衆議院

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第1号 平成16年8月4日(水曜日)

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本国会召集日(平成十六年七月三十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      小林千代美君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    鳩山由紀夫君

      肥田美代子君    牧野 聖修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

平成十六年八月四日(水曜日)

    午後一時三十八分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 淳司君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松木 謙公君

      松野 信夫君    松本 大輔君

      笠  浩史君    高木美智代君

      石井 郁子君    山本喜代宏君

      横光 克彦君

    …………………………………

   議員           枝野 幸男君

   議員           牧野 聖修君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   内閣府副大臣       中島 眞人君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      小野 晋也君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸秀君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   山木 康孝君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      萩原 久和君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月四日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     鈴木 淳司君

  小林千代美君     松木 謙公君

  高井 美穂君     松野 信夫君

  富田 茂之君     高木美智代君

  横光 克彦君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     城内  実君

  松木 謙公君     田島 一成君

  松野 信夫君     高井 美穂君

  高木美智代君     富田 茂之君

  山本喜代宏君     横光 克彦君

同日

 辞任         補欠選任

  田島 一成君     小林千代美君

    ―――――――――――――

七月三十日

 学校教育法の一部を改正する法律案(武正公一君外三名提出、第百五十九回国会衆法第四八号)

八月二日

 私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案(岡田克也君外十名提出、衆法第四号)

同月四日

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(江崎鐵磨君紹介)(第二〇号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(江崎鐵磨君紹介)(第二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案(岡田克也君外十名提出、衆法第四号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する事項

 生涯学習に関する事項

 学校教育に関する事項

 科学技術及び学術の振興に関する事項

 科学技術の研究開発に関する事項

 文化、スポーツ振興及び青少年に関する事項

以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

池坊委員長 岡田克也君外十名提出、私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。提出者牧野聖修君。

    ―――――――――――――

 私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧野議員 ただいま議題となりました私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明いたします。

 さきの通常国会で成立した年金改正法に対して、国民は強い疑念を抱き、繰り返し不信感を表明してきました。成立前の世論調査ではおおむね六割が法案に反対し、この民意を踏みにじって衆参両院での強行採決という異例の国会運営を行った結果、成立後の世論調査では七割から八割の国民が成立を評価しないとしているのであります。

 そして、最も鮮明に国民が年金改正法にノーを突きつけたのが、先月の参議院選挙でありました。この選挙で有権者は、どの世論調査を見ても、年金を最大の判断基準としていました。まさに年金選挙だったのであります。そして、その結果、与党は改選過半数を獲得することはできませんでした。自民党は、第一党を滑り落ち、議席数、比例区得票数、選挙区得票数、いずれでも民主党の後塵を拝した結果となったのであります。これが民意なのであります。国民は、今回の年金改革はだめだということを、民主主義の最も重要な手続である選挙で、これ以上ないくらい明確に表明したのであります。年金改革関連法の廃止は、我が国が民主主義国家である以上、余りにも当然のことであります。

 年金改革関連法を廃止する理由は他にもあります。すなわち、この改正の、いわゆる本体法は既に内容的に欠陥法となっているのであります。政府は、通常国会の年金審議中からさまざまなまやかしを繰り返してきましたが、成立後、最大のまやかしが判明いたしました。審議中に民主党議員が何度となく求めてきました出生率が、法案成立後に公表されたのであります。民主主義を支える情報公開や適正手続を怠ったことも極めて問題ですが、年金改革に限っていえば、事後的に公表されたこの数字こそ最大の問題であります。政府が全く想定しない一・二九という出生率では、年金改正法の約束する負担上限、給付下限が実現できないのであります。既に年金改正法は破綻していると言わざるを得ません。

 今回の年金改革は明らかに破綻しております。そして、参議院選で示された民意は、年金を一から議論し直すことであったのは明らかであります。これは与野党の違いを超えた受けとめ方だと考えられます。一元化も含めて検討せよと国民は言っているのであります。だからこそ、年金改革関連法の一つとして成立したこの私学共済法改正法も一たん廃止をして、一から議論することが必要なのであります。

 以下、本法律案の概要を申し上げます。

 第一に、さきに申し上げましたように、通常国会で成立した私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止することとしております。

 第二に、基礎年金拠出金にかかわる国の補助の割合については、平成二十年度末までに二分の一に引き上げることとしております。

 第三に、改正法に盛り込まれていた事項のうち、特に必要と認められる部分については、改めて私立学校教職員共済法の改正を行い、実施することとしております。具体的には、育児休業に準ずる休業期間中についての掛金の免除に関する事項などであります。

 以上が、本法律案の概要であります。

 重ねて申し上げますが、参議院選挙で示された民意は、年金改革を一から議論し直せということであります。この民意を素直に受けとめれば、今回の一連の改正法廃止法案の提出は余りにも当然の行為であります。憲法に規定される国権の最高機関は、民意を代表してこその権威であることを強く申し上げ、趣旨説明とさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官林幸秀君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長山木康孝君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長萩原久和君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、研究振興局長清水潔君、スポーツ・青少年局長素川富司君及び厚生労働省健康局長田中慶司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自民党の遠藤利明です。

 きょう、この大事な委員会で質問させていただくわけでありますが、まず最初に、先日来、新潟そして福島あるいは福井、中四国と大変な水害がありました。犠牲になられました皆さんに心からお悔やみ申し上げますとともに、被災に遭われました皆さんが一日も早く元気に復旧されますことを、まずもってお祈りを申し上げたいと思います。

 そこで、その画像を見ておりましたときに大変印象的なのは、避難する場所が大体、学校の体育館とか公民館なんですね。ですから、私たち、教育という観点の中から学校の体育館あるいは公民館とかも見てきたんですが、国民の安全を守るという意味からも、実は大変大きな役割を果たしているんだなということを改めて実感をいたしました。

 実は、私は戦後のベビーブームの時代の生まれでありますが、ちょうどそのぐらい、昭和四十年代ぐらいに建てたそういう建物が耐震性がない、あるいは老朽化しているという中で、ただ単に学校の子供たちの体力あるいは健康という観点だけではなくて、地域の安全を守るという意味からも大変大きな役割を果たしている、そういう観点から、これから体育館あるいは公民館に対してなお一層しっかりと取り組んでいく必要があるんだと思いますが、まずこの件についてお伺いをしたいと思います。

萩原政府参考人 お答えいたします。

 学校施設につきましては、先生今御指摘のように、災害時に児童生徒、子供たちの安全を確保するのはもちろんでありますけれども、地域住民の方々の避難場所となることが多いわけでございます。したがって、その耐震性能の向上あるいは老朽化対策、これらを図っていくことは非常に重要な課題だと認識しております。

 また、このたび、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太の方針二〇〇四におきましても、また防災白書におきましても、地域の防災拠点となる学校等公共施設の耐震化推進、これが重要だということが盛り込まれております。

 文部科学省としましては、今までもそうですが、今後とも、学校施設の耐震化を含め、地域の避難場所としての整備が円滑に進められますように、必要な予算の確保に努めて適切に対応してまいりたいと考えております。

遠藤(利)委員 続いてこの法案に入るんですが、その前にもう一点だけ。

 実は私、大変野球少年でありまして、子供のときはもう朝から夜まで真っ黒になって野球をやっていた。大の長嶋ファンで、長嶋さんが倒れて大変残念だなと思っているわけでありますが、一リーグ制、二リーグ制、今いろいろな議論をされているようであります。後ほどほかの議員から質問があるようですから詳しく申し上げませんが、現在のこうした一リーグ制、私は一番心配するのは、どうもプロ野球と高校野球、アマチュア野球との連携がうまくいっていなくて、そういう意味では、サッカーの強化のおくれをとってしまったんじゃないかなと。そんなことを考えますと、なおさら、こうした観点の中から、今回の騒動がプロ野球の衰退につながってしまわないかどうか、そんな危惧を持っております。

 そんな意味で、後ほどほかの委員から話があるということでありますから、所感だけ大臣にお伺いをしたいと思います。

河村国務大臣 私も野球ファンの一人でありまして、この成り行きについては、プロ野球の発展という観点から一体どうなるんだろうという思いがございます。

 文部科学大臣として、一連のこれまでの動きを私も見ておるわけでございますが、これは任意団体のプロ野球組織というのが、この合併問題等は、リーグ制の問題をおやりになる。そこで、プロ野球協約というのがあるわけでございまして、これに従って粛々とやっていただくということになるんであろうと思っておりますが、今、遠藤先生言われたように、私も、やはりプロ野球が発展してもらいたいと思っておりますから、ぜひその方向で、やはり広範な意見も聴取しながら、いい方向にまとまるといいな、こういうふうに思っております。

遠藤(利)委員 最近、プロ野球といいますか、野球全体が元気がないので、そういう意味からも隆盛になるような制度にぜひなってもらいたいなと思っております。

 さて、本題に入りますが、私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案、こういうことであります。

 いろいろ質問をと思って法案を見たんですが、余り書いていないんで、なかなか質問するのが難しいなと。もちろん、反対をする立場から質問させていただくわけですが、私は、国会というのはお互いの信頼関係から成り立っているんだろうと思います。

 過日の我が委員会におきまして、大臣の答弁について、信頼できるできない、担保するしないという議論がありました。しかし、ここはやはりお互いに信頼をし合ってなし得る、ましてや政党政治でありますから、政党間の約束というのはやはり何よりも重いものだろうと私は思っております。

 そうしたときに、今回、牧野委員から提案があったわけでありますが、そうしますと、五月六日に、自民党、民主党、公明党が、そのときの幹事長であります安倍さん、そして岡田さん、あるいは冬柴さん、この三名の方が政党として合意をし、そしてその上で、五月十一日の衆議院本会議では、修正案を出して、当然、民主党の皆さんも賛成された。その政党間の合意というのはどうなったんだろうと。

 先ほど言いましたように、議会制民主主義というのは、当然、最終的には多数決でいくわけでありますが、当然、その過程の中で少数意見を尊重する。ですから、この法案につきましても、民主党の皆さんや多くの皆さんの意見の中で、一元化を含めてこれからしっかりと議論していきましょう、そうした前提のもとに合意をされたはずなんです。ですから、民主党の皆さんも修正案には賛成をされた。しかし、参議院へ行きましたら、一転してそれが反対と。そんなのは全然違うと。それは、院といいますか、議会としてはおかしな話ではないだろうか。

 いろいろ聞きますと、その当時、次の選挙に向けてとかいろいろ議論があったようでありますし、党首が変わったからとか、党の中で違う意見の人があったからとか、いろいろ新聞報道等では伝わってくるわけであります。しかし、私たち、例えばもしこれが、自民党が、あるいは政府がこうした合意を破ったとしたときに、民主党の皆さんはそれで納得するだろうか、多分しないだろうと思います。それが野党だったらいいんだろうか、それは私は大変おかしな話ではないかなと思っております。

 まず、その三党合意についてどのように認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。

牧野議員 遠藤委員の静かな真摯な質問に丁寧にお答えをさせていただきたいと思います。

 いやしくも、国民注視の中で、公党の代表たる者が話し合いをして、そこで決まりました結果といいますか、約束事といいますか、合意は、これは重たく受けとめて尊重しなければいけない、そういうことだと思っております。

 誤解のないように申し上げますが、民主党はその三党合意を破棄しているというわけではありませんので、その点は誤解のないようにしていただきたいと思いますが、その三党合意を尊重しているというその意味をもちまして、今度の本法の、親法である改正国民年金法廃止法案、この附則の中に、三党合意に基づく修正部分を私たちは明確に盛り込んでいる。

 それで、三党合意を遵守し、より実効性あるものに高めていくというのには、私は、二つの前提条件があると思うんですね。今、委員が言われましたように、それは、公党間の信頼関係がやはり構築されている、そして、お互いがいろいろな壁を乗り越えて信頼関係をつくっていこう、よいものを生み出していこう、そういう姿勢が必要だと思うんですが、確かに、衆議院段階までは粛々と進んでいった法案でありましたけれども、またステージが変わってきましたら、いろいろなことがありまして、波乱含みになってしまった。

 そして、その後、参議院選挙が終わってから、果たして、本当に信頼を保ち得るだけの状況にあるかというと、私は疑問に思っております。ですから、お互いにそこは仲よくやっていくという信頼関係をつくらなければいけないということ。

 もう一つは、抽象論でもう済まされる状態ではないんですよ。私たちは、さきの国会では、自分たちの抜本改正の案を提出して、国民の皆さん、そして政権党の皆さんにちゃんと明示して、具体的な数字とかいろいろなことを挙げて、しかも、我々は消費税のことまで踏み込んだ責任ある態度を示した。

 ところが、御党の場合には、総理はそういう一元化に向けての評価をされていますけれども、どうも党内あるいは現場での意見等が漏れ伝わってくるところによると、マスコミの報道によると、そこまで行っていないんじゃないか。しかも、我々はちゃんとした法案として前回出させてもらって準備をしているけれども、御党におかれては、まだ、その後のしっかりとした対案といいますか、抽象論ではなくして、具体的に話し合う、そういったものを持ち合わせていないのではないかという感じがしておりますので、そうなると、実効性は期待をしておりますし、三党合意は尊重しておりますけれども、今はそんな状況ではないかな、そういうふうに考えております。

遠藤(利)委員 今、選挙で民意を聞かれたと。私たちは選挙で大変苦戦をいたしましたので、いろいろな理由の中で、年金法案、確かに、いろいろな説明不足だった点もありますし、それはあると思っております。

 ただ、私は、選挙の終わる前、いわゆる衆議院から参議院に移った段階で皆さんの方針が変わったのかなと。しかし、公党の約束というのは、衆議院だけの約束とか参議院だけの約束ではなくて、党と党が約束をしたわけですから、少なくとも衆議院、参議院を通じて約束したんだろうと。その上で、さあ、次のステージにお互いに進みましょうかと。それが、約束の最中に、破棄していないとおっしゃいましたが、方針あるいは行動を見ますと、参議院の審議の段階ではもう既に実質的には合意を破棄した行動をされていたんではないだろうか。

 そんなことを考えますと、私は、参議院の議決が終わって、改めて一元化のためのいろいろな協議会をつくるなり努力をしましょう、それをしなかったというなら、これは理解できるんです。しかし、その前の段階で、既に方針が変わった、あるいは選挙、多分これは選挙を意識されたんだろうというふうな思いをいたしますが、それはやはり違うんではないだろうか。

 これはさっき言いましたように、もし自民党がそういうことをされたときに、では皆さん方は、その合意は、どうぞ方針が変わったら結構です、あるいは、全体の流れが変わったから結構ですとおっしゃるか、絶対おっしゃらないと思うんです。そこは、しっかり信頼関係で成り立っている合意、これを守らなければ、私は、国会の運営というのはなし得ない。それを前提にした形でのその後の活動というのは、大変不信を持っております。

 それについては水かけ論になるかもしれませんので判断は求めませんが、ただ、今回の廃止法案、なかなか、そんなに多く書いてありませんが、見ますと、例えば給付と負担のあり方の見直しなど、今回の法案には触れていないわけですね。年金制度を持続可能にしますよ、こういうふうな形で、たしか、前回の国会での法案はこういうことが書いてあったと思うのです。今回の廃止法案には、これは全く書いていない。

 それから、三党合意の中で、十九年三月を目途に結論し、随時実施をしましょうと。しかし、今回の民主党の皆さんの案は、十八年度中にもう既に行う。三党合意と今回の皆さんの案とそごを生じているのではないだろうか。

 それから、必要な整備を平成十八年度中に行う、そういうふうに書いてありますが、国民年金、厚生年金そして共済年金、いろいろな仕組みを、今は十六年の半ばでありますが、そうした具体的な姿とか内容とかスケジュール等を示さないで、さあ、これでやりましょうといって二年足らずで本当にできるものだろうか。

 そしてまた、この提案の中に最後の方にありますが、今回成立した、前国会で成立した改正案のいいところは今回は取り込んでいる。

 ですから、そうしますと、逆に、全体のバランスとか年金財政というのは無視されているのではないだろうか。こんなことを考えますと、こんなことを言うと大変民主党の皆さんに申しわけないのですが、先に否決されるということを前提にして、国民の皆さんに受けをねらった何かパフォーマンスなのかな、そんな思いが私はするんです。

 ぜひそれについてお答えをいただきたい。

枝野議員 まず、三党合意の話なんですけれども、我々、通常国会の段階で、衆議院と参議院で途中で方針が変わったという事実は全くございません。

 あくまでも、三党合意をお読みいただければよくわかると思いますけれども、政府案のことについては全くこの三党合意ではかかわっていない話でありますし、実際に衆議院でも、我が党は、修正部分には賛成をいたしましたけれども、政府原案には反対をいたしています。

 そして、参議院に行きまして、残念ながら、最後の採決の段階で混乱をいたしましたが、これは既に御承知のとおり、西川きよし議員の質問が予定されていて、総理も出席してというようなことがあったのに、なぜか一時間、二時間を待てずに無理な採決をされたというようなことなどがあったという国会対策上の問題、国会運営上の問題で混乱をいたしましたが、私どもは一貫して、中身が自分たちの意見と違うから国会に出ないなどというような姿勢はとったことはございません。

