手段として、再建資金にするため営業損害の賠償金をためている、こういう業者の実態があるわけですね。この賠償金に課税するのはやめるべきだと私は思うんです。

 例えば、日本税理士会連合会が昨年、資料一につけました平成二十七年度・税制改正に関する建議書を公表いたしまして、その中で、原子力損害賠償制度による損失と収入の平準化等の措置を提案しております。内容は、放射能、風評被害等に対する損害賠償金の多くは課税対象とされるが、復旧復興のおくれから、収入と支出の時期が不一致となる事例も多いため、損失と収入を対応させるための措置や所得を平準化させるための措置が必要だ、こういうものであります。具体的には、課税される収益補償金の賠償金の処理について、課税の繰り延べ制度などを創設する、こういう提案をされております。

 政府としても、こういう提案を真剣に検討すべきではないですか。大臣、そう思いませんか。

麻生国務大臣 御指摘のありました御提案というものは、賠償金は複数年度にまたがったものを一度にまとめて受け取る場合がある一方、賠償金を受け取る時期と損失を計上する時期が一致するとは限りませんので、そういったことで、タイミングのずれによって賠償金が一気に課税扱いとなってしまうという問題意識によるものだと私は理解をしたんです。

 しかし、東京電力の賠償金につきましては、複数年度を一挙に受け取るという場合であっても、受け取った時点で一気に収益として計上するのではなく、各年度に分けて段階的に収益に計上できる取り扱いになっております。当然のこととして、収益は一括計上していないということです。また、例えば、被災した資産の損壊などによって生じた損失につきましても、これは法人であれば現行で九年間にわたって欠損金の繰越控除ができるんですが、改正後は十年になるんだと思います。

 したがって、基本的には、賠償金に係る収益と震災関連の損失計上の時期がずれることがあって課税が生じるというような問題はないものだと考えておりますが、もしそういうことがあるのであれば、我々としては、ずらすなりなんなり、しかるべき対応をしていかなならぬと思っております。

 また、震災からの復興のための税制上の対応としても、二十七年度の税制改正において、一部地域において避難指示が解除され始めておりますけれども、そうした地域に帰還して事業を再開しようとしておられる自営業者等々の方々を支援するために、事業再開に必要となる事業用の建物、また、いろいろ、仕事をするに当たっての機械設備等への投資については、投資費用を積み立てやすくするために準備金制度を創設するといった対応を盛り込んでおりまして、今言われましたような対応を通じて、被災した事業者の方々をしっかりと支援していきたいと考えております。

宮本(岳)委員 準備金とかという話をされるわけですけれども、私がここで想定して議論しているのは、セメント会社の話ではないですからね。先ほどの議論でいうと、お豆腐屋の話をやっているんですから、そういう方々が事業再開のめどを立てるということを、やはり厳にしんしゃくして考えなきゃならぬわけですよ。

 そして、先ほどの基本的考え方では、「帰還を望む者が皆帰還し、」「若い世代が帰還する意欲を持てるよう、責任を持って」と政府は掲げているわけですね。まさにそういう家業を若い人が継いでいけるところまで支援するのが国の責任だと言っているわけですから、きちんと検討して、そういう声に応える施策を、きちっと対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 次に、ことしの確定申告がいよいよ始まっております。昨年四月からの消費税率の引き上げ、八%になって初めての確定申告期を迎えております。

 五%から八%への税率変更によって、中小事業者からは、税額がはね上がった、このままでは潰れてしまう、こういう声が、私の地元は大阪ですけれども、大阪でも、それこそあちこちから寄せられております。消費税は、国民の所得を奪うばかりでなく、営業破壊税だと言わなければなりません。

 大臣は、アベノミクスの効果が徐々にあらわれてきている、稼ぐ力のある企業を応援していくとおっしゃるわけですけれども、中小業者は景気回復の実感がないばかりか、物価の上昇あるいは税率引き上げの負担が重く、納税資金さえ滞るという状況が生まれているわけです。

 そこで、まず数字を確認しますが、三月二日に経済産業省が公表した消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査、二月書面調査について、事業者間取引及び消費者向け取引、それぞれで転嫁状況がどうだったか、報告していただけますか。

佐藤(悦)政府参考人 お答えを申し上げます。

 経済産業省は、消費税の転嫁状況を定期的に把握するため、平成二十六年四月から、消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査を実施しているところでございます。

 二月の調査では、転嫁状況について、全て転嫁できていると回答した事業者が、事業者間取引で八五・一%、消費者向け取引で七六・二%、全く転嫁できていないと回答した事業者は、事業者間取引で三・二%、消費者向け取引で四・一%となっております。

宮本(岳)委員 大臣にお伺いしたいんですけれども、このモニタリング調査では、消費税法上の納税義務者である事業者のうち二割前後が、増税後ほぼ一年たった今でも消費税の転嫁ができていない、こう答えているわけです。消費税を転嫁できていない業者がいる実態を、あなたは認識されておりますか。

麻生国務大臣 大阪の状況を、先生の選挙区がどうかは知りませんけれども、生活保護世帯なら筑豊の方も数字としては極めて高いところですから、状況についてはかなり詳しくわかっていると思っています。

宮本(岳)委員 消費税が転嫁できないという現状があることを認識しておられますか。

麻生国務大臣 今、そう答弁を申し上げたつもりだったんですけれども、似たような極めて厳しい状況に私どものところもありますので、そういった業者がおられるということは私どもも町を歩いていたらわかりますから、これはよくありますので、知っていますかといえば、よく知っております。

