衆議院

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第11号 平成28年3月16日(水曜日)

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平成二十八年三月十六日(水曜日)

    午前八時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    國場幸之助君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    武部  新君

      中山 展宏君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      鷲尾英一郎君    上田  勇君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   厚生労働副大臣      竹内  譲君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    佐川 宣寿君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中山 隆志君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     櫛田 誠希君

   参考人

   (日本銀行理事)     武田 知久君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     瀬戸 隆一君

  福田 達夫君     武部  新君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     井上 貴博君

  武部  新君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

三月十五日

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

同月三日

 消費税一〇%再増税、インボイス導入中止に関する請願(清水忠史君紹介)(第五〇六号)

 同(真島省三君紹介)(第六〇五号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(堀内照文君紹介)(第五三三号)

 同(清水忠史君紹介)(第五三九号)

 同(吉川元君紹介)(第五五九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六五八号)

 同(志位和夫君紹介)(第六五九号)

 消費税の再増税を中止し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(真島省三君紹介)(第五四〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七〇三号)

 同(池内さおり君紹介)(第七〇四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第七〇五号)

 同(大平喜信君紹介)(第七〇六号)

 同(笠井亮君紹介)(第七〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七〇八号)

 同(斉藤和子君紹介)(第七〇九号)

 同(志位和夫君紹介)(第七一〇号)

 同(清水忠史君紹介)(第七一一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七一二号)

 同(島津幸広君紹介)(第七一三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七一四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七一六号)

 同(畠山和也君紹介)(第七一七号)

 同(藤野保史君紹介)(第七一八号)

 同(堀内照文君紹介)(第七一九号)

 同(真島省三君紹介)(第七二〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七二一号)

 同(宮本徹君紹介)(第七二二号)

 同(本村伸子君紹介)(第七二三号)

 消費税率を五%に戻し、増税中止を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第五六〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六六〇号)

 同(池内さおり君紹介)(第六六一号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第六六二号)

 同(大平喜信君紹介)(第六六三号)

 同(笠井亮君紹介)(第六六四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六六五号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六六六号)

 同(志位和夫君紹介)(第六六七号)

 同(清水忠史君紹介)(第六六八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六六九号)

 同(島津幸広君紹介)(第六七〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六七二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六七三号)

 同(畠山和也君紹介)(第六七四号)

 同(藤野保史君紹介)(第六七五号)

 同(堀内照文君紹介)(第六七六号)

 同(真島省三君紹介)(第六七七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六七八号)

 同(宮本徹君紹介)(第六七九号)

 同(本村伸子君紹介)(第六八〇号)

 中小企業増税とインボイス方式導入をしないことに関する請願(真島省三君紹介)(第六〇四号)

 消費税の増税反対に関する請願(真島省三君紹介)(第六八一号)

 消費税増税の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六八二号)

 同(池内さおり君紹介)(第六八三号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第六八四号)

 同(大平喜信君紹介)(第六八五号)

 同(笠井亮君紹介)(第六八六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六八七号)

 同(斉藤和子君紹介)(第六八八号)

 同(志位和夫君紹介)(第六八九号)

 同(清水忠史君紹介)(第六九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六九一号)

 同(島津幸広君紹介)(第六九二号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六九三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六九四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六九五号)

 同(畠山和也君紹介)(第六九六号)

 同(藤野保史君紹介)(第六九七号)

 同(堀内照文君紹介)(第六九八号)

 同(真島省三君紹介)(第六九九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七〇〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第七〇一号)

 同(本村伸子君紹介)(第七〇二号)

同月九日

 消費税増税の中止、税の集め方の抜本的見直しに関する請願(池内さおり君紹介)(第七三五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第七三六号)

 同(志位和夫君紹介)(第七三七号)

 同(清水忠史君紹介)(第七三八号)

 同(島津幸広君紹介)(第七三九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七四〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七四一号)

 同(宮本徹君紹介)(第七四二号)

 同(本村伸子君紹介)(第七四三号)

 同(志位和夫君紹介)(第八一〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八一一号)

 消費税の再増税を中止し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第七四四号)

 消費税の増税反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第八〇五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八〇六号)

 同(宮本徹君紹介)(第八〇七号)

 消費税増税の中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第八〇八号)

 同(宮本徹君紹介)(第八〇九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明させていただきます。

 政府は、最近における内外の経済情勢等に対応するため、関税税率等について所要の改正を行うほか、税関における水際取り締まりの強化、貿易円滑化に係る税関手続の改善等のための規定の整備を図ることとし、本法案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、平成二十八年三月三十一日に適用期限が到来をいたします暫定税率等について、その適用期限の延長を行うことといたしております。

 第二に、不正競争防止法に規定する営業秘密侵害品を、関税法上の輸出入してはならない貨物に追加することといたしております。

 第三に、認定事業者のうち輸出入者及び通関業者等について、いずれの税関官署に対しても輸出入申告を行えるようにするほか、通関業者の業務を各税関の管轄区域内に制限する規定を撤廃する等、通関業制度について所要の見直しを行うことといたしております。

 そのほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。

宮下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長佐川宣寿君、理財局長迫田英典君、経済産業省大臣官房審議官中山隆志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 おはようございます。民主党の鷲尾でございます。

 関税法の改正ということでございまして、私は、税関の現場、大変今業務も多種多様そして大量になってきてございますので、そのことを中心に質問させていただきたいというふうに思います。

 昨年、当委員会でも質疑が行われまして、昨年の四月から、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する指定薬物、いわゆる危険ドラッグでございます、これが関税法上の輸入してはならない貨物に追加されております。この危険ドラッグでございますけれども、税関における摘発件数が随分とふえているというふうに聞いております。

 新たに昨年から指定されたということで、その業務量あるいはその摘発の状況、どんな現状になっているかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がおっしゃいましたように、昨年二十七年度の関税法改正におきまして、指定薬物を関税法上の輸入してはならない貨物に追加をいたしました。これによりまして、指定薬物の密輸入に関税法上の重い罰則を適用することが可能となったわけでございます。

 それで、関税法改正前の指定薬物の場合は、摘発というよりも発見件数でございますが、発見件数、改正後の摘発件数、両方比較しますと、平成二十五年度、二十六年度の改正前の発見件数は、それぞれ約七百件でございました。関税法改正後、昨年の二十七年四月から年末十二月までの摘発件数でございますが、約千五百件と増加をしているところでございます。

 指定薬物の摘発が増加したことに伴います業務量の増加でございますが、定量的に示すということは困難ではございますが、指定薬物の摘発がこれだけ増加しておりますので、指定薬物を分析するという作業もございますし、犯則調査に係ります業務が増大しているということもございまして、業務量が増大しているところでございます。

鷲尾委員 今の局長のお話ですと、もう倍を超えているということでございますね。加えて、倍の量を摘発されているということですから、それにかかわる調査ということになりますと、さらに業務量は大変な状況になっているんじゃないかと、こう推測するわけでございます。

 この指定薬物に限らずそうですが、やはり、水際でいかに国内に違法なものを入らせないかということが基本的に極めて重要な政府としての措置だというふうに思っておりますが、そういう意味で、新たに指定されたこの指定薬物だけでも相当な業務量がふえているというふうに考えます。

 この点、税関の体制をいかに整備充実をしていくかということが必要になってくるかと思いますけれども、この点につきまして大臣から御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは鷲尾先生、御指摘のありましたように、これまで税関においても、水際におけますいわゆる指定薬物の的確な取り締まりのために、必要な職員の増員とか予算の手当てをしてきたところでもあります。

 今後とも、限られた定員、予算事情のもとで、効率化を図りながら、この指定薬物の摘発に必要な体制準備を進めてまいりたいと思っておりますが、二十七年度の定員の査定で五十五人増でふやさせていただいて、二十八年度の定員査定においても五十三名の増員というものをさせていただいているところであります。

鷲尾委員 今後の見通しもあろうかと思います。これだけ急激にふえているということに鑑みまして、入ってしまってはどうしようもないので、マンパワーが犯則調査は大事だと思いますので、ぜひ、それを踏まえて御対応いただけたらというふうに思います。

 危険ドラッグもそうなんですけれども、危険ドラッグも含むといいましょうか、危険ドラッグは去年指定して、それで物すごく業務量がふえた。従来からの、いわゆる覚醒剤を初めとする不正薬物についても、相変わらず、最近もいろいろな各界での覚醒剤の事件というのは相次いでおるわけでございますが、やはりこういったものが入ってきているということ自体が、大変憂慮すべき事態だろうと思っております。

 先ほど大臣もおっしゃったとおり、水際でどうとめるかというところが大事なわけでありまして、覚醒剤事犯並びに大麻や麻薬等、この水際の取り締まりという状況の中で、これはどれぐらい今の現状はどうなのか。また、新たに金の地金の密輸事件も大変ふえているというふうに聞いておりますので、ここのところの状況もお聞かせいただきたいと思います。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず不正薬物全体のことでございますが、危険ドラッグが対象になりましたので件数は大変多くなったというのは先ほど申し上げたとおりでございますが、それ以外のところでも、不正薬物全体の押収量で、平成二十七年で約五百二十キログラム、昨年比、減少はしておりますけれども、五年連続で五百キログラムを超えているという状況でございます。

 中でも、今先生がおっしゃいました覚醒剤でございますけれども、覚醒剤の密輸の摘発件数が平成二十七年で八十三件、押収量におきまして四百二十二キロということでございまして、前年比では若干減少しておりますが、やはり覚醒剤というのは、不正薬物全体の押収量の中では約八割を占めておるというところでございまして、我が国で乱用される薬物の主流というのが覚醒剤という現状でございます。

 一方、先生御指摘の金地金の話でございますが、金地金の密輸事件の摘発件数でございます。平成二十六年が百二十件、平成二十七年が四百六十三件というふうに増加をしているところでございます。

 摘発後の取り扱いを申し上げますと、金地金の密輸事件を摘発しますと、まず、その金地金を押収いたします。押収した上で、犯則嫌疑者から事情を聞きまして、罰金の相当額及び本来納付すべき消費税を納付させて行う通告処分、あるいは、もう情状が悪質であるというならば、まさに検察官に告発を行うということをしているところでございます。

鷲尾委員 覚醒剤の件ですけれども、最近のその生産量というのは非常に世界全体で伸びているそうでございます。二〇〇八年で二十四トンだったものが二〇一二年には百十四トンまで、世界の覚醒剤の生産それから摘発というのはどんどんふえている一方だと聞いております。

 それがいつ日本に来るかわからないということで、先ほど局長おっしゃったように、若干ちょっと減っているということなわけでございますけれども、いつまたふえるかわからないというところで、従来からの取り締まりというのも、決して緩んではいけないというところでございます。

 ですから、新たな危険ドラッグが出てきました、あるいは金の地金もふえているということでございますけれども、こっちもふえました、では人員を、こっちは減ってきたからという形で、既存のものを少し人員を抑えて、新しくふえてきたものに対応しようということができるかというと、今申し上げたように、大変世界全体で生産量もふえているような、あるいは摘発量がふえているような覚醒剤という取り締まりについても、これはもう体制として薄めることは全くできないという状況だというふうに認識をしております。

 また、今ほど指摘をいたしました金地金の密輸事件はかなりふえているという認識でございますけれども、これはなぜふえているかというと、消費税の部分も起因しているんじゃないかというふうに思っております。益税目当てということなのかなと思っておりますが、これはともすれば、消費税率が上がるということになりますと、さらに入ってくる可能性がふえるのではないか。

 何か税関の今の状況は本当に大変なんじゃないかな、調べれば調べるほど、水際対策はかなり今厳しい状況に立たされているんじゃないかなというふうに思っておりまして、この点、大臣どうお考えかということもお聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 おっしゃるように、大幅にふえております。

 平成二十六年は百二十件、平成二十七年が四百六十三件と間違いなくふえておりますが、これは過去二年間のいわゆる金の地金の密輸入の摘発件数の数なんですが、これを取り締まるために税関といたしましては、これは、いわゆる金地金の密輸のリスクの高い旅客というのは大体見当のつくところがありますので、そういった旅客を事前に選定して、いわゆる金属探知機等々の検査機器等々を活用して、検査をさせていただいているんです。

 今、鷲尾先生おっしゃるとおりに、消費税というものを払わないで買えるところがありますので、買っておいて、それを日本に持ってきて、金の相場というのは今一オンス幾らですかね、千二百ドルちょっとだと思いますが、そういったようなものを買っておいて、日本に持ってきて、今度は消費税込みで売るということになると、黙ってそこは差額が八パーだ、一〇パーだ、もうかるというところが目をつけられるところなんですが、こういうことに関して密輸件数の増とのかかわり合いというのは、一概にそれがとは今は申し上げられませんけれども、利幅が大きくなってきているであろうなということは容易に想像がつくところではありますので、いずれにいたしましても、この点につきましては、引き続き厳重な注意を払っておかねばならぬ大事なところだと思っております。

鷲尾委員 摘発件数が急増しているということは、多分、その前の状況からうまみを感じている人たちが大変多かったということだと思うんです。

 つまり、皆さん頑張っておられるんだけれども、体制がそこに追いついていないから、徐々に徐々に体制が整備されて、いろいろ税関での経験も蓄積されて、それで少しずつ件数が上がってきているということなので、それで、今大臣はどこまでの因果関係がというふうにおっしゃいましたけれども、利幅が、利幅という言い方がちょっと適切かどうかわかりませんが、少なくとも相当ふえそうだなという感じも常識的にはいたしますね。ですから、人をどうやってやりくりしていくんだろうなと思うんです。

 必要な体制の整備と一言で大臣はおっしゃいますけれども、いろいろな技能を習熟していくというのもやはり人ですし、それをどんどんふやしていくにしても、それを組織として浸透させなきゃいけないということもありますから、そういう意味でも、皆さん方にかなり気を引き締めてかかっていただかなきゃいけないんじゃないか、こう思っております。

 その人の話ですけれども、ちょっと質問を先に進めたいというふうに思っております。

 訪日外国人観光客が爆発的にふえているということで、政府ももちろん、観光立国として訪日外国人旅行者数二千万人の目標ということを立てておられて、そして、その二千万人の目標ももう既に視野に入っているんじゃないか。二〇二〇年でたしか二千万人という目標だったと記憶しておりますけれども、これがもう前倒しで達成寸前に今至っているというのが現状ではないかと感じております。

 そうしますと、この二千万人を前倒しで達成しそうになっているときに、では、水際で取り締まっているいろいろな犯罪の状況、密輸の状況というのは、お聞きいたしますと、密輸の九割が外国人がかかわっているというふうに聞いておりまして、そうしますと、外国人旅行者がふえればふえるほど、これまた密輸の事案も比例的にふえてしまうことが予想されるわけでございます。

 もちろんそれは政府もわかっておられて、全国の税関において旅行者の増加に対応する要員を二〇二〇年までに、これは財務省が公表している話ですけれども、約七百人くらいまで増員する必要があると試算をされているそうでございます。

 ただ、税関の定員ということでいきますと、先ほど大臣が若干増員をしているということをお述べになっておられますけれども、全体の定員ということでいきますと、平成二十六年度が八千七百三十四人、平成二十八年度が八千九百六十二人ですから、二百二十八人の増員しかなっていないということでございます。しかし、外国人旅行者数二千万人は、もう前倒しで達成することがほぼ明らかになっているという状況でございます。

 となると、今の三段論法じゃないですけれども、密輸事案の九割は外国人、外国人旅行者はどんどんふえている、政府の目標は二〇二〇年で目標を立てているんだけれども、その二千万人に対応する定員増員の目標を今約七百人と立てている、しかしそれが前倒しになっている、では、それに対応する定員の増員があるかというと、現状なっていないというのが今現下の状況じゃないか。

 しかし、今までの既存の人員をこれまでの質疑のようにやりくりをしてしまうと、どこかしらまたふえてしまうということになってしまうわけですよね。そこなんです。

 そこで、これは具体的に大臣に御答弁いただきたいんですけれども、今はもう前倒ししているという状況ですから、これはもう水際対策が極めて重要と大臣がおっしゃっています。どれぐらい増員をしていくべきか、大臣、明確にお答えいただけるとありがたいんですけれども。ここまで明確な話はないですから。

麻生国務大臣 これはもう鷲尾先生おっしゃるとおりに、大体二〇二〇年のオリンピックの年に二千万人ぐらいになるんであろうと目標を立てたときに八百万人ですから、その当時の国内の訪日観光客は。飛躍的にふえて、一千九百七十四万人が去年です。ことし一月段階でもう既に百何十万人というので、史上最高。過去一月で一番多かったのが今年一月ですから。

 そういった意味では、めちゃくちゃにふえておりますのは、予想以上の伸びでふえてきているというのは確かでありますので、これは当然のこととして、先ほど申し上げましたようないろいろな指摘のありますのは御存じのとおりなので、私どもとしては、これまでになく税関の職員というのは、これはかなり偏った職業で、それだけをやるわけですから、そういった職業をやることになりますので、これは、ほかのところの職種から引き抜いて、ちょっとおまえやれというような種類の仕事じゃありませんので、そういった意味では、これはかなり特殊な仕事ということも考えた上で、私どもとしては、破格ではありますけれども、二桁を超えて三桁の増員というのを二十七年にやらせていただいて、百四十人だったかな、何かやらせていただいたり、二十八年度の予算でも百四十人一挙にふやすような形をさせていただいて。

 例えば福岡というところは、韓国、中国に近いものですから、お見えになる方が多いんですが、クルーズ船なんていうのはむちゃくちゃなことになっていまして、博多に来られると上海弁、広東弁が博多弁よりは通じているぐらいに物すごいんじゃないでしょうかね、今は現実問題として。北京語よりは上海語、広東語ですな、この間聞いていましたら。とにかく、もうむちゃくちゃな数です。ちょっと想像を絶するぐらい、別の国じゃないかというぐらい、船が着いたときにはずらっとあらわれますので。

 そういったような形になっていますので、私どもとしてはこれに対応しなくちゃいかぬというのでやっておるんですけれども、問題は、板付空港とか博多港じゃなくて、みんな佐賀におりていくんですね、すいていますから。佐賀空港にチャーターで。佐賀に国際線なんか予定していませんから、そうすると、佐賀にいきなりCIQ、カスタム、イミグレーション、クアランティーン、いわゆるそれをごそっと板付からそこに移動させて、やって、またこっちに戻さないかぬというようなこともやったりして、ちょっと過剰労働になっていることは確かなものですから、ここのところも対応しないととてもできませんので、そういったことも含めまして、今いろいろな対応をやらせていただいております。

 これが今後ふえていくか、こんな爆買いなんて、そんないつまで続くんだという説も確かにありますが、ちなみにフランスなんかを見ていますと、人口が七、八千万で観光客が八千九百万ですから、そういった意味では日本で一億五千万人が来てもおかしくないという計算になりますと、これはとてもじゃないということになりますので、対応としてはいろいろなことを今後とも考えていかないかぬと思っております。

