衆議院

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第5号 平成17年3月11日(金曜日)

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平成十七年三月十一日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    遠藤 利明君

      小渕 優子君    加藤 勝信君

      加藤 紘一君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      谷本 龍哉君    西村 明宏君

      葉梨 康弘君    馳   浩君

      古屋 圭司君    保利 耕輔君

      山際大志郎君    青木  愛君

      市村浩一郎君    岩國 哲人君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      小宮山泰子君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      樋高  剛君    松本 大輔君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   総務副大臣        今井  宏君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   総務大臣政務官      松本  純君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十一日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     遠藤 利明君

  近藤 基彦君     谷本 龍哉君

  古屋 圭司君     城内  実君

  笠  浩史君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     加藤 紘一君

  城内  実君     古屋 圭司君

  谷本 龍哉君     近藤 基彦君

  小宮山泰子君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     樋高  剛君

同日

 辞任         補欠選任

  樋高  剛君     笠  浩史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治財政局長瀧野欣彌君、自治税務局長板倉敏和君、消防庁次長東尾正君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君及びスポーツ・青少年局長素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。牧義夫君。

牧委員 おはようございます。一昨日の質疑に引き続きまして、きょうは、総理に御出席をいただきましたので、質問を続行させていただきたいと思うわけでございます。

 本来ならば、総理にわざわざお出ましをいただいたわけでありますから、まずは御礼を申し上げなければいけないところなのかもしれません。

 顧みますと、戦後、今は文部科学委員会でございますけれども、文教委員会当時から振り返ると、昭和三十一年に鳩山一郎総理が文教委員会にお出ましをいただいて、そして三十三年、岸総理がやはりこの義務教育国庫負担制度のお話で文教委員会に来て答弁をしたという記録がございます。

 昭和三十三年というと私が生まれた年でありますから、ちょうど四十七年ぶりに総理がこの文教委員会においでになったということであります。せっかくのそういう機会ですから、本来だったら、本当は小泉総理の米一俵の、米百俵の精神についてじっくりとお話を伺いたいところでもございますけれども、御承知のように、そういうわけにはまいらないわけで、まず三十分という限られた時間でもあります。

 また、今回私が御礼申し上げるわけにはいかないと言ったのは、そもそもこの審議を進める上で、総理みずからがまいた種といいますか、総理が三月二日の予算委員会において発言をされた内容とこの法案の中身、そもそもちょっとずれているんじゃないか、このまま、総理の答弁をいただかないままこの審議を続行することはできないということで、これは何も、私たちがただ揚げ足を取って言っているわけでもございません。これは与野党一致する意見でありますし、また、文部官僚の皆さんに聞いても、あるいは法制局の皆さんに聞いても、やはりこれは一度ここで総理の真意を確かめた上でないと無理があるよ、そういうことでございますので、きょうはおいでいただいたわけです。

 私たちは、この文部科学委員会において、本当に、将来の日本を担って立つ青少年の育成をどうやってこれからしていかなければならないのかということを日夜真摯に議論しているわけで、そういう中で今回の法案の審議もしているわけですけれども、その法案の審議に当たって、総理の御発言があって、ややその日程もずれております。

 本来だったら、ありがとうと言うよりも、むしろここで総理に一言、この文部科学委員会の委員の皆さんに謝罪をしていただくべきだと私は思うわけですけれども、何か一言ございましたら、総理からお願いいたします。

小泉内閣総理大臣 四十七年ぶりですか、総理大臣が文教委員会といいますか文部科学委員会に出るのは。

 きょうは、斉藤委員長初め、何か学校の先生の前に出てくるような、文教関係の専門家が多い皆さんの中で緊張しております。生徒のようなつもりで皆さん方の御意見をしっかりと聞かせていただきたいと思っております。

 教育の重要性は言うまでもございません。これからも、日本の教育の振興に皆さん方が大いに頑張っていただきたいと期待しております。

牧委員 そもそも、私があえて予算委員会において質疑をさせていただいたというのも、この三位一体の改革の中での義務教育国庫負担についての位置づけ、よく中身がわからないところがございます。小泉総理はかねがね、地方にできることは地方にというふうにおっしゃっておりますけれども、今回、どういう意味で地方分権の中でこの義務教育費に手をつけたのか、その意味を私は予算委員会でも問いただしたわけでありますけれども、決して十分な回答が得られなかったというのが私の率直な感想でございます。

 そこで、もう一回、あえてお尋ねをしたいんですけれども、今回の暫定措置、これが一体どういう意味があるのか、どこが地方分権なのか、その意味を総理に教えていただきたいと思うわけであります。

小泉内閣総理大臣 地方にできることは地方にということから、いわゆる今まで中央政府の関与が余りにも過ぎるのではないかという地方団体の声、国の役割、地方の役割それぞれありますが、地方の自主権あるいは裁量権を拡大してほしいという声が、地方団体の皆さんから今までもよく出ておりました。

 また、小泉内閣の重要課題として、地方にできることは地方にということから地方の裁量権を拡大するということを考えますと、補助金の改革、税源移譲の改革、そして交付税の改革、いずれも今までも議論の俎上に上ってきたわけでありますが、どれ一つとっても必ず強い抵抗がある。一つ一つ難しいということで今日手をつけられないで来た。

 そこで、この補助金、税源、交付税、全部難しいのはわかっていますが、一つ一つでやって難しかったんだからこの三つの改革を一緒にやろうじゃないかということを考えたわけであります。そのときに、三者一体ということだったんですが、どなたかが三位一体という言葉の方がわかりやすいということで、いつの間にか三位一体の改革というのが定着してきたような感じがいたします。まあ知識のある方は、三位一体というのはキリスト教関係の言葉だということでありますが。

 いずれにしても、補助金と税源と地方交付税、これを一緒に改革しようという中で、地方団体も協議を重ねました。そういう中で、地方団体の中でもそれぞれ賛否両論が出てまいりました。まずまとまらないだろうと見られていたときもありました。しかし、最終的に地方団体は、賛否両論、かんかんがくがくの議論の中に一つの結論を出してきました。

 そこで、私は、補助金の問題について地方には賛否両論があるんだからまとまらないと言っていたところを、苦労してまとめてきたという報告を受けまして、それだったらば地方団体の意見を真摯に受けとめて改革していこうという中で、地方が出してきた案、これを小泉内閣でも真摯に受けとめて改革していこうという中で出てきたのがこの義務教育の問題であります。だから、義務教育の重要性は私も十分認識しているつもりであります。

 その中で、義務教育費国庫負担金、この額が極めて大きい、八千五百億円、そういう地方の意見と中央の意見というものを協議した中で出てきた結論でありますが、もとより地方が言い出した案をそのまま実施に移したわけではございません。

 当面、来年度にかけてもまたがる問題でありますので、暫定的に今回八千五百億円の半分程度を地方の裁量拡大という意味で与えてはどうかという中で出したものでありまして、私は、この地方の、それぞれの知事や市町村長、また議会関係者の意見を今後も真摯に受けとめて、地方にできるだけの裁量権を拡大していくような方向で改革を進めていきたい。

 私は、この問題については、国がこうやれと言って押しつけたものではありません。地方がもっと裁量権を拡大してほしいという要望というものを真摯に受けとめて考えているわけでありまして、決して教育をないがしろにしたり、教育を重視していないという話とは全く違うわけでありまして、日本のこれまで発展してきたのは、教育を重視して多くの人材が活躍してこられたたまものである、そして、今後も日本の発展にとって教育を重視していかなきゃならない、その重要性は十分認識しているつもりでございます。

牧委員 総理の御発言というのは、いろいろなフレーズをたくさんつなぎ合わせて長くなるものですから、結局、最後は何が言いたいのかよくわからないんですけれども、再三、地方の意見を真摯に受けとめて、地方案をあくまでも重視したんだ、このようにおっしゃっています。

 今回の法改正でどこが地方案なんですか。どこが地方案を重視した結果、こういう形になったんですか。端的に答えてください。

小泉内閣総理大臣 地方の意見を尊重したからこそ、暫定的でありますが、これから地方にもかなりの裁量権を与えていこう、今までとは違っている、これは御理解いただけるのではないかなと思っております。

牧委員 私が懸念したのは、この八千五百億の根拠を先日もお伺いしました。その中で、そのお話の文脈の中で、地方案を尊重した結果この八千五百億という数字が出てきたんだ、こういう話だったわけですよ。それでいいんですか。

小泉内閣総理大臣 地方の案、そしてそれを真摯に受けとめて中央と協議した結果であります。あくまでも地方の案を真摯に受けとめた。それは当然話し合いの結果であります。

牧委員 結局、今回ここで引っかかっているわけですよ。総理の三月二日の予算委員会の答弁を引用させていただくと、「私は、この補助金の問題、今回、義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、今年度は約八千五百億円の中での約半分、今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。」こういうふうに述べられているわけですね。

 総理が今おっしゃったような地方案を尊重したということは、今私が読み返した文言のとおりで、それでよろしいんですか。

小泉内閣総理大臣 それで結構です。

牧委員 本当によろしいんですか。今回の法律の改正案というのは、附則をつけ加えて、暫定措置として四千二百五十億の減額措置を講ずると。これは別に中学校分でも何でもないんですね。今おっしゃったことと違うじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 額として特定はしておりません、中学校分に。

牧委員 額として特定していないというのはどういうことですか。ちょっとはっきり言ってください、これは。そこが一番大事なんですから。

小泉内閣総理大臣 中学校分に特定しているわけではございません。

牧委員 もう一回読みますよ。「私は、この補助金の問題、今回、義務教育の国庫負担金の中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないか」、中学校分の部分、これを移譲するという話ですか。

小泉内閣総理大臣 義務教育費として地方が出してきたわけですから、その点について、中学校だけという特定のことを指しているわけではございません。

牧委員 いや、それだったら、きちっとここで訂正してください。だれがどう読んだってこれは中学校分ですよ。だったら、この法案に重大な瑕疵があるとしか言いようがないじゃないですか。それとも、総理が勘違いしていたんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、どうして、わかりませんか、義務教育費の中で特定していない、中学校と。例示として挙げたわけであって、それは中学校だけに特定しているわけではありません。

牧委員 だったら、逆に聞きますけれども、では、この八千五百億の根拠というのは何なんですか。特定していないんでしょう。ただそこに八千五百という数字があったから、たまたま目の前にそういう数字があったから拾ってきたんですか。

中山国務大臣 この八千五百億というのは、まさに中学校の教職員の給料の二分の一ということでございます。(発言する者あり)

 いやいや、八千五百億円というのは、中学校の先生方の分の給料の二分の一でございますし、四千二百五十億というのはその二分の一ということですね。

牧委員 だから、もうちょっとはっきりわかりやすく言ってほしいんですよね。その分にたまたま相当するけれども中身は違うんでしょう。では、はっきり、いや、総理ちゃんと言ってください、総理。

中山国務大臣 八千五百億というのは、先ほどから言っていますように、中学校の先生の給料の二分の一、四千二百五十億というのはその半分でございまして、まさに額として、それに相当する額として四千二百五十億を計上した、こういうことでございます。

牧委員 だから、私がさっき言ったように、もうちょっとちゃんと素直に、はっきり言ってくれればいいんですよ、わかりやすく。たまたまそういう数字が地方案として出てきたからその数字だけかりました、だけれども中身は違いますよ、そう言えばはっきりするじゃないですか。

 もう一回、それをちゃんとはっきり言ってくださいよ。

中山国務大臣 もう何度も答えていますが、額として、相当する分であるということで、その中身が中学校の先生方の給料の分そのものであるということじゃなくて、額として、わかりやすく言えば、かりてきたと言えばわかっていただけるかなと思いますが。

牧委員 だから、最初から、かりてきたと素直に言えばいいんですよ。昔ある登山家が、どうして山に登るんですか、そこに山があるからだと。それと一緒じゃないですか。そこに八千五百億というのがあったからかりてきただけでしょう。今はっきり、それはいいですね、政府見解として。

 だとすると、もう一回総理にお尋ねしますけれども、地方案を真摯に受けとめてという話とこれはちょっとずれているんじゃないですか。どこが真摯に受けとめた結果なんでしょう。数字をかりてきただけじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 真摯に受けとめて、全体として考えたわけでありまして、だからこそ、地方団体は結果について一定の評価をしていただいているわけでございます。

牧委員 これ以上不毛の議論はしたくありませんので……(発言する者あり)不毛の質問ではありません。これははっきりさせておかなければ、法案の中身にかかわる問題ですから、ここだけはきちっと踏まえておきたいなと。今はっきりと、この八千五百億という数字はただかりてきただけの数字だということがはっきりしたので、これは晴れてこれからまともな中身の審議に入れると思うんですけれども。

 ただ、同じく三月二日の総理の御答弁の中で、もう一つひっかかるところが私なりにありますので、そこを確認させていただきたいと思うわけです。

 そのいわゆる中学校分という発言の後、「そういう方針を決めて、」というところですね。「中学校にかかわる部分、こういう点については、地方にその権限を渡してもいいのではないかと思って、そういう方針を決めて、」ここから先です、「今年度は約八千五百億円の中での約半分、今後のことについては中教審等の意見を踏まえましてよく協議していこうという判断をしたわけであります。」

 これは、さらっと聞くとそれですんなり通る話かもしれませんけれども、よく読むと、この八千五百億についてはもう既定の事実だと。二兆五千億から八千五百億を引いた分については、それがつまりは「今後のことについては」ですね、中教審の意見を踏まえてというふうにこれは読めるんですよ。これは全部含めて中教審にゆだねるんでしょう。そこはちょっと表現が危うい表現なんですよね。総理の御発言からすると、もうこれは八千五百億というのは既定の事実だ。だけれども、我々が今審議しているのは、あくまでも四千二百五十億の、今年度限りの暫定措置について議論しているんですよ。そこをやはりはっきりしていただきたい思います。

小泉内閣総理大臣 暫定措置でありますが、中央教育審議会においては全体を幅広く議論していただくということでございます。

牧委員 もうちょっとはっきり答えていただきたかったんですけれども。

 では、もう一つ聞きますよ。「今後のことについては中教審等の意見を踏まえまして」、「等」というのは一体、中教審以外のどこなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、中央教育審議会で議論をいただきますが、同時に、地方と中央政府との協議の場も設けております。ですから、地方団体の代表の方とも引き続き、これから我々は協議していきますので、「等」の中にはその地方団体との協議も入ります。

牧委員 ぜひ、地方の意見というものも今後は本当の意味で真摯に受けとめて協議を進めていただければありがたいな、そんなことをつけ加えさせていただきたいと思います。

 それから、今私がなぜ、この八千五百億というのは既定事実化してしまっているんじゃないかという懸念を申し上げたかというと、実は、二月二十二日の本会議においても、これは麻生総務大臣の発言なんですけれども、「政府といたしましては、中教審の結論を得て、私どもとしてもきちんとした結論を出すようにいたしたいと思いますが、私といたしましては、三位一体の改革を成功させるという政府全体の方針のもとに、地方の改革案が適切に生かされる形で中央教育審議会の結論が導かれるものと考えております。」と。これはあらかじめ総務大臣は、「導かれるものと考えております。」という表現をされているんですよね。

 先日の、例えば私の予算委員会における質疑において、政府・与党合意、昨年十一月二十六日の話ですけれども、文部科学大臣はどうしてそこにいらっしゃらなかったのかという質問を申し上げました。大臣は、そこにはいなかったけれども、再三再四、この制度の堅持を訴えてきた私の意見も取り入れていただいたので、中教審の結論を待つということになったんだとおっしゃっているわけですね。

 これはもう全く、同じベッドで寝ていて違う夢を見ているという話じゃないですか。大臣、どう思われますか。

中山国務大臣 予算委員会等において各大臣いろいろ発言しているわけでございますが、これは昨年秋の政府・与党の合意がございまして、その合意の趣旨の中で、それぞれ担当の大臣は担当の大臣でいろいろ言いたいことはありますから、それで、私は私なりに何とか堅持したい。麻生総務大臣は地方の意見ができるだけ生かされる方策について検討するとありますから、合意の中にはまた、この国庫負担制度については堅持するということもあるわけですから、その合意の範囲内でそれぞれの担当大臣が発言しているということではないかと思いまして、閣内不一致とかそういうことではないと思っています。

牧委員 その四千二百五十億もあるいは八千五百億にしても、これは既定事実じゃなくて中教審の結論を踏まえて今後判断するということ、これはある意味では一つの先送りですけれども、そういう意味でとらえるのであれば、何も今回この暫定措置というものの意味がないと私は思うんですよ。はっきりと将来にわたっての中長期的な方針が決まったところできちっとした措置をすればいいわけで、何のために十七年度、十八年度、これをやるのか、その意味が私にはよくわかりません。

 ただ単に、これはもう総理が旗を振っているわけですから、その三兆円に向けて数字合わせのためにこれをやったとしか思いようがないわけですけれども、違いますか、総理。

小泉内閣総理大臣 確かに、文部科学省の意見と地方団体の意見は対立しました。そういう中で、地方の意見というものを真摯に受けとめるという形で一定の結論を出したわけでありまして、そういう中で、中央教育審議会等の役割もあります。そういうのを調整して、今回、案を出してきたわけでありまして、私は、今後も教育の重要性、特に義務教育の重要性と地方の裁量権の拡大という点につきましては、意見の隔たりは認めますけれども、そういう意見を重ね合わせながら、今後も引き続き一定の結論を出していかなきゃならない、財源の問題もあります、総合的に判断した結果でございます。

牧委員 はっきりと、ここで総理自身のお考えをお聞きしたいんですね。

 というのは、この議論については三位一体の関連で、この義務教育費国庫負担金の制度について、これまで予算委員会やらあるいは本会議、総務委員会、財金やら、いろいろなところでいろいろな委員の方たちが質問をしたり、あるいは答弁をもらったりしているわけですけれども、これはマスコミの人たちに言わせても、どれがどれだかわからないという感想が広くあるわけです。

 それはひとえに、やはり総理の教育に対する方針というものがどうもはっきり総理の口から聞かれないということが原因ではないかと私は思うんですけれども、例えばの話、さっきの麻生総務大臣の発言と、それから中山文科大臣の発言については、私は百八十度違った方向を見ているようにしか思えないんですけれども、総理はどっちの考え方なんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、地方に裁量権を拡大しても教育の軽視には当たらないと思っております。

 だからこそ、対立ある意見はあります。この教育問題だけじゃありません。閣僚の間で意見の対立は、ほかの問題でもあります。しかし、結論を出す場合は一致協力していくのが内閣であります。この問題も、私は意見の対立はあっておかしくないと思っています、各省。そういう中で、全体の意見を積み重ねながら、あるいは意見の違いを調整しながら一つの結論を出していくということについては、教育の問題についてもほかの問題についても私は変わりないと思っております。私は、教育を重視しております。まして、地方団体が自分に任せてもできると言っている、その基本的な考えは今後も尊重していきたいと思います。

牧委員 最後に、時間がございませんので、中山大臣にお伺いしたいと思います。

 今の総理の発言は大臣のお考えとはかなり乖離しているようですけれども、いかがでしょうか。この秋の中教審の結論、これは何も今総理がおっしゃったような方向で必ずしも導かれるとは思いませんけれども、その辺について、最後に中山大臣の見解をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 義務教育については、国、都道府県、市町村、それぞれの役割があるわけでございまして、国は国としての責任はしっかり果たしていかなければならない、こう考えているわけでございます。

 そういう意味で、昨年の三位一体の改革の中では、国と都道府県との間の専ら費用負担の話だけが中心だったようでございまして、実際のところは、教育の現場の、設置管理者であります市町村の話をもっと聞かなければいかぬと思いました。

 私どもは、国は国としてしっかり責任を果たしますが、やはり実際の教育に当たられる現場の方々の創意工夫といいますか、そういったものをより強めていただいて、それぞれの地区で責任を持って子供たちの教育に当たっていただきたい、このことは考えておるわけでございまして、いつも言いますが、現場主義ということでございます。

 そういう意味で、国は国としての責任をしっかり果たしていく、そして実際の教育は現場の市町村の方でしっかりやってもらいたい、そういうことで、今後とも教育改革に邁進してまいりたい、そう考えているところでございます。

牧委員 大臣の御決意はよくわかりました。

 三十分、総理のお時間もいただいて、改めて感謝を申し上げたいと思います。きょうは、その八千五百億という数字が、単に目の前に転がってきた数字であって、それをかりただけの、意味のない、教育論を度外視した数字であるということだけ確認させていただきましたことを多として、この三十分の質問を終了したいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。須藤浩君。

須藤委員 民主党の須藤浩でございます。

 ただいま総理出席のもと、質疑応答がなされましたけれども、せっかくですから、その意味では今のお話をベースに、私の方からも大臣にいろいろとお聞きをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今回のこの義務教育費負担金のいわゆる交付金化、一般財源化はこれまでたくさん議論されているところですが、そのスタートからして、私は、どうも結論ありきといいますか、その方向で進んでいるのではないかという気がしております。

 特に、今、八千五百億の半分の四千二百五十億円の話ですけれども、今総理が言われたように、もし数値としてあったからそれを使ったということであるのでしたら、地方団体の方から出てきた意思といいますか考え方をどう反映させるというふうに考えておられるのか。

 地方の意見を真摯に受けとめて、そして今回の交付金化にしたと前提で言われているわけですから、その数値が、ただ単に計算上の数値として入れたというのでは、地方団体の言っている意思といいますか考え方が反映されているとは言えないのではないかと思いますけれども、まず、その点について最初にお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 三位一体の改革の中で、総理の方から投げかけられて、三兆円規模の数字をつくってこい、こう言われて、知事会側が三兆二千億の数字をつくってきたわけでございまして、その中に八千五百億円の中学校分の先生方の給料の二分の一が入っていたということでございますから、その八千五百億というのは意味があったんだろう、私はこう思っているわけでございます。

 先ほども申し上げましたように、単なる財政論といいますか、金額だけの問題じゃないんじゃないか、もっと教育のそもそも論にさかのぼって議論すべきじゃないかということで私は主張してきたわけでございまして、最終的には中央教育審議会の方の議論を経て結論を出そうということで、今回地方側が要求しております、これだけのものをよこせという八千五百という数字のうちの半分は、一応、暫定的に地方側の計上すべき数字になったわけですけれども、それも含めてもっと中身の議論をして、この三位一体の改革、そして義務教育費国庫負担制度全体について議論しよう、こういうことになったわけでございます。

 そういう意味では、地方側の数字といいますか地方側の考え方も生かされているし、また、私どもの主張したそもそも論についても議論しようということ、まさに暫定という形になっているということで、ことしの秋までに中央教育審議会で議論しようということになったということで、そういう意味では、双方の意見が生かされている、私はこのように考えております。

