衆議院

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第17号 平成28年5月10日(火曜日)

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平成二十八年五月十日(火曜日)

    午後一時五十三分開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      木村 弥生君    國場幸之助君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    中山 展宏君

      長尾  敬君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      堀井  学君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      若狭  勝君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      初鹿 明博君    前原 誠司君

      宮崎 岳志君    鷲尾英一郎君

      上田  勇君    斉藤 鉄夫君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣官房副長官      萩生田光一君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   外務副大臣        木原 誠二君

   財務副大臣        坂井  学君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土生 栄二君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室次長)   諸戸 修二君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総務部長)       桑原  進君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    門間 大吉君

   政府参考人

   (財務省財務総合政策研究所長)          冨永 哲夫君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 笠原 俊彦君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            堀地  徹君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        田中  聡君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    中曽  宏君

   参考人

   (日本銀行審議委員)   櫻井  眞君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     櫛田 誠希君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     若狭  勝君

  勝俣 孝明君     瀬戸 隆一君

  根本 幸典君     堀井  学君

  福田 達夫君     神山 佐市君

  山田 賢司君     木村 弥生君

  木内 孝胤君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     青山 周平君

  木村 弥生君     山田 賢司君

  瀬戸 隆一君     長尾  敬君

  堀井  学君     根本 幸典君

  若狭  勝君     井林 辰憲君

  初鹿 明博君     木内 孝胤君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     福田 達夫君

  長尾  敬君     勝俣 孝明君

    ―――――――――――――

五月九日

 消費税の増税反対に関する請願(島津幸広君紹介)(第一六五〇号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(田村貴昭君紹介)(第一六七七号)

 同(島津幸広君紹介)(第一六九八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁岩田規久男君、副総裁中曽宏君、審議委員櫻井眞君、理事雨宮正佳君、理事櫛田誠希君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官土生栄二君、内閣官房日本経済再生総合事務局次長・文部科学省大臣官房審議官義本博司君、内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室次長諸戸修二君、内閣府大臣官房審議官増島稔君、経済社会総合研究所総務部長桑原進君、金融庁監督局長遠藤俊英君、外務省大臣官房審議官大菅岳史君、財務省主税局長佐藤慎一君、理財局長迫田英典君、国際局長門間大吉君、財務総合政策研究所長冨永哲夫君、国税庁次長星野次彦君、防衛省大臣官房審議官笠原俊彦君、防衛装備庁装備政策部長堀地徹君、プロジェクト管理部長田中聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。うえの賢一郎君。

うえの委員 自由民主党のうえの賢一郎でございます。

 質問の機会をお与えをいただきまして、ありがとうございました。十五分間という短い時間でございますので、端的に行わせていただきたいと思います。

 冒頭、熊本地震に際しましては、亡くなられた皆様の御冥福をお祈りしたいと思いますし、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 最初、その熊本地震の関連につきまして金融庁に質問をさせていただきたいと思います。被災企業の資金繰り対策についてでございます。

 今般の地震につきましては、多くの中小企業が影響を受けたと思います。被害を受けた中小企業が資金繰りに行き詰まるというようなことがあってはならない。また、被災企業に係る手形の取り扱いについては、金融機関は十分に配慮をすることが必要だというふうに考えております。また、被災をした中小企業が一刻も早くもとの生産活動に戻ることができるように万全を期すべきだと思います。

 これにつきましては、生産設備の復旧について一体どれぐらいの資金が必要なのか、これから十分調査をしていただけるものだと思いますが、その資金の円滑な供給ということについても重要だと思いますので、これにつきまして金融庁としてどのような取り組みを行っているのか、お伺いをしたいと思います。

 なお、牧島政務官におかれましては、先般まで現地対策本部長として御滞在をいただきました。お疲れさまでございます。引き続き御尽力いただきたいと思いますが、そうしたことも含めまして、現地の状況も含めて御所見を頂戴できればと思います。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 熊本、現地におきまして中小企業の皆様のお声も、私自身、直接聞かせていただいたところでございます。

 金融庁においては、今般の平成二十八年熊本地震に災害救助法が適用されたことを受けまして、四月十五日に熊本県内の関係金融機関などに対し、災害の影響を受けている顧客の便宜を考慮した適宜的確な措置を講ずるよう要請したところでございます。

 具体的には、ただいま、うえの議員よりお尋ねございました資金繰りに関連する事項として、中小企業が振り出しを受けた手形について、震災により支払い期日までに金融機関に持ち込むことができなかった場合でも、関係金融機関と相談の上、取り立てができることとするとともに、支払いができない手形の不渡り処分を猶予すること、資金繰り目的を含む融資審査の手続の簡便化、融資の迅速化、そして、既存融資に係る返済猶予などの貸し付け条件の変更などについて要請を行ったところでございます。

 金融庁としては、金融機関が被災地における取引先企業のニーズを的確に把握し、きめ細やかな対応を行うよう、引き続き努力をしてまいります。

うえの委員 ありがとうございます。現地でいろいろな対策をとってこられたと思いますが、中小企業支援につきましても、引き続き御尽力を頂戴したいというふうに思います。

 次に、個人の二重ローンの問題でございます。

 これは東北大震災でも大変問題になりました。今般の地震におきましてもたくさんの住宅が深刻な被害を受け、いまだに多くの人々が避難所等で暮らしをされているという状況でございます。この中には、住宅ローンの支払い中であるにもかかわらず、住宅が全壊等の被害を受けた方も多いのではないかというふうに思われます。そうした方々が新たな住宅ローンを組むことで二重ローンを背負ってしまうというようなことになりかねないわけでありまして、生活の再建に向けた支障にもなることが危惧されるところでございます。

 また、旧債務につきまして、これを法的整理により解消しようとすれば、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうというようなおそれがございます。新しく家を建てる際のローンを組むことができなくなってしまう、そういったおそれがあるわけでございまして、こうしたことも十分念頭に置いて対策をとっていく必要があると思います。

 全国銀行協会、全銀協では、東日本大震災のときの経験を踏まえ、災害によって債務の支払いができなくなった被災者の債務整理を支援する枠組みにつきまして、ガイドラインを取りまとめ、ちょうどこの四月から適用を開始したというふうにお伺いをしております。

 これは民間としての取り組みでございますが、金融庁としても、本ガイドラインが積極的に活用されるように、これは強力に後押しをしていただくことが大切だと思いますが、これにつきましてどのようなお考えか、政務官のお考えをお伺いしたいと思います。

牧島大臣政務官 ただいま、うえの委員より御指摘ございましたとおり、家屋の倒壊などの被害が出ております。

 御指摘の自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインは、全国銀行協会を事務局とする研究会において昨年十二月に取りまとめられ、本年四月より適用が開始された、民間の自主的なルールでございます。

 今般の熊本地震により既往の債務の弁済が困難となった被災者の方々についても、本ガイドラインにより、法的な破産手続による不利益を回避しつつ、債務免除を受けることが可能となるとともに、当該手続に要する弁護士費用などについて国の補助を受けることができます。

 金融庁としても、被災者の方々に本ガイドラインの周知が図られるよう、被災地の各金融機関に対し、ガイドラインの利用に係る相談に適切に応ずることやガイドラインの周知、広報について要請するとともに、首相官邸や金融庁のウエブサイトに掲載しましたほか、金融庁に熊本地震の相談ダイヤルを開設しています。ガイドラインに関する相談が寄せられた場合には、丁寧かつ適切に対応するなどの対応を行ってきたところでございます。

 今後も、ガイドラインのさらなる周知を行い、被災者の皆様の御支援に全力で取り組んでまいります。

うえの委員 ありがとうございます。

 しっかりと対応していただいていると思いますが、政府一丸となって取り組んでいただいている状況でもございます。とりわけ、金融面での支援、サポートというのは、まさに、生活あるいは企業活動に密着した問題だと思いますので、引き続き注力をしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、フィンテックにつきまして御質問をさせていただきたいと思います。

 フィンテック拡大の動きというのは、これは世界的な規模で相当急速に進行しています。例えば、民間の調査機関の調べによりますと、全世界でのフィンテックの関連の投資というのは、二〇一五年、これは二〇一一年比で約九・三倍の二百二十七億ドルに達するというようなことでございますが、一方で、我が国への投資額というのはその百分の一程度にとどまっているというような状況でございます。

 急速に進むこのフィンテック拡大の動きに乗りおくれない、あるいは、むしろ先導していくぐらいのことが必要ではないかというふうに思っておりますし、一定程度、危機感を相当持って取り組む必要があるのではないかと思います。

 こういった状況の中、私ども自由民主党におきましては、金融調査会におきまして、先般、フィンテックをめぐる戦略的対応第一弾というのを取りまとめをさせていただきました。フィンテックを核として金融の高度化を我が国がリードするというような、そのための提言を幾つか行っているところでございます。

 とりわけ、世界的に、外部との連携によってイノベーションを進める動きというのが加速をしている状況があります。これは金融業界だけではなくて、産学の幅広い領域の人材に、より先進的なアイデアを生み出していただいて、それをエクイティー性の高い資金供給等によってバックアップをするというような、フィンテックとして成長していくための環境、エコシステムというふうに言われておりますが、このエコシステムの形成というのを、これは早急に政府も力を入れて進めていくことが必要ではないかというふうに思っております。

 そうしたことを進めることによって、日本が世界最先端、フィンテックの創出、成長の原動力となっていくというようなことをやはり目指していくべきではないかというふうに考えているところでございます。

 そうした観点から、ぜひ、金融庁としてこのフィンテックの発展に向けて今後どのように取り組んでいくのか、その決意なり、あるいは大きな方向性について、政務官のお考えをお伺いしたいと思います。

牧島大臣政務官 ITを金融に活用したサービス、いわゆるフィンテックの登場は、従来見られなかった新しい金融サービスの提供をもたらし、金融の将来に大きな影響を及ぼし得るものと金融庁としても認識をしているところでございます。

 フィンテックの動きは、我が国の経済、金融の発展にかかわるものであります。フィンテックの動きを利用者利便の向上や我が国の国際競争力の確保につなげていくことが重要な課題であります。

 そうした中にあって、うえの委員より御指摘ございましたとおり、我が国においては先進的なフィンテックベンチャーの登場がいまだ必ずしも実現していないとの御指摘もあり、また、金融EDIの実現など金融インフラの高度化も、今、重要な課題として認識しているところです。フィンテックをめぐる諸課題については、与党でも精力的かつ有意義な御議論をいただいたと承知しています。

 金融庁としては、まずは足元のフィンテックの動きに適切に対応するため、今国会に提出させていただきました法案の早期成立が重要と考えておりますが、フィンテックベンチャーの創出が図られるような環境を整備していくこともあわせて重要であると思います。

 与党からの御提言も踏まえまして、この環境整備のための方策について検討するため、金融庁においては、有識者会議を設置することを決定いたしました。

 また、金融インフラの改革に関しては、企業の生産性や競争力強化につなげるべく、金融EDIの実現などの課題について関係者が連携して着実に実行に移されるよう、取り組みを促してまいりたいと考えております。

うえの委員 ありがとうございます。自民党としての提言をさせていただきました。それを着実に、ともによく協議をしながら進められればと思います。

 とりわけ、有識者会議を開催していただけるということでございますので、この際にはぜひとも、大企業だけではなくて、スタートアップ企業ですね、そうした企業の皆さんの御意見というか、まさに現場で頑張っていただいている方の御意見をしっかりと踏まえて対応していただけるとありがたいと思います。

 あと五分ということでございますので最後の質問になりますが、ポートフォリオリバランス、貯蓄から投資ということにつきまして、一点だけ質問をさせていただきたいと思います。

 足元二十年の家計の金融資産の動向を日米で比較をいたしますと、日本はこの間、この二十年間で一・四倍程度資産が増加をしているわけですが、アメリカでは三倍以上にふえています。これは恐らく分散投資がより進んでいるということに起因をするということではないかと思っております。

 こうした状況を改善して国民の安定的な資産形成を実現するためには、やはり、長期の分散投資を進めていくというような視点が大事ではないかと思っておりまして、その一つの核はNISAだと思います。

 NISAにつきましては、統計上は国民の十人に一人がこのNISAを活用しているというような状況で、その普及も一定程度は進んでいるのではないかなというふうに思いますが、これをさらに活用していただくということが大事だろうと思います。

 各種団体からはこのNISAにつきまして、恒久化をしてほしい、そういった要望が強く出されているところでもございますし、あるいは、NISAの原型となりましたイギリスのISAでは、住宅の取得、あるいは先ほどのフィンテックの支援、そうしたものについてもこのISAの枠組みを活用しているというようなことがございます。

 そのような状況を踏まえてですが、NISAのさらなる活用も含めまして、貯蓄から投資への促進というものをどういったふうに今後進めていかれるのか。政府の現状認識も含めてお話を頂戴できればと思います。

牧島大臣政務官 安倍内閣における三年間の経済再生に向けた取り組みによりまして日本経済がデフレ不況から脱却しつつある中においては、御指摘のとおり、ポートフォリオリバランスの促進を通じて家計金融資産が成長マネーに向かっていくこと、その資金が投資先の企業の成長を促し、安定的なリターンが投資家に還元されるという好循環を確立することが重要であると認識しております。

 こうした観点から平成二十六年一月に開始したNISAは、昨年十二月末で九百八十七万口座が開設されています。買い付け金額も六・四兆円に及んでおり、NISAを利用した投資の促進は確実に成果を上げていると考えているところです。

 ただ、このような変化をさらに大きなうねりとしていかなければならないというのも御指摘のとおりです。引き続き、NISAのさらなる普及促進、また、金融経済教育などによる金融リテラシーの向上、コーポレートガバナンスの実効性向上を通じた投資先企業の価値向上などのさまざまな施策を通じて、アベノミクスを金融面からしっかりと支えてまいりたいと考えております。

うえの委員 ありがとうございました。

 引き続き精力的な取り組みをお願いをして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平です。

 私も、十五分という大変短い時間ではあります。余り突っ込んだ議論はできないかもしれませんけれども、ぜひ質問させていただきます。よろしくお願いをいたします。

 まずは、私からも熊本地震について一言御質問をさせていただきたいと思います。

 まずもって、今般発生をいたしました平成二十八年熊本地震では、大きな被害が発生をいたしました。お亡くなりになられた皆様方また御遺族の皆様には心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆さんに、私からもお見舞いを申し上げたいと思っております。

 一日も早い生活再建が大変重要でありますし、また、避難生活の長期化等々も懸念をされる中で国がどういう支援ができるのか、大変被災者の皆さんも、固唾をのんで見守っているところと思います。

 現在、熊本地震の復旧復興のために、補正予算を組んで対策費を確保する方向で調整をしているところでもありますし、また、与党、野党も一体となってこうした国の取り組みを後押しさせていただいているところであります。現在調整中の段階でありますけれども、この補正予算の考え方についてまずは教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 政府といたしましては、地震の発生以来、自衛隊、警察、消防、海上保安庁等々の医療部隊によります救命救助活動や、また、飲料水、生活必需品の提供など、被災地で求められておりますニーズに合わせて、今、現場主義で、牧島政務官、現場に行っておられますけれども、被災者の支援に取り組んできたところであります。

 そうした中で財政面からも、これは先手先手で機動的に対応するということで、今般、補正予算を速やかに編成することとさせていただいております。

 住宅の確保、また、生活支援金の支給など、これは地震の被災者支援に要します経費を計上させていただくと同時に、いわゆる復旧等々の予備費ということで熊本地震復旧等予備費というものを新たに創設して、今後、例えば、被災された方々の事業の再生とか、道路とか、またインフラ等々の復旧、ほかにも瓦れき処理等々、いろいろ迅速に進めていかねばならぬと思っております。

 したがいまして、今国会、この通常国会において成立ができますように、五月十三日の金曜日と思いますが、提出を目指して与党とも調整を進めてまいりたいと考えておりますので、この予算によりまして当面の復旧対策に万全を期してまいりたい、さように考えております。

松本(洋)委員 ありがとうございました。

 被災地の復旧復興を一日も早くなし遂げるためにも、この補正予算の成立、大変重要な事柄でもあります。ぜひしっかりと対応していただきたいと思いますし、特に、迅速かつきめ細やかに、被災地それぞれ、被災者それぞれのさまざまな立場、また懸案というものがあると思いますので、迅速かつきめ細やかな対応をぜひしていただけるような、そうした補正予算編成をよろしくお願い申し上げます。

 それでは、熊本地震の質問を終わらせていただいて、次に移らせていただきたいと思います。

 麻生大臣、今回、ゴールデンウイーク中にドイツのフランクフルトへ行かれました。そして、ADBの年次総会、日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議、ASEANプラス3財務大臣・中央銀行総裁会議などに出席をされたというふうに認識をしているところでございます。大変お疲れさまでございました。

 こうしたゴールデンウイーク中に行われました外遊、そして、そこで行われました精力的な会談等々につきまして、ぜひ大臣から、その成果をきょう教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 アジアに開発銀行を、これは御存じかと思いますが、日本が提唱してつくり始めてちょうど五十年、来年で満五十周年ということになるんですが、ことしはフランクフルトでその総会が開催をされております。