鷲尾委員 これはやはり大変そうですね。私は大規模空港の職員の配置を特にまたちょっと質問しようかと思ったんですけれども、今の大臣のお話ですと、大規模な空港以外でも大変な状況になる可能性があるということで、どれぐらいの人員をふやそうというおつもりなんですか。そこを一言。

麻生国務大臣 これは鷲尾先生、おかげさまで、文句が多かった民主党の時代に、いわゆる地方空港なんか、赤字なんかやめろとかいうごんごん御意見があった。今、地方空港はみんな黒字です。佐賀空港、静岡空港、みんなもう、羽田におりられないから、成田におりられないから、板付におりられないからといってみんなそっちに来ちゃうものですから、チャーター便でお見えになりますものですから、そちらの方が黒になった。決して悪いことではありませんけれども、それに対応する人数というのは、正直、ここに百人、ここに三十人、ちょっとなかなか今の段階で申し上げる段階ではありませんけれども、これは緊急に対応しない限りは、治安の維持の上からも、いわゆるそういった密輸等々の対応の点からも、これはいろいろなことを考えて、別につくらないかぬということを今研究させていただいております。

鷲尾委員 今、大臣の危機意識も若干うかがい知ることができました。相当その量をふやさなきゃいけないという、その現状の認識であるということだと思います。

 また、税関が対応能力として劣ることがないようにというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いします。

 ただ、今までの話だと、量をふやしていくということですね。ところが、量をふやすだけではこれはもう足りない話でありまして、やはり専門的な技術でございます。これに特化してやっていただかないと実際密輸を見抜けないという職業的なその性質がございますので、そうすると、特化したものというのをつくっていくということになりますと、かなり職員が大量にふえるということは、さらに皆さんに底上げしていっていただかなきゃいけないというふうに思っております。

 そうしますと、税関の皆さんの教育、研修という部分も、量に比例して質をいかに担保するか、さらに苦労しなければいけない話なのではないかというふうに思うんです。

 ですから、必要な定員だけではなくて、その教育、研修の充実であったり、並びに、機械によってうまく業務をサポートするという意味でも、定員だけではない予算がまた必要になってくるというふうに思うんです。

 この点につきましても大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 まず鷲尾先生、定員からですけれども、平成二十七年度中におきまして、訪日外国人増加に対応するために、税関だけでプラス七十六人の緊急増員を実施させていただいております。二十八年度におきましても、税関定員をさらに五十三人純増ということにさせていただいておるんですが、研修につきましても、これはかなり高度な専門性を有しておりますという御指摘のとおりなので、そういったことも重要だと考えております。

 税関は研修所がありますので、研修所において、新規採用職員に対する研修とか、いわゆる役職別の研修を実施するのは当然なんですが、取り締まりのいわゆる技法は、かなり巧妙になってきているのは昔ともう全然違いまして、単純な手口じゃありませんので、そういった意味では、情報分析などの専門研修を実施させていただいているところですが、いわゆる検査の機器、機械というものにつきましては、平成二十八年度の予算におきましても、治安対策経費として百二十一億円、前年度比プラスの一割、約十何億になりますが、を計上させていただいているところです。

 今後とも、この取り締まりに当たりましては、機器やら何やら、とにかく一回、香水に見えるけれども、別に入れるとぱっと分解して麻薬に戻りますみたいなものやら何やら、もう物すごく巧妙になってきていることは事実でありますので、そういったものに対応するべく、機器等々も考えないかぬということになってきているのは事実だと思いますので、検討させていただいておく、常に心構えをしておかねばならぬと思っております。

鷲尾委員 質の確保ということもぜひお含みをいただいて、御対応いただけたらというふうに思います。

 今回の法律の改正では、営業秘密侵害品というものを、経産省の不正競争防止法の改正によりましてこれを輸入禁止の指定をするわけでございますけれども、これもかなり専門的な話でありまして、この営業秘密侵害品、これは現場でどういう対応になっていくんだろうな、あるいは、不正の輸出入が行われたときにタイムリーにこれは取り締まっていかなきゃいけない、そのタイムリーさということも大事だなというふうに思うんです。

 今申し上げている現場の状況から、さらにこういうものが加わるということで、政府としてどう対応しようと考えておられるのかということを質問したいと思います。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃったとおりでございまして、営業秘密侵害品、今回の法改正で水際取り締まりの対象にしようというふうにしておるわけでございますが、そのためにも、税関の現場では、その侵害の該否を迅速、適正に判断、確認できる仕組みが必要だというふうに考えております。

 何もそのエビデンスがなければ、不正競争防止法の保護を受けることができる者や物品が必ずしも明確でないような事案も想定されるところでございます。

 したがいまして、経済産業省との議論をいたしまして今回の関税法の改正でございまして、経済産業大臣が、営業秘密を侵害された者の申請に基づいて、まずは、税関の水際取り締まりの対象となる営業秘密不正使用物品及び輸出入するおそれのあるものが営業秘密不正使用物品であることを知っている者という、その二つの要件を認定する制度を導入いたしまして、営業秘密を侵害されたものは、税関へ差しとめ申し立てをする際に、経産大臣による認定内容が記載された書面を提出するという仕組みになってございます。

 したがいまして、この仕組みを使いますと税関の水際取り締まりの対象となる営業秘密侵害品が明らかになりますので、税関の現場で迅速、適正に判断、確認することが可能になるというふうに思います。

 今後とも、経産省とよく連携して、迅速、適正な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。

鷲尾委員 不正輸出入をとめたいというそのニーズにどう応えるかというところだと思いますので、それは、今は連携していくということでしょうけれども、現場で混乱のないようにお願いしたいというふうに思います。

 それから最後の質問でありますけれども、今回の法律で、輸出入申告にかかわる若干の規制緩和をしております。いわゆる認定事業者はその管轄の税関以外でも申告を行えるという形で選択肢がふえたというふうに認識をいたしておりますけれども、若干の規制緩和がされているということであれば、逆に、認定事業者になる際の基準でありますとか、あるいは、認可を受けた後の管理監督というのをやはりある程度高めていかないと、通ってしまったらそれで十分だということになったらどうかなというふうに思っておりますので、この点はいかがでしょうか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がおっしゃいましたように、今回の申告官署の自由化につきましては、輸出入に関する業務を適正かつ確実に遂行する能力を有する者として税関長の認定を受けたAEO事業者が、それができることになってございます。

 それで、そのAEOの認定の審査に際しましては、事業者のコンプライアンスを確保する観点から、過去三年間の関税法等の法令違反の有無をまず確認します。それから、貨物のセキュリティー管理、あるいは税関手続に関する事項が、その事業者の法令遵守規則という部内の規則にきちんと定められているかというものもきちんと書面で確認しまして、その上で事業者の施設に赴いて実効性を確認しているというのが、まず事前の審査でございます。

 その後、認定した後も定期的にAEO事業者に監査を実施して、きちんとコンプライアンスが維持されているかということを確認しているところでございますので、今後とも、AEO認定の審査、事後監査に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

鷲尾委員 大臣、本当に今税関の現場は大変だなというふうに、調べれば調べるほど、そう思います。

 水際対策の重要性と現場の今の状況を踏まえまして、本当に全力で体制を整備されることをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 おはようございます。維新の党、落合貴之でございます。

 民主・維新・無所属クラブの持ち時間の範囲内で、関税定率法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 まず、今回の改正の六本柱の一つ、営業秘密侵害品の輸入してはならない貨物への追加について、先ほど鷲尾委員も少し触れましたが、お伺いをさせていただきます。

 これは、昨年、不正競争防止法の一部改正案が国会を通ったことに関連するものです。私、そのときの経産委員会の審議にも参加していましたので、それを踏まえて何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず、ここに規定している貨物の輸出入者とは何を示しておられるのでしょうか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 営業秘密侵害品に関する輸入者のお話でございますが、不正競争防止法におきましては、営業秘密の不正使用により生産されたものを、そのことを知っている者が譲渡、輸出入等をする行為が規制されているところでございます。

 したがいまして、その行為に係る物品が営業秘密侵害品でありまして、当該物品を輸入する者がまさに営業秘密侵害品の輸入者ということに定義されているわけでございます。

落合委員 では確認ですが、通関業者はこの中には入っていないということでよろしいですね。

佐川政府参考人 通関業者と申しますのは、各税関長がその許可をして出している者でございまして、今おっしゃったように、この営業秘密侵害品の輸入者ということには当たっていないということでございます。

落合委員 それでは経産省に伺いますが、ここに二つの判断が求められている。まず一つ目が、その貨物が営業秘密侵害品であること、それから二つ目に、その貨物の輸出入者が営業秘密侵害品であることを知っていること、この二つが判断されなければなりませんが、これはどのような基準で判断されることになっているんでしょうか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一つ目の、営業秘密の不正使用により生じたものであるかどうか。具体的な場面によると思いますけれども、例えば、営業秘密が不正に流出していることを示すような送信ログ、記録のようなものが残っているかどうか。

 あるいは二番目の、営業秘密侵害品であることについて知っていたか、あるいは、知らなかったことについて重大な過失があるかどうかということにつきましては、例えば警告書が事前に届いていたとか、そういった事実があるかどうかということを丁寧に調べ、判断をしてまいりたい、かように考えております。

落合委員 それでは、これが営業秘密不正使用物品であることを知っている者が輸出入することを事前に認定する申請手続をすると思いますが、それはどのような具体的な手順を踏むんでしょうか。

中山政府参考人 先ほど、関税局長の方からも御答弁ございましたけれども、営業秘密を侵害されているおそれがある者の方から申し立てがある場合がございます。そのような場合は、先ほど私が御説明申し上げましたような、営業秘密を不正に使用して生じたものであるかどうか、あるいは知っていたかどうかという申請をしていただきまして、それを指します資料とともに経済産業省の知的財産政策室の方に申請をいただくということになります。

 以上の手続とか、どのような書類が必要になるかということにつきましては、法案成立を目指して経済産業省令を整備し、周知を図ってまいりたい、かように考えております。

落合委員 わかりました。

 法案が通ってから施行日が四月一日になっていますので、かなり日にちが迫っているということで確認をさせていただきました。

 具体的に判断をするとなると、役人の方だけでは難しいと思います。恐らく外部の弁理士、弁護士等もかかわってくると思いますが、これは予算はそのために必要だと思いますが、どうなっていますでしょうか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、きちんと営業秘密侵害品であるかどうかについて判断をしていくためには、例えば大学の教授などを含めた学識経験者ですとか、弁護士、弁理士の方々などにも、必要に応じて意見を伺ってまいりたいと思います。

 これまで、水際規制の対象となっている不正競争防止法違反物品というのは既にございまして、そこでも必要に応じてこうした外部有識者の方々には、例えば謝金をお支払いするなどの手当てをしてまいりました。

 こうした既存の枠組みで基本的には対応できるのではないかと現時点では考えております。

落合委員 それでは、これは既存の省内の担当の課が対応して、それで、外部の組織は特に新たには設けないということでよろしいですね。

中山政府参考人 そのとおりでございます。

落合委員 これは、昨今調べてみますと、やはり、日本企業からの大型の技術流出事案というのはかなり顕在化が相次いでしております。こういったことに対応することは大変なことではありますが、今回の法律の中身を見て考えてみましても、この営業秘密侵害品というものは、多くが、見てすぐわかるようなものではないというふうに私は考えました。

 にせもののブランド物のバッグだったら、見てみますとすぐはっとするものがあると思いますが、図面が盗まれたですとかデータが盗まれた、製造技術だというようなことを、見た目で、水際で判断するというのは非常に難しいものがあると思います。それから、専門分野に及んでいますので、手続もいろいろと煩雑になる可能性もある。専門家の判断を仰ぐに当たっては、時間もかかってしまう可能性も高い。

 したがって、実際に実効性を持って機能させるというのはいろいろと試行錯誤をしなければならないことが考えられますので、やはり、これは施行してからが重要な事案であると私は考えております。施行してからいろいろと問題が出てきましたら、私もまたここで取り上げさせていただきたいと考えております。

 それでは続きまして、業務改善命令について伺わせていただきます。

 通関制度の見直しに関しまして、今回、業務改善命令等が新設されます。何で、そもそも今まで業務改善命令という仕組みがなかったんでしょうか。

坂井副大臣 まず今まででございますが、通関業者の通関業務に問題がある場合には、通関業法第三十八条、これは「報告の徴取等」という項目でございますが、この三十八条に基づく報告徴取、質問、検査により、原因の究明や再発防止策等について指導を行ってきておりました。

 さらに、通関業法や関税関係法令に違反する行為があった場合や通関業者の信用を害するような行為があった場合には、戒告、業務停止及び許可取り消しの処分を行ってきているところでございます。

 しかし、昨今、EPA、経済連携協定等の進展が大変ございまして、通関手続をめぐる環境の変化、要は、数も多くなりましたし複雑にもなってまいりました。通関業者の行う実務が複雑化、多様化してきておりまして、これに対応するものと考えております。

 今回は、通関業者の業務が適正に行われていない場合には、その業務を早い段階でその是正を促す必要がございますので、今までは指導と処分という二つでやってまいりました。処分の一番軽い戒告という処分がございますが、今回、その戒告という処分を廃止して、指導と処分の間的な意味合いで業務改善命令にかかわる規定を新設する、現状に合わせて対応させていただいたということでございます。

 なお、他の業法においても、同様の定めに基づいて業務改善を命ずることを可能としているということが一般的であるということもつけ加えさせていただきたいと思います。

落合委員 今まで、報告の徴取をして、それに対して処分として戒告があり業務停止がありという、その間の業務改善命令、是正を促す仕組みをつくるというようなことで、見てみますと、今まで現行法では三十四条の一項に戒告というのが規定されていて、これが今回改正案では削られている。今回の三十三条の二で業務改善命令が新設されている。戒告が業務改善命令にある意味変わっているわけですので、この戒告と業務改善命令の違いがどういうふうに作用していくのか、ここは重要な点だと思いますので、私も、いろいろと資料などもいただきながら、この数字も見せていただければと思います。

 では、その次に重加算についてなんですが、今回、短期間に繰り返して無申告または仮装、隠蔽が行われた場合の重加算税等の加重措置の導入がされます。これまで、これに該当するような件数というのはどれぐらいあったんでしょうか。

佐川政府参考人 お答えします。

 重加算税でございますが、直近一年間ですが、平成二十六年に重加算税を賦課した件数、三百九十件でございます。

落合委員 これも、今まで重加算税をこのような形では課していなかったということですが、もうちょっと早くやるという選択肢もなかったんでしょうか。

佐川政府参考人 お答えさせていただきます。

 この重加算税の加重措置のお話でございますが、実は今般、国税につきまして税制改正法案が出てきておりますが、その中の国税の法案において、意図的に仮装、隠蔽を繰り返す者を牽制するという観点からという意味でございまして、実は現行の加算税率は、国税の場合、無申告または仮装、隠蔽が行われた回数にかかわらず、一律でございます。

 したがいまして、意図的に無申告または仮装、隠蔽を繰り返す者に対する牽制効果が限定的ではないかというふうに考えられたところでございまして、そういう意味では、当初申告のコンプライアンスを重視する観点から、加算税の見直しを行うこととしたところでございます。

 そういう意味では、関税につきましても、繰り返し仮装、隠蔽等をして納税申告をする悪質な事例がございますので、これまで以上に牽制効果を働かせて、適正な納税申告を確保する観点から、税制改正と同様の措置を今般導入することとしたというところでございます。

落合委員 牽制効果というお言葉でしたが、これも大変重要なポイントだと思います。これも、数字がどのように今回の改正によって変化をしていくか、私も注視をさせていただきたいと思います。

 そして、いろいろこの法案の中で新旧の部分を見させていただきました。その中で、概要ペーパーにはなかったのですが、相続の件が変更されているということで、その点も質問をさせていただきたいと思います。

 今回の改正において通関業法第十一条の二が新たに追加されまして、相続による通関業の許可の承継に関する規定が設けられました。現行では、第十条において、通関業者が死亡した場合は通関業の許可は一旦消滅するというふうに規定されているんですが、今回は相続ができるようになっています。

 資格、許認可の問題ですので、今までのように、一旦消滅させた方が行政のチェックがきくのではないかと思うんですが、どうして相続させるように変更がなったんでしょうか。

大岡大臣政務官 落合先生にお答え申し上げます。

 今回の通関業法改正におきまして、合併等があった場合に安定的に通関業者としての事業の継続性を担保することができるように、地位の承継に係る規定を新設いたしました。

 ちなみに、他のものに、例えば保税蔵置場等は既にあったわけでございますが、今回、通関業者について新設をしたということでございます。

 なお、通関業者の合併等につきましては、これまでも、あらかじめ合併後の法人について実質的な審査を行いまして、速やかに通関業の許可を行うことによって、通関業者の事業の継続性の確保や利用者の保護に努めてきたところでございますし、今回、この事業の承継の規定を設けるからといって何も審査をしないわけではございませんで、同様の審査をやるということになっております。

 ただ、法的にしっかりと担保をしてあげた方が業者にとっても安定性の点でメリットが多いということから、今回の規定を設けるようにしたということでございます。

落合委員 ここの点は、本当にいい改善なのか、いい改定なのかというところは、少し私は納得しない部分があります。これも事例が具体的に出てこないとわからない部分もありますので、もし問題があるようであれば、今後も取り上げさせていただきたいと思います。

 それでは、時間なので最後ですが、今回の大きい変更点として、輸出入申告官署の自由化というものがあります。

 この自由化につきましては、弊害も出てくることはあるんですが、弊害についてどのようなことを想定されていますでしょうか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、先生御指摘のとおり、申告官署の自由化を行うわけでございますが、メリットの方を申し上げますれば、この自由化におきまして、貨物の置かれていないところに申告ができるわけですから、いわゆる輸出入者、通関業者等、事務の効率化、コスト削減等で貿易の円滑化に資すると考えておるところでございます。

 一方、先生がおっしゃる弊害があるのかということでございますが、弊害ということではございませんが、申告官署の自由化をいたしますと、先はまた見通せないのでございますけれども、特定の税関官署の輸出入申告が集中して若干事務が遅延するのではないかといったような懸念もあるかもしれませんが、そういう弊害は生じないということが大変重要だというふうに考えております。

 したがいまして、今回の自由化の実施に当たりましては、各事業者との間で十分に意思の疎通を行いまして、官署ごとの業務量を適切に把握しまして、税関の業務が円滑に行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。

落合委員 今回挙げさせていただいたポイントは、また数カ月後に、どのようにいい数字が出ているかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

 本日は、お時間をいただきましてありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 関税定率法等改正案について質問します。

 本改正に向けた昨年夏のパブリックコメントを見ますと、通関業務料金の最高額の廃止で価格競争が激化するのではないか、こういう懸念が寄せられております。その後、聞きましたら、通関業監督官を通じて全九百二十業者に話をする中、懸念は少なくなってきているけれども、引き続き懸念の声はあるということであります。

 現行の法制でも価格の下限自体は決まっていないわけでありますけれども、本改正で目安となる価格がなくなってしまう、こういうことによって、通関業者のなりわいが成り立たないような価格急落があっては絶対ならないというふうに思っております。

