衆議院

メインへスキップ



第1号 平成15年2月25日(火曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十五年一月二十日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 山元  勉君 理事 斉藤 鉄夫君
   理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      鳩山由紀夫君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      牧野 聖修君    松沢 成文君
      松原  仁君    山口  壯君
      池坊 保子君    東  順治君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君    松浪健四郎君
平成十五年二月二十五日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      大野 松茂君    岡下 信子君
      岸田 文雄君    小西  理君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      中谷  元君    林田  彪君
      松野 博一君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      大島  敦君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      牧野 聖修君    松沢 成文君
      松原  仁君    山口  壯君
      池坊 保子君    東  順治君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      児玉 健次君    山内 惠子君
      松浪健四郎君    山谷えり子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         加茂川幸夫君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十五日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     小西  理君
  松野 博一君     高木  毅君
  鳩山由紀夫君     大島  敦君
  松浪健四郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     小渕 優子君
  高木  毅君     松野 博一君
  大島  敦君     鳩山由紀夫君
  山谷えり子君     松浪健四郎君
同日
 理事山谷えり子君平成十四年十二月二十四日委員辞任につき、その補欠として鎌田さゆり君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
一月二十日
 学校教育法の一部を改正する法律案(武正公一君外三名提出、第百五十三回国会衆法第二六号)
 公立の小中学校等における地震防災上改築又は補強を要する校舎等の整備の促進に関する臨時措置法案(肥田美代子君外四名提出、第百五十五回国会衆法第一号)
二月三日
 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(高橋嘉信君紹介)(第四一号)
 義務教育費国庫負担制度の堅持と学校事務・栄養職員の配置に関する請願(保坂展人君紹介)(第五七号)
 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(島聡君紹介)(第五八号)
同月十四日
 障害児学校建設、障害児学級増設のための予算増等に関する請願(石井一君紹介)(第一八二号)
 行き届いた教育を進め心通う学校に関する請願(石井一君紹介)(第一八三号)
 同(石井一君紹介)(第一九二号)
 日本育英会奨学金制度の廃止反対に関する請願(山内惠子君紹介)(第二五六号)
 同(横光克彦君紹介)(第二五七号)
 同(山内惠子君紹介)(第二七六号)
 同(横光克彦君紹介)(第二七七号)
 同(今川正美君紹介)(第二九九号)
 同(横光克彦君紹介)(第三〇〇号)
同月二十一日
 私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願(中村哲治君紹介)(第三三四号)
 同(植田至紀君紹介)(第四四八号)
 日本育英会奨学金制度の廃止反対に関する請願(今川正美君紹介)(第三三五号)
 同(北川れん子君紹介)(第三三六号)
 同(今川正美君紹介)(第三六一号)
 同(北川れん子君紹介)(第三六二号)
 同(北川れん子君紹介)(第三九五号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第四六九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 国政調査承認要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴いまして、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に鎌田さゆり君を指名いたします。
     ――――◇―――――
古屋委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 文部科学行政の基本施策に関する事項
 生涯学習に関する事項
 学校教育に関する事項
 科学技術及び学術の振興に関する事項
 科学技術の研究開発に関する事項
 文化、スポーツ振興及び青少年に関する事項
以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。
 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
古屋委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、文部科学大臣から所信を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 第百五十六回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。
 我が国の社会経済情勢は極めて厳しい状況にあり、あらゆる分野で二十一世紀を見通した抜本的な改革が求められております。小泉内閣の経済活性化戦略においても、人間力戦略、技術力戦略が掲げられており、我が国が真に豊かで成熟した国として発展し、国際的にも貢献していくためには、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指した改革を進めていくことが不可欠です。
 昨年八月、私は人間力戦略ビジョンを提唱いたしました。資源の乏しい我が国がこれまで発展してきたのは教育を重視してきたからであり、未来に向け、みずから行動し、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい日本人を育てることが極めて重要であります。また、これからの知の世紀をリードするトップレベルの人材も必要となります。このような中にあっては、心豊かな文化と社会の継承、創造の担い手となり、国際社会を生きる教養を備えた日本人が求められています。そのため、人間力戦略として、教育改革や科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興に全力を尽くしてまいる所存です。
 昨秋、ノーベル物理学賞を東京大学名誉教授の小柴昌俊氏が、また、ノーベル化学賞を株式会社島津製作所の田中耕一氏が、それぞれ受賞されました。三年連続で、しかも同じ年に二人の日本人受賞は初めてのことであり、国民に自信と希望を与え、我が国全体にとって大きな誇りと励みになりました。さらに、昨年はH2Aロケット二、三、四号機の打ち上げが連続して成功し、世界最高水準の信頼性の確立に向けたステップを着実に歩むとともに、子供たちに夢を与えることができました。
 明るい未来を創造的に力強く切り開いていく担い手である子供たちが、将来に夢と希望を持ち、それを実現するためのしっかりした実力を身につけられるよう、私としても最善の努力をしてまいります。そのことが、子供たち一人一人の人生を豊かなものにするだけでなく、我が国社会の発展基盤を形成する上でも不可欠と考えるからであります。
 このような認識に立ち、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現に向け、以下のような事項についての施策を総合的に展開してまいります。
 国家百年の計である教育は、国政上極めて重要な課題であります。このため、教育に携わる者は、すべての学校段階を通じて、常に二十一世紀にふさわしい教育のあり方を見据え、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい日本人を育成するとの高い志を持ち、真摯に教育改革に取り組んでいくことが求められております。
 小泉内閣発足当初から、二十一世紀教育新生プランに基づき、学校がよくなる、教育が変わることが実感できるような教育改革を実現するため、各般の施策を講じてまいりました。今後は、これをより一層推進するとともに、人間力戦略ビジョンに掲げる目標の達成に向けて、国民的課題である教育改革をさらに加速してまいります。
 教育基本法の見直しについては、昨年十一月に中央教育審議会から中間報告が提出され、現在、国民各層から幅広く御意見を伺いながら議論を深めているところです。近く取りまとめられる答申を踏まえ、教育基本法の見直しにしっかりと取り組んでまいります。
 構造改革特区については、地域の創意と工夫を生かし、教育の活性化を図る観点から、これまでも不登校児童生徒を対象とした学校の設置に係る教育課程の弾力化などに取り組んできたところでありますが、引き続き柔軟に対応していきます。
 私は、確かな学力と豊かな心の育成が初等中等教育段階における教育改革の重要な柱であり、これらは、子供たち一人一人に新世紀を生き抜く力をはぐくむ上で極めて大切であると思います。そして、国民の教育水準を高めることこそが、日本社会の国際的競争力の基盤となると考えます。
 昨年四月から実施されている新学習指導要領のねらいは、子供たちに基礎、基本をしっかりと身につけさせ、みずから学び、みずから考える力などの確かな学力をはぐくむことにあります。これによって、画一と受け身から自立と創造へと、教育のあり方を大きく展開しようとするものであります。
 子供たちの学力については、その低下を懸念する声が聞かれるところであります。OECDの実施した国際比較調査などによれば、我が国の子供たちの成績はトップクラスに属するものの、今後対応すべき課題も見られます。また、昨年末に公表した小中学校における教育課程実施状況調査の結果については、目下、その詳細を分析中であり、今後、その結果をしっかりと受けとめると同時に、新学習指導要領の実施状況の検証についても、常設化された中央教育審議会教育課程部会にお願いし、その検討を踏まえて指導の改善に取り組んでまいります。
 また、教職員定数改善計画を着実に実施し、少人数授業や習熟度別指導などの個に応じたきめ細かな指導を推進するとともに、学習意欲を高め、学力の質を向上させること等をねらいとする学力向上アクションプランの実施など、総合的な施策を進めてまいります。さらに、十年経験者研修制度の新年度からの実施を初め、教えるプロとしての教師の育成を図るとともに、学校施設の耐震補強や改築の推進、学校の安全管理の徹底等に努めます。
 豊かな心を育成することは、確かな学力の育成に劣らず重要なことであります。子供たちに基本的な規範意識と倫理観、公共心や他者を思いやる心をはぐくむためには、学校において、心に響く道徳教育の充実、奉仕・体験活動、読書活動の推進を図るとともに、家庭や地域の教育力の向上を図ることが不可欠であります。また、完全学校週五日制のもとでの子供たちのさまざまな活動機会や場の拡大に取り組んでまいる所存です。さらに、不登校や子供たちの問題行動への適切な対応、幼児教育の振興、障害のある児童生徒に対する教育の充実にも努めてまいります。