須藤委員 そうしますと、八千五百億円の中身なんですけれども、これは知事会の方から出てきた金額としては、中学校分のいわゆる費用だということで積算をして、その八千五百億ということが出ているのだと私は理解をしているんですが、それは違うということになるのでしょうか。

中山国務大臣 地方側の積算の中では、まさに中学校の分の二分の一ということで積算されたんだと思いますけれども、三位一体の改革の中で、いわゆる税源移譲に見合う分として補助金幾らカットするかというやはり数字数字の問題でございますから、そこにまさに、先ほど言いましたが、かりてきたと言いましたけれども、その数字。要するに、額として、こういったぐらいのものという地方側の気持ちがあるわけですから、その気持ちが八千五百億円、あるいはその半分の四千二百五十億円という数字にあらわれている、このように考えております。

須藤委員 知事会の方でその八千五百億という数値を出してきた、それを積算したということは、その部分を、つまり国庫補助金、負担金から交付金化をしてくれという意思表示ですよね。ということは、それを地方団体の方で、ある意味、一般財源化をして自分たちの裁量の範囲内において使いたいということであろうと思うんですね。

 その数値、つまり根拠のある数値をただ単純に計算上の数値として国の側が取り扱うということになると、プラスマイナスは数値として合いますけれども、実際には、その後に、その金額に見合う分のつまり使用目的、使うわけですね、そこがおかしくなってくると私は思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

中山国務大臣 使用目的という意味がちょっとわかりませんが、地方団体側は、とりあえず十七、十八年度で中学校の分、その後で小学校の分、合わせて二兆五千億全部地方に回せ、こういう主張があるわけですね。それで、今回は第一期分として中学校の分を移してくれ、こういう話だったということでございます。

須藤委員 補助金を一般財源化するという考え方の中には、それぞれこれまで地方が、これまでも現在もそうですけれども、使っている費用というものを地方に移す、そして、それはさまざまな事業目的に従って積算をするわけですけれども、その移された費用、お金、財源というものを自分たちの裁量に従って使うというところに意味があるわけですね。ただ、地方にどれぐらいの費用が必要だと言われても、いきなりその数値は出てこないでしょうから、これまで行ってきた事業の費用というものを、仮といいますか、その数値を出して、そして、その数値を地方に移して、地方が責任、自覚を持って使うということだと思うんですね。

 今回、この一般財源化の八千五百億、そして暫定措置として四千二百五十億というのは、私は何も隠すことはなくて、これは知事会が、八千五百億ですけれども、四千二百五十億移すということに関しては、積算の根拠は中学校分だ、だから移せという話だったと思うんです。それをあえて、政治的な発言か、審議状況の問題か、あるいはその他の問題か、私わかりませんけれども、ただ数値としてかりてきたんだということでは、この議論というのは、ある意味で私は非常に不思議、おかしい議論だと思うんですね。もっともっと正直にといいますか、出せばいいんじゃないかと思うんです。

 もともと、総理は、地方にできるものは地方にということで組閣をして、その中に文科大臣として中山大臣がいらっしゃるわけですけれども、その時点で、ある意味では、この考え方、地方分権にのっとって地方にできるものは地方にということを賛同されたわけですよね。ここだけ文科大臣としては反対で、それ以外の文教政策には賛成だから文科大臣を受けるということではなかったと思うんです。つまり、大臣になられたということで、この考え方は総理に従うということだったと思うんですね。

 そうしますと、文科大臣として、これまで多くの方々が大臣をされて文科行政をされてきました。そして、新しく大臣になられた中山大臣が、少なくともその線上からすべて外れるわけにはいかないと。今までの答弁をお聞きしていても、さまざまな点で文教に対する責任ということを私は述べられていると思います。

 そうしますと、今回のこの問題、まさにそういったところにぶつかると私は思うんです。四千二百五十億円というものが、地方分権の中で、そして知事会の方から中学校分だということで移すことになった。それは、先ほど総理が言われたようにただ単なる数字合わせではなく、そして、大臣御自身もそのことは当然のことながらおわかりだと思いますけれども、地方にその中学校分を移して一般財源化をして、各自治体、地方団体の言う意図に沿うように今回は行っているんだというふうに、普通、一般的、常識的に考えると、私はその説明だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 私が文部科学大臣を拝命いたしましたときに、総理から手渡されたメモがございます。幾つか御指示があるんですけれども、この三位一体に関しましては、十一月の半ばをめどに全体像を取りまとめる三位一体の改革に当たっては、義務教育費国庫負担金等文教科学関係の補助金について、地方からの改革案を真摯に受けとめ、積極的に見直しに取り組まれたい、こう書いてあるわけでございます。

 真摯に受けとめてということでございましたので、私は真摯に受けとめて議論に参加したということでございましたが、先ほど来話をしておりますように、何か金額だけ、要するに国と都道府県との負担割合のことだけが議論になりましたものですから、地方の声といいますと、知事会側だけじゃなくてこれは市町村もございますよね、そういったいろいろな声も聞きながら私はこの三位一体の議論に参画してきたわけでございまして、総理の意向に反していたとも思っていません。

 また、要するに、三兆二千億の数字が出てまいりましたけれども、それがそのまま実現しているわけじゃございませんよね。ですから、それはもちろん政府全体としていろいろ議論しながら、この三位一体の改革の十七年度予算にある程度実現されている、こういうように考えております。

須藤委員 そうしますと、改めてお聞きをしたいんですけれども、中山大臣が文科大臣に就任されまして、特に義務教育という問題、そして地方分権に係る財源の移転ということに関して、自分自身はどのような文科行政を行いたいというような抱負といいますか考え方があったのかどうか、あるとしたらどういうものだったのかということをもう一度披瀝をしていただきたいと思います。

中山国務大臣 文科大臣を拝命いたしましたのも官邸に呼び込まれる二時間ほど前に知ったばかりでございますから、こうこういう考えで文科行政をやりたいから文部科学大臣になりたいとか、その話が事前に総理とあったわけじゃございません。ですから、文部科学大臣を拝命しましたとき、これまで私、やはり国会においていろいろな仕事をしてまいりました。大体は経済、財政、金融、そういった面でございましたけれども、そういったところから教育関係についても関心を持ってまいりました。

 というのは、いつも申し上げていますが、小泉改革、いろいろな改革をやっていますけれども、その改革を担うのはやはり人材である、人であると。その人の問題だということはもう本当に考えておりましたので、これからの日本、非常に厳しい時代だろうと思うんですけれども、そういった中で、これからその中で生きていかなければならない子供たち、どういう場面になっても、どういう事態になってもその中を生き抜いていけるような、そういうたくましい子供たちを育てていきたい。

 そのために私は、大臣になりまして早々でございましたけれども、「甦れ、日本!」と称します私の教育改革の案を公表したところでございます。その中に一番最初に掲げましたのは、まさに、頑張る子供を応援する教育をしたい、そしてチャレンジ精神に富んだ子供たちをたくさん輩出したい。そういう意味から、教育全般について検証して、直すべきものは直していかなきゃいけないんじゃないかな、そういう思いで、本当に厳粛な思いで文部科学大臣に就任したところでございました。

須藤委員 その大臣の思い、目的を達成する中で、今回、地方分権に伴う財源の移譲、移転という制度的な問題が出てくるわけですね。そのときに、その方法として、義務教育費の国庫負担をどうするか、堅持していくのか、あるいは地方に移して地方の裁量に任せることがいいかということが問われているわけですね。その判断基準として、教育論であり、ある意味では財政論であり、さまざまな視点からの議論がなされていることだと私は思います。

 そのときに、大臣は当然、今この問題に直面して、結論として、地方にこの負担金を交付金として渡していいという結論を出したということになりますけれども、それでよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 私は、義務教育というのは、特に国と都道府県と市町村、要するに国と地方が役割分担に応じてそれぞれ責任を果たしていく、それで力を合わせて未来を担う子供たちを育成していくということだろう、こう考えておったわけでございますが、その中で、国の責任というのは何かということも考えるわけでございます。

 国というのは、憲法の要請にもございますけれども、教育水準の確保ということと、それから、機会均等といいますか、日本のどういう地区に生まれてもひとしく教育を受ける権利を有する、そういった観点に立ちまして国としての責務を果たす。ですから、国は、国全体としての学校制度だとかいろいろな基準を定めて、それを担保する国としての予算措置もしっかり担う。そして、それをもとにして地方は、それぞれの役割に応じて、学校を設置したり、あるいは教職員を採用したり異動させたり、それこそ地域ぐるみで子供たちの教育に当たる、こういうことだろうと思うわけでございます。

 そういった中で、私は、では国の責任として、いわゆる予算ですね、資金面でどうかなと思って、これは私も実ははっきり知らなかったんですけれども、大体、義務教育というのは全体で十兆円かかる。その中で国が三兆円、都道府県が四兆円、地方が三兆円負担している。私はある意味でびっくりしたんです、余り大きなことは言えないな、三割しか国は負担していないのかと。よその国はもう全額負担している国もあるわけですね。まさに全額負担しようという方向で流れている、そういう趨勢がある中で、日本の国というのが、国の責任も、その負担制度についてはもう放棄すると。

 地方案にのっとりますと、まず一期分として中学校分、二期分としては小学校分、全部これは地方に渡せということでございますから、ゼロになるわけですね。三割がゼロになる。それで本当に国の責任を果たしたことになるんだろうか。いろいろな基準を決めるだけで、口を出すだけで、あとはおまえたちちゃんとやれということでは、これは地方分権にも反するんじゃないかな。

 私は、そういう意味で、国がそういった基準を決める以上は、ある程度やはり国としてもお金の面でも責任を持つべきじゃないか、このように考えておったわけでございまして、そういう主張をいたしまして、最終的には、八千五百億円のうち四千二百五十億円について来年度の予算で計上いたしましたが、これも暫定ということがついたということは、まさに中央教育審議会で教育についてそもそも論から始めよう、先ほども申し上げましたが、負担の話ばかり出ていますけれども、実際に、先生方、そして市町村教育委員会、現場の市町村の声ももっと聞きながら議論すべきじゃないかということで、今中教審で議論していただいておる、その結論待ちだというふうに考えております。

須藤委員 今大臣答弁されましたけれども、義務教育の根幹を守るということで、国の責任といいますか、今持っている三割はすべてなくなってしまう、そして国が本当に責任を持てるかということに関して今疑問を持っている、そういった内容でお話をされました。

 文科行政のトップである大臣がそのことに関して疑問をお持ちになっている。しかし、現実は、小泉首相の号令のもとに、この四千二百五十億円が暫定として移されようとしているわけですね。内閣ということでは首相の言うとおりに従うということでつじつまが合うんでしょうけれども、大臣は今言われた疑問を持っている。

 先ほど、大臣に就任したときにどういう思いで就任されたかということをお聞きしたのは、実は、そういった思いを大臣として貫き通すのかなと私は思っている、あるいは思っていたんですけれども、やはり今の時点では、どちらかというとそうではない、地方の意見があったから、その意見を尊重してやるんだというふうに言われています。

 このように答えが出ていない状況の中で、事をどんどんと進めていってしまって果たしていいものかどうか。そして、その挙証責任を、中教審の答えが出るまで待つという形にしていいものかどうかということ。

 本来であれば、私は、市町村の意見をまず十分に聞く、つまり実態の把握を完全にすることだと思います。今回、知事会の方から要望がありましたけれども、各都道府県で市町村の意見がどれだけ聞かれたかということ、そういったことは調査されたんですか。状況はどうであったか、お聞きをしたいと思います。

中山国務大臣 三位一体の改革の議論を進める中で、知事会側はああいう結論を出されましたが、もちろん知事会の中にもいろいろな意見があったということは御承知だと思うんです。そのほか、市町村長の方からは、九割以上が堅持してくれという声だったんですね。あるいは、議会の方でしたか、二千以上のところからそういった意見書が出てきたということでございまして、小泉総理が地方の声を真摯に聞けと言われましたが、地方の声にもいろいろな声があるということもしっかり受けとめたわけでございます。

 今、私ども、義務教育の改革に関しまして、スクールミーティングというところで、現場に行きましていろいろな現場の声を聞いておりますし、一方ではまた、教育委員会とかあるいは市町村長さんに対しましてもアンケート調査の票を出しまして、本当にどう考えていらっしゃるんですかということについて今調査を依頼しているところでございます。

 ですから、この問題というのは、単なる財政論だけではなくて、やはり現場の実際の教育に当たっていらっしゃる方々の声も聞きながら私はやっていきたい。

 ですから、決してこの三位一体の改革、地方分権というものに逆らうつもりはございません。というのは、今までも文科省も、先生方のお給料につきましてはいわゆる総額裁量制ということで、ぼんと総額を決めまして自由にお使いくださいという形で、まさに現場の裁量を拡大する方向でやってきているわけでございますから、そういった中で、しかし、ある一定の部分は国がしっかり責任を持つんだよ、これは憲法の要請でもあります機会均等という精神にも私は合うと思いまして、そういったことをしっかり踏まえながら、三位一体の改革、義務教育費国庫負担制度の改革にも取り組んでいきたい、こう考えております。

須藤委員 今回のこの地方分権に伴う税財源の移譲という意味では、私はそれほど枠組みとしては難しいことではないと思うんですね。当然国の行うべき役割と地方の行うべき役割の線引きをして、その線引き基準に従って移せばいいだけであって、その意味ではそれほど難しいことではないわけです。

 ただ、その線引きをすることがさまざまな問題があって難しいということであって、今回のこの義務教育費の国庫負担金も、その線引きに当てはまるかどうかということの議論が少し足りなさ過ぎる。文科省としてもそうだし、あるいは、そのわからない部分を中教審に投げているわけですが、私は、先ほど大臣も言われましたように、世界の趨勢で、国が費用負担を持つべきだ、それはこれまでの歴史の中で、そうしていかないと人材が育たない、国として人を育てる仕組みというものもうまく機能しないという、ある意味で経験則から出ているのだと思います。

 日本が中央集権化の非常に際立った国で今日まで至って、そしてこれから地方分権をやろうというときに、その経験をしていない部分を、ただ投げればいいからというような、どちらかというと絶対的な基準といいますか、また別の言い方をすれば安直に投げてしまうということの中でこの問題が扱われていいのかどうかということだと思うんですね。

 先ほど大臣も言われましたように、教育の根幹を堅持し、そしてこれからの地方分権の流れは当然認めてやっていきたい、改革をしていきたいと言っていますが、やはり肝心かなめの、もとになるところの議論が、答えが出ていないわけですね。

 中教審もさまざまな方が委員として入っていらっしゃるということですが、文科省の方にしっかりとした考え方があれば、中教審の答えが参考といいますか一つの見識、答えとしてそれを後どう料理をするかということになりますけれども、文科省にそれがないということになりますと、中教審で出た答申をそのまま活用といいますか、そのとおりに実行していくという話になるわけですね。

 そこで一つお聞きしたいのは、中教審の答申の方向性というものを文科省としては定めているといいますか、何らかのもくろみといいますか、そういったものを持っているのかどうかということをお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 中教審というのは、御承知のように三十三名の委員がいらっしゃいまして、うち十名が地方行政に携わる方でいらっしゃいますが、そのほかにもさまざまな分野の方々、立派な見識を持った方々が参加していただいておるわけでございまして、そこで、まさに委員がおっしゃいますように、義務教育全般についてタブーを設けることなく議論していただくということになっているわけでございます。その結論がどうなるのか、今私の方でそういう何かこうなるんだ、ああなるんだということを申し上げる立場ではない、こう考えておりますが、まさに政府と与党の合意でもありますように、中教審の結論を待って決めていこう、こういうことになっているわけでございます。

 もちろん、文部科学省には文部科学省の考えがあるわけですけれども、文部科学省の考えだけで突き進んでいいわけではございません。私どもは、中教審だけではなくて、幅広く、先ほどから申し上げておりますように、現場の声、そして市町村とかあるいは知事会とか、各界各層のいろいろな御意見を聞きながら、そして考え方をまとめていきたい。また、中教審の方にも、私どもが得られたいろいろな調査結果とか、そういったものも参考として出しながら、中教審で実りのある議論をしていただくということを期待しておるところでございます。

須藤委員 事務的なことですけれども、中教審の答申というものに文科省が拘束される法的な根拠、あるいは拘束されないということに関しては、法的な根拠があるんでしょうか。

銭谷政府参考人 御説明いたします。

 中央教育審議会は、文部科学省組織令に基づきまして、教育に関する重要事項を調査審議する審議会でございます。中教審自体は、文部科学大臣の諮問に応じて答申をしたり、あるいはみずから建議をしたりすることがあるわけでございますけれども、一般的に審議会の答申につきましては、私ども、それを十分尊重してこれまで行政を進めてまいりましたけれども、それはすべて拘束されるということではなくて、基本的にその答申内容について尊重しながら行政を進めているということでございます。

須藤委員 私も、政治の世界、こう見えても結構長くやっているんですけれども、もともと行政側が出す、諮問するいわゆる審議会というものは、どちらかというとそこで得た結論、これは大義名分といいますかそういったものを得て、皆さんに、審議会で審議をしていただいたのでこうですよという説明に使われることがこれまで非常に多かったわけですね。現在でもそういう部分がかなり残っていると私は思っています。

 その審議会の中に、いわゆる行政執行者に対する賛成派だけではなくて、やはり広い見地から物事を考えてくれる、あるいは場合によっては、その諮問内容に対する、あるいは行政の考え方に対して反対意見を持っているような人もどんどん入れて、そして本当に全体の人のための答えを出せるような審議会というものが地方によっても少しずつ生まれつつあるわけです。

 地方分権が特にここ数年、物すごい勢いで進んでいますけれども、それ以前から当然あったわけであって、今回のような義務教育費あるいは教育に係る費用をどうするかということが出てくる前から想定されているような問題であったと私は思うわけです。

 そして、文科省の方で中教審にこれを相談するといいますか、方向性を定めていただくというようなことになるわけですけれども、今のお話ですと、特別その方向性は文科省の側としては指示をしていないし出してもいないんだ、中教審が出してくる答申というものを尊重していきたいという。

 しかし、今回のこの問題というのは、最終的には文科省で決めていく、政府で決めていく話ですね。そうすると、中教審の考え方と文科省の考え方、あるいは小泉首相と言ってもいいんですが、これが違った場合、これはどうされるんでしょうか。

中山国務大臣 いろいろな審議会があるわけでございますが、先ほども申し上げましたけれども、今回の義務教育の問題について議論いたします義務教育特別部会、先ほど申し上げましたように、今のところ三十名ですけれども、地方の方からもまた地方の代表として三名推薦されましたので、最終的には三十三名、うち地方行政に携わっていらっしゃる方が十名ということで、それこそ偏らないようにという観点から私は選任したというふうに思っていまして、最初から、どういう方向、こういう方向ということを目指してやっているということはないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。

 ですから、審議会の結論がどういう方向になるのか、ちょっと私、今結論を先に言えるような立場にはないわけでございますが、私どもとしては、やはり各界各層の方々、そういった方が、代表する皆さん方が決めていただいたことについては、これは尊重すべきだと思っています。しかし、それがそのまま政府の方針になるわけじゃございません。

 文部科学省はもちろん尊重いたしますし、それをもとにしてまた政府内では、三位一体の議論、地方分権の議論、補助金の議論、交付税の議論、いろいろあるわけですから、そういった中で私は適切な結論が出されるだろうと思いますけれども、私どもとしては、やはりこの義務教育の根幹にかかわる問題についてはしっかり堅持して、国としての責任を果たしていきたい、このように考えておるところでございます。

須藤委員 少しわかりやすく質問したいと思います。

 義務教育の根幹にかかわる部分を国として堅持したい、これは、先般大臣も答弁されていましたが、機会均等と水準の確保と無償制ということで、私は、根幹にかかわる部分が今回大きな問題となっているのは、費用負担をどうするかということだ、その一点だと思うんですね、特に今回法案が出ているわけですから。

 そうすると、そこに関して文科省がとやかく言うことはできないとか、もし、考え方を持っていない、中教審にすべてゆだねるというのであれば、出てきた答えをそっくりそのまま是として使うか、あるいは、文科省はこうだから、中教審の答申のこの部分はいい、だめという判断を最終的に決断を下すという、どちらかしかないわけですね。

 前者の、中教審のとおりにそのまま実行するということであれば、中間答申で、この義務教育の国庫負担金堅持に関してはやはり国が堅持すべきであるというようなことがたしか書いてあったと思うんですけれども、最終的な報告もそういう方向になるのではないかなと私は想像します。そうすると、文科省、国としては、今回措置をしている暫定措置云々という話がまさに暫定で、それはやめますという話になりますね、一つは。

 もう一つは、中教審の答申にすべて拘束されるわけではないということは、国、文科省が考え方を持っているということですから、その持っている考え方に対して、中教審の答申を具体的にどこを採用し、どこを外すかという答えになるわけです。そして、文科省が持っている考え方は何かといったら、今回行った暫定措置そのものが文科省の持っている考え方だということになります。

 どちらをとってみても、これから先、文科省としては非常に困るのではないかと私は思います。そして、大臣自身のお立場も非常に困る。首相がある意味で絶対的な権限を持って、実行すると言ったことがすべてそのとおりになるのであれば、それはそれで私は一つのやり方だと思いますけれども、大臣御自身は、義務教育のこの問題に関して、国としてしっかり責任を持つ、堅持していきたいと再三言われております。

 そうしますと、こういったことをぼやかしていって果たしてどうなるのか。私は、最後は、現場の小中学校の生徒そして先生、基礎自治体である市町村、そういったところに最終的にはしわ寄せが行ってしまうんだと思いますが、こういったことをぼやかして、既成事実の積み重ねで今事を進めていいのかどうか、その考え方をお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 決してぼやかしているわけではございませんし、私の考えあるいは文部科学省の考えがそのまま通るわけではありませんし、また通っていいというものでもない、こう思っているわけでございます。

 昨年来、財政論だけで、要するに銭金の問題だけで義務教育を決めてもらっては困るということを再三再四主張いたしまして、中央教育審議会でそもそも論から議論してほしい、その上で費用のあり方、負担のあり方についても結論を出してほしい、こういうふうなことを、これは政府・与党の合意でも決まっているわけでございますから、今、中教審の方で議論をまさに始めていただいているわけでございますから、私の方から先に結論を先取りするようなことは、これは差し控えるべきだ、こう思うわけでございます。

 私はやはり、中教審の方で出していただく結論というのは、これはもちろん尊重すべきでございますし、それをもとにして私どももこの義務教育について政府内において、要するに文部科学省の立場から主張していきたい、こう思っております。

