衆議院

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第19号 平成13年6月13日(水曜日)

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平成十三年六月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高市 早苗君

   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 高橋 一郎君

   理事 平野 博文君 理事 藤村  修君

   理事 西  博義君 理事 都築  譲君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      河村 建夫君    左藤  章君

      杉山 憲夫君    砂田 圭佑君

      谷垣 禎一君    谷田 武彦君

      谷本 龍哉君    馳   浩君

      林 省之介君    増田 敏男君

      松野 博一君    水野 賢一君

      森岡 正宏君    大石 尚子君

      鎌田さゆり君    葉山  峻君

      肥田美代子君    牧  義夫君

      松沢 成文君    山口  壯君

      山谷えり子君    山元  勉君

      池坊 保子君    斉藤 鉄夫君

      武山百合子君    石井 郁子君

      児玉 健次君    中西 績介君

      山内 惠子君    松浪健四郎君

    …………………………………

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策

   局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長

   )            工藤 智規君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青

   少年局長)        遠藤純一郎君

   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  杉山 憲夫君     左藤  章君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     杉山 憲夫君

    ―――――――――――――

六月十三日

 豊かな私学教育の実現を求める私学助成に関する請願(中西績介君紹介)(第二五八一号)

 同(山元勉君紹介)(第二五八二号)

 同(横光克彦君紹介)(第二五八三号)

 小中高校生等の奉仕活動義務化、不適格教員排除等をねらう教育関係六法案反対に関する請願(中西績介君紹介)(第二五八四号)

 教育改革関連六法案の廃案と教育基本法見直しの中止に関する請願(今川正美君紹介)(第二五八五号)

 同(金子哲夫君紹介)(第二五八六号)

 同(重野安正君紹介)(第二五八七号)

 同(横光克彦君紹介)(第二五八八号)

 同(植田至紀君紹介)(第二六四六号)

 同(大島令子君紹介)(第二六四七号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第二六四八号)

 同(辻元清美君紹介)(第二六四九号)

 同(東門美津子君紹介)(第二六五〇号)

 同(山内惠子君紹介)(第二六五一号)

 同(山内惠子君紹介)(第二七三三号)

 アレルギー性疾患を学校病に指定することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七一四号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二七一五号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二七一六号)

 同(大森猛君紹介)(第二七一七号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二七一八号)

 同(児玉健次君紹介)(第二七一九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七二〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二七二一号)

 同(志位和夫君紹介)(第二七二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二七二三号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二七二四号)

 同(中林よし子君紹介)(第二七二五号)

 同(春名直章君紹介)(第二七二六号)

 同(不破哲三君紹介)(第二七二七号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二七二八号)

 同(松本善明君紹介)(第二七二九号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二七三〇号)

 同(山口富男君紹介)(第二七三一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二七三二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)

 社会教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)(参議院送付)




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     ――――◇―――――

高市委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、学校教育法の一部を改正する法律案及び社会教育法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君及びスポーツ・青少年局長遠藤純一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。

 教育関連の三法案について質問をさせていただきたいと思うわけですけれども、まず、それに先立ちまして、大阪の池田小学校において起きました連続児童殺傷事件、この被害者の方々に、まずは心からのお悔やみとお見舞いを申し上げさせていただき、そして、この事件に関して、何点か質問をさせていただきたいと思うわけでございます。

 今回の事件に関しては、この悲劇、惨劇というものに対しての怒り、悲しみ、やるせなさ、それによって、語るべき言葉もないわけでございますけれども、しかしながら、こういう事件が起きると必ず、二度と繰り返してはならない、そういうことが言われるわけであります。当然のことでございます。

 しかし、これまでの歴史というものを振り返ってみると、何度も、二度と繰り返してはならないということ、再発防止ということが言われながら、残念なことに、類似の事件が起きてしまっている。

 たしか、おととしの京都市で起きました小学校での男子刺殺事件のときも、当時の文部省が、三十九項目だったと思いますけれども、チェックリスト、点検項目、つまり、学校の安全というものを確保するための、安全管理のための点検項目というものを打ち出したというふうに思うわけです。しかしながら、こういう事件が起きてしまった。そう考えると、この点検項目というものが十分に現場に行き渡っていたのかな、そういう疑問というものをやはり持たざるを得ないわけであります。

 もちろん、こういうチェックリストを出すということは大いに結構なことでございますし、教育委員会などにそういう通知をするということは非常に意味のあることだと思いますけれども、しかし、これは通知のしっ放しでは意味がない。現場にどれだけ徹底したのかということをまずお伺いさせていただきたいと思うわけであります。言葉をかえて言うならば、ただ指示をしただけでは仕方がない。それは、指示した結果というものが現場から報告として上がってきたのか、その状況というものをお聞かせいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 学校におきましては、児童生徒が安全に教育を受けられるよう、日ごろから安全教育と施設設備の安全点検等の安全管理に万全を期すことが必要でございます。委員御指摘のように、京都市での事件を受けまして、平成十二年一月に幼児児童生徒の安全確保及び学校の安全管理につきまして通知を出しまして、その中で、外部からの侵入者による事故等への対応も含めまして、学校等における点検項目を例示し、家庭や地域との連携のもとに取り組みを充実させるよう指導をしてまいったところでございます。

 しかしながら、今回のようにまことに痛ましい事件が現実に発生したことは事実でございまして、文部科学省といたしましても、このことを重大に受けとめまして、学校における安全管理についてさらに充実を図ってまいりたいと思っているところでございます。

水野委員 今、私、ちょっと実施状況についてお伺いをしたわけですけれども、どうも詳しい答弁がなかったような気もしますけれども、その点はさておき、じゃ、この点検項目を通知したという話がありましたけれども、点検項目の内容そのものについて見直すという考えはありますでしょうか。

 これは、私は何も、昨年ですか、打ち出された点検項目が間違っていると言っているわけではないけれども、しかしながら、こういうものは硬直化して考える必要もない。さらに言えば、適宜、最善のものを目指しての見直しというものはあってしかるべきではないかなと思いますけれども、見直しということは考えていらっしゃるかどうか、お伺いしたいと思います。

遠藤政府参考人 文部科学省としましては、今回のまことに痛ましい事件を受けまして、直ちに大臣談話を出し、そして六月十一日付で通知を出しまして、学校の安全管理につきまして、緊急の再点検や再発防止の観点からの対応を求めたところでございます。

 これにあわせまして、学校の安全管理につきましても、第一には、効果を上げている方策や有効と考えられる方策、今後の課題等につきまして、各都道府県教育委員会から意見を出していただく、さらには、平成十二年の通知におきまして例示されました点検項目で、見直すべき内容につきましても意見を出していただくということで、お願いをしているところでございます。

 今後、この意見を集約しまして、十分な検討を行いまして、見直しを図ってまいりたい、こう思っております。

水野委員 万全を期していただきたいなと思うわけでございます。

 今回の事件のような場合は、被害者にとっては何の落ち度もないわけでございます。それだけに、こういう事件を予測するというのは、一方において非常に難しかったんではないかというふうにも思います。しかしながら、予測は難しいかもしれないけれども、また自己防衛するというのは口で言うほど簡単なことではないかもしれません。

 しかしながら一方、学校という場が、子供たちにとっても必ず絶対に安全な場でなければならないというのも言うまでもないわけでございます。ましてや、子供は社会の宝、国の宝ということも言われるわけでございます。そういう意味においては、こういう社会の宝を預かっている場において安全が確保されなければいけないというのも、これも当然のことなのであると思います。ゆめゆめ、こういうことが再発されることが決してないように、遺漏ないような対応をお願いしたいと思います。

 さて、この問題は、ある意味では、開かれた学校というスローガンに対して、やや冷水を浴びせるような形になってしまったのかなという気もしないでもないと思います。しかし、私は、こうした悲劇を乗り越えてでも、開かれた学校づくりというもの、これを推進していかなければいけない、そういう思いもあるわけです。何も、開かれた学校という場合に、それはただ単に学校の校門を開放しっ放しにしておくとか、そういうことだけではなく、より地域に根差し、地域とともに歩む、地域と共生していく、そういう基本理念を体現するような学校であってほしいなと思うわけです。学校が単なる閉鎖社会であってはならない、そういう思いもあります。

 しかし、一方で、安全の確保というもの、これが大切なのは、先ほど来申し上げたとおりでありますけれども、大臣のいろいろな御発言をお聞かせいただくと、基本的にその部分は私と考えが同じではないかというふうに思いますけれども、改めてここで大臣の、開かれた学校に対する、この推進をどういうふうにしていくのか、その決意や、また、それと安全との調和、両立というものをどういうふうに図っていかれるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

遠山国務大臣 委員御指摘のとおりに、今回の事件、まことに痛ましいものでございまして、よく言われるとは仰せでございますけれども、二度と起こしてはならないという決意を新たにすべきだと考えております。特に、校内に入り込んできて刃物を振り回して、あのように多くの子供たちが被害を受けるというようなことは、これは絶対に許されないということはすべての日本の大人たちの決意でもあろうかと思います。

 そんなことで、今各地で取り組みが始まっているということも大変心強いところでございますが、当然、我が省といたしましても、できるだけこの問題に対しては、いろいろな工夫もあるいはアイデアも各地から取り寄せたりしながら、なすべきことはきちんとやっていくということが必要であろうと思います。

 その安全管理の必要性と同時に、委員御指摘の開かれた学校という姿勢も、これは大変大事なことでございまして、これらを分けて考える必要があろうかと思います。学校が安全であるということはもう絶対条件でありまして、これに対する最善の努力を続けていくということはすべての学校がやる必要があるのと同時に、学校がその社会の、特に地域社会の中の非常に大切な存在として、地域の人たちの理解も協力も得て濶達な学校教育活動ができるように、内容を充実した教育活動ができるようにするためには、開かれた学校でなくてはならないわけでございます。

 開かれたという意味は、私は、物理的に、常にドアを開き門を開いているということではなくて、その学校運営の仕方なり地域社会の協力を得る姿勢において開かれたということであろうかと思っております。

 そのようなことに関しましては、学校が家庭、地域などに対して努めて開かれたものであるべしというのは、既に、一九八〇年代の終わりの臨時教育審議会を初めとして、いろいろな審議会でもきちんと指摘されておりまして、それに対応して、最近、学校が単に閉鎖的になるのではなくて、地域に向けて地域の理解も得るための努力がなされているということは、学校の教育活動がより多彩で活発なものとなるという意味で大変大事であろうかと思っております。その意味で、この開かれた学校という考え方、これを後退させてはいけないと思っております。

 確かに、安全管理と開かれた学校との両立というのは一見難しいように思いますけれども、安全管理を絶対条件としながら、姿勢として開かれた学校、また、いろいろな工夫をして、そのねらい、目的というものを実現するべく各地で御努力をいただきたいと思っております。

 という考え方からいえば、私も委員の御指摘の方向性と全く同じ考えでございます。

水野委員 池田小学校の話とはちょっと離れるんですけれども、開かれた学校という場合には、よく空き教室の活用ということが言われるわけですね。今も十万を超える空き教室があるというふうにも言われていますけれども、私、この委員会の審議をいろいろ聞いている中で、なるほどなと思った提案の中に、例えば、空き教室を活用するという場合に、学校にそういう改修費を一定の割合で付与したらどうかとか、もしくは学校改修のときの補助率など、今の制度を見直して、空き教室活用などのために必要なそういう部分にはより重点的に補助率をかさ上げするとか、そういうようなことをしたらどうかというような提案も実は野党の議員からもあったりしたわけですけれども、そういう提案というのは、これは党派を超えて、いいことはいいんじゃないかとも思うわけですけれども、例えばこういう問題に重点投資をするようなお考えというのはあるでしょうか。

岸田副大臣 先生御指摘のように、余裕教室を活用すること、大変重要だというふうに認識しております。実情に応じまして、特別教室や多目的教室、さらにはPTA室など、地域との連携のためのスペースの活用ですとか、あるいは生涯学習、あるいは児童福祉施設への転用、こういったものも近年行われてきているところであります。

 文部科学省としましては、平成五年に余裕教室活用指針というものを示しておりますが、その中で、余裕教室を特別教室や多目的教室、カウンセリング室など、学校教育のための施設に改造する経費の一部を補助、三分の一でありますが、こうした補助をしておるところであります。また、学校施設以外の社会福祉施設などへの転用につきましては、関係省庁との連携を図りながら、パンフレット、手引書を作成して促進を図っているというところであります。

 現状、平成五年、この指針を出しましてから平成十一年までの数字でありますが、余裕教室約十一万室のうち、九二%、約十万室が今申し上げましたような形で活用されているところであります。

 しかし、引き続きまして、余裕教室全部が活用されているわけでもありませんし、今先生の御指摘の点、大変重要な点だと思っております。より以上この活用に向けて施策が講じられるかどうか、これは引き続き検討していかなければいけない、そのように考えております。

水野委員 例えば予算的な話になると、これはなかなか、いろいろな折衝もあるでしょうから、そう簡単にここでお約束したりすることは難しいかもしれませんけれども、前向きに必要な施策については検討していただきたい、そういうふうにお願いしたいと思うわけでございます。

 さて、時間が大分過ぎてしまったわけですけれども、法案について幾つかお伺いをしたいと思います。

 実は、この長い審議時間の中で、かなり論点というものは出尽くしてきたのかなと思うわけでございます。ただ、その中で、かなり大きく争点になった、焦点になったというものは、奉仕という概念だったのかな、そんな思いがあるわけでございます。

 私は、現在の教育において、奉仕というもの、その精神というものは実は非常に必要なんじゃないかと思うわけでございます。少なくとも今の教育に必要なのは、自分よりも大きなものに対して尽くしていく、例えばそれは、社会であるとか、国であるとか、世界であるとか、人類であるとか、自分よりも大きいものに対して尽くす心というものがなければ現在の諸問題は解決しないんじゃないかと思うわけでございます。例えば地球環境の問題一つとっても、単なる利己主義を超えて、人類とか世界とか、そういう大きいものに尽くしていくんだ、そういう心構えというものは極めて大切だと思うわけです。

 ただ、一方では、奉仕という言葉に対しては、強制が伴うとか、私は個人的にはちょっと極端ではないかと思いますけれども、勤労奉仕のような言葉を印象させるとか、そういうようなある種抵抗のあるのもこれまた事実かもしれません。私自身は、教育という現場において、教育というものがある種の強制とかある種の指導というものを伴うのは当然であり、それが必要であるというふうに考えておりますけれども、しかしながら、奉仕の精神というものが自発的に、自主的に行われるにこしたことはないわけでございます。

 そういう意味において、お伺いしたいのは、この法案で言うところの奉仕活動というものに、これは、自主的なものというのはいわばボランティアと言いかえてもいいかもしれません、このボランティアというか自主的な精神というものは、ここで言うところの奉仕活動のかなり中心的な、かなり重点的な位置を占めるのかどうか、基本的な考えをお伺いしたいと思います。

遠山国務大臣 社会奉仕、奉仕活動の中に、ボランティアといいますか、みずからの発想によって他に尽くす、発意をもって活動をするというふうなことが含まれる、あるいはそれが代表的な例であるということは確かでございます。

水野委員 これまでの法案の審議の、この委員会での議論の内容を聞いていましても、法案に真っ向から反対という方も中にはいらっしゃるのかもしれませんけれども、しかしながら、かなり多くの論点というのは、この法律というものを一面において評価はしているけれども、恣意的な運用をされては困るとか、例えば不適格教員の問題なんかがそうなんでしょうけれども、法案の趣旨には賛成するけれども、恣意的に運用されては困る、そういうような懸念というのが、そういう表明もあったかと思うわけであります。

 もちろん、提出者としては恣意的に運用するつもりはないわけでしょうし、また、そういうことがあっては法律の本来のねらいとかけ離れてしまうとも思うわけですけれども、この運用という部分に当たって、法律の本来の趣旨というもの、理念というものをきちっと生かして運用していくという、その決意を最後にお聞かせいただきたいと思います。

遠山国務大臣 今回の法案でねらいとしております中身について、その運用が恣意的にわたらないようにするということは当然でございまして、このために、改正法の趣旨や留意点について周知を図りますとともに、適切な指導を行いたいと考えております。

 また、法律において定められております、義務づけられている手続についても、その盛り込むべき内容を指導するというような方法によりまして、このねらいがきちんと達成されるように努力をしてまいりたいと思います。

 このような措置を通じて、法令の運用が恣意的なものとなることのないよう適切に対応するということを、ここではっきりと申し上げたいと思います。

水野委員 時間ですので、終わります。

高市委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。

 冒頭に、先ほどもお話ございましたが、先週の金曜日に、私の地元でもございますが、大阪で、教育大学の附属池田小学校で、歴史にないほど痛ましい事件が起こったわけであります。八名の子供さんが、日本の宝でありますとうとい命をなくされた、またおけがをされている方も多数ある、こういうことでございます。私、心から御冥福を、またお見舞いを申し上げたいと思っています。

 そういう観点で、私も地元に戻りまして、すぐさま現場の学校並びに関係者にお会いをいたしました。そのときにお聞きをいたしましたことを含めて、大臣並びに関係者にお願いと御質問をしたいと思っています。

 現地での本部長であります教育大学の学長、中谷学長のところにも私参りましたが、大変悲痛な思いで、茫然としておられる、こういう気持ちが、そのとおりだと思います。ただ、今一生懸命、被害に遭われた御家族の方々、さらには学校全体の、子供の傷ついた心をどういやしていくのかということに全力を挙げて腐心されている状況でございました。その中で、岸田副大臣、池坊政務官がきちっと現地に御訪問されているということは、私は、さすがだな、こういうふうに思いました。

 しかし、訪問されるだけでは意味がないわけでございます。後をきちっと責任を持って文部省がどう対応するかということが非常に大事だというふうに思っておりますし、遠山大臣も、子育てをされた大臣でございます、やはり何をおいても、母の心を持って、子育てをされた方として、現地に赴くことが、私、さらに大きな心の安らぎになるのではないかと思っておりますから、大臣、現場には行かれましたか。

遠山国務大臣 私の役割は、この安全管理について、全体的な、効果のある安全対策をきちんととって、現地における問題解決はもとよりのこと、全国各地における小中学校の動揺を抑え、さらにやるべきことをきちんと明確にしていくということがまず第一の責務でございますし、また、こういう委員会での議論を通じて、また先生方の御意見を伺いながら、私どもの政策に反映させていく、そういう最終責任を負っております。

 そういうことでありますから、いろいろのやるべきことをやった上で、なおかつ必要があれば、もちろん出向くこともちゅうちょする問題ではございませんけれども、まず私の役割として考えることをなし遂げたいと思っております。

平野委員 そこは、私ちょっと大臣と感覚が違うんですね。何をおいても現場を見る、これが最高責任者の仕事だと私思うんです。その上で、適切な処置をとる、これが一番の役割だと私思うんです。まして、大臣は子育てされている、子供を持つ親の悲しみというのは一番、大臣だってわかるはずですから、そういう視点で、やはり現地に早く赴いていただいて、関係者の声を聞いていただきたい、このように思います。

 そういう視点で、私、二、三御質問したいと思うんですが、今回の事件というのは、私なりに考えますと、こういう犯罪、外部の人が、教室の中で起こった事件、まして八名にもわたる死傷者を出した事件というのは、教育界の中でも過去ないんじゃないかな、こう思っています。それだけに、この事件の持つ意味、重大さ、あるいはこれだけこの社会がすさんでいる、こういうことを我々が真剣に、真摯に認識をしなければならないと思っています。

 そういう中で、開かれた学校、こういうことであるわけでありますが、では、門を開けば開かれた学校なのか、では、今回こういう事件があるから門を閉鎖する、こういうことと安全性を確保するためにそういう手段をとるということは全く違うことだろうというふうに私は認識をしております。

 したがいまして、改めて、日本の将来の宝であります、また社会的弱者であります子供を守っていこう、こういう気持ち、やはり学校の現場、さらには地域社会、あるいは国民全体の意識の中に芽生えていかなければならないと思っています。

 そういう中で、当面、この措置に対して、学校の現場での安全性の確保について今考えられていることがあれば、お教えをいただきたいと思います。

岸田副大臣 今先生からお話がございましたように、この事件、楽しくそして安全に学べるはずの学校、そしてなおかつ教室の中で多くのとうとい命が奪われたということにおいて、日本の教育史上におきましても類のない大事件だと考えております。この事件の深刻さ、重さ、また影響の大きさ、こんなものをしっかりと受けとめてこの事件に対応していかなければいけないと強く感じております。

 そういった中にありまして、これもまた今御指摘にありましたように、開かれた学校とその安全管理というもの、開かれた学校というのは、決して物理的な意味の開かれた学校ではないということ、先ほど大臣の答弁にもあったわけでありますが、物理的な意味ではなく、実質的な意味で、内容において開かれた学校を実践していくに当たりまして、安全管理というものにつきましては、しっかりと両立をさせていくべく努力をしていかなければいけないというふうに考えております。

 そういった中にあって、今後の安全体制ということについてでありますが、この大阪教育大学教育学部附属池田小学校あるいは大阪教育大学附属高校におきましては、当面、警備員の配置等の対応をしているところでありますが、これは全国の学校においても同じ問題を抱えているわけであります。全国の学校においても、今後の安全体制というものをしっかり考えていかなければいけないということであります。

 そういった面から、まず、文部科学省としましては、平成十一年に出しました全国の学校における安全管理のチェックリスト、三十九項目の安全管理におけるチェックポイントを指摘し、その実施を平成十一年、促したわけでありますが、その安全管理の状況、今度は実施状況につきまして、今週中にその実施状況を全国の学校において確認し、そして、この際にはこっちから一方的に通知を出すだけではなくして、結果を全部フィードバックしてもらう、結果を全部こちらに戻してもらうというところまでやって、安全管理、まず現状がどうかということをしっかり確認したいと思っております。

 そして、その上で、従来の安全管理のポイントが現代社会において本当に適切なのかどうか、これもしっかり点検しなければいけないというふうに思っております。現状の把握とあわせて、全国の学校に対しまして、チェックポイント、安全管理の諸点が現状に合っているかどうか、このあたりもしっかりと意見として出してもらうよう今指示を出しておりまして、こちらにつきましては、今月いっぱいをめどにその意見を集約して再点検を行いたい、そのように考えております。

平野委員 ぜひ、そういう視点での現状の管理体制のあり方、こういう把握、チェックをされるということも大事だと思いますが、私、この事件の持つ意味というのは、教育の限界を超えたところに事件が起こっているんではないかという一面の認識をしています。当然、学校で起こりましたから学校の安全性ということは非常に大事な今問題でありますが、今の日本の社会病理の大きな現象がこういうところにあらわれているのではないか、こういう見方を実はしておるわけであります。

 したがって、現場にあります学校の先生方におかれましては大変な、日々一生懸命やっておられると思いますが、一生懸命やっている役割とは違う流れでこういう限界、幾らやってもそういうことが想定できない事件なのかな。したがって、やはりこれは政治、国がしっかりと、今この日本の国のすさんでいる社会病理をきちっととっていく、こういう視点での対策が必要なのかなというふうに私は考えています。

 もう一つは、やはり多くの人が入ってくる公共施設での危機管理のあり方も、一面同じ状況にあるのではないかな、こういうこともあわせてお考えをいただきたい、このように一つお願いをいたすところであります。

 子供さんと御家族の立場に立ちますと、やはり今非常に心が傷ついておられるわけであります。メンタル的なサポート体制、これをお聞きしますと、五十五名の体制でやっておられるというふうに聞いておりますが、何分においてもショックが大きいわけですから、十分なるサポート体制をしいていただきたい、このように思っております。

 加えて、私、先生方にお聞きをいたしますと、事件の起こった校舎において、改めてそこで教育をするということについては非常に気にしておられるわけであります。改めて校舎の改修、建てかえを含めて強く切望しておられたような声がございましたが、その点についてはどうでございますか。

岸田副大臣 今御指摘いただきましたように、この問題、社会全体、安全な社会をどう実現していくか、そういった見地からも見なければいけない、先生おっしゃるとおりだと思います。

 また、二点目、心のケアにつきまして万全を尽くすようにという御指示、これもしっかり受けとめて、全力で取り組んでいきたいと思っております。

 そして三点目、授業を行う場所の確保、教室を改修あるいは建てかえ、こういったところを含めて検討するのかどうかということでありますが、これは当然検討しなければいけないと思っております。心のケアという面からも、こうした細心の対応をするということ、国におきましても全力でそれをバックアップしていかなければいけないということ、当然のことだと思っておりますので、全力で努力したいと考えております。

平野委員 それでは最後に、マスコミの皆様方にも私、この件でぜひ心の注意をしていただきたい、このように思います。

 私も行きまして、マスコミは報道の責任ということであるわけでありますが、傷ついている御家族あるいは学校の生徒さんに事件の模様を聞いたり、情報収集するについて、余りにも心の配慮のないままの情報収集をされているように聞いております。何としても、やはり今現状に置かれている当事者の気持ちを十分に酌んであげていただきたい。このことを私、マスコミの皆さん方にも、きっちりと心の配慮をした報道を、あるいは情報収集をしていただくように大臣の方からも強く言っていただきたい。悩んでいるのに、また夜、家に来て、どうだったとか、こういうことをされますと、その被害者の御家族の心情を考えますと、何よ、こういうふうにもなりかねませんし、なっておられる方も二、三聞きました。したがって、私の方からもマスコミの皆さんに、報道の役割というのは重々承知しておりますが、十分そういう視点での配慮される報道をお願いしたい、このように申し上げておきたいと思います。

 さて、それでは、本題の質問に入ってまいりたいと思います。(岸田副大臣「ちょっと一点」と呼ぶ)はい、どうぞ。

岸田副大臣 済みません、ちょっと一点、修正をさせてください。

 先ほど、全国の学校に文部科学省から安全の通知を出したのを平成十一年と申し上げましたが、平成十二年の間違いでございました。訂正させていただきます。

平野委員 それでは、教育三法に関係する質問に入っていきたいと思います。

 これまでのいろいろな委員の皆さん方の質疑等々を聞いてまいりまして、かなりの問題点、課題が出てきたように思います。そこで、私、改めて、地方教育行政法案に関係するところについて再度、確認のことを含めて御質問をしたいと思うんです。

 先般の、私、質問に立たせていただいたときにも、不適切な教員の転職配置措置についての質問をさせていただいたんですが、その中で、行き先がない場合は転職させられないのではないか、こういう質問もいたしました。したがって、現場に置いたままにするのか、こういう質問をしたわけでありますが、私、十分納得する答えがいただいておりません。そこで、そのときに、副大臣の答弁では、行き先がないからと現場に置いておくことは許されず、さらに研修等を進めていくんだ、こういう趣旨の発言もあったように思います。しかし、これをよくひもといてみますと、極めて課題のある発言だと思えてなりません。

 といいますのは、大臣自身が再三お答えになっておられますが、今回の転職制度の対象者というのは、研修等の措置をとっても改善の見込みのない者を対象にしておるわけであります。したがって、行き場がなかったら研修を再度してもらう、こういう答弁は非常に当を得た答弁にはなっていない、こう思うわけであります。改善の見込みがないと一度判断された者はさらに研修をさせるというのは、どういうことか、余りこの法の趣旨に的確にお答えをしていず、矛盾のある発言ではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

岸田副大臣 今御指摘ありましたように、今回の措置におきまして、どうしても適切な職がないという場合においては、教育センター等において引き続き研修に従事するなど、こうした対応をするということになると思います。

 ただ、研修等において改善の見込みがない者をこの措置の対象にするわけであるから、それが矛盾するのではないかという御指摘でありますが、要は、今回の措置によりまして、そうした指導が適切でない教員に対しましてとり得る施策の選択肢が一つふえるわけであります。この施策がなければ従来のように研修を繰り返すしかないわけでありますが、その中にあって、本人の適性あるいは行き場の確保、こういったものが可能であれば、こうした教育の現場から外すという選択肢を新たに加えるという意味では、今回の措置は大いに意味があるというふうに思っております。

 いずれにしましても、今回の措置でそういった指導力に問題がある、不十分である教員の措置がすべて完結する、対応が十分になるというのではなくして、一つの前進としてこうした選択肢を確保できるという趣旨でございます。このことの意味をぜひ御理解いただければと考えております。

平野委員 だけれども、現実にこの法案がもし通りまして、現実的にこれは教育委員会にゆだねるわけですよ。教育委員会は、選択肢を一つふやしたからそれでやってくれと言われても、なかなか難しいんじゃないでしょうか。

 指導力不足で判定委員会で判定をしました、しかし、極端なことを言えば、行き場がないので動かせません、これでは、そういう指導力不足だというレッテルを張られる教員にとっても、またそういう指導力不足だという教員に居座り続けられる子供にとっても、極めて不幸なことになるのではないでしょうか。子供はたまったものじゃないんじゃないですか。また、先生においても、レッテルだけ張られて、そこでいなさいよ、これでは、どうなっておるかというのは、非常に大変でございまして、どちらにしても、現場の教育委員会に不可能を押しつけることになりはしないでしょうか。

 厳格に運用させなければいけないと言いながら、現実に運用するのが教育委員会であることをいいことに、文部省は責任を持って真剣にこの法案に対する検討をしてきたのかということに私は疑問を投げかけなければならないわけであります。転職先を用意すれば処分も受け入れやすいだろう、極めて、問題になっております対症療法的な法案であるような気がして私はなりません。

 きのうも、骨太の抜本的なことが今の教育国会と言われながらも、何か対症療法的な法案だという御意見の参考人の方もおられましたが、まさに安易な制度を設けているとしか私は思えないわけであります。極端なことを言いますと、では、県職に押し込みます、こんなことを言ったら県職は怒りますよ。

 一つの例を挙げましょうか。

 大阪府という大きなエリアでも、行政職新規採用は、平成十二年で大卒二十名、高卒二十名しか採ってないんですよ。指導力不足だ、こういう評価の出ている大阪の教員は今三百名以上いるという。この間、我が党の議員からも、数百名いるんだ、こういう結果が出ていると。こうなると、大阪府全体で三十名ぐらいしか新規採用しない、こういう行政職のゾーニングにどっと押しつけていくなんて、こんなことが現実的にはできない、私はこういうふうに思うわけであります。したがって、この法の実効性というものは、極めて架空の、偉い人がデスクワークで描いた法律でしかないと私は思っているわけであります。

 本来、指導力の不足している場合、まず現場から外して、独立した、そういう指導力不足を本当にバックアップする、こういう研修所において再研修の機会を必ず与えて、そこでしっかりした研修を受けてもらう。そこで合格したら出てもらうということで、まずそこでしっかり研修が受けられる体制をつくることからやらなければだめなんだと思うんですね。

 今までだって研修しております。二週間から四週間、あるいは新任研修で一年間とかいろいろなことをやっていますが、やってきたけれども、それが何の実効にもならなかったわけであります。効果が出なかったんだから、改めて研修の体制を整備することからやることがまず先決だというふうに私は思うわけであります。

 そして、そこで改善された先生は現場に戻って頑張ってもらう、どうしても改善されない先生には転職を、別の支援体制のもとにみずから別の道を選んでもらう、こういう方法が一番スムーズな方法なんじゃないでしょうか。

 したがって、この法律で担保されることではなくて、こういう指導力不足の教員を生み出さないために次善の策をとることが非常に大事な視点だ、この法案を出されて改めて私は認識した次第でございます。

 したがって、学校の教員養成課程、過日の質問でも私は言いましたが、養成課程、さらには、特に現場で子供と触れ合う、OJTとよく民間企業で言いますが、いわゆる現場の体験を通じてそういうものを知ってもらう、あるいは、採用するについては今までの採用基準とは違った視点で、特にそういう指導力不足になるということがよく出てくるわけですから、ならないような人物を採用していくんだ、このことをまずやるべきだと私は思いますが、どうでございましょうか。

岸田副大臣 まず、指導力不足、指導力が不適切な教員を教育の現場から離さなければいけないということにつきましては、教育センター等の研修を受けてもらう等、現状のシステムでも現場から外す方策は幾つかあるわけであります。しかし、現状のシステム、プラス今回こうした措置を講じる。

 教育委員会の中には、教職以外にもさまざまなポストがあります。それをできるだけ活用してこうした新たな措置も加えることができるということになれば、より前進するのではないかということ、これは大きな意味があるということをぜひ御理解いただきたいと存じます。

 そう申し上げた上で、今先生から御指摘ありました教員、そもそも養成、採用、研修、さまざまな分野でしっかりとした対応をしなければいけないということ、これはおっしゃるとおりだと思います。それがまず基本としてあるということは、おっしゃるとおりだというふうに考えます。

 そういった意味から、養成におきましても、採用におきましても、また研修におきましても、より一層すばらしい教員の育成にぜひ努めていかなければいけない、そのことは強く感じるところでございます。

