衆議院

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第7号 平成28年2月25日(木曜日)

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平成二十八年二月二十五日(木曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      井林 辰憲君    池田 道孝君

      越智 隆雄君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    金子万寿夫君

      國場幸之助君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      中川 郁子君    中山 展宏君

      根本 幸典君    野中  厚君

      福田 達夫君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      落合 貴之君    岸本 周平君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      上田  勇君    斉藤 鉄夫君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   会計検査院事務総局第五局長            斎藤信一郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官)    安田 貴彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        小野田 壮君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 時澤  忠君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    佐川 宣寿君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           水嶋  智君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石田  優君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 笠原 俊彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 西田 安範君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  真部  朗君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        田中  聡君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     金子万寿夫君

  勝俣 孝明君     池田 道孝君

  助田 重義君     瀬戸 隆一君

  福田 達夫君     青山 周平君

  山田 賢司君     大串 正樹君

  鷲尾英一郎君     岸本 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福田 達夫君

  池田 道孝君     勝俣 孝明君

  大串 正樹君     山田 賢司君

  金子万寿夫君     穴見 陽一君

  瀬戸 隆一君     助田 重義君

  岸本 周平君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     中川 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     井上 貴博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房少子化・青少年対策審議官安田貴彦君、大臣官房審議官増島稔君、子ども・子育て本部審議官小野田壮君、総務省大臣官房審議官時澤忠君、財務省主計局次長美並義人君、主税局長佐藤慎一君、関税局長佐川宣寿君、理財局長迫田英典君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官伊原和人君、中小企業庁長官豊永厚志君、事業環境部長木村陽一君、国土交通省大臣官房審議官水嶋智君、大臣官房審議官石田優君、防衛省大臣官房審議官笠原俊彦君、大臣官房審議官西田安範君、整備計画局長真部朗君、防衛装備庁プロジェクト管理部長田中聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、会計検査院事務総局第五局長斎藤信一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野中厚君。

野中委員 自由民主党の野中厚でございます。

 財務金融委員会に所属をさせていただきまして初めての質問の機会を頂戴したことに感謝申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 今回、財務金融委員会におきまして委員の皆様方と政府との議論を聞くに当たりまして、改めて線引きというのは難しいなというふうに感じております。財源に限りがあるわけですから、時に年齢、そして、時に所得、給付の額等々ございますが、今回議論に上がっている中で、軽減税率、そして給付つき税額控除について議論がなされております。

 それぞれメリットがございます。給付つき税額控除についても、低所得者に的を絞った給付が可能という意見もございます。一方、軽減税率におきましては、消費者が対象品目を購入する都度、減税効果を実感する、いわゆる痛税感を緩和するメリットがございます。

 重ねて申し上げるとおり、財源に限りがあるということでありますので、どちらも線を引かなければならないということであります。仮に給付つき税額控除でも、低所得者に、範囲そして給付水準について線引きの議論になると思いますし、軽減税率においては、現在多くの委員の方々が品目について質問をされております。

 非常に細かい中で質問がございました。例えば、そば屋で食べれば一〇%、出前だと八%とか、中で食べられるコンビニエンスストア、店内で食べれば一〇パー、外にテイクアウトすれば八パー、レジを通した後、店内で食べたらどうなるのか、本当に細かい質問がございました。新聞におきましても、週二日、定期購読、ですので、コンビニで、外で買ったら一〇パーとか。

 ただ、こういったさまざまな議論を通じまして、この軽減税率の線引きについて、この委員会を通じて明らかになってきたのではないかというふうに私は感じております。

 麻生大臣にお聞きをしたいと思いますが、一九八八年、竹下内閣時に消費税が導入されました。一九九七年、橋本内閣時に消費税が三%から五%に上がりました。そして二〇一四年に五%から八%に上がったということでありまして、消費税導入、そして二回の増税というのを麻生大臣は国会議員の立場で経験をされているというふうに思っております。消費税というのは、国民感情として余り気持ちよく受け入れがたい。その中で、必要性を訴えて、厳しい中で国会議員の立場で説明をされてこられたということであります。

 今回に関しては、さらに特別な事例といいましょうか、増税をし、その中に軽減税率で品目を入れて落としていくということが今回の議論になっておると思いますが、過去三回、消費税について経験をされた立場から、今回の消費税の必要性、そして軽減税率導入の必要性についてどう説明をされておられるか、御答弁を願います。

麻生国務大臣 これは野中先生、この国にとってやはり中長期的に最大の問題は、少子高齢化に伴う人口減少等々によって、結果として二〇二〇年代の半ばごろには、今あります社会保障制度というものを維持していくということが極めて財政上難しいという、待ったなしの課題というのが大前提としてあるんだと思っております。

 このためには、どうやって社会保障と税の一体改革をやるかということが野田内閣のときにでき上がった三党合意ということで、与野党を含めてこの問題に関しては意識を一致させた、多分日本の憲政史上に残る、少なくとも、与野党が一致してこの種の余り一般受けしない話を合意した、将来のためを思ってというところは、極めて大きなものだったと私は思っております。

 したがいまして、今回の主たる目的は、今申し上げた点から、我々としてはこういったものをきちんとやっていく必要が財政上ある、また、社会保障という制度を維持していくためにもある。

 傍ら、私どもは、いわゆる財政上からいきますと、国債の発行比率が極めて高い等々で、外国もしくはマーケットと言われるものからの信認等々というものを考えて、私どもとしては、これは必ずやり遂げねばならぬということを思って今この種の話に取り組ませていただいておりますので、今の話で申し上げれば、そういったようなことが大前提。

 しかし、傍ら、逆進性の話が必ずこの消費税というのは出てまいりますので、その意味でいきますと、逆進性からいきますと、所得の低い方々に対しての逆進性が高いというのをできるだけ回避するということからいろいろな手法が考えられておられたんですが、その中でいろいろな試行錯誤がありましたけれども、最終的にこの軽減税率という税制をとらせていただいて、買い物の都度、痛税感というものの緩和を実感していただくということに主眼を置いた制度をとらせていただくというようになった背景であります。

野中委員 ありがとうございました。

 日本が誇るこの社会保障制度を次世代につないでいく、そしてまた、逆進性の面からも、痛税感を緩和するために軽減税率を行うという答弁をいただきました。ありがとうございました。

 今回、消費税の軽減税率対策予算といたしまして、中小企業団体等の小売事業者への周知、対応サポート体制の整備、補正予算百七十億、そして、中小の小売事業者等に対するレジの導入、システム改修等支援、予備費九百九十六億円が計上されております。

 この予備費九百九十六億円について質問をさせていただきますが、この予備費に対してどれぐらいの企業数を想定しているのか、また、想定企業数のうち、小規模事業者の割合についてお伺いしたいと思います。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの本予備費による事業の対象事業者数でございますけれども、複数税率に対応したレジの導入の対象となる中小の小売事業者を約三十万社と見込んでおります。また、複数税率対応のできない電子的な受発注システムを導入している中小の小売事業者、卸売事業者等を約三万社と想定してございます。

 また、お尋ねの小規模事業者の割合でございますが、残念ながら、具体的な数字を持ち合わせておりません。

 しかし、全中小企業者の八五%が小規模事業者であること、また、本予備費の対象事業の主なユーザーとなる小売業、外食サービス・宿泊業においては、いずれも八割以上が小規模事業者となっていることからしますと、それに近い、かなり高い割合の方々が小規模事業者になろうかと考えております。

野中委員 想定企業数三十万社、そして、計算上、大体八割以上が小規模事業者の割合ではないかという御答弁であります。

 今回の軽減税率導入に伴い、税のプロであります税理士さん、会計士さんとお話をする機会がございました。今回の軽減税率導入についても、税のプロである税理士さん、会計士さんを巻き込んで周知をしていくべきと私は考えておりますが、常日ごろから、一般国民感情で、税というのは払って何に使われているかということで、私、議員が話しても本当かなと言われるところがありますが、ただ、税のプロの税理士さん、会計士さんがそういった税のプロの目線から周知してもらえればと常々思っているところであります。

 今回、軽減税率導入について、新年、いろいろな会合でお話をする機会がございました。一人の方だけは、今回我々に与えられた新しい課題、使命であるということをお話をされておられましたが、多くの方は、負担がふえるな、人を雇わなきゃいけないかな、または、負担がふえる分、料金体系に反映せざるを得ないかなと言う方がいらっしゃったのも事実でございます。

 これは一例でございますけれども、この複数税率に対応するため、今の例で申し上げますと、税理士、会計士の負担がふえることで顧問料が上がる等、小規模事業者に影響があるのではないかということを私は心配しておりますが、その点についてお伺いしたいと思います。

大岡大臣政務官 野中議員にお答えを申し上げます。

 野中議員から、税理士、公認会計士の顧問料の負担などさまざまな御負担がふえるのではないかという御指摘でございますが、この軽減税率の導入につきましては、それだけではなくて、やはり、さまざま御協力を事業者からお願いしなければならないものというふうに思っております。

 あわせて、それに伴って、私どもでもできることはしっかりとやっていこうということで、例えばインボイス制度につきましては、軽減税率を導入してから四年後に導入するということで一定の猶予期間を設けておりますし、また、先ほど先生からも御案内いただきましたとおり、補正予算それから予備費の活用で、レジ周りの改修ですとか、先ほどお話しのありました税理士や公認会計士に対する講習等も含めて、万全の体制をつくっていきたいということで措置をしているところでございます。

 御指摘のとおり、事業者からすれば、税務署に問い合わせるよりも、先に税理士さんに問い合わせられることの方が恐らく多いのではないかというふうに考えておりますことから、税理士、会計士の先生方の御協力もいただきまして、スムーズに、円滑にこの軽減税率制度が導入できるよう、私たちも努力をしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

野中委員 ありがとうございました。

 ぜひ、身近な税のプロである税理士そして会計士との講習を通じて連携を深めていっていただき、できるだけ企業の負担を軽減するようにお願いしたいというふうに思っております。

 先ほど申し上げましたこのレジの改修、システム導入においては、もちろん、大きなスーパーも影響を受けるということであります。二〇一六年二月六日読売新聞ですと、埼玉県にヤオコーというスーパーがありますが、約百五十店舗を展開しておりますが、経理システムの変更に約四億円程度かかるのではないかと見積もっているところもあります。

 ただ、先ほども申し上げておりますが、地力が弱い小規模事業者が今回のことで悪い影響を受けないかというのを私は特に心配をしております。

 平成二十六年、小規模企業振興基本法が策定されました。日ごろからよく、自民党は大企業しか見ていないと言われがちですが、とんでもない。実際、製造二十名以下、そしてサービス五名以下を新たに小規模事業と定義をしてこの基本法を策定したということは、地元に戻っても非常に高い評価を、特に、商工会議所より商工会に所属をしている方々から評価をいただいております。

 今回の軽減税率対策に対して、改めて、小規模事業者をしっかりと守る、そういった中小企業庁長官の決意をお伺いしたいと思います。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 予備費を活用して行います今回のレジの改修、システム導入の補助でございますけれども、補助率を原則三分の二といたしておりますが、小規模事業者等への配慮の観点から、三万円未満のレジに対する補助率は四分の三と少し高くしておりまして、より手厚く支援することといたしております。

 また、小規模事業者であっても補助金申請を円滑に行えるように、申請書類を簡素化するとか、レジメーカーに申請手続のサポートを求めるなど、事業者の手続の負担にも配慮した制度設計を進めてまいりたいと考えてございます。

 さらに、平成二十七年度補正予算も活用し、軽減税率制度の内容やその対応策について十分な周知及び広報を行うことが重要かと思っておりますけれども、小規模事業者にとって身近な存在でございます、今もお話しありました商工会、商工会議所や、その他関係団体とも十分に連携し、相談窓口の設置、説明会や講習会の開催、はたまた専門家の派遣などを通じて、中小企業、小規模事業者に丁寧なサポートを行ってまいる所存でございます。

野中委員 ありがとうございました。

 手続の簡素化というのは、人手が少ない小規模事業者にとっては、今回のケース以外でも大変求められていることであります。

 三分の二だけではなく、小規模には四分の三でやっていくということでございました。一円、十円、百円、千円、一万円というのは同じ価値ですが、やはりそのかかる負担というのは、より小さい単位の企業にのしかかるものであるというふうに思っておりますので、ぜひともよろしくお願いをしたいというふうに思っております。

 次の質問ですが、これは仮定の話をこれからさせていただきたいというふうに思っております。

 今回、既に軽減税率導入における対策費で九百九十六億円、そして百七十億円、約千二百億円を計上されておられます。

 品目とパーセントを挙げた方がわかりやすいと思うんですが、ただ、挙げると、それが仮定の話ではなくなって、先にその単語と数値が出ちゃうと思いますので、新しい品目、そして新しい税率ということを仮定にして質問をさせていただきたいと思います。

 現在、八%から一〇%に向けて、軽減税率となる対象品目が出てございます。この品目について今後減るということは現段階では私は考えられないのではないかなという、個人的には思っております。

 そして、これが仮に品目がふえるという仮定において、八%から一〇%の間で品目がふえれば、これは、現段階のレジの切りかえ、システム改修、そして周知の部分で多少上に額が乗ってくるぐらいなのかなというふうに思っておりますが、この先に仮に、八%、一〇%、その一〇%の後に新しい税率となりまして、その一〇%から新しい税率になったときにまた軽減税率対象となる品目がふえるという、これは全て仮定の話です、その場合、八%、一〇%、そして新しい税率というその三つの品目、これは複数税率ですから可能性はなくはないんじゃないかというふうに私は思っておりますけれども、仮に三種類の税率が品目であるということになりますと、何よりまず消費者の混乱を招くということであります。

 そしてもう一つ、八から一〇にかかったシステム導入、レジ改修、一〇からその新しい数値になったときにまた同等の額がかかる、コストがかかるというふうに私は懸念をしております。

 これはあくまでも仮定の話ですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。

大岡大臣政務官 お答えいたします。

 まずは、麻生大臣並びに総理からたび重なって答弁を申し上げておりますが、消費税率一〇%への引き上げに向けて、まずは経済財政運営に万全を期すということを考えておりまして、消費税率のさらなる引き上げということは考えておりませんので、その仮定に基づいてお答えできないということは御了承いただきたいと思います。

 その上で、一般論として、二つの異なる軽減税率を設定するということについてお答えを申し上げます。

 現に諸外国を見ましても、例えば、ベルギーは四段階、フランス四段階、その他の諸国におきましても、三段階の税率設定をしておる国は多数ございます。

 それぞれどのような考え方で適用品目を設定するのか、どのような考え方でもって税率の差をつけていくのかというのはかなり幅広い議論が必要になってまいりますので、それにつきましては、今後また政治活動を通じてしていただければありがたいと思っております。

 また、委員御指摘のとおり、やればやるほど税収が減ってまいりますので、社会保障財源を今後どうしていくのかという議論もあわせてしていかなければならないと思っております。

 また、先ほど委員から御指摘をいただいておりますように、事務負担に関しましては、現在、インボイスは、軽減のものについて米印で対応できないかということを考えておりますが、仮にもう一個、超軽減税率ができたとしますと、もう一個マークを、例えば米と星にするとか丸と二重丸にするとか、丸、バツ、三角にするとか、そういった対応もしなければなりませんので、区分経理をするためのコストも当然かかりますし、そのためにシステムを新しくつくり直さないといけないというコストも発生します。

 したがいまして、二段階から三段階になりますと、当然、応分の事業者の御協力もお願いをしなければなりませんし、消費者への周知もしていかなければならないということが考えられます。

 以上でございます。

野中委員 ありがとうございました。

 あくまで仮定の話ですので、現状、その中で政府として臨むのは、軽減税率を導入することによって痛税感を緩和する、そのためにかかる軽減税率対策費、また、二%分落とす財源というんでしょうか、それを上回る、軽減税率による痛税感の緩和というものを周知して、国として臨んでいただきたいというふうに思っております。

 次の質問に入らせていただきたいと存じます。

 多国籍企業が各国の税制や国際課税ルールのずれを利用することで課税所得を人為的に操作する、いわゆる課税逃れを防ぐためにBEPSプロジェクトが立ち上がり、その中でBEPS行動計画を策定したということであります。

 その一つであります、多国籍企業の企業情報の報告制度についてでありますが、この制度の概要とOECDにおけるこのBEPSプロジェクトの位置づけについて、大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 OECDの中におけますこのBEPSというプロジェクトですが、これは、ベース・エロージョン・アンド・プロフィット・シフティングの頭だけとってBEPSと言うので、税源侵食と利益移転、直訳すると多分そういう言葉になるんだと思いますが。

 多国籍企業において、今話題のアップルを初めいろいろあるんですが、いわゆる租税を回避するために、合法的に、非合法じゃありません、合法的に税をどこの国にも払わぬ。特定に安い、ケイマンアイランドとかいろいろありますけれども、そういった地域に本社を移して、法人税が極端に低いようなところに全部集めて、そこでやる。

 決して非合法ではありませんけれども、どこの国にも払っておらぬというような企業が、コンピューターの発達、インターネットの発達に伴ってそういうのがかなり目立つようになってきているという問題に関して、我々としては、これは少なくともきちんとした対応をしない限りは、我々が税金を納めた人たちから頂戴した税金を使ってきちっとしたインフラを整えたものをただで使い倒して、利益だけ持っていってというのは、どう考えても公平さを欠くじゃないか。

 これをきちっと対応しないのは、これはどう考えても、我々OECDの中でも、G7と言われた先進諸国の財務大臣の対応に問題がある。

 三年前の五月にこれは日本から提案をさせていただいて、二十八年度の税制改正に盛り込ませていただけるところまで、昨年のOECDの中でもこれは総会で決まっておりますので、こういった多国籍企業の事業活動の透明性というものを深めるということによって租税回避を防止するというのを目的にさせていただいております。

 具体的には、多国籍企業グループの活動状況に関する情報を国際的に共通様式に基づいて報告するということを求めると同時に、租税条約に基づいて各国間で情報交換をするという制度等々によって、一つの国だけでは把握が難しいと言われております多国籍企業の実態というものを各国が協調することで把握できるようにするということを期待しておりまして、二十八年度の税制改正において、日本においてもこの制度を確実に整備して、多国籍企業の租税回避というものに我々としても対応していきたい。

 現実問題として、グローバル化するに伴って、有名な企業は幾つも日本でもいろいろ商売しておられますけれども、税金は一円も納められておらぬという実態に対して、これは日本よりもっとひどいところはいっぱいありますので、そういったところをきちんと対応してまいりたいと思っております。

野中委員 ありがとうございました。

 各国で情報共有をすることで多国籍企業のテクニックに一定の歯どめをかける、それを日本がリーダーシップをとって提案されたというふうに認識をさせていただきました。

 今、プロジェクト参加国、四十四カ国が参加しているというふうにこの間説明を受けたわけでありますけれども、このプロジェクトの参加国全てが本制度を整備し終わる時期、今後のスケジュールについてお伺いしたいと思います。

坂井副大臣 昨年取りまとめられました最終報告書におきましては、多国籍企業情報の報告制度、二〇一六年度、つまりは平成二十八年度、ことしから実施することが勧告されております。しかし、各国の状況がそれぞれでありまして、国内法制手続に当たっては一定の期間が必要であるということも認められているというわけであります。

 したがって、各国が本制度を具体的にいつまでに整備するかというのは、その一定の期間がどれくらいかということ、各国の事情によりまして、各国とも、本勧告に基づいて早期の国内法制化に向けた検討と作業を進めていると承知しております。

 日本におきましても、本勧告に従って、ことしの四月一日以後開始するグループの親会社の会計年度から制度の運用を開始することを予定いたしております。

野中委員 各国それぞれの事情があるということであります。

 当面、四十四カ国全てが足並みがそろったら、そこで情報を共有してこのプロジェクトの機能を果たすということだと思うんですが、この後さらにプロジェクトの参加国がふえるのかどうか。ふえればふえるほど、より多国籍企業の透明性の向上につながる、テクニックを使うところに歯どめがかかるというふうに思っておりますけれども、この点についてお伺いをさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

坂井副大臣 委員がもう既に触れていただきましたように、四十四カ国がコミットいたしておりますが、多ければ多いほどこれは効果が上がるということでございますので、今でも四十四カ国で一定程度以上の透明性の確保というものはなし得る、十分に確保し得るとは思っておりますが、今後とも、開発途上国を含むより多くの国々がBEPSプロジェクトにコミットして、その成果を享受できるようにするための取り組みがG20やOECDを中心に進められることとなっておりまして、日本としても、こうした取り組みを主導してまいりたいと考えております。

野中委員 ありがとうございました。質問を終わります。

宮下委員長 次に、田野瀬太道君。

田野瀬委員 本日、二番手を務めさせていただきます自民党の田野瀬でございます。

 今国会、私は初めての質問の機会をこのたびいただきました。まことにありがとうございます。大臣、副大臣、政務官、そして政府参考人の皆様方、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、私からは、マクロな観点から数点、そして所得税について数点お伺いをさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、ことしに入りましてはや二カ月、二月ももう間もなく終わろうとしておるところでございます。本年は一月四日からの国会のスタートということでございました。正月も冷めやらぬ三が日の間に、これは皆さんもそうだろうとは思うんですけれども、上京されまして国会に備えたわけでございます。ことしは我が国にとってどんな一年の始まりになるのだろうと期待をして国会開会に臨んだのを覚えておるところでございます。

 すると、北朝鮮による核実験、サウジアラビアとイランの国交断交による原油価格の変動、また、中国経済の鈍化を発端とする世界のマーケットの乱高下など、内外のさまざまな要因によりまして、波乱含みのスタートとなったわけでございます。

 一月二十二日には、国会におきまして総理の施政方針演説そして財務大臣によります財政演説をお述べいただきまして、我が国の進む道、そして、デフレ脱却、経済再生に向けて力強い方針をお示しいただいたところではあるんですけれども、その間、地元を歩いておりますと、国民の間に、先行きの不安の声、特に、株価の変動によります経済に対する不安の声がささやかれているというような状況であろうかと思っているところでございます。

 原因がわからなければ不安というのはどんどんやはり高まっていくというものでございまして、これは複数の原因が絡み合ってのことだとは存ずるわけでございますけれども、ぜひここで、年初来の株価変動の要因に関して政府の御所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

大岡大臣政務官 田野瀬議員にお答えを申し上げます。

 この株価の変動の要因についてなんですけれども、その時々の株式市場の動きの要因はさまざまでございますので、具体的にコメントするということは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、一方で、足元につきましては、世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がっているというふうに考えております。

 またあわせて、マネーが、全世界の国や地域で金融緩和が進んでいることもございまして、非常に大きな動きになっているということもあろうかと思います。

 あわせて、中国の景気減速への懸念、それから原油価格の低下、それから米国の利上げの動向などの海外要因を主因としまして、日本の市場においても変動が見られているというふうに考えております。

 いずれにしましても、政府としましては、株式市場の動向を注意深く見守ってまいりたいと考えております。

田野瀬委員 ありがとうございました。

 世界的にリスク回避の傾向がある、先日来、大臣も黒田日銀総裁もそのように御発言を承っておるわけでございますが、ただ、決して日本経済のファンダメンタルズは悪いものではないという御答弁も繰り返ししていただいておるわけでございます。挙げますと、先ほど政務官もおっしゃっていただいたように、いろいろな要因で不安定なところがあろうかと思うんですが、決して、その中でも日本の経済のファンダメンタルズは悪いものではない。

 例えば、三年間のアベノミクスで、名目GDPは二十八兆円増、国民総所得は四十兆円増、雇用も百万人以上増、企業収益も過去最高となるなど、長く続きましたデフレによる不況から、確実に、まあこれは確実にと言ってもええとは思うんですけれども、脱却しつつあることは間違いないということでございます。

 これはちょっと楽観的過ぎるかもわかりませんが、為替が円高に振れているというのも、世界各国から日本の政治と経済に対して信用の裏返しであるんだというようなことも、過激かもしれませんが、ひょっとしたら言うことができるかもしれません。

 なので、そこをしっかりと見据えた上で今後の対応をしっかり講じていく。我々が進めておりますアベノミクスにとって決して株安と円高というのはいいものじゃなくて、障壁になり得ますので、それをしっかりと打破していかなければならない、そのように思っているところでございます。

 ちょっと話が横にそれるんですけれども、先日、数人で麻生大臣と夜お食事をともにさせていただくことがございました。大臣の方から御高説を賜ったわけでございます。心にがつんといただいた言葉なんですけれども、何をおっしゃったかといいますと、経済は安定した政治のもとで健全に成長するものなんだ、そういう趣旨のことをおっしゃっていただいておりました。また同時に、現在の世界をぐるっと見渡してみまして、最も政治が安定している国の一つに日本があるんだ、これは自信を持っていい、そうやっておっしゃっていただきました。あともう一つの国もおっしゃっておられましたけれども、それはもう言わんときます。日本は最も安定した国の一つなんだとおっしゃられました。

 世界各国を多く見て回られまして、そして多くの要人とお会いしてこられました麻生大臣がそのようにおっしゃったということで、本当に説得力のある言葉でございましたし、そうかなるほど、日本というのは、いろいろ与野党の思惑はありますけれども、世界に比べてみたら、安定していないわけじゃないというか、どっちかというと政治が安定している国なんだ、そういうふうに勇気を大臣には与えていただいたというようなちょっと逸話があったんです。

 何が言いたいかと申しますと、要は、世界的にリスク回避の動きがある中、日本の経済のファンダメンタルズは決して悪いものじゃない。世界的に経済が発展するためには政治が安定しないといけないという前提に立ったときに、日本の政治はまあ安定しているというときにこの日本が頑張るしかない、頑張る以外の筋はないのじゃないかというふうに思っております。

 今こそ我々は、与野党ともに知恵を出し合い、安定した政治のもとで経済再生に取り組む必要があるんだと強く思っているところでございます。

 連日の株価の変動に一喜一憂をすることなく、とにかく前進をする。例えば、女性活躍などで労働力を確保、もしくは、イノベーションを通じて生産性を高める。もしくは、TPPによる市場の拡大、これをチャンスと捉え、商品の付加価値を高め、雇用を生み、そして外貨を稼ぐ。実質のGDPを上げたり外貨を稼いだり、そしてさらには、減少している個人消費を喚起して成長と分配の好循環をつくり上げなければならない。そんな局面にあるんだ、そのように思っているところでございます。

