衆議院

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第8号 平成28年2月26日(金曜日)

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平成二十八年二月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      越智 隆雄君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    勝俣 孝明君

      國場幸之助君    笹川 博義君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      中山 展宏君    長尾  敬君

      根本 幸典君    野中  厚君

      橋本 英教君    福田 達夫君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      山田 賢司君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      鷲尾英一郎君    上田  勇君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   厚生労働副大臣      竹内  譲君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 井野 靖久君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 籠宮 信雄君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    門間 大吉君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           梅田 珠実君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           保坂  伸君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     海堀 安喜君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     新谷 正義君

  助田 重義君     笹川 博義君

  根本 幸典君     橋本 英教君

  福田 達夫君     白須賀貴樹君

  宗清 皇一君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     助田 重義君

  白須賀貴樹君     福田 達夫君

  新谷 正義君     國場幸之助君

  橋本 英教君     根本 幸典君

  宮路 拓馬君     長尾  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  長尾  敬君     宗清 皇一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 来る二十九日月曜日午前九時、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、SMBC日興証券株式会社金融経済調査部部長・金融財政アナリスト末澤豪謙君、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員片岡剛士君、静岡大学名誉教授安藤実君、及び、同日午後一時、所得税法等の一部を改正する法律案審査のため、慶應義塾大学経済学部教授竹森俊平君、中央大学法科大学院教授森信茂樹君、全国商工団体連合会副会長太田義郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官井野靖久君、大臣官房審議官籠宮信雄君、大臣官房審議官増島稔君、財務省主計局次長美並義人君、主税局長佐藤慎一君、理財局長迫田英典君、国際局長門間大吉君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官梅田珠実君、大臣官房審議官樽見英樹君、大臣官房審議官森和彦君、大臣官房審議官堀江裕君、大臣官房審議官谷内繁君、大臣官房審議官伊原和人君、経済産業省大臣官房審議官保坂伸君、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官海堀安喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 まず、黒田総裁に質問をさせていただいて、その後、半分ぐらいの時間を使って、きょうは厚労省に来ていただいていますので、スイッチOTCの関連について質問したいと思います。そういう順序でやらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 黒田総裁にお聞きしますけれども、インフレ率を上げるために銀行の信用創造を促す、基本中の基本でございますが。マネタリーベースの増加がマネーストックの増加につながらなきゃいけない、基本中の基本でございますけれども。マイナス金利の導入以降、株式市場で、特に収益懸念から銀行株が下落しております。銀行の信用スプレッドも拡大をしておるんですね。このことについてどうお考えになっておりますか。

黒田参考人 今回導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和は、量的・質的金融緩和の基本的な枠組みを維持しつつ、それを一段と強化するものであります。

 具体的には、さまざまな措置によって実質金利を低下させるということを通じて、企業や家計の経済活動を刺激し、企業収益の改善や雇用、賃金の増加を伴いながら物価が高まっていくという経済の好循環をつくり出すということを目的としております。

 委員御指摘のとおり、その過程で当然、銀行の貸し出し増、あるいはマネーストックの増加というのが起こってくるわけでございます。

 マイナス金利に限らず、金融緩和を進めますと、企業や家計にとって、今申し上げたような実質金利の低下等、金融環境を緩和しようとしますと、仲介者である金融機関の収益に影響するということは避けられないわけですけれども、今回のマイナス金利導入に伴う直接的な収益への影響につきましては、今回導入したスキームでは、御承知のとおり、日銀当座預金について三段階の階層構造を採用いたしまして、その一部についてのみマイナス金利を適用するという形になっております。

 なお、委員御指摘のとおり、銀行の株価の下落や信用スプレッドの拡大が生じているわけですが、これは御案内のとおり、本年入り後、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まるもとで、実は日本だけではなく、欧州や米国においても、銀行株価の下落とか信用スプレッドの拡大が生じております。

鷲尾委員 世界的な要因があるんじゃないかという総裁の御指摘でありますけれども、少なくとも、マイナス金利を導入したことによる収益懸念というのは市場関係者には広く共有されているところでありますし、そのことがもたらす信用スプレッドの拡大ということもあるであろう。それが銀行の資金調達コストを上げて、いわゆる信用創造活動に負の影響を与えるというのは自明の理であります。

 つまり、インフレ率の上昇という目的にとってネガティブであろうということも指摘できるわけでありまして、このネガティブな効果ということを、またうまく緩和するというか、そういう意味において、例えば量的緩和の枠組みの中で、金融機関発行の債券を同時に買うといったことを考えるということはあり得るのかということもぜひコメントいただきたいと思います。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、銀行の株価の下落というのは世界的に起こっているわけでございますが、他方で、日本の金融機関は、特に欧州の金融機関と異なりまして、リーマン・ショックや欧州債務危機による損失は極めて少なくて、資本基盤が充実しているということから、高い健全性を保っております。

 金融機関の収益につきましても、景気回復を背景に、貸し倒れ等に伴う信用コストが大幅に低下しているということなどから、低金利環境にもかかわらず高い水準を確保しておりまして、二〇一四年度の大手行、地域行の当期純利益は過去最高に迫る水準となっております。

 こうしたことを踏まえますと、我が国において、このところの銀行株価の下落などが金融仲介機能の低下につながるといったことは考えられません。そういう状況のもとで、委員の御示唆のような、金融機関発行の債券を同時に買うといったことは全く考えておりません。

鷲尾委員 それでは、総裁も御承知のように、マイナス金利のいわゆる負の側面でございます保管コストを考慮しても、現金にかえて持たれる、預金を引き出される、そういうリスクを考えると、マイナス金利ですけれども、どれぐらいまで引き下げられるということをお考えになっていますか。

黒田参考人 一般的に、中央銀行の当座預金にマイナス金利を適用する場合の問題点としては、一つは、委員御指摘のような、金融機関の収益を過度に圧迫して、かえって金融仲介機能を弱める懸念はないかという点と、もう一つは、金融機関が現金保有を増加させることによって、マイナス金利の効果が減殺されるのではないかといったようなことが指摘されております。

 この点、今回導入いたしましたスキームでは、先ほど申し上げたように、当座預金について三段階の階層構造を採用して、金融機関の収益への影響に配慮しております。

 また、仮に金融機関の現金保有額が大きく増加した場合には、その増加額に見合う形で、当該金融機関の当座預金残高のうちマイナス金利が適用される部分を増加させるということにしておりまして、先ほど申し上げた二つの問題点に対する対応ができております。

 したがいまして、技術的にはより大きいマイナス金利を適用することは可能になりますけれども、具体的にどの程度のマイナスの水準まで引き下げられるかという点につきましては、今申し上げたような金融機関収益への影響度合いあるいは現金保有コストのレベルに依存するために、確たることは申し上げられないわけでございます。

 いずれにいたしましても、現時点においては、今回決定したマイナス〇・一%のマイナス金利の政策効果の浸透度合いをしっかりと見きわめてまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 今総裁がおっしゃった、その浸透度合いというところでございます。

 今の日銀の政策の少なからぬ部分というのは、市場の期待に訴えかけるというところでございまして、そういう意味では、黒田総裁は、かつてないほど市場の期待の一歩先を行くサプライズで、ある意味うまく市場をコントロールしてきたんじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。

 今総裁がおっしゃったような、浸透度合いを見てというコメントがございましたけれども、マイナス金利導入後の浸透度合い、市場の動きについてはどのようにお考えになっていますか。

黒田参考人 マイナス金利導入を決定して以来、国債のイールドカーブ全体が低下しておりまして、それに応じて、企業に対する基準貸出金利であるとか住宅ローンの金利などもかなり低下をしております。これが実体経済に波及していくということを期待いたしております。

 他方で、国際金融市場では、確かに、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入決定後も、引き続き主要国の株価が軟調に推移しているほか、ドル安傾向が続いております。

 その背景としては、御案内のとおり、原油価格の下落あるいは中国経済の先行き不透明感に加えまして、欧州の銀行セクターに関する懸念あるいは米国の金融政策の先行きに対する不透明感が強まるという中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっていることがあると認識をいたしております。

 ただ、市場は市場でございますので、日本銀行としては、こうした国際金融市場の動きが我が国の経済、物価にどのような影響を与えるかについて、しっかりと注視していく所存でございます。

鷲尾委員 総裁が今、市場は市場でございますとおっしゃっておられましたが、総裁は総裁でいろいろな、今の中国経済の見方とか、さまざまなところで発言されておられます。その市場の見方をこちらからリーダーシップをとってどううまくコントロールしていくかという観点で、総裁はこれまで成功しておられるわけでありますが、ちょっと今の状況を考えますと、これはなかなか、今、少し岐路に立っているんじゃないかという気もいたしておるところでございます。

 というのは、純粋に量的緩和などという、量をふやすという今までの延長線上の政策ということでいきますとサプライズはきいたのかもしれませんけれども、マイナス金利というのはいわば新しいフレームワークですから、これは、それこそ十分に市場関係者と対話を積み重ねた後に、効果を判断しながら行うことを決めた方がよかったんじゃないかなというふうには思っております。

 ちょっとサプライズをきかせ過ぎたんじゃないかというふうに私も思いますけれども、総裁のお考えをお聞かせください。

黒田参考人 内外の金融市場の動向につきましては、平素から丹念にモニタリングを行っておりますし、市場関係者とも緊密な意見交換を行っております。

 その上で、金融政策につきましては、金融市場の動向あるいは経済・物価情勢、そのリスク要因などを政策委員会において丹念に検討した上で、政策委員会の判断と責任において決定するべきものと考えております。

 なお、委員御指摘の市場関係者との対話の重要性というのはよく認識しておりまして、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入後も、引き続き市場関係者とは対話を重ねております。

鷲尾委員 やはり、金融機関の信用スプレッドの拡大の状況でありますとか、あるいは中国経済に対する総裁の見方でありますとか、そこのところの市場関係者との対話、もちろんそれだけではありませんけれども、ちょっとうまくいっているのかどうなのかなと思う節もございますので、そこは、今後とも、不測の事態に陥らないように御留意願いたいというふうに思うところであります。

 それから、次の質問ですけれども、労働市場について質問したいというふうに思いますけれども、労働市場のスラックの低下のことでございます。

 これは、通常、経済原理に基づいた賃金上昇を生む、こういう話でございますけれども、そのメカニズムは失業率からいって何%くらいから起こるかというところでございまして、黒田総裁、一年半ほど前には三・六%が自然失業率とおっしゃっていたんですね。しかし、今の失業率ということでいきますと、足元三・三%まで下がっているという状況です。

 賃金上昇の加速が、いわば経済原理に基づいた通常の考え方からすると、自然失業率、総裁が言っていた水準を下回っている状況ですから、賃金上昇が加速してもおかしくないというふうに、普通は総裁の発言を聞けばそうなってくるだろうというふうに考えますけれども、現状、賃金上昇の加速が見られていないわけでございまして、総裁の自然失業率に対する認識について、どうなのか、この間、その見方の変更があったのかということもあわせてお答えいただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、労働市場がタイト化すれば賃金に上昇圧力をもたらすということは、まさに御指摘のとおりでございます。

 その上で申し上げますと、最近の労働市場については、有効求人倍率が一・二倍台後半まで上昇しておりますし、御指摘のように、失業率は三%台前半まで低下するなど、労働需給の引き締まりが続いております。

 自然失業率あるいは構造失業率といったものにつきましては、いわゆる求人と求職のミスマッチによる失業だけが残っているという状況を、実際の失業率と構造失業率がほぼ同じであれば、完全雇用であると言ってよいと思います。

 そういう意味では、従来の考え方を変えているわけではございませんけれども、労働市場がどのくらいタイトになったときにどのように賃金上昇が起こっていくかということにつきましては、御案内のとおり、いわゆるフィリップス・カーブにつきまして、その傾きとか切片がどのように動いているかということで、米国においても我が国においてもいろいろな議論があるところでございまして、必ずしも一様ではないというふうに言われております。

 ただ、こうした労働需給が引き締まっているということは事実でありまして、それを反映して、名目賃金は既に緩やかに上昇しておりまして、一昨年の労使間の賃金交渉で約二十年ぶりにベースアップが実現して、昨年も多くの企業で一昨年を上回る賃上げが実現しております。

 こうした労働市場の引き締まりぐあい、あるいは過去最高水準にある企業収益を踏まえますと、賃金が今後も上昇していく環境は十分整っているというふうに考えております。

鷲尾委員 インフレ目標を達成するということでいけば、賃金の上昇というのは当然一番の問題だと思っておりますので、その予想の中で機動的に政策を打っていただきたいなというふうに思いますが、ちょっと今のところ、今総裁がおっしゃったような認識の状況の中にあっても、緩やかな上昇ではあっても、なかなか賃金上昇が加速化していない、これも現状認識の一つでありますから、そこも注視をしていただきたいなというふうに思っております。

 それでは、きょうは厚労省さんに来ていただいておりますので、今般の法改正によりまして、日本再興戦略では、健康寿命の延伸を図る、そういう観点で、効果的な予防サービスとか健康管理の充実によって、健やかに生活し、老いることができる社会を目指すということを目的としたセルフメディケーションを推進していくということでございます。これは、適切な健康管理のもとで医療用医薬品からの代替を進めるということで、年間一万二千円を超える金額で八万八千円を限度として、スイッチOTC薬ですね、税額控除が導入されることとなったわけであります。

 このスイッチOTCにつきまして、今の普及状況等に関連して質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、控除対象医薬品としてスイッチOTC薬も含められているということでございますけれども、現在の普及状況につきまして、スイッチOTCがどの程度実施されているかというところについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 いわゆるスイッチOTC医薬品というものは、医療用の医薬品から転用されたものでございまして、医療用としての使用実績、副作用の発生状況などから、消費者の選択により使用される要指導一般用医薬品として取り扱うことが適当である旨、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、承認を行った医薬品でございます。

 具体的には、風邪薬、胃腸薬、水虫のお薬、花粉症などのアレルギーのお薬などがございまして、企業が、医療用医薬品の用法、用量、使用上の注意、包装など、消費者の選択に適するように見直した上で承認申請することになってございます。

 現時点で、スイッチOTC医薬品として承認しておりますのは八十二成分ございます。

鷲尾委員 このスイッチの種類とか適応症の分野というのはどうなっているのかなということもお聞きしたいなというふうに思いますけれども、その八十二件のうちの最近はということでいくと、外用薬とかアレルギー系が多いんじゃないかという印象を私は持っているわけでありますけれども、外用薬とかアレルギー系ばかりなのは何でなのかなというふうに思います。

 国民総医療費をできる限り抑制していく、そういうことでいきますと、増加傾向にあるのは生活習慣病であります。そういう意味では、民主党政権時代で出たきりでそれっきりなんじゃないかなという認識を持っているんですけれども、いかがでございましょうか。

森政府参考人 どのようなものがスイッチ化されているかということについて、八十二成分というふうにお答え申し上げました。

 その中で、最近の承認されている成分で申しますと、委員御指摘のように、アレルギーに関係するお薬あるいは水虫に関するお薬あるいは痛みどめのお薬、こういったものが比較的多うございますが、二〇一二年には、中性脂肪の改善薬というようなことで、イコサペント酸エチルという成分もスイッチ化されております。

 数的にはまだ少のうございますが、こうしたものについてもスイッチ化される候補の一つとしては考えられているところでございます。

鷲尾委員 先ほども申し上げましたけれども、やはり医療費を抑制していくという観点で政府全体で取り組まれているというふうに思いますけれども、そこでいけば、やはり生活習慣病というのは、医療費を抑制するという意味においても、そのお薬というのは効果が非常に高いというふうに思うんです。

 今、なかなかスイッチが進んでいないというコメントもありましたけれども、もっと政府からどんどん働きかけて、スイッチした方がいいんじゃないかということをやっていった方が総医療費の抑制にもつながっていくというふうに思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のような医療用医薬品から一般用医薬品への移行、スイッチ化におきましては、これまで、スイッチOTC医薬品の候補となる成分について関係学会の意見を聞いて選定する、その上、医療用としての使用実績、副作用の発生状況などから、消費者の選択により使用される要指導・一般用医薬品として取り扱うことが適当である旨、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くというふうにされております。

 しかし、産業競争力会議におきまして、スイッチOTC化を促進するに当たって、関係学会等だけではなく、産業界、消費者等のより多様な主体からの意見が反映される仕組みの構築を求めるという声が上がっておりました。

 このことから、平成二十六年六月の日本再興戦略二〇一四において、セルフメディケーションの推進や医療用から一般用へのスイッチOTC化を加速するために、米国など海外の事例も参考にしまして、産業界、消費者等のより多様な主体からの意見が反映される仕組みを構築することなどが閣議決定されているところでございます。

鷲尾委員 いろいろな主体から意見を聞くということをより熱心にやっていく、そういうことだと思うんですね。

 そういうことだと思うんですけれども、それでは、あくまでも現場での意見ですけれども、そもそも薬局で売られているのかとか、そういう指摘もやはりありますね、買いにくいとか。あるいは薬局からは、売れないから置きたくないとか、こういうことも聞きますね。卸さんから少量の発注だったら販売しないよなんて言われて困っている薬局さんだってあるわけで、そういったことを厚労省として、いろいろな意見を聞くという話でありますけれども、そういうことは聞いているのでしょうか。認識としてどうか。

森政府参考人 委員御指摘の、一般用の医薬品の流通に関して、一般論としてでございますが、小規模の取引の場合には薬局と卸売販売業者との間で価格交渉の折り合いなどがつきにくいというような実情があるということでは理解してございます。そのような実情というのを私どもも一定程度認識はしてございます。

 このようなスイッチOTCの販売におきましては、薬剤師等が必要に応じて適切な受診勧奨を行うことも含めまして、副作用防止の観点から、医薬品の選択や使用方法等必要な情報提供を的確に行うことも必要だというふうに考えてございます。

 このような中で、地域住民による主体的な健康の維持増進を支援する健康サポート薬局という制度を四月から施行することにしておりまして、こうした取り組みを通じまして、薬局における適切な供給と情報提供を推進してまいりたいというふうに考えてございます。

鷲尾委員 一般的にというか、私が消費者の立場に立って聞く声としては、スイッチ医薬品というのはなかなか薬局で取り扱ってはいない、いないとは言いません、まれでありまして、ドラッグストアに行ってみると、しかし、そこでは今度は薬剤師さんがいないから買えないとか、そういうことになっていまして、スイッチですから、むしろ逆に、実質三割負担の医療用医薬品の方が割安感もあるし、せっかくスイッチしても、国民が買いたいと思わなければ、これは制度としていかがなものかというふうに思っているわけです。

 そういうたてつけになっている現状を少し改善していかなきゃいけないというふうに思っていますが、具体的にどれだけのOTC医薬品が上市されているか、過去から最近の状況をざっと御説明いただけたらありがたいんですけれども。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 薬事工業生産動態統計によりますと、平成二十五年におきますスイッチOTC薬の生産額は約千四百億円でございます。

鷲尾委員 もうちょっと詳しく御答弁いただきたかったんですけれども、ちょっと時間もないので、これはもうしようがない、これぐらいにさせていただいて。

 そうしたら、少し切り口を変えまして、処方箋を受け付けてくれるような薬局には、このスイッチOTCはなかなか置いていないんじゃないか。仮に置いてあったとしても、我々が選ぶようなバリエーションがそろっているかというと、そういうことでもないんじゃないか、今の現況は。

 ですから、OTC医薬品の取り扱い、特にスイッチOTCですけれども、今の薬局の取り扱い状況について御説明いただけますか。

森政府参考人 現状におきまして、薬局で全てどのような状況であるかというところまでの正確な把握はできてございません。

 現状で販売されているスイッチOTC医薬品の製品の数という意味でいいますと、七百四十品目程度の製品が販売されているということは承知してございます。

 個々の薬局におきまして、どのような製品を配置するのかということにつきましては、消費者の方の需要に応じて、それぞれそろえておられるというふうに承知してございます。

鷲尾委員 今、七百四十品目という御指摘がありましたけれども、では、それを我々がすぐに手に入れられる状況にあるかというと、そういうことではないというのが現状でありまして、それこそ、医療費抑制であるとか、セルフメディケーションの推進ということでいくならば、やはりこの状況は改善していかなければいけないんじゃないかというふうに思っております。

 医師側の問題点や患者さん側の問題点とか、あるいは取り扱う薬剤師さんの視点から、これはいろいろな問題があると思っておりまして、今、推進されているとは全く言えないような状況だと思っています。そこはどうお考えになっていますか。

森政府参考人 委員からの、スイッチOTC医薬品の使用を促進していくためにどのような取り組みをするのかという御指摘というふうに理解いたします。

 先ほど御説明申し上げましたが、地域住民における主体的な健康の維持増進を支援する健康サポート薬局という制度をこの四月から施行するということにしておりますが、この健康サポート薬局におきまして、四十八薬効群のOTC医薬品を備えるようにということを通じまして、今後さらに普及を図ってまいりたいというふうに私どもは考えてございます。

鷲尾委員 健康サポート薬局というお話でありますけれども、それで推進していくんですというにはちょっと不十分じゃないでしょうかね。もちろん、こうした今般の法案による、それこそ税額控除というのもありますけれども、ちょっとそれでは、関係各位の意見を全部入れてそういうアイデアなのかというふうに私は思います。

 そこでですけれども、諸外国において、スイッチOTC薬の普及が進んでいる例によりますと、例えばOTC類似薬につきましては保険適用をやめる方法を検討するとか、そういうことも諸外国の例に鑑みれば検討するということもあっていいんじゃないかというふうに思いますけれども、この点、諸外国の例も含めてどのように考えておられるか、お聞かせください。

谷内政府参考人 お答えいたします。

 諸外国の薬剤の保険給付の範囲でございますけれども、厚生労働省におきまして承知している範囲で申し上げますと、例えばドイツとかフランスでは、一部の薬剤につきまして保険給付の対象外とされておりますけれども、今御指摘のありましたスイッチOTCと同一の成分を含んでいるという理由で一律に保険給付から外れているというものではないと承知しております。

 このほか、イギリスやアメリカにおきましても、先ほどのドイツとフランスと同様でございますけれども、スイッチOTCと同一の成分を含んでいるという理由で一律に保険給付の対象外になるものではないというふうに承知しているところでございます。

 一方、そういったことについて検討すべきではないかという先生からの御指摘でございますけれども、これにつきましては、昨年十二月に経済財政諮問会議で策定されました経済・財政再生計画改革工程表におきまして、スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率のあり方につきまして、関係審議会等において検討し、二〇一六年末までに、本年末までに結論を得るということとされております。

 厚生労働省におきましては、この検討に当たりましては、医療費適正化の観点に加えまして、次のような観点についても留意しながら検討していきたいというふうに考えております。

 一つには、保険適用されている医療用医薬品を保険給付の対象外にいたしますと、これは患者負担がふえることになりますけれども、それについて国民の理解を得ていく必要があるということ。また、医療用医薬品には、有効成分は同じでありましても、市販品と異なる重篤な疾患の適応を有するものや、また用法、用量が異なる場合があるということ。また、スイッチOTCと同一成分を含むという理由で保険給付外とすることで、かえって保険適用されているより高額な薬剤が使用される可能性があること。

 こういった観点も留意しながら検討していきたいというふうに考えております。

鷲尾委員 おっしゃるとおり、ちょっとその値つけの部分についても、やはり政策当局としては配慮しながら進めていっていただきたいというふうに思います。

 それで、今回の税額控除でありますけれども、これまであった医療費控除の特例であります。

 医療費控除というのは、これまでもそうですけれども、十万円以上というところがかなり使い勝手が悪いということが指摘されてきたわけであります。ただ、今回はOTC医薬品だけが特出しなんですね。これはこれで、ちょっとOTC医薬品メーカーだけに甘過ぎなんじゃないかなというふうにも思っておるわけであります。

 特出しするということであれば、医療費控除に積算できる全てのものについて特出しをする。あるいは、逆に、健康推進を目的とするような、スポーツだとかダイエット器具だとか、健康食品、保健指導、栄養指導、こういったことも、健康産業全般を控除対象とするということも、私は考えられてしかるべきだと思うんです。なぜOTC医薬品だけなのかというところがちょっとよくわからないんですけれども、これは財務省と厚労省、ともに聞きたいと思います。

樽見政府参考人 平成二十八年度の税制改正におきまして、軽度の身体の不調は自分で手当てする、それで健康についての意識も高め、しっかり自分でやる、そういうところについてのセルフメディケーションを推進するということで、スイッチOTC薬の購入費用に係る医療費控除の特例ということになったわけでございます。

 そのほか、健康づくりのために、検診でありますとか予防接種でありますとか、重要なものはいろいろあるわけでございますが、こうしたものに関しましては、御自身で健康管理を行って適切にセルフメディケーションに取り組んでいる人を支援するという観点から、今回の税制の医療費控除の特例については、医師の関与を伴う検診や予防接種を受けているということを今回の特例の適用要件としているという形になっているということでございます。

 私ども厚生労働省としては、検診や予防接種、こうしたものの受診率とか接種率の向上ということは非常に重要であるというふうに思っております。健康づくりの取り組みは非常に重要であるというふうに思っておりまして、そのためには、ほかにも、予算措置あるいは普及啓発事業などさまざまな取り組みを行っているところでございまして、今後とも、国民の健康づくりの支援についてはいろいろと検討して推進をしていきたいというふうに考えております。

麻生国務大臣 御存じのように、この特例というのは、軽い体の不調等々の方々は自分で手当てせいと、いわゆるセルフメディケーションとかいうような表現になっていますけれども。

 そういった中で、いわゆる処方箋を使った処方薬と同じような有効成分を有しています薬等々を市販される市販薬、スイッチOTC、意味不明な和製英語ですけれども、普通の人が聞いたって、一回では絶対理解できないよ。これは何をどうスイッチしたのだかわかりませんし、OTCも、オーバー・ザ・カウンターの略だそうですけれども、どういうためにこういう言葉なのかよくわからぬのですが。

