衆議院

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第5号 平成16年3月17日(水曜日)

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平成十六年三月十七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田中 英夫君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      西村 明宏君    馳   浩君

      福井  照君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   国務大臣         茂木 敏充君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 岡本  保君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)  樋口 修資君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)  銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)  近藤 信司君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     田中 英夫君

  岸田 文雄君     福井  照君

  鈴木 恒夫君     竹下  亘君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英夫君     城内  実君

  竹下  亘君     鈴木 恒夫君

  福井  照君     岸田 文雄君

    ―――――――――――――

三月十六日

 日本学術会議法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

同日

 教育諸条件改善の要求に関する請願(谷畑孝君紹介)(第九五七号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成等に関する請願(鉢呂吉雄君紹介)(第九五八号)

 行き届いた教育に関する請願(奥村展三君紹介)(第九八二号)

 私学助成の抜本的な拡充と三十人学級の早期実現に関する請願(奥村展三君紹介)(第九八三号)

 同(川端達夫君紹介)(第九八四号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(大畠章宏君紹介)(第九八五号)

 国庫補助の堅持・拡大、父母負担の軽減、教育条件の改善、私学助成制度の大幅な拡充に関する請願(大畠章宏君紹介)(第九八六号)

 三十人以下学級の実現、教育予算の大幅増、父母負担軽減に関する請願(大畠章宏君紹介)(第九八七号)

 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額等に関する請願(泉健太君紹介)(第一〇二八号)

 同(山井和則君紹介)(第一〇二九号)

 私立専修学校の教育・研究条件の改善と父母負担軽減に関する請願(山井和則君紹介)(第一〇三〇号)

 どの子にも行き届いた教育を進め心の通う学校に関する請願(渡部恒三君紹介)(第一〇八三号)

 助産の高度専門職大学院での質の高い助産師教育実現に関する請願(石毛えい子君紹介)(第一〇八四号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一〇八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 日本学術会議法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官岡本保君、自治財政局長瀧野欣彌君、文部科学省大臣官房審議官樋口修資君、生涯学習政策局長銭谷眞美君及び初等中等教育局長近藤信司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 通告に従って質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、この義務教育の話、これまでも議論がございました。今回のこの国会の中での委員会でも議論がございました。その中で、新人で、特に若い世代として、聞いていてどうしても一つひっかかることがありますので、まずこれを大臣にお伺いしたいというふうに思っています。それは、義務教育のこれまでのあり方というもの。

 先日も、我が党の平野筆頭理事からの質問の中で大臣は、義務教育の水準確保というものがこれまでの発展に寄与してきたということをおっしゃられておりました。しかし、実際に義務教育のこれまでの、例えば私が心ある部分から見てきて二十年余りということになりましょうか、その間に、本当に水準の確保が発展に寄与してきたということだけでとまってしまっていいのか。むしろ、その中で、これからの発展に寄与していこうという部分もたしかあわせておっしゃられたと思います。ただ、その間にはまってしまっている部分があるのではないかというところが一番気にかかっています。特に、小学校、中学校でこの二十年起こってきた問題というもの、これまでも文部科学省としても取り組んできた部分はあると思います。しかし、殊さらにこの義務教育の果たしてきた役割といったときに、その部分の問題を横において思考停止に陥ってしまっていないかという危惧がまず一番、これまでの質疑を聞いている中でございました。

 この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。お願いします。

河村国務大臣 義務教育を全国一律に行って、そしてその水準を維持する。どんな辺地であろうと離島であろうと、もちろん都会であろうと、水準の高い先生を確保していく、そういう意味においてその条件を整備していく、そういう意味において憲法の要請に基づいて国が責任を持ってこれまでやってきた、それが全体の維持を保ってきた。

 しかし、現代の大きな社会変化の中で、物の豊かさと並行して心の豊かさが育っているかどうかということも指摘されてきた。そういう今の制度がいわゆる画一的で受け身的であると言われる、そういうものに対する制度疲労的なものがいろいろ指摘されていますね。

 そういう意味で、今、城井さん、思考停止に陥っているのではないかと言われましたけれども、これでいいのかという議論ですね。だから、これを踏まえて、今から、これからどうしていったらいいかということ。

 例えば、今からもいろいろ議論されますが、これから国と地方の役割分担の中で、もっと地方に裁量を持たせて、それぞれの地域の特性に合わせた、あるいは地域がやっている教育がもっと活性化するような仕組みに変えていこうという国民的要請があるということ、これを踏まえて、文部科学省もそれにきちっと対応していくというのがこれからの課題だと思いますね。

 だからといって、国がその義務教育の責任を放棄していいのか、義務教育に国が持つ役割というのを放棄して一切関与しないということでいいのかどうか。これは、私はやはり水準を維持するのが国の責任だ、こう思っていますから、そういう理論で展開をしていって、そういう意味でこれまで果たしてきたし、これからも果たしていかなければいけないけれども、その態様といいますか、中はこれから大きく変えなければいけない部分もある。そういう気持ちでこれまで果たしてきた、そしてこれからも果たしていきたい。しかし、それは今までどおりではやはり問題点もあろう、それに対応した役割を果たしていこう、こういう意味で答弁をしたと思っておるんですが。

城井委員 今の国民の目から見まして、これまでの努力というものもありましょう。ただ、実際に見ていくときに、大臣、司馬遼太郎という小説家を御存じでしょうか。「坂の上の雲」という小説があります。よく、日本のこれまでの発展は「坂の上の雲」に例えることが多いと思います。ただ、その「坂の上の雲」で本当によいのかというところの議論が、この十年ほどの日本の一つの議論ではなかったかというふうに思っています。

 特に、イギリスあるいはアメリカといったところが経験してきた先進国型衰退、これまでの先進国はある程度の発展をしてきたけれども、そこで、精神が弱り教育が弱りといったようなところに直面した後の対応が問題なんだというところを言っている学者がおります。そういった部分が、今の文部科学行政がとりわけ直面している課題の大きなところではないかと思っておりますので、そこの部分はぜひ心にとどめていただきながら今後取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に移らせていただきます。今回の義務教育費の国庫負担の改正が基づいている三位一体改革についてお伺いしたいと思います。

 我が党から見ましたときに、特に今回の三位一体改革、先日来、三位ばらばらということをお伝えしているかと思います。実際に、では、精神論の部分は先日伺いましたのでよくわかりました。これまでの三位一体改革がその教育の部分、とりわけ義務教育の部分がつくられてくるに当たって、文部科学省としても、例えばそこに関係をする他省庁の方々と協議を進められてきているというふうに思います。

 その中で、それぞれの立場があるだろうというところは想定をしながら、では、例えば総務省あるいは財務省といったところがこの義務教育に対してどのような姿勢で臨んできて、どのように議論してきたのか。文部科学省として、この部分はかち取れた、残念ながらこの部分はなかなかかち取れなかった、譲ってしまったというような部分があろうかと思います。その他省庁との意見の兼ね合いの部分も含めて、まずは文部科学省としてのそれまでの他省庁の姿勢についての御見解を伺いたいと思います。

河村国務大臣 総務省、麻生大臣の立場、これはやはり地方分権、地方主権といいますか、そういう方向で、地方の自由度をいかに増すかという形で考えてこられる。それから財務省側は、いわば財政論といいますか、いかに効率的に税金をうまく使っていくか、極論をすれば、子供の数が減るのだから当然先生の数は減ってしかるべきだという割り切り方ですね。私の方の立場は、いや、やはり教育を重視する日本のこれまでやってきた伝統的な日本の考え方、やはり教育論でこのことは考えてもらいたいという意見が絶えず対立し、あるいは時には、それはそうだとは言いながら、しかし財政としてはこうだという考え方ですね。

 それで、そういう中ですから、教育は大事だということについて私は総論として異論はないんだろうけれども、しかし、現実を見たときに、ないそでは振れないと言われる部分もありますから、これは効率化も図っていかなければいかぬ。こういう面も考えながら、しかし、しからば国の基幹、根幹である教育をないがしろにするわけにいきませんから、そういう立場で我々はやってきたわけです。

 三位一体論の中で、補助金のあり方を見直せ、それから、今の義務教育費国庫負担制度のあり方そのものを見直せという議論も来ております。しかし、日本の教育の根幹を守るこの制度は、優秀な教員を一定数きちっと確保する、特に教育は先生だと言われる部分、そういうものからいって、この制度の根幹を我々は守っていきますよということは絶えず言い続けておりますし、その姿勢は一貫して変わっておりません。

 それを貫くという方向で、今、まさに十八年度に向けてこれからもさらに議論をする。それから、我々の方もそれを手をこまぬいて見ているわけにいきませんから、中央教育審議会、こういう問題について専門的に知識を持っておられる皆さん方にも、一体どうあるべきかということを今まさに議論をしていただいておって、それを我々としては根拠にしながら、義務教育の国がやはり責任を持つんだという点をきちっとやっていきたいと思っております。

 今この時点で、何を得て何を得なかったかという点は、まさにそれが進んでおるという段階で、我々としては、この根幹をきちっと守っていく、国が義務教育について責任を持つんだということをきちっと位置づけたい、こういう思いで、今まさに三位一体論議、総務大臣、これからまた財務大臣ともそういう議論を闘わせていかなければいかぬ、こう思っているんです。

城井委員 今の大臣のお話を伺っておると、大臣は、ある意味で道をきわめんとする柔道家のような感じを非常に受けます。ただ、今闘っている三位一体という舞台は、残念ながら柔道の試合ではないんですね。

 例えて言うならば、最近ちまたではやりの異種格闘技、バトルロイヤルと言ってもいいかもしれません。大臣は柔道家として多分その舞台に上がられている。ただ、そこには空手道をきわめんとする空手家たる総務省と、あるいは、興行が成り立つように何とか舞台回しをしていかなければいけないと思っている興行主かつショープロレスラーの財務省がいるわけですね。そういうそれぞれがある意味で道をきわめんとする、あるいはある意味でショーの財政が回っていかないと困るというようなところがある中で、そのバトルロイヤルが実はシナリオがなく進んでいるんじゃないかと。

 つまり、そこでガチンコをしているふりをしながら、先ほども平成十八年度という話がありましたけれども、実際にはガチンコをするふりをしながら、ちょっとパンチを当てておきますからまた次に勝負を流しましょうよというところになっているんじゃないかという気がしています。

 特に、例えば税源移譲予定特例交付金という制度で、当面の間はサポートしますというふうなことにしました。ですけれども、肝心の義務教育の姿、十八年の議論まで譲るということになった。つまり、寸どめはしていてパンチは当たっていないというような状況なんじゃないかという感じがしています。

 ただ、そのときに、では、先ほどのそういう柔道家のあり方に対して、きょうはお願いしてお呼びしておりますが、空手道をきわめんとする総務省の、その空手に対する道の考え方と申しますか、今回の三位一体について、義務教育について、特に分権のお立場からお考えがあろうかと思います。その部分を率直にお話をいただきながら、このショープロレスのあるべき姿、シナリオなきでは困ると思います、ぜひ考えたいと思いますので、お聞かせいただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えをさせていただきます。

 義務教の国庫負担制度につきましては、御案内のように、昨年の基本骨太二〇〇三におきまして、地方分権を推進し、義務教育に関する地方の自由度を大幅に高めるという考え方に立って検討するというふうにされております。

 私どもといたしましては、その検討に当たっては、国は、教育制度の根幹や全国的に確保すべき水準などのできるだけ大枠に絞って、具体の実施は地方団体が、地域の教育環境や児童などその地域地域の実情に応じて、できるだけその創意工夫を凝らしながら教育サービスを提供するというやり方ができるように、そういう国と地方の適切な役割分担に見直していって地方の自主性を拡大していく。

 そういうことがまた全国知事会等からも、そういう観点に立って全額の一般財源化というような要望がなされておりますので、そういう全額の税源移譲によって一般財源化を図っていくという観点で、これまでもいろいろな議論をさせていただきましたし、また、十八年度の全体の議論に向けてこれからも取り組んでいきたいというふうに考えております。

城井委員 総務省の審議官の方に端的にお伺いをします。

 地方分権が進んで義務教育を仮に地域に預けたときに、どのような取り組みを、具体的にこれまでにない部分ができるとお考えですか。

岡本政府参考人 いろいろな地域におけるいろいろな工夫は、現にいろいろな取り組みがなされていると思っておりますが、いろいろなやり方の問題があります。例えば現在でも、今の制度の中で、習熟度別でありますとか、あるいは、その地域地域の子供の実情に応じていろいろなクラス分けあるいは教育の仕方をされている工夫がございます。それが今、今回の総額裁量制を含めいろいろな制度改正の中で対応していただいている部分もございますし、また、あるいはそれで対応し切れない部分もございます。

 そういうものをとにかくできるだけ多くふやしていく、そういうことによって、地域でまさに住民と直結してそういう教育行政がなされ、それをまた住民の目からいろいろな意見が闘わされて、より充実した教育に向かっていくというようなあり方があるのではないかと思いますが、私どもの立場は、より分権、地方がより教育の責任を持って対応していくということをどのようにしたらできるのかということにあると思っております。

城井委員 どうやらきょうは総務省の方は、寸どめというよりは演武に近い形になっておろうかと思いますけれども、実際、文部科学省さんにしても総務省さんにしても、そうして演武を繰り返しているうちに、結局絵が見えないまま進んでいくときに、ではだれが一番負担をこうむってしまうのかといったときに、そのシナリオなきバトルロイヤルを見せられている国民の側だというふうに思うんです。特に、先ほどからのやりとりの部分を伺っておりますと、三位一体というよりはむしろ三位三すくみではないかというふうに感じるところもあるわけです。

 演武を見せ合うことで議論が進むとは思っていません。これまでも恐らく我々の見えないところでパンチやキックを当て合っているに違いないというふうに想像はするわけですが、そこの部分が我々に見えずに、これからの義務教育のあり方、あるいはいわゆる教育における地方分権というものを進めていくという基本的な方向を持ってやっていくとしたときに、そういう演武だけ見せられていたときに、我々には、とてもじゃないけれどもそこに想像が至らないというところがあります。

 我が党でも、三位一体の具体的な姿が見えないから、そこをまず示してくれということを言っているわけですけれども、先日筆頭理事から伺っていただいたときには精神論だった。今見たときには、残念ながら、まだパンチが当たる姿もなかなか見えないというところがあります。そこは、今後の審議でぜひ我々に見える形で、どのように本気で当てているのかというところをお見せいただきたいということを要望して、次の質問に移りたいと思います。

 今の質問に関連しまして、改めて文部科学省の見解をお伺いしたいと思っています。それは、教育に関する分権の程度についての問題でございます。

 大臣、率直に言って、地方というか地域はどれぐらい教育に関する受け皿になり得るかとお考えでしょうか。

 例えばこういう考え方があるかもしれないと思っているのは、一つは基準、水準づくり、それから予算、それに関する運営、運用の部分という三段階に分けてもよいんじゃないかと思いますけれども、その点について、大臣お願いします。

河村国務大臣 基本的な問題として城井さんと話さなければいかぬと思うんですが、地方分権を考えるときに、私はむしろ、私も地方議会からの出身でありますから特にそういう思いがしますが、今の地方分権、地方主権の考え方というのは、もう身近なところでやれる、住民に近いところの行政はできるだけそちらでやってもらう、一番身近なところでやるのが本来のあり方だという考え方ですね。それでいきますと、私は、教育は地方は受け皿じゃないと思うんですよ。だから、地方が主体的にやるんだということに考えていきませんと、この地方分権は成り立ちません、と思います。

 だから、受け皿論というのはちょっと、受け皿というのは、やはりどうしても中央があってそれを受けてくれるのが地方だという考え方になりますから、むしろこれからの教育、私は、地方分権、教育こそまさに地方が本当にやっていることだと思うんです。どっちかというと、国は、全体の標準を下げないように見ながら、教育のセンターとしての役割を果たしていく。だから、はしの上げおろしまでもう言わないというのがこれからのあり方でしょうから、そういう意味でいえば、できるだけ地方に裁量を増すというのが、この考え方は正しいと思うんです。

 だから、その考え方をずっと進めていけば、もうともかく国は何も言わないから、財源も何も全部渡しますから、全部やってくださいと。やらせてくれ、やらせてもらいたいという意見を言われるのが知事会の中心的方々、いらっしゃいます。しかし、ちょっと待てよというのが、一方、しかし、さはさりながらやはり自由勝手にやれば、財政力が違ったり、いろいろな地域の取り組みの中で、そうはいってもやはり財政というのは大きいですから、この点についてやはり国が責任を持てと。

 だから、現時点で言われているのは、国は金は出すが、できるだけ地方に任せなさいという考え方、特に義務教育については。これが基本だと思いますね。それが義務教育費国庫負担制度のあり方。そこにおいて国が義務教育については責任を持ちますよということの担保だという考え方に立てば、一切というよりも、役割分担をして、その部分については国が責任を持つんだという考え方が私は必要だと思いますね。

 しかし、現実にやっている取り組みについては、さっきおっしゃった運営のあり方とか、それから予算の基本の適用は国が持つ、しかし、運営のあり方、教育の実際の運営はそっちでやってもらいますが、全国の標準的な基準は国がやはり持ちましょう、考えましょうという役割分担をこれまでやってきた。それがやはり義務教育を国が責任を持つというあり方だろうな、こう思います。そういう意味で、地方に裁量性を、自由度を増すという考え方、これは私はしっかりやってもらうし、これはまさに国立学校準拠法というものがなくなった今時点、まさに実際にやれるようになってきた、こう思っています。

城井委員 では、教育においてお金をある程度自由に裁量で使えるようにするといったときに、現状というか、今後の実際のところはどうなるだろうかといったときには、義務教育に関しては、やはり国の責務としてという部分で、予算措置でいうといわゆる二分の一を国が担うというのが今のぎりぎりの姿、その給与本体についてということになると思いますが、その二分の一の給与本体を担うというのが義務教育に対する国の責務を果たすということになるんでしょうか。

河村国務大臣 これは、考え方はいろいろあろうと思いますね。もっと国が責任を持つべきだ、だから、小学校、中学校、義務教育は国立でやるべきだとおっしゃる人もいらっしゃいます。しかし、それでは地方の自由度ということは非常にいろいろな面で障害が出るでしょうから、これまでも身近なところの行政はということでやっていただいております。そのぎりぎりといいますか、二分の一というのが一番私はそういう意味では役割分担する上で。そして、二分の一を決めることによって総額も決まってくるわけですね、その半分ですから。それで交付税措置で半分行きますから、その中で考えるということになっていくんではないんでしょうか。

 だから私は、これは二分の一というあり方が一つの担保のあり方としてある。それは、国庫補助金や何かでも、三分の一負担とか二分の一負担とか三分の二負担とか、それぞれ政策によってありますが、これは今までこういう形でやってきて、いろいろな問題点が出てきたから、今、三位一体論も出てきて指摘をされておりますけれども、この義務教育費国庫負担制度の二分の一というのは、国が責任を持つ範囲として、そして地方にも大いに自由度を増し、また地方が実際に教育をやるんですよという意味において、これまでの形として、私はこれは一つの知恵だな、こう思っています。

城井委員 大臣、私自身も、ある程度地域で教育について決めていける形にしたいというふうに思っているんですね。ただ、そのときに、どこまで預けられるかと。能力がない、そういうことではありません。どちらかといえば、水準確保のために、どれぐらい基準、水準づくりというものを国が担っていくか、そのぎりぎりのラインがどこかにあるんではないかというところを考えています。

 特に、教育予算において、どれぐらい一般財源化というものがなじむのか、その裁量の範囲をどのあたりに一つ置くのかというのが、そこを考えていくに当たって一つの判断基準になるんではないかというふうに思っているんです。その使い道の限定の最大幅ですね。

 これは我が党の中島章夫議員が一つの議論のたたき台として出されている考え方ですが、その使い道限定の最大幅を教育全体と考えた場合と、もう少し狭めて学校関係全体、もう少し狭めて義務教育関係経費、もう少し狭めると給与関係経費、恐らく本体ということになろうかと思いますが、そういう少しずつ狭めていくことによって、そうすると恐らく現行と変わらない形になってくるんじゃないかと思うんですけれども、そのそれぞれの幅によるメリット、デメリットというものをどのようにお考えか、ぜひお聞かせください。

河村国務大臣 そうですね、これをメリット、デメリットで考えるかどうかという問題も私はあると思いますが、この一般財源化という考え方が出てきて、それで一番問題になるのは、私は、これは極論かもしらぬけれども、知事会が一般財源化ということを盛んに言われる知事さんもいらっしゃる。

 そこで、文部科学省は総額裁量制というのを出した。そこで今また新しい議論が生まれていますが、一般財源化で自由度を増せ、増して大いにやります、こうおっしゃるけれども、私は、これはこれだけの今財政難のときに、地方交付税をむしろ今回予算をつくるのに大変だと言われる、むしろ総務省側は地方交付税をもう削減して出してきた。この中で、教育費の固定費をきちっととっていくだけでもだんだん大変なことになっていくと考えますと、私は、それは一般財源化ということで臨んだ場合には、これは教育をまず確実に確保するんだということで、強い意思でおやりになる知事さんもいらっしゃる。しかし、ちょっと待てよと。うちはもうここまで来ている、全国の水準を見ても達しているんだから、この部分は、ともかく一般財源化という考え方は、色をつけないわけですから、何に使ってもいいですよという考え方ですから、この一部分はこっちへ回す。まさに自由度を増すという考え方で来られるけれども、むしろこれは削減以外にこの自由度というのは考えられないんじゃないかと思うんですね。

 だから、そういう心配もあるわけでして、また現実に、知事さんの中には、みんな今財政をつくっていくのに大変だ、人件費ですからかなり大きいものでありますから、どうしてもこの一部をという思いがあるので、やはり国が担保して、教育財源については心配するなと言ってもらう方が本来のあり方だという意見もありますから、どこまで持つかどうかというんですが、これは国の教育水準をいかに担保するかということですから、学校教育の条件を整備するところまではやはり国が地方と一体となってやっていくということが必要なことじゃないでしょうか。

 特に、義務教育については国が責任を持つということは、教育条件を整備する、その中にはもちろん人件費も含みますが、学校の校舎の問題とかそういうような問題等、国が責任分担をしていく部分というのは教育条件を整備するという考え方でこれまで来ておりますし、それを貫くべきだろう、私はそう思っているんです。

城井委員 そのような中で、恐らく今、文部科学省さんが頭をひねって、いろいろ考えられて出されているのが総額裁量制ではないかというふうに思っています。これはなぜ政令なんですか。なぜ政令でつくられたんですか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今回考えております総額裁量制は、教育の機会均等と教育水準を維持するという国の責任を果たすために、教職員給与費の実支出額の二分の一を国庫負担する原則を維持しながら、義務教育費国庫負担制度の中で地方の自由度を拡大するために、従来は、給与の種類でありますとか教職員の職種ごとに細かく最高限度を定めていましたのを、改めまして、国庫負担の最高限度を総額のみで設定することによりまして、負担金総額の範囲内で、給与額や教職員配置について都道府県の裁量を拡大しよう、こういう趣旨でございます。

 したがいまして、総額裁量制の導入によって、実支出額の原則二分の一負担という法律の大枠が変わるものではございません。そういったことから、法律改正ではなく政令改正によることにした、こういうことでございます。

城井委員 この総額裁量制の導入、私も文部科学省の方から御説明を受けて聞いていく中で、非常に耳ざわりのいいメリットの話がそのペーパーにも書いてありました。

 その中で、いわゆる給与の一定程度の抑制による教職員の増員や非常勤講師、再任用教員の多数の任用などということで、現場に先生方がふえるところができますよというようなことが書いてあったわけなんです。実際、いわゆるメリットのところを言われる前に、逆に、そういう仕組みになった後に地方の現場にとってデメリットというのはどうなのか。我々としては、あらかじめリスクはきちんと受けとめた上でないと、制度の導入といったところにはとてもじゃないけれどもうなずけないというところがありますが、その点、いかがでしょうか。

河村国務大臣 結論からいいますと、この総額裁量制の趣旨をきちっと御理解いただいてこれを適切に運営していただければ、これによるデメリットというのは考えられないと私は思うんですが、今のこれがいわゆる一般財源化ということになると、給与費を下げるとかそういうことになるんでしょう。しかし、総額裁量制の場合には、金額は決まってきますが、ではその分先生を、もうちょっとこの部分をふやそうとかということが自由にできますから、それによって安易に安い非常勤講師をどんどんふやせばいいとか、そんなことによって教育の質が下がるのではないかという懸念、そういうことは懸念としてあると思います。まさにそれは適切にやっていただきたいということになるわけですから、そういう意味においては、まさに私は、いわゆるデメリットといいますか、そういうものはない、こう考えて、今、総額裁量制の理解を高めるように努力をいたしております。

城井委員 先ほどのメリット、デメリットということで申しますと、この総額裁量制が抱えているメリットというところで、ちょうどその御説明を聞いているときに、私は一つの質問をしました。

 いわゆる給与を抑えて人数をふやすということのほかに、逆に、教育現場において給与をある程度上積みすることによって、かえって優秀な人材が集まりやすい環境ができるのではないかというような部分はないのかと言ったときに、幾つか全国的な取り組みがありますということでした。

 具体的には、東京や大阪でそういう取り組みがなされているということだったんですが、なかなか今人数自体が足りないと言っている現場が多いというふうに聞く中で、その仕組みが本当に働いていくのか、どれだけ現実味のあるものにしていけるのか。つまり、能力主義というか、そういう評価をある程度前提にした、高い報酬も前提にしながらの仕組みというものがどれぐらい現実味があるのかというところを、今の取り組みの進捗状況を含めてお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 学校教育の成否は、先生御案内のとおり、直接の担い手である教員に負うところが大きいわけでございまして、教員が資質、能力を向上させながらそれを最大限に発揮するためには、教員一人一人の能力や実績等が適正に評価され、それが配置や処遇でありますとか研修等に適切に結びつけられることが必要であろうと考えております。

 そういったことから、文部科学省では、平成十五年度から三年間の予定で、教員の評価に関する調査研究をすべての都道府県、指定都市教育委員会に委嘱いたしております。自己申告と業績評価による能力開発型の人事考課制度の中で、評価方法、評価項目、あるいは評価者の研修のあり方等について、今、各都道府県教育委員会で検討が進められているところでございます。一応これは三年間の調査研究でございますけれども、こういった調査研究の状況も踏まえながら、引き続き、各教育委員会におきます教員評価の改善充実に向けた取り組みを私どもとしては促してまいりたい、こういうふうに考えております。

城井委員 その教員の評価の部分なんですけれども、最近いろいろ教員の方々の給料あるいは手当といったところを見ているときに、ちょっと気にかかる部分がありました。

 今、三年間で教員の評価に対する研究を全県にお願いしていますというお話だったんですが、そんな取り組みだったのかと。では、それまで教員の働きに対する評価というものが、改めて研究を全県でお願いしないといけないほど手つかずだったのかというところは、むしろ私としては非常に懸念をするところであります。

 特に、最近ちょっと気にかかったのが、いわゆる教職員の方々に係る手当の部分。具体的に申しますと、教職調整額というのがございますね、一律四%で先生方の給料に上乗せをする。聞くところによりますと、残業をされていない先生も、そしてめちゃめちゃ働いている先生も、みんな四%なんですね。それに加えて、義務教育等特別手当、これも一律四%だと聞いています。

 つまり、小中学校の先生の場合、働いていない人間が、ただ取り四%プラス四%と、ただ取りでその八%の部分をもらってしまうという現状。逆に、現場で時間も関係なく働いているからというのが、たしかこの制度が取り入れられている趣旨だと聞いています。しかし、そういう一生懸命時間も惜しんで働いている先生がおられる。そういう方々に対しての部分、支えが八%。四%プラス四%ですね、義務教育にかかわる方ということならば。ということで本当によいのかというところがあります。

 もちろん、時間を長く働けば効率がよいということではありません。その質を上げるために、短い時間の中で先生方に努力を重ねていただくというところは必要でしょう。ただし、そのときには、その部分がわかるためには何が必要かといえば、先生方がどういう働きをされているかという評価の部分が当然あってしかるべきだということなんです。

 そこで、お伺いしたいんですが、この教職調整額について、これまで実態調査というものは行われたことがあるんでしょうか。

近藤政府参考人 制度を導入するときに調査を行ったという経緯はございます。

城井委員 つまり、それは、導入当時には調べたが、それまでは手つかずだという認識でよろしいですか、局長。

近藤政府参考人 教職調整額につきましては、教諭について、その職務と勤務態様の特殊性から、ほかの一般公務員に対して支給されている時間外勤務手当の支給がなじまない、こういったために、これを支給しないこととし、これにかえて、勤務時間の内外を問わず包括的に評価するものとして、給料一体として支給されるべきものとして現在位置づけられているわけでございまして、いわば、労働基準法第三十七条を適用しないこと、時間外勤務手当を支給しないことに対する代替措置、こういう位置づけである、こういうことで教職調整額について支給している、こういうことでございます。

城井委員 趣旨はよくわかりました。

 問題は実態だというふうに思います。つまり、これは実態調査とかあるいは勤務評価というものが前提になく、一律で、導入された当時から、その後の変化の状況も勘案することなく続いてきているというところである。これは非常に怠慢ではないかというふうに思っています。

 つまり、今例えば、我々議員も税金から歳費をいただいています。その中で、議員年金の話を含めて、身分にかかわるお金というものがお手盛りになっていないかということが常に国民の目にさらされています。

 その中で、では、税金から同じように給料をいただいて働いていらっしゃる先生方の給与あるいは手当といった部分に関して、そういう実態調査もなければ勤務評価も反映されていないようなことで、これは国民の目から見ると、もしかすると非常にマイナーな制度かもしれません。しかし、それが長らくお手盛りで続いてきていたということがもし明らかになったときに、どうやって申し開きができるのか、説明がつくのかといったところは、先ほどからの答弁では、とてもじゃないけれども見えないというところがあります。

 ここの部分の今後の改善ということについて、大臣、ぜひ御決意をお聞かせください。

河村国務大臣 今日の教育で、いろいろさまざまな指摘がされている部分、これはやはり教員の質の向上という形ではね返ってきておりますね。それを受けて、今回の総額裁量制を含めての改善、これは今度は、国立学校準拠法で今までの給与をがちがちに決めていたという、それは確かに、ほとんど評価らしいものもなしに来たという面がございます。

 これからは、地方が県条例に基づいて給与を決めることができる。もちろん、人確法、標準法という形がありますから、この枠の中、だから、平均を見たときに一般の公務員より下回らないような制度をつくるとすれば、しかしその中で評価をして、まさに、非常に効果を上げている先生とそうでないという評価がつけば、それによって給与の差が出る、こういう仕組みがつくれるわけですね。これはもう地方でやっていただくようにこれからやっていきます。そこによって差をつけようとすれば、当然評価をしなければいけなくなるということです。

 それから、四%の問題は、教員については残業手当が出ないという部分があって、この部分について一律ということでありますから、これは先生方は、学校だけじゃなくて部活とかいろいろなことで随分やっていただいている先生が大多数ですから、そういう面で見てやりますから、これは一律になっています。

 しかし、それも含めて、今後評価に値するかどうか、これを入れませんとこの給与の差はできなくなるという問題ですから、これは我々、もちろん教育センターである文部科学省の基本的な考え方は示してくれ、こう言われるだろうと思いますが、これから各地方が条例に基づいてそういう制度をつくっていただく、これによって教員の質が上がっていく、このように期待をいたしております。

城井委員 やはり実態が求められていると思うんですよ。特に、きょうもずっとやりとりをさせていただきながら感じますのは、義務教育、本当に国の責任でやっていくんだ、それが今や給与本体という部分が最後のとりでとなってきているわけですけれども、その部分を本当に国の責務でといったときに、国民に説明をし、納得をしていただこうといったときに、その給与本体自体のところ、先ほど言ったようなグレーの部分を残したところ、今後仕組みが変わっていくからということで、その趣旨のところだけを説明するということで本当に通っていくのか。