平野委員 副大臣、力強くお答えになりましたから、具体的な改革としてそれはぜひ出してくださいよ。今の現行制度で改善をしますというんじゃなくて、抜本的にやらなきゃだめだというのが、今なっているんですから、やはり具体的に出してもらう。そうしなければ、この委員会を通すがゆえの答弁じゃ困るわけですから、きちっとそれを次の国会でも出してくださいよ。それがこういう指導力不足の教員をなくしていくための一番近い早道だと私は思っております。

 でないと、やはりだめな人はだめだということで、分限免職とか今の現行制度だってあるわけですから、それに改めてこれをつくるという根拠性が余りにも希薄である、私はこう思えて仕方がないのであります。

 時間がありませんから、次に行きます。

 この法律の中で、指導が不適切というこの範囲でありますが、明確に基準がないと恣意的に運用される可能性があるということも前回の質問で私は申し上げました。恣意的な運用を防止するという点についてまず聞きたいのでありますが、各教育委員会における運用が恣意的に運用される、こういう懸念を私考えますが、文部省は全然考えませんか。

岸田副大臣 我々も、今回の措置が適正に運用され、恣意的にならないようにすること、極めて重要な点だと認識しております。

 そのために、施行通知等において具体例を示す、なおかつその手続は教育委員会の規則で定めること、法律上義務づけられているわけでありますが、この手続の具体的内容につきましても、想定しているものを施行通知で示すこと、こういったことをしていかなければいけないと考えております。

平野委員 ぜひ、恣意的にやられるということは本来の趣旨ではありませんから、そこについてはやはり、レッテルを張られる教員の立場に立っても大変なことでございますから、恣意的に運用されないように、再三注意をしていただきたいし、そういう指導をしていただきたい、このように私は思っています。

 まず、恣意的要因が起こるという視点に立ちますと、要は、指導が不適切の範囲が非常に不明確な点があるから、裁量の幅によっていろいろ運用が振られる、こういうところが非常に気になるわけであります。この点を明確にしておかなければならないと思うのであります。したがって、まず、懲戒処分や分限処分との関係について再確認をしておきます。

 これらの処分は、処分する側にとってもやはり責任問題になりかねず、明確な根拠を必要とするんですね、懲戒処分とか分限処分については。これは処分ですから、やはり責任問題がつきまとってくるわけです。このため、懲戒処分や分限処分のかわりに今回の転職措置という、安易に利用される、この点が非常に懸念のされることであります。私は、今までだって分限処分、懲戒処分があるんだから、そこの処分でやればいい、改めてこの転職措置をつくったという根拠性が不明だと思っているから、こういうふうに思うのであります。

 そこで、改めて確認をしておきたいんです。

 大臣は、この委員会における答弁で二つのことを述べておられます。

 一つは、従来の懲戒処分や分限処分の対象となる行為には今回の転職措置は適用しない、こういうことをお答えになっておられます。いま一つは、今回の措置は分限処分に至らないような指導力不足の場合に適用するものであるということでお答えになっておられますが、間違いございませんか。イエスかノーで結構です。

遠山国務大臣 そのとおりでございます。

平野委員 この二つのことをさらに聞けば、よく考えると、特に二つ目の分限処分に至らない指導力不足に適用されるということの意味が非常にわかりにくい。

 これは、懲戒処分や分限処分の対象とするに至らない、程度の軽い問題教師全般に適用され、それを指導力不足という意味なのか、それとも、分限処分の対象となる不適格教員にまでは至らないものの、満足な指導ができない教員に適用される意味なのか、どちらですか。これは非常に悩ましい問題ですよ。はっきり答えてください。

岸田副大臣 今回の措置と分限処分との違いについての御質問だというふうに理解いたしますが、分限処分となっている場合、要は、授業等の指導が放棄されていたり、児童生徒が授業中に騒いでも全く指導を行わない等、指導が行われていないか、それとも同視し得る状況、こういった場合が従来から分限処分に該当するというふうに言われております。判例上も、このあたりの判断、厳密、慎重であることが要求されておりまして、そういった判断が行われているわけであります。

 これに対しまして、本法律案における措置の対象としましては、指導が行われていない状態とまでは言えないものの、指導内容に誤りが多かったり、児童生徒の理解度等を踏まえず授業を進める上、指導が不適切である者、こういったものが該当するというふうに考えております。

平野委員 しかし、そういうふうな考え方でいくと、程度が軽ければ今回の指導力不足、こういうことにもなるわけですね。そうすると、指導力不足ということがやたらに広い概念として入ってくるわけです。

 私は、生徒を指導する能力や意欲の不足する教員のうち、不適格教員とは言えない教師に対する措置であるとの前提で来ていると思うんです。文部省は、指導力不足という概念を、広い意味と文字どおりの指導力不足をしているという狭い意味のどちらに使っておられるんですか。

岸田副大臣 分限処分におきましては、要は、指導の不適切だけではなく、公務員一般に当てはまる勤務状況全般に基づいて判断されるというふうに思っております。

 今回の法律案の措置は、児童生徒に対する指導が不適切か否かのみ、これにおいてのみ基づいて判断されるものと考えております。

平野委員 ほかにも質問したいところがあるので、もうこれ以上いきませんが、要は、この法律というのは非常に問題があって、余り実行されたくない、してもらいたくない、したがって成らぬようにしてもらいたいという気持ちです。

 もう一つ、指導力不足が甚だしくなると、適格性に欠けるという流れに行くんでしょう。しかし、指導力不足は、だれもがその教員を現場に置いておけないと考えるほどのものでないとされる。両者の区分というのが非常に不明確なんです。

 教員としては不適格でないけれども、教員として必要な指導力がないというおかしな概念がここに生まれてくるんじゃないでしょうか。教員の適格性はあるけれども指導力が不足している、こういう概念がこの流れで、この法律をつくることによって生まれてきやしませんか。教員としての適格性がだめな者は分限になるんだけれども、教員としての適格性はまだ不適格とは言えないけれども指導力不足。この辺は、非常にややこしい概念がこの法律によって生まれてくるんじゃないかなということを危惧しているんです。

矢野政府参考人 制度論にかかわる問題でございますから、少し御説明をさせていただきたいと思います。(平野委員「簡単でいいですよ」と呼ぶ)はい。

 先生おっしゃる話で、教員というのは、公立学校の教員というのは教育公務員ということで、公務員としての要素とそれから教員としての要素を持っておるわけでございます。そこで、分限制度というのは、教員としての要素、例えば指導力、それから公務員としての要素ということで勤務態度等の勤務成績がございます。そういうものを総合する形で、適格性を欠くかどうかという判断があるわけでございます。

 今回のケースにつきましては、教員としての要素、つまり指導力というところに着目をして、それが適格性を欠くほどにも至らない、そういうものについてこういう新しい制度を設けようとするものでございます。そういうふうに整理、御理解をいただければと思います。

平野委員 わかったようなわからぬような気持ちでありますが、いずれにしても、これはグレーゾーンが入ってきますから、非常に難しいんですね。

 適格性に欠けるところでも、分限免職の対象になり得るんですよ。適格性の程度が低いところ、物すごい重度、ひどいという場合には分限免職。しかし、まだ軽いな、適格性というところの判断をし足らないところの領域というのは、今度、新しいこのスキームでやろうとしている。

 しかし、判断の基準があいまいになっているものですから、ぶわっと広がるのではないでしょうかと、私が言いたいところはそういうことなんです。したがって、これは恣意的にやってもらったら困りますよ、基準をしっかりしてくださいよということに対して、やはりぜひきちっとしていただきたい。

 この点だけ、わかりましたと言ってくれたら次の質問に行きますが、わからないと言ったら、また再度行きますよ、どうぞ。

岸田副大臣 先ほど申し上げましたような方法を通じまして、恣意的なものが入らないよう努力をしていく所存でございます。

平野委員 何分にもよろしくお願いをしたい、このように思います。

 さて次に、長期休業制度という制度があるわけですが、教員の自己研さんというところでお伺いをしたいのですが、教員に社会性が欠けているとか、一般常識が欠けているとかよく言われているんですが、私はそんなことはない。やはり閉鎖された中にいますから社会性に欠けているところはあるかもしれませんが、一般常識に欠けている、これは一般常識に欠けているとしたら、採用するプロセスで全く違った採用をしているということになりますから、それを否定するつもりはありません。社会性というのは、やはり閉鎖された教室の中におられますから、少しお欠けになる方も出てくるのかなという気はしますが。

 そういう意味では、企業体験や社会体験をもっと持っていくべきだ、こういうふうに思うわけでございますが、やはり文部省は、もっと教員に社会の中のいろいろな体験をしてもらうために、長期休業制度を教員の枠の中に取り込んでいこう、こういう気持ちはございますか。

遠山国務大臣 教員の皆様が社会の実態もよく承知された上で指導されるというのは大変重要なことでございます。

 そんなことで、各地においていろいろな研修制度を取り入れられたり、あるいは学校の教員が企業の中に行って短期間であっても研修をする、あるいは地域の商店でありますとかそういうところで働いてみるとか、いろいろな工夫がされているわけでございます。そういうことの重要性については、私は委員の御指摘に賛成するものでございます。

 今のお尋ねは、長期休業のことでございますね。それについてお答えした方がよろしいのでございますか。それはよろしいですか。

平野委員 いや、大臣、いいですよ。大臣、重要であるという認識はいただいたと思っています。

 平成十二年から大学院の修学休業制度がつくられて、教員が、専門知識をより高めたり、時代の変化に対して教科指導力を確保するということでこの制度があることも承知をいたしております。しかし、今大事なことは、企業体験やボランティアや、やはり実体験のことを学んでもらう、こういうことが長期休業という制度のもとにされることが、専門知識をより高めていくということよりも、もっと違う、人格的な、社会の枠の中での体験を通じて高めていくことの方が大事であろうと思っていますから、大学院制度というのをやってもらっていますが、それに加えてそういう視点の長期休業制度をやっていただきたい、こういうふうに願っているところでございます。時間がありませんので、ぜひこれを強く要望しておきたいと思います。

 さて、もう一つは、先ほど申し上げましたように、指導力不足の教員を出さないようにするためにという、こういうところもあるのですが、特に今、学校現場において、教師の手に余る困難な状況がたくさん起こっている。過日の事件も私は教育現場から超えた事件だと思っていますが、その中で、もし問題教師がいるとするならばそれは排除する、これは私も当然だと思っております。

 しかし、大多数の教員は一生懸命子供のためにやろうとして頑張っていることも事実でございます。そういう中で、この困難な状況に対して必死で対応しておる教員が、努力もむなしく子供が傷ついたり非行に走ったりする現状に思い悩んで、精神的に非常に苦痛の中にある、こういうことも私は事実だろうと思います。

 先輩の教員の方々に聞きますと、わしのときはこれでやったんだという、体験をベースにして語っておられませんが、現実に何かのもとにおられる現場の教員の今の精神的フラストレーションというのでしょうか、これは相当なものがあると私は思うのですね。それを放置しておきますと、指導力不足が起こったり精神的疾患になったりするわけでございますから、やはり現場教員にきちっとそういうノウハウを与える、あるいは人員配置をきちっとする、あるいは現場教員に、思い悩む教員への適切なるメンタルヘルスをきちっとする、こんな制度充実をぜひ求めたいと思いますが、どうでございますか。

遠山国務大臣 御指摘のように、子供たちにとって教師との触れ合いというのは大変重要でございまして、したがって、教師は心身ともに健康を維持して児童生徒への教育に当たってもらいたいと思っておりますし、私も、多くの教員の方々は大変努力をして学校教育の充実のために日々努めておられるという実感を持っております。

 今御指摘の点、大変大事でございまして、そのことのために、文部科学省といたしましては幾つかの点を強調しながら指導をしております。

 まずは、教員がゆとりを持って教育活動に専念できるよう、学校内での会議や行事の見直しなどによって公務の効率化を図ってほしいこと、そして二番目、日ごろから教員が気軽に周囲に相談したり情報交換ができるような職場環境をつくること、三番目には、教員に対するカウンセリング体制の整備でありますとか、心の不健康に陥った教員については早期発見、早期治療に努めること、そして教育委員会の方も、学校だけに任せるのではなくて、積極的な学校訪問を通じて、学校の様子でありますとか、各教職員の状況を的確に把握するように努めてもらいたいなどのことについて、各都道府県教育委員会に対し指導助言を行っております。

 今後とも、教員の心身の健康の保持、増進について、こういう指導助言というのを徹底してまいりたいと思います。

平野委員 大臣、ぜひ、結果論として問題教員を起こさないためにも、これはやはり事前に、早期に相談に乗ってあげることによって問題が早く解決しますから、何とぞこの体制整備をよろしくお願いしておきたいと思います。

 最後になりますが、通学区域の削除の問題でございます。

 私は、公立高校の通学区域に係る規定の削除について一点だけ聞きたいのでありますが、学区の設定を教育委員会にゆだねる、このことは基本的に教育の地方分権に伴うものですから、私はそのとおりだと思うのです。また、学区を柔軟に設定するということは、子供の学校選択の自由度を高める、こういう意味においても基本的に私も理解をするところであるわけであります。

 しかし、学区を全く設定せず全県一区にすることも可能な制度になるわけでありまして、懸念されることは、特定学校への生徒の集中であるとか、あるいはナンバリングがされるとか、あるいは生徒の競争をあおることにもなりかねない、こういうことを私は懸念するわけです。

 したがって、私がここで確認しておきたいのは、通学区域の削除というのは、この改正の趣旨は、地方自治体に地域の実情に即した学区を設定させることにあって、学校間の競争をあおるためではないという考え方でよいのか。そして、今回の改正は全県一学区や学区の拡大を目指すものではない、こういうふうに私は理解をいたしますが、もしこの理解と同じであれば、この趣旨を各自治体に周知徹底していくんだ、こういう認識でよろしゅうございますか。

岸田副大臣 先生おっしゃるとおりでございます。

 地域の事情ですとか、今先生が御指摘されましたいろいろな問題点も勘案して、各教育委員会の判断にゆだねることがこの趣旨でありまして、全県一学区にすることや学区を拡大すること、ましてや学校間の競争をあおること、こういったことは決して意図するところではありません。この辺の趣旨はしっかり徹底するよう対応していかなければいけないと考えております。

平野委員 時間が来ましたので、終了いたしますが、いずれにいたしましても、この教育三法につきましては、これはもっと抜本的な、対症療法的な対応じゃなくて、基本的に、二十一世紀の日本の社会を支える人間、それの将来を支える子供の教育体系のあり方について、やはりしっかりと議論をしていく中で、こういう法案が出てくるべきだと考えております。

 まだまだ問題はあると思いますが、今大臣、副大臣から御答弁いただきましたことをきっちりと実行に移していただきますことを心よりお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高市委員長 藤村修君。

藤村委員 民主党の藤村修でございます。

 教育関係三法律改正案、まあ一言で言うと、教育改革国会と銘打って、そしてこの三法が本当にこれは教育改革だと言うには、だんだんに審議をする中で明らかになって、すなわち、それほど大げさなことではないし、ただ、必要なことではある、こういうことであろうと考えております。やや対症療法的ではあるけれども、しかし、必要なことは必要としてしなければならない、このことも十分に理解はしつつ、きょうの夕方にはもう採決という委員会運びになっておりますので、きょうは、私、いろいろな確認をしたいと思いますし、その確認の中で、まさに私どもの賛否が決まっていく。こういうことから、大臣、副大臣あるいは答弁者については、本当に中身のある、しっかりした答弁をしていただかないと、これは賛否に影響してくる、こういうことでございますので、そのことを冒頭申し上げたいと存じます。

 先般、私は地教行法改正について質問いたしましたので、きょうは学校教育法関係とそれから社会教育法関係、残り二法を聞いておかないといけないと考えております。

 ここで、問題点はもう幾つか絞られてまいりました。学教法では、生徒の出席停止の問題、これも大きな問題ではございます。私は、もう一つの問題として、きょうは、大学制度の多様化、弾力化ということで、このたび飛び級を相当大きく広げた。このことについて、本当にこれでいいかどうか、まさにこれは、この質疑の中で我々の賛否も固まっていくものだとは思いますが、お伺いしたいと思います。

 それで、千葉大学が今回何度も取り上げられております。ただ、聞いてみる範囲で取り上げられていないなと思うのは、千葉大学、たった十二人、一学年四人ですか、十六人になりましたか、四人程度。ですから、大したケーススタディーにはならないにしろ、そもそも、その人たちは一体どういうふうにして千葉大学に飛び入学してきたんだろうかということを、過去の資料をお願いして、見たり読んだりしてまいりました。本人の希望というのが多いんですね。だから、やはり手を挙げて、行きたいという人たちがこれに入ってきているケース。それから、中には、学校の担任の先生がこの制度に興味を持って、自分のクラスに話をしたら、そこで手を挙げて、じゃ私行きたいと言って来たというケースもあるようであります。

 これは、千葉大学のわずかな人数の話なので、余り一般に参考になるのかどうか。しかし、このたびこの法改正をすれば、これは全国に広がり、短大まで広がり、大変大きな影響力があるわけですが、どんな応募の仕方になるんだろう。私は、この制度自体は、非常に例外的措置というか、希有な、非常に優秀な者、本当に一部がそういうことになると考えるんですが、しかし、相当大きく広げてしまう。どんなケースを想定していますか。

遠山国務大臣 千葉大学の例につきましては、今お話しのように、高校の先生の指導あるいは本人の希望というものが入学志願のスタートとなっていると聞いておりまして、今回の法改正によりましても、このような取り組みが基本になると考えております。

 したがって、まずは、生徒本人の意欲を前提として、そして高校、これは生徒のいろいろな活動ないし勉学の実態を最もよく知っているわけでございまして、その高校において、その本人の意欲を前提としながら、その意欲をどのように支援していくかということについて、よく考えていただき、そしてこの制度につなげていただきたいと思っております。

 このために、関係者による協議の場などにおきまして、例えば、特にすぐれた資質をどのように発見し、指導するかということについても、そうした運用のあり方について協議していくことを考えてまいりたいと思っております。

藤村委員 大学の側でいうと、たった二つですから、非常に丁寧に採用していますね。千葉大学、私ちょっとさっき数字を間違えました、三人掛ける四年間ですから十二人ですね。三人ですか。この方たち、まず応募する側は、担任の推薦とか自己推薦とか、書類。そして受け入れる側は、火星からなぜ水が失われたかなどという思考力、ひらめきを問う小論文、あるいは七時間ぐらいかけて実験のセンスを問う、その他に小論文や口頭試問。まあ、三人の方をとるのに大変努力し、そして、これも千葉大学の場合だと、最初の平成十年度では十一人ぐらい受験して、そのうち三人をとられた。これぐらいの、いわば狭き門というか、あるいは非常に特異な例ということでの飛び級というのは、私は悪いことじゃないと思っているんです。

 しかし、今回、このように法改正でうわっと広げますと、今大臣の答弁では、高校と割にちゃんと連携するんだとおっしゃいますが、じゃ、何か具体的に連携機関を考えるとか、設置を考えるとか、そういうことなんでしょうか。

岸田副大臣 先生、大学と高校との連携機関を設けるのですかという御質問だったでしょうか。

 大学と高校との連携は、大変重要な点だというふうに思っております。

 特にすぐれた資質の判定に当たりましても、二年間、生徒をしっかり見てきた高校の判断等も踏まえて、大学においてその資質をしっかりと見出していかなければいけない。そういった意味でも、連携は大変重要だというふうに思っておりますし、そして、個別の大学と高校との連携に加えまして、こうした制度をスタートさせた後に、全国規模で、この関係者等において協議機関等を設けて、そしてそこにおきまして検証をし、そしてそれを公表していく、こうした連携体制も必要だというふうに考えております。

藤村委員 受け入れの大学も、これはケーススタディーといってみても、千葉大学と名城大学だけですから、余り一般的なことは多分言えないと思うんです。

 ただ、今回の法改正は、短大、専修学校、短大だけで全国五百七十二校ですか、専修学校で専門課程と高等課程ですかね、上を持つのが八百六十何校と、一気に一千数百の短大、専修学校ですね。それに加えて、大学が六百ぐらいあるわけでしょう。それだけにばっと広がるわけです。だから、今のケーススタディーの千葉大、名城大から、今度は、今の、大変大きな数に広がるときにはどんな問題が生じるのか。この前からのいろいろな質問で、シミュレーションはないとおっしゃっていましたけれども、しかし、そのぐらいの想定はするでしょうから、どんな問題点が、幾つか出てくるかなとお考えなんでしょうか。

岸田副大臣 確かに、仕組みとしましては、短大や専修学校等、その範囲を拡大するわけであります。しかし、あくまでもこれは、特にすぐれた資質を伸ばすというのが趣旨でありまして、例外的な措置だというふうに考えております。

 結果、どれだけ数字の上で範囲が拡大するかというのはなかなか予想できないわけでありますが、やはり基本としましては、特にすぐれた資質の判定、これをまず適切に行うということ、なおかつ受け入れ側が教育上適切な指導体制を持っているということ、この点はしっかりと確認をした上でこの制度を進めていかなければいけないというように考えております。

 ですから、判定の問題、体制の問題、この部分におきまして、しっかりとした、内容が充実していることが、この制度を実施する条件であるというように考えております。

 ですから、先ほど高校と大学との連携の話を申し上げましたが、その判定に当たりまして、先ほど先生の方からも千葉大学の実験や小論文の話が出ておりました。こうした面接や小論文、こういったあたりにつきましても、こうした例を参考にしつつ、しっかりと工夫をしていかなければいけないと思っております。

 また、その指導体制におきましても、適切なカリキュラムを持っている、あるいは教員が確保されている、そして、高校三年次を履修していないわけですから、それを補うような体制が整っている、さらには、そうした飛び入学をした学生に対する助言体制、相談体制が整っている、こういったあたりをしっかりと確認し、そういったものが整っていることが、飛び入学を実施する極めて重要なポイントだというふうに考えております。

 確かに、教員組織が小さい短大とか専門学校においてこうした指導体制がとれるかという問題はあるんでしょうが、いずれにしましても、そうした指導体制がとれなければ、この飛び入学というものを実施することは不適切だというふうに考えております。

藤村委員 それなら、最初から外しておけばいいじゃないですか。

 つまり、今、適切な受け入れ体制、指導体制が整っている、それをきちんと確認するとおっしゃいましたが、短大五百余り、専修学校の高等課程八百、大学六百、全国で二千ぐらい、文部科学省が、その二千、それぞれ法律的にはできるとなれば、やりたいと言えば、ちゃんと確認するといいましても、多分書類だけでしょうね、そういうことになるんでしょう。しかし、大変なことになってきます。

 むしろ、さっきの千葉大の例でも、結局、高校生の生徒の側から希望があれば、これは原則としては、高校の中でも、ああそうかといって対応しないといけなくなりますよね。私、ぜひ二年生であそこへ行きたい、あそこの何とか専修学校へ行きたいとなると、これは学校側も、そういう人が何人か出てくれば、全国津々浦々のそういうところへ、また、本当に体制ありますか、文部科学省に聞いてということで、いわゆる高校の進路指導の部分でも、非常にこれは新たな大きな負担になってきはしないか。これだけのたくさんの全国の対象に対して、高校はそれぞれ、一人希望があれば、やはり聞いてやらないといけないわけですね。進路指導にも大変大きな負担になるのではないかなという懸念をするんですが、そういう心配はしていませんか。

岸田副大臣 こうした飛び入学というものは例外的なケースだと考えております。こうしたものも含めて、進路指導の業務の範囲内でこうした対応もされていかなければいけないというふうに考えておりますので、大きな負担にはならないとは考えておりますが、さりとて、先ほど申しました、大学との情報交換ですとか選抜方法の公開ですとか、そういった面におきまして、飛び入学に対応しなければいけないさまざまな事柄が出てくるわけであります。こういったあたりが円滑に実施されるように、必要な支援があるのか、もし必要な支援があるとするならば、そのあたりはしっかりと考えていかなければいけないと思っております。

藤村委員 だから、少しこの方が開け過ぎたんじゃないかということで、私どもは修正案をきのう正式に提出いたしました。つまり、今も何度かおっしゃっているように、例外的措置だとか、あるいは一人一人の資質が一層伸長できるようにということで、ある意味では、非常に限られた人たちのための道を開くという趣旨の法改正だと思うんですね。

 にもかかわらず、法律の書き方自体が、短大、さらにそれに連関して、今度は省令でしょうけれども、専修学校の高等課程までとなってしまっているところに、私は、最初の法律をつくる趣旨とそれから実際の立法の技術との間に若干のそごがあったのではないかな。我々は、それをやはり正すために修正案を提出しておりまして、ある意味では、そういう例外的措置なら例外的措置に適応した、限定したところでの受け入れというものについてなら、まあいいんじゃないか、そんな考えを示しているんですが、修正案について、政府は聞いていると思いますが、何かコメントがありましょうか。

岸田副大臣 修正案につきましては、委員会、国会において御協議いただくものだと思っております。

 今御指摘の点につきましては、やはり先ほども申し上げましたが、内容におきまして、指導体制あるいは判定の体制、こういったものが整っているということが重要だと我々考えておりまして、その内容が整っている限り、短大ですとか専門学校ですとか、そういった制度の違いによって区別をすることは不合理ではないかなと思いまして、我々はこうした案を御協議いただいておるところでございます。

藤村委員 岸田副大臣、きょうまで幾つもお答えになっているので、だんだんに矛盾が生じてきている部分もあるんですね。

 例えば、私どもの委員から、先般、千葉大学の実態、名城大学の実態についてどう考えているか、実施状況を踏まえてということであるが、実施状況についてまとまったものがあるんですか、そういう質問でありまして、岸田副大臣は、幾つか答えた中で、受験戦争への影響、あるいは大学の青田買いなどの問題は生じていないと我々文部科学省は受けとめておりますと。それは、たった四人とかの話ですから、こんなことは言える話ではない。生じていないのが当たり前で、生じる理由もないですよね。しかし、今回は、ぼっと広げたときには何が起こるかわからない。シミュレーションありますかと言ったら、なかなかそれが出てこないし、実はシミュレーションしていないという答弁もありました。

 その意味では、余りに無理を通さないで、この際、今国会で審議をしている修正案、応じたらどうかというのが意見であります。

 そこで、六月五日の大臣答弁では、これは遠山大臣が、能力、適性に応じた、より柔軟な教育を展開できるようにしたいということで、これは趣旨であろうと思います、まさに何度かほかにもおっしゃった光の部分、伸ばしたいんだと。これはこれで結構だと私思うんですが、しかし、今、高校の段階で、より重要なあるいは喫緊の問題というのは、何年か前に高校中退者が年間十万人を超したというふうに、まさに高校の授業についていけないなど、学習がおくれる生徒への対応という方が、さらに大きな、重要な、あるいはすぐに取り組まねばならない問題、幾つか取り組んできているという問題。

 ですから、この機会に、まさに光の部分と影の部分で、影の部分が大きく、暗い、ここにどのように光を当てるのかということを答弁いただきたいと思います。

遠山国務大臣 教育の場におきまして、一人一人の個性と能力に応じた教育をやっていくというのがこれからの行き方の基本であろうかと思っております。

 したがいまして、一律主義というのを改めて、児童生徒一人一人に応じた指導を通じて、その子に最も適切な方法で指導をしていくということが大事でございます。

 理解のおくれがちな子供に対しましては、補充的な学習を通して基礎、基本を繰り返し指導していく、そして、理解の進んだ子供に対しては、発展的な学習に取り組ませるというような、そういうきめ細かな指導を行っていくことが重要であろうかと思います。一人一人が大変大事な存在である子供にとって、それぞれがその伸びるべき方向にきちんと伸びていくように指導していく、そこがまさに教育の成果が問われる場であろうかと思っております。

 このような教育を推進する観点から、新しい学習指導要領におきましても、全員が一律に学ぶべき教育内容をできるだけ厳選して基礎、基本の確実な定着を図りますのと同時に、選択学習の幅を拡大するなど、個に応じた指導をより一層充実しようとしているところでございます。

 特に、高等学校の学習指導要領総則におきましては、学習のおくれがちな生徒などについては各教科、科目の選択、その内容の取り扱いについて必要な配慮を行い、生徒の実態に応じて指導内容や指導方法を工夫するとしておりまして、特に高校のあたりですと、高校の授業についていけない人が、七五三、三割が理解できてそれ以外の方が理解できないというようなことも言われておりまして、学習のおくれがちな生徒に対して十分な配慮を行うことを学校に求めているわけでございます。

 我が省といたしましても、各高等学校において習熟の程度に応じた指導など、少人数によるきめ細かな指導を行うことができますように、新たな教職員定数改善を策定いたしまして本年四月から実施しているところであります。

 新しい学習指導要領のもとで、すべての生徒の基礎学力の向上が図られて、伸びる子もそれから理解がおくれている子も、伸び伸びとその力を発揮してもらうようになってもらいたいと考えているところでございます。

藤村委員 この機会に、ぜひ本当に、学習がおくれている、授業についていけない、こちらの方がうんと数は多いわけです、飛び級するような人は本当にわずかな、希有な、例外的な部分でありますから、これはこれとしても、そちらの方にむしろ大きく光を当てていただきたい、このように希望いたします。

 しかし、まださらに、大学制度の弾力化について詰めて聞かないといけない部分がございます。

 特にすぐれた資質の判定ということを先ほど岸田副大臣もおっしゃったんですが、これは、聞いてみますと、学校教育法施行規則の中で特にすぐれた資質を適切に判定するようということでありますが、もっと具体的に、では、特にすぐれた資質を適切に判定するためにどうするかなどはもう既に御検討なのか、それを通知される原案があるのか、そこをちょっとお聞かせください。

岸田副大臣 まず、飛び入学を実施する大学に対しましては、制度を適切に運用し、学生のすぐれた資質を十分伸長する観点から、まず、教育上適切な指導体制を整えること、そして、生徒の資質を見出し得る立場にある高校側の推薦を求めるなど、特にすぐれた資質の判定の上での適切な配慮を行うこと、あるいは、飛び入学に関し自己点検、評価を行い、その結果を公表すること、こうしたことを求めることとしておりまして、これらは省令に規定する予定にしております。

 そして、飛び入学に係る入学者選抜、各大学の判断で行われるわけでありますが、やはり一般の志願者とは異なる特別な選抜方法によって実施されることが当然考えられます。ですから、その際に、高校の校長の推薦、あるいは独創性や創造性を問う面接あるいは小論文、こういったものを組み合わせるように工夫をしていただかなければいけないと思っております。

 加えて、先ほどありましたような大学、高校との連携、意見交換、こうした体制につきましても指導をしていかなければいけないと思っております。

藤村委員 受け入れ機関の大学の側の今お話、それから連携が必要だという話。高校側で、高校でも、千葉大、名城大、わずかなケースを見ても、私、行きたいという人は、先生はそれなりに考えて推薦するということになっていますよね。いや、君じゃ無理だからということは余り先生はしたくないと思うんですね。だから、その意味では推薦がややルーズになりがちではないか。やはり高校においても、この際、飛び級に応募するためにはそれなりの基準というのか、こういうことですよということをある程度つくってあげないと、高校側も戸惑うんじゃないですかね。そういう意味では、高校にいわば特にすぐれた資質の判定をある程度してもらわないといけないわけですけれども、どういうふうに考えていますか。

岸田副大臣 おっしゃるとおり、高校側の役割も大変重要だというふうに思っております。資質を見出し得る立場にある高校側の推薦を求めるなど、特にすぐれた資質の判定の上で適切な配慮を行うこと、これは高校側にも求めなければいけないと思っております。この高校側の推薦を求めることなどは、省令に規定する予定にしております。

藤村委員 それにしても、千葉大学がやっと四年生、国立で。さっき数字を挙げましたように、千葉大学は割に厳しい選考をしているという、数字の上では見られます。名城大学はこの四月から。これはしかし、応募者四人で採用者四人ですよね。だから、ここにやはり国立と私立の違いが出てくるなと思うのは、私立は、来た人は受け入れますよ、こういう姿勢ですよね。

 これが将来の青田買いということがきょうまで何度も言われて、このことはもう繰り返しませんが、しかし、まだいずれにしても実験中に近い、卒業生も出ていないことからも、私は、今後これをやっていくならば、相当全国的に飛び級に関して実証的な調査研究をしなければならない、このように考えておりますけれども、どうお考えでしょうか。

岸田副大臣 おっしゃるとおりに、この新しい制度をお認めいただいてスタートしましても、飛び入学というもの、絶えずその調査研究をしていかなければいけないと考えております。

 ですから、大学、高校のみならず、有識者、こういった方々も含めて全国レベルで協議の場を設けること、これは考えていかなければいけないというふうに思っております。その場で、その運用のあり方ですとか、選抜方法のあり方、あるいは入学後の指導体制についての状況、こういったものをしっかりと点検しなければいけないと思っておりますし、それをしっかりと公表していくことが大変重要だというふうに思っています。また、こうした全国レベルの協議の場におきまして、不適切な、適切さを欠く運用がなされたことが判明したならば、公表していく、こういった対応も重要であるというふうに考えております。