 とにかく、そういう単語をつくられて、その使用を促進することによりますと、基本的には医療費というものが、お医者さんに行かなくても、ましてや市販ということになりますと、医療費の適正化とか抑制化とかいうことにつながるんだという観点から導入するということにしたんだと思います。

 健康維持というものは、PPKとか健やかに生きるとかいろいろな表現が近年言われていますけれども、そういった中で、これは税制上の優遇を認めるべきだという御指摘によるんだと思っております。私は、これはこれなりに、全体として、健康に留意して自分なりに健康を維持しておられる方々とそうじゃない方との差というのを考えますときに、健康を維持している人のために一生懸命やっている人の払っている税金でいいかげんにしている人の税金を全部賄っているなんて、どう考えてもおかしいじゃねえかという意見は前からあるところですから、そういった意味では、こういったものをまず最初にやられるということになったんだと思いますが、まずはこの特例の活用状況というのをちょっと見きわめていかないかぬところだろうと思っております。

鷲尾委員 今、大臣もおっしゃいましたセルフメディケーション、厚労省さんもおっしゃっていたセルフメディケーション。セルフメディケーションといいますけれども、これは定義をはっきりさせておかなきゃいけないと思います。

 ですから、私も今御提案申し上げたように、セルフメディケーションを推進しますよ、大臣がおっしゃっているように、総医療費を抑制していくんだよ、その方向性でいいじゃないか。では、そのセルフメディケーション自体の定義というのは、厚労省はどう考えているんですか。

森政府参考人 委員御質問のセルフメディケーションの定義でございますけれども、厚生労働省として、世界保健機関、WHOにおきまして、セルフメディケーションについては、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な体の不調は自分で手当てをすることというふうにされてございます。こうした定義を私どもも定義として使っているところでございます。

 このように、個人がみずから健康管理や予防に高い意識で取り組むということによりまして、健康寿命を延伸し、健やかに生活できる社会をつくっていくことは重要な課題だというふうに認識してございます。

鷲尾委員 ということであれば、やはり、私が先ほど申し上げましたスイッチOTCだけじゃなくて、今セルフメディケーションを推進するために、税制上の優遇措置ということをほかにも考えていってもいいんじゃないか。それが医療費抑制に効果があるのであれば、そういう方向性も十分に考えられるというふうに私は思います。

 最後に、大臣に質問したいんですけれども、軽減税率についてであります。

 低所得者対策ということが入り口であり、そして、今言われているのは痛税感の緩和ということであります。痛税感の緩和ということであるならば、薬も軽減税率の対象となってしかるべきだと思いますけれども、大臣、どう思われますか。

麻生国務大臣 いわゆる医薬品を含めまして、適用対象をこれ以上拡大するという話なんだと思いますが、基本論として言わせていただければ、特定の物品とかサービスとかいったものを対象にするということは、これはいわゆる代替品との間でゆがみが生じ得るということが一つ。こうしたゆがみを回避しようということになると、対象がどんどんどんどん、また圧力やら何やらいろいろありまして、そういったようなことも十分に考えておかないかぬと思っておりますので、結果として、社会保障の財源になります消費税の絶対量そのものを減少させるおそれがあるということも十分に考えておかないかぬのでありますので、そういったものでは慎重であるべきだと思っております。

 ただ、基本としては、医薬品の、今言われたような形で、医療費の絶対量が削減されるという結果につながっていくのであれば、これはほかの方法を含めていろいろあろうかと思ってはおります。

鷲尾委員 大臣が今ほど答弁いただいたように、薬を軽減税率の対象にして、それはもちろんいろいろ難しい問題もあろうかと思いますけれども、大事なのは国民の総医療費をいかに抑制していくかという観点での検討も大事だと思いますので、それを御指摘申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。

 まず、財務大臣に、租特、政策減税についてお話を伺いたいというふうに思います。

 お配りをしている資料の六をごらんいただきたいと思います。

 民主党政権のときに租特透明化法というものをつくりまして、その結果明らかになってきたものであります。国税で、二十四年度が一兆円、二十五年度が一兆四千八百億円、そして二十六年度が二兆円。こういうことで、政策減税、租税特別措置減収額というのはふえていっているわけであります。

 私どもは、租特そのものが悪いということを申し上げるつもりはありませんが、その使い方についてやはりもう少し精査した方がいいのではないかと思っております。

 その精査する中身について、下の表を見ていただきますと、法人名を具体的に、これは法人コードしかわかりませんが、大体これはわかりますので、一応、「法人名(推定)」、プロ野球選手の年俸みたいにしておきますけれども、トヨタ自動車が一千二百億円のいわゆる減収になっている、NTTドコモが二百七十七億円、デンソーが二百二十六億円、日産自動車が二百十四億円、ホンダが二百十億円、JR東海が百九十八億円、キヤノンが百五十八億円。

 言ってみれば、これは補助金というか、国からこういう租税特別措置ということで減税をしてもらっているわけでありますが、では、この会社が一体どれだけ利益を出しているのかということを申し上げれば、一々申し上げませんが、トヨタ自動車でいうと二兆円以上の利益を上げているわけですね。そして、ほかの読み上げた企業については数千億円の利益を出していて、しかも、利益剰余金、いわゆる内部留保について言うと、トヨタ自動車なんていうのは十五兆円を超えているわけですね。

 こういった会社に対して減税が行われるというのは、大臣、これは国民感情からいって納得できますか。

麻生国務大臣 法人税の税制政策の恩恵が大企業に偏っているとの御指摘だと思いますが、確かに、最大の政策税制の一つであります研究開発税制というものを見ますと、いわゆる大企業の利用が多くなっておるということなんだと思いますが、それ以外の政策税制は、全体として見ましても、大企業に偏っているというわけではないのではないか。例えば、制度の利用者を見ましても、中小企業が約八千三百件とか、大企業の方が四千件とか、そういった形になっているんだと思っております。

 政策税制はいわゆる政策を達成するための手段でありまして、実際に効果が上がっているということが最も重要なんです。所得拡大促進税制というものも、これは一つのきっかけだったんだと思いますが、これをやり始めるときにはいろいろ御意見があったんですが、やらせていただいた結果、二年連続で大幅な賃上げというのが実現しておりますので、経済の好循環につながったということは確かだと思っております。

 他方で、今おっしゃるように、内部留保というものが、最初が二十四兆、翌年が二十五兆、去年のはまだ出ていませんので、合計約四十九兆五千億だったかな、約五十兆出たんだと思っております。それまで手元資金が積み上がっておるわけです、内部留保として。

 そういったものがいわゆる賃金に回るはずなのではないかといえば、最初の年度は、実はマイナス三兆、賃金は減っております。翌年、プラスの一兆ふえておりますので、トータルで一兆しかふえておらぬ。五十兆ふえて、賃金は一兆しかふえておらぬ。極端な言い方をすれば、そういうことになろうと思います。

 そういった意味では、やはり経済界というか企業側も、いわゆるデフレじゃないんだ、インフレなんだから、マインドを変えてもらって、少なくとも、こういった設備投資の拡大とか、賃金とか、配当とか、そういったようなものに切りかえていくというのは、これは物すごく重要なことなんだと思います。

 政府としても、こういったものに関しまして、事業環境は我々としては整備していって、これまで三年やってきましたので、そういった意味では、きちんと今後やってもらいますよということを何回も申し上げ、おかげさまで、ことしの一月四日の新年の賀詞交換会というか、ああいう会では、同友会、経団連、商工会議所、いずれもそのトップの方々は、これまで政府に、金融、財政、いろいろやってもらったが、これからは民間の番なんだ、我々がやるべきなんだということを三人とも冒頭で発言しておられ、地方を回ってもおられますので、そういった点に関しましては今後期待をいたしておるところであります。

前原委員 答弁は短くお願いいたします。

 私は、冒頭に申し上げたように、租特そのものを否定しているわけではないんです。ただ、それで恩恵を受ける企業については、やはり区別すべきではないかということを申し上げているわけです。

 今大臣が御答弁をされました内部留保の問題、恐らく、積み上がったもの全体でいうと、三百五十四兆円ぐらいだと思いますね。そして、それが賃金に回ればいいですよ、設備投資に回ればいいけれども、なかなか回っていない状況があるわけですね。

 私が申し上げているのは、やはり体力、余力のあるところに政策減税が行われるというよりは、むしろその財源を、例えば、より中小零細企業に回すとか、今の好循環をさらにアクセルを吹かせるために回すとか、区別をつけた方がいいんじゃないかということを申し上げているわけです。

 したがって、内部留保とかあるいは利益とか、こういうものをしっかりと見きわめた上で、そして、まあ立場は違いますけれども、軽減税率と一緒なんですよ、私に言わせると。つまり、大企業、利益を出して内部留保をたくさんためているところにやったら、そのお金がもったいないということなんです。

 軽減税率の最大の問題点というのは、財源が決まっていないということもありますけれども、所得のより高い人ほど高額のものを買うんですね。お米にしたって、お肉にしたって、高いものを買うんですよ。その場合に、言ってみれば、さらに軽減されるということについて、社会保障のお金に大きな穴があくということで我々は問題視をしているわけです。

 この租特も同じで、政策減税そのものを否定しているわけじゃないんです。先ほど御答弁されたとおり、必要なものもあるでしょう。しかし、一定の利益とかあるいは内部留保とかいうことを考えて、そこは区別をする、もう少し精緻な形にしたらどうかということを申し上げているわけです。

麻生国務大臣 これは前原先生、この政策減税というものにつきましては、いわゆる特定の政策目標を実現するために有効な政策手段になり得るものだ、私もその点に関しては全く意見は同じなんですけれども、他方では、御指摘のありましたとおり、必要性とか、その政策の効果というものをよく見きわめた上で適切に見直しをやっていってもらわないかぬのではないかということを言っておられるんだと思うんですが、最近でも、二十七年度、二十八年度の税制改正において政策税制の見直しというものに取り組んできているんですが、今後とも、毎年度、いわゆる期限が到来する、時限立法になっていますので、期限が到来するものについては、これはゼロベースで見直せということをやろうといたしております。

 ただし、今言われたように内部留保が多額な企業を対象としないといったアイデアとか、そうした見直しを受けて仮にやったとして、投資拡大や賃上げなどにちゃんと前向きに取り組むかということにつきましては、なかなか難しいので、それは企業の判断によりますので、内部留保が多額かどうかという点についても、どこを基準とするかというようなことで、ここまでが多額、ここから先は多額じゃないという線引きはなかなか難しいなというので、ちょっと慎重に考えないかぬとは思っているんですが、少々内部留保に多額に偏り過ぎたというこの数年間の事実ははっきりしていると思います。

前原委員 いや、そこで終わられたら困るんです。はっきりしているのはわかっているんですよ。だからどうするかということを伺っているわけです。つまり、期限が来たものの見直しではなくて、内部留保とか、あるいは利益がずっと出ている、さっきのトヨタなんてすごい内部留保ですよ。

 そこで、私は、安倍政権のいわゆるトリクルダウンという考え方については全てを否定しませんけれども、いつからこの国は社会主義になったのかという気がするわけですよ。

 例えば、賃金を上げろ。まあ、最低賃金まではいいですよ、それは。携帯電話の値段まで下げろ。こういうことは、本来、資本主義国家においては企業がみずからの判断で決めるべきものなんですね。そして、これだけ労働生産人口がタイトな時期においては、どうやったら優秀な人材を囲い込めるかということも含めて、本来であれば、労使の中で話し合いをして賃金を決めるということで、政府が、共産主義国家、社会主義国家じゃないのに、こういう仕組みをつくったから、あんたのところは賃金を上げろと言うのは本来はおかしいと私は思うんですよ。

 さらに加えて、もう一度申し上げますと、それは線引きは難しいですよ。優秀な財務省の方々がいっぱいおられるわけだから、それは考えさせたらいいでしょう。大臣が指示したら考えますよ。これだけ内部留保を抱えているところにさらに政策減税というものが行われるということについては、もったいないんじゃないですかということを申し上げているわけですよ。

 私は、別にトヨタ自動車を狙い撃ちしているわけじゃないですよ。千二百億といったら相当な額ですよ、千二百億円。そして、この会社は、二兆一千億、一年で利益を出しているんですよ。内部留保は十五兆六千億ぐらいあるんですよ。そこに千二百億円の言ってみれば租税特別措置。自動車産業を足すと、もっと、数千億になるわけですよ。そういうところに租特、政策減税措置が行われるというのはおかしいでしょうということを申し上げて、それを見直してくださいと申し上げているわけです。

麻生国務大臣 今私も同じことを申し上げているつもりなんですが、基本的に、期限が到来するものを中心にゼロベースと申し上げているのは、中心というのは、何も期限が到来するまで待つというつもりもありませんし、今、内部留保金課税をしろ、内部留保金には課税せいと。二重課税のきわみとは思わぬでもありませんが、そういった激しい意見もあることは確かです、間違いなく。

 そういったようなことを考えていくと、先ほど言われましたように、この国はいつから社会主義になったんだと。私は、昔から、世界で最も成功した社会主義は日本じゃないかと思わないでもないんですけれども。

 いずれにしても、今言われましたように、やはり、給料の上げを連合が自民党に頼んで、政治圧力で企業に何かするなんというのはどう考えたって筋としてはおかしいですよということを何回も申し上げてきましたけれども、今回も給料の話から何からというので、社会主義じゃないですかといろいろなところで申し上げてきたんですが、今は非常事態なんだと。始まって以来の、始まって以来というか、戦後以来のデフレ状況になっておりますので、そういった意味では、デフレ対策をやった経験者はゼロですから、したがって、日銀も間違えた、政府も間違えた、みんな間違えたというのが失われた二十年の一番のもとだと思っています。

 いずれにしても、今言われましたものを含めまして、企業家としての矜持とか企業家としての精神とかいったものも含めて、いろいろなものが、私どもとしては、ルールだけでやると違反じゃないじゃないかと言うけれども、いや、違反だけの問題じゃないのであってというところまでいきますので、ちょっとここのところは、政治でやる、法律でやるというところがなかなかひっかかるところなんですけれども、この話につきましては、我々としては検討せねばならぬと思っております。

前原委員 ぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 別に連合さんは自民党だけに頼んでいるのではなくて、政治にいろいろな団体が要望するのは当然の権利ですから。権利の中で、与党、自民党や公明党に政策要望をされている、我々にも政策要望をされている、それを政治が大局に立って判断するというのは当たり前のことだ、こういうことは申し上げておきたいと思います。

 さて、きょうから、財務大臣それから黒田日本銀行総裁は、上海でのG20に行かれるわけであります。

 きょうは若干株価も上がって、円も下がっていまして、きょうはきょうでいいわけでありますが、非常に年初来から市場が荒れている、ボラティリティーが高い、こういう状況であります。これは、言うまでもなく中国を初めとする新興国経済の減速、それから原油価格の低迷、これは相乗的にかかわっているものもあると思いますけれども、それから欧州の銀行セクターの問題とか、あるいは、一番安全だ、安心だ、堅固だと思っていたアメリカ経済というのが若干黄色信号に見える状況になってきた、さまざまな要因があるというふうに思います。

 さて、中国の経済とそして原油の問題についてどういう議論をされるのかということに絞って、少しお二人にお話を伺いたいというふうに思うわけであります。

 まず、皆さん方には釈迦に説法でありますが、若干バックグラウンドで話をさせていただきたいと思います。

 資料の八をごらんいただきたいと思いますが、これは中国の外貨準備の推移でございまして、最大四兆ドルぐらいあったわけでありますけれども、今、毎月毎月一千億ドルずつ下がっていっているという状況です。ピークから比べると二割下がったということでありまして、まだまだ潤沢にあるんだというのはそのとおりだと思いますが、ただ、このペースでいくと、外貨準備は三十カ月で枯渇します。こういうような状況にまずあるということが一つ。

 それから、九をごらんいただきたいんですが、これは、上の線が預金取扱銀行資産なんですね。それと、下のぎざぎざのものがGDPでありますけれども、これだけ乖離してきているということは、これはバブルの危険性が極めて高まっているということですね。

 それから、その下、十です。これは二〇〇五年を起点としておりますのでこういう表になっているわけでありますけれども、実質実効為替レートというものを見ると、中国の元はやはり高いんですね。ドルとずっとペッグで来まして、それを引き下げるということを行ったわけでありますけれども、しかし、相対的に高い、こういうことなんだろうというふうに思います。

 さてそこで、お二人にお伺いをしたいわけでありますけれども、まず、中国の経済について何がG20で発出されるべきなのか。議長国ですよね、議長国のメンツというのはありますけれども、どういったことが発出されるべきなのか。

 こういう非常に難しい状況です。後の議論の中でまた申し上げますけれども、トレードオフの関係があるわけですね。つまりは、元は相対的に高い。しかし、元は高いけれども、下がるということになると資本流出になるし失業はふえるしということで、むしろ元を買い戻しているわけですね。元を買い戻しているということは、これは金融政策をみずから封印しているのと一緒なんです。なぜなら、通貨の引き下げをしないようにして、しかも市場から元を言ってみれば吸収しているわけですから、緩和効果の逆をやっているわけですね、経済が低迷しているのに。

 つまりは、資本流出をとめるためにこういうことをやっていて、そして元は相対的に高いんだけれども、フリーフォール、暴落を防ぐためにいろいろなことをやらざるを得ない、そして供給過剰体制になる。こういう非常に難しい状況の中で、しかし、これが世界全体のマーケットを言ってみれば不安定にさせているわけですね。

 どうしたらいいか、どういうメッセージをG20で発出したらいいか。まず、財務大臣に伺います。

麻生国務大臣 これは前原先生、昨年のG20、九月のときにも、上海のマーケットの暴落の底はと名指しで、ほかの方と違って日本の財務大臣というのは余り品のいい方じゃないものですから、名指しでおかしいじゃないかと。名指しで騒ぎになったんです。

 少なくとも、中国の過剰設備、鉄鉱石なんて実需の何倍も生産能力があるわけですから、簡単に言えば、これはどう考えても閉鎖してくださいと。それから、過剰信用、今この図に出ておりますが、これは過剰信用のきわみなんですから、こういったようなものもちゃんと落としていただきますというような話を名指しでしたんです。

 ほかの国がどう対応するかなと思って見ていましたけれども、私が言った後は皆、遠回しな名前じゃなくてチャイナときちんと言うようになりましたから、ちょっとは効果があったんだと思っています。

 その後、中国側が二人、中国の代表も、我々はこれまで金融政策で間違いを犯したかもしれないと。また、財務大臣の方も同様に、これから五年間、中国というものは、経済構造改革というもので、ニューノーマルとかいろいろな表現をしているけれども、こういったようなことを言われて、時間をかけてやらせてもらわなきゃしようがないんだというような話をしたんですよ。少なくとも、中国の高官がG20という公式、しかも平場の場で自国の政策の間違いを認めたというのは過去一回もありませんから、これは結構騒ぎになったんです。

 少なくとも、そういった状態を今後ともやり続けてもらわないかぬわけです、ここは。やはり、ここが急激にということは、さっき言われましたようにハードランディングとかいろいろな表現がありますけれども、それは他国に与える影響が大きいので、落ち目になっていくというのはある程度やむを得ぬとは思っても、なだらかにやっていくようなことを考えてもらわないとということに関して、いわゆる資本流出が急激に進むんだったら、それをとめろという手口は、少なくともあの国にはやった経験がありませんから、我々はもうその種の話は何回もやったことがあるので、そういった経験者に聞けといった話もその人たちに直接、個別につき合いがありますので、そういった話もしたりいたしておりますので、いろいろな話を今後していかねばならぬ、私どもとしてはそう思っております。

黒田参考人 御案内のとおり、中国経済は、今、大きな構造転換を迎えております。

 IMFのラガルド専務理事の言い方をかりますと、三つの構造転換、輸出から内需へ、製造業から非製造業中心へ、そして投資から消費へと。これは、どんな経済にとっても非常に大きな構造転換ですけれども、特に中国経済については非常に大きな構造転換である。それを政策的にできるだけスムースに、しかも必要な構造改革をやっていくという姿勢自体は、私ども、バイでも、あるいはマルチの会議等でも感じております。基本的な構造改革というのを一方で進めながら、他方で、緩やかな減速というのはもちろん受け入れているわけですけれども、景気が急激に下落するとかハードランディングになるということは適切な財政金融政策で避けるということでこれまでやってきておりまして、全体として、安定した成長は続けておりますし、ハードランディングの可能性は少ないと私どもも感じております。

 ただ、委員御指摘の、いわゆる融資総量が非常に大きく伸びたといったこととか、あるいは為替政策と金融政策との関係とか、さまざまな難しい問題というものに直面していることも事実であります。そういった面で、当然のことながら、さまざまな場で意見交換をし、適切な政策対応をとっていただけることを期待しております。

 ただ、委員がまさに言われたように、この方程式を解くというのはそう簡単なことではない。ただ、私は、中国政府の政策能力というものは十分あると思っておりますので、適切に対応していただけるというふうに思っております。

前原委員 黒田総裁がダボス会議に行かれたときに、グローバル・エコノミック・アウトルックというセッションに出られましたね。そのときに、先ほどお名前の出たラガルド専務理事、あるいは他国の財務大臣等々とパネル参加をされたと思うんですが、そのときに、国際金融のトリレンマの話をされていますね。独立した金融政策、為替相場の安定、自由な資本移動、この三つを同時に満たすことはできない、これはまさに公理ですよね、トリレンマという公理であります。

 これは原則論として言ったんだということはおっしゃってはいるんですけれども、私も、答えは、とにかく徐々にうまくやるしかない、相反することだけれども徐々にやるしかない、こういうことなんだろうと思うんですけれども、それをやろうと思ったときに、やはり資本規制という問題は、先ほど財務大臣は資本流出をとめなきゃいけないという言い方をされましたけれども、では、その方策として資本規制というのは必要なのかどうなのかということは議論になると思うんですね。

 いかがですか。まず黒田総裁。

黒田参考人 確かに、国際金融におけるトリレンマというのは有名な議論でありまして、これ自体は理論的に正しいと思っております。

 そうした上で、現在の中国の経済状況、金融システムの中でどういった組み合わせが最も適切かということになってくると思います。

 その面では、既に中国政府あるいは人民銀行等がはっきりと示しておりますけれども、やはり人民元が大きく下落するということは避けなければならないし、それは十分避けられると言っておられますと同時に、国際取引ですので、経常取引に化体した資本逃避とか、これは違法な取引なわけですけれども、そういったものについてはきちっと取り締まると言っておられますし、現に取り締まられているようであります。

 したがいまして、一種のパニック的な資本逃避というのは、そういった適切な規制とそして当局の為替の安定に向けた断固たる対応ということで私は十分防げるものというふうに思っております。現に、このところ、人民元は比較的安定的に推移しております。

 資本規制一般論ということになりますと、これはなかなかいろいろなところで議論があるところでありまして、御承知のように、IMFは、以前は資本規制というものに非常にネガティブでしたけれども、このところ、新興国、途上国については、場合によっては、資本規制とは言っておりませんが、キャピタルフローマネジメントと言っておりまして、資本フローの管理という形で認められる場合があり得るという姿勢は示しております。同時に、あくまでも適切な構造改革と適切な財政金融政策、マクロ政策のもとで、そういったものが一時的、例外的に発動されても適切な場合があるということを言っておられます。

 たしかダボス会議で、委員御指摘のグローバル・エコノミック・アウトルックのセッションで中国の話が出ましたときにも、ラガルド専務理事は、資本規制そのものについては具体的なことはおっしゃいませんでしたけれども、例えばマクロプルデンシャルな規制といったような形は触れておられましたので、そういうことは十分あり得ると思います。

 今の時点で、私の見るところ、中国政府は今言ったトリレンマをうまくマネージする方向で人民元の安定を図りつつ、リーズ・アンド・ラグズとか経常取引に化体した実際は資本逃避といったものを取り締まりながら、委員御指摘のように緩やかに調整していくということをやっておられますし、私は、そういうことができる政策能力は中国は十分持っておるというふうに思っております。

前原委員 違法なものはもちろんよくありませんけれども、資本逃避というものをどうやって防いでいくのかということについては、大変重要な議論として考えなくてはいけないと思います。

 それに関連すると、他国の金融政策というものがまた関連してきますね、総裁。つまりは、資本逃避するかどうか、資本流入するかどうかというのは、これだけグローバルな環境になれば、他国の金融政策に大きくかかわるわけですね。

 先般、おとつい、ここで議論をさせていただいたときに、今アメリカの大統領選挙をやっていますけれども、共和党の候補であるトランプ氏が日本を名指しで批判した、この中身については言いがかりなところがあるということは申し上げましたけれども、今度は民主党の大統領候補のクリントン氏も通貨安政策を批判している、こういうことであります。

 きのう、アメリカで関税関連法というのが成立をいたしました。これは、貿易相手国の為替操作を阻止する措置、こういうものがかかわっているわけでありますけれども、これからアメリカの経済が、黄色信号なのかどうなのかわかりませんけれども、こういう状況になるにつれて、他国のいわゆる金融緩和政策への目つきが物すごく厳しくなってくるというふうに思います。

 そことあわせて、私は、アメリカの利上げというものについても、これは利上げそのものを見直すとか、あるいはやるにしても本当にゆっくり徐々にするとか、世界全体の環境を見てやってもらわないと極めて大きな影響が及ぶ、こういうふうに思うわけであります。