 義務教育費国庫負担制度については、今国会に義務教育費国庫負担法等の一部改正法案を提出するなど、必要な見直しを行うこととしておりますが、国の責任により義務教育水準を確保するという制度の根幹は引き続き堅持していきます。
 知の創造と継承の拠点である大学が、その期待される役割を十二分に果たしていけるよう、大学の構造改革を初めとするさまざまな大学改革が進行中であり、我が国の大学制度の歴史の上でも重要な時期を迎えております。
 国立大学の再編統合を引き続き積極的に進めるとともに、民間的な経営手法を導入し、個性豊かで国際競争力ある大学づくりを進めるため、平成十六年度から新しい国立大学法人とするための法律案を今国会に提出することとしております。また、国公私立大学を通じてすぐれた研究教育拠点を重点支援する二十一世紀COEプログラムや、教育面での改革の取り組みを一層促進するための特色ある大学教育支援プログラムを推進するなど、各大学の自律的な取り組みを支援しつつ、教育研究基盤の整備や教育機能の充実に取り組んでまいります。
 さらに、昨年の臨時国会における学校教育法の改正を受け、大学の設置認可制度の弾力化、第三者評価の導入など大学の質の向上と保証に係る新たなシステムや、法科大学院などの専門職大学院制度の円滑な実施に向けた取り組みを進めます。あわせて、私立学校の一層の振興や、次代を担う意欲と能力のある人材を育てるため、奨学金の充実に努めてまいります。
 冒頭で申し上げたノーベル賞受賞は、我が国の研究水準の高さが世界的レベルにあることを示すとともに、独創的で多様な基礎研究の振興と、これを支える科学技術システムの重要性を再認識させるものでした。
 科学技術は、日本経済の成長と構造改革を支え、希望ある未来を切り開き、人類が直面する地球規模の問題を解決していくためのかぎとなるものです。知の世紀と言われる二十一世紀において、高い科学技術水準は国力の枢要な源泉であり、その成果は、国民の生活や経済活動を持続的に発展させ、人類共有の財産として蓄積されていくものであります。
 文部科学省としては、世界最高水準の科学技術創造立国の実現を目指し、社会経済発展の原動力となる知の創造と活用に向け、第二期科学技術基本計画に沿って科学技術及び学術の振興に力を注いでまいります。
 このため、大学共同利用機関等を中心としたニュートリノ研究、加速器科学、天文学研究等の国際水準の先端的、独創的研究の推進、新たな知を切り開く基礎研究等を推進するための競争的資金の拡充、科学技術・学術のすぐれた人材の育成、国立大学等施設緊急整備五カ年計画の着実な実施を初め最先端の研究施設・設備といった研究開発基盤の整備等に一層積極的に取り組みます。
 また、経済活性化、安心、安全な国民生活の実現など国家的、社会的課題に大きく寄与するライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料等の研究開発を戦略的かつ重点的に推進します。大学における知的財産の戦略的活用等を図るための体制整備や大学発ベンチャーの創出など産学官連携の推進、大学等を核とする知的クラスターの創成など地域における科学技術の振興、科学技術・理科大好きプランを初めとする科学技術・理科教育、科学技術理解増進活動の充実などを図ります。
 さらに、国の存立基盤となる宇宙、原子力、防災、海洋等の研究開発についても積極的に推進することが必要です。宇宙開発については、三機関を統合した新法人が宇宙航空分野の中核機関として本年十月に万全のスタートを切れるよう準備を進め、我が国のロケット技術の国際競争力を高めるとともに、幅広い宇宙開発利用を推進します。去る二月一日、米国においてスペースシャトル事故がありました。犠牲となられた搭乗員の方々の御冥福をお祈りするとともに、心より哀悼の意を表します。私たちは、この事故を厳粛に受けとめつつ、彼らの求めた宇宙開発の夢に今後とも果敢にチャレンジしていきたいと考えます。
 原子力については、国民の信頼と安全の確保を大前提として、原子力研究開発の推進に最適な体制を構築すべく、原子力二法人統合に向けた検討を精力的に進めるとともに、高速増殖炉サイクル技術や国際協力によるITER計画への取り組みなど研究開発を進めてまいります。また、「もんじゅ」については、エネルギー資源に乏しい我が国において高速増殖炉開発を進めることが必要であることにかんがみ、地元を初め国民の理解を得るための努力を続けていきます。
 人々が生涯にわたり自己実現を図っていくためには、生涯のあらゆる時期に学習機会を選択して学ぶことができ、その学習の成果が適切に評価される生涯学習社会の構築が重要です。このため、生涯学習の環境整備や大学、専修学校における社会人のキャリアアップのための教育を推進します。また、男女共同参画社会の形成、環境教育や人権教育の充実に努めます。
 昨年のワールドカップサッカー大会の成功に象徴されるように、明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で、スポーツの振興は欠かすことができません。このため、スポーツ振興基本計画に基づき、国民のだれもが身近にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現や、世界で活躍するトップレベルの競技者の育成、学校での体育・スポーツ活動の充実を図ります。あわせて、体力の低下や子供の健康に関する現代的課題に対応し、子供の体力向上や食に関する指導など健康教育に積極的に取り組み、健やかな体をはぐくんでまいります。
 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものであり、我が国の文化芸術の頂点の伸長やすそ野の拡大を図ることが必要不可欠です。このため、文化芸術振興基本法に基づき、先般策定した政府の基本方針を踏まえ、我が国の顔となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、文化芸術創造プランや「日本文化の魅力」発見・発信プランを推進します。また、国民が文化ボランティアなどによりみずから積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境を整備します。文化財の保存、活用、地域文化の振興、国際文化交流の推進、著作権制度の改善等の施策を推進し、あわせて、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう取り組んでまいります。
 我が国が、国際社会において積極的な役割と責任を果たし、世界から信頼される国となることは、極めて重要な課題です。このため、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術など各般にわたり、日本人の心が見える協力、交流に力を入れるとともに、留学生交流については、その一層の推進を図ります。また、英語が使える日本人の育成にも努めてまいります。
 以上のほかにも、特殊法人改革、公益法人改革、規制改革等の行政改革や、地方分権、知的財産戦略の推進など、さまざまな課題が山積しております。私としましては、国民の強い期待を真摯に受けとめ、文部科学行政全般にわたり誠心誠意取り組んでまいる決意ですので、委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。(拍手)
古屋委員長 次に、平成十五年度文部科学省関係予算の概要について説明を聴取いたします。河村文部科学副大臣。
河村副大臣 平成十五年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十五年度予算の編成に当たっては、厳しい財政状況のもとではありますが、我が国が真に豊かで成熟した国として発展し、国際的にも貢献していくためには、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指した改革を進めることが極めて重要であるとの観点から、教育改革、科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興にわたる総合的な施策の展開を図ることのできる文部科学予算の確保に努めてきたところであります。
 文部科学省所管の一般会計予算額は、六兆三千二百二十億一千二百万円、国立学校特別会計予算額は二兆八千四十五億二千九百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は一千四百九十一億一千四百万円となっております。
 以下、平成十五年度予算における主な事項について、御説明を申し上げます。
 第一は、確かな学力の向上と豊かな心の育成などを図る二十一世紀教育新生プランの着実な推進についてであります。
 子供たちに基礎、基本を確実に身につけさせ、みずから学び考える力などの確かな学力をはぐくむため、第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を着実に実施するとともに、学力向上フロンティア事業など学力向上を目指した施策を総合的に進めることとして、四十九億円を計上しております。
 なお、義務教育費国庫負担制度については、必要な見直しを行うこととしておりますが、国の責任により義務教育水準を確保することとして、二兆七千八百七十九億円を計上しております。
 また、英語が使える日本人の育成を図るため、英語教育の改善に十一億円を計上しているほか、不登校問題への対応を強化するためスクーリング・サポート・ネットワークの整備などの生徒指導の充実及び道徳教育の充実や、社会奉仕・自然体験活動を推進することにより、心の教育の充実を図ることとしております。
 さらに、新たに十年経験者研修を実施し、教員の資質向上を推進するほか、公立学校の施設整備については、耐震化、老朽化対策に重点的に取り組むこととして、一千四百五十二億円を計上しております。また、学校における安全管理の徹底を引き続き図ることとしております。
 次に、完全学校週五日制をより一層有意義なものとするため、地域において週末等に子供の活動支援を行うとともに、地域と学校が連携協力した社会奉仕体験活動などさまざまな体験活動の推進体制を整備するほか、子育て講座の全国展開など家庭教育支援の充実を図るとともに、子供の読書活動など青少年の健全育成を推進してまいります。
 また、高等教育機関において、キャリアアップを目指す社会人の受け入れ体制を引き続き整備することとしております。
 第二は、大学の構造改革の推進と二十一世紀を担う人材の育成についてであります。
 我が国の大学が国際競争力を有する大学となるためには、大学の構造改革を一層進めることが重要であり、国立大学の再編統合を進めるほか、第三者評価による国公私を通じた世界的研究教育拠点の形成のための重点的な支援や教育面での改革の取り組みを一層促進することとして、三百三十五億円を計上しております。
 また、専門職大学院の充実など、大学院を中心とする教育研究基盤の強化に努めることとしております。
 さらに、育英奨学事業については、学生が経済的に自立し、安心して学べるようにするため、事業費総額で六百二十四億円の増額を行い、貸与人員で六万八千人増員するなど、一層の充実を図ることとしております。
 第三は、特色ある教育研究の推進など私学助成の充実について、教育研究条件の維持向上と修学上の経済的負担の軽減などを図るため、学術研究基盤の強化や教育改革の推進などに配慮しつつ、経常費助成を中心に総額で四千四百九十一億円を計上するなど引き続きその充実を図ることとしております。
 第四は、留学生交流など国際教育協力の推進について、留学生交流のため五百四十一億円を計上するほか、開発途上国に対し、我が国が培ってきた教育経験を生かし、日本人の心の見える協力などを推進することとしております。
 第五は、心身ともに健全な人材を育成するスポーツの振興について、世界で活躍するトップレベルの競技者の育成、子供の体力向上のための総合的な方策、学校体育の充実を図るなど、スポーツ振興基本計画を推進していくこととしております。
 第六は、文化芸術振興基本法を踏まえた心豊かな社会の実現に向けて、文化芸術立国推進プロジェクトとして、「日本文化の魅力」発見・発信プランの創設に四十九億円を計上するとともに、昨年度創設した文化芸術創造プランとあわせ推進するほか、文化財の活用と次世代への継承、新たな文化拠点の整備などを図ることとしております。