 こうした全国レベルの協議の場、ぜひ設けていきたいと考えております。

藤村委員 連携で、協議の場、そして公表、この辺で文部科学省としては公正性というか、そういうものが担保できるんじゃないかとお考えのような気がいたしますので、これは必ずやっていただきたい、このように希望したいと思います。

 さて、今度は飛び級の範囲で、今までは大学、短大、専修学校などの受け入れ機関の問題をお話ししましたが、今度は対象分野であります。

 岸田副大臣がきょうまで幾つも答えているんですが、実は我々も対象分野をどうするかを考え始めると、なかなかどこでどういうふうに切るかというのは難しいなということはわかりましたが、しかし、きょうまでのお話の中では、いわゆる物理や生物の自然科学系の分野だとか、それからコンピューターの分野だとか、あるいは、経済なんかでもコンピューターを使う、数学を使う、そういう学際的な分野だとか、あるいは詩歌、創作等の文学の分野、演奏、歌唱、作曲等の音楽の分野、絵画、書、彫刻等芸術の分野、陸上、水泳、スキー等のスポーツの分野などなど、相当たくさん出されました。

 本当にこれだけの範囲でやっていいんだろうかな。野球とかサッカーなどスポーツの分野あるいは芸術の分野について、これは中教審も言っていますけれども、学校に別に行かなくったってそういう分野で才能を伸ばすことが十分に可能ですし、むしろ学校でやることじゃないのじゃないかなと思いますし、そのことをむしろ学校側、短大側なりはまさに利用してと言うと悪いですが、さっきの名城大は四人来たら四人とっちゃったわけですから、どうしてもそういう傾向になってくるとすれば、青田買いの懸念がそこから出てくるし、やはり、対象分野は大学が定めるとはいっても、相当に判断を慎重にしなければならない、このように考えるのですが、いかがでございましょうか。

岸田副大臣 今先生おっしゃったように、基本的には、大学がこの対象分野を自主的に定めるということを基本としておりますが、やはり社会的に妥当な運用の確保、こうした対象分野におきましても当然必要だというふうに考えております。ですから、具体的には、対象分野につきましても、その指導体制との兼ね合いにおきまして、特にすぐれた資質を伸長し得る分野のみを対象とすべきであります。

 ですから、大学を初め受け入れ側においてこの指導体制、その分野におきましては大丈夫だというような体制が整ってこうした制度の導入が図られるということでなければならないと考えております。

 ですから、可能性としては広げるわけでありますが、そういった実質的な面でしっかりとした、内容との兼ね合いにおいて、対象分野においても適切な対応がされること、これが大切だというふうに思っております。このあたりにつきましては、事例等も蓄積しながら、円滑な定着に向けて検討をしていかなければいけないとは考えております。

藤村委員 今指摘しましたのは、野球とかサッカーとか芸術分野も指摘したのですが、これも構わないと思っているのでしょうか。

遠山国務大臣 副大臣がお答えしましたような趣旨でございますが、必要なことは、この制度の趣旨に即した適切な運用の事例を蓄積していきながら、日本の中でこの制度が円滑に定着していくことが大事だと考えております。その点で、御指摘のような分野につきましては、個人的な意見ではございますけれども、大学において特に十分な検討が求められるのではないかと考えております。

 いずれにしましても、今まで副大臣がいろいろ答えてくれましたように、関係者間における協議等の場でこれらのことも含めて適切な運用を図られるよう、我が省としても努力をしてまいりたいと思います。

藤村委員 これら、おおむね飛び級についてたくさんのことが言い尽くされてきたとは思います。そこで、いろいろな心配があるし、一部短大の関係者からいえば、いや、これができれば、全国に、うちはこれが飛び級できますよと言って、これをうたい文句に、まさに目玉にして生徒を集めたい、学生を集めたいみたいな声も聞かれるわけでありますから、そのことを、まさに青田買い青田買いときょうまで言っていますが、大学側にしては、本当に少子化の中で、多分二〇〇七年ぐらいには十七歳、十八歳人口が最低に近くなってくるわけですね。

 一方、大学の入学定数というのはちょっとずつふえているわけですから、多分二〇〇八年だと思います、そのときの高校卒業者数と大学入学者定員がイコールになるのですね。つまり、選ばなければどこかの大学に入れる、そういうバランスになってくるとなれば、今度は高校二年生も大学側にとってはお客様だという、これはその法律ですから、そういうことにならないようにやはりこれは修正を考えてもらわないといけないなということを政府側には強く要請したいと思いますし、文教関係で過去十年ぐらい閣法が修正されたことはないからなどというそんなメンツにこだわらずに、本当に必要なことはこの議論の中で決めていくわけですから、十分に検討いただきたいなと考えております。

 そこで、私はもう一つ、社会教育法関係の質問が残っています。

 今回、社会教育法という法律の一部改正が出てきて、これも久々ではないかと思うのですね。最近、余り社会教育と言わないで生涯学習というふうに言っていたり、しかし、法律は古くからあるわけであります。

 そもそもこの社会教育法というのは、当時文部省がつくったわけでしょうが、どういう意味合いの法律なんですか。これで何かいろいろ規定していく、そういう意味の法律なのかどうか。法律の基本の性格についてお話しください。

遠山国務大臣 社会教育法の重要性というのは申すまでもないわけでございますけれども、この法律の性格としては、住民の自主的な社会教育活動を尊重しながら、それを奨励、援助するということを社会教育行政の任務としておりまして、今回の改正についてもその考えは変わらないところでございます。

 社会教育法の第三条にも社会教育の奨励に必要なさまざまな施策のことは掲げられておりまして、そういう方法によって、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならないということでございまして、委員の触れられましたように、奨励、援助という姿勢が貫かれる、そういう法体系でございます。

藤村委員 そこで、この社会教育法に出てくるのも学校教育法に出てくるのも、今回たまたま同じことで、いわゆる社会奉仕体験活動という言葉で、これも再三この委員会で取り上げられてまいりました。社会奉仕という言葉は悪い言葉じゃないと思っているのです。国や社会のために献身的に尽くす、そういう意味だと思うのですね。そのことは決して悪いことじゃない。

 ただ、学校教育段階において社会奉仕と大上段に言ってみるよりは、その前段としては、今既に学習指導要領等でもボランティア活動の推進をしていますね。だから、まさにきょうまで遠山大臣の概念として聞かせていただいた社会奉仕という大きな概念の中にボランティア活動も入る。奉仕ということはサービスという意味もありますから、別な意味もあるということでありまして、どうしても社会奉仕は、ある意味では押しつけの概念がちょっと強いわけですね。

 ところが一方で、ボランティア活動というのは、まさに自発性、無償性、社会性というのがあるわけで、自発性が非常に重要なわけですね。だから、学校教育段階において、これは学校教育法にちょっと戻りますけれども、社会奉仕体験活動、体験活動の一つとして今回例示したわけでありますが、と言うよりはボランティア体験活動と言ってみた方が一般的にわかりやすいし、学校教育段階では、まずはそのボランティア精神を体験していただく、人のために何かすることが自分にとってもこれはいいんだ、あるいは自分のためにもひょっとしたらなるんじゃないかなというところからスタートすべきで、いきなりこの社会奉仕体験活動を学教法、社会教育法両方にまさに例示で入れたことよりは、ボランティア体験活動あるいはボランティア活動というものをもう少し位置づけたらどうかと思っているのです。

 これは通告になかったかもしれません。もう一度議論のやり直しでありますが、それは我々が実は修正案を出しているということもあるので、答えていただきたいと思います。

岸田副大臣 おっしゃるとおりに、社会奉仕体験活動の中でボランティア活動というのは大変重要な活動の例だというふうに思っております。

 しかし、学校教育、あるいはさらには社会教育における体験活動ですが、自発性の低い活動も全く含まれないかということになりますと、その実情あるいは学校の判断等においていろいろなケースが考えられるのではないかと思います。特に学校の場合におきまして、子供たちにとって体験活動、初めての体験というのは随分あると思います。こういった中にあって、学校現場において適切な指導のもとにこうした体験活動を行うということも重要ではないかと思います。

 先生おっしゃるように、この社会奉仕体験活動の中で、ボランティア活動というものも大変重要な活動だとは思いますが、用語としましては、それも含めた社会奉仕体験活動、ほかの法令の用例等も勘案した上で、今回はこの用語を使うのが適切であると我々は判断するところでございます。

藤村委員 体験活動で、この委員会でも何度も議論に取り上げられた兵庫県のトライやる・ウイークですか、もう中身は大体言い尽くされたと思うのですが、ここで重要なポイントは、それなりにお金がかかったということも明らかになっております。四億円以上かかっているのですね。

 今回こうして、学教法にしてもあるいは社教法にしても、社会奉仕体験活動を初め、あるいは自然体験活動など、体験活動を相当強力に前面に押し出してきたわけですから、それを、ではやるのは各都道府県教育委員会であったりするわけで、地方ですよね。国は、当然その環境整備というのか、予算措置というのか、そういうものを考えないといけない。ただ、平成十三年度はそれは入っていませんという遠山大臣の答弁ですけれども、来年度からは本当にちゃんとこれは予算つけていくんですねということは確認したい事項であります。

遠山国務大臣 トライやる・ウイークの話はしばしば出てまいりますけれども、これは本当にすばらしい事業だったと思います。県内の公立の中学生、二年生全員に対して、これは二万四千人が参加しての活動でありまして、それだけに予算もたくさんかかっているわけでございます。

 ただ、体験活動のやり方は、それぞれの地域の実情に応じてそれぞれのやれることをやっていただくというのも大変大事でございます。

 体験活動の実施に要する経費は、もともと通常の社会教育活動と同様に、主催者、それから青少年、保護者において負担されるべきものでありますが、こういった体験活動を奨励するために、国としては、御存じの、例の子どもゆめ基金を通じて青少年団体等に助成を行うこととしているところでございます。

 さはさりながら、やはり効果的な体験活動をしたい、あるいはこういうことをやってみたらこんなに効果があったというような、さまざまな成果がこれから上がってまいると思っておりまして、私どもとしても、そういう考えをベースにしながら、しかし、国として、予算措置でそういう活動をより効果的に行うことができるのであれば、これは十分対応していかなくてはならないのではないかと考えておりまして、地域における推進体制の整備とあわせて、どのような支援措置が考えられるかをよく検討した上で、必要な予算措置についてぜひ努力をしてまいりたいと思っておりますので、今後とも御支援をよろしくお願いいたします。

藤村委員 そこで、社会教育法に関しては、また家庭教育に関して、講座等の実施及び奨励の事務を今度は教育委員会の仕事とするということに変わるんですね。今まではそれが書き込まれていなかったからややおざなりであったけれども、今後、これは各教育委員会、相当真剣に考えないといけなくなるわけですが、そのことで一体地域でどんなことが起こってくるんでしょうか、どういうふうに変わってくるんでしょうか、少し事例を挙げていただきたいと思います。

岸田副大臣 家庭教育というもの、すべての教育の出発点だというふうに考えますが、近年、都市化ですとか核家族化、あるいは少子化、こうした動きに伴いまして、家庭の教育力が低下しているというふうに認識しております。中教審の答申等におきましても、家庭教育に関する学習機会を充実していくことが求められているところであります。

 しかしながら、従来、社会教育法におきまして、家庭教育に関する学習機会の提供、明確な根拠規定が置かれていなかったわけですが、今回はこうした規定を置くことによりましてその重要性が明らかになるわけでありますが、こうした重要性が法律の中で明らかになることによりまして、各教育委員会におきましても、予算の確保等がより容易になるというふうに考えておりますし、またその取り組みもより積極的になると期待しております。

 こうした動きを、文部科学省としましても、地方公共団体等に対して支援を行っていく、こういったことによって応援をしていくこと、こういったこともぜひ努力したいというふうに思っておるところであります。

 こうした効果が今回の規定を置くことによって期待されるところかと考えております。

藤村委員 私は、ちょっと私事にわたりますが、地元は大阪の吹田市と摂津市というところであります。二つの市があります。

 実は、この摂津市という小さい方の市は、この五年来毎年、公民館まつりということで、六つの公民館、順にやるんですね。そこに年々子供たちの参加がふえてきていて、非常ににぎやかにやっている。今非常に公民館というのが地域の教育、いわゆる教育の中では家庭、学校、地域という、その地域の中核になりつつあるなというのが私の地元の一つの市であります。公民館活動は、まさに社会教育関係の活動であろうと思います。

 ところが、聞いてみると、やはり市の財政がどこも厳しい中で、そして人がふえてきて、うれしい悲鳴なんだけれども、しかし、実はお金がなくて困っているんですというのが地元の訴えでありますし、今回、社会教育法関係の改正をする、そして家庭教育に関する講座等の実施や奨励を教育委員会の事務とするということで、やはり私は、この法律自体に予算措置はないとしても、文部科学省全体として、来年度、まさに社会教育、地域の教育力を高めるという意味で相当の措置をしないといけないと思いますが、その決意を聞きたいと思います。

遠山国務大臣 仰せのとおりでありまして、地域の活動、家庭教育に関する講座等の実施などが成果を上げる形で実施されますように、予算措置は必要だと考えております。

 今年度から新たに子育て学習の全国展開といたしまして、小学校入学前の子供を持つ親が参加する就学時健診でありますとか、乳幼児健診などの機会を活用した子育てに関する講座の開設に対して、補助を開設いたしました、これは今年度のものでございますが。

 それ以外にも幾つかの項目を既に予算措置をいたしておりまして、今のところ、大きな柱として六つの事業がございまして、そのトータルが十三億九千万円でございまして、ここ数年のところ、伸びを示しておりますが、まだまだこれでは全国の公民館でありますとかいろいろなところでの活動を支えるのに十分でないかもしれません。その意味で、私どもとしては、この点についてもさらに充実に努めてまいりたいと思います。

藤村委員 これは項目にないことでありますが、先ほど来申し上げているように、私ども民主党は、今与党側に対して、今回の三法の中で学校教育法について、一つは社会奉仕体験活動、この言葉は非常に正反あるし、やや概念が大きいし、学校教育の中で考えるなら、その前段であるまさにボランティア活動、ボランティア体験活動を推進することで、それは将来の、国のため、社会のために献身的に尽くすという奉仕の精神を涵養すればいいんじゃないか。学校教育においても、社会奉仕体験活動、仰々しい、古めかしいということでの言葉の入れかえを、修正をすること。

 それから、飛び級については、先ほど来大分お聞きしたり言ったりしました。まさに千葉大の四年間の、これは実績とまでまだいかない。今、名城大の一年生がいる。十数人の範囲で、それで今度は一気に大学から短大、専修学校専門課程までなどという、そして分野も、今は物理と数学なのに、これも一切の分野限定は基本的に法律ではしないなどという、実績もないし、そして、そうしたらどうなるというシミュレーションもないし、ないない尽くしの中でこんなことをやっていいのかということから、修正を提出しているところであります。

 これら修正が、過去の文部省が閣法として出した法律が長年修正などされなかったなどというメンツにこだわらずに、本当に実際に法ができたら社会がそのように動き出す部分があるわけで、大変困る部分が、青田買いのこともありましたけれども、いっぱいあるわけですから、よく慎重に国会の立法の中で検討し、文部科学省もその受け入れ体制を整えていただきたい、このように思いますが、何か御意見がありましたら伺いたいと思います。

岸田副大臣 修正につきましては、委員会、国会で御協議いただくものだと思っておりますが、その御協議は大変重たいものだというふうに認識しております。

藤村委員 以上で終わります。

 ありがとうございました。

高市委員長 山元勉君。

山元委員 民主党の山元勉でございます。

 いよいよ、この重要法案の教育三法、審議してまいりましたけれども、どうも拙速と言わざるを得ない、大詰めに来ているという感がいたします。

 小泉総理は、この国会の初めに、改革を断行するんだと声高におっしゃった。そして、痛みを恐れず、壁にひるまず、過去にとらわれず、改革を断行するんだということをおっしゃいました。しかし、弱い立場の者への痛みのしわ寄せだとか、あるいはひずみをつくっていくということについては最も恐れなければならないものですし、既得権益だとかあるいは横暴というものにはひるまないけれども、民主主義のルールだとか、いわゆる民の声にはひるまなければいけないだろうというふうに思うんです。

 それで、審議をしてまいっております、例えば、高校教育を大混乱させるという、今、藤村委員からもありましたけれども、飛び入学を教育機関も分野も限定を外すんだということや、あるいは、発表になったときにあらゆる新聞の社説で反対だ、きのうの参考人の意見も多数がそうであったように、奉仕活動の義務化には反対だ、これは私は声だというふうに思いますけれども、やはりそういうものに為政者はひるまなければいけないんだろうというふうに思います。

 例えば、前も申し上げましたけれども、文部科学省が出した、これは文部科学省になってから出しているのですが、二十一世紀教育新生プラン、こんなものは、省が出すパンフとしては初めて見た。「私たちは議論を恐れません」と、でかでかと書いてあるわけですね。

 その中に、例えば、今問題にしようとしています、あるいは問題になってきています奉仕体験活動の促進についても、小中学校でやり、さらに十八歳後の青年が一定期間奉仕活動を行う社会的活動システムをつくる、この議論を恐れませんと。こういう居丈高な、恐れない、ひるまないというようなことでは、私は教育をぶっ壊していくことになるんだろうというふうに思います。

 ですから、私は、今改めて拙速ということについての懸念を強く持っています。議会というのは数の力だ、こういうふうに言いますけれども、しかし、恐れなければならないもの、ひるまなければならないものについてはきちっと受けとめる、そういう政治手法が必要なんだろうというふうに思います。

 私は、今までこの問題で二回質問をさせていただいて、飛び入学や、今議論のありました学区の拡大問題などについて問題を指摘してきました。先ほども言いましたように、どうもそういう感じがするのですが、大詰めに来ているのであれば、なお一遍、さらに確かめておきたい。これからの教育にどう影響するのかということを、しっかりと文部科学省のお気持ちを、あるいはこれからの施策をお尋ねしておきたい、確認しておきたいというふうに思います。

 最初に、今、藤村委員から、社会教育法についてのボランティアの問題がありましたけれども、私は、特に小中学校のボランティアについてお尋ねしたいのですが、きのう、池本参考人が、ボランタリーな人間や社会をつくっていくことが大事なんだ、こういうふうにおっしゃいました。恐らく、文部科学省の人も院内テレビでごらんになっていただろうというふうに思いますけれども、私も、これはこれで理解をいたします。

 しかし、教育というのは、さまざまな技能だとかあるいは内面的なものだとかいうのを育てていく仕事なんですけれども、とりわけその内面に価値を育てていく仕事というのは、これはなかなか強制してもできるものではないわけです。本当に子供たちが自分の思いで取り組んでいかなければそういうものは育っていかないだろうというふうに思います。

 とりわけ今の状況というのは、今の社会ですね、個別的な、さまざまな情報が出てきている、さまざまな教育の機会がある、提供されている。ですから、子供たち自身も、本当に価値が高いと見なければこれに取りついていかない。そして、それに取りついていくことによって、疑問、問いといいますか、あるいは感動というものが育っていくんだろうというふうに思うのです。だから、学校は、いかに価値が高い、子供たちが飛びついていくといいますか、心を動かしていくような、そういう教育の機会をつくっていくことが大事なんだろうというふうに思うんです。

 この奉仕活動についても、再々、学校の創意工夫だ、それを生かすんだ、こういうふうにおっしゃっている。これは、もちろん一番大事だろうというふうに思いますけれども、実際に大事だ大事だと言ってもだめで、どうしましょうかということを、子供たち本人にも、保護者にも、地域の人にも、どういうふうに子供たちを育てたらいいか、どういう経験を与えたらいいかということについて、十分意見を受けとめながら行うことが大事なんだろうというふうに思うのです。

 文部科学省として、そういう受けとめる、大事ですよと言うだけでは、これはかけ声だけになるわけですが、実際にこれからこのことを進めていく、法改正してわざわざ強めていくわけですから、その配慮を十分するという手だてがきちんとなければいけない、かけ声だけではいけないだろうと思うのです。どういうふうにお考えになっていますか。

遠山国務大臣 社会奉仕体験活動などの体験活動を充実するに当たりましては、各学校におきまして、校長の指導のもとに、学校全体として意思統一を図りますとともに、校内体制を整備して、各教職員がそれぞれの責任を自覚しながら、適切な役割分担のもとに指導を行っていくことが求められます。

 今委員のお話のように、子供の内面の価値を育てるということももちろん大事でございますし、同時に、プロとしての教師がそれまで培ってきたいろいろな指導の方法を駆使しながら、教育指導の一環としてこういう問題について取り組んでもらうことももちろん重要であるわけでございます。

 体験活動を充実していきますためには、学校内の取り組み体制を充実するだけではなくて、社会教育関係団体などの関係団体、機関との連携にも十分配慮して、地域の方々にもボランティアとして協力いただきながら、地域における推進体制の整備を図っていくことも大事だと考えておりまして、国としましても、いろいろな方法を駆使されながら、この体験活動、社会奉仕を含む体験活動の今回のねらいが十分に発揮されるように支援をしてまいりたいと考えております。

山元委員 ぜひ具体的なことできちっと、これは新しい分野と考えてもいいと思います、進んできていますけれども。ですから、そのことについての取り組みについて、省自身も研究していただく必要があるだろうと思いますし、全国のよき例を、交流し合うような、そういう取り組み方についての指導というのはぜひ具体的に進めていただきたいというふうに思います。

 そのときに、指導というのを耳にすると、文部科学省、文部省の時代から、限りなく強制に近づいていく、義務化に近づいていく指導というのが繰り返し行われたというふうに私は思っています。私も現場にいてそういう記憶がございます。ですから、よき面でのそういう材料提供あるいは知恵の提供というのはいいけれども、どんどこどんどこと、指導という名で限りなく強制に近づいていく、義務化に近づいていくというようなことについては、これは強制をしない、義務化をしないということはおっしゃっていますから、そのことは間違いないと思うのですが、指導という名でそのことをやられたら困ると思うのですが、いかがですか。

遠山国務大臣 義務化をねらっているものでないということはもう何度も御答弁したとおりでありまして、各学校において、それぞれの地域や学校、児童生徒の実態、実情などを踏まえて適切に判断されるようにと、この趣旨をきちんと私どもとして指導してまいりたいと思います。

山元委員 さっき藤村委員からもありましたけれども、財政の問題でも具体的に支援をしていただきたいと思うのです。それは、さっきは社教法の問題でしたが、学教法でも、学校が、何回も出てきますがトライやる・ウイークで四億七千万かかった。実際に各自治体がやろうとすると、頑張りなさい、工夫しなさいでは済まない問題ですから、これはもう答弁求めませんけれども、私は、ぜひ具体的な予算措置、人的措置について努力をしていただきたいというふうにお願いをしておきます。

 そして、この条件整備の一つとも言えるわけですけれども、学校支援ボランティアというようなものをきちっとつくっていく時代になっているんではないかというふうに思います。

 先ほどもありました池田小学校の問題は、私も、実は小学校一年生と二年生の孫がいますけれども、思うと本当に涙が出ました。ですから、ああいう事件を二度と起こさないようにということは言えますけれども、あそこの論議で、やはり開かれた学校よりも閉ざされた学校に何か向いていくような議論がある心配があります。けれども、そういうような消極的な対応策ではなしに、地域の人々が学校に関心を寄せて、そして学校の子供たちと一緒になって教育をつくっていく、そういう支援ボランティアの制度というものを本格的にやはりそれぞれの地域でつくっていくように、これもやはり日本の教育のあり方として考えていくべきではないかというふうに思うんです。

 その一つとして、これは教員養成とも絡みますけれども、教員養成大学学部にいる学生たちが、きっちりと、やはり単なる教生で一カ月とかいうことではなしに、常に地域の学校と結びついて、実践的に教員養成ということを受けていくといいますか、育っていくような、そういう地域の支援組織というものをつくっていく、目に見えるようにつくっていくということが大事なんではないかというふうに思いますけれども、積極的にこれは検討していただきたいと思うんです。

 町の人やあるいは学生が気が向いたら行くというのではなしに、きちっとそういうものがありますよ、手伝っていただけますよというものをつくっていく、そういう方向というのを検討すべきだというふうに思うんですが、いかがですか。

池坊大臣政務官 委員がおっしゃいますように、これから社会奉仕体験活動を行っていく上に、そういう先生の養成というのは大切だというふうに考えております。

 先ほども御意見がございましたように、開かれた学校というのは、何も門をあけるということではございませんで、学校と地域社会と、あるいはPTA、保護者の方々が連携をとりながら学校教育に参加していくということではないかと思っております。

 ですから、社会奉仕体験活動を行いますには、教師を指導することも、そういう知識を教師が持つことももとよりでございますが、地域社会の支援なくしてはこれはできないというふうに考えております。私が参りました京都でも、あるいは兵庫でも、地域との連携がとれておりますところは、きちんとした体験活動が子供にいい影響を与えながらやっていると思います。

 ちなみに、具体的に兵庫県におけるトライやる・ウイーク事業では、まず、県や市町村に、経済界の方、PTA、福祉、ボランティア関係、そういう方々による推進協議会というのを設けております。それからまた、中学校区に、校長、PTA、地域団体代表者から成る推進委員会というのがございまして、そういう連携の上に立って、社会奉仕体験活動というのを行っております。

 例えば、駅を掃除するとか、あるいは公園をきれいにする、あるいは老人ホームに行く、あるいは養護施設を訪問してともに遊ぶなどということは、一方的に学校が参りましても、連携がとれませんと相手にとっては多大な迷惑をかけるわけでございますから、この社会奉仕体験活動は、みんなが一環となってしていくところに、私は大きな意義があるというふうに考えております。

山元委員 私は、子供たちの奉仕活動の問題でなしに、地域の人々、とりわけ教員養成のコースにいる学生たちが、子供たちと一緒に経験をしていくといいますか、学校へ来て、教育活動に参加をしていく、子供と一緒に勉強するという、いわゆるアシスタントみたいな形になるでしょうか、そういうような支援の体制を恒常的につくっていくような方向というのを、やはり検討すべきではないかというふうに申し上げたわけです。

 時間がないですから、最後に、この奉仕の問題で、この間副大臣が、評価をする、こういうふうに答弁していらっしゃる。奉仕活動について評価をする、こうおっしゃった。評価の対象であるとおっしゃった。

 このボランティア活動とか社会体験活動を、特別活動の中、あるいは総合学習の中でやる。けれども、この評価というのは、一々総合学習、体験学習で評価するというのは、数値的な評価だとか評定ということには、私はなじまないと思っているんです。

 ですから、子供の内面的な問題として、例えば、こういう成長をしましたよとか、こういう側面を持っている子ですとか、こういう体験をしてよかったねというような評価はいいですよ。けれども、この間の副大臣の答弁では、あたかも評価をする、こう言い切られるから、五なのか三なのかというような評価ではないということははっきりとしておかないと、そして、それは温かい目で子供の内面的な成長についてコメントをするんだということでないといけないんです。そうでないと、またもう一遍、義務化の道につながっていくような感じがするわけですね、評価をするということで。

 ですから、そこの評価についての具体的なお考えをお伺いしておきたい。

岸田副大臣 先生おっしゃるように、評価というものは数字ではないと考えております。

 どのような評価方法をとるかは、各学校における判断に任せることになります。その活動のねらいとか、特質に即して評価のあり方を工夫していかなければいけないと考えております。

 新しい学習指導要領のもと、指導要録につきましては、総合所見及び指導上参考となる諸事項の欄に、特別活動や総合的な学習の時間の学習に関する所見、あるいは学校内外における奉仕活動などを記入することとしているところであり、体験活動につきましても、こうした欄に評価の結果を記入することが考えられますが、あくまでもこの欄に記入するのは、数字ではなくして、具体的な事項であるというふうに考えております。

山元委員 そうすると、それは、指導要録の中で所見を書く、必ずそれに触れなければならぬということではないわけですよね。だから、一般的に評価の対象になりますというと、みんな評価しなければならぬわけです。だから、そうではなしに、特別な所見が、よく伸びた、こういう経験をしたということがあれば書くことはあっても、そうでなければ、全部に評価するのだったら、これはもう義務化になるわけです。いかがですか。

岸田副大臣 先生おっしゃるとおりでございます。

山元委員 それじゃ、この間も申し上げましたが、出席停止について、もう一遍確認をしておきたいんです。

 この出席停止というのは、そもそも、子供たち、児童生徒に対する懲戒ではない、あくまでも、一定の権利を制限するけれども、それが伴うけれども、教育的な措置なんだ、そのことをきちっと踏まえなければいけないと思うんですが、懲戒措置なのか、教育的措置なのか、いずれですか。

遠山国務大臣 出席停止といいますのは、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するという観点から設けられているものでありまして、義務違反があった児童生徒に対する処罰としての性格を持っている懲戒処分とは、目的や性格を異にしております。

山元委員 懲戒でないとすると、教育的な措置だとすると、ずっと日常的な教育活動の延長上にあると。ずっと子供をこういうふうに指導してきて、そして、最後のところでこれは出席停止にしたという教育的措置にした方がいいということでなきゃいかぬわけです。

 例えば、ずっと教育的な、十分な教育指導をしてこなくて、ある日突然、暴れたから教育的措置だ、これはなじまないと思う。それはやってはならない。だから、日ごろ十分に教育的な生徒指導、生活指導が行われていることが一番大事なんだというふうに思うんですが、いかがですか。

遠山国務大臣 当然ながら、児童生徒の問題行動に対応いたしますためには、これはもう、日ごろから生徒指導を充実することがまずもって必要であります。そして、学校が最大限の努力を私は払ってくれていると思いますし、そうでなくてはならないわけですが、にもかかわらず解決しない場合に、他の児童生徒の教育が妨げられているようなケースにおいて、その、他の児童生徒の教育を受ける権利というものを保障する観点から、出席停止の措置が講じられるべき、そういう性格のものでございます。

山元委員 私もさっき言いましたように、日常的に最大限の努力がされていて、なおかつそういう措置をとらなければならない場合というのは、これは考えられるものですから、一番大事なことは、それまでの生徒指導、教育指導の問題、努力だというふうに、私も考えたいと思いますし、ぜひそういう指導もお願いをしたいと思います。

 そして、この権利の制限ですけれども、憲法二十六条だとか学校教育法で教育を受ける権利が保障されていて、それを一時的には、教室に入ってはならぬ、こう制限するわけですから、あるいは恣意的に、あるいは軽々に、軽々にということは悲しいことですからしないだろうというふうには思いますけれども、軽々にその措置がとられることについては、十分戒めなければならないと思いますけれども、そういう、軽々に行われない、恣意的に行われないということをどういうふうに担保しておくのかということですね。こういう制度はできるけれども、担保しておくのかということで、お尋ねをしておきたい、確かめておきたいんです。

 十分な手順、例えば、保護者の意見もしっかりと聞く、あるいは、判断に至ったこういう経過について、だれが聞かれても間違いのないような、こういう理由でという文書を作成するとか、あるいは教育委員会と十分な協議をする、こういう幾つかの手順は要るだろう、慎重な手順が要るだろうというふうに思うんですね。その手順、手続について、どういうふうに、要点ですか、考えていらっしゃるか。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

遠山国務大臣 大変大事なポイントでございますので、御説明させていただきますけれども、出席停止制度は、児童生徒の教育を受ける権利にかかわる重大な処分でありまして、その適用に当たって、慎重な手続を踏み、適切な運用に努めなければならないということは、もとよりのことであります。

 今回の改正は、この出席停止制度に関しまして、まずは要件を明確化する。そして二番目には、保護者からの意見聴取や、理由や期間を記載した文書の交付を義務づけるなど、手続に関する規定を整備しようとしております。そして三番目には、出席停止期間中の児童生徒に対する学習支援などの措置を市町村教育委員会が講じるようにすることといたしておりまして、これらをきちんと実行することによって、出席停止制度の一層適切な運用を図ろうとしているわけでございます。

 今後、この法改正に伴って、そういうことをきちんと書きました通知を発出するということがまず一つございますし、機会を見て、会議をきちんと開催して、その趣旨を徹底したいと思っておりますし、こういう法改正の趣旨、それから保護者や児童生徒からの意見聴取などの手続のあり方、留意点についても指導を行ってまいりたいと考えております。

山元委員 今まではこういう制度をきちっとしていなくて、今大臣がお答えでありましたような、手順をきちんとして、こうだという法的な制度はなかった。ですから、例えば他の子供たちに迷惑をかけるとか、いろいろなことが要件として出てきていますけれども、今までなかったかというと、あったわけですね。そうすると、それは、その子供たちは、ともすると、本当の話、もう学校にしばらく来なくてもいいよ、卒業証書はやるぞ、こういうような措置が行われた例が多かったといいますか、そういうものがこの制度によって表へ出てくるわけだというふうに思います。

 そうすると、これは短期間ではなしに長期間に及ぶ場合もあるというふうに、二日や三日ではなしに。制度化されて表へ出てきて、数が、ケースが多くなる、そうすると、いろいろのケースが出てくるだろうと思うんですね、いろいろの問題が出てくる。そのときに、どういうふうに対処するか。