 まず財務大臣に伺いますけれども、アメリカがかなり目つきが厳しくなっている、日本の金融政策に対して。先ほど申し上げたいわゆる関税関連法もそうですし、こういったことについて、金融政策については、これから恐らく、G20においても、通貨安競争はやめようねという話はあると思うんですね。それについて同意されるかということ。それから、アメリカの利上げ、これについては、先ほど、中国に一番初めに自分が物を言って、それで雰囲気をつくられたということで、麻生財務大臣の存在感がある、ぜひ日本の代表としてそうあっていただきたいと思いますし、利上げについてもやはり逆に物を言うというところは必要だと私は思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 これは前原先生、他国の金融政策に我々がコメントするというのはなかなか難しく、控えなきゃいかぬところなんです。

 アメリカの場合は、影響が、金利が上がりますと、他国に入っておりますドルがアメリカに逆流する、いわゆるキャピタルフライトとかいろいろな特殊用語がありますけれども、そういったことが起きますものですから、発展途上国というか新興国における影響は極めてでかいということになりますので、今言われましたように、そういった点は緩やかにやってもらわぬと、我々は近くにおりますものですから、隣国の影響によってこっちも被害が出てくるということだと思いますので、これはちょっと緩やかにという方向に、今間違いなく市場の声としてそうなってきておるのを受けて、あのイエレンという人は対応を今のところしておられるように見受けます。

 マイナス金利つき量的・質的金融緩和ということ等々、我々の方は黒田総裁の方から説明がされることになるんだと思いますけれども、いずれにしても、今G7とかG20において、自国通貨の切り下げ競争をやめようというのは、これは二〇〇八年のリーマン・ブラザーズのときの、最初に我々日本が十兆円をIMFに貸し付けたときの条件に、平価の切り下げ競争はしない、関税引き上げ競争はしない、ブロック経済はつくらない、この三つが条件で俺たちは十兆円という話をしたんですけれども、間違いなくそれをきちっと守ったのは日本だけだったかなと思わないでもありません。他国は、切り下げ競争はしなかったんだけれども、平価を大量に出したものですから結果として下がったというので、裏口入学みたいなことじゃないかと僕は何回も言ったことがあるんですけれども。

 結果としてはそういうことになったのであって、今さら、我々がやったからといって、今度は日本だけが通貨安競争なんて言われる覚えはない、先にやったのはそっちがやったんじゃないかと言われて、それ以後、その話は全く出ません。

 そういった意味では、この種の話は常にみんなで協調しないとできないところだと思いますので、おっしゃるように、この点は、アメリカがいろいろ言ってくるのはわかりますし、選挙の期間でもありますから、いろいろ言うんだとは思いますけれども、現実問題、今やりますのはイエレンであり、ジェイコブ・ルーという人がやっていきますので、そういった人たちと十分に話をしていかねばならぬと思っております。

前原委員 黒田総裁、一つポイントだけ伺いますけれども、関税関連法あるいは大統領選挙での候補者の発言を含めて、日本の金融政策は縛られるものなのかどうなのか。

 それは、自分たちは違うと言いますよね、通貨を切り下げる、為替政策をダイレクトに意図したものではないと言いますけれども、向こうは違うふうに見ている。その中にあって、しかし、今財務大臣おっしゃったように、これは国際協調ですから、アメリカのこういう法律あるいは大統領候補の発言というものは今後の日本の金融政策に影響を与えるのかどうなのか。その点、いかがですか。

黒田参考人 二つ申し上げたいと思いますが、一つは、G20では従来から、通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗するという考え方がずっと共有されておりまして、ほとんど毎回のG20のコミュニケにそういう点が盛り込まれております。ですから、この点は、G7はもちろん、もとより、ずっと前からそういう考え方でございますし、G20もそういうことでやっておるということであります。

 金融政策につきましては、常に物価の安定という金融政策のマンデートに従って運営されるべきものであるということも合意事項になっておりまして、この点は、我が国の金融政策も全くそのとおりでありまして、為替レートをターゲットにしてやっておりませんので、したがいまして、御指摘のようなものが我が国の金融政策について制約を与えることになるとは考えておりません。

 いずれにいたしましても、引き続き、二%の物価安定目標の早期達成に向けて、現在のマイナス金利つき量的・質的金融緩和を推進してまいりたいというふうに思っております。

前原委員 それでは、残りの時間で、今のマイナス金利つき量的・質的緩和についてお話を伺いたいというふうに思います。

 この間も、おとついも若干言及したんですけれども、突然でしたよね、このマイナス金利つき質的・量的緩和。したがって、金融機関、銀行のシステム、それから法令、顧客との法令、これが間に合わなかった。今も間に合っていない面がありますけれども、そういうところは配慮されなかったんですか。

黒田参考人 そういった点につきましてはもちろん配慮して、いろいろな考えを持っておりました。

 そうした中で、御指摘のように、特にコンピューターシステムの対応が直ちにできないということもありまして、当初は短期金融市場、コール市場などにおいて対応できないという金融機関が多かったわけですけれども、最近は対応する金融機関が出てきまして、マイナス金利が成立するということになっております。

 法務面では、最近、金融法委員会でもかなり明確な方向を出されておりまして、これは法律家、弁護士の方々、専門の方々の御意見でございまして、これは当然、私どもも考えておりました線でございますけれども、金融機関もこれに沿って法務面の対応は十分できるということであろうと思っております。

前原委員 一月二十九日に発表されて、二月十六日から施行ですよね。できていないんですよ、金融機関。多分、総裁もいろいろな方とお話しされていますけれども、まだ対応できていないですよ。

 なぜもうちょっと準備期間を置かなかったんですか。それはやはり、私は、日銀としての実務的なミスだと思いますよ。しっかりとやはり準備期間をとって、銀行にその準備をさせるということは大事でしょう。それは自分たちの瑕疵だとお認めになりませんか。

黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入を決定したのは一月二十九日でございましたけれども、決定した以上、これを可及的速やかに実施することによって政策効果の浸透を図ることが適当というふうに判断いたしました。

 コンピューターシステムにつきましては、直ちに対応することが困難な場合があるということはよく承知しておりましたが、対応の仕方によっては何カ月もかかるという話もありまして、一方で、システム全体を変えるのではなく、パソコン等を使って具体的な短期資金取引等についてマイナス金利に対応できるようにするということは可能であるということであり、現に外銀等を中心に既にそういう対応をとって、マイナス金利が市場で成立をしております。

 したがいまして、コンピューターシステムについては、幾つかの困難に直面する金融機関があるということは承知しておりましたけれども、そうかといって、何カ月もかかりますというのを、政策を発表して何カ月もやらないでいるということはやはり適切でないと思いまして、先ほど申し上げたように、政策効果の浸透を図るという観点から、二月の中旬に、ちょうど積み期の関係から最も適切な時期にこの適用を始めたということでございます。

前原委員 この政策によって、金融株は大幅に下落をする、そして、実務的にも、コンピューターのシステムのみならず、先ほどの法務上も大きな問題が起きるということで、別に数カ月とは金融機関も言っていませんよ、もう少ししっかりと準備をする期間をということでありまして、そこは配慮しないと、ある金融機関の方は、株主代表訴訟を日銀に起こそうかなんということをおっしゃった方もおられるぐらいですから、それぐらいやはり今の日銀の政策については怒っているということであります。

 一番困っているのは、私は、ゆうちょ、そして地銀が大きいということを申し上げましたけれども、このマイナス金利が入ることによって、今、地銀がメガバンクにお金を預けているということは御存じですか。

黒田参考人 マイナス金利導入後、市場の金利が低下しております。そうした中で、御案内のとおり、三層構造をとっておりますので、自分の準備預金にマイナス金利が適用されるところと、そうでなくて、ゼロとかあるいはプラス〇・一%の枠のあるところがありますので、そういうところでの取引ということは十分あり得ると思いますし、欧州の例を見ましても、欧州も三層構造をとっている国が多いんです、三層というか、階層構造をとっている国が多いんですけれども、そこにおいては、金融機関同士でそういった取引が行われております。

前原委員 いや、そういうことじゃないんですよ。運用に困って、メガバンクに預けているんですよ。そういうものがふえているんですよ。調べられたらどうですか。

 あるメガには地銀から、あれ以降、数兆円のお金が集まっていますよ。だから、こういうポートフォリオリバランス、これは政策目的と違うことになっているわけじゃないですか。

 だから、こういうことと違うことになっているということについては御存じないんですか、そういう動きが起きているということは。

 ちょっと時間がないので、もう一つだけ質問させていただきます。あわせてお答えください。

 やはり、私は、このマイナス金利つき量的・質的緩和というものが導入されたときに一つ心配だったのは、それは、金利を下げるということになるわけですが、もうおなかいっぱいで食べることができないのに、また食えと言っているようなものですよね。先ほどの話では、内部留保は、ため込んでいる企業はいっぱいあるわけですから。それにもかかわらず、まだ借りろみたいな、そういう政策ですよ。

 七番を見てください。マイナス金利を導入しているスイスとかデンマークでは、不動産が値上がりしているんですね。

 そして、バブルが崩壊してからもう二十年以上たちますけれども、不動産融資は二十六年ぶりの最高値ですね。つまりは、バブル崩壊の前を超えたんですよ、バブルのときの不動産融資を。

 もちろん、あのときになかったREITという仕組みというものがあります。これは大事な仕組みです。私も、国交大臣のときに、建てかえなんかにREITが使えるようにということで法改正したぐらいですから、このREITというのは極めて大事だということは認識をしていますけれども、これは、先ほど財務大臣がおっしゃったようなところでの実際の設備投資じゃなくて、マイナス金利というものがこの不動産バブルというものを起こす危険性というのは十二分にあるんじゃないですか、スウェーデンとかデンマークの例を見ても。

 地銀がメガに預けているということを知っておられるかどうか、一言で結構です。あと、不動産融資がバブルのころを超えたということについて危機感を持っておられるかどうか、それをお伺いします。

黒田参考人 マイナス金利導入後まだ時間が十分たっておりませんので、統計的な分析が十分できているわけではございませんが、先ほど申し上げたように、マイナス金利の階層構造のもとでそういった取引があるということは十分予期されるところであります。

 それから、不動産価格につきましては、私ども十分モニターしておりまして、これまでのところ、不動産関連で行き過ぎがあって、過熱があり、バブルで、その崩壊が金融システムに影響を与えるといったような状況にはなっていないというふうに思っております。

 ただ、引き続き、金融システムの健全性、安定性につきましては十分注視してまいりますし、半年ごとの金融システムレポートで詳細に報告をしてまいりたいと思っております。

前原委員 これで終わりますけれども、やはり、量的そして質的緩和を行うことによって、過去、バブルが起きているわけですね。それが崩壊して今のデフレにもつながっているわけですから、日銀のこの政策というものがもう一度同じようなバブルを生んではいけないということで、しっかりとその辺は注視をしながらやってもらわなきゃ困るということを申し上げて、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。

 きょうは、軽減税率について質問させていただきたいんですが、その前に、一点、昨日の財務金融委員会での麻生財務大臣の発言について、ちょっと確認したいことがございます。

 昨日、麻生財務大臣は、農家は税金を払ったこともない人もいるだろうという発言をなさいました。かつ、トーゴーサンということを例示しながら、それを御説明なさいました。それに対して違和感を持った鈴木克昌委員は、ちょっとおかしいじゃないかという指摘をしたかと思うんです。

 いろいろ見ると、普通、新聞というのは、見出しを変な形で切り取ったりするケースはありますが、これはトーゴーサンということを例示して、農家の人たちは税金を払っていないだろうという発言とつながっています。したがって、農家の方からすると、自分たちは税金を払っていない例えとして使われたと非常に怒っています。

 私は、選挙区は東京ではありますが、練馬区で、練馬大根で有名なところですが、非常に農家の皆さんが怒っていて、これは誤解ではなくて、払っていないことを補完するトーゴーサンという言い方をしているというのは非常に問題だと思うんですが、大臣、この発言を御撤回いただけないでしょうか。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

麻生国務大臣 昨日のこの委員会において、宮崎委員の方から、インボイス制度の導入後、買い手事業者の納入元の元、いわゆる免税業者に対して、他の納入業者よりも低い価格を求めるのが許されるのかとのお尋ねがあった、これがそもそも最初だったと思うんです。

 これに対して、私が申し上げたのが、下請、孫請などの関係もあって力関係が存在する場合ということで、優位な立場にある者が、その立場を利用して、一方的に不当な値引きを求めることは望ましくないということを申し上げたのに対して、他方、主税局長の方がといって、いろいろな話の中で今のが出てきたんだと思いますが、私として申し上げましたのは、今申し上げましたように、今の例は、当時、前置詞がついていたと思いますが、トーゴーサンというような形で、税金を納めていないというような例として、農業関係者の方はよくあるという例を申し上げたと記憶いたしますので、一つの例示として申し上げたということだけでありまして、特に、それによって傷つけたとか、そういったような話になっているとは思っておりません。

木内(孝)委員 トーゴーサンという例示は、所得の把握を農家の方は三割程度しかできていないから税金をしっかり払っていないという例示として使われているんです。ですから、払っていない人もいるだろう、それを補完する材料としてトーゴーサンとおっしゃっているということは、農家の方は税金を払っていないだろうということを明確におっしゃっているわけなんですね。

 そもそも、財務大臣の立場でいらっしゃりながら、トーゴーサンという状態にある、言われているというおっしゃり方をしましたけれども、私は極めて不見識だと思うんです。この二つの点、両方ともおかしいと思うんですが、これは発言は撤回していただけないでしょうか。

麻生国務大臣 トーゴーサンということに関しましては、通常よく言われております表現をそのまま使わせておりますので、別にその点に関しましては、どこでも言われている、農協の方もよく言われますし、私どもとしては、通常よく使われておるものだと思っておりますので、そのことに関しまして、特に、撤回とかいうような意識はするわけではございません。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

木内(孝)委員 これに時間を要するのもあれですので。

 ただ、農家の方が税金をきちんと払っていないという例示として使われているということは、私は問題発言だと思っておりますので、それを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 問題発言といいますと、先般、麻生財務大臣は、軽減税率につきまして、百や千の事業者が倒産しかねないみたいなことをおっしゃいました。軽減税率の事務作業は非常に面倒くさいというふうな発言をなさいました。

 民主、維新で給付つき税額控除という法案を出させていただきまして、今までいろいろなことが、この軽減税率について論点として、賛成の立場から、あるいは反対の立場から論ぜられております。

 きょうは、四つの論点を改めて整理したいんですが、一点目は、格差是正の効果について、逆進性対策について。

 多くの委員から、軽減税率は逆進性対策にならないという指摘がございます。逆に、麻生大臣からは、逆進性対策を考えるのであれば、給付つき税額控除の方が効果的かもしれないというような御答弁もいただいたと記憶しております。

 この給付つき税額控除と軽減税率、二つを比較しまして、格差是正効果、逆進性対策としてどちらが有効だとお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これもたびたび申し上げたと思いますので、何回も人の御質問を聞かれた上での御質問だと思いますが、軽減税率制度というものは、いわゆる税制抜本改革の中において、消費税引き上げに伴う低所得者への配慮として、消費税の逆進性緩和の観点から、検討すべき三つの施策のうちの一つだということはたびたび申し上げてきたところだと思います。

 その中で、私どもの方は、軽減税率制度は、日々の生活の中において、いわゆる幅広い消費者が消費、また活用しておられる商品の消費税負担を直接軽減するということによりまして、消費税の逆進性の緩和というものを図りつつ、同時に、日々の生活の中で税金を払うという痛税感の緩和を実感できるという利点がある、この点が特に重要であるという判断の中で、今般、導入することにさせていただいたという経緯です。

 他方、給付つき税額控除につきましては、これは実際に買い物をするときのタイミングや購入額と関係なく、所得水準に応じて決まった額を給付されるものなんですから、したがいまして、消費税負担が直接軽減されるものではなく、また、消費者にとりましても、痛税感の緩和の実感にはつながらないという問題点があります。

 また、所得というのが把握されたにしても、資産の把握はどうやってなさるんですか、資産の把握というのは難しくありませんかという点もあります。

 また、行政の執行可能性という面につきましては、幾らまでにどうするという執行可能性のコストといった問題もあります。

 また、過誤とか不正受給とかいった支給の問題、いわゆる受給するときのいろいろな適正の問題があるというのは、これは海外で見ましても、ヨーロッパで見れば、アメリカで見れば、大体約二割の額にわたって過誤、不正受給があるということが推計をされておるところでありまして、そういった面も我々は考えておかねばならぬ。それぞれ一長一短はあろうかと存じます。

木内(孝)委員 所得の把握という課題はあろうかと思いますが、それもマイナンバー制度等もございますので、私は、いろいろな委員、双方の意見を聞いた上で、明らかに格差是正対策としては給付つき税額控除の方が高いと思われます。

 次の論点、所要財源についてでございます。

 一兆円、総合合算が廃止されましたというところでございますが、その後も、財源をどうするのかということが明確になっておりません。

 私どもの提案しております給付つき税額控除は、年収五百万以下の世帯を対象とした場合、約三千六百億円という試算になっております。

 やはり、一兆円で財源が見つかっていないということになりますと、もしかして社会保障が切られてしまうのではないか、これもこの委員会で何回も議論されているわけですけれども、財源が明確になっていないという問題点があろうかと思いますが、本当に社会保障が切られないのか、あるいは、例えば子育てに関連するそうした予算が切られないのか、非常に多くの国民が心配をしております。

 そもそも、社会保障を充実させるために消費税を上げるというような話であったはずにもかかわらず、軽減税率を入れるために社会保障をカットするという、本末転倒、支離滅裂と言わざるを得ないと思うんですが、この財源問題について、どう解決というか、お考えでしょうか。

麻生国務大臣 これもたびたび御答弁させていただいていると思いますが、軽減税率導入のための財源、よく言われる一兆円というものの、総合合算制度見送りによって生じます財源が約〇・四兆ということになろうと思いますので、それ以外の財源、〇・六兆円につきましては、現時点で具体的な内容が念頭にあるわけではないということをたびたび申し上げてきておりますので、今後、歳入歳出両面にわたって、この点に関してはしっかり検討してまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、社会保障全体を持続可能な制度にしておく必要がありますので、そういった意味では、私どもとしては、この点をきちっと精査して、社会保障制度を継続できるような形にしていく、そこが一番の観点だと思っております。

木内(孝)委員 たった今も御答弁いただきましたとおり、〇・六兆円、具体的な予算は今ないという答弁自体が国民に不安を与えている、社会保障をカットされる可能性があるというふうに考えているわけで、全く質問に対する解決策の答弁になっていないというふうに思います。

 続きまして、三点目の争点、これも多くの委員から質問が出ておりますので、繰り返される部分もございますが、政府案ですと、この線引きはなかなかいろいろな意味で困難だ。あと、特定の業界とか団体で利権化するおそれがある。一方で、給付つき税額控除であれば、特に対象品目の線引き等もございませんので、そういう心配はない。

 新聞はたびたび多くの委員が例示されましたので、それ以外にしたいと思うんですが、例えばですけれども、何かいろいろな人がいろいろな例を聞いてくれというので、私も一つ、二つ聞きたいんです。

 例えば、コイがいますね。コイというのは、私も知らなかったんですが、観賞用というか、何か百万、二百万するコイがいるそうなんですが、コイというのは一方で食用にもなります。

 同様に、競走馬。競走馬というのは、これもすごく高いのを私は承知していなかったんです。中には億を超える競走馬もたくさんいるそうなんですが、ちょっとこういう場で言いづらい話ですが、競走馬も場合によっては馬肉になる、食用になることもあるそうなんです。

 これは、将来食用にもなる可能性があるよと例えば売り主が申告した場合、どちらの対象になるのか、私はちょっとよくわからないんですけれども。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生のお尋ねは、生きた馬はどうなるのかということでございますが、生きた馬そのものは、食品ということで人の食に供するということではございませんので、そこは軽減税率の対象にならないということでございますが、例えば、それが流通段階で、どこかの段階で枝肉のようになってくるということになると、食品として表示されますので、それは八%の対象になるという整理でございます。

木内(孝)委員 では、生きているか生きていないかというのが線引きだという御説明になるんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率の対象は、飲食料品の譲渡という法律の定義になっておりまして、当該そのものが、販売者が販売する時点において、それが人の食用に供されるかどうかという判断において八になるか一〇になるかということでございます。今の場合、生きた馬ということになれば、生きた馬を売る段階で一〇であり、生きた馬がどこかの段階で肉になったら、肉を売る段階で八になっていく、そういうふうに変遷していく、その時々の販売時点で決まっていくということでございます。

木内(孝)委員 あと、幾つかの事例として、複数税率の先進国であります、先進国というかフランスは、マーガリンとバターがあって、マーガリンは軽減税率の対象でなくて、バターは軽減税率の対象だ、よくそういう事例が聞かれます。

 要は、何でこういうことになったのかなと聞きましたら、やはり酪農業界の政治的なプレッシャーが強くてそういう形になったという事例。あるいは、フォアグラも何か業界が強いらしくて軽減税率の対象になるそうなんですが、やはり、いろいろな海外の事例を聞いていましても、利権化する、それの温床になる事例が非常に多いんです。

 私は、なぜ馬の例とかコイや何とか、あるいはフォアグラだ、バターだとお伺いしているかというと、先ほど前原委員からもありましたけれども、本来、日本は自由で公正な経済を目指すときに、国がいろいろなことに、経済に介入しているというのが、今、日本経済が停滞している大きな原因の一つだと考えております。そういう意味で、利権の温床となるこうした線引きが、正直言ってわけがわからないんです。麻生大臣が面倒くさいとおっしゃっていましたけれども、本当に、私はこれは面倒くさいと思うんです。非常にわかりやすく面倒くさい話だと思います。

 これを全部含めて、対象品目の線引きを、一体、大臣はどうお考えになっているんですか。大臣は去年一年間ずっと反対だというふうに御答弁なさっていたので、突然ある人によって法案の中身が変わってしまって、ちょっと戸惑っていらっしゃるのかなとも思いますけれども、一体、この線引きをどうお考えなんでしょうか。

麻生国務大臣 面倒くさいというのを今ごろ理解されても困るんですけれども、軽減税率の適用対象品目の認定に当たってはということで、消費税率一〇%の引き上げに伴ういわゆる低所得者への配慮との趣旨を踏まえというところで、基本的には四つか五つか述べてあると思いますが、日々の生活の中での消費並びに活用の状況が一点、二つ目、消費税の逆進性の緩和につながるか、三点目は合理的かつ明確な線引き、食料品か否か等々、医薬品、いろいろありますけれども線引き、また、社会保障財源である消費税そのものの税収への影響等々を総合的に勘案させていただいて、このたびのような適用対象とさせていただいたということであります。

 対象品目について、業界の利権化とか、また、いわゆる安易な陳情合戦というのを生じさせないようにすべきだという問題意識は、それはみんな持っておられるんだと思います。私もそう思っております。したがって、軽減税率対象品目については、特定の物品とかサービスというものを対象にすると、代替品との間でゆがみが生じます。また、こうしたゆがみを回避しようと際限なくやっていくと、対象品目がどんどん広がっていきますので、社会保障の財源として考えられたいわゆる消費税収というものの絶対量を減少させるということになりますので、そういったことを考えて、拡大等々については当然慎重にならねばならぬ、そう思っております。

木内(孝)委員 各業界の陳情合戦にならないように努めなければならない、それはおっしゃるとおりだと思います。

 ただ一方で、今これだけ政治とお金の問題がクローズアップされている中で、しかも具体的にいろいろなお金のやりとりの話があった中で、陳情合戦にならないというのは全く説得力がないと私は思いますし、国民の皆さんが委員会をきちっと聞いていたら、おかしいだろうと当然なると思うんですね。

 いずれにしましても、対象品目の線引きはおかしいというのは、いろいろな質疑を通じて国民の皆さんもおかしいという理解が大分深まったと思いますので、到底納得のできる説明ではなかったなと思っております。

 事業者負担、四番目でございます。

 各経済団体は、連名で反対意見を述べられていらっしゃいました。当然、事業者の負担、大手もそうですし、あるいは中堅、中小の事業者もそうですが、これは手続というか準備が非常に大変です。最近、より混乱が深まっていると思うんですが、要は、もしかしたら消費税増税は延期になるんじゃないかと思っている人が多いんですね。

 この間、安倍総理もいらしたときに似た質問はしたかと思いますが、普通、消費税を上げるのか上げないのかというのは、最終的に半年とか一年前には決めないといけないかと思いますが、要するに、今回は軽減税率とセットということになると、事業者の準備期間というのが相当長くなってしまうと思うんです。一方で、今、ファンダメンタルズは良好だとずっと言い切られていますけれども、見る人が見ると、相当弱いよねと。そういう状態の中で、消費税増税をするのかしないのか。

 今、するという答弁がずっと続いているのは承知しておりますが、本当に消費税は上げられるのかな、上げないだろうなと予測し始めている市場関係者も多うございます。それにつられて、各事業者も、本当に上げるのか上げないのか、では、設備投資を始めていいのかいけないのか、ここは全く、事業者の混乱がより大きくなっております。

 いつまでに上げるのか上げないのかを決定されるんでしょうか。

麻生国務大臣 これまでも繰り返し申し上げてきているんだと思いますので、この引き上げにつきましては必ずやらせていただきますということで、平成二十九年の四月に確実に実施するということにいたしておりますので、時期が不透明というようなことにはならないんだと思っておりますし、それに合わせて実施いたします軽減税率の実施につきましても、そうした前提のもとで、円滑な制度の導入に向けて、政府としては万全の準備を進めているという段階であります。その導入に当たりましては、いろいろ事業者への配慮やらが重要になるだろうということは言うまでもないところでありまして、制度上の対応といたしましては、いわゆる適格請求書等保存方式、通称インボイスというものにつきましては、その導入に当たりまして、混乱が生じるとかいろいろなことを言われておりますので、時間を四年、六年、十年かけさせていただいたり、そういった税額計算の特例も設けることにいたしておりますので、こういった意味で、今御審議いただいております税制改正法案にも明記をいたしておりますように、そういったものに対して万全の準備をやらせていただきたいと思っております。