 第七は、未来を切り開く基礎研究の推進についてであります。人類の知的資産の拡充に貢献するとともに、革新的技術などブレークスルーをもたらし得る多様な基礎研究等を推進するため、科学研究費補助金を初めとした競争的資金の改革と拡充を図ることとして、二千七百十四億円を計上しております。また、ニュートリノ研究などの先端的、独創的な研究プロジェクトを推進し、大学や大学共同利用機関の共同利用体制の充実を図ることとしております。
 第八は、研究開発プロジェクトの推進についてであります。ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の重点四分野への重点化を図ることとして、二千三百三十五億円を計上するとともに、大学、公的研究機関等と産業界が一体的に協力しつつ、それぞれのポテンシャルを最大限に活用する経済活性化のための研究開発プロジェクトを推進することとしております。
 また、国家戦略プロジェクトである宇宙航空分野、原子力分野については、徹底的な見直し、合理化を図り、国の安全、地球環境、最先端の科学など国として戦略的に推進すべき領域を着実に推進することとしております。さらに、地震、防災、海洋分野など国の存立基盤となる研究開発を戦略的に推進するとともに、人文・社会科学の振興及び自然科学との融合を図ることとしております。
 第九は、新産業創出に向けた研究成果の展開については、大学に知的財産本部の整備を進めるなど、知の確保と活用を戦略的に実施するための施策を総合的に推進するとともに、大学発ベンチャーの創出を支援するなど、産学官連携の促進を図ることとして、一千九百六十億円を計上しております。また、大学、公的研究機関等を核とした知的クラスターの創成を図るなど、地域科学技術の振興を積極的に支援することとしております。
 第十は、科学技術振興基盤の強化については、創造性、独創性豊かな科学技術関係人材の育成、確保に努めるとともに、国立大学等施設緊急整備五カ年計画に基づき、国立大学等の施設を着実に整備していくこととして、一千四百四億円を計上しております。また、科学技術・学術活動の国際化等を推進していくこととしております。
 第十一は、科学技術・理科教育及び科学技術理解増進活動の推進についてであります。科学技術創造立国を支える次代の人材を育成していくため、科学技術・理科大好きプランや科学技術理解増進施策を実施することとしております。
 第十二は、情報化への対応として、高度情報通信ネットワーク社会の形成を目指し、情報化の影の部分にも配慮しつつ、学校の授業においてコンピューターやインターネットを活用できる環境の整備を進めるとともに、専門的かつ創造的な人材の育成や研究開発分野の情報化、情報科学技術などを積極的に推進してまいります。
 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようにお願いを申し上げます。
 なお、これらの具体的な内容につきましては、お手元に資料をお配りいたしておりますので、説明を省略させていただきたいと存じます。
 以上であります。ありがとうございました。
古屋委員長 以上で説明は終わりました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局私学部長加茂川幸夫君及び厚生労働省職業安定局次長三沢孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。
馳委員 おはようございます。自民党の馳浩です。
 大臣、お元気ですか。風邪がはやっておりますので、ぜひお気をつけていただきたいと思います。
 きょうは、私立大学の生き残りと、そして不幸にも経営破綻した場合の後始末について質問させていただきます。
 今ほど大臣の所信にもありましたように、大学の、いわゆる高等教育機関の競争力を高めて国際的に通用する人材を育成しよう、そういう文部科学省の方針がある一方、そうはいいながらも、現実問題として、地方であったりあるいは偏差値のちょっと低いと指摘されている大学は、実は経営の破綻に直面している大学もあります。今後、十八歳人口の減少ということを考えれば、これもまた一つの高等教育機関にかかわる問題であろうと思いますので、今後の文部科学省の対応の姿勢といったものをお聞かせいただきたいと思います。
 まずお伺いいたしますが、広島の私立立志舘大学が、ことし一月、学生の募集停止にまで至りました。現在どういう状況になっているのか、また、在学生の転学や入学金についてどうなっているのかを教えてください。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 御指摘の立志舘大学につきましては、平成十二年四月に、当時の広島女子商短期大学を改組する形で、広島安芸女子大学として開設されたものでございます。また、平成十四年四月には現在の名称に変更されてございます。開設当初から大幅な定員割れとなりまして、このため、資金繰りが困難となっていたものでございます。
 立志舘大学を設置する学校法人広島女子商学園は、大学と高等学校を設置しておる法人でございますが、このままでは学校法人自体の存続が危ぶまれるため、高等学校のみの学校法人として存続していくことを決めまして、平成十五年度の立志舘大学の学生募集を停止したところでございます。
 また、同大学の募集停止に当たりまして、在学生の措置が大変大きな課題になったわけでございます。そこで、呉市にございます呉大学の協力を得まして、一つには、学生本人の同意が得られた場合には在学生をこの呉大学へ転学させること、二つには、卒業まで現在の立志舘大学のキャンパスで授業を実施すること、三つには、転学にかかる入学金、委員御指摘の入学金の件でございますが、免除するということなどを前提に、すなわち在学生の負担が少しでも軽減されるような配慮のもとに、両大学の話し合い、手続が現在進んでおるわけでございます。
 この方針に基づきまして、在学生は現在百七十四名ございますけれども、希望等を確認いたしまして、一部退学等を除きまして、このうち百五十八人が呉大学へ転学することになったと報告を受けておるわけでございます。
 これによりまして、立志舘大学は、平成十五年四月から学生がいなくなりまして、休校状態になるわけでございます。
馳委員 いわゆる四年制大学の廃校の幕あけともとらえてよい、非常に厳しい、切ない一つの現実であろうと思います。
 四年制私立大学の定員割れが、一昨年で百四十九校、全体の三〇・二%、昨年が百四十三校、全体の二三・八%になりました。定員割れが四割を超える大学が、一昨年で三十五校、昨年が三十六校、全体の七%に及んでおります。この三十六校中十二校が、過去三年連続して四割以上の定員割れを起こしております。ちなみに、短大は、昨年で五十五校、三年連続が二十七校です。
 さらに、財務指標を見ると、流動比率、これは流動負債に対する流動資産の割合ですが、これについては、一〇〇%を切ると資金繰りに窮していると見られるものですが、一〇〇%を切る大学が昨年で三十四校あります。
 こう見てくると、破綻の予備軍として十数校あたりが非常に経営の危機に瀕しているのではないかというふうに思われますが、こういった現状の数字を見て、大臣としては、今そこにある危機として、私立大学の経営問題についてどのような認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 馳委員御指摘のように、近年の十八歳人口の減少などによりまして、私立大学の経営環境が大変厳しさを増しているということについては認識をいたしておりますし、心を痛めているところでございます。
 私立大学の経営につきましては、第一義的には、それぞれの大学の経営関係者がしっかりとその経営について考え、そして将来のことも見ながらマネージしていただかなくてはならない問題だとは思いますけれども、文部科学省としましても、学校法人が経営困難に陥ることがないように、できれば、やはり事前の指導、それから助言、あるいは援助の充実というものを図っていくことが大事だとは考えております。
 このために、従来から学識経験者などから成ります学校法人運営調査委員会制度を設けておりまして、その委員の方々が実地調査をしたりして、そういう必要なところについては指導助言を行ってまいっております。特に今年度からは、委員を増員したり、あるいは実地調査の対象校をふやしましたりいたしまして、自主的な改善努力を支援するためにいろいろやっておりますが、また、日本私立学校振興・共済事業団、いわゆる事業団と呼んでおりますが、ここで財務分析を充実しているところでございます。
 さらには、学校法人の経営基盤の強化に向けた取り組みなど、あるいは実際に学校法人が経営破綻した場合の対応などにつきまして連絡調整を図りますために、文部科学省、先ほどの事業団、それから私学団体による私立大学経営支援連絡協議会というものを設けまして、検討を行っているところでございます。
 いずれにしましても、この問題は、これから大変大きな課題だというふうに認識しているところでございます。
馳委員 大臣が非常に御心配されているとおり、学校法人運営調査委員会や共済事業団、そして今御指摘の私立大学経営支援連絡協議会などなどで私学の経営に対する御支援、相談体制はとっておられるようでありますが、そうはいいながらも、やはり今般のような立志舘大学の事例が今後出てくる可能性があるわけですね。
 ちなみに、非常に期待もしておりますが、この私立大学経営支援連絡協議会、今後どういうような作業工程で機能させていかれるのか。今回の立志舘大学の件に関しましては十分に機能をなし得なかったという反省点もあろうかと思いますが、今後のこの作業工程と文部科学省としてのかかわりを教えていただきたいと思います。
加茂川政府参考人 私立大学経営支援連絡協議会についてのお尋ねでございます。
 本協議会は、各学校法人の経営基盤強化に向けた取り組み等を支援するための基本的な施策について検討しますとともに、実際に学校法人が経営破綻した場合には、その対応についても連絡調整を図ることを目的に、平成十四年三月に設置をいたしたものでございます。関係者との間で必要が生じた場合に、随時、機動的に、学校法人の基盤強化、経営破綻した場合の対応について各種の連絡、協議を行うことをその使命としておるわけでございます。
 機動的に対応することとあわせまして、この協議会を有効に機能させるためには定期的にこういった会を開く必要があろうかとも考えておりますので、そういったことも検討してまいりたいと思っております。
馳委員 議事録などは公開していただけるんですか。答弁は求めませんけれども、要は、できるだけ連絡協議会の議論が我々議員にもわかるような形で情報提供いただかないと、やはり常に私たちも、こういう指示というかお願いというか、こうした方がいいんじゃないかとか、あるいはそんなあり方でいいんじゃないかというふうに申し上げたいと思いますので、十分そういう情報なども出していただけるように、できたら議事録も公開していただけるようにお願いを申し上げておきます。
 それで、大臣、この国会は国立大学の独法化の法案が出ておりますね。これは遠山大臣も大変積極的にリーダーシップをとられておる法案でありますが、やはりしわ寄せが私学の方に来るのではないかという懸念があるわけですよ。独法化されれば、定員の弾力化であるとか寄附金集めとか、それぞれの独法化された大学が特色を出してくると、恐らくそのしわ寄せとして私立大学の経営に、つまり受験者の減という一つの現実問題も出てこようかという心配なんですね。
 そこで、質問を続けさせていただきますが、社団法人日本私立大学連盟は、この危機に備えて、「学校法人の経営困難回避策とクライシス・マネジメント」という危機管理マニュアルを昨年三月に作成しております。マスコミでも大きく取り上げられております。私も精読をさせていただきましたが、実に示唆に富む内容が盛り込まれております。我々立法、行政サイドに対する提言も数多く見られます。
 そこで、私自身も、こういう方向で改革をしていくべきではという提言や、私なりの提言をこれからさせていただきたいと思います。
 まずは、財務状況の情報公開であります。
 財務諸表の公開の徹底、すなわち、全学校法人による、一般人でも知り得る場所、機会による公開を提言したいと思います。例えば、ホームページ上に三種類すべての財務書類を公開させたりすることであります。私学助成を受けている立場であり、国民の税金の投入ということになりますから、国民へのアカウンタビリティーとして当然だと考えますし、また、この財務諸表の公開は、実は私学経営を健全ならしめるキーポイントの一つとも考えられているからであります。