 法のたてつけとしては、懸念するようなことが起きた場合は五年後の見直し規定はありますが、法の施行に合わせて、価格の急落が起きていないのかしっかりチェックし、調査に入る体制が必要なのではないか、また、仮に価格の急落が起きるようなことがあれば、五年後の見直しを待たずに必要な対策をとる必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今般のこの通関業法の改正によりまして、財務大臣による通関業務料金の最高額の設定を廃止ということになるんですが、これによって通関業者というものは、みずからが提供するサービスの内容とかコスト等々に応じて自由な料金の設定というのを行うことが可能ということになりますので、この結果、通関業者のいわゆる創意工夫とかサービスとかそういったような質を高めて、結果として利用者の利益や健全な通関に資するんだというようなことを期待しておるんですが、今おっしゃりましたような懸念につきましては、この附則において、五年後をめどとして、施行の状況を勘案して必要があると認めるときは検討を加えと書いてありますので、そういった形で必要な措置を講ずる旨の措置を規定いたしております。

 御指摘の指定価格というものの激化、激安とかそういった意味ですけれども、逆に言うと高くするということもあるかもしれませんけれども、通関業務の状況というものにつきましては常に税関としては把握しておるところでありますので、これは正しく見ておかないかぬと思っておるんですが、採算を度外視した低価格なんということになりましたときには、これは独占禁止法等々いろいろな利用するものがあろうかと思いますので、きちんと目を配っておきたいと思っております。

宮本(徹)委員 しっかり目を配っていただきたいと思います。

 それからもう一点、パブリックコメントの中で、申告官署の自由化について、地方の中小の通関業者から仕事が減るのではないかという懸念も寄せられております。これも、全事業者に説明する中で懸念は少なくなっているというふうには聞いていますが、これは施行は二年後ということで、二年たつまでに、大手の事業者からの今もらっている委託が引き続きもらえるのかどうかというのは、まだ不透明な部分がかなり残されていて、先が見えない不安もあるというふうに聞いております。

 ですから、法施行まで二年というふうになっていますけれども、通関業監督官を通じて、この九百二十者は手のひらに乗るぐらいの数ですから、しっかり手のひらに乗せて、親身に相談に乗って、なりわいが成り立たなくなるような事業者が出ることがないような対策をぜひとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、申告官署の自由化というものによりまして、一部の通関業者の方から、地方の通関業者に対する都市部の荷主や通関業者からの依頼そのものが減少するのではないかといった意見があります。他方、多くの通関業者からは、手続を行う申告先というものが変わりましても、貨物が置かれている場所とか、いわゆる貨物の流れが変わるものではありませんし、また、通関業務は、貨物の保管それから輸送、運送といったものと一体として委託をされますのが通常でありますので、通関業務のみを切り離して委託されるケースというのはまれであろうというような理由から、必ずしも、地方業者への委託が直ちに激減するというか、減少するということにはならないのではないかとの意見も聞かれて、これは両方ありますので、今御指摘のとおりだと思います。

 そういった意味では、この制度改正の内容の説明、また周知にこれまでも努めてまいりましたが、まだ時間もありますので、引き続き、丁寧な説明、相談というものを行わせていただいて、いわゆる零細中小の通関業者、地方の通関業者の不安というものの払拭に努めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 丁寧に説明して、相談して、もし仕事が減るようなところがあったら、そうならないように親身に援助もしていただきたいということを申し述べておきたいと思います。

 そういう対策をしっかりとるということを前提に、私たちもこの法案については賛成をさせていただきたいと思います。

 その上で、残った時間で、この間起きている幾つかの問題について取り上げさせていただきたいと思います。

 一つは、保育園の待機児童の問題です。一年前も三月に本委員会でも取り上げさせていただきました。

 おととい、私の住んでおります目黒区でも、保育園に入れないお母さん方が集まって、区に異議申し立てということも行いました。このままでは職場に復帰できない、私活躍できません、どうにか保育園に入りたいと、大変深刻な事態が起きております。ですから、緊急対策、抜本対策、本当にできることは何でもやっていかなければならないというふうに思います。

 日経新聞が自治体に行ったアンケートを見ますと、保育所整備の一番の課題は何かということで、一番は用地、物件の確保、二番目に保育士の確保、三番目に運営主体の確保、四番目に財源の確保、五番目に周辺住民の理解ということで、たくさんの課題が出ているわけですね。これに全部手を打っていかなければならないというふうに思います。

 そこで、本委員会の管轄でできることということで、私、昨年も国有地の問題について取り上げさせていただきました。

 国有地を、福祉施設については、無償貸し付け、減額貸し付けが国有財産特別措置法ではできるということであります。介護施設については、賃料を半額にするという減額貸し付けに今度踏み切られたということは大変評価しております。

 ここで理財局にお伺いしたいんですけれども、昨年十二月に、この減額貸し付けの相談ですか、自治体への告知を始めたと思いますが、これ以降、自治体や社会福祉法人から幾つ問い合わせ、相談が来て、今協議中の件数は何件あるでしょうか。

迫田政府参考人 お答えをいたします。

 介護施設整備に係る国有地の減額貸し付けでございますけれども、介護施設は、広い用地を確保する必要があって、特に都市部においては、十分な広さの土地の不足、あるいは地価が高いといったようなことのための初期投資負担の大きさ、こういうことも配慮いたしまして、委員御指摘のとおり、昨年十二月から介護施設に対する国有地の減額貸し付け等の負担軽減策を講じたところでございます。

 そこで、お尋ねの問い合わせの件数でございますけれども、これは制度の内容そのものに対するお問い合わせとかそういうふうなものも大変多いわけでございますけれども、そういうものを除きまして、具体的なお問い合わせということで、とりあえず首都圏、一都三県の国有地についての数字を申し上げますと、地方公共団体及び社会福祉法人からのお問い合わせは、本年二月末現在で十二物件ございます。

 また、お問い合わせがありました十二物件のうちの五つの物件につきましては、減額貸し付けに向けた具体的な協議を行っているというところでございます。

宮本(徹)委員 十二物件相談が来て、今、五物件協議中、もう契約が成り立ったのが一件あるということでありますから、その分、今回の制度によって自治体も手を挙げやすくなっているという状況だと思います。

 私は、保育園についてもこの減額貸し付け制度を拡大すべきだというふうに考えております。

 新年度予算に向けての東京都の提案要求の最重点事項というのを私も見ましたが、やはり保育園についても貸し付け条件を見直してほしいというのが出ております。国有地を社会福祉施設の整備目的に貸し付ける制度があるが、貸付料の減額を行わないこととしており、地価の高い都市においては活用が図りにくい、国有地の貸し付けに当たっては、低廉な価格で児童福祉施設を整備することができるよう貸付料の減額を行ってほしいというのが東京都から出ております。

 私、昨年も紹介させていただきましたけれども、国有地を自治体に時価で貸し出す制度ができたのは五年前なわけですよね。そのとき、一定利用は進んだわけですけれども、利用されなかった自治体の中には、形が適当ではないだとか、場所がニーズがある場所じゃないというのと同時に、やはり高いから手を挙げなかったという自治体もありました。

 実際、国有地を活用している自治体なんかもどうなっているかといいますと、一年間の賃料は、例えば世田谷のある園では、一千七百二十六万円なわけですね。これを、保育園、社会福祉法人はそんなに払えないですから区が払って、社会福祉法人からもらっているのは九十六万円ということになっているわけですね。やはり社会福祉法人の体力ではとても借りられるような賃料ではないというのが今の状況だと思います。

 そこで、一昨日の予算委員会で、我が党の田村智子議員が国有地の減額貸し付けなどの対策を提案したことについて、総理からは、研究していきたい、こういう答弁がございました。

 そこで、どう研究するのかということですけれども、きょうは厚労省の副大臣にも来ていただきましたが、仮に保育園に対しても、今回の介護施設と同じような、賃料を半額だとか、減額貸し付け制度ができた場合、利用したい自治体があるのかどうかを、改めて待機児童を抱えている自治体に意向調査、ニーズ調査をやられてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

竹内副大臣 お答え申し上げます。

 保育園における国有地の活用につきましては、待機児童解消加速化プランに基づきまして、まず財務省におかれまして、自治体に対しまして、廃止宿舎跡地などの国有地情報を提供され、優先的売却や定期借地制度を用いた国有地の貸し付けを行っているところでございます。

 保育園設置に当たりまして、その負担を軽減し、保育園整備を促進するために、現在、厚生労働省では、まず整備費補助の補助率のかさ上げを大幅に行っておりますとともに、本年四月からは、賃貸物件を活用した保育園の賃借料加算を実勢に見合うように、これも大幅に上積みをしております。このように、保育園の設置促進を図っているところでございます。

 委員から今御指摘のありました点につきましては、今後も、自治体のさまざまな御意見も伺いつつ、財務省など関係省庁ともよく相談をしながら、保育の受け皿確保に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えているところでございます。

宮本(徹)委員 実際の意見を伺って、財務省と相談していただくということですから、よろしくお願いしたいというふうに思いますし、麻生大臣も相談があった場合は積極的に応じていただければということをお願いしておきたいと思います。

 それから、あともう一つきょう取り上げたいのが、所得税法五十六条の問題です。

 先週、国連女性差別撤廃委員会が出した最終見解で、所得税法の見直しが提起されました。最終見解では次のように言っています。英語なので、私の不十分な訳なんですけれども、委員会は、所得税法が自営業者や農業従事者の配偶者や家族の所得を必要経費と認めておらず、女性の経済的独立を事実上妨げていることを懸念する。委員会は、締約国に対し、女性の経済的エンパワーメント、自立ですかね、を促進するために、家族経営における女性の労働を認めるよう、所得税法の見直しを検討するよう求めるというものが出されました。

 内閣府にお伺いしますけれども、この女性差別撤廃委員会の最終見解というものについては、内閣府というのはどういうふうに対応すべきとお考えなんでしょう。

高木大臣政務官 宮本委員にお答えをいたします。

 女子差別撤廃委員会の最終見解に対する対応についてでありますが、昨年十二月に閣議決定をいたしました第四次男女共同参画基本計画において、女子差別撤廃条約に基づく女子差別撤廃委員会からの最終見解については、内閣府に設置された男女共同参画会議が、各府省における対応方針の報告を求め、必要な取り組み等を政府に対して要請することとされております。

 したがいまして、まずは男女共同参画会議において必要な調査審議を行っていただきたいと考えております。

宮本(徹)委員 同じ計画の中で「積極的遵守の観点から、」というふうに書かれております。

 実は、国連女性差別撤廃委員会の今回の最終見解と同じ問題意識で、先ほど紹介された第四次男女共同参画基本計画でも盛り込まれております。自営業者の項目でこういう文言があります。「商工業等の自営業における家族従業者の実態を踏まえ、女性が家族従業者として果たしている役割が適切に評価されるよう、税制等の各種制度の在り方を検討する」という文言が、これは麻生大臣も署名された閣議決定ですので、男女共同参画基本計画の中にも書いております。

 これは内閣府に確認しますけれども、ここで言われている税制の検討というのは所得税法五十六条も含むということでよろしいんですね。含むか、含まないか、そこだけでいいです。

大岡大臣政務官 宮本先生にお答え申し上げます。

 宮本先生、この問題、大変熱心に取り組んでおられまして、先日も財務省にお運びをいただきました。支援者の方々からお話を承ったところでございます。

 今回御指摘の中には、所得税法第五十六条、含まれるというふうに考えております。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 含まれるということですので、閣議決定としても、所得税法五十六条は、これはもういよいよ検討の課題ということになってきたということだと思います。

 この間、経過、私も改めて国会の議事録を見ましたけれども、麻生内閣のときに与謝野金融担当大臣がこの所得税法五十六条については研究しなきゃいけないというふうに言われたのが出発点で、その後、民主党政権の中で見直しは検討課題だということで、研究課題から検討課題になって、さらに今回は、年末の閣議決定で、検討するということが閣議決定にまで格上げになって、検討の方向まで書き込まれた。一歩踏み込むところまで来たということだと思います。

 そういう中で、今回、女性差別撤廃委員会から見直しを求める最終見解が出るということになりました。そういう点では、政府が検討しようと言っているのを国際社会からも背中をぐっと押す、そういう最終見解が出たんだと思います。

 麻生大臣にお伺いしますけれども、この国連女性差別撤廃委員会からの見直しを求める最終見解が出たことについて、どう受けとめられているでしょうか。

麻生国務大臣 三月に公表されております国連の女子差別撤廃委員会の最終見解におきまして、所得税法の第五十六条についての記述がなされているというのは、これは公表の直前に把握をさせていただいたところであります。

 この問題については、ことしの二月に行われた委員会の口頭審査を含めて、それまでも日本政府と委員会との間で全く議論されてはおりません。

 そもそも所得税法第五十六条というのは、性別を問わず適用されておりますのは御存じのとおりですから、そういった意味で、女性の経済的な自立を損なうものでないことははっきりしておりますので、したがいまして、日本政府より修正の申し入れを行ったところでありますが、反映をされなかったものと承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、今後、機会を捉えて委員会に対して指摘を行っていくことになろうかと、これは対国連上そういうことになろうかとは思いますが、国内におきましては、今御指摘のありましたとおり、今後この問題についていろいろ検討させていただかなきゃいかぬということになるんだと思っております。

宮本(徹)委員 日本政府に相談がなかったからといって、余り国連に目くじら立てなくても。

 確かに、法律の文言には男性とか女性とは書いていないですけれども、日本社会の実態としては、父ちゃんが世帯主で母ちゃんが家族従事者というのが多いわけですよね。だから第四次男女共同参画基本計画の文言にもなったんだというふうに思います。

 所得税法五十六条は、白色の申告者の場合、税金の面でも大変不利益があるわけですが、社会生活の面でもさまざまな不利益があります。交通事故に遭って入院した方に聞きましたら、保険会社から一日二千三百円しか休業補償が出ない、なぜかというと、これは控除の八十六万円しか認められていないからだ、それが基準とされて二千三百円なんだという話でありました。一方で、主婦だと五千七百円出るのに何なんだというお話も伺いました。

 そういう話も、先日、大岡政務官のところに一緒に行って聞いていただきましたけれども、大岡政務官御自身、白色申告の自営業者の御婦人の皆さんが不利益をこうむっているというお話を聞いて、どういう御感想をお持ちでしょうか。

大岡大臣政務官 先日も、先生とともに多くの皆様が財務省にお運びをくださいまして、お話を聞かせていただきました。

 そのときの御指摘を受けまして、私も損保協会の方に確認をさせていただきましたところ、今回の所得税法五十六条の控除を根拠にしての支払いというのは行っていない旨の回答を得ているところでございます。

 今回、その折に御指摘いただきました所得補償保険につきましては、これは損害保険でございまして、その損害保険に入ろうとする方と損保会社と丁寧なお話し合いをして、上限を二百万円として、そのうち二百万で入るか百万で入るか、それぞれ保険料にもかかわってきますので、話し合いをして対応した上で、所得補償保険につきましては対応しているというふうに確認をさせていただいたところでございます。

宮本(徹)委員 私の聞いている話では、保険会社はいろいろあるわけですよ、確かに主婦と同じ扱いで入れてくれるところもある、損保協会としてはもしかしたらそういうガイドラインも一方であるのかどうかわからないですけれども、そうじゃない、あなたは家族従業者だから八十六万円の控除が基本なんだ、こう説明されて二千数百円という、こうなっているという話は実際の話として私たちは伺っているわけですから、そこは本当に現実をしっかり何が起きているのかというのを見て対応していただければというふうに思います。

 社会的にもいろいろな問題が起きていますし、そもそも白にも記帳が今義務づけられているもとで、青と白を差別して、青色申告だったら家族従業者の給料を認める、白色申告の場合は給料を認めない。おかしい話だと思うんですよね。

 大体、実際は働いているわけでしょう。私の両親も自営業でしたよ。税務署とけんかしていましたよ。母ちゃんの取り分を何で認めないんだということでさんざんけんかしておりました。実際に働いている実態があるにもかかわらず、白色申告に限っては家族従業者の給料を必要経費と認めない、八十六万円の控除しか認めないというのはやはりおかしい。

 先ほど麻生大臣からも検討していくんだということはお話しありましたけれども、閣議決定にまでなっておりますので、早急に、この検討を進めて、所得税法五十六条については廃止、見直しが必要なんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 白と青の違いについてはよく御存じなんだと思いますが、これはおととしですか、平成二十六年の一月から白色申告に関しましても、いわゆる個人事業主ということで、青色申告をしていなくても記帳義務ということは課されておりますが、その内容につきましては資産の状況までは記さなくていいということになっておりますので、もう御存じのとおりなので、記帳のレベルの間に明らかに差がありますということはもう間違いないところだと思いますので。

 したがいまして、私どもとしては、差があるというのを前提にした上で、この第五十六条に関する国連の女子差別撤廃委員会の最終見解につきましては、先ほど私の方から申し上げましたように、女性の経済的自立を損なうという指摘は当たらないと考えておりますが、いずれにいたしましても、以前から所得税法第五十六条を見直すべきとの御指摘を受けているところでもありますので、引き続き財務省において丁寧に検討していきたいと考えております。

宮本(徹)委員 引き続き丁寧に検討なんですけれども、検討、研究というのが始まったのが、それこそ前の麻生内閣のときからの話ですから、役所としてももう検討の時間は随分たっているんじゃないかと思います。

 先ほど言いましたが、閣議決定でもここまで書き込んだわけですから、ここはもう次年度の税制改正ではやるという構えで早急に検討を進めていっていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、関税定率法の一部改正法案、審議させていただきたいと思います。

 これは例年審議している案件ですけれども、去年の改正時に、指定薬物のいわゆる危険ドラッグ、輸入してはいけない貨物への指定の話を議論いたしました。その改正の話、先ほども少しお話がありましたので重複する部分はありますが、事前に通告されているものですので、きちんとお聞きしていきたいと思います。

 その危険ドラッグの輸入に重い処罰の対象と改正されて、先ほど少し数字もありましたけれども、この改正によって効果があったというふうに私も聞いているんですが、いま一度財務省として、この改正の効果についてお伺いしたいのと、済みません、手を挙げていらっしゃるところ恐縮なんですが、当時の議論で広報をきちんとしていただかないと意味がないですよというお話をさせていただいたときに、すぐやりますという話で、ポスターをつくっていただいて、そして、私のところにも持ってきていただいて、私の部屋にも張ってあるんですけれども、このポスターも効果があったかどうかも含めて、財務省としての成果についてどのようにお考えか、お答えいただけますか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず一点目の、指定薬物を対象とした昨年度関税改正の効果の話でございますが、二十七年度、昨年度の関税改正によりまして、指定薬物、危険ドラッグを関税法上の輸入してはならない貨物に追加しまして、指定薬物の密輸入に関税法上重い罰則を適用することが可能になりました。

