衆議院

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第4号 平成15年3月12日(水曜日)

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平成十五年三月十二日(水曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      五十嵐文彦君    大石 尚子君
      鳩山由紀夫君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      松原  仁君    山口  壯君
      池坊 保子君    黄川田 徹君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (総務省自治財政局長)  林  省吾君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十二日
 辞任         補欠選任
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
同日
 辞任         補欠選任
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長林省吾君及び文部科学省初等中等教育局長矢野重典君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤村修君。
藤村委員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。
 きょうは、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案が議題になりましたので、この点につきまして、種々、文部大臣、副大臣ほかにお尋ねをしてまいりたいと思います。
 その前に、ちょっと冒頭に一件だけ、今の文部行政に大変重要な教育基本法あるいは教育振興基本計画などを中央教育審議会、いわゆる中教審で検討をいただいていること、このことに敬意を表しますとともに、この中の委員の問題が先般参議院の予算委員会でも一部取り上げられましたが、衆議院においてこれが初めての機会かと思いますので、同僚委員の皆様方に一つ、これでいいのかということだけを提起したいと思います。
 すなわち、現在開催されております中教審の、もう三月、来週には答申というところに差しかかっているようでございますが、この重要な教育基本の問題を考えている委員会に、先日まで文部科学省事務次官であった小野元之さん、この方が、一月末に退官をしてもう二月早々からこの中教審の臨時委員に、これは文科大臣が任命をされるということでございますが、就任をされている。
 私は、小野前事務次官、大変有能な見識の高い、そして教育行政に通暁した立派な方だと思います。だれもがやはりそういう方に審議に加わってもらいたいと思う気持ちもわからないではない。ただしかし、この小野次官が、遠山文科大臣のもとで事務方のトップとしてこの件を中教審に諮問した側でございます。つまり、この問題はいかがですかと中教審に対して投げかけた、その側の事務方のトップ、小野前事務次官が、次官を退官するや否や、臨時委員ではございますが、今度はその中教審の委員で、いわゆる答申をつくる側に立ってすぐ審議に加わっているというのはいかがなものかと思いますが、これはなぜこうなったのか、簡単に説明願いたいと思います。
遠山国務大臣 中央教育審議会の臨時委員につきましては、特定の事項に関して学識経験のある者のうちから大臣が任命するということとなっているわけでございます。
 御指摘の小野臨時委員は、委員のお話にもございましたように、長年文部科学行政に携わってまいりまして、教育基本法を初めとする教育行政に通暁しているわけでございまして、中央教育審議会の審議の状況についても熟知をしているものでございます。一月十日に退官をいたしまして、事務次官としての役割としては諮問した側にあったわけでございますけれども、本人の持っている属人的な専門的かつ高い識見からの意見を継続的に聞きたいということで、二月一日付で任命したところでございます。
 審議会等の運営に関する指針におきまして、府省出身者の審議会の通常委員への選任については厳に抑制することとされておりますけれども、属人的にその者の専門的知識経験から必要な場合は、これは認められているわけでございます。しかも、それは正委員についてでございますし、臨時委員についてはその規定は当たらないわけでございます。
 もちろん、私も、通常の場合にはその決まりの精神を遵守するという精神でいくべきと考えておりますけれども、今般、小野氏の場合には、高度な専門的な知識経験ということにかんがみまして、任命をいたしたところでございます。
藤村委員 経緯はそういうことであったと。
 ただ、例えば我々の政党組織であっても、今私の隣に前代表もおりますが、いろいろな人事をするときに、この人は本当に適材適所で、大変この人を引っ張ってきたいというポストがあったときに、しかし、たまたま今、国会の特別委員会の委員長をやっている、委員長というのは中立的な立場で云々となれば、欲しい人材であっても、そこはやはり遠慮をするといいますか、次の機会にと考えるのが一般的であり、今文科大臣御紹介がありましたとおり、運営に関する指針で、府省出身の審議会委員への任命は厳に抑制するなどという指針がある以上、これはこのたびの人事はいかがなものか。
 調べていただきましたら、文科省長い歴史の中で、あるいは中教審、戦後から始まった長い歴史の中で、他に似たケースが一件だけありました。
 これは、昭和三十七年、当時、内藤誉三郎事務次官が次官に就任し、それから二年半で昭和三十九年七月に退官をされた。そのときに、実は事務次官在任中に「後期中等教育の拡充整備について」という諮問を行った当時の事務次官、この方が退官をして、実はすぐに、七月一日退官で七月七日、一週間後には今度はその答申を検討する側の中教審、専門委員でありますが、就任をされて、約一年審議をされた。ただ、この場合も、一年審議をされたんですが、最終的にこの諮問に対する答申が出たのはまだその先でした。その先一年以降でしたので、答申のときにはもう現には存在しなかった、専門委員でありますが、そういうことでございます。これ一件だけ、一生懸命調べていただいたので多分ほかにないんでしょう。
 小野さんが有能で見識があり、そして文部行政に通暁している、この点は認めます。その上で、いや、法律に反していないし、指針にも反していない、特別にはいいんだと書いてあるからいいんだというのは、いわゆる日本の教育行政のトップである遠山大臣の言にしては私はちょっといかがなものかと思います。
 河村副大臣の御意見もお伺いしたいと存じます。
河村副大臣 御案内のように、中央教育審議会、今大詰めを迎えておりまして、最終取りまとめをいただいているというところでございます。私も副大臣として中教審にも出させていただいて、その中に前事務次官が臨時委員として入られたということ、私は、この中教審の議論を最終的にお取りまとめをいただきたいという、大臣と一体でありますから、お願いをした立場から見れば、全体的な観点からこの取りまとめにお力をおかしいただける方が入られたということを感じたわけでございますが、行革等々、また公務員のあり方等々言われているときに、すぐ天下りの問題等も言われますが、そうした中でどうかと言われると、まあ、このタイミングは余りにも早過ぎたかなという思いが私もしないわけではありません。
 しかし、考えてみて、私の率直な意見を申し上げますと、これ以上のありがたい人はないと思いましたから、また、小野さんがこれまでやってこられた行政というものは、非常に公正にやっておられたと私は知っておりますから、そういう視点から、まさに適切なといいますか、日本の将来を考えた教育はこうあるべきだというお取りまとめを後ろから臨時委員としてしっかり支えていただける、得がたい人である、このような印象を持っておるわけでございます。
藤村委員 得がたい人であり、本当になくてはならない人である、だから任用したというのではお手軽過ぎると思います。
 中教審の審議会令によりますと、「委員は、学識経験のある者のうちから、文部科学大臣が任命する。」ということでありまして、特に、それはできるだけ民間の方の意見を広く集めるという趣旨も当然あるわけでございます。それが、この前まで文部科学省事務次官をやっておって、諮問をした事務方の責任者で、その人が今度は答申する側にすぐ回ってというのは、得がたい人材という、つまり属人的なことを今言っているのではなくて、やはりそういう肩書のある方をすぐに文部科学大臣が、いや、あの人はすばらしいからということだけの観点で選んではいけない。
 特に文部科学行政のトップに立つ大臣が、これは地方の教育委員会の人事とか、いろいろ全部その人たちは見ているわけであります。中教審の委員というのは、できるだけ民間から、そして学識経験のある者のうちからということであります。学識経験のある人はいっぱいいると思うんですよね。だから、それはやはりこういう人事をされたことは、特に教育をつかさどる文科大臣としては私はちょっと納得できない。最終答申が出るのはまだ来週のようでありますから、きょうにでも臨時委員をやめさせた方がいいんじゃないかな、そのことだけを申しておきまして、次の本題に入っていきたいと存じます。
 さて、今審議されようとしているのは義務教育費国庫負担法関係のことでございますが、この法律を審議するには常にやはり原点を確認しないといけない、このように思います。すなわち、憲法で、義務教育は保障され、そして無償である、こういうふうにされているわけであります。これは、さっき話題にしました中教審でも相当深く今、特に基本法の問題をやっているものですから、検討されているように聞こえます。
 この憲法の規定でありますが、この規定の主語は、「すべて国民は、」こういう主語でございます。これは発足当時、ですから昭和の二十二、三年ですか、のことでありまして、今この国際化時代の中で、日本の国内にはたくさんの外国人も住んでいるし、その子弟が教育も受けている。もちろん税金も払っているわけであります。となると、この「すべて国民は、」という主語のもとに今の保障されている、無償であるなどということは、実際、しかし運用は違うと思うんです。
 在留外国人の子女について、現在これはどういうふうな解釈のもとでの義務教育があるのか、この点をお答え願いたいと存じます。
河村副大臣 委員御指摘のとおり、日本国憲法の第二十六条に、「すべて国民は、」こうなっておりまして、法律の定めるところによって、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有して、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、こう定めてあるわけでございまして、そして、義務教育は無償とする、こうなっておることは御存じのとおりでございます。
 そこで、ここで言う国民ということに対する解釈は、日本国籍を有する者である、こういう解釈でありますから、日本国内に居住する外国人について、その子女を就学させる義務を負うものではない、このように解しておるところでございます。しかしながら、我が国が批准をしております経済的、社会的、文化的権利に関する条約、いわゆる国際人権規約Aでございますが、それと、児童の権利に関する条約等に基づきますと、希望する外国人子女に対しては無償の義務教育の機会を保障することがこれによって求められておるということでございますから、我が省としても、各市町村の教育委員会に対しましては、外国人子女の就学の機会を確保するという観点から、希望する外国人子女の受け入れにつきましては日本子女と同様に公立の小中学校へということを指導いたしておるところでございます。
藤村委員 人権条約とか子どもの権利条約などの関連でそのように図っているということでございました。
 そして、義務教育は、今度は教育基本法によりまして、いわゆる保護者に対してその子女に九年間の普通教育を受けさせる義務を課している。この規定も主語はやはり「国民は、」でございます。そうすると、今の御説明では、では外国人籍の子女に対しては、これはその保護者に対しての義務はない、このように考えてよろしいんでしょうか。
河村副大臣 これも憲法の精神にのっとって、教育基本法がそこのところ、あるわけでございまして、「国民は、その保護する子女に、」ということでありますから、国内に居住する外国人については、先ほども申し上げましたように、就学させる義務は負わないということでありまして、外国人の子女の方々に対しては希望によってということになっておるわけでございます。
 しかし、それはやはり周知徹底されなきゃいけないことでありますから、その時期の方々に対しては、こういう形で公立の義務小学校は、入学を希望されれば我々はきちっと受け入れますということの就学案内をきちっと出すようにということを、市町村教育委員会に指導いたしておるところであります。
藤村委員 河村副大臣もよく御存じのブラジルの日系の方々が今たくさん日本に出稼ぎという形で来られている。三十万人と言われております。この子弟がやはり日本の学校に行っているけれども、いろいろな問題がある。これはこれで対応をしないといけないんです。大ざっぱな数字でいいますと、義務教育段階で学校に通う人が三割ぐらいしかいないそうであります。そして、十八歳ぐらいになって、結局学校にも何も行かないような状況で、少年院にいる数がまた非常に多いという現実がございます。そういう意味では、教育基本法のことが審議されている中でも、今取り上げました「国民は、」というこの主語のことは、河村副大臣もメンバーにいつも参加されているようでありますから提起されているかもしれませんが、この辺の検討はぜひ加えていただきたいと希望を申し上げたいと思います。
 さて、これはいつも毎回多分確認をしていることだと思いますが、義務教育について、憲法や教育基本法にのっとって国が担う基本的な責任とは何と何と何か、幾つか基本的な部分をまず確認したいと思います。
河村副大臣 義務教育について、一番の根幹は、国が憲法及び教育基本法にのっとって全国どこでもあまねく一定水準の教育を無償で受けられるようにする、このことが国としての重要な責務であるというふうに考えておるところでございます。
 この義務教育の実施主体というのは市町村、いわゆる地方公共団体でございまして、今地方公共団体との役割分担も問われているところでございますが、国としては、まずは教育制度の枠組みの制定といいますか、いわゆる教育制度の根幹にかかわる問題の制定の部分、それから学校の設置基準であるとか学習指導要領等の基準の設定、それから義務教育費の国庫負担制度等の地方公共団体に対する財政支援をすること。一が教育制度の枠組みの問題、二が学校の設置基準あるいは学習指導要領の基準の設定の問題、第三が今の財政支援の問題、もう一個、四番目としては、学校の管理運営に対する指導、助言、援助ということが、国として、全国的な、まさに申し上げた、全国あまねく一定水準の標準の教育が無償で受けられるという制度を堅持する上から、さらに教育の機会均等ということも踏まえながら、この基本的な認識の上に立って教育の推進を図っておるということでございます。
 これからも、国として果たすべき役割というものはきちっと堅持して、その役割を果たしていかなければならない、このように考えております。
藤村委員 原点に戻り、国としての役割を確認していただいたところでありますが、今回の法改正は、今おっしゃった三番目の財政的な部分に当たると思います。その部分について一部改正をしようという案件だと思いますが、そもそもの経緯というのは、これは確かに割に長い問題を抱えて議論してきたことではありますが、今回の法改正に直接つながるのは、多分、昨年の五月二十一日でしたか、経済財政諮問会議において、これは「総務省は」という主語になっていますが、「地方財政の構造改革と税源移譲について」の試案を公表し、そして一に「国から地方への税源移譲等により国税と地方税の比率を一対一とすること」、二に「その際の税源移譲に伴う五兆五千億円の原資については、国庫支出金の縮減により捻出することを提案」と。これを受けて、義務教育費国庫負担金に手をつけないわけにはいかないという発言を総務大臣会見などでもされている。ここが今回の直接的な発端ではないかと思います。
 そこで、今回の発端、経緯から見ますと、国と地方の税源を、国税、地方税の比率を一対一とする、今は多分国が二、地方が一、それを大ざっぱに言いますと一対一までにするんだ、その目標はそれは了としても、その際に、税源移譲に伴う五兆五千億円の原資というのを今までの国庫支出金の縮減で捻出ということでありました。
 五兆五千億円というのは大変大きな額であります。今回、この義務教育費国庫負担関係では二千三百億円弱ですね。五兆幾らからするとほんのわずかではございますが、その他の部分はどういうふうに、他の省庁を含めて、いわゆる国庫支出金の縮減がなされているんでしょうか。文部科学省としてどのように認識しているんですか。
河村副大臣 委員の御指摘のとおり、片山大臣の方からといいますか、総務省の「地方財政の構造改革と税源移譲について」という試案が出されて、そういう方針が打ち出されたわけでございます。これは五月二十一日だったんですが、これに基づいて六月二十五日に閣議決定をいたしたものが、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二というものであります。
 この方針によりますと、国庫補助負担金と地方交付税と税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討して、本年の六月までに改革案をまとめる、こうなっておるわけでございまして、その際に、国庫補助負担金を「改革と展望」の期間中の平成十八年度までに数兆円規模で削減を目指す、こういうふうになっておるわけでございます。
 今回、この国庫補助負担金の整理合理化をどのように進めていくかということについては、これは三位一体の改革の一環として政府全体として検討をいただくということになっておりまして、文部科学省としては、この義務教育費国庫負担金が、必要な見直しをやりながら、さらに、これはそうした財源論だけではなくて教育論としてもきちっと議論をしなきゃいかぬということをこれまでも言ってきたわけでございます。
 そうした観点で、今回、義務教育費国庫負担金の部分に対する二千二百億でございますが、今回はその三位一体の中の一つの芽出しといいますか、頭出しとして、総額で五千六百億が削減をされる方向、今回法案にもなっておるわけでございますが、そうなっております。文部科学省の義務教育費国庫負担金二千二百億、ほかに公共事業関係の補助金の負担金を二千六百億、それから奨励的補助金の削減というのが一千九百億ございます。これは一部文部科学省の中にも含まれておると思うわけでございますが、さらに社会保障関係費の補助金も百六十億あって、これが五千六百億という形でございます。
 これは今後、今委員も御指摘ありました税源移譲の問題が当然入ってこないと本格的な縮減にはつながっていかないだろう、こう思っておるところでございまして、国全体でこの問題を、三位一体の中で政府全体として考えていく課題である、このように我が省としては認識をいたしておるところであります。
藤村委員 最後の方でおっしゃった、税源移譲が伴わないとということだろうと思います。しかし、今、伴わない中で、二千二百数十億ですか、文科省が芽出しだといっていち早く決めてしまうのはどういうことか。これは、遠山文科大臣も相当頑張ったとは聞いておりますが、どうも他省庁に比べて、教育という本当は最も投資が必要なあるいは国にとって重要な部分を、何か一つのモデルにしてしまっているような印象がぬぐえないのでございます。
 このことはもう幾つか多分言われていると思いますので、ちょっと次に行きます。
 そこで、義務教育費国庫負担の制度自体はそもそも、さっき副大臣もおっしゃった教育の機会均等、日本の隅々までちゃんと、いわゆるナショナルミニマムというんですか、そういうものが達成されるということであろうと思いますが、一九七九年に発行された「ジャパン・アズ・ナンバーワン」、これは結構たくさん売れた本で、たまたま私どもの広中和歌子参議院議員が翻訳をしておりますが、エズラ・ボーゲルですか、あの当時に、日本の特に義務教育が非常に世界的に水準が高いとか良質であるとかいうことを褒められていたわけです、高等教育は大分けなされたんですが。
 その当時、つまり、今からいうともう二十年以上前の義務教育レベル、非常に水準の高さを言われておりました。それから二十年あるいは四半世紀、二十五年ぐらいたった今日、これは地方分権推進会議の「事務・事業の在り方に関する意見」の中で述べられているかと思いますが、教育について、国の責務として国民への最低保障は先進国並みに達成されたとしている。ここへ来て達成されたとしているんですが、むしろ二十年前、二十五年前はもっとよかったんじゃないかと思うんです。
 今から四半世紀前と比べて、果たしてよくなっているんだろうかということを考えるとき、例えば学級編制四十人というのは、これは例の三十人学級の議論で相当たくさんやりましたが、世界水準と言っていいんでしょうか。あるいは、今地方の公共建物は非常にきれいになったりしておりますが、どうも学校がこのところ一番汚いんじゃないか。建てかえ時期に差しかかっているのが相当あるわけですけれども、トイレなんかの問題はいつも取り上げられます。これは果たして、ナショナルミニマム、つまり最低保障として先進国並みに達成されたと言えるんでしょうか。御感想を聞きたいと思います。
遠山国務大臣 エズラ・ボーゲルさんは私の友人でございまして、あの本が出たときは大変衝撃的でございました。
 あそこで明らかにされたことは、日本の義務教育の水準は極めて高い、均質的である、それから国が学習指導要領というものを定めて一定水準を保障している等々の、日本の成長の秘密のようなものが明かされたと思います。それをもって諸外国は日本の義務教育システムというものを猛勉強されて、あのアメリカにおいてもイギリスにおいても、さまざまな点で日本の義務教育のいい点を導入され始めていると思います。その面でいえば、日本はその後そういう水準を維持してまいっておりますが、各国が非常に伸びてきている、そういう段階において、日本の義務教育というのは今のままでいいのか、あるいは今で十分世界水準のトップを走っているかといいますと、私は、必ずしもそう油断していてはよくないという面があると思います。