 ただ、いろいろな意味で、こういったものに関しましては初めてのことをやりますので、そういった意味では、時間をかけてきちんと対応していかなきゃなりませんでしょうし、レジの導入とか、POSとは言いませんけれども、いわゆるポイントの設備みたいなそういったシステムの改革等々、改修などに資金的な支援等々もやらせていただきますので、導入ということに関しましては、私どもとしては速やかにやらせていただきたいということで、今、何月何日に導入を決定するという日にちまでを決めているわけではありません。

木内(孝)委員 そういう意味でいうと、上げるか上げないかの判断の時期は、わからないというか、上げるということを決めているという答弁だと思います。

 それでは、今月以降、軽減税率導入に向けたシステム開発をして、仮に、例えば五月とか六月に増税を凍結すると御判断された場合、そうした事業者に生じるさまざまな損失というのがあると思うんです。こうした損失がもし発生した場合、国がこれを補償してくれるんでしょうか。

麻生国務大臣 何回も申し上げるようで恐縮ですけれども、私どもとしては、今重大な事態が発生しない限りと何回も申し上げておりますので、それは、あと二カ月で重大な、例えば中国がいきなりクラッシュダウンして、ハードランディングになりましたというような騒ぎになるという前提を仮に置かれるとなると、それはいかがなものかと思います。

 そういったことのないように臨みますけれども、仮にそういったことが起きたらというようなことを考えておられますかと言っておられるのかと思いますけれども、基本的には、今まで申し上げたとおり、きちんとしたことをやらせていただくので、今の段階で、そういうときになったらという、いかにも人様の不幸を期待するような話をされてもちょっと困りますので、私どもとしてはお答えのしようがありません。

木内(孝)委員 私は、人様の不幸を期待しているわけではないということは申し上げたいと思います。

 ちょっと関連してといいますか、G20と財政出動についてお伺いします。

 IMFは、世界経済の予測を、従来三・四%としてきました。世界経済の見通しが弱まり、見通しを四月に下方修正するだろうと、昨日ぐらいですか、表明をしました。同時に、経済成長を底上げするため、G20は短期的な財政支出の拡大による需要押し上げが必要だというコメントを出しています。

 きょう、まさにこれから、G20ですけれども、今、非常に多くの危機感を世界じゅうが持っていて、私は、中国がどうなるかとか、そこは全く予見できません、これは誰も予見できませんが、非常に世界経済の不確実性が増しているというのは、誰の目から見ても明らかでございます。日本のファンダメンタルズは良好だ、勝手にそれを言うのは結構ですが、やはり世界経済とこれだけリンクしている中で、私は、無条件で消費税を引き上げるというのは極めて無責任だと思っています。

 今までの答弁は、リーマン・ショック級の事象がなければ機械的に引き上げる、予定どおり引き上げるという答弁でしたが、きょうは、中国のハードランディング、これがなければ引き上げるという答弁に変わったと思っております。

 例えばという事例として、どのようなレベルであれば消費税をやめるのか。例えば、アジアの通貨危機もございます。あるいは、株価に例えれば、一万三千円、二千円割れをしましたということもあり得ます。一体どういう事象であればやるのか、やらないのか。私は、少なくとも、やるのかやらないのかというのを、前回有識者会議を立ち上げたように、議論するくらい不透明さが増していると思っているんです。

 何でこんな大切なことを、まさに御党の政調会長がおっしゃった、消費税、経済を壊してまではやらない、正しいじゃないですか。せめてそうした有識者会議を経て、上げるか上げないかというのを判断する場くらい設定するということも拒否なさるんでしょうか。

麻生国務大臣 従来申し上げておりますように、リーマン・ショック、大震災という例は、重大な事態というものの例として引かれているのであって、中国になって、今度は中国のハードランディングに変わったと、そんな単純なことを考えちゃだめですよ、いろいろなことを考える例の一つとして申し上げているんですから。

 そういったことであって、経済状況の中にあっては、その時々の政治情勢なり、政治状態において判断する、政治判断というものでしか決められないということなんだと思っておりますよ、基本的には。

 そうしたケースを具体的に申し上げるということは、これは極めて困難であって、中国の状態がどの程度なんと言われたら、そのレベルも比較のしようがありませんし、そういった意味では、政治判断ということで景気判断条項を削除いたしました以上、少なくとも、一昨年のような景気判断というようなことでできるわけではないというのが基本だと存じます。

木内(孝)委員 G20で財政出動みたいな話があるのかどうかはわかりませんけれども、一つ、消費税を上げるべきか上げないべきかというのは、両方の意見がございます。当然、消費税を凍結してしまいますと、税収が減って、格付の格下げにつながる、あるいは国債が不安定化する、こうした事態も想定されますので、私もこの点については非常に慎重に考えております。

 したがいまして、私が繰り返し質問の中で述べておりますのは、財源がないと、なかなか消費税を凍結したり、あるいは大型の補正予算等を打てないというふうに考えております。

 その中で、時々財源の候補となります外為特会について質問させていただきたいと思います。

 テクニカルな話であれば事務方の方からお答えいただければと思いますが、図を一枚用意いたしまして、外為特会のバランスシートでございます。これは、外貨資産が百五十一兆円、貸方の方が、政府短期証券等百二十一・一兆円、剰余金、内部留保、為替差益等があります。これは昨年の三月末の段階のもので、今、若干円高になっておりますので、もう少し内部留保といいますか剰余金の部分が減っているというふうに理解しております。

 そもそも、外為特会というのはなぜあるんでしょうか。

麻生国務大臣 外国為替資金特別会計、通称外為特会というのがありますけれども、外貨資産というものは、外国為替相場の安定というものを目的として、将来の為替の介入とかいろいろなことがあろうと思って、そういったものに備えて保有しているものでありまして、そもそもこれは政府短期証券、いわゆる借金というもので成り立っているものだと理解しております。

木内(孝)委員 百五十一兆円の外貨資産は、為替を安定させるために必要なんでしょうか。

麻生国務大臣 今のような大きな経済規模になってきた日本にとりましては、かつてとは全然条件が違っていると思いますので、私どもとしては十分に必要なものだと思っております。

木内(孝)委員 百五十一兆円の外貨資産が為替の安定のために到底必要とは思えません。私は、一度この規模が適切なものであるのかというのをしっかりと議論していただきたいと思います。

 その上で、恒久的な財源としては難しいということは承知をしております。しかしながら、時限性のある財源として、この貸方の下の約二十二・七兆円、あるいは剰余金等は一部一般会計に繰り入れられているかもしれませんけれども、このうちの一部を財源として使うというのは十分にありだと思います。

 なぜこれは財源に使えないのか、御答弁をお願いします。

麻生国務大臣 外為特会が保有しておりますいわゆる外貨資産、いわゆるワンショットですが、そういったものは、ワンショットか否かにかかわらず、これを財源として活用することについては、基本的に外貨から円貨への転換が必要となるでしょう。そういった意味では、実質的なドル売り・円買いですよね、これはおわかりだと思いますが。

 そういうことで、金融為替市場にどういった影響が与えられるのかということも今の状態では十分に考えておかないと、これは極めて慎重な対応が必要なんだという、あしたから始まるG20とかIMFの話を先ほどずっとされておられますので、それはよくおわかりなんだと思いますが、仮に、今後、ドル売り・円買いの介入などによって外貨を売却して円貨を取得するといった機会があれば、まずは外為特会が抱えております政府短期証券というものを償還する必要があるということを考えております。

 したがって、他の財源に使えるわけでもありませんし、そんな必要はないと言われますが、少なくとも、今、中国でどれだけ減っているか、一月間でどれだけ減っているかというのは、この二カ月間で二十兆減っておりますから、そういった意味では、二カ月間でそれだけ減るという事態がお隣で起きておるという現実も我々は頭の中に置いて運用させていただかねばならぬものだと思っております。

木内(孝)委員 私も、東京三菱銀行という、特に東京銀行の方は外国為替の専門銀行でありまして、ロンドンにも長くいましたので、為替がどうこうというのはある程度普通の人よりは深く理解しているつもりでございます。

 私は今回この質問をするに当たりまして、実は多くの市場関係者とか、あるいは行政の方も含みますけれども、この規模が本当に必要なのか、適正レベルなのかというような質問もあわせてしました。中に、組み入れの金額の適正額というのも明示されていまして、保有資産の三〇%ぐらいにしたいというふうなことが書いてあるんですが、現在、組み入れ金額の累計は二十二・七兆円、これを三〇%にするというふうにしてあるんですが、この三〇%まで引き上げないといけない根拠、これは何でしょうか。

門間政府参考人 お答えいたします。

 御承知のとおり、外為特会を外貨の安定のために保有しておりますが、持っておる資産、外貨の反対側として、借金としての短期有価証券を持ってございます。市場が、あるいは為替とか金利が大きく動きますと、ここの特会の損益状況が大きく変わりますので、そのために一定の内部留保が必要だろうというふうに考えてございまして、私どもとしては、その水準が保有外貨資産の三〇%ぐらい必要なのではないかと思っております。

 この数字につきましては、外為審議会でも御議論いただいた上で発表したものでございますが、例えば、過去、平成二十三年度の決算におきましては、四十一・三兆円の為替評価損を出したことがございます。現在の二十六年度の残高をベースに計算いたしますと、この三〇%の数字というのはおおよそ四十一兆円ぐらいになります。

 ですので、二十三年度で四十一・三兆円の為替評価損を出したということから考えますと、この三〇%という数字は妥当な数字であろうと私どもは考えております。

木内(孝)委員 私も円高リスクは全く否定しておりません。事実、九十四円ぐらいのレベルになると、内部留保相当の為替評価損が出てしまうということも理解しております。

 その上で、私は、この外貨資産というのは余りにも過大だと思っております。もちろん、これを小さくするときは円買いという形になりますので、当然、円高要因になってしまうとか為替の不安定要因になってしまうということも十分理解した上で、私はこれを両建てで少し小さくするべきだと考えております。

 やはり、毎年剰余金から一般会計に繰り入れたり、勝手にお金が使える状態になっているんですよ。だから、これはすごい便利だと思うんですね。私ももし財務省に勤めていたら、こんなにおいしい、毎年お金がちゃりんちゃりん出てくる埋蔵金というのは、私は非常に好んで使います。これだけ問題なものを、なぜもっと多くの人が指摘しないのかよくわかりません。

 事実、財務省にお勤めでいらっしゃった元税理士法人トーマツの会長、元財務省為替資金課長さんですか、河上信彦さん、本も大分出されて、私も随分研究したわけですけれども、明らかにこのバランスシートは大き過ぎると思っていますし、私は、内部留保の部分も含めて十兆円程度を財源として使って何ら問題ないと思っていますので、あらゆる場で、これに御関心のある方はぜひ追及を深めていただきたい、そのように思っております。

 続きまして、次の質問に移りたいと思います。

 きょうの新聞各紙の一面に出ておりますが、鴻海さんという台湾の企業がシャープに資本を出すというような報道がございます。私は、今余りにも動き過ぎている案件なので、正直、ちょっとこの件について質問するのをちゅうちょもしていたわけですが、逆に、動いていないとこういう官民ファンドとかそういうものに皆さんなかなか御関心を持ちにくいということもありまして、特に、細部、今回の資本注入等について影響を及ぼさない範囲内で質問したいと思います。

 国が家電メーカーの経営にリスクマネーを供給する、産業再編を促すという意味とかいろいろな意味があろうかと思いますけれども、それの意義について教えてください。

保坂政府参考人 お答え申し上げます。

 産業革新機構でございますが、民間企業の自主的な取り組みを補完し、企業間のオープンイノベーションを促進することを目的としている機構でございます。

 こうした目的を達成するため、機構の支援基準において、リスクが高く、民間単独では実施が困難な支援であること、民間資本と協調して投資を行うことなど、民業補完の原則を徹底することとしてございます。経済産業省としましては、こうした基準にのっとり適正な業務運営がなされるよう、適切な監督を行ってまいりました。

 今回の産業革新機構のシャープに対する提案も、シャープの要請に応える形で、こうした趣旨にのっとって行われたものと認識してございます。

 以上でございます。

木内(孝)委員 国が一家電メーカーのこうした経営に事実上介入するというのは、市場をゆがめると私は考えます。

 麻生大臣、こうした国が一メーカーにお金を出すということについて、いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 今経産省の方から答弁が一部あっていますけれども、官民ファンドというものは、民業補完というものを原則としながら、民間の資金というものを活用するために、政策性の高い分野に重点を置いたリスクマネー等々の供給を行うためのものなんだと理解をいたしております。

 こうした機能というものは、民間がとるには少々難しい、リスクの高いというようなものに対して、官民ファンドがそのリスクをとるということによって民間の資金を活発化させますし、また経済の持続的な成長を促すためにも、私どもとしてはこれは必要なものだと考えております。

 したがって、官民ファンドを通じました資金の供給というのは、あくまでも民業補完とか市場規律の尊重とか、そういった原則を踏まえて実施すべきものであって、産業革新機構等々、ほかにもあるんでしょうが、各官民ファンドにおいて適切な投資判断がなされてしかるべきものなんだと思っております。

木内(孝)委員 私も官民ファンド全てを否定しているわけではありません。とりわけ、金融機関等に対して金融システムが不安定化したときに資本注入をしたり、あるいは昨今の震災のときに東京電力に国が資本を注入したり、やはり有事の際、とりわけ公益性の高い企業に対して、こうした国が資本を注入するというのはありだと思っております。

 しかしながら、私は、今、安倍政権が行っているさまざまな政策というのは、先ほどの自由主義経済ということとも相通ずると思いますが、統制型の経済、先ほど麻生大臣が、世界で最もうまくいった社会主義だという言い方をする人がいるという冗談をおっしゃっていましたが、まさに私はそうだと思うんです。それを大きく転換するというのが構造改革だと思っています。

 ただ、自由主義経済というのは、一つ欠点があるのは、やはり格差を大きくしてしまう。ですから、その一定のセーフティーネットをきちっと張るという意味で、先ほど申し上げた給付つき税額控除が非常に、今回はまだその金額が小さい状態でございますけれども、これを一定規模の金額にすれば、いわゆる日本版ベーシックインカムともいうべきセーフティーネットになるわけです。

 あらゆる規制を撤廃して、自由主義、競争主義を私は徹底するべきだと思っていますが、その結果、どうしても、セーフティーネットが整備されていることとセットでないとなかなかそれは十分に機能しないというふうに考えております。

 そうした中でお伺いしたいんですが、幾ら何でも、今の、シャープさんという固有名詞を挙げさせていただきますが、今回は、私は逆に、もし本当に台湾の鴻海さんが資本を出してくれるということであれば歓迎するべきだと思います。何かいろいろ偶発債務がどうのという話もあるようで、本当にクロージングできるのか、ちょっと不安で見ておりますけれども。

 私は、こうして国が一企業の経営に介入するという統制型の経済を続ける、これが今、安倍政権の潜在成長率が大きく下がり続けている理由の一つだと思っております。二十年間の経済政策の失敗、これを繰り返していただきたくない、そのためにも給付つき税額控除は非常に有効なセーフティーネットであるということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。

宮下委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民主・維新・無所属クラブ、落合貴之でございます。

 本日は、冒頭で、昨日宮崎委員が質問した件の確認をさせていただきます。インボイスと免税業者の件でございます。

 小規模の免税業者から課税業者が仕入れる、買う場合に、インボイス制度を導入すると、今後は仕入れ税額控除の対象とならなくなってしまう。その場合に、一〇%控除が受けられないから消費税分安くしてくれと言われる可能性があるかもしれませんが、万が一そういうことがあった場合、それはあっていいのでしょうかという宮崎委員の質問に対して、麻生財務大臣は、あってはいけないでしょう、主税局長は、そういうことはあり得るのではないかというような答弁でございました。

 この統一見解はできましたでしょうか。

麻生国務大臣 これは、きのうのこの委員会において宮崎先生の方から、いわゆるインボイスという制度の導入をされた後、買い手事業者が納入元の免税事業者に対していわゆる他の納入事業者よりも低い価格を求めることが許されるのかというお尋ねがありました。

 私は、下請とか孫請などの力関係もあって、いわゆるそういった力関係が存在する場合は、優位な立場にある者がその立場を利用して一方的に不当な値引きを求めるのは、これは何も今に始まったことじゃなくて、いつでもある話だとは思いますけれども、そういったものは好ましくないということを申し上げたのであります。事実好ましくありませんから。

 他方、主税局長が申し上げましたのは、商品価格というものは、消費税の転嫁相当額を含め、事業者間の合意形成によって設定されるという一般論を申し上げておるのであって、例えば、対等な立場で合理的に値引きの要請を行うというものが許容されるというのはよくある話なんだと思っております。

 したがって、それぞれの念頭に置いている事業者の力関係というものが異なっておりますので、私と主税局長の発言の間が何か違ったように聞こえたかもしれませんけれども、基本的なところにそごはないというように考えております。

落合委員 優位な立場であれば優越的地位の濫用があってはいけない、一方で、合意であればオーケーというような統一見解であるということですが、買ってもらう側と買う側というのは普通に考えたら優越的地位がある。しかも、買ってもらう側が免税業者で、買う側が課税業者である、大きさの違いがあるということで、宮崎委員は恐らく優越的な地位がある場合について聞いていると思うので、また改めて宮崎委員の質問で取り上げられると思いますので、ここは、私は次の質問に移らせていただきます。

 まず、特例公債法案についてでございます。

 これは、正式名称は、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案ということで、及び法ということで二本の法案が一本になって出てきているわけです。

 これは一本にする必要はあるんでしょうか。

麻生国務大臣 この改正は、復興財源の確保が一般会計の財源の確保に大きな影響を与えます。したがいまして、互いに密接に関係をいたしておりますので、平成三十二年、いわゆる二〇二〇年度にかけまして、復興と財政健全化、いわゆる基礎的財政収支のバランスという財政健全化を同時に推進していく必要がありますので、いずれも財政法の第四条の特例であります公債、いわゆる復興債とか特例公債とかいうような公債ですけれども、この発行根拠を設けるためのものでありまして、共通点というのはそこが一番の共通点であろうと思って、私どもは両改正を一括化するということにさせていただいたということであります。

落合委員 一括の法案にするということに、一つこの法案の論点はあると思います。

 もう一点、期間についての問題、発行期間についての問題もあると思います。

 調べてみますと、従来、赤字国債の発行に当たる法律、つまり特例公債法は、特例公債発行の権限のみを規定し、具体的な発行額は予算が規定していた。そして、予算と同時に特例公債法案が毎年度内閣から国会に提出され、審議をされてきました。そもそも財政法第四条においては、国の歳出は原則として租税等をもって行う、つまり赤字国債の発行は認められていなかったことから、一般会計の歳出財源の不足を補うための特例として、一年に区切って、一年ごとに審議がされていました。

 しかし、二〇一二年の秋に、震災から一年半で状況が逼迫している、そのときの国会の状況は、衆議院、参議院、与党野党ねじれているということで、なかなか特例公債法が成立しなかった、赤字国債が発行できなかった。その中で、平成二十四年から二十七年度までの間、例外的に複数年の特例公債発行を認めるというような法案が与野党で合意されて通りました。

 つまり、前回は、ねじれ国会、そして震災復旧復興が始まったばかりで財源の問題に直面しているということで、例外的に複数年度の赤字国債を発行できる法案に書きかえられて成立したわけです。

 しかし、今回は状況として、衆議院、参議院が議席がねじれているわけではありません。そして、まだまだ復興は進んでいないですけれども、集中復興期間はこの三月で終わります。前回とは環境が違います。

 財政はなるべく何重にもチェックをしなければならない。予算は、毎年国会にかけられて、毎年予算委員会で審議をされていますが、さらに慎重にチェックをする上でも、この赤字国債の発行を定める法案も今回からは一年ごととしてもいいのではないでしょうか。

 復興債に関しても、震災の復興をとめようなんという野党はそうはいないと思うんですが、いかがでしょうか。

坂井副大臣 現行の特例公債法は、二〇一二年十一月の議員修正によりまして、二〇一五年度プライマリーバランス赤字半減目標という目標を踏まえて、発行期間を二〇一二年度から一五年度までの四年間にしたということで承知をいたしております。

 今回の件でございますが、今回の特例公債法の改正案は、少なくとも二〇二〇年度までの間は引き続き特例公債を発行せざるを得ないと見込まれる財政状況であるという点が一点。そして、現行の枠組みを引き継いで、二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化の目標に向けて財政健全化に取り組んでいく、これもまた二〇二〇年度までの黒字化目標という目標があるということ。これらを踏まえて、引き続き安定的な財政運営を確保する観点から、つまりは、これがいろいろな政争の具にならないということを想定しておりますが、確保する観点から、特例公債の発行を五年間としたものでございます。

落合委員 今副大臣がおっしゃったことも理解はできなくもないですが、その中の、答弁の言葉にあった、前回の枠組みを引き継いでというのは、やはりこれは慎重に考えなきゃいけないことだと思います。前例を踏まえることと、それから赤字国債をどのような形で発行するかということは、やはり赤字国債は基本的には発行は慎重でなければならない、経済効果はあるけれども慎重にならなければならない。その原則よりも前回の枠組みを引き継ぐということが優先されてしまうというのは、気をつけなきゃいけないことだと思います。

 今回、復興債を五年発行して、発行限度額二・二兆円というのがこの法案の中に一つありまして、もう一方で、赤字国債も五年発行できて、二十八年度の発行限度額は二十八・四兆円。

 これは、やはり一括にするのではなくて二本に分けて、復興債は、復興がありますから、中長期的な観点からやっていかなければならないので例外的に五年、でも、赤字国債の発行は一年ごととやってもいいのではないですか。前回の枠組みを引き継いでというのは、そうした方がいい法案もありますけれども、この赤字国債の発行についてはやはりプロセスは踏んだ方がいいんじゃないでしょうか。副大臣、いかがですか。

坂井副大臣 この枠組みを引き継いだ上で、先ほど私は、プライマリーバランス黒字化二〇二〇年度の目標があるということも申し上げました。十分に慎重にという御意見はまさしくそのとおりであろうかと思いますが、ある意味、このプライマリーバランスの黒字化目標は、経済・財政再生計画のもとに、財政規律を堅持して、そして財政健全化を進めていくということを明らかにしているということもございまして、これらのことを総合的に考えまして、今回、政府として判断をさせていただいたということでございます。

落合委員 赤字国債の部分だけでも、先ほど申し上げた、一括じゃなくて分離させて、一年と区切るだけでも、今回は一回の審議で終わりなのが、来年のこの時期もまた審議する、再来年も審議する、副大臣がおっしゃったプライマリーバランス黒字化に向けたこの状況というのを毎年毎年五回に分けて審議ができるわけです。その目的を達成するためにも、今回の審議で五年間いけてしまうというよりも、五回審議した方がいいと私は思います。

 前例を踏んだ方がいい場合もありますが、こういう重要なことは、やはり前例を踏んでプロセスを簡略化しますということはしてはいけないことだと思います。これは重要な問題だと思いますので、私は、五年間、国会では審議されないかもしれませんが、たびたびこの委員会でも取り上げて、五年間の状況を常に見させていただきたいと思います。

 次にお伺いしますが、具体的な部分を見ていくと、平成二十八年以降の五年間の復興・創生期間における復興財源ということは、去年の六月三十日の閣議決定で最大三・二兆円程度を確保するとされて、その財源に、財政投融資特別会計からの受け入れなど国の保有する資産の有効活用等の税外収入により〇・八兆円程度を確保するというふうに閣議決定がされております。

 一方で、もう一方の復興財源確保法では、JT株それから東京地下鉄株式会社、東京メトロの株の売却収入や、ほかの国有財産の処分による収入等の税外収入を復興財源としますと書いてあります。

 ここで具体的に名前が出てきているJT株それから東京メトロの株はそれぞれ今どうなっているのか、状況をお聞かせいただければと思います。

坂井副大臣 まず、東京メトロの株式についてでございます。

 東京地下鉄株式会社法によりまして、国及び東京都は、できる限り速やかにこの株式を売却することとされております。また、委員御指摘のように、東京メトロ株式売却収入につきましては、復興財源に充てるものとされているところでございます。

 国の株式を売却するに当たりましては、民営化して経営を効率化するという趣旨等を踏まえて、国とともに同社株式を保有する東京都が同時に売却することが重要であります。現在、東京メトロの主務官庁であります国土交通省が東京都に対しまして株式売却に向けた働きかけを行っているなど、幅広い観点からの調整が行われているものと承知をいたしているところでございます。

 また、JT株式についてでございますけれども、これもまた、政府はJT株式の総数の三分の一を超える株式はできる限り早期に処分するものとして規定をされております。

 二十五年二月から三月にかけて売却も行いました。この結果、政府は、復興財源として約一兆円を確保しており、また、政府が保有するJT株式の保有割合は約三三・三%となっているところでございます。今後の処分に関しましては、財政制度等審議会の中間報告等々もございまして、いまだ処分をされていないという状況でございます。

落合委員 JT株は、二十五年、一部売って一兆円の売却収入を得ましたと。

 東京メトロの方は、要は、まだ一株も売っていない、手放していないということでよろしいでしょうか。

坂井副大臣 その認識で結構でございます。

落合委員 プロセスの説明の中で、東京都と同時にということがありました。それはそれで、東京都の中心を走っている地下鉄ですので、東京都との連携というのは大変重要だと思います。

 しかし、一般的に、政府は自分の資産を手放すのをためらう傾向がある。こういった中で、やはりその手放さない理由の大きな一つとして東京都のせいになってしまうというのは、あってはならないと思います。

