衆議院

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第19号 平成16年5月18日(火曜日)

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平成十六年五月十八日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  勉君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   参考人

   (独立行政法人大学評価・学位授与機構長)     木村  孟君

   参考人

   (東京都立大学人文学部助教授)          大田 直子君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     加藤 紘一君

    ―――――――――――――

五月十八日

 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第九〇号)(参議院送付)

同月十七日

 教育基本法の改正反対に関する請願(東門美津子君紹介)(第二三〇七号)

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(杉浦正健君紹介)(第二三〇八号)

 小中高三十人以下学級の早期実現、行き届いた教育に関する請願(村井宗明君紹介)(第二三九五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一二六号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、独立行政法人大学評価・学位授与機構長木村孟さん及び東京都立大学人文学部助教授大田直子さん、二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人のお二方に委員会を代表いたしまして一言ごあいさつさせていただきます。

 本日は、大変お忙しい中を本委員会のために御出席くださいまして、心よりお礼申し上げます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序でございますが、木村参考人、大田参考人の順に、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますと、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず木村参考人にお願いいたします。

木村参考人 おはようございます。

 私、ただいま御紹介賜りました大学評価・学位授与機構の木村でございます。

 中央教育審議会の初等中等教育分科会の分科会長として、「今後の学校の管理運営の在り方について」の答申をまとめました立場から、意見陳述をさせていただきたいと存じます。

 中央教育審議会では、平成十五年の五月に、文部科学大臣から、今後の初等中等教育改革の推進方策についてのいわゆる包括的な諮問をいただきました。諮問は、当面の検討事項として二つ挙げられております。その一つが、初等中等教育の教育課程及び指導の充実・改善方策についてでございます。二つ目が、義務教育などの学校教育に係る諸制度のあり方についてでございます。その二つの検討事項それぞれについて検討すべき課題が挙げられております。

 中央教育審議会では、二番目の諮問事項、すなわち義務教育などの学校教育に係る諸制度のあり方についての諮問事項の三つの検討課題、つまり義務教育に係る諸制度のあり方についてが一番目でございます。二番目が、義務教育の条件整備のあり方について、三番目が、今後の学校の管理運営のあり方についての議論を集中的に行いますため、五月二十六日の初等中等教育分科会におきまして、教育行財政部会を新たに設置することを決定いたしました。

 部会では、まず、第三の検討課題を取り上げまして、これにつきまして、地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校、いわゆる地域運営学校のあり方についてと、二番目、公立学校の管理運営の包括的な委託のあり方についての二つの視点から審議を開始いたしました。

 まず、審議経過について簡単に御報告申し上げます。

 これらの事項につきましては、有識者からヒアリングをさせていただきましたり、実践研究を実施しております学校並びに教育委員会からのヒアリングを行いました。また、海外調査、さらには教育関係団体からのヒアリングなども含めまして、教育行財政部会において精力的な審議を行い、昨年十二月に中間報告を取りまとめ、公表をさせていただきました。

 この中間報告につきまして、国民の方々から御意見をいただきますとともに、教育関係機関からさらに意見聴取をさせていただきまして、これらいただきました御意見をもとに、本年三月に、「今後の学校の管理運営の在り方について」の答申を取りまとめたところでございます。

 答申の内容について簡単に御説明申し上げます。

 地域運営学校に関しましては、公立学校の運営に地域住民が参画することによりまして、学校の教育方針の決定でありますとかあるいは教育活動の実践に、地域のニーズを的確かつ機動的に反映させますとともに、地域の創意を生かした特色ある学校づくりが可能となるであろうという期待のもとに、以下に述べます五つの制度化に当たっての基本的な考え方を示しております。

 まず一番目が、地域運営学校は、学校運営のあり方の選択肢を拡大する一つの手段として、学校を設置する地方公共団体の教育委員会の判断によって設置するということ。

 二番目が、保護者や地域住民の学校運営への参画を制度的に保障するために、保護者等を含めた学校運営に関する協議組織、学校運営協議会と呼んでおりますが、これを設置すること。

 三番目として、この学校運営協議会は、教育計画、予算計画の方針などの学校運営の基本的事項について承認をいたすとともに、校長や教職員の人事について任命権を有する教育委員会に対して意見を述べること。この教育委員会は、その意見を尊重して人事を行うこと。

 それから四番目が、学校の創意工夫を生かした取り組みが可能となるよう、校長の裁量権を拡大すること。

 最後の五番目として、地域運営学校自身による自己評価に加え、当該教育委員会は不断の点検、評価を実行し、必要に応じて、指導、指定取り消し等の是正措置を行う。この五点でございます。

 審議をリードする立場の初等中等教育分科会の分科会長として、所感を申し述べさせていただきたいと思います。

 教育行財政部会での検討を依頼されましたこれらの課題は、申し上げるまでもなく、いずれも、国からの規制改革、地方分権に対する強い要請を受けて設定されたものでございます。検討の背景には、既存の公立学校が国民の期待に十分こたえられていないという批判がありますために、新しい制度の導入も含め、公立学校の管理運営全体の活性化を図る必要があるという状況がございました。

 このような状況のもと、部会では、近年の改革の流れを加速し、各学校が国民の期待にこたえて、創意工夫を十分に生かし、学校の担うべき役割を十分に果たすことができますよう、学校の管理運営のあり方をより柔軟で弾力的なものとする視点から、この課題について検討を行うことを期待されていたと了解をいたしております。そのため、議論の視点を、これまでの我が国の教育の基本的枠組みを大きく超えたところまで拡大する必要がございましたので、その点、分科会長としてはかなり苦労をいたしました。

 正直申し上げて、そういう議論のやり方を提案しましたときに、部会全体にかなりの戸惑いが出ましたが、議論を重ねていくうちに、従来の枠組みを超えることによって我が国の教育全体がよい方向に向かうのであれば、それでもいいではないかという雰囲気がかなり出てまいりまして、このたびのような形で議論がまとまったものでございます。ちょっと誇張過ぎる表現かもしれませんけれども、教育関係者としては、ルビコン川を越えたかなというふうな気もいたしております。

 要するに、法律的には枠組みを大ざっぱにつくっておいて、細部については地方に裁量権をゆだねるというのが私どもの基本的な姿勢でございます。

 以上をもちまして、意見陳述を終わらせていただきます。どうも失礼いたしました。(拍手)

池坊委員長 木村参考人、ありがとうございました。

 それでは次に、大田参考人にお願いいたします。

大田参考人 東京都立大学の大田直子です。本日は、意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。

 昨今の教育改革では、イギリスの教育改革の事例が先行事例として言及されることが多いかと思います。本日は、イギリスを研究する者の立場から、この法案につきまして意見を述べさせていただきます。ところで、このイギリスの教育改革という場合、正確にはイングランドだけを指しておりますので、まず最初にこのことを申し上げておきます。

 文部科学大臣が説明されたこの法案提案理由には、

 国民の学校教育に対する要請が多様化・高度化する中で、公立学校が国民の期待に十分こたえることができるよう、公立学校の管理運営の活性化を図る必要があります。このため、地域の住民や保護者がより主体的に学校の運営に参画することを可能とすることにより、地域の住民、保護者の意向に的確に対応した教育活動を実施し、信頼される学校づくりを進めることが重要であります。

とあります。文部科学大臣がこのような認識に至り、改革に乗り出されたということは評価できると思われます。

 今回の法案の焦点は学校運営協議会にあると思われますが、この法案は、これまでの日本の教育改革の論議の到達点から見ましても、またイギリスの教育改革の結果から見ましても、残念ながら不十分な法案であると思われます。

 一九八〇年代、英米諸国から始まった教育改革は、まさに文部科学大臣が御指摘になりました要求にこたえるためになされた改革であると言えます。それは、専ら専門家によって管理されてきた公立学校制度が、莫大な公費を費やしているにもかかわらず、保護者や地域、社会の多様なニーズにこたえていないという現状に対する批判というところから始まっています。

 近代社会の中心的な理念は民主主義と人権です。公教育制度は、教育学に裏打ちされた最善の教育をだれもが平等に保障されるという教育の機会均等の理念を実現するものでした。しかしながら、二十世紀の終わりごろになりますと、医者に対しても患者とのインフォームド・コンセントが求められるように、学校に対してもアカウンタビリティーが求められてきたわけです。

 一九八〇年代の教育改革を担ったサッチャー保守党政権は、所有者意識を高め、学校関係者を教育サービスの生産者とし、保護者や地域住民を消費者と見立て、生産者の側から消費者の側へ権限をシフトさせる政策をとりました。

 具体的には、一九〇二年から設置されることになっていた学校評議会を、これは日本では学校理事会といって紹介されておりますが、混乱を避けるため、私は学校評議会という言葉を使わせていただいています、改めてすべての学校に設置を義務づけ、これを活性化し、保護者代表、地域代表、地方教育当局、これは地方教育行政機関に当たります、LEAと申しますが、その代表、教職員代表で構成すること、そこに、予算、人事、カリキュラムに関して、これまではLEAが持っていた権限を移譲したのです。これが学校に基礎を置く経営という考え方です。

 他方、学校を選ぶ自由を家庭に与え、予算は生徒数に応じて配分されることになりました。それと同時に、ナショナルカリキュラムと、義務教育段階で四回行われるナショナルテストの結果の公表、通学区域と通学校指定制度の撤廃によって学校間に競争を導入し、水準の上がらない学校は自然淘汰されていくことが意図されたのです。

 総じてこれら一連の政策には、LEAと教育専門家の権限を弱体化させる意図が明確にありました。しかしながら、このような保守党政権の意図は、幾つかの点で失敗します。

 一つには、学校評議会がうまく機能しなかったことがあります。保護者や地域の所有者意識がうまく発達しなかったということです。保護者や地域住民が教育に関心を持っておらず、あるいはまた関心を持っていたとしても、それが我が子だけに対して注がれていたり、自分の価値観を学校に押しつけるように機能したりしました。

 学校間に競争を入れ、消費者の権限を強めれば、おのずと学校教育はうまくいくといった単純な想定による保守党政権の改革の進め方では、一番問題を抱えている学校の改善は全く進まず、学校と保護者や地域に互いに不信感だけが募っていった、そういうことが起こったわけです。

 二つ目には、保護者は決して学校のテストの成績だけで学校選択の基準としたということではなかったということです。保守党の思惑では、保護者が教育水準の低い学校を回避するだろうから、おのずとだめな学校は淘汰され、消えていくだろうということが期待されていたのですが、事態は逆で、学校の閉鎖は激しい反対運動をもたらし、政治問題化していったのです。また、幾つかの調査研究では、学校の成績よりも、この学校に来ることが子供にとって幸せかどうか、安全かどうかといった観点から保護者が学校を選択した例も多数あったと報告されています。

 三つ目は、公立学校での成績不振の者が固定的な集団を形成しつつあり、ドロップアウトや若者の軽犯罪はふえ続け、貧富の差は拡大していったというものです。公立学校の教育水準はテストの成績から見れば全体的に上がりましたが、若者の道徳心、公共心の低下や失業問題は余り解決していないという認識です。さらに、ロンドンなどの都市部における貧困地域では、追加資金を投入しても問題がなかなか解決できなかったり、そういったところではよい教師も集めづらくなるという、一度問題を抱え出した学校がますます悪化していくという悪循環も顕著となりました。

 九七年に成立したブレア労働党政権は、こういった反省から、それまでの保守党政府の改革の進め方、つまり、市場に任せる、マーケットに任せるという趣旨からの政府やLEAの非介入政策を見直し、教育水準の向上を至上目的とし、所有者意識をさらに一段進めて、政府、LEA、地方教育当局、学校、そして保護者や地域住民といった関係者全員の新しいパートナーシップということをキーワードに改革を進めております。このもとでは、パートナーはそれぞれ明確にされた自分たちの役割と責任を果たさなければなりません。単に消費者としての保護者や地域の意見を絶対視することによって学校を押さえ込もうとした保守党とは全く違います。

 以上のようなイギリスにおける教育改革の経験を教訓にするならば、今回の法案には不十分な点が多くあるように思います。今回の法案は、地域の住民や保護者がより主体的に学校の運営に参画することを可能とするための法案であると説明されていますが、イギリスの教育改革では、公教育制度全体を、関係者全員の所有者意識を高めるために、そして、それによって教育水準を上げるというふうに改革しているのであって、学校運営協議会を設置する、イギリスでは学校評議会ですが、これを設置することは一つの手段であり、その一部にすぎないということです。ともかく学校運営協議会を認めることにしたというだけのように見える今回の法案には、本格的な改革に着手せず、部分的に修正を加えてその場をしのぐというような感じがいたします。

 また、学校運営協議会の設置によって、教育専門家と保護者、地域住民のバランスをとるといっても、それは極めて不十分であり、依然として行政及び専門家を上位に置く発想から脱却していないように思われます。この法案では、従来からの文部科学省の主張である地域に開かれた学校づくりと矛盾しないレベルで学校運営協議会が考えられていると思われます。この運営協議会には明確な責任も権限も与えられておりません。イギリスの学校評議会は、予算、人事、カリキュラムに関する広範囲な権限を持っています。このような責任を伴わない参画は、無責任な形式化をもたらすだけではないでしょうか。これは学校評議員制度の実施におきまして、既にあらわれているものであると思われます。

 また、法案では、委員の選出方法が教育委員会の任命になっております。イギリスでは、保護者代表と教職員代表は、それぞれの選出母体による選挙となっています。したがって、この法案では、委員はだれの利害を代表するのか、その正統性の根拠が何であるのかが不明瞭であり、さらに、現在のイギリスの事例から考えれば、このような任命制は、自分たちの代表を選ぶことを通じて、また学校評議会の討議や決定をフィードバックされることによって高められるパートナー意識をつくり出すことにも失敗すると思われます。

 また、教育委員会が特定の学校を地域運営型の学校として指定することも、保護者や地域の自発的な参画を損なう要因になる可能性があると思われます。

 もちろん、一斉にこのような改革が行われた場合には、九〇年代前半のイギリスがそうであったと思いますけれども、人材の偏在という問題が如実に出ます。保守党政権はこういった問題を放置する傾向にありましたが、労働党政権は、むしろこういった学校や地域を積極的に支援する政策に出ています。そうした観点に立てば、学校選択や保護者、地域住民の参画を重視する開かれた学校にするといった政策は、これまでとは違って、問題を抱える学校がある場合、その弱点を明らかにし、そこに政府やLEAなどが積極的な救済策を施すことを可能とするためのものということになります。

 しかしながら、今回の法案のように指定校制度をとりますと、こういったダイナミズムが損なわれ、下手をすると、逆に一部の学校を優遇するためにこの政策が利用される可能性がなきにしもあらずであると懸念いたします。これは、特にこうした学校についてのみ、教職員の採用、任用に関して特例的な措置をとろうとする法案の規定にもかかわってきます。

 確かに、非常に短い期間での教職員の異動は、所有者意識そのものも失わせるものとなるでしょう。学校が、一つの教育目的を共有する教職員と保護者、地域住民とで経営されるとき、教育効果は非常に上がると思われます。しかし、今回の法案によって、指定校のみにこのチャンスが与えられるとするならば、学校間の格差をただただ広げるだけになるのではないかと思います。

 また、何をもって指定校を選ぶのか、その基準も明確でなく、教育委員会が一方的に指定することが、果たしてこのような学校単位の教育理念と結びつくという保証もなく、このままではやはり指定校優遇政策に終わるという危惧をぬぐい切れません。また、教育委員会による指定の取り消しも、何をもって「著しく適正を欠く」運営なのか、明確ではありません。現行のような任命教育委員会の場合、任命権者である首長のその時々の判断に左右されて、教育委員会が過剰に反応することも十分あり、その点もまた危惧する点でございます。

 以上、簡単ですが、法案につきましての私の意見を申し述べさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 大田参考人、ありがとうございました。

 以上でお二人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子でございます。

 きょうは、二人の参考人の先生方に大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。私は持ち時間十五分ということでございますが、よろしくお願いを申し上げます。

 今、学校運営協議会の制度ということで、新しい、教育の現場の中に地域の力を導入しようということで改革の大きな突破口が開く、こんな前向きの議論を進めているところでございます。この委員会の中でも、いろいろな可能性につきまして、何とかうまく実現し、そしてその成果を上げていこうという前向きな議論がこれまでの委員会の質疑の中にもあったかと思っております。

 しかし、それが十分であるかどうかということにつきましては、きょう二人の御意見を伺っておりますと、まだまだ課題が大きい、また、その先にさらに大きな目標を立てていかなければならないんじゃないか、こんな思いもいたしております。

 まず、質問でございますが、この間に既に評議員制度という形で導入をされておりまして、公立高校には六割の学校の方にこの制度が導入されているということでございますが、その延長に今回の制度改革があると考えてよろしいのか、この既に実施されている評議員制度そのものの評価の上に、今回、それを乗り越えてこの協議会制度自身を導入しようとして御検討したのかどうか。

 中教審の中のこれまでの取り組み、地域とのかかわりの中で取り上げてきた制度とその評価、そして、それを乗り越えての今回の改革、さらにその先に、これを踏まえてさらに将来大きな改革に向けて議論が進んできたのかどうかということについてまずお伺いしたいと思います。

 木村先生、お願いいたします。

木村参考人 ただいまの御質問に関してお答え申し上げます。

 御指摘のとおり、評議員会制度、今、高等学校で六割設置されておりまして、特にこの評議員制度が大きな問題を抱えているという認識は私どもしておりません。今御指摘のとおり、私どもは、その評議員会制度の延長線上にこの学校運営協議会を据えておりまして、もっと積極的に住民なり保護者が学校運営に参画することを制度的に保障するという立場からの議論を行っております。

 最終的にどこまでいくかというのは、これはもうあくまでその地域のお考えによると私どもは考えておりまして、そういうところで、いろいろ御批判はございますけれども、先ほど申し上げましたように、法律の枠組みだけを準備して、細かいところは全部地域でお考えいただくということにしております。それで、ある地域で非常に先見的な取り組みができて、いい学校が誕生したとすると、それをほかの地域がごらんになって、それに追随してまた御努力をいただく、そういう基本的な思想で議論を展開いたしました。

上川委員 学校の創意工夫を踏まえた上で、先進的な事例をできるだけ応援する形で、それに基づいてさらに進めていく、こういうお考えだというふうに思います。

 大田先生、今の日本のそうした取り組みの仕方ということについて、イギリスでは先進事例ということで、さらに課題を乗り越えて、ブレア政権の中で修正を加えながら今に至っている、こういう御指摘がございましたけれども、今のような日本の取り組みを進めていけば、例えばイギリスのような、これがあるべき姿かどうかということにつきましては議論の余地があろうかと思いますけれども、そうした方向に向かっていくのかどうか、この辺のお考えをお聞かせください。

大田参考人 お答えします。

 方向性としてはそういう方向に向かっていると思いますけれども、その歩みが余りにも遅いのではないか、そういう意識を持っています。

 いろいろな調査で、数少ないですけれども、評議員の制度を見に行ったこともありますけれども、余り実質的なものではないように私は判断しております。

上川委員 イギリスと日本の違いの一つとして、教育委員会の存在というのがあろうかと思います。

 先ほど、お話の中にも幾つか言葉が出てきましたけれども、教育委員会と学校との関係ということについては、この制度がうまくいくかどうかの大変大きなかぎになる、こんなふうに思っておりますが、中央教育審議会の議論の中で、この教育委員会と学校との関係について議論を突っ込んでされたということがございましたら、そのことの内容につきまして木村先生に御意見をちょうだいしたいというふうに思っております。

木村参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、現在、教育委員会のあり方については日本のいろいろなセクターで大きな問題になっております。

 私ども、そのことは十分認識いたしておりまして、どういう制度が望ましいのか、それについて、十五期の中教審が再開されて以来ずっと議論をしてきておりますが、このたび、本格的にその議論に取り組もうということで、教育制度分科会を設けまして、そこで、教育委員会のあり方を抜本的に見直すといいますか、議論をしようということを始めたばかりでございます。

 まだ三回委員会が開かれたばかりでございますけれども、相当長丁場で、しっかりとした議論をやりたいというふうに考えております。

上川委員 今、この法案の中には、教育委員会がさまざまな形で責任のある立場をとるということで規定がされておりますが、今のこの問題についての御検討の大きな流れの中で、この運営協議会、今度の制度とのかかわりの中で、中央教育審議会の中で御議論のことがございましたら、ちょっと触れていただけたら大変ありがたいと思います。

 今度の運営制度の実現の中で教育委員会の果たす役割ということにつきまして、どういう御議論をしてこられたかということについて、二、三よろしくお願いいたします。

木村参考人 学校運営協議会と教育委員会との関係について、やはり相当いろいろな御意見が出ました。従来の枠組みを守ろうとされる方は、やはり従来の路線でいくべきだという方もいらっしゃいましたし、逆に、もう教育委員会と直接関係ないような仕組みにもできないかという議論も出ました。

 しかしながら、現在の日本の法律の枠組み、私は法律の専門家でないのでよくわかりませんけれども、法律の枠組みの中では、教育委員会から完全に独立した形で学校運営協議会を存在させるということは無理であろうということ。それから、いずれにしても将来どういう姿になるかは、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、地方の御選択でございますので、非常ないろいろな可能性があると思いますが、とりあえずはまずその第一歩としてこの答申を位置づけたということでございますので、やはり教育の公性といいますか、そういうことから、どこかがきちんとやはり責任を持つ仕組みをとりあえずは残すべきであろうということから、教育委員会が最終的な権限、決定をするという答申にさせていただいた次第でございます。

上川委員 ありがとうございます。

 私は、制度というのは、もちろん新しい制度を導入していくというのはとても大事なことですし、また、活性化の上でも貴重な制度づくりというふうに思っておりますが、それを受け入れ、実施していく現場の体制、あるいは現場の中でかかわっているあらゆる皆様の意識の改革というか、そういうものがなければ、制度そのものができたとしても、絵にかいたもちになってしまうと。

 先ほどは、うまくいっているところがどんどん進み、またそうでないところがというような御懸念の部分もございましたけれども、そういう意味では、全体の本当にいい質の教育をしていくためには、やはり現場が本当にそのことをしっかりと見据えて、そして活動していくことが大事ではないか、こう思っているわけであります。

 そういう意味では、制度がなくても十分に生き生きとやっていらっしゃる学校もあるし、評議員の制度があったとしてもうまくいっていないところもあるし、恐らく、運営協議会、地域運営学校制度、今度の制度で導入したとしても、うまくいくところとうまくいかないところがあるかもしれない、これはもう多分予測がつくことであろうかと思います。