 デフレからの完全脱却に向けて我々が講じることができる選択肢は、ひょっとしたら決して多くはないかもしれませんが、とにかくやれることをひたすらやるんだというふうな思いでおるところでございます。

 そこで、ちょっと広い質問で申しわけございませんが、改めてですけれども、民需主導の経済の好循環の確立に向けた政府の取り組みの御所見、お伺いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 安倍内閣におきましてこの三年間、経済再生に向けたさまざまな取り組みをしてきたことで、企業収益が過去最高となるなど、日本経済のファンダメンタルズ、基礎的な状況は非常にしっかりとしているというふうに言われております。

 一方で、議員から御指摘ございましたとおり、民需主導の好循環というものを確立していかなければならないと考えておりまして、そのための最大の課題は、やはり、官民連携をして、新しい需要、新しいニーズ、新しい国民の望みを見つけ出して、それを経済サイクルに組み込んでいくことだというふうに考えております。

 政府としましては、麻生大臣を先頭に、政労使会議あるいは官民対話を通じた働きかけを行ってまいりました。また、コーポレートガバナンス・コード等を制定しまして、ガバナンスの強化や、あるいは法人税の改革等を進めまして、これらの動きを後押しをしてまいりました。

 これに応えるように、経済界からも、与党税制改正大綱に関するコメントとしまして、法人実効税率が二〇%台になったということを歓迎していただいた上で、設備投資の増大や雇用の増大、賃金のさらなる引き上げに積極的に取り組みを進めるというふうにしておられますし、新年の経済三団体の代表の話を聞きましても、企業の賃上げあるいは投資拡大を積極的に進めていくという姿勢をあらわしていただいております。これらはまさに、私たちの努力に応えて経済界がやるべきことを表明をしていただいた、この決意のあらわれというふうに考えております。

 今後も、これら賃金の引き上げあるいは投資の拡大を通じて、経済の好循環を定着させていくということに向けて経済界の努力を引き出すとともに、これらの貢献に向けて私たちも、やるべきことを進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

田野瀬委員 ありがとうございます。

 キーワードは新しいニーズであり需要であり、総理も施政方針演説でも何度となく繰り返しておっしゃっておられましたイノベーション、それで民需を喚起して需要をどんどん広げていく必要があるんだということであったかと思います。

 私、秘書をずっと長らく二十年ほどやらせていただいておりました。びっくりしたのが、とにかくここ数年で安倍内閣が、官民対話と称しまして、とにかく賃上げを頼むぞと言いに行っていらっしゃるというのを、私は聞いたことがなくて、もうとにかくなりふり構わずやれることはやるんだという政府の姿勢のあらわれだろうなと思っているわけでございますけれども、引き続き、ぜひこの難局を突破するために、取り組みをさらに進めていただくことをお願い申し上げたいなと思っているところでございます。

 続きまして、以上の質疑を踏まえまして、マクロな質問は次で最後にするんですけれども、今月末に上海におきまして、G20財務相・中央銀行総裁会議が開催されるということでございます。これは、直近の世界経済の動向であったり、成長の見通しであったり、そして金融市場の変動などが議論される、そんな会議になるんだろうと認識をしているところでございます。

 今は目下、世界的にリスク回避の動きがある中、世界的な需要の押し上げに向けて各国が、金融であったり財政であったり、あらゆる手段を講じる必要があると考えておるわけでございますけれども、そこで、先ほどもありましたけれども、経済のファンダメンタルズが決して悪くない日本、さらには政治も安定している日本、G20におきまして、我が国のプレゼンスであったり存在価値であったり、また、発言が注目されるし、かなり問われるというようなそんなG20にこの月末の会議はなろうかと思っているところでございます。

 大臣にお伺いさせていただきます。国を代表してそのG20に御出席いただくんですけれども、御出席いただく麻生大臣に、G20に向けての意気込みをお伺いさせていただきます。よろしくお願いします。

麻生国務大臣 今は御存じのように、年初来、世界的に、リスクの回避というものに向けていろいろ金融市場の中で上がり下がり、ボラティリティーとかいろいろな表現がありますけれども、そういう変動がする中であります。

 あすの夕方から上海でG20が開かれることになっておりますので、そこでいろいろ話を、各国、意見交換という場で話をさせていただくことになるんですが、私の方からは、例えば今の中の大きな、昨年の十月、上海から始まったみたいな話ですけれども、少なくとも、中国の過剰設備、鉄鋼に限りませんけれども、多くの過剰設備、また、シャドーバンキングに代表されるような過剰信用、過剰金融というようなもののこの構造問題が片づかなければとても安定しないことははっきりしていますので、これは前回の十月のときにも言いましたけれども、これもきちっと言わないかぬところだと思っております。

 また、アメリカの金利の利上げというのを、昨年、急激に上げていったら問題あるのではないかという話をして、事実、一回は上げたんですけれども、やはり言うとおりだったものですから、ことしじゅうに四回やる予定ですけれども、今のところ次の予定はまだ立っていないということになっていますので、そういった意味では、市場とのコミュニケーションというのはそれなりにできているんだとは思いますけれども、その方向。

 また、原油の安につきましても、原油安の話は決して我々にとっては悪い話じゃありませんから、我々は輸入している方ですから。輸出している国にとりましては、損益分岐点が七十ドルだ、八十ドルだというところが、今、二十八ドルだ、WTIが三十何ドルだと言っている時代には、これは急激に外貨準備というものが、サウジに限らず、皆軒並み減っておりますので、そういった意味では、極めて厳しい状況になっている傍ら、こちらにとっては、原油安になったおかげで貿易収支が一挙にわあっと赤字幅が減ってきたりしております。

 そういった意味ではいろいろなものがあろうと思いますけれども、そういったものに関して我々は、二十八年度の予算を今は議論をさせていただいている真っ最中ですけれども、こういったものをきちんと仕上げて、我々としては、この三年間にわたって間違いなく経済は成長させた、GDPはふやした、税収もふやした、かつ、心配されている新規公債等々については十兆減らした、雇用はふえている等々の日本のファンダメンタルズというもののよさというものだけははっきり言っておかなきゃいかぬところだと思っておるんですけれども、これは難しいところでして、余り言い過ぎて円ばかり買われても忙しいことになりますので、これはどの程度に言うかというのはなかなか難しいところなんですが。

 いずれにしても私どもとしては、きちんとした対応というものは、やった結果こういった形になっているのであって、デフレーションというものは今は後追いで皆来ていますけれども、我々、デフレーションというのはかなり前からやっておりますので、事デフレーションに関しては我々の方がはるかに先に経験をしておるという点に関しましても、今、我々としては、我々の経験を人様に語れる立場と思ってもおります。

田野瀬委員 大臣、ありがとうございます。

 ぜひ、世界経済の需要を喚起する、大変な議論ではあろうかと思うんですけれども、日本を代表してG20に臨んでいっていただきまして、そして御活躍をお祈りしたいなと思っているところでございます。

 続きましては、税の話にちょっと質問を移らせていただきたい、そのように存じます。

 いろいろこのたびの税の中でも、所得税、おもしろい税制改正を予定していただいておりまして、本当にありがたいなと思っているところでございます。

 一つ目の質問が、国立大学法人等への個人の寄附に係る税額控除制度を導入するということに対して御質問したいなと思っているところでございます。

 人口減少を迎えたこの我が国日本にとりまして、教育というのは本当にますます重要度が増してきているんだと私は考えております。とにかく人が減るんですから、教育をしっかりして個人の能力を高めて、何人分もの活躍をしていただかなければ生産性も何も上がってこないということで、この人口減少社会においては、教育の重要度というのは本当に高まっているんだと思っています。

 この数年ですけれども、政府におきましても、我が国の教育再生を喚起するような、おもしろい、変わった税制をしていただいております。

 例えば二年前でしたら、贈与税だったと思うんですけれども、おじいちゃん、お父さんから子や孫に対して教育資金を贈与できるという税制もやっていただきました。それが二年前だったと思います。

 昨年は、さらに発展していただきまして、教育だけじゃなくて、少子化に歯どめをかけるという意味も込めて、結婚であったりとか子育てであったりとか、そんなところにまで贈与ができるという、そんな税制も組み込んでいただいたと認識しています。

 一部では、それが教育の格差につながるんだというふうな御議論もあることはもちろん承知はいたしておるわけでございますけれども、ただ、たんすに眠っておるお金をずっと眠らせておくだけだったらもったいなくて仕方がないわけで、何がしかの働きかけをしてお金を動かす、そういう意味において、おもしろい税制を本当につくり込んでいただいておるなというふうにここ数年感じております。

 とにかく教育が大事だということ、こういうことわざがございます。一年先を考えるならば種をまけ。種をまいたら、収穫が一年後に恩恵として返ってきます。十年先を考えるなら木を植えろ。ミカンとかリンゴ、植えたものに対して木から収穫の恩恵が来る。百年先を考えるならば人を育てろということでございます。なので何を言いたいかというと、とにかく教育が大事なんだということです。

 今、日本の教育力、どんなプレゼンスかと申しますと、決して基礎学力は悪くない。悪くないというよりも、基礎学力の部分でいいますと、ほとんど世界有数のレベルにいまだあるというふうな各種データが出ております。

 さらには、PISAといいまして、OECD諸国の十五歳の生徒に関して学習到達度調査というのをやっているんですけれども、これは、読解力であったり、数学的リテラシーであったり、科学的リテラシー、考え方、考察力、基礎学力じゃなくて考察力というところにおいても、実は日本の教育力は上位にあります。

 今の日本の教育の足らぬところはそれならどこなのか。いろいろあるんでしょうけれども、私が今質問であわせて言いたいのが、いわゆる高等教育です。

 例えば、日本の高等教育の一番トップに君臨するのはやはり東大、京大なんだろうと思うんですけれども、東大は世界の大学ランキングでいいますと四十三位です。京大は八十八位。これは二〇一六年度現在ですけれども、今までアジアの大学でトップの座に君臨しておった東大がいよいよ抜かされまして、今は二位とか三位になっています。高等教育の部門が、これから推進していく必要があるんだということ。

 私は実は地元で学園を経営している者でございますので、教育を見ますと、高等教育が変わると中学、高校の学問も変わるし、それに向けての小学校も変わるということで、やはり出口の高等教育が一番大事なんだと。

 そういう認識の中、何が言いたいかといいますと、このたび、国立大学法人の個人寄附に係る税額控除制度を導入していただいた。広く何か事を起こそうとしている大学に資金がない場合、どんどん寄附を集めてしっかりと運営、マネジメントしていっていただくということを拍車をかけよう、そういう制度だと私は認識しているんですけれども、この制度を導入することとした趣旨をぜひお聞かせいただきたいと思います。

坂井副大臣 委員の教育に対する熱い思いを感じながら質問を聞かせていただきましたけれども、まさしく、意欲と能力のある人が希望する教育を受けられるようにしていかなければならないという観点から、今回、こういった制度を導入させていただいております。

 そういう人を支援するという支援の中身も幾つかありますが、今回は、例えば、授業料、入学料または寄宿料の全部または一部の免除等々で経済的負担の軽減を図る事業でありましたり、学資を貸与または支給する事業でありましたり、海外へ留学をするのに係る費用、また、学生を教育研究に係る業務に雇用するための費用を負担する事業といったものを、修学支援事業ということで今回充てる事業といたしまして、これらの事業に使う個人寄附というものを今回の対象にしたところでございまして、これらのことによって個人寄附を今まで以上に集めやすくするためということでございます。

田野瀬委員 ありがとうございます。

 教育をおろそかにする国に未来はないわけでございまして、ぜひこの税制制度で、日本の国立大学にもっといろいろなチャンスを与えていただけるというようなことを拍車をかけていただけたらなと思うところでございます。

 ちょっと、税制じゃなくて予算のことで要望だけ申し上げさせていただきたいんです。

 子供が減っているということに起因しまして、教員の予算がカットされるというようなことでございます。それは、主計局の方々もいろいろ計算の上で、いろいろなエビデンスを出していただいてということでは百も承知の上でございますけれども、ただ、生徒が減るから教員を減らすという、実は現場はそういう単純なものじゃございませんで、例えば、発達段階に応じて特別支援が必要な子供の割合がふえておるであるとか、単純に、生徒が減るから先生をそれに合わせて減らすというような現場状態じゃないということもぜひ加味をしていただけたらありがたいなと思います。

 それで、いわゆる国際人ですね、海外でどんどん活躍できるような人材を進めていくという意味におきましても、私、海外子女を推進していきましょうという議員連盟を実は立ち上げさせていただいております。

 これはどういうことかといいますと、留学制度を今も文科省も実は推進していただいておりまして、財務省も予算をつけていただいております。これは行って帰ってこいの、留学というのは行って帰ってくるんですけれども、今現在、海外に十万人、実は学んでいる日本人の方々がおられます。同じ日本人。片道切符で行けるんです、何かを支援するにしても。

 今、日本人学校とか在外教育施設はどんな状態かといいますと、実は、国内と海外で、在外教育施設で結構な格差があります。

 一つだけ例を挙げさせていただきますと、義務教育課程で教員を派遣するんですが、満たしている率は、海外の日本人学校、在外教育施設は七割です。あとの三割は、現地で保護者が負担して教員を雇っています。義務教育課程でですよ。日本国は全部教員は一〇〇%やっていますけれども、海外は七割しか満たされていないということ。

 見ていきますと、細かいことですけれども、そういう格差がちょっとありますもので、ぜひまた予算の面でもいろいろ御検討いただけたらありがたいなと思うところです。

 ちょっと今のは要望でございまして、申しわけございません。

 最後になります。

 年々膨らみ続けます医療費、社会保障費ですね、介護とか年金、その部分で医療費を抑制するという効果がこれは狙いであろうと私は思うわけでございますけれども、セルフメディケーションを推進するがための、スイッチOTC薬という薬の医療費控除の特例を今回認めようというふうに案を出していただいているところでございます。

 この税制改正案の概要及びそして効果も、ぜひちょっと詳しく教えていただけますとありがたいです。よろしくお願いします。

坂井副大臣 骨太の方針二〇一五を踏まえまして、今言葉が出ましたけれども、セルフメディケーションというものを推進していく。つまり、軽度な体の不調は自分で手当てをして、お医者さんにかからずとも済むようにしていこうということでございますけれども、これを推進していく中で、医療用医薬品と同じ有効成分が含まれる、店頭販売ができるようになった市販薬、これがいわゆるスイッチOTC薬でございますが、この使用を促進することによって医療費の適正化を図る観点から、今回制度が導入をされます。

 スイッチOTC薬の購入費用、十万円を限度のうち、一・二万円を超える部分について所得控除を受けられることとするものでございます。

 この特例の導入によって、軽い病気にかかった人が、医療機関へ行くのではなくて、薬局、特にかかりつけ薬局のような薬局に行くことによって、スイッチOTC薬を購入し、それによって自分で体を治していくということで、医療費の適正化効果が期待をされているというところでございます。

田野瀬委員 ありがとうございます。

 この制度もしっかりと周知徹底をして広めていくことが、日本再興戦略でも書かれてございます、骨太の方針にも書かれてございますが、健康寿命の延伸を図るという観点から、この制度で行こうということでございます。

 大事なのは、OTC薬の控除を受けるためには、適用要件というのを設けていただいていると思います。これをしっかりと周知徹底していただくということと、そしてもう一つ大事なのが、このOTC薬の対象医薬品の範囲などは、改正案成立後に関係者と協力して周知を行っていく、こうなっておるみたいでございますけれども、ぜひその対象医薬品の周知を迅速に行うということもこれは必要であろうかと思いますので、そのあたりもよろしくお願い申し上げまして、時間が参りましたので私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、根本幸典君。

根本(幸)委員 自由民主党の根本幸典です。

 本日は、財務金融委員会においてことし初めて質問をさせていただきます。お時間をいただいたことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 最初に、三世代同居に対するリフォームに係る税額控除制度の導入について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 実は、十三年前に、私は豊橋の市会議員に挑戦しようと思いまして、いろいろなところを歩いたんですね。ある高齢者の自宅に行きまして、どういう豊橋市にしたらいいですかと聞いたら、一番最初に出てきたのが、孫と一緒に住みたいんだ、こう言われまして、今はおばあさんと二人で住んでいる、朝昼晩おばあさんと一緒に御飯を食べて、特に会話もなく寂しいんだ、こういう話を聞きました。

 よくよく考えてみますと、私のところ、豊橋、田原というところなんですが、確かに製造品出荷額は二兆円超あるんですけれども、それでも、高校の同級生四百人ぐらいいるんですが、地元に残っているのは百人もいないんですね。みんな東京に行ったり大阪に行ったり、同じ県内ではありますけれども名古屋に行ったりということで、要するに、どんどん東京の方へ一極集中、都会へ都会へとみんなが出ていってしまう、そしておじいさんとおばあさんだけが残されている、こういう家が結構あったんです。

 それでその後、私は、ではこれから三世代同居ができる、こういう町をつくるようにしようというふうに思いまして、それでいろいろな高齢者のところを回っていきましたら、やはり皆さん賛同していただいて、三世代一緒に住みたいんだ、こういう声が実は圧倒的に多かったです。

 一方で、私の同級生で三世代で同居しているところもありまして、そこに行きますと、いやいや、そうはいっても、実は結構大変な部分もあるんだよ、嫁さんとの問題とかいろいろあって、なかなか外の人には言えないんだけれども、苦労している部分もあるんだ、だからその辺を考えてやられた方がいいんじゃないか、こういうアドバイスをいただきました。

 私としても、それであればどういうふうに市として応援できるかというのは、多分、ハードの部分とかそういうところ限定になるんだろうな、こんな思いを持ちながら、実は初めての選挙に臨んだわけであります。そのかいもあって何とか当選をさせていただいて、今につながっているんですが。

 その意味では、今回、この税制改正を見て、我が意を得たりと。十三年前にその方々が言っていたことが、まさにこれから国が手がけてくれて、そして三世代が一緒に暮らせる、こういう社会がつくっていけるんだということで、大変うれしく思いました。

 そこで、今回の三世代同居に対するリフォームに係る税額控除制度の導入の背景と三世代同居の現状について、まず最初にお伺いをしたいというふうに思います。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 三世代でございますが、先ほど先生のお話もありましたとおり、世代間の支え、その他の形の、ある意味でいえば価値があるということで、全年代の中でも約二割の方が三世代を理想の住まい方だというふうなアンケートの調査の結果がございます。その一方で、現実に三世代でお住まいの方は、全世帯の中の五%にとどまっております。

 また、近年を見ますと、平成十五年ごろには三世代が約四百万世帯、八・五%を占めておりましたが、その後年々減少を続けておりまして、平成二十五年には先ほど申し上げました五・二%、約五%、世帯数では二百七十四万世帯まで減少しているという状況でございます。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 今聞きましたように、やはり希望と現実というのが乖離をしています。

 たまたま私に孫と一緒に住みたいと言っていただいたおじいさんは、娘さん二人だったんですが、そのお一人が名古屋から旦那さんと一緒に帰っていただいて、今一緒に暮らしていて、行くと子供の声もして、家に行きますと子供用の自転車があったりして、すごくにぎやかな感じがしていて、今まで何となくちょっと寂しかったのから、お会いすると、きょうは孫のお風呂を入れなきゃいけないから帰るわ、こういうようなのがあって、まさに三世代の支え合いというのが現実のものとして見えているんですね。

 そういう意味では、今ありましたように、私がこの話を聞いたのが今出ていました四百万人のとき、平成十五年のときですから、残念ながらそこから三割、四割減ってしまっているということで、やはりここを今回こういうふうに国として進めていくというのは、非常に大きな一歩だったというふうに私は思っています。

 その中で、そうはいっても、三世代同居に関していろいろな手法があると思うんですね。いいか悪いかは別として、例えば、三世代同居したら子供に対して交付金を交付しますよとか所得税を減額しますよとか、多分いろいろな考え方、やり方があると思うんです。

 その中で今回、住宅政策として三世代の同居を進めていこうというふうに決められたということでありますが、この辺の理由、背景、このあたりをお聞かせいただきたいというふうに思います。

石田政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど申し上げましたとおり、現実とニーズのかなり大きな差がございます。それを埋めていくということが住宅政策の観点からも非常に重要だというのが、まず我々の認識でございます。

 そのためには、三世代同居など複数の世帯が御一緒に住まれるときに、うまく住めるような住宅のストックがちゃんとあるのかどうか、それがやはり住宅政策上の大きな課題であると思っております。

 そういった観点から、今回、二世帯住宅の仕様に既存住宅も活用するという観点も含めまして、リフォームする場合の割高となる工事費の支援措置をお願いしているものでございます。

 具体的には、先ほど先生のお話の中でも、具体に住もうと思えばいろいろあるというお話がございましたが、アンケートを見ましても、二世帯で住む場合にはお互いのライフスタイルの尊重が重要だという回答が八五%を占めております。また、現実のリフォームを見ましても、そういった観点からのリフォームが現実には多数ございます。

 それを踏まえた上で、住宅に関しては、キッチン、浴室、トイレ、玄関といった、まさしくお互いのライフスタイルの尊重を行う上である意味ではポイントになるような、それに着目した税制の制度を今回お願いさせていただいているところでございます。

根本(幸)委員 今回は、そういう意味では、持ち家のある人を対象に、リフォームをしたらそこに関して応援をしていこうということなんですね。

 実は、日本の持ち家率というのは約六割というふうに言われていまして、それ以外に、賃貸住宅へ入ったり公営住宅へ入ったりしている人たちもたくさんいらっしゃるんです。

 私が十三年前に行ったときには、もちろん、公営住宅に住んでいるおじいさん、おばあさんもいらっしゃって、その方も、こういう三世代が一緒に住めるような政策、こういう町づくりをしたいんだと私が言ったら、賛同していただいた。ただ、やはり部屋の広さというのがありまして、せいぜい二世帯まではいいにしても、三世代住むとなるとなかなか公営住宅では難しい。私も、そのとき市会議員でしたのでいろいろ調べてみたんですが、なかなか制度的にも難しいという話を聞いていました。

 ただ、今回こういうふうに住宅を支援していこう、三世代を進めるために住宅支援していこうというふうに考えますと、今回はこれで入り口なので、すばらしいスタートだというふうに私は思いますが、今後を考えたときには、一つは、やはり公営住宅等々も三世代が一緒に住めるような設計をしていくことが必要だというふうに思いますが、このことに関してどのようにお考えになるか、お聞かせをいただきたいと思います。

石田政府参考人 お答えさせていただきます。

 公営住宅につきましては、住宅に困窮されている低所得者向けということで、所得制限とか入居者の公募制といった制約が一応ございます。

 ただ、そういう制約の中とはなりますけれども、平成二十一年度には、それまでございました住宅一戸当たりの床面積の上限を撤廃させていただきました。地方公共団体が地域の実情を踏まえて三世代などの比較的多人数の世帯にも対応できる住宅の整備も、現在では可能となっております。

 また、その入居に関しましても、公募原則でございますが、公共団体の御判断によっては、実情に応じて当選倍率の優遇措置を設けることも可能でございます。実際に、一定の親子の世帯の同居について優遇措置を設けている例もございます。

 国土交通省といたしましては、こういった地域の実情を踏まえました公共団体の取り組みを引き続き御支援申し上げたいと思っております。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、三世代が同居をしていくことで支え合いをしていく、ここは、今ありましたように、持ち家もそうですし、借家も公営の住宅も含めて、ぜひ進めていただきたい。

 さらには、最近、近くに住んでいるおじいさん、おばあさんのところから、昔でいうとスープの冷めない距離というんでしょうか、そういったこともこれから応援をしていくことによって、三世代が世代を超えてしっかり子育てに協力していく、こういう体制が必要だというふうに思いますので、ぜひこのあたりは総合的にまた検討をしていただければありがたいなというふうに思います。

 それで、住宅政策をやることでどれだけ少子化対策さらには子育て支援につながっていくのか、これが一番重要なことだというふうに思うんですね。そういう意味では、今回、三世代同居に対するリフォームに係る税額控除制度の導入において、少子化対策、子育て支援、どういうふうに進んでいくのか、その見通しについてお伺いをしたいというふうに思います。

安田政府参考人 お尋ねの、三世代同居が少子化の改善にどのような効果があるかということでございますけれども、まず、三世代同居を希望する方がその希望を実現できるよう支援を行うことで、世代間で助け合う環境が整備されるものと考えております。

 少子化対策の観点からは、子育てへの不安や負担が少子化の要因の一つと考えられるわけでございますが、その中で、三世代同居を希望する子育て世代が、祖父母による育児や家事の支援を受けつつ子育てを行うことを可能とすることで、こうした子育てへの不安や負担が緩和されるものと考えております。平成二十七年三月に閣議決定されました少子化社会対策大綱におきましても、世代間の助け合いを図るための三世代同居の促進について盛り込まれているところでございます。

 また、実際、国立社会保障・人口問題研究所が平成二十二年に実施をしました第十四回出生動向基本調査、いわゆる夫婦調査によりますと、初婚同士の夫婦につきまして夫または妻のいずれかの母親が同居している場合は、それ以外の場合、すなわち別居の場合などと比べまして、完結出生児数、これは結婚持続期間が十五年から十九年までの御夫婦の平均出生児数の数字でございますけれども、これが高いという傾向があると承知をしております。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 この制度の導入によって、先ほど言いました、高齢者が幸せになれるという話でしたが、今は三世代で子育てもやる、そして高齢者のおじいちゃん、おばあちゃんも幸せになれる、まさに私は、この政策はこれからしっかりと進めていただきたい政策だというふうに思っています。

 ただ、きのうの質問の中にもありましたけれども、居住者の三世代同居を要件としているかどうかという部分が、ここはまだはっきりしていない部分もありますので、今後はそこもしっかりとフォローしながら運用していただいて、この趣旨であります少子化対策、子育て支援、そして世代間の助け合い、これがしっかりと前へ進んでいくように引き続き御努力をしていただきたいというふうに思います。