 この東京メトロの株についていろいろ調べてみますと、昨年の九月三十日に会計検査院から国会、内閣に報告された報告書、「政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について」の中で、ちょうど東京メトロについての指摘がありました。「設置根拠法に早期に売却する旨の規定があり、その売却収入を東日本大震災に係る復興債の償還財源に充てることとされているものの売却が進んでいない」というふうな指摘がありました。

 設置法に早期に売却すると書いてあるわけですが、ほかの委員会の審議も見ていますと、早期に民営化するとか、何年までにと書いていない、早期にと書いてあるものは、大体私の見た限りでは進んでいない。全然進まないものに関しては、期限を書かないで早期にと書いてあることが多いと思うんですね。

 この用語で言う早期にというのは我々国民の常識的な早期にではなくて、早期にというのはやらないということなのか。これは早期にと書いてあるんですから、急いでやらないといけない、東京メトロの売却の準備は急いでやらないといけませんということを書いてあるということで御認識はよろしいですね。

坂井副大臣 早期に売却をということでございまして、そのために主務官庁である国土交通省も今鋭意努力をしているというところでございます。

落合委員 努力をしているという答弁も、今までの私のすごく短い経験ですが、質問に立った中で、努力をしているというのはゼロ回答に等しいんじゃないかなというふうに私は思います。

 これは具体的に法律に東京メトロ株と書いてあるわけですから、わざわざ書いたわけですから、約束をしているわけですから、どのように進んでいくのか、私もこれは見させていただきたいと思います。大臣に答弁は求めませんが、副総理でもありますので、ぜひ、こういう問題、どんどん前向きに指示を出していただければと思います。

坂井副大臣 国土交通省も、実は早く処分をしていきたい、こう重々思っております。

 昨年、当時の太田大臣が、平成二十七年十月の二日でございますが、東京メトロの株式売却収入は復興財源に充てられることとされており、株式の早期売却は非常に重要であると認識をしていると大臣会見でも述べております。同時に、その中で、舛添知事は今のところ都の持ち分を売却する意向はない、こういうことも太田大臣がおっしゃっております。

 また同時に、同じ日に舛添知事も実は記者会見をされておりまして、簡単に言うと、一番大事なのは、株をどうするかということではなくて、二〇二〇年を前にして、東京メトロを含めて地下鉄全体のサービスを向上させる必要がある、そこに全力を挙げるべきであってという発言をされております。

 法律には確かに書いてあるところでございまして、国交省としては重々やりたいということで今交渉しているところでございますが、何せ東京都が四十数%の株式を保有しているという状況で、委員も御承知のように、国の分だけ先に売っても、半官半民の会社を要は投資家の方がどう評価するか、完全民営化になった会社、半官半民の会社、どう評価をするか等々を考えますと、国民の財産を処分する際、やはりよりよい条件、よりよい形で処分をしたいということなども考えれば、総合的な中で今の状況があります。

 ぜひ、委員も東京の選出の議員でございますので、東京都ともいろいろなおつき合いがあろうかと思いますから、この点に関しましてはいろいろと御尽力をいただければと思います。

落合委員 知事が意向はないということでとまってしまっていますと。東京も、都営地下鉄も持っていますので、そういう複雑な問題もあるんだと思います。

 しかし、これは、法律をつくったときにわざわざ名前を書いたということは、それも踏まえた上で書いたはずであると私は思います。ですから、法律をつくった以上、責任を持って目に見える形で進めていくべきである。私も、この進展についてはこれからも注視をさせていただきたいと思います。

 今回改めて思いましたのは、国の財政はできるだけ多くの人の目でやはりチェックをしていかなければならない。国会もそうですし、財務省自身もそうですし、会計検査院もそうですし、そして国民もマスコミも、やはり国のお金の使い方については厳しくチェックをしていかなければならないと思います。

 私も、国の予算書も、それから税制改正の内容も大変分厚くて、一見するとわかりにくいんですが、そこのポイントをしっかりわかりやすく発信していきたいと思いますので、ぜひ細かく見させていただきたいと思います。

 この法案に関連しまして、確認なんですが、今、復興特別会計があります。これは、復興をしていく上で大変重要な特別会計です。復興期間というのはあと五年で、震災から十年で役割を終える予定ですので、毎年の予算分しか特別会計にはお金が入りませんので、あと五年たったときにそんなにいっぱいお金が余っているということは恐らくないと私も思いますが、単年度単年度で思ったより事業費が下振れして、思ったよりかお金が余ったということもなきにしもあらずだと思います。

 五年後、復興特別会計が終わるときにもしもお金が余っていた場合、これはもちろん一般会計に全額入れるということでよろしいですね。お金が余っていたときに、別の目的でその特別会計から別の特別会計にお金が移ってしまうということはありませんね。

坂井副大臣 復興庁は、できてから十年ということでございますので、平成三十二年度末で廃止されることとされております。復興特会は、復興庁が廃止されたときに、別に法律で定めるところにより廃止するとされております。

 ただし、復興特会において、復興事業の経費を賄うための復興債でございますが、これは出納整理期間発行を活用しております。これは、その年度の公債の発行額を必要最小限とするために、翌年度の四月、五月、六月の間、歳入歳出の動向等をぎりぎりまで見きわめた上で、四月、五月、六月に、前の年度というか当該年度というか、その部分の必要最小限の公債を発行する仕組みでございます。これを使っておりますので、基本的には、決算時に多額の余剰資金が残るというようなことは発生しない仕組みとなっておりまして、そのように考えております。

 その上で申し上げれば、復興特会の廃止の際には、復興事業の進捗状況等を踏まえ、復興事業に関する経理のあり方について検討を加え、必要に応じて所要の措置を講ずるとされていることから、そうした中で余剰資金の取り扱いも含めて検討していくこととなろうかと思います。

落合委員 要は、検討していくということですが、復興特別会計というのは復興予算のためにつくられた特別な会計です。これは、復興庁の役割が終わった時点で復興のための特別会計の役割は終わるわけですから、ほかの目的で使ってしまっては、特別会計の本来の意味をなしていないと思います。

 これは必ず一般会計に戻さなければならないのではないでしょうか。どうですか。

坂井副大臣 まだ先の話でございまして、今そこまで確たることを申し上げる時期にはないかと思いますが、ほかの目的のためにというよりは、例えば、復興債の償還財源として国債を償還する特別会計等に組み入れるとか、そのときも復興債に充てるとか、そういったことも含めて、委員が御心配、御懸念されているような、ほかの目的に勝手に使うんじゃないかというようなことは決してないように検討を進めていきたいと思います。

落合委員 検討をこれからするという選択肢もあると思いますが、一般会計に一回戻してから予算の中で決めるというのが正しいプロセスだと思います。それなのに、一般会計に返すかどうかわからない、裁量的に特別会計の余ったお金をどこに使うかはこれから検討します、そういう形では正しいプロセスを経ていないのではないでしょうか。

 これは重要な問題だと思いますので、五年先に私がこの場で質問できるかわかりませんけれども、しっかり毎年この推移を見ていきたいと思います。

美並政府参考人 済みません、先生の御疑問に、少し補足して答えさせていただきます。

 復興庁が廃止されたときに復興特会を廃止する、その余剰金をどうするんだということでございますけれども、そこで検討すると言っているのは、まさに復興特会に関する法律、特別会計法の附則の二条になるんですけれども、先ほども一部副大臣の答弁がありましたけれども、そのときの復興事業の進捗状況等を踏まえ、それから復興事業に関する経理のあり方について検討を加え、それで所要の措置を講ずるということでございます。

 したがって、財源が本当にその事業にきちっと充てられるかどうかという趣旨はそこに含まれておりますので、そういうことも踏まえて所要の措置を講ずるというふうに法律で決まっているということでございます。

 以上でございます。

落合委員 それであっても、私は、一回一般会計に入れて、復興庁のような組織がまたその後も必要なのであれば、また新たに考えればいいんじゃないかというふうに今の時点では思いますので、これはまた、年を追うごとに私も追っていきたいと思います。

 残りの時間は、法人税に入らせていただきます。

 法人税は、税制改正の中で、課税ベースを拡大しつつ税率を下げていきますというふうにされております。従前三四・六二%だったのが、今年度三二・一一になって、来年度は二〇%台に突入するということです。

 このパーセンテージを、財務省の資料では実効税率とありますが、先ほど政策減税のことを前原委員も触れましたけれども、実際に払っている金額は実効税率より低い場合があるということで、財務省に資料をお願いしました。実際に払っている実質負担率はどのぐらいなんですかということで頼んだところ、全業種の全法人平均で一七・八%ですということでございました。

 ただ、これは企業全部が入ってしまっているので、大企業はどうなのか、中小企業がどうなのかがわかりません。

 よくいろいろな資料に、百億円超の企業とかそういう話が出てきていますので、資本金百億円超の企業の平均の実質負担率は何%なのか、それ以下が何%なのか、もし集計されていましたら数字を教えてください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生のお求めは、資本金百億円超の法人とそれ以外を分けて、それぞれにおける法人税の実質的な負担率に係る資料だ、こういうことでございます。

 そういう形で私どもは推計を持っておりませんので、今ここでお出しするということはできませんけれども、数日前に先生から、そういう推計はできないかというお尋ねがございましたので、そういうことができないか、今検討させていただいているところでございます。

落合委員 前原委員も先ほど大企業が優遇されているのではないかと指摘をして、恐らく、去年もおととしもその前からも、そういう議論はあったと思います。それなのに資料がない。

 これは、公平性、中立性を持った税を考える上でどうなんでしょうか。百億円超とそれ以下で公平なのかという議論は今までされてきたんでしょうか。主税局長、いかがですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 法人税のあり方を議論するときに、もとより、大法人、中小法人、それぞれのあり方というものをベースにいろいろな議論をしていくことは事実でございます。

 ただ、百億円超という形で仕切るという形での推計はしておらないということでございまして、私どもとしては、それについて先生からの御要請がございましたので、至急やらせていただきたいということでございます。

落合委員 大法人とそれ以外での検討はしてきたということですが、どういう推計の仕方をして、どこから先の法人が大法人だというふうに今まで考えてきたんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもとしましては、百億円超でわざわざ分けるということはしておらないという意味でございまして、当然、内部的には一億円を境に中小と大法人に分かれますし、大法人の中でも、例えば十億円の法人でありますとか、あるいはそれの連結法人でありますとか、幾つかのカテゴリーに分けてあらあらの試算は持ってございますが、百億という形でやっていないということだけ申し上げている次第でございます。

落合委員 それでは、一億円超と一億円以下の法人で分けた場合、実質的な負担率、これは差があるんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今手元で持っている数字で申し上げます。あらあらの推計でございますので、また変更があることを前提にちょっとお聞きをいただければと思います。

 私どもが持っておりますのは、平成二十五年度の利益法人を前提に負担率を計算すると、負担率を計算する場合には、当然、表面税率というものがございますけれども、実際に税金を計算していきますときには、課税ベースが縮小すればその分だけ実質的な負担率が下がるということでございますので、資本階級別に見たときに、租特が大体どれぐらい使われているか、あるいは受取配当益金不算入制度のようなものがどれぐらい使われているかとか、欠損金繰越制度がどう使われているかというふうな、租特並びにさまざまな制度調整をしている部分、そこまでいわば織り込んだ形で計算をする、そういうことになります。実質的という意味でございます。

 それで、例えば、資本金一千万円以下でございますと、一三・六%でございます。それから、一千万円超から一億円以下でございますと、一七・六%。それから、資本金一億円超十億円以下ですと、二二・三%。それから、十億円超で連結している法人が一四・六%。全体を平均しますと一五・六という数字を私ども持っておりますけれども、それぞれのあらあらの資本金で分けましたら、そういう形でばらつきが出ているということでございます。

落合委員 今、百億、二百億の部分の数字を言われなかったですけれども、中央大学名誉教授の富岡先生、長年、この国の税体系にもかかわってきた方だと思います。その方が集計をしています。

 やはり、百億円超の企業それから連結法人は、ほかのところよりも負担率が明らかに低い。そして、今主税局長がおっしゃった一番高いところ、五億円とか十億円の資本金のところが一番負担率が高い、そういう集計になっています。

 これはやろうと思えば、百億円超が明らかに低いという数字は出るんじゃないでしょうか。これは、しかも財務省のデータから集計したものです。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 たまたま百億円超というところで切っていなかったというだけでございますので、お求めがございましたので、しっかりと計算をしたいということでございます。

 それから、大法人について実効的な税率が低いとお話がございましたが、いわば数字だけを見て判断をするというのは、場合によっては判断を誤ることがございます。そういう大きな法人になりますと、グループを形成しておりまして、例えば、子会社と親会社との間の受取配当について益金不算入の制度ということがございますけれども、それはむしろ二重課税があってはいけないという制度上の要請からくるものでございまして、そこの部分も一応あえて計算をしてやっているということではございますので、その辺のあり方というのを考える必要があると思います。

 私どもとしましては、実効税率、実効的な負担が低いということは一体何を意味しているかということになりますと、それは実は課税ベースが日本の法人税制については狭いということを全体として意味していて、どういうところの制度によってそういうものがもたらされているかというのを見ているわけでございます。

 二十七年、二十八年、二年にわたりまして法人税改革をさせていただき、また提案させていただいておりますけれども、まさに、租特のみならず、いろいろな、今申し上げた受取配当益金不算入制度を含めまして、その辺の適正化措置を講ずる一つの材料としてきたことは事実でございます。

 百億円超のお話が先生からございましたので、それはできるだけ早く提出をしたいと思いますが、それをごらんいただければと思います。

落合委員 今局長がおっしゃったような議論をするためにも、今までマスコミとかも言ってきたわけですから、そういう資料はつくった上で、この税についての委員会が開かれて審議されるのが最もあるべき姿だと私は思います。

 本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございました。

宮下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本日は、税金の納付制度について質問いたします。

 まずは国税庁に、徴収の基本姿勢について確認をしたい。

 納税者から納税相談や徴収の現場の話を聞きますと、税金の納付が困難な納税者に対して、サラ金から金を借りてでも納税しろ、あるいは借金の金利より滞納税の利率は高いぞなどといった、まるで税金は借金をしてでも払うものだと言わんばかりの指導がなされた、こういう声も時々耳にいたします。

 まさかとは思うんですけれども、国税庁は、税務職員に対して、サラ金から金を借りてでも納税させろというような指導や教育をしているかどうか、また、そのようなことは言ってもいいとの姿勢なのかどうか、これはまず確認で、お答えいただきたい。

星野政府参考人 お答えいたします。

 国税の滞納整理に当たりましては、納税者から一括納付が困難との相談があった場合には、個々の実情を十分把握した上で、猶予制度を適用し、分割納付を認めるなど、法令等に基づき適切に対応することとしておりまして、先生が御指摘になられたような指導等は行っておりません。

宮本(岳)委員 それは当然だと思うんですね。もしそんなことをしていたら、とんでもないことだと思うんです。

 しかし、本法案には、国税通則法の改正内容として、国税のクレジットカード納付制度の導入が盛り込まれました。これは、昨年六月二十二日にまとめられたマイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上等に関するアクションプログラム(報告書)、これをもとに法案化されたものであると聞いております。ここには、導入の目的は国民の利便性の向上としか書かれてありません。しかしながら、クレジットカードは、クレジットカード会社が立てかえ払いで納税し、後に納税者に納税額を請求するというものであります。請求する方法には、リボ払いのような金利をつけた分割払いもあります。これは、まさに借金でもあるわけですね。

 導入の目的は、借金をしてでも納税させようという意図、先ほど現場ではそういうことはやっていないというお答えでありましたが、今回のこの制度にそのような意図は含まれないと私は思うんですけれども、御答弁をいただきたいと思うんです。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、そういう意図はございません。

 専ら、納税者の利便向上のため、納付手段の多様化を図るという観点でございます。

宮本(岳)委員 資金が不足をして滞納せざるを得ない場合と、クレジットカード納付の後にクレジットカードの決済日までに入金ができないという場合では、実は納税者にとって大きく意味が変わってくるわけであります。

 そこで一点確認をしたいんですけれども、クレジットカード会社から納税者への請求、つまり、クレジットカード会社が納税した後、クレジットカード会社から納税者にする請求は、税務署にかわって徴収する代理執行に当たるのか。それとも、金銭消費貸借契約に基づく単なる借金の請求ということになるのか。どちらでございましょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、国が国税債権の徴収をクレジット会社に代理執行する、依頼する、そういうものではもとよりございません。

 位置づけといたしましては、クレジット会社からの納税者への請求というのは、クレジットカード会社と納税者との間での立てかえ払い契約に基づく債務の請求という位置づけでございます。

宮本(岳)委員 代理執行ではない。代理納付をした後は民民の契約だという御答弁だったと思うんですね。

 そういたしますと、インターネットでクレジット納付の手続をした後に、資金繰りが苦しくなって、クレジットカード決済日までにお金を調達できないという場合、納税は済んでいるわけでありますけれども、クレジットカード会社の請求に対して、なかなか払う段取りが困った。

 冒頭のやりとりでは、滞納者に対して、猶予その他の手続をしっかり紹介もしながら丁寧にやっている、借金してでも払えということはやっていない、こういう話でありましたけれども、クレジットカード会社が払って、その後、クレジットカード会社からの請求に対してちょっと払えないという場合に、納税の猶予あるいは換価の猶予などの税法上の納税緩和措置というものは適用されますでしょうか。

星野政府参考人 お答えいたします。

 納税の猶予、換価の猶予につきましては、税務署が納税者から国税を徴収する場合に適用されるものでございまして、クレジットカード会社からの請求に対して適用されることはございません。

 また、クレジットカード納付では、納税者が納付受託者、クレジットカード会社でございますけれども、納付受託者に国税の納付を委託し、納付受託者が税務署に納付することにより、国税債権は消滅をいたします。

 したがって、国税の未納を前提とした措置の対象とはならないということでございます。

宮本(岳)委員 そういう措置の対象にならない。

 クレジットカード納付の手続を行った場合、税金の納付はその時点で納税が終わるんですけれども、その後のクレジットカード会社からの請求に対しては、税法上の納税緩和措置などは適用されなくなる。ですから、利便性が高まる。そういう利便性を考えてぜひクレジットカードでという納税者がいらっしゃる。それは私も認めますけれども、納税者にとり、逆に不利益をこうむる可能性も、そうやってクレジットカード会社から払ってもらった後、クレジットカード会社の請求に対して払えないという事態になった場合には、税務署との関係で今さまざまな緩和措置があるようなことはもうなくなっちゃうわけですから。

 そういう点では、納税者にとり、大変不利益をこうむる可能性もこの場合はあると私は思うんですが、いかがですか。

星野政府参考人 お答えいたします。

 国税庁といたしましては、クレジットカード納付が導入された場合には、チラシ、ホームページ等により、その仕組みや利用方法などをわかりやすく広報、周知していきたいと考えております。また、手続面におきましても、クレジットカード納付をするためのウエブ画面上にその仕組みや利用方法などを表示し、その内容を確認した上でクレジットカード納付を行う手順となるような手続を考えております。

 いずれにいたしましても、クレジットカード納付につきましては、納税者の利便性向上のために納付手段の多様化を図る観点から導入しようとするものでございまして、これを利用するかどうかというのはあくまでも納税者御自身が判断することだと考えております。

宮本(岳)委員 納税職員の心得である税務運営方針というものを見せていただきました。そこには、「納税者の主張には十分耳を傾けるとともに、法令や通達の内容等は分かりやすく説明し、また、納税者の利益となる事項を進んで知らせる心構えが大切である。」こう書かれてあります。この視点からも、税務相談や徴収の現場などで、税務職員が滞納している納税者に何をどう話すかは極めて重要な問題だと思うんですね。

 例えば、東京の杉並税務署で次のようなことがございました。二〇一四年のことであります。ある事業者が税務調査を受け、修正申告をさせられました。分割で払えるから安心しなさいとの指導を信頼し、修正申告書に印鑑を押しました。ところが、直後に職員の態度が急に変わった。修正申告書を持って銀行への借り入れをするように、銀行で借り入れてこい、こう言って、その職員は返済を強要する言葉を浴びせた、こう訴えが寄せられています。

 当然、その職員は、そのようなやりとりを税務署に報告はしておりません。事実確認ができないとの理由で異議申し立ては却下されております。

 第三者も立ち会わず、税務署の職員と納税者のみで、密室で相談や調査が行われることもあります。一般的に、納税者がそういうことを言われたという内容を証明することは難しい、不可能なことが多いです。

 一部の職員の問題かもしれないんですけれども、ゆめゆめ銀行への借り入れをせよというようなことを納税者に迫ることは絶対にあってはならない、これはもう当然のことだと思うんです。

 今回の制度の導入により、もし誤った行政が行われる場合、懸念というのは、可能性としては起こり得るわけです。その可能性は高まるわけです。導入にあわせてしっかりと職員への教育がなされなければならないというふうに思うんです。

 ですから、納付相談、徴税の現場で、本人が進んでクレジットカード払いを希望したような場合はともかく、滞納者に対してクレジットカード払いを勧めるようなことは絶対にあってはならないと思います。借金させて納税させる指導がなされないよう、税務職員への指導は徹底していただきたい。

 麻生財務大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、宮本先生、クレジットカードによります納付というのは、あくまでも納税者の利便性というものの向上のために、いわゆる納付の手段の多様化というものを図る観点から導入をしようといたしているものであります。したがいまして、これを利用するかどうかというのは、これはあくまでも納税者自身の判断によるものであろうと存じます。

 したがいまして、御懸念のように、国税の滞納の整理に当たって、いわゆる滞納者に対してクレジットカードによる納付を強要するというようなことはありません。

 また、クレジットカードによる納付に当たりましても、これは国税庁におきましても、今申し上げたような点も含めまして、星野の方から制度導入の趣旨等々いろいろ説明しておりましたけれども、職員への周知徹底というものはきちんといたしたいと考えております。

宮本(岳)委員 それは、強要なんということは論外でありますけれども、滞納を既にされている方に対しては、これは勧めることも控えるべきだ、それよりも、最初に丁寧に御答弁をいただいたように、猶予の制度、さまざまな緩和制度を親切に説明して、こういう形で支払うことができますよというのが当たり前であって、クレジットカードだったら一発で立てかえ払いになりますよというようなことは言うべきではないというふうに思います。御本人が、もうそういう心配はないから、私は利便性のためにそうしたいという人には、それはやっていただいても構わないというふうに思っております。くれぐれも、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。

 さて、先日に続いて、きょうは日銀総裁にお越しいただきました。引き続き、マイナス金利の効果について総裁と議論したいと思います。

 石田浩二委員は、先日も言いましたように、イールドカーブをさらに引き下げても経済に対する刺激効果は限定的、こう考える理由について、貸出金に対応する金融機関の調達コストの低下幅はもともと限られており、他に経費率という経費もかかっているので、貸出金利の下げ余地は限られる、こう述べられました。

 それに対して黒田総裁は、金融機関の現在の貸出金利にまだ下げる余地があるとして、その理由として、マイナス金利導入後、実際に金融機関の金利が下がっているというふうに御答弁されました。

 メガバンクはどれくらい貸出金利を下げましたでしょうか。具体的な例を提示していただきたい。

黒田参考人 住宅ローン金利については、十年固定で見て、平均すると〇・二%程度低下しております。

 また、貸出金利については、基準金利として広く用いられているTIBOR三カ月物で見て、〇・一%弱低下しております。

宮本(岳)委員 メガバンクが貸出金利をすぐに引き下げたということに若干の違和感があるんです。

 配付資料を見ていただきたいんです。

 先日の二月十六日に公表された日本銀行の業態別の日銀当座預金残高の一月分から作成をした資料であります。

 いわゆる都市銀行、三メガバンク、プラスりそなに当たると思いますけれども、これを見ますと、当座預金残高が九十六兆五千五百六十億円、これに対して、マイナス金利適用残高というのは一兆六千三百十億円であります。率にすると、全体のうち、たったの一・六九%でありまして、付利がわずかばかり減少するだけだということになると思うんですね。単純に計算すると、都市銀行が得る付利はそれでも七百九十七億円となると思うんです。

 一方、超過準備残高は九十二・七兆円でありますから、従来の方法であれば得るべき付利は九百二十七億円となります。九百二十七億円と先ほど計算した七百九十七億円、その差は百三十億円、これだけ利子の分が低下する、マイナス金利導入によって。これが都市銀行の状況なんですね。

 ですから、各行で割れば、ざっと二十億円とか三十億円、ごくわずかのマイナスでしかないわけですよ。収益減でしかないわけですよ。役員に一億円を超えるような給与を支払っているメガバンクが、この程度の減収で貸出金利を引き下げてリスクのある貸出先をふやすとは到底思えないんですけれども、本当にこの先、都市銀行からの貸出先はふえるんですか。

黒田参考人 今回のマイナス金利につきましては、御案内のとおり、階層構造を適用しておりまして、当座預金の一部にマイナス金利が適用されるわけですけれども、その場合でも、金融市場に対してはマイナス金利としての効果を持っているわけであります。

 すなわち、金利など、金融取引の価格というものは、新しい取引を行うことに伴う限界的な損益によって決まってまいります。マイナス金利が当座預金全体に、残高の全体に適用されなくても、限界的に上積みされる部分に適用されるのであれば、新しい取引によって当座預金が増加することに伴うコストはマイナス〇・一%となりますので、それを前提として金利あるいは相場形成が行われるということでありまして、現に、先ほど申し上げたように、住宅ローンの金利あるいは企業への貸出金利につきましても明確に低下をしているということでございます。

宮本(岳)委員 もう一つ納得のいかない答弁なんですけれども。

 私の資料を見ていただいて、一方で、マイナス金利適用残高の約五三%を占めているのが、都市銀行ではなくて、その他の準備預金制度適用先というものであります。その他の準備預金制度適用先というのは、具体的にはどのような金融機関が含まれますか。