宮本(岳)委員 租税というものを考える上で、人頭税のように、納税する原資を生まない者に課税をすることは、近代の税制ではあってはならないとされております。

 今回の消費税増税を決めた一体改革の審議をしていたときでも、商工会議所のような大きな企業団体も含め各種団体の調査で、消費税の転嫁などできないと多くの声が上がっておりました。それでも、先ほど大臣がおっしゃった、自民党、公明党、民主党、三党合意で、その訴えを無視して一体改革法案を成立させたわけですね。私、税と社会保障一体改革特別委員会の理事役もやっておりましたよ。

 今まさに増税前に憂えていた事態が起こっている、転嫁できない業者が発生している、それでも政府は、消費税を転嫁できていない業者にも消費税を納付しろと言うんですか。

麻生国務大臣 消費税を転嫁できない理由というのは、事業者によってさまざまあると考えております。例えば、中小企業庁で実施しておられますアンケート調査においても、競争が激しく、価格の引き上げによって他社に取引を奪われるおそれがあるなどの回答があったということも、これはよくある話で、承知をしているところです。

 いずれにしても、事業者が消費税を円滑かつ適正に転嫁できない、それを転嫁できるようにすることは重要な課題だと思っておりますので、政府としても、公正取引委員会、経産省、中小企業庁等々が、六百名程度だと思いましたけれども、転嫁対策調査官というのを配置して、内閣府においては消費税価格転嫁等総合相談センターを設置して、悉皆的な書面調査を実施するとか、違反行為に対して公正取引委員会が相当数の指導、勧告を既に実施したというような対応を行っているところで、消費税引き上げ分を適切に転嫁できるように政府としては今後とも対策に取り組んでいかないかぬ、大事なところだと思っております。

 これは最初から話題になっていましたので、消費税をやる前からこの話が一番問題で、やり過ぎじゃないか、介入し過ぎると言われる可能性もあるほどやってちょうどいいぐらいと言ってきたことがありますので、今の点は十分に対応していかなならぬものだと思っております。

宮本(岳)委員 いや、転嫁できるようにするとおっしゃるけれども、そして、転嫁できるようにするとおっしゃって消費税の税率を上げたわけだけれども、現に、二割程度は転嫁できていないと答えているわけですね。

 私は、その転嫁できていないという結果になっている者からも消費税を取るんですかと聞いたんです、取り上げるんですかと。いかがですか。

麻生国務大臣 それは、基本的には、同じ商売をやっておられる方でも、払っておられる方が八割はおられる、片一方は払えないというので、そちらだけ、払えないから除外しますというわけにはなかなかいかぬというのが現実だと存じます。

宮本(岳)委員 転嫁できないと言っているのに消費税率を引き上げたこと自体、まさに私たちが、そういうことをすれば転嫁できないですよと言ったのを、いや、できるようにするんですと言って引き上げたこと自体に問題があるということを私たちは今指摘しているわけです。

 それで、消費税を転嫁できなかった業者に何か問題があると。この人たちに、転嫁できていなくても無理やりでも納税しろと言うのであれば、一体どうやって納税資金をつくればよろしいのでしょうか。

麻生国務大臣 消費税というものは、基本的には、事業者が借金などによって負担を負うというのはおかしいと思いますので、転嫁を通じて最終的に消費者に負担していただくべき税なんだ、私どもはそう考えております。

宮本(岳)委員 いや、しかし、私は驚いたことがあるんです。

 大蔵財務協会というところが発行している「税のしるべ」という機関紙といいますか新聞があるんですが、この「税のしるべ」を読みますと、これは税制改正の内容や新たな通達など、税務行政に関する出来事を載せている、いわば国税庁の準機関紙のようなものでありますけれども、昨年十月二十日付で、金融商品で消費税滞納防止、納税定期積立金、タックスローン、セットで商品化、こういう大きな見出しがございました。消費税完納キャンペーンの一環だと書いてありましたよ。納税したときに発生する延滞税の税率より低い優遇金利で地元の信用金庫から融資が受けられますよ、こういう売り込みですよね。

 まさか、さっき財務大臣は、借金をして納めろと言う気はないとおっしゃるんだけれども、現に現場ではこういう話になっているんじゃないですか。

麻生国務大臣 これは私の答弁じゃないのかもしらぬけれども、少なくとも、これは、宮本先生、わかって聞いておられるんでしょうけれども、払い方は自由ですから、借金して払う人もおられるし、借金は拒否というので、私が最初に申し上げたような形でなさるのは当然なのであって、普通は、高い金利まで払って借金をして消費税を払うというのは基本的にはおかしいと思います。

宮本(岳)委員 つまり、こういう金融商品が出されるほど、中小業者にとって消費税の納税が厳しいということを物語っているんですよ。そういうニーズがなければ、こんな金融商品が売り出されるわけがないわけであって、そういう実態が現にあるということを示しているわけですね。

 ともかく、八%消費税の転嫁問題が確定申告の中小零細業者の悩みの種となっております。では、どうして転嫁ができないのか、先ほど大臣が先回りして答弁されたものを答弁いただきたいんですね、経産省にきょう来ていただいていますので。

 経産省のモニタリング調査では価格転嫁ができない理由というものを聞いておりますけれども、事業者間取引及び消費者向け取引それぞれで、転嫁できない理由の一番と二番は何か、答えていただけますか。

佐藤(悦)政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省が実施している消費税の転嫁状況に関する月次モニタリング調査の二月調査において、価格転嫁ができていない理由として、事業者間取引では、先ほど麻生大臣が答弁されましたが、一番は、自社商品等の競争が激しく、価格を引き上げると他社に取引を奪われてしまうおそれがあるためと回答した事業者が五〇・六%と一番多く、二番目は、取引先の業界の景気が悪く、消費税分の値上げを受け入れる余裕がなかったためと回答した事業者が二九・七%いらっしゃいました。