 また、関連して、一般人が見てもわかるように、情報公開の実益を高める意味でも、現在ある学校法人会計基準を見直して、特に簿価から時価会計に見直すなど、企業会計原則を導入していくべきではないかと思います。この点は私大連盟も強く要望しているところでありますが、この二点についての所見をお伺いしたいと思います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 まず、財務諸表の公開についてでございますが、私どもも、私学の有する高い公共性にかんがみまして、積極的にこれを公開していくことが必要であると考えてございます。かねてより、各種の会議等を通じまして、法人関係者に積極的な取り組みを要請、指導してきておるわけでございます。私立大学が情報を可能な限り社会に提供することによって、社会から評価を受けるわけでございます。学校の自主的、自律的な取り組みによって、ますます質の向上を図っていくこともこれによって期待できるものと思っておるわけでございます。
 十三年度の数字でございますが、文部科学大臣所管であります大学法人のうち、何らかの形でこの種の情報公開を行っておりますものが八五%強ございます。今後とも、積極的な公開を促してまいりたいと思っております。
 また、二点目の学校法人会計基準についてでございますが、学校が極めて高い公共性並びに継続性、安定性を求められておる特徴を踏まえまして、主として収支の均衡の状況を正しくとらえるということを目的といたしまして、この学校法人会計基準が設定されておるわけでございます。
 一方、委員御指摘の企業会計原則でございますが、これは、営利を目的とする企業の特性を踏まえまして、主として収支の状況を正しくとらえるということを目的としておるものと理解しておるわけでございます。すなわち、二つの会計基準はそれぞれ目的が異なっておりまして、事柄に応じた個別の判断が求められるのだと私どもは考えておるわけでございます。
 ただ、現在の学校法人会計基準はわかりにくい、あるいは本来の趣旨が徹底されていないという指摘があることも十分承知をしてございます。そこで、現在、大学設置・学校法人審議会に学校法人制度改善検討小委員会を設けまして、今の二点、すなわち、財務情報の公開のあり方でありますとか、会計基準のあり方を含めました学校法人制度の改善について検討をしていただいておるところでございます。この検討結果を踏まえまして、必要な見直しについて適正に対応してまいりたいと考えておるものでございます。
馳委員 昨年、帝京大学問題もこれあり、あれは特殊な例かもしれませんが、学校法人の会計基準については、より透明性があって経営状況がよくわかるような方向性というのが大事ですから、今検討中であるそうでありますが、私学法の改正もひとつ視野に入れながら、文部科学省としてもぜひ厳しく見ておいていただきたいと私は要望申し上げます。
 次の質問をいたします。
 収入源の多様化という意味で、学校法人が出す学校債の運用のさらなる規制緩和、また、学校債の転売が法的にも可能になるようにしたり、寄附金税制のさらなる優遇措置、これは寄附金の損金算入の拡大でありますが、こういうことをすべきと思います。これは、収入源の多様化という意味のほかに、学校経営が市場のチェック、評価を受ける、経営健全化の意味もあることを忘れてはならないと思います。
 この収入源の多様化は、学校法人、特に研究所、大学病院等を除いた大学部門の収入源に占める学生納付金の割合が昨年では七七%もある現状を見るならば、喫緊の課題ではないかと思います、入学者の数、ひいては十八歳人口に今後余りにも経営が左右されてしまいかねないという実態でありますから。この件についての御所見を伺いたいと思います。
加茂川政府参考人 お答えをいたします。
 学校債等を活用して学校法人の収入源の多様化を図るべきではないかという観点からの御質問とお受けとめいたしました。
 現在、大学が、学生納付金、授業料等が主でございますが、これに多く頼っておりますので、それ以外の、外部資金を積極的に導入していく必要があるということは、私どもも極めて重要な課題であると認識をしてございます。そこで、これは平成十三年度になるわけでございますが、学校債の募集対象につきまして、それまで同窓会会員あるいはPTA会会員等に限定しておりましたものを、この限定を払いまして、広く一般人を募集対象としても差し支えない旨の通知を発出しておるところでございます。
 また、こういった収入源の多様化を図る意味では、寄附金等のウエートが高まってくると思っておりますが、税制上の扱いにいたしましても、従来、私立大学の受託研究につきまして、収益事業として課税されておりましたものを、平成十四年度よりは原則非課税とされておりますし、現在国会で御審議いただいておりますが、十五年度よりは、個人が土地や建物などを寄附した場合に生じるいわゆるみなし譲渡所得についても、大学に寄附を行う場合の非課税措置の要件、手続の大幅緩和について御審議をいただくことになっておりますので、こういった観点も踏まえて、収入源の多様化が図れれば大変ありがたい、こう思っておるものでございます。
馳委員 この点に関しましては、ぜひ自民党の先生方にも税制調査会で大きな声で御支援いただきますことを強く要望しておきます。
 次に、今までの質問は、危機管理マニュアルでいえば危機回避のための予防策にかかわるものでありましたが、ここから私は、最も関心がある危機管理マニュアル、さらには破綻処理も含めた意味での危機対処法について質問をさせていただきます。
 まずは、学校法人の財務情報を毎年受けている文部科学省が、私学事業団また第三者評価機関が経営悪化を察知したら、ここに警告を発するシステムをつくる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 次に、いよいよ経営危機に陥り、単独での再生が難しくなった場合の話ですが、この場合、とれる手段は、破産法による清算はもちろんですが、再生となれば、学校法人の設置者変更、具体的には法人丸ごとの完全譲渡や学部単位の部分移管、分離分割移管、もしくは合併、これも、対等的・戦略的合併と、救済的・危機回避的合併のいずれかになるわけです。
 そこで確認したいのが、危機回避的合併の話です。
 この場合、法的処理としては民事再生法が適用になるわけですが、民事再生計画の内容が危機回避的合併の場合、学校法人が対象ですから、私立学校法が適用され、理事の三分の二の同意で再生計画が決定され、次に、文部科学省の承認も必要となります。しかし、ここは、決議された再生計画は、民事再生法に言う裁判所の許可のみを要件とすれば足りるのであり、文部科学省の承認までは不要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 いずれにしても、さまざまな面を含めて、民事再生法とのすり合わせが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
河村副大臣 私学の危機の時代がやってきたということでいろいろな御指摘をいただいておりますが、今、いよいよ私学の状況が悪くなってきたという状況があったときには文部科学省からも積極的に警告を発しろ、こういう御指摘でございます。
 これまで、私学の経営については、私学の独自性、自律性というものを非常に重んじてきた経緯もございまして、文部科学省としては、第一義的にはその学校法人が一層努力願いたいということで今日まで来たわけでございまして、事前の指導、相談ということは、大学側から申し出があれば乗っておった、あるいは、私立学校振興・共済事業団では経営、教育等についての相談業務もやっておるわけでございますが、どっちかというと受け身の状態であったわけであります。
 これを文部科学省として今度はどこまで出ていくかという問題だと思いますが、これも今、産業についても産業再生機構等があって、積極的に政府も関与していくというようなことでございます。私大連盟の方も、危機管理マニュアルを持っておられて、それについては自主的に、自分たちでもお互いに助け合おうという感覚がふえてきておると思いますが、文部科学省としても、今年度になりましてこの体制を、経営指導の強化をしなきゃいかぬということで、私学経営企画官、専門官、係長を入れる三名で、具体的な方策について今検討をいたしておるわけでございます。
 どこまで文部科学省が警告を発するかという問題でしょうが、警告を発するということになりますと、これが表へ出ますと、そのことだけによっって評価を失って大学が成り立たなくなるという問題もございますので、どういう形が一番いいのかという問題だろうと思います。少なくとも、四年間もうずっと二分の一定員割れしていて私学助成もできない状況にあるというようなことについては、やはり何らかの形でこの対応を図る必要があろう、こう思っておりまして、御指摘の点は十分対応していかなきゃいけない重要な課題だと受けとめております。
 なお、具体的な今の民事再生法等の問題については、私学部長の方から答弁させます。
加茂川政府参考人 民事再生法の関係についてお尋ねがございましたので、お答えをいたします。
 同法は学校法人にも適用がございます。具体に、再生計画の決定については裁判所の認可が必要であるのも委員御指摘のとおりでございます。その再生計画の中に学校法人の合併といった事柄が含まれてまいります場合には、所轄庁、文部科学大臣等の合併に関する認可が必要になるのも御指摘のとおりでございます。
 この合併に関します所轄庁の認可と申しますのは、合併に伴いまして、学校が教育研究を支障なく継続できるか、運営できるかということが課題になるわけでございまして、裁判所の行う認可が計画が実行可能であるかどうかという観点から行われるものと若干観点は異なっておりますので、私どもはそれぞれ必要性があるんだと考えておるものでございます。
 ただ、学校法人の円滑な再生ということが裁判所の手続のもとに進められる場合には、私どもとしても適切に対応する必要があるんだという認識は十分持っております。
馳委員 いずれにせよ、大臣、大学の設置基準の緩和等をした以上は、後始末の問題についてもある程度のガイドラインとか法的な整備というものを考えるべき時代に入ってきたなということなんですよ。学校法人再生法なんてつくれと、そこまでは言いませんが、それほど現場の学校法人の理事さん方が大変危機感を持っているということの御認識をぜひいただきたいという質問でありました。
 最後になりますが、昨年、金沢市内の企業の入社試験でこういう問題が出題されました、大東亜戦争(太平洋戦争)の背景とその流れについて記せ。これに対して、金沢公共職業安定所が文書で、出題が戦争の是非について問うているとすれば、応募者本人の思想、信条の自由にも抵触するおそれがあると指摘して、求人職種に対する応募者の適性、能力を見る一般的なテーマに変更するようお願い申し上げるとした行政指導を行ったのであります。これに対して企業側は反発し、指導の撤回と謝罪を求めており、地元新聞でも大きく取り上げられております。この指導が適切だったのか、まずこれを伺いたいと思います。
 関連して、企業側は、戦争の是非は聞いていない、近現代史の理解度を聞いていると反発していますが、例えば仮に戦争の是非を聞いたとしても、そもそも論として、このことが個人の思想、良心の自由の侵害になるのかもあわせて伺いたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねの件につきましては、平成十三年度の高等学校卒業予定者の採用に当たりまして、金沢市内の事業所に応募いたしました受験生から、先ほど御説明のあったように、大東亜戦争についてというテーマの作文が課されたとの報告があり、これを受けまして、石川県の教育委員会、それから私どもの石川労働局等でいろいろと協議をした結果、この作文のテーマがいろいろと解釈の余地があり、また、出題者の意図は別にいたしましても、戦争の是非について問われていると受け取られるような懸念があるということから、私どもとしては、採用に当たっては職務への適性、能力に基づいて判断することが適当である、こういうことから一般的なテーマへの変更をお願いしたもの、こう承知しております。
 ただ、このようなハローワークの指導を受けられた事業所の方々が、自分としては公平な採用に努めている、自分の意図とは異なっている、あるいは反しているということで、心外というふうなお気持ちを抱かれるところがあったかもしれませんけれども、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますように、採用に当たっては、あくまでも職務に関する適性、能力の点について採否を決定いただくようにお願い申し上げたというところでございますので、御理解をお願いしたいと思っております。