 ただ、今委員が御指摘になりました四十人一クラスの標準の件でございますが、クラス編制の標準の数というのは四十でございますけれども、教員一人当たりの児童生徒数の比較でいきますと、今やっております第七次の定数改善が達成されました後には小学校が十八・六人でございまして、アメリカ、ドイツと並ぶ、あるいはそれより若干よくなるわけでございます。それから、中学校につきましても、一人当たり十四・六人でございまして、これはアメリカと同じ、ドイツよりはよくなるということでございます。クラスの標準という数値にとらわれますといろいろな議論もあるわけでございますけれども、そういうふうに次第次第に、私どもとしても義務教育の充実について力を注いでいるわけでございます。
 同時に、委員も御指摘になりましたように、国民の生活水準も大変上がってまいっておりますし、各国における義務教育のいろいろな面での条件整備も整っている中で、これで本当に日本がいいかとなりますと、ナショナルミニマムのスタンダードというのは時代によって向上していくわけでございまして、その意味では、地方分権推進会議の一つの考え方というのは必ずしも、私はもう少しよく精査した上で述べられるべきものというふうに考えております。
藤村委員 ですから、達成されたとするには最もおぼつかないと思われるのは、やはり教育に対する公共の支出というんでしょうか、国や地方ですね、これが、特に今初等中等教育段階においても、日本は決して欧米先進国並みにと誇れるような数字ではない。いわゆるOECDの比較、これは九九年文部省資料もありますが、必ずしも全体として、日本の初等中等教育に対する公的支出が、他の先進国よりうんと高いというよりは、むしろ平均より低いわけでありますから、ここが基本になって、それでナショナルミニマムが先進国並みに達成されたと見るのは、私はちょっと誤解があると思いますので、ここはそういう主張をぜひ大臣も引き続きしていただかないと、現に、あの学校の環境からすると、今や本当に地方の公共建物が非常にきれいになっているのに、学校だけはまだ残されているな、そういう思いはそれぞれ実感されていると思います。
 そこで、具体的な法案の中身について一部伺います。
 今回は、公務災害補償基金負担金等というところと、それから共済費長期給付、これが大きいんですが、この部分についての一般財源化を意図している。過去にも旅費や教材費等、幾つか一般財源化をされてきた歴史がございます。これが一般財源化されて、ちゃんと旅費や教材費が措置されているのか。この現状はいかがでございましょうか。
矢野政府参考人 過去に一般財源化されました旅費、教材費等についての実際の予算措置状況はどうかというお尋ねでございますが、まず、旅費につきましては、一般財源化されました昭和六十年度以降、支給実績を踏まえた交付税単価により積算していることから、必要な地方交付税措置が行われ、おおむね措置額に見合う予算が確保されているところでございます。
 また、教材費でございますが、教材費につきましては、昭和六十年度以降、実績を踏まえた交付税措置が行われているところでございますけれども、直近の調査、直近のデータによりますと、平成十二年度交付税措置に対する地方公共団体における予算措置状況は、約九割という状況になってございます。
藤村委員 旅費の方がおおむね、教材費の方が九割ということで、一般財源化することは、すなわちそれよりは下がる、さっきのナショナルミニマム論ではありませんが、下がるわけであります。ですから、一般財源化ということに対してやはり相当慎重に考えないといけない。これは実態が下がっているわけですね、過去の例でいいますと。
 そういうことではありますが、今回の一般財源化、地方財源措置をとられている。これは総務省になるんだと思うんですが、財務と総務の申し合わせか何かで、平成十五年度限りの暫定措置というふうにされておりますが、十六年度以降いかなる対応を今検討しているのか、お知らせいただきたいと思います。
林政府参考人 お答えを申し上げます。
 今回の一般財源化に当たりまして、地方財源を確保する必要があったわけであります。今回、義務教育費国庫負担金の一部につきまして一般財源化されることとなったわけでありますが、地方団体におきましては引き続き当該部分につきましての財源を確保する必要があるということで、御案内と思いますけれども、二分の一は地方特例交付金によりまして、残りの二分の一につきましては地方交付税の増額によりまして、地方団体が必要とする財源を完全に補てんする、こういう措置をとったわけであります。
 ただ、今回のスキームは、当面、平成十五年度の芽出しに係る暫定措置として設定をさせていただきました。今回、一般財源化することとした共済長期負担金等につきましては、平成十六年度以降もこのスキームにより財源措置を講ずることを予定いたしているところでございます。
 ただ、先ほど副大臣の方からお話がございましたが、今後、三位一体改革の中で相当規模の国庫補助負担金の見直しを行うこととされておりまして、その趣旨は、地方に対する国の関与を縮小し、地方の権限と責任を拡大しながら、地方の自立的な財政運営を保障するような、国と地方のあり方を見直していこう、こういう趣旨で行われるものでございまして、十六年度以降におきましても国庫補助負担金の見直しが行われることになっているわけでありますが、そういう場合の財源措置につきましても、この基本方針に沿って改めて関係省庁間で協議して定めることとなるものではありますが、総務省といたしましては、今回のスキームが、今後の三位一体改革の中で、国庫補助負担金の廃止、縮減に関連して税源移譲が行われるまでの間の基本的な考え方になるものと考えているところであります。
 今後、このような措置を十六年度以降も講じながら、この規模が相当程度に達し、国、地方を通じた税制の議論を行えるようになりました時点で、税源移譲を含む税財源配分の見直しにつなげてまいる、それまでの間の暫定措置と考えているところでございます。
藤村委員 では、今おっしゃったのは、この義務教育費国庫負担制度だけでなくて、その他のそれぞれの役所の国庫負担金などの縮減に当たってこの仕組みを当面とっていこうと。
 この仕組みというのは、実は、今ちょっときちっと述べられなかった点は、今回、一般財源化の影響対象額は二千三百億円とすれば、それをちょうど半分半分にして、片っ方は地方特例交付金、片っ方は地方交付税、その地方交付税の方の部分について、金がないからという理由かもしれませんが、交付税特会からの借り入れを、国が四分の三、地方が四分の一。ということは、全体の八分の一が、実は地方の借金に残るという仕組みであります。つまり、八分の七は国が手当てして、八分の一は地方の借金に残していく、五年後から返済が始まるような。
 地方にこうして借金を残させる仕組みを、この件以外に他の全体にまたがってやろう、そういうことでよろしいんですか、今の御説明は。
林政府参考人 今後見直しが行われます国庫補助負担金の一般財源化に伴います財源措置のスキームとしては、義務教育費国庫負担金の見直しのみならず、他の分野におきます補助負担金の見直しにつきましても、私、先ほど申し上げました基本的な考え方を踏襲しながら、総務省としては対応してまいりたいと考えているところであります。
 なお、御指摘いただきました財源措置のスキームでありますが、二分の一は地方特例交付金により、残の二分の一につきましては、当面、交付税特別会計におきます借入金によりまして十分の十の財源を確保することといたしておりますが、その交付税特別会計におきます借入金の元利償還時におきまして、その四分の三は国が負担をするということにいたしております。
 したがいまして、御指摘ございましたように、トータルいたしますと、国が今回の財源措置に伴います地方の負担分につきまして八分の七を措置し、八分の一につきましては地方団体が将来元利償還時に負担していく、こういうことになるわけでありますが、これは先ほども申し上げましたが、三位一体改革の中で、税財源移譲等による財源措置が講じられるまでの間のつなぎとして暫定的に講ずることとした措置であり、やむを得ないものと考えているところでございます。
藤村委員 三位一体はまだ単なる標語で、見出しでありますから、実現するかどうかわからないというところで言っているかもしれませんが。
 もう時間がないので、一つだけ、最後に遠山文部科学大臣にお伺いします。
 経済財政諮問会議に提出された「見直しについて」の中で、義務教育費国庫負担制度の対象経費は「国が真に負担すべきものに限定」とされています。ですから、まだ今から見直しをするという姿勢で、基本的考え方は「国が真に負担すべきものに限定」としている。この「真に負担すべき」ということを少し解説をしておいていただきたいことと、しかし、国が真に負担するべきものは今までの二分の一国庫というものを堅持する、そういう考えがおありになることを必ず述べておいていただきたいと思います。
遠山国務大臣 義務教育費国庫負担制度そのものは見直しすべき点があるということで今回取り組んだわけでございますけれども、国が負担すべきものとしては教職員の給与費ということでございまして、これはしっかり堅持をするとともに、二分の一国庫負担ということも、私としては、その負担制度の目的に照らして、今後ともしっかりとやっていくべきものと考えております。
 対象経費につきましては、私としては、今維持をしているものは当然やるべきものだと考えておりますが、三大臣合意という件もあります。ただ、考え方としては、教職員の給与費については、しっかりと守っていくということは考えているわけでございます。
 制度そのものにつきまして、地方分権という角度からは、負担金を国が負担をするということでありますよりも、むしろ義務教育のさまざまな各地域における展開が弾力的になるように、そういった面の制度化、地方分権化ということについて大いに今回も協力をしているわけでございます。そのような姿勢でやっていきたいというふうに考えております。
藤村委員 終わります。
古屋委員長 山口壯君。
山口(壯)委員 山口壯です。
 きょうは、義務教育費の国庫負担金の取り扱いについて、ぜひ遠山大臣と一生懸命議論させていただければと思いますので、よろしくお願いします。
 まず、この義務教育費の国庫負担金の取り扱いということについて、十二月十八日ですか、片山総務大臣と塩川財務大臣、そして遠山大臣との間で合意がなされている。私、一番の問題点は、教育の改革について、人件費の削減ばかりに目が向いて、本当に本質のことを議論されていない、ここだと思うのです。もっと改善すべきところがあるはず、お金のことが先に出ている、ここが一番の問題だと思うのです。教育をライフワークとしてこられたはずの遠山敦子さんが、ここで片山の虎さんと塩じいにやり込められたんじゃ、最後に大きな失点をしてしまうんではないか、そういう意味で、私は心から遠山大臣に頑張っていただきたい、まだ遅くないと思うわけです。
 今回、この十二月十八日の文書を見ますと、これはその後の十二月二十五日の官房長官提出資料というものにも全く同じ文言が出ていますけれども、まず、共済長期給付と公務災害補償にかかわる部分を一般財源化ということで合意してしまっているわけですね。しかし、国会は国権の最高機関ですから、別に内閣の中で三方で合意されても、我々がここでしっかり議論してこのことをもう一度考え直すということもあり得るわけですね。
 のみならず、一番問題なのは、私が思うに、この三ですね。「退職手当、児童手当等に係る部分の取扱いについては、関係省庁間における継続検討課題とし、平成十六年度予算編成までに結論を得る。」と。このことは、結局、残る退職手当そして児童手当についても全部含めて一般財源化をするということで文部大臣はオーケーをされているというふうに読めるわけですけれども、その解釈で正しいですか。
遠山国務大臣 義務教育費国庫負担金につきましては、義務教育に関します国と地方の費用分担のあり方を見直すということで、御指摘の三大臣の合意にありますように、平成十五年度から共済長期給付それから公務災害補償に要します経費について一般財源化することとしたものでございます。
 御指摘の退職手当それから児童手当の取り扱いにつきましては、三大臣合意におきまして、関係省庁間における継続検討課題ということでございまして、平成十六年度予算編成までに結論を得る、ことしの暮れになると思いますが、それまでの間にしっかりと議論をして結論を得るということでございまして、我が省としましては、今回の一連の政府としての検討のプロセスにおいても明らかにしましたように、義務教育費国庫負担制度について、必要な見直しを行いながらも、義務教育の水準を確保するために国として必要な責任というものはしっかりととりたいということで対処してまいっているところでございまして、これからの検討ということでございまして、今委員がおっしゃいましたようにもう認めたとかそういうことではございません。これからもしっかりと、そういう基本的な考え方に基づいて、検討の中に加わっていきたいというふうに考えております。
山口(壯)委員 昭和六十年度に教材費と旅費がまず一般財源化され、そして平成元年に恩給費が一般財源化され、そして今度、災害補償と共済が一般財源化されようとしている。そして残りの退職手当と児童手当が一般財源化されると、これは戦前の、昭和十五年のレベルにまで、もう一度振り出しに戻るということですね。
遠山国務大臣 大事なことは、日本の義務教育制度の根幹をしっかりと守って、水準を維持だけではなくて向上させていくことだと考えております。
 諸手当という角度から見ますと、今おっしゃいましたような、戦前におきましては給料、諸手当、退職手当まで、昭和十五年の旧義務教育費国庫負担法において国が見ていたということになります。
山口(壯)委員 戦後、昭和二十八年に今の義務教育費国庫負担法が制定されてから、あるいはその以前から文部省のあなたの先輩が一歩一歩築いてこられたこの義務教育費の国庫負担制度、今、年末までに結論を出す予定だということですけれども、今までの大臣の答弁を聞いて、児童手当、退職手当、このことを含めて、もう既に、あと骨と言われるのは給与の本体のみということは、ここにおられる委員はすべて間違いなく解釈できていると思います。まだ結論が出ていないというのは、ただ単にごまかしにすぎない。どうも小泉内閣の大臣というのはみんなそういうごまかしが好きなのか、やはりここは、我々は国の根幹の国策を議論しているわけですから、そういう意味では、遠山大臣、せっかく大臣になられているんですから、やはりここは、役人の答弁ではなくて、政治家としての答弁をぜひともやっていただきたいと思うんです。
 今までライフワークとしてこられた教育、その教育の問題について、大臣になった途端に今まで先輩が築き上げられてきたものを全部ほごにしてしまうということでは、遠山敦子の名前が廃るんじゃないですか。
遠山国務大臣 きょうは挑発に乗らないように心構えをして答弁に立っております。
 大事なことは、日本の教育水準をしっかり守っていく、私は、単に守るよりは、本当にこれから向上していかないと日本の将来はないというふうに考えております。そのことから、人間力戦略ビジョンというのを昨年の夏に出しまして、単に義務教育だけではなくて、小学校、中学校、高等学校、大学、そして生涯学習も含めて、これからの日本を担うしっかりしたたくましい日本人を育てていくためにどうしたらいいかという角度から総合的な戦略を立てたところでございます。これをしっかりやっていくことが、私としては、これからの日本にとって基本だと考えております。
 先ほども申しましたように、年末までの間に三大臣の検討というのがあると思いますけれども、私としては、その基本の、国として守るべきそのものについては絶対に後へ引かないという覚悟で議論に加わりたいと思っております。
 今の段階で、ではおりたのではないか、それは、私は、そういう見方というのは、それはむしろ委員の方がそのように解釈されるということは、何かそのように導いていこうとされているかのように思うわけでございまして、それよりはむしろしっかり頑張ろう、一緒に頑張ろうというお話をお聞きしたいと思っております。
山口(壯)委員 年末までに小泉内閣があるかどうか私は知りませんけれども、そのときに今おっしゃったことをしっかり検証しようじゃないですか。多分、間違っていないでしょう、私は。
 このことについて、私は国の姿勢の弱まりということを指摘しているわけです。根幹がどうのこうのじゃないんです。その方向を議論しているんです。微分をすればこれはマイナスになっている、そのことを議論しているわけです。そして、塩じいにしても片山の虎さんにしても、彼らは財政の観点なりあるいは地方分権の観点から言っている。あなたが教育の担当の大臣として体を張ってこれを阻止すべき立場にあるんです。それをどうしてできないのか。もしもそれができないんだったらあしたからやめられた方がいい。そういうことを我々は、ここの教育を担当する我々の院の場で議論していくことが本来のあるべき姿じゃないでしょうか。
 まさか、遠山大臣、今回のこの合意、あなたはプラスの成果だと思っておられるんじゃないんでしょうね。一説によれば、小泉総理にドンと机をたたかれて、文部科学省の分何とかしろと言われて、これをすごすご引き下がってやっていたということも聞くわけです。体を張ってでも阻止しなければいけない、それが政治家だと思うんです。そういう意味では、遠山敦子さんには、ひょっとしたらまだ役人の枠組みというものが、マインドセットというのが抜け切らずに今そこにおられるのであれば、我々政治家としては極めて物足りないことになるわけですね。
 遠山大臣、先ほど私がお聞きした今回の措置、まさかプラスの成果と思っておられるんじゃないでしょうね。お答えを。
遠山国務大臣 教育の本質論ということではなくて、財政論あるいは財源論から議論されて出てきたのが地方分権推進会議の議論であり、かつまた経済財政諮問会議のほとんどのメンバーがそういう角度から御議論されている中で、私としては教育というものの大切さを訴え、その流れを変えたのが昨年の八月末の経済財政諮問会議の一連のプロセスであると思います。どうぞ、その議事録を読んでいただきたいと思います。
 私としては、むしろ財源論という矮小化された議論ではなくて、本当に教育というものをしっかりやっていくことが日本の将来につながるということで出したあのビジョン、そこで流れを変えたと思っております。総理もあのときは議論をすべてお聞きになりまして、最後に大事なことを何かおっしゃるのかなと思いましたら、教育は大事だよね、奨学金なども十分これからやろうねというお話でございました。私はあのときに流れは変わったと思っております。
 決して、私は閣僚として、内閣の一員としてその方向性に協力するということはあり得ても、私が守るべき――しかし、これは私個人ではなくて、この職にあの時期におられた方がやるべき当然のことだと思いますけれども、いわばその流れを変えるための知恵を絞った一連の作業をしたというふうに考えております。
 その結果について、コップの中の水が九九%、一%少なくなったかもしれません。その一%も、必ずそれは地方においては負担されるわけでございまして、それを国がバックアップするわけでございます。それについて、一%減ったな、基本がなくなったではないかという批判と、九九%は残っているではないか、むしろそこのところをしっかり守っていこうよという議論と二つあると思います。そのことを申し上げたいと思います。
山口(壯)委員 プラスだったとお考えですか。
遠山国務大臣 今の答弁でかえさせていただきます。
山口(壯)委員 ということは、マイナスだけれども、今そこにこのタイミングでいるからしようがない、こういうことですね。
遠山国務大臣 今私どもがこの委員会で議論して、そしてこれからどうしようかということを御議論いただいているのがこの会議の本質だと思っております。
 御提案した法改正といいますものは、その大略が既に閣議決定で決まっておりまして、そのことに基づく法案でございます。これは日本が今抱えております大きな問題を解決するのに、政府として構造改革をどう考えていくか、地方分権をどう進めていくかということにおいて大きな議論が行われた上で一つの結論が出された方向だと思っております。その角度から、我が省としては、守るべき根幹というものは絶対に譲らないという覚悟で協力して今日の新たな法制度というものについて御提案をしているわけでございます。
 それが勝ったか負けたかとか、それがプラスであるかマイナスであるか、そのような議論で私はこの問題に取り組むというのは、同じように、財源論で物事をはかろうとする行き方と似たようなことではないかと思います。
山口(壯)委員 今の答弁というのは、私は、文部科学大臣としての職責を果たしていない答弁だと思いますよ。財政の観点から、あるいは地方分権の観点から閣議で何をお決めになろうと、この国権の最高機関である国会ではそのことは関係ないことです。
 地方分権を進めるということであれば、では最終的に国の役割として残すものは何か、こういう議論にかかわってくるわけですね。例えば外交あるいは防衛、このことがよく挙げられるわけですけれども、それが国の最終的に地方分権を進めた場合にも残る議論ということはだれも異論がない。今地方分権の中で、例えば地方の自主性にこの義務教育の問題も任せていきましょう、外交とか防衛では、そういうことは絶対に起こらないわけです。例えば、あなた方は北朝鮮に近いから、あなたのところは分担金を多くしてくださいね、そんな議論は絶対起きない。
 ということは、教育は国の根幹にかかわる役割ではない、こういうふうに文部科学大臣は認識しておられるのか、そういうことになろうかと思うんですが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 教育は、私は、国家の将来を左右するものだと考えておりまして、日本が活力ある国家として今後とも発展していきますためには、国家百年の計であります教育の振興が一番大事だと思います。一番回り道のようで、一番力強い日本の再建策というのが、教育の強化であろうと思っております。
 それは、国民の教育を受ける権利を保障し、そして、教育の機会均等と全国的な教育水準の維持向上に努めることによって達成できるわけでございまして、その意味で、教育というものは、国家にとって一番大きな責任を持つ分野だというふうに考えております。私としては、外交、防衛に並ぶ国家の一番大事なこととして教育を挙げたいと思います。
 今日、委員ももちろん御存じだと思いますけれども、諸外国におきましては、それぞれの国の元首たち、大統領なり首相たちが、国家にとって一番大事なのは教育であるということを、ブレアさんもそうであり、あのブッシュさんにおいてもしかりであり、各国のトップの人たちは、繰り返し教育の重要性についてきっちりと発言しておられます。
