衆議院

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第6号 平成28年2月24日(水曜日)

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平成二十八年二月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      岩田 和親君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大見  正君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      小松  裕君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    白須賀貴樹君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      武井 俊輔君    辻  清人君

      中山 展宏君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      福山  守君    藤原  崇君

      細田 健一君    宮川 典子君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    若狭  勝君

      落合 貴之君    玄葉光一郎君

      鈴木 克昌君    原口 一博君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      鷲尾英一郎君    上田  勇君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        小野田 壮君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    酒巻 哲朗君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          小野  尚君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 時澤  忠君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    會田 雅人君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 武田 俊彦君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石田  優君

   政府参考人

   (観光庁観光地域振興部長)            加藤 庸之君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     穴見 陽一君

  大野敬太郎君     青山 周平君

  務台 俊介君     小松  裕君

  宗清 皇一君     若狭  勝君

  山田 賢司君     岩田 和親君

  鷲尾英一郎君     原口 一博君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     藤原  崇君

  穴見 陽一君     白須賀貴樹君

  岩田 和親君     山田 賢司君

  小松  裕君     福山  守君

  若狭  勝君     宗清 皇一君

  原口 一博君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  白須賀貴樹君     斎藤 洋明君

  福山  守君     務台 俊介君

  藤原  崇君     武井 俊輔君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     大見  正君

  武井 俊輔君     辻  清人君

同日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     神山 佐市君

  辻  清人君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     井上 貴博君

  宮川 典子君     細田 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     大野敬太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府子ども・子育て本部審議官小野田壮君、経済社会総合研究所総括政策研究官酒巻哲朗君、金融庁総務企画局総括審議官小野尚君、総務省大臣官房審議官時澤忠君、統計局長會田雅人君、財務省主計局次長美並義人君、主税局長佐藤慎一君、理財局長迫田英典君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官森和彦君、政策統括官武田俊彦君、中小企業庁長官豊永厚志君、国土交通省大臣官房審議官石田優君、観光庁観光地域振興部長加藤庸之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 おはようございます。

 きょうは、総理大臣また日本銀行総裁にもお越しをいただいておりますので、主にお二人に質問をさせていただきたいと思います。

 まずは日本経済の現状について、税あるいは復興財源を議論する前提としてお聞きをし、また、各論にも移っていきたいというふうに思います。

 まず安倍総理、総理になられた直後の平成二十五年二月七日の衆議院予算委員会において私と討論した際にこうお答えになっておられますけれども、この考え方が変わっていないかどうか、まずお伺いいたします。こう答えられたんですね。

 「人口の減少とデフレを結びつけて考える人がいますが、私はその考え方はとりません。デフレは貨幣現象ですから。つまり、金融政策においてそれは変えていくことができるわけであって、世界じゅうに人口が減少している国はたくさんありますけれども、その中でデフレに陥っている国はほとんどないんですから。」

 こう答えられております。この認識は今でも変わっておられませんか。

安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、デフレ脱却を大きな目標として掲げたわけでありまして、三本の矢の政策でそれに挑んだわけであります。

 もちろん、デフレ脱却に向けて、金融政策だけではなくて、機動的な財政政策ということも含んでいるわけでありますし、その後の持続的な成長において成長戦略も進めていくわけでありますが、デフレ脱却においては金融政策が大きな手段である、このような考え方は変わっていないということでございます。

前原委員 こうも答弁されているんですね。

 「世界史的にも先例のないデフレ脱却に取り組まなければならないという中において、思い切ったマインドの転換が必要なんですね。その中において、例えばスティグリッツもクルーグマンも、三%、四%という、例示として出していました。私も何人かのエコノミストと話をした中において、つまりショックを与える意味においても三%、四%という数字を出すべきであろう、つまり一%、二%という」「出だしの数字だけでは意思そのものが、国家としての意思そのものが疑われるんだろう、こういう話でありましたから、むしろ私としては、その中において、選挙等を通じては強目の数字を申し上げたわけであります。 しかし、政治は最終的に多くの人たちの同意を得なければいけません。また、日本銀行の了解を得なければいけないわけでありまして、言うだけになってはいけないわけであって、結果を出すのが我々政治家の仕事ですから、そこは、結果を出すということにおいては二%という数字だろう。」

 つまり、選挙のときに物価上昇を三、四%ということをおっしゃっていて、そして、結果を出さなきゃいけないから二%にしたという答弁をこの二月七日にされているわけです。

 つまりは一貫して、先ほどは財政政策とか成長戦略とかおっしゃいましたけれども、総理になられた直後のこの答弁においては、「貨幣現象ですから」ということで、少なくとも金融政策でデフレは脱却できるということを強調されているように思いますけれども。

 いいか悪いかを言っているわけじゃありません。このときの考え方と、今は、先ほど答弁されたように、さまざまな考え方をあわせてやらなければいけないんだということで、デフレ脱却は金融政策だけではだめなんだということについて、そういう認識でいいのかどうか。御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 私がいわゆるアベノミクスと言われる政策を進めるに当たって、いわば三本の矢でデフレ脱却をしていくということは一貫して申し上げているわけでございますが、その中におきまして、金融政策が大きな影響を与えるということは一貫して申し上げているわけでございます。

 そして、金融政策によって大きくデフレマインドが変わってきたのは事実でございますし、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができた、このように考えております。

前原委員 黒田総裁にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、私がなぜこの話を冒頭伺ったかといいますと、総理と黒田総裁にお話をしますけれども、金融政策に重きを置いておられる、ある方、専門家に言わせると、金融政策の一本足打法と言う方もおられますけれども、かなり金融政策に重きを置かれているということであります。

 先ほど総理が答弁されたように、やはり金融政策というのは、ある意味でカンフル剤であって、そして、その時間稼ぎをしている間に、日本の構造問題、後で議論しますけれども、潜在成長率を上げていくということを考えたときには、時間稼ぎをしている間にこの構造問題を変えなきゃいけないということで、金融政策よりはむしろ日本の構造問題改革に軸足を置くべきだ、私はそう思っているわけであります。

 黒田総裁、金融政策はあくまでも時間稼ぎ、カンフル剤であって、日本の構造問題、財政の健全化とか、あるいは潜在成長率を高めるための成長戦略、これが大事なんだと私は思うわけでありますが、黒田総裁の見解を聞かせてください。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、持続的な成長、実質GDPの成長、あるいは一人当たりのGDPの成長といった面では、当然のことながら、成長戦略その他が最も重要であることは御指摘のとおりでありますけれども、デフレからの脱却あるいは二%の物価安定目標の実現、そういった面ではやはり金融政策が最も重要であり、我々の量的・質的金融緩和というものも、二%の物価安定目標を達成するために行ってきたということでございます。

前原委員 先般、予算委員会で黒田総裁とはかなり突っ込んだ議論をさせていただきましたけれども、二年で二%という物価目標について四回先送りをされている、こういうことであります。先ほどの総理の言葉をかりれば、政治は結果を出さなきゃいけないということで、かた目の数字二%ですら実現をしていない、こういうことであります。したがって、今は出口ではないんだろうというふうに思います。

 総裁に改めて伺います。今、出口ではないということでありますが、仮に今、金融緩和をやめたり、あるいは店じまい、テーパリングというものに仮に入ったとすれば、為替、株価にはどう影響を与えるとお考えですか。

黒田参考人 現時点で消費者物価の上昇率は、生鮮食品を除く指数で見ますとゼロ%程度で推移しております。これは基本的に、原油価格が七〇%以上この一年半で下落したということが大きく影響しているわけでございます。

 一方で、生鮮食品とエネルギー品目を除きますと、二十数カ月プラスでありますし、足元では一・三%程度に来ております。

 ただ、やはりまだ、二%の物価安定目標との関係でいいますと道半ばというところでございますので、今、具体的に出口の話あるいは仮定の話で、もし今テーパリングあるいは金利を引き上げるということをやったらどういうことになるかということを議論するのは、日本銀行としては適切でないというふうに思っております。

前原委員 おかしなことをおっしゃいますね。どういうメカニズムで今の金融政策に働きかけるかということの議論をしているわけですよ。つまりは、金利を下げるわけでしょう。イールドカーブ全体を押し下げる。そして、それを補完する形として、この間マイナス金利を一部導入をされた。つまりは理論を聞いているわけですよ。

 どういう政策目標なのか、どういう政策目標であれば、もしそれがなかった場合にどういう影響が及ぶのかという話を聞いているわけであって、別に、具体的にやりますねということを聞いているのではなくて、今、テーパリングとか、やっておられる金融緩和をやめれば為替と株価にはどういう影響が及びますかということを聞いているわけですから、その前提でお答えください。

黒田参考人 この量的・質的金融緩和、あるいは、最近マイナス金利を導入いたしましたので、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、デフレマインドを抜本的に転換するために行っているわけでございまして、具体的には、二%の物価安定の目標の早期実現に対して強くコミットメントを行うとともに、それを裏打ちする大規模な金融緩和を推進するものでございます。

 こうした政策によって、主として実質金利を低下させることを通じて、企業や家計の経済活動を刺激し、企業収益の改善、あるいは、雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという、経済の好循環をつくり出すことを目的としております。

 今申し上げたようなメカニズムでこのマイナス金利つき量的・質的金融緩和が、経済の好循環を通じて物価安定目標の達成に資するというふうに考えております。

前原委員 私が黒田総裁の今の御説明を分析すれば、量的・質的金融緩和によって実質金利を下げる、こういう政策目標を達成するためにやっているんだと。ということは、それをやめれば実質金利が上がるということですね。

 実質金利が上がるということになれば、その場合、為替、株はどうなるかということを聞いているんです。

黒田参考人 今申し上げたとおり、現在のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは、委員が要約してもうおっしゃったように、実質金利を下げて、それによって企業収益の改善、あるいは、雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという好循環を実現するということを目的としておりますので、まだ道半ばでございますので、それを今反対のことをすれば、実質金利が上がってしまって、経済にマイナスの状況が出てきてしまうということでありまして、まだ、出口のことを議論するのは時期尚早であろうと思っております。

前原委員 かなりお答えになられ始めたというふうに思うわけでありますが、実質金利が上がる、こういうことですね。

 他国との金利差というものを考えたときに、実質金利が下がれば金利差は広がりますね。そうすると総裁、お金を持っている人は、金利の高いところで運用しますか、安いところで運用しますか。

黒田参考人 それは委員が御指摘になっているとおり、金利格差というものが資産運用の場所あるいは通貨について影響を与えるということは、そのとおりだと思います。

前原委員 お答えになり始めたんですけれども。金利を下げる目的だったから、テーパリングとか、あるいは金融緩和をやめれば実質金利は上がる、そして、金利差については縮小するわけですから、為替にも影響を与える。縮小というか、金融緩和をしたときには金利差が拡大をするので、いわゆる為替にも影響がある。こういうことをおっしゃったわけですね。

 つまりは、黒田総裁がお答えをされているように、私も甘利さんの前の担当大臣をやっておりましたので、さまざまな施策というものは為替操作を目的としたものではない、まさに実体経済をよくするということが主目的であって、為替について何らかの予見を持ってやるものではない、それはそのとおり言い続けなきゃいけないことだというふうに思います。

 そこで総裁、ちょっとお伺いしたいんですけれども、QE1、QE2、つまりは、三年前の四月四日、それから一年半前の十月三十一日にこれをやられたときには、バズーカ砲1、2ということで、言ってみれば、金利がぐっと下がって、そして為替が円安に振れて、そして株価は上がりました。今回のマイナス金利においては、同じように実質金利も下がったわけです。しかしながら、幾つかの話の中で、講演をされたり、あるいは委員会の答弁の中で、別に為替に影響を与えるということでやっているわけじゃないんだ、実質金利を下げて実体経済をよくする、そのために政策をやっているんだ。私はそのとおりだと思うんです。

 ただし、QE1、QE2のときは、為替が円安に振れて、株価も上がった。今回は同じように金利が下がったわけです。にもかかわらず、三日もたたないうちに円は高くなり、そして株は下がり続けている。

 これはどう分析されますか。

黒田参考人 そこは御承知のとおり、年初来の国際金融市場の変動があったわけでございまして、マイナス金利を導入した以降も、御指摘のように国際金融市場は変動が続いておりまして、主要国の株価は軟調に推移するし、ドル安傾向も続いております。

 その背景としては、原油価格の下落が続いていたということと中国経済の先行きの不透明感に加えまして、欧州の銀行セクターに関する懸念、あるいは米国の金融政策の先行きに対する不透明感が強まる中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢がやや過度に広まっているということがあるのではないかというふうに認識しております。

前原委員 つまり、QE1、QE2のときは、世界環境というものが、経済環境というものがある意味で静かであった。しかし、今は相場が荒れている。中国の経済の減速、原油価格の下落、そういったものによって外部環境が荒れている状況であるので、別に為替を狙ったものではない、株価を狙ったものではないけれども、QE1、QE2のときとは違って、金利は下がっているけれども為替は下がらず、逆に上がって、円は上がって、そして株価は下がっている。

 こういうことで今お答えになったということでよろしいですね。

黒田参考人 基本的にそういうことだと思います。

 ただ、株価は、御承知のように世界的に軟調に推移しております。それから、為替につきましても、マイナス金利導入後の動きは基本的にドル安でありまして、円だけ上がっているのではなくて、世界の主要通貨のほとんどが上がっているという状況だと思います。

前原委員 この週末に、麻生財務大臣と黒田日銀総裁は上海で行われるG20に行かれますね。それを前にどういう議論をするか、きょうだけじゃなくて、私は金曜日にも質疑時間をいただいておりますので、あわせて質問をしたいというふうに思います。

 一部報道によりますと、アメリカが通貨安競争に懸念を表明する、そして財政出動というものの必要性にも言及をする、こういった報道がなされた。それでまた円が上がっているわけです。

 アメリカが一番堅調だと思っていた。中国が減速しても、あるいは原油価格が下がっても、世界のナンバーワンのGDPを誇るアメリカが堅調であれば世界経済は大丈夫だろう。しかし、今総裁がおっしゃったように、言ってみればドル高を許容していたアメリカですらこういうような懸念、これは報道ベースですから実際はどうかわかりませんけれども、通貨安競争に懸念、そして財政出動の必要性もあるんじゃないかということをG20の議題にしたい。

 また、今、大統領選挙が行われています。共和党のトランプという候補が善戦をしているわけでありますが、彼がどう言っているかというと、通貨安を、日本を批判して、日本は通貨の価値を下げている、コマツ製を買わせ、キャタピラー製を買えないようにしている。これもむちゃくちゃな話だと思うんです。コマツはイリノイにもう現地工場もつくっていますから、現地でつくっているわけですので、別にコマツ製かキャタピラー製かというと、現地でつくったものについては、それはどちらがすぐれているかということをアメリカの方々は選ぶわけですから、僕はトランプの言っていることはおかしいと思いますよ。おかしいと言っているけれども、演説ごとにこれを言っているわけですよ。

 こういうことを考えたときに、まず総理にお伺いしますけれども、G20に麻生財務大臣が出かけられます。今の世界経済の前提でアメリカなんかもこういう通貨安競争とか財政出動の懸念なんかも言っているということの中で、まさに先ほど、一番初めにきょう議論したかったポイントである、金融政策に過度に頼らずに、もちろん機動的な財政出動が必要なときもあるかもしれませんが、それぞれの国が構造改革に取り組むということ、そういうことをむしろ確認することの方が建設的で、いい会合になるのではないかと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 一番最初の前原委員との議論の中で私が申し上げたのは、またこれは政権発足当初の私の発言でございますが、基本的には、デフレを脱却していく、そのための政策と、持続的に日本の経済を成長させていくための政策と、これは両方ともリンクをするわけでありますが、この二つを考えていただきたいと思うんですが、デフレから脱却する上においては、金融政策が大きな役割を担っていくということを申し上げたわけであります。

 それには、もちろん適時適切な財政出動も必要でありますが、しかし、持続的な経済成長を進めていくという観点から、まさに三本の矢であって、成長戦略も必要でしょうし、さまざまな構造改革に挑んでいくことも必要である。これは、金融政策に依存するということではなくて、この三本の矢、特に三本目の矢が極めて重要であるということは言をまたないわけでございます。

 私の考え方はそういうことでございまして、デフレ脱却ということについては、これは金融政策が大きな役割を担うということであります。(前原委員「G20」と呼ぶ)

 そこで、G20においては、これは今前原委員がおっしゃったとおりでございまして、私どもが申し上げたいことは、アメリカ側の発言に一々コメントすることは差し控えたいと思いますが、現下の世界経済の不透明感がある、先行き不透明になっているという状況に際して、G20において、しっかりと世界経済を安定させ、持続的な成長のために何をすべきかという観点から話をすべきだろうと。

 例えば中国の経済の減速懸念に対しては、例えば、その中にあっても、しっかりと中国側にも過剰設備等の構造改革に取り組んでもらいたい。それぞれの国々がそういう努力をしていこうという建設的な議論をすべきだろうと、このように考えております。

前原委員 黒田総裁にも質問をさせていただきたいんですが、先ほど、QE1、QE2とQE3、違いを述べられました。つまりは、世界経済の状況が違う中において、日銀としての当初の政策目標はしっかり達成しているんだけれども、為替、株価については違う結果が生まれている、こういうことであります。

 アメリカの懸念なんかもお話をしたわけでありますが、三月の政策決定会合で、また追加緩和をすべきだ、これだけ円高になって、そして株価が下がっている、こういう議論も市場にはあるわけですよ。

 これはもちろん日銀総裁がお決めになることでありますけれども、マイナス金利についてもいろいろな議論があります。金融株が下落をし、そして混乱も広がっている。私の知り合いで銀行に勤めている人間がおりますから、もう少しフォワードガイダンスをしてくれればよかった、時間を欲しかった、なぜなら、機械のシステムが、マイナスになることを想定していなかったので混乱している、こういう話もしておりました。

 大事なことは、私が今総裁に伺いたいことは、このマイナス金利導入の結果の推移を見るということをおっしゃっているわけです。そして、世界が荒れている状況の中においては、一国の中央銀行がいかに頑張っても、できないことがあると思うんですよ。黒田総裁については、サプライズで今まで市場に働きかけてこられた部分はあると思いますけれども、できることとできないことがあって、期待をサプライズで高め過ぎることが、むしろ黒田総裁の選択肢を狭めることになると思うんです。

 つまりは、この円高そして株安の状況の中にあって、追加緩和を求めるような話がありますけれども、私は、そこは慎重になるべきだ、むしろそこでやってしまったときに、また、きかなかった場合においては、逆に日本銀行の政策の選択肢というものを狭めることになると思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 ただいまの前原委員の御意見、大変参考になる御意見だと思いました。

 もちろん、日本銀行といたしましても、従来から申し上げているとおり、為替や株価をターゲットにして金融政策を運営するということはありません。あくまでも、そういった金融市場の動きが企業のコンフィデンスの改善とかデフレマインドからの脱却をおくらせてしまう、それにマイナスの影響を与えてしまって、結局二%の物価安定目標の早期実現が難しくなるといったリスクがある際に、一昨年の量的・質的金融緩和の拡大であれ、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入であれ、決定したわけでございまして、今後ともこういった市場の状況はしっかりと注視して、それが日本の経済や物価の動向に悪影響が来ないかどうか、もしそういう悪影響があるということであれば、ちゅうちょなく対応策を検討するということになろうと思います。

前原委員 安倍総理にお伺いしたいんですけれども、構造改革、いろいろな面があると思いますけれども、潜在成長率をどうやって上げるかということが大事、これは同じ認識でおられると思います。労働力、労働生産性、イノベーション、こういったところが非常に大事だというふうに思います。

 そこで、二つちょっと、次の質問の本題に入る前にまずお伺いしたいんです。

 例えば、労働力ということを考えたら移民ということが浮かぶわけです。しかし、安倍政権では移民は考えないということをおっしゃっています。それからもう一つ、一〇%までは自分が責任を持ってやるけれども、それから先については安倍政権は考えていない。潜在成長率は消費税の話と違いますので、同じような質問なのでちょっと対にお伺いしたいんですけれども、移民も安倍政権では考えていない、そして一〇%を超えるものについても考えていない。

 しかし、ポスト安倍政権、つまりは、日本の今の状況を考えたときに、自分の後の政権、何政権になるのかわかりませんが、ポスト安倍政権においては、移民とか、あるいは、消費税を一〇%を超えるものについて考えるべきだと思われますか。それとも、自分が今おっしゃっているように、考えなくていいというふうに思われますか。

安倍内閣総理大臣 まず、安倍政権においては、外国人人材は活用していきたいと考えておりますが、いわゆる移民政策をとる考えはないわけであります。

 しかし、労働人口は減っていくではないか、それに対抗するために、今まで生かされていなかった女性の力を活用していきたいと思っておりますし、そしてまた、きのうも、一億総活躍社会に向けての会議においての議論も終わったのでございますが、定年延長等も進めながら、高齢者の力を生かしていきたい、経験を生かしていきたい。人材として活躍していただくことによって、生産人口の減少をカバーする。あるいはまた、前原委員が先ほど例として挙げられたように、IoT等の活用において生産性を上げていくということもしっかりと取り組んでいきたい。こう考えております。

 その中において潜在成長力を上げていくことは十分に可能ではないか、こう思っております。

 そしてまた、現在、プライマリーバランスをGDP比半減するという目標は達成することができました。二〇二〇年の目標に向けて何としてもこれは達成していきたい、こう考えております。

 その際、あるいは消費税を引き上げる必要があるかどうか。まずは無駄削減等、そしてまた経済をしっかりと成長させていくことによって税収増を図っていきたい、こう考えております。

 そこで、ポスト安倍政権、この中にそれを担う方がおられるんだろうとこう思うわけでございますが、このポスト安倍政権について私が今それを縛るようなことを申し上げるべきではないと思いますが、しかし、世界状況、あるいはそのときの国内の国民的な思いの中において、どういう政策を形成していくか。しかし基本的には、移民政策においては、果たして日本でなじんでいくかどうかということはあるんだろうと思うわけであります。

 消費税については、まさに、そのときにそれぞれ財政を健全化させていくにはどういう手段をとるかという手段のもちろん有力な一つであろう、このようには思います。

前原委員 それでは、今二つ目におっしゃった、消費税とプライマリーバランス二〇二〇年のことについて少しお話をしたいというふうに思いますが、お配りをしている資料の左の上に六と書いてあるもの、「短期経済予測の概要」というものをごらんをいただきたいと思います。

 先般、二〇一五年の十月―十二月の四半期の速報値が出たわけでございます。マイナス〇・四ということでありまして、二〇一四年は、これは確定値ですね、〇・〇%でございます。右側を見ていただくと、そして、二〇一五年が〇・七%、まだ確定値ではありませんけれども。そして、二〇一六年が一・〇%。これは消費税の駆け込み需要が入っています。一〇%に上がるであろうという駆け込み需要。そして、二〇一七年はこの反動減が入っている。こういうことで、〇・七、一・〇、〇・一。そして、ちょっと下に移っていただきますと、名目については二・一、一・六、〇・五、こういうことになっているわけであります。

 そこで、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化は何としてもやらなきゃいけないということを今安倍総理もおっしゃったわけであります。それはやはり、円の信認、そして日本の信認、国債の信認ということからすると極めて大事なことでありますけれども、ただ、経済成長シナリオだと名目が三%、これは次のページの左上に七と書いてあるものをごらんいただきますと、現在、大体十六・四兆円の赤字がある。そして、この折れ線グラフになっているのは、実質二%、名目三%で伸びていったときでも九・四兆円足りない、こういうことになっているわけです。

 名目三%、実質二%というのはなかなか大変だと思います。先ほど議論させてもらったように、潜在成長率が〇・四ということを考えると、それはいろいろな取り組みをしていかなきゃいけない。そして日本の底力を高めていかなきゃいけない。そういうことについては認識は共有すると思っておりますけれども、この名目三、実質二というのは、我が政権のときにもこれはやっていたわけですよ。

 先ほど総理が、必ず二〇二〇年にプライマリーバランスの黒字化を達成しなくてはいけない、私も同じ思いなんですね。そうすると、余り楽観論に立ってやると、それでも九・四兆円足りないわけですよ。楽観論に立つと、先ほどの六に戻っていただくと、なかなかこれから先行き、名目三、実質二というのは難しいですよね。

 そうなると、やはり九・四兆円以上のものを財源として当てはめなきゃいけないというところで、それは歳出歳入改革をやらなきゃいけないと思うんですが、総理いかがですか。

安倍内閣総理大臣 確かに、前原委員がおっしゃったように、この目標はなかなか難しい、困難が伴う目標ではありますが、我々がこの目標に向かってしっかりと政策を進めていかなければならないという決意においては変わりがないわけであります。

 果たしてどうやってその赤字をこれは埋めていくんだ、いわば、私どもが描いているシナリオにおいても六・五兆円の赤字が出るではないかという御指摘があるのは事実であります。

 経済・財政再生計画では、安倍内閣のこれまでの三年間での実質的な増加が一・六兆円程度となっていることや、経済、物価動向を踏まえるという一般歳出の水準等の目安が設定をされていますが、平成二十八年度予算においては、これに沿って社会保障を初めとする一般歳出の伸びを抑制することができたと考えておりまして、今後の予算編成においても、引き続きこれらを十分に踏まえて進めていきたい、このように考えております。

前原委員 総理、私が伺っているのは、財政健全化というのはしっかりやらなきゃいけないと思うんです。成長戦略も大事であります。そして、今おっしゃったように、歳出歳入改革も必要。ただ、この間の予算委員会で最後に私申し上げたように、それから、先ほど日銀総裁と議論させていただいたように、金融政策で上げ底になっている部分があるわけですよ。

 つまり、金利を下げて、そして円安にして株を上げる。株を上げることによって、結果的には企業の言ってみれば分配、そして株を持っている方の所得が上がる、そのことによって所得税が上がっている、そして為替効果で法人税も上がっている部分はあるわけですよ。それだけとは申しません。

 つまりは、金融政策というのは未来永劫続けられるものじゃないんですね。上げ底の部分があるわけです。ですから、現在の状況の中でこのままいったらどうのこうのということについては、それは今まで三年間政権を運営されてきた総理としては、その自負はお持ちだというふうに思います。それはわかりますけれども、私が申し上げたいのは、世界の情勢が、先ほど、黒田総裁の言葉をかりても、ある程度なぎの状況でも、だからQE1、QE2を聞いたんですけれども、それでも、この六を見ていただくと、きょうはその中身についてさらに議論する時間はもうありませんけれども、実質成長率は二〇一五年で〇・七、二〇一六で一、二〇一七だと〇・一ぐらいしかない。

 三と二で名目、実質、これで計算するんじゃなくて、もう少し慎重なシナリオの中でどうやって二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化というものを考えるということの発想に立たないと、まさに経済が金融緩和もあって今よくなっている部分を前提にしてやると、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化というものが達成できなくなるんではないかという心配をしているわけです。

 したがって、そのかた目の数字の中でしっかりやる、歳出歳入改革、もちろん経済成長、そういうことが必要じゃないかということを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 委員がおっしゃったように、かた目の数字、我々はベースラインと申し上げているわけでありますが、このベースラインの数字にも立ちながらかた目に見ていく、それは当然そういう考え方もあるんだろうと思います。

 しかし、同時に、潜在成長率を上げていく、その力を上げていく努力は常にしなければいけませんし、その目標はしっかりと我々はお示しをしているような形で達成を目指していきたい、こう考えております。

 しかし、同時に、歳出の削減につきましては、社会保障分野も聖域とせずに効率化、重点化を徹底していく、もっともっと徹底していくことはできるだろうと思っておりますし、社会保障費の削減に成功している自治体の取り組みの横展開を徹底的に図っていくということもやりながら、さらなる削減を目指していきたい、この効率化を図っていきたい、こう考えております。

 同時に、成長する力も維持をしていく必要があるわけであります。これはもう前原委員重々御承知のことだと思うわけでありますが、GDPの成長率を失速させないようにしながら、歳出の削減できるところはしっかりと削減しながら目標を達成していきたい、こう考えております。

前原委員 今、総理が御答弁されたように、ベースラインというものをしっかりと頭に入れながら、これから二〇二〇年までの基礎的財政収支黒字化をどう果たすかということを考えることの方が、むしろそれを達成できる蓋然性が高まると私は思っておりますので、しっかりそのベースラインというもの、つまりは、経済がいいときの前提じゃなくて、ベースラインをベースにしっかりと考えていただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。

 先週の火曜日、所得税法につきまして、安倍総理に会派を代表して質問させていただきました。その後も、財務金融委員会あるいは予算委員会で質疑が続いていますが、一番大きな争点、論点となっておりますのが軽減税率についてです。やはり、二年前の消費税の増税は消費の冷え込みが非常に大きかった、個人消費が底割れしているということも背景にあるのではないかと思っています。

 軽減税率の問題点等につきましてはいろいろ指摘されているところですが、私どもが提案しております給付つき税額控除、これについては、麻生財務大臣からも、逆進性対策としては軽減税率よりも有効ではないかというような御答弁もいただいておりますが、麻生財務大臣は、もともと軽減税率はむしろ反対の立場を長くとっていらっしゃいましたので、ここら辺はちょっと聞きづらいなというのもあるんですが。

 きょう総理に伺いたいのは、そもそもこの軽減税率の話をする前に、二〇一七年、来年四月の消費税の増税について伺いたいと思います。

 総理は、予算委員会の御答弁の中でも、アベノミクス、ファンダメンタルズは揺らいでいないというようなお話をなさっています。

 私も、いろいろ数字を見ますと、企業収益、これは非常にいい数字だと高く評価しております。雇用関連の数字も、非正規がどうだとか、実質賃金指数はマイナスが続いているとか、いろいろな細かい部分はございますけれども、雇用の数字がいいというのは、これもアベノミクスが誇るべき非常にすばらしい数字だと評価をしております。

 ただし、その一方で、基本中の基本の経済指標であります実質GDP、これを少し軽視し過ぎているのではないか。具体的には、直近GDPはマイナス一・四%であります。あるいは、二〇一四年度を見ましても、一年間通してマイナス、二〇一五年度に入っても、第一、第三・四半期とマイナスが続いているような状況でございます。

 中身を分析しますと、とりわけ個人消費が弱いということが今のアベノミクスの一つ大きな問題ではないかと思っておりますけれども、今回の日本経済の足元の状況と世界経済の不確実性が増しているこの二点をもってして、安倍総理は、来年四月の消費税の増税、これを凍結するお考えはありませんか。リーマン・ショック級の事象がなければ増税はやると予算委員会等でも答弁なさっていますが、このお考えに変わりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 世界経済においては、今委員が御指摘になられたように、世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、我が国の市場でも変動が見られるわけであります。これは、中国の景気減速への懸念や原油価格の低下、米国の利上げの動向等の海外要因が背景と見られるわけでありますが、また同時に、委員がおっしゃったように、日本の経済のファンダメンタルズはしっかりしていると我々は考えております。

 そこで、リーマン・ショックのときには、市場も大きく変動いたしましたが、実体経済そのものに大きな影響があったわけでありまして、そうした点もしっかりと冷静に見ていく必要があるだろう、こう思います。

 来年四月の消費税率一〇%への引き上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たしていくとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するため、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施をしていく考えであります。経済の好循環を力強く回していくことによって、そのための経済状況をつくっていきたいと考えております。

木内(孝)委員 総理の経済アドバイザーでもあります本田内閣官房参与が二月二十二日に、消費税の再増税は絶対にするべきではない、二〇一四年四月の消費税増税は間違っていたとコメントしています。

 間違っていたかというのは主観的な面もありますのでここでは議論いたしませんが、多くの国民は肌感覚で、アベノミクスはうまくいっていない、消費税を増税できないのではないか、あるいは、市場関係者に聞いてみますと、今の現下の経済状況で消費税を来年の四月に上げるというのは相当無理があるのではないかと思い始めています。

 二月十八日に行われました経済財政諮問会議におきましても、「海外リスクの発現等により、必要と判断される場合には機動的に対応するべき」ということも言われております。

 あるいはOECDのレポート、これはたまたま二月十八日に出たわけですが、日本の成長率を下方修正しております、一・〇から〇・八%に。あわせて、従来の財政再建を重視する姿勢から、むしろ成長への転換を促すというような、財政再建を再考するような論説となっているわけです。

 自民党の稲田政調会長も、週末のテレビで、消費税、経済が壊れてまではしないとおっしゃっています。当たり前のことだと思います。

 リーマン・ショック級の事象がなければ消費税を上げるということは、逆に、例えばアジア通貨危機レベルの経済の停滞があった場合には上げるというふうにも読み取れます。

 誤ったタイミングで消費税を上げると経済を壊しかねないということにつながりますので、私は、いま一度立ち返って、上げるべきか上げないべきかという判断をするべきだと思っております。

 前回、消費税を上げる前に有識者会議を開催して、いろいろな意見を吸い上げました。ただ、今回と前回と一つ大きな違いがありますのは、今回は軽減税率の導入とセットになっています。したがいまして、準備期間というのが前回よりも長くとられないといけない。前回であれば、半年前に判断すれば何とかなった世界はあると思いますけれども、今回は、少なくとも一年程度前に、延期をするのであればそれを決断しなければならないと思います。逆に、半年前にやはり凍結するということになりますと、現場の混乱はさらに大きくなります。

 したがいまして、私は、この二月、三月、四月、いま一度、足元の経済状況はどうなのか、本当に増税できる環境にあるのか、そうしたことを御判断いただくような機会を総理が指示して設けるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 経済の現状についてどのように分析をしていくか、どういう認識を持つべきかということは、我々は不断にそうした分析を行っていくべきであろうと思います。

 経済財政諮問会議でも議論をしておりますが、また、現下の世界経済の状況にどのように対応していくかということについても、今委員がおっしゃったように、これは私に日ごろアドバイスをしていただいている方々も含めて、さまざまな方々の意見もお伺いをしてみて、これは消費税の引き上げをどうするかということとはまた別に、現下のこの経済状況をどう分析していくか、我が国の経済にどのような影響を与えているかということについても、しっかりとさまざまな方からお話を伺ってみたい。

 これは、消費税を八%に引き上げるときに行ったようなああいう会議を今私はやるということを申し上げているのではなくて、常にそうした方々の御意見は伺っていきたいと思うわけでありますし、今般行われるG20の財務大臣また中央銀行総裁の会議においても、現下のこの世界経済の不安定さをどのような認識を持つべきかということが恐らく議論になるんだろうと思います。また、その際、それぞれの国がどういう努力をしていくべきかということについても当然議論になっていくんだろう、このように考えております。

木内(孝)委員 昨日、麻生財務大臣に、なぜ消費税を延期したときに景気制限条項を外したのか、そういう質問をいたしました。回答としては、国際社会に財政健全化に向けての姿勢をきっちりと示さなければならないからというような御答弁でした。リーマン・ショック級でないと上げるというのも、ある意味、決意表明的な意味合いもあってということかと思います。

 私は、やはり、経済をしっかりと見て、上げるか上げないかという判断をするには、先般のリーマン・ショック級の事象がなければ消費税を予定どおり上げるという答弁というのは撤回するべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、委員がおっしゃったように、また麻生財務大臣が答弁をさせていただきましたように、法律で決まっていた消費税の引き上げを延期するという判断、これはまさに大きな判断でもありましたし、そしてそれは、世界に対するどういうメッセージとして伝わっていくかということも考慮に入れなければならない。日本の経済に対する日本の国の信認を維持するという観点からも、今委員がおっしゃったように、私どもの決意として、いわば景気判断条項は削除していく、我々は強い決意を持って、この一年半後には引き上げをしていくということを発信させていただいたところでございます。

 しかし、その際申し上げたことは、しっかりと経済の好循環を回し、賃金の引き上げも行っていく、来年の春も、その次の春も、そしてその先の次の春においても賃上げを行っていくという経済状況をつくっていく、こう申し上げたわけでございまして、この考え方は今も変わりはないわけであります。

 まずは四月にしっかりと賃金が上がっていく、こういう状況は現在のところつくり出し得ているのではないかと思いますので、企業側にもしっかりと対応してもらいたい、こう思っておりますし、また、来年も賃金が上がっていくという状況をつくり出していきたい、こう思っているところでございます。