 また、消費者向け取引では、価格転嫁ができていない理由として、景気が回復しておらず、まだ消費者の財布のひもがかたいためと回答した事業者が五四・二%と一番多く、自社商品等の競争が激しく、価格を引き上げると他社商品に乗りかえられてしまうおそれがあるためと回答した事業者が四〇・一%と二番目に多うございました。

宮本(岳)委員 今聞いていただいたとおりですよ。競争が激しく、価格引き上げによって他社に取引を奪われるおそれがある、半分、答えが。それから、取引先の業界の景気が悪く、値上げを受け入れる余裕がなかった、三割。また、消費者向け取引では、消費者の財布のひもがかたいため、半分以上です。競争が激しく、価格引き上げによって他社製品に乗りかえられてしまうおそれがあるため、四割。こういう結果が出ているわけですね。

 つまり、やむにやまれず転嫁できないというのが今の現実の姿ではないか。値下げ要求を拒否したり告発すれば、仕事を切られかねない。消費税や原材料の高騰分を転嫁すれば、売り上げが下がる。値段を上げたくても上げられない事業者の苦悩が、この結果からもはっきり見えてくると思うんですね。

 三月二日、予算委員会で、我が党の真島議員の質問に対して麻生大臣は、地方でいろいろまだ問題があるのも確か、地域によっても業種によっても企業の大きさによっても差がある、こう答弁されました。

 都市部よりも地方部、大企業よりも中小・小規模企業が景気回復の実感もなく苦しんでいる、そういう認識をお持ちなのだと思うんですけれども、もう一度、大臣のこれについての御認識をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 その申し上げた答弁のとおりだと思います。

宮本(岳)委員 景況感だけでなくて、消費税の転嫁ができていないとの実感も、末端の下請企業や小売、サービスなど、小規模になるほど大きくなっているのではないか。

 先ほどの経産省のモニタリング調査では、小規模になればなるほど困難があるという結果が出ているんじゃないですか。お答えいただけますか。

佐藤(悦)政府参考人 御指摘いただきました二月の調査におきましては、従業員規模別の転嫁状況を見ますと、例えば、事業者間取引において、全てが転嫁できていると回答した事業者は、五人以下の事業者で八四・〇%、六人から二十人の事業者で八五・二%、二十一人から五十人の事業者で八七・四%となっているなど、総じて従業員規模の小さな小規模事業者の方が価格転嫁が難しい状況にあることがうかがえるというふうに承知をしております。

宮本(岳)委員 全国の商工会でつくる全国商工会連合会の調査を見ましたけれども、規模の小さな事業者ほど、今後も転嫁できない、転嫁できるかどうかわからないとの回答が多く、さらには、先行きが不透明な状況と指摘をしております。

 大臣、消費税が転嫁できていない、かといって、身銭を切るだけの余裕もない、これ以上借金をして払うということもできない、そうなると、業者の皆さんは一体どうするしかないと思われますか。

麻生国務大臣 これまた人によって、商売をそのままやめられる方もいらっしゃるでしょうし、いろいろ、人様によって対応の仕方は全部違うと思います。

宮本(岳)委員 違うとはいえ、廃業するか、滞納するか、これぐらいの選択肢しかないわけですね。そうなると、滞納ということが起こります。

 そこで、数字を確認したいと思います。

 これは国税庁ですが、新規発生の国税の全滞納の中で消費税の滞納が占める比率、これがどう推移してきたか。一九八九年、一九九五年、二〇〇〇年、二〇〇五年、二〇一〇年、そして二〇一三年の数字をそれぞれお答えいただけますか。

佐川政府参考人 お答えします。

 御指摘の各年度におけます国税の新規発生滞納額に占める消費税滞納の割合でございますが、一九八九年度は二・七%、一九九五年度は二七・四%、二〇〇〇年度は四四・六%、二〇〇五年度は四五・四%、二〇一〇年度は四九・七%、二〇一三年度は五一・四%となっております。

宮本(岳)委員 一九八九年に二・七%から始まったものが、二七・四、四四・六とふえて、二〇一三年ではとうとう五割を超えております。年を追うごとに滞納全体に占める消費税の滞納の比率が高まる傾向がはっきり出ております。

 麻生大臣、なぜこのような傾向にあるのか、大臣のお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 基本として、デフレによる景気がまだ回復していないということの証明をしている一つの数字だと思っておりますけれども。

 今言われました中で一つだけ、九八年のいわゆる通貨危機のときにはたしか七千億円ぐらいの滞納が発生したと思いますが、パーセントは三八%だったんですが、額としては七千億円ぐらいになっていたと思います。今回の場合、二十五年が、パーセントとしては五一%ですけれども、額としては二千八百億ぐらいのものになっていますので、パーセントと額とは少し違うということは頭に入れておかないかぬなと。我々、税金を預かる方としては、その点は考慮しておかないかぬところだと思っております。

佐川政府参考人 今の大臣の答弁に数字を補足させていただきます。

 大臣がおっしゃいましたように、消費税の新規の発生滞納額でございますが、ピーク時の一九九八年度が七千二百四十九億円で、平成二十五年度、二〇一三年度の新規発生滞納額が二千八百十四億円でありまして、そういう意味では、二十五年度の消費税の新規発生滞納額はピーク時の四割以下、約三九%まで減少しているところでございます。

宮本(岳)委員 売り上げも下がったし、景気も悪いというだけのことじゃないですか。中小零細企業への消費税の課税が年々負担になっているということの結果だと思うんですね。

 例えば、一九九七年に税率が三%から五%に引き上げられたときには、滞納が急増し、自殺件数が一気に三万人を超えました。消費税の免税点を売り上げ三千万円から一千万円に下げたときにも、〇四年の五十万件から〇五年の六十五万件へと、一気に三割も滞納件数がふえております。