 総理も教育の重要性について述べておられるわけでございまして、私としては、その意味からいって、教育の重要性、国にとっての一番の基本であるということにおいて、日本も当然ながらその姿勢というのを今後も貫いていくべきだというふうに考えております。
山口(壯)委員 言っておられることとやっておられることが全く違っているんじゃないでしょうか。小泉総理も教育は重要だと言っておられるようですけれども、米百俵どころか、うそ八百じゃないですか。
 教育は重要だと言いながら、そして、国の役割として教育というものが外交や防衛と並ぶ非常に大事な役割と言いながら、やっていることは、一般財源化を、塩じいと虎さんに合意させられてしまった。これじゃ、体を張ってやっているということにはならないんじゃないでしょうか。教育は国づくりの根本だ、これについては、ここの委員の間で全く異論はないと思います。しかし、国づくりの根本を一般交付税化して地方に渡してしまって、それが道路に使われようが、あるいは橋に化けようが、それは地方の自主性だからということであれば、国づくりの根本を忘れた発想だ。
 今回のことについては、確かに確保されるんでしょう。しかし、この一般交付税化、例えば退職金の話、いろいろ残っている。そういうものについて全部それを認めてしまうと、先ほど九割という話もありました、当然、本来教育に回るべきものが回らないということが起こり得るわけですね。
 これは、私の地元の学校の教材費というのを、ずっと私の仲間と一緒に調査したものですけれども、例えば、山崎小学校というのは四二・七%しか、交付税単価による教材費が、本来これだけあるだろうというものに対して、二〇〇一年度に使われたものというのがこれしかない。確かに、一〇〇%以上の学校もあるんです。だけれども、低いところでは、例えば、染河内小学校なんというのは二七・四%、三方小学校は三一・九%、波賀町の野原小学校が二二・六%、波賀小学校が二七・一%。私のところに全部で百五十四校、公立の小中学校がありますから、今これを全部挙げると、そういう低いパーセンテージのところがたくさんある。
 私も、実は、百五十四校のうちの百二十校、分会回りということできっちり懇談させてもらって、現場のことは非常によくわかっているつもりです。だけれども、この本来使われるべきお金が使われていない。全国ならして、ほぼ九割、あるいはほぼ使われているという議論は、地方それぞれをとってみれば、物すごいでこぼこが出ているという議論に取ってかわるだけの力を持っていない。
 この狭い日本の中で、たまたま何々町に生まれた、たまたま何々市に生まれた、そういうことで教育に違いがあるようじゃ困るわけですね。あるいは、これから国の支出のかげんが弱まって、要するに公立学校のレベルの低下というものにもつながりかねない議論を含んでいるものですから、私はここで力を込めて言っているわけです。
 すなわち、貧富の差が学力の差になってはいけないわけです。あるいは、貧富の差がその人の将来の可能性の差になってもいけない。すべての人が同じチャンスを与えられるように、結果はわからない、だけれどもチャンスは同じ、そしてだれも取り残されることがないように、これが我々の目指すべき社会のイメージだと思うんです。
 だけれども、今遠山大臣が言っておられたのは、ただ単に塩じいの代弁でしかない、ただ単に片山虎さんの代弁でしかない。文部科学大臣の気持ちではないはずなんですね。そういう意味では、この一般交付税化というのは、もう玄関のところで極めて間違った議論だと私は思うんです。
 だから、そういう意味では、我々が教育というものを大事に考えれば考えるほど、今回の義務教育費の国庫負担制度の見直しというものは私は間違っていると思うんですね。人件費の削減のみに焦点が当たって、本来の本質が議論されていない。今の教育ではどこが問題か。義務教育費の国庫負担が一番の問題じゃないはずですよ。今、まるで本質がそこにあるような言い方をされたから、私はあえて言っているんです。
 例えば、今の教育で、多分、突き詰めていけば、大学入試のあり方とか、そういうことに着くんでしょう。大学入試の状態が今のままでは、小中高で幾ら変えようと思っても変えられないし、限界があるわけですね。あれは夏でしたか、河村副大臣の地元の山口大学をみんなで視察させていただいて、そこでアドミッションコミッティーというものを設けて、いわゆるアメリカに近い入学選考のあり方というものを見ましたけれども、あれは一つの考え方ですね。だけれども、そういうことを議論せずに、義務教育費の国庫負担で構造改革が成り立っているんだ、そんな小泉さんみたいなまやかしの答弁はやめていただきたいと思うんです。
 もう一度答弁をお願いします。
遠山国務大臣 私も、すべて日本の国民たちが、みずからの地域に用意された学校に通って、そして、すぐれた内容の教育を受けられる、これが基本だと思います。その意味では、小学校では九九%の子供たちが公立学校に通い、中学校では九四%でございます。私学は私学でそれぞれすぐれた教育をなさっていて、これはもう大いにやってもらったらいいと思いますけれども、公立の学校が仮に質を低下させたら、私は、日本の将来というのは大変なことになると思うわけでございます。
 その意味で、公立学校の質を確保していくということは、我が国にとって一番の基本の問題の一つであるわけでございます。そういうことから、委員の力説なさる点も、もうほとんど共感することばかりでございます。
 ただ、今回提案している法律で内閣ないし政府に協力した面もございますけれども、本質においては譲っていないわけでございますし、また、それに必要な一般財源化した部分の手当てというものも、先ほど総務省からお話ございましたように、手当ても十分しているわけでございます。それは私はちゃんとやるべきだと思います。
 同時に、御存じのように、大学改革あるいは初中教育におきましても、学力向上のための総合的なプラン、これは別途、一般会計の予算で今回はさまざまな施策を展開いたしておりまして、先ほど申しました人間力戦略ビジョンに基づきますいろいろな要求に対して財務省の方もこたえてくれておりまして、そういうことを総合的に考えて、私としては、教育の質の向上というものに誠心誠意取り組んでいるところでございます。
山口(壯)委員 大臣は根幹においては譲っていないというふうにおっしゃるわけですけれども、先ほど私指摘しましたけれども、もう一度これは最後に指摘しておかなきゃいけない。
 今、公務災害補償と共済費について今回外して、そして、あと大きいところでは児童手当と退職手当が残っている。これは年末までにと言われるけれども、もうみんなここにおられる人は、それがもうほとんど結論を見ているということは、だれも間違いがない。そうなってくると、そのもともとの形、だんだんふえてきて、だんだん減っていく、そして丸裸の給与だけになった時点というのは、昭和十五年の前の段階に、戦前の、昭和十五年のさらに前の段階に戻るんだ、ちょうど満州事変のころですよ、そのころに戻るんだという認識は、遠山大臣、しっかり持っておいていただかなきゃいけないと思います。
 この十二月十八日の中で一つだけちょっと前向きに解釈してもいいのかなと思うのが、加配の話ですね。これは法律に出ていなくて、政令で出すんでしょうか。ただ、確かに、この加配というのは、今までは枠決めされている、要するにひもつき加配と現場の先生方は呼んでおられるようですね。何々のための加配と、もうはっきり目的が決まっている。それ以外の目的には使ってはだめだと。
 だけれども、こういう目的加配だと柔軟性に欠けるので、特に人数の少ない、私のところの地元なんかは、分会回りすると大体五人とか四人とか六人ですから、波賀の道谷小学校なんかに行ったときには、ちょうど雪が降っていたので、山口さん、きょうはこたつに当たって懇談しましょうかなんという小さな小規模校がいっぱいあるんです。そういう小規模校では、加配がその名目で縛られているとつらいわけですね。教師の人数が少ないときに柔軟に役割分担が可能になるようにしてほしい、そういう要望というのは極めて強いわけですね。
 今回の十二月十八日なり十二月二十五日の文書に書かれている、学級編制の一層の弾力化とともに加配教職員に係るメニューの大くくり化、こういうことが政令で実施された場合には、今私が紹介したような教職員の先生方の要望についてはおこたえすることになる、そういうことでよろしいですか。
遠山国務大臣 御指摘のとおりでございます。
 教職員に対する定数加配につきましては、メニューごとに種類が定められておりますけれども、平成十五年度からそのメニューの大くくり化を図ることにいたしておりまして、近々通知をしたり必要な制度を整えたいと思っておりますが、例えば、今お話しのように、産炭地域とかそれから生活困窮者等の密集地域といった特定の地域のみに限定した一律的な基準による加配というものを見直しまして、そうした特別の指導のための加配を一くくりにいたしまして、児童生徒の状況あるいは学校の課題などに応じて柔軟に定数を活用できるようにするということで、これはまさに地域の実態に合った活用ができるように弾力化をしていこうという考え方でございます。
山口(壯)委員 その点は確かに、今の枠組みの中で言う限り、前向きに評価できると思うんです。これはぜひ取り組んでいただきたいとは思うんです。
 他方、先ほど藤村委員の方からも言及のありました、加配で対応ということと定数標準法の改正で対応することとは全く次元が異なるわけですね。あれは二年前ですか、三十人以下学級法案、私も提案者の一人にならせていただいて、議論した。結局、当時の町村文部科学大臣といろいろ議論させてもらって、結論的なことは、財政の事情も厳しいからなと。だけれども、今回は五年間の二万六千九百人の加配を認めよう、こういうことに落ちついたわけですね。でも、二万六千九百人が何でかといったら、五年間で児童生徒の数が六十万人減るんだから、本来であれば先生の定員も二万六千九百人ほど減らさなきゃいけない、だけれどもそれを減らさなくてもいいようにと。言ってみれば、看板は、例えば少人数のクラスが可能になるように、あるいは学習集団が可能になるようにと言いながらも、非常に中途半端なところで終わっているわけですね。
 ですから、今財政が厳しいということではあれ、現場の教職員の先生方が一生懸命やっておられる中でいろいろな問題点に対応しようと思えば、やはり三十人以下学級法案なり、あるいは、場合によっては三十人ということも通過点かもしれないと思うんですね、二十人、二十五人というところまで本来行かなきゃいけないかもしれない。そういうことができなければ本来の解決にはならないと思うんですね、この加配ということでは。
 加配というのは一年単位、単年度加配。要するに根本的対応ではないわけですね。定数標準法の改正というのが本丸の攻め方ということだと思うんです。そういう意味では、今回の加配というのは、今の枠組みにおいては前向きに考えてもいいかもしれないけれども、我々、教育を一番一生懸命考えているこのグループの中では、やはり三十人以下学級法案なり、さらにはさらに小さな集団で可能になるようにという考え方を我々は共有しておきたいと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
河村副大臣 本件については、町村大臣の当時、副大臣としてもあなたとも議論したことでありますので、ちょっとお許しをいただいて立たせていただきますが、私は、山口委員の言われることについて大いなる共感を抱いております。
 ただ、財政的な問題もあるし、それに向かって我々はもっと努力しなきゃいけない。私の基本的な認識としては、これは三十人学級というよりもむしろ二十人ではないかと個人的に思っているんです。そのためにどういう努力をしていけばいいかということだろうと思いますね。四十人学級の問題が到達したときにも考えたのでありますが、結果的に、あれは子供の数がどんどん減っていく段階の中で、むしろ努力しなくても到達したのではないかという思いさえあの当時抱いたものでありますから、これは一つの見識だと思いますけれども、しかし今、現時点でとれる最良のやり方は何なのかということを考えていって、今回のまた大くくり、これは一部評価をいただいておりますが、そういう形で今の現場の教育に対して対応していくということであったわけでございます。
 町村大臣の当時も、まさに山口委員も十分承知のとおりでありまして、財政当局はまさに公務員の削減の一環だという考え方で来たわけでございますが、事教育に関して、先生を削減するということはとても文部科学省としては認められない現状だ、今の教育を考えたときに、むしろふやす方向だということで我々は頑張って、少なくとも現状維持はするということによって結果的にふえたという実績をつくったわけであります。
 そのことを踏まえながら、今後さらにどうあれば現場の教育がきちっとできるかということを踏まえながら、これからの定数改善、次の第八次にまた入っていく時期も来るわけでございますが、今回、第七次をきちっと実施することによって、そういうことも踏まえて考えていかなきゃいかぬだろう、こう思っておりますが、しかし、現実にこの少人数教育等々を実施することによってかなりの成果は見られておるというふうにも考えておるところでございます。
山口(壯)委員 河村副大臣はせっかく前向きにお答えいただいたんだから、遠山大臣、答弁はもう結構です。
 我々がどうしてこの少人数のクラスが必要だと思うかということ、これは、いろいろ現場の先生方の意見を聞いてみると、特に話を集中して聞けない子供たちがたくさんふえている、友達とのかかわり下手の子供たちが非常にふえている、コミュニケーション能力が落ちている、あるいは自分の感情処理能力が落ちている、切れやすいわけですね。そういう意味では、昔のように、例えば五十五人、あるいは四十五人、そういう中で、先生がこれをやりましょうと言ったらその言葉が、コミュニケーションがちゃんと伝わるという状況が難しくなってしまっている。そういうことを踏まえると、昔はちゃんとできていたから、昔の先生は立派だったから、今同じようにやれよというわけにはいかないと思うんですね。その点をよろしくお願いします。
 きょうは、あとナノテクノロジーの話、あるいはSPring8の話、いろいろ御準備いただいていると思います。
 ナノテクノロジーに関しては、河村副大臣、これはこの間、十一月の二十七日だったですけれども、私がかなり応援のつもりでお聞きしたときに、二百四十二億円の今年度のナノテクノロジー、来年は四百九億円に七割増になるんだから、頑張りますからそれ以上きつく言わないで、こういうことだったと思うんですけれども、ふたをあければ何と二百四十二億円が二百四十六億円に四億ふえるだけ。これでは本当に、ナノテクノロジーが日本の経済のこれからの起死回生の一打になろうかというときに、余りにもほかのライフサイエンスあるいはITと比べて、本当に文部科学省はその重要性についてわかっているのかなという疑問が出てきてしまうわけです。この点についてはいかがでしょうか。
渡海副大臣 河村さんの名前が出たわけでありますが、委員の認識は全く同じだと思います。
 しかし、数字について言いますと、実は十四年度の補正予算というのは、従来から考えられているものをできるだけ経済の観点からも前倒しをしようということで、十四年度補正予算で百七十二億円というかなりの額を実はナノに関しては計上いたしておりまして、これを合計いたしますと四百十八億円ということで、当初の七三%増という形になるわけでございます。これで我々は、考えておりましたいろいろな研究開発のプログラムは十分実行できるというふうに、先生方ともいろいろお話をいたしまして、確認もいたしております。
 なお、先生の御指摘のように、時間がないから余分なことは余り言いませんが、四分野の中でも、ナノというのは、ほかの分野に非常に影響が強い分野でございますし、産業の基盤技術という意味では大変重要でございます。今後とも、文部科学省といたしましても、私個人といたしましても、しっかりとやっていきたいというふうに思っておりますので、よろしく御支援をお願いいたします。
山口(壯)委員 ぜひとも、その方向で頑張っていただきたいと思うんです。
 この後、SPring8についてもかなりの予算を今回も持っていただいているとは思うんですけれども、どうでしょうか、きちっとこれについてはとっておられるという認識でしょうか。
渡海副大臣 細かい額についてはお答えをいたしませんが、SPring8のこれからの最大の問題は、これも委員認識を持っておられるようでございますが、民間企業がいかにこれを使っていただけるか。研究開発の部分で、大学とかさまざまな分野、学術の分野では非常に利用が進んでいるわけでございますが、そこが一つの課題でございます。そのために、例えばトライアルユースという、ただで使っていただく、こんないいものだよということをわかっていただくようなプログラムもやりましたし、それを単なる一時的な措置ではなくて、十五年度予算の中にも計上いたしております。
 そういうことを通じて、できるだけ産業界が頑張っていただく支援といいますか、枠組みをつくっていきたいというふうに思っております。
 ただ、一義的には、これはやはり経済界がしっかりとこれに興味を持っていただくように、何らかの形で大いに、パブリックアドバイスをよくしていくということがもうちょっと要るかな、こんなことも考えながら、しっかりと頑張っていきたい。十分かと言われれば、ハードルが高ければちょっと足りないかなということですし、必要な経費は確保したということでございます。
山口(壯)委員 民間に頑張ってもらわなきゃいけないということでしょうけれども、でも、民間で、例えば知的クラスターの話とか産学連携の話で関連することですけれども、やはり特許が申請するのに高いわけです。日本の特許でも数十万、外国の特許で二百万とか三百万、こういうことについても、国としてきちっと対応できなければいけないと思うんですけれども、それについてはいかがでしょうか。
渡海副大臣 これも重要な御指摘だと思います。
 国立大学、御案内のように、全部減免をされております。公立大学については半分というふうなことで、この申請料というものを今免除といいますか、支援をしているわけでございまして、新たなメニューとしては、ことしは全国三十カ所ということで、この知的財産本部というのを設置して、より特許の支援をしていこうというふうな体制を整えましたし、また、特に国内の特許を海外へ持っていく場合のプログラムとして、科学技術振興事業団などのメニューもつくっておるところでございます。
 各種TLO、それから知的クラスターというのは、これは中身は御存じだと思いますが、全国十二カ所十クラスター、新たに三クラスター、これをつくって、地域から活性化していこう、地域から科学技術を、国内の一つの活力にしていこう、こういうことで頑張っておるわけでございますが、今後、なおベンチャー等がスムーズに立ち上がるように頑張ってまいりたいというふうに思っております。
山口(壯)委員 そうですね。ことしからの知的財産本部とかあるいは特許の支援とか、こういうことについては非常に大事な話だと思いますから、ぜひとも頑張っていただきたいと思うんです。
 大型放射光施設の予算というのは、私のこの読み方が間違いなければ百十二億来年度つく予定ということですね。トライアルユースの話も一億五千万入っている、こういうことですね。
 最後に、私きょう、義務教育の国庫負担とかいろいろお聞きしたわけですけれども、現場の先生方が特に思っているのは、今年度の四月から始まった例の総合学習の話とか、あるいは新しい学習指導要領の話とか、言ってみれば、文部科学省が改革するたびに教育がだめになっている、そういうような認識を現場の先生方は持っているし、私も否定し切れない部分がそれはある。
 そういう意味では、これからいろいろ問題は起こるでしょうけれども、これは、改革するたびに一体何が求められているかわからないようなことにならないように、文部科学大臣、あとどれだけおられるかわかりませんけれども、ぜひとも次の大臣にも引き継げるように、我々はどういうことを目指しているのか、そして、義務教育の国庫負担制度という話がそういう方向で行ってしまうと戦前の状態にもう一回逆戻りするんだぞというようなこともあわせて、我々は、国つくりの根本の人つくり、人つくりすなわち教育、これが我々の二十一世紀の時代を決めていくんだという強い認識のもとに、お互いまた頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
 終わります。
古屋委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 遠山大臣、河村副大臣に質問をします。
 日本国憲法と教育基本法は、教育の機会均等ということを重要な原則として打ち出しています。そして、その保障、支えとして、憲法二十六条で「義務教育は、これを無償とする。」教育基本法はその六条で「教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」こうしています。
 これらの要請を受けて、教育の機会均等とその水準の維持向上のために、国の責務として、教職員の給与等、国が必要な経費を負担することを具体的に定めたのが今審議の対象になっている義務教育費国庫負担法である、私はそのように考えておりますが、遠山大臣の理解を伺いたい。
遠山国務大臣 義務教育は、教育の一番基本部分でありますのと同時に、国の礎をなす大変重要な作用であるわけでございます。
 憲法の要請を受けて、すべての国民が一定水準の教育を受けるために、国としてなすべきこと、そして設置者である地方にもなすべきことがあるわけでございまして、これらがきちんと負担関係を持ちながら、特に国としては、そのなすべきことをしっかりやっていくということが大切であるわけでございます。
 委員御指摘のように、義務教育費国庫負担制度というものは、まさに国がやるべきことの一番の根幹のものを定めた法律であるというふうに考えます。
    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕
児玉委員 さて、この法律で、第一条において「国が必要な経費を負担すること」とありますね。国の負担金、この性格について、さきの経済特区法案に関する審議、内閣委員会でしたが、去年の十一月二十日です。河村副大臣に私は質問をしました。河村副大臣は、こうお答えになった。
 国が進んで経費を負担する必要があるものなどを負担金とするということが地方財政法の第十条にうたってございます。
  したがって、国がどうしてもこれはやらなきゃいけない、今の義務教育のレベルを維持するとか、これは国も責任があることだ、地方もやらなきゃいけないことで、しかしこれは国の方も進んで経費を負担する必要があるからということになっておるわけであります。
とはっきり答弁なさった。これは私は文部科学省の見解だと考えますが、遠山大臣、どうですか。