 一時の学校やあるいは教育委員会の判断でやってしまう、そういう措置をしてしまう、こういうことにならないようにしなきゃならぬ。いわば、そういうことによって問題が生じる、紛糾が起こるということを防ぐためにも、こういう問題についてはこうだということについて、教育委員会や学校や地域の人々がしっかりとふだん話し合っておく必要があるだろうと思うんですね。こういう制度があります、こういうことになったら、こういう措置をしなければなりませんということは、きちっと地域のルールとして確認されている方がいいだろうというふうに思うんですね。

 そうすると、今申し上げました団体、あるいは職員団体の皆さんもあるかもしれない、そういう人たちとそういうルールについて話し合っておく必要があるというふうに思いますが、いかがですか。

岸田副大臣 先生おっしゃるように、そういった意思の疎通はしっかり図っていかなければいけないと思っております。法改正、もし御了解いただきましたならば、通知等を通じまして、法改正の趣旨ですとか、それからその手続のあり方、留意点につきまして、しっかりと徹底していきたいと思っております。

山元委員 時間がありませんから、急ぎますが、出席停止した子供たちに対する支援の問題です。

 先ほども言いましたように、教育を受ける権利が保障されていて、それは、一時的にこれが制限されるということです。けれども、やはりその子たちにはきちっとした教育、学習を保障していく必要があると思うんですね。現在、そういう子供たちについて、どういう措置がとられているのか、どういうことが行われているのか、現在の措置の仕方。

岸田副大臣 出席停止に係る児童生徒につきましては、出席停止期間中、当該保護者や児童生徒等の状況を踏まえまして、まずは学級担任等の教職員が家庭を訪問し、学習課題を与えて指導したり、教育相談を行うというようなこと、さらには、関係機関と連携して、専門職員の協力を得て指導を行う、こういった対応がとられております。

山元委員 今、学級担任等が家庭訪問をしとありましたけれども、今の学校の現場でいうと、そういう子供が出たときに、一人でなくて多数出たらなおさらですけれども、とてもじゃないが、学校の担任が家庭訪問をしてきちっと指導をする、そういうことのゆとりというのは、残念ながらない。学校の先生が家へ帰るときに寄ってちょこっと、これはできるかもしれぬけれども、三時、四時までも授業をして、一日のまとめをして、明くる日の準備をしようというような教師が、一人の子をあるいは何人かの子の家庭訪問をして指導をするとかいうことについては、極めて困難。

 ですから、こういう制度をつくるんであれば、きちっとその場合には、その子供たちの学習をどういうふうに十分保障するのか、そういう子ほどそういう手だてが、温かい手が要るんだろうというふうに思うんですが、そういうことについてはこれからどうなさるんですか。

岸田副大臣 おっしゃるように、こうした対応における教員の負担の問題ですが、まず、こうした学校の取り組み、ぜひしっかりやってもらわなければいけないと思いますし、それを支援する意味から、本年度におきましては、従来から行っている学校における生徒指導担当教員の加配に加えて、さらに上乗せする形でこの教員定数を乗せているというようなことも図っております。

 こうした人員の確保等において支援をしていくということも考えなければいけないと思いますし、加えて、やはり地域との連携、諸機関との連絡、こういった中でこうした指導効果を上げていかなければいけないと思っております。こういった形によって負担をできるだけ軽くしていかなければいけない、そういった問題意識を持っております。

山元委員 私は、前にも言いましたけれども、三十人学級法案を議員立法として提出して否決をされました。与党の皆さん、賛成できない、こうおっしゃった。一番の理由は、財政的な理由からでした。今四十人を三十九、三十八、こういうふうに十年かかって三十人にするというのも、財政的に難しいんだということが第一の理由で賛成いただけませんでした。

 今度の場合に、この間副大臣は、上乗せというのは今年度は各県二名だ、こうおっしゃったとたしか思うんですが、それではとてもじゃないが、今も言いましたように、そういう問題の子供たちには余計手が要るんだ、温かい手も、細かい手も要るんだという立場に立てば、やはり財政は確かに地方も国も厳しいけれども、財政が苦しいからということは言いわけに使ってもらわなくて、最大限の努力をするということでなければ、本当の隔離、切り捨てになるだろうというふうに思いますから、その点再度、今具体的にお考えがあればですが、最大限の努力について、お聞かせをいただきたいと思います。

岸田副大臣 先生から、ことし各都道府県二名程度の上乗せの話が出ておりましたが、これはあくまでも、従来の加配に加えて上乗せ部分がその数字だということであります。従来から、不登校担当教員等、第六次改善計画のもとでもその配置を重ねてまいりまして、実際の配置数は平成十二年度で九百六十八人。こうした配置、第七次改善計画におきましても継続していく所存でございます。こうした改善計画に加えて二名上乗せするということでございます。

 ただ、これで十分かという御指摘につきましては、謙虚に受けとめて、しっかりと現状を把握した上で今後も対応を検討していきたいというふうに考えております。

山元委員 第七次の計画で各都道府県が大変努力を上乗せでしてくれていますね。チームティーチングの場合や、あるいはそれぞれのアシスタントをつくるというような努力をそれぞれの都道府県がしています。そういうことをきっちりと、先ほども言いましたけれども、都道府県、頑張りなさいよ、工夫しなさいよでは済まないわけでして、財政は厳しいけれども何としても、私は前、前の前の文部大臣にも、予算のときにはやはりむしろ旗を立てて、当時、大蔵省にも官邸にも文部省は乗り込みなさいというふうに言いましたけれども、まあむしろ旗というのは古い言い方ですけれども、ぜひ強い決意で、現場にこれは必要なんだ、切り捨て、隔離ではないということについて、そのあかしとなるような予算措置、人的配置をお願いしたいというふうに思います。

 それから、最後、もう一つですが、これは行政不服審査法から除外されている、教育の問題だからということで不服申し立てができないことになっているわけですね。けれども、そういう事件といいますか、事態が起こったときに、学校や教育委員会が何とか早くということで事態を解決しようとする。これはよくあることです。そのときに、本人も保護者も、何としても違うんだということを言いながらも措置されてしまうという場合はあるわけです。とりわけ言い分がありながらそうやって措置をされてしまうと、指導要録にも載る、子供の将来にも、あの子は出席停止十日があったんだということになるわけです。

 ですから、いや違うということがどうしてもある場合には、かたい言葉で言えば不服申し立てが教育委員会なり学校に対してできる。たとえそれがもう期間に入っておろうが、極端に言えば進んでおろうが、違うんですということを言えるような制度といいますか、今、法的な制度は当たらぬと言うんですけれども、それは教育委員会なり学校が受けとめますということだけはきちっとしておかないと、やってしまったことは正しいんだ、妥当なんだというだけでは、私は、子供やあるいは保護者がずっと心に、違うんだ、違うんだという思いを持つようなことをしてはならない、そういう制度であってはならないと思うんですが、その救済というんですか、不服申し立てについての受けとめ方、どういうふうにお考えですか。

遠山国務大臣 出席停止に関します事後の不服申し立てについては、法律上規定を設けていないわけでございます。

 それはなぜかと申しますと、一つは、学校において教育等の目的で児童生徒に対して行われる処分につきましては、十分御存じと思いますけれども、教育の性質にかんがみまして一般的な不服審査にはならないことになっております。

 また、期間が非常に短期間であるといった出席停止の制度を踏まえますと、事後の不服審査によりますよりも、今回の法改正で規定いたしております意見聴取などの事前手続による方がより適切であるわけでございます。出席停止に関するデータで申し上げますと、期間別の件数といたしましては、一日から三日までの間というのが最も多いわけでございます。そういうこともありまして、二番目に申し上げましたような理由のもとに、事前の手続で十分意見を聞いていくということが大事だと考えているわけでございます。

 実際にも、出席停止を命じます場合に、学校におきましては、事前の指導の過程、プロセスにおきまして、当該児童生徒や保護者から意見を聞いているというのが実態でございますし、そういうことを通じて問題行動に適切に対処し得るわけでございます。そうした事実の積み重ねを経て、この措置に至っているところでございます。

 さらに、今回の改正では、これまでに明確でなかったわけでございますけれども、出席停止が児童生徒の権利義務にかかわる重大な処分であるということにかんがみまして、出席停止を命ずる際に、改めて保護者からの意見聴取を行うということを義務づけております。

 このように、出席停止に係ります保護者や児童生徒の権利につきましては、今回の改正において規定した保護者からの意見聴取などのこういう事前手続によりまして保障することといたしておりまして、不服審査について定めることを要しないと考えているところでございます。

 ただ、私どもといたしましては、この趣旨が十分に伝わりますように、慎重かつ適切な手続がとられるように通知等において指導してまいりたいと考えております。

山元委員 先ほどから出ていますように、事前の教育指導を十分やっておくこと、あるいはそういう事態が起こったときに事情を聴取してきちっと文面で整理をすることということはわかりました。

 けれども、親も子供も、わかりました、私が悪いことをしたさかいに、十日の出停も結構ですというばかりにはならぬでしょう。これは、あなたが悪いことをしたんだからとか、あるいはこういう暴力を振るったんだからという理由があって、そして措置をする。そのときに、本人あるいは保護者が、全くおっしゃるとおりですという場合もあろうし、違うんですという場合もある。わかりましたという場合だけ措置をするのではないということを考えると、そういう子供やあるいは保護者の言い分というのを措置後でもやはり聞くべきだ、新たな事実が出てくる場合もあるわけですから。ですから、そういうことはきちっとこれから、審査方法にはなじまないというだけでなしに、ぜひこれは研究をしてもらいたい、必要だというふうに私は思いますから。

 それでは、もう一つ別のことなんですが、教科書の採択について、今日本じゅうでずっと展示がされて、それぞれ、市民の皆さん、保護者の皆さん、教職員の皆さんが見に行って、採択の仕事に入っていっているわけですが、ある教科書会社の教科書が本屋さんに並んでいて、ベストセラーになっていて、この会社のホームページでは、また二十万部、こっち二十万部、こっち十万部を増刷するんだと、ベストセラーになっているのですね。

 日本の子供たちにどういう教科書を与えて、どういう教育をしたらいいのかというのは、教職員も保護者も地域の皆さんも、あるいは文部科学省も考えなければいかぬと思うんですね。一番いい教科書を並べて、それも北海道の子供と鹿児島の子供は違う。だから、それぞれの地域で先生の教えやすいような、あるいは親たちが望むような教科書を選んでいく必要があるわけです。だから、検定制度があって、採択の制度があるんだろうと思うのです。

 この中身についてとやかくきょうは言おうと思わないんですが、今の状況で見て、検定のときに白表紙本がどんどこどんどこと配られて、一定の活動があってルール違反だということがあります。この委員会でも話がありました。

 この本がベストセラーになっているということで、三月に文部科学省が矢野局長の名前で教育委員会と教科書発行者に通知をそれぞれ出していらっしゃる。例えば都道府県に対しては、過当な宣伝行為その他外部からの不当な影響等によって採択の公正確保に関し問題が生じた場合は、文部科学省あてに報告をしなさい、こういう通知が出ているわけですね。そして、教科書の発行者に対しては、小学校及び中学校用教科書見本については教科書一点について一万部を限度として都道府県教育委員会等に出す、こういうふうになっているわけですね。

 ですから、わっと出して宣伝活動をやって、そしていろいろな手段を講じてうちの教科書を採用してくださいというようなことをやってはいかぬ、冷静にいい教科書を採択していくということが求められている。だから、局長名での通知が都道府県教育委員会と発行者に出ていると思うのですが、今の状況について、現在守られているのかどうか、どういう認識をしていらっしゃいますか。

岸田副大臣 御指摘の通知におきましては、過当な宣伝行為その他外部からの不当な影響等により採択の公正確保に関し問題がある場合には、教育委員会において適切な措置を講ずるとともに、文部科学省に報告するよう指導しているところであります。現在のところ、そのような報告は文部科学省の方においては受けておりません。

 いずれにしましても、採択におきまして公正が損なわれないように努めなければいけない、それはおっしゃるとおりでございます。

山元委員 いや、だから、この通知は今の状況から見て守られているというふうに考え、各県から言ってきていないと。各県は、具体的に言うとなんですけれども、それぞれ陳情も出ていて、いろいろ採択についての議会の論議がありますよ。だから、教育委員会は、うちの状況はおかしいわというようなことの報告はなかなかしづらい。けれども、現にこの会社のホームページでは、もう二十万部刷りました、詳しくは知りませんけれども、話では七十万部売れてベストセラーだとか、この帯封には「これが話題の教科書だ!」といって売っているわけでしょう。

 通知では、一万部を全国に配る、そして採択をそれぞれ公正にしてもらいましょう、過当な宣伝はだめですよ、こう言っているわけでしょう。その通知を出していて、ウン十万部も売れていて、これが話題の教科書だといって本屋へ並ぶ事態については、公正な採択について、これはやはり問題があるというふうに私は思うのです。再度どうですか。

岸田副大臣 先ほどの通知におきましては、報告するように指導しておりまして、その指導に基づいて報告は受けていないということを申し上げたわけであります。

 そして、今市販されている教科書でありますが、この教科書が今後公正な採択を妨げる行為等に使われる、この教科書の扱い等が妨げる行為に該当する、こういったことは好ましいことではないというふうに思っております。

 各教育委員会等の採択関係者が十分な調査研究を行い、そのみずからの判断と責任において公正かつ適正な教科書を採択すること、これをぜひ期待したいと思っております。

山元委員 いや、答えになっていないでしょう。確かに、こういうことは好ましくない、だからいけない、適正に採択されるべきだ、これは精神ですよ。私が聞いているのは、ウン十万部も売れていて、これが話題の教科書だといって本屋へ並んで、一万冊ですよという通知と並んでいる実態とをどういうふうに、公正な採択ということでいうとどう考えられるのかということだけ聞きたいわけです。

岸田副大臣 教科書の内容を、市販することを制限する法令はないわけであります。出版の自由等の関係もありまして、このあたりは慎重に考えなければいけないとは思いますが、今後、市販された教科書が大量に寄贈されるとか、過当な宣伝の手段に使われるとか、こういったことになれば公正な採択に影響が出てくると考えます。そういったことはあってはならないというふうに考えております。

山元委員 今の事態はあってはならないことなのかどうかと判断を聞いているわけですよ。もう時間ですから、私はやはり好ましくないと思うんですね。

 一万部を各都道府県に配って採択に供しなさい、公正な競争、過当な競争は戒めなさい、これは教科書協会も申し合わせをしているわけでしょう。通知も出しているわけです。けれども、守られないで、これが話題の教科書だといって本屋へ並んでもうける、あるいは宣伝する、採択に対して運動をするというような行為というのは公正なルールではないと私は思うのです。

 先ほども申し上げましたような当該の人たちが判断をして、うちの地域の子供にはこの教科書がいい、理科はこれがいい、算数はこれがいい、公民はこれがいいというふうに冷静に判断をするということがなければ、金があるのか、そういうネットがあるのか私はわかりませんけれども、ウン十万部も売るようなことで宣伝をして採択されるように教科書採択運動をするということを、文部科学省としては許してはならないという手だてを早急に講じてほしい。これは省内で一遍論議をしてください、これでいいのかどうか。日本の教科書のあり方としてこれでいいと私は絶対思いませんから、ぜひ文部科学省としても検討をしていただくようにお願いをして、終わりたいと思います。終わります。

 ありがとうございました。

鈴木(恒)委員長代理 西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。相当長時間にわたりまして、午前中の最後でございます。大臣、頑張ってください。

 初めに、大阪教育大学附属の池田小学校で起きた事件で亡くなられました八人の子供たちの御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、御家族の皆様に心から謹んでお悔やみを申し上げたいと存じます。また、事件に巻き込まれました皆様方に対して、一日も早く回復されますように祈っております。

 このことに関連いたしまして、初めに、学校の安全対策ということでお伺いを申し上げたいと思います。

 六月の十一日の政府・与党連絡会議で、我が党の神崎代表は、被害児童、家族、教員らの心のケアについて万全の体制をとるということや、それからスクールポリスのシステム導入などを提案いたしました。

 学校等の安全管理体制を総点検をまずしていただくとともに、その安全の確保のために、アメリカなどでは民間警備会社のガードマンを配置するという、スクールポリスというシステムが相当普及しておりますけれども、あくまでも地域の実情に合わせてということでございますが、こういう民間警備会社、それから退職警察官の活用などを含めた警備体制の強化を早急に検討してはどうかというふうに考えております。文部科学省としては、スクールポリスのシステムについてどう考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

 もう一つ、また私たちは、ちょうどただいま審議中の出席停止児童を含めて、問題を起こす児童生徒の対応に対して、学校を支援するための地域サポートチームづくりを提言いたしております。

 学校の安全面でもこのサポートチームが日常的に重要な役割を果たすことが、問題児童だけではなくて、こういう外部からの侵入者、また危険をあらかじめ察知し、その対応を練るという意味でも、私は役割を期待したいというふうに思っておりますが、あわせて文部科学省のお考えをお聞きしたいと思います。

岸田副大臣 まず一点目でありますが、先生の方から、スクールポリスについての考え方について御質問がございました。

 学校における安全管理というもの、その体制というもの、当該国の社会情勢や学校制度等に応じて、それぞれの国の置かれている状況に合ったさまざまなものが採用されるというふうに思っております。銃社会と言われるような米国とまた我が国の状況、こういったあたりの違いも考えた上で、どうあるべきなのか考えていかなければいけないとは思っております。

 しかしながら、今回の事件、文部科学省としましても大変重たく受けとめております。事件直後、大臣談話とかあるいは通知によりまして、緊急の対応を求めると同時に、従来の安全管理の体制、これが十分だったかどうか、現状についての報告を早急に求めると同時に、従来の安全管理のチェックポイントが現代社会、実情に合っているかどうか、このあたりにつきましても、その意見を聴取した上で見直しをしていかなければいけないというふうに考えております。

 今月いっぱいをめどにそういった意見を聴取して見直しをしていきたいと思っておりますが、その見直しの中に、先生がおっしゃったような警備員の配置等も検討課題の一つとはなり得るというふうに思っております。

 今申し上げましたような手順で、ぜひしっかりとした見直し、現状把握、点検とともに見直しもやっていきたいと考えておるところでございます。それが一点目であります。

 そして二点目、地域との連携の話でございますが、安全管理対策につきましても、保護者、地域、こういった関係者との連携、理解や協力を得るということ、大変重要だというふうに考えております。

 ですから、今回、事件後の対応の中に、六月十一日には、社団法人日本PTA全国協議会を初めとする関係団体にも協力をお願いする、こうした対応も行っているところでございます。PTAを初め地域の関係者の支援、これは児童生徒の安全を確保する上で大変重要な役割を果たしていただけるものと期待をしておるところでございます。

 これからも、こうした連携はしっかり大切にしながら、開かれた学校と学校の安全管理との問題、しっかりと両立できるように努力をしていかなければいけないと考えておるところでございます。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、高橋(一)委員長代理着席〕

西委員 続きまして、精神科の医療スタッフの問題を、若干、文部科学省の範疇の中でお伺いをしたいと思います。

 犯罪を犯した精神障害者の問題につきましては、保安処分を含めた議論が始まっております。議論を通じて、改善すべきことはもちろん改善をしていただくということですが、精神障害者の真の社会復帰が行われる環境づくりをいかにつくるかということがそもそも大切な問題だ、こういう認識をしております。

 予防策もしくは事後の対応策を講ずるにいたしましても、精神科医療の専門家の力というのがどうしても欠かせないわけです。しかし、精神科の医療スタッフというのは非常に少ない状況にあると私は認識しておりまして、このことは、以前、地域におけるスクールカウンセラーの問題も実は質問させていただいたんですが、こういう精神的な医療を行う専門家が地域によっては大変少ないという実情もお伺いをいたしました。

 そこで、まず、現在、精神科医それから作業療法士、臨床心理技術者、また精神保健福祉士などを養成できる大学もしくは専修学校があるのかどうかちょっとわかりませんが、そういう養成する高等教育機関があるのかどうか、どの程度あるのか、また学生がどれくらいいらっしゃるのかということについてお示しを願いたいと思います。

岸田副大臣 現状、数字を御報告いたしますが、まず精神科医につきましては、すべての医科大学、医学部において精神科に関する講義や臨床実習などが実施され、養成されております。国公私立医科大学、医学部、全部で七十九大学、入学定員七千六百三十名であります。

 そして、作業療法士の養成は、二十六大学、短期大学で、入学定員七百四十八名、そして専修学校八十一校で、入学定員二千八百六十五名。臨床心理士は、四十六大学で、入学定員九百三十九名。精神保健福祉士の養成は、五十二の大学、短期大学で、入学定員七千三百二十七名、専修学校二十九校で、入学定員一千八百十名となっております。

西委員 今御説明いただきましたが、多分、大学の中で、例えば国公私立の七十九大学七千六百三十名というのは、全体を含めての数であろうと思います。その中で、実際、精神科とかそういう専門家になられる方はまだぐっと少ないのではないかと思います。現実は、まだまだ各地の現場においてそういう専門家が足りないというふうに私自身は認識をしております。

 その上で、今の供給体制、今の現状をどう見ておられるのかということをまずお伺いしたいのが一点。

 それで、私自身は、やはりもう少しそういう本格的な精神医療に携わるスタッフ、もちろん精神科医として病院に、医療に携わるということだけではなくて、今の社会の中でそういう、例えば臨床心理士または精神保健福祉士等で、社会の中で努力をされる、活躍をされるスタッフが必要である、こう思っております。そのための必要な人材を確保する、そういう体制をまずつくっていただきたいと思いますが、この認識について、文部科学省のお考えをお伺いしたいと思います。

    〔高橋(一)委員長代理退席、委員長着席〕

遠山国務大臣 社会におきますメンタルヘルス等への対応が望まれる中で、精神科を対象とする医療は重要と考えておりまして、先生おっしゃいますように、社会復帰を促すための環境づくりにおきましても、この面の充実というのは大変大事だと考えております。

 我が省といたしましても、医学教育カリキュラムにおきます精神科学の充実など、各医科大学におきます精神科医の養成体制の充実に努めてまいりたいと思いますし、また、作業療法士につきましては、国立大学にあっては逐次三年制から四年制への転換を図って資質の向上に努めているところでありますが、精神保健福祉士なども含めました精神科医療スタッフの充実のために、関係省庁とも連絡をとりながら、その養成施設の整備を図ってまいりたいと思います。

西委員 次に、本題の体験活動のことについて御質問申し上げます。

 先ほど何人かの委員が、既に御発言がありましたけれども、私も同じ認識を持っておりまして、今回の学校教育法の改正によって、小中高校が体験活動の充実に努めるということが法的にはっきり打ち出されることになりました。

 山登り、キャンプなど自然体験を初めとして、農業、職業体験、さまざまな社会的な体験活動、これは学校を離れて、社会の一つの集団として行われるということももちろんあるわけでございますが、一方では、学校教育の中で、今回きちっと体験活動を位置づけている。もちろんこれは学校教育下における先生方の管理、指導のもとにおける体験活動、こういう認識でございます。

 そうした体験活動の際に、交通費、施設の利用費というようなものがかかってくるのは当然なんですけれども、そのときの費用の問題について、例えば、よく言われる兵庫県のトライやる・ウイーク、お金が何億かかっているというふうなことが言われておりますが、こういうときに、来年から、こういう学校教育法の改正をやった後に、兵庫県に何がしかの財政的な援助があるのかどうか、こういうことを考えれば一番具体的かと思いますが、財政的に国から援助が行われるということになるのかどうか。もし行うとすれば、どういう予算の費目を使っていくのかということでございます。さらに、児童一人当たり、または総額としてどれだけになるかということが、およその目安がつけば教えていただきたいと思います。

 それから、兵庫県のトライやる・ウイークで、同じく、参加者全員に保険をかけているというふうに聞きました。これは学校教育下のことですから、日本体育・学校健康センターですか、長いので僕も余りよくわかりませんが、その保険、補償があった上で、さらに上増しして掛けているというふうに思われるのですが、必要があってのことだろうと思います。そういうことについても国の補助か何か、今後体験活動をしていく上に何らかの補助があるのかどうか、お聞きをしたいと思います。

岸田副大臣 済みません、保険の部分につきましては、後ほど政務官からお答えさせていただきたいと存じます。

 まず、財政支援の話でありますが、体験活動の経費も、一般的には通常の学校教育活動と同様に、設置者及び児童生徒、保護者において負担されるべきものだとは考えますが、さまざまな工夫の中で、具体的な活動の中で、ある程度まとまった実施が行われる等によりまして、通常の教育活動よりも多くの支出負担が必要になるということ、これもまた想定されるところであります。ですから、このあたりにつきましては、各都道府県の取り組み状況ですとか予算措置等を参考にしながら、必要であれば、当然のことながら予算措置の努力をしなければいけない、そのように感じております。

 また、一人当たりの数字というようなお話もございましたが、これは今までの具体例におきましてもさまざまのようであります。兵庫県のトライやる・ウイークでしたら、一人当たり八千六百円というような換算があるようでありますし、石川県の地域と共にわく・ワーク体験という事業におきましては、一人当たり千五百円というような数字も出ておるようであります。このあたりは、具体的な事例によりまして一人当たりの費用はさまざまだと考えております。このあたりもしっかり把握した上で財政支援は考えていかなければいけないと考えております。

 以上、保険の部分につきましては大臣政務官からお答えさせていただきます。

池坊大臣政務官 今、西委員がおっしゃいましたように、これは学校教育活動の一環でございますから、当然、児童生徒が負傷いたしました場合には日本体育・学校健康センターの補償制度が適用されてまいります。それとともに、よそに出かけていろいろなことをいたしますから、児童本人がけがをするだけでなくて、例えば、相手方の施設を何か壊してしまう、あるいは相手方に負傷をさせてしまうということがございます。それは各学校がそれぞれ賠償責任補償制度に加入いたしております。

 例えば例を申し上げますと、兵庫県のトライやる・ウイークについては、兵庫県学校厚生会が実施主体となりまして、参加するすべての人を対象として、第三者の身体、財産に損害を与えた場合の賠償責任保険並びに参加者がけがをした場合の傷害保険を行う総合補償制度を設けております。その経費は国は負担いたしておりませんで、今のところ県及び市町村で補助いたしております。

 これは、これから、保険というのは大変大切と思っておりますので、国と県と市町村がそれぞれ総合的に考える必要があるのではないかと思います。それからまた、学校と地域を通じた奉仕活動推進事業は、新規に十三年度予算として九千二百万計上いたしております。これは七十二区域でございますから、これからもっともっとこれを広げる必要があるというふうに考えております。その中には当然保険料等も考えなければいけないというふうに考えております。

西委員 もう時間が参りましたけれども、最後に、先ほど申し上げました学校教育下における自然体験、社会体験活動につきましては、やはり義務教育下ということもございますし、本来無償、完全に無償というわけにはいきませんけれども、やはり皆が同じ条件で学び、体験できるという条件を整えるためにも、文部省として最大限の努力をお願いしたいということを希望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高市委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

高市委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。都築譲君。

都築委員 それでは、午後の質疑一番手ということで、きょうは、出席停止関係、それから教育委員会の活性化の問題、あるいはまた不適切教員の問題について論点を絞って政府の見解をただしていきたい、こんなふうに思っております。

 きのう参考人質疑が行われまして、大変貴重な意見を拝聴したわけでございます。私自身も、池本参考人あるいはまた杉原参考人、こういった方たちのお話を聞きますと、本当に今回の教育改革三法案、教育改革国会と銘打ってスタートした国会でございますが、この法案の中身を見る限り、今日の教育の現状あるいはまた社会の情勢、そういったものが求めている改革の具体的な足取りとしては、いかにも対症療法的で不十分なものではないか、そんな思いを強くしたわけでございます。特に杉原参考人が、戦後の教育について、文部省を中心にして法律を整備して体制を整えてきましたけれども、地方の教育の創意工夫が大きく沈滞し、中央に寄りかかるような姿勢ができてしまったことこそが問題ではないか、こういう見解を述べておられました。私も全く同感だな、こんなふうに思った次第でございます。

 また同時に、形を整える中で、何か形さえ整えていけば、それで教育が変わっていく、学校がよくなる、こういう発想というのは安易ではないか、むしろ本当に今求められているところに人員も予算も重点的に配分していく、そういうものが求められているのではないか、そういうことを今回の三法案の審議に当たって念頭に置きつつ、私はただしてまいりました。きょうもそんな観点から議論を続けていきたい、こんなふうに思っております。

 まず、出席停止の関係でございます。

 直近の数字でまいりますと、八十四件という報告がなされておりますが、ただ、新聞の報道などによりますと、実際にはもっと本当に多いんだ、出席停止処分というのを現在の学校教育法の二十六条、そういったものに基づいてやることをためらっている現状があるんだ、こんな話も実はあるわけでございます。私自身は、この出席停止に至る前の対応、あるいはまた出席停止を決定する際の対応、そして同時に、その後のフォローアップ、むしろこういった観点からもう一度この問題を掘り下げていく必要があるんではないか、こんなふうに思うわけでございます。

 今の学校教育の中にゆだねられている子供たちの健全な成長、生育のための多くの諸条件といったものが、本来は家庭で行われなければいけないものが、家庭自身が十分に教育力といったものを発揮できなくなっている現状、そういった中で、全部学校に任せていいんだろうか、むしろその他の機関、そういったものとの連携とか、そういった中でいろいろな取り組みを進めていく必要があるのではないか、こんなふうに思うわけでございます。突然出席停止という処分が出てくるわけではないし、突然子供が荒れ狂って教師に対して暴力を振るう、友達に対して暴力を振るう、あるいは学校の施設を破壊する、こういったことに及ぶわけではないわけでございまして、むしろ、今までどういう状況の中でそういう過程に至ったのか、そういったものをしっかりと見詰めてみる必要があるんではないか、こんなふうに思います。

 それで、まずお伺いしたいのは、今学校の中で、子供に対する指導の方法とか体制、問題行動が見られ始めた児童生徒に対してどういう取り組みを行い、そしてまた、家庭あるいはまた地域の皆さん、こういった方たちとの連携がとられているのか、そしてまた、そういった活動というものがどのような成果を上げてきているとお考えになるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。

遠山国務大臣 もともと学校におきましては、校長の指導監督のもとに、学級担任はもとより、生徒指導主事その他の生徒指導担当の教員を初めすべての教職員が一体となって、問題行動を起こす児童生徒に対して指導を行っております。また、そうでないと本当の成果は上がらないと考えております。

 具体的には、まずその一番近い学級担任がいろいろと指導するのだと思いますけれども、職員会議で指導方針等の共通理解を図る、そして全校で問題行動に対応する体制をとっていく、そして次に、加害児童生徒への個別指導あるいは家庭訪問を通じて問題行動を反省させ、今後の生活について考えさせる指導をするということも大事であります。また、スクールカウンセラーによるカウンセリング、あるいは、状況に応じましては学校内での別室での個別指導などが行われておりまして、それぞれの学校でいろいろな工夫をしながら、出席停止に至る前の指導に懸命に当たってくれていると思うわけでございます。

 こういったような指導を通じて、出席停止を措置することなく問題行動の改善が図られることも多いというふうに考えております。

都築委員 幾つか、今の御答弁の中でまたお聞きしたい点もございますが、それはまた後に回すといたしまして、今その中で、家庭訪問というお話がございました。実際に家庭との連携の状況といいますか、保護者の皆さんとのお話し合い、そういったものについて、実際のところ、連携をとっていますと言うだけで実は済むわけではない。現場の先生方の御苦労というものも本当に大変大きいだろう、こう思うわけでありますし、また、家庭そのものを学校の先生が、改めてください、直してくださいと、例えば食生活の問題にしても、洋服の問題にしても、あるいはまた通学の際の態度の問題にしても、それからふだんの余暇時間の活用の問題とか、そんな中身まで実は入っていけない大変難しい状況があるだろう、こう思うわけであります。

 ただ、そうはいっても、そういった子供を、では放置しておいて本当にいいんだろうかという問題も、私は相当大きいと思うんです。学校の先生がやらなければ、ではどこがやるのか。

 例えば児童虐待の問題も、実際には、親から虐待を受けて、その子が大きくなって、今度はまた別の人に対して加害行為に及ぶとか、あるいはまた、自分の子供さえも虐待してしまうというふうな不幸な連関といったものが起こっている現状を考えると、そういったものにしっかりと対応していく必要があると思うわけであります。

 例えば児童虐待の問題にしても、例えば病院に担ぎ込まれた子供のあざとか骨折の状況とかを見たら、お医者さんは直ちに児童相談所に連絡するとか、そこからまた警察とかいろいろなところに手だてをとっていくとか、そういう体制をつくっていると思いますが、例えば学校の先生方も、そういった状況の中で、本当に子供たちに健やかに成長してもらうということを願うのであれば、中にまで踏み込んでいかなければいけない状況に追い込まれるときもあろうかと思います。ほかの機関との連携といったもの、そして、本当にその子の成長といったものを願って行っている活動といったものは、具体的にどこまで立ち及んでいるのか、そこら辺の状況をちょっと教えていただけますか。