 その一方で、一件当たりの滞納額は九十万円から七十万円に下がった。つまり、免税点を引き下げたことで、小規模事業者ほど消費税の転嫁が困難な実態が表面化して、消費税の滞納が大量に生まれる事態となったということを示していると思います。

 今回の消費税八%への引き上げでも、小規模の事業者になればなるほど消費税の転嫁が困難である実態が、政府の調査でも中小企業団体の調査でも明らかだということであります。

 そこで、ちょっと質問が長くなりますが、私の事務所で幾つか聞き取りを行いました。

 一つは、安くて新鮮と地域で評判の八百屋さんであります。

 大型店の出店や消費の低迷で、昨年からことしにかけて売り上げが落ちた。所得は三百万円。消費税額は、昨年の十八万円から三十二万円にはね上がった。市場の買掛金、いわゆるツケをふやして税金を支払うことにしているが、税金や社会保険料などの負担が重い。野菜の価格は相場で決まるもの。競合店を意識すれば、価格を安く抑えるしかない。生鮮品なので、古くなると安くしたり、なじみの客やお使いに来た子供にサービスすることもある。取引の中で価格が決まるわけで、価格はお客様が決めるものだと思っている、こうおっしゃっていました。

 この方は、小泉構造改革が始まるまでは七つの店舗を持って、二十名の従業員を抱えて、大きく商売をやっておられましたが、現在は借り店舗一つを夫婦二人で経営するまでに縮小せざるを得なかったと、悔しそうな表情で語っておられます。

 大阪のおそば屋さん、これは二つ目の事例ですが、夫婦二人で営業し、そば粉を自分でひいてお客に提供する店主のこだわりが地元の人に愛されているお店です。

 この間、食材や電気・ガス代が値上がりして、昨年の消費税三%引き上げ分もあり、メニューの価格を変えた。全てを価格に上乗せしたら安く提供しているチェーン店などにはとても太刀打ちできないので、全ては転嫁できないが、しかし、価格は若干上げた。値段を上げていますから、見かけ上、売り上げは伸びたが、消費税額は昨年の二十九万円から一・六倍の四十六万円に。赤字ではないけれども、利益はほとんど出ていないので、どうやって税金を支払うか頭を悩ませている。こういう赤裸々なお話でありました。

 結局、自営業者にとって消費税は価格の一部でしかないということなんですよ。価格に織り込まれているわけで、増税になれば、市場競争の中でこうした人たちは商売を続けていくことが難しくなります。消費税の滞納もふえ続けるのは目に見えております。

 今回、政府は、転嫁できればうまくいく、そう言って増税したわけですけれども、全ての事業者が転嫁できる環境をつくるための転嫁対策だと言っておりましたけれども、中小業者にとっては、消費税を転嫁すれば客が減る、赤字でやっていけなくなることを恐れて、結局本当は転嫁できていないというのが実態だと思うんですね。大臣、そうじゃないですか。

麻生国務大臣 消費税が最初に導入されると決まったときから、御指摘のようなことが起こらないようにするため、消費税率の引き上げに際しては、転嫁しやすいようにということで環境を準備する、これは重要な課題だということで、最初からこの話が出ていたと記憶をいたします。

 したがって、政府としては、今回は、特に消費税の円滑かつ適正な転嫁等を確保するため、転嫁対策特別措置法、これは今までつくったことがないんですが、それに基づいて、公正取引委員会また中小企業庁等が六百名程度の転嫁対策調査官などを配置して、違反行為に対しては公正取引委員会等が相当数の指導、勧告を実施するなど、かなり強力かつ実効性のある対策を推進するとともに、同時に、消費税率の引き上げが全額社会保障財源として国民の皆さんに還元されているんだということを御理解いただけるように、最終的に消費税を御負担いただく国民の皆様に対して積極的な広報にも取り組んだところでもあります。

 いずれにしても、中小企業者、零細事業者が消費税率引き上げ分を適正に転嫁できるように、引き続き、政府としては転嫁対策に取り組んでまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 その転嫁ができていない実態があるということを、私はるる申し上げているわけです。

 資料の二枚目につけましたけれども、これは中小企業白書の資料で、過去十年間の間、一方的に中小企業の数がどんどん減っているということがこのグラフに示されております。また近年では、中小企業の中でも中規模企業と小規模企業とでは規模が小さいほど減少率が大きい、こういうふうに中小企業白書の中には書かれております。

 どうしてこのような傾向があるのか、御答弁いただけますか。

佐藤(悦)政府参考人 中小企業の数は、二〇〇九年から二〇一二年の三年間で約三十五万者減少しておりますが、うち小規模事業者は三十二万者減少しております。減少率を見ますと、中規模企業はマイナス四・八%、小規模事業者はマイナス八・八%と、小規模事業者の減少率が大きくなっております。

 その背景、原因といたしましては、小規模事業者は全体の約六割を個人事業者が占める等、規模が小さく、経営基盤が強くないことが挙げられます。また、建設業、小売業、宿泊、飲食サービス業等、小規模事業者には経済社会構造の変化の影響を受けやすい業種の企業が多数存在していることもまた原因と考えております。

宮本(岳)委員 つまり、小規模事業者は、経済社会構造変化の影響を受けやすい、今回の消費税増税の影響も受けやすいわけです。小規模事業者の倒産、廃業がこの先も進んでいく可能性がある、大臣が幾ら答弁されてもこれは否定できないというふうに思うんですね。