 それでは続きまして、法人税の実効税率の引き下げについてお伺いをしたいというふうに思います。

 やはりこれは、経済のグローバル化の進展が進んでいる、それから国際競争力が激しくなっている、国境を越えた投資が活発化している、こういうところから法人税の実効税率の引き下げという議論が始まったんだというふうに思います。

 確かに、我々も国際化というのは非常に目の当たりにしています。私は、先ほど市会議員の話をしましたが、その前はサラリーマンを十一年ほどやっていました。実はその会社は全く国内企業でした。海外に営業所が一個あるかないかぐらいで、ほとんど国内で商売をしていました、十五年前まで。それがここに来て、当時の同期等々に話を聞きますと、最近は、アジアに行ってきただとか、アメリカへ行ってきただとか、さらにはオーストラリアに行ってきただとか、どんどん投資をして、まさに十五年前まで英語がしゃべれなかった人たちが平気で英語をしゃべっているんですね、海外へ行ってしまうぐらい。

 この十数年ぐらいで日本の企業を取り巻く環境というのはぐっと変わってきた。これは、多分私だけじゃなくて、産業界の現場に身を置いている人たちが一番感じていることだというふうに思うんですね。

 そういう意味では、実効税率を下げていかないと、企業の国際競争力をそいだり、投資の呼び水の障害になったりということになりますので、やはり早くこれは進めていくことが私は意味があるんではないのかなというふうに思います。

 そこで、法人税改革をスタートしてわずか二年目で二〇%台に達した、この意味は大変大きいというふうに思いますが、改革二年目で二〇%台を実現した背景と考え方についてまずお伺いをしたいというふうに思います。

坂井副大臣 今般の法人税改革でございますが、課税ベースを拡大しつつ、税率を引き下げることにより、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革していくものでございます。今回の税制改正におきましても、経済の好循環を確実なものとしていく観点から、この改革を大胆に進めさせていただいております。

 この改革を通じて、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することによって、企業に対して収益力拡大に向けた前向きな国内投資、そしてまた継続的、積極的な賃金引き上げが可能な体質への転換といったことなどを促して、経済の好循環の定着につなげていきたい、このように考えております。

根本(幸)委員 今おっしゃっていたように、これを実現して、企業の投資さらには賃金、しっかりと上げていこうということだというふうにお伺いをいたしました。

 現実の生活の中でもそういう声がありまして、うちの、愛知県ですから自動車産業が盛んなんですが、ボーナスがよくなってくると、年末年始、町に人のにぎわいが出てくるわけですよ。そういうところを見ますとやはり経済が動いているなというふうになりますし、ことしの年末は、ふだんは結構タクシーがつかまるんですが、つかまらないというようなこともありましたので、そういう意味では、地方経済ではありますが、確かに動き始めているなというのもあります。

 それから、投資をしていただくと一番喜ぶのはやはり地方自治体でして、固定資産税がふえてくるわけですから、そこがまた新たな投資を生んでいくということで、まさに、税率を下げることによって、企業が投資をしていただいたり従業員の給料をふやしていただくことでどんどんお金が動いて、まさにいい循環が進んでいくということなので、早い段階で二〇%台を達成した、やはりこれは非常に大きなことだというふうに思います。

 そこで、これからますます、もっともっと企業の皆さんには投資を促していかなきゃいけない、さらには、できれば下請等々にも同じように投資をしてもらう、さらには従業員の給料をふやしてもらう、こういう働きかけをしていくことが必要だというふうに思うんですが、このあたりについてどのように働きかけをしようというふうにお考えなのか、お伺いをしたいというふうに思います。

大岡大臣政務官 根本議員にお答えを申し上げます。

 経済の好循環と言われておりますのは、官民連携して新しい需要を見つける、国民の需要、海外の需要を見つける、それに向けて経済界が投資をしていく、そうすることによって、売り上げが拡大し、あるいは生産性が向上し、それが賃金にはね返ってくる、その新しい賃金がまた新たな需要、新たな消費を生み出していく、こういうサイクルを回していくことでございまして、まさに経済界がそのようなマインドに変わっていくことが重要だというふうに考えておりまして、この点におきましては、麻生大臣からも繰り返し官民対話の場で申し上げてきているところでございます。

 経済界からは、これに応じるように、与党税制改正大綱に関するコメントの中で、法人実効税率を二〇%台にしたということを歓迎するとした上で、設備投資の増大、雇用の拡大、そして賃金のさらなる引き上げに積極的な取り組みを進めると表明してきておりまして、この点につきましては期待感を持って見守りたいというふうに考えております。

 なお、法人税改革の直接的な効果の見通しというのはなかなか申し上げにくいところはありますけれども、官民対話におきまして経済界からは、二〇一八年度に八十兆円まで投資を拡大するですとか、収益が拡大した企業に対して、昨年を上回る賃金の引き上げを期待し、これの前向きな検討を呼びかけるという方針が示されておりまして、このように、政府としてやるべきことをちゃんとやった、それに対して経済界が評価をしていただいて、経済界もやるべきことをやる、お互い日本経済のために何をやればいいのかという行動について今後も協議をし、前に進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 これから経済界と行政の中でしっかりと話し合いをして、これをやるからこれをやってくれ、やはりこのことが確実にまた賃金増、設備投資の増加につながっていきますので、引き続きまた御努力をいただければというふうに思います。

 一方で、今回、実効税率の引き下げを行いましたけれども、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化目標というのがありまして、こことの整合性というのはしっかり考えていかなきゃいけないんだというふうに思います。

 税制の中立性とか財政の健全化、いろいろなところに目配りをしていかなきゃいけないですし、財源なき減税、これを重ねることは、今の財政状況とか企業の内部留保の状況を見るとなかなか国民には理解をされない部分もありますので、ここをどう説明していくかということは非常に大切なことだというふうに私は思います。

 そこで、今回の法人税実効税率の引き下げに伴ってどういうふうに財源を確保していくのか、その考え方、さらには進め方について、お伺いをしたいというふうに思います。

坂井副大臣 厳しい財政事情を鑑みますと、企業部門の内部留保、また、手元資金の状況などを踏まえれば、財源なき税率引き下げというのを行うことは適当ではないことから、しっかり財源を確保した上で二〇%台へということで、法人実効税率引き下げを実現したところでございます。

 具体的にということで幾つか申し上げますと、例えば国税では、生産性向上設備投資促進税制の見直しということで、二十八年度プラス七百二十億円、二十九年度からプラス二千四百十億円、また、その他の租税特別措置の見直しで二十八年度からプラス二百四十億円、減価償却制度の見直しで二十八年度からプラス六百五十億円、また、欠損金の繰越控除制度の見直し等々によりまして所要の財源を確保した上で、これらが大体、二十八年度が総額プラス二千三百七十億円、二十九年度はプラス二千三百八十億円、三十年度はプラス三千三百億円となってまいりますが、こういったことで法人税率を現行の二三・九%から二十八年度に二三・四、三十年度に二三・二%に引き下げてまいります。これが国税であります。

 また、総務省の所管でございますが、地方税である法人事業税におきましては、大法人向けに外形標準課税を二十七年度税制改正で決めた内容からさらに拡大をいたしまして財源を確保しつつ、現行で六・〇%であります所得割の税率を、二十七年度税制改正で決めた四・八%からさらに引き下げて三・六%とする。

 これらの措置をとった結果、国、地方の法人実効税率が、三二・一一%から二十八年度に二九・九七%、そして三十年度には二九・七四%となるということでございまして、とにかく、財源をしっかり確保するということが大事だろうと思っております。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 この法人税率の引き下げの効果、これからも十分フォローしていただいて、企業の国際競争力強化に資するように引き続き改革を進めていただければというふうに思います。

 それでは、続いて、プライマリーバランスについてお伺いをしたいというふうに思っています。

 二〇二〇年度までに黒字化、こういう目標を今我々はとっているんですけれども、そんな中で、現下の経済は、中国経済の減速とか、あと原油価格の下落などなどで、先行き不透明感がどんどん増しているんですね。そんな中でこのプライマリーバランスの黒字化というのを進めなきゃいけない。

 そこで、この黒字化に向けて、基本的な考え方、そしてそれを具体的にどう進めていくのか、この二つをあわせて御答弁をいただければというふうに思います。

坂井副大臣 委員御指摘のとおり、プライマリーバランス黒字化のためには、経済再生とそして財政健全化、これを両立させていかなければならないということでございます。

 実際、安倍内閣におきましては、三年間で一般歳出の増加を一・六兆円に抑制しておりまして、この間税収がふえたということとも相まって、平成二十七年度は、今年度でございますが、プライマリーバランス赤字半減目標を達成する見込みでありまして、平成二十八年度予算では、新規の国債発行額を十兆円減額したところでございます。

 今後も、政府といたしましては、成長戦略を着実に実施することで経済再生に取り組むとともに、経済・財政再生計画で示された目安に沿って、改革工程表、八十項目あるものでございますが、これに基づく歳出改革を実行し、二〇一八年度時点でその進捗状況を評価し、必要な場合には歳出歳入の追加的な対応を検討することによって、不退転の決意で二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化を実現する方針でございます。

 詳しい施策につきましては政務官がお答えいたします。

大岡大臣政務官 副大臣の答弁につけ加えまして、具体策について申し上げます。

 先ほど申し上げました八十の歳出項目につきまして改革工程表をつくりましたが、その中には、例えば社会保障につきまして、負担の公平性の確保や公的保険給付の適正化に取り組むですとか、後発医薬品の使用促進のためのインセンティブ措置を強化するですとか、大型門前薬局に対する調剤報酬の引き下げを行うといった改革を含みまして、診療報酬の適正化を通じて、この計画に沿った歳出抑制を実現しております。

 以上でございます。

根本(幸)委員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、安倍政権の哲学であります経済再生なくして財政健全化なし、ぜひ、経済の再生とそして財政健全化、これを必ずなし遂げていただくように、我々も与党の一員として一生懸命頑張ってまいりますので、引き続きの御努力をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 きょうは、これまでの当委員会での質疑も踏まえまして、まず冒頭、改めて軽減税率導入の意義について再確認をさせていただきたいと思います。

 三党合意を経て成立をいたしました税制抜本改革法におきまして、軽減税率制度は、給付つき税額控除、総合合算制度と並び、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮の観点から検討課題の一つでございました。

 そうした中で、軽減税率制度は、給付つき税額控除といった給付措置とは異なり、日々の生活の中において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を直接軽減することによって、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により、導入が決定をされました。

 また、年収の低い方の飲食料品等の消費支出に占める割合は高収入の方よりも高くなっており、消費税が有しているいわゆる逆進性の緩和の観点からも有効であること、さらに、日々の生活の中で痛税感の緩和を実感していただくことで消費者の消費行動にもプラスの影響があるものと期待できることなど、これまで答弁をいただいております。

 また、こうした軽減税率制度の導入の意義がここまで確認されておりますが、ちなみに、給付つき税額控除に関することについても質問させていただいておりまして、例えば、平成二十六年度に実施をいたしました臨時福祉給付金の場合、支給対象者数約二千二百万人に対し、支給決定者数が約一千九百九十二万人となり、支給対象者数の約九%に当たる約二百八万人もの方が残念ながら給付を受けられなかったという事実から、申請に基づく給付制度の課題も明らかにしてまいりました。

 また、給付の前提となる所得の把握につきましても、国税当局において全ての所得を把握することは困難であることも明らかにしてまいりました。

 こうしてこれまでの質疑を確認させていただきますと、税制抜本改革法において検討対象であった軽減税率制度、給付つき税額控除、そして総合合算制度の中で、低所得者への配慮を可能にする、現実的に実施可能である制度は軽減税率制度しかないという結論に至ってくると考えておりますけれども、まずこの点について財務省の見解をお伺いいたします。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

大岡大臣政務官 伊藤議員にお答えを申し上げます。

 もうほとんど議員が質問の中で言っていただいたことの繰り返しとなってしまいますが、よろしいでしょうか。(伊藤(渉)委員「はい」と呼ぶ)はい。

 軽減税率制度は、日々の生活におきまして幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税負担を直接軽減するとともに、これによりまして、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点がございまして、この点が特に重要だという判断のもとに軽減税率制度の導入を決定いたしました。

 他方、給付つき税額控除あるいは総合合算制度では、対象を低所得者に絞った支援ができるという利点があるものの、給付が実際の買い物のタイミングや購入額とは関係がない、あるいは、消費税そのものの負担が直接軽減されないので痛税感の緩和を実感できないといった問題点がございます。

 加えて、給付つき税額控除と総合合算制度につきましては、低所得者層の所得把握の問題や、所得が少ないが多額の金融資産を有する方をどう考えるのかといった資産把握の問題、それから、これらの制度の前提となるマイナンバー制度がまだ稼働したばかりだという問題、それから、これまで確定申告を行ってこなかった方も申請をする必要があるのですが、これに対応する行政の執行の可能性やコストの問題、それから、既に給付つき税額控除を導入しておりますアメリカやイギリスにおきましては、給付額の一割から二割程度が過誤、過ちであったり不正受給であったりするなど、適正性の問題などがありまして、消費税率を一〇%に上げる平成二十九年四月に導入することは現実的ではないと判断したものでございます。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 政務官、ありがとうございます。さらに理由をつけ加えていただきまして、税制抜本改革法に基づく低所得者への配慮としての軽減税率制度導入の優位性は、この委員会の質疑を通して随分明らかになってきたと思います。

 その上で、この制度を導入していく上で乗り越えていかなければならない課題もございます。

 一つが、具体的な当てはめについてでございます。個別具体の飲食料品の提供が軽減税率の適用対象となるのか否かについて疑問がある場合は、原則として所管の税務署に問い合わせることになる、ここも答弁はいただいております。一方で、税務署が閉まっている時間、夜とか土日、こういうときにも飲食料品の提供はたくさんの取引が行われています。よって、原則は原則として、事業者あるいは消費者の問い合わせに適切に対応するために引き続き検討を重ねる旨、さきの質問の際、やはり大岡政務官から非常に丁寧な答弁をいただきました。

 税制改正法案第百七十一条では、「政府は、消費税の軽減税率制度の導入に当たり混乱が生じないよう万全の準備を進めるために必要な体制を整備し、消費税の軽減税率制度の周知及び事業者の準備に係る相談対応を行うとともに、事業者の準備状況及び政府における取組の状況を検証しつつ、必要に応じて、消費税の軽減税率制度の円滑な導入及び運用に資するための必要な措置を講ずるものとする。」とございます。

 これを実現していくために、課税当局自体の体制の充実、整備も大変に重要となると考えますけれども、この点についての財務省の見解をお伺いいたします。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率制度の導入に当たっては、政府として、混乱が生じないよう万全の準備を進めることとされております。

 このため、執行官庁である国税庁としては、法案が成立し公布されれば、関係省庁や関係民間団体等と緊密に連携しつつ、積極的な周知、広報や丁寧な相談対応に取り組んでいきたいと考えており、平成二十八年度予算においても、こうした制度導入に係る事務への対応のため、執行体制の整備として、百三十二人の定員措置等のほか、制度周知、説明会の開催、電話相談体制の整備に係る経費として約九・八億円などを計上しているところでございます。

 具体的には、税務署の消費税専用窓口の相談体制の拡充、電話相談を集中的に処理するコールセンターの設置、事業者のニーズに応じたQアンドA等の最新情報を提供する特設コーナーを国税庁ホームページに開設、幅広い事業者へのリーフレットの送付、関係省庁と関係民間団体や各種事業者団体と連携した事業者向けの説明会の開催及び講師派遣といったきめ細やかな取り組みにより、国税庁本庁、国税局、税務署の関係部署が一体となって効率的な事務運営を行いながら、円滑な制度導入に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 具体的な相談対応や説明会の開催に当たっては、より効果的に制度内容等を理解していただく観点から、事業者の準備状況やニーズも踏まえつつ対応していく必要があると考えておりまして、大岡政務官からも御答弁があったように、今後、事業者、関係民間団体等の御意見や御要望も伺いながら取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 こちらも大変丁寧な答弁をありがとうございます。

 政府としては、総定員の削減という大きな枠組みの中で、課税当局の体制の充実、整備、簡単なことではないと思いますけれども、私どももしっかりサポートさせていただきますので、この点についての取り組みをお願い申し上げたいと思います。

 次に、今回の法律の中で、インボイス制度、適格請求書制度の導入の意義について確認をさせていただきたいと思います。

 平成三十三年四月から導入を予定しておりますこのインボイス制度、事務負担の増加など、特に、中小企業、小規模事業者の皆様の御心配の声に丁寧に対応していく必要があることは言うまでもありません。その上で、インボイス制度導入のメリットについてもここで確認をしていきたいと思います。

 まず一つに、複数税率のもとでも、取引ごとに適用税率を明記し、税額を算出しますので、正確な税額計算が可能になります。

 また第二に、もしこの税額計算に誤りがあれば、取引業者の税額計算にも影響が及びますので、正確な税額計算がなされているか、事業者間、つまりBツーBで相互チェックする牽制機能が働くようになると考えられること。

 また第三に、これら二つのメリットから、事業者間で消費税が正確に転嫁されるようになります。消費税が八%に引き上げられた際、消費税分を力関係で取引業者に転嫁できない事例が問題になりましたけれども、インボイス制度ではこうした問題が発生しにくくなる。

 こういったことが、京都大学の諸富教授、日経新聞紙上でも指摘をされております。

 改めて、平成三十三年四月から導入を予定されているインボイス制度導入の意義について、財務省に答弁を求めます。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど伊藤先生みずからお話しいただきましたとおり、インボイス制度の導入は、複数税率のもとでは、適切な課税を確保するためにはどうしても必要なものというふうに考えております。

 一方で、メリットもたくさんございまして、先ほど伊藤議員からお話しいただきましたとおり、正確な税額計算、それから相互チェックが働くことによる不正がなくなるということとあわせて、とりわけ交渉力、取引力の弱い中小企業にとりましては、最後の三つ目としてお話しいただきましたとおり、税額が明確になりますことから、税金の分の価格転嫁がしやすくなるという、中小企業にとりましては大きなメリットがあるというふうに考えております。

 今回の税制改正法案の附則におきましても、政府は、インボイス制度の導入に係る事業者の準備状況等を検証しつつ必要な対応を行う旨明記をさせていただいておりまして、しっかりと今後とも、事業者への対応を行いつつも、軽減税率制度のもとでの適正課税の確保のために、このインボイス制度の円滑な導入に向けて取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 まさに今政務官から御答弁いただいたように、円滑な導入に向けて、このインボイス制度への移行期、これを今回の法律では四年間見ているわけでございます。この間における会社の経理、ここにも混乱を来さないように、丁寧な対応そして周知徹底が重要になると思います。

 繰り返して申し上げますけれども、軽減税率制度がスタートをすると、会社の経理における事務負担が増加することについて不安の声がございます。

 まず、平成三十三年四月からのインボイス制度導入までの間、請求書は今のままで、軽減対象の商品をチェックする簡易型でよいとしております。また、それでも、税率ごとの商品の売り上げを合計し、そこから納税額を計算するのも大変だ、こういう声もございます。

 そこで、年間売上高が五千万円以下の企業は、厳密な売り上げ管理をしなくてもよいみなし課税という方法を選べることとしています。年間売上高が五千万円超であっても、平成二十九年四月から一年間は同様な対応を認めております。

 一つは、仕入れた商品をそのまま販売する小売業の場合、仕入れ額に占める軽減対象商品の割合を把握し、そのまま売り上げにも当てはめられるようにしております。

 もう一つは、連続する十日間の営業日の軽減対象商品の売り上げを把握し、年間の売り上げを推計する仕組みで、みなし課税の大半はこの手法になると現時点では考えられております。

 さらに、おじいちゃんやおばあちゃんだけで営むような本当に小さな商店など、売り上げすらきちんと把握できていないケースもあるというふうに現場では耳にいたします。そこで、売り上げに占める五〇%を軽減対象の売り上げとみなす仕組みも考慮をされています。もちろん、さきに申し上げた十日間の売り上げも把握できない場合だけにこの仕組みは限定をしております。

 以上申し上げたとおり、軽減税率の導入当初からインボイス制度導入までの移行期において、会社経理等の事務において事務負担の増加が抑えられ、混乱が生じないよう、さまざまな対応が今回の法律には盛り込まれております。法案が成立したならば、これらを速やかに現場へ浸透させていかなければなりません。

 先ほどの問いとも同じ趣旨になりますけれども、そのための課税当局自体の体制の充実、整備及び関係団体等の協力体制の整備について、財務省の見解をお伺いいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘のとおり、今般の税制改正法案には、来年四月からの軽減税率制度の導入に当たり、税率ごとの区分経理が困難な事業者の方々のための税額計算の特例などの経過措置が盛り込まれております。

 こうした特例措置も含めて、事業者の方に制度内容をしっかりと周知していくことが重要と考えており、国税庁としても、各種の取り組みに関係部署が一体となって取り組んでまいりたいと考えております。

 また、これまでの税制改正においても、事業者と直接接する国税局や税務署においては、各地域の関係民間団体等と連携して制度周知等に取り組んできたところでありますが、軽減税率制度については、特に多くの事業者に関係するものであるため、各地域の関係民間団体等はもとより、中小企業団体や関係する業種の事業者団体などとも連携を図り、事業者のニーズや各業種の実態に即した説明を行うといったきめ細かく丁寧な取り組みを行っていくことで、できる限り迅速に軽減税率制度の内容が事業者に浸透するよう努めてまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 こうしたきめ細かな対応が現場にきちんと伝わっていけば、徐々に不安の声も小さくなり、導入に向けて円滑に進むようになってくると思いますので、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 この移行期等におけるもう一つ重要な案件として、レジの改修等の速やかな実施というものが含まれてくると思います。

 軽減税率制度の円滑な導入に向けて、必要なレジの導入やシステムの改修等に対して、政府は資金的に支援することとしており、予備費や補正予算で手当てを行っているところでございます。

 軽減税率対応の簡易なレジの導入や商品情報が登録可能な機種のメーカーによる改修、コンビニなどが導入しているPOSレジは既に複数税率に対応している機種も多く、大きな改修は行わなくても大丈夫そうだとも言われております。また、チェーンストアの牛丼店などは、税率が異なる店内飲食と持ち帰りの両方に対応するための券売機の改修が必要になる可能性もございます。

 メーカーがレジや受発注のシステムを開発し、小売事業者の機器に反映させるまでには一定の期間が必要であり、小売事業者の資金的支援のための予算も使い勝手のよいものとして、レジの買いかえや改修の速やかな実施をしっかりサポートしていただきたいと思います。

 この点については、経済産業省に答弁を求めます。

木村政府参考人 中小企業庁といたしましては、消費税の軽減税率制度の導入に当たりまして、事業者の現場においても混乱が生じませんよう、影響を受ける中小企業、小規模事業者の準備に対する支援にしっかりと取り組むこととしております。

 このため、まず本年度の予備費を活用いたしまして、中小の小売事業者等に対しまして、複数税率に対応が可能なレジの導入等を補助するということとともに、電子的な受発注システムを使っております中小の小売事業者、卸売事業者等に対しまして、複数税率に対応するために必要なシステム改修を補助することとしております。

 予算の使い勝手等についての御指摘もいただいておるわけでございますが、事業者がまず補助金申請を円滑に行えるように、事業者の手続負担にも配慮した制度設計が重要だろうと考えてございます。

 詳細は現在検討中でございますけれども、申請などの手続をできるだけ簡便に行えるように、記載事項をまず極力簡素化するでございますとか、例えば、通常であれば事業完了時に提出いたします実績報告書といったものがございますが、これを交付申請書で兼ねるといったことで、書面を減らすようなこともやっていきたいという考えでございます。

 また、平成二十七年度の補正予算に基づきまして、軽減税率制度の内容でございますとか対応策について十分な周知、広報を行うための、関係省庁と一体となったパンフレットの配布、あるいは説明会、講習会の開催、そういった取り組みの予算もいただいておりまして、こういった取り組みも進めていく所存でございます。

 加えまして、商工会、商工会議所、あるいはその他の関係団体とも連携をいたしまして、相談窓口の設置でございますとか専門家の派遣といったことを通じまして、レジの買いかえ、あるいは改修の速やかな実施を促すように、丁寧なサポートを行っていきたいと考えてございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。よろしくお願いをしたいと思います。

 消費税関係では最後の質問にさせていただきます。

 依然として現場では非常に根強い望む声がありますので、総額表示義務に関する特例について質問をしたいと思います。

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法、この第十条第一項は、二度にわたる消費税率の引き上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の張りかえ等の事務負担に配慮する観点から、本法の施行日平成二十五年十月一日から本法が失効する平成三十年九月三十日までの間、消費税法第六十三条に規定する総額表示義務の特例として、税込み価格を表示することを要しないものとしている。消費者の利便性にも配慮する観点から、本特例の適用を受けるための要件として、現に表示する価格が税込み価格であると誤認されないための措置を講じることを求めております。

 また、本法第十条第二項では、消費者の利便性に配慮する観点から、平成三十年九月三十日までの間であっても、本特例により、「税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。」と規定をしております。

 この点、二月十七日の委員会質疑の冒頭でも取り上げましたけれども、普通の主婦の方などとお話をすると、物を買うに当たって、今だと消費税八%ですから、千円のものが千八十円と記されているのと千円プラス税と書かれているのとでは、実際にお買い物をする際の感覚というのは随分違うと。これは事業者の方においてもこういうお話をよく聞くわけでございます。

 よって、誤認防止措置を施した上で、いわゆる外税も可能にした方が事業者にとっても消費者にとっても利点があるように私には思われるわけですけれども、当該特例の延長等も含めて検討すべきと考えますけれども、財務省の見解、お伺いをしたいと思います。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 消費税の総額表示義務といいますのは、先ほど委員からお話しいただきましたとおり、税抜き価格と税込み価格を正しく表示しなければならないという義務でございまして、これらは、消費者の立場に立ちまして、利便性に配慮して、税を含めた支払い総額が一目でわかるようにするための制度でございます。

 一方で、先ほど委員からお話しいただきましたとおり、転嫁対策の一環としまして、消費税率引き上げ前後の期間に限ってこの総額表示をしなくてもいいというふうに免除をしているところでございます。もちろん、誤認防止措置を施した上で、しなくていいですよという免除をしているところでございます。