遠山国務大臣 委員冒頭に述べられましたように、本当は家庭がしっかりしてもらわないといけないわけでございますけれども、それを待っていてもなかなか問題は解決しないということで、学校の教員の皆さんが大変努力をしてこの問題に当たってくれていると思っております。

 しかも、学校の先生だけではなくて関係機関との連携が大事だという御指摘もそのとおりでありますが、問題を起こす子供について、学校におきましては、民生児童委員、児童相談所、その他の関係機関あるいは家庭との連携を深めて、個別の指導を徹底することなどによって的確な指導を行うことが重要であるわけであります。

 具体的には、例えば児童相談所員に来校してもらって、全教職員と懇談会を開催しながら指導方針について助言を得るというようなことも行われておりますし、校内の生徒指導のための委員会に民生児童委員に参画してもらって、その生徒の情報を共有化したり、連携して当該生徒や保護者の相談に当たる、また、校外での暴力行為の防止につきましては地区少年補導員に協力を依頼するといったふうに、民生児童委員でありますとか児童相談所、警察、少年補導センター、保護司などの関係機関、関係者と連携して、相談、援助活動が行われているところであります。

都築委員 今大臣からお話ございました出席停止の問題が大きくマスコミに取り上げられたのは、神辺西中学校で校長先生の指導のもと決断をしてやったということで、この校長先生が手記を雑誌に投稿されておられます。そこを読んでみますと、実際に学校の先生方が生活指導ということで家庭を訪問しても、そこの親は、例えば「「言うても聞かないんです」と言いつつ、家出を繰り返す娘を言われるままに夕方遅く繁華街までクルマで送り届けている。」

 こんな状況があったら、野放しの状況の中で、朱に交われば赤くなるという、前から言われているような状況が結局繰り返されていってしまう。そこを本当に何とかするというのは、ここでは恐らく学校の先生ではとてもやり切れないような状況じゃないのかな、こんなふうに思うし、また、後ほど不適切教員のところでも私は指摘をしたいと思っておるんですが、今、学校の先生方に余りにも過大な負担を、生活指導とかいろいろな面で押しつけている結果が、さまざまな問題を先生方の心身の面でも引き起こし、また、学校の指導体制の中、教育の現実の中でも起こってきているのではないか。

 だから、むしろ本当に、先ほど言われたような民生児童委員とか、あるいはまた保護司の皆さんとか児童相談所の皆さん、補導センターの皆さん、さまざまなそういう専門的な知識や経験を持った人たちの能力といったものをうまく活用していくことが、少しでもその負担を和らげるし、逆に言えば、そういうことで問題の解決に実際には効果を上げてくるんではないのか、こんなふうに思うわけでありまして、ただ出席停止の問題だけがぽんと出ていることで本当に済む問題なのかな、こんなふうな思いがいたしますので、ぜひそういった連携を進めていっていただきたい、こんなふうに思う次第であります。

 それからまた、出席停止措置の公正性、客観性の問題、やはりこういった問題についても大きく疑問がある。実際に今までだってあったのに、今回の改正によって、発動の要件といいますか、出席停止処分を行う要件を四項目として明確化をした。今までだって実際には学校教育法の条文の中にちゃんとあってそれをやることができたのに、なぜためらっていたのか。そこら辺の状況を本当に今回の改正によって乗り越えていくことができ、問題児となった子供の矯正、そしてまたほかの子供たちの学習権の確保といったものに本当につながることになるのかどうか。そこら辺のところがちょっと私は、今までの御説明を聞いていてもかなり疑問だな、こんなふうに思うわけでありまして、もう一度、ちょっとその点についてお願いをしたいと思います。

遠山国務大臣 これまでも出席停止にかかわる規定はございましたし、また、その運用の仕方について通知も出したり、いろいろな指導を行ってきたわけでございますけれども、今回の法改正を契機としまして、出席停止の要件を明確化すること、そして保護者からの意見聴取や、理由や期間を記載した文書の交付を義務づけるなどの手続もしっかりと整備をして、出席停止制度の一層適切な運用を図ることとしたわけでございます。

 したがって、これまでなかなか、それを実際に適用するということにためらいがちであった学校におきましても、適切な運用によって、その子供自体の状況を把握した上で、そしてその制度に該当するのであれば該当させていく、と同時に、その子供についてもきちんとフォローして教育的観点から指導していくということで、私は、この制度によって、本来の目的である、学校が明るく、また多くの子供たちが意欲的に学ぼうとする環境にしていくという点で大変意味のある制度であろうかと思っております。

 委員御存じだとは思いますけれども、私立学校とか国立学校の小中学校におきましては、出席停止ということではなくて、問題を大きく、例えば退学という処分ができるわけでございますけれども、公立学校ではそれができないんですね、制度上。では、そのような事態になったときに、一体どうやって、その行動を起こす以外の子供の教育の権利を確保していくかということの視点がまことに大事だと思うのです。そのようなことから、これまで通知で行われてきたことをさらに法律上明確にして、問題行動を起こしてその規定に該当する子供のフォローもきちんとしながら、しかし学校としては本来あるべき環境を保っていくという目的で今回の法改正ができ上がっているわけでございます。したがいまして、その適用に当たっては、公正、客観的にきちんと適用すると同時に、このねらいがきちんと達成されるように、私どもとしては今後ともその指導に当たりたいと思っております。

 同時に、単に学校側なり教育委員会側だけにその責務を負わせるということではありませんで、各都道府県におきましては、問題行動等の発生状況に応じて学校を援助できるように、教職員定数の加配などの必要な人的措置を講じること、また、今後サポートチームというようなものをつくりまして、問題行動を起こす児童生徒に対する地域における支援体制づくりを積極的にサポートしていく、そのようなこともあわせ行いまして、この制度の適正な運用について支援をしてまいりたいと考えております。

都築委員 今ちょっとお話の中で、人員の加配とかサポートチームのお話、ぜひそれは充実したものとしてやっていただきたい。特に、先ほどもお話に出ていましたスクールカウンセラーとか、そういった専門的な知識とか経験を積んだ方たちをもっと本当に活用していくことが何よりも大切ではないのかな、こんなふうに思うわけであります。通常の職員の加配だけではやはり済まないだろうと思いますし、体制を組むということでは、今までと同じメンバーでサポートチームをつくっても十分なのかな、そんな思いがいたしますので、ぜひその点は御考慮をお願いしたい、こんなふうに思うわけであります。

 先ほどの、ためらいがちであったという今の学校の状況でありますが、実際に統計などを見ておりますと、先ほどの私が申し上げた八十四人という直近の出席停止になった子供たちの数は、実際の加害児童の何万人という数と比べたらはるかに、圧倒的に実は少ないわけでございます。現実に、今大臣が言われましたように、退学処分ができないという状況があるわけでございますが、ただ、私自身はむしろ、本当に出席停止という形ですぽんといくのかと。先ほどから、出席停止に至る前の対応についてもお伺いをしておったわけでありますが、実際に要件に該当するのは、もうその問題が明らかにおかしくなってきた時点では既に四つの要件のいずれかに該当するであろうということはわかるわけであります。だから、出席停止というものにその段階でいくということはないだろう、こう私は思うんです。例えば自宅謹慎とか自宅学習とか、いろいろな問題があるのかもしれません。

 ただ、自宅謹慎なんていったって、それも実はその子供の教育を受ける権利を侵害することになっちゃうからなかなか難しいんだというふうなお話もあります。いろいろなステップを踏んでいると思いますが、何か出席停止だけがぽこんと出てくるような印象というのはいかがなのかなというふうな気がいたしますし、その要件に該当する児童がいても、事前の指導の段階、あるいは対応の段階でもう少し考慮されるものもあるんではないか、こんなふうに思うのですが、そこら辺についてはいかがでございましょうか。

岸田副大臣 先生御指摘のように、事前の対応、まずもってこれがあって、これが重要であるということ、そのとおりだというふうに思っております。平素からこうした児童の様子をしっかりと把握し、そしてその心を受けとめ、そして適切な指導をしていく、こういったものがまずあった上で、その上で、もし必要であるならばさまざまな措置が講じられる、これが物の順番だと思っておりますし、御指摘の点の重要性を我々も認識しながら、この制度の運用を図っていかなければいけないと考えています。

都築委員 ちょっと時間がまた押してまいりましたので、次のテーマに移らせていただきます。

 次は、教育委員会の活性化ということでございます。

 今回の改正の内容として、一つは保護者の人も教育委員に入れるように努めるとか、あるいは教育委員会の会議の情報公開とか、あるいはまた相談窓口といったものを設けるというのが主な内容でありますけれども、私自身は、正直申し上げて、教育委員に保護者の人を入れるということで済むような問題じゃないんじゃないのか、これまた、何か形だけ整えて教育委員会に機能を果たしてもらうんだというふうな印象をぬぐえないわけであります。

 本来の教育委員会が果たすべき役割というのは大変膨大なものがあるわけでありまして、地教行法の二十三条に、教育委員会の権限がずらっと書いてあります。それこそ学校の設置から管理から、あるいはまた教職員の人事、任免、さまざまなものが列挙されておるわけでありますが、むしろ、今の五人とか六人、こういった教育委員の運営自体が実はもう、ほかの合議制の機関といったものがいろいろございます、例えば都道府県の公安委員会とかあるいはまた労働委員会とか収用委員会とか、さまざまなものがございますけれども、どうも本来そういった行政委員会ということで、戦後、アメリカの占領政策、民主化政策の一環として設けられてきたものが、実際には本来の機能を十分果たさなくなってきてしまった一つの典型になっているのではないか。

 むしろ、文部科学省から都道府県の教育長におりて、そしてまた今度は都道府県の教育長から市町村の教育長という形で事務方の執行体制といったものが確立してしまった結果、教育委員会といったものが本来の機能を果たさない。

 本来の機能というのは、それこそ合議でございますから、教育という問題について、例えば戦前のそれこそ神道教育とかあるいはまた国家教育とか、そういった一つの価値観を全国民に押しつけるのではなく、いろいろな意見、多様な考え方、こういったものの中で、民主的に社会の教育といったものを運営していく本来の役割が、余りにも多忙な業務の中で矮小化されて忘れ去られてしまった結果が今日ではないのかな、こんなふうに思うわけであります。もともと、今の地教行法の教育委員会の規定を読めば、どこからそんな活性化ができるようなものがあるのかしらと実は思うわけであります。

 ちょっと前置きが長くなって大変恐縮でございますが、だから、むしろ本当に抜本的な改革をやるんだったら、さまざまな、例えば児童虐待の問題あるいは少年の非行の問題、いじめや不登校の問題、校内暴力の問題、そういった中で、教育委員会が本当の問題への対応に十分機能を果たせないんだったら、教育委員会を廃止して、むしろ教育オンブズマンといったものを置いてそういった問題に対応したらどうだ、こういう考え方を私どもは持っております。

 今のシステム、仕組みの中で少しでも変えていこうというんだったら、教育委員会が本当にだれに対してどういう責任を負いながら今機能しようとしているのか、保護者の人を一人委員に入れただけでそれが解決する問題なのかということを私は問いたいわけでありまして、まずちょっと冒頭、その点について見解をお聞きしたいと思います。

岸田副大臣 まず、御質問の中で、教育委員会がだれに対してどういう責任を負うのかという御質問がありました。

 この責任は、当該地方公共団体の住民に対して、合議制である教育委員会として負うということになるかと存じます。この責任は、一人一人の教育委員が負うというのではなくて、合議体としての教育委員会として負うという形になると思います。

 そして、こうした保護者等でその多様な構成を図っていくということの意味合いでありますけれども、教育委員会が地域に根差した特色ある教育行政を積極的に展開し、各学校や地域における取り組みを支えていくということ、このことは極めて重要だというふうに思っております。そして、地域住民や保護者の意向を的確に反映させ、教育委員会の活性化を図るということ、この重要性につきましても間違いないところであります。そういった観点から、今回、教育委員の多様な構成に配慮するということから、保護者が含まれるよう努めるという規定を設けたわけであります。

 従来から、教育委員会においては、人格が高潔で教育、学術及び文化に関し識見を有するという方々に教育委員になっていただくということであったわけであります。この点は変わりませんが、より多様な人材を得ることによって活発な議論が行われることは期待できるのではないかというふうに思っております。

 また、オンブズマン制度についてのお話もございましたが、現状においては、教育委員会をこの趣旨にのっとって活性化することによって、先ほど言いましたような地域に根差した特色ある教育行政を展開する、こうした取り組みを支えていくことは可能だと思っておりますので、ぜひ現状制度を大いに活用できるよう、これからも工夫を加えていきたいと思っております。

都築委員 今の副大臣のお話を聞いておりますと、本当に、多様な構成のもと活発な議論が行われて教育委員会がその職務を全うするような印象を抱きますが、では、実際に日常的な活動はどうなっているんだろうか。会合の回数はどうなのかということを資料で拝見いたしますと、市町村レベルの教育委員会では平均一年間で十二回も開かれないんじゃないか、県レベルの教育委員会で十二・五回ぐらい、こんな状況で一体何を活発に議論して、それが本当に教育行政に反映されるんだろうか。抱える仕事の中身の膨大さといったものを考えれば、とてもじゃないけれども、幾ら教育に見識やあるいはまた経験などを持つ方、人格が高邁な方が選ばれてきても、本当にそんなことができるんだろうかというふうな思いがするわけでありまして、むしろ通常の、日常的活動は本当にどうなっているんだろうかと。

 例えば、市町村レベルで一年間に十二回も開かない、一月に一回ぐらいの会合を開いて一体どういうことをやっておられるのかということを考えると、結局、教育長さんと言われる方が用意をした、事務局がみんなでまとめ上げたいろいろな文書、書類、あるいは文部科学省からの通達、都道府県の教育委員会からの通達、そしてまた学校の問題についても、いろいろな参考資料などを整理したものをごらんになって、うん、そうか、こんなふうにして動いているのか、そんなことを確認しているだけにすぎないのではないのかな、こんなふうに思うわけでありまして、私はもう一度、その日常的な活動は本当にどうなっているのかと。

 例えば予算の問題、人事の問題だって、多分、年が明けてから一月、二月、三月は大変忙しい時期であろうと思います。では今度、四月になったらどうなるか。また、例えば来年度の教科書の問題だって、教育委員会の選定権限があるということであれば、恐らく八月ぐらいまでには結論を出さなければいかぬというふうなことでいろいろな議論が交わされるのかもしれない。それから、よその状況はどうなっているとか、そんなことを議論しながらやっていかれるのかな、こんな気がするのですが、本当に日常的な活動がどうなっているのか。

 そしてまた、そんな、保護者の人を一人入れるというだけではなくて、例えば、それぞれの学校のPTAの代表の皆さんと、週に一回とか二回、ぐるぐる回りながら教育委員が全部意見交換をするとか、あるいは、その学校の、例えば同窓会の幹部の皆さんと議論をするとか、あるいは教職員の皆さんと議論をするとか、そういった日常的な活動といったものをやっていかないと、本当に名誉職、そしてまた、任命をしてくださった町長さんや市長さんたちの意向を体して、恥をかかせないように、そんなことで萎縮をしながら操り人形のように動いていっているのが今の教育委員、と言ったら大変失礼な言い方かもしれませんが、今のような会合の状況では見識とか力量というものを十分発揮できる状況にないと私は思いますが、いかがですか。

岸田副大臣 教育委員会の会議のあり方、活動のあり方についてでありますが、会議の開催状況、例えば平成九年度の資料によりますと、都道府県教育委員会におきまして十六・九回、市町村教育委員会におきまして十一・六回という数字が出ております。

 こうした会議に加えまして、各教育委員会におきましては、それぞれの地域の事情に応じまして、学校等の視察、あるいは関係団体からのヒアリング、あるいは教育委員が参加する懇談会や意見交換会の開催、あるいはPTAや教育関係者を初め地域の人々、各種団体の意見や要望を把握するさまざまな試みをしているところであります。

 今回、保護者等の、教育委員の構成の多様化を図るための措置、さらには会議の原則公開ということ、さらには教育行政に関する相談窓口の明確化、こうしたことを規定することとしたわけでありますが、こうした措置に加えまして、先生が御指摘のように、運営のあり方そのものにも改善が必要だという認識、そのとおりだというふうに思います。

 ですから、会議の開催につきましても、定例会のほかに、臨時会あるいは委員協議会等の方式を活用したり、開催日時、時間等も工夫する、こんなことも考えなければいけないと思いますし、会議の運営の方法としまして、事前の説明とか資料の配付の方法について工夫を凝らす、あるいは教育委員に対する情報提供、研修あるいは視察、こういったものにつきましても工夫をしていかなければいけないというふうに思います。

 こうした今回の措置に加えまして、さまざまな運営上の工夫を加えることによって、より教育委員会の活性化を図っていきたいと考えております。

都築委員 今いろいろと活動を御紹介いただきましたが、私の問題意識は、確かにいろいろな活動をやっているけれども、結局、事務局の上に乗っかって、お客様のような委員になってしまっているのではないか。非常勤だからしようがないという面はあるかもしれませんが、むしろ非常勤でしようがないんだったらもっと常勤化してしまう、そういうふうな改正とか、あるいはまた、予算や人事についても権限を持っていると言いながら、実際にはそれが十分に発揮できていない、そういうような状況。

 そういったものを、本当に活性化するというんだったらそこまで踏み込んだ改革をすべきではないか、それが、本当に住民の皆さんが期待する教育行政のあり方といったものを教育の中で実現していく唯一の道ではないのかな、私はこんなふうに思うわけです。

 先ほど、地方の住民に対して合議体として責任を負う、こういうお話がございました。実際に、この地教行法の八条では、教育委員の解職を住民が、有権者が請求することができる、こういう規定になっております。今までに教育委員で解職請求された、リコールされた人がいるのかどうか私は承知をいたしておりませんが、それほどのものであるならば、それだけの責任を持って本当に住民の気持ちを酌んでやる、そういう仕組みに改めていく必要があるのではないか。何かここだけやけに目立ってしまって、ちょっと形が、表現は大変失礼なんですが、ロボットのような、操り人形のような形の活動しかしていない人に、解職請求までが書いてあるということ自体が何かおかしいような気が私はいたしてしまいます。

 あとまた、相談窓口を設ける、こういうことでございました。では、相談を受けて、本当に、どういう体制で取り組んでいくのか。教育委員会として、実際に合議の機会、そういったところで相談の問題、受け付けた問題をどういうふうにやっているのか。

 例えば子供の学校の問題であれば、恐らく、まずは学校の担任の先生とか学校の教頭先生のところにいろいろな問題が提起をされるだろうと思います。そういった問題はちゃんと教育委員会の方に上がって、そして教育委員会全体として、この町の教育をどうするんだ、この町の子供たちをどう育てていくんだ、そういう観点から本当に十分に今まで議論がされてきたんだろうか。あるいは、保護者の皆さんたちの要望、学校が荒れているんだったら子供がしっかりと落ちついて安心して勉強できない、そういったものに対してどう取り組むんだ、そういう議論を本当にやってきたんだろうか。

 今ここで、窓口を設けて、ちゃんと職員を指名してと、こういうふうな形で改正が行われるかもしれませんが、それはまた結局形式的なものに、今までだってできないのに、単に法律を変えただけでこんなことができるんだろうか、そんな思いが実はしてしまうわけであります。ちょっときつい言い方で大変恐縮ですが、本当にこれが実効性のあるものになるようにするためにはどういうふうにお考えになるのか。

 また、教育行政の難しさは、それぞれ地方の独自性、地方の創意工夫といったもので地方の住民の声を聞いてやらなければいけないのに、先ほども指摘をしましたように、きのうの杉原参考人が言っておりましたが、結局、そういったものが発揮できないような仕組みになって、中央に寄りかかってしまう。

 だから、私が言っていること自身が自己矛盾かもしれません。どうやってこの相談窓口が本当に活性化するのか、文部科学省はどう責任をとってくれるんだ、こういうふうに言うこと自体が、実は地方の創意工夫を殺してしまうことになるのかもしれないことを思うと、大変複雑な思いで実は質問をしておるのですが、そういった点についてどうお考えになっているのか、聞かせていただけますか。

遠山国務大臣 いろいろお話しいただきましたように、教育委員会といいますものは、地域住民の意向を十分に把握して、その地域の実情に応じた主体的かつ積極的な教育行政を展開することが望まれているわけでございます。

 このために、我が省といたしましては、平成十年の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」などを踏まえまして、苦情処理窓口の設置等を指導してきたところでございます。

 しかしながら、これまでのところ、教育委員会で苦情処理窓口を設けているのが、都道府県では約三割、十三団体、市町村では約一割、二百七十六団体にすぎないわけでございます。それではなかなか住民の生の声を受け付けることができない。そしてまた、そういう声をもとに地方教育行政に意見を反映していくこともやりにくいというようなことで、今回の法案では、教育行政に関する相談窓口というものを明示する措置を規定することにしたわけでございます。これによって、私は、住民のいろいろな教育に関する要望なり意見なりアイデアなり、そういった建設的な意見が教育委員会に的確にもたらされやすいと思いますし、そして、教育委員会もその声を重視していく方向になると思います。

 もちろん、こうした窓口の明示に限らないで、例えば、公聴会を開いたり、住民との意見交換会を開催したり、あるいは教育モニターなどの積極的な活用を行うなど、さまざまな工夫を行うように促して、これらによって教育委員会の活性化を図ってまいりたいと考えます。

都築委員 今、大臣のお答えを聞いておりまして、本当に活性化ができるんだろうかというか、県の方で相談窓口を設けているのが十三、あるいは市町村だったら二百七十六団体にすぎないということを考えたら、冒頭副大臣が、住民に対して責任を持つんだ、責任を負うんだと言った教育委員会の姿がこの数字にあらわれているんですかというふうに言わざるを得ぬのです。

 結局、文部科学省が何かしてくれるだろう、文部科学省が何か言ってくるまで待とうという姿勢になってしまっている教育委員会のあり方自体が問題なんであって、そこのところを、本当に自分でも、またおかしな質問をしているな、こう思いながら聞いておるわけでありますけれども、やはり抜本的な改革が必要である、僕はこんなふうに思います。

 一つの例として、きのう参考人の方が言っておられました、川西市のオンブズパーソンのお話が出ておりました。本当に困った子供たち、困った家庭、保護者の皆さん方の声をしっかりと取り上げる、そういった意味で一つの参考になるのではないか、こんなふうに思いますが、もし状況を把握して、それについてのお考えがありましたら、ちょっと聞かせていただければと思います。

岸田副大臣 まず、学校や教育委員会が、保護者あるいは地域住民の方々の信頼にこたえて、家庭や地域と連携協力しながら一体となって子供の健やかな成長を図っていくために、教育行政に関する意見や要望を十分に受けとめ、学校運営や教育行政に的確に反映していくこと、このことが重要であるということは申すまでもございません。

 御質問の、兵庫県川西市の子供の人権オンブズパーソン条例につきましては、こうした取り組みの一環としまして、子供の人権救済の観点から設けられたものというふうに理解しております。そういう認識でおります。

都築委員 いずれまた私どもももう一度、教育オンブズマンということを言うのであれば、もう少し具体的な中身、皆様方に提示できるようなものをぜひ議論していきたい、こんなふうに思っております。

 次のテーマに移りたいと思います。

 不適切教員の問題について随分と議論がなされてまいりました。正直言って、本当にどういった方たちが不適切、指導力不足という形で判定されてしまうのか、そしてその判定の基準、あるいはまた判定の手続、そういったものの公平性あるいは公正性、客観性、そういったものは本当に大丈夫なんだろうかという思いがいたしますが、その議論に入る前に、まず、今の状況で、分限免職とかそういった処分を受けた方もいらっしゃるのですが、実際には、そういう処分を受ける前に自主的に退職し、別の道を歩まれる教員、先生方もおられると思うわけであります。現在の教職員の中で定年退職とか勧奨退職とか、あるいはまた、病気退職は精神疾患を患うということになるとちょっと関連がありますが、自主退職などは実際どんな数字になるのだろうか。そしてまた、今回の不適切教員という形でどれぐらいの人が当てはまってくることになるとお考えになっているのか、そこら辺の状況をちょっと聞かせていただきたいと思います。

岸田副大臣 まず一つ目の御質問で、教員の自主退職ということですが、教員の自主退職という観点から集計した資料はございません。ただ、学校教員統計調査によれば、平成九年度において退職者が二万四千五百十四名となっております。その中で、定年や死亡といった理由ではなく、病気その他の理由でみずから職を離れた教員数は、小学校、中学校、高等学校、盲、聾、養護学校を合わせて七千二百二十二名、二九・五%ということになっております。

 そして、今回の措置で指導が不適切であるという要件に該当する者についての質問でありますが、平成十一年度、勤務実績不良や適格性欠如を理由として分限免職の処分を受けた者は十四名でありますが、この分限免職に至らない教師に対する措置、今回の措置はそういう措置でありますが、その部分につきましてどのぐらいの数字になるかは、我々ちょっと把握はしておりません。

都築委員 以前から議論がございました、分限免職の規定があるにもかかわらずこういう形でつくっていくということについて――済みません、ちょっと恐縮ですが、今までの議論の繰り返しになるかもしれませんが、もう一度議論を不適切の内容、基準といったものに。

 実は本当に公平、公正、客観性といったものを十分保ち得るのかという観点から、この改正案では都道府県教育委員会の規則の中にその手続を定める、こういうことになっていると思うのですが、その具体的な内容といったものはどういうふうになるのか。

 確かに、今まで聞いたところでは地方の教育委員会のそれぞれの独自の判断によるということでありますが、それでも恐らく一定のものを示すことになるのではないか。そこら辺のところで示せるものがあれば、ちょっと教えていただきたいと思います。

岸田副大臣 各教育委員会の規則で定める手続に盛り込む内容ですが、想定しているものとしまして、教育委員会内に判定委員会等を設けて判断すること、また、指導が不適切である原因が精神疾患等の病気に起因するおそれがある場合には精神科医の意見を聞くこと、さらには、必要に応じ校長等から授業状況等の様子を報告させること、さらに必要に応じて当該教員に意見を述べる機会を与えること、こうした内容を想定しております。

都築委員 そうすると、今、分限免職というものが行われて、その分限免職された中で不適切教員という範疇も当然あるわけですね。不適切教員というか、指導力不足で分限免職になった人たちもいるわけだと思うのですが、実際にその人たちの事例の集積といったものがあるわけですか。そこら辺はどうですか。

岸田副大臣 分限免職に該当するかどうかということにつきましては、判例等でも厳格に対応しなければいけないということになっておりまして、実質的に授業が行われないというような状況、こういった段階まで至っている場合には分限免職の対象になるというふうに理解しております。

都築委員 今回のこの措置は、分限免職と違うのは、分限には至らないけれども指導力が不足である、だから教壇に立ってもらうのはまずいんだ、ただ、ほかのポストについてもらう、実はそういう形でやるということになるわけですけれども、それは一体どちらのサイドの要請なんですか。

 いわゆる教育の立場の観点からいったら、教壇に立つことができないんだったら、本来分限というものはちゃんと地方公務員法に二十八条で規定があるわけですから、それで対応していけばよかったのに、それで対応できなかったということは、むしろ、学校側のあるいは教育委員会側の問題として、もっとやりやすく、学校の教壇からそういった人たちは出ていってもらうんだ、こういう発想でいくんですか。それともまた、逆に、今度は教員の側からいったら、指導力が不足かもしれないけれども、自分も一生懸命教員として奉職をしてきた、しかし大分疲れちゃった、こんな状況の中ですぐ首にされたんじゃたまったものじゃない、こういう状況の中から一般職の方に移るという道をつくってくれという形になったのか。そこら辺のところはどうなんですか。

岸田副大臣 今回の措置は、やはり児童生徒の立場に立って、児童生徒が適切な授業を受けることを確保する、要は、指導が不適切な教員を児童生徒に対する指導から離す、これがこの一番の趣旨だというふうに考えております。

都築委員 児童の立場ということを考える、これは教育の問題でありますから当然のことだろう、こう思うのでありますが、それだったら、今までの分限処分という形の中で、公務員でありますから、それぞれ研修も受け、そしてまたみずから訓練もし、さらに見識も磨いていく、そういう努力が当然行われてきているだろうと思うわけでありまして、それでもやはり困るんだということだったら、どうしても分限という状況になっていくんではないのかなと。

 今回の規定も、地方公務員法の二十七条、二十八条の規定にかかわらずという形でいくということは、分限処分の一環である、だからこそ、もしそれに問題があれば、不服申し立てあるいはまた救済措置を人事委員会に申し立てることができる、これはこういうことでよろしいわけですよね。

遠山国務大臣 分限処分に該当するかどうかといいますのは、児童生徒に対する指導の不適切さだけではなくて、公務員一般に当てはまりますいろいろな義務違反がございますね、遅刻、欠勤、職務命令違反など、こういった義務違反の要素の双方に基づいて、あるいはそれらの一方の要素について判断されているところでありますが、今の不適切教員の場合については、副大臣が答えましたように、児童生徒に対する指導が不適切か否かの点にのみ基づいて判断されるものでありまして、この点、分限処分とは異なっております。分限処分の一部のものを今度は新たに取り上げてということではございませんで、これは別途の制度として、教育上必要な観点から新たに制度化しようとするものでございます。

都築委員 今の大臣のお答えを聞いておりますと、地方公務員法の二十八条の一項の第一号は「勤務実績が良くない場合」、第二号は「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」、それから第三号で「前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合」、二十八条の一項の本則は、「その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。」実はこういう規定になっているわけでありますから、指導力が不足をするというのは、それは心身の故障があった、そういった状況の場合は第二号に該当するでしょうが、「勤務実績が良くない場合」あるいはまた第三号で「前二号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く」、指導力を欠くということは適格性を欠くということにも実は該当するんではないか、そんな思いがするわけであります。

 だからこそ、本来、この分限処分といった形で対応できるものが、実はほかの職場に移すということで回していこうということなのかなということを考えると、私は、いかにも本来の公務員制度の仕組みを、大きくではありませんが、むしろゆがめていくような感じがしないでもない。現に今、公務員制度全般について見直しが行われている。これは国家公務員が中心でありましょうが、しかし、恐らく地方公務員につきましてもその見直しの内容がいずれ議論をされることになっていくんではないか、そんなことを思うわけでありまして、むしろ今の公務員制度そのものを根本から改めていく必要があるんではないか、そんなふうに思うわけです。

 そして、私自身がここで提起をしたいのは、先ほど申し上げましたように、出席停止の中で、本当に学校の先生方の負担が大変大きい。そんな中で、実は心を病むような状況にまで追い込まれてしまう、あるいはまた、バーンアウトと言われるように、燃え尽き症候群というような状況の中で心身ともに本当に疲労してしまって気力を失ってしまう、そういった原因も大変大きいんではないか。だから、こんな状況に至った中で、あなたは不適切だ、不適格だ、こんなことを言われたって、教員の立場からいったら、それはたまらぬという思いもまたあるんではないかというふうに私は思うわけであります。

 今の教育公務員制度全般を見直していく、そして教員の皆さんが、世の中はこんなに大きく変わってきた、豊かになって便利になって、情報化も進んで、子供たちが本当に何をやっているかわからないような状況の中で多くの課題を抱える。例えば、自分は教育大学の中で国語を学んだ、あるいはまた数学の教える技法を学んだ、そういった専門の先生が来たけれども、生活指導だ、進路指導だ、ありとあらゆる問題を全部面倒見てくれというふうな状況、あるいはまた、通知票をつけるとか成績を取りまとめるとか試験を採点するとかというだけではなくて、逆にもっと管理事務的なものにまで目配りをしなければならないような膨大なストレスを与え続けておいて、あなたは指導力不足だと言われたって、それはたまらぬという思いがするわけであります。

 一人の人が、教員という、教職という人生を歩む、そしてそれが自分に合っていないという状況があるんだったら、むしろかわりやすい仕組みといったものをつくっていく。そして、何もこんな形で、あなたは不適格ですという烙印を押されて、その後の一生をまたうつうつと過ごしていくようなものではなくて、もっとオープンな形に改めていく仕組みといったものも考えたらいいんではないか。

 だから、一つは専門分化、いわゆる分業ですね。学校の中で、先ほどスクールカウンセラーということを文部大臣が言っておられましたけれども、スクールカウンセラー、心理学の専門的な知識、知見を持った人、あるいはまた、実際にさまざまなスポーツや何かをやりながら子供たちを引っ張っていけるような人、あるいは突発的な暴力行為に及ぶような危険がある場合だったらしっかりとそれに対応できるような人と。例えば女性の先生だったら、国語とか音楽とか、そういったのを習ったけれども、子供たちに本当はいろいろ言わなきゃいけない。大人の立場ですから言わなきゃいけないかもしれないけれども、中学になったらもう大人と同じような状況の中で、大変な身の危険を感じながら、ストレスを感じながらやり続けているということ自体がおかしいんじゃないか、私はそんなふうに思うわけであります。