 要するに、憲法二十六条にありますような義務教育の国の責任、そしてその中の根幹は堅持する、維持するというふうになっているわけですから、どこが堅持することになるのか。先ほど言いましたように、今ですらもまだ全体の三割しか国は負担していないわけですから、一体どこまで持てば責任を果たすということになるのか、こういったことも含めて、これから秋にかけて、そして最終的には私は再来年度の予算編成のころまでかかると思いますけれども、結論が出されるものだ、こう思っていまして、私は私で自分の主張をやっていきたい、こう思っております。

須藤委員 言葉としては大変頼もしい限りなんですが、今大臣が言われたことを最終的に貫き通すといいますか、意味することは、最後には、それは腹をくくって総理大臣と対決をするという場面も出てくるのではないかと私は思います。

 ただ、大臣をお引き受けして、そして今回の三位一体改革の中で義務教に係る費用というものを交付金化、一般財源化するということを認めて、今行っているわけですから、途中で、言葉が悪いですけれども、謀反を起こすとか、そういうことにはなりにくい。

 こういった委員会の場で一生懸命答弁されるその真摯な姿は私も大変すばらしいと思いますけれども、ただ、この問題は、やってみてだめだったから今度こうしようと、悪いことを正すのはいいんですけれども、余りにも安直過ぎるというか、その時々によって変えてしまう、そういった傾向があり過ぎやしないかと思います。

 従来、別に文科省に限らずに、国で行っていた行政のさまざまなものが、この地方分権という大きな流れの中で、枠組みだけを定めて地方に移せば事足れりとするような状況が各省庁で見えております。これまでやってきたことに対する責任と反省というものが私はどこに行ってしまったのかということをずっと疑問に思っております。

 今は、文科に係る問題でこの義務教育費の国庫負担の問題がその俎上に上っております。中教審にげたを預けてしまったり、あるいは首相が言われることに対してもし腹の中に異議があるのでしたら、その場で堂々と私は述べていただきたいと思います。

 これまで文科行政の行われてきた中身といいますか、立場と、そして、ある意味で国民が選んだ首相というものの考え方がずれたときに、各省庁の大臣がどういう腹のくくり方をするか、それはもう政治家として自分たちがおのずと結論を出すことだと私は思っておりますけれども、今回の問題は特に、私は、その意味では余りにも事を早く進め過ぎているのではないかというふうに思います。

 先ほど大臣も答えられましたように、各市町村の八割あるいは九割近くは堅持してほしいと言っている、その声はどこへ行ってしまったのか。

 知事会が移していいと言ってきたからそれでよしとするということで今進んでいるわけですけれども、そうすると、これから地方の声を聞くといっても、それはもう既に流れてしまっている、動いてしまっていることに対する逆に説得しかないように私は思います。その声をもし反映させるとして、堅持してほしいということになった場合、当然、今回は暫定措置ですから、それを全部ゼロに戻すということになりますよね。この点に関してはいかがでしょうか。

中山国務大臣 今回、暫定ということになりまして、そして、中教審の結論を待ってということになったというのは、これは、私、本当に粘り強くといいますか、もともと性格的には淡泊なんですけれども、本当に粘り強く頑張ったと思っております。その結果、中教審ということになりましたし、暫定という言葉が入ったというのは、やはりこの問題が非常に大事な問題、重要な問題だからもっと時間をかけてやろうという、私は、総理の決断でもございましたし、いろいろな閣内の各大臣の考えでもあった、こう思っているわけでございます。

 そういう意味で、私は、ことしは非常に大事な年だ、義務教育に関して非常に大事な年だな、こういう思いでおるわけでございまして、暫定になったということは、そういう意味で、非常に慎重にやっているんだということは御理解いただきたいと思います。

須藤委員 地方分権をどんどん進めるということで、各省庁の持っているいわゆる行政権限といいますか、これをすべて地方に移す、当然、その基準として、国が行うべきものと市町村の行うべきものの線引きがされた上で、すべて今回移すということにはなっておりません。また、一気にできるものでもないと思います。

 ただ、その流れに対して、今大臣が言われたように、これで一生懸命、言葉が悪いかもしれませんが、抵抗をして守るべきものを守ろうとした結果が暫定だということであれば、それはそれとして大臣が一生懸命やっておられるということになろうと思います。

 ただ、それを中教審に、形だけとは言いませんけれども、投げてしまって、そこまで思っているのであれば、文科省としてはこうだという、やはり姿勢、方向性を私は出すべきだと思います。そして、その方向性が正しいのか、支持されることなのか、あるいは間違っていることなのかということを中教審に問うてみたらどうかと思うんですね。今回はそこがなくて、ただただ、私たち野党からすると、時間稼ぎといいますか、これを移すための隠れみのとして中教審の答えを待っているんだというふうにしか聞こえない部分があります。

 本当に実行したいと思うのであれば、暫定ということはやはりしないで、おいておいて、中教審の答申を待ってからということでも遅くはない。先ほど言いましたように、すべてが今回交付金化あるいは一般財源化されているという予算状況ではありませんので、文科省としてはもっともっと頑張ってよかったのではないかというふうに私は思っています。

 そうしますと、最終的にこの費用負担というものをどこが持つかということ、これから当然議論されるわけですけれども、先ほど大臣が言われました三割を地方にすべて渡してしまう、そうすると、当然地方が主体となってその費用を使うわけですね。その財源がしっかり確保されるかどうかということの担保はありません。

 過去に、交付金化で使われなくなってしまってもとに戻したという経緯もありますし、地方がどんどん能力を伸ばして、そういったものの責任と自覚を持って使うことはもちろんいいんですが、やはり国を支える人材育成という意味では、私は制度的な担保というものをぜひ考えるべきだ。私たち民主党は、一括交付金をして、そして財源を確保する、そういった法律をつくるべきだということを主張しております。

 時間が参りました。この点に関して大臣はどう考えているか、最後にお聞きをしたいと思います。

中山国務大臣 世界の趨勢のことについては申し上げましたが、戦後、昭和二十五年から二十八年にかけて、一たん一般財源化されて、地方間で非常に格差が出てきて、それこそもう一回知事会側の要望等があって今の制度に戻ったという経緯もあるわけでございますし、既に一般財源化された旅費だとか教材費だとか図書購入費、減ってきたり、あるいは地方間で本当に、特に図書購入費なんかはもう三・何倍の差ができている。これは本当にそういう意味で、教育の機会均等という憲法の趣旨に合うんだろうかとか、そんな疑問さえ感ずるわけでございます。

 私どもは、やはりできるだけ地方に渡していきたい、地方分権という趣旨もわかりますが、地方にできることは地方にといいながら、できなくなることもある。これから財政力の差も出てまいりますし、また、交付税が削減されるというようなことになりますと、本当に地方から悲鳴が上がってくることだって考えられるんじゃないか、こう思うわけでございまして、そういったことも考えまして、国としての責任というのはしっかり果たしていくということを中心に据えて、私どもは頑張っていきたい、このように考えております。

須藤委員 以上で終わります。

斉藤委員長 高井美穂さん。

 どうぞ、着席のままで結構でございます。

高井委員 民主党の高井美穂と申します。

 ちょうど妊娠六カ月になりまして、理事の皆さん方に御協力いただきまして、座ったままで質問を許可していただきました。ありがとうございます。

 牧議員それから須藤議員に引き続きまして、私も同じような問題意識で質問を続けたいと思います。

 ただ、質問に入る前に、冒頭一言、昨日の国会史上初の残念な事件について少し申し上げたいと思っています。

 自民党現職議員の強制わいせつでの現行犯逮捕という国会史上初の事件がきのう起こり、マスコミでは大変な騒動でございました。文部科学委員会というところは、当然、人権の問題、教育の問題、道徳の問題も扱うところでございますし、政治がその最低の道徳の見本のようになってはならないと大変残念な思いでおります。現在も、自民党の旧橋本派の一億円の献金隠しの事件の公判が東京地裁の方で続いている中で、こうしたまた別件の、国会史上初のゆゆしき事件が起こるというのは、大変困ったことといいますか、本当に問題であると思いますが、大臣から、もしコメントがあれば、一言お願い申し上げます。

中山国務大臣 おめでとうございます。知りませんで、どうか無事な御出産を心から祈っております。

 それから、中西議員の逮捕のことについてでございますが、私も愕然といたしました。これはもう政治家以前の人間としての問題だろう、まさに、もし報道どおりであるとすれば、破廉恥行為でございまして、許されざるべき行為である、このように考えております。

高井委員 ありがとうございます。

 最近、子供をねらう、女性をねらうとかいう事件もふえております。本当に人権の観点からも大変な問題ですので、どうぞ文部科学大臣としても、誠実な対処の方を今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

 では、法案についての審議に早速入らせていただきます。

 昨年十一月の政府・与党合意の中身について、少し細かく私はお聞きしたいとは思っているんですが、その前に、冒頭、義務教育の充実と地方分権にとって今回の法案が文科省にとってどんな前向きな意味がある法案なのか、大臣から一言お願いしたいと思います。

中山国務大臣 大変厳しい御質問だと思いますけれども、先ほど来議論しておりますように、三位一体の改革の中で、この義務教育費国庫負担制度をどうするか、地方と中央のあり方が問われたわけでございますが、最終的には、地方案を生かす形で、八千五百億のうちの四千二百五十億が暫定的に削減されたということでございます。

 文部科学省も、これまでも国は最終的な責任を負うけれども、しかし、実際の教育というのは、教育現場にできるだけその裁量権を任そうということで、総額裁量制というようなこともやってきているわけでございます。

 地方分権ということも言われるわけでございますが、教育についても、できるだけ子供たちに近いところ、住民のニーズに合わせた形でやっていただこうというのは文部科学省の方針でもございまして、そういった過程の中で、この費用負担の問題が俎上に上ったということ、これが出発点になりまして、義務教育全般のあり方について議論がなされるということは、私は、プラスに考えております。

高井委員 十一月の政府・与党合意、もう繰り返しで恐縮なんですけれども、改めて申し上げたいと思います。「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。 こうした問題については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。」とされておりますよね。私には、本当に極めてわかりにくく、その後、「中央教育審議会の結論が出るまでの平成十七年度予算については、暫定措置を講ずる。」というふうに発表されておりますけれども、とても理解しがたいので、逐一お聞きしたいと思います。

 義務教育の根幹とは何でしょうか。

中山国務大臣 わかりにくい合意文書でもありますし、わかりやすいというか文部科学省の立場からいいますと、義務教育制度の根幹は維持するわけですから、まずそれは一番で言っていただいていますし、「国の責任を引き続き堅持する。」これも言葉はすばらしい、こう思うわけでございます。その一方で、「費用負担についての地方案を活かす方策」あるいは「教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。」まさにこれは本当にいいことだなと私どもは歓迎している文章でございまして、ことしの秋までに中央教育審議会で結論を得るということになっていますから、そういう意味では、今、精力的に議論をいただいているところでございます。

 そこで、まず、その根幹ということでございますが、この根幹というのは、憲法二十六条に基づきまして、一つは、教育の機会均等ということですね。日本全国どこに生まれても、どんな山間僻地、離島に生まれても、ひとしく教育を受ける機会を与えられるということでございます。二つ目が、教育水準の維持向上ということでございます。これは、日本国民として、日本の国家の形成者といいますか構成員として、しかるべき教育水準を維持するという意味だろうと思います。三つ目が無償制ということでございます。この三つが根幹であろうと思っております。それでいいですね。

高井委員 それでは、国庫負担制度が国の責任を引き続き堅持するということでは必ずしもないわけですね。この三つがきちんと保障されれば、国庫負担制度でなくてもいいというお考えなんでしょうか。

中山国務大臣 国庫負担制度というのは国が負担するということですから、国が負担するという意味では、国が金を出すということだろうと思いますね。

高井委員 では、この三つの、機会均等と水準の維持向上と無償制ということがきちんと維持されれば、逆に言いますと、国庫負担、国が保障する形でやれば、地域がきちんとお金を出すということであれば守れるということですね。

 細かい議論をもう少し先に進めたいと思うんですが、例えば、重視するという費用負担についての地方案というのは、一般財源化というふうに理解してよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 地方の方は、一般財源化というふうに考えられていると思いますね。

高井委員 では、この地方案を生かす方策とは何でしょうか。骨格をこれから先々取り入れるということでしょうか。

中山国務大臣 費用負担についての地方案を生かすというのは、地方が言っていますように、八千五百億削ってくれ、自分たちに任せてくれということじゃないかと思いますね。

高井委員 大臣のおっしゃる意味での国庫負担制度を堅持しながら一般財源化を生かす方策を取り入れるというのは、矛盾であるのではないかと思います。

 つまり、三位一体改革というか、今回、これから先々考える上でポイントになるのは、やはり実質的に地方分権ができていくかどうか、つまり財源が全国で確保できていくかどうか、地方に裁量が与えられるかどうかというのがポイントであると、先ほど、総理大臣も、中山大臣も同じような趣旨で御答弁いただいていたと思うんですが、どうしても私には、国庫負担を堅持しながら一般財源化を生かす方策というのが理解できないんです。それはどういうふうなことなんでしょうか。

中山国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、地方の方としては、自分たちの方で持つよ、一般財源化してくれ、こういうことだろうと思うんです。これが地方案だと思うんです。私どもとしては、この地方案を生かす方策というのは、地方の権限と責任を拡大して、そして住民に必要な行政サービスを地方がみずからの責任で選択できる幅を拡大していく、そのための具体的ないろいろな案だろう、このように考えております。

高井委員 国庫負担制度というのは、国が使途と裁量を決めるということですよね。一般財源化というのは、地方に任せて、地方が使い方と裁量を決めていくということなので、言葉じりはわかるんですが、とてもじゃないけれども両立するような話ではないというふうに逆に思うのです。

 今回、とりあえず暫定措置ということで行われるわけですけれども、では、中教審の結果次第でもとに戻すということも、国庫負担、またちゃんとやるということもあり得るというふうに考えてよろしいんですね。

中山国務大臣 この点については、先ほどから何回か答弁しておりますが、余り結論を私が言うのは差し控えたいと思っております。

高井委員 では、中教審の審議の中で、仮に国庫負担制度よりもきちんと財源さえ保障されれば地域に全部任す、税源移譲するという話になったとすればですが、今後、文部科学省としてもそのときはそのときで考えるということで、国のナショナルミニマムをどう保障するか、どういうふうに先ほど大臣がおっしゃった三つの根幹を維持するかということを、これから考えていくということになるんでしょうか。

中山国務大臣 中央教育審議会の結論がどうなるかわかりませんが、もし国の責任はない、全部一般財源化していいよというふうなことになった場合、これもよく申し上げているんですけれども、地域間の経済格差がございまして、試算によりますと四十の道府県で教育費の財源不足に陥るとか、あるいは今後地方交付税自体が三位一体の改革によって総額が削減される、それは教育費にも当然及ぶだろうと思うわけでございまして、結果として義務教育水準そのものに著しい地域格差が生ずる結果になりかねないと思うわけでございます。

 そうなった場合には、憲法とかあるいは教育基本法の要請に基づいて教育環境というものを実現できなくなりますから、国が国民に対してその責任を果たしているとは言えない状態になるんじゃないかな、こう考えております。

高井委員 大臣の御答弁からすると、それはあり得ないだろう、文科省の考えとしては、今後とも絶対に一般財源化はしてはいけないという方向でいくというお話なんですね。ということは、中教審の議論というのも、ある意味で結論がそういうふうに方向性として出ているように私はお聞きするんです。というのは、先ほども、須藤議員のお話にもありましたとおり、法的根拠というか、必ずしも一〇〇%中教審の審議に従わなければならないというようなことではないでしょうし、中教審のメンバーも文部科学省の皆さんがお選びになるわけですから、ある意味で結論は方向性として先に決まっているのかなという感じがいたしました。

 去年も審議させていただいたんですけれども、昨年度、十五年度には、共済費長期給付、それから公務員災害補償基金負担金、それから十六年度には退職手当、児童手当、そして本年度、本体の教職員給与部分というふうに、ずっと毎年毎年一般財源化されて地方に任せるという流れが、この間の法案なり審議の流れではあったのではないかと思っています。皆さん方賛成されたように、私たちは反対をいたしましたが、この間の文科省が出してきた法案というのは、少しずつ少しずつ削って一般財源化の流れができていったのではないかと思います。

 これを考えるにつけ、この流れが来年度も続いていくという可能性が私は否めないのではないかと思います。だからこそ、仮にそうなった場合、憲法二十六条が求める教育の機会均等の保障をどうやったら果たせるのか、今から真摯に検討すべきではないかと思います。

 文部科学省としては現行の国庫負担制度を維持するという一点張りでいくと、一般財源化の流れが本当に変わるのか私には非常に疑問で、昨年度も審議させていただいたし臨時国会でも審議をいたしましたが、もっともっと具体的に中身の方のお話をやっていかないと、これからこの流れはとまらないのではないかと思います。この間の一般財源化については大臣もお認めになるところだろうと思いますし、来年も一〇〇%ないとは言い切れないと思いますので、国のナショナルミニマムをどう守るかという具体的な議論にぜひ踏み込んでいただきたいというふうに思います。

中山国務大臣 これまでいろいろと一般財源化されてきているわけでございますが、これまでの改革というのは、国と地方の役割分担を踏まえて、負担対象経費を国として真に負担すべきものに限定しながら、そして総額裁量制を導入したりして、制度の根幹は維持しながらできるだけ地方の自由度の拡大を図ってきた、このように考えておるわけでございます。

 改革の趣旨と国庫負担制度の必要性等については地方側に説明して、主張すべきことはすべて主張してきたわけでございます。今後、義務教育の根幹にかかわる、いわゆるまさに教職員の給与の二分の一、これは根幹だろう、こう思っていまして、そこのところは堅持していきたいな、このように考えておるところでございます。

高井委員 昨年は河村文部科学大臣でしたけれども、真に負担すべきものに限定、限定と、毎年聞いてきたような気がします。そして、本年度はついに教職員の給与に暫定措置として触れられたと。では、真に負担すべきものが何なんだということがだんだん縮小しているわけですので、非常にこれは矛盾というか何というか、何でこの法案を文部科学省が今回も進めていかれるのか、本当に双方、総理のおっしゃることと大臣のおっしゃることとが、私は、この間のお話を聞いていても、矛盾するのではないかという印象が否めません。

 それで、話は少し移りますが、昨年八月の知事会の三兆円の国庫負担補助金の改革案を決めたときの議事録を私は読んでみました。夜中十二時まで知事の皆さんたちが教育に対する熱い議論を、激論を交わした随分長い議事録なんですけれども、私は大変感銘を受けました。新聞等、それからまとめたもので読むのと違って、すべての知事さんが本当に教育に情熱を持ち、本当に気持ちを込め、いろいろな答弁をなされていた、それを読んで改めて感銘を受けたんですが、私がここで問題にしたいのは、なぜ今日地方が義務教育の国庫負担制度を廃止する、国庫負担の中学校分を廃止するように求めているのかということであります。

 その議事録の中のある知事さんの発言の中に、余りにも国がいろいろな基準をつくり、お金も権限も握っているという形で、全国一律の教育をずっとやってきた、これがやり損なったときに、例えば全国全部だめになっていくという大変な危機状態になっているのではないかということだと思うという発言もあったり、またその中に、なぜこのことが問題になっているかといえば、多分今の教育制度にみんなが何がしかの疑問を感じているのではないかという発言もありました。

 私も、こういう問題意識から一つお伺いしたいと思うんですが、教育は自治事務であるということが地方分権一括法で認められましたし、現在の多様なニーズにこたえた多様な教育を行うという観点からも、やはり権限、お金はできるだけ現場に近いところに移すべきではないかというふうに感じています。そうなったときに文科省が必要ないと言っているのではなくて、よりもっと別の役割が求められるようになると考えています。

 知事会の議論の中でも、全国的なレベルを維持向上させるためのプランニング、それから教育の内容の水準の確保というのは国が責任を持ってやるべきだというふうにおっしゃっている知事さんもございましたし、また、大臣がよくおっしゃる国家戦略というものを示すというのも大事な文科省の役割であると思っています。こうした国と地方の新しい役割分担、文科省の役割についても、中教審の中でやはり議論を進めていただきたいと考えています。

 教育の最低水準を担保できなくなるのではないかとか、懸念の声が多いのも確かなんでしょうけれども、文科省の中で多いのは事実なんでしょうが、やはりどのような制度になろうと文科省の役割の重要性というのは変わらないし、それを担保するのが役目であるというふうに考えています。

 最後に、ある知事さんが、一般財源化をしても、それを補てんする手だてさえちゃんと考えれば、本日お集まりの四十七人の知事さんの情熱と力をもってすれば、教育が何でそんなにおろそかになりましょうかという発言もございまして、私は、その言葉を信じたいと思っています。

 ぜひとも、本当に、文科省無用論も、あるところでは発言が出るような御時世の中で大変だと思いますが、より次の踏み込んだ議論を中教審並びに文科省の中でも進めていただきたいと思っています。お願いします。

中山国務大臣 私は、高井委員の意見、全く賛成でございまして、国は国としての責任がありますし、本当に教育というのは地方が、できるだけ子供といいますか保護者、地域の方々が身近なところでやってもらいたい、こう思うわけでございます。今知事会でのいろいろな発言を聞かせていただきましたが、それを聞きながら、本当に今の教育の現状を見て、文部科学省として、やはり反省すべき点は反省していかなければいかぬなと思っております。

 義務教育の改革の議論を今始めたところでございまして、また、中教審に対しましても、タブーを設けることなく、幅広くいろいろなことを議論してほしい、こういったことをお願いしているわけでございます。

 そういった中で、地方の方が、いわゆる情熱と力さえあれば何でもできる、それはそのとおりだと思うんですけれども、教育に対して情熱のある方もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃる。これは、先ほど、図書購入費についても四倍近い差ができているということもありますし、力についていいましても、地域間の格差、財政力の格差というのはもうはっきりしてきているわけでございまして、そのことが、憲法の要請であります教育の機会均等を脅かすことにもなってしまうのではないかなというおそれもある。これからの三位一体の改革の中で、交付税改革が進めば、ますますそういうことになってしまうのではないか。

 そういった中で、文部科学省としては、少なくとも、先ほど言いました、たった三割でありますけれども、三割の負担をしっかり堅持することによりまして、機会均等ということについても何とか守っていかなければいけないのではないか。先ほど言いましたが、日本人で生まれれば、どんな山間僻地、離島に生まれても、少なくとも義務教育を終える段階では同じスタートラインに立ってスタートさせたい、そういう思いで私は教育改革に取り組んでまいりたい、このように考えております。

高井委員 私も山間僻地に生まれた人間の一人なんですけれども、今までの教育のおかげで本当に機会を与えられ、無償制のおかげでちゃんと学校に通えたという部分では本当に感謝している部分も多いんです。