 今後の議論にも出てくると思いますけれども、実態のところをぜひ踏まえながらお話をしていただかないと、結局、理念上滑りかというふうに言われかねないということを最後に御指摘を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

池坊委員長 小林千代美君。

小林(千)委員 おはようございます。民主党の小林千代美です。

 引き続きまして、義務教育費国庫負担法の改正案についてお伺いをいたします。

 先ほど、城井委員の方からも御指摘がありました。今回の三位一体にかかわるこの義務教育国庫負担の法改正にかかわる問題で、城井委員の方は、三すくみだ、文部省と総務省と財務省の三すくみだというふうに発言をされておりましたけれども、私は、この問題を考えていく上で、どうも教育に対する大変重大な課題というものが、財政面から語られていることが大変強いように感じられてなりません。

 先日も、平野筆頭理事の方からも御質問をさせていただきましたし、先ほどの城井委員の指摘にもございますけれども、本当に子供たちにとって必要な教育というものが国の責任によってしっかりと確保されているのか。それとも、今回の法改正、私が思うところには、財政難の折、どうやったら国の財政を削減することができるかというような観点で取り上げられることが多いように思いまして、もちろん後で河村大臣からは、教育に対するしっかりとした決意というものを聞かせていただきたいと思うわけですが、まず最初に、そういった観点から、総務省さんの方にお伺いをしたいと思います。

 今回の義務教育国庫負担の、今おっしゃっている退職金、そして児童手当の一般財源化ですか、これを最終的には一般財源化すると。そして、その移行措置として、税源移譲のために、税源移譲特例交付金という制度をつくって各都道府県に交付金を渡すということになっておりますけれども、この税源移譲特例交付金、これは何を根拠にして各都道府県、四十七の都道府県に割られるのか。

 今、試算では人口割ということで考えられているようですけれども、人口割にすると、実際に退職金、児童手当に必要な現在の額とそれを人口で割っていった場合というものでは、都道府県によって大変でこぼこができてしまう。これは何で人口割にしたのか。各都道府県によって、人口イコール義務教育を受けている子供の数にはならないと思います。

 また、子供の数が、例えば多い学校、少ない学校あるわけなんですけれども、一律子供の数で割っていいものなのか。さらには、本当に今回の適用となる退職金、児童手当という観点からならば、その対象となる学校の先生の人数により都道府県で割られた方がいいのかと思うわけですけれども、何で今回、人口割ということをされたのか、まず総務省さんの方に伺います。

岡本政府参考人 今回の税源移譲特例交付金は、暫定的な一般財源化という位置づけでございます。したがいまして、国税から地方税への税源移譲を行うまでの間の暫定的な措置であるというふうに位置づけております。

 同じように、昨年、共済の長期につきましても特例交付金をその二分の一設けましたけれども、これにつきましても人口で案分をいたしております。そういう考え方は、地方税収一定の相関関係を有しているということ、それから、税に移行していく、暫定的ではありますが、移行していくものという意味で、税収と一定の相関関係を有して、また、配分の基準として簡素であるという観点から、人口を配分基準として採用いたしております。

小林(千)委員 将来的には一般財源化ということで、その財政面から人口割というお答えをいただいたわけなんですけれども、行った試算によりますと、人口割でこの税源移譲特例交付金を各都道府県に割り振った場合、四十七都道府県の中で見込み額に足りる分を割られるところは二十一都県しかないんですね。残りの半分以上、二十六道府県に至っては足りない、今の特例交付金からおりてくるお金はその自治体にとっては足りない金額になるわけなんです。充足率もいろいろありまして、一番足りないところだと、沖縄県が、今のままだと充足率四五%でしかないということになってしまい、半分も満たされないんです。

 今後、一般財源化ということになるというお話ですけれども、一般財源化、個人住民税を充てるのか、それとも地方消費税を充てるのかわかりませんけれども、それで試算をした場合、その表も、お手元にはないんですけれども、試算をした場合、これは個人住民税で計算をした場合なんですけれども、充足しているのは九つの都県でしかない。埼玉県、千葉県、東京、神奈川、そして愛知、三重。あとは京都、大阪、兵庫、ここの九つの都県だけは足りる。しかしながら、圧倒的多数である三十八の道県にとっては足りない。ただちょっとだけ足りないかなと思ったら、六〇%近くも足りない道県も出てくるという試算も今あるわけでございます。

 こんな中で、本当に今必要とされている義務教育の国庫負担分が地方財政に一般財源化されていいものなのか。これによって、各都道府県でいわゆる勝ち組と負け組が出てきてしまうのではないか。ひいては、都道府県の財政の中で、子供たちにかけられる教育に対するお金というものが左右されてしまうのではないか。これは、言ってみれば、憲法の二十六条で規定されております、すべての国民は、法律の定めるところにより、ひとしく教育を受ける権利を有する、これが義務教育の本当の根幹の部分だと思いますけれども、この地方間格差ということが憲法違反に当たるのではないか。

 さらに申し上げますと、都道府県格差だけではなくて、地方間格差というのも同時に生まれてくると思います。私は北海道の出身なんですけれども、北海道は、いわゆる小規模校、僻地校というところがたくさんあります。例えば、子供の数が千人いる学校と百人しかいない学校と、かかる費用が人口割で十分の一で済むかといったら、そういうわけじゃないわけなんですよね。それが義務教育の大変重要なところで、今、国がしっかりとそれを保障されてきた点だと私は思うんですけれども、今、この一般財源化により、地方間格差が都道府県のみならず市町村にも生まれるものではないか。

 今、市町村の皆さんも大変厳しい財政の中で運営されていることは、総務省の方はこれは十分御存じだと思いますけれども、そんな中で子供たちにまでそれがしわ寄せになってしまうんじゃないか、ひいては憲法違反になるのではないか。

 この点につきまして、総務省そして文部科学省の方から御意見をいただきたいと思います。

岡本政府参考人 お答えさせていただきます。

 先ほど御指摘ございました、今回の税源移譲予定特例交付金の措置に伴いまして、当然、現在の国庫補助負担金を受けている額と差が生じてまいります。

 今でもそうでございますが、退職手当も含めまして、義務教育の給与、退職手当に係ります額は、その所要額を交付税の基準財政需要額に算入をいたしておりますので、今回、国庫補助金が減ったものの部分につきましては逆に交付税がふえるという形になりますし、特例交付金になった方が、国庫補助金のふえたところは逆に交付税の算定額は減るということに相なりますので、そういう意味での、今回の措置に伴いまして、その必要な額が確保されないという状態は生じないということになるわけでございます。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 問題は二つに分けて考えるんだろうと思っています。

 今回の退職手当、児童手当に係る財源措置につきましては、ただいま総務省から御説明があったように、例えば、個別の都道府県において税源移譲予定特例交付金が国庫負担金ベースを下回り、その額が不足することになったとしても、その不足額は基準財政需要額の範囲内で地方交付税により補てんされるので支障は生じない、こういうことであろうかと思っております。

 今後とも、私どもは、しっかりと所要の財源が確保されるよう総務省にもお願いをしてまいりたいと思っておりますし、義務教育費国庫負担金全額の一般財源化の可否の問題につきましては、これはまさしく財源論のみならず教育論として、先ほど来大臣からも申し上げておりますように、中央教育審議会でも御議論をいただいておるわけでございます。

 確かに、一般財源化すれば、地方の財政状況の中で、厳しい財政事情の中で必要な額が確保できないのではないか、あるいは地域間格差というものが生じるのではないんだろうか、そういうことが懸念されるわけでございますから、そこはしっかりと教育論の、義務教育制度のあり方の一環として、平成十八年度までに、中央教育審議会での御議論を踏まえながら私どももしっかりと考えてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

小林(千)委員 私、今、いわゆる義務教育国庫負担分の二分の一の退職金、児童手当は言ったんですけれども、いわゆる給料本体についてはまだ伺っていなかったと思うんですけれども、結局それも将来的、十八年度までには手をつけるということを今お答えいただいたんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 そういうことではなくて、義務教育費国庫負担金のあり方については、基本方針二〇〇三などにおきまして、中央教育審議会における検討も踏まえつつ平成十八年度末までに検討する、こういうことになっておるわけでございますから、今、中央教育審議会でもこの義務教育費国庫負担金のあり方について御議論をいただいておるわけでございますし、そういったものも踏まえながら、私どもとしてはしっかりと対応してまいりたいと考えております。

小林(千)委員 多分、今のお話は、今回の出ている改正案の附則の第二条の「検討」のところについてお答えいただいたんだと思いますけれども、この附則の第二条の、先ほどお答えいただきました、検討する、平成十八年度末までに検討するというふうにお答えいただきましたけれども、これは具体的に何をどう検討されるんでしょうか。

 先週、平野筆頭理事の方から質問をいたしましたけれども、国が真に負担をするべきものというようなお答えになるんでしょうか。そうすると、一体何がその本質の部分に当たるのか。特に、附則の第二条の「検討」、具体的に平成十八年度末までどのようにどういった観点から検討されるのか、具体的にお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 この附則第二条は、ちょっと読んでみますと、「政府は、第一条及び第二条の規定に基づく措置については、」と、つまり、今回、退職手当、児童手当に係る措置を国庫負担の対象から外したわけでございますが、昨年十二月の三位一体改革に係る政府・与党協議会の決定がございまして、その中で「義務教育費国庫負担金の退職手当・児童手当に係る取扱いについては、暫定的な措置とする。」このように決められたわけでございます。

 そこで、今回の法改正による退職手当、児童手当に係る措置について、政府として、義務教育諸学校の教職員の給与等に要する経費負担のあり方については、先ほど来申し上げておりますように、平成十八年度末までに検討することになっておるわけでございますから、その検討の状況でありますとか、社会経済情勢の変化、これは国や地方の財政事情あるいは税制改革等いろいろなことが考えられるわけでございますけれども、そういった検討の状況や社会経済情勢の変化を踏まえつつ、その時点において必要に応じ適切な措置を講ずる、これは退職手当、児童手当に係る取り扱いとしてそういう趣旨をこの附則において規定した、こういうことでございます。

小林(千)委員 この附則の第二条は、どう読んでも退職手当、児童手当にかかわるものだけとはとれないんですよね。だって、実際にこの第二条に、教職員の給与等に要する経費のあり方というふうに書いているわけですから、本体にかかわる問題になってくるんですよ。

 それで、今回いただいた資料によりますと、今回の児童手当と退職手当にかかわる国庫負担分の削減が、トータルで二千三百九億円が今回削減の対象となる。そして、検討に入っている給与本体の部分、平成の十八年までに検討されるというこの給与本体の部分は二兆五千五百八十一億円、約二兆六千億ですか。十八年までに検討される二兆六千億と今回の二千三百億、これをトータルすると、大体二兆八千億ぐらい、三兆弱になるわけなんですよね。

 そうすると、私が勘ぐりたくなるのは、政府の基本方針、骨太の基本方針二〇〇三の中で、平成十八年までに四兆円の国庫補助負担金を廃止すると。くしくもこの附則の第二条で、平成十八年までに給与本体についても検討する。とすると、十八年までに四兆円のうち三兆円弱をこの義務教育国庫負担で削減する。四兆のうち三兆、義務的経費ですよ。移行しただけで、使われる用途は限定をされているんですよ。これが本当に四兆円の交付金の削減の使途として正しいのか。義務的経費を地方に移譲するだけで自分の責任は終わったと言わんばかりのその総務省の見解について、これが本当の地方分権に当たるのか。そして、平成十八年までの二兆六千億の見直し、これで本当に子供たちの義務教育というものがしっかりと確保されるのか。

 総務省さんの方に、地方分権が本当にこれでいいのかということと、その中で子供の教育についてはしっかりと、文科大臣守っていただけるんですよねということを、決意表明を含めて伺わせていただきたいと思います。

岡本政府参考人 先ほどもお答えさせていただきましたけれども、私どもは、今回の義務教育の国庫負担制度の検討に当たりましては、分権を推進し義務教育に関する地方の自由度を高めるという考え方からこれまで議論をさせていただきましたし、また十八年度の制度全般に向けた検討に当たっても、そういう議論をさせていただきたいと思っております。

 したがいまして、国は、全国的に確保すべき水準などの国の教育制度の根本、大枠を定めることとして、具体の実施でできるだけ地方団体の自由度を高めるということが必要であるというふうに考えております。

 そういう観点からいたしましたときに、退職手当だけではなかなか自由度の拡大というふうに直結しないという面もございますし、またその部分が、将来退職手当者数が増加をしていくという状況もございまして、地方団体からは、いわば負担の転嫁ではないかというような議論もございましたので、特例交付金という総額を、そういう全体の検討、自由度緩和の検討がされるまでは退職手当者数の増加に応じてその総額を確保するという制度を導入いたしましてその地方団体の不安を取り除くということで、今回の採用の措置をとったわけでございます。これからも、そういう地方の自由度をできるだけ高めるという観点に立って議論をさせていただきたいというふうに思っております。

河村国務大臣 小林委員の御指摘、これだけ読むと何かもう決まったような話じゃないかといって心配されている向きがあります。これは我々も、大変大きな問題ですから、そう簡単に、金をこっちからこっちへ移したら済むというような話じゃありませんので、そこで教育論でという話が出てくる。これは、経済財政諮問会議でもそういう議論をやってまいったつもりです。まだあれで十分だとは決して思っておりません。

 ただ、この二〇〇三基本方針の中を読んでいただきますと、義務教育費国庫負担、教員給与の一律優遇の見直しということが上がっております。その中で、義務教育に関する地方の自由度を大幅に拡大する観点から、義務教育費国庫負担制度の改革をやろう。総額裁量制、例えば定額化とか交付金化ということも書いてありますが、これは、文部科学省としては総額裁量制ということを打ち出してきた。と同時に、二番目に、義務教育費に係る経費負担のあり方については、現在進められている教育改革の中で中央教育審議会において義務教育制度のあり方の一環として検討を行いという、これを踏まえつつ、平成十八年度までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行うという、一たんボールを投げかけられたわけですよ。

 だから、私の方は、これはボールが来たものですから、すぐ投げるわけにもいきませんので、一応受けて、すぐ投げてもいいんですが、それは政府の方針として来たものですから、これは文部科学省、まじめにきちっと検討する。言われることも、それは全体としてはわからない、しかし、義務教育の根幹を守るというのはどういうことなのかということを改めて教育論として中央教育審議会でやってもらって、その結果を踏まえながら、これに対して今度はボールを返しますよ、こういうことになっておりますから。

 今おっしゃるように、これまでも述べてきましたように、この制度の根幹を守るという考え方で貫いていく、この意思は全然変わっておりません。

小林(千)委員 その言葉を聞いて大変安心をいたしましたし、ぜひその投げられたボールをしっかりと精査しながら受けとめていただきたいとエールを送りたいと思いますし、総務省さんについては、地方分権というものが本当にこれでいいのか、本質的な分権論になっているのかということを指摘しておきたいと思います。

 続きまして、次の質問項目に移らせていただきます。

 二〇〇三基本方針の閣議決定の中に入っている文章なんですけれども、この中で、学校事務職員と学校栄養職員にかかわる項目が入っております。

 言うまでもありませんけれども、事務職員、栄養職員の皆さんというものは、教員とともに、学校の中で独自の専門性というものを生かしながら、教職員の皆さんが一体となって学校の基幹教職員として子供たちのために働いていらっしゃる、重要な職務にあられる方だと思っております。

 事務職員につきましては、これから各学校の個別の運営、運営というよりも主体的な学校経営というものがこれから大変重要な観点になってくると思いますし、その中で学校事務職員の皆さんが総括責任者として学校事務の機能強化に携わることが大変重要だと思います。

 そして、もう一つの学校栄養職員、これは、小泉総理も食育というものを施政方針演説の中でおっしゃっていました。子供たちの今置かれている食の問題を考えてみますと、これからの栄養職員の方の活躍のあり方というものは大変重要なことになろうと思いますし、場合によっては、栄養職員の方が教壇に立って、子供たちに食の大切さというものもきっと教えていくことになるのではないかなというふうに思っているわけでございます。

 実際には、栄養職員、事務職員の方々が、平成十五年の九月に出されたものの中に、今回の国庫負担金の一般財源化にかかわり所要の検討をするという項目がこの二〇〇三基本方針の中に述べられているわけでございますが、これは、先ほど申し上げました事務職員、栄養職員の大切さ、それから離れて、自分たちはひょっとしたら国庫負担からそこだけ取り上げられる、教員は別として確保されるけれども、自分たちは真の国が負担する責任の管轄から外れてしまうんじゃないかという大変恐怖感を持っていると思うんですが、これはどういう意味にとらえていいんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘の問題は、昨年の基本方針二〇〇三で国庫補助負担金等整理合理化方針の中で、「学校栄養職員、学校事務職員については、義務標準法等を通じた国の関与の見直し及び義務教育費国庫負担制度の見直しの中で、地域や学校の実情に応じた配置が一層可能となる方向で検討を行う。」と、こういうことを指してのお尋ねかと思います。

 これは現在、義務標準法では、教諭、養護教諭、学校栄養職員、事務職員の職種ごとに各都道府県における総数を定めることにいたしておりまして、その職種ごとの算定方法により算定される数を標準とするということにいたしておるわけでございます。

 ただ、少し細かくなって恐縮でございますが、この義務標準法は、個々の学校ごとに置くべき教職員の配置基準を示すものではございませんで、地域の実情あるいは各学校の実態に応じまして、例えば、学校事務の共同実施を行う場合に拠点となる学校に複数の事務職員を配置したり、食の指導を充実させる観点から学校栄養職員を複数配置する、こういうことも考えられる、そういったことが実情に応じた配置ということでございまして、そういったことを私どもはさらに各都道府県へ周知徹底していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

小林(千)委員 総額裁量制のことも視野に入れて今の発言がされているのかと思いますけれども、そうやってプラスで配置をされていく。一方、つじつまを合わせるためには減らされていくところもあると思うんですよね。その中で、国として一定の最低水準を守るだけのガイドラインみたいなものは私はつくるべきではないかと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 それが、まさしく義務標準法の教職員の算定。そこで標準とするということによってナショナルミニマムが確保されている、こういうふうに私どもは考えております。

小林(千)委員 次に、二〇〇三基本方針が出されたのが平成十五年の九月ですね。その後に、平成十五年の十二月の十九日に「三位一体の改革について」という、これは三位一体の改革に関する政府・与党協議会さんが十二月に出した文章、その三カ月後に出した文章があるんですが、その文章の中の「文部科学省関係」のところの中にこのように書かれております。「学校事務職員分に係る取り扱いについては、」「国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う中で結論を得る。」というふうに書かれているわけです。先ほどの二〇〇三基本方針の中では、栄養職員と事務職員については検討を行うというふうに書かれている。この三カ月後には、栄養職員というものは外れて、事務職員だけがここの中に書かれているわけなんですね。

 そうすると、この十二月に、私も、実際の学校の事務職員の方から多くの要望が出されました、自分たちだけ切られる対象になってしまったんではないかと。これは栄養職員というものが、小泉総理のおっしゃる食育ということに関して、重要視されるようになった理由かどうかわかりませんが、九月に出しておいた文章では栄養職員と事務職員が併記をされているのに、十二月に出された文章では事務職員だけが書かれている。これは、政府・与党合意がなぜこのように書かれて栄養職員が外されたのか、お伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 この問題につきましては、昨年の暮れ、文部科学大臣、財務大臣、総務大臣の間で何度となく議論があったわけでございます。文部科学省としては、平成十六年度予算において退職手当、児童手当を国庫負担から外したい、こういった主張をしてきたわけでございますが、特に総務大臣からは、退職手当等を国庫負担対象から除外するということは、知事会等も反対でございますし、地方への単なる負担転嫁ではないか、そういった議論が総務大臣からも出されたわけでございまして、むしろ、総務大臣からは、学校事務職員に係る国庫負担金について見直しを図ってはどうか、こういった三大臣折衝をやってきたわけでございます。

 そして、この十二月十九日の政府・与党合意におきましては、事務職員に係る取り扱いについてどうするのかということで、この問題につきましては、これだけを取り出して決めるのではなくて、義務教育費国庫負担金全額の検討を行う中で結論を得る課題であろう、こういうことで、十五年十二月十九日の政府・与党協議会にこういう記述となってあらわれてきた、こういうふうに理解をいたしております。

小林(千)委員 ぜひ、これからの学校経営ということが重要視される中で、事務職員、また栄養職員の方々の重要性ということもしっかりと認識をされた上で議論をしていただきたいと思います。

 続きまして、総額裁量制、先ほども少し出ましたけれども、これについてお伺いをさせていただきます。

 特に、国で子供たちの最低限の義務教育は保障するといった観点から、例えば、教職員の給与あるいは数については、今現在、義務標準定数法あるいは人材確保法というような法律の中で、いわば給料の枠というものは大体もう大幅に決まっていて、余り地方独自で動かせるものではないと思っています。

 こういった前提がある中で総額裁量制が導入をされるということは、地方自治体の中でどれだけ本当の意味で自由度がふえるのでしょうか。また、教員の賃金を少し低くして、その分ふやすとかというようなことも言われているようですけれども、賃金というのは労働意欲を増すために大変重要な一項目であると私は思います。このようなことにおいて、非常勤講師がふえる、そういった中で、本当に子供たちがしっかりと指導、教育を受けるといったようなことを妨げて、マイナスになってしまうことになるのではないか、教職員の質の低下を招くことになってしまうのではないか、私は大変危惧するところなんですけれども、ぜひお答えいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 総額裁量制は、基本的に、今先生おっしゃいましたように、都道府県が支給した教職員給与費の実支出額の原則二分の一を国庫負担する、これを前提とした上で、負担金総額の範囲内で給与額や教職員配置について都道府県の裁量を拡大しよう、こういうものでございまして、例えば、給与費を全体的に抑制し、その財源を活用して教職員を多く配置することによって少人数学級をより実施しやすくするとか、あるいは、今先生が御指摘になりましたけれども、非常勤講師、再任用教員等を多く配置することによって習熟度別少人数指導を充実させるなど、地方独自の学力向上の施策が展開しやすくなるんではないんだろうか。

 委員の御指摘ではございますけれども、やはりきめ細かな指導のための習熟度別少人数指導を充実させることでありますとか、専門分野、得意分野を維持する幅広い指導スタッフを導入するということが今まで以上にできやすくなるわけでございますから、こういったものを活用いたしまして、教育の質の維持向上を図りながらも地方独自の教育施策の実施を可能にしていただきたい、これが私どものねらいでございます。

小林(千)委員 この義務教育国庫負担制度については昨年も、その対象となるのが共済費、公務災害補償基金ということで、外されてきた。その中で、附帯決議がついているわけなんですけれども、またことしこういう議論が起こっている。平成十八年度に向けても検討がされている。

 こういった中で、私はどうも、去年つけられた附帯決議、この決議の内容は、義務教育は、国の責任において、その水準の維持向上を図るとともに、教育の機会均等を損なうことのないようにすること、また、義務教育費国庫負担制度を堅持し、地方の財政運営に支障を生じることのないようというふうに書かれているわけでございますけれども、どうもこの附帯決議が軽視されているように思えてならないわけでございますが、これからはしっかりと国が子供たちの教育に対して責任を持って取り組むということを、ぜひ最後に河村大臣に御決意をいただきたいと思います。

河村国務大臣 小林委員御指摘のとおり、また附帯決議のとおりだと私も思います。

 国が義務教育においては責任を持っていくというこれまでの考え方、この根幹を守るという考え方、これを貫いてまいりたい、このように思っております。

小林(千)委員 ぜひ、その決意を持ってこれからもしっかり議論に当たっていただきたいとお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池坊委員長 須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤浩と申します。

 初めて文科大臣に質問をすることになります。また、先ほど来から義務教育費の国庫負担に関してはこのようにたくさん質問がなされ、そして、答弁する側としても恐らく、見渡すとちょっともううんざりかなというような感じがないでもないんですけれども、それほどまでに重要な法案である、またある意味では考え方もさまざまであるというようなことがあると思いますので、もう少し辛抱して答弁をいただきたいというふうに思います。

 まず最初に、これも既に答弁をされているかと思うんですが、義務教育費国庫負担の負担対象経費ということで、退職手当とそして児童手当が国庫負担の対象外になるということで、実は、今の議論を私も聞いていて、そうかなと思いながらも、やはり違うのではないかなというようなところもありまして、もう一度確認の意味で伺いたいと思うんですが、義務教育に関し国が責任を持つ、義務教育の根幹を堅持するということが再三答弁をされていると思うんですが、その範囲というものはどこまでなんだということをまず最初にお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 須藤委員も御存じのように、義務教育については憲法の要請がございます。すべての国民に対して必要な基礎的資質を培う、こうなっておりまして、そのために国と地方が適切な役割分担をする。その範囲をどこまでどうするかという御指摘が今あったところでございます。

 この役割分担がやはりきちっとできるといいますか、もちろん融合する部分もありますけれども、そこで、やはり範囲としては、国が全国的な観点から、いわゆる教育の機会均等の問題、それから教育水準を維持向上させる、この大きな視点が一つ。それから、教育制度そのものの基本的な枠組み、全国的な基準の設定とか、教職員の給与費、それから学校施設の整備費、これについて国が、今二分の一という形で持っておりますが、国庫負担を行うということ。こういうことによって全国の学校、全国津々浦々に至るまで一定水準の教育を保障していく、こういうことであろう、こう思っております。

 直截的に言えば、全国的な基準の設定を持つこと、それから教職員の給与費、学校施設の整備費に対する国庫負担を持つ、それによって一定水準の教育を保障する、そして必要な、また優秀な先生を確保する。ここが国の一つの範囲と言えるのではないか、こういうふうに思っております。

須藤委員 そうしますと、給与費というところに今回の退職金あるいは児童手当というものが包含されるかどうかということだと思うんですね。

 先ほども出ていましたけれども、国庫負担の経緯の内訳を見ますと、昭和二十八年に現在の義務教の国庫負担が制定されていて、そのときは、給料・諸手当、給与本体に退職手当、旅費、教材費等が入っているわけですね。それがおおむね昭和六十年あたりから、共済費であるとか恩給費であるとか、その前につけ加えられたものが昭和六十年以降に随時なくなってきた、減らされてきた。そして、今回は退職手当、児童手当等が外される。

 一番最初に、昭和二十八年のときに、これが今大臣が言われた、根幹を維持する、給与費等を守る、それが対象範囲であると言われたことに対して、これだけ変わってきたということは、その対象範囲というものの基準がなかったのかということに関してはいかがでしょうか。

河村国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたが、義務教育費国庫負担制度というのが、すぐれた教育人材、いわゆる教諭を確保する、このことが非常に大事だ、そのためには教職員の給与に充てる財源が確実に保障される必要があるという考え方に基づいて政策的に義務教育費国庫負担制度というのがあるわけですから、この考え方に立って、それに附帯するものについて国として必要であるという考え方。

 しかし、根幹はどうなのかと聞かれたときに、この給与費が真に必要なものであるという考え方に立っていたわけで、だんだん狭められていって、枝葉は全部折れて幹だけ残った、こういう言われ方もいたしております。数字の経緯を見れば、私はそういう言われ方もあり得ると思います。しかし、やはり国が責任を持つ、根幹は死守するといいますか、これは必要なことだ。

 国が義務教育について責任を持つんだ、根幹を守っていくという考え方を問われて、そして地方の裁量性をできるだけ増す、そして負担金制度のあり方全体を見直しながら、できるだけ、国が全部握って、そして采配を振るうとかいう考え方はもうやめようという流れの中で、義務教育の根幹はどこなんだと基本的に考えたときに、この教職員の給与費を負担する。それ以外を譲ったことについては、義務教育に責任を持つということについて当面の、今の支障は及ぼさないということで、移譲しながら根幹を守ってきたということであって、その当時から、国の基本的な考え方といいますか、義務教育について国が責任を持っていくんだという考え方は変わっておりません。

 ただ、その時点でここまでが範囲だという議論をしたかどうか私はつまびらかではありませんが、この経費はどうなのか、この経費はどうなのかというぎりぎりの議論を二十八年当時されたかどうか、私ちょっと詰めておりませんけれども、しかし、根幹を問われたときに、今こういう地方分権の時代になってみて本当に国が責任を持つというのはどこなんだと言われたときに、今御答弁申し上げた点に統一して考え方を述べている、こういうことであります。

    〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕

須藤委員 今答弁の中に、木に例えて、幹の部分、あるいは根も入るんでしょうけれども、幹の部分と枝葉と。もし木に例えるのでしたら、枝葉を切ってしまったら恐らく木は枯れてしまうと思うんですよね。ですから、例えとしては余り適切ではないかなと。

 それは別として、その根幹の部分が果たして給与だけなのかということの判断、その判断をかつて文部省、今文科省がしているということについて、妥当性といいますか、内部でどれほどの議論が、先ほど審議会等という話がたくさん出ていますけれども、では、審議会がこうしろと言ったら、担当責任である文科省は、はい、そのとおりですと答えるのか。みずから所管している文科省として、この件についてどれほどの議論がなされ、今回のような結論が導き出されているのかを伺いたいと思います。

河村国務大臣 文科省の考え方が変わっておるわけじゃなくて、基本的にそう思っていると。しかし、今、地方分権の時代であって、さっき球が来たと言いましたけれども、こういう課題が投げかけられたということについて、我々としては、基本的な憲法の要請に対してどう対応していくのか、この義務教育費国庫負担制度そのもののあり方をどう改革していけばいいか、そういうことを含めて中央教育審議会で議論もしていただくということであります。

 中央教育審議会、御用機関だから都合のいい議論が当然出てくるんだろう、こういうことをおっしゃる方もありますけれども、そういうことじゃなくて、やはり教育の根幹をどうするかというそもそも論をきちっとこの際改めてする必要がある、文部科学省内部だけの考え方だけではなくて、一大臣の考え方だけではなくて、幅広い議論もした上で、これについてきちっとした位置づけをしよう、こう思っておりまして、私は、今申し上げたことについて真剣な議論をしていただけるものだと。

 今、実は行われておりまして、まだ結論をいただいておりませんので、今の議論は、それは今の憲法の要請の中で総額裁量制のあり方等々について議論を今していただいておる、このように承知をいたしております。

須藤委員 実は、この退職手当というものが維持すべき唯一対象になるのかということに関しては、例えば、学校の先生でなくても、民間企業でもどこでもいいんですが、勤めますよね。定年が来て退職をする。現役の時代に一生懸命働いたものは給与としてバックされます。それに加えて、老後の生活をどうしようかということで退職手当が出るということは、今日の一般的な社会ではこれは至極当然なことで、今日は、それですら人生を最後まで有意義に過ごすことができるかどうかわからないというような状況まで来ている。

 この退職手当があるとないということに関しては、恐らく勤める側からすると、これはよほど大きな位置づけといいますか項目になるんじゃないかと思うんですね。一生懸命勤めたけれども退職手当は全く出ませんとか、あるいはそれに見合ったものが出ないとかという話になったとしたら、これはどうなるでしょうか。

 今回は特に義務教ですから先生方がその対象になるんですけれども、現在勤めていらっしゃる方々がどう思われるかについて、どうお考えでしょうか。

    〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕

河村国務大臣 私も社会通念として、私もサラリーマンの経験がございますが、一定の基準、退職規定というのがあって、それできちっと退職金は出るんだという前提、またその前提で雇用契約を結んでおると思います。学校の先生方にとっても、免許をお取りになって、採用試験にお通りになって、先生として教壇にお立ちになれば、その規定によって当然あるべきものだという考え方に立っていますから、これをほごにするというわけにいきません。

 今回の問題は、一般財源化する、しない、これは国のまさに地方分権のあり方とか、どこからその財源を出すかという話であって、先生方にとってこれがカットされるということのためにやっているわけではない。これは文部科学省としては当然そう思っておりまして、これが当然担保される。地方に、交付税に移管されたとしても、それは財源が確保されるという前提でやっているわけでありまして、退職金を減らすんだという目的でやられるとしたら、それはやはり話が違うということになってくるわけでありまして、このことはやはり確保されなきゃいかぬと思っております。