 あくまでも、国会に出ていく出ていかないという話は、ルールや前例を無視した強引な国会運営があった場合には、それに対する抗議の意思を示すというようなことはあり得ます。それは三党合意とは全然別次元の話でありまして、私どもは一貫して、政府案には反対であり、ただ、この三党合意の文書の中にある範疇については、これは合意をしたし、これは我々としてもぜひ与党にも真摯に受けとめていただきたいということであります。

 ただ、一言付言させていただきますと、三党合意に基づくお互いの約束事を時系列的に、何をやらなければならないかという一番最初には、実は、衆議院の厚生労働委員会における年金に関する委員会決議を行う、これが時系列的には最初にやるべきことなんですが、残念ながら、これがまだ合意ができておりません。午前中の厚生労働委員会でも、ここは与野党間で意見の食い違いが明らかになっています。

 まず、委員会決議が合意できて委員会決議が行われれば、次のステップとしては、厚生労働委員会の小委員会設置や協議機関の設置という段階に進み得るのかもしれませんが、まずその前の段階であるということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 そして、今度の廃止法案について、我々としては、まず、さきの選挙で示された民意というのは、私どもも、民主党の示した対案がそのまま一〇〇%支持されたというところまでうぬぼれるつもりはありません。しかしながら、少なくとも、決め方といい、中身といい、成立した政府案がだめなんだ、もう一回一からしっかりと議論をし直せ、こういう民意であるということははっきりしているというふうに思います。

 そして、その上で、では、本来の抜本改革はどうあるべきか。これは、我が党はさきの通常国会で示した案があります。ぜひ政府・与党としても一元化などについての方針を党内あるいは与党内でしっかりと整理をしていただいて、その上で協議をということであるならば、三党合意に基づいてぜひさせていただきたいと思いますが、まず与党の側でそのことを整理していただかないと前に進みようがないということを申し上げさせていただきたいというふうに思っています。

 また、その上で、一たん白紙に戻して抜本的な部分についてやるとした場合だとしても、それは与党の側の皆さんもおっしゃっているとおり、年金財政は後になれば後になるほど大変厳しくなります。

 これも三党合意に基づいて、十九年の三月までに、つまり十八年度中にというめどが示されています。我々は、そこまでに結論を得るにとどまらず、措置をとるところまで頑張ってやっていこうということでありますし、与党の側も、その十八年度中に合意をするというようなことについて合意をされているわけですから、それぐらいの期間の間に、与野党協議という困難なことを乗り越えた上で、一致をして抜本改革、一元化等のことをまとめられるというふうに与党の側もお考えになっているから三党合意をされたのではないかというふうに思っておりますので、これは国会内の努力によって十分可能だと思っております。

 最後に、我々は、そうやって一たん白紙にして抜本改革の部分を一から議論し直すべきだと考えておりますが、政府案の中にも部分的にはいい部分も含まれていたということは否定するつもりはありません。しかも、仮に我々の一元化をしても、従来の負担に対応する部分の給付という意味では従来制度が残りますので、そこを部分的に手直しすることで、いいことについて、しかも抜本改革のスタートまでの間に先行して行うことが可能な部分について、これは改めて復活をさせるということで考えております。

 確かに、この廃止法だけ見ると、理念とか哲学とかが見えないというふうな御批判はあるかもしれませんが、我々は抜本改革の理念、哲学は通常国会で示した対案で明確になっておりますので、それに至るまでの経過措置的部分としての復活部分がある、こういうことでございます。

遠藤(利)委員 決議を先にと言われますが、通常、廃止しろと片方で言っておいて、さあ、決議しろというのはなかなかすっきりしないかなという気がいたします。

 ただ、お互いここは水かけ論になりますし、同時に、我々としては一日も猶予はならない。まず、成立した法案はしっかり実行して、その上で、お互いに腹蔵なく意見を出し合っていい形の法案をつくりましょう、そういうことでやっていくのが、私は本来の、三党合意を受けた、そして国会の中でお互い信頼関係を持った形でのスタートかなと思っておりますので、ぜひそんな形で進めていただきたいと思っております。

 年金廃止案につきましては内容が余りありませんので、もう一つ、実は最近我々にとりまして大変大きな課題は、義務教育の国庫負担制度についてお伺いをしたいと思います。

 三位一体の改革、十七年、十八年で三兆円の税源移譲をしましょうと。知事会の意見を聞くということで、これから知事会が、八月十八、十九日にこの三兆円の中身の内容を総会で決定する、これを伺っておるわけでありますが、私は、教育はまさに国の礎だろうと思っております。

 実は、七、八年前から私、アジアの子供たちに学校をつくる議員の会という活動を自民党の国会議員四十名ぐらいで活動しておりまして、お互いに月々一万ぐらい出し合って、この前もミャンマーとそれからカンボジアに合わせて三校贈呈をしてまいりました。

 教育というのは、何にも増して国が責任を持ってやるべきものだ、それがその国を隆盛させる、国民として誇りを持てる一番大きな力だと思っておるのですが、最近の議論を聞いていますと、何か教育論でなくて財政論になっているのではないかな、本末転倒の議論になっているのではないかな。

 そこで、時間も余りありませんので、大臣にお伺いしたいのですが、義務教育というのはだれの責任でやるものですか。それは国なんですか、それとも地方ですか、まずそこからお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 義務教育費国庫負担制度に関して、まず、義務教育のそもそも論をお話をいただきました。

 遠藤先生も御存じのように、憲法第二十六条には、教育を受ける権利を国民が持っているということと同時に、その子供の保護者といいますか、それに対して教育を受けさせる義務を課しておるわけです。そのかわり、教育は無償にするというのが精神でありますから、その基本的な精神からいけば、教育の最終的な責任は国が負うべきである、私はそのように考えております。

遠藤(利)委員 私も、当然国が負うべきものだろうと思っております。

 実は、今回の議論をしている中で、私もいろいろな知事とお会いをしたんですが、一部の知事の中では、税源移譲を受けて我々がやったとしても法律で縛ってさえくれれば同じ効果じゃないですか、そんなことをおっしゃる知事もいらっしゃるんです。これについてはどういうお考えですか。

河村国務大臣 法律は、人確法もありますし標準法もあるわけです。教育費を何に使ってもいい金という形になった場合、それから今の言われている、巷間言われているといいますか、予定されている税源移譲からいっても、教育費に見合うだけの税源がそのまま行かない、あとは交付税になる、交付税はカットされる方向である、こう考えますと、やはり教育費の削減につながることになりかねない。よって、財源がある県ない県、ある地方ない地方によって教育費にかかる度合いが変わってくると大きな教育の格差が生まれる。この懸念を私はどうしても払拭ができない。

 こういう点もあって、この制度を、今改革、いろいろな意味の改革をしなきゃなりませんが、地方にすべてゆだねるということになると、そういう問題が必ず惹起する、このように考えておるわけでございます。

遠藤(利)委員 きのう、大臣も記者会見で、何か大変強い口調でおっしゃっておられたようでありますが、きょう総務省の瀧野局長においでいただいています。時間がありませんので、まず最初に局長に、義務教育はだれが責任を負うのか、これをお伺いしたいと思います。

瀧野政府参考人 義務教育につきまして、憲法上、義務教育にしようというような規定もございますので、国全体としてそれは責任を負うべきものだと思いますが、今我々議論しておりますのは財政論として、それは国が責任を負うといたしましても、全額国費であるべきか、あるいは地方費でもいいのではないかという議論をしているわけであります。そういった、そもそも論というのはもともとあるとは思いますけれども、それはそれとして、財政論としてどういうふうにしていくべきかという議論をしております。

 地方団体の方も、これからの教育を考えた場合に、地方それぞれが創意工夫のできた教育をするためには、一定の基準は国が定めるといたしましても、それが必ずしも国費ということではなくて地方費であった方が自由度も高まるのではないかという議論があるということでございます。

遠藤(利)委員 実は、この三位一体の改革というのは、要は、税源を移譲して地方の自由度を高めましょう、地方が自分たちの発想のもとに、いろいろな今までのしきたりや今までの流れを超えてやりましょうと。例えば、三兆円、今度税源移譲しましょうといったときに、そのうちの二・五兆が仮に義務教育ですよと。しかし、その義務教育は、あまねくひとしく国民に教育を受けさせる義務を負うわけですから、逆に自由度がないんじゃないでしょうか。

 ですから、先ほど大臣もおっしゃいましたが、三兆円の税源移譲を行う、しかし、同時にそのときに国税を減税して、そして住民税を一〇%ぐらい税率化する、そんなことを聞いていますが、現実にばらつきが出てくる。当然それは総務省の皆さんは調整するとおっしゃっていますが、本当に調整ができるのかどうか。

 それからもう一つは、前回、今年度の予算、地方財政計画では一兆一千八百三十二億円マイナスになっている。さらに今回、もし三兆円を国税から地方税へ移しますと、当然、国税の三割前後が地方に交付税としてされるわけですが、それが減っちゃう。そうしますと、かなり大きな額が現実的に地方の予算から減っていくのではないだろうか。

 三位一体の改革のときに、地方の知事さんや市町村の皆さん方から我々がいろいろな意見をいただいたときに、税源移譲して、自分たちに三位一体するとふえると思っていた、まあ現状維持だと思った。ところが実際は少なかった。またこの二の舞になるのではないだろうか。ましてや、義務教育という一番自由度の低い、それを含めたら、かえって本来の趣旨に逆らった形になってくるのではないだろうか。

 そういうことを考えますと、私は、今回の義務教育費を地方に任せるということはかえってそうした意味での、教育という観点、財政論じゃなくて教育という観点、そして現実的な地方財政を運営する中で、三兆円の議論をしたときに、かえってほかよりも自由度を失ってしまう、そんなことにならないのか、そんな危惧をいたしますが、いかがでしょうか。

瀧野政府参考人 税源移譲をいたしますと、現在国庫補助負担金で対応しているものに比べまして、地域間の相違が出てくるということは事実だろうと思います。その場合にどういう形で税制を組んでいくかというのがまず第一番目に出てくると思います。

 六月に閣議決定いたしました骨太二〇〇四におきましても、住民税で地方税を充実するのであれば税率のフラット化をしようではないかというようなことでございまして、そういった形で地方団体間の税源移譲に伴います偏在を是正しようというのが一つまずやらなきゃいけないことだろうと思います。

 その上で、御指摘ございますとおり、さらに埋め切れない部分につきましては交付税で当然きちんと財源措置をしていくということになろうかと思います。

 そのときに、十六年度大幅に削られたではないかという議論がございますが、これは、現在の地方財政につきまして、地方単独事業等につきまして財源保障している部分と決算の中に乖離があるという別の要因で見直しをした部分でございます。

 仮に、今回の三兆円の税源移譲に伴いまして義務教等についての見直しが行われますれば、その部分についてはきちんと一般財源、税、交付税を確保していくというのが我々のスタンスでありますし、先ほどの骨太の二〇〇四におきましても、地方の必要な一般財源総額は確保するということが明記されているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

遠藤(利)委員 時間が来ましたので、最後に簡単に一つだけ。

 大臣、今お話をお伺いしましたが、全国知事会で決まるということでありますが、私、日本の力、日本が戦後これだけ経済復興をなし得たというのは、どんな地域でもどんな山村でも優秀な人材が輩出されて、そしてそれが切磋琢磨して日本という国をつくってきた。三十七万八千平方キロの国がこれだけの経済大国になったのはまさに教育の力だ。その責任を負ってきた国が放棄していいんだろうか、財政的に。そのことを考えますと、地方自治団体、いろいろな意見があるかと思いますが、そこは大臣にしっかり頑張っていただいて、国の責任を果たしていただきたい。

 最後に見解をお伺いして、終わりにしたいと思います。

河村国務大臣 今回の三位一体の改革に伴う義務教育費国庫負担制度、これを崩壊させることによって、いわゆる義務教育を後退させてはならぬという思いでございます。

 そういう観点からこの問題にこれからも取り組んでまいりたいと思うし、地方のことは地方で決めていただくというのが小泉改革の理念でございますから、今回の問題については、まず球が地方に行っている、知事会に行っている、知事会がお決めいただく、この結果も見なきゃなりませんが、知事会としても、教育、どうあるべきかということもお考えいただいて、賢明な御判断をいただきたい、このように考えております。

遠藤(利)委員 終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 私は、さきの水害におきまして多く亡くなられましたその方たちの御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、また、水害の被害に遭われた皆様の一日も早い復興を心よりお祈りいたしております。

 先ほど、年金のことがございました。私は、一点だけお伺いしたいことがございます。

 それは、さきに成立しました年金改革法におきましては、女性を中心に大変早期の実施が期待されておりました離婚時における夫婦分割の問題、この制度を初めて導入することになっております。これは、本来であれば夫婦ともに負担をしたということで、年金を受けるときに、今の形でいえば御主人の方にたくさん入る、また第三号の奥様の方には基礎年金が入るという、こうしたシステムではなくて、半々にすべきであるというのが私のかねてからの主張でございました。

 そうした意味合いも込めまして、今回この法案の中には、夫婦がともに負担をした、こういう形で文言が盛り込まれております。これは、女性の低年金を解決するためにも大きな第一歩だったと大変多くの女性の方たちから高い評価をいただいているところでございます。

 ところが、民主党案の中では、この施策については復活させないというふうに書いてございます。この理由につきまして御説明をお願いしたいと思います。

枝野議員 私どもも、政府案の中で、女性の年金権の確立に向けて、離婚時に限定ではありますけれども、年金権の分割を認めたということは半歩前進だというふうに受けとめておりますので、この点は評価をいたしております。ただ、この部分については、政府案でも平成十九年四月の施行という内容になっております。

 私どもの今回の廃止法では、十九年四月スタートで抜本改革の新制度をスタートさせようというふうな中身になっております。そして、十九年四月のスタートの時点で、私どもとしては、半歩前進の離婚時の分割ではなくて、年金権の個人化をして、そしていわゆる二分二乗方式を取り入れてという本当の意味での抜本改革を十八年度中に取りまとめて、十九年四月、本来の離婚時に限定したスタート時点には、もうそれをスタートさせたいというふうに思っておりますので、今回の廃止法の中にその部分は復活項目として入れていませんが、我々としてはより進んだ形で同じ十九年四月にスタートさせたい、こういう意図でございます。

高木(美)委員 はい、よくわかりました。

 ただ、やはり夫婦分割のこの問題につきましては、個人の年金権、これはどうしても女性の今の雇用環境であるとか、パート法に対する均等労働、均等処遇等の、こうしたやはり経済界にまつわる問題が大変多くございます。こうした課題もしっかり見据えていただきまして、まさに実のある、また実現性のある施策をお願いするところでございます。

 続きまして、私の方からは、思春期の健康教育につきまして、本日は質問をさせていただきたいと思っております。

 今の若者たちの性意識の大きな変化の中で、性感染症がふえております。薬害であるとか、喫煙であるとか、またエイズ、性感染症、それががんの原因となり、またひいては不妊症になる、このようにも言われております。これは女性に限ってのお話でもございますけれども、ただ、今少子化という流れの中で、生涯にわたりまして男性も女性も健康を維持していく、そのためには、やはりこの土台づくりが思春期であるというふうに、これは医学の世界でもとらえているというところでございます。したがいまして、大人が若者たちの健康を守るために全力を上げて取り組まなければならない大事な課題ではないかと思っております。

 そこで、まず厚生労働省の方にお伺いをいたします。今、こうした若者たちのエイズ、また性感染症の実態がどのようになっているのか、答弁をお願いいたします。

田中(慶)政府参考人 お答え申し上げます。

 性器クラミジア等の性感染症の発生動向は、感染症法に基づきます全国約九百の医療機関からの報告により把握しております。二十歳未満の報告件数を平成十二年と十五年で比較いたしますと、性器クラミジアは五千七百五件から六千二百五件へ、淋菌感染症は千六百八十件から二千二百四件へ、尖圭コンジローマは六百六十件から七百五十件へ、性器ヘルペスは四百八十六件から五百六十九件となっておりまして、いずれも増加傾向が認められているところでございます。

 なおまた、梅毒につきましては、すべての医療機関から報告を求めておりまして、二十歳未満の報告患者数を平成十二年と十五年とを比較いたしますと、二十四件から二十三件ということで横ばいという状況でございます。

 エイズにつきましては、エイズ発生動向年報によりますと、全年齢のHIV感染者、それからエイズ患者の合計報告数で見てみますと、平成十二年と十五年で比較いたしますと、七百九十一件から九百七十六件へと増加しているところでございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 それでは、文部科学省として、こういう低年齢化の傾向につきましてですが、これをどのように認識されており、また学校ではどのような対策を取り組んでいらっしゃるのか、お伺いをいたします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、性に関する感染症の増加、それから性交経験の低年齢化、こういったものにつきましては大変憂慮すべき状況にあると認識しております。