黒田参考人 その他の準備預金制度適用先には、ゆうちょ銀行、農林中央金庫など、さらには信用金庫もここに含まれております。

宮本(岳)委員 ここにゆうちょ銀行、それから農林中金、信用金庫、あるいはネット銀行等々が含まれるということでありました。

 これは、総裁は、マイナス金利を導入すれば金融機関が貸し出しをふやす、こういうお話でありますけれども、マイナス金利適用残高の約半分がゆうちょ銀行を含むその他の準備預金制度適用先で占められている。ゆうちょ銀行というのはそもそも企業への融資を行わないと思うんですけれども、ゆうちょ銀行などは一体どうやって貸出先をふやすのか。それとも、貸し出すのではなく、ゆうちょ銀行は株式などのリスク資産で運用せよ、こういうことなのか。これはいかがですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますように、三層構造をとっておりますので、金融機関によっては、マイナス金利の適用を受けるものが大きい銀行もありますし、他方で、マイナス金利を適用されるほど準備預金を持っていない、ゼロ金利、あるいはプラスの金利が適用される金融機関もございます。そうした金融機関相互で当然取引が行われて、全体としては、マイナス金利が適用される準備預金というのは十兆円プラスアルファぐらいになると思います。

 そうしたもとで、当然、マイナス金利が適用される準備預金が大きい金融機関は資金を放出してまいりますので、そういった調整は行われていくというふうに思っております。

 その上で、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは従来の量的・質的金融緩和を強化したものでありまして、量的・質的金融緩和と同様に、イールドカーブ全体を下げ、実質金利を下げ、それによって投資あるいは住宅投資等をふやしていく。当然、金融機関の貸し出しもふえていくということでございます。

宮本(岳)委員 いや、そこが解せないんですね。大きい金融機関も小さい金融機関もある。マイナス金利適用が大きいところも小さいところもある。そうおっしゃるから、具体的に中身を見てみたら、都市銀行は小さいですね、わずか一・数%ですね、そして、半分ぐらいマイナス金利が適用される大きいところは、ゆうちょ銀行を含むその他の準備預金制度適用先ですね、こういう話ですよね。

 先ほど、貸出金利は確かに下がった、住宅ローン金利は下がったとおっしゃるんだけれども、この先、こんなわずかなことで都市銀行がどんどん貸し出していくということは考えにくいんじゃないですか。そして、一番マイナス幅の大きいゆうちょ銀行などはそもそも企業向け貸付融資はやれないんじゃないですか。では、ゆうちょなどはそういう大きなマイナスがあるからといってどういう運用をさせるんですか。こう聞いたんですよ。

黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、このマイナス金利というのは限界的なところにかかってくるわけでして、都市銀行等の残高の総額のうち、マイナス金利がかかる部分は小さくても、限界的な取引にはそれが影響してくるからこそ、彼らの住宅ローン金利や企業への貸し出しの基準金利も下がってきているわけです。

 こういった金利が下がり、それは実質金利も下がるわけですので、設備投資や住宅投資等を刺激するし、金融機関としても融資をさらに積極的に進めていくということになろうということでございます。

 昨年の準備預金の平残については従来どおり〇・一%の金利をつけておりますので、年度末というか年末にかけて準備預金を非常に大きく積み上げたところは当然マイナス金利がより幅広くついてくるということになるわけですけれども、先ほど来申し上げていますように、マイナス金利が非常に大きくついてくる金融機関というのは当然そういった資金を市場を通じて放出いたしますので、それは、ゼロ金利あるいはプラス金利の枠が残っている金融機関もたくさんありますので、そういうところに資金を放出していく形で、金融機関全体としてはバランスがとれた形になっていくと思いますけれども、そうした中で、マイナス金利というのは基本的に十兆円プラスアルファぐらいついていくという形で、限界的には、マイナス金利の影響が十分出て、貸出金利の引き下げにつながっていくということでございます。

宮本(岳)委員 そうおっしゃるわけですけれども、一月の二十九日の日銀資料を見ますと、どの程度の政策金利残高があれば十分に機能するか、実際のマイナス金利を運営した上で判断する必要がある、マクロ加算の運営はこうした市場金利への実効性と金融機関収益への影響を踏まえて今後も決定するんだ、こう説明されております。

 次回の決定会合で、こういうマイナス金利導入後の状況も検討課題になると思うんですけれども、効果が薄いということになれば、さらに大胆なマイナス金利政策に踏み込むということもあり得るということですね。

黒田参考人 この点につきましては、いわゆるマクロ加算額というものがございまして、何度も申し上げておりますように、マイナス金利というのは、限界的にそういうものがつけば金利の決定に影響が出てくる。現に大きな影響が出ているわけでございます。

 他方で、量的・質的金融緩和は継続してまいりますので、日銀の当座預金残高は増加していきます。しかし、マイナス金利がつく準備預金をどんどんふやしていく必要はありませんので、何カ月かごとに、適宜のタイミングで、ゼロ金利が適用される部分をふやしていく。つまり、マイナス金利が適用される部分を一定の範囲内にとどめるということにするということが、今回の三層構造の基本的な考え方でございます。

 その際、どのようにマクロ加算額というゼロ金利の適用する部分をふやしていくかというのは、まさにその時点の金融資本市場の動向等を見ながらやっていくということでありますけれども、マイナス金利の効果が不明確だということではなくて、マイナス金利の効果は明確であるというふうに考えておりますし、現に市場において、貸出金利が低下してきているということでございます。

 その上で、お尋ねの点につきましては、マイナス〇・一%というマイナス金利の政策効果の浸透度合いをしっかりと今後見きわめていきたいと思っておりますので、何かスケジュールを決めて、どんどんマイナス金利を下げていくというような考えは全くございません。

宮本(岳)委員 ぜひ慎重な検討をお願いしたいですし、できるだけ議論の中身を早く公開していただきたいと思っております。

 次に、銀行の預金金利について日銀総裁にお伺いしたいんです。

 日銀のマイナス金利導入以降、民間金融機関の金利はどんどん引き下げられております。先ほど指摘したように、大手銀行のマイナス金利による影響はまだまだ少ないにもかかわらずであります。

 三菱東京UFJ銀行は十九日、普通預金金利を年〇・〇二%から〇・〇〇一%に引き下げると発表いたしました。みずほ、三井住友も既に普通預金の金利を〇・〇〇一%に引き下げており、三メガバンクは全て過去最低水準になりました。ゆうちょ銀行も、二十二日、普通預金に相当する通常貯金の金利を〇・〇二%から〇・〇〇一%に引き下げると発表し、二十三日から適用しております。

 これは、個人の預金についても、結局、預貯金から、リスク資産もしくは住宅ローンなどへシフトすることを期待したマイナス金利つき量的・質的金融緩和政策の政策効果というふうに見ておられますか。

黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和、これは従来の量的・質的金融緩和と同様な波及効果を考えておりまして、基本的に、実質金利が下がり、これが投資を含む経済活動を刺激するということであります。

 もちろん、その波及効果の一つに、いわゆるポートフォリオリバランスがあるということは事実でありまして、これまで長期国債の運用を行っていた投資家あるいは金融機関が株式などのリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸し出しをふやしていくということを、このポートフォリオリバランスとして念頭に置いているわけでございます。

 もとより、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和が、先行き一段と効果を発揮して、雇用や所得の改善を伴いながら物価上昇率が高まっていくという好循環が実現すれば、当然、個人の支出行動や資産選択についても、それに応じた変化が生ずるものというふうに思っておりますけれども、先ほど来申し上げましたように、いわゆるポートフォリオリバランスという観点からは、主として、機関投資家、金融機関等のポートフォリオを変えていくという効果を認識しているわけでございます。

宮本(岳)委員 二月四日の予算委員会で、黒田総裁は、一般の方々が金融機関に預けた預金にマイナス金利があり得るのかどうか、こう問われて、その可能性も当然否定いたしませんと答弁されました。一方で、個人預金にマイナス金利がつくというようなことはないだろうと思っているともおっしゃっております。

 個人預金にマイナス金利はつかないと思われる根拠を御説明いただきたい。

黒田参考人 マイナス金利の可能性について云々したのは、いわゆる政策金利といいますか、日本銀行の、金融機関の準備預金に対する金利について申し上げたわけでございます。金融機関の個人向け預金の金利につきましては、マイナスになるとは全く考えておりません。

 これは、中央銀行が既にマイナス金利を採用してかなりになる、あるいは相当な幅のマイナス金利を採用している欧州の例も見ましてもそうでありますので、個人向け預金の金利がマイナスになるということは考えておりません。

 ちなみに、個人向け預金の金利がマイナスにならない背景の一つとしては、各金融機関が顧客との長期的な取引関係を考えることと、仮にマイナス金利を適用した場合、現金を保有する方が有利であるといった事情があろうかと思います。

宮本(岳)委員 既にマイナス金利を導入しているECBなどの経験を検討して判断されているということだと思うんですね。

 そもそも、中央銀行のマイナス金利政策自体が誰も想定していなかった未知の世界なんですよ。その効果も副作用も、想定はするんだけれども、やってみなければわからないという世界なんですね、これは。

 国民は、預金金利がマイナスにならなくても、口座維持手数料が取られるのではないか、こういった別の手段での国民負担、これへの懸念も持っておられます。

 仮に、個人預金にマイナス金利がつくというような事態が起こった場合に、日本銀行は、現在の金融政策を変更するなどの対応策をとるんですか、あるいは何もしないんですか。いかがですか。

黒田参考人 日本銀行の金融政策の目的は、あくまでも物価の安定でございます。また、預金金利は、各金融機関が市場金利を参照しつつ経営判断で設定するものであると考えております。

 その上で申し上げますと、繰り返しになりますけれども、中央銀行が既にマイナス金利を採用している欧州諸国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。

宮本(岳)委員 根拠じゃないんですよね、何度聞いても。それは、欧州では、やってみたら、今のところそういうことは起こっていないとおっしゃるだけであって、起こるかもわからない。そこにみんなが不安を持っているわけでしょう。これも国民生活に大きな影響を与えるわけですから、これからもしっかり議論をしていきたいと思っております。

 次に、金融政策の為替への影響をお尋ねしたいんです。

 総裁は、この間、当委員会でも、為替レートをターゲットにして金融政策を運営することはないと繰り返し答弁されております。一方で、安倍首相は、円安がアベノミクスの成果であるかのように答弁することがございます。

 この三年間で起こった円安の原因について、黒田総裁はどのように分析しておられますか。

黒田参考人 この三年間で為替の円安方向の動きが進んで、過度な円高水準が修正されたということは御指摘のとおりであります。

 為替相場に影響を与える要因にはさまざまなものがございますので、その時々の状況によって、原因、理由は異なってくるとは思いますが、その上で、一般論として、特に、長期的な為替の動向という面では、昔から購買力平価説というのがございまして、物価上昇率の低い国の通貨は物価上昇率の高い国の通貨に対して為替レートが上がっていく傾向があるというふうに言われております。

 この点、我が国では、九〇年代の末から十五年ほどデフレ状況が続いておりましたので、そういったことも、長期的に見ればある程度影響はあったのかもしれないというふうに思っております。

 その上で、二〇一三年の一月に、二%の物価安定目標というのを日本銀行は導入いたしました。そして、同じ年の四月に、その早期実現を目指して量的・質的金融緩和を開始いたしました。そのもとで、物価の基調は着実に改善してきております。こういった物価情勢の変化も、過度な円高水準の修正に、長い目で見れば貢献したのではないかと思います。

 先ほど来申し上げておりますように、為替レートの短期的な動きというのはさまざまな要因によって左右されますので、常に特定して御説明するというのは難しいと思いますが、そのときそのときの内外の経済情勢あるいは金融市場の動向その他、最近でいうと地政学的な問題とか、いろいろなことが絡んで為替レートは動いていくと思いますけれども、ある程度長い期間をとれば、先ほど申し上げたような購買力平価説の言うとおりに動く傾向はあろうというふうに思っております。

宮本(岳)委員 本当にそういうことなのかということをきょうは論じたいんですね。

 金融政策決定会合のあった一月二十九日正午過ぎですけれども、零時半過ぎに、日銀、マイナス金利導入を検討、こういう臨時ニュースが流れた後、ヘッジファンドなどの投機筋に加えて、決済用ドルを必要とする輸入企業からドル買い・円売り注文が殺到し、円相場は一時一ドル百二十一円と、発表直前に比べて一気に三円近く円安・ドル高が進みました。

 金融政策決定会合では、また黒田総裁自身は、マイナス金利政策の導入がこのような為替相場に影響を与える、円安・ドル高が進むということを想定していたかどうか、いかがですか。

黒田参考人 これも先ほど来申し上げておりますとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは、あくまでも二%の物価安定の目標を早期に実現するために導入したものでありまして、為替相場を目的としたものではございません。

 いずれにいたしましても、為替相場は、経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが望ましいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 では、その後、円安傾向はもちろん続きませんでした。再び円高・ドル安に振れて、現在、一ドル百十二円というところで取引をされております。

 その後、なぜこのように円高が進んだか、総裁はどうごらんになっておりますか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、その時々の為替の動きというのはいろいろな要因によって影響されますけれども、最近の為替相場の動きの背景としては、しばしば、原油価格下落や中国経済の先行き不透明感に加えまして、欧州銀行セクターに関する懸念や米国金融政策の先行きに対する不透明感が強まっているという中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっているというふうに言われておりますし、それはそのように私どもも認識しております。

 そうしたもとで、いわゆる安全資産として認識されている日本円が買われたのではないかと思っておりますが、これも、あくまでも市場の関係者の見方とか、あるいはさまざまな要因が発現した後の為替の動きをフォローしてそういうふうに見ているということであります。

宮本(岳)委員 私は、先ほどもお伺いしたように、このマイナス金利政策というものが為替レートに影響を与えるということは、日銀の皆さん、総裁も含めて、これは御存じないということはなかったと思うんですね。

 マイナス金利を導入しているデンマーク、スウェーデン、スイスでありますけれども、第一生命経済研究所の主席エコノミストの田中理氏は、週刊東洋経済、二〇一六年二月十三日号に次のように書いております。

 マイナスの政策金利を導入したデンマークでは、「欧州債務危機の深刻化により、欧州内でユーロの代替投資先として魅力が増した同国には資金流入が加速、継続的な通貨高圧力に見舞われてきた。資金流入を抑制しユーロとのペッグ制を維持するため、ECBに追随して金融緩和を強化、マイナスの政策金利導入が必要となった。デンマーク同様、通貨高圧力の抑制を目的にマイナスの政策金利を導入したのが、スイスだ。」まさに、デンマークもスイスも通貨高を抑制するために導入したと述べておられるんですね。

 配付した資料を見ていただきたい。日本銀行に作成していただいた資料であります。

 スイスは、安全資産需要が高まる中、スイス・フラン建ての投資に対する魅力を低下させ、為替の増価圧力を緩和するためにマイナス金利を導入したとここに書いていますから、欧州ではまさに為替レートをターゲットにしてマイナス金利政策をやっているということがわかった上でやっておられるんですね。違いますか。

黒田参考人 御案内のとおり、スイスあるいはデンマークといったいわゆるスモール・オープン・エコノミー、経済規模が非常に小さい、しかし大変オープンだというところでは、為替の安定と物価の安定というのがほぼ表裏一体というところが多いわけでございます。もっと極端な例を言いますと、例えば香港などは、ドルに完全にペッグするという形で、為替の安定と物価の安定をほぼイコールに見てやっておられるわけでございます。

 スイスあるいはデンマークが、そういった経済の動向を踏まえて、物価の安定のために為替の安定を狙ってマイナス金利をされたということはそのとおりだと思いますが、この表にもございますとおり、一方、ユーロ圏の中央銀行であるECBは、実際の物価上昇率がインフレ目標を下回る水準に長期にわたってとどまる可能性があるというもとで、中長期の予想インフレ率をインフレ目標にアンカーさせるためにマイナス金利政策を行っておりまして、その旨を対外的にも説明をいたしております。

 日本銀行も、マイナス金利政策を導入いたしましたのは物価安定の目標を達成するためでありまして、この点、ECBと共通しております。

宮本(岳)委員 円安がターゲットでないと幾ら強調されても、その政策を選択すれば結果として円安圧力となると多くの市場関係者が認識していれば、それはもうターゲットでやっていると言われても仕方がないわけですよ。

 週刊エコノミスト、二〇一六年三月一日号、スフィンクス・インベストメント・リサーチ代表取締役の藻谷俊介氏は、「当初から一貫して述べてきたように、アベノミクスの本質は量的緩和を呼び水にした円安誘導であり、それ以上でもそれ以下でもない。円安になれば、企業の円換算の利益は自動的に増えるし、内外価格差に起因するインフレも発生する。」と指摘をしております。さらに、「円安誘導策であることが見透かされ、内外の市場に「通貨戦争」が意識されてしまったのが今回の失敗だった。」とも指摘をしております。

 総裁は、既に通貨戦争が起こりつつある、こういう認識をお持ちですか。

黒田参考人 そうした認識は持っておりません。

 日本銀行の金融政策の目的は物価の安定でありまして、為替レートの水準を目標として金融政策運営を行うことはございません。この点、G20では、金融政策について、各国における中央銀行のマンデート、物価の安定というマンデートと整合的な形で経済活動をサポートするという考え方が共有されておりまして、為替レートについては、通貨の競争的な切り下げを回避して、あらゆる形の保護主義に対抗するという考え方が共有をされております。この点は、昨年九月のアンカラでのG20コミュニケでも明確に示されております。

 したがいまして、御指摘のような考え方は全くとっておりません。

宮本(岳)委員 二月二十四日付ロイターの配信によれば、アメリカ大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官が、日本や中国及びその他のアジア諸国が過去数年にわたり為替操作で人為的に輸出価格を抑えてきたと名指しで批判をいたしました。

 先ほど指摘いたしましたように、日銀が幾ら為替操作をターゲットとしていないと繰り返しても、公然と批判されるほどに通貨戦争の様相を帯びてきております。金融政策により円安や株高を装い、景気回復を演出するにすぎないアベノミクス及び黒田バズーカなどという金融緩和政策は、国民に重大な負担を負わせる懸念が高まってきたわけでありまして、早急に改めることを求めて、本日の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、今回の法案について質問させていただきます。

 ここ連日質問させていただく中で、この二、三回ほどは新聞の軽減税率の話は一切しておらなかったんですが、やはりこの点はどうしてもおかしいと。私も、何も新聞が親のかたきでも憎いわけでも何でもないんです。しかし、国民の皆さんから見ても、どう考えても、電気やガスや水道や携帯やネットも入らないのに、なぜか食品から飛んで新聞だけ入っているこの現状がおかしいという声は大きいですし、私自身も何よりおかしいと思うので、そういった意味で、きょうもこの新聞の話を引き続き、細かいところになりますけれども、おかしい、特に局長答弁をいただいたところで変じゃないかなというところを中心にお伺いします。何も佐藤局長を個人的に恨んでいるわけでもございませんので、その辺、御容赦いただきますようお願いします。国民にとって大事な議論だというふうに考えています。

 そういった意味で、この軽減税率、新聞がなぜ入っているかというと、ずっとさんざん答弁いただいているように、生きていく上で情報媒体として幅広い層に日々読まれているから新聞は入っているんですよというのがネックになっているんですけれども、前回、この日々の判断が、新聞以外は線引きが難しい、公共料金で、水道を入れてしまったらどこまで入れるのか、ガスを入れてしまったらどこまで入れるのかわからないから難しいという答弁があるんです。

 一方で、新聞だけはなぜか明確に切り取っています。週二回以上刊行している、そして定期購読で宅配しているものと、なぜか明確に定義をここだけ切っているんです。

 何で日々読まれているものが週二回以上刊行の新聞なんだというところを局長に、三回前ぐらいの質疑のときに伺ったところ、非常に曖昧な御答弁が出てきました。局長の御答弁だと、二回以降は日々読まれているとぎりぎり判断できるのでと、ぎりぎりみたいなお言葉まで出てきてしまったんですけれども、ぎりぎりという判断基準は一体どういったところにあるんですか、これをもう少し詳しくお伺いしていきたいんです。

 地方紙の例も挙げられていましたけれども、具体的に、客観的に、どういった数字や基準から、この週二回以上刊行するものが日々読まれているという判断をされたんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞が今回軽減税率の適用対象になるわけでございますが、るる御説明申し上げていますような趣旨から対象にしたわけですが、その際、今先生御指摘のように、幅広い層に日々読まれているという点を特に重視いたしまして、一定の発行頻度のあるものを対象にする、こういう考え方でございます。

 具体的には、その典型は恐らく日刊新聞ということになります。毎日ということであります。それを基本といたしまして、そこから、これに準ずる新聞というのをどこまで拾うべきか拾わないべきかということで、日刊という考え方から大きく乖離しない範囲というのはあるんだろうか、そういう問題意識でございます。

 特に地方新聞の場合、全国紙は恐らく日刊だと思いますけれども、地方新聞の場合には必ずしも日刊ばかりではないということもございますので、それの発行状況を調べてみるということでございます。

 新聞はたくさんありますので、全て調べ切れているわけではございませんけれども、一応、例えば百六十ぐらいの地方紙を調べましたら、大体九割弱が日刊紙でございます。それから、週三回、週三回というのは二日に一回という意味でございます、それから、週二回、これは三日に一回、こういうあたりを入れますと、九割をちょっと超えるというぐらいの感じでございます。もちろん週一回というのはございますが、週一回になりますと七日に一回ということになりますので、二日に一回、三日に一回、七日に一回、こういう感じになってきます。

 それで、日刊だけに絞るという考え方ももちろんありますけれども、そこは、毎日か、二日に一回か、三日に一回かというあたりの、そこら辺のところをどこまでカバーするかという考え方だったということでございます。厳格に規定し過ぎても、そこのところは実情に合わないかなということで、週二回、すなわち三日に一回というところをリミットにいたしまして、基本は日刊というところに置いたというのが考え方の流れでございます。

丸山委員 今のお話だと、九割が週二回以上刊行しているから、残り一割は日々読まれていると言えない、そこの論理が飛んでいるんです。

 これまでの御答弁で、水道とかガスはなぜ入らないんですかと言ったら、線引きが難しいとおっしゃったわけですよ。しかし、今回のも非常に線引きが難しいわけですよ。日々読まれているというふうなのが大事だとおっしゃりながら、週二回と明確に切っているわけですね。

 一方で、NHKの受信料も伺いました。NHKの受信料についても伺ったところ、ほかのケーブルテレビとの線引きが難しいと。それこそ線引きしやすいはずです、NHKなんですから。でも、難しいからだめだと。でも、新聞だけ週二回で割っている。

 九割だというのはわかるんですけれども、それがなぜ日々読まれているということに、部分じゃないですよね、その割合が多ければ日々読まれているというわけでは論理的に飛躍していると思うんですけれども、なぜ日々読まれているというのを二回で切ったかというところなんです。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 もともと、軽減税率の適用対象にするに当たり、日々読まれているという形で日常生活における頻度とか重要性というものを捉えましょうという定性的な考え方が基本でございます。ここから先は、地方紙の発行状況であるとか、ある種、社会通念として、どこら辺で切れるかということでございます。

 何度も申し上げますが、具体的に日刊だけに限るということはもちろんあり得ますけれども、実際の生活実感からして、週二回、すなわち三日に一回というような形で実際に読んでおられる方も地方には多くいらっしゃるということも含めて、そこまでなら、先生おっしゃいますように、いわゆる数量に基づく明確な線引きでないという意味においては曖昧性は残るかもしれませんけれども、一つの考え方としてそういう線を引かせていただいているということでございます。

丸山委員 御自身で曖昧だというふうにお認めになっていますけれども、そこはどこまで議論しても多分かみ合わないとは思いますので、まずはこれはおかしいというのは申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、新聞で、生きていく上での情報媒体として幅広い層に買われているというのが非常に大事なポイントだという答弁が財務省からありました。この点、本当に新聞が幅広い層に読まれているのかというのは、私は疑問を感じているところです。

 例えば、NHK放送文化研究所が二〇一一年にやった「二〇一〇年国民生活時間調査報告書」というのがありまして、また、総務省の情報通信政策研究所というところが情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査というのを平成二十六年にもやっていまして、公のところもこういった、どういったメディアがどれぐらいの世帯にどれぐらい読まれているのかというのを調査されているところがあります。

 例えば、放送文化研究所の方を見ますと、十代の男性が新聞をどれだけ読まれているかというと七%、女性で四%です。二十代でも一三%と一五%しか読んでいません。ちなみに、三十代になると二三%、二四%。確かに、上がっていけば、六十代は六八%、六六%、半分以上います。でも、それでも三分の一は読まれていないわけです。十代はほとんど、九割以上、二十代も九割が新聞を読まれていないんですけれども、これでも幅広い層に読まれているという認識でいらっしゃるのか。

 また、購読の度合いを見ても、一番売れている読売新聞でも、世帯数から見たら一六%前後しか売れていません。全部足しても、もちろん重ねて購買されている方もいるんですけれども、四〇%強ぐらいの方、恐らく重ねている方もいらっしゃるのでもう少し少ないと思いますが、世帯数でも四〇%ぐらいの方しか新聞をとっていないんです。

 そして、幅広い層に読まれているとおっしゃいながら、十代は一〇%以下。二十代も九割の方が読んでいない。これを幅広い層に読まれているメディアだとおっしゃることに私はおかしいと思っているんですけれども、これはどうお答えになりますか。

佐藤政府参考人 幅広い層というのをどのように捉えるかということで、先生の御指摘のデータはちょっとつまびらかではございませんのでコメントはできませんが、それぞれの調査には、それぞれの問いかけの仕方とかいろいろあるんだろうと思います。ですから、どういう形のサンプルに対してどうやったかということの状況もよく見ないと、そういう説明の基礎になるかどうか、その辺はちょっと何とも申しがたいというふうに思うところでございます。