 ADBが、今、アジアに極めて高い要望の出ておりますインフラストラクチャーというもの、社会資本の整備というものの需要が極めて大きいことになっておるんですが、それに当たっては、ただ、でき上がったインフラがすぐ壊れるとか流れるとかいうものではなくて、質の高いインフラというものを推進することの重要性をここ三年間主張してきておりますけれども、今回出されたコミュニケの中に質の高いインフラ整備という言葉がきちんと書き込まれることになりましたし、日本としても、スタートいたします川上から川下まで各段階でアジア開発銀行にしっかりと協力していくことを説明し、また、インフラとか自然災害とか、そういったほかにも、パンデミック等々の保健等々に対して、地域の重要課題に重点的に取り組んでいくということを求めております。

 また、日中韓の財務大臣それから中銀総裁会議、それからASEANプラス3財務大臣・中銀総裁会議では、私の方から日本経済の現状について丁寧に説明した上、地域協力について、AMRO、AMROというのはASEANプラス3マクロエコノミック・リサーチ・オフィスですかね、これも日本が提唱してつくったものですけれども、結果としてこれが正式に国際機関に認知をされることになりましたので、地域のセーフティーネットのかなめとして重要な役割を果たしていくことが期待されるということを再確認をさせていただいた上で、国際金融システムの安定性を高めるために、例のチェンマイ・イニシアチブと言われるものの、IMFとの協力関係というものをより深めるということが必要なのであって、IMFはIMF、チェンマイ・イニシアチブはチェンマイ・イニシアチブ、そんなんじゃない、両方で協力し合ってやっていくというものの重要性を指摘などさせていただきました。

松本(洋)委員 大変実りの多いそうした会談をしていただいて、成果を上げられたということであります。

 各国との連携を図って、世界的また地域的な課題をいかに解決をしていくかということも、我が国の経済に直結をする大変重要な課題だというふうに考えております。ぜひこれからも、そうした各国との連携、しっかりととっていただきますように心からお願いをしたいと思います。

 また、その外遊中の記者会見で大臣も言及をされていた部分があるかと思います。我が国の経済において、当然、貿易というのは重要な要素の一つでありますけれども、こうした貿易におきまして、為替相場というものは一体どこが適正な水準で何が問題なのかというのは、大変重要な論点だと思っております。

 この為替相場の安定、また、実体と乖離をしたような状況というものに対して日本政府としてどのように考え対応していくのかというのは、大変重要な事柄だというふうに考えておりますし、我が国の経済に与える影響も大変大きいと思っております。

 そこで、今回の円高に対しまして、日本の政府としての対応をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いします。

麻生国務大臣 円高の基準ですけれども、一九八五年、二百四十円です。それが約一年で百二十円。それからずっと下がって、二〇〇八年、リーマン・ブラザーズのときに約百二十円だったのが、それ以後数年間で、正確に言えば五年ぐらいで七十円台まで円が高くなっております。

 考えてみれば、昔は三百六十円ですから、五倍、円が高くなり、ドルが五分の一になったということですから、これは間違いなく円が高くなっていったというのは、決して悪いことではありませんが、どれが相場かというのはなかなか難しいので、私どもとしては、これはどう考えても行き過ぎではないかということでしたけれども、二〇〇八年のあのリーマンのときに、日本から、一千億ドルですから十兆円の金をIMFにローンして、少なくとも通貨安競争はしないという約束の上であれをやったわけですけれども、各国、円に限らず、自国通貨を大量に印刷することによって自国通貨の切り下げというのを、実質通貨の切り下げをやった中、日本だけが耐えたわけですから、その意味で、七十円まで円高になったというのに比べて、少なくとも我々の政権になりましてからは、これが八十円、九十円、今は百七円、八円になっておると思います。

 こういったような状況にまで戻ってきたんだが、問題は、どれくらいが正しいかというのを政府が決めるわけではありません。これは市場が決める、マーケットが決めるというルールになっていますから、そういった意味では、我々としては、このマーケットが急激に上がったり下がったりというのが最も経済に与える影響が大きい。少なくとも、四月末から二営業日で、二日間で五円円高に振れましたし、それ以後も急激に円高の方向に走って百五円というところまで来ておりましたので、これは行き過ぎと。

 急激なことに関しましては、我々、G20、G7の合意で、急激な投機は望ましくない、経済に与える影響も極めて芳しくないということで合意をしておりますので、それに沿って私どもとしては、G7においての約束どおり、こういったものは望ましくないという方向で、悪影響を与えるものであるということを申し上げて、偏った、刺激的な、急激な投機等々は望ましくないということを申し上げて、きょう、約百八円ぐらいになっていると思います。

松本(洋)委員 適切な為替相場というのがどこにあるかというのは大変難しい課題ですし、恐らく正解はないんだろうと思っております。中には、某ファストフード店の商品を一つの指標にして為替水準をはかるなんという、そんなことをやっていらっしゃる方たちもいらっしゃるわけでありますけれども、それが正しいのか正しくないのかというのはいろいろな議論があるかと思います。

 いずれにいたしましても、今大臣がおっしゃられましたように、この急激な乱高下というものは大変悪い影響を与えるかと思いますので、ぜひ国といたしましても、適切な対応をお願いしたいと思います。

 そんな為替に関しましてもう一つだけお伺いしたいと思いますけれども、アメリカの財務省が四月二十九日、半年ごとに議会に提出する為替報告書の中で、日本、中国、韓国、台湾、ドイツ五カ国の地域の経済政策に懸念を示し、大幅な黒字を抱えていることを主な理由に、新たな監視リストに載せたということが報道をされたところでもあります。これに対する見解を教えていただきたいと思います。

門間政府参考人 お答えします。

 米国の為替報告書のいわゆる監視リストについて申し上げます。

 こちらにつきましては、あくまでも、経常黒字額あるいは対米貿易黒字額などのデータに基準値を設けて、機械的に評価した結果にすぎません。これによりまして米国が日本の為替政策を不当と考えているとか、米国が日本に対して何らかの行動をとるといったことを意味するものではないと理解しており、日本の為替政策が制約されるものではないと考えております。

 また、日本は、過去のG20で既に合意されておりますとおり、通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のための為替レートを目標とはしないことについてコミットしております。こうした目的のもとで、長期にわたって為替を操作といったことはしておりません。

松本(洋)委員 ありがとうございました。

 ぜひこれからも、そうした日本の立場というものをしっかりと御説明をいただいて各国に理解を求めるということは大変重要な作業かと思いますので、ぜひそうした取り組みというものにも力を入れていただきますようにお願いをしたいと思います。

 今月五月はさまざまな国際的な大イベントがあるわけでありますけれども、その中でも最大のものは、五月の末に行われます伊勢志摩サミットだと思います。

 その前に、五月二十日、二十一日の日程で、仙台財務大臣・中央銀行総裁会議が開催をされます。このG7財務大臣会合への大臣の意気込みを最後にお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 今お話がありましたように、仙台の秋保地区においてG7の財務大臣・中央銀行総裁会議を主催させていただきますけれども、新興国を含めますG20におきましても、世界経済の持続的な成長と国際金融の安定に向けたいわゆる政策対応が議論をされております。自由とか民主主義とか法の支配とか、そういった価値観を共有いたしておりますG7というものの役割は、依然として極めて重要というように考えております。

 今回の会合におきましても、いわゆる、G7の間の揺るぎない連帯とか相互理解とか協調の精神というものを発揮ができていかないとこの種の安定というのはなかなか得られませんので、そこが議長として最大限の努力をいたしたいと思っております。

 また、財政政策やら金融政策の方向等々、我々は、少子高齢化という避けがたい問題、構造的な課題を抱えておりますし、また、世界的には、テロとか、ヨーロッパで見られます難民などの地政学的なリスクとか、新興国におきます資本のフローが大きく変動することなどなど、問題が多岐にわたっておりますので、そういったことに関して忌憚のない意見の交換を行いたいと思っております。

 また、東日本の被災地で開催をさせていただくということにしておりますので、復興状況の視察等々を予定しておりまして、東北地方が今は急速に復興を実現しつつあるという現状をぜひ世界に発信する機会にさせていただければと思っております。

松本(洋)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、議長といたしまして、大臣の御活躍、そして、それによって世界経済が安定し、いい方向に導かれますように、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 本日、日本酒、日本産の酒類についてということで実は質問も提出をさせていただいていたところでありますけれども、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきたいと思います。国税庁の星野次長、いらっしゃっておりましたけれども、大変恐縮でございます。

 では、これで終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民進党の鈴木であります。

 少しお時間をいただいて、各般にわたって御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず私からも、やはり熊本の皆さんにお悔やみ、お見舞いを申し上げたいと思いますが、いずれにしましても、一千三百回を超える余震、本震が続いておる現状であります。本当に心配なことでありますが、一刻も早くおさまって、復旧復興ができるようにお祈りを申し上げ、また、国としても、我々議員としても、しっかりと応援をさせていただきたい、このように思っております。

 それで、震災時の税制上の対応ということでまず最初にお伺いをしていきたいのですが、先日、四月二十六日に、我が党の同僚議員から、震災時の税制上の対応ということで御質問をさせていただきました。要は、激甚災害発生時における税制上の措置をあらかじめ講じておく必要があるのではないか、こういうことを申し上げたわけでありますが、それに対して大臣は、個々の災害ごとに的確に対応することとしており、一律に決めるのはいかがなものか、災害の規模や災害発生地の特性、被災者の生活に及ぼす影響などを踏まえていくと、一律に決めるのはいかがなものか、こういうお話でございました。

 ただ、先ほど大臣は自民党議員の質問に対して、先手先手に対応している、こういうことをおっしゃいまして、なるほど、先手先手にしっかり対応していただいておるのかなというふうに思うんですが、であるならば、さらに先手で、発災を想定して法の整備をしていく必要があるのではないかなということで、ちょっと具体的な例を申し上げて質問に入らせていただきたいというふうに思っています。

 阪神・淡路大震災、それから東日本大震災のときに、税制上の対応ということで非常に印象的なのは、例の住宅ローン減税の適用の特例ということがありました。まさにこれは、被災者にとって負担軽減で、非常に助かるということでございます。一方、新潟県の中越地震のときはこのような特例措置は講じられていなかった、このように記憶をしておるのですが、ちょっとまず事実を確認したいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、震災対応といたしまして、住宅ローン減税につきます特例措置というのを設けましたが、それは、阪神・淡路大震災と東日本大震災、その際に特例的に講じられたということでございます。

 御指摘ございました新潟の中越地震のときには、そのようなことは講じられておらないというのが事実関係でございます。

鈴木(克)委員 御記憶だと思うんですが、中越地震のときも、全半壊合わせると一万七千棟にも及ぶ被害があったわけですね。確かに、東日本の四十万棟とか、例えば阪神・淡路の二十五万棟ということに比べれば、その規模は違うかもしれませんけれども、被災をされた方々にとってみれば、これは全く同じなんですね。私は数の問題ではないというふうに思っておるわけです。

 同じように激甚災害の指定を受けたにもかかわらず、一方が対象になり、一方が対象にならないという、この合理的な理由というのがあるのかどうか、まず財務省に確認をさせていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、現行の税制上でございますけれども、災害を受けた方につきましては、一般的な措置としてさまざまな特例措置が現にございます。先生御案内のとおり、所得税、法人税におきます措置もございますし、国税の申告、納付の期限の延長などの措置が現にあるところでございます。

 そうした上で、一般的な措置でございますけれども、それに加えてさらなる特例措置を講ずるかということについて基本的な考え方を申し上げますと、やはり、被災地における被害状況、それから被災からの復興状況、それから関係方面からの御要望というものをよく聞いた上で総合的に検討するというのが基本的なスタンスということになろうかと思ってございます。

 特に、阪神・淡路大震災ないしは東日本大震災のときには、そういう観点から見たときに、やはり大震災による被害が過去に例がないほど非常に大きかったというようなこととか、それから、一般的な措置では十分対応できないという実態がかなり多く見られたというようなことを考えまして、緊急措置として特別な立法をしたというふうに考えております。

 新潟中越のときにはそのような状況はなかったということが、新たな措置を講じていないというようなこととして、当時の整理としてはそのようになっているということでございます。

鈴木(克)委員 今も申し上げたように、規模は違うかもしれませんけれども、被災に遭われた方にとってみれば、これは全く同じ痛みなんですよ。一方が対象になり、一方が対象にならないというのは、私はやはりアンフェアだというふうに思うわけであります。

 そこで、大臣にこの質問の最後でお伺いしたいんですが、先ほど、先手先手に対応をしておる、こういうことをおっしゃいました。私もそのように頑張っていただいておるというふうに思うんですが、もしそうであるならば、現行の法律を改正をしておくということで、災害発生時に特別な立法措置を講ずるまでもなく被災者の負担軽減に向けて迅速に対応できるという項目も、私はさまざまな措置の中にはあると思うんです。それを、やはり税制上の措置をあらかじめ講じておく必要性があるというふうに思うんですが、先手先手であるならば、さらに先手で、ひとつこのことを大臣から御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは御存じのように、現行の税法上、災害を受けた方々に対して一般的な措置として実にさまざまな特例措置というのが講じられておりますのは、もう御存じのとおりです。

 その上で、阪神・淡路の大震災とか東北大震災のときにつきましては、その被害が例のないものであったことから、御存じのように、住宅ローン減税の特例というのを含めて特別な立法措置を講じたところであります。

 今回の震災におきまして、現行制度による対応に加えて新たな措置を講ずるべきかどうかについては、これはまだ余震が続いているという段階で、最初にあった地震より後の方から来た余震の方が大きかったみたいな話で、被災地におけます災害の状況はまだ確定はしておりませんし、被災からの復旧状況などを考えながら、いろいろ関係方面から御要望をいただいているところなので、的確にそこのところを対応していかなならぬというふうに基本的に考えております。

 また、今、鈴木先生お尋ねの、いわゆる一定規模の災害が起きた場合に自動的に特例措置ができるというような考え方なんだと思いますけれども、これはそもそも、地震に限りませんけれども、災害の種類とか規模、また、発生した地域の特性等々を考えますと千差万別であって、何をもって規模の基準にするかというのをあらかじめ定めておくというのは極めて難しいと思いますのが一点。

 その中で、災害が被災者の生活、事業等々に及ぼします影響、被害とか地域社会に及ぼす影響もさまざまな場合でありますので、規模を基準に一律に措置をするということは、これは個々の災害に的確に対応していく上でおのずと限界があるだろうと思っております。

 したがって、個々の災害の全容を踏まえた上で、税制も含めていわゆる総合的な支援をきめ細かく検討することの方がより的確だし、重要なことであろうと思っております。

 いずれにしても、今回の震災を受けてどのように対応していくかにつきましては、今後、被害の状況がまだ続いておりますので、被災地の復旧状況等々を踏まえつつ、いろいろな方面からの御要望、御意見等々を踏まえて、私どもとしてはその上にしっかり検討させていただきたいと考えております。

鈴木(克)委員 確かに、規模もそれから発災の状況もさまざまなケースがあるわけですから、あらかじめというのは非常に難しいというのはわかりますけれども、しかし、それではあっても、やはり基本的な部分については、どこへ行ったっていろいろと、メニューと言うと大変御無礼ですけれども、想定できるところは私はあると思うんです。そういうものについては、迅速にまさにやれるようなそういう法整備をぜひ災害の比較的多い我が国としてはやっておくべきではないのかな、それが先手先手の対応になるのではないのかな、このように考えますので、このことをしっかりと御要望しておきたいというふうに思います。

 それでは、時間の関係もありますので、次に移らせていただきます。

 まさに、きょうの未明というのか、パナマ文書で、ある意味では世界じゅうが騒然としておるということでございます。

 ちょっと私、このことを整理させていただいて申し上げたいんですが、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立して、それを使えば合法的に税金負担を軽減できるとなれば、多くの富裕層がその手段をとることは自然な成り行きである、このように考えます。実際、パナマ文書の公表が進むと、さらに多くの人々が文書に登場することになるのではないか。

 ここに問題が二つありまして、一つは、節税と脱税の区別が難しいということであります。

 もともと、納税者側と徴税側では、税金算定の基準などについては議論が分かれる部分がありました。今回のパナマ文書では、多くのケースが現行法では許容される範囲内と見られております。しかし、世界じゅうで活動を行う多国籍企業がふえると、実際にどの国、どの地域で収益が上がっているかを厳密に判別することは至難のわざであるというふうに言わざるを得ません。

 納税側から見れば、できるだけ税率の低い国で収益計上を行い、税金負担を軽減する行動をとるだろう。そのため、今までにも世界有数の大手企業が税率の低い国に本社を移転させるなどのことがあった。それに対して税務当局とのあつれきが生じたり、世間から批判を受けたケースは数多くあったわけであります。

 もう一つの問題は、納税者の間で不公正が生じることというふうに思います。

 我々庶民は、ほとんど選択の余地がなく、粛々と税金を支払っている。一方、一部の高額所得者は、タックスヘイブンのペーパーカンパニーなどを使って節税する選択肢を持っている。それはいかにも私は不公平だというふうに思います。

 本来、税負担は、社会全般にわたって公平であるべきであります。公平が維持されていると思うから社会の納税意識を保つことができるわけでありまして、それができないと、近代国家の税負担の倫理観が崩れてしまう。それでは国を維持することさえ難しくなるというふうに思います。