 その上で、今回導入をする場合の指定校、指定校の先生方、とりわけ学校の校長先生が大変大きな役割を演じるわけでございますが、この学校を担っていらっしゃる校長先生を初めとした教職員の皆様、さらには地域の中で代表者として出られる地域の皆様、それから親御さん、PTAの皆さん、あるいは子供たちと、四者大きな主人公がいるわけですが、この制度をうまく活用して実効あるものにしていくための何か適切なアドバイスということがございましたら、お二人にぜひお願いをしたい、こんなふうに思っております。

木村参考人 ちょっと漠然とした話になるかもしれませんけれども、私も英国に四年ほど住んでおりまして、英国の社会と日本の社会を比べたときにどこが違うかというと、やはり自分たちが地域の一員であるという意識が非常に英国人は強いということだと思います。それに比べて、多分戦前の日本の社会はそういう意識が強かった、この国でも強かったんだと思うんですけれども、どうも戦後その辺の意識が非常に薄れてしまったということから、学校運営そのものがうまくいかなくなっている、そういう事例も出てきたのではないかというふうに思っております。

 そういうことで、やはり、これまで学校評議員会制度が御指摘のとおり存在したわけですが、学校評議員会制度というのは、御承知のとおり、個人としての意見を校長に述べるというにとどまるわけですね。このたびはそうじゃなくて、個人が、つまり教育に関係するステークホルダーがある種の権限と同時に責任を持って学校運営に参画するということで、やはり意識していただきたいのは、責任を持つということを地域を構成する各個人が認識する、そこから始まるのではないかというふうに思っております。要するに、人任せではなくて、自分たちの学校だぞということを地域の方々が認識していただく、そこから始まるのではないかというふうに思っております。

大田参考人 木村先生がおっしゃったことと基本的には同じだと思いますけれども、それを具体的に制度的に考えさせる装置というものをつくらないと、実際には理念、観念論になると思います。

 学校は一つの経営体として組織されるということがまず第一で、それは教育職員、非教育職員すべての者たちの共同の場である、子供の教育をみんなでやるのだということに一つ大きなまとまりを持つということがまず必要ですし、それと、地域と保護者がそれに対して自分たちの責任をちゃんと分担して、お互いにいいものにしていく、そういうことを制度的に保障するという時代に来たというふうに私は思います。だから、制度化というものが、今は現実に物を考えながら動くという制度をつくるということが、今後の大きな課題になっているというふうに考えております。

上川委員 今、木村先生、大田先生からの御指摘のところが、私はとても期待をしている部分であります。

 学校の中に地域の力を入れるということと同時に、今、地域社会そのものが大変薄くなっている。一人一人のつながりも、地域の結びつきというよりも、むしろ趣味とかサークルでネットワークで結ばれていて、自分自身が地域の住民であるという意識はなかなか持たれなくなっている。最近は、治安の問題とか、あるいは福祉の分野でいきますと介護の問題とか、本当に地域の中で共同して解決しなければいけない問題がたくさんございます。そういう中で、地域共同体、共同の意識というものを芽生えさせるのはなかなか大変なことであるわけでありますが、しかし、それがこれからの私たちの社会にとって大変大事なことである。

 そういう中で考えてみますと、今おっしゃった地域運営学校、地域の皆さんが主体的にかかわりながら、学校を核にしてこの共同意識を芽生えさせながら、地域社会そのものにいろいろな角度の中で交流をしながら活動していくという、まとまりのある共同体をつくっていく上でも、私は、学校がその力を持っていくんじゃないかと。学校を変えることが、また同時に、地域社会の今問題を抱えている、この薄れている共同意識というものを再生する大きな力があるんじゃないか、こう思って、学校のこれからに大変期待をしているところでございます。

 そういう意味で、その辺の問題意識の中で、さらに将来に向けてぜひ前向きに御検討いただきたい、中教審の中で御検討いただきたいと思っているところでございますが、その点についての御決意というか、前向きな取り組みの姿勢ということにつきまして、一言だけで結構ですので、よろしくお願い申し上げます。

木村参考人 中央教育審議会では、日本の初中教育を一言で申し上げますと、かなり批判がありますけれども、世界的なレベルで見ると、非常にまだ質が高いんですね。さらに、私ども中央教育審議会では、そのレベルを高くして、その後の高等教育に何とかつなげていきたいというふうな思いを強く持っておりますので、今委員の御指摘のような形で今後とも議論を展開していきたいというふうに考えております。

上川委員 時間が終わりました。本当にありがとうございました。

池坊委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。お二人の参考人の方におかれましては、本日は、大変ありがとうございます。

 まず、お二人の経験に照らしまして、一番最初にお伺いしたいと思っていることがあります。今回の法律案の改正、一言で言って何点かというその点数、それからその理由を、一言ずつで結構ですので、お伺いしたいと思います。お願いします。

木村参考人 なかなか点数は難しいんですけれども、先ほどちょっと私口を滑らせましたけれども、ルビコン川は越えたんだと思うんですね。そういうことからすると、八十点と申し上げたいのですが、私、個人的にもいろいろまだ問題だなと思うところがございますので、七十五点というふうに申し上げたいと思います。評価をやっております関係で、決して高い点はつけないというのが癖になっておりますので、よろしくお願いいたします。

大田参考人 六十点にしたいと思います。というのは、学校評議員制度よりはかなり前進が見られるということです。ただし、木村先生がおっしゃったように、この法案は、やり方次第によっては九十点ぐらいまでいくような可能性を秘めているというふうに思います。

 ただ、そのときにはいろいろ仕掛けを考えなくてはいけないと思いますし、私は、ここでは論じられていないのですけれども、教育長の専門制、資格制というものを復活させて、そこで全体の調和をとるとかその地域全体を調整していく、ほかの学校との調整をする、モニターする、そういう新しい役割が教育長あるいは教育委員会に出てくると思うので、それを十全に保証するような専門家の知識というものを入れない限りは、かなり難しいものがあるような気がいたします。

城井委員 ありがとうございます。

 木村参考人におかれましては、ルビコン川を越えるという努力の中で法案作成に尽力されたことには、心から敬意を表したいと思っております。

 そこでお伺いしたいのですが、先ほど、教育委員会の件、与党議員からも触れられましたけれども、今回の法案の核心として、教育委員会にある意味よるところが非常に大きいというふうに思っておるんですが、なぜ、それが教育委員会にある程度権限が集中されて、学校現場ではないのかというところが一つポイントになるかと思うのですが、木村参考人、この点について御意見を伺えますでしょうか。

木村参考人 その点、先ほども申し上げましたが、将来的には今委員の御発言のような形、そういうこともあり得ると思います。私どもとしてはそういうふうな方向へ行ってくれればいいと思っておりますが、まずは第一歩としてこういう新しい制度を提案したということでありまして、やはり公教育でございますから、安定性、継続性、公平性、そういうことが非常に重要なわけですね。

 そういうことから、だれかがどこかできちんと見ていなければいけない、責任をとらなきゃいけない、そういうシステムを置いておく必要があるだろうということで、まずは第一歩でそういう形にしたというふうに御解釈いただければと思います。

城井委員 ありがとうございます。

 続いて、大田参考人にお伺いをさせてください。

 お話を伺っておりますと、イギリスの教育改革の変遷、とりわけサッチャーさんからブレアさんに移ってくるところの教育改革に学ぶところ、特に公立学校のあり方というところ、その経験に学ぶところが非常に多いのではないかというふうにお話の中で感じました。

 そこで、特にイギリスのこれまでの教育改革の中での実践の部分をお伺いしたいと思います。

 まず、先ほど触れられました学校理事会、お話の中で学校評議会という言葉で言いかえておられましたけれども、この場において、校長先生あるいは教職員がどのような立場で臨んでいらっしゃるのか、そして、生徒児童の参画というものはどうなっているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

大田参考人 学校評議会でいろいろなことの権限がおりていますので、決めることは学校評議会の委員長みたいな人が中心になってやりますが、九名以上二十名以下、学校規模に応じて設定が決まっておりまして、それぞれ分担を決めて、小さな委員会をつくって論議しております。そこには、教職員代表も、親代表、保護者代表も、皆同等の立場で話し合うということが前提になっています。

 以前、校長は議決権のない委員として参加していたのですけれども、現実には、今、ちゃんと一人の構成メンバーとして考えられているようです。

 法律上、在校生は委員にはなってはならないということになっていますし、評議員のメンバーは十八歳以上ということですので、生徒たちの参加というのは一切ありません。

城井委員 ありがとうございます。

 続けて、大田参考人にお伺いしたいと思います。

 そのイギリスの学校においてなんですけれども、教職員の採用、それから人事、給与、その辺あたりの仕組みというものはどのようになっているのでしょうか。

大田参考人 イギリスの公立学校のモデルはもともとの私立学校で、そして、私立学校に公費を出すことによって公立学校化した部分があります。もちろん、今は一〇〇%公費で維持されている学校があるのですけれども。そのモデルがもともとの私立学校ですので、学校教職員の採用すべて、学校単位で行われます。

 定数というものの考え方もありません。席があいた場合は、全国紙に募集を出して、その条件に合う人たちが全国から応募してくる。その採用は、学校評議員会のメンバーで、基本的に校長の採用も決めています。

 それから、学校現場にはシニアマネジメントチームというものが、校長、副校長、そして事務の担当官などで構成するものがありまして、そのメンバーの採用に関してはやはり学校評議会と校長がやるようです。ただ、それ以下の一般の教職員に関しては、校長に権限が委任されておりますので、もうちょっと比較的簡単な形で採用しています。

 給与等々も含めて予算が全部学校におりていますけれども、全国的にモデル賃金ケースというものがありまして、それに準拠した形で給与は支払われているというふうに思います。

 ですから、異動というような発想は全くありません。昇任、昇格もないので、ほかの学校で空きポストがあったときに、あるいは、自分の学校でも空きポストが出たときに改めて応募をして、そしてインタビューを受ける、そういうシステムになっております。

城井委員 そうすると、そういう状況あるいは仕組みの中で、現在のイギリスの学校評議会が抱えている問題点ということを指摘していただくと、どのような点がございますか。

大田参考人 一番の問題は、地域の、あるいは地方自治体レベルですけれども、財政の格差というものが予算に反映しやすいということから、非常に貧しい地域では余り高い給料が払えないとか、ベテランの教師は避けるとか、そういったようなことも起きています。

 そして、地域が貧しいところでは、また人材の不足ということが顕著でありまして、学校が働きかけたいような保護者が一番関心を持ってくれないというようなこともありまして、親代表になり手がなかったとか、そういったところもたくさん出てきたというふうに考えています。

 ですから、一番の問題は、制度はつくっても、なかなかそれに積極的に参加してくれるような方たちがいないという地域が出てくる、そういう問題ではないでしょうか。

城井委員 ありがとうございます。

 これまでの審議の中で論じてきているわけですけれども、今回、この法案が目指そうとしている新しいタイプの公立学校、ちょうど大臣に私が代表質問をさせていただいたときに、大臣が、日本版のチャータースクールというような表現をなさった経緯がございます。

 ただ、今のところ、仕組みを見たときに、本当に日本版チャータースクールと呼べるところにあるのかどうかということが、少し私は疑問に思っているところがあります。

 そこで、お二人の参考人、それぞれお伺いしたいと思うのですが、これまで中教審でも論じてこられたと思うのですが、この新しいタイプの公立学校の制度、これはいわゆるチャータースクールと呼んでいいものなのか、それともイギリス型のようなものなのか、それともというところを、どのように見ていて、どのあたりがそう見える理由かということを、あわせてそれぞれの参考人にお伺いしたいと思います。お願いします。

木村参考人 チャータースクールということが国民的な議論になりましたのは、委員も御承知のとおり、例の教育改革国民会議が発端でございます。私もそのメンバーで参画しておりましたから、よく覚えておりますが、そのときには、そのそもそもの趣旨は、ステークホルダー、つまり、地域住民並びに保護者が積極的に学校運営に参画してもらうような学校をつくりたいということからの発想でありまして、議論していくうちに、どうもチャータースクールとは違うぞという議論になりました。

 チャータースクールというのは、私もアメリカで見てまいりましたけれども、かなり広い概念を持っております。例えば、今の日本でやろうとしているような学校もありますし、逆に地域を越えて、父兄が、ある意図のもとに特殊な学校をつくろう、そういうこともチャータースクールというふうに呼ばれております。

 さらには宗教団体が、宗教団体といいますか、教会系のグループが非常にイノベーティブな学校づくりを目指してチャーターを申請するということもありますので、そういうことからすると、私どもが今議論している地域運営学校よりは少し広い概念を持っているということで、教育改革国民会議でも、御承知のとおり、後半の方ではチャータースクールという言葉を使うのはやめまして、コミュニティ・スクールという言葉を使ったのは、そのためでございます。

 ですから、私どもは、あくまで地域という、地域を越えるのではなくてその地域の中で、住民、それから保護者が積極的に学校運営に参画をするという仕組みをつくろうということで、いわゆるチャータースクールとはかなり隔たったものであるということは申し上げられると思います。

大田参考人 これまでの文書や研究書、例えば、関係者へのインタビューに基づいて書かれました黒崎勲教授の著作によれば、それぞれの立場から、あえてあいまいなまま議論が進められているような気がします。

 私自身、金子郁容先生ともお話ししたことがあるのですが、金子先生のおっしゃっているコミュニティ・スクールというのは、市町村が基本的に設置主体であり、イギリスの学校に基礎を置く経営というもののアイデアであって、従来の教育委員会制度とかなり近いものを感じています。そうしますと、地域運営型学校が、既存の公立学校について教育委員会が指定するということであれば、学校教育の供給主体の多様化を意識しているチャータースクールとはならないと思います。

 ただし、仮に、この地域運営型学校というものが、自分の教育理念を実現させたいと希望する公立学校の教師たちとか保護者たちとか、あるグループに幾つかの、今空き教室がたくさんありますから、三つぐらいでいいのですが、その空き教室を貸して、新しい学校、学校の中に小さな学校をつくるというようなことをして、自分の思うとおりの教育をやらせるというようなことが可能であるというふうになれば、これはニューヨーク市のイーストハーレムで始まった、学校選択とスモールスクール運動のそもそもの発端と同じになるので、そういうことができれば、この案自体が公立学校に対して与えるインパクトというものは、かなりのものになるというふうに考えております。

城井委員 ありがとうございます。

 最後に、お二人にお伺いしたいのですが、私自身も、今回のこの法案がつくろうとしている新しいタイプの公立学校は、日本のいわゆる学校運営に、がつんと刺激を与えるものの入り口の第一歩だという認識は、私も持っておるところでございます。

 ただ、その扉を開いた後に、では、そこをきっかけにどこまで学校運営を変えていけるのかというところがポイントになるだろうという中で、今後の日本の学校運営に求められているものというものは何なのかというところを、最後に、お二人のそれぞれから御指摘をいただきたいというふうに思います。

木村参考人 確かに、先ほどから申し上げておりますように、この私どもが答申で提案いたしておりますことは、見方によっては非常にファジーなものであるというふうな見方ができるかと思います。

 私は、それはやはりファジーなものにしておいて、地域にまず考えてもらうということ。これは、教育の世界だけではなくて、日本の社会構造すべてに、地域が率先していろいろなことを考えるという、ちょっと言葉は使い過ぎかもしれませんが、習慣みたいなものを根づかせていかないと、日本というのは変わらないと私は信じております。

 そういうことから、地域がそういう先見性のあることをやれるような仕組みにしたということでございまして、やはり今後このシステムがうまくいくかどうかは、いかに先進的な地域が出てくるかにかかっていると思います。私は、その点については少し楽観しておりまして、いろいろな革新的なといいますか、先見的な首長さん、市長さん、知事さんとお話を申し上げて、決してこれは夢物語ではない、多分実現できるだろうというふうに考えております。

大田参考人 私も、基本的には木村先生がおっしゃったことと同じなんですが、日本の場合、学校教育を多様化するときに、私立学校をつくるというハードルは非常に高いものがあります。ですから、いろいろな意識を持った人たちが新しい学校をつくって、トライアルができるようなシステムをつくるというのは大事だと思います。

 そしてまた、先ほど木村先生がおっしゃったように、革新的な首長さんたちがいろいろな実験をしてくると思いますが、そのときに一番懸念されるのは、やはり首長というのは政治家出身でありますので、そこに教育行政というものの中立性といいますか、教育として、その時々の政治に左右されないで永続性などを担保しなくてはいけないので、先ほど申しましたように、やはり教育委員会と教育長の復活というものを私は強く念頭に置いております。

 そしてまた、イギリスでも行われたのは、校長の免許状も新しく導入されておりますので、そういった専門職の力量全体も向上していかないと、非常に多様化するニーズにはこたえ切れないのではないかと思います。ですから、今のように、革新的な部分を許すにしても、専門職制としての立場とそれから役割というものをもう一度きちんとつくり直す必要性があるというふうに考えております。

城井委員 お時間が参りました。御意見を生かして今後の審議をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

池坊委員長 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。お二人の参考人の先生、貴重な御意見、ありがとうございました。

 先ほどの両先生のお話ですと、まず木村先生の方は、評議員制度はどちらかというと校長の諮問機関だったけれども、学校運営協議会というのは、個人に責任を持ってもらうんだ、自分たちの学校だという思いを持ってもらうための制度だというお話がございました。大田先生の方からは、それはそうなんだけれども、そこにもう少し具体的な装置がなければ、なかなか動いていかないんじゃないかという御意見がございました。この点について、ちょっとお尋ねをしたいんです。

 「今後の学校の管理運営の在り方について」の中で、このような記載がございました。学校運営協議会の設置は、まず「学校の運営への保護者や地域住民の参画を制度的に保障するための仕組み」だと。これを大前提として、

 学校運営協議会の委員には、保護者や地域住民を代表する立場にある者として、学校に対する保護者の要望や地域ニーズを公平・公正に、かつ、幅広く把握・集約し、学校運営に反映させることが求められる。さらに、基本的な方針に照らした学校の教育活動の実施状況について絶えず目を配り、評価を行い、必要があれば改善を求めるなどの働き掛けを行うことなども期待される。

これは、ここまでできたら本当にすごいなとは思うんですが、実際に保護者、地域住民にこれだけの能力のある方がどのぐらいいるんだろうか。また、保護者を代表する方、地域住民を代表する方の選定の仕方というのが大変難しいと思うんですね。

 木村先生がおっしゃっていたように、イギリスのようにコミュニティーというのがきちんとあれば、その中でこの人はこういう役割を果たしているとかあると思うんですけれども、日本の場合には、やはり地域住民の代表というと、自治会の会長さんをやられているとか、そういう古くからの地域にいた方だとかいうふうになりますし、保護者の代表というのはもっと難しいと思うんですね。

 私、子供三人おりまして、まだ下が小学校五年生なんですが、学年が始まるときの会に行くと、だれがPTAの役員をやるんだというのでみんな逃げまくるわけですね。そこの中から、六年間のうち一回はやらなきゃならないからということで引き受ける方が一応PTAの役員をやっている。では、そういう方が本当に保護者の代表という地位にあるのか、そういう問題もあると思いますので、今、中教審の学校の運営のあり方に関する中の一部分を紹介させていただきましたけれども、実際に選ばれた方たちがこれだけのことをやり切れるのか、そこに対してちょっと大丈夫なのかなというふうに思うんですが、まず木村先生に、それがどうなのかということ。

 大田先生には、そういうふうなことをするためにもう少し具体的な、本当に地域の代表、保護者の代表というような人を選べるような何か仕掛けとか装置について、イギリスのを参考にしながらでも結構ですので、先生がお考えのようなそういう仕組みや装置がありましたら、ぜひ御紹介いただきたいと思います。

木村参考人 確かに、委員の御指摘のような心配を私も持っております。ただ、それを議論していたのでは多分先へ進まないだろう。むしろ、そういう環境をつくって、そういう先見的な方たちを育てていく、ちょっと言葉は口幅ったいですが、育てていく、そういうシステム設計にすべきではないかということを私は強く感じております。

 ちょっと余談でありますけれども、選択を任されると、いろいろ委員御心配のようなことがあるんですけれども、案外うまくいくということを何度か私、大学の教師の生活を三十三年続けておりまして感じております。

 その一つが大学院の飛び級。つまり、三年から大学院に行けるという制度をつくりましたね。そうしますと、それまでは成績のよい学生というのは、当然自分は大学院に行くものだ、つまり四年終わってから行くものだと思っていた連中が三年で行けるとなると考えるんですよ。それで、自分が本当に三年で行っていいかどうかということを、真剣に仲間でも自分でも議論し始める。そういうことによって学生が驚くほど変わってしまったんですね。

 ですから、私は、むしろそういう制度設計を、ファジーな制度設計をすることによってやはり住民の皆様方に考えていただく。そして、今委員が御指摘のような立派な方が少しでもたくさん出てくるような仕組みを考えるべきだ、そういうふうに思っております。

大田参考人 一番難しい問題だと思います。

 イギリスの場合は、地方教育当局代表者というのは、自分でボランティアで登録制にしていまして、そこから、政党支配なものですから、バランスを考えてLEA自体が学校に配置していくのが代表なんですが、教職員は教職員の選挙で選ばれます。それから、保護者は保護者の選挙で選ばれます。それでもなかなか決まらないという実態がありまして、あるいは、選ばれても、積極的に活動するというのはなかなか時間がかかると思います。

 日本の状況などを考えますと、先ほど言いましたように、一つの学校すべてをやるのはとても大変だろうと思いますので、例えば小さな学校をつくって、そこで自分たちがやりたいという人たちにまずチャンスを与えるというようなところを幾つかつくって、それがおもしろそうで、なおかつ生き生きとした学校制度になれば、多くの方たちが興味を持って、自分たちもやってみようかというふうになるのではないかなとは予測をしております。

富田委員 また、運用の面についてちょっとお尋ねをしたいんですが、先ほどの「管理運営の在り方について」の中に、「例えば」ということで、

 学校運営協議会が、教職員の公募を求めたり、任用の候補者について要望するなど、学校運営協議会が人事について任命権を有する教育委員会に対して意見を述べることができ、当該教育委員会においては、その意見を尊重して人事を行うなどの仕組みを設けることが考えられる。

というふうになっております。

 実際にこのように運用されたときに、先ほど大田参考人が懸念されておりましたけれども、指定校、指定された学校とそうでない学校との間で格差が出てくるんじゃないか。また、指定校の中で、運営協議会の中からこの先生はちょっと問題ありというようなことが出てきたときに、教育委員会の方できちんとそこをうまく配置ができるのか。教員人事の公平性というものをどうやって担保していくのかというのがまた新たな問題として出てくると思うんですが、その点については両先生はどんなふうなお考えでしょうか。

木村参考人 確かに、私どもが議論している中で、そういう問題があるということを認識いたしております。結局、ちょっと私の議論は理想論に過ぎるかもしれませんけれども、やはりそこのところも乗り越えていただかないといけない。