 ただ、今回退職金を一般財源化することについては、知事会あたりは、こんな裁量性のないものをいただいたってどうにもならないという意見がありまして、さっき事務職員の話とかそれから加配の話まで総務大臣が述べられた話が出ておりましたね。これは総務大臣、困ったわけです。それは、知事会からわんわん言われて、こんなものをもらったって裁量性がないじゃないか、何でくれるんだ、要らないという話も出ました。

 だから、要らないと言われるんなら、もとに戻してもらったってそれは構わないんだけれども、全体として、地方の補助金的なものはできるだけ地方でやりやすいように移していこうという趣旨の大きな枠の中で来たから、我々としては、根幹は残しますけれどもそれに従ったということでありまして、これは私は本音で言いますけれども、我々も積極的にこれはいい話だとやったとは、今までの経緯を見ていても思いませんけれども、しかし、閣議決定の中で、大きな流れの中で、地方の裁量性。

 それは、退職金だって、今後地方へ移っていきますね、そうすると、これは給与そのものも今度は地方条例で変えることはできますから、優秀な先生とそうでない、差がつけば、退職金も変わってきますからね。これは裁量性がまるでゼロかというとそんなことはないんです。当然退職金も、もらう額は、それは基本給や何かによって計算しますから、変わっていく部分はあるんです。

 しかし、裁量性があるものかと言われたら、大体給与費なんというのが裁量性がそんなに大きくあるとすれば、これを削る話ですよ、もちろん。そこにねらいがあるとしか思えませんから、そんな簡単なものじゃありませんよというのが私の基本的な認識なんです。

須藤委員 文科大臣がそういう答弁をされるということは、これは喜んでいいのかどうかちょっと私もわかりませんけれども、先ほど来から、国庫補助の対象、教育の根幹を守るということの対象が給与費本体のみなのか、それとも、今回外されようとしている退職手当等も含まれるのかどうかということに関しては、少し話は戻りますけれども、私は、退職手当はやはり外すべきではないんじゃないかなと。

 それは、昭和二十八年にこの現行制度ができたときに既に入っている。ただ、このときは、地方分権という考え方はそれほどなかったと思うんですね。ない状態の中で、国が義務教育に関する制度といいますか、これをとにかく保障していく、その中の金額に係る給与あるいは退職金がやはりその対象になっているんだという考え方があったからこそ、二十八年当時入っていたんじゃないか。

 今日、分権と同時に財源も地方に移譲していく、それは子供が大きく大人になって、その意味では自由裁量というか、自分たちでできるものは自分たちでやっていくんだという話になったときに、それはあくまでも、権能ももちろん含まれますけれども、財源という話になってくる。では、地方がこれをすべて捻出するだけの今状況にあるかといったら、それはない。国も財源不足だからないという話になると、では、どこを削ろうかという話になって、給与本体がその堅持する対象であるという話。もしそうだとしたら、では、二十八年当時に考えられた本来の国が持つべき対象費用というこの位置づけがどこへ行ってしまったのか。

 今大臣が答弁されましたように、地方の自由度を増すといっても、義務的に出ていくこういった経費が裁量の対象にはならないという話ですよね。自由度を増すために裁量の対象になるというのであれば、この退職手当を含め国が保障するというか堅持するというか、財源確保していくと言っている言葉がまさにそこで矛盾を来している話になるわけであって、これはどうとらえたらいいかという話になってくると思うんですね。

 まず、この今申し上げた二点、二十八年当時に退職手当がその考え方の中に入っていた、これは地方が負担するとか負担しないということではなくて、義務教育に係る、そこに奉職をする先生たちの給与であり退職手当というものを教育という制度の中で保障するという観点から入っているはずだと私は思うんですけれども、今日、経済財政事情が変化したからといって、その考え方までも変わってしまっていいものかどうか、ここについてお尋ねします。

河村国務大臣 御指摘の点、義務教育費国庫負担法は昭和二十七年に成立をしているわけですね。その当時の精神といいますか、そういうものが今変わっているかというと、私は、変わっておりませんで、教育の機会均等、その水準維持向上という点、これに焦点を置いて、目的として、国が必要な経費を負担するという考え方は変わっておりません。

 ただ、先ほど、退職手当の考え方については、これはいわゆる給与なのかどうなのかという議論はこれまでもあったと思うんです。

 それで、これは財政当局ともいろいろ話したときの考え方の中に、給与にはいわゆる狭義の給与と広義の給与といいますか、いわゆる給与本体、在職給与、いろいろな手当含めて給料に足したものと、それから別途支給される退職手当、全体は広義で言えば給与だけれども、狭義で考えれば給与でないということ。

 それで、退職手当は国庫負担の対象外としたとしても、もちろんこれをカットするという意味じゃありません、財源は確保されるんだけれども、考え方としてそうしたとしても、給与、いわゆる義務教育の水準を維持したり立派な先生を確保する、これは国庫負担制度の目的に照らして支障が生じないという考え方で一般財源化を認めた、こういう判断をした、こういうことであります。

須藤委員 そうしますと、退職手当が広義の給与であり、あるいは狭義の給与本体に含まれるかどうかということは、私は何か余り意味がないような気がするんですね。実際にそれを受け取る、あるいは退職後の生活に充てるための費用であると考えれば、それは必要なんだと、人間が生きていくために。必要なんだから、どういう定義区分にしようと、何らかの意味で措置されなければおかしいという話だと私は思うんですよ。

 それともう一つは、仮に、狭義で給与本体がその対象で、退職手当がそうじゃないから一般財源化してそれを保障しているんだと。でも、一般財源化の話になりますと、これは地方、特に都道府県単位での裁量性が、裁量化が強くなってくる。といいますと、では制度的にどこでそれを担保するんだと。地方の自由度を高めるという意味では、それは意味があるのかもしれませんけれども、本来持つ、今私が申し上げた、現職として奉職しているとき、それから退職をして生活を支えていく、そういったことを含めて、本来必要な費用であるというものを、一般財源化された自由度の増した地方自治体が果たして一〇〇%常にその金額が担保できるかどうか。では、国としてはそれをどのように保障するのか。

 私は、これは非常に矛盾をするところだと思うんですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。

河村国務大臣 今回、この法律によって見直しをさせていただくわけでございますが、退職手当、児童手当の所要額は、平成十六年度予算については、税源移譲予定特例交付金という形で税源移譲までの各年度の退職手当の支給に必要な額の財政措置が講じられるということで、先ほどの議論の中でも、いわゆる交付税として、人口基準であるが、その不足分については交付税でさらに補てんされて全額保障される、こうなっております。

 あくまでも私どもは、この退職金はきちっと支払われるという前提に立って、これは財源措置は一般交付税でありますから総務省から出る形になるわけですけれども、これはきちっと保障されるという前提に立っておるわけでありまして、そのことが地方のしわ寄せになり、これによって、地方財政が窮屈だからこれをカットするとか、そういうことはあり得べからざるものであるという前提に立って、今回この法案を出しておるわけでございます。

須藤委員 そうしますと、その前提というものは何によって保障されるんでしょうか。交付税措置をされ、この分権化の中で地方の自由度を増すということは、それは裁量権があるから自由度を増すのであって、つまり一般財源であるお金には色がついているわけでもない、このために使わなければいけないということはないわけであって、だからこそ自由度が増して自由に使える。

 当然、責任はそれを行使する側にあるんでしょうけれども、国から都道府県、地方に任せられたいわゆる義務教に関する費用というものが、今大臣が言われているような、保障される、担保されることを前提としてとおっしゃるんですけれども、では仮にその前提が崩れたときは、それは地方が勝手にやったことだから国としては知りませんよということになるのか、この辺に関してはいかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 退職手当それから児童手当につきましては、今回、国庫負担の対象から外したわけでございます。

 その理屈につきましては、今も大臣からもお話がございましたように、実はこれまでもいろいろな経費についてそういった見直しを行ってきたわけでございますが、国と地方の役割分担、費用負担のあり方の観点から、対象経費の見直しをし、適宜、国庫負担の対象外にしてきたわけでございます。

 今回、特に退職手当、児童手当につきましては、退職手当は、今後退職者がふえてまいりますから、当然そういった財源の問題があるということで、先ほど来申し上げておりますように、税源移譲予定特例交付金、こういうものを設けることによって必要な額の全額をきちっと措置をする、こういった形で今回予算編成等がなされたわけでございます。

 したがいまして、私どもは今後とも、この退職手当等に係る経費のしっかりとした裏づけがなされるように総務省にもお願いをしてまいりたいと思っておるわけでございます。

須藤委員 そうしますと、今回のこの話は、あくまでも予定というか、そうなるだろう、あるいはそうしてほしい、そういう考え方、根拠のもとに行われると。

 あるいは、過去において昭和六十年からそれぞれ国庫負担の対象経費というものが外されていますね。一つお伺いしますけれども、そうしますと、この外された経費というのは、その後各都道府県で、全額、あるいは交付税で足らない分も含めて、義務教育に係る費用のための経費として使われているかどうかという数値は押さえてありますでしょうか。

近藤政府参考人 一般財源化した経費の中身ということにもよるんだろうかと思っております。

 退職手当とかこういうものは、これは基準にのっとって支給されなければならないものでございます。

 例えば旅費ですとか教材費、こういったものにつきましては、一般財源化された六十年度以降、地方団体の支給実績を踏まえた単価によりまして基準財政需要額が積算をされ、所要の地方交付税措置が行われている、こういうふうに承知をいたしております。

須藤委員 答弁の形式になるのか、承知をしているということは、そうであったということと、それから、そうは思っているんだけれども実態はそうじゃなかったというように解釈できなくもないんですが、いかがですか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 地方交付税の仕組みというものは、今申し上げましたように、必要な単価によって基準財政需要額が積算をされ、それに係る交付税措置が行われている、そして地方公共団体においてもおおむねこれに見合う予算措置が行われている、このように私は承知をいたしております。

須藤委員 では、別の角度から伺いますが、現在国が行っている地方に対する交付税措置、これは日本の借金の現状を考えると、交付税措置そのものも減額をしていかなければならない。現に平成十六年度も減ってきている。これから先も、よほどの景気回復、高度経済成長とは言わないまでも、国の税収が上がってくるような状況がない限り、今までどおり交付税として地方に渡していくということはかなり難しいと私は思うんですけれども、そういった中で、全体のパイといいますか、枠が縮まる中で、その意味では、この義務教育だけが聖域として守られるという保証は果たしてあるのかどうか。

 一般的に考えれば、それはないだろうと。当然、日本の国民一人一人あるいはそれぞれの企業であり団体であり、さまざまなところで、この苦しみを乗り越えていくためには我慢をしなければならないというようなことは想定されることだと思うんですが、そういう状況になってきたときに、最初から申し上げているように、守らなければならない、根幹を維持すると国が言っているその対象は、では一体何なのか、その中身は何なのかということがやはりもう一度問われてくるのではないか、私はそのように思います。

 それで、先ほど来から申し上げているように、地方に対する分権に伴う自由度、裁量度を増すということは、当然そこに責任は生じるけれども、今まで仮に一万円使っていたところを五千円にしますよと。減額された五千円に対する説明責任はある、その責任もすべて、結果もとりますよと。だけれども、その裁量に対しては、皆さんこういうことだからわかってくださいという話になるわけですね。

 今回、国庫負担の対象から外される、交付税で措置されているといっても、基本的な考え方として、分権であり、地方の自由度を増すということになれば、その中身が義務教育であろうとなかろうと、一たん地方に移したものについては、国が守る守ると言っていますけれども、どうやってそれを守ることができるのか。

 例えば法律をつくって、この分に関しては地方においても対象の費用に使いなさい、使うべきであるというようなことをするのかしないのか。そういうようなことがあれば、これは、根幹を維持し守っていくという話は私はわかるんですが、そういうことではなく、名目だけ地方の自由度を増して、そして裁量をもっと大きくしていく。今回、地方に交付税措置あるいは予定特例交付金として渡したから大丈夫だよといったって、これから先のことを考えると、それが保障されるということと私は直接つながらないと思うんですね。気持ちとして、あるいは文科省としてそうだと言ったとしても、本当にそれがそういう状況にならないのであれば、今言っている言葉自体が非常にむなしいものになってくると私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

河村国務大臣 須藤委員御指摘のとおり、聖域なき構造改革、こういうことで今進んでおります。一切聖域を設けないで考えようということではありますけれども、しかし、今御指摘の点が論点になってくるわけで、それは財政論からいえばそうかもしれない、しかし教育論に立ったときに、国の根幹にかかわる教育の問題、特に義務教育だということになってまいりますと、この根幹を維持していくということは国の責務ですから、私はその点はきちっと考え、通さなきゃいかぬ立場にあるわけでございます。

 そういう意味で、私は、文部科学省としても、この投げられた課題に対して、文部科学省としての改革の中でどう対応していくか。地方分権というものを十分考慮しながら、地方の裁量性、自由度というのを増しながら、政策としてきちっと根幹を守るものを打ち出していく。これは今の義務教育費国庫負担制度を守っていく、根幹を守っていくということによって達成される、そして改革としては総額裁量制というものを打ち出してきた、こういう考え方で今進めておるわけでございまして、この責任は国に最終的にはかかってくる問題ですから、文部科学省が直接的な責任を持つという考え方でこれからもやっていかなきゃいかぬ、こう思っております。

 では、言葉だけで、それがどこで担保されるかということです。これは、やはり教育をどう考えるか、国のあり方を問われる問題だ、こう考えておりまして、民主党の枝野政調会長が予算委員会でもそういうことについて、私も聞いていて、私が聞き間違いだったらあれですが、いわゆる全額を交付制、交付税といいますか、特例交付金みたいな形にするが、教育はやはり別だという発言をされていたように私は思います。そういう点では、これは国会の皆さんの考え方も、教育というのは、聖域という考え方を持つと、また今の流れの中でどうなのかと言われますが、やはり教育は義務教育を根幹で考えようということについては合意が得られるのではないか、私はこう思っております。

 まさに、ある意味ではその理論的な考え方もきちっと持たなきゃなりませんから、今、中教審、中央教育審議会で議論をしていただくというのも、その理論づけも考えながらこれにきちっと対処していかなきゃいかぬ、こう思って今この問題に取り組んでおりますし、所信においてもそういうことを述べてきましたし、今までの答弁にもそういうことを申し上げてきている。須藤さんが御指摘されている点は非常に重要な視点だ、私はこう思っております。

須藤委員 では、そうしますと、また別の角度からお伺いしたいんですが、先ほども出ましたけれども、中教審の中でも話をしている、ですからそれを待って対応をまたしていくという附則が設けられていますが、あの中に給与本体は入らないというふうに先ほど答弁されたかと思うんですが、あの文言を読む限りは、「給与等」、等ということで、やはり本体も議論の対象になるのではないかというふうに読み取れる、私はそう読み取りますけれども、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 なぜこの附則をつけたかということでございますが、今回、退職手当、児童手当に要する経費を国庫負担の対象から外したわけでございますが、これは先ほど来申し上げているように、三大臣合意等でもいろいろと議論があったことでございますし、地方公共団体からも、この退職手当は今後、しかも十五年ぐらいにわたりまして退職者がふえてまいります。そういったことからしても、これを国庫負担対象から外すということについてはいろいろな意見があったわけでございます。

 そこで、昨年十二月十九日の三位一体改革に係る政府・与党協議会で、地方向け国庫補助負担金について十六年度予算で一兆円の廃止、縮減等の改革を行う、なお義務教育費国庫負担金の退職手当、児童手当に係る取り扱いについては暫定的な措置とする、こういう決定があったわけでございまして、それをどういった形でこの附則の中に盛り込むかということで、事務的にはいろいろと考え、関係省庁とも協議をしたわけでございますが、この附則の規定は、退職手当、児童手当に係る措置について暫定的な措置であるからして将来どうなるのかと。

 そこで、政府としては、義務教育諸学校の教職員の給与等に要する経費負担のあり方について十八年度末までに検討を行うことになっておるわけでございますから、その検討の状況でありますとか社会経済情勢の変化を踏まえながら、そういったものを総合的に勘案して、その時点において必要に応じて所要の措置を講ずる、こういうことでこの附則を書き込んだ、これが今回の経緯でございます。

須藤委員 この附則の文言は、今説明されましたように、「公立の義務教育諸学校並びに公立の養護学校の小学部及び中学部に係る教職員の給与等に要する経費」、給与等ですから、給与とプラスアルファですよね、日本語から解釈すれば。給与等というのですから、給与も当然その対象になる、国語も普通に読めばそういうふうに解釈できるんですが、いかがですか。

近藤政府参考人 おっしゃるように、この給与は、在職中の給与を含めてすべて入るわけでございます。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、三位一体改革の中で、「義務教育費に係る経費負担の在り方については、現在進められている教育改革の中で中央教育審議会において義務教育制度の在り方の一環として検討を行い、これも踏まえつつ、平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」これが骨太の方針等で決められ、現在私どもは中央教育審議会にお願いをいたしまして、義務教育制度のあり方の一環として検討していただいておるわけでございます。

 こういった検討の状況とか社会経済情勢を踏まえて、退職手当、児童手当の暫定的な措置を将来にわたってどう考えているのか、これが附則第二条の趣旨でございます。

須藤委員 これが官僚答弁の典型なのかなと、本当に残念ですよ。つまり、こういう教育論を論じているときにこういう答弁をして、はい、そうですか、はい、そうですよと。よろしいんですか、大臣、こういうことで。

河村国務大臣 原則論を述べたと思います。その原則に沿ってやっていることは間違いございません。

 ただ、この附則がついてきた段階、いろいろ指摘があったんです。それは、十五年六月の閣議決定がありますね、あの二〇〇三。この方針と整合性を求められたということもあるわけですね。そこで、検討はするんだ、検討はすると言ったんだから検討しますよということで、ここに入ってきたということが、これまでの経緯を知っている者として、そういう思いで、本当を言うと、もっと一般財源化云々という言葉も指摘があったんです。しかし、それは、閣議決定はそこまで言っているんだから、これは我々としては、所要の措置ということで広く考えようと。というのは、我々は議論を、もっと教育論をやるんだから、それを踏まえてやってもらうというのが、次の与党との協議でこういうふうに決まっているんだから、それに基づいたということで、必要と認めれば所要の措置をということに。

 そういうことで、これは法案をつくるときの内閣府等々のいろんなやりとりの中、これは内訳を言ってはあれですけれども、そういうことも含めて附則もついてきた。聖域なき構造改革の中の一環としての大きな流れの中にある法案として、ぎりぎり我々としてはこれを堅持するんだという姿勢をここへ織り込まなきゃいけませんから、そういう意味で、中央教育審議会等で議論を、今さっき説明した、そういうものを踏まえたもので考えましょう、教育論を踏まえてやりましょうというものがここに含まれている。こう私は理解をして、この法案を出させていただいた、こういうことでございます。

須藤委員 時間が来ましたけれども、今の大臣の答弁で私思いますに、今回のこの国庫負担、退職手当、児童手当を外すということは、このように中教審に諮問をしている段階で、しかも附則の文言が解釈論としては幾つか成り立つような状況で、さまざまなことを考えるとやはり少し早いのではないかというふうに思います。

 財源保障というものが仮に法律で定められるとか、あるいは大臣が、教育、五十年、百年先のことを議論するわけですけれども、文部大臣としてそれぐらい在籍しているとか、そういったことがない限り、現時点で、財政論からのみこの国庫補助の対象から外すというのは、少し私は無責任ではないか。

 堅持、堅持という言葉は何回も聞かれますけれども、その中身というものが、本当に信頼に足る、あるいは任せて安心できるというような状況にはまだなっていないというふうに私は感じます。

 これで議論が終わるわけでもなく、また後から幾つも質問が出ると思いますので、今私と議論をした点も加えて、この後の答弁をお願いしたいと思います。

 それから、あと一点、ゆとり、子供の居場所づくりについて質問をさせていただく予定でしたが、時間が来てしまいましたので、答弁の準備をされた方には申しわけありませんけれども、以上で質問を終了いたします。

池坊委員長 肥田美代子君。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、義務教育の国庫負担制度に関連いたしまして、質問をさせていただきます。先ほどから同僚議員から質問もございました。しかし、いま一度、念押しをさせていただきたいと思っております。

 改正案の趣旨は、負担対象経費を国として真に負担すべきものに限定すると述べておりますけれども、ここで大事なこと、注目すべき点は、真に負担すべきものに限定という表現だと思っております。

 これは、どのような意味で、何を示唆しているんでしょうか。大臣にお尋ねします。

河村国務大臣 さきの委員会で平野委員からも、この点、厳しく指摘をされたところでございまして、私も、この真に負担すべきものという言葉は一体どこから出たんだというので調べたんです。

 そうしましたら、経済財政諮問会議等々の中から、国と地方の役割分担をするときに、国が負担をするというのなら真に必要なものだけに限定しなさいというあらわれ方で、表現の仕方で来たんだと。これをこういう形で受け継いで答弁等にも使わせていただいているという状況でございまして、私も、そうか、そういう表現なのかと。真に負担すべきものと言って、そういう言い方があるものかと随分しかられもしたのであります。

 しかし、国が、義務教育費国庫負担制度の趣旨を守るといいますか、これを堅持していくために必要なものとしては何なのか。これは、優秀な先生を確保することだということであれば、その一番もとであるいわゆる給与費を確保する、国がきちっと確保してあげるから、地方はしっかり裁量を発揮してやっていただけるような仕組みにしましょうというのが、今回の法案であり、改正になるわけですね。

 この法案と総額裁量制はまた別のものでありますが、そういう意味で真に負担すべきものという考え方に立っておる、こういうことでございます。

肥田委員 今、大臣のお言葉にもありましたが、それでは、給与本体というふうに理解していいんですね。

河村国務大臣 真に優秀な先生を確保する、これは人材確保法、標準法もございますが、これに裏づけされた給与費本体、こう考えております。

肥田委員 既に平成十五年までに共済長期給付や公務災害補償は国庫負担の対象から外されております。今回の改正案で、退職手当と児童手当、これが外されようとしておりますけれども、国庫負担の対象外に想定するものはまだありますか。

河村国務大臣 これは、そもそも論から申し上げます。

 先ほども申し上げたとおりでありますが、教職員の給与に充てる財源が確実に保障されなきゃいかぬという視点に立っておりまして、今回は、そういうことですから、制度の根幹を維持するという立場で、負担対象経費というものを国が真に負担すべきものに限定するという点で見直しをやったということでございます。

 基本方針二〇〇三において、中央教育審議会の議論を踏まえながらということで、文部科学省としては、この制度については総額裁量制も含めていろんな形での改革はやります。しかし、制度の根幹はきちっと守っていく、給与費を確保するということから考えれば、肥田先生が言われたように、何かまだほかに外すのかと言われたら、もう外すものはない、こう私は言い切っていいと思います。

肥田委員 今、大臣が明言してくださいました。真に負担すべきものに限定というのは、文部科学省としてはこれが最後だよ、そういう決意を表明したものと受けとめていいですね。うなずいていらっしゃいます。まさにこれは悲壮感のある言葉だと思うんですね。

 とすれば、義務教育費国庫負担金について、さらに念押しをしますけれども、平成十八年度に結論が出される予定ですが、現在の文部科学省の姿勢に揺るぎはないと受けとめていいですか。

河村国務大臣 これは、基本方針、全く変わりません。

 ただ、民主党からも言われているように、全額交付金にするんだという考え方、だって、この負担制度そのものはもう根幹からなくすんだということになってしまうと、別のことを考えなきゃいけないんじゃないかと。私は経済財政諮問会議でも、そういう全部、この制度そのものを変えるんだということになれば、この名前はなくなるかもしれない、しかし、教育費については、やっぱりこれは、言葉は悪いんですが、まさに教育費というものは色つきのものであるべきだという考え方は、私は変わりません。

肥田委員 大臣の揺るぎない決意と受けとめさせていただきます。

 そこで、教育内容について大臣の御意見を伺っておきたいと思います。大臣は、学校教育の質を決定づける要素、これはどんなことだとお考えでいらっしゃいますか。

河村国務大臣 これは、教育は、いわゆるソフト面といいますか、それからハード面、いろいろ考え方があると思います。

 教育活動の中には、教育課程があり、学習指導があり、生徒指導があり、進路指導があり、さらに大事な教科書がある、そういう教育の内容面の視点ですね。それから、まさに教職員をどのように配置するか、学級編制規模をどうするか、こうした人的な要素があると思います。それからさらに、ハード面としては、校舎等施設をどういうふうにつくっていくか、予算をきちっと確保するか、こうした要素。これらが学校教育の質を決定づける要素である。これによって、教育の具体的な内容の質を確保して、そして直接の教育の担い手である教員に人を得ていくということが大事になってくる、このように考えるわけであります。

肥田委員 今、大臣は、教育内容、教員の質、それからハード面で校舎、施設等とおっしゃってくださいましたが、私、もう一つ大事なことが抜け落ちているというふうに思うんですね。それは、スクールマネジメントという考え方でございます。

 これは、ユネスコとかOECDなど国際機関で大変関心を持たれているテーマでございますけれども、これまでは、学校や教育委員会は文部科学省の指示に従ってくればよかったんですね。スクールマネジメントの必要がなかったわけです。ところが今、個性化、多様化、独自性の発揮など、教育内容に大きな変化が起きております。これは大変いいことだと私は思っております。この大きな変化は、同時に、マネジメントの必要性が高まってきたということにもなるんですね。

 自由がなければマネジメントの必要はなかったわけでございますけれども、自由裁量を与えた、それと同時にマネジメントの必要性が立ち上がってきたということでございますが、このスクールマネジメントの責任は、現実には今、校長先生が背負っていらっしゃいます。しかし、それをサポートする体制ができておりません。校長の自殺という悲惨な事件も、この背景に、マネジメントのサポート体制がないということも原因には絶対なっていないとは言えないと思っております。

 こうした校長のスクールマネジメントのサポートは、今どこで行われておりますか。

原田副大臣 これまで、学習指導要領につきまして、文科省としても、お話がありましたように、大綱化、弾力化を進めてきたところでございまして、とりわけ、十四年度から、新学習指導要領の中で、総合的な学習の時間とか、中学校、高校の選択学習の幅を広げるというような形で自由化が進められてまいりました。

 これによって、これまで以上に、それぞれ現場、学校の創意工夫を生かしたものができると同時に、しかし、やっぱり学校側にもそのような手を与えられると戸惑いが出てくるわけであります。今、先生おっしゃったように、最終的な責任は校長に与えられるわけでありますが、これはまた、学校全体でそのことを運営するということになるわけであります。お話しのように、校長に余りに大きな権限が与えられて、それに耐えかねて悲惨な事故に結びついているところもございます。

 そういうことを踏まえまして、文科省としては、国としても全体の指導を行っておると同時に、各都道府県、市町村の教育委員会がこのことを踏まえまして、傘下の教育センターなどを通じまして、例えば、地域、学校の実態に応じたカリキュラムづくりの編成とか情報提供、またすぐれた事例をお互い交換し合う、またはいい人材を地域から集めるためにその人材への意見を取り入れる、関係機関、団体との連携協力の体制にしっかり努めておるところでございます。

 国は国として、当然のことながら、習熟度別指導等に対応した教職員の定数改善計画なども十三年度から進めておるところでありまして、相まって、このスクールマネジメント、学校運営をきちっと管理する、あわせて、それぞれの創意工夫が十二分に発揮できるようなシステムにしてまいりたい、こう思っておるところであります。

肥田委員 今そういうふうにしてまいりたいというお話は伺いましたけれども、現段階として、文科省の中では、それはどの課が受け持っておりますか。

原田副大臣 これは、所管といたしましては、初等中等教育局が行っておりますし、課が十課ほどございますから、そういうそれぞれの問題について担当課、すなわち、教育課程課、教職員課、また、総括的なことにつきましては筆頭課であります企画課が担当しておりまして、全国のそういう動きにきちっとこたえられるように体制をつくっておるところであります。

肥田委員 今、それぞれの課が担当しているとおっしゃった、私はそれも結構だと思うんですけれども、やはり統括的なマネジメントという意味では、マネジメントする課なり部なりつくっていく方向じゃないと、自由化、自由化といいましても、それが結局は不自由に結びついてしまうような気がするんですよ。ですから、自由は自由だからほっておけというんじゃなくて、文科省にお伺いしたらそれぞれの課がやっていますというふうにお答えくださるんですけれども、まだそれじゃ足りないんじゃないですかというのが私の気持ちでございます。

 例えば総合的な学習を例に挙げたいと思いますが、この時間は、学校が自由に企画して自由に教育内容を決めることができております。しかし、校長のもとで新しい教育内容が決まりますと、地域の父母たちが不満を漏らします。これまでは、これは文部科学省が言っているんですからというふうに校長は逃げられたわけですけれども、教育の自由化の波はそうした逃げを許さないことになっております。文科省も都道府県も市町村も応援してくれない、だから孤立してしまっているとこぼしていらっしゃる校長さんも各地域に見られます。

 教育の地方分権、それから教育内容の自由化は、戦後教育の中で私たちが初めて体験することでございますので、この新しい事態を見詰めて、政治的、行政的な立場にある選挙で選ばれた市町村や都道府県の首長が、それぞれスクールマネジメントに責任を負って、そして文部科学省もそれを支援する体制をとらないと、せっかくの教育の自由化が本来の目的を達成できない、そういうふうに思います。私は大変危惧をしております。

 それですので、大臣、これからどういうふうにしていったらいいか、今すぐにお答えは無理でしょうけれども、前向きなお答えをいただきたいと思います。

河村国務大臣 私は、かねて、就任以来、やっぱり今、教育の現場、いろいろ大変努力をいただいております、苦労していただいておる、そのことを直視して、そして、地方の取り組みを、文部科学省が全国の教育のセンターとして、それをしっかり支援する体制をつくるということは極めて大事であるということを絶えず言っておるわけでございます。

 そういう視点で、今おっしゃったスクールマネジメントのあり方、これもまさにこれから大いにやらなきゃいけないことでありますから、窓口はやっぱりつくる必要があると思いますね、ばらばらではあれですから。しかし、その窓口を中心にしてそれぞれの課がそういう視点で対応できるような仕組み、さらに研究をしっかり続けていかなきゃいかぬ。そして、地方の取り組みをしっかり支える体制をつくっていく、これは極めて大事だと思いますので、しっかり受けとめさせていただきたいと思います。

肥田委員 よろしくお願いいたします。

 スクールマネジメントと関連いたしまして、教育内容の検証ということでございますが、これが大変重要な問題だと思っております。教育の目標を設定します、そして到達手段を見つけて、結果と目標を比較検証しなければならないときに来ていると思います。

 一つ事例を申し上げますと、例えば、授業にゆとりを取り戻すために、一科目にかける授業時間の延長、または教育内容の削減という二つの選択肢がございました。新学習指導要領では、教育内容の三割削減を選択されました。ところが、教育現場には、教育内容の三割削減について学力低下を招いているという声が上がっております。

 こうした声がなぜ上がってくるのか。三割削減の教育は正しかったのか。現在、どのように評価されていらっしゃいますか。

河村国務大臣 ゆとり教育即学力低下、こういう話に今なってきておるわけでありますが、新学習指導要領においてはその教育内容を厳選していくということで、学習の系統性とか、学年の接続のぐあいとか、ダブりはないかとか、そういうことでできるだけ時間をとれるようにして、そして限られた時間数の中で効果的な指導をしよう、それもやはり基礎、基本に焦点を当てようということが今回、土曜日が休みになりましたからその時間をどう調整するかということで、みんな苦労していただいておるところでございます。

 ただ、これが即学力低下につながっていると言われるけれども、まだ始まったばかりでして、一般的に、学力テストのOECDの比較とかなんとかで、義務教育段階において日本の子供たちが格段に今そのことによって落ちたということはないと思っています。そういう事実も統計的には出ておりますから。