遠山国務大臣 そのとおりでございます。
児玉委員 そこで話が非常に見やすくなるんですが、この負担金と補助金の違いというのは一つは明確にしなければならないと思うんです。
 私はこれを持ってきました。新版の「地方財政法逐条解説」、石原信雄氏などが書いて、二〇〇〇年十一月に刊行されたものです。その中でこういうふうに言っている。地財法十六条に言う補助金は、地財法「第十条ないし第十条の四に規定する国と地方の負担区分に基づいて国が地方公共団体に支出する負担金とはその性質をまったく異にするものである。すなわち、負担金は、国がいわば割勘的に当然の義務として負担するものであるのに対し、補助金は、国が地方公共団体に対しいわば奨励的ないし援助的に交付するものであるといえる」、こう言っていますね。御存じだと思う。
 そこで、地方財政法における負担金と補助金がその性質を全く異にするものである、このことについて文部科学省の見解を伺いたいと思います。
河村副大臣 前回といいますか、前のときに児玉委員から御指摘があって、私が御答弁し、そのことを大臣も文部科学省の方針としてお認めいただいたわけでございます。
 したがいまして、義務教育が、地方がまさに法令に基づいて実施しなきゃいけない事務という位置づけもございますし、そのことを根本として、憲法もまた全国的な教育の機会均等、また水準の確保を求めておる、これを果たしていかなきゃならぬわけでございまして、そういう観点でこの義務教育費の国庫負担制度というものがあるわけでございまして、義務教育に国の責任があるという観点から、この国の責任を果たすためには経費の二分の一を負担するということになっておるわけでございまして、これがまさに地方財政法上の負担金という視点に立っておるわけです。
 このような形で一般財源化をするということが、今回法律のもとで皆さんに御審議をいただいておるわけでございますが、この問題については、昨年の六月二十五日の閣議決定が、基本方針を打ち出された。国庫負担金も含む国庫補助負担金の整理合理化の方針ということがそこでうたわれて、一般財源化の方針を打ち出したわけでございます。
 したがって、このような、国が進んで経費を負担する必要がある負担金という形でこれまで整理をしてきた中で、さらに、真に国が負担すべきであるかどうか、これについてもう一度検討をして、必要な見直しを図れということでありまして、ここのところが、教育の根幹を維持しながら、しかし、地方と国との役割分担を考えたときに、真にこれが国が負担すべきものかどうかという見直しということは、やはりこれは、その時代時代に応じて考えていく必要も生まれてきたんではないか、このように考えて一般財源化を図るという方針を決めたということで、今、法律でお願いをしている、こういうことであります。
児玉委員 今のお話は、この後本題として議論したいんです。
 私が今聞いたのは、負担金と補助金はその性質を全く異にするものである、これについて文部科学省はそのようにお考えではないですかと聞いたんです。
河村副大臣 御指摘のとおり、全くという意味が、国の政策を進める上でそれぞれ意味を持っていると思いますけれども、根本的に、いわゆる負担金と、地財法十六条で言う補助金とは違うものであるという認識でございます。
児玉委員 そこで、私、先ほど来の議論を熱心に聞いていまして、そして遠山大臣、例えば経済財政諮問会議だとか地方分権改革推進会議だとか、いろいろな議論があった。一つの流れがある。その流れを変えるために知恵を絞ったと先ほどおっしゃったし、そしてそれを聞きながら、私は、遠山大臣はこの流れを必ずしも是とはされていない、言うべきことは言おうと思っていらっしゃったんだなということは、聞いていて多少感じました。あなたはさっき、議事録を読んでほしいという趣旨のことを言われたけれども、その議事録も拝見した。例えば東京大学の吉川委員とあなたが激しい議論をなさっているあたりというのは、なかなか読みごたえがありました。
 そこで、言いたいんですけれども、知恵を絞る、間違った流れを変えるために必要な知恵を絞る、そのときに、議論というのは、やはり言葉の定義というのをはっきりさせなければ、議論が混乱してきますね。その混乱している代表例の一つが、先ほど来議論になっている経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二、この中で何と言われているか。全く性格を異にする国庫負担金と、そして地財法十六条で言う、私はそのことに必ずしも同意しないけれども、政策的、奨励的な補助金、それを、異なるカテゴリーのものを一つにしてしまって、国庫補助負担金の廃止、縮減と言ってしまって、そしてそれをいついつまでに幾ら縮減するんだというので目標まで掲げてしまう。これは事柄を混乱させる議論だと私は思うんですね。その点について遠山大臣に明確に指摘してほしかったと私は思うんですが、いかがですか。
遠山国務大臣 その議論の前提のもとに、義務教育費国庫負担金の根幹を守るということで議論を展開したところでございます。
児玉委員 では、遠山さんも私と同じ考えというふうに聞いていいですね。――はい。
 そこで、そういった流れの中には、ある意味では非常に無責任な、ある意味では意図的な理解がありますけれども、もう一つ、そのことで、私たちが放置できない問題としてどうしてもここで提起をしたいことがある。これは私自身の思いですけれども、教育というのは人と人との触れ合いだと思う。そして教育の成否というのは教職員にかかっている。義務教育の水準を確保するためには、教職員の一定数を確保することが必要ですね。
 そのことに関して文部科学省はこれまでどんな議論をなさってきたのかということを多少拝見していると、九三年に刊行された国庫負担の十年、その中で皆さんの同僚ないしは先輩であった逸見博昌氏がこういうふうに言っている。「学校に配置されている教員、事務職員、学校栄養職員は、そのいずれが欠けても、学校に期待されている活動を円滑かつ効率的に行なうことが困難か、又は不可能になるという意味では、これらの教職員は、すべて学校の基幹的職員」、「基幹的職員」という言葉を使っている。「であるといってよいと思います。」「教員、事務職員、学校栄養職員は、学校教育の円滑を図り、教育効果を最大限に発揮させるためには、不可欠かつ不可分の関係にある」。「私としては、」「学校内における全教職員の一致協力の必要性」、ちょっと省きますが、今、校内暴力、いじめ問題など、現下の大変厳しい学校状況を踏まえますと、このことが特に強調されなければならないと思っています、こう述べている。
 当然現在の文部科学省もこの見地に立っていらっしゃると私は思うが、どうでしょうか。
河村副大臣 委員御指摘のとおり、栄養職員であれ、そして事務職員等々、学校現場で今頑張っておられる皆さん方は、まさに教育を進める上での基幹的職員であるという基本認識に立って進めておるところであります。
児玉委員 当然のことです。
 そこで、昨年六月十七日の地方分権改革推進会議の中間報告、恐縮ですけれども、お持ちであれば二十七ページを出していただきたいんです。そこにこういうくだりがあります。「教育水準を確保するため、現行の制度、即ち義務教育費国庫負担制度は必要不可欠というのが、国の立場であるが、確保すべきは教育水準であって教員の数ではない。」こう言っていますね。私は、この議論は本当に放置しておくことはできないと思う。なぜかといえば、一定数の教職員の共同の努力、その努力の必然的な結果として、憲法が求める教育水準が保障される。そこを機械的に切り離そうとする議論というのを、私は、この後の私たちの共同の努力の中で乗り越えていく必要があると思う。
 その面で、遠山大臣は、ないしは文部科学省は、こういう議論に対してどういう対応をなさっているのか、伺いたいと思います。
    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕
遠山国務大臣 地方分権推進会議には、これは、私も、それから我が省関連の、我が省の職員も委員として属しておりませんで、そこでなされた議論が一つの政府の機関として重みを持っていたわけでございますけれども、そうした議論のもたらす問題というのが、教育論の立場に立って十分でないという角度から、私としましては、先ほど来御紹介しておりますような一連の対応策をとったところでございます。
 みずからが属していて決められていった会議であれば別でございますけれども、そうでもない会議のところで、また事務局にも当省関係の者は入っていない、そういう状況の中で書かれたものだというふうに考えております。
児玉委員 その点で、私は、文部科学省の提起されたことの中で、これは共感できるという部分が幾つかあるんですけれども、八月三十日の経済財政諮問会議に対する遠山臨時議員の提出資料の中に、今のことに関連して、「教育の成否は教員にかかっており、義務教育の水準を確保するためには、優れた教職員を一定数確保することが必須。」と。まさに必須ですね。
 地方分権推進会議が六月にさっきのような議論を展開して、八月末に皆さんは、別のところに対してではあるけれども、こういう見解を述べていらっしゃる。この見地は是非堅持していただきたい。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 当然、この認識というのは堅持いたすべきものと考えます。
児玉委員 もう一つ、その言葉の定義をいいかげんにするととんでもないところに行ってしまう例として、先ほどの地方分権会議の中間報告の、さっき紹介したくだりのすぐ次のところに、義務教育費国庫負担制度に基づいて国が必要な負担を負う、そのことについて「国の関与」というふうに述べている。私は、これは国の関与ではないと思う。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 国の関与ではなくて、国が当然果たすべき責務の一つだと考えます。
児玉委員 やはり、その立場も今後堅持していただきたいんです。
 そこで、議論を進めたいと思います。
 先ほどから、遠山大臣は、義務教育費国庫負担制度について、この制度の根幹は今後とも堅持することが必要であると。これは、本会議でも、それから提案理由の説明その他で、その趣旨のことを述べていらっしゃる。
 義務教育費国庫負担制度の根幹とはどのような内容を指すのか、もう一回聞かせていただきたい。
遠山国務大臣 現在の義務教育費国庫負担制度は、国の責任による最低保障の制度でございまして、教職員の給与費等の二分一を国が負担することによって、全国的な観点から、教育の機会均等あるいは教育水準の維持向上を図るものでございます。その意味におきまして、この制度の根幹といいますものは、今申し上げたような、その制度で守るべきものそのものを指しているわけでございます。
児玉委員 地方財政法の十条では、第一に、義務教育職員の給与に関する経費、こうなっていますね。第二に、義務教育職員の共済組合の長期給付に関する経費、この部分が、今度の手直しの中で地方財政法から削除されることになる。
 私は、さっき意識して教職員の給与費等と言ったんですが、それは、これまで文部省の幹部の方たちが述べるときに、給与の本体だけでなく、退職手当や共済組合の長期給付、この前、本会議で遠山大臣は、長期給付は言ってみれば厚生年金のようなものだというふうに述べられたけれども、それらを総括的に述べていたんだけれども、今度それが削除される。私は、これはやはり根幹だと思う。
 そして、皆さんがおっしゃる、真に負担すべきものに限定すると先ほど河村副大臣も言われたけれども、それでは、これまで真に負担すべきでないものを負担してきたのかということが出てくる。どうですか。
河村副大臣 パラドックス的におっしゃったわけでありますが、これは、基本的な負担金の考え方を進めていく上で、国の財政のあり方を今後変えていこうという一つの大きな流れの中にあることも事実でございます。
 私は、国の根幹をどこまで持つかということ、これは教育の根本にかかわる問題でありますから、先ほどの議論でもございましたように、防衛とか外交とか、そういう、国がきちっとやらなきゃいけないことの中に、当然、教育というものの一つの根幹を守っていくということがあると思います。
 しかし、教育の実施部隊は地方でございます。だから、地方の役割と国のそうした根幹とがうまく整合性がとれて、現場がきちっとやるということが非常にこれから必要になってきておりますから、その考え方をどこでどう役割分担をしていくかということがこれからの議論になるわけでございますが、時代の変遷とともに、国がこれまで負担すべきものであったということが、どこまでこれは真に負担すべきかということをもう一回見直すということは、私は必要なことであろう、こう思ってきておるわけでございます。
 私は、今回のこうしたことが何かなし崩しにどんどんいって、母屋を貸してひさしをとられることになりはしないかという皆さんのいろいろな御心配、また、文部科学省に対して激励をいただいていることは、私も承知をいたしておるわけであります。
 しかし、私は今回の問題で極めて遺憾に思ったのは、確かに、国庫負担金というものが縮減される方向が打ち出されたことは事実でございます。しかし、そのことによって、国民の方は何か教育費そのものが縮減をされたようなイメージになったことは非常に遺憾なことでありまして、国がきちっと責任を持っていたのでありますが、それを今後、役割分担として、最終的には国民からの税金を使うわけでありますから、これをどういう形で使うかという、これは地方分権の話から出ると、これは教育のことだからといってまた山口委員にしかられそうでありますが、そういうことも踏まえながら、今回の負担については考えていく。
 そして、やはり地方の自治体がやっている教育というものがもっと活性化していかなきゃいかぬという思いも我々の方にもあるわけでございます。その辺も踏まえながら、国の一つの方針の中で、ぎりぎり我々としても考えていこうということで、今回こういう形で法案を出しているわけであります。
児玉委員 私が言っているのは、真に負担すべきものといって、みずからどんどん負担すべき範囲を狭くしてしまう。母屋を貸してひさしをとられることに――いや、私はこれは誤解せずに言っているんです。肝心なところを貸してしまって、残るのはひさしだけ、こういうふうになる可能性があるので。
 それで、今の議論について私はもう少し詰めてみなければならないと思うんです。
 今回の一般財源化において、地方財源への手当て、地方特例交付金二分の一、地方交付税二分の一と。そして、地方交付税特別会計借入金というのが出てきている。そして、五年後、償還を求められることになる。四分の三は国の負担で、四分の一は地方負担だと。先ほど総務省の方もいろいろ述べていらっしゃった。
 聞きたいのは、これまで教材費や旅費や恩給費などが一般財源化されてきていますけれども、地方交付税特別会計借入金を財源にして一般財源化されるということがこれまであったかなかったか。先ほどの教材費、旅費、恩給費、このことに限定して明らかにしていただきたい。
河村副大臣 これまでございません。
児玉委員 その点がやはり非常に重要なことなんです。これまではそうはさせていなかった。今度、国の財政云々と言いながらそのようになっていく。では、地方はどういうことになるかというと、その分は民間の金融機関から借入するということになってきますね。それが今度のスキームの新しい重要な特徴である。
 次に、片山総務大臣は本会議で、その八分の一が国の地方負担だと。それは、この後の三位一体の議論の結果という言い方で若干あいまいにされた。
 もしこの法律の手直しが行われたらどんな事態が起きるのかということを私は見てみる必要があると思う。当然、文部科学省はその試算をなさっていると思う。八分の一というのは、率にして一二・五%です。この一二・五%は、四十七都道府県について一律一二・五%なのか。
 ある県に問い合わせた。あえてある県と言わせていただきます。そのある県は、今回の一般財源化の対象額は予算ベースで約十九億円、そのうち特例交付金が七億補てんされる、残りの十二億円が地方交付税特別会計借入金によって措置される。そうすると、償還のうち地方が負担する額は三億円。つまり、一五・八%になるんですね。一二・五、八分の一ではなくて、一五・八%。
 別のあるところ、これは県ではないので少し規模が大きい。一般財源化対象額は約百七億円、そのうち特例交付金で補てんされる分は約四十五億円。一千万円のところは四捨五入しています。六十三億円が特別会計借入金となって、そして償還の地方負担は約十六億円、これは一四・六%ですね。これも一二・五%を上回る。
 結局、交付税の仕組みがそうなっている。人口の数によって必ずしも一律ではない。それぞれの都府県についてこの八分の一の負担率に格差が出る。この点についてどうお考えですか。
河村副大臣 今回の見直しによって、委員御指摘のように、地方の負担分八分の一という数字が出てまいりました。これの問題は、この償還がどうなるかということだろうと私は思うのであります。それで、十五年間、五年間据え置きで償還をされるとなっておりまして、個々の都道府県が一般会計から支出する、あるいは公債を発行して負担する、こういうものではなくて、交付税の特別会計全体の中でこの財源を負担する仕組みということでありますから、これは地方負担分の償還費については償還期が来てから生ずるということになるわけでございますが、今後の地方財政運営の効率化等によって、地方財政計画全体の中で所要の財源が生み出される、このように承知をいたしているところであります。
児玉委員 この問題で文部科学省は、総務省、財務省との間で詰めた議論をしたのかどうか。そして、四十七都道府県で、いうところの八分の一、一二・五%に差が出てきているということについて承知しているかどうか。この二点を明らかにしてほしい。
河村副大臣 この問題について総務省側ときちっとした取り決めを交わしているかと言われると、それはいたしておりません。
 数字の上で今御指摘のあった格差が生じるという問題、これは数字の上で想定できることであるというふうに考えておりますが、それも踏まえて、我々としては、全体の地方財政計画の中で償還をしていくという基本認識に立っておるわけでございまして、これはこれからやはり詰めなきゃいけない課題であるというふうに思います。
児玉委員 私は、その答弁には納得できませんね。今副大臣は、都道府県によって差が出てくるということは認識なさっていたと答弁の後半でお述べになった。しかし、そのことを知っていて総務省と詰めていないというのは、これほど制度の根幹にかかわる問題についての準備としては非常に不十分だと思う。大臣、どうでしょう。
遠山国務大臣 私どもといたしましては、制度の面で協力できるぎりぎりのところで協力をしたわけでございますが、財源につきましては、これは地方の負担にならないようにということで、財務省に対しましても、それから総務省に対しましても、十分にその点の確保についてお願いをいたしております。
 財務省と総務省との間におきましてそのことについてはぎりぎりのまた検討が行われて、結果として、先ほど副大臣が申しましたように、これは地方交付税の全体の枠の中で考えていくということで私は説明を受けております。その意味におきまして、地方におけるいろいろな問題というのは、私は、総務省も責任を持ってこの点については対処されるものというふうに認識をいたしております。
児玉委員 私は、遠山大臣に要請したいんですが、やはり事柄は軽いものではありません。きちんとした試算をして、そしてそれを都道府県がどのように受けとめているか。これが国会で審議されている今の瞬間で、都道府県の教育委員会の財務課だとかその他は真剣な試算をしていますね。そして、そこからもう自治体の規模によってこの八分の一に差が出てくるということが示されている。総務省と詰めていないというんでは、それはやはりあなた任せになりますね。
 私は、これは次の審議のところまで、皆さんのこの間の総務省との詰めの経過と、そして都道府県で差が起きないように、一番起きないのは削減しないのが一番いいんですから、その道を改めて探るということを含めて、きちんとした答えを次の機会までにいただきたいと思う。
 委員長、その点、私は理事会にお願いしたいんですが、いかがでしょう。
古屋委員長 理事会で協議をさせていただきますが、今個別の案件でございますので、ぜひ政府内でもしっかり検討していただきたいと思います。
児玉委員 そこで、今も出てきた三大臣合意の問題です。昨年十二月十八日に行われた。
 これを読んでいて、いろいろな面でやはり感ずる点が多いんですが、例えば第二項のところで、「「改革と展望」の期間中(平成十八年度末まで)に国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」こうなっている。つまり、今回の措置はその一部を先行的にスタートさせるものであって、今後次々と国庫負担金をなくしていかれてしまいやしないか。「国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」すなわちそのことについての検討を約束させられたというふうに読めるんですが、大臣、どうでしょう。
遠山国務大臣 これは、義務教育制度のあり方の一環として考えていくということで、財源論だけではなくて教育改革の中で考えていくというところに力点があると思います。
 平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化、これは義務教育費とは書いてないわけでございまして、「国庫負担金全額の一般財源化」というところについては、これは我が省ということではないというふうに考えております。
児玉委員 私は、その議論の当事者でないから、それぞれの省庁の読み方を聞いてみましたけれども、随分違いますね。そして、その違いを詰めるより、やはり義務教育費国庫負担制度を制度としてきちっと守っていく、その点で、文部科学省が国民に責任を負ってどういう義務と任務を果たしていくか、そのことが非常に重要だと考えます。
 その点で、やはり厳しい言い方をしておく必要があると思う。それは何かというと、各省庁が今度の負担金と補助金の廃止、縮減についてそれぞれに対応しています。それぞれの対応についてきょうここで議論することは、あえてしないでおきたいと思う。遠山大臣が、去年の八月三十日、「遠山臨時議員提出資料」として経済財政諮問会議に出されたものを読んでみると、一方では、義務教育費国庫負担制度は国の関与ではないと明確に主張されている。これは私は必要な見識だと思う。しかし、他方で、「国庫負担対象経費を国が真に負担すべきものに限定することにより、平成十五年度から平成十八年度までに数千億円の縮減を目指す。」数千億円、こう言われてしまっている。大体もうそこでみずから道を開く、ある意味では自分の手で外堀、内堀を埋めていくことになりはしないか、こう思うんですね。