 ただ、でも今起きている問題というのは、また時代時代によって別でございますので、ぜひとも真摯な御検討の方、よろしくお願いしたいと思っています。

 現場不信先にありきではなくて、やはりどうすれば担保していけるか。例えば、我が党なんかは、教育一括交付金として、教育にしか使えないお金として交付金を地方に渡すということも考えたり、また、財源確保法と申しますか、財源はちゃんと確保する、教育にはちゃんと使うということも検討しているところであります。だから、やはり現場が教育を行っているわけですから、現場を信じて、また一緒に鍛えていく、協力していくということで、ぜひとも今後とも文部科学行政を進めていっていただきたいと思っています。

 続きまして、次の質問に移りたいと思います。

 私は、教育委員会制度の現状と課題について、少し最近調べたことがありまして、この件について少し御質問申し上げます。

 教育に意欲がある首長さんの登場によって、教育委員会と首長部局との関係の問題が近年問われているケースが出てきていると思います。

 例えば、これは昨年度、福岡県の前原市というところなんですが、センター方式で給食センターを実施しようとしていた教育委員会に対して、市長選で自校方式というのを公約して候補者が当選いたしました。そして、市長と教育委員会とが対立して、一時は市の教育委員会の方が県知事に自治紛争処理の調停を申請するという事態にまで発展したというケースがございます。

 首長選において、候補者が教育問題での公約を前面に掲げるというケースは古今ふえてきていると思いますし、抽象的な公約ならともかくとして、マニフェストという形で公約がぶつかってくる、具体化すれば公約がぶつかるというケースになってくれば、これまでの方針とそごが生じるケースも当然出てくると思います。

 教育の中立性確保という理由から、首長から独立した機関である教育委員会ですけれども、一方、選挙で民意を問うた首長さんの公約というのも大変に重いものであると感じますが、こういう首長さんと教育委員会の関係、どっちを重視するかということも非常に難しい問題なんですが、こういうケースが起こった場合、今後、どういうふうに改善していくおつもりがあるのか、御回答いただきたいと思います。

中山国務大臣 地方における教育行政につきましては、教育の中立性、継続性、安定性の確保、さらには、多様な民意の反映を図るために、首長から独立した合議制の執行機関として教育委員会が設けられて、公立学校の設置管理などを直接担当しております。一方、首長は、私立学校や大学に関する事務を担当するほか、教育委員の任命や、教育に関する財政的権限を通じて、間接的に教育委員会の行う教育行政に関与しているところでございます。

 このような制度になっておりますので、教育委員会と首長がそれぞれの役割を果たしながら、調和のとれた教育行政を進めていくことが重要であると考えているわけでございまして、仮に首長の選挙公約と従来の教育施策が異なった場合、先ほど御指摘がありましたが、そういうときには、選挙を通じて示された住民の意向をいかに反映するか、それから教育の安定性、継続性をいかに確保するか、この双方を考慮しながら、教育委員会が首長と連携しながら教育改革を進めていくべきものである、このように考えておるところでございます。

高井委員 私もさまざまな調査や文科省の分科会の方の資料も読みまして、教育委員会制度は、大多数のところがうまくいっている、賛同を得られているところもございます。

 ただ、こういうケースがこれから起きてくる可能性もあるし、指摘の中には、教育委員会が形骸化しているのではないかとか責任の所在があいまいではないかなど、一部の自治体から教育委員会不要論も出てきているというのもある意味で事実でございます。不要までとはいかないでも、教育委員会を置くか置かないかは自治体の選択に任せるという必置規定の見直し論というのも出てきているのは確かでございます。

 例えば、島根県の出雲市長らが提案しているようでございますが、出雲市長というのは元文部省国際局研究協力室長という肩書をお持ちになられた方だというふうに聞きました。全国首長会の提言にも取り入れられているようでございますが、こういう主張に対しては、どのような御見解でしょうか。

中山国務大臣 地方分権を進めていく場合、教育委員会というのは、教育行政の責任ある担い手として地域住民の要請に応じた教育行政を主体的に企画し、実行していくことが期待されておると思うわけでございます。一方、この教育委員会制度につきましては、十分に機能しているのか、首長との連携は十分か、あるいは小規模市町村の教育委員会の体制は十分かなどの御指摘がなされていることも承知しているわけでございます。

 これらを踏まえまして、教育委員会のあり方につきましては、今中央教育審議会に諮問いたしまして、教育改革全般のあり方の一環として検討を進めていただいておるところでございまして、必要な改革方策についてしっかり検討してまいりたいと考えております。

高井委員 例えば埼玉県の志木市が、教育委員会の必置規定を廃止するという特区の申請を平成十五年の十一月に行っています。つまり、地域の実情に応じて教育委員会を廃止して、志木市の場合は、合議制をやめて教育長の権限を強化するということで、教育に対する責任の所在を明確化するとともに、山積みになっている教育課題に迅速に対応するというのが申請の趣旨のようでございますけれども、これに対して文部科学省は、特区としては対応不可というふうに回答した、断り続けていると聞いています。

 私は、むしろ特区こそこういうふうなチャレンジをやってみるに値するのではないか、許可するに値するのではないかと思いますが、文科省がこの特区の申請を却下した理由というのは何でしょうか。

銭谷政府参考人 御説明申し上げます。

 構造改革特区の提案募集におきまして、今お話がございましたように、埼玉県の志木市から、第三次の提案募集から数次にわたりまして、市長制度の廃止など地方自治制度の全般にわたる提案の一環として、教育委員会の廃止、任意設置についても御提案があったところでございます。

 志木市のこの御提案は、教育委員会を廃止して、代替措置として教育審議会を設けるものとしているわけでございますが、これは執行に関する権限を持たない諮問機関でございまして、結果的には、教育行政を独任制の機関で行うという御提案であると承知をいたしております。

 教育におきましては、その中立性の確保は極めて重要でございまして、教育委員会は、教育の中立性、安定性、継続性を確保するとともに、多様な民意を反映するため首長から独立した合議制の執行機関として設けられているものでございます。

 したがいまして、文部科学省といたしましては、志木市の御提案は、教育の中立性を確保しながら多様な民意を反映するとの教育委員会制度の趣旨を確保することが困難ではないか、こういうふうに考えまして、志木市の特区提案については対応することは困難という回答を申し上げているところでございます。

高井委員 教育の中立性が確保されないという見解に対しても、志木市の側としては、教育行政の根幹をつかさどる文科省自身も、政治的背景を持つ大臣が意思決定権限者であることを考えれば論理矛盾ではないかというふうに反論もあります。

 教育の中立性、安定性、継続性と地方には言いますが、国の方では政治的に中立ではない大臣の発言によって教育の現場が大きく左右される、変わっていくというわけでございますから、非常にある意味で論理矛盾、これについても、地方分権ということでいけば、やはりひとつチャレンジとして認めてみるのはいいのではないかと考えます。

 大臣、去年からことしにかけていろいろな、私も報道でしかわかりませんけれども、自虐史観に立った教育だけはしてはいけないとか、自虐的な教科書がいっぱいあるというふうなこともマスコミに対してお語りになられているようでございますが、ことしに入ってもいろいろな、さまざまな発言をおっしゃっておられます。何をもって自虐的とするかどうかはまさに判断の分かれるところで、政治的な争点の一つではないかと思いますし、愛国心という問題も同様の問題であるというふうに考えます。

 こういう発言を聞いて、文科省トップは中立的な人ですねとはみんなはなかなか思わないでしょうし、その文科省が、地方にだけ中立的、安定的、継続性を求めるということを理由に自治体のチャレンジを阻止するというのは少し理解できない。ぜひとも、これからそういう申請があれば、差しさわりのないことは許可するという前向きな方向で取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 いわゆる特区につきましては、教育関係、文部科学省関係で特区申請を認めて実施をしていただいている例はたくさんございます。それはやはり事柄によって判断していくべきものだろうと思っております。

 今回の志木市の件につきましては、教育委員会における教育の中立性の確保という使命に照らしたときに、いわゆる直接選挙によって選ばれました市長のもとでの教育委員会、それから直接に学校を設置管理する立場にある教育委員会というものと、議院内閣制のもとでの文部科学省、それから、国として基準をつくるあるいは指導助言を行う立場にある文部科学省というものを比較した場合に、先生お話しのように、国と地方公共団体における教育行政のあり方を同列に論ずるということは私はできないのではないかというふうに思っております。

 ただ、教育委員会の制度そのものにつきまして、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、私どもとしても、今後、教育委員会制度についてどう考えていったらいいのか。このことについては、中央教育審議会で今御議論をいただいているところでございます。教育委員会の組織や運営の弾力化、あるいは首長と教育委員会の権限分担の弾力化などについて、今検討をいただいているところでございまして、今後、この中央教育審議会において、義務教育のあり方の一環としてさらに検討を続けていただきまして、文部科学省としても、その結果を踏まえて、教育委員会制度についても必要な改革は行っていきたいというふうに思っているところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 大臣も先ほど来から、地方の裁量をふやせる部分については、また教育行政がよくなる部分については進めていきたいというふうに御答弁いただいていますので、ぜひとも、特区なんですから、地域限定で、教育委員会なしで例えばやってみて、教育委員会を活性化させた市町村とどちらが教育を充実させることができるか、いい意味で競争させてみてもいいのではと思います。特区という特別なところですから、そこに意義があるのではないかと思いますが、ぜひともこうしたことも検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 教育に関しても地方分権ということを進めていきたい、こう思っております。

 先ほどから答弁していますように、この教育委員会制度につきましては、ただいま中央教育審議会でそのあり方等について審議していただいておりますので、その結論を待ちたいな、こう思っておりますが、いろいろな特区につきましても、文部科学省としてもできるだけ弾力的にやっていきたいなと思っております。

高井委員 現在は合議制によって責任の所在があいまいだ、首長からの独立により民意が反映されにくいという意見がございますので、基本的な事項について是非を問う今までのやり方だけではなくて、本当にどうすべきかということを新しく考えてみるということがこれから大事になってくるだろうと思います。ぜひとも、地方がチャレンジできるという道を開いて、できるだけ開いていけるように、文科省としても頑張っていただきたいと思います。

 では、次の質問に移ります。

 教育委員会自身の自己評価とか外部評価の現状はどのようになっておりますでしょうか。

銭谷政府参考人 教育委員会がそれ自身、その政策の実施結果について評価をしていくということは大変重要なことだと思っております。

 この政策評価の取り組みは近年徐々に導入が進んできておりまして、平成十五年度間で見てみますと、都道府県、政令指定都市におきましては八〇%、市町村におきましては約二〇%の教育委員会が自己評価を実施しているところでございます。

 また、いわゆる外部評価につきましても、都道府県、政令指定都市におきましては二七%、市町村においては約三%で導入をされているという状況がございます。

高井委員 学校評価のように、努力義務化もしくは義務化するようなお考えはございませんでしょうか。

銭谷政府参考人 今先生お話ございましたように、評価の問題については、学校については自己評価が努力義務として示されているわけでございますけれども、教育委員会につきましては、それぞれの教育委員会がそれぞれの御見識によって政策評価、自己評価、外部評価を徐々に導入しているという状況でございます。ですから、私どもとしては、今後、教育委員会の行う政策評価を、公表のあり方も含めて、さらにそれぞれにおいて御検討いただければなというふうに思っております。

 ただ、先ほど来申し上げておりますように、今、教育委員会制度全般について中教審で御議論もいただいておりますので、その結果も踏まえながら、この評価の問題について私ども必要な改善を促してまいりたいと思っております。

高井委員 ありがとうございます。

 ぜひとも教育委員会についても、開かれたものである、見えやすいようなものであるというふうに前向きに進めていっていただきたい。コミュニティーとか国民全体を巻き込んでいく教育というのが言われていますので、ぜひともできるだけ開かれた教育であるように議論を進めていただきたいと思っています。

 学校教育、学校の人事に関する裁量権の拡大についてはいかがでしょうか。現状なり、改善策があれば少しお伺いをしたいんです。

銭谷政府参考人 教職員の人事に係る学校裁量の拡大についてのお尋ねがございました。

 市町村立の小中学校等のいわゆる県費負担教職員の人事につきましては、まず校長が市町村教育委員会に対して意見具申を行って、さらに市町村教育委員会が都道府県教育委員会に内申を行って、その内申を待って都道府県教育委員会が人事を行うということになっております。これは、あらゆる地域で必要な人材を確保したり、広域的な人事によりましてバランスのとれた配置を行うなどの観点から、最終的な人事権は都道府県の教育委員会にあることとしているものでございます。

 一方で、お話がございましたように、学校の裁量権限を広げていくという観点に立ちまして、平成十三年に、教職員人事に関する校長の意見を市町村教育委員会の内申の際に添付をして、その意見の一層の反映を図る法律改正を行っていただいたところでございます。

 また、各教育委員会におきましては、例えば公募制とかFA制などの取り組みが行われて、例えば公募制ですと、校長がみずからの考えや方針を示して教員を募り、校長と協議が調った場合にはそれを尊重した人事を行うといったようなことが最近行われるようになってきております。

 文部科学省としては、各学校の実情に応じたきめ細かな配慮が行われるよう、こうした人事上の柔軟な取り組みをさらに促進してまいりたいと考えております。

高井委員 ありがとうございます。

 ぜひとも裁量権拡大についてさまざまな取り組みをチャレンジしていただきたいというふうに思っています。

 時間がなくなりましたので、最後に一言だけ。学力低下問題で大変この間大騒ぎになっていますが、不登校や非行という深刻な問題を抱える教育の現場の声が一番伝わりやすいのは、やはりその地域であって、自治体であって、一番現場に近いところであると思います。自治体のアイデアやチャレンジを抑圧するような教育行政であってはならないと思いますので、この義務教育費国庫負担制度をめぐって噴き出してきた教育の分権化という課題に対して、今までも取り組んでおられたと思いますが、さらに一層取り組んでいただきたいというふうにお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 法案審議に先立ちまして、一点確認をさせていただきたいと思います。下村政務官の教科書に関する発言問題でございます。

 下村政務官は、教科書検定基準の近隣諸国条項について、条項ができたことでマルクス・レーニン主義による自虐史観の教育が行われていることを看過できず議連をつくったと述べまして、近隣諸国に配慮した検定のあり方を強く批判したという記事を、私、新聞で読みました。そして、いよいよ教科書採択がことしの七、八月に行われる、きょうは地方の方々がたくさんいるので、歴史教科書がぜひ正常な形で採択されるようにしていただきたいというふうに述べたと報じられておりますが、事実でございますか。

下村大臣政務官 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 先日の日曜日に、これは、そもそもこの大会におきまして、超党派の教育基本法改正促進委員会というのがございまして、そこの委員長代理として、その議連でつくりました教育基本法の改正についての基調講演をするということの中で、今の御指摘のことがございました。

 正確には、おっしゃっていることはそのまま事実ではございませんので、ちょっと正確に申し上げたいというふうに思うんですが、特に申し上げたのは、従軍慰安婦それから強制連行、こういう言葉が歴史教科書の中で少なくなってきたのはよかったと思っているということを申し上げました。

 それは、理由が二つあります。一つは、強制連行という言葉は当時ありませんでしたし、今も外務省初め政府はそういう言い方をしておりません。これは、徴用とか、それから募集とか官あっせん、こういう言い方をしておりまして、それ自体をもちろん否定しているわけじゃありませんが、しかし、そういう言葉が当時使われていなかった。同じように、従軍慰安婦、これも、慰安婦そのものを否定しているわけではなくて、従軍慰安婦という用語が当時使われていたわけではありません。これは、特に近隣諸国条項そのものを批判しているわけではなくて、それができた以降の歴史教科書において、そのような、当時使われていなかった、ある意味では学術用語が教科書の中で使われ、それが減ってきたのはよかった、つまり歴史的なそういう用語の問題として申し上げたのが一点あります。

 それから、そもそも中学二年生の歴史教科書に従軍慰安婦等の言葉が入っているということは教育指導上適切ではないというふうに思っておりまして、私にも中学二年生の子供がいますが、中二の子供に、殊さら親の立場として、慰安婦という言葉を教科書で記述するのは適切ではないというふうに思ったことから申し上げたわけであります。

石井(郁)委員 今私は、強制連行や従軍慰安婦の問題をどう考えるかということをお尋ねしたわけではありませんし、その議論をしようとは思っていません、それはそれとして私も意見を持っておりますけれども。

 問題は、近隣諸国条項、この条項ができたことでの問題、その関連での御発言があったのかどうかということでございますが、御答弁はちょっとそこら辺が明確でありませんでしたから、いかがでございますか。

下村大臣政務官 それは、恐らく一昨日の朝日新聞の社説で書かれたことに対しての御質問だと思いますが、その社説そのものが正しくはございません。

 私が申し上げているのは、近隣諸国条項そのものに対して批判を申し上げているわけじゃなくて、近隣諸国条項ができた以降の、いわゆるそういうふうな強制連行とかそれから従軍慰安婦という、そういう意味では私は自虐史観というふうに申し上げているわけですけれども、そういう記述がふえてきたことは事実でありまして、それが一方で、最近減ってきたということも事実ですから、そのことを申し上げているわけであります。

石井(郁)委員 私、新聞で見ましたのは、これは東京新聞の三月七日でございます。

 それで、きょうはその議論じゃありませんので、確認だけさせていただきたいのでございますけれども、近隣諸国条項は、一九八二年、宮沢内閣の官房長官談話として出されたものでありまして、我が国としては、今後とも、近隣諸国民との相互理解の促進と友好協力に努め、ひいては世界の平和と安定に寄与していくというものでございまして、この背景には、日韓共同コミュニケや日中共同声明において、やはり過去についてのきちんとした反省に立って友好関係を築いていくということがございますね。

 そういう歴史教科書に関するこの宮沢内閣の官房長官談話ということを、政務官は内閣の一員、政府の一員でございますから、やはりきちんと守っていただかなければ困るわけでして、そういう立場に立っておられるのかどうか、そのことを重ねて伺っておきたいと思います。

下村大臣政務官 それについては当然のことでありまして、近隣諸国条項そのものの内容はもっともな内容でございまして、それ自体否定することでは全くございません。

石井(郁)委員 しかし、そのときの発言が、もうひとつ全容が今のことだけではわかりませんし、新聞報道はいろいろありますので、あえて私は伺っているわけです。

 こうした発言が新聞等々で報道されますと、こういうことを実際におっしゃったのかというふうになりますから、私は、こういう発言、条項ができたことで自虐史観の教育が行われているんだ、教科書採択を正しくやってほしいみたいなことを政務官の立場でおっしゃられますと、やはり教科書検定と採択に影響するということがあっては困るわけであります。そういう点で、私は、きちんと、この官房長官談話を政府の一員として踏まえていただきたいということを重ねて申し上げまして、この質問は終わりにしたいと思います。

下村大臣政務官 最初に申し上げましたように、これは、政務官としての発言を申し上げたわけじゃなくて、議連の教育基本法改正促進委員会の委員長代理としての立場で出席をしてそのように申し上げたわけでございます。

 そもそも、政府見解そのものについて、これを否定している立場ではないということは重ねて申し上げたいと思います。

石井(郁)委員 しかし、新聞では下村政務官とはっきり書いてありますから、それだったらちゃんと訂正もしていただかなくてはいけないと思いますし、やはりそういう発言が政府から出てくるということが問題なんです。政府の一員から出てくるということが問題だということを私は申し上げているわけでございます。もう結構でございます。

 さて、法案審議に移らせていただきます。政務官、どうもありがとうございました。

 義務教国庫負担をめぐって本当に大変真剣な議論になっているわけでございますが、これまでも、旅費、教材費、恩給費、共済費、公務災害補償基金、児童手当等々、給与費はもちろんですけれども、国庫負担の対象としてまいりました。ところが、臨調行革以来、公教育からの財政的撤退ということがどんどん進んでおります。そして、今、三位一体改革というところで非常に大きな問題になっているわけでございます。だから、削減に次ぐ削減という形で来まして、もう給与費本体のみとなってしまいました。いずれにせよ、今回の四千二百五十億円の削減というのは教職員の給与費だということでよろしいですか。これは大臣にお願いします。

中山国務大臣 そうでございます。

石井(郁)委員 私は、大変問題だというふうに言わざるを得ません。この三位一体改革が、既に昨年、一昨年と議論になってきておりますから、二〇〇三年度では、教職員の共済費の長期給付、公務災害補償基金負担金が一般財源化されました。その際の文部科学大臣は、国会審議でこのように言っておられたんですね。義務教育の根幹は守る、根幹とは教職員に支払われる給与費ということになる、その根幹である給与についてはしっかり守っていきたいと。

 きょうも、大臣も根幹は守るということまでは言われましたが、どうも給与費という次は明確に出てこなかったように私は思うんですが、国会の質疑の中では、これは二〇〇三年の三月、遠山文部科学大臣の御答弁で、教職員に支払われる給与費、その根幹である給与についてはしっかり守っていきたいというふうに述べていらっしゃいました。しかし、今、もうこの給与費が削減されるということになりますから、この答弁は守られなかった、守られていないということになりますが、いかがですか。

中山国務大臣 この義務教育費国庫負担制度の根幹といいますか、先ほども答弁いたしましたけれども、機会均等、水準の維持向上、無償制、これを担保するのが義務教育費国庫負担制度である、このように考えております。特に教職員給与費の二分の一を国が負担して、そして必要な教職員を確保する、その財源を保障するということで、義務教育の妥当な規模と内容を保障している制度である、このように考えておるところでございまして、何度も申し上げておりますが、義務教育制度の根幹を維持する、国の責任を引き続き堅持するという方針に変わりはございません。

石井(郁)委員 義務教育費の根幹、その根幹は教職員に支払われる給与費だ、これが国会での答弁なんですよ。しかし、大臣は、今、どうもそのようにおっしゃっていない。根幹は守るが、その後はおっしゃっていない。

 重ねて伺いますけれども、二〇〇四年度では、退職手当、児童手当が一般財源化されました。そのときも、河村文部科学大臣でございましたが、給与費、これが根幹で、この根幹をしっかり守っていくことによって基本理念を貫くことができる、こういう御答弁でございました。ところが、どうですか、今回の削減の対象こそ給与費そのものではありませんか。

 そうすると、国会の答弁というのは、国民に対して、国会に対して、うそだったということになりませんか。この点ははっきりしていただかなくてはいけないと思うんですが、明確にしていただきたい。

中山国務大臣 この義務教育費国庫負担制度を堅持する根幹として給与費があると思うわけでございますが、今でも二分の一になっているわけですね。全部を見ているわけではございません。ですから、どれだけ持てば根幹も守ることになるのかというのはまた議論は別だと思いますけれども、私は、やはり国としての責任があるということを前提にしてこの議論はやっていきたいと思っております。