 ただ、学ぶ意欲はどうかとか、ゆとり教育が何か緩み教育にとられて、学びを少し緩めていいんじゃないかというふうにとられたということは、これは非常に心配なことですから、このことは、やはり学校現場において学力低下を来してはならない。

 ただ、学力の定義というのもありますから、それを踏まえながら、人間力向上の教育改革をこれからやろうとするならば、総合的な学習の時間等において単なる机上では得られないようなことを体験していくということも、全体の人間力、まさに学力も含めた教育の一環ですから、そういうものも取り入れながら全体として考えていこうということで、基礎、基本知識などの徹底を図りながら、そういうことを含めた判断力とか実行力、思考力、みずから考えみずから行うような意欲、そういうものも全体に考えて、表現としては確かな学力という表現を使っておりますが、これを目指すということであります。

 そういう意味で、私は、現在の学習指導要領はその方向に向かっているのであって、ただ、それが学力低下を来してはならない、学校教育現場の責任においてそのことはさらに努力してもらわなきゃなりませんが、総合的な学力、ただ点数だけであらわれたものではない学力、そういうものを目指しながら、学習指導要領はそこにねらいが定着しつつある、このように考えております。

肥田委員 今大臣がおっしゃってくださいましたように、検証、評価というのがとても大事なんですね。それで、教育改革を繰り返し今まで行ってきてくださいましたけれども、その割に成果が上がらないのは、行った教育政策の結果の検証とか評価とかがじっくりと行われてこなかったんじゃないかという思いを持つわけでございます。

 それで、子供たちは教育改革の波にはさらされるけれども、積み上げの中での改革の実をなかなか得られない、私は、文科省の検証の手段それから検証のチャンスが少ないんじゃないかというふうに危惧しているんですけれども、大臣、どう考えられますか。

河村国務大臣 御指摘の点、日本の教育は確かに政策評価の実施という点について、最近ですね、そういう考え方が入ってきましたのは。だから、そういう点ではまだ十分でないという点、御指摘は私も当たっているんじゃないかと思います。

 やはり達成度、目標を持ってそれにどのように到達したかというようなこと、このようなことは、この評価結果が今後、予算概算要求などへの反映、こういうふうな形で持っていかなきゃならぬということで、実は評価の実施に当たっては、政策評価に関する有識者会議等から助言もいただきながら、また文部省のホームページをもって今これを公表いたしておるところでございまして、具体的に、行政機関が行う政策の評価に関する法律というのも出てまいりましたので、それを受けた形で平成十四年三月に文部科学省も政策評価基本計画というのを出しまして、そして翌年に文部科学省の政策評価実施計画というのを策定いたしまして、今これに基づいてやっておるわけでございます。

 ただ、これも、各校の評価、あるいは教員の評価、それから子供たちのどの程度到達したかの評価、これはなかなか、今から具体的に進めていこうとしているわけでございまして、今、いわゆる政策評価、それから政策目標とその具体的な施策目標、こういうものを設定しながら、具体的に数値的な指標を用いてその分析を行いつつあるというところでございまして、教育現場そのものにこのいわゆる政策評価をどういうふうに具体的に入れていくかということ、私はこれからの大きな課題だ、こう思っております。

 学校というものが、もっとオープンにして開いたものにしていく、そして信頼されるためにも、これをもっとオープンにしながら評価をきちっとやっていくことがこれから大事な課題だ、私はこう思っておりまして、いわゆる文部科学省が持っている政策そのものの評価、そのことはこの法律に基づきながら今まさに進めておるわけでございますが、具体的な学校現場での評価のあり方、これはこれからさらに取り組んでいく課題だ、こう思っておりまして、まさに教育の成果がいかに上がるかという視点に立ってこの政策評価に積極的に取り組んでいかなきゃいかぬ、このように考えております。

肥田委員 次に、義務教育を受ける世代の中で大きな不条理を背負わされている弱視児の教科書問題について質問いたします。

 昨年来、文科省はこの件に関してはまれに見る迅速な対応で行ってくださったことに対しては、感謝申し上げたいと思います。

 文科省は二〇〇三年十二月二十五日、「通常の学級に在籍する視覚に障害のある児童生徒に対する「拡大教科書」の無償給与について」、こういう事務連絡文書を各都道府県教育委員会に送付していらっしゃいます。内容は、一月三十日までに、拡大教科書を必要とする弱視児の数を調査して、拡大教科書希望の有無やボランティアとの契約などを報告するようにというものでございますけれども、契約予定冊数や児童生徒数についてどのような御報告がございましたか。

原田副大臣 弱視児童生徒に対する拡大教科書の問題でありますけれども、御指摘の、また評価いただきましたように、文部科学省としては常にそう心がけてはおりますけれども、この件についても迅速な対応をしたところであります。

 また、その陰に肥田議員が中心となって御活動いただいたということも伺っております。

 それで、来年度、十六年度から御指摘のように拡大教科書について無償化をする、予算化措置も現在の予算案にものせておるところでございます。

 調査をした限りでは、三月十七日現在、取りまとめておりますけれども、小中学校合わせて五百十四名分、三千九百四十八冊、こういうふうに報告を受けておるところであります。

肥田委員 通常の学校に在籍する弱視児が二千人から三千人と言われておりますから、五百十四名というのは大変少ない数のように思うんですね。

 私が聞きましたところでは、拡大教科書の製作依頼がボランティアに殺到しました、それで納期の関係で泣く泣く依頼を断った、そういうケースもかなり出ております。また、ボランティアは首都圏に偏在しておりまして、地域によってはボランティアに依頼できずに拡大教科書が入手できなかった例もございます。

 そうした子供たちの姿は報告をお聞きする限り見えてまいりませんけれども、都道府県教育委員会あるいは関係団体から、これまで無償措置に伴った混乱が生じたケースというのは報告がございますか。

原田副大臣 先ほどの数字もきちっと各都道府県から上がってきた数字でありまして、それ以外にもあればまたぜひ対応したいと思います。

 また、混乱、トラブルについては特段の御報告はいただいておりませんけれども、何分始まったばかりのあれでありますし、いろいろお聞きいたしますと、数少ない関係者が、また恐らくたくさんの種類の教科書を数少なく印刷する、そういう問題もございまして、ボランティアの方が一生懸命のようであります。例えば納期の問題とか、さらに契約手続等でまだ十分なれていない、私どももまた十分習熟していないところがございますから、できるだけそういうことのないように、また契約等につきましても、できるだけ緩やかに、弾力的に対応するように、こういう指導をしているところであります。

 いずれにしましても、何か個別の問題でもありましたら、ぜひ前広に連絡をいただければ、できるだけきちっと対応するようにしたいと思っております。

肥田委員 確かに初めての経験ですから、多少の混乱は私は仕方がないと思います。

 ただ、今おっしゃっていただきましたように、緩やかな契約でありますとか、納期の問題とか、かなり大切なところがありますので、件数も少ないと思いますので、ぜひ調査報告をしてくださればありがたいんですが、お願いできますか。

原田副大臣 この問題は、教科書の配付につきましては、大体年度末から年度初めに、まず文科省で各都道府県の担当者を集めて説明会も開いておりますし、また、特に今回の無償措置については新しい制度でありますから、そういうちゃんとした状況の把握を行うということには努めておるところでございます。

 この拡大教科書の問題につきましては、いずれにいたしましても、円滑にその制度が導入されるように努力をしたい、こう思っております。

肥田委員 例えばボランティアの人たちの中で、文字の大きさについて、児童生徒の中でいろいろ差があるわけですから、これは個性的な教科書をつくるわけなんですね。ですから、教科書が何分冊になるかというのは、これまた事前に予測することは難しいわけですよ。

 ところが、分冊形態の変更によって今後の冊数の増減もあるとしていらっしゃるけれども、途中で分冊変更したら契約違反だと言われたという例もあるわけですよ。ですから、円滑な施行をされるためには、今回とても大事ですから、どんな報告が上がっているか、どんなところに混乱があったということを、再度申し上げますが、ぜひ調査をしていただきたいと思います。

原田副大臣 御指摘のように、契約といいましても、ボランティアもなれておりませんし、制度自体も新しいものですから、何かありましたら、また皆さん方にしっかり御報告したいと思っております。

肥田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、弱視児が自分が必要とする拡大教科書を手に入れるためには、ボランティアを探し始めますね。これが大変な苦労なんです。それで、当面はボランティアに依存するということは仕方がないことなんだけれども、将来的には、ほかの子供たちと同じように、学校の責任で安定した教科書供給を行う体制を確立することが本来の姿だと思いますが、大臣、いかがですか。

河村国務大臣 現時点については、ボランティア団体の御理解と御協力をお願いいたしておるところでございまして、当面そういう形で、今回、この制度、対応したわけでございます。

 しかし、本来的には、委員のおっしゃるとおり、学校において責任を持ってやる部分というのはたくさんあると思うんですね。そういう視点に立って、これにはきちっと対応できるように、今後どういう形でやっていくか検討しながら対応してまいりたい、こういうふうに思います。

肥田委員 引き続き熱い期待をしてまいりたいと思っております。

 高校に通う弱視の生徒は、検定教科書の何十倍という値段で拡大教科書を購入しているわけですね。この現状は、「乳幼児期から学校卒業まで一貫して計画的に教育や療育を行う」と盛り込んだ「今後の特別支援教育の在り方」に照らし合わせましても、放置できない問題でございます。また、盲学校に通う生徒は奨励金で教科書の無償給与を受けていることからも、やはり不条理なことだと思います。検定教科書代を超える費用に対して、国が何らかの形で経済的な支援と配慮を行うことを検討すべきでないかと思いますが、高等学校に通う弱視の生徒、この教科書代について御答弁いただきます。

河村国務大臣 御指摘の点、確かに費用が一般の方よりかかっているということは承知をいたしております。高等学校段階は義務教育でないという点もあって、無償制度をしいていないわけでありますが、やはりどこまでが学校が責任を持つべきことなのか。非常に高額なものですね。そういうものについては、やはり国、国がといいますか、最終的に学校が用意しているということは、これは、高等学校の場合には、県立でありますから、県が一義的にお考えをいただかなきゃなりません。それをまた国が支援するという形をこれまでもとってきているわけでございます。

 高等学校が義務教育でない、この制度の趣旨、また教育内容、これはどのぐらい格差があるんだということも含めて、今後の検討課題でありますが、できるだけ教育の機会均等、これはもう障害者であろうと健常児であろうと適用されることでありますから、そういうことの障害にならないように考えていく、こういう基本的な考え方に立って、まさにこれからの特別支援教育のあり方も含めて、前向きに検討していきたい、このように思います。

肥田委員 ぜひ前向きにお願いいたします。

 それから、学校図書館と弱視児の支援について伺いたいと思いますが、大臣も御承知のように、子どもの読書活動推進法は、すべての子供があらゆる機会とあらゆる場所において自主的に図書活動を行うことができる環境を整備するとなっております。弱視というハンディに加えて、学校図書館を利用できない、これは二重のハンディになります。ですから、学習参考書、それから一般図書も読めるように、長期計画で各種書籍の拡大文字化をしていったらどうか。弱視児が学校図書館を活用できるように環境整備をしなければならないと私は思っております。国もその技術開発に努めることはもちろんのことでございますが、自治体に対してもその責任を果たすように奨励をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 学校図書館にも当然そういうことが考えられなくてはいけない、こう思いまして、教科書は、拡大教科書という形で今取り組みを始めたわけでございます。学校図書館にもそういう考え方が当然入ってくるわけでございますので、これはぜひ、ボランティアの皆さんにも御協力いただく面がまた多々あろうと思いますが、そういうことを踏まえながら、弱視の児童生徒の教育の充実のために、学校図書館もそれに応じた充実を図っていくということが大事なことであろう、このように認識をいたしておりまして、これに向けて、さらに検討を踏まえながら努力していかなきゃいかぬ課題だ、こういうふうに思います。

肥田委員 さらにもう一つ、学校図書館に関連しまして、人の問題について大臣にお尋ねしたいと思います。

 改正学校図書館法では、「政府及び地方公共団体は、司書教諭の設置及びその職務の検討に当たっては、いわゆる学校司書がその職を失う結果にならないよう配慮する」という衆参両院の附帯決議がついております。私も、文部科学省が司書教諭の義務配置に踏み切ってくださり、自治体に対して継続的な指導を行っていることには敬意を表しております。

 しかし、他方で、やはり学校司書の職が失われていっているんですね。例えば、東京都は、都立高校の学校司書定員を大幅に削減しました。事実上、学校司書制度が廃止されようとしております。東京都日野市は、専任職員を廃止して、有償ボランティアに切りかえ、山形県の鶴岡市でも専任職員を引き揚げ、非常勤嘱託職員にかえるという事態が起きております。私たちが一番恐れていた事態がもう既に各地域で起きているという報告が出てまいっております。

 司書教諭の配置で学校司書の職が失われることはまことに不本意であるし、私はやはりこれはあってはならないことだと思っておりますので、大臣はこの附帯決議をどのように履行されようとなさっているのか、お尋ねしたいと思います。

河村国務大臣 附帯決議が委員御指摘のようになされておりまして、現に勤務するいわゆる学校司書がその職を失う結果にならないようにと言われております。

 それから、子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画、平成十四年八月の閣議決定においても、学校図書館担当事務職員の配置ということについては「各地方公共団体における事務職員の配置の取組を紹介して、学校図書館の諸事務に当たる職員の配置を促していく。」こうなっておりまして、司書教諭との連携協力が重要だ、こう指摘をされておるところでございますので、私も、この司書教諭、これもまだ専任制はとっておりませんけれども、司書教諭の発令がなされるようになった十二学級以上、それに伴って、当然学校事務職員とのむしろ協力連携が望ましい、こう考えておりますので、この閣議決定に基づいてこの配置を進めていくということで、御指摘のような点は懸念されることでございますから、今後とも、この点については、各教育委員会あるいは学校図書館関係者を集めた会議などにおいてこの基本計画を周知徹底しなきゃいかぬ、このように考えておりまして、児童生徒のこれからの学習活動の中で読書というものが大いに進むような視点からこの問題にぜひ取り組んでまいりたい、このように考えます。

肥田委員 ぜひ厳しいチェックをお願いしたいと思います。

 次に、学校図書館の図書についてお伺いしたいと思いますが、学校図書標準が定められたのが平成五年です。およそ十年間が経過いたしまして、その間、交付税ではございますが、一千五百億円ぐらいのお金が投入されていたことになります。

 これは文部省の調査でですが、この図書標準を達成した学校がわずか三割程度というんですね。調査してくださったからこれはわかったわけですが。それで、平成十五年の三月三十一日現在、小学校で三四・八%、中学校で二九・〇%、中学校で達成率が九・八というところもあるわけですよ。

 学校図書館図書標準は一体いつ達成されるのか。十年かかってもこれだけである。そして、文科省は再三再四、指導とは言えないまでも、啓発をしてくださっております。しかし、これがなかなか達成されない。また、学校図書館の図書五カ年計画では、学校図書の蔵書ですね、廃棄冊数はきちんと見込まれていたのかどうか、この辺はいかがですか。

河村国務大臣 この学校図書館の図書標準を達成するためにということで、新たに平成十四年度から五年間で四千万冊ふやそうということで目標を立てたわけですね。それで学校図書館図書整備五カ年計画もつくった。そして交付税、御指摘のとおり、ここ五年においても、百三十億掛ける五年で六百五十億円、それで図書館を整備していた、図書を整備していた。ところが、一向にその目標が達成できない。これは何でだというので、私も今回こういう御指摘をいただいて、今の御指摘をいただいて、これは、廃棄処分が物すごい数字なんですね。この十四年度の図書の増加状況の数字を見ても、購入図書は一千万を超えています。一千百七十二万二百九十にプラスし、寄贈を受けた本も百七十七万、一千二百万近い図書が購入されているんです。ところが、廃棄図書が八百三十九万八千とあるんですね。これは一体どういうことなのか。この見込みの中に廃棄処分を見込んだ数字なのかどうか、私はここをもう一度きちっと検討し直す必要があるんではないかと思っております。

 ただ、どうしてこれを廃棄するんだということになりますと、立派に使われてぼろぼろになったからもう廃棄するんだということなら、そんなに需要のある本ならまたそれは買い足さなきゃいかぬわけであります。だからこれは、この調子で廃棄されていきますれば、幾らたってもなかなか到達は難しいな、こう思っておりまして、この廃棄処分のことも含めて、この図書標準が早期達成されるにはどうしたらいいか、一度検討してまいりたい、こういうふうに思います。

肥田委員 大変きちんとした答弁をしていただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、私は最後に、河村大臣に大きな御決断、御決意をいただきたいことがございます。

 この十数年来、子供の読書とか、それから学校図書館という、今まで国会で議論されなかったテーマが超党派の皆さんによって議論され、そして達成されてきております。これは本当に喜ばしいことでございます。その結果、四十四年ぶりに学校図書館法の改正がございました。今話題になりました学校図書館図書整備計画もできました。国際子ども図書館も設立された。それから、二〇〇〇年には子ども読書年決議、これも国会で決議されたわけでございます。そして、子どもの読書活動推進法もできました。子どもゆめ基金の創設もありました。このゆめ基金に関しては、大変河村大臣が骨を折ってくださっております。

 こういうふうにして、着々と、子供と読書、この流れが本当に夢のように達成してきております。ただ、今さっき申し上げましたように、学校司書の問題とか、それから本の問題とか、形の上では平成十五年から司書教諭の設置も行われておりますけれども、私は、まだこれは「学校図書館元年」だというふうに受け取っております。

 そこで、一つ、山形の例を申し上げたいと思うんですね。山形県の鶴岡市立朝暘第一小学校、そこの報告を承りまして、私は目からうろこという気がいたしました。この学校図書館のことは、学校図書館協議会が学校図書館大賞を与えていらっしゃるんですね。どういうことかということをいろいろ伺いましたら、校長さんが率先して学校図書館の取り組みをなさっている。組織的にやっていらっしゃる。校長、教頭、教務主任、学年主任、学校司書、司書教諭、それから図書主任とか、そういういろいろな方が組織的に一生懸命学校図書館を輝かせようとなさっているわけですね。

 この組織の名前は図書館活用教育特別委員会というんですが、これが大変機能し始めております。そして、この校長さんの理念は、学校図書館を単なる書庫ではなくて、学びの宝庫にしたい、そうおっしゃっているんですね。学びの宝庫ということは、要するに読書センター、そしてもう一つの役目が学習情報センターでございます。

 それで、校長さんがこのようにおっしゃっているわけですね。変化する国際社会を生き抜く力を育てます、民主主義社会を生き抜く力を育てます、そのためには、生涯学習者を育てる必要があります、校長さんはこのようにおっしゃっております。そして、校長さんのこのような努力の結果、子供たちの学力が上がりました。そして、人の話を聞ける子供が育ってきております。朝礼や集会では私語がありません。そして、話す必要があるときには、子供たちは本当に一生懸命自分のことが言えるようになってきましたという結果が出ております。私は、これこそ実は教育の一番大切なことだったと思うわけですね。

 ですから、図書館を活用する教育を学校経営の中核にする、これが私はこれからの教育の一番大切なことじゃなかったかと。今まで読書ということがややもすると教育の片隅に追いやられてきました。しかし、学校図書館は、読書だけではなくて、情報の中枢でもあるわけですね。そしてさらに、この学校では、地域、それから学校、先生方、特に地域では子供たちの意見も聞くというわけでございますけれども、こうやって学校教育を一つ一つ大きく改革しようといううねりが出てきているわけでございます。

 このような教育をすることもやはり一つの大きな学校教育の改革につながるということを、私は大臣が大声でおっしゃっていただきたいと思うんです。

 大臣、今まで読書推進についてもいろいろな努力をしてくださいました。しかし、なかなか学校図書館が思うように進んでおりません。進んでいるところとおくれているところは、本当に大差がございますし、それによって子供たちの幸不幸にもつながってまいりますので、学校図書館が学校教育の中核をなす、学校経営の中核をなすということを、大臣、この際ぜひおっしゃっていただいて、あの河村大臣が学校図書館を輝かせてくださったおかげでこの国の学校教育に輝きが出た、そのように後世に言われるように頑張っていただきたいんですが、御決意をお願いいたします。

河村国務大臣 肥田先生の御提唱に端を発するのでありますが、子ども読書活動推進法もできまして、今、読み聞かせ運動等が全国に燎原の火のように広がりつつあるということを私も喜んでおります。

 そのためには、御指摘のように、学校図書館をもっときちっと整備していくということが大事だと思いますし、鶴岡市の取り組みを今御披露いただきながら、すばらしいなと思って聞いております。全国の学校がそのような形になっていくように、文部科学省としてもこれは率先垂範をして、さらにその情報を全国に発信する役割を、まさに教育のセンターとして果たしていかなきゃならぬと思います。

 図書館というところが、やはり学習の、読書のセンターといいますか、それの機能と、それから、そこでいろいろな情報を得る、学習の情報を得るセンター、こういう役割をこれからさらに担っていく必要がありましょうから、そういう面では、学校教育の中で極めて重要な位置を占めるという考え方、これは私はもっと定着させる必要があろうと思います。

 それから、学校図書館と周辺の公立図書館との連携の問題、そうすると、司書教諭、そういうものが非常に大事になってきますし、前段で御指摘がありました事務職員の皆さん、それに加えてボランティアにも協力していただくというのが理想であろうと思います。それが非常に大事であるということを私もさらに発信をしてまいりたいと思います。

 これから学校の建築等も行われるわけでありますが、やはり、図書室といいますか学校図書館、そこの図書室は特に念を入れて、子供たちが集まりやすいといいますか、あそこへ行こうと、場合によっては、きれいにしていただいて、そこで寝転がってもいいんだというような、やはり子供たちが図書館に集まろうというような、そういう図書館をつくる必要があるんじゃないか、こう思っております。

 そういう意味で、図書館というものがやはり学校教育の非常に重要なウエートを占める、中心的役割を果たす、私は、非常に大事な指摘でございますので、まさに理想的な学校図書館づくりといいますか、それを求めてということで、大いに発信をしていきたいと思いますので、きょう、特にその問題について御活躍をいただく文部科学委員の先生方にも、全国それぞれの選挙区において、大いにひとつ奨励をいただければありがたい、このように思います。

肥田委員 大臣の御決意を重く受けとめさせていただきます。

 ありがとうございます。

池坊委員長 古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 私これまで、国会議員生活の中で、地方行政委員会とか国土交通委員会等々でやっておりましたけれども、ずっと思っておりましたのは、やはり人あっての日本、教育が一番重要だ、ずっとそういう思いを持ちながら議員活動をやってまいりました。しかし、きついことを言いますけれども、今の文部行政、本当にこれで大丈夫か、何を考えているんだと思うことも多々ございまして、今回はぜひ、名前は変わりましたけれども、文部科学委員会を希望しましたところ、入りました。大臣、ひとつこれからばりばりやりますので、お互い国のことを思いながら、御答弁もよろしくお願いしたいと思います。

 私、ちょっとその前に、この法律の論点は、本当に我々民主党の、あるいは各党の優秀な皆さん方、ポイントをついていい質問をされました。答弁の方が優秀でないと思うところも多々ございますけれども。

 それで、同じことを聞いてもいけないので、私なりに、これまでの経験からいって、切り口を変えて、やはり厳しく本質を言うべきだろうと思いながら、先ほど答弁を聞いておったところでございまして、きついことも言うかもしれませんが、それは、人あっての日本、教育は重要だ、そういう思いで、ぜひ真摯な答弁をお願いしたいと思います。

 私、どこから言おうかなと思ったんですけれども、がらっと雰囲気を変えまして、最近、この永田町というか、霞が関を含んでこのかいわいで、本末が転倒している話が多過ぎるんじゃないかと。先ほど須藤さんの方から、枝葉を切れば木そのものが死ぬではないか、こういう話がありましたけれども、枝葉にこだわって、根本というか幹を切るというか、そういう話が大変多いように思えるし、この義務教育費国庫負担法の改正もそれに近いのかな、私はそういう危惧を大変持ちながら聞いておりました。

 それで、もう一つの本末転倒というのは、これはちょっときょうの委員会、今後もたくさん起こると思うので私は申し上げておきたいんです。私、先週、国会質問をすると言っておりましたら、ちょっと大臣の都合がつかないと、参議院の方で。大臣が悪いんじゃないです、参議院の方でとられたからだめだ。きょうは午後だ、いや、今度は、午後が無理だから、要するに午前中に、こういうことが、この文部科学委員会のみならず、最近しょっちゅう起こっているんです。これも私は本末転倒ではないかと思うんですよ。

 国権の最高機関、国民を代表した我々が、法律について国民の立場から議論をして、その法律の問題点をはっきりさせるというところが国会の役割だし、やはりそれは国権の最高機関でありますから一番重要な使命なんですが、最近は、河村大臣が悪いわけじゃないんですけれども、省庁統合、省庁統廃合で、橋本総理のときの行革で省庁が少なくなった。その結果、我々国会議員もちょっと抜かったと思うんですけれども、委員会もこういうふうに大きくなったということで、それは一見よさそうに見えるんですが、実は、この文部科学委員会のみならず、総務省は特にそう、国土交通委員会もそう、大きいテリトリーで、国会の委員会がでかい委員会になったものだから、結局、大臣の日程に合わせて、委員会が右に行ったり左に行ったり、前に行ったり後ろに下がったりと、こういうふうになっておるわけでありまして、これは何か、この法案の問題ではないんですけれども、我々国会議員あるいは委員会に属する人間として大変重要な問題をはらんでおる。

 きょう早速、そういう御苦労が両筆頭あるいは理事会でもあったと思うんですけれども、これは我々国会議員としてはちょっとゆゆしき問題だなということを思っておりまして、できるだけ、ひとつやはり国権の最高機関でこういう重要法案を委員会が中心となって審議することの重みというものを、委員長にも、今後一般質問もあるだろうと思いますし、そういう折にはぜひその点、心の中に置いておいていただきたい、かように思います。

 それで、時間も余りないので、早速これまでの質疑でなかったことでお聞きしたいんですけれども、私も地方行政委員会にずっとおりまして、地方分権推進一括法あるいは各年度の地方財政計画、地方税法改正、ずっとこの七、八年見てきました。国家財政もさることながら、地方財政、これで先行き本当に道があるのかという感じもするんですね。

 その調整の一環として、地方分権推進一括法とかあるいは三位一体改革、こういうふうに鳴り物入りで改革が行われているように見えますが、この義務教育費国庫負担に至る以前の、大きく、地方分権推進一括法等のあの体系、そして三位一体の今の論議、これについて、政治家河村建夫としてどういうふうに評価されるのか、ひとつ心のうちをお聞かせ願いたい、かように思います。

河村国務大臣 これからの時代は、中央から地方へあるいは民でできることは民にという小泉改革の一つの方針もあるわけでありますが、やはり、この地方分権推進一括法が成立したということはかなり画期的な一つの大きな流れをつくったと、私はそのことは評価をいたしております。やはり、中央だけではなくて、地方が活性化する、地方が豊かになる、これでないと本当の日本の活性化というのは起きない、こう思っておりまして、そして、できるだけ住民に近いところでいろいろな行政が行われる、これが自然なあり方だ、こう思っておりますので、地方分権を推進していくということは大変大事なことだという認識にございます。

 ただ、教育の分野について、先ほど来本末転倒の話がございましたが、やはり教育が、もちろん地方が十分担っていただく、そして国民から信頼される学校があり、教育現場がある、このような形でこれから取り組んでいく、そのような観点で文部科学省もその流れの中で最大努力をしてきておると思います。

 県の教育長も、これまでは文部科学大臣が最終的に任命承認制度というのがあったのですけれども、これはまさに地方分権の考え方からいってもおかしいということで、任命制を廃止したわけですね、報告だけいただくということになりました。このようなこととか、教育課程の基準を大綱化する、弾力化する、こういうことで地方分権を進めてまいりまして、そしていわゆる三位一体改革ということが出てまいりまして、これはできるだけ地方の裁量をふやす、自由度を増す、権限、責任拡大、この流れは私は非常に結構だと思っております。

 ただ、義務教育のあり方については、やはり国と地方の役割分担というものをよく考える、憲法の考え方がある、そういう観点にこれは立たなきゃならぬ、こう思っておりまして、この役割分担をいかに適切にやるかということは、我々教育を担当する者、各委員の皆さんもそうでありますが、これは真剣に考えて、地方分権の流れの中で国の役割をどう確保するかということ、これは教育論でやっていかなきゃいかぬ、このように思っております。

 これから、この法案もお出しをしておるわけでございますが、これを通じて濶達な御議論をいただきながら、義務教育の国の責任、教育の機会均等、教育水準の維持、こういう観点からぜひ義務教育の推進を図っていく、こういう観点を持って、地方分権を踏まえながら取り組んでまいりたい、このように考えておるところであります。

古賀(一)委員 今の大臣の答弁、お気持ちはわかるのでありますけれども、私は大きな矛盾があると思うのですね。

 憲法上、国の責務として義務教育に国が関与する、それがあるというお話ですけれども、でも、一連の三位一体、とりわけ補助金削減の流れを見ますと、まず国が地方に自由度を与えた方がいい。しかし、義務教育については、やはりほかとは違って国の関与はもっと強くてしかるべきだというお気持ちを吐露されたし、私もそういう気もします。しかしながら、実際起こっていることは、昨年の義務教育の国庫負担の制度変更と、ことし、今議論されているこの退職金、児童手当。先ほど肥田さんの方でしたね、要するに、義務教育が先兵となって、先鞭をつけて、ある面では一番大きい補助金削減のえじきというか、それになるという現象ももう見え始めているわけですよ。

 大臣の気持ちはわかる。教育こそはやはり地方の自由度を高めてほしい、そういうのも価値はあるけれども、国の関与は重要な部分が義務教育についてはあるんだよとおっしゃるから、ほかの補助金削減よりももっと憲法の根幹にもかかわるし、重要だし、国の関与も、そう簡単に地方の自由にはさせられない、重い重みを持っておるとおっしゃりながら、実際に起こっているのは義務教育の削減という形で来ておるわけでありまして、私はそこに、これについてはもう一回聞いても同じだと思うのでちょっと申し上げますと、大きい流れは私はこうだと思うのですよ。

 まず、大きい財政の流れの仕組みからいいますと、国の予算、今回、旧文部省所管の補助金としての義務教育費国庫負担金というところから、去年に引き続き、今回二つの費目について補助金の枠組みから外す。では、どうやって対応するのかといったときに、今度は地方交付税特会に、税源移譲予定特例交付金、何かとんでもない名前だと思いますけれども、予定とか特例とかついておるこの交付金を地方に渡す。これは総務省の所管する地方交付税特会の費目として渡す。すると今度は、過不足があるじゃないか、過不足はいわゆる普通交付税で調整をします。こうなっておるのです。

 そうすると、国からお金が行くという面においては変わらぬ。しかし、文部省ではなくて、義務教育費国庫負担じゃなしに、もっと大きなどんぶりの中で、地方交付税というどんぶりの中で対応する、こういう仕組みなんですね。そこで得られる政治的効果は何かというと、小泉総理の補助金削減という形は得られるのですよ。形は得られるけれども、本当の意味で本質というものが変わったのか、確保されているのかというところは、私はずっと今までの審議を聞いておりまして心配でしようがありません。私は、このような論理でいけば、必ず給与本体についても、この特例交付金でいいではないか、そして、それに問題があれば地方交付税で方程式を別につくればいいじゃないかという論理になると思うのですよ。

 私は、そういう面で、ちょっと技術的なことですけれども、せっかく総務省から来てもらっておりますので申し上げますけれども、今回の地方特例交付金の中に設けられる暫定的な税源移譲予定特例交付金というものは、まず、地方公共団体、受け入れ側においてはどういう管理をされるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。どこにほうり込まれるのか。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 税源移譲予定特例交付金は、先ほどお話の中にございますように、国の退職手当の総額、現在の額に応じて、それの人口割で配分するものでございまして、地方の一般財源という形で管理されるものでございます。