馳委員 今おっしゃったように、この出題をした企業の経営者の方は、大東亜戦争(太平洋戦争)の是非を問うような意図は全くない、近現代史の歴史の事実関係を把握しておるか、その辺を問うと言っているのでありますから、その点も考慮して、こういうふうな文書による行政指導というものはすべきではないという私の意見を申し上げて、質問を終わります。
古屋委員長 牧野聖修君。
牧野(聖)委員 民主党の牧野聖修です。民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいまの大臣所信に対しまして質問をいたします。
 最初に、今、大臣所信を伺いました率直な感想でありますが、昨年の所信表明は布にすると木綿の味わいだったかなという感じがしますが、きょうの所信は絹の味わいになってきたという感じがしました。肌ざわりと見た目はいいんですけれども、手ごたえが若干弱くなったかなというのが私の印象でございます。
 そこで、質問に入らせていただきますが、最初に、ことしの文科の基本的な軸足、これは教育・文化立国と科学技術創造立国ということになっております。昨年の二つの軸は、人材・教育・文化大国でありました。この大国と立国というのは似て非なるものでして、どういうわけでこういうふうに変わってきているのかなという感じがする。
 それから、昨年の十一月六日に法務と文科の合同の連合審査会が行われたことがありまして、あのときに、ロースクールの話の中で、専門大学院があって、二年たった後に専門職大学院に機構改革をしていく、普通のところではそういったことは日常茶飯事かもしれませんが、国家百年の大計を考える文科省の方針としては、それは朝令暮改ではないかと私は詰め寄ったことがございます。
 それと同じようなことが四ページのここにも載っておりますね。六行目ぐらいですが、「また、昨年末に公表した小・中学校における教育課程実施状況調査の結果については、目下、その詳細を分析中であり、今後その結果をしっかりと受けとめると同時に、新学習指導要領の実施状況の検証についても、常設化された中央教育審議会教育課程部会にお願いし、その検討を踏まえて指導の改善に取り組んでまいります。」ということですね。ゆとり教育に対する全国からの批判が高まる中で学力低下の問題が大きく取り上げられて、そのことにあたかも反省をして、もう一度見直すというふうな感じにこれでいくと私は読めるんですね。
 本来、教育というのは、海で例えれば潮流のようなもので、とうとうと流れていく、一貫した方針があるという感じがするんですが、これでは波間のさざ波みたいな感じがする。ぶれている、そういう感じがしますが、その点について、大臣の考え方をまずお聞かせください。
遠山国務大臣 御指摘の点でございますけれども、新学習指導要領のねらい、これは申すまでもなく、日本の未来を考えて、基礎、基本をしっかり身につけた上で自分で考えたり、自分で学ぶ力を身につけさせるということでございまして、今年度、最初の年度であったわけでございます。私は、それぞれの学校において教員は大変努力をしていただいていると思いますし、そのねらいの定着ということをこれからもしっかりやっていかなくてはいけないと思っております。新しい学習指導要領でございますので、これは、ぜひともきちんと定着を図るというのは文部行政の基本でございます。それについて何ら揺らぎもないわけでございます。
 指導要領につきましては、これは一度変えますと十年間ずっと続けてというのが文部行政のこれまでの行き方であったわけでございますけれども、そのことについては、やはりいろいろな角度から必要とあれば常に検証をするということの重要性は言うまでもないわけでございまして、新学習指導要領について審議のあった教育課程審議会答申の中でも、教育課程の基準については、「不断に見直し、その改善に向けた検討を行っていくことが必要である」と前文の中で書いているところでございます。
 そのようなことも受けまして、私どもとしましては、実施に移した新指導要領の実施状況というものを常に検証しながら、それの実際の状況をよく見た上で検証をし、そして、その検討を踏まえて改善すべきものは改善するというスタンスをとるということは、これは教育行政として非常に大事なことではなかろうかと思います。
 そういうふうなことで、ここに書きましたように、先般の教育課程実施状況調査の結果について、今、専門家によって検討がなされておりますので、それもしっかり踏まえた上で、さらにまた、新指導要領の実施状況についてもしっかりとその状況を見た上で、教育課程審議会による審議も経て、必要な指導の改善というものがあればこれに取り組んでいく、その趣旨で書いているわけでございます。
牧野(聖)委員 ゆとりの教育と学力の問題については、僕は反比例しないと思っています。ゆとり教育は、この殺伐とした社会の中で子供にそういう教育方針を求めていくというのは、僕はいいことだと思っているんですね。その中で工夫をして、さらに、御父兄や関係者たちが心配しているような学力低下がない、どちらかというと、そういう実力、確かな学力が伸びていく方策というのは当然あると思っていますので、その辺、ぜひ工夫をして対応していただきたい、こういうふうに思います。
 それから、この所信表明の二ページの五行目に「明るい未来を創造的に力強く切り拓いていく「担い手」である子どもたちが、将来に夢と希望を持ち、」と書いてある。非常にいいことなんですが、数日前の読売新聞の中学生や高校生の全国青少年アンケート調査というのが出まして、私、このことが非常に印象に残っていましたので、きょう持ってきました。
 この調査結果には、今の日本は努力すればだれでも成功できる社会だと思うかどうかということに対して、そう思わないというのが、中学生、高校生は七五%ですね。日本の将来は明るいと思うかどうかというと、暗いというのが、やはりこれも七五%ですよ。中学生の七一%が日本の将来を暗いと予想している。非常に残念な結果ですね。
 それから、お金を稼いで豊かになるためにはどんな苦労をしてもよいのかというのに対して、ほどほどに暮らせればよいので、お金のために無理な苦労はしたくないというのがありますね。それから、偉くなるためには人を押しのけてでも努力して偉くなった方がいいかといったら、そうは思わないという感じですね。
 僕は、これは、子供たちに本当に明るい未来があるのか、そして、子供たちは本当に希望を持っているのか。こんなことは二十年間言われているんですよ。教育がこういうことに対して無力なのかどうか、その疑問に対して大臣はどういうふうに考えられるか、お答えください。
遠山国務大臣 この調査結果は、確かに、青少年の四人に三人が日本の将来は暗いと思う一方、同じく七五%が今の日本は努力すればだれでも成功できる社会ではないと見ているということでございまして、私としても興味深く拝見したところでございます。
 しかし、いつの時代でも未来を切り開いていくのは青少年でございまして、その青少年が夢や希望を持てる社会にしていくのが大人の責任だと思っております。私は、仮にこの調査を大人に対してやりましても、今の段階では同じような結果が出てくるのではないかと恐れるところでございます。子供たち自体が社会から切り離された存在ではなく、夢と希望を持てというふうに抽象的に言っても、社会全体の、大人の感覚そのものが子供たちにも反映している面もあろうと思います。
 ただ、私としては、やはり学校における、特に未来を持つ子供たちに、そういう大人の社会の反映なりいろいろな問題のあることにとらわれるのではなくて、学校に来て、本当に学ぶことの楽しさを覚え、そして、自分で考えたり、行動したり、いろいろな体験をしたり、物をつくってみたり、そういった喜びを与えていく、それが学校だと考えているところでございます。
 他方で、今の調査でほっとするのもございまして、あなたはどんな人生を送りたいと思うかといったら、好きな仕事につくというのが七割、幸せな家庭を築くというのが六二%、そして、趣味などを楽しむというのが五割以上。あるいは、親が年をとったら子供が面倒を見るべきと思うかというと、そう思う、それからどちらかといえばそう思うという人たちを足すと八二%でございます。
 したがいまして、子供たちは非常にいい芽を持っているんですね。私もできるだけ現場の学校に伺えるときは伺っておりますけれども、そこで見る子供たちは極めて意欲的で、明るく、前向きに取り組んでいる子供たちが大部分だと思っております。そういう子供たちを、その心の心情に合わせたいい教育ができるようにするのが私どもの役目だというふうに考えております。
牧野(聖)委員 その言はよしだと思いますね。ただ、新任の大臣だったら素直に聞かれますよ、私は。あなたを初め大勢の皆さんは、生涯を教育にささげておられる方々が今答弁席に座っておられる。二十年前からこういうことはずっと言われてきて、なおかつここにこういう結果が出ているということは、教育は無力だということじゃないですか。僕は無力だとは言いませんけれども、今の子供たちが将来を暗く見ているというのは非常に悲しい。真剣に取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。
 それから、この中にも触れられておりましたが、不登校の問題が三ページに書かれておりますので、そのことについて質問をさせていただきたいと思いますが、今のことと同じなんですよね。
 小中学校の不登校の児童数が、十三年度では十三万八千六百九十六人になっていますね。十年前から倍になっている。高校の中退者は、これも何回も論議されたことで、今さらという感じが私もしないではないですけれども、十数年間、毎年十万から十一万人の数の高校生が中途退学をしているんですよ。これは一体なぜなんだという感じがしますね。これは十五年前から言っているんですよ。いいですか。それなのに毎年ふえているというのは何なんですか。文科省は何をやっているんだ、そういう疑問を僕は持ちますよ。それについて答えてください。
遠山国務大臣 不登校それから高等学校中途退学の状況につきましては、今お話しのように、平成十三年度の不登校児童生徒数が約十三万九千人と過去最多になっておりますし、公私立高等学校の中途退学者は約十万五千人と、ここ数年横ばいではございますけれども、依然として憂慮すべき状況にございます。
 不登校につきましてはいろいろな対策を立ててきたんだと思いますけれども、一つは、学校に行って楽しさを感じさせる、あるいはわかる授業を展開する、それから、スクールカウンセラーの配置などによって教育相談体制を充実するということでやってきたのだと思います。
 ただ、これまで不登校の児童生徒とのかかわり方がやや画一的あるいは希薄になりがちだったということも反省材料だと思っておりまして、私も就任以来、どうしてこんなに放置していていいのかと思いまして、これについては専門家による協力者会議を立てまして幅広い検討を今行っていただいております。この年度末にもその結論をまとめていただく予定でございます。この会議では、中途段階でございますが、解決目標というのは、その子供たちが、将来、社会的に自立するという観点に立って、これまでの対策に加えていろいろな対策を今考えてもらっております。
 私も、この問題については委員と同じような信念と、それから解決に向けての情熱を持ちながら、ぜひともこうした問題についてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。ただ、その場合に、行政官だけの知恵ではなくて、専門家の知恵も交えながら、本当にこの社会が抱えている問題について真剣に取り組んでいくことが大変大事だというふうに考えております。
牧野(聖)委員 ついでの機会ですから、青少年の犯罪のことについてもちょっと質問させていただきたいと思います。
 最近のニュースの中で気になる現象が出ているんです。ホームレスに対して、例えば弱い立場の者に対して集団で暴行を加えて死に至らしめる。中には裸にして川に捨てて殺してしまったという事件もありましたね。それから、中学生の女子が売春をして、その相手の社会人にほかの仲間の女子中学生が恐喝をして、五百五十万の大金をせしめるという事件がありました。それから、最近気になったのは、父親がリストラで退職した、そのとき一千万円の退職金をもらった、そのことを子供が仲間に漏らした、そうしたら、その仲間たちがその子供をおだてたりおどかしたりして数百万円恐喝をしてかすめ取ったという事件がありましたね。僕は、これは非常に気になっているんですよ。