 一つデータを御紹介して、学校教育における取り組みをお話ししたいと思うわけでございますけれども、まず人工妊娠中絶の実施率につきましては、これは厚生労働省による医療機関からの報告に基づく調査によりますと、二十歳未満の女子の人口千人に対しまして、平成十四年一二・八人となっておりまして、二十年前の昭和六十年の六・四人に比べますと倍増しているところでございます。

 また、性交経験の割合につきましては、民間の教育研究団体が行った関係者の協力をベースにした調査によりますと、高校三年生の時点で男子の場合、昭和五十九年の二二%から平成十四年の三七・三%に、また、女子の場合に、同じく一二・二%から四五・六%にそれぞれ増加しているところでございます。

 このような状況、極めて憂慮すべき状況でございまして、このような状況に対処するためには、やはり学校教育の果たすべき役割というのは極めて重要だと認識しております。

 学校におきます性教育は人間尊重というのを基盤といたしまして、発達段階に応じて性に関する科学的知識を理解させるとともに、それに基づきまして望ましい行動をとることができるようにするということをねらいとして、教科、特別活動、道徳等を中心に、学校教育全体を通じて行われているところでございます。

 具体的な指導内容としては、例えば、中学校の保健体育科においては、生殖機能の成熟についての正しい知識や異性の尊重、性に関する情報の適切な対処でございますとか、性感染症の予防についても、感染経路を断つことなどの重要性について指導することにしておりますし、また、高等学校の保健体育科におきましては、異性を尊重する態度や性に関する情報への対処など、適切な意思決定や行動選択の必要性、また人工妊娠中絶の心身への影響や感染症の予防などについて指導することにいたしております。

 このほかにも、文部科学省におきましては、教師用の指導資料や生徒用のパンフレットなどを作成、配付して、学校教育の場で活用していただくようにしているところでございます。

 今後とも、学校におきます性教育や感染症予防のための教育の充実につきまして努めてまいりたいと存じております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 今お手元に、皆様のもとにデータをお配りしてございます。その資料を見ていただきたいと思いますが、その資料の三ページ目に図一というのがございます。これは性交開始年齢、これが低年齢化が進んでいるという、これはまさに現実でございます。

 この図の見方は、例えば、一番下の十文字になっております折れ線が、四十五歳以上の女性がかつて初交が何歳だったかということで、これが当時、この方たちは本当にわずか一%、二、三%という十六歳、十七歳でございましたのが、このひし形の方の、今伸びているところのグラフでございますが、今の十六歳、十九歳の若い女性から見ますと、それがもう約三〇%近く、または三〇%、これが十六歳、十七歳という現実である、まさに初交年齢が、開始が速まっている、こういうデータでございます。

 それに伴いまして、次のページの性交経験という図二でございますけれども、今局長からお話ございましたとおり、中学三年のときは、〇二年のときは男性一二・三%、女性九・一%という状況でありましたのが、高校に入りますときに、といいますのは、恐らく中三のここから高一に至る、こういう経過も含まれると思いますが、これが約四分の一、二五・五%、二四・八%というデータとなっております。高三になりますと、女性で四五・六、男性で三七・三、まさに中学、高校のときにこうした経験をする。しかも、これが果たして不特定多数なのかどうなのかというところは、またほかのデータにまつところでございます。

 それに合わせまして、次のページの図の三には人工妊娠中絶、これも今局長から御指摘ございましたとおり、若い世代がふえている。特にこの折れ線グラフの方の下の二十歳未満、ここが急激に今ふえているというところでございます。また、点線になっております二十から二十四歳、この世代もふえている、こういう今の性の実態というものがございます。

 もう一度三ページ目の図に戻っていただきたいのですが、下の方の図四というのがございます。それは「性や避妊方法などについて主にどこから学んだか」というグラフでございます。これにつきましては、左側にございますとおり、多いのはやはり「教師、学校の授業」、これが二十歳未満は六六・九%、七〇%近く、そしてまた二十から二十四歳は五五・〇%、こういうデータでございます。当然、友達からとか、これが四割ちょっとというデータもございますけれども、やはり圧倒的に学校の授業、教師からという、これがいかに大事であるか、またこれがやはり子供にとってどれほどの重い意味で受けとめられているか、このことをぜひ認識をお願いしたいと思っております。

 したがいまして、学校で正しい知識、そしてまた自分の責任において自分の健康を守るという、いわゆる思春期のこうした大事なことをこういう視点から、学校でのしっかりした健康教育をお願いしたいと思っております。

 そこで、大臣に伺わせていただきたいのですが、実は、こうしたデータを取り寄せるときに大変苦労をいたしました。民間でつくられたものとかいろいろございますけれども、私は、やはりこうした思春期の子供たちの性意識、そしてまた性行動がどのようになっているのか、そうした子供たちの心の奥底に何があるのか、そこをしっかりと把握しておりませんと、やはり的確な手は打てないのではないかと思っております。文部科学省としましてどのようなデータを把握していらっしゃるのか、お伺いをさせていただきます。

河村国務大臣 文部科学省として公式にこういう調査をやったかといいますと、これはなかなかプライバシーの問題もあったりして非常に難しいのでありまして、公式にというのは、もちろん地方は教育委員会、学校もございますけれども、先ほど御説明ありましたああいうグラフというのは民間がおやりになった。私の方も承知しているのは、ああいうもので今お答えをしているのが現状でございます。

 これを今後どういうふうにするかというのは、なかなかこれも難しいのでありますが、大学当局が在学生に対してやることについてはどうだろうかとか、それも組織的に、ある大学側が実験的に自由意思でおやりになるとかいうことは可能だと思いますが、各大学一斉にということになると、これはまたやはりいろいろ問題点があるのではないかと思っておりまして、なかなかそういう意味でのきちっとした全員の意識を数字的につかむことは難しい現状にございます。

 ただ、今いろいろ、先ほど来の御指摘のように、他省庁、厚生労働省もございます、それから民間の統計もございますので、そういうものを活用しながら、児童生徒に対する性意識、先ほど来、やはり学校でということが非常に大きいわけでありますから、学校で一〇〇%受けたというような形に持っていくように我々は努力しなきゃいかぬ、適切な教育をしなきゃいかぬ、こう思っております。そういう意味でも、公式な調査、なかなかできがたいのでありますが、民間、他省庁のそういうものも大いに活用しながら、全体の流れというものをきちっと把握していきたい、このように思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 私は、やはりこれだけ子供を取り巻く環境も大きく変化しておりますし、また子供たちの意識も大きく変わってきております。先ほどの初交の、やはりお母様たちの今の三十代後半、四十代というこの女性の意識、お母様たちの意識、それと子供たちの意識、全くこれはもうずれがある、いつも世代はそうなのかもしれませんけれども、特に今は、これだけの急激な社会の状況変化の中で、大人が推察できる範疇をもう超えている、このように言っても過言ではないと思います。そういう意味では、この実情をどう把握していくのか、これはやはり私は、文科省として責任を持って何らかの対策を知恵を絞ってされるべきではないかと。

 これは例えば、私の一つの案ですけれども、やはり現役の中学生、高校生にダイレクトに言いましても、これはなかなか教育委員会とかPTAも大変であるという、今の恐らく大臣はそのような現実の状況を一番認識された上での答弁だったのかなと思いますけれども、ただ、現実にこれを薬害とかそういう観点で既に実施されている、静岡県の教育委員会がこうしたサンプリング調査をかつてされたと伺ったことがあります。

 こういうように現実、先駆的にされているような県の教育委員会とか、そういうものを丹念に発掘していただきながら、そうしたところにまず理解を求め、しかもそれを、お子さんのプライバシーを何も露見させるとかそういう目的ではなくて、やはりこれだけの今の社会状況の中で子供たちをこれからどう守るか、あくまでも健康を守るための調査であるという、これをダイレクトにメッセージを伝えていただきながら、この調査のやり方の工夫をお願いしたいと思います。例えば第三者機関に委託をして実施していただくとか、知恵を絞っていただきたいと思うんです。

 先ほど、大学生のというお話、一言ございました。実は、私も高三、高一、娘が二人おります。確かにそこにいきなり封筒で送られてきますと親もどきっとする部分はありますけれども、例えばそれが、一つ年代を超えた大学生、そういう大学生に協力を求めて、自分たちが既に経験をしてきた、いわゆる追跡のような、そういう意味合いを兼ねて、大学生に当時の意識、そしてまた、もっとこういうふうに教えてほしかった、また今現実にもっとこういうことを知りたいと思っているとか、大学一年生といいますと、中学を見ればもう三年、四年前、そういう世代でございますので、若干少し年代はさかのぼるかもしれませんけれども、傾向とか、またそうしたどこの星を打てばいいのかとか、そこのポイントは明確になるのではないかとも思っております。

 そのような形で、ぜひともこれは、やはりこれだけの大きな課題でございますし、毎回こうした性教育が行われるたびに、どことかで処罰をされたとか行き過ぎであるとか、そういったことがいつも新聞をにぎわせる、また大臣がお悩みになる、こういう経緯もございますけれども、やはりそれは実態がわからないから、先生たちもどう手をつけていいかわからない、また大人もどう手を差し伸べていいかわからない、こういうことが多いのではないかと思っております。こういうことにつきまして大臣の御所見を伺いたいと思います。

河村国務大臣 大事な御指摘だと私も思います。確かに一律にというのは難しさも感じておりますが、どういうふうにしたらもっとその点をつかめるか。民間にお願いするというのは一つの手でありましょうし、文部科学省としては、やはりそういうものをきちっと持っていて実態把握をしながら、そして児童生徒の性意識、性行動、これはやはりつかんでおく、それに基づいて教育をしていく、こういうことが大事だろうと思いますので、そのための努力をさらに続けてまいりたい、このように思います。

高木(美)委員 力強い御決意をいただきましてありがとうございます。ぜひとも実施をいただきまして、恐らくそれはPTAの皆様にとってみれば賛否両論、当然波風も立つかもしれませんけれども、ただ、そこまで文科省、また大臣が真剣に考えてくださっているという、やはり教育に対する信頼は深まっていくものと確信をしている次第でございます。よろしくお願いいたします。

 さらにその上でお願いでございますが、提案でございますが、そうした調査をもとにしまして、これまで文科省、多くのパンフレットを出していらしたと伺っております。薬害について、また喫煙防止について、また拒食、過食の問題であるとか、そうしたさまざま子供を取り巻く環境について、そうしたことについてパンフレットにまとめていただきまして、これを予防するための教育に力を、これまで以上、またさらに御尽力をお願いしたいと思っております。パンフを小冊子にまとめるとか、そのようなお考えはあるかどうか、お伺いをさせていただきます。

河村国務大臣 御指摘の点でございますが、既にお話ございましたように、エイズ教育パンフレットであるとか性教育の考え方、進め方、あるいは性感染症予防に関する指導マニュアル等々、薬物乱用もそうですし、喫煙防止もありますが、こういう形で作成をいたしています。

 これは、こういう問題を思春期の児童生徒のさまざまな健康課題に適切に対応するような工夫がさらに必要ではないか、こう思っておりまして、この今の時代に合っているかどうか、そういうものを絶えず改善、工夫をしながら、今おっしゃったような小冊子というものをそれぞれの年齢において必要なものについて作成をしてまいりたい、このように考えております。

高木(美)委員 ありがとうございます。楽しみにさせていただきたいと思っております。

 問題は、こうした小冊子を作成していただく、大変ありがたい、すばらしいことと思います。この末尾のところで構いませんので、例えば、そういう性感染症であるとか、相談したいとき、どこに相談に行けばいいのか、やはりそこの窓口を明示していただければ、さらに思春期の子供たちにとって安心ではないかと思います。

 今、子供たちがそういうことを親に言えない。特に、家庭の中では、性についてオープンに話すという家庭は日本では大変少ない実態でございます。また、親が果たしてそういうことを言った方がいいのかということについては、こういうセミナー等をやっている講師の方たちに伺いますと、親はそういったことに、言わない方がいい、触れない方がいい、むしろ学校できちんとした医学的な知識としてきちんと教える、親は違う意味でコミュニケーションを図っていく、そういう形の方が子供たちの育成について健全ではないか、そういうセミナーの講師の方もいらっしゃいます。

 ただ、反面、親に言えない、ですから保険証を持ち出せない、したがいまして、自分で行くわけですけれども、全額個人負担になりまして、治療についても経済力がもたずに途中で中断せざるを得ないという、こうした事例も多く出てきていると伺っているところです。

 したがいまして、相談の窓口、保健所もあるかと思います。また、今厚生労働省では思春期外来という、これを全国、たしか十数カ所と聞いておりますが、展開をしている、また電話相談の窓口もある、こういったことにつきましては、ぜひこれは省庁、連携をしていただきながら、やはり子供たちの健康をどう守るか、また、子供たちの体をどう守り予防してあげるか、こういう観点から、明記をしていただければと思っております。

 さらに、もう一つお願いでございますが、この小冊子をもとに教育をまた担当される場合については、やはり私は、今申し上げましたように、学校の先生がこのことを話をしてくださる、それも大事なことかと思いますが、ただ、先生にそれほどの専門的な知識を与えていく、このための研修もかなり大変なものがあろうかと思います。したがいまして、これはあくまでも正確な専門知識に基づいて行う、これをルールにしていただきながら、医学的に冷静に子供たちに教えていただくという、このような方向をとっていただきたいと思っております。

 例えば、そのために保健所から派遣をしてもらうとか、既に出前講座等を開催しているところもあると伺っております。また、今申し上げましたように、厚労省の思春期外来であるとか、また学校の校医さん、そしてまた御近所の、むしろ父兄の方の産婦人科医とか、いろいろこうしたことも総合的に学校でもまた教育委員会でもよく検討していただきながら進めていただければと思っております。

 こうしたお考えについてお示しいただければと思います。

河村国務大臣 適切な御提言だと思います。

 先ほど、小冊子等をつくる場合に相談先を明記、これは大事なことでございますので、必ず間違いなく、たしかやっていると思いますが、見やすいところにやるというような配慮が要るだろうと思います。

 それから、冊子も渡すだけではどうにもなりませんので、おっしゃるように、できればこれをもとにして、渡り先には全員が何らかの形で教育を受けられるようなシステムをつくる。それは、病院であるとか保健所から講師に来ていただいてやる、これは非常に効果的だと思いますが、先生でやれるところはやっていただきながら、ここのところは医学的な知識だからお医者さんにお願いしようとか、こういう形でやっていただけることが大事じゃないか、こう思っておりまして、まさに計画的、継続的にこれを実施するということが大事だろうと思いますので、教育委員会、学校等にも適切な情報を提供しながら性教育の指導を進めてまいりたい、このように思います。

高木(美)委員 大変数々の力強いお答えをいただきまして感謝をしております。文部科学省の皆様、ぜひ思春期の子供たちの命と健康を守るために、やはりこれは今こそまさに一丸となって、どうこの事態を変えていくのか。これはやはりそのまま少子化の防止になり、そしてまた子供たちの幸福へとダイレクトにつながっていくという大事なことでございますので、今後ともよろしくお願いをいたします。

 最後に、思春期の子供たちの命と健康を守っていくという、ぜひとも大臣の御決意を伺いまして、質問を終わらせていただきたいと思います。お願いいたします。

河村国務大臣 昨今の子供たちの性教育をめぐる状況、性に対する状況を見たときに、やはり子供たちの命を守っていく、健康を守っていく、こういう視点からこの問題に取り組んでいくということが非常に大事だと、改めて御質問をいただきながら私も感じたわけでございまして、そういう思いでこれからの指導の徹底を図ってまいりたい、このように思います。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 まず、提出されました私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案について質問をいたします。

 本法案は、前国会で自民、公明両党によって強行成立した私立学校教職員共済法案の一部を改正する法律を廃止するものです。この私学共済法の最大の問題点は、国家公務員共済法の改正規定を準用し、マクロ経済スライド方式を導入し、厚生年金に合わせて今後国会審議抜きで私学共済年金の給付水準を自動的に引き下げること、また掛金も同様に引き上げることにありました。私学共済年金法の審議の中で、現行の掛金率が一〇・四六%なのに最終的には二〇・三五%にもなることが明らかになりました。

 我が党は、さきの参議院選挙でも改悪年金法の廃止を訴えましたし、国民世論もその八割が法律の撤回、やり直しを求めており、廃止は国民の願いにこたえるものであり、賛成するものでございます。

 その上で、お聞きいたします。

 年金の積み立て度合いを見ますと、厚生年金の場合は四・七倍、国家公務員共済は四・六倍、そして地方公務員共済年金は七・六倍に対して、私学共済の場合は九・八倍なんですね。私学共済が一番健全である、何も横並びで保険料を引き上げる必要もない、給付水準を引き下げる必要もないと考えるわけでございますが、この点、提案者としてはどのようにお考えでしょうか。

枝野議員 御質問ありがとうございます。

 御指摘いただきました積み立ての度合いなどにつきましては、今後の年金の議論の参考にもなる大事な数字だというふうに思っております。そしてまた、確かに、今の現行制度を前提として物事を組み立てた場合には、今のような御指摘もあり得るかなというふうに思っております。