 むしろ教育公務員制度そのものを改めていく一つの提案は、学校の中の仕事といったものを、教科の指導とか生活指導とか進路指導とか、あるいはまた事務的な面とか、そういったものをもっと分業化して教師の負担をもっと軽くしてあげるとか、あるいはまた、これはちょっといろいろ議論があるかもしれませんが、私は、例えば日本の雇用慣行自体も、もう今までの右肩上がりの、終身雇用慣行が支え切れるようなそういう仕組みはなくなってきているという状況になれば、そしてまたたくさんのストレスが集まってくる仕組みになれば、例えば十年ぐらいの勤務期間の中で、次に任用されていく人と、むしろもう自分は別の道を選んだらいいんじゃないかということを堂々とオープンで議論できるような仕組みに改めていくとか、そういったものを考えていくことの方が大事じゃないか。

 私はもう一つ、私の両親も実は小学校の教員をやっておりましたのであれなんですが、要は、今の公務員制度そのものが、人事院勧告に基づいて毎年賃金が上がって、そして、何十年勤務したら退職金が幾らで年金が幾らもらえる、そういったものを失いたくない一心でさまざまな不祥事も起こっておりますし、そしてまた、そこにすがりついてしまうという人間の特性もあるわけでありまして、そういったものが今の経済状況、あるいはまた雇用慣行の中で本当にふさわしいものなのかどうか、そういったものも考えた、制度全般の改革といったものに今それこそ取り組んでいかなければ、六月四日の読売新聞に出ておりますけれども、今申し上げたような、本当に抑うつ感などで休職者が大幅に増加している現状というのは解決できないし、学校の抱える問題も解決できないと思うのであります。最後に、今の点について文部科学大臣の見解を聞かせていただきたい、こんなふうに思います。

岸田副大臣 先生、幾つかあったので、最初に私からさっと答えさせていただきまして、最後に大臣から御答弁させていただきます。

 まず最初に、地方公務員法と本措置との関係についてでありますが、指導力ということに着目して申し上げるならば、従来の分限処分の対象というのは、授業等の指導が放棄されていたり、児童生徒が授業中に騒いでも全く指導が行われない等、指導が行われていないか、それと同視し得る状況にある場合というふうに考えます。一方、本措置におきましては、指導が行われていない状態とまで言えないものの、指導内容に誤りが多かったり、児童生徒の理解度等を踏まえず授業を進める等、指導が不適切であるという程度だというふうに考えております。

 いずれにしましても、従来の分限処分は、指導が不適切だけではなく、公務員一般に当てはまる勤務状況全般についての判断であり、今回の措置はあくまでも指導力、指導が適切かどうか、ここに集中して着目して措置を行うという点におきまして、今回の措置、地方公務員法における分限処分とは全く別の分類、そして処分だということをまず御理解いただきたいと存じます。

 そして、二番目の質問で、教員の過大な負担についての御質問でありますが、現場におきまして、多忙感にさいなまれながら仕事をしている大変熱心な多くの教員がいるということ、これはおっしゃるとおりだと思います。こうした教員に過重な負担がかからないような措置、これも当然行わなければいけないということで、校務分掌を整える、あるいは校務運営の効率化を図る、こういった指導をやること、こういったものも当然のことでありますし、相互の協力、こういったあたりもしっかりとした体制を組んでいかなければいけない、そのように認識をしております。

 そして、公務員全体のキャリアあるいは休暇、こういったもののあり方についての御質問でありますが、これにつきましては、今公務員制度全体の議論が進んでいるわけであります。文部科学省としても、問題意識は持たなければいけないとは思いますが、全体の中で解決しなければならない問題だというふうに認識しております。

 ざっと諸点につきまして、私の方からお答えさせていただきました。

高市委員長 遠山大臣、都築委員の質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。

遠山国務大臣 はい。

 今副大臣の方から克明にお答えいたしましたように、やはり教員の多忙感、あるいはそれにさいなまれる状況というのは、これは大変、本人にとりましても、また子供たちにとっても望ましい状況ではございませんで、教員が心身ともに健康を維持して児童生徒への教育に当たってもらえますように、今後とも、私どもとしてもいろいろな手を尽くしてこの問題に対処してまいりたいと思います。

都築委員 ありがとうございました。

高市委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 まず、学校教育法の奉仕体験活動についてお伺いをいたします。本日は、すべて大臣の御答弁でお願いをしたいと思います。

 この問題でこの間の質疑を聞いていますと、学校における奉仕体験活動は義務でもなければ強制でもないという御答弁だったと思います。ところが、六月五日の児玉議員の、総合所見の対象となりますかとの質問に対して、遠山大臣は、他の教育活動同様、評価を行うことになるわけでありますとお答えになっていらっしゃいます。

 評価の対象となるならば、強制あるいは義務につながるのではありませんか。いかがでしょう。

遠山国務大臣 学校教育の一環としてやる活動であります以上、それは評価されるということになると思いますが、それをすぐに強制でありますとか義務とかにつなげてお考えになるのはなかなかわからないわけでございまして、むしろこの場合には、評価方法などについて工夫を行いまして、児童生徒の体験活動というものを適切に評価といいますか、適切にそれを考えていくということが大事であるわけでございます。

 むしろ、そういう活動を通じて一人一人の子供が見せるよい面に着目して、その点について記録にとどめるということはあり得ると思いまして、ただ、その記載の仕方などにつきましては各都道府県教育委員会などが定めるものでありまして、我が省といたしましては、生徒の行う体験活動等が適切に評価されていくことが大事と考えているわけでございます。そのことが、児童生徒への義務づけということにはつながらないと考えております。

石井(郁)委員 それは少しおかしいと思うんですよ。子供の側からしますと、やはり評価となるとそれは参加するわけでしょう。あるいは参加せざるを得ないわけですよ。社会奉仕体験活動に参加しない自由というのはなくなるでしょう。参加しなければ評価はされない、また減点の対象にもなるということになるわけですから、よい面だけを評価されるというふうになると、なおさら子供たちは評価してもらおうと、参加しなきゃいけないという義務づけにつながるんですよね。しかも、これは内申点に響くということになれば、いやが応でも活動に参加せざるを得ない。この点は、昨日の参考人からも出されておりました。内申点を上げるために老人ホームの慰問とかいろいろな形での活動に参加をしているということで、まさに評価、点数とつながったら、これはもう強制になるわけです。もう一度お願いをいたします。

遠山国務大臣 これまでの御論議、それから午前中の質疑でもございましたけれども、この評価というのは点数化するようなものではございませんで、子供たちが見せるいろいろな長所の面というものを評価していく、そういう角度でやってもらうべきでありますし、私どもはそのように、教育委員会においてその記載内容等を定める場合に配慮がなされるものと思っております。

石井(郁)委員 ボランティアの場合は自主的とか自発的ということがたびたび強調されますけれども、この奉仕活動については非自発的な活動も含まれるというふうに御答弁もされていると思うんですね。つまり、非自発的ですから、嫌でも参加するということがこの奉仕活動に含まれますよということなんですよ。ここはやはり、ボランティアと奉仕活動の区別されているところじゃないですか。

 それで、その対象も学校、地域の清掃、花壇の手入れ、老人施設との交流、幼稚園等の施設の手伝い等々を挙げていらっしゃるでしょう。だから、本人はこういう部分では嫌だとか、あるいは私はそれは苦役に思うとかというふうに思っても、これはあなた方が言うように、評価ということで義務になると逃れるすべはない、まさに強制に当たるんじゃありませんか。ちょっとボランティアと奉仕活動の区別に立って、あなた方が御答弁されたことでございますから、もう一度よろしくお願いします。

遠山国務大臣 学校でどのような体験活動の充実を図るかにつきましては、それぞれの学校において、地域の実情でありますとか、あるいは児童生徒の実態を踏まえて適切に判断されるものと考えますけれども、各学校におきましては、その学校の教育活動としてそれぞれの教育計画に基づいて教師の適切な指導のもとに行われるわけでございます。

 教師がそれぞれの持っている指導の力を十分に発揮して、児童生徒の発達段階や活動の内容に応じて、その自発性に配慮をいたしますとともに、さまざまな種類の活動の場や機会を工夫したような形で行われることが大切でございまして、そのこと自体が強制であるとか義務ではないと、もう再三御説明しているとおりでございます。

石井(郁)委員 それはやはり全然論理的説明になっていないんですよ。

 では、義務づけないんだ、強制ではないんだと言うんだったら、わざわざ法律に書き込むこともないんじゃないですか。そこが問題なんですよ。それはもうおかしいですよ。そして、評価をしないというならわかるけれども、評価もすると。これは「充実に努めるものとする。」いうのが法文でしょう。だから、学校はやるんですよ。そして、それはやはり子供たちにやらせるんですよ。これは義務づけでしょう。それを義務づけではないと言うんですか。そういうのは内容、実態にも全然合いませんよ。説明にもならないというふうに思うんです。再三その評価の対象とするとまで言うわけですから、やはり子供にとったら強制になる。やらざるを得ない、やらなければならない、こういうものとなるんですよ。

 そういう意味で、「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」という憲法十八条にこれは反するのではないかというふうに思います。憲法制定時の審議で司法大臣の木村篤太郎氏が、苦役とは本人の意思に反して労務を課さない、そういう趣旨でございますということがあったと思いますけれども、本人の意思に反して押しつけるということはやはり許されないというふうに思いますが、この点はいかがですか。

遠山国務大臣 憲法で禁じます苦役といいますものは、人間の人格を無視する程度の拘束には至らなくても、精神的または肉体的に甚だしい苦痛を伴う労役と解されているところであります。

 各学校が教育活動の一環として社会奉仕体験活動への参加を児童生徒に求めますということは、社会奉仕の精神を涵養するという目的のもとに、これからの市民社会できちんと生きていく、それは、自分自身がしっかり生きていくだけではなくて、周りのためあるいは世のためにも役立つ、そういうことを体験するために必要なことでありまして、それは教育的な意義を有する活動でありまして、憲法の禁じる「意に反する苦役」というようなものには全く当たらないわけであります。

 ただ、指導の際には、児童生徒の発達段階や自発性に配慮をしたり、地域の実情に応じて多様な形で行われることが大切と考えているところでございます。

石井(郁)委員 定義とか概念というのはやはりきちっとしなきゃいけないと思うんですよ。そういう意味で、私はこだわってもいます。

 自然体験活動とか社会体験活動というのは教育活動の中で大変意義を持つ、あるいは子供の人格形成や成長発達に大事だ、これはもう当たり前のことですよ。そのことと、今回の社会奉仕体験活動、なぜ社会奉仕ということを入れなきゃいけないのか。ここのところが問題なんでしょう。全然概念が違うじゃないですかという意味で議論しているところであります。しかも、それがやはり評価の対象となる。それは、中学校などでは、いわば内申にもつながるということでそういうことをさせられて、燃え尽きてしまうとかもう嫌だという声だってあるわけですよ。高校、大学と進むにつれて、奉仕体験活動、こういうものはもう嫌だという声だって聞こえてくるわけであります。

 そうした点で、私たちは、あくまでも自主的に、自発的に行われてこそこういう部分の活動というのは意味を持つわけですから、強制をさせてはならないということをやはり確認しなきゃいけないと思うんですね。強制につながるこの法改正というのはやはり撤回すべきだということを私は強く主張したいと思います。

 次に参ります。

 出席停止の問題でございます。

 私は、きょうは時間の関係で出席停止の問題もすべてを取り上げることはできませんが、二十六条の二項であります。「あらかじめ保護者の意見を聴取する」というふうになってございますけれども、子供の意見については法文上書かれておりませんが、どうなるのでしょうか。

遠山国務大臣 今回の改正におきましては、市町村教育委員会は、出席停止を命ずる場合にはあらかじめ当該処分の名あて人でありますところの保護者から意見を聴取することとしております。

 これはなぜかと申しますと、一つは、行政手続法制上、行政処分を行う行政庁が意見陳述の機会を設けることを義務づけられる対象としては処分の名あて人とされておりまして、他の利害関係を有する者については、行政庁等の判断により機会が付与されるにとどまるということでございます。そして第二には、他の法制上、十五歳以下という発達途上の子供について一律に意見聴取を義務づける例も見られないところでございます。

 ただ、児童生徒との関係について申せば、出席停止を命じるまでの過程におきましては、当然ながら当該児童生徒を指導してきているところでありまして、そういう事実関係を積み重ねてきている。そのことを踏まえて、法律上、出席停止を命じる場合に市町村教育委員会に意見聴取を義務づけるのは当該処分の名あて人である保護者としたものでございます。

 もちろん、運用上、当該保護者のみならず児童生徒から意見を聞く機会を持つよう配慮することは大切であるわけでございますが、法制上の制度としてそれを位置づけるというわけにはまいらないわけでございます。

石井(郁)委員 私は、法制上子供の意見を聞くということを位置づけることにならないという立場というか、考えというのは、やはり大変問題だというふうに思うのです。今議論しているのは、問題を起こす子供、しかも出席停止にするという、その本人の権利に関する停止処分ということになるわけですから、幾つもの意味で、子供の意見、子供の理由をしっかり聞くというのは、これはもう教育上の問題としても欠かすことができないわけですね。そういう点で、私は、子供たちの意見をきちんと聞くということを本当に位置づけてほしいというふうに思うのです。

 それはなぜかといいますと、今そういう実態がありますけれども、子供の意見を聞くというのは、国際的な流れとしてやはり法制化の中にきちんと位置づけていくというのは必要じゃないかというふうに私は思うのです。いつも申し上げますけれども、子どもの権利条約でございます。日本政府は批准しているわけですね。この子どもの権利条約の第十二条では一項、二項と二つの項目にわたりまして、「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される」というふうにあります。二つ目に「このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。」というふうにあります。

 今新たに法律をつくろうとしているわけでしょう。そういうときには、こういう精神をきちんとやはり組み込む。そういう子供の権利を一律に聞いているようなものはないというふうに今御答弁されましたけれども、今、法改正をするんですよ。新たにつくるときに、なぜこういう子どもの権利条約の精神をきちんと組み込んだものをしないんですか。いかがでしょう。

遠山国務大臣 まさに、今おっしゃいました子どもの権利に関する条約第十二条第二項におきまして、自己に影響を及ぼす「行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは」云々ということがございます。そして、先ほど申し上げましたように、日本の国内法の手続といたしましては、行政手続法制上の問題、それから他の法制上におきまして、十五歳以下という発達途上の子供について意見聴取を義務づける例もないというような国内法の体制のあり方、これに乗っかって私どもは今回の法改正の案を作成しているところであります。

石井(郁)委員 現状はそういう御説明かもしれませんけれども、この問題ではやはり子供の意見の聴取ということをきちんと手続を明確にしないと、子どもの権利条約に反することになる、あるいは子どもの権利条約を全く無視して法改定をしようとしている、そうなりますけれども、よろしいですか。

遠山国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、今回の改正によりまして、保護者からの意見聴取を法律上規定することとしておりますけれども、これは条約の要請にも対応するものであります。

 ただ、今後とも、児童生徒本人からの意見聴取も含めて、通知等によって指導してまいりたいと思います。

石井(郁)委員 出席停止というのは、やはり子供本人にとって極めて重要な問題です。憲法上の教育を受ける権利を一時的に奪うわけでございます。そして、この処分というのは、指導要録にも書かれるわけでしょう。まさに不利益処分なんですよ、いわば一生にわたる。だから、そういう自己に関する権利停止の問題ですから、本人の意見を聞くというのは当然のことです。

 しかも、年齢でいえば、中学校段階が多い。もう十分に子供は意見を持ち、理由も説明できたり、あるいは判断もあるという年齢でございます。ですから、私は、事前の告知とか弁明聴取の機会だとか、それは保護者のみならず、本人にきちんとやはり保障する、これはもう教育上も必要だ。子供は、納得しないと、やはり本当に確信を持てないというふうに思うんです。教育の効果もないと思います。そういう点でも、重大な権利停止に関するこういう事態のときに、きちんとその手続を明確化してほしいことを今重ねて申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、どんどん進みますけれども、三つ目のテーマ、指導力不足教員でございます。

 指導力不足というものを何を指して言うのかという定義の問題も私はずっとお聞きをしてまいりました。他の委員に対しても答弁があったかというふうに思います。大臣は、具体例として三点挙げられたわけでございます。一つは、教科における専門的知識、技術の不足、それから二つ目に、指導方法が不適切だ、三つ目に、児童生徒の心を理解する能力あるいは意欲に欠けて、学級経営や生徒指導が適切に行われていないということでございました。

 きょうの質疑を聞いていましても、この不適格と不適切の違いについて、あくまでもこれは指導上の問題ですということを強調されたように思うのです。だとしますと、新しい教員の人事管理の在り方に関する調査研究、今、都道府県に文部科学省が委嘱していらっしゃいますね、私も資料を要求して見せていただきました。それを見ますと、到底あなた方がお示しの三つの具体例に合致しない例がたくさんあるんですよ。

 例えば大阪では、指導力不足に適格性を欠く教員という項目がちゃんと入っているんです。それから、埼玉では、人間関係に関すること。人間関係に関することまで入っている。北九州、使命感や責任感という問題が入っている。高知県、職場の人間関係や服装、言葉遣い、私生活の乱れ、私生活の乱れですよ、組織の一員としての欠如、こういうものが挙げられているんです。国会の答弁と全然違うじゃないですか、この都道府県で検討されている内容というのは。だから、こういう内容になると、いわばもう、指導力に名をかりた教員の日常生活の監視じゃないかというふうにさえ言わなければなりません。

 ですから、国会審議、これでは幾らここで審議しても、各県はばらばらですという状況では、この審議自身が意味がないことになりませんか。いかがですか。

遠山国務大臣 この件についても、前回の御論議の過程で出てまいったわけでございますけれども、現在、調査研究事業に取り組んでおります教育委員会におきましては、その調査研究におきまして、おのおのの地域の実情などを踏まえて、人事管理上特にその対応が必要となる教員について、今後どのような指導や研修、あるいは人事上の措置を講ずるべきかという観点から調査をしているわけでございまして、そのときに対象となる教員を定めて、例えば指導力不足教員等、あるいは指導を要する教員等、指導力に課題を有する教員等という名称でそれぞれ定義しているところでございまして、その中には、分限処分の対象になるような人も入れているわけでございます。これはいずれも法律上の文言ではございません。ですから、それぞれの教育委員会で調査をする際に、ある表現を用いて調査をしているわけでございます。

 一方、この法案におきます「指導が不適切である」とございますのは、この措置を適用するための要件としてこの法律案において規定したものでありまして、両者の観点は異なっております。したがって、その対象は必ずしも一致するものではございません。

 調査研究事業の具体的内容と申しますものは、各都道府県教育委員会にゆだねられているものでありまして、この法律案が成立いたしますと、都道府県の教育委員会がとり得る人事上の選択肢が一つふえるということになるわけでございまして、この措置の内容やその適用の可能性も含めて調査研究が行われていくのではないかと考えております。

石井(郁)委員 せっかくの大臣の御答弁ですけれども、やはりちょっとごまかしがあると思いますよ。

 都道府県では確かに、人事管理のあり方といって広く行っていることは、そうでしょう。今、私が申し上げた例は、その一般の中から拾っているんじゃないんです。指導力不足教員をどういう範囲で考えるかという項目の中から選び上げているんですよ。そのほかに別な管理のあり方の項目もありますよ、大きくは。指導力不足というものを今挙げたような中身でとらえていますよ、それでいいんですかということを言ったんですよ。ちょっとそういう、意識的かどうかわかりませんけれども、やはり何かちょっと違うんですよね。

 それから、この法案でも、事実の確認の方法を判断するための手続に関して必要な事項は都道府県教育委員会規則で定めるとなっているでしょう。だから、都道府県教育委員会が規則で定めるというふうにしていて、ああ、そこできちんとお決めになってくださるかなということで安心はできないわけですよ、今のような実態がありますから。法案が通ってしまったら、各県はもうそれぞればらばらでおやりになっていいというか、そういうことになれば、この委員会の審議は本当に何なのか、何だったのかということになるわけでしょう。

 やはりきちんと見ていただきたい。私は、いただいた資料で先ほど申し上げたんですから。指導力不足という範囲の中に、私生活の乱れまで入っていますよと、そういう問題で言ったんです。不適格の話を言っているんじゃないんです。そこをやはりごちゃごちゃにしないでいただきたい。

 ですから、私は繰り返し申し上げていますけれども、今こういう実態の三年間の調査をしているんですから、まだ一年終わっただけであって、来年、再来年と、文部科学省が委嘱をして、各都道府県でしているわけでしょう。その調査がちゃんと終わってからこの法案を改正しても遅くないじゃないですか。私は、国会がどういう責任を持つのか、そういう意味からも、やはりここはきちんとしていただきたいというふうに思います。もう一度御答弁ください。

遠山国務大臣 各都道府県で用いられている用語の問題については、先ほどお答えしたとおりであります。この法案で規定している概念とはまた別の概念を用いて、そういうそれぞれの表現を用いて調査研究しているわけであります。

 新しくこの法律が成立いたしましたら、当然のことながら、この不適切な教員の問題について、恣意的にこれが運用されることのないように、私どもとしましては、それらの要件を具体的に指導を徹底しますのと同時に、それぞれの都道府県において手続上の規則を定めてもらいますときについても、その内容について、できるだけ望ましい方向を明確にして指導助言をしてまいりたいと思っております。

 もう再三申し上げておりますように、この制度が適正、公正に運用されますように、私どもとしても、これからも力を尽くしてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 今の御答弁も重大だと思いますが、それでは、文部科学省は具体例として三つ挙げましたけれども、各都道府県は別の概念だと。私生活の乱れや服装や言葉遣いの問題まで挙げられている。それから、疾病がありましたね、精神疾患。これはおかしいという話になったじゃありませんか。そうでしょう。各都道府県、概念は別々です、それはそれでよろしいという今の御答弁ですか。

遠山国務大臣 今申し上げておりましたのは、調査のときに用いられた用語を例に挙げられましたけれども、それは、今回の法律で規定しようとしている不適切な教員という範疇ないし概念とは違うということを申し上げたわけでして、この新しい法改正に伴います制度の中身につきましては、これまで申し上げました要件であるとか手続規定のあり方について十分に指導をしていくということでありまして、そういう私どものねらい、ないしここでお決めいただく法律の目的に照らして、それぞれの教育委員会でお定めいただくわけでありますけれども、それが、本来あるべき趣旨に照らして十分内容を反映するものであるように私どもとしては指導をしていくという趣旨で申し上げているところであります。

石井(郁)委員 私は、大臣の御答弁は、せっかくでございますけれども、ますますこの問題ではあいまいだな、これで法を通したらどういうことになるんだろうかという思いでいっぱいです。

 この不適切という定義をどうするのかという問題で、当初たしか大臣は、基準というのはやはり必要だというふうにおっしゃいました。しかしその後、基準はつくれない、例しか示せないんだ、三つの例ですと。私はあれは例とは思いません、枠組みだと思いますけれども、例しか挙げられませんと。きょうは、各都道府県がもうばらばらにいろいろな概念で行っている、それはそれとしてというようなニュアンスでしょう。答弁がどんどん違っているんですよね。一体これはどうなるんですか。これだけの、本当にやはり審議が尽くされていないということのあかしだとも私は思いますけれども、文部科学省自身が、実はこの法案をやはり非常に拙速に、あるいは確たるものとして出していないということが示されているように思うのです。

 だから、これは本当に重大な問題ですから、他の議員の皆さんも質問されるかもしれませけれども、これは到底このままでは通すわけにいかないということがますます明らかになっているというふうに私は思います。

 でも、時間がありませんので先へ進みます。

 もう一点重要な問題は、教育改革国民会議の報告を受けての法案でございますから、直接今回の法案には出ておりませんけれども、国民会議は、「努力を積み重ね、顕著な効果を上げている教師には、「特別手当」などの金銭的処遇、準管理職扱いなどの人事上の措置、表彰などによって、努力に報いる。」としています。

 今回の指導力不足教員のいわばチェックなんですけれども、この評価は、国民会議の提唱する特別手当などの金銭的処遇あるいは人事上の措置に結びつきますか。それとも、そうじゃないというふうにお考えでしょうか。

遠山国務大臣 今お話しの点は、今回の法案とは直接関係はございません。

石井(郁)委員 今回の法案に出ていないことは確かでございますけれども、そういうものとしてのお考えがあるのかどうかということですが、それもないというふうに確認してよろしいですか。

遠山国務大臣 さきに策定いたしました二十一世紀教育新生プランにおきましては、教師の意欲や努力が報われ、評価される体制をつくるための主要施策の一つといたしまして、優秀な教員に対する表彰制度と、それに連動した特別昇給等の実施を挙げているところであります。

 すべてが画一的過ぎる、そういうことにとらわれないで、やはり努力をする人がきちんと対応してもらえる、そういう社会にしていくことも重要でありまして、我が省といたしましては、各都道府県教育委員会におきまして、優秀な教員を対象とした表彰制度が整備されますとともに、このような教員に特別昇給等の措置を講じるようなシステムが設けられますように検討を促してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 では、やはりそういう検討の方向を促したいということじゃありませんか。今回の指導力不足の法案でそれがすぐリンクするとか、そこまでは言っていないとしても、今後はそういうことを考えるということですよね。

 では、伺いますけれども、私は、それはやはり大変重大な内容だというふうに思うのです。これは指導力不足教員に名をかりた新たな教員の排除につながるわけで、やはり金銭的処遇を教育の場に持ち込む、あるいは差別を持ち込む、これはもう教育の場に本当に大きな問題を引き起こすというふうに言わざるを得ないと思うのです。

 きのうの参考人の質疑でもそのことが強調されて、私学などでは一部にそういうことが導入されている、教育にとって一番大切な子供と教師の人間的関係あるいは教職員の間の協同、協力、これをやはり損ねるという点で危惧を表明されていたというふうに思います。

 その点でもう一点伺いますけれども、教員にこういう業績主義というか、業績主義給与とセットになった教員評価の問題なんですね、欧米では既に行われていますけれども、これについては文部科学省として何か把握をしていらっしゃいますか。済みませんが、大臣に。ちょっと細かくなるかもしれませんけれども、大臣の御認識をちょっと伺ってみたいと思います。

遠山国務大臣 いろいろな国々では、やはり同じ教師とはいえ、きちんと努力をし成果を上げる教師について、それを認めてある程度のリターンを、リターンといいますか、報奨を行うというようなことは聞き及んでおります。例えばアメリカでの、業績給与としてのメリットペイの問題なども聞き及んでいるところであります。

石井(郁)委員 もう議論する時間がございませんけれども、そのアメリカのメリットペイでは、やはりそういう教員評価というのはさまざまな負の部分、負の影響で実は失敗したというふうに、私などはいろいろペーパーで見ております。だから、既にもう欧米の方が先にこういう部分の教員評価がありますから、そういう部分を文部科学省としてもやはりちゃんとよく精査していただきたいというふうに思います。そういうことの検討もなしに、不適切教員、そしてさらに今度は金銭的な問題導入、そこまで考えるというのは文部科学省としてはやはり大変拙速だということも、私は強調しておきたいというふうに思います。

 さて、もう一点、研修の問題なんです。これも大変重大な内容を含んでおりまして、法案では、「研修等必要な措置が講じられたとしてもなお児童又は生徒に対する指導を適切に行うことができない」場合という二項めがございますけれども、この研修というのはどういう中身で、どれだけの期間行われるのでしょうか。

遠山国務大臣 指導力に問題があります教員に対する研修につきましては、各都道府県教育委員会などにおきまして、教員の状況に応じて、種々工夫がなされて適切に対応されておりますし、また、そうであるべきものと考えております。

 例えば東京都の教育委員会におきましては、一年を単位として、主として学校内においてあらかじめ作成した指導計画のもとに適切な指導者をつけて実施する研修と、研修センターにおいて実施する研修の双方を行っていると承知しております。それぞれの教育委員会において、工夫がいろいろとなされているところであります。

 この法律案におきます研修といいますのは、都道府県教育委員会または市町村教育委員会におきます研修や学校内における研修でありまして、指導力の向上を目指して行われるものを指しているわけでございます。

 具体的にどのような研修がどの程度行われますかということにつきましては、各都道府県教育委員会におきまして、教員の状況等いろいろな条件整備の問題もございましょうし、そういうことに応じまして種々工夫がなされて適切に対応されるべきものでありまして、国が一定の中身、こういうモデルだ、こうでなくてはいけないというようなことを示すというのはなじまないというふうに考えております。

石井(郁)委員 確認をしたいのですけれども、今回の法案で「児童又は生徒に対する指導が不適切であること。」それから、今申し上げました「研修等必要な措置が講じられたとしても」云々という、二項ございますね。これは、このいずれにも該当する問題ということについて、免職に当たる、そして配置転換ということになるわけですが、このいずれもというのは、一と二は必要要件だというふうに理解してよろしいでしょうか。

遠山国務大臣 一号、二号のいずれにも該当する場合ということでございます。

石井(郁)委員 そうしますと、これは過日の委員会での質疑で、同僚議員に対しまして、今回の措置の判断をする際に、平素研修が行われていることから判断をすることも可能だ、研修が平素行われていることからして判断することが可能だ、だから新たな研修を義務づけていないという答弁がございましたね。

 つまり、研修を新たに義務づけなくても、一号の要件だけで免職ということはできるという御答弁があったように思いますが、これはいかがですか。

遠山国務大臣 当然ながら、こういう判断が行われる前にはさまざまの研修が行われているわけでございます。

 この要件といいますものは、都道府県教育委員会に対しまして、この措置を適用するに当たって新たな指導や研修を行うことを義務づけたものではありませんけれども、それまでの指導等から見て、新たな研修等の措置を講じたとしてもなお効果がないと判断できる場合には、直ちにこの措置を適用することも可能であるということでございます。

石井(郁)委員 ですから、やはり新たな研修が必要だというふうに理解していいわけでしょう。今のお話、何かちょっとはっきりしなかったように思いますけれども。一号と二号いずれもというのは、つまり、不適切だという判断がどこかでされた、そのためには、しかし研修も必要な措置として講じますよ、一定の研修を受けた上で最終的な判断ですよということで確認させていただきますけれども、よろしいですか。

遠山国務大臣 通常、こういう判断が行われる前には研修が繰り返し行われているわけでありまして、ただ、その判断をする時点でさらに研修を義務づけるということではなくて、一号、二号に該当すればそのことについて決定することができるというのが法律の仕組みと考えているところであります。

石井(郁)委員 私はどうもちょっとわからなくて、申しわけないですが、一号、二号に該当すると言って、さらに研修を義務づけることがなくてもと言われるのはどういう意味なんでしょうか。日常的に研修があるということと、さらに研修を義務づけるとの関係がもう少し明確にならないと困ると思うのです。つまり、一号だけでも何かできるかのようにやはりとられかねませんよ。

遠山国務大臣 第二号に該当するかどうかを判断するに当たりましては、既に講じられた指導や研修の結果に基づいて判断されることが通例であると考えているところであります。

 したがいまして、この第二号というのは、都道府県教育委員会に対しまして、この措置を適用するためには研修等をさらに行わなければならないということを義務づけているところではないわけでございます。十分にいろいろと研修をしたり指導をしたりという後の判断ということでありまして、しかし、それは項目としては二つの各号を満たすということに当たるわけであります。

石井(郁)委員 では、日常的にいろいろ研修をしているということなんですけれども、その研修が一体どういうものなのかということも、まだもう一つ不明確というか、ここでは明らかになっていません。

 私のところには、各県から要請やメール等々がいろいろ送られてきますけれども、その中に、何と、研修ということで草取りをさせられていると。教員が一日じゅう草取りをさせられている。これは校庭の草むしりなんですよ。余りにも人格、人権を無視した屈辱的な研修ではないかという訴えがあるわけでございます。こういう実態というのは、教員の研修でまた教員の質を向上させるとか力量を上げるという話じゃなくて、もうやめてくださいという、いじめにしか見えないという話にもなるわけです。

 それから、これは東京の例ですけれども、研修を受けた二十三名の先生方がいらっしゃいますけれども、職場復帰できたのが三名だけだというのです。六名が自主退職で、八名が精神疾患だということがわかったと。ですから、やはり研修で職場復帰をするというケースが非常に少なくなっている。私が全部知ったわけじゃありませんけれども、この例を見ても、私は大変な実態があるんじゃないかというふうに言わざるを得ません。