 というのは、校内暴力だとか学校内のいじめとかという閉鎖された特定の範囲内でのそういう犯罪的行為がとうとう臨界点を超えてしまって、社会の中に溶け込み始めた。それはずっと昔からありますけれども、そういったことが非常に顕著になってきて、今までの状況とは違うんじゃないかという感じがするんですね。そのことを、大臣、どのように考えられますか。
遠山国務大臣 最近の子供たちの犯罪が、暴力の度合い、あるいは性に関するいろいろな問題、それから大人をも対象にしたいろいろな悪事といいますか、そういうことを働くというような問題は、本当に私としても残念でございます。
 ただ、浮浪者を中学生があやめるというようなことはもう何十年も前から幾つか起こっているところではございますけれども、今の社会状況は、大人の犯罪も物すごいわけですし、それから外国人等による犯罪もこれまでにないような残虐さを加えてまいっております。子供たちだけがそういうことをしてはいけないという、なかなか難しい状況の中ではございますけれども、私は、子供たちというのはできるだけ真っすぐな心のままに伸びてもらいたいと思っておりますので、そのことを親も社会もそして学校も、何をしてはいけないか、それはそんなに幾つものことではないんですね、それはしっかりと教えた上で、他者に対しては思いやり、親切、そういった気持ちで接することがいかに人間として大事であるかということをしっかり教えていく必要があろうかと思っております。
牧野(聖)委員 専門家を前にして釈迦に説法で大変恐縮ですが、私は、今の教育は、すべてとは言いませんけれども、子供のニーズに合っていないと思うんですよ。それから、社会的状況に対応し切れていないんじゃないかと二つ思っています。
 僕は、もう二十年近く、ソフトボールというスポーツの、七十チームぐらい集めたところの会長をして、子供たちとずっとつき合っている。サッカーもやっている。子供会活動もずっとやってきている。そこで私が、子供が本当に望んでいることは何かというのを自分流の言葉で言うと、素直にみんなに受け入れてほしいという気持ちが一つあるんですね。どうしても、見捨てられたり、仲間外れにされるのは嫌だ、素直に自分を認めて受け入れてほしいということと、もう一つ、何かみんなの役に立てればうれしい、チームのとかみんなのために貢献できて役に立てれば大変うれしい。そのために自分は何をしたらいいか、この世に生まれてきて、自分は役に立つには何をしたらいいかというのを子供は求めているという感じがするんですね。本当にそういう子供のニーズに合った教育をしているのか。偏差値教育で、進学で、就職を見詰めながら、見通しながら教育しているんじゃないか、そういう批判はやはりありますよね。
 それから、最近の新宿や渋谷の若者の生態を見ていますと、かつて我々は農耕民族で定住型だったんだけれども、最近は、インターネットだとか携帯電話の普及によって、人、金、物、情報、楽しみのあるところへ電話を持って、直接的、直截的に動いていくんですね。非常に、移動型といいますか、狩猟民族型しているんですよ。
 そういうときに、一つの囲い込み現象の中に連れてきて、押し込めて、義務教育だから逃げ場がない、そういうところでもってやること自体に難しさがあるんじゃないかな。もっと動きとか流動性の中で教育をするとか、発想の転換というのをここでしないと、いつまでたっても、二十年も三十年も同じ課題を抱えたまま行ってしまうんじゃないかなと私は思います。そのことについて、大臣のお考えを。
河村副大臣 先ほど大臣からも基本的な御答弁がありましたが、私の方からも今の問題、これは、牧野先生の御指摘は、我々また共通認識にあると思います。
 私は、今の現状はやはりゆゆしい状況下にあるし、日本のよさというものがそういうところから壊れていくという心配をいたしております。これは、まず一義的には教育の力というものがもっと発揮されなきゃいかぬと思うわけでございますが、包括的に考えるときに、やはりこの日本の社会全体がそのことをもっともっと意識して、これにどう対応していくか、そういう仕組みをつくっていかなきゃいかぬと思うんです。
 偏差値教育のことがございましたが、ゆとり教育というのも、何か緩み教育のようにとられてしまって、そうじゃなくて、今御指摘のあったような、人間の生きていく上での大事なもの、規範、そういうものをもっとゆとりの中で見つけていこうということからスタートしたはずなんですね。もちろん学習は学習としてちゃんとやる、しかし、もっとそういうことが大事だ。その原点は、例えば家庭教育にある。そこはどうなのか。そうすると、それを突き詰めていくと、今の、現代の親の教育をし直さなければいかぬという意見が出てくる。こういう現況下にあることは間違いないわけでございます。
 私は、今、ソフトボール等々で、社会的な体験とか、上下関係とか、人間としてのつき合いの仕方とか、そういうものが非常に希薄になってきて、まさに今、子供たちはバーチャルの世界に入ってきた。だから、その子供のニーズを見つけることもいいけれども、そのニーズだけによっていったらそれはそっちの方へどんどん行ってしまいますから、きちっとした、人間として生きていく仕方というものはやはり教育の中で見つけ出してやらなきゃいかぬ、こう思っております。
 ただ、さっきの統計のように、子供の六割も七割もの人たちが、努力したってつまんないんだということになっておるというこの現状、そのことからまずとらえていかなきゃいけないと思っておりますので、そういう意味で、これは教育改革という言葉で尽きることじゃありませんが、今のこれまでやってきた教育のあり方を根本的に見直す、この新しい時代の教育理念を打ち立てるというのが今問われているんではないか、このように思います。
牧野(聖)委員 子供のニーズと言ったのは、表層的なニーズじゃなくて、根源的なニーズにこたえてほしいと言ったので、そのことはぜひ御検討いただきたいと思います。
 そこで、所信表明では触れておられませんでしたが、一点、ここで質問をさせていただきたいと思います。
 小泉内閣は、内閣の総力を挙げて景気対策に取り組むと言っておられますので、文科省もその中に入っていると思います。そこで、文部行政は景気対策や経済の回復のためにやるものではないということは百も承知しながら聞くわけでありますが、最近、いろいろな経済評論家とか学者の皆様方が、日本が活性化していくためには教育行政にもっと力を入れたらいいのではないかというのが非常にあちらこちらで出てきていますね。リクルートワークス研究所所長の大久保さんという人もそんなことを本に書いたり言っていた。
 それから、大変僣越なんですけれども、私は、友達と日本経済復活の会という偉そうな名前の会をつくって、いろいろ勉強会を開いて、その中でいろいろな我が国経済のシミュレーションを行って、アメリカのポール・サミュエルソンとローレンス・クラインさんにその結果を送りました。そうしたら、その中から、いろいろな返事が来た中にちょっと気になったことがありますので、読みます。下手な英語ですから、ちょっと堪忍してください。
 マイ プロポーザル ウッド ビー ワン、マネー エクスパンション。バンク・オブ・ジャパン パーチャシーズ ガバメント デット。タクシーズ シュッド ビー カット、バット アイ ウッド ミックス ジス アスペクト オブ フィスカル ポリシー スティミュラス ウイズ ア ロング ピリオド プログラム オブ アップグレーディング ジャパンズ エデュケーション システム(ベター ティーチャーズ、モア ペイ フォー ティーチャーズ、エクスパンデッド リサーチ ファシリティーズ、ベター スクール インフラストラクチャー、ビルディングズ、フォー イグザンプル、アンド メンテナンス オブ スチューデント エフォート スルー ユニバーシティー イヤーズ)。
 文部行政、教育行政に力を入れると、雇用が促進されて経済的効果が出るだろう、こういうふうにノーベル経済学賞受賞の博士が言っておられるんです、日本の経済を見て。
 ですから、文部行政そのものが、雇用とか経済の再生のために行われるものではないと百も承知していますが、そういう副産物といいますか、プラスアルファが出るというのははっきり指摘されているのですから、そのことを視野にして考えなければいけないと思うんですが、その点についてはどうですか。
河村副大臣 牧野委員御指摘の点は、非常にこれからの教育を考える上で、直接的ではないにしても、やはりそのことを踏まえて教育行政というのはあるべきだと私も感じております。
 小泉内閣の経済戦略、先ほど御指摘のように、人間力戦略とそして技術力戦略ということで、これがまさに日本の成長戦略につながるんだ、やはりそのよって立つ基本は、教育によって人材をつくることに最後には終着はあるんだということが指摘されておりますが、まさにそのとおりだというふうに思いますし、今英文でお読みになりましたので、私も全部は理解できなかったんでありますけれども、もちろん、もっと先生にいい給料を与えて、もっと先生を活性化させることとか、子供たちのスチューデントエフォートをもっと評価するとか、そういうことによって教育をもっと活性化しようというお話でありました。
 結果として、特に今問われているのは、今のこのデフレ不況の中で一番の問題は、産業の空洞化ということなんですね。それで今雇用が失われつつある。新しい雇用をどういうふうにつくっていくか、新しい産業をどういうふうにつくっていくか。
 これはやはり、日本が目指す道は、まさに先ほどの所信にありましたように、科学技術創造立国の中で見出していこうということでありますから、このところで新しい産業をつくっていく、ITも含めてそうでありますが、そこへ今、日本の教育をもっと力を入れていく。そのためには、産官学の連携というのをもっと強めていこうという方向に今なっておるわけでございまして、人間力戦略ビジョンといいますか、そういうものが、結果的に今の雇用や景気対策につながっていくんだという前提に立ちながらこの政策をもっと進めていく。それについては、国民の理解もいただいて、教育的な予算といいますか、そういうものにもっと理解をいただいてやっていかなきゃいかぬ、このように思っておるわけでございまして、委員の御指摘は私も全く、その点を踏まえなきゃいかぬ、同感の思いでお聞きをいたしました。
牧野(聖)委員 高校生の新卒者の三六%がまだ就職を見つけられない状況にいるんです。これは文科省としても、雇用問題とか経済問題、真剣に取り組んでいただきたい、そういうふうに要望させていただいて、次の質問に入ります。
 所信表明の五ページ目の前段のところに、「義務教育費国庫負担制度については、今国会に義務教育費国庫負担法等の一部改正法案を提出するなど、必要な見直しを行うこととしておりますが、国の責任により義務教育水準を確保するという制度の根幹は、引き続き堅持していきます。」こういうふうに言われています。
 もう少し詳しく言ってくれませんか。
遠山国務大臣 義務教育は、憲法の要請によりまして、すべての国民に対して必要な基礎的な資質を養わせるものでございまして、その実施に当たりましては、当然ながら、国が応分の責任を負いながら、地方と適切に役割分担をして円滑に行っていくことが重要であるわけですが、現在の義務教育費国庫負担制度は国の責任による最低保障の制度でございまして、教職員の給与費等の二分の一を国が負担することによりまして、全国的な観点から、教育の機会均等あるいは教育水準の維持向上を図るためのものでございます。
 今回法改正をお願いしておりますものは、その国が負担してまいりました経費の中で、国と地方の費用負担のあり方の見直しを図るという観点から、共済費、長期給付などの経費を一般財源化するために改正するものでございます。
 今は最低保障ということから、教育に最も大事な人、教員の給与の二分の一を国庫負担していく、これを通じて日本の義務教育の水準確保を図っていくということで制度ができ上がっておりますけれども、すぐれた教職員を必要数確保することによって、また教員の給与、中核的なその給与の分についてきちんと負担をしていくということでございまして、それによって教育水準を維持し、かつ高めていこうということでございます。当然ながら、教員給与費のほかに、施設の新増設の経費あるいは教科書等のことについても国が責任を持ってやっておりますけれども、今お願いしておりますのはその趣旨であり、また所信の中に書きましたのも、そういう給与の最低のところについてはしっかりと、最低限の国が果たすべき役割というのはしっかりやっていきたいという趣旨で書いているものでございます。
