衆議院

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第11号 平成13年5月23日(水曜日)

会議録本文へ
平成十三年五月二十三日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 高市 早苗君

   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君

  理事 田野瀬良太郎君 理事 高橋 一郎君

   理事 平野 博文君 理事 藤村  修君

   理事 西  博義君 理事 都築  譲君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      河村 建夫君    杉山 憲夫君

      砂田 圭佑君    谷垣 禎一君

      谷田 武彦君    谷本 龍哉君

      馳   浩君    林 省之介君

      増田 敏男君    松野 博一君

      水野 賢一君    森岡 正宏君

      大石 尚子君    鎌田さゆり君

      葉山  峻君    肥田美代子君

      牧  義夫君    松沢 成文君

      山谷えり子君    山元  勉君

      池坊 保子君    斉藤 鉄夫君

      武山百合子君    石井 郁子君

      児玉 健次君    中西 績介君

      山内 惠子君    松浪健四郎君

    …………………………………

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   文部科学副大臣      青山  丘君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   政府参考人

   (人事院事務総局総務局総

   括審議官)        吉藤 正道君

   政府参考人

   (人事院事務総局人材局長

   )            藤原 恒夫君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会

   事務局長)        木阪 崇司君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国

   際社会協力部長)     高須 幸雄君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長

   )            槙田 邦彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 結城 章夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教

   施設部長)        小田島 章君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策

   局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長

   )            工藤 智規君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学

   術政策局長)       大熊 健司君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長

   )            遠藤 昭雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長

   )            今村  努君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青

   少年局長)        遠藤純一郎君

   政府参考人

   (文化庁次長)      銭谷 眞美君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局

   障害保健福祉部精神保健福

   祉課長)         松本 義幸君

   参考人

   (核燃料サイクル開発機構

   理事長)         都甲 泰正君

   参考人

   (核燃料サイクル開発機構

   理事)          笹谷  勇君

   参考人

   (核燃料サイクル開発機構

   理事)          清野 貫男君

   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 国立大学病院の看護婦の増員に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一七三七号)

同月二十三日

 よき伝統や文化等の保存、伝承等への積極的な参加に関する請願(岩屋毅君紹介)(第二〇四〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

高市委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局総務局総括審議官吉藤正道君、人材局長藤原恒夫君、内閣府原子力安全委員会事務局長木阪崇司君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高須幸雄君、アジア大洋州局長槙田邦彦君、文部科学省大臣官房長結城章夫君、大臣官房文教施設部長小田島章君、生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、科学技術・学術政策局長大熊健司君、研究振興局長遠藤昭雄君、研究開発局長今村努君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、文化庁次長銭谷眞美君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課長松本義幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として核燃料サイクル開発機構理事長都甲泰正君、理事笹谷勇君、理事清野貫男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳です。よろしくお願いいたします。

 まず、大臣にお伺いいたします。

 小泉内閣となりまして、前森内閣と比べて教育改革に対する情熱が薄れているのではないかという意見もあるようでありますが、この教育改革に向ける御熱意についてお伺いいたします。

遠山国務大臣 まだ就任いたしまして一カ月にも満たないわけでございますが、私自身は、今日の日本の状況を考えますに、やはり教育改革ということが大変大事な課題であるというふうに認識いたしております。

 二十一世紀の戸口に立つ今日、日本は今いろいろな問題を抱えておりますけれども、その将来を考えますときに、やはり人づくり、これが基本であろうかと存じます。教育につきましてもいろいろな問題が生じておりますが、国民の信頼を回復し、そして国民が自信と誇りに満ちて生きていく、そういうことが大事でありますけれども、そのような人材をつくるのに、教育改革ということが非常に大事だと思っております。

馳委員 まだこの国会で教育改革関連法案が積み残してあります。これは、与野党の理事の皆さん方に、十分な審議をされる日程取りとか審議内容等の詰めとか、御努力を御期待申し上げますので、よろしくお願いいたします。

 教科書問題について質問させていただきます。

 五月八日に、韓国政府が、検定に合格した中学校の歴史教科書について内容の修正要求を正式に求めてまいりました。続いて中国も、十七日に同様の修正要求をしてまいりました。

 この要求に対して政府はどのような対応をとるのか、お伝えください。

岸田副大臣 歴史教科書につきましては、先生御案内のとおり、民間の教科書発行者が著作、編集したものにつきまして、近隣諸国条項も含めまして、検定基準に基づいて、教科用図書検定調査審議会、この審議を経て、適切に実施しているところであります。

 それに対しまして、今御指摘がありましたように、五月八日の日に韓国から、そして五月十六日の日に中国から、それぞれ修正要求がなされたところであります。

 政府としましては、これはまず真摯に受けとめなければいけないと思ってはおりますが、専門的、学術的な見地から精査を今行っているところであります。これから、外部の専門家の意見も聞きながら、引き続き精査を続けていきたいと思っております。

 いずれにしましても、誤った事実の記載がある場合のほかは訂正できない、この制度の趣旨を守り、この枠組みの中で誠意を持って対応したい、これが文部科学省のスタンスでございます。

馳委員 出版社側が明確な誤りがある場合に自主的に訂正しようとする姿勢については、容認するわけですね。

 それからもう一つは、文部科学省として、中国、韓国から指摘があり、明確な誤りがありますよということの、出版社側に対する要請ということはするのですか、しないのですか。

 この二点、お答えください。

岸田副大臣 あくまでもこの制度を守り、制度の範囲内でどう対応するか、今精査をしているところであります。

 この精査をした結果はまだ出ていない状況でありますから、これからの対応は、その結果いかんではありますが、しかし、いずれにしましても、この制度の枠組みはしっかり守っていきたいと考えております。

馳委員 答弁になっておりません。出版社が自主的な訂正をする場合には、それは容認するのですか。

岸田副大臣 制度としまして、自主的な対応というのは認められているとは認識しております。

馳委員 基本的に修正はしないのですけれども、中国、韓国側から申し入れもあり、現行の制度の中から、言葉で言えば、弾力的な対応は一応いたしますというふうなことだと私は認識しておりますので、政府の対応を私は支持します。

 しかし、このような要求や、非公式に行われた検定前の教科書の不合格要求が再度行われないようにするための外交努力も必要であると思います。

 まず、現状の日本の教科書検定制度を維持した上での努力として、我が国の検定制度は中国や韓国が行っている国定教科書制度ではないことを十分理解してもらう必要があります。関連して、憲法で教科書をつくる自由が表現の自由として保障されており、必要最小限の公的介入しかできないこと、それ以上やれば、厳に憲法で禁止されている検閲になることの理解を求める努力が不可欠ではないかと考えます。

 この点の努力はどう実施しているのか。外交努力としては外務省ということになりますが、文部科学省として、どのような努力や外務省との協力をしているのか、お伝えください。

岸田副大臣 文部科学省としましては、外務省と連絡をとりつつ、まず、この教科書検定の結果につきまして、発表の際に、外務省の方から、中国政府あるいは韓国政府に対しまして、この教科書検定制度の趣旨、内容及び結果について説明をお願いしたところであります。今後も、外務省と連携はしっかりとっていきながら、説明、理解に努めていかなければいけないと思っております。

 その中で、文部科学省独自の対応としまして、例えば、今回初めて、中国及び韓国の日本駐在記者に対しまして、四月二日、文部科学省において直接ブリーフィングを行いました。

 さらには、文部科学省としましてもあらゆる機会をとらえて理解をお願いしなければいけないということで、例えば、四月十二日には、これは前大臣でありますが、韓国与野党議員団四名と会談を行い、あるいは四月二十日、駐日韓国大使と前大臣が会談を行い、あるいは五月二日、韓国の文化観光大臣と現大臣が会談を行い、あるいは五月十一日、駐日韓国大使と現大臣が会談を行う、こうしたあらゆる機会をとらえて、我が国の検定制度あるいはその事情につきまして説明をし、理解を求めるよう我々も努力しているところであります。

馳委員 教科書問題が日韓、日中の間において外交問題として顕在化し、それが両国の関係において悪い方向に行くようなことは事前に阻止をする、こういう予防外交の観点からも、あらゆるチャンネルを通じて日本側の立場というものを真摯にお伝えする努力をすることは、これは外務省ばかりではなく、文部科学省としてもされることは当然のことであると思いますので、今岸田さんがおっしゃった努力というのはすばらしいと私は思います。

 そこで、実は、私がひとつ提言しようと思っておりましたら、けさの毎日新聞にも出ておりました、日本と中国と韓国、三国から成る歴史教科書についての民間学者ベースにおける合同調査委員会などを設置して研究を始めてはどうか、最終的には三国で歴史教科書についての考え方をまとめてみてはどうかと。

 歴史教科書をつくれというと、これはまず無理だと私は思うのですけれども、三国の学者が集まって、教科書問題について、こういう報道を中心にした空中合戦をするよりも、実務者の民間の学者が歴史教科書についての調査委員会などを行って、常に、そごがあるような場合には、まさしく外交問題として出る前に事前にお互いに詰めておくというふうな形にしないと――我々国会議員の中にも、教科書を読みもしないのに教科書問題について発言されている方も多くあります。これはやはり国会議員としては不見識であると私は思います。そういう観点からも、日本と韓国と中国の民間の学者ベースでの教科書問題に関する合同調査委員会を設置してみてはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。

遠山国務大臣 日本と韓国あるいは中国との関係というのは、まことに重要な外交上の課題でもありますし、友好関係をさらに増進していくということは国民全体の願いでもあろうかと思います。

 きょうの新聞に取り上げられたことについて、まだ詳細にコメントする段階ではございませんけれども、いずれにしましても、いろいろな方途を尽くして友好関係を増強していきたい。そんなときに、歴史教科書の問題で長くあるいは再三意見のそごがあるというようなことにならないように何らかの方途を考えられればと、私としては、その方途というのは、日本及び韓国、中国との将来、ひいてはアジアなり国際的な状況の中で、非常に大事なことだと考えております。

馳委員 目が合いましたが、外務省の槙田さん、来ていらっしゃいますけれども、これを私は提言しようと思ったら、実はけさの毎日新聞に、「日韓で歴史教科書を」ということで駐日韓国大使からの発言として載っておった。毎日新聞のインタビューとして出ておったらしいのですけれども、これも踏まえ、また私の提言は、三国でこういう歴史教科書についての合同調査委員会というものをつくって民間学者のベースで話し合えばいい問題じゃないか、余り国会議員がくちばしを挟み過ぎるのはよくないなと。これは私の意見ですが、どう思いますか。

槙田政府参考人 今の馳委員の御提言、私は、外務省の公式な見解ということではございませんけれども、私の私見も交えてお話をさせていただきますならば、日中韓という三国が、特に近代史につきまして基本的に同じような認識を持っていくというふうなことが、今御提言にありましたような委員会のようなものを通じてできるようになれば、それはまたいいことだなというふうには感じるわけでございます。

 例えば、ドイツとフランスあるいはドイツとポーランドの間なんかにおいてそういうふうな努力が行われてきているということもございましょうし、そういうアイデアに対しまして、私は、そういうことが実現できればいいなという感じは持っておるのでございます。

 ただ、具体的にこれを行うということになりますと、では、日本の学者、識者というのはどういう方がなられればいいのかということになりますと、これは委員先刻御承知のように、日本の学者の間でもいろいろな幅広い意見がございますので、その人選というふうな問題からしてかなり難しい問題があるなというふうに感じるわけでございます。

 しかしながら、究極においてそういう努力を政府としてもやっていくということは、これはまさに、委員の御指摘になった観点からいって望ましいことではあろうと思いますので、現に、終戦五十周年の記念の時点で平和友好交流計画というものを政府が打ち出しまして、学者間の交流であるとかシンポジウムの開催とか、そういうふうなことがいろいろ行われてきております。それは、必ずしも今委員のおっしゃったものに直接はつながらないかもしれませんけれども、そういう方向での努力というものがこれから行われていいのかなという感じはいたしております。

馳委員 なぜ私はこういうことを申し上げるかというと、一義的には、やはり教育の現場に混乱を起こさせないためなんですね。

 歴史教科書を使って教える社会科の先生方は、いろいろな圧力が内外からかかると、やはり萎縮されますよ。この五月から七月にかけて採択に入ってまいりますけれども、やはり採択に携わる皆さん方は、こういう外交的な問題にもなっているというと、おびえるのですよね。そういうことをさせないためにも、現場の、特に先生方に無用な混乱を起こさせないためにもこれは必要だと私は思うのと、もちろん、槙田さんがおっしゃったように、予防外交の観点からも必要です。

 なぜかというと、韓国側と中国側にこの教科書問題で日本に対して攻め込む口実を与えてはいけないというのが私の言っている予防外交の観点でありますから、これはひとつ、韓国側の大使の御意見もありましたけれども、私は純粋に民間学者、まさしく槙田さんおっしゃるように、いや、では、そうなるとどんな学者を入れたらいいのかなと、そこでまさしく議論が始まりますが、いいじゃないですか、それは、しかるべき機関において学者を選定して、入っていただいて、その学者ベースでは大いに議論をし、けんかをしていただければいいのです。事実は事実として求める姿勢をお互いに見せる、つまり、お互いに歩み寄り合う姿勢を求める、そういう場をつくり合うというのは外交の基本であると私は思います。

 次の質問をいたします。

 四月十七日付の日教組教育新聞で、書記長の談話として、新しい歴史教科書をつくる会編さんの中学校の歴史と公民の教科書を、「偏狭なナショナリズムを煽る危険性があり、「皇国史観」につながる考え方」とし、さらに、教育に「大きな弊害となることを危惧する」と批判しております。そして、七月に行われる教科書採択決定に向けて、「七月採択にむけとりくみ強化を」、これは大きな見出しになっているのですね。そう述べて、名指しこそしておりませんが、前後の文章から、つくる会の教科書の不採択運動を推進しているとしか読めない記事を掲載しております。

 記事の最後には、「地方議会でのとりくみも重点課題となる。山場は六月議会が想定されており、」と、六月議会に対して、日教組の皆さん方があらゆるチャンネルを通じて圧力をかけるかのごとき、そう読める、行間にあふれているような、「七月採択にむけとりくみ強化を」、こういう記事を載せておられます。これは事実ですから、確認をしてください。

 そこで、問題にしたいのですが、日教組所属の教員が、教科書採択過程において、教科用図書選定審議会や教科用図書採択協議会の調査員や選定委員として採択過程に関与していることが、厳正、公正な採択に反するのではないかということを指摘させていただきます。特に、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第十条に反して違法ではないかと私は思います。

 第十条を読ませていただきます。

  都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択の適正な実施を図るため、義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究に関し、計画し、及び実施するとともに、市町村の教育委員会並びに国立及び私立の義務教育諸学校の校長の行う採択に関する事務について、適切な指導、助言又は援助を行わなければならない。

とあるわけですよね。この第十条に違反していると私は思いますが、この件についてお答えいただきたいと思います。

 これは新聞にちゃんと出ているのですからね、日教組教育新聞に。つまり、文部科学省としても、日教組がこういう動きをしている以上、厳正、公正な教科書採択の運用に問題が生じているわけであり、その運用の責任者として、日教組にしかるべき措置、指導をとるべきであると思いますが、いかがでしょうか。

矢野政府参考人 まず、御指摘の調査員や選定委員につきましては、職員団体に属する者がこれに就任してはならないとするような法令上の規定は存在しないところでございます。

 そこで、教科書の採択につきましては、あくまでも教育委員会などの採択権者の判断と責任において適切に行われるべきものでございまして、したがって、関係者にありましては、それぞれの活動が教科書の公正な採択に影響を与えることのないよう慎重な対応がなされることが望ましいというふうに私どもとしては考えているところでございます。

馳委員 これは、委員の皆さん方も今おわかりいただいたように、違法じゃないのですよ。いいですか、教科書採択に向けて取り組み強化をしと、現に新しい教科書をつくる会の教科書を厳しく批判している日教組の所属の先生方が、採択の現場の選定委員や調査員になることは、法律上も違法ではないのですよ。ですから、どんどん採択の現場に出ていらっしゃるのですよ。まず、この事実を私は皆さんにお知りいただきたいと思います。私は、それでいいのですかということを実は問題にしたいからこの質問をしたのですね。

 先ほどの第十条、この法律はどういう法律かというと、もう一回言います、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律ですよ。義務教育で使われる教科書はだれがお金を払っているのですか。私たち国民じゃないのですか。その無償措置の、国民から税金をいただいて、そのお金で子供たちに教科書を選んであげようというその採択の現場において、明確に特定の、それも検定を通った、いいですか、検定を通った特定の教科書会社に対して、公然と批判をし、批判までは私はこの日本の国家社会においては許されると思いますから、そこは何も言いませんが、採択に向けての取り組み強化をしようと。

 やはり日教組はさすが先生方がいるからうまいなと思うのは、「とりくみ強化を」とあって、採択しないように不採択運動をしようとは書いていないのですね。これはうまく文章を、レトリックを使っているなと私は思いますよ。

 しかしながら、先ほどの第十条で読みました「採択の適正な実施を図るため、」。これのどこが適正なのですか。私はそこを質問しているのですよ。矢野さん、適正だと思うのですか、思わないのですか。適正だと思うか思わないかで答えてください。

矢野政府参考人 少し説明をさせていただきます。

 無償措置法の第十条は、先生お読み上げになりましたが、これはあくまでも都道府県の教育委員会の任務を規定しているだけでございます。そういう意味で、先ほど私が申し上げましたように、御指摘の調査員や選定委員について、だれが就任してはならないとか、あるいはその資格がどうであるとかといったような規定ではないわけでございます。そういう意味で、職員団体に所属する者が就任してはならないという法令上の規定はないということを改めて申し上げておきたいと思います。

 そこで、御指摘の点でございますけれども、職員団体が教育について見解を表明したり具体的な活動を行うことは、これは基本的には自由であるわけでございます。しかし一方、先ほど来お話がございますように、教科書の採択は教育委員会等の採択権者の判断と責任において適切に行わなければならないものでございまして、そういう意味で、公正な採択が確保される必要があるわけでございます。

 そういう意味で、一般論として申し上げますれば、公正な採択に影響を与えることのないような慎重な対応が望まれるということを申し上げているところでございます。

馳委員 適正か適正でないか、私はその部分は、選定委員とか調査員にどのような方々が選ばれるのかということについても、教育委員会の皆さん方に権限があるわけですからね、だれを選ぶかは。そうでしょう。これは第十一条に書いてあるじゃないですか。二十人以内で選べるのですから。適正か適正でないかということを判断できるように指導すべきですよと私は主張しているのでありまして、もうこれ以上答弁は求めません。

 次に行きます。

 鳩山由紀夫代議士が韓国を訪問されて、この歴史教科書の問題について発言されたことについて、私は一言コメントをするとともに、当文部科学委員会理事会において、私は、議題としてその真意を確認することを要請いたします。

 なぜか。私は、見識のある鳩山由紀夫代議士が、この時期に韓国に行かれて、教科書問題についていろいろとコメントをされるということは、これはだれもとめることはできませんが、ちょっとまずかったかなと思っております。

 しかしながら、明確に新聞報道等もされておりますので、鳩山代議士が、扶桑社の中学歴史教科書の内容について偏狭なナショナリズムに基づいたものというふうに決めつけをし、市町村教育委員会において同教科書の採択は望ましくないというふうに述べたことは、公正であるべき教科書採択への明白な政治的干渉であり、これは看過できないと私は思っております。

 ですから、この点に関しまして文部科学省に答弁は求めませんが、この我々立法府において、こういう影響力のある、ましてや民主党の党首であります、恐らく民主党の統一見解として述べられたのだと私は思いますが、もしそうであるならば、こういう時期にこういう発言をし、ましてや日本の教科書検定制度を合格した教科書について、それも特定の教科書を名指しで批判をし、先ほども言いましたように、批判は私はいいと思うのですね、いろいろお考えがあるでしょうから。しかし、採択を左右するような発言までされるということは、これはちょっと言葉が走り過ぎたのか、私の立場からいえば、とんでもない発言であると私は言わざるを得ないのです。

 ですから、この点に関しましては、鳩山由紀夫代議士は、一代議士ではなく民主党の党首でありますので、政治的な影響力、もしかしたら韓国側に間違ったメッセージを送ってしまったのではないかという危惧もあり、この発言をもとに韓国側が外交的な、政治的な影響力を日本側に対して行使しようと思えば、幾らでもできるわけですよね。そこまでの配慮があったのか、なかったのか等々を含めまして、私はまず基本的には、日本の教科書検定制度に対する大きな何か挑戦状を、韓国から鳩山代議士が日本側の、特に我々政治家に対して突きつけられたような思いもして、これを受けとめております。

 ぜひ理事会でこの問題を私は議題として取り上げていただきたいというふうに思っておりますが、取り扱いは委員長にお任せいたします。

 次に、教科書問題についての最後の質問をさせていただきます。

 ちなみに、大臣は政治家じゃありませんのであれですけれども、副大臣はやはり選挙を通って選ばれた政治家であり、今現在は副大臣としてお務めですが、このような鳩山発言についての御感想をいただきたいと思います、青山副大臣と岸田副大臣に。

青山副大臣 私も、政治家の一人として、少し行き過ぎの発言で、そこまで踏み込んでいただくのはどうかという思いでございます。よろしく。

岸田副大臣 いろいろな立場でいろいろな考え方があるのは事実でありますが、我が国の教科書検定制度、この制度は大切に守っていかなければいけないと思っております。その中で、公正な採択に影響が及ばないようにそれぞれ慎重に対応しなければいけない、そのことだけは感じております。

馳委員 次の質問に移らせていただきます。引きこもり問題について質問させていただきます。

 厚生労働省にまずお伺いいたします。

 そもそも引きこもりの定義は何でしょうか。これは、対策を立てる上でも重要であり、実は、引きこもりといっても、明らかな精神疾患を背景にするものとそうでない場合もあり、なかなか区別できない問題であると思っております。

 厚生労働省はどのような調査結果を持ち、どのような見解を持っていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

松本政府参考人 引きこもりは、さまざまな要因によって社会的な参加の場面が狭まり、自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことを指す言葉でございまして、単一の疾患でありますとか障害の概念ではないということから、明らかな定義がなされているわけではございません。

 ただ、厚生省の研究班で、援助の対象者としての社会的引きこもりというものを、明確な精神疾患、精神障害を持たないが引きこもりを続けている人々というような定義をしたものもございますし、昨年度、社団法人青少年健康センターの研究者が実態調査をされましたときに、定義といたしまして、六カ月以上自宅に引きこもって社会参加しない状態が持続しており分裂病などの精神病ではないと考えられるものというぐあいに定義をして、調査をされております。

 この実態でございますけれども、昨年度、先ほども申し上げました社団法人青少年健康センターの研究者によりまして、都道府県・指定都市などに設置されております精神保健福祉センター、保健所などで受けました引きこもりに関する相談状況の調査が実施されております。

 調査の概要につきまして簡単に申し上げますと、相談を受けた件数は、保健所が三千七百八十七件、精神保健福祉センターにおける相談が二千三百六十四件ということで、総数およそ六千件の相談があったということでございます。また、相談件数のうち、小中学校で不登校の経験がある者が約四〇%、また引きこもりが関連する問題行動として、本人から親への暴力というものが一八%であったということでございます。

 またもう一つ、厚生省の研究所で、全国の精神保健福祉センターを対象といたしまして、平成十二年四月から九月末までの半年間に、引きこもりについて初回の相談件数があったものが五百九十九件ということで、男性が四百三十四人、女性の事例が百六十三人ということで、男性の相談件数が女性の二・七倍であった、そういう調査結果がございます。

馳委員 実は、私がこの引きこもり問題にちょっと熱心に取り組むようになったきっかけは、テレビ朝日のスーパーモーニングというワイドショーですが、この企画で、引きこもり問題ということをやるので出てくれと言われたので出ました。僕は知らなかったからです。なぜなら、私の性格は、皆さん御存じのように、引きこもりとは全く正反対の性格をしておりますので、何でだろうと思った。

 ところが、お話をお伺いし、実際にもう十年間も引きこもりをしていらっしゃるという二十九歳の青年に会い、あるいは、引きこもりの子供たちにカウンセリングをしてメンタルケアをしていらっしゃる名古屋の長田百合子さんという先生にもお会いをし、お話を聞けば聞くほど、これは一つの社会的な大きな問題であるなというふうに思いました。

 今厚生労働省からお話をいただきましたが、引きこもり、これは不登校の一つの類型ともちろん考えられるわけですね。だって、引きこもりといえば社会的な現象ですが、学齢期の児童生徒にとってはまさしく不登校なんですね。こういうことを考えていけば、私は学童保育のときにも経験いたしましたが、まさしく、厚生労働省と文部科学省の連携というものが非常に求められてくると私は思います。

 厚生労働省の調査結果、五月八日に出ておりますが、実は問題点のところが、なるほど、この引きこもり問題の本質を指摘しているのですね。何か。引きこもり問題の専門家の不足。治療、相談体制の未整備。知識、支援技術の不足。対応の困難さ。そうなんですよ。家庭内のことでもあり、引きこもりで困っている等々の問題がなかなか外に出てこない、そういう意味での対応の困難さというのもあるんですね。

 ところが、私も先月名古屋の、引きこもりを三年間続けている、本当なら学校に行っていたら今高校一年生というある方の御家庭にも行って、お母さんの話も承ってまいりました。あるいは、先ほど申し上げました長田百合子さんがみずからやっていらっしゃる塾教育学院という民間の、フリースクールのようなものですね、そちらの方にも伺いまして、下は小学校二年生から上は二十三歳までおりましたけれども、子供たちの話を伺い、親の話も伺ってまいりました。一言では言いあらわせない御苦労とともに、対応の困難さというものも実感させていただきました。

 ここで申し上げたいのは、厚生労働省と文部科学省の十分な連携のもとに、やはり早目に対応すれば絶対に解決できる問題であるという信念のもとに取り組んでいってもらいたいと私は思っております。これは、文部科学省、担当はどちらになるのでしょうか、御答弁をお願いします。

矢野政府参考人 不登校問題の対応に当たりましては、これは学校における取り組みに加え、児童相談所や精神保健福祉センター等の、厚生労働省所管の専門の関係機関と連携を図っていくことが大変大事であるわけでございます。そういう意味で、先ほど厚生労働省からお話がございましたけれども、厚生労働省が引きこもり対策等において行っている事業、そうした取り組みは、児童生徒の不登校あるいは問題行動について、学校と関係機関との連携をする上で大変有意義であるというふうに私どもは考えているところでございます。

 したがいまして、学校や教育委員会は、こうした事業に協力して、関係機関と連携し、不登校等の問題に適切に対応していくのが重要であると考えているところでございまして、文部科学省といたしましては、このような地域における連携が進みますように、教育委員会に対しても指導してまいりたいと考えているところでございます。

馳委員 厚生労働省にまたぜひ答弁いただきたいのですけれども、要は、学校側と、現在対応の前線である保健所、精神保健福祉センターとの情報交換、連携、ひいては両省庁の十分な連携、つまり両省庁が携わるモデル事業などをつくるとか、これが私は必要だと思うんですよ。前向きな御答弁をお願いいたします。

松本政府参考人 委員御指摘のように、それぞれ厚生労働省、文部科学省、いろいろ現場で協力していくことが大事だろうと思っております。

 これにつきましては本年度から、思春期精神保健ケースマネージメントモデル事業という名称のものを実施することとしておりまして、このモデル事業におきまして、引きこもりなど、思春期などの区々の時期から発生するさまざまな問題行動につきまして、保健、福祉、教育、さらには警察などの関係機関が連携し、現場の担当者によるチームをつくりまして、本人、さらには家族の支援を行うことを今年度から実施していくこととしております。

馳委員 私もこの二カ月間引きこもり問題に取り組んできた一つの経験として申し上げると、子供たちが望んでいるのは、親に本気で怒ってほしいと。つまり、子供が何か親をなめているようなところがある、あるいは逆に、親に夢を持った生き方をしてほしい、やはりこういうふうな、親に親にと言うところがちょっと甘いなとは私も思いますし、このやろう、しっかりしろよと思わず言ってしまうときもありましたが、そういう部分がいろいろ、引きこもりの事例も御家庭が千差万別であるように、本人の精神的な状況、学校に行きたくても行けない、職場に行きたくても行けない、こういうような状況というものはなかなか解明しがたいものもあると思いますが、まさしく両省庁の積極的な取り組みをお願いしたいと思います。

 次に、東大生産技術研究所跡、旧陸軍歩兵第三連隊兵舎の取り壊しについて質問いたします。

 現在、六本木にある東大生産技術研究所跡を取り壊し、新国立美術展示施設、ナショナル・ギャラリーのことですが、この建設を進めていると承っております。ナショナル・ギャラリーの建設に当たり、既存の建物を壊さず、パリのオルセー美術館やロンドンのテートギャラリー新館のように、歴史的建造物を美術館に転用再生させる方法がなぜとれなかったのか。また、ことし着工費が執行されると聞いておりますが、これをストップさせることはできないのか。関連して、取り壊さずにナショナル・ギャラリーとして活用した場合、一体どのくらいの費用がかかるのか。

 この三点について質問いたします。

青山副大臣 六本木の東京大学生産技術研究所の移転の問題ですが、これは実は老朽、狭隘化が非常に顕著でございまして、東京大学のキャンパス再配置計画、その一環として研究施設の環境改善のためになされたものでございます。

 そこで、今回のナショナル・ギャラリーについてでございますが、ナショナル・ギャラリーをここで建設していくということになりますと、国の内外から相当多数の来館者が予想されます。そうしますと、交通の利便であるとか、周辺の環境との調和であるとか、施設の規模をどれぐらいにしていくのか、相当大きなものにしていかなければならない。それから、美術団体からの要望を相当受けてきておりまして、こうした状況の中で、東京の都心部に建設する必要があるというふうに判断をしてきました。したがって、候補地をいろいろ検討した結果、生産技術研究所の跡地が適切であるということで建設することといたしました。

 ナショナル・ギャラリーですが、幾つかの要件を満たしていかなければなりませんが、特に三つの要件に照らして決定をしていきたいと考えてきたのは、一つは、やはり十分な施設の面積が必要である。それから、展示施設として、天井の非常に高い展示空間をどうしても確保していきたい。それから、多数の作品の搬入が繰り返し行われるわけでして、搬入、搬出、審査、保管、展示、これが極めて短期間に繰り返し行われなければならないという要件がございました。こうした意味での作業が円滑に行われる施設でなければならないというふうに考えまして、生産技術研究所の建物を保存活用することは極めて困難ということで、取り壊して新たに施設を建設していきたい。