 ただ、私どもは、日本全体として急速な少子化が進んでいて、これから急速に年金財政が悪化をしていくという現状の中では、今の分立した年金制度をこのまま継続して続けていくということはなかなか成り立っていかないだろう。むしろ一元化をして、途中で仕事がかわったりとか、そういう状況が変わった、あるいは特定の産業が、学校の先生、私立学校の先生が急速に人口減少以上の比率で減るということはちょっと考えにくいかもしれませんが、他の分野では多々出てくることだと思いますので、そうした中で、職業別に年金制度が成り立っているということでは大変やりにくいというか、成り立っていかないだろう、こういう観点から一元化をするということで考えておりますので、その点についてはぜひ御賛同、御理解をいただければと。

 念のため申し上げますが、従来積み立ててきた部分、従来払い込んできた部分に対応して将来受け取る年金額につきましては、私どもの一元化が導入された以降についても、それは従来の既得権として、当然、私学共済の皆さんの過去に納めてきている分に対応する将来の給付は、これは従来の私学共済の計算法に基づいて給付をする、こういうことで考えております。

 以上です。

石井(郁)委員 もう一点伺いたかったことも含めてもう御答弁いただいたんですが、結構でございますけれども、確かに、年金制度の一元化について議論がいろいろ始まっているというか、これからの問題だろうというふうに思うんですね。しかし、いろいろ本当に考えなきゃいけない問題が多々あるという点でいいますと、今の積み立て度合いの問題等々で、私学共済の方からは、やはり私学共済のそういう事情を考えると慎重にあるべきだという意見も強くあることは確かなんですね。そういう点で、これは今後の議論になっていくわけですけれども、もうお答えいただいたからいいんですけれども、年金の一元化という議論、例えば提案者としては今後どのように進めていかれるおつもりなのかということを、もしお答えいただければと思います。

牧野議員 お答えさせていただきます。

 たしか、河村大臣からこの私学共済のことの提案がなされた後、先生が同じ趣旨の御質問を熱心にされたのを私も横でずっと拝聴しておりましたので、先生の御趣旨にはうなずける、また理解できるものはたくさん持っているわけですが、御案内のように、分立していた一つの制度を大きく一元化して、みんなで協力してやっていくことの方がこの時代、いいのではないかというところへ来ておりますので、うまくいっているところ、あるいは大変なところといろいろあるかと思いますが、私学のこの共済の方はうまくいっている方だとは思いますが、うまくいっていればいっているだけに、新しい一元化の大きな流れの中でさらに御理解と御協力をしていただくことの方がいいのかな、そういうふうに思っております。

 ましてや教育関係の皆様方でございますので、うまくいっている、そういうノウハウは次の時代にも生かしていただくように御協力いただければと思います。

 また、八月三日火曜日の朝日新聞の夕刊の記事に、この一元化の方向性はどちらかというと共同体主義から脱却して税収基礎の普遍主義へという新しい、そういう移行になっていくだろうという論調がございまして、私ももっともだと思っておりますので、そういう意味で、我々の趣旨が生かされましたならば、大勢の皆さんの御理解と御協力をいただくように極力努めて、いい制度にしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

石井(郁)委員 提出の法案については以上の質問で終わらせていただきます。残りの時間は、私学の問題にも入ってきておりますので、関連して伺いたいと思っています。

 まず、経済的な理由で退学した生徒の問題についてでございますけれども、これは、全国私立学校教職員組合連合会がことしの三月末に行った調査によりますと、二十六都道府県の高校二百十二校、十八万三千六百九十七名を対象に行ったんですけれども、経済的理由で退学になった生徒が二百九十三名ございました。一校当たり一・三八名なんですが、不況が長引いていると高校生活を直撃するという事態はやはり変わっておりません。夜逃げ、父の居所が不明、電話しても電話機が上がらない、つながらないという報告がなされていますし、これは中学校で滞納によって子供が退学をして、それを苦にして母親が自殺をされたということも聞いているわけであります。

 特に私が胸を痛めているのが、修学旅行なんですが、経済的理由で不参加しているというのが百五十六校で五百三名もいるんですね。一校当たり三・一八名です。修学旅行はやはり子供にとって大変思い出になる、学校としても非常に重要な行事だろうと思うんですが、修学旅行不参加者が大きくふえています。

 そこで、こういう中でございますので伺いたいのは、日本学生支援機構による緊急採用奨学金の拡充という問題、これをぜひ図るべきだということが一点。それから、これは私どもも提案もして今継続になっていますが、授業料減免事業の臨時特別措置、これはさらに継続を図るべきだというふうに思いますが、いかがでございますか。

河村国務大臣 今家計が大変で退学をされた方々があるということ、あるいは修学旅行でも困っておられる方がある、こういう方については緊急採用奨学金ということで対応しておるわけでございますが、それでもそれに行かなかった方があるということは残念でございます。毎年一万人分を用意しておりまして、これには十分対応をしてきたところでございます。

 今御指摘の授業料減免のための臨時特別経費でございますが、これは、私立の高等学校等で保護者が急に失職した、倒産、そういう場合に授業料の納付が困難になった、危なくなったという児童生徒、これに授業料減免措置を行って、都道府県がその軽減額に対して補助する場合に、国が都道府県の補助額の一部、二分の一以内で補助する、こういうことでありまして、平成十六年に三億円を用意いたしております。

 この制度、これからも、そうした経済的理由による退学者に対応するということでありますから、これも非常に重要な制度でございますので、これは今後とも継続して、奨学金事業それから私学助成、これも効果的に実施しながら、私学に通う子供たち、学生たちを支援していく、こういうことでやってまいりたい、こう思っております。

石井(郁)委員 今御答弁いただきましたように、この授業料減免事業の臨時特別措置というのはやはり大変重要な、今喜ばれている施策だというふうに思うんですね。私は、これにとどまらないで、今本当にこういう退学とかあるいは修学旅行に行けないという子供たちも引き続きあるわけですから、この際、父母負担軽減のための授業料に対する直接補助制度、これは一部の地方自治体でもう導入されていることもございますし、やはり国としてそういうことに踏み切ってもいいのではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょう。

河村国務大臣 国としてこれをというお考え、一方では、私学に対してバウチャー制度の話もいただいておるわけでございますが、これは世界の傾向を見てもなかなかうまくいかない状況もございますので、国としては、こういうことについて、やはり奨学金事業の充実という方向で進めておるわけでございます。

 今のああいう特別なケースについても、臨時措置あるいは特別な奨学金をつくるという形で対応しておりまして、全体としては、その経常費の補助というものを私学助成の中心に置いて、その充実を図りながら、例えば授業料等の値上げを抑制する方向、そういう意味で学生の経済的負担を軽減する、こういうやり方で来ております。今後とも、奨学金事業あるいは私学助成、これを効果的に実施するという方向で、私立高校生を持っておられる家庭の支援に努めていくという方向でまいりたい、このように思います。

石井(郁)委員 これは新しい政策的な提案でもありますから、すぐやるとかなんとかというふうにはなかなかいかないのかと思いますが、しかし、もうそういうことも視野に入れてというか、考えていいのではないかということで、私は提案をさせていただくわけでございます。

 東京の、これはある高校での話ですけれども、一年生のとき、とてもクラスで積極的で、代表委員もしたという子供ですけれども、修学旅行明けから少し変化して、だんだん年明けには学校へ来なくなった。それで、クラスの中でやはり話題になりますから、どうしたのと聞くと、もう本当に授業料が払えない、修学旅行だけは行かせてと言って行ったけれども、その後は続かなくなった、それで、とうとう退学になったという話を聞いているわけでございます。

 だから、こういう事例はやはりたくさんあるんですよ。そういう点で私は、授業料補助制度の新設ということを強く求めたいと思うわけです。

 今のこの子の話なんですけれども、退学をするときに、最後の委員会とか学校の中で、退学だということになるので、参加者全員が目をはらして、本当に悲しい、こういう形で友達が学校を去るのを見たくないということで、生徒たちの間で公費助成の署名運動を積極的に行うということをクラスの活動の内容に一番に挙げたということで、今やこの私学助成というのは、生徒たちの勉学にとっての、あるいは自分の将来にとっての命綱になっているんですね。

 大臣も既に私学助成の充実というお話ございましたけれども、来年度の概算要求の時期ですから、私学助成のやはり充実を本当に図っていくということをしっかりと言明をしていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

河村国務大臣 私学助成の問題は、十六年度の予算編成についても最大限努力してきたわけでございますし、また、いよいよこれから具体的に要求をしていかなきゃいかぬということで、前年度が全体で六十四億六千万円増の四千五百五十五億八千万円計上いたしました。これを上回る予算要求ということで今考えておるわけでございますが、ぜひ、御指摘のとおり、私学助成の充実という非常に大事なことでございますので、私立学校がこれまで果たしてきた役割の重要性、そういうものを考えながら、いわゆる幼稚園から始まり大学まで、私学教育一貫の、私学のそれぞれの教育がうまくいくように、振興という視点からこの助成の予算確保に全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 大臣から大変力強い御答弁をいただいたんですが、しかし、今大変私は危機に直面しているというふうに認識しているんですね。

 一九七五年から私学振興助成法に基づく私学助成が始まったわけでございますが、この小泉改革が掲げる三位一体改革で、国庫補助の廃止ということが、義務教育の国庫補助とともに、私立高校以下の国庫補助も挙げられているんじゃないでしょうか。

 四月二十六日に行われた経済財政諮問会議で、麻生総務大臣はこのように述べております。改革を通じ、奨励的国庫補助金の原則廃止、また、来年度の奨励的補助金は相当程度の削減率を設定と公言されているわけですが、いかがですか。この奨励的国庫補助には私学助成は含まれますか。

河村国務大臣 この御指摘の補助金、国庫負担金、それから国庫補助金、これを三位一体の改革で三兆円をめどにというのが当面の今課題になっておりますが、この廃止、縮減の中には、私立高等学校等経常費助成費補助金、これは国庫補助金としてその検討対象になっている、このように承知をいたしております。対象になっております。

石井(郁)委員 いや、なっているということを言われて、文科省としてどうされるんですかということが次にはあるわけですよね。重大だと思いませんか。

 私学助成は、言うまでもなく、七五年に振興法で出てきたわけですが、私立学校の教育条件の維持及び向上、また児童生徒、学生らの経済的負担の軽減、私立学校の経営の健全性を図るという目的で導入されてきて、先ほど大臣はこの充実を図っていきたいと。しかし一方で、そういう縮減だ、削減だという話になっているわけです。

 一九七五年当時、県補助の格差が五・五倍だったんですね。それで、国基準以下が圧倒的だったところがこの私学助成振興法で解消されてきて、文部省の国庫補助というのは、こういう格差の是正に大変やはり意義を持った、傾斜配分によって国基準を守るように指導してきた。だから、八〇年代にはもう国基準以下の県がなくなってきたというところなんです。

 ところが、今度、それが財政諮問会議の言うとおりに廃止ということになれば、七五年時点への逆戻りになりかねないということにもなるわけで、私は、この問題は絶対譲れないと思うんですね。大臣は、これはいかがですか。

河村国務大臣 今、石井先生御指摘のように、私立学校振興法に基づく私学助成、この経常費補助をやってくることによって確かに私学助成が、地方公共団体の格差も縮まってきたという現実がございます。

 これを削減、いわゆる廃止するような場合には、地方の財政事情によって必ず水準にばらつきが生じる、これは、財政状況が厳しい地方公共団体の私学助成が削減される方向というのは、私は目に見える状況だと思います。その結果は学費の値上げに行くとか、公私格差ができるとか、結果的に教育の質の低下を招くという問題になりましょうから、これはやはり各都道府県の私学助成に対する、まさに国の補助金は誘導措置になっておりまして、これは引き続き国庫補助をやっていかなきゃいかぬ、このように思っております。

 そういう面では、私学助成、振興、この私学振興に関する国の役割、この部分だ、このように考えて、この件についても我々としては最大努力していく覚悟で取り組んでいく、このように思っております。

石井(郁)委員 ぜひ、その姿勢というか立場で、大臣には頑張っていただきたいというふうに思います。

 最後にお聞きするのは、義務教育費国庫負担金の問題でございます。

 当委員会でもずっと、たびたび質問が繰り返されてきました。でも、先日、指定都市の市長会の提言というのを見まして私は本当に驚いたんですが、義務教育費国庫負担金を含む経常的な国庫補助負担金は、所得税から個人住民税へ税源移譲の対象として廃止すべきであるというのが出されましたね。

 文科省は、この義務教育費国庫負担金を廃止して全額を税源移譲した場合、四十道府県で収入減となるということを何か試算しているとちょっと私は聞いたものですから、その内容を、どういう試算をされているのか、御報告いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明いたします。

 仮に、義務教育費国庫負担金が廃止をされまして相当額が全額地方に税源移譲されるとした場合に、地方の財源としては、個人住民税所得割のフラット税率により計算された金額がそれに当たるということが想定されるわけでございます。

 この方式によりまして私どもが試算をいたしました各都道府県が得られる金額と、現在、義務教育費国庫負担金で配分されている金額を比較いたしますと、七都県では国庫負担金額を上回るわけでございますが、四十道府県におきましては国庫負担金を下回るということが見込まれております。

 したがって、仮に、義務教育費国庫負担金を廃止して相当額を全額一般財源化した場合には、都道府県間に格差が生ずるということになると思っております。

石井(郁)委員 時間が参りましたが、ぜひ、今せっかくその試算がございますので、後で各県名もお知らせいただければ、資料としてお願いしたいと思います。

 では、本当に最後に一言、大臣、義務教育費国庫負担制度を私学助成とともに堅持するとこれまでも御答弁いただきましたが、今の時点で改めて決意を伺って質問を終わります。

河村国務大臣 この義務教育費国庫負担制度、これは、国がまさに義務教育に責任を負ってやる、このあかしでもございますし、これによって、まさに格差の起きない、全国津々浦々に義務教育がある、優秀な教員がある、このことを担保してきておるわけでありますから、この根幹を堅持するということ、これは文部科学省として必要、欠かせない制度である、このように考えて取り組んでまいりたいと思います。

石井(郁)委員 終わります。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 まず冒頭、先般、新潟や福井やあるいは四国までも襲いました集中豪雨によって、とうとい命を失われた方々の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。また、被災に遭われた方々にもお見舞いを申し上げたいと思います。

 これから災害復旧が非常に重要になるわけですが、政府を挙げて取り組んでいただきたいことをまず冒頭お願い申し上げたいと思います。

 それでは、民主党が提案されました私学共済法改正案につきまして質問をさせていただきます。

 今回の民主党提出の法案、また親法も含めて、この年金改悪廃止法案全体の考え方についてお伺いしたいと思うんです。

 給付を減らす、そして負担をふやす、しかも、給付の下限、負担の上限というものを示して、百年の安心といううたい文句でさきの政府案が提案されたわけですが、結果的には、上限、下限も、出生率の後出しということで、大前提ががたがたに崩れてしまっているわけですね。まさにもう欠陥法案しかないわけです。

 この法案が、野党の質問権を奪ってまで、強行採決してまで成立したわけですが、そのことが今回の、さきの参議院選の、私は、この法案を廃止するという国民の声を背に受けて、野党はやはり参議院選で有権者に訴えてきたわけでございます。そして、その結果は、この提案理由説明にもございますように、与党は改選過半数を獲得することができなかったわけですね。ということは、そこでもう民意がはっきり示されたわけでございます。つまり、この法案を廃止してほしいという民意が示された。

 さらに、その選挙の後での世論調査でもなお七〇%の人たちが同じ思いを持っているということを考えたときに、私は、今回の廃止法案の提出はまさに適宜適切である、このように受けとめております。

 そこで、ちょっとお尋ねしたいんですが、我々野党各党の主張の違いは横に置いて、まず、先ほど、これまで随分いろいろ言われております政府案の欠陥あるいは矛盾、こういった国民からしたら到底納得できない分野を改悪前の状態に戻す、そういった法案を野党が共同でつくって、そしてまたやることが本当の民意を反映することになる、しかも政府・与党に迫っていく大きな力にもなる、これが国民の期待にこたえる道筋ではないかと私は思っております。

 この点について、提案者の御見解を賜りたいと思うんです。

牧野議員 お答えさせていただきます。

 私どもがこのたびの廃案提出いたしました趣旨等につきましては、深く御理解をいただいている感じがいたしまして、まずもって心から御礼を申し上げたいと思っております。

 先生が御指摘しておりますように、既にこの法案については、審議の途中から欠陥法案であるということはもう明らかになりましたし、また終わってから、その法案をつくるための基礎的な数字も欺瞞に満ちていたということがはっきりしたわけでございまして、こういう案を国民に押しつけるということがいかがなものかなという感じを持っておりますので、これは廃案に持ち込む以外にはない、こういうふうに考えております。