 それから、ちょっとあれですけれども、指定校、指定学校というのが表現がよくなくて、いかにも教育委員会が指定をするというふうにとられますが、実はそうではなくて、よくお読みいただきますと、教育委員会が、教育委員会は地域をリードしますけれども、その地域にそういうニーズがあるかどうかというのをまず十分に調べてから指定するなりなんなり、ゴーということを決定するということでありますので、ちょっと指定という表現が私はよくないと思っております。それを申し上げておきます。

 本題に返りますと、確かに委員御指摘のような問題があろうかと思いますけれども、先ほどから申し上げておりますように、やはりそこのところは一段と乗り越えて賢くなっていただかないと、この制度はできない、そのためのシステムづくりだというふうに御解釈いただければと思います。

大田参考人 まず、ちょっとこの法案は出発点が逆転しているのかなと思うところがあるんですが、イギリスなどの場合、学校選択が最初に入ってしまいましたので、学校は独自の教育理念を掲げます。その教育理念のもとに教職員、保護者が参画をするというようなことがありまして、この教育理念がいろいろな、学校によって、ミッションといいますけれども、全部、前面に出るわけですね。それで、それを共通にする者たちが集うという、まあ建前上ではありますけれども、そういう理念がございます。

 そうすると、今のような公立学校全般ではなく、そこにやはり理念の多様化みたいなものを実現させていかないと、最初に学校があって、そこに何か協議会をつくるというようなイメージがこの法案では強いんですけれども、それではちょっと逆転しているような気が、済みません、ちょっと何を言っているかよくわからなくなりましたが、思います。

富田委員 校長の裁量権の拡大に関して、ちょっとお尋ねをしたいんですが、大田先生は、もっと専門性を持たせるべきだという御意見がございました。

 今回のような、この改正にのっとって学校運営協議会ができていけるようになると、管理のあり方についての中にも、こういうふうに書いてあるんですね、「校長には、学校を取り巻く地域の様々な関係者と十分なコミュニケーションを図り、相互の連携・協力を確保しつつ、学校の責任者としてリーダーシップを発揮する高い力量が一層強く求められることとなる。」マネジメント能力、コミュニケーション能力というのがものすごく大事になってくると思うんですが、申しわけないんですが、今の小学校の校長先生にそういう方がどれだけいるのかなと。

 私、先週の土曜日に子供の運動会がありましたので、学校へ行って、校長先生にまだごあいさつしたことがなかったので、ちょっとごあいさつしたんですが、やはり地域のことを知らないんですね。

 だから、こういう先生方に国や地方自治体がどうやって、そういう専門性を高める、地域の皆さんとコミュニケーションをとって、地域にどういう方がいて、学校運営の中にどういうふうな方に入ってきてもらうんだという、そういう知識も能力も必要になってくると思うんですが、そういったことについては、中教審でどんな議論がされて、どうあるべきだというふうに木村先生はお考えになるか。

 また、大田先生は、イギリスの研究の中で、校長先生というのはどういうふうな専門性を持って、また、その専門性を持つためにどんな制度的担保が必要なのか、御意見がございましたら、お聞かせ願いたいと思います。

木村参考人 御指摘のとおり、現状でいきますと、確かに、一般の方が校長先生をごらんになって、そういうコミュニケーション能力だとかマネジメント能力、そういうものを含めてリーダーシップが本当にある方がいるかどうかというのは疑問だと思います。まあ私はかなりの数いらっしゃると信じておりますけれども、確かに、疑問視されるのは当然だと思いますが、それはそういう場を与えてこなかったからであって、やはりお与えいただきますと、先ほどの比喩ではありませんけれども、随分変わってくるのではないかというふうに思います。

 現実に、国立大学、四月から独立行政法人化しましたけれども、全部とは言いませんけれども、同じ方が引き続き学長をおやりになる場合でも、かなりやはり学長先生の意識というのは変わっております。そういうことから、やはりそういう場を与えるということが一つ。

 それからもう一つは、英国が非常に得意でありますけれども、そういう研修の機会をふんだんに設けて、そういう人材を研修によって出していくというふうな努力も国としてする必要があるのではないかというふうに考えております。

大田参考人 イギリスの場合は、サッチャー政権のもとで最初に行われた教育改革が非常にラジカルで、予算を生徒数に応じて配分するということで学校の競争を導入しましたから、校長が一生懸命やらないと生徒が来ない、したがって予算が減る、こういうメカニズムを持っているわけですね。

 その後、それまでは、イギリスは校長は教師のベテランの人たちがなるというふうに思われていましたが、マネジメントの方も重視されるようになって、労働党政権になりましてからは、全国に一つですが、わざわざその養成のためのカレッジもでき上がっていて、校長の免許状というのがそのコースを経た後で発行されるようになっております。

富田委員 最後になりますが、学校運営協議会でどういうことが議論されているのかという情報公開というのも、地域の人たちに興味を持っていただくという意味では非常に大事だと思うんですね。

 学校評議員制度が動いておりますけれども、実は、私の地元、習志野市でも、半分ぐらいは学校評議員制度がある、私の子供が行っているところはない、どんなふうな活動をしているのかもよくわからない。

 平成十四年度から、新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究というのが始まりまして、その中の一つの小学校に習志野市の秋津小学校というのが入っております。この小学校でどういったことをやっているのかが、ほかの小学校にいる保護者にはわからない。せっかく同じ地域で実践的な研究に取り組んでいるのに、なぜその広報活動をしないのかなと思うんですが、そういったことについて、今後どういったふうにやっていくべきだというふうにお二人の先生はお思いになりますか。

木村参考人 御指摘の点は非常に重要な点だと思います。

 先ほどから申し上げておりますけれども、従来の学校評議員制度に比べますと、学校運営協議会制度は、そのステークホルダーに一定の権限を持たせるということですね。権限を持たせるということは、逆に言いますと、これは評価の対象になるということでございまして、権限を持つということとその権限を持った人たちが評価をされるということは表裏一体でなければいけないということで、答申にも書いてございますように、三つの項目、すなわち「学校運営協議会が期待される機能を十分に果たしているか、」以下、「地域の信頼に応える学校づくりに具体的な成果が上がっているか」といった項目について、第三者評価を受けるべきであるという提案をしております。

 ですから、やはり権限を持つということと評価をするということは同時に行われなければいけないことであって、かつその第三者評価の結果を情報公開するということ、これが非常に重要だというふうに考えております。

 それから、権限を持った方は、当然、その地域の教育のステークホルダーに対して説明責任を負うわけですから、ここでもまた、情報公開というのは必須の条件になると私は考えております。

大田参考人 イギリスの事例で御説明したいと思いますが、イギリスの場合は、学校評議会が年に一度報告書をまとめまして、それが各保護者、関係者に配られます。それから、教育水準局という、視学官制度ですが、四年に一遍、学校の視察をいたしまして、その報告書はインターネットに公開されます。

 それからもう一つ、学校のテストの成績など、それからドロップアウト率、付加価値評価といったようなものを加えまして、PANDAと呼ばれていますが、そういうものもインターネット上で公開されておりますし、学校に保護者その他の人たちがいつでも来てくださいというようなオープンデーもしょっちゅう設けて、なるべく情報をすべて公開する、もちろんまずいものはありますけれども、そういうできる限りの公開をするという方向で動いております。

富田委員 時間が参りました。ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。きょうは、参考人としての貴重な意見陳述、本当にありがとうございました。

 早速、お伺いをしたいと思いますが、まず木村参考人にお願いをいたします。

 この法案は、昨年の十二月二十二日に出された総合規制改革会議の規制改革の推進に関する第三次答申に基づくものだという説明を文部科学省の方から私どもよく聞くわけでございます。

 その点で伺うんですが、規制改革会議の答申はコミュニティ・スクールの法制化を求めていたと思うんですね。新しいタイプの学校であるコミュニティ・スクールは、教職員人事、予算使途及び教育課程の決定などの学校運営について、学校、保護者、地域の独自性を制度的に担保する一方で、地元代表や保護者代表を含む地域学校協議会が地域に対して説明責任を負うという、地域コミュニティーに開かれた責任のある経営体として地方公共団体によって設置されるという提言があったかと思います。そういう意味で、コミュニティ・スクールの設置と一体のものとして地域学校協議会という提案があったかと思うんですね。

 今回の法案は、そういう意味では、コミュニティ・スクールではなくて普通の学校で、教育委員会の指定する学校に学校運営協議会を置くということにしたわけでございますが、どうしてこうなのでしょうかということを伺いたいのです。

木村参考人 総合規制改革会議のコミュニティ・スクールという表現は、私の想像いたしますところ、多分、教育改革国民会議からの流れを受けてコミュニティ・スクールという表現をお使いになったんだというふうに思っております。

 先ほど申し上げましたように、教育改革国民会議でもかなりその定義についてはふらふらしておりまして、当初チャータースクールということから議論が始まったんですけれども、どうもそれは違うぞということで、要するに、精神は、地域の住民、保護者が学校の運営に参画する学校ということでコミュニティ・スクールというものを定義づけておりましたので、総合規制改革会議でおっしゃっているコミュニティ・スクールと今回の地域運営学校、私どもは特に矛盾しないというふうに考えております。

石井(郁)委員 最初の意見陳述で、木村参考人の方からは、三月四日に出された中教審答申、「今後の学校の管理運営の在り方について」、その中身の御説明が大変あったかと思います。

 その点なんですけれども、今のお話のように、学校運営協議会という名前からしても、規制改革会議答申の実施ということが前面に掲げられながら、実際はこの中教審答申を法案化したという流れとして見ていいのでしょうか。

木村参考人 全体的な姿は、私、必ずしも全部把握しているわけではございませんけれども、そういうふうにお考えになってよろしいかと思います。

 要するに、総合規制改革会議でもアイデアをお出しになりましたけれども、あくまで教育の問題であるから、教育の問題は中教審に任せるというふうにおっしゃったというふうに、私、記憶しておりますので、そういう立場から私ども議論をして答申をまとめたということだと思っております。

石井(郁)委員 中教審が三月四日に答申をされたということで、この法案の提出というのは三月十二日ですかね。だから非常に、答申を出されると直ちに法案化という点でいうと、国会の方は本当に驚くばかりというか、なかなかついていけないような状況もあるんですけれども、そういう流れがあるということが一つわかりました。

 それで、その点で、またこれも木村参考人に伺いますけれども、中教審答申が、「義務教育諸学校の管理運営を包括的に委託することについて」、委託という言葉が出ているんですけれども、特に検討する必要があるということが述べてございます。それで、公立学校の管理運営の委託に当たっては、「その対象は、当面、幼稚園及び高等学校とし、学校教育としての質の確保に十分配慮しつつ、検討することが適当」ということがありますけれども、中教審としては、この学校運営協議会に管理運営を委託するということをお考えになっているのでしょうか。この委託という問題と本法案との関係なんですけれども、どういうふうに理解したらよろしいでしょうか。

木村参考人 私どもが議論しました立場では、今委員のおっしゃった二番目の管理委託については、また一番目の地域運営学校とは別の問題として考えております。例の設置者管理主義ですか、それとの兼ね合いで今の御質問のことを議論したということで、一番目の地域運営学校の問題とは別の問題として考えております。

石井(郁)委員 重ねてもう一点、本法案のかかわりでいいますと、それはないと考えてよろしいということでしょうか。

木村参考人 私はそういうふうに思っております。

石井(郁)委員 大田参考人にお聞きをいたします。

 今回の学校運営協議会には、法文上、教職員、校長というのを加えていません。イギリスもそうだと思いますけれども、こういう制度を持っているところには、教職員、校長が入っているかと思うんですね。私は当然加えるべきだと考えておりますけれども、お考えをお聞かせください。

大田参考人 私もそういうふうに考えております。すべての構成員が参加すべきであろうというふうに考えます。

石井(郁)委員 さらに大田参考人にお伺いいたしますけれども、アメリカでもシカゴの学校協議会というのがございますが、高校の場合は生徒が参加しているというふうに聞いています。フランスやドイツでも、同様の会議には生徒代表が参加するということがあるわけですね。

 子どもの権利条約は日本も批准しておりますから、そういう批准している国としては、学校運営協議会として子供の意見を聞く、生徒の意見を聞く、あるいは生徒を参加させるということは当然考えてしかるべきだと私は思いますけれども、この点ではいかがでしょうか。

大田参考人 イギリスでも、学校評議会を形成するときの最初のアイデアに、十六歳から十八歳ぐらいの生徒は参加させてもいいのではないかという論議がありました。しかしながら、人事の問題とかが会議の議題になりますので、というようなことから推察しますが、今回の法律では、十八歳以上の大人というふうになっておりますし、その学校に登録している生徒はなってはならないという規定が組み込まれております。

 権限の問題と、それからどこまでの生徒が生徒として意見を言うかというと、今度は逆に、生徒会ができまして、その生徒会で意見を集約し、それを教職員が考慮するというふうなシステムに今移行していると思います。

石井(郁)委員 それから、これもまた大田参考人に伺いたいんですけれども、こういう運営協議会に参加する方々というのは代表制という形をとっているかと思うんですけれども、教育委員会の直接任命というのは地方教育行政当局を加えるときなどごく一部だけれども、今回の場合は、こうした代表制ではなくて、教育委員会は直接人選して直接任命するというやり方ですね。こういうやり方についてはどのようにお考えでしょうか。イギリスの例とか、諸外国も勘案いたしましてお聞かせいただければと思います。

大田参考人 先ほどのときも申し上げましたけれども、これですと個人の資格として参加するという形でありまして、果たして個人の意見が全体の保護者の意見となっているかどうか確かめようがないというような、そういう懸念を持っております。

石井(郁)委員 ちょっとぽつぽつとお聞きして申しわけないんですけれども、私、先ほど、構成員としてというか、子供が参加するということについて大田参考人の御意見を伺ったんですが、この点では木村参考人にも伺っておきたいと思うんです。

 先ほど来、この法案はルビコン川を渡ったという例えを言われまして、これからどういうふうになっていくかという意味では大変期待もされるというお話があったかと思いますけれども、ルビコン川を渡ったという表現をされるとすれば、私は、やはり日本の教育にももっと子供参加という視点が加わっていいのじゃないか。世界はそのように幾つかの国で、いろいろなケースはあるとしても、進んでいるわけですから、それこそが本当にこの中身をよくしていく重要なポイントではないのかというふうに考えておりまして、その点での木村参考人の御意見も伺いたいと思います。

木村参考人 私も、やはり学校運営に生徒の意見を聞くということは非常に重要なことだというふうに認識いたしております。

 ただ、現在の学校運営協議会の性格づけが、非常勤の特別職公務員というふうになっておりまして、ですから、そういうことでいうと、現状では制度的に無理であるというふうに私ども考えております。

 理想的な姿としては、今委員御指摘のとおり、子供たち、直接参画させるということは、先ほど申し上げております権限との関係で非常に難しいと思いますけれども、意見を聞くということは大いにあってよろしいことだと私自身は理解しております。

石井(郁)委員 では、続けて木村参考人にお聞きしたいと思いますけれども、今回は非常にかなり大まかな形で出して、地方がいろいろこれを受けとめてやっていくだろうという話があったかと思いますけれども、先ほどお話の中で、地方のいろいろ自治体では進んだ経験ができつつあって、そして、さらにこの法案でもっと取り組もうということがうかがえるというお話がありましたけれども、ちょっとそういう事例として、どんな芽生えとして、そしてどういう取り組みがされているのかということで教えていただければと思います。

木村参考人 私、余り詳細について存じておりませんけれども、中教審の場で委員として参画されております市の首長さん、そういう方から伺うと、もう非常に沸々たる情熱を教育に対してお持ちであるということで、例えば、ある首長さんは、もう人事権も全部市に任せろというふうなことすらおっしゃる。そうすると、もう市の学校は一遍によくなるよというふうなことまでおっしゃっている。なかなかこれは議論のあるところで、一つの市がよくなっても、ほかの、隣の市がだめになったらという問題がありますので、今すぐに移行できないと思いますけれども、そういう非常に情熱を持っておられる首長さんがたくさんいらっしゃいます。やはりそういう方をぜひ応援するようなシステムにしたいということで、私どもも議論をいたしました。

 具体的には、私が非常に感銘を受けておりますのは、ちょっと個人的なお名前を挙げてよろしいでしょうか、静岡県の掛川の榛村さんですね。もう本当に早くから、私も随分おつき合いを長くさせていただいておりますけれども、生涯学習ということで町おこしをやろうということ。例えば、非常にうまい、住民の総意に基づく土地憲章みたいなものをおつくりになっておりましたので、バブルのときも住民が投機に踊らず、私の観察するところ、掛川というのは非常にいい町になっております。

 そういうことですから、そういう首長さんがかなりお出になっているということは確かだというふうに思います。教育の細かい実践例については、ちょっと私存じておりませんので申し上げられませんけれども、掛川の例は非常に参考になる例ではないかと思っております。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 あと、最後に一点ですけれども、まだ時間がありますので、大田参考人に伺いますけれども、なかなか委員というのは、住民の代表と一口に言っても、いろいろ、どういう利害がかかわっているのかとか、それぞれやはり利害が出てくるだろうという意味での難しさというのがあると思うというお話がちょっとあったかと思うんですが、その辺で何か御意見をいただければと思います。

大田参考人 余り具体的に考えられないというのが正直なところでございますけれども、やはり、その地域と子供たちについて一番関心がある人たちから選ばれるというのが理想であろうかというふうには考えております。

石井(郁)委員 時間が参りました。どうもありがとうございました。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、木村参考人、大田参考人、それぞれに貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 まず、木村参考人にお伺いをいたしますが、三月に出されました中教審の答申ですね。この中身の中で、「今後の学校の管理運営の在り方について」ということで答申が出されておりますが、現在の学校運営の状況に対して非常に厳しい指摘がされております。硬直的だとか画一的だ、これに対極するように柔軟性、多様性がない、あるいは改革に取り組む動機づけが働きにくい、効率性が十分に意識されていない、閉鎖性が強い、地域社会との連携を欠きがちである、非常に厳しい内容が盛り込まれております。

 そういったことを受けて今回の改革ということに向かわれたんだと思いますが、これがすべてではなかろうかと思いますが、こういった状況で、現在の学校の運営のあり方というのはこんな状況なんだろうと。となりますと、児童生徒あるいは保護者、地域住民のどのような期待に現在の学校運営がこたえていないのか、そのあたり、ちょっと具体的にお聞かせいただければと思うんです。

木村参考人 まず最初の、非常に厳しいことを答申の中に書いてあるという御指摘でございますけれども、これは、議論しましたのはほとんど教育関係者でございますので、自戒の念を込めてこういう表現にしたということを御理解いただきたいと思います。

 私は、先ほど申し上げましたように、日本の初中教育というのは決して世界的に見て、平均的に見ると劣っているとは思っていませんで、むしろかなり高いステータスを保っているというふうに思っております。ただ、局部的にかなり巷間御指摘になっているような問題が出ていることは確かでありまして、そのことを強調して書かせていただいたということでございます。

 それから、どういうニーズといいますか、そういうものに応じるべきかということでありますけれども、やはり今の世の中、ITだとかそういうものの進歩によりまして非常に激しく変わっている。そういうものに対して、どうも公的セクターの教育システムは追随できないのではないかという批判がかなりあるんですね。そういうことで、住民の方もかなり、保護者もかなりいらいらされているということが私どもの耳にたくさん入ってきておりますので、そういういわゆる現代的なニーズにこたえられて、信頼できる学校づくりができるようなシステムにしたいということで中教審では議論をしたということでございます。

横光委員 信頼できる教育システムをつくりたい、そのために、これから一つの手法として今回のような学校運営協議会をまず導入しようということでございましょう。

 木村参考人、先ほどから、地域の重要性、これは教育だけじゃないんだ、あらゆる面において地域というものがこれから非常に大きな役割を担うんだというお話がございました。そのことに関しまして、私も全く同感でございます。そういった意味で、地域の住民が学校運営により参加するということの必要性もよくわかります。

 ただ、すべて、大枠を決めて後は地域にゆだねるんだ、地方にゆだねるんだというお話もございましたが、これは一歩誤れば地方丸投げということにもなりかねませんので、そのあたりの意識はいかがですか。

木村参考人 全くそのとおりだと思います。

 今後、国がやるべきことは、先ほど申し上げましたけれども、こういう枠組みを大枠でつくっておいて、その中から、いわゆる私どもグッドプラクティスと言っておりますけれども、いい先行事例が出てきたときに、それをできるだけ情報伝達をして、さらにいい事例をつくるような努力をすることだ、そこのところが国の役目だというふうに思っております。枠組みをつくったらそれでおしまいということでは絶対だめで、これは私も経験がありますけれども、とにかく何か政策を提言したら、それでいい例が出てきたら、早速それを取り上げてそれを広めていくという努力はもう不可欠のものだというふうに考えております。

横光委員 よくわかりました。

 それで、この学校運営協議会を設置する場合、非常に大きな役割を占めるのが、先ほどからお話ございます教育委員会ですね、教育委員会が設置を決めるわけですから。

 ところが、この教育委員会の現状、ここも非常に今、問題点を指摘されております。非常に形骸化してきた、あるいはもう名誉職的になりつつある、こういった状況で果たしてその機能を十分に発揮できるのか、そういった声が今広がりつつあるんですね。その教育委員会について、中教審は今どのような審議をされているんでしょうか。

木村参考人 先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり私ども中教審としても、あるいは教育関係者としても、教育委員会のあり方について大きな問題意識を持っております。

 もちろん、教育委員会によっては非常に機能しているところもございます。私、幾つか見せていただきましたけれども、非常に先進的なことをやっておられる教育委員会もありまして、教育委員会の現在の状況がすべて悪いということではございませんけれども、問題も、今委員御指摘のとおり数々指摘されておりますので、中教審としても、この教育委員会のあり方について抜本的に議論しようということで教育制度分科会を発足させまして、過去三回だったと思いますが、かなり頻繁に議論を行ったところでございます。

 今後とも、非常に過密なスケジュールですけれども、鋭意この教育委員会のあり方について中央教育審議会として議論をしていこうというふうに考えております。

横光委員 その教育委員会ですが、今回、非常に大きな役割を担うわけですね。非常に問題点があると言いながら、大変大きな役割を担う。木村参考人は、先ほどのお話では、やはり完全に独立した学校運営というのが理想ではあろうが、今は無理だ、その第一歩である、そのためにはだれかが責任を担わなきゃならない、そこは今教育委員会しかないんだというような趣旨のお話がございました。

 その教育委員会に問題点が指摘された中で、これだけ大きな改革の中の責任を最終的には担うんだという役割を言われましたが、果たしてそれで十分な責任を果たすことができるというお考えなんでしょうか。