 したがいまして、転嫁対策特別措置法の期限到来後は、原則的には、これは消費者の立場から事業者に総額の表示を求めることが適当だというふうに考えておりますが、委員が恐らく現場を回っていただいて、スーパーとか小売業者からさまざまな声を拾ってこられたんだと思いますが、値ごろ感というものを出すためには、やはり三百九十八円、税込み四百三十円ですか、四百三十円と書かれているのと三百九十八円と書かれているのでは、三百九十八円と書きたいということなんだろうと思います。

 実は、現在の総額表示義務におきましても、税込み価格を書いて税抜き価格を書かなければならないとは決まっておりませんで、最初に税抜き価格を書いて、括弧書きで税込み価格を書くということも認められておりますので、こうしたことは、法律に照らして、小売業者のポップ等で工夫、努力をしていただければありがたく思います。

 一方で、委員から御指摘がありましたとおり、今後の事業者の価格転嫁の状況がどうなるかというのは、これはわかりませんので、こうしたことも踏まえて、今後、この総額表示義務につきまして、引き続きよく検討してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、またじっくり現場の声にも耳を傾けていただき、御検討いただければ幸いに存じます。

 時間も参りましたので一つ飛ばして、最後、総務省にお伺いをいたします。

 今回の税改正、平成二十八年度税制改正における地方法人課税の見直しによりまして、地方法人特別税・譲与税が廃止をされました。一方で、法人住民税法人税割の一部国税化が都道府県分、市町村分ともに拡大をされまして、法人事業税交付金が創設をされる法案となっております。

 これによって、法人市町村民税法人税割の税収割合が大きい不交付団体では、法人市町村民税の一部国税化による減収が法人事業税交付金及び地方消費税引き上げによる増収を大きく上回ると心配をされている自治体もございまして、結果として減収となる地方公共団体が生じるわけでございます。

 よって、政府は、今回の税制改正により生じる個々の地方公共団体の実情を的確に把握していただきまして、全ての地方公共団体の財政運営に支障を来さないように配慮すべき、こう考えますけれども、総務省の答弁を求めて、私の質問を終わります。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の偏在是正措置でございますが、地方消費税率の引き上げと法人事業税交付金の創設によりまして、大半の市町村では増収となるものでございますが、御指摘のとおり、法人住民税法人税割の税収の割合が非常に大きい団体におきましては減収が生じることもあり得るものでございます。

 これに対する配慮措置といたしまして、法人事業税交付金につきまして、変動が急激に生じないよう経過措置を講ずる、また、この税制改正に伴います減収額を対象に地方債を起こすことができるよう、地方財政法上、特例規定を設けることといたしております。

 これらの措置につきましては、交付団体、不交付団体いずれも対象となるものでありまして、地方団体の財政運営に支障とならないよう配慮しているものでございます。

 偏在是正措置の意義あるいは配慮措置の内容につきまして、引き続き、丁寧に御説明し、御理解をいただけますよう努めてまいりたいと思っておりますし、個々の市町村からの御意見につきましてもきちんと賜ってまいりたいと考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民主・維新・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 本日も引き続き消費税を中心に質問をさせていただきますが、まず、これまでの質疑を聞いていった中でちょっと感想を申し述べたいというふうに思うんです。

 昨日、公明党の斉藤鉄夫先生が質問をされまして、そのときに、軽減税率について、低所得者対策になるかならないかの議論は、率で見るか額で見るかの違いである、逆進性であると言われる場合は率で見ているのに、高所得者の方に恩恵があるという場合は額で見ている話であるという指摘がありました。

 これは当を得た指摘であるなというふうに思いますし、ある意味、斉藤先生の非常に誠実なお人柄があらわれているような、含蓄のある言葉だなというふうにも思ったんですけれども、それを聞いていて、やはり与党議員の皆さんも、例えば、支持者の方などから厳しい声もこれについていただいているんじゃないかなというようなことも感じました。与党の立場として、なぜこういうことが理解されないのかという、ある意味で疑問のようなもの、戸惑いのようなものもあるんじゃないかなというふうに感じた次第です。

 私どもも含めて、あるいは国民広く一般もそうかもしれませんし、専門家もそうかもしれません、低所得者の対策になっていないではないかというふうになぜこれだけ指摘するのかということを、根本に立ち返って考えなければならないと思うんです。決して、単なる政治的な思惑とか、あるいは、ためにする批判というわけではないわけであります。

 これが、もし低所得者対策も何もない状況で二%上げる、八から一〇にするということがまずあって、その中で軽減税率が出てくるということであると、なるほど、これは逆進性が緩和されるんだな、そういうふうな受けとめ方をされたと思うんです。

 しかし、今回は、最初から低所得者対策というものがあるということはもとより決まっていたわけであります。総合合算制度、給付つき税額控除、軽減税率という三案がありまして、そのレールというものは、四年前の三党合意で既に引かれていたということであります。

 その上で、軽減をすれば、当然その分の税収が減る、逆に言えば、財源が必要になるということでありますから、限りある財源の中で、では、どうやって低所得者対策を実現するんだろうということがまずあったわけであります。軽減がなくて一〇%というものとの比較ではなくて、最初、合意で取り決められた三案の中でどうするのかということがまずあったということだと思うんです。

 三党合意時点で私どもは与党であったわけです。私もこれは調べていて気づいたんですけれども、私たち、三年三カ月政権にいたんです。私は中二年落選をしているんですけれども、復活して再選をさせてもらったということなんですが、与党を三年三カ月やりました。これはちょっと驚きの事実だったんですが、今の自民党の二期生の方よりも与党経験が長いということにはたと気づかされまして、ああ、うそのような本当の話もあるものだなというふうに思ったんです。

 そのときにやはり徹底的な議論を行っているんです。軽減税率についてももちろん議論したし、給付つき税額控除、あるいは総合合算制度、こういうところについて非常に徹底的な議論をいたしました。その中で、軽減税率には大きな効果がない、あるいは、あるにしても効率が非常に悪いんじゃないかという結論になって、それがなくなったという経緯があります。

 その後、三党合意で、二〇一二年の六月だったと思いますけれども、協議をする中で、やはり当時の自公の方から、軽減税率をぜひ入れてくれという話があって、そこに、一回民主党案では消えたものが戻ってきた。こういう経過だったんです。

 軽減税率というのは、低所得者対策としての効果が薄い。かつ、例えば事務負担、インボイス、線引き、あるいは業界と政治との癒着、そういった課題がいろいろ残るということでありましたから、我々は政権からおりましたけれども、軽減税率というのは、まずそのままの形で出てくることはないだろうというふうに考えていたところもあります。野党になってからもです。そして、実際、当初そのとおりになりかかったわけであります。マイナンバーを使ったポイント制の還付案みたいなものも出てきたりした。

 しかし、いろいろ経過があって、では軽減だということにもう一度なったわけです。

 そのときに私どもも、野党として見ていて考えました。軽減税率はいろいろな問題がある、ならば、どういう工夫をして与党の方から御提案があるのかなと。インボイスが大変とか効果が薄いとかいうことは最初からわかっておりました。そのまま出してくることはないんだろうと。

 例えば与党議員の中からは、個別に、例えばインボイスを使わなくてもできる案が個人的にはあるんだということも仄聞をすることもありました。あるいは、軽減対象の品目を狭めて、そのものについては五%に下げて、そして一〇%、五%の二段階でやるという案もあったかもしれません、同じ例えば一兆円という枠を使うなら。また、軽減税率に給付つき控除を組み合わせるとか、別のやり方もあったかもしれません。

 しかし、出てきたものは、ある意味何の工夫もない、二%ただ上げるだけ、食料品で一律というものであって、しかも、なぜか新聞がついている。ちょっと理屈として、何というのでしょうか、根本的な問題を解決しようという姿勢がちょっと見られないんじゃないかなという案で、正直、我々としてもちょっとがっかりしたというところはあるわけであります。それが本音であります。

 特に、その直前に出てきたのが、マイナンバーを使ったポイント制の還付という余りに複雑過ぎる案だったがために、その後に出てきたのが今度は余りに単純過ぎるというか、簡素な案だったものですから、面食らったという面があるのかなというふうに、これまでの我々の視点から見た議論の総括といいますか、一定の所感でございます。

 その上で、積み残されたさまざまな問題についてちょっと議論をさせていただきたいんですが、資料を御用意させていただきました。免税事業者、特に農業に関することをまず取り上げたいというふうに思います。

 こちらの資料を見ていただければと思うんです。これを私が自分でつくって、なかなかよくできた表だなというふうに自画自賛しておるんですけれども、私はこういう表をつくるのが結構好きで、自分でつくりながら考えをまとめたりしているんです。

 農家があります。先日言ったように、農業センサス等を見ますと、販売農家のうち販売額が一千万円を下回るもの、恐らく大半が免税事業者だと思いますが、それが全国に百三十数万軒ありまして、全国の農業者の八割以上を占めている。その農家は免税業者なんです。そして、この表を見てもらえばわかりますが、インボイスを発行できないということになります。そして、購入した事業者の方は、インボイスがないと仕入れ税額控除ができないものですから、消費税の分の負担を自分のところで丸かぶりするということになります。

 ですから、事業者というのは、免税業者から買うということは、インボイスが発行された後はまずなくなります。そうしますと、免税業者は売り先が限られてくるということです。

 この表を見ていただきます。一番左、JA、これは無条件委託販売です。一般的なJAに卸すという場合はこういう形をとるというんですが、これは、特例措置でJAがかわりにインボイスにかわるものを発行してくれる。これはオーケー。

 次は、市場で競りで売る場合。これも、市場の方でインボイスにかわるものを発行してくれる。これもオーケーということであります。

 問題はそこからであります。例えば商社とか問屋さんとかに卸す、いわゆる商系の取引をするということになりますと、かなりの部分が、基本的にはそういう卸商社みたいなところに農作物を売るということはできなくなります。もちろん、向こうがインボイス要らないよと言ってくれればいいんですが、なかなかそういうことにはならない。あるいは、非常に安く買いたたかれるという形でインボイス要らないよと言ってくれるかもしれませんが、基本的には売ることができなくなる。

 それから、規模は小さいけれどもやる気のある農家の方々が、レストランや食堂、スーパー、直接そういったところと取引をするという場合もあります。レストランで、地域の、丹精を込めてつくった人の、農家の顔が見える野菜を使ってサラダをつくっておりますなんていう看板を出してサラダを売る、取引をするという場合も、そこに卸すことはできない。あるいは、地元のスーパーに直接卸すということもできなくなる。あるいは、直売所を通した場合も、事業者に売る場合はできなくなる。

 ただ、消費者に売る場合は、この消費者の方がインボイスは基本的に要らないわけですから、ここには売れるということになりますし、消費者に直接販売もできる。

 しかし、この図でいえば、七つの経路があるうちの三つが基本的にできなくなる。ちょっと長くなりましたけれども、これの問題についてどのように対応するんでしょうか。改めて伺います。

 事業負担が重くなっても課税業者になるということなのか、それとも、そうじゃなくて別に手だてがあるのか、この点について、まず麻生財務大臣にお教えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは自画自賛するぐらいのことはありますよ。よく整理がされていると思います。

 これはいわゆる適格請求書の保存システムという、通称インボイスシステムというものの導入後において、今、宮崎先生の御指摘のあったとおりに、直売所で免税事業者であります農家から仕入れた農作物というものについては、仕入れ額の控除がということでできないということになっておるのはもう事実であります。

 こうしたことから、農家の場合ですけれども、免税業者が排除されるのではないか、または課税を選択せざるを得なくなるので、早い話が、適格請求書、このインボイスというものの発行とか税額計算とか、そういった事務負担を負わせるのではないかと懸念する声があるということなんだと思います。私ども、これはよく承知をいたしておるところであります。

 ただし、この制度というものの導入の事業者への影響というのは、これは実はさまざまなんだと思っております。

 例えば、納入業者であります地場の食堂とか小規模なスーパーなどは、通常これは簡易課税を適用していると思いますね。というような場合には、小さなところですから、納入先の事業者がインボイスというものを必要としないということも多々あると思いますので、免税事業者が取引から排除されるということは、簡易課税を使っているサイズのところだったら、普通はないんじゃないかなと思っております点もあります。

 また、免税事業者でありますこの農家が課税選択を行う場合に、これは簡易課税を農家の方が利用するということで、事務負担というものそのもの自体が軽減されるという可能性もあろうと思っております。

 また、取引から除外されるのではないかといった御懸念は、こういった事情というものを必ずしもよく御理解いただいていないこともその一つの一因ではないかと思っているんです。

 少なくとも政府としては、まずこの制度についてよく知ってもらう、周知徹底を図っていきたいというのが第一なんですが、その上で、免税業者が課税事業者へ転換するかしないかというのを見きわめながらしっかりした時間というものをかけないと、これは多分農家というのは、トーゴーサン、御存じかと思いますが、トーゴーサンの例から見ても、いまだかつて一回も払ったことはないという人も多分おられるのだと思います。私も地元で三人ぐらいから聞きましたので、私は一回もやったことがないという人がおられましたので、多分そういう人もおられるんだと思いますので、これはちょっと時間をかけますということで四年したらと言ったら、もう私はそのころ死んどると言われたので、いや、あんたの息子がやるんじゃないのという話もしたぐらいなんですが、時間をかけてやらせていただきますのが一つ。

 それから、導入からさらに六年間、免税事業者からの仕入れについては一定の仕入れ税額控除ということを認めますので、トータル、四年、六年で十年ということになりますので、そういったかなりの時間をかけてやらせていただかないと、定着するのに何十年とやってきて、今だかつて一円も税金を納めたことないわいと自慢そうに言われても、ちょっとあなた、それは今までの方がおかしいんだろうがという話もしましたけれども。

 とにかく、こういったものもいろいろありますので、今回も、税制改正法の附則に示した方針で、この保存方式というものの導入にかかわる事業者の準備状況とか事業所のいわゆる取引への影響の可能性というのは、ちょっと正直、これは役人が考えている話というのは、大体商売をしたことのない者ばかりで、率直、新聞しか売ったことないとか言われればそれまでですけれども、商売をしたことのない人の話というのは、どうもいま一つ、私らのように商売をした経験のある者からいくと、ワンポイント、ピントがちょっとおくれているというような感じが正直なところしないわけでもないので、ちょっと時間が必要なんだと思っております。先方があって、その免税業者も、免税を受ける買い取る方にしても、消費者はもちろんでしょうけれども、我々つくっている方も、初めてのことですから、これはなかなかいま一つぴんときていないところもあるんだと思います。

 これは、時間をかける必要があるのは、むしろこっちも必要があって、そういったものを見て、ああこういう事業に対してはという点に関しては、これはいろいろさわって附則としていろいろやっていかないかぬという部分もあるんだと思いますので、これは、農業従事者、売っている方ですね、農業、つくっておられる方々を含めていろいろ話をさせていただきながら、適正にこれは対応していかないかぬということが起きてくるだろうなと思っております。

宮崎(岳)委員 財務大臣、農家はトーゴーサンで一回も税金を払っていない人がいっぱいいると実例を挙げて言われて、ここでそういうことを言われるのもどうかなと思うんですけれども、それはともかく、ちょっと確認させていただきたいんですが、これは主税局長の方がよろしいかもしれません。

 今の話でいうと、事業者の方が、つまり購入側の方が簡易課税を選択している場合は、インボイスは受け取らなくていいということでよろしいんでしょうか、これは最終的にそうなるということで。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 購入している側の買い手の方でございますね。それが例えばレストランのような形でもしも簡易課税を選択しているという場合は、その事業者の納税計算をするときに、簡易課税のみなし仕入れ率というのを使ってやりますので、仕入れについて特段その情報が必要ではないということです。

 みずからがどれぐらいの売上高があるかということから自動的に仕入れ額が出てまいりますので、インボイスに基づいてやるという必要性が乏しくなるということでございますので、免税事業者が例えばそういうところと取引している場合においても排除される可能性があるかといったら、そういう相手であればその可能性は極めて低いだろう、こういう意味でございます。

宮崎(岳)委員 今の主税局長の御説明はちょっとわからなくて、では、簡易課税の場合はインボイスを受け取らなくてもいいということでよろしいんですね。これは重要なところなので、ちょっと確認させてください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者間の取引ですから、何がしかの請求書なり、そういうものが通常出ていると思います。

 税法の方からの要請として簡易課税を選択している場合には、インボイスという形でなくても、今申し上げたような形で計算ができるので、インボイスがないとだめだというふうにはならないと申し上げているわけですが、実際にその取引をしているところ、そういうことにおいて、その一点をもって排除されるということはないということではないかということです。

 言いかえますと、簡易課税制度を適用しているという場合においては、仮にインボイスがなくても納税事務には支障がない、そういう意味だということを申し上げておるわけでございますので、その場合には、仮に免税事業者の方がインボイスという形で出さなくても、取引が成立しないということの可能性も低いであろう、こういうことを申し上げております。

宮崎(岳)委員 ちょっと、可能性が低いとか、インボイスがなくても納税事務に支障がないとか、何かはっきり言っていないんですよ。

 本当に、簡易課税を相手がやっているからインボイスを受け取らなくていい、インボイスなしでも税務署がちゃんと認めてくれる、仕入れ額も含めて全てということでよろしいですか。

佐藤政府参考人 その事業者においては受け取らなくてもいいということになります。

宮崎(岳)委員 もう一つ確認をしておきます。

 そうすると、例えば免税事業者も、インボイスは出さないけれどもレシートは出す、あるいは領収書は出すということがあると思うんです。そうすると、例えば、所得税を計算するときと消費税を計算するときで使う書類が違ってきますよね。消費税の方はインボイスしか有効じゃないけれども、所得税とか法人税とか、まあ所得税ですね、つまり、経費が幾らかかったのかということをやる場合と、消費税の計算、税額控除をどれぐらいとるかということが、使う紙が変わってきます。それをどういうふうにつづるかとかという問題も出てきますが、そういうことでよろしいんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 免税事業者の場合でも、やはり取引をいたしますので、何がしかの請求書なり領収書なりを発行するということになるんだろうと思います。

 ただ、そこに、税法上で今回求めているいろいろな事業者番号とかそういうものはついていないという意味においてはインボイスではない請求書であるということでございますが、取引実態としては、当然そういうふうになるんだろうというふうに思います。

 それから、インボイスが仮に出されれば、それは一つの大きな取引の証拠でございますので、所得税とか法人税とか、申告するときの証拠書類の一部という位置づけになるんだろうと思います。

宮崎(岳)委員 地域の税務署の皆さんが税務調査に入るときは余りそんなに優しくないかなという気も正直しておりまして、そんな、何となく書類があればそれで全てオーケーというふうにはならないだろう。

 通常は、領収書あるいは振り込み明細みたいなものをつづってまいるわけです。その中に、インボイスであるものもあれば、インボイスでないものもある。そして、消費税の計算をするときはインボイスのものだけを計算し、そうじゃない、例えば経費とか所得に関するところを計算するときはそれ以外のところも計算をする、そういうことでよろしいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘になられたのは、納税の事務をするときに、課税事業者から買った場合と免税事業者から買った場合、二種類まざるであろう、こういうお話だと思います。

 両方におきましても、通常はそれぞれ請求書が出てまいります。そのときに、免税事業者から出たものは課税者番号がついていない請求書ということになりますし、そうでないものは、インボイスの方はその番号はついているということで、明確に請求書が適格請求書であるかどうかということが判別がつくという形になりますので、それに基づいて消費税の申告をしていただくということになります。

宮崎(岳)委員 少々複雑なような気もしますし、本当にスムーズにいくのかなとちょっと危惧は覚えます。

 さて、今、麻生大臣が言われましたとおり、相手も簡易課税を選択していればと、つまり小規模なところであれば、なくてもオーケーだ。逆に、相手がある程度のきちんとインボイスを使って税額を計算しているところだと、そこには売れなくなるし、そこについては、例えば猶予の措置とか、時間的猶予という意味じゃなくて、例えば除外規定とか特例措置とかというのは、現時点で設けるつもりはないということでよろしいんでしょうか。

 逆に言えば、基本的には、課税事業者への転換をするか、あるいは、そういうところとの取引はやめて、直接消費者とのみやる、あるいはJAとのみやるという存在に転換していくか、どちらかを選びなさいということでよろしいんですか。これは大臣にでも。

 何かありますか、主税局長。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 課税の適正化という観点からインボイスが必要であり云々という話はるる申し上げてきましたので、それを前提に、先生から御指摘あるような事業者の排除の問題等々いろいろ考える必要があるという御懸念に対してどう対応するかということでございます。

 今御提案申し上げているのは、まず、インボイス導入まで四年間の準備期間を置くということで、事業者がみずからの判断において、転換することの可能性あるいはその可否というものはしっかりと見きわめていただければということで四年を置いておりますが、一方、法律の附則で、軽減税率制度導入後三年以内に、事業者の準備状況等をよく検証して必要な対応を行うということが書かれてございます。

 三年以内ということは、インボイスが導入する一年前までの間に、インボイス導入に伴う事業者の準備状況をよく見て検証して、必要であれば必要な対策をとりなさいというふうにさせていただいております。

 そういう意味では、今まで申し上げている準備というのは、あくまで事業者側にやっていただく準備というのもございますけれども、政策当局として、まさにそういう必要性があれば必要な対応をとるということも盛り込んでおるということでございます。

 ただ、現状におきましては、我々が考え得る最大限の形で御提案をさせていただいているということでございます。

宮崎(岳)委員 さまざまな対応をとると附則に書いてある、それは当たり前だと思うんですが、その場合は、例えば実施時期をちょっと延長するとか、あるいは予算でレジへの支援みたいなものを改めて入れるとか、通常そういうものをとっているのであって、今回の場合のように、課税業者にならなくても特例を設けるとかというものは基本的には念頭にないんじゃないかなというふうに、過去の例から見ても私は想像するんです。

 一点、以前も別の委員の方がここで指摘をされましたけれども、ヨーロッパでは確かに付加価値税が広くあって、複数税率も広くあり、そしてインボイス制度も定着をしておりますから、ほとんどの事業者がインボイスを発行しているんです。逆に言うとほとんどの事業者が課税業者で、免税業者というのは、日本のように幅広くとっているということはないんですよ。

 そうすると、そのとき別の委員の方が指摘したように、政府とか財務省の姿勢がどこにあるのかというのがやはり判然としないような感じがするんです。つまり、これを全部原則課税業者なんだ、ヨーロッパ的にそういうふうにしていくということならわかりやすいんです、逆に。多少の手間はかかるけれども、税は納めるのが原則であるので、原則は課税になってください、そういう事業者相手に取引するようなものは課税しても当然じゃないですかと。ただ、本当に趣味的にやるとかというもので消費者相手にやる、副業的に、趣味的にやるようなもの以外は全部課税なんですと言い切っているならわかりやすいんですけれども、何か今のままで余り変わりません、でも、インボイスを入れると全然状況が変わってくるというところがやはり非常にはっきりしないなというのが、私の今の感想であります。

 麻生大臣、この点、課税業者への転換をしろという姿勢なのかどうかということと、あとは、今後例えば商社やスーパーに売れなくなったり、あるいは、直売所で相手に一々、あなた簡易課税ですかなんて確認できないと思うんですよ。固定の取引先だったらできると思いますよ。ただ、そういう不特定多数の人が来るところはできないわけですから、そういう場合への対応を、対応というか、例えば除外措置なり特例措置なりというのを今後設ける可能性というのはそれなりにあるのかどうか、この二点について伺えますか。大臣にお伺いしたいです。

麻生国務大臣 これはもうおっしゃるとおりに、ヨーロッパの場合は、ずっと昔から複数税率という制度になっておりますので、どこへ行っても皆同じようなやり方になっているのが一つ。

 それから二つ目は、宮崎先生、日本の場合みたいに、本当に小さな業者がこれだけあるという国はほかにありませんから。五百万社なんて、とてもじゃないけれどもありませんので。

 そういった意味では、私どもの場合は、ちょっとヨーロッパの歴史とも違いますし、ヨーロッパと数も違いますので、こういったものを定着させていくのに、数プラスこれまでの歴史等々をかけますと、かなり時間がかからぬとこれは定着せぬと思って、僕は十年と言って、四と六というような形になっているんですけれども。少々の時間がかかった結果どうなっていくか、ちょっとよく見なきゃわからぬところだと思います。

 また、日本人というのは、御存じのように引き算もきちんとできますし、おつりが一円、二円も間違わずびしゃっとできる。九九ができるとかいろいろな表現がありますけれども、そういったことができる国民性でもありますし、物事はきちんとしたがる国民性でもありますので、そういった意味では、これは行く行くは定着していくだろうと思っております。

 したがいまして、長期的には、私どもとしては、やはり複数税率を導入する以上は、これはある程度、インボイスというものをつけるというのはこれはもう避けがたいところだと思いますので、時間をかけて多くの方々になるべくこのインボイス制度を採用していただく、そういった方法をとっていただくという方向に行くのが我々としては望ましいというのが率直なところです。

宮崎(岳)委員 大分わかってまいりました。やはり消費税で複数税率を導入する以上は、基本的にはインボイスを発行する課税事業者になっていただく方向で、無理やりするというわけではないけれども、なるべくそっちにしてもらおうという姿勢があるということだと思います。

 確かに、消費税の免税事業者であっても所得税は払っているわけですから、経理自体はやっているわけですので、絶対にできないということではない。

 ただ、やはり事務的な負担は、特に前回も申し上げましたけれども、たった二%のためにやるのかというところは、私は相当強い思いを感じるところであります。

 もう一点です。農家の場合であれば、例えば古川委員の方からも質問がありましたが、仕入れは一〇%、肥料であったり農薬であったり農業資材、農業機械等を一〇%の税率を含めて仕入れる、収穫した作物を販売するときは八%、そうすると、納めた消費税の方が多いという可能性が出てくる。たった二%ですから苦痛はないけれども、これが例えば五%とか一〇%であれば、逆になる可能性は非常に大きくなるわけです。