 そして、先ほどの地方分権会議の文書を読んでいると、皆さんがそういう提案をした、地方分権会議はこれを文部科学省の提案と言って、そして何と言っているか。「その評価は分かれた。しかし、この見直しが義務教育費国庫負担全体の見直しの契機となるのであれば、その限りで当会議としては、改革に向けた第一歩と受け止める。」実に冷ややかですね。私は、これは文部科学省としても、こういう態度に対しては厳しく対応すべきだと思うんです。
 福田官房長官は何と言っているか。総額五千六百億円程度を削減、これは国庫補助負担事業に関する芽出しと。芽がちょっと出ただけだ、この後茎になり、葉が茂っていって、そしてやがて三兆円何がしの全額の一般財源化と。今度のは芽出しだと。
 私は、やはり率直に言いたいけれども、今からでも遅くないから、この数千億円の縮減という皆さんの提案を撤回すべきではないか、こう思います。いかがですか。
遠山国務大臣 その芽出しという意味は、私は、本体の三兆円に及ぶ義務教育費国庫負担金で対応すべき、それが本体であって、それの芽出しであるというふうには全く考えておりません。我が省としては、今回協力したというのはぎりぎりの線でございます。
 今後のことにつきましては、政府全体として、構造改革の一環あるいは地方分権化ということを進めながら、財源論も、財源というか三位一体論を実質化していくためにさまざまな御議論が行われるんだと思いますけれども、義務教育費国庫負担制度につきましては、先般出して今日法律案としてお願いをしておりますこの部分が、私としては現時点において我が省が協力できるぎりぎりの線だという認識に立っております。
児玉委員 遠山大臣のこの間の発言を拝見していまして、その中には、義務教育費国庫負担制度が戦後の日本の義務教育を支える上で大きな役割を果たしてきているというふうに述べていらっしゃる部分も拝見しました。まさにそうだと思う。これは、現に大臣でいらっしゃるあなたの責務であるというだけでなく、この間の民主教育の発展を求めてきた多くの国民や教職員や、そして文部省の方々の努力の言ってみれば共同の結実なんですから、それを守らなきゃいけない。
 ところが、どうもその点で私は危うさを感じる。例えば、中央教育審議会が昨年十一月に発表した「教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(中間報告)」、これを読んでいてあっちこっち驚きましたけれども、驚いた箇所の一つに、教育振興基本計画の中に教育費国庫負担制度の見直しというふうに書いてある。どうしてこれで教育が振興するのだろうか。逆じゃありませんか。こういうやり方というのは私は改めるべきだと思う。どうですか。
河村副大臣 これは、今から最終的に答申をいただく段階になってくるわけでございますから、当面、教育段階でいろいろ問題にされていることがそこへ一応入っているというふうに思いまして、これは今中間報告をごらんになっておっしゃったと思いますが、我々、最終の答申を見た上でさらに検討しなきゃいけない課題だ、こういうふうに思います。
古屋委員長 質疑時間が終了しました。
児玉委員 終わります。
古屋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 私の地元、広島県尾道市高須小学校の慶徳校長が九日、自殺をされたという悲しい事件がございました。本日は、この委員会冒頭におきまして心より御冥福をお祈り申し上げ、質問に移らせていただきたいと思います。
 まず、この悲しい事件、尾道市にあります高須小学校、私の地元中の地元でございます。ここで校長先生が自殺をしたという大変ショッキングな出来事でもあり、広島県においては過去にも実はあったことでございます。現段階では、尾道市、市議会、市の教育委員会、また県教育委員会においていろいろと調査をしながら調べている最中であり、詳しいことはまだ文科省の方にも上がっていないかもしれません。
 ただし、私がこれを冒頭に取り上げましたのは、まさに普通の校長さんという、これは別にどうのこうの区別するわけじゃございませんが、今回の校長さんというのが、民間校長として大変注目を浴び、民間人の登用ということでこのたび校長になられて、卒業式を迎える前に自殺をなされたということ、本当に大変悲しいことでございます。
 こういった事件に対しまして、文科省として、また大臣として、現状、まだわからないことがたくさんあると思います。あると思いますけれども、どのようにこの事件を受け取られ、お感じになり、また意見を持たれているのか、お聞かせ願えればありがたいかと思います。
河村副大臣 委員の方からお話がございました高須小学校の慶徳和宏校長先生の自殺については、まことに痛ましいことであるというふうに考えております。
 委員もお触れになりましたけれども、広島県の教育委員会から、自殺の原因等については現時点ではまだ明確なことは不明なのでありますが、引き続き詳細な調査を行った上で、支援体制等について検討していく、そういう方向であるという報告を受けておるところでございます。
 民間人校長を現場に登用ということは、校長先生がこれから学校運営を行う上で民間の発想も非常に大事であろう、今の教育現場のある意味での行き詰まりといいますか、そういうものも考えながら、すぐれた人材があれば新しい試みでやっていこうということで、各教育委員会が積極的な姿勢としてそれを取り入れられたわけでございます。
 文部科学省といたしましては、広島県の教育委員会に対しまして、今回の民間人校長の選考の方法、研修内容あるいは支援体制等、これについて詳細な事実関係を報告するように求めているところでございますが、その結果を踏まえて、民間人校長の登用に当たって改善すべき点や特に配慮すべき点が判明すれば、これは改善を行うように指導していかなければならないと考えておるところでございます。
 また、今後、必要に応じて他の教育委員会に対しても情報提供していかなきゃいかぬ、こう思っておるところでございますが、私も副大臣として、このお話を聞いたときに、民間人校長というのは新しい試みでございましたから、ある意味では、そのことが負担になって犠牲になられた面もあるかなというふうに思いました。しかし、もし犠牲になられたとしたら、そのことを一つの大きな反省材料にして、この流れがやはりそれによってとまってはならないのではないか、こういうふうに思っておりまして、この痛ましい事故は、我々にとっても、この制度をこれから運営していく上で大きな一つの課題を投げかけられたものではないかな、このように感じておるところでございます。
佐藤(公)委員 まさに副大臣がおっしゃられるようなことを私も感じております。
 ただ、自殺というのは本当にいろいろな要因があっていくことであり、今はまだ調査段階で、一概に教育現場だけが原因だと言い切れる状況ではないとは思いますけれども、ただ、もしもこの自殺というのが本当に教育現場なり校長という職務においてのいろいろな関係またプレッシャーがそういったところに追いやったのであれば、これは本当に痛ましく悲しいことになると思います。
 まさに副大臣がおっしゃられましたように、教員出身でない方々、民間の方々の活用というのは、今徐々にふえて、採用が二倍、三倍という状況になってきている。もしもそういった教育現場もしくは校長という職務においてこのたびのようなことが起こった可能性があるのであれば、二人目、三人目の被害者、こういった状況にならないように、おっしゃられるように、採用に関しての選考の仕方もしくはトレーニングの仕方、でも最も大切なことは、やはり学校現場でのPTA会のサポートだとか学校の先生方のサポート、または市や県におけるサポート、いろいろなサポート体制が整っていないと、なかなかうまく進まない部分というのがあるのではないかと思います。
 私がきょう言いたいことは、これに関しては徹底的に調査をし、やはり一つの、いいという言い方は失礼ですけれども、今後の参考になる事例として徹底的に調査をして原因究明をしていくということが大事だと思います。
 こういう意味で、私の方から文科省に対しまして、これに対しては、ただ単純に民間人の方を採用したその採用の経過だけではなく、やはりその学校の内部またはその環境における状況がどうだったのかというのを徹底的に究明していただいて、こういった犠牲者の方がもう今後出ないようないい環境の中で、民間の方々がフルにその能力を発揮し、そして次世代を担う子供たちの教育に専念できるような状況づくりをしていただきたいと思います。
 河村副大臣、いかがでしょうか。もう少し御意見等があればお聞かせ願えればありがたいと思います。
河村副大臣 おっしゃるとおりでございまして、今の御指摘を踏まえて、これからの対応をしっかり図ってまいりたい、このように思います。
佐藤(公)委員 よろしくお願いいたしたいと思います。
 まだ本当に調査段階ということなので、私も断定的に物は言えません。ただ、私も地元ということでいろいろな話を聞いており、いろいろな立場の人がいろいろなお話をされますけれども、やはり本当に次の時代を担う子供たち、その子供たちにおいて、また社会全体において教育というのがいかに大事かということ、ここは本腰を入れてぜひお願いをいたしたいと思います。
 さて、義務教育費国庫負担関係に入らせていただきます。
 経済財政諮問会議において、大臣は、義務教育費国庫負担制度は、義務教育について必要な最低限の水準を担保する、最低保障ということでしょうか、国が保障し支援するためのものであるというような趣旨の発言をされているかと思いますけれども、こういったお話はよくいろいろなところで聞かれることが多くあります。きょう午前中も、国の根幹というような議論を児玉先生がされておりましたけれども、では、もう一度確認をさせていただきますけれども、大臣、また副大臣、また文部科学省として、また政府として、その最低限の水準というのは一体全体どういうことまでが最低水準ということになるんでしょうか。
遠山国務大臣 義務教育の水準維持をしてまいりますためには、義務教育を担う教員の給与費、それから子供たちが学ぶ学びやといいますか学校施設、あるいは教材など、さまざまな経費が必要だと思います。
 今議論の中心になっておりますのは義務教育費国庫負担制度でございますけれども、この制度においては、私は、教育の成否を担うといいますか、一番大事な存在である教員の給与費等の国庫負担二分の一はしっかり守っていくというのがその法律ないし制度の根幹であると思っております。その意味におきまして、教員の給与費等の二分の一、これは国庫負担というものをしっかり守っていくというのがまさにこの制度における最低限の支援、そのほかにもいろいろございますけれども、それが御質問に対する答えかと思います。
佐藤(公)委員 きょうも午前中からの議論、今までの議論を聞いていまして、私は、文部大臣や副大臣、政務官に対しては多少同情的な面で見させていただけば、本当はこれは賛成じゃないですよね。やりたくないですよね。本音ですよね。だけれども、実際問題、政府・与党として、また総理から、また財務省、総務省から言われて、いたし方なくしているように私は感じ、また答弁においても非常に歯切れが悪いというか、大臣、副大臣の方としても、本音はやりたくない、やりたくないんだけれどもいたし方ないみたいなところに巻かれちゃっているのかなというふうに私は非常に感じるところがございます。
 でも、そういう部分で、大臣は同じく財政諮問会議で、国庫負担金のあり方を財源論のみで論じるべきではないと主張されておりましたよね。では、このたびの改正は、実際、財源論のみで論じてきたということになるんでしょうか。
遠山国務大臣 今回の議論の発端は、昨年、地方分権改革推進会議から出ました意見をベースにして、その上に経済財政諮問会議でのいろいろな議論が加わって、ある一定方向が出まして、それを、政府においてはそういった意見も踏まえた上で、国の関与を縮小して地方の自主性を拡大するという観点から、国庫補助負担金の整理合理化について取り組むという政府の大方針が決まったわけでございます。
 私は、地方分権推進会議の委員ではございません。経済財政諮問会議につきましては、みずからの所管のことについて論じられるときに臨時委員として参加するということでございます。その範囲でなかなかそういう意見を言うチャンスというのには恵まれにくい立場にあったわけでございますけれども、その経済財政諮問会議に呼ばれまして、そして私どもの義務教育費国庫負担制度に関する取り組み方について説明するチャンスを得たときに、私どもの考え方を述べたわけでございます。
 その意味におきまして、今回の一連の取り組みといいますものは、政府の大きな方針につきましては行政組織としてそれに協力するという姿勢は当然とりながらも、しかし、義務教育については、制度の根幹たるものについて守るべき立場は我が省しかないわけでございます。そういうことで、今回そこの会議で対処したような方向で今まで来ているわけでございます。
佐藤(公)委員 そういう議論の中でも、負担金制度だけとめれば義務教育の基盤が揺らぐとも多くの方々が言われており、また政府は、補助金、負担金カット、交付税削減、地方への税源移譲を三位一体で税財政改革をすると言っておりますが、実際その全体像が見えないというのが各方面からの意見として多い。これは大臣もおっしゃられていますよね。全体像が見えない。
 いつもの話になりますけれども、一体全体、小泉内閣、この政府は全体像、まさにこの国のあるべき姿をどういうふうに考えているのかが相変わらずわからないのが実情でございます。実際、各方面から、全体像が見えないのにこういったことばかりをやるというような指摘が多くありますけれども、これについて、大臣、いかがですか。
遠山国務大臣 これは政府全体の問題でもございまして、私がすべてを答えるということではないのかもしれませんけれども、そうした状況の中で、義務教育費国庫負担制度が話題になったときに、私としては、財源論というような角度から議論されてはいけないという信念のもとに、それを教育論という角度から広く物を考えてもらい、そして義務教育の重要性について論じるために人間力戦略ビジョンというのを出しまして、その全体が見えないということにむしろ私として最大限こたえていくために、そうした全体のビジョンの中でどうしていくかということについて我々の考え方を述べ、かつ多くの方のそれまでの教育についてのお考えについて新たな視点を御説明申し上げたというふうな形で取り組んでおります。
 したがいまして、限られた立場ではございますけれども、全体の中での教育論というものが財源論という角度からではだめだということの主張をし、そして全体のビューを持ってもらった上で、この制度にどう取り組んでいくかということで一貫して取り組んでいるのが私の姿勢でございます。
佐藤(公)委員 言葉ではビジョンとか全体像ということでの話なんですけれども、それがよくわからないということなんです。今大臣はそういうことは言うべきことじゃないと。とんでもない、言うべきことなんです。内閣としてはこういうビジョンを掲げ、国のあるべき姿を持ってやっています、だから、それにおける教育問題、教育改革、教育方針はこういうものがあり、こうなってきます、これが筋道じゃないですか。そういう説明をしてみてくださいよ。
 では、もう一つそれに関連して話をいたしますと、今三位一体というようなことで考えていった場合に、では、今の内閣として、政府として、教育とか地方分権とか財政とかありますけれども、根本的にそのプライオリティー、順位をつけるとしたらどういう順位になるんですか。米百俵の精神からやっているんでしょう。そうしたら、教育が一番になってもおかしくないんじゃないんですか。
 何か言っていることとやっていることがちぐはぐで、私たち余計わからない。何をしようとしているのかがわからない内閣または政府というふうに見えますけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 これは先般の予算委員会で総理がお答えになりましたように、現在日本が抱えているいろいろな問題という中で、改革なくしては成長なしという強い信念のもとに進めておられるのが現在の我が政府の一番の柱であろうかと思います。それを実現するために、地方分権なりあるいは民間でできることは民間でということで、できるだけその構造というものをしっかりと今見直していこうというのが大きな方向であると思います。その角度で取り上げられたのが、先ほどの義務教育費国庫負担につきましても、それを含んで三位一体論というのが出てきたんだと思いますけれども、その中においては教育というものの位置づけが必ずしも明瞭でなかった。
 そういうことで、私の方からむしろ、教育といいますか、今世紀をしっかりと生き抜いていく日本人の育成はどうあったらいいかという角度からビジョンを明確にしたわけでございます。それについて述べますとかなり時間がかかりますので、今は述べるつもりはございませんけれども、そういう絡みと、あるいは全体の中での教育の重要性というものを主張するために取り組んでいるという状況でございます。
佐藤(公)委員 正直言って、大臣のお答えになられているところが、私自身理解しづらい部分があります。これは毎回の議論にもなってくるんですけれども、実際、本当に言っていることとやっていることが違うんじゃないかなという気がいたします。
 そして、大臣の思い、また副大臣、政務官とのいろいろなお話し合いの中で、本当に教育論、教育というものがどうあるべきかというのを財務省や総務省に、また総理に、かなり御主張なさられたんでしょうか。そして、その主張というのはどういう主張をされたのか、この場で簡単にお話し願えればありがたいと思います。
遠山国務大臣 今の構造改革の一番の責任者であります総理に対しましては、何度もこの義務教育の意義づけ、さらには世界各国の教育に対する取り組みの状況、それから日本における今進めている教育改革の内容、これはさまざまな分野に及んでおります。そして、それらを総合した上でこれからどんなふうに取り組んでいくかということについての全体の政策及びその目標を明確にしたものを御説明いたしました。これは何度にもわたっておりますけれども、それを通じて総理も、私は教育についてはお任せをいただいているというふうに今考えているところでございます。
佐藤(公)委員 財政諮問会議や何かでも大臣はいいことを言っていますよね。「義務教育費国庫負担金の在り方を、財源論のみで論ずるべきでない。地方教育行政の現場の実情を考慮に入れるべきで、教育行政の責任者として申し上げている。」そして、「関係方面からは、義務教育費国庫負担金の骨格は守れとの意見が多数来ている。恐らく国民も、一般財源化したら国は責任逃れをしていると非難を浴びせるだろう。」と非常にいいことを言っているじゃないですか。
 だから、私はこれを絶対守るんだという姿勢でいくのかと思ったら、最後になったらこれを受けちゃっている、のんじゃっているようなお話がずっと続きますよね。せっかくここまで来て、なぜこれを押し通そうとしてもっと主張をされないのか。
 また、私は、ここの一線というのは、実は大臣をやめるかやめないかの本当に瀬戸際の覚悟、これぐらいで押し通して、総理や内閣の中で頑張るべきことだったんじゃないんですか。いかがですか。
遠山国務大臣 その大きな流れを変えたと私は思っております。
 八月末の経済財政諮問会議で、それまでその会議では、経済財政諮問会議、そういう名称にあらわれておりますように、あらゆる政策について経済ないし財政という角度からしか論じられてこなかったと思います。でも、それではだめだ、我が省が担っております教育というものはそうした視点からだけでは十分でないということで主張をし、そして、もうほとんど、義務教育については地方がやるべきで、したがって一般財源化というとうとうたる議論の流れを私としては押しとどめたところでございます。
 同時に、先ほど申しましたような、政府全体としての方針が定められております。それは、国の関与をできるだけ縮減して地方にと。その部分について協力できるということで、経費について経費の種類を限定したということが一つと、同時に、教育改革の流れの中で今やっておりますいろいろな弾力化、地方分権化というものは大いに進める。これは大きな時代の流れでもございますし、政府の大方針でもあるわけでございまして、それについて私どもとして協力できることは協力する、そういう二本立ての姿勢でその会議に臨んだところでございます。
佐藤(公)委員 大臣、物わかりがよ過ぎますよ。物わかりがよ過ぎる。これはちょっと大臣に聞くのはやめますよ。
 副大臣、政務官、実際、負担金制度だけを先行させたら義務教育にしわ寄せがいくと言われて、分権改革推進会議自身の最近の調査でも、首長の八割が制度の見直しに慎重な姿勢や現状維持を表明していたりする。まさに先生方の選挙区や何かからもそういった声がたくさん聞こえてくるはずです。結局、見取り図がない中での負担金制度の廃止論が、義務教育の財源確保に不安を生じさせていると思われますよね。
 見取り図がないとの指摘に対して、実際、副大臣、政務官としまして、周りから、これは何とかしてくれと、有権者、後援者の方々、いろいろな方々から言われているはずです。現場を、地方の状況も考えて財源論も考えてみてくれ、こういう声がたくさん副大臣、政務官に入っているかと思いますけれども、政務官、副大臣、これをこのままやらせていいんですか。
河村副大臣 我々、義務教育費国庫負担の問題の根幹を守っていくという姿勢は全然変わっていないわけですね。
 問題は、このままずるずるいくと、午前中にも申し上げましたけれども、まさにひさしだけ取ればいいというのが本体までなくなってしまうのではないかという御心配、そのことは、大臣もこれまでも絶えず言っておられるように、やはり憲法の要請に基づいて国が守るべき、国民に対して義務教育をきちっと課す、標準を守っていく、守ってもらえるようにするという、この基本線を変えるということでは決してないわけです。ただ、真に国が負担すべきものを地方が負担すべきかどうかと言われたときに、これは我々検討するということになっているわけですね。
 ただ、私が懸念しますのは、この三者で、総務省、財務省、文部科学省の合意もございますけれども、総務省あたりからも税源移譲まで言われていながら、そこのところがまだ進んでいないというところが非常に不安にする一つだろうと思うんですね。
 結果は、国民にとっては、よりよき教育がいかになされるかということに最後はなるわけです。だから、国民サイドから考えたら、教育を受けている者から考えたら、そのお金の出方が地方であろうと国であろうと、いい教育がされればいいわけです、結果的には。そのことが担保できるかどうかというと、この交付税制度そのものが、先ほどからも御指摘のあるように、非常に危ういものがまだある。むしろこれは税源できちっとすべきだという議論、このところの根っこをきちっと押さえてあれば、私は、国民の皆さんは心配はされないと思うんですよ。