 消費税が八%に上がった。この先、政府は今度は、先送りした後、一〇%に引き上げる、こういうことを今回のこの法案でも織り込まれているわけですけれども、こうなってくると一括で消費税を納付できない事業者が増加する、これは予想されます。現在の経済状況を考慮するならば、想定される消費税の滞納発生業者に対して、きちっと実情や実態に即して納税者に有利になる情報を提供するなど親身な納付相談をする必要があると私は思うんですけれども、今大臣はいらっしゃいませんので、では、事務方の方でお答えいただけますか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 滞納整理に当たりましては、納税者から一括納付が困難などの相談があった場合には、納税者の事業内容、業績、資金あるいは財産の状況などを十分把握した上で、一定の要件に該当する場合には猶予を認めるなど、これまでも納税者個々の実情に即して、法令に基づき適切に対応しているところでございます。

 引き続き、丁寧な対応に努めてまいりたいと思います。

宮本(岳)委員 消費税増税の納付期に合わせて、ことし四月から国税の猶予申請の制度が変わります。納税の早期段階での計画的な納付の履行を確保するという観点から、申請に基づいた換価の猶予という制度が導入されました。

 重ねて国税庁に聞きますけれども、どういう条件の納税者が申請による換価の猶予の対象となるのでしょうか。制度について御説明いただけますか。

佐川政府参考人 今御指摘のありました、この四月から始まる新しい換価の猶予の制度でございますが、今回創設されます新たな換価の猶予は、要件としましては、一つに、滞納者が滞納国税を一時に納付することによりその事業の継続またはその生活の維持を困難にするおそれがあると認められること、二つ目に、滞納者が納税について誠実な意思を有すると認められること、三つ目に、ほかに滞納となっている国税がないことのいずれにも該当することが要件とされております。

 また、この新たな換価の猶予を受けるには、滞納国税の納付期限から六カ月以内に申請をしなければならないということでございまして、今委員御指摘のとおり、この制度は、従来税務署長が職権により適用していたものを、滞納者からの申請に基づいても猶予することができるというふうになったものでございます。

宮本(岳)委員 税務署長の職権による適用も従来あったものを、申請によってもできるようにする。これは、制度上連続して対処するならば、何年ほどこの猶予は受けられますか。

佐川政府参考人 簡潔に申しますと、法令の要件に該当する場合は、まず、申請による換価の猶予で最初に一年、さらにやむを得ない理由がある場合には最長二年。さらに、申請による換価の猶予の二年でも完納できなかった場合には、法令の要件に該当する場合には、職権による猶予が一年、さらにやむを得ない理由がある場合にはさらに一年ということでございまして、制度上は両者の合計で最長四年まで延長することは可能となっております。

 ただし、換価の猶予におきましては、滞納者の財産の状況、その他の状況を踏まえまして、滞納している国税をできる限り早期に完納していただく必要があるというふうに考えております。

宮本(岳)委員 消費税率の影響はいまだに個人消費を冷やして、多くの自営業者が経営が圧迫されて夜も眠れない日々を過ごしている、確定申告の準備に当たってもそういう状況を私は見聞きしております。

 換価の猶予の前に対応できる納税の猶予なども活用して、やはり柔軟に、消費税を払えない納税者に対してきちんと相談に乗っていただきたい。

 これは最後に、麻生大臣にその御決意をお伺いしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは、まず何といっても景気回復というものを起こさないと、なかなか、消費税に限らず、税が払いにくくなっているという状況になることは間違いないと思っております。加えて、デフレーションによる不況ということになると、その度合いがさらに難しいことになるというのもはっきりしておりますので、基本的には、我々としては、きちんとした形で納税をしていただけるように、消費税を納めていただけるように、景気回復、またその他、個別の事業、ちょっと個々にいろいろありますのでなかなか申し上げられませんけれども、そういったようなことができるような支援をしてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 もちろん、根本は、転嫁もできない消費税増税を強行したことに今日の問題があるんです。消費税率の一〇%への引き上げは、今回の例を見るまでもなく、国民と中小零細業者に重くのしかかるわけであります。二年の延期ということではなく、きっぱり中止するということを改めて申し上げておきたいと思います。

 次に、ジュニアNISAについて聞きたいと思うんです。

 冒頭、所得税についてグラフをつくってみました。資料の三におつけいたしましたが、日本の所得税の問題の一つは、累進性が弱まっているという点にあると私は思うんですね。多くの研究者だけでなく、政府の税調も幾度か指摘をしていると思います。

 まず、現在の所得税制の累進性あるいは所得再配分機能について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 宮本先生、よく御存じのように、所得税につきましては、昭和六十年代以降、大幅な累進緩和というのを行ってきた、たしか六十年代だったと記憶いたしますが、当然のこととして、所得再配分の機能が低下したという指摘がなされているところです。

 こうした中で、最近の税制改正において、所得再配分機能の回復のために、所得の最高税率を引き上げるということで四〇%を四五%、それから、給与の所得控除の見直しというのが、控除の頭打ちなどで給与収入額を段階的に引き下げて、あれは千五百万から千二百万にして千万にしたんだと記憶します。そして、上場株式に係ります配当、譲渡益に対する軽減税率の廃止、これが一〇%までだったのが二〇%に戻ったということだと思います。これらの見直しの多くは、そのほとんどはこの一月以降、こういった形のものをさせていただいておりますので、今後、その影響をよく見てまいりたいと考えておるというところです。

宮本(岳)委員 いろいろと累進性を緩めてきたものをもう一度もとに戻す改革をしたとおっしゃったんですが、資料の三につけた図を見ていただきたい。ことしの二月二十日に国税庁が発表した二〇一三年の申告所得税の実態から作成した、所得税負担率のグラフであります。

 昨今言われているように、収入が一億円を超えたところから税負担率が下がっていく傾向が今回はっきりと出ております。二七・五%の負担率をピークに、百億円以上の所得層で一一%程度の負担率にまで落ち込んでおります。