 それからもう一点ありましたね。(馳委員「着工費の執行」と呼ぶ)費用でしたね。この機会ですから、全部お答えしていいですか。

 ナショナル・ギャラリーについては、平成七年度に新しい美術展示施設の基本構想というものが示されました。それから、平成十年には新国立美術展示施設基本計画が取りまとめられました。そして平成十二年に基本設計を完了するなど、建設準備が進められてきたところであります。平成十三年度には、実施計画を取りまとめるとともに建設工事に着手することとしておりまして、そのための予算措置が既になされているところであります。

 それから、相当な金額が保存のためにかかるということを、ひとつぜひ御理解いただきたいと思います。

馳委員 これは実は、小泉総理もごみゼロ社会を目指すと言っていらっしゃるし、遠山大臣も所信表明の中で、文化財についてはできる限り保存していくと。ましてや、遠山大臣は以前文化庁長官もしていらっしゃった。登録文化財制度がなぜできたかということも御存じでありましょうし、ましてや、この東大生産技術研究所、物性研究所は東大のものであるとはいいながら、文化庁も東大も、所属は文部科学省じゃないですか。

 私は、こういうこれまでの経緯を考えても、なぜ現在あるものを活用するような選択肢のもとでの十分な議論をされなかったのかということが非常に不満でありますし、ましてや、先般アフガニスタンにおきましてバーミヤンの石仏がタリバーン勢力の手によって破壊されてしまったということを胸を痛めながら聞き及ぶにつけ、いよいよ文部科学省もタリバーン勢力になってしまうのかという怒りも感じております。

 関連しまして、この旧兵舎の歴史的価値について質問をしたいと思います。

 御承知のとおり、この旧兵舎は、関東大震災直後の震災復興建築物であり、我が国最初の本格的鉄筋コンクリートづくりの兵舎建築であります。当時、世界有数の模範兵舎と称され、日本建築学会においても、近代建築の中でも特に重要な建築作品として、その価値と保存を訴えているところでもあります。さらに、二・二六事件の舞台ともなっており、日本近代史の意義も有する建物であります。

 このような価値のある建物の歴史的価値について、文化庁はどう認識しているのか。歴史的価値があると思っているのか、ないと思っているのか。この認識を踏まえた上で、どのような保存措置を考えているのか。特に、登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値についての認識を示していただきたいと思います。

青山副大臣 馳委員と松浪委員に大きい声を出されますと答弁者は平常心を失いますので、ぜひひとつ穏やかにお願いしたいと思います。

 まず、今お話しのとおり、昭和三年、陸軍が初めて建設した鉄筋コンクリートづくりの兵舎でございます。しかし、これは外観は簡素にまとめてきた建物でして、文部科学省としては、ナショナル・ギャラリーの建設によって生産技術研究所の建物が解体撤去されるに当たって、その存在を後世に伝えるために、記録を作成して保存する、建築模型を作成していく、それから建物の外壁など、その一部を現在の敷地内において保存、活用するというような方策について検討を進めることといたしております。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

馳委員 きのう、そしてきょう、きのうは朝日新聞が書いてくださいました。けさは産経新聞が書いてくださいました。

 今の答弁にもありましたように、建物の一部を現敷地内において活用する方策等の検討をしており、きのうの朝日新聞には、「「建物をそのまま残すことは無理だが、石段や壁など一部を敷地内に残すなど、設計者とも協議し、歴史的意味を残したい」としている。」と。けさの産経新聞では、「文化庁では、石段や壁など一部を残すことで折り合いをつけたい意向だが、」とありましたが、私は明確にだめだと反対を申し上げたいと思います。

 私もきのう現場に行ってまいりました。登録文化財としての法律をつくった。三年前、私も法案審議に参加させていただきました。建築学会からの申し出もあり、また、ナショナル・ギャラリー建設に向けての経緯も、今青山副大臣から御丁寧に承りまして十分わかっておりますが、なぜ、登録文化財として、機能を持たせた上で残せないのか。模型をつくったって、あるものを壊してしまったら、一緒ですよ。だめです。

 私はこういう答弁は納得できませんので、十分な答弁を求めたいと思います。次長が来ていらっしゃると思いますので、銭谷次長に伺いたいのです。

 登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値について、その認識を持っているのか持っていないのか。持っていたのにどんどんと、流れでここも壊してしまおうとしているのか。全く持っていなかったのか。

 もう一回言いますね。登録文化財にいう客観的要件としての歴史的価値についての認識を示してください。そして、歴史的価値について十分に、東大の方も、あるいは文化庁の方も持っていながら、ナショナル・ギャラリーという事業がどんどん先に進んでくるので、これを壊しに入ろうとしているのか。そして、もう予算もつけたから予算を執行しなきゃいけない、こういうふうな事態になってきているのか。申しわけ程度に、模型を残したり記録を保存したり一部分だけ残すというのは許せません。登録文化財として認定できる大きさの建物として残すべきです。

 銭谷さん、答弁してください。

銭谷政府参考人 先ほど来副大臣の方からお答えを申し上げておりますが、東大の生産技術研究所の建物は、兵舎として機能性を備えた築五十年以上の建物でございます。

 登録文化財制度につきましては、国あるいは地方公共団体が指定をした文化財以外の建造物のうち、文化財としての価値にかんがみて保存、活用のための措置が必要とされるものを登録するようにしているものでございますが、その場合、所有者の同意が得られたものについて登録をしているものでございます。一般論として申し上げますと、やはり建物の特徴を示す相当部分が保存されているというものが登録文化財に当たるというふうに考えられるわけでございます。

 本件につきましては、種々検討の結果、保存、活用が困難であるということで、登録文化財とするのは困難ではないかというふうに考えております。

 なお、先ほど御説明申し上げましたように、私どもとしては、この東大の生産技術研究所の歴史的な経緯というものを後世にきちんと伝えていくことも文化財保護の一つの方策でございますので、建築家の方々の御協力を得て、記録保存のための調査研究会を最近発足をさせまして、その記録保存に現在取り組んでいくとともに、建物のその調査に基づく模型をきちんとつくったり、あるいは、その建物の一部について保存、活用できることがないかという面での検討も行っているところでございます。

馳委員 大体、そもそも最初からナショナル・ギャラリーありきで、東大の生産技術研究所、物性研究所が狭隘、古くなったので、もうそろそろだめだな、そういう議論があったのではないかというふうな危惧を私はいたしますよ。登録文化財としてこの建築物の歴史的な価値観も認めながら、いかにしてナショナル・ギャラリーとして活用できるかという議論は最初したんですか。今ある建物を残して、あるいはこれを改築して、それをナショナル・ギャラリーとして活用できないか、そのためには予算が幾らぐらいかかるだろうかという調査、そこまで十分やっておるのか。

 まず壊すありき、まず生産技術研究所、物性研究所の移転ありき、ナショナル・ギャラリーの構想があり、ああ、ちょうどいいところだ、壊してナショナル・ギャラリーを建ててしまおう、もしそういうふうな形で今後の文化財行政が進められていくとするならば、その象徴としても、今回のこのナショナル・ギャラリー建設構想、そして今現在ある跡地を壊してしまうということには絶対に納得することはできないと私は指摘をさせていただきます。

 銭谷さん、もう一回答弁してください。

銭谷政府参考人 ナショナル・ギャラリーにつきましては、昭和五十年代から、美術界から長年にわたって要望があった施設でございまして、そういう要望にこたえ、我が国の美術振興を図ろうという観点から、長年にわたって準備が進められてきたものでございます。その件につきましては、先ほど副大臣の方から御説明を申し上げたとおりでございます。

 問題は、ナショナル・ギャラリーという事柄の性質上、交通の利便性のよい、また広大な敷地、建物が確保できる、そういう都心につくる必要があるということで用地の選定が行われたわけでございますが、そういう条件に合致するところがこの六本木の地区ということになりまして、それ以外、現在までもそういう用地というのはないわけでございます。

 文化庁といたしましては、平成七年度以降、基本構想、基本計画、基本設計をそれぞれ行いまして、建設の準備を進めてきて、平成十三年度、実施設計、そして建設工事に着手をするということになったわけでございます。

 率直に申し上げまして、そういう観点からの検討をずっと進めてきたということでございますが、東大の生産技術研究所につきましても、その建物の歴史的な経緯というものを勘案をいたしまして、その建物すべてを保存、活用することは、ナショナル・ギャラリーの機能性から見てこれは困難なわけでありますけれども、その歴史的な経緯を踏まえまして、先ほど来申し上げているような、専門家の御協力を得ながら、例えば施設の一部の保存を含む記録保存等の可能性について検討をしているということでございます。

馳委員 この件については、後ほど松浪健四郎委員の方からもまた御指摘があると思いますので、そちらに私は譲りたいと思います。

 時間がないので最後の質問になりますが、大阪オリンピック招致についての大臣の御見解を伺いたいと思います。

 IOC評価検討委員会から、評価報告書が出ました。一時はIOC内部でも辞退勧告まで考えられたそうですね。大阪、イスタンブールが非常に評価が低かった、これは事実かどうか。評価が出たのは事実かどうか。

遠藤(純)政府参考人 五月十五日に公表されました……(馳委員「事実かどうかです」と呼ぶ)三都市に比べて大阪が低いという評価をその報告書で受けたのは事実でございます。

馳委員 大阪としては言い分があるんですよ。ちゃんといろいろ、財政状況の問題であるとか、言い分があるんです。それを、いわゆる異議申し立てとして今IOCの方に出しておると思いますが、それがちゃんとみんなに伝わりますか。そして、異議申し立てしたことで、それによって評価報告書の内容は変更されますか。そして、七月十三日、IOC総会で最後のプレゼンがありますけれども、それまでに最終的に投票する全員に今回の大阪市招致委員会側の言い分が伝わりますか。つまりそれは、最初に出てきた低い評価書はちょっと誤解があるんですよ、本当はこうなんですよと、これは伝わりますか。それをお答え願います。

遠藤(純)政府参考人 評価委員会の報告書に異論がある場合には補足のコメントを出すことが認められておりまして、そういうことから、今月の二十五日までにIOCに提出をすべく、今準備をしているということでございます。

 この補足のコメントにつきましては、IOCに提出した後には、IOCの許可のもと、全世界のIOCの各委員に送付をすること、そして、さらには、二月に提出いたしました立候補ファイルにその一部として追加をすることができるということになっておるわけでございます。

馳委員 最後に、二つ選択肢があるんですよ。この低い評価委員会報告書が出た。大阪市招致委員会側も大変苦慮しておられますが、現実に低い評価報告書が出た以上は、もう一切、日本は名誉ある撤退、そして、撤退するだけじゃだめ、北京を一生懸命応援する。それは、イスタンブールやパリやトロントで行われるよりも、アジア地域で行われた方が、日本のスポーツ関係にとってははるかにいいんですよ。こういう低い評価報告書が出て、逆に北京の方が高い評価を得ている段階において、政治的な判断をして北京の力強い応援団に回る、これも一つの選択肢。

 もう一つの選択肢は、七月十三日IOC総会で最後のプレゼンが行われる、ここに遠山大臣、応援団で閣僚として行かれたらどうですか、あるいは小泉総理大臣が行かれたらどうですかという姿勢を見せることが、いや、ちょっと待てよ、IOCの皆さんも、日本の、大阪の評価は低かったかもしれないけれども、政府あるいは文部科学省を挙げて国民が協力しようとしている姿勢を明確にプレゼンで示したと。トロントやパリや北京、どんな応援団がやってくるか、最終的にまだはっきりしていませんが、閣僚級がやってくるのは当たり前なんですよね。そういうものですよ、外交の現場というのは。そういう意味でいえば、大阪オリンピック招致委員会、大阪市の磯村市長も大変な御熱意と御努力で頑張ってやっておられますが、それを明確に支援する姿を文部科学省が示す。

 ちょうど七月十三日、参議院選挙が始まっています。遠山大臣は選挙にお出にならないから、そんなに厳しい日程ではないと思います。むしろここは、大阪市の皆さんの招致委員会、これは長野の招致委員会の問題もありましたけれども、それを受けて立派な招致活動をしてこられた方々の思いに報いるためにも、大臣みずからが行ったって何にもおかしくないと私は思いますよ。ましてや参議院選挙、こう言っては失礼ですけれども、やはり遠山大臣は民間の方ということですから。

 何よりも、二つの選択肢のうち、おりてしまえばいいというのは――招致委員会の皆さん方のお気持ち、大阪のお気持ちを考えた上でそういうものをバックアップする、その気持ちを態度、言動で示すのが私は文部科学大臣の姿勢だと思いますが、最後に大臣の御答弁を求めて、私の質問を終わります。

遠山国務大臣 七月にIOC総会においてプレゼンテーションをどのように行うかにつきまして、目下、その主体であります大阪市と、それから日本オリンピック委員会で検討が進められていると承知しております。

 やはり、担当省としてはこれを支援していくというのは当然の姿勢でございます。ただ、どういう方法で支援していくかということについては、今の御意見も参考としながら、今後考えていきたいと思います。

馳委員 ありがとうございました。

鈴木(恒)委員長代理 山谷えり子さん。

山谷委員 民主党の山谷えり子でございます。

 遠山文部科学大臣にお聞きいたしたいと思います。

 大臣は、荒れる教室というのが社会問題化しておりましたときに中学校課長でいらっしゃいましたけれども、それから月日がたちまして、今の日本の教育の現状をどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

遠山国務大臣 大変大きなテーマでございますが、日本の教育について少しロングレンジで振り返ってみますと、第二次世界大戦後、憲法の要請する機会均等の理念を実現して、日本の教育水準というのは大変高い成果を上げたわけでございますが、それが日本の経済社会の発展に大変寄与したということは事実であろうかと思います。

 しかしながら、その一方で、社会の変化あるいは大人社会の抱えるいろいろな問題も反映している面があると思いますけれども、教育の現場でいろいろな問題が起きているということも事実でございます。一番目につくのが子供たちの問題行動でございます。ちょうど私も中学校課長のときに、その一つのピークでございました校内暴力、これが大きな社会問題となったわけでございます。それに取り組みましたけれども、その後、いじめの問題、あるいは今日では、学級崩壊であるとかあるいは不登校というような問題も出てきております。

 同時に、戦後の教育の中で、個人の尊重というものを強調する余り、一方で、公を軽視する傾向が広がったのではないかということも指摘されておりますし、権利を主張する余り、必要な義務でありますとか責任のことが十分教えられてこなかったのではないかということも挙げられております。

 それから他方で、子供のいろいろな可能性があるのに、個性を尊重したり、伸びる力を十分伸ばさなかったのではないか、いわば、個性に応じた、能力に応じた教育が軽視されてきたのではないかというような問題でありますとか、あるいは、今日の非常に急速に社会が進展している中で、そういうことに対応する教育が十分行われていたかどうかというような、いろいろな問題が出てまいっております。

 私は、こういう問題を直視して、そして、これからの教育のあり方というものを考えて、今の時点で本当にあるべき教育の姿というものを追求して、真剣に教育改革に取り組んでいく時期であろうかと思います。

山谷委員 私は、大臣のお書きになりましたエッセーをたびたび読ませていただいておりまして、長らく文部官僚をなさっていらっしゃったその現実認識、リアリストとしての目、それから改革の志を失わないその気概、そしてまた、情緒豊かな部分というのは大変すばらしいというふうに思っているのです。

 そのエッセーの中で、例えばこういう一節がございました。最近の高校生たちの多くが、自分で考えることはナンセンスで、もっぱら外部の動きに流される、合わせるだけで済ませようとしているという調査結果には愕然とするとか、外国の若者と違うのは、あしたのために努力すること、偉くなることの拒否であり、一切の責任からの逃避であるとか、現在享楽型、自己中心型の価値観が支配的になったというようなことがございました。

 私も、今文部大臣がおっしゃられましたように、切磋琢磨のシーンとか、あるいは、適正な評価をして、そして持ち味を生かしながら可能性を広げていく、チャンスを与えていくというような、励ましの部分というのが今の教育界に足りないのだというふうに考えております。

 大臣は、所信表明の中で、基礎学力の徹底、基礎、基本を徹底させるということもとても大事なことである、ベーシックな問題として大事なことであるというふうに言っていらっしゃいますが、ことし、全国学力調査テスト、小中高で三億円というような予算がつきまして、実際にその調査テストが行われるのは平成十四年一月と二月、そして、分析に一年ぐらいかけるのでございましょうか。

 そうしますと、現在の教育の現状がかなりひどい状況の中でこのような悠長な時間をかけて、もちろん調査と分析というのは時間がかかる問題がございますけれども、どのようなスピードで分析して、大臣は本当に深刻なら今のやり方を見直すことが大切と言っていらっしゃいますけれども、これは五年先、十年先の見直しではとても心もとないわけでございまして、どのような形で発表して、そして、すぐに何か励ます部分とか、何か評価できる部分はとりあえず評価していって、みんなでノウハウを共有していくとか、そういうようなスピード感覚が大事だというふうに思うのですけれども、その辺の分析、発表、スケジュールはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

遠山国務大臣 委員御指摘の実態調査はぜひやってみたいと思っております。やはり事柄を本当の方向に進めていくには、実態がどうであるかということをきちんと把握する必要があると思いまして、今回準備をいたしております実態調査というのは、それに関する非常にいいデータを与えてくれると思います。

 ただ、かなり大がかりな調査でもございますし、今後どういう具体的なスケジュールでいくかは、まだちょっとここで御説明するほどには固まっておりません。でも、何年もかけて結果を出すようなことでは到底今日の国民の期待にこたえることができないと思いますので、私は、できるだけ早い機会にそれを分析して、そして問題点を抽出し、そして対策につなげてまいりたいと考えております。

山谷委員 全国的な学力のレベルの問題が、今回の新学習指導要領のかかわりとの中でどのような結果であるかという分析については、かなり時間がかかる部分というのはあると思うのですけれども、調査をいたしまして、あるクラスだとかある学校がもしも何かとてもいい結果が出た場合は、どんどん発表していただいて、こういうノウハウでこんなふうになったんだというような、そういう成果を共有できる、そのような体制づくりというのは早くやっても問題はないかなというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。

遠山国務大臣 今仰せのように、いい教育実践のモデル事例のようなものを集めて、それを広く普及していくというのは大変いいアイデアでございますし、重要なことだと思っております。

 これまでも、新しい指導要領に基づく教育のあり方についていろいろな工夫がなされていまして、それについての事例集もかなりでき上がっていると思いますが、今後も、特にいいモデル的な事業については、ぜひ情報として取り上げて、それを普及して、各地で苦労しておられる教員の皆様が参考になされるようにやるのが、我が省の役割の一つであろうかと思います。

山谷委員 大臣は、またエッセーの中に、子供の問題行動の底には、親の無責任と無関心がある、子供にはいっぱいの愛情を注ぎ、曲がったり間違ったりすることは正さねばなるまい、それが人間形成の基本である、家庭教育こそ教育の土台であることを家庭も社会もしっかり自覚すべきであろう、あるいはまた、家庭というものは、私は精神の継承というものがなければ、本格的なよい家庭というものは生まれないのではないか、親がしっかりとした信念を持って子供を育てていくことが大事ですね、そしていろんな問題が起こったときに、ほかに責任を転嫁しないで、まず親自身がみずから顧みるというところが基本ではないかなと思います、これは対談の中でおっしゃっていらっしゃるわけでございます。

 私も同感なのでございますけれども、ただ、私自身PTAの会長をしたりまた教育委員などをしたり、取材をしながら感じることは、家庭が基本なのはもちろんなんですけれども、都市化、核家族の中で、また共働きがふえたり、非常に人間関係が希薄になっていく中で、非常に家庭、特にお母さんに重荷が背負わされて、もうにっちもさっちもいかなくて、ノイローゼ状態というような状況の中で子育てをしていらっしゃるという状況もございます。

 私は、PTA会長をやっておりましたときに、家庭の懐が薄くなった分、地域全体をビッグファミリーだというような形で組みかえていかないと、昔はそれが日本の社会の中に当たり前にあったんですけれども、今は都市化、核家族化が急速に進んだ中で、やはり仕掛けとしてつくっていく必要があるのではないかというふうに思います。地域のことは地域に任せてやっていけばいいんですけれども、ある種文部省がちょっと、回転させるエネルギーを最初に出すというような部分でリーダーシップをとっていくということは、今の現状を見ますと重要なことではないかというふうに思うのです。

 そこで、私がちょっと関係いたしました二つの事例を紹介させていただきたいと思うのです。

 今、学童保育の充実ということが言われておりますけれども、学童保育というのは、一年生から三年生まで、働いている母親の子供、しかも今、待機待ちというような大変な現象なんですけれども、必ずしも働いていない専業主婦の御家庭でも、あるいはまた四年生、五年生、六年生でも、あるいは中学生もそうでしょう、子供の居場所がないんです、放課後の居場所が。伸び伸びとみんなで、異年齢で遊ぶ安心した空間がない。子供たちに取材をしますと、公園で遊んでいても大人たちが寒い目で見るとか、とにかく居場所がないということを訴えるわけでございますね。

 名古屋市でやっている試みが、トワイライトスクールと申しまして、小学校の空き教室などを使いまして、地域のボランティアの方たちが参加して、一年生から六年生まで、夏休みもプログラムとしてやるわけでございますが、今現在二百六十一校中五十三校がやっていて、来年七十八校になる。

 それから、世田谷区では、BOP、ベース・オブ・プレーイング、遊び場基地の略なんですけれども、現在六十四校中五十五校が実施しておりまして、平成十六年には全校で実施するという、これは大変いいプログラムなので、毎年毎年、教育委員会、生涯学習課、ふやしていっているわけです。

 世田谷区の例を私も体験したんですけれども、例えば近所の大学生がスポーツの指導に来てくれるとか、あるいはPTAのおばあちゃんが自分の自宅に呼んで茶道を教えてくれるとか、あるいは近くのケーキ学校、民間教育施設が、子供たちにオープンにしてケーキづくりにおいでと言ってくれたり、お寺さんがお掃除の後に命のお話をしてくれたり、あるいは果樹園が収穫に呼んでくれたりというような形で、民間のさまざまなネットワークの中で、子供たちが本当に地域全体をビッグファミリー、自分たちの家庭のように体験しながらさまざまな体験をし、さまざまな異年齢の方、世代間の交流も進んで、自分自身いろいろな可能性を持っていることに気づいていくというようなプログラムなのでございます。

 文部省としては、このようなトワイライトスクールとか世田谷区でやっているBOPのような事業というものをどの程度調べて把握していらっしゃるのか、またそれに対してどんなような感想をお持ちなのか、お教えいただきたいと思います。

岸田副大臣 済みません、文部科学省の認識につきまして、私の方からお話しさせていただきます。

 まずもって、子供たちが地域社会の中で、大人ですとかあるいはさまざまな年齢の子供たちと交流する、そしてさまざまな生活体験ですとか社会体験、こうした経験を豊かに積み重ねていくということ、これは子供たちの豊かな心をはぐくむあるいはたくましさを育てる、こういった意味で大変重要であるというふうに認識しております。

 そういった中にありまして、今先生の方から御指摘ありましたトワイライトスクール、あるいはのびのび世田谷BOPというのでしょうか、こうした試みですが、放課後や休日等に児童のために遊び場を提供する取り組み、大変有意義なものだと認識しております。特に、これはハード面で、学校施設を使ってこうした取り組みが行われているという面から、文部科学省としましても大変大きな関心を持っておりますし、重要性を感じているところであります。

 文部科学省自体としましても、今年度から地域ふれあい交流事業ですとか、あるいは平成十一年度から全国子どもプランですとか、こうしたモデル事業をしているわけですが、こうしたモデル事業をしっかりとPRすることによって社会にこうした雰囲気、環境を広めていき、こうしたそれぞれの独自の活動を支援する土壌をつくる、こういったことも努めていかなければいけないのではないか、そんなふうに認識しております。

 いずれにしましても、こうした活動の重要性、しっかりと認識して、これからもどんな支援ができるのか検討していかなければいけない、そういった認識でおります。

山谷委員 トワイライトスクールもBOPも、全児童が対象で、実施校では六割から九割の児童が加入しているというぐらい、本当に子供たちは遊び場を欲しているということでございますので、モデル事業もいろいろやっていらっしゃるのは承知しておりますけれども、このベースを全校に、全国のすべての小学校に三年ぐらいで進めるぐらいの意気込みで、予算はかからないのでございます、一人当たり学童の三十分の一ぐらいという、かければ幾らでもあれですけれども、ボランティアを活用したりいろいろな状況で、予算の点でもそれほど高額にかかるプログラムではございませんので、本当に、子供たちの体験学習と地域の教育力の向上という意味では、これにまさるプログラムはほかにないというふうに私は思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 それから、生き方についての質問をさせていただきたいのですけれども、今、厚生労働省の統計では、フリーターが百五十一万人という推計でございます。実際はその倍ぐらいいるのではないかというふうに言われております。また、大卒で六割ぐらいが就職するわけでございますけれども、三人に一人は三年以内にやめてしまうということで、生き方、深みのあるライフプラン、それは、どの学校に進学するとかどんな職業につくとか、そういう薄っぺらなものではなくて、非常に深みのある生き方、自分の持ち味は何か、どんな方法があるのかということを、さまざまな情報を日本の教育はやはり教えなさ過ぎているんだというふうに思います。

 日本のスクールカウンセラーというのは、臨床心理士だったり、あるいは退職すぐの先生だったりするわけでございますが、主に心理相談にウエートがかかっているというか。けれども、子供たちの悩みというのは、心の悩みでありながら、アクションプランを、こういうことをやったらいいんじゃないという、具体的な何か行動につなげてあげるようなことをすることによって、自分自身に対する誇りを持ち、自分の持ち味を知り、すばらしい人のすばらしさを知って励みになっていくというような部分があるというふうに思うんですね。日本の場合はそれがない。アメリカのスクールカウンセラーなんかは、心の悩みを聞いていたけれども、途中からアクションプランのサジェスチョンに切りかえたという言い方をするわけですね。

 つまり、あなたのその悩みだったら、このボランティア活動をしてみたらとか、この人に会いに行ってみたらとか、こんなふうなやり方があるのよと、具体的なアクションプランに、紹介状まで書いてつなげてあげることによって、子供の悩みというのは解決するという部分が大変に大きいわけです。不登校の子もそうだと思いますし、引きこもりの初期もそうだと思います。

 アクションプランの提示がなくて、心の悩みだけ相談していると、どうしても、それがすれ違ってきた場合に、もうコミュニケーションをこちら側から絶ってしまうという部分があるんではないかというふうに思うんです。

 生き方の情報というのは、今あるようでございますけれども、系統的な、そして親身に立ったものがございません。例えば、イルカの調教師というのがテレビで人気ドラマになると、次の年にイルカの調教師の希望の子供たちがふえるとか、あるいは、私も経験したことですけれども、アナウンサーになりたいという子がいる。そうすると、アナウンサーというのはもう何千倍の競争率だから、どこそこの学校へ行かないととても無理よというような言い方をするわけですね。

 しかしながら、アナウンサーになりたいんだったらば、例えば読み聞かせのどこかカルチャースクールでも公民館でも、いろいろ学校はあります、勉強の場所は。そして、そこで学んだら、こういう幼稚園へ行ってごらん、先生に紹介状を書いてあげるよ、子供たちに読み聞かせのボランティアしてみたらとか、図書館で読み聞かせのボランティアグループがあるからそこへ行ってみたらというような、そういう具体的な、その地域で自分が何ができるかという、そういう橋渡しをしてあげるような指導というのが日本の教育の場面に決定的にない。

 以前はあったんだと思います。先生も地元で、家庭環境を知っていたり、地域の実情を知っていたり、あるいは、地域に親切なおじさん、おばさんがいて、ここにおいでよなんて言ってくれたんだと思いますけれども、今はそれがないわけですね。

 今回、教員養成課程で、平成十四年から、進路における勉強一単位というのが入りました。私、ちょっと、何をどう教えるのかというようなことを調べましたところ、教授すべき具体的内容や基準については文部科学省では定めていないというようなことでございますし、実際、何をどう、素材もありませんし、教授も非常に少なくて、知り合いの教授なんかは七大学かけ持ちしなきゃいけないぐらいになっているというような、本当に一単位設けたことは設けたんですけれども、現場、これから回転していくような時期になりましてまだこのようなお寒い状況ということに対して、私は非常に不安を覚えております。

 そのほかに、総合学習それから体験学習の推進といった場合、教育委員会にいる社会教育主事とかあるいは進路の専門家の方たち、それから一般の先生たちの研修、アクションプランにつなげていく、それからネットワーカー、コーディネーターとしての研修ノウハウ、プログラム開発というのが、日本の場合、決定的におくれているわけでございますけれども、そのような方面への何か振興策とかあるいは現状認識というものをお聞かせいただければと思います。

遠山国務大臣 今御指摘の点は、私も大変重要なことだと思います。

 これまで、日本の教育では、主として座学中心でございまして、世の中にどのような職業があるのか、どのような活動の場面があるのかというような実際的なことについて興味を持ちながら、体験しながら学んでいくということは大変少なかったと思います。

 その意味で、これはアメリカなんかで随分発達しているんですけれども、キャリアガイダンスという一つのジャンルがあるくらいでございまして、今お話にありましたいろいろな問題点なり、それからあるべき方向なり、示唆に富んでおります。私自身も幾つかの方途を既に研究もいたしておりますが、それがどのように政策に結びつけていけるかというのは、ちょっと今急にはお話しできる段階でございませんけれども、大変重要な御指摘だと思います。

 単に一単位、大学の教職課程に設けてみても、到底その必要な精神というのはつながらないんじゃないかと思います。このことについては、私どももより研究してまいりたいと思いますので、また何なりと御示唆をいただければ大変ありがたいと思います。

山谷委員 キャリアガイダンスという言葉も、文部省職業教育課、進路指導担当課でちょっと言い始めたということで、心強く思ってはいるんですけれども、予算と人間の配置を見ましたらとても心もとない現状でございますので、その辺をやはり早急に変えていくような方法で御検討いただきたいというふうに思います。

 日本というのは、そういう人材とかプログラム開発とか、その辺に予算をかけるというのがなかなかまだまだ後退しているというような現状でございます。例えば、学校教育に対する公財政支出の割合、日本は三・七%、欧米は四・四から五・六%、アメリカのブッシュ大統領は教育費を一一%増すというような、大変な意欲で教育問題を改革していこう、よくしていこうというふうに考えているわけでございますけれども、遠山文部大臣は、未来への先行投資として、教育関係の予算配分の見直し、これは小泉総理がおっしゃる構造改革でもあると思います、その辺についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。