 民間企業だったらこういう欠陥商品をどうするかというのを私考えてみましたら、欠陥だということがわかれば即刻発売禁止ですね。そして、世間に出したものは全部、リコールといって、自分たちの責任で集めて、それを直してまた返すか、あるいはそれはもう出さない、そういう責任のとり方をするわけですけれども、政府のやることは、欠陥ということがわかっていても、これを、最悪の場合には一度これが動き出すと平成二十九年までこの制度を国民に押しつけるかもしれない、そういう法案になっているわけですね。

 こんなことを我々は許すわけにはいかない、こういうふうに思っておりますので、今ここでこれを廃案に持っていくことが国民に対して本当に真剣な態度を持つ政党であり政治家ではないかなと思っておりますので、何としても廃案に持ち込みたい。御党の格段のお力添えをくださいますようお願いいたします。

横光委員 中身の問題ではちょっと我々とも違う分野もあるわけでございます。

 そのことについてちょっとお尋ねしたいんですが、まず社会保険庁のあり方なんですね。これは、二〇〇四年の年金改正法廃止法案で、国は、平成十八年度までに、社会保険庁を廃止し、公的年金制度における保険料及び国税を徴収するための新たな行政機関を創設するものとすることとなっております。つまり、社会保険庁の廃止といわゆる歳入庁構想の導入がうたわれているわけですね。

 社会保険庁改革、これが今回の年金の問題のときに年金不信の象徴的な存在として浮上したわけで、この改革は積極的に取り組むべき課題であろうということは論をまちません。しかし、徴収一元化は、保険料と税の性格や対象の違いがあります。また、給付事務のあり方、徴収を税務署が行うことによって逆に滞納や資格停止者の増加の懸念もある、あるいは国税と地方税の相違など、詰めなければならない問題点があるんじゃないかと思うんですね。

 本当に効率化が図られるのかどうか非常に疑問であると我々は考えておるんですが、この点について、今後どのように検討される予定なのかお聞かせいただきたいと思うんです。

枝野議員 ありがとうございます。

 御指摘のような問題点、論点があるということは私どもも十分に認識をしているつもりでございます。ただ、所得の把握をしっかりと行った上でその所得に応じて負担をお願いしていくというような性格を考えますと、税と社会保険と別々建てをしていくということの効率の悪さということはやはり逃れられないだろうというふうに思っております。

 具体的に、歳入庁という形で社会保険庁を国税庁と一元化をした場合に、それをどういう位置づけと役割にするかということについては、さらに突っ込んだ議論が必要であろうかというふうに思っています。特に給付業務、当然年金などについては、社会保険については残るわけでございますから、そういう部分のところをこの歳入庁で一緒に行うのか、その場合であっても、事務だけ行うのかどうするのか、そういった問題点もあろうかというふうに思っております。

 私どもといたしましては、先ほど与党の側から御質問ありました、三党合意が与党の側にお守りをいただけるのであるならば、そこで、一元化の具体的な手順の中で、これは与野党協議でございますので、社民党さんや共産党さんにも当然お加わりいただくんだろうと思っておりますので、その場で協議、検討して、十九年四月には一元化をスタートさせる。その前に徴収体制のスタートまでできるかどうかは議論はあるかもしれませんけれども、その議論の中で整理をしていきたい、こういうふうに思っております。

横光委員 民主党のいわゆる年金改悪廃止法案、これは先ほどから言っておりますように、個々のところでは意見の違いもあるわけでございますが、しかし、さきの通常国会で与党の強行採決によって成立したこの改悪関連法案を廃止して、そして抜本的な年金改革の国会審議を行えという国民の大きな願いを踏まえたならば、この政府案廃止の一点ということで、我々は賛同の意を表明いたしておきます。

 それでは、文科省にお尋ねしたいんですが、先ほどからるる質問がございます義教費の件です。

 いよいよこれも大詰めを迎えてきておるんですね。国の方は、地方の問題なので地方の意見を集約してほしいとボールを投げた。その地方の集約がそろそろまとめられる時期が迫っておるわけです。概算要求も今月末には財務省に提出しなければならないわけで、そういった状況であります。

 そもそも、本当に、これは私はもうちょっと国民的に論議しなきゃ大変なことになる問題だなという気がしてならないんですね。確かに、三位一体改革あるいは地方分権という大きな流れがありますが、中央集権か地方分権か、そういった単一的な問題でとらえていいのかということが一つ。そして、そもそも財政論でこの問題が大きく動いているということが一つ。仮に、国も地方も財政が豊かであったならば、果たしてこのような制度の見直しが浮上していたでしょうかという疑問を持たざるを得ないんですね。

 そうした場合は、本当に教育論的にこの制度がもう役割を終えたとか、そういった形で見直されるならば我々も理解はできますが、そういった形でないところでこういった非常に重要な制度が見直されつつあることに対して非常に危惧を感じておるんです。非常にそういう問題点があるということを如実に示しているのが、地方六団体でも意見がなかなかまとまらないということにあらわれていると思うんですね。それぞれの意見がある。

 しかし、これは私は、一時的な問題でとらえたら大変禍根を残すという気がしておりますので、やはり文科省も粘り強くこの問題は必要性というものを訴え続けていかなければならないという気がいたしておるんですが、文科省、これは二・五兆という大変大きな補助金でございますので、この行く末というのは文科省そのものにとりましてもまさに大きな問題になるわけでございますので、改めて大臣のこれを堅持していくための決意をお聞かせいただきたいんです。

河村国務大臣 この問題につきましては、前遠山大臣の時代に三大臣合意というのがあったりして、この問題は十八年度までに一つの方向づけをするということになっておりますが、文部科学省としては、これは非常に重要な問題であり、文部科学省の諮問機関である中教審の意見も踏まえながらこれに対応するということで、その中間報告もいただいておるわけでございますが、この義務教育費国庫負担制度があるということは、まさに義務教育が国の責任において行われるその根幹をなすものであるという報告もいただいておるわけでございます。

 これを今からいかに堅持するかということで、私も、経済財政諮問会議に対しましても、そもそも教育はどうあったらいいのか、特に国の役割と地方の役割分担はどうすべきなのかという議論をきちっとやらせていただきたいということを申し入れておりまして、これは今月中に必ず集中的にその問題だけをやる、こうなっておるところでございます。

 しかし、一応二十日には知事会は球を投げ返してくる。地方のことは地方で選ぶように、地方で決めてほしい、こういうことになっておりますから、これは地方が最終的にどう決めるのか、こっちが決めるわけじゃありませんから、これを待たなきゃいかぬ部分もございますが、どう決まったとしても、やはり私どもとしては、この制度は、先ほど来の説明からお聞き及びのとおり、これは義務教育費の削減につながる方向です。

 また、財務省は、地方に税源移譲するにしても、地方にリストラがない、これを求めなきゃ意味がないんだ、こう言う。そのリストラにかわるものは交付税カットだと言うのが総務省。ということは、義務教育費もカットされるという方向が目に見えておりますから、これで本当に知事さん方あるいは地方自治体の皆さん方、いいでしょうかということを私は強く警鐘を乱打しておりながら、義務教育費の、義務教育の重大さをさらに訴える必要がある、このように思っておりまして、これから二十日までの期間についても、基本的な私の考えというものをもっとぴしっとアピールをする必要がある、このようにも思っております。

横光委員 確かに、本当にこれが、地方に税源移譲、補助金が、一挙に義教費が行くことになると、先ほど総務省では足りないところは交付税で補てんするみたいなことを言っていましたけれども、それがすべての突破口になっていく、地方の教育の格差が歴然と始まるんじゃないか、そういった心配を私はしています。先ほど教育は国の責務であるということを義教費の件で大臣も明言されましたので、本当に力強くやっていただきたいと私は思います。

 その次に、大臣がこの四月に、公立学校の教育制度のあり方などを議論する私的諮問会議として、これからの教育を語る懇談会を立ち上げておりますね、賢人会議と言われているようでございますが。これは、現在文科省には常設の中央教育審議会というものが設置されているわけですが、こういったいわゆる政府の教育政策の骨格をつくる中教審があるにもかかわらず、あえてこの懇談会を設置したという理由をちょっとお聞かせいただきたいんです。

河村国務大臣 中央教育審議会というのは、公的な文部科学省の機関になっておるわけでございます。ここでまさに答申を行う行政機関として位置づけられておりますが、私の方でお願いをいたしましたこれからの教育を語る懇談会というのは、極めて私的な諮問懇談会でございまして、そういう意味では、ここで私も含めてまさに自由な意見交換ができる場としてお願いをしたわけでございまして、ここでは、時間をかけてゆっくりというようなことじゃなくて、もう即決で、やれることはやりましょうというようなことにもなるわけでございます。

 そういう意味で、一部、屋上屋を重ねるのではないかという御指摘もいただいたわけでございますが、性格的にも違うものでございますし、中央教育審議会に私が出かけていってその中で議論をいつもやるような状況下にもございませんし、そういう意味から考えて、まさに大所高所、いろいろな意見交換ができる場として、有識者にお願いをして、私の私的な諮問機関として懇談会を持たせていただいている、こういうことでございます。

横光委員 中教審が機能していないとか、いろいろ意見もございますが、今言われたようなことは、では中教審では対応できないという意味合いなんでしょうか、それともスピードに差があるということなんでしょうか。

河村国務大臣 確かに、中教審はスピードアップをしてもらいたいと私は思っております。時間がやはりかかる点がある。それは、重要な問題をいろいろやっていただきますから、ある程度の期間はしようがありません。しかし、この私的機関ですと、そういう点では確かに、必要な御提言があればすぐやることも可能になってまいります。

 そうかといって、では中教審を全然無視してやれるかというと、これは制度的な、あるいは法的なものが伴うということになりますと、やはりもっと幅広く各界各層の意見も聞いていただくという問題が起きてきましょうから、そういうときには中教審にもかけなきゃいかぬ、こういう問題も当然出てくると思いますので、そういうこともにらみながら即決でやる。あるいは、これからの文部科学省の具体的な政策づくりとか、そういうものであればぜひまた取り入れたい、こういう思いもございまして、いろいろな形での意見、いろいろな方々の意見を今伺っておる、こういうことでございます。

横光委員 教育行政において広く、今言われましたように、民間人の意見を聞き、またそれを活用することは重要だということはよくわかっております。しかし、この懇談会と中教審の関係、例えば優位性みたいなのはあるんですか。どちらが拘束力、例えば懇談会の提言の拘束力といいますか、そのあたりはどういうふうにお考えなんでしょうか。

河村国務大臣 拘束力はございません。あくまでも私的懇談会であるという御理解をいただいて、そのかわり、自由濶達な、ある程度テーマは持ちますけれども、あらゆる角度からいろいろなお話をいただくということでございまして、まさにいろいろな役職で入ってきておられますけれども、まさに個人的な自由な発言をお願いしている、こういう状況でございます。

横光委員 わかりました。

 もう時間でございますが、児童生徒の刃物による事件が非常に今、多発しておるんですが、平成十年に町村文部大臣、あのときもいろんな子供の事件が続きました。このときに文部大臣が緊急アピールを出して、本当に心の教育を重視したことをすべての人たちに訴えたんですね。教育現場におきましても命の大切さは当然教えているわけでございますが、私はもはや口で説明するだけでは子供たちの心に届かなくなっているようなのが現状ではないか、もっと子供が置かれている環境、学校の現実を踏まえた指導こそが今求められているような気がするんですね。

 具体的に言えば、いわゆるスクールカウンセラーの意見ももちろん大事ですが、子供たちのことを一番よくわかるのは担任でございますし、担任の先生が果たして十分にそれぞれの子供たちに目が行き届いているのかどうかとか、そして、それが十分でなければ、やはりもうちょっとそういった環境整備を図るべきじゃないか。いわゆる三十人以下学級みたいな、余りにも多忙な教師の中でこういったことが起きかねないということもあり得ますので、もうちょっと環境整備みたいな、三十人以下学級みたいなものを目指して、本当に教師がそれぞれの子供にちゃんと目配り、気配りができるような教育の現場をつくっていくこともこの心の大切さをさらによくすることにつながるんじゃないかという私の意見を申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 笠浩史君。

笠委員 どうも委員長、大臣、お疲れさまでございます。民主党の笠浩史でございます。

 本日は、いよいよ八月十三日からはアテネ・オリンピックも始まるわけでございます。また、この七日からは夏の甲子園も始まる。まさにスポーツの季節という、ことしは特に暑い夏を迎えているわけでございますけれども。それで、やはり文部科学省の重要な、大臣の所信にもございましたけれども、スポーツ振興という観点から幾つかちょっと質問の方をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、これはプロ野球の問題なんですけれども、六月に近鉄とオリックスが合併するんだという発表がされまして、この合併問題、さらには一リーグ化していくんじゃないかというような球団再編につながるような問題で、今これが大きな関心事になっていて、大変これは社会問題になっているわけでございます。その点について、当委員会でも大臣とぜひとも議論をさせていただきたいと思っております。

 そもそも一九三六年に発足したプロ野球、河村大臣自身は、このプロ野球の果たしてきた役割、どのようにお考えか、まず聞かせていただきたいと思います。

河村国務大臣 これはプロ野球のお話でございますが、今、一九三六年からとおっしゃいましたが、日米野球はその二年前にもう行っておりまして、そこから職業野球という形になっていったと聞いておりますが、ことしでプロ野球が七十年、大相撲とともにプロスポーツ界の双璧でありまして、やはり国民にとっても、これは世代を超えて非常に親しまれているし、スポーツによって元気を得ることも大きいし、悔しがったり喜んだりと一喜一憂するわけでございます。そういう意味で、このプロスポーツが頂点にあってアマチュアも非常に盛んになったという面もございますので、そういう意味では、アマスポーツも含めて全体のスポーツ振興に非常に大きな役割を果たした。

 また、野球は、投げる、打つ、走る、あらゆるスポーツにも通ずるものもございまして、そういう意味で、やはりスポーツ振興の大きな役割を果たしてきた非常に大切なプロスポーツである、このように考えております。

笠委員 私自身もやはり全く同感でございます。スポーツ振興に大きな役割を果たしてきた。

 また、大相撲と同じようにと今大臣がおっしゃったように、ある意味では、もう国技ではないか、それに匹敵するぐらい非常に親しまれてきた、また子供たちに夢を与えてきた、そのきっかけがやはりプロ野球であった。

 当然、小さいころ、うまい下手は別です、やはり一度ぐらいは、当時は、私が小さいころはまだ女の子がそんなに野球をやるような感じではなかったですけれども、昨今では女の子の野球を目指すような選手たちもふえてきている中で、一度はプロ野球選手になってみたいなとか、広く親しまれてきているわけでございます。

 そういう意味では、これはまさに、確かにスポーツビジネス、そういう側面もあると思います。これを経営する球団、オーナー側の広告塔である、球団は広告である、そういう面は確かにあると思うんですけれども、一方で、公共財としてのプロ野球の果たすべき役割あるいは位置づけというものが非常に重要ではないかと私は思っているわけでございます。

 そこで、先ほど申し上げました、今の球界再編をめぐる議論をちょっと見ておりますと、果たしてプロ野球がそういう方向にこれから行くのかなという懸念を私は抱かざるを得ません。それは、この国会の場で、もちろん、一リーグがいい、二リーグがいい、そのことを政治が指導していく、そういう場ではないと思っております。けれども、少なくとも、その公共財という面、スポーツ振興にプロ野球というものが深くかかわっていかなければいけないし、また、そういう存在でないといけない。

 そういう面からいって、今行われている一部オーナーによる密室的な話の進め方というもの、ここに恐らく、多くの選手あるいは多くのファン、そういう人たちがどうなっているんだと。

 本来であれば、今もうプロ野球の試合をやっているんですよ。真っ盛りですよ、ペナントレース。選手の方々も毎日毎日の試合に全力投球したいでしょう、集中して。けれども、選手会の皆さんを含めて、自分たちの球団がなくなるかもしれない、どうなるんだろう、そういう不安を抱えながら今プレーを日々やられている。そして、多くのファンが、果たして自分の地域から球団がなくなるんじゃないかとか、そういう不安を持たれている。

 そこで、大臣にお伺いしていきたいのは、公共性というものをしっかりとわきまえた議論というものが今なされているというふうに、昨今のこの議論を見ている中でお感じでしょうか、その点についてお答えいただけますか。

河村国務大臣 今、直接的に、一リーグにするとかしないとか、あるいは、球団の合併をやる、もう一つ合併があるんだという話も出てきたりしておりますが、このあたりについては、まさにプロ野球協約のところで決まっておることでありますから、プロ野球の組織がその中でオーナー会議等を通じてやっておられる。これは特に、さっき御指摘のようなビジネス、経営という面が非常に色濃く出ているように我々は受けとめる感じがありますね。

 しかし、野球というのは、ファンもおり、いろいろな方、もちろん選手がまず中心になりましょう、それからファンがいて成り立つ。これは、野球を幾らやったって、聴衆がいなかったら、ファンが見てくれなかったら成り立ちませんから。だから、ビジネスだけでもいかない面もありますから、そこのところはいろいろお考えをいただいておると思います。