 なぜこのような累進性を阻害する負担率となっているのか、政府の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の表でございますが、これは平成二十五年の統計に基づくものでございまして、合計所得金額に占める所得税の負担割合が一億円を超えたところで低下している、この要因でございますが、まず、高額所得者ほど株式譲渡所得の比率が高いという中で、平成二十五年当時は上場株式の譲渡所得などにつきまして軽減税率一〇%の適用ということが影響しているのではないかというふうに思われます。

 ちなみに、上場株式の譲渡所得に対します軽減税率は二十五年の十二月三十一日をもって廃止されておりまして、現在は二〇%という税率適用でございますので、この改正の影響は注視していく必要があるだろうと思っております。

宮本(岳)委員 そういう御答弁をされるんだろうと思っておりましたが、一〇%、半額にまけてやっていたんですね。株式譲渡益が収入に占める割合が高まれば高まるほど引き下がる、この一〇%を本則に戻した、二〇%に戻したという今の答弁だったと思うんですが、一億円のところで二七・五%ですからね。それは、三〇%、四〇%にしたというんなら、今後眺めていたら、だんだんちゃんと累進的に、この山は下に下がらず右肩上がりになるんでしょうが、二〇%に戻しても二七・五%より低いですから、そういうふうにはなかなかならないと僕は思うんですけれども。

 少なくとも、今おっしゃったキャピタルゲインの軽減税率というのは、貯蓄から投資へと、政府が旗を振って譲渡益課税に異常な優遇をしてまいりました。高額所得者の所得税負担率を大きく引き下げる原因となってきました。

 そこで聞くんですが、これは大臣に聞きますよ、証券優遇税制などで、金融資産は、政府がおっしゃったとおり、貯蓄から投資へ移動しましたか。

麻生国務大臣 家計におきますリスク性資産の保有額ということなんだと思いますが、とりわけ株価の影響を大きく受けるというところから、その資金の動きについて一概にこうだということを申し上げることは困難ですが、証券軽減税率がなかった場合に市場や家計の資産構成がどうなっていたかを検証するということも難しい、これははっきりしていると思っております。これはなかなか難しい。やろうといったって、とてもじゃないが難しいので。

 ただ、どういうような家計の資産が増減しているのかを、確たることは申し上げられませんが、事実関係を申し上げれば、平成十五年の制度導入以降、個人株主の延べ人数は三千四百万人から四千六百万人に増加しているというのは事実であります。

 したがって、証券軽減税率の廃止に伴って、平成二十六年度より導入されましたNISAにつきましては、比較的少額から、投資による利益を非課税とすることによって広く国民に投資への関心を持ってもらい、投資の裾野をさらに拡大することを期待しておりますけれども、いずれにしても、こういった形で、いわゆる資産の形というものが、投資等々、単なる貯蓄から成長に向かっていろいろな形でその金が動くということを期待しているところではあります。

宮本(岳)委員 きょうは、資料の四、資料をつけておきました。二〇〇四年と二〇一四年。これは金融庁提出資料ですから、私がつくったものじゃないですよ。日本の家計等の金融資産の構成比を見ていただいたら、現金、預金、二〇〇四年が五三・二%、二〇一四年が五二・六%、ほとんど変化がないですよ。全然そういうふうには動いていないですね。

 つまり、税制で優遇した、それで家計の預金を投資に移そう、こういう建前だったわけです。結果は、移らなかった。そうしたら、結局、そういう優遇をしなくても、以前から株式などのリスク資産で運用していた大資産家が減税の恩恵にあずかったというだけの話だと言わなければなりません。

 さすがに、世界でもまれに見るこの優遇税制は、二〇一三年の十二月末をもって最後となります。その後に出てきたのが、今大臣がお触れになったNISAというものであります。この制度でありますけれども、これも同じように、貯蓄から投資へということのためにやるんですか。

麻生国務大臣 NISAは、上場株式や公募株式投資信託などへの年間百万円までの新規投資から生じる収益については最長五年間非課税とするという制度、長く言えばそういうことになります。

 この導入によって、国民に投資に関心を持ってもらって、家計の資産形成の支援ということをやる。単に預金している、金利なんかほとんどつかないのに預金だけしているわけですから、それを、資産形成を支援できればと思っておりますと同時に、現在、預貯金にかなり日本の場合は偏在しておりますので、個人金融所得一千六百四、五十兆円のうち八百六十兆円ぐらいが現預金ですから、そういった意味では、金融資産が投資へ振り向けられるということによって、経済成長に必要な成長資金への供給がふえるということに期待しておるんですが、こうした制度の趣旨に鑑みて、預貯金を非課税の対象とはしていないというところであります。

宮本(岳)委員 今の答弁は、つまり、貯蓄から投資へというインセンティブを与えるために、NISAは株式については非課税にするが、貯金の利子については課税するのだ、こういう答弁ですか。確認させていただきます。

麻生国務大臣 今申し上げたのはそういうことです。

宮本(岳)委員 随分、本音をあからさまにおっしゃるわけでありますけれども。

 このNISAというものは、英国のISAという制度を手本としてつくられた、金融庁もそういう説明をされております。

 英語に堪能な麻生大臣に、NISAというのは一体何の略か、ISAというのは一体何の略か、お答えいただけますか。

麻生国務大臣 ニッポン・インディビジュアル・セービング・アカウントじゃなかったですかな。インディビジュアル・セービング・アカウントの略だと記憶します。

宮本(岳)委員 おっしゃるとおり、NISAというのは、ニッポン・インディビジュアル・セービングズ・アカウント、そしてイギリスのISAというのは、Nを取った、インディビジュアル・セービングズ・アカウント、こういうことになります。どちらもセービングズというのが入るんですね。