木内(孝)委員 私も二十年ほど、株式市場、資本市場に近いところで働いていましたので、消費税を凍結するという決断をした場合のリスクについても非常に心配をしているところです。当然、格下げのリスクもありますし、あるいは将来の国債の信認の問題もございますので、そこを私は、軽々に凍結するべきとか言うのは無責任だと考えております。

 したがいまして、私は、財源があるのかないのかという観点から凍結をするべき、あるいは、できるのかできないのかということを先般の質問でも申し上げさせていただきました。

 細かい点につきましては質問はいたしませんが、例えば、日本たばこの株式あるいは郵政の株式、NTTの株式、それぞれ売却していないのにはそれなりの理由はございますけれども、私は、これは総理の御決断一つで十分に売却可能な政府資産だと思っております。あるいは、外為特別会計、こうしたのも財源にできないと言う。これは細かいところについては金曜日も質疑に立ちますのでその際に質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、こうした売却可能な政府資産がある中で、なぜ財源があるのにそれを凍結の財源に回さないのか非常に不可解でございます。

 総理は、こうした政府資産の売却、日本たばこ等についてもいろいろ聞いたこともございますし、では一つだけ例にとりますと、日本たばこという会社の株式の売却、これを売却すれば三兆円になります。こうした政府資産の売却についてどのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今の委員の御質問は、消費税を先送りした場合の社会保障費の充実に充てる財源をどうするかということでの御質問かと思いますが、それとはまた別の観点からも政府資産の売却についてどう考えるかということだと思います。

 現時点では、我々は予定どおり消費税を引き上げていく考えでございますので、それに代替する財源をどうするかということについては我々は全く考慮していないわけでございます。

 政府資産の売却についてでありますが、JT株についてはさまざまな御議論がございます。これについては今まで各委員会で相当のやりとりをしてきたわけでございます。たばこ耕作者に対する対応も考えなければならないわけでございます。そうした観点も整理をしていく必要もあるんだろうと思います。

 同時に、JTの株を政府が所有している意義について、我々が申し上げている理由で所有するということについてのさまざまな御議論もあるのは十分に承知をしておりますが、いずれにいたしましても、常に不断に、政府が持っている資産、これを維持していくべきかどうかということについての検討はしていくべきであろう、このように考えております。

木内(孝)委員 安倍総理は二〇二〇年ころに六百兆円とおっしゃっています。先ほど前原委員も触れましたが、非常に楽観的な数字、例えば三・九%の名目成長率を前提とした六百兆円の実現ということになっております。

 一九九二年度以降最も高い名目成長率、資料をお渡ししているので手元にございますけれども、二・二%が最も高い名目成長率であります。その中で、この六百兆円の数字の意味するところは、細かい数字が実現できるできないとかそういうことではなくて、安倍総理のデフレ脱却あるいは成長を重視するという姿勢をこの六百兆円に込めたものではないかと私は推察をしております。これは、できるかできないかというとかなり荒唐無稽ですし、できるタイミングがそもそも二〇二二年の一月ぐらいでないとできないんですね、内閣府の数字を前提にしますと。

 その数字の根拠のいいかげんさは横に置いておいて、六百兆円とおっしゃっているわけですから、それに向けたあらゆる政策の総動員をするべきではないのか。野党の我々が言うのもなんですけれども、そういった提案をぜひ与党の皆さんからするべきではないか。

 何が言いたいかといいますと、来年四月、消費税を上げるということは、二年前もそうでしたが、個人消費に大きなブレーキをかけることになります。あのときもいろいろな議論の中で、このタイミングで三%上げると個人消費は落ち込むけれども一過性だという議論がありました。

 しかしながら、あれは一過性ではなかった。二〇一四年の四月―六月期と直近の十月―十二月期を比較すると、消費は落ち込んだままなんです。いわゆる個人消費が底割れをしている。ですから、我々は、消費税の増税を凍結することを御検討いただいたらどうかと思っております。

 繰り返しになりますが、リードタイムがことしは一年程度必要なんです。それは、軽減税率という制度が抱き合わせの消費税の増税となっているわけですので、何とかこの四月ごろ、ちょうどG20が今週末ございます。伊勢志摩サミットもございます。やはり、日本は今、財政健全化にも真面目に取り組む、それと同時に、世界の経済の牽引役にもなれるんです。だから、隠れているさまざまな資産を掘り出してやるというのは、これは簡単ではないということはわかっていますし、さまざまな抵抗に遭うと思いますが、そこは総理のリーダーシップをもとに、私は、消費税の増税、もう一度、もう一度凍結を再検討いただきたい。

 最後にそれをもう一回質問して、終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々、来年の四月の消費税の引き上げにつきましては、国の信認の維持、あるいは社会保障制度を次の世代に引き渡していくという責任を果たすためにも、そういう状況をしっかりとつくっていきたい、このように考えております。

 と同時に、G20あるいは伊勢志摩サミットにおいて、世界経済の安定化、そして成長のために何をなすべきかということについては、それぞれしっかりと議論したい、こう考えております。

木内(孝)委員 以上で終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは消費税増税の問題に絞って質問させていただきます。

 先週発表された十―十二のGDPは二期ぶりにマイナスとなりました。とりわけ、家計最終消費支出は実質マイナス〇・九ポイント、民間最終消費支出も実質三百四兆五千億ということで、八%増税をやった直後の二〇一四年の四―六の三百五兆八千億をも下回りました。そして、家計調査も出されましたけれども、二年連続で減少ということになりました。

 日本経済の状況からいっても、国民の暮らしの状況からいっても、消費税増税はおよそ許されない状況にあると私たちは考えております。

 きょう朝、毎日新聞を見ましたら、内閣官房参与、安倍政権の経済政策のブレーンの本田悦朗さんのインタビューが出ておりまして、こう書かれております。

 「個人的な考えだが、二〇一七年四月の消費税率一〇%への引き上げは必ず凍結すべきだと確信している。客観情勢として、消費増税ができる経済環境に全くなっていないからだ。」「企業が過去の利益の蓄積である内部留保をため込み、家計も貯蓄に励んでいる状況で、政府まで増税すれば、経済が縮小してデフレに逆戻りしてしまう。」と書かれております。

 総理は、ちょっとこれは朝読んだものですからお聞きしますけれども、こういうお話は本田悦朗さんから伺っているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 本田参与は消費税の引き上げに大変慎重でありますし、そういう話は本田参与から私は何回か伺っております。

宮本(徹)委員 お話を伺っているということですけれども、では、総理自身の御認識としてお伺いしたいんですけれども、二〇一四年十一月十八日に総理は記者会見をやられて、消費税増税を延期されました。そのときよりも現在の個人消費の落ち込みは深刻だ、こういう認識はお持ちでしょうか。

安倍内閣総理大臣 増税延期を判断した時期と現在について消費の動向を比べますと、昨年十―十二月期において、記録的な暖冬の影響などを背景に二期ぶりにマイナスとなりましたが、一昨年の七―九期は、その前期に消費税率引き上げに伴う反動減等により五%の大きなマイナスを経た後、回復が見られなかった状況であり、足元の状況とは大きく異なると考えております。

 また、最近の雇用・所得環境を当時と比較すると、名目雇用者報酬は一・九%の伸びであり、失業率は〇・三ポイントの改善であり、また、有効求人倍率は上昇し、民間設備投資額もふえるなど、民需主導の経済の好循環の確立に向けて着実に前進をしている。こうした中で、消費者マインドが持ち直し、個人消費についても持ち直していくことが期待される、このように考えております。

宮本(徹)委員 マインドが持ち直されることを期待するという、期待は語られるわけですけれども、実際は、反動減の落ち込みよりも、個人消費は縮小しているわけですよ。連続して縮小しているというのが今の事態で、やはり認識が非常に甘いと言わざるを得ないです。

 前回増税したときは一九九七年でした。そのときは、長引く大不況の引き金を引いたわけですよね。このときは、その他の負担と合わせて九兆円の負担増と言われました。今回は、連続増税の負担増というのは十三兆円にもなります。

 きょう資料をお配りしましたけれども、そのときと比べて勤労者世帯の可処分所得はどうなっているのかというのを載せさせていただきました。二人以上の勤労者世帯で見ると、今の可処分所得の水準というのは、一九八〇年代後半の水準です。これは消費者物価を加味した実質で見ると、三十年前、一九八五年の段階よりも落ちているというのが、今の可処分所得の状況なんですね。

 これは消費税が入っていないデータですけれども、これに消費税三%が乗って、さらに二%引き上げると、一世帯当たり六万二千円以上の増税ということになったら、個人消費に極めて深刻な影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかだと思うんですよね。

 今の個人消費の落ち込みにしっかりと目を向けて、深刻な認識を持って、増税は中止すべきじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 このたびの消費税の引き上げは、五から八に上げる際もそうでありますが、一〇%への引き上げも、社会保障の充実のためであり、そして、世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していくために必要なものでございます。

 そして、同時に、私たちが財政健全化を進めていくことは大きな責任であろう、こう考えているわけでありまして、現在の状況におきまして、我々は、この世界に冠たる社会保障制度を次の世代に引き渡していく上においても、来年の消費税の引き上げを行っていく考えに変わりはございません。

宮本(徹)委員 税収が減るという事態になったら、社会保障制度もくそも何もないわけですよね。

 そして、前回の増税延期の判断のときの総理の記者会見、私も改めて読ませていただきました。そのときも総理は、雇用はふえています、有効求人倍率も過去最高だ、給料も平均二%以上上がっていると言った上で、だが、私は何よりも個人消費の動向を注視してまいりましたと当時おっしゃっています。そう言って、消費税増税後、GDP速報値で個人消費が二期連続で下がっていることをもって、増税の延期を発表したわけですよね。

 ところが、今回は、リーマン・ショックや大震災のような事態がなければやるんだということを言い続けているわけですけれども、ということは、もう個人消費はどうでもいい、増税するかどうかという判断のときには個人消費は脇に置いてしまうということなんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、個人消費は、当然、我々重視をしている、私も重視をしているのでございますが、先ほども申し上げましたように、今後、個人消費が持ち直していくことが期待される、このように考えているところでございます。

宮本(徹)委員 個人消費を重視していたら、およそ今の段階でできるんだと言えるような状況じゃないと思うんですよね。

 ちなみに聞きますけれども、一―三のGDP速報は五月中旬に発表されます。個人消費が二期連続で下がった場合は、先ほど個人消費は重視されるとおっしゃいましたけれども、消費税増税の中止の判断はされるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 来年の四月の消費税一〇%への引き上げは、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施をしていく考えであります。

 なお、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態とは、単に個人消費の落ち込みということのみではなくて、その背景に、世界経済の大幅な収縮といったことが実際に起こっているかどうかということについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえて、そのときの政治判断において決められる事項であります。

 いずれにせよ、一〇%への引き上げを確実に行うための経済状況をつくり出すという決意のもと、個人消費の動向も注視をしつつ、経済財政運営に万全を期してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 よくわからないんですね。個人消費は重視している、だけれども、単に個人消費だけではなくて世界経済の収縮が起きているかどうかというふうにおっしゃるわけですけれども、世界経済の収縮が余り起きていなければ、個人消費がどれだけ落ち込んでも消費税増税中止の判断をすることはないということですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、冷静に分析をしていく必要があると思いますが、もちろん、日本経済自体が危うくなるようなことは、そういう道はとってはならないのは当然のことでありますが、我々もその中においてしっかりとこの経済の現下の状況についても注視しつつ適切に対応して、適切というのは消費税を上げる、上げないということではなくて、経済財政運営において適切に対応していかなければならない、こう思っております。

 その上におきましても、補正予算のしっかりとした着実な実施、そして、早期のこの本予算の成立等において、しっかりと消費を下支えしていかなければならない、こう考えているところでございます。

宮本(徹)委員 日本経済が危うくなる道をとってはならないと言うんでしたら、それは、この個人消費の冷え込みの状況を見たら、もう消費税増税はきっぱり中止、こういう判断を私はすべきときだと思います。

 総理は、この間繰り返し、税収が減ることになったら元も子もなくなるということをおっしゃるわけですけれども、本当に消費税増税が個人消費の収縮を今もたらしているわけですよね。GDPの六割を占める個人消費が収縮していくということ、これを重ねていったら、文字どおり、税収はふえない、減っていくということになるじゃありませんか。そういう認識はございませんか。

安倍内閣総理大臣 我々、この三年間、順調に税収はふえているわけでございまして、今後もこの状況を維持していきたい、このように考えております。

宮本(徹)委員 三年間に税収が順調にふえていると言っても、その中心部分は消費税増税でふやしたわけですよ。しかも、この間の所得税にしろ法人税にしろ、税収がふえてきたものというのは、大きな部分というのは、株高、円安、差益によるものというのが多いわけですよね。株が今どんどん下がっている、こういう状況の中で、税収が順調にふえていくという状況ではおよそないというのは言えると思います。

 一九九七年の消費税増税のときも、そのときは法人税減税や所得税の最高税率の引き下げもやりましたけれども、同時に景気の落ち込みもあって、税収は落ち込み続けたわけですよね。この過ちを繰り返しては絶対にいけない。税収を考えても、景気にとっても悪影響を与える消費税増税はすべきでないということを私は重ねて申し上げておきたいと思います。

 あわせて、消費税のもう一つ、逆進性の問題についてもお伺いしたいというふうに思います。

 消費税導入以降、所得税、住民税は累進性が緩和されてきました。そして、逆進性を有している社会保険料はどんどん引き上げられるということになりました。その結果、個人所得課税と社会保険料についてこの四半世紀でどうなったのかということで、資料の二枚目に、これは政府の税制調査会のまとめのグラフから二本だけ抜かせていただきましたけれども、赤色が消費税が導入される前、青色が今日の個人所得課税と社会保険料の負担率ということになっています。

 低所得者は大幅に負担率が上がるということになっております。その一方で、高額所得者は負担率が大きく下がっている。これが政府税調の資料に出されておりました。

 それを受けて政府税調は、この間、所得再分配の機能が低下している、所得再分配の機能の回復を図り、経済力に応じた公平な負担を実現するための見直しを行う必要がある、こう書かれておりました。

 この問題意識については、総理は共有されているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 消費税には、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定している、勤労世代など特定の者への負担が集中しないといった特性があり、年々増加する社会保障費の財源としてふさわしいと考えております。

 来年四月の消費税率引き上げについては、予定どおり行う考えでございます。

 また、先ほどおっしゃった、消費税を引き上げて税収が十分に上がらなかったではないかという御批判がございましたが、これについては、我々、消費税引き上げ後、消費税収は五・二兆円増加したほか、所得税収は一・三兆円、うち給与所得に係る税収も〇・五兆円ふえ、法人税収が〇・五兆円ふえているということは申し上げておきたいと思います。

宮本(徹)委員 私が聞いたことにお答えいただいていないんですけれども、政府税調が昨年の十一月にまとめられたこの冊子の中で言われている、この間、所得課税と社会保険料について所得再分配の機能が低下した、そして、所得再分配の機能の回復を図って、経済力に応じた公平な負担を実現するための見直しを行う必要があるということが書かれているわけですね。

 この問題意識を共有されているのかということをお伺いしたんです。

安倍内閣総理大臣 政府税調が昨年十一月に取りまとめた中間的な論点整理においては、個人所得課税及び資産課税が果たす再分配機能の重要性が増しているとの指摘がなされていることは承知をしております。

 安倍内閣においては、税制について、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引き上げ、給与所得控除の見直し、金融所得課税の見直し、相続税の最高税率の引き上げ等を講じ、逐次実施をしているところであります。まずはこうした見直しの影響を見ていく必要があると考えております。

 その上で、経済がグローバル化する中で、高所得者が高額の税負担を避けて資金や人材が流出するといった事態にも十分配慮し、議論を進めていく必要があると思います。

 政府税制調査会においては、中間的な論点整理を踏まえ、引き続き議論が行われていくものと承知をしておりますが、いずれにせよ、税制の再分配機能のあり方については、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続きよく考えていきたいと思います。

宮本(徹)委員 政府税制調査会が所得再分配機能の回復と言っているのは承知しているというお話でありました。

 これは個人所得課税と社会保険料についてのグラフなわけですけれども、資料の三枚目は、消費税の負担率が低所得者、高所得者でどうなっていくのかというのを改めて配付させていただきました。

 この二枚目のグラフと三枚目のグラフを足したらどうなるのかということを私は考えなきゃいけないと思うんですね。足すためのいい資料はないかと思ったんですけれども、なかなかいい資料がないので、家計調査、六割しか把握していないと私もさんざんこの場で言ってきましたけれども、家計調査をもとにしたグラフを、最後、四ページ目につけさせていただきました。

 これは、所得階級別、五分位階級別ですね、第一分位と第五分位、社会保険料と個人所得課税、そして消費税も含めた負担率がどうなったのか。

 消費税増税前、最も所得が少ない第一分位では一〇・七五%だったのが、二〇一五年では一八・一九%と倍近くにまでなっております。その一方で、第五分位、所得の高い方のところでは、一九八八年一九・四九%だったのが、二〇一五年二五・一七ということで、こちらの方が上がり方は比較的緩やかになっています。上がり方でいえば、低所得者ほど、消費税を増税したこともあり、そして社会保険料が上がってきたこともあり、上がっているわけですよね。

 消費税を一〇%にしたら、これは見ていただければわかりますけれども、低所得者の負担率というのは、消費税増税前の最も収入がある方の負担率と同じところまで引き上がるということになるわけですよね。一方で、税の所得再分配の機能が低下している、所得再分配の機能を回復しなきゃいけないと言いながら、所得再分配に最も逆行する消費税を増税するというのは、極めてちぐはぐですよ。間違っているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 これは、先ほど答弁をさせていただきましたが、消費税には、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定をしている、そして勤労世代など特定の者への負担が集中をしないという特性があるわけでありますが、同時に、消費税は、まさに社会保障の充実のためにこれは使われるわけでありまして、ひとしくその観点からも負担していただこうということでございまして、年々増加する社会保障費の財源としてふさわしいと考えております。

宮本(徹)委員 社会保障というのは経済的弱者や低所得者を支えるためのものなんですから、そこに最も負担が重い消費税で財源を賄うというのは、私は最もふさわしくないと思いますよ。この間、法人税は累次の減税が重ねられてきました。高額所得者の減税も歴史的に見れば相当行われてきているわけですよね。

 やはり、所得再分配機能を高めなければいけない、社会保障を支えていくんだということを考えたら、力に応じた負担という税制改革こそ必要であって、低所得者ほど負担が重い消費税増税は絶対やってはならない、このことを強く申し述べまして、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも今回の税法についてお伺いしていきたいと思います。

 まず、軽減税率についてお伺いしていきたいんですが、この間、私は、しつこいと言われるほど、新聞の軽減税率適用について財務省と質疑させていただきましたが、やはり、佐藤主税局長の話を聞いても麻生財務大臣の話を聞いても、なぜ新聞だけが軽減税率の適用になっているのかというのは非常に曖昧な答弁が続いているなというのが正直思うところです。

 今回の政府の出してきた軽減税率、新聞は適用されるけれども、書籍や雑誌は、逆進性の観点、例えば、所得の水準に応じて支出されている、お金持ちの方ほど多く買っていてお金のない方は余り買っていらっしゃらないという点で、低所得者対策にならない、そして、その時々の関心に応じて買っていらっしゃるので奢侈性があるという点から、書籍、雑誌は含まないという形で出されてきています。

 しかし、一方で、総理、与党では継続協議に書籍や雑誌はなっているんじゃないですか。しかし、財務省、財務大臣の御答弁を聞いていたら、どう理屈をつけても、逆進性の観点とかが変わらなければ書籍や雑誌というのは入れられないと思うんですけれども、今後、まず書籍や雑誌は特出しで教えていただきたいんですけれども、ほかのものへ適用拡大されていくということになっているんでしょうか。拡大されるということがあり得るのかどうか、総理からお答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 書籍、雑誌については、昨年末の与党税制改正大綱において、「その日常生活における意義、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する。」とされているところであります。今後、与党において検討されるものと承知をしています。

 なお、これまで政府により、書籍、雑誌について、対象範囲の外縁の定義づけが困難であること、書籍、雑誌の購入に係る消費税負担は逆進的とは言えないこと、適切に有害図書を排除する仕組みが存在しないことなどと述べてきたのは、今般の法案において軽減税率の適用対象としなかった理由を挙げたものでありまして、今後、こうした課題も含めて検討されるものと考えています。

 ということであります。

丸山委員 つまり総理、それらが解決されなければこれらは入らないということなんですか、それとも、これらが解決されなくても次の法改正では書籍や雑誌が入る可能性があるということですか。

安倍内閣総理大臣 まさに今委員がおっしゃったことが検討課題でありまして、その検討課題においてしっかりと検討していくということになると思います。

丸山委員 非常に曖昧な総理の答弁ですけれども、つまり、今回の軽減税率の適用、今回は入っていないですけれども、今後、書籍や雑誌を入れるためにはこれらの課題を解決しなければならない、つまり、解決されなければ入らないという理解でいいのか、それとも違うのか。

安倍内閣総理大臣 課題があるということは事実でありまして、この課題を、どのような形でこの課題に対応していくことができるか、あるいは、この課題をどう考えるか、決定的な課題なのかどうかということも含めて我々は検討をしていく。

 今回については、こうした課題があり、この課題への対応について、あるいはまた、この課題をどのように考えるかということについて、議論を十分に深めるには至っていないわけでございまして、今後、まずは議論をしっかりと踏まえながら、課題の解決の方法があるのか、対応の方法があるのか、あるいは、これは絶対的に解決をしなければならない課題であるのかということについて議論を進めていきたい、こう考えております。

丸山委員 非常に曖昧な御答弁で、御自身も言っていて笑いながらお話しされていますけれども、お聞きになっている皆さんはお感じになると思うんですけれども、おかしいんですよ。

 非常に曖昧に、電気、ガス、水道は入っていない。どうして入っていないのかと聞いたら、公共サービスを全部入れるか線引きが難しいと御回答があるんですけれども、一方で新聞だけは、日々読まれているという定義を勝手に、週二回以上のものはぎりぎり日々読まれていると言えるだろうという佐藤局長の御答弁で、新聞が定期購読のみ入っています。全部入れると巨額になりますよ、公共サービス、難しいですと言いながら、二百億円の新聞だけ入っているんです。

 では、確かに最近不正がひどいのでNHKはどうかと思うんですけれども、しかし、NHKは少なくとも新聞よりは公共性が高いと思うんですけれども、この二百億より低くなるであろうNHKの受信料は入っていないと言う。今総理の御答弁を聞いても、これまでの財務省の御答弁を聞いても、非常におかしな話だなというのが感じるところです。国民の皆さんも、恐らく今の総理の御答弁を聞いて、おかしいなとお感じになっているんじゃないかと思います。

 その総理にお伺いしたいんですけれども、今回、軽減税率の適用によって一兆円近い財源が必要になっていくということで、その意味で、総理は、総理在任中に、任期中に一〇%より消費税は上げないと御答弁を予算委員会で先日されているんです。一〇%までは可能性があるけれども、それ以上は上には上げないというお話をされています。

 政府として継続性が必要なんですが、昨今の社会保障の財源の不足を考えたとき、もろもろ考えたときに、安倍政権じゃなくても、将来的に政府として、これらの観点からさらに消費税率は上げなければならないタイミングが来るというそもそも認識でいらっしゃるのか、それとも、このまま一〇%のままでうまくいけばいきますよと考えているのか、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 これは、財政健全化の進捗の状況等もあるでしょうし、あるいはまた、社会保障費をどのように効率化、重点化をしていくことにおいて適正化できるかどうかということもあるんだろう、こう思うわけでありますが、そのときの政府が適切に判断するべき事項であろう、こう考えております。

 安倍政権において、この安倍政権がどれぐらい継続していくかということももちろん前提としてあるわけでありますが、私が総理という段階においては八%、一〇%と二回引き上げていくわけでありますから、私の任期中にそれをさらに上回って引き上げていくということについては、これは、経済に与える負担を考えれば、その道をとるということは考えていないわけでございます。

 そして、その後の政権がどう考えるかということについては、それはその後の経済状況、財政状況を勘案しながら適切に判断していくべきものと考えております。

丸山委員 御自身の政権では八%、一〇%を考えるということですけれども、先ほどのお話にもありましたけれども、今回、軽減税率を適用するということで、かなり前回よりも準備が必要になってくるのは事実だと思います。そういった意味で、これをやるのかやらないのか早く決めなきゃいけない。しかし一方で、目下の経済状況は不安定さを増しているというのは事実だと思うんです。

 これは、前回は年末、十二月のタイミングでお決めになりましたけれども、一〇%に上げるのは総理の政権だとおっしゃいましたけれども、一〇%に上げるかどうかの判断というのは経済状況等を勘案するとおっしゃっていますけれども、前回の十二月のタイミングより前倒しされるという理解でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど、経済状況についてさまざまな分析を行うということは、それは、現下の経済状況が国際経済において先行きの不透明感が増している中においてどう考えるべきか、あるいは、それぞれの国がどう対応していくべきかということについてさまざまな方から御意見を伺いたい、こう考えておりますが、経済においての消費税を引き上げるかどうかについての景気判断を行うということは考えていないわけでございまして、我々は来年の消費税を引き上げていく状況をつくり出していきたい、こう考えております。

丸山委員 タイミングをお伺いしているんですけれども、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 基本的には引き上げていくという考えでございますので、現段階で八%に引き上げたときのようなああした会議を念頭に置いていることはないわけでございます。

丸山委員 逆に、どのタイミングまでならやめることを決められるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 現段階でやめるということを考えているわけでございませんので、どのタイミングかということについては申し上げることはできません。

丸山委員 今回の軽減税率の件にしても、消費税に関しても、国民の皆さんにとってみれば非常に身近な問題で、しかも経済全体にもかかわる大きな問題です。まだまだこの委員会は審議が続きますけれども、そういった意味で、総理、きょうのお答え、軽減税率の点を見ても、総理まで曖昧なお答えをされていることに対して、非常に心苦しく私は見ていて思います。

 しっかりと今後の質疑でも答えていただけますよう、質疑を見ていらっしゃる国民の方々になるほどと思っていただけますよう、質疑できますよう、私は望んでおりますので、総理や大臣もその点を鑑みて御答弁のほどよろしくお願い申し上げまして、私の質疑を終えます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 質疑を続行いたします。原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博です。

 きょうは、関連法案、そして財政、金融について、持続可能性というキーワードで麻生財務大臣、それから日銀総裁、金融担当大臣とお話をしていきたいと思います。

 昨年、六千万人の難民が出て、そして新興国市場も大きく変動してきています。こういう中で財政はどうあるべきなのか、それから税はどうあるべきなのかという基本的な問題をお話をしたいと思います。

 まずその前に、委員長にお許しいただいて、ちょっと多いんですが、資料を配らせていただきます。

 まず、私が非常にこれから立ち向かっていかなきゃいけないと思っている課題は、やはり貧困と格差の拡大だというふうに思います。

 総務省の統計局に来ていただいていると思いますが、都道府県別の一世帯当たりの年間収入、平成二十一年からすると、二十六年、減った県が随分多いんじゃないかと思いますが、事実関係ですので、事務方からまずお願いいたします。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

會田政府参考人 全国消費実態調査の結果による都道府県別の一世帯当たりの年間収入について平成二十六年と平成二十一年の結果を比べますと、二人以上世帯につきましては四十七都道府県中三十二県で、単身世帯につきましては四十七都道府県中三十六県で年間収入が減少しております。

原口委員 今お話しのとおりです。皆さんのお手元の資料二十五に書いてございます。皆さんの御出身の都道府県はいかがでしょうか。ほとんどのところが減っているんです。可処分所得も減っている。貧困層のさらなる窮乏化と、そして格差の拡大は、これは絶対に避けなければならないというふうに思います。

 そこで、麻生財務大臣と少し議論させていただきたいと思いますが、今回の税法に関連して、まず基本をおさらいしておきたいと思います。

 憲法における税を定めた条文、これは二つしかないというふうに思います。一つは憲法三十条「納税の義務」、それから憲法八十四条、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」というこの条文の二つでございます。私たちは、租税法律主義、租税公平主義、このもとでさまざまな税を国会で議論してきてまいりました。

 まず麻生財務大臣に伺いますが、租税法律主義、租税公平主義、この重要性についての御認識を問いたいと思います。

麻生国務大臣 まず最初の憲法八十四条は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と規定をされております。この規定の趣旨は、租税の種類及び根拠、納税義務者、課税物件、課税標準及び税率といった課税要件並びに徴税手続を法律で定めることを要するというものであると承知をいたしております。

 また、御指摘のように、税負担は、国民の皆さんそれぞれの担税力、いわゆる税を負担する能力に応じた公平な負担でなければならず、各種の租税法律関係においては国民は平等に扱われなければならないとの、いわゆる租税公平主義という考え方があることは承知いたしております。

 自分としても、こうした考え方は大きな意義があるものだと考えております。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

原口委員 財務大臣、ありがとうございます。今お話しのとおりでございます。租税は民間の富を強制的に国家が徴収するものですから、租税には必ず法律の根拠を要する。

 そこで私たちは、社会保障と税の一体改革ということで、できるだけ幅広く、これはまだ私たちが政権につく前から当時の与党の皆様にもお声かけをさせていただいて、社会保障ももう待ったなしだ、税の改革も待ったなしだ、できるだけ幅広い共通の基盤をつくって、そしてこの改革に与野党の枠を超えて協力しようじゃないか、前進させようじゃないかというのが、そもそものこの三党協議のスタートだったというふうに思います。

 党ではございませんけれども、財務大臣は、この三党協議に従って法律を出され、そしてこの趣旨に沿ってさまざまな運用をされているわけですが、私が今申し上げたような理解でよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 この社会保障と税の一体改革に関する三党合意というものは、社会保障と税、財政の問題につきまして、自公民での真摯な議論を経て策定されたものであります。国の長期的課題に対する与野党の枠を超えた枠組みとして、これは先進国の中で他に例がない、私はそう思ってよく他国にも言うんですけれども、重要な意義を有するものと考えております。

 軽減税率制度というものは、三党合意に基づいて成立をした税制抜本改革法において、総合合算課税とか給付つき税額控除と並ぶ低所得者対策の一つの選択肢として掲げられたものだとも理解しておりますし、政府としては、この法の規定に基づきましていろいろ検討させていただいて軽減税率制度の導入を決定したところなんですが、まさに三党合意に沿った対応がなされ、その意味において三党合意というものは現在も生きているものだ、私どもはそう思っております。

 三党合意が生きているのであれば三党協議を丁寧に行うべきとの御指摘でありますので、税制抜本改革法に沿いまして今般提出をいたしました税制改正法案については、国会の場でいろいろ御議論をまさに今いただいている最中でもありますし、そういった御議論をいただければと考えております。

原口委員 財務大臣、丁寧にやるべきだというのは次の質問なので、まだ指摘していません。財務大臣が御自身から言ってくださったので。

 私も税調の役員をしていました。それで、政権を再交代した後もかなり丁寧にやってきたんです。この軽減税率と、それから給付つき税額控除、それから総合合算制度、このミクスチャーやどんなものをつくるかというのは、自公の皆さんの協議を待って、私たちは、今は古川さんが税調会長ですけれども、皆さんの結論を待ち、私たちの党内議論をするということで待っていたんですが、こうやって法律が出されている。

 今生きているということであれば、やはり法律を出す前にきちんと今までのようにちゃんとした協議をしていただきたい。これは財務大臣に言う話ではないと思いますけれども、与党の皆さんに申し上げます。

 それはなぜかというと、私たちも責任を負うんです、三党合意をしているわけですから。その合意の一端、一つの党に対してそれを無視したようなことはできないということを申し上げておきたいと思います。

 それから給付つき税額控除については、税制抜本改革法では「総合的に検討する。」というふうに書かれていますが、これは委員長、資料で結構ですから、いつどのように検討されたのか、それを本委員会に財務省として出していただきたいと思いますが、財務大臣の御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 与党税制協議会などの場において、消費税率引き上げに伴いますいわゆる低所得者への配慮の観点から軽減税率制度について検討していく中で、政府として、例えば給付つき税額控除を含みます措置をとるということに係ります調査、また、軽減税率制度との比較などについて御報告をし、これを踏まえた議論がなされたものだと承知をいたしておりますので、その結果、軽減税率制度の導入は決定されたものだと、私どもとしてはそう認識をいたしております。

原口委員 私、その認識、いかがかなと思うんです。そういう認識を財務大臣がされているということですけれども、この三つは三択じゃなかったんですよ。つまり、軽減税率をとるか給付つきをやるか、それとも総合合算制度、どれか一つにしなきゃいけないというものではなかった。

 そこで厚労省、総合合算制度というのはどういうものか、これは事務方で結構ですから、教えてください。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 総合合算制度でございますが、これは、三党合意を経て成立した税制抜本改革法において、給付つき税額控除や軽減税率と並んで、消費税率引き上げに伴う低所得者対策の検討事項の一つとされていたものでございます。

 このため、制度の詳細な内容が固まっていたものではございませんけれども、社会保障・税一体改革大綱によりますと、「制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて、医療・介護・保育等に関する自己負担の合計額に上限を設定する」ものとされているところでございます。

 なお、総合合算制度の実施には、家計ごとの正確な所得の把握や自己負担額の制度横断的な把握が必要となるため、税制抜本改革法におきましても、この制度の導入にはマイナンバー制度の導入、定着が前提とされていたところでございます。

 以上です。

原口委員 財務大臣、今厚労省が説明しましたとおり、皆さんのお手元の資料四に「総合合算制度の導入」、これは厚労省がつくったものでございます。まさにこれこそが、税、社会保障の負担が増加する中で、低所得者の負担軽減により所得再配分機能を強化する、社会保険制度の持続性、安定性の確保、制度横断的な自己負担軽減策の導入。つまり、高齢化が進んでいます、医療や福祉の負担の上限を決めようじゃないか。これこそ低所得者対策じゃないんですか。

 麻生大臣、私たちの合意が三択でなかったということはお認めいただきたいと思います。その上で軽減税率を選択したと言うのであればそれは一つの判断ですけれども、三つのうちどれか一つを選ぶというからこれを選んだという答弁では私は納得できないので、そこを確認いたします。

麻生国務大臣 今御指摘のあったとおりでして、低所得者対策の候補の一つとして検討する対象となっていたものなんだと理解をしておりますので、繰り返しになるかもしれませんが、今般の消費税の逆進性の緩和とかいう点を重大な問題だと考えたんですが、日々の生活の中で痛税感の緩和という点に関して、これが実感できることが特に重要ではないかということを判断して軽減税率の導入ということにさせていただいたということで、これに伴っていわゆる低所得者対策としての総合合算制度等々は、実施するのはなかなか難しいということにさせていただいたと理解をいたしております。

原口委員 それは、まだマイナンバー制度がスタートして間もない、あるいはその導入に対してはさまざまな障壁があるということで今回は見送ったというふうに認識をしていいのか。

 マイナンバー五原則というのを私が総務相のときに出させていただきました。みずからの情報をコントロールする権利。このマイナンバーも、管理のための番号じゃないんです。むしろ国民の権利に着目した制度設計をしてきました。

 それからすると、この総合合算制度を早々に諦めたというのは、私はもう一回考え直してほしいというふうに思います。

 確かに、この総合合算制度が全てではありません。これを入れると、高齢化や、あるいは、先ほど申し上げました貧困の拡大、格差が広がれば、これは財政拡大要因になるんですよ。ですからいいことばかりとは限らないけれども、本当に、病気やあるいはさまざまなことで苦しんでいる人たちにとっては、その負担の上限を決めるというのはとても大事な制度であるということを再度申し上げておきたいというふうに思います。

 国債の市場、私たちは、やはりボンドマーケットについても慎重な判断が必要だろうと思います。

 日銀総裁に来ていただきました。ありがとうございます。

 日銀は、さまざまな通貨の安定、アンカーだというふうに思いますが、黒田日銀総裁になってからは、熱帯低気圧や台風が吹き荒れるような、そういう大きなインパクトも市場が感じている。そのこと自体が本当にどういうものなのかなというふうに思います。

 これは資料の十二をごらんください。もう皆さんはさんざんごらんになった絵だと思いますが、今回、マイナス金利を日銀が導入をされた。一月二十九日に政策決定会合で決定をして、二月十六日にもうそれがスタートしたということでございます。