古賀(一)委員 一般財源ということですね。だから、交付税の中では、この義務教育費国庫負担については、こういう税源移譲予定特例交付金という名前をつけて一応国側は形はつけているけれども、もらう方の地方自治体においては全くのどんぶり、どんぶりというか、大きいほかの、いわゆる地方税収であるとかそういう固有税の歳入であるとか、そういうものに全部ほうり込まれて管理されるというわけで、結局それは、危険性として言うならば、ほかに回されても法的に問題のない会計の中において処理される、こういうふうに言ってよろしいのですね。もう一度答えてください。

岡本政府参考人 特例交付金は、先ほどもお答えしましたように使途の自由な一般財源で、それは交付税と同じような性格でございます。

 ただ、教職員の退職手当はいわゆる義務的な経費でございますので、それ自体は自由な一般でございますが、当然これらの手当は支出されるものというふうに考えております。

古賀(一)委員 まあそういう御答弁になると思うのですね。

 でも、私は、いわゆる地方交付税特会、今、地方交付税の借金は五十兆を超えましたね。数年前、私が担当しておったときは二十六兆。あれよあれよという間に五十兆を超えました。当時の大蔵省、当時の自治省に、だれが責任を持つんだ、だれがこれを解消するシナリオを書くんだ、両省とも、結局、もう景気回復しかありませんと。つまり隠れた借金ですよ。七百二十兆プラス五十兆の、赤字国債に転換するならばまさに五十兆の借金がこの地方交付税に残っているんです。

 そういう面では、私は、元建設省出身だから言うわけじゃないけれども、補助金もつまらぬ補助金はけしからぬ。しかしながら、ある面では、たった五百万円の費目であったって、我々はこのプロジェクトをこういう思いでこういうふうに設計してきました、予算をくれという方が、ある面ではそういう零細補助金であっても重い、交付税よりも責任があるんではないかとかねがね思っているのです。

 地方債増発しろ、増発したけれども、増発したらいかぬでしょう、地方債発行については総務省の許可が要るでしょうと。いや経済対策だ、いやもう今我々の自治体は債務残高が百何十億あるからと言ったら、結局それは交付税措置をするからと。そういう面で、非常に私は、この地方交付税というのは、どんぶり勘定といえば言葉は悪いですけれども、ある面では一般財源化というものの危険性もあるんです。

 そこで、地方においても中央においても問題になるのは、教育のこれからあるべき姿、教育の重要性というところの思いというか、あるいは国民のコンセンサスというか、やはりそれだと思うんですよ。ところが、今度の法案の説明を聞いても、地方の自由度を高めるとか、憲法上どうだとかいう議論はあるけれども、文部大臣あるいは文部科学省サイドから、いわゆる教育の重要性、これから教育をこう持っていくんだ、ここが悪い、そういう本当の中身というか情熱というか思いというものは余り伝わってこないわけです。

 むしろ質問している方の方がその思いが強くて、何か財務省と総務省と文部科学省のいわゆる財源の、三位一体という言葉がありますけれども、三つどもえ、あるいは先ほど三すくみという話がありましたけれども、そういう世界の中で、いわゆる財源論、あるいは負担押しつけ論、あるいは補助金削減の形をどうつけるかというそのレベルの三省の三すくみ、三つどもえのこの議論の中に実は文部省の教育の理念というか思いというのが埋没しているように思えてしようがないんですよ。

 そこら辺、大臣、ひとつ、そうじゃないという思いといいますか、今後、今のままだったら必ずこれは、附則二条の問題もありますけれども、今の財源論、そういった三すくみの財源調整論になってくる。これは義務教育費の根幹の部分も、つまり給与についても非常に危ない立場にあるんじゃないかと私は思いますので、この点、もう一つ、大臣のはっきりとした、教育から見てこれは守らねばならぬというところを、あるのかないのか、お聞かせ願いたいと思います。

河村国務大臣 戦後と言わず、日本が立国以来と言ってもいいぐらいでありますが、一千年も前に紫式部の源氏物語があったというこのいわゆる日本の教育における文化といいますか、それが今日の日本をつくってきた。それは、あれだけの敗戦の中で立ち上がれたのも、やはり教育にみんなが力を入れた、そして豊かになろうというので努力をした、やはり資源がない国がここまで来たということですね。これはもう世界でも認知されていることだし、日本の誇るべき姿だと思います。これを崩すわけにいかない。このことについては、私は、国民のコンセンサスは得られると思いますし、そういう姿勢でこの問題に取り組んでいかにゃいかぬ、絶えずそういう思いでおるわけでございます。

 ただ、戦後の大きな変化の中で、いろいろな教育をめぐる状況、変わってまいりました。これにやはり敏速に対応する教育というものを打ち立てていかなきゃなりません。そのためにはもっとやはり教育を重視する姿勢というものが必要であろう、こう思っておりますし、見直すべきところ、改革すべきところは大いに改革しながら、特に義務教育が重要であるという視点、それゆえに憲法の要請もあるんだということ、これをしっかり訴えて、まだ迫力が足らないという御指摘をいただきましたが、さらに迫力を増してこの問題に取り組んでいく。これについては既に皆さん方からいろいろ御指摘をいただいております。これも私にとりましては大きなよりどころでございまして、叱咤激励をいただきながらこの問題に真っ正面から取り組んでいく、こういう決意でございます。

古賀(一)委員 もう最後に、あっという間にたちますけれども、最後に厳しいことを言うなと思われるかもしれませんが、これはやはり、先ほど言いました、人あっての日本、本当にそう思います。そういう思いでひとつ問題提起をしたいんです。

 今問われているのは、もちろん、義務教育をめぐる財源問題であり、国の財政問題であり、あるいは地方自治体の問題でありますけれども、本当に問われているのは、文部科学省の皆さん方がおられますので、厳しい言葉と聞こえるかもしれませんけれども、文部省の気持ちそのもの、心そのもの、文部省の行政の理念そのものが問われているんだと私は思うんですよ。私は本当に、教育に関する、英語教育がどうなった、体力が落ちる、学力も落ちるとか、十七歳の春に子供たちが切れる、子が親を殺す、それを言ったらもう百時間かかるようないわゆる教育の荒廃という現象があって、今度は一般質問のときに私はたくさん申し上げますけれども、自分の体験談を申しますが、本当に教育はこれでいいのか、親も子も学校もみんな心配している。

 それは、やはり文部省は、さっき言った、人あっての日本。我々文部科学省、あるいは初等中等教育、幼児教育、中等教育もそうです、これだけ重要なものを担っているという気概で国民に対しても財務省に対しても気迫を込めてやることが先決だと私は思うんですよ。そうしないと、この財源問題も押し切られちゃうと思うんです。そこが私は問われていることだと思うんです。

 それで、私、もちろん大臣は読んでおられないんだと思いますけれども、日本経済新聞社の「教育を問う」という本をこの前ちょっと見つけて、読みました。なるほど、ああそうだな、へえと思うことがたくさん書いてあって、悪いことばかり書き過ぎの本でちょっと嫌気が差しますけれども、でも、その中で、私も長らく役人をやっていて大蔵省とけんかばかりしておった立場におったからこれはぴんときたんですけれども、こういうあれがあるんですね。

 「文部科学省の消極的な姿勢を見かねて、査定役の財務省主計局がこんな助言をすることもある。文部科学省に入省したいわゆるキャリア官僚は、十六もある審議会の事務作業や省令作り、文教族議員への対応に追われ、課長級になるまで予算折衝をほとんどしない。「ほかの省庁に比べると予算を取る技術の蓄積が乏しい」」とか批判してあるんですけれども、要は、もっと正面から、「本当に政策を動かしたいなら、もっと正面から予算を取りにこなきゃだめですよ」、こういう言葉を財務省主計局が語ったと書いてあるんです。そういうところが私はあると思うんです。私も実は体験があるんです。これはもう時間がないから言いません。

 本当に、人間、教育の重要性というものはだれしもわかる。それと、今の現状が十分でない、十分でないどころか、先行きに物すごい心配を国民に与えている、子供にも。やはりここは、義務教育のこの負担をどうするという論議だけじゃなしに、その根幹の部分をもう一回文部省は分析し、自覚し、そして本当にそういう思いでこれからやることが問われたのがこの法律だ、私はかように思います。

 それで、今度の財源措置は、とりあえず、去年の共済費に引き続きまして、こういうことで来ましたけれども、こうだと思うんですね。私は、パッチワークのような、切り張り細工のような気がしてしようがありません。毎年度ごとの短期的な帳じり合わせをやる、補助金削減というにしきの御旗を掲げたものだからやっているように思えてなりません。最終の教育の形、義務教育の形、そういうものが見えない、ダッチロールしたような改革ではないかと私は思うわけであります。

 ひとつ、最後に大臣にもう一回聞きたいんですが、私は大臣とは同期でありまして、十二年前に大臣から教えてもらった歌があるんですよ。それは私が一番好きな歌になりまして、よく話が出ます。「吉田松陰」ですよ。皆さん知らないでしょう。「吉田松陰」という歌があるんです、聞いた人がいますけれども。ここに、三番目が一番いいんです。「何も持たない若者たちの無欲無限の赤心が日本の明日を創るのだ」、こうあるんですね。この三番目が私は一番好きなんです。赤心というのは赤い心、情熱ですよ。何も持たない若者たちのその情熱があすの日本をつくるのだと。恐らく、大臣もここに一番ほだされて、僕もそう。これだと思うんです。そういう思いで、私は、まず、何も持たない文部省の皆さんたちというわけにはいかぬけれども、要するに、そういう思いですよ。それが絶対、日本に今欠けています。

 私は、そういう面で、今後、来週か再来週か知りませんが、この文部科学委員会が、科学技術も含めて、法案処理だけじゃなしに、今問われているのは、教育全体のいろいろな声を文部科学省の皆さんが聞くこと。そういう面で、一般質問を私はぜひやっていただきたいし、そうなれば私は一時間も二時間もやりたいと思っていますので、そういう場を、委員長、文部行政の置かれた立場を考えれば、法案処理ということだけじゃなしに、折々に一般質疑をぜひやっていただきたい、かように思います。

 きょうは、初めて参りました新参者でございますので、若干遠慮しながら申し上げましたけれども、今後は一般質疑で教育論をぜひお互い闘わせていきたい、かように思っています。

 以上で終わります。

池坊委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。

 十四年ぶりに文教、文科委員会に戻ってまいりまして面食らっておりますけれども、きょうはこの義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法について質問をいたしたいと思います。

 もう議論も煮詰まってまいりまして、最終盤、採決が待っているわけでございますけれども、私、久しぶりに文科委員会に戻って、義教法の勉強をもう一度やり直してみたんですけれども、極端に言えば文部省解体が始まったんじゃないかと思うぐらいでございます、大変武張った言い方でございますけれども。教員の人件費を地方に渡す、これはまだ決まっておりませんけれども、恐らく平成十八年にはそちらへ行くだろうと古賀さんも言っておりましたけれども、私もそう思っております。

 なぜかというと、要するに、今の内閣は小泉内閣なんですね。そして、大臣は小泉内閣の閣僚であります。そして、地方分権あるいは財政再建の荒波にもまれているわけでありますけれども、もう既にセットはでき上がって、もう一大臣でどうこう言う状況にはないのではないかという感じがするのでございます。

 要するに、すべては小泉首相の方針に基づいて、指示に基づいて政府は動いているわけでございまして、文科省とてそれから逃れることはできない。そういうふうに考えますと、もう小泉総理の手は着々と打たれて、そして河村大臣も身動きができなくなってしまっているんじゃないか。これは後でゆっくりまた詰めてまいりたいと思っております。

 まず、地方分権改革推進会議があって、そして中間報告等をして、それに呼応するように経済財政諮問会議があって、そして基本方針二〇〇二が決定されます。いわばこの二つの大きな審議会が、あるいは会議が提起をしました路線に従って内閣は動いていかざるを得ないし、またそれが当然の話でございます。

 この経済財政諮問会議、一昨年、平成十四年の八月三十日には、遠山文部科学大臣が呼ばれます。そして、共済長期給付と退職手当等約五千億を段階的に削減しますと自分で言うわけです。そして、教員給与についても都道府県に自主的な決定権を付与しますということを言っているわけですね。十月三十一日に、再び経済財政諮問会議の集中審議で遠山大臣が呼ばれます。きょう審議しております平成十六年度の法案に基づくいわば約束をするわけであります。その後、総務、財務、文科の三大臣が合意をいたします。これが一昨年の十二月でした。それで閣議に報告されて、昨年の三月二十九日にこの法案が成立いたします。これで決まりだと思うんです。

 ですから、ことしの審議は、もはや何をか言わんやという感じがするわけでございまして、いわば小泉改革あるいは小泉教育改革の仕上げをしていると。

 その後、昨年の五月九日には、小泉総理より関係大臣に対して三位一体改革に向けた国庫補助負担金の廃止、縮減等の検討を指示しております。昨年の六月十一日には、国庫補助負担金の見直し等について関係閣僚会議が持たれて、すぐさま六月の十八日には三位一体改革の工程表を出しまして、基本方針二〇〇三、骨太の方針三が出るわけでございます。

 こういう一連の流れに沿って見てまいりますと、政府部内で、かくも文科省のいわばそぎ落としというか、あるいは先ほど枝葉の論議がありましたけれども、何がこういうことをなさしめているのかということを考えてまいりますときに、私は、きょうは、遠山前文科大臣が二度会議に呼ばれて証言された、その会議録、それからその後、昨年河村大臣も呼ばれて、そこでいろいろな発言をしていらっしゃる、その中身、そこに今日の文部省の姿勢が見られるんではないかという視点で質問の用意をした次第でございます。

 それはそれとして、まず私、ちょっと確認をしておきたいのは、義務教育費国庫負担法という法律と公立養護学校整備特別措置法という二本立てになっているんですね。なぜ二本立てなのか。

 少し歴史を調べてみますと、昭和二十二年に学校教育法が公布されて、盲学校、聾学校の養護学校の就学義務と設置義務が決められます。そしてそのときに、実は、いわゆる今でいいます知的障害者の養護学校が施行されていないわけです。

 そして、三十一年になりまして、実に、学校教育法成立以来九年おくれて養護学校整備促進法というのができてまいります。そして何と、それからまた時を経過いたしまして、昭和三十一年に一校だけ養護学校の設立を見るわけでございます。実に、学校教育法公布以来十四年間、この三十六年の改正によって、現在の知的障害者のための養護学校、あるいは肢体不自由者あるいは病弱者の概念も含めて、養護学校がやっとできる。昭和五十四年になりまして、ようやく、養護学校設置義務及び就学義務の施行により、すべての障害者の義務化が完了する。実にそれは三十二年かかっている。

 どうしてこんなにおくれたのか、文科省の見解を聞きます。

原田副大臣 養特法につきまして、委員御説明いただきましたように、法律自身は昭和三十一年にできて、養護学校の設置促進と養護学校における教育の充実を図るために特別措置がなされるようになったわけでありますが、それにおくれること二十三年、養護学校が義務化された、こういう歴史的な流れであります。

 おくれたことにつきましては、いろいろそのときの社会情勢等々ございまして、また、社会の認識、そういうものもあったのではないかと思いますけれども、いずれにしましても、相当早い段階からその必要性は認識されておったようであります。今、そういう意味で、義務化自身は昭和五十四年でありますが、それに先んずること、昭和三十一年にこの設置促進のための特別措置法ができたわけであります。

 これに基づきますと、通常の、一般の国庫負担率が二分の一のところを、この特別措置では十分の五・五と、優遇措置を中に置くことによって今までのおくれをしっかり取り戻そう、こういうことからこの措置が行われた、こういうふうに理解しておるところであります。

土肥委員 率直に、障害者教育、特に知的障害者の教育に手がつかなかった、つまり文科省自体としても養護学校の扱いがやはり不十分だったというふうに思うのであります。

 それからまた、今日に至ってもこの公立養護学校整備特別措置法という法律がまだ残っていて、つまり、きょうは義務教育費国庫負担の話が議題になるんですけれども、二つの法律をベースにして議論しているわけでございまして、そうすると、なお今日でも養護学校の整備がおくれておって、特別な措置をしなきゃならない状況にあるんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

原田副大臣 昭和五十四年に養護学校が義務化された、この時点でも大分議論があったようでありますけれども、養護学校の新増設の必要性というのは、それ以後、今日もなお必要である、こういう観点から、特に新増設の十分の五・五の優遇措置というのは引き続き存置して対応したい、こういうふうに思っているところであります。

土肥委員 今、義務教育費国庫負担の、いわば枝葉と言っていいでしょうか、あるいは人件費以外のところの項目を一般財源に移そうという議論をしているわけでありますけれども、そこでは、よく言われる財政的要因、金目のものだけを何とかしようというだけでございまして、本格的な、養護学校はどうあるべきかということについて、ほとんど議論がなされていない。

 そうすると、今後どれくらいまでこの特別措置を続けられるんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

原田副大臣 私どもは、将来にわたってその必要性はまだまだある、こういうふうに感じておるところでございます。十分でないという御指摘もございましたけれども、養護学校での知的障害児、肢体不自由児、また病弱の児童生徒に対して一般の児童生徒に負けないぐらいのしっかりした教育を行い、生きる力を身につけさせなきゃいけない、こういう観点からもろもろの、また、おくれた分はそれを今取り戻すような勢いでこの問題にも取り組んでいるところでございます。

土肥委員 今度の大きな改革の趣旨が、事務経費を節減するんだというのも一つの大きなテーマになっているわけでございまして、二つの法律に基づいて事務経費を処理する。もう既に、盲と聾は、今の義務教育の普通の、通常の小中学校の中に入って、同じ体系の中でやっているわけでありまして、なぜか、これは非常に問題ですけれども、知的障害者あるいは病弱児などなどの残された部分で、残されたといっても、知的障害者の数は莫大な数でございまして、毎年、高等養護学校を出ても行くところがないなんというのがしょっちゅう起こっているわけでございます。そういうことからいうと、一体いつになったら、普通の文科省の教育政策の中で盲、聾、そして知的障害と、同じレベルで扱うような時代が来ないと、まだまだおくれているというのでありますならば、むしろこれは、何がどうおくれているのかということを精査しなきゃいけないというふうに思っております。

 私は、基本的には、早く一本化して、そして、わざわざ特別措置法なんということをうたわなくても、きちっと障害者に対する政策、学校教育における障害者の教育政策が充実することを願っております。

 今、中身に入ると細かくなりますけれども、盛んに言われているのは、障害者の重度化、重複化、これは大変な問題でございまして、ますますいろいろな教育政策が施されなければならない、そう思うのであります。

 ですから、そういう意味では特別措置がずっと続くのかもしれませんけれども、私が考えるところによると、やはり養護学校、盲、聾、知的障害も含めて、学習指導要領も読んでみたんですけれども、大分現実と乖離しているな、離れているなというふうに印象を持ちます。そういう意味で、もはや従来の障害児教育というところを離れて、かなり専門的な、かなりジャンルを分けた綿密な学校教育、これは義務化されているわけですから、やらなきゃいけないというふうに思っております。

 そういう中で、かなりの子供たちが、例えば小学校から中学校に行くとき、中学校から高等養護に行くとき、脱落していっているわけであります。

 例えば、この文科省の資料を見ておりますけれども、平成十四年の五月の資料でございますけれども、いわゆる知的障害だけをとってみますと、小学生の数が一万七千名、中学生になると一万三千名、四千名減っているわけですね。つまり中学校に行っていない子供がおるということです。

 それから、いわゆる特殊学級といいましょうか、通級学級といいましょうか、それには知的障害者の子供が三万五千人ぐらいおります。中学生になると一万八千に落ちて、一万六千人やめていっているわけですね。

 高等養護になりましても、例えば通常の知的障害者が中学まで通っていて、高等養護になると三千名近くが行けないというような状況がございます。それは、親御さんにとっても大変な問題でありまして、早晩、もっとしっかりとした障害児教育、カリキュラムの中も含めてやっていかなきゃならない、そう思うのであります。

 英語の学習というのがあるんですね。それは、英語のできる子もいると思います、知的障害者で。だけれども、知的障害者といった場合には、私は、そこまで求めなきゃならないのかとか、美術とか芸術というのは、ある意味では花開くかもわからないからいいでしょうけれども。そして、一日五十分の何単位、こう決められているわけですね。本当に子供たちが喜んで地域の養護学校に行けるだろうかということも考えるわけでございます。

 今、重度対策というのはどういうふうに考えていらっしゃるか、今時点での文科省の御意見を聞いてみたいと思います。

原田副大臣 養護学校の対象となる児童生徒に対して本当に愛情に満ちた政策をとるということが私ども強く求められている、こう思っています。

 子供たちの能力やら可能性を最大限に引き出すということ、さらには、将来の自立、社会参加、いろいろな難しいところはあろうかと思いますけれども、それをみずから身につけてくる、これを私ども生きる力という形で、それを身につけさせるように施策を行っているわけでありますけれども、しかし、それぞれ、程度、状態が違いますから、きめ細かい指導というのが必要であります。

 平成十四年度から、もう既に学習指導要領を新しいものに改訂をいたしまして、この辺にも非常に重点を置いて私どもいろいろ施策を組んでおるところでありますが、いずれにしましても、きめ細かさといいますか、それが非常に大切であります。

 養護学校の考え方を養護・訓練という言葉でそれまではまとめておりましたけれども、今度の新しい制度の中では、自立活動という、これは言葉ではありますけれども、しかし、これをきちっと前面に出すことによって、この養護教育をもう一回見直そうということでありますし、それぞれの児童生徒の個別の指導計画をきちっとつくることによって学校全体としてフォローをする、こういうようなことも現在やっておるところであります。

 また、先生御指摘、御質問いただきましたように、重度、重複の生徒に対しまして、養護学校の普通の学級ですと六人制が定員になっているんですけれども、その場合に三人制にするとか、特に、小中学部に加えて、平成九年度から高等部においても訪問教育を実施する、さらに日常的に医療的なケアを加える、こういうような体制をとってこの指導を徹底しておる、こういうところでございます。

土肥委員 私も時々養護学校に行きますけれども、あるいは障害者を預かっている施設も参りますが、極端な話になるかもしれませんけれども、早く社会性を身につけるということが一番大事なんですね。人と緊張しないで接して、そしてにっこりと余裕を持って人に接することができる。そして、やはり明るい子供にする。そして、人に好かれるというか、人から愛される、そういう障害児、障害者が非常に大事であって、社会的な訓練をしないで障害児は社会に出ることはできません。就職しようと思ってもなかなか大変なわけであります。

 昨年から厚生労働省で、障害者の雇用促進、雇用というのは企業が雇用をするということではなくて、就業促進を進めるために、わざわざジョブコーチといいまして、仕事のコーチをするわけです。ジョブコーチという非常にあいまいなというか不安定な立場でございますけれども、試行的に始まっておりまして、それを見ておりますと、もう大変なんです。朝起こすところから、その彼の家に行って起こして、身支度を整えて、朝食を食べさせて、それから手を引いて会社に行く。会社の仕事を一つずつ覚えるまでじっと横についている。昼食の時間も一緒に食べて、その障害者に、特に知的障害者が多いんですけれども、およそ半日つきっきりでやっております。それが三カ月、六カ月と続くわけでございますね。

 共通に言われることは、何の生活訓練もできていないということです。それでは就職に導くというようなことができないわけでありまして、養護学校は一体何をやっていたんだというのが現場にいる人たちの感想でございます。

 したがって、義務教育である、義務的な修業が求められている障害児の教育というのは根本的に考え直した方がいいんじゃないか。学習指導要領なんというのは、それは本当においてもいいんですけれども、その子、その子に合った社会的な訓練をする。外へ出ていっても心配のない、どこにでも行けるような子供にするということが大事なんですね。そういうことから考えますと、文科委員会でまた機会があれば、私も養護学校諸学校における教育のあり方について議論をしたいというふうに思っております。

 さて、今回の本論に入るわけでありますけれども、文科省がつくってくれた資料で「負担対象経費の変遷」という、実に、ぱっと見て、大正七年から書いてありますが、給料・諸手当がもちろんベースになりますけれども、その上に、最高では八項目、その横には事務職員と学校栄養職員が並んで、いわばフルセットででき上がったのが、昭和四十九年、一九七四年ですね。

 近藤局長にお聞きしますけれども、何年に入省されたんでしょうか、文科省に。

近藤政府参考人 昭和四十六年に入省いたしました。

土肥委員 大変結構ですね。まさにピーク時におられたわけです。

 そのとき、ここまで伸ばしてきた、給料・諸手当、退職手当、旅費、教材費、恩給費、共済費、公務災害補償基金、児童手当と。何で、どうしてここまでというか、何か理想を持って文科省は、当時は文部省ですが、負担対象経費をふやしてきたんでしょうか。その考え方を聞いてみたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 義務教育費国庫負担制度は、昭和二十八年に創設されて以来、今先生御指摘のように、昭和四十九年までに旅費、教材費を初め、恩給費ですとか共済費、公務災害補償基金、児童手当の負担対象経費が拡充をされてきたところでございます。

 これは、一つには、新しい制度が創設されたことに伴い国庫負担の対象としたもの、例えばこれは児童手当などがその典型的なものかと思っておりますけれども、あるいは当時の地方の財政事情等を考慮して、地方間の財政力格差に対する財源保障、こういう観点から国庫負担の対象としてきたもの、これは旅費等でございますけれども、必要に応じて制度の充実を図り、国庫負担の対象を追加してきた、このように承知をいたしております。

土肥委員 地方が大変だからあれもこれも面倒を見ようということだと思いますね。ところが、昭和六十年に二段階減ってまいります。一九八五年です。それから急速に諸手当というか諸保障は減っていくわけですが、この昭和六十年というのはどういうことがあったんですか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 私の承知をする限りでは、昭和五十六年七月に、第二次臨時行政調査会、いわゆる土光臨調の答申におきまして、義務教育費国庫負担金については、教職員の増員抑制等の措置をとるとともに、国庫負担金の算定に当たっては、現行の実支出額基準を改め、国並みの給与水準を限度とすることにより、極力抑制をすると。さらに、昭和六十一年六月に、臨時行政改革推進会議からも、同様の答申と申しましょうか、義務教育費国庫負担金については、その沿革、趣旨、社会経済状況の変化等を踏まえて、国、地方の機能分担、費用負担のあり方の観点から、その内容について引き続き見直しを行う、こういうふうに答申が出たわけでございます。それを受けまして、政府全体として、国、地方の財政状況あるいは経費の性質等を考慮して対象経費の見直しを行ってきた、こういった背景があるものと理解をいたしております。

土肥委員 土光臨調でありますとか、ある種の行政改革の指示が出るわけでありますけれども、そうしますと、それからどんどん減ってまいりまして、今日の平成十六年の時代になっておるわけでございまして、児童手当も退職手当も地方に回す、給料と諸手当だけが残る。昭和十五年あるいは大正七年ぐらいの考え方に戻っていくわけですね。

 どうですか。地方の負担をカバーするような意味で積み上げていって、そしてそれからどんどん削減していって、これからまた、例えば教材費とか旅費とか、そういうものが積み上がる可能性というのはあるんでしょうか。そういうものなんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 旅費、教材費等につきましては、先ほど申し上げましたような、国と地方の役割分担、費用負担のあり方を見直すという観点、あるいは地方公共団体に定着をしている、そういったような判断のもとに国庫負担対象経費から外したわけでございまして、今後それを国庫負担の対象に戻すということは、私ども、今考えていないところでございます。

土肥委員 そうすると、いわば国庫負担というものが文科省に負担感が積み重なって、そして、しかも国庫というんですから、国の財政も逼迫してきている、それを、つまり、財政上の意味合いから地方に、悪い言葉で言えばツケ回すというか押しつけるというか、そういうことであって、この一連の歴史、対象経費の変遷というのは、ほとんど教育観や哲学、教育理念というものには基づいていないと考えていいんでしょうかね。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 文部科学省といたしましては、この義務教育費国庫負担制度につきまして、先ほど来申し上げておりますように、社会経済情勢の変化等を踏まえ、国と地方の役割分担あるいは費用負担のあり方を見直すという観点から、適宜必要な見直しを行ってきたところでありますけれども、常に義務教育の水準を全国的に確保する、こういう観点、これを維持するんだ、そういう教育上の観点を頭に入れながらこういう見直しを行ってきたところでございます。

土肥委員 教育上の観点を頭に入れながらとおっしゃるんですけれども、頭に入れるのはいいんですけれども、行政というのは絶えず財政を伴っている、つまり、予算やお金がないところに何もつけられない、どんなに理念を振りかざしても、そこに裏打ちする予算がなければ何の意味もない、それが行政というものであります。

 教育的な理念や哲学によらない、いわば財政の、あるいは歳入歳出の状況によっていつも教育の問題が考えられていくというふうに私は理解しております。だから、教育的な理念を忘れた減額がどんどん行われて、そして地方に押しつけていくという流れを見るときに、私は、文部行政も落ちたものだと思うわけでございます。給料と諸手当だけ出せばそれで文科省の責任は果たせると言い切っておられるわけでありますから、ないそでは振れないという言葉がありますけれども、余りにも理念のない、余りにも展望のない改革ということを強く印象づけられているわけでございます。にもかかわらず、憲法の要請や、教育の機会均等や、教育水準の確保と、給料と諸手当だけをもってそうおっしゃるわけでありますけれども、それを聞いても、私ども、むなしい思いがするわけでございます。

 私は、そもそも、冒頭申しましたように、今回の国庫負担制度の改正は小泉内閣の仕事だということを重ねて申し上げたいと思うのであります。先ほど、冒頭申しましたように、地方分権改革推進会議あるいは財政諮問会議、この二つの会議の板挟みに遭いまして、そしてそれに三位一体の検討ということで、いわば文科省は巨大な主導機関に翻弄された、そして遠山文科大臣も、あるいは河村現大臣も、その板挟みに耐えかねて、みずからどんどんどんどん国庫負担の対象経費を削っていく、そして今日に至っているということではなかろうかと思います。

 少し詳細にわたって質問をしたいんでありますけれども、遠山前文科大臣は、平成十四年の八月三十日の財政諮問会議に出まして、そして国庫負担対象経費を、先ほどの国が真に負うべきものに限定する、彼女はそう言っているわけです、大臣がそう言っているわけです。都道府県に教員給与の自主的決定権を付与する、裁量権を拡大する、国庫負担は一定の限度額の範囲内で都道府県が実際に支出する額に応じて負担する。義務教育費国庫負担制度は、国の関与ではなく、国と地方がともに協力して義務教育に責任を持つ、こういうふうに八月三十日の財政諮問会議で言っているわけですね。どうしてここまで言わされなきゃならないのか、遠山大臣にしても、何か抵抗の跡は余り見えないんですね。

 実は、河村大臣も十一月二十一日に出席しておられまして、そしてこうおっしゃっていますね。義務教育費国庫負担制度について、骨太の方針二〇〇三で三位一体の方針は政府全体の方針であること、地方の自由度を大幅に増すため総額裁量制を導入することとしたい、都道府県は義務教育費の負担額の総額の範囲内で給与の水準と教職員数を決定できます、習熟度別指導も今七割の学校が取り入れられているが、さらに進めて少人数学級や三十人学級も自由にやれるようにします。教員の給料も、総額で渡すので、地方でも地方の判断で教職員の能力に応じて給与の差をつけていただきたい、人材確保法も守ることで一定のレベルを確保し、地方自治体関係者の全体のムードもよろしい、こう言っております。

 河村大臣に聞きますけれども、財政諮問会議の議長は小泉総理大臣ですね。そして関係大臣が出まして、そこに臨時議員として呼び込まれるわけです。小泉さんはずっと出席しておられたんでしょうか。そして、発言はされたんでしょうか。