木村参考人 地域運営学校に関しましては、そういう先進的な教育委員会を持っているところでないと名乗りを上げてこられないというのが私どもの解釈でございます。

 ですから、先ほどから何度も申し上げておりますが、とにかく大きな枠組みをつくっておいて、先進的なお考えでございましたらどうぞ名乗りを上げてくださいと。そういう意味で、先ほども指定という言葉は私好きじゃないと申し上げましたけれども、これはあくまで名乗りを上げていただいて、そこからいいものをつくっていくという仕組みでございますので、これはもうだめな教育委員会は名乗り出ることもありませんでしょうし、名乗り出ても多分うまくいかないということですから、うまくいくのは先見的なすぐれた教育委員会をお持ちのところだけということを考えておりますので、十分、そういう教育委員会であれば責任をとっていただけるというふうに考えております。

横光委員 今、指定という言葉は好きじゃないということになっていますが、指定という言葉しか今使いようがないのでちょっと使わせていただきます。名乗りを上げるということですが、名乗りを上げたところは指定する、名乗りを上げないところは指定されない、もちろん名乗りを上げないわけですからね。

 そうすると、今度の法律の中身のことに入りますが、指定校のみとなるんですが、そうすると、教育で一番あってはならない格差というものが生じてくる可能性が非常に強いと思うんですね。これは大田先生もそのことを指摘されておりましたが、このことにつきましてはどのようなお考えをお持ちですか。大変な懸念があると思います。

木村参考人 格差の定義によるんだと思いますね。ですから、とにかくすぐ格差というと、例えばこちらの学校は進学率がいいとかこちらの学校は進学率が悪いとか、そういうふうなことにとらえがちでありますけれども、私は、そうじゃなくて、やはりすぐれた学校とそうでない学校、つまり地域のニーズに応じた学校、そういうものをすぐれた学校と私は考えておりますけれども、そういうものと地域のニーズに応じていない学校というのは、当然、これは格差が出るのは仕方がないことだというふうに思っております。むしろそういう意味では、格差が出ることによってお互いに刺激し合って、いいところはどんどんよくなるし、悪いところもまたそれに引っ張られてよくなるというのが理想的、あるべき姿ではないかというふうに考えております。

横光委員 どうもありがとうございました。

 次に、大田参考人にお話を伺いたいんですが、イギリスのお話をしていただきました。イギリスの理事会という場、ここで保護者、地域住民が学校運営に参加しているという形で説明がございましたが、この理事会の最終的な目標は教育水準を上げるというようなお話もございました。このことを考えた場合、現在のこの日本の運営協議会の導入との差といいますか、そういったものをどのようにお感じになられるでしょうか。

大田参考人 最終目標は教育水準を全体として上げるということですが、それは労働党政権の目標でもありまして、学校自体としては、やはり子供の教育、子供が幸せかどうかというようなことももちろん考えているということを申し添えたいと思います。

 今の法案の学校運営協議会がどういう目標をやろうとしているのかというのは、私にはちょっとそこら辺はよくわからない法案だというふうに考えております。

横光委員 この法案では、委員は任命ということになっております。ところが、イギリスの方では選挙だということをお話しされました。この任命と選挙の差というものはどのようにお考えですか。

大田参考人 私は、今の状態では、やはり非常に大きな違いをもたらすというふうに考えています。

 特に、これから運営協議会のような場をたくさんつくっていって地域を再活性化していくというような手段を考えておられるのなら、やはり大変でも選挙という形が一番ふさわしいと思いますが、なかなか最初がうまくいかないというのであれば、任命制にしても、やはりやりたいというような最初の自発性をどこかで確認してみるような、そういう仕組みも考えていく必要性があるような気がいたします。

横光委員 イギリスにおいても教育改革が繰り返されてきたと思いますが、現在のイギリスの教育の特徴は中央集権型でしょうか、分権型でしょうか。

大田参考人 伝統的な分権型は維持しつつ、労働党政権はかなり中央集権的に介入を強めておりますが、そういう中央集権か分権かなどというような分析自体がふさわしくなってきたかどうかというようなことも問われてきているような時代だというふうに考えております。

横光委員 終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、お二人の参考人に一言お礼を申し上げます。

 お二方の参考人には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、私ども、本委員会のこれからの審議にもこの御意見をしっかりと参考にさせていただきながら審議を深め、よりよい法律をつくっていきたいというふうに思っております。本日は、本当にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして心よりお礼申し上げます。(拍手)

 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十一分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長近藤信司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇です。

 午前中の参考人質疑に引き続き、質疑をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、本日の参考人の意見陳述を手がかりに、大臣に質問をさせていただきたいと思っております。

 本日の木村参考人からは、今回の法案、ある意味でルビコン川を渡った気持ちがあるというような趣旨の御発言がありました。文部科学省としても、恐らく思い切った内容であるという思いがいっぱいなのではないかと思っています。私も、その意欲自体は感じ取っているところであります。大田参考人からも、非常に、温かいけれどもかなり厳し目の指摘が随所にちりばめられていた意見陳述だったと思っています。不十分な法案だという指摘、あるいは、ともかく学校運営協議会を認めることにしただけという法案だ、あるいは部分修正のその場しのぎだというような非常に厳しい指摘もありました。午前中の参考人質疑、与党の議員の方からも、まだまだ問題点が多いという指摘があったのも事実でございます。

 この点に耳を傾けながら、大臣にお伺いしたい二つの点が大きな問題としてあると思っています。

 まず一つ、今回の仕組みをつくるに当たって、とりわけ地域運営協議会、学校運営協議会ということになろうかと思いますけれども、この学校運営協議会に参加をされる委員の方の参加者としての動機づけが足りないのではないかということです。

 きょうの参考人の言葉で申しますと、大田参考人がおっしゃられていた、いわゆる所有者意識と申しますか、今回の仕組みの中で、例えば予算、人事、カリキュラムといった、実際に学校を運営していく上で重立った役割を果たすところに関して、参加している委員の方々がどれぐらい実際にかかわれるかといえば、非常に少ない部分だ。きょうの午前中の質疑でも明らかになったように、やはり教育委員会の役割が大きいということは言うまでもないところがあります。

 その上でお伺いします。この学校運営協議会の委員、とりわけこの運営に参加される方々の動機づけが足りないという部分について、大臣の御見解をまずお聞かせください。

河村国務大臣 御指摘の点でございます学校運営協議会に参加する方々の動機づけをどのように高めるかという問題、今回新たにこういう形で取り組んでいくものでありますから、学校運営協議会のあり方についてやはり御理解を十分いただきませんと、確かに、どういう形で参加するかということは難しいし、実が上がらないというふうに思います。

 御案内のように、これは、すべからくどのぐらいの権限を持って臨むのかということにつながっていくのではないか。あるいは、学校現場で、どのぐらいの学校を新たにつくるといいますか参加していく上で、では、どのぐらいの権限が運営協議会にあるかとか、それから役割分担はどうなのか、こういうことだろうと思うんですね。この辺をはっきり理解をいただいて参加をいただくことが必要であろう、こういうふうに思います。

 いずれにいたしましても、今の学校が、ややもすると非常に閉鎖的で、また地域の信頼性に欠ける面がまだある、そして校長先生のリーダーシップも発揮しにくいというような視点がございます。そういうものを改善しながら、地方の自主性を高めよ、こういうこともございますが、同時に学校の自主性も高めながら、そしてまた子供と、それから地域の実情といいますか、そういうものを十分、状況に対応した特色ある学校がやはり必要であろうということで、そういう意味では、地方や学校の権限が拡大していくということは大事だろうと思うんです。

 要するに、国と地方公共団体、学校がどの程度どういうふうな形でその役割分担をしていくかということを考えていかなければなりません。その根底は、まさに教育に関する憲法の精神あるいは教育基本法の精神、教育の機会均等とか、それから全国的な教育水準を維持していく、これが基本的に基本概念にならなければなりません。

 そこで、まず、この学校運営協議会に参加していただく皆さんには、国がどういう役割を担っているか。学習指導要領とかをもって、あるいは教科書検定をもって、基本的な役割を全国的規模で国がまず持っていますよということ。それから、教職員人事、学校への予算配分、それから就学区域の指定とか、あるいは学校の管理規則等々については、学校の設置管理、それに関する事務は地方自治体が持っておりますということ。

 それから、学校そのものは、設置者であります地方公共団体の管理のもとで、学習指導要領に基づいて教育課程を編成していく。どのようにカリキュラムを組んで学校でやっていくか、そして児童生徒に対する直接的な教育活動をやっているんですということを、まず十分この役割分担を御理解いただいて、そして、いわゆる教育委員会、今の学校規則関係がこれでいいのかどうか、あるいは教育委員会の関与をどのように縮減していくか、あるいは学校の判断で執行できる予算をどのように措置するか。

 そして、今回の法案でも、御案内のように、教職員人事についても校長の意見がこれに反映されるように、要するに、教職員人事についても今回の新しい学校運営協議会で議論をし、そして校長の、統一された意見というものが尊重されなければいかぬという尊重義務の規定を持っている、こういうことを御理解いただいて学校運営協議会に参加をいただくということが非常に大事だと思うんですね。

 子供たちにとってよりよい制度になるかどうか、このこともやはり考えていただかなければなりませんし、文部科学省全体として考えるならば、家庭の教育力も言われる、もちろん学校の教育力も言われておりますが、同時に、地域の教育力も低下している、こういうふうな言われ方をしております。まさにそういう事件はたくさん起きている。

 そういう意味で、この学校運営協議会に参加をいただくということは、そうした大きな意味もあるんだということ。子供たちにとって、やはり地域が子供を守り育てる機能もここで発揮していただきたい。このあたりを御理解いただくことによって、このインセンティブを持っていただくことによって、私は学校運営協議会の成否がここで問われていくだろう、こう思っております。せっかくこういう制度をつくるなら全国一斉にやったらどうだという意見もございますけれども、やはりその成熟度が要りますので、まさに言われるように、このインセンティブをきちっと持って参加していただく、これは非常に大事なことだ、そういうふうに思っております。

城井委員 今大臣がおっしゃった、仕組みの理解というところが恐らくポイントになるだろうと思っています。

 ただ、今大臣が事細かに御説明くださいました。私も少し勉強をした身で伺っておりまして、やはりちょっと難しいかもしれないという感じがしています。

 その上で、先ほども成熟という、私が申し上げるならば、恐らく実践という言葉に置きかえてもよいかもしれません。そこの部分につながってこなければならないんだろうというところは理解としてございます。

 ただ、今回の仕組みで、仮に大臣がおっしゃった理解というものを地域の方々あるいは保護者の方々にしていただいたとして、それで今回の仕組みが十分かというふうにお考えかどうか、その点をお聞かせください。

河村国務大臣 これが本当に十分かどうか、実際にやってみて、欠点があれば直していく、当然のことでありますが、実は、全国七地区といいますか九校、実験校といいますか、いわゆる研究開発校を持たせていただいて、私もその一つに実際に視察に行っていろいろな意見も聞いてまいりました。

 そういう意味では、確かに、保護者の代表の方もいられる、それから地域の経済人もいられる、いろいろな方がそこへ参加して、そして学校と連携をとりながら、あるいは教育委員会との連携をとりながらいろいろな取り組みをされております。

 それで、地域の教育に対する要望とかいうものがそこでやはり実現をされておりますので、そういうものが、これはいわゆる研究開発校ですが、それを一つのモデルにして今回の法案になっておりますので、私は、これで十分かと言われると、さあ、これから教育委員会との関係をどういうふうにやっていくかとか、どういう方々が参加していただけるかとか、やってみなければわからない部分も多分にあると思います。

 あると思いますが、しかし、この運営協議会によって確かに学校が変わるといいますか、あるいは校長先生の採用についても、皆さん方の理事会なり委員会なりの意見も聞きながら、どういう校長が欲しいということも言えるわけですね。そういう意味で、みんなが学校づくりに参加しているんだという機運が盛り上がってまいりますし、PTAの代表の方に聞いても、やはり、自分たちもこれに入っていると保護者の皆さんへの説明責任もあるということで関心が高まってくるということをおっしゃっておりました。

 私は、そういう意味で、これで百点満点かと言われると、まだまだ欠点があろうと思いますけれども、この仕組みを取り入れるということは、学校が信頼される、また皆から支えられる、そして開かれた学校になっていく。そういう意味で、ある意味では公立学校にそういうことをやるというのは画期的なことでありますから、また、その結果が周りの公立学校に対する大きな刺激になっていく。そういう意味で、私は、大きな意味があるし期待ができる、このように思っております。

城井委員 周りの学校への刺激というのは、私も今回の効用が大きいのではないかなと思っています。その点を頭に置きながら、今大臣がおっしゃった部分、例えば欠点があれば直していくという部分、あるいは時間とともにといったところはあると思います。

 そこで、今後の進め方ということでお伺いしたいんです。

 ちょうど午前中の参考人質疑で、木村参考人がこのようなことをおっしゃっていました。中教審で今回のアイデアを取りまとめていかれる際に、学校現場への権限や責任を含めた移譲、移していくという部分に関しては将来的にあり得るというような御趣旨の発言がありました。今回の仕組みはあくまで第一歩なんだ、まずは第一歩というふうに御理解いただきたいということを重ねておっしゃっておられました。それに加えて、あえて今回の仕組みはファジーにつくってあるんだ、地域に考えてもらう習慣をつくるためだ。私は、ある意味でのトレーニング期間を置きたいということではないかというふうに理解をしました。

 この点について、まずは第一歩という認識について、大臣も同じ認識かどうかお聞かせください。

河村国務大臣 確かに、木村委員は中央教育審議会でいろいろこの議論をされたわけでありますから、そういう思い、我々の方もそういう思いで受けとめさせていただいておりまして、地域の運営校を実際にやってみて、そしてこれでスタートすれば、まさにそのスタート台に立ったという思いでいえば、第一歩だと思います。

 これを今からどういうふうに広めていくか。教育委員会もいろいろ、どこの学校をどういうふうにしていくか、あるいは地域の盛り上がりがどうかとか、そういうものをやはり見きわめる必要もあろうと思います。

 それから、学校評議員制度がございます。その仕組みがきちっと動いている学校、そうでない学校ございます。この学校運営協議会があれば、もうそれがほとんど要らなくなるぐらいの機能を持っておるわけですから、そういうことも見きわめながらこの制度を導入していくということですから、そういう意味では、まず第一歩という考え方、私も同じように考えております。

城井委員 そういたしますと、今の大臣の御発言をまとめさせていただくと、欠点があれば直していきたいんだ、やはり第一歩だという認識がおありである、それに加えて地域の盛り上がりの見きわめが必要だ、これは時間が必要というのは先ほどの御答弁にあったかと思うんですけれども。

 ある程度時間の見きわめが必要で、かつ第一歩で、今後の展開が必要だということになりますと、その第一歩の次の二歩目、三歩目というところにポイントが置かれるのではないか。時間の経過というものが今回のこの仕組みの前提としてあるならば、この二歩目、三歩目というのはとても大事だと思うんですけれども、残念ながらこの法案を眺めたときに、二歩目、三歩目に入ったときの、例えば、ではどんなふうに直していくかというところ、その見直しをしていくような仕組みというものが見当たらないわけです。

 この二歩目、三歩目をつくっていくための見直しの部分を仕組みに盛り込むという点について、私は必要だと考えるんですが、大臣、この点についていかがでしょうか。

河村国務大臣 この問題については、中央教育審議会でもいろいろ御議論があったと伺っております。

 まず、この地域運営学校を導入することによって、そしてそこの協議会をどのような形でとっていくか。PTAの皆さんあるいは教育委員会の皆さん、私は、今回はそういう方々が一体となってやっていく学校でありますから、これは日々に見直しといいますか、そういうことは絶えず行われていくべきものだろうと思いますね。そういう意味では、この法案がある意味ではファジーだと言われる点はそういう点にあると思います。

 また、地域のそれぞれの皆さんの自主性を重んじなきゃいかぬという点がございますから、がちがちに固めて、そしてさらに、それをまた規則にのっとっていなければ見直しができないとか、そういうものではなくて、やはり現場、何も現場に丸投げとかなんとかいう意味じゃなくて、そういう意味じゃなくて、子供たちにとってこれでいいのかということを絶えず皆さんがお考えいただいて、この運営協議会をつくり上げていただくということが大事だと思います。

 したがって、地域運営学校のあり方について、私は地域性も出ると思いますから、全部一律のものではないと思いますね。運営の実験モデル校をやってもらったところも、名前を理事会としておられるところもあるし、一方では委員会でやっておられるところもあります。

 だから、それぞれの地域の取り組みが違いますから、私は、それぞれの地域の取り組み、そういう意味では自主性を重んじてやっていただくということが非常に大事だ、こう考えておりまして、改めて何年たったら見直しますというような法律に今回なっていないのは、そういう点が特に意識されておるのではないか、そう思います。

城井委員 大臣、ちょっとすりかえられてしまって残念なんですが、今私が申し上げたところは、今大臣がおっしゃっていただいた、いわゆる今回のこの法律案の改正に伴う、法律がカバーをする範囲での運用の見直しという点を申し上げているのではないんです。つまり、法律の中での運用の見直しは、今大臣がおっしゃったように、地域の自主性に任せて、そこの例えば協議会とか校長先生を含めた努力の中で十分にカバーできるだろう。それぐらいファジーな法律案であるというところは、私も理解をしています。

 今申し上げたのは、今回の法律案に書いてある部分に地域での取り組みがぶつかったときに、そこを見直す部分ということを仕組みとして持っておくべきではないかということを申し上げたわけです。法律の中での運用の話ではありません。法律に直接かかわってきた場合の運用の見直しについて規定を持っておくべきではないかというお話を申し上げたんです。その点について、もう一度御答弁ください。

河村国務大臣 城井先生がどこの点を特に強調して言っておられるかと思うのでありますが、この法案の一番大きなといいますか、意義のあるところは、やはり人事等について、これを教育委員会が出てきたものを尊重していくんだ、こういうことですね。ということは、もっと平たく言うと、よほどの、とてもこれは物理的に難しいんだということ以外はその地域運営協議会でされたことをほとんど受けとめていかなければいかぬということであります。

 ただ、一方では、この学校をやってみた、しかし、これは現実に趣旨にのっとっていないし、趣旨から外れているし、子供たちにとってこれはプラスでない、問題が多いということになれば、逆に設置者はこれを廃止する権利も持っておるわけですね。そういう一つの大きな根本のところはきちっとされておると私は思うんですが、城井先生が言われる点、ぶつかった場合にどうするかということ、そういう面でもし不備があればそれは正さなければなりませんが、現実に今モデル的な研究開発校の動きなんかを見ていると、今の現状で当面スタートできるのではないか、こう考えております。

城井委員 今の大臣のお答えにもありましたけれども、では、実際に具体的に法律を使っていく上でどこに当たるかというところを、若干今後の質疑を含めて御指摘申し上げながら、議論を続けさせていただきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 続いて、今回の地域運営学校の仕組み自体のあり方についてお伺いをさせていただきます。

 本日の参考人質疑の中で木村参考人からもございました、恐らく先進事例の重要性というものが今回の成功するかどうかを決めるのではないかという部分があろうかと思っています。

 これは、私ども民主党のコミュニティ・スクールのワーキングチームがあるんですけれども、コミュニティ・スクールを成功させていくためには何がポイントかといった場合に、よい事例を地域で幾つつくれるか、単に町中に学校がたくさんあるような都会の学校でそういうものをつくるという一部盛り上がりということではなくて、どの地域においても一つのひな形とした形として成り立っていくようなものをつくっていかねばならない、そこが大事だろうというところは議論としてしたところでございます。これは恐らくポイントだと。

 とすると、今回の仕組みを見たときに、その一方でどういうことになっているかというと、ちょうど先日も議論が出ていました、いわゆる学校を指定してつくっていく、つまり、指定校制と呼んでもよいかと思いますけれども、この方式をとることによって起こってくる現象、例えばその地域地域で、ある意味で人も資源も限られます、集中投下をするというふうなふれ込みのもとで、単なる一部の学校の優遇策になってしまうのではないかという懸念があります。

 本日の大田参考人からの言葉もありました。かえってこの部分が地域あるいは保護者の自発的な参加であるとか、あるいはそこで決めていくダイナミズムを奪ってしまうのではないか、損なってしまうのではないかという指摘があったところでございます。

 この点、単なる優遇策に終わってしまうかもしれないという懸念について、見解をお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今回の学校運営協議会は、地域に信頼される学校づくりの実現に向けて、学校運営のあり方の選択肢を拡大するための手段の一つとして新たに制度化をするものでございまして、その導入は、やはりすべての公立学校に一律に求められるものではないんだろうと思っております。地域の特色でありますとか学校の実態、保護者、地域住民の意向などを十分に踏まえて、教育委員会の適切な判断により行われる必要がある。

 いずれ最終的な責任は、これは学校を設置する教育委員会でありますから、確かに指定という行為を伴うわけでありますけれども、そこは、例えば各教育委員会におきまして、教育委員会規則により指定の手続を定めることとしておりますけれども、あらかじめ地域住民や保護者の意向を聞くなど、地域の要望を踏まえながら指定をするといういろいろな工夫をしていただければ、そこは運用でかなりいい方向に行くのではないかと思っております。

 それから、例えば、その市町村の中での学校、それもまた市町村として、条件が整っているのであれば、域内のすべての学校に学校運営協議会を置くことによって学校の管理運営の改善に資していくんだ、そういう判断で指定を行うということもありましょうし、あるいは、やはりその学校の成熟度と申しましょうか、まだまだ十分でないということから、うちの学校は今回は希望しない、そういった意向等も十分に踏まえるということもあろうかと思っております。

 いずれにいたしましても、その地域のいろいろなニーズに対応した形で、柔軟な形でこの制度ができ上がっていくことを私どもは期待しているわけでございます。

城井委員 今、局長から期待という言葉がございました。当該学校にかかわる教育委員会というものの仕組みの運用について、期待というところで本当に終わっていいのかということ、この点をぜひ確認をしたいんです。

 実際に、この学校にかかわる教育委員会に対しての最終的な指導権限というものは、文部科学省はお持ちなんでしょうか。何かこういう条件がそろった場合には、文部科学省がコミュニティ・スクールに対して指導を行いますよというケースがあるんでしょうか。その要件がございましたらお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 現在の地教行法の全体の流れの中で、文部科学省は、都道府県教育委員会に対して指導助言あるいは援助をするということができるわけでありますし、また都道府県の教育委員会も、市町村の教育委員会に対してそういう指導、助言、援助ができる。私どもは、今回のこの制度をお認めいただいた暁には、しっかりと都道府県の教育委員会を通じまして今回の学校運営協議会の制度、その仕組み、趣旨をまずは周知徹底していきたいと思っております。