 そうした節税自体は、現在の法律では違法ではないのだが、節税の規模がかなり大きくなったことに加え、節税を行う主体が、英国のキャメロン首相や中国の主要政治家の親族のように、本来税金逃れを取り締まるべき政治家の関係者などだったということは見逃せないポイントだ、このように思います。

 そうした事態の発生を防ぐためにも、今回、パナマ文書を精緻に解明し、それを明確に公表することは必要だ、このように思います。

 それと同時に、今後、税金の抜け駆けを監視、取り締まる世界的なシステムをつくることが必要だ、このように思います。各国の事情が異なっていることもありまして、世界的に合意を取りつけることは容易なことではないかもしれませんが、しかし、そうした監視制度がないと、一部の金持ちはさらに金持ちになり、一般庶民は厳しい状況に押し込められてしまうということではないかというふうに思います。

 そこで、ちょっと前段が長くなりましたけれども、二、三、具体的にお伺いをしたいと思います。

 この文書が最初に報道されたときに、菅官房長官は会見で、この問題について調査する考えがないということを明言されました。ところが、四月中旬になって、税務調査を行うなど適切に対応すると前言を覆す発言をされたわけであります。こうした官房長官の発言というのは、結果として、我が国はこの問題に消極的であるかという印象を与えてしまった、このように思います。

 そこで、パナマ文書に関して日本企業や日本人を調査するつもりがあるかどうか、改めて麻生財務大臣のお考えを確認するとともに、げすの勘ぐりと言われるかもしれませんけれども、念のために、麻生大臣御自身及び親族または関係企業のタックスヘイブンの過去も含めた利用の有無についてお伺いをしたいと思います。

 以上です。

麻生国務大臣 パナマ文書、日本人が含まれているとの報道があるということは承知をいたしております。いずれにしても、個別の納税者に関する事項についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思っております。

 その上で、一般論で申し上げさせていただければ、課税をさせていただきます当局側といたしましては、あらゆる機会を通じて情報を集める、それは当然のことでありますし、問題のある取引が認められれば税務調査を行うということでありまして、適正とか公平な課税の実現に努めるべきものでありますし、今後も、そういった意味では適切な対応に努めていかねばならぬものだと思っております。

 パナマと関係あるか。帽子は持っておりますけれども、文書は持っておりません。

鈴木(克)委員 わかりました。

 それでは、パナマ文書とそれから国外財産調書の活用といいますか、関係についてお伺いをしたいと思います。

 報道によれば、日本人は、重複も含めて約四百人前後の名前が挙がっておるということであります。政府としてはこれらの方々を調査するにはそれなりに時間とマンパワーを要するというふうに思うんですが、個人については、国外財産調書との突き合わせによって、記載内容の真偽や記載漏れ、そして、あるいはそもそも提出がないものの抽出等を行うことで効率的な作業ができるのではないか、このように私は考えるわけであります。

 そこで、国外財産調書制度の概要、そして調書の収集実績等を御説明いただき、また、パナマ文書関連の調査への利用の可能性について国税庁の見解を伺いたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国外財産調書制度でございますけれども、これは、その年の十二月末日におきまして、その価額の合計額が五千万円を超える国外財産を有する居住者が、翌年三月十五日までに当該財産の種類、数量及び価額等を調書として提出することとされているものでございます。また、その適正な提出を確保する観点から、国外財産調書の提出の有無等による加算税の加減算の措置ですとか、未提出者等への罰則が設けられているところでございます。

 この制度のパナマ文書の関連の利用についてのお尋ねでございますけれども、一般論として申し上げますと、当局といたしましては、今申し上げました国外財産調書を含めまして、あらゆる機会を通じて課税上有効な情報の収集を図るとともに、仮に問題のある取引が認められれば税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 報道によると、租税回避の目的ということではなくて、合理的な理由があるタックスヘイブンの利用もあるようでございます。

 ここで、公開された一部を御紹介いたしますと、英領バージン諸島やアメリカのネバダ州、それから香港を初めとする二十一カ所の登記情報など。日本関連では、設立された二十四の法人のほか、四百近い出資者などの名前があった。ソフトバンクは取材に、中国企業の要請で出資したが、撤退したと答え、伊藤忠と丸紅は、適切に納税していると説明した。インターネット通販大手の楽天やUCCホールディングスの代表らの名前も公表されたが、いずれの関係者も適切な税務対応を講じたと言われておるわけであります。

 それで、要は、私は、きちっと調査をされて、そして、国税庁の調査の結果、課税上問題がなかったということを公表すれば、逆にそういった方々についてははっきりしてくるんではないのかなというふうに思うんです。逆も真なりということではありませんけれども、やはりそういうことをして、日本の税制、公平性というのはきちっと守られているんだということを出した方がいいんじゃないのかなというふうに私は思うんですが、その点、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆるパナマ文書につきましては、国際調査報道ジャーナリスト連合、ICIJというのが本日の午前三時に、日本時間ですけれども、その内容のうち、いわゆるタックスヘイブンに設立された法人に関連する個人、また企業の名称を公表したというように承知をいたしておりますので、同文書の詳しい内容についてまでは承知をいたしておりません。

 したがって、パナマ文書の全体が公表されたわけではありませんので、いずれにしても私どもとしては、先ほども申し上げましたように、個人の納税者に対する税務調査の結果といった個別にわたる事柄について、これは守秘義務が課せられておりますので、その関係から申し上げられないというのは御存じのとおりであります。

鈴木(克)委員 いずれにしても、きちっと実態を把握されるということ。それからもう一つは、問題がなければ何も問題ありませんよということを公表するということは、先ほどから繰り返し申し上げておるように、公平性、税に対する国民の期待というものか、そういったものをきちっと払拭することになると私は思いますので、ぜひやっていただきたい。確かに、本人の同意がなければなかなか出せないことである、これはよくわかりますけれども、やはりそこはぜひやっていただきたいなというふうに思うわけであります。

 この質問の最後に、今度、OECDの租税委員会が京都で開催をされる、このように伺っておるわけであります。

 先月のG20で、課税逃れ対策について各国が協力して取り組んでいく、このことが確認をされたというふうに聞いております。それがちょうど、来月下旬に京都でOECDの租税委員会が開催されるというふうになっておるようでございます。

 そこで、OECDの租税委員会はパリに本部があるそうですが、今回、わざわざ日本で開催することになった経緯と、それから議論する内容を御説明いただくとともに、我が国開催が持つ意義と会合で我が国が果たすべき役割についてどのようにお考えなのか、麻生大臣にお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

麻生国務大臣 OECDの租税委員会の本会合の次回開催地というのは、京都というか、日本になったんですが、これはもう日本に対してというか、いわゆるBEPSと言われる、ベース・エロージョン、プロフィット・シフティングですか、あれの委員会の議長を、選挙で選ばれた日本人がしております。財務省の財務官が今しているんですが、それのリーダーシップによって、少なくともOECD加盟数十カ国の中でこのBEPSの案というのを三年がかりでつくり上げて、絶対無理と言われたものができ上がっております。言い出したのも日本、実際にこれをリードしたのも日本ということで、この租税委員会のこれができ上がっておりますので、OECDから日本に対して、これまでの貢献を踏まえて開催が打診されたというのが、ことしでしたか、最初の方だったと思います。

 これを受けて我々としては、国際会議の開催実績等々を踏まえて、OECDと協議をした結果、京都での開催というものが決定されたと承知をいたしておりますので、この六月末でしたかに開かれます次回の会合は、G20、OECDのBEPSプロジェクトが実施のフェーズに移ったということを受けて、いわばそのキックオフみたいなミーティングというように位置づけられております。

 具体的には、このBEPSプロジェクトの実施が行われるに当たっては、これはモニタリングするとか、支援を行います新たな枠組みが立ち上げられますことになっていくので、その具体的な運用方法等々については、これは法律をつくってもそれが実際に実施されるか否かというのは全然別問題ですから、きちんとそういったことをやっていく運用方法等々について議論がされるということになろうかなと思っております。

鈴木(克)委員 ぜひ、せっかく日本で開催をされるわけでございますので、私は、現下の国際的な問題になっているこのパナマ文書も含めて、きちっとした最大限の努力をしていただきたいなというふうに思って期待をいたしておるところであります。

 それでは次に、先ほども松本議員からの質問もあったわけでありますが、私も、アメリカの財務省が出した外国為替報告書についてちょっとお伺いをしていきたいと思うんです。

 こういう文書がありまして、四月二十八日の日銀の金融政策の現状維持の決定を受けて、為替市場ではゴールデンウイーク中に円高・ドル安傾向が進展した。日銀の決定に追い打ちをかけたのが、四月二十九日に米国財務省が発表した為替報告書だ。為替報告書の中で米国財務省は、我が国を通貨政策の監視リストに載せ、為替介入を強く牽制する姿勢を示した。それをきっかけに海外のヘッジファンドなどの投機筋が一斉に円買い・ドル売りを仕掛け、一時一ドル百五円台まで円高が進んだ。こういうことの記事があるわけです。

 私がここでまず大臣にお伺いしたいのは、大臣は、円高・ドル安が急激に進んでおる状況の中で、一方的で投機的な動きが見られ、極めて憂慮しているということをおっしゃられました。一方で、四月二十九日に、今申し上げましたように、アメリカの財務省が公表した外国為替報告書では、円相場は秩序立っているとされているわけですね。この大臣のお考えと、アメリカの財務省の円相場は秩序立っているという認識の違い、これはちょっと私は微妙な違いがあると思うんですが、大臣はどのようにお考えになっているか、お聞かせください。

麻生国務大臣 違いがあるのはしょっちゅうであって、別にそんな珍しい話とも思いませんが、今、高いとか安いとかいうような話から、急激だとか急激じゃないとか、ありとあらゆる話をよく電話でしますので、今、安定している、いや、安定していない等々の意見の違いはよくある話で、別に驚く話とも思っておりません。

 ただ、私どもは基本的に今回の場合、四月二十九日でしたか、あれはたしか二営業日に五円たしか円高に振れたと思いますので、少なくとも二日間で五%ぐらい上がったということになりますと、これはどう考えても急激でしょうと。この流れが引き続いてずっといくようなのであれば、これはちょっと、少々我々としては問題ということを言わざるを得ぬということを申し上げたというのであって、向こうの文書が出たというのとそのときがたまたま重なったぐらいの話であって、毎年こういったようなリストが、今回は五カ国出ていたと思いますが、日本、ドイツ、中国、韓国、台湾と五カ国が出たと思いますが、あれは基本的には、貿易収支の対米黒字の額と、それから経常収支の額と、それと為替介入に対してのGDP比のパーセントというのを基準にして一律に出してきておりますので、その中のリストに載ったということ以外に、特にこれによってというような、大きなものが動くような話とか、動かせないとか、どうしてもさせないとかいうような話とは全く考えておりません。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木(克)委員 考え方の違いや意見の相違はよくある話だということでありました。

 今大臣がおっしゃったように、為替報告書はまさに三つの基準を言っているわけです。その中で、今日本は、為替介入をしていない。今回、先ほど大臣がおっしゃった為替介入の規模がGDPの二%以上というこの三番目の基準は適用されていなかったということでありますが、大臣は、為替市場の動向を引き続き緊張感を持って注視し、必要に応じて対応する、こういうふうにおっしゃっておるわけであります。

 この報告書との関連でいくと、そういう行為をした場合、制裁対象とされる可能性が出てくるのではないのかなというふうに思うんですが、そのあたりはどのようにお考えなのか。先ほど財務省は、外国為替報告書は何ら影響を受けるものではないというような答弁を松本議員に対してされておりますけれども、その辺も含めて、制裁対象とされる可能性が出てくるのではないのかなという私の考えに対して、いかが御見解があるでしょうか。

麻生国務大臣 先ほど松本委員の御質問に対してのお答えを役所の方からしておりますのと基本的には同じですけれども、この監視リストに日本が他の四カ国と一緒に載せられておりますが、条件は、三カ国は日本と同じ。台湾だけがたしか為替介入のところにリストが載った。あとは皆、経常黒字。日本よりはるかに大きい中国とか出ていますし、貿易収支の黒字も中国の方が圧倒的に大きいしと、いろいろ出ています。

 そういったことが出ておりますので、私どもに言わせていただければ、こういったデータに基準値を設けて、それを機械的に評価したということだけの結果にすぎませんから、これによって、為替政策が不当と考えられているとか、また、米国が日本に対して何らかの行動をとるとかいったようなことを意味するものでないということは、そう思っておりますし、当然のこととして、日本の為替政策が制約されるということはないというように考えております。

 また、これは過去のG7、G20でも既に合意をされておりますので、通貨の競争的な切り下げを回避するということや、競争力のために為替レートを目標とはしないということについてはコミットしておるところでありまして、こういったことの目的に向かって、長期にわたっていわゆる為替を操作するということはしたことがありませんし、現在もしていないということだろうと思っております。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 時間の関係もありますので、先に進めさせていただきます。今度はちょっと積極財政ということで、政府のお立場、お考えを聞いていきたいと思うんです。

 二月二十六、二十七日の上海で行われたG20の財務大臣・中央銀行総裁会議で声明が出されました。それは、世界経済の現状認識とそれに基づく経済政策のあり方ということの声明が出されたわけであります。

 その要約を申し上げますと、世界経済の下方リスクと脆弱性が高まっており、G20諸国としては、世界経済の成長という共通の目的を実現するためにさらなる行動が必要である。そのために、全ての政策手段、金融、財政及び構造政策を個別にまた総合的に用いる。その際、金融政策のみでは均衡ある成長を実現することはできず、機動的に財政政策を実施する。

 こういうことであったわけですが、声明でありますから、当然、日本政府もそのように思って声明に参加されたというふうに思いますけれども、この判断というのは現時点でも維持をされているのかどうか、まず伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは、本年の二月に開催をされております上海でのG20での財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明において、今言われましたように、「経済成長、雇用創出及び信認を強化するため、我々は機動的に財政政策を実施する。」との合意がなされたということでありまして、さらに、四月に開催をされておりますワシントンでのG20におきましても再確認をされておりますので、日本もこのような考え方をG20と基本的に共有しておるということであります。

 また、安倍内閣におきましては、これまでも、金融政策やいわゆる成長戦略とあわせて、アベノミクスの三本の矢として、時々の経済状況等々を踏まえて、我々は必要に応じて機動的な財政運営を行ってきたところでありますし、今回の予算につきましても、史上最大の予算を編成させていただく。また、御存じのように、前倒しでそれを執行する等々のことをやらせていただいておりますので、経済再生と財政再建というものを両立させるということのために、この共同声明の内容を踏まえつつ、適切な経済財政運営というのを行っていきたいと考えております。

鈴木(克)委員 そこで、この積極財政ということで少しお話をさせていただきたいんですが、安倍総理はゴールデンウイーク中に欧州を歴訪されたわけですが、特にドイツのメルケル首相に財政政策の積極活用というのを言われたというふうに聞いております。

 安倍総理が外国へ行って経済政策についていろいろとおっしゃるというのは、サミットをやる国としてわからないわけじゃないんですけれども、本当に現下の日本の状況をどういうふうに総理が認識をされておるのかというところが、私はどうしても理解できないんですね。

 総理は口を開くと、もはやデフレではないというところまで日本経済は改善してきた、こういうふうにおっしゃっておるわけですが、数字を見ると、日本経済の実質経済成長率は、前にも申し上げましたが、二十六年度がマイナス一・〇、二十七年度は四―六期がマイナス一・四、七―九がプラス一・四、十先、十―十二月がマイナス一・一で推移しておるわけです。

 本年一―三の成長率も恐らくマイナスになる可能性もあるんじゃないか、このように言われておるんですが、日本経済の下方リスクと脆弱性について政府はどのように判断をしておるのか。本年一―三月の実質経済成長率を仮にゼロというふうに置いた場合に、平成二十七年度の実質GDP成長率は何%になるのか。このところをお聞かせいただきたいと思います。

増島政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の経済動向を見ますと、消費者マインドに足踏みが見られ、また、企業の景況判断にも慎重さが見られる中で、個人消費が力強さを欠くなど、このところ景気には弱さも見られております。

 ただし、企業収益は、過去最高となった二〇一四年度に引き続き足元でも高水準でございますし、有効求人倍率は一・三〇倍と、二十四年ぶりの高水準でございます。また、総雇用者所得は二〇一五年四月以降増加傾向にございまして、持ち直しております。

 このような状況でございますので、企業収益や雇用・所得環境の改善傾向は続いておりまして、景気の緩やかな回復基調は続いているというふうに認識しております。

鈴木(克)委員 いずれにしても、先ほど大臣は、大きな予算を組み、そして積極的に展開をしておるというふうにおっしゃったわけでありますが、私はどうもそうではないというふうに思うんです。

 これはちょっと数字を申し上げなきゃ御理解いただけないかもしれませんけれども、二十七年と二十八年の歳出の総額と、それから税収を計算しますと、歳出が二兆九千四百十五億円少なくて、税収が一兆一千八百億円多くなっておる。この一般会計の二十七、二十八のかかる姿は、基本的には四兆一千二百十五億円の緊縮予算であり、デフレ予算である、このように私は理解をするんですね。