石井(郁)委員 少し申し上げたいんですが、遠山文科大臣に至っては、その議論のところで、広義の給与、狭義の給与論という形も持ち出されました。給与費で本当の根幹ということになりますと、これは在職給与でございます、狭義の給与ということで、いわゆる給料とそれから諸手当になるわけでございます、こういうこともありました。そういう形で、一般財源化を退職手当と児童手当についてはされたんですよね。

 私は、そのときの質疑で、これはもう全面移譲に向けたつなぎでしかないじゃないかということを質問させていただきました。だから、根幹を守ると言うけれども、結局、給与である退職手当に手をつけていったら、これはもう総崩れになっていくんじゃないか、ここはきちっとすべきだ、本当に譲れないところですというふうに質問したことを思い出しますが、今、もう総崩れの間際を迎えている、必死の防戦をしている、そういう状況じゃないんでしょうか。だから、退職手当、児童手当の一般財源化を許したところから、今回に足を踏み出してしまったということになっているんじゃありませんか。この点は、大臣はいかがお考えですか。

中山国務大臣 まず、退職手当等は、給与ではない、根幹ではない、こう思っておるわけでございますし、平成十七年度予算、今御審議いただいているものにつきましては、まさに暫定ということで、十七年度限りの措置ということになっているわけでございまして、昨年来、何とか根幹を維持したいということで頑張ってきておるところでございます。

石井(郁)委員 もうたびたび出ておりますけれども、旅費とか教材費というのは一九八五年に一般財源化されました。教材費に至っては、平成九年には予算措置率が一〇〇%を切りました、今では八六%台で推移している、各県ではばらばらだ。徳島県では三五・六%、富山県で三八・二%、埼玉県でも四五・七%ですね。三割台、四割台がもう並んでいるわけです。だから、一般財源化されますと教育の機会均等というのは著しく困難になるということがもうこの数字にあらわれているというふうに思うんですね。

 中山大臣は、この問題のときにも答えていらっしゃいましたが、まさにこういった数字が示される、一般財源化された場合には地方によっては本当に大変なことになる、こういった数字もあるわけでございまして、それを踏まえまして、どうしてもこの義務教育費国庫負担制度は堅持すべきだという主張をしてまいりました。これからもそういう方向でやってまいりたいというふうに御答弁なさっておりますが、この立場はお変わりないと確認してよろしいですか。

中山国務大臣 変わりはございません。

石井(郁)委員 そう力強くおっしゃっていただくとありがたいんですけれども、しかし、大事なことは、今、義務教育費国庫負担制度を廃止する、しかも、根幹の給与に今足を踏み出しているということなわけでありまして、この相当額を個人住民税フラット税率にして全額税源移譲したと仮定した場合、文科省の試算でも、四十道府県では財源不足になるという結果が出ております。

 だから、改めて、義務教育費の国庫負担制度というものを本当に堅持する、十八年度はもう減額しない、あるいは給与費は永久に措置する、この言明はできますか、していただきたいと思います。

中山国務大臣 そのことにつきましては、まさに今中央教育審議会において議論いただいているところでございますが、私としては、何とか堅持していきたい、こう思っているところでございます。

石井(郁)委員 そういう義務教育費の国庫負担制度というのは、負担法の第一条、法律の目的にきちんとあるわけでございますから、そして、憲法二十六条、教育基本法の掲げる教育無償の原則及び教育機会の均等の原則を実現するという立場からこれは堅持しなければいけないということになると思うんですね。

 しかし、今申し上げましたように、実際に、教材費、旅費が一般財源化されて基準以下になっている、自治体によってばらばらだ、予算措置状況三割台、四割台ということになっているわけで、本当にこれが大変な事態だ、義務教育の水準の維持ということがもう崩れつつあるという点の認識を、これは文科省自身が調査で明らかにしているわけですね。

 だから、そういう実態が明らかになっている以上、やはり教材費や旅費を一般財源化から国庫負担の対象に戻す、これが本当に義務教育費国庫負担制度の原則にのっとった措置ではないかというふうに思うんですが、それはいかがでございますか。

中山国務大臣 個人的な気持ちとしてはそうしたい。世界的にも、まさに義務教育費国庫負担、国が全額を持つような方向に行っているわけですから、そのときになぜ日本だけが逆行していっていいのか、そういう思いがございまして、昨年来頑張ってきたところでございます。

 御指摘ありましたように、教材費だとかあるいは図書購入費が減ってきている、あるいは地域によって大きなばらつきが出てきている、このことは教育の機会均等という国の責任を果たすことになるんだろうか、そういう思いを持っていることは御理解いただきたいと思います。

石井(郁)委員 お気持ちとしては、大臣もそういうお気持ちだということですけれども、現実、実際の問題として、文科省を挙げてそういうことで本当にやれるのか、やっていらっしゃるのかということになると、甚だ心もとないということがあるんですね。

 私は、今、教育の機会均等を侵すような状況ということがもう明確になりつつある、これはもう放置できない状況だと。だから、幾ら言葉の上で教育の機会均等を守ってまいりますとおっしゃっても、現実はもうそれが保障されていないという状況を本当にどう取り組んでいかれるのかという問題なんですね。

 私は、これまでに一般財源化した部分についても、本当に国庫負担の対象に戻すということをやはりもっと明確に言明していただきたいというふうに思いますが、その辺はいかがですか。

中山国務大臣 今個人的な思いは申し上げましたけれども、これから中央教育審議会におきまして、国と地方が負担している総額約十兆円の義務教育費全体を視野に入れて議論していただくわけです。

 まず、文部科学省といたしましては、義務教育費の保障の歴史的な経緯とか、あるいは義務教育に係る諸外国の財源保障制度、さらに義務教育費の将来推計など、さまざまなデータ等を提供しながら、一方では、国民的な議論を喚起しつつ、国民の声を適切に反映させることができますように、中央教育審議会の議論に資する、そういった取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私は、旅費、教材費の問題もありましたけれども、先ほどからも出ていますけれども、やはり学校図書整備費の問題というのも本当に深刻なんですね。これも一応言われておりますけれども、改めて、学校図書整備費の予算措置の状況、これはぜひ文科省、図書購入費というのは非常にばらばらになっていますけれども、どんな状況なのか、ちょっとお示しいただきたいと思います。

中山国務大臣 私も、現場の学校を視察するたびに図書館に参りまして図書の整備状況を見るんですけれども、全体的に本当に少なくなっているなとか、古いのが多いなとか、そういうことを感じておったんです。実際に調べてみますと、学校図書館の図書購入費につきましては、平成十四年度の額で見まして、全国ベースでは百三十億円以上措置されているわけでございますが、これは都道府県別に相当の格差が見られるわけでございまして、小学校一人当たりの平均では四十二万一千円、高いところでは七十万七千円、低いところでは十八万六千円ということで、三・八倍に格差が広がっているのが現状でございます。

石井(郁)委員 だから、本当に一般財源化しても交付税で措置するから大丈夫です、もう何年来こういうふうにずっと言われてきましたよ。しかし、現実はこういう格差、ばらばら状態、これでどうして義務教育の水準の向上、維持していると言えるんでしょうか。私は、これは本当に文科省としてどう考えるのかと思うんですね。

 しかも、これからますます、三位一体改革というのは交付税の問題もありますから、交付税で措置するというけれども、一方で交付税は大幅に減らすということなんでしょう。ますます交付税措置の保障はないじゃありませんか。だから、もう給与費本体まで手がつけられ出した。その広義、狭義の分というのをわざわざ分けられて、そして、もう細ってしまった狭義の分さえもう削られようとしている。その周辺の部分というのはどんどん削減されていっている。しかも、交付税措置の見通しは甘くはない。どうするんですか。私は、文科省、大臣がおっしゃっておられることの担保が本当にないと思うんですよ。

 その点では、この事態というのを本当にどう受けとめていらっしゃるのか、重ねて伺わなくてはいけないと思うんです。

中山国務大臣 既に一般財源化されたものについて全体として減ってきている、あるいは、申し上げましたように、図書購入費についてはもう四倍近い格差が出てきているということで、憲法の保障します教育の機会均等ということについても、そういう観点からも問題があるのではないか、こう思うわけでございます。

 だからこそ、義務教育の根幹については何とか守るべきだということを昨年来から主張してきているということでございます。

石井(郁)委員 その義務教育の根幹が給与費であるということは再度確認させていただきたいと思いますし、それは本当に守っていただきたいというふうに思うんですね。一般財源化されますと、今申し上げた教材費、図書整備費など、本当に各自治体でばらばらで、基準以下ということが続出しているわけでございまして、本当に今重大な事態に立ち入っているということです。

 そうしますと、今回の法案で出ているもう一つの問題、就学援助費の問題なんですね。これは、準要保護部分は国から削減するという問題。それから公立高校の産業教育の実験実習設備の問題、それから定時制、通信制高校の設備に要する経費の問題、スポーツ指導者の養成等に要する経費についての補助、これも廃止をして地方移譲するということにこの法案ではなっているわけでございますけれども、従来どおりの措置が保障されるのかどうかというのは本当に極めて不安であります。その保障、とりわけ就学援助費の準要保護部分、これについての保障はあるのかどうか、それはいかがでございましょうか。

銭谷政府参考人 今回の法律改正におきまして、これまで国が補助対象としておりました就学援助のうち準要保護者に対する部分については、これを廃止するという内容が入っているわけでございます。

 その意味としては、これは三位一体の改革におきまして、就学援助は準要保護者と要保護者が対象になるわけでございますけれども、準要保護者は要保護者よりも困窮度が低く、その認定について各市町村の判断によるものであることから、準要保護者に対する就学援助については、今回、国庫補助を廃止して税源移譲するということにしたものでございます。

 財源につきましては、準要保護者に係る部分につきましては、所得譲与税として税源移譲されるとともに、所要の事業費が地方財政計画に計上されて、地方交付税を算定する際の基準財政需要額に算入されることとなっております。

 私ども、今後とも、市町村におきまして適切に就学援助事業が実施されるように、実態の把握等に努めてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 ちょっと時間が途中になりましたので、本格的なこの問題での質問は次回に回したいと思います。

 そのためにも、最後に一点確認をさせていただきたいんですけれども、これまで経済的理由によって就学困難な児童生徒に学用品など就学援助費が出されていたということで、私、大阪ですけれども、本当にこの援助費で助かったという声をたくさん聞いております。これも、憲法二十六条と教育基本法の掲げる義務教育無償の原則、教育機会均等の原則を実現するためのものであるということを確認させていただきたいのですが、これは文科大臣、いかがでしょう。

銭谷政府参考人 就学援助につきましては、憲法第二十六条それから教育基本法第三条に基づきまして、広く、経済的な理由によって就学困難な者に対して奨学の方法を講ずることの一環として実施をしているものでございます。

 ただ、いわゆる義務教育の学校における就学援助につきましては、具体的には学校教育法に基づきまして市町村が就学援助を行うということに基本的にはなっておりますので、今後とも、市町村において適切な就学援助を行っていただけるように、私どもとしても指導してまいりたいというふうに考えているところでございます。

石井(郁)委員 教育が、本当に現場主義という大臣がおっしゃるような意味では、それぞれの現場が責任を持ってやるとか、市町村がきちんと責任を持ってやるというのはそのとおりですけれども、問題は、その財政的な支援をどこが責任を持ってやるのか、国がそこを責任を持たなければどうするのか、こういう問題なわけでございまして、この法案にかかわるたくさんの問題点はございますけれども、また次回にすることにして、以上で終わらせていただきます。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 まず下村政務官にお尋ねしようと思ったんですが、先ほど御答弁いただきました。ただ、一言申し上げておきたいんですが、政務官という立場でないという発言でございましたけれども、やはりここを切り離すということは難しいと思うんですね。やはり、下村博文という一衆議院議員と政務官というのはどうしても、どこで切り離すかということは難しいわけで、常に政務官という肩書きがついて回るということで御発言をこれからもしていただきたいと思うんですね。やはり国の方針としては、村山談話、あるいは従軍慰安婦の問題については河野官房長官の談話もございますので、そういった国の方針をしっかりと見きわめた上でこれから発言をしていただきたい、このことをまず申し上げておきます。質問はもういたしませんので、結構でございます。

 先ほど総理が出席されまして、今回の法案についての質疑もございました。総理が、地方分権を進める、これはもう当然のことだと私も思っておりますし、その意味では、地方の声を尊重したい、いわゆる地方の自主性あるいは裁量の拡大をこれからもさせていきたい、これも当然のことだと思います。そのために地方自治事務、これは整理して、そして地方の方に権限や責任を与えてきたわけですね。

 その次には、今度は税財源の移譲でございます。これがなければ、やはり地方の自主性あるいは裁量の拡大というのはなかなか難しいわけでございます。そこから地方六団体は国庫補助負担金の改革を求めておるわけでございます。いわゆるひもつきの補助金じゃなくて、自由に使えるいわゆる交付金あるいは一般財源化という形で求めておる、これは地方の意見としては当然のことだと思うんですね。しかし、それはあくまでも、その税財源が本当に地方にとって自主権、裁量権の拡大になるのかどうか。でなければ、私は、幾ら中央から金を渡してもらっても意味がないと思うんですね。

 そういった意味で、今回の義務教育費国庫負担のいわゆる廃止の問題になりますと、本来、地方にとって本当に使い勝手のいい補助金をカットして回してほしいという、そちらの方はなかなか進まなくて、いわゆる裁量権の拡大にはほとんどつながることのない、あるいは義務的経費であるこの国庫補助負担金を、今回一年限り、暫定とはいえ四千二百五十億円減額して、そしてまた税源移譲予定特例交付金という形で措置するということになっておりますが、この措置によって、総理の言う地方の裁量の拡大、地方の求める地方の裁量の拡大に本当になるのかどうか。なるとお思いなのかどうか、まず文科大臣にお尋ねしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 昨年の三位一体の改革の中で私が主張いたしましたのは、地方分権の中で、できるだけ地方の裁量によって地方に応じた予算措置ができるようにということで、税源移譲に伴う補助金カットであってほしいなということは再三主張したわけでございます。

 そういう意味で、この義務教育国庫負担制度というのは学校の先生方の給料に充てる分でございますから、これは余り裁量性がないんじゃないか、使い勝手がいい悪いじゃなくて、まさにそれに充てられるわけですから、どうかなということを思いましたし、また、文部科学省としても、もう既に御承知のように、総額裁量制ということで、非常に地方にとって使い勝手のいい義務教育の負担の話をしているわけでございますから、そういう点からも、私、いろいろと議論はしたわけでございます。

 今回、四千二百五十億円という金額を仮積みといいますか暫定として置いたということは、地方としては、そういう金をとにかく自分たちに使わせてくれという議論でございましたし、私ども文部科学省関係の方では、ちょっと待ってくれ、教育というのは、財政論といいますか銭金だけの問題ではないんじゃないか。特に、知事側との関係では負担の話ばかりだったんですけれども、そもそも義務教育全般にわたって議論させてほしいというふうなことからこういうような数字が出まして、それが暫定ということになったわけでございまして、そういう意味では、地方分権に資するのかということについてはまだ議論半ばである、このように私は認識しております。

横光委員 地方分権に資するかどうかはこれからだということですが、事文部科学関係、教育関係では、先ほど地方の裁量拡大にはそんなに資するものではないというような趣旨のお話もございました。

 このように、総理が言っていることは、最初総理に就任のときの所信表明であるあのいわゆる米百俵の精神から、事この教育分野に関する総理の対応は、私は、あの米百俵の精神が、どんどん米が減っているんじゃないか。先ほど牧議員が米一俵と言い間違えたようですが、これは言い間違えたのではなくて、私は、今米百俵が、総理が教育分野に対しては米一俵の精神になってしまったのではないかという気がして、先ほど聞いていてつくづくそのように思ったわけでございます。

 このことはもう大臣にもお聞きいたしませんが、とりわけ今回の法案の、義務教育費国庫負担金から四千二百五十億円減額することにより一般財源化となれば、その使途については限定されませんよね。となりますと、財政事情の厳しい都道府県によっては、この全額を教職員給与に充てることもなく他の経費に回すことも想定されるわけですね。この点、重ねてお聞きいたしますが、そのようなことはあり得ないんでしょうか。

中山国務大臣 その点につきましては、各都道府県におきまして今予算案が作成されているわけでございますが、文部科学省の方からきちっと守られているんでしょうねという調査はやったところでございますけれども、そういう方向で予算措置されているようでございます。

横光委員 そうはいっても非常に心配なわけですが、その点、麻生総務大臣の先般の予算委員会の答弁では、いわゆる義務教育の教職員の配置というのは標準法がございますから、標準法というようなきちんとした基本のところだけ定めておけば、御懸念のようなところは余り起こる可能性はないのではないか、このように答弁をされております。これが守られればそのとおりだと私も思っております。

 今回は一年限りということで、暫定措置ということで、私、文科省もその標準法ということである意味では納得している部分があるんじゃないかとは思うんですが、確かに標準法によって適正配置が行われている。数の問題、いわゆる四十人というクラス、それに応じて先生の数も決めるということ、この標準法と、いま一つ人確法というものがございますね。こちらは給与水準を決めるわけでございますが、このことによって優秀なる教師を確保しようと。この二つの上に、私は、国庫負担法というものがあると思うんですね。ですから、標準法あるいは人確法をしっかりやるためにも、そこには国庫負担法という形で金が渡るということでこれまでの義務教育制度は成り立ってきたと思っております。

 いわゆる義務教育費国庫負担法と標準法と人確法というのは、ある意味では私は教育における三位一体、この三位一体タイアップして、セットになってこれまでやってきたと思っているわけです。この状況が今、国庫負担法というものが昨年来からの大変な議論で脅かされつつあるわけですね。そうしますと、この標準法あるいは人確法、これも半永久的ではないという気がしてなりません。

 地方の要求は、地方分権のためにはまず金を渡してほしい、その次は規制を廃止してほしい、私はこういう動きになろうかと思うんですが、その点、この標準法、人確法につきましてのこれからの対応につきまして、大臣はどのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 義務教育におきましては、まさに標準法によりまして必要な教員数を確保する、そしてそれに必要な財源として義務教育費国庫負担制度があるわけでございまして、この二つでもって日本の義務教育制度をしっかり守っていくということになろうと思うわけでございますが、今御指摘ありましたように、これにプラスしまして人確法ですね。ですから、標準法と人材確保法そして義務教育費国庫負担制度のこの三つが相まって、すぐれた教員数を確保して、そして義務教育をしっかり推進していく、こういうことだろうと思っております。

横光委員 今回のこの問題で、政府・与党合意で、いわゆる十七年秋の中教審の答申を得て、そこで結論を得るということで合意されております。

 この政府・与党合意の中には、文科大臣、先ほどからお話ございますように、参加されておりません、参加されておりませんけれども、このように中教審で結論を得るというところにこぎつけたということは、本当に私はすごいことだと思うんですよ。やはり大臣が平素から、三位一体改革の論議の中で、義教費の話は財政論だけで本当に論じていいのかとか、あるいは、世界の教育行政の今の流れ、これと比較して日本の逆行性の意味、さらには地方に任せた場合の不安等々、三位一体改革の中で強く大臣が訴えてこられた、そのことが、政府・与党合意の最後の、中教審で結論を得ると。

 つまり、これまでは財政論ばかりで論じてきたと私は思うんです、この義務教育の問題。しかし、今回初めて、要するに教育論を論じる中教審でこれから論議をして、そして恒久的な措置につなげるための結論を得るというところに持っていったということは、私は、すごい大臣の功績であろうと思っておりますし、まさに私は、この義務教育費国庫負担制度の命綱がここで保たれている、このように思っているわけでございます。

 そういった意味で、中教審の役割というものが非常に重要になってくるわけでございますが、地方六団体の改革案は、十七年、十八年度で国庫負担金廃止額三兆円と税源移譲額三兆円という数字の差し引きが最初前面に掲げられた。そして、それに見合う額を各省庁がいろいろと出してきたわけですね。文科省もそれに見合う額を、文科省は予算から何を削減対象とするかというような視点から今回のような状況になっていると思うんですが。

 地方六団体の改革案は、先ほど言いましたように、要するに教育論の観点からではなく、変な言い方になりますが、何を召し上げるか。各省庁の補助金の件で、各省で数字合わせに四苦八苦するというような状況で、財政論だけで進めてきた。その結果が、地方六団体の要求する中学校教職員給与費八千五百億円削減という結果につながっているんじゃないかと思うんですが、この点については、そういった流れにつきましては、文科大臣はどのような認識をお持ちですか。

中山国務大臣 三位一体の議論の中で補助金改革ということ、税源を移譲する、そのかわり補助金はカットする、そのカットする候補としてどういったものがあるのかという小泉総理の呼びかけに対して、地方側といいますか知事会側が出してきた三兆二千億だったわけでございます。そういう意味で、私も議論の中で再三申し上げましたが、補助金改革という財政論、銭金と言ってはちょっと言葉が行き過ぎかもしれませんが、財政論からだけ、この義務教育国庫負担制度というまさに憲法の要請する国の責任というものを否定していいのか、放棄していいのかということを再三申し上げたわけでございます。

 そういう意味で、今命綱ということを言われましたが、私は、中教審が徳俵だった、こう思っていますし、自民党の先生方初めいろいろな方々からも本当に御支援いただきまして、国民的なそういった支援の中で、とにかく中教審で、銭金の問題だけではなくて、義務教育そのものから議論しようじゃないか、その結論を待ってというふうに政府・与党の合意がなされたということは本当によかったな、このように考えておるところでございます。

横光委員 文科大臣は所信でいろいろおっしゃっております。子供たち一人一人がこの世に生を受けたありがたさを実感し、一生を幸せにかつ有意義に生きることができる土台をつくるという二つの目的を持っている、そういうふうに考えておると。その根幹は、憲法の保障する教育の機会均等とおっしゃっております。私はこのとおりだと思うんですね。そこに義教費が、国庫負担制度があるんだという趣旨でございます。

 しかし、今回、義務教育費国庫負担金が減額された。たとえ一時期とはいえ減額されても、税源移譲特例交付金で全額分は措置される、であるからして、この義務教育の根幹を覆すものではないと認識されておるのか。それとも、今回のような措置によっていわゆる憲法の保障する教育の機会均等、教育水準の確保、無償制、この三つから成る義務教育の根幹が今回の措置によって脅かされる可能性もある、影響する可能性があるとお考えなのか。大臣の率直な御意見をお聞かせください。

中山国務大臣 今回は暫定措置ということになっておりまして、それも交付金という形で国が出すことになっていますから、来年度までについては今までどおりと同じだろう、こう思うわけでございますが、来年度以降、この国庫負担制度、八千五百億円がどうなるか。