 そこで、日銀総裁に少し基本的なことを伺いたいと思います。日銀のバランスシート、この間、年間八十兆ぐらいバランスシートを膨らまされて、ECBやFRBと比べると、対GDP比という形からいうとかなり膨大だと思いますが、ECBとFRBと日銀の対GDP比、バランスシートはどうなっていますか。

黒田参考人 手元のデータによりますと、昨年の十二月末で日本銀行の資産規模、これは国債が中心ですけれども、全体として名目GDPの七六%程度、米国のFRBの場合は二五%程度、ECBの場合は二六%程度となっております。

原口委員 今、大変大事な数字なんです。これだけ大きな割合を占めているわけです。しかも、アメリカのGDPと日本のGDP、あるいはEUのGDPと日本を比べると、荒い言い方をすると三対一だと思います。その中で、七五%ものバランスシートを占めている日銀のビヘービアが本当にこれでいいんだろうか。

 今回の資料、皆さんのお手元の十二をごらんください。もともと当座預金には金利が付されていません。原則、金利を付さないということになっています。これはどうしてですか。

黒田参考人 この点につきましては、実は、日本銀行法自体に、金利を付してはいけないとか、そういうことは書いていないんですけれども、従来の答申等を踏まえて、準備預金については金利を付さないということになっております。

 ただ、必要な準備預金を超える部分については、以前の包括緩和の際も〇・一%の付利をしていたということでありまして、量的・質的金融緩和導入に際しまして、引き続き、その必要準備を超える部分については〇・一%の付利をする。

 ただ、必要準備については一貫して金利はゼロということになっておりまして、各国の中央銀行も、必要準備については大抵そういう扱いになっておると思います。

原口委員 おっしゃるとおりです。必要準備、基礎残高、マクロ加算残高、こうやって書いてありますけれども、総裁、大体十兆円ぐらいですね、必要準備の残高は。そして、それ以外のところに、今回マイナス金利を入れる前は〇・一の付利がされていたわけです。これは、国債の決済とかいろいろなことに使ってこんなに広がっていたんだと思いますが、その〇・一の金利を乗せていること自体の是非というのも、やはりどこかで議論をしておかなきゃいけないと思います。

 これだけ巨額のお金を日銀に当座預金で積めば〇・一の金利がつく、このことについては、見方を変えれば、日銀からそれぞれの銀行に対するある一種の、補助金という言葉は適切ではないかもわかりませんけれども、そう見られる場合もある。

 私たちはちょうど一九九〇年代の終わりに、これも与野党を超えて金融再生法をつくらせていただきました。金融ビッグバンと当時の総理がおっしゃって、さまざまな銀行が不良債権を抱えて、巨額の公的資金を入れました。金融社会権ということを私たちはそのときにずっと言っていたわけです。一般の国民の皆さん、企業の皆さんが、銀行を通して決済をする、あるいは預金を預ける権利が奪われてしまえば、それこそ、私たちの社会、経済、金融そのものが破壊をされてしまう。だから、与野党を超えて金融再生法をつくったわけです。

 ところが今はどうでしょうか。あの当時は、銀行にお金を預けても、引き出すときの手数料なんというのは、今のようにはなかったです。今は、巨額のお金を預けている人とそうでない人との間に扱いの差も出てきている。あの当時に私たちが懸念をしていたこと、つまり、貧富の格差によって金融決済についてもその利便性が変わっているとすれば、そこは議論をしておかなければいけないというふうに思います。

 さて、これだけバランスシートを膨らませながら、では、銀行貸し出し、これはもう総裁は何回も言われたことだと思いますけれども、これですよ。資料の七をごらんください。ふえていないですよ。

 今申し上げた、私どもが金融再生法を、もう本当に血のにじむような思いを国民の皆さんがなさってやったときが国内銀行貸出残高が五兆円。このころは貸し渋り、貸し剥がしということが言われてきました。しかし、年間八十兆、バランスシートをこれほど広げながら、銀行貸し出しがふえていない。この理由は何ですか。

黒田参考人 量的・質的金融緩和のもとでイールドカーブ全体を下げ、実質金利を引き下げるということによって、企業の設備投資あるいは個人の住宅投資の需要を増加させる、さらには、金融機関が積極的に貸し出しを行いやすい緩和的な金融環境をつくるということが主たる目的でありまして、量的・質的金融緩和を遂行してまいりました。

 その結果、日銀の短観で見ますと、金融機関の貸し出し態度DIというのは、中小企業を含めて改善が続いておりまして、リーマン・ショック前のピークを上回る水準になっております。

 また、貸出金利が既往最低水準まで低下するもとで、この委員提出の資料のとおり、銀行貸し出しは前年比二%台の伸びを続けておりまして、従来は前年比で減少していた中小企業向け貸し出しも、二〇一三年半ば以降は増加に転じております。

 このように、量的・質的金融緩和は、金融機関の貸し出し面も含めて効果を発揮しているのではないかと思っております。

 委員の御指摘のとおり、何でもっと金融機関の貸し出しが増加しないのかということはよく理解できる点でありますけれども、現在の状況のもとで実質金利がこれだけ下がって、そして、貸し出しも中小企業向けを含めて二%台の伸びになっているということは、一定の効果を持ったということは御理解いただきたいと思います。

原口委員 せっかくの総裁の御答弁ですけれども、金融緩和のマグニチュードと効果に対してはやはり大きな乖離があるというふうに、ここは財務金融委員会ですので、細かいデータをもとにDIを出されるのは結構ですけれども、私が出したデータに対してどう思うかというのをお答えをいただきたい。私がつくったわけじゃなくて、日銀さんがおつくりになったものですから。

 財務大臣、私は、世界的に今はかなりいろいろなリスクについても議論をしておかなきゃいけないというふうに思っています。世界的に見ると、三年に一回、むさぼるマネーというんでしょうか、実体経済とは乖離をしたお金が暴れて、そしてさまざまなクラッシュを起こす。

 アメリカはボルカー・ルールというのを、資料の五にあのイエレン議長の昨年末のステートメントを載せていますけれども、基本的にボルカー・ルールが、これはたしか二〇一〇年にその基礎ができて、去年の七月二十一日でしたか、全面適用されるということで、金融界にとっても大変大きな規制強化ということですね。今までのようなことができなくなる。

 このマグニチュードと、それから、最近ではドイツ銀行。たしかリーマンの総資産が六十兆ぐらいでしたか、ドイツ銀行は二百兆ぐらいというふうに認識をしていますけれども、CoCo債、あるいは米国のエネルギーセクターのハイイールド債、この価格が下落するなど、国際的な金融市場に大きな変動が見られています。

 この変動について、我が国の金融システムに与える影響、これをどう考えておられるのか、麻生大臣からお話を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは先生言われますとおりに、いわゆる欧州の銀行が発行しております、全部ではないですよ、一部の社債とか、今、エネルギーセクターで発行するハイイールド、まあジャンク債みたいなものです、だとよく言われていたんですが、こういったものの価格が足元で変動しているということは私どもよく承知しておりますが、それが日本の金融システムにとってどうかといえば、銀行としては、総体としては安定をしておるんだと思っております。

 いずれにしても、こういった金融機関というものの話が日本には関係ないと思っていた方も多かったリーマン・ブラザーズのあの話も、日本の銀行で何とかいう社債を買っていた人というのは余りおられなかったので、まあ余り関係ないんじゃないかという御意見もあの当時はあったんですが、結果として見れば、世界に与える影響は極めて大きくて、結果として日本にもその影響が、遠い対岸の火事と思っておったものがわさっとこっちにかかってきたとかいうのが二〇〇九年以後の話だと思いますので、私どもとしては、引き続き市場とか金融情勢というのは丁寧に見ておかなきゃいかぬという御指摘は正しいと思います。

原口委員 金融担当大臣は、そのとき総理として大変な大きな対応をなさったんだと思います。

 今おっしゃったように、対岸の火事ではない。二〇一〇年夏に成立した米国の金融規制改革法、ドッド・フランク法の中核となる、銀行の市場取引ルールであるボルカー・ルール、私は、このボルカー・ルールを入れたことがどうこうということを、アメリカのことですから、私が申し上げることは控えようと思いますが、いずれにせよ、むさぼるマネーをどこかで正しい形にしなきゃいけない、その規制が必要だというのは我が国でも同じことではないかと思います。

 そこでちょっと心配なのは、この日銀の資料、今のイエレン議長の次のページをごらんください。「日銀の当座預金の推移」です。

 日銀総裁、心理学にマスキングの実験というのがあって、一つの刺激を、ずっと同じ刺激を与えていると、それが仮に強い刺激でも、もうきかなくなってくるんですね。今の国債市場を見てみると、少し気になる動きがあります。長期金利のグラフをごらんになってください。その後ろにつけていますが、資料九です。十年債、五年債、二年債、こういう動きをしています。どんどん上がっているんです。

 財務大臣、財務大臣に勉強させていただいているころ、ちょうどバブルが崩壊するころでしたけれども、銀座の土地が物すごく上がりました。不動産取引も活発で、まさにバブルだったわけですけれども、余りにも土地が高過ぎて、ぱたっと取引がとまった。そして、誰かが資金繰りに困って投げ売った。そうすると、まさに泉の水がなくなるような、どんと下がるという現象が起きました。それが土地バブルの崩壊だと思います。私は、国債でこれが起きてはならないと思うんです。

 ですから、後で申し上げますように、持続可能性という観点からすると、財政改革努力をさらにしなきゃいけない。それから、日銀については、やはりバランスシートの拡大にもある一定の節度がいるんじゃないかと思います。

 日銀総裁に伺いますが、金利上昇時の保有長期国債の時価減少額、これを、直近の数字を教えてください。

黒田参考人 金利が上昇した場合の保有長期国債の時価減少額というのは、一定の前提を置いて、例えば現時点の長期国債の保有状況を前提として、一斉に十年物の国債金利が直ちに一%上昇して、他の期間も年限に応じて同じ比率で上昇するというケースを仮に想定いたしますと、時価の減少額は、昨年の九月末の段階では十七兆円ぐらいだったと思いますが、十二月末の計算をいたしてみますと、二十一兆円程度減少するということになります。

 なお、一五年九月末時点で保有する国債の含み損益はプラス五・四兆円程度であったわけでございます。

 いずれにいたしましても、御案内のように、日本銀行では、国債の評価方法につきましては償却原価法を採用いたしておりますので、長期金利が仮に上昇して、決算上の期間損益において評価損失が計上されるということはないわけでございます。

原口委員 総裁、きのう、一月末の数字も出していただけないかと言っていたんですが。

黒田参考人 それはまだ集計されておりません。

原口委員 これは毎回予算委員会でも、日銀の自己資本に与える金利上昇リスクというのを議論してきました。確かに、今お話しのように、直ちに何か問題があるというふうには私も思いません。

 しかし、先ほどの土地バブルではないですけれども、財務大臣、国債の管理についてもやはりよほど慎重な目配りが必要ですし、財政再建のその圧力というのは、もう過去の比でないぐらい大きくなっていると私は認識しているんですが、財務大臣の御認識を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 基本的に、毎年大体三十兆円ぐらいの新規の国債を発行しておられますので、普通国債発行残高が八百三十八兆とか、GDPでいきますと約一六〇%ぐらいになろうと思いますので、これは大変厳しい状況にあるというのは我々皆同じ認識をいたしておりますので、財政の健全化というのは、これは絶対避けて通れぬというところが一番肝心なことだと思っております。

 したがいまして、財政再建ばかり見ますと縮小均衡みたいな形になりかねませんので、私どもとしては、経済成長というのを進めながら財政健全化というものに着実に取り組む必要があろうと思っておりますので、まあ、今年度は新規国債を十兆円減額ということでやらせていただいておりますけれども、いずれにしても、私どもとしては、御心配になっておられますように、二〇二〇年までのプライマリーバランスというものの黒字化に向けて、いろいろ財政再生計画をつくって今やらせていただいておるところであります。

 いずれにしても、私どもとして、先ほど出ておりました日本銀行のマネタリーベースがこれだけふえているのにマネーサプライが全然ふえぬじゃないかという御指摘は全く正しいんであって、マネーサプライがふえぬ最大の理由は、多分、金を借りに来るという需要がない。いわゆる、町に需要がないんだと思っておるんです。

 だから、市中銀行から先に金が出ていかないというのは需要が足らぬということだと思いますので、GDPの中に占めます個人消費、次が設備投資、次が政府支出、大きな順番でいえばそんなものだと思いますが、そのうち二つがとまった形になっておりますというところがふえない理由だと思いますので、やはり財政というものをきちんと考えないかぬというのが、財政を機動的に運用していかないとやれないということを申し上げております二本目の矢の主な背景はそれなんですけれども、いずれにしても、きちんとした形でこういったものを見ておかないと、何となく、日本銀行がやってくれるから大丈夫大丈夫みたいな安易な考えでやると、極めて厳しい状況に将来追い込まれる可能性というものを常に考えておかないかぬものだと思っております。

原口委員 私もほぼ財務大臣と同じ認識をしています。個人消費、冒頭に出しましたように、これだけ貧困と格差がふえていくと、なかなか消費にも結びつかない。あるいは、今は投資というお話をされましたけれども、私どものときは、バイICT計画といって、ICTを使って、これは麻生総務大臣のときもそうですけれども、生産性を高めていこう、新たにICT革命を起こしていこうということをやってきたわけです。

 ただ、日銀の、マイナス金利を今回導入したかどうかというのは、ここでもう先生方が何回も議論をされましたのであれなんですが、この間、同僚議員の鈴木先生も予算委員会でされていましたけれども、マイナス金利の導入、これについて情報が漏れていたなんという話も予算委員会でありましたけれども、これはもう証券取引等監視委員会の話なので、ここではしません。

 やはり相手があることなので、政策決定でマイナス金利を入れるということを、この是非は後で議論をしますけれども、十兆円ですよね、十兆円の部分をやって三次元的にオペレーションをしていくということですが、その後市場がどうなったかということも丁寧に見ておかなきゃいけないと思う。

 資料の十三をごらんになってください。

 もともと、付利〇・一をやったというのは、短期市場をつくっていこう、オーバーナイトやいろいろなものをつくって、そしてお金を動かしていこうという意図だったと思うんです、さっきイールドカーブのお話をされましたけれども。

 ところがどうでしょうか。コール市場の残高をごらんになってください。もう先ほど申し上げたように、泉の水がなくなるような、取引停止というニュースもどこかで聞いたような気がしますけれども、こういう状況になっている。

 かつて大学時代、私もプログラムを勉強していましたけれども、マイナスのプログラムは結構難しいんですよ、それを入れるのは。そういう技術的なことだけじゃなくて、日銀がこういう史上初めてのことをやった。そうすると、取締役会でいろいろなことも議論して、どうするか。その間もなく、二月十六日というのは、いかにも乱暴じゃないですか。

 私がもう一つ気になるのは、銀行株です。銀行株も大きく落ちているんです。十六ページをごらんになってください。これは何も日本の銀行株だけじゃなくて、上がちょっと切れていますけれども、ドイツ銀行もアメリカも銀行株が落ちている。やはり一九九〇年代を思い出すんです。銀行の自己資本比率が落ちると、先ほど財務大臣がおっしゃったように、貸し出し余力もなくなって、結果、投資にもお金が回らないということになる。

 日銀総裁、手続的にも、それは暴れる台風をずっと見ておけということではなくて、むしろ企業の自由な、鼓腹撃壌という言葉がありますけれども、日々やるべきことをやっておけば、中央銀行が何をやるかというマグニチュードを、地震のようなものを気にせずとも、予見可能性の高いそういう経営をする方が健全なんじゃないのか。

 今回、大変世界的に信用危機というか、金融システムの危機と言う人もいますけれども、そういう中で異例の対応をされたんだと思うけれども、やはり市場との対話の中で丁寧にやっていくべきじゃないか、私はそう思いますが、日銀総裁の基本的な御認識を伺いたいと思います。

黒田参考人 今回、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入いたしました考え方につきましては、公表文その他で申し述べておりますし、この委員会でも何度も申し上げていますので割愛させていただきますけれども、一旦このマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものを必要な政策として決定した以上、これをできるだけ速やかに実施することによって政策効果の早期浸透を図ることが適当ではないかというふうに考えたわけでございます。

 御指摘のとおり、事務、システム面での対応が必要であるということはそのとおりでございまして、一部、確かに委員御指摘のような、コール市場における取引が非常に減少したということの一つの理由として、マイナス金利というものが従来のコンピューターにそのまますんなりと入らないのでその修正が必要だ、あるいは、もう既に実はマイナス金利が市場でも成立しておりますが、それは、全体のシステムを一気に変えるというよりも、パソコンとか何かを使ってマイナス金利に対応できるような対応をして、それが動いてきているということでありまして、ヨーロッパでは四つの中央銀行が既に何年も前からやっているとはいえ、日本としては初めてのことでございますので、そういった面で金融機関とは現在も十分連絡をとりながら、適切に対応していただけるような努力もさせていただきたいと思っております。

 そういった面で、我が国で初めての試みだったところから、ややそういった対応がおくれている部分があるということは、委員御指摘のとおりでございます。

原口委員 総裁、ありがとうございます。

 やはり、自分の体の大きさを認識しておくべきだと思うんです。先ほど、ECBとFRBと日銀のGDP比の簡単な数字を見てもどれほど大きなものかということを。大きな人は、やはりその大きさに応じた謙抑的な行動が求められると私は思います。今は誰がやっても難しいときですから、総裁が約束したことがどうのこうのとここで言う気はありませんけれども、やはり市場と対話をしながらやっていく。

 ちょっと気になるのは、さっき銀行株価を言いましたけれども、今は超長期の国債が非常に高くなっています。直近でも物すごく高くなっている。これを誰が買っているかというと、生保、機関投資家が買っています。その人たちが買う体力がなくなっていくと、さらに国債についても、財務省はうまくコントロールしていると思いますけれども、目配りをしておかなきゃいけないと思います。

 財務省のもう一つの資料。一九九〇年代が終わるころ、二〇〇〇年代の初めでしたか、宮沢財務大臣にお願いをして、後年度試算というのを、やはりきっちりしたデータに基づいて議論をしようじゃないかということで私がお願いして、そのときに財務大臣は、そんなものは原口一博さんの勉強にはなるかもわからぬけれども足しにはならぬというので、財務省の人たちも少しそうかなと思ったときがあったように感じています。

 これが、税収の弾性値を一・一と置いたときの経済成長三・〇%ケースです。私はこっちで議論すべきだと思っていて、もう一つ、内閣府から出ている、これは皆さんのお手元の資料の十七、これが「国・地方の財政状況の見通し」というものであります。

 これのグッドパスをとってみても、さっき財務大臣がおっしゃったように、二〇二〇年で六・五兆円足りない。それをどうするかというと、二〇一八年のところでもう一回チェックして、二〇一七年については、アクションプランというか工程表をつくって、骨太の方針ですか、それに沿った工程表をつくるんだけれども、二〇一八年でもう一回チェックをして、足りなければもう一回そこでドライブをかけようというのが今の政府の基本的な財政再建についての考え方だと思いますけれども、私は、本当にそれだけでいいのかなと思うんです。

 予算委員会でお話をしました。パネルが多くて恐縮ですけれども、FMS、フォーリン・ミリタリー・セールス、こんなにふやしていますよ。防衛省の入札については九九・八とか九九・九で、中谷防衛大臣にそれでいいんですかと聞いたら、いや、特殊な弾薬だとか特殊なミサイルだからこういうことが起きるんだ。さもそれが当たり前のように言われてしまえば、それはいけないわけです。

 そこで財務大臣に伺います。私は、同じ麻生さんでも、麻生知事、麻生大臣の地元の福岡県知事、大変立派な知事でいらっしゃいました。そのときに、知事会の皆さんと、国、地方のプライマリーバランス論というのは簡単にとるのをやめようと。それはなぜかというと、国、地方でまぜてしまうと、中央政府の改革努力がうまく見えなくなるんです。もっと言うと、税を集める方がそれをやってしまうと、地方にその負担を転嫁することもある。だから、国は国で自分たちの改革努力をしっかりまとめていこうじゃないかということを私が総務相のときに知事会の皆さんと話をいたしました。

 私はそっちの方がいいような気がするんですけれども、財務大臣、総務大臣もなさいました、基本的な御認識を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは極めておもしろい、おもしろいというのはいかがなものかと思うが、一つの見方として私どもとしてはそう思っておるところはあるんです。簡単に言えば、国と地方がそれぞれ目標を設定して、それぞれ責任を持って取り組むという方が一つの考え方ではないかということを言っておられるんだと思いますが、こうした関係を踏まえれば、国と地方との財政を一体として考えるということも重要と考えておりますけれども、財政健全化目標につきましても、国と地方ベースで設定をしております。

 他方、足元のプライマリーバランスを見ると、国と地方では十五兆円の赤字が立っているんだと思いますが、これを国単体で見ますと大幅な赤字で、十七兆八千億である一方、国からの財源保障のもとにあるいわゆる地方単体では大幅な黒字で、二・八兆円の黒ということに立っておりますので、こうしたことなどを踏まえて財政健全化というものに取り組んでいく必要があるのではないかと言っておられるんだと思いますが、これは重要な認識だ、私どももそう思っております。

 こういうことを踏まえた上で、私どもも今後とも基礎的財政収支の黒字化というものを考えていかねばならぬと思っております。

原口委員 今までの財務大臣よりはるかに前に進んだ答弁をしていただいて、ありがとうございます。

 私は、一・一兆円の地方交付税をふやさせていただいたときも、麻生総務大臣のときにもふやしていただきました。それは、疲弊した地方に一回体力をつけてもらって、改革の間の時間を、余裕を少し持ってもらおうということであって、改革をとめたんじゃないんです。国の出先機関の原則廃止であるとか、あるいは公会計、電子化する中で標準化して、そして、本当に企業会計と同じような会計を地方も取り入れて積極的な財政削減をやってほしい。そのための呼び水として一・一兆円ふやさせていただきました。

 ところが、公会計を入れたところも、これはマンパワーが一定以上要りますから、地方自治体全体で見てもまだ半分ぐらいあるかな。総務省に聞くと、まだ一八%ぐらいと言います。

 こういう状況では本当の財政再建というのはできないと思いますし、もう一つ、今は前向きの御答弁をいただきましたので、私はこのグラフを余り使いたくないんですけれども、皆さんがお使いになっているので。国、地方の基礎的財政収支ということでいうと、一七年度までのアクションプランをつくるだけでいいんでしょうかね。今の国債の値動きを見ていると、もっと積極的な財政再建のメッセージを市場に与えておかないといけないんじゃないか、私はそのように考えているんですが、財務大臣の御答弁を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今おっしゃいましたように、社会保障など約八十ぐらいの歳出改革というものの項目について、いろいろ検討、時期というものも明確にしたいわゆる改革工程表というのを今つくらせていただいておるんですが、これに基づいて歳出改革に取り組むことにしておるんですけれども、私どもとしては、今これだけ世界じゅうが大きく動きますと、我々の想像していたこととは全然違ったことが起きかねぬ。

 二〇〇七年にリーマン・ブラザーズを予想した人はいませんし、いろいろな意味で、一九八〇年代のあの時代にソ連がなくなるということを予想した人もおらぬのと同じで、私どもは先のことは物すごく大きなことが起きるかもしれぬということを考えておかないと、これだけヨーロッパで中国で、石油の価格が、アメリカもとかいうようなことになってくると、日本だけ政権はそこそこ安定していて経済もそこそこということになっていて、これだけでもつかと言われれば、これは先生おっしゃるように、そういったことが何か起きたら、一つでもこけたら、ざあっと連鎖してということになる可能性というものも考えて、こういったものの再生を考えるときには、いろいろな不安要素、見えない要素というものをある程度おなかの中におさめておかないと、途端に予想せざる事態になりましたというような話で逃げるわけにもいきませんので、そういったものを常に考えておくという姿勢はすごく大事だと思います。

原口委員 前向きの御答弁をいただきました。

 今、原油価格のお話が出ましたので、資料八をごらんください。

 今までは、本当に原油価格は需給のギャップで決まっているんだろうか、もっとほかの、いわゆる金融的要因で決まっているんじゃないか。きのうですか、サウジの石油相が、減産には応じない、これだけ価格が低くなっているのに減産をまだためらっている。これは一体どこに理由があるんだろう。今はジャンク債とおっしゃいましたが、ハイイールド債と原油価格のスプレッドも広がっていますね。

 私が非常に気になっているのは、債務国のビヘービアが変わってきたなと思うんです。あなたが私の借金を棒引きしてくれるんだったら麻生総理には払います、だけれども、原口総務大臣は借金を全然びた一文まけないと言うから払いません、こういうような形で新興国のデフォルトが先進国にも広がってくるんじゃないか。私は、そのリスクについても今考えておかなきゃいけないと思っています。世界的な金融システムの危機とまで私は言う気はありませんけれども、ボルカー・ルールや、さまざまなものによってマネーの流れが全く変わってきている。

 だから、きょう私は持続可能性ということで議論をさせていただきましたが、ぜひ、社会保障と税の一体改革は生きているとおっしゃるのであれば、本当に協議の場をもう一回再開してほしいんです。野田毅先生のときは、私たちはかなりいろいろなことを、政権を終わった後も話をさせていただきました。今回、私たちの会長は古川さんですから、ぜひ副総理としても、そういう持続可能なための協議の場というものをつくっていただきたいと思います。

 さて、資料十五、これは予算委員会で、麻生財務大臣というか副総理に伺いますよと言っていて、時間がなかったものであります。これはちょうど半世紀前の資料です。英語なので、もう麻生総理はすぐお読みになれると思いますけれども、何て書いてあるか。

 これはあらかじめ言っておきますが、政権を責めたり、自民党さんを責めるために言っているんじゃないんです。歴史的な資料として、ここにこう書いてある。

 アイゼンハワー政権時代に、CIAを通して、沖縄政策についてプロアメリカンな人たちを当選させるためにお金を渡した。当時の与党、自民党さんにお金を渡した。自民党だけではなくて、当時の左派、当時の左派というのは名前は書いてありませんけれども、分断させるために、プロアメリカな人たちに、責任野党をつくるためにお金を渡したと。

 半世紀前のことですけれども、これは主権の侵害ですよね。七年間統治をされたといっても、我が国は主権国家です。その主権国家の政党に、ビジネスマンを装って、これは、アメリカのビジネスマンでもお金をもらうことはできません。

 これの本文、これは国会では何回も取り上げられてきました。だけれども、原文をもとに取り上げるというのは私が初めてで、おとといの予算委員会で、外務大臣はこの文書の存在について公式にお認めになりました。

 そこで麻生副総理に伺いたいのは、こういうことをどう思いますかじゃないんです。そうではなくて、今、金融のルールやさまざまなルールを変えることによって、その競争に勝った人たちが先を行く。あるいは、ことし、オバマ大統領が一般教書演説で、アメリカが世界の警察官ならずとも、世界が平和で安全であるためにはどうすればいいかという問題提起をされています。同じくロシアの大統領は、一国がたとえ民主主義というその価値であっても、それを力によって他国に及ぼしていくということについては、やはりそれは慎重でなきゃいけないということをステートメントで言っています。

 思い出すのはイラク戦争のときです。あのとき私は、パウエル演説の八ページ目から十四ページだったと思うんですけれども、イギリスの高校生の書いた論文によく似たものがコピーしてペーストしてあったんですよ。だから、これは本当かなと思っていました。結局、大量破壊兵器はなかったということになりました。

 私は、世界全体が大きく変わってきたと思います。世界の全体を一国が何か一つのルールでやっていく、あるいは他国にこういう形で影響を及ぼしていく、そういう政治が一つ区切りをつけてきているんじゃないか。

 テロとの闘いについても、二〇〇一年からことしまで十五年、戦争する側がもうかなり疲弊をしてきています。六千万人も難民が出ているときに、もう戦争なんかできやしない。今のような経済状況で、よく中国だと言いますけれども、中国も今どういう状況になっているか。もうここでは聞きませんけれども。

 新たな時代に持続可能な財政政策やあるいは政治をやっていくためには、新たにやはりビジョンが必要なんじゃないか。私はそう思うわけです。

 麻生副総理にこれからの時代について、財政はどうあるべきか、金融はどうあるべきか、少しこの文書を踏まえて御所見をいただければと思います。

麻生国務大臣 これは今いろいろな話は、アイゼンハワーの話までさかのぼっていろいろあれが出ていたんですけれども、最後のところというのは、先ほどちょっと触れましたけれども、かつて、世界のGDPの四〇%をアメリカ一国で握っていた時代と今とは全く違う。もうはっきりしていると思っております。相対的にその力が落ちたということはもうはっきりしていると思います。また、新興国と言われる国々が一時期うわっと伸びましたけれども、それもまた原油、資源等々が暴落した結果、その力もまたというので、非常に不安定な状況になっております。

 そういう中で、金というものが、金が金を生むというようなものになってきて、今までの、物を売って何とかというんじゃなくて、金が金を動かしてという全く新しいものが出てきているというのもこの最近の事情、コンピューターとかITとかいうものはさらにそれを加速させていくという時代になっていますので、私どもとしては、少なくともいろいろなことを考えないかぬ。

 借金がふえたら金利がかさむのは当たり前な話ですけれども、金利はきょう〇・〇〇五ですか、それぐらいまで下がっておりますので、そういった意味では、今おっしゃるように、我々としては、そういった新しい時代というのか不安定な時代に対して、どうやって自分の自己防衛としても、国家の国益を考えてどうあるべきか等々を大局観を持って臨んでいかないかぬという意識を持って、実際現場で何をやっていくかというようなことを改めて考えていかないかぬ。

 全然これまでと違った、目先の予算というのともまた違った意味でそういったものを考えておかねばならぬ、私もそう思います。

原口委員 ありがとうございました。これで終わります。

 きょうは持続可能というキーワードのもとに、麻生大臣それから日銀総裁とお話をさせていただきました。

 最後に十九の資料をごらんください。これは、ドル円と日経平均の推移です。よく我が政権と総理は比べられますけれども、麻生政権や森政権と比べてどうかというのもここで見られます。

 私は、もうそういう比較をしてお互いをなじり合うのはやめて、共通の基盤をつくって建設的な議論をし、この危機に対応することが何よりも大事だ、新たな時代をつくることが大事だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民主・維新・無所属クラブ、落合貴之でございます。時間の範囲内で質問をさせていただきます。

 まずは、本題に入る前に、軽減税率について整理をさせていただければと思います。

 まず、消費税には逆進性がある。したがって、低所得者に配慮をしなくてはならない。低所得者へ配慮する政策として、給付つき税額控除や総合合算制度という選択肢もありましたが、痛税感の緩和という点でも軽減税率が選ばれて、しかし財源の問題もあるので、まずは食品と新聞に適用するという流れ、まず第一段階の流れ、これで間違いはないでしょうか。

麻生国務大臣 第一段階と言われると何となく怪しげな言葉ですけれども、今の段階では間違いありません。

落合委員 ありがとうございます。

 その流れで、今の軽減税率の計画では一兆円の財源が必要であると。ほかにも低所得者でも生活に必要なものというのは、電気ですとかガスですとか水道ですとかNHKですとか。

 先ほどからも質問がありましたけれども、公共料金も軽減税率を適用するべきという声もありますが、これはきのうの主税局長の答弁でも、四千億ぐらいかかってしまうんだということで、しかも公共料金は、別途、価格が適正かの審査を受けているので今回は適用しませんでしたというふうな答弁がございましたが、これもこの流れは合っていますでしょうか。

麻生国務大臣 電気、ガス、水道というのは、御存じのように、地方自治体によって決められたいろいろな形で、公共料金という形で料金が、いわゆる公共的なサービスであるということが一つ。

 また、電気、ガス、水道という料金を軽減税率の対象といたしますと、今回のは社会保障と税の一体改革ということで、社会保障のための税源ということを考えておりますので、この税源、きのう佐藤の方から御答弁申し上げましたように、約四千億ぐらいの収入が減ということになりますとこれは極めて大きな額でありますので、私どもとしては、消費税収を大きく減少させるということになろうと思いますので、社会保障と税の一体改革という実現には支障を生じかねないというように基本的に考えております。

落合委員 ありがとうございます。

 では、大臣に改めて伺いたいのですが、新聞がなぜ適用されるのかということです。

 低所得者への配慮ということからこの軽減税率がスタートして、財源も限られています、社会保障もあります、ですから、軽減税率の適用範囲は絞られた。その中に、食品はわかりますが、どうして新聞が入っているのか。私個人の感覚としても、新聞がなくても生きていくことはできますが、食料は絶対に必要です。そういう中でなぜ新聞が選ばれたのか、改めてお聞かせください。

麻生国務大臣 新聞につきましては、これは日常生活に、通常我々が生きていく上での情報の媒体として、ほぼ全国あまねく均質的な情報を提供して、各幅広い層に日々読まれているということが一点。この結果、新聞の購読料に係りますいわゆる消費税負担というものは、当然のこととして逆進的になりますので、いろいろな事情を勘案させていただいて軽減税率というものの対象ということにさせていただいたところであります。

落合委員 ありがとうございます。

 広く一般的なあらゆる方々の情報の媒体になっている、情報というのは生活にも欠かせないので、新聞はその意味で軽減税率適用にかなっているんだというようなことであると思います。

 細かい点の質問ですが、参考人の方にお答えいただければと思いますが、今回いろいろ読ませていただいて、軽減税率が適用される新聞代とは、定期購読契約が締結された、週二回以上発行される新聞の代金であり、「一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞」とのことです。

 日刊のスポーツ新聞を定期購読する場合、これは軽減税率の適用になるんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生が今お話しになりましたように、今回軽減税率の対象となる新聞の定義はおっしゃっていただいたとおりでございます。したがいまして、定期購読される日刊のスポーツ紙ということであれば、それがこの定義に当てはまるということであれば対象になるということでございます。

落合委員 スポーツ新聞も対象になり得るということです。やはりこれも、最低限のものに軽減税率を適用するという基本を外れているのではないでしょうか。我々政治家はみんな選挙区がありますが、これは説明して、スポーツ新聞も軽減税率だということは納得しますかね。大臣がいらっしゃらないので、副大臣、いかがでしょうか。

坂井副大臣 今おっしゃられたように、一般社会的事実を掲載する新聞ということ、また、週二回以上、定期購読ということは、通常であれば、そこにお住まいの皆様方には、一定程度社会的事実、真実を伝えるものだということも含めて理解をいただいているものだと思っております。

 また、これも中身次第でございますので、全てということではなくて、定義に当てはまるものということでございますので、説明をさせていただいてまいりたいと思っております。

落合委員 この部分は極めて厳格に考えるべき問題だと私は思います。

 それで、いろいろデータなども財務省から出していただきまして、勉強しました。新聞について逆進性があるということをどうやって証明しているのですかという資料は、家計調査からデータをとりましたという答弁が先日主税局長からもありました。その資料があったら下さいということでいただいております。

 これは総務省の家計調査、平成二十五年、総世帯の消費支出額等に基づき作成された家計調査における新聞の消費支出額、これは定期購読以外も入っているんでしょうけれども、年間収入を五つの階級に分けて、それぞれの階級の新聞への支出がグラフになっています。一番所得の低い年収二百五十一万円までの世帯は、新聞への年間支出が二万四千六百三円、年収七百三十五万円以上、一番上の世帯が、新聞への支出が三万四千六百二円、新聞購入に払う消費税額を収入で割ると逆進性があるというグラフをいただいております。

 局長にぜひ伺いたいんですが、例えば、東京で一番読まれている読売新聞ですとか、有名な朝日新聞ですとか、年間購読料は大体幾らぐらいだと思いますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞によりましていろいろ定期購読料に幅があると思いますけれども、例えば月決めで定期購読料が四千円ということであれば、それの十二ということになるんだろうと思います。

 ただ、ここのデータは、世帯を全体でとったときのいわばならした数字であるということもございますので、数字の乖離はあるんだろうと思います。

落合委員 調べました。朝日新聞、月四千三十七円ですから年間四万八千四百四十四円、日経新聞はちょっと高くて、年間五万四千円。この家計調査は、一番年収の低い世帯の年間支出、新聞への支出が二万四千円です。一番所得が高い世帯でも三万四千円。ということは、例えば一番低い世帯では二軒に一軒しか新聞をとっていないんじゃないでしょうか。これは、広く一般に情報の媒体として新聞がライフラインだということにはこの数字ではならないのではないですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この家計調査によりますと、これはまず、全ての総世帯で、しかも全国でございます。東京あるいはほかの地域、それぞれ定期購読料が違っているというのは現実としてあるんだろうと思います。それから、ある種、これはそれぞれの収入階級別の平均値でございますので、とっておられるところ、とっておられないところ、恐らく差はあるんだろうと思いますけれども、そうしたような要素が一応反映されてこの数字になっているんだろうというふうに思います。