 そういう意味では、まさにあの野球協約の中にありますように、「野球が社会の文化的公共財となるよう努めることによって、野球の権威および技術にたいする国民の信頼を確保する。」こう規定もされておりますから、今回の合併等々についても、やはりこの文化的公共財の視点、これを大切にして議論がされたい、こう我々期待を、私自身も期待をしておるわけでございます。

 やはりプロ野球の繁栄ということを考えてお進めいただきたいと思っておりますし、我々、私自身もファンの一人でありますから、そういう期待感を持って今この問題を見守っているというのが現状でございます。

笠委員 まさに、今の大臣おっしゃったとおり、私もそのことを期待しているわけです。そして、それがやはり当然だと思っております。

 ただ、この六月にこの合併話が持ち上がって以降のさまざまな話し合い、あるいは、そこで報道等を通じて見るところでは、どうもやはり一部の球団のオーナー側の論理だけで物事が進められて、今実際に、選手会の方々、選手の人たちも、何も、合併がだめだとか、一リーグ制が何が何でもだめだということをおっしゃっているんじゃないんですね。やはり自分たちも、しっかりと一緒に、この機会に、将来のプロ野球がどうなるべきか、そのことを真剣に考えるテーブルをつくってほしいんだということをおっしゃっている。

 同時にやはり、先ほど大臣おっしゃいましたファンですね、ファンに支えられて初めてプロ野球界の発展がある、これはもう当然のことです。そういう方々の、ファンの視点というものもしっかりと大事にして、きちっともう少し時間をかけて議論をしようじゃないかというようなことを多くの方々が今感じられていると思うんですね。

 そういう面からすると、ともすると、九月八日にオーナー会議が行われて、そこでもう一リーグ制を決定するというようなことを議長の立場の渡辺さんがおっしゃっているようでございますけれども、そこのところを、大臣、これは少し、これはもちろん指導する話じゃないですけれども、助言をするとか、あるいは、こうした委員会の場でしっかりと、やはりそういう視点が大事なんだというようなことを、ちょっとその御決意のほどをお述べいただければと思います。

河村国務大臣 笠先生も言われるように、私どもの方から、こうすべきだ、一リーグがいい、二リーグがいい、これをここで議論する場ではない、私はこう思いますけれども、先ほど来から申し上げておりますように、やはりプロ野球協約が定めた手続もありますし、それから、社団法人の日本野球機構の目的を示した定款第三条、こういうものもございます。これが直接に結びつかないけれども、一方ではそういう期待感がある、そういうものを踏まえて、やはりプロ野球全体の発展の方向で検討していただきたいなと思います。

 こう言うとあれかもしれませんが、最近はアメリカのリーグがどんどん直接見られるようになった。我々はもっと野球の広い世界も知っている。ああいうものを見ますと、日本のプロ野球の現状ということもやはり考えさせられる、そんな思いもあります。

 これはもちろん経営をされる皆さんも必死でありますよ。これは、経営が成り立たなきゃ、幾ら幾ら言ったってうまくいきませんから。当然、そういうこともお考えいただいているでしょうけれども、多くの野球ファンが、かたずをのんで、プロ野球に発達してもらいたい、そして、アメリカの大リーグのような広がり、ああいうものが欲しい、やはりみんなこう思っているんじゃないでしょうか。やはりこの期待にこたえてもらいたいなという思いが私にあることも事実でございます。

 そういう意味で言えば、そんなに拙速にできることだろうか、こういう不安も抱きながら、まだ今からいろいろな議論があるように聞いておりますから、プロ野球の発展ということを、ファンもついている、選手もあるんだということもぜひお考えいただいて、ぜひ日本のプロ野球が、私は、できることなら広がりを見せるような解決策を見出していただくことを期待いたしております。

笠委員 私も、今おっしゃったように、広がりを見せていく、地域を含めて。やはりそれが普及していってというようなことを今まさにここで考えていかなければいけないと。けれども、今伝えられているところでは、どうも方向性が縮小していく方向になっているんじゃないかというような懸念を私は個人的に持っているわけでございます。

 そこで、少し幾つか確認したいこと、あるいは今現在進められているこの状況の点についてちょっとお伺いをしたいわけでございます。

 選手というのは、当然ながら、雇われている労働者という立場でもあるわけですね。そういう点からしますと、このプロフェッショナル野球協約、大臣もお持ちだと思いますけれども、この中で十九条というのがございます。この十九条の中に、実行委員会でこれを審議していくわけでございますけれども、「選手契約に関係ある事項については特別委員会の議決を経て、これを実行委員会に上程する。」つまりは、この特別委員会というのは、これは、セ・リーグ、パ・リーグの両連盟の会長、そして球団の代表、オーナーですね、それに選手も加わって、十名で構成される委員会で、そこでしっかり議論をしようよということを今選手会の方がオーナー側に求めているわけですね。

 私は、今の、球団が合併するとかということは、あるいはなくなるということは、これは選手契約に関係のある事項であることは間違いないわけですから、これは当然開かれてしかるべきだと思っておるんですけれども、どうもなかなかそれに応じてこないというのが今の現状だというふうに認識しているわけでございます。この点については、大臣、いかがですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本プロ野球選手会、七月十日の臨時大会を開きまして、命名販売権を一年間認めて合併を凍結しようとか、協約上の特別委員会の開催とか、あと、また第三者機関の設置、そういったことを決議されまして、日本プロフェッショナル野球機構側に投げかけたということは承知しております。そして、七月の下旬に、選手会として日本プロフェッショナル野球組織の代表者との折衝の機会を持たれたとかというようなことでございまして、プロ野球界の大きな問題であるということは、選手会として要望を出すということは十分理解できるところでございます。

 そして、今お話のございました野球機構の特別委員会の開催につきましては、現在、日本プロフェッショナル野球組織として検討中であるというふうに聞いているところでございます。この問題につきましては、野球協約の解釈にかかわる事項でございまして、私どもとしてこれを判断するということはなかなか難しいものかなというふうには承知しておるところでございます。

笠委員 確認なんですけれども、この開く開かないという決定というもの、判断、難しいのかもしれません。けれども、これはやはり選手の契約にまさに関係ある事項ですよね。合併という話はもう少なくとも発表されているんです、近鉄とオリックスの。ということは、やはりそこで、選手たちが全員再就職できるのかどうか、あるいは全員雇われることはないけれども、どこでその人たちが違う働き場所、チームを見つけるのか、それは別としましても、そういった意味で、これは契約にかかわってくること自体、間違いないですよね。ちょっと改めてお伺いします。

素川政府参考人 この野球協約、これは御案内のとおり、任意団体の日本プロフェッショナル野球組織の定めた協約であるわけでございます。そういうこともございまして、さらに加えまして、この野球協約を見てみますと、選手契約につきましては、この野球協約上、別途いろいろな規定というものが設けられているところでございますので、その辺の規定の相互の関係というものにつきましては、私ども聞いているところでは、日本プロフェッショナル野球機構側として検討しているというような状況であるというふうに聞いておりますので、私の立場で野球協約の解釈自体をこうだと申し上げるのはなかなか難しいかなというふうには感じている次第でございます。

笠委員 非常に難しいのはわかるんですけれども、そもそも、文部省の所管する社団法人の日本野球機構と、今まさに日本プロフェッショナル野球組織、この二重構造というのが非常にわかりにくくしているんですね。これは任意団体なんです、今大臣もうなずいていただいていますけれども。任意団体なので、実態がどうなんだというところを、ではどこがしっかりと把握をするのか、あるいはそこの不透明さというものがこれまでも指摘はされるものの、どういうふうに実際運用されているのか、これがなかなかわかりにくい。

 そして、一方、スポーツでも、後発となったJリーグなんかに関しては、ここはしっかりと組織がすっきりしているんですね、非常に透明な。そして、九二年に八チームでスタートしたJリーグが、今や二十八チームですか、そこまで伸びてきて、今しっかりとすそ野、底辺を広げている。

 ですから、この際、野球機構の社団法人と任意団体のプロフェッショナル野球組織を一緒にして、やはり機構というものも、どこに責任の所在があるのか、あるいはどこで物事が決まっていくのかというようなあたりも、私は、これからのまず第一弾のプロ野球改革としては、構造改革としては必要なんじゃないかなと思っているわけでございますけれども、その点については、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 この両団体、目的も違うといいますか、どっちかというと、まさにビジネスの方からきた球団の合併等の問題、いわゆるプロ野球協約というのがあって、そこでやっておる。それから、こちらの社団法人日本野球機構、これは文部科学省所管の社団法人でございますから、これは機構として事業を進める基本的な目的をここにうたっている。

 私は、御指摘は一つの卓見だと思うんですが、こういうものが一体となって透明化されるということになれば、もっと機動的な、選手の契約の問題等々もそう大きな問題にならないでいくのではないかと思います。確かにそういう意味で、この組織、日本プロフェッショナル野球組織が任意団体であるということがなかなか透明感のないものとして国民に映っているということがいろいろな話題を呼んでいる点があろうと思います。

 これを一足飛びにこの時点において、今こういう問題が起きているときにすぐにというわけになかなかいかない問題ですが、これは課題として考えなければなりませんし、アメリカなんかのあり方とかそういうのも研究をしながら、これがどういうふうな方向であれば本当にプロ野球の繁栄につながっていくかということを考える時期に来ておるのではないかな。私も、今回のこうしたいろいろな動きを見ながら、やはり国民の声がもうちょっと反映しやすいといいますか、そういう組織というものがやはり今の時代必要ではないだろうか、このように思いますね。

笠委員 今の点でちょっと一つだけ事務的に確認をしておきたいことがあるんですけれども、この野球機構の方の定款の第六条に、「会員になろうとする者は、この法人所定の手続きにより申込をし、理事会の承認を受けなければならない。」というものがあるんですけれども、この法人所定の手続というのは具体的にはどういうことを示すのか、ちょっとお願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本野球機構の会員に加わる手続につきましては、今先生お読みいただいた規定があるわけでございますが、これに関しましては、特段の別途の規定が設けられているというわけではないというふうに聞いているわけでございまして、プロ野球協約の手続によりまして、実行委員会そしてオーナー会議、この承認を経て決定した場合には、その球団が機構の会員となるというような運用が行われてきているというふうに聞いているところでございます。

笠委員 ということは、もうプロフェッショナル野球組織の方のその中での決定というものが行われれば、今おっしゃったように、オーナー会議の決定を経ればそのまま自動的になれるという解釈でよろしいわけでしょうか。

素川政府参考人 社団法人の会員については球団が加わるというふうになっているわけでございますけれども、その球団につきましては、今先生おっしゃったような形で認められたものというものについて社団法人の会員になるというような運用がなされてきているということでございます。

笠委員 今確認したのは、やはりそういった意味でも、これは、こういう定款からしてもあるいは協約の方からしてもまさに一体なんだということが、もうそれが明らかになっているわけですから、先ほどの前向きな答弁をいただきましたけれども、こうしたことについてもしっかり考えていかなければいけないと思っております。

 それで、先ほどちょっと大臣の方からも御答弁いただきましたけれども、すそ野、底辺を広げていって拡大をしていく道というもの。その方法論は別といたしましても、やはりそういう野球ファンをふやしていく、プロ野球というものが一番重要な役割を果たしていくという方向になったときに、確かに、あるときに球団を持っている会社が、それはずっと未来永劫景気がよくて、球団を経営できる状況であればいいですよね。けれども、そういかない場合もあるでしょう。だからこそ、私は、当然それは、時には新規の参入があっていいと思うんですよ。これはアメリカでも当たり前です、大リーグでも。

 そこで、もう一つここでしっかりと考えておかなければいけないことが、これは新規に参入しようとしても非常に難しいんですね。その一つが、このプロフェッショナル協約の方で規定されております六十億なんですね。高額な加盟料が必要になってくるんですよ、六十億。

 しかも、例えば、球団というのは、そのとき一時的にある人がお金を持っている、だから買えるよと。けれども、万が一その会社がちょっと本業の方で失敗しちゃって、選手たちが結果として路頭に迷ってしまう、そういうことはもちろん、この機構としても、全体としてそういうときのために何を保障していくのかということ。何でもかんでもお金だけあれば買えるということをすべて認めるわけにはいかないと思うんですけれども。だったら、逆に言うと供託金だったらまだいいですよ、その六十億というお金が。これが、買い取るときでも三十億ですからね。しかも、これを既存の球団で山分けするというふうに書いてあるんですよ。

 これは大臣、おかしいと思いませんか。供託金ならともかく、六十億かかるんですよ。参加料ですよ、参加料。いかがですか。

河村国務大臣 基本的にはプロ野球組織の方でいろいろ御検討いただいてお決めになったことだと思いますね。

 ただ、一般的にそういう組織があるのかどうか。これは任意団体ですから、どのようにお決めになろうと法律違反とかなんとかというものにもならないだろう、こう思いますので、これをどうというのは、一般社会通念からすると、何かわかりにくいというか、そういうもので、ではほかから入ってくるだろうかとか、いろいろなことをやはり考えさせられるのですね、それは。

笠委員 私は、六十億というこのたぐいのお金がなければ、この参加料がなければ、例えば地方の自治体だって、それが供託金だったら、お金を預かってそれが戻ってくるものですから、例えば市民の方々に、そういうふうな形で球団を誘致したいんだと。あるいはもっと低い金額だったら、Jリーグなんというのは、これは参加料二千万で、あといろいろな手続、二億程度お金がかかりますので、やはりそのレベルですよ。六十億みすみす取られちゃうということになると、新しい企業が参入しようと思っても、これはなかなかしり込みしちゃいますよ。

 ですから、先ほど来の話なんですが、これは確かに任意団体なのでなかなか難しいといっても、やはりこうした点は、新規参入の垣根というものをしっかりと下げて、そしていろいろな各地域で、本当に自治体の方々が、やはりうちの町にもプロ野球が欲しい、うちの地域にも球団が欲しい、これは手を挙げるところは必ずありますよ、これがなくなれば、あるいはもっと常識的な金額になれば。そうすると、まさにスポーツ振興にも、地域振興にも、地域の経済の活性化にもつながっていく、またその地域の方々とファンと選手とのより密接な関係が、やはりこれがまさに底辺を広げていくということになるんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 これができたときが一九九一年と聞きますから、ちょうどバブル時期ですよね。いろいろな経営基盤しっかりした企業が母体となって球団経営をやろうというような意見でこういう形になった、だからこの野球組織の協約に追加されたというふうに聞いておりますから、それはそれで、そのときの意図があったと思います。しかし、今のこの現実に合うかどうかについて、今御指摘のような御議論があることを私も承知をしております。

 いずれにしても、この定款三条が、任意団体であるプロフェッショナル野球組織への参加のあり方自体、一方ではこっち、日本野球機構がございます、これと照らし合わせて考えてみても、性格が違いますから、一般的な、オープンな組織でないという面から見て、やはりむしろこの組織そのものをさっきおっしゃったような形のものに変えていきませんと、私は、これがおかしい、おかしいといったって解決になかなかならない。だから、そういう意味での考え方をどうするか。

 やはり、これは我々、我々といいますか、ファンの方もいらっしゃる、選手の方もいらっしゃるこの現実というものが、広範な意見を述べることによって動かすということだってあり得るのではないか、こういうふうに思います。

笠委員 今の点でもう一つちょっと確認をしておきたいんですけれども、これは法律的に、先ほどの六十億という高額な加盟料というものが、私、これは独禁法にある意味では抵触する可能性があるんじゃないかと。例えば、独禁法八条の事業者団体とこの日本プロフェッショナル野球組織を解することができるんじゃないか。そうなりますと、八条の三号に、加盟金制度というものがここに抵触してくる可能性があるのではないかと思っておるんですけれども、その点についていかがでしょうか。

山木政府参考人 お答えいたします。

 まず前提でございますけれども、プロ野球といいますものは、御案内のように一球団だけでは興行できませんので、複数の球団があって興行として成立するわけでございますので、関係の事業者でありますとか事業者団体がさまざまな取り決めをするということが当然あるわけでございまして、それ自体が独占禁止法上問題となるということはないということでございます。

 それから、御指摘の加盟料、加入料につきましては、制定されました経緯が、球団経営者としてふさわしくない者が入ってほしくない、それから短期的にころころ経営者がかわるということは防止したいということから、こういう規定が設けられたというふうに聞いておるわけでございます。

 なお、野球協約上は、加入または買収に際しましては、オーナー会議等の承認が必要だという規定がある上に、さらに六十億または三十億という加入料を徴収することにされております。

 これについては、先ほど申し上げました加入料の目的、加入料を取ると申しますか制定の目的と、それからその手段となっております六十億、三十億ということが、その目的に照らして合理的かどうかということについて、やはり関係事業者ないしは団体の方でさらに検討を加えられてしかるべきではないかというふうに思っておるところでございます。

 なお、独占禁止法との関係では、これは全くの一般論でございますけれども、新規参入を不当に排除するということにつきましては、やはり私どもとしても関心を持たざるを得ない事柄だと考えておるところでございます。