 それで、関税法の改正以前では、税関で指定薬物を発見した場合、警察など関係機関に通報するのにとどまっておりまして、その発見件数、二十五年度、二十六年度ともに七百件でございました。ところが、昨年、関税法改正後の二十七年四月から年末十二月までの摘発件数が千五百件と、実は増加をしているところでございます。

 この背景でございますが、実は、警察等による取り締まりの強化がございまして、平成二十六年の三月時点で見ますと、全国に危険ドラッグの販売店というものが二百十五店舗存在しておりました。ところが、一年後の平成二十七年三月には、実にこれが三店舗に減少しているということがございまして、そういう意味で、国内でこの指定薬物を入手することが大変困難な状況となりました。したがいまして、背景として、これは国際郵便等による密輸が増加したのではないかというふうに考えているところでございます。

 ただし、関税法改正後の摘発件数、四半期ごとに見させていただきますと、四月から六月までで六百二十七件、七月から九月まで五百五十件、十月から十二月になりますと二百八十五件というふうに減少をしております。したがいまして、関税法改正による罰則の強化による抑止効果もあらわれているのではないかというふうに考えているところでございます。

 もう一点、ポスターのお話でございますが、昨年先生の御指摘によりまして、ポスター、リーフレット等、広報活動を一生懸命やらせていただいております。

 税関におきましては、空港における入国及び出国の検査場、その他国民の目に触れる機会の多い場所を中心に、指定薬物の国内への持ち込みは犯罪であるという旨周知するポスターを掲示しているところでございます。

 また、各種駅前で実施する密輸撲滅キャンペーンなどにおきましては、同じようなリーフレットも配布しているところでございまして、こうした目に見える形での広報活動は、国民意識の向上というものを通じまして指定薬物の密輸入の抑止につながっているというふうに考えております。

 ただ、いずれにしましても、依然として指定薬物の摘発は続いておりますので、今後とも厳正に対応してまいりたいというふうに考えております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思いますし、どうしてもこういったものは、指定したら別のものが指定しなければいけないのに網の目をくぐってしまうとか、また、運び方にしても、いろいろな運び方、イタチごっこになるところもあると思いますので、もうしっかりやっていただきたいというふうに言うしかありませんけれども、成果が出ているというふうに私も思いますので、よろしくお願いをします。

 そういった意味で、この指定薬物、危険ドラッグは、法改正で、効果がわかりやすい、もしくは、しっかりと水際でとめやすい方だと私は逆に思っていて、今般入りました営業秘密侵害品というのは、先ほどの審議でもありましたけれども、その構成要件の中に取り締まり対象が知っていることが入っているがゆえに、逆にこの証明というのが非常に難しいんじゃないかというのが考えられるんです。

 この証明にコストがかかること、しかも時間もかかると思うんですけれども、この負担の緩和や、もしくは適時性、この取り締まりをどうやってなるべく早目にきちんと時間をかけずにやっていくかということは非常に大事なところですけれども、これについてどのように対策されようとしていますか。

佐川政府参考人 お答えします。

 営業秘密侵害品の水際の取り締まりで時間がかからないように迅速にというお話でございまして、営業秘密侵害品に関しましては、不正競争防止法におきまして税関の水際取り締まりの対象となる営業秘密不正使用物品であること及び営業秘密不正使用物品であることを知っているということが構成要件というのは、先生がおっしゃるとおりでございます。

 したがいまして、今回のこの関税法の改正におきまして、経済産業大臣が営業秘密を侵害された者の申請に基づいてこれを認定する制度を導入しまして、この秘密を侵害された人は、税関への差しとめ申し立てに際しまして、経産大臣による当該認定内容が記載された書面の提出というものを義務づけております。

 したがいまして、この仕組みによりまして水際取り締まりの対象である営業秘密侵害品が明らかになりますので、税関が迅速、適正に判断、確認することが可能になるというふうに考えておるところでございます。

 いずれにしましても、一生懸命水際取り締まりをするためにも、経済産業省とよく連携して、税関で時間がかからないように迅速、適正な対応を進めてまいりたいというふうに考えております。

丸山委員 よく連携してというお言葉、信じておりますので、しっかり連携いただいて、水際でとめていただくようお願い申し上げます。

 今回、改正で一番気になるところがありまして、幾つか自由化されたり、また、金額の最高額、通関業務料金の最高額を廃止しているとか、かなり大きな変化をされているところがあるんですけれども、一方で、その影響で中小の、特に小さな業務をされている通関業者の方々に対する負担は大丈夫かというお声が出てきております。

 私個人としても、党としても、基本的にやはり自由化の方向にほかの士業を見ても、業種を見ても進んでいますので、通関にしても例外ではないというふうに考えるんですけれども、しかし、急激な変化というのは、お商売されている方々、業者の方々に対して非常に大きな変化を与えるものでございます。そこのあたり一定の配慮が私は必要だというふうに考えます。

 そうした中で、まず一つお伺いしたいのは、今回、申告できる官署を自由化されている部分があると思います。これによって、恐らく、特に大きな荷主の部分とかは大都市に集中するので、そういった意味で、大都市の官署の方に申告が集中するんじゃないかという懸念の声が上がっておりますけれども、これについてどのようにお考えになって、そして、特に地方の通関業者の業績が悪化すると思いますけれども、そういった部分の対策とか何かお考えですか。

佐川政府参考人 お答えいたします。

 まず最初の、申告官署の自由化に伴いまして申告の偏りが税関ごとに起きるのではないかというお話でございます。

 申告官署の自由化の実施に当たりましては、一生懸命全ての通関事業者からヒアリングをして御意見を賜ったりしているところでございますけれども、そういうヒアリングを十分に行って意思疎通を行うことによって、今後さらに通関業者から、どういうような通関をしていくのかというような見込みも聞いてみたいと思っておりますので、そういうものを踏まえて、官署ごとの業務量を適切に把握してまいりたいというふうに考えております。その上で、適切な人員配置を行いまして、許可の遅延とか税関業務の処理に支障を来すことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。

 それから、地方の通関業者への影響というお話でございますが、現在、都市部の大手の通関業者で、全国に営業所を持っている業者もございますが、都市部にありますが地方には営業所を持たないというケースもございます。そういうケースで、地方の通関業者に業務を再委託している場合がございますが、今回の申告官署の自由化によりまして、一部の通関業者からは、こうした地方への再委託業務が減少するのではないかという意見もございます。

 一方で、申告先は変わるんですけれども、貨物が置かれる場所あるいは貨物の流れというものは変わらない、また、通関業務というのは、貨物の保管とか運送とかと一体として委託されることが一般的でありまして、通関業務のみを切り離して委託されるケースはまれであるという話、さらに、保管、通関、運送といったそうした一連の手続を委託する側の都市部の通関業者がみずから地方に出ていってやるというようなことをした場合には、まさに保管、運送などの業務に係る事務処理のコストがかえって増大するのではないかといったような理由から、必ずしも地方の通関業者への委託が直ちに減少することにはならないのではないかという意見もございます。

 これまでも、通関業者に対して、制度改正の内容の説明、周知に一生懸命努めてきたところでございますが、引き続き、丁寧な説明、相談を行って、通関業者の不安があるとすれば、その不安の解消に努めてまいりたいというふうに考えております。

丸山委員 これは、どれぐらいどこの官署が業務がふえそうかみたいな、予測や見積もりがある程度私は必要だというふうに思うんです。

 先ほど、ヒアリングをされて今後把握されていくという話をされたんですけれども、前回の所得税法の改正のときも、関税の担当者とはちょっと違うんですけれども、インボイスの導入でBツーBの免税事業者さんが事業者間の取引から外されてしまうんじゃないかみたいな話をしたときに、主税局が、その可能性は大いにあるけれども、これからヒアリングして、ウオッチしていって、問題が生じたら対応をしますみたいな対応だったんです。

 私は、これは関税局さんも対応が似ているんじゃないかなと思っていて、今もう制度を変えるわけですから、まず変える前にある程度見積もり、どれぐらい変わりそうかみたいなのがあってしかるべきだというふうに思うんですけれども、そういったものは立てられていないんですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと国税のことは承知しておりませんが、通関業に際して申し上げれば、全国で通関業者は約九百二十でございます。それで、全国で九税関ございまして、業務で常日ごろおつき合いをしておりますし、いつも業務上のおつき合いがございますので、そういう意味では、日ごろから会話も成り立っておりますし、意思の疎通も十分にできておりますので、現実に、業務量を把握するためのヒアリングも現在実施途中でございます。

 できる限り早急にそういう結果をまとめて、もっとも、改正の施行そのものは二年以内ということでございますので、そこまでの状況も見ながら、きちんと事務量を把握して、きちんとした人員配置をしていきたいというふうに考えております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思いますし、どこかに偏ってどこかが少なくなるというのはいずれにしろ起きるかなというのは通常考えられるところですので、起きた場合にも的確に対応していただくことはもちろん、起きる前から綿密に関係をとっていただいているという今お話だったので、起きる前からしっかり、混んだりしないように、また無駄が生じないようにやっていただくようにお願い申し上げます。

 最後、もう一つ、中小の通関業務をされている業者さんへの影響についてお伺いしたいんですけれども、少し触れましたけれども、今回、通関業務料金の最高額を廃止されていると思います。この件で、急にいきなり廃止の方向になるわけで、中小の小さな業者さんにとってみれば、急激に減収につながっていく、そしてそれが死活問題だという声もあるんじゃないかと思うんですけれども、このあたりの影響について、財務省として、どう考えていて対策をとられるおつもりなのか、お答えいただけますか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 通関業務料金の最高額の廃止でございますが、まさに最高額の廃止ということでございまして、今でも既定の料金があるわけではございませんで、最高額以下のところでは自由に競争が行われているわけではございます。

 ただ、いずれにしましても、今回、そういうものも、最高額も廃止して自由な料金の設定を行うということで、個々の業者の創意工夫を生かして、サービスを高めて、業界全体あるいは利用者の利便に資するということを考えているところでございます。

 それで、通関業務の話でございますけれども、実は、先ほど申しましたように、貨物の保管とか運送とか、兼業している業者が大変多うございまして、通関業を専業でやっている業者はほとんどございません。そういう意味では、ここのところを最高料金を外したからといって、通関業務料金の価格競争のみによって事業者の経営が立ち行かなくなる可能性というのは低いのではないかというふうに考えているところでございます。

丸山委員 ということは、今のところ対策は必要ないというお考えなのか、何か起こったらきちんと対策いただけるという理解でよろしいんでしょうか。

佐川政府参考人 例えばでございますが、全体で九百ちょっとの通関業者がおりますけれども、いわゆる中小の事業者と言われる資本金三億円以下あるいは従業員二百人未満といったような中小企業基本法上の中小の通関業者を見ますと、いろいろな業務を兼務しておりまして、通関業務だけの料金が自分のところの会社の中でどのぐらい占めているかというような統計を見ますと、実は、通関業務の料金が一割以下という中小企業の通関業者が既に八六%ということでございまして、そういう意味では余り大きな影響はないのではないかというふうに考えているところでございます。

丸山委員 いずれにしましても、しっかりと関係の方々と連絡、今もとってくださっていると思いますけれども、さらに綿密にしていただいて、関税、通関の業務がよりスムーズになるようにしていただくようお願い申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税定率法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、うえの賢一郎君外三名から、自由民主党、民主・維新・無所属クラブ、公明党及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。古川元久君。

古川(元)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和のとれた対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。

 一 最近におけるグローバル化の進展等に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適正かつ迅速な税関業務の実現を図り、また、覚醒剤等不正薬物・銃器を始めとした社会悪物品等の国内持ち込みを阻止し、水際において国民の安心・安全を確保するため、高度な専門性を要する職務に従事する税関職員の定員の確保、処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。特に最近の国際的な情勢を踏まえ、水際におけるテロ・治安維持対策の遂行に当たっては、税関における定員の確保及び取締検査機器等を含む業務処理体制の整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

宮下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいります。

    ―――――――――――――

宮下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

宮下委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁岩田規久男君、理事雨宮正佳君、理事櫛田誠希君、理事武田知久君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官田和宏君、厚生労働省大臣官房審議官伊原和人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 去る平成二十六年十二月十六日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君。

黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 最初に、我が国の経済金融情勢について御説明申し上げます。

 我が国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出、生産面に鈍さが見られるものの、企業部門、家計部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、基調としては緩やかな回復を続けています。先行きについては、当面、輸出、生産面に鈍さが残ると見られますが、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加すると見られます。このため、我が国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられます。

 物価面を見ると、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はゼロ%程度となっています。もっとも、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比は、二十八カ月連続でプラスを続け、最近では一%を上回る水準で推移するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面ゼロ%程度で推移すると見られますが、需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の上昇を背景に物価の基調は着実に高まり、物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくと考えています。原油価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提に立てば、二%程度に達する時期は、二〇一七年度前半ころになると予想しています。

 このように、メーンシナリオとしては、我が国経済は基調として緩やかに拡大し、消費者物価の前年比は二%に向けて上昇率を高めていくと考えていますが、年初来、原油価格の一段の下落に加え、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっています。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しています。

 日本銀行は、こうしたリスクの顕在化を未然に防ぎ、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、一月の金融政策決定会合においてマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入しました。マイナス金利つき量的・質的金融緩和は、日本銀行当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買い入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを主たる波及経路としています。国債のイールドカーブは、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、大幅に低下しており、これを受けて貸し出しの基準となる金利や住宅ローン金利も低下するなど、金利面では政策効果は既にあらわれています。今後、その効果は、実体経済や物価面にも着実に波及していくものと考えています。

 日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までマイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続します。今後とも、経済、物価のリスク要因を点検し、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、量、質、金利の三つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じます。

 国際金融市場では、なお世界的に不安定な動きが続いています。日本銀行としては、こうした動きが我が国の経済、物価にどのような影響を与えるかについて、しっかりと注視していく方針です。

 ありがとうございました。

宮下委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民主・維新・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 本日は、黒田総裁、また岩田副総裁、お忙しい中をおいでをいただきまして、ありがとうございます。また、初めて質問の機会をいただけますこと、心より御礼申し上げます。

 私は、民主党内では絶滅危惧種と言われているリフレ派でございます。二〇〇九年に初当選させていただいて、二〇一〇年の春には、まさに私が個人で最初呼びかけましてデフレ脱却議員連盟というのをつくって、まさに日本銀行に、大規模な、空前の規模の金融緩和をやることでデフレから脱却をしようということを呼びかけたわけであります。その際には、岩田副総裁にも当時講師でおいでいただいたこともあるんじゃないかなというふうに記憶をしております。

 結局、二〇一〇年の参院選のマニフェストに金融緩和を入れようということで、金融政策、あるいは財政政策、そして規制改革、今の安倍政権の最初の三本の矢とほぼ同じであります。教科書的なことでありますから同じになっても当然でありますが、そういったことを入れようということで、実際、大畠章宏さんが会長をやっていました成長戦略研究会という、マニフェストの原案をつくる経済関係の部局では原案に盛り込まれた。

 しかし、盛り込まれた瞬間に当時の鳩山内閣が崩壊をいたしまして、そして菅内閣にかわったというタイミングになりまして、全てが白紙に戻されて、なかなかそういう政策が採用されることはなかった、こういう歴史がございます。

 そういうことも踏まえて、私も黒田総裁や岩田副総裁とはかなり立場が似ているのかな、考え方が似ているのかなというふうに思いはするんですが、さはさりながら、現在の経済の状況を見てみますと、私が当時考えたようなこと、また、恐らく黒田総裁や岩田副総裁が就任当初考えていたとおりにはどうも進んでいない部分もあるんだろうというふうに思います。そういったことについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、ちょっと順番を変えますが、マイナス金利についてちょっと確認をさせていただきたいんです。

 マイナス金利政策、前々からこういうことができるんじゃないかと言われていて、しかし日本では導入はされませんでしたけれども、ヨーロッパが導入をしたということから、いろいろな環境が整って、今回導入ということだと思います。欧州での前例はありますけれども、歴史が深いわけじゃありませんから、どういった効果があるのか、副作用があるのか、十分に判然としない部分もあると思います。

 まずお伺いしたいのは、黒田総裁は、このマイナス金利については、今後、場合によっては拡大をしていく可能性もあるということを常々おっしゃっておられますが、では、限界点というのはどの点にあるかもしれないというふうにお考えなのか。

 今の欧州の状況なども踏まえて、当然、効果が発現されないということであれば、この政策には一定の効果はあるけれども、それ以上効果がなかったということでやめるか、それとも、まだ規模が足りないのかということでさらに加速をしていくか、どちらかかと思うんですが、大体その上限としてどの程度のところを想定しているのか。

 例えば、極端な話、マイナス五%とかマイナス一〇%とかということも最終的にあり得るのか、マイナス一%ぐらいのところが極限点なのか、ここら辺のところを、ちょっとお考えをお伺いできますでしょうか。

黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和の考え方をまず申し上げたいと思います。

 これは、従来の量的・質的金融緩和の基本的な枠組みを維持しつつ、それを一段と強化しようということでありまして、日本銀行の当座預金のごく一部ですけれども、そこに適用される金利を、現在はマイナス〇・一%でございますが、そういうことによってイールドカーブの起点を下げて、大量の長期国債の買い入れと相まってイールドカーブ全体を下げる、それを通じて貸し出しの基準となる金利や住宅ローンの金利を引き下げていくということでありまして、先ほど冒頭申し上げましたとおり、貸し出しの基準となる金利あるいは住宅ローンの金利ははっきりと低下をいたしております。

 そういう意味でこの政策は効果を持っていると思いますが、実体経済への波及にはそれなりの時間もかかると思いますので、この波及の状況を十分注視してまいりたいと思っております。

 その上で、委員の御指摘の点につきましては、理論的には、マイナス金利の幅を大きくしていきますと、どうしても、ゼロ金利である銀行券の方にシフトしていく傾向が出てまいります。

 したがいまして、ヨーロッパの国も、今御指摘になったような、一%を大きく超えるような大幅なマイナス金利にしている国はないわけでございます。ECBも、最近マイナス金利をさらに引き下げましたけれども、マイナス〇・四%というところでございます。

 我が国につきましては、もちろん、理論的な余地というのは相当あると思っておりますけれども、具体的に経済の動向を見て金融緩和をする、追加的な緩和をするというときには、先ほども申し上げたように、量、質、金利という三次元で緩和が可能になっておりますので、そのときの経済金融情勢に応じて追加緩和をする。

 その際には、当然、金利の引き下げという可能性もあると思いますけれども、現時点で、どこまで引き下げられるかとか、あるいは、量、質と金利とどちらを選考するかというようなことは具体的には申し上げられないわけでありまして、あくまでも、量、質、金利、三次元で、必要に応じて、ちゅうちょなく追加緩和を行う用意があるということでございます。

宮崎(岳)委員 そうしますと、実際のところ、現実的な数字といえば、今、欧州、ECB、〇・四ということでございます。多少いろいろでこぼこはありましても〇・五%内外ということは、例えばマイナス〇・五%前後とか、そういったところのことは、実際にやる、やらないとか、いつやるかとか、そういうことは別として、可能性としては、例えば〇・五%近傍ぐらいまで行くということも、これは否定はされないということでよろしいですか。