 それによりまして、もし地方側が主張しますように全部地方の方でやるというふうなことになった場合に、国の責任を果たすことになるのかどうかということは、これはそういうことにならないと思いますけれども、では、どれぐらい持てば国の責任を持つことになるんだ。

 きょうも何度か申し上げましたが、今でも三割しか持っていないのに大きな顔をするなと言われそうでございますが、私は、この根幹というのは何かといえば、やはり先生、教師だろうと思うわけでございまして、先生の給料の二分の一を負担しているということは、これはとても重要なこと、大事なことだろう、このように認識しております。

横光委員 義務教国庫負担金が減額、そしてそれを税源移譲特例交付金で措置する、つまり同額をきちんと措置するのであるのならば、何も今回の法案は出す必要はないんじゃないかと素人ながら思うんですが、これまでどおり義務教育費国庫負担金として負担すればいいのではないかと思うんですが、その点はいかがなんですか。

下村大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 要するに財布が違ってきた、文部科学省のお財布から総務省のお財布に変えるということでありますけれども、三位一体の改革に基づいて国庫負担金四千二百五十億円を減額して、そして同額を税源移譲予定特例交付金で措置するということは最初に申し上げた、そのために法律改正はやはりしなければならないということでございます。

横光委員 それは、法律改正の必要性はそのとおりでございますが、なぜ、同額を措置するのなら、私は義教費国庫負担金を減額して税源移譲特例交付金で措置する必要があるのかと不思議に思うわけでございますが、そうなった以上、この法律の改正というのは、これは当然のことだということはよくわかるんです。

 次に、全国知事会など地方六団体、ここで先週代表者会議が開かれて、中教審、中央教育審議会のもとに設置されております義務教育特別部会にいわゆる地方の代表者三人が参加することを決定したということでございます。

 義務教育にかかわる国と地方の関係あるいは役割、また制度、さらには教育内容、費用負担のあり方、こういったことについて国と地方が、先ほどから言いますように共同責任で、地方団体が同じテーブルについて審議するということは当然のことであり、非常に私はいいことだと思っておるんです。

 ただ、この報道を見て気になることがあるんですが、地方六団体は、議論が紛糾すれば途中で席を立つ構えとか、地方案が通らなければ参加を拒否するようなことや、さらには中教審の結論よりも国と地方の協議機関が最終結論の場であるような発言もあったと受け取れるわけですね。こういった新聞報道ですが、大臣はもっとこの状況は詳しくおわかりだと思うんですが、この地方六団体の行動について、文科大臣の御見解をお伺いしたいと思うんです。

中山国務大臣 報道というのはやはり少しおもしろおかしく、対立をあおるような、そういう形で報道されるのが常でございますから、そういった報道には惑わされないようにしておるところでございます。

横光委員 中教審は大臣のもとで法令に基づいて設置されている審議会でございますが、細田官房長官が座長をしているこの国と地方の協議機関というのは何に基づいて設置されているんでしょうか。おわかりですか。

中山国務大臣 この国と地方の協議の場というのは、三位一体の改革において官房長官を中心とした協議機関を設置する旨の昨年八月二十四日の経済財政諮問会議の場における総理の指示に基づいて設置されたもの、このように理解しております。

横光委員 そこには文科大臣も参加されているんでしょうか。

中山国務大臣 メンバーではございませんが、呼ばれまして意見を陳述したことはございます。

横光委員 しかし、例えば中教審の義務教育費国庫負担制度の論議というものがそこでもし行われるとしたら、当然私は大臣は正規のメンバーとして入らなきゃならないという気がしてならないんですね、都合のいいとき呼ばれて意見を聞かれるようでは。もっともっとやはり重い立場にあろうかと私は思うんです。

 政府・与党の「三位一体の改革について」という合意でございますが、官房長官や総務大臣や財務大臣や、あるいは自民党の政調会長、公明党の政調会長の皆さんが署名した最後の文書なんですが、全体像において八千五百億円程度の減額を計上するとか、十七年度の予算暫定措置として四千二百五十億円程度減額するとか、その分は予定特例交付金で配分するとか、このようなことはこの中にもちゃんとしっかり書かれております。

 しかし、この「「三位一体の改革に関する基本的枠組み」に基づき十七年秋の中教審の答申を得て、」ここまではいいんですね、「十八年度において恒久措置を講ずる。」という文言があるんですが、これは十七年秋の中教審で結論を得るというふうには書かれておるんですが、その後の「十八年度において恒久措置を講ずる。」このように書かれておるんですね。

 これを読みますと、どこから見ても、中教審の答申を得て十八年度の恒久措置を講ずると受け取れるわけですが、地方の方は、中教審の答申を得て、またどこかの協議会で諮って、十八年度の恒久措置を講ずるというような言い方をしておるんです。ここのところの文言の重要性、わざわざ与党合意で「中教審の答申を得て、十八年度において恒久措置を講ずる。」と書いていることは、私は異例な書き方だと思うんですね。

 つまり、中教審の答申を最大限尊重して、最終答申であるというふうにここは受け取れるわけでございますが、そのとおりでよろしいんでしょうか。

中山国務大臣 合意の中で、十七年の秋ごろまでにという文章があったと思うんですけれども、そのころまでに中教審の結論を得て、その上で決めていくということでございます。

横光委員 先ほど総理は「等」とか言ったんですね、中央教育審議会等ということを言って、どうもそこのところがあいまいで、今大臣は、中教審が最終結論ということなんですか、もう一度お聞かせください。

中山国務大臣 中教審の答申が結論である、そのままというふうには考えておりませんで、中教審の結論を得て、それを踏まえて十八年度中に決める、こういうことだろうと思っています。

横光委員 その中教審の結論というのはもう最大限、当然のごとく尊重されることなんですね、その後の協議会の場でも。

中山国務大臣 もちろん、私の諮問機関でございますから、その諮問機関の中教審の結論を最大限尊重していただけるように、いろいろな場において主張してまいりたい、このように考えております。

横光委員 わかりました。

 ちょっとそのほかのことで一つだけお聞きしておきたいんですが、今回の義教費国庫負担のほかに、いろいろな形で整理合理化される補助金がございます。

 その中で、就学困難な児童及び生徒に係る就学援助、これは、家庭の経済的理由で就学が困難な児童生徒に対して市町村が学校給食費あるいは学用品等の就学援助を行う場合、国が市町村に対して補助を行ってきたわけでございます。今回の改正案では、これが補助対象を要保護者だけに限定した、準要保護者は補助対象外となってしまったんですね。

 しかし、数字から見ますと圧倒的に準要保護者の方が多いんですね。しかも、昨今の経済不況の中で、生活保護を受ける人口もふえてきている。まさに弱者保護の観点から、私は教育の機会均等という意味からも、なぜこの就学援助法を改正し、準要保護者にかかわる部分を廃止することになったのか、そのあたりの理由についてお尋ねしたいと思うんです。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 準要保護者に対する支援の問題でございますが、憲法においては教育を受ける権利、これは憲法二十六条、そして教育基本法三条において、「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」そういった憲法と教育基本法において規定されているわけでございまして、これがまさに教育基本法等の原則を実現するための手段であるわけでございまして、これに対して、国及び地方公共団体は具体的にどうするかは個別の法律の定めにゆだねられているということでございます。

 学校教育法においては、就学援助は市町村の義務であると規定されており、就学援助が実施されているところであります。

 そして、国においてもこの義務教育の円滑な実施を図る観点から、就学援助法等々に基づいて市町村に対して補助を行ってきたところでございまして、この法律に基づいて、今回は準要保護者に対する就学援助については一般財源化され、市町村に対する財源措置のあり方が変わるものの、今後においても各市町村は引き続き学校教育法に基づき就学援助を行うものとしまして、国としても一般財源化に伴い財源措置を行うものである以上、今回の改正は憲法あるいは教育基本法及び学校教育法に反するものではないと思っておりますし、その点においては今後も実施されるものと思っておるところでございます。

横光委員 今言われたように、違反するものでないとするならば、それがちゃんと担保できるようにしっかりと、私は準要保護者に対する就学援助の状況を文科省としてはチェックしていただきたい、このことを申し上げまして、質問を終わります。

斉藤委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後一時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。奥村展三君。

奥村委員 民主党の奥村でございます。

 けさほどは、総理が、昭和三十三年以来四十七年ぶり、この委員会にお出ましをいただいた。意義のあることだったと思いますし、私、中山大臣も、報道関係、そしてまたこうして委員会等でお話を聞いておりまして、教育に対して本当に熱意を持って御努力いただいていることに敬意を表したいと思います。特に、「甦れ、日本!」ということのエールを送っていただいていることに、本当に重ねて感謝を申し上げたいと思うわけであります。

 そうした流れの中で質問をしていきたいと思うんですが、先ほども須藤委員の質問の中にありましたが、大臣、御就任のときに総理からメモをもらったと。その中にというお話がありましたけれども、どうも私、先ほどの総理の答弁をお聞きしておりましても、本当に教育に対して全力を傾けていただいているか、ちょっと残念な思いをいたしました。郵政民営化も大事かもわかりませんけれども、今のとき、私は、やはり教育、日本の根幹をなす教育というものにもっともっと力を入れてほしいなというような思いで聞いておりました。

 中山大臣が御就任されたときに、メモをいただかれたようですけれども、教育についてどのように総理からお話があったか、まず聞かせていただきたいと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 就任に当たりまして小泉総理よりメモをいただいたわけでございますが、その中には、人間力向上のための教育改革のさらなる推進、教育基本法問題の与党間協議の取りまとめの努力、義務教育費国庫負担金など三位一体改革への対応、教育分野における規制改革の推進、若年者の自立、挑戦を支援する実効性ある施策の推進、また、このほか、科学技術創造立国の実現に向けた重点的研究開発の実施、産学官連携などの推進、国民スポーツ担当大臣に協力したスポーツ振興施策の推進などの御指示をいただいたところでございまして、これらのこれまで進めてこられた小泉内閣における教育の構造改革にさらに意欲的に取り組むように要請されたものだ、このように受け取ったところでございました。

奥村委員 数多くの期待感もあり、総理みずからおっしゃったんだと思うんですけれども、やはり我々、人間社会におきましても、人との対話、あるいはそういう流れを考えますと、じんと引きつけられるものがあるはずなんです。確かにそういう思いで大臣も取り組んでいただいていると思うんですが、どうも私は、先ほどの答弁にしても牧さんのいろいろな思いを、予算委員会等のあれを聞いても、本当に心の中まで入り込んで、教育というのは大事なんだというような思いが伝わってきません、私自身は。皆さんはどうお思いになるかわかりません。

 やはりそういう思いをしますと、中山大臣が今いろいろな面で、大変僣越な御質問をしたわけですけれども、一生懸命こうして取り組んでいただいておる。そして、四十七年ぶりにここにおいでになった。そういうことになれば、もう少しこの委員会そのものが沸き立って、本当に教育というのはもっともっと大事なんだ、当然大事なんですけれども、そういう思いを私は期待してやっていたんですけれども、通り一遍の答弁しかなくて非常に残念だったんです。

 総理からたくさんの課題を、大臣がそれを今一生懸命やっていただいていることにうれしく思うわけですが、そういうことを考えますと、教育だとか外交、防衛、あるいは社会保障、治安、こういうものはやはり国の根幹ですから、しっかりベースをつくっていかなければなりません。

 しかし、考えてみますと、今は地方分権、これは私は参議院に身を置かせてもらったときも言ったんですが、ちょうどそのとき法律ができ上がったんですけれども、地方分権という言葉よりも地方主権だろうと。

 地方にしっかりとした主権、税の移譲から、権限から、あらゆるシステムから、移譲していく。地方主権の時代をつくって、そして国は、外交だとか防衛だとか教育の基本だとか、今申し上げたそういうものをしっかりとベースをつくっていくというのが国の役目だ。従来の中央集権から地方の主権の時代をつくり上げていく。そのときにも、やはり私は、教育というのは一番の根幹だと思っているわけなんです。

 どうも、今中山大臣が意欲的にいろいろなことをお考えになって、後ほどまたお聞きいたしますけれども、学習指導要領の問題等も、見直しもやらなければならないとか、いろいろなことをおっしゃっています。一方では、教育基本法の改正の問題もちらほら話が出ておるわけなんですけれども、そういうことを考えますと、いずれにしても、私は、地方主権、地方をそういうものとして教育そのものを考えますと、やはりビジョンというものが総理から発せられて、そして大臣がそれを実践であらゆるところでやっていかれる、そういう一つのシステムというか流れがなければならないと思うんですが、どうも私にそれが伝わってこないんです。

 ですから、もっともっと国民の皆さんに、今、こういう学力低下だとかいろいろな問題が起こっていますけれども、そういうときにしっかりと総理なり国をリードする人たちが国民に向かって、こうなんですよ、安心してくださいというようなことを訴えるようなことも大事であろうと思うんですが、教育の基本的なビジョンをしっかり国民に特に明確にすべきだと思いますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

中山国務大臣 小泉総理、ちょっと教育改革には熱意がないんじゃないか、こういうふうな御指摘でございましたけれども、私も時々総理のところにお伺いしましていろいろな話をさせていただくんですが、決してそういうことではない、こう思っています。

 郵政民営化だけを何か取り上げていますが、私、総理にも申し上げているんですけれども、総理の進めておられるタブーなき改革の中で、やはり教育改革が基本じゃないかと。この改革をやっていくのも人間だし、そういう意味で、教育改革が一番大事だということを申し上げると、総理はそのたびに、そうだそうだ、自分もいろいろなところでそういうことを言っているよと。

 例の米百俵、何か一俵という、まあ非常にそういう意味ではおもしろいことを言われたなと思ったんですが、総理は米百俵ということはいつも言っておられますし、所信表明、去年のあれは臨時国会でしたか、新しい時代の国づくりの基盤はやはり人であるというふうなことを言われました。それから、夏の甲子園大会で「「やれば出来る」は魔法の合いことば」という校歌があったということも所信表明で言われましたが、あれがまさに自分の教育改革にかける夢なんだ、こういうことも私との話の中で言われました。

 さらにまた、今回の所信表明でも、子供は社会の宝、国の宝だ、こういうことを言っていらっしゃるわけでございまして、教育改革ということを声高にはおっしゃいませんが、底流に流れるものはやはり教育改革、人材だというのは、私は、常に総理の胸の中にはあるなということを考えさせられるわけでございます。

 そういう意味で、時代は本当に大きく変わりつつありますし、まさに国際的な大競争の中にあって、これからの子供たちがやはり幸せな人生を歩んでほしい、しかも、日本という国がこれからもちゃんとした国であり続けてほしい、これは私たち大人の責任だろう、こう思うわけでございます。特に、子供たちに関する義務教育に関しましては、日本国家の構成員といいますか、形成者である国民の育成という面と、それから、子供たちの立場に立って、どういうことになってもしっかりと生き抜いていけるような子供たちを育てていく、こういう意味で私はとてもとても大事なことだ、こう思っているわけでございます。

 義務教育の実施に当たりましては、国がしっかりとした方針を持って、全国的な教育水準の確保と教育の機会均等について責任をしっかり果たしていく、これはとても大事なことだと思っているわけでございます。まさに奥村委員が御指摘のように、外交とか防衛と同じように、教育というものについては、やはり国が最終的には責任を持つということをしっかり踏まえた上で教育改革を進めていきたい、このように考えておるところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。

 義務教育、先ほど来からも各委員の皆さん方も意見をお述べになって質問されていますが、これは昭和十五年に現行制度ができたようでございますが、その後、昭和二十五年にシャウプ勧告で一たん廃止をなされて、そして二十七年にこの制度が復活をしたようであります。

 先ほど申し上げたように、四十七年ぶりに総理がここにおいでいただいた。当時の岸総理が御出席なされたようですが、やはりそのときも同じような形で、地方に財源が乏しくなっていく、不足していく、もう地方ではたえ切れない、だから、もう一度しっかり二分の一のこの制度を復活して、しっかりとした教育というものの根幹をなしていくべきだということが大きな議題になったようであります。

 ですから、四十七年ぶりに、昭和三十三年に当時の総理がおいでになった、そしてまた今こうして小泉総理がおいでになって、いろいろなお話あるいはまた開陳されたことがあったわけなんですけれども、ぜひ私は、そういうことを考えますと、義務教育というのは、教育の制度、そして教育というものはしっかりと国がやるべきだ、今中山大臣がお答えいただいたとおりだと思います、しっかりと進めていただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

 そういう流れの中に、特に学力の低下が最近叫ばれているわけなんですが、私は、まず冒頭に申し上げたいのは、やはり子供の立場、子供の目線に立って議論していかないと、我々の大人社会、ここで幾らいろいろな立派なことを申し上げても、それは子供たちには実感としてぴんとこない、教育現場で進んでいかないというように思います。子供たちの立場に立ってしっかりと物を見ていこう、それが大事ではないかなと思います。

 今委員長おられませんけれども、委員長、けさお着きになるときにごあいさつをなされました。この間の保坂先生のことを、理事会でも話があったんですが、あいさつをしっかりやろうというような話がありました。

 私の地元の県立高校なんですが、昭和五十八年に開校した甲西高校というのがあるんですが、これは開校三年目で甲子園出場いたしました。ベストフォーまで行ったわけなんです、昭和六十年に。その学校は、時の校長先生なり生徒指導の、後に野球部の監督で甲子園に出るその人が生徒指導をやっていたんですが、奥村源太郎さんという人なんですが、この人がまず校長さんと相談して、あいさつ運動だということで、開校以来、しっかりあいさつをする学校にしようということで生徒たちにやっていかれた。そして、二十一年目を迎えているんですが、地域の人たちから本当に好感を持たれる、どこで出会っても、我々が学校へ行っても、きっちりとこたえてあいさつをしてくれる。そのことに地域も、県立高校でありながら地域の高校のような雰囲気で、ですから三年目に甲子園に出たときに地域は盛り上がって、相当な勢いでどんどん勝ち進んでいったんです。

 やはりそういう一体化というのを、あいさつ運動一つにしても大事なことではないかなと思いましたし、委員長がけさほどおはようございますというあいさつをなされました。ああいうことで、やはりこういう委員会からそれをどんどんと進めていくのも大事ではないかなというような思いをしましたので、申し上げたわけなんです。

 そういうことを考えていきますと、やはり子供たち、そしてそれを取り巻く大人社会あるいは地域だとかいろいろなものが一体となって教育というのははぐくんでいかなければ難しいと私は思っておりますし、ぜひそういうことが日本全国津々浦々に浸透すればいいなというような思いをしております。

 そうした流れを考えますと、特に、大臣は学力の低下だとかいろいろなことで今中教審に学習指導要領の見直しを検討するように要請されているわけなんですけれども、今ゆとり教育と言われます。何かほのぼのとしたネーミングなんですけれども、一方では、現場の先生、教師の方々に聞くと、とてもゆとりじゃない、週五日であって時間がないわ、子供たちの行動範囲は変わってくるわ広いわ、そういうことになると本当に、何かゆとり教育と言われると、我々、厳しい、毎日毎日が追われて、とてもじゃないが現場でやっているのは耐えられぬぐらい厳しい状況ですよというような話を聞いております。

 私ごとですけれども、私は幼稚園を三カ園経営していますが、幼稚園の保母としても、就学前のいろいろなことを聞いてみても、やはり大変や、帰ってきても夜十一時、十二時まで子供たちの明くる日の成長記録なりを書いてまた持っていかなければならない。そういうことを聞くと、幼稚園ですらそれだけ大変ですし、あるいは一方でその現場、小学校、中学校でも、もちろん高校もそうですが、大変なことになっているというようなことを聞くわけですね。

 そういうことを、現場のいろいろなお話を聞きながら思いますと、時宜を得たことかなというような思いもするんですが、大臣として、この検討を要請されていることをどういうようなお考えのもとで言われたのか、お伺いいたしたいと思います。

中山国務大臣 昨年末に公表されました国際的な学力調査の結果によりますと、特に読解力が大幅に低下している、これが一番目立つわけですけれども、そのほか、これまで日本がトップクラスにありました数学とか理科についても低下傾向が見られる。このことはしっかり受けとめなきゃいかぬと思うわけでございますが、私が一番憂慮しますのは、日本の子供たちの勉強時間が一番短くなっている、テレビとかゲームに費やしている時間が長い。あるいは、子供たちが何のために勉強しなきゃいけないのかという動機づけが非常に乏しい、学ぶ意欲とかあるいは学習習慣、必ずしも身についていないんじゃないか。こういうことが指摘されたわけでございまして、さらに、今、奥村委員が御指摘のように、子供たちがあいさつもしないとか気力がないというか、そういったのは私が見ていても、もう子供は大きいんですけれども、周りを見ていても思うわけです。

 ですから、これは何とか考えなきゃいけないんじゃないか。今までゆとり教育という名のもとにずっとやってきたんですけれども、私は、このゆとり教育が本来目的としていたもの、基礎、基本をしっかり身につけさせて、その上で子供たちがみずから考え、みずから判断して行動する、こういう主体性のあるといいますか、私はよく思うんですが、指示待ち人間じゃなくて自分で課題を見つけて解決していくような、そういう子供たちがこれからの時代には絶対必要なんだ。特に、これから日本はトップランナーになって走っていかなければいかぬわけですから、これまでとは違うんだというそういう思いでいたわけでございます。

 そういう意味で、私は、「甦れ、日本!」ということで私の教育改革の案を示しまして、もっと頑張る子供を応援する、そういう教育がしたいと。チャレンジ精神を持った子供たちを本当に輩出させるということが、これは日本の将来のためにも、またその将来を生きるこれからの子供たちのためにも大事なんじゃないか、こういうことでいろいろな、とにかくタブーを設けないで今の教育全般について見直そうじゃないか、そういうことを提案しているわけでございますが、それをやるにはまず現場だろうと。

 現場の先生方、父兄の方々が一体どういうお考えを持っているのか、しかも子供たちの実態というのがどうなっているのか、そういったことをしっかり踏まえた上で改革をやっていきたい、そういう思いで、今、スクールミーティングと称しまして全国三百校を我々が手分けして回って、実態を調べて、そしていろいろな資料とかそういったものをもとにして、中央教育審議会でタブーを設けないで議論していただこう、こう考えているわけでございます。

 これはあくまで、私は、子供の立場に立って、子供たちがこれからどういう人生を生きていくのか、どういう立場になろうとも、この世に生まれてきた、日本人として生まれてきた幸せをしっかり自覚しながら、なおかつ自分の人生というものを幸せに、かつ実りあるものにできる、そういう土台をつくってやるような義務教育にしたい、今そういう思いで取り組んでいるところでございます。