 だから、研修というのが実際にどういうふうに行われているのか、どういう実態なのかというあたりはどのようにお聞きしたらいいのでしょうか。少しお聞かせいただけますか。

遠山国務大臣 この場合の研修というのは、その教員が指導力をさらに増すために行われる研修でありまして、そのことについては、あらかじめ作成した指導計画のもとに適切な指導者をつけて実施する研修、あるいはこれまでに研修のいろいろなノウハウを積み重ねてきた研修センターにおいて実施する、そういう研修のあり方というのが代表的な、これも例でございますけれども、そういうことを想定しているわけであります。

石井(郁)委員 こういう問題でも、本当に審議はまだまだ奥が深いと私は言わざるを得ないわけです。免職のためにも、ためにもというのは変ですけれども、不適切な教員ということを判定するために研修ということを一応義務づけるというか、必要条件としているわけですけれども、一体、それはどういう研修で、どんな体制で、どういうふうにできるのか、これが重大ではないのかというふうに思います。

 それと、その研修が免職にどんなふうにつながるのかという問題もはっきりさせなければなりません。そういう意味では、これは法案の論議の核心に当たる部分だというふうに思うのですけれども、残念ながらもう私の持ち時間は参りました。

 これまでのことから見ましても、本法案は、指導力不足という名のもとでそういう教員のあぶり出しを図る、そして学校からそうした教員を排除する、このことを目的として出されているものとしか私には思えません。本当に、今現場が求めている教員の力量の向上、教職員が集団で学校づくりに励む、父母と協力して学校をつくり上げていく、子供から信頼される、そういう学校をつくっていくというようなことにこれはつながらないということを、私ははっきり申し上げておきたいというふうに思います。そういう点でも、この問題での配置転換に当たって当該教員の同意が要らないという問題も大変重大だというふうに思うのです。

 また、指導力不足の問題に限っても、まだまだ審議しなければならないことはたくさんございます。それから、私自身は教育委員会のあり方について質問する時間がございませんでした。私は、時間が参りましたけれども、この審議は続行して、慎重審議を貫くべきだということを強く委員長に要求して、終わりたいと思います。

 以上です。

高市委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時開議

高市委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山内惠子君。

山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。

 教育改革関連三法案の審議がきょうが最後となっていることを、私は、実感不足ということも含めて、大変残念に思っているところです。全国各地から、お手紙、ファクス、それからはがき、お電話、いろいろな御意見をいただいていますし、毎日このように傍聴席も満席になっているという状況にあるだけに、この教育の問題は、親も子供も教職員も地域の方々も、いろいろな意味で、自分たちの声を上げたいと思っていた、そのあらわれがこの参加の状況だと私は思います。その意味で、公聴会が開けなかったことを大変残念に思っているところです。重要法案ということであればなおのこと、公聴会は開く必要があったと思います。

 私の質問に入ります。

 十五分という短い時間ですので、急いで質問いたしますので、答弁の方も短くお願いいたします。

 先ほど平野議員が、研修体制をしっかり整えることを要望しておりましたが、私も、この研修体制によって現場に復帰することをしっかりと目指した研修であることを要望しているという点で、この平野議員の御意見に賛成です。

 その意味で、今回の法案に改めて指導が不適切な教員の転職を打ち出されましたけれども、この間、教員養成大学で教育がなされ、教育実習があって、採用では試験もあり、面接もあり、その上初任者研修があって、現職研修があったのですから、このような法案をあえてつくらなくてもいいほどの研修がなされてきたと思います。

 私は現場に三十年いましたが、私の時代にはこのような研修がありませんでしたけれども、研修は本当に欲しかったので、私は、夏休み、冬休み、自費で、自分の興味と関心のある研究会に随分駆け回った記憶があります。

 それにしても、このような研修があるんですが、改めてこういうことをしなければならなくなったという意味では、今までなさっていた研修のどこを評価され、どこに問題点があったからこのような取り組みをしなければならなくなったかという意味で、大臣、お答えを短く、よろしくお願いいたします。

遠山国務大臣 研修の件でございますけれども、教員の資質、能力の向上につきましては、これまでも、養成、採用、研修の各段階を通じた施策が体系的に実施されて、成果を上げてまいりました。

 一方で、学校教育に求められます内容や、教員に求められる資質、能力というものが変化しつつありまして、このため、養成、採用、研修のあり方についての見直しや改善も絶えず行ってきたところであります。

 研修につきましては、平成十一年十二月の教育職員養成審議会第三次答申におきまして、初任者研修については、校内研修の実施体制が確立していなかったり、その内容が画一化している例があること、あるいは、教職経験者研修につきましても、その内容、方法が画一化され、教員のニーズに応じた研修の機会が少ないことなどの問題点が指摘されたところであります。

 このために、幾つかの改善を各教育委員会に促しているわけでございますが、初任者研修については、初任者の指導教員が指導事務に専念できるよう適切な校内分掌等の措置を講ずること、あるいは校内研修の内容を個々の初任者の経験や力量に応じたものにすること、さらには、教職経験者研修については、教員のニーズや学校の課題等に応じて多様な選択ができるようにするなど、今日的な観点から内容、方法の見直しを図るというようなことを指摘してまいっているわけでございます。

 我が省といたしましては、今後とも、教員の指導力向上のための研修、さらには、採用、養成の各段階を通じて、総合的、体系的な施策を推進してまいりたいと考えております。

山内(惠)委員 先日、遠山大臣は、採用においては人物評価を重視したいというようなこともおっしゃっていらしたので、今後の採用の仕方も変わっていくのかなと思いますが、私としては、初任者研修のあり方も、担任をして、そして初任者研修に行く、学校にいない間はどなたかが来てくれるという状況の中で、子供の名前も十分覚えないような段階で研修に行ったりして、戻ってくるとかわりの方が授業をしていてという状況を考えると、私は、一番最初の年はとにかく自分の力で全力を挙げてやって、それから二年目か三年目で、自分が本当にしたい研修を、ニーズとして要求をしてやれる研修であればもっといいんじゃないかなという意見を持っています。

 それにしても、今回新たに導入する、指導が不適切な教員と言われている方たちに対しての研修は、今までの研修、今例に挙げた研修と内容が違うものを想定しているのかどうか。もし違うのであれば、どのような研修を想定しているのか。短く、お願いします。

矢野政府参考人 この法案におきます「研修等必要な措置」の場合の研修でございますが、これは、都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会が実施する研修、さらには学校内において行われる研修があるわけでございますが、具体的にどのような研修がどの程度行われるかにつきましては、これは、各都道府県教育委員会等におきまして、教員の具体的な状況等に応じ、種々工夫がなされ、適切に対応すべきものと考えているところでございます。

 なお、現在、各都道府県におきまして、特に指導力不足の教員を取り出して研修を行っている例があるわけでございまして、例えば東京都教育委員会におきましては、指導力不足教員に対しまして、一年を単位として、主として学校内において、あらかじめ作成した指導計画のもとに適切な指導者をつけて実施する研修と、それから研修センターで専ら研修する、そういう両方の研修を行っているような、そういう例がございます。

山内(惠)委員 私も、マスコミを通じたり、それから、このように傍聴された方の中から私の部屋を訪問してくれて、お聞かせいただいた状況でいえば、もう既に、先進的にというのか、そういう研修をして、それを受けた方の声などもお聞きしています。

 一般の現職教員の研修とは別の棟で、個室であったり、少人数が入るグループであったりして、それで特に、例えば学習指導要領についてどう考えるだとか、総合学習の内容をどのように組み立てようと思っているかというような、多くはペーパーによるものであって、その中では、新聞も十分には読めないような状況に置かれていて、ある方の声では、まるで牢獄のような気分がするとかいう声もあるんです。

 ある一人の女性が、この研修を受けていたときに、自分がテーマとして、今後の教育に人権教育が重要だ、しかし、そのときに日の丸・君が代における人権問題は別であると書いたら合格をいただいたと、何か笑えないような本当のような話もあっただけに、私は、指導が不適切な教員に対する研修であれば、先ほど大臣の言葉を私はおかりしましたが、人物評価重視でとおっしゃった部分のところでいえば、子供たちも人間関係がなかなかつくれないでいるとしたら、まだ若い世代の、教職員になりたての方であれば、子供との人間関係も十分につくれない状況も想定できます。

 その意味では、ペーパーによる努力よりは、しっかりと子供に対する指導の仕方を、板書の仕方も前に言っていらしたけれども、例えば教科書にマーカーを引いただけでも否定されたというのを読んだことがありますが、私は、子供たちに教科書にマーカーの使い方も指導しました。このことはとても重要です。私は、自分で読んだことを自分のものにするときのマーカーの意味は大変大きかったんです。

 その意味では、きのうの参考人の森田先生がおっしゃった、クラスの実態を聞いていないで、かつてよその学校ではベテランと言われた方がその教室に来たときに、子供や親との信頼関係がつくられなくて苦労した例は、もしあれだけを見れば不適格教員と評定されたんじゃないかという例でした。しかし、この方は人間関係をつくりさえすれば回復するというふうな例でもあっただけに、その意味では、本当に慎重な、そして内容のある研修をしてほしいということを私は思っています。

 実は、私が自分で高学年を持ったときの経験の中で一つ。クラスの中で問題のある子を見つけるのも割と難しいことです。あるとき、たくさんの子供たちが手を挙げていましたが、ふっと私が視線をその子にやったときに、その子の手が挙がっていたはずなのに、おりた瞬間、実はこの子の目線の先には別な子供の目線があって、その子の一にらみでこの子が手をおろしていた。別のところを見ると、そのようにおりていた。その後、一人ずつ一人ずつ私は当たって、そして本当にいろいろ見えてきて、芋づる式という言葉が合っているかどうかわかりませんけれども、その場合は一月かかって、子供たち、それから親も来ていただいて、解決をした経験があります。

 その意味では、もし、子供たちをそのときの一人か二人に絞って、それなりの対応をして、おうちへ帰ってからの交渉では、決してクラスの問題は解決しなかったと思っています。その意味でも、きのうの森田先生の、子供を手放すこと、切っていくことの問題点の方が大きいということを訴えて、次の質問に入りたいと思います。

 今回の教育改革国民会議の報告には、いじめ、不登校、それから学級崩壊等々深刻だということが書かれての十七の提言だったと思いますが、私は、あの十七の提言を一つ一つ実践したとして、本当に不登校の子供たちは学校に戻ってくるのだろうか、いじめはなくなるのだろうかと、そして、今回のこの法案にも疑問を持っています。

 その意味で、前にも大臣にお伺いしましたけれども、森田先生のおっしゃっていた、先ほども例に挙げられました川西市の例をおっしゃったんですが、関係性回復のプログラムをあの町ではつくっているそうです。その意味で、文部科学省としては、いじめ防止のためのプログラムとか、それから問題行動を起こす子供たちの出席停止の日数も、短時間でとおっしゃるのであれば、それなりのプログラムを検討されているのかどうかも含めて、恐れ入りますが短く、お聞かせください。

矢野政府参考人 まず、いじめについてのお尋ねでございましたけれども、いじめの問題につきましては、これまで、いじめは人間として絶対に許されないという認識を徹底させる指導を中心に取り組みを進めてまいってきているところでございます。このような学校における取り組みを支援するために、我が省といたしましては、心の教育の充実や、あるいはスクールカウンセラーの配置等の教育相談体制の充実等に努めてまいってきているところでございます。

 そこで、今回の法改正との関係でございますけれども、例えば、今回の法改正によりまして、社会奉仕体験活動や自然体験活動を初めさまざまな体験活動の充実が図られるような取り組みが、学校、家庭、地域社会一体となって進められることによりまして、いじめ問題を初め生徒指導上の諸問題の解決や、あるいは心の教育の問題の解決にも大きく寄与するものと考えているところでございます。

 それから、出席停止期間中の児童生徒に対する対応でございますが、このたびの改正法では、市町村教育委員会に、出席停止期間中の児童生徒に対し教育上必要な措置を行うことを義務づけているところでございまして、具体的には、例えば学級担任や生徒指導主事等の教職員によりまして、家庭や家庭以外の場所に赴き、学習課題を与えて指導したり、教育相談を行うこと、さらには、青少年教育施設におきまして自然体験等の体験活動に取り組むプログラムを組んで指導を行うといったようなことが今後行われるものと考えておるところでございます。

山内(惠)委員 同じようなお答えですので、プログラムをしっかりと示す努力をさせていただきたいということを申し上げて、私としては、次の質問に行きます。

 もう本当に最後のところですので、教育委員会の活性化につきまして一言です。

 地域に密着した初等教育ということを考えると、例えば条件整備が急がれると思います。中野区の教育委員会の準公選制を実践された俵萌子さんの言葉なんですけれども、何よりも住民参加が大事であり、公開されることの重要性をおっしゃっていた部分につきましては、少々、一歩前進した法案かと思いますが、それにしても、俵さんがおっしゃっているのは、教育委員会が地域の声を受けとめていい仕事をするためには予算の裏打ちが必要だと言っているんです。そして、例えば地方カリキュラムセンターをつくろうという声が上がったら、さあそれをやりましょうというふうに、自由裁量の予算があって初めてその仕事ができるということを言っています。

 本当に時間が十五分と限られていますので、このことは答弁はいただかないで、私の主張だけをお聞きいただければと思います。この法案は、予算関連ということではありませんけれども、やはり教育委員会に自由裁量の予算を保障することで地方の教育は活性化されるということを強く申し上げまして、きょうの私の質問を終わらせていただきます。

高市委員長 中西績介君。

中西委員 私は、先般から幾つかの問題について触れてまいりましたけれども、時間の制約で、十分な回答もいただけないまま今日に至っています。したがって、奉仕活動なりあるいは学区制の問題なり多くの問題がございますけれども、飛び入学問題、さらに一、二の問題について質問を申し上げたいと思います。

 飛び入学問題については、前回当委員会において私はこの飛び入学問題について質問をいたしましたけれども、討論すべき資料もなく、科学的な判断力を私たちはここで与えられなくてはならないのに、その実証性がありませんでした。さらにまた、学校教育全体に視点を当てて、飛び入学のような制度導入が、特に高等学校教育にいかなる影響を及ぼすかを十分検討した上で制度改革はされるべきであると私は主張してまいりました。しかし、政治主導による拙速は依然として続けられております。これは避けるべきであるし、十分納得のいく答えを得ることによって、この委員会も皆さんが本当に討論を果たしたということになるのではないかと思うんですけれども、そうしたことが時間制限の中で極めて残念でなりません。

 そこでお聞きしますが、飛び入学の拡大は、実証性も欠け、総合的検討も欠けている。特に学校体系全体、とりわけ後期中等教育と高等教育の接続関係を十分検討して、高等学校教育への影響を明らかにすべきだと、私はさらにお聞きをしようと思います。

 大臣、副大臣は、影響に関しては、高校と大学などの連携があれば問題は生じないと再三にわたって答弁を繰り返しています。これ以外にはありません。では、高校と大学、あるいは専門学校と連携できているのか、どれほどあるのか、どのようになされているのか、検証した結果はあるのかないのか、はっきりしていただきたいと思います。

 科目別履修生の受け入れによる連携が部分的に進んだところはあると思いますけれども、カリキュラム開発あるいは選抜のあり方等の連携が進んでいることは、私は余り聞いておりません。とすると、高校への影響は避けられないと私は断言したいと思いますが、いかがでしょう。お答えください。大臣、これは答えてくださいよ、大臣がずっと言ってきたんだから。

遠山国務大臣 飛び入学の問題につきましては、今委員御自身の御発言にもありましたように、受け入れ大学側がしっかりした体制を整えて、そして同時に高校との連携を深めていく、これが一番大事な要素であろうと思っております。それから、受け入れ大学がしっかりとみずからその対象を選び、そしてどれぐらいの規模でいくかということを十分に考えて、しかも受け入れ側がいろいろな、これまで説明していたような準備を整えた上で、そして公募をするわけですね。その後に高校側からの推薦を受けてやっていくということであります。

 私は、今回の法改正のねらうところのものは、何かいろいろな人たちが、あるいは数多くの生徒がこれに当てはまるというふうには考えられないのではないか。特にすぐれた資質ということは、万人も認めるような非常にすぐれた場合でありまして、そういう能力を持った人たちに道を開いていく、そのことのプラス面を重視しての制度でありまして、そのことが高校教育そのものを揺るがすであるとか、あるいは今の受験競争がさらに激化するであろうとかというふうなことには至らないと思います。

 午前中の御論議でもしばしば御説明してまいりましたように、その成否についてはきちんとフォローをし、その体制のとり方についてはいろいろなデータを公開していくというふうなこともありますし、また、全国的なレベルで、どういう形でやっていくかということについても協議をしていくというような、さまざまな手段をとりながら、にもかかわらず、やはり本当にすぐれた人が伸び伸びと、たった一年でありますけれども、上級学校に進学してその才能を伸ばせるようにする。そのこと自体を、これまで日本の教育でいろいろ批判されてまいりました画一性というものを打破していく一つの特色ある制度として取り上げているわけでございまして、私はそのように考えているところでございます。

中西委員 私の質問には何も答えていません。私たちがここでこの前から再三言っておるように、こういう制度を設けるためには、皆さんが本当に納得のいく資料なり、あるいは検証ができる実証性のあるものを出してくれということを言うんだけれども、今言うように、将来的なものだとか期待だとか、こういうことしか答えていないんですよ。ですから、本当に今改めてこれを設けるというならば、そうしたものを完全に出し切って、その上で私たちは論議をして、納得をするということがなければ、みんな消化不良ですよ。そう思いませんか。

 だから、この点を全く、先ほどから私が言っておるのは、連携できている、あるいは連携によって云々ということを言っておるから、連携があれば問題がないと言っているわけですから、ですから、そのために、連携があればと言うけれども、ではどれだけのものが今あって、そういう実証できるものがありますか、どの程度あるのか、どのようになされているのか、そして、さらにそれを深く検証しているかということを私は今聞いたわけだけれども、それに対する答えは何もない。

 そして、その後の、高校への影響は避けられないということについては一応の、少数だからどうだこうだということを言っているけれども、きのうの参考人の答弁の中にもありましたように、いろいろな今の進学体制の諸条件、問題点、この前から言っている学歴社会からすべての問題をちゃんと踏まえた上でどうするかというような、こうしたことが何も答えられていないじゃないですか。

 もう答えたと言うなら、それじゃ、私はもうそれでいいんです。というのは、何もなかった中でやられたということをここで実証する、今度は私の方から実証しますから。そのように確認しますよ。

高市委員長 中西委員にお伺いいたしますが、現在あります千葉大、名城大のケースの高校との連携の実態ということですね。これからやるものについては、高校との連携の実態というのは答弁のしようがないと考えるのですが。

中西委員 今委員長が言われました千葉大学の問題、それから委員長は、そういう実証すべきものはないと思われますが、こう言ったから、それをお受けして、ないというふうに判断をします。

 その上で、千葉大学問題について触れるとするならば、飛び入学を組み入れてから四年の経緯、まだ四年たっていませんね、三年何カ月かにしかなっていません。実施者としてよい結果を期待できるような報告は、私はあったと推察をします。そのことを正式に我々は受けていない。皆さんお受けになっていないと思いますよ。ただ私が漏れ聞くところでは、千葉大学でもそうそう軽々な結論は出せないと聞いています。この制度の実証性が乏しいので公表できないから、皆さんにそれを全部配っていないわけでしょう。

 私は、もう一つ千葉大学の問題で、もう時間がありませんから重ねて聞いておきますけれども、そういうことを考えたときに、こういう状況の中であるのに、このために大学に対して、施設の問題あるいは人的な配置の問題等を含めまして、財政的なものを含んで措置をしておるのかどうか、こうした点あたりを皆さんにはっきりさせて、どれだけの財政的措置が要るんだとかいろいろなものが皆さんに明定された中で、明確に示された中で、こうした論議というのを積み重ねていくことが私は生産的だと思いますよ。そうしなきゃ、この前から言っているように、抽象的なことだけでやったんではどうすることもできませんから。

 一点目の問題については、ないということを確認する。その上で、千葉大学については今お聞きしたことをお答えください。時間がありませんから。

岸田副大臣 まず一点目の、高校と大学の連携につきまして、過去を検証してどうか、その検証の実績があるかということでありますが、現在、例えば高校生が大学の公開講座や科目等履修生として授業を受講した場合に、その学習を高校の単位として認定すること、あるいは大学教員による高校での授業の実施、こういった連携は行われているわけであります。

 また、カリキュラムの開発につきましても、千葉大学のケースを見ましても、高校と連携し、数学、物理以外の分野も含め、早期高等教育に係る諸問題について調査研究を行うことをやっておりますし、また、研究開発学校として大学教員による高校生の指導等の実施、こうした実践的な調査研究を行った実績があるわけであります。

 また、選抜のあり方につきましても、高校生とコミュニケーションを重視した事前の面接を行ったりするアドミッションオフィス入試や、あるいは大学入試者選抜の試験問題作成に関して高校関係者の意見交換の実施、こうした取り組みも実際もうやっているわけであります。

 こうした実績を踏まえまして、今回、高校と大学の連携、こういったことを行うことによってその成果が上がるということを申し上げているところであります。

 そして、千葉大学の四年間の実績でありますが、これはたびたび申し上げておりますので繰り返しませんが、問題は生じていない、良好な結果であるというふうに受けとめております。

 また、予算的にどうかという御質問がございました。千葉大学におきまして、平成十年度に飛び入学を始めるに当たりまして、学内の関係教官により先進科学センターというものを組織しております。そして、平成十一年に、同センターを発展させ、学内共同教育研究施設として先進科学教育センターというのを設置しております。この運営費は約一千万だと聞いておりますが、この一千万は学内で工面して対応をしていると聞いております。

中西委員 今のお答えをずっと聞いておりまして、財政的な問題は別にいたしまして、前段の部分で言ったことは、今まで言ったことと全然変わりないんですよ。それほどあなたたちが自信を持って言うんだったら、何でそのことを出しませんか、皆さんに。勝手に皆さんがそれを判断して、そこでそのように言うだけじゃないですか。だから、私たちにそうした資料をみんな出しなさいと言っているんだ。千葉大学でそうしたことがあるというのならば、そのまとめられたものがあるならこっちに出してくれということを私は言っているんです。そして、私たちも含んで、一緒になって討論をするときに初めて合意が求められるんじゃないでしょうか。一方的に言ったのでは、合意を求めるということはできません。この点を明らかにしておかないと、いかに拙速主義であるか、勝手に決めておるかということを、そのことが実証するわけですから。

 少なくとも私が提案するという場合には、そうした資料から全部提起をする。今までは、数値的なものからみんな提起をしたはずなんですよ。だから、中央教育審議会では慎重にやるということで積み重ねてきてやったものを、今度は一挙に、教育改革国民会議、いわゆる懇談会から報告が出れば、それによって強引にこうして短期間の間にやってしまう。私は、今回の場合は特にということをやはりここで皆さんで確認をする必要があると思うのです。その意味で、私はこのことをあえてまた聞いたわけであります。しかし、残念ながらそれは出てきませんでした。

 ところが、大学に対して財政的なものと言うけれども、これが全くない中でこうしたことをまたやるということになりますと、では、大学の研究費だとか人的配置というのは十分だということをその国立千葉大学は立証しておるということになるわけですね。私はそう確認しますよ。

 ですから、これから国立大学の予算については、この種問題について、たとえ制度的なものを取り入れても、全くそれをやらないということの立証です。今、答弁はそうなっています。ですから、二つのことは大体そういうことで終わります。

 そして、連携問題について、少なくとも各高等学校あるいは大学、行政、そういうところの連携、時間がありませんからこれは要望だけを私はいたしておきますが、大学ばかりでなくて、専修学校、専門学校課程を加えまして、飛び入学だけでなくて、他のことも含んで、総合的な連携というものがなければこうした問題を取り上げてやるべきでないという私の意見です。

 ところが、今回の場合にはそうしたことがどのように我々に提示されたかというと、それが提示されていない。ただ、千葉大学の報告はよいという報告ですという、このことしか出ておりませんね。そして、努力はしておると。そういうことでは、私たちはここで、はい、そうですかということで引き下がるわけにはいきません。

 ですから、中央における連携された継承性というか、総合的に連携されたすべての教育体系の中におけるあり方をやはり徹底的に追求した上でこうしたものをやはりやるべきだということになっておかないと、私は不十分だと思っておるからであります。

 このようにあれしてまいりますと、実証性に欠けるということが明らかになりました。それから、教育体系全体におけるそうした問題、千葉大学問題一つだって出していないわけですから、こうした問題についても出ておらない。いかに拙速主義であり、この種問題についてここで討論をせよといっても、私たちが本格的にできる内容でなかったということを確認して、次に移ります。

 そこで、指導の不適切な教員の転職についてお聞きをしたいと思いますけれども、不適切な教員とは、この前から三点挙げられました。もうこれについては触れません。こういう判定の基準、これまで論議をされてきました。きょうも先ほどもやっておられましたけれども、聞いておりますと、大臣の答弁も三回も変わった。基準を持つ、そして三つの例を挙げ、そして今度は都道府県の教諭、こういうふうになっているわけでしょう。ということになりますと、私は、それが非常に困難だということを意味しておると思います。

 そこで、教員資格を持つわけですから、第一に、養成機関はどのようにされたかということが問題になる。それから、どういう方法でもって採用されたかということです。そういう不適切な教員、あなたたちからいうと、あるいは国民的な世論としてそういうものがあるじゃないかというようなことを言うわけでありますけれども、そういうところが全然解明されないで、このような原因がどこにあるかということの検討をされたかどうかが一つ。

 それからさらに、何を基準として、だれが、どこで、どのように判断をするかということがこの何日間かにわたってやってこられましたけれども、私の経験からすると、このような教員に対して、現場の教師集団の中で解消するという体制が最も重要ではないかということを、今までの経験の中から私は考えています。なぜ私がこのようなことを言うかといいますと、現場で起こって、我々は教師ですから、現場の教師、仲間が、今度は仲間のそうした教師を研修、研さんをすることによって、皆さんから指摘をされるようなことを克服できるということができないということが一番私は残念です。しかし、それをするためには何が必要かということを考えなくてはならぬと思います。

 私もこうして処分をされた一人ですから、経験を持っています。PTAの会長が校長に言い、そして県教委にそのことを上申して、そのために配置転換させられた経験を持っています。ところが、その人がだめだと言ったことを私たちがやっておったために、また訂正しに行ったんですよ。

 そのように、どこで、だれが、どのように判断をするかということが物すごく大事です。例えば、県立高校の場合には離れておるわけでしょう。離れておるのにどうするかということになるんです。では、そういう者を、査察官か何か何十人もずっと県下に配置をするのか。ところが、校長のリーダーシップでそうしたことを具申ができるということを言っているわけでしょう。では、校長に本当にそうした能力があるかどうか。

 私は、そうしたことを考えたときに、今皆さんが示されておるこうした問題については、例えば本当にあったときに、その人の環境を変えて、今度は、隣の学校なりどこかの学校とお互い話し合って、その教師をもう一遍包み直そうという話をして、回復した人たちの経験を私は持っていますよ。ですから、そういう手だてをするためには、何としても支援の体制です。環境です。ゆとりが必要だし、本当の研修、研さんをするための余裕ですね。それから、勤務時間の問題から、職員会議の構成でも自由に発言ができるとか、そういうような諸条件が全部そろっていくということが、今現場で一番必要じゃないでしょうか。そうしないと、子供同士で遊んだことのない人たちがもしかするとなっているかもしれません。そうすると、一遍に不適格だということになるんですよ。

 そういう人たち、能力がありながらその能力を発揮できない条件に置かれておる人たちをどうするか、こうしたことをやはり本格的に考えてやれる体制をつくっていかないと、この問題についてはだめだと私は思っています。この点についてどう思いますか。

岸田副大臣 幾つか御指摘をいただきましたが、まず最初に、養成、採用、研修、すべての段階で教員の資質向上に努めなければいけないという点、それはそのとおりであると思います。そして、その上で、こうした現場での問題を研修等でみずから吸収する努力をするべきではないか。これは、まず一義的には、研修等でこうした現場で解決していく努力をするということ、これもそのとおりだというふうに思います。

 しかし、今回は、その指導能力等におきまして、研修等を通じても改善の見込みがない場合、こうした場合を想定してこの手続を決めているわけであります。どこが判断するかという御質問もございましたが、任命権者である都道府県教育委員会が教育委員会規則で定めた手続に従い判断する、都道府県教育委員会が判断することとなっております。

 そして、その際に、個々の教員が指導力に欠け、児童生徒への指導に支障を来している状況の把握は、校長の報告に基づき市町村教育委員会において行われ、そしてそれが都道府県教育委員会に上がってくるというのが通常のケースであるとは思いますが、その実態の把握につきましては、直接、関係者あるいは保護者等からこうした情報が寄せられる、こういったケースも考えられるのではないかというふうに思います。

 また、校長等の判断が適切かどうかという御指摘もございました。日々の授業状況等の把握、あるいはさまざまな研修や指導が行われている状況、これはまずもって校長においてしっかりと把握されていなければいけないというふうには思いますが、先ほど申しました任命権者である都道府県教育委員会の判断は、当該教員のこれまでの児童生徒に対する指導の状況や問題点、あるいは校長や市町村教育委員会による指導や研修の状況、さらには校長の意見、そしてさらには本人の弁明、こうした資料に基づいて行われるものでありますから、ひとり校長のみの判断でその措置が行われるというものではないというふうに思っております。

 さらには、繰り返しませんが、先ほど申し上げました規則の中にもさまざまな手続を設けております。こうした手続を踏むことによりましても、校長の意見のみによって判断されるということにはならないと考えております。

中西委員 だから、私は余り私的なことを出したくなかったけれども、私自身の問題を出したのも、校長だけではないんですよ。そして、訂正をするのは、何かあったらその人たちが、こういう教員もおるといって推奨した、そういう仕事をやっておったのをずっと調べて回ったら、強制配転をさせられた人たちがみんなやっておったというのですね。

 だから、一番の問題は、私はあえて言いますけれども、皆さんは日教組だとか教育団体というものに対して物すごくいろいろ内容的に持っておられるようでありますけれども、私たちの経験からすると、当初組合を脱退したのは、女性問題、金問題、授業ができない人、挙げてそういう問題を持った人たちが全部組合を脱退したんですよ。県教委に弱みを持っている人たちが全部そうしたんですよ。

 その内容はあなたたちは御存じであるかどうか知りませんけれども、本当に真摯にやっておられる人ほど、この前も言っておられましたけれども、こういうことをやっておるなんというようなことをけばけばしく皆さんに披露したりなんかするということはありません。同僚関係の中で、研さん、研修するときにはそうしたことをお互いに言い合う。もうけんけんがくがくでやるんですから。ですから、やはりそういうことをやれる体制を、環境をつくるということが最も大事だと私は思うんですね。

 残念ながら時間が参ったようでありますけれども、したがって、文部科学省の教育行政に対する反省というのをこの前ずっとあれしましたけれども、読み上げられましたのは、遠山大臣からありましたのは、この中の一番上に書いてある、基本方針の中の上の方に書いてあるやつを回答いただきました。しかし、このことは、本当にそうであるかどうか。

 先ほどから申し上げるように、むしろ、文部科学省が指導助言という名のもとに押しつけ、強制をしてきたじゃありませんか。嫌というほど我々は経験してきていますよ。ですから、画一化というけれども、創造的な、地域、学校の教育計画をむしろ抑圧し、枠の中にはめ込んだのはだれかということを反省せぬと、再びその反省なしにやっておったのでは、これに書かれておるようなことだけでなく原因はほかにあるようなことも書いています。

 ですから、ここいらをぴしっと整理してかからないと、これから後、必ずといっていいほど昔にまた返る体制、それが、今度の三法案の中に出ておる奉仕の義務的な――追及すると義務という言葉は抜きますけれども、なくすけれども、そういう格好でやられるということになりますと、指導助言ということがどれだけ強制されたかということ、私は、これが本当に納得のいくものにならぬ限りは、だめです。昔返りにならぬことを期待して、やめます。

 終わります。

高市委員長 松浪健四郎君。

松浪委員 保守党の松浪健四郎でございます。

 最後の質問者に立たせていただくことを大変光栄に存じます。

 新たなる国づくりを担う人間性豊かで個性や創造性に富む日本人の育成を目指し、二十一世紀の教育改革を進めていくためには、学校教育、社会教育及び地方教育行政の各般にわたる改革を進めることが必要であり、この三法が出された、こういうふうにとらえておるものでございます。

 この三法の改正案でいろいろと議論されてまいりましたけれども、大体問題点は幾つかに集約されてきた、私はこういうふうに思います。質問を聞いておりますと、先生、教師経験者がいらっしゃって、自分の経験を述べられる。そして、それは我々にとっては有益なものでありましたけれども、私も教員の経験者でありますので、おのれの教員経験を通じて質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。

 そこで、まず最初に、教育改革国民会議の最終報告の、「奉仕活動を全員が行うようにする」、「問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない」、これらの提言を受けたものだ、こういうふうに思います。