遠山国務大臣 先進国に比べまして教育への投資の比率が低いということは現実でございます。もっとも、国によりまして何をその額の中に含めるかとか、いろいろな制度の違いがありますので一概には言えないのでございますけれども、本当に、これから二十一世紀、日本をあるべき、あるいは伸び伸びとした活力ある社会にしていくには人ということであれば、教育への投資というものを十分に考えていく必要があるのではないかと思います。

 アメリカが、前世紀の後半、非常に危機に陥ったときに、危機に立つ国家ということで教育の本格的な見直しを始めましたね。そのときの姿勢も一つの参考になろうかと思いますが、御指摘の点については私どももできるだけ努力をしたいとは思いますけれども、委員初め関係者の御支援をお願いしたいと思います。

山谷委員 参議院の予算委員会で、塩川財務大臣は、予算配分の見直しについて、使途の合理的配分というような形で非常にごまかされた答弁をなさっておられます。

 今、大人たちは、子供への教育投資でしたらば非常に納得するというような状況でございますので、自信を持って遠山文部大臣は塩川財務大臣ともお話しになられまして、小泉総理も説得なさって、教育予算、これは構造改革の非常に目玉だというふうな形で推していただきたいというふうに思います。

 最後に、科学技術関係についてちょっと質問をさせていただきたいんですけれども、第一期の科学技術基本計画で、内閣府科学技術政策担当官の方が、残った課題としてこのようにまとめられておられるんです。

 ポストドクター期間後の進路に課題を残している、任期つき任用制度研究公務員の兼業緩和などの制度改善はあったけれども、流動性が不十分である、それから、評価の導入はしたものの、資源配分や処遇への反映、プロセスの透明性は不十分である、それから大学等の施設整備目標も不十分。ちょっと調べさせていただきましたら、整備目標千二百万平方メートルが、実は二百七十九万平方メートルしかできなかったというような状況がございました。

 今回、第二期の科学技術基本計画、二十四兆円ですか、大変な金額を、予算をとっていらっしゃる。私は、科学技術の振興が、日本の国力あるいは世界の平和と安定のために、繁栄のためにも重要なことだというふうに思っておりますので、大変期待しているのです。

 遠山文部大臣は参議院予算委員会で、流動性を大切にしたいというふうな御答弁をなさっていらっしゃると思いますが、第一期の科学技術基本計画、残した課題、流動性が不十分であったというようなことも含めて、第二期のビジョンあるいはかける意欲というものをお聞かせいただきたいと思います。

遠山国務大臣 本当に日本の未来は今の若手研究者にかかっていると言ってもいいかと思いますけれども、その若手研究者に対する研究支援、いろいろな問題点がまだ残っております。

 文部科学省としましては、平成十三年度予算において幾つか措置をいたしておりますので、御説明いたしますと、一つは、創造性豊かなポストドクター等の若手研究者が研究活動に携わることができる環境を実現するためのポストドクター等一万人支援計画というものをつくっておりまして、これを実施に移していきたいと思います。

 それから、若手研究者を主たる対象とした競争的資金といいますか、研究費、これについても十分な手当てをしてまいりたい。これは、若手研究者の養成確保に係る予算としまして、約七百四十億円、平成十三年度で計上をしております。

 そして同時に、今おっしゃいましたように、任期制を設けて、研究者がそれぞれの能力に応じて、流動性を確保しながら活躍する場が与えられるように、そういう制度についても、法律もでき上がっておりまして、それの実施に向けて、さらにそれを加速するための助言、指導を行っていきたいと思います。

 それにしましても、研究環境も十分でございませんし、この面についての努力すべき点は多々あると考えております。

山谷委員 年度別、項目別に細かく分析しながら、フォローアップしながら進めていただきたいというふうに思うのです。

 ノーベル賞の受賞者が受賞理由となった研究業績を上げた年齢でいいますと、生理学、医学分野では七二%が三十歳以下ということで、若手研究者を大事にしないと将来はない。しかしながら、日本の研究体制は、まだまだ教授がどかんと乗って、若手は奴隷のように、小間使のように、本来の研究をさせていただけないというような状況でございます。

 そしてまた、大学の方も、例えばアントレプレナー、自分で業を起こして、自分らしい活動をしていきたいというような部分で、例えば自分の会社をつくりたいというのが、アメリカのMITでは二六%いるのに、東大、東工大では一〇%。それに比べて、企業で出世するというのは、MITは二二%ですが、東大、東工大は四〇%というような形です。

 やはり、本当にクリエーティビティーを育てていく、それからみずからやっていくというような体制と教育方法というものが大事だというふうに思いますので、さまざまな分野での課題を解決するために遠山文部大臣の実行力を期待して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木(恒)委員長代理 藤村修君。

藤村委員 遠山敦子文部科学大臣においては、御就任おめでとうございます。

 最初の一般質疑ということで、総括的な、全体的な御質問をさせていただきますが、その前に、冒頭、きょうの冒頭の馳委員の方から、私ども民主党の鳩山代表の韓国での発言等々をとらえ、委員長に要請がありましたので、一部誤認識があるかと思いますので、その点だけちょっと触れておきます。

 多分報道でいろいろ承知されたということであろうと思います。私どもも報道で知った上で、さらに同行したメンバーからいろいろその後に、教科書採択等に非常に関心がある一人として伺った結果としては、まず、一部通信社、それから一部新聞社の報道にすぎなかったのですが、それは非常に大きな報道であった。ただし、そこにちょっと間違いがあるのが、外交の場の発言ではなかったということであります。それはすなわち、同行記者団との内政懇という内輪の話の中で出てきていた話であるということが第一点。

 それから、採択に触れた云々のところがありますが、これは実は一つ言葉が飛んでおりまして、申請本のという前提がありました。だから、申請本のというときに一つの教科書会社の話を挙げて発言したことには変わりはありませんが、申請本のというところが抜けると大変に大きく違ってくるということであります。

 それからさらに、私ども民主党の見解として、政党とか政治家が、採択にある意味では圧力をかける、あるいはそれを曲げる、そのような発言や行動をしないということは党の方で確認をしているところでありますので、その点は委員長の方でしんしゃくいただきたいと思います。

 さて、私の方からは、遠山文部科学大臣は、ある意味では文部省の本当に隅から隅まで御存じの方で、かつ近年の特に文部行政を熟知していらっしゃる方ですから、こんなことは聞くまでもないと思うのですが、先日の大臣あいさつというのは、この通常国会途中で内閣がかわったということですから、その意味では所信的あいさつというふうにとらえるわけですが、通常国会冒頭の前大臣のいわゆる所信から比べると、非常に短いものであります。

 その意味では、それはこの通常国会の中で、内閣がかわったといえども、当然通常国会冒頭の文部科学大臣としての所信というものが基盤にあるということで、それを踏まえた上での新しい大臣の追加的な考え方などを述べられた、そういうふうにとらえているわけでありますが、そういう認識でよろしいかどうか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

遠山国務大臣 仰せのとおりでございまして、今国会の冒頭に町村前文部科学大臣が所信表明されたものを踏まえた上で、私なりの考えをつけ加えさせていただいたということでございます。

藤村委員 そこで、冒頭のというのは通常国会冒頭のいわゆる所信の中では、私は一般質疑のときにも言葉をとらえたのですが、これは町村さんの所信であります。「国民や社会の教育に対する信頼が大きく揺らぎ、我が国の教育は危機に瀕しています。」というくだりがあります。

 文部科学大臣が教育の危機という言葉を使ったので、それはそれで前回にも質問をしておりましたが、きょうはそういう全体的な質問に対して、きょうの馳委員の質問だったと思いますが、遠山文部科学大臣は、今日の日本の状況を考えるとき、教育改革が大事と考えるというふうに、これはなぜ教育改革が必要かという話の前提ですが、今日の教育の状況を考えるときというのは、遠山さんは町村さんと違って、それは危機ではなくて、いろいろ改革すべき点、改善すべき点があるという程度の認識なのか、いや、これは大変えらいことなんだという前大臣と大きな認識の差があるように思うのですが、いかがでしょうか。

遠山国務大臣 冒頭の決意表明のときは、私はもう一、二段お話しできると思っておりまして、やや言葉が足りなかったと思いますが、現状の認識につきましては、町村前大臣と全く同様でございまして、今取り組むべき問題というものは極めて重要でありまして、それをある見方からすれば、まさに危機の状況であるというふうに言えると思います。

藤村委員 では、そういう認識のもとに、新たに改革が必要、かつ小泉内閣は改革断行内閣だ、そういう中でそれを断行していくんだというお考えに変わりないということを伺いました。

 そこでさらに、この通常国会の中で、一つ前大臣の所信で触れられていたこと、当然それを踏まえられるわけでしょうが、コミュニティースクールという全く耳新しい言葉を通常国会冒頭の所信では前大臣はお出しになりました。これは「コミュニティースクール等の新しいタイプの学校についての検討」ということで、課題として挙げられたわけであります。一体これはどんな学校のことを言っているんでしょうか。

岸田副大臣 コミュニティースクールについての御質問でございますが、先生御案内のとおり、このコミュニティースクールの議論につきましては、昨年の教育国民会議において議論をされたわけでありますが、趣旨としましては、多様な教育を提供するとともに、起業家精神を持った人間を学校教育に引き込む、このことによりまして教育を活性化するという趣旨のもとに、地域独自のニーズに基づいて、地域が運営に参画する公立学校というような定義がされていたわけであります。

 このコミュニティースクールでありますが、今後の学校教育において、一人一人の子供の個性を伸ばし、そして地域の要請にこたえる、特色ある教育を行う、こういったことの重要性を認識した上で、二十一世紀教育新生プランの中で、新しいタイプの学校ということで、このコミュニティースクールの可能性や課題について検討しているところであります。

 まだこれは事務的に検討を行っている段階でありますので、今後また関係者の意見も聞かなければいけませんし、それぞれ手続を踏んだ上で、できれば今年度中に検討結果をまとめていきたいなというふうに思っております。

藤村委員 今、だからなぜコミュニティースクールかということを少し説明いただいたんですが、多様な教育機会を提供するということが一つですね。それから、新しい試みを促して、起業家精神を持った人を学校教育に引き込む、それから教育界を活性化する、これらが目的だ。ということは、それを反対に考えれば、今の学校は非常に、起業家精神もないし、活性化もしていないし、だからという理由なんですか。

 私どもも、実はコミュニティースクールの検討をもう大分進めてまいりました。法制局との詰めまで入って、つまり法律化しようというところの前段ぐらいまで来ております。このときに、いろいろな議論の中では、今の学校に何か活性化するとか影響を与えるということよりは、やはり今の学校、特に公立学校の中からどうしてもはみ出ている人たち、あるいは、石原知事は学校なんか行かなくてもいいという発言もこの前ありましたが、今の学校行きたくないけれどもという、そういう需要あるいはそういう実態がある中で、そういう人たちに対しての、やはりこれは憲法で保障された公教育の可能性を考えていく、そういうむしろ目的意識が必要ではないか。

 今の学校を何か活性化するためにこんなものをつくってみたいというのは、ちょっと邪道な発想ではないかなと思うんですが、いかが思いますか。

岸田副大臣 先生御指摘のように、今の学校、公教育におきまして、教育の機会均等ですとかあるいは一定水準の教育水準を確保するとか、こうした重要な役割を担っていると思います。

 今、活性化するといっても、これは、要はこうした新しいタイプの学校の可能性を探る、こうした選択肢を探るということでありまして、今の学校教育の問題点をこういった形で指摘するというような趣旨ではないと理解しております。

藤村委員 まさに改革の中で、今までの延長上では考えられないいろいろな分野、そこの新しい選択肢をつくるという、今までが何か非常に旧態依然でだめだから、それを外から活性化するみたいな発想は、私はちょっと思い違いではないかと思うので、その辺は改めながら、ぜひ検討していっていただきたい。我々も検討し、これはスピードを競争したいと思っております。

 ただ、既にもう通常国会冒頭で表明されて、検討するということで四カ月たっているわけですから、それなりの検討はされているでしょうし、あるいは、多分検討し始めたらいろいろな問題点があることがわかってくるんですが、今はどんな問題点が一番、あるいは幾つもあるのかもしれませんが、今文部科学の中ではどんな問題点を指摘しておりますか。

岸田副大臣 この内容につきましては、具体的な内容は必ずしもまだ明確化できておりません。しかし、先ほどちょっと御説明しましたように、このコミュニティースクールというもの、地域の事情ですとか独自性を尊重しながら、あくまでも公立学校でありますから、従来の公教育の理念とどのような関係にあるのか、公教育の理念をどのように担保するかというような問題点が一つ考えられると思いますし、さらには、逆に、独自性あるいは地域の事情を取り入れるということになりますと、従来の私立学校制度との関係でどのように考えたらいいだろうか、こうした論点は考えられるのではないかなというふうに大まかには思っております。

 いずれにしましても、まだ今事務的に検討中であります。また多くの関係者の皆様方の御意見もこれから聞いていかなければいけない、そのように感じております。

藤村委員 遠山大臣には、過去長く文部省にいらっしゃった中では余り考えつかなかったことかもしれませんが、非常に新しい発想のコミュニティースクールというのが検討に入っているということは歓迎したいと思いますし、我々も検討しておりますので、ぜひ前向きに、それなりの時間をかける必要はあるかと思いますが、早急に結論を出していただきたい、このことをお願いしたいと思います。

 そこで、きょうは私、高等教育のことをお尋ねしたいと思うんですが、私が国会に出てきたときに、たしか遠山大臣は高等教育局長をされていたかと記憶しております。

 それで、今回、遠山大臣あいさつの内容で、「世界水準の大学づくりを目指し、」云々と述べていらっしゃいますね。世界水準の大学というのがどういうものかよくわかりませんが、それは、研究の分野でも教育の分野でも先進国で伍して戦えるということだろうと大体想像つくんですが、それを目指しということは、では現在の日本の大学というのは、世界水準で考えるとどのくらい、相当低いレベルなんでしょうか、どのくらいのレベルなんでしょうかということと、それから、それを目指して一番大切なことは何だろうかということについてお答え願いたいと思います。

遠山国務大臣 世界水準の大学づくりというのが日本の将来に非常に重要な問題という認識からあのような表現になったわけでございますけれども、大学の本来の目的である教育、すぐれた教育、人材養成ですね、と同時に、クリエーティブな研究をする土壌としての、現場としての大学というものをしっかりつくっていくこと、同時に、大学での教育研究活動が、社会の発展あるいは文化の創造といった面への積極的な貢献を行うと同時に、知的資源を活用した国際協力にも力を発揮してもらう必要があろうと思います。

 私も、ここに座ります前に、海外で日本の状況を見る機会が多かったわけでございますが、日本の大学の水準というのは一体どうかと言われますと、なかなか難しい点がございます。切り取る角度によりまして非常にすぐれた面もありますし、しかし、最近のIMDの調査結果のように、それは余り真実を反映していないのではないかと思われるような調査結果も流布されたりいたしております。でも、やはり大学がそれぞれ個性を持ちながら輝ける存在になってもらう必要があるわけでございまして、その意味で、国際的な見地から見てもすぐれた大学として評価される、そういう大学というものをもっと積極的に応援し、つくり上げていく必要があるのではないかと思っております。

 それにはいろいろな要素があると思いますが、これまでもいろいろな施策が講じられてきているわけでございますけれども、制度的な規制の面では随分緩和されたわけでございますが、それぞれの大学が独自の目標ないし個性を発揮することができるようにしていく条件づくり、それから教員の任用でありますとか人員でありますとか、あるいは施設設備のあり方、カリキュラムの問題、あるいは学術研究のさらなる発展のためのいろいろな手だても必要でございましょうし、本当にすぐれた大学になっていただくにはきちんとした評価というものも必要であろうかと思います。

 そういった各大学の取り組みを促すような、あるいは、別の言葉で申し上げれば、各大学の競争的環境を醸成していくという視点から、さらなる大学改革というものを推進してまいりたいと思っております。

藤村委員 どうも、どういうふうにしたいか、よくわからなかったのです。

 端的に言いますと、やはりこれはなかなかお口から漏れないのですが、投資が足りないんじゃないか。これは、きょう通知しているとおりでありますが、日本の高等教育に対するいわゆる公的財政支出の現状はというふうにお伺いして、それは一度答えていただきたいのですが、どうも、かつてから言われておりますとおり、相当足りないんじゃないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

岸田副大臣 数字だけちょっと申し上げさせていただきます。

 日本の高等教育の公財政支出、OECDの調べによりますと、対GDP比、我が国は〇・五%ということであります。アメリカ一・四、イギリス〇・七、フランス一・〇、ドイツ一・〇というふうになっております。

 おっしゃるとおり、数字的には少し少ないようでありますが、先生も十分御案内のとおり、この比較、単純には比較できないわけであります。国立大学の比率ですとか、あるいは高等教育の範囲ですとか、ちょっと国によってさまざまな違いがあるかというふうに思っております。

 現状どうかというお尋ねでありますが、数字的にはそういうことになっておりますことをちょっとつけ加えさせていただきます。

藤村委員 金額的に言うと、今の比較をしたときの数字、これは多分、九八年、平成十年度の数字で、高等教育に対する支出というのが三兆八千五百十三億四千百万円という数字をもとに比較をして言っていると思うのですね。おっしゃるとおり、単純に外国との比較というよりは、むしろ、日本国内において三兆八千五百億円ほどの高等教育に対するいわば公的投資、これがどうなのかということを少し考えた方がいいのかなと思うのです。

 もちろん、対外比較でいうと、比率は少ない、GDP比が少ないというのは前から言われているし、金額的にも三兆八千五百十三億、これは、遠山高等教育局長時代からいって、それなりにふえてはきておりますが、経済成長、つまりGDPの伸びからいうと、それよりは低い伸びなんですね。ということは、どうも傾向としては、高等教育に対する投資はふやさないといけないと言いながら、減ってきているんですね、日本の国内の中で考えても。これは何か理由があるのでしょうか。あるいは行政改革等の何か影響があるんでしょうか。その辺、ちょっとこれはきちっとした通知はしていないですけれども、お考えがあれば聞かせてください。

岸田副大臣 明確な理由は持ってはおりませんが、今の日本の国のさまざまな現状、御指摘の財政も含めまして、いろいろな現状の中で、こうした数字が結果として出ているというふうに思っております。

 しかし、いずれにしましても、文部科学省としまして、高等教育の存在、大変大きいものであると考えておりますし、我が国が二十一世紀にたくましく羽ばたくためにも、存立基盤として大変重要だと思っております。この思いのもとに、予算においても充実していかなければいけない、この認識だけはしっかり持って、これからも努力していきたいと思っております。

藤村委員 ぜひとも、遠山大臣が高等教育局長もされているということで、ここを少し特色を出すなら、副大臣も頑張って、高等教育、予算の時期になりますので、本当に本気で考えていただかないと、ちょっと高等教育は危機の一つの大きな対象だと私は思いますので、その点はよろしくお願いしたいと思います。

 高等教育で関係するのは、山形大学工学部の入試集計ミスというのがこのところ連日ありまして、私も地方国立大学工学部ということで、何か非常に人ごととは思えない。これは自分のときもひょっとして何か間違いで入ってしまったんじゃないか、逆の立場であります。

 つまり、今回、九十人の今年度の不合格者が出た。実は、合格であった人に対応して、九十三人は不合格であった、そういうこともあるわけですね。それを考えると、この五年間で四百人というのは、実は八百人にそれぞれ直接的に関係しているし、それは一人一人考えたら大変なことであります。

 本当に、国立の工学部、特に情報なんかの分野では非常に優秀な学部でありますから、行きたいんだといって、しかし、残念だった、進路を変えた、浪人している。それが、五年前になると、もう取り返しがつきません。ほかの大学に行った人はもう大学を出ているかもしれません。

 何でこんなことが、これは単純ミスと言ってしまっていいのか。原因を今追求中でありましょうが、多分コンピューターのプログラミングミスだということのようでありますし、不合格にした学生に対しては、これはきょうの朝刊ではありますが、過去にさかのぼっても合格にするという判断も少しあるようですし、それから、今後こういうことが本当にあっては困るわけで、それもこんなに多数、これは年を経て五年間もというのは過去に前例のないことでありますから大変な問題でありますが、これらについて、今聞いたポイントでお答えを願いたいと思います。

岸田副大臣 まず、今回、多くの学生に影響を及ぼし、そして国立大学の信頼を損ねたということ、このことにつきましては大変残念に感じております。

 そして、先生の方から、まず、どうしてこんなことになったかという点でありますが、今、現状受けている報告の範囲内で申し上げるならば、平成九年度から国語の出題分野につきまして配点の変更を行ったわけですが、入試委員長、これは教官でありますが、入試委員長の方から電算プログラムの変更の指示がなされなかったというのがまず根底にあって、そして、その後、それをチェックする仕組みをこの山形大学が持っていなかったというようなことで、長い間にわたってこうした残念なことになってしまったというふうに報告を受けております。

 そして、まず平成十三年度の入学者選抜において新たに合格になる者については、そして新たに入学を希望する者については、入学を認めるという方向であります。そして、平成九年度から十二年度、この過去の分につきましては、先生御指摘にありましたように、五年ですから、もう卒業している学生もいるのでありましょうし、また、二年とか三年、そういった立場にありますと、編入というようなことも考えなければいけないということもあるのでありましょう。そういった個別の事情に応じて対応していかなければいけないというふうに思っております。

 そうした認識のもとで、今、山形大学において対策チームを設置して、原因究明に全力を尽くしているわけでありますが、しっかりと適切な措置をするようにという指示を行っているところであります。

 そして、今後ということにおきまして、これは山形大学で今回こういう不祥事が起こったわけでありますけれども、これは決してほかの大学では起こらないということではないというふうに思っております。ほかの大学におきましても、こうしたことがないかどうか、もう一回入試システムについて検討をし、そして見直しをする、こういった対応を求めていきたいというふうに感じております。

藤村委員 本当に、これはきのうも大臣、会見されて、ある意味では言語道断の間違いで、申しわけないの一手しかないわけですけれども、本当にこれは繰り返されては困る。

 それから、今回、これが情報公開、情報開示ということで、一学生から、国語の点数が奇数だからおかしい。さすが工学部に入る人ですね、二倍しているから偶数でなければならないという論理的な質問ですからね。となると、私は、今回気がついたのは、今岸田副大臣おっしゃったように、入試センター試験の、いわば各大学においていろいろな加工をするということが、余り私もよく知らなかったのですが、そういうことがある。今回は、現代国語に二倍掛ける、古文や漢文はほとんど見ないわけですね。

 そういう意味では、そういう加工の仕方で、結構全国でやっているわけであるならば、今回、情報開示で初めて一人の学生が言って、わかったことというのは案外幾つもあるかもしれない、何となくそういう予測は立つわけでありますから、今おっしゃったように、過去五年なら五年の範囲で、各大学、特に合否を判定する場合、入試センター試験を加工して使う、こういうのが多分一番危ないですから、ぜひこれはきちんとチェックし、かつ、まさに情報開示でこうして出てきた話ですから、これは絶対に隠さずに必ず報告をする。私も報告を待っておりますので、大臣、そのことだけ、お約束いただけますか。

遠山国務大臣 今回の問題は、青年の将来を左右するようなことにもつながるということで、私ども大変憂慮いたしております。

 先生がおっしゃいましたように、情報開示で問題が明らかになったということ、これは情報開示がある意味でプラスに働いたといいましょうか、大学にとっては大変でございましたけれども、でも、あらゆることを透明に、クリアにして、問題点も解決方策もクリアにしていくということは大変大事だと思いますので、御指摘の方向で進むべきだと思います。

藤村委員 ぜひそうしていただきたいと思います。つまり、まさに情報開示を機に、一件出たけれども、あと出たら困るなと思うけれども、しかし、この際一気にそういうことをひとつクリアしておく。まさにこれは痛みを伴う改革でありますから、それをしていただきたいと思います。

 そこで、一昨日ですか、参議院予算委員会において塩川財務大臣が、日本育英会の奨学金制度について、一つは無償奨学金、いわゆる給付、それからもう一つは貸与額引き上げに言及をされておりまして、それが昨日の読売新聞でしたか、一面の中段に割に大きな記事で出ました。

 その見出しは、大きな見出しであります「育英会「返済なし奨学金」」それで、「財務相が検討表明 貸与額引き上げも」というサブ見出しもあって、塩川財務大臣は云々で、日本育英会の無償の奨学金ができたらいいのではないか、ということと、さらに貸与額についても、少ないと思う、もう少し貸し出してもいいのではないか。これは一面に出た記事で、全国では非常に歓迎されていると思います。

 私も、奨学金について前からもう何度も言っておりますが、これはいい、返済なし奨学金を切望していた者からしても、いい制度だなと思ったわけでありますが、文部科学大臣、公式にこの委員会できちんとこの点についてお答えをください。

遠山国務大臣 このたびの財務大臣の奨学金制度の重要性について述べられましたお言葉は、大変心強いものと感じております。ただ、大臣の御発言の真意についてはまだお伺いいたしておりません。

 日本育英会の奨学金というのは、制度創設以来、貸与制で事業を実施してきております。また、毎年その充実が図られてまいっております。特に、十三年度予算では大変な増額を見ているところでございます。

 文部科学省としましても、今後とも、貸与月額の増額も含めて、無利子、有利子あわせて日本育英会奨学金の充実に努力してまいりたいと思います。

藤村委員 時間が来ましたが、今の大臣答弁で一つ抜けています。無償の奨学金、これを検討するんですか。

遠山国務大臣 御答弁の真意を伺いながら、それも検討のテーマになろうかと思いますけれども、長年積み上げてきている育英制度というものを前提としながら考えていくことかと存じます。

藤村委員 時間が過ぎて申しわけありません。

 財務大臣がやると言っているんですから、文部科学大臣もぜひやりましょうと言わないといけないんじゃないですか。何でそんなに慎重なんですか。当然じゃないですか、そんなこと。それを間違って、そんな官僚答弁してもらっては困るので、大臣答弁をしてください。

遠山国務大臣 真意を確認しながら検討してまいります。

藤村委員 終わります。

高市委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

高市委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。

 同僚議員の後を受けまして質問に入りたいと思うのですが、新しく中央省庁再編になって文部省と科学技術庁が一緒になったわけでございますが、今国会も含めて、科学技術についての議題というのでしょうか、そういうことがなかなかないものですから、何か科学技術は文部省に乗っ取られたような雰囲気に感ずるところがございました。

 そう思っておりましたら、朝日新聞だったと思いますが、科学技術のもとの所管であります科学技術庁に関連する機構が、事実かどうかわかりませんが、新聞記事に出た。こういうことで、その点について少し質問をさせていただきたいと思います。

 特に、この新聞に載りました機構というのは、核燃のサイクル機構と呼んでおる機関でございますが、この機関というのは、そもそも日本の科学技術、とりわけエネルギーにかかわる部分に対しての、原子力の平和利用であるとか核燃サイクルに対する研究であるとか、そういうところに非常に重要な役割を担っている機関でもございます。そういう我が国の国民生活にとって大事なエネルギー問題、特に核燃サイクルに関する研究機関でございます。

 言葉をかえますと、「ふげん」であるとか「もんじゅ」であるとか、いろいろな課題、問題もある機関でもあったわけであります。旧動力炉・核燃料事業団という事業団が前身でございまして、そのときにも、十分透明性がない、あるいは何かを密閉している、こういうところから改めて組織改組をして、核燃料サイクル機構という新しく改組した組織として今日まで来たわけでございます。

 そういう中で、朝日新聞の記事を見ますと、「核燃が裏金二百五十四億円」とか「過去五年分 二重帳簿作り」とか「研究費、給与に化けた」、こんな新聞の見出しが出て、これを国民の皆さんが見たときに、本当にこれは事実かどうかはわかりませんが、ああ、またあの「もんじゅ」のかかわっておる機関がこういうことをしているのかと。このことによって、原子力をやっている機関が、透明性、安全、大丈夫だと言っても、本当に安全なのか、そんな変な風評まで立ってしまえば、これを真摯に一生懸命推進しておるそこの機構の何も知らない現場の皆さん、一心不乱に研究開発しておる従業員のやはり士気にももとる。あるいは、我々一生懸命平和利用を願う立場の人間にとっても、ああ、またか、これじゃやはりだめじゃないかと。こんなことになりますと、本質論が失われてしまうのじゃないか、こういうことを私は非常に危惧するわけでございます。

 そういう思いで、きょうは、もしこういう内々の問題があるとするならば、何としてもきちっと善処してもらいたいし、経営をされている経営責任者はきちっとその責任をとってもらいたいし、その上で、本当に日本の国策の一翼を担う立場で今後とも処していただきたい、こんな思いで質問に入っていきたいと思うのであります。

 そこで、核燃料サイクル機構ということで、きょうは理事長と理事にもお越しをいただきました。

 私は、一義的には現場の方の課題だろうとは思いますが、監督省庁であります文部科学の皆さん方にも、この問題についての事実と、それに対する、もし事実であるならば対処の仕方あるいは責任の所在をきちっと明確にしていただきたい、このように思っています。

 そこで、具体的質問に入りたいと思います。

 まず、核燃料サイクル機構というのは非常に複雑な特殊法人でございます。特に、予算を処していく場合には、通常一般会計から出てくる予算と特別会計からというこの二本立ての予算でもって運営をしておる機構であります。これがまた非常に複雑にしておりまして、通常、特別会計で処している特殊法人等々におきましては、一般予算を一たん特別会計の方に入れて、そこから組織の方に財政として落としていくのですが、これは並行して落ちるようになっている。したがって、その二本立ての予算が行ったり来たりする、こういうふうになる可能性も、逆にこの組織の中でうまく流用すればでき得る仕組みもあると私は思っておるわけであります。

 したがって、まず、今回平成十二年度の核燃サイクル機構におきましての予算については、予算要求を定員二千六百七十六人をもって申請をしたわけでありますが、実人員は二千五百七十一人である。この申請時の定員と実人員との間にまず百何人かの乖離がある、こういうことであります。そうしますと、予算の積算に当たっては、サイクル機構はどのような計算で予算要求をしておられたのか。

 また、毎年一人一人の給与の支給状況を詳細に調べる給与実態調査をやっているわけでありますが、この実態調査と予算要求時との間に、同じでなきゃならぬわけでありますが、うそ偽りをして出しているのか、こういう疑念さえ出てくるわけであります。

 したがって、まず、このような調査がどのようになっているのかということを伺いたいと思います。これについては、まず文部科学省の方からお聞きしたいと思います。細かい話だけれども、その点については大臣、こういうことが起こっているということについては、私が知っておりますのは新聞報道だけですから、事実かどうかということについては、大臣、ちょっと答えてください。