 一方、我々として、そうした広く読まれているかどうかについて検討するに当たりまして、手がかりといたしますのは家計調査によるしかないんだろうというふうに思います。

 今回の制度設計の基本は、家計調査にいろいろな限界があるということはわかりつつも、家計の消費の構造でありますとか、そういうものが極めて網羅的に出ておりますし、それから経年的に把握ができるという非常にいい特性がございますので、判断をするときには同じデータに基づいた判断をするのが適切であろうというところに立って見ますと、各収入階級別の支出額というのを新聞について見ますと、おおむね一定の金額の範囲内、二万五千円から三万五千円という範囲内におさまっておりまして、収入の多寡を問わず広く読まれるというふうに見ていいんじゃないだろうかと。低所得者でありましても、その支出額は二万五千円程度となっているということでございます。

 もとより、東京のようなところでは恐らく月額でいうと四千円ぐらい、地方に行けば、発行頻度等の関係もありまして、もう少し低い定期購読料になっているというようなこともあります。その辺、数字が単純に四千円掛ける十二というふうにはならないわけでございますが、平均的に見まして、各年収の層に一定程度の、しかも、ある一定の幅の中で支出されているということをもって幅広く読まれていると一応考えて、今回の裏づけとしているところでございます。

丸山委員 局長、平均なんですよね、その数字は。平均なので、もうわかっていらっしゃると思うんですけれども、平均ということは、読んでいない人も読んでいる人も入って、一緒くたにして、その人数で割っているわけですよ。

 つまり、仮に二人いたとしたら、片方は読んでいなくて、片方がとっていて年間四万六千円払っているとしたら、二人の平均は二万三千円なんですよ。そうしたら、この二つの世帯の合計のどちらにも、幅広い層に普及しているというふうに平均上は言えてしまう。今のデータだとそうですよね。

 つまり、局長、少しごまかされましたけれども、年間で大体四万幾らの額を払わなきゃいけない新聞で、平均を見て二万幾つあるということは、やはり、このほかの数字で見ても正しいとおり、四割ぐらいの世帯の方しかとっていないんじゃないですか。とっている人もとっていない人もいる中で平均をとって、しかも、年間とったらこれぐらいという額よりも半分前後の値段のところで平均が出ているのをもって、家計調査の数字をもって、新聞が世帯に幅広く普及しているというのは、いかにも強引なんじゃないですか。

 いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 低所得者、第一・五分位のところを見ますと、二万五千円というのが支出額でございます。仮に月額四千円というふうに置きましたら、二万五千円を四万八千円で割りますので、二軒に一軒、こういうふうになるわけですが、例えば三千円、そういうふうに置きますと、三万六千円で割りますので、三軒のうち二軒がとる、こういうふうになるわけでございます。

 ですから、おっしゃいますように、平均で見るというのはいろいろな問題はあるわけでございますけれども、一応、全体の、食料品にせよ何にせよ、家計調査に基づきながら、その物品を、逆進性の問題であるとかいろいろなものを判断してきているということも考えますと、一定の信頼性のある根拠になり得るのではないかということで申し上げている次第でございます。

 あとは、それ自体の特別調査をして、本当に何軒とっているかというところまで本来はすべきということかもしれませんけれども、そこまではいたしていないという意味においては限界がありますけれども、少なくとも、こういうものを念頭に置きながら、社会通念として、日刊新聞を中心とする考え方であれば、幅広く読まれるということでも十分説明できるのではないだろうかということで御提案させていただいているというところでございます。

丸山委員 今のお話だと、平均でわかりにくいという話を御自身でもおっしゃっていましたし、社会通念上、これを幅広くと言うのは少し強引なんじゃないかなと思うんです。

 この幅広くというのを少しお伺いしたいんですけれども、今、家計調査でごらんになっているので、所得ベースでの幅広さでおっしゃっていますよね。一方で、お酒、なぜ酒類が今回の軽減税率から除かれているかという話をしたときに、法律で年齢で制限されているというのも一つの要素だとおっしゃいました。十代の方は入っていないのに上が入っているのは不公平だと。普及しているとは言えないという部分だと思うんですが、それはおっしゃるとおりだというふうに思います。

 この新聞も、同じように、十代、二十代というのは、私が申し上げたように低いと思うんです。こういう観点、年代での幅広いというのはそもそも検討されるときに入っているのか入っていないのか、お答えいただけますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ある特定の物品を、どの部分を軽減にするかというような刻み方はできないわけでございまして、全体としてどういう傾向にあるかというつかまえ方をする。しかも、それを、できるだけ同じデータに基づいて、同じような比較の中で判断していくということが必要かと思います。

丸山委員 お聞きになっている方も、本当にけったいな話やと思ってはると思いますよ。お酒は年齢で切るとおっしゃいながら、今回のは、年齢は、別に幅広い層をごらんにならない。そして、水道とかガスとかを入れるときには、それに対してどんどんどんどん広がってしまう、どこで線引きができるかわからないとおっしゃいながら、新聞だけ、日々をなぜか週二回と切ってしまったり、また、今回の幅広いというのも、勝手な、家計調査の平均をとって、数字のマジックがあるのはわかっている、やや曖昧だと御自身でもおっしゃりながら、それに対して適用しているというのは非常におかしなことだと思うんです。

 そういった意味で、もう一つお伺いしたいのは、明確にしておきたいんですけれども、NHKの受信料の話をきちんと細かくお伺いできていなかったので聞いておきたいんですが、このNHK受信料は、新聞よりもきちんと公共性の線引きはできると思います。そういった意味で、また、社会保障全体に与える影響も、恐らく、受信料全体を考えれば、二百億の新聞よりも財源としては何とかなる範囲じゃないですか。それなのにもかかわらず、このNHK受信料が入っていない。

 新聞ではなくNHKをまずやろうと考えない理由について、お伺いできますか。

坂井副大臣 今回の軽減税率の適用対象品目を決めるときに、日々の生活の中での消費、利活用の状況であるとか、消費税の逆進性の緩和、合理的かつ明確な線引き、社会保障財源である消費税収への影響等々を勘案して決めさせていただきました。その結果が、今御指摘あったように、酒類及び外食を除く飲食料品と一定の新聞の定期購読料となっております。

 今後適用対象をこれ以上さらに拡大することについては、特定の物品やサービスのみを対象とすると代替品との間でゆがみが生じること、こうしたゆがみを回避しようとすれば、際限なく対象が広がり、社会保障財源となっている消費税収を減少させるおそれがある等の問題があり、慎重であるべきものと考えている、これが基本論でございます。

 そしてなお、代替品、類似品との競合について、今回、NHK受信料ということで申し上げれば、先ほど御指摘ありましたが、ケーブルテレビの接続料等との関係をどのように整理するか、また、同じくいわゆる公共料金としての性格を有する電気、ガス、水道まで広げるのかなどの問題があると考えております。

 また、NHK受信料ということに関して申し上げますと、この制度が十分かどうかという議論はあったにいたしましても、NHK受信料につきましては低所得者向けの料金の減免制度が既にございまして、これが機能しているということも十分に踏まえる必要があるのではないかと考えております。

丸山委員 確かにNHKは減免制度がありますけれども、これが全てちゃんと網羅できているかというと微妙だと思いますね。何も私はNHKの回し者でも何でもなくて、NHKは最近不祥事も多いのでしっかりしろというふうに思いますし、おかしいというふうに思うんですけれども、しかし、公共性という点ではどう考えても新聞よりもNHKの方が、しかも幅広い層に世帯数で考えても普及しているのに、今回挙げられていない。

 今のお話だと、そもそも論として、これ以上追加するのは社会保障財源上難しいという話が前提でありましたけれども、ではなぜ新聞が入るのか。新聞をのけて、ほかのものを先に入れるという考え方もありますよね。なのに新聞だけ入っているということにはお答えになっていないんですよね。

 さらに、それだけじゃなくて、水道、ガス、ほかの公共料金が入ってくるんじゃないかという話も、新聞だって同じように言えるわけですよ。何で新聞だけ入ってというのは誰もが思うんですけれども、それに対して明確に答えられていないんです。

 そもそも根本論として、なぜ新聞だけ入ったのかということにはどういうふうにお答えになりますか。もう一度根本に戻りますけれども、お伺いできますか。

佐藤政府参考人 累次御答弁申し上げています趣旨どおりでございます。

丸山委員 つまり、生きていく上での情報媒体として幅広い層に日々読まれているからですよね。

 しかし、それは、新聞が入ったことの理由にはなっているかもしれません。私は、なっていないと再三申し上げて、今のお答えも不十分だと思っていますけれども、しかし、ほかのものが入らず新聞だけ入った理由としては私はこれは不十分だと思うんですよ。つまり、比較の観点がないわけです。ありませんよね。

 その比較の観点についてお伺いしているんですけれども、なぜほかのものが入らず新聞が入ったのかという点にはどうお答えになりますか。

佐藤政府参考人 結論的に申し上げれば、考え方の基本は今まで申し上げていますので繰り返しは避けますけれども、そのもとで適用対象品目を選定するということでございます。

 あと、例えばNHKの料金であるとか電気、ガス、水道それぞれを見ていったときに、それぞれの事情というのがございます。確かに、公共料金の中で電気だけ選ぶとかいうのはなかなか考えにくいわけでございます。それは、ガス、水道、NHKとか、公共料金として恐らく全体として考えていく、要するにカテゴリーとして包んでいくとか、そういうふうなことが必要になってくるんだろうと思います。ですから、一つ一つ見ればそれなりの説明を求められる部分があるかもしれませんけれども、そこは、そういうものをくくりで見たときにどう考えるかという視点があります。

 それから、一つ一つの、例えばNHKでいえば、今副大臣から御答弁申し上げましたように、低所得者向けの減免措置があるとか、それぞれございます。それで、低所得者対策というものは、もちろん、今回一〇%に消費税が引き上がることに伴う措置として軽減を入れておりますけれども、軽減税率で全て対応するということには限界があるわけでございまして、例えば、NHKにそういう措置があるならば、そういうものを考えて判断をするとかいうことで、それぞれの判断も、追加的な加味という点もあるんだろうというふうに思っております。

 そのような思考経路を経て御提案申し上げているということを御理解いただきたいと思います。

丸山委員 そのお答えだと国民の皆さんの考えと乖離しているんじゃないかと思います。

 本当にお金、所得が少なくなって困っている場合は、まず新聞をとらないですよ。真っ先に新聞をとりません。しかし、NHKは払わなきゃいけないんですね。確かにNHKは減免措置があります。それはいいとします。では、何が一番困るかといったら、食品の次は水とかガスとか電気ですよ。それは、民間企業で減免等の措置はないじゃないですか。

 そういった意味で、お金がないんだったら、社会保障財源に限界があるというのは確かにおっしゃるとおりです。なので、先に水道だけでもやりますとか、切り方は何ぼでもできる。そして、その中で、国民の皆さんに、今お金を使い過ぎて申しわけない、なるべく絞っていて、次はできるなら電気まで回しますが、今は、この社会保障財源の中で、水道しかできませんというならわかります。しかし、お金がなかったら別にとらなくていいわけですよ、新聞は。それだけ、新聞だけ入ってやっているというところに関して、そういう案を出してきたことに対して非常に憤りを感じますし、国民の皆さんはおかしいと思っていらっしゃると思います。

 どう考えても、与党の中に公明党さんがいらっしゃいますけれども、公明党さんを支援されている団体は新聞を出されています、聖教新聞を出されています。また、どうやらマスコミの皆さんといろいろなお話を政権の幹部の方々がされているんじゃないかという話も出ています。

 そういった中で、こういった新聞だけが入ってくる、特定の業界を応援するというものが入ってきたら、来年度以降の税制改正で、では次は、この間の安倍総理との話でも書籍等を検討してくれという話、検討するかもしれないという話が出ましたが、書籍や雑誌を入れてくれと来ますよ。ほかの団体だって、どんどんどんどん業界団体が来ますよ。

 税制が本当に業界の圧力によって毎回毎回ころころ変わる、そんな税制に今回の軽減税率でなりかねないなと非常に危惧していることを申し上げまして、また来週以降の質疑につなげていきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、麻生大臣、この後御出張ということでございますけれども、最後まで大変にお疲れさまでございます。

 ちょっと、質問に入る前に、今、新聞の軽減税率の件で全く不適切な発言がございました。

 私たち公明党も、特に新聞に軽減税率を適用するということを強く求めてきたという経緯はございません。

 確かに、新聞協会は、野党の方々も参加をしている会合においても各党に対して要請があり、それに対して前向きな発言をされていた方もたくさんいらっしゃるのも事実でございます。それは、業界はそういう要請をするし、一定の理屈がある。

 その中で、ちょっと、先ほどの発言は全く事実誤認、不適切なものでありましたので、後ほど訂正をしていただきますように委員長の方にお願い申し上げたいというふうに思います。

宮下委員長 会議録を精査して、後刻理事会で協議いたします。

上田委員 それでは、きょうは法人税改革についてまずお伺いをしたいというふうに思います。

 現在、安倍内閣におきましては、法人税率、法人実効税率引き下げを計画的に毎年行っているわけでありますけれども、この目的、メリット、効果、そういったことがもう一つわかりにくいという声はよく聞きます。

 二十八年度改正におきましても、法人税の基本税率を、これは大法人に適用されるものでありますけれども、二三・九から二三・四%として、その結果、実効税率が三二・一一から二九・九七と二〇%台になるという改正が行われるわけであります。

 これまでも、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという基本方針に基づいて、毎年課税ベースの拡大をしてきていますので、二十八年度を見ても、全体のバランスからいうと二十億円程度の税収減にはなるという試算でありますけれども、ほぼ税収中立であります。そうすると、マクロ的な効果というのは余りないんだろうな、限定的であるというふうに思います。

 また、内容にしても、この委員会でたびたび指摘をされておりますけれども、大企業の収益というのは既にかなり改善をしてきているので、アフタータックスで見てもかなり資金余裕があって、預貯金も随分と積み増されてきている。これ以上税率を下げても、それが好循環に回る、賃金や投資に回る、そういう効果は本当に限定的なのではないかという声もあります。

 他方、メリットについてもあるというふうに理解しております。やはりグローバルで活動している企業から見れば、これから海外展開を進めるために流動資金が重要であるというのは理解できますし、また、今、国内経済の活性化を図るために対内直接投資の残高を二〇二〇年末までに三十五兆円を目指そうということにしておりますので、それを進めていく上では、やはり実効税率を下げるというのは有効なんだろうというふうには思います。

 今、もう一つ効果がよくわからない部分、そしてメリットもあるだろう、両面のお話をさせていただきましたけれども、現在進めている法人税改革の目的と、それが国民にとってどういうメリットになっているのか、その辺をひとつ、国民目線でわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

坂井副大臣 今回の法人税改革であります法人実効税率の引き下げということが大変有名というかアピールされているところでございますが、同時に、課税ベースを拡大して財源をしっかり確保するということ、また、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革していくということもともに狙いとしております。

 例えば、大法人につきましては、法人事業税の外形標準課税の拡大を行いつつ税率を引き下げることによりまして、稼ぐ力が高い企業の税負担が減り、また、赤字の大法人にとっても、黒字化した場合の税負担の増加度合いが緩和されることから、企業に対して収益力を高めるインセンティブをもたらし、企業が前向きな投資を行ったり、継続的な賃金引き上げを行える体質に変わっていくことが期待をされているところでございます。

 もちろん、このような形で利益を上げたとしても、これをため込むような結果で終わってしまっては意味がないわけでありまして、そうした点は、麻生大臣からも、官民対話や経済財政諮問会議などのさまざまな機会で繰り返し申し上げてきているところでございます。

 それに呼応していただきまして、経済界の側でも、例えば、榊原経団連会長による与党税制改正大綱に関するコメントにおきましては、法人実効税率が二〇%台に引き下げられることを歓迎するとした上で、設備投資等の増大、雇用の拡大、賃金のさらなる引き上げに積極的に取り組みを進めるということでお応えをいただいているところでございまして、今後、企業がこれらの行動を積極的に進めていかれるということを期待もいたしているところでございます。

 今後、実際に経済界のマインドが変わって、そしてそれが実際の行動に結びついていくことで、経済の好循環が確実なものとなり、簡単に言うと、賃金がふえ、仕事がふえて、持続的な国民生活の向上につながっていくということが国民のメリットとして実感をしていただけるのではないかと期待をしているところでございます。

上田委員 なかなか、効果が直接的でないので、わかりにくいという面があるんじゃないかというふうに思います。

 やはり、今、いろいろとこれから働きかけをしていかれるということでございましたので、そこをしっかりと取り組んでいただいて、効果、メリットが確実に目に見えるような形になるように努力をお願いしたいというふうに思います。

 法人税改革の中で、信用金庫とか農協などが上部団体に出資している、それによります配当の益金不算入の割合引き上げについての要望がございます。

 法人税改革では、課税ベースを拡大してきましたので、その一つとして、資金運用のための株式保有については、他の資産運用手段との間での選択がゆがめられることがないよう、持ち株比率五%以下に係る配当の益金不算入割合を五〇%から二〇%に引き下げるというふうに改正をされました。これによって、結果的に、信用金庫、農協などの協同組合組織、こうした組織は上部団体に、信金中央金庫であるとか農林中央金庫でありますけれども、出資をしていますが、その配当が益金に算入されることになりますので、税負担がふえたということになりました。

 こうした上部団体への出資というのは資金運用とはちょっと目的が異なるのは明らかでありますので、こうした団体からそういう意見が出てくるというのはある程度理解できるところだというふうに考えております。

 この点について、財務省の御見解を伺いたいというふうに思います。

坂井副大臣 受取配当等の益金不算入制度におきましては、持ち株比率が低く、会社支配目的に乏しい株式からの配当金などにつきましては、従来から、債券投資といった他の投資機会とのバランスも考慮して、一部のみを益金不算入とするにとどめておりましたけれども、さらに、先ほど御指摘いただきましたように、二十七年度の税制改正において、持ち株比率五%以下の株式からの配当金などにつきまして、益金不算入の割合を五〇%から二〇%へと引き下げるなどの見直しを行ったところでございます。

 これに対して、農林水産省や金融庁から、農協や信用金庫などの協同組合から中央機関、先ほどもありました農林中金や信金中金などに対する出資は通常の株式投資などとは性格が違う、そして、二〇%に引き下げられた益金不算入の割合を再度引き上げてほしいとの要望がなされたのも事実でありますが、二十七年度税制改正で見直しを行ったばかりのタイミングでもございまして、今回の二十八年度税制改正においてはそうした見直しは行っていないということでございます。

 いずれにいたしましても、協同組合につきましては、法人税率が軽減されるなど一般法人とは異なる扱いが既に認められている一方で、事業規模が大きく事業内容も一般法人並みであるような法人もございまして、与党税制改正大綱でも、その実態を検証しつつ、課税のあり方について検討を行っていくこととされております。

 御指摘の点につきましても、そうした過程において引き続き検討を行っていくことになると考えております。

    〔委員長退席、松本(洋)委員長代理着席〕

上田委員 確かに、協同組合といっても規模もさまざまでありますし、その形態ももう本当に多様でありますので、なかなか一概に論ずるのは難しい面があるというのはよくわかります。税率の議論ということになると、今度は中小法人をどうするのかというような議論とも関係してくることでもありましょうし、来年度の改正に向けてさらに議論を深められればというふうに考えておりますので、政府におきましても、今御答弁いただいたような御検討をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、先ほどからちょっとお話が出ておりますが、新聞の件についてお伺いしたいというふうに思います。

 軽減税率の適用対象に新聞を含めることについては、先ほどからも議論があったように、賛否さまざまな意見がございます。一方、諸外国では広く新聞に軽減税率が適用されていることも事実でございます。諸外国では新聞等への軽減税率の適用実態はどうなっているのか、また、改めて、それを適用する意義について御見解を伺いたいというふうに思います。

坂井副大臣 新聞につきましては、ほかの委員との質疑の中で取り上げられておりまして、局長からもるる説明があったところでございますけれども、先ほど御指摘ありました海外ではどうかということでございますが、日本の消費税に相当する付加価値税を導入しているOECD三十三カ国のうちにおきましては、二十六カ国が新聞を軽減税率の対象としているというのが現状、実態でございます。

 委員御指摘のとおり、諸外国においても新聞に軽減税率が広く適用されているものでございまして、やはり多くの国におきましても、新聞というものが国民にとりまして情報媒体として大変重要な媒体であって、軽減税率の適用にすべき、こういう判断をしているということだろうと思います。

上田委員 新聞の取り扱いについては、有識者の中にもいろいろな御意見がございます。適用すべきであるという賛成の意見もあります。

 例えば、斎藤孝明治大学教授は、新聞には大きな公共性がある、社会にとって有益なのではないか、こういうふうに言っております。また、戸松秀典学習院大学名誉教授は、新聞への軽減税率適用は日本の文化を守るための措置だ、こういう言い方もしております。また、片山元鳥取県知事は、元総務大臣でありますけれども、食料品と新聞に適用すべきであるという立場から、体の栄養と心の栄養は両方必要なんだという言い方もされております。また、姜尚中東大名誉教授は、これは未来への投資として必要なんだ、こういう言い方もしている。

 これらの意見、少し手前みそな面も多いし、全てに賛同しているわけではありませんけれども、理解できるという点もあります。

 また、先ほど御答弁があったとおり、EU諸国等においても、例えばイギリスなどではゼロ税率になっているし、その他多くの国でも、大体、標準税率の三分の一から二分の一程度の軽減税率が適用されているところが多いというのがございます。

 もちろん、これらの国では、軽減税率制度が、税率区分ももっと複雑ですし、適用対象もいろいろなものが対象になっていたりするので、一概に、単純に比較するということは適切ではないんですけれども、新聞や書籍については、我が国においては逆進性緩和という目的で行われますが、こうした欧米諸国、ヨーロッパ諸国などでは、知識や文化の課税は軽くする、そうした観点がむしろ表に出ているのかなという感じがいたします。

 今申し上げたとおり、簡単に、単純に比較すべきことではありませんけれども、そういう意味では十分理解できる制度だというふうに受けとめております。

 最後に、厚生労働省にお伺いしたいというふうに思います。

 簡素な給付措置、臨時福祉給付金制度について改めて伺いますが、この制度は、消費税率が五%から八%に引き上げられたときに導入をされ、各自治体、市町村で実施をされております。改めて、目的及びこの給付金の金額の算定根拠を含めた制度について御説明をいただきたい。

 そしてまた、あわせて、非常に素朴な疑問でありますけれども、これは消費税率引き上げに伴う対策であるから本来なら税務署でやればいいんだけれども、何で市町村にやってもらっているのか。この辺、市町村事務としている理由も含めて御説明いただきたいというふうに思います。

    〔松本(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 簡素な給付措置でございますけれども、消費税率の五%から八%への引き上げに伴います低所得者への影響を緩和するため、税制抜本改革法に基づきまして、暫定的、臨時的措置として実施しているものでございまして、平成二十七年度の支給額は一人当たり年六千円でございますが、これは消費税率の引き上げによる低所得者世帯の食料品支出の増加額を参考に設定したもので、厚生労働省ではその支給実務を担当してございます。

 支給対象者は市町村民税の均等割が課税されていない者という仕組みになってございまして、支給事務の実施に当たっては、税務署ではなく、市町村民税の課税、非課税の情報を保有している市町村に御担当いただいている、こういうことでございます。

上田委員 今答弁ございましたけれども、市町村じゃないと給付対象者の正確なデータがない、そのとおりなんだというふうに思います。税務署には納税をしている人のデータはあるかもしれないけれども、給付対象というのはもっと広いので、それはやはり市町村じゃないとデータがない。

 この委員会でもこれまで給付つき税額控除制度についても議論されてきましたけれども、それに当てはめてみますと、国税の納税者は、これは年末調整や確定申告をすれば、もちろんしなければならないんですけれども、還付されることになります。制度設計をうまくやっていけば、納税額を超えるような金額の還付というのも可能にすることもできるのかもしれません。

 しかし、非課税の世帯については、これは当分の間、税務署には何もデータがないわけでありますから、やはり市町村にお願いをしなければならない。今の臨時福祉給付金と同様に、市町村に申請しなければならないというような形なんだろうというふうに思います。もちろん、マイナンバーが定着すれば、もっとその辺のデータのやりとりというのが可能になるんだというふうに思いますが、基本的に、今の行政機構を考えてみると、そこの部分はどうしても国と自治体と両方にまたがる部分なんだろうというふうに思います。

 そういう意味では、その辺は、いずれにしても、またがるややこしい事務になるのではないのかなというふうに感じておりますので、いろいろとこれからまだ議論も続くんだというふうに思いますが、そうした実務のあり方などについても、もっとしっかり明らかにしていかなければならないなというふうに考えております。どうかよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

宮下委員長 次に、助田重義君。

助田委員 自民党の助田でございます。

 本委員会初めての質問でございます。質問の機会をいただきましたことを、委員長を初め委員各位に御礼申し上げます。

 まず、特例公債法と復興財源確保法の一部を改正する法案について、経済成長と財政健全化について質問していきたいと思います。

 二〇一二年の政権交代以降、安倍内閣はデフレからの脱却、経済再生に取り組んでまいりました。アベノミクスにより、企業収益は過去最高、有効求人倍率は二十年ぶりの高水準、昨年の賃金上昇率は十七年ぶりの高水準となるなど、好調な企業収益が雇用、所得環境の改善につながり、それが消費や投資に結びつくという経済の好循環が回り始めております。