 教育改革国民会議の最終報告は、もとよりその審議過程においても、子どもの権利条約や憲法、教育基本法などが保障している子供の権利の視点や、それに対する国家や大人の責務という視点が欠落しておる、こういう批判がございます。そして、奉仕活動の強制は任意参加を前提とするボランティア活動とは異質なものであって、子供の人権の視点にかんがみてもさまざまな問題がある、こういう批判が続くわけであります。

 しかし、感性豊かな、創造力豊かな子供をつくるということになりますと、私は、ある程度の強制というものが当然出てくるのではないのか。強制なくして教育ができるんだろうか。そして、教育で一番大切なことは動機づけではないのか。動機づけを強制なくしてできるんだろうか。私は疑問でしようがありません。

 実は、この委員会に私自身が教えた学生が委員としております。そして、指導者として、私は自分が教えた学生が国会議員になったということを大変誇りに思うものでありますが、この学生を指導するときに、私は大変な強制を行いました。授業を絶対さぼってはならない、そしてゼミをきちんとやれ、さらには教員になるために教職課程もきちんととれ、そして、オリンピックを目指し、世界一のレスラーとなるべく、早朝からの練習、そして午後の練習、絶対にサボってはならない。厳しい強制であった、こう思います。そして、私は、五十数名の部員を抱えて、そのように指導してまいりました。そのうちの一人が立派に教職免許を取り、高校の教員になりました。そして、オリンピック選手にもなりました。そして、石川一区から、国民の皆様から御支援をいただいて、国会議員になることができたわけであります。

 私は、子供の人権というものを、当然のことながら踏みにじってはならない、こう思いますけれども、ここで言う人権と大分話が違うんじゃないのか、そういう思いを持つものでありますが、それらについてお尋ねしたいと思います。

岸田副大臣 先生のお話、大変興味深く聞かせていただきました。

 まず、ポイントとしまして、奉仕活動とボランティア活動の違い、あるいは強制かどうか、学校教育におけるこうした活動の扱い、こんなところがポイントかなというふうに考えます。

 そして、まず奉仕活動とボランティア活動の共通点でありますが、労働の対価を目的とせず、自分の時間を提供し、他人や社会のために役立つことを行うという点が共通点として挙げられます。

 一方、相違点としましては、ボランティア活動は個人の自発的意思に基づく活動であるのに対して、奉仕活動は、自発的意思に基づく活動はもとより、非自発的活動も含まれる、これが相違点だというふうに思います。

 そして、この奉仕体験活動、学校教育あるいは社会教育においてこれを実践していくべく、こうした支援体制をつくらなければいけないということでありますが、これはあくまでも強制ではないわけであります。しかし、学校教育におきまして、学校教育における指導の中で、こうしたものは生徒に適切に提供されるべきものだというふうに思っております。強制ではありませんが、学校教育における指導の中で、こういったものは大切にされていかなければいけない、そのように認識しております。

松浪委員 副大臣の答弁としては非常によかったと思いますが、私は、強制だと思っています。そして、強制した方がいいんです。子供たちは、達成感を得るということは、ある程度の強制がなければそれはおのれのものにならない、これは、教育の現場にいた者であればよくわかるはずです。なぜ登山をするのか、そのことを考えればはっきりする、こう思います。

 次の問題に移りますが、高校の通学区撤廃や高校から大学への飛び入学の拡大は、受験競争をより激しくさせ、高校生の苦しみをさらに広げるものですと、こういう批判があります。何を考えているんだろうかと私は思っております。

 飛び入学を全員にさせるんじゃないんです。能力のある者、これを飛び入学させる。また、本人がしたいと言うからさせる。また、受け入れる側は受け入れると言うからするんです。それで、どうのこうの、さらには千葉大学、名城大学の資料がない、どうのこうの。教育の結論なんというのは、四年や五年で出るものじゃありません。随分かかるものなんです。私も、馳浩を教えたとき、まさか国会議員にまで成長するとは思いませんでしたよ。教育とはそういうものなんです。ですから、改革しようとする姿勢を持つものであるならば、これはいいんじゃないかと思えば、勇気を持ってやっていくべきだ。

 そして、高校生の苦しみをさらに広げる。私も高等学校で三年生活をしましたけれども、ほとんど勉強ができませんでした。嫌いだから、やらないんです。ちっとも苦しいとは思いませんでしたよ。好きなことがあって、一生懸命やっていたからです。

 だから、好きなことができる学校を自分でチョイスすることができる、余計いいんじゃないのか、私はこういうふうに思っておりますけれども、受験戦争をより激しくさせ、高校生の苦しみをさらに広げるものだ、こういうふうに思われていますか。

岸田副大臣 通学区域の撤廃あるいは飛び入学というものについての御質問でありました。

 まず、通学区域の撤廃につきましては、あくまでもその地域の実情を反映して、各教育委員会の判断にゆだねるというのが趣旨であります。学生の選択の幅を広げる等々、さまざまな要素を勘案して、各教育委員会の判断にゆだねるというのがこの改正の趣旨であります。

 そして、飛び入学につきましても、先生御指摘ありましたように、これはあくまでも、特にすぐれた資質を有する者に対してこうしたチャンスを与えるという例外的な措置でありまして、一般の受験で争ったりするものではないというふうに理解しております。

 ですから、この通学区域の撤廃につきましても、飛び入学につきましても、受験戦争の悪化につながるというようには考えておりません。過度の受験戦争の問題につきましては、別途、その選択方法の多様化ですとか評価尺度の多元化、さらには個性ある学校づくり、こういった形の中でこうした弊害を除いていくべきものだと考えております。

松浪委員 指導力不足教員の免職、転職は、教職員を萎縮させ、創造的な取り組みを学校から奪うものです、こう書いた投書といいますか抗議書といいますか、何々組合、××組合から、わんさと私のところに、朝から夜まで、ファクス、はがき、手紙等寄せられるんですが、誤字脱字が多くて非常に読みにくい。特に、私の「浪」を間違う人が多くて、この人たちが人の名前を間違う、これが先生の現実かなと思ってがっかりすることがあります。そして、丁寧に書いてくれているんです。国会議員たる者は、議場で水をまく、真摯に反省し――いや、反省はしているんです、議員として活動せい。

 私は、大学教授を辞して選挙に臨み、国民の審判を受けました。しかし、大学教授としての仕事に、また研究に大変な未練がありました。もっとやりたい、おのれの研究はまだまだ終結していない、こういう思いでありましたけれども、国政への意欲が大きいものですから、辞することになりました。しかし、大学の学生たちは私に、ああ、松浪がおらぬようになってよかった、そういう学生もいたでしょうけれども、はるかに多くの学生は、涙して私との別れを悲しんでくれたのであります。

 学校の先生が上手に教えることができない、だから転職だ、ありがたい制度だなと。はっきり言えば首じゃないですか。それを、転職させてくれるという、こんな生ぬるいことでええのか、国民が許してくれるのか、そういう不満が私にはありますけれども、まあいろいろな問題がある。だから、こういう形にする。そんな制度があるから萎縮するような先生で本当にきちんとした教育ができるんだろうか、私は心配であります。

 そして、このように私のところに、これもファクスでありますけれども、このような抗議が一様に寄せられることに、これはもっともっと大きな改革をしなければいけないと。

 野党の皆さんは、この改革は単なる対症療法じゃないかといって不満を述べられておりますけれども、対症療法をしなければならないほど今の教育が病んでいるということなんですよ。だから、まず対症療法でもいいから改革をしていく、私はこのことは非常に大切である、こういうふうに思います。

 いずれにいたしましても、この改革は教職員を萎縮させ、創造的な取り組みを学校から奪うものだ、そういうふうに思われているんですか。

矢野政府参考人 教員の職務は児童生徒の人格形成に重大な影響を与えるものでございまして、指導が不適切な教員への対応は適切な教育を確保する上で重要な課題でありますことから、このたびの法改正におきまして、このような教員について教員以外の職に転職させることができる道を広げることとしたものでございます。

 今回の改正法は、本措置が公正かつ適正に運営されますように、対象となる教員を、児童生徒に対する指導が不適切であること、また研修等の措置が講じられてもなお適切に指導を行うことができないことのいずれの要件にも該当する者に限定をいたしておりますとともに、要件に該当するかどうかを判断するための手続につきましては、教育委員会規則で定めることといたしているところでございます。

 本法律案は、あくまでも児童生徒に対する適切な教育を確保することをねらいとするものでございまして、教員を萎縮させるものではないと考えておるところでございます。

松浪委員 そのとおりだ、こういうふうに私は思います。

 そして、もう一つ大きな批判に、今必要なのは、長年の競争主義、管理主義教育を改めるための国民的論議だ、こうおっしゃるんですね。

 競争主義、管理主義教育だった、そう思うのは自由であります。しかし、はっきりしておることは、私たちは自由主義社会を守り、自由主義社会の中できちんと教育をしてきたことではないか。この自由を我々は守る、当たり前のことであります。

 そして、今回の改正で喜ばしいことは、一芸の評価、万能を平等に評価するということだと私は思っております。それを、万能を平等に評価しないで、総花的にすべての科目において子供ができなきゃいけない。そういうふうな子供をつくるよりも、感性に富んだ、想像力の豊かな子供をつくる。この改革をしていかなければ実のある教育にはならない、こういうふうに私は考えております。

 私は、一九六八年、六九年と、アメリカのイースタンミシガン・ユニバーシティーという大学で学びました。すべて奨学金でありました。一ドル三百六十円、大学卒の初任給が三万円弱の時代であります。

 何が評価されたのかといえば、スポーツの技術であります。万能を平等に評価してくれるアメリカの寛大さ、懐の深さ、私は感銘を受けました。そして、いろいろなことを学びました。つまり、教育というものは、一つのことを教えているように見えるけれどもいろいろなことを子供たちに教えておる、そういうことだと私は認識します。

 そこで、最後にお尋ねしますが、繰り返しますけれども、政府は、今までの教育というのは競争主義、管理主義教育であった、そういうふうな思いをお持ちですか、それとも、そうでなかったか。お尋ねしたいと思います。

遠山国務大臣 これまでの文部科学行政につきまして、私は、それぞれの時点において、その時点の担当者がよりよい教育を目指していろいろ手を尽くしてまいったと考えております。

 今松浪委員からのお話、ずっと伺っておりまして、学校の現場において本当に必要なのは、きちんとした指導力を持つ教師であります。学校教育の成否は教師にかかっております。その教師が、全人格的な価値を持って子供に対し強い指導力を発揮して、伸びるべきものは伸ばし、そして一人一人の能力が本当の発展を遂げていくように導いていく、それが非常に大事だと思います。

 一人一人の教師の信念と、そしていかに生きるかという哲学があってこそ本当にいい教育ができると思っておりまして、私は、今回の改正が決して、場当たり的なもの、あるいはおっしゃるような対症療法的なものではなくて、そういう目的に照らして、とるべきことを、あるいは措置すべきことを一斉にやろうとする、そういう改正案だと考えておりまして、委員の御指摘を聞きながら大変心強く思った次第でございます。

松浪委員 大臣の答弁に感激をさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高市委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高市委員長 引き続き、各案中、内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案及び社会教育法の一部を改正する法律案の両案について議事を進めます。

 この際、両案に対し、平野博文君外一名から、それぞれ修正案が提出されております。

 提出者から両修正案の趣旨の説明を求めます。平野博文君。

    ―――――――――――――

 学校教育法の一部を改正する法律案に対する修正案

 社会教育法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平野委員 ただいま議題となりました両修正案につきまして、順次その趣旨を御説明申し上げます。

 修正案はお手元に配付のとおりでございますが、まず、学校教育法の一部を改正する法律案に対する修正案について申し上げます。

 今回の改正案では、小中高等学校等において社会奉仕体験活動等の体験活動を行うことを定めておりますが、児童生徒の社会性や豊かな人間性をはぐくむ観点から、ボランティア活動などの児童生徒の自主的、自発的な活動を重視することが必要でございますので、「社会奉仕体験活動」を「ボランティア活動など社会奉仕体験活動」に改めるものであります。

 また、飛び入学制度につきましては、短期大学を含むすべての大学で導入できることとなっておりますが、特にすぐれた資質を有する者の育成を図り、制度を適正に運用するために、飛び入学をさせることができる大学を、当該大学の定める分野に関する教育研究を行う大学院が置かれており、かつ、当該分野における特にすぐれた資質を有する者の育成を図るのにふさわしい教育研究上の実績及び指導体制を有する大学に限定するものであります。

 次に、社会教育法の一部を改正する法律案に対する修正案について申し上げます。

 今回の改正案では、教育委員会の事務に社会奉仕体験活動等に関する事務を追加することを定めておりますが、青少年の自主性及び主体性の尊重、豊かな人間性の育成の観点から、社会奉仕体験活動の趣旨をより明らかにするため、「社会奉仕体験活動」を「ボランティア活動など社会奉仕体験活動」に改めることを内容とするものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

 以上でございます。

高市委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

高市委員長 これより討論に入ります。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、学校教育法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案、社会教育法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案の各案及び両修正案を一括して討論に付します。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木恒夫君。

鈴木(恒)委員 私は、自由民主党、公明党、保守党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、学校教育法の一部を改正する法律案、社会教育法の一部を改正する法律案及びただいま提出いたされました両修正案につきまして、両修正案及び両修正部分を除く原案に賛成の意を表するものであります。

 新たなる国づくりを担う、人間性豊かで個性や創造性に富む日本人の育成を目指し、二十一世紀の教育改革を進めていくためには、学校教育、社会教育及び地方教育行政の各般にわたる改革を進めることが必要でありまして、このたびの政府案は、それぞれについて今日必要な改正を行うものであります。

 先ほど、松浪議員に対する大臣の答弁をお聞きしておりまして、この改正の基本的な考え方を、大臣はとうとうと述べられました。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 具体的に申し上げれば、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案は、教育行政に対する住民の関心や要望の多様化等を踏まえて、保護者や地域住民の多様な意向をより一層的確に教育行政に反映させ、教育委員会の活性化を図るとともに、校長のリーダーシップの発揮の観点から所要の措置を講じ、また、指導が不適切な教員の他職種への転職を円滑にする観点から所要の措置を講ずるほか、規制緩和を一層進めるものでありまして、時宜を得た適切なものと考えます。

 また、学校教育法の一部を改正する法律案は、学校教育における社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動を促進するとともに、大学における飛び入学の促進等のための所要の改正を行い、また、問題行動への適切な対応を図るため、出席停止制度の改善などを行うものでありまして、妥当なものと考えます。

 さらに、社会教育法の一部を改正する法律案は、家庭教育の向上のための社会教育行政における体制の整備を図るとともに、社会教育分野における社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の促進を図るための所要の改正等を行うものでありまして、これも妥当なものと考えます。

 また、学校教育法の一部を改正する法律案及び社会教育法の一部を改正する法律案に対する修正につきましても、体験活動の充実や飛び入学制度の改善に係る部分について、その趣旨を明確にするとともに、制度の円滑な定着及び適切な運用を確保するという観点から、これを妥当なものと考えるものであります。

 以上の理由により、私は、両修正案及び両修正部分を除く原案に賛成するものであります。

 以上であります。(拍手)

高市委員長 次に、藤村修君。

藤村委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、討論を行います。

 教育関連三法律改正案について、本委員会において審議してきたところ、幾つかの問題点が浮き彫りになってまいりました。

 第一に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案においては、指導が不適切な教員の転職に関しての問題です。

 審議の中で、指導が不適切な教員として、例えば、教科に関する専門的知識、技術の不足や児童生徒の質問を受け付けない、児童生徒とのコミュニケーションをとらないなど、普通の常識ではほとんど考えにくい教員に対する、おおむね例外的な、特別な場合においての措置と理解をいたしました。

 また、必要な手続等については、都道府県教育委員会で定めることとして、文部科学省は、施行通知において、判定委員会設置のこと、精神性疾患等の場合の精神科医の意見聴取、校長や当該教員からの意見聴取などを明記することなどが確認されました。さらに、恣意的な法の適用がないことなども繰り返し確認することとなり、私たちは、児童生徒や保護者の側からのさまざまな訴えも聴取した上で、民主党・無所属クラブとしては、この改正について、厳格な法の適用、運用を監視していくことを申し添えて、是認することといたしました。

 第二に、公立高等学校の通学区域に係る規定の削除の問題です。

 民主党は、教育の徹底した地方分権を主張する立場から、通学区域についても基本的には都道府県教育委員会が決定することに賛成です。ただし、審議の中では、これが全県一区になった場合の問題点がさまざま議論されました。

 民主党としては、地方分権を一層推進する立場から、通学区域については、地域の事情を十分に踏まえて高校の通学区域が設定されることが必要であるとの考えを表明した上で、さらに、都道府県教育委員会には、通学区域の設定に当たっては受験競争の激化や学校間格差の拡大が起こらないように十分に慎重に取り組んでいただくことを要望して、同改正を是認することといたしました。

 第三に、学校教育法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 まず、社会奉仕体験活動の導入についてさまざまな議論がありました。民主党は、学校において体験活動の導入とそれらの促進について基本的に賛成であります。しかし、社会奉仕などという少々古めかしい言葉を、今さらながら法改正で使用することに多数の反対意見もありました。

 奉仕とは献身的に国家社会のために尽くすことであり、これらの意識はボランティア活動などによって十分に培われて後に醸成されるものではないかと考えます。学校教育段階においては、まず、ボランティア活動体験を通じて他者のために役に立つことの喜びや大切さを学ぶことから始めるべきであるとの認識から、今回、修正案を提出いたしました。民主党の修正案が理解を得られるならば、修正の上で、体験活動の導入に賛成であります。

 第四に、児童生徒の問題行動への対応で、今回出席停止を法改正で取り上げた問題です。

 現在も、性行不良で他の児童生徒の教育に妨げがあると認める者については出席停止を命ずることができることとなっており、これを改正案では性行不良の内容について新たに法で規定することとして明確になった点は評価できるものと考えています。

 今後の課題としては、出席停止措置は児童生徒の教育を受ける権利の制限となることの重要性にかんがみ、この措置の運用に当たっては、本人や保護者に対しての十分な説明が必要であり、かつ、教育上の配慮として児童生徒の弁明の機会を確保していくことや、出席停止となった児童生徒に対する教育的な支援措置が十分に行える条件整備が必要であるものと考えています。

 第五に、飛び入学問題です。

 今回の政府提出の改正案においては、飛び入学について、千葉大学等での試験的取り組みの中で、数学、物理に限定されている対象分野をあらゆる分野で可能とし、飛び入学を受け入れる大学についても限定を外して、短期大学でもよろしいとすることは、まことに拙速であり、無定見の感をぬぐえないと判断いたしました。

 そこで、民主党は、当該分野に関する教育研究が行われている大学院があることなどに限定して、短大を除くとともに、分野においても受け入れる大学を限定するという一定の制限の中で認めることを提案しました。飛び入学に道を開くとしたら、本修正案は現時点では最低条件と考え、修正案が可決されることを条件として飛び入学を認めることが民主党の見識でございます。

 第六に、社会教育法の一部を改正する法律案については、学校教育法改正内容と同様に、社会奉仕体験活動の部分について民主党の修正が理解を得られるならば、修正部分を除く原案については賛成であります。

 以上、六つの問題点について、私ども会派の考え方を示した上で、民主党・無所属クラブとしては、二法律案に対する修正案に賛成、修正部分を除く三法律案の原案に賛成の意思を表明し、討論を終わります。

 以上でございます。(拍手)

高市委員長 次に、都築譲君。

都築委員 私は、自由党を代表して、政府提案の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、学校教育法の一部を改正する法律案及び社会教育法の一部を改正する法律案並びに民主党提案の二修正案に対して、それぞれ反対の立場から討論を行います。

 現在、青少年の異様な犯罪や学級崩壊などが大きな社会問題になっており、他方、大学生の学力低下や創造的人材の育成の必要性など、教育のあり方について各界でさまざまな議論が沸き起こっております。

 この問題の根幹は、戦後の日本が経済発展を目標に掲げて突き進んでいた陰で、利己主義や金銭万能主義がはびこり、国家や社会の最小単位である家庭や地域共同体が崩壊し、人間としてのあり方や社会生活の基本的ルールを学ぶための場所や機会がなくなり、日本人の精神構造が誤った方向に進みつつあること、また、学校教育の中でも、産業の要請する人材を供給するための受験教育の画一的な枠組みに馴致する風潮が蔓延しつつあることに大きな原因があります。

 これを解決するには、日本人の精神的荒廃を立て直す具体的施策を早急に実施する必要があります。そのためには、本来であれば、まず教育基本法を抜本的に改正して、今後の教育のあり方の基本的指針を明確にした上で、その指針に従い、各種の教育関連法案を改正するべきであったと存じます。

 しかし、政府は、教育基本法の改正などの抜本的な改革には目をつぶったまま、個別法の改正などによる小手先の手法で事を済ませようとしているのであります。これらは、あくまでも技術的な改正にしかすぎず、この改正案によって今の教育問題が解決されることは絶対にあり得ないと考えます。

 私ども自由党は、日本人の精神的荒廃を回復するために、腹を据えて本物の改革を実施することを訴えており、日本人の心と誇りを取り戻す、自己中心的社会から規律ある自由に基づく開かれた社会に改めることを主張しております。その観点からも、教育のあり方及び日本人のあり方がどうあるべきかという問題に全く答えていない今回の改正案は、改革の名に値しないと断ぜざるを得ません。

 総論的に、一つは、小手先の場当たり的な、対症療法的な内容でありますし、また、学習指導要領や通達事項を法律化したものにすぎず、改革の名に値しないものと言えます。

 具体的に申し上げれば、社会奉仕体験、自然体験活動については、既に要領にあるものの充実さえできない現状で、法律化しても、効果がどこまで期待できるか不分明であります。また、単発的、形式的、短期の取り組みは、子供や教師の負担にこそなれ、効果は疑問であります。

 飛び入学については、個性、才能を見出すのではなく、逆に、今の教育が個性や能力を押しつぶす画一的、受験偏重の管理教育であることを浮き彫りにさせましたが、その抜本改革には必ずしもならないと考えます。

 出席停止の問題につきましても、現有の学校教育法の条文と通達で対応しているものであり、むしろ、本当の問題である、家庭や地域あるいは諸機関と学校との連携に焦点を当てた取り組みをもっと進めるべきであると考えます。

 教育委員会活性化についても、文部科学省や事務局主導の改革で地方が活性化することなどあり得ないと考えており、各委員が住民に対し本当に責任を果たす改革が必要であると考えます。

 最後に、不適切教員の問題につきましても、今日の教員が直面しているさまざまな課題を放置したままであり、むしろ、教職員の専門化や分業化などその負担を軽減する方途や、あるいは公務員制度の抜本的改革にまで踏み込むべきであると考えております。

 以上、政府提案の法案について述べてまいりましたが、民主党提案の二修正案も、十分なものとは言えないものと考えております。

 よって、政府提案の三案並びに二修正案に対して反対であることを表明して、私の討論を終わります。(拍手)

高市委員長 次に、児玉健次君。

児玉委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法など教育三法の一部改正案に反対、民主党提案による修正案に反対する討論を行います。

 この教育三法案は、昨年十二月、首相の私的諮問機関でしかない教育改革国民会議の報告を受け、森前首相がみずからの政策の中心に据えるために、文部省に対して関係教育法の早急な取りまとめを指示したことによって、国会に提出されたものです。

 衆議院における委員会審議は、きょうまで、わずか七回です。教育基本法に基づく教育法制の中心をなす三つの法律の改変について、公聴会、地方公聴会を開催することもせず、数の力で審議を打ち切り、採決を行う態度は、教育改革を論議する場にとって最悪のものです。私は、このような日本の将来に対する無責任な態度に、満身の怒りを込めて抗議をします。

 法案に反対する第一の理由は、高校の通学区域の指定に関する規定の削除と、大学、大学院への飛び入学拡大で、競争教育、ふるい分け教育の激化が必至であるということです。

 日本政府に対し、国連子どもの権利委員会は、極度に競争的な教育制度を是正するために適切な措置をとることを勧告しました。日本政府には、この勧告にこたえる責務があります。今回の高校学区制の廃止等は、国連の勧告に逆行するものであり、日本の子供の健やかな成長、発達を保障するという見地から許すことができません。

 第二の理由は、強制による社会奉仕体験活動が苦役となり、日本の子供たちを、人間形成にとって有意義な体験活動から引き離す結果につながることです。

 審議の中で、社会奉仕体験活動が評価の対象になることも明らかになりました。社会奉仕活動押しつけの根底には、強制することが学校教育の基本的機能だとする、教育改革国民会議の主張があることを指摘しておかなければなりません。

 第三の理由は、問題を起こす子供への出席停止措置に、期間に関する定めも、出席停止期間中の教育的代替措置も示されていないことです。

 憲法が保障する教育を受ける権利を一時停止しようとする以上、子供、父母の異議、不服提出に関する適正手続は必須のものです。法案では適正手続が欠如しています。出席停止の要件を法定化し、拡大したことと相まって、出席停止の発動を行政的、機械的に学校へ促すことにつながる危険があります。

 反対する第四の理由は、指導が不適切であると校長、教育委員会が一方的に判定した教師を免職、配置転換することは、教師を管理主義で縛りつけて萎縮させ、教師の伸び伸びとした教育力の発揮を阻害して、日本の教育を荒廃させることに直結するからです。

 教師が職場の同僚とともに自主的に研修を行う機会、条件を豊かにし、子供を中心にして、教師と父母、地域が共同して学校づくりを進める努力が各地で注目されています。このような努力を通じてこそ、教師の力量が生き生きと発揮されるのではありませんか。

 教育三法案の内容は、これまで自民党政府、文部省が続けてきた競争と管理の教育政策を一段と強化するものです。広範な国民が抱く学校教育の民主的改革への願いに反する三法案の撤回を、私は厳しく要求します。

 提出された修正案についていえば、これによって教育三法案の本性、役割が変わるものではありませんので、同意いたしません。

 日本共産党は、すべての子供に基礎的な学力を保障することを中心とした学校教育の民主的改革を前進させるために、多くの国民の皆さんと協力してあらゆる努力を尽くすことを表明し、私の反対討論を終わります。(拍手)

高市委員長 次に、山内惠子君。

山内(惠)委員 社会民主党・市民連合を代表しまして、今回の教育改革関連三法案と修正案、ともに反対の立場で意見を申し上げたいと思います。

 本会議でも申し上げましたが、私は、国会で活動を始めてやがて一年です。この短い期間に、文部にかかわる大臣が三人目です。そして、今回のこの関連法案にかかわって、私は三人の大臣の所信的ごあいさつをお聞きし、一般質問を三回するという異常な事態であったというふうに思っています。百年先を見る者は人を育てるという言葉を御紹介いたしましたけれども、今の状況、教育をこのような形で論じることを本当にどう考えたらいいのかと思います。

 しかも、首相も小渕首相から、その私的諮問機関であったこの内容も、森内閣に引き継がれ、小泉政権へと引き継がれてきたということ。この重要法案を、このような状況で、教育にかかわる重要法案といいながら、中教審にもかけずに法文化してきたことを納得することはできませんので、それが反対をする第一の大きな理由です。今後の子供たちの将来を考えるときにも、歴史に禍根を残す法案だと私は思います。

 子供たちはシグナルを発しています。全国十三万人の不登校の子供たち、十一万人の高校中退の子供たちのシグナルを受けとめるとしたら、少なくとも中教審は、第十四期、十五期、十六期と、子供の側からの論理、例えば生きる力、考える力、新しい学力観などで教育改革を進めてまいりましたが、しかし、今回の改革は、「子供はひ弱で欲望を抑えられず」にあらわれているように、子供をマイナス面のみでとらえ、わがままになった子供を奉仕活動等で押さえ込もうという国家の論理で見直してきた法案だと、そういうふうにかじを切ったこの状況を私は許せない状況だと思っています。

 子供たちに最善の利益を与えるのが私たちの仕事だと思います。何よりも、伸びようとする子供たちを励ます温かい大人社会が必要だと思います。小田実は、飛び入学よりもカメ教育をと言って、学校で急ぐことはないということを言っています。

 ただでさえ子供たちは今学校を息苦しく思っているだけに、今回の法改正によってもっと息苦しくなるのではないかということを私は大変心配をしています。二十一世紀を担う子供たちの願いにこたえるような改革だとは思えません。

 そして、指導が不適切であるという教員に対して、多くの皆さんが心配している学校現場の皆さんは、これが日の丸・君が代の踏み絵にならなければという声を私のもとに訴えています。これはなぜかというと、国旗・国歌法の制定のときに当たって、当時、野中官房長官が内心の自由は守られるとおっしゃった言葉とは裏腹に、現在、起立しなかったということで七十八人の人たちに戒告処分が流されるように、処分行政が今続いているという状況があるからです。

 ところで、皆さん、中田選手、今イタリアのサッカーで、日本から来たと世界の人気を集めています。彼は日本にいたとき君が代を歌わなかった、斉唱しなかったとマスコミでたたかれました。それから、スキーの里谷多英さんは、君が代のとき帽子をとらなかったとたたかれました。しかし、この多英さんは、後に続く女の子たちにどれだけ夢を与えたか。その意味でいえば、このような状況、日本のこのような体質をこそ本当に改めなければならない、世界に通じない状況だと私は思っています。

 最後に私が申し上げたいのは、先日、スコットランドのエジンバラ大学の主催で、子供の教育にかかわる国際会議が開かれたそうです。テーマは、ヤングボイス二〇〇一、この研究会が開かれたその中身は、子供の声を受けとめて、子供たちが一人一人の個性をどう伸ばし、相手とのコミュニケーションをどう育てるかということが語られたそうです。

 日本の文部科学行政が、子供の権利条約を外務省任せにしないで、子供の最善の利益を中心に教育改革を考えられるような方向へこそ大きく変わっていただきたいということを強く申し上げまして、今回の三法案には本当に反対だということを申し上げて、意見を終わります。

 修正案につきましても、賛同できるものもございますけれども、全体としては、今の法案の出方からしても、それを含めて残念ながら賛同できないということを申し上げて、終わりたいと思います。(拍手)

高市委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高市委員長 これより採決に入ります。

 初めに、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。松浪健四郎君。

松浪委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 指導が不適切な教員を免職して引き続いて都道府県の教員以外の職に採用する措置の運用に当たっては、学校長や教育委員会による恣意的な運用が行われることのないように、都道府県教育委員会に対して適切な指導、助言を行うこと。

 二 今後、教員の資質向上を図るため、教員の養成、採用、研修の連携をさらに深めるとともに、教職員の勤務条件の一層の改善に努力すること。

 三 公立高等学校の通学区域に係る規定の削除に関し、高等学校教育を適正に進めるため、受験競争を激化させたり、学校間格差を助長することがないように努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

高市委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。

遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高市委員長 次に、内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平野博文君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。西博義君。

西委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    学校教育法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 学校教育における体験活動の実施に当たっては、教育的な意義と見地を踏まえ、知的な探求や社会参加、職業意識の醸成などに資するように配慮するとともに、児童生徒の発達段階や活動内容に応じて、児童生徒・保護者らの意向にも十分に配慮しながら行うこと。また、体験活動の重要性を踏まえ、実施に必要な条件整備に努めること。

 二 出席停止制度の運用に当たっては、これが児童生徒の教育を受ける権利の制限となることに鑑み、可能な限り短い期間にするとともに、真に必要な場合に、本人や保護者に対して十分な説明を行うように努めるなど慎重な手続きを踏むこと。また、出席停止に係る児童生徒の弁明の聴取等、教育上の措置として本人の人権に十分配慮して行うこと。

 三 出席停止期間中の児童生徒に対する教育的な支援措置が十分に行えるように必要な条件整備に努めること。

 四 大学への「飛び入学」の拡大に伴い、高等学校と大学間の連携を一層進め、協議の場の設置や、必要な指針等の策定を検討するとともに、本制度の実施状況に関する実証的な調査研究を継続して行うように努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

高市委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。

遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高市委員長 次に、内閣提出、社会教育法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、平野博文君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

高市委員長 次に、内閣提出、参議院送付、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 国立学校設置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、短期大学部の廃止及び学部等に講座、学科目等を置き、その種類等を省令で定めることとする規定を削除するものであります。

 まず第一に、短期大学部の廃止についてであります。

 これは、医学、医療の高度化、専門化等に十分に対応し得る専門的知識、技術、豊かな識見及び的確な判断力を有する資質の高い看護婦等の医療技術者の育成などが求められていることにかんがみ、徳島大学及び長崎大学に併設されている三年制の医療技術短期大学部を廃止して、それぞれの大学の医学部に統合し、看護等の医療技術教育の充実を図るものであります。

 これらの短期大学部は、平成十四年度から学生募集を停止し、平成十六年度限りで廃止することを予定しております。

 第二に、学部等に講座、学科目等を置き、その種類等を省令で定めることとする規定を削除することといたしております。

 これは、従来省令で規定されてきた国立大学の講座、学科目等の種類等について、今後省令で定めないこととすることなど、国立大学の組織編制の弾力化を図るものであります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。

高市委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十四分散会




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