遠山国務大臣 これからの答弁に先立ちまして、核燃料サイクル開発機構、委員御指摘のように日本の将来のエネルギー政策にとって極めて重要な機関でございますが、そこにおいて今回のような問題が起きたということは大変遺憾に思っております。

 この問題につきましては、予算執行、定員管理についてチェックしつつも改善するという方向で今検討してくれておりますので、我が省としても、その事態を見守りながら、責任を感じてこの問題に対処していきたいと思います。

 具体のことについては担当の方から答えさせていただきます。よろしくお願いします。

平野委員 担当の方で結構でございますが、大臣並びに副大臣には、起こったことは事実であるという認識に立っておられるのか、具体的な報告が大臣、副大臣にはあるのかどうか、これだけは教えてください。

青山副大臣 極めて事実に近いこともありましたし、事実と違う点もありました。

 問題は、やはり予算管理と定員管理が、その流用は必ずしもしてはならないものではなかったのですが、主務大臣にきちっと認可を得てやるべき手続がなされておらなかったとかというようなことで、今回改善すべきことがあるということを明確に感じました。

平野委員 では、局長どうぞ。

今村政府参考人 今お尋ねのサイクル機構における予算定員と実員の乖離の問題について御説明申し上げます。

 サイクル機構の給与費の予算要求につきましては、一般的に申しまして、毎年度、次年度の予算人員の見込み、あるいは平均給与単価の見込みをサイクル機構から聴取するほか、サイクル機構の人員数につきましては、四半期ごとにサイクル機構から国は業務実施状況の報告をいただいておりますが、その報告によって把握に努めております。

 それに基づいて予算を要求し、確定するわけでございますが、今回明らかになった認可定員と実員の乖離、ただいま平成十一年度のことをお話しになったと思いますが、定員二千六百七十六人ということであったが実員は二千五百七十一人という状況であったという、この乖離につきましては、私どもはサイクル機構から実員について、例えば事業の実施状況報告の中で適切な報告がなされていなかったので、私どもとしてはその状況を把握し、適切に是正するということができなかった、そういう状況にございます。

 したがって、予算執行、定員管理につきまして、私どもとしては、サイクル機構から正しい、適切な報告を受けて、認可定員と実員の差、実態の給与単価と認可されている平均給与単価の差の解消につきまして具体的な改善策を講じるよう考えてまいりたいというふうに思っております。

平野委員 それは改善されたらいいのですが、今私が聞いているのは、実人員と予算管理するための定員管理との差はあったということですね。

 それはあっても必ず是正されるシステムになっているはずなんです。といいますのは、毎年一人一人の給与の支給状況を詳細に調べる給与実態調査というのはやっているわけです。これは毎年やっているのです。予算要求するとき、予算要求されて、実際そこの職員がどういう給与実態にあるかというのは毎年調べているわけですから。では、そこにそごがあったのですか。その点はどうなんですか。

青山副大臣 まず、ベースとして御理解をぜひいただいておきたいことは、サイクル機構というのは非常に多様な雇用形態の人員を抱えておりまして、これは今後考え方を変えていかなければならないと思ったのは、実員の範囲に関する明確な考え方が今までなかった点が実はあると私は思っています。そういう意味で、正確な人員の充足状況を把握していく。

 多様な雇用形態というのは、企業から出向していただいていたり、プロパーの人がいたり、いろいろな形がありましたので、実員の範囲に対する認識がまだ明確に確立されておらなかったという点があったと私は思います。

平野委員 副大臣、それはおかしい。実員の管理もできずして、組織なんてどうやって動かすのですか。だれがおるかわからぬという、そんな組織なんて普通ありますでしょうか。――いや、いいですよ。私が言いたいことは、副大臣がそれはわからぬと言うのは、それはわからぬのはわかるような気がしますわ。わからぬようなのがわかるような気がするというのですよ。しかし、本当の、組織の運営、経営をする立場でいったら、人こそ財産、人によって物事、組織というのは動くのですよ。その人間がどういう実態にあるかわからぬなんというのは、そんなばかなことが許されていいはずがない。

 これはまた、文部省が所轄ですから、予算措置をする立場でいったら当然そういう意味での掌握をしていなければならないし、現場にある核燃料サイクル機構の経営者は少なくともそのことをきちっと把握されて運営をされる、これは当然のことだと僕は思いますが、これは副大臣ではなくて当該の、核燃料サイクル理事長も来ていますから、理事長、どうですか、その点。(青山副大臣「委員長、ちょっとその前に」と呼ぶ)ひとつ簡単に。

青山副大臣 実員の把握が全くできておらなかったわけでは決してありません。例えば四半期ごとに、業務実施状況に基づいて実態の把握については努めてきております。おりますが、それぞれ専門の人たちであるとか、いろいろな形の雇用形態が実はありまして、それは聞いていただければわかると思いますが、そういう意味でなかなか把握が、考え方の確立がなかったという意味でして、実態はいつも把握するように努力しておったのです。

都甲参考人 お答えいたします。

 私どもといたしましては、業務を遂行する上で、人員の管理を正確に行う、これは当然のことでございまして、これは十分に把握いたしております。

 ただ、お役所の方に四半期ごとに実員報告をいたしますが、その解釈が、私どもとしては雇用関係を有している者を全部含めて報告いたしておりまして、この中には、その時点で外部に出向している、しかし我が社の職員の籍を持っているという人も含めて報告いたしておりましたので、御指摘のように、予算定員と実員との乖離が生じたと認識しておりますが、もし詳細でございましたら、担当の理事の方から御説明申し上げます。

平野委員 もうひとつよくわからないけれども、基本的なところで何か間違っとるんちゃう。関西弁で言うと余りよくないけれども。

 要は、会社の経営をしていこう、特殊法人といえども国民の税金を使ってやるのだから民間ではないのですよ。税金を使ってやるということは、貴重なお金で国策の事業としてやるのですよ。そうしたときに、こんなすばらしいスキルの人を職員として現場に配置してやろうとしたときに、外部から派遣されて来てもらっているからとか、あるいは物事を立ち上げるために臨時要員で雇った人がおるであるとかいうことも、すべて管理、把握していなければだめなんですよ。お金の出どころは、それは核燃料サイクル機構の自分のところのお金で人が雇えるのだったらいいのですが――人を雇うのであってもだめだと思う、これは民間企業でもだめだもの。まして国民の税金を使って国策としてやる以上、定員が何人おるか、あるいは外部からは季節変動で変わるからようわかりませんわ、こんなあほな管理の仕方なんて組織じゃないですよ。この点が、私が非常に気になる点の一つですよ。

 それともう一つ。毎年調べておる給与実態調査、これは何人で報告したのですか。何人に対して何人と報告しているのですか。人数だけでいいですよ。

笹谷参考人 平成十一年度は二千六百七十六人の定員でございましたが、実員も二千六百七十六名ということで報告しております。

 これは実員の定義を、先ほど理事長が申し上げたような定義で国の方に御報告いたしております。

平野委員 そうすると、二千六百七十六人という定員に対して、実態調査でいくと二千六百七十六人の給与実態調査を出しているということですね。そういう理解でいいですね。

 そうすると、その中には、実人員が二千五百七十一人しかいないのに、その差額の人の実態調査というのは、どこから引っ張って書いているのですか。

笹谷参考人 先ほど理事長からお答えいたしましたように、基本としては、サイクル機構との雇用関係にある者、先生御心配になっておりますように、我が社のプロパーの職員、それから民間企業から派遣、それから出向で来ていただいている方、こういう方々の定員管理についてはきちっと行っております。その点、誤解のないようにお願いしたいと思います。

 繰り返して恐縮ですが、報告する考え方といいますか、報告が求める趣旨の解釈が、私どもまことに反省すべき点でございますが、その点認識が一致していなかったということでございまして、管理そのもの自体はきちっとしております。

 したがって、実態調査で求められている実員の考え方が、私ども、定員管理をきちっとやっておりますが、その中でどれを拾うかというところで食い違いがあったものですから、結果的に百人程度の数字の違いが出てきたということでございます。

平野委員 全くわからぬ。

 二千六百七十六人という定員がおります、実人員が二千五百七十一人だと。財務省から文部科学省を通じて給与実態調査を毎年やっている。そのときの対象者は、実人員が二千五百七十一人であれば、その人に調査をして出すべきじゃないのでしょうか。それを二千六百七十六人に当てはめて出すということは、その差額、百何人かは、どういう状態の人も一緒に給与実態調査として出していっているのですか。

 では、民間から派遣して来てもらっている人がおりますと。しかし、その実態調査で、民間から手弁当で来ている人までも、税金から給与を払っていない人も同じように実態調査として上げているのじゃないですか。そういう事実はないですか。

笹谷参考人 御説明いたします。

 大くくりで言いますと、私どもの報告は、先ほど申しましたように、雇用関係にある者、したがって、サイクル機構に籍があるのですがサイクル機構で勤務していない者についても、我々は雇用関係にあって管理責任がありますから、これは報告書に記載してございました。その場合、外部に出向している者について、給与の支払いがされていない者についても実員の報告の中に含まれていたということでございます。

 したがいまして、サイクル機構で働いておってサイクル機構が給与を支払っていない者について、数を含めて報告したという考え方をとっているわけではございません。外に出ている者で、サイクル機構で給与を負担していない者まで報告に含めてしまったというところが、国が求めている報告の実員の趣旨と異なっていたということでございます。それが六十数名ですか、ございました。

平野委員 もうひとつよくわからぬな。

 要は、私が言いたいことは、核燃料サイクル機構が定員数としてとりました二千六百七十六人の認可予算措置をいたしました。これについては、当然その人の給与ベースでもって、サイクル機構が多分給与規定か何かに基づいて給与を払っていくんですね。その人数は本来は二千六百七十六人なんでしょう。ところが季節変動で十人や二十人やめてしまったとか、そういうことはあっても、そこに百何人も乖離があるということはまことにもっておかしいということ。

 もう一つは、複雑なのは、サイクル機構の定員管理、働いておられる人というのは、社外から手弁当で来ておられる人、あるいは社外からすばらしいスキルを持った人で核燃でお金を払ってでもこの人に働いてもらいたい人、あるいは核燃から例えば文部科学省へ出向されている人、こういう人は出向先で給与を払っているにもかかわらず、定員管理の給与実態調査の中に含めた人がおりませんかと。この質問に対して、ないという答えでよろしいのか。端的でいいですよ、もう時間もないですので。一問目でひっかかっちゃっているじゃないですか。

笹谷参考人 雇用関係にある者で、外部に出向していて給与を支払っていない者についても実員として報告していたということでございますので、先生が今御質問された内容で正しいと思います。

平野委員 ということは、まことにもって遺憾な管理をしていた、こういうことですね。

 もういいです。大変だ、これは。次へ行きますわ。

 もう一つは、核燃サイクル機構でやっておる部分でいきますと、人件費というのは通常、どう見ても補助金という形で人件費というものを見ていきましょう、こういうことですね。一方、核燃の場合には、いわゆる特定財源というのでしょうか、出資金部門から給与を受ける、あるいは支出をする業務協力員という方もおられるわけですね。これは補助金から給与費として出すのじゃなくて、いわゆる出資金からその人の給与を払ってもよろしいという二本立てになっておるのです。これが非常にややこしくしているのですよ。

 本来は、業務協力員といえどもやはり単年度の予算計上でやっているわけですから、ことしはこういう協力作業員がいます、事務員もいます、本来トータルで人件費管理をすることが好ましいわけであります。しかし、一般予算と特定財源というこの枠があるものですから、そういう使い分けをしてやっているために、トータルとしての管理が非常にやりにくい、制度上こういうようになっている。

 したがって、私は、この中でも、あるときには、あなたは本来は核燃の職員だけれども、この時期予算が非常に緊迫しているあるいは予算が余っているから、緊迫したときには業務協力員として給与を受け取ってよ、予算が少し余ってきたから、業務協力員にしているけれども、今度は一般職のところでの給与形態にしてよ、こんなような調整弁、運用になっていないか、こういう疑念を持たざるを得ないのですが、その点は、あるか、ないか、グレーか、ちょっと言ってくれますか。

笹谷参考人 先生御指摘のとおり、業務協力員という制度は非常に理解しづらい形になっております。

 その理由については、一緒の職場で働きますので、職員の一体感ということから、派遣元からやはり職員と同じような条件で雇用関係を結びたいという、協定がそうなっております。したがって、補助金、いわゆる通常で言う定員に充てられている予算ですね、補助金部門、それと出資金部門、お金の出どころが違っているにもかかわらず、実態はそういうことで同じところで働いているということで、非常に能力を持った方に来ていただいておりますので、それは私ども、今後とも業務協力員制度による仕事の進め方は私どもの事業の特殊性からして必要だと思っております。

 ただ、今回のことにかんがみまして、非常にわかりづらいことになっておるということについては反省すべき点だと思っておりますので、その点について検討し、改めてまいりたいと思っております。

平野委員 時間がなくなってくるものですから、基本的なところをもっと聞きたいのですが、またの機会にしたいと思います。

 いずれにしても、わかりにくい。わかりにくいということは、中でごまかせるということにもなるわけです。ぱっと見たらわからない、監査してもわからない、会計検査院は、うまく使っている、こういうことですが、今言われたようなことを、今日まで長い間ずっとそういう制度でやってきたとしたら大問題だ、私はこのように思うのです。

 しかし、もしそうせざるを得ない仕組みにしているとしたら、要は、通常に正しく現場の実態を報告しても監督官庁が認めてくれないのですよ、認めてくれないからやむを得ぬ現場の知恵としてそういうことをせざるを得ないのですよ、こういう声があるかもしれません。その辺はもっと、現場の実態に即した給与、人員管理体制を当該の文部科学省がしっかりとすべきだとは私は思っています。

 これ以上余り言及しません。

 次に、一つは、今度は核燃サイクル機構から省庁へ出向しているときの給与管理のあり方でございます。

 最近、人事院はよく、官民交流ということで、民間の人も官庁へ来てもらってやりましょうよ、こういう官民交流をやっているのですが、特殊法人から官庁へ出向する場合、例えば核燃サイクル機構から各省庁へ出向する場合、こういう場合にどういう立場で出向するか。

 この出向形態も三種類ぐらいあると思いますが、派遣という形をとる場合、出向という形をとる場合と、いろいろあるのですが、手弁当で行く場合には、それはよろしかろうと思うのですね。出向する場合には、休職という扱いをして国家公務員に身分を切りかえて処していこう、こういう形態の方もかなりおられるように聞いております。

 そこででございます。そのときに、現場でいただいておった給与と官庁へ来たときの給与に格差が起こったときに、減額補償をしている実態にあるというふうに聞いています。しかし、公務員になって身分を切りかえて、社会保険も公務員共済に切りかえて、なおかつ減額補償を親元の企業がするということに対しては、私は極めていかがなものかと思うのです。人事院の方にも来ていただいていますが、こういう取り扱いはどうなのですか、公務員法違反ですか。

吉藤政府参考人 今核燃サイクル機構のお話がございましたけれども、そのほか、国家公務員に採用されて従前と比較して給与が下がるような場合に、派遣元から従前の給与との差額を補てんする個別の事例については、私どもは特に承知しておりません。

 国家公務員法の問題でございますけれども、国家公務員法上は、国家公務員に採用されて従前と比較して給与が下がるような場合に、その差額の補てんとして金銭を派遣元から受けることについて、金銭の受領を制限する直接の規定は存しませんけれども、派遣元の業務に従事しないで報酬を受けることが適切かどうかという問題につきましては、国家公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために公正に職務に専念すべき立場にあることや、補てんの趣旨や目的に照らしまして、社会通念上公務に対する国民の信頼を損なうことがないかどうか、そういった点を踏まえて判断する必要があるのではないかというふうに考えております。

平野委員 今の、公務員に身分を切りかえて給与を払っている、これは当然文部科学省のある機関のところに来られればそうなるのですが、減額補償をしているというのは、文部科学省は知っておりましたでしょうか。知っていたか知らないかでいいですよ。

青山副大臣 いや、実は大事なところでして、今回調査によって確認をされた部分と、なお確認を求めている部分とありますが、今回の件は、サイクル機構から国の機関に出向している職員を休職扱いとしておりまして、休職給を支給していることが確認されました。

 それから、そうなると下がりますので、サイクル機構との間に、就業規定や給与の規定あるいは労働協定に基づいて減額分を支給するということがなされていたことが確認されました。

平野委員 初めて知ったということですね、今回のことで。それまでは知らなかった、こういうことですね。これは大丈夫ですか。今回初めて知ったのですね。知っていたけれども黙認していたということではないですね。ここをはっきりしてくださいよ、官房長。黙認していたのだろう。

結城政府参考人 今回の文部科学省の行った調査によりまして、事実上の給与補てんを行うために、特殊法人から国の機関の方に出向している職員を休職扱いとして休職給を支給していることを確認できたわけでございます。今回の調査によってこれはわかりました。

平野委員 官房長はそうかもしれませんが、少なくとも当該の管理監督をしておる課は知らないはずはないと僕は思います。今回だけやったのではないのですから。ずっとやっているのだから。

 動燃は改組した。なぜ改組をしたか。その意義がわからずして、また同じことをずっとやっている。恥ずかしいのは、新聞に報道されて初めて気がついたと。そんなばかな組織になっているのか、これが一番私は悲しくてしようがない。何か外からの外圧でしか改革できないのか。外圧でしか改革できないという、この組織の持っている意味合いを非常に私は悲しく思うわけであります。

 本来、国民のための国策、国民のためにやっている事業であります。オープンにして、これだけ苦労してやってもらっておるのだから、逆に言ったら、大変だろうなと、こんな同情の余地が生まれてきて当たり前の事業だと僕は思っている。にもかかわらず、何とひどいことをしているじゃないかということになってしまうことの方が、私は、今後のこの事業の形態から見ると、悲しい思いをしてならないのであります。

 そこで、もう一つこれに関連して聞きたいのです。

 利害の関係のあるところに人を出す。まして許認可を持っている省庁に人を派遣する。身分をある時期切りかえる。それで、切りかえた後、ある時期が終わったら元へ戻る。これはどうなんですか。それでなおかつ、減額については金品を補てんする。ある意味でいったら、これは贈収賄、収賄罪にならないのですか。派遣される人間も、その組織から、あそこに行っておけば自分の組織のためになるからといって出されるのだ。組織のためにならぬかったらそこへ出向なんかさせませんよ。なるからこそ行くのであります。

 そういう中で、核燃サイクルの持つ本来の仕事からいきますと、原子力の研究開発であります。原子力安全委員会に人を派遣しておる。これは、規制するところと推進するところ。核燃は推進するところ、原子力安全委員会は規制をするところ。推進しておるところの組織の人間が原子力安全委員会に人を派遣している。この意味合いがよくわからない。原子力安全委員会の方にきょう来ていただいていますが、その辺は実態的にどうなんですか。身分を公務員に変えているからいいじゃないか、こういう理屈なのでしょうか。その辺、どうですか。

木阪政府参考人 御説明申し上げます。

 原子力安全委員会におきましては、その任務を的確に遂行するために、今般、事務局機能の強化を図ったところでございます。その強化を図る趣旨で、原子力安全に関する高い専門性を有する人材の登用ということを進めてきているわけでございます。

 その中におきまして、今先生言われましたように、我が国の主要な原子力の研究開発機関でございます核燃料サイクル開発機構の職員であった者六名の方を現在事務局職員として受け入れているところで、これは事実でございます。

 安全委員会は、文部科学省、経済産業省等の行政庁が行う安全審査、いわゆる規制ということをやっているわけでございますが、その安全審査などをダブルチェックする権能を有しているわけでございまして、私どもの役割といたしまして、事業者自身、今先生言われましたような、例えば核燃料サイクル開発機構とかあるいは電力会社とか、そういう事業者自身に対する直接の規制権限を持っているわけではございませんで、それは行政庁にあるということでございます。

 したがいまして、核燃料サイクル開発機構から受け入れました職員が、直接にその事業者あるいは、今の場合ですと核燃料サイクル開発機構に対しまして、規制監督を行うものではないわけでございます。

 ただ、やはり誤解を生じるようなことがあってはならないということで、業務分担上、そういうことがないように特に配慮するということに努めているところでございます。

平野委員 時間がなくなってきましたが、許認可を受ける立場、許認可をする側、あるいは原子力を推進する側、規制する側、これはやはりそれなりの緊張感ある立場になければならない。その中に、人事交流だといって、いっときの間そこへ行って人間関係をつくってこいといううまみがある。こんなことで、安直に人を受け入れてやったらいけませんよ。もっとやはり厳しいものだ。我が党は、原子力安全委員会というのは三条機関にしよう、こういう法案を実は出してきたわけであります。そのことがまさに、今やられていない証拠じゃないですか。したがって、今後、対処をきちっとしてもらいたいと思うのです。

 ただ、この問題は、私はサイクル機構はけしからぬと思っていますし、やはりサイクル機構のそういう経営責任を私はきつく問いたいと思いますので、きょうは財務を、財務の人はまして、あなた、文部科学から天下っておるんじゃないですか。一番よくわかっているんじゃないですか。それでもそんなことをしてしまっているということは、私は、文部科学の監督責任もやはりきちっとしてもらわなければならない。

 まして理事長、じっと座っておるだけとちゃいまんのやで。事故の責任をやはりしっかりとってもらわないとだめですよ。あなたは動燃のときに理事長に就任されたんですから、動燃改革をなぜしたかということも十分わかって今日まで来ているんですから。理事長がやはり一番偉いんですから、理事長自身がしっかりとそういう意識、認識に立ってもらわないと、現場で一生懸命働いておる研究者あるいは現場の従事者はたまったものじゃないですよ。もう意識が低下して、私ら何ぼやっても世間からの批判にばっかりさらされるわといったら、ますますこの事業が衰退する、このことに私は強く危惧をするわけであります。したがって、今回のことはきっちりと責任はとってもらって、改めて、新生の、新しい核燃料の研究開発の体制をきちっとしいてもらいたい。

 このことをぜひお願いいたしまして、大臣、最後に、そういうことをやるという決意を言ってもらいたいと思いますよ。大臣ですよ、これは。

遠山国務大臣 御指摘の方向をきちんとチェックし、責任をとるべきところはとるということで、この問題に対処してまいりたいと思います。

平野委員 これで終わりたいと思いますが、きょうのNHKの昼のニュースで処分が減給とか、たかがそんなしっぽを切るような処分では納得しない、このことを言っておきますから。事実かどうか知りませんが、きょうNHKの昼のニュースで流れておるようですから、そんなことでこの問題を片づけていただいては困る、このことを申し上げまして、終わります。

高市委員長 山元勉君。

山元委員 民主党の山元でございます。遠山大臣、御苦労さんでございます。

 大臣は、六二年に入省されたというふうにお聞きしていますけれども、十一年前、私が国会に来たとき文教委員会でしたけれども、助成局長、高等局長、それからずっと、文化庁も美術館も、そしてトルコ共和国でしたね、大使も経験されている。まさにあらゆる教育の分野での行政をグローバルに経験をしてこられて知識をお持ちの大臣ですから、今こういう大変なときになっている教育を担当していただいて、指揮をとっていただく、期待をしておりますので、頑張っていただきたいというふうに思います。

 私、きょうは人権教育、とりわけ同和対策事業についてお尋ねをしようと思っていますが、まず最初に、この間の所信、あいさつのときに、私は前の町村大臣のときもそう申し上げたんですが、人権教育というのは一言だけしかない。四文字しかなかった。具体的なことは何もおっしゃらなかったわけですね。人権教育や環境教育について取り組みたい、こういうふうにおっしゃって、どういう条件とか、あるいはどういうところが問題だということについては一言も具体的にはお触れにならなかったわけです。

 まず最初に、今、遠山大臣は、今の人権教育についてどのように認識していらっしゃるのか。私は、今申し上げましたように同和対策事業についてお尋ねしようと思いますが、まず人権教育をどのように進めようと、その中に同和対策事業もあるというふうに思いますから、お尋ねをしたいと思います。

遠山国務大臣 人権教育につきましては、憲法及び教育基本法の精神にのっとり、基本的人権尊重の教育を推進していくことは極めて重要でありまして、学校教育におきましては、児童生徒の発達段階に応じながら、小中高等学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高め、一人一人を大切にした教育の充実を図っているところであります。今後とも、この考えのもとに、学校教育における人権教育の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

山元委員 実務の経験がおありなんですから、もう少し、紋切り型でない、本当に現実的な課題意識をお聞きしたかったわけですが、まあいいです。時間がたったの二十分ですから、具体的にお尋ねをしたいと思うんです。

 国民的課題と言われた同和対策、部落問題の解決については、随分長い間努力が行われてきました。一九六九年ですけれども、最初の特措法が出て、その次、地対法ができて、今、地対財特法が打ち切られようとしている。三十年余にわたって国民的課題だということで努力をされてきた。そういう国民的に努力をしてきた特別の措置法が、とうとう来年の三月三十一日に期限切れになってしまう。

 そこで、確かに大きな役割を果たしてきた、そういう施策でしたけれども、特別措置法を終わって一般施策へ移行ということについては、大変たくさんの課題が、問題がございます。例えば住宅の問題、あるいは就職、職業の問題、そして私がきょう問題にしたい奨学金の問題。

 今までずっと努力をされてきて、確かに同和地域の子供たちの進学率というのが上がってきました。けれども、これは特別の奨学金、解放奨学金という事業があってこそ上がってきたわけですね。それが今打ち切られるわけです。打ち切りになる、一般施策へ移行だということになるわけですけれども、この問題で、当該市の人たち、あるいは自治体の皆さん、例えば高校の設置者である自治体も大変心配をしているんですけれども、文部科学省としてどういう認識をこの問題についてお持ちなのか、お尋ねをしたい。

岸田副大臣 先生から今御指摘いただきましたように、この事業の取り扱いにつきましては、平成八年の閣議決定におきまして、五年間の経過措置を講じて終了するということになっているわけであります。政府としては、特別対策延長は考えていないわけです。

 そして、十四年以降は一般施策の枠内で対応していくということでありますが、今先生から御指摘をいただきましたさまざまな点、こういったさまざまな問題点があるということ、これは重く受けとめておりますが、そのあたりも含めて、この一般の施策の枠内でどのように具体的にあるべきなのか、今検討中であります。こういった流れの中で今検討しているということを御理解いただきたいと思います。

山元委員 この打ち切りになるもとといいますか、前の地対協の具申、その中にもはっきりと、教育の問題については心配が書かれているわけです。今まで改善に努力をしてきたけれども、なおいろいろなことを配慮しながら措置をしなきゃならぬ。その措置というのは五年間だと言ってしまえばおしまいですけれども、しかし、五年間経過措置をとってきたからもう今大丈夫なんだということには全然なっていないというふうに私は思っています。

 例えば、大阪の実態調査があるんですけれども、例えばこの解放奨学金がなかったらということを尋ねたら、四人に一人は高校進学は断念しただろう、あるいは大学に進学している人に聞いたら、三八%の人が、この奨学金がなかったら大学は行けなかった、断念しただろう、こう答えている実態があるわけですね、今。

 ですから、これが全く打ち切りになってしまって、特措法終わったよ、財特法終わったよということでは済まない実態が現場にあるわけですね。そこのところは認識していらっしゃるのだろうと思います。

 今大阪の例を言いましたけれども、福岡の人に聞くと、福岡はもっと厳しいよというお話があります。そこのところは、文部科学省はきちっと認識をして対処していただきたいと思うのですけれども、そういう今の実態について、大臣なり副大臣、どう認識しているか。

岸田副大臣 今先生から御指摘いただいた例も含めまして、いろいろな関係者からいろいろな実態について御意見を承っております。そういった実態を認識した上で、制度としましては一般の枠内でどういったことができるのか、そういった考え方で今検討しているということでございます。

山元委員 財特法がなくなったから一般施策だ、一般の枠の中でと頭から言ってしまうと、何の手だても講じられない。一般の奨学資金というのは、日本育英会もあれば、各単独の事業が各県ごとにありますから、そういうところでと言うだけでは、これはえげつない言い方かもしれぬけれども、能のない話で、あるいは親切心もない話で、今申し上げましたように、きちっとした、逆流はしないのですよと。

 一般地域と同和地域とで十年ほど前は二〇%ほども進学率に差があったのが、どんどんと解消してきた、縮まってきた。そして、今さっきも言いましたように、この奨学金がなければ断念せざるを得なかったという人が、高校では四人に一人、大学だともう三十何%ある。そうすると、これが、一般施策の中でやるのです、工夫しましたというだけでは、逆流をすると思うのです。

 だから、そこのところをしっかりと考えて、今の答弁で、何とか考えるんだということはわかりますけれども、一般施策の中でということだけでは、私は物は解決しないだろうというふうに思います。何しろ、ことしの予算でも五十五億がこの解放奨学金の予算だというふうに思っていますが、それが打ち切られるわけですから、簡単に、一般施策の中で各県が頑張ってくださいよ、育英会の皆さん配慮をしてくださいよだけでは済まぬと思うのです。だから、そこのところで実際に努力をしてもらいたい、後戻りしないようにしてほしいということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 時間がないのですよ。私の質問時間も余りないのですけれども、時間がない。というのは、一つは、概算要求がもうすぐ始まるわけでしょう。どういう方式でやるんだということがきちっとならないと、間に合わないことになる。もう一つは、今子供たちが、さあ、どうだろう、高校へ進学してももらえるのだろうか、助けてもらえるのだろうか、大学へ行きたいけれどもどうなるのだろうか、お兄ちゃんはあれで大学へ行った、高校へ行った、よかったけれども、僕は行けない、今中学三年生だ、高校三年生だと。というのは、新しいのはなしですから。

 ですから、そこのところは急がなきゃ。進路指導が始まるわけです。そして、各都道府県も財政は厳しいわけですから、よほど文部科学省が、こういう方式で、子供たちをがっかりさせません、経済的理由で断念せざるを得ないというようなところに追い込むことは何としても避けたいという決意なり方式を早く出してこぬといかぬと思うのですが、いかがですか。

岸田副大臣 一般の施策につきましても、一般奨学事業としまして、国においては、日本育英会が高等学校及び大学等の学生生徒に対する育英奨学事業を行う。一方、都道府県においては、多くの都道府県が主に高等学校などの生徒に対する奨学事業を行っている。こういった実態を踏まえて、一般事業としてのあり方を今検討しているわけです。

 いずれにしましても、先生御指摘のように、大変時間が限られているということは事実であります。これにつきまして、できる限り早く検討を進めていかなければいけない、その認識はそのとおりだと思っております。