 その一方、足元では、世界的なリスク回避の動きの中で、年初来、株価は軟調に推移しており、為替も一時期より円高となっていることも事実でございます。こうした市場の動きに一喜一憂する声もあります。しかしながら、政権交代前と比べ、安倍内閣の三年間で経済指標が大きく改善しているのも事実でございます。

 実体経済は決して悲観するような状況にはないと考えておりますが、現下の経済状況に対する認識と政府の対応について、内閣府にお伺いします。

増島政府参考人 御質問のうち、私から、足元の経済状況について御回答させていただきます。

 我が国の景気の現状については、個人消費や設備投資に改善のおくれが見られるものの、企業収益や雇用、所得環境の改善が続いており、緩やかな景気回復基調が続いていると考えております。

 先生から御指摘のございましたとおり、世界的にリスク回避の動きが世界金融市場で広がる中で、我が国の市場でも変動が見られておりますが、これは、中国の景気減速への懸念、原油価格の低下、米国の金融政策の動向など、海外要因が背景となっておりまして、日本経済のファンダメンタルズは確かなものと認識しております。

籠宮政府参考人 政策対応について簡単にお答えいたします。

 良好なファンダメンタルズを景気回復につなげていくために、政府としても努力してまいりたいと思います。

 まずは、二十七年度補正予算を迅速かつ着実に実施するとともに、二十八年度本予算と関連法案の一日も早い成立をお願いしたいと存じます。

 また、世界経済や市場の動向を注視しながら、G7諸国等と国際連携を深めつつ、日本銀行と一体となって、デフレ脱却、経済の再生に向けた取り組みをさらに前進させてまいりたいと存じます。

助田委員 こうした政権交代後の経済成長により、財政面においても税収が大きく増加し、これにより財政健全化は着実に進んでおります。

 当初は多くの人々が達成困難と思っておりました、二〇一五年度プライマリーバランス赤字半減目標も達する見込みと思っております。しかしながら、財政健全化の取り組みはいまだ緒についたばかりでございます。次は二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化、そしてその後の債務残高対GDP比の引き下げと、取り組みを前進させていく必要があると思います。

 二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化に向けて、これまで安倍内閣の実績がまさに示しているように、何よりもまず経済再生をしっかりと実現していくことが前提になると思いますけれども、強い経済の実現に向けた取り組みについて、見解を内閣府にお伺いします。

井野政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針のもと、経済再生と財政健全化の両立を目指しているところでございます。

 基礎的財政収支の黒字化という目標を達成するためには、社会保障の改革を含めて、歳出の重点化、効率化を進めていくことはもとより、デフレを脱却して日本経済を再生させ、強い経済を実現していくことで税収を今後とも着実に増加させていかなければならないと考えております。

 また、債務残高対GDP比の引き下げのためには、分子である政府債務の拡大を抑制すると同時に、分母であります名目GDPを成長させていくことが重要であります。委員御指摘のとおり、日本経済の再生を果たし、強い経済を実現していくことが財政健全化のためには極めて重要であると考えております。

 こうした考え方のもと、政府といたしましては、昨年の骨太方針で決定した経済・財政再生計画を着実に実行していきたいと考えております。

助田委員 ありがとうございます。

 もちろん、経済成長すれば財政健全化が自動的に達成されるわけではございません。内閣府の中長期試算が示しているとおり、名目三%超の経済成長を実現したとしても、二〇二〇年度において六・五兆円のプライマリー赤字が残るとされており、歳入歳出両面にわたる改革は不可欠でございます。

 特に、歳出の三分の一を占める社会保障分野の歳出抑制が鍵になると考えております。社会保障分野の歳出改革を今後どのように進めていくか、方針をお伺いしたいと思います。

坂井副大臣 今御説明があったような状況の現状でありますけれども、政府といたしましては、二〇二〇年度のPB黒字化に向けて、経済・財政再生計画に沿って経済再生を進めながら、歳入歳出両面から財政健全化にしっかり取り組んでいく方針であります。

 その際、三分の一というお言葉がありましたけれども、既に三分の一を占めて、今後も高齢化等によって伸びが見込まれております社会保障分野の歳出改革は極めて重要だと考えておりまして、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を構築していく必要があると認識をいたしております。

 昨年末には、社会保障を初め約八十の歳出改革項目について、実施そして検討時期を明確にした改革工程表というものを策定いたしまして、もう既に早速その実現に取り組んでおります。

 計画初年度となります二十八年度予算におきましては、後発医薬品の使用促進のためのインセンティブ措置の強化や、大型門前薬局に対する調剤報酬の引き下げといった改革を含む診療報酬の適正化等を通じて、歳出抑制を実現してきております。

 今後とも、この改革工程表に沿って、負担の公平性の確保、公的保険給付の適正化等、手綱を緩めることなく改革を行っていくことで、持続可能な社会保障制度を次の世代にしっかり引き渡す責任を果たしてまいりたいと思います。

助田委員 また、毎年大量の国債発行を行わざるを得ない状況を踏まえますと、財政健全化を進めることは極めて重要でございます。同時に、国債が市場において信認を失うことがないように、適切な国債管理政策に取り組んでいく必要があると思います。

 現在は、日銀の量的緩和、さらには最近のマイナス金利政策の影響もあり、国債の発行環境は良好であると認識しておりますが、こうした環境が今後も続くことを前提とするのは適当ではないと思います。

 市場環境の変化に備え、国債管理政策にどのように取り組んでいくか、方針を伺いたいと思います。

大岡大臣政務官 助田議員にお答えをいたします。

 日本の普通国債の発行残高は二十八年度末で約八百四十兆円に上る見込みでございまして、今後も借換債を中心に毎年大量の国債発行が必要な状況となっております。このため、御指摘のとおり、国債の確実かつ円滑な発行、そして中長期的な調達コストの抑制を図ることが国債管理政策上の重要な課題となっております。

 こうした中、二十八年度国債発行計画におきましては、国債発行総額は全体としては縮小をしておりますが、市場との対話を通じて、きめ細かな年限構成の見直し等による安定的な国債発行の確保を図っているところでございます。

 具体的には、超長期の、四十年債を少しふやす、そのかわり二十年債を少し減らすなどの対応をしております。また、海外金融環境の急変等にも備えまして、国債の買い入れ消却の枠を一兆円程度に設定しておりますほか、十年物価連動債や流動性供給入札の実施に当たりましては、市場環境を踏まえ、柔軟に発行額を調整することとしております。

 今後とも、国債市場の動向を注視しまして、市場のニーズ、動向を踏まえた国債管理政策の推進に努めてまいります。

助田委員 次に、我が国の経済再生の大きな原動力となる地方創生についてお伺いしたいと思います。

 昨年三月、北陸新幹線が金沢まで開業し、富山県や石川県は多くの観光客でにぎわっております。いずれ敦賀まで延伸することで、大阪へとつながる回廊が生まれます。

 こうした地方の発展の基礎となるインフラ整備は大変重要なものであり、私の地元である北陸福井も、今後大きく発展していくことを期待しております。

 同時に、将来の地方創生に向けては、地方がみずからの将来のあり方を主体的に考え、みずからチャレンジしていくことが重要になると思います。

 政府は、今般、地方の主体的な取り組みを支援するため、新たに地方創生交付金を設立いたしましたが、この新しい交付金の特徴と、地方創生にどのように貢献していくことが期待されるかをお伺いします。

大岡大臣政務官 地方創生推進交付金は、現在御審議をいただいております二十八年度予算におきまして、地方版総合戦略に基づく地方創生事業の本格実施に向けて、地方公共団体が取り組む先駆的な事業を支援するために設置したものでございまして、国が合計一千億、そしてそれぞれの地方合計で一千億、合計二千億の事業費規模を予定しております。

 具体的には、それぞれの成果目標、KPIを設定しまして、効果検証を伴うことを要件とし、将来的には、いずれはその事業をそれぞれの地方で自立させていくということを事業の内容としておりまして、対象は、先駆性のある取り組みですとか、あるいは、地方が既存事業の隘路を発見してそれを打開するための取り組みですとか、地方創生の深化、深くするための裾野を広げる取り組みなどを対象としております。

 この交付金が、雇用の創出、人の流れ、町の活性化などに寄与することで、地方創生の深化の実現に貢献するものと期待をしております。

 以上でございます。

助田委員 続きまして、ただいま議題となっております法律案のうち、所得税法等の一部を改正する法案について、主に税制の国際的側面から質問させていただきます。

 グローバルにビジネスを展開する多国籍企業が租税回避を図ることに対し、国際的な批判が現在高まっております。

 報道によりますと、イギリスのスターバックスコーヒーは、税金の安いオランダやスイスといった国にヨーロッパ各国の利益を移転されることで、約四千五百億円の売り上げがあったにもかかわらず、法人税の納付額はわずかに十三億円、売り上げの〇・三%にも満たなかったと言われております。

 各国が厳しい財政事情を背景に国民に負担を求める中、企業は払うべき場所できちんと税金を負担すべきという考え方が、今や国際的な共通認識となっております。

 このような問題意識を見て、税源侵食と利益移転に関するプロジェクト、BEPSプロジェクトが立ち上げられ、昨年、OECDにおいて最終報告書が取りまとめられ、G20にも報告されたところでございます。各国が協調することで国際的な租税回避を効果的に防止することが可能であると考えます。公平な税制を実現し、税制に対する納税者の信頼を確保するためにも、国際的な租税回避には厳しく対応していく必要があると考えております。

 そこで、まずBEPSプロジェクト最終報告書の概要、それから最終報告書を受けた今後のスケジュールについてお尋ねしたいと思います。

坂井副大臣 BEPSプロジェクトについてのお尋ねでございました。

 OECD、G20を中心に、各国が協調して多国籍企業の課税逃れを防止するため、経済活動の実態に即した課税を重視する観点から、国際課税ルール全体を見直したものでございまして、二年に及ぶ議論の末、最終報告書が昨年十月に公表されました。

 この報告書によりますと、複雑な課税逃れに包括的に対応するため、十数項目についてそれぞれ具体的な勧告が示されており、今後は、各国において、それぞれの勧告の実施のための国内法整備が数年かけて行われることとなっております。

 日本においては、こうしたグローバルな取り組みの趣旨を十分に踏まえ、国境を越えた電子商取引を消費税の課税対象にする等の改正を二十七年度税制改正において既に実施をしております。今回の二十八年度税制改正でも一部対応しておりまして、今後も段階的に着実に進めていきたいと考えております。

助田委員 ありがとうございます。

 国内整備は既に開始されているということがわかりました。

 そこで、今国会に提出されている法律案の中で、BEPSプロジェクトにどのような対応を行っているかについてもお尋ねいたしたいと思います。

坂井副大臣 二十八年度税制改正では、多国籍企業グループの透明性を高める観点から、多国籍企業情報の報告制度を国際的に合意されたスケジュールに沿うように整備することとしております。

 この合意されたスケジュールというのは平成二十八年度から適用開始をする。ただ、各国での法制化に当たって、手続上、一定の期間は考慮されることになっております。日本では、平成二十八年四月一日に開始をするということで、今国会、この委員会にお願いをしているところでもございます。

 具体的には、多国籍企業グループに対して、事業を行う国ごとの所得等の各国別の活動状況に関する情報、国別報告事項です、グループの事業概況等のグループの活動の全体像に関する情報、関連者間取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報を求める等の制度を整備することを予定いたしております。

 日本といたしましては、今回の税制改正において、本制度を確実に整備いたしまして、多国籍企業の租税回避に適切に対応してまいりたいと考えております。

助田委員 多国籍企業による租税回避は、時を待ってはくれないと思います。こうした国際的な租税回避を一刻も早く撲滅することによって、真面目に納税している企業が過度な節税を行っている企業との間の条件の不利を克服できると考えております。BEPSプロジェクトの成果については、これを早急に実現する必要があるのではないかと考えます。

 デフレ脱却、日本経済再生のためには、海外に展開する日本企業の後押しが大変重要でございます。政府には、引き続き、BEPSプロジェクトの最終報告書を踏まえ、その実現のための法整備を着実に図っていただきたいと思います。

 さて、ここまで、税制の国際的側面から、デフレ脱却、日本再生のお話をしましたので、同じ文脈で、台湾に関する国内法整備についてもお伺いしたいと思います。

 先ほども申し上げましたが、デフレ脱却、日本経済再生のためには、日本企業のグローバルな展開を後押ししていくことが重要であると思います。しかしながら、日本企業がグローバルに展開すれば、諸外国との間で二重課税となったり、外国当局との間で課税上の紛争が生じたりするリスクが高まります。こうしたリスクを最小限に抑え、健全な国際的投資交流を促進していくことは日本の企業にとって非常に重要であり、租税条約はそのための重要な経済インフラの一つとしてみなされます。

 日本と台湾の関係は経済においても非常に深く、産業界からも、租税条約締結について大きな期待が向けられていると承知しております。台湾との間でこうした重要な経済インフラが構築されることにつき、私も非常に歓迎すべきものと考えております。

 他方で、台湾につきましては、通常の租税条約では見られない民間の租税取り決めと、それを実現するための国内法の整備という形式が採用されています。

 そこで、日台民間租税取り決めを実現するための今回の国内法整備の趣旨及び取り決めの内容についてお伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、台湾との間は、パレスチナとかと同様に、これは国ではありませんので、今やろうとしているのは、これは取り決めであって条約ではない。まず、この点だけははっきりしておかないかぬところなんです。

 その上で、今、日本と貿易をしております、租税条約等々を結んだ結ばないは別にして、世界百九十四カ国の中で、台湾に対する直接投資は、多分十八番か十九番ぐらいで、かなり多い、一兆五千億ぐらいになっていると思っておるんですが、そういう関係にあるにもかかわらず、租税条約というものが結ばれていないという点においては最大の地域であろうと存じますので、この基本的な立場を踏まえた上で、民間によります窓口機関というものをきちんとやっておくべきであろうというのは、これは前々から言われていたんですが、なかなかできなかったんです。

 このたび、日台の間におきまして、日本側の交流協会と台湾側の亜東協会との間で基本的な合意ができ上がったところで、この内容を日本国内でも実施するために、国内法の整備ということをこの取り決めにあわせてやらせていただこうと思っておりますので、日本企業の子会社から親会社への配当に対する台湾からの課税の税率というのが、従来の二〇から一〇に引き下げるということにさせていただきましたり、企業が進出をしております税務当局から受けました課税について、いろいろなことが起きたときに問題が生じた、これを解決するための窓口も、亜東関係協会等々においてやるという取り組みが盛り込まれておりますので、こういったようなことが、今後、日台間をさらに健全に、経済交流に限らず、幅広く発展させていってくれるものと期待をいたしております。

助田委員 日台間の経済交流がさらに発展されることをお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、中山展宏君。

中山(展)委員 自由民主党の中山展宏でございます。

 私のきょうの最大の責務は、三時十分に、予定終了時刻にこの質疑を終わらせて、麻生大臣に滞りなくG20に向かっていただくことだと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、空き家対策にかかわる特別控除について伺いたいと思います。

 これは、坂井副大臣がかねて、自民党の国土交通部会長をしていらっしゃるころから、空き家対策に熱心に取り組んでこられたことを私は拝察させていただいております。

 まず、空き家対策の、空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除制度について、副大臣の方からその思いを込めて、期待される効果また経緯等を御説明いただきたいと存じます。

坂井副大臣 空き家と聞いて、最初は、人が住んでいなくてあいているところというイメージであったので、すぐ引っ越しができる状況か、こう思っておりましたが、大多数の空き家で困っているのは、もう崩れかけたような、誰も手のつけられないようなところも多数あり、そこが一番困っているところだということを改めて部会長のときにも認識をさせていただきました。

 これら空き家の現状につきましては、今申し上げたような周辺の生活環境に悪影響を及ぼし得る空き家の数が、何と年平均六万四千戸のペースで増加しているということでございます。国土交通省から、空き家の発生を抑制するため、今回、税制改正要望が行われてまいりました。

 こうした状況を踏まえ、平成二十八年度税制改正におきましては、空き家の発生を抑制し、地域住民の生活環境への悪影響を未然に防ぐ観点から、空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例を設けることといたしました。

 今回の特例によって、耐震性が低く築年数が経過した空き家、つまり、耐震基準が満たされていない昭和五十六年以前につくられた空き家が放置される状況を抑制するとともに、現行の耐震性能を満たした良質な住宅の流通を促す効果もあると期待をされているところでございます。

中山(展)委員 譲渡所得は、被相続人が取得したその当時の金額をベースにした売買益でございますから、特に昭和五十年代の初頭、これは、今リフォームをされたりまた更地にされて売却をされると、相当な売却益が出ると思います。ですから、それを特別控除ということでありますので、流通の部分でも、空き家がないようにするというインセンティブが非常に働くものと思っております。

 また、租税特別措置でありますけれども、経済の動脈の部分、例えば発展したり生産する、そういった部分に租税特別措置というのも非常に重要ではありますけれども、私は、日本は成熟した社会でありますので、経済の動脈の部分というよりも静脈の部分、撤退をしたり再生をしたり、そういったところにも租特を使って、新たな環境へと導いていくことも非常に大事だと思っております。

 この空き家対策について、流通の面からも少しお伺いをしたいと思います。

 今回の空き家対策で住宅、土地の供給が促されることになります。逆に、需要の方、購入される側の方の需要を喚起することについてどのように対応されていらっしゃるか、伺いたいと思います。

 あわせて、少しお話は飛躍をするんですが、長年、私たちは資産デフレに本当にさいなまれてまいりました。特に株式市場の方は、大臣の前で非常に恐縮でありますけれども、あの八九年十二月末の三万八千九百十五円、時価総額五百九十兆円あったものが、その後二百兆円まで減って、ようやく昨年末にその五百九十兆を超えるところまで参りました。ことしに入って、海外要因で翻弄されているところはございますけれども、かつての時価総額に、往時の時価総額に戻ってきた状況があります。

 その一方で、土地の時価総額は、これは九一年、九〇年あたりだったと思いますけれども、二千四百兆円から二千五百兆円ございました。それがだらだらだらと下がってきて、土地の相場も低迷した状況にあり、一千数百兆円というところが今の時価総額であろうかと思っております。

 もちろん、人口減少の中で土地に対する需要が少なくなってきたということはあろうかと思いますが、株式市場と土地の時価総額の違い、これは海外要因、海外の投資家、外国人投資家が参入したかどうかというところも大きな違いだと思います。

 私たちは、土地資産が育まれるという期待を形成していくこと、これが非常に大事だと思っております。けさ方、前原委員が土地バブルの懸念があるということも御指摘をされましたが、私たちは、土地資産が形成をされていくことも大事だと思っております。

 このような、土地、不動産の資産デフレの今後の対応策についてお伺いをしたいと思います。

海堀政府参考人 お答え申し上げます。

 空き家の活用を含めた既存住宅市場の活性化のために、住宅ストックの質の向上を図ることとあわせまして、良質な既存住宅が適正に評価される環境整備と、既存住宅が安心して取引できる環境整備が重要だと考えております。

 このため、既存住宅に係ります住宅性能表示制度の評価項目にエネルギー消費量等の追加を行うとともに、建物状況調査の結果を買い主に提供することなどを内容とする宅地建物取引業法の改正案を今国会に提出することといたしております。

 また、委員からお話がありました、既存ストックの流通拡大、成長分野への不動産供給につながる不動産投資市場の活性化も極めて重要な課題でございます。

 国土交通省におきましては、関係省庁と連携いたしまして、J―REIT市場の規模拡大あるいは多様化のために税制等の政策措置を講じておりまして、リーマン・ショック時には約二兆円だったJ―REITの時価総額でございますが、現在では十一兆円を超える規模というふうになっております。加えまして、超高齢化社会に対応いたしましたヘルスケア施設などの新しい成長分野への投資促進、あるいは、耐震化などによりまして老朽化した不動産を再生するといった経済社会のニーズを踏まえた取り組みの促進も進めているところでございます。

 今後とも、我が国の経済成長に資するよう、不動産投資市場の活性化に積極的に取り組んでまいります。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 今、中国の方々の爆買いの文脈の中で日本の不動産を取得するという話も出ておりますが、もちろん個人名義での取得に関しては御心配な方も非常に多くいらっしゃると思いますけれども、先ほどおっしゃっていただいたように、REITの市場が、五十三銘柄、十一兆超に今なっているんですかね、そういった過去最大の規模になってまいりました。直接的な投資ではなくて、REITを挟んだ間接的な海外投資家からの投資ということをしっかり促していただきたいと思います。

 それでは、特例公債と国債発行計画についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 JGB、国債市場、国債のマーケットでは、日本銀行のマイナス金利つき量的・質的金融緩和政策の導入によって国債金利がマイナス水準で推移しておりますが、需給が逼迫し、流動性低下が指摘されている状況でもあります。国債の安定消化を今までずっと志向してこられたと思いますが、安定消化というより、むしろ流通が困難である。

 逼迫感をどのように解消していくか、投資家のニーズにどのように応えていくかという観点から、国債市場の流動性維持向上に向けてどのような取り組みをしていらっしゃるか、お教えいただきたいと思います。

坂井副大臣 御指摘の国債市場の流動性の維持向上というのは、中長期的な資金調達コストの抑制にも資することから、大変重要、留意すべき課題の一つと考えております。

 このため、政府といたしましては、市場関係者の声なども踏まえつつ、国債の発行方法等を工夫して流動性の確保に努めております。

 具体的には、平成二十八年度国債発行計画では、発行総額は減額となります。その中で、市場環境に配慮した年限構成等により国債の安定的な発行を確保するとともに、マーケットにおいてニーズが高く流動性が不足している既発債を追加供給する流動性供給入札について、新たに残存一年超五年以下の国債を対象に追加して、国債市場の流動性の維持向上を図ることといたしております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 少し時間が迫ってまいりましたので、二問ほど飛ばさせていただきます。

 財政の信認、国債の信認についてお伺いをしたいと思います。

 大量の国債購入を伴う日銀の金融緩和は、市場関係者から財政ファイナンスと疑われるリスクがあることがたびたび指摘をされております。足元では市場金利が、十年債まではマイナス、四十年債を今週発行しましたけれども一%強という状況で、この状況は、イールドカーブがスティープしているのかフラットしているのかということを議論するよりも、かなり全体的に低い状況になったと思います。

 その中で、政府の資金調達コストが非常に下がっておりますけれども、私、実は、先日財務省の方に、もしマイナス利回りで新発債を発行する場合は、利子はどうなるんですか、クーポンはどうなるんですか、マイナス〇・一%とかそういう利子をつけることもあるんですかと聞いたら、それはないとおっしゃっておられました。

 〇・一%プラスの利子、クーポンをつけて、発行時の発行価格が百円以上、オーバーパーで発行される。ですから、最初にお金を百何円、例えば一億の額面の国債を買われるときには一億を超える金額を出されて、それで利子を受け取りながら、マイナス金利、利回りという形になるということであります。

 こういう状況の中、民間の発行体であれば、資金需要があれば社債をどんどん発行したりとかということをした方がいい状況にあろうかと思いますけれども、いずれにしても、こうした低金利に甘えて特例債を乱発するような財政運営を行えば、市場からは財政ファイナンスと受け取られ、ある日突然市場のセンチメントが変わってしまって、相場が、非常に国債の信認が揺らぐこともあろうかと思います。

 財政法第五条では、日銀の国債引き受けが禁止されておりますが、現在日銀が行っております金融緩和のもとで行っている国債購入が、財政法第五条違反に当たらないことを御説明していただきたい。それからまた、政府は、財政ファイナンスとのそしりを受けないように、今後も財政規律をきちんと確保していく、その姿勢をお示しいただきたいと思います。

坂井副大臣 財政法第五条本文では、日銀の国債引き受けを禁じております。

 これは、戦前戦中に多額の公債を日銀引き受けという手法によって発行したことなどが急激なインフレにつながったことを踏まえ、他の主要国と同様、中央銀行による公債の引き受けを原則として禁止する、公債の市中消化の原則を定めたものでございます。

 他方、現在日銀がマイナス金利つき量的・質的金融緩和のもとで行っている国債の買い入れでございますが、これは二%の物価安定目標の実現という金融政策目的で、しかも日銀みずからの判断で行っているものであること、全てマーケットで流通している国債を対象に金融機関を相手方として実施しているものであることなどから、財政法が禁じる日銀の国債引き受けには当たらないと考えております。

 また、委員御指摘のように、市場に財政ファイナンスとの疑念を抱かれるようなことがあってはならないのはもちろんのことでございまして、安倍内閣は、日銀との連携を強化するに当たって、「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」との方針を共同声明で明確にお示しさせていただいておりまして、金融緩和いかんで財政規律を緩めてしまうというようなことは全く考えてはおりません。

 今後とも、経済・財政再生計画に基づき、不退転の決意で二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化目標に向けてしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 最後に、一問だけ、クレジットカード納付についてお尋ねをしたいと思います。

 これは納税者にとって利便性が非常に高いと思いますが、国が負担する手数料と利用者が負担する手数料がクレジット会社にあると伺っております。あわせて、クレジットカードで納税をされた場合にポイントがつくとも伺っております。最後にそれをお伺いして、終わらせていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のクレジットカード納付を可能にした件でございますけれども、手数料についてのお尋ねでございます。

 二通りございまして、一つは、納税者がクレジットカード会社に支払っていただく手数料がございます。これは、クレジットカード会社が立てかえ払いをいたしますが、それによって納税者の方に国税の支払いの事実上の繰り延べの利益が生じる、それに対する対価性のあるものとして手数料を支払っていただくということでございます。それからもう一つは、クレジットカード会社による国の納付事務自体に要する費用に関して、国からクレジットカード会社に対して一定の事務取り扱いの手数料を支払う、こういう形になっております。

 ポイントはつくということでございます。

中山(展)委員 ありがとうございます。

 麻生大臣のG20での御活躍をお祈り、お願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、来る二十九日月曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十分散会


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