 確かに、ここで、熊本地震への対応で七千億強の補正をというお話はありますが、それを入れても、私は、二十八年度の日本の財政政策というのは、積極財政にはなっておらなくて、依然として緊縮財政のままだというふうに思うんです。

 そこで、何が言いたいかというと、ドイツのメルケル首相に積極財政を説くのであるならば、日本の財政政策を緊縮から積極に転換をすることが先決である、このことをまず大臣にお伺いしたい。

 あわせてもう一点、時間もありますので伺いますけれども、主要国の経済政策における積極財政を提唱されるのであれば、平成二十九年四月に予定している消費税率の一〇%の引き上げは景気に水を差すことになるから、この提唱と真正面から対立するものでありますので、消費税率再引き上げの中止または無期延期を判断すべきであるというふうに考えるわけでありますが、この二点、大臣から御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 安倍内閣の場合は、これまでも、金融政策とか成長戦略とあわせて、いわゆるアベノミクスというものとして、時々の経済状況を踏まえて、必要に応じて機動的な財政出動を行い、経済再生と経済再建というものを両立させてきたと思っております。

 それが先ほど内閣府の申し上げている数字にも裏づけされていると思いますが、少なくとも政府としては、過去最高の九十六兆七千億円の予算というものを執行する。しかも、これの執行に当たっては、これまで前倒しても七割と言われたものを八割まで前倒してやっていこうということによって、これによって公共事業が、十二兆一千億の一割ですから、約一兆少々のものが間違いなく契約を前倒しするということになっていきますので、これはできるだけ速やかに景気というものを国民、有権者等々に届けるということだと思っております。

 また、足元の経済状況につきましては、有効求人倍率、これまで〇・八とか言っていたものが今は一・三ということになってきておりまして、これは史上最高ですし、企業収益も御存じのように過去最高ということになっておりますので、いわゆるファンダメンタルズとしてはこれは確かなものだと認識をいたしております。これはもうずっと申し上げてきているとおりなので。

 また、今言われましたように、消費税のお話が出ておりましたけれども、これはもう何回も申し上げておりますとおり、我々は、税と社会保障制度の一体改革ということを申し上げて、三党合意でここに入ってきたわけですから、これをきちっとこの社会保障制度というものを次世代に引き渡していくという責任が我々にはありますし、また、これを確実にやるということを国際社会にも言ってきた、また、マーケットにもそう伝えてきたというのがこれまでの経緯でありますので、国の信認というものを確保するためにもこれは極めて大事なところなのであって、社会保障をきちっと、今、子供手当等々いろいろ出ていますけれども、こういったものに関しまして、私どもとしては、重大な事態が発生しない限り、きちっとこれを確実に実施するということを申し上げておりますとおりであって、これが今変更されているということはありません。

鈴木(克)委員 時間があれば、今のあれに少し数字でお示しをさせていただきたいんですが、時間が参りますので。

 最後に、積極財政の内容ということについて申し上げて終わりたいというふうに思うんです。

 積極財政というと、要するに、公共事業や天下り関係機関への財政支出というような、利権ばらまき的な印象があるわけでありますが、私は、やはりプログラムだというふうに思うんですね。国民生活の下支え、それから社会保障、福祉の充実のための予算を使う、そこに財政資金を集中的に使うべきだというふうに思うんです。

 なぜこういうことを言うかというと、現実には、保育所に入所を希望しても入所できない待機児童が多い、高齢者の福祉を実現する介護施設が不足している、一人親世帯の子供の貧困が深刻化している、大学に進学している若者の奨学金債務が過大になっている、こういうさまざまな問題があるわけです。

 したがって、やはりこれらを積極財政で転換していくということであれば、お金の使い方といいますか、要は、植草一秀さんのおっしゃるには、プログラム支出というものにお金、予算を変えていかなきゃ日本の国は変わっていかないんだということを、私も考え方に共鳴をしておるわけであります。

 本来なら大臣の御見解を伺いたいんですが、時間が参りましたので、一応これだけ申し上げるだけ申し上げて、今回の質問は終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 まず、パナマ文書問題について質問させていただきます。今、鈴木委員からも質問がありましたので、なるべく重ならないように質問したいと思います。

 けさ未明、三時、パナマ文書の新たなリスト、ペーパーカンパニー二十一万社分が公開されました。国際調査報道ジャーナリスト連合、ICIJによる調査報道の一つであります。

 この報道はいわくつきなものでありまして、私も記者出身でありますけれども、南ドイツ新聞というところが最初に報じました。そして、それをICIJで共有しながら、全世界同時に取材を進めております。全世界のジャーナリズム、そしてジャーナリスト四百人以上がかかわっているということであります。

 なぜか。自分と家族の安心を守るためだ、人一人消しても何のちゅうちょもない人たちがこのリストの中に出てくる、武器商人であったり麻薬の密売人であったり、まさに犯罪とかそういったものに密接にかかわっている人たちも含まれている、そういうリストだからだという説明を本人たちがしております。

 今回、とりわけ一連の、オフショア・リークス、ルクセンブルク・リークス、スイス・リークス、そして今回のパナマ文書ということになるわけですが、今回特に注目されているのは、政治家の名前です。アイスランドでは首相が辞任しました。英国、ロシア、中国、こういったところでも最高指導者の名前が出てきているということであります。

 そして、政治家がやるということは、つまり、タックスヘイブンの問題というのは、どこまで行っても不適切な問題がかかわる。合法だという言い方をする人もいます。しかし、合法だと言っても、脱法的であるか、違法であって摘発困難だとか、そういったものも含まれているわけであります。そのすき間を政府、政治家、こういう人たちが塞がなきゃならない、それが仕事である。ところが、自分たちが使っていては、そういう制度のすき間、穴を塞ぐことができないから、こういう人たちがタックスヘイブンを使うことは問題だということで、世界的に政治への不信が高まっているということかと思います。

 タックスヘイブンは、まさに正直者がばかを見るという話であります。

 さて、このタックスヘイブンを使った取引がどの程度の規模なのか。

 日銀に用意してもらった資料によると、例えば、証券投資等残高地域別統計、二〇一四年末、これは日本からの証券投資額を示すデータでありますが、ケイマン諸島だけで六十三兆二千九百四十六億円であります。これは、アメリカ向けの半分をちょっと下回るぐらい、英国、ドイツ、フランス三カ国合計のちょっと下ぐらいです。つまり、アメリカやヨーロッパ主要国と匹敵するようなお金が、日本からだけです、日本の国家の税収を上回るような額がケイマン諸島に流れ込んでいる。

 ケイマン諸島は、人口五万三千人の島です。佐渡島や淡路島より規模は小さい島だということだと思います。そこに日本の国家の税収を上回るようなものが流れ込んでいる、これが現実であります。

 BIS国際資金統計によりますと、二〇一五年十二月末現在、日本に所在する銀行がタックスヘイブンと行っている資金取引は八千五百三十七億七千二百万ドル、前回の質疑で鈴木委員からもお話がありました。現在のレートで約九十一兆円、これは、日本とヨーロッパとの取引額を上回っている額であります。

 つまり、適正なものというのも全くないとは言えませんが、多くは租税回避であって、よく言っても節税、悪く言えば脱税、そういうものだ、あるいは、表に出せないアングラなマネーが絡んでいるものだ、そういうふうに理解できるわけであります。

 パナマ文書問題を最初に報じた南ドイツ新聞の記者が、数千社のペーパーカンパニーの代表になっている人物と面会をしました。この人物は、貧民街に住む女性であります。つまり、全くの実体のない会社を名義貸しでつくっている。そして、食うや食わずの人をその代表にして、一つのビルに一万社以上の会社があるとか、そういう状況をつくり出している。

 そして、今回のパナマ文書を持ち込んだ匿名の情報提供者は、パナマの法律事務所、モサック・フォンセカについて、創設者、従業員と顧客は、かかわった犯罪について責任追及を受けるべきだ、各国捜査当局が文書を入手すれば、何千件も起訴されるだろうというふうに言っています。違法行為が多いということを指摘している。

 このような事態を絶対に許してはいけないというふうに思います。

 麻生大臣には、先ほど鈴木委員の質問に答えて、御自身はタックスヘイブンとの取引に関与したことはないというふうに明言をされたというふうに理解をしました。

 パナマ文書に今名前が挙がっているとして出てくる政府に何らかの関係がある方ということでありますと、まず、内閣官房参与加藤康子氏が現在代表を務める会社の名前が登場しております。

 加藤康子氏のお父上は、安倍派四天王と呼ばれた大物政治家、加藤六月元農水大臣であります。そして加藤康子氏は、一億総活躍担当大臣加藤勝信氏の義理の姉ということになります。これまでの各種の報道によると、勝信氏の元婚約者であったけれども、本人が、その康子さんが留学をするということで一方的に破談をした、そのかわり、妹さんと御結婚ということになったというふうに報道されております。

 そして、安倍総理の幼なじみである。これは、御本人がインタビューで答えていて、私は、勝信さんより安倍さんの方が話しやすいんです、幼なじみですからね、いろいろ、産業遺産の世界遺産登録の話をしているんですが、こういうことも聞いてもらいましたということを御自身がおっしゃっている、こういうことであります。

 まず、この加藤康子氏の関連する会社のパナマ文書への掲載について、財務省として把握をされているのか、その内容についてはどのようなものであるというふうに考えているのか、お示しください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの加藤康子氏の関連でございますけれども、個別にわたる事項についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 種々報道があることにつきましては私どもも承知をしておりますが、一般論として申し上げれば、課税当局としては、あらゆる機会を通じて情報収集を図るなど、適正、公平な課税の実現に努めるべきでありますし、そのように努めているものでございます。

宮崎(岳)委員 パナマ文書に掲載されているのは、東京個別指導学院という会社であります。その会社がイギリス領バージン諸島に設立された会社の株主として登場するということでありまして、しかし、なぜかその会社の連絡先が、加藤氏が現在代表取締役を務めるトランスパシフィック・エデュケーションネットワーク株式会社というものになっている。エデュケーションですから教育関係の会社のように思えるんですが、なぜかブライダルの輸入業が本業であるということなんですけれども、この東京個別指導学院の株主である。過去には上位十位以内の株主として名前を連ねたこともあると。

 加藤氏は、全く心当たりがなく驚いている、当時の会社代表者は別の人で、連絡先として名前を使うことを認めた人がいなかったか調査するということを言っているそうであります。別の人とは言うんですが、当時の親族であるということですし、住所も同じでありましたから、全く知らないということはなかなか考えがたいことかなというふうに思うんですけれども。

 もちろん、パナマ文書に名前が出てきたからすぐに違法だということにはならないかもしれませんけれども、内閣官房参与、現職の方であります。その職にふさわしい人物かどうかを調査する必要があると思います。問題がないものだったのかどうか、これは内閣として調査する気があるのかどうか。内閣府にお伺いします。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 今御指摘のありましたような報道については承知しておりますが、その文書の具体的な内容については承知しておりません。

 加藤内閣官房参与は、昨年七月に世界遺産登録された明治日本の産業革命遺産に関しすぐれた識見を有しており、精力的な活動を行っていただいております。産業遺産に関して内閣総理大臣に対し情報提供や助言をいただいているところであり、引き続き御尽力いただきたいと考えております。

 なお、加藤参与からは、租税回避に関係しているがごとき事実は一切ないと聞いております。

宮崎(岳)委員 それは調査をしたということですか。確認をして、租税回避に関与したことはないということを結論として出したということでよろしいんですか。

牧島大臣政務官 現状、私どもとしては、加藤参与から租税回避に関係しているがごとき事実は一切ないと聞いているということでございます。

宮崎(岳)委員 きちんと政府として調査をすべきじゃないかということを改めて申し上げます。

 事実、その会社の名前が出てくるというのは事実でありますし、加藤さんが個人的に知らないと言っても、現在代表取締役でありますから、そのタックスヘイブンに置かれている会社の株を持っているということなんでしょう。あるいは、それを売り払ったか、過去に持っていたということなのか。御本人が、知らない、当時の代表は別の人だったからと言っても、現在代表であるんですから、少なくとも、その株を今会社として有しているのかいないのか、そういうことについてはきちんと調べて、そして報告をさせるべきではないかと思いますが、いかがですか。

牧島大臣政務官 御本人の方で調査をされると思いますし、それについて御報告があるものと思います。

宮崎(岳)委員 先ほど申し上げましたとおり、これは昨年の週刊新潮五月二十一日号ですけれども、まさに加藤康子さんのインタビューが載っています。

 その中で、これは非常に加藤康子さんを褒めたたえる記事なんですよ、この記事は。「君がやろうとしていることは「坂の上の雲」だな。これは、俺がやらせてあげる」というふうに安倍総理がおっしゃった。そして、康子さん自身がその週刊誌に対して、「私は勝信さんよりも、安倍さんの方が話し易い。幼馴染みですから。産業遺産の話は、官房長官時代から耳にタコができるくらい聞いてもらっています」というふうに言っていました。

 つまり、以前、お友達内閣だという言われ方をしましたけれども、まさに安倍さんのお友達の一人として抜てきされた、官房参与に起用されたんじゃないかというふうにも思えるわけであります。

 これは内閣府の方で伺いますが、加藤氏が官房参与に起用されたのは誰の推薦によるものなんでしょうか。総理御自身ですか、それとも別の人物ですか。

牧島大臣政務官 加藤参与は、すぐれた識見を有していたことから、産業遺産に関して情報提供や助言をいただくということで参与になられております。

 その経緯については、人事のお話なので、詳細は差し控えさせていただきます。

宮崎(岳)委員 言えないということですけれども、普通に考えれば、総理がみずからスカウトしたというふうに思われても仕方ないんじゃないでしょうか。

 さて、パナマ文書にもう一人名前が挙がっている、産業競争力会議議員三木谷浩史氏の方についてお伺いいたします。

 この会議体は日本の経済政策に強い影響力を持つ、その議員は非常に強い重責を担っている方だというふうに思います。

 内閣府に伺いますが、三木谷氏について、現職の産業競争力会議の議員としていらっしゃるわけですから、タックスヘイブンにまつわる投資取引等について問題がないのかどうか、調査をするつもりはございますか。

高鳥副大臣 宮崎委員にお答えをいたします。

 産業競争力会議の民間議員につきましては、産業競争力の強化及び国際展開戦略に関しすぐれた識見を有する方にお願いをいたしております。

 御指摘の三木谷議員でございますが、ITやベンチャー等の分野に造詣が深く、これまでも積極的に議論に御参加をいただきまして、積極的に御発言をいただいております。

 三木谷議員に関する報道があることは承知いたしておりますが、引き続き産業競争力会議の民間議員として御活躍をいただけるものと考えておりますし、特別な調査をすることは考えておりません。

宮崎(岳)委員 御本人に聞き取りもしないんですか。

高鳥副大臣 個別の案件については差し控えさせていただきたいと思いますが、現時点では報道で名前があったというだけでございますので、この時点で何か特別な調査をするということは考えておりません。

宮崎(岳)委員 三木谷氏は報道に答えていますよね、自分たちは問題がないんだ、これこれこういうことだということは。そういったことすら聞かないということなんですか。

高鳥副大臣 お答えいたします。

 産業競争力会議を担当する立場としてお答えを申し上げれば、本件について特別な調査は考えておりません。

宮崎(岳)委員 加藤康子さんについては調べて、あるいは御本人が調べて報告を求める、こういう話であるが、三木谷さんについては調べない。そういうことでいいんですね。

高鳥副大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、三木谷議員について、特別な調査を現在のところ考えてはおりません。

宮崎(岳)委員 大臣に伺います。

 この話は、政治の信頼そのものにかかわる話であります。一部の特別な人たちが自分たちだけの抜け道を使って税金を逃れている、こういう話であります。一般の国民の皆様は、消費税、所得税、法人税、こつこつ働いて納めていただいていて、そして、一部の特別な個人や企業が、そういう抜け道を使って払っていない蓋然性が極めて高い。なぜ極めて高いのか。佐渡島や淡路島に満たないような国に六十兆ものお金が流れ込んでいる、こういう実態があるからであります。

 少なくとも政府の閣僚全員について、本人、親族、関係会社がタックスヘイブンに関する投資取引をしていないかどうか、政府として調査をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 個別の納税者に関しましてのお話ということになろうかと思いますので、税務調査に関しましての具体的な話というのは、これはお答えを差し控えさせていただくというのはいつも申し上げているとおりであります。

 そもそも、具体的に誰々を調査しろと私が国税庁に命じるんですか。それはいかがなものかということになりかねませんから。

 政府としてというお話でしたら、財務大臣としてここへ出席をさせていただいておりますので、私の立場として今のお答えは、政府としてというお答えでしたらできませんし、財務大臣としてというのでは、それはちょっといかがなものかと存じます。

宮崎(岳)委員 内閣の副総理として、政府の閣僚に少なくとも聞き取りや報告を求める等のことはやるべきだというお考えはありませんか。

麻生国務大臣 今、そういう御意見があったということは伺っておきます。

宮崎(岳)委員 ぜひお願いします。

 先ほど申し上げましたとおり、この取引の中には合法的なものもある、しかし、合法的なものにも不適切なものがある、あるいは完全に違法なものもある。いろいろなものがまざっていることですから、これに登場したからといって、即その人がやめなければならないとか、あるいは批判に値するとかいうこととは限りません。とはいえ、やはり国民からの信頼というものを得なければならないのが政治であるというふうに思いますので、ぜひ調査については積極的に行っていただきたいというふうに思います。