山元委員 この問題は早くからわかっていたわけですよ。前の文部省の高等教育局の育英奨学事業の在り方に関する調査研究協力者会議というのがあって、そこのところで、これは九年ですから、もう四年前に出しておられるわけですね。これは、文部科学省として研究会をつくって検討していらっしゃる。

 そこのところにはこう書いてある。高等学校の生徒を対象とした奨学金については、平成五年の研究会の報告において、「各地域の実情に即した事業を実施するという観点から、今後高等学校の設置者としての都道府県における事業の拡大を強く要請」したい。各県で、高校の設置者である県が育英資金の事業をつくりなさいよということを言っているわけです、平成五年に。このときには、遠山大臣が高等教育局長をやっていて、このレポートの責任者であっただろうというふうに思います。

 ですから、平成五年からそういうふうに、このことを急がなきゃならぬ、各自治体頑張ってくださいよと言っていて、いまだに十県ほどができていないというふうに聞いていますし、調べてみましたら、今その事業を持っているほとんどの都道府県でも、先ほど苦慮しているという話でしたが、大変苦慮しているわけです。何しろ五十五億円あった特別措置の奨学金をどんと、都道府県頑張りなさいよでは、これはもう大変ですから、都道府県がどうしたらいいかと。

 私の資料では、法の期限が切れた後の奨学資金事業について、継続してやるというのは七県しかない。検討していますというのが十五県です。どうしようか、未定、まだ決められませんというのが六県。国に何とかしてくださいという要望をしているというのが六県。ほとんどのところで、これから解放奨学金の後をどのように受け取ろうか、自分たちの地域の子供たちをどういうふうに、経済的な理由で進学を断念させることはかわいそうだ、今までの努力が水の泡です、逆行するわけですから。逆流するわけですから。

 ということで、各都道府県が努力をしているのですけれども、これは大臣、随分昔からわかっていた。七年も八年も前からわかっていて、文部省として、あるいは今は文部科学省として、どういうふうに都道府県について指導をしていらっしゃるのか、あるいは協議をしていらっしゃるのか。実態があったら、どうぞ。

遠山国務大臣 高校生を対象とする育英奨学事業については、一般的に各都道府県が責任を持って実施されているわけでございます。もちろん、育英奨学事業はあるわけでございます。

 今のお話をるる伺っておりまして、私どもの方といたしましても、来年度以降どうするかということについて、今鋭意研究をしております。ということで、これから国と地方の役割分担を考慮しながら、今の御指摘のような点についても検討してまいりたいと思います。

山元委員 もう一つだけですが、今、日本育英会が、ことしですか、有利子のところだけでもどっとふやされて、そういうことについての施策が進んでいることについては私どもはいいと思うのです。有利子というところが問題なんですけれども、額にしてはずんとふえていることについては承知をしています。

 そこで、そこのところへ、経済的理由で行けない部落の子供たちに、これで借りなさいよ、枠はありますよと言うだけでは、策にならぬと私は思うのですね。それは、例えば経済的理由が非常に厳しい子供がどうしても高校へ行きたい、大学へ行きたいときに、今ある育英会の規則で言うと、成績条項というのがある、予算の枠がある。だから、申し込みをしても、あなたの成績はといって断られる、あるいは、もうオーバーしましたからと断られる、こういう状況がやはり今育英会にあるわけですね。

 ですから、例えば各県がやっているのでいうと、こういう子供たちには連帯保証人だとかなんとかいうことでなしに、高等学校の校長さんが具申をすれば、この子はこういう事情だから貸してやってほしいというふうに県の育英資金に言えば、貸してもらえるという方法があるわけですね。だから、育英会の皆さんにも、ここのところは、一般施策だけれども、うちは受け付けません、その部分は一般施策へ移行する、育英会は、私のところとしてはこのことについては受け入れられません、受け皿がありませんと言うだけでは困るわけでして、そこのところは育英会の皆さんともいろいろ相談をしていただきたい、協議をしていただきたい、何らかの道を見つける努力を育英会の皆さんともしていただきたい。

 一言ですけれども、先ほど藤村委員のお話にありましたが、この間の参議院の予算委員会、新聞の見出しにもどんと出たのですが、「育英会「返済なし」奨学金」といって一面トップで出て、遠山大臣にも飛びついてもらえるだろうと思ったら、さっきちょっと聞いていたら、真意を伺っていないと。真意を伺うどころか、それは真意にしてしまって、飛びついてもらって、取り組んでもらわないかぬわけです。これはやはり財務大臣が言っているわけですから。どうも後で聞いたら、きのう、軌道修正がちょっとあるみたいやというのだけれども、それではならぬということで、ぜひ本物にする努力を大臣にしていただきたいというふうに思います。

 もう時間がありませんから、そこで、具体的なことをここで、どういう方式でやりましょうか、都道府県にこれだけのこういう方法で援助しましょうとか、あるいは育英会、こうしましょうとかいうことについては出てこぬだろう。難しいと思うのですよ、技術的なことがあるものですから。ただ、最後に、大臣に決意として、先ほどからも言いましたように、ずっと三十数年の努力でも、同和地域の子供たちの進学率にまだ差がある、高校進学率でもまだ五ポイント近い差があるというふうに思っていますけれども、まだ差があるわけですね。ですから、こういう状況があるときに、文部科学省として、きょうのところは具体的なことよりも、ぜひはっきりと大臣にお約束をしておいていただきたい。

 三十年と何回も言いますけれども、長い間この問題に取り組んで心血を注いできた団体の人たちや、この問題にかかわってきた人たちがいるわけです。自治体の皆さんも、金は厳しいけれども、独自の奨学資金をつくって自分の地域の子供たちを進学させるということで努力をしてきた、そういう人たちもいます。育英会のように専門にしている人もいます。ですから、そういう人たち、関係者の皆さんとしっかりと協議をしてほしいと思うのです。

 文部科学省としてこういうことをすることにしましたということにならないように、文部大臣にも汗をかいてもらって、そういう関係者の皆さん、当該者の皆さんあるいは自治体の皆さんとしっかりと協議をして、前向きに早急に結論を出したいと、今副大臣は、検討中だ、理解をしているとおっしゃるけれども、しつこいようですけれども、ここのところではっきりとお約束をいただきたいなというふうに思うのですが、いかがですか。

遠山国務大臣 実態を踏まえながら、十分に検討していきたいと思います。

山元委員 ありがとうございました。

 副大臣、よろしゅうございますね。

 実務的にもまたいろいろな問題があると思うのです。ぜひ財務大臣にも食らいついて金をつくってもらわなきゃならぬだろうというふうに思うのですけれども、いずれにしても、子供たちが学校へ行きたいけれどもということで泣かないような施策、納得できるような施策というものをつくり出していただくようにお願いをして、終わります。

 ありがとうございました。

高市委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、まず最初に、文部科学省と総合科学技術会議の関係について、大臣の御認識をお伺いします。

 省庁再編前は総理府に科学技術会議というのがございましたが、こう言ったら語弊があるかもしれませんが、現実には余り機能していなくて、科学技術庁が、ある意味で全省庁の調整官庁として総合的な科学技術政策の方針をつくっていたのかな、このように認識をいたしております。

 省庁再編後は内閣府の中に総合科学技術会議、これは機能が前の科学技術会議とは比べ物にならないほど拡充をされました。その総合科学技術会議が科学技術政策についての基本的な方針を出し、また財政についても重点投資の方針を出し、これにのっとって各省庁がやっていくということになったわけでございます。

 しかし、現在の総合科学技術会議の役目をやっていた科学技術庁が文部省と一緒になって文部科学省になった。それとは別に総合科学技術会議が内閣府にできた。そういうことで、今過渡期にあるのかな。一体どこが本当の意味での科学技術の総合戦略を立てるのか。名目上は総合科学技術会議なんですけれども、しかし、実質的には文部科学省がやらないとできないのじゃないかというふうな意見もございます。

 そういう意味で、この両者の関係をはっきりさせておくことが今後の科学技術政策について大変重要だと思いますので、この点についての大臣の御認識をお伺いします。

遠山国務大臣 今御指摘の点は、まことに大事なことだと思います。

 今回の内閣府、総合科学技術会議が設置されたことによって、科学技術行政と学術行政の融合を図るということができると同時に、科学技術行政が大きく前進できる機会としていきたいと思います。

 その意味では、今本当に過渡期であり、今どういうふうに運用していくかということが今後を決めると私は思っております。

 認識といたしましては、総合科学技術会議が科学技術政策推進の司令塔として、政府全体の科学技術に関する総合戦略あるいは資源配分の方針を作成するということは確かだと思います。

 文部科学省は、政府の研究開発の主体を担うという立場に立っております。したがって、それらの戦略等に沿って各種の研究開発を実施、推進するとともに、関係行政機関の事務の調整等を行うということになっております。ここのところをきっちりと役割として認識をし、かつ実践をしてまいりたいと思っております。

斉藤(鉄)委員 立法府と行政府、今日本は議院内閣制でございますが、そういう意味で、この総合科学技術会議と文部科学省も、議院内閣制とは言いませんけれども、総合科学技術会議の主要な部分を、文部科学省のこれまで蓄積してきた知見を生かして、全く独立するのではなくて、ある意味では、政府と与党は一体だというようなこともありますが、総合科学技術会議と文部科学省は一体、このような形で進めていくのが実質的な科学技術政策の遂行に最も効率的だと思います。私はそのように認識しておりますので、よろしくお願いいたします。

 その総合科学技術会議が、この三月に科学技術基本計画を発表いたしました、五カ年計画でございます。本当にチャレンジングな内容でして、本当にできるのかなということでございますが、この科学技術基本計画についての大臣の認識、決意をお伺いいたします。

遠山国務大臣 今回の科学技術基本計画、今世紀の幕あけに当たりまして、大変力強い内容を含んでいると思います。

 文部科学省といたしましては、この第二期科学技術基本計画に基づいて、科学技術と学術のそれぞれの特性を生かしつつ、創造性に富んだ世界最高水準の研究成果の実現を目指してまいりたいと思っております。

 特に、政府の研究開発の主体を担うという立場に立ちますと、一つは、独創的な基礎研究を推進していく、この任務が大きいわけです。

 と同時に、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の四分野に重点を置いて研究開発を推進してまいりたいと考えております。

 同時に、科学研究費補助金を初めとする競争的資金の拡充でありますとか、あるいは産学官連携の強化、さらに大学などの研究施設の重点的整備など、我が国の科学技術システムの改革にしっかりと努めてまいりたいと考えます。

斉藤(鉄)委員 この基本計画、総合科学技術会議、内閣府が立てたものではございますが、その実行のほとんどは文部科学省なのではないかと思いますので、かつ、これを実行するにはかなりの決意がないとできない内容でございますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 それでは、この中について二、三質問させていただきます。

 今後五年間で、政府研究開発投資、総額二十四兆円ということでございます。物すごい数字であるわけですが、一方、小泉総理は、財政再建、そして聖域なき改革、このようにおっしゃっております。当然、この研究開発分野につきましても聖域ではない、こう思うわけですが、この二十四兆円という計画と小泉総理の聖域なき改革、どう両立させるのか。本当は内閣府に聞くのが筋かもしれませんが、その計画の大半を文部科学省が担っていらっしゃるという意味で、文部科学省にお聞きいたします。

青山副大臣 まことにそのとおりでして、政府研究開発投資の額が相当に今度は上がっていくわけです。対GDP比一%を確保していこう。ところが、財政健全化という大きな課題を抱えてきております。

 したがって、そのことと資源の重点的な配分ということは極めて整合性がとれていると言えなくもありませんが、現実的には非常に困難な課題に我々が取り組むことになるというふうに言えると思います。したがいまして、その意味では、予算の確実な配分についての努力をしっかりやっていきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 重点投資、しっかりやっていく、これはいいのですが、総額二十四兆円という額がもう決められているわけでございまして、そういう意味で、どういう決意でこの総額を達成されるのかという質問でございます。

青山副大臣 先ほど大臣が述べられましたように、重点四事業といいますか、例のライフサイエンス、情報通信、ナノテクノロジー、そして環境、そのほかまた四分野がありますが、これはまさに今我が国にとってどうしても取り組んでいかなければならない非常に重要な研究課題です。

 したがって、その課題を明確に我々が持ち、基本計画に沿ってこの研究開発に取り組んでいくためには、対GDP比一%を何としても確保して、その裏づけを持っていかなければならない、こういう気持ちで、これからも強い決意で臨んでいきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 強い決意で、よろしくお願いいたします。

 「重要政策」の中に「科学技術の戦略的重点化」、三つポイントがございますが、その一番目に「基礎研究の推進」、公正で透明性の高い評価による研究水準の向上というのがございます。

 基礎研究というのは、我が国の中では大学そして文部科学省傘下の研究所、独立行政法人研究所、特殊法人もありますけれども、こういうところが担っております。ある意味では、日本の基礎研究のほとんどを文部科学省が管轄している、こう言ってもいいかと思いますが、その中で、公正で透明性の高い評価というのをどう研究の世界に切り込んでいかれるのか。現実に、今ほとんどないのじゃないか、特に大学については全く評価なんかない、こう言われている中で、どうここを切り込んでいかれるのか、お伺いします。

青山副大臣 今の公正で透明性の高い評価を実施することが極めて重要であるという点については、共通の認識があると思います。

 問題は、競争的な研究開発環境というものを実現していくためには、どうしても客観性の高い評価をきちっと確保していかなければならない。したがって、外部評価を積極的に活用していくという考え方で、それからまた、被評価者に対する評価の手法、基準、こういうものを徹底して周知させていく必要があるであろう。それから、評価内容の開示を図っていくことが非常に重要だと考えております。

 いずれにしても、評価のさらなる改革に我々は積極的に取り組んでまいりたいと思います。

斉藤(鉄)委員 国立研究所、独立行政法人等についてはかなり評価ということが言われておりまして、進んでいると思います。

 問題は大学です。大学でも、ちょっとこういう話をしますと、大学の研究に評価などなじまないというふうなメールがどっと来まして、いかにも学問の自由に抵抗している悪者というふうに決めつけられてしまうような風潮がありますけれども、特に大学、重点投資ということになれば、当然その前提として評価が大事になってきます。大学の学問分野の中で重点投資するためにどう評価をしていくか、一番大事なところだと思いますが、この点についてお聞きします。

青山副大臣 斉藤委員は私の先輩的な方でございまして、今さら私が教えることは何もなくて、むしろ教えていただきたい。

 ただ、平成九年でございますから、前の総理大臣のもとで、評価の大綱的指針というものが出されておりまして、これに従って我々は取り組んでいきたいと考えております。またいい案がありましたら、ひとつぜひ教えてください。

斉藤(鉄)委員 いい案かどうかわかりませんが、総合基本計画の中に、「研究開発システムの改革」ということで、競争的資金の倍増と間接経費(三〇%)の導入、いわゆるオーバーヘッドと言われるものでございます。アメリカの大学ではもうかなり一般化されておりますが、これまでは一〇〇%研究者にしか行かない外部からの研究資金の導入、それを管理費として大学なり管理者がとっていいという制度、オーバーヘッドでございますが、これなどは研究現場のかなり大きな改革につながっていくのではないか、間接的な評価制度の導入になるのではないかと私は思いますけれども、果たして今の日本の大学のシステムでこれが導入できるのかという大きな危惧もございます。

 この点について、導入するんだ、その決意と具体策をお伺いします。

青山副大臣 昨年四月から大学評価・学位授与機構というものを創設いたしまして、国立大学の教育研究について、客観的で透明性の高い第三者評価を開始したところであります。

 各大学に評価の結果をフィードバックして、教育研究活動の改善に役立てていただく、それから広く社会に公表していくというような、それぞれの段階で適切な、効果的な資源配分を行う観点から、参考資料の一つとしてこれをぜひ活用していくことが望まれていると考えております。

斉藤(鉄)委員 ぜひ具体化をしていただきたいと思います。

 それから、国立大学の老朽化、狭隘化の問題でございます。

 これは与党三党のプロジェクトチームでも提言をさせていただき、今後の日本の科学技術力の向上のためにぜひ必要だということで取り組んでいただくことになっておりますが、この計画と現状についてお伺いします。

岸田副大臣 国立大学の施設の整備についてでありますけれども、本年三月三十日に閣議決定されました科学技術基本計画におきましても最重要課題として位置づけられております。これを受けまして、文部科学省といたしましては、国立大学等の施設の重点的そして計画的な整備を図ることとし、四月十八日に国立大学等施設緊急整備五カ年計画というのを策定したところでございます。

 この計画におきまして、大学院施設の狭隘解消や卓越した研究拠点の整備等、約二百十万平米につきまして優先的目標とするとともに、老朽化した施設の改善整備に当たっては、約三百九十万平米につきまして、個別の施設の状況等を総合的に勘案しつつ、優先順位に基づき適切に判断するなど厳選を行っているところでございます。

 今後五年間ということになっておりますが、こういった形で重点的そして計画的に整備を図るということにしております。ぜひこの計画、着実に達成できるように努力する、これが一つ道筋だと思っております。

斉藤(鉄)委員 この点もよろしくお願いいたします。

 それでは、科学技術基本計画から離れまして、次に、原子力政策についてお伺いいたします。

 先ほど総合科学技術会議と文部科学省の関係をお伺いしましたが、それと全く同じ趣旨で、内閣府の中に設置されました原子力委員会、原子力安全委員会、そして経済産業省の中の原子力保安院との関係について認識を問わせていただきます。

 省庁再編までは実質的にこれらの機能はすべて科学技術庁の中にございました。ジェー・シー・オーの事故等あり、その反省も踏まえてこういう形になったわけでございますが、ある意味では、前はすべて科技庁にあったわけですから、わかりやすかったといえばわかりやすかった。それが今、内閣府の原子力委員会そして原子力安全委員会、経済産業省の原子力保安院、そして文部科学省とある意味でばらばらになったわけで、この関係についてはっきり認識をしておくことがまず前提になるかと思いますが、これについてお伺いします。

青山副大臣 何となく釈迦に説法のような気がしまして申しわけありませんが、せっかくのお尋ねですから、お答えしておきたいと思います。

 原子力行政というのは、国家にとって非常に重要な政治課題でございます。これの推進は我々にとっても非常に重要でありますが、原子力委員会と原子力安全委員会そして文部科学省、経済産業省がそれぞれ役割を担って、これからも取り組んでいきたいと思っております。

 そこで、まず、省庁再編後、原子力委員会と安全委員会が内閣府に置かれております。そして、行政庁よりも一段と高い立場から原子力行政を適切にまず推進していく。

 それから、原子力委員会の策定する長期計画を文部科学省と経済産業省で担っていくわけですが、文部科学省においては科学技術振興の観点から、それから経済産業省はエネルギーの安定供給の観点から、特に我々文部科学省においては、原子力行政に責任を持って、高速増殖炉サイクル技術や加速器、核融合等の原子力科学技術を推進してまいりたいと考えております。それから経済産業省は、エネルギーの安定供給の観点から、原子力行政に責任を持ちつつ、原子力発電の推進であるとか、高レベル放射性廃棄物の処分の技術開発などを実施しているところです。

 それから、安全規制についてでありますが、文部科学省は、放射性同位元素、試験研究炉及び核燃料物質の使用にかかわる安全規制を担当しておりまして、経済産業省は、原子力安全・保安院において、商業用の原子力発電所、発電用研究開発段階炉、再処理施設及び核燃料物質加工施設の安全規制を担当しております。

 なお、文部科学省も経済産業省も、審査の結果については、両委員会がそれぞれ独自の立場からダブルチェックを行っているというふうに御理解いただきたいと思います。

 このような分担のもとで、文部科学省としては、関係省庁と連絡、協力をして、安全確保を大前提に、国民の信頼を得つつ、原子力の推進に取り組んでいきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 先ほど平野委員から三条機関という話もありましたが、私は、三条機関のような強大な機関によるシングルチェックよりも、現在の日本のダブルチェックというシステムの方が現実には安全規制が働くのかなという感触を持っておりまして、現在の新しい体制はこのダブルチェックという基本的な考え方で動かされていくということを今確認させていただきました。

 次に、大臣にアメリカのエネルギー政策の転換についての所感をお伺いします。

 私も、アメリカのエネルギー政策を見て、いつか破綻するなと思っておりました。その端的な例がカリフォルニアのあの停電騒ぎだと思いますけれども、今のエネルギーの根幹は原子力と火力でありまして、そういう現実を見据えて新しいエネルギーの導入を図っていかなければいけない、基本的にそういう考え方を持っております。

 そういう意味で、原子力に回帰するアメリカのエネルギー政策は、長い目で見て、人類の幸福に寄与するものと私は思っておりますけれども、大臣の所感をお伺いします。

遠山国務大臣 今般公表されました米国の国家エネルギー政策に関する報告書におきまして、原子力エネルギーの安定供給と地球環境の保全に資するものとして、エネルギー政策の主要な構成要素と位置づけて、推進を図ることを打ち出したというふうに承知いたしております。

 これは、エネルギーの安定供給と温室効果ガス削減への寄与の観点から、原子力発電を基幹電源に位置づけて最大限に活用している我が国の政策と方向を一にしているものと認識しております。このことは、原子力の研究開発を推進している我が省としまして大きな関心を有しております。

 今回発表されましたエネルギー政策の内容を今後詳細に検討いたしますとともに、今後の動向を注視していきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 私と全く同じ認識でございます。

 私は憲法調査会の幹事をさせていただいておりますが、憲法調査会で今、二十一世紀の日本のあるべき姿ということを議論しております。その中で二つほど、大変感銘を受けたといいましょうか、エネルギーに関しての発言がございました。

 そのお一人は曽野綾子さんでございまして、世界じゅうを回ってみて、電力の安定供給のないところ、夜電気のつかないところに民主主義はない、こう明確におっしゃいました。いかに電力の安定供給が我々民主主義国家にとって大事かという点でございます。

 もう一つは、村上陽一郎先生の発言でございました。これは原子力についての発言ですが、原子力について、反とか支持するとかいうこととは別に、現実問題として、今の日本が原子力エネルギーによって支えられている、しかし、その原子力に対して非常に逆風が吹いて、若い人がそれを勉強しなくなった、このことを非常に危惧している、現実問題この日本が支えられながら、若い人がそれを勉強しようとしない、つまりそれは、大きな空洞化を招いて、大きな事故を招いていくのではないかというふうな発言をされて、私も大変そうだなと思ったわけですけれども、原子力についての教育ということについてどうお考えでしょうか。

青山副大臣 まさに御指摘のとおり、原子力の研究開発利用を進めていくためには優秀な人材が必要でありまして、すぐれた人材を育成していく、確保していく、これが重要な課題であります。

 原子力委員会の原子力の長期計画においても、少し長い名前ですから長期計画と短くさせていただきましたが、この長期計画の中でも、大学における多様、有能な人材の養成が必要である。それから、国の研究開発機関における人材育成の重要性が指摘されております。

 そこで、文部科学省としては、まず第一に、大学における人材養成、それから日本原子力研究所による原子力技術者を対象とした研修、それから財団法人原子力安全技術センターによる各種の原子力防災研修、これを実施してきているところです。

 近年、我が国の原子力産業は成熟期に入っているのではないかと理解しておりますが、研究者、技術者は減少傾向にありまして、関係機関が連携して人材養成に取り組んでいくことが必要だと考えております。その意味で、原子力の幅広い可能性に挑戦して、若者に夢と希望を与えるような研究開発活動を展開することによって、原子力を志す人材を育てていきたい、このことが非常に重要だと考えております。

斉藤(鉄)委員 文部科学省としても真剣に考えていただきたいと思います。

 原子力に関して最後の質問でございますが、将来の原子力、核融合、ITER、国際熱核融合炉でございますが、設計作業がほぼ終了というふうに聞いております。今建設という段階ですが、私はぜひ、これはまだ個人の考えでございますけれども、長い目で見れば、日本に建設を誘致することが、日本の科学技術レベルの向上に結びついて必ずや国益につながる、このように思っておりますが、ITERの設計作業の状況、それから誘致についての文部科学省としての見解、時間がありませんので、端的にお願いいたします。

青山副大臣 既にITERの積極的な取り組みについて、衆議院の科学技術委員会においては決議をいただいておりまして、国際協力のもと積極的に進めてきました。超電導コイル技術などのITERに必要な基幹技術の開発を進めてきたところです。

 それから、本年二月には最終設計報告書がまとめられまして、日本、EU、ロシアの専門家による、ITERの目的である核燃焼プラズマによる長時間運転は達成し得る設計となっているという評価がなされております。

 それから、誘致についてでありますが、日本が設置国となることの意義が極めて大きいという結論が出ております。この報告を受けて、原子力委員会として結論を出す予定でありますので、その結論を待っているというふうに考えております。結論を参考として、その後の取り組みを積極的に進めていきたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 ITER計画懇談会も誘致すべきだという結論を出したわけでございますので、政府としても、早急にそういう態度を表明されて頑張るべきではないか。国会としても、いろいろな意見がございますが、頑張りたいと思っております。原子力については以上でございます。

 技術士制度についてお伺いいたします。

 大臣、大変失礼な質問なんですが、これは新しい大臣にいつもお聞きしているものですから、もう既に技術士制度については御存じでしょうが、大臣になる前に、この技術士というものの資格制度については御存じだったでしょうか。

遠山国務大臣 明瞭に詳しくは存じ上げておりませんけれども、私は、この技術士という制度は大変重要だと考えております。

斉藤(鉄)委員 この技術士について、今はこれは日本だけの資格ですけれども、例えばアメリカやヨーロッパや、またアジアの諸国の資格と相互乗り入れをしようというふうな動きもあるようでございます。また、最近、技術者倫理ということも問われておりまして、この技術士と技術者倫理ということも今後検討しなければいけないというふうに聞いておりますが、この点について、どういう状況か、お伺いします。

青山副大臣 APECで、相互承認制度としてこの技術士の制度が取り上げられて、認められていくようでございます。

 そこで、非常に大きな仕事をされる場合に、技術士の倫理というものが、これから重要な課題として必ず上がってくると思います。特に技術士が、後で触れられるのでしょうか、大学の学士と同じような立場で産業界において果たす役割というのは非常に高くて、それがもっと私は社会的に、産業的に求められてくる社会になるのではないか。受験者も非常にふえておるようでして、そういう意味では、これからなおその重要性が増してくると考えております。

斉藤(鉄)委員 大臣に先ほどああいう失礼なことをお聞きしたのは、これまで、私が議員になりまして、科学技術庁長官、何人だったでしょうか、もう十数人ですけれども、ほとんどの方は大臣になるまでは知らなかったというほど知られていない制度で、もっと科技庁として頑張ってくださいという質問をずっとしてきたからでございますが、もう大臣はよく御存じとのことで、ぜひ拡充をお願いしたいと思います。

 最後の質問になろうかと思いますが、これまでは、科学技術庁が技術士という制度を設けて、技術者の社会的地位の向上に努めてきました。文部省は、学位というのが、博士、何とか学博士がありまして、これも研究者の地位の向上に努めてきたわけですけれども、これが今、文部科学省として一緒になりました。同じ省庁の中に博士と技術士と両方あるわけでございまして、そこら辺、性格の立て分けをきちんとしておく必要があるのかなというふうに思います。それが一つ。

 それから博士ですけれども、昔は功成り名遂げた人が、おれは博士なんだという称号だったそうですが、今は研究者としてのパスポートという性格、もう世界的に認識されているけれども、日本はまだそこら辺がはっきりしていないということも言われております。その博士号についての文部科学省のきちんとした考え方と、博士号と技術士との関係についてお伺いします。

青山副大臣 博士は、学校教育法に基づく学位であります。極めて高い地位でございまして、技術士は技術士法に基づく資格であって、高度の専門的能力、応用能力を必要とする業務を、博士も技術士も、いずれも自立して行う能力を有する者ということでございまして、博士は研究分野における能力証明であります。それから、技術士は技術分野における能力認定でありまして、それぞれの分野において自立して活動を行える高度な能力という意味において同様でありまして、技術者にとっての技術士は、研究者にとっての博士に該当するものと認識しております。

斉藤(鉄)委員 博士号に対する認識を。

青山副大臣 博士号は、学校教育法に基づく学位でありまして、大学院の課程を修了し、専攻分野において研究者として自立して研究活動を行い、またはその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力を有する者に対して、大学などが授与するものであります。

斉藤(鉄)委員 要するに、成果に対して与えるものではなくて、研究者としての能力に対して与えるもの、パスポート、こういう認識でよろしいわけでございますね。

 ありがとうございました。終わります。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

鈴木(恒)委員長代理 都築譲君。

都築委員 自由党の都築譲です。

 遠山大臣におかれましては、このたびの御就任まことにおめでとうございます。

 一説では参議院選挙までの看板娘だ、こういうお話も流れておりますが、女性の大臣が今回五人出られた。遠山大臣、そして森山大臣、川口環境大臣、扇国土交通大臣、田中外務大臣ということで、女性が大臣になられるのが当たり前の世の中になってきたというのは、遠山大臣、文部省に御入省されたのは昭和三十七年ということでございまして、文部省というのはもともと学校教育、明治の学制発布のとき以来、男女平等の職場を提供してきたということで、大変意義深いと思うわけであります。そういう文部省に御奉職をされて、今日までいろいろ御尽力をされた成果が今日こういう状況になってきたのかな、こんなふうにも思うわけでありまして、重ねて敬意を表する次第であります。

 それで、きょうは、ただ、そうは申しましても、実はかなりきつい話もちょっとお聞きをしなければならない、こういうふうに思うわけであります。

 まず第一に、大臣は実は国会議員ではないわけでありまして、国会議員でないのになぜ御自分が文部科学大臣に選ばれたのか、そのことについて、どういうふうに小泉総理からはお話があり、また遠山大臣御自身思っておられるか、お伺いしたいと思います。

遠山国務大臣 閣僚人事、今回の場合、小泉総理が大所高所から御判断されたことであると考えます。

 私は、議員御指摘のとおり、国会議員ではありませんが、教育改革あるいは科学技術の振興といった、現在文部科学省の抱えるさまざまな問題を解決する上で、私が適任であると総理がお考えになった結果であると受けとめておりまして、その意味で、しっかりと文部科学大臣の任に当たってまいりたいと考えております。

都築委員 さまざまな課題を抱えているということは事実でございますし、また大変大きな国政上の課題であるということは事実であろうと思います。

 そういった中で、大所高所から小泉さんが選ばれた、こういうことでございますが、では御自身として、今まで文部省の役人をやっておられた、こういうお立場から、大臣というのは実は飛躍をするわけでありまして、大臣になって御自分として何をやりたいというふうにお考えになっておられるか、それをお伺いしたいと思います。