 そうじゃなくても、例えば、豊作になって生鮮食品等で価格が暴落するということがよくあります。そういうことになると、利益がなくても収支とんとんでというような販売をすることもある。そういった場合は還付ということが生じます。そして、還付申告も課税事業者にならないとできないということです。

 これについてどう対処するのかということなんですが、ただ、今、麻生大臣から、なるべく基本的には課税事業者になっていただくんだという御発言がございました。ということは、特に還付の問題ですから、もうなるべくなってくれというのが一番の答えということでよろしいですか。

麻生国務大臣 御指摘のありましたとおり、免税事業者が還付を受けようということになる、これはもう確かにパーセントの差が少ないものですから、一〇で八と、片っ方、納入者が九の九だった場合、そこに花はほとんどありませんから、だけれども、額がでかくなってくればそれなりにその部分もふえますので、そういったことで還付は十分にあり得るんだと私どもそう思っておりますので、受けようとされるのであれば、これはやはり課税事業者に転換をした上で、原則どおりに売り上げ税額と仕入れ額をそれぞれ計算をしていただかないと還付する必要があるかないかわからぬわけですから。

 そもそも、事業者でいわゆる免税点制度というものは、これはもともとが、納付税額の計算というものが困難な人というもののためにつくられた制度ですから、今御指摘がありましたように、還付が生じることがあるということがわかるということは、これは税額計算ができるというレベルの人、税額計算ができるということを意味していますので、新たな経理の手間が発生するというわけではありません。

 そういった意味では、税額計算を行えるような事業者が事業者免税点制度を活用するということをそもそも考えてはいないんですが、還付が生じる事業者の数というものにつきましては、これは、還付が生じるか否かというところも含めまして、その事業者の付加価値、いわゆる人件費とか利子とか、その他利益などの大きさにもよりますけれども、この付加価値について、個々の農業者とか漁業者とかそういった実際に事業をしている人たちがどのような仕入れを行っているかなどについて、事情はさまざまなんだろうとは思いますけれども、今申し上げましたように、そういう計算ができるレベルなのであれば、これは基本的に課税対象業者になっていただきたいと思っております。

宮崎(岳)委員 大分本音の話をしていただけるようになって、話がかみ合うようになりました。基本的には、還付を受けるような人は当然課税事業者になるべきだというお考えだというふうに思います。

 二枚目の紙をおつけいたしました。どんな人が今免税業者で、課税になるのかなというのを、いろいろな資料をもとにつらつら考えてみました。

 例えば建設業とか造園業、いわゆる植木屋さんだとかあるいは職人さん、こういった方で一人親方という方がたくさんいらっしゃいます。基本的には、取引相手は事業者であります。取引相手が簡易課税をしていないということも非常に多いと思います。あるいは、個人タクシーの方で、相手は不特定多数であります。お客さんがインボイスをくれと言うと思います。つまり、会社の社用で乗って、インボイスをくれ、それがないと会社の方が税額控除できぬ、こういう話であります。あるいはトラックドライバーさん、当然、会社から請け負って運転をする。

 こういった方々については、先ほど言いましたように、インボイスを発行しないということがなかなか難しいのかなというふうに思います。相手も簡易課税でない可能性が高いでしょう。あるいは、簡易課税かどうか判断できないという場合が多いと思います。

 こういう場合は基本的に課税業者に転換していただく、こういうことでよろしいですか。

麻生国務大臣 先ほどの繰り返しにもなりますけれども、適格請求書保存方式というこのインボイスというものの導入によって免税事業者への影響ということになるんですが、今御指摘のありました一人親方、これはもう私どものところに多くおられますので。個人請負業者ともいうんですけれども、大工さんを含め、庭師、いっぱいおられます。事業者によってさまざまなんですが、課税業者への転換を求められるか否か、ちょっと一概に申し上げられませんけれども、とにかく免税事業者に、こういった保存方式というものを含めて、この消費税制度についてはまずよくよく理解をしてもらった上で、少なくとも課税業者への転換ということは、これは我々としては先ほど申し上げたとおりなんだが、この状況を見きわめながら決めていただくということが必要なんだと思います。

 いずれにしてもこの話は、まだあちゃこちゃあちゃこちゃ、週刊誌を含めていろいろな話がわんわん出て、書いている本人が余りよくわかっておらぬ人が書いておるように思えないこともないんですが、読んでいる人はさらにわからぬことになりますので、もうしばらくちょっと時間をかけないかぬなとは正直思っていますけれども、今言われましたように、こういった方々も、基本としては先ほど申し上げたとおりであります。

宮崎(岳)委員 そうすると、建設業関係の一人親方の方々、あるいは造園業関係の一人親方の方々、あるいは個人タクシーの方々、トラックドライバーの方々、違うものがあれば逆に言っていただきたいんです。あるいはここは除外されていますよとか、これは特例がありますよとかというところがあれば、逆に御指摘を願いたいんです。

 例えば飲食店、もちろんお客さんが来ます。個人で使うお客さんもあるでしょうけれども、社用で接待のために使うので領収書をくれ、よくある話であります。

 それから個人商店、八百屋さんとか肉屋さんとか、先ほどのレストランの話ではありませんが、近所の例えばレストラン的なところが、その商店街の中の別の八百屋さんや魚屋さんや、あるいは、そこの地域にあるオフィスが地元の文房具屋さんで購入をするという場合も、これはインボイスが恐らく必要になるだろうと推察をいたします。

 あるいは、個人事業主の方々で会社と契約しているようなパターン、例えば保険外交員でありますとか、化粧品販売員、健康食品販売、そういったものに従事している方々で、社員になっているのではなくして、その会社と契約して代理店のような形に個人でなっている場合。

 とりあえずここまでにしましょうか。こういった場合も基本的にはインボイスを発行しなければ商売は成り立たないと思うんですが、基本的には課税業者に転換をしていただく、こういうことでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 ちょっと見た範囲で、例外はないなという感じがして見ていますけれども、ぱっと見た感じですから、いや、ちょっと待て待てという話になるのかもしれません。

 少なくとも、今見た範囲、例外はないと思います。

宮崎(岳)委員 違うということであれば、事務方の皆さんも控えていることですので、その都度御指摘いただきたいと思います。

 あるいは、先ほど麻生大臣からも、個人請負という言葉が出ました。厚生労働省がいろいろその個人請負について調べたですね。それは結局、実態は社員なのに個人請負と称してやっているものがないかどうかという、ある意味そういった調査のために調べて、個人請負というのはどういうものがあるかという調査があって、それを参考にちょっとこういうものも出しているわけですが、この場合はきちんとした個人請負だとしましょう。偽装請負ではなくして、きちんとした個人請負。

 例えば、エステティシャンの方が会社と契約をして入っている場合、あるいは塾講師、社員ではなくて個人請負として入っている場合。あるいはクラブのホステスさんとか、しばらく前に、銀座ルールというものが有効かどうかという裁判があったことは皆さんも御存じだと思います。私は余り銀座に行かないのでわからないんですが、銀座のホステスさんというのは、社員になっているんじゃなくて、店と契約を結んで、個人請負の世界で自営業者としてやっているという方が多い。そういうふうにその裁判ではいろいろな主張が交わされたということであります。ここも、社用で使って、この場合は店と契約しているわけですから、そのお店が簡易課税をしていなければ、当然、店に対してインボイスを出さなきゃいけない、こういうことになるんだと思います。あるいはIT技術者、ゴルフのキャディーさん、デザイナーさん、あるいはスポーツインストラクターの方々、スポーツジムと契約をして個人請負として業をしている。

 こういう場合も、基本的には、個人請負でありますから払う相手は法人ないし事業者ということになりますが、この場合も転換していただくということでよろしいですね。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 課税転換云々という話については、さまざまな局面で起こり得るということでございます。

 それで、今先生お示しの部分について、例えば、相手方がどういう状況であるかということも当然関係してくるんだろうと思います。先ほど申し上げましたような、相手方が例えば簡易課税事業者であれば、必ずしもそういう課税転換を求められるというわけでもないというような状況もありますから、一概に決めつけられる状態ではないだろうというふうに思います。

 ただ、インボイス制度を入れるということでございますから、しっかりとした形でその制度を定着させるという意味においては、免税事業者がいろいろな局面に直面するということは事実でございますので、そこはしっかりと事業者において判断をいただくということが必要だろうというふうに思っております。

宮崎(岳)委員 相手方が簡易課税かどうかというのは、もちろん一概には言えないんですが、今私が挙げたようなケースでは余り多くないはずであります。そんなに零細業者が何人も個人請負の方を使ってということは、先ほど最初に言われた例のように、地元のレストランが地元の農家さんから仕入れるという場合は、簡易課税というのがそれなりの数あるということは想定されますが、例えば、スポーツジムであったりとか銀座のクラブであったり、クラブ規模にもよるんでしょうけれども、あるいはゴルフ場であったりというところが簡易課税ということはそれほどないのではないかというふうに推察をいたします。

 それからもう一つ、フリーの職業の方、小説家とか、イラストレーターとか、フリーライターとか、あるいはピアノ講師、それも、大手のピアノ教室等に社員でなくして入っているというような、パターンもいろいろあるかと思います。あるいは道場、道場というのは一般の方が多いのかもしれませんが、例えばまとまって法人と契約をしているというようなパターンもあるかもしれません。私も昔、集英社というところで小説を三冊書いたことがあるんですけれども、こういったときも、もちろん支払い調書等も全部送られてきて、印税について所得税としては処理をしてきたわけでありますが、私はそんなにプロとしてやっていたというほどではないんですけれども、ある程度の収入があって、年に二、三冊、コンスタントに出すというような人であれば、必要なのかなというふうに思います。

 あとは、今は副業をやっている方が結構いらっしゃいます。ネットを使ってネット通販とか、あるいはアフィリエイトといって、ネットのホームページ等を使った広告ビジネス、それから、インターネットを介してテープ起こしとかデータ入力とかの仕事を受ける。本当に一日二時間とか三時間その仕事をやって、ふだんは普通の会社に勤めているけれども、そういうサイドビジネスをやる。テープ起こしやデータ入力等だったら、受ける相手は大体法人であろうというふうに思われます。

 こういったものも基本的には課税選択ということなのか、あるいは猶予を受ける方法があるのか、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 各事業者が、繰り返しになりますけれども、どういう取引をしているか、特に事業者の場合、相手の事業者が例えば簡易課税というような事業者であれば、インボイスを求める可能性も非常に低いというケースもあるでしょうし、例えば、BツーCで消費者というような場合になると、それはそういうことも起こらないということですから、きょう御提示になられましたさまざまな業種はあると思いますけれども、それがどういう相手と取引しているかというところ次第ということには基本的になるんだろうと思います。その範囲の中で御判断をいただくということだと思っております。

宮崎(岳)委員 ちょっと今の御答弁はごまかしがあるのかなという気もします。

 私がここに書いてあるのは、BツーBのものには限りませんけれども、ただ、BツーBがあるもの、つまり、事業者相手の商売があるものを出しています。完全に消費者相手だけというものは載せておりません。例えばネット副業等であれば、普通のオークションとかで自分の持ち物を売るみたいな人は相手は消費者でしょうけれども、例えばステッカー的なものをつくって売るとか、こういった場合は業者からの注文というのもある。そういったものはかなりございます。

 例えば小説家等だったら、あるいはイラストレーター等だったら、大体出版社相手の商売になりますから、出版社というのはそこそこの規模がある場合が多いですから、ほとんど簡易課税じゃないと思うんです。

 この中でいうと、例えば小説家とかイラストレーターさんみたいなフリーの職業の方が出版社と取引をする、ただ、その人はまだ余り売れていない、余り売れていないからそこそこの収入しかない、本業は別にあって副業としてやっているけれども、やがてはひとり立ちしてプロになりたいという思いを持ってやっているという方々がいて、こういう方が出版社と取引するということは、基本的には課税選択をするということなのか。それとも、そうではないパターンとすれば、相手が簡易課税とかそういうケースは除いてです、そういうケースは除いて、どういう方法で、どこら辺で線引きされるというふうにお考えなのか。主税局長、お願いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 結局、その先生のケースでは、出版社が、どういう形で、その著作をされている方との関係でインボイスを求めるかどうかということに尽きるわけでございます。

 したがって、それを前提にそういうことになるということが想定されるということであれば、例えば、自分はどういうふうに課税選択の方に行ったらいいかどうかということもちょっと考えていただく必要は出てくるんだろうというふうに思います。

宮崎(岳)委員 言っている意味がよくわかりません。もう一度お願いします。

佐藤政府参考人 著作をしておられる方が出版社との間でどういう形のやりとりをされるかということでございますが、結局、出版社の側からインボイスを相手に対して求めるかどうかということは、出版社との間の関係になりますので、そこは、例えば出版社が、それがないとあなたいいよという話なのか、その辺はどういう関係か、インボイスだけでそのお互いの関係が決まっているわけでもないでしょうから、そこら辺の事情というのをそれぞれの両者の間で考えていただくということとともに、今度は、著作をしている方々がまたいろいろなところの出版社といろいろなことが出るでしょうから、関係を整理しないといけない、考え方を整理しなきゃならぬという状況にもなるでしょうから、その点については、課税選択の要否というものを自分の問題として考えていただく必要が出てくるということでございます。

宮崎(岳)委員 そうすると、これは大臣にお伺いした方がいいのかな。

 例えば、おたくは免税業者だからうちが消費税をかぶることになるから、その分まけてもらうよ。これはありですか、なしですか、大臣。

麻生国務大臣 消費税というのは、今回の話の前から似たような話はいっぱいあるんだと思いますが、基本的に、消費税をまけてもらうよ、ちょっと待ってください、これは皆さんが払っていただくことになっておりますからと言って突っ張り切るか突っ張り切らぬかは、それはやはり力関係というものもあろうかと思いますよ。下請、孫請、ひ孫請等々そういった関係もあろうかと思いますが、基本としては、消費税は払っていただくということになろうと存じます。

宮崎(岳)委員 いや、これまでのケースでいえば、消費税を別にインボイスではなくても控除できたわけですから、免税業者からやっても控除はできたので、下請いじめみたいな話になってくると思うんです、今のようなことが。

 ただ、相手が免税業者だった場合に、実際に自分でその免税業者の分の取引、取引した相手は実際に税額をかぶるわけですから、では、おたくは免税業者なんだからよそと同じ値段では買えないね、もっと安くしてもらうよということはありという考え方もあると思うんです。

 では、ちょっと専門的だとすれば主税局長の方から、どうなんですか、ありですか、なしですか。実態としてあるのはあると思いますけれども、そういうことは許されるのか、そうでもないのか、違法ではないけれども好ましくないのか、そこら辺はどういうふうに捉えているのか、お願いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 税法上の考え方は、免税事業者については、仕入れに入っている税額の部分というのがございますので、その部分については、今度は相手に渡すときの価格に転嫁していくというのが基本的な考え方になるということでございます。

宮崎(岳)委員 許されるか許されないか、お願いします。つまり免税業者と取引しているんだから。いや、税と元値がはっきり区分されていればいいですよ。

 ただ、区分されていなくて、ざくっと幾らでやるのが普通ですよね、小さい取引。その場合に、おたくは免税業者なんだからよその業者と同じ価格じゃうちは買えないよ、その分を引いてもらうよ、こういうのは、今は少なくとも好ましくはない、場合によっては違法性もあるということですが、インボイス制度が導入された後はどうなんですかということを伺っているんです。主税局長、ここは悩むようなところじゃないと思いますよ。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 結局そこは、両者の間の価格設定というふうになるんだろうと思います。

宮崎(岳)委員 ということは、いいということですね。(麻生国務大臣「好ましくない」と呼ぶ)好ましくないの。では麻生大臣、お願いします。

麻生国務大臣 これは今もそうですけれども、基本的には好ましくないんですよ、はっきりしています。

 ただ、そういうことも力関係で起こり得ると思います。ちょっと俺のところは今資金繰りが足りないんだから今月だけ勘弁して、来月に払うから、そういう話は幾らでも御経験もおありだと思うけれども、そういうのはいっぱいある話ですから。

 だけれども、基本的には、宮崎先生、好ましくないことははっきりしています。

宮崎(岳)委員 好ましくないということでいいんでしょうか。今、ちょっと完全に両者の答弁が違っているような気がしておりますけれども。

 実は、内閣府政務官に来ていただいたので質問を最後にしようと思ったんですけれども、ここをそのまま放置すると終われないので、ちょっと主税局長、お願いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 恐らく、相対でどういう形になるかということでございます。力関係等々いろいろ出てくるというようなことの恐らく想定でございますけれども、まさにそこは価格交渉の中で決まるということだと思います。

宮崎(岳)委員 価格交渉の中で決まるというのは、いいということじゃないですか。好ましいとか好ましくないという話じゃないということで、今は大臣が好ましくないとおっしゃったから。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 そこは、善悪というより、両者の間で価格を決めるときの要素として考えていただくということかと思います。

宮崎(岳)委員 済みません、質問を大分残して終わってしまったんですが、今のところはやはり食い違いがあるということだと思いますので、あと、改めて私がやるか別の人がやるか、ちょっと詰めていただくことにします。(発言する者あり)

 では、今指摘がありました。これは好ましいのか好ましくないのかについて統一見解だけ求めたいと思います。

 委員長、そこはお取り計らいください。

宮下委員長 理事会で協議いたします。

宮崎(岳)委員 最後、では一点だけ、来ていただいたので、時間ぎりぎりでございますけれどもお伺いします。

 三世代同居、一億総活躍の目玉ということですが、聞いたら、税の減税額が十億円で、一万人を想定されているということです。

 よく国立人口問題研究所等のデータを引き合いに出されるんですが、それを見ると、三世代の方が出生率が〇・二五高い。そうすると、単純計算すると、〇・二五高いということですから、二千人ですか、二千五百人ですか、この政策で二千五百人ふえるということになるんですが、そもそもそこに因果関係を本当に見ていいのかどうかということと、目玉政策としては余りに、二千五百人みたいなことだと、〇・二五%ですから、毎年百万人生まれていますから、ちょっと小さ過ぎるんじゃないかと思います。御見解をお願いします。

高木大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、我が国の少子化ということについては、晩婚化、未婚化を初め、さまざまな要因が影響しております。そして、この少子化を克服するためには、政府一体となって総合的に政策を推進していくことが重要であると考えております。その中で、子育ての中の孤立感や負担感が大きいこともこの少子化の要因の一つであると考えております。

 この特例によって、三世代同居を希望する子育て世代が祖父母による育児や家事の支援を受けることが可能となり、子育ての不安や負担が緩和されることにつながるものと承知をしております。実際、内閣府の調査では、子供が小学校に入学するまでの間、祖父母が手助けをすることが望ましいと八割近くの方が答えております。

 政府としては、子供を持ちたいという希望をかなえるための環境整備の一つとして、この特例を設ける意義は大きいものと考えております。

宮崎(岳)委員 時間ですので終わります。

宮下委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 総裁が今お着きであります。二、三、総裁から御答弁いただきたいので、ちょっと待たせていただきます。

 よろしいですか。

 総裁、どうも連日御苦労さまでございます。二、三問私からお伺いしたいんですが、前々から伺っております予算委員会でも、それからこの委員会でも伺っておるわけでありますが、なぜマイナス金利が国民のためになるのかということ、これをわかりやすく御説明いただきたいということでございます。

 日銀がマイナス金利を導入したという狙いについては何回も伺っておるんですけれども、この前、私は金庫の話をしましたよね。これは、マイナス金利対策はお済みですかという広告のもとに金庫が売れているという話をいたしました。これがやはり国民の皆さんの実際の反応なんですね。

 百貨店の友の会の話も、この前、予算委員会でさせていただきました。百貨店の友の会への新規入会が大変なラッシュになっておるということでございます。

 日本を代表する日銀総裁に友の会の話を聞くというのは、いかに次元が低いかどうかわかりませんが、本当に、友の会や金庫の動きを総裁はどういうふうに今お感じになっているのか。友の会ということを御理解はいただいておると思うんですが、その辺のところをちょっと御答弁いただきたいと思います。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

黒田参考人 まず、このマイナス金利というものが国民のためになる政策かどうかという点についてお答えをしたいと思います。

 今回導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、量的・質的金融緩和の基本的な枠組みを維持しつつ、それを一段と強化するものであります。

 量的・質的金融緩和は、御案内のとおり、国民の間に定着してしまったデフレマインドを抜本的に転換するために、二%の物価安定の目標の早期実現に対する強いコミットメントを行うとともに、それを裏打ちする大規模な金融緩和を推進するものであります。

 こうした政策によって、主として、実質金利を低下させることを通じて企業や家計の経済活動を刺激し、企業収益の改善、あるいは雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという経済の好循環をつくり出すことを目的としておりまして、こうしたことは所期の効果を発揮していると考えております。

 まず、企業収益は最高水準となっておりますし、失業率が三%台前半まで低下するとともに、一昨年の労使間の賃金交渉において約二十年ぶりにベースアップが実現し、昨年も多くの企業で一昨年を上回る賃上げが実現するなど、雇用・所得環境も改善しております。そうしたもとで、企業の価格設定スタンス等にもはっきりとした変化が見られているということであります。

 今回導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、金融機関が日銀に保有する当座預金の一部にマイナス金利を適用するとともに、これまでどおり大規模な長期国債買い入れを行うことにより、長短金利により大きな下押し圧力を加えることを狙いとしております。その結果、実質金利の低下を通じて、企業や家計の経済活動にさらなる好影響をもたらすことが期待されております。

 現に、マイナス金利導入後の金利の動向を見ますと、預金金利も低下しておりますけれども、もともとゼロ%近くにあったこともあって、その低下幅はごく小幅にとどまっている一方、貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利ははっきりと低下しておりまして、金利面では既に政策効果があらわれております。

 今後、設備投資や住宅投資にも好影響が及んでいくというふうに思っておりまして、このように、マイナス金利つき量的・質的金融緩和は国民生活にとって必ずプラスになると確信をいたしております。

 なお、委員がおっしゃいました金庫が売れている、あるいは百貨店の会員になる方がふえているというお話は私も伺っております。

 それから、さまざまな金融機関からもいろいろな話を伺っておりまして、金融機関の方のお話では、一般の消費者、家計からのお尋ねで一番多いのはやはり住宅ローン金利、これが下がるので借りかえをしたらいいのか、あるいは新たに住宅ローンを組むときの金利等についての御相談、これが一番多いとおっしゃっておられました。

 それから、もちろん預金金利についてのお尋ねもあるようですけれども、これは、従来から申し上げておりますように、預金金利がマイナスになるということは考えられませんし、既にかなり低い金利になっておりますので、これがさらに若干下がったとしても、一般消費者として非常に大きな影響を受けるということは余り考えられません。したがいまして、そういうお問い合わせのようなものは余りないというふうに伺っております。

 ただ、委員御指摘のようなことが報道されておりまして、そういうこともあろうかと思いますが、先ほど申し上げたように、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、従来行ってまいりました量的・質的金融緩和をさらに拡大して、実質金利を下げ、経済活動を刺激し、できるだけ早く二%の物価安定目標が達成できるようにするということを目的としたものでありまして、その効果が少なくとも金利のところにはあらわれてきておりますので、これが実体経済に波及していくというふうに考えております。

鈴木(克)委員 総裁は、私が何遍もお伺いしても、所期の効果は上がっておるというお話でございます。先ほどのローンの話とか金利の借りかえの話とか、その話はもちろん私も承知しております。ただ、日銀がマイナス金利を導入された本当の目的は、やはり、投資が始まっていって経済が活性化する、景気が上がるということが私は本来の狙いだったというふうに思うんですね。

 そうすると、消費も投資も両方ふえていかなければ本来の狙いどおりではないというふうに思うんですけれども、現在、過程であると言えばそれまでかもしれませんけれども、私はむしろ、国民の皆さんの心配というのか、先行きの心配、生活防衛というような方に力がかかってしまっておるんではないですかということを申し上げたいわけであります。

 しかし、何遍お伺いしても、二十年ぶりに何々がアップしたとか所期の効果が出ておるとか、こういう話なものですからあれですが、やはり総裁、そうではない部分もあるということをぜひひとつ心にとめていただいて、今後の政策をお進めいただきたいなというふうに思うんです。

 私は、さっきも申し上げましたように、消費がふえ、そして投資がふえ、景気がアップしていくということについて、くどいようですけれども、今やった政策が間違いないんだということであるなら、はっきりと国民の皆さんにわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。

黒田参考人 その点につきましては、従来からもちろん国民の皆様に御説明申し上げておりますけれども、今後とも引き続き御説明したいと思っております。

 なお、御承知のように、昨年の第四・四半期、最後の期でしたか、のGDPの成長率は若干マイナスになったわけですが、その中でも設備投資は非常に力強く増加しておりますし、日銀の短観などによっても企業の設備投資計画は非常にしっかりしているようでございます。

 消費が若干マイナスになったということの中には天候不順であるとかいろいろな要因が含まれているように思われまして、小売売上高とかその他を見ますとまあまあ比較的伸びているようですけれども。

 確かに、GDPベースの消費がマイナスになったということは成長率をマイナスに引き下げた大きな要因でございますので、今後とも消費の動きを十分注視してまいりたいと思いますし、消費の基調というか、消費自体は底がたいものがあるというのが実は政策委員会の判断でもあるんですけれども、さらにこの消費が力強く増加していくことを期待しつつ、しかし、実際どのように消費が動いていくかというのは今後とも十分見ていきたいというふうに思っております。

鈴木(克)委員 これぐらいにさせていただきますけれども、イールドカーブがどうのこうのということよりも、やはり、国民の受けとめというのは、マイナス金利というイメージが本当に総裁が思われておるように進んでいるというか伝わっているんではないというところを私は申し上げたいと思うんですね。

 十三世紀の資本論の中に、資本は石ではなくて種子である、種であるというお話がありました。今回のマイナス金利というのは日銀が貨幣を石にしてしまったんではないかという極論をおっしゃる方もあるということだけ申し上げて、ぜひひとつ、もっと国民が本当に、まさに種をまいて花を咲かして明るい社会になるような、そういうイメージをつくるために日本銀行として大いに御尽力いただきたい、このことを申し上げて、私の総裁に対する御質問は終わります。ありがとうございました。