黒田参考人 理論的な可能性としてそういった余地があるということは、そのとおりだと思います。

宮崎(岳)委員 理論的な可能性ということじゃなくて、実際に欧州でそういうことがあるので、ということは、もちろん限界点はあると思いますけれども、それも日本経済の動向によっては、今後、例えばさらに中国経済が悪化して、それこそリーマン・ショッククラスみたいな影響があった場合にはそういうことだってあり得るというふうに思った方がよろしいんですか。どうですか。

黒田参考人 そのとおりでございます。

宮崎(岳)委員 そのとおりということだと思います。〇・五%前後、今はヨーロッパが〇・四ですが、〇・四とか〇・五ということはあり得るというお答えだったと思います。

 その場合に、例えば個人の銀行預金への影響、こういったものはどうなるか。過去いろいろな質問もお答えになっていらっしゃる、そういうことも踏まえた上での質問なんですけれども、例えば、うちの銀行に預けると金利マイナス一%ですなんということは私もないと思うんです。しかし、別の形で、口座維持手数料を取るとか、日本国内の銀行でも実際に過去に個人口座から口座管理手数料というのを取ったというところももちろんございます。あるいは、ATMや振り込み等の関連の手数料を上げるという形でマイナス金利の影響が個人の預金者に及ぶということは、これは想定されるということでよろしいでしょうか。

黒田参考人 中央銀行が既にマイナス金利を採用して一定の期間がたっております欧州諸国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。

 その背景としては、各金融機関が顧客との長期的な取引関係を考える、さらには、仮にマイナス金利を適用した場合、顧客が現金を引き出して保有する可能性があるということでありまして、個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。

 金融サービスの手数料云々の話はまた別の話でございますが、現時点で、何か個人預金についてそういった手数料を引き上げるというような動きは出ておりません。

宮崎(岳)委員 実際に、マイナス金利が始まって以降、あるメガバンクについて内部で、いわゆる口座維持手数料、口座管理手数料、そういったものを設けるということを具体的に検討しているという報道がなされました。銀行の方はそれは事実ではありませんというふうに否定コメントを出したわけですが、しかし、別にマイナス金利になっていなくても口座維持管理手数料というのを取ったところはあるわけであります。ネットバンクなんかでそういうところを取ったところもある。

 こういったことを踏まえれば、マイナス金利がある程度拡大すれば、当然、そういう少なくとも手数料的なことについて、つまり、預金額が少ないような人に対してとか、ある程度の条件は求めるんですが、銀行の収益が悪化すればそういう影響が及んでくるんだろう。全く影響がないということですと、それもおかしな話かなというふうに思いますし、理論的なことになってしまいますけれども。

 実際ありませんか、そういう例えば手数料を広げるとかという動きは。というか、逆に言うと、全く想定はされていないということでよろしいんですか、そういったことはないだろうと。

黒田参考人 現時点では特に想定しておりませんが、もとより、金融サービスの提供に関しては、一定のコストがかかるという場合に、そのコストについて手数料を取るということも十分あり得ると思いますけれども、現時点で、先ほども申し上げましたように、マイナス金利との関係で手数料を引き上げようという動きは全く生じていないと思います。

宮崎(岳)委員 マイナス金利との関係でということをおっしゃいましたが、しかし、マイナス金利になれば、銀行の収益というのは一定程度悪化するであろうということは容易に想定されるし、実際にヨーロッパでも日本でもそういう影響は恐らく出ているだろう。市中銀行の収益が悪化する。

 そういった場合に、コスト的にマイナスになっている小口預金者等も含めて、例えば月二百円なり口座管理手数料みたいなものを取るというのは、当然、逆に言うと想定すべきじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。

黒田参考人 まず第一に、今回のマイナス金利の導入に際して、金融機関に対する収益の圧迫を最小限にするためにいわゆる三層構造というのをとっておりまして、昨年の平残の超過準備預金に対しては従来どおり〇・一%の金利をつける。これが二百十兆円ぐらいあるわけで、それに対してプラス〇・一%のものをつける。それから、必要準備その他については、これは従来からゼロの金利ですけれども、これが四十兆円程度あるんだと思います。その上にマイナス金利が付される部分は、十兆円から三十兆円ぐらいの間、足元では二十兆円ぐらいになっていると思いますけれども、そこについてマイナス〇・一%の金利をつけるということでありまして、マイナス金利の直接的な銀行収益に対する影響は極めて小さいというふうに考えております。

 他方で、これも金融緩和であり、先ほど申し上げたように、イールドカーブ全体を下げますので、貸出金利は当然下がっていく。あるいは、利ざやも下がるところがあるかもしれません。

 ただ、これは実は、三年前に導入いたしました量的・質的金融緩和も全く同じでございまして、イールドカーブを下げて貸出金利を下げてきたわけでございます。そのもとで金融機関は非常に高い収益を上げておりまして、二〇一四年度と二〇一五年度の前半しかまだデータはありませんけれども、ほぼ史上最高レベルに近いような収益を上げております。

 この理由としては、景気回復のもとで貸し倒れが非常に減っておりますので信用コストが大幅に下がったこともありますし、従来減っておりました貸し出し自体も、二%台でこのところ伸びております。そういったこともあって、現時点では、実は、低金利環境にもかかわらず高い収益を上げております。

 そうしたことを踏まえまして、もちろん、先ほど申し上げたように、貸出金利は下がり、利ざやが縮小する可能性があるわけですので、金融機関に対する収益の影響が全然ないとは申しませんが、そうしたもとでやはりデフレからできるだけ早く脱却する、そうしたもとで低金利環境からノーマルな金利の状況になっていくというもとでこそ金融機関の持続的な高い収益が実現できるだろうというふうに思っておりますので、今、足元での何か収益での影響から金融機関の行動が大きく変わるということは、先ほど申し上げたような状況から見て、考えにくいのではないかというふうに思っております。

宮崎(岳)委員 難しい言い方をおっしゃっていますが、将来金利が上がればもうかるんだから、低いときはちょっと我慢してくれるんじゃないかみたいな説明だったような気がして、ちょっと十分納得できるところではありませんが、時間もありますので次に参りたいと思います。

 今、二%を目指す物価安定目標を掲げていらっしゃる。それはCPIの消費者物価指数の総合指数で見ていらっしゃいますが、途中から、除く生鮮食品、エネルギーという、通称日銀版コアと言われている指標が導入をされました。

 例えば実際の国内の需給の環境とか景気の状況を見るのに、CPI総合じゃなくて、あるいは、いわゆるコアCPIと言われる、除く生鮮食品じゃなくて、ほかの指標を入れるというのは意味があると思います。

 ただ、例えばアメリカ等では、除く食料、エネルギーという指標、コアコアCPIというふうにこれまで日本でも呼んでいたかというふうに思うんですが、除く食料、エネルギーという指標でやっていた。

 除く生鮮食品、エネルギーという新たなカテゴライズだと思うんですが、これをつくられた理由は何でしょうか。総合じゃない理由とか、あるいは、除く生鮮食品じゃない理由はわかります。これはこれまでもるる御説明いただいている。

 しかし、いわゆるコアコアCPIではなくて、除く食料、エネルギーではなく、除く生鮮食品、エネルギー、つまり加工食品をそこから除いているということだと思いますが、なぜこの指標にしたのか、ちょっと教えていただけますか。

黒田参考人 御指摘のとおり、日本銀行の物価安定の目標というものは、主要国と同様に、消費者物価指数の総合で前年比二%というふうになっております。これは、総合で見るというのは、欧米主要先進国の中央銀行全て同じでございます。その上で、物価の基調を見るというためには、それぞれの国のそれぞれの経済動向に合わせて、一時的な要因の影響を除いたさまざまな指標を活用するということをやっております。

 我が国の場合は、御指摘のように、従来から、生鮮食品の値動きが非常に激しいものですから、これを除いた、生鮮食品を除く指数というものを物価の基調を見る一つの有力な指標として使ってまいりました。現在もそれを使っておりますし、政策委員会の物価の見通しというときには、生鮮食品を除く消費者物価の指数を出しております。

 ただ、その一方で、一昨年の夏までの一バレル百十ドル程度の水準から、直近では三十ドル台半ばというか、最近三十ドル台後半までちょっと回復していますけれども、そこまで大幅に低下しておりますので、それに伴ってエネルギー価格も大幅に下落しております。

 こうしたもとで物価の基調を判断するためには、エネルギーを除いた指数を見ることも必要ではないかということで、御指摘のような、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価を含めてさまざまな物価指標を使っている。その背後にある経済の動きを点検して物価情勢の判断を行っているわけでございます。

 ちなみに、欧米諸国の中には、御指摘のように、我が国のいわゆるコアコアと言われるように、食料品とエネルギー品目を除いたものを指標の一つとして見ている国もありますし、実は、加工食品を除く食品、我が国の生鮮食品よりは少しは広いと思うんですけれども、食品全体ではなくて、加工食品を除く食品とエネルギー品目を除いたもので見ている国もありまして、それはやはり、それぞれの国の経済状況に合わせて見ているんだと思いますが、あくまでも、現在、日本銀行がこの生鮮食品とエネルギー品目を除くもので物価の基調を判断する一つの材料にしておりますのは、原油価格が、先ほど申し上げたように、一年半で七〇%以上下落するということが、それを含めたままですと物価の基調が見にくいということで、これも一つの指標として使っているということでございます。

宮崎(岳)委員 やはりどうしても新たな指標をつくるということになる、そして、その指標が主要な指標の中で一番成績がいいということになると、これは、あえてつくったんじゃないかという疑いを持たれてしまうようなところはあると思うんです。コアコアCPIであれば、もともと広く参照されている指標ですから、ああなるほど、これを見るのが適当だというふうに判断したんだな、こういうことになりますが、除く生鮮、エネルギーというのは、内閣府の方では使っていたかもしれませんけれども、余りこれまで使われていた指標じゃないので。

 そうすると、例えば二〇〇八年なんか、世界食料危機なんかありました。食料がわあっと上がったこともある。あるいは、原油がわあっと上がれば、それだって物価は上がる、総合指数は上がる。では、ほかのものは動かずに、石油だけ高騰した、結果、二%の成長になりました、こういうことだってないわけじゃない。そういうときに、やはり連続性のある指標で私は見なければいけないというふうに思うので、であれば、新たな指標をつくるとか、ある意味、都合のいい指標じゃなくて、ずっと前から使われていた、例えばコアコアのようなものを使った方がいいんじゃないかというふうにも思うんです。

 それは、経済学者の方に説明するんだったら、こういう理由でこういう指標を使っているんですよと言われれば、なるほどとなるでしょうが、当然、一般マーケットとの対話、あるいは我々国会議員も含めて、そんなに知識があるわけじゃありませんから、ある程度連続性のある指標で、きちんと十年、二十年単位で見られるもので考えた方がいいんじゃないかというふうな気がするんですが、いかがでしょうか。

黒田参考人 確かに、除く食品、エネルギー、いわゆるコアコアというのも指標の一つでございまして、我々ももちろんそれを見ているわけですけれども、御案内のように、食料とエネルギー品目を除きますとカバレッジがかなり小さくなってしまうわけですね。したがって従来は、除く生鮮食品、かなりカバレッジの広いもので見ていたんですが、先ほど申し上げたように、原油価格の一年半で七〇%以上下落するというもとでは、物価の基調を見る上では必ずしも適切な指標ではないので、こういった状況のもとで、生鮮食品とエネルギーを除く指標でも見るということになっております。

 ちなみに、日本銀行はさまざまの物価指標を見ておりまして、そのそれぞれの特性についてもかなり分析をしております。その中で、こういった生鮮食品及びエネルギーを除く品目の指標というのが、今のような状態のもとで、物価の基調判断をする上ではかなり有益であるという結果が出ております。

 他方で、引き続き除く生鮮食品といった指標も有益であるし、さらに、ややテクニカルですけれども、いわゆる刈り込み平均というまた別途の、違ったつくり方の指標も参考にしております。

 そのもとで、繰り返しになりますけれども、一年半で原油価格が七〇%以上も下落するということで、それが、いわゆるヘッドラインインフレーションというか、総合指数で見たところのインフレーションの率をほとんどゼロに、これは全世界そうなっているわけですが、日米欧ともですね、それだけ見ていると物価の基調がわかりづらいということで、各国ともそれぞれの工夫をして見ているわけでございます。

    〔委員長退席、松本(洋)委員長代理着席〕

宮崎(岳)委員 岩田副総裁にも質問をさせていただきたいというふうに思います。消費税の影響であります。

 二%の物価安定目標をなかなか達成できておりません。先ほど、原油価格の下落が原因だという話もありましたが、それを除いても達成できていないということだと思います。

 そういった中で、外部的な要因はいろいろあれ、国内的には、消費税の引き上げによる消費等の圧迫等が大きな影響があったんじゃないかというふうに思っています。

 これを達成できなかった理由の中で、消費税の引き上げに伴うマイナスの割合、大体どれぐらい主要な要因なのか、それとも、全く主要じゃないサブの要因なのか、こういったことについてちょっと、まさに学者である岩田先生に伺いたいということです。

 もう一つは、今、経済は余りいいとは言えません。この状況で来年一〇%に引き上げを予定しているわけですが、このときにこの影響はどの程度か。国民も含めて我々も大変心配をしております。どの程度の影響があるかということを、先生、いかがでしょうか。

岩田参考人 二%の目標達成が、当初は二年程度を念頭にしていたわけですが、それがなかなかできなかった一つの例は、今委員がおっしゃったような消費への下押し圧力が予想よりもはるかに強く、かつ長引いたということであります。

 そこで日本銀行は、一七年四月の今度は消費税率一〇%引き上げという現行の法律の定めを前提として、去る一月に経済、物価の見通しを作成して、四半期ごとの展望レポートを示しております。

 その際、消費税率を引き上げるということの影響を試算しておりまして、二〇一四年四月の引き上げ時に少し予想を見誤った、そういう経験を踏まえまして、そして今度は引き上げ幅がちょっと違います、三%じゃなくて二%であるということと軽減税率が入るということも勘案して、駆け込み需要やその反動の影響、さらに、実質所得は押し下げ圧力が働くということを考えまして、二〇一七年度の実質GDPへの成長率の寄与度はマイナス〇・七%と試算しております。

    〔松本(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

宮崎(岳)委員 正直、私は、前回の引き上げのときに比べて経済環境というのは相当下がっている、もちろん、前回三%だったのが今回二%で、マイナス一兆円、軽減税率分だというのはわかりますけれども、経済環境の方は逆に相当悪化しているんじゃないかなというふうに思います。

 そういったところでこれは引き上げが本当にできるのかという、引き上げずに、まず二%の物価安定目標の達成ということを優先させるべきじゃないかなというふうに私は思いましたので、そのコメントをいただきたいということであります。

 あともう一点、ちょっとこれも岩田副総裁に伺いたいんですが、日銀法二条に、物価の安定というものが日銀の政策目標として定められています。この物価の安定とは何ぞやということが、この数年、七、八年の間、やはり議論になってきたと思うんです。ゼロ%でも物価の安定なんでしょうか、マイナス〇・五%ぐらいでも物価の安定なんでしょうか、プラス〇・五%なら安定なんでしょうか、あるいはプラス四%なら安定なんでしょうか。どうなんでしょう。

 安定的な成長なのか、それとも、ゼロインフレというのがある意味法律の想定している理想型なのか。どのように思われるか。ちょっとコメントをいただけますでしょうか。

岩田参考人 日本銀行は、日本銀行法に定められて、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ということで金融政策を運営しているわけですが、今おっしゃった物価の安定の目標ということに関しては、二〇一三年一月に、消費者物価の前年比上昇率で二%と定めた上で、「これをできるだけ早期に実現することを目指す。」というこの点は、二〇一三年一月の政府と日本銀行の共同声明において明記されているということで、現在は二%を目標としているということでございます。

宮崎(岳)委員 政府と日銀が取り決めたからこうだというのはもう本当にわかるんですけれども、そうすると、例えば政権がかわる、あるいは総裁が交代するということになると、また違う考え方が出てくるのかなということで危惧をしております。

 私はこういうことを明確にする日銀法の改正等も必要じゃないかということを踏まえておりまして、時間となりましたので終わりますが、もう一度機会があれば、そういった点についてまた質問させていただきたいというふうに思います。

 本日はありがとうございました。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。

 宮崎委員が絶滅危惧種と言いましたけれども、私も、黒田総裁以下日銀の今の金融政策を非常に好意的に見ている一人でございます。

 民主・維新・無所属クラブからは二人がきょう質問に立ちますが、二人とも、そういう意味で言うとリフレ的政策を支持しているということは、もはやこれは絶滅危惧種ではなくて、民進党という党が三月二十七日に結党されますが、そういう意味では、そこら辺の政策はどう変わっていくのかなと非常に興味深く見ているところでございます。

 その上で、マイナス金利政策についてお伺いをいたします。

 一月半たちまして、おととい、金融政策決定会合がありました。先ほども御説明ございましたが、イールドカーブが下がって、今後、実体経済へいい形で波及をするということは、何回も、予算委員会等でも御答弁をいただいております。

 このマイナス金利政策を導入する前に、副作用といいますかリスクといいますか、いろいろ御心配の点があったかと思います。金利以外の部分で非常に心配していた点、副作用で懸念している点、あるいはヨーロッパ等で見ていて今まで導入しなかった理由もあるかと思いますけれども、そこら辺の副作用の状況について質問させていただきたいと思います。

黒田参考人 このマイナス金利というものは、我が国にとっては初めてのことでございますので、当然、欧州の事例なども十分参考にさせていただきました。

 その上で、このマイナス金利の際の副作用というか、影響としては基本的に二つあると思うんですが、一つは、マイナス金利になりますと、どうしても銀行券の方に、金融機関にしても個人にしても移っていくのではないかということであります。

 この点は、実は欧州の経験からいいますと、金融機関についてはそういうことが生じておりませんし、我が国のマイナス金利の導入に際しても、仮に金融機関が日本銀行における準備預金から銀行券にシフトしていくということがあった場合には、それに対応する措置をとるということを明らかにしておりまして、そういったことは生じておりません。

 それから個人につきましては、欧州でも個人向け預金はマイナス金利になっておりませんし、そのもとで銀行券にシフトするというような状況にはなっておりません。

 我が国におきましても、いわゆるマイナス金利が導入されてまだわずかでございますが、個人預金の金利は低下はしましたが、マイナスにはなっておりませんし、ならないと思いますので、そういった意味では、銀行券へシフトしていくということにはならないだろうと思っております。

 二番目が、これは欧州でもいろいろ議論されております点ですけれども、銀行の収益に過度の圧迫を加えて、金融仲介機能をかえって損なわないかということでございまして、この点につきましては、先ほど来御説明しておりましたように、三層構造ということで直接の影響は最小限にしておりまして、そうしたもとで、金融機関の収益に直接的に大きな影響が出ないようにするということでありますので、考えられる問題、マイナスという点については、一応対応をとった上でやっているということでございます。