 つまり、もともとの英国のISAというのは個人貯蓄口座のことなんです。預貯金などの安全資産もこの制度の対象となっております。

 しかしながら、日本のNISAでは、今大臣がお答えになったとおり、預貯金と株式とでは全然違う扱いになっている、つまり、NISAの制度の対象から外されている。先ほど答弁にありましたから、無理やりでも株のところへ持っていくんだということなのでしょうけれども、英国の制度を手本にしたといいながら、日本だけ何でこんな偏った制度にしたんですか。

麻生国務大臣 英国のISAの方は、国民に貯蓄自体を奨励することを目的とした制度というように理解しておるんですが、非課税の対象が株式等に限定されず預貯金も含まれているものだった、イギリスの場合はそうだったと記憶します。

 他方、我が国のNISAの場合は、イギリスと全然違いますから、家計貯蓄が極めて豊富ということでありますので、傍ら、現預金にかなり偏っておるというのが現状でありますので、したがいまして、これを投資に振り向けることによって家計の資産形成というものに支援をすると同時に、経済成長にも必要な成長資金というものがそこから生み出される、供給拡大につなげるということを目的としておりますために、預貯金につきましては非課税の対象としていないということ、先ほど申し上げたとおりです。

 このように、政策目的の違いが制度面での違いを生じさせているものだと理解をしております。

宮本(岳)委員 もう少し原点に返って、では、もう一つ聞きます。

 小泉内閣以来、これだけ大がかりに貯蓄から投資へと旗を振ってやってきたにもかかわらず、先ほど私が紹介したように、五〇%余りの現預金、これはぴくりとも、ほとんど動かず来ている。つまり、なぜそのようになっているのか、国民が金融資産を現預金の形でこれほど動かそうとしないのか。どう考えておられますか。

麻生国務大臣 これはいろいろな理由があると思いますので、宮本先生、一概に、これが答えというのは、これですよなんという答えがあろうとは私は思いませんけれども、それぞれの御家庭の事情があるんだろうと思います。

 少なくとも、前のバブルの景気のいいころに、一九八九年十二月の二十九日ですか、あれが三万八千九百十五円つけたんだと思いますが、あのときが株の最高。今、上がったといったって、三万八千円が一万八千円に下がっておるわけですから。あのとき株を随分やった方々というのは、三万八千円が一万円を切るところになったということになれば、株という名の動産が四分の一になった。早い話が、資産が完全なデフレーションを起こしたわけです。

 それは大きな理由の一つで、やはり株よりは現預金を持った方がいいということになって、かつ、その現預金の方は、円が高くなってドルが安くなったという時代がありましたので、現金で持った方がかなりその点についてはよかったという時代が、現象面として起きたというのが大きな背景かなという感じはしますが、いずれにしても、現預金の方が株よりは信用できるという気持ちが非常に強いというのが一般的なものだと思います。

宮本(岳)委員 庶民は、わずかな余裕資金があればやはりまずは貯金をして、確かに元本が保証される貯金で確実にためておかなければ、いつ何どきどうなるかわからないという不安感を持って、貯金にどうしてもシフトしているんだと思うんです。元本が減らない運用資産として貯金をしている庶民からは、わずかな預金利子に二〇%も課税をする一方で、株式投資はNISAで非課税として優遇するのはひどいじゃないか、こういう声が上がるのは当然だと思うんですね。

 政府が、もう貯金なんかやるな、株を買ってもらいたいんだ、こういうあからさまな御主張なのかと思いますけれども、それは預金の利子だって不労所得には違いないですよ、どちらも不労所得であるにもかかわらず税率が違う、預金の場合と株式利得の場合と。私はこれは課税の公平に反するのではないかと思いますが、いかがですか。

佐藤(慎)政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係でございますが、まず、預貯金の利子に対する課税につきましては、所得税が一五%、個人住民税が五%、合わせて二〇%の税率でございます。先ほどから議論に出ております、上場株式に係ります配当、譲渡益に対しましても、現在、同様に二〇%の税率ということで、ここは制度がそろっているわけでございます。

 一方、NISAといいますのは青天井ではございません。一定限度の投資限度額を設定した中で非課税としているということでございます。

 加えて、利子に関しましても、例えば勤労者につきましては、財形年金貯蓄とか財形住宅貯蓄におきましては、元利合計五百五十万までを限度としまして利子が非課税という制度でございます。

 何と何を比べて公平かというバランス上、今のようなことになるんだろうというふうに思います。

宮本(岳)委員 預金にかかる税金も二〇%だ、株式譲渡益の税率も二〇%だと。しかし、ここは公平かもしらぬけれども、NISAの世界では、片方はかかるが片方は減税、これが不公平だと僕は言うているわけですよね。

 それで、ISAを見ますと、これは大臣がおっしゃるとおりですよ、上場株式だけでなく、公社債、投資信託、保険、預金、MMFなど、幅広く各種の金融商品を対象としております。これは、貯金の奨励と言われましたけれども、同時に、資産形成のポートフォリオをきちっと個人で選択してもらう、こういうことが念頭にあるわけですよ。

 だから、日本でも恐らく、NISAという以上は、資産形成のポートフォリオをそれぞれみずからの責任できちっと選択してもらうということであれば、当然、英国のように全ての資産を自分の判断でポートフォリオをつくることができなきゃ、金融リテラシーというような点では余りプラスにならぬのじゃないかと思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 今、各世帯におけるいわゆる貯蓄と投資の適切なバランスというものについては、各世帯の資産状況によって異なっていますので一概に申し上げることはできませんけれども、一般的に言えば、当面必要な資金は預貯金で確保、それが普通だと思います。余裕資金があれば、適切な分散投資を通じて中長期的な資産形成を行うということが合理的なんだと私は思います。