 それでは次に、大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 GPIFの資産運用に与えるマイナス金利の影響ということをお尋ねしたいと思います。

 現在、年金積立金の運用を行っているGPIFの資産運用の目安として、国内株式と外国株式、その割合がそれぞれ二五%ずつというふうになっております。年金積立金の運用について、実にその半分を株式で行うこともあり得るということになったわけです。

 そこで、今般の日銀のマイナス金利であります。きのうは長期金利がいっときマイナス〇・〇五五%と、過去最低の水準となったわけです。

 株でも損、国債でも損が出るような事態になったら、国民の年金はどうなってしまうかということであります。

 政府の主要なお立場の一員として、またアベノミクスの責任者のお一人として、このGPIFの資産運用、それからマイナス金利の影響、そのところの認識を大臣からお伺いしたいと思います。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 GPIFのいわゆる基本ポートフォリオにつきましては、これは厚生労働省とかGPIFで検討されるべきものなんだと考えておるのはまず基本であります。

 その上で、現在のポートフォリオというのを見ますと、二十六年度の財政再建の検証というのを踏まえますと、厚生労働省とGPIFで検討されたものだと承知しているんですが、いわゆる短期的な経済の変化により見直すべきものではなくて、これは長期的なもので見ていかないかぬ、年金の話ですから。当然のこととして、今月上がったとかきのう下がったとか金利が零コンマ何々、そんな毎日の話なんかしていたらとてもじゃありません。

 年金でやっていますので、最低でも一年ぐらいのタームで見ないといかぬものなんだ、基本的にそう思っておりますので、短期的にどうのこうのというような動向に過度にとらわれるべきものではない、基本的にそう認識いたしております。

鈴木(克)委員 そうすると、結局、GPIFの資産運用に対しては、許容の範囲というか、それは大臣としては認めるというお立場だということですね。わかりました。

 次に、アベノミクスの株価に対する大臣の認識をちょっとお尋ねしたいんです。

 これも先日予算委員会で議論をさせていただいたわけでありますが、政府や与党がアベノミクスの成果としてきたのは、唯一ということではありませんが、やはり株価だというふうに思うんですね。この株価について議論をさせていただきたいと思います。

 この前の予算委員会で、大臣は、株価はあくまでも結果だ、こういうことをおっしゃいました。こういうこともおっしゃったんですね、今の日本の実体経済はしっかりしておるというお話でもありました。

 とすると、原油安、それから中国経済が減速、米国の利上げの先行きが不透明だ、こういうことをおっしゃるわけですが、それとは関係なしに我が国のマーケットは、そういった一時的な影響を受けようとも、長期では株価は下がらない、こういうふうな御見解が出せるんでしょうか。その辺はどういうふうにお考えになるでしょうか。

麻生国務大臣 株が損するとか上がるとかいうことが私の立場で言えるはずもありませんし、またそれを言えるというのは神様ぐらいのものであって、それも先行きまで全部予想できる人はおりません。

 その上で、もうわかった上で聞いておられるんだと思いますが、株というのは基本的には先行指標ですから、そういった意味で、私どもは、アベノミクスというものは、先行指標の株は、たかだか八千円弱ぐらいだったものが倍ぐらいになっておりますから、それは間違いなく、見やすい数字としては、株価が上がったということははっきり申し上げられる例だと思っておりますよ。

 そのほかにもいろいろあるのであって、GDPの伸びであってみたり、税収の伸びであってみたり、なかんずく雇用の増加であったりということは非常に大きなものだったと思っておりますが、政権交代以降の趨勢として株価が大きく上昇してきたということは間違いない事実だと思っております。

 株は、きのうは上がっておりますが、きょうまた上がって一万六千円に行っておりましょう、確か二百何十円きょうは上がっているはずですけれども。

 そういった意味で、この種の、きのうは上がってきょうは下がったとか、あしたはどうとかいう話ではなくて、いわゆる株価の変動については、これはいろいろな要素で動くものなので、日本の実体経済のファンダメンタルズというものが悪いことではないことはもう数々の指数ではっきりしていると思います。

 海外要因というのは確かにありまして、わかりやすい例でいえば、先生の近くなんかでいろいろつくっておられる会社で、例えば中国に進出しておられた企業で、紙の製品やら何やらつくって、向こうが安いというのでつくっておられた有名な紙おむつがあります、ちょっと業者の名前まで言えませんけれども。少なくとも、メード・イン・チャイナと書いてあったら中国では売れないんですよね、御存じのように。したがって、メード・イン・ジャパンと書いたものをこっちでつくって送る、そうすると向こうの値段で倍で売れるわけです。これがこの数年ずっと起きていることですよ。

 したがって、皆工場をこっちへつくって、こちらでつくってまた輸出するというようなことをやり始めたのに、今度の上海のああいった騒ぎになりますと、その紙おむつの中国で売れていた分の絶対量が減少しますので、その部分では、こちらでつくっていた、日本にあります紙おむつの工場が影響を受けるということになる。

 そういった形で、中国経済というのはいろいろな形で影響しているということは事実だと思いますけれども、経済そのもの自体がおかしくなっているというわけではありませんけれども、これだけ世界じゅうに組み込まれておりますので、日本だけ、一人だけ例外ということはあり得ないのであって、我々はその被害を最小限度にとどめるように努力せないかぬということだと思っております。

鈴木(克)委員 そこで、株価を維持している一つの要素として、外国人投資家の動向というのがあるというふうに思うんです。

 なぜこれを伺うかというと、平成二十六年四月十六日のこの委員会で、大臣が、これも当時ちょっと話題になりましたけれども、GPIFのポートフォリオの見直しに先立って、「いわゆるGPIFの動きが六月以降出てきます。」ちょっと略しますけれども、「そういったようなものの動きが出てくるというのがはっきりしてくると、外国投資家の方が動く可能性が高くなる。」このように御答弁をされて、当時話題になったわけです。

 結局、アベノミクスの相場というのは、年金ですね、さっきのGPIFという公的マネーを呼び水にして投機マネーに支えられてきた。こういうのが、七千円、八千円が一万六千円になった、二万円になったという結果を出した。そういう御認識、公的マネーと外国の投資というのがそういう結果を招いたというふうに大臣はお考えなんでしょうか。確認させてください。

麻生国務大臣 基本的に、日本の株式につきましてはいろいろな要素がありますので、日本のGPIFが動いたからとか海外の資本が動いたからとか円が安くなったからとか、いろいろな要素がこの中にありますので、一概にこれで決まったというわけではありません。

 GPIFで言わせていただければ、少なくとも安倍政権になる前のときは、三カ月前は間違いなく年間マイナス一・五兆円ぐらいのマイナスだったでしょう。それが、翌月の通年度で約十兆円の黒、その次の年が十五兆円の黒、三年目がたしか十一兆の黒、いずれも黒ですよね、結果論として。違いますかね。私の記憶では、数字はそらんじて言っていますのでちょっと記憶が違っているかもしれませんが、大体そんなに違っていないと思うんですね。少なくとも、すごく大きく影響してきているというのは黒字になっているから。だから、年金の話というのを皆余り言われなくなったのは、年金は赤字ではなくて黒字ですから。

 そういった意味では、私どもは、これは非常に大きな効果があったことだけははっきりしていると思っていますけれども、これで株価がどうのこうのと言うので、これだけかのごとく言ったら、それは大きな間違いを起こされますので、それはやめておかれた方がいいです。基本的には、株というのはそういった一つの要素とかいうもので動くものではありませんので、いろいろな要素で動いてくるんだと思います。

 今、石油が下がったからとかいう話になっていますけれども、日本の経済にとりましては、石油が下がって間違いなく貿易収支なんかは非常に大きく貢献していますから。そういった意味では、石油の話やら何の話やら、一概にこれだけが悪いかのごとく言われる話は、明らかに経済がわかっていないか、わざと偏って、偏向しておられるか、とにかく足を引っ張るネタを探そうとしておられるのか、よくわからないんですけれども、石油が高くなって文句を言われたことはあっても、安くなってという話は少なくとも今まで余り聞いたことがなかったんですけれども。

 今言われておる話はそういう話で、石油が安くなって騒ぎになっているのは輸出国の話が一番大きな話なので、特にアメリカとかロシアとか中近東の国々で大きな問題になってきているというのの波及効果がどう響くかという話だと思っております。

鈴木(克)委員 確かに株価は、外国の買いだけで上がったりGPIFで動いたりということではないというのは、それはもう基本的にはわかっておるわけですけれども、しかし、大臣自身が昨年の四月にそういうような発言をされたわけですよ。だものだから、そこのところの大臣の御認識をちょっと確かめさせていただいたということであります。

 厚労省に来ていただいておると思うんですが、GPIFの年金積立金の運用のあり方と、それから株式の直接売買解禁の見通しということでお伺いをしたいんです。

 先ほど大臣がお話しになりました、確かに三十数兆円、GPIFの運用は黒だったと。それから、直近の数字は、二十七年の四半期だったと思いますけれども、かなりの損も出ておるということです。

 上がったり下がったりというのもあるということなんですが、いわゆる株式の直接売買解禁について、今厚労省はどんなふうに考えてみえるのか、お答えをいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありました、株式のインハウス運用を含めましたGPIFの運用の見直しにつきましては、ガバナンス改革とあわせまして、社会保障審議会の年金部会において御議論いただいたところでございます。

 株式のインハウス運用につきましては、積極、消極、それぞれの御意見がございましたが、消極論としては、国の機関が市場のプレーヤーとなることの是非、あるいは、市場の企業経営に影響を与えることへの懸念といったことが示されたところでございます。

 二月八日に議論の整理が行われまして、現段階では、国民から一層信頼される組織体制の確立を進めることがまず重要であるということから、株式のインハウス運用までは踏み込まず、ガバナンス改革を中心とした改革を実施すべきという意見が多数でございました。

 現在、そうした議論を踏まえまして、今国会に関連法案の提出に向けて必要な作業を進めております。(麻生国務大臣「何のためにやっているんだよ」と呼ぶ)

鈴木(克)委員 大臣がおっしゃるのは、少しこちら側の席に空席が多いのではないかということでありますが、恐らく私の質問が余りみんなの興味を引かなかったのか、内容的に乏しいのか、よくわかりませんけれども、それはそれとして反省をして、また対処させていただきたいというふうに思います。

 さて、去年の第二・四半期はたしか七・八兆円ぐらいの損を出しているんですね。先ほど大臣がおっしゃったように、長期的に見なければならない、それから、上がったときもあるじゃないか、しかし、下がったときもあるよということでありますけれども、私は、やはり年金基金というものをギャンブル的な発想で使っていくということがいかがなものかな、前々からそう思っておるわけですよ。

 確かに、さっきの大臣のお話のように、上がったときは黙っておったじゃないか、下がってわあわあ言うな、そういうことの見方が私は違って、むしろ国民の皆さんは、きちっと管理をしてもらいたい、安全、安心に管理をしてもらいたいということであって、ギャンブルで、あるときは上がる、あるときは下がる、減るというようなことを本当に望んでみえるのかどうか、このところに私は非常に疑問を持っておるんですね。だから先ほど大臣は、おまえはわかっていないな、無理やり攻撃の材料に使うのかというふうにおっしゃっておるわけですけれども、そうではなくて、国民の気持ちを代弁すると、確かに上がればそれはあれかもしれません。

 きょう、本当に総理が見えないので残念なんですけれども、総理は、下がったときには、結果、年金も少なくなることもあり得るということをおっしゃったんですよね。この発言は、余りにしても無責任だというふうに私は思うんですね。厚労省の担当者は、今回の損失で今の年金額が減ることはない、こういうことをおっしゃっておるわけですよね。総理がおっしゃった真意を厚労省に聞くというのは、それはわかりませんということかもしれませんけれども、国民は、その総理の発言も厚労省の発言も両方聞いておるわけじゃないんですよね。総理の発言だけ聞けば、これは本当に大変なことになっているんだなというふうに思うわけです。

 その辺を踏まえてもう一度、こういったふえたり減ったりすることによって国民の皆さんの年金が減ったりすることがないのかどうかというところを御答弁いただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 積立金の運用につきましては、その評価は、短期的な動向ではなくて長期的な観点から判断していく必要がございます。

 そうした意味で申し上げますと、今、短期的な経済変動がございますが、平成十三年からの自主運用開始以降の運用実績を見ますと、その間にリーマン・ショックや東日本大震災といった大きな経済変動がございましたが、年率で見ますと現在二・七九%のプラスになっております。金額でも四十五・五兆円ということで、長い目で見ますと、経済変動があっても一定の必要な運用収益の確保をしてきております。

 そうした意味からしますと、今後とも、我々が考えるべきところは、短期的な市場の変動ではなくて、長期的にしっかり運用していくということではないかと思っております。

 先ほどお話にございましたポートフォリオにつきましても、現在の市場環境でいきますと、非常に国内債券に偏った運用では利回りも低いので必要な運用利回りは確保できませんが、そうした中で、我々としては、基本ポートフォリオを見直しまして今のポートフォリオを運用しておりますので、今後とも長期的な運用でしっかりと対応していきたい、このように考えております。

鈴木(克)委員 繰り返しになりますけれども、政府が国民の年金を、勝手にと言うとまた叱られるかもしれませんけれども、マネーゲームにつぎ込んでいるということで、結果、うまくいけばいいのかもしれませんけれども、最悪の場合には国民に影響が出るようなことのないようにしていただかなきゃいけないというふうに私は思います。

 したがって、安倍総理がどういうおつもりでおっしゃったかわかりませんけれども、ここでその議論をしても仕方がないことなんですけれども、私は、非常に乱暴な発言をされたな、こんな思いがあるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 ちょっと視点を変えて御質問したいと思いますが、大臣にまずお伺いをしていきたいと思います。

 今月十五日に発表された昨年十―十二の実質GDPは、マイナス〇・四ということでした。年率ではマイナス一・四%ということですよね。今回のマイナスで、政府の今年度の成長見通しであるプラス一・二%を達成するというためには、ことしの一―三月期で年率八%を超える高度成長並みの極めて高い成長を実現しなければならないという、非常に高いハードルが課されたわけであります。

 これは、現在の経済状況からして事実上達成困難ではないかというふうに思うんですが、大臣の見解をお示しください。

麻生国務大臣 二〇一五年の十―十二のGDPの一次速報の結果が今言われたような数字になっておることを踏まえますと、政府の経済見通しにおける二〇一五年度の実質GDPの成長見込みプラス一・二を達成するためには、一―三月期に、相当程度の成長、前期比プラス二・一五%が必要となるということを言っておられるんだと存じますが、よく見ていただくと、二〇一五年の暦年では、もう出ていますので暦年を見ていただければ、実質で〇・四%、名目で二・五%ともう既になっております。

 そういった意味で、政権交代後のアベノミクスというものを見ますと、名目GDPではこの三年間で二十七兆円ふえております。また、企業利益というのは過去最高となっていますし、就業者数は御存じのように約百十万人プラス、ふえておるというので、経済の好循環が確実に生まれているというのは数字の上からもはっきりしておる、私どもは基本的にそう思っております。

 したがいまして、私どもとしては、企業の好調な利益というものがいわゆる内部留保だけでたまるのではなくて、この三年間の間に、賃金に払われた分は実質一兆円しかふえていませんから、内部留保が約五十兆たまって、給料は一兆円しか実質ふえていないというようなところが、我々としては、景気、なかんずく消費というものを考えたときに非常に問題なのであって、設備投資、いわゆる個人消費、この二つがGDPに占めます大きな要素ですから、この二つがきちっと動いていくためには、企業の活動、対応、そういったものが、我々としてはさらにデフレマインドから大きく進化させていってもらわないかぬのだと思っております。

 幸いにして、このところ、設備投資というものを見ますと、金が市中に出始めてきて、マネタリーベースからマネーサプライに変わりつつある、パーセントがふえてきつつある傾向にあるというのは、少しずつではありますけれども、確実にそういった傾向は出つつあるのかな、特に中小企業にそういった傾向が顕著に見られるような感じがしないでもありませんので、一つの流れが出てきたかなと思って、期待をいたしております。

鈴木(克)委員 まさにGDPの伸びというのは個人消費に大いに関係をするわけでありますし、今大臣がおっしゃったように、毎月の勤労統計でも、いわゆる賃金の実質的な伸びが伸び悩んでいるという実態がある、これはもう事実であります。つまり、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていない、だからこういう状況が起きているということだというふうに思うんです。

 財務省にお伺いしますけれども、ここへ来て、十八日に発表された貿易統計速報によると、一月の輸出額は五兆三千五百十六億円、これは前年同月比一二・九%減というふうになっています。それから、六年三カ月ぶりの落ち込み幅だ、こういうことも言われております。

 この原因として、具体的にどの地域の輸出が落ち込んだのか、それから、例えば株安の震源地と言われる中国が減少したのか、あるいは具体的にどういった業種が落ち込んだのか、そのような詳細について、財務省、御答弁をいただきたいと思います。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がおっしゃいましたように、二〇一六年一月分の貿易統計で、輸出額、前年同月比でマイナス一二・九%となりました。

 この減少幅が比較的大きくなったことでございますが、先生の御指摘、まず地域別でございますが、中国などアジア向けでございますが、春節の時期には貨物が届かないように日本からの輸出が調整されるというのが例年でございまして、そういう意味では、本年一月に一部その春節の時期の調整が重なったという特殊要因がございます。

 それから、業種別のお話でございますが、アメリカやEU向けの自動車などは引き続き増加しておりますが、国際的に市況が悪化しております鉄鋼あるいは石油化学製品などの減少幅が大きかったことなどが影響しているのではないかと考えております。

鈴木(克)委員 やはり、中国の減少が大きいということなんですけれども、その理由の一つとして春節というふうに言われたんですが、春節は毎年あるわけでして、そういう意味で、そうか、一月のですからね、わかりました。年間じゃなくて。そういう状況であったということはわかりました。

 いずれにしましても、状況、いい話をずっと集めると、よくなってきているのかなというふうに考えられぬことはないし、逆に心配な要素もあるわけですね。やはり、両方見ていかないと国の進路を誤ってしまうのではないのかなというふうに思いますので、こういう心配な数字もありますよということを私はちょっと申し上げたということでございます。

 次に、また話がかわるんですが、地方について。

 これは先回、予算委員会で、私、石破大臣に来ていただきながら、質問をする時間がなくなってしまって大変申しわけなかったんですが、石破さんに聞きたかったのは、アベノミクスの地方への波及状況というのはどういうふうになっているのか、またどうお考えになるのか。まず、波及がどうなっているのかということに対して、それからもう一つ、どんなことを今地方創生でやらなきゃならないのかということをお伺いしたかったんです。

 きょう内閣府から来ていただいておるかと思いますけれども、石破さんにかわってというのは大変御無礼ですけれども、現在、内閣府がどのようにこの地方創生、アベノミクスを見てみえるのか、御答弁いただきたいと思います。

増島政府参考人 お答え申し上げます。

 地域経済の現状につきましては、アベノミクスの三本の矢の政策により、デフレではない状況となる中で、全国各地でも前向きな動きが見られております。

 具体的には、アベノミクスの三年間で、雇用面では、有効求人倍率が全都道府県で高まり、昨年、七県において過去最高を記録いたしております。倒産件数を見ますと、企業の収益が過去最高となる中で、四十三都道府県で減少または横ばいということになっております。日銀短観では、全地域で業況判断が改善いたしております。また、全都道府県において税収がふえ、決算では約二・二兆円の増加ということになっております。

 このように、経済の好循環が地方にも波及しつつあるというふうに認識しております。

 他方で、例えば個人消費の動向を見ますと、百貨店売り上げの回復は大都市圏で先行するなど、地域間のばらつきも見られております。この背景には、少子高齢化や人口減少といった構造変化もあり、地方によっては経済環境に厳しさがあるのも事実でございます。

 経済の好循環が全国隅々で進むよう環境整備を行っていくことが重要というふうに考えております。

鈴木(克)委員 地方創生ということを大々的に言われて、しかし、今の御答弁も、やはりいいところを挙げられておるというふうに私どもの立場から見ると考えられるんですね。

 実際に地方に行かれれば、きょうも議員の皆さんもどのようにお考えになっておるかわかりませんけれども、少なくとも私は、地方にアベノミクスの恩恵が行き届いておるというような状況はないし、倒産も確かに減っておるということでありますけれども、極端なことを言うと、これは叱られるかもしれませんけれども、本当に倒産をしなきゃならないようなところはもう既に倒産をされてしまったんですね。本当に厳しいところが今地方はあるという御認識を持っていただきながら、この地方創生ということをしっかりと地に足をつけてやっていただきたいな、このように思っております。

 それで、続いてですけれども、大臣にお伺いをします。

 地方の状況を中央の財務大臣として、今内閣府はそのような御答弁でしたけれども、大臣はどんなふうに今地方の状況を見てみえるのか、地方の声を聞いてみえるのか、ちょっと教えてください。

麻生国務大臣 これは、愛知県ですから、今、古川さんはいないけれども、そこと大分違うだろう、同じ愛知県の中でも、蒲郡とは。違うと思うよ。

 この間、不交付団体の陳情というのがありましたけれども、不交付団体が一番多いのは愛知県ですものね。不交付団体というのは一都四十九市町村なんだと思いましたけれども、そのうち一番多いのが愛知県だと思うんだよね。だから、その中でも蒲郡は入っていないよね、はっきりしている。

 僕がこう言ったのは、地方とか言うけれども、その同じ地方の中においても、市によって違うと思いますよ、場所によって。例えば、福岡県を見ても、政令都市がうちには二つあるんです、北九州市と福岡市と。この数年間を見ていても、福岡の方は、今五年目ですかね、五年目で間違いなく税収の伸び率は政令都市の中で日本一になっていると思いますよ。片っ方の北九州市の方はじゃんじゃん下がって、下がり率は最低じゃないかな。一番下がったのは北九州市だと思いますよ。

 それは何でそんなことになるのかといえば、市長さんのリーダーシップの能力の差もかなり影響するのは、ここで見ているとはっきりしていますね。両方、同じようなときに選ばれて、同じようなときになりましたから、非常にわかりやすいんです、うちのところは。だから、そういった意味で私どもすごくよく比較するんですけれども。

 ぜひ、そういった意味では、この種の話をするときには、地方という中でも、その地方の首長さんの能力というのはかなりあるなというのが全国あちこち回った私の正直な実感なんです。

 もう一つは、車という面でいけば、おたくは車のある方ですから。福岡県は二番目に車の生産量の多い県ですから。その福岡県、おたくでは八市町村あるんだけれども、うちは一町ですから。だから、そういった意味では、かなりそこも差があるのかなと思ったりします。

 いずれにしても、企業とかそういったものの経営理念もあるでしょうけれども、今の時代に合った状況に合わせて、やはり、恵まれた地域環境とか恵まれた条件、恵まれた産業が町にある、そういったところとそうじゃないところの差は出ますし、加えて首長さんのリーダーシップの差というのもかなり差が出てくるんだと思っていますので、私は、この種の話を地域でどうだとか、一概にそういったことを軽々しくは言わぬように心がけてはおります。

鈴木(克)委員 地方のその差は首長の力量の差だというような御発言ですけれども、私としては、それは少し乱暴ではないのかなというふうに思っておりますので、また別の機会にその議論をさせていただきたいというふうに思います。

 次に進めさせていただきますが、東日本大震災から五年が経過をしました。もちろん、いまだ復興が進んでおらない部分もあるわけですが、この復興財源となる政府保有株式の売却が今回予算にのっておるわけですが、まず最初に、日本郵政株の売却についてお伺いをしたいと思います。

 昨年六月三十日に閣議決定されて、新たな復興財源のフレームでは、復興期間十年間の復興事業費を三十二兆円というふうに見込んで、その財源を確保するというふうにされておるわけであります。そのうち四兆円を日本郵政株の売却からの収入を見込んでいるということであります。

 今回の改正案で、平成三十四年度までの日本郵政の売却収入を復興財源に充てるというふうにされておるわけですけれども、昨年の十一月に株式上場を果たした、その際に得られた売却収入というのは幾らだったのか、財務省、御答弁ください。

迫田政府参考人 お答えをいたします。

 昨年の日本郵政グループ三社の株式の一連の売り出し上場プロセスにおきまして政府が得た売却収入は、約一・四兆円でございます。

 内訳を申し上げますが、まず、十一月四日の日本郵政株式の売り出し、上場によりまして六千八百八億円、次に、十二月三日の日本郵政の自己株式取得に応じた売却によりまして七千三百二億円、合わせますと一兆四千百十億円ということでございまして、先ほど申し上げたように約一・四兆円ということでございます。

 なお、この売却収入につきましては、全額復興財源に充てられるということでございます。

鈴木(克)委員 いよいよ時間がなくなってまいりました。

 まだ、いわゆる東京メトロの売却とか、いろいろと復興財源にというのがあると思うんですね。東京メトロに関しては、何か会計検査院から早く進めるようにというような指摘も得たというふうに聞いておるわけでありますけれども、いずれにしても、復興についてはやはりお金がかかるわけでありますし、そのお金をしっかりと確保して、そして復興に合わせて一日も早く皆さんに夢と希望を与えるように頑張っていっていただきたいなというふうに思います。

 最後の質問といいますか、あれですけれども、ちょっと私は委員長に申し上げたいんですが、先ほどの大臣の、前の宮崎さんへの答弁の中でトーゴーサンという話がありましたよね。これは、農家の方が税金を払っていないというようなニュアンスの中でおっしゃったというふうに私は聞いたんですが、この辺の発言の真意というのをぜひ一遍お伺いをしたいということが一つ。

 もう一つ、先ほど、地方の差は首長の力量の差だということもおっしゃったわけでありますが、私としては、これは非常に乱暴な御発言ではないのかなというふうに思いますので、その辺のところを後に理事会でちょっとお諮りをいただいて、問題なければ問題ないし、あれなんですが、今ここで大臣から直接御答弁があればまたそれでも結構でございますが、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 前提を全部飛ばされるとそういう話になるんですが、いろいろな差が出るという福岡と北九州の例を引いて、きちんとその上で申し上げましたでしょうが。それで、うちは九十市町村ありますけれども、黒字というかあれは一町しかありませんから。ほぼ同じ、自動車の一番、二番の生産県ですけれども、そちらの方は八市町村あるんですが、うちは一町しかありませんので。