河村国務大臣 私が出ている間では、発言はありませんでした。

池坊委員長 土肥隆一君、挙手してお願いいたします。

土肥委員 はい。済みません。

 あの……(河村国務大臣「ちょっと待ってください」と呼ぶ)はい、どうぞ。

河村国務大臣 失礼しました。私が出る最後のところで、一言、地方の声を十分尊重して、国庫負担金の一兆円削減を目指してやってください、こういうことがありました。

土肥委員 この経済財政諮問会議に出ますと、私は出ていないんですけれども、記録を読みますと、小泉純一郎、福田康夫、竹中平蔵、麻生太郎、谷垣禎一、中川昭一、なぜか知りませんが福井俊彦日本銀行の総裁がいる。あと民間人として牛尾治朗、奥田碩、それから大学からは本間正明、吉川洋と出ております。これは大変な会議ですね。この会議の司会はだれがするんでしょうか。

河村国務大臣 竹中経済財政政策担当大臣です。

土肥委員 どうですか、雰囲気は。和気あいあいと、日本の教育のあるべき姿だとか、今の国庫負担の改定などはなかなかのめないとか、理念、理想、哲学を述べるチャンスはあるんですか。

河村国務大臣 私も初めてのことでありまして、どういう形で議論をしていいのか、ここで濶達なやりとりがあるのかといったらそういうものではなくて、これは特に、経済財政諮問会議、経済財政からきた会議でありますから、本来教育論をあそこでやるということじゃありませんで、そういう面では、私は、非常に違和感を感じるといいますか、そういうものがありました。しかし、私が言うべきことはちゃんと言わなきゃいかぬ、そのために行ったわけでありますから、少し長くなって隣の中川大臣から、少しおまえ長過ぎやしないかと注意を受けたぐらいでありますが、一応、私の考え方は全部述べたつもりであります。

土肥委員 その後、河村大臣は非常に重要なことをおっしゃっておるんですね。交付税を全部いただきたいという話が地方から出ている、しかし自分は、総額裁量制をもってしっかり自由度を増していただきながら、給与の半分はきちんと国の責任のもとで、思い切り地方にやっていただきたいと考えている。義務教育制度のあり方、いわゆる教育論として、国と地方との役割分担を含めて、関係者の意見を踏まえつつ、平成十八年度末までに十分な検討を行って方針を決めるべきだと考えていると。

 ですから、もう既に、巨大官庁の総務省と財布の元締めである財務省の間に挟まって、この裁量制なども含めて、何とか生き残りを考えていらっしゃるわけでございます。

 その後、委員がいろいろ、例えば麻生議員、これは議員と書いてあるんですね、谷垣議員などが、それぞれの省庁になるほどと思われるような意見を出しまして、そして民間の牛尾議員が、教育問題というのは非常に国民がセンシティブになるテーマだ、義務教育費国庫負担金二兆八千億円を国から地方へ持っていくのではなく、全体の一〇%ぐらいを徐々に地方に移すという方が話としては筋が通ると思う。少子化の中で、義務教育のあり方は本格的に議論すべきなのに、財政上の問題をきっかけに議論されるところに非常に問題がある、特に教育問題だけが財政上の問題と中身の議論を混同しているところに私はちゅうちょを覚えると。財政面ではなく、教育の本質から議論を持っていくべきだというふうにおっしゃっていますね。私は、大変ノーマルな発言だと思っておりまして、それについて、河村大臣は一々反論はしておられません。

 本間議員に至っては、彼らしいんですけれども、今回の文科省の決定を高く評価している、総額裁量制というのは恐らく清水の舞台から飛びおりたような決断だったと思う、柔軟な制度設計をしていただいて、交付金からこれが実施される、大変いいことだ、あと三年間で一般財源化を検討するという三大臣合意があるが、これは前倒ししてでも改革を実現していくようにしてほしい。

 河村大臣は、これに対して、なぜ地方に権限を渡すかということについて、今は成熟社会で日本の教育は大丈夫だ、地方に全部やれば、心配なく仕事をするだろう、交付税に色はついていないが、当面はそれでいいかもしれないが、しかし、知事がかわったり、選挙をやっていくうちにいろいろな展望が出てくる、交付税という考え方も、旧自治省の交付税に色をつけてはならないという考え方があるが、しかし、政策官庁としては、これは国庫負担金的性格のもので、教育に使ってもらわなきゃならない、ひもつき交付税という言葉はあり得ないのであるが、義務教育について国がどこまで責任を持つかということは中央教育審議会で議論していただく、そして十八年度までに結論を出したいというふうに言っております。

 ここに河村大臣の苦渋の発言が見えているわけでありまして、財源を交付税として渡しても、それは都道府県の勝手な政策経費ではなくて、そこには何とか義務教育費国庫負担制度の色をつけながら、しっかりと地方で教育をやってほしい、こういうふうにおっしゃっているんだと思います。

 そのときのやりとりをもう一度大臣に思い返していただいて、この発言というのは本音のところでしょうか。

河村国務大臣 ちょっと回りくどい言い方をしたように思いますけれども、ひもつき交付税、交付税のあり方というのはそういうものじゃないんだというのは私も聞いておりますし、そういうものじゃない。しかし、事教育についてはむしろそれでないと、実際に教育にこれが使われるかどうか確たるあれが持てないわけですから、知事がかわればまた政策も変わる、結局迷惑をこうむるのはそのとき教育を受ける子供たちですから。

 そういう意味で、先ほどの午前中の議論の中でもちょっと私触れました、枝野民主党政調会長も予算委員会あたりで、全額ともかく交付金制度にすべきだというのが民主党の意見だと聞いておりますが、しかし、その中でもやはり教育はと、こういう意見があって、やはり私は、教育費というのはそういうものだろう、こう考えておりますし、また、教育論で考えるのなら当然そうあるべきだ、こう考えておりますから、そういう意味を込めて申し上げたわけでありまして、この制度を、国全体として国庫負担金制度そのものが全部なくなるんだ、また新しい方法でいくんだということであれば、新しく考えていかなきゃいけない。それでもやはり、交付金の形であろうとどうであろうと、教育費は教育費として使える仕組みをつくっていく、これが私の本旨であります。

土肥委員 それはわかるんですけれども、人件費部分が十八年に地方に回るかどうかは別にして、ここまで来ますと、いわば国庫負担金総額、まだ文科省が半額出すにしても、使い道は地方にゆだねる。河村大臣、こう言っていますね、国庫負担金総額を使い道も含めてそっくりゆだね、地方の裁量に任せると。つまり、地方分を合わせて給与、教職員の配置を自主的に決めていい。

 ここで、例えば、大臣はこうも言っているんですね、給与を一定抑制してもいい、余った分を少人数学級に回せ、人件費の安い非常勤講師や再任用教師を多く雇い、これを習熟度別の充実のために渡す、地方独自の学力施策が展開できると。

 私、地方分権というのはここまで文科省が言っていいんだろうか。地方に任せるというときに、何かこんなこともできるよ、賃金カットまでできるよとか、非常勤講師を多く雇って再任用をふやしたらどうだ、習熟度別指導は確かに今も行われておりますけれども、これとて議論のあるところでございますが、これは本当に分権論をやるとすれば、ここまで文科省が、まだ平成十八年を迎えていない段階でこういう発言をすることはどうだろうかなというふうに思うわけであります。

 そうすると、つまり、文科省の仕事は人件費を地方に回すだけだ、すべては地方の教育政策にゆだねるんだということを言っているわけですね。それは私、余分な発言ではないかと思うんです。というのは、地方はまさに地方がやるわけでありまして、選挙で選ばれた首長がいわば最高責任者で、教育長や教育委員会があって、そして市民や住民、関係団体の参加があって、地方にふさわしい地方主権の教育が展開されるというふうに理解するんですが、河村大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 財政諮問会議等、今国会においてもそうでありますが、具体的に総額裁量制の考え方を説明しろと言われれば、例えばということ、それはどういうところから出てくるかというと、やはり地方からそういう要請が出てくるわけですね。

 これまでのやり方だと全く自由がきかない、がちがちに締められている、そういう批判もあって、もっと自由裁量性を増すとすればこういうことをやりたい、ああいうことをやりたいという御意見がある。それを踏まえてそういう発言をしたわけでありまして、例えばということでありまして、もっといろいろな取り組みがこれから起きるであろう、それを想定しているわけでありますから、当面、一番要請の強かったことを取り上げるならばそういうことがあるという例えとして申し上げたわけで、そうやらなきゃいけないとか、そういうつもりで言ったわけでは決してございません。

土肥委員 経済財政諮問会議ですから、これはある意味で密室の発言だったかもしれませんが、記録に全部出ておりますので。

 したがって、今回の文部省が出された総額裁量制のポンチ絵なんかを見ておりますと、あれもこれもできるよと書いてあって、これは政省令でやるわけでございますけれども、随分踏み込んだことをおっしゃるものだ、文科省にしては珍しく、張り切ってこの総額裁量制をやりたいんだなということがわかるわけでありますけれども。

 やはり、これからの教育というのは、要するに地方にゆだねられるんですね。そして、地方独自の教育政策や、それから給料なども含めて、人件費も含めて、それから学校における教材費なども含めて、全部地方がやるわけです。これはもう大改革だと思いますね。牢固とした明治以来の文部省行政がここで地方に大幅な権限を渡す。そういうときに、一体どんな地方における教育政策が行われるんだろうかと思うときに、見当がつかないですね。この見当がつかないところが、私は今回の改革あるいは小泉内閣がやろうとしている教育改革の一番の問題点だと思うんですよ。

 それについては、例えば中央教育審議会に聞いていますと大臣おっしゃるんだけれども、私が記録を読む限りには、やはり小泉内閣の方針に基づいた中教審答申が出てくるだろう、それを超えて、それはおかしい、これはこうあるべきだというような議論が中教審から出るとは思わないんです。

 ですから、今後、県知事であるとか首長が特に教育行政においてどんな政策を持ち出すだろうかということは、もう四十七都道府県全部違う、こう思っております。これも一つの大改革だと思うんです。だから、一度地方に全部渡して、そしてやってみて、まずかったらまたやり直したらいいかもしれない。だけれども、いかにも今回の改革は、この総額裁量制にしても、地方がうまくやるということを前提にしていますが、さまざまな問題が出てくるでしょうね。

 日本は民主国家ですから、そういう知事や市長が出たら落選させればいいわけです。だけれども、市民は、特に子供たちは、何が自分の周りに起こっているのかというのがわからないままに、教育が大幅に地方に流れていく。文科省が、憲法の精神だ、あるいは定員の問題であるとか、あるいは人確法が残っていると言っても、ないものはない、ないそでは振れないというのはまた地方の考え方でしょうから、恐らく、さまざまな合理化が行われて地方の教育状況が混乱するのではないかというふうにも考えております。大臣の御感想をお聞かせください。

河村国務大臣 私もそういう懸念を持っております。

 総額裁量制を打ち出したということは、総額裁量制によって地方の自由度を増すという一つの小泉構造改革のあり方、これについては文部科学省も否定するものではない。

 しかし、現実に教育論として考えたときに、国が義務教育に責任を持つというその限度、その部分はどこにあるかということは、今の義務教育費国庫負担制度にあり得るという考え方、これは経済財政諮問会議が何と言われようと、そのことはきちっと位置づけていかなきゃならぬ、教育論を展開しなきゃいけない。あの中にもそういうことを考えておられる方もおりますから、そういう方々の御意見も改めて伺う。私も、そうした文部科学大臣の諮問機関を別途、相談機関をつくって、その中でこの問題を御意見を伺いながら本格的に議論をして、確たる政策として打ち出してまいりたい、このように考えております。

土肥委員 大臣、理念はいいんです。だけれども、お金がないところに理念は実現しないというのが私の主張でございまして、ひとつその辺は、財源もきっちりとらないと、弱小文科省が、財務省と総務省の板挟みに遭って、これ以上羽をもぎ取られないように、きっちりと仕事をしていただきたいと思います。

 終わります。

池坊委員長 川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 大臣、副大臣、本当に長時間ありがとうございます。大分いろいろな質問が出ましたので、私の方はまた総論的に、同じことを繰り返し聞かせていただいて本当に恐縮なんですけれども、聞かせていただきたいというふうに思います。

 先ほど我が党の肥田先生の方から、これ以上削る項目はありますか、削る手当はありますかということを御質問させていただいたわけでありますが、それについては、もうない、これでおしまいだというふうに大臣がお答えになられました。私も、ちょっと違う言葉で聞かせていただきます。文部科学省としては、今回の改正で、義務教育費国庫負担金の一般財源化については打ちどめだと考えていらっしゃるかということをお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 単刀直入に申し上げて、先ほど肥田議員に申し上げましたとおりでありまして、これ以上一般財源化することになりますと制度の根幹が維持できないという問題に直面しますから、この根幹を維持するということは、まさに委員御指摘の打ちどめである、このような考え方で臨んでおるところであります。

川内委員 今の、土肥議員からも、経済財政諮問会議の会議の流れについていろいろと聞かせていただいたわけでありますが、私も、この経済財政諮問会議というのは、我々にとっては共通の敵ではないかと思っておりまして、若干聞かせていただきたいというふうに思います。

 大体、現場を知らない頭でっかちな人たちが寄り集まって会議をするとろくなことにならないというのは歴史が証明をするところでありますが、一昨年八月の経済財政諮問会議で遠山前大臣がるる発言をされた。そしてまた、平成十五年の三月、前回の国庫負担金改正案の国会の質疑録を見ると、遠山大臣が自信たっぷりにいろいろなことを発言、答弁していらっしゃいます。

 「その大きな流れを私は変えたと思っております。 八月末の経済財政諮問会議で、それまでその会議では、経済財政諮問会議、そういう名称にあらわれておりますように、あらゆる政策について経済ないし財政という角度からしか論じられてこなかったと思います。でも、それではだめだ、我が省が担っております教育というものはそうした視点からだけでは十分でないということで主張をし、そして、もうほとんど、義務教育について地方がやるべきで、したがって一般財源化というとうとうたる議論の流れを私としては押しとどめたところでございます。」遠山大臣が、私が流れを変えたんだと国会で堂々と答弁をしていらっしゃるんです。

 しかし、その流れを変えたと遠山大臣がおっしゃっていらっしゃる経済財政諮問会議、二〇〇二年八月三十日の議事録要旨を拝見しますと、吉川さんという民間の議員の方ですね、東京大学大学院経済学研究科教授、この方が、遠山大臣がとうとうと演説した後、恐らく、手を挙げたのか何なのか知りませんが、発言をしていらっしゃいます。

 「義務教育の国庫負担制度について。義務教育、初等・中等教育は非常に大事で、国全体として資源配分をけちるなどという考えは全く無い。しかし、義務教育が大事だということと、国庫負担制度として先生の給料の半分を文部科学省が地方へ回すという制度が大事だということとは別だ。両者は独立だというのが我々の考え。」吉川さんの考えではない、「我々の考え」と言っています。

 「仰る通り、初等・中等教育の義務教育は子どもにとって権利。財政能力に地方間でばらつきが出るのは是正しなくてはならない。しかし、そのために地方交付税がある。義務教育は大切であり、あるレベルは日本中きちっとした水準になるべきだと思っているが、」、「あるレベルは」と書いてあります。「文部科学省から国の補助金を地方に回すという制度が本当に必要なのか。」、この人は「補助金」と言っています、負担金じゃなくて。「補助金を地方に回すという制度が本当に必要なのか。その根拠が論理的によくわからない。」

 遠山大臣が、流れを変えたんだ、私は変えたんだと言っているその諮問会議で、遠山大臣の発言の後にこの発言が出ているわけですけれども、本当に、文部科学省として、あの八月の経済財政諮問会議で流れを変えたと思っていらっしゃるのかどうか。

河村国務大臣 経済財政諮問会議の性格がよく出ておると思うんですね。

 この国庫負担制度のあり方と補助金とが全く一緒になっている。とにかく補助金をばらまけばという今までのものを変えろ変えろと、それだけのことですから。しかし、極めて義務的な、政策的な国庫負担制度のあり方、これは、今お読みいただいて、私も改めて、そのままいくとまさに同床異夢になってしまうと思います。

 しかし、遠山大臣は、これは非常に危機感を持たれまして、人間力向上のための総合戦略として人間力戦略ビジョンというのをまず打ち出して、そういうようなところで、教育論、教育が極めて厳しい状況になって、今ここで、もっと方針を変えなきゃいかぬということで、単なる財政論でやっていく状況にないということをまず力説をされて、その上に立って、特に、流れを変えた、こう言われているのは、三大臣合意の中でも、今この問題をどう取り上げるかということの中で、自分が述べたことを、歯どめをかける、いわゆる流れを変えるためにということは、文部科学省の、文部科学大臣の基本的な認識に戻すためには、ここの検討条項の中に、義務教育制度のあり方の一環として検討を行うという考え方をきちっとうたい込んだというところ、これで歯どめをかけて、流れが向こうに行かないようにするんだという思いがここにあると思います。

 義務教育制度のあり方ということは、これは憲法から基づいて、今の無償制度から始まって、国が責任を持たにゃいかぬ、ここに戻ってくるわけでありますから、これに歯どめをかけておいて、それを今からさらに強く展開していくということで、遠山大臣としてはそういう思いをここで述べられたものだと思いますね。

川内委員 質問通告では一番最後の項目になっているんですけれども、ちょっと順番を変えてここで聞かせていただきたいんですが、そもそも、今大臣も図らずもおっしゃいましたけれども、この経済財政諮問会議の中には、負担金と補助金の違いさえよくわかっていない人が議員としている。そういう経済財政諮問会議という会議が、義務教育を施すことは国の責任なんだ、だから負担金になっているんだということさえ理解していない、あるいは国の役割で義務教育を施すべきだということに関して全く意識を持っていないと思われる方が中にいらっしゃると思うんですが、大臣、これについてはいかがですか。

河村国務大臣 議員の中にはいろいろいらっしゃいます。

 私も、この会議にまだ一回だけの印象ですが、先ほどの議事録、土肥議員もちょっと読み上げられた中にもあったわけでありますが、牛尾議員あたりは、やはり教育論をそのまま経済論だけでは、国民にとって非常にセンシティブな問題だ、これはやはり慎重になるべきだという意見もお出しになっております。しかし、あのとき私は、そうは言いながら、徐々にやっていけばいいじゃないかというような言い方もされたものですから、ちょっと待てよと言って、これはどこまで本気で言っておられるのかなと、そのとき私、ちょっととっさに思ったんですけれども。

 しかし、やはりこれは、そういうものであるということをもっときちっと、教育費、いわゆる義務教育ということは国がやはり責任を持つんだといういわゆる基本的な考え方をきちっと打ち出していく必要がある、私はこう思っております。そういう意味では、地方に任せれば何でもうまくいくんだ、こうおっしゃる知事さんもいらっしゃいます。しかし、現実に、さはさりながら、しかし義務教育はやはり国が持つんだ、これは国の政策だということは、それは打ち出していかにゃいかぬ。そこで自由度を発揮していただこうという思い、これは議論をもっと詰めなきゃいかぬと思います。実は、総理からも、とにかく地方の意見をしっかり聞くようにと言われております。

 あの当初のときは、この議論が地方分権推進会議等からわっと上がってきたときには、そうだそうだという声だったんです。しかし、文部科学省としても、地方の分権の考え方、教育を地方にできるだけ自由度を増すということで総額裁量制を出すということによって、私はかなり知事会の流れも変わってきたと思いますよ。

 現実に、それを盛んに言うのは知事会ですが、市長会、もっと末端の町村等に行ったら、これは交付税に任されてどんどん削られたのではとても教育できません、文部省、頑張ってくれ、こういうのが本音でありますから、私は、そこをもっときちっと詰めて、地方の意見を十分聞いた結果こうでありますという方向は当然あり得ると思いますので、そういう方向で、義務教育費国庫負担制度の根幹をなぜ国が守らなきゃいけないのか、地方の声もこうなんだということを明確にしていきたい、こう思っております。

川内委員 今大臣がお話しになられたようなことを、もう少しそれこそ経済財政諮問会議の中でしっかりと主張をしていただくべきだというふうに思うんですね。

 昨年十一月の経済財政諮問会議で、河村大臣が、「義務教育費負担のあり方については、教育改革の中で義務教育制度のあり方の一環として、国・地方の役割はどこまでなのかということを中央教育審議会でも検討している。義務教育制度のあり方、いわゆる教育論として国と都道府県、市町村の役割分担を含めて、関係者の意見を踏まえつつ、平成十八年度末までに十分な検討を行って方針を決めるべきと考えている。」というふうに経済財政諮問会議でお述べになっていらっしゃいます。

 私は、義務教育の国庫負担金についてはもうこの退職手当や児童手当で打ちどめだというのであれば、「義務教育費負担のあり方については」という主語は、これは変えなければならないと思いますし、義務教育費の国庫負担という考え方と、義務教育の国の関与を減らしていくという二つの考え方の中で、今文部科学省は、総額裁量制をとることによって国の関与は減らしていきます、しかし、義務教育の国庫負担はしっかりとその根幹は守っていくんだというスタンスに立っているんだときょうの答弁を聞いていて思ったんですけれども、間違っていれば御指摘をいただきたいんですが、そうであればなおさらのこと、もうこれ以上削るものはないと言っているところで、わざわざ義務教育費負担のあり方についてという主語を使うことによって、まだ何か削る余地があるんじゃないかみたいなことを諮問会議の皆さんに想起させることは避けなければならないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 この財政諮問会議に呼ばれた、そして大臣としての意見を言えというには、それまでの過程があるわけですね。前遠山大臣からの過程もあって、あそこで私がいきなり、もうこの話はこれでなきものにしてくれという、そういう会議ではありませんので、まず基本的な認識を聞く、それで委員の皆さんもいろいろ言われる、そこでこれからどうするということに持っていきたいと。

 私も最初から、こんな石頭が来てやったんじゃ、これは外せなんて言われたんじゃ、これは議論に入れませんから、一方的に決められたら困りますから。私も、あそこでは、こういう考え方がある、それはそういう一つの考え方としてあるかもしらぬけれども、義務教育には国が責任を持つ制度だということをまず理解してもらうことに最大努力をすべきだ、こう考えて臨んだわけであります。

川内委員 最初だからちょっとおとなしくやったんだ、これから見ていろということなんでしょうけれども、しかし、それにしても大臣、しつこいようですけれどもお気を悪くなさらずに聞いていただきたいんですが、この昨年十一月の同会議の中で、谷垣財務大臣が、「今の総額裁量制で地方の自由度の拡大を大幅に図るということだと思うが、私どもは標準法とか、人材確保法を残したままでそれができるのかという点は疑問に思っている。」と発言をされていらっしゃいます。

 この義務教育費国庫負担法というものと標準法そしてまた人材確保法というのは、私は、これこそがまさに三位一体となって教育の水準を維持していくために必要なものだというふうに考えて理解をしていたんですけれども、これらの谷垣大臣の発言に対しても、河村大臣は、特に明確な反論というか、いや、それはこれこれこうです、あるいはこうしますというようなことをおっしゃっていらっしゃらないんですね。

 その発言をちょっと御紹介申し上げますと、河村大臣の谷垣大臣に関する部分ですけれども、「人材確保法等々の見直しをどのように位置づけるかという御指摘があった。それについては、国の責任をどのように考えるべきか、しっかりやらなくてはならないということ。」ちょっとわけがわかったようなわからないようなことを一番最後でおっしゃっていらっしゃるんですね。

 これはもうちょっと明確に、最初だからこそ明確に御反論をいただきたかったなというふうに思うんですけれども、しっかりやるというのは一体何をしっかりやろうとしているのかということを含めて、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

河村国務大臣 地方分権を進めれば、今の仕組みを全部外してしまって自由にやったらいい、これは財政当局の基本的な認識なんですね。だから、これはこれで議論として財務大臣としておっしゃる。しかし、私はその前段の中で、人材確保法というのがあって先生の給与というのは保障されているんだ、これに基づいて今の義務教育の根幹は成り立っているんだからということを一回述べておりますので。

 これは、この問題はもっと基本的に財務省ともやり合わなきゃいけない課題であって、私も、あそこで意見をもっと明確に、そう言われてみれば言うべきだったかなと後で思います。議事録になってこういうところへ出てくるとは、あのときは夢にも思いませんでしたが、そういう点では私は舌足らずだったと思いますけれども、この問題は、これはもっと議論をしなきゃいけない、論破しなきゃいけない話であります。

 御指摘の点は、今後特に留意して対応していかなきゃいけない、こう思います。

川内委員 ぜひともしっかりと頑張っていただきたいと思うんです。

 ちょっと時間もなくなってきましたけれども、今、文部科学省さんが、総額裁量制というものを採用して、地方で自由に国の関与を外して教育についてお考えをいただきたい、教育の地方分権を進めたいとおっしゃっていらっしゃることは、私は、その趣旨は全く賛同するところであります。しかし、その一方で、全く違う意図を持って、経済財政諮問会議の中では、義務教育の国庫負担金を一般財源化しようという人たちの動きというのは相変わらずこれからも続いていくだろうというふうに思うんですね。

 だから、先ほど土肥議員からも御紹介ありました、この十一月の経済財政諮問会議の本間議員の発言、三年間で一般財源化を検討するというんじゃなくて、前倒しで一般財源化を実現しろみたいなことを発言されていらっしゃるわけで、そういう意味ではこれから非常に厳しい厳しい闘いをしていただかなければならないわけであります。

 文部科学省さんが生きる力とか人間力とかいうことを盛んにおっしゃるわけでありまして、その人間力というのはどういうことかというと、新しい時代を切り開くたくましい日本人の育成と。これは、新しい時代を切り開くたくましい文部科学省に勤める人たちの育成というふうに言ってもいいかと思うんですけれども。

 まず、御自分たちのお仕事の中で、義務教育、子供たちの未来をしっかりと守る、そのために財源をしっかりと守っていく必要があるんだということなわけですから、経済財政諮問会議の論点から義務教育費国庫負担のあり方についてというような項目を削らせる、なくしていく。もうこれ以上はないとおっしゃるわけですから、経済財政諮問会議の論点ではないということをしっかりとロビーイングというか運動をしていただかなければ、これはいつまでたっても同じ議論が諮問会議のたびに繰り返されて、竹中平蔵に偉い顔をされちゃ我々もたまらぬという思いがありますから、どうですか。

河村国務大臣 御指摘のとおり、義務教育費国庫負担制度の根幹を守るということ、これが国の責任であるということ、これはきちっと我々も発信をもっと強めなければいけないと思います。

 今この問題がこういう形で来た一番大きなところは知事会でありまして、しかも、こう言うといささか当たりさわりがあるかもしれませんが、自治省出身の知事がたくさんいるという現状があります。そういうことも、本当の行革の観点からいって、そういうところから声が上がってくるというのは本当の行革なのかという思いも持っておりまして、各県、皆さんそれぞれ御出身がありますから、我が県の知事はどういう態度をとっておられるのか、一度ひとつ研究していただくとありがたい、こう思っておるところでございますが。

 義務教育を国が責任を持つんだという基本的な認識というのは、もっと私はきちっとうたっていく。我々も、広報力まだ弱い面があるんではないか、こう思っておりまして、その点については我々はもっと努力をする必要がある、こう思って、そういう努力をした上で次なる会議に臨んでまいりたい、こういうふうに思っております。

川内委員 お気持ちはよくわかるんですけれども、国立大学の独立行政法人化に伴って効率化係数という考え方が用いられていましたけれども、総額裁量制というものを採用することによって、またそういう何かわけのわからない係数が導入されてしまうんじゃないかみたいな不安も若干持ったりするんですね。

 だから、そんなことにならないように、私は、地方分権推進会議やあるいは経済財政諮問会議の中で義務教育の国庫負担金を削っていくという議論が唐突にあらわれて、やり玉に上げられてくちゃくちゃにされているという今日の状況を考えると、やはりきょう大臣に、義務教育費の国庫負担金については、この制度のあり方についてはもうおしまいだということを、経済財政諮問会議の論点から削るんだという決意を聞かないとどうにも安心できないので、もう一度御答弁いただけますか。

河村国務大臣 これからこの問題については議論をしていくわけでありまして、おっしゃるとおり、十八年度までにこれについて結論を出すということになっていますから、それまでに、それまでにといいますか、十八年度ということであればもう今からそれは対応していかなきゃなりませんので、その時点で結論を出すということは、それを外すという結論を我々は導くということになる、こういうふうに思います。

川内委員 今、文部科学大臣、大変強い御決意をいただいて力強く思うんですが、大変重要な御発言をされて、今からやるんだということをおっしゃられました。

 私は、ずるずるすると何回も何回も同じ会議の中で話が蒸し返されて、後戻りがきかなくなって押し込まれるということになりますので、本当にきょうからでも、国庫負担金の問題についてはもうおしまい、終わりだというところで議論を整理していただけるように、経済財政諮問会議を、別に経済財政諮問会議にやたら気を使わなきゃいけないというのも片腹痛い話で、何でそんなところに教育のことを言われなきゃいけないんだという思いも持ちながら、何か知らないけれども経済財政諮問会議が何かやたらと力を持っているように見えてしまうものですから、きょうはあえてこういう議論をさせていただきました。

 どうぞこれからも、子供たちのために、子供たちの心を心として頑張っていただけるようにお願いを申し上げまして、質問にいたします。ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 御提出の法案につきまして質問をいたします。

 これまでかなりいろいろな角度からの審議がございましたから、重なる部分もあるんですけれども、確認の必要もございますので、幾つか質問をしていきたいと思います。

 義務教育費国庫負担法は、昭和二十七年ですね、国会でも審議されております。あなたたちの大先輩である坂田道太委員、後の文部大臣でございますが、このように述べておられます。「憲法上重要な国民の権利であり、義務であるのみならず、わが国文教政策の根幹でございます義務教育について、国が明確に財政上の責任を負担することにより、義務教育の基礎を確立し、わが国文教の振興をはかりますことは、日本教育史上画期的な措置」でございます。また、続けて「都道府県が負担する諸給与のすべてが、国庫負担の対象ともなつたのでございまして、さらに学校教育上、教職員の給与費と相並びまして最も重要でございます教材費につきましても、新たに国が一部を負担する原則をここに明らかにしましたことは、義務教育無償の原則を実現し、あわせて義務教育の振興をはかる上から、まさに画期的な法案であり、わが国全教育界の要望である」と述べておられます。しかも、この理想的義務教育費国庫負担制度が一日も早く確立されることを要望し、とも加えられております。

 ですから、このとき、給料・諸手当、退職手当、旅費、教材費が国庫負担の対象となりました。その後、恩給費、共済費、児童手当などが国庫負担の対象となるなど負担の対象を拡大してきたわけでございます。義務教育無償の原則と教育の機会の均等を確保するためにこのように努力してきた先輩たちの気概を感じるわけでございますけれども、文部大臣としてはどのように受けとめておられるでしょうか、お聞かせください。

河村国務大臣 昭和二十七年、坂田道太大先輩、これは趣旨説明ですか、こういう形でお述べになったということ、現実にはその幅が狭まっているということ、これは、教材費等々についてはできるだけ地方の裁量という声の中でそういうふうになっていったわけであります。しかし、今もって義務教育費、この無償の憲法の精神にのっとって、国民のすべての人に対して教育を保障する、教育の機会均等、その水準を維持する、この基本的な義務教育国庫負担制度の創設当時の基本理念、これは今も何ら変わっていない、このように思っております。

石井(郁)委員 一九八五年以降、臨調、行革、そして今回の三位一体改革で、今や国庫負担の対象は児童手当、退職手当、給料・諸手当のみになって、今回の法改正で給与と諸手当のみということになってきたわけです。もう明らかに細ってきたわけです。

 理想的義務教育費国庫負担制度だと、理念は変わっていらっしゃらないとおっしゃいますけれども、この義務教育費国庫負担制度そのものがもう風前のともしびだと言わなければならないと思うんですね。理念は変わらないと大臣はおっしゃいますけれども、今、こういう実態、現実については、改めてどのようにお思いでしょうか。