落合委員 でも、新聞協会の発表している数字は、発行部数と世帯数を単純に割り算しても、一には全く届いていません。これは、世帯でなくても、発行部数の中には企業なども入っていますので、一に届いていないことは確実であると思います。

 それから、財務省が出したこの総世帯の平均、これは、もう一つ勤労世帯の平均というのも家計調査に出ていまして、そちらの方が、働いている人たちの方がもっと新聞に支出をしていません。勤労世帯で見ると、年収が低い三百五十万円以下の方々、働いているのに世帯収入が三百五十万円以下の方々は、平均で年間一万三千円。ということは、平均すると、とっている人が一紙しかとっていなかったとしても、四人に一人しか新聞をとっていません。

 こういうグラフを出されて、新聞は逆進性があると。逆進性があるのは確かだと思うんですが、軽減税率を適用するほど、情報の媒体として、ライフラインとして新聞というのは役割を果たしているんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、データの関係でございますけれども、やはり、軽減税率の議論をいたしますときには、収入階級別の負担割合というものの差というものを何らかの形で把握しなければならないという制約がございます。その中で、食料品を含めまして、いわば統一的に把握できるのが家計調査ということでございます。

 それぞれ家計調査には、これまでの議論で、いろいろ制約はありますけれども、やはり一番信頼に足り得る部分、しかも家計の構造を示している部分という要素がございますので、それに依拠するのが一つの判断の材料であろうと思います。

 それから、世帯について、勤労者世帯だけを取り出すということも、これまたある部分だけを取り出している判断なので、そういうものと総世帯というのを見比べていく必要があると思いますけれども、我々としては、総世帯を見ながら逆進性というのを観察しているということでございます。

 いろいろな制約はございます。それぞれ、統計でございますので、そういう意味では個別の実態とは少しずれているところがあるという感じだと思いますけれども、全体として鳥瞰したときに、一つの傾向としてこれでつかみ得るのではないだろうかと思っております。

落合委員 全体として鳥瞰すれば、家計調査に載っているものはほとんど逆進性はあると思いますよ。その中で、限られた財源の中で有効なものに軽減税率を適用しなくてはならない。

 それから、勤労世帯よりも総世帯の方が重要だというお話ですが、働いている人たちは子育てをしている確率も高い、最低限の支出も多い。本当に困っている人たちを見るのであれば、勤労世帯なのに収入が低い方々なのではないですか。

 財務省が一生懸命統計をとられてグラフにされている、この努力は認めますが、もう少しグラフのとり方を改めるべきなのではないでしょうか。いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、逆進性をどのように把握するかということについて、統一的にどういう統計によるべきかという観点からすると、家計調査によるというのが一番望ましいであろうというふうに思います。その中で、その分析という過程で、総世帯をとった形でお見せをしているということでございます。

 もとより、先生御指摘になるようなさまざまな要素も当然加味しなければなりませんが、全体として見たときの判断として、このデータを重要なデータとして、一要素として考えて、しかも、新聞が持っております情報媒体としての機能等もあわせ考えて、このような結論にさせていただいているというところでございます。

落合委員 私は、勤労世帯で低所得者の方々が単純に割り算すると四軒に一軒しか新聞をとっていないんじゃないかというような状況の中で、逆進性を家計調査でとれば、ほとんど全部の項目で逆進性は出てくると思います。こういった中で、新聞に軽減税率を適用することの理由がしっかりしているというふうには私は説明はできないと思います。

 もしよろしければ、大臣、新聞に適用することについて、数字だけでいうと、勤労世帯の一番所得の低い方々は、三百五十万円以下は四分の一しか新聞をとっていません。それでも、広く国民にとってのライフラインである、そして低所得者対策として新聞の軽減税率が必要だと言えるんでしょうか。これは、我々地元の人たちとかかわる政治家にとっては結構重要な問題だと思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 先ほど佐藤の方から御説明いたしましたように、いろいろな新聞がありますので、四千円というけれども、伊豆の方へ行けば、伊豆新聞というのは千二百三十円だと思いますけれども、これは毎日出ていますからね。そういった新聞もありますので、地方に行ったりしていろいろ見ますと、これは一概にそうは言えないのではないか。四千円で計算すると、今言われた話になります。それが一点。

 もう一点は、やはり、勤労者の場合は会社で読める、また、勤労者の場合は若いからインターネットを使うということができますけれども、高齢者で自宅におられる方こそ、いわゆるこういった、広く浅くとかいろいろな表現があるんでしょうけれども、媒体として幅広い層に読まれているという条件を考えますと、高齢者の方々が一人でおられるというところにとりましては、新聞というのは極めて大きな要素を擁していると思います。

落合委員 広く一般、国民にとってのライフラインであるという説得力を持たせるには、家計調査の、この財務省のやり方のグラフでは非常に説得力がないと私は考えます。ぜひ、ここのところは重要な問題だと思いますので、この資料、もう少し説得力のあるものを考えていただければなと思います。

 では、同じ軽減税率の問題。今、消費者にとっての軽減税率というのを取り上げましたが、小規模事業者にとっても、もしかすると大変厳しい状況をつくってしまうのではないかという点、私はあると思います。

 食品について、何が軽減税率を適用されて、何がされないかという質問、これは何回もいろいろな方が質問しておりますが、改めて伺います。

 例えば、町のおそば屋さんで店内で食べると消費税一〇%、出前は消費税八%になるということでよろしいですね。

佐藤政府参考人 御指摘のとおりでございます。

落合委員 食べるもの自体が例えばカツ丼ならカツ丼で同じで、つくる人も同じである、それなのに複数税率を適用する、これは合理的なんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 食料品については八%ということでございますので、それを例えばコンビニとかスーパーマーケットでそのものを買う、てん丼とかを買うということであれば、それはテークアウトということで八ということになります。

 問題は、同じものを店で食べるというふうになりますと、今回それは外食に当たるということでございますが、法令上、外食の定義は、一定の飲食設備のあるところで飲食サービスを提供するという、その関連での飲食料品の譲渡ということでございますので、いわば外食サービスというものが伴うという点で位置づけが異なるのではないかと思います。

落合委員 サービスが伴うのは、私は、出前も配達するサービスが伴っていると思います。

 私は、毎日地元で個人商店で食事をしています。常連のお店は今、二百、三百あります。多くが家族経営で、ぎりぎりのところを切り盛りしているおそば屋さん、中華料理屋さん、出前もしているところはたくさんあります。コストがかかってしまう出前を地元の必要としているお客さんのために頑張って続けている、こういう中でさらに複数税率が求められて、会計帳簿が煩雑になる。しかも、コストのかかる出前の方が税率が安い。

 これは、政府が痛税感の緩和と言っているわけですから、お店で食べるのをやめて、出前がもしかしたらふえるかもしれない。これは、軽減税率を適用することで、地域を支えている家族経営の小さなおそば屋さん、中華料理屋さんに新たな負担を求める、コストを求める、事務負担を求めることになりませんか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、出前の位置づけでございます。これは、でき上がったものをいわば届けるということで、配達に当たるということで、サービスを伴うということではないという位置づけかと思います。今、ネットスーパーなどによる飲食料品の宅配のようなものがございます。それとの恐らくバランスで八%と考えるのが適当ではないだろうかと思います。

 一方、御指摘のように、出前ということになりますと、それなりのコストというものがかかるんだろうと思います。それをどのように考えるかということについては、新たな問題が生じるということは確かでございますけれども、例えば、事業者において、出前に要するコストあるいは消費者の行動をどのように考えて価格設定をするかというようなことも少し考えていただかないといけないのかもしれません。

 その辺も含めまして、制度の概要、考え方というのを丁寧に事業者の方に御説明していく必要があろうと思っております。

落合委員 地域を支えている、そういった家族経営の方々への配慮というのは、政治の世界にとっては大変重要なことだと思います。

 軽減税率の導入によって、レジの交換も小売ですとか飲食店では特に求められると思います。そのサポートは国はするんでしょうか。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率制度の導入、運用に当たっての中小企業、小規模事業者の準備が円滑に進むよう取り組んでいるところでございます。

 こうした事業者に対する支援策としましては、まず、本年度の予備費九百九十六億円を使用して、中小の小売事業者に対して複数税率に対応が可能なレジの導入を補助するとともに、電子的な受発注システムを使っている中小の小売事業者、卸売業者に対して複数税率に対応するために必要なシステム改修を補助することとしております。

 加えまして、平成二十七年度補正予算では百七十億円が計上されており、中小・小規模事業者に対して十分な周知を行うとともに、中小企業団体等と連携して、相談窓口の設置、講習会の開催等を通じて丁寧なサポートを行うことといたしております。

落合委員 済みません。具体的に、今の答弁に入っていたか、レジを取りかえたり交換したり修理することについては、全額補助が出るのか一部なのか、どちらでしょうか。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 申し漏れましたけれども、レジの交換に関しては補助制度になっておりまして、補助率が原則三分の二になってございます。ただし、三万円未満の安価なレジにつきましては、補助率を上げまして四分の三ということでございます。

落合委員 軽減税率の導入によって事務負担もふえるにもかかわらず、レジの交換の負担もしなければならない。これはぜひ、個人事業主、東京よりも地方の方がそれこそ多いですから、いろいろ考えなきゃいけない問題だと思います。

 前半の時間が参りましたが、麻生大臣は会社の経営者で御経験がありますし、御見識が世界のことについても大変あると思います。一方、私ごとですが、私は個人商店の息子でございます。個人商店の息子が国会議員になるということはほとんどありませんから、こういった方々の声、特に地元の人たちの同じ立場の人たちの声を私は国会に届けなければならないと考えております。

 個人商店の経営者たちが地元で消防団をやったり町内会の世話役をやったりして、それで地域社会が支えられています。そういう個人商店、零細企業が立ち行かなくなるような社会になってしまったら、地域社会も崩壊してしまいます。こういう人たちの立場に寄り添うことこそが、地域の社会、文化を守る、これこそ私は保守だと考えています。

 税制改正が決まった後に政令、省令、そして細かい部分がこれから決まっていくと思います。税制は毎年改正があります。低所得者対策に軽減税率が有効なところがあるということは私も十分理解をしていますが、今回の制度ではその目的が果たせないのではないかというふうに考えています。

 間違いをしっかり改めて改善していくことを求めまして、後半、午後の質問に入らせていただきたいと考えております。

 本日はありがとうございます。

宮下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福田達夫君。

福田(達)委員 自由民主党の福田でございます。

 麻生大臣に対しての質問は、決算委員会、二年前でございますが、に続きまして二回目でございます。

 この財務金融委員会、ここの質疑というのは、聞いていまして本当に勉強になると思っています。さまざまな委員会がある中で、きょうも午前中に、前原先生それから原口先生もおっしゃっていました。同じちゃんとした土台、共通の土台を持ってしっかり前に進んでいこうじゃないか、そういう議論をしていただいていますし、またきょう、共産党の両宮本先生もいらっしゃいますけれども、我々と立場は異にすることではあるけれども、しかし、真摯に、今の世の中に着目してその課題点を出していただける。本当に意味のある委員会だなというふうに感じておりまして、この委員会に所属していることを本当にうれしく思っております。

 ただ、ちょっとこれは与党内の議論でも気になるんですけれども、たまに議論が非常に瑣末な方に行ってしまって、政策論に終始してしまって、政治論がちょっと足りないのかな、そのバランスが少しないのかなという気がしなくもないこともあります。

 また、世界経済への懸念、増税への懸念、もしくは税制の変更への懸念など、懸念という言葉が随分出てきて、その議論が多いんだけれども、では、それを乗り越えてどうするべきか、そういう議論がちょっと足りないのかなというふうに感じることがないわけではないと思っております。

 正直、私自身も、今の経済の現状というものを見ていますと、マーケットのセンチメントに実体経済が引きずり込まれそうな、そういう危機感を持たないわけではありませんけれども、だからこそ、それゆえに、残された時間と、そして使い得るアセット、これをどういうふうに使って、どういう全体観を示してどういう一般方向に進むのか、そういう議論も、五対五とは言わないけれども、三対七ぐらいで、細かい政策論とあわせてすべきなんじゃないか、そういうふうに思っております。

 例えば、二〇二〇年度までにGDP六百兆円達成、昨日の玉木委員の質問にもございましたけれども、この政権の目標設定についてもいろいろな議論があると思っています。正直言いますと、この六百兆円という数字、私自身も、初めて聞いたときには、高過ぎやしないかというふうに思わないわけではありませんでした。

 しかし、よりこれを政治論として考えてみた場合、先ほどの質問で木内委員もおっしゃっていましたけれども、この数字の持つ本当の意味というのは、過去四半世紀、五百兆円ちょぼちょぼのGDPしか生み出されなかったこの国というものが、これがいわゆるデフレという状況であるわけでありますけれども、ここから脱却して違うステージに向かうんだ、そういう向かうべき方向性、これを指し示したということが一番の意味なんじゃないか、この国の一般方向を示したというのが一番の意味なんじゃないかというふうに思っております。

 私自身の卑近な例を一個出すのも恐縮なのでありますけれども、私が勤めておりました商社において、当時、経常が八百億円だったときに、社長が一千億を目指すというふうに言いました。正直、会社内がこれは騒然といたしました、どうやって出すんだと。特に商社というところは、十年に一遍、冬の時代が参ります。なかなか次の稼ぎ頭が見えないときに一千億という目標を出した。正直、社内でもって本当に大もめにもめて、しかし、何とかこの目標を達成しました。

 達成をした発表のその日に、周りの人に相談なく社長が、今度は千二百億を目指すと言いました。正直、我々からすると、いや、一千億だってこれはぎりぎりだ、無理だよという話をしていたんですが、当時、そのときの社長が言ったことは何か。一千億というもののステージに乗っかった、ここから先は違うものが見えるんだ。

 経営者であれ政治であれ、やはり大きな写真というものを見せる、大きなビジョンというものを見せる、あの辺が目標だ、あそこに向かっていくんだ、こういう一般方向を示して全体像を示すというのが政治の果たす一つの大きな役割だと思うんです。

 ここで、三十有余年の政治経歴を持っていらっしゃる麻生大臣、この中では竹本先生が二十年ということで、もう画然たる長さ、キャリアを持っていらっしゃいますけれども、いろいろな政治判断、政策論議を見ていらっしゃったと思います。

 政治の議論というものがあるべきというこの姿について、ぜひ我々に御教授を願いたいというのと、そして、その目から見るとこの六百兆円という目標がどういうふうに映っていらっしゃるのか、その御卓見をいただければと思います。

麻生国務大臣 目標として、岸内閣から池田内閣にかわったとき、所得倍増だったかな、あのときは何を言っているんだという感じでしたけれども、事実、所得倍増になりました。

 やはり目標というのは、随分その当時としてはえっというようなものでも、現実問題、所得倍増というのは、実際、池田内閣の間にほぼ達成されて、現実的になったのは佐藤内閣のときにもっとはっきりしましたけれども、あのときも寛容と忍耐とか、当時、安保騒動の真っ最中が終わって、六〇年の安保、昭和三十五年の後でしたから、世の中かなり喧騒としていたんですけれども、寛容と忍耐とか、何か坊さんみたいなことを言う政治家が出てきたんだなと学生時代にそう思った記憶があるんですけれども。

 少なくとも、所得倍増と言われて、御存じのように、一挙に東京オリンピックから何からずっとあのころなんですけれども、実際問題、それを達成できたということでありますので、一つの大きな夢とか目標とかいうのを設定するというのは、これは政治的にすごく大事なことなんだと思っております。

 やはり政治というのは、よくGDPが出ますけれども、GDPというのは、基本的には消費と民間の設備投資と、あとは大きなものでいえば政府支出、この三つでGDPというのはほぼでき上がりますので、そのGDPというものを稼ぎ出すほとんどは、それは民間ですから、その民間の活動がしやすくなるように、政治はそのために、規制がかかっているのはそれは規制を外すとか、邪魔しているものは取り除く、そういったような形で、より民間が仕事がしやすいように、働きやすいように、活動しやすいように状況を整えるというのが政治に課せられている大きなところなのであって、それが行き過ぎて混乱すれば規制する、そういったところのさじかげんというのが最も難しいところだと思っております。

 政府の姿勢としては、三本の矢のうち一番、二番というものは間違いなくやった。三番目は、今度は俺たちの番だということをことしの一月四日の、経済三団体の長はいずれも新年会でそう発言をしておられますので、そういった意味では我々は大いに期待しているところなんですけれども、いずれにしても、この六百兆という話も、我々としてみれば、そういった方向づけとしては一つの目安としては決して間違っていないと思っておりますので、六百兆という数字が本当に達成できるかより、その方向に向かっていくというのは非常に大きな意味を持っているんだ、私はそう理解しています。

福田(達)委員 ありがとうございます。まさにそういうふうに思います。

 でありますので、実はこの六百兆円という数字にチャレンジをするのではなくて、まずはそちらの方向に向かうんだというその総意をこの国会として我々は持って、そこに向けて、今持っている我々の力というものを全て出していく。そういう意味において、本当にここでの議論というのは、いろいろな角度からの勉強ができる、そういうところだと思っております。

 また、そういう目的を示したらば、そうすれば、ではどういう役割がそれぞれあるのか。今、麻生大臣、官民の話をされました。官の中にも、国があり地方がございます。民の中にも、いわゆる大企業もあれば中小企業もある。その中でそれぞれがどういう役割を負うべきなのかということが、多分、ここでもって我々が本当は示していかなければいけないことだと思っています。

 と申しますのは、この二十数年間、私は半分は民間企業におりましたけれども、また、東京といういわゆる大都市と、そして地方都市の間を行ったり来たりしておりました。そこでどうしても気になるのが、みんなが多分課題は持っている、何かブレークスルーしなければいけないということはわかっているんだけれども、立場でできませんという話が随分多うございました。

 この問題はわかっているんだけれども、我々の立場ではできないんです。政治の立場ではやはり一民間企業は云々だとか、霞が関の立場ではなかなか政治的なことはどうとか。もしくは、企業もそうです。例えば金融機関。金融機関としてこの地域に対してしっかり金を回すというその責務はわかっているんだけれども、しかし一方、株式会社なので。

 今現在やらなければいけないことはわかっているけれども、そしてその役割というものも、分担していけばそれぞれ負わなければいけないことがあるということは理解はしていても、その立場を乗り越えた役割としての一歩が出ない。それがこの二十年間だったんじゃないかなというふうに思っています。

 安倍政権というものが第二次安倍政権として帰ってきてから、実は安倍総理というのは、ここにチャレンジをしているんじゃないかなというふうに思っています。

 まずは第一、第二の矢でもっていわゆる期待感を醸成する。これをよくアベノミクスが張り子の虎だというふうにおっしゃる方がいますけれども、言い方はちょっと間違っていても、期待感を醸成するということでいえば、まあ、当たっていないわけじゃないのかなと思っています。

 ただ、その期待感が醸成した中において、次にやる方にしっかりそのバトンを受けとめていただかなければいけない、そういうふうに考えているんですが、ある意味、その期待感を醸成した次にやったのが、例えば賃金を上げるということをお願いする。これは、のりを越えるという批判がありました。政治が、自由主義社会の国で民間企業にこういうことを言うのはおかしいじゃないかという議論がありました。

 しかしこれが、まさに安倍政権がデフレというものに対して戦っているその一番の真骨頂かなと思っています。あえて安倍総理はわかった上でのりを越えたのじゃないか。そうやって政治の側がのりを越えることによって、経済界の方も、しかも、なかんずく大企業の方からも、しっかりとのりを越えてやるべきことをやってほしい、そういうメッセージだというふうに私自身は思っています。

 その中でもって、今、正直、経済状況がよくなくなってきたという中において、きのうも補正の議論が、ちょっと時期尚早だと思いますけれども、ありました。財政出動というものは昔に比べると批判されるべきものじゃないかもしれませんけれども、しかし、我々が抱えている財政再建という課題を考えても、やはりここは、バトンは大企業に中心になってしっかりと握ってもらうということが必要なんじゃないかというふうに思っています。

 先ほど、大臣の方からも、企業の方からも俺たちの番だという意見が出ているというお話がありましたが、ただやはり、例えば五百兆円というGDPしかつくれない国において、ちょっとベースは違いますが、三百兆円という内部留保があるということ、これは経済団体の長の方に聞いても、全体観としてはこれはおかしいよねという話になるんだけれども、ではどうしますかという話になると、急に一会社の社長のお立場になってしまって、いや、これはそれぞれの個々の経営体の合理的な判断ですからという話になってしまう。

 そこを乗り越えて、でも、この五百兆円のフローに対して三百兆円のストックがあるということはおかしいですよね、では、お互いどういう役割分担ができますかということを議論するのが今の我々の仕事であり、また、政治の側がやるべきことだと思うんですが、先ほど、大臣、経済界の方もしっかりやるというふうに言ってくれているとおっしゃっていましたけれども、では、今の段階でどういうことを御期待になっているかということを、ひとつ要因分解して御説明いただければと思います。

麻生国務大臣 やはり経済界として、一九八九年で株が三万八千九百十五円、これが戦後最高をつけたんですが、翌年からざあっと下がって、一時期七千円台ぐらいまでおっこって、今は一万五、六千というところだと思いますが、同時に、九二年から土地の値段も下がって、六大市街化地域で、どうでしょう、六分の一ぐらいになりましたかね、百万円が十五万円ぐらいになったと記憶しますので、そういった意味では、企業は動産も不動産も貧乏になったんですよ。はっきりしています、六分の一になっちゃったんだから。そういった意味では、株でも、七千円といえば、少なくとも五分の一以上におっこったわけです。

 ということは、動産、不動産いずれもなくなっていますので、企業としては債務超過。債務超過となれば企業は金が借りられませんから、どうするかといえば、間違いなく優先順位の一番は、賞与を払う、給与を払う、配当をふやすよりは、まずは借金を返す。これが企業にとっての優先順位の一番になった。

 上場企業の債務超過が消えたのは、九七年のあのころ終わって、二〇〇〇年の初めぐらいに大体一部上場企業で債務超過は消えたと思うんですが、そのときに、逆にみんなで借金を返したがために立ち行かなくなった業界が銀行です。金を借りてくれる人がいなくなれば銀行は成り立ちませんから、結果として、九七年、いわゆる金融危機というのが起きていったあの大きな背景は、みんなが借金を返したことです。みんなが正しいことをやったがために銀行は立ち行かなくなったというのがあのときの例だと思って、我々はずっと記憶用にとどめておかねばならぬ大事なところだと思います。

 結果として銀行もばたばた倒れて、もう都市銀行、昔の名前で出ていますなんというところはほとんどなくなっておりますので、そういった意味では、今は富士銀行が何と言うんですと言われて即座に答えられる人はおられませんから、そういった時代になっているようなことを考えるときに、何がなくなっていったのかといえば、その二十年間以上にわたって続いたデフレーションによる不況、正確には資産のデフレーションによる不況に対して、我々はデフレを敗戦後七十年間やったことがありませんので、デフレ対策というマクロ経済対策がなかった、これが失われた一番大きなものだと思っていますけれども、それを何かしない限りはというので、この第二次安倍内閣においては三本の矢というのを立てさせていただいて、金融の緩和であり、財政の機動的出動でありというので、三本目の矢が今やっと始まろうとする。

 しかし、野党の方も言っておられましたけれども、気分的にはなかなかその域には達していない。デフレの気持ちが、二十年間あれだけ貸し剥がしを食い、あれだけ貸し渋られたあの銀行のやつらに頭を下げて金なんか借りるかと思っていますから。正しいですよ。銀行屋も何人かいるけれども。みんなそうなんですよ、借りたかないんです。だから絶対自分の金でやろうとする。だからあれは自己資本がたまるんですよ。私は、基本的にはそれが一番大きな理由なんだと思っていますので。

 これは、一九三〇年代も同じような傾向が起きたというのはアメリカでもはっきり見えていますので、ルーズベルトからあれに変わっていくときの時代というのはまさにそういう時代ですから、我々、それは範としてはいかぬところだと思いますので。

 福田先生、この気分が直るまでまだしばらく時間がかかるんだと思いますので、その間、我々がどの程度後押しするか。こっちも借金を抱えていますから、政府の借金として大きなものを抱えていますので、それをやり過ぎたら意味がありませんし、実際問題、いろいろやってもまだ出てこないというのも、これ以上やると今度は行き過ぎになる可能性、そのところのさじかげんは今後とも細心の注意を払っていかねばならぬところだと思っております。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 まさに、マインドのシュリンクしているところが一番の問題だと思いますけれども、やはり、日本国内でも一番いい人材と一番いい金とのれんとを持っている大企業、これがしっかりと売れるものをつくっていただかないと、結局、そういう構造でもってまだ日本の産業構造はできておりますので、ぜひそこをお願いしたいことと、もう一つは、やはりまだまだその企業からの下請事業者への構造とつながりというものが、これが細っているというのも事実だと思っています。

 今、与党の方でも、下請事業者と親事業者の取引慣行について、信義則に反するような価格交渉とか取引慣行、これについてはしっかりと見ていこうというふうに思っていますけれども、やはり、中小企業者、小規模事業者に七割の方の家計というのを頼っていますので、ぜひここにしっかりと、仕事した分のお金というものはちゃんと親事業者の方から回ってくる、そういう構造もつくっていただきたいですし、自分たちの会社がしっかりと利益を上げているということだけじゃなくて、そこのチェーンの中でもって初めて日本の市場というものがしっかりとしていくということを、もう少し大企業には意識として持っていただきたいなというふうに思っております。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたものですから、軽減税率ということについての中小企業者、小規模事業者の影響についてちょっとお話をさせていただきます。済みません、質問が飛びます。

 いろいろな方が御指摘になっていますように、特に中小企業政策をやっている僕としては、今回の軽減税率は非常に危惧をするところではあります。特に、事務作業等についてさまざまなコストというものが出てくるという話になっておりますけれども、今回の中小企業と軽減税率の関係で一番の問題は、事務作業に対応ができないという問題ではなくて、そもそも、変化に対応する体力を中小企業者、小規模事業者が持っていない、また、その体力をつけるだけの稼ぎがつくれない体質である、これがこの問題の一番の本質であるというふうに思っています。

 きのうも、宮本先生の方から大阪の事業者の方の話がございました。正直、地元に帰っていれば同じような話が聞こえます。ただ、我々が一つ考えなければいけないのが、今現在、多少減速しているとはいっても、この国は世界第三位の経済大国であります。その経済大国の中小企業者、小規模事業者がそういう稼げる経営力をつけちゃいけないのかという話であります。

 現状の追認で、それに合わせてやっていくのではなくて、しっかりとお金が稼げる、稼ぐことができるというふうに、軽減税率対策というものをさらに超えた、二歩、三歩先のそういう中小企業政策をやるということが、実は、家計の七割を支えている中小企業、小規模事業者がもうける力をつけるというのが一番の社会保障なのではないかというふうに思っております。

 実際、今、都道府県の予算を見てみますと、軒並み税収が上がっています。基本的には企業収益が上がっているということだと思っていますし、帝国データバンクのデータなんかを見ましても、中小企業の内部留保が大分ふえています。

 そういう中において、かわいそうな中小企業論を超克して、しっかり稼げる中小企業政策に我々は進むべきだと思っておりますけれども、経産省、中小企業庁とともに力を合わせて、財務省としても、今回の軽減税率の導入ということを踏まえて意気込みというものを聞かせていただければと思いますので、よろしくお願いします。

大岡大臣政務官 福田議員にお答えを申し上げます。

 本来、中小企業政策は中小企業庁の所管でございますが、今回、軽減税率導入に伴うレジ周りの改修、見直しとあわせての中小企業の経営力向上という御質問でございますので、財務省としても非常に重要なテーマだと考えておりますので、私から御答弁を申し上げます。

 御案内のとおり、レジ周りの改修にあわせて、できれば中小企業の経営の見える化、透明化、あるいは、自分たちの会社がどの商品からどの程度利益が出ているのかなどの経営力向上につなげていけないかという課題を私ども財務省は持っておりまして、先日も事業者の視察に行ってまいりました。

 この、レジ周りを改修する、あるいはクラウド技術、さらにはIT技術等を生かして中小企業の経営力向上に生かしていくための取り組みを、今後も、よろず支援拠点、あるいは商工会議所、商工会、地域金融機関と私ども財務省がしっかりと連携をしまして、どういったことができるか、また、先生の御意見もいただきながらしっかりと検討してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

福田(達)委員 ありがとうございました。質問を終わります。

宮下委員長 次に、宗清皇一君。

宗清委員 自由民主党の宗清でございます。質問の機会をいただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 三世代同居に対応したリフォームにかかわる税額控除について質問させていただきます。

 当然、住宅を三世代同居にしようと思えば、キッチンやトイレ、浴室、玄関の増設、改修をすることが一般的でございまして、これを実現しようと思えば、おおむね二百五十万円、多額の費用がかかるということで、それでこういう税額控除の制度をつくられているのであろうというふうに考えますけれども、制度導入の目的と期待する効果を教えてください。

麻生国務大臣 これはいわゆる少子高齢化という問題が、日本の中長期的には最大の問題は多分これだと思っております。

 その意味で、三世代同居というものの家族が住まい方として理想だと考えておられる方々というのが二割程度おられる、今のおられる家族の中で。実際問題として、三世代で住んでおられる方はその中の数%しかいないという実態にとどまっているというのが一つです。

 それから、親と一緒に同居している、三世代、うちなんかは四世代一緒に住んでいましたからあれですけれども、そういった同居しておられる夫婦の方が別々に住んでおられる方よりいわゆる出生数が多い傾向にあるということなどを踏まえて、これは、複数世代の同居というものが可能な、そういう希望ができるように、いわゆる同居しやすいような住宅ストックというのを考えたらいかがですかと。

 東京より地方に帰るとみんな子供がよく生まれるという話を、東京に本社を移された方々が本社を地方に戻した、また、本社の方から東京に来た子が本社に行ったら、家族が近くにいるものだから、途端に二人目が生まれたとか三人目が生まれたという話をよく企業の方がされますので、そういった例をよく見るにつけ、私どもとしては、世代間の助け合いというようなことを考えますと、子育て支援というものに関しまして、育てやすいような環境づくりというものを、これは我々がやれる範囲はソフトの部分じゃありませんので、そういったような、家、いわゆる家屋というものに関することが、ちょっとほかにどうしなさい、こうしなさいと言えるような筋の話ではありませんので、我々としては、ハードとしてそういうことができるというのはいかがかというのが、多分、これが出てきた一番の大きな背景だと思っております。

宗清委員 麻生大臣、ありがとうございます。

 さまざまないいデータを見て、三世代同居が望ましいのであろうというふうに私も思うんですけれども、例えば、出生率や女性の就業率についての傾向を事務方の方から御答弁お願いします。

小野田政府参考人 お答えいたします。

 三世代同居と出生数との関係でございますが、国立社会保障・人口問題研究所が平成二十二年に実施いたしました第十四回出生動向基本調査によりますと、初婚同士の夫婦について夫または妻のいずれかの母親が同居している場合は、それ以外の場合、すなわち別居などと比べまして、完結出生児数、これは結婚持続期間十五年から十九年までの夫婦の平均出生児数でございますが、この完結出生児数が高い傾向にあるものと承知してございます。

 また、女性の有業率との関係でございますが、平成二十七年版労働経済白書によりますと、子育て世代の女性について、親との同居比率が高い地域ほど子育て世代の女性の有業率が高い傾向、すなわち、両者には正の相関があるものと承知しております。

宗清委員 今御答弁ございましたように、三世代の同居がやはりふえれば、女性の就業を促進したり、出生率にもいい影響があるのではないかなということが統計から読み取れるのではないかなと思うんですけれども、これは、安倍内閣が進める、女性の活躍を応援していくとか、先ほど大臣がおっしゃったように、少子高齢化に対応する、こういう政策に合致するものだというふうに考えます。

 それで、この制度を利用して工事をされる件数が約一万件程度であると聞いておりますし、金額にして十億円程度の減税ということになるわけですけれども、三世代同居の現状をちょっと申し上げますと、持ち家だけを見ても、二〇〇三年で同居しているのは三百八十八万世帯あったものが、十年後の二〇一三年には二百六十五万世帯、百二十三万世帯減少していることがわかりますし、急激に減っていますので、これは何とかしなければならないなというような思いも持ちますし、ぜひともこの制度が、三世代を希望する方々の大きな応援になればなというふうに私も大いに期待をしております。

 昨日もいろいろ議論ございましたけれども、どれぐらい三世代の家がふえたのか、もしくは減少をとめることができたか、政策導入の目的が達成できているのか、きちっとこれは省庁の方で検証していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 三世代同居を行っておられる世帯数、先ほど先生の方からお話しありましたとおり、今、減少を続けております。そういったマクロの数字は当省の方の統計等で今までもフォローしておりますし、引き続きフォローさせていただければと思っております。

 また、今回の政策の効果等につきましては、リフォームを実際実施されます団体等を通じましてアンケートを実施するなど、そういったいろいろな手法を使わせていただきまして、本税制を利用された方がどの程度実際同居されたか、また、本税制は同居を行うに当たってどの程度きっかけといいますか誘因になったか、そういったことについても調査をした上で検証していきたいというふうに思っております。

宗清委員 先ほど御答弁ございましたように、子育ての世代である三、四十代の方々の二割が三世代同居を理想の住まいだと考えているようでございますし、まず、女性の就労を応援するとか少子化対策、さまざまな効果があると思いますので、ぜひ政府としても力強く進めていただきたいと思います。

 例えば、一定の期間同居している世帯の所得税の軽減措置であったり、相続税の基礎控除額をふやすとか、これからもさまざまな施策を打っていくような御検討もお願いをしたいというふうに思いますが、まずは、法案が通りましたらこの制度を大々的に宣伝していただいて、よりたくさんの方々に利用していただいて、政策効果を高めていただきますようにお願いをします。

 次に、法人税についてお伺いします。

 アベノミクスの効果もありまして、我が国の経済はもはやデフレではないと言えるところまで回復しているというふうに私も感じておりますが、ここで一層の努力が必要であろうというふうに感じます。来年は消費税の増税も控えておりまして、景気に対して何らかの悪影響が出るのではないか、懸念のお声も聞こえてきますけれども、そうであるからこそ、先行して法人税の実効税率を引き下げていくということに大きな意味があるというふうに考えております。

 このたびの税制改正で、法人税の実効税率が二九・九七%、平成三十年には二九・七四%になるわけですけれども、この改正によって稼ぐ力のある企業の税負担を軽減することによって、収益力拡大に向けた投資や積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すことによって、経済の好循環、それを期待されているところであろうというふうに思いますが、では、この改正によって、具体的にどれだけの賃上げ、どれだけの投資に回るというふうに期待をしておられるのでしょうか。また、今後、企業の意識や行動を変革するための方策についても検討するというふうに書いてありますが、具体的にどのようなことを考えておられるのでしょうか。教えてください。

坂井副大臣 経済の好循環を定着させていくことが必要でございますが、そのためには、経済界がマインドを変えていただいて、賃金引き上げや投資拡大に積極的に取り組んでいただくことが重要であると考えておりますが、これは経済界の側でも、今回の法人実効税率二〇%台の実現といった事業環境の整備を受けて、賃金引き上げや投資拡大に積極的に取り組むということを表明していただいているところでございまして、まずはこの取り組みに期待をしたいと思っております。

 具体的な効果ということでございましたが、確たる見通しを政府の側で申し上げることは難しいわけでありますが、一つの例えば数字といたしましては、経済界は昨年十一月の官民対話で、政府の政策対応、こういうことをやるんだということを前提といたしまして、設備投資については、平成三十年度に八十兆円まで拡大、二十六年度が一応六十八・四兆円という数字でございますが、八十兆円まで拡大。また、この春の賃金の引き上げにつきましては、収益が拡大した企業に対し、昨年を上回る賃金引き上げを期待し、前向きな検討を呼びかける。ちなみに二十七年度が二・二〇%ということでございますので、このような数字が出てきております。