 そして、もし仮にこの仕組みなりが各学校現場あるいは市町村の現場で必ずしもその趣旨に沿った形で運用がなされていないということになりますならば、それは都道府県教育委員会を通じて指導なり助言をしていく、これは行ってまいりたいと考えております。

城井委員 今のお答えの中で、確認をしながら再度お伺いしますが、地教行法の中に照らして指導、助言、援助できる、趣旨にそぐわない場合は教育委員会を通じてということなんですが、この趣旨にそぐわないというのは、もうちょっと具体的におっしゃっていただくと、どういうことですか。お願いします。

近藤政府参考人 今回の学校運営協議会制度を設けた趣旨でございますけれども、私どもは、公立学校の管理運営がもっともっと活性化してほしい、そして地域住民や保護者が学校運営に参画することによって、より公正で透明な学校運営が実現をし、地域に開かれた信頼される学校の実現、これが大きなねらいであるわけでございます。

 そして、今回、この学校運営協議会、地教行法の四十七条の五にこういう規定があるわけでございまして、例えば、学校運営協議会の運営が、校長先生とこの運営協議会との間に意見の対立があって、必ずしもこれが所期の目的を達成できないというようなことであれば、これはまたこの法律の中にも指定の取り消し、こういった条項があるわけでございます。

 それは市町村の教育委員会が、いろいろなそういった状態に立ち至ったときにそういうことをなされるんだろうと思っておりますし、それがうまくいかないときには都道府県の教育委員会が市町村の教育委員会を指導していく、そういったようなことは、当然この法律の条文に則してケース・バイ・ケースで出てくるんだろうと思っております。

城井委員 今、私がお伺いしたのは、文部科学省からの指導あるいは助言、援助という部分に関してなんです。もう一回お聞かせください。

近藤政府参考人 私どもといたしましては、この法律改正によって学校運営協議会制度というものが導入をされ、その所期のねらいが達成されていくということが大事だと思っております。

 仮にそういった所期の目標なりねらいが異なるような形で運営がなされ、学校運営に著しい支障が生じてきている、そういったようなことがあれば、都道府県の教育委員会を通じて、この法律の趣旨にのっとった運営を行っていただくように指導なり助言なりお話を申し上げていく、そういうことがあり得るであろうということでございます。

城井委員 ということは、この指導、助言、援助に関してはその時々の状況による、つまり、明確な基準は持っていないという理解でよろしいですか、局長。

近藤政府参考人 明確な基準というものをどう考えるかということでございますが、いわば一般的な、今申し上げましたような地教行法上における国と都道府県、市町村、そういった関係の中で私どもは対応してまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、考え方としては、この法律の、改正法の趣旨がきっちりと運用され、所期のねらいが達成されていく、こういうことが大事なんだろうと思っております。

城井委員 続いて質問をさせていただきます。

 次は、校長について、今回の仕組みの中での校長について質問をさせていただきます。

 今回の法律案の中では、校長が作成する学校運営の基本方針というものについて触れられています。この中で、「教育課程の編成その他教育委員会規則で定める事項」というふうにございますけれども、この点、具体的にはどのような範囲になるのでしょうか。その基本的方針に具体的に含まれるものは何か、そして何を決められるのかをお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 教育課程の編成以外の、学校運営に関して基本的な方針を定める事項につきましては、基本的には各教育委員会が判断で、教育委員会規則で定めることになるわけでございますが、一般的には例えば、学校の施設管理に関する事項でありますとか、学校の組織編制に関する事項でありますとか、学校予算の執行に関する事項などが考えられるところでございます。

 なお、このうち教育課程の編成に関する基本的な方針について特に法律で書いたわけでございますが、これはやはりこの制度の中で教育課程の編成というものが学校の教育活動の基本となるものでございまして、地域の住民や保護者の意向を学校運営に反映させるというこの学校運営協議会の目的にかんがみますならば、教育課程の編成に関する基本的な方針については必要的な承認事項としていくということで法律に書き込んだ、こういうことでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 続いて、ほかの点についても質問をさせていただきます。次は、学校運営協議会について質問をさせていただきます。

 この協議会の構成メンバーとしての委員、どのような人を想定しているかというところで、とりわけお伺いしたい部分がございます。それは、実際に学校生活をその学校の中で送る、例えば児童生徒、あるいは教職員といった方々がその構成メンバーとして加わっていくのかどうかという点でございます。

 まず、児童生徒が学校運営協議会の委員に含まれるのかどうか、この点についてお聞かせください。

近藤政府参考人 学校運営協議会の委員の人数、構成等につきましては、学校の実態等に応じて教育委員会が判断することが望ましい、こういうことから、法律においては、特に地域住民、保護者については必ず委員として含まれるようにということで書いてあるわけでございますが、あとは各教育委員会の規則で定める、こういうことにしておるわけでございます。

 委員御指摘の児童生徒でございますが、今回の学校運営協議会は、教職員の人事も含め、学校の管理運営に一定の法的な権限を持って関与する機関でございますから、私どもといたしましては、その委員として当該学校の児童生徒を参画させるということは想定をしていないところでございます。

城井委員 わかりました。

 では、教職員は含まれるのでしょうか、この点、お願いします。

近藤政府参考人 校長先生ですとか教職員につきましては、これは教育委員会の判断で委員として任命するということはもちろん可能でございます。

城井委員 先ほど、児童生徒は、例えば人事にかかわるところがあるので含まれないという想定だというお答えだったと思うんですけれども、その場合に、いわゆる学校の運営に関して、必ずしも人事だけが学校の運営ではないというふうに思います。

 そのほかの運営方針の部分について、実際に学校生活を送っているそういう児童生徒の声をどのように反映するような仕組みを想定していらっしゃるのか。場合によっては、実際に送る生徒側から反論が出るケースも考えられると思います。そうすると、実際の学校とあるいは地域住民との差が出てきてしまう、乖離が起こってしまうのではないかという懸念がございますけれども、この点について見解をお聞かせください。

近藤政府参考人 今回の学校運営協議会でございますが、教職員の人事だけではなくて学校の管理運営全般にわたっていろいろな権限があるわけでございまして、そういうことから私どもは、学校の児童生徒を委員として参画させるということを考えていないわけでございます。例えば、仮に校長や教員が委員として入っていない場合であっても、やはりこれは学校運営のプロでございますから、学校運営協議会の場に来ていただいて意見を聞くというふうなことは、当然、学校運営協議会の議事のあり方としてもあり得るんだろうと思っております。

 児童生徒も、これも小学校から高等学校まで発達段階もあろうかと思っておりますけれども、例えば、学校運営協議会で、そういった議事の中身によりましては、当該生徒に来てもらってその意見を聞くとか、そういうことは運用の一環としてはあり得ることかな、こういうことに思っております。

城井委員 としますと、協議会の委員と校長の、ある意味での共同作業ということになるかと思うんですが、その部分の働きが非常に重要になってくる。その場合に、協議会の委員の働きと申しますか、かかわりの評価については、どのようにお考えなんでしょうか。

 とりわけ、その評価の基準、あるいはどなたが評価をするのかという点について、まだ見えていないところがあります。特に、所期の教育目標が達成されない場合が起こったときにどうするのかといったところなどが懸念をされるわけですが、この委員の評価について御見解をお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 まず、やはり学校運営協議会自体として、その運営の状況でありますとか協議の内容等について、広く住民に対して積極的に情報の提供ですとか公開を行っていく、こういうことが大事なんだろうと思っておりますが、そういうことに加えまして、やはり設置者である教育委員会におきましては、学校運営協議会の運営状況についてふだんから把握に努めていただく。そして、例えばその運営が公平公正に行われているのかとか、あるいは期待された役割を十分に果たして成果を上げているか、いろいろな観点からやはり定期的に教育委員会が点検、評価を実施するということが必要だと思っております。

 やはりその際、具体的な点検、評価の方法ですとか体制につきましては、あらかじめ教育委員会規則で定めておくとか、あるいは外部評価、教育委員会だけではなくて外部の有識者の方々などにお集まりいただく外部評価なども取り入れるとか、そういう恣意的ではないいろいろな評価の活用、こういうことも工夫をしていく必要があるのではないんだろうか、こんなことを考えております。

城井委員 今の評価の点についてでございますけれども、今の委員への評価に限らず、私の本会議の代表質問でもお伺いをさせていただいたと思いますけれども、本会議の代表質問の大臣の答弁の中で、設置管理者たる教育委員会が定期的に評価を行うことが必要だというふうなところがございました。今局長の御答弁の中にも同様の趣旨があったというふうに思っています。

 そこで、お伺いします。

 今の委員の評価に加えて、今回のこのコミュニティ・スクールを設置した場合に、どういう点を評価しなければならないというふうに具体的にお考えか、この評価のポイントについて見解をお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 やはり基本的には、学校運営協議会の設置の目的であります、学校運営協議会を置くことによって地域住民、保護者が直接学校運営に参画をする、そして学校の校長先生たちと共同してそういう開かれた信頼される学校づくりをつくり上げていく、こういう目的なり役割は十分に果たしてきているのか、こういうことが一番評価のポイントになるんだろうと思っております。

城井委員 ちょっと抽象的でよくわからないんですが、もう少し具体的に答えていただきたいと思っているんです。

 なぜかと申しますと、先ほど私の質問の中で、今回の対象となる学校に係る教育委員会の最終指導権限は文部科学省にありますかという質問のときに、趣旨にそぐわないときには教育委員会を通じてということでございました。ということは、文部科学省がかかわる基準というのが評価によって左右されてくるのではないかというふうに思うわけです。ただ、その評価が、今の表現のように抽象的な部分であるとすれば、やはりある意味で、ちょっと言葉が悪いかもしれませんが、かなり恣意的な部分が出てくるのではないか、管理指導の部分が出てくるのではないかという懸念が私にはございます。

 この点を頭に置いていただきながら、もう一度、今回のコミュニティ・スクールの評価を行うべきというふうに文部科学省として考えているポイントについて、具体的にお聞かせください。

近藤政府参考人 一つは、学校運営協議会は校長が作成する基本的な方針について承認を行い、それにのっとって校長が具体的な校務を運用していくわけでございますから、やはりそういった成果が、自分たちが承認をした基本的な方針にのっとって学校がどういう教育活動を展開しているのであろうか、あるいは先ほど申し上げましたような、所期の目的をどう達成しているのか、あるいは、これは保護者や地域住民との意見の、何と申しましょうか、適切な学校の管理運営に盛り込んでいくわけでございますから、そういった点での配慮が十分になされているのかとか、いろいろあるんだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、その際、その地域、その指定学校が置かれているいろいろな状況の中で、評価項目と申しましょうか、それはやはりそれぞれの学校によって違いがあるんだろうと思っております。

 いわゆる七件九校の実験校におきましても、この評価の問題というのはなかなか、まだまだ改善すべき余地があるわけでございますけれども、その学校が目的としているねらいというものがそれぞれ違いがあるわけでございますので、そういった地域運営学校の特色に応じた評価項目というものをやはり定めて、それを一つ一つ評価していく、これが大事だろうと思っております。

城井委員 とすると、今の局長の御答弁を総括しますと、文部科学省としていわゆる一律の基準をもって今回のコミュニティ・スクールの評価に当たるというのではなく、一番最初につくられた方針なりあるいは所期の目標というものをそれぞれなりに勘案して、それぞれのケースに応じて、それぞれの学校が持っている目標や方針を基準に判断をするという理解でよろしいですか。

近藤政府参考人 私どもは、この法律で大きな枠組みをつくったわけでございます。そして、その枠組みの中で、具体的な運用については、それぞれの地域の教育委員会において、その地域のニーズに一番こたえ得るような形でやっていただけたらいいと思っておるわけでございます。

 それぞれの学校でいろいろな評価項目を定めて、そしてそれぞれの理念、考え方のもとに点検、評価を行っていく。私どもが一律こうでなければならぬ、そういうことを申し上げているわけではございません。あくまで本来の趣旨のねらいに沿った形で実施をしていただきたい、こう考えておるところでございます。

城井委員 わかりました。ありがとうございます。次に移らせていただきます。

 続いて、学校運営協議会の内容について、この今回の法律の中で、地域住民を選出するということになっていますけれども、この地域というのは一体どのあたりの範囲までになるのか。一般的には学区ということなんでしょうけれども、法案の中では「学校の所在する地域の住民」というふうになっているかと思います。この地域の範囲について見解をお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今先生御指摘になりましたように、学校運営協議会を通じて、地域に開かれ、地域に支えられた学校づくりを進める、こういう制度の趣旨から見ますならば、基本的には各学校の通学区域程度の範囲が想定をされるわけでございますが、ただ、これもまた、具体の範囲はそれぞれの教育委員会において判断をしていただけたらいいんだろうと思っております。

 例えば今、学校選択制というものを導入することによって通学区域が弾力的に運用されている、こういった場合もあるわけでございますし、小学校と中学校との連携ということがますます大事になってきておるかと思っています。そういったときには、例えば小学校区ということではなくて、中学校区程度の範囲でもって地域というものを想定していく、これもまたその教育委員会なりその学校の判断であり得るのだろう、こういうふうに考えております。

城井委員 わかりました。では、次に質問を移らせていただきます。

 学校運営協議会の部分について、このような部分がありました。「学校運営協議会は、当該指定学校の運営に関する事項について、教育委員会又は校長に対して、意見を述べることができる。」という部分がございます。いわゆる人事の関係、任用とは違って、ここには、いわゆる尊重義務には触れられていないわけですが、それはなぜでしょうか。何か意図があるんでしょうか。

近藤政府参考人 今先生御指摘の、第四十七条の五の第四項の規定であろうかと思いますが、学校運営協議会は学校運営に関して協議する機関として設置をされるものでございまして、できるだけ学校の運営全般についてそういった方々の意見を反映させる、こういう趣旨から法律の中に規定をしたわけでございます。

 これは、学校運営協議会の設置の趣旨に基づく、当然といったらあれでございますが、本条項がなくても学校運営協議会は意見を申し出ることはできるわけでございまして、校長や教育委員会は、この本項が特に規定された趣旨を踏まえまして、その意見について十分に配慮する必要があると考えております。

 なお、この第四項に基づいて学校運営協議会が意見を述べることができる事項というのは、広く学校運営に関する事項、ある意味では幅広いものでございまして、あらかじめその事項を教育委員会規則で定めるということではなく、ある意味では適宜さまざまな事項について運営協議会が主体的に意見を述べられる、こういうことから、法律上一律にこれを尊重する、これはなかなか難しいのではないか、こういうことから尊重義務を課していないところでございます。

城井委員 わかりました。次の項目に質問を移らせていただきます。

 次に、教職員の人事、採用、その選定過程についてお伺いいたします。

 今回の法律の中で、学校運営協議会は教職員の任用に関して、任命権者である教育委員会に意見を述べ、教育委員会はその意見を尊重して教職員を任用とございます。ここで言う任用というのは何でしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 この任用の意味につきましては、法律では、採用その他の任用に関する意見を述べることができると書いてございますが、この運営協議会を設けた趣旨からいたしまして、その学校の運営の基本的な方針を踏まえて実現しようとする教育目標なり教育内容にかなった教職員の配置を求め得ること、すなわちこれは、地方公務員法で規定をいたしております、採用、昇任、転任について意見を述べることができる、こういう意味でございます。

城井委員 今の部分を踏まえまして、これは大臣にお伺いしたいんですが、一番最初に私が申し上げました、今回の仕組みで問題があるというところの一つに、参加している方の動機づけというところがありました。

 最初に申し上げましたように、予算であるとか人事であるとかカリキュラムであるとかといったところが動機づけにかかわるということを申し上げました。とりわけ、どのような人と、どのような教職員と一緒に学校をつくっていくかというところ、特にそこに関して協議会の委員の方がかかわっていかれるときに、そこに深くかかわれるということは、今回の学校づくりの動機づけとしては非常に大きなものがあるのではないかというふうに思っています。しかし、今のところ、尊重義務というところにとどまっておるところがあります。

 この点について、採用、昇任、転任ということに限ってで結構でございます、その三点についての人事権の部分、任用の部分についてを学校現場に任せるということをすることが必要なのではないか。

 特に、きょうの午前中の参考人質疑の中でも、イギリスの新しいタイプの公立学校のあり方として、人事の部分で任せて成果を上げているというふうなお話もございました。最初に申し上げた、二歩目、三歩目といったところにかかわる部分だと思います。大臣の見解をお聞かせください。

河村国務大臣 おっしゃるとおり、やはり学校現場の人事権をどのようにするかというのは一つの大きなテーマだと思います。

 これは、教育委員会のあり方ともかかわってくると思うんですけれども、今、人事権そのものは、全体の教育でいいますと、県の教育委員会が持っておって、広域でやるような形をとっておるわけですね。それで、各市町村にも教育委員会がある。小さな、今、合併していますからだんだん大きくなりつつありますが、千人とか二千人規模のところにもある。それから、二十万、三十万規模のところにもある。

 その辺のことをどうするかというのが一つの課題になっておりますが、今回の学校運営協議会においても、ここに人事を持たせて学校現場にある程度任せたらどうかと言われます。それから、校長先生にある程度持たせたらどうかと言われています。

 これをやりますと、さっきの話、優遇策ではないかという話もありましたが、そこの希望が通るということになりますと、そこの学校に希望するいい先生だけが集まってしまうということも考えられるわけですね。もちろんそれは、そこにとっては理想かもしれぬけれども、あっちでまだ期待されておった先生が、新しい実験校ができたからといってみんなそこへ集中したということも、バランスを考えないかぬという点もあろうと思うんです。

 そこで、人事権はできるだけ広く持つべきであろうという考え方に立って、教育委員会が人事権を持つという形になっております。そのことが教育水準全体の維持をしていくということもあろうと思います。

 しかし一方では、この先生では、運営協議会の我々の考え方と全く、それを理解して子供と向き合ってくれないという評価があった場合には、これは一般の学校でもそうでなければいかぬのですが、こういう場合には、特に学校運営協議会は、そこへストレートに地域の皆さんの声が普通の学校と違って入ってきますから、そういう意味では、人事権とは言わないまでも、これに対してはきちっと対応ができる面があるのではないか、私はこう思っております。

 これまでも校長の意見を任命権者に伝える制度というのがあって、十分その意見を聞くということになってはおるわけでございますが、今回のこの運営協議会は、かなりそういう面では、いわゆる人事権と言うべきものではないかもしれないけれども、その意見が通りやすくなっているといいますか、反映しやすくなっている。そういう意味で、今回の学校運営協議会を持った学校の一つの特色といいますか、そういうものではないかな、こう思っております。

城井委員 先ほども御指摘申し上げましたように、恐らく動機づけの部分で非常に大きなところだと思います。今後も現場の状況を見ながらきちんと御検討いただければというふうに思います。

 次に移らせていただきます。

 教職員の人事、採用というところについては、一義的には都道府県の教育委員会の決定ということに今回の仕組みはなっておるかと思いますが、市町村の教育委員会の位置づけというものはどういうふうになっているんでしょうか。特に仕掛けが見当たらないものですから、もしかするとただ通り過ぎていくだけという形になっているんだろうかというふうに感じておるわけでございますが、全くかかわらないんでしょうか。この点についてお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今回の改正案では、地域住民や保護者等の教職員人事に関する意向を任命権者に直接伝えられるように、県費負担教職員につきましては都道府県教育委員会に対して意見を述べることができる、こういうことにしたわけでございますが、県費負担教職員、小中学校の教員であれば、これは市町村の教育委員会が設置者でございますから、市町村教育委員会を経由するということにいたしておるわけでございます。

 これは、手続的には経由をするということでございまして、市町村教育委員会がその意見を変更するとかそういうことはなく、そのまま意見が都道府県教育委員会に伝えられていくということを意味しているわけでございます。

 なお、現行法の地教行法では、都道府県教育委員会は、市町村教育委員会の内申を待って、県費負担教職員の任免その他の進退を行うということで、市町村教育委員会は、県費負担教職員の人事につきましては、学校運営協議会が意見を述べる、述べないにかかわらず、各学校の実情や域内全体のバランス等を総合的に判断いたしまして、設置者、管理者として内申を行う、こういう立場にあることは従前と変わりがないところでございます。

城井委員 内申を行うということは、つまり報告をするということ、要するに、決定にはかかわらないけれども、現状の報告は随時行うという理解でよろしいんですね。

近藤政府参考人 今回の学校運営協議会の仕組みと申しましょうか、意見もいろいろなことが考えられるわけでございます。うちの学校には若手の先生が欲しいとか、あるいはもう少し数学の指導力のある先生が欲しい、そういう抽象的な意見を言う、こういう場合もあるわけでございますし、個別の具体的な教員の採用を希望する、いろいろなことがあり得るわけでございますから、市町村教育委員会は、当然、学校運営協議会の意向も踏まえながら、その具体の人事について内申を行う。

 したがいまして、通常であれば、学校運営協議会が出されたその意見に当然沿った形での内申を行っていく、こういうことになるものと考えております。

城井委員 わかりました。

 時間もなくなってきましたので、最後に大きな項目として一点だけ。

 今回の学校をつくるに当たって、もう一つだけ確認をしておかなければならないと思っている大事な点があります。それは、設置をした後に問題が起こって、先ほど指定の取り消しというお話もありました。その指定取り消しを含めたトラブルの後のフォローをどのように行っていくか。私の言葉で申しますと、どのようにセーフティーネットを張っておくかというところが大事な点ではないかと思っています。

 特に、学校の管理運営が続けていくことができなくなった場合、どうやってその学校で学ぶ子供たちが、公立学校において、学校で学んでいくということを確実に続けていくことができるのかというところを考えていくときに、是正措置を教育委員会が講ずる、あるいは、先ほど少し話を出させていただきました、文部科学省が教育委員会を通じて指導するといった場合の特に教育委員会の方の部分、措置を講ずる場合の要件、そして指定を取り消しする場合の要件というものが、やはりいまだにまだ見えないところがあるわけです。

 この指定の取り消しの要件と措置を講ずる場合の要件について、お考えをお聞かせください。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 学校運営協議会、教育委員会は十分にその活動について実情を把握し、まずは必要な指導助言を行う、そして運営協議会の運営改善に努める、こういう努力をすることが肝心ではございますけれども、なおそれでも改善が図られない、あるいは学校の運営に支障が生ずる、こういった場合には、法律の規定にのっとって指定の取り消しということが出てくるわけでございます。そういった場合も、やはり教育委員会といたしましては、教育委員会規則において、あらかじめ指定の要件ですとか具体の手続について定めていくということが必要になるわけでございます。