奥村委員 本当に熱意ある答弁をありがとうございます。そのとおりだと思うんです。国家論でいけば、愛国心だとかいろんな話もありますが、やはり自分にも誇りを持ち、あるいは国にも誇りを持てる、そういう教育、そういうものをしっかりとやはり根底で教え込んでいくということが一番大事ではないかなと思います。

 大臣みずからも、現場主義ということで全国のそういう実態を把握するために努力いただいているようですが、私は、だんだんと時代が変わってきましたけれども、人間対人間の出会いでありますから、子供と教師あるいはその環境、やはりそこに心が通じなければ何事も進まないというように思います。

 ぜひこれからも現場主義を中心に行っていただきたいし、特に、いろんな根幹は国がきっちりベースはつくらなければいけませんけれども、先ほどのいろんな答弁を大臣はなされていますが、市町村といいますか、やはり現場のそういう力がぐっと進んでいかないと、こういうものは進んでいかないのではないかなというような思いも表明をさせていただいておるんです。

 たまたまなんですけれども、八日の日にテレビを見ておりましたら、NHKの「プロジェクトX」で、私の隣の京都の伏見工業の山口さん、苦労の全国制覇をしたときのものがテレビで放映をなされておりました。やんちゃなどうもしようがない生徒を何とか立ち直らせてやっていこう、それには、ラグビーを通じて伏見工業の校風を変えていこうとする思いでやられたことがテレビ放映をなされておりました。

 私ごとで大変恐縮ですが、私も四年半高校野球の監督をいたしまして、今から三十七年前に甲子園の土を監督として踏みました。当時はまだ二十二歳でございましたけれども、本当に私は、三百六十五日グラウンドへ出て、そして自分たちの後輩に何とか夢をかなえさせてあげたい、自分は甲子園に出られなかったけれども、後輩たちにと思って、実は大学を中退までして、親に怒られながら没頭して、ようやく三年半ぶりに監督として甲子園の土を踏ませてもらいました。それを私は八日の「プロジェクトX」を見ながら、山口さんがやっておられることを涙しながら、自分のそのときを思い出しながら、やはり体と体、心と心、ぶつけ合ってやはり育てていってこそああいう結果を得られたんだな、自分もそうだったなというような思いで、えらい生意気な言い方ですが、そんな思いで見ておりました。

 大臣も、「甦れ、日本!」のその心、そういうものを子供の立場でひとつぜひこれからも推し進めていただきたいし、今大臣がこれだけ一生懸命思っていただいておりますが、僣越な言い方ですけれども、大臣がとことんずっと人生、本当はそのまま文科大臣をしていただきたいのですが、そういうわけにはいかないと思いますけれども、そういうものがしっかりと継続されて、日本の国のあるべき姿、根幹がなし得ていくような、ひとつこれからも御努力をぜひお願いいたしたいというように思います。

 それでは次に、そういう具体的な中でまた大臣のお考えをお聞きしたいんですが、実は、数学だとか国語だとかいろんな学力の問題が出ております。今、京都議定書やらとかいろんなことを進めていただいておりますが、教育の特に環境教育というのが私は大事ではないかなというように思います。人間が生きていき、生物がある限り、やはり環境教育というものをしっかりとこれもカリキュラムの中に推し進めていただく必要があるのではないかなという思いをしております。

 そうした流れの中に、私は総合的な学習のそういうときにしっかり環境教育も取り込んでやっていく。今、総合学習的な話が出ておりますけれども、一方では英会話を総合学習の中でやっている、一方では缶拾いをやったりボランティアのことをやっている。ある意味ではちぐはぐなことなんですが、教育の中には、やはり環境教育というものの一つのベースをつくって、あらゆる問題につないでいくというのが大事ではないかなというように思います。

 これも参議院のときにも申し上げたんですが、きょうは小渕議員もおいででございますが、当時の小渕総理にこの質問を投げかけました。ぜひその船に乗ってみたいな、時間があれば一遍滋賀へ行きたいなということを当時の小渕総理がおっしゃったのは、実は昭和五十九年からでございますが、滋賀県には今、小学校五年生になりますと、フローティングスクール、「うみのこ」という船をつくっていただいて、それに子供たちが水環境あるいは周辺の環境の勉強ということで、一泊二日そこで生活をしてくれております。もう二十年、月曜日から金曜日までは毎日今も就航をしております。

 私がたまたま五十四年に県会議員にならせていただいたそのときに、滋賀県は琵琶湖に赤潮が発生したりいろんなことがあって、京都や大阪の皆さん方に水を供給しているんですけれども、やはり上流の琵琶湖をきれいにしなければならない、当時の武村さんが富栄養化防止条例というものをおつくりになる、それで議論をいたしました。そして、粉石けん運動を奥さん方がやっていただいておる、だから、家庭でもそういうこと、工場にしても排出規制を厳しくやる、そういう流れで条例ができたわけなんです。

 そのときに私はふと思ったんですが、確かに家庭でも排水のそういう粉石けん運動なり、いろんな工場も力も入れる、しかし、これは教育の中で何かできないだろうかと思って、五十六年の県議会で提案させていただいて、船をつくってくださいと。そして、船をつくって子供たちに、琵琶湖に面している子、あるいは河川に面している子、いろいろありますけれども、水というものとの触れ合い、いろんなものを考えますと、もっともっと水に対する関心が、あるいは環境に対する関心が大事だということで、当時の武村知事にお願いをして、五十九年にその船をつくっていただいて就航いただいております。

 ですから、今、プランクトンの問題だとか、あるいはまたカッターに乗って子供たちがいろんな体験をしております。まさしく体験学習なんです。これにはいろんな苦労がありました。今みたいに携帯電話はありませんし、事故が起きた場合にどうする、病気になった場合にどうする、いろいろなことをクリアして、私も担当者といろいろなやり合いをやりながら、それをつくってもらってよかったなと思っていますし、今、それが京阪神の子供さんなんかと交流の場所にもなっているわけなんです。

 ぜひ大臣も時間があれば、全国お回りいただいているようですが、一泊していただかなくてもいいですから、子供たちと一遍乗ってやってもらって、どういうことを琵琶湖の湖上でやっているか、そういう体験学習のことも一遍御見聞いただければというように思っているんです。

 私は、ぜひ、こういう体験学習という思いからも、そして環境教育という思いからも、国としても推し進めていただきたいし、今、森林、山林が非常にひどいことになっています。国有林もそうなんです。しかし、そういうところへ、昔の林間学校ではないんですが、夏休みあるいはそういうときに山に子供たちがもっとどんどん入っていく。夏休みのいろいろな休み期間がありますけれども、そこを改善して、子供たちの体験をさせていく、自然との触れ合いをさせていく、そういうようなことをやはり私はもっともっと推し進めていく必要があると思うんですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 奥村委員は野球部の監督で甲子園に出場されたという話を前にお聞きしたことがありますが、この前、私もNHKのまさに「プロジェクトX」、あの伏見高校のを見ておりまして、大変感激をいたしました。

 私も、中学なんですけれども、そのときに野球部の監督が、もう中学二年の秋でしたけれども、私に、野球部に入れと。私の家は貧しかったものですから、グローブからユニホームからスパイクから、全部貸してやるから入れ、こう言われまして、そのかわり、入ったその日から四番バッターでキャプテンをさせられたんですけれども……(発言する者あり)格好よかったんですよ。そのときに、竹下という先生ですけれども、本当に休みなしで、今思えば一体家庭生活はどうなっていたのかなと思うぐらい、本当に献身的に我々に指導していただいたということを思い出しまして、胸が熱くなったわけでございます。やはり子供たちの成長の中で、すばらしい先生にめぐり会うということがどんなに大切なことかということを、テレビを見ながら実は思っていたところでございます。

 そこで、今、奥村先生、琵琶湖のフローティングスクールですか、あのことをお話しなさいまして、それこそ、これももう二十年近く前のことを思い出していたんですが、武村知事が国政に出てこられまして、私も実は同期でございました。そのときに、武村さんからそのフローティングスクールの話を聞いたんですね。なかなか大変だったんだと。危険ですからね。でも、いろいろあったんですが、やってみてよかったわということを言われたのを覚えているんですけれども、まさか奥村委員がその提唱者だったということを初めて聞きまして、改めて敬意を表したい、こう思っております。

 私ども本当に田舎に育ちまして、うちが農家で、いつも田畑、山に入って、農作業をしながら、野山で遊びながら、いろいろ学んできたなということを思うわけでございます。その点、今の子供たちというのはそういう環境がない。だから、こちらからつくってやらなければいかぬと思うわけでございまして、まさに、湖上で一泊二日ですか、私も行ってみたいなと。なかなか泊まることはできないかもしれませんが、おりてきた子供たちをつかまえて、どうだったということを聞いてみたいなという思いがございます。

 これはこの前、ルバングから帰ってこられた小野田さん、あの方の本が出ていまして、「君たち、どうする?」という本でございまして、あの方は、ブラジルに渡って牧場を開かれて、それでもやはり日本に時々帰ってこられて、自然塾というのをつくられて、子供たちを本当に自然の中にほうり出して鍛えていらっしゃる、その記録みたいな本でございます。あれを見ても、やはり子供たちに自然体験させるということがどんなに大事なことかということを改めて思っているところでございます。

 特に、今委員がおっしゃいました環境教育ということについても、このフローティングスクールなんというのは、環境のことを勉強しながら、かつたくましさも身につける、一石二鳥だと思うわけでございますが、現行といいますか、平成十年からやっております学習指導要領によりましても、身近な自然との触れ合いなど、体験的な学習を通じて環境についての理解を深めよう、そういったことで、今、環境教育を進めておるところでございます。

 また、総合的な学習の時間、これもいろいろと今検証しているところでございますけれども、これは調べてみますと、環境について取り組んでいる、そういう学校が非常に多いわけでございまして、平成十六年度では、公立小学校の約七五%、それから中学校の約五三%の学校で実施されているわけでございます。

 具体的に、例えば身近な里山において下刈りとかあるいは樹木の伐採とか、あるいは木炭を活用した水の浄化活動を行ったりとか、さらに地域の河川の清掃とか水質調査を行ったり、蛍がすめる環境づくりに取り組むとか、自然との触れ合いを通じた環境教育をやっているということで、これは、そういう意味では、総合的学習の時間を有効に使っていることになるんじゃないかな、このように考えておるところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。

 確かに、今フローティングスクールの話をしたんですが、今は五年生の子供たちだけなんですが、障害をお持ちのお子さんも、最近、ここ十年ほど前から一緒に乗っていただいて、そして、やはり思いやりの心そして団体生活、そういうようなこともやるべきだということで、県教委の方で思い切ってそういうこともやってくれております。私は、本当にそういうことが、これから社会へ出て成人になったときに、いろいろなことをまた頑張ってくれるその何かになればいいなという思いをしているわけでございます。ぜひ大臣も、お忙しいと思いますが、お時間があれば、一度出向いてやっていただいて、乗っていただければというように思っております。

 次に、今回のこの法律、全部で六本ほどあるわけなんですが、そうした流れの中に、産業教育振興法の一部改正というのがあるわけなんですが、これは考えてみますと、我が国は資源のないこういう国ですから、技術だとかいろいろなそういうものを逆に輸出といいますか、外国にどんどん広めていって日本の国があったわけですし、これからもそれを英知を出し合って、頑張ってしていかなければならない。一番大事なそういう産業教育そのものの充実をもっともっとしてほしいなと思っているにもかかわらず、今のこうした流れの中に、補助を、設備を全部廃止してしまうようになっているわけなんですが、こういうことは本当にいいのかなと。

 それは、こういう時代の流れですから、いろいろなむだなものはカットせよと我々も言っておりますし、皆さんもそうお思いだと思うんですが、しかし、先ほどの義務教育云々の話と同じように、やはりこういうものは国がしっかりと、そしてまたこういう今の時代の流れですから、もっと民間の企業の方がどんどん進んでいるかもわかりませんけれども、そういうものを取り入れて進めていかなければ、日本の産業あるいはまた国力というものがだんだん、逆にこういうことによって廃れては困るなというような思いをしているわけです。

 この一部改正について、国の補助が廃止されるわけなんですが、このことについて、今後どのようになっていくのか、お聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 文部科学省といたしましても、産業教育の重要性ということは認識しているわけでございまして、これまでも、産業教育のための実験実習の設備整備に必要な経費について補助を行ってきたところでございます。

 この重要性については、これは変わることはないと思うわけでございますが、昨年の三位一体の改革に伴いまして、この事業というのが、長年にわたりまして地方公共団体において実施されてきた事業であって、既に地方の事務として定着してきているということ、さらに、法令によりまして各地方公共団体に実施義務が課せられていることから、地方においても着実な実施が求められるであろうということから、今回、地方団体からの要請もありまして、これからは地方公共団体の責任において地域の実情に応じて適切に実施されるものということで、国の補助を一部廃止することといたしまして、そして産業教育振興法についての所要の改正を行おう、こう考えているところでございます。

 文部科学省といたしましては、産業教育の振興を図るためには教育条件の整備を行うことは重要な施策である、このように考えておりまして、今後、地方公共団体においてどういう取り組みがなされるかということはしっかり把握しながら、必要に応じて指導するということにしていきたいと考えているわけでございます。

 また、来年度、十七年度予算におきましては、こうした一般財源化とあわせまして、特色ある取り組みを行う農業高校あるいは工業高校などの専門高校を支援する目指せスペシャリストという事業を拡充しようということにしているわけでございまして、文部科学省として、引き続き産業教育の振興には努めてまいりたいと考えております。

奥村委員 ありがとうございます。

 後段でお話がありました、そういういろいろな農業、産業等の、農業はもちろん産業でありますけれども、私の今日までの経験といいますか、特に今は高校入試の時期なんですけれども、農業をしていない子供たちが実は農業高校へ行くんです。これは本当に問題あるのは、中学校の輪切り教育なんですよ。そして、一学期もたない、退学してしまう。

 私の滋賀県でしたら、毎年一校四百五十から五百人ぐらいが実は退学していくんです、一年間で。そうすると、せっかく入学しても、家庭の事情があったりいろいろなことがあるんですが、自分は夢を持って高校へ入ったけれども、自分のところは農業ないのに農業高校へ行ったり、自分と違う方向に行って、そこに夢を持って歩んでくれればいいんですけれども、そういう環境ができておればいいんですけれども、今、大臣が最後におっしゃった、そういうことがこれから推し進められたらいいんですけれども、やめてしまう、そういうことを繰り返す。結局、中学校の立場にしてみれば、義務教育が終わって高校へ送り届ければいいわ、やれやれというような雰囲気が現場では本当にあるんですよ。これは滋賀県だけじゃなくして、全国的なあれだと思うんです。

 それをやはり教師と、進路指導していただく先生方と子供とのコミュニケーション、そこをしっかりやっていかなければ、結局そういうことがどんどん、全国で何万人という退学者、中退者があるわけなんです。これはいろいろな事犯を起こしてとかそういうのじゃなくて、そういう自分の思いと違った方向で進学して、それで退学していく。

 そういう実態もあるわけですから、特に私は、これからの時代もやはり子供、生徒に、日本の国のあるべき姿を考えたときに、そういうもののしっかりとした教育を施していただきたいなというふうな思いで、ちょっとお伺いさせていただきました。

 ぜひ、先ほどおっしゃった、確かに、市町村やそれぞれの地方でそれだけのものをしっかり確立できればいいんですが、そこは文科省としてしっかりと見張っていただきたいというように思います。

 最後でございますが、もう時間がありませんのであれですが、先ほど私の僣越な自分の経験やいろいろなことで申し上げてきたんですけれども、実はスポーツの振興なんです。

 これもまた今回の法律改正の中に、地域で一番苦労してくれたり、いろいろなところで汗してボランティアで頑張ってくれている人たちの、スポーツ振興法の一部改正が出されているわけなんです。これは、指導者の養成に必要な経費を、何も国だけで持ってくれというわけじゃないんですが、やはり国も、あるいは地方も、地域も、あるいは受益者もみんながやって指導していただく、そういうようなことが大事なんですけれども、これも廃止される。

 考えてみますと、国民の健康あるいは地域のコミュニケーション、そういうものを、やはりスポーツを通じていろいろな連携をとりながら進めていくというのが一番大事ではないかなというように私は思っているんですけれども、こういう振興法あるいは指導者に対する養成、今日まであったのがなくなってしまう。

 オリンピックでは、去年のあれではすごいメダルを獲得していただいたし、その選手の皆さん、チャンピオンスポーツとしてのすばらしさを発揮いただいたわけです。確かにチャンピオンスポーツの、そういうオリンピック選手だとか世界のいろいろな、あるいはプロで活躍するいろいろな人があるかもわからない。しかし、それは小さなときから地域でスポーツ、あるいは地域の皆さんとともに楽しみながらそこに蓄えてきた力が積み重なってこそ、チャンピオンスポーツで立派な成績を出されていくと思うんです。一番根底の大事なことだと思います。だから、今、スポーツ少年団だとかあるいは体育協会だとか、いろいろなそういう方々がボランティアの形でやっていただいているわけなんです。

 だから、私は、そういうことこそ、やはり国民の意気を高める、そういうスポーツを通じてしっかりとした体力をつくり上げていかなければならないし、そういうものを欲しいなと思っているやさきにこういう問題が、廃止なされるということで、非常に残念だな、どういうように思っておられるのかなというようなことを、ちょっと不信感を持ちながら質問させてもらっているわけなんです。

 私は、去年の予算委員会でも質問いたしましたけれども、当時の河村大臣にも、あのtotoのとき、サッカーくじのときに、本当に一千三百億からのお金が集まるとかよう言われた、そんなばかな話はないぜ、一千億も買ってくれる人がだれがあるよと当時は言いました。そして、子供たちに悪影響を及ぼさないようにしてほしい、スーパーやいろいろなところで売らないでほしいということも言いました。

 しかし、今度はどんどんそういうふうにしてtotoの見直しで進めておりますけれども、もう情けないような、各都道府県だとか競技団体に渡すお金がないぐらいの恥ずかしいようなことを、今度は見直しをなさる。これはまた違う機会に議論いたしますけれども。

 しかし、そういうことを考えても、やはりスポーツとこういう資金といいますか、お金というものは正比例するわけなんですけれども、こういうことについても、ひとつまた大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 スポーツの振興、そのためにはやはりいい指導者を養成することだと思うわけでございまして、それがもとになりまして、国全体としての底力といいますか、底辺から上げていく、ボトムアップしていく、これがやはり大事なことだろうと思いますし、去年のアテネ・オリンピックの成果というのもそういったものが出てきたのではないか、こう思うわけでございます。

 今回、三位一体の改革によりまして、このスポーツ振興に関する地方向け補助について、その一部が廃止された、税源移譲されることになったわけでございますが、これはこれとして地方でしっかりそういったものに使ってもらいたいと思いますし、私どもとしては、それがしっかりスポーツ振興に使われるかどうかということをチェックしてまいりたい、こう思っているわけでございます。

 文部科学省としては、スポーツの振興につきましては、こういった都道府県に対する補助のほか、今話がありましたが、日本体育協会とかあるいは日本オリンピック委員会などのスポーツ団体の活動に対する支援とか、あるいはスポーツ団体あるいは都道府県に対するモデル事業等の委嘱、そして国際競技力の向上を図るためのナショナルトレーニングセンターの整備とかいったいろいろな手法があると考えておりまして、こういったいろいろな手法を駆使しまして、幅広く我が国のスポーツ振興を図ってまいりたい、このことの方針は変わらないというふうに考えております。

奥村委員 ありがとうございました。

 大臣のいろいろな御所見をいただきまして、心強いところもありましたし、また、より以上進めていただかなければならないところもあります。

 教育というのは、与野党問わず、これはもう我々心を一つにして、しっかりとこれから大臣のもとで推し進めていきたいというように思っておりますので、これからもまた、より以上の御苦労をかけると思いますが、頑張っていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。午前中に引き続きまして、法案の中身について質問させていただきたいというふうに思います。

 これで私も、文部科学委員会に所属させていただいてから三回目の質疑に立たせていただくんですけれども、私も、ようやく文部科学、特に文教行政の実態というのが、何となくですが、おぼろげながらでありますけれども、見えてきた気がいたします。特に、今という時期は日本の教育にとってまさに歴史的なターニングポイントになっているのではないだろうか、こういうふうに思っております。そういう中で、中山大臣のような立派な大臣に対して私が質問させていただく機会が与えられているということを大変光栄に存じております。

 言うまでもなく、半世紀にわたって続いてきた義務教育の国庫負担金制度というものが、地方分権の分権改革の中でどう位置づけられるべきか、こういう本質論が一つあります。それから、昨年の国際学力テストの結果を見てもわかるように、学力がどういうわけか低下してきてしまっている、こういう現実の中にあって、約三十年にわたって続いてきたいわゆるゆとり教育といったものが転機を迎えている。それと同時に、学力、体力、気力、子供たちのこの三つの力が同じように低下してきてしまっている。教育現場はこのままにして大丈夫なんだろうか、こういう教育の現場そのもののあり方というものが今問われている。そういう意味で、非常に重要な局面に私たちは今差しかかっているんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。

 これに対して、私たちは、子供の学びの環境というものを再構築していかなければならない、こういう認識に立っております。つまりは、先ほど来お話がありますように、地域、学校、家庭、本当に一体となって子供の学びをどうしたらいいかということを真剣に考えていかなきゃならない。そこにおける国の責任、国の役割は一体何だろうかということを、きょうはまた皆さんと一緒に考えさせていただきたい、こういうふうに思っております。

 午前中の審議を通じてますます明らかになったのは、今回のこの法案をめぐる閣僚の皆様方のお立場の違いといいますか、閣内不一致じゃないんだとさっき中山大臣おっしゃいましたけれども、しかし、向いている方向がばらばらであれば、これは不一致と言わざるを得ないというふうに私は思うのでありますが、きょうは文科大臣と同時に今井総務副大臣にもお見えをいただきまして、本当にありがとうございます。本法案の核心部分の討議でございますので、しっかり御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。

 午前中の質疑でも何度も触れられてまいりましたけれども、私も、昨年の十一月二十六日の政府・与党合意というものをもう一度おさらいさせていただきたいと思います。

 「義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。こうした問題については、平成十七年秋までに中央教育審議会において結論を得る。」中教審の結論が出るまでの十七年度予算については暫定措置、ということであります。

 実によくできた文章だと思うんです。ああもとれる、こうもとれるという意味であります。文科省の立場は、前段の部分を強調されますね。先ほど来大臣も御答弁されておられましたけれども、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する、この部分を強調されるわけです。一方、総務省の側は、費用負担についての地方案を生かす方策を検討しなきゃいけないんだと。真摯に受けとめているという先ほど小泉総理のお答えもありましたけれども。その上で、政府全体としては、中教審にいわば丸投げをする、そして、その間の暫定措置として、国庫負担金制度を維持しつつ、しかし負担金は減額する、こういう仕分けになっている。