 もう一点伺います。

 この匿名の情報提供者は、自分を免責してくれれば、各国政府の調査、捜査に協力をしたいというふうに報道機関を通じて申し出ております。

 というのは、過去、幾つかのICIJがかかわったリーク、これにかかわった情報提供者というのは、何人か実際に逮捕されてしまっている。その情報を公開した、あるいは入手したところに違法行為があった。実際、その中には、国の税務当局等に協力をして、そして、そのためにいろいろな犯罪が暴かれたとか脱税が発覚したとかという、協力をしていた方もいるんですね。

 そういった経過でこのようなことをおっしゃられているんだろうというふうに思いますが、今回の情報提供者にそういった協力を求めるというつもりはありますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 パナマ文書について、ICIJの情報提供者に関しましては、情報の入手方法も含めまして、その全貌は明らかになっていないものと承知をしております。

 税務調査を念頭に考えますと、一般論として、国税庁としては、犯罪行為等を免責するような権限を持っておりませんので、情報提供者に対し、そういったことを条件として情報提供等に関する協力を求めることはできないというのが現状かと思います。

宮崎(岳)委員 いずれにしても、この情報提供者の方が持っているパナマ文書という情報、もちろんICIJにもこれが提供されているということですけれども、中には非常に巨大な、あるいは、さまざまな犯罪的な事実が含まれているという蓋然性は極めて高いというふうに思います。

 そして、タックスヘイブンそのものの問題に手をつけなければならないというふうに思います。

 星野国税庁次長、お伺いいたします。

 タックスヘイブンに関連した投資取引についての見解をお述べいただきたい。国税庁としての見解というのはこれまでほとんど出ていないと思います。この問題について、タックスヘイブンというのはあってもいいんだ、これは合法である、そのままでいいのか、それとも、不適切であり、これは改善しなければならないというふうにお考えなのか、いかがでしょうか。お答えください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、多国籍企業や富裕層がいわゆるタックスヘイブンなどを利用して税負担を軽減していることなど、国際的租税回避への対応が世界的な問題になっております。

 こういった問題につきまして、国税庁といたしましても、税務調査などを通じまして事実関係を的確に把握した上で適正な課税を行っていくことは必要であると考えております。

 もちろん、いろいろな形態がございますし、先生おっしゃいましたとおり、違法なもの、適法なもの、そこについては必ずしも一様ではないと考えておりますけれども、そういったものに対応するために、国税庁としては、国際的な租税回避事案への対応を専門に担当する部署を設置するなど、調査体制の充実を図るですとか、租税条約等に基づく情報交換を積極的に活用するなど、あらゆる機会を通じて情報収集を図っております。

 仮に問題のある取引が認められれば、税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めていくべきだと考えております。

宮崎(岳)委員 パナマ文書、日本に関連する部分、こういうようなリストです。これは、一般の人でも誰でも、このICIJのサイトに接続をすれば検索をかけることができる。私も、例えば自分の出身地域の名前などを打ち込みますと、私の家から恐らく数百メートルのところの住所が突然ぽんと出てきたりということもありました。

 ざっくり名前を見ました。中身も見てみました。日本に関係するところで、例えば、広告代理店と同じ名前、あるいは有名IT企業と同じ名前、日本国内の法律事務所、あるいは、食品メーカー、製紙メーカー、ゴルフ場経営会社、商社、医療法人、こういったものと同じ名前の、もちろん、アルファベットですから、本当に同じかどうかわからないですけれども、同じ名前も出てきます。

 あるいは、政治家の名前は、一応現職の政治家についてはみんな調べて出ていなかったという情報も聞いてはおりますが、例えば高級官僚と同じ名前の人、あるいは芸能人と同じ名前の人、こういった方々もいます。もちろん、アルファベットですから、同一人物かどうかわかりません。同姓同名の別人かもしれないし偽名かもしれないということだと思うんですが、そういったことも出てくるということであります。

 今後、ぜひこの問題についてきちんと調査をして、そして適切な、適正な納税がなされるように取り組んでいただきたいというふうに思います。

 パナマ文書については、とりあえずおきます。

 続いて、日本銀行に関する問題について質問させていただきます。

 昨日発売の週刊誌、週刊ポストで、日本銀行政策委員会審議委員櫻井眞氏の経歴についての記事が掲載されました。その記事は、「安倍官邸が送り込んだ「日銀のショーンK」重大経歴詐称疑惑」という記事であります。

 この記事について、添付資料として添付をしようとしたんですけれども、与党の方々の反対があったということで、提出が認められませんでした。別に何かパネルにして映そうというわけではない、ここにいる数十人の議員の皆さんに、実際に週刊誌に載っているものを参考として共有していただこうということだったのに、それすら認めないというのはいかがなものかというふうに思います。この場をかりて抗議をさせていただきます。

 さて、その記事によると、日銀のホームページに櫻井氏の経歴が掲載されて、「東京大学大学院経済学研究科博士課程修了」というふうに書いてある、しかし、博士論文が見当たらないので、博士号を取得していないのではないかという疑惑であります。

 私は、これまで金融緩和を強く主張してきたいわゆるリフレ派でありますから、こういう質問をするのは甚だ残念なんですけれども、こういう記事が載った以上、ぜひお伺いしなければなりません。確かに、日銀のホームページには、「博士課程修了」という表記がございます。

 まず、文部科学省に事実関係を確認させていただきたいというふうに思います。

 博士課程修了とはどのような状況を指すのか、法的にお答えください。

義本政府参考人 お答えいたします。

 博士課程の法令上の修了の要件につきましては、文部省令でございます大学院設置基準第十七条におきまして、原則、大学院に五年以上在学し、三十単位以上を取得し、かつ、必要な研究指導を受けた上で、当該大学院の行う博士論文の審査及び試験に合格することと規定されているところでございます。

宮崎(岳)委員 今言われたとおり、これは文部省令でありますけれども、明確に明文化されております。誰でも読める。

 まず、一定の年限、原則五年以上在学する、三十単位以上取得をする、そして、博士論文の審査あるいは試験に合格をする、この三つの要件を満たしたら博士課程修了というふうに書くことができる。

 日本でも、二十年ぐらい前には、確かに論文が通っていなくても博士課程修了というふうに書くということもあったやに記憶しています。

 私、新聞記者をやっておりましたので、いろいろな人のプロフィールを書くという仕事も結構ありました。週に一遍ぐらい誰かのプロフィールを書いているということもあった。ある時期から、やはり博士課程修了という表現はなくなりました。博士号取得と書くか、満期退学とか単位取得退学とか、そういう書き方をするようになりました。

 櫻井審議委員にお伺いします。博士号は持たれていますか。

櫻井参考人 宮崎先生にお答えいたします。

 議員御指摘のとおり、私自身は博士号を取得しておりません。単位を取得して、博士課程中途退学ということになっております。

宮崎(岳)委員 博士号を取っていなければ、それは経歴詐称にはならないんでしょうか。いわゆるショーンK、ショーン・マクアードル川上氏の経歴詐称の問題もありましたけれども、似ているんじゃないでしょうか。過去には、大学中退を大学卒業というふうに書いたということで議員辞職に追い込まれた政治家もおります。違いますか。

櫻井参考人 私、今申し上げましたとおり、単位を取得して中途退学ということになっているわけでありますが、この点、従来、日本銀行が公表している役員の経歴ということにつきましては、博士号をきちっと取得している場合はPhDないしは経済学博士という形になっているんですけれども、単位取得退学という場合を含めて、博士課程修了という表記を従来からしてきました。したがって、私の経歴についてもそれに従ったということでございます。

宮崎(岳)委員 中曽副総裁にお伺いします。

 これが、例えば民間で講演をするときに経歴が書かれていて、そこに修了と書いてあった、あるいは、茶飲み話、雑談をするときに博士課程を修了だというふうに言った、こういった話だったらよくある話ですよ。しかし、日本銀行という公の機関が、博士課程修了の要件が省令に明記をされている。これは誰でも知っている。例えば、ある大学に勤務しようという人が履歴書を出す、そのときに、今どき大学院博士課程修了なんて書く方はいませんよ。それを放置しているというのはどういうことですか。

中曽参考人 お答え申し上げます。

 まず、私どものこれまでの履歴の取り扱いでございますけれども、公表している役員の履歴につきましては、表記の統一も図りつつ、本人の申告に基づいて主要な経歴を記載しているところでございます。

 こうした役員の経歴におきましては、私どもは、本人が博士号を取得している場合にはPhDないし経済学博士取得というように明示をしている一方、単位取得退学の場合を含めまして、博士課程修了という表記をしてきたところであります。

 恐らくこれは、委員が先ほど御指摘されましたように、博士課程を取得する人がまだ少ない時代の、そういった表記の慣行をこれまで踏襲していたということではないかというふうに思います。

 それ以外の櫻井委員の職歴についても、本人が確かにウエブサイトに掲載された職務に従事していたとされておりまして、これに反する事実があったことは確認をしておりません。

 したがいまして、櫻井委員の表記につきまして経歴詐称に当たるものではないと考えておりますけれども、その上で、このような表記のあり方が今のままでよいかどうかは、先ほどの文部科学省からの御答弁なども踏まえまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

宮崎(岳)委員 変わって数年とかじゃないですよね。少なくとも平成に入ってから、修了という言い方はほとんどしなくなっていると思いますね、博士号を取っていない人はですよ。取った人は修了という表記をすることもありますけれども。二十年以上たって、世の中の情勢がまだそのままで、そして経歴詐称ではないというふうに断言をできるというのは、私は正直、甚だ違和感を覚えます。

 実は、櫻井審議委員が、その人事が国会同意人事で国会に提案されたときに、履歴書が提案されますね、議運委員会に。そのときの履歴書と、今ホームページに掲載されている経歴の間に何かちょこちょこと違う部分があるんですね。普通は、全く同じものを使うか、片っ方が片っ方のものを省略しているとか、こういうのはあるんですけれども、全く違うもので、対照表をちょっとつけさせてもらいましたけれども、どういうことなんだろうという疑問を非常に抱かざるを得ないんです。

 一つは、大きな疑問というのは、国会に提案された方の分、履歴書、経歴書に、東京大学大学院経済学研究科博士課程ということが書かれていないんです。これは最終学歴ですよね。最終学歴を書かないで、しかも、まさにど真ん中の日銀の審議委員になるときにこの履歴書が提案されたというのはどういう事情によるものなんでしょうか。

土生政府参考人 御説明させていただきます。

 国会同意人事に関する資料、本件につきましては、櫻井眞氏から提出をされました資料に基づきまして、国会におけます各党各会派で御審議に必要と思われる略歴というものを、ピックアップいたしまして整理をして国会に提出をしたというところでございます。

 経過を確認いたしましたところ、櫻井氏から提出いただきました資料には、先ほど御質疑ございましたとおり、当該博士課程を単位取得退学したというふうに明記をされていたものでございますけれども、私どもが事務的に整理をする中で、略歴でございますので、その中から抽出をして整理をしたわけでございますけれども、この点につきましては必ずしも記載する必要がないというふうに判断をいたしまして、国会に提出いたしました資料にはその点に関する記載はなかったということでございます。

宮崎(岳)委員 何かわかりにくいですね。だって、日銀の審議委員を選ぶ、この人物がふさわしいかどうかということで国会に提出させた資料ですよね。それなのに、最終学歴、中央大学経済学部卒で載っているんですよ。私も中央大学ですから、立派な大学だと思いますけれども、さはさりながら、東京大学大学院経済学研究科、立派な最終学歴じゃないですか。それを、全然関係ない職につくのなら別ですけれども、日銀の審議委員につくのに落とすというのはわかりません。

 櫻井審議委員にちょっと確認したいんですが、大学院にはきちんと五年以上通って、三十単位は取得して、そして修士号は取ったということ、これは間違いないんですね。

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、私、きちっと東京大学の大学院経済学研究科に在籍をいたしました。東大紛争のすぐ翌年、終わった翌年に入学いたしまして、五年在籍ということになります。そして、単位取得で退学ということは一切変わりありません。そのとおりでございます。(宮崎(岳)委員「五年」と呼ぶ)はい、そうです。

宮崎(岳)委員 その週刊ポストに、修士論文なるものが千二百五十八文字しかなかったという表記があります。これは事実ですか。

櫻井参考人 修士論文は、もう四十数年前なので余り記憶は定かでないところはあるんですけれども、確かに、文書を提出せよということで、四ページということのものを書きました。

 それは、先ほど申し上げましたとおり、まだ東大紛争が終わってすぐの時間であったので、やや混乱期にまだ大学院の教育があったんだろうというふうに思います。そして、きちっと修士号は学位記としていただいております。

宮崎(岳)委員 千二百五十八文字で、私は打ってきたんです。これですよ、これぐらい。学生の毎週提出するレポートだってこんなものですね。

 一橋大学言語社会研究科というところのホームページで、この科で、「修士論文の分量は以下のとおりとする 日本語論文の場合は、論文本文について、四万字から五万字程度を目安とする。」こういうふうなものもあります。

 幾ら何でもA4ペラ一枚というのは少な過ぎるように思うんですが、事実ということであります。

 さて、これは論文を審査した教官はどなたなんですか。どこのゼミに属していたとか。というのは、浜田宏一先生の下にいたということを各所で櫻井審議委員が発言をされている。これは浜田先生が審査した修士論文なんですか、それとも全然関係ない方なんですか。

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、ちょうど東大紛争のすぐ後で、まだ混乱期だったんですが、あの当時、終了後の、私、大学院の最初の入学だったんです。その当時は、修士院に関しましては指導教官がいません。特に浜田先生は、当時MITの客員教授をされていまして、私がドクターの一年生のときにお帰りになって、私は、その後ずっと御一緒に共同研究をいたしました。したがって、一年、二年の間というのは、特別に指導教官というのはいない。

 ただ、私は、その論文を書いたのは、亡くなりましたけれども、故宇沢弘文先生の下でその論文の指導をしていただきました。

宮崎(岳)委員 宇沢弘文先生、有名な教授でありますけれども、その下でこの論文の審査を受けたということでしょうか。

 さて、イエール大学に留学して、お帰りになって大蔵省に入ったとされるんですが、日本銀行のホームページによると、大蔵省財政金融研究室特別研究員という役に、昭和五十九年四月に就任をされたということになっています。

 実際に、本日は、財務省の財務総合政策研究所、この機関の後継機関だと思いますが、こちらの冨永所長に来ていただいております。冨永所長、そういう経歴でよろしいんですか。

冨永政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の財務総合政策研究所が平成十二年七月に機構改革される前の組織でございました財政金融研究所におきましては、中長期的な観点から、内外財政経済に関する基礎的な調査及び研究を行っておりまして、特別研究官には、財政経済の重要な専門的事項についての調査及び研究に参画いただき、学会等の最新の研究をもとに指導助言等をいただくこととしておりました。

 櫻井審議委員には、平成二年五月に特別研究官を委嘱し、平成八年三月までの間、国際経済の専門家の立場から指導助言等をしていただくとともに、例えばアジア太平洋金融資本市場発展研究会の専門委員などとして、当研究所の活動に参画していただきました。

宮崎(岳)委員 もう一度確認です。就任時期はいつですか。

冨永政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二年の五月でございます。

宮崎(岳)委員 経歴は昭和五十九年四月になっております。国会に提出した資料も日本銀行のホームページに載っている資料もそうでありますが、その時期ではないということですか。

冨永政府参考人 現段階までに私どもとして確認できておりますのは、お答え申し上げましたとおり、平成二年五月に特別研究官に出向させていただいたということでございます。

宮崎(岳)委員 研究室でなく研究所、研究員でなく研究官、これは無給の職であるというふうに報道されております。そして時期も違うということであります。

 そして、実は櫻井さんが講演をされておりますが、その中で、帰国して二年目ぐらいから、大蔵省と銀行と半々ぐらいで勤務するようになった、当時、大蔵省関税局長長富さんの秘書官を仲間二人と一緒に務めたというふうに言っております。この経歴の大蔵省の時期と重なります。これはどういうことでしょうか。

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 過去、その間、確かに大蔵省の方には勤務しておりましたけれども、それは、当時の輸出入銀行なんですが、そこから出向という形をとっておりましたので、辞令は出ていないんだというふうに思っております。

 いずれにせよ、ただ、当時の特別研究室に当たりますそこに、形としてはいる形で勤務をしていたということは事実でございます。

 言われましたとおり、後で、平成二年でしょうか、そこから正式な辞令をいただいたということになっております。

宮崎(岳)委員 辞令が出ていなくて、輸銀のことですから、政府関係機関ということで、私的にか上司の指示かどうか知りませんけれども、行ってこいやと言われて行っていた、そういうことなんですが、甚だちょっと経歴に載せるものとしてはわかりにくいんじゃないか。

 もう一つ。経済企画庁経済研究所客員研究員というのを、昭和六十一年四月から平成四年三月までですか、お務めになったということになっていますが、これは、経済企画庁の方、このとおりの経歴で間違いありませんか。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和六十二年四月から昭和六十三年七月にかけて経済企画庁経済研究所客員研究員として在籍していたことは確認させていただいております。