 また、具体的な取り組みということでございますが、まずは、これら賃金引き上げ、投資拡大等に向けた経済界の実際の取り組み状況を見きわめて、必要があれば、必要なときにしっかりとまた検討を行っていきたいと考えております。

宗清委員 今御答弁にあったようなことを国民は本当に望んでいると思いますし、デフレ脱却の力強い政策効果があるというふうに期待をしております。今後、動向をしっかり注視していただいて、政策の効果が最大限発揮できるようにお願いを申し上げます。

 最後に、質問の最後になりますが、東京一極集中についてちょっと私の私見を申し上げたいというふうに思うんですが、アベノミクスの恩恵が、大企業だけでなく中小零細の企業の皆様方にも、また、東京だけでなく地方都市にもその恩恵を実感していただくということでなければならないというふうに考えますが、その大きな課題の一つは、やはり東京一極集中の是正であろうというふうに考えております。

 しかし、現実は、東京一極集中はいまだに加速をしているのではないかなというふうに考えます。

 少しいろいろなデータをちょっと申し上げていきたいと思うんですが、税収、収納済み額で比較をいたしますと、平成二十六年度の全国の国税の収納済み額は五十七兆二千三百六十一億円となっており、そのうち東京国税局管内、これは一都三県ですけれども、収納済み額は約二十八兆二千七百九億円で、国全体の四九・四%を占めております。その中でも、東京都だけで二十三兆二千二百八十一億円ですから、東京都で国全体の四〇・六%を占めているということになります。

 一方で私の地元ですけれども、これは大阪国税局管内、近畿二府四県を統括していると思いますが、これは約八兆二千八百八十五億円、全体のわずか一四・五%しかございません。その中で大阪府はわずか五兆一千百五十二億円でございますので、全国の九%しかない状況なんです。

 ここ十年の収納済み額が一番少なかった平成二十一年度と二十六年度を比較しても、東京都の収納済み額というのは、平成二十一年度は十六兆四千五十一億円あったんですが、二十六年度には二十三兆二千二百八十一億円、実に六兆八千二百三十億円伸びておりまして、伸び率が一・四二倍になっています。

 これに対して大阪府はどうかというと、平成二十一年度は四兆一千三百十八億円、二十六年度で五兆一千百五十二億円でありまして、わずか一・二四倍しか伸びていないということになります。

 東京都はリーマン・ショック以前の収納済み額を実ははるかに超えているのに対しまして、大阪や愛知県ではリーマン・ショック以前の収納済み額にまだ届いていないというのが現状だろうというふうに思います。

 次に法人数を申し上げますと、平成二十一年度と二十六年度を比較しても、東京都は法人数で七千六百七十七社ふえておりますけれども、愛知県なんかは六百二十二社減っているということもございます。また、資本金一億円以上の大企業を見ましても、東京都は大阪府の五・六倍、愛知県の九・二倍ありまして、大法人が東京に集中しているということがわかるわけでございます。

 人口について申し上げますけれども、ここ数年、東京へ人口の転入超過というのがよく報道でありますが、平成二十一年度で十一万七千四百六十一人、これは東京圏へ転入超過でございまして、そのうち東京都内が五万六千二百二十名、二十三区は三万七千三百九十一人の超過でございます。二十六年度は、東京圏の転入超過というのは十万九千四百八人ですけれども、東京都内がそのうち七万三千二百八十人、二十三区内は六万三千九百七十六人の転入超過がありまして、この人口の傾向だけを見ましても、これは東京圏に、その中でもより東京都内に、その中でも特に二十三区内に人口が加速して集中しているということがわかります。

 今言いましたように、人も企業も、特に大企業は同じ傾向が見られておりまして、全国からより東京圏に、東京圏の中でも東京都内に、その中でも二十三区内により集中しているということがわかります。この数字を見る限り、地方都市も頑張っているんですけれども、どんなに頑張ってもやはり東京の求心力には勝てていないというのが現状だろうというふうに思います。

 私は大阪でございますので大阪のことを少し申し上げますけれども、大阪のような地方都市が東京から企業を誘致したくても、不利な条件もございまして、例えば、昨年の税制改正で地方拠点強化税制というのがつくられましたが、大阪市内もその周辺も、実情は東京二十三区とは全く力が違う、現状が異なるにもかかわらず、二十三区と同じ扱いになって、東京と同じく、ほかの都市から企業を誘致される側になっております。

 この税制は成立から三年後をめどに見直しが予定されておりますけれども、東京一極集中の是正ということであれば、名古屋や大阪、地方拠点強化税制の適用の、除外にぜひしていただきますように、多くの先生方の御賛同をお願いする次第でございます。

 また、もう一つ地方の都市で困っている税制が、事業所税というものがございます。

 この税金は地方税なんですけれども、東京二十三区や政令指定都市など、該当する地方公共団体において一定規模以上の事業所を営む個人や法人に課せられている税金なんですけれども、この法律がつくられた一九七〇年代と現在では、政令指定都市や中核市の実情というのは合併などによって著しく変わっているというふうに思いますし、この税制が地方都市にとっては企業誘致の足かせになっているという実感を持っておりますので、これもそろそろ見直す時期に来ているのではないかなというふうに感じております。

 人口も企業も東京に集中し過ぎている、この現状を是正することが国家の最重要課題であるというふうに思いますし、これを現在放置しておけば取り返しのつかないようなことになるというふうに危機感を持っています。

 奇抜なことを申し上げるようなんですけれども、地方拠点強化税制のように、東京から企業を移転させる、そういう方法を考えるのも大事ですけれども、今後は、新たに東京に大法人の本社や本店を移転させる場合は、昔の工場等制限法という法律がございました、これは流入を規制する法律なんですけれども、このような制度も考えまして、ぜひ、東京に大法人が入りにくくするような法律、もしくは、国税を加算するとか賦課金をいただくような、そういうことも同時に考えなければこの東京一極集中はとまらないのではないかなというように思います。

 新たな法人に対するお願いでございましたら、現在東京で活動している企業にも御迷惑もかけませんし、地方の大企業の経営者の方々に、地元でぜひとも頑張ってほしいという政府の大きなメッセージになって、経営者のマインドを変える一定の効果があるのではないかなというふうに考えておりますけれども、御見解をお伺いいたしたいと思います。

坂井副大臣 税収、それからまた法人数、また人口など、具体的な数字を挙げていただきまして東京一極集中の状況を御説明いただいた上、また、税制なども具体的に挙げて今御質問をいただいたところでございます。

 各地域における計画的、戦略的な取り組みとあわせて、国としても、この東京一極集中是正のためには、効果的な支援を行っていくことが重要だと考えております。

 委員のお考えは、例えば先ほど挙げていただいた地方拠点強化税制のように、インセンティブを与えるという形でこれを進めていくというだけではなくて、地方から東京への企業移転について一定のペナルティーを与えてはどうかという御提案もあったかと思います。

 企業それぞれの事情がある中で、東京に進出しようとする企業に一律にペナルティーを与えるような制度を設ける合理性があるか、さらには関係者の理解が得られるかといった点につきましては、まだまだ慎重な検討が必要になるのではないかとは考えておりますが、いずれにせよ、地方創生のためにどのような方策が有効であるのか、引き続き、関係省庁等において議論を深めていくべきものと考えております。

宗清委員 時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、きょうは、消費税の軽減税率をテーマに麻生大臣に質問をさせていただきます。

 これまで当委員会や予算委員会での議論を通じまして、大体論点は四つぐらいに絞られてきたのではないかなと思います。

 一つは、やはり低所得者対策としての位置づけ、意味、それから二番目に財源、それから三番目に事業者の負担、混乱、そして四番目に線引きの問題、外食なのかテークアウトなのかという線引きをめぐる混乱といいましょうか、この四つが大きくテーマとして上がってきたと思います。

 きょうは時間がありませんので、そのうち三つお聞きできればいいかな、このように思っているんですが、順番が不同になりますけれども、事業者の準備ということについて、まず麻生大臣にお伺いしたいと思います。

 予算委員会、またこの委員会におきましても、野党から、来年四月一日の導入までに準備が整わないのではないか、また、その準備の負担によって廃業を迫られてくるところもあるのではないかというような質問がなされました。

 これに関連して、麻生大臣が混乱を容認した答弁をしたなどという報道がございましたが、私はその場におりましたけれども、大臣の答弁をお聞きしておりまして、これは全くそのような趣旨ではなかったと私は思います。新しいことを始めるわけですので、経験のないことを始めるわけですので、いろいろな試行錯誤がある、また、乗り越えなくてはならない壁がある、事業者の方にも新しいことをやっていただかなくてはならない。これは当然でございます。

 しかしながら、諸外国では古くから導入されている制度で、しっかりと運用、執行できることは証明済みである、このように言えると思います。

 重要なことは、来年四月一日に混乱なく軽減税率制度を導入できるよう政府として万全の準備を進める、しっかりと事業者を支援していくということだと思います。この点については、与党の税制改正大綱にも、そして今回の法律案にも書かさせていただいたところでございます。

 そこで改めて、来年四月に混乱なく軽減税率制度を導入する、その財務大臣の決意を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 来年四月の軽減税率制度の導入に当たりましては、これは、消費者もそうですが、仕事をしておられる方々、先ほど数字が出ていました三百万社、五百万社、合計八百万社といろいろな表現が出ていますけれども、この方々への仕事をやっていく上での配慮というのは、これは物すごく重要なことだということは言うまでもありません。

 こうした観点から、いわゆる適格請求書保存方式、通称インボイスですけれども、このインボイス方式制度につきましては、その導入をするに当たりましては、軽減税率というものの導入から四年後、いわゆる平成三十三年の四月からにさせていただくというので、まず四年間の時間的猶予。

 それから、それまでの間は複数税率というものになりますので、そういったものに対しましては、いわゆる区分経理が困難と思われる中小零細業者の方々もおられるものだと想定をいたして、税額計算の特例というものを設けることにいたしております。売上額の割合で軽減税率の仕入れ割合を計算するという例外規定であります。

 また、今御審議をいただいております税制改正法案にも既に明記をしておりますように、軽減税率制度の導入に当たりましては、これはどうなんだとかあれはとかいうような話で混乱が生じないように準備を進めるために、政府にとって必要な体制を整備するのと同時に、事業者の準備状況というものをよく検討しつつ、軽減税率制度のいわゆる円滑な導入また運用に向けて必要な対応を行うものとしておりまして、その一環として、制度の周知徹底、また相談への対応というものを、誰に相談していいか知らない人が多いので、相談への対応というものを丁寧に行う。

 同時に、中小零細のいわゆる小売事業者が複数税率に対応するために必要なレジの導入とか、また、POSとは言いませんけれども、システムの改善などに対する資金的支援とか、予備費や補正予算でそういったものを手当てをしておりますので、これは中小企業庁等が今一生懸命やっているところなんですけれども、政府としては、こういったものの混乱を招くということに関しましては、時間と手間とをかけてきちっと対応していく、そういった体制を整えようといたしております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。時間と手間をかけて丁寧に対応していくということで、どうかよろしくお願いをいたします。

 それでは二番目ですけれども、委員会でも、外食かテークアウトかということでいろいろな議論があるところでございます。この線引きが曖昧だから混乱が生じるのではないか、こういう点でございます。

 しかしながら、今般の軽減税率制度の導入に当たっては、酒類、外食を除く飲食料品という範疇にいたしまして飲食料品を幅広く対象にしているという意味で、全体として見れば、代替品や類似の品との間でゆがみを生じさせない、わかりやすい線引きになっていると思います。外食まで含めればテークアウトか外食かという混乱はなくなるんですが、しかし、ある意味では外食というのは非常に財源的にも大きな部分になりますし、かつ、外食は逆進性がそれほどない、ほかの生鮮食料品や加工品に比べて逆進性が小さいという点もあり、与党の議論の中で今回の判断としたものでございます。

 その上で、軽減税率の対象外となる外食について今回は明確に定義した、このように思っております。ここでの議論のやりとり、予算委員会でのやりとりを聞いていても、かなり明確に答弁がきちっとできていると私は思うところでございます。

 あとはこの定義を個別のケースに具体的に当てはめていくことになりますけれども、具体的な当てはめについて事業者や消費者にわかりやすくしていくということが重要だろう、このように思います。

 今回の適用対象の範囲について政府はどのように認識しているかということと、事業者や消費者にとってわかりやすく説明していくためにどのような取り組みを今後行っていくのかということについてお伺いします。

麻生国務大臣 消費者に対する個別具体の飲食料品の提供が例えば法令上の外食に当たるか否かのいわゆる当てはめにつきましては、これは、サービスの態様などの状況がいわゆる千差万別であろうと思いますので、実際の個別具体の状況を踏まえてその都度個別に判断していくべきものなんだと考えておりますが、いずれにいたしましても、消費者及び事業者にとりまして、軽減税率の適用範囲をわかりやすいようなものにしておくということが極めて重要と考えております。

 今後、その具体的な当てはめにつきましては、通達とかQアンドAとかいろいろなものを通じまして、できるだけわかりやすく私どもとしてはお示しをしていくという必要があろうと思っております。

 事業者からの相談等への対応を丁寧かつ速やかに行えますように、私どもとして、一生懸命これは努めてまいらねばならぬところだと考えております。

斉藤(鉄)委員 この点も制度の信頼性という意味で非常に大切ですので、よろしくお願いいたします。

 三番目に、この委員会でもよくテーマとして取り上げられます。いわゆる低所得者対策になっているのかという点でございます。

 お金持ちにより有利なのではないかという議論がなされます。それで、軽減税率はお金持ちにより有利という考え方を突き詰めていきますと、軽減税率がなくなれば一番得をするのは金持ちだということになります。でも、一般的に、消費税というのは逆進性の高い、低所得者により負担感の強い税制ということです。逆進性が高いと言われておりますので、消費税がなくなって一番得をするのは低所得者のはずであります。違う結論が出てくると思うんです。

 やはり、消費税は低所得者により負担感の強い、逆進性の高い税制であるというのが常識ですから、金持ちがより優遇されるという論はどこかがおかしい。どこがおかしいか考えてみたんですが、それはやはり、軽減される絶対額で見ているというところだと思います。常識論は、逆進性が高いと言われる常識は、それをやはり収入に対しての割合で見ている。その絶対額で見るか割合で見るかというところの差だと思うんです。

 きょうは、一枚、紙を用意させていただきました。「軽減税率導入後の消費税負担率と差」ということでございます。これに似た図は随分この委員会でも出されましたのでおなじみになっているかと思いますが、これまでのとはちょっと違うところがございます。

 赤い線は、消費税が一〇%のときの収入に占める消費税負担額の割合でございます。横軸が収入ですので、収入が高くなるほど負担率は下がっている。この傾きがまさに逆進性と言われるところでございます。

 その赤の下にあります青の線が、今回の軽減税率制度を導入したときの収入に対する消費税負担額の割合で、当然のことながら、下がるわけでございます。

 問題はその下がり方、どれだけ収入の中の割合として負担が軽減されるか。この赤と青の差を拡大したのが緑の太い線でございまして、これは右側の数字の軸で見ていただければと思うわけですけれども、このように、ある意味では当然ですが、低所得者ほど負担が軽減される割合が高い。最も低所得者の方で〇・五二%、お金持ちになるに従ってその割合は下がってきて、千五百万円以上の収入の方で〇・〇九%。この〇・五二と〇・〇九、ここを比べるのにどれだけ意味があるかわかりませんけれども、五、六倍の差が出てきている。

 このように、まさにこの緑の太い線の右肩下がりの点が、今回の軽減税率制度が低所得者対策になっているということの理論的根拠で、金持ち優遇というのは間違っていると私は思うわけでございますけれども、この点につきましての財務大臣の御認識をいただければと思います。

麻生国務大臣 消費税の負担につきましては、これは所得の水準によって感じ方が変わるということなんだと思っております。いわゆる消費税の逆進性と言われるのは、もう斉藤先生御指摘のとおりなんで、消費税負担の絶対額ではなくて、収入に占めます消費税負担の割合によってはかるべきものだと、私どももそう思っております。

 こうした観点から、いわゆる家計調査に基づきまして、酒類、外食を除く飲食料品の消費支出全体に占めます割合を見ますと、たびたび御答弁申し上げておりますように、千五百万円以上の方々ですと約一五%程度にとどまります一方、二百万円未満の世帯では三〇%程度と極めて高くなってくるということでありまして、こういったことを考えた結果、外食を除く飲食料品に係る消費税負担の収入に対する割合も、家計調査に基づけば、低所得者の方が高くなってくるということだと思っております。

 したがいまして、これは、今般の軽減税率制度の導入によって低所得者世帯の方が税負担の軽減割合が大きくなるということを意味しておりまして、消費税の逆進性の緩和につながるということを示しているものだと思って、この表もそれを裏づけておるものだと思っております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 四番目のテーマでございます財源につきましては、これはもう質問いたしませんけれども、しっかりとこの〇・六兆円という財源を、与党としても、そして政府としても、これを明確な形にして、社会保障を削ることはしないということはもう既に何度も御答弁なさっているところでございます。

 私ども公明党の税調で韓国に、もう一年前になりますが、軽減税率制度の調査に行ってまいりました。韓国は消費税一〇%。食料品、これが全部じゃないんですね、食料品半分ぐらいで税率は〇%という制度でした。行って見ましたけれども、混乱なく運営をされておりました。

 なぜ混乱なく運営されているのかという点ですが、一つはITが普及していること。どんな大きなスーパーも、そして小さなお店もIT化が進んで、レジで全てその事務計算ができるようになっているということと、それから、国民が基礎的な食料品については軽減税率は当然だ、こういうふうに考えている点にあるのかなと思った次第です。

 一日一万人ぐらい入るという大きなスーパーのレジの方に聞きました。食料品が変なところで区切ってあるものですから、例えば、包装したキムチは標準税率、ばら売りのキムチは軽減税率というようなことになっていて、なぜこちらは一〇%でこれは〇%なんだというようなことを聞く人がいるか、このように聞きましたら、そういう人はほとんどいない、制度としてきちんと説明がされて、それを国民は受け入れているということでした。

 やはり、政府がきちっとその線引きについて明確に説明するということがいかに大切かなというのを感じた次第です。

 小さなスーパーに行ったときに、そこの税理士さんにお話を伺いました。事務手続が大変なので反対だと言う人が日本ではいるんですけれども、どうですか。本当に小さなお店でした。しかし、その税理士さんはこのように答えました。確かに手間はちょっとふえる。しかし、一ウォンでも安いものを求めてここに買い物に来る庶民のために私たちの仕事はあるんだ。このような税理士さんの言葉を聞いて大変感動したということもぜひこの場で伝えたくて、今この話をさせていただきました。

 この軽減税率制度の円滑な運用に我々も全力を挙げていきますけれども、ぜひ政府におかれましても努力されることを望みまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久です。

 まず、今の斉藤議員の意見には私もいろいろ言いたいことがあるんですけれども、軽減についてはきょうはじっくりやることにして、その前に、きょうは総務省の方に来ていただいていますので、地方税が関係している部分について、まず最初にちょっと確認を含めて御質問させていただきたいと思います。

 まず、地方法人税の偏在是正措置につきまして今回の税制改正案に入っているわけなんですけれども、私たちは、地方団体同士の税収を調整することで今回のような形で小手先の偏在是正を行うのではなくて、やはりこれは、地方税源の総体として安定財源の確保とそして税源の抜本是正、そういうところに踏み込んだ改革を行う必要があるというふうに考えております。

 特に今回問題だと考えるのが、今回の措置によって大幅な減収となって、しかも、減収がある自治体にはちゃんと経過措置等で対応します、起債もできるようにしますというふうに総務省は言っているんですけれども、そういう対応措置をとっても税収減の影響を免れることができない、そういう団体があるんですね。それはどういうところかというと、交付税の不交付団体です。私の地元の愛知県ではそういうところが七つもあるんですね。

 さきの本会議のときに、同僚議員の近藤議員が代表質問でこの問題についてただしたところ、高市総務大臣は、こういう不交付団体の問題についても配慮措置をしっかり講ずるというふうに答弁されたんですけれども、これは具体的にどういう配慮措置をとることを考えているのか、それを教えていただけますか。

時澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法人課税の偏在是正措置によりまして、法人住民税法人税割の税収の割合が非常に大きい団体におきましては減収が生じるということもございますので、これに対する配慮措置といたしまして、法人事業税交付金につきまして変動が急激に生じないように経過措置を講ずる。もう一つが、この税制改正に伴う減収額を対象に起債、地方債を起こすことができるよう、地方財政法上、特例規定を設けることとしております。

 これらの措置につきましては、交付団体、不交付団体いずれも対象となるものでございますので、財政運営に支障のないように配慮を行っているものでございます。

古川(元)委員 では、今の措置で、新たに何かをやるということは考えていないということですか。

時澤政府参考人 交付団体の減収が大きいところにつきましては地方交付税で補填がされるところでございますが、不交付団体につきましては、財源超過がございますので、その範囲において工夫をしていただくことになるわけでございます。

 先ほども申し上げましたように、今回の配慮措置といたしましては、法人事業税交付金の経過措置、それから地方債という二つでございますので、私どもといたしましては、この偏在是正の意義あるいは配慮措置の内容につきまして、個別地方団体も含めてしっかりと御理解いただけるよう努めてまいりたいと考えるところでございます。

古川(元)委員 要は、これ以上やらないということですね、その答弁は。

 でも、これだと、交付税の不交付団体というのは、これまで企業立地などで一生懸命頑張ってきたところなんですね。頑張って努力して、交付税のお世話にならなくても自分たちでやっていける、不交付団体になっている、そういうところがこういう形で影響を受けて、それによって住民サービスなどに悪影響が及ぶということになったら、何か、頑張るよりも、とにかく国に助けてもらうという方がいいんじゃないか。財務大臣は首を振っていますけれども。

 今回、法人税の税率を下げるというのは、稼ぐところをもっと応援するという話ですよね。であれば、やはり、地方自治体でも頑張って自分のところで自立できるように頑張っているところを、そこの何か足を引っ張るような形になって、今の審議官が言われるようなことで、今の対応で影響があるんだったら地方債を出してやってくださいと。それは、頑張っている地方自治体に対して冷たいんじゃないですか、どうですか。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 地域振興あるいは企業誘致等、当該地域の税源涵養につながる地域活性化に御努力していらっしゃる地方公共団体は数多くあると認識をいたしております。

 一方、地方公共団体が安定的な財政運営を行うためには、税源の偏在性が少なく、税収の安定的な地方財政の構築が必要でございます。その必要性は、今までも政府税制調査会等の答申におきまして何度も指摘されたところでございますし、税制抜本改革法におきましても、「地方法人課税の在り方を見直すことにより税源の偏在性を是正する方策を講ずる」ということが規定されておりまして、地方税財源を充実していく中で税源の偏在性をいかに是正していくか、これは近年の地方税制における極めて大きな課題であったわけでございます。

 御指摘の頑張ったところでございますけれども、今回の事業税交付金につきましても、市町村の従業者数を基準に交付をするということといたしておりまして、これは、各市町村の産業の集積度合い、すなわち税源の涵養努力が反映されるということも含めて制度設計を行っているものでございます。

古川(元)委員 さっきから申し上げているように、要するに、今やっている以上やらないということでしょう。

 もちろん、私は是正は必要だと思いますよ。でもそれは、やはり税のあり方全体、税源総体の国と地方との見直しとかそういう中で考えるべきものであって、こういう形だと、本当に頑張っている自治体とか、頑張ろうというそういうところが気持ちをくじかれてしまうんじゃないか、そのことを強く危惧いたしますし、やはりそこは、もうこれで終わりということじゃなくて、大臣もちゃんとそういうところに配慮措置をしっかり講ずるというふうに言われたんですから、しっかり考えてもらいたいということをまずお願いしたいと思います。

 次に、自動車関係諸税についてちょっとお伺いしたいと思います。

 ちょっと大臣に、済みません、通告していませんけれども、一般的な大臣の御認識をお伺いしたいんです。

 私たちの生活にとって自動車というものはどういう存在なのか、そしてまた、日本の経済にとって自動車産業というのはどういう占める地位があるというふうに考えているか、ちょっと大臣の御認識をお聞かせいただけますか。

麻生国務大臣 これは一般論ですけれども、やはり、名古屋より、私らのおります筑豊とか、地方にとりましては自動車は、公共交通機関というのが人口密度が低いせいもあって発達していない分だけ、間違いなく、軽自動車等々を含め小型自動車は、これは生活の足に近いものだと思っておりますのが一点。

 それから、自動車というのは、愛知県に次いで福岡県というのが生産台数が多い県なんですけれども、当然のこととして、そこで抱えております従業員、雇用しておられる従業員の数というものは、極めて裾野の広い仕事なものですから、そういった意味では、地方の工場のあるところ等々、また部品を納入しておられるところ、加えて車の修理等々を考えますと、その与える影響というのは極めて幅の広い産業というのが私どもの基本的な理解です。

古川(元)委員 私も全く同じ認識をいたしております。

 本当に、今や車は我々の生活にとって切っても切り離せない。特に、地方、田舎の方に行けば行くほど、もうこれがなければ本当に動けない、孤立してしまう。そういった意味では、もうまさにこれは生活必需品ですね。そういう意味からいったら、軽減税率にするんだったら、車だって軽減税率にしないと、地方の人はこれがないと生きていけないというものじゃないかと思いますけれども、それくらいのものだと思います。

 また、自動車産業というのは、本当に、大臣がおっしゃったように、やはり裾野が非常に広いんですね。細かい部品から含め、今のお話のサービスとか修理だとかそういうものまで考えますと、雇用を誘発する効果とか物すごくやはり大きいんですよ。

 だから、私の地元の名古屋を初めとする愛知県とかの東海地域が今全国の中でもいいと言われるのは、やはりこの自動車産業が中心だからなんですね。逆に言えば、自動車産業が悪くなると、地域経済全体が冷え込んでしまう。特にそれが象徴的に出ているのが私の地元でありますけれども、これは、日本全体でいってもやはり自動車産業の占める地位というのは極めて大きいわけですね。

 それこそ我々がTPPの今回の大筋合意で最大の問題だと思っているのは、一番日本にとっては攻めるべき、攻めることをしなきゃいけない、攻められる、そして、この経済効果は大きいですよ、アメリカの自動車やあるいはトラックに対する関税が十五年先とか二十五年先まで引き下がらないとかなくならないというこの辺が一番問題だと私なんかは思っているんですね。そういった意味でも、非常に日本経済に与える影響というのは大きいと思うんですね。そして、生活に与える影響も極めて重大。

 そういう中で、もう大臣も御存じのように、自動車にかかわる税金というのはたくさんあるんです。大臣、これはもともと何でこんなに自動車に税金がかかっているかといったら、昔は自動車はぜいたく品だったんですよ。消費税が入るずっと前の、個別に税金をぜいたく品にかけていくという時代に、自動車を持っているといったら、まあ大臣のお宅は多分そういう最初から持っていたと思いますけれども、やはり私なんかは、昭和四十年生まれですけれども、うちに中古の自動車を幼稚園か小学校のころおやじが買ってきたというのは、本当に生活が一変するというか、やはりそういう商品だったんですね。

 だから、そういうぜいたく品だからということもあって負担をしてもらいましょうということでいろいろな税金がかかって、そして、今の複雑でかつ重い税負担がある。自動車を買うと何万円も、買うときにもかかるし、持っているだけでも税金がかかるという状況になっているんだと思います。

 この複雑でかつ非常に重い負担の今の自動車の関係の諸税について、大臣はどうお思いになっていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 簡単に、言い方もいろいろあるんだと思いますけれども、多くの税金というのが自動車に課せられているというのは間違いありませんよ。国税に限りませんから。地方税を含めましていろいろありますので。

 これはやはり先生言われるように、ぜいたく品だから、取りやすいところから取ったんですよ。もともとの生い立ちはそうだと思いますね。僕はその最初のころをよく知りませんけれども、まだこの稼業に入っていませんので、そのころどうやって順番を決められたんだか知りませんけれども、重量税から何から、もうありとあらゆる理屈をくっつけて、ガソリン税を含めていろいろやられたので、それぞれの根拠やら創設の経緯があって成り立っているんだということは私どももわかるところなんですが。

 また、同時に、自動車関係の税負担について、これは、車体課税に限らず、燃料関係の課税もありますし、また、消費税にあわせた等々も見れば数多くあるんですけれども。

 ただ、アメリカは別ですよ、欧州の諸国に比較した場合においては、車体課税とか燃料課税とか全部足してトータルで見ますと、合計で大体十五万円少々、ヨーロッパへいきますと二十万円ぐらい行きますので。

 そういった意味では、トータルとしては高いという気はありませんけれども、何となく、それにしても全体として、自動車を買うと、えっ、税金がほかにこれだけあるのかというのは、昔、親をだましていろいろ金を稼ぎ出してちょっと車を中古品で買ったときに、払う税金が足りなくてさらに数カ月また買えなかったという記憶が今でもあります。

 そういったのを考えると、税金は高いなというのが今でもあります。あれはほとんど変わっていないそうですから、そういった意味では高いだろうなという感じは、感じとしてはわかりますけれども、ただ、欧州諸国に比べて日本だけが極端に高いというわけではないということも私なりに理解をしているつもりではあります。

    〔委員長退席、松本(洋)委員長代理着席〕

古川(元)委員 さっきの軽減税率もそうなんですけれども、よくヨーロッパがと。何か、明治の最初ならヨーロッパ、ヨーロッパと言うのもいいんですけれども、もう明治維新から百五十年もたっているんですから、別にヨーロッパがどうであろうと我が国は我が国だということでいいんじゃないかと思うんですね。

 しかも、最初に大臣がおっしゃったように、特に高齢化が進んでいる、過疎化が進んでいる、そういう状況の中で、自動車が本当に生活の足になっている。かつ、日本経済に占めるこの自動車産業が及ぼしている影響というものを考えていくと、やはり今のこのままでいいとはとても私は思えないんですね。

 また、この消費税の引き上げ、八%に上げたときの後の個人消費の落ち込みの大きな要因の一つが、大臣も御存じだと思いますが、自動車の売り上げが戻っていないんです。特に、これは大臣御存じのように、軽自動車の税金をどんと上げました、消費税以外に。地方に行ったら本当にほとんど黄色ナンバーですよ。やはり、こういう人たちにとって、麻生財閥の麻生大臣でさえも自動車の税金は高いなとおっしゃるんですから、普通の一般の庶民にしてみたら、軽自動車の税金をどんと上げたのは極めて大きなショックだったと思うんですね。

 だから、消費税の引き上げ、プラスしてこの軽自動車の税金が上がったことが、それによってすごくやはり車の売れ行きが伸びない。そういうことが日本経済総体の中でいうと個人消費の伸び悩みの大きな一因にもなってきた。そういうことを考えると、来年一〇%に予定どおり上げていこうとするんだったら、自動車にかかる税金をこのままでいいのか、そこは真剣に考えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。どうですか、大臣。

麻生国務大臣 車体課税については、これは、リーマン・ショックの以降に景気対策として税率の引き下げというのをやったり、エコカーの減税を、あれは創設したのもあのときやったと思うんですが、そういった大幅な減税は既に行ってきたんだと思っていますが、この結果、税収については、一兆は行かなかったけれども〇・八か九近く減収したんだと思います。

 車体課税というのにつきましては、こうした点に加えまして、地方もそうでしょうし、国、地方の厳しい財政事情もありますので、自動車がもたらす大気汚染とか道路損害などの社会的なものも考えて、自動車ユーザーというものが道路整備にかかわる利便性の向上の恩恵を受けているなど考えて、いろいろ検討が進められてきたんだと思っています。

 今言われましたように、自動車というものが、私どもから見て、都会の場合は、私の子供の世代、あなたたちと比べて大分子供の年は若いんですけれども、学生へ出て車を買いませんものね。私らのときは、とにかく、何が何でもまずは免許証を取って車を買わなきゃ、とてもじゃないけれども楽しい生活にいろいろ影響が出ましたので、車は何といったって絶対大事なものだったと思うんですが、息子たちは買いませんもの。

 どうしてと言うぐらいなんですけれども、早い話が、みんな、近くに全て地下鉄だ何だかんだで公共交通機関が物すごく発達しちゃったせいなんだと思うんですが、ところが、地方に行くとそれはまた全然違っていて、しゃにむに車が要るということになっていますので、地元と東京と、えらいそこのところが、若い人の生活のパターンというのが、行動が違うなというのが、私の正直な実感なんです。

 いずれにしても、車というものの持っている影響というのは極めて大きいものだと思いますので、こういうものはぜいたく品という発想からは少し考え方を変えていかないといかぬと思いますが、傍ら、環境汚染という問題が確かにありますので、環境汚染というのは、いろいろ規制が厳しくなって、昔に比べればはるかに排気ガスというものも随分変わってきたんだとは思っちゃいますけれども、これが地球温暖化やら何やらの影響から、この点に関しての話は、また別の角度からの話なんだと思っております。

古川(元)委員 大臣がおっしゃるように、都市部なんかだとやはり保有コストが高いんです。駐車場なんかも、とにかく今、車庫証明が要るじゃないですか。昔は、私たちのころは、車庫証明なんか要らなかったから、学生はどこかに路駐しておいて、でもやはり何か車を持っていないと彼女もできないとか、大臣がおっしゃった楽しい生活というのはそういうことだろうと思いますけれども。今はちゃんと車庫証明がないとというふうですから、都市部で駐車場といっても、駐車場は高いし、しかも、重量税とか、取得のときだけでなくて、やはり自動車は保有に対するコストも非常に高いんですね。

 ですから、そういうことを考えたら、必要なときだけタクシーに乗ったりとかそういうことでいいんじゃないか。今の特に若い人たちは、携帯があればという、携帯に何万円かけなきゃいけないから、そんな車に月々ガソリン代も入れて万の単位でかけられないみたいな、やはりそういうこともあるんだと思うんですね。

 しかし、繰り返しになりますけれども、自動車産業か何かが日本経済に及ぼしている影響というものを考えると、こういう若い人たちも、いつかは、例えば、地方創生ということで地方に行ってもらおうとなったら、免許がないとやはり困るわけです。うちの秘書で、ちょっと地元へ行ってもらうと、名古屋あたりでも車を運転できないとちょっと秘書として仕事ができないんですよ。でも、東京で生まれ育っていると、免許を持っていないという人は結構いるんですね。

 やはり、そういう意味では、ちゃんとみんな免許を持って、地方へ行っても生活できるという意味では、そういう車を持ちやすい環境をつくるということは、これは経済政策的に言っても私は必要なことじゃないのかなと思うんですね。

 そういう視点からいうと、確かに、大臣おっしゃったように、今まで減税してきた、我々の政権でも、重量税をグリーン化で環境性能がいいものは減税するとかやりました。

 しかし、少なくとも、来年度へ向けて見ると、増税だけやっておられるんですよ、今度。例えば、来年、一〇%に合わせて、ずっと昔から言われていました、消費税と二重課税だと言われていた自動車取得税、これを廃止することになっているんですけれども、そのかわりとして、自動車税及び軽自動車税において、自動車取得税のグリーン化機能を維持強化する環境性能割を導入する、そういうことが決められているんですね。

 これは総務省にお伺いしたいんですが、結局、自動車取得税のグリーン化機能を維持強化する環境性能割を導入するということは、要は、これは自動車取得税の廃止の代替だということを示しているんじゃないですか。どうですか。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 自動車によります環境負担の低減を図るためには、環境性能にすぐれた自動車の普及等を促進する税制の仕組みが必要でございます。

 こうした考え方に基づきまして、自動車税及び軽自動車税に新たに導入されます環境性能割は、自動車の環境性能に応じて税率が決定される環境税制となるものでございます。一定の税率で課税する原則の中で、時限的な措置として自動車の環境性能に応じて特例的に税率を軽減する自動車取得税のエコカー減税とは異なるものでございまして、そのつけかえというふうには認識しておりません。

 さらに、環境性能割では、新車と中古車が同じ取り扱いとなる点におきましても、自動車取得税とは異なるところでございます。

 また、環境性能割の導入に伴いまして、登録車につきましては自動車税に、軽自動車につきましては軽自動車税に、それぞれ税目が一本化されるということがございます。あわせまして、市町村税であります軽自動車税に環境性能割が位置づけられまして、市町村の自主財源の強化にもつながるというものでございまして、これまでとは違った枠組みとなっているものでございます。