 まさに玉虫色ではないだろうかと私はこれまでもずっと追及させていただいてまいりましたけれども、しかし、大臣、遅くともことしの秋までにはこの問題に決着をつけなきゃならないわけですね。

 ところが、新聞報道によりますと、その中教審のメンバーシップをめぐっていまだに混乱が続いていると。昨日ですか、ようやく義務教育特別部会のメンバーシップについては決まったそうでありますけれども、本体の方の委員がまだそろっていない。これはまさに、ただメンバーシップがそろわないという話ではなくて、このメンバーシップがどうなるかということが結論に直結しかねないような、そういうせめぎ合いが今行われているんだろう、こういうふうに思うんです。

 この部会と本体、これから中教審の答申を待って政府は決断されるということになるんだろうと思うんですけれども、部会でいろいろな議論がされる、それを中教審の本体の審議会がそれをどう受けとめて、そしてそれは、私の理解では、中央審議会の方、本体の方から答申が上がるようになっているんだと思うんですけれども、この部会と本体の方の関係がどうなっているか、御説明いただけますでしょうか。

銭谷政府参考人 中教審の本体と部会の関係でございますけれども、中央教育審議会は、まず正委員が三十人でございます。その三十人が総会を組織いたしております。総会のもとに五つの分科会というのをつくることになっておりまして、これは例えば初等中等教育分科会といったように、あらかじめ決められた分科会がございます。それ以外に、総会直属の組織として部会をつくることができることになっておりまして、今回の義務教育特別部会はまさに総会直属の部会ということで設置をされたものでございます。このような形の部会は、かつて教育基本法を検討した際に、同じように総会直属の部会というものを組織いたしました。

 基本的には、このたびの義務教育のあり方についての検討はこの部会で行うということになっておりまして、その部会の審議結果を逐次総会の方に報告しながら審議を進めていくということになろうかと思っております。

長島委員 そうしますと、総会が部会のプロセスを見守りながらと言うんですけれども、まず部会で結論を得て、それは総会に上がって、その総会が文部科学省に答申を出す、こういう理解でよろしいんでしょうか。

銭谷政府参考人 基本的には、今先生お話しいただきましたとおりで、部会で結論を出して、それを総会に上げていくという形になろうかと思います。

長島委員 ここで終わらないんですよね、ストーリーは。さっき「等」、中央審議会の答申等というようなお話がありましたけれども。三月の四日に知事会が最終的に部会の方に委員を送り込む決断をしたときに、官房長官に申し入れをしていますね。

 最終的には、どんな中教審の答申が出たにしろ、国と地方の協議の場で結論を得るようにしてくれということを細田官房長官に迫って、そして、細田官房長官は文部科学大臣にそれを伝えると言ったというふうに新聞には載っているんですが、文部科学大臣の御理解はそれで一致しておりますでしょうか。

中山国務大臣 新聞でそういった申し入れをしたということは聞いておりますが、官房長官から私の方にはまだそういう話はありません。

長島委員 どうも、最後のこのプロセスが国民から見ると見えにくい。つまり、また結局うやむやになってしまうんじゃないだろうかということが非常に心配になるんですけれども、そこはぜひ、文部科学大臣としてしっかり中教審の答申を受けとめて、そして、当然のことながら地方と最終的に協議することになるんだろうと思いますけれども、そこは国民の皆さんの懸念がしっかり払拭できるように、私はこれから今回の暫定措置について追及、質問させていただきますけれども、言葉は悪いかもしれませんが、こんな中途半端な形で終わらないようにぜひお願いをしておきたいというふうに思っております。

 地方六団体の改革案というのはもう既に出ております。それによると、何度も申し上げておりますけれども、第一期改革については中学校の教職員の給与分、しかし第二期の改革までにはその全額を廃止するんだ、これが、ある意味で地方六団体にとっては揺るがない結論のようなのであります。

 先ほどから、義務教育制度における国の責任とは何ぞやという話が何度も出てまいりました。私なりに、文部科学省のあるいは中山文部大臣のお考えについてはもう何度かお聞きをいたしましたので、きょうは、せっかく今井総務副大臣がお見えですから、国の責任というのは、当然のことながら別に文部科学省の責任というわけではないと思いますけれども、国の機関として今回の暫定措置を、いわばその責任を共有するお立場として、国の責任を堅持する、維持をする、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するという、この国の責任とは、総務副大臣、どういうふうにお考えか。

今井副大臣 長島委員さんにお答えいたします。

 お話しいただきましたように、教育はすべての社会の基本中の基本だということで大変な御関心を持っていただいて、重要な局面を迎えた、転換期である、中央集権から地方分権の大きな時代の流れでこの教育の分権化をどうしていくかということで、大変御熱心にお取り組みいただきまして、御質問をいただいたわけです。

 早速でございますが、義務教育における国の役割について総務省としてはどのように考えているんだ、こういう御質問かと思うわけでありますけれども、国は義務教育に関しまして、国民にひとしく、全国だれでもがどこでも一定の水準の教育環境を保障されなければなりませんし、それは大枠を法律によって担保されています。

 例えば、学級の編制あるいは教職員数を法的に担保するわけでありますが、当然のことながらそこには費用がかかるわけでございますので、その所要財源を確実に保障する、そしてその上で地方の取り組みを制度的に保障していく、これが必要かと考えておるわけであります。教育環境の整備が、御案内のように、今日まで先人の大変な努力がございまして一定の水準に達してきたわけでありますが、課題もこれまた多い、こういうことであります。

 そういう状況の中で、国それから地方の役割の分担、こういったものを見直ししなければならないという時代の大きな要請があろうかと思っています。特に、義務教につきましては自治事務である、国は教育制度の根幹を定める一方で、具体の運用につきましては地方にゆだねていくという考え方、地方における自由度を最大限拡大していく、こういうことが今の時代の要請ではないか、このように考えている次第であります。

    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕

長島委員 今の総論について文部科学大臣、中山大臣、異論はございませんか、認識の違いというか。そもそも国の責任とは何ぞや、私が伺うところ、私としては、所要の財源を確実に保障しなきゃいけないというところまで踏み込んで御答弁いただいたので、私自身はそれほど違和感がないんですが、もし大臣、あれば。

中山国務大臣 今の答弁、私もああそうだなと聞いておりましたが、最後の自治事務のところだけひっかかったんですけれども、自治事務のところですね、自治事務になっているから全部地方がやるんだということではない。

 自治事務というのは、平成十一年に地方分権一括法が成立したときに、小中学校の設置管理については、それまでの団体委任事務などの事務の概念とか名称を改めたものでございまして、これは戦後ずっと一貫して地方自治体の責務だったわけでございまして、平成十年の閣議決定でも、義務教育は生活保護と並んで真に国が義務的に負担すべき分野の代表例として位置づけられていたわけでございまして、財源保障の問題と自治事務であるかどうかというのは、直接関係がないと私たちは考えております。

長島委員 また少しずつ閣内のほころびが見えてきたような気がするんです。

 今、少し大臣が示唆されたように、国の責任を果たす上で国庫負担金制度が不可欠なものであるかどうかというのが恐らく意見の分かれ目なのではないだろうか、こう思うんですが、もちろん文部科学省としては、これは不可欠だ、こういう主張を先ほど来されておられます。総務省は、いやそうじゃないんだと。これはさっきの自治事務のお話もありましたように、地方にもっと裁量をゆだねるべきなんだ、こういうお考えだと思います。

 それにしても、根本的な疑問として残るのは、なぜ今の国庫負担金制度ではだめなのか。この国庫負担金制度が、これはもうまさに文部科学委員会での審議ですのでぜひこの切り口で伺いたいんですけれども、教育の現場にどんな弊害をもたらしているのかということを、ぜひ委員の一人として副大臣からお伺いをしておきたいと思うんですね。その弊害というものは深刻であればあるほど、私たちも、そういうことならば国庫負担制度というものをやはり見直さざるを得ないのかな、こういう議論になると思いますので、ぜひ具体的に、現場の弊害という観点から御説明いただきたいと思います。

今井副大臣 今までの国庫負担制度が義務教育の根幹を維持する上で大変重要な役割を果たしてきたということは、私どもも認識をしておりますし、役立っていないというような言い方、認識ではないわけであります。

 その上で、地方の方からは、現在の義務教育国庫負担制度につきまして、標準法では学級編制あるいは教職員の配置、これらに地方の裁量の幅をある程度認めてもらってはいるものの、国庫負担制度の運用がその幅を狭めている、こういう意見も地方側からあるわけです。

 例えば、地方の教育委員会の国に対する依存体質といいますか、これを助長している、こういうような指摘もありますし、何よりも国庫補助負担金の要望を県を通して国まで上げていかなきゃならない、あるいは精算をする、これは大変事務量があるわけです。手間暇がかかる、大変繁忙になる。

 私も実は教員にかかわる家族の一員で、よく聞くんですが、その事務というのはかなりあるんですね。しかも、学校の先生がそちらの方に時間をとられるというものが大変一つの弊害として指摘をされて、もしこれが一般財源であれば、いわゆる要望を出したり、あるいはそれを精算する事務というのがなくなってくるわけであります。

 こうしたものを解消すると同時に、地方の自由度の拡大を通じて、教育の充実あるいは活性化を図ることも可能だと思っておりますし、冒頭申し上げましたように、今日的な立場に立ってこれらを進める、あるいは検討させていくということが必要だと思っておるわけです。

 全国的な教育水準あるいは機会均等、これの維持など、その根幹を維持することは国の責務としてとても重要なことだ、このように考えております。そのために、義務教育にかかわる財源保障を適切に行うことが必要であるわけでございますが、その財源保障が国費によるべきか否かは、時代の流れの中で適切な選択をする必要があるのではないか、このように考えております。

 御案内の今回の三位一体の改革は、税財源の改革であります。教育費の削減の議論ではなくて、まさに財源保障のあり方の議論が今この三位一体で問われているわけでございますし、先ほど長島議員から指摘がありましたように、国際比較においても、各国の例を見る限り、教育水準と財源の種類、これは国費かあるいは地方費かにかかわりがない、関係がないというふうにも読み取れるわけであります。

 以上です。

長島委員 副大臣の問題意識、私も実は共有しておりまして、きょうで三回目ですけれども、私も常にそういう現場の実態というものを踏まえて議論しなきゃならない、こういうふうに思っているんです。

 最後に触れられた財源保障のあり方について、それで、恐らくここからが議論の大きな分かれ目なんですが、文部科学省としては、一般財源化してしまうと将来に相当弊害が出てしまうということを懸念しているんですね。恐らく、この委員会の委員の多くがその懸念を共有しているんだろうと思いますが、文部科学省の試算によれば、四十の道府県で財源不足に陥る可能性があるんだ、しかも、それを地方交付税で、ある意味で財源調整をするから大丈夫だ、こういう説明をされても、しかしこの地方交付税自身がこれから大きく削減の対象になっていくから、将来のことについてはおぼつかないんだ、こういう議論がなされているわけですね。

 しかし、今回の暫定措置というのは、申し上げるまでもありませんが、その一般財源化を認めるということですね、大臣、間違いないですね。

 これについて、四千二百五十億円、九日の質疑の中で、近藤委員の質問に対する御答弁の中で、銭谷局長が答弁をされているんですが、こうおっしゃっているんですね。

 「税源移譲予定特例交付金というのは一般財源でございますので、文部科学省としては、各都道府県において義務教育水準の維持に必要な教職員の給与費が適正に確保されるように、各都道府県の予算措置状況について把握をしているところでございます。」中略、「今後とも必要な指導助言を行って、各都道府県における教職員の配置を含む教育条件の整備に支障がないように努めてまいりたいと思っております。」一般財源になっても大丈夫だという御答弁をされているんですが、これは、総務省が従来主張されていたことを認める御答弁なんでしょうか。

 前回、実は私、同じような御質問をさせていただいたときは、先ほどもちょっと申し上げましたが、一般財源化されたときには、地方の財政力格差によって教育力にも格差が及んでしまうんだ、こういう御答弁だったんですが、私の質疑に対する答弁と、今私が読み上げた、同じ局長の答弁なんですが、一般財源で大丈夫なのか、そうでないのか、はっきりもう一度説明をしていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 私の答弁に食い違いがあるのではないかという趣旨の御質問だと理解をいたしますけれども、まずお断りをしておかなければいけないのは、ただいま御審議をお願いしております法案では、本来負担するべき国庫負担金額から、十七年度限りの措置として四千二百五十億円を減額するという内容の法案の御審議をお願い申し上げているわけでございます。

 全体でいいますと、義務教育費国庫負担金、おおむね、本来の負担額でいいますと約二兆五千億円余りになるわけでございますけれども、そのうちの四千二百五十億円について、ことしは税源移譲予定特例交付金ということで今暫定措置をお願い申し上げている、大体一六・七%ぐらいの額に四千二百五十億円は当たるかと思っております。

 したがいまして、改正自体も、附則の改正という形で行っておりますけれども、本則の改正は今回は行わないということでございます。

 全体の一六・七%の額につきまして、十七年度限りの特例措置として、税源移譲予定特例交付金として、いわば総務省の方において計上していただきまして、私ども、その額について、各都道府県において予算措置状況がどうかということを今調べているわけでございます。

 これは、現在限り把握している状況では、十七年度限りの暫定措置ということもございますし、四千二百五十億円という額が暫定だということもあって、各県、所要の措置を講じていただいているように私ども現在限りでは把握をいたしております。これは、各県、大変御努力いただいていると私どもは思っております。

 ただ、二兆五千億全体が一般財源化された場合には、それは、まず一つには、もし恒久的な措置として仮にそういうことになった場合、それから、額の比較が全然違いますものでございますから、それについては、先ほど先生の方からお話がございましたように、フラット税率で税源移譲した場合でも、やはり四十道府県で財源不足になるというのは私どもの調査でも出ておりますし、本当に恒久的な措置としてその後の交付税措置で補てんできるのか、それから、本当に各県が所要の教職員給与費を措置していただけるのか、この点について私どもは大変危惧をしているわけでございます。

長島委員 同じ一般財源化されたとしても、その規模が違う、スケールが違うんだ、こういうお答えだったと思うんです。

 しかし、それには恐らく総務省の方も反論があるんだろうと思うんですね。十分な財源保障をするんだという意味においては、暫定だろうが、規模が大きかろうが小さかろうが、フラット税率として、そして交付税で補う、こういう仕組みですから、今の銭谷局長の御答弁では私は十分なのかなという気がするわけです。

 それでも恐らく、標準法とか人材確保法とか、あるいは指導助言、それから前回も申し上げましたが、地方交付税法の二十条の二にあるような勧告をして、それでも従わなかった場合には全額もしくは一部を減額できるというような、こういうかなりの強硬手段をとることができるわけですから、そういう点においては、しっかりと財源保障というのは私はできるのかなというふうには思っているんですけれども、それでも恐らく文部科学省としては、心配だ、将来の地方の財政については、今、国も地方も真っ赤っ赤であるから、これは難しいんだ、そう言われると、私もそうなのかなと。

 しかも、交付税改革は、この前谷垣財務大臣は、〇五年、〇六年度で七・八兆円の地方交付税を削減する、こう言っているし、それから麻生総務大臣も、とりあえず本年度は交付税による対応は万全だ、こうおっしゃっていますけれども、将来的には地方交付税の削減は避けられない、こういう見解もおっしゃっております。地方自治体の中には、先ほど地方の声とは何ぞや、こういうお話がありました、実は二千の議会が心配しているんだよという話もあったし、あるいは地方六団体と言われているものは一応国庫負担金は全廃という方向で結論を得ましたけれども、しかし、それでも心配している市区町村が多い。こういうことでありますので、そこはやはりもう一段、私たちが考えていかなきゃならないだろう、こういうふうに思っているんです。

 そこで、もう一度、政府・与党合意に戻って考えてみたいんです。

 先ほどは、皮肉を込めてうまくできていると申し上げたんですが、今度は真剣に読んでみると、なるほど、うまくできているなと実は私は思っておりまして、これはどういうことかというと、つまり、地方分権改革というものと国の責任というものをどうやって両立させるかという今後の方向性を実は的確にとらえた文章になっているんじゃないだろうか、こう思っているんです。

 私はこう読んでみました。義務教育制度の根幹を維持し、「国の責任を引き続き堅持する。」と言っているのは、国の責任と言っているのは、何も文部科学省の責任というわけではないですね。したがって、ここからはちょっと大臣とは違うかもしれませんが、この一行目から、文部科学省の補助金である国庫負担金制度にこだわる必要は実はないんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 つまり、さっき総務副大臣がおっしゃったように、国がしっかり財源保障ができるということが担保されれば、私はこの一行目というのは、国の責任を引き続き堅持するという方向で、国庫負担制度とは切り離して考えることができるんじゃないか。

 それから二番目の、「費用負担についての地方案を活かす」、ここは私は、地方案の趣旨を生かすというふうに読み込みたいと思っているんですが、地方案の趣旨というのはどういうことかというと、裁量をもっと持たせてくれ、教職員の給与だけに限定した使い方しかできない、総額裁量制みたいなことをやっているけれども、しかしそれでもまだ使い勝手が悪過ぎるんだ、ほかのいろいろな教育現場をもっともっと発展的に改善していくためには、もっと使い勝手のいいような財源にしてほしいと。

 この二つを満たせば実はいいんじゃないだろうか、私はこういうふうに思っているんです。つまりは、教職員給与に使途を限定されない、ある意味で国の財源保障、そして地方が自由に使える、これはもう交付金しかないですね、制度としては。

 ですから、私たち民主党のアイデアは、教育目的の一括交付金という形でこの義務教育制度の根幹を支える、国が責任を持って財源保障していく、こういうことに結論を得たわけなんですね。これは、今政府・与党合意が言っている、先ほどちょっとばらばらじゃないかと私は申し上げたけれども、しかし、それをつなげる唯一の方法じゃないんだろうかというふうに私は思うんです。

 私が何でこんなことを申し上げるかというと、私は、今のままの二・五兆円だけ国が財源保障するやり方でいいとは思っていないんです。これはよく中山大臣もおっしゃっているように、全額国が持ったっていいと。イギリスなんかは、来年度から全額でやるんだ、こういう話。ですから、今、私が歯がゆいのは、今の文部科学省のストラテジーが、何か国庫負担制度を守りながらずるずるじりじり後退をしているように見えて仕方がないんですね、地方分権改革の荒波の中で。

 しかし、これは手前みそかもしれませんが、もし、民主党が発想しているように発想の転換をして、教育目的の一括交付金という形に衣がえをすれば、逆に反転攻勢で、これをもってもっと教育予算というものをふやしていくんだ、国の財源というものをもっとふやしていくんだという、守る話ではなく攻める話をぜひ中山大臣から伺いたいと思うんですが、民主党のアイデアに対する御所見と、そして、ぜひこれから攻めに転じていただきたいと思うんですが、その辺の御決意を伺いたいと思っております。

中山国務大臣 民主党の教育一括交付金ということでは余り詳しく承知しておりませんので、コメントは差し控えたいと思いますけれども、一つは、使い勝手のいい予算という意味では、総額裁量制ということで本当に使い勝手がよくなっているという評価を地方からいただいているということがございます。

 もう一つは、もう守るばかりじゃなくて攻めに転ずるべきじゃないか。小泉総理がよく、農業も守りだけじゃなくて攻めに転ずべきだと、今その言葉が流行語になっていますが、私としては、きょうも午前中の議論で申し上げましたけれども、十兆円の義務教育費のうち三割しか負担していなくて余り大きな顔はできないというような思いもあるわけでございます。まして、諸外国がどんどんふやしていく方向だ。ですから、時々申し上げますけれども、全額を負担したっていいんじゃないか、国が持ってもいいんじゃないか、こういう思いもするぐらいでございますが、しかし、日本の予算制度というのが、今までのいろいろな長い経緯がありますから、今、三割ぐらい負担するということになっておるわけでございます。

 この三割をどうするかという話でございますが、私は、やはり教育の機会均等ということを考えますと、まさに今長島委員が御指摘のように、これから先、地方によって財政力の格差が大きくついてくる、こう思うわけでございまして、少なくとも三割ぐらいはしっかり文部省が持っておかないと、そういったことが、国の責任が果たせなくなるんじゃないか、今そういう思いでおるところでございます。

長島委員 せっかくたきつけているんですが、まだちょっと勢いが足りないような気がする。それはなぜかというと、私、非常に危機感を持っているんです。

 日本の公教育に対する支出、GDP比で見ると本当に最低。ここに、教育指標の国際比較という文部科学省がつくった十六年度のデータがあるんですけれども、主要十三カ国、先進国十三カ国中最低なんですね。日本は、GDP比で、公教育支出三・五%。頑張っている、この前国際比較でトップをとったフィンランド五・五%、トップのデンマーク六・四%、二位のスウェーデン六・三%。では初等中等教育はどうかと見ると、日本は、これもほとんど最低レベルの二・七%。フィンランド三・五%、スウェーデン四・四%。本当にこんなことでいいんだろうか。

 それから、教職員の給与あるいは標準法でしっかり我々は教職員を確保しなきゃいけない、質のいい先生を確保しなきゃいけないと言っているんですが、児童生徒千人当たりの教職員の数、トップのイタリア九十四・三、それから日本はそのほぼ半分、四十九・三ですよ。スウェーデンは八十・〇。

 それから、学校教育費の自己負担、つまり家庭が負担させられている、させられているという言い方、義務教育は無償ですから、させられている、その負担率ですけれども、ノルウェー、フィンランド、一・三、二・〇。日本はどうか、二四・八、ブービーですよ。アメリカが三一・八で最下位ですけれども。それから、初等中等教育に絞って見ても、日本は八・三、ノルウェー〇・八、フィンランド〇・五、スウェーデン〇・一ですから、もう歴然と公教育に日本は金をかけていない。

 ですから、私は最初に申し上げました。日本の教育は本当に歴史的なターニングポイント、もちろん分権改革もしっかりやっていかなきゃならないわけですけれども、しかし、本当に子供の教育を国が真剣にやる、そのための財源保障をする、これは総務副大臣も同じ考えだと先ほどおっしゃっていただきましたけれども、やはりこの国の姿勢、心意気を教育現場にまさに見せていく、そういう努力というのは、これまでの予算がどうとかという発想から一段と飛躍していただいて取り組んでいただきたい、こういうふうに思っているんです。

 ただ、その際に、私が文部科学省の役割として重要だと思っているのは、やはり施策をした後どう事後評価をしていくか、今実態がどうなっているかということをしっかり見据えて政策を打っていかなきゃいけない、こういうふうに思っているんですね。

 前回私が申し上げました、補助金で事前統制するようなやり方はもう古いですよと