 だから、国の教育を、全体の日本の教育のレベルをきちっと守っていくという根幹は、文部科学省がそのことはきちっと担保しながら、そして生き生きとした教育が地方でできるようにしていくということがこれからの流れだし、必要なことだろう、こう思っておりますから、私は、方向としてまるで違う方向に行っているとは思っていないんです。思っていないけれども、税源は言いながら、口だけで実行はないというところに問題があるので、そのことを早く詰めて、一対一なら一対一を早くやる。だから、交付税制度ではなくて、きちっと間違いなく使われるようなものになっていく、その方向が一つの方向ではないかと思うんです。私はそう思っております。
 だから、大臣がそのことを非常にきちっと言っておられて、根幹を守っていく、これは譲れない、このことは、私はきちっとこれからもやっていくし、当然、大臣は体を張ってそのことは阻止される、こういうふうに考えております。
池坊大臣政務官 私も、全く河村副大臣と同じでございます。
 私は、ナンバー幾つになりますのか、下の方におりますので、すべて私の意思が通るわけではございません。昨日もちょっと意見を申しましたら、大臣からは、批判はだれでもできるといっておしかりを受けたところではございますけれども、教職員の人件費そのものに対しては、私は、政府におります限りは、義務教育国庫負担金はどんなことがあっても死守いたします。これは私の強い意思でございます。
佐藤(公)委員 いる限りはいいんですけれども、いなくなっちゃったら、どうなるかわからない。
 河村副大臣、河村副大臣は地方の財政状況も御経験されてよく御存じだと思います。実際、担保というのはどういうことでとられるつもりでいますか、もしくはとろうと考えていらっしゃるんでしょうか。その気持ち、意欲、意思はわかりました。きちっと担保として、やはり政治家なんですから、財務省、総務省を含めてどうとっていくのか、これをお聞かせ願えませんでしょうか。気持ち、意欲はわかりました。わかりましたけれども、そこの担保の部分はいかがでしょうか。
河村副大臣 この問題は、今回の交付税措置でやった部分についても、最終的に詰めていくと、午前中にも議論がありましたが、八分の一の地方負担が出るじゃないかという問題にぶつかったわけですね。
 私は、この問題が、最終的には地方に、何のことはない、しわ寄せがいくということにならぬようにきちっとしなきゃならぬということですから、これはやはり三省が責任を持って、合意した以上は、ましてや総務省だって地方分権の立場から地方がもっと生き生きするようにという議論からこの問題を提起されるのなら、それをきちっと確実に担保してもらいたいということですから、これは地方交付税できちっとやりますという前提に立っておるわけですね。
 だから、これは国の負担が、地方に単に中央の財源が回るということではなくて、教育は国が責任を持つという考え方であれば、地方交付税、国から出るもので最終的にはきちっと処置されるということでなければなりませんし、現実に高校教育はそういう形でもうやっておるわけでありますから、私は、そういう意味で、国が責任を持って担保している、このように考えておるわけです。
佐藤(公)委員 でも、副大臣、よく御存じのように、地方において、県の財政力が強いところ、あるところ、またないところ、また下におりると市町村でも、中山間や何かというのは大変財政状況が厳しい中、いいところ、ある程度のところはまだわかりますけれども、市町村を含めて県も、本当に地方財政が苦しいところ、そういったところに対して、そのままで何とかやっていかれるかといったら、大変厳しいものがあるというのは現実だと思います。
 しわ寄せが絶対に来ますよ。そこで財政論だけでこうやって話をして進めていくことになれば、必ずと言っていいほどまさに義務教育の根幹を揺るがすことになり得る。ただ、それは約束したからみんな責任を持ってやっているとはいうものの、みんな責任持って今までやってきたはずでしょう。だけれども、こんなになっている。こんな政治でありこんな社会に、今、現状がなっている。信用できないということなんですよ、今のままじゃ。どこか担保をきちっと、とるべきところはとっておかなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか、副大臣。
河村副大臣 先ほども私、ちょっと触れたんでありますけれども、これは、こういう形で二分の一を交付税、特例交付金でやるという、制度としてはありますけれども、やはり根幹は税源移譲のことがきちっと担保されない限りは真の担保にはならない、私はこういうふうに思います。
 ましてや交付税ということになると、交付税のない裕福な県も中にはあるわけですね。それは自分のところのでやらなきゃいけないということですから、それによって教育に大きな差がつくようなことがあっては、教育の機会均等、いろいろな観点からも問題がある。しかし、国としては、少なくとも標準のここまではきちっと守ってもらうということは国が担保しなきゃなりませんから、今の二分の一のこの財源のあり方というものは、これはやはり堅持をしていくものだ、こういうふうに考えております。
佐藤(公)委員 今、担保は心配ないみたいなお話ですけれども、それがもう覆って覆って、また手のひら返したようにこの先なっていくような気がして、大変心配でなりません。
 この辺は平行線になってしまう部分もあると思いますけれども、分権会議や何かは、学級編制や教職員の定数配置に国の強い関与があって分権が進まない、こんなことの話があった。教員管理の根幹である給与負担制度の廃止が大事だと言っていることもありました。学級編制や教職員の定数配置を縛るのは義務標準法やまたは県費負担教職員制度と言われていることもあり、またこういう部分に関してより踏み込んだ弾力性のある見直しをしていく方が先というか、考えていかなきゃいけないかと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
河村副大臣 まさに委員御指摘のように、今回のそうした交付税措置等の扱いの中で、さらに具体的に義務教育に関する地方の自由度を高めるということが必要になってくるわけでございまして、定数の標準法の範囲内で都道府県が判断をして学級編制等が弾力的にやれるようにするとか、メニューごとに定めてある加配の教職員を、このメニューにしか使えないということじゃなくて、全体で使えるような柔軟な対応ができるようにする、これは大くくりと言うそうでありますが、全体の中では自由にお使いいただけるようにする。
 そのようなことで、教職員の、特に国の関与が、一々国が教職員の配置まで指図しているじゃないかというような言われ方をしておりますが、現実にはこのことは本当は教育委員会が自由にやっているわけでありますけれども、もっとそのことがやりやすいように制度としてもきちっとしていくということだろうと思いまして、そういう意味で、自主的な教員の配置が行われて、学校教育がさらに充実されるということが必要なことだし、それをもっと進めていかなきゃいかぬ、このように考えます。
佐藤(公)委員 まずそういったところを先にどんどんやっていって、財政論はやはりもう少し先に延ばしていくべきなんじゃないかなというふうに私は思います。
 もう時間もございませんが、私、根本的なことをもう一回聞かせていただけたらありがたいと思いますけれども、なぜこういうことになってしまったんでしょうか、副大臣。何でこういうふうなことになってしまったんですか。なぜですか、今回のような法改正になること、削除をすることになったのは。何でこういう事態になっちゃったんでしょうかね。わかりますか、質問の意味が。
河村副大臣 これは、御指摘を受ける面からいえば、財源論が優先したんではないか、教育論が後回しになったんではないか、こういう御意見だと思うんです。
 ただ、私は、先ほどちょっと申し上げましたが、教育の根幹は国でありますけれども、教育を実施しておるところはまさに地方にあるわけでありますから、地方がやはり責任を持ってやりやすいようにしていくという方向は一つの方向だと思いますし、これは、義務教育国庫負担金の中にいろいろな項目があったものがだんだん減ってきたということで、段階を追ってここまで来ております。
 だから、やはり一つの流れは、地方分権の流れもある中で教育を考えていこうということで、こういう決断をある意味では迫られた部分もございますし、その流れに沿うけれども、それによって教育が、地方がもっとうんと頑張れるような仕組みも一緒につくっていきますという方向で私はこういう法案を出しておるわけでありまして、その点はひとつ御理解を賜りたいというふうに思います。
佐藤(公)委員 理解できないですね、理解できない。
 結局のところ、財政破綻というのが大きな柱になって、こういうふうになっちゃっているのかな。まさに財政破綻のしわ寄せですよね、しわ寄せだと僕は思います。いろいろな要因がありますよ、いろいろな要因がありますけれども、地方分権社会にしていく、そういう意味での話し合いの中でこういうところに着地点を見出したところもあると思います。
 しかし、やはり財政破綻ということがありますけれども、副大臣、財政破綻は何で起こっちゃったんですかね。お答えになれますか。
河村副大臣 これは非常に難しいといいますか、それは入っているお金より出る金が多かったからだんだん財政が厳しくなったということだと思いますけれども、ただ、日本の経済が右肩上がりでずっと来た、そのことの一つのツケが今日来ているんだと思いますね。
 現に、経済、これだけ大きくなったものを縮小するというのはなかなか大変な努力が要るわけでして、今バブルがはじけたというのはまさにそういうことなんだと思うんですね。そのしわ寄せが今日来ているわけですから、そして、今まで経験したことのないようなデフレという現象が今起きている。この現実にどう対応していくかということで我々は今呻吟をしているわけでありますから、これはやはり政府、国を挙げてこの問題に取り組んでいかなきゃならぬということだと思います。
佐藤(公)委員 やはり一番の原因は無責任ですよ、無責任。まさにこれからの子供たちに無責任な大人になってもらいたくない、そこら辺をよく与党、野党、政治家、国会が考えてやっていかなきゃいけないというふうに私は思います。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
古屋委員長 鎌田さゆり君。
鎌田委員 民主党の鎌田さゆりです。本会議に続きまして、どうぞよろしくお願いします。
 私は、自分でもはっきりわかるほど自分自身は気が弱いし、それから目上の方に対しては、いわゆるきついことは言えないし、ですから、本会議のときには、私自身なりに意を決して、勇気を振り絞って、大臣に対して、失礼かなと思われるようなことも言いました。私は頭はそんなによくありません。でも、自分自身すごく純粋だとは思っています。だから、その純粋な思いを込めて遠山大臣に、この法案に対して私の考えを述べながら、また大臣にもいろいろ申し上げました。
 その純粋な目で見ますときに、たとえこれが単に芽出しであろうと、一ミリ一歩の前進であろうと、本当に言っていることがそのまま正しく法案の中身にあらわれているのであれば私も受け入れられるし、そしてまずはそう信じたい、信じようという素直な気持ちを持っているつもりです。ところが、地方分権にしても税源移譲にしても、いろいろな部分において、えっ何で、何でこうなるの、そこまで私、頭が悪いかなと。全然理解できないんですよ。
 だから、私は、本会議ではやはり財務大臣や総務大臣にきっちりお伝えをして聞いておかなくちゃいけないと思いましたけれども、きょうは財務も総務も呼んでいないんです。文部科学省との打ち合わせのところで、ぜひこの質問には総務省を呼んでくれ、財務省を呼んでくれと言われました。でも呼んでいません。
 大臣、ここには今まで、少なくとも今まで、文部科学省の応援団でいよう、そういうふうに心に決めていた議員がいて、そしてきょうの、あるいは十四日の大臣とのやりとりで、またこれからも応援団でいけるかどうかと、私自身は今そんな気持ちでいるんですね。また、この応援団でい続けるためにも、きょうは総務も財務もいませんから、ぜひ率直な本心を吐露していただくぐらいの思いで答弁に立っていただきたいと思います。
 ちょっと前置きが長くなりましたが、今、佐藤議員が、そもそも何で今この法案を出したのかという御質問がありました。河村副大臣がお答えになっていましたが、同じ質問を私もやはりまず最初に遠山大臣に、何でこの法案を今出されたんですか。
遠山国務大臣 鎌田委員が、本会議での御質問のときも大変力を込めて、おしかりを受けながらも、私もむしろ応援していただいているという気持ちで受け取ったところでございます。
 今回のは、今日本が抱えるいろいろな問題を解決するために、構造改革なくしては前進なしという趣旨の一連の政策の中で、国として、例えば地方分権については地方分権推進会議で、三位一体を進める、そういうことで御議論がされてきて、そして提言があり、また経済財政諮問会議も、それを受けた上で議論がなされて、一つの解決の方向が見出されてなったということでございます。その中で、私といたしましては、義務教育を守るあるいは教育を守るという立場から最大限主張すべきものは主張し、そして国として守るべきものは今後とも絶対に堅持するという考えのもとに、さはさりながら、協力できるものは協力するということで結論を出したものでございます。
 したがいまして、今回のお願いいたしております法律案といいますものは、そういった議論と政策判断の後にでき上がった改正案でございまして、そのことについては御理解をいただきたいと思います。
鎌田委員 やはりまずスタートは地方分権のところからなんですね。そして、国と地方の構造改革、スタートがそこなんだということを今改めて教えていただいて、正直、やはりそうだったのかという思いです。
 というのは、次の質問なんですが、今回の義務教育費国庫負担制度、この仕組みを変えるという議論、この議論と検討が始まったのはいつごろからなのか。それは文部科学省としての自発的なものなのか、あるいはどこからかの要請があってのものなのか。議論の時系列、過程を見ておりますと、とにかく地方分権改革推進会議と経済財政諮問会議、この姿はたくさん見えてきますが、文科省の姿が見えてこない。改めてお伺いします。
矢野政府参考人 私の方から少し、一連の経緯について簡単に御報告させていただきたいと思います。
 この問題につきましては、昨年の六月二十五日に閣議決定いたしました経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二というのがございます。これに基づきまして、国庫補助負担金、また地方交付税、それから税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、ことしの六月までに改革案をまとめるという政府の方針が決まったところでございます。その際に、国庫補助負担金につきましては、「改革と展望」の期間中に数兆円規模の削減を目指すということもその中で決まったところでございます。
 これらを受けまして、小泉総理から義務教育費国庫負担制度の見直しを行うように御指示がございまして、義務教育費国庫負担の削減につきましては、昨年の八月に、経済財政諮問会議におきまして、大臣の方から、我が省として国と地方の役割分担あるいは費用負担のあり方を見直すという観点から必要な改革案を提示したところでございます。
 一方、経済財政諮問会議とは別の舞台でございますけれども、地方分権改革推進会議におきまして事務事業のあり方の見直しについての検討が行われておりまして、六月にそれの中間まとめが出されました。それを経て、十月に地方分権会議の最終報告がまとめられたところでございまして、その中で、義務教育費国庫負担金の共済費長期給付等を負担対象外とする対象経費の見直しが分権会議の提言としてまとめられたところでございます。
 政府といたしましては、これらの経済財政諮問会議や地方分権改革推進会議の提言を受けまして、昨年の暮れでございますけれども、平成十五年度予算編成におきまして、政府全体と調整をして、この義務教育費国庫負担金につきましては、共済費長期給付等の経費についてこれを一般財源化するという政府としての方針を決めたところでございます。
 これが義務教育費国庫負担金の見直しをめぐる一連の経緯でございます。
鎌田委員 つまり、六月二十五日の経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二、これが閣議決定されたのを受けて、総理からのということで、そこから議論が始まったということなんですね。
 そうすると、六月二十五日に閣議決定されて、それを受けてあっという間に、四年で五千億というプラン作成まで、提出までいっちゃっているわけなんですよね。私は、その辺のところからして、文部科学省というのは一体何なんだろうと。先ほど来ずっと議論が続いていますけれども、国の財政状況が、財布状況が厳しくなった、だから何かちょっと検討しろと言われて、はいはいと言われて検討して、さっさと四年で五千億のプラン提出までいっちゃうというのが、私は本当に、正直言って余りにも情けないです、本会議でも言いましたけれども。
 それで、遠山大臣は経済財政諮問会議の中でも、私は議事録を読みながら、時に涙が出そうになったり、声を出して、行け、頑張れと言いたくなったり、本当に、いわゆる抵抗をきちんとなさっている。正論だと思います、おっしゃっていることは。
 その中で、二十兆円もある国庫補助負担金の中で、三兆円の義務教育費国庫負担金のみがターゲットとなるということに違和感を感じたというふうに大臣はおっしゃっています。その違和感というものを、改めて具体的にここで紹介していただきたいんです。私も違和感を感じました。私の場合の違和感は、それはないでしょう、そんな理不尽な、そういうものを私は感じました。大臣は、その違和感というものをもっと具体的に、わかりやすく言うと、どういうものだったんですか。
遠山国務大臣 閣僚の一人でございますし、政府の、内閣の負っている大きな課題の中で協力していく面があると思いますけれども、教育の一番の根幹のところを、私から見れば、かなり軽々に論じられたというふうに感じたわけでございます。
 もう一つ、納得できなかったのは、国庫負担金あるいは補助金のトータルが十九兆とも二十兆とも言われているわけでございますが、その中で、一番大事なところをターゲットにして、そして、三兆円というその数字がちょうどよかったのかもしれませんけれども、それを地方に地方分権という角度で一般財源化すれば税源が移るというふうな判断のもとに議論が行われていた節があるということを見まして、これは我が方にとっては極めて譲るべからざるものであって、そうした議論があることについて違和感を覚えるというふうに言ったところでございます。
鎌田委員 私みたいに余り端的過ぎる、それはないよとか、そんな理不尽なとかという表現は、大臣のお立場では難しいのかなと。でも、要するに、わかりやすく言えば、やはり私と同じだと思うんですね。――うなずいていただきました。
 それで、この法案を改正案として国会にお出しになられた。ということは、大臣にとってのその違和感は解消されているということでしょうか。私は解消されておりません。どうでしょうか。
遠山国務大臣 その中で、やはり義務教育の重要性ということから制度の根幹を守り切っているという点では、私は、ある意味でこれは成果であったと思っております。
 もちろん、義務教育という角度からいえば、それは今回お願いするようなことがなければなおよかったのかもしれませんけれども、あのときのいろいろな情勢、そして今国が抱えているいろいろな問題、地方分権という一つの大きな方向性という中で、最大限協調できるところで今日の法案提案になったわけでございます。
 ただ、一つ大事なことは、午前中もちょっと申し上げましたけれども、義務教育の水準を守るという意味で、この義務教育費国庫負担制度の根幹を守るというのは、私としてはこれはもう絶対にゆるがせにできないものだと思いますけれども、それ以外に、質の向上なりあるいは条件整備ということからさまざまな政策を展開いたしております。先般衆議院で通していただきました来年度の予算案の中にも、さまざまな形で教育の充実についてのプラスの政策が展開されているところでございます。
 そういうものを総合的に判断すれば、これは、私としては、近年における中ではかなりの前進を見ているというふうに考えているところでございます。
鎌田委員 今おっしゃった部分は、半分が私も本当に受け入れられるし、半分はえっと思うんです。
 教育の改革を文部科学省が地道に少しずついろいろと行ってきていること、それをこれからも進めていかなくちゃいけないし、それは本当に正しく評価をされるべきだと思います。でも、そのことと今回の法改正の内容とは全然リンクしないと私は思うんですね。今回の法改正をやったからといって、そちらの教育の改革がさらに進む、さらにもっといい方向に進むというならまだしも、先ほど来出ているように、将来に不安が残る、それから疑問も残る、そういうような状況で、私は、この法案の正当性というものをまた一段と疑問を持たざるを得ないわけであります。
 さきの本会議で、遠山大臣が御答弁をなさいましたけれども、「一方、政府におきましては、地方分権改革推進会議などの意見も踏まえまして、国の関与を縮小し、地方の自主性を拡大するとの観点から、国庫補助負担金の整理合理化について検討を進めているところ」だという御答弁がございました。
 また一方、昨年八月の経済財政諮問会議へ遠山大臣が提出なさった資料には、義務教育費国庫負担は、国の関与ではなく、義務教育水準確保のための国による最低保障だとおっしゃっているんですね。
 これは、よくお話を比べて聞いてみますと、一方では、義務教育費国庫負担制度というのは関与じゃないんだ、堅持すべきものなんだと言っている。しかし、今回は法改正で、その中でも国の関与と思われるものは縮小する。ということは、今まで昭和三十年代からいろいろ教員の給料の中で項目がふえていますけれども、その間にずっと行ってきたこと、義務教育費国庫負担制度として堅持をして行ってきたこと、そこのところをしっかり検証して、それは国の関与だったんだ、今までの、過去の数年間あるいは数十年間のうちのこの部分は関与でしたというふうにお認めになって、そして今回の法改正になったんだというふうにとらえてよろしいですか。
遠山国務大臣 ちょっと、誤解されているのではないと思いますけれども、御説明したいんですが、国の負担金の中で経費が地方交付税の方に回されたとしても、個々の教員が受ける給与費等は変わらないんですね。それをずっと保障してきているんです。今回もそうでございます。