宮崎(岳)委員 今私が申し上げたこの紙にある経歴と時期が違いますよね。違いませんか。

桑原政府参考人 昭和六十二年四月から昭和六十三年七月にかけて在籍していたことは確認させていただいていますが、昭和六十一年度については確認できておりません。

宮崎(岳)委員 皆まで申し上げませんけれども、この二つの経歴書に違いがいろいろあるんです。例えば大正海上基礎研究所の研究部長主席研究員が違うとか、いろいろあります。例えば、私も三井海上投資顧問の閉鎖された登記簿なども拝見しましたけれども、この役員の時期も違います。それから、平成四年時点ではMSK基礎研究所国際金融センター所長には就任されていないと思います。そもそも、その時点ではMSK基礎研究所という名前になっておりませんが、所長に就任されたのは平成八年の方が正しいんじゃないかというふうに思います。

 こういったところ、少なくとも、この短い経歴の中に六つも七つも、日付だとか役名だとか、間違いがあるということなんですが、これはどういうことなんでしょうか、櫻井さん。

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 かなりいろいろと組織を動いていたものでございますので、その辺が、半年だとか一年間ずれてしまっているという可能性はあるかと思いますが、いずれにせよ、少し異動が激しかったということを反映しているのかもしれないと思って、甚だ申しわけないと思っております。

宮崎(岳)委員 時間となりましたので終わりますが、ちょっと異動が激しいと言うほど激しくないと思いますし、この大正海上研究所と三井海上研究所とMSK研究所というのは同じ研究所ですから。名前がただ変わっただけですから。今はMS&ADという名前になっていますけれども、これは同じですからね。

 あと、最後にちょっと一問だけ岩田副総裁に、甚だ聞きにくいんですが、伺います。

 岩田副総裁も東大大学院博士課程修了という経歴で載っているんですけれども、博士号は保有されていますか。

岩田参考人 お答えします。

 当時、私は博士課程は終わったわけですね、単位を取って。東大紛争がありましたから五年以上いたんですけれども、いずれにしても、終わって。それで、修士を取って、そして私は、上智大学に就職するときに、大学の教務の担当者に、一体私の経歴はどうやって書けばいいのかと聞いたんです。そして私が、満期退学と書くのかと聞いたら、そうじゃない、東大ではあなたの場合には博士課程修了と書くんだと言われて書いたのでありまして、ですから、当時、結局そういう指導を櫻井さんも受けたんだと私は思います。当時はそういう慣例だったということでございます。

宮崎(岳)委員 持たれていないということでよろしいんでしょうか、博士課程は。

岩田参考人 ですから、当時の慣例の、修了という意味は、取得をしていない人に対してつけるという意味で、持っていないということでございます。

宮崎(岳)委員 時間になりましたので終わりましたが、これは、文部科学省の方で持っている学位規定とかさまざまな省令に、全て、修了というのは博士号を取得した人に使うものだというふうに、これは明文的な、法的な規定で書かれているわけですから、日本銀行がきちんと対応しなければいけないと思います。

 以上です。終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、自衛隊機のフィリピンへの貸与の問題についてまず質問させていただきたいと思います。

 連休のはざまの五月二日に、中谷大臣とフィリピンのガズミン防衛大臣との間で、海上自衛隊の航空機の貸与が合意されました。

 まず初めに財務大臣に確認しますが、安倍政権が定めた防衛装備移転の三原則に基づいて、自衛隊が国有財産である装備品を他国軍隊に貸与するというのは初めてのケースですよね。

麻生国務大臣 一点だけ、防衛装備品ということになるかならないかというところは問題ですけれども、防衛装備品か否かという点については、目下、防衛省において、防衛装備するいわゆる搭載装備品を含めて今具体的な話が進んでいる、協議中であると聞いておりますので、今の段階で、これが防衛装備移転三原則の防衛装備に当たるか否かが今は判断はできておりませんので、今に対するお答えは、もしそれになった場合はという前提で申し上げますが、防衛装備ということになった場合は、初めてのケースということになろうと存じます。

宮本(徹)委員 防衛装備品の場合は初めてのケースということになります。

 今、南シナ海をめぐっては、今度、武器貸与を合意したフィリピンを含めて五国一地域が領有権をそれぞれ主張するという状況が続いております。

 二〇〇二年に南シナ海行動宣言が中国とASEAN諸国の間で結ばれております。その中で、現在無人の島嶼、岩礁、その他のものへの居住は慎むということが決められ、さらに、紛争を複雑化あるいは激化させ、また、平和と安定に影響を与えるような行動を自制する、こういうふうに決められているわけですよ。

 この間、中国が、南沙諸島、スプラトリー諸島で人工島をつくっている、あるいはパラセル諸島でのミサイルの配備をやっているわけですが、こういう行動は明らかにこの南シナ海行動宣言に反するというのは言えると思います。

 私たちも、中国に対しては、南シナ海での一方的な現状変更と軍事的緊張を高める行動はやめるべきだということを求めております。

 同時に、二〇〇二年のこの南シナ海行動宣言が締結された後の十数年を見ても、各国・地域が埋め立てを行ったり空港の建設というのをこの地域の島々で進めてきているというのも事実なわけです。

 ですから、こうした事態を解決していく上で日本が果たすべき役割は、領有権争いの一方の側に自衛隊の装備品を貸与していくことなのか。私は、決してそういうことではないと思います。

 そこで、きょうは防衛副大臣もいらっしゃっていますが、自衛隊の装備品をフィリピンに、今回は貸与ですけれども、供与も含めて検討されたと思いますが、こういう話はどちらの国から出てきた話なんでしょうか。

若宮副大臣 宮本委員にお答えさせていただきます。

 今お話しになりました、どちらから話が出たのかということでございますが、フィリピンとの間におきまして昨年の一月に行われました日本とフィリピンとの防衛大臣の会談におきまして、防衛装備そして技術協力の可能性を模索するために、事務レベルでの協議を開始することでまず一致をいたしたところでございます。

 この事務レベルの協議の過程の中で、特に、人道支援と、それから災害救援、それからまた輸送及び海洋状況の把握に係る能力の向上、これをしたいというフィリピン側の強いニーズが示されましたことを踏まえまして、私ども防衛省といたしましては、いかなる防衛装備の技術協力が可能かについて検討を重ねてきたところでございます。

 この検討の結果、本年の二月二十九日に日本とフィリピン間におきまして防衛装備品それから技術移転協定が署名されたことを踏まえまして、先ほど委員も御指摘になりました五月二日に、私どもの中谷防衛大臣とガズミン・フィリピン国防大臣との間で、フィリピン海軍へ最大五機の海上自衛隊の練習機TC90を移転することなどにつきまして、協力を具体化していこうということを確認したところでございます。

 ガズミン・フィリピン国防大臣を初めフィリピン政府は、TC90移転につきましては非常に大きな期待をお持ちのようでございまして、今般、本件につきまして両大臣間で一致をしたということは、極めて意義深いものがあるというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 先ほどのお話ですと、一月以降の話し合いの中でフィリピン側からいろいろなニーズが示されたということですけれども、そもそも、二〇一四年春に安倍政権が武器輸出三原則を変えるまでは、例外はありましたけれども、日本は武器輸出が原則できないとなっていたわけですよ。そこから先ほどあった一月の合意までの間に、何度も防衛省の経理装備局装備政策課の職員がフィリピンに行かれていますよね。

 これは、いつ、何の目的でフィリピンに行ったんですか。

堀地政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十六年の四月一日に防衛装備移転三原則が閣議決定されました。それ以降、さまざまなレベルにおきまして、諸外国との防衛装備、技術協力に関する意見交換、また情報収集を実施しているところであります。

 御指摘の、防衛装備庁設立以前でございますから防衛省経理装備局装備政策課、当時の職員のフィリピン訪問につきましては、平成二十六年の七月、それから二十七年の一月に、防衛装備移転三原則の説明、また、先方の装備、施設に係る情報収集など、フィリピンの国防省関係者との防衛装備、技術協力に係る一般的な意見交換を目的として実施したところでございます。

宮本(徹)委員 ですから、初めに若宮副大臣からは、二〇一五年一月以降にフィリピンとの話し合いの中で向こうからニーズが出てきたというお話でしたけれども、その前に、武器輸出三原則が変わりましたよ、防衛装備移転三原則に変わりましたよということを、わざわざASEAN各国を回って防衛省の職員が説明をしているわけですよね。その中で、日本の防衛装備品で欲しいものはありませんかというのを、ニーズを聞いて回ったわけですよね。それが事実ですよね。堀地さん、どうぞ。

堀地政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の装備政策に関する意思決定が装備移転三原則という形で閣議決定されましたので、それに関する趣旨を御説明して、これから装備移転三原則に係る趣旨に沿って装備協力等々のことを実現できるよう、可能性について、さまざまな形での意見交換を実施してきたというところでございます。

宮本(徹)委員 つまり、日本から輸出できるようになりましたよ、日本は協力しますよということで、日本の側から積極的にアプローチをして、日本の側から御用聞きをして回って、その結果、昨年の一月に、日本とフィリピンの間で防衛装備移転についての話し合いが正式に始まるということになっていったわけであります。

 その上で聞きますが、今回の自衛隊の練習機TC90ですが、フィリピンはこれを何に使うと言っているんですか。南シナ海の警戒監視活動に使うんじゃないですか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 フィリピン海軍がこのTC90というのを、人道支援、それから、先ほども申しました災害救難、それから輸送及び海洋状況把握のために使用する予定であるというふうには承知をいたしているところでございますが、実際にフィリピンの海軍が具体的に今後どういった活動に使うかということにつきましては、これは他国の運用の問題でございますので、私どもがお答えする立場にはないのではないかなというふうに考えているところでございますが、一般的に考えれば、海洋状況把握ということになりますと、災害対応、環境保全、あるいは海洋監視等が含まれるものではないかというふうに承知をいたしているところでございます。

宮本(徹)委員 一般的に言えば海洋監視は含まれる、当然、南シナ海の海洋監視も含まれるということで若宮副大臣、よろしいですね。

若宮副大臣 地域がどこかということは、私はちょっと、フィリピンの方がどういったところを海洋監視をするかということによるかと思いますので何とも申し上げるところではございませんけれども、一般的には、海洋の状況の把握ということには、やはり監視活動というのは入るものだというふうに思っております。

宮本(徹)委員 では、南シナ海は除外はされていないですよね、一般的に言えば当然。

若宮副大臣 フィリピンがどこの海に面しているかということにもよろうかと思いますので、太平洋も入るのではないかと思います。

宮本(徹)委員 太平洋も入るかもしれないと言いますが、南シナ海も除外されていないというのは否定できないわけですよね。

 それで、私、一つ疑問なのは、今回自衛隊が貸与するTC90という練習機は、もともとはビーチクラフト社がつくっているもので、民間で世界で広く使われている航空機だ。ビジネス機なんかでも使われているということになります。しかも今回は、財政法との関係で、適正な価格で貸与、市場価格で貸与するという話を聞いているわけですが、そうすると、世界で民間航空会社もいっぱい使っていて、民間会社からリースできるものをなぜわざわざ日本の自衛隊が貸与するんですか。

若宮副大臣 今回の海上自衛隊の練習機のTC90というのは、確かに今宮本委員がおっしゃったとおり、アメリカのビーチクラフト社の民間機のC90というものを海上自衛隊の機材として使用するために、通信機器等を搭載しまして改修を行ったものでございます。機体の性能そのものにつきましては、まさにおっしゃるとおり、民間機でありますC90と大きな差はないというふうに考えているところでございます。

 今般のTC90の移転ということにつきましては、冒頭も申し上げましたが、フィリピン側からの強いニーズを踏まえまして、フィリピン政府との間でいかなる防衛装備や技術協力が可能かについて協議を重ねてきた結果、関連する、例えば要員の教育ですとか、あるいは訓練や支援、そういった維持整備分野にも広がるかと思いますけれども、支援とともに具体化していくこととしたものでございます。

 いずれにいたしましても私ども防衛省といたしましては、このTC90の移転につきましては、海洋安全保障分野におけます日本とフィリピンとの間での連携強化に資するものではないかなというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 今、この機体とあわせて、教育、訓練の支援、さらに維持整備についてもというお話がありましたけれども、これはパッケージになっているわけですよ。練習機の移転、この練習機に関連するフィリピン海軍要員への教育、訓練の支援、フィリピン海軍によるTC90の運用を持続していくための維持整備分野にかかわる支援ということを自衛隊が行うことになっているわけですよ。

 ですから、結局、南シナ海の警戒監視に使う飛行機の機体整備、パイロットの育成まで含めて自衛隊が行っていこう、フィリピン軍の南シナ海警戒監視部隊を日本の自衛隊が育成しようという方向に踏み出すのが、今度のガズミン大臣との合意ということになるんじゃないですか。

 だから、結局、日本の側から南シナ海の領有権争いに軍事的に関与していこう、こういう方向に踏み出すのが今回の決定なんじゃないですか。

若宮副大臣 委員ももう十分御承知のところだと思いますけれども、私ども日本というのは、四面環海、まさに海でございまして、海洋国家である我が国といたしまして、平和と繁栄の基礎であります、開かれた安定した海洋、この秩序を強化するということは極めて重要であろうというふうに認識をいたしているところでございます。海上交通の安全の確保には、もちろん万全を期す必要があろうかと思っております。

 そういった観点からも、フィリピンを初めといたします沿岸諸国自身の能力の向上というのは、これは我が国にとりましても非常に重要なものであるというふうに認識をしているところでございます。

 また、フィリピンというのは多数の島々によって国土が成り立ちます島嶼国でもございます。ある意味、私ども日本もそうですけれども、災害の非常に多い場所でもございます。人道支援や、災害救援や、輸送あるいは海洋状況の把握に関する能力向上というのは、フィリピン自身にとっても非常に重要な課題ではなかろうかなというふうに承知をいたしているところでございます。このフィリピンの能力の向上ということが、この地域の安定にも大きくつながるものではないかというふうにも考えているところでございます。

 このTC90の移転につきましては、こうした背景のもとで、海洋安全保障分野におけます日本とフィリピンとの両国間の連携を強化する一環で行うものでございまして、御指摘のように、南シナ海の領有権の争いに日本が軍事的にかかわろうということでは全くございません。

宮本(徹)委員 すなわち、フィリピンの海軍の能力向上をして地域の安定を図るんだというのは、まさにどこを相手にしているのかというのを考えれば、領有権争いに日本の側からかかわっていこうというふうに諸外国が捉えるのは当たり前だというふうに思いますよ。

 この間アメリカは、アジアへのリバランス政策を進めてきました。そして、アーミテージ・レポートなどさまざまな形でアメリカ側から日本に対しては、南シナ海の警戒監視活動に加わってほしいということを求めてきたわけですよ。こういう中で昨年は、自衛隊のP3Cもフィリピンとの共同訓練で南シナ海を飛ぶということもありました。さらに、この間アメリカは、この地域で航行の自由作戦を行っております。

 そして、ことしの四月十四日、カーター国防長官とアキノ大統領の会談では、南シナ海で米軍とフィリピン軍の共同哨戒活動の定期実施で合意しているわけです。このときのカーター国防長官の記者会見では、オーストラリア、日本とも共同哨戒を行いたい、こういうふうに表明をされています。

 ですから、結局、今進んでいる事態というのは、アメリカと日本が一緒になって南シナ海への軍事的関与を強めようということになっているんじゃないでしょうか。

 もう一つお伺いしますけれども、河野統幕長とアメリカのスイフト海軍幕僚部長との会談録、昨年の安保法制特別委員会で、私たち、内部文書として出させていただきましたが、その中で、米側からは自衛隊に対して、ASEAN諸国への戦略的寄港をどんどん行ってほしいということが求められておりました。

 そこでちょっと数を教えていただきたいんですけれども、自衛隊が南シナ海の海域で他国軍と行った共同訓練の回数、二〇一三年度、一四年度、一五年度、それぞれ何回か。そして、一六年度は何回を予定していて、これまで何回行ったのか。この数を教えていただけるでしょうか。

笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 南シナ海における共同訓練の回数についてでございますが、これは専ら親善を目的とした訓練を除いた数で申し上げますと、平成二十五年度、二〇一三年度ですが、これが二回、平成二十六年度、二〇一四年度が三回、平成二十七年度、二〇一五年度が六回実施をしているところでございます。また、今年度、平成二十八年度、二〇一六年度につきましては、これまでに二回実施をしております。

 今後の予定については未定でありますけれども、各国との共同訓練を通じて、自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、相手国との協力の強化を促進していくことは有益であると考えているところであります。

 防衛大綱におきましても、アジア太平洋地域における二国間、多国間による共同訓練、演習を推進する旨定めているところ、防衛省・自衛隊としては、南シナ海等において米国を初めとした各国と二国間、多国間の共同訓練、演習を実施し、これらを通じて、アジア太平洋地域の平和と安定に寄与してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 今お話しありましたけれども、二〇一三年度は二回、一四年度は三回、それで一五年度が六回、ことしはまだ一カ月ちょっとしかたっていないけれども二回。今年度は二回ということですから、どんどん南シナ海の領域での他国軍との共同訓練の回数もふえてきているわけですよ。ですから、この地域にどんどん自衛隊がいろいろな形で乗り出していっているということになっています。