河村国務大臣 まさに地方の時代、地方分権あるいは地方主権と言われる時代、地方のできるだけ裁量性を発揮して、まさに教育も地方分権、まさに教育する者がそれぞれの地、一番住民に近いところの行政が責任を持って直接当たる。それができるだけやりやすいようにする。この考え方に立って今日に至っておるわけでございまして、今回、退職金、児童手当、これが裁量性があるものかどうかという議論、私もいろいろな考え方があると思います。

 文部科学省としても、地方分権の大きな流れといいますか、それを否定はしないで、裁量性を最大限発揮していただきながら根幹を守るという考え方に立ったときに、給与費、これが根幹であるという考え方に立っておるわけでございまして、もう風前のともしびだと。それは、これしかないんですから、これをなくしたらその根幹ということの考え方はまた全然変わってくるということから考えれば、まさにここが剣が峰にある、私もそういう認識でおることは事実でございますけれども、この根幹をしっかり守っていくということによってこの基本理念、これは貫くことができる、こう思っておるわけであります。

石井(郁)委員 地方分権の流れ、地方の裁量を拡大するということが強調されているわけでございますけれども、私は、地方分権と言うのでしたら、やはり教育の内容などそういう分野でこそ分権化を図っていくべきだというふうに考えるんですね。ところが、分権の中身として真っ先に国庫負担の分野が手をつけられるということなんですね。そういう国の財政事情とはいえ、教育にしわ寄せが来る、そのことがやはり非常に問題だというふうに思っているわけです。

 それで、国の財政事情ということから来ている、あるいは行政の効率化等々から来ているわけですけれども、やはりこれは、このようにして教育を軽視していいのかという問題であって、決して私はいいことにはならないというふうに思うんですね。ですから、財政事情を口実にして、国のいわば財政的な撤退を次々に図っていくということが非常に問題ではないかというふうに思います。

 そこで、ちょっと大きな話として確認をしておきたいんですけれども、文科省は、「教育指標の国際比較」、これを公表していらっしゃいますけれども、平成十四年度版で見ますと、国内総生産、GDPに対する学校教育費の比較、これが掲載されておりますけれども、公財政支出で比較すると、ここに挙げられている、二十九カ国だと思いますけれども、これは日本は何位になるでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 OECDの一九九八年の調査によりますと、我が国の国内総生産、GDPに対する公財政支出学校教育費、これは初等中等教育から高等教育まで含めたものでございますが、その割合は三・五五%となっておりまして、OECD加盟国三十カ国のうちで、指標にある二十八カ国中二十六番目、こういうことになるわけでございます。

 ただ、教育に対する公財政支出につきましては、GDPに対する公財政支出の割合でありますとか、教育制度の相違、あるいは、総人口に占める児童生徒、学生数の割合の相違など、国によりさまざまな条件が異なるわけでございまして、単純な比較は困難な面があるのではないんだろうか、こんなふうに承知をいたしております。

石井(郁)委員 いろいろ理屈をつけられますけれども、二十八カ国中何番目ですか、下から三番目と……(近藤政府参考人「二十六位」と呼ぶ)二十六と言われましたね。二十八カ国中二十六番目なんですよ。OECDの各国平均が五%ですから、日本は三・五五%なんですよ。だから、もう本当に、いろいろな国を含めても極端に少ないということが数字の上からもはっきりしています。

 しかも、この数字は、今お示しになったのは一九九八年ですね。一九九〇年、三・六二%、九五年で三・六%ですから、これは年々減り続けているんですね。よその国も、確かに本当に今国家財政厳しいという中で、いろいろな努力があると思います。まさにいろいろな努力があるわけですよ。だから、やはりこの比率を上げるというのが、政府としてのまず第一の責任に上がることなんじゃありませんか。ところが、こんな状態に置いていく、下がっていくということになっているわけです。

 大臣として、こういう現状について、ここにこそ国としてのきちんとしたやはり対応、メスを入れなければいけないというふうにお考えになるかどうか、お聞かせください。

河村国務大臣 これは義務教育費だけではなくて、高等教育においても指標的にそういう数字が出ております。やはりこのことは我々ちょっと注意をしなければいけない課題でありまして、教育立国というならばその点ももっと我々強調する必要があろう、こう考えております。

 日本の財政、非常に大きい、大規模でございますし、また人件費に大きな金がかかっているというような面もございます。さはさりながら、少なくとも今のような数字であるということは、私は、決して自慢できることではなくて、むしろこれを高めることに努力する、当然のことだというふうに思います。

石井(郁)委員 このGDP比における公財政支出ですけれども、二%台というのは一カ国だけ、トルコなんですけれども、三%台というのは二カ国しかないんですね。あとは大体四%、五%、六%だという。デンマークなどは六・八一、ノルウェーでは六・七%ですから、本当にそういう点からすると、このどこに経済大国日本なんだということでいうと、私は、やはりこういう数字のままにしておくわけにいかないというふうに思うんです。

 先日の参考人質疑の中でも、市川参考人がこのように言っていらっしゃいました。教育にお金を投じることは、将来の我が国の経済生産性を高めるだけじゃなく、国及び地方の税収入をふやすことになる、最も効率的な投資は教育であり、財政論からいっても、教育にお金をかけることが賢明な策だと。大体これは最近の大きな説になって、いろいろな方がこのように述べていらっしゃると思います。私も全く同感であります。

 ですから、GDP比に占めるこの割合を高めていく、公的な財政支出を図っていく、先ほども大学、高等教育も含めてと大臣おっしゃっていただきましたけれども、今本当にそういう方向に切りかえるべきときなんですよね。そのことを重ねて大臣、明確に答えていただきたいと思います。

河村国務大臣 これまでの教育が、ある意味では画一的で、そして守りといいますか、そういう形にややもするとなってきた。したがって、その中で、しかし先生方も努力をされ、効率的に運営されてきた部分もあると思います。

 しかし、今、教育をめぐる現状、いろいろな点が指摘をされ、改革をしていかなければいけないときに差しかかっておるということを考えますと、教育費にもっと金をかける、小泉総理が言われた米百俵の精神というのは、まさにそこに帰結しなければいかぬ、こういう思いでこれからも取り組んでまいりたいと思います。

石井(郁)委員 さてそこで、義務教育費国庫負担で根幹を守る、この問題でございますけれども、昨年、法改正の際も、遠山文部科学大臣、河村当時副大臣も根幹を守るということをしきりにおっしゃっておられました。私は、根幹とは何かということを聞きまして、給与には広義の給与と狭義の給与があるということで、守るのは狭義の給与だということを答弁されておられました。退職手当は広義の給与に当たる、だから守る対象にないようなその当時の発言もあったわけでございます。

 そういう結果が今回の法改正にやはりつながっていくんですよ。みずから解釈を狭めていって、道を狭めていくわけですから、今回のこういう法改正になる。これは私は、文科省に、本当に義務教育費の国庫負担制度、この国庫負担法を守り抜く、本当にこの広義、大きなものとして根幹を守り抜くという姿勢がやはりないからではないのかというふうに言わざるを得ないんです。

 ですから、昨年、そして今回と、いわば撤退に次ぐ撤退ということになっているわけでございまして、私は、冒頭、坂田文部大臣の発言を引用いたしましたけれども、本当にそういう気概からすると、あるいは理念からすると、余りにも乏しいのではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでございますか。

河村国務大臣 この問題、先ほども御答弁したところでありますけれども、これは国の責任において義務教育の水準を維持し、そして立派な教職員を確保するというこの国庫負担制度の目的、これの根幹を守るということ、これについては、退職手当を国庫負担の対象外とした場合に、そのことに支障はない、こう判断をしたからでありまして、給与に広義も狭義も本当にあるのか、これは理屈をつければそういうことになるんだという意見も私はあろうと思います。

 しかし、だからといって、退職手当そのものをなくすということであれば大問題でありますが、そういうことではないのであって、まさに国として優秀な教員を集めていく、確保していく、そして全国津々浦々に、教育制度を守りながら水準を維持していくという観点からいえば、これをきちっと守っていくということでこれが貫けるというふうに立って今回法案を出させていただいているわけであります。

 あらゆる見直しはやらなければいけないという観点から、こういうことでやってきているわけでございまして、これからもこの制度の根幹を引き続き守りながら、堅持しながら、そういう観点で適切に対応していくということでやってまいりたい、こう思っております。

石井(郁)委員 私は、昨年のこの法改正の審議のときに、文科省の高橋、財務課の方の著書を引用いたしまして、当時はきちんと給与費目として、退職手当もあったし、共済長期給付、公務災害補償基金負担金、児童手当等々も含めて給与費目というふうに挙げていたんだ、そういう解釈をあなた方が勝手に今回変えたじゃないかという形で質問いたしまして、問題にしたわけです。だから、こういうやり方をしていったのでは、本当に守るべき給与そのもの、それさえも私は今守れなくなっているというふうに思うんですね。

 そこで、お聞きしますけれども、遠山大臣はこのように前回答えておりました。給与費で本当の根幹ということになりますとこれは在職給与だ、「狭義の給与ということで、いわゆる給料とそれから諸手当になるわけでございます。」そういう根幹は守っていきたいというふうに解釈を変えて、根幹をいわば細らせてしまっているわけですけれども、こういう答弁でした。

 重ねてですけれども、本当にこの給与本体、これは守り抜きますね。

河村国務大臣 この義務教育費国庫負担制度の根幹を守るということは、そういう給与二分の一制度、これを守る、こういうことであります。

石井(郁)委員 そういう御答弁をいただいたんですけれども、そういう御答弁に立ってこの法案を見ますと、ちょっとおかしいことが起きてくるんですよね。この国庫負担法の根幹を守ると言いながら――ちょっとごめんなさい。もう一つその間に入れておきます。

 では、今、教員の給与ということで尋ねましたので、事務職員、栄養職員、この栄養職員に係る経費、この給与もきちんと国庫負担の対象として守るというお考えについてはいかがですか。

河村国務大臣 学校教育、学校運営、これが円滑にされる、大事なことでございまして、学校運営に当たるための事務職員、そして、一般の教員とともに学校栄養職員というのがおられる。これはともに学校にとっての基幹的な職員であるという認識であります。

 したがって、これまでも、事務職員、学校栄養職員は、教員と同様に、義務標準法によって都道府県ごとに置くべき総数の標準を定めながら、この給与について国庫負担してまいりました。

 したがって、文部科学省としても、引き続いて、この事務職員、学校栄養職員については、学校の基幹的な職員として国庫負担の対象として考えていく、この考え方に変わりはございません。

石井(郁)委員 この点でも、これまでの文科省の答弁は極めてはっきりしていたわけでございまして、これは平成四年の鳩山邦夫文部大臣の答弁なんですけれども、義務教育費国庫負担制度の根幹は死守する、必ず守っていかなければならない、極端に言えば未来永劫と言ってもいいかもしれない、「事務職員、栄養職員は、これは学校というものの中の基幹的職員であるからして、彼ら、彼女らを外すということも絶対あってはならない、」という御答弁がございました。これは、私、引用いたしましたのは、先日、我が党の大先輩の山原健二郎元議員が亡くなられまして、その山原委員に対する答弁だったわけでございます。

 さて、それで、昨年の法改正でも、国庫負担法審議の際に附帯決議がつけられまして、「学校栄養職員、事務職員の学校教育において果たす役割の重要性にかんがみ、これらの職員に係る経費についても国庫負担の仕組みを堅持すること。」ということが全会一致でなされました。

 こういう決議が何遍もされているわけでございますから、今大臣からもかなり明快に御答弁いただきましたけれども、きちんと事務職員、栄養職員の給与は本当に未来永劫守っていくという御答弁、重ねてお願いします。

河村国務大臣 学校の運営の基幹職員については、これは全体として義務教育国庫負担制度の二分の一を保障するというこの考え方、この中にきちっと入れて堅持していく、これでなければいけない、こう思っております。

石井(郁)委員 そういう御答弁をいただいたんですけれども、そうすると、この法律の中に、やはり先ほどからも出ておりますけれども、この附則の部分なんですね。それとの整合性というのは、私はおかしいことになるんじゃないかというふうに考えるわけであります。

 つまり、給料・諸手当、これは事務職員、栄養職員を含めてきっちり守っていくということでございましたけれども、この附則は、給与等に要する経費の負担のあり方に関して平成十八年度末までの検討状況並びに社会経済情勢の変化を勘案して、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずると。

 なぜ給与費について所要の措置を講じなければいけないのか、これは何を検討するのかということをちょっと明快に、明確に御答弁ください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 この附則第二条の規定でございますが、今回、退職手当、児童手当に係る経費を国庫負担の対象から外したわけでございますが、先ほど来御説明を申し上げておりますように、昨年十二月の三位一体改革に係る政府・与党協議会の決定、これはこの措置は暫定的な措置とする、こういう決定があるわけでございますから、それならば、暫定的な措置ということであれば、将来にわたって退職手当、児童手当の取り扱いをどう考えていくのかと。

 そこで、政府としては、義務教育諸学校の教職員の給与等に要する経費負担のあり方に関する平成十八年度末までの検討の状況でありますとか社会経済情勢の変化、これは国、地方の財政事情の変化でありますとか税制改正の状況等、そういったものを総合的に勘案いたしまして、その時点において退職手当、児童手当の今回の暫定的な措置について見直し、必要に応じ適切な措置を講ずるということがあり得べし、こういう趣旨の規定になっているわけでございます。

石井(郁)委員 私、どうもごまかしのように思えてならないんですね。だから、退職手当と児童手当の税源とか今後について、今回は暫定的だと。税源移譲の予定特例交付金という措置なわけですから、どうもそこが暫定的だと。

 では、そのことだけ書いたらいいじゃないですか。これは給与費等に関する経費の負担のあり方ですから、給与費全体のことを書いているとだれだって読みますよね。

 何で給与費等についてという、経費の負担のあり方に関して平成十八年度まで、これが例の財政諮問会議等々から三位一体改革として出されているその全体にかかるというふうに見られるのは当然だと思うんですけれども、なぜこういう語を入れなければいけなかったのかという問題なんですよ。なぜその必要があるんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 あくまでこの附則第二条は退職手当、児童手当に係る、今先生おっしゃいましたように、今回は税源移譲予定特例交付金を設けて、税源移譲までの間の暫定的な取り扱いにするということでございますから、その将来の取り扱いの問題をこの附則の中で明確にしていこう、そのときに、義務教育費国庫負担金の、この経費の経費負担のあり方についての検討の状況でありますとかあるいは社会経済情勢の変化、そういったものを総合的に検討しながら、将来、退職手当、児童手当に係るこの暫定的な取り扱いについて、その時点で必要とあらば必要な措置を講ずるということを明記した、こういうことでございます。

石井(郁)委員 同じ答弁を繰り返されているだけなんですけれども、結局、国庫補助負担金等の整理合理化方針、ここで義務教育費に係る経費負担のあり方について、平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化についての所要の検討を行うということがあるわけでしょう。だから、これをやはりここに置いておかないと、今何か出せないという、どういう圧力か何があったか知りませんが、ということじゃないんですか。

 だから、この整理合理化方針のそのものをこの条文の中でやはり書き込んでいると認めたということでしょう。これは私は重大な問題だと思っているんですよ。大臣、いかがですか。

河村国務大臣 現実に三大臣合意等々、一連の閣議決定等々の中で、このことが、十八年度までに一般財源化も含めてという方向が閣議決定されたという現実があるわけですね。これを受けておりますから、表現としてまだこれが続いている、検討の中に入っているという意味でこれが入っておる。平成十八年度までの検討の状況も見なければいかぬ、これが入っているということであります。

 ただ、所要の措置というのは、これは第一条、第二条の退職手当のことについての所要の措置というふうに私は読んでおるわけでございますが、そうした全体の中で考えているということでありますから、私どもとしては、十八年度までに検討をしろということですから、検討を今しているわけです。それを検討しておりますということをここに入れた。そして、今までの流れの中にこの検討は入っているということで、まあまあ全体の閣議決定等との整合性を持たせた法律である、そういう意味でこの附則第二条がある、そして今の給与等が入っておる、こういうことであります。

 これをやるんだ、そのとおりやるんだということであれば、これはおっしゃるように、ゆゆしき問題ということに、私の答弁からしてもそうなるわけでありますが、これをまさに検討しております。教育論として検討させてくれ、検討いたします、我々はこう言っているわけでありますから、それがここに含まれているというふうに御理解をいただきたい。

石井(郁)委員 私、単純に御質問しますけれども、義務教育費国庫負担金の全額の一般財源化ということはもう政府決定だ、内閣としての決定だということは、こういう一般財源化という問題で、もしそのとおり行ったら、大臣おっしゃるように、義務教育費国庫負担の根幹、給与費、事務職員、栄養職員も含めて根幹を守るということには矛盾しないんですか。

河村国務大臣 いや、ですから、これを一般財源化するということになれば、それは矛盾するわけです。これを一般財源化するかしないかを十八年度までに検討しろと閣議で言われておりますから、検討はいたします、こう言っている。それがそのまま今ここに法律として続いておるというふうに御理解をいただきたい。

 我々は、教育論としてこれを検討して結論は出しますというふうに言って、今まで御答弁申し上げた基本的な理念を我々は貫くつもりで今おるわけであります。つもりというか、そういうことで決めていかなければいかぬ、こう思っておりますが、しかし、あらゆる問題について検討はしなければなりませんが、そうした場合に一体どういう問題が起きるのかとか、本当に教育はできるのか。

 いずれにしても、教育をきちっとやる上において必要な教育費というものがどこで保障、担保されるかというこのことが非常に大事になってくるわけでありますから、教育論で考えたときに、まさに憲法の要請である義務教育についての国が無償制度を持って保障している、ここに行き着く、これが私の確信であります。

石井(郁)委員 先ほど私は国庫補助負担金等の整理合理化方針のことで申し上げましたけれども、学校栄養職員、事務職員についても、義務標準法等を通じた国の関与の見直し及び義務教育費国庫負担制度の見直しの中でと述べているように、この事務職員、栄養職員も国庫負担の対象から外すということが既にもういわば示唆されているということなんですね。

 それで大臣、私、今やはり大変重要な御答弁をいただいたと思うんですけれども、まだ給与本体についての、もちろん大臣は、しっかり守る、根幹だとおっしゃっているわけで、今回は退職手当と児童手当だけなのに、今後一般財源化する、もう全額一般財源化しますよと、それだったらもう根幹を守ったことにならないという問題を、何でわざわざこの法律の中に書かなければいけないのか。

 それは、検討しろと言っているから検討しろという話ですけれども、法律に何も書き込むことないじゃないですか。あわせて法律として、退職手当、児童手当と同時にこの給与本体についてももう一般財源化の方向でやりますということを入れ込んでくる、こんなやり方はないと思うんですよ。これだったら私は、大臣はどんなに頑張るとおっしゃっても、もう事実上、これは一歩踏み出したようなものですよ、法律に書いているんだったら。これ、やりましょうと、もうどこかの方からどんどん言ってくるんじゃないですか。

 だから、最初に私、去年のことを申し上げましたように、文科省は、本当にもうどんどん城を明け渡していっているわけですよ。参考人質疑の中でもございましたね、出城をどんどん明け渡して、もう本丸ほんのちょっとしかないという話ですけれども、今回のこの重要な法律の中でもわざわざこういうことを附則に入れる、十八年度までにちゃんと所要の検討をします、一般財源化についても考えます、こういうことを私たち、委員会で認めるわけにいかないじゃないですか。私は絶対この附則は撤回してもらわなくては困ると思っているんです。いかがですか。

河村国務大臣 ここに一般財源化という言葉は一切入っておりません。今までの流れからいけば、一般財源化を含め検討するというのが本来のあり方でしょう。しかし、それは我々としては、今の検討段階でそこまで受けるわけにいかない。経済財政諮問会議の流れからいえば、一般財源化もということの指摘もあったやに、私は、この法案をつくる段階においていろいろ指摘を受けたということも聞いておりますが、所要の措置ということで、我々としては検討して結論をきちっと出すんだ、教育論として結論を出すんだからということで、しかし今までの検討をするという、整合性を持たせるという意味でこういう形になったということであります。

石井(郁)委員 これは、昨年十一月二十一日の経済財政諮問会議に対して、河村文科大臣の補足説明資料というのがこの中にございますけれども、その中にやはり「義務教育費の経費負担の在り方(全額一般財源化)」だと。「平成十八年度末までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」と。だから、もう大臣はそういう表明をしていらっしゃるわけですよ。

 ただ、この法案にはそこまでは文言はありませんけれども、十八年度までに所要の検討を行うというのは、それはそういうことを含んでいるということを説明していらっしゃるわけですから、見るのは当たり前ですよね。だから、それを政府の方は、暫定措置で、退職金と児童手当のことについての暫定のことだけをこれは書いているんだという、そういうごまかしの答弁しちゃだめだと思うんですよ。

 私は、今回の改正案で、この附則によってやはり結局給与本体にまで手をつけるということに一歩踏み込むことになるんですよ。だから重要で、これは一つのステップにすぎない、その本丸に、給与の本体に手をつけるステップの法案になっているという意味で、私はこれはとても重大だというふうに思っています。

 先ほど紹介しましたけれども、出城は全部やられてしまって、本丸だってもう危ないというところに来ているわけですね。ですから、私は、やはり文科省がそんな及び腰ではだめだと思っているわけで、だとしたら、本当に委員会としてやはりきっぱりとした態度を示さなければならないと思いますので、その意味で、私は法案の撤回を強く求めたいと思います。

 大臣、いかがですか。

河村国務大臣 私は、この一般財源化を進めるとか、そういうことを一回も言ったことはございませんから、しかし既に私が大臣に就任したときには、十八年までに検討するという閣議決定は、これは生きておるわけでありまして、こんなものはおれは知らないんだと言う立場にないということは御理解をいただけると思いまして、これは、検討は検討として受けとめながら、この根幹を守ることが日本の教育のためになるという信念でこの問題に取り組みたい、こう思っているわけでございます。

石井(郁)委員 法案については以上のように問題を指摘させていただきました。

 こういう三位一体改革で今地方自治体は大変な事態となっております。三位一体改革では補助金の一兆円削減が行われました。来年度予算で、公立学校施設の整備費、このことを伺いたいんですが、国庫負担補助金はどれだけ削減されたでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 平成十六年度予算案におきまして、公立学校施設整備費予算につきましては、三位一体改革の一環として見直しを図り、全体として約百四十億円が減額になっておるところでございます。

石井(郁)委員 これは前年度と比べますと、千四百五十二億円が千三百十一億円ですから、九・七%の減なんですね。これは大変な減額だと言わなければなりません。来年度の新増改築予算として、だから約七百億円しか新規事業に使えないということになっているわけなんですね。

 ことし早々にそのことが判明して、各自治体に衝撃が走ったと言われています。私も幾つかお聞きをいたしました。ある県の市町村教育委員会施設整備事務担当係長にあてた文書を見ますと、そのろうばいぶりというのはよくわかるんですね。

 平成十六年一月十四日に開催された公立学校施設主管課長会議、これは文科省が主催です。下記のとおり、平成十六年度の執行方針、概要が示されました、調整の詳細については一月二十日の説明会で説明しますが、予算編成に重大な影響がありますので、事業計画に中止、順延等の見直しを含めて、財政担当部署と事前に協議いただきますようお願いします、こうあるわけです。

 具体的にどういうことかといえば、単年度計上事業について、十一月調査に回答いただいた予定額に対して補助金については六割削減です、六割です、負担金についても四割が削減される見込みですので、事業量の調整をしてくださいと。申請校の削減とか申請面積調整等々ですね。また、市町村単独一般財源の増額等が必要となると。設計未了等の理由により着手時期がおくれる場合は、平成十七年度への繰り延べまたは補助採択されない場合がある、こういうものでした。

 だから、予定額に対して六割削減ですから、これは大変な影響、深刻な事態、重大な事態になるというふうに思うんですが、どうしてこういう通知や説明会などを文科省はことしになってやっているんですか。ちょっと説明してください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 確かに予算の削減があったわけでございますが、平成十六年度事業計画が執行可能額を上回っている、そういう現状にあることから、事業実施段階におきまして地方公共団体にできるだけ支障を生じないように、地方公共団体の理解や協力を得ながら、実際の申請前に調整を行わせていただいた、こういう経緯でございます。

石井(郁)委員 大変な国債事業の予算が引かれましてそうなっているんですけれども、各自治体では、学校の教室不足がありますし、国の基準に合わせて学校改築を行う予定だったものを、十六年度に見送りをしなくてはいけないというような形で、自治体は負担をどうやって軽減するかということで、起債事業に借りかえたりしているわけですね。

 だから、大臣、地方自治体に今本当に、学校建設に関して、四月から本来予定すべきだった、それをストップしたり、いろいろ起債事業に変えたりとか、さまざまなことが起こっているんですけれども、これは大臣としてこういう実態はどのように把握されていらっしゃるでしょうか。

河村国務大臣 この公立学校施設整備予算についても、これは三位一体の改革の一環として取り上げられて、大幅な見直しをしようということになって減額の措置にしたのでありますが、一方では、学校施設の耐震化を進めなければいかぬという課題がございまして、耐震補強あるいは改築、このときの耐震関連経費ということで、この方は前年比プラス増にして一千八十一億という形をとりまして、これまでの改築に行った部分の大部分がこの耐震関連にも、今回はそこへ焦点をかけたという面もあって、現実に見直しせざるを得なくなったという現状がございます。

 これまで、景気対策等も含めて、補正予算等々でも順調に対応してきたのでありますが、今日の緊縮財政の中で、一部こういう事態が起きております。これは、我々予算を確保する部分からいけば非常に残念ですし、これにシーリングがかかるということそのものも極めて遺憾だ、私はこう思っておりますが、国全体の予算の確保の中でこういう事態になったわけで、この点については地方公共団体の御理解、御協力をいただきながら進めておる現状でございます。

石井(郁)委員 もう少し大臣の方に、各自治体、地方でのリアルな実態、困っていらっしゃる状況等々が届いたらいいなと私は思うんですけれども。

 文科省として、十六年度予定の新築あるいは改築事業で、もう十六年度予定していた、本当に年末まで予定していらっしゃったと。それは、だから千四百五十二億円という当初予算があったわけですから、そういうことからして予定していらっしゃったということがあるんですが、次年度繰り延べしているというような事業等々がどのくらいあるのかということは、これは文科省として、どうですか、今日の時点での調査はしていますか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 平成十六年度に実施を予定いたしました公立文教施設整備事業のうち、平成十七年度へ繰り延べる事業の詳細につきましては、現在年度の途中でもあり、現時点においては把握はしておりませんが、今後、平成十七年度の概算要求に向けまして公立文教施設整備費の所要額を調査する中で、当該事業につきましても把握をしてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 ですから、今お聞きになりましたように、地方自治体には本当に突然の話として、年末から一月にかけて事業を変更したりしなきゃいけない。あるいは予算ですよね、三月。地方自治体の予算編成にももろに影響してくるというようなことで、本当に深刻な影響を与えているんですよ。やはり地方にとったら学校建設というのは一大事業ですからね、小さい市町村、小さいと言ったら失礼ですけれども、市町村にとったら。だから、予算にも、そして地元にも、子供たちにも大変な影響を与えている、こういう問題について、文科省は調査もしていない。そういうのは私は怠慢だと思いますよ、本当に痛みを感じていない。どれだけそういう事態を引き起こしたのか、これは政府の責任においてやるべきことじゃないですか。だから、やはりそういう対応は本当によろしくないと思います。至急調査を行っていただきたい。

 そして、本来、来年度、十六年度にやるべき計画なんですから、財政は厳しいけれども新たな予算も組んでやる、やはりそのぐらいの姿勢を文科省として示していかなければと思いますが、大臣。

河村国務大臣 石井先生おっしゃること、私もよくわかります。地方自治体にとっては、計画していたものが予定どおりいかないというのは、非常にいろいろ手続上もお困りだろうと思いますので、これは、我々としては今回そういう方針を決定いたしましたので、このことには御理解を求めると同時に、次の予算で確実に確保できるようにということで、御理解をいただきながらやってまいりたいと思っております。

 学校建築というのは、ある意味では幅、すそ野の広いことで、景気対策にもなっていくわけでありますから、そういう意味で、ぜひ次の予算でその分を取り返したい、こういう思いでございます。

石井(郁)委員 小泉内閣が進めている三位一体改革というのは、本当に、義務教育の根幹の義務教育費の国庫負担という大変重大な問題でも財政的な撤退を余儀なくさせていくという問題、そしてまた今申し上げましたように、文教施設への影響もある、建設もおくらせていくという意味では、私は、やはり日本の公教育、義務教育そのものが今本当に危機的な状況だというふうに思いますし、義務教育に対する政府の責任という問題が本当に放棄される状態になっているというふうに思うんですね。

 そういう意味で、今日の義務教育の国庫負担制度のこういう撤退状況というのは、戦後教育の中でも本当に大転換だというふうに思うんですね。だから文部大臣は、非常に理念をしっかり引き継ぐというふうにおっしゃっていますけれども、実態は、本当に大転換が今図られようとしているというふうに言わなければいけないと思います。

 こういう改革は、私は改革に値しない、やめるべきだということを主張いたしまして、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 この際、御報告いたします。

 政府参考人総務省自治財政局長瀧野欣彌君は、所用のため出席できなくなりましたので、御了承願います。

 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 この法案の審議も六時間にわたって行われ、いよいよ私が最後の質問者となりました。

 まず、総務省にお尋ねをいたしたいと思います。

 三位一体改革が完成すれば税源移譲によって地方財政が確保される、それこそ受益と負担の関係が明確になる、このように言われておりますが、しかし、税源の持っております偏在性の問題、これをどうするかということだと思うんですね。これは、人口や産業が少ない、そのために自主財源が乏しい地方にとっては、いわばもう構造的な問題なんですね。

 したがって、これを解決するためには、後でいろいろと質問をさせていただきますが、すべての国庫補助負担金を縮減、廃止すればそれで済むのか。そうではなく、国が責任を負うべきものは引き続き確保させる、そういった考え方を政策として打ち出す必要があるんじゃないか、地方交付税交付金の財源保障機能も引き続き堅持させることが必要ではないか、私はこのように考えておりますが、まず総務省のお考えをお聞かせください。

岡本政府参考人 委員御指摘のように、補助金削減をいたしますと、それを税源移譲するということで、当然、税源につきましては地域に偏在をいたしているわけでございます。

 そういう税源移譲を行った場合に、その財政力格差が拡大する面は、そういう意味では地域の偏在が顕在化をしてくるという問題がございますので、その方策として私どもが今現在検討してつくっておりますのが、一つは、税源移譲に当たりまして、できるだけ偏在性の少ない地方税の体系を築くということが一つ。

 二つ目には、なおそれでも地域間の財政力格差が拡大するという場合には、まさに今委員御指摘のような、地方交付税の持っております財源保障機能というものをきちんと維持し、その交付税制度によって適切な対応を図るということが二つ。

 それから三つ目には、不交付団体で国庫補助負担金の廃止、縮減以上の税源移譲が多額に生じてしまうような場合には、補助負担金や譲与税等の配分調整などの新しい財源均てん化の方策というようなことを総合的に検討していかなければいけないというふうに思っております。

 いずれにしても、これは税源移譲の規模等を十分見きわめて対応すべき問題ではないかというふうに考えております。

横光委員 今のようなお答えならば、それを実施していれば、それは偏在性というものが薄れていくことはあり得ます。多くの県はそれなりに努力しているんです。しかし、努力しても、今の税構造に偏在性があるものですから、どうしても教育あるいは福祉、さらには上下水道の整備など生活インフラ、こういったことを推進しようと思っても、このままでは税源が確保できないと言われておるんです。