 表面上は国の負担額というものが減ったということで、それを国の関与の減少というふうにとるところもあると思いますけれども、私どもとしましては、むしろ国の果たすべき最低限の保障というのはずっとやってきているわけでございますし、今回も、経費について表面上は国の負担金の中からは減るということをお願いしているわけでございますけれども、教員自身が受け取るべき手当としては必ず残るわけでございますし、その意味では、決してそれはこれまでの義務教育の水準ないし教員の受けられる給与等の経費の減にはつながらないわけでございます。
 そこのところは保障をしながら、国の負担金という、いわば名目の額、これが減っていくわけでございますけれども、そういうことを考えていただきますれば、国としては、最低限守るべき中核のものは守りつつ、また一方で、経費の種類を限定いたしますが、その面についても一般財源化ということで、今回、特例交付金なり一般交付金なりいろいろな制度を工夫しながら手当てはしていくということでございますので、その点は不変である。後退ではなくてそこは維持されていく。それ以上に、むしろいろいろな政策を展開して、教育の充実という方向に向けて今やり始めている。そういうふうに御理解いただければありがたいと思います。
鎌田委員 私、別に教員の給料が減っちゃうんじゃないかとかそういう懸念を言ったつもりではなくて、教員のお給料、昭和三十一年に恩給費が入りまして、それからずっと共済費、公務災害補償基金、児童手当、退職手当などが加わっていって、そして現在のような体系になるのに、昭和六十年にそこの仕組みが変わった以降ずっと同じように続いている。そういうことが続いてきて、そして今回その二つの項目の部分を国の負担から外す、真に国が負担すべきものだけ残して、国の関与を小さくするためにそれを外すということは、じゃ、今までやってきたこの数年あるいは数十年、その部分は国の関与であったということを今の時点で振り返って思われるのでしょうかというふうなことを聞いたんです。
 というのは、私はあくまでも、文部科学省が皆さんに、国民に対して説明をしている、国として真に負担すべきもの、これに限って負担をしていきます、そして国の関与を小さくするためにこういうふうにここの部分を国の負担から削りますという説明を信じたいという気持ちからなんですね。だから、今回そういう理由でここを削るのであれば、今までやってきたその部分については、やはり今の時点から振り返ればそれは国の関与であったと認めざるを得ないということなんでしょうかということをお聞きしたわけなんです。でも、それはいいです。
 それで、平成十五年から十八年度にかけて四年で五千億という具体的なプランを、遠山大臣、去年の九月にお出しになりました、八月のヒアリングを経てから、また九月のいろいろな会議も経てからだと思いますけれども。四年で五千億という具体的な数字が出てきたのは、その九月十二日、このときが初めてでしょうか、地方分権改革推進会議の席上だと思いますが。
矢野政府参考人 夏の経済財政諮問会議におきましては数千億円程度ということを大臣の方から申し上げましたけれども、その後、具体的な精査をいたしまして、私どもとして五千億という数字を挙げて改革の規模を申し上げましたのは、分権会議の報告を受けて文部科学省としてどう対応するかということを、経済財政諮問会議の場で大臣の方から申し上げたときが初めてでございます。
鎌田委員 これは、大臣が御提案なさっているということは、そしてまさに国庫補助負担金制度に手を入れるものですから、四年で五千億という数字に対して大臣としての相当の理念あるいは信念というものがあったと思いますけれども、その理念、信念についてお示しをいただきたい。
 さらに、理念、信念がきちんとあったのであれば、四年で五千億というものをきちんと段階的に、一年目はこうだ、二年目はこうだというスケジュール、プランがあって、それと、経済財政諮問会議でほかの委員と意見が食い違えばきちっと議論を闘わせるという必要性があったのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
矢野政府参考人 先ほどお話し申し上げましたように、具体的な経費削減の規模を申し上げましたのは、十月の経済財政諮問会議の場において、文部科学省としては分権会議の提言を受けてこういう改革案を持っておりますということを申し上げたわけでございまして、その際、これもあくまでも私どもの考えでございますが、具体的な改革案としてはこういうスケジュールでという一応の案は持っておりますということを申し上げました。
 ただ、いずれにいたしましても、この具体的な削減の規模あるいは具体的な削減のスケジュール等々につきましては、これはあくまでも政府全体として決まったものではなくて、文部科学省としてはこういう考え方を持っておりますということを申し上げて、後は政府全体の調整にゆだねるという形になったものでございます。
鎌田委員 だから、文部科学省としてのプラン、スケジュールというものが私はすごく大事だと思うんですね。それを遠山大臣がきちんとお伝えをして、その理念、信念に基づいて進んでいくならまだしも、四年で五千億という数字がぽんと出てきて、それに理念、信念があるならそれに基づいて進んでいくのかと思いきや、ことし約二千三百億というふうになってしまった。
 そして、午前中の審議でも明らかになっていますけれども、来年、十六年度以内に児童手当と退職手当も手をつけていくと、だれもがみんなそう思っていますよ。そしてさらに、総務省のたくらみとは言いたくないけれども、思惑の中には、全部一般財源化しようと。だから、そのなし崩しの第一歩にこれが使われているという危惧を私たちはうんと抱いているし、そこのところで、やはり大臣に本当に最後まで闘い続けていただきたかったという思いがあるんです。
 また、聞くところによると、他の省庁は、四年で五千億という文部科学省のような数字入りでは提案していないというふうに聞いていますが、それは本当ですか。文科省だけがそういうふうに数字入りで提案したということのようですけれども。
矢野政府参考人 申しわけありません。私、具体的に各省がどういう形で提案したかというのは承知いたしておりません。
鎌田委員 さっきから政府全体で政府全体でとずっとお答えになっていて、それで、政府全体として地方分権と国と地方の構造改革をやる、そして国庫補助負担金の削減ということで、政府全体でやっているものなのに、文科省、自分のところで四年で五千億という数字を出しておいてほかのところがどうなっているかわからないというのは、余りにも人がよ過ぎますよ。私が聞いているところでは、ほかは、うちは何年で何ぼ削減いいですよなんというのを出しているところはないと聞いているんですね。出していても、せいぜい百分率で出している。そして、厚生労働省なんかは、自分のところは減らなかったからいひひと、心の中で笑っているのか声を出して笑っているのかわかりませんけれども、そういう状況なんですよ。だめですよ、これでは。
 そして、改めて大臣にお伺いします。四年で五千億というプランを文科省内でおつくりになって出したということの背景には、昨年の五月二十一日の片山大臣の試案、国から地方への税源移譲等により国税と地方税一対一の実現、これが実は文科省の皆さんの心の中での担保になっていたんじゃないかということを改めて確認させていただきたいと思います。先ほどの答弁で、税源が移るということが最大の担保であったというふうに河村副大臣はお答えになりましたけれども、改めて伺います。
河村副大臣 前の委員の皆さんにもお答えをしたとおりでありまして、きちっとした教育ができるために税金が教育にきちっと使われるという前提は、三位一体の中のこの税源移譲の問題も含めてというふうに考えておるわけでありまして、やはりこれがこの問題の一つの担保になっているということは間違いありません。
鎌田委員 であればちょっと救われるんですね。これがあるからだということで、取り組みになったと。
 ただ、次に、また打ちのめされるのは、でもその経済財政諮問会議の議論の席上で、片山大臣が税源移譲をかち取れていない。それから、塩川財務大臣が十月三十一日の経済財政諮問会議に提出をした十五年度の予算編成の基本的な考え方、税源配分の考え方の中に、結局、国債をじゃかじゃか発行している、その国債を発行する際の信頼を得ていくために今の国税が最小限必要だ、だからその中から地方にやるものなんかないよとはっきりおっしゃっている。ペーパーで文字にもなっている。だから、三位一体の一部の税源移譲なんというものは、五月の片山試案では一応出ているけれども、その後全然実行されるはずがないとわかっていたんじゃないでしょうかね。これは私、後から、今になってこの議事録を読んだだけでもわかりますよ。
 そうしたら、その途中の段階で、だめだ、税源移譲できないんだったらやはりそれには乗れない、四年で五千億のプランは撤回する、そのくらい遠山大臣がおっしゃって当然だったと私は思うんです。憲法の話を出し、国でこの制度を堅持していくんだ、そういう決意があればそれは当然のことだったと思うんですけれども、それがなされていない。非常に残念でしようがありません。
 あと、根本的なところでなんですけれども、今回、先ほど遠山大臣も、十九兆何がし、約二十兆ある国庫補助負担金の中から三兆のこれがターゲットになるのは違和感があるとおっしゃったんですけれども、私も改めて、日々不勉強なので、総務省自治財政局調整課からちょっと資料を取り寄せて見てみたんです。国の国庫補助負担金の一覧表、普通会計ベースというものがここにありますが、この国庫補助負担金を国が財政改革の中で幾らかでも少なくしていこうということで、その一環として今回この義務教育費もターゲットになったわけですけれども、義務教育費のところで二千数百億削減になっていますよね、国庫補助負担金の中からは。
 義務教育費のところでそれだけ削減になっているんだから、きっと国全体で見ればさらにプラス数千億かもっとでそれに見合った数字というものが削減になっているんだろうと思いきや、十四年度の国庫補助負担金の総額と十五年度、今回の予算の総額、プラスマイナスしてみますと、マイナス二百十六億、二百十六億減っているんです、国庫補助負担金。文部科学省のこの義務教育費国庫負担法改正によって削減された国庫補助負担金、何ぼでしたでしょうか。二千三百億と言われている。でも、全体では二百十六億しか減っていないんですよ。これはだれだってわかると思うんです。教育の方でこんなにじゃかすか減らしておきながら、どこかでふえているところがない限りこういう計算にならないと思いませんか。
 だから、私が申し上げたいのは、財務省の塩川財務大臣、総務省の片山総務大臣、そのお二人の方々、特に塩川財務大臣の微妙なうまい言い回しによって文科省は、私は言いくるめられたとは思いたくないけれども、そんな失礼なことは言いたくないけれども、はっきり言ってそうだったと言わざるを得ません。結果として文科省ばかりが痛みを負う、傷を負わされるということについて、国庫補助負担金の削減、政府がやったこと、それに対して今改めてどんな感想をお持ちでしょうか。
遠山国務大臣 それは、この委員会ではなくて、私は、もっとトータルなことを議論する場で、ぜひとも国会議員皆さんで御議論いただきたいと思うところでございます。それは、今、結果的に当方から二千億余の削減について協力をしたのにマイナス二百億余であったというのは、社会保障の義務的経費、これは当然増なんですね、それに伴って増をしたことで、差し引きそういうことになったのではないかと思います。
 それから、先ほど地方分権推進会議の絡みで、十月三十一日ですか、あれのときの話が出ましたけれども、その直前の地方分権推進会議、あれは三十日ですね、前日ですか、そのときに「負担対象経費の見直し 平成十五年度から実施」ということではっきり言われているのが、これは義務教育のところだけであったということでございます。
鎌田委員 遠山大臣の中ではその数字の部分も納得をしていらっしゃって、それから、こういう議論はしかるべきその分野でというふうにおっしゃいましたけれども、少なくとも、私は今回、代表質問からきょうまでの準備をする過程の中で役所の人といろいろ打ち合わせをしています。そのときに、役所から返ってくる言葉は、これは文部科学省から出されている法案です、それが最終的に閣議決定されているけれども、遠山文部科学大臣が総理大臣にかわってすべてにおいて責任を持って答弁もするし、ちゃんと説明もするんです、できるんですというふうに私は言われたんですよ。
 それで実は、代表質問のときの裏話をちょっと紹介しますと、私はそれはおかしいと思いました、正直。これは最終責任者はやはり小泉総理でしょう。それで、あの本会議に小泉総理が出ないんだったら、官房長官が答弁してくれるのは当然だと思った。しかし、最後の最後の夜の夜まで、官房長官は答弁に立ちませんと。お金の話だろうが何の話だろうが、全部遠山大臣がきちんと答えられるんですから、そんなこと、官房長官が答える筋のものじゃないと言われた。
 では、経済財政諮問会議での遠山さんの発言はどうなんですか、それは個人的な自由な発言と理解しているからと。こんなふうにほかの省庁から思われている。はっきり言って、なめられている。私は、同じ女の、遠山の金さんじゃないけれども、女遠山に本当に期待をしているし、こんなになめられているのに対して毅然として立ち向かって、ふざけるんじゃないわよと言ってもらいたいんですね。
 ですから、いろいろ裏の裏、実態の方を見ていけば、遠山大臣、こういうふうにやはり、ここにいらっしゃるすべての議員は本当はわかっている、その法案の中身の実態を。これはもう、義務教育とは何ぞやというものを論じるその前に、国のお金の事情でこれをやらされた。それから、どんなに地方分権だと言っても、どんなに地方の裁量が拡大する云々と言ったって、結局は八分の一の負担、それが地方交付税、しかも特別会計の借入金から来ると。その仕組みをわかっているから、遠山大臣に対してきついことを申し上げたり、あるいは私は、そのことを申し上げながらも、やはり最後まで望みを託して、この委員会の場で本当の気持ちをおっしゃっていただきたい。
 私は、遠山大臣にいろいろ今まで申し上げてきましたけれども、実はじくじたる思いでこの法案を出しているんだというふうなことを正直にあらわしていただけないのかな、そういうふうに思います。もちろん閣法ですから、そんなことを遠山大臣が内閣の中でおっしゃったらどういうふうになるか、ここでおっしゃったらどういうふうになるかはわかります。でも、この制度の性質をちゃんと理解して遠山大臣としての立場の自覚をきちんと持っていれば、そういうことを言えると思うんですけれども、本当はそういう思いをお持ちじゃないんでしょうか。
遠山国務大臣 私は、教育あるいは科学技術、文化、スポーツの事象について行政的な責任を持つ立場からいたしまして、特に義務教育につきましては、もっと冷静な、あるいは日本の国を今後どうしていくべきかという議論の上に立って、それが仮にお金に絡むことであっても、今後議論されるべきものだと思います。そのことにつきましては、私は、三大臣の合意の中で、義務教育費国庫負担制度のあり方については教育改革の一環として今後論ずるということについて納得させることができたわけでございまして、今後はその角度からきちんと私どもも最後まで責任を持ってやっていくということをここで明らかにいたしまして、今回の法律につきましては、国の大きな状況というようなことに私どもとしては制度の根幹は守りながらも協力をしていくということにおいて出てまいった一つのシステムの改革であるということで御了解をいただきたいと思います。
鎌田委員 時間がなくなってきました。私の悪い癖でいつも委員会だと余計なことも言っちゃうので、まだまだたくさん聞きたいことがあったんですが、一つ、地方負担の八分の一のところで、先ほど児玉議員とのやりとりの中で、はっきりさせなくちゃいけないこと、地方への国からの補てんの差が生じるといったときに穴埋めはどこがするのかということ。これは、総務省とお詰めになっているかということに対しては詰めていないと言われたけれども、ここのところはやはりはっきりさせなくちゃいけないと思うんですね。そういう差が地方において生じたときにどうしていくお考えなのか、現時点で文部科学省のお考え。
 それから、地方財政計画全体の中で八分の一を措置していくというふうな説明を文部科学省から受けております。けれども、これは単純にわかりやすく言えば、いずれ地方交付税から天引きをされる仕組みであるということ、これを文部科学省はそのように御認識なさっているか。
 それから最後に、遠山文部科学大臣の決意として、総務省が教員の給与費本体も含めて一般財源化ということ、これは経済財政諮問会議での皆様の議論のやりとりを見ていてもちらちら、そんな考えがあるんだなというのはうかがえます。そういうところに対して、遠山大臣、現時点での大臣としての決意をきっちりと表明していただきたいと思います。
矢野政府参考人 まず、私の方から、少し事務的な点について御説明申し上げたいと思います。
 まず、地方交付税による償還についての財源措置でございますが、先ほど御指摘がございましたように、地方負担分が八分の一でございますけれども、これは私どもの理解というんでしょうか、この八分の一というのは、個々の都道府県が県債等を発行して各自治体が借り入れをする、そういう性格のものではないわけでございます。これは、地方交付税特別会計全体として、そこの特別会計として償還をする、こういうものでございますから、追ってまた児玉委員の御質問については精査いたしますけれども、個々の自治体について負担率がどうのこうの、そういう性格のものではないということについては御理解をいただきたく思います。
 それから、この八分の一についての負担の問題でございますが、確かにこれは地方の負担ということになるわけでございますが、午前中、総務省の財政局長から、この地方負担分については、今後、一般財源化に伴う地方の自由度の拡大あるいは効率化等によって必要な財源は確保できるのではないか、そういう御説明がございましたので、私どもも、そういうふうに理解をいたしているところでございます。
古屋委員長 持ち時間が終了しておりますが、大臣、もし答弁があれば。
遠山国務大臣 一言だけ。義務教育制度の根幹を守る、これについて、その方針を堅持するということについて、はっきりとお答え申し上げます。
鎌田委員 ありがとうございました。
古屋委員長 中西績介君。
中西委員 私は、きょう、午前中から午後、お二方の論議を聞いておりましても、文科省の考え方がおおよそわかりました。本当に残念でなりません。
 この中身、たくさん聞こうと思ったんですけれども、この中から数点にわたって指摘をしながら、もう一度、皆さんが、この義務教育費国庫負担法改正の一番の焦点、結局、削除されたというこのことが全部やはり中心になっていますので、重なるところもあると思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。
 そこで、先ほどからも出ておりましたけれども、もう一度私はそこを確認しておきたいと思うんですが、経済財政諮問会議並びに地方分権改革推進会議では、困窮する財政問題から、国と地方の経費負担のあり方を再検討されることが中心課題になって進められたと私は思うんです。
 この検討に当たって、教育、特に義務教育とのかかわりでどのような論議をしてきたかというのが、きょうも皆さんが一番お聞きしたいところであったと思うんです。その点、先ほどから聞いておりますけれども、私、十分納得いく返答が得られておりませんので、この点についてお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 経済財政諮問会議におきましては、歳出の構造改革の一環といたしまして、国と地方のあり方についての検討がなされました。そして、地方分権改革推進会議におきましては、国と地方の役割分担に応じた事務事業のあり方についての検討がなされたというふうに承知をいたしております。
 この検討の過程におきまして、私としては、単に財源論のみでなく、教育のあり方あるいは教育改革という立場から議論すべきであると考えまして、八月の経済財政諮問会議に、これは臨時委員として出席を請われました。その場におきまして、国民的な課題であります教育改革を推進していくことの重要性を強調し、各国の取り組みを説明し、そして、今私どもが進めております教育改革の取り組み、その中では随分地方分権を進めているわけでございますが、そういったことも援用をしながら、教育のあり方についていわばトータルな考え方を示すために、人間力戦略ビジョンを提唱したところでございます。
 財源論のみで論じられてはならない、教育論として論じられなくてはならない、その教育の分野で、しかも義務教育という枠組みでのみ論じないで、むしろ、二十一世紀を切り開いていくたくましい子供たちを育てていくのにはどうしたらいいか。すなわち、小学校、中学校、高等学校、大学あるいは生涯学習を通じてやっていくべきものだと思います。その中での一番の根幹としての義務教育という角度から、そこにおいての役割の重要性というのを強調もし、全体の視点も持ってもらうという角度から議論をしたところでございます。
 八月のその会議において、私は、大きく流れを変えたと思っておりますが、もう一度、十月に、それまでの間に、地方分権推進会議において、いろいろあると思われる国庫負担補助金、その中から義務教育について取り上げられて、いろいろ指摘があったものですから、その十月の会議におきましては、義務教育というのは国の礎であって、国民として必要な基礎的な資質を培うものであること、また、義務教育費国庫負担制度については、義務教育の水準確保という制度の根幹を堅持するということで、主張をいたしたところでございます。
 そのようなことで、私としては、機会をとらえ、その議論のあり方というものを根本的に考え直してもらうために、いろいろな角度からの知恵を尽くした説明をし、そして今日の状況になっているというふうに思うところでございます。
中西委員 今お答えになりました八月の際には、教育という視点から、いろいろあったけれども、その流れを文科省の流れに変えることができた、その後の十月なりになってきますと、これは相当変わってくると思うんですけれども、その際も、論議の中心をやはり義務教育に置いて論議をしたということですね。
 ところが、その義務教育という問題を本当に相手方、総務省なりあるいは財務省を中心として、こういう内閣の中の他の省庁の皆さんに十分理解されたかというと、結果的には、先ほどから指摘されていますように、後になって出てくる十二月の三省の確認事項からすると、そのことは消え去っておるんではないかと私は思うんですね。ですから、やはりここが一番の問題ではないかと思っています。