古川(元)委員 枠組みは違うように見えて、この税制改正の記述にも書かれているように、自動車取得税のグリーン化機能を維持強化する環境性能割を導入ということですから、これは代替だということをいみじくも言っているんだと思うんですよね、幾らそういうことを言われても。

 しかも、地方財源というお話がありましたけれども、最初の議論から聞いていたらわかると思いますけれども、要は、自動車にかかわるところで過度な負担を求めてそこで何とか地方財源を維持しようじゃなくて、やはり地方の税源全体の中で地方財源をどう充実するかということも考えていかなきゃいけないんだと思うんですね。

 そういった意味では、ようやく、ずっと二重課税と言われていた自動車取得税が廃止をされるというのにもかかわらず、実質的には同じような環境性能割が入ってくるということは、本当に取得税を廃止したことの意味をなくしてしまうのじゃないか。私どもは、これは問題だというふうに強く指摘をさせていただきたいと思います。

 その上で、再来年度、二十九年度の税制改正においては、「自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」というふうにありますが、これを素直に読めば、ああ、保有に係る税負担は軽減されるんだなというふうに読めると思いますが、そういう認識でよろしいですか。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年度の税制改正の過程におきましては、今後の我が国の自動車産業のあり方や自動車の社会的費用と行政サービスのあり方など、幅広い観点から議論がされたところでございます。

 これらの議論を総合的に勘案した上で、先生御指摘のとおり、二十八年度与党税制改正大綱におきましては、「平成二十九年度税制改正において、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」というふうにされたものと承知をいたしております。

 また、全国知事会からは、「今回の環境性能割の導入の際に負担軽減がなされたことから、更なる減税は容認できない。仮に都道府県の基幹税である自動車税の税率の引下げを議論する場合には、地方財政に影響を及ぼすことのないよう具体的な代替税財源の確保を前提とすべき」、こういった意見が出されているところでございまして、平成二十九年度の税制改正におきましては、このような議論を踏まえ、地方団体あるいは関係者の御意見を伺いながら、具体的な検討を進めてまいることになるんだと思っております。

古川(元)委員 では、これは軽減すると書いてあるけれども、軽減しない場合もあるということですか、そうしたら。

時澤政府参考人 大綱に示されておりますのは、安定的な財源を確保しつつ、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行う、それで必要な措置を講ずるというふうにされておりますので、そういう地方財政との影響等も踏まえながら、総合的な検討がなされていくものと考えておるところでございます。

古川(元)委員 大臣、きょうの議論で聞いていてわかるように、自動車の国民生活における役割や、あるいは自動車産業が雇用や日本経済全体に与える影響を考えれば、これはやはり、自動車の関係諸税は整理統合していって、簡素化して、負担を軽減して、もちろん、地方の税収をどうするかという話は最初の話ともかかわるんですけれども、自動車の中だけで見るんじゃなくて、税制全体の中で、国と地方との税源の配分のあり方とか、そういう大きな枠組みの中で見るのであって、少なくとも自動車の関係諸税の中については、これは軽減する方向で検討して、そしてそれを実現していただきたいと思いますが、そういう意気込み、お約束をぜひ大臣にしていただきたいと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 今言われましたように、この税制改正大綱の中において、二十九年度の税制改正において、安定的な財源を確保して、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつというのがついて、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行うとの方針が示されておりますので、おっしゃるとおり、自動車だけでやるというのはなかなか難しい。

 というのは、自動車だけで中で何かしようといったって、自動車税だけで一兆五千億ぐらい地方税がありますでしょうか、それをいきなりなくすといったってそんな簡単にいきませんから、まずは重量税で、これが千億ということになっていますので、そういったような話でいきますので、今後、具体的な内容につきましては今からいろいろ検討されていくことになるんだと思いますけれども、年末にかけてさらに検討を進めておかなきゃならぬということになるんだと思います。

 いずれにしても、今言われたように、自動車の中だけ以外で全体を考えるといっても、自動車の場合は税の絶対量が大きいものですから、数百億じゃなくて数千億、自動車税に至っては一兆五千億ぐらい行きますので、そういったものからいくと、そうそう簡単な財源が出てくるというのはなかなか難しいだろうなという感じはします。

    〔松本(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

古川(元)委員 税収が大きいということは、それだけ大衆課税になっているということなんですよ。それだけ負担があるということなんですね。しかも、今回そういう新たな環境性能割の導入や、また、軽自動車や二輪はさらに今回の税制改正で増税されるんですね。

 そうなると、本当に地方の足になっている軽自動車とか二輪車とか、そういうものの売り上げにまた影響を及ぼして、そういうことが経済全体に悪影響を及ぼす、そういう可能性は十分考えられるわけであって、やはりここは、そういう生活の足となっているし、必需品であるし、かつ、日本経済にとっても極めて重要な自動車産業全体のことを考えれば、自動車に対する税負担は、簡素化、そして負担を軽減する方向でぜひ議論を進めていただいて、ちゃんとそうした結論を出していただきたいということをお願い申し上げて、消費税の軽減税率の話に移っていきたいと思っています。

 この委員会でいろいろ議論される中で、議論すればするほど、昨年、突然、所管の大臣であるにもかかわらず、全然違うところで何かぼんと決まってしまって、私は大臣の心情を察すると、いかばかりだろうかと思って本当に御同情申し上げるんですけれども、大臣は、これは大変だよ、高所得者にもそんな優遇していいのか、絶対混乱するよと言って、税を所管する大臣として、本当に真摯な、正直な御発言をずっとされていらっしゃったと思うんですね。そこのことがこの間の議論でますます明らかになってきたんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 そういう中で、特に税の議論というのは、私は役所にいて消費税が導入になって、それから自民党が選挙に大敗して山が動いた、あのときの選挙ですよ、当時の社会党が消費税廃止法案を出してきたのに対して、実は役所の中で、特別軽減税率という、一・五%のまさに軽減を検討していたことがあったんです。でも、検討すればするほど、これは理屈で分けるのはできそうな気がするけれども、実際に現場になったらどうだろうかなと。これはどう考えてもやはり混乱するなというので、結局出さずじまいで済んだんですけれども。

 そういう、理屈で、口で、あるいは言葉で、きちんとここは分けられていますと言っても、現場でいろいろな混乱や負担がやはり生じる。しかも、それは消費者だ。消費者はもちろんですけれども、特に事業者は大きいんですね。

 それだけじゃなくて、税務署の職員の皆さん方、現場で納税者の皆さん方と直接対応するのは税務署の職員の皆さんですから、文句を言われる、怒られるのは、これはみんな税務署の職員の皆さんですよ。ここに座っているような、後ろにいらっしゃる皆さん方は、昔、税務署長で行ったことはあっても、現場へ行って直接そういう納税者の皆さんからクレームを受けたり、そういう経験はしている人はいないと思うんですね。

 ですから、そういう意味からすると、やはりそういう視点というのを非常によくここは見ていかなきゃいけないと思うんですね。ちょっときょうは、そういう視点から少しいろいろと具体的な話で聞いていきたいと思っているんです。

 この軽減の話でいうと、最終的に消費者が買うところが軽減だという話ばかりにちょっと目が行っているんですが、実は、事業者が仕入れる仕入れのときでも同じ問題は起きるんですね。

 例えば、これはちょっと具体的な話ですから政府参考人の方にお伺いしますけれども、農家が種もみとか苗とか買う、これは軽減税率の対象になるんですか。例えば種もみというのは、それでも食べられますよね、食べようと思えば。食品とも言えると思うんですけれども、こういうのは、農家が種もみとして使う場合は軽減税率になるんですか、どうなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の軽減税率制度の飲食料品を軽減対象にするということでございます。

 それで、飲食料品というものはどういうものかということで、法律上は食品表示法に規定する食品ということで、言いかえますと、人の飲用、食用に供されるか否かということを販売時点で判断するということになります。

 それを前提に申し上げますと、今のお話だと、農作物の種とかその手の類いでございますけれども、それは人の食用に供するものという形では販売されないということですので、一〇%ということになると思います。

古川(元)委員 では、例えば今度そういう話でいったら、お肉なんか、そのまま、生きたままの鳥とか何かだったら、それは多分標準税率ですよね。でも、潰してお肉として仕入れる場合だったらどうなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 生きている牛というようなことが、例えば流通過程で枝肉になっていく、こういうふうなことを頭に置いての御質問だと思います。

 生きている牛ということになりますと、冒頭申し上げた説明からいきますと、人の食用に供するものとしては販売されるものではないということで一〇%ということになりますけれども、例えば枝肉という形になりますと、販売者は通常、まさに人の食用に供するものという形で販売されるということでしょうから、八%の税率という対応になると思います。

古川(元)委員 では、魚の場合はどうですか、生きたままの魚。よく最近、生けづくりとか、生けすに入っていて、これはちゃんと、死んでいるのだったらそれは食べ物でしょうけれども、生きているままの魚だったらどうなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 判断基準は、あくまで人の飲用または食用に供するというところの判断でございますので、それが人の口に入るという前提での販売ということであれば、八%ということになります。

古川(元)委員 人の口に入るかどうかの前提というのはどういう基準で判断するんですか。

佐藤政府参考人 それは販売者が、それを例えば熱帯魚のように観賞用に売るのか、人の食べる用に売るのかということで、そこでどういう形で販売するかということで決まってくるということでございます。

古川(元)委員 余りこんな例はないかもしれませんけれども、この前、私が委員会で、人も食べられるペットフード、そういうのが出てくるんじゃないかと思うんです。

 では、人も食べられる、鑑賞もできます、そういう魚が出てくる、でも、それは人も食べられるとなれば軽減税率になるということですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 販売者が食べられるものとして売っているということであれば、食料品ということで八%ということになります。

古川(元)委員 そういう人が出てくるかもしれませんよね、これは。やはりおかしなことが起きるんですよ、こういう税が入るとそのために。

 では、もう少しお伺いします。

 いろいろな調味料なんかをつくっている製造業者が、よく味の素はグルタミン酸だとかいいますよね、そういうだしの原料になる塩だとかグルタミン酸とかイノシン酸とかナトリウムとか、こういう食べるものの原料として、それ自身も要は食用に供することができる、こういうものはどうなるんですか。

佐藤政府参考人 食品表示法に規定します食品ということで軽減対象としてございますけれども、食品表示法の中には添加物というのがございます。恐らく、そのグルタミン酸というのは添加物という対応になろうと思いますので、八%になるということだと思います。

古川(元)委員 では、これは何か別の医薬品用とかそういうふうに使うんだったら、それは同じこういう酸とか何かでも標準税率になるということですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 冒頭申し上げていますように、販売事業者がどういう目的で、どういう用途で売っているかということがポイントになるということになりますので、例えば、食用以外のものであれば一〇になるし、食用の場合は八になるという大きな制度の中でお考えいただければと思います。

古川(元)委員 そうすると、販売業者の売り方によって、食用として売ったものは八%、そうじゃないものとして売ったものは一〇%になる、そういうことですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的にはそういう考え方でございます。それは、食品表示法という法律に基づいての食品でございますので、基本的には、食品表示という形でもってその意思が表明されるということになります。

古川(元)委員 では、今の局長の話でいえば、逆に、食品表示法に基づいて、これは食品としても使えますし、そうじゃないものにも使えますよと売ったら、それは八%で売っていいということですか。

佐藤政府参考人 そのとおりでございます。

古川(元)委員 では、そういうことでいいますと、食品の中には食品以外の用途に使えるものもあるわけですね。

 例えば、お米なんかは工業用でのりの原料なんかにもなったりします。ですから、こういうのも、食品としてもこれは食べられますけれども、のりの原料としても使えますという形、食品表示法に基づけば、のりの原料として出荷してもそれは軽減税率になる、そういう認識でよろしいですか。

佐藤政府参考人 そのお米が、のりをつくるための原料として売られているということであれば、売る側の用途が人の食用に供するという意味ではございませんので、一〇%になるということでございますし、食用ということでしっかり表示をしながら売っている場合には八%になるということでございます。

古川(元)委員 いや、食用として表示をすれば、その買った人がそれを別にのりにしてもいいわけでしょう。そうですよね、いいですか。

 そうしたら、例えば、のりの原料として米を仕入れる業者が、少しでも安くしてもらいたいから、おまえのところ、これを食品表示法にちゃんと合うようにして、そういうものとして俺のところに卸せというふうに言ったら、そういうのはいいんですか、どうなんですか。

佐藤政府参考人 基本的には、売り手側の意思として、食用に供するということであれば八%、そうでなければ一〇%というのが基本的考え方でございます。

古川(元)委員 いや、聞いているのは、売る方が買い手の方から言われて、わかりましたというのでそれで応じても、それは別に、ちゃんと食品表示法の規定に合っていれば問題ないということですか。どうなんですか、それは。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、売る側がどういうものとして売っているかというところが基本的な重要なポイントだということを繰り返し申し上げているところでございます。

古川(元)委員 では、売る側としては、これは売る側から考えたらですよ、そういう食品業者に売れば八%、そうじゃないところに売ったら一〇%、その分だけ高くなるわけですから、それこそほかの業者との競争を考えたら、うちのは全て食品として売っています、後どういうふうに使っていただくかはそれはそちらで決めていただけばいいです、そういう商売をやってもいいということですか、それは。

佐藤政府参考人 基本的には、飲食料品を譲渡した時点、販売した時点でその適用関係が決定するということでございます。それが食品の場合には食品表示法に基づく食品ということでございますので、食品表示されるということで、販売者側がそういうことを示した形で売るということであればそれが八%、そうでなければ一〇%ですので、仮に買った側がどのような形に使ったとしても、基本的にはその譲渡時点で決まるということが基本形だと思っております。

古川(元)委員 大臣、どうですか、これを聞いていて。経営者でもあるからわかると思いますけれども。厳しい競争でやっている中で、二%というのは結構大きいですよね。うちから買ってくれたら、これは軽減で仕入れられますよ、うちのは全部食品表示法の適用をちゃんとしていますからという経営者が出てきてもやはりおかしくないと思います。

 そういうものが出てくるということは、結局、この税が入るがために、いわば新たなビジネスモデルをつくり出すというか、それは、結果からするとやはり経済活動に中立的でないというその証拠になるんじゃないですか。どうですか、大臣、聞いていてどう思いますか。

麻生国務大臣 今般の制度案においては、これはいわゆる軽減税率の適用対象品目というものを酒類また外食を除く飲食料品ということにしてありますので、それぞれ法令上、今、佐藤の方から申し上げましたように、明確に定義づけをいたしておりますので、具体的な定義の当てはめについては、今言われましたように、飼料用米を食える米だといって八%とか、いろいろな話が出てくるんだと思いますが、それはその都度個別に判断していく以外にほかに方法はないんだと思うんです。

 いずれにしても、こういうような話をわかりやすいものにしていくということが極めて重要なんだと思っておりますので、具体的な当てはめ等々につきましては、通達やらQアンドAとか、いろいろな形でできるだけわかりやすくやっていかねばならぬものだと思っております。

 今言われましたようなことは、御自分でお考えになったんでしょうけれども、ほかにもいろいろ私どもがこれを議論したときにはいっぱい出て、おもしろがって結構いろいろこんなときはどうなるととんち問答みたいなことをずっとやっていたんですけれども、確かにおっしゃるようないろいろなものの混乱が出ます。

 どこかで定義づけをせにゃいかぬというところで、食品は結構法律としてきちっと明確だったというのが、私どもとしては、食品の品目としては極めて明確に法律ができておりますので、そこで線を引くのが一番明確かなということでさせていただいたという経緯であります。

古川(元)委員 法律上は引けるんですよ。でも、私がここで言っているのは、法律上はこうで明確ですと言っても、現実の現場の経済活動や生活の中では、やはりそういう線というのは引けないんですね。そういうことを言っているんです。

 だから、やはりこれは本当に、いろいろ考えたって、えっというものが必ず出てきますよ。そうすると現場が、どうするんだという話で絶対混乱する。また、そこで事業者の人と消費者とぶつかったりとか、あるいは、一番事業者の人にとって嫌なのは、これでいいと思っていたら、突然税務署がやってきて、こんなのはだめだと言われてどかんと追徴をかけられたりする。これは税務署の職員の人だって、そんなことはやりたくないですよ。わざわざ何かそういうトラブルのもとをつくっている、そういう認識を持たないといけないと思うんですね。

 もう少し進めていきたいと思います。

 また、今回のでいろいろ問題が出てくるのは、免税業者とか簡易課税業者。こういう業者も、今ちょっとお話ししたのは特に仕入れのところに係るものですよね。

 こういう免税業者とか簡易課税業者というのは、今の仕組みだと、仕入れ税額はそもそも控除できないから、あるいはみなし税控除をしていますけれども、軽減が入ってくると、仕入れの中に標準税率の部分と軽減の部分が入りますよね。それこそ消費者から見ると、明らかにちっちゃなお店で免税業者だなというところが、軽減が入りました、では一〇%に上がりました、普通、値段は上がらないよなと思いますよね。だって、食品は軽減なんでしょう。

 ところが、免税業者は、仕入れの分の標準税率の部分は上がるわけですよ。仕入れは負担が多くなっているんです。この負担を、小さいところは価格に転嫁できますかね。こういう小さな免税業者とか簡易課税業者みたいなところで、きちんと仕入れを仕分けできないというかやっていないところについて、これはきちんと転嫁できますか、どうですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生の御指摘は、例えば、食料品を専ら扱うという簡易課税事業者などについて、消費税の税率を引き上げるということになると、一〇%になった仕入れの部分についての仕入れ税額がふえるということなので、それはコストアップの要因になるということの御指摘かと思います。

 制度上は恐らく、我々としては、その部分は基本的には価格に転嫁をしていただくというのが基本という考え方になると思います。

 それで、そういう部分についてはしっかりと転嫁ができるようにということでの転嫁対策、これまでもやっておりますから、そこをしっかり取り組むというのが基本でございますけれども、結局、そこで生じておりますのは、例えば簡易課税事業者であれば、いわゆるみなし仕入れ率を現状のまま適用するというようなことでそういうことが起こってくるということであれば、そこのみなし仕入れ率自身を、しっかり、新しい複数税率下でどういう形の仕入れ率にするか等々の見直しをするということも必要になってくるんだろうと思います。そういうことでないと、きっと中和しないんだろうというふうに思います。

 その点につきましては、今回の法案の附則に、そのような導入後の三年以内をめどにいたしまして、簡易課税制度などの影響を検証して対応を措置する、そういうふうなことも入れてございまして、全体としての対応をとっていくというふうに考えているところでございます。

古川(元)委員 これは、影響を受けるのはやはり小さいところなんですよね。絶対、聞かれたときに、転嫁してもらうんだと言うけれども、値上げしたら、消費者の皆さん、おまえのところはこれは食べ物だから上がらないんじゃないのかと。そのときにその人が、いやいや、仕入れのところの中で軽減じゃなくて一〇%に上がった部分がありますと言って、こんな説明をしていられるかどうかですよ。これは、中小零細の人たちの現場の感覚をわかっていない。混乱が起きるということは、そういうところからも見えてくるんだと思うんですね。

 また、ちょっとその延長線上でいいますと、軽減税率で販売した商品の原価の中には、今申し上げたように、標準税率の仕入れがありますね。小さいところとか、あるいは食品とかそういうものを扱うようなところで多くの売り上げが生じるところは、売り上げの多くはほとんどが軽減税率。ところが、仕入れは標準税率も多かったりして、仕入れ税額控除の額の方が、これは売り上げに係る消費税額を超える場合というのが出てくると思うんですね。そういう場合にはこれは還付を受けるということになる、そういうことでよろしいですか。

佐藤政府参考人 御指摘のとおりでございまして、仕入れ税額が売上税額を上回るというときは還付ということになります。

古川(元)委員 還付を受けるということになると、今まで大体還付業者というのは、輸出なんかの大手の、輸出免税でそういう大手のところですよ。こういうところはいいですけれども、今度の場合、個人事業者とか物すごく小さなところが対象になってくると思うんですね。

 例えば農業者とか漁業者の皆さん方、余りこれは関係ないと思っているかもしれませんけれども、農業者や漁業者の皆さん方というのは、大体、仕入れ税額の方が大きいはずですよ。なぜかといったら、大体、生産設備の耕運機だとかトラクターだとか船だとか網だとか、こういうものは皆標準税率ですからね。一方で、売っているものというのは食品、食べるもの、こういうものというのは、今、生産者、そんなに高く売れるものをつくっているのはやはり少ないですから。

 そうやって考えると、農業者とか漁業者とか、こういう人たちが還付を受けるのが普通になるようなそういう状況になるんじゃないですか。どうですか、これは。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に考えますと、まず、売り上げの全てが八%の適用税率、それから、仕入れの側も便宜一〇%の今度の標準税率、そういう事業者を考えるという場合、結局、還付が生じるかどうかは、その事業者の付加価値の大きさ、あるいは逆に言えば、仕入れの大きさに依存しているというふうになると思います。

 例えば、売り上げが一〇〇で仕入れが八〇というふうな事業者が、例えば売り上げに八%の適用対象ということになりますと、売り上げに係る税額はプラス八ということになりますが、仕入れに係る部分についてはこれは全部一〇ということであれば、八〇に一〇がかかりますので八ということで、これは引き算ができるということですので、プラス八と三角の八ということで、これがゼロになる。それは、仕入れ率が八〇%というケースを置けばそういうことになります。

 例えば仕入れ率が九〇%ぐらいになってまいりますと、今申し上げた仕入れに係る税額が大きくなってまいりますので、そこは還付が生じるし、八〇%よりも仕入れ率が七〇とか六〇とか下がってくれば、その部分は納税が生じるということになります。

 いずれにしましても、それは、事業者におきまして還付、納税いずれが生じるかというのは、まさにその事業者そのものがどの程度の仕入れを行っているかということに影響するんだろうと思っております。

 ちなみに、簡易課税制度におきます農林水産業のみなし仕入れ率というのは七〇%ということでセットをさせていただいておりますので、今申し上げた、消費税一〇%の仕入れが全て、売り上げ八%が全てという事業者を想定いたしますと、むしろこれは還付は生じないという形になるんだろうと思っております。

古川(元)委員 では、政府としては、こういう農業者とか漁業者とか、今回の軽減が入ることによって還付を求める例なんというのはそんなに生じてこない、そういう認識ですか。あるいは、生じるとすればどれくらい生じるというふうに想定しているんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 そこは個々の事業者の仕入れ状態によりますので、多いか少ないかというのはつまびらかには申し上げることはできませんけれども、今申し上げた、みなし仕入れ率が七〇%というふうに設定されているというところら辺が現実に近い数字ということであれば還付の生じる割合が少なくなる可能性はあると思いますが、いずれにしても、そこは確たることは申し上げられません。

古川(元)委員 これは、今、簡易課税の話でありますけれども、簡易課税を利用している中小事業者は還付申告はできませんよね。それでいいですね。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 簡易課税制度というのは、むしろ、もともと売上税額の一定割合を仕入れ税額とみなして税額を計算する仕組みということで、まさに、計算が困難な事業者用にしているということでございますので、制度上は還付を想定しているものではありません。

古川(元)委員 局長、もしかなりの農業者とか漁業者とか還付の例が出てきたら、やはりこれは、簡易課税じゃなくてこっちの還付を受けられるんだなということで、そういう簡易課税を断念してこちらの方に行かないとむしろ損しちゃう、そういう動きも誘引してしまうんじゃないかと思うんですよね。

 この還付の問題というのは、実はこれは余りフォーカスされたりしませんが、この話、もともと国税庁の人が昔書いているものに、軽減税率を入れるとこういう問題が起きてきますよというので指摘している問題なんですね。

 これは余り甘く見ない方がいいと思いますよ。ただでさえも、今、還付でいろいろな不正も起きているとか、そういうこともあったりします。輸出業者だけじゃなくて、こういう軽減が入ることによって物すごい数の還付が出てきたりしたら、果たしてそれに対応できるのかどうか、やはりここも非常に大きな問題に私はなってくるんだと思います。

 その最後のところで、ちょっと国税庁の方の見解を聞きたいと思いますが、軽減税率の関係のいろいろな問い合わせがもう既に税務署なんかにもよく来ているという話も聞きます。

 本来であれば、これだけ議論になっているのであれば、ちゃんと問い合わせの、中小企業対策は、きょうは中小企業庁に来ていただいていますけれども、ちょっと時間の関係で、申しわけないですね豊永さん、またゆっくり今度聞きますけれども、ちょっと時間がないので省きます。

 中小企業対策の話は聞いていますけれども、まずやはり中心になっていろいろ相談とか問い合わせとかが来るのは国税庁あるいは税務署ということではないかと思うんですが、今そこでそういう対応はされているのか、あるいは、具体的にいつからか、そういう対応をするような予定はしているのか、そこはどうなっていますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の税制改正法案におきまして、軽減税率制度の導入に当たり、政府として、混乱が生じないよう万全の準備を行っていくこととされております。

 国税庁といたしましても、執行官庁として、基本的には、法案が成立し公布されれば、関係省庁、関係民間団体等と緊密な連携を図りながら、積極的な周知、広報、丁寧な相談対応などを通じて、事業者の方が円滑に軽減税率制度の導入に対応できるよう取り組んでまいりたいと考えております。

 その際、例えば電話相談につきましては、電話相談を集中的に処理するコールセンターを設置して対応するほか、税務署の窓口相談については、従来から改正消費税相談コーナーといったものを設けておりますけれども、そういった担当者の増員を図るなど体制整備を図るといったことによりまして、国税組織全体としては、より一層効率的な事務運営を行いながら、消費者や事業者の方からの問い合わせにしっかり対応してまいりたいと考えております。

古川(元)委員 いつからコールセンターをやるんですか、また、ちゃんとこのための予算とか何か、きちんとそれも手当てもされているんですか、そういうコールセンター初めもろもろのことについて。

星野政府参考人 コールセンターの設置につきましては、法案成立後なるべく早いタイミングで行っていきたいと考えております。

 定員、予算等も、消費税が円滑に導入されるように定員措置、予算措置等されておりますので、そういったものの活用もしっかりと図ってまいりたいと考えております。

古川(元)委員 定員、予算と言うんですけれども、来年度の国税庁の定員査定では、消費税軽減税率制度に関する相談等の対応のために百三十二人を増員することになっているんですけれども、全国には、十二の国税局と五百二十四の税務署があるんですよ。百三十二人でどうやって対応するんですか。一人が何か三カ所か四カ所を持つんですか。どうするんですか、これは。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 定員措置でございますけれども、今、先生御指摘になられましたとおり、百三十二人、これが今後円滑な軽減税率制度導入に向けた準備に係る事務への定員措置として、平成二十八年度予算に計上されております。

 確かに、国税全体の組織と比較した場合、この百三十二名の定員措置が少ないといった見方もあるかもしれませんけれども、そこは、この定員も活用しつつ、国税庁本庁、国税局、税務署、関係部署が一体となって効率的な事務運営を行うということと、あと、関係省庁と関係民間団体とも密接に連携を図りながら円滑な制度導入に向けて取り組んでまいりたいと思っております。

古川(元)委員 次長もおわかりだと思いますけれども、今やはり、国税庁、税務署の現場というのは物すごく忙しいんですよね。

 つい先日、私も税理士の先生方がやっていらっしゃる無料相談のところを回ってきて、税理士の先生方とお話をしていますと、最近、調査に来るという割合が非常に少なくなっている、しかも、一人で来ると。

 昔は、一人で行くと、そこで署員の人と相手方との間で何か裏取引みたいなことがあったりするといけない、だから複数で行くというのが前提だったのが、今は、回らないから一人で調査に行くという例もふえているんですね。しかも、なかなか定員も足らないから、少ないので、ふえないので、実調率がずっと下がっているわけですよ。しかも、今、マイナンバーの導入もあって、やはり現場が相当大変な状況なんです。

 そういう状況の中で、さっき次長は何も言われませんでしたけれども、この対応のために予算措置がちゃんとやられているのか確認したいと思いますけれども、そういうのも含めて万全の措置をと言いますけれども、本当に現場がそれでできるのか。マンパワー的にもそうですし、しかもこれは、いろいろなきょう私が局長に聞いたようなことをみんなが聞いてくるわけですよね。そうすると、現場の署員の皆さんも、それに答えられない、わかりませんと言っていたのでは怒られますよ。

 ちゃんと署員までそういう細かいところも含めて、きちんと来年の四月までに間に合うんですか、準備も含めて、教育も含めて。どうですか、これは。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、予算の関係ですけれども、二十八年度予算で、先ほどありました定員以外に、軽減税率制度への対応に係る予算措置として約十億円が措置されておりますし、このほかに、システム関係の改修等で同じく十億円ほどが予算措置をされているということでございます。

 先生から御指摘がございましたとおり、税務職員が軽減税率の円滑な導入のために体制を構築していかないといけないということでございます。そのためには必要な研修等も行ってまいりたいと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、国税庁全体、国税局、税務署を通じてできる限り事務の効率化を図りながら、体制の整備をしていきたいと考えております。

古川(元)委員 何だかんだ言って、いずれにいたしましてもというのはマジックワードみたいなもので、努力するというのはわかりますよ。でも、本当にそれは、次長、現場の今の大変な状況をわかっているかということですよ。マイナンバーへの対応、そして、この軽減税率の対応なんかをやっていたら、それこそもう調査に行っている暇がなくなる。税務署の職員が今までやってきた部分のそういう部分がおろそかになってくる。そうなったら、これはやはり税務署に対する信頼自身が失われることになりかねないんだと思うんですよね。

 大臣、これまでの議論を聞いていて、最後にお伺いしますけれども、どうですか。こんな状況の中で、無理に、どうしてもとにかく来年の四月に軽減税率の導入なんてやったら、これは大臣がいみじくもおっしゃったように、やはり混乱は税務署の中だって起きますよ、そう思いませんか。混乱が起きないなんというのは、それは起きないように頑張りますということは言えるけれども、やはりどう考えてもこれはいろいろな混乱が起きる、そう言わざるを得ないじゃないですか。それがもう本当に率直なところだと思うんですけれども、どうですか、大臣。最後に御答弁をお願いします。

麻生国務大臣 軽減税率につきましては、これは多くの事業者やら消費者に直接関係するところでもありますし、施行まで極めて限られた時間でもありますし、かつ、全国の事業者約八百万社の方々に円滑な制度導入に向けた対応を行っていただくという必要があるんだと思っておりますので、このために法案を成立させていただいた後、国税庁において積極的な周知、広報はもちろんのことですが、相談等々には丁寧な対応などでしっかりと取り組んでいくということを確保してまいりたいと思っております。

 確かにおっしゃるように、軽減税率の対応以外の事務がおろそかになるんじゃないかという御指摘もありますので、国税庁は、これまでも限られた定員の中でかなり効率化を図ったり、税制改正への対応を含めていろいろ必要な事務はこれまでも適切に取り組んできたところでもありますので、今後、税務行政というものにつきましては、効率的な体制というものを維持して、きちんと適正、公平な課税の実現を図っていく努力をしていかなならぬと言って、一件の滞りもないだろうなと言われると、それは御存じのように、おられたからよくおわかりのとおりなので、日本じゅう一カ所も問題が起きないかと言われたらそれはなかなか難しい問題もいろいろあろうと思いますが、全力を尽くしてやっていく以外にないと思っております。

古川(元)委員 終わりますけれども、意気込みだけではやはり現場の混乱は避けられない、そのことを最後に申し上げて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民主・維新・無所属クラブ、落合貴之でございます。

 午前中の三十分に続きまして、また質問をさせていただきます。

 午前中は、新聞に軽減税率を適用することの合理性が感じられないこと、また、軽減税率を導入するに当たっては、例えば町のおそば屋さんや中華料理屋さんなど個人商店に配慮が足りないのではないか、彼らの商売が立ち行かなくなってしまうのではないかということを取り上げさせていただきました。

 途中でそこで終わってしまいましたので、さらにインボイス制度導入にまつわる問題も取り上げさせていただきます。

 今の現状、小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮から、一定条件のもと、一定期間の課税売上高が一千万以下の事業者については消費税の納税義務が免除をされています。小さな事業者は消費税を払わなくていいということになっているわけですが、現行では、その免税業者からの仕入れについても仕入れ税額控除の対象になっています。しかし、本改正案によるインボイス制度を導入すると、免税業者からの仕入れは仕入れ税額控除の対象にはなりません。

 このように、今回審議されている制度を導入すると、免税業者は事業者間の取引から排除されてしまうおそれがある、これはおそれがあることは事実ですね。

麻生国務大臣 これは落合先生おっしゃるとおり、複数税率と言われるものの中では、適正な課税というものを確保するためには、いわゆる適格請求書保存方式、インボイスというのを日本語に訳すと多分そういうことになるんだと思いますが、この制度の導入が必要なんだと思っております。

 したがって、御指摘がありましたように、この制度を導入いたしますと、千万円以下の免税事業者からの仕入れにつきましては仕入れ税額控除ができないということとなりますので、免税事業者からの取引が排除されるのではないか、または、課税選択を余儀なくされて、この制度の適格請求書の発行や税額計算など多大な事務負担というものが負わされるのではないかといったような懸念をすることがあるということは、もうよく承知をいたしております。

 しかし、この制度の導入は、これは事業への影響はさまざまでありまして、例えば納入事業者が簡易課税を適用しているような場合、納入業者ですよ、納入業者が簡易課税を適用している場合には納入事業者はこの制度を利用しないということから、免税業者から取引を排除されるということはありません。

 また、免税事業者が課税選択というものを行う場合には、今度は簡易課税の利用によって税務負担を軽減することも可能です。

 さらには、この制度は税額が明確になりますので価格転嫁がしやすくなるという御指摘も、これは役所ではないところから聞かされたんですが、そういった指摘もありました。

 いわゆる免税事業者にはこうしたことをよく御理解いただいた上で、この制度の導入に向けた対応の検討を行っていただく必要があるんだと思いますけれども、我々といたしましては、これは軽減税率制度やこのインボイス等々の制度を含みます消費税制度につきまして周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

 その上で、免税事業者が課税事業者への転換の要否というものを見きわめるのに、これはしっかりとした準備が要るんだと思います。どっちがいいかなといろいろ考えられると思います。

 したがいまして、インボイスの導入というものは平成三十三年ということで約四年間の準備期間がありますので、その制度の導入からさらに六年間、免税事業者からの仕入れについては一定の仕入れ税額控除というものを認めるということにさせていただいております。

 さらに、今回の税制改正の法案の附則におきまして、政府としては、この制度の導入にかかわる事業者の準備状況及び事業者の取引への影響の可能性などをよく検証させていただいて、必要な対応を行うといたしておりますので、しっかりと事業者への対応を行ってまいりたいと思っております。

 これは我々、役所で余り商売したこともないようなのが考えていますので、問題はいろいろと今後出てくる可能性はこれは十分にあると私はもうそう思っておりますので、そのときはそのときなりにきちんと制度をさせていただく、その間の残存期間、四年間とか六年間という準備をさせていただいておりますので、そういった準備を十分にさせていただいて、御迷惑がかからぬようにいたしたいと思っております。

落合委員 今までのこの件のほかの方の質問よりもかなり丁寧に、そして踏み込んで答弁をいただいたと思います。これは重要な問題であると思いますので、ぜひ注視して対応していただければと思います。

 今までのこの委員会での大臣の答弁の中にも数字があったのですが、我が国の八百万事業者のうち五百万事業者が免税業者であると。そのうち、特にBツーBの仕事をしている事業者に今回のこの影響があるわけですが、これは役所の方で、この五百万事業者のうちどれぐらいの事業者に影響がある、BツーBをどれぐらいの割合の事業者がしていると把握しているんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 全事業者が八百万事業者いらっしゃいまして、課税事業者が三百万ということで、残り五百万というのが免税事業者ということで推計してございます。

 ただ、その中のBツーB、BツーC、ちょっと統計がないものですから、明確な数字はお答えできないことをお許しいただきたいと思います。

落合委員 これも先ほど大臣が答弁されたように、丁寧なケアが求められる先が五百万事業者あるということです。五百万という数字はかなり大きな数字ですので、この四年後の導入ですか、その間に丁寧に対応していかなきゃいけない。どのような形でどういうふうに対応するのか、これは改めてまた期間を置いて質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひ早急に前進があるように御検討をいただければと思います。