 きょうは木原外務副大臣にも来ていただいております。

 日本は南シナ海の領有権争いの直接の当事者ではないわけですよ。その日本が南シナ海の問題への軍事的関与を大きく拡大していくことでこの地域の領有権争いというのは解決に向かうというふうに考えているんでしょうか。

木原副大臣 お答えを申し上げます。

 もう既に若宮副大臣の方から御答弁いただいたとおりだというふうに思いますが、今般の防衛装備協力は、副大臣からも答弁あったように、人道支援・災害救援、輸送及び海洋状況把握等に係るフィリピンの能力向上のために実施するものであって、特定の国または地域を念頭に置いたものではないと承知をしております。

 したがって、今委員御指摘がございましたが、この南シナ海の領有権争いに日本が軍事的に関与するといった指摘は当たらないものというふうに考えております。

 他方で、この南シナ海における航行の自由及びシーレーンの確保というものは、我が国のみならず、地域の平和と繁栄に直結する課題でありまして、国際社会共通の関心事項であります。

 したがいまして、私どもは、海洋における法の支配を遵守する、こういう立場から、三つの原則を国際社会に訴えております。

 まず、主張するときは国際法にのっとって主張すべきであろう。二つ目は、武力の威嚇や力による現状変更は行ってはならない。そして三つ目は、問題を解決する際は平和的に国際法にのっとって解決すべきである。こうした三原則を外交を通じて国際社会で繰り返し主張し、多くの国から賛同を得てきたというふうに理解をしております。

 引き続き、海洋における法の支配の実現に向けて、外交努力を通じて関係国との協力を進めていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 やっているのが外交努力だけじゃないから私は質問させていただいているわけですよ。

 先日の日中外相会談でも、たしか中国の側から日本に対して、対抗するという考えを捨てるべきだということをこの南シナ海の問題にかかわって発言があった、こう報道もあったわけですよ。日本が外交で訴えることは対抗じゃないですよ。当然、南シナ海行動宣言に反する行動に対しては、これは言っていかなきゃいけない話ですよ。

 ただ、同時に、この地域に、フィリピンに対して自衛隊が武器を貸与していく、幾ら日本政府が否定しても、周りの国々は、自衛隊が軍隊に対して物を貸し出していっているわけですから、これは、軍事的関与を拡大していると見るのは当たり前の話だと思うんですよ。

 そして、南シナ海行動宣言を初めに紹介しましたけれども、紛争を複雑化あるいは激化させる行動を自制するとなっているわけですよ。これは中国に対しても当然そうですけれども、この精神からいったら、日本政府がフィリピンに対してこういうものを貸与していくということ自体も、これは紛争を複雑化するものになっているんじゃないですか。どうですか。

木原副大臣 もう繰り返しになって大変恐縮ですが、あくまでも今回の自衛隊の練習機の移転というのは、こういう人道支援、災害救援、輸送及び海洋状況把握に係るフィリピンの能力向上のために実施するものであって、特定の地域、国を念頭に置いたものではないということであります。

 そして、いずれにしても、フィリピンがこういう能力向上を図ること自体はこの地域の安定に資するものである、このように考えております。

 また、COCあるいはDOCの話を今、特にDOCの話を挙げていただきましたが、私どもは、外交を通じて、中国はもちろんでありますが、ASEAN各国に対して、DOCをしっかり守ること、遵守すること、そして、行動規範であるCOCを早期に合意すべきであるということを双方に対して繰り返しさまざまなレベルで、また、さまざまな機会に呼びかけてきているというところであります。

 こうした努力を今後ともしっかりと続けてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 ですから、COCにDOCを発展させていく、そのための努力をやはり徹底してやるというのが本来日本政府がやるべき仕事なわけですよ。だから、それとは違う方向なわけですよ。DOCの考え方からも背くことを、今はこの自衛隊の練習機の貸与ということでやっているんじゃないですか。

 フィリピンは、一九七一年から南シナ海で実効支配しているパグアサ島について、ことしに入ってから、管制塔を設置するということを発表しました。そして滑走路の改修を急ごうとされています。ここには滑走路、千三百メートルのものが今はあるわけですよ。これだけ大きければ、当然、今度貸与するTC90の離発着だって楽々できる滑走路があるわけですよ。そうすると、ここを使って、海洋状況の把握ということで警戒監視活動を行っていくということになるわけですよ。ですから、軍事に対して軍事という動きが進んでいるわけです。

 それを後押しするようなことを日本はどちらに対してもやらない。どちらに対しても、DOCをちゃんと遵守せよ、COCに発展させるために真剣に話をするべきだ、こう働きかけるべきなわけですよ。

 もう一つ聞きますけれども、こういう自衛隊機をフィリピンに貸与していく、そういう形でこの南シナ海の問題にかかわっていくということについて、国民的コンセンサスがあるというふうに木原副大臣はお考えなんでしょうか。

木原副大臣 これはもう明確に申し上げた方がいいと思いますが、私どもの最大の眼目は、国際法にのっとって平和裏にこの問題を解決していく、そしてその外交努力を尽くしていくということであります。

 他方で、議員御指摘のとおり、冒頭御指摘いただいたように、中国を初め、現状変更を一方的にするという試みが続いていることも事実であります。

 したがいまして、DOC、COCをつくる過程において、こういう一方的現状変更の試みが余り進まないようにしていくということも大変重要なことであります。

 そういう意味で、関係国を含めて全ての国が能力を向上させて、監視活動も含めてしっかりとした対応をとっていくということは、このDOCあるいはCOCをしっかり貫徹するという意味においても、非常に重要なことであろうというふうに思っております。

 そして、今、国民の理解というお話がございました。

 私どもは、やはり先ほど防衛副大臣からもお話がありましたが、四方八方を海に囲まれて、そして、海を通じてこの国の平和と繁栄を守っている国でありますし、このことは、海の航行の自由がしっかり確保され、そしてまた海において国際法が遵守をされるということは、我が国のみならず、国際社会全体の共通の利益であろうというふうに思います。

 そういう意味で、責任ある国として、海において国の法の支配が貫徹されるように、最大限努力をしていくということについて国民の皆様に十分理解を得られるもの、このように考えております。

宮本(徹)委員 法の支配が貫徹されるようにすることとそこに対して自衛隊機を貸与していくというのは、かなり論理的な飛躍があるわけですよ。法の支配を貫徹するためにDOCをCOCに発展させるのは、やはり外交努力しかないわけですよ。相手側からすれば、自衛隊がここにいろいろな形でかかわって乗り出していく、そうすれば反発を呼ぶ可能性があるわけですよ。

 実際、一昨年ですか、アジア安全保障会議でも、議長国だったシンガポールのリー首相からは、やはりアメリカがあそこに入ってくることについて、それは対抗が対抗を呼ぶんだ、だから、そういう悪循環を絶たなきゃいけないんだというお話もあったわけですよ。ASEANの中でも、話し合いでの解決、努力というのはいろいろな形でやられているわけですよ。それこそ後押しすべきだというふうに思います。

 きのう、フィリピンの大統領選挙がありました。ドゥテルテ氏という方が次期大統領になって、報道では、南シナ海の問題では中国と直接話し合っていこうということで、現政権から方針が変わるのではないかという可能性も報じられております。やはり、フィリピンの中も軍事的対抗一本やりというわけでは決してないと思いますよ。だから、フィリピンの大統領選挙の結果も踏まえる。

 それから、フィリピンが、この間、国際海洋法条約で仲裁手続をやってきましたけれども、これの仲裁も遅くない時期に出るわけですよ。でしたら、やはり日本がやるべきは、そういう状況の変化を生かして、やはり五国一地域に真剣な話し合いのテーブルをつくっていく、そのための外交努力こそやるべきなんじゃないですか。

木原副大臣 繰り返しになって大変恐縮ですけれども、今、比中間の仲裁裁判のことについてもお触れをいただきました。

 私ども、中国側に対しましても、そしてまたフィリピンに対しましても、いずれにしても、こういう仲裁裁判の結果についてはきちっと受け入れるべきである、そのことが法の支配を貫徹することにつながるということを繰り返し申し上げてきております。

 そして、私どもは、この問題は、いずれにしても、国際法にのっとって、そして、一方的な行動を伴わずに平和的に解決すべきであるということを繰り返しさまざまなレベルで、また、さまざまな機会に関係国に申し述べてきているところでありますので、まさに委員御指摘いただいたように、そういった外交努力をしっかりと続けてまいりたいというふうに思っております。

宮本(徹)委員 ですから、そういう外交努力をだめにしてしまうのが、今回のような、自衛隊機を貸与して軍事的にかかわっていくやり方だということを重ねて指摘しておきたいと思います。

 さらに、ふえ続ける防衛費との関係で今回の問題をちょっとお聞きしたいんですけれども、今回、新たなヘリ用の訓練機を購入したので、TC90五機を用途廃止して貸与するんだというふうに聞きました。まだまだ使える練習機を用途廃止できるぐらい自衛隊は、無計画もしくはぜいたくに航空機の購入をしているということなんでしょうか。

若宮副大臣 厳しい財政状況の中で無計画に、ぜいたくには決して、大事な大事な税金でございますので、使うようなことは全くございません。そのことは冒頭申し上げておきたいと思っております。

 この海上自衛隊の練習機のTC90でございますが、気象条件の制約のため、目視に頼ることなく、航空機の姿勢、高度、位置及び進路の測定を計器のみに依存して行う計器飛行の教育に使用いたしているところでございます。

 これまで、海上自衛隊におきましては、この計器飛行教育に使用できる回転翼機を有していなかったんです、委員が今御指摘になりましたけれども。固定翼機、回転翼機の双方の計器飛行教育においてこのTC90というのを使っておったところでございます。

 一方、回転翼機の計器飛行教育につきましては、今御指摘になりましたように、平成二十七年度の末に新たに導入されましたTH135、十五機をいよいよ購入をさせていただくことになりましたので、この回転翼機の操縦教育に加えまして計器飛行教育も実施できるようになったことから、このTC90が、十八機保有をいたしてございますが、取得時期の古い五機を早期に用途廃止することが、運用に係る経費を合理化する上でも適切ではなかろうかというような判断に至ったところでございます。

 その上で、このTC90がフィリピン海軍のニーズに、まさにフィリピン側から、冒頭も申し上げましたけれども、ぜひとも何とかならないかという強い御希望がございまして、それでこのTC90五機を早期に用途廃止して、フィリピン海軍に貸与することとしたものでございます。

 御指摘のように、ぜいたくかつ無計画に航空機を購入しているということは全くございませんで、厳しい財政状況の中、本当に切り詰めて切り詰めて、真剣に考えた上で選定をしているところでございます。

 しかしながら、この海洋安全保障分野におけます両国関係につきましては、やはり大きな強化をしていかなければいけないというふうに考えているところでございまして、このTC90の今回の貸与につきましては、大きな、資する意味があるのではないかなというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 自衛隊がこのTC90を購入している契約価格、一番新しいのを見ましたら、一機当たり七億八百万円、かなり高額なものになっているわけですよ。TC90自体は、残りの十三機というのは使い続けるわけですよね、当然。それはなぜかというと、計器飛行の訓練で固定翼機の訓練も必要だから使い続けるわけですよ。用途廃止せずにこれを使い続ける。あるいは、維持費がかかると言うんだったら、しばらく倉庫に置いていてもいいですよ。そういう形でぎりぎりまで使い続ければ、次の購入の時期というのは延ばせることになりますよね。

 今伺っているのは、TC90の寿命は九千五百飛行時間だ、そのうち、貸与する飛行機は二千時間程度の飛行寿命がまだあるものをやるわけですよね。ですから、何年もTC90の次の購入時期を延ばすこともできるわけですよ。先ほど、用途廃止した方が経費は合理的だということを言いますけれども、そういうことには絶対ならないと私は思いますよ。

 機体の一機当たりの契約額は七億八百万ですけれども、そのうち機体そのものの輸入費用というのは四億三千二百万ですよ、計算したら。それに自衛隊で使用するための機器だとかを積んだり、あるいは改修で多額にお金をかけてつくっているわけです。自衛隊向けの付加価値がついた、高いものにこれはなっているわけですよ。

 それをフィリピンに市場価格で貸すとなったら、当然、この自衛隊向けの付加価値の部分なんていうのはほとんど換算されない。何ぼぐらいだと職員の方に聞いたら、ほんのわずかな、数千万という話、一機当たりということを言っていましたけれども、そういう額になってしまうわけですよ。ですから、およそこれが経済的に見て合理的な判断だということは言えないというふうに思います。

 その上で、最後に財務大臣にお伺いしますが、中谷大臣は今後の自衛隊の装備品について、無償供与だとか低額貸し付けという問題について記者会見で言及されております。

 実際、昨年防衛省が出している検討会の報告書では、「現状では、財政法第九条との関係で、適正な対価で売り払うことが必要であり、無償又は低価で装備品を譲渡することは基本的にできない。」「不用となった中古装備品、部品について、」「相手国のニーズに応じて無償又は低価で移転することを可能とする制度を整備する必要がある。」こういうふうにこの報告書には書いてあります。

 伺いますが、一つは、財務省はこの報告書ができるときに何らかかかわっていたのか、二つ目に、フィリピンへの貸与に当たって、この制度を変えること、無償もしくは低価で移転する制度について内部で検討した事実はあるのか、三つ目に、国民の貴重な財産を諸外国の軍隊の増強のためなどに使うべきではないというふうに思いますが、その三点について財務大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 まず、御指摘の検討会ですが、防衛省の事務方、防衛装備・技術移転に係る諸問題について、これは外部有識者から意見をいただくということで、今後の政策立案に役立てるために開催したものと聞いておりますので、財務省等、この検討会の報告書の取りまとめに関与したということはありません。

 それから、国有財産法令上、用途廃止された航空機の貸与、貸し付け等々については、これは当該航空機を所管するいわゆる各省各庁の長が行うということにされておりますので、フィリピンの貸与につきましても、防衛省の判断のもとに実施されるものと承知をしておりますので、財務省として特段の検討を行ったわけではありません。

 三番目の、御指摘の、中古装備品等を無償または低価、安い価格で移転する制度について、具体的な制度案というものが示されていない段階において見解を示すということは困難であります。

宮本(徹)委員 ニューズウィークの報道によりますと、制度案について検討したけれども、今回は、アキノ大統領退任までには間に合わないからそういう無償の制度にはしなかったというふうに書かれていますが、では、財務省がかかわっていないんだったら、防衛省でそういう検討をされたということですか。

若宮副大臣 今の御指摘でございますが、私どもといたしましては、先ほどお示しされた有識者の検討会の報告書等々の提言を踏まえまして情報収集等を行っているところでございますけれども、今後、不用となりました中古の防衛装備品を無償または低価で移転する制度を創設すべきか否かということを含めて検討する必要はあろうではなかろうかということは考えているところでございます。

宮本(徹)委員 これは財政法の縛りがありますので簡単にはできない、法改正がない限りできない仕掛けになっております。私、ここで国有財産の問題については、福祉施設への無償貸し付けの問題も繰り返し麻生大臣に質問もしてきましたけれども、法律に書いてあるような社会福祉法人への無償貸し付けすらやらずに、防衛装備品について無償貸し付けの制度をつくるなど言語道断だということを申し上げまして、質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私で本日最後の質疑でございます。あと二十分間、おつき合いいただけますようによろしくお願い申し上げたいと思います。

 本日で恐らく財務金融委員会は今国会十五回目かなというふうに思います。というのは、自分でも質疑に立っている回数をカウントしていまして、財務委員会で一回もやらなかったことがないので、私の財務委員会の質疑が十五回目だということなので、恐らく十五回目じゃないかなというふうに思います。大臣とも何度も質疑させていただきました。

 今国会は閣法ももう終わりまして、そういった意味で、あとあるかないか、できるかどうかというところに今財務委員会もなっているのかなというふうに思うところでございます。

 そういった意味で、先ほどの委員の御指摘でもありました日銀の櫻井審議委員の件について、私としては、先ほど来聞いていると、そんなに極めて悪質というものではないなというのが、正直、今お伺いしている範囲では思うところですが、しかし、しっかりと御説明いただいて、今の間にこれをきっちりと御説明していただく方が、日銀にとっても、そして審議委員にとっても、何より国にとっても重要だと思いますので、このまま委員会も開かれず、説明の機会も余りないまましばらくやるというのは、逆にそれはよくないと思いますので、少し時間をとりまして、先ほどの質疑とかぶらない範囲でお話をお伺いしたいと思うんです。

 今のところですが、先ほど来申し上げているように、極めて悪質とは言えないと私は思っていまして、何か取ってもいないものを取ったかのように学歴をおっしゃっている、されてもいない経歴をおっしゃっているというよりは、表記の仕方だったり、あとは特に年数ですよね、どの年数から勤務されているみたいな、非常に間違いが多いなというのは、これはそうはいっても問題だというふうに率直に思うんですが、まず審議委員に、この点、今回、非常に大きな騒ぎになりつつありますけれども、この件についてどのように審議委員として率直にお考えになっているのか、御感想をお伺いできますか。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来申し上げていますとおり、大学院の博士号は取得しておりません。単位取得で退学ということでございます。