遠山国務大臣 確かに、私は、文部省の時代に長年いろいろなポジションで仕事をしてまいりました。しかし、その後に、これも思いがけずでございましたけれども、大使という非常に重い任務を受けまして、他国で三年余過ごしました。また、その後に、国立の西洋美術館長という形で文化の具体的な分野で活動いたしまして、またことしの四月からは独立行政法人の国立美術館の理事長ということで、任務を果たそうとしていたやさきでございました。

 ということで、確かに文部省での経験はございますけれども、その後に経験したものは、私自身としては幅広いものがあろうかということでの御判断もあったろうかと思います。

 ただ、私自身は、文部科学省の守備範囲につきましては常に関心を持ってまいりました。そして、文部省を離れまして後の日々におきましても、やはり教育のあり方というものが一国の将来を決めるということで、常に注視をしてまいったところでございます。

 このたび、まことに思いがけなくこういう任務につくことになりまして、おめでとうという言葉は全く当たっておりません。しかしながら、私としては、任務についた以上は不退転の決意でやりたいと思いますが、やはり第一に力を注ぎたいと思うのは教育改革でございます。このことは、るるいろいろな機会で話しておりますし、また追って御説明することもあろうかとは思いますが、今の教育の危機的状況について、これをきちんと改革をしていくということが一番の任務であろうかと思います。

 同時に、大学といいますか、大学における教育もそうでございますが、特に学術研究そして科学技術、ここは知的な分野ですね、日本の将来を考えますと、すぐれた人材を有している日本でございますから、知的分野での国際貢献ということも非常に大事でございますし、日本のよって立つところ、その成果が待たれるところでありますので、その分野、科学技術、学術の振興ということも大変重要だと思っております。

 同時に、予算委員会でも、小泉総理も大変力強く鮮明に強調していただきましたけれども、文化の振興というようなことが大事であろうかと思います。

 いろいろ、さまざまにこの省の抱えている課題というものが日本の将来につながっていく大切な役割を持っているということから、そのいずれについても力を尽くしてまいりたいと考えている次第です。

都築委員 今お話を聞いておりまして、確かに、大使とか美術館長、文化庁長官を経験されたということで、日本文化の国際的な紹介とか、あるいはまた美術といった芸術関係の文化を発展させる、こういう観点もよくわかると思うわけであります。

 ただ、御自分で何をやりたいのか、こういった質問に対して、今の御答弁、まず第一に教育改革、ここでとどまっていたらよかったのですが、第二、第三と出てくると、実は私自身、この大臣の所信をこの間聞かせていただき、読みますと、大変広範で精緻で、さらにまた詳細にわたって非常に要領よくまとめておられるわけです。ただ、この中からは、何が本当に自分が一番やりたいのかというポイントというか、大臣御自身の肉声が実は伝わってこないのではないか。

 小泉内閣の中の文部大臣として、一番最後のところに、「聖域なき構造改革」に取り組む改革断行内閣であります、こういうふうに言っておられますが、文部科学行政全般にわたって、大胆な積極的な改革を速やかに進めていくということを言われておりますが、そんなことができるのだったら、今までだってもう十分にできておったのではないのかなというふうに思うわけでありまして、ちょっと、これはまた後ほど戻ってまいりたいと思います。

 実は、昔は、それこそ戦前の場合は、末は博士か大臣か、こういうふうに言われて、身を立て名を上げやよ励めよ、仰げばとうとし、最近では余り卒業式でも歌われなくなってしまったようで大変寂しい思いがいたしますが、そういった同一行政の官僚出身として大臣になられた。今まで民間出身というふうに新聞報道はやっておりますけれども、私は正直申し上げて、そうじゃないと思うのです。前に文部大臣をやられた赤松さん、労働省出身でありますけれども、この人は行政分野がちょっと違うからそうかもしれない。

 ただ、例えば戦前の岸信介さんみたいに、商工次官から商工大臣に上がっていく、こういうような発想の人事というものがこれから行われてくることになるのかなということを考えると、一番の問題は、確かに官僚機構として大変優秀な人材を集め、その中で切磋琢磨をして、そして局長や長官、最後は事務次官というふうなポストまで上がり詰めた人が大臣になっていくというやり方もあるけれども、今、この民主主義の世の中で、国民主権という大原則のもとで、本当の民意を国会の中にどう反映し、そしてどう行政を指導していくかということから考えたら、私は、こういう安易な人事というのは本当は問題を抱えているんではないのかな、こんなふうに思うわけでありまして、ちょっとそこら辺のところについて。

 例えば、以前は、ちょっと正確に、私も幼かったのでよくわかりませんが、天野貞祐さんとか森戸辰男さんとかあるいはまた永井道雄さんとか、そういった方がたしか民間御出身ではなかったのかな、こういうふうに思うわけであります。

 今、本当に、ずっと役所のステップを、ステップ・バイ・ステップ、上がられて、そしてまた退官後は、大使という別の分野かもしれませんが、それでも、外務省の職員、そしてまた西洋美術館長あるいは独立行政法人美術館理事長ということであれば、やはり役所の飯を食っているということでは間違いないわけでありますから、じゃ、どこで大臣は幅広い民意を酌み取られようとされるのか、私は、そのことについてちょっとお伺いをしたいと思います。

遠山国務大臣 不退転の決意で臨むと言っております人間になかなか厳しい御質問でございまして、私が答えるべきかどうか迷うところでございますけれども、しかし、幅広い民意をどうくみ上げていくかということにつきまして、お答えをしたいと思います。

 改革断行内閣として、小泉内閣がさまざまな改革を行うに当たりまして、幅広い民意をくみ上げながら、国民の立場に立って改革を進めることが大切ということは、総理も常にお話しでございますし、総理の出現のプロセス自体がそのとおりではなかったかと思います。

 このため、例えば、教育改革を進めるに当たりましては、各地域での教育改革フォーラムの開催など、総合的な広報活動に力を入れて国民運動を展開しているところでございます。これは前大臣の時代から行われておりますが、私もそれをきっちりと受け継いで、その国民運動の展開にさらに力を尽くしてまいりたいと思います。

 それから、文部科学省の制度の中で、既にパブリックコメントでありますとか情報公開制度の活用など、さまざまな工夫を凝らしているところでございます。

 今後とも、そのような取り組みを一層推進してまいりたいと考えております。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

都築委員 私自身も役人を経験しておりましたから、政治家になってびっくりしたのでありますが、実は、役所の仕組みというのは本当に整然と整理された情報ばかり上がってくるわけでありまして、そこらにおるおっちゃん、おばちゃんたちが、それこそ床屋の政治談義ではありませんけれども、ああでもない、こうでもない、かんかんがくがくの議論の中で、実は政治に対するいろいろな期待を込めてお話が進んでいるというのが本当のところであろうと思いますし、そういった人たちの意見を本当に吸い上げていくことが一番大切なことではないのかな、こう思うわけであります。

 団体の陳情とか、あるいは要請行動とか、あるいは時には抗議行動、こういったものもございますし、今大臣が言われたフォーラムとかあるいは情報公開制度の活用、こういうことも大変重要でございますけれども、そこは、私が見るところ、もう一定のスクリーンがかかってしまって、例えば、大臣が出てこられるんだったら、そんな失礼な質問をしちゃいかぬ、格好よく大臣が答弁できるような質問をちゃんと用意しろと、文部省だったら都道府県の教育委員会とか市町村の教育委員会とか、そういったところにどこかから指令がちゃんと行って、それで、それぞれの町や村やそういったところで今まで一生懸命教育問題に取り組んできた方たちの代表選手が本当に理路整然とした質問をして、そうですか、大臣、じゃ頑張ってくださいということで終わるというのが大体の通例でありまして、実はそんなものじゃないというのは、ここに居並んでいる国会議員の皆さんだったらみんな知っているわけです。

 いかに国会議員という身分が実は脆弱なもので、そういった人たちの支援をどうやって取りつけるのか。だから、ただ意見を聞くだけではなくて、政治家というのは、実は、そういったいろいろな意見がある中で、自分はこう考えるけれども、皆さんもこれでまとまってくれるかということを時には決断をしてやっていかなきゃいけないというのが私は政治家であり、そしてまた、そういったことだから、実は国全体の行政というものが、もう一度根本に戻りますけれども、本当に頭のいい、優秀な官僚機構が理路整然とやったものだけではなくて、国民の民意をしっかりと反映した行政になっていく、こういうふうに思うわけでありまして、ちょっとそこら辺のことをぜひお聞きしたいと思う。

 私も、以前、それこそ海外勤務をさせられました。フランスに勤務をさせていただいたときに、当時、マルチヌ・オブリーという、それこそグランゼコールでいうところのENAですね、ENAを六番で卒業して、卒業してすぐに労働省の官房の次長というところで、ミッテラン政権、社会党政権のもとで、実は労働法の大改正の草案作成を担った人がおります。たしか八八年から八九年。というのは、私が行った八七年には、ミッテランとシラクの保革共存政権ということで、シラクの共和党政権、首相のもとでは勤務したくないということで、コンセイユ・デタの方にたしか勤務をしておりましたが、しかし、しばらくしてロカール社会党政権が成立をしたら労働大臣に、三十八歳ぐらいだったとたしか思いますが、就任をした方がおります。

 だから、実際にそういう形で抜てきをされ、また政治家になっていく、そういうことは大いに私はあるんだろうと思うわけでありまして、だから、遠山大臣は、今回、午前中、馳議員が参議院選挙は関係ない、こういうふうに言っておられましたが、参議院選挙に出て政治家になられてはどうかというふうなことも、大変失礼ながら私は聞きたいと思うのでありますが、いかがでございましょう。

遠山国務大臣 私自身、官僚の中におりましたけれども、十七のポストを文部省で過ごしましたが、常に新しい問題に挑戦し、常に新しい方法を考え、常にある程度の成果を上げてまいったと思っております。同じ官僚という一定の図式でお考えいただきたくないと思います。

 また、政治の世界へ出る出ないにつきましては、個人の信条がございます。私は、自分の信条に忠実に生きていきたいと思っております。

都築委員 ということは、そういう道は選ばないということでよろしいわけですか。(遠山国務大臣「そのとおりです」と呼ぶ)

 そのとおりですということでございますので承りまして、そして、今言われましたが、私自身役人もやっておりましたから、今、たくさんのポストを経験されてきたということでございますけれども、正直申し上げて、じゃ、今はどなたに対して責任を持つ、これ、ちょっと言い方があれかもしれませんね。今の立場は、もう既に政治家である、国会議員という身分はないけれども政治家である、こういうふうにお考えでございますか。

遠山国務大臣 私は、大臣に与えられた職務を忠実に、かつ前向きに、全力を挙げて取り組むということでございます。

 政治家であるかどうかというのは、世の中が判断されることであろうかと思います。

都築委員 国会議員の一番の特質は、やはり選挙によって選ばれてくるということで、最終的な責任を有権者に負うというのが一番大きい問題だろうと思うのです。

 国家公務員、各省の組織に勤務する公務員は、最終的には大臣を補佐する、そういう役割を与えられているにすぎないわけであります。確かに、国家公務員法等に基づいて職務専念義務とか忠実義務とかさまざまな義務がありますけれども、現実には、上司に対して、その指示を受けてその職務を遂行し責任を負うということでありまして、直接的に国民に対して責任を負うものではないというふうに思うわけであります。だから、その点を私はぜひしっかりとわきまえておいていただく必要があるというふうに思うのであります。

 それで、もう一度戻ってまいりますと、私は、だから、先ほど御答弁を、馳さんの御議論もありましたし、それからその後の藤村先生や山元先生の御議論を聞いておりますと、実は文部大臣の所感として、先ほどちょっと言及をいたしましたが、この大臣あいさつ、実は藤村委員の答弁において、認識は町村前大臣と全く一緒です、こういうことになるわけでありまして、確かに専門性はおありになるかもしれないけれども、そういったことで、果たして町村氏にかわって、これは小泉総理が選ばれた人事でありますから、そこのところは小泉総理に聞くしかありませんけれども、それでどうやって大臣としての見識を発揮して、新しい本当に国民が期待するような教育改革、あるいはまた学術研究の振興、文化の振興、そういったものが進んでいくのだろうか。全く同じだったら、では役人の皆さんに、おい、やっておけといって大臣が言ったのと同じじゃないのか、こんな印象を持つわけです。

 それから、奨学金の問題に言及がございました。それも慎重に検討します。ここだって、それは同僚であった役人の皆さん方の御意見を聞かなきゃいけない。財務省に対してどういうお話になるかわからない、そういった慎重さがあるかもしれませんが、しかし、文部大臣を離れて国務大臣という立場でおありだったら、実際には、ええ、やりましょうというふうな形ですぐに御返事をされるのが私は政治家としての実は大臣のあり方ではないのかな、こう思うわけでありまして、その点について、ちょっと何か御感想がございましたらお聞かせいただければと思います。

遠山国務大臣 先ほども明瞭に御答弁いたしましたとおりに、私は教育改革というものが第一に大事であります。この教育改革の今の流れは、私が就任して突然でき上がることではなくて、既に内閣なり政府なりがじゅんじゅんとしたプロセスを踏んで今日に至っております。そこのところを前提としないで、そこのところまでおやりになった前大臣の努力を前提としないで、どうやって、ではその上に空中楼閣を築けとおっしゃるのでしょうか。私は、とるべきものはとり、さらにつけ加えるべきものはつけ加えて、しかし、強い指導力でこの難局を乗り越えていきたいと考えているところです。御理解をいただきたい。

都築委員 それでは、そういう方向で努力をされるということでございますが、小泉政権の文部科学関係の特色、目玉というのはどこにあるのだろうか。

 というのは、「聖域なき構造改革」ということをキャッチフレーズにやられておるわけでございまして、ただ、多くの皆さん方は、総理の所信表明の中に教育関係部分がわずかに数行しかなかったということに、特に文部科学委員会関係の皆さん方は落胆をされたのではないのか、こんなふうに思っているわけでありまして、本当にどういう目玉を、今までと同じことでやるのだったら、では、それは森政権と同じではないのか。確かに長い経緯はあるかもしれないけれども、実際のところ、それをまとめてきた時期といったものがあるわけでありまして、本当に、ではその中でどういうところを先にやって、どういうところに重点を置いてやっていくのか、そこのところをぜひお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。

遠山国務大臣 まず、小泉総理の所信表明におきまして、教育の部分が少なかったとか多かったとかいうお話でございますけれども、私は、あの中に本来やるべきことがきっちりと書かれた上で、あの締めくくりの中に米百俵の精神の必要性にも触れられているということは、今日、日本が抱えている問題の中で人づくりが一番大事であるということを鮮明にされたと思っておりまして、教育改革の重要性というものを総理御自身も力強く明確にされたと思っております。

 そういう前提の上に一体何をするかということでございますが、私自身は、今日の教育改革の中で、いろいろなとらえ方はございますけれども、一番大事にしていきたいのは、子供たちが学校において本当に学ぶことの楽しさを身につけること、そして豊かな心を身につけていくこと、その二つが日本の今の国民の皆様が一番要求していることではないかと思います。

 一方で、学力低下というようなことが言われ、また心の荒廃というようなことが言われております。それは家庭であり、社会であり、いろいろなところが関係をいたしておりますけれども、やはり専門家、プロである教師を擁している学校がその問題に正面から立ち向かっていくことが必要であろうかと思います。

 では、それを実現するには一体どうしたらいいかということで、さまざまなプランが既に構想されております。それは、二十一世紀教育新生プランという形で構成されているわけでございまして、それに魂を入れ、実現していくというのが今の一番の課題であるわけでございます。何より、それを実施していくために四つの法案が出ておりますので、これを速やかに通していただいて、その改革への勢いをつけたいと考えております。

都築委員 学校が楽しくあるべきである、ゆとりがあって充実した教育ができる、教える側のプロを養成する、それぞれに重要なことだろうと思います。

 ちょっとここでは質問を全然通告しておりませんでしたけれども、今のこの世の中、こういう問題が起こって、こういう問題というのは青少年の犯罪とか、あるいは不登校の問題とか、いろいろな学校教育の問題、大臣が御認識されている問題があるわけでありますが、その背景にある、本当に日本が今直面している状況というものをどういうふうに御認識をされておられるのか。

 例えば、以前中国の言葉で、衣食足りて礼節を知るという言葉がございました。最近、週刊誌の中には、衣食足りても知り得ぬ礼節とかいうコラムをつくって写真を掲載したりなんかしているのもあるようでありますが、衣食足りても知り得ぬ礼節、衣食は足りても結局礼節というのは知り得ないのだという状況の中で、今人間の社会というものが、今までは貧しい中でそれぞれ力を合わせて、より豊かに、より安全に、より安心できるようにということで協力をしてきたけれども、今はどうも世の中が変わってきているのではないのかというのが私の印象であります。

 そういった印象の中で、例えば明治、今からそれこそ百数十年前にできました今の学校制度といったものが近代化の中で果たしてきた役割というものはありますけれども、あの貧しい時代にやってきたと同じようなことをやり続けていていいのだろうか、もっと基本の枠組みを変える必要があるのではないのかなというのが実は私のまだおぼろげな考えであります。

 大臣御自身は、このさまざまな、犯罪とか不登校とかいじめとか、あるいはまた、例えばそういった子供が大きくなって児童虐待とか、あるいはまた突然キレて十七歳の少年の犯罪とか、そういったものの背景にあるものをどのようにお考えになっているのか。これはちょっと通告をしておりませんが、行政に長い間携わってこられたということで、どういうふうに御認識を持っておられるのかをちょっとお伺いいたしたいと思います。

遠山国務大臣 今のお話は、正確な分析というものは膨大な論文をもってすべき事柄であるかもしれません。しかしながら、今のお尋ねに際しましてお答えするといたしますと、やはり幾つかの原因があろうかと思いますけれども、心の問題ということで絞って申し上げれば、これまで日本人が持ってきた、あるいは忘れてはならないようなものを今忘れてしまったという点が一つあろうかと思います。

 教育には不易と流行というものがあると思います。不易の部分というのは、本当に、生きていくときに、どういう考え方で、どういう態度で生きていくかということの基本がしっかりと身についていなくてはならないと思うわけでございますが、第二次世界大戦まではそれなりの、それぞれの家庭あるいは社会における規範というものがあったと思いますけれども、第二次世界大戦後の社会というものはそういう規範性というものを軽視してきたと申しましょうか、必ずしも重要視してこなかったというようなことがあろうかと思います。もちろん、人により、子供により、非常にすぐれた人たちもいるわけでございますけれども、トータルとして見た場合に、日本の社会が忘れたもの、そのことを十分今考え直し、取り戻すべきものは取り戻す必要があろうと思います。

 同時に、二十世紀の終わりごろから、社会が非常に大きな勢いで変化をしてまいっております。その急激な変化というものは、私どもの身辺でも音を立てて動いているというふうに感じるぐらいでございます。

 青少年をめぐる社会の変化という形では、子供たちがその楽しみ方、あるいは用いる道具、あるいはインターネットを通じたいろいろな新しい知見、その知見の中にもプラスの面、そうでない面あろうかと思いますけれども、そういった大きな環境の変化というものが子供たちを取り巻いている、大人たちも取り巻いているわけでございますが。

 そんな中で、どうやって子供に、本当に生きていくのに必要な基礎、基本の学力と、よりどころとすべき心の糧と申しますか、そういったものが必要であるわけでございますけれども、そういう点の重要性について認識することの不足、またそういうことをきちんと教育していこうということへの努力の不足というものは、ある程度指摘できるのではないかと思います。

都築委員 大変奥深い御見識をお聞かせいただきまして、ただ、今のお話をお伺いいたしますと、先ほど大臣が言われた、私は教育三法といったもので本当に十分なのか、大丈夫なのかなということを実は考えるわけでありまして、これはまた、いずれ法案の中で議論をすることになろうかと思います。

 それで、もう一度、政治家かどうかという議論に戻って大変恐縮でありますが、今、連日新聞をにぎわしておりますのが、実は、ハンセン病の国家賠償訴訟に対して、熊本地裁の判決が五月十一日に出されました。そして、控訴期限が二週間ということですから、五月二十五日までに政府として控訴するかしないか、そういった決断が迫られている状況の中で、小泉総理に原告団の皆さんが面会を申し込んだけれどもまだ会っていただけない、こういう状況が今続いておるわけでありますし、また、控訴するのかしないのかの時期も迫ってきている、こういう状況であります。

 私自身、今回の原告団の皆さんあるいはまた弁護団の皆さんとのいろいろなお話の中で、国会議員の懇談会にも参加をさせていただいて、いろいろお話を聞かせていただきました。本当にひどい実は実態があったんだ、こういうふうにつくづく思うわけでありますし、映画の中でしか実はそういう場面も、確かベン・ハーという映画がございましたが、そういった中でそういう病気があるということも承知をしておりました。

 ただ、学校教育の中で、実は随分いろいろ取り上げられておったんではないだろうかなということも思いまして、資料をお願いしたわけであります。そうしたら、現実に、実は教科書のコピーを、私の事務所も探しましたし、行政の方からもいただきました。

 一つは昭和四十七年、「中学校新保健体育」、大日本図書。これは保健3年のところでありますが、らいというのは

  らい菌の感染によって起こる慢性伝染病で、神経や皮膚をおかす病気である。潜伏期はひじょうに長く、数年から十数年である。以前は不治の病気と考えられていた。しかし、近年、医学の進歩によって、らい患者はたいへん減少し、社会復帰もできるようになった。しかし、適確な予防法がないために、まだ一万人近い患者がいるといわれている。

 それから、昭和五十三年、これも同じ「新版 中学校新保健体育」、大日本図書。ここでは、同じような記述ですが、少し変わっておりますが、

 らい らい菌の感染によって起こる慢性伝染病で、神経や皮膚をおかす病気である。潜伏期は数年から十数年である。患者数は現在全国で約一万人で、最近の発生届出患者数は年間百人前後である。最近よくきく薬が開発され、完全になおって社会復帰することが多くなった。らいのことを、らい菌を発見した学者の名まえをとって、ハンセン病とよんでいる。

 それから、同じ昭和五十三年の、これまた東京書籍の「新編 新しい保健体育」。ここでは、ハンセン病ということで表題がつけてありまして、

  らい菌の感染によっておこる慢性伝染病で、遺伝病ではない。菌を発見したハンセンの名まえをとって、ハンセン病という。一九〇〇年には三万人ほどいた患者も、最近はすぐれた薬によって、約一万人ほどに減った。また、早期に治療すれば完全になおるようになり、新しく発生するものはほとんどなくなった。なおったあと眉毛が落ちたり、手指が曲がったりするため、むかしは社会の人の偏見があったが、完全になおった人は、健康な人と同じであるから、職場や家庭であたたかく迎えるようにしたい。

という実は記述になっておるわけです。

 昭和五十三年というのは、厚生省が熊本地裁の裁判の中で主張した、実は、昭和五十六年以降にハンセン病の解決方法というのはある程度確立した、それ以後については、確かに行政の対応、立法の対応がおくれていたかもしれない、こういう主張をしておったにもかかわらず、文部省の検定を受けているでありましょう保健体育の教科書には、既にここまで、差別や偏見をしてはいけないという形で取り上げておるわけでありますね。

 それは何に基づくのか、こう思いましたら、昭和四十四年の中学校学習指導要領というのが出されておりまして、その中で、これはどこの(5)かわかりませんが、「病気とその予防」、アとして「伝染病の予防」「伝染病の種類とその現状、予防の原則および予防接種について知ること。特に、赤痢や結核の原因、感染経路、症状および予防について理解すること。」こうなっておりまして、その後、「内容の取り扱い」という項目がありまして、(5)として、「内容の(5)のアについては、癩、痘そうの推移にも触れるとともに、性病の概要についても取り扱うものとする。」ということで、ハンセン病についてもちゃんと取り扱うようにというのが、学習指導要領ということで、昭和四十四年当時、もう既に、実は文部省は、こういう教科書を使って子供たちに教育をしておった、こういうことだろう、こう思うわけです。

 そうすると、厚生省の主張していることは一体何だったのか。予防法が確立していない、だから、強制隔離して、全国十三の園にそういう患者さんたちを終身閉じ込めておくんだという姿勢をとり続け、そして大変残酷なことも行われておったわけです。

 昭和四十四年というと一九六九年でありますが、この原告団がつくった資料によりますと、「優生保護法」に基づくハンセン病を理由にした断種・人工妊娠中絶数ということで、一九六九年、断種は男一人、女二十四人、計二十五人、人工妊娠中絶数は九十三人、翌年の一九七〇年、断種、男二、女四、計六、そして人工妊娠中絶数百四十六、実はこんなことをやっておったわけでありまして、これを一体どういうふうに政府は認識をするのか。

 だから、時間がもう参りましたが、今回、実は政府の方は、控訴して和解をするという極めて形式的な対応をとろうとしておりますが、それは、その理由として、例えば、立法の不作為を、こんなことを一々やられたらたまったものではない、それから、除斥期間という問題も、その論争が、実は原告の主張に近い形でというのは納得できない、あるいはまた、損害が個別ではなく共通損害という形でやっているというのは、これはまた悪例を残す。

 こんな、ほかの裁判への影響を懸念して、平均年齢七十四歳という状況になった高齢者の皆さん方、もう控訴をやっておったら恐らく救うことがなかなかできないかもしれない、そういう状況、あるいはまた、国の政策が誤っておったということについての謝罪を求めているわけでありまして、それについて、例えば小泉総理に会うべきだという坂口大臣や川口大臣あるいは中谷防衛大臣、こういった方たちのお話を聞きますと、ぜひ遠山文部大臣も、こういう行政を担ってきたお立場から、ぜひ小泉総理に会うべきだというお話と、控訴は、ぜひ政治家の立場からも、政治家ではないかもしれませんけれども、そんなことをやっていいのかということを御主張されたらいかがかということを最後にお伺いしたいと思います。

遠山国務大臣 個人としてはさまざまな感情がございますけれども、これはこの委員会で公式な立場で申し上げることではないので、コメントを差し控えます。

都築委員 終わります。

高市委員長 児玉健次君。

児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 国連子どもの権利委員会に対する日本政府の第二回報告をめぐって質問をします。

 最初に、外務省からおいでくださっている政府参考人の高須さんにお尋ねをします。

 国連子どもの権利委員会に対する日本政府第二回報告は、この五月が期限だと私は承知しておりますが、報告の作成と提出の状況は今どうなっているか、端的にお答えいただきたいと思います。

高須政府参考人 お答え申し上げます。

 児童の権利条約の規定に基づきまして、締約国たる我が国政府は、条約において認められます権利の実現のためにどういう国内措置をとっているかということで、報告書を出すということになっているわけでございます。

 今回は第二回報告ということで、今月出すということで、現在鋭意作成を進めているところでございます。

児玉委員 そこで、第二回政府報告、これは子どもの権利条約の第四十四条にも規定がありますけれども、日本の子供が置かれている状況を正確につかんで、そして、国連子どもの権利委員会が九八年六月に採択し、最終所見として示された、主たる懸念事項、提案及び勧告、この各項に誠実にこたえることが求められていると私は考えますが、いかがですか。

高須政府参考人 今回の報告書は第二回報告書ということでございます。

 我が国が締約して以来、最初の報告書というものは、一九九六年の五月に出したわけでございます。その報告書に基づきまして児童の権利に関する委員会がそれを審査したということで、その報告書が九八年の六月に出ている。その最終見解におきまして、日本の報告書についての分析が行われ、勧告が出されたということでございますので、今回第二回の報告書をつくるということに当たっては、その最終見解で挙げられております児童の権利に関する委員会の懸念、それから提案及び勧告というものを十分配慮して、また、この報告書が現在の我が国の児童を取り巻く状況をできる限り正確にとらえたものになるよう、そういう観点から努力しているということでございます。

児玉委員 まさにそのようにしていただきたいのです。主たる懸念事項、提案及び勧告、極めて具体的な内容を含んでいるものもありますから、それに対して、そらすことなくこたえていただきたい。

 外務省に対してもう一つ、最終所見の三十四は、日本政府に対して、各条約の原則及び規定の実施及び監視に当たって、NGOと緊密に交流し協力するよう求めています。第二回報告の作成で、このことが非常に重要だと私は考えます。

 先日、外務省がNGOと二回の協議の場を設定されて、私もそれに参加いたしましたが、この最終所見の三十四について外務省の考えをお聞きします。

高須政府参考人 児童の権利に関する委員会が九八年に出しました最終見解の三十四項というところに、締約国に対して、条約の原則及び規定を実施し監視するに当たりまして、NGOと緊密に交流し協力するように勧奨するということになっているわけでございます。

 政府といたしましては、この見解を踏まえて、NGOからの必要な情報提供を受けたり、あるいは関係するNGOの方々との意見交換会を適宜実施するということで、最近も二回開催させていただいた次第でございますけれども、このような、政府のみならず社会のすべての構成員の積極的な取り組みが必要だという観点から、NGOとの協力関係を深めているところでございます。

 今後とも、必要に応じましてNGOとの連携を積極的に進めたい、そう考えております。

児玉委員 今のお話の、今後とも積極的に進めていきたい、それを私は強く希望して、外務省、御苦労さまでした、これで外務省に対する御質問を終わります。

 さて次に、遠山大臣にお伺いをしたい、こう思います。

 最終所見の二十二に次のような指摘がありますね。委員会は、これは子どもの権利委員会です、児童が、高度に競争的な教育制度のストレス及びその結果として余暇、運動、休息の時間が欠如していることにより、発達障害、ディベロプメンタルディスオーダーという言葉を使っていますね、発達障害にさらされていることについて、条約の原則及び規定、特に三条、六条、十二条、二十九条、三十一条に照らして懸念すると。委員会は、さらに、登校拒否の事例が看過できない数に上る、さまざまな訳がありますけれども、シグニフィカントナンバーという英語が使われていますが、そのことを懸念するとあります。お読みのとおりです。

 そこで、サミット参加国政府に対して、この国連子どもの権利委員会は、勧告そして懸念を表明しています。それを私、入手してそれぞれ見ました。アメリカはまだ入っていない。ロシアの報告はごく最近出たばかりですから残りの国々のものということになりますが、日本のように、教育制度の根幹に触れて、このような厳しくかつ率直な懸念が表明されたところは他にありません。

 そこで、問題なのは、九八年六月にこの勧告を受けた後、事態が改善されず、依然として深刻が増していることです。

 ちょっと今お配りした資料を皆さん、大臣にもぜひ手に取っていただきたいと思います、お配りした資料ですね。文部省の資料によって作成いたしました。いただいた資料が九四年で、二〇〇〇年はまだ未集約だということですから九九年までですが、これを見て、私は多くのことを考えました。