笠委員 今まさに、反するとはおっしゃいませんでしたけれども、関心を持たざるを得ないということで、これはやはり抵触をする可能性もあるということで、きちんとここのところはまさに考えていただかなければいけないことだと私は思っております。

 これは、本当にプロ野球の将来を考えていくときに、私は、これまでやはり巨人軍というものが人気があって、そこを中心にこれまでの体制というもの、二リーグ制というものもあったわけです。今回の一リーグ制にするか否かの論議でも、テレビの放映権の問題もあります。ただ、この日本のプロ野球自体が縮小方向に行って人気がなくなっていけば、これはおのずと巨人軍一球団で支え切れるわけないんですね。今でもほとんどの球団が赤字ですね、一部の球団以外は。ただ、親会社が広告費という形で損失も計上できるということで、そこもなかなか明らかにはなってこないわけでございます。

 だからこそ、今選手の皆さんも年俸制、フリーエージェント制になっての年俸が非常に高騰した、自分たちはそういうことについても、何も今の給料を確保しろということだけじゃなくて、選手側の方も、そこの部分に我々の方も協力するものはしっかりと協力してもいい、身を削ってもいいというような決意で皆さん署名活動もされている。何とか話し合いに、ぜひとも加わりたいんだ、まず合併ありき、一リーグありきじゃなくて、その前に十分にファンの方々やそして球団関係者、そして選手も巻き込んでの議論をゆっくり一年ぐらいやらせてくれというのが切なる願いなわけですね。

 私は、当然ながら、これは球団側のオーナーも含めて、選手の代表の人たちあるいはオーナー側、そういう人たちも含めてのシンポジウムでも全国で開いて、ファンの方の直接の声、そういうものも聞いていくようなことをもっともっとやって、まあ半年、一年を急ぐ話ではないと私の感じでは受けとめておるんです。

 そういう意味で、これからこの問題については、当委員会でもしっかりと、やはりスポーツ振興を預かる委員会でございますから注視していきまして、これは、一つ御提案なんですけれども、一度、オーナー会議の今議長の渡辺さん、それから選手会の会長の古田さんあるいはコミッショナーの根来さん、こうした方々を、当委員会においでいただいて、そしてこういう議論、今おっしゃったように任意団体なのでなかなかわからないですね、実態が。だから、そこあたりの意図あるいはこれからどうしようとしているのか、そういったことをしっかりと議論をこの委員会でやりたい、やるべきではないかと私は考えておるんですけれども、この点については委員長にぜひとも取り計らいの方をよろしくお願いをいたします。

池坊委員長 今の笠委員の御要望に対しましては、理事会で検討して決定したいと思っております。

笠委員 ぜひともよろしくお願いをいたします。

 もちろん、重ねて申し上げますけれども、これは今本当にオーナーの方々が、こういう場じゃなくても、しっかりと選手会の要望にもこたえて、そしてファンの声もきちんと聞いて、そして物事を進めていこうという方向に持っていかれるのであれば、それであればそんな必要はないんです。けれども、どうもそうじゃない。

 ということは、我々は、やはり地域の代表として出てきて、そして、しかもこのスポーツの問題、子供たちの問題を預かるこの文部科学委員会ですから、この場でもしっかりとした議論をして、また国民の皆様にもその議論を見ていただかなければいけない、その責務があるのではないかと思っております。

 そこで、ちょっと話題を変えたいんでございますけれども、昨日、中国でサッカー、アジアカップの日本選手が、あれだけのやじの中、すばらしい活躍をされました。もう本当に見事な、バーレーンに勝利をして、大変喜んでいるわけでございます。

 これも七日の日に、いよいよ中国との決勝戦が行われるわけですけれども、私、やはり中国の観衆の方々の、あの感情むき出しのやじ、あるいは日本人のサポーターに対して物を投げる、これはもうおよそ信じられない。逆に日本でそんなことをやったら、中国政府はどんなことを言ってくるんだろうと思うぐらいこれは本当に遺憾なことだと思っておるんですけれども、大臣、いかがですか。

河村国務大臣 私も、PK戦で勝った試合、それから今回の試合、テレビで見ましたが、普通のサッカーの状況とは違っていて、サポーターは日本側にはほとんどいない、国旗もない、やはり異常な状態であったと思います。

 これは極めて残念なことでありまして、スポーツのフェアプレー精神からいっても、我々としても、この状態が続くとなると、やはり中国側にも十分な善処をお願いしなきゃいけないことだ、こう思っております。その中で頑張った選手の皆さんの健闘というのは大いにたたえられると思います、これまではそれをばねにしたんだという話もありますけれども。しかし、やはり、まさにスポーツでありますから、そうした政治的な色合いというものは、できるだけそういうものを排除しながらお互いにやっていくというのがスポーツの世界。ましてや、これから北京オリンピックを控えておる中国でありますから、このままではその点に対しても非常な懸念がある。

 このことについては、担当大臣としても先方に意思を伝えなきゃいかぬ、こう思っておりますし、これは外務省が第一義的でしょうけれども、そういう何らかの対応、我々の意思というものを、日本国政府の意思というものを、特にスポーツの世界だということは向こうに伝えて善処方を求める、これは当然のことだというふうに思います。

笠委員 今大臣おっしゃいましたように、二〇〇八年に北京オリンピックを控えているわけですね。果たして、本当に日本として選手団を安心して出せるのか。私は、今のような状況であると、これはもう怖くて、ともすると本当に選手生命にかかわりますからね。そういう懸念をやはり払拭できません。それで、これはやはり言うべきは言うという姿勢も必要だと思います。

 また、中国におけるいたずらに愛国心をあおっていくような教育というものが行われている現状等々もございますので、そういった教育の問題についても、これはやはり先方の中国に対して高度なレベルでのきちんとした、ぜひ教育を預かる文部科学大臣としても強く申し入れをしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 この件については、今御指摘の点、既に在中国の日本大使館が中国側に邦人保護の徹底を要請したということは聞いております。これは出先の問題でもございますが、やはり政府としてもこのことについて非常に懸念を抱いているという意思が伝わることが必要ではないかと私も思っております。

 これは、文部科学省としては、選手の確保という問題、当面の問題もあります。それと同時に、外務省、日本サッカー協会とも連携をとりながら、この問題について日本政府としての対応をきちっとするような方法をとるべきであろう、このように思っております。

笠委員 そうした、きちんと言うべきは言う姿勢と同時に、私、これはやはり一つは、小泉内閣の中国に対する、小泉内閣というよりも小泉総理自身の対中政策というものが余りにも、何も頭を下げに行けとかそういうことは一切言いません。ただ、やはり距離があり過ぎて、それをなかなか埋めようとしない、その今の基本姿勢というものが、一方では、例えば韓国なんかは、今本当にドラマ、文化、スポーツ、何でも国民的ないい交流ができてきているわけですね。ただ、中国とは非常にこういった形で、お互いがこういうふうな形で感情論でぶつかり合うようなことになりかねないような事態を招いているというところで、やはり小泉総理自身の今の対応というものがまたさらに中国人の愛国心をあおっている、そういう一面もあるかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

河村国務大臣 この要因については、私はいろいろあるのではないかと思います。これを今即、こうだからこの点だ、あの点だということを私が言える立場にもございませんし、内閣の方も、官房長官の御意見等も見ても、いろいろな要因というものを考えていかなきゃいけないだろうと。

 しかし、いずれにしても、こういうことは望ましいことではないという意味で対応していかなきゃいかぬ、こう思っておりますし、文部科学大臣としては、スポーツを担当し、選手がやはり安心で、安全でフェアプレーがきちっと発揮できるような環境、状況のもとでしてもらいたい、こう思っておりますので、そういう条件が整うように努力していかなきゃいかぬ、このように思っております。

笠委員 ありがとうございました。

 ぜひ、そうした意味でも、また河村大臣の方からも総理に対してもしっかりとお話をしていただき、これは本当に二〇〇八年の北京オリンピックというものを視野に入れて、これはやはり二国間の問題でもございますので、中国側に反省を求める部分もございますし、また我々が考えていかないといけない部分もあると思いますので、その点で指導力を発揮していただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

池坊委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。

 最後のバッターでございますので、大臣、最後までよろしくお願いをいたします。

 実は、通告をしておりましたのは、一つには、やはりクローン法の問題について、三年の見直しが来ている、こういうことについての問題と、もう一つは、学習障害についての、やはり大きな課題を抱えている子供さんについての対応をしっかり大臣、副大臣にお聞きしよう、こういうことで通告を申し上げておったんですが、朝、宿舎で目が覚めますと、新聞紙上に「補助金二億五千万不正受給」というこの新聞報道が実はございました。私もあっと驚きまして、厚生労働省、日歯、いろいろなところで社保庁を含めて政官業癒着の大きな疑惑がある中で、文科省までも侵されてきたか、こういうことで大変びっくりいたしました。

 まずこの点、十分な通告はさせていただいておりませんが、ぜひ御質問をさせていただきたいと思っておりますので、朝通告したと思います、これをやるよということを、朝、うちの事務所から連絡が行ったと思いますので、ぜひ、通告なしじゃないかということでお逃げにならずに、堂々とお答えをいただきたいと思います。

 非常に私も理解に苦しむわけでありますが、新聞紙面で出ております部分でいきますと、世界青少年交流協会、こういうことで、補助金を出しておる、補助を出しておる文科省の所管の団体でございます。大体の流れでいきますと、その団体がどういう状態で、こういう不正受給、水増し請求をして中で資金をためている、こんな構図なんだろうというふうに思いました。

 私は、何年か前か忘れましたが、実は、渡海筆頭が今同じ委員会でおられるんですが、決算委員会の委員長のときに、実は文科の関係で、JETという、同じような、学生を交流させる、こういうプロセスの中で、正規航空旅券を格安で買って、その差額を取り入れておったということで、決算行政委員会で質問をしました。その当時の委員長は非常に聞き分けがよくて、しっかりと問題追及を……(発言する者あり)いやいや、今の委員長も結構だと思いますが。

 こういういわゆる不正な行為をして受給する。こういう同じアクションのプログラムが、この世界青少年交流協会という学生を通じていろいろな交流を図ろうという中に、まさに文科省、教育的指導をする立場にある文科省の所管でそんなことが、もし来る学生にわかれば日本の恥にもなる、こういうことでございますから、そういう視点で、中身はよくわかっておりませんが、質問をいたしますので、ぜひ究明をしていただきたいと思っております。

 まず、簡単で結構でございますが、世界青少年交流協会というのは何を目的にするところなんですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 財団法人世界青少年交流協会、これは昭和四十四年に設立された財団法人でございますけれども、青少年の国際相互交流を行う、そして我が国の国際的文化の向上発展に寄与する、そういうことを目的として設立されたものでございます。

 事業内容といたしましては、主にドイツやイギリスなどの海外の各国との間で、青少年とか青少年の指導者の派遣、受け入れの国際交流事業というものを実施しているものでございます。

平野委員 四十四年からやっておられるわけであります。

 今、この世界青少年交流協会の会長はどなたですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、財団法人世界青少年交流協会の会長は、衆議院議員の森喜朗議員でございます。(平野委員「聞こえない。もう一度大きな声で」と呼ぶ)衆議院議員の森喜朗議員でございます。

平野委員 常務理事はどなたですか。

素川政府参考人 常務理事は三名おられます。一名が常勤で二名が非常勤でございます。常務理事は、衆議院議員の川崎二郎議員、それから、オフィス・フジイ代表取締役社長の藤井大至氏、この二人が非常勤でございます。それから、常勤の常務理事が、役職は当協会の常勤常務理事ということでございますけれども、荒川洋輔氏でございます。

平野委員 当然理事もおられるわけですが、理事にかかわっておられる政治家の名前を言っていただきたいと思います。

素川政府参考人 理事は数名ポストがあるわけでございますけれども、国会議員というお話でございますが、非常勤でございますが、お一人おられます。衆議院議員の額賀福志郎議員でございます。(発言する者あり)もう一人は、茂木議員は数年前にこの理事をやめております。

平野委員 森元総理も会長をやられている。非常にこういうところに造詣の深い方だと思っておりますが、この団体に政治家が少なくとも責任者としてかかわっている。また、非常勤とはいいながらも、それぞれ衆議院議員が運営の形態にかかわっておるという団体であるということは、今御報告いただいたとおりであります。

 この方々に対する給与は、報酬はお支払いをしておられますか。

素川政府参考人 すべて無給、無報酬でございます。

平野委員 報酬という形はとっていなくても、別の意味の謝礼とか、そういうことは渡しておりませんか。

素川政府参考人 現時点で、今の段階で、それは手元の資料ではございません。お話しできる資料は手元にはございません。

平野委員 現時点で話せないけれども、よく調べたら出てくる可能性もあるということですか。

素川政府参考人 この報酬につきましては、無報酬といいますか無給であるという、無報酬、非常勤の職であるということでございます。

平野委員 質問は、報酬はないということですが、報酬にかわる何かの方法で、謝礼とかいうものは渡っておりませんかという質問であります。

 ちょっと話を変えます。

 実は、これは当然、公益法人ですから、文科省として検査、監査を入れるはずですね。いつ監査をやりましたか。

素川政府参考人 所管の公益法人に対しましては、おおむね三年をめどに実地検査というものを行うということにしておりまして、当該財団法人に対しましては、平成十五年の十二月に行ったところでございます。

平野委員 そのときに、十五年にやられているとしたら、その監査の中でその不正受給が、新聞報道に言われているような問題点云々ということはつかめなかったのでありますか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 実地検査におきましては、補助金等の事業計画、事業報告、それから予算、決算などを実地で確認したわけでございますけれども、残念ながら、今回報道されている不正受給につきましては、その実地検査では確認することができなかったところでございます。

平野委員 私、いつも思うんですが、各省庁の、自分の所轄の公益法人の監査の仕方というところに非常に疑問を持っています。どういう意味かといいますと、大体A、B、Cぐらいのランクをつけて、大学の成績評価じゃないんですから。Aは異常なし、Bは問題あり、こういうレベルでの監査しかしないんですよ。

 前にも言いましたように、私は、しっかり本当に監査をしているかと。税金を使って、入れている公益法人に対して、国民の目線でやはりしっかりと監査をしてもらわなきゃいかぬけれども、実態的にはほとんどそういう監査の機能を持っていない人が監査しているんじゃないでしょうか。責任ある人が監査していますか。これはだれがやっておるんですか。

素川政府参考人 当該公益法人の実地検査につきましては、文部科学省の担当の係の者が二名、実地で検査したところでございます。

平野委員 では、そこで伺いますが、私、実は朝、時間がなかったものですから要求できませんでしたから、ホームページで、平成十五年度の会計収支に対する予算等々というのはホームページにちゃんと出ておりますから、とらせていただきました。きっちり形上は書かれておるんですね。

 だけれども、ちょっと私、わからなかったのは、オリンピックセンターから収入が入っている。何でオリンピックセンターから入ってくるのかなと、これは素朴な疑問を持ったんですが、何よりも持ったのは、文科省から先ほどいただいた数字でありますが、どうも金額が違うんだね、これは。

 ホームページで出されているこの収支の数字と、文科省からさっきいただいた助成金、補助金、民間社会教育活動振興費助成金、これを十年から十五年までいただきました。委託事業費の云々というのもいただきました。これで見ると、金額が違うんだよね。これはどういうことかな。これは二重帳簿になっているんじゃないのですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 当該財団法人に対しましては、補助事業として民間社会教育活動振興費補助金と、委託事業として青少年交流推進事業というものが二種類出ているところでございます。

 ちなみに、十五年度は、補助金といたしまして五千六十四万三千円、それから委託費といたしまして三千二百万円というものが出ているところでございます。

平野委員 では、これはホームページで入れているこの金額、これとの整合性はどうとるんですか。我々、ホームページというのは大体、国民に見せているわけですから、やはりこれを信じて見ているわけですよ。それと今おっしゃった金額とはかなりの乖離がありますよ。

素川政府参考人 国からの補助金に対しましては、ほかの省庁からの補助金もあろうかと思いますし、どのようなタイトルかは存じませんけれども、民間の団体からの助成金といいますか、そういうものもあろうかと存じます。

 いずれにいたしましても、文部科学省の先ほど申しました補助金につきましては、先ほど申しました数字が正しい数字でございますので、特に二種類あるというようなものではございません。

平野委員 いや、どう考えても合わないんですよ、考えたら。(河村国務大臣「こっちの方がいいんじゃないですか、ほかからも出ているから」と呼ぶ)いやいや、ほかのものはほかの収入として書かれておるんだから、細かく。

池坊委員長 きちんと挙手して質問し、そして御答弁いただきたいと思います。(平野委員「失礼しました。今のは私が悪いんですか、大臣ですか。では、委員長、済みません」と呼ぶ)

池坊委員長 はい、どうぞ。

平野委員 要は、いずれにしましても、ホームページで見る収支の予算と決算、これは出ていますよ、きっちり。これは克明に出ていますよ。文科省からもらった、この補助事業として出ている部分については二つありますということで、今おっしゃった五千万、あるいは三千二百万、こういうことですが、これから見るともっと多いんですよ。ホームページからですよ。勝手に私がつくったのと違いますよ。そこから見ると、この金額がどうしても合わない。合わない理由は何ですか。