 それからあと、日本銀行で表記しております経歴につきまして、特に博士号の人はPhDというふうに書いておりますし、私どものような単位取得で退学といったところは博士課程修了という、これまでの表記に従ったということでございます。

 それからあと、御指摘の、いろいろな組織に属していた時間等がありますけれども、これは、研究会等が始まった時期だとか、そこと、それから、そこの組織に属した時期というようなものが少し曖昧になっていたものですから、その辺で表記が非常に誤ったような感じになっているんだろうというふうに思っておりますので、その辺が誤解を招く原因になったのではないかというふうに考えております。

丸山委員 とはいえ、審議委員、総裁と副総裁と今は六名の政策審議委員、全員、九人でこの国の金融政策を決定されるわけで、非常に重責にいらっしゃる。だからゆえに年間二千六百万円ものお給料が、それはその重責にとって適切かどうかという議論は別にあるとして、しかし、現に取られている。そして、五年間が任期なので一・三億円というお金が、その重責を担う形ということでお支払いされているわけです。

 その意味でも、国会同意人事として我々も事前にその方がふさわしいかどうかというのをチェックするという中で、今回の件、特に、事前に内閣総務官室から議運の方に出た資料とも違ったわけです。年数も違った。

 表記の仕方をどうするかというのはあると思います。違う部分があるということに対して、今後のことも考えると私は非常に問題だと思っていまして、速やかに審議委員としても御自身でもう一回調査されて、わかる範囲でできる限り確認されて訂正を提出されるべきだと思うんですけれども、御本人、どう思われますか。

櫻井参考人 お答え申し上げます。

 かなり古い時期のものもございますので、そもそも議運の方の理事会の提出資料というのは、きょう初めて私実は見せてもらったんです、履歴の方は。したがって、私が出した資料に基づいて多分議院運営委員会提出資料はつくられたものだというふうに思いますので、今まではそれを確認できていなかったということで、初めて今回その違いがわかったんですが、日本銀行のウエブサイトに掲載されている方の履歴に関しては申告したものの方に基づいてやはりできていまして、実際に、例えば在籍していなかった大学だとか、それから、従事していなかった職務というものは一切記載されておりませんので、そちらの方は全くないというふうに思っております。日本銀行の方は全くその方の問題はないというふうに思っております。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 審議委員、しかし、先ほど来、経済企画庁、今は内閣府ですけれども、旧大蔵省、財務省が現に名前や年数が違うというふうに答弁されているわけですよ。大きな、悪質なほどの間違いはないにしても、現状のところ、間違いが見つかっているわけで、きちんとやはりこれは確認して訂正を御本人でもいただくべきだと思うんですけれども、どうなんですか。イエスかノーか、単純だと思うんですけれども。

櫻井参考人 どのようにそれを対応できるかということに関して、これから検討して前向きに考えてみたいというふうに思っておりますので、訂正できるところは訂正してみたいというふうに思っております。

丸山委員 ぜひしっかりやっていただきたいんです。

 審議委員自身の問題ももちろんあるのかもしれませんが、しかし、内閣として、そして政府として非常に危ないな、ゆゆしき事態だと思っています。

 というのは、過去、この国でも、日銀の総裁人事、副総裁人事が政局で動かない、審議委員も空席だったという時期があったわけで、そのときもすごく神経を政府側はとがらせて、情報に対して事前に出ないようにする、もしくは、出た情報が間違えないようにするという対応をとってきたはずの過去の経験を踏まえているのかどうかという点で、特にこの内総が議運に出してきた資料を、特に政府側の立場でもある大蔵省の研究員だとか経済企画庁の研究員というのは、これは内部で調べれば今と同じ答弁が出てくるはずで、調査できているかどうか、できていないかというのは事前にできるはずだと思うんですけれども、現に先ほど、修士は取られている、修士号のところは載っていない、博士号の修了というものも、御本人は出されたけれども落ちているという、御本人の対応とともに、もっと言えば、むしろ政府側の内総の対応に私はすごく問題を、今、危機感を感じるんですよ。

 つまり、同意人事を国会に対して提出するに当たってこんな状況はまずいと思うんですけれども、しかるべく内総はきちんとこの点、何でこんなふうになっているのか、今後どうすればいいのかとかも含めてどういう御対応をとられるのか。内総、お伺いできますか。

土生政府参考人 お答えさせていただきます。

 国会同意人事に関する資料につきましては、先ほども御答弁させていただきましたとおり、本件につきましては、櫻井眞氏から提出をされました資料に基づきまして必要な略歴をピックアップするという形で国会に提出資料を作成させていただいたところでございます。

 先ほどもお答えいたしましたとおり、博士課程につきましては単位取得退学との記述がございましたけれども、私どもの事務的な検討の中で、それについては必ずしも国会同意人事資料について記載する必要はないというふうに判断をして記載をしなかったという経過でございます。

 先ほど委員からも、情報管理等々の御指摘、ございました。国会同意人事に関しましては、一時期に相当数の資料を短期間でつくっているところでございます。また、秘密保持の観点からも、それにかかわる担当につきましては、私を初めとしてほぼ数人という形で限定をする形で、情報が外に漏れないような形でやっているということでございます。

 したがいまして、逆に申し上げますと、政府部内で、例えば財務省さんですとか内閣府さんですとか、事前に確認をとるということは今回も含めて現時点ではやっておりません。事後的にそのような事実が判明したということで、現在、どのような状況なのか把握に努めているという状況でございます。

 今後につきましては、今回の件につきまして、改めてどのような事実関係があったかということを、よく関係機関と連携をいたしまして、さらにどのような改善ができるのか検討したいと考えております。

丸山委員 これは非常に問題で、検討どころじゃなくて、しっかりと改善していただかないと同じようなことが、今回事後に出てきましたけれども、事前に出てきたら、それだけで国会の同意人事がとまってしまうので、金融政策にとってもゆゆしき事態なんです。だから、しっかりと検討していただいて改善をいただきたいんですけれども、今回、先ほど審議委員の方から、改めて確認して、できる限り必要なものは訂正したいということですけれども、きちんと内総としてもそれをやられるのかどうか。

 そして、今回、新しい審議委員交代で、たしか石田先生から政井先生ですかね、交代人事が出されていると思うんですけれども、今回出されている方、過去の方は言いませんけれども、少なくとも現状在籍されている方については同じことがないようにしっかりチェックいただきたいんですけれども、それをお答えいただけますか。

土生政府参考人 御説明させていただきます。

 まず櫻井審議委員の件につきましては、改めて事実関係を御確認いただくということでございますので、関係省庁と協力しまして、それに協力いたしまして、仮に事実に異なる点がありましたら、それに沿って適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

 それから政井氏の件につきましても、現在国会に提示をさせていただいているところでございます。このような事態を受けまして、早急に事実につきまして確認をさせていただきたいというふうに考えております。

丸山委員 その他の方もぜひやっていただきたいんですけれども、今はお二人の名前を挙げましたけれども、私申し上げたように、ほかの方も一応きちんとチェックいただけるということでよろしいですね。

土生政府参考人 日銀等と連携いたしましてチェックさせていただきます。

丸山委員 もうこれでこの件は終わりにしたいと思います。内容的にはお伺いしていても悪質じゃないなというのは、これ以上新たな事実が出てきたら問題になってくるかもしれませんが、しかし、今のところはお話を聞いていても感じませんでした。

 しかし、金融政策を決定される審議委員の皆さんの御経歴が、事前に確認できる案件であっても間違っていた、それが国会同意人事で国会に出ているという状況は非常に問題ですし、かつてのこの国の金融政策の人事を決定する中で空席が出てきた、日銀の政策委員会の委員のメンバーが決まらないという現状があった中で、非常に問題だと思いますので、しっかり改善をこの点お願いして、この話は終わりにしたいというふうに思います。

 そういった意味で、お話をお聞きしたいことはいっぱいあるんですけれども、きょうは日銀の総裁は出張中ということでございますので、副総裁を含め皆さんにお伺いしていきたいんです。

 今回の四月二十八日の政策決定会合で、いわゆる現状維持を決定されたと思うんです。大臣が先ほど来、二日で五円ほど為替が上がったという御答弁をされているんですけれども、マーケットの投機筋のお話をされているんです。しかし一方で、マーケットのいろいろな情報の声を見てみますと、どちらかというと、日銀の政策が現状維持というのはどういうことだと。期待感が失望に変わって、あの五円というのも非常に影響があったんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういった意味であの四月二十八日の現状維持決定、非常に重要な決定だったと思うんですが、副総裁として出られていて、この決定についての背景をお伺いできますでしょうか。

中曽参考人 先般の決定会合の背景、現状維持の背景でございますけれども、まず、一月の決定会合におきましてどういう決定をしたかということを振り返っておきたいんでございますけれども、当時、一月の時点ですね、年初明け、金融市場が世界的に不安定なもとで、企業コンフィデンスの改善ですとか、あるいは人々のデフレマインドの転換がおくれる、そういうリスクを認識したところでございますので、これをいわば未然に回避する、プリエンプティブに対応する、そういう観点からマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入を決定したところでございます。

 そして、その後のマーケットの動きを見てみますと、国債金利が大幅に低下をしました。そして、その貸し出しの基準となります金利ですとか、あるいは住宅ローンの金利もはっきりと低下をしまして、金利面ではその効果が既にあらわれてきているというふうに思います。

 ただ、その効果が実体経済ですとか物価面にも今後は波及していくと思うのですけれども、その波及についてはやはり時間がかかるのではないか、こういうふうに考えております。ある程度時間が必要ではないか。

 特に、現状では、国際金融市場において、新興国ですとか資源国の経済の先行きに関する不透明感などから不安定な動きが続いております。つまり、逆風が吹いている状況が続いておりますので、前向きな変化がまだあらわれにくい状況にあるというふうに思っております。

 このため、四月二十八日の会合では、政策効果の浸透度合いを見きわめていくことが適当であると私ども判断をしたわけであります。

 もとより、世界経済、先行き不透明感が強い状態でございますので、我が国の経済、物価とも下振れリスクが相応に引き続き大きいというふうに思います。

 したがいまして、今後、毎回の決定会合におきまして、経済、物価のリスク要因を点検しまして、その上で物価安定目標の実現のために必要と判断した場合には、これは追加的な措置を講じていく、こういうふうに考えてございます。

丸山委員 今は副総裁、御説明されましたけれども、しかし、市場の期待としては若干それと反していたかなというのが正直な印象です。そういった意味で、マイナス金利についても、若干市場の方で疑問視、不安視する声があります。

 特に、三月の方の政策決定会合の議事が公開されていると思います。その中で、各委員の指摘で、このマイナス金利の負の側面、具体的には、金融機関や預金者に不安を招いている、金融市場の不安定化に拍車をかけている、あと、国内の投資対象資産が限られていく、そうした中で、期待したようなポートフォリオのリバランスが、これがきちんとそういった効果につながっていないんじゃないかというような声が出ているというふうに議事が公開されていますけれども、こうした不安の声にはどのように日銀として答えられますか。

中曽参考人 御指摘のように、三月の決定会合におきましては、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和の効果につきまして、何人かの委員から負の面の議論がなされたのはそのとおりでありますが、ただ、一方で、その効果につきましても、イールドカーブの起点を引き下げて、大規模な長期国債買い入れとあわせて金利全般に強い下押し圧力を加える、そういう狙いどおりの効果が出ているのではないかとか、市場が落ちつきを取り戻すにつれて金利低下の効果はしっかりと波及をしていく、こういった意見も示されているところであります。

 実際、先ほど若干申し上げましたけれども、マイナス金利つき量的・質的金融緩和によりまして実質金利は非常に低い水準に維持されておりまして、金融環境は極めて緩和的な状態にありますので、今後、設備投資などを通じまして、実体経済や物価面にも着実に波及していくというふうに考えております。

 それで、そのマイナスの面でございますけれども、実は決定会合の場だけではなくて、金融機関とか預金者などの方々からもいろいろな御意見、御批判をいただいているのはそのとおりでございます。

 個別の点についてこの場で全て一つずつというわけにはいきませんけれども、一つだけ申し上げておきたい点は、金融機関の不安というふうに、こういう意見があるのは事実でありますけれども、金融仲介機能は、これは金融政策の伝播経路そのものでありまして、その機能が損なわれてしまっては、これはもう元も子もないというふうに認識をしております。

 それゆえということになっちゃうんですけれども、私ども、九〇年代の銀行危機、あるいはリーマンの後の金融危機、このときにも、仲介機能、これだけは守るのだ、そういう全力を挙げてきたところであります。これが損なわれてはいかぬ、そういう考え方は今も全く変わっておりません。

 いずれにしても私どもとしては、さまざまな御意見、御批判に真摯に耳を傾ける、よい聞き手でありたいというふうに思います。

 と同時に、私どもの政策のマクロ的な波及メカニズムについても、これは根気強く、丁寧に説明していく必要があるというふうに強く感じております。

丸山委員 もう時間が来たので、大臣、最後に一つだけ。

 為替のことを最近かなり御言及されて、気にされていると思います。先ほど委員のお話でもいろいろなお話ありましたけれども、G7があるので、このG7に対して、口先介入は限界じゃないかとみんな思っているわけですよ。それに対してG7の議題となるかどうかという点と、最後、もう一つ、アメリカとの関係を気にしている声が多いと思います。

 この二点、G7で議題となるか、アメリカとの関係をどう考えているか、この点を最後に端的に伺って、終わりにしたいと思います。

麻生国務大臣 G7で話題になるか、もう少し時間がたたぬとわかりませんですね。その場でぽんと出てくるのはしょっちゅうですから。全然予定していない議題がその日に出てくるなんというのはよくある話なんで、今の段階でちょっと申し上げるわけにはいきません。

 もう一点、アメリカとの関係がどうなるか。この種の金融の話は、基軸通貨の国と他国の通貨の大臣とは、ある程度緊張感が常にあるものだと思っております。

丸山委員 これで質疑を終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

宮下委員長 次に、酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、理事会等において協議いたしました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ました。

 まず、本起草案の趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 酒類は、国の重要な財政物資であり、酒税の確保及び酒類の取引の安定を図る必要があります。また、酒類は、アルコール飲料として致酔性、依存性を有し、社会的に配慮を要するものであります。

 このような特殊性を有する酒類の取引の現状を見ますと、平成二十六年度における公正取引委員会による不当廉売に係る注意件数のうち、酒類に係るものは全商品の中で一番多く、国税庁による平成十八年の酒類に関する公正な取引のための指針制定後も、酒類の不当廉売に係る注意件数は指針制定前と比較して増加しております。

 また、平成二十二年に、WHO、世界保健機関においてアルコールの有害な使用を低減するための世界戦略が採択されましたが、その後、我が国ではアルコール健康障害対策基本法が制定され、平成二十六年六月に施行されております。

 同法には、酒類の製造または販売を行う事業者はアルコール健康障害の発生等の防止に配慮するよう努める責務を有する旨が定められておりますが、現在、販売場ごとに選任される酒類販売管理者に対する酒類の販売業務に関する法令に係る研修は、法令上、努力義務にとどまっており、さらに、定期的な研修受講は任意であるため、初回の受講率は約九割であるものの、再受講率は約三割となっております。

 本起草案は、このような状況に鑑み、また、四十万八千九百三十名に及ぶ国会請願を踏まえ、酒税の保全及び酒類の取引の円滑な運行を図るとともに、酒類の適正な販売管理の確保を図るため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、財務大臣は、酒類に関する公正な取引につき、酒類製造業者または酒類販売業者の適切な経営努力による事業活動を阻害して消費者の利益を損なうことのないように留意しつつ、酒類製造業者等が遵守すべき公正な取引の基準を定めるとともに、基準を遵守しない酒類製造業者等に対して指示、公表、命令をすることができ、命令違反に対しては、免許の取り消しができること等としております。

 なお、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との整合性を図るため、財務大臣は、公正な取引の基準の制定をしようとするときは、あらかじめ、公正取引委員会に協議しなければならないこととしております。

 第二に、公正な取引の基準の実効性を確保するため、財務大臣の質問検査権の対象に、酒類業組合等、酒類製造業者または酒類販売業者の関係事業者を追加することとしております。

 第三に、酒類製造業者または酒類販売業者の酒類の取引に関し、公正取引委員会と財務大臣の連携強化を図るため、両者の間において双方向の報告制度を設けることとしております。

 最後に、酒類小売業者は、酒類の販売業務に関する法令に係る研修を受けた者のうちから酒類販売管理者を選任しなければならないこととするほか、選任した酒類販売管理者に対しては、財務省令で定める期間ごとに研修を受けさせなければならないこととしております。また、酒類小売業者が研修を受けさせなかった場合は、財務大臣は勧告、命令をすることができることとし、命令違反には罰則を科すこととしております。さらに、酒類小売業者に対しては、酒類販売管理者の氏名及び当該酒類販売管理者が最後に研修を受けた日等の事項を記載した標識の販売場ごとの掲示を義務化することとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び概要であります。

    ―――――――――――――

 酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

宮下委員長 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出法律案とするに決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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