 不登校は、九四年、七万七千四百四十九、これを一〇〇としましょう。そうすると、残念ながらずっと伸びていって、そして九八年、十二万七千六百九十二、九四年に比べて一六五になりますね。九九年が十三万二百二十七名、一六八です。増加していく傾向に変化がないし、そして、九八年六月の勧告を受けた後もその増加傾向に変わりがない。

 まずその点について、大臣、これをごらんになってどうお感じか、お答えいただきたいと思います。遠山大臣からお願いします。

遠山国務大臣 不登校、年間三十日以上の児童生徒、これが増加の傾向にあるというのは大変残念でございます。

児玉委員 まさに残念ですね。文部科学大臣として極めて残念だという点では、私と同じ考えですね。

 それが児童だけなのかどうか。この点は、外交官もなさったあなたは御存じかもしれないけれども、イタリアの元外交官で、カナダやNATO、国連大使もなさったフルチさんが、この九六年五月の日本の初回審査に委員として参加されている。フルチさんはこうも述べる。ある研究によりますと、日本においては神経システムの発達にゆがみが生ずる子供が多くなったということですと。

 そして、つい最近、五月十九日に仙台市で、日本小児学会が開かれて、そこで、厚生労働省からの委託を受けているわけですが、奥野晃正さんを主任研究者とするチームのレポートが発表された。大臣もごらんになったと思うけれども、五月二十日の朝日にそれが出ています。保健室に来る小中高校生、七人に一人が心身症、これは少ないデータではありません。九九年十月の第四週の時点で調査をした。千二百二十四校から回答が来た。保健室に来た児童生徒は約三万八千六百人、このうち五千二百人が、朝日によれば心身症と判断された。

 私は心身症とくくるのは問題だと思って、厚生省に問い合わせたら、そのレポートの概要が届けられました。それによると、心身症、神経症等としてあって、そして、レポートの中では、心の問題を抱える子供というふうに表現しています。この方が正確だと思いますね。

 先ほどのような極めて残念な不登校の増加の傾向と、そして子どもの権利委員会が二十二で指摘をした発達障害にさらされている子供たちが起こしている状況、ここのところは、至急になぜそうなるのかということを突き詰めて、そして、日本の教育を子供たちが伸び伸び育つように改める必要がある、私はこう考えますが、大臣、いかがですか。

遠山国務大臣 不登校ばかりでなく、いろいろな問題行動がございます。それは、いじめであり、学級崩壊であり、そのようなことが起きていることは現実でございます。これを正面から受けとめて、どう対応していくかというのが今の教育改革の主たる柱でございます。

児玉委員 高度に教育的な、高度に競争的な教育制度によって非常な抑圧を受けているという点で言えば、子供だけではありません、教師も同様です。

 先ほどの九八年六月の初回報告の審議を私はずっと読んでおりまして、その中で、ウェドラーゴ委員がこういうふうに述べていますね。日本の教育制度が、子供にとっても教師にとっても、抑圧的になっている、この指摘は当たっていると思う。

 それを示すのが、先ほどの資料の二つ目です。ちょっとごらんください。教職員の病気休職者数、その中で、左に括弧抜きで書いているのが病気休職全般です。かぎ括弧の中に入っているのが、文部省の集約によれば、精神疾患によるものの内数です。九四年を一〇〇とすれば、九九年は病気休職全体は一二四です。ところが、教職員の精神疾患によるものの内数は、九四年を一〇〇とすれば、九九年は一六二です。

 もちろん、精神疾患にかかって、そして休職を余儀なくされる、そこに至る要因はさまざまです。しかし、ここの子供の不登校の増加傾向と教職員の精神疾患によるものの増加傾向が、極めて残念ながら高度の相関関係を示している。そこのところにも、競争主義と管理主義を主体とする現在の日本の教育の弱さが端的にあらわされている、私はそう考える、いかがですか。

岸田副大臣 先生御指摘のように、こうした数字を見まして、今複雑化する現代社会におきまして、いろいろな要素が絡んでいるとは思いますが、生徒指導上あるいは教科指導上の心身の疲労や悩み、これも一つの背景になっているというふうに考えられると思います。

 そして、先ほど子供たちのストレスの話もございましたが、それも含めまして、一九九八年六月に児童の権利に関する委員会の最終計画が出た後、児童に対しましても、さまざまな施策を文部省でも行っているところであります。

 そして一方、教師におけるさまざまなストレス、こういったものの問題点もしっかり把握した上で、一部の教員に過重な負担がかからないような措置ですとか、あるいは学校行事の見直し、効率化、さらには、相談ができるような環境づくりとして、専門家によるカウンセリングの整備、こうした具体的な積み重ねを続けているところでございます。問題意識におきましては、先生おっしゃるとおりだと存じます。

児玉委員 子供の不登校、それから教職員の、さっき述べたような疾患を少なくするために努力をなさる、これは当然のことです、してもらわなきゃ困る。にもかかわらず、状況が変わっていないというところを直視すべきです。

 皆さんが平成五年六月二十九日に、教員の心の健康等に関する問題についてというレポートを出されていて、そして今、副大臣がおっしゃったように、精神疾患に至る経過というのはさまざまです。私も、そのことはそうだと思う。

 しかし、この中でさえ「心の不健康状態に陥ることを未然に防止するために、学校運営をどのように改善すべきか。」ということをこのレポートが文部省自身の課題にしていますね。そのことが課題にされたにもかかわらず、先ほどのように、減少傾向にはなっていない、むしろふえてきている。

 そこで、具体的に伺いたいのです。

 最終所見四十三では、過度なストレス及び不登校を防止し、かつそれと闘うための、闘うという言葉を使っていますね、かつそれと闘うための適切な措置をとるべきことを貴締約国に勧告する、ずばり指摘していますね。この間、日本政府が高度に競争的な教育制度の是正を中心に、逆はあったとしても、適切な措置をとったとは私は到底考えられない。だからこそ、さきに示したような状況が出てきたのではないか。事実は冷厳です。この点、大臣どうですか。

岸田副大臣 一九九八年にこうした最終見解をいただいた。その後の努力にもかかわらず、数字がふえている、悪化している、御指摘をいただきました。

 この手の問題、そして教育全体の大きな問題、なかなか一つの施策をしてすぐ結果が出てくるものではないということを考えますときに、この辺、大変大きな課題だと痛感しております。

 そして、この問題、子供たちにとりましても、どの子供にも起こり得るという視点に立ちまして、やはり家庭、地域、学校等の連携が大切だという認識のもとに、さまざまな施策は行っているわけであります。

 学習指導要領の改正ですとか、あるいは生徒指導総合研修講座ですとか、スクールカウンセラー、心の教育相談室、そしてさらには、学校外におきまして、適応指導教室等の取り組みを支援するスクーリング・サポート・プログラム、こういった政策を行っているわけであります。こういった政策、すぐには数字にあらわれていませんが、これは大きな積み重ねが必要だと思っています。

 この問題意識、しっかりと確認した上で、これからもしっかり努力していく問題だと認識しております。

遠山国務大臣 今副大臣からお答えしたとおりでありまして、この問題は本当にいろいろな角度からよく分析をした上で、また、いい方途を間断なく対策として打っていく必要があろうかと思っております。新しい学習指導要領に基づくいろいろな体験的な学習でありますとか、ああいったものというのは、私は、これに一つの解答を与える方途であろうと思います。

児玉委員 その点の議論はこの後じっくりやりたいのですが、例えば、学習指導要領を法的拘束力あるものとして現場の教師に強要することについては、国内での論議だけでなく、九八年五月の何日間かの審議の中で各委員から随分厳しい指摘がされていますね、日本における抑圧的な教育課程の教師に対する強要という言い方で。そして、この間、国旗・国歌の法律ができて、そしてそれが今学校にどんな状況を与えているか、これもそのうち集中的に議論をしたいと思います。

 問題は、副大臣の言葉の中で、ある施策を行う、その施策がどうなるかというのは、近いうち私たちは行政の政策の評価をどうするかという法律を議論することになるけれども、結果が雄弁ですから、結果で見なければいけない。あれこれやるけれどもその状況は少しも変わっていない、状況の深刻化のベクトルは少しも向きが変わっていない、そのときに文部行政の責任者としては何をしなければいけないのか。

 残念だと私も思います。大臣もそう思っていらっしゃる。そうであれば、その点で思い切った検討をしなければいけないし、そして第二回政府報告の中で、その点も、やはり日本政府としての至らなさを明らかにしていく必要があるだろう、私はそう考える。

 そこで、もう一つの問題です。

 それは、最終所見四十五で、国連子どもの権利委員会は日本政府に対して、日本政府は体罰及びいじめを根絶するための包括的なプログラムを開発すべきことと勧告しています。体罰及びいじめを根絶するために包括的なプログラムを開発すべきだと。この点で、文部省がこの九八年六月以降、どんな努力、どんな措置をとられたのか。

 外国の人たちはなかなかよく見ていて、例えばこの問題で、ブラジル出身の女性外交官で、九八年当時オランダ大使であったサーデンバーグ委員はこう言っていますね、日本において体罰が違法であるというだけでは不十分ですと。文部省から参加した人が学校教育法で体罰は厳しく禁じられていると言うことに対する、これは見事な反論ですよ。体罰が違法であるというだけでは不十分です、違法にもかかわらず行われているわけです、日本政府はその真の原因に取り組む必要がありますし、調査を行うべきです、こうも発言していますね。

 最終所見四十五、包括的なプログラムを開発する、この点でどんな努力、措置をとられたか、お答えいただきます。

岸田副大臣 まず、児童生徒のいじめについてでありますが、平成十一年度の発生件数は約三万一千件でありまして、四年連続減少しております。数字を重視するというのであるならば、これは、減少しているということは、一つ注目するべき点だというふうに思っております。

 こうした結果を見ながら、この最終見解後、我が国におきましても、引き続きまして、規範意識の徹底を初めとする心の教育、あるいは研修の実施、スクールカウンセラー、心の教室相談員の配置、あるいは学校、家庭、地域一体となった取り組みを推進しているということであります。

 また一方、体罰につきましては、残念ながら依然行われておると認識しております。このあたりはしっかりとこの現状を認識した上で、体罰の根絶に向けた徹底を一層進めていかなければいけない、こうした認識でおります。

児玉委員 今、副大臣が率直にお認めになったように、体罰ではないかとして問題とされる、学校で調査した事件の発生件数、平成七年千三十八からほぼプラトーですね、減っていないですよ。だからこそ、包括的なプログラムの開発が求められている。

 そこで、私は、これは最後ですから遠山大臣にお答えをいただきたいのだけれども、子供たちがどう言っているかというのは直接聞いてほしいのですね。子どもの権利委員会に向けて、NGOが全国の子供から意見を集めています。その中で高校生の男子がこう言っている。学校の先生の中ですぐ暴力をする人がいる、見ていると気分が悪くなり、授業のムード全体が暗くなる、また、怒らせないように気を使ったりして疲れると。さすが高校生ですね。

 この状況をなくさなければいけない。大臣の取り組みについての抱負をお聞きして、終わります。

遠山国務大臣 厳密な意味での体罰が許されないのは当然であります。指導によってそのことを徹底していくというのは大事でございますが、子供たち自身の行動なり態度なりというものを一体どうしていくかというのもあると思います。その意味で総合的な方策というものが要ると私は考えています。

児玉委員 恐縮ですが、私、最後と言ったけれども、今来たメモを見るとあと五分あるそうですから、大いに喜んで、もう一問、二問、お聞きしましょう。

 遠山さん、話をかみ合わせませんか、大臣。今あなたがおっしゃったように、子供たち全体の雰囲気その他もいろいろ要素としてあるでしょう。そういう中で、私、これをずっと読んでみまして、言われていることは、教師の体罰、暴力、暴力的雰囲気がどのくらいクラス全体を暗くしているか。さっきの高校生ぐらいになりますと、先生を怒らせないように、ある意味じゃなだめているんだから、だから疲れる、そう言われるような雰囲気がある。

 そして、体罰が学校教育法で禁止されているというだけでは非常に不十分で、先日、私は法務省に来てもらって、この点で法務省はどんな努力をしているかと聞いたら、「体罰をなくそう」という、非常に説得力のある内容の豊富なパンフレットを、法務省の責任で運用していますね。

 文部省に今、国連子どもの権利委員会が求めていることは、例えば、全国の教職員に対してこういった形で、体罰がなぜ今の日本の教育で許されないのか、そのことをはっきりと示すことです。学校教育法で何と書いてあるとか、何年に何とか局長がどんな通知をしたなんというようなことは過去の話で、今求められているのは、九六年六月以降の努力です。

 そこで私は言いたいのですけれども、体罰、言い直せば暴力、これを根絶するだけでなく、子供の人間としての尊厳、品位を傷つけるような暴言も学校から一掃しなければいけないと思います。今、刑法上の傷害罪の中でも、心的外傷を残すような暴言は傷害罪が適用されるんですよ。文部省として、そこまで体罰のカテゴリーを広げる必要があると思いますけれども、いかがですか。

岸田副大臣 定義を広げるかどうかは別としまして、暴言というものの意味合い、これはしっかりと受けとめなければいけないというふうに思っております。それも含めまして、先ほど大臣からお答えさせていただきましたように、この問題は、子供たち、生徒側の態度も含めて、全体の雰囲気の中で体罰がなくなる環境をつくっていかなければいけないというふうに思っています。

 ですから、ひとえに教師側だけではなくして、生徒側も含めて、体罰というものが発生しないような環境を学校の中につくっていく、そのことによって、本当の意味で体罰がなくなる状況をつくっていく、こうしたさまざまな角度から、さまざまな視野にわたってこの問題を検討し、努力をしていかなければいけない、そういう認識でおります。

遠山国務大臣 今の答弁のとおりであります。

児玉委員 そのとおりというのは、あなたのお話なのだけれども。

 私は、この文部科学委員会で最初に質問したのはえひめ丸の事件のときでした。今でも高校生が三人、教師が二人、乗組員が四人帰ってきていない。その問題を皆さんと議論したときに、文部省は、あの悲惨な事故で運よくというか、生存されている子供たちのトラウマの問題を非常に重視された、そしてそのためにあらゆる努力をする。私が言っている心的外傷、ポスト・トラウマティック・ストレス・ディスオーダーですね。それがえひめ丸の事件のような場合だけでなく、教師の暴言、暴力的な雰囲気の中で子供たちに傷跡として残っているのですね。そういうことを許さないという形で体罰を現場から一掃する、そのことが今極めて重要なのだ。遠山大臣にこの点の検討を求めたいのですが、いかがですか。

遠山国務大臣 体罰が許されないということは一貫して文部省、現在は文部科学省、これはその精神で指導をし、またそれが実現されるように今日まで努力をしてきていると思います。具体的に、それをさらに広げるための何か方策があれば、それは大いに考えていきたいと思います。

児玉委員 引き続き論議しましょう。終わります。

高市委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 私は、教科書の検定問題で伺います。

 扶桑社発行の中学歴史教科書については、検定調査審議会から百三十七カ所の修正意見がつきました。その修正意見に従いまして書き直したために検定合格となりました。しかし、その後、これは荒井信一茨城大学名誉教授、和田春樹東京大学名誉教授らによって、事実に関する誤りと問題点のみについて五十一点指摘されているわけであります。

 例えば、大日本帝国憲法をアジアで最初の近代憲法としている。しかし、これは、アジアで最初の近代憲法は、一八七六年にオスマントルコ帝国で公布されたミドハド憲法という指摘があるなど、こうしたたぐいで五十一カ所であります。私は、歴史教科書としては、これは余りにも恥ずかしいものだと言わなければならないと思うのですね。

 また、今問題になっているのは、韓国政府からのこの歴史教科書に二十五カ所の修正要求、そして中国政府から五月十六日には八カ所の修正要求ということでございます。だから、極めて重大な、外交問題にまで発展している教科書問題でありますけれども、検定された教科書を読んでみて、余りにもずさんだ、またそういう点では、検定のあり方そのものも疑われると言わなければならないと思うのです。

 この教科書では、太平洋戦争を大東亜戦争と呼ぶなど、侵略戦争と植民地支配の合理化で貫かれています。侵略と植民地支配を反省するというのが日本政府の立場であったはずでありまして、国際公約にも反するものだと言わなければなりません。憲法と教育基本法に反するこうした歴史教科書は、やはり政府の責任で合格措置を取り消すということが私は解決法だと思いますが、いかがでしょうか。

岸田副大臣 今先生から御指摘いただきました歴史学者からの五十一カ所の修正につきましてはちょっと承知しておりませんので、それにつきましては具体的な答弁をちょっと差し控えさせていただきたいと存じます。

 この御指摘の歴史教科書の検定でありますけれども、近隣諸国条項も含めた検定基準に基づいて、教科用図書検定調査審議会の審議を経て適切に実施されたものというふうに認識しております。

 ですから、我が国の検定制度、教育の見地のみならず、言論の自由も含めたさまざまな見地から、守るべき大変大切な制度だと思っております。この制度のもとに適切に処理され、そして合格されたものだと思っておりますので、これを取り消すというようなことは現状では考えておりません。

 また、明確な事実の誤認というものがない限りは、これをまた修正等も考えていない、これが文部科学省のスタンスであるということをぜひ御理解いただきたいと存じます。

石井(郁)委員 私は何かとても変だと思うのですね。この五十一カ所の事実に関する誤りと問題点を見ていないというのはどういうことですか。これは重大な問題ですよ。明確な事実に関する誤認があるわけでしょう。ないという前提で今御答弁されているのですけれども、あるのですよ。

 それで、もう私のきょうの持ち時間、本当に少ないので、やはり事実の誤りを多数含んでいる、これがこの教科書です。しかも、これは国内外からそういう意見が出されているのですよ。こういう教科書を子供たちに渡せないのは明白だと私は思うのですね。

 そういう点で、今近隣諸国条項に照らしても、これは再検討しなければいけない、合格取り消しだということがやはり解決の道だというふうに私は申し上げているわけでございますが、これは大臣、最後に御答弁いただいて、ちょっと次の問題がございますので、いかがですか。

遠山国務大臣 日本の教科書検定制度はしっかりした制度のもとに行われております。また、その合格決定というのは厳密に厳正に行われていると思います。そこで合格されたものをどうして取り消す必要がありますでしょうか。副大臣がお答えしたとおりであります。

石井(郁)委員 これは大変な問題だというふうに思っておりますので、今事実の問題を言っていますからね。それは事実をちゃんと直視してください。

 さて、そこで、私、きょうはこの短い時間で、大臣はもちろんこの教科書をお読みのことと思いますけれども、私も読んでみまして、到底これは日本の歴史教育の問題として看過できないということを多々感じているわけでございますが、その一つとして、女性の人権、人格について余りにも配慮がないのですよ。配慮を欠いているという点でちょっと具体的に指摘をしたいというふうに思います。

 それで、大臣、ちょっとこれをお読みください、この赤線のところです。

 この教科書の六十二ページなのですね。委員の皆さんには申しわけないのですけれども、ちょっとコピーは用意しませんでした。というのは、私は、これを読み上げるということは到底できないという点からでございます。

 さて、二行ほどですから、大臣、どのように思われますか。

遠山国務大臣 今部分的に拝見いたしました。いろいろな感情はもちろん起こりますけれども、ただ、これは、本当にきちんとした、厳正な審査によって決定された、合格した教科書でございます。それについてコメントすることは差し控えます。

石井(郁)委員 では、大臣にもう一つ伺いますが、大臣は、もし教師だといたしまして、中学校でしょう、このクラスには女生徒もいるのですね、この部分を生徒たちに読み上げることができますか。

遠山国務大臣 教師の指導力を信じております。

石井(郁)委員 あなたの御意見を聞いているのですよ。

 委員の先生方に申し上げませんけれども、これはアマテラスオオミカミが天の岩屋に入って、出てくるというその場面でございます。非常にどぎつく書かれているのですよね。だから、これは中学生にふさわしくない、教科書にふさわしくないというふうに思っているし、それからこれはセクシュアルハラスメントでないか、それに当たるのではないかというふうに思うのです。そういう意味で私は問題にしているのですね。

 セクシュアルハラスメントについては、文部省もセクシュアルハラスメントの防止等に関する規程の制定という文書を出していらっしゃいますよね。これは「職員が他の職員、学生等及び関係者を不快にさせる性的な言動並びに学生等及び関係者が職員を不快にさせる性的な言動」だと。私は、これは本当に子供にとってみたら不快になる、とても女の子はたまらない表現だというふうに思うんですよ。何でこういうことを教科書に書かなくちゃいけないのかということがあるわけでありまして、私はそういう点で問題にしているわけであります。女性の文部大臣でございますので、そういう点での非常に強い関心と、またいろいろお持ちかなということで伺いました。

 もう時間になってまいりますけれども、この点は、この教科書の中に実は随所に見られるんですね。そういうことで私は取り上げたいというふうに思っています。

 例えば、この徳川家斉、四十人のめかけを持って、五十五人の子供がいた。これは事実かもしれません、ここは。しかし、ただ単にこの事実、もうめかけなんという言葉が今の子供にどうなのかということがありますけれども、ただそういう事実だけ書くということもありますが、もう一つは、これは白表紙本のときにこういうことがあるんですね。明治憲法のもとで、国民は各種の権利が保障され、選挙で衆議院議員を選ぶことになったと書いていたんですよ。国民はでしょう。国民はという中には、しかし、この当時女性は入っていないじゃないですか。当然これは検定で修正されたということはあるんですが。

 事ほど、やはり女性というのが視野にないんじゃないか。女性の権利や人格というのが歴史的な中でどんなふうに扱われて、どんなふうに発展してきたのかという視点は、もうここの中には本当に見ることができないという点で、私は、その象徴的なこととして先ほどの六十二ページを取り上げました。

 さて、こういう教科書でございます。これが厳正な検定のもとで出てきたと言われたら、本当に、逆に検定制度そのものが大変問題だということになると思います。歴史の史実や真実を書かないで、事実をゆがめる教科書を持たされて困るのは子供たちです。こういう教科書で、二十一世紀に日本の子供たちが、アジア、世界の国々と本当に人権感覚、民主主義の感覚を持って対等にやっていけるんだろうかということで、いけるはずがないというふうに私は思います。

 こうした偏向教科書です。これは合格措置を取り消すべきだということを重ねて申し上げまして、もう時間が参りましたので、きょうはこの教科書の内容の一端だけ申し上げましたけれども、ぜひ教科書問題の集中審議を本当にお願いしたいということを委員長にお願い申し上げまして、質問を終わります。

 以上です。

高市委員長 山内惠子君。

山内(惠)委員 社民党の山内惠子でございます。

 男女共同参画社会基本法が一九九九年の六月にできて、各分野への女性の参画も、わずかではありますが進んでいます。特に、政治は最大の教育と言われる状況の中で、学校現場に子供たちが半数いるということで考えれば、遠山大臣がこのたび誕生したことも、内閣の二七・七%、これははっきり言ってまだまだ少ない数字だとは思いますけれども、風景として、女性が参画するという意味は、ジェンダー問題の視点からもうれしいことであります。

 その意味で、このジェンダーの問題に大変詳しい田嶋陽子さんは、政治家をはかる物差しを、従軍慰安婦の問題をどう見るかで見ているとおっしゃっています。私もそのように思います。その意味で、大臣、大臣は従軍慰安婦の問題についてどのように思っていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

遠山国務大臣 どんなふうなお答えを御期待いただいているのでしょうか、一つの歴史的事実であったと思います。

山内(惠)委員 歴史的な事実、単なる事実プラス、このことについて、今回もいろいろ問題になっているだけに、この事実を、どうあるべきとか、その辺までのお考えもお聞かせいただければありがたいです。

遠山国務大臣 どうあるべきか、二度とあってはいけませんね。

山内(惠)委員 二度とあってはならないと大臣がおっしゃられた。できれば、もう少し踏み込んでお聞きするとよかったかと思います。一般的にお聞きしました。

 一九九三年になって初めて、当時の河野洋平官房長官が、慰安所は軍当局によって設営されたもので設置、管理及び慰安婦の移送には旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した、時には官憲が直接これに加担したこともあると、事実を認めています。軍の関与であれば、国による組織的レイプとして、日本政府は責任をとらなければならない。戦争犯罪として非を認め、生きている被害者一人一人に謝罪し、賠償することで名誉を回復する必要があると私は思っていますが、この問題に関しまして、従軍慰安婦問題を教育で、現代史で教えることが重要だと私は思いますが、大臣はいかがでしょうか。

遠山国務大臣 歴史にはいろいろな出来事がございました。そのすべてをどの段階でも教えるというようなことが全体のカリキュラムの中でできるかどうかというのは、総合的に判断した上で考えるべきことだと思います。

山内(惠)委員 その意味で、二度と繰り返さないと先ほどおっしゃった言葉を考えると、どうなのかということが問われる従軍慰安婦問題だと私は思っています。

 教科書問題になりますが、今回のつくる会の教科書のみならず、かつて記述されていた教科書からも、表面上では、自主的にという言葉を前文部大臣もおっしゃっていましたけれども、この教科書のほとんどに書かれていない状況にあります。書くべきだというふうに思いますし、先ほどの、二度と起こしてはならないとお考えになったとしたら、これは教育の場で教えていくためにも教科書に書くべきだというふうに思いますが、教えるのが教科書でないともしお思いなら、またそれも含めて、どうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

岸田副大臣 今、教科書というお話でありましたので、教科書ということで申し上げさせていただくならば、今回の教科書の検定はその厳正な手続に基づいて実施されたというふうに認識しております。

 それで、個別の問題を取り上げるかどうかという問題でありますけれども、この制度におきましては、学習指導要領の範囲内でどのような現象を取り上げるか、あるいは記述するか、これはすべて執筆者の判断にゆだねられております。その上での検定制度でありますので、結果として先生が御指摘のような結果になっておるのは事実でありますが、これは制度上適切に行われた結果だというふうに思っております。

山内(惠)委員 私は、検定制度にかかわらないで質問したんですけれども、大臣のごあいさつにもあります、一九八二年の近隣諸国条項、このことをごあいさつの中にも触れていらっしゃいますけれども、このことを考えた上で適切に検定と今おっしゃっていらっしゃいます。

 ところで、九六年ですね、橋本元総理大臣が、首相の手紙という形でこの慰安婦問題についてお手紙を書いているんですけれども、御存じでしょうか。そのことを大臣にお聞きしたいのです。検定の結果のことを言っているのではありませんので、お聞かせください。

遠山国務大臣 平成八年八月に、橋本総理が、総理大臣の手紙ということで、女性のためのアジア平和国民基金ですか、ここに対して出されたものでしょうか。

 この中では、

 いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。

  我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。

中心部分でございますが、このように書かれております。

山内(惠)委員 ただいまお読みいただいたとおりの文章なのですが、このお手紙の中で、「過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝える」というふうに書かれているのですけれども、この部分で言えば、今回の教科書は、かつて書かれた教科書があったにもかかわらず、書かれなくなった。そして、今回のつくる会の教科書の中には本当にここのことは書かれていない。そのことで考えると、文部省は、この元橋本総理大臣の、後世に伝えるということをお約束したことについて、教科書に書かないでということを文部科学省の方針となさっているのでしょうか。

岸田副大臣 政府の歴史認識につきましては、従来どおりであります。

 しかし、その検定制度の中で、合格した教科書が政府の歴史認識と必ずしも一致するものではない、そういう制度であるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

 ですから、この中でどういった事項を取り上げるのか、盛り込むかは執筆者の判断に任せられていると先ほど御答弁申し上げましたが、この内容につきましては、その生徒、子供たちの発育段階等も考えた上で、ふさわしいかどうか、その辺の判断も含めて基準が決められているわけであります。

 ですから、今回も、問題になっております特定の教科書のみならず、それ以外の教科書におきましても記述が落ちているというようなことにもなっているわけであります。その辺の状況もぜひ御理解いただきたいと存じます。

山内(惠)委員 二度と繰り返してはならないということであれば、小さなときから、過去日本が犯してきた戦争の責任の問題を含めて子供たちに伝えていくことが、二度と戦争を起こさない道へつながると私は思っています。

 その意味で、子供たちがこのことを義務教育の中でしっかりと学ぶことなくアジアの諸国の方たちと友好関係を結ぶには、きっと問題が起こるだけに、二十一世紀に生きる子供の将来も心配ですし、日本のあり方も問われる問題だというふうに思っています。

 ところで、先ほども話題にのっておりましたけれども、熊本地裁での五月十一日のハンセン病にかかわる判決は、国会に対して立法の不作為責任を問う判決でした。このことと従軍慰安婦問題は共通する大きな問題だと私は思います。

 大臣、この従軍慰安婦問題は、載せても載せなくてもいいというような内容では決してなくて、先ほどお言葉にあったように、二度と起こしてはならない出来事であるだけに、そして、この従軍慰安婦の問題は、二十世紀最大規模の戦時性暴力と言われる問題であります、自分が名乗るのも、その意味ではハンセン病の方も名乗ることさえもできずとおっしゃっていましたが、この元従軍慰安婦の皆さんも、名乗ることも本当に苦しかった、名乗ることができてやっと十年、そして、その中で裁判を起こされていても、日本の対応はひどい状況だと思います。

 大臣、御存じだと思いますが、女性国際戦犯法廷では、八カ国から六十四人の高齢者である被害に遭った女性が出席されて証言をされました。戦争犯罪であるだけでなく、人権問題である、人道に対する罪である。その意味で日本政府に国家責任が問われている問題だと思いますが、大臣はいかがでしょうか。恐れ入りますが、短くお答えいただきたいと思います。

矢野政府参考人 教育内容あるいは教科書制度にかかわるものでございますから、私の方から申し上げておきたいと思います。

 教育の内容あるいは教科書の中身について国がどこまで関与するかという問題があるわけでございますが、御案内のように、国は、教育内容につきまして、学習指導要領という大綱的な基準というものを国として決めているわけでございます。最低の基準でございます。それに従って教科書の中身も決まるわけでございます。

 そういう意味で、先生お尋ねの、これまで御議論がございました従軍慰安婦の問題は、先ほど来副大臣から申し上げておりますように、学習指導要領で書かれていないわけでございますから、それを書けと言ったり、あるいはそれを教えろと言ったりという形で国が強制的に関与することはできないものでございますので、その点、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。

山内(惠)委員 教科書問題をめぐる討論の場が、きょう、本当に限られた時間しかないということでは、本当に子供たちの将来に使う教科書としては大変時間が短いのですが、時間がありませんので急いで言います。

 このジェンダーの視点からも、差別撤廃条約の視点からも、教育基本法の視点からも、あらゆる面で、大臣が、どのように後世に正しく伝えていくかという具体的な計画、方針をいずれ出していただけることを期待して、大至急、二つの問題点を御質問いたします。