 そこで、もう一度、義務教育問題について基本的な確認をしておきたいと思うんですけれども、義務教育の位置づけ、基本理念は、もちろんお答えになると思いますけれども、憲法二十六条とのかかわりだと言うでしょう。その場合に、このことが、財政面とのかかわりの中の問題でなくて、なぜ国がかかわってでも死守しなきゃならぬかという、ここら辺が相手方に十分浸透したかどうかというのが私は一番問題じゃないかと思っています。
 したがって、先ほどからお二方の同僚議員が言われておりましたように、極端な言い方をしますと、本当に義務教育という問題と教育に対する基本理念というものが、文科省の中で相手方を説得するような、ほとばしり出るような論議に果たしてなっただろうかという、表現は違いますけれども、そういうところを盛んに皆さん指摘をしておったと思うんです。
 したがって、ぜひ義務教育の位置づけというものをぴしっともう一度整理しておく必要があると思うんですが、どうなんですか。
河村副大臣 私からもお答えさせていただきます。
 先ほど来大臣も御答弁申し上げておりますように、教育問題、特に義務教育の保障の問題が財政論的なものから出ていることについては、私も非常に危機感を抱いておるところでございますし、財政諮問会議等の議事録等の中、あるいは漏れ聞こえてくる中には、ついには人確法のあたりについても、何でこんなものがあるんだというような議論までされたというようなことを聞いておりまして、教育に対する認識が一体どうなっているのかという思い、そのことは大臣も強く訴えられてきたところでございます。
 義務教育は、今御指摘のように、憲法第二十六条にもあります、また教育基本法においても、きちっと国民に必要な基礎的な資質を培うものだからということで、すべての国民に一定の水準の教育を無償で提供する、この基本的理念を堅持していくということは当然のことでありまして、そして、義務教育を実施するに当たっては、市町村、都道府県、国、それぞれが役割分担をきちっと果たしていかなきゃならぬ。
 国としては、義務教育の適切な実施を下支えするためにも、その財政的支援、いわゆる教職員の給与等の二分の一、これを負担するということを持っておるわけでございますし、ほかにも、教育の根幹であります教育課程の基準の設定であるとか学級編制の問題、教職員の定数の標準の設定等々を、義務教育を進める上での根幹として行っておるところでございます。
 現行の義務教育費国庫負担制度、これは、義務教育の持っている性格、国が必要な経費を負担するということによって教育の機会均等とその水準の維持向上を図るということを目的として、この制度そのものがもう昭和二十七年から創設されて今日に至っている。この国が持っている責任、義務教育の最低保障の確保の役割、これをずっと果たしてきた、このことはこれからも堅持をしていかなきゃなりません。
 もちろん、時代の変遷とともに教育のあり方についてもいろいろ問われておりますから、その必要な見直しは行いつつも日本の教育の水準をきちっと堅持する、これは国の最大の責任である、このことはこれからもきちっと守っていくという基本概念に立って、これからの対応を図っていくということである、大臣と副大臣一体の中でそのように思っておるところでございます。
中西委員 ですから、今河村さんが答弁なさったその内容というのは、義務教育国庫負担制度を設定するに当たってのまた基本理念でもあったと思うんですね。
 ですから、私は、いろいろ分権推進改革会議だとかいうところあたりで、分権という問題と、私は分権することは確かにこれはまた民主主義の原則でもあろうと思うんですね。これは徹底して私はやらなくちゃならぬと思います。しかし、国があくまでも最後まで関与し、最低保障するというこの理念、分権であろうと何だろうと、最後たとえ反対されてもこれを遂行するという、ここがないものだから皆さんが不満でしようがないんです。いつの間にか向こうの船に一緒に乗ったような格好の最後のこの答えが出てくるから問題なんですよ。
 ですから、今言われたことを本当に国の基本的な政策として、教育というものの中で最低をどう保障するかという義務教育ですから、このことはだれが何と言おうと国が関与してでもやりますということぐらいにならぬと、さっき出た例えば学級編制の問題があるでしょう、給与の問題、これからまた出てきますよね、みんなそういう問題にあれするわけですから。ところが、あなたたちは、後になると、それは地方で自由にできるように、こういうことになっているんですよ。だから、分権推進改革会議の方からその矛盾をつかれた文書が出ているじゃないですか。
 私は、問題はそこにあると思うんですね。その基本的な構えが揺らいでおる、また極端な言い方をすると、不明確だし、ない。私は、ここに問題があるんじゃないかということを指摘せざるを得ないんです。今までの答弁を聞いていて、もう午前中からここまでに至る経緯をずっと聞いていましても、ここがやはり一番の問題だろうと私は思います。
 ですから、もう一度聞きますけれども、義務教育に対して国が関与するこの限度と内容、これをはっきりしてください。
矢野政府参考人 義務教育につきまして、国としてはすべての国民に一定水準の教育を確保するという責任を有しているわけでございまして、また、その責任は大変大きいものがあるというふうに私どもとしては考えているところでございます。
 このため、国としては、教育の機会均等あるいは全国的な教育水準の維持向上を図る、こういう観点から、教育制度の基本的な枠組みでございますとか、あるいは学習指導要領などの全国的な基準の設定でございますとか、さらには今回問題になってございますように地方公共団体に対する必要な財政負担、さらには地方公共団体に対する指導助言といったような役割を担っているわけでございます。
 そういう意味で、私どもとしては、地方分権、そういう観点を一方に置きながら、国として果たすべき役割はきちんと果たしていかなければならない、かように考えているところでございます。
中西委員 文科省が誤っているのは、先ほど幾つかの点を出しましたけれども、現場に任せていいことに手を突っ込んでやるんですよ。例えば、現場の運営の仕方だとか、あるいは指導要領の問題だってそうなんですよ。指導要領ですから、全部じゃないんですよ、その基本にかかわるところはそうかもしれないけれども、それ以外自由に現場でやっていいわけですから。ところが、それをやるとあなたたちは今までどうしたんですか。処分してきたじゃないですか、逸脱をしておると。私はやられた組だから知っているんですよ。問題はそこなんですよ。
 だから、今大臣は笑っていますけれども、今言った関与するという、この部分をもう一回言ってください。義務教育だから、これだけはどんなことがあっても文科省の責任として国がやらなくちゃならぬ。それが明快になったら、今度のこの補助金削減の問題等についてはまた問題が出るんです。言ってください。
遠山国務大臣 私は、教育行政におきます国と地方の役割分担というのは、これは明確だと思います。
 国の役割といたしましては、基本的な制度の枠組みの制定でありまして、これは義務教育に関しますいろいろな法律、政令等ございます。それから、全国的な基準の設定ということで、小中学校等の学校設置基準、それから学習指導要領などのカリキュラムの基準の設定、教科書検定の実施、あるいは教員免許の基準の設定、それから学級編制と教職員定数の標準の設定がございますし、そのほかに、矢野局長からもお答えいたしましたようないろいろな条件整備に関する支援でありますとか指導助言ということもあるわけでございますが、私は、特に義務教育については、関与といいますか、国として最低限果たすべき、そういう憲法あるいは法令上の責務を果たしていく、そこをやっていくというのが国のまさに役割であろうかと思います。
中西委員 それでは、それに沿って、この義務教育国庫負担の問題はどうなんですか。ですから、私はわざわざ義務教育国庫負担制度、この基本理念を聞いたんだけれども、そこがあいまいだから、またはっきりしないんです。
遠山国務大臣 義務教育費国庫負担制度における国の役割といいますか、義務教育費国庫負担制度そのものが国の役割というものを明確にしているわけでございますけれども、教職員の給与等に関する国の二分の一の国庫負担というものをしっかりやっていく、そういうことでございます。
 今回の改正でお願いいたしておりますものは、負担対象経費について、国費として負担するものについては限定をしていくということでございますが、これは当然ながら、手当てとして交付税等による措置も行うということでもございます。
 法令上の責務といたしまして、私は、義務教育の根幹である教員の給与等の二分の一の負担というものは、これは今後とも堅持していく、そういう姿勢でやっていくつもりでございます。
中西委員 そうしますと、今言われましたように、一般財源化することは認めるということですね。
遠山国務大臣 今回の二種類の対象経費につきましては、これは裏打ちをしながら国費の負担の額からは削除するということでございます。
中西委員 もう一度戻りますけれども、義務教育国庫負担はこのようにして設けられたけれども、なぜ、給与面における問題を、義務教育国庫負担として国が一律的に支払うということをなさったんですか。お答えください。
矢野政府参考人 御案内のように、義務教育費国庫負担制度の趣旨は、すぐれた教員を一定数確保することにより、またその確保することに必要な財源を国として負担することによって義務教育の水準を維持向上しよう、維持向上をするというのが義務教育費国庫負担制度の趣旨、目的であるわけでございます。そういう意味での国の責任というのが、この義務教育費国庫負担制度の根幹にあるというふうに御理解をいただきたいと思います。
中西委員 そうしますと、この問題はかつての市町村、自治体の財政上からいうと物すごい格差があったわけですね。Aという村に勤務する者とBという町に勤務する者の賃金の差があったということはお認めですか。ですから、そのように同じ、今言われる義務教育を施すに当たって、そこで働く皆さんの場合には財政の多寡によってすべてそういう差があったのではいろいろ問題が出るので、これらを一律的にやるということが、一つの条件として、国がまとまった実額的なもので全部やるということになったんですよね。給与は国に準ずるわけですから一律になるわけでしょう。
 ですから、こういうようなことを考えたときに、今度あなたたちが考えているように、給与についてもこの分を自由裁量に任せるということになってきたときには、これは不交付団体と〇・一か二ぐらいしか財政力指数のないところと並べられたときに、どういう結果になるかということはおわかりですか。お答えください。
矢野政府参考人 委員のお話は、今回私どもが提案しております国立大学の法人化に伴う国立学校教員の給与体系の改善にかかわる御指摘だと思うわけでございますが、御案内のように、今回の措置といたしましては、現在、公立学校の教職員の給与の種類と額は国立学校の給与に準拠して定められることになっているわけでございますが、今回、国立大学の法人化に伴いまして、国立大学の教員が非公務員型の職員として整理されることに伴いまして、私どもとしては、その国立学校教員の準拠制を改めまして、公立学校の教員の給与の額につきましては、これは地方分権の流れの中におきまして地方自治体の判断にゆだねるということにいたしたいと思うわけでございまして、そのことによって、より地方の創意工夫を生かした学校運営なり教職員人事というようなことが可能になるのではないかと考えているところでございます。
中西委員 今、各学校の給与というのは、地方公務員の場合には、あなたも御存じのように、労働基本権を付与されていませんから、交渉権も何もないわけですね。ですから、地方では地方人事委員会がその地方の実態と合わせて給与を決めていますよ。それでやっているんです。ですから、それによって出てくる実額によって計算をしようとしていたんでしょう、今までは。そして二分の一を交付したわけですよ。これがこの義務教育の中の給与面における負担ですよ。文科省の予算の中の重要な幹をなすところになるんですよ。
 だから、私が言うのは、その面から考えると、地方は、あなたは給与など自治体の自由裁量に任せると言うけれども、みんな今は地方における人事委員会あるいは公平委員会、ここで全部賃金というのははじき出すわけですよ。そして勧告をし、それによって全部実施するわけですから、これをあなたたちが云々する必要はないんです。国公立が離れたから、これはもう別枠です、これに準ずるということになりません、国がなくなったんだから。それはそのとおりですよ。私が言うのは、そのように差をつけていいということにならぬよと言っているんです。だからこそ、それを今度は、例えば一般財源化したときに一番問題は何ですか。それが本当に使われるかどうかということのあれはだれがやるんですか。お答えください。
矢野政府参考人 今委員がおっしゃったのは、義務教育費国庫負担全体を一般財源化した場合の保障という意味でございますね。これにつきましては、義務教育費全体を一般財源化すれば、それは委員が御指摘のとおり、教員の給与費に充てられるという財源的な保障は全くないわけでございます。そうなりますと、義務教育費国庫負担制度の持っております教育水準の維持向上という機能、その目的を果たすという意味で大変大きな問題になるわけでございますので、私どもとしては、義務教育費国庫負担全体についての一般財源化については、大変大きな問題があるというふうに認識いたしているところであります。
中西委員 ですから、皆さんが根幹は守ると言うのは、では何を指しておるか、答えてください。
矢野政府参考人 繰り返しになるかもしれませんが、義務教育費国庫負担制度の趣旨、目的というのは、義務教育についての水準を維持するというところにねらいがあるわけでございまして、それは具体的に申し上げれば、一定数の教員を確保する、その財源をきちんと確保することによって義務教育の水準を維持しようとするということでございますので、まさにそのところが義務教育費国庫負担制度の根幹であろうかと思います。
中西委員 ですから、その根幹を守ると言って、給与、義務教育で今中心になっている部分、ほかの何々手当だとかなんとかじゃなしにまさに給与面ですね。このことが根幹を守る大きな、皆さん方が絶対譲ることはないと言っているけれども、ところがこれは、見ていただくとわかるように、十二月二十四日の三者の合意事項の中にちゃんと示されておるんじゃないですか。十八年までに国庫負担全額について検討をするということになっているんです。
 ですから、今度の場合、文科省から出したのは、十八年度までに五年間で割って出したんですね。今問題になっておる五千億の中の内容を全部細かく分けて、何年度にはどれだけの額、何年度ということでずっと分けてあったでしょう。それを文科省は、分権だかあるいは経済財政諮問会議の中に出したと思うんですけれども。ところが、そのことは拒否をされて、最後に三省で確認をしたその中身というのは、このように、二千三百億をまず本年度に、来年度に今度は退職手当あるいは児童手当を振り向けるということになっているでしょう。そうすると、今度、空白期間がありますね。割っていくと、あなたたち、考えたらわかるでしょう。皆さんの論に従って十八年度までに分割をして払うということになればこれだけに制限されるということを向こうも見てとったんですよ。だから、五千億は二年間で片づける、後のところで検討して全額をということを表現しているでしょう。その全額をということはありませんか。
矢野政府参考人 この問題につきましては、事柄を整理して考える必要があろうと思っています。
 一つは、財源保障、一般財源化することに伴う財源保障をきちんとやるということでございます。これは、義務教育費負担の円滑な執行に当たって、きちんとした財源手当てがなければならないわけでございまして、そういう意味で、私どもとしてはこの点について大変心配をしておって、かねてから、一般財源化に伴っては、財務省あるいは総務省に対して、きちんとした財源手当てをしてもらいたいということが私どもの立場でございまして、そういうことをお願いしてまいったところでございまして、財源手当てについては、この額は全額手当てをされます。
 他方、その負担をどうするかという問題があるわけでございますが、その負担については、結論として、最終的には国がその八分の七を負担して、残りの八分の一を負担するということになったわけでございます。その負担の問題につきましては、これは私どもの立場というよりも、国と地方の財源調整全体の中で、つまり、必要とする財源手当ての額でございますとかあるいは財源手当ての方法でございますとか等々を考慮して国と地方全体の中で調整をしてこういう形になったというふうに思ってございまして、そして、地方財政の立場としても、こういう調整であるならば、きょうのお話にもございましたけれども、特段の問題はないという形で決着を見たものというふうに理解をいたしているところでございます。
中西委員 私が申し上げましたように、手当てでなしに私が全額と言うのは、あと残る二兆何千億かなんですよ。この分まで今度は一般財源化するということがこの中に含まれているでしょう。三者の合意の中に、十八年度までにこの分についてはやるということになっているんですよ。ですから、それを全部一般財源化したら、私たちが一般財源化することに反対をするのはなぜかといったら、今度、これは自由に地方自治体では措置できるわけでしょう。そうすると、財政の事情によって流用だってできるわけですから。金に義務教育費国庫負担というあれは書いてないんですから。そうなると、自由にされたときに本当に義務教育が、あなたたちは地方と国が分担してやるんだと言うけれども、地方がそういう体制で進むことができるかどうかという保障、さっき盛んに担保という言葉を使ったんですね。担保をあなたたちがちゃんととっての話ですかというんですよ。それがこの文章の中には出ていませんよ。
矢野政府参考人 この三大臣合意におきましては、おっしゃいますように、義務教育費に係る経費負担のあり方について、教育改革の中で義務教育制度のあり方の一環として検討を行うことといたしているところでございますが、その検討に際しましては、委員の御指摘のとおりでございますし、私も先ほど、全額を一般財源化したときの問題というものはこういう認識であるということを申し上げましたけれども、その検討に当たりましては、今持っている一般財源化に伴う問題点等々を十分念頭に置きながら、かつまた、国としてその責任を今後ともきちんとして果たす必要がある、そういう観点に立ちまして十分検討してまいりたいと考えているところでございます。
中西委員 検討するじゃだめなんですよ。検討したらまたやられるんだよ。
 では、担保があるなら言ってごらん。
矢野政府参考人 今回の検討は、きょうずっと御議論がございましたが、財政論とかあるいは地方分権といった観点だけの議論ではなくて、まずは、現在進められている教育改革の議論の中でまさに制度論としてきちんと検討するということが大前提でございます。そういうことを踏まえながら検討をいたし、しかも、今私が申し上げたような考え方を念頭に置きながら検討をいたしたいと思っているところでございます。
中西委員 ですから、攻められれば、今はもう幹だけが残るんですよ。あと、来年はもう決まっていますからね。来年やらぬということではないでしょう。退職手当と児童手当はもう来年はなくなるんですよ。そうすると、完全に給与費だけになるじゃないですか。そうしたときに、それが守り得るという保障は何もないんです。というのは、検討するということになっているので。
 だから、また一番先に返りますけれども、義務教育という問題の位置づけと、どうこれに対応していくかというこの基本姿勢がないからです。だから私たちはこのことを何回も繰り返し指摘しているところです。それがあるんだったらお任せするというんですよ。危なくてこれは任せられぬです。だから、問題は全部そこに起因していくんです。いわゆる教育という視点、義務教育という、最低保障というこの視点、それをする場合に、絶対に国費としてやるんだというこのことをなぜ言えないかというのが一番問題です。
 何か言うことありますか、大臣。
遠山国務大臣 この三大臣の合意に書かれました二番目のところの御指摘でございますけれども、これは、私としては、これまで財源論の角度から論じられてきたものを、教育改革の中で義務教育制度のあり方の一環として検討を行う。これは、今までの両大臣が進めてこられたトーンと全く違うわけです。
 義務教育というものは教育制度の一番の礎であります。それを教育改革の一環の中で論じる、これは我が方の土俵の中で論じるという意味でございます。と同時に、義務教育費国庫負担の根幹は堅持するということを何度も申し上げておりますが、必要であればもう一度申し上げます。きちんと堅持いたします。
中西委員 いや、だから、我が土俵でと言うけれども、今まで我が土俵になったためしがないんですよ。少なくとも、あなた、では、お考えいただければわかるように、大学の特別会計と義務教育国庫負担にかかわるこの財源を除いたら、文科省はなくなるんじゃないですか。もうほとんどなくなるんですよ、財源は。それくらいにこのことは、義務教育という問題は重いんですね。だから金も出したんですよ。
 それを今、話の起こりを一番最初に聞こうと思ったけれども、先ほどから皆さんがお聞きして大体出てきどころはわかったけれども、結局は金がないということから話は起こっていったんですよ。金があるときには言わなかったでしょう、このことについて。金がなくなったからどこかに手をつけようと思ったらこれが一番取りやすいんじゃないかといって、やったんですよ。それは、あなたたちは土俵があると言うけれども、土俵はないから。問題はそこなんですね。
 ですから、私は、本当にこれから後あなたたちが、先ほどから何人の方も言われましたけれども、大臣がおめおめと帰ってくるなどということはだめなんですよ。女性だからなお私は効果があると思いますよ、逆に。本当に私は、あなたが徹底的に頑張って、あなたは、少なくとも民間からということになっていますからね、今の内閣の中におけるやはり目玉なんですよ。それを本当に生かしてやるなら、あなたは座り込んででもやることが大事ですよ。そこが今欠けているから、結局官僚的な感覚の中で物を運んでいくから、おおよそ全体を見回して、これはもう片づけなければならぬと思うから、それで終わってしまうんです。
 以上で終わります。
古屋委員長 次回は、来る十四日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三分散会


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