 先ほど、午前中に私も申し上げましたが、軽減税率自体は低所得者への配慮から今回導入されるということですが、にもかかわらず、小規模事業者が今回の件ではもしかしたら締め出されてしまうかもしれないという懸念がある。しかもそれが、八百万事業者のうち、今のところ、もしかしたら五百万事業者にそれがあるかもしれないということですので、こういうことがあってしまったら本末転倒の制度の導入となってしまいます。

 ぜひ、この点、改善しなければならない大きなポイントだと思いますので、御対応をお願いしたいと思います。また日を改めて質問をさせていただきます。

 それでは、税の公平性という点で、先ほども古川理事が少し触れましたが、消費税の不正還付の問題でございます。

 一部の新聞でも今月記事にはなっていましたが、国税庁のまとめによると、二〇一三年、一四年と、消費税の不正還付件数がふえている。払い過ぎた消費税を還付してもらう制度を悪用し、虚偽申告などで還付金をだまし取る業者がふえてきているということです。

 国税庁の把握している数字で、直近一年間で発覚した不正還付件数は何件で、金額は幾らなのでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税の不正還付のこの一年間の実績についてのお尋ねでございました。

 直近、平成二十六事務年度、これは平成二十六年七月一日から一年間ですけれども、この一年間における消費税の還付申告法人に対する調査件数で申しますと、約七千四百件しております。このうち、消費税の非違、要するに誤りがあった法人は四千百件ほど、追徴税額が七十七億円となっております。また、消費税の非違があった法人の中で、不正に還付金額の水増しなどを行っていた件数は約七百件でございまして、その追徴税額は十一億円となっております。

落合委員 これも、今八%、それで一〇%と税率が上がっていけば、恐らく平均して消費税を扱う金額はふえていくわけです。よりインセンティブが働いてしまう可能性もあり得るということで、軽減税率導入と同時に消費税は一〇%になるわけですが、この一〇%増税に当たって、この点、防止策を何か考えていますでしょうか。

星野政府参考人 お答えいたします。

 消費税は、預かり金的性格を有することから、適正な税務執行が一層求められているところでございまして、国税庁においては、消費税の適正課税の確保について、重点課題の一つとして取り組んでいるところでございます。とりわけ、御指摘のような不正還付事案については、厳正な対処に努めております。

 具体的には、消費税に係る還付申告書の提出があった場合には、その申告書の添付書類、保有する資料情報等に基づきまして、還付原因等について厳格な審査を行っているところでございます。その上で、その内容に疑義がある場合には、書面照会や税務調査等により納税者と接触を図り、適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。

 今後とも、こうした厳格な審査と的確な税務調査等を通じまして、不正還付の防止にできる限り努めてまいりたいと考えております。

落合委員 消費税は間接税でありますので、一旦預かるわけです。預かったタイミングと払うタイミングが違うということで、いろいろな問題が起きるポイントがあるわけです。

 今回の税制改正の中に、ほかのあれですけれども、加算制度の見直し、短期に繰り返して無申告または仮装、隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置の導入案も示されていますが、昔から、税は正直な人たちが払っているんだと言っている人たちもいるわけですから、税の公平性、この基本がやはり税の体系を維持していくためには重要だと思います。

 これも、消費税がアップしたときにどのように数字が動いていくのか、それをしっかり見て、必要があれば政治としても対応していかなければならないと思いますので、ぜひ私もこの点は注視をさせていただきます。

 では、その次に、消費税のまた関連で、外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充についてお伺いをさせていただきます。

 地方創生を推進するための取り組みとしても、好調に拡大する外国人旅行者による消費、最近は爆買いという言葉も聞かれますが、外国人旅行者向けの消費税免税制度のさらなる拡充ということで、法案では一日一店舗当たり一万円超から五千円以上に購入下限額が引き下げられるということです。

 まず、今回の改正の目的は何でしょうか。

麻生国務大臣 これは、今おっしゃるように、三年前約八百八十万人ぐらいの来訪者が去年一千九百七十四万人まで急激にふえておるんだと思いますね。

 これに伴いまして、その外国人の旅行者が消耗品以外の一般商品、いわゆる家電とか衣料品とか、そういったものを購入する場合には、これまで一万円を超えておるというものでないと消費税が免税とはなっていないんですが、今般の改正案で、いわゆる飲食料品とか化粧品とか、そういったようなもののほか、医薬品、そういった消耗品と同様に五千円以上のものでも免税となるように下限額を引き下げるようにした。

 その背景は何かということなんだと思いますが、これは、地方の商店におきまして少額な販売が多いので、免税となる購入の下限額というものを引き下げてほしいという御要望がありましたので、外国人旅行者による旅行消費の経済効果というものを地方にさらに波及させるという観点から行わせていただきたいと考えております。

落合委員 ありがとうございます。

 この免税によって、今までも一万円超ということで免税がされていましたが、今までこの一万円超に外国人の消費に対して免税をしたことで、どれぐらいの経済効果があったのでしょうか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの効果ということでございますけれども、御案内のように、訪日外国人の消費拡大につきましては、免税の制度の緩和だけではなくて、ほかに、為替の動向でありますとか、外国人向け訪日プロモーション、ビザ緩和の要件など、いろいろな対策による訪日旅行者数の増加などがございます。あと、消費税免税の店の数が拡大しておる、こういったこともありまして、その効果だけを定量的に取り出してちょっとお示しすることは難しいかというふうに考えてございます。

落合委員 今までの経済効果の算定は難しいということで、では、今回一万円から五千円に下限を下げることの経済効果もわからないということですね。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回も、やはり、定量的な効果につきましてはお示しすることは難しいかと考えておりますが、先ほど財務省の御答弁にもありましたように、今回の制度改正によりまして免税での買い物がしやすくなるということでございまして、さらなる消費の拡大、そして地方創生の実現に資するものというふうに考えておるところでございます。

落合委員 これもバランスが重要であると思います。効果は確かにあると思いますが、一方、免税店になることで事務手続が発生するわけですので、小さい事業者、引き下げの要望があったということですが、事務手続上、免税店になることを選ばない事業者もバランスが崩れた場合はあり得ると思います。

 確かに、本当に外国人の旅行収支はふえていまして、昨年、二〇一五年、旅行収支が五十三年ぶりに黒字になっています。外国人の我が国国内での消費額は三兆八百三十八億円、約一兆円もふえております。

 しかし、免税されているからどれぐらいふえたというのがわからないわけですから、過度に免税政策に頼ることがないことが必要であると思います。結局、うちのお店だけが免税していますということの競争になってしまうと、国内に来た外国人のとり合いになってしまうわけで、ここは、観光庁も、そして政府も、日本自体に来る外国人の数をふやしていかなければならないということが一番重要だと思います。

 心配されるのが、旅行収支の黒字額が一番大きいのは中国でございます。足元の経済は失速していて、為替も元安傾向である。それから、ニュースによると、銀聯カード、一番中国で使われているカードの海外での現金引き出し限度額の引き下げも行われた、こういった要素がありますので、ぜひ総合的な、免税政策だけに頼らない、外国人の消費の受け入れ政策をしていかなければならないと考えます。

 この点、副総理として、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 おっしゃるように、中国は一番わかりやすい例で、外貨準備高、十二月、一千五十億ドル、一月も同じく一千億ドルぐらい外貨準備高が減っております。十二兆円という額がぼんと減るというのは、それは二カ月連続ですから、このままいったら二年もすればゼロになるということですから、それはちょっと異常な事態。

 したがって、銀聯カード、そのほかいろいろなことになっているんだと思っておりますので、私どもとしては、この爆買いというのがそんなずっと続くなんていうのを考えるのはそれは間違いなんであって、基本的に日本としては、いろいろな意味で観光というものに関しましては、リピーターが多いという現実を見たときに、やはり、日本に一回来るともう一回来たいと思わせているというのが日本という国が持っておる非常に大きな要素なんだと思っていますので、そういったものを含めて今後とも対応を考えていかねばならぬところだろうと思っております。

落合委員 それでは、時間の関係で法人税はちょっと飛ばさせていただきまして、贈与税について伺いたいと思います。

 贈与税の控除の拡大というのは昨年の目玉でもありました。先日私は、少子化対策関連税制の中で、ことしの目玉である三世代同居はどうなのかということを取り上げさせていただきました。去年の目玉だった贈与税の拡大についても、どうなのかなと私は思っています。

 まず、これはどういった控除の中身なんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘は、恐らく、結婚、子育ての贈与の特例のお話かと思います。これは、昨年の税制改正でお認めをいただきまして、今施行されております。

 制度の趣旨は、祖父母や親の資産を早期に移転するということを通じて、子や孫の結婚、出産、育児を後押しする、こういう目的で講じたものでございまして、枠が一千万円の資金を一括贈与した場合に、その贈与税につきまして非課税にするという制度でございます。

 期限がございまして、二十七年の四月から三十一年の三月末までという時限で講じておるわけでございます。

落合委員 一見すると、世代間格差の解消のためにも重要であるというふうには思うんですが、この控除は平成二十七年、去年の四月から始まりましたが、実績はどのぐらいだというふうな数字は出ているんでしょうか。

佐藤政府参考人 この制度を利用する機関の主たるものは信託銀行になりますので、信託協会から公表される数字としてお答えをさせていただきます。

 平成二十七年四月から九月末までの約半年間でございますが、その実績は、信託の契約件数が二千六百九十五件、信託財産設定額が六十三億ということでございます。

落合委員 これは、少子化対策ですとか世代間格差解消の去年の目玉なわけですが、子や孫が四十九歳までオーケーと幅が広い中で二千六百件であるというのは、やはりほかにももっともっとこういった政策を行っていかないと、これだけでは不十分であると思います。

 しかも、この制度の問題点は、自分の子供や孫が対象である。今言われているのは、機会の均等がどうなのかということです。生まれながらに学歴まで決まってしまうのではないか、生まれながらに年収まで決まってしまうのではないか、こういった問題を解決しなければならない中で、やはり自分の子供、孫だけしか控除にならない。これでは、世代間格差を、マクロで見たら少しはならすことがあるかもしれないですが、世帯間の格差、世帯間掛ける世代間の格差に対応することはできません。

 こういった、視点は重要だとは思うんですが、全体に波及するような税制控除をぜひ考えていただければと思います。

 法人税や特例公債法については、次の機会に取り上げさせていただきます。

 本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 二十分ですので、租税特別措置と研究開発減税に絞って質問させていただきます。

 庶民には消費税増税、赤字企業には外形標準課税の拡大の一方で、黒字大企業は大減税。そして、黒字大企業が大きな恩恵を受けている税制の一つが租税特別措置です。

 昨年も研究開発減税の問題を議論させていただきました。赤字国債を発行して租税特別措置を行っているような今は状態だと言っていいと私は思うんですよ。内部留保をため続ける大企業への減税というのが中身としては多いわけですから、思い切った見直しが必要だと思います。

 まずお伺いしますけれども、二〇一四年度の実態調査を見ますと、研究開発減税は、昨年をさらに上回って六千七百四十六億円、そのうち上位十社が三六・四%を占めて、減税額は二千四百五十五億円。この上位十社の納めている法人税額は幾らでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘の計数は、毎年財務省が国会に提出をしております租税特別措置実態調査の報告書に基づくものでございまして、この報告書は、平成二十二年の立法当時におきまして、個別名は公表しないという整理になっているところでございます。

 こうした中で、今御指摘ありましたように、特定の租税特別措置の適用額の上位十社につきまして、法人税の納税額といった、報告書を超えた追加的な情報をお示しするということにつきましては、報告書の情報と突き合わせた場合、個別企業名が推測されやすくなる、あるいは、それについての法人納税額についてまでの推測のおそれが生じるということもございまして、追加的な情報をお示しすることはできないということを御理解をいただきたいと思います。

宮本(徹)委員 いや、個別企業名は、去年、出してくれと言って出せないという押し問答もありましたけれども、今回は別に個別企業名を聞いているわけじゃないんですよ。十社まとめて出してくれ、そうすれば個別企業は特定されることは、まあ特定は簡単にできるんですけれども、有価証券報告書を見ればできるわけですけれども、政府としてはそれを出せないと言うんだから、十社まとめてだったら出せるんじゃないかということを言っているわけです。

 だって、租税特別措置の透明化というのがもともとの趣旨だったわけですね。これが本当に公平にやられているのかどうかといったときに、実際、減税を巨額に受けているところがどれぐらい税金を納めているんだ、何ぼ納めているんだ、こういうことは、やはり明らかにされないと私はおかしいと思うんですよ。

 かつて、三メガバンクグループ銀行が長期にわたって法人税を納めていないことがありました。そのときは、過去の議事録を見ましたら、財務金融委員会の場でも、政府の側からは、おおむね十年ぐらい納めていませんということで、それこそ企業名を特定できますね、納めていませんという話ですから。そういう答弁をした例もあるわけですよ。

 ですから、別に個別の企業名を明らかにしろと言っているわけじゃないですよ。租税特別措置が公平なものなのかどうなのかと明らかにする上でも、どれぐらい税金を納めているのかというのをこれは明らかにする必要があるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、これをぜひ検討していただけないですか。個別の企業名を明らかにしろということじゃないですよ。

麻生国務大臣 財務省が毎年国会に提出をさせていただいております租特適用実態調査の報告書につきましては、平成二十二年度の立法当時において、個別企業の名は公表しないというように整理をされておるのは御存じのとおりです。

 したがいまして、お求めのように、特定の租税特別措置の適用額の上位十社につきましても、法人税の納税額といった、報告書にはない追加的な情報をお示しすることになりますと、報告書の情報と突き合わせをいたしました場合には、個別企業名がより推測されやすくなるということになりますので、個別企業の法人税の納税額についてまで推測されるおそれが生じるということから、そうした情報をお示しすることはできないということを御理解いただければと存じます。

宮本(徹)委員 同じペーパーを読まれても困るんですけれども、いわば、税の公平性と信頼にかかわる問題だと思います、どれぐらい実際に納めているのかということは。これはぜひ検討していただきたいと重ねて求めておきます。

 そして、この研究開発減税については、昨年、会計検査院が厳しい指摘を行いました。「所見」がこういうことを書かれております。

 「租税特別措置等は、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則の例外措置として設けられているものであり、その効果等を不断に検証して、真に必要なものに限定すべきである」、「関係省庁においては、適用額からみた業種や企業の偏りの状況や、特別措置の適用に伴う減収額が減収見込額を上回る状況等について、検証内容を一層充実させ、拡充等の要望に当たっては適用実態等からみて拡充後もなお措置の内容が必要最小限であるとする説明を十分行い、特別措置の実効性を高めるとともに、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことが望まれる。」ということが書かれております。

 財務省としては、この会計検査院の指摘というのはどう受けとめられているんでしょうか。

麻生国務大臣 この研究開発税制につきましては、企業の研究開発への取り組みというものを後押しするものであって、実際に、幅広い企業に活用をされておると思っております。適用額、いわゆる減収額が大きくなっておりますので、政策効果などをよく見きわめていくことも必要だというのは当然のことだろうと存じます。

 既に平成二十七年度税制改正において、総額型の税額控除の限度を、当時の原則であった法人税額の二〇%から三〇%へと上乗せする特例が期限を迎えましたので、一般の研究開発の上限枠を二五%とするなど見直しを行っており、約一千百四十億円の財源を確保いたしており、一定の改革は実現したものと考えております。

 今後とも、会計検査院の報告書でも指摘をされておりますように、関係省庁、これは適用状況をしっかりと検証し、説明責任というものを果たしていくべきものであり、財務省といたしましても、他の関係省庁とよく議論を行ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 いや、会計検査院がとりわけ指摘したのは、事前の減収見込み額との差なんですよ。二〇一二年度の研究開発減税について事前の減収見込みは二千五百九十一億だった。ところが、実際は三千四百九十四億で、九百億円も減税の方が大きかったわけでありますよ。

 ところが、なぜ減収額が大きくなったのか、その検証もやらずに、次から次へと拡充の税制改正要望が出されて、実際には拡充がされてきた。ここを会計検査院は問題にしているわけですよ。

 国民の納得できる必要最小限の特例措置だ、その額として二千五百九十一億円というのが見込み額で示されたわけですよ。それを九百億円も上回って、それがふえたことの検証もないままさらに要望するというのは、およそもうこれは、必要最小限の措置とはとても言えないことになっていると思うんです。

 この指摘についてはどう受けとめているんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、租特のいわゆる適用額、減収額になりますけれども、につきましては、個別企業の企業経営等々の状況に応じて事前の見込みから変動し得るものだとは思いますけれども、会計検査院の報告書で指摘されておりますように、関係省庁においてそうした状況について分析をよくして、その検討結果を税制改正要望に反映させていくべきものだと考えております。

 また、そうした指摘を踏まえて、財務省といたしましても、今後の税制改正のプロセスにおきましては、租特のあり方についてさらにしっかり検討してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 検討していくということですけれども、ちなみに、二〇一四年度の研究開発減税、総額型は五千五百三十五億円です。このときの税制改正要望の際の省庁の減収見込み額は四千七百六十七億円ですから、これも物すごく大きく上回っている。だから、省庁がこれぐらいが必要最小限ですよというのを上回る減収が繰り返されているわけですよ。

 だから、本当にそれが必要最小限の措置とはもう言えない状況になっているということで、厳しい検証をしなきゃいけないと思うんです。

 しかも、各省庁が出してきている税制改正要望自体かなりいいかげんだというのを、今回改めて見て、私は思いました。

 税制改正要望の記載要綱というのを財務省にいただきました。そこには「要望の措置の妥当性」という欄があるんですけれども、ここには何を書くかといいますと、「課税の公平原則に照らし、国民の納得できる必要最小限の特例措置となっているか否かを記載すること。」というふうに書いてあるわけです。

 では、研究開発減税の税制改正要望はどうなっているか。これは平成二十五年度のも見ましたけれども、このときは総額型を一・五倍に拡充したときですよ、二〇パーから三〇パーに引き上げたときですね。

 この要望の措置の妥当欄を見ましたけれども、なぜ必要最小限の措置となるのかという話は何も書いていないんですよ。書いてあるのは、簡単に言えば、我が国においては研究開発の中心は企業だ。それに対する国の支援は少ない。だけれども、イノベーションのためには研究開発を促進することは必要だ。世界各国でも研究開発の優遇税制があります。こういう話しか書いていないんですよ。

 財務省の記載要綱では、国民が納得できる必要最小限の措置だということを書けということになっているのに、そういうのも書かずに、実際は、こういう税制改正要望を受けてやられているわけですよ。

 こういうのはちょっとやり方として大変ずさんじゃないかと思うんですけれども、大臣、どう思われます。

麻生国務大臣 今の御指摘ですけれども、この租特につきましては、真に必要なものに限るべきとされているというのはもう事実でありまして、これは、関係省庁が適用状況をしっかりと検証して実効性というものを高めると同時に、説明責任というものを果たしていくべきものではないかという御指摘は正しいと思っております。

 したがいまして、財務省としても、これは十分に検証を行っていくべきと思っておるところでもありますので、これらを踏まえまして、今後とも租特のあり方というものにつきましては、さらにしっかり検討してまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 しっかり検証していただきたいと思いますけれども、私、結局こういう租特のあり方なんか、いつも経団連からの要望を受けて与党税調で話し合って決まっちゃうから、実際は、記載要綱はいいかげんなものであっても決められちゃう、こういうことになっているんじゃないかというふうに思ってしまいます。

 その上で研究開発減税の問題をさらにお伺いしたいと思いますけれども、二〇一三年度のトップがトヨタです。一千二百億。二〇一四年度分もトップはトヨタで、一千八十三億ということです。

 ですから、一社に二年も続けて一千億を超えるという減税を行う、これは偏っているという認識はないでしょうか。

麻生国務大臣 研究開発税制の適用金額について一社が一千億を超えるというのは、確かに大きな数字ではあります。しかし、そうした企業が研究開発投資に積極的に取り組んでいるあらわれでもあると思っておりますので、その分だけ法人税を多く負担しているということでもあろうと思っております。最大でも法人税の四〇%が限度ということになろうと思いますので、そういった数字になります。

 傍ら、研究開発税制の全体としては、適用金額全体に占める十社の割合は二十六年度は三六%でありますが、比較的高い水準ではありますが、他方、適用件数というのを見ますと、中小法人の利用も約八千件ございます。また、全体では一万二千件に及んでもおりますので、幅広い企業に活用されている面もあるのではないかと考えてもおります。

宮本(徹)委員 幅広い企業が、中小企業なんかが活用するのはいいと思いますけれども、ただ、一社に一千億円、ずば抜けた金額で毎年減税措置が行われているというのは、これは、普通に考えたら偏っていますよ。一千億あったら、どれだけ国民のためのいろいろな施策ができるのかということだと思います。

 しかも、トヨタの利益というのは空前なわけですよ。二〇一四年度までの二年間で税引き前利益は一兆二千六百八十九億円ふえている。連結内部留保は三兆円以上ふえて十八兆円。こういうところに一千億の減税をしていく。これが国民が納得できる必要最小限の措置と言えるんでしょうか。

 だってトヨタは、これだけの体力がありますから、研究開発をやりますよ、減税しなくたって。それだけの体力を十分持っているところですよ。ここに毎年一千億の減税を租税特別措置でやるというのは、国民が納得できる必要最小限の措置とはおよそ言えないんじゃないでしょうか、大臣。

麻生国務大臣 この制度につきましては、企業の研究開発への取り組みを後押しするというのが一義的なところでありまして、実際に幅広い企業に活用されておりますのは今申し上げたとおりです。

 適用額、いわゆる減収額が大きくなっておりますが、政策効果などをよく見きわめていく必要があるということは、そう思っております。

 既に二十七年度の税制改正において、総額型の税額控除の限度を当時の原則であった二〇%から三〇%へ上乗せする特例が期限を迎えましたので、既に開発の上限額を削っておりますので、そういった意味では、一定の改革が実現したものだと考えております。

 いずれにいたしましても、会計検査院の報告書でも指摘されておりますように、よくよく多省庁の、これは関係しているところがいろいろありますので、他省庁ともよく議論を行ってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 政策効果を見きわめるということを繰り返されるわけですけれども、経済産業省が毎年委託調査をして、研究開発減税の効果というのは出されています。

 それを見て私は思うんですけれども、例えば二〇一四年度の税制改正では、研究開発減税の増加型というのが拡充されたんです。それについてのアンケートですけれども、増加型を利用する見込みの企業でも、この税制改正の影響がなかったと答えたのが八一・二%なんですよ。

 ですから、結局、企業はそれぞれがもうけを上げて競争に勝ち抜くために、やはり必要な研究開発はやっていっていると思うんですよ。だから、この増加型を拡充したけれども、税制改正がなくても自分たちで研究開発したというところが圧倒的多数というのが、経済産業省のやっている委託調査でも出ているわけですよ。

 これは、そういうところもしっかり見て政策効果を見きわめるということはやっていただきたいというふうに思います。

 その上で、二〇一六年度末で研究開発減税の増加型、高水準型は特別措置の期限が来ます。同じ期限を迎える設備投資減税、これは今度の税制改正でやめるということが盛り込まれたわけですけれども、この研究開発減税の増加型、高水準型の租税特別措置は廃止が盛り込まれておりません、今度の税制改正には。これは何で盛り込まなかったんですか。

麻生国務大臣 この租税特別措置というのは、特定の政策目的を実現するための有効な政策手段となり得るということがあります一方、間違いなく、必要性や政策効果を見きわめた上で見直しを行っていくべきものであるという点に関しましては全くそうだと思っておりますので、個別の租税特別措置の性質を踏まえてその取り扱いというのを考えていく、これは適当なことだと思っております。

 御指摘の生産性向上設備投資促進税制につきましては、全体の期限が二十八年度末であるところから、一部は既に二十七年度末が期限でありますので、それに合わせて、二十八年度の税制改正プロセスで議論を行ったものであります。

 また、この制度は設備投資の促進を目的といたしておりましたので、政府として、官民対話などの場におきまして設備投資の拡大を呼びかけております中、この制度につきましても、期限をいたずらに延長しないという姿勢をきっちり示すことによって企業に投資判断の前倒しを促すということを狙って、期限どおり、二十八年度末に廃止することについて明確にしたものであります。

 他方、研究開発税制のうち、いわゆる増加型及び高水準型の部分についても、二十八年度末が期限とされておりますが、これは、企業の研究開発の取り組みを後押しするためのものであると同時に、期限が到来する二十九年度税制改正プロセスにおいて、政策効果などを十分見きわめた上で見直しを検討していくべきものと考えておりますので、生産性向上設備投資促進税制とは事情が少々異なっておると考えております。

宮本(徹)委員 政府税調の原則は、期限が来た租税特別措置は原則的にやめるということが書き込まれているというふうに思います。そういう点でいえば、何で研究開発減税は続いていくのかということを考えると、やはり結局、経団連が言うから、経団連の研究開発減税だけは残してくれという、そこにいつもいつも応えているからそういうことになってしまっているんじゃないかと疑わざるを得ません。

 やはり経団連の方に顔を向けている限り、本当だったら国民の暮らしを支えるための大事な財源が奪われ続けるということになりますので、そういうところの政治姿勢はきっぱり改めて、租税特別措置というのは期限が来たらきっぱりやめて、国民の暮らしを支える財源に回す、こういうことをしていただきたいということを求めまして、質問を終わります。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、消費税増税に関連してまず質問をしたいと思うんです。

 先週、各種の経済指標が公表されました。あらゆる指標が景気後退を示しております。

 二月十五日公表の四半期別のGDP速報、二〇一五年十―十二月期の実質GDPの成長率はマイナス〇・四%、年率マイナス一・四%。また、名目GDP成長率はマイナス〇・三%、年率でマイナス一・二%。家計最終消費支出は実質マイナス〇・九%、名目マイナス〇・八%ということでありました。

 二月十六日公表の家計調査、家計収支編を見ますと、二〇一五年平均速報結果、二人以上世帯の家計消費は、前年比名目一・三%の減少、実質二・三%の減少と、二年連続の減少であります。二人以上世帯のうち勤労世帯の家計収支も、前年比名目一・一%の減少、実質二・一%の減少ということであります。

 二月十六日公表の労働力調査、詳細集計を見ますと、正規の職員、従業員数は、安倍内閣発足の二〇一二年十―十二月、三千三百三十万人だったのが、二〇一五年十―十二月、三千三百七万人と減少をいたしております。

 安倍首相は、来年四月一日に予定している消費税率一〇%の増税の時期について、リーマン・ショックや東日本大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施すると、けさもその場で答弁をされておりました。しかし、二〇一四年に延長を決断した際には個人消費を最大の理由としたわけでありまして、今回も前回と同様、個人消費は連続して減少、しかも、消費税増税という要因がないのにここまで個人消費が後退しているというのが現状なんです。

 午前中も総理と直接宮本徹議員が議論をしておりましたが、「消費税を引き上げることによって、景気が腰折れしてしまえば、国民生活に大きな負担をかけることになります。そして、その結果、税率を上げても、税収が増えないということになっては、元も子もありません。」こう言って消費税の増税を延期したわけでありますから、現在の経済指標を見れば、来年、消費税の増税を実施すれば、まさにそのような事態、景気の腰折れ、税率を上げても税収がふえない、こういう事態が発生するのではないか。これは、財務大臣はそのようにはお考えになりませんか。

麻生国務大臣 一昨年の、消費税を八%、五から八への引き上げというものが消費に影響を与えたというのは事実であります。

 当時、経済が腰折れするリスクというものを回避して、そして、デフレ脱却、経済再生へ万全を期すという観点から消費税率一〇%の引き上げを延期することとなったというのが、あの十一月の現状だと思います。

 その後、経済再生の取り組みによって日本経済は、あの当時とは違って、企業収益は過去最高、有効求人倍率は二十四年ぶりの高水準、雇用の面です。昨年の賃金上昇率はいわゆる十七年ぶりの高水準となるなど、好調な企業収益や雇用・所得環境というものの改善につながって、それが消費や投資に結びつくという経済の好循環が拡大、深化しつつという過程に来ているんだと我々は理解しております。

 平成二十九年の消費税率の一〇%の引き上げにつきましては、もうたびたび申し上げておりますように、我々としては、この社会保障制度を次の世代に引き渡すということは、建設公債とは違って、赤字公債を発行し続けているという状況は極めて無責任なことになると思いますし、また、マーケットや国際社会の中における国家の信認というものを確保するための上からも、こういった財政健全化というものにきちんと向かっているという姿勢を示す意味からも、我々としては、消費税率一〇%の引き上げというものについては確実に実施をさせていただきたいと考えております。

宮本(岳)委員 個人消費がこれだけ後退している中で消費税の増税は、景気を悪化させることは明白だと私は思います。

 ことしに入り株価は下落を続けておりますけれども、最近の日経平均株価、一万五千円から一万六千円、きょうも一万六千円を割り込みました。こういう推移であります。昨年の高値二万九百五十二・七一円、これから比較すると、五千円から六千円の大幅な下落ということになります。もう少し下がれば、リーマン・ショックなどの急落局面並みというような株価の下落だという指摘もあるわけです。

 そこで麻生大臣に重ねて聞くんですけれども、リーマン・ショック並みの重大な事態というのは、一体どのような基準で判断するのか。少なくとも、株価の変動幅、下落幅も考慮される基準の一つとなるのか。麻生大臣にお伺いしたい。

麻生国務大臣 いわゆる足元では、御存じのように、世界的なリスクの回避、金融とか金とかそういう意味ですけれども、リスクの回避の動きが金融市場というところで広がっております中で、日本の市場でも、これは変動が見られておるのは事実です。

 しかし、実体経済を見れば、先ほども申し上げましたように、企業収益というものが一番肝心なところですが、過去最高となっておりますのは、日本経済のファンダメンタルズというものはしっかりとしておるということは、これはもうはっきり申し上げておかないかぬところだと思っております。

 その上で、平成二十九年四月の消費税率一〇%の引き上げにつきましては、これまでも申し上げてきておりますように、重大な事態が発生しない限り確実に実施するということに尽きるんですが、日本経済に対する重大な事態というのはどんなもんじゃというような、経済状況なのかについての説明ということなんだと思いますが、それはまさにそのときの政治判断においてなされるしかないんだと思いますが、その判断を具体的な基準で申し上げるということは極めて困難だと思っておりますことは御理解いただけると思っております。

 少なくとも、景気判断条項を削除をいたしております以上、一昨年のような景気判断というものを行うことはないということだと存じます。

宮本(岳)委員 もう少しお伺いしたいんですが、株価の大幅な下落、こういうものがその判断の基準のもちろん全てでないことはわかるんですが、株価の下落も入るのか入らないのか。いかがですか。

麻生国務大臣 何を基準にするかというのは、これはもう経済判断をするときには、雇用もありましょうし、経済状況もありましょうし、いわゆる企業の業績等とかいろいろなもの、そういったもろもろ考えながら、一つに、株価というものもその中の一つだろうとは存じます。

宮本(岳)委員 株価がそこに含まれることを否定はされなかったと思うんです。

 二十二日のブルームバーグの報道、実に衝撃的な報道がございました。「原油相場が一バレル当たり三十―四十ドルのレンジにとどまれば、世界の政府系ファンドが今年、四千四十三億ドル(約四十五兆八千億円)を株式市場から引き揚げる可能性があると、ソブリン・ウェルス・ファンド・インスティチュートが指摘した。」こういう報道であります。

 政府系ファンドは二〇一五年に上場株式を約二千百三十四億ドル相当売却した、こう言われており、仮にことしじゅうに、このブルームバーグが伝えるとおり、四千四十三億ドル、約四十五兆八千億円、こういう株式が売却されれば、二〇一五年の倍のインパクトで株式市場の下落を招くことになろうと思うんです。

 二〇一五年に政府系ファンドはこのような投資行動を行ったとの認識を大臣はそもそも持っておられるか、ことしの投資行動についてそのような動きがあるのかどうか。麻生大臣のこの御認識をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、世界じゅうにあります政府系ファンドの投資行動について御指摘のような報道があったということは承知いたしておりますが、同時に、市場関係者から、世界の政府系ファンドのことしの動向につきましては、原油価格の下落とか世界的な景気減速懸念等々を背景にして、リスクの回避の動きが広まっているということがあるということも承知をいたしております。

 ただし、市場というものは、これはさまざまな要因で動きますので、個別の投資家の動向がすぐに市場に与えるという影響について、これは具体的にコメントするということは差し控えさせていただきたいと存じますが、一方、安倍内閣におけるこの三年間の経済再生を受けた取り組みによって、企業収益が過去最高となるなどしているから日本に対しての買いが入ってくるんだという面もあろうと思いますので、日本経済のファンダメンタルズはしっかりし続けていくというのは大事なところですが、いずれにしても、市場の動向というものにつきましては、常に関心を持って見守っておらねばならぬところだと思っております。

宮本(岳)委員 いやいや、ファンダメンタルズがしっかりしているから日本に買いが入っているのは結構なんですが、このブルームバーグの報道どおり、政府系ファンドにこれだけの売却の動きがあれば、つまり、オイルマネーが下がっているものですから資金を引き揚げる動きがあると、四十五兆からのお金を売却して引き揚げれば、日本の株式市場も相当の影響を受けることはもう誰が考えても当然であって、こうなればリーマン・ショック並みの重大な事態が想定されるのではないかと私は思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 たらればの話をしていきますとこれはちょっとエンドレスな話になりますので、ちょっと時間ももったいなかろうと思いますので、先生、これはエンドレスの話をしないと、途中で切りますと、話をいいところだけ切られて、また話が別の方向に飛びますのはもう数々これまで経験させられましたので、そういったことは避けないかぬと思っております。

 今言われたようなことは、いろいろな状況というものを私どもは考えておかないかぬというので、先ほど、もう一人の宮本先生の方の答弁にも申し上げたと思いますけれども、私どもとしては、基本的に、今世界じゅうの情勢がいろいろな形で動いておりますので、これは何も政府系ファンドに限らず、原油の話にしても、ヨーロッパの銀行の話にしても、アメリカの話にしても、中国の話にしても、いろいろな不安要素というものが四つも五つもあちらこちらにありますのは事実でありますので、そういったものがどう連携して、どういった形で我々に影響を与えてくることになるかというのを予想するというのはなかなか難しいんだと思っておりますが、非常事態というものは常に考えておかねばならぬものだと思っております。

宮本(岳)委員 きょうはひとつじっくりと議論したいと思って、構えて質問させていただいておりますが、余りにもこのブルームバーグの報道が衝撃的なものですから、もちろん、個々の投資家の動きについて具体的に答弁できないことは重々わかって聞いておるわけです。

 きょうは日銀の黒田総裁にも来ていただいております。

 世界の政府系ファンドの投資行動について、もちろん情報収集はされておられると思うんですけれども、どのようにこういう報道を認識されているか。もちろん一般論としてしか答えられないとは思いますが、ひとつ御見解をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 近年、国際金融市場において政府系ファンドのプレゼンスが大きくなっているということは事実であります。また、このところの世界的な株価下落の背景として、原油価格の下落を受けて産油国の政府系ファンドが株式の売却に動いていることがあるという見方が市場にあるということも認識しております。

 その上で申し上げますと、先ほど麻生財務大臣が言われたことと重なりますけれども、現在の国際金融市場において大きな振れが続いている背景としては、原油価格下落、あるいは中国経済の先行き不透明感に加えて、欧州の銀行セクターに関する懸念、あるいは米国の金融政策の先行きに対する不透明感が強まるという中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢が、私から見ますとやや過度に広がっているということがあるのではないかと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、市場は市場でございますので、日本銀行としても、こうした国際金融市場の動きが我が国の経済あるいは物価にどのような影響を与えるかについては、しっかりと注視してまいりたいと思っております。

宮本(岳)委員 昨年の二倍の上場株式が売却されれば、日本の市場にも重大な影響を与えることはもう間違いありません。

 原油価格の一段の下落、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっていると今御答弁がありました。黒田総裁もそういう御認識です。先月の政策決定会合でマイナス金利を導入されたのも、そういう動きもその一つの要因なんだろうと思います。