牧野(聖)委員 この問題が出ましてから、今三十六都道府県からこの体制を堅持してほしいという要望書が政府にも行っていると思いますし、我々のところにも連日来ております。このことについては、またあすとか、これからいろいろ御審議をさせていただくことになろうかと思いますから、大臣、ぜひこの基本的な最低基準を確保していくという気持ち、体制は堅持していただくように心から強くお願いさせていただきます。
 それから、国立大学の法人化等の問題については、先ほど馳議員が非常に高い観点から質問していただきましたので、私は、予定してまいりましたけれども割愛したいと思います。
 ただ、大学改革について気になるところが私からすると一つあるんですよ。競争原理を導入するということと一点豪華主義、この二つで乗り切っていこうという姿勢がどうもありありだね。これは短期的には成功するでしょう、短期的には。でも、長期的には非常に危ない考え方に基づいた改革になるんではないかなと僕は思いますので、ぜひ慎重にやってほしい。
 それから、第三者評価機関というのは、これが現代社会では一番危うい存在なんですよ。この前の東電の原発の事故のときも、本来、国民の立場に立ってやるべき保安委員会とかそういったところが、どちらかというと企業側とかそういうのと癒着しちゃっているね。それから、いろいろなところで建物を建てた場合のコンクリートの、計算どおり、設計どおりやっているかどうかという審査も、自分たちで審査するような状況ですね。それから、おふろ屋さんの衛生面も、だれもする人がいないからおふろ屋さんがお金を出して人を雇って、みんなで調べて回った。そういうふうなことがあると、それは都合のいい結論が出てくるという感じはするんですよ。
 だから、文科省から天下りした人が第三者機関に入ってくる、大学からのOBが入ってくる、そうすると、やはり自分たちの言うことを聞くところに評価が甘くなるという心配があるんですね。そうしたら、そこにお金がたくさん行くということになれば、とてつもない権限が第三者評価委員会のところに行くということになりますと、度を過ぎると、それは教育の公平性、中立性とか、そういったものをゆがめる結果になるかもしれないという懸念がありますので、その点はぜひ注意して取り組んでいただきたいと思います。
 時間が来ましたので、本当に一点だけ要望します。大衆芸能の振興についてという質問をしようと思っていました。
 先ほど所信表明の中で文化に触れたのは、百六十行中おおむね八行なんですよ。全体の五%ですね。去年の字数は七%でした、調べてみたら。それから、歌舞伎だとか浄瑠璃だとか能だとか、今度はオペラとかバレエでしょう、そういう脚光を浴びるところばかりお金をかけていこうとしているんですね。僕は、本当に文化大国というものを標榜するなら、民謡とか詩吟とか踊りとか三味線だとか琴だとか、そういった大衆に浸透しているものに力を入れるべきだと思うんですよ。そういう視点が欠けている。だから、それはちゃんと取り入れてほしい。これもきょうは要望にとめます。また改めてこれは質問させていただきたいと思います。
 最後に、科学技術のことについて質問をさせていただきたいと思います。渡海副大臣、よろしくお願いいたします。
 私は、産学官共同路線というのは余り好きじゃなかったんですよ。一九六〇年代の大学紛争の中で教育を受けてきましたので、そういうことをやると学の独立とか真理の追求というのが企業の利益のために曲げられてしまう、そういうインプットがあって、余り好きじゃない。
 ところが、科学技術とかこういったものについては、産学官でやっていかなくちゃならない時代ですね。そうでないと世界の中に対応できないというのがよくわかります。日本の経済も文化も伸ばしていくためには、産学官の共同路線は私はいいと思います。しっかりとやってほしい。そのことについてどんなふうに考えておられるのか、お伺いさせていただきたいです。
渡海副大臣 牧野先生と同じく私も大学紛争の世代の人間でございまして、大学時代はあのバリケードの中で、勉強はしておりませんでしたが、多くの学友と大学の将来について語り合った、そういう経験を持っておるわけでございます。そういった思いからも、実は、神聖な大学が社会に俗されてはいけない、汚れてはいけない、そんな思いをやはり強く持った人間の一人でございます。事実、私は建築を学んだわけでありますが、有名な建築家を我々が学外に追放した、そういう事実もあるわけでございます。
 しかしながら、今委員御指摘のように、現在、この産学官の連携というものが、日本の経済社会のためにも、大学のある意味の活性化ですね、中に閉じこもって非常に凝り固まった考え方をしないという意味でも重要だと思います。しかしそれは、あくまでこれまでやってきた重要な基礎研究というものが横にやられないという前提で行わなければいけないということでありますし、同時に、御存じだと思いますが、地域の経済の活性化のためにも産学官連携が大事だ。例えば知的クラスターであるとか、さまざまなプロジェクトも今実施をしておるところでございます。
 今後とも、TLOとかインキュベーションセンター、もうちょっと日本語を使えということも言われておるわけでありますが、さまざまなそういった支援を行いながら、産学官を正しく透明性の高いもので連携をさせて、より日本の経済社会の発展と同時にまた大学の活性化、これを目指して頑張っていきたいというふうに考えておるところでございます。
牧野(聖)委員 要するに、産学官共同の中で、大学の持っている知、そういうものをより多く企業だとか一般社会に普遍的に広げていく、そのために必要だということはよくわかりますので、ぜひお願いします。それから、今答弁の中に、やはり国だけじゃなくて地域レベルでのそういうシステムとまた発展が必要だということもよくわかりました。ですから、ぜひそういう観点で努力していただきたい。
 最後に、聞かずもがなではありますけれども、やはり青少年とか子供たちの理科離れとかいろいろ言われておりますので、そういった観点から、若者のみならず国民全体が科学技術に親しみと関心を持っていかれることが必要だと思いますが、その点について、どんなお考えか。
大野大臣政務官 科学技術立国を目指しております我が国におきまして、今後も科学技術の着実な発展を期していくことが極めて大切でございます。そのためには、国民一人一人が科学的な知識に基づいて諸問題について主体的な判断を行うこと、そして国民の理解と支持の下で科学技術振興を図ること、これは極めて重要でございます。
 その一方で、青少年を初め国民の科学技術離れ、理科離れが指摘されているところでございまして、大変残念な事態だ、こう思っております。科学技術に対する理解増進に資するさまざまな施策を実施していく必要があると考えているところでもあります。
 具体的には、科学技術・理科教育施策を総合的また一体的に実施するために、科学技術・理科大好きプランを推進しているところでもあります。その中で、理科、数学に重点を置いたカリキュラムや大学、研究機関等との連携方策について研究を実施するスーパーサイエンスハイスクール、また小中学校における観察、実験等を重視した取り組みを推進する理科大好きスクール、さらには、大学、研究機関等と教育現場の連携の手法開発を支援するサイエンス・パートナーシップ・プログラム、これらの施策を実施することといたしております。
 また、広く国民に対する科学技術理解増進のための施策といたしましては、科学技術に関するテレビ番組を制作、提供するサイエンスチャンネル、あるいは映像や参加体験型の展示を駆使するなどして、科学技術情報発信拠点として設置をいたしました日本科学未来館を活用した取り組みをいたしております。
 今後も、これらの取り組みを有機的に組み合わせ推進することによりまして、将来の我が国の科学技術を支える研究者、技術者を育成するとともに、何よりも青少年を初めとする国民一般の科学技術に対する理解の増進に努めてまいりたい、こう考えているところでございます。引き続き御支援を賜りますようお願い申し上げます。
牧野(聖)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。
古屋委員長 山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 明治維新、終戦後に続く今日の第三の教育改革は、歴史認識、人間とはどういう存在かという議論、またとりわけ現場で起きていることを通して、深い思索的なものであると同時に現実的なものでなければならないと考えておりますが、大臣は所信において、学校において心に響く道徳教育の充実を挙げておられました。
 平成十年の四月一日の参議院予算委員会の席で、小中学校週一時間ある道徳教育がきちんとなされていないという指摘を受けて、当時の町村文部大臣が、やり方も検討し、指導を行う根拠になるような調査をしたいと言われました。しかしながら、その調査結果、ちょっと私が見たところでは、広島県内だけでしかなされていないのではないかというような印象があるんですが、その後、全国の実態調査などはなされたのでございましょうか。
矢野政府参考人 道徳の時間の実施状況あるいは教材の活用の実施状況等につきましては、これまでも定期的に調査をやってきております。近年では、平成五年、またその後平成十年ということで、大体五年間隔で調査をやってきているところでございまして、次は平成十五年度にまた同じようなたぐいの調査を行う予定でございます。
 御指摘の広島県につきましては、道徳教育につきましても指導を行ってきておるところでございまして、また、他の都道府県につきましては適宜指導を行ってきているところでございます。
山谷委員 「道徳」が「人権」に変わっていたり、あるいは「M」、これはモラルという意味の「M」らしいんですけれども、「M」とか「人権」に変わっていたのが広島県内だけで四十三校あるとか、また最近では、平成十五年二月二十日の新聞なんですけれども、小学校一年生に過激な性教育を府中市でしていた。それが道徳の時間を使われていまして、余りにも過激で逸脱したものであったがゆえに、保護者が怒り、校長が謝罪をしたというようなことがございました。こういう、道徳教育の中で本当に中身がかなり逸脱しているというような現状を御存じでございましょうか。
矢野政府参考人 今申し上げましたように、全国的な調査といたしましては、どれだけの時間で道徳を実施しているとか、あるいはどのような教材を活用しているとか、あるいはどのような人材の活用であるとかといったような道徳の全体的な状況については、私どもも調査をいたしているところでございますが、個々の、各学校における、また各授業における道徳の実態調査ということまでについては行っていないところでございまして、それは、各学校において、校長の指導監督のもと、学習指導要領に基づいて当然適切に指導がなされるべきものであるというふうに考えているところでございます。
山谷委員 例えば、過激な性教育の場合には、きょう受けた授業について、保護者に、親に話さないようにというようなことを学校の現場で教えたり、かなり逸脱が進んでおります。
 私、きょう資料として、きのう書きましたコラム、一般紙に書きましたコラムを出させていただいているんですが、先月の警察庁発表調査では、セックスで小遣いをもらうこと、中高校生ですね、四四・八%が本人の自由と答えている。今、自己決定能力が十分でない小学生、中学生にまで性の自己決定権を教えている、これにかなり道徳の授業、時間が使われております。中学生、高校生からは、援助交際を体験した子などは、心に傷が残っていますとか、そのときはラッキーと思っても必ず後悔するときが来るなんという声が挙げられているんですね。
 今の教育は、自己決定、それから個というものが大事だ、自由というものを非常に強調しているわけでございますけれども、心のノートなどというのが道徳の時間に使われている、あるいは使うようにというような指導があるわけでございます。
 日教組の第五十二次教育研究全国集会報告書の中に、心のノートをこう読むというふうなペーパーがございまして、家族について、「「家族のために、家族の一員として何ができるか」と家族のための自分が強調されていく。家族愛、郷土愛が、巧みに愛国心へと誘導され、ナショナリズムの流れとなる。」とか、日本らしさについては、「「ここがあなたのふるさと」となり、「あなたは日本の伝統や文化の頼りになる後継者である」と言い切る。もはや外国人の姿はどこにもない。もちろん外国籍児童や在日朝鮮人、中国人など存在もしないかのようである。」「「日本に住む者はみんな日本人で日本人なら日本人らしくこうあらねばならない」ということが貫かれている。」「この本に「共生」の視点はなく、むしろ「分ける」こと、その結果「排除」や「無視」や「優越感」ができ、同時に「劣等感」や「疎外感」を生む危険性が充分ある。」というふうに書いてあって、「「心のノート」の特徴」「よい子の概念を示し、それに合わせよとソフトにさとす「心のノート」」「マインドコントロール本「心のノート」」というふうになっております。