 そういった意味で、いろいろ当たる業界、そのときに当たっている業界、昔だったらいとへん、今だったら自動車とかいろいろあるんでしょうけれども、そういった意味で当たり外れがあることはもう間違いありません。

 ただし、私どもは、ついこの間までよかった北九州がこれだけ落ち込んでいくというのを見たときに、やはりその前の市長と今の市長と比べたり、福岡もその前の市長と今の市長と比べるというのも、やはりみんなで忘れちゃいかぬことだと思いますけれどもねというつもりで申し上げたのであって、地域によって、リーダーによってかなり差が出るというのは、いろいろその市民の方々、町民の方々は感じておられるところなんじゃないのかな、私は率直にそう思っております。

 トーゴーサンにつきましては、よく言われる例として、農業関係の話として申し上げたところであります。

鈴木(克)委員 では、以上で終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、特例公債法案についてまず質問をしたいと思います。赤字国債の発行を禁じた財政法四条の背景について改めてお伺いしたいと思います。

 私は本会議で、財政法制定当時の主計局法規課長が書いた解説書の記述を紹介いたしました。今は国会図書館もコピーでしかもらえないような古い本なんですけれども、「財政法逐条解説」というものです。

 この中で、四条についての解説の一文目は、「第四条は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて戦争危険の防止を狙いとしてゐる規定である。」ここから始まるんですよ。そして、戦争と公債は密接不離だという話がずっと展開されています、当時の解説の本で。

 この解説本は当時の主計局の法規課長が書いているわけですけれども、「序」は当時の主計局長が書いております。「国民の一人でも多くが本書を読んで財政に対する認識を深め、本法の精神を充分に把握されることを、切に希う」というふうに書いておりますので、ですから、これは当時の財務省の考え方だったのは間違いないというふうに思います。

 改めて麻生大臣にお伺いしますけれども、やはり赤字国債の発行を禁じた財政法四条は、膨大な戦時国債で戦争を進めて、国家財政と国民生活を破綻させた反省を踏まえたものだ、こういう認識はお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 今の話は、多分、平井先生の件を引いておられるんだと思いますが、この財政法第四条というのは、あくまでも健全財政のため、国の健全財政のための財政処理のいわゆる原則というものを規定したものであろう。まずこれは基本的にそう思っております。思っておりますが、戦争危険の防止そのものが同条の立法趣旨というふうに考えているわけではありません。

 また、政府としても、引き続きこの特例公債の発行というのには、これは抑制というものに努めなきゃならぬのは当然のことなんですが、今回の私どものやろうとしています法案について言わせていただければ、現行法と同様で、各年度の特例公債の発行限度額というものにつきましては、これは毎年度予算によりまして国会の議決を得るということになっておりますので、国会のチェック機能というものは確実に確保されているのであって、少なくとも、問題となりました戦時公債というものを発行したあの当時とは、いわゆる大政翼賛会のあの時代とは全く条件が違っていると思っております。

宮本(徹)委員 よく報道ステーションに出てくる木村草太さん、憲法学者の方が法律の説明をするときに、法律というのは、過去に問題があったからだ、失敗があったからだ、それを踏まえて、そういうことが起きないためにつくるんだと言っているわけですよ。

 なぜ健全財政のために赤字国債の発行を禁じたかというと、その失敗は何だったのかといったら、やはり、戦時国債を膨大に発行して国家財政を破綻させた、この失敗を踏まえてのものなんじゃないですか。

麻生国務大臣 財政法の第四条というものの中で、巨額の公債発行による軍事費調達を許したということが戦争の遂行または拡大を支える一因となったということなんだという反省から、無原則かつ歯どめのないというような借金財政を戒めるために設けられたという意見を私は否定するつもりは全くありませんが、この財政法第四条というのは、あくまでも健全財政のための財政処理の原則というものを規定したものであって、戦争危険の防止がこの同条の立法趣旨であるというふうに考えているわけでは私どもはありません。

宮本(徹)委員 ですから、なぜ健全財政を守らなきゃいけないのかというのは、歴史の背景は否定されないということでしたけれども、私が言っていることは常識だと思いますよ。

 これは学生時代の教科書です。「予算と財政法」、小村武さん。小村武さんは主計局の元次長ですよね。この中でもこう書いていますよ。「この財政法の健全財政主義の原則は、戦前の軍事費調達のための巨額の公債発行の反省が一つの契機であつた」という文言が書いてありますよ。学生だって学ぶ当たり前の話なんですよ。ここをやはり今財務省の中でしっかり引き継がれていないということになったら、私は大変心配になってきます。ですからやはり、なぜこの規定ができたのかという点では、歴史をかがみとしなければならないというふうに思います。

 そして、前回の特例公債法が出された二〇一二年までは、毎年、赤字国債の発行が必要な年に特例公債法案が出されて、審議して成立させられる、こうやってきたわけですけれども、特例公債の発行を単年度に限定してきたのは、財政規律を保つための最低限の措置だったんじゃないですか。

麻生国務大臣 今回の特例公債法の改正案というものは、少なくとも二〇二〇年度までの間は引き続き特例公債の発行を認めざるを得ないというような財政状況の中で、現行法の枠組みを引き継ぎ、安定的な財政運営を確保するという観点から、特例公債の発行を二〇二〇年までの五年間とすることとしたものであります。

 御指摘の財政規律というものにつきましては、現内閣では、特例公債の発行を複数年度化した現行の特例公債法の下であっても財政健全化を着実に進めておるわけですから、少なくとも十兆円、新規公債発行は減額しておりますし、二〇一五年のプライマリーバランス赤字半減という目標も間違いなく達成する見通しでありますし、この期間の特例公債の発行額も毎年減少させてきたというのはもう御存じのとおりです。

 また、平成二十四年度に議員修正で複数年度化した際、特例公債法は、財政規律が緩まないように、特例公債発行額の抑制の努力義務規定、いわゆる現行の第三条ということになろうと思いますが、改正後は第四になったんですか、それが設けられておりますので、この規定も踏まえて、引き続き特例公債の発行の抑制に取り組んでいきたいと考えておりまして、今後とも、二〇二〇年度のプライマリーバランス、いわゆる基礎的財政収支の黒字化の目標に向けて、経済財政計画というものの、財政規律を堅持して財政健全化を進めていく方針でありまして、二〇二〇年度までの五年間としても、財政規律がこの期間に特に緩むということはないと考えております。

宮本(徹)委員 緩むか緩まないかをチェックするのが国会だというのが憲法の考え方だと思うんですよ。国会が全て財政はチェックする、予算単年度主義の原則も憲法の中に書かれているわけですから、だから、二〇一二年までは毎年毎年、自民党政権の時代であっても、他の政権のときでも出し続けてきたわけじゃないですか。

 その歴史というのは、それだけ、赤字国債を発行することへの、本当はやっちゃいけないんだという思いがあって、毎年毎年審議をしてきたという経過があると思うんです。その重みをやはり踏まえなきゃいけないというふうに私は思います。財政規律を守る上で、やはり最低限の話だと思います。

 それで、先ほど、前回は議員修正で直されたというお話がありました。前回は、私たちはその議員修正に当然日本共産党は入っていませんけれども、三党合意という形でやられました。これは、私たちとしては、国会がみずからの審議権を放棄した自殺行為だというふうに思っています。

 ですが、もう今度は、国会からチェックを受ける政府の側が、国権の最高機関たる国会の審議権を事実上制限する、こういう法案を出すということになっているわけですよ。だから、前回の法案も問題ですけれども、今回の法案はそれにも増して私は問題だというふうに思います。そう思いませんか、大臣。

麻生国務大臣 今回の特例公債法の改正案というのは、先ほども申し上げましたように、今後とも、少なくとも二〇二〇年までの間は引き続き特例公債の発行というのはまずやむを得ないと見込まれております今の財政状況の中ですので、現行法の枠、現行法ですよ、現行法の枠組みを引き継いで安定的な財政運営というものを確保するという観点から、特例公債の発行を二〇二〇年までの五年間というようにさせていただこうといたしておるものであります。

 繰り返しになりますけれども、現行法と同様に、各年度の特例公債の発行限度額については、毎年度の予算によって国会の議決を得ることということになっておりますので、いわゆる国会の審議権は確保されているということから、御指摘は当たらないと考えております。

宮本(徹)委員 いやいや、毎回毎回、特例公債法を毎年出せば、ここの委員会でも、財源をどこから確保するのかというこの法案そのものについても議論になるわけじゃないですか。それが今度は、今回通したらもう五年間は、来年も再来年もその翌年もなくなっちゃうというわけですから、それは国会のチェック力を奪うものだというのは当たり前じゃないですか。憲法が定めた財政の国会中心主義というのに対して極めて問題がある法案だということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 その上で、法案では、二〇二〇年度までのプライマリーバランスの黒字化のために経済財政の再生を進めていくということが書かれています。

 経済・財政再生計画の改革工程表を私も見ましたけれども、前半はずっと社会保障の話ばかり出てくるわけですよ。もう本当に、いかに給付を削減するのか、負担をふやすのかという話が入っているわけですよ。こういうものを赤字国債の発行を抑制するために進めていくんだという、こういう中身が入っていること自体、私は大問題だというふうに思っています。

 本来、赤字国債を抑制する、無駄を削ると言うんだったら、私はここでも何度も主張してきましたけれども、やはり大企業優遇税制にメスを入れていく、浪費型の公共事業にメスを入れていく、ふえ続けている防衛費にメスを入れていくということが必要だと思うんですよ。でも、改革工程表を見ましたけれども、八十八ページありましたけれども、防衛費なんか最後の一ページしかないということになっているわけです。

 公共事業の問題については、きょう、私は分科会で夜七時からやりますけれども、法人税はその前やりましたので、きょうは、この場では防衛費の問題についてお伺いをしたいというふうに思っております。

 防衛費は、来年度予算では、社会保障を上回る一・五%の伸びということになっております。きょう予算委員会でも使った資料を配付させていただきました。上のグラフは、黒い棒が中期防衛力整備計画を想定する毎年〇・八%増、赤が毎年の当初予算、黄色が補正予算の中期防経費にかかわる部分です。ですから、明確に中期防衛力整備計画を上回る勢いで防衛費がふえ続けています。そして下のグラフは後年度負担の推移ということで、二〇一四年以降、後年度負担も急増しているということになっております。そして、きょうはグラフをつけていないんですけれども、思いやり予算も増額でこれからの五年間は合意するということになってしまいました。

 私は、財政健全化ということを言ったら、ここを聖域化していくわけには絶対にいかないというふうに思います。

 財政制度審議会も、来年度予算の編成に当たって、建議でこういうことを言っておりました。新規後年度負担の抑制を図る必要がある、思いやり予算の新しい特別協定については削減に取り組む必要がある、聖域視せず見直せ、こう言っていたわけですけれども、麻生大臣御自身は、財政制度審議会の建議についての防衛費部分の指摘についてはどういう受けとめでしょうか。

麻生国務大臣 この防衛関係費につきましては、財政制度審議会の建議というのに指摘された事項につきましては、私どもとしては、二十八年度予算案におおむね反映されている、そう思っております。

 例えば、今御指摘のありました新規後年度負担の抑制につきましては、対前年度というので見ますとマイナス一〇・七%ということになっておりますと思いますが、また、いわゆるホスト・ネーション・サポートと言われるものにつきましても、駐留軍のいわゆる労働者に対する格差給や語学手当というものを廃止させていただきましたし、また、日米の安全保障環境等を踏まえて、在日米軍の運用等にかかわる労働者の負担人数をふやすということをやらせていただきます一方、娯楽施設等々で働く駐留軍の労働者につきましては日本が負担する人数は減らすとするなど、国民の理解が得られるよう、我々なりにめり張りをつけて見直させていただいたものだと考えております。

宮本(徹)委員 新規後年度負担を昨年より減らしたというふうにおっしゃいますけれども、減らし方が全く足りないわけですよ。後年度負担の総計額を、このグラフをごらんになったらわかりますけれども、二〇一五年から二〇一六年にふえているわけですよ。

 なぜかというと、毎年の歳出化経費よりも新規後年度負担の方が多いというのが続いているわけですよ。そのために、後ろへ後ろへ積み増す額が大きくなっているわけですよ。ですから、以前は、このグラフでいえば二〇一一年ぐらいまでは三兆円前後だったのが、毎年の新規後年度負担と歳出化経費がバランスがとれていたわけですよ。ところが、新規後年度負担がぐっと伸びているから、歳出化経費よりも大きくなっているから、後ろの世代へのツケ回しはどんどんふえていくということになっています。

 それから、思いやり予算のホスト・ネーション・サポートのことをおっしゃいましたけれども、基地従業員の日本側が負担する給料の人数というのは、過去最高に今度なるわけですよ。五百五十三人ふえるということになっているわけですから、やはり、財政制度審議会の建議を受けとめたということには今度の予算は決してなっていないと言わざるを得ないと思います。

 さきの国会で、私も安保法制の特別委員会で防衛費の問題も取り上げさせてもらいましたけれども、あのときは、新しい安全保障法制で防衛費がふえることはないんだ、中期防があるんだからそれ以上上回ることはないんだということを言っていたわけですけれども、実際はそれを上回る伸びになっているというのは、国会と国民を欺いている状態だと言わざるを得ないというふうに思います。

 その上で、具体的にお伺いしていきたいと思います。

 来年度予算案について、総理は本会議での私の質問への答弁で、平和安全法制の施行を前提とした経費は計上していないというふうにおっしゃっていました。ですけれども、この新しい法制が三月末に施行されると、自衛隊が持っている装備の意味も共同訓練の意味も全く変わることになります。

 新しい安保法制では、これまでは憲法違反の疑いがあるということで政府自身が外してきた、戦闘現場に発進準備中の戦闘機などへの給油活動、そして整備の活動、ミサイルの積み込み、こういうことも新しい米軍支援のメニューとして追加されるということになりました。

 そして、今度の新しい予算案では、この空中給油機の部隊を倍増させるために、新しい空中給油機KC46A、予算が一機組まれております、二百三十一億円。中谷大臣は、この導入を決めたときの記者会見でこうおっしゃっているわけです。KC46Aというのは、性能上は主要な米空軍機に給油可能となる、日米の相互の運用や訓練などのためには優位な機種であるというふうに述べております。

 きょう、若宮防衛副大臣に来ていただきましたけれども、この空中給油機のKC46Aの購入というのは米軍機への給油やその訓練も想定している、こういうことでいいわけですね。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 今、宮本委員御指摘になりましたKC46でございますが、平成二十八年度の予算案におきまして、確かにおっしゃるとおり、一機の取得に係る経費二百三十一億円を計上させていただいております。

 これは、まさにもう委員もよく御存じのとおりでございますけれども、我が国を取り巻きます安全保障環境、一層厳しさを増してきております。こうした中で、防衛大綱そしてまた中期防衛力整備計画を踏まえまして、あくまでも、私どものこの日本の防空を全うするために必要不可欠な装備品として整備を進めているものでございまして、今おっしゃったように、米軍機への空中給油を具体的に念頭に置いて導入をするというものではございません。

宮本(徹)委員 そうすると、中谷大臣の記者会見でおっしゃったことというのは、うそをしゃべったということなんですか。これは、性能上は主要な米空軍機に給油可能となる、日米の相互の運用や訓練などのためには優位な機種であるというふうに記者会見で述べられているんですよ。うそを言ったんですか、中谷大臣は。若宮さんのおっしゃっていることと違うんですけれども。

若宮副大臣 私どもの防衛省・自衛隊が導入する目的として、やはり今申し上げましたように、米軍機への空中給油を具体的に念頭に置いているものではございません。

 ただ、新たなKC46につきましては、南西地域の防衛体制の強化、そしてまた、各種事態におけます実効的な抑止及び対処を実現するために、海上優勢、航空優勢の確実な維持の観点から、あくまでも、我が国の防空を全うするために必要な装備品とするものでございます。今、米軍への給油のために導入するということは、御指摘は当たっておらないところでございます。

 その上で、一般論でございますけれども、我が国の防衛に当たって、もちろん日本とアメリカで共同対処ということも想定されているのも事実でございます。航空自衛隊によります空中給油活動が米軍の任務遂行にも資するものであるのも考えているところでございます。

 このために、米軍機への空中給油といった支援が全く排除されているというわけではございません。

宮本(徹)委員 やっと、排除されているわけではないと。中谷大臣が記者会見で初めにぺらぺらしゃべっているんだから、初めから答えていただければいいんですよ。とにかく、米軍への支援のための給油も排除されているわけではないということをおっしゃいました。

 それで聞きますけれども、これまで自衛隊の空中給油機は、米軍機への給油というのは実は一度も行ったことはないんですよね。今度の新しく買うKC46Aでは、今まで自衛隊が持っている空中給油機ではできなかった米軍の機種にも給油できると思うんですけれども、その機種は何ですか。

若宮副大臣 今委員がおっしゃられました具体的な機種といたしましては、米空軍が使っておりますCV22オスプレイ、米海軍が使っております戦闘機F18、同じく戦闘機F35C、それから、米海兵隊が使っております戦闘機F35B、それから、MV22オスプレイ等が新たに給油が可能となります。

 また、このKC46の導入によりまして、主要な米軍機に対して、性能上はもちろん給油は可能ということになりますが、どのような場面で実際に空中の給油あるいは輸送機が用いられるかということにつきましては、あくまでも、個別具体的な状況に即しまして、地上基地等の利用も含めまして、全体的な運用の合理性という観点から適切に判断することになろうかと思っております。

宮本(徹)委員 CV22やF35などには新しく給油できるタイプの空中給油機だというお話でした。

 それで、東京の横田基地にCV22オスプレイを来年から配備するということで、昨年、アメリカから一方的な通告がありました。そうすると、先ほどの話でいきますと、CV22オスプレイへの空中給油訓練も排除されていない、先ほどの若宮副大臣の発言からいくと排除されていないということですから、排除されていないということでよろしいわけですね。

若宮副大臣 御指摘のCV22オスプレイを初めといたします米軍との共同訓練につきましては、私ども防衛省・自衛隊の空中給油・輸送機による米軍機への給油を含めた米側からの幅広い後方支援への期待等を踏まえまして、今後、日米間におきまして具体的に検討されるべき事項であることであろうかと思っております。

 現時点におきましては、具体的に想定しているものではございません。

宮本(徹)委員 ですから、現時点では具体的には想定していないけれども、先ほどの答弁では排除されていないということで、あり得るという理解でいいわけですよね、ここは当然。よろしいですよね。

若宮副大臣 現時点では想定いたしておりませんが、今後は、後方支援等々踏まえまして、日米間で具体的に検討されていくということになろうかと思います。

宮本(徹)委員 やらないということをおっしゃらないので、あり得るということになると思います。

 この間の大臣の国会答弁でも、CV22オスプレイを利用した米軍と自衛隊の共同訓練、配備されたらやるんだということを言われているわけですよ。そして、新しくCV22オスプレイに給油できるタイプの空中給油機が購入されるということになりました。

 このCV22オスプレイというのは、今沖縄に配備されているMV22とは違うんですね。これは防衛省の、昨年自治体向けに配ったパンフレットですけれども、何をやる部隊かというと、米軍の特殊部隊を輸送する特殊作戦用の航空機なわけです。この中でも、対テロ戦争を担っている特殊作戦の部隊を輸送する、潜入作戦だとかそういうことを担っているのがこのCV22オスプレイなわけですよ。

 ですから、この間、ISを空爆する米軍の支援はやらないということを安倍首相は予算委員会なんかでもおっしゃいましたけれども、実際は、対テロ戦争への後方支援ができる装備が購入されて、その体制が次から次へと着々とつくられているということになると思うんですよ。

 ですから、新しい安全保障法制実施のための経費は今度の予算には計上していないと言うわけですけれども、実態は、もう文字どおり、新しい安全保障法制に対応して、今まではできないとされてきた米軍支援メニューができる装備が購入されているということだと思います。

 そして、兵器は、購入すると、整備、維持補修、そして廃棄まで費用がかかります。一昨年の財政審の建議の中でこういう指摘がありました。防衛費それ自体の特性として、「氷山のような構造となっており、最上部の装備品の取得・建造にのみ焦点が当たりがちであるが、下部にはその後の多額の整備維持費が付随してくることとなっている。」

 つまり、装備を買えば、その後、氷山の地下に隠れているように、維持費、整備費が物すごくかかるのが今の兵器だということを財政審は指摘しております。実際、この二十年間ぐらいで、毎年の装備の整備維持費というのは倍増しているということになっております。

 そういう中で、防衛省自身もライフサイクルコストの管理というのをうたっておりますが、ここで聞きますけれども、この新しく買うKC46Aのライフサイクルコストというのは幾らでしょうか。

若宮副大臣 委員御指摘のとおり、今、私ども防衛省では、プロジェクト管理重点対象装備品に選定したもの等につきまして、ライフサイクルコストの見積もりを管理、実施いたしているところでございます。

 御指摘のKC46につきましては、このプロジェクト管理重点対象装備品に選定しておりませんために、私どもとしましては、そのライフサイクルコストを見積もってはいない状況でございます。

宮本(徹)委員 つまり、ことしまず二百三十一億円、一機分買う。全体で四機買うと言われています。それで大体一千億近くかかるわけですけれども、それ以外に整備維持費が幾らかかるのかというのはわからないまま購入がスタートするということになっているわけです。余りにずさんだと思います。

 それから、南シナ海まで飛べる無人機グローバルホークの予算も今度ついております。それから、新しく戦車並みの大砲を積んだ機動戦闘車、これも百両導入を目指して、ことしも数十両の予算がついていますけれども、この二つの装備品のライフサイクルコストは幾らでしょうか。

若宮副大臣 広域におけます常続監視体制を強化する目的で導入をいたします、今委員御指摘のグローバルホークにつきましては、昨年十一月にプロジェクト管理重点対象装備品として選定をいたしたところでございます。ライフサイクルを通じまして、最適なプロジェクト管理を行うことといたしております。

 また、現在はライフサイクルコストの算定を行っている最中でございまして、スケジュールやリスクなど、ライフサイクルコストに影響を及ぼすさまざまな要素を考慮いたしまして、精査した上で見積もりを行う必要がございますために、一定の時間が要することになっております。

 また、島嶼部への攻撃に対応することを念頭に置きました、今御指摘いただきました機動戦闘車につきましてですが、現在、プロジェクト管理重点対象装備品には選定をされておりませんために、私どもといたしましては、ライフサイクルコストについては、これについては見積もりをいたしておりません。

宮本(徹)委員 つまり、新しい装備をいろいろ買うんですけれども、装備維持費にこれからお金がかかるんだと財政審がいろいろ指摘して、防衛省自身もプロジェクト管理しなきゃいけないということになっているわけですけれども、その対象から先ほど言った空中給油機も漏れている、機動戦闘車も漏れている。グローバルホークについてはやっと計算を、さっきの話は昨年の十一月から始めたと。予算はその前からついているわけですよ。

 これだけ財政審に、これからの装備というのは、取得だけじゃなくて維持管理まで見なきゃいけないんだと言われながら、幾らかかるかというのもわからないままどんどん購入の契約をしているというのが今の実態なわけですよ。

 これは、大臣、やり方として余りにもずさんじゃないですかね、やり方として。麻生大臣。

麻生国務大臣 今、毎年度の予算編成におきまして、中期防衛力整備計画というのがありますので、これを踏まえて、各種の防衛装備品につきまして、その必要性や調達のタイミング等々を考慮しながら対応しておるところではあります。

 そうした中で、御指摘の種々の装備品については、いわゆるライフサイクル等々が示されていないものも含めて、適切に予算計上しているものと認識をいたしております。

 他方、防衛関係費に係る後年度負担等を抑制していくための調達改革として、ライフサイクルコストによりますプロジェクトの管理を進めていくということが今後重要な課題になっているとのいわゆる認識というものにつきましては、我々もそう思っておりまして、財政制度審議会の建議におきましてもそうした考え方が示されているところであります。

 ライフサイクルの見積もりも含めまして、装備品を効率的に取得かつ管理する調達改革の取り組みについては、現在、防衛装備庁を主体として進められているものと承知をしております。

 財務省といたしましても、そういったものに実益というか、実効的な取り組みになるよう、私どもとしても今後とも働きかけていかねばならぬと思っております。

宮本(徹)委員 財政審の指摘はそのとおりだ、管理をしっかりしていかなきゃいけないということをおっしゃるわけですが、実際はそうなっていないのが今の状態なわけですよ。結局、アメリカの後方支援のための装備を買うんだったら幾ら膨らんでもいい、幾ら膨らむかわからないけれども、とにかく買いそろえようということになっているんじゃないでしょうか。私は、こういうやり方は改めるべきだというふうに思います。

 さらに、他国との共同訓練のあり方も、新しい安全保障法制のもとで大きく変わります。

 他国との共同演習の予算も大きく来年度予算でふえております。二〇一四年度が四億四千七百万、二〇一五年度が六億六千七百万、二〇一六年度は十一億二千二百万ということでふえ続けております。この内訳を見ましたら、一番大きくふえているのが燃料代です。油購入費が昨年の二億から六億に、三倍にもふえております。

 具体的にどういう演習がふえているのかというのを防衛省に資料をいただきましたけれども、今度の他国との共同演習で予算が一番多く積まれているのが、オーストラリア海軍主催の多国間共同訓練カカドゥ、二年に一度やっているそうですが、二年前は計上していた予算が四千八百万円ですが、今度は三億二千五百万円ということで、六倍にもなっているわけですよ。

 六倍にもなった理由は何なんでしょうか。

若宮副大臣 今、宮本委員御指摘のオーストラリア海軍主催の多国間海上共同訓練カカドゥにつきましては、おっしゃるとおり、御指摘のとおり、平成二十六年度予算ではおよそ〇・五億円、平成二十八年度の予算案では約三・三億円を計上させていただいておるところでございます。