木内(孝)委員 マイナス金利を導入する際に、一般的に考えますと、為替への影響、基本的にこれは物価安定のための金融政策だということは理解しつつも、当然、マイナス金利を導入すると、私の感覚からいうと、円安に動く可能性が高いのではないかと。事実、これを発表した直後は一定程度円安にぶれた。ただ、その後、外的要因、とりわけ米国のイエレン議長発言等もあり、百二十円ぐらいから、また百十三円の水準になっている。

 これを導入したときは、円安にぶれるということを、通貨政策でないということは理解しつつも、円安になるだろうというふうに予想していたのか、あるいは、今の状況というのがレベル感としてこんな水準なのか。為替の水準等いろいろコメントしづらいというのは承知しておりますけれども、そこら辺の実施後の為替の動きについてコメントいただければと思います。

黒田参考人 まず、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、これは、量的・質的金融緩和を一段と強化するということによって二%の物価安定の目標を早期に実現するために行っておるものでありまして、為替相場を目的としたものではないということは常に強調している点でございます。

 その上で一般論を申し上げますと、マイナス金利政策に限らず、金融緩和は我が国の金利に低下圧力を及ぼしますので、他の条件を一定とすれば、自国通貨安の方向に作用するというふうに考えられます。

 もとより、実際の為替相場は、通貨間の金利差だけではなくて、さまざまな要因によって変動するものでありますので、一概に言うことはできないと思いますけれども、他の条件を一定にすれば、そういった方向に作用するということは考えられると思います。

 いずれにいたしましても、為替相場は、経済あるいは金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということがいわばG7とかG20とかの共通の理解になっておりまして、そういった方向で安定してもらうことが望ましいと思います。

木内(孝)委員 そうしますと、百二十円くらいあったドル・円の相場が今百十三円のレベルだとすると、当然、百二十円の方が、その二%の物価目標を実現するためには、輸入物価が当然上がるわけですから、追い風になるということが言えると思います。そういう意味では、百十三円のレベルで二%の物価目標というのは、ますます遠のいているのではないか、そのようにも見えます。

 もう一つは、円安にならずに今円高に行っているということもあり、株価もいっときよりは高くなりましたけれども、株価も、ある意味、ピーク時から見たら比較的低迷をしている。

 そういう状況からすると、今回のマイナス金利をやったとしても、なかなかこの二%の目標の実現というのは、まだまだ道半ばというふうに見えます。

 先ほども、実体経済への影響は多少時間を要する。多少時間を要するというこの期間がどれぐらいかというのが一つと、あと、原油価格が少しずつ上がるという前提で二〇一七年度前半の二%目標という話をされていましたが、原油価格の前提の、大体どれぐらいの水準を前提にした予想なのかというのが一つと、株価や為替レートのマイナス要因というのを、これを加味しても二〇一七年度前半に二%が実現できるというふうにお考えでしょうか。

黒田参考人 御指摘のように、消費者物価は、為替レートの変動に伴う輸入物価の動きとかあるいはエネルギー価格など、さまざまな要因で影響されます。ただ、物価の基調を規定する主な原因、主な要因というのは、やはり、経済全体の需給ギャップと中長期的な予想物価上昇率だと思います。

 この点で需給ギャップについては、御承知のように、失業率が三%台前半まで低下しておりまして、労働需給の引き締まり傾向が続くもとで、この需給ギャップというのは着実に改善傾向をたどっておりまして、最近では、過去平均並みのゼロ%程度になっております。

 中長期的な予想物価上昇率は、確かに、マーケット指標などを見ますとこのところ弱含んでいますけれども、企業の価格設定行動あるいは家計の支出行動を見ますと、引き続き、長い目で見れば全体として上昇しているというふうに判断できるのではないかと思っております。

 その上で、物価の基調は改善が続いておりますので、先行きも、日本銀行がマイナス金利つき量的・質的金融緩和を着実に推進するもとで、物価の基調は着実に高まっていって、消費者物価の前年比は二%に向けて上昇率を高めていくというふうに考えております。

 そうしたもとで、原油価格が緩やかに上昇していくという前提に立ちますと、二%程度に達する時期は二〇一七年度前半ころというふうに予想しております。

 ちなみに、この予想というか見通しの前提になっております原油価格につきましては、一バレル三十五ドルを出発点に、見通し期間の終盤、つまり二〇一七年の終わりにかけて、四十ドル台後半に緩やかに上昇していくという想定でございます。

 これは、この見通しをつくったときの前の一カ月の平均で足元の数字を決め、先行きは、石油の先物市場の動きでそれを引き延ばして、四十ドル台の後半に緩やかに上昇していくという前提でございます。これは、あくまでも石油と先物市場の価格を使った見通しでございます。

木内(孝)委員 原油価格がインフレ率に影響する度合いというのが非常に大きい中で四十ドル台後半と今言われても、非常に違和感のある数字です。

 仮に三十五ドルの前提だと、どれぐらいこの達成時期が先延ばしになるのか。そこら辺の数字等は、モデルを回している上でなかなか難しいとは思うんですけれども、どれぐらい先延ばしになるのか。前提が余りにも、今は三十五が四十ドル台後半というのはちょっと非現実的と思うんですが、いかがでしょうか。

黒田参考人 石油価格につきましては、各国の中央銀行とも、独自の見通しを立てるというのではなくて、あくまでも、市場の先物の価格を踏まえて、それを前提にして見通しをつくっているわけです。

 その前提が違った場合にどういう見通しになるかというのは、これはまた前提が違った場合に見通しをつくり直してみないといけないんですけれども、あくまでも我々の、特に九人の政策委員は石油価格の前提について共有しないと、各人が違った石油価格の見通しで経済見通し、物価見通しをつくりますと、ばらばらになってしまいますので、石油価格の前提を共有して見通しをつくっているということでございまして、石油価格が違った形になったときどういう見通しになるかというのは、そういうことを九人の委員の中でやっておりませんし、ここでお答えするというのは難しいということを御理解いただきたいと思います。

木内(孝)委員 先ほど、宮崎委員から岩田副総裁に質問を既にしていることと重なるんですが、来年の四月に消費税再増税をした場合の経済への影響についてお伺いをしたいと思います。

 黒田総裁は、三月七日、講演を行った際に、前回の半分くらいというようなことをコメントなさっています。当然、三%に対し今回は二%、それと軽減税率の一兆円分がございますので、単純に計算すれば半分ぐらいというふうに言えるかと思うんですが、先ほども岩田副総裁のコメントでもありましたとおり、個人消費の戻りがなかなか戻ってこなかった、かつ、その期間が非常に長かったというコメントをなさっています。

 黒田総裁も同じような御認識なのか、個人消費への動向をどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

黒田参考人 確かに、消費税を二〇一四年の四月に三%、全ての消費財、サービスについて引き上げた後、四―六月がマイナス成長になったわけで、これは駆け込みの反動ということだったんですが、七―九月も、わずかではありますけれどもやはりマイナス成長になりまして、二四半期マイナス成長が続いたということで、駆け込みが予想よりも大きくて、駆け込みの反動減も予想より大きく長引いたということは、そのとおりだと思います。私も、消費税引き上げ後の消費に対する影響が予想よりも大きく長引いたというふうに思っております。

 そういうことも踏まえまして、最近の展望レポートで影響の試算というのをやっておりまして、そこでは、二〇一四年の経験を十分踏まえて、二〇一四年のときの影響は、振り返ってみると、事前に考えていたよりもかなり大きく、二〇一四年度のGDPの成長率への影響はマイナス一・二%ぐらいあった。そういったことを踏まえた上で二〇一七年度の影響を試算すると、マイナス〇・七%ぐらいであるということを、一応、展望レポートの中で影響の試算をしております。

 これは一つの試算でございますけれども、そういうふうに見ております。

木内(孝)委員 黒田総裁の役割は物価の安定ということでしょうから、消費税を上げる、上げないというところからは役割がずれていることは承知しております。

 きょうから国際金融経済分析会合というのが開かれます。黒田総裁も御出席なさる御予定というふうに承知しておりますけれども、この会合の位置づけなんですが、私は以前、財務金融委員会におきまして安倍総理そして麻生財務大臣に、これだけ世界経済が不確実性を増しているのであれば、法律的には来年消費税を上げるということにはなっているけれども、今、景気条項が抜けている法律になっているので、きちっと一度立ちどまって、消費税を上げるか上げないかを判断なさった方がいいのではないかということを申し上げたら、リーマン・ショック、震災級のことがなければ予定どおり上げると。

 ただ、その後、こういう形で国際金融経済分析会合を開くということは私は歓迎しているのですが、この会議の何か位置づけがいま一つよくわからなくて、要するに、これを参考に上げる、上げないということを判断することになるのか。しかも出席者は、浜田宏一内閣官房参与とか本田内閣官房参与も含まれていまして、おとといプライムニュースでやっておりましたけれども、絶対に消費税は上げるべきではないと本田参与はおっしゃいましたし、浜田参与も割と消極的というか、慎重なスタンスだと思うんです。

 この会合の位置づけと、黒田総裁からごらんになった、例えばきょうであれば、スティグリッツ氏のどういうところに関心を持ってこの会合に臨むのかということをお聞かせいただければと思います。

黒田参考人 この国際金融経済分析会合というものは、日本が議長国を務めるG7サミットに向けて、現下の世界的な経済状況に適切に対応するため、世界の経済、金融に関する情勢を分析するために開催されるものというふうに認識をいたしております。そういった意味で、世界じゅうの著名なエコノミストをお呼びしてお話を聞くということだと思います。

 本年入り後、世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっているもとで国際金融市場の変動は大きくなっておりますし、日本銀行としては、こうした会合の場も生かしながら、引き続き、国際金融市場の動向、あるいは、それが我が国の経済、物価にどのような影響を与えるかについて、しっかりと注視してまいる方針でございます。

 なお、この委員会の前に官邸で第一回の国際金融経済分析会合がございまして、スティグリッツ教授がお話をされて、その席に私も参加させていただきました。

木内(孝)委員 多分、いらっしゃるスティグリッツ教授、あるいは来週はクルーグマン教授が参加されるというふうに聞きましたけれども、増税を凍結するというのは、ある意味、格付の問題ですとか、あるいは財政健全化に対する問題、凍結するリスクというのもたくさんあるということは承知しておりますけれども、総裁はその御担当ではないものの、こういう会議に全て参加されるわけですし、もともと大蔵省出身ということもありますし、そういうことも踏まえて、私も、絶対に凍結するべきだとか上げるべきだということを申し上げづらいところはございますけれども、とにかく虚心坦懐にそういった先生方のコメントをいただいて、増税を凍結する必要があるのであれば、法律を書きかえてぜひ凍結をしていただきたい。

 私は前から、五%を八%にしたこと自体も失敗だと思っておりますし、黒田総裁の金融政策は私は支持しているものの、実は、アベノミクス全体としては非常に大きな不満を持っておりまして、それはとりわけ三本目の矢、規制改革、構造改革、こうしたものが、少なくとも私はそう見ていますし、市場から見ても、本当に進んでいないというふうに見ております。

 そういった意味で、今度、財政出動をして凍結をしたとしても、金融緩和と財政出動をマクロ経済政策としては支持しているものの、この三本目の矢がきちっとセットでない限り、これは、将来に対するツケを全部先送りするだけ、消費の先食い、利益の先食い、こうした経済政策パッケージになるということを非常に危惧しております。

 なぜ私はアベノミクスのことを一つ心配しているかというと、前から黒田総裁にお伺いしたかったんですが、二〇一四年の十月末に日銀は三十兆円の追加緩和を決定しました。そのときに、たまたまなのかよくわかりませんが、GPIFが基本ポートフォリオを大きく変動して、国債を約三十兆円売却をしなければならないということがあって、その三十兆円の日銀の追加緩和とGPIFの三十兆円がたまたま同じ日になった。GPIFは今まで基本ポートフォリオを一切合財ほとんど変えたことがなかったのに、初めて変えた日が偶然同じ日に合い、かつ、その一週間後、二週間後には解散・総選挙を安倍総理が決断なさった。

 市場から見ていると、大勢の方が、これはもうできレースだ、こんな偶然があり得るのかというふうに、私は選挙を迎える立場で見ていたわけですけれども、黒田総裁がそういう談合的な、筋悪なことをしたとは到底私は信じられないので、違うところで誰かがそういうことをやったのかなという気はしておりますけれども、黒田総裁、たまたま日が合ったというのは、物すごい偶然だというふうにお考えなのか、これが市場から見て筋悪と見えたと思われるかどうか。この点、前からちょっとお伺いしたかったので、お聞かせいただければと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、決定会合の日程は事前に公表されております。そうしたもとで、各金融政策決定会合におきまして、経済、金融の状況を丹念に九人の委員が点検をして、その上で次回の決定会合までの金融政策を決めるという形になっておりまして、その金融政策決定会合でどういう議論が行われるかというのは、これはまさに九人の委員が集まって議論してみないとわからないわけでございますし、政策自体も、そこで議論した上で九人の委員で決めるということでございますので、私どもの方から見て、何か談合というか、意図してやったというようなことは全くございません。

 それから、そういうことが何か、十月三十一日に行われた量的・質的金融緩和の拡大といった政策についてマイナスの影響があったというようなこともないと思っております。

木内(孝)委員 五月に伊勢志摩サミットもございますし、世界経済の不透明さが増している中で、黒田総裁の手腕、世界じゅうが注目しておりますし我々も期待しておりますので、ぜひとも、消費税増税は全く関係ないお立場かもしれませんけれども、ぜひその点についても安倍総理にアドバイスをきちっとしていただければと思います。

 質問を以上で終わります。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 一部の報道で、総裁の不動産の購入が取り上げられております。きょうは最初に、これに関連して幾つか質問したいと思うんです。

 三月四日の日刊ゲンダイデジタルによれば、総裁は、昨年十二月に、世田谷にマンションを購入したと報じられております。地元不動産業者は、「〇九年に分譲された九十一平方メートルの中古物件ですが、今でも軽く一億円は超えるでしょうね」と答えております。また、住宅ローンは借りずに支払った、こういうふうに報じられているんですね。

 黒田総裁にまず確認しますけれども、総裁は、役員の金融取引等に関する特則という日銀の内規を御存じですか。

黒田参考人 存じております。

宮本(岳)委員 では、資料一を見ていただきたいんです。

 日本銀行は、福井総裁が村上ファンドに一千万円の投資をしたことが社会問題になって、このような内規を定めました。この内規には、「一部の金融商品を除き、金融取引を原則禁止。」「第三者の名義を使った取引も禁止。」「規制の対象は、金融商品に限らず、投資目的の不動産も含む。」こういう非常に厳しいものであります。

 不動産については、自家用目的以外の不動産の購入は禁止されておりますので、このマンションは自家用目的なのだ、こう思うんですけれども、この不動産を自家用以外で利用するということは決してないですね。

黒田参考人 ございません。

宮本(岳)委員 現在、日銀は、不動産投資信託、いわゆるJ―REITを金融緩和を進めるための資産の一つとして、年間九百億円のペースで購入しておられます。この内規が定められた当時には、これはなかったことなんですね。また、現在日銀が行っているマイナス金利つき量的・質的金融緩和政策は、貸出残高とともに住宅ローン残高をふやし、不動産市場の活性化を目指そうというものであります。

 この服務規定が日本銀行の金融政策に疑いを与えないためにあるとすれば、運用目的の不動産だけでなく、不動産の購入そのものも自粛するのが当然だと思うんですが、総裁、そうではありませんか。

武田参考人 私からお答えします。

 現在の内規は、外部の有識者による諮問会議の答申を踏まえまして策定しております。委員御指摘のように、定期性または一定額を超える外貨預金、個人向け国債を除く債券、株式、投資信託、それに不動産につきましては、投資目的のものにつきましては禁止しております。その一方で、日常生活に当たって必要な金融商品等の取引、あるいは商品性から見て公務の公正性に関し疑念を抱くおそれのない金融商品等の取引については、規制の対象外といたしております。

 今回購入されました不動産については居住用ということでありますので、内規で禁止されている取引には当たらないということであります。

宮本(岳)委員 私、一応登記も確認をさせていただきましたけれども、この物件は、前所有者が少なくとも一億円を超える抵当権を設定したことのある物件なんですね。

 総裁には、就任時と退任時の資産公開が義務づけられております。二〇一三年に就任されたときに資産公開された黒田総裁の資産は、一千万円以下の定期預金のみということでありました。報道によれば、住宅ローンもないということであります。

 一億円前後の物件を住宅ローンを借りずに購入するための資金は、資産公開ではちょっと見当たらないんですけれども、どのように調達いたしましたか。

黒田参考人 資金調達の仕方についてお答えするのは適切でないと思いますが、資産公開の際に十分内規に従って公開しております。

宮本(岳)委員 現金でお持ちであったということなのかな、黒田総裁の経歴からすればそれだけの資産があるのかなというふうに思うんですけれども。

 そうしますと、資産公開の意味がないんじゃないですか、総裁。

武田参考人 私からお答えします。

 内規では、取引または保有が禁止された金融商品につきまして、その規制の実効性を担保するために資産公開という制度を導入しております。就任後、退任後、三カ月ということであります。

 その規制の対象外の金融商品等につきましては、資産公開の対象外になっているということであります。

宮本(岳)委員 いやいや、一千万円以下の定期預金のみしかないという報告であるにもかかわらず、一億円を超える物件をどこからか調達したお金で買えるわけですから、資産公開の意味がないと私は思いますね。

 報道によれば、岩田規久男副総裁も昨年の五月に横浜に不動産を購入したということであります。就任時に公開された資産によれば、岩田副総裁は、東京都に土地と建物、静岡に建物を投資目的不動産として所有しておられます。こちらは投資目的で所有しているとなっております。最終的には、横浜に購入した不動産を自家用住居とするのかもしれませんけれども、それまでに住居として使っていた建物を貸し出せば、これは投資目的と言われても仕方がない、そういうことじゃないですか。総裁、いかがですか。

武田参考人 私から申し上げます。

 投資目的の不動産については規制の対象になっておりまして、したがいまして、資産公開の対象になっているということでございます。目的が変わってくると、またそれは資産公開の対象になるということであります。

 居住のものについては規制の対象外でございますので、資産公開の対象外ということでございます。

宮本(岳)委員 いろいろ言いわけをされるわけですけれども、J―REITを日本銀行が直接購入したり、マイナス金利つき量的・質的緩和政策で住宅ローン貸し出しをふやして不動産市場を活発にしようとしている、まさにそのときに、総裁と副総裁がそろって不動産の購入をしている。このことは、国民感情から見れば強い違和感があるのは当然だと私は思いますよ。それを指摘して、きょうはここまででこれはとどめて、次の質問に移りたいと思います。

 マイナス金利の政策効果について聞きたい。

 昨日も総裁は、国民各層に幅広くプラスの影響をもたらすと述べられました。三月七日の読売国際経済懇話会の講演で、黒田総裁は、金融緩和政策の政策効果について、次のように説明をいたしました。