 一般的には、想定されることといたしましては、学校運営協議会としての活動の実態が認められないような状態でありますとか、委員同士の意見が対立をして学校運営協議会としての意思形成が行えない、あるいは校長と学校運営協議会の方針が著しく対立し、結果として当該学校の円滑な運営に支障が生じている状態、こういったことがそういった指定の場合に該当するんだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、あらかじめそういった指定の取り消しの要件でありますとかあるいは手続、これをしっかりと定めておく、そういったことを通じて指定の取り消しが恣意的にならないようにしていく、そういう努力をしていくことが大事だと思っております。

城井委員 そういった指定の取り消し等になってきた場合に、そこの学校に通っていた児童生徒というものに対する救済措置というのはどのようにお考えなんでしょうか。

近藤政府参考人 この制度は、公立学校の管理運営の改善を図るための選択肢を拡大する一つの手段として導入しようというものでございまして、仮に指定が取り消され、学校運営協議会が行われなかった場合であっても、公立学校であることには変わりはございませんし、継続した教育活動が行われるということも変わりがないわけでありますし、例えば学校運営協議会、校長の意向を受けてその学校に配置をされた、あるいは採用された教員につきましても、仮に学校運営協議会が置かれなくなったということから当然にほかの学校に異動しなければならない、こういう性格のものではないと考えております。

城井委員 本日の参考人質疑でも出ました、イギリスの例を引くまでもなく、学校の運営が継続できなくなって仮に閉鎖になった場合に、激しい反対運動が起こって政治問題化したという経緯があったというふうにも聞いています。今後の取り組みをきちんと見続けながら、しかるべきところは改善をとっていくというところが今後必要かと思いますので、しっかりと目を凝らしていただきたいということを最後にお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 今、我が党の城井委員から、この法案が通った暁にどのように運用されるのか、運用上の懸念される点を一つ一つ丁寧に質問させていただきましたので、私からはまた、もう一度原点に返って、初歩的な質問から進めさせていただきたいと思います。

 そもそもコミュニティ・スクールについては、我が党でも、やはり地域の教育力を高めていかなければならない、そして地域の裁量により幅を持たせ、教育の地方分権を進めていかなければならないといった観点から、同様の趣旨で政策をつくってまいったところでありますけれども、そもそもこれを法律にしなければならなかった理由について、もう一つ私は腑に落ちない部分も残っております。

 地域といっても、それぞれいろいろな地域があろうかと思います。私の地元の名古屋市というのは、本当に地域のコミュニティーがしっかりと確立をしているところでありまして、この委員会の中には名古屋市、ほかにはおりませんけれども、青山先生は愛知県でありますけれども、私ども、小学校の学区単位で学区の委員長さんという人がいて、それぞれ学区の区政協力員という人たち、これが町内会長に当たるわけですけれども、それぞれの町内会にまたさらに子供会、女性会あるいは保健委員、体育委員、こういう人たちが網の目のように地域の組織を構成して、また、これは小学校単位ですので、PTAとも一体となって、教育課程にまでこそ踏み込んではいないものの、かなり学校の運営にも参画をしていると言っても過言ではないわけであります。

 このようにいろいろな地域によっての差もあるでしょうし、私、今さら、非常勤の地方公務員としての学校運営委員という人を果たしてうちの地元で、その中からどういうふうに選ぶのかなといったような逆に懸念もあるぐらいでございます。

 今回、そういった意味で、これを法律にしなければならない、その提案理由については、せんだって大臣からも提案理由の説明を受けましたけれども、これは質問通告とややちょっと違うかもしれませんけれども、改めて今回、法制化の意義について、大臣からお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 今、牧先生おっしゃったように、現実に立派に運営がされていて、不登校児もいないし、非常にうまくいっていて地域の信頼も厚くてという学校、そこをわざわざまた何か運営協議会をつくって、新しい仕組みを持ち込むか、この辺になりますと、恐らく教育委員会としても、むしろそういうところじゃなくて、もっと地域の教育力、地域の参加が必要だというところを選ぶし、話し合いに持ち込むのではないかと私は思います。それから、そういう学校は、恐らく校長先生も学校評議員制度をきちっと活用されて、地域の意見も取り込んでおられる、またPTAとの関係もうまくやっておられる、そういう学校があれば、これは望ましいわけであります。

 しかし、現実には、その学校運営において地域から見ても、一体あの学校はあれでいいのかというような指摘のある学校もある、教育委員会も頭を痛めているような学校も事実ある。なかなか連携をうまくとれない、いろいろな事件が起きる、不登校児もふえる、こういう学校をどういうふうに立て直していくか。

 それには、もちろん校長先生のリーダーシップのもとで教員が一丸となってそういう問題に取り組む姿勢が必要でありますが、やはり地域の応援が要るんだということになってくると、この学校運営協議会的なといいますか、そういうものをつくって地域と一緒に学校を盛り立てる、そういうことが必要ではないかということ。

 こういう指摘は、実は、小渕内閣の当時、平成十二年でありますが、その当時に教育改革国民会議でもそういう議論がなされました。それから、政府の総合規制改革会議においてもこういう指摘があったわけであります。これを受けて、中央教育審議会においても諮問をし、議論をいただいて、今回の法律になったわけであります。

 特に、その中で、先ほど来、城井先生の質問として、いろいろあった問題点を幾つか指摘をしていただきました。特に、人事権的なものといいますか、任命権者に対して十分人事に対して物が言える状態でないと機能しないというところ、このところはやはりきちっと地教行法において規定する必要があろう、そういうことから、今回の法律改正の始点になったわけでございます。

 そういう意味で、やはりこの学校運営協議会を設けるということについての、公立学校の管理運営に関する権限は有するけれども、新たな機関として設置する以上は、公立学校の管理運営のあり方を定める法律においても、その設置の根拠と権限、まさに、任命権者に対し意見をきちっと述べることができて、そして任命権者はその意見をきちっと尊重するんだということを明確にする必要があろうというのが今回の改正になったわけであります。

 現実にモデル校的なものをつくって実際にいろいろ伺ってみると、やはりそれによって地域の皆さんが確かに学校づくりに盛り上がってきて、そして評価がある程度出てきて、それによってその周辺の学校も、特に今学校選択制というのがあって、かなり広範囲にどの学校に行ってもいいというような仕組みをとっている、東京都あたりはそういうことがありますので、これはうちも負けてはならじというような動きが出てきたという反響もあることも教育委員会から伺っておりまして、そういうことも期待ができるということで、今回、法律に基づいて、やはりその位置づけはやる以上はちゃんとすべきだということで、今回の法律改正に臨んでおるわけであります。

牧委員 大臣のおっしゃる趣旨はよくわかります。あえて私が原点に戻ってお聞きしたのは、だからこそ、これが本当に、例えば学校運営協議会の意見が尊重されるべきであるということだけでいいのかどうなのか。人事に踏み込んだ意見まで述べることができる、しかし、本当にそこの権利が担保されるのかどうなのか。極めて、先ほど来ファジーという言葉も出ておりますけれども、そこら辺のところをしっかりしなければ法律のていをなさないと思うし、そうじゃないというのであればあえて法律にする必要もないであろうし、そこら辺のところを私は申し上げたかったわけであります。

 この提案理由説明の中にも、「公立学校の管理運営の改善を図るため、」とあるわけで、その辺のところを、本当にこれで改善されるのかどうなのか、それより以前に、改善すべき点がどんなところにあったのか、その問題意識も含めて、もう一度ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 戦後の我が国の学校教育の充実を通じた国民の教育水準の向上、これが社会の成長、発展に大きく貢献をし、諸外国からも高い評価を受けてきた、そういうプラスの面はあるわけでございますが、一方、近年のいろいろなこういう社会構造の急速かつ大きな変化、あるいは国民の意識ですとか価値観の多様化等に伴いまして、現在の公立学校における教育が果たして国民の期待に十分にこたえているのであろうか、そういう批判が見られることも、またこれは事実だろうと思っております。

 そして、特に、我が国の公立学校教育あるいは公立学校が、ややもいたしますと硬直的で画一的であり、柔軟性だとか多様性に乏しいのではないか、あるいは、閉鎖性が強くて、地域の一員としての意識でありますとか地域社会との連携を欠きがちなのではないか、こういった指摘があるのもまた事実だろうと思っております。

 私どもは、そういうことで、これまでもいろいろな改革に取り組んできたわけでございますが、さらにそれをもう一歩進めて、地域や保護者のニーズをもう少し学校運営に反映していく、こういったことから、中央教育審議会の答申でありますとか、あるいは新しいタイプの学校運営のあり方に関する実践研究を平成十四年度から実施してきたわけでございますけれども、そういった成果なども踏まえまして今回こういった法律改正をお願いしている、こういうところでございます。

牧委員 保護者や地域のニーズにこたえるというのは趣旨はよくわかるんですけれども、くどいようですけれども、私はどうしてもちょっとよくわからないのが、どうして法律にしなければならないのか。

 今回の法改正というのは、四十七条の五、一から九項までをつけ加えるということであります。

 この四十七の五の一、こういうものを置くことができるということになっておりますけれども、例えばこの地教行法の三十三条を見ると、「教育委員会は、法令又は条例に違反しない限度において、その所管に属する学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする。」とあるわけであります。

 であれば、それぞれの地方の教育委員会の裁量において、もう既にこの法律で学校運営協議会なるものを設置することも可能であったわけで、この学校運営協議会というものが本来地域の発意によってつくられるべきものであるという観点からすると、あえてこういう法文をつけ加えて上から押しつけるということが、果たして主体性が一体どっちにあるのかということをあいまいにさせている。したがって、せっかくいい趣旨であっても、この趣旨が本当にこの法律で生かされるのかどうなのかというところは私は非常に疑問に思うわけであります。その点についてお答えをいただきたいと思います。

河村国務大臣 この点、この御疑問に答えることは大事なことだと私も思います。

 先ほど、城井先生とのやりとりの中で、これの運営協議会に参加いただく方々のインセンティブ、動機づけをどう高めるかということが必要ではないかという指摘がございました。この中でやはり一番、先ほどもちょっと触れましたけれども、この新しいタイプの学校を運営する場合において、いわゆる人事あたりについてはどうなるんだろうということは一つの大きなポイントだと思いますね。

 今回の法律改正において、先ほど御指摘があった三十三条については、法令または条例に違反しない限度において、かなりこれはその学校に属するいろいろなことができるとありますが、これは確かに、管理運営の基本的事項について必要なことは定める、こうなっておるのでありますが、では、人事をどの程度動かすことができるのか、人事に対してそれがきちっと物が言えるのか、この点については非常にあいまいでありまして、単なる聞きおく、これだともう聞きおくにしか思えない。

 やはりそれをきちっと尊重してもらわなければ意味がないのではないか、こういう点が私は今回の法律改正の大きなポイントだ、こう思いますので、参加する皆さん方がかなりそういう責任があるんだよという意識を持って参加をしていただく、そういう意味で法改正というふうに臨んでおるわけであります。

 そういう意味で、やはり地域の皆さんが参加をしていただいて、地域の教育力を増すことにつながっていくだろう、こういうことでありますから、まさに先ほど申しました、教職員の人事に対して任命権者に直接意見を述べる、そして任命権者はそれを尊重する、その任命権者の権限に一定の関与を行う権限を有するというこの点に力が入っておるわけでございまして、これだけの責任を持ってこの運営協議会に参加していただく、これによって学校を変える、教育を変える、その役割を果たしていただきたい、こういう思いが今回の改正にございます。

牧委員 その御趣旨もよくわかります。わかって聞いたんですが、だからこそ私は、であれば、四十七の五の一は置くことができるじゃなくて、置かなければならないというのであれば法律として何かこうすっきりするなと思うわけだし、また、四十七の五の四及び五、ここに、それぞれ意見を述べることができるとあります。その辺についてもいま一つ、述べることができるんですけれども、それがどこまでの権能を有するのか、そこも非常にあいまいであります。

 ちょっとここで、国語の勉強じゃないんですけれども、できるという言葉がたくさん出てきますね。できるという言葉には、一つには、その能力があるという意味があろうかと思います。もう一つは、その権利を有する、あるいは権限がある、こういった意味もあろうかと思います。もう一つは、もっと主体がはっきりしない、漠然とした意味でのできるというのもちょっと考えたんですけれども、例えば、夏の軽井沢では快適に過ごすことができるとか、これは主体が余りはっきりしないできるですね。もっと漠然としたできるというのは、この色のネクタイはどのスーツにも合わせることができる、これはもっと漠然として、いわば、してもおかしくないという程度のできるであろうかと思います。

 この四十七の五の一、あるいは五の四及び五の五のそれぞれできるというのは、どういう意味のできるなんでしょうか。お答えください。

近藤政府参考人 基本的には、何々することができるというものは、そういう権能、権限を示す、こういうことで使っているものでございます。

牧委員 だとすると、六項の尊重するものとするというのはあえて入れなくても、もうできるという中に、言われた方は尊重しなきゃいけないという意味も含まれているんじゃないですか。ちょっとここはつまらない質問で恐縮ですけれども、そう思いませんか。

河村国務大臣 一般的な考え方でいうとそういう考え方もとれるかもわかりませんが、この法律の決め方というのは、わざわざこの六項を掲げて、そして、「指定学校の職員の任命権者は、当該職員の任用に当たつては、前項の規定により述べられた意見を尊重するものとする。」ということをわざわざここにうたったというところに、私は、この法律に書き込んだというところに、人事権をめぐるいろいろな考え方があるのではないか。

 特に、人事権に対してそこまで言うというのは、それなりの意味があるんだということがここにはっきりされておる、私はそう思うのでありまして、これだけの意見を述べることができるだけでしたらそれでおしまいになってしまうけれども、これに加えて、これを尊重するものとするということになると、この効果というのは非常にやはり効いてくるわけですね。

 一般の教育現場ではそういうことはあり得ない。意見はもちろん聞いてしんしゃくはしますけれども、ここまでうたっていることは今回初めてのケースですから、そういう意義を今回の改正にとらえていこう、それによって、参加される方はそのことを承知して参加していただくということになっていくんだと思います。

 このことをできるだけで終わった場合と、これをわざわざ尊重規定、尊重するというものが入っていると入っていないのでは、かなり私は、かなりというか大きな違いがある、このように理解をして運営協議会に参加していただく、こういうことだと思うんです。

牧委員 大臣から力強く言っていただいたのでそれで納得しますけれども、本当に、意見を述べることができるなんというのは、これは何人たりとも意見を述べることは日本国憲法が保障しているわけで、それをどこまで尊重してもらえるかということがまさにこの法律の重要なところですので、大臣の答弁をいただいたので納得するしかないんですけれども、そこら辺のところをはっきりさせていただきたいと思います。

 なぜそういうことを申し上げるかというと、ことしの三月四日の「今後の学校の管理運営の在り方について」という中央教育審議会の答申にも、「学校の運営への保護者や地域住民の参画を制度的に保障するため」とはっきりうたっております。

 続いて三月十九日、規制改革・民間開放推進三か年計画の閣議決定の中にも、「地域学校協議会の意向が反映されることが確実に担保されるような、」という文言がありますので、それが本当に担保されなければ今回の立法化というのも本当に意味のないものになってしまいますので、そこら辺のところはひとつよろしく踏まえておいていただきたいと思います。

 その上で、もう一度提案理由についてさかのぼらせていただいて恐縮でございますけれども、私、大臣からの提案理由の説明を受けて、本当に短い文章でありますけれども、どなたが作文されたのかあえて問いませんが、非常に残念な文章だなと思わざるを得なかったわけであります。

 この本文の二行目、「国民の学校教育に対する要請が多様化・高度化する中で、公立学校が国民の期待に十分応えることができるよう、」とあります。まず、国民の学校教育に対する要請が多様化、高度化とありますけれども、その意味が私にはよくわからない。まずその意味からちょっとお聞かせいただきたいと思います。どのように多様化、高度化しているんでしょうか。

河村国務大臣 一口に多様化、高度化、こう言ってしまうと、これだけでその概要をとらえるというのは、なかなか私ども難しい。限られた字数の中でありますからこれを具体的に表現しておりませんが、例えて言えば、やはり国際情勢の大きな変化、グローバル化、そしてテレビをつければ世界のニュースが全部入ってくるような状況下、あるいは情報化という大きな進展があります。それに学校はちゃんと対応しているかどうか、IT化を今進めておりますが、そういう動きがあります。

 それから一方では、家庭や地域の教育力の低下が盛んに言われる。いろいろな事件も起きつつあります。大人社会も倫理観を失っているという部分がありますから、それを子供たちにすぐに押しつけるというわけにいきませんけれども、やはり物の豊かさの中で、心の豊かさの共存するような社会、と同時に、子供たちにもそういうものをやはりちゃんと教え込んでいかなければならぬ、こういうことがはぐくまれるような情操教育といいますか、規範意識をはぐくむような教育をやってもらいたいというのが、家庭のことはそっちのけにして学校ばかりにその責任を押しつけるのかと言われますけれども、事実、学校に対する強い要請になってきておりまして、御案内のように心のノートというようなノートをつくったのもその要請にこたえるための一つの手段でありますが、そういう状況下にあるということ。

 それから、現実に不登校状態にある子供たち、この子供たちにどうして学校に戻ってもらえるようなことをやるのか、そういう問題。さらに言えば、学習障害児といいますか、そういうLD児とか、そういうこともだんだんはっきりわかってきた、そういうものにきめ細かく学校はこたえられるのかどうか、地域の要請にこたえているかどうか。私はこのような観点が要請の中に、非常に多様化、高度化といいますか、ITなんかをもっと求めるなんというのは高度化だと思いますが、そういうような条件下にございます。

 そういうものにきちっと対応していくには、やはりその地域の声もしっかり酌み取っていこうということで今回の改正になっていっておる、このように考えます。

牧委員 今のお話はもっともなお話だと私も思いますけれども、どうもやはり文科省そのものがいろいろな世間の声にこづき回されて、まさに迷走しているようにしか私の目には映らない。

 そんな中でこの文言を見たものですから、例えば地域の住民、保護者の意向に的確に対応した、私は必ずしもその人たちの意向だけで教育というものはその方針が決められるべきものだとも思いませんし、やはり文部科学省がしっかりまず主体性を持った上で、その上で地方の、あるいは地域の裁量というものをどういうふうに生かしていくかということを考えるべきだと思うわけで、まさにここのところ、例えばゆとり教育、九八年告示されて、小中の学習内容が三割削減、二〇〇一年四月に初めてその三割削減教科書が誕生をして、さらに次の年の一月には、遠山当時大臣が「学びのすすめ」、こういったものを発表しています。

 これは学力低下だなんだと騒がれてそういうことになったんだと思いますけれども、同年八月に発展的な内容を認めるようになって、検定基準を改正して、この三月にはまた発展的内容が随所に盛り込まれた小学校の検定教科書が誕生したわけです。

 こういった流れを見ていると、本当に文科省の主体性というのはどこにあるのかなと思うんですけれども、大臣いかがですか。

河村国務大臣 こういう視点というのはマスコミからも随分取り上げられ、文部科学省迷走しているのではないか、こう言われますが、私は、教育改革というのは、改革というのは絶えず行われていかなければいかぬわけでありまして、これで絶対だというものは特に教育の世界においてはないと思うんですね。もちろん人間が生きていく上で普遍的な不易のもの、これはもう絶対的なものがありましょうけれども、それ以外はもうどんどん変わっていかなければいけない部分であります。

 もちろん教育は開かれたものであって、国民の方を向いておかなければいけませんから、逆にこれは文部科学省はかたくなるんですね。いや、これでいいんだと言い張った場合にどういうことになるかということも考えなければなりませんし、ましてや、子供たちの未来については、皆さんがいろいろな要請を持っておられる、それにはやはり謙虚に耳を傾けなければいかぬ。しかし、その基本的なことは、やはり政策を少し変えていこうとすると、その場合に対していろいろ御批判が当然出るわけです。

 今回のゆとりと言われた、そのゆとりを持ってもっと体験学習をし、もっと、ただ単なる知識だけの学力じゃなくて総合的な人間として生きていく上での力をつけようという観点、そういう面からゆとりを持ってという言葉が、いつの間にか、土曜日も休みになったので勉強しなくていいんだという緩み教育だと言われる。これは困りますと。学ぶべきことはちゃんと学んでもらうし、学校に学力低下があってはいけません。特に七五三と言われる置いてきぼり状況、これは絶対なくさなければいかぬ。

 そうすると、基礎、基本をしっかりやっていただきましょうというところに「学びのすすめ」があり、またその中にはどんどん進む人に大いに勉強してもらわなければ困る、そういうことも含まれておるわけで、何せ平等がいいんだ、真ん中がいいんだということで、学校現場で差をつけてはいけない、そういうことを平気でおっしゃる先生方が、この前もタウンミーティングに行ってみてびっくりしたんですが、そういうことをおっしゃる先生方もいらっしゃる。いや、そうじゃなくて、やはり個人には能力差もあるし、特に算数とか理科とか差がつきやすい教科がある。そういうところにはきめ細かくやっていかなきゃいかぬ。もちろん、理解が早い人はどんどん前に進んでいただくし、理解がなかなか進まない人は時間をかけてでもゆっくりきめ細かくやりましょう、これがまさに「学びのすすめ」なんですね。

 この理解を十分求めるように、その後かなり努力をしてきたつもりでありますが、発展的な学習なんというのも本当は、これ以上やったら、学び方にここまででいいんだというものはないわけです。あのとき問題だったのは、一応ここの学年はここまででおきましょうということになってしまったところに問題があるので、いや、学びたい人にはどんどん学ぶ機会を与えなきゃいかぬ、だから、それもちゃんと残しておかなければいかぬということで発展的学習というのは出てきたわけでありますから、まさにそういう意味では、しっかり学びながら、同時に、まさに体験学習とか総合学習の時間とか、非常に広い範囲、多角的な勉強をする。単なる学力、知識力、知識だけの問題じゃない、そういうものも踏まえながら勉強していただく学校であろうということが今日の教育方針にあるわけで、これを公立学校はやはり期待にこたえていかなきゃいかぬ。本当に期待にこたえているのかどうか。

 そして、今回のこの改正は、では一律にというんじゃなくて、やはりいろいろ学び方、学区のあり方にも選択肢をふやして、そういう新しいタイプの学校もつくってみて、そしてその評価も受けながら、いいところはまたほかの学校も学んでいただこう、本当にいいものなら全部そういうふうにしたらいいんでしょうけれども、まずは第一歩を踏み出してみようということになっておるわけであります。

 文部科学省が揺れ動いておるのではないかという指摘、一部だけとらえればそういう見方ができないこともないかもしれませんが、私は、全体を見ていただければ、やはり「学びのすすめ」というのも教育の一環、大事なことでありますし、また、ゆとりを持ってやる、そして心の教育と言われる、そういうものもしっかりやる、これもやはり大事なことだ、こう思います。全体として基礎、基本を大事にしながら、しっかり学び、しっかり遊び、しっかりしつけもやりながらやっていこうというこの新しい時代に応じた教育の方針というのは揺らいでない、このように思います。