素川政府参考人 先ほど申しましたように、文部科学省からの補助金、委託金は先ほど申しました数字でございますけれども、ほかの団体、役所からの助成金、補助金というのもあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、そのホームページの数字というものを精査させていただき、また御報告をさせていただきたいと存じます。

平野委員 ぜひ詳しく、きょう朝言ったことですからそれでどうのこうの言いませんが、ぜひ一度精査をされて、出してください。監査をされているんでしょうから、監査の印をついて、私、当然やっておられると思いますから、検査のチェック、しっかりしたオフィシャルなものを、控えをいただけますでしょうか。

 もう一つは、「外部への支出」という項目を見ますと、これもまさにJETと一緒ですよ。ジェイティービー、近畿日本ツーリスト、近畿日本ツーリスト、ジェイティービー、東日観光、ジェイティービー。これは私、時間がなくて平成十四年度しかとっておりませんが、十五年度、十四年度、十三年度、十二年度とったときの、払っている業者、これは多分この業者以外にないんじゃないか。専属契約ですか、これは。随契ですか、入札ですか、この業者を選んでいるのは。

素川政府参考人 先生おっしゃいましたのは支出でございましょうか。支出につきましては、ちょっと今お答えできる資料がございませんけれども、文部科学省からのお金の流れ方ということは、補助事業でございますので、申請に対して出しているということでございます。

 団体と個々の旅行会社、旅行業者との関係につきましては、今お答えできる材料は手に持っておりません。御承知おきいただきたいと思います。

平野委員 わかりました。

 それでは、委員長にぜひお願いをしますし、こういう視点で調べてください。毎年同じ業者が入っておられるということは結果としてはあるかもしれませんが、どういう契約のもとにお入りになっておられるのか。入札をしっかりして入っておられるのか、こういう専門家だからといって、随契で必ず業者を選定されておられるのか、専属にされておられるのか。

 私、JETのときにも申し上げました。ほとんど同じ業者がずっとやっておるものですから、要は、不正受給でき得る温床ができ上がっているんじゃないか。こういう視点で見きわめたいものですから、ぜひ、どういうふうに協会がやっておられるのか。たった六人しかいないんですよ、人が。ですから、そんな複雑なものではないんです。我々素人が見てもこれはわかると思うんですね、しっかりチェックする気であれば。

 それを一度出してもらわないと、この二億五千万というのは――不正受給された、これはあくまでも新聞報道なんですか。そういう事実はあったんですか。大臣、これはどうですか、報道ですか。

河村国務大臣 この事件については、たしか七月二十日でした、警察が内偵したというか、事実関係をあれし始めたということで初めて私はわかったわけでありまして、だから、金額が幾らになるとか、そのことについては、今報道で初めて知ったような状況です。

平野委員 警察がそこまで内偵して捜査に入っているということは、かなりの部分では事実なんだろうというふうに思います。ただし、これは私も、思うということでしか物は言えないんです。

 ところが、これも報道ですが、多額の使途不明金という格好で支出計上しているところに私は大きな問題を持つんだろうと思います。公益法人であれば、これだけ使途不明金なんということが本当に許されるのか。会計監査あるいは検査をするときに、使途不明金ということがかなりあるということが本当に許される、また許されるとして検査を通していく、このことは本当に、補助金という立場であったときに、大臣、そんなチェックは許されるんですか、文科省の責任者としては。

河村国務大臣 私はそのものを見ておりませんので何とも言えませんが、高額の使途不明金がそのまま通るということは、普通は考えられません。何か特殊なものであって、検査を通るだけのものがないとと私は思います。今現物を見ておりませんので何とも言えませんけれども、一般論として。

平野委員 大臣、ぜひしっかりとチェックをして、見てください。過去にもJETではあったことは間違いなく事実ですから、同じツールだと思います、やり方としては。同じようなやり方で、パクる、中抜きする、こういうやり方ですから、予測ですけれども、私はまず同じところに問題があるような気がいたします。

 それでは、本題に入ります、時間がちょっとなくなってきましたけれども。

 実は、もう一つ大事なところで、これはぜひ大臣に深い御理解をいただいて対処してもらいたいということなんですが、学習障害という、学習障害児に対する教育現場でのあり方なんでございます。

 我が国においても、非常に自閉症的になるとか、こういうような課題があったと思うのでありますが、今日まで、学校教育の閉鎖性といいましょうか、特殊教育、養護教育あるいは一般教育、こういう格好できっちり垣根をつくって分けていたものですから、こういう方々の状況というのが非常に把握が難しかったんだろうと思うんですね。文科省としては、今私申し上げましたように、LDであるとかあるいは多動性障害であるとか、こういう方々が今どれぐらいおられるか、今掌握しておられますか。

銭谷政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるLD児、ADHD等の発達障害を抱えるお子さんについて、平成十四年に文部科学省が実態調査を行いました。これは判断が大変難しいわけでございますけれども、LD、ADHDの可能性のある児童生徒というのが、子供たちの約六%程度の割合で通常の学級に在籍しているのではないかというふうに思っております。

平野委員 通常の学級に約六%の方々がおられる。ということは、これは世界的水準から見たら多いのですか、少ないのですか。

銭谷政府参考人 これも、先ほど申し上げましたように、判断基準が大変難しい軽度の障害の子供たちでございますので、どのようにその子供たちをとらえるのかということで、私は数字は大分違ってくるのではないかとは思っております。

 ただ、一例を挙げますと、これはアメリカの精神医学会の、ちょっと古いのでございますが、一九九四年の報告によれば、いわゆるLD児が、学習障害児が公立学校の生徒の約五%程度ではないかというふうな報告があるというのは承知をいたしております。

平野委員 私は、こういう子供さんも、非常に認定というんでしょうか判断が難しいということで、ややもすると見過ごされてきた、こういう経過なんだと思うんですね。

 しかし、今までの教育というのは分離教育をしてきておりますから、知的障害児、これは養護学校へ行く、あるいは聾学校へ行く、こういうことで、そういう明らかに障害を持っている方々については、はっきりとした基準に基づいて分離をしてきた、一般教室から外れていた。

 私は、しかし、この社会においては、障害を持っている方々と健常児の人と一緒に構成をする、そういう中での教育体系が好ましいと思うんですね。というのは、特殊学級に入れて、あるいは特殊学校に入れて、社会に出たときに、どうしてもその方々が社会になじめない、こういうことにもなりますから、私は、やはり通常学級の中に、学校の中にこういう障害児の方々も一緒に勉学をさせる、また、その中でもその方々に対して支援をしていくという制度設計に本来あるべきだ、こう考えています。

 そういう中にあって、この今言われた学習障害児に対して今日まで逆に何もやっていない、こういうことであります。私は、早期発見をすればするほど回復ができ得る児童でありますから、そういう意味で、この問題について、今どういう認識で、あるいは今後どういうふうに対応しようとしておられるのか、ぜひ御所見をお聞きしたいと思います。

銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、例えばLD児につきましては、聞く、話す、読む、書く、計算するなどの能力のうち、特定のものの習得と使用に困難を生ずるというふうに一般に定義をされているわけでございますけれども、これの判定というのが大変難しいということがございました。

 それで、文部科学省では、平成四年に調査研究協力者会議を設置いたしまして、LDの児童生徒の指導方法に関する検討を開始したのでございますけれども、平成七年に一度中間報告を出したところでありますけれども、これについていろいろ御意見もございまして、さらに検討を進めて、平成十一年の七月にLDの定義、判断基準、指導方法等を示した報告書を取りまとめた。それから、ADHDの子供さんについて言いますと、平成十三年からこういう調査研究協力者会議を設置して、教育的な対応について検討を開始いたしまして、平成十五年の三月に報告書を取りまとめたところでございます。

 それぞれについて現在、こういう特別な支援を必要とする子供たちに対して特別支援教育推進体制モデル事業というものを実施いたしておりまして、例えば専門家によるアドバイスでございますとか、あるいは、何よりも子供たちの実態を把握するための校内委員会の設置でございますとか、それから巡回指導とか、一体的な特別支援を行うように現在心がけているところでございます。

 さらに、ことしの一月でございますけれども、こういう子供たちの指導に当たってのガイドラインの試案を作成して、その指導の充実に取り組んでいるところでございます

平野委員 今、局長おっしゃいましたけれども、まだまだこれは緒についたばかりであります。

 先ほども義務教云々という話もありました、財源が非常に不足していると言っておりましたけれども、こういう方々の対応の仕方をもっと積極的にやっていただきますと、必ず回復するんです。健常者に戻るんです、もともと健常者と見過ごしてきたんだから。ただし、何かの状態で学習障害が起こったために、その状態で成人になってしまうということですから、早期にやはり発見をしていただいて、それに対する特別支援体制を組んでいただいたらもとに戻るわけです。そういう対応は、将来的にはこの社会を構成する中に、より健常な人間として社会構成をしていくわけですから、私は、これはぜひ通常の学校教育の中に、モデル云々ということじゃなくて、早急に特別の支援学級、教室をつくっていただきたいと非常に思います。

 複雑でわかりにくい、こういうことがあるんですが、私は、それ以上に、これは厚生労働省の所管と、医療的な問題なのかどうかということと学校教育上の問題なのかという、いわゆる縦割りの弊害によって谷間にあった課題だと思うんですね。これをやはりぜひ教育的観点、教育的な中にもしっかりと取り入れていただく、こんな体制をまずつくっていただきたい。モデルでつくりましたからそれを順番にやっていきますなんて悠長なことを言わずに、すぐやれば治る話ですから、そういう体制をおつくりいただきたい。

 大臣、どうでございますか。

河村国務大臣 御指摘の点、確かに、日本の教育の中でこの部分がおくれておったといいますか、対応が十分でなかったことも事実でございまして、これについてはことしの一月にガイドラインも出したところでございますが、これも確かに、厚生労働省が、医学的な見地、いわゆる先天的な見方というのも一部ある。しかし、今おっしゃるように、教育的な立場できちっとやることによってこれを和らげ、また戻すこともできるんじゃないかということもある。これも含めて、やはり特別支援教育の中に入れて、個々に対応するということが必要でございます。専門的な治療的なものも必要な者は場合によってはそこへ行くということもあるかもしれませんが、これは原則普通学級で一緒に対応できる課題ではないかというふうに考えております。

 今、現実に、六%とか言われる子供たちは普通の学級にいて、実際に、今までと様子が違うということで、先生方もなかなか苦労されている。またこれに対する専門家、また先生方の知見も少ないということでありますから、そういう方々にもきちっとLD、ADHDに対する知識というものをもっとふやしてもらわなきゃいかぬ、そういう課題もございますけれども、方向としては、この子たちもみんな能力を持っております、それを活用できる方向というのは考えていく必要がある、まさにそれが特別支援教育であろう、こういうふうに考えております。

平野委員 大臣、そこまで言っていただきましたから、ぜひ早期実現に向けて取り組んでいただきたいと思いますし、特に家庭教育の中で、親御さんが自分の子供を育児をしていく中で、やはり何らかの格好で気づいていくと思うんですね。ところが、これは何かちょっと調子が悪いのかなという感覚で見過ごすケースもある。一方、これは問題だと思っているんだけれども、学校に言いに行っても聞いてもらえない。その学校がわからないんだから、これは何だろうという。したがって、相談に行くそういうツールがしっかりできていないところにやはり元凶、問題がある。

 一方、カウンセラー的な指導する人の育成、養成ができていない、こういう側面もあるということですから、これはやはり家庭教育の中で、将来大事な日本の宝ですから、その宝をしっかり育てていくための、こういう視点で見ていただかなきゃ、親御も責任あると思います、学校にもある、医学的な立場での見地も必要だ。こういう三位一体の中で、少子という、少なくなっている子供さんを大切にしっかりと、何かあったらすぐ回復できるような措置が現行の教育施設の中に取り入れられるようにぜひ強く要望しておきたいと思います。

 私は、養護学級であるとかそういう特別学級に分離をすることに対しては真っ向から反対であります、将来社会復帰するときに物すごく壁があるように思いますから。こういう社会が当たり前の社会なんだという国民的認知がやはり必要なんだろうと思っていますので、普通学級の中にこういう特別な支援教室の設立、あるいはそういう教育の推進を切に願うところでございます。

 まだ二分ぐらい時間がありますからやりますが、これもまた中途半端になるといけませんので、少しだけ言っておきます。

 大臣に、クローンの問題で、これは三年前にいろいろ議論があって、いろいろ社会的課題の中での大事なところだし、乱用されることについては非常に危惧がされるところでありますので、この問題については総合科学技術会議で指針を出したということですが、この指針については極めて問題があると思っていますが、現時点で、大臣、どういう御認識かお聞きして、質問を終わりたいと思います。

河村国務大臣 あの倫理審査会、調査会で審議されて、ヒト受精胚を人と同等に扱うかどうか、倫理的な位置づけのほかにも、人クローン胚についてもヒト受精胚と同様に扱う、これが検討されたわけですね。

 結果として、ヒト受精胚と人クローン胚、それぞれ法律上の取り扱いとか科学的性格に差異、違いはある、あるが、人クローン胚はヒト受精胚同様に体内で移植されれば人になり得る可能性がある等の両方の特質を考えて、それぞれについて結論が出されたというふうに報告を受けておりますが、これは、やはりこの結論を受けて、今後のガイドラインの策定等について検討を進めていかなきゃいけない、このように考えておるところであります。

平野委員 時間が来ましたので、終わります。

 副大臣、たくさんきょうは来ていただきましたが、必ず次回は質問をいたしますので、よろしく。

 ありがとうございました。

池坊委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がございますので、これを許します。川内博史君。

川内委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました私立学校教職員共済法等の一部改正法を廃止する等の法律案に対し、大多数の国民の皆さんの声を代弁して、賛成の立場から討論を行います。

 さきの第百五十九国会で、自民党、公明党の与党によって強行採決をされました年金関連法について、多くの国民の皆さんはその成立前から強い不信を抱いておりました。政府並びに与党は、負担と給付の数字を明確に打ち出したことが抜本改革である、あるいは、百年安心だと強弁をしていらっしゃいましたが、国会審議を通じて、負担の数字、給付の数字のごまかし、まやかし、あるいは後出しが明らかになったのであります。

 また、政府は、加入者の四割が保険料を納めていない、既に破綻状態にある国民年金について、何らの根本的な解決策を示すことができず、全く放置したままであります。

 さらに、年金法成立後に発表された合計特殊出生率一・二九は、今次年金改正の根底が崩れるほどの数字であり、法律で約束した給付と保険料負担の水準を到底維持できるものになっておりません。

 おまけに、政府改正法には、その法案の内容について大きな変更を及ぼすであろう四十カ所もの誤りがあり、これを官報告示で訂正をするなどということは、全く法律としての体をなしておらず、国会としての自殺行為であると言わざるを得ない状況であります。

 これらをもってしても政府年金法は明らかに欠陥法であり、参議院選挙で国民の皆さんがその評価を下したとおり、年金法は撤回すべきであります。

 国民の皆さんは、政府年金法に対する不信あるいはノーの意思を明確に選挙でお示しになられました。参議院選挙の投票基準が年金であったのはまさしく明らかであり、まさに年金選挙でありました。国民の皆さんが下した審判は、政府の年金法へのノーという意思表示であります。

 国民の皆さんが、一から議論をし、正確な情報と開かれた議論によってもう一度しっかりと年金法を、安心と安全の年金法を確立してほしい、その国民の皆さん方の願い、私たち国会議員一人一人がその声を強く感じているはずであります。にもかかわらず、このまま法律を実施すれば、国民の年金に対する信頼は文字どおり地に落ちてしまいます。

 政府並びに与党の皆さんが国民の意思を無視し、こうした問答無用の政治を続けることが、政治に対する信頼を根本から失わせ、国会の存在意義さえ問われてしまうような事態に立ち至ることを私は危惧します。主権者たる国民の皆さんの代表として、国民の意思を代弁してこそ国会議員であると私は信じております。

 繰り返し申し上げますが、参議院選挙で示された国民の意思は、政府年金法案を一たん廃止にし、年金制度を根本から、一から議論をし直すことであります。

 今回の政府改正法によって、年金保険料の未納がなくなるんでしょうか。若者の年金に対する不信、年金離れが解消をされるでしょうか。多くの国民の皆さんは到底そうは思っていないと思います。年金は国民の皆さんの信頼なくしては成り立たない制度であります。

 まずは、この政府の年金法を、私どもが提案をするとおり一たん廃止することから始めなければなりません。年金に対する国民の皆さんの信頼を回復し、真に持続可能な年金制度をつくることに与野党の別はありません。本法案に対し、どうか与党の皆さん方の賛意を得られんことを心より御期待申し上げ、私の賛成討論を終わります。

 以上でございます。(拍手)

池坊委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより採決に入ります。

 岡田克也君外十名提出、私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律を廃止する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十六分散会


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