 強く明確なコミットメントと大規模な長期国債の買い入れ等の結果、実質金利が低下します、実質金利の低下は、企業向け貸し出しや住宅ローン金利の低下などを通じて設備投資や住宅投資を活発にします、また、金融資本市場では株高や円安方向の動きが生じ、企業利益を押し上げ、雇用や賃金の改善をもたらします、マイナス金利というのは、このルートをさらに強力に追求する仕組みと説明されております。

 前回の委員会でも答弁していただいたわけですけれども、マイナス金利政策の導入後、民間銀行の貸出金利や住宅ローン金利は引き下げられました。

 では、銀行からの貸し出しはどのように変化したのか。二月に銀行の貸し出しがふえて設備投資や住宅投資が活発になる兆しが起こっているのか。黒田総裁、いかがですか。

黒田参考人 銀行貸し出しの動向を見ますと、もちろん、銀行貸出残高というのは季節性がございますので、常に前年同月比で見ているわけでございますけれども、二〇一五年十二月はプラス二・二%、二〇一六年一月はプラス二・三%、同二月はプラス二・二%となっておりまして、二月の銀行貸し出しは緩やかな増加を続けているということでございます。

宮本(岳)委員 マイナス金利の導入以降、銀行の住宅ローンの金利あるいは企業への貸出金利は確かに低下をいたしました。ところが、貸し出しについては顕著な伸びはあらわれておりません。

 今お話があったように、三月八日に日銀が公表した貸出・預金動向の速報によれば、銀行、信金の合計の貸し出しは、前年同月比では今お話にあったようにふえたんですけれども、伸び率は、一月の二・四%増から二月は二・二%増に低下、二月の貸出金の残高は、一月の残高四百九十八・五兆円から四百九十七兆円へと、逆に約一兆五千億円減っております。特に、都市銀行等の貸出残高は前年同月比一%増だが、一月との比較で見れば一兆二千億円も減少しております。マイナス金利後の二月の貸し出しは、先月比では減少しているということなんですね。

 全銀協の預金・貸出金速報を見ても、平成二十八年二月末の全銀行百十六行の貸出金月末残高は、前年同月末比で見れば、約十一兆九千六百二十九億円、二・六%の増でありますけれども、前月末比では、二兆三百八十二億円、〇・四%の減なんです。全銀行の貸出金の四割を占める都市銀行でも、前月末比で一兆二千四百七十六億円、〇・七%も貸し出しは減少している。

 少なくとも、マイナス金利政策が導入された以降の二月末の残高を見れば、貸し出しは減少したということではありませんか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、銀行の貸出残高というのは季節性がございますので、季節性を無視した議論は余り意味がないと思います。季節性を排除するために、前年同月比で見るということでございます。ちなみに、消費者物価につきましても前年同月比で見ております。

 なお、大手行の貸し出しの場合には、一月から二月にかけて、銀行の貸し出しの平残が二・三%から二・二%、若干下がっておりますけれども、中身を見ますと、これは全て外貨建てのものの換算レートの影響でございまして、貸し出しの実態は全く同様な伸びになっております。

宮本(岳)委員 いや、総裁がそう言うだろうと思って、私、一昨年と昨年の一月、二月の推移を見たんですけれども、別に季節性というのはないんですよね。一昨年は一月から二月に向けてふえているので、前年比で比べなければ比べられないということはない。現に、これは減っていることは事実だと思うんですね。

 住宅ローンについてもどうか。さまざまな問題が指摘されております。例えば、住宅業界からは、マイナス金利が導入されたとしても、これまでも超低金利だったので、ここからあとコンマ数ポイント下がっても影響は限られるだろう、こういう声が上がっております。

 結果として、二月末の住宅ローンはどれだけふえましたか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 住宅ローンにつきましては、私どもが作成しております貸出先別貸出金統計において、これは四半期末ごとの残高を公表するという扱いになっておりまして、直近に公表した数字が昨年十二月末の数字でございますので、まだ二月末の数字は出ておりません、次は三月末の計数までお待ちいただきたいと存じます。

 ちなみに、昨年一年間、十二月末の前年同期比は二・三%の増加ではございました。

宮本(岳)委員 一月にマイナス金利政策に移ったんですから、昨年の十二月の話をされてもよくわからないんですが。ふえるであろうという話であって、今のは、数として現にふえたという話は出てこないわけですね。三月末まで待たなきゃならない。

 報道によりますと、借りかえの相談が激増しているということであります。新規の住宅ローン残高がふえずに、借りかえの住宅ローンがふえた場合、貸出残高は増加しないのだから、マイナス金利政策は効果があったとは言えません。むしろ金融機関の利益が減るだけだと言わなければなりません。

 黒田総裁にこれは確認しますけれども、そもそも、マイナス金利をやれば、住宅ローンの借りかえが増加するということを想定しておりましたか。

黒田参考人 まず、住宅ローン金利の低下ということは、住宅投資に対する需要を喚起するということで、住宅投資にも当然プラスの効果をもたらすと考えております。

 借りかえがふえるであろうということは、当然予想しておりました。なお、借りかえの場合であっても、借り手の利払い負担の減少を通じて可処分所得が増加するために、消費などにもプラスの効果があるというふうに考えております。

 これは、どのくらいの借りかえが行われて、どのくらいの利払いの負担が減少するかというのは、いろいろなモデルで計算しないとわかりませんが、数百万円単位で利払い負担が減るというケースもあるようでございます。

宮本(岳)委員 いや、僕は、コンマ数ポイント下がっても、それでおっしゃるように不動産が次々売れるというふうになるのかどうか、これはまだ確たるものはないと。現に、不動産を買った方は、総裁のようにローンを組まずに買っている人は幾らもいるわけでありますから。マイナス金利を導入したものの、実質金利が低下するばかりで、貸し出しや住宅ローンの増加には今のところ効果があらわれていないと見ざるを得ないと思うんです。

 前回も指摘しましたけれども、都市銀行各行でマイナス金利による付利の減少額、これは私の計算では、ざっと三十億円程度の減収では大きな影響はないだろうと思うんですね。結局、金利が高いから需要がふえないのではなくて、需要そのものがないことが一番の問題なのではありませんか、総裁。

黒田参考人 金融政策の役割といたしましては、従来から申し上げているとおり、量的・質的金融緩和であれ、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和であれ、一方で、二%の物価安定目標に対する強いコミットメントを通じて予想物価上昇率の引き上げを図ると同時に、大量の国債の買い入れ、さらには、今回、マイナス金利というものをつけて、イールドカーブ全体を引き下げ、貸出金利を引き下げるということを通じて、経済にプラスの影響を与えようというものでございます。

 そういった意味で、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものも、従来の量的・質的金融緩和をさらに強化するというものでありまして、その経済に与える影響の主たる波及経路というのは、先ほど来申し上げておりますように、実質金利の低下を通じて企業、家計の経済活動をサポートするということであります。

 その上で、おっしゃるように需要を直接的に引き上げるほかのいろいろな措置があるではないかということは、それは、よく言われておりますように、財政政策であれ、需要創出的な規制緩和であれ、いろいろなものがあると思いますが、やはり金融政策も、今申し上げたようなことを通じて消費や投資を刺激して経済をサポートするという大きな役割があるというふうに考えております。

宮本(岳)委員 本当にそういう効果になるかどうかを少し議論してみたいと思うんですね。

 ことしの二月十六日、日銀は業態別の日銀当座預金残高二〇一六年一月分を公表いたしました。

 配付資料二を見ていただきたい。

 前回も指摘をしましたけれども、日本銀行が導入したマイナス金利政策の結果、都市銀行、メガバンクですけれども、都市銀行は、これまでなら得ることができた付利がわずか百三十億円減収になるだけであります。五行で単純に割れば、たった二十六億円。億の給与を役員に支払うメガバンクにとって、二十六億円など微々たるものだと言わなければなりません。

 一方で、都市銀行の五行は普通預金金利を〇・〇二%から〇・〇〇一%へと二十分の一に引き下げました。住宅購入などを考えない多くの国民にとっては、マイナス金利政策により預金の利子は二十分の一に下がったわけであります。

 普通預金金利の引き下げにより、都市銀行、三メガバンク、りそな銀行、埼玉りそなはどれだけ預金利息を払わずに済むことになるか、日銀、わかりますか。

雨宮参考人 御質問の五行の昨年九月末時点の普通預金残高、これが百七十四兆八千億円でございましたので、これを前提に、普通預金金利が〇・〇二%から〇・〇〇一%に低下したことに伴いますこの五行の普通預金の支払い利息の減少額を計算いたしますと、年間三百三十二億円となる計算でございます。

宮本(岳)委員 三百三十二億円、預金利息を払わずに済む、こういうことですね。

雨宮参考人 さようでございます。

宮本(岳)委員 こういう三百三十二億円も預金利息を払わずに済むわけでありますから、マイナス金利で付利が仮に減少するといっても、百三十億円程度減少する一方で、国民の預金に対する支払い利息は三百三十二億円、実は浮くということになる。これはつまり、マイナス金利政策によってメガバンクなどは焼け太りしているということになるのではありませんか。

黒田参考人 そういうことにはならないと思います。

 先ほど来申し上げておりますとおり、企業向け貸し出しの基準金利も下がっておりますし、住宅ローンの金利も〇・二五%ほど下がっておりますので、それに伴う貸出金利収入はかなり減少すると思います。

宮本(岳)委員 企業向けや住宅ローンの話をされますけれども、一般国民の預金について言えば、三百三十二億円も利子が減らされてしまった。

 それは、マイナス金利で損するからだと都市銀行、メガバンクは言うけれども、実は銀行にとって、大半の部分は付利はこれまでどおり〇・一つくわけですね。それを今回、マイナスにする分はごくわずかなわけでありますから、減る分というのはわずか百三十億だという議論をやったわけですよ。差し引きしたって、むしろ支払い利子が下がる方が大きい。今まさにそういう結果になっているわけですから、一般国民にとったら、まさにそういう焼け太りした、銀行はこれを口実に我々の利子から三百三十二億円も取り上げたという事態になることは明らかではありませんか。

 次に、日銀トレードと言われるものについて聞きたいと思うんです。

 一月二十九日の政策決定会合の後公表されたマイナス金利つき量的・質的金融緩和に関するQアンドAというものがあります。問い二に、長期国債の買い入れが困難になるのではないかという質問に対して、「マイナス金利分だけ買入れ価格が上昇することで釣り合うので、買入れは可能と考えられる。」との答えが掲載されております。

 これは理事さんでいいんですが、間違いないですね。

雨宮参考人 そういう御説明は申し上げております。

 具体的には、当座預金のマイナス金利分だけ買い入れ価格が上昇、あるいは金利が低下することでつり合うので、買い入れは可能である、欧州中央銀行でも、マイナス金利と長期国債の買い入れを両立している、こう御説明申し上げております。

宮本(岳)委員 簡単に言えば、金融機関にとっては、国債を日本銀行に売却すれば、マイナス金利が導入されたとしても利ざやを稼ぐことができるということです。

 日経三月九日付によれば、証券会社は、財務省の入札で国債を調達し、より高い価格で日銀に国債を転売すれば、金利が下がり続ける限りもうかる。これを日銀トレードと呼ぶそうでありますけれども、マイナス金利導入以降、このような事態が現に起こっているんじゃありませんか。

黒田参考人 国債市場ではさまざまな取引が行われておりまして、御指摘のような取引は、別にマイナス金利導入後に起こったということではなくて、前から起こっております。

 いずれにいたしましても、日本銀行が行っている金融緩和政策は、こうした取引も含めて、長期、短期の国債金利を全体として低下させるということを通じて、貸し出し、社債、CPなど、全面的に金利を引き下げて金融環境を緩和して、民間需要を刺激する、それによって経済活動を活発にするということで効果があるわけでございます。

 なお、先ほどの委員の御指摘の個人と金融機関との取引関係云々という点で申し上げましても、住宅ローン金利の引き下げ等がかなり大幅でございますし、預金金利の引き下げというのは、もともと預金金利が低金利環境のもとで低いところにございましたので、そこの影響よりもはるかに個人にとってもプラスだと思います。

 いずれにせよ、金融機関と個人、あるいは金融機関と企業との相対取引のプラスマイナスよりも、経済全体にどのように影響が出て、それが個人や企業にとってプラスになるかどうかということが一番重要ではないかというふうに思っております。

宮本(岳)委員 それは〇・〇二が〇・〇〇一ということでいうと、まさに二十分の一ですから、これまでも十分低かったから大したことないという話じゃないんですよ。受取利息は明確に二十分の一に減ったというわけですからね。

 最初に指摘しましたけれども、貸し出しや住宅ローンがふえずに、日銀トレードよりも利回りが高い運用先がなくなれば、結局銀行は、日銀にある当座預金のマイナス金利が適用される部分の資金を引きおろし、国債を購入した上で、日銀にまた売って利ざやを稼ぐ、これが日銀トレードと言われるものでありますけれども、こういう方向に走るにすぎないというふうに思いますね。

 政府、銀行、日銀、この三者の間を国債と金がぐるぐる回っているだけでは何の経済対策にもなりません。そうではありませんか。

黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、量的・質的金融緩和であれマイナス金利つき量的・質的金融緩和であれ、国債のイールドカーブ全体を引き下げて実質金利を引き下げ、貸出金利その他について、より低利で有利な条件で借り入れができるという形にすることを通じて経済全体にプラスの影響を及ぼそうというものでありまして、これは、量的・質的金融緩和であれマイナス金利つき量的・質的金融緩和であれ、あるいは従来の伝統的な金融緩和であれ、全て同様でございます。

宮本(岳)委員 そのように進めたいと思っておられることはよくわかるんですけれども、不動産にしても住宅ローンにしても住宅の販売にしても、確たる結果はまだわからないか、数字も出ないわけであります。大体、物価安定目標二%ということで、そうさせたいと思ってあなた方はやってきたけれども、その思いどおりにいっていないというのが現状なんですね。

 結局、設備投資や住宅ローンにも回らず、金利低下で国民の預貯金から利子を奪い、焼け太りの銀行に日銀トレードで利ざやを稼がせる、こういう邪道ともいうべき金融政策は直ちに転換することを求めて、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 本日二回目でございますけれども、総裁は本日は初めてでございますので、お伺いしていきたいと思います。

 まず、少し時間はたちましたけれども、G20に行かれて、特にマイナス金利の御説明をされてこられたと思います。それに関して、国際社会において理解を得られたというふうに日銀総裁はお考えなのか、G20の状況も踏まえて御回答いただけますでしょうか。

黒田参考人 今回のG20では、私から、マイナス金利つき量的・質的金融緩和について、あくまでも物価安定の目標、この早期実現のために、量的・質的金融緩和を強化し、実質金利の一段の低下を狙ったものであるということを御説明いたしました。

 このような説明に対して反論や意見は全くございませんで、参加国の十分な理解が得られたものというふうに考えております。

丸山委員 何か特段、質問や懸念点などを挙げられたということはありますか。

黒田参考人 全くありませんでした。

丸山委員 そういった意味で、いわゆる国際決済銀行、BISが報告を出しておりまして、このマイナス金利政策に対する効果に疑問符を打つような報告を出されていると思いますけれども、まず、それについて総裁はどのようにお考えになっていますか。

黒田参考人 BISが先般公表したレポートでは、欧州におけるマイナス金利導入以降の金融市場の動きをレビューした上で、マイナス金利導入以降、欧州各国の短期、長期の金利が低下しており、マイナス金利はプラスの領域での金利引き下げとおおむね同様の効果をもたらしているというふうに評価しております。また、銀行預金から現金への目立ったシフトも生じておらず、マイナス金利の導入は大きな問題を生じさせていないというふうにしております。

 その上で、今後、金利のマイナス幅がより拡大したり長期にわたる場合に、個人や金融機関の行動に不確実性が残るというふうに指摘しておりまして、BISのレポートは、マイナス金利政策は効果があると分析した上で、留意点をつけ加えたもので、特に副作用を論じたものではないというふうに理解しております。

丸山委員 先ほど別の委員の御質問で総裁がお答えになったものに、金利引き下げの可能性もあって、特に理論的な余地が相当あるというお答えを先ほどされておりますが、それはそのとおりですよね。今お話しされて、そういうふうにお考えになっているということなんですけれども。

 そうした中で、このBISで、今後マイナス幅がさらに広がった場合の懸念点、もしくはマイナス金利が長期化した場合の個人や金融機関の行動についての不確実性について疑問点を述べていますが、これについてはどのようにお考えですか。

黒田参考人 これは欧州のマイナス金利導入以降の状況についてレビューしたものでございまして、御承知のように、欧州ではマイナス一%程度の金利をつけている中央銀行もありますし、当時はECBはマイナス〇・三だったと思いますけれども、そういったことを踏まえて、先ほど申し上げたように、有効であったと。ただ、今後、この欧州の金利のマイナス幅がより拡大したり、長期にわたる場合には、個人や金融機関の行動に不確実性が残るというふうに留意点を述べているということでございます。

丸山委員 マイナス幅がさらに広がる可能性については、総裁、少し言及をされていますけれども、マイナス金利が長期化する可能性についてはどのようにお考えですか。日本についてです。

黒田参考人 量的・質的金融緩和のときにも申し上げましたし、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和に関しても、二%の物価安定目標の実現を目指し、それを安定的に持続することができるようになるまで継続するというふうに申し上げております。

 その上で、石油価格の一定の前提を置いた場合に、二〇一七年度前半ころに二%程度に達する可能性が高いとしておりまして、いずれにいたしましても、これはあくまでも物価安定目標の実現のために行っているものであるということでございます。

丸山委員 景気の状況の見通しについても、きのうの政策決定会合で少し見通しが下げられていると思うんです。具体的には、「緩やかな回復」という表現をされているのが、今回、「基調としては緩やかな回復」と、明らかに後退している表現をされているんですけれども、景況はそういう理解でいらっしゃるということですか。

黒田参考人 この点は足元の現況と先行きと分けてごらんになっていただくといいと思うんですが、この点については、現況につきまして我が国の経済は、新興国経済の減速の影響などから輸出、生産面に鈍さが見られるものの、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムがしっかりと持続するもとで、基調としては緩やかな回復を続けているということでございます。

 なお、先行きについては、基調として緩やかに拡大していくという先行きの見方は変えておりません。

丸山委員 一方で、必要に応じて、ちゅうちょすることなく追加の緩和の用意があるというお話なんですけれども、では、現時点ではそれは必要ないという理解でいいんですか。

黒田参考人 この点は、常に、世界経済の動向、それが我が国の経済や物価にどのような影響を与えるかということを注意深く見ていかなければなりませんので、今の時点でさらに追加緩和をするということは、もちろん、先日の金融政策決定会合において、一月の決定会合において決定されたマイナス金利つき量的・質的金融緩和を継続するという決定を行ったばかりでございます。

 ただ、毎回の金融政策決定会合において、その時点での世界経済の動向、さらには日本経済の状況、金融市場の動向その他を十分点検して、常に、物価安定の目標の実現のために必要な場合には、ちゅうちょなく量、質、金利の三つの次元で追加的な金融緩和措置を講じるという方針であることに変わりはございません。