牧委員 よくわかりました。

 この提案理由説明をさっと拝見して、国が教育権を放棄してしまったのかなという感を抱いたものですから、余計なことまでお聞きをしましたけれども、教育権は基本的に国に帰属するものだという大臣のお考えでありましょうか。最後に確認をさせていただきたいと思います。

河村国務大臣 教育の最終的な責任はやはり国になければならぬと思っております。特に義務教育は、憲法の精神からいっても、この根幹を堅持する、義務教育費国庫負担制度の問題もしかりでありますが、義務教育についてはやはり国がきちっと責任を持って、その根幹を守りながら、責任を持ちながら、そして学校現場との役割分担をきちっとしながら、よりよき、質の高い、また全国平準化した教育をこれからも続けていく、これが日本のこれまでの教育に対する伝統であり、一つの文化として世界に誇るべき教育制度をつくり上げてきておる、このように思っておるわけであります。

牧委員 質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤でございます。

 今回、教育問題ということで、私も、今までたくさん質問があったんですけれども、どうしても、答弁を聞いていまして、明確にまだこのイメージが描けないということと、それからもう一つは、本当にこの制度が必要なのかという疑問がどうしてもぬぐえない部分がありますので、質問としてはかなり重なるところがあるかもしれませんけれども、最後となりますので、答弁の方よろしくお願いしたいと思います。

 最初に、文科省の方からこの法案の審議に当たってさまざまな資料をいただきました。その中で、「ねらい」ということで、「学校運営協議会を通じて、学校運営に地域住民や保護者が参画することにより、地域の実情に応じた特色ある学校づくりを実現」するんだと。これも、先ほど御説明の中にこういった言葉が随所に出てきて、文字どおり、読んでいくと、そうなのかなというふうに思います。

 さらに、個々の項目について、「地域の力を学校運営に導入することを通じて学校運営の活性化を図る」と。それから、「地域住民や保護者の参画により校長の学校経営を支援」する。さらに、「外部講師やボランティアの依頼等、地域の協力を得やすい環境を構築」する。そして、「家庭に対する要望等を通じて、学校と家庭の適切な役割分担を実現」する。つまり、今回の法改正で学校運営協議会を設置する、その設置するための必要性というものがこちらに書いてあるわけですね。

 そのとおり読むと、本当にそうだなと。今の教育環境やあるいは教育行政を見ていても、こういったことが足りないから、そういったものをつくっていくために必要なんだな、そしてその説明が書いてあるんだなというふうに見えるんですけれども、これは全くその文言どおりに、逆説的に物事が言えるんじゃないかというふうに私は思っているんですね。

 今、牧議員からも質問がありましたように、そもそもこういった制度が本当に必要なのかと。つまり、逆説的に考えていくことが、今回この法案の中身を別の角度から見るということで非常に大切な視点だなというふうに私は思って、そういう観点から質問させていただきたいと思います。

 そこで、ただいま読み上げました「ねらい」についてなんですけれども、これまでの学校運営における地域やあるいは保護者とのかかわりがさまざまありました。そういったものについて、これは、今まで文部省、つまり文部行政が、どうかかわってきたのか、どう考えてきたのか、あるいは、これまで行ってきた文部行政に対して、省として、あるいはそれぞれの責任ある立場でも構わないのですけれども、どう総括をしているのか。この辺のことなくして次の一歩に進むというのは、ちょっと待った方がいいんじゃないかという気が私はしてしようがないわけですね。

 中教審であるとかさまざまな審議機関でそういったことも含めて議論された結果こういった法案が出てきたということは十分承知の上ですけれども、当事者としてこの問題に関してどうとらえられているかということをまずお聞きしたいと思います。

河村国務大臣 大事な指摘だ、私もこういうふうに思います。

 やはり、学校というものが、その地域それから子供たち、この状況に応じてそれぞれの地域に合わせた特色ある教育を展開してもらう、また保護者や地域の皆さんもそういう思いでおられる、それに対応して、学校が開かれてオープンになって、家庭と地域との連携関係ができていく、これが望ましいわけです。

 実は、そういうことで、特に、今の学校の現状を見ていると問題点が多い、それはやはりだんだん、家庭の教育力も低下しているが、地域の教育力も低下しているんだということでありますから、そういうことをやはりきちっと把握しなきゃいかぬ。そうすると、学校における責任者であります校長がきちっとそのことを把握する必要がある。

 そういうことで、御案内のように、平成十二年四月に学校評議員制度ができたわけですね。これによって、校長がやはりきちっと地域の声を聞いた上で学校運営に当たっていこうということ、そして、それの相談役としての評議員を求めることができるようにした。これは現在、十五年七月現在の統計によりますと、まだ全部ではありませんが、六割を超える公立学校で学校評議員制度が導入されております。

 ただ、これは県によってばらつきがありまして、確かに一〇〇%やっているようなところと、もうほとんどできていない県と、そういうものがあるものですから全体の六割という数字が出ておりますが、これを導入して、この地域との連携、保護者との連携を図ろう、こういう動きがまず出ておるということです。

 それから同時に、もっと学校現場に民間の声も入れなきゃいかぬ、地域の声をしっかり入れなきゃいかぬ。最近では、御案内のように、民間の校長先生が任用されて、教育改革、学校改革に取り組んでいただいております。

 同時に、今、実は小学校の約九割、それから中学校の八割においては、その地域で活躍をされたり、あるいはそういう経験を持たれた、そうした方々、一般の方々に、特別非常勤講師制度であるとかあるいはボランティアの教員補助者として入っていただいております。これは、実は不況対策等もあって、臨時雇用対策補助金というのが出てまいりました。これを実は活用させていただいておりますが、そういうもので、今、それだけでも三万三千人の一般の方々が学校に入っている。小中学校、約三万三、四千ですから、三万三千人ということは、一校に一人は入っているという計算になるわけであります。

 こういうことで、そういう方々がどんどん学校に入っていただいて、地域との連携とかあるいは開かれた学校、そして特色ある学校づくり、そういうことをやっていただいておりまして、これをさらに具体的に進める一つの選択肢として、今回、学校運営協議会制度を入れる。今までのように、学校評議員制度というのは校長先生の相談役だけであった、しかし、学校全体を見る協議会、いわゆる私学における理事会に近いもの、今度新しいタイプとしてそれを導入することによって、さらに地域や保護者との連携を深いものにしていこうというのが、まさに総括の結果、制度の一つの選択肢として新しくこういう形のものをつくっていこうということで今回の法案の提出になっている、このように考えておるわけであります。

須藤委員 では、今の現状認識といいますか、これまでの経緯というものは、今大臣が話されたことでおおむね私も理解するんですけれども、そうしますと、これまで学校、あるいは学校と地域、あるいは保護者との関係、主に、学校教育ですから学校が中心になるんですけれども、そういったところで、学校教育が行われてくる過程の中でさまざまな問題が起きていると思うんですね。そういうことに対して、文部行政、文部省としてはこれまでいろいろ指導をしてきたことと思うんです。

 ところが、そういった指導というものが十分な効果を発揮し得なかった。指導がいいかどうかはちょっと別としましても、そういう対策、対応が十分効果を発揮し得なかった。ですから、そういう意味では、新しい制度、新しい仕組みをまた考えなくてはならないというふうにもとらえられなくはないと私は思うんですね。

 本当に十分な形の対応がとられてきたのかということ、別の言い方をすれば、きちっと責任ある行政が行われてきたのかということに対する自己評価といいますか、文科行政に対するこれまでの総括といいますか、そういうものを大臣としてはどう考えられているか、お伺いしたいと思います。

河村国務大臣 率直に申し上げて、学校に行きたくない子供たちが十三万人もいる。今回の統計ではちょっと歯どめがかかったとは言われておりますけれども、この現実はやはり直視しなきゃならぬ。文部科学行政をずっと進めてきながら、これだけではそれに対応し切れていないという現実があるわけですね。学級崩壊についてもしかりです。これに対応し切れない教師がいるということ。

 同時に、やはり家庭においてもそれをきちっと、しつけができていない家庭もふえてきたことも事実ですから、これも見据えながらどう対応していくか。これはやはり地域全体で、その地域に対しては、学校を管理運営しながら一緒にやっていくということも必要になってきますから、そういうものもやはり選択肢の中にこれから入れていかざるを得ない。これができたら、これがすべてだという保証もございません、正直言って。しかし、モデル校を使ってみて、やってみていると、もっと地域で、みんなで学校を守り育てていこうという雰囲気が出てきた。

 この前私が参りました五反野では、やはり少なくとも、授業が始まる前に礼儀作法をちゃんとしよう。我々の時代も、授業で先生が入ってきたら級長が声をかけて、起立と言って、気をつけ、礼と言って授業を始めておったと思うんですけれども、そういうことがずっとそこではなされていなくて、やろうと言うんだけれどもできなかった。それでやはり協議会的なものをつくって、そこできちっと理事会制度をつくって申し入れることによって、先生方もわかったということになって、授業が始まる前にきちっと、級長さんが声をかけて、先生に、よろしくお願いします、それで授業が終わったらありがとうございましたと言うことができるようになった。

 こんなことは基礎の基礎みたいに思うけれども、これはやはり家庭においてもそういうことがきちっとできなきゃいかぬわけでありますが、そのように、やはりこういう選択肢をふやすことによって、そういう学校をつくろうという機運がこれからまた出てくるのではないか。また、そのことは、ひいては、全部ではないけれどもそういう学校が出てきた、これが評判がいいということになりますと、一般の、普通の、そういうことをやっていない学校も、これに見習う動きが出てきたという報告をいただきながら、やはり今の学校が変わらなきゃいかぬ、教育も変わらなきゃいけないんでしょうが、学校そのものが変わる努力をしなきゃいかぬ、こういうことがやはり求められておる、こう考えております。

 今回、そういう反省の上に立って、また、その指摘がずっとされてきた、これにこたえる意味で、今回の法案によってその第一歩をまず、文部科学省としても当然これは、今の現状だけでは、国民の皆さんの要請あるいは子供の教育上から十分にこたえていないという反省の上に立って、総括をして、今回のこの新しいタイプの学校づくりということに踏み切った、こう私も思っておるところであります。

須藤委員 学校と家庭の信頼感、こういったものも最近はかなり欠けてきているなと。地域によっては、あるいは学校によっては、当然そういうことはないんですけれども、やはり数の上からいくとそういったものが希薄になってきているんじゃないかなと思います。

 それで、例えば、校内暴力であるとか、あるいは中学校が荒れて授業が成り立たなくなる、今でもあるんでしょうけれども、過去非常にそういう時期があって、よくよく調べてみるといいますか突き詰めて見ていると、どうも、特に中学校あたりは、校長先生がかわって、しっかりした人がトップというか校長になると変わるんですね。授業も成り立つし、校内暴力もなくなってくるし、まさに礼儀といいますか、おはようございますとか、授業が始まるときに起立、礼とか、そういったことも含めて、そういったことがどんどん変わっていく。そうすると、これは制度じゃないんですよ。校長先生がかわったという、ある意味でその一点で学校全体が変わってきたという事例が数多くあると私は思います。私の住んでいる地元の中学校でもそういう事例が現にありました。

 そのときは、恐らく、文部省としてああしろこうしろとか、指導云々ということとはちょっと違う、やはり有為な人材が校長という職につくことによって、その学校が大きく変わる、先生も変わってきます、そして生徒も変わるということでありますと、それはもう制度に頼ることではない。やはり突き詰めるところ、人材といいますか、適材適所といいますか、そういう話になってくると思うんですね。

 特に中学校あたりでは、校長先生の人材が物を言ってくるという状況にあろうかと私は思うんですが、どうも今回の法律の改正といいますのは、極論でこう言ってしまうと語弊がありますけれども、そういったところがちょっと抜けてしまっているのかなと。もちろんできるというような規定で、プラスの方向、これを活用するんだという意味からすれば、使える部分で非常にいいんですけれども、反面、それを使ってできないのは地域の責任だ、教育委員会の責任だ、地域の教育力がない責任だということの方向に流れやしないかという危惧も若干私は持つわけですね。それで先ほどの校長先生の例を出したんです。

 そういう意味における、文科省の文部行政における指導といいますか、行政の行い方というものの考え方、そういったものがどうであったのか、あるいは今どう考えられているか、お伺いしたいと思います。

河村国務大臣 学校が変わる、教育が変わる、校長先生のリーダーシップ、その思いは、須藤先生おっしゃるように、私も同じような思いを持っております。

 また先ほどの五反野の例を出してあれでございますが、ここにおいても実は、十四年に指定校的なものにして、モデル校でやってもらおうということになったんですが、やはり地域の声を聞いて校長が二度かわって、三度目の正直で今度のような校長ができてという例があるんですね。やはりそれは、地域が見に来たときに、校長がきちっとしたリーダーシップを発揮していないということが目に映った。そうすると、地域の声として、かえてもらいたいということになる。

 こういう機能がやはり働くということは、地域の声としてはいろいろあるのでしょうけれども、具体的にそういうのが実現できるということはこれまでなかなかなかったことであります。教育委員というのは全体を見ながらやっておったということだろうと思います。そういう意味で、やはりこの新しいタイプの地域運営、学校運営協議会制度を設けることによって、まさに、制度的なものではないけれども、具体的にそういう動きが出るということですね。

 文部科学省は、理念的には、いろいろな情報があるし、いろいろなケースがあるし、問題があれば新聞にも出ますし、全国でいろいろな問題があることを集約しているわけでありますが、しかし、地方において現実にどういう人材がいて、どういう人材を、こまを動かしたら効率がいいかということは、これは文部科学省ではわからないわけですね。だから、やはりそういうことについては地域の運営にお任せして、地域が地域の運営力を発揮していただかなきゃどうにもなりません。

 だから、そのことができやすい仕組みをつくっていくというのが、これはやはり文部科学省としての仕事になってくるわけでありますから、今回の法案になってくる、こういうことであろうと思います。

 これが決してすべてではございませんし、新しい動きとしては、さらにこれを進めたアメリカ型のチャータースクールの実験がございます。また、NPOなんかでいろいろな取り組みをしておられる動きもある。既に特区で導入した株式会社の動きというのも出てまいりました。

 私は、いろいろな選択肢というのがこれから入ってくる、そうした中で、またよりよき教育を求めて皆が努力していただく、そういうことが日本の今の教育にとって必要になってきておるわけでありますから、その第一次突破口といいますか、そういう意味で、今回の新しいタイプの学校を生み出そうとしておる、このように御理解をいただけたら、こう思うわけであります。

須藤委員 学校教職員の設置といいますか、都道府県の教育委員会が中心になって行われていますね。国立の場合は別としても、小中学校、これは都道府県教育委員会。そうすると、文科省が直接現場に入っていってああだこうだと言う機会もそれほどないし、恐らくそういう意味では、上から下への指導力あるいは強制力というものはそれほど高くないのかもしれませんけれども、今、大臣が言われましたように、現場におけるそういった問題解決の力というのですか、そういったものをより育てる、解決能力を高めていくための研修であるとか、あるいは行政の行い方。その行政という意味では、国があり、都道府県があり、市町村がある。余りよくない例で使われますけれども、いわゆる縦の流れの行政における指導力、こういったものが十分に機能をして、よりよい教育環境をつくっていくということが望ましいと思うのです。

 今、大臣が言われましたように、突破口としてこういう制度をつくっていく、その意義は私も考えますけれども、先ほどから申し上げている、これまでのやり方がうまくいかないから、さて、次の段階だということなのか。もう少しよく考えてみると、これまでやってきたやり方が不十分ではなかったのかという部分が結構あるんじゃないか。

 それはなぜかといいますと、さまざまなところで教育に関する問題が指摘をされてきましたね。そういったことを、いわゆる一般常識的に考えてみると、それはおかしいじゃないかと言われるようなことがたくさんありました。しかし、それは例えば、一片の通知で、そういうことはやってはならないとか、直せとか。それで直るんだったらとっくに直っているはずであって、直らない。

 つまり、そういったことを根本的にもっと変えていくために、日ごろの日常活動でどういうことがなされてきたかということの反省といいますか検証といいますか、そういったものがなされているのか、なされてきたのかということは、私は大事なことだと思うのですけれども、この点に関してはいかがでしょうか。

河村国務大臣 これは、絶えず、地方の教育委員会と文部科学省との関係で、連携をとりながら、よりよい教育を目指してきたわけです。

 しかし、現実にいろいろな問題が起きているということ、やはりこれは直視しなきゃならぬ。各県の教育委員会ともそのことは絶えず協議しながら、どうしてまずは学校の教員の質を高め、学校の教育力を高めるかということ。同時に、最近の家庭の教育力の低下、教育はどのようにこれを受けとめて、少しでもその教育力を高めるために、学校としては何ができるかということも考えていかなきゃいかぬ。文部科学省は、教育のセンターとして、それを、日本全国、全体、津々浦々、そういうことが考えられるような環境をつくり、連携をとっていくということをやってきたと思います。

 しかし、現実に問題が起きていることに対して対応していかなきゃなりません。そのためには、やはり地域の教育力を高める努力をもっとしていかなきゃいかぬ。だから、教育委員の皆さん方にも研修を受けていただいて、こういう問題に取り組んでいただく。

 しかし、モデルとしてうまくやっているところもある。学校が本気で取り組んで、不登校状態とかいじめをなくすとか、校内暴力をなくすとか、そういうことを現実に取り組んでいるところもあります。うまくやっているところもある。そうすると、うまくできていないところはどこが問題なのか。こういう全国的な情報を教育のセンターがきちっと流して、そして連携をとりながら学校を変えていく努力をしていただく。そういうことを、私は、つとにやらなきゃいかぬし、これからもずっとやっていかなきゃいけない課題だ、こう思っております。

 しかし、その中で、こういう取り組みはどうだろうということになれば、そういう取り組みができるような仕組みもつくっていきましょうということで、そうした選択肢として今回はできたわけでありまして、これができたからそれがすべてだと考えれば、これはまた間違うおそれもある。しかし、やはりそういう選択肢を設けながら、よりよい教育を求めていくということ。

 だから、確かに不十分な点があるがゆえに、原因があって今日のいろいろな問題があるということでありますから、やはりそれをどういうふうにして追求し、それを正していくかということ。そのためには、地域が盛り上がることによってそういうことができるんじゃないかという、いろいろなデータ、いろいろな報告、それから世界の情勢、よその国のやり方、いろいろなことを考えてみると、日本型の、こういう形のものを取り入れようというのがこの一つでありますから、これでそのすべてだ、こう思っているわけではありませんし、日常的に絶えず、こういうことについては関心を持ち、連携をとり、教育全体が上がるように、文部科学省としてはその責任が十分ある、日ごろ絶えずある、このように思っております。

須藤委員 では、ひとつ局長にお伺いしたいのですけれども、局長は文科省に入られてどれくらいになりますか。

近藤政府参考人 昭和四十六年に入省いたしましたので、三十三年近く経過をいたしております。

須藤委員 そうしますと、三十三年間、日本の教育というものを、文部省、文科省の中からしっかりと見詰め、そしてさまざまな政策を実行してきたというお立場ですね。

 その中で、今日に至るまでに、入省してから、それぞれ係長、課長、部長とか、局長まで来られる過程の中で、できること、できないこと、たくさんあったと思うのですけれども、今日に至った中で、反省点といいますか、文部行政、文科行政の中で、これはすべきだったとか、ああすればよかったなというような、そういったことはございますでしょうか。

近藤政府参考人 私にとって大変感慨深いものは一つございますが、昭和五十年から二年間、当時の学校給食課の係長をしておりまして、ちょうどその一年前に、学校栄養職員がいわゆる県費負担教職員に切りかわり、国庫負担の対象になったわけでございます。その後、いわゆる栄養教諭という制度の実現、これにつきましては、私、学校給食担当課長もいたした経験もございまして、文部科学省にいる間に実現したい、もしかしたら実現できないまま退官するのかなというような気持ちを持っておりましたが、先般、栄養教諭制度の創設をお認めいただいた。これは、私にとりましても長年の悲願の一つでございました。大変うれしく思っているわけでございます。

 それから、私も、これはこういう法案審議で長いこと言ってよろしいのかどうかあれでございますけれども、土光臨調というようなところに出向して、他人の飯を食べた経験もございます。そういった、外から見ておりますと、当時の文部省、やはり物足りなさを感じたこともございます。

 教育は確かに息が長い事業でございます。なかなかその成果が数値化できない。それだけに、なかなか、証明する、検証するということが難しい。また、難しいがゆえに、反省点でございますけれども、そういった点での、私のことですけれども、努力が十分でなかった点もあるのかな、そんなことも今考えておるわけでございます。

 最初に入ったところが大学課というところでございました。大学紛争の後始末もさせていただきました。これが先般、国立大学が法人化する。これも中央教育審議会の四六答申でそういった趣旨のことがあったわけでございますが、当時はまさか実現すると思ってもおりませんでした。これもまた先般、この四月から国立大学も法人化をされた、これも、思えば感慨深いものがございます。

 余り長くなりますと審議に差しさわりがございますので、この程度にさせていただきます。

須藤委員 別に個人的なことでどうのこうのということでお聞きしたわけじゃなくて。

 よかったということのお話なんですが、反省点は、一点でもありますでしょうか。

近藤政府参考人 先生、先ほど校内暴力とか子供の非行の問題の話をされました。ちょうど二十年前に、やはり荒れる中学校というようなことが大変世の中でも大きな問題に取り上げられたわけでもございます。そういう意味で、私も当時担当もしたこともございますけれども、二十年たって、果たして、やはり今の青少年が十分ないい環境の中で育ち、心身ともに健全な発展ができているのであろうか。

 こういったことをかんがみますと、文部科学省、文部省としてもいろんな施策を講じてきたわけでございますけれども、校内暴力が少し減るといじめがふえてくる、いじめが少し減るといわゆる登校拒否、不登校がふえてくるとか、いろんな問題が発生をしてくる。私どももいろんなことで努力をしたつもりでございますけれども、なかなかこういった問題の解決ができない。これは、学校教育のみならず、家庭教育、社会教育、あるいはいろいろな問題が複雑に絡み合っているわけでございますけれども、そういった点でのもう少し何か打つ手がなかったのかなというようなことは、今、私個人としては思いの中にございます。

須藤委員 お一人の方でも、反省すべきこと、あるいはこうあってほしいということがあるわけですから、省になりますと、多くの人がいて、当然そういった思いがたくさんあると私は思うんですね。そういったことを文部行政の中でやはり追求していく姿勢が私は大切なことだと思うんですね。