 前回、安倍総理が消費税増税の時期を二〇一七年四月一日に延期すると決断したのは、量的・質的金融緩和政策を拡大した二〇一四年十月三十一日の政策決定会合の約三週間後のことでありました。今回、三次元の金融緩和が導入され、不透明な世界経済の動きの中で、日本経済への重大な影響が懸念される事態が起こっているわけです。

 当時、二〇一四年九月四日の記者会見で黒田総裁は、「消費税率引き上げが行われた場合と、行われない場合のリスクをどうみるかは難しい点ではありますが、行われない場合には、それによって仮に政府の財政健全化の意思や努力について市場から疑念を持たれると、確率は非常に低いとは思いますが、そのような事態が起こってしまうと、政府・日銀としても、対応のしようがないということにもなりかねません。」と説明した上で、「確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味では、リスクが大きいと思っています。」と述べられました。

 消費税率引き上げを予定どおり行わないリスクについて二〇一四年当時と同じ考えでおられるか、黒田総裁の見解を求めたいと思います。

黒田参考人 消費税の扱いも含めました具体的な財政運営については、政府、国会において行われるものというふうに認識しておりまして、具体的に意見を申し述べることは差し控えたいと思いますが、その上で一般論として申し上げますと、やはり持続可能な財政構造を確立するということは、まず、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提でありますし、日本が国全体として取り組まなければならない課題であるというふうに思っております。

 そういう意味で、政府による財政再建の取り組みが引き続き着実に進められていくということを期待しておりまして、そういったリスクが大きくならないということを期待しております。

宮本(岳)委員 私は、GDPがマイナスとなって、実質賃金が低下し個人消費が減少している、こういう現状を考えれば、リーマン・ショックのような事態がなくても消費税増税は中止すべきだと繰り返し申し上げてまいりました。

 この問題は今後も当委員会で議論するとして、きょうは、日本銀行の金融緩和政策についてこの後も質問を続けたいと思います。

 一月二十九日の金融政策決定会合でマイナス金利の導入が決定され、異次元の金融緩和というものが三次元の金融緩和になりました。

 世界大百科事典を見てみますと、異次元というのは、「文学的空想における異世界と数学の次元概念とを合成した造語で、正しくは高次元的に存在可能な別世界とでもいうべきもの。」わけのわからぬ説明でありますけれども、そういう意味では、高次元的な世界から三次元だったら、むしろ次元が下がったのではないかと言わざるを得ないと思うんです。

 つまり、異次元というのは、ありていに言って、失敗に至ったために、金利という伝統的な手法に戻り、マイナス金利を導入せざるを得なかったのではないか。例えばBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、今回のマイナス金利政策について、国債を購入する量的ターゲットの拡大が限界に近づき、金利ターゲットへの移行だと指摘をしております。

 黒田総裁は、量的・質的金融緩和の限界について否定されております。否定されるならば、今回の決定会合では、なぜ量的・質的金融緩和を据え置いてマイナス金利だけを導入することとしたんですか。

黒田参考人 御案内のとおり、今回のマイナス金利の導入ということは、量、質面での拡大が限界を迎えたから行ったというものではございません。マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、従来の量的・質的金融緩和に金利面での緩和オプションを追加して、量、質、金利の三つの次元で緩和手段を駆使することによって金融緩和を進めるものであります。

 金利面では、日銀当座預金の一部の金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えることができるようになるということでありまして、今後とも、量及び質の面での追加緩和も選択肢でございます。

 今回の決定に至ります議論の経緯というのは、次回の金融政策決定会合において議事要旨が承認されますと公表されますけれども、このところの金利環境を踏まえ、年間約八十兆円という現行の国債買い入れペースを維持しつつ、日銀当座預金の一部にマイナス金利を付すことによって、先ほど申し上げたように、イールドカーブの起点を引き下げることが最も効果的に金利全般の一段の低下を促すことができるというふうに判断したものでございます。

宮本(岳)委員 量、質、金利という三次元で緩和手段が使えるということで、より金融緩和を抜本的、大胆に進められるようにした、こういう答弁なんですけれども、ならば不思議なのは、なぜ、これまでの三年間、マイナス金利を金融緩和の手段として使わなかったのかということであります。

 今回の決定に際して総裁は、ダボス会議前に事務方へ指示を出し、帰国後に今回の選択肢を提示されたと言われております。量的・質的金融緩和が導入された二〇一三年四月には、マイナス金利政策について日本銀行はどのような認識を持っておられたのか。これが一つです。

 また、本委員会でも、逐次投入ではないかとの質疑も行われましたけれども、明確な答弁はありませんでした。三年前に始まった量的・質的金融緩和は、初めから、異次元でなく、マイナス金利も加えた三次元の金融緩和として導入されなかったのは一体なぜなのか。この二点をお答えいただけますか、総裁。

黒田参考人 御指摘のように、二〇一三年の四月に導入いたしました量的・質的金融緩和というものは、二%の物価安定の目標に対する強いコミットメントによって予想物価上昇率を引き上げるとともに、大規模な長期国債の買い入れによってイールドカーブ全体にわたって名目金利に低下圧力を加える、それによって実質金利を引き下げて経済にプラスの影響を与えようということでございました。

 今回のマイナス金利政策につきましては、日本銀行の量的・質的金融緩和の導入以前にも一部の国でマイナス金利が導入された例はありますけれども、二〇一四年の六月にECBがマイナス金利を導入した後、欧州諸国においてマイナス金利を導入する動きが広がりました。さらに、ECBでは、二〇一五年の一月に長期国債等の大規模な買い入れを導入したわけですけれども、その後の状況を見ますと、マイナス金利のもとでの長期国債等の買い入れは円滑に進んでいるようでございます。

 先般のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入に当たりましては、こうした欧州の経験も踏まえた上で検討した結果、マイナス金利によってイールドカーブの起点を引き下げるとともに、従来から続けております大規模な長期国債の買い入れを継続することによって、より強力な金利引き下げ効果が得られるというふうに判断したものでございます。

宮本(岳)委員 やはり最初の時点でマイナス金利を導入しなかったのは、それは慎重だったのではないかと思うんです。

 先日の金融政策決定会合において石田委員は、これ以上の国債のイールドカーブの低下が実体経済に大きな効果をもたらすとは判断されない、こう言って反対したことは注目されます。

 二月十九日の記者会見で石田委員は、効果が期待できないと反対したことについて二つの理由を挙げておられます。一つは、イールドカーブをさらに引き下げても、経済に対する刺激効果は限定的だということ、もう一つは、ポートフォリオリバランスの効果についても限定的だということであります。

 まず一つ目の刺激効果でありますけれども、石田氏は、「貸出金に対応する金融機関の調達コストの低下幅はもともと限られており、他に経費率という経費も掛かっていますので、貸出金利の下げ余地は限られる」と考えたと述べておられるんです。つまり、金融機関の貸出金利の下限にも限界がある、こう言っているわけですよ。

 黒田総裁は、金融機関の現在の貸出金利にまだ下げる余地がある、こうお考えですか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、日本銀行の当座預金の一部にマイナス金利を付すことによってイールドカーブの起点を下げて、大量の国債買い入れの継続とあわせて、金利全般に強い下押し圧力を加えていくということを主として想定しております。

 この点、マイナス金利つき量的・質的金融緩和導入以降の金利の動向を見ますと、国債のイールドカーブは全体として低下しておりまして、貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利もはっきりと低下しております。

 このように、金利面では政策効果はあらわれておりまして、今後、その効果が実体経済や物価面にも着実に波及していくものというふうに考えております。

宮本(岳)委員 時間が迫ってきましたのでまとめてちょっと聞くんですけれども、石田氏はその会見で、「民間の金利はこれまでにも大きく下がっていますが、必ずしも設備投資の増加に繋がっているとも思えない部分があります。」こう述べておられます。

 また、石田氏はポートフォリオリバランス効果についても、「ポートフォリオのリバランスをする対象で一番大きいのは、本来は貸付なのですが、貸出の状況は御承知のとおり顕著に伸びていません」とし、「限界的に貸出が大きく伸びていくということはなかなか難しい」と指摘しています。

 一方、総裁は二十二日の予算委員会で、「実は貸し出しも、この量的・質的金融緩和のもとで二%台の貸し出しの増加が続いておりまして、特に中小企業向けは、従来マイナスだったんですけれども、二〇一三年半ば以降は中小企業向けもプラスに転じておりまして、足元では多分中小企業向けの方が大企業向けよりも貸し出しは増加をいたしております。」と答弁をしております。

 決定会合ではこの企業への貸し出しについてどのような議論がなされたのか。黒田総裁と石田氏の認識、全くこれは食い違っているんですけれども、いかがですか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたように、金融政策決定会合におけるいろいろな意見が出され、それが議論されて最終的に金融政策の決定に至るという議論の流れというものは議事要旨で今後公表されるわけですが、それに先立って、金融政策決定会合後にすぐに「主な意見」という形で、いろいろな政策委員その他政策委員会のメンバーの方々の意見を並べて紹介をしております。

 そうした中に、貸し出しが余り伸びないのではないかとか、いろいろな意見が出されたことは事実でありますが、そういう議論が出て、最終的にマイナス金利つき量的・質的金融緩和の決定に至った議事の流れについては、議事要旨をぜひごらんになっていただきたいと思いますが、銀行貸し出しにつきましては、委員御指摘のとおり、貸出金利が既往最低水準まで低下するもとで銀行貸し出しが前年比で二%台の伸びを続けておりますし、それまで前年比マイナスで推移していた中小企業向けの貸し出しも、二〇一三年半ば以降、プラスに転じております。

 また、設備投資につきましても、企業収益が過去最高水準にあるもとで増加基調にありまして、GDPベースの名目投資額は、年率換算で見ますと、二〇一三年一―三月期が六十三兆円程度だったものが二〇一五年十―十二月期には七十・八兆円と、しっかりと増加してきているというふうに認識をしております。

宮本(岳)委員 時間が来ましたのできょうはここでとどめますけれども、設備投資の増加や貸し出しの伸びなどという、これは事実関係、ファクトですよ。ファクトについて真逆の認識を総裁と石田委員と持たれている。議事録要旨が出れば、どういう議論だったのかは議事録要旨にそれは出ているのでしょうけれども、こういう状況のもとでとられているマイナス金利政策だと思うんです。

 マイナス金利政策がどのような影響を与えるのか国民は不安の気持ちを持っていますよ、どんどん預金の利子だって下がっているわけですから。そもそも、三年間たってこの状況を見れば、異次元の金融緩和の政策自体が破綻をしていると私は言わざるを得ないと思います。

 副作用の懸念が高まる金融緩和政策の中止を求めて、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 本日二回目でございますが、私からも、今回の法案について質疑させていただきます。残りあと三十分でございます。委員の皆様もお疲れとは思いますけれども、あと三十分、おつき合いいただきますようお願い申し上げます。

 午前中に総理に、短い時間ではございましたが幾つかお伺いして、ちょっとまだ総理の御説明ではわかりにくいなというところを麻生大臣から補足説明いただきたいところがあるんです。

 軽減税率の適用がどの範囲になるのかというのを今回の法律で定めて、国会でも議論させていただいています。特に、新聞が入って書籍や雑誌が入らないことに対する問題意識というのはたびたび私申し上げさせていただいて、そして、いろいろ御意見がありました。そうした中で、書籍や雑誌が入っていない理由について、特に佐藤局長を中心にいろいろ御説明をいただいております。

 具体的には、繰り返しになりますけれども、まず、書籍や雑誌がなぜ入らないかというと、所得の水準に応じた支出をこの書籍や雑誌はしている。つまり、お金持ちの人ほど多く買っていて、お金を余り持っていない低所得の方ほどこれらの書籍、雑誌は買っていない傾向にあるから、そういった意味で低所得者対策としては遠いんじゃないかというお答えと、そして、その時々の関心で購入されるものであるということ、食品のように生活必需品とまでは言えないんじゃないかという観点での理由から、今回、書籍、雑誌が見送られているというのが、これまでの財務省からの答弁だったんです。

 これらの書籍や雑誌だけではなくて、私、これまでいろいろ、電気やガスや水道がどうして入らないのか、そして新聞がどうして入っているのかというのを、なぜこれをお伺いしてきたかといいますと、今後、また来年、再来年、税制改正何度もありますけれども、その中で、つまり業界団体から圧力がかかって、意図的に、ではもう政治の判断で入れてしまおうと、次から次へところころ変わるような税制であってはおかしいじゃないかと。

 結局、総理は新聞業界との癒着を否定されましたけれども、しかし、その政権によってころころとこの体系が変わるようであれば、癒着を疑われても仕方がないな、税のあり方としては問題があるなというのが私の根底の問題意識でありまして、だからこそ、この細かい判断をどう今されたのかということをきちんと御説明いただいて、そして、もちろん来年度以降もその課題に対してそれがきちんと解決されないのであれば入るべきではないというのが私の考えですし、税としてはそうあるべきだというふうに思うんです。

 一方で、総理に午前中にそのお話をしまして、書籍や雑誌を含めてほかのものにも拡大されていく可能性があるんですかとお伺いしたときに、書籍や雑誌には課題があるのは事実だとお答えいただいて、しかし、それらの課題が解決できるのかどうか、もしかして絶対的に解決に至らなければならないものじゃなければということもあり得る、議論していった上で、そうであるならば入るかもしれないというようなニュアンスともとれかねない御発言をされています。曖昧に答えられていて、議論を深めていくんだというお話をされたんです。

 大臣、確認なんですけれども、今、いろいろな条件から雑誌や書籍を省いてこられました。これらの条件が解決される、もしくはそれらをちゃんと説明できなければ、今省いているから来年ももちろんこれは入ってこないという理解でよろしいんですね。

麻生国務大臣 まず最初に、書籍、雑誌については、これは昨年末の与党税制改正の大綱において、「その日常生活における意義、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する。」と。引き続きというのが一番問題だとされているところなんだと思いますが、今後、与党において検討されるものだとは承知しております。

 なお、これまで政府より、書籍、雑誌については対象範囲の外縁の定義づけというものが極めて困難と。雑誌というのは、我々の知っている雑誌以外に、多分何万種類という、学生の雑誌から含めましていっぱいありますので、そういったものが外縁が決め切らないという点と、書籍、雑誌の購入に係る消費税負担は逆進的とは言えないのではないかという点、そして、適切に有害図書を排除する仕組みが存在しないということであります。

 こう述べてきて、今回の法案において対象外ということになったんですけれども、今後、こうした課題を含めて検討されるものと考えております。

 自分なりの経験から言わせていただくと、有害図書を排除する仕組みというのは、昔、もう大分前になりますが、ポルノコミックというのが全盛だった時代があります、愛読書かどうかは知らぬけれども。ポルノコミックというのは、お隣の方の方が愛読者かもしれぬけれども、それはともかくとして、これを排除するための議連というのができまして、議連の会長をさせられました。

 そのときに、この雑誌社というのは集英社とか講談社とか、いろいろ漫画を出している雑誌社が全部、編集長等々がお見えになって、何回となくこの問題についてやらせていただいたんですが、早い話が、お互いでちゃんとルールを決めろ、そちらで決めたルールでやらないと、こちらが介入するというとまた話が込み入ることになるし、非常に範囲が限定的なものになってそっちも困るだろうし、こっちも何となく、いわゆる言論統制とか、話が飛躍したことになりかねぬからということになったんです。

 結果的に、何回やったか忘れましたけれども、もう何回となく、ポルノコミック推進議連の間違いかとかみんなからやゆされながら、大分やらされましたよ。もう本当に、これは何をやっていたんだか忘れましたが、政調会長代理か何かをしていたんだと思いますが、とにかくやたらやらされた。結果としてできなかった。やむを得ぬので、我々として、黄色い横枠の中に黒字で成人と書くマークを、ポルノコミックはこれを張るというルールをあのときは決めたんです。

 そのときにこの雑誌社の人たちとはもう何回となくやり合いましたけれども、これはもう全然話がまとまらなかったという経験がありますので、その方たちがまた、同一人物がまだそのままいるとは思いませんけれども、基本的な体質はそうそうは変わらないのではないか、基本的にそう思っております。

 この問題は、少なくとも有害図書というものに関して軽減税率というのはなかなか納得は得がたいだろうと思っておりますので、この問題が解決するというのはちょっと考えられぬ、今の状況でそう思っております。

 したがいまして、絶対かと言われれば、これがきちんと直るという可能性は否定できないという点はありますよ。ありますけれども、とてもじゃないなという感じが率直な実感です。

丸山委員 とても興味深いお話で、実体験を踏まえてお話しいただきました。

 一方で、今の大臣のお話で、有害性を排除するという点は、ただ逆に、大臣のお話だと、業界でうまく、例えば成人マークを張ったことで指定をするというのがある。逆に考えれば、それを張っていないものに関して軽減税率を適用するということが可能になるかもしれませんね。

 もう一つ理由を挙げられた、要は定義が難しいと、雑誌と書籍。でも、これは新聞も同じで、しかし今回、新聞の定義を政府は明確にされています。わかりにくい新聞を、けさも申し上げましたけれども、なぜか週二回というルールで切り取って、しかも、定期購読しているというルールで切り取ることで明確にこれも定義はできると私は思っているんです。

 問題は、逆進性があるかどうかというのは、非常に定義で何かを切りにくいものだと思うんですけれども、この点、逆進性があるかどうかも解決されなければ、書籍や雑誌というのは、もちろん検討されて、これが難しいのであれば入らないということでよろしいんですか。

麻生国務大臣 雑誌につきましては、これはどう考えても所得の高い方の方々が買っておられるパーセントが圧倒的に高い。額もパーセントも高いと思いますので、いわゆる逆進的かと言われれば、その点に関しては、定期購読されている新聞とは違うと思います。

丸山委員 そうなんですけれども、違うと思うんですが、それが解決されない限り、やはりこれが軽減税率の対象として入るというのは、そうしたら難しいということでよろしいんですかということです。

麻生国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、対象範囲の外縁の定義づけがまず困難であるというのが一番最初なんですが、次に、購入に係る消費税負担が逆進的とは言えないこと、これが二番で、そして有害図書ということを申し上げたんです。

 いずれにしても、こういったものを総合勘案して軽減税率の対象とはしなかったんですが、この三つ、解消できるか、外縁というのはどこで切れるんですかというようなことを考えますと、現実的には極めて難しいだろうと存じます。

丸山委員 そういった意味で、要は逆進性がないというところもクリアできなければ入りにくいというのが大臣の御判断ですね。大きくうなずいていただいて、ありがとうございます。午前中の質疑で少し総理の御答弁がわかりにくかったので、今大臣に補足いただきましてわかりました。ありがとうございます。

 軽減税率の話はまだまだお伺いしていきたいんですけれども、ずっと軽減税率で新聞、新聞と言っていますので、ちょっと違うところも切り込んでいって、実は、あしたも大臣、大変恐縮なんですが、財金の委員会質問と、もう一つ、予算委員会の分科会でも二回御質問させていただきますので、またあしたに譲らせていただきます。

 大臣、少しお話を今回はかえさせていただいて、G20のお話をさせていただきたいんです。

 G20、今週末、上海の方に行かれるというふうに伺っています。財務相・中央銀行総裁会議でどういうお話をされるかと記者に聞かれて、中国の構造問題とか原油安、市場変動の要因となる世界経済の情勢について話をしたいというお話をされました。

 G20、具体的にできることは限られているんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、G20で何を今の段階ですべきだと財務大臣自身はお考えでしょうか。

麻生国務大臣 昔のG7というのと変わって、G20というとかなりな数の国にふえております。実際問題、各国から中央銀行総裁並びに財務大臣というので、それだけで四十人。ほかに、IMFだ、世銀だ、ADBだ、いろいろなことになりますので、かなりな数になります。

 そういったところで細かい詰めの議論までできるかといえば、それは全部分科会に落とすみたいな形にしかできませんので、なかなか細かい作業までできないことは確かなんですけれども、一つだけはっきりしていることは、みんな平場になっていますので、その平場の席で中国さんと言って、おたくおかしいんじゃないですかと面と向かって聞かれたときに、やはり答弁しないで黙っているというわけにいかないので、確実にその場で言わないかぬ。

 そんな中国に向かって面と向かって聞いた人はこれまでいなかったそうですけれども、だって、聞かなかったら、隣国ですから、我々にとっては極めて重大な問題ですから。上海の話どうなっているんですかとか、国家のいわゆる外貨準備高が、一月一千五十億ドルとか、翌月も一千億ドルを超えて出ていくなんというのは普通じゃありませんから、そういった状況はどうなっているんですかとか、過剰設備はどうなっているんですか、これを整理しない限りはとてもじゃありませんよ、鉄の需要がこれだけしかないのに、おたくだけで何億トンつくれる準備を持っておられるんですかというふうな話をして、整理してくださいということが要望ですと言うと、ほかの国もみんな思っているから、わんわん言うと、やはり発言するんですよ、自分としては追い込まれますから。そういった意味では、あの場は結構きついです。

 そういった意味では、私どもとしては、こういった場でいろいろな話が率直に言える、ふだんからのつき合いも大事ですけれども、面と向かって名指しで糾弾するだけじゃだめで、そういった実がとれなきゃ意味がありませんので、終わった後、実際問題、これはやり方がわかっていないんじゃないの、どうやったらこれができるかというのがわかっていないんだったら、教える余裕はあるから、そういった話をする気はないかというような話ができるようにしておいた上でやっておかないといかぬものだとは思いますけれども、それなりの実はあると思っております。

丸山委員 非常に具体的にお答えいただいて、特に中国に対して、外貨準備高、株価の問題も含めて構造的な問題をびしっと指摘されて、その場にいる皆さんに対しても問題提起になって、しかもそれが答えざるを得ない状況をつくっていくという、非常に具体的でわかりやすい御説明をありがとうございます。

 我々としても、やはり財務大臣や日銀総裁がしっかりと国際社会に出ていっていただいて、目下の経済状況が不安定でございますので、世界経済の議論をしていただきたいし、何より日本経済の説明もしていただかなきゃいけないと思うので、ぜひ実のある週末を過ごしていただければと思います。

 そうした中で、世界経済については、特に中国に対して、どういうことやと言うていただけるということなんですけれども、一方で、日本の経済の説明もしていかなきゃいけないと思います。本来はこれは日銀総裁に伺わなければいけないんですが、本日は財務大臣にお伺いしたいんですけれども、恐らく今回の会合で、マイナス金利政策について必ず質問なりされると思いますし、むしろ、必ずこちらから説明をしていただかなければなりません。

 現に、アメリカの高官ですけれども、G20で通貨安競争をどう回避していくか、つまり、お互いに金利を下げ合うことで、結局、どっちの通貨を安くするかみたいな競争に世界じゅうが今なっている、これをどう回避していくかというのをきちんと話し合わなきゃいけない、つまり、露骨に日本に対して、マイナス金利というのはどういうことか、あなたのところは円を安くしたいんじゃないのと言ってくるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、このあたりはどのように御説明されますか。

麻生国務大臣 いつとは申しませんけれども、今は電話という便利な道具ができましたので、夜中でも電話をかけたりかかってきたりすることはこの立場にいるとよくある話なんです。今言われた御指摘の報道というのは、あったというのは知っていますけれども、他国の高官の話についてちょっとコメントは差し控えさせていただきますけれども。

 我々として申し上げていることは、いきなりこの短な間に円が十一円円高になっているという事実というのは忘れてもらっちゃ困るよと。そういった点は、緩やかならともかく、急激に二週間ぐらいでばんと十一円も変わられたらたまらぬというので、口先介入等々いろいろなことは十分にある話だという話で、私はもうそのとき電話でしてあります。

 今回の会合では、日銀の黒田総裁の方から、いわゆるマイナス金利つき量的・質的緩和ということについての説明がなされると思っておりますけれども、これはあくまでも日銀にとりましては、物価安定というか、二%のインフレターゲットというのが正確なんですかね、二%のインフレターゲットというものを目指してやっている手段なのであって、この目的は、平価の切り下げとか自国の円の切り下げというのは副次的に起きた話なのであって、もとは、インフレターゲットでやった政策に合わせて副次的に起きた話なんだと。これは最初の三年前にも同じ話をしてありますけれども、今回も基本的には同じことを言うのであって、為替を目的としたものではないということだけははっきり言わないかぬところだろう、私の立場ではそう思っておりますから、これは主に黒田総裁の言われるせりふだろうと存じます。

丸山委員 細かいところはまた黒田総裁にお伺いしたいと思いますけれども、わかりやすかったです。ありがとうございます。

 次が、空き家の対策の特別控除をお伺いしていきたいと思います。

 以前、別の委員が麻生大臣にお伺いしたときに、空き家対策の特別控除が今回入っています、国交省さんの弾で入れ込んでいるんですけれども。今回のこの空き家対策による効果の検証みたいなものは国交省が行うという形の御答弁を麻生大臣はされております。

 国交省にきょうは来ていただいているのでお伺いしたいんですけれども、この空き家対策の特別控除、特に譲渡する場合の所得の特別控除ですけれども、前回の国交省さんの御答弁では、まず、なぜそもそも旧耐震の住宅に限っているのか、新しい耐震基準を満たした家ではなくて、今回の税制改正では旧耐震の家のみを対象にしていますけれども、どうしてこれを旧耐震のみにしているんですかというふうにお伺いしたら、今、空き家の調査で周辺に悪影響を及ぼしている住宅を調べた中の四分の三がこの旧耐震のものです、そういった意味で、特に耐震性能を上げたいという国交省さんの住宅政策の観点も含めて、今回は旧耐震の空き家に絞っていますよという御答弁が前回あったんですけれども、二点お伺いしたいんです。

 一つは、四分の三というと残り四分の一、二五%が残っているということなんですけれども、では、これも後々にはもちろんこの対策に入っていくのかどうか、非常に大事な観点だと思うんですけれども。では四分の三しか対応しないんですかということにもなりかねないんですが、まずその点を一つ。

 そして、もう一つは、麻生大臣が国交省が調査しますとお答えになった点ですけれども、この税制によって空き家対策が進んだのかどうかという効果の検証の調査をされるのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

石田政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、最初の点でございます四分の一というお話でございます。

 今回の措置でございますが、先回御説明申し上げましたとおり、耐震改修をして耐震性をつけていただくか建て壊すかということでございます。今回の新耐震後のものについては、現在もう既に耐震性はございますので、これを建て壊すことを図るよりは、これをなるべく適正に維持管理をして、いわゆる中古としての流通を促していくということが我々としては望ましい姿だというふうに考えております。

 そのために、我々としては、今回の税制ではございませんけれども、住宅がちゃんと適正に、いわゆる中古が評価されるように価格の査定マニュアルの普及を図ってみたり、また、安心して中古を買っていただくという意味で、性能表示や、インスペクションと言っておりますが、建物のチェック、検査でございます、また、それを踏まえた保険の制度、こういったものの普及啓発を図っているところでございます。

 また、二点目のこの効果の検証の関係でございます。これにつきましては、当省を中心としまして、あといろいろ、今回の場合の税制ですと仲介をいただくというのは最後の姿になってまいります。建物を建て壊す、もしくは耐震化して売るということになりますので、当然ながら仲介が入ります。その仲介をしていただく業界の団体等を通じましてアンケート調査を図るなど、いろいろその効果について検証を図っていきたいというふうに思っております。

丸山委員 わかりやすい御答弁ありがとうございます。

 四分の三の旧耐震住宅に関してはやはり取り壊すべきだということから、今回の税制で促進を進めて、そして残りの四分の一に関しては、空き家対策という意味で中古住宅として売り出していきたいということで入っていないので、今後もこれは入れていくよりも、むしろ中古住宅としてやっていきたいということですね。わかりました。

 そういった意味で、今回、先ほど空き家対策の調査をされるということなんですけれども、これはオープンにしていただけますか、政策の効果の検証した後のデータですけれども。

石田政府参考人 お答えいたします。

 当然ながら、政策関係、今回の税制も時限でございますので、またその次どうなるかとか、いろいろな我々としても要望とかするときにそのデータをもとにして御議論をさせていただくことになると思っておりますので、そういった形においてそのデータ等についてはオープンにさせていただければと思っております。

丸山委員 ありがとうございます。

 政策の検証は非常に大事だと思いますので、公表していただきたいと思います。

 もう一つ、最後の質問になってしまうかもしれませんが、済みません、先ほど私、間違えて申し上げまして、正確には、大臣が国交省がやりますとお話しされたのは、この空き家の調査の方ではなくて、実は三世代同居の調査の方でした。失礼いたしました。

 何かと申しますと、もう一つ、今回の税制で入っている項目に、三世代同居に対応した住宅リフォームに対して税額控除をするという話ですけれども、たびたびこの委員会でも委員の方から御指摘、私も前回させていただいたんです。

 これは、税額控除されるかどうかというのは余り居住実態を見ておらず、建物が三世代同居に適しているかどうかという点でのみ見ているので、例えば、三世代同居しますよと言っても結局三世代同居されず、今始まろうとしている民泊だとか、もしくはシェアハウスみたいな形で若者同士が住むみたいな、この三世代同居という政策目的に対して今きちんとチェックするかどうかという部分が欠けてしまうと、この税制の効果が必ずしも得られないんじゃないかという指摘が数多くありまして、それに対して麻生大臣にある委員がお伺いしたところ、この調査をやりますかという問いに対してお答えが、国交省がやるんじゃないでしょうかというお答えだったんですけれども、その点、空き家ではなく三世代の方ですが、国交省さん、これをやるということでよろしいんですか。

石田政府参考人 お答えさせていただきます。三世代の関係でございます。

 三世代に関しましては、まず三世代同居の世帯数のようなマクロ関係、これは統計関係で今までフォローしてきております。

 また、今回、制度をお認めいただいた場合に、その制度の実際上の実行の状況、どの程度それによって同居が進んだか、また、この政策そのものが同居を決めるなりに当たっての誘因、きっかけとしてどの程度機能したかといったようなことにつきましても、これはリフォーム関係でございますので、リフォーム関連の業界団体等を通じたアンケート調査など、各種の手段でなるべく情報を集めて検証してまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 つまり、今回の税制によって三世代住宅がふえたかどうかというのはそれでわかるものなんでしょうか。

石田政府参考人 お答えいたします。三世代同居のリフォームの関係でございます。

 リフォームの関係について、実際、リフォームをどうするかという判断については、税制だけではなくて、例えば金利でありますとか、そういったマクロ的な経済状況も大きく影響してまいります。

 したがいまして、定量的に、明確にこれで何戸というところまで分析できるかどうかというのは限度がございますが、例えばアンケート調査で、今回のものによってどれぐらいこれをきっかけとしてやる気になったかというようなデータなりはとれると思いますので、そういったものをとることによって、その効果について分析をさせていただければというふうに思っております。

丸山委員 直接的ではないにしろ、それは、利用者、税額控除を利用された方に聞くのか、それとも、仲介なり施工者なりそういった者に聞くのか、どちらのイメージをすればよろしいんですか。

石田政府参考人 同居関係につきましては、やはり個々人、それぞれの家族、実際に利用者の方々の内心の問題にかなり深くかかわります。したがいまして、アンケートの調査の対象としては、実際の利用者の方を想定しております。

 ただ、それを得るに当たりましては、直接個々人と国交省がというのはなかなか難しいものですから、実際やっていただいているリフォーム業者を通じて、そういう業界の団体からの協力を賜って実際はやっていきたいなと思っているところでございます。

丸山委員 行ったり来たりで済みません。

 最後、これも公表いただけるということでよろしいですか。

石田政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの空き家と全く同じでございます。やはり今回も時限の措置でございますし、また次の要望等に当たっては、多分そのデータが必須だと思っております。いろいろな意味で、そういう形で整えたデータについては、またそういう形でオープンにさせていただければと思っております。

丸山委員 ありがとうございました。

 しっかり検証いただいて、次以降の税制改正に生かしていただきたいと思います。

 明確にお答えいただいたのでわかりやすかったんですが、最後、短いんですけれども、あとお伺いしたいのは、インボイスの導入において、これもたびたび各委員から言われていて、お伺いしていてここも明確じゃないなという話です。

 特に、現時点もそうですけれども、小規模ないわゆる免税事業者、今税金を免除されている事業者さんが、このインボイスの導入によって取引の仕入れ税額控除の対象外になるから、それによって、つまり取引の相手にされない、事業者間取引から排除されるんじゃないかという懸念の声が数多く上がっています。

 特に小さい事業者さんが多いので、その方々からお声を聞くんですけれども、これに対する対策に対して、今までの大臣のお答え、財務省のお答えを聞いていると、まだ時間がある、その時間の中でいろいろ検討してやっていきたいという、簡単に言うとそういうことなんですけれども、今の段階でこれに対して対応というのは何か具体的に考えられているものがあるのかどうかというのが見えなかったんですけれども、その時間内にやるというだけのお答えなのか、それとも、何か具体的に今の段階でもできること、考えられることはあるんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘の、インボイスに伴いまして免税事業者が取引から排除されるのではないかという懸念、これはたびたびこの委員会でも御指摘あったところでございます。

 その上で、こちらからも何度か御答弁申し上げましたが、ちょっと整理をいたしますと、確かに、インボイスを導入して免税事業者に影響を与えるということはあり得ますけれども、それは事業者によってさまざまであろうと。

 例えば、いわゆるBツーBということで、事業者間の取引に当たる事業者にとっては、納入先の企業の方から課税の選択を求められるということでなかなか容易ではなくなるというケースは、一番典型的ケースとして想定されます。

 他方で、BツーCということで、要するに、消費者に直結している消費者取引の部分についてはそういう状態にはないということ。あるいは、納入先の事業者が簡易課税を利用している場合には、インボイスそのものが仕入れ税額控除をすることに関係ないということで、そういう場合には取引から排除されたり課税選択を求められるということは非常に少ないであろう。

 ということで、どういう事業をしておられるかによりましてその影響度は随分違うんではないかということで、そこは一つ整理をさせていただきたいと思います。

 それから、免税事業者が課税選択を仮にするということになりましても、もとより記帳のようなことで事務がそれなりになされている事業者であれば、追加的に何か事務がふえるからといって、その点についての影響は軽微かもしれません。それから、簡易課税制度の利用によって簡易に税額計算をするといったこともできるとか、あるいは、インボイスでありますとそもそも価格転嫁をしやすくなるという指摘もあります。

 ですから、さまざまな要素もあって、その辺の影響が混在してくるんだろうと思います。

 今現在の時点におきましては法案として御提案しておる段階でございますから、まず我々としては、免税事業者には、今申し上げたのはまず制度の中身、それから具体的にどういうことが想定されるかというようなことなども御理解をいただきながら、インボイス制度の導入に向けてどう対応すべきかということを御検討いただくということがとりあえずの局面として出てくるんだろうと思います。

 したがいまして、そういう制度の周知徹底というのを図っていくということがまず何よりもスケジュール的には大事になってくるというふうに思います。

 一方、制度的な対応としては、既に法案として提案しておりますけれども、免税事業者が課税転換をするということについて、本当にそれが必要なのかどうかということをみずからやはり見きわめないといけませんので、そのしっかりとした時間的な余裕も要るであろうということで、制度設計において、例えば、インボイスの導入自体を三十三年四月ということで、四年間の準備期間を置くとか、あるいは、導入後六年間に仕入れ税額控除についての一定の特例を設けるというようなことで、みずからの課税転換についての可否の判断をできるようにするということで、制度的にはそういう形での余裕を持たせるという形にしている状況でございます。

 したがいまして、まずはそういう制度設計、物の考え方、起こり得る可能性ということをなるべく早い段階で周知させていただくということが大事だろうと思っております。

 その中で、いろいろなお問い合わせがあったり云々ということになった場合には当然お答えをしていく必要がございますし、今回の法案の附則にございますように、やはりインボイスの導入に伴う事業者の準備状況とか事業者間取引への影響の可能性、ここは特に注意をして検証しなさいというふうになっておりますので、その時点においては必要に応じた対応ということもなされるだろうというのが、全体の今のフレームワークでございます。

 実際にスタートをするということになれば、そういうことについての地道な情報発信からまずスタートしていくということになるんだろうと思っております。

丸山委員 もう時間がないので終わりますけれども、大分長くお話しいただいた割に、結局はBツーBが問題だとわかっているけれども、ではこれに対する対応は何ができるかといったら、今のところ何かあるかというのはおっしゃらなかったんですね。

 またこの続きは次の委員会でさせていただきますが、ここも非常に重要な問題だということだけ指摘しまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、明二十五日木曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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