 つまり、努力しても報われない地方になってしまうおそれがある。自主財源を確保しやすい都市のひとり勝ちになってしまって、強者と弱者の地方自治体を生むことになりかねない。努力しても報われない、そういった社会を行政みずからつくることは、政治に携わる者としてはいかがかと私は思っております。

 ちょっと資料を配らせていただいておりますが、民間の大手のシンクタンクでございます日本総合研究所が二〇〇四年度の予算案について分析したものの一部でございます。補助金縮減によって地方の裁量は拡大するものの、地域間の行政サービスあるいは税収格差の拡大が見られる、このように分析をしております。

 具体的には、この図表にございますように、千葉、埼玉、東京、神奈川、そして静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、いわゆる関東、中部、近畿の大都市圏、この九つの都府県しか税収は確保されないであろう、それ以外の三十八道県はマイナスになると言われておるんです。こうなれば、行政の水準低下が起こってしまって、肝心かなめの地方分権が危ういものになってしまいます。

 総務省としては、この分析をどのように見ているか、そしてまた、税源の偏在性という構造上の問題に対してどのような対応策をとられようとしているか。今対応策は言われましたから、それは結構ですが、このような民間の分析についてどのようにお考えか、お聞かせください。

岡本政府参考人 お答えをいたします。

 今お示しいただきましたような中で、まさにそういう偏在を調整し、各財政力の格差にあってもその対応がきちんと出せるような、まさに御指摘のありましたような財源保障をするという機能が現在の交付税機能の中にあるわけでございますので、交付税の基準財政需要額に、例えば今回の退職手当の問題につきましても、そういうものをきちんと入れて、そして税、あるいは今回は特例交付金でございますが、そのようなものがある意味では偏在をする中で、その団体に必要な額を確保していくということで対応していくべきものというふうに考えております。

横光委員 今、交付税で補てんをするというお考えを示されましたが、交付税そのものは総合的には抑制する方向なんでしょう。しかも、交付税改革は白紙に近い状況じゃないですか。すべて先の二つをやって、そして後で交付税でということで、そういったものでは、なかなか、格差調整を後からするということでは問題解決にならないと思うんですね。

 この問題は、地方分権問題、地方分権をどう考えるのかという問題にたどり着くと思うんですね。そもそも地方分権を考える場合、大事なことは、我が国は、三千二百ある地方自治体、これがすべて同じではないんですね。それぞれ地方の置かれた地理的な条件あるいは人口の分布状況を勘案して、それぞれの都市や地方が支え合っていくことだと私は思うわけですよ。

 全国町村会長の山本さんがこのような発言をしております。町や村はそれなりに国家的な役割分担を担っている、自然や水を守り、そして食料をつくり都市に供給している、したがって、それを受けた都市は生産して町や村への豊かさを供給している、相互扶助の精神が働いている。このように全国町村会長の山本さんはおっしゃっているんですね。まさにこれは、都市の人たちも納得できるような地方の人の声だと私は思うんですね。

 こうした地域が全国土の七〇%を占めているわけです。いわば、我が国をこの地域の人たちが守っていると言っても過言ではないわけなんです。しかし残念ながら、先ほど言いましたように、こういったところは人口も少ない、そうしますと産業も少ない、どうしても財源が乏しくなる。じゃ、こうした地域では、その地方の財政基盤を反映させた施策だけで我慢しろということになってしまうんです。果たしてそれでいいんでしょうか。

 例えば、地方税も少ないから、私の町は、四十人学級はなかなか難しいので四十五人学級にせざるを得ないとか、そういうことをしてしまったら、その町に住んでいる子供たちはどうなりますか。憲法あるいは教育基本法の保障する教育の機会均等に反してしまうことになります。

 これは、今、教育のところで例を挙げましたが、教育だけでなく、福祉あるいは社会インフラの面でも同じような状況が起きてしまい、そしてまた、それを放置すれば、本当に多くの住民は、より高い受益を求めて移動することにもなりかねない。そうすれば、地方は崩壊してしまいますよ。いや、大げさに聞こえるかもしれませんが、そういうことだってあり得るということを私は言っておるんです。

 ですから、今のような形の三位一体改革を進めれば、三位一体じゃないからこういった問題が起きているのであって、三位一体改革が今のような状況で進めば、私は、地方分権の推進どころか、まさに都市部以外の三十八道府県については、大変厳しい状況の地方分権、崩壊が進むんじゃないかという気がいたしておりますが、総務省のお考え。

 そしてまた、これは教育のことも例に出しましたので、このような状況の中での文科大臣のお考えもお聞かせいただければと思います。

岡本政府参考人 まさに今いろいろ御指摘ございましたような地域間の格差、財政力の偏在をしている中で、教育でありますとか福祉でありますとか、全国標準的な行政の水準をきちんと確保するに足る財源を確保するということが地方交付税制度の根本でございますし、その根本をきちんと守って財政調整をしなければいけないというふうに思っております。

 一方でまた、国、地方を通じます非常に財政状況が苦しい中で、財政のスリム化ということも一つの大きな課題でございますので、その全体としての、国、地方の全体の水準というものを見直していくということは、分権の推進ということと同時に行わなければならない課題であると思っております。

 しかし、その中にありましても、先ほど来申し上げております、まさに標準的行政システム、教育、福祉等の水準を守っていくということは、どのような財政力の格差があっても、それをちゃんと対応できるような交付税の機能というものを堅持していく必要があるというふうに思っております。

河村国務大臣 義務教育が、憲法第二十六条あるいは教育基本法から基づきましても、国民として必要な基礎的な資質を培う。あるいは教育の機会均等、そして教育の無償制度、これをきちっと堅持していく、そして、全国どこの地域においても教育は一定水準の教育が受けられる、この教育条件の整備を図っていくというのは非常に大事でありますから、そのためにこの義務教育費国庫負担制度というのがあるわけでございまして、特に義務教育を担う教員の資質を維持する、このことによって給与を確保する、これが非常に大事なことであります。

 これが、まさにこの制度によって保障されているということでございますから、これが三位一体の改革を推進する段階において、地域間の格差、特に財政力の違いによってこういうものが失われるということになりますと、これはゆゆしい問題であります。そのためにも、この義務教育費国庫負担制度を堅持していくということがどうしても大事になってくる。

 そういう意味で、これを堅持する方針、これをこれからも貫いていかなければいかぬ。今、総務省からも、教育の水準を維持するんだ、こういうことでありますから、これについては、この義務教育費国庫負担制度というのは、これまでの歴史からいっても、日本の教育を維持する上で一番大事な制度であるということに御理解をいただけておるものだと、さっき答弁を聞きながらそう思ったところであります。

横光委員 昨年の予算編成時の一兆円削減をめぐるこの問題で指摘されましたことは、知事会などでも、政府の検討が、数字のつじつま合わせである、理念なき数字の積み上げであると批判しております。まさに一兆円削減の数字合わせになっていると思うんです。昨年暮れ、総務省から、義務教育費国庫負担金から事務職員等の一般財源化が提起されましたが、これも数字合わせ以外の何物でもない。

 また、先ほど大臣は、全国の知事の皆さん方の中でも、義務教育費国庫負担金制度の一般財源化を提起している知事さんもいらっしゃるというお話がございました。しかし、なぜ一般財源化なのか。今、大臣もおっしゃられましたように、憲法二十六条の、すべての国民はその保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、この関係から、それでいいのかという疑問がどうしても出てきます。

 明確に答えないまま、ただただ自由度が欲しいということしか主張をしていない。つまり、これまた数字合わせ以外の何物でもない、そういった気がしております。こういった数字合わせが先行して、形だけの三位一体になってしまってはいけないという気がするわけですね。

 私は、三位一体の議論で必要なことは、ナショナルミニマムの必要性、さらには国庫補助負担金が果たしている役割、こういったことなどを憲法の視点に立って検討する必要があると思うんです。このことが欠けていると思うんです。とりわけ総務省には欠けている。この点についての総務省のお考えをお聞かせください。

岡本政府参考人 国庫補助負担金の制度につきましては、その国庫補助負担金が持っている、ややもすれば、その国庫補助金の政策によって地方団体の自主的な判断が誘導されかねないとか、要するに、国庫補助負担金について、これを改革していく、地方の自由度を高めていく観点から改革するということが政府の方針として決定されているわけでございます。その改革の流れの一環の中で、昨年の二〇〇三に示されておりますような幾つかの補助金がその検討課題として提示されているというふうに承知をいたしております。

 また、そういうものを踏まえまして、各地方団体、全国知事会、市長会等から、具体的な名前を挙げて、国庫補助金の廃止、縮減、その全額の一般財源化というものが提起されているというふうに承知いたしております。

 また、先ほど申し上げましたように、私ども、当然そういう中で、地方の自由度を高めつつ、教育のそれぞれの水準に必要なものを地方交付税制度等の財源調整制度、財源保障制度を通じて、その水準はきちんと確保する、そこで地方の判断できちんとした行政が行われていくものだというふうに考えております。

横光委員 私の質問に全然答えていません。そしてまた、やっていることと言っていることが今全然違う。

 私が聞いているのは、国庫補助負担金という、いわゆる義務的な、憲法で決められていることの見地から、総務省はこの問題には対処している意識が薄いということをお伺いしたんです。やはり、私が先ほど説明したようなことで、地方が崩壊する可能性があるぞといったところの問題は、ここのところをしっかり押さえればそれは阻止できると私は思っているわけです。

 例えば、四兆円の削減をする、それで一兆円削減した、残りの三兆円をめぐって、義務教育費国庫負担金を一般財源化すればこの問題は来年度で決着する、そういったことを漏れ聞くわけですが、これは国会軽視も甚だしいわけで、そんなことは絶対総務省は考えたこともないわけですね。お聞かせください。

岡本政府参考人 今御指摘のような、要するに、これからの国庫補助負担金制度について、いろいろな改革を議論していくということで政府の骨太の方針は決まっているわけでございまして、具体的に、どういうふうなものが十七年で終わるとか、そういうような思いを持っているわけではございません。

横光委員 地方分権とは、補助金あるいは負担金の削減が目的なのかと言わざるを得ないんですね。そうではなく、地方自治体が住民の要望を踏まえ、事業や施策の選択を行うことが趣旨なんでしょう。その趣旨であるならば、私は、この補助金と負担金の性格、これがそもそも異なっていると思うんですよ。それを何か十把一からげにこの問題を処理しようとしているところに、いろいろな問題が浮上してくるんじゃないか。

 ですから、今、地方の自由度を高めるというようなお話しされましたが、例えば、義務教育費国庫負担金のような教職員の人件費といった義務的な経費について、地方にこれを移譲してどこが活性化になるんですか。ほとんど裁量の余地はないわけです。こうした経費を政府が示している四兆円の国庫補助負担金の中で真っ先に移譲するというのは、間違っているんじゃないんですか。

 国庫補助負担金の見直しに当たっては、まず、地方の自主的な判断で事業への取り組みが決められるような、いわゆる奨励的な補助金から検討対象とするのが筋だと考えておりますが、総務省の見解をお聞かせください。

岡本政府参考人 御指摘のように、奨励補助金を率先的に整理、改革をしていく。国庫補助負担金改革をやります中で、いろいろな負担金について国と地方の役割分担の観点から見直していく。それから、奨励的補助金につきましても、その必要性、いわば、まさに国と地方の割り勘の世界ではないわけでございますので、率先的に検討の対象としていくという形で検討はしております。

 奨励的補助金、十五年度国の予算で、他の補助金におきまして約二千六百億円ほど削減、整理をさせていただいております。

横光委員 三位一体、結構でございます。しかし、あくまでもこれは一体でなければ意味をなさない。そして、その場合、しっかりと確保することは、いわゆる国が責任を持ってやるべきことは維持するということ、それも憲法の視点に立って、そういうことを踏まえた上で取り組んでいただきたいということを私は申し上げたいと思います。

 総務省の皆さん、ありがとうございました。

 続いて、文科省にお聞きをいたしたいと思います。

 昨年からの三位一体あるいは義教費制度をめぐる動きを見ておりますと、そこで指摘をされて、あるいは懸念されている事項、これは全く新しい出来事でも何でもないんですね。

 例えば、先ほど私が言いましたが、税源移譲によって都市部のみが優遇なんじゃないかとか、義務教育費国庫負担金の一般財源化によって教育費が不安定に置かれる問題、こういった問題などは五十年前にも本当に起きて、激しい議論が闘わされておるんですね。その反省から今の制度ができたわけでございます。文科大臣もこの制度の生い立ちを昨年の経済財政諮問会議で触れておられますが、今の動きは当時と全く同じで、いわば歴史は再び繰り返すということが今起きようとしていると私は思っております。

 過去の歴史をちょっと振り返ってみますと、一九一八年、大正七年に、教育費が地方財政を圧迫し、市町村負担になっておるということから、国が毎年一千万円支出する市町村義務教育費国庫負担法を成立させたわけでございます。しかし、これでもなかなか問題点を解消できません。そこで、一九四〇年に義務教育費国庫負担法、旧法ですね、これが制定された。そして、以降、市町村立学校の教員給与の半額を国が負担するようになった、これが一九四〇年。

 ところが、一九四九年のシャウプ勧告によって、五〇年から地方財政平衡交付金制度が創設されたわけですね。これによって、義務教育費国庫負担金制度はこれに統合されることになってしまった。この平衡交付金制度によって、教育費の一般行政への流用を懸念した教育関係者は、同制度、前の国庫負担制度を強く主張したんですね。

 そして、先ほどにもお話出ていましたように、一九五三年、昭和二十八年に、ちょうど五十年前でございますが、義務教育費国庫負担法が施行されたわけです。これに事務職員、そしてまた学校栄養職員も適用され、一九五八年に制定された標準定数法とともに、日本の教育を支える原動力になってきたわけでございます。大変な紆余曲折の末に現在の制度が始まって、そしてまた現在まで続いてきた。

 この紆余曲折の一つが、先ほど言いました一九五〇年から一九五三年の間のいわゆる平衡交付金でございます。これは、今総務省が提起しております一般財源化と全く同じなんです。ということは、もしこれがそういうことになれば、五十年前とまた同じような議論が始まるかもしれない。

 こういう紆余曲折の末、現在の制度ができ、そして現在まで続いてきた状況、理由、その意義といいますか、妥当性といいますか、それを文科大臣はどのようにお考えでしょうか。

河村国務大臣 今まさに、義務教育費国庫負担制度、これを一般財源化するというのは、あの当時に戻る議論を再び蒸し返すことになる、私もこのように思います。

 あのときは、地方交付税交付金制度をとったわけですね。今、横光議員も御指摘をされました。結局、教員の給与費が地方財政に大きな圧迫を与えてしまったということ。それで、各都道府県においても、教員数の不均衡、それから教育支出の格差が非常に激しくなってきて、これはもうどうにもならぬ、たまらなくなって、この問題について、財政の安定的確保を図るためにこれは義務教育費国庫負担制度の復活を求める世論が高まってきて、いただきました資料にも、当時の社説等が大々的に取り上げられております。

 その結果、これは地方の時代にまた逆戻りするんじゃないかという議論もあったようでありますね。こういうことをやるというとまた国が中央集権を強くするというような意見もあったようでありますが、しかし、やはり教育の重要性からして、昭和二十七年に義務教育費国庫負担制度が制定されて、一たん廃止されたものがもう一度戻って、昭和二十八年度から施行される。これはまさに適切な処置だったと思います。これは私は教訓としなければならないのではないかと思っております。

 実は、お時間をいただいてあれですが、先般、昨年のことでありますが、まさにこの一般財源化を進めたいという知事会の筆頭の会長さんが私のところにお見えになって、立憲政友会のポスター、これは昔のマニフェスト、昭和三年の第一回普通選挙のポスター、立憲政友会のマニフェストみたいなものでありますが、これは、やはり地方分権を進めるという観点で、地方に財源を与うれば完全な発達は自然に来るということで、地方分権で丈夫なものはひとり歩きして発展する、こう書いてあって、それから、中央に財源を奪いて補助することは市町村を自立できなくするという趣旨を書いてあって、中央集権は不自然なもので、市町村の足腰を弱くすると、こういう状況で比較してあるんです。昭和三年、一九二八年の第一回普通選挙ですよ。

 この中をじっと見ると、「国民諸君は何づれの姿を望むや」と書いてありますから、こっちですよと、地方分権はもう地方に財源をやりなさい、こうなっているわけです。昔からこれは言われておったんですね。今に始まったことじゃないんです。

 ただ、この中に、「地租ヲ市町村ニ移セバ恒久財源ヲ得テ」、これがまさに地方財源移譲ですね、「得テ市町村民ノ負担ガ軽クナリ従ツテ地方ハ発展ス」、ここまでは書いてある。ただこれは、「地域セマキ町村ニ付テハ例外ヲ設ケ教員ノ俸給ヲ補助ス」と書いてあるんです。やはり教育費はちゃんとしなければだめだ、このとおりやったって、地方に移したってうまくいかないということをここでもちゃんとうたってあるわけですね。

 この紙を持って知事会の会長、僕はそのときはすぐ気がつかなかったんですが、だってこれは、教育費はやはりちゃんと、ここは補助と言っていますけれども、これを言えば、やはり義務教育費国庫負担制度は要るよ、こういうことじゃないかと思って、いずれあの会長さんにもう一度きちっとこの説明を求めたい、こう思っておりますが、事実、当時から議論された大きな問題なんですね。

 今またこれを蒸し返そうとされていることについては、私もこれは教訓とすべきだ、こう考えております。

横光委員 本当に今の説明のように、私たちの国はいわゆる資源というものに乏しいわけで、唯一の資源は人材の育成にあるということは、昔の人からも、そういった時代からも認識されていたわけですね。

 そして、小泉総理も米百俵の精神ということで教育の大事さというものを訴えておりましたし、ここのところがやはり私たちの国の一番の宝だと思うんですね。ここの制度というものが崩れたときどうなるかということをやはりみんなでしっかりと論議して、守るべきものは守っていかなければならない、このように思っております。

 お示ししましたこの資料、私はこれを見たときに、これは現在と同じかな、五十年前の議論が全く今と同じような問題点で、文言で議論されたんだなと、改めてこの教育の制度の大事さというものを痛感したんですけれども、朝日新聞の社説では、「毎年くりかえされる教育費をめぐっての平衡交付金の増額問題では、」中央と地方のいわゆる意見の違い、そして、「要は、憲法において国民の義務であり、権利であるとされている最低の義務教育費が確保されていないところからきていることは疑う余地がない。」ここのところからこういった問題が来ているという朝日の当時の社説ですね。

 そしてまた、毎日の社説でも、「地方財政が危機になればなるほど、教育費を圧迫し勝ちである。」と。それで、文部省の意見としては、「国の負担は地方平衡交附金の中に他の経費と一しょにして含まれているが、特にこれだけが教育費だというヒモつきになって」はいけないということですね。また、それに対して、地方自治庁、今で言う総務省の反対意見。「文部省と地財委、大蔵省の間に毎年論争をくりかえしていること、」「教育財政を確立する立法は、この際ぜひ必要だと考える。」と、本当に現在と同じようなことが五十年前に論議されていた。

 そして、先ほどから言われておりますように、一九五二年、昭和二十七年に現在の法制度が提案されたんですが、その提案理由を述べました当時の自由党の竹尾議員の意見も出ております。義務教育費、「特に教職員の給与費は、」「都道府県の一般財源に対して三五%から四五%に膨脹し、地方税収入の七五%を占めるに」至っている、「このため、地方公共団体独自の税収入で義務教育費をまかなうことができるのは、わずかに九都府県にすぎず、中には義務教育費が税収入の二倍、三倍に達している県すら少くないことが報告」。

 現在も、先ほど私は総務省に聞いたんですが、今度の税源移譲で税源を確実に確保されるのは九都府県ということを言いました。民間シンクタンクもそういった分析をしている。五十年前もわずかに九都府県にすぎない、ちゃんと義務教育の収入を確保できるのは。全く同じ状況が起きている。

 ここにいらっしゃる先生方は、当時のことを記憶されている方はほとんどいらっしゃらないかと思いますが、このように、今日までのこの議論の過程を見ますと、昔も今もそれほど変わらず、義務教育費が抱えているこのことの本質、そしてまた一般財源化した場合の問題点が、絵にかいたように見えるわけでございます。

 地方財政に占める教育費の割合が高く、教育費が不安定な状況下に置かれること、あるいは自主税源があるところ、ないところの県の格差が拡大するなど、私が先ほど指摘したことが今から五十年前にも起きているわけでございます。恐らく、義務教育費国庫負担制度が一般財源化されるようなことになれば同様な問題が起きることは、これは火を見るより明らかでございます。

 大臣は先ほど、この過去の出来事を教訓にして考えることが大事だということをおっしゃいました。まさにそのとおり、三位一体改革についてはこうした過去の出来事を本当に教訓にして取り組んでいかなければならない、私はこのように考えております。

 また、このときにも議論の対象になっておるのが、教育委員会の財政に関する機能をどうするかということなんですね。現状は、教育委員会の権限は少なく、首長部局によって教育に関する予算編成がされておりますが、旧教育委員会法当時に近い財政に関する権能を与えることも、私は中教審で議論してもいいのではないか。つまり、総額裁量制というものを進めるのであるならば、自由度を増すわけでございますので、そうなりますと、当事者であります教育委員会の考え方が今以上に予算編成に反映されなければならないということを私は考えておるのでございますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

河村国務大臣 総額裁量制の導入によって、地方分権、これは大いに進むと考えておりますし、地方の教育行政、この体制はやはり充実していかなければいかぬ、こう考えます。

 現在、文部科学省は先般、地方分権時代における教育委員会のあり方についても、中央教育審議会に諮問をいたしまして、検討を開始していただいておるところでございます。

 教育委員会制度の発足当時、教育委員会には予算編成権もあったわけですね、一定の権限もあったりして。これが、昭和三十一年に施行、実施された現行制度において、教育行政と一般行政の調和を図る観点から、首長に、市町村長さんに予算編成権、財務に関する権限が移ってまいりました。

 このような経緯も踏まえながら、今後、中央教育審議会において教育行政の、この首長と教育委員会のあり方はどうあったらいいか、もちろん教育の中立性という問題もございます、そういうことも踏まえながら、この教育委員会のあり方について検討していただく、こうなっておるわけでございます。当然、この総額裁量制によってそれだけ地方の自由度が増す、この中にあって教育委員会がどうあればいいかということについても議論をしていただかなければならぬ、検討してもらわなければならぬ、このように思っておりまして、御指摘の点を踏まえて、議論の展開を期待いたしておるところでございます。

横光委員 教育委員会の画一的な指導による問題点ということも議論されてきましたけれども、こういった総額裁量制というものに進むのであれば、やはり教育委員会の声というものは予算の編成にも反映されてしかるべきじゃないかという思いを持っております。

 次に、義教費と憲法の関係でございますが、中教審でも、この問題について、いわゆる教育的な見地から議論が進んでいるとお聞きいたしております。しかし、この委員会としてもこの問題は明確にする必要があるんじゃないか、そういう気がいたしております。でなければ、これはもう財政論ばかりでこういったものを推し進められて、いわゆる教育的見地からこの問題をしっかりと本委員会は、私は明確にする必要がある。

 先日、この委員会でも参考人の方々に義教費の問題でお話を伺いました。私は、そのときに、義教費制度が廃止になれば、憲法違反に当たるというお考えはどうかということをお聞きしたんですね。そうすると、お二方とも、日本PTA全国協議会常務理事の小野田誓さんも、国立教育政策研究所名誉所員の市川昭午さんも、ただ廃止しっ放しということであるならば、やはり憲法に違反するという解釈を持っておるというお答えでした。

 要するに、これからの学校は、家庭、地域、一体となって取り組まなければいけない。その一翼を担う保護者、家庭の皆さん方の代表者、そしてまた研究所の代表者、こういった方がこの問題に対してはっきりとそういった意思表示をされております。

 義務教育というものは、これは申すまでもございません、子供一人一人が社会生活を送る上で必要な基礎、基本、そしてまた、社会や自然の仕組みなどそういった仕組みを学び、習得させることを意味しているわけでございます。同時に、これらの教育は、教育を受ける本人、いわゆる子供たちだけのためではなく、この制度は社会全体の便益にもつながるわけでございます。

 そして、義務教育を保障することによって、最初から言っておりますように、山間地あるいは農村や都市部など、居住している地域あるいは生まれた土地に関係なく、どこの地域に住んでいても、義務教育を修了すれば基礎学力が身につくように、そういう制度になっているわけです。ですから、私は、こうしたナショナルミニマムの確保や教育に果たす国としての責務から、やはり国と地方公共団体が共同責任を負っている趣旨から、この制度は何としても維持していかなければならないと思っております。

 こういった考え方は、一九九七年、ですから七年前ぐらいですか、七月の地方分権推進委員会、この第二次勧告にこういった考えが踏襲されて、そして、義務教育費と生活保護については、国の経常的国庫負担として国が確実に負担するということが明確になっておるんです。この地方分権推進委員会の第二次勧告。そして、この方針が当時の橋本内閣で閣議決定までされて、遵守されてきていたんです。

 ところが、この地方分権推進委員会、任務が全うして終わったら、その後にできた地方分権改革推進会議によって、法律で設立された地方分権推進委員会の考えがほごにされてしまっておるんです。これでは、何のための閣議決定なのか、何のために法律で設置した委員会なのか。

 やはり地方分権推進委員会の二次勧告にはっきりと明記されたことは私は遵守をされていかなければならなかったことだと思うんですが、こういった事態に陥っている。大臣は、教育における国と地方の役割というのは、先ほどからお話しされていまして、重々わかりますけれども、この地方分権推進委員会の流れがこういうふうに大きく変わったことについて、どのようにお考えですか。

河村国務大臣 先ほど御指摘があった地方分権推進委員会、この点で、義務教育費等の真に国が義務的負担を負うと考える分野に限定していく、経常的国庫負担金、翌年の分権計画、平成九年、十年と、このことは閣議決定を、特に平成十年に地方分権推進計画が出されて、明確にうたわれておるわけですね。この考え方がどこでどういうふうな形で曲がっていったかということ、私もこれは極めて重要な問題だと思っております。

 これから、今御指摘もいただきました、改めて検証するとともに、まさに閣議決定に立ち返って、この問題をもう一度原点に戻す必要があわせてあるな、こういう思いを今思っておるところでございまして、やはり義務教育の給与費を二分の一負担する、教職員の国と地方の適切な役割分担、これはもう堅持しなければいけないことだということを、改めて今、これを見ながら強く思ったわけであります。

横光委員 確かに国も地方も財政が厳しい。しかし、そういった地方分権を進めようとする地方分権推進委員会の皆様方、そういった苦しい中でもここだけは死守すべしということなんです。生活保護と義務教育費を国庫負担せいと。それをあえて明記したということの意味の大きさというものを、本当にしっかりともう一度認識し直していただきたい、私はこのように思っております。

 これは先ほども質問ございましたが、さらにちょっと念押しのためにお尋ねをいたしたいと思います。

 学校というのは、教員とともにさまざまな職員がその専門性を発揮しながら、協力しながら成り立っているわけでございます。大臣もそのようにおっしゃっておりました。

 これも先日の参考人質疑のときに私もこのことを聞いたんです、いわゆる事務職員、栄養職員の件を。そうしたら、国立教育政策研究所の名誉所員の市川昭午さんが、非常にわかりやすい、言い得て妙だなというようなことをお話しされたんですね。それは、「この法律が学校教員給与費国庫負担法であるならば教員給与費だけでいいということになります。だけれども、これは義務教育費国庫負担金ですから、教員以外の職員の給与費はもちろん、施設費、教材費その他を含めて保障するべきだ、こう思っているわけです。」非常にわかりやすい説明をされております。

 文部省も進めようとしております地域に開かれた学校、これを実現していくためには、先ほど言いましたように、保護者や地域からの多様な要請に的確にこたえていくことなくして成り立たないわけですね。

 そうなりますと、いわゆる裁量と責任のある学校経営への転換というものが必要となる。であるならば、学校財務やあるいは学校裁量の拡大、あるいは学校情報の積極的提供、学校評議員制度などが図られているわけでございますので、こうした流れからしてみましても、教育活動を支える学校事務の機能強化が不可欠だと私は思っております。いわゆる総括責任者でもあると言えるこの事務職員の存在抜きには学校は成り立ち得ない、こう思うわけでございます。

 また、栄養職員の皆様方も、教職員とともに、学校現場において食教育の充実が図られるように努力しているわけですね。この栄養職員の栄養教諭への制度化も求められているわけでございますが、子供を主人公とする学校再生のためにも、私は、事務職員や栄養職員の皆さんも引き続き学校の基幹職員として位置づけ、そして、むしろ増員こそ図られる必要があると考えております。

 そういった意味で、この事務職員や栄養職員はこれまでどおり義務的負担制度の対象職員として堅持していくというお考えを改めて大臣からお聞かせいただきたいと思うんです。

河村国務大臣 学校教育、まさに学校の現場におきましては、校長のリーダーシップによって、教員、養護教諭も含めて、そこにおられる学校事務職員、そして学校栄養職員一体となって学校が運営される、これがもう大原則でございますし、また、それでなければなりません。

 そういう意味では、教員、養護教諭とともにこの事務職員、そして栄養職員、これは基幹的な職員でありますから、この方々の給与費の負担のあり方、これはまさに国庫負担のあり方、これを今まで貫いてまいりましたし、これからも、学校の基幹的職員としての国庫負担の対象としてきちっと位置づけて堅持していく、これが必要である、このように考えております。

横光委員 最初に、この義務教育費国庫負担制度の問題で、歴史は再び繰り返すというようなことを言いましたが、やはり繰り返してはならない歴史もあるということを最後に申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子君。

石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 この法律案は、小泉内閣の進める三位一体改革に基づくものであります。昨年の共済費長期給付、公務災害補償基金負担金に引き続き、児童手当、退職手当を国庫負担の対象から外すものであります。言うまでもなくこれらは給与であり、国庫負担の対象から外すべきではありません。

 ところが、義務教育国庫負担制度を守り発展させなければならない文部科学省が、広義の給与、狭義の給与などの論を持ち出し、守るべきは狭義の給与などと退職手当、児童手当を国庫負担の対象から外したことは、言語道断と言わなければなりません。

 しかも、法律の附則第二条で、教員等に要する経費の負担のあり方に関する平成十八年度末までの検討の状況を勘案し所要の措置を講ずるものとしているのです。

 委員会審議でも追及したように、これは給与、諸手当、事務職員、栄養職員にかかわる経費に手を入れ、義務教育費国庫負担制度そのものを危うくするものです。参考人も指摘したように、抜本改正のためのステップである法案を本委員会で採決すべきではありません。撤回すべきです。今なすべきは、公教育からの財政的撤退ではなく、世界から大きく立ちおくれている公教育費の支出を欧米並みに拡大し、義務教育無償の原則と教育の機会の均等を確保すべきであります。

 このことを主張して、反対討論を終わります。

池坊委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

池坊委員長 内閣提出、日本学術会議法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。茂木内閣府特命担当大臣。

    ―――――――――――――

 日本学術会議法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木国務大臣 日本学術会議法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 日本学術会議については、中央省庁等改革基本法により、総合科学技術会議においてそのあり方を検討することとされたところですが、この法律案は、その検討結果等を踏まえ、日本学術会議の所轄、組織、会員の選考方法等について所要の改正を行うものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、日本学術会議が、内閣府に設置されている総合科学技術会議と連携して科学技術の推進に寄与する体制を確立するため、日本学術会議の所轄を総務大臣から内閣総理大臣に変更することとしております。

 第二に、部の構成を、七部制から三部制に大くくり化することとしております。

 第三に、日本学術会議会員と連携して日本学術会議の職務を行う日本学術会議連携会員を新設することとしております。

 第四に、日本学術会議会員の選考方法を、学術研究団体からの推薦に基づく方法から日本学術会議自身が会員候補者を選考する方法に変更することとしております。

 このほか、所要の改正を行うとともに、附則において、この法律の施行期日、経過措置等について規定することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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