 二十八年度予算案におきますカカドゥの関連経費の規模につきましては、二十六年度の予算と比較した場合には、主として、防衛交流等を目的とする東南アジア諸国への寄港のための経費と、それからまた、予算の積算方法に係る技術的な変更といった内容の要素がこの影響を受けているものでございます。

 この二番の予算の積算方法に係ります技術的な内容の変更というところにつきましては、具体的には、前回の二十六年度の部分につきましては、航空機に関する予算のみを所要の経費に計上させていただいたところでございますが、二十八年度につきましては艦艇の部分も本経費に計上させていただいたというところが、一番金額の差異が出たところの大きな要素でございます。

宮本(徹)委員 先ほど、東南アジア諸国に寄港するんだというお話なわけですよ。何のために、東南アジア諸国に行くときに寄港するのか。その目的は何なんですか。

 私たちが昨年の安保法制の特別委員会で取り上げさせていただいた防衛省の内部資料を読みますと、アメリカの方から、スイフト海軍作戦幕僚部長から、戦略的な寄港を実施してほしいというお話が来ているわけですよ。経路上にない港にも寄港してメッセージを出すべきじゃないか、中国との関係で海上自衛隊にどんどん、ベトナムを初めとするさまざまな国だとか、シンガポールやクアラルンプールだとかいろいろ言っていますけれども、戦略的な寄港を実施すべきではないか、こういうことを言われているわけです。

 これを受けてやられるということですか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になられまして、それを受けてやるということではなくて、もう委員もよく御承知のところだと思いますけれども、昨今のこの一月六日の北朝鮮の核実験、あるいは二月七日の、衛星と言われているミサイルの発射事案等々を含めまして、もはや本当にまさに一国で、私どもだけで防衛を完全に、この地域の安定と平和を守るというのが非常に困難な、難しい時代になってきているところでございます。

 そうした中で、近隣諸国と防衛交流を深めることによって、お互いの意思の疎通がいざというときにも図りやすくなる、あるいは、さまざまな部分でさまざまな違いがわかること、あるいは、その交流を深めることが、ひいては、日本自体だけでなくて、この地域全体の安定にもつながるものに大きく寄与するものであろうというふうに考えているところでございまして、そちらが主目的というふうになっております。

宮本(徹)委員 いや、北朝鮮のミサイル対応で別に東南アジアに行くというのは、普通に考えて筋が通らない話だというふうに思います。

 結局、アメリカから南シナ海の警戒監視活動の協力を求められて、アメリカの対中国包囲網に協力するという形で南シナ海への戦略的寄港、あの地域での多国間共同訓練をふやす、そのための予算をどんどんふやしているということじゃありませんか。

 日本がやるべき話は、確かに、中国があの地域で一方的な現状変更をしている、軍事拠点をつくろうとしているのは大変問題だと思いますよ、私たちも。だけれども、そうであるからこそ、外交的な解決のために、憲法九条を持っている国として働きかけるというのが日本がやるべき仕事であって、自衛隊をあそこにどんどん出していくというのは日本がやるべき仕事ではないということを言っておきたいと思います。

 その上で、二月二十三日の東京新聞の一面で、「ミサイル防衛費一・五倍超 政府想定超え累計一兆五千八百億円」と報じられました。

 二〇〇八年の国会答弁では、ミサイル防衛、BMDの費用は八千億から一兆円程度を要すると答弁していましたので、国会答弁に反する重大な事態になっているんじゃないかと思いますが、これはどうですか。

若宮副大臣 今、先ほどのお話の関連で委員御自身も御指摘になられましたけれども、私が例示に挙げましたのは、北朝鮮のミサイルの話を申し上げました。また、中国の力による現状の変更についても委員から御指摘のあったところでございますので、まさにさまざま報道でも現状されておりますとおり、あの南シナ海においては非常に、どういう状況なのかなというふうに御懸念を持たれる状況になっているのも現状かと思っております。

 南シナ海とかあるいはシンガポールのマラッカ海峡等々は、私ども日本にとって全く関係のない……(宮本(徹)委員「ミサイル防衛の話ですよ」と呼ぶ)はい、その後申し上げますので。(宮本(徹)委員「時間がないです」と呼ぶ)はい。全く関係のない場所ではなくて、やはり八〇%の原油を運ぶシーレーンでもあります。そういった意味でも、周辺諸国との関係というのは非常に緊密なものを築いていかなければいけないのかなというのが私どもの考えているところでございます。

 そこで、BMDのお話でございますけれども、私どもでは平成十六年からBMDシステムの整備を進めているところでございます。二十八年度の予算までで累計で約一兆五千七百八十七億円を計上させていただいております。平成二十年当時におきましては、平成十六年から二十三年度におきますBMDシステムの整備につきましては、八千億から一兆円程度を要すると見込んでいたところでございますけれども、その後、いわゆる二二大綱、二三の中期防及び現行の大綱、中期防におきまして、新たにイージス艦二隻の能力の向上と、それからまたイージス艦二隻の建造等を進めることといたしたために、二十八年度予算案としては、累計で一兆五千七百八十七億円となったものでございます。

 また、中期防の残りの期間になります平成二十九年度それから平成三十年度におきましても、今後のイージス艦の能力の向上、あるいはペトリオットミサイル、PAC3の能力向上、あるいは固定式の警戒管制レーダー等の整備等を計画いたしております。

 そのための経費といたしましてやはり三千から四千億程度が必要になるものと見込んでおりますが、いずれにいたしましても、厳しい財政状況を見きわめつつしっかり検討していきたいと思っておりますが、何よりもまず念頭にありますのは、私どものこの日本が、日本人が、そしてこの日本の領海、領空、領土を確実に守るためには、どうするべきかということを念頭に置いているところでございます。

 さまざまな検討を加えてまいりますが、どうぞまた御指導いただければと思っております。

 以上です。

宮本(徹)委員 南シナ海のことをさっきおっしゃったからあれですけれども、あそこがシーレーンとして重要だという話でありますけれども、だったらそんなところまで自衛隊をどんどん出すんですかという話ですよ。専守防衛でしょう、今の自衛隊の建前というのは。全くそこを踏み外しているということを言っておきたいと思います。

 それから、もともとこの弾道ミサイル防衛システムというのは日米の話し合いで始まったわけですよ。出発点は、アメリカを防御することによってアメリカ自身が反撃のおそれなく先制攻撃できるようにしよう、これがアメリカの戦略の出発点だったわけですよ。ですから、そこは本当に正確に物事を見ておいた方がいいと思います。

 さらに、先ほどの話だと、一兆五千八百億に加えて、あと二年で三千から四千億ということで、それこそ二兆に迫るお金になるというお話であります。国会答弁では、八千から一兆円と言っていたんですよ。

 このとき、こういう質疑をやられているんです。八千から一兆円というのは最初の段階の費用ですか、それとも全体がその中で整備される、そういうお金でしょうかと問われて、当時の松本政府参考人は、全体の経費ですと。私、議事録をきのう読みましたけれども、こう書いているわけですよ。

 ですから、国会では、それが全部ですよと言っておきながら、国会と国民を欺いて答弁をして、じゃんじゃんミサイル防衛のお金を積み上げているということになっています。天井知らずでお金が注ぎ込まれていくのではないかという心配があります。

 菅官房長官は先日、新しい高高度の防衛ミサイルシステム、THAADの導入の検討を加速するということを言いましたけれども、ここに注ぎ込んでいったら、莫大な税金が注ぎ込まれていくことになります。

 大体、北朝鮮からアメリカに向かって飛ぶミサイルは、北極を通るんだから、日本から追っかけても追いつかないということを専門家の皆さんは言っているわけじゃないですか。

 こういう中で、本当に軍拡競争という形で日本の国民の税金を注ぎ込んでいくのではなくて、国際社会が結束して、外交的努力と圧力で北朝鮮を六カ国協議の枠組みに戻して核開発の放棄を迫っていく、それしか道はないということを重ねて言っておきたいというふうに思います。

 もうちょっと質問通告があったわけですけれども、最後にちょっと麻生大臣とも議論したいんです。あともう一問、米軍向けの予算のことについても一言言っておきたいと思います。

 米軍向けの予算もかなりふえております。思いやり予算も増額改定になりましたけれども、思いやり予算以外の米軍再編関連経費も急激に増加をしております。

 私も、改めて、どういうものにお金を使っているのかという資料をいただきましたけれども、例えばキャンプ座間の、スケートリンクをつくる、円盤投げ場をつくる、屋根つき観覧席をつくる、一億二千九百万円。あるいは、横田飛行場に運動場の観覧席をつくる、サッカーグラウンドをつくる、ランニングトラックをつくる、八億九千二百万円。こういうものがずらっと思いやり予算とは別枠で、米軍再編経費ということで次から次へと税金が投入されるということになっております。そして保育園から家族住宅まで、物すごい勢いでつくっているわけですよ。

 ちょっと一つだけ数字を紹介してもらいたいんですけれども、今、岩国で米軍向けの家族住宅の建設がどんどん進んでおります。図面をもらいましたら、トイレが三つもあるんです。何でトイレが三つも要るのかなというのはよくわからないんですけれども……(発言する者あり)三世代でも二個あれば足りるんじゃないかと思いますけれども、この戸建ての米軍家族住宅の一戸当たりの建築費用というのは幾らですか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりました米国の軍人の方々の住宅に関するものでございますが、やはり、私ども日本人とはまず根本的にライフスタイルが違うのと、それからまた、体の大きさがそもそも違うのと、それから、トイレが三つというふうにおっしゃいましたけれども、外国の方の習慣では、私も何人かの方を存じ上げておりますが、一人に一個のお風呂に入るような習慣の方が非常に多いようにも聞いてございます。ですから、そういった点でのさまざまな習慣の違いというのもお含みおきをいただければと思っております。

 その上で、お尋ねの一戸建ての建設費につきましてですが、既に完成いたしております住宅について申し上げますと、住宅の規模によって異なりますけれども、大体約六千二百万から九千七百万円の範囲ということでございます。

宮本(徹)委員 六千二百万から九千七百万です。これは土地代なしですよ。米軍基地内につくっていますから、土地代なしの上物で一戸当たり六千二百万から九千七百万ですよ。与党の方も首をかしげていらっしゃいますけれども。びっくり仰天のお金を出して、体が大きいからといってここまでなるのかという話だと思います。若宮さんもおかしいと思いますよ、体が大きいからという説明でここまでの違いになるというのは。

 ですから、結局、米軍向けの経費も増大し、戦争法対応の新しい装備でも、そして訓練でも防衛費が膨らんでいる。赤字国債でこういうことを進めていくことは私は許されないというふうに思います。

 防衛費も聖域にしないということを総理は本会議で答弁をされましたので、最後に麻生大臣にもお伺いしたいというふうに思います。

 二月二十六日、あしたで二・二六事件から何年になりますか。一九三六年ですからちょうど八十年ということになります。当時の高橋是清大蔵大臣は、軍事費の縮小をやろうとして凶弾に倒れるということになりました。大蔵大臣の役割というのはなかなか本当に重責を担っているんだなと、歴史を振り返ってもわかるわけですけれども、やはり、防衛費を聖域にせずにメスを入れていく必要があるんじゃないかと思いますが、麻生大臣、どうでしょう。

麻生国務大臣 この防衛関係費の話ですけれども、中期防衛力整備計画というものや、経済や財政再生計画などを踏まえて、毎年度の予算編成において、全て個別経費について聖域化することなく、査定を通じて見直しに取り組んでいるというところであります。これは毎年のことでありますけれども。

 二十八年度予算案において、防衛装備品の調達について要求のあった装備品の調達数の査定減を通じて新規後年度負担の抑制を図ったということでもありますが、また、一般物件費につきましても、例えば基地対策経費は、政策目的と照らし合わせて、費用対効果の薄い事業や重複、類似した事業を排除してその抑制を図ってきたところでありまして、私どもといたしましては、防衛関係費を聖域化しているかのごとき表現なり御指摘は全く当たっていない、私どもはそう思っております。

宮本(徹)委員 御指摘は当たらないと言うんですけれども、このグラフを見て、誰が見てもこれは聖域化していると。

 中期防衛力整備計画というのは、私たちの側からすれば軍拡計画なわけですよ、毎年〇・八%伸びる。私たちは削るべきだという立場ですけれども。しかも、これは閣議決定なわけですよ。この黒い棒というのは閣議決定なわけですよ。閣議決定すら踏み越えて使っているんです。これを聖域になっていないという姿勢では、軍事費に、防衛費にメスが入らないじゃないですか。

 やはりここは思い切ってメスを入れていただきたいということを申し述べまして、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。私で最後でございます。もうしばしおつき合いいただければと思います。

 きょうはまず、日銀総裁、お越しいただきましてありがとうございます。あすから上海でG20だと思います。その関係を中心に、マイナス金利も含めて少しお伺いしていきたいんですけれども。

 G20について、麻生大臣にもお伺いしましたし、また、官房長官も御発言されていると報道でありますけれども、特に、今、中国に対してばしっと言うというお話をされておりました。中国の過剰設備と、また不良債権、そういった部分の構造的な問題にメスを入れていかなければいけない、その場としてのこのG20は非常に重要だという御発言が財務大臣、そして官房長官からありましたが、日銀総裁としても同様の認識でおられて、また、そうした議題をお話をされていくという認識でよろしいでしょうか。

黒田参考人 御承知のように、G20財務大臣・中央銀行総裁会議では、世界経済全体がバランスのとれた持続的な成長を実現していくために、さまざまな課題について参加国が緊密な意見交換を行う場であります。

 委員御指摘のように、中国のそういった構造問題、あるいは、最近の原油を含む資源安の問題、その他、世界経済に影響を与え得るさまざまな問題について議論が行われるというふうに私も思っております。

 そうした中で各国の経済金融情勢の最近の状況を意見交換するわけですが、その中で、御指摘のようなこと、特に、国際金融市場の不安定な動きの背景、あるいはその影響についても議論することになるというふうに思います。

丸山委員 これは中国に対して、ある程度、いろいろな国との話し合いの中で、圧力とまでは言いませんけれども、どういうことだという問いかけをしていくという、日銀総裁も同様の方向でということでよろしいですか。

黒田参考人 現在、中国は米国に次ぐ世界第二の経済でございますし、さまざまな構造転換を遂げている途上にある国でもあります。

 そうした国の経済がアジア、世界経済にとって大きな影響を与えるわけですので、当然、御指摘のような点も含めて、中国経済についても忌憚のない意見交換ができればというふうに思っております。

丸山委員 一方、アメリカの方の動きを見ていますと、最近、特に為替にすごく敏感な御発言をされているアメリカの政府筋が多いと思います。

 例えば、特に為替の目的として、輸出競争力強化を狙って通貨安の誘導をするというのに対して、強く懸念の声というか牽制をしているのが今の米国の状況だと思います。名指しをしている大統領候補もあるというふうに聞いているんですけれども、一方で、政府高官が名指しというのは今のところ聞いていませんが。

 一方で、今回マイナス金利を導入した日本というのは、まさしく、疑いとまでは言いませんけれども、この批判に対して、もしくは指摘に対してきちんと説明をしていかなければならない立場にあると思いますけれども、このマイナス金利というのは決して通貨安を招くためにやっているわけではないというのが総裁の立場だと思うんですが、まずその立場でよいのかどうかということが一つと、そして、このマイナス金利について、各国にどのように、アメリカにどのように説明していくのか、お答えいただけますでしょうか。

黒田参考人 G20では従来から、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗するという考え方が共有されておりまして、この点は、昨年九月のアンカラでのG20のコミュニケにおいても明確に示されております。

 これまでも申し上げてきましたように、日本銀行のマイナス金利つき量的・質的金融緩和は、本年入り後の金融市場が世界的に不安定になるもとで、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延して、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているということを踏まえて、そうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために導入したものでございまして、当然、必要に応じて私からこのような説明をするつもりでございます。

 なお、欧州中央銀行、ECBは、既にもうマイナス金利を導入してある程度時間もたっておるわけですけれども、ECBも従来から、マイナス金利政策につきまして、あくまでも物価目標との関係で、特に原油価格が下落して、物価上昇期待がそれに合わせて下落してくるということに対抗してマイナス金利も含めて追加的な金融緩和を行ってきたということを述べておりまして、私どもは全く為替安を目的として金融緩和を行っているわけではないということは、当然、必要に応じて申し上げたいと思います。

丸山委員 このマイナス金利の説明、もちろん国際的にもしっかりしていただきたいというふうに思うんですけれども、国内にももう少ししっかりとしていかなければならないんじゃないかなというのは強く思います。そうした中で、お忙しい中御出席いただきましてありがとうございます。

 きょうの午前中に、マイナス金利について木内日銀審議委員が御発言されているんですけれども、鹿児島で御講演されたとき、今回のマイナス金利によって金融機関の収益の悪化が起こる可能性があると。特に地銀だと思うんですけれども、地方銀行、体力のない銀行に起こるときに、結局、貸出金利の引き上げや手数料の引き上げによってコストを転嫁されて、それによって逆に金融の引き締めになるんじゃないかという木内委員の御指摘なんですけれども、これについては、日銀総裁、ノーだという御意見でよろしいんでしょうか。それについて御意見いただけますか。

黒田参考人 先ほども申し上げたとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和導入後の金利の動向を見ますと、国債のイールドカーブは全体的に低下しておりまして、そうした中で、住宅ローン金利、あるいは、企業に対する貸し出しの基準となる金利、いずれも低下をいたしております。

 したがいまして、今御指摘のような、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入によって、金利がむしろ上がり、金融仲介機能が阻害されるということはないと思っております。

 なお、御承知のように、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和と申しましても、昨年までに銀行が積み上げました二百十兆円の準備預金には引き続き〇・一%の金利がつきます。その上の四十兆円ぐらいが多分ゼロの金利でありまして、マイナス〇・一%の金利が適用されますのは、その一番上の、いわば上積みの十兆円プラスアルファというところでございまして、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和の直接的な影響として金融機関の収益に大きな影響が出るということはありません。

 ただ、イールドカーブ全体が下がり、貸出金利も下がっていくという中で、貸し出しの利ざやが縮小していくということはあるわけでございまして、これはいかなる金融緩和であっても、かつての量的緩和、包括緩和、そして二〇一三年四月から始めました量的・質的金融緩和におきましても、貸出金利が下がっていく、利ざやが下がっていくという中で経済に対するプラスの影響が出てきているということでございます。

丸山委員 重ねて木内委員は、このマイナス金利を導入することで、保有国債の利回りも、もし仮に付利水準が低下したら、地銀中心に金融機関は、要は保有国債を日銀に売却するインセンティブ自体が薄れてしまう、つまり、日銀がやろうとしている金融政策自体が先行きが怪しくなるんじゃないかという説明を鹿児島で、それも懸念しているという御発言をされているんですが、それに対して日銀総裁はどのようにお答えになりますか。

黒田参考人 市場の一部、市場関係者の一部に、前から、量的・質的金融緩和については限界があるのではないかというお話がございました。

 そうした中で、実は、昨年の十二月に量的・質的金融緩和を今後とも円滑に進めていくためのさまざまな措置を決定いたしております。そうした中で、今回マイナス金利を導入した後の日本銀行の国債買い入れにつきましても、何ら支障は生じておりません。

 御承知のように、日本銀行は国債を大量に買い入れておりますが、現在まで買い入れたものは国債の残高の大体三分の一ぐらいでございまして、三分の二ぐらいが市場にまだ残っております。そうした中で、日本銀行が国債の買い入れを進めていく際に、金融機関が国債をもうこれ以上売りたくない、売るインセンティブが低下するということが仮にあったとすると、それだけより金利が下がるわけですね。ですから、それだけ金融緩和の効果がより大きく出てくるという話でありまして、これまでのところそういった問題は全く生じておりませんけれども、仮に、国債を保有している金融機関が売り渋るというか、売るインセンティブが低下した場合には、むしろ国債の価格は上がり、金利は下がるということで、経済に対する刺激効果はより強くなるということであります。

 私どものこれまでの経験、それから諸外国の経験を見ましても、量的な緩和について、今の状況で具体的に国債の買い入れが困難になるといったことは全く生じておりません。

 ちなみに、欧州中央銀行は、まずマイナス金利を導入して、後に量的緩和を導入したわけで、たしか毎月六百億ユーロぐらいの国債などを買い入れていますけれども、そのもとで国債の買い入れについて障害が出たということは何ら聞いておりません。

丸山委員 今、ECBとの比較のお話をされましたけれども、私は、若干ECBは日本と状況が違うんじゃないかというふうに思っているんです。

 例えば、今、付利の話をさせていただきましたけれども、総裁は会見で、そもそもこの付利の引き下げについては検討しないというふうにお答えされているんです。

 何を言いたいかというと、日銀が毎年年間八十兆円買い取りをしていくわけですよね。それに対して、銀行は今の話だと売らないということはない、絶対にないという見解で総裁がいらっしゃる。それは、ヨーロッパでもそういう状況にあるので、将来にわたってもそれはないということでよろしいのか。もう一度、曖昧だったので、将来にわたってもというところなんですけれども、今の現状を聞いているんじゃなくて。

黒田参考人 国債の残高の三分の一を既に買っているわけですが、もちろん、全て買ってしまえばもう買うものはなくなるということは確かなんですが、これまでの国債の三分の一まで買い進んだ中で何ら問題は生じておりませんし、もし仮に金融機関が国債を売り渋るということがあれば、それ自体は、国債価格をより引き上げて、イールドカーブをより引き下げるということですので、量的・質的金融緩和の効果をより大きくするということであります。

 ただ、そういった状況はまだ生じておりませんし、昨年の十二月に量的・質的金融緩和をより円滑に進めるための措置を決定しておりますので、当面そういった問題が生ずるとは思っておりません。

 なお、先ほど申し上げたのは、欧州の場合は、まず先にマイナス金利を導入し、その後に量的緩和を導入して、その量的緩和をさらに期間を長くするということをしたわけですけれども、そうしたもとでも、欧州では何ら問題が出たということは聞いておりません。

 ただ、私が申し上げましたのは、あくまでも日本の状況のもとで今問題が生ずるかと言われましたので、そういう問題が生ずることは考えられないと申し上げたわけです。

丸山委員 一部タブロイド紙で、先日総裁にこの財務金融委員会にお越しいただいたときにされた御発言が出ていまして、ちょっとあおり過ぎだと私は思っているんですけれども、ついにギブアップ、黒田総裁がアベノミクスの失敗を認めたというタイトルで、何かといいますと、総裁が、玉木委員だったと思うんですけれども、民主党の玉木委員のときにお話しされた、マネタリーベースそのものをふやすことで直ちに物価あるいは予想物価上昇率が上がっていくということではないという御発言だけを捉えて、これを問題視しているんです。私はあのときの議論も聞いていましたので、少しこれは切り取り過ぎているなというのが率直な感想なんですけれども、これに対してどのようにお答えになるのかというのが一つ。

 もう一つ、今、市場がどういうふうに総裁を見ているかというと、これまでの量的緩和が限界が来たから、このマイナス金利導入という新たな手を打つことでさらに物価目標というものを達成しようというところを思っているんですけれども、一方で総裁は、限界じゃないという話も、量的緩和の方も限界じゃないんですよというお話をされています。

 木内さんが言ったのは、危機的状況になったならば、今言ったマネタリーベース、年間増加目標額が今ありますけれども、これにこだわらずに、もっと一時的には潤沢な円資金や外貨資金を供給すべきだと木内先生は言っているんです。

 一方で、総裁は、財務金融委員会で、この記事にされていますとおり、マネタリーベースそのもので直ちに物価上昇率が上がるものではないというようなことを言ったかのような新聞報道があるんですけれども、それは恐らく否定されると思うんですが、否定された中で、この量的緩和がまだまだ限界じゃないという中で、木内委員が言ったように、このマネタリーベース、年間目標額にこだわらないというのは、総裁としてはどうお考えになるのか、お答えください。

黒田参考人 この量的・質的金融緩和というのは、マネタリーベースを拡大するというだけでなく、それを長期国債その他の資産を買い入れることによってマネタリーベースを拡大するということであります。

 マネタリーベースにつきましては、金融政策の操作目標として、現在でいいますと年間八十兆円程度増加させるということを決めておりますし、それを実現するための長期国債の買い入れも八十兆円をやりますということを申し上げております。

 したがいまして、量的・質的金融緩和が始まって以来、マネタリーベースだけで何か物価が上がるというふうに説明したことはございません。常に、量的・質的金融緩和によってイールドカーブ全体を押し下げて、それが実質金利を下げ、投資やその他の経済活動にプラスの影響を与え、ひいては物価、賃金が上昇していくというプロセス、チャネルを御説明しているわけでございまして、その点は、従来からの量的・質的金融緩和の説明と全く変わっておりませんし、マイナス金利つき量的・質的金融緩和でも全く同じでございます。

 なお、量的・質的金融緩和自身について現時点で何か限界があるとかいうことは全く考えておりませんし、政策委員会の中でもさまざまな議論が行われておりますけれども、政策委員会の公表文書、あるいは、毎回毎回の議論の議事要旨が次回の金融政策決定会合で承認された後に公表されておりますけれども、それをごらんになっていただいてもわかると思いますが、そういった限界があるのでマイナス金利に移ったということでは全くないということでございます。

丸山委員 マネタリーベースの年間目標額にこだわらない方がいいという委員の御発言なんですけれども、総裁としては、この目標額にこだわるべきだ、もしくは、この発言についてはどうお答えになりますか。

黒田参考人 量的・質的金融緩和というのは、今申し上げたように、操作目標としてマネタリーベースの増加というものを示して、それを長期国債その他の資産を買い入れることによって実現する、それがイールドカーブ全体を押し下げていくということですので、これまでどおり量と質と両方重要でありますので、マネタリーベースは必要ないとか、マネタリーベースの増加を減らしてもいいとか、そういうことではないと思います。

 あくまでも、量と質、今回はマイナス金利を導入しましたので金利、こういう三つの次元で必要な緩和をしていくということであるというふうに思います。

丸山委員 時間が来たので終わりますけれども、この後、G20、しっかりと国益のために、総裁と大臣、よろしくお願い申し上げます。

 ちょっと質問が残ってしまいましたが、あしたも質問あるそうなので、あしたにこの残りは入れさせていただきます。ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、明二十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三分散会


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