 「文部科学省が一方的に編集作成した事実上の国定教科書であり、上意下達で配布したことも国定教科書的である。」「教育内容への不当な介入をしたことになり、教育基本法第十条に違反している。 また、教育基本法一条、二条の教育の目的や主体的学習の転換要請からもはずれるし、個の内面的価値のありようには立ち入ることは出来ず、宗教的情操の涵養を盛り込むことは教育基本法第九条からも許されない。もちろん、個人の尊厳を重んじる教育基本法の精神や人の思想、良心、信教、学問の自由をうたった憲法への介入でもあり、許されていいはずがない。」というふうにありますけれども、このような心のノートの読み方というものの報告書、御存じでございましたでしょうか。
矢野政府参考人 まことに申しわけございませんが、先ほど資料をいただいて、先ほど拝見したばかりでございます。それまでは承知いたしておりませんでした。
 ただ、この際でございますから、私ども改めて申し上げたいと思うわけでございますが、心のノートは、児童生徒が身につける道徳の内容を児童生徒にわかりやすくあらわし、道徳的価値についてみずから考えるきっかけとなるように文部科学省において作成した道徳教育のための教材であるわけでございます。
 この心のノートのそれぞれの内容につきましては、これは、教育基本法、また学校教育法の趣旨に沿って作成されました学習指導要領の内容を踏まえて作成したものでございまして、したがいまして、先ほど委員が御紹介になりました教育基本法の各条項、第一条、第二条、第九条でしたか、教育基本法の各条項を御紹介されましたが、私ども、教育基本法のいずれの条項にも反するものではなくて、先ほど御紹介があった指摘は私ども全く当を得ていないものというふうに考えているものでございます。
山谷委員 私もそう考えるものでございますけれども、これは大臣、文科省と日教組の関係、まずいんじゃないでしょうか。教育現場がこのような形で混乱している、そうすると子供たちが翻弄されるわけでございますから、今のやりとりをお聞きになられまして、どんな御感想をお持ちでございましょうか。
遠山国務大臣 学校教育を通じて子供たちに確かな学力とともに豊かな心をしっかりと身につけさせるというのが、私は教育の役割だと思います。その教育を担う教員が、本当にその豊かな心をどのようにしたら子供たちに育てることができるかということを常に考え、そして最良の方法を使って私はやってもらいたいと思っております。その意味で、心のノートというのは、昨年四月にすべての子供たちの手に届くように配付したところでございますが、あそこに書かれているものは、私は、その豊かな心というものを子供たちに育てる点で大変重要な事柄ばかりだと思っております。
 その意味におきまして、すべての教員の方もあれを活用し、また子供たちにもよく読ませ、そして親御さんにもそういう教育を学校がしているということをしっかりと連絡をしていただいて、大人がそういう豊かな心を、これにはさまざまな要点があると思いますけれども、そういったことについていろいろな英知を集めてつくったものでございまして、あれを一つのツールとして活用するとともに、より大切なことは、私は、教員なり親なり地域社会の大人たちが、本当に人間として立派に生きていく、そのことの大切さ、それにはどういう要素があるかということを常々考えながら、あらゆる場面で子供たちにそのような生き方を示し、かつまた導いていく、そういう精神が教育の根本に必要ではないかと考えます。
山谷委員 心のノートの使い方も含めて、やはり、道徳教育というのは一体何だろうかということを、お互いに問題意識を共有化していった方がいいというふうに思っております。
 教育基本法のことにもこちらで言及されているわけでございますが、教育基本法の改正中間報告の中に、伝統、文化、国を愛する心、家庭の教育力の回復、生涯学習社会の実現などの視点が挙げられておりますけれども、宗教に関することについては今後の検討課題としております。
 教育改革国民会議の報告書は「宗教を人間の実存的な深みに関わるものとして捉え、宗教が長い年月を通じて蓄積してきた人間理解、人格陶冶の方策について、もっと教育の中で考え、宗教的な情操を育むという視点から議論する必要がある。」と強調しておりまして、私も同じような考えを持つものでございますけれども、公聴会の中で宗教者がこのようなことを言ったことが、私は非常に興味深く感じております。
 「宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」とあるわけですが、日本の宗教に関する基本的知識及び理解は、教育上これを重視しなければならないと改正されますよう御提案申し上げますという意見の方でございます。
 人格の完成は普遍的なものであるから、今後も大切にしていく必要があると中教審は主張している。しかし、道徳教育どまりで、どのように人格の完成を目指すのでしょうか。道徳と宗教はおのずから異なると言われております。道徳の場では、人間の良心を基礎に考えます。宗教の立場では、特に仏教では、事実を事実として素直に受け入れることのできない人間、むさぼり、怒り、愚痴の心は底が知れず、善と知っても善に赴かず、悪と知っても悪を退け得ない人間の現実を考えます。良心があるとするなら、その良心に沿った生き方をするよう努力すればいいでしょう。しかし、それができない人間の果てしない迷妄があるから、それを見詰めていくのが宗教的な立場からの見方だ。
 私もこれは非常に重い提案だと思いますね。ついていると思います。親鸞上人なんかは、善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をやと、それからキリスト教も、罪人を招かれるためにイエスは来られたというわけでございますね。
 人間をどうとらえるか。良心でとらえられるならばそれは道徳教育でいいだろう、しかし、そうではないのが人間ではないか、だからこその宗教ではないかということでございますけれども、これについては教育基本法の第九条、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」また二項で、「国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。」それから、憲法二十条にもいろいろな規定がございますので、その絡みがあるんだとは思いますが、大臣は、この宗教者の公聴会での発言をどうお考え、お感じになられましたでしょうか。
遠山国務大臣 公聴会でいろいろな方がいろいろな角度から御意見を言っていただいたということは、大変貴重だと思っております。今お読み上げいただいた方も、一つの信念に基づいて、しっかりしたお考えだと思います。
 今、昨年十一月に取りまとめられました中央教育審議会の中間報告におきまして、宗教に関する教育につきましては「国際化の時代に様々な宗教について学ぶことは異文化理解の観点から大切である」などの意見がございまして、宗教一般に関する教育を行うことの重要性が指摘されているところでございます。
 しかしながら、具体的にいかなる場でどのような内容の宗教に関する教育を行うべきかにつきましては、今の御意見もございますように、さまざまな意見が出されておりまして、意見が集約されるに至っておりません。引き続き検討していくこととされているところでございます。私としては、ぜひともこの面について英知を集めて御議論をいただきたいなと思っているところでございます。
山谷委員 宗教的情操というのは教育の柱でございます。ドストエフスキーは、もし神がなければすべて許されると言いましたけれども、物質中心主義で宗教を軽く考えていては、心の教育の一番大事なところに手が届かないというふうに考えております。
 教育現場では、私が平成十三年の十月三十一日のこの文部科学委員会でいろいろ問題提起させていただきましたが、例えば、富山のあの学校では、合掌、いただきますというそのあいさつもできなくなってしまっている、あるいは運動会で子供たちが手づくりでやったおみこしを応援合戦で使おうとしたら、それも宗教行為だというふうに言われてしまう、どうも何かおかしなような解釈が行われているのではないかというふうに思います。
 ドイツなどでは宗教教育を公立学校で義務教育化して、カトリックとかプロテスタントとか倫理とか、それぞれ好きな形で選んでいいよとか、イギリスも義務教育の中で義務化されておりますし、イタリア、オーストラリア、スウェーデン、デンマーク、ポルトガル、ペルー、アイルランド、もう数え切れないくらい多くの国々が義務づけておりますので、日本に合った形で、選択としてもいいでしょうし、あるいは総合学習の時間の中で、いろいろな形があるでしょう。あるいは、学校評議会制度の中で、地域社会等の中でのいろいろなプログラムもあるかもしれません。
 この宗教というものをどのように教育の中で位置づけるか、そして、どのような選択、シミュレーションが可能なのかというのを御検討いただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
河村副大臣 先ほど御指摘がありました中教審の公聴会、私もあの現場におりまして、一つの大事な指摘だというふうに受けとめさせていただきました。
 宗教教育の、第九条ですか、あの第二項のつかまえ方が余りにもそちらの方が優先されたような形になっておりまして、第一項の宗教教育を重視しなければいかぬ、これはもっと尊重しよう、こういうことなんですが、これをもっと重視しろという御意見もございますが、そのとおりに読んでいただければいいのでありますが、二項が非常に強調され過ぎたところに、今御指摘のような、宗教をすべて、学校に入ってきたものを全部排除するというような格好になっております。
 自然の受けとめ方、これは宗教でありますから、信仰の自由とか信教の自由、いろいろな問題を含んでおりますけれども、宗教的素養といいますか、それがやはり人間の生きていく上で非常に大事なものだということは、やはり段階を踏んで教育の中に、それでやはり、知識としても教養としても、まず基本的なことは知る必要があろうと思います。
 今、審議会でもその最後の詰めをやっていただいておるところでございますが、その答申が出ましたら、それをしっかり受けとめさせていただきまして、今の教育基本法の見直し等々、宗教教育という項がございますから、それをどういうふうにしてまさにそういうことの重要性をもっと教育の中に位置づけられるか、あるいは、第二項のあのくびきからどういうふうにして離れられるか、真剣に検討してまいりたい、このように考えております。
山谷委員 GHQの占領下において制定された教育基本法は、日本側が草案をつくり、伝統や宗教的情操の涵養をめぐっては、アメリカとやりとりがあって削除されました。こうしたやりとりは、二百四十万ページに及ぶさまざまな占領文書の公開によって知られることになったわけでございますけれども、日本側が全く自主的に制定したものでもなく、といって、押しつけられたものでもなかった、部分的に干渉を受けたものであったというような事実も明らかになってきているわけです。
 例えば、伝統を尊重してという字句の削除はGHQによって命じられました。宗教的情操の涵養は教育上これを尊重しなければならない、これも、社会における宗教生活の意義と宗教に対する寛容の態度は教育上これを重視しなければならないというふうに変更されたわけなんです。
 このやりとりの中で、伝統を尊重してというのは、通訳が、再び封建的な世の中に戻ることを意味すると言ったからそういうふうになってしまった、GHQ教育課長補佐が日本人学者とのインタビューの中でそう言っているわけですね。それから、宗教的情操の涵養に関しても、歴史的には神社に頭を下げるといった軍国主義、超国家主義の手段になっていると言われてそういうふうになってしまった。
 こういうような事実とか、さまざまなことを分析しながら、大臣は、所信の中で、教育基本法の見直しについて、国民各層から幅広く御意見を伺いながら、議論を深めているところですというふうにおっしゃいましたけれども、教育現場の混乱とか、それから事実、経緯、さまざまなことを出しながら理解を深め、議論を深めていただきたいと思います。
 以上です。
古屋委員長 次回は、明二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.