 私は、北海道出身ですので、ITER問題につきまして、苫小牧にも行ってまいりましたが、三月三十日のITER懇の最終報告も傍聴しましたが、今回出された最終報告の状況はあのときよりも一歩先に進んでしまった報告となっていることに、私は問題を感じています。

 それにしても、このITER、燃料として放射性物質のトリチウムを使い、大変危険なものです。時間がないだけに大至急ここのところをお話しいたしますが、この部分ではいろいろなところで論議されていると思います。

 それで、研究をするだけで、いつ結論がという方向もなかなか見えない状況の中で、今回、当面五千億円ですか、これだけかける研究費、もしくは、それにまだ運営から何から相当かかるとお聞きしていますが、それだけのお金をかけるとしたら、原子力にかわるエネルギーで、高い安全性があって、コストが安く、小型化されているというエネルギーの方策は、もう既にかつての原子力産業を手がけた方たちも切りかえをしているという状況があります。ガスコンバインドサイクル、マイクロガスタービンシステム、燃料電池、さまざまございます。そちらの方に研究を移していただきたいということを強く要請し、ここのところは、時間がありませんので質問としないで、いずれかの機会でまたお聞かせいただきたいと思いますが、推進するべきではないという意見をつけ加えて、この問題点は終わりにしたいと思います。

 ところで、大臣も先日「もんじゅ」の視察に行かれた、そして、そこのところでお答えになったのは、再開のめども立っていない、そして不退転の意思でというのですか、背水の陣で安全の確保を図るというふうにおっしゃったという議事録がございました。

 ところで、もしこの「もんじゅ」で細管に事故が起こった場合ということをちょっとごらんいただきたいと思います。

 資料を持ってまいりました。これは、ナトリウム中水素計の検出時間と蒸気発生器伝熱管破断伝播時間の関係、大変難しいのですけれども、細い細管なので、最初にどこか漏れるということを発見するのは大変難しいそうです。もしかしたら、この安全点検のところでもうあきらめているようなことだそうで、事故が起こったとき、破裂が始まったときからあっという間にこれが爆発につながっていくまでの間に、安全装置としてナトリウム中水素計検出時間というのがあるのです。このパネルはごらんになったと思いますので、置きます。

 その部分についてなんですけれども、もしこのひび割れができたときなんですけれども、すぐ発見できないだけでなく、ごくわずかな漏れを検知するのに八分以上かかる。細管が連続破損するのに九秒から三十秒というのだそうです。

 ところで、先ほどのこの安全装置では、発見をしてからどれだけで、ここのところでそれを抑えるためのことができるかというと、これは、十の二乗、十の三乗というのは秒です、約千秒かかるということです。ですから、ここのところでほかの連鎖反応も出てくるということです。

 それで、実は「もんじゅ」がこの間の問題を起こしたときなんですけれども、これは、二十リットルで爆発をするという状況にあったそうです。何とかこのときは、さまざまな問題はあったとしても大きな事故にならなかった。事故は起こってはならないわけですけれども、これは実は冬の「もんじゅ」の事故だったというふうに私は聞いています。これが夏であれば、湿度がまた大変あるわけですし、湿り気があるところなので、大変な事故になったと想定されている方がいます。これは二十リットルでです。これを超えてしまうと、チェルノブイリの事故のような事故が起きるのだというふうに言っていらっしゃいますので、ぜひそこのところを、どのような御検討をいただいているのか、お聞かせいただきたいと思います。

今村政府参考人 今の御質問は、私がもし正しく理解しておるとすれば、「もんじゅ」の蒸気発生器の健全性にかかわる問題ではなかろうかと思っております。蒸気発生器の健全性につきましては、「もんじゅ」を建設する段階における前の安全審査において、これの健全性が保たれるという評価がなされております。

 それで、先ほどお話しになりました「もんじゅ」の二次系のナトリウムの漏えい事故がありましたとき、この漏えいは蒸気発生器とは全く関係のない場所で起こったわけですが、念のため「もんじゅ」についてはすべての、蒸気発生器の健全性も含めて、改めて安全性総点検が行われました。その結果、今お話にありましたような、伝熱管が破損しそれが一挙に広がっていくといったようなことではなくて、蒸気発生器全体の健全性は確保される、放射性物質による環境への影響を及ぼすようなことには至らないということが、サイクル機構の安全性総点検で確認されております。

 ただ、この点につきましては、今後「もんじゅ」の改造において安全審査が行われるわけでありまして、国の安全審査の際に、今の点も含めまして改めて安全性を確認するということになっておることを申し上げます。

山内(惠)委員 時間が短くて丁寧な説明ができないのですが、最後の安全性は、安全だ、安全だという言葉で確保されるものではありません。北海道の原子力発電所は、今、三号機を建設しております。

高市委員長 山内委員に申し上げます。もう時間が終了いたしておりますので。

山内(惠)委員 はい。

 亡くなった方がもう既にいる東海事故の問題もあります。その意味では、言葉で安全と言うことでは、大変私たちは不安です。住民の方も不安です。その意味で、自然エネルギーは開発できることがほとんど見えてきているところにあるだけに、そちらの方に計画を移していただきたいということを申し添えまして、終わりにいたします。

高市委員長 中西績介君。

中西委員 私は、まず教科書問題について、時間が制限されておりますから、多くはお聞きすることはできませんけれども、きょうはひとつ遠山大臣からお聞きをしたいと思うのです。

 というのは、問題になりまして以来三十年近くになるわけでありますけれども、この間大体旧文部省におられた大臣でありますから、そうしたことを十分御承知のはずであります。その時期にいらっしゃらなかった人は全くだめだということでなしに、おられたということでなぜ私がそのようにこだわるかと申し上げますと、文部省自体の中に、かつて一九八二年に問題になったとき、宮澤官房長官が御存じのように近隣諸国に対しまして官房長官談話で謝罪をする、こういう状況が出てきたときに、文部省の官僚の皆さんが、文部事務次官以下、もう言いませんけれども、それを包囲しておる一部の人たちが、会談をして帰ってきた後、なおすべてを拒否するという態勢をとったわけですね。ですから、この中に政府の責任で是正するという言葉が入ったのもそのためであると言われています。

 ですから、私はそうした意味で、文部科学省がこうしたことを本当に自分のものとしてどうとらえ、そしてそのことが、これから将来日本が近隣諸国の皆さんに信頼されるかどうかということをかけた問題であろうと思いますので、あえて遠山大臣にお聞きをするわけであります。その点をひとつ御理解いただきたいと存じます。

 そこで、八一年度検定が発表されまして、七月二十六日中国、そしてさらに韓国など海外からの抗議が激しくあったことは、もう御承知のとおりです。ですから、この点を私は、ただ単に中国、韓国、北朝鮮などというような狭い意味でなしに、こんなにたくさんあったということのために、簡単に申し上げたいと思うのです。

 これはアジア経済研究所図書資料部編さんのものでありますけれども、一九八二年の七月から九月までの期間だけです。短い期間にアジア諸国の主要新聞にあらわれた教科書問題記事、この索引によりますと、短期間のものでありますけれども、東アジア、東南アジア、南アジア、豪州オーストラリア、主要三十九紙によると、もう物すごくこれが指摘されています。

 これを見ますと、韓国の場合にはこの二カ月で九百四十六、三紙であります。北朝鮮が三十三、二紙ですね。それから中国が二百四十六、これは二紙です。台湾、一紙で六十二。香港、三百五十三、二紙です。マカオ百四十五、フィリピン三十七、インドネシア七十五というように、シンガポールのごときは三百十二。このように物すごくやられておるわけであります。もうあとは言いません。

 このように大変な問題になったという認識があるかどうか、認められるかどうかについてお答えください。

遠山国務大臣 当時、私は確かに初等中等教育局の中学校課課長をいたしておりましたけれども、今いろいろ先生おっしゃっていただきました数値については存じませんし、当時としては、アジア諸国から教科書問題に関してさまざまな報道がなされたということは存じておりますけれども、その数でありますとか、あるいはその資料については存じておりません。

中西委員 それでは、今なお文部省にはこの資料はないのですか。

遠山国務大臣 ないようであります。

中西委員 であれば、私は、なおもう一度それらの内容についても、図書館の方からでも請求をして全部取り寄せて、どういうことが指摘をされておったかということを勉強していただきたいと思います。そういうことがないものですから、いまだに態度が変わらない、問題はそこにあると私は思うのです。ここいらが従来の文部省、現在の文部科学省がこれから後、教育改革をと言うけれども、そのことが子供たちにどういう影響を与え、そして将来、子供たちが国際的に信頼されるようになる政治の体制というものを考えていったときに、今求められておる改革をすべきは文部科学省の内部じゃないかな、こういう感じがしてならぬわけですよ。この点をひとつ十分肝に銘じておいていただきたいと思うわけであります。これが一つです。

 その次に、外交問題にまで発展しましたので、先ほど申し上げましたように、近隣諸国に謝罪をして、政府見解、「アジア近隣諸国との友好・親善を進める上でこれらの批判に十分耳を傾け、政府の責任で是正する」という官房長官談話を発表したわけですね。そして、外交問題について決着を図ってきた。それを受けて八二年十一月二十四日、文部省は検定基準に、「近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」、いわゆる近隣諸国条項という文言を加えたわけであります。

 そこで、確認をいたしますけれども、この点については、よもやこうした経過について知らないとは言われないと思いますが、この点について確認してよろしいですか。

遠山国務大臣 近隣諸国条項というのが明確に規定されて、以後、それにのっとって検定の審査が行われているということは事実であります。

中西委員 先ほどからの論議を聞いておりますと、本当にしっかりやっておるということを盛んに言っていますけれども、その点、また後で指摘をしたいと思います。

 そこで、この点はもう狂わないと思いますから、私は、先ほど申し上げましたように、外務あるいは文部両省の、八月十九日だと言われていますけれども、幹部協議の席上においていろいろやられたときの対応の仕方、ここいらを先ほどのことは言ったわけでありますけれども、時間がありませんから、この点については細かくは指摘をいたしません。

 私は、そこでお聞きをしたいと思います。官房長官談話で、政府の責任で是正することで今後に期待して、事態は一段落しました。ところが、その後九月に入りまして新聞等の報道に、侵略を進出に書きかえられたことが誤報であり、この騒ぎの根源だとして、「文春」だとか「諸君!」だとかあるいは産経の九月七日の、読者に深くおわびをするという訂正、謝罪記事が掲載されました。それ以後、誤報キャンペーンが大変激しく行われました。そして、結局は、もともと侵略を進出と書きかえなどは全くなかったということを強調して、そういういろいろ批判をされている部分について、これを擁護するという立場に立ったわけであります。

 ところがよく見ますと、これは一つの例でありますけれども、ここにありますように帝国書院から発行されたものですが、高等学校世界史、これが白表紙本です。これには侵略と書いてあります。ところが検定後のこれには進出と書いてあります。このことは知っておられると思いますよ。このように、東南アジア戦線の記述部分で教科書の内容をこのように書きかえさせておることは事実なんです。そしてしかも、文部省が出しておられる見解の中にもこれがちゃんと記述されています。

 ただ単にそれだけではありません。私が言いたいのはこういう中身以外に、この八一年の検定の事例について幾つもそれはあるんですね。「日本の中国侵略」、日本の侵略はなくなって「日本の満州占領」、東京書籍。「日本の中国侵略」が「満州事変から日中戦争へ」、これも同じです。「特に東三省に駐屯する関東軍は…満州国をつくった。この侵略にたいして」が「特に東三省に駐屯する関東軍は…満州国をつくった。これらの軍事行動にたいして」、こういうように、挙げていきますとたくさん例がある。ただ、進出ということはないにいたしましても、それを全部書きかえさせていることは事実なんです。

 私は、今本当に問題にしたいと思いますのは、こうしたあり方、九六年七月二十三日に、今問題にしておりますけれども、中学校の社会科公民教科書の、これは清水書院の分でありますけれども、その記述には、極めて正確だと思いますと書かれておるわけです。こういうようにしたところが、これが今徹底してたたかれておる。

 ということになりますと、私がお聞きをしたいのは、こういう文部省見解でもはっきり確認されておりますけれども、これらについては、大キャンペーンをやっていることと実際にあること、文部省が認めたこと、それとの違いというのはちゃんとあるということの確認をしたいと思うのです。

矢野政府参考人 これは事実関係でございますから、私の方から御説明申し上げたいと思います。

 御指摘のキャンペーンの件でございますが、これは中西先生御案内のように、この五十七年の事件は、前年度に行われた、つまり昭和五十六年に行われた教科書の検定で、中国への侵略を進出に書き改めさせた、そういう趣旨の報道があって、その報道に端を発して、中国あるいは韓国からの批判があってこういう一連の動きになったわけでございますが、その後の取材によりまして、五十六年度の検定には、中国への侵略を進出に書き改めたという事例はなかった、このことははっきりしているわけでございます。ただ、そのことについてのキャンペーンがなされたわけでございます。

 ただ、先生がおっしゃいましたように、私どもの確認は、五十六年度の検定で、東南アジアの侵略について、それを進出に改めたという事例があることは事実でございますけれども、今回の一連の報道、また一連のそれへの対応は、中国への侵略を進出に書き改めたという報道が誤りだったということに一つの発端があったことは事実でございます。

中西委員 今、中国ということを限定しましたね。中国ということを限定されれば、そこにはなかったかと思います。

 ただ、問題は、中国ということを前面に掲げてそういうキャンペーンをやったわけじゃありません。そこだけはちゃんとしています。

 そこで、私はもう一つ言いたいのは、そういう状況の中にあるのに、本年三月十二日、参議院予算委員会における、竹村泰子議員の、ほかにもたくさんあるのですけれども、質問に対する町村大臣の答弁を見ますと、全くなかったとなっています。これは中国だとかなんとか限定していません。誤報キャンペーンと同様に、間違っているのに正式の政府答弁になっておるわけでありますから、その後、これを指摘して書き改めたとか、こういうことはないようでありますが、この点についてどのようにお考えになっておられるか。この点を指摘しますので、お答えください。――これは大臣ですよ。大臣の答弁を大臣がちゃんとしなきゃ。(発言する者あり)いや、あなたじゃなくて、ちゃんと大臣。だめだよ、私はあなたに求めていないんだ。

高市委員長 不規則に発言をなさらないでください。

 それでは、遠山大臣。

遠山国務大臣 御指摘の三月十二日の参議院予算委員会におきます竹村議員の質疑におきまして、昭和五十七年に検定結果が発表された高等学校歴史教科書の日中戦争に関する記述について、町村前大臣から、侵略を進出に書き改めさせられたという報道がありましたが現実に侵略を進出と書き改めた教科書はその時点ではなかったということが後刻判明したという答弁であるというふうに私も理解しております。

中西委員 ですから、私は聞いているのですよ。ここに、「現実に侵略を進出と書き改めたそういう教科書はその時点ではなかったということが後刻判明をいたしました。それはすべての新聞に謝罪等々の形で訂正報道がなされたわけでございます。」こうあります。

 中国ということは何も指摘していないのです。ですから、この点をちゃんと正確に答えておかないと、近隣諸国条項だとかいろいろな問題はあなたたちはちゃんと答えるけれども、それとの整合性がだんだん薄らいでいくのですね。ですから、私はあえてこのことを言っておるわけであります。これは後刻でいいからちゃんと答えてください。

 最後になりますけれども、なぜ私がこのようにこれにこだわるかということでありますけれども、本当に今のような状況の中でありますと、大臣がこのような誤った認識で答弁するということは、教科書問題で近隣諸国との関係悪化が起こるであろうということを私は懸念している。

 韓国にしましても中国にしても、また改めて韓国の大使あたりがあれほど、きょうの新聞等にも出ておりますように、これまで言っているでしょう。彼は、日本は韓国の専門家が払った同じ濃度の努力を払って客観的に吟味してほしいと。これはもう、つくる会だとかなんとかじゃないのです。何かというと町村大臣の発言だとか、そういう政府の態度そのものに対する懸念があるから、こうした体制をとってほしいということまで向こうから言われているでしょう。ですから、私は今申し上げるように、本当に今こそ関係悪化をさせてはならない。

 最後にこれだけ言っておきます。

 村山元総理が、九五年八月十五日の戦後五十年談話におきまして「杖るは信に如くは莫し」とおっしゃっておられます。そして、信義を施政の根幹とすることを内外に表明しています。その中身というのは、頼りとするものとしては信義にまさるものはないという意味になっています。

高市委員長 中西委員に申し上げます。質疑時間が終了いたしております。

中西委員 あるいは九八年十月八日の日韓共同宣言等を考えますと、まさに今各国々との信頼関係なしにできないわけですから、それを壊すのは文部省の態度であるということになりますと大変なことだということを警告して、やめます。

 終わります。

高市委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 大臣並びに副大臣におかれましては、朝からずっと大変御苦労さまでございます。大臣におかれましては、就任を謹んでお祝い申し上げたい、こういうふうに思います。

 中西先生の迫力のある、怖い質問が終わりましたので、御安心いただければと思います。

 五月二十一日の新聞の報道によりますと、「海外ボランティア 教員の参加後押し」という大きな見出しの記事がございました。非常にうれしい記事でございます。青年海外協力隊に教員を積極的に参加させるということになったとありますけれども、その経緯について大臣にお尋ねしたいと思います。

遠山国務大臣 青年海外協力隊につきましては、昭和四十年の事業発足以来、現職教員もこれに参加してきた経緯がありますが、募集に当たりまして文部省や教育委員会が主体的に関与してこなかったということなどがありまして、開発途上国からの派遣要請件数が多いにもかかわらず、現職教員の参加が伸びないという問題がございました。このため、文部大臣の私的懇談会であります国際教育協力懇談会、私もメンバーでございましたけれども、その昨年十一月の報告を踏まえまして、本年度募集、これは来年度派遣でございます、その分から、現職教員が参加しやすくなるよう、教育委員会を通じて募集を行うなどの改善を盛り込んだ現職教員特別参加制度を創設したものでございます。

 青年海外協力隊によるこういう協力については、私も外におりました経験上、大変喜ばれております。今後、この制度により、現職教員の参加がふえることを大いに期待しております。

松浪委員 なぜ私がこの新聞の発表がうれしかったかと申しますと、何も、これから教育三法がこの委員会で議論される、その前にこういう形で発表された、だからうれしい、そうは思わないのです。実は、このことについては、九九年二月十日のこの委員会で、私が質問させていただいたのです。

 ところが、答えがこの新聞だったのです。

 文部省は質問者に対してもっと早く、こうなりましたよという報告があってしかるべきじゃないのか。私は、そのことについて、文部省、これは信用できないと。文部科学省は、一生懸命お役人の皆さんやられた。だけれども、質問者に何ら報告もせずして、進捗状況の報告もなく、新聞にいきなり出るのですよ。これが文部科学省のやり方ですか、大臣。

遠山国務大臣 それは大変失礼を申し上げました。懇談会の報告が出た段階で御連絡すべきであったかもしれません。

松浪委員 私だけへの失礼であればいいのですが、国民に対する失礼なことについて質問させていただきたいと思います。

 大臣は文化庁長官をやられました。我が国の文化を統括される責任者であられましたし、そして今、文部科学大臣として立派におやりになっておられます。

 そこで、私は、大臣は小泉内閣の一員であられます、小泉内閣はどういう内閣であるか、一回大臣からお聞きしたいと思います。

遠山国務大臣 所信表明及びいろいろな機会における総理の答弁にありますように、改革断行内閣と申しましょうか、そういう性格を持っている、極めて前向きの内閣であると思います。

松浪委員 今の言葉を、大臣、絶対忘れないでくださいね。

 もう一回復習しましょう。

 これは小泉総理の所信表明演説、

 「新世紀維新」ともいうべき改革を断行したいと思います。痛みを恐れず、既得権益の壁にひるまず、過去の経験にとらわれず、恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫き、二十一世紀にふさわしい経済社会システムを確立していきたいと考えております。

 私は、自由民主党、公明党、保守党の確固たる信頼関係を大切にし、協力して「聖域なき構造改革」に取り組む改革断行内閣を組織しました。抜本的な改革を進めるに当たっては、さまざまな形で国民との対話を強化することを約束します。対話を通じて、政策検討の過程そのものを国民に明らかにし、広く理解と問題意識の共有を求めていく信頼の政治を実現してまいります。

このように述べられました。

 そして、一番後ろの方に、我々にもこう呼びかけられております。

  議員諸君も、変革の時代の風を真摯に受けとめ、信頼ある政治活動にともに邁進しようではありませんか。

 私は、この総理の呼びかけに真摯にお答えしていきたい、こういうふうに思って、また決意するものであります。

 そこで、今度は大臣のあいさつであります。一番後ろの方でありますけれども、

  文化については、新しい世紀に人々が真に心豊かな質の高い生活を送り、創造性に富んだ活力ある社会を構築していくため極めて重要であり、今後、文化を大切にする社会を実現するため、芸術文化の振興、文化財の保存、活用など、文化振興のための諸施策を推進します。

 このとおりであってほしい、このように強く願うものであります。

 朝、馳浩委員から質問がございました。

 昭和三年に建築されました、この前までの東京大学生産技術研究所が取り壊しになる。こういう悲しい知らせ、これを我々は知って、このような文化財を、文化をはぐくみ、そして広くこれらの啓蒙に当たらねばならない役所が壊すということ、私は大変遺憾に思うものであります。

 そして、国民の立場からすれば、総理の所信表明演説、そして大臣の演説からすれば、当然のことながらこれは残さなければならない、そういう思いに駆られて当然だと思いますし、この計画が持ち上がったときには、大臣はたしか文化庁長官であられたのではないのか。

 変革のあらしが、風が吹いている。どうされますか、大臣。

遠山国務大臣 松浪委員の文化にかける情熱、大変感じ入ってお聞きいたしておりました。

 東京大学の生産技術研究所の建物は、委員おっしゃいますように昭和三年に竣工した、陸軍が初めて建設したコンクリート造兵舎で、兵舎としての機能性を備えて、外観は簡素にまとめた建物と認識しております。

 現在進んでおりますのは、この建物を撤去して、そしてナショナル・ギャラリーというものをつくるということでございます。

 確かに、古い建物ないし文化財に類するようなものをできるだけ保存していくというのは、それは法の精神でもありますし、大事なことではあろうと思います。ただ、今回の私の所信の中にも明らかに書いておりますように、芸術文化の振興、文化財の保存、活用というものを並べて書いてございます。新たにここを活用しようとしているのはナショナル・ギャラリーでございます。今日のナショナル・ギャラリーの設置についての要望というのは、またこれも大変大きな流れとなってまいっております。

 では、どうやってその二つのことをかなえるかということでございますけれども、今日文化庁の方でも大変頭を悩ませてくれておりまして、その方途を今探ってくれておりますけれども、私としましては、今考えつつある三つの方途でいくというのは、ある知恵ではないかと思います。

 それは、あの建物の価値についてきちんとした記録を行っていくということ。そして、あの場所にあったあの建物について、きちんとしたモデルですか、模型を残していくこと。そして、でき得れば、あの建物の一部でありますとか、あるいは土台の礎石の部分であるかもしれませんけれども、そこをきちんと残して、ここに生産技術研究所であったもとの古い兵舎があったというふうなことがついえないで、何とか人々の記憶になるあかしとして一部でも残すことができればいいのではないか、今そういうふうな形で検討が進んでおります。

 この点につきましては、ぜひ松浪委員の御理解をいただきたいと思います。

松浪委員 今の大臣の答弁に全く満足しないものであります。

 記録の保全をする。記録は全くございません。その記録をつくろうと思うと、かなり時間がかかります。ところが、七月の末から八月につぶそうとしておるわけであります。どんな記録を残そうとされるのか。

 模型をつくられるとおっしゃいます。設計図がなければなりません。設計図もございません。それを調査するのに一カ月で大丈夫なんだろうか。

 これは、古い、登録文化財と称していい建物とナショナル・ギャラリーと二つ必要だ。二つとも大事にしたい。ところが、大臣は演説で、保存、活用ということを言うているわけです。そして、保存、活用ということを推進させるために文化庁はこの制度を設けられたのですよ。

 例えば、一つお尋ねしますけれども、国会議事堂は登録文化財になりますかね、大臣。

遠山国務大臣 これは専門家の英知を集めて考えないといけない問題でありまして、私が軽々に言えるものではございません。

松浪委員 文化庁長官をやられた人の話にしては、余りにも頼りなさ過ぎるのですよ。「建物を活かし、文化を生かす。」というパンフレット、これは大臣が長官のときにできたものですよ。

 五十年以上たっている建物については、これはおおむね登録文化財になるんですよ。まして国会議事堂は、議論するまでもなく、専門家を呼ぶまでもなく、これはなるんです。私の方がよく勉強しているというのは情けなく思いますけれども、文化庁のパンフレットにそう書いてあるんですよ。

 だから、文化財というのは一回つぶしたらどうなるかということを真剣に考えなければいけない。そして、我々国民の共有する歴史、これをどこまで大切にしていくかということ、これができなければ国際的に日本人が恥をかく。

 何も、ナショナル・ギャラリーをつくっちゃいけないということは一言も私は申しておりません。どうしたら我々の歴史、文化、そしてあの技術を伝えていくことができるだろうか、時代が変わった、内閣がかわったんだから考え直さなきゃいけないということを大臣にお尋ねしているのです。

 だから、大臣の答弁は、内閣がかわる前からの話なんですよ。もちろん、検討会が設けられて、今大臣が述べられたことは検討会で出てきた話だ、こう思いますけれども、これでは我が国の文化行政は恥ずかしい。

 我が国で最初の鉄筋コンクリートでできたあの兵舎を簡単につぶしてしまう。一回行って見ていただきたいのです。あれをリニューアルすれば、どんな立派なものになるだろうか。そして、登録文化財であればそうしてもいいということを書いているんですよ、文化庁。

 自分たちであっちこっちの建物に対してはそういうことを言いながら、自分たちの建物に対しては、模型を残す、記録を残す、土台を残す。そんなものでは満足できません。

 私は、これは超党派の議員の皆さん方が、残すべきじゃないか、あるいは真剣に文化庁と話し合って、いいアイデアを出すべきではないか。今大臣の答弁されたアイデアは、我々を満足させるものではありません。私は、これは委員会決議をしてでもやらなければならない重要な、この国の二十一世紀の文化についての考え方、指針を明確にする重大な問題だ、こういうふうにとらえるものであります。

 だから、大臣は今、記録だ、模型だ、一部を残す。一部といったって、新聞報道によれば、壁であるとか小さいアーチであるとか、そのようなものなんですよ。その考えに変わりありませんか。

青山副大臣 ちょっと答弁の前に、一言だけ理解していただきたいのは、国会の質疑を活性化していこうということで、役人の答弁を禁止していく、そのために大臣のほかに副大臣制度が設けられて、政治家同士の議論をここで深めていきたい、こういうことでスタートを切ってきておりますので、副大臣の答弁もひとつぜひお許しいただきたいと思います。

 今のお話は、なるほど、非常に示唆に富んだ建設的な発言であると私は受けとめました。ただ、しかし、東京大学の生産技術研究所、この建物は既に、キャンパス再配置計画でしたか、あれで、従来使っていたあの今の校舎は、非常に老朽化して、狭隘化してきて極めて使いにくいもの、そういうことで駒場の方へ移転をしていきました。

 ただ、しかし、建物としては文化的に意味があるじゃないか、こういうことですが、ナショナル・ギャラリーとして使う、こういうことになりますと、たくさんの問題がありまして、私は、東京大学生産技術研究所の建物を保存してナショナル・ギャラリーとして活用することは、まず非常に困難であるというふうに判断しております。

 それから、建物を活用していくことが安くなるという議論がけさほどもありました。しかし、現実には使えない建物、ギャラリーとしては使えない建物ではありますが、そのまま改築するのでも、あの建物をつくった費用と同じぐらいの費用がかかるという計算が出てきておりまして、幾つかの点で大変な障害があると申し上げておきたいと思います。

 もう一つ。芸術文化の振興をぜひ図っていきたい。美術関係の団体から、あの位置にぜひひとつ、ナショナル・ギャラリーが適切で、つくってほしいという要望を長く、多く、強く受けてきたという経過があることもひとつぜひ御理解いただきたいと思います。

松浪委員 ここに一枚のパンフレットがありますけれども、これは実は、ドイツの国会議事堂の、爆撃をされて、修復して、そして新しい国会議事堂としてできたというポスターであります。

 古いものは、一回つぶしてしまうと取り返すことができない。老朽化しておる。老朽化しておるから東大の生産研究所は出ていったのと違うのです。手狭になったのと、そして新しい機械等いろいろ問題があって行ったのです。それと、修復にお金がかかるからつぶすというならば、すべての古い建物はつぶさなきゃいけなくなっちゃうんです。それをいかに保護して使っていくかが、我々に求められる知識、知恵なんです。それを認めないで、古いからつぶすんだ。

 私は、今の副大臣の意見にくみするものではありません。もう一回真剣に考えていただいて、真剣に考えずにここまで来ているということもようわかっているんです、言わないだけなんですよ。

 それと、ナショナル・ギャラリーはやめておけというようなことは一言も言っていないんです。私は、この地図に、今度つくろうとしているギャラリーをどういう向きにしてどうすれば、どれだけ今の建物を登録文化財として指定して残すことができるかという調査研究をやらせていただいております。

 とにかく、文化庁が文化財を壊すということ、このことが許せないんですよ。ナショナル・ギャラリーは必要だ、ならば、今の土地は立地条件として最高だ、ならば、ストーリー性のある、たくさんのお客さんが来たときにそこでお茶を飲むあるいは食事をする、あるいは二・二六の記録を保存する、あるいはこの建物の記録室をつくる、知恵を出せば幾らでも残しようはあるし、使いようはある。それも検討せずして、余りにも設計者の意見を聞き過ぎておる。文化庁は文化庁として何一つ主張していない。これを私は残念だと思っているんですよ。

 だから、文化庁が、本当にナショナル・ギャラリーとこの建物をうまいこと共存させる方法がないだろうかと、壁を残すとかアーチを残すとかいうような小さなことでお茶を濁すのではなくて、建物として、我が国の歴史を、また技術をたたえる、そしてそれを活用する知恵を出すべきではないか、私はこのように申しておるわけであります。そして、そういう時代なんだということ。

 今、私は、小泉内閣はどういう内閣なのかと。そして、大臣が決意を述べられた。それを実行するためには、大臣自身が真剣に考えていただいて、そしてお願いをしたいということであります。

 はっきり申しておきますが、私の考えが通らなければ、私は座り込みをしてでも、残さなければならない、そしてそれが国民の声だという思いがあります。その宣戦布告をさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

高市委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会




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