丸山委員 いつもは、現時点では追加緩和は考えられないと御発言されますが、きょうは少し前向きな感じがするので、少し思いを感じるところなんですけれども。

 しっかりやっていただく方針だというのは変わらないとは思うんですけれども、一方で、今回の決定会合を受けて、発表を見ていますと、少しマイナス金利の部分で変更点があったように思うんですけれども、いわゆるMRFの部分で変更されていると思います。

 今回、証券会社とか信託銀行の要請を受けられて変更されたというふうに聞いているんですけれども、趣旨をお伺いしたいのと、これはマイナス金利を着実に実行していくという話をされていますけれども、少し細かい部分ですが、ぶれがあるようなふうにもとられかねないと思うんですが、この辺も含めて、日銀総裁はこれはどういうお考えで入れられたのか、お答えください。

黒田参考人 この点につきましては、MRFが個人の株式投資など証券取引において決済機能を担っているということに鑑みまして、昨年の残高を上限にゼロ%を適用するマクロ加算残高の対象としたものでございます。

 なお、決定会合の後の公表文あるいは記者会見でも申し上げておりますとおり、限界的にマイナス金利を適用するものは、従来どおり、十兆円から三十兆円というところでマイナス金利がかかってまいりますので、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和の効果がこれによって何か減殺されるということは全くございません。あくまでも、MRFの証券取引における決済機能を担っているということに鑑みまして、こういった取り扱いにしたということでございます。

丸山委員 ということは、今後、MMFとかほかのあれもあると思うんですけれども、そういったものも要請があれば、もしかしたらそこは変更の余地がある、その可能性ももちろんあるということでよろしいんですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、MRFの決済機能に着目したものでございますので、他にそういったものは見当たらないと思いますので、現時点で何かその他のことがあり得るとは全く考えておりません。

丸山委員 金融政策としてのあれではなくて、決済機能の配慮でということでございますね、わかりました。

 そういった意味で、幅を広げていくというよりは、そうすると、むしろ政策的には金利がどこまで引き下がるかというところが一つ大きな政策の点になってくると思います。先ほど、理論的な余地は相当あるという話をされましたけれども、正直、欧州を見ていますと、そんなに総裁がおっしゃるほど、相当あるとは思えないんですけれども、この相当あるというのはどういうお考えでこれはおっしゃっているのか、わかりやすいように御説明いただけますか。

黒田参考人 マイナス〇・一%というところでございます。

 なお、欧州では、スイスがマイナス〇・七五%、スウェーデンがマイナス一・一%、デンマークがマイナス〇・六五%、そして、ECBがこの間さらに引き下げてマイナス〇・四%というところでございます。

 特に欧州のこれを狙って何かやるということでは全くございません。あくまでも、我が国の経済、物価状況に照らして、必要であれば、先ほど申し上げたように、量、質、金利、三つの次元で追加緩和を講じる用意がある、ちゅうちょなくそれを行う用意があるということでございます。

 理論的な余地というのは、欧州の例を見ても相当あると思いますけれども、何か欧州のことを狙ってやるとかそういうことでは全くありませんので、理論的には相当の余地があると思いますし、必要があれば、量、質、金利で追加緩和を行う、ちゅうちょなく行うという用意があるということに尽きます。

丸山委員 つまり、今の話だと、理論的には相当の余地があるので、欧州の数字は限界ではないということでよろしいんですか。

黒田参考人 そのとおりでありますが、ただ、欧州は、現時点でかなりのマイナス金利にしているということも事実だと思います。

丸山委員 最後、油価も含めた物価についてお伺いしたいんです。

 先ほどほかの委員の質疑で、物価の安定が日銀の使命の大きなところだというところがございました。

 油価の変動については、先ほど総裁からお話がありましたけれども、一方で、この委員会でも議論をさせていただいて、この原油の影響も踏まえて、物価の二%目標の見通しがどんどん先送りされている感を正直すごく感じるところなんですけれども、これは今の油価も踏まえた上で今のところ前にお話しされている状況で変更ないと。

 そして、油価なんですけれども、今後、見通しどおりいくというふうな認識はどこから来るのかというのをもう一度お答えいただけますか。

黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、原油価格の変動というものが消費者物価に影響を与えるということはそのとおりでありまして、一方で、このところの世界的な金融市場の変動の一つの原因になっているとも言われておりまして、この原油価格の状況について、何か特別の知見があって申し上げるわけではありません。

 ただ、確かに、足元では原油価格が若干反転上昇しておりまして、そのもとで国際金融市場も幾分落ちつきを取り戻しているということであります。

 また、それが資源国あるいは新興国経済の回復に資するということになると、それもまた世界経済にとってプラスになるとは思いますが、原油価格がどのように動くかというのは、これはなかなか予測は難しいと思いますので、先ほど来申し上げておりますとおり、各国の中央銀行と同じく、足元のレベルを原油の先物市場の価格で延ばして原油価格の前提を置いて見通しをつくり、その見通しのもとでの金融政策の運営を行っているということであろうと思います。

 なお、IEAは、原油価格は底打ちしたというふうには言っておられるようであります。

丸山委員 なかなかその辺が難しくて、今、先延ばしされていると思いますけれども、いずれにしても、目標となる物価達成のために、ちゅうちょなく追加緩和の用意がありますし、さらには、理論的には、まだまだ欧州は限界じゃなくて、金利を下げる余地があるというお言葉ですので、しっかりと政策を総動員いただいて、達成に向けて頑張っていただきますよう、私からもお願い申し上げまして、丸山穂高の質疑を終えます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、井林辰憲君。

井林委員 自由民主党の井林でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 今、私たちは、アベノミクスということで、経済対策を行ってまいりました。その中で、大胆な金融緩和というのが一つ大きな柱でございまして、その中で、多くの皆さんのお力で企業収益がかなり上昇してきているということで、これは大変すばらしいことだというふうに思っております。

 ただ一方で、その利益がやはり設備投資に回っていったりですとか働く人の雇用により回っていってもらいたいということは、再三再四、政府の方からも経済界に対して申し入れをしているところでございます。

 そういうところもぜひ金融サイドからもバックアップしていきたいということで、前回十二月のときに、日本銀行が、年間約三兆円のETFの買い入れに加えて、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に対するサポートを行うための新たなETF購入というものを打ち出されまして、昨日の金融政策決定会合において、さまざまな実務上の方針を決定されました。

 改めて、導入の狙いと現時点での準備状況、こうしたものを御説明いただきたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、量的・質的金融緩和のもとで企業や家計のデフレマインドは転換してきておりまして、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いとは思いますけれども、そうした動きがさらに広がっていくことが望ましいと考えております。

 御質問の新しいETFの買い入れにつきましては、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業をサポートする観点から、昨年十二月に決定したものでございます。

 その後、実務的な検討を進めたところでありまして、昨日、御指摘のように、より具体的な内容を公表いたしました。すなわち、新しいETFにつきましては、設備投資や研究開発費が基調的に増加している企業、人材投資が基調的に増加している企業や人材育成に積極的に取り組んでいる企業で、こうした取り組みが成長につながっている企業から成る指数に連動するETFを買い入れていくということにいたしました。

 実際にどの程度を買い入れることができるかは新しいETFが今後どの程度上場、販売されるか次第ですけれども、検討に際して市場関係者からいただいた御意見の中には、具体的な商品設計につながるような御意見も少なからずございました。

 日本銀行としては、こうしたETFを買い入れることによって、企業の設備・人材投資などキャッシュフローの効率的な活用に対する資本市場の関心が一段と高まって、企業活動に好影響を与えていくということを期待しております。

井林委員 ありがとうございます。

 新しいETFの買い入れということでございますので、総裁もよくおっしゃっていますけれども、ぜひ市場と会話をしていただいて、しっかりと導入していただいて成果を上げていただくようにお願いをしたいというふうに思います。

 さて、ちょっと話題がかわりますけれども、まず、経済と物価の情勢について、きょうも御報告いただきましたけれども、確認をしていきたいというふうに思います。

 我が国の経済とか物価の情勢、この三年間で明確に改善をしてきたというふうに思います。これは、先ほど申し上げましたアベノミクスということが一定の効果を上げていることだというふうに思います。

 企業収益が過去最高、また失業率も大変改善をしてきているということでございます。ことしはなかなか厳しいという報道もありますけれども、ベアも連続で実現をしているということでございます。物価についても、確かに厳しい数字は出ていますけれども、原油価格という少し我々のコントロールができない数字を除けばプラスが続いておりますし、デフレということは、私は、いろいろなところで生活をしていても、払拭されつつあるのかなというふうに思ってございます。

 ただ、今大きな話題になっているのは、世界的な金融資本の動揺でございます。投資家心理が過度に悪化しているというようなことも言われますけれども、今までは資本を世界じゅうから集めて成長に回してきた新興国でございますけれども、中国の外貨準備の大きな減少に代表されるように、新興国からの資本の流出が続いております。それらの動きがこうした新興国の実体経済を冷やして、日本の経済に悪影響を及ぼすことを懸念しております。

 まずそこで、日本銀行にお伺いをしたいと思いますけれども、新興国経済の動向について今どのように評価をしているかということを御説明ください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のとおり、年明け以降、国際金融市場は大変不安定な動きとなっておりましたが、その背景は、やはり御指摘のとおり、中国を初めとする新興国経済の先行き不透明感の高まり、これを背景に、投資家のリスク回避姿勢が過度に広まっていたということがあろうかというふうに思います。

 その上で、御質問の、新興国経済全般に関する私どもの評価でございますけれども、まず中国経済について申し上げますと、これはもう減速しているということは事実だろうと思います。ただ、基本的には、現在、中国経済は、これまでの輸出、製造業主導の経済から、内需、非製造業中心の経済への構造転換の過程にあるということでございますので、この減速も、そうした中国当局の大きな政策目的のもとで発生しているということであると思いますし、一方、マクロ政策的に見ると、政策対応余地は十分にございますので、おおむね安定した成長経路をたどるというふうに見てございます。

 この間、一方、NIESやASEAN諸国などにつきましては、やはりこの間の中国経済減速の影響等で輸出や生産が弱目となっておりますし、また、資源価格の低迷が、ブラジルですとかロシアなど資源国経済を下押ししているという現状もございます。

 先行きにつきましては、先進国が米国を中心に堅調な成長を続けるということであれば、その好影響が波及するもとで、減速した状態から徐々に脱していくというふうには見ておりますけれども、引き続き、さまざまなリスク要因がございますので、新興国経済の動向ですとか国際金融市場の動向及びそれが全体として我が国の金融、経済、物価にどのような影響を与えるかについては、しっかりと注視していくという方針でございます。

井林委員 ありがとうございます。

 しっかりと注視をしていくということでございますので、しっかり見ていただいて、また、適切な対応というのをこれはちゅうちょなくしっかりととっていただきたいというふうにお願いを申し上げたいと思います。

 この一月末に、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものが導入をされたのも、こうした世界的な金融資本市場の動揺が高まるもとで、我が国の経済や物価に悪影響を及ぼすリスクが高まったことに対応したものだというふうに認識をしておりますし、また、総裁を含め日本銀行さんからも、たびたびそうした御説明があったところでございます。

 初めてのマイナス金利ということでございますので、国民の間には、この政策に対してさまざまな反応がありました。どのような政策にも、やはり、プラスの面、マイナスの面というのが非常にありまして、その点をよく考えていただいた上で、一番大きなデフレ脱却、そして、物価上昇の二%の目標に向けてさまざまな政策を打っていただく中で、マイナス金利の導入というのに踏み切っていただいたと思いますが、マイナス面はいろいろ取り沙汰されるんですが、プラス面もやはり非常に多くあると思います。

 プラス面、マイナス面含めどのように判断して、日本銀行としてこのマイナス金利の政策導入を決定したのかということを、改めてこれは国民の皆さんにも御説明をいただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、マイナス金利政策というのは我が国では初めての経験でございますので、政策委員会でも相当な十分な議論をいたしました。その際には、当然、プラス面、マイナス面もあわせて議論をいたしたわけでございます。その上で決定したということでございます。

 まず、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、御案内のとおり、国債の利回りは短期、長期とも大幅に低下しておりまして、これを受けて、貸し出しの基準となる金利、あるいは住宅ローンの金利は、はっきりと低下をしております。金利面では、政策効果は既にあらわれているわけでございまして、今後、その効果が実体経済や物価面にも波及していくというふうに考えております。

 一方で、預金金利も低下しておりますけれども、その低下幅は、貸出金利に比べますと小幅なものになっております。また、中央銀行が既にマイナス金利を採用してある程度の期間がたっております欧州諸国の例を見ましても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは考えておりません。

 次に、金融機関の収益に対する影響についてでは、マイナス金利に限らず、一般的に、金融緩和を進めて企業や家計にとっての金融環境を緩和させるということになりますと、仲介者である金融機関の収益に一定の影響が出るということは避けられないわけですが、その上で、金融機関の収益を過度に圧迫することによってかえって金融仲介機能を弱めることがないように、従来から申し上げております三段階の階層構造の採用によりまして、金融機関の収益に及ぼす直接的な影響は最小限にしているということでございます。

 もちろん金利全般の低下の影響はあるわけですが、日本の金融機関は、リーマン・ショックや欧州債務危機による損失が小さくて、資本基盤が充実しております。さらに、収益の面でも、先ほど来申し上げておりますとおり、景気回復を背景に、貸し倒れ等に伴う信用コストが大幅に低下しておりますし、貸し出しも増加しているということなどから、低金利環境にもかかわらず高い収益水準を確保いたしております。

 いずれにいたしましても、このマイナス金利つき量的・質的金融緩和を遂行することによって、一日も早くデフレから脱却し、それが家計、企業、あるいは、金融仲介機能を果たしている金融機関にとっても、プラスになるようにしていきたいというふうに思っております。

井林委員 ありがとうございます。

 やはり、マイナス金利ということでいろいろ国民の皆様も不安に思うことも多いと思いますので、ぜひプラスの面も含めてしっかりと伝えていっていただいて、多くの皆様に御安心をしていただきたい、そういうお願いを重ねてさせていただきたいというふうに思います。

 さて、マイナス金利政策は、国債金利が〇・二%下がるなど明確な低下を実現しておりまして、また、住宅ローン金利もこれはよく言われていますけれども低下をしつつありまして、また、企業の貸出金利のベースの部分もかなり下がってきているということで、金利面で大きな政策効果を上げているということはたびたび御説明をいただいているところでございます。

 今後、これは総裁もおっしゃっていますけれども、この効果が実体経済に波及していくことを期待しているということでございます。これから時間をかけて金利低下の効果が実体経済に浸透していくことが非常に重要だと私も考えております。

 そこで質問ですけれども、これから実体経済に対して波及していくためには、具体的にはどういう形で波及していくと思われているのか。特定の指標だけを見てこうだということをやはり断ずることはできないと思うんですけれども、特にしっかりと注視をしている指標または金利、さらにはさまざまな経済的な動き、こうしたものをよく見ているというところをぜひ御説明いただきたいと思います。

黒田参考人 基本的には、実質金利が低下して、設備投資、住宅投資、消費その他が刺激されて、GDPであったりGNIだったり、国民所得が増加する、それが家計や企業にとってプラスの効果をもたらすということであろうと思います。

 まず、家計につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、住宅ローン金利がかなり下がっております。〇・二五%程度下がっておりまして、これが当然住宅投資にプラスの影響をもたらすとともに、従来の住宅ローンを借りかえることによって家計の可処分所得もふえますので、消費にも二次的な影響、プラスの影響を及ぼすということを通じて、家計による住宅投資や消費にプラスの影響を及ぼしてくるだろう。ただ、これは若干の時間を要するとは思います。

 二番目に、企業でございますが、これは、企業向けの貸し出しの金利も下がっておりますし、社債の金利なんかもかなり大きく下がっております。当然、企業の設備投資あるいは人材投資等にプラスの影響を及ぼすであろう。現在の日本の企業は、史上空前というか史上最高の収益を上げておりますので、資金繰り的に非常に困っているということはないとは思いますが、それでも、設備投資とかRアンドD等について金融機関からの借り入れを活用することもありますし、それから、現預金をいたずらに持っていても機会費用の面で余りプラスになりませんので、そういった面も使って設備投資、人材投資等にプラスになっていくだろう。

 そういったことを考えますと、家計にとっては、既に実は、失業率が三%台前半ということで、完全雇用に近いことになっておりますので、そのもとで雇用・所得環境が着実に改善していくだろう。

 それから、企業につきましては、設備投資は、先行指標その他を見ますと、かなり強い状況でございます。これが実際の設備投資として結実していくわけでございます。

 そうなりますと、当然、GDP、国民所得もより大きくなっていくということでございますので、実体経済、それからさらには物価にもプラスの影響をもたらすと思いますが、そこには若干のタイムラグがあるということは御理解いただきたいと思います。

井林委員 ありがとうございます。

 タイムラグがあるということですけれども、ぜひ着実に、期待した効果がしっかりとあらわれるように、これからも取り組みを進めていただきたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、これまでの量的・質的金融緩和に、マイナス金利という新しい政策が加わりました。これで日本銀行としては、金融政策として、マネタリーベースの増加額という量の面と、長期国債やETF、J―REITなどの質の面、そして、マイナス金利の幅ということで金利という三つの次元をさまざまに組み合わせるということで、金融政策においてとり得る手段というのが一つ大きく選択肢が広がったというふうに思ってございます。

 そうなると、市場としては、日本銀行は今後どういう金融政策を行うかということが非常に気になると思いますし、また、不用意な混乱ということは、これは総裁自身も、起こしてはいけない、また期待はしていないということだと思います。

 また、マクロ加算残高、年八回の金融政策決定会合でコントロールを行うということでございますけれども、これもやはりタイミングが微妙なときとかも出てくると思います。そういうことを考えますと、これまで以上に日本銀行の考え方や情報発信の内容が市場は大変気になるということだと思います。

 日本銀行としても、市場との対話の重要性が一層増すということで、たびたびお話をいただいているところでございますけれども、この点について、最後に、総裁の所見と、そして、決意というか思いをお聞かせいただけますようにお願い申し上げます。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、金融政策運営に当たっては、政策に関する考え方、あるいは、その前提となる経済・物価情勢についての判断をできるだけわかりやすく説明して、市場参加者を含めた国民各層の理解を得ていくということは大変重要でありますし、殊に、かつての伝統的金融政策という形で短期金利だけを上下するという状況から、先進各国の中央銀行はみんな、量的あるいは質的、そして、欧州の中央銀行はマイナス金利もということで、手段の幅を広げて大胆な金融緩和政策を進めておりますので、それだけに、御指摘のように、一層、市場参加者を含めた方々にわかりやすく説明して理解を得ていくということが大変重要だと思いますので、今後とも、その点は十分念頭に置いて金融政策を進めてまいりたいと思っております。

井林委員 今後も、金融政策を通じて二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成できますように重ねてお願いを申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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