 また、余裕資金の運用に当たっては、資金の払い出しまでの期間というものが長く、長期的な視点でリスクをとるということが若い人ほどできますので、リスク性資産への長期投資というものを通じた資産形成のメリットを享受しやすいというのは考えられると思っております。

 したがって、ジュニアNISAの場合は、子供の将来に向けて、比較的少額からの投資を長期的に積み上げていくという資産形成を支援するものでして、各世帯の資産状況に応じて有効に活用されるということを我々としては期待しているということであります。

宮本(岳)委員 ジュニアNISAですけれども、私は実は、麻生さんと国会で初めて出会ったのは、私が参議院総務委員で、麻生さんが総務大臣か何かをやっておられるときだったと思います。郵便貯金を当時所管しておりまして、当時は、こども郵便局というのがありまして、学校で子供たちに郵便貯金を奨励する、こういうことをやってまいりました。

 それで、ジュニアNISAというふうに聞きますと、NISA自身が、先ほど大臣が御答弁になったように、貯金はもういいから、できるだけ株式投資に流れろということであれば、子供のうちから、貯金なんというのは余りしなくていい、できるだけ株で大きくふやすことを考えよう、こういうようなことを意味しているのかなと感じるわけですが、これはそんなことないですか。

麻生国務大臣 宮本先生らしくない質問だなと思って、珍しいなと思って聞いていて、別の人かと思いました。

 正直なことを言って、先ほど申し上げましたように、現預金というものは、やはり基本的には、金がないというときには金をためるというのは立派な目的になります。金が足りないから。しかし、金があるというのであれば、その金は目的から手段に変わらないとおかしい。当然のことです。金は置いておくものじゃありませんし、眺めるものでもないですから。あれは使うものであるのであって、したがって、お金を有効に使うというのは当然のことだろうと思っておりますので、当然、お金は目的から資産に変わる。

 その中の一環として、日本の場合は、持っている現預金の比率が国際的に見て明らかに高い。少なくとも全金融資産の六割以上が現預金ですから、一千六百兆のうち八百六十兆がそうなんですから。

 そうなると、それは明らかに極端に高いので、少なくともそういったようなものがあるのであったらその分を成長資金の方にという話をしているのであって、貯金をやめろとかいうような話は何も言うておらぬのであって、それはちょっと曲解に過ぎますので、ほかの方だったら、それは共産党的考えですと言っちゃうところなんだけれども、私はそんなことを言いませんよ、今。言わない。間違いなくそれは明らかに曲解なのであって、我々は貯金をやめろなんて言うておらぬのであって、貯金は今世界で一番あるんですから。世界一ですよ、我々は。

 だから、その持っている金を少なくとも株とかその他のものに振り向けていただけぬだろうかという一環として話をしているというふうに御理解いただければと存じます。

宮本(岳)委員 お金がなければためる、そうなんですよ。麻生大臣はお金持ちですから、もうためる必要もないほどお金がある人のことを想定して考えているでしょうが、やはり一般的にはお金はないんです、子育て世代は特にないんです。

 ジュニアNISA、この資金は恐らく、金融庁の説明でも親、祖父母等となっていますから、ゼロ歳からのそんな子供が株式を取得するお金をどこかから段取りすることはできませんので、親や祖父母がこれを拠出するということでしょうが、しかし、大半の親にとっては、まず子育てするのもままならないわけですよ。そうですね。

 それから、私はこの間、予算委員会等で麻生大臣とも繰り返し、学生たちの高学費の問題、それから奨学金、せめて無利子にするのが当たり前じゃないかという議論もこの前やりましたよ。だって、大学まで行こうと思えば、国公立で初年度八十数万円、私立なら百数十万円かかるわけですから。親が右から左にぽんぽんと出せる状況じゃない。

 だから、まず、今の日本の国民の中で、さまざまだとあなたがおっしゃったとおりなんですよ。まずは、そもそも貯金がゼロという国民がいらっしゃいます、子育てしていても。次には、貯金を持っているが、それは貯金なんだ、それを動かすなんてとんでもない、そういう御家庭もあります。その次には、学資保険ですよ。保険という、確定された運用で、きちっと元本割れがないように安全運用するということで、学資保険に入られている御家庭はどんどんふえているわけですね。

 きょう、これもちょっと調べてきていただいておりますから、子供保険、いわゆる学資保険の最新の新規契約と現在の残高について、件数と金額を答弁していただけますか。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年度におけます生命保険会社全体の子供保険につきまして、新規契約件数は約五十七万件、保険金額の合計は約一兆二千六百億円でございます。保有契約件数で見ますと約六百四万件、保険金額で見ますと十三兆六千億円という状況でございます。

宮本(岳)委員 保有件数約六百万件、十三・六兆円と。

 日経新聞に記事が出ていまして、子供の保険の六百万口座が年間八十万円の投資をすると、新たに五兆円弱の規模の株の買いが見込まれる、数年にわたってこれを運用すれば、総額で五十兆円規模になると。これは日経ですよ、日経の記事にはそう出ておりました。つまり、学資保険からジュニアNISAへ運用先を移していくことを期待する、まさに証券業界の姿を示しております。

 さらに、日経の社説では、「しかし、制度を拡充するだけで、元本が保証されない投資にお金を回す人が増えるとは限らない。自己責任に基づく投資を根づかせるために、時間をかけた取り組みが欠かせない。」こうも主張しております。

 結局、元本が保証されない投資にいかに資金を移させるか、安全運用から優遇税制を使ってリスク運用に資産を移す、まさに貯蓄から投資へということをあおって、まさに証券業界の要求に応えようとしているとしか考えられない。

 私たちは、こういうやり方は間違っている、やめるべきだということを申し上げて、きょうは時間が来ましたから、私の質問は終わりたいと思います。

古川委員長 次回は、明十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時五十九分散会


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