 それで、制度というのは、もう御存じのように、つくったその日から下手をするとひとり歩きをしてしまって、いつの間にか魂がどこかに行ってしまう、形骸化をしてくる、これが常ですよ。そうならないために、いつまでも熱い状況を保つにはどうしたらいいか。それは、とりもなおさず、そこにかかわる人がいつも熱い心を持っている以外に私はないと思うんです。

 文部行政に三十年余りそうやって携わってこられて、恐らくやり残したこともあるし、これからやりたいということもたくさん私はあるのではないかと思います。今回のこの制度が仏つくって魂入れずというようなものになってもらっては、これは本当に困るわけですね。

 同時に、私は、こういった制度がなくても、日本の教育環境はそれぞれの立場にいる人がその思いを持ってやっていけば十分できるんだというような環境を文科省がつくるべき、ただ、文科省が全責任を負うべきだとは決して言いませんけれども、少なくとも、そういう立場にある人たち、文科省が率先をしてつくっていくべきだ、このように思うわけです。

 その点に関して、一番最初にお聞きしたかったのは、これまでの総括あるいは反省、この制度をつくらなきゃだめなのかどうかという思い、考え方をぜひお聞きしたかったということなんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 私は、そういう思いを込めてこれまで御答弁申し上げてきたと思うわけでございますが、確かに、戦後、日本がここまでやってきて、そして経済大国と言われるところまで来た、資源のない日本が人材という日本人をつくってきた、これが今日の日本の一つの大きな特色であり、世界に誇るべき点でありますから、これをやはり崩してはならぬわけです。そのことを考えますと、教育が揺るぐ、教育が低下する、劣化する、これは日本の国にとってゆゆしい問題だ、こう思っておりまして、そういう意味でやはり改革をしていかなきゃならぬと思うんです。

 しかし、それには、先生、学校の現場に立つ先生もそうだと思うんだけれども、子供たちをどういうふうに将来育てていくのか、どういう日本人につくり上げていくかというのは、やはり夢を持って教育現場に臨んでいただかなきゃなりません。我々政治家は、行政もそうでありますが、やはりその条件整備をしていく責任があると思うんですね。

 そういう考え方に立って、今回もその条件整備の、これは全体の教育から考えたら、そんな、事はかなり大きなことかもしれぬけれども、まずスタート台に立ったところでありますから、これがすべてではありませんけれども、つとに、絶えず改革精神を持ったら、やはりこういうものも思い切ってやっていこう。

 それはもっと保守的に考えたら、教育現場は先生に任せたらいいんだと言われる方もあるし、おれたちはそれでやってきたということを豪語される自信のある先生のOBもいらっしゃるわけですね。四十人学級であろうと三十人学級であろうと、そんなことは問題じゃないんだ、教員に任せてもらえばいいんだという自信のある先生もOBの中にはいらっしゃるけれども、しかし、現実を見たときに、こういうことがあるということ、これはやはりちゃんと受けとめなきゃならぬ。文部科学省もそのことを受けとめなきゃなりませんし、地方における教育現場も受けとめていただかなきゃなりません。

 そういうことで、今回の改正も、学校を変えていく、総合的な教育改革の一環として取り上げるべき課題であろう、こう思っておりまして、そういう意味で、文部科学省の責任というのは非常に大きいものがありますし、だからといって、それによって萎縮してはならぬわけでありまして、未来がかかっている子供たちがよりよき教育条件のもとで伸びやかにやってもらう。

 そして、ある意味では世界との競争もある。世界の競争に負けてしまっては日本の国が成り立たなくなってきますから、そういう意味で、教育がその根底にあるんだということ。これは私も、APECの教育大臣会議に出てみても、やはりみんなどの国もそういう思いを持っておられて、教育大臣は自分の国の未来を教育にかけていかなきゃいかぬ、その思いですね、その思いはみんな持っておられる。それは、国力の違いによって、それにどれだけ投資できるかできないか、これに差がある。それも、ずっと突き詰めていくと、人材をどういうふうにつくってきたかということになっていく。

 最近言われるのは、日本の教育が劣化しているのではないか。あるいは学力が落ちているのではないか。その学力というのも、いろいろ言い方はありましょうけれども、全体的にこれでいいのかという指摘を最近特に受けるようになった、こう思います。

 だから、教育・文化立国と科学技術創造立国、こういうものがやはり一つになっていかなきゃなりませんし、そういう意味では、科学技術振興の面からも、人材をもっと育成しろという強い要請がある。また、医療の面、そういう面からもそういう強い要請が来ております。これはもう大学だけでじたばたしても始まらないので、基礎教育からちゃんとやってくれという強い声も来ております。

 そういうものをきちっと受けとめて、日本の力といいますか、世界に力を見せるというのは、これは人がつくっていくもの、国づくりはまさに人がつくっていくものでありますから、そういう考え方に立ってやっていかなきゃならぬ、こう思っておりまして、先ほど申し上げましたように、今回のこの改正もまさに教育改革の一環である、このようにとらえておるところでございます。

須藤委員 最終的には、すべからく人、つまり人材ですね、ここに私は到達するんだと思います。ですから、制度はあくまでも器であって、これを生かすも殺すも、そこに携わる人材、人であろう、すべてはそうだろうと私は思います。

 それで、特に教育といいますと、人が人を教えるわけですから、教える立場の人がやはりそういった自覚を持つということは、ある意味で最低限のことであり、また最高のことだと私は思うんですね。ところが最近は、えてしてそのこと自体が軽んじられている。政治家も、本当でしたら、これはわかりませんけれども、人の上に立って国政に携わる、あるいは県であれ市町村であれ、そういう立場ですから、それなりの覚悟を持ってやらなければいけないし、責任も大変大きなものがある。別にこれは、政治家だけではなく、教師だけではなく、どういう立場でも、とにかく人の上に立って物事をやろうという立場の人は、それ相当の覚悟がなければいけないと私は思うわけです。

 特に学校の先生は、小さなお子さんたちが、将来まさに日本をしょって立つ人材の育成をしていかなきゃならない。結局、自分が初めて出会ったといいますか、学校で教わる先生というものの影響力は、下手をすると生涯やはり続くわけですよ。それほど重要な職責を負っているのが先生であり、学校であろうと私は思います。

 そういうことを考えてみますと、やはり、今日の学校教育、そしてそこにつながる家庭教育、地域の教育力というものが、多くの人がこれは困ったと思うぐらい低下をしている。だから、何としてでもこれを上げていかないと日本はやがてつぶれてしまうだろうという大きな危機感があるんだと思うんです。そういう大きな危機感に包まれているときに、制度を直せば事足りるという発想は、私は間違っていると思います。それは、幾ら制度をつくっても、これを動かす人たちがそういう認識を持っていなければ無理だというふうに思います。

 そこで、話はちょっと違うんですけれども、学校の先生が、特に今申し上げたように、重要な立場であって、教職課程をとって学校を卒業して教員になる、社会経験、いわゆる学校ではない社会経験、あるいは公務員でないいわゆる民間、そういった経験の必要性というのを私はいつも感じています。

 教員の養成については、いわゆる地域の人材を導入したりとか、あるいは十年勤めれば研修期間があるとか、さまざまな工夫はされていますけれども、教育者として人の前に立って教鞭を振るうというときの視点といいますか経験、そういったものは、やはり民間、学校の外からの視点、経験というものが私は大変必要であるというふうに考えているんですね。

 それで、これは教員だけではなくて、ある意味で公務員になる人はそういう経験が私はぜひとも必要だというふうに考えています。だからといって、これを研修制度の中にすぐに取り入れろといっても、非常に難しいし、ちょっと無理なのかなと自分でも考えています。それでも、できれば、例えば、国家公務員になるにしろ教員になるにしろ、一度民間にまず入ってみる、それでいわゆる民間の厳しさというものを肌で感じて、それでも教員になりたいと思う人は、そこで初めて教員の資格試験を受けて教員になる、こういうような仕組みといいますか経験というものが必要なんじゃないかというふうに私は思うんですね。

 そうすると、大学を卒業して、では、一年でも二年でも三年でも民間を経験しろ、そして、最初に教員になる人たちの間にまずブランクが生じるから、その辺の整合性といいますか経過措置をどうするかとか、民間会社としては、いや、それは、二、三年使ってすぐほうり出すわけにはいかない、相当な費用がかかるからそんなボランティアはできないとか、さまざまなハードルはあるんですけれども、つまり、そういうようなことが必要なほど、今は教員あるいは公務員の人たちにいわゆる民間の肌合いといいますか視点、経験が求められていると私は思うんですね。

 この点については、ちょっと外れますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

河村国務大臣 学校教育における成果の大半はまさに教員にある、教員の資質にある、このことは紛れもない事実だと思いますし、須藤先生そう言われた、私も全く同感の思いで、ずっと最近、そういう思いを抱いております。

 最近は、先生方にも研修をしていただくということが盛んになりまして、ただ、ちょっともう遅いんじゃないかというんですが、教頭先生あたりをどんどん今社会に出しておるようなことをしております。最近の先生に対する評価の中で、やはり社会性がないということが言われておりますね。そういう点をどういうふうに高めるかということ。

 これはちょっと前の例ですが、教員免許法特例法案というのがあって、介護体験等をさせる。これは、田中眞紀子さん提唱いただいて、私も一緒に法案をつくって、議員立法でやりました。これは、一週間程度の短期間しかありませんが、介護体験的なもの、老人ホームとかあるいは身障者の施設とか、絶えずそういうところへ必ず行って触れ合いを持って、少なくとも一週間以上の体験をしない限り、最低一週間ですが、教員免許が取れない法律をつくったんですね。これは、学校の先生だけじゃなくて公務員にもやっていただいたらいい、あの当時そう思ったのでありますが、今、学校の先生は、必ずこの研修をやらなきゃいけなくなった。

 これは一つの例でありますけれども、これからさらに、二十二歳で大学を出ます、大学を出てすぐ教壇に立って、先生、先生ということになるんですが、そのことは、今までそれでやってきたのでありますが、社会の全体も高学歴化の中で、いろんな体験をしているお父さん、お母さん方の中で、まことに社会体験のない先生がそれにきちっと応じ切れるか。そういう点で、だんだん自信をなくしてやめていく先生も出ている現状がございます。

 そういう人たちをもっとレベルアップするには、おっしゃるように、どの時点でどうするか、大学の免許そのものを、二年ぐらいふやして六年ぐらいやらないと免許を取れないようにしてしまうのか、採用が一応内定したら二年間ぐらい社会体験に出すか、あるいは大学院に必ず行ってそこでいろんなことを学ばせる、こういうふうにするか、そういうことをこれから考えていく必要があるのではないかと私自身も今思っております。

 これには、それは、二年間、もし採用してからということになると、その間の保障をどうするんだという問題があります。それから、今、教員は一万人かそこらしか採用されていないのに、受験生は八万、十万とおられる。そうすると、その方々に皆大学院にまで行ってもらって、免許は取ったわ、就職はないで本当にいいのか、そういう課題がありますから、これはいろいろ研究してみなきゃなりません。

 いずれにしても、教員にそうした社会体験をしっかり持っていただいて、そしていろんな広い視点、それから、民間の校長を導入したというのもその一つのあらわれでありますけれども、そういうものが今求められておるということを私も感じておりまして、これは、制度的な観点からもやらなきゃなりませんし、人材養成という観点からも、質の高い、今の社会に対応できる教員人材をつくるという視点が必要だと思いますし、現場に今おられる先生方の研修にも今盛んにそういうことを取り入れるようになっておると思いますが、そういう視点を持つことは私は非常に大事な視点だと思っておりまして、これからの教育行政のあり方の中にぜひ取り入れたい、このように今考えておるところであります。

須藤委員 これは私の勝手な想像といいますか思い込みなんですけれども、恐らく、そういった形で先生になる方が社会経験をふんだんに積んで、そしていわゆる民間の厳しさ、これは、民間というと、そこには採算性であるとか効率性であるとか、さまざまそういうものが入ってきますので、そういった感性、感覚を身につけるという意味で経験なんですね。そういったことを積んでいくと、今、今回法案に出されているような部分の、少なくとも学校現場における問題点というのはかなり解消されてくるんじゃないかと思うんですね。

 それはどういうことかといいますと、例えば、学校でPTAや保護者会がある。学校の先生とは会話が成り立たないですね、余り。何かするとPTAに文句を言われるんじゃないかとか、今で言えば、ちょっと暴力ざたになったらこれは暴力教師だとか、ありとあらゆるところでがんじがらめになって、怖くて何も手が出せない。ところが、そういう経験を積んできますと、言葉も恐らく変わるでしょうし、意思疎通のための言葉、手段というものも経験をしてくるし、もっと言えば、感覚的に、それは普通の会話が成り立つと思うんですね。そこは通風性が非常によくなって、まずそこは第一関門突破だと私は思うんです。

 そういうことがないまま、先生という枠にはめられてしまったり、学校の管理者である校長という立場に追いやられてしまうと、どうしていいかわからない。それは、経験がないからわからないですよ。そういうことが、制度でこれを担保しようという考え方といいますか発想につながりやすいんじゃないかと思うんですね。

 それはなぜかというと、おおむね、都市部でもあろうと思いますけれども、やはり、地方に行けば行くほど、教育というものはその地域によってしっかりと支えられているわけですよ。そこに住む人たちが教育の重要性、もっと言えば人材の必要性ですね、そういったものを自分たちでつくっていかなければその地域は成り立っていかないということを、もう骨身にしみてわかっているわけです。ですから、教育の現場は学校ですけれども、人材の育成は学校であり地域であり家庭だという、これは当然のこととして長い間行われてきているわけです。ですから、そこにわざわざ制度なんかはめる必要がないわけですよ。人がいて、それぞれが啓発し合って育て合えば、立派な人材ができるわけですから。

 ですから、今回の法案を見ると、これは適用が必要だ、つまり制度の枠をはめなければどうしようもないと言われるようなところと、それからそういうものは全く必要がない、現時点でもそういうことが行われているという、やはり大きな差があり開きがあると思うんですよ。そういったことを、制度というのはつくればひとり歩きするという部分から見て、今回文科省は、つくってからあなたたちが使えばいいんですよというのは、私は、ちょっと無責任過ぎるというか、これまでの文科行政を行ってきてどうもうまくいかなかった部分を、地方分権で、自由度を与えるために地方に任せてしまえばそれでいいんだというふうに受け取られかねない。

 私は、これは、もしかしたら、随分無責任だななんて若干感じたりもしているんですけれども、この辺はいかがでしょうか。

河村国務大臣 この制度を一面的な部分だけ見ればそういう見方もできるかな、こう思いますけれども、しかし、最終的な、特に義務教育における責任は文部科学省にあり、それから逃れるわけにいかないわけでありますから、その制度の仕組みがうまくいくかいかないか、これは絶えず検証もし、評価も受け、そうした中で絶えず改革もしながらやっていかなきゃなりません。

 その結果によって、これがうまく機能し、学校が変わり、教育が変わり、人材養成に大きく貢献するということになれば、それをまた目指しておるわけでありますから、それに向けて努力をしていくというのが、今回のこの法案を出して、我々の閣法だ、こう思っておりますので、御指摘の視点は受けとめながら、そういうことを言われないように、今回のこの法案はそうでありますが、心してこの法案を初めとするあらゆる改革に取り組んでいかなきゃいけない。そしてやはり、地方ができるだけ濶達に教育に取り組んで、現場重視ということは私は大事だと思いますから、その視点は持っていかなきゃいかぬ、こう思っております。

須藤委員 では、次の項目に移りたいと思いますけれども、地域の実情に応じた特色ある学校づくり、これはその地域で本当に特色ある学校づくりというのが行われていると思います。

 よく言うように、学校制度の中で、金太郎あめでどこを切っても同じようなということよりも、その地域に行ったらこういう教育をやっているのかとか、こういう逸材がいるのかとか、そういう地域が日本全国各地に生まれてほしいなと、私は個人的には思っています。

 それで、自分のことを言うのは恥ずかしいんですけれども、私が小学校のときに通っていたところは当時まだ分校でして、途中から市街化が進んで、それが一つの独立した小学校になって今日に続いているんですね。当時、今から四十年ほど前ですけれども、運動会といえばはだしで走る、靴は履いていても、あえて靴を脱いで、そしてはだしで駆けっこをするということがよく行われていまして、農村部ですから、それがある意味でまた自然な風景なんですけれども、学校教育の観点、あるいは健康上の観点からも結構いいものがありまして、四十年たってもはだしの学校ということでまだ続いているんですね。非常に子供が健康である、足腰が強い、そして泥遊びはもちろん平気だと。

 ただ、最近、靴を履くようにとか、けがをしたりというような声も上がって、履いている部分も若干あるんですけれども、非常に特色のある学校づくりというか、伝統、地域の教育力の伝統だと私は思っているんですけれども、そういう例があるんですね。

 こういったものというのは制度でも何でもないですよ。ある意味で自然発生的に起きて、それが大変いいものだから続けようと。もしこれが制度に乗っかっていたら、私は、途中でやめてしまうとか、やる人がいなくなってしまうとか、そういうものだと思うんですね。やはりそこにいる生徒、そして先生、あるいは校長先生がそれをよしとして、だから続けていこう、そういう意思の継続が今日に至っているというふうに私は思っておりますけれども、日本全国、いろいろな、ほかの例でも似たようなことはたくさんあると思うんですね。

 そういう特色ある学校づくりということは、例えば文科省がこうしなさい、ああしなさいと言っても多分できないし、言えないんじゃないかというふうに思いますけれども、文科省の方で、例えばこういう特色あるものが学校で行われていますよという事例がありましたら、二、三、お聞かせ願えますでしょうか。

近藤政府参考人 今先生のお話を聞いておりまして、私も二十年近く前に、東北のある小学校で、やはりはだしで運動をしている、そういう学校を視察させていただいた経験を今思い出したわけでございます。大変すばらしい実践事例であったかと思っております。

 それから、今の子供たち、やはり自然体験、こういったものが不足をしているということで、例えば、これもある市の話でございますけれども、農山漁村に長期滞在をするセカンドスクール、これはその市のすべての小学校五年生、九泊十日間で、山形県や長野県などの市町村に行きまして、そこでいろいろな自然体験、あるいはそういった農村の農家に泊まって、そこでいろいろな体験活動を行う、そういった事例でありますとか、あるいは、小学校の教員と幼稚園の教員の人事交流の中で、幼稚園と小学校とが連携をしながらいろいろな取り組みを進めていく。

 あるいは、これは中高一貫の話でございますけれども、宮崎県に五ケ瀬という、これまた山の中でございますが、六年制の中高一貫の初めてできた学校でございますけれども、私はあの学校も視察をさせていただきましたけれども、地域学というような形で、その五ケ瀬地域のいろいろな地域の伝統でありますとか文化、こういったものを、それこそ、これは全寮制でございますから、体験をしながら、生き生きと子供たちが学習にも励んでいた。

 そのほか、いろいろな事例がございます。それぞれの地域あるいは学校で、今いろいろな特色ある学校教育あるいは学校づくりが進められている。私どもも、そういった事例は集めさせていただきまして、都道府県の教育委員会を通じて紹介をさせていただいておる、こういうところでございます。

須藤委員 幾つか事例を挙げていただきましたけれども、ここで私がお話をしたいのは、つまり、別に制度をつくらなくても、一生懸命やっているところはあるじゃないかということなんですね。

 ということは、どういうことかといいますと、そういうところの実践例を研究して、その地域の特殊性、特色というものをどうやって、まねをする必要はないと思いますけれども、どうしたらそういうものが全国各地に広がっていくのかということの研究、そして実践を図っていくことが必要じゃないかというふうに私は思うわけですね。これはもう大変な努力だと思うんです。ただ、その努力の方がいかに効果があり、そして長く続き、大きなものになるかということを考えたら、はかり知れないものがあると私は思っています。まさに地域の教育力あるいは地方の教育力であろうと思います。

 これは、きょう最初に冒頭申しましたように、逆説的に、今回の制度を導入することについていろいろなところから考えてみたいということで今御質問しておりますので、この点も、私は、そういう見方が必要ではないかというふうなことの例として、今お聞きをしたわけです。

 時間が迫ってきましたので、あと一問だけお伺いします。

 教職員の採用その他の任用に関して教育委員会に意見を述べることができる、これについては、もう既にさまざまな質問がありました。教育委員会に、例えばPTAや保護者会や地域の人、保護者、そういった方々が学校の人事ということに関して意見を述べる、あるいは話を持っていくということについて、文科省、こちらにいらっしゃる方は、現場というものがどうかということをどう感じられているか、私は結構疑問を持っているんですけれども、実態というものをどう認識、把握されていますでしょうか。

近藤政府参考人 先生の御指摘は、恐らく一部の都道府県あるいは市町村等で、現実に、そういう教員の人事一つをとってみても、なかなか簡単には教育委員会の思うとおりにいかない、あるいは、いろいろな外野席からの声であるとかいろいろなそういうしがらみと申しましょうか、そういったことを十分に認識せずにこういった制度だけ導入しても、うまくいかないのではないんだろうか、こういう御指摘ではないかと思っております。

 確かに、一部そういうところがあるということもまた事実でございますが、私どもは、こういった制度を導入することによって、むしろ外部の方々が学校の現場の中に入っていただく、そして公正、透明な学校運営の改善、こういったことの一つのきっかけになればと、もちろんこれは、その地域、学校の実態もさまざまでございますから、そういうことからも、これは必置ということではなく、教育委員会の判断でやれるところからやっていただく、こういう制度として考えておるところでございます。

須藤委員 学校現場における、学校あるいは教育委員会も含めた関係の中で、意見がなかなか通らないというのは、これは日常茶飯事のことでありまして、その意味で、しかるべき機関を設置して通風性をよくするということの意味は私は大きいと思いますけれども、逆に、それによってなかなか意見が通らないということも起こり得るわけです。

 私は、何かあったら学校に親が文句を言いに行けばいいし、PTAや父兄会等、そういう機関があれば、そこで意見を集約して、学校にどんどん言っていく、それでも通らなければ、地域の教育委員会にどなり込んでいく、そういうことも必要だと思うんですね。それを余り形式張って、形にのっとらないとだめだとか、まさに通風性が悪くなってしまうというふうに思います。現場を見ても、そういうことがかなり多くて、どうもそういったときには、上級機関から下級機関へみたいな、国から県、県から市町村、教育委員会からPTAというような形が横行しているような気がします。

 先般、文科省の方々とお話をして、ふと私、気づいたことが一つだけあるんですけれども、こういったことをやらせるとか、こういったことをどんどん進めさせるとか、使役系の言葉がふんだんに使われているんですね。これは一度、地方に行ってみっちり研修を積んできた方がいいんじゃないかなとそのとき感じまして、多分、そういった硬直性というか、その辺の感覚が今日の文科省の行政の行き詰まりにも関係があるのではないかというふうに思うところです。

 時間が参りましたので、これで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 次回は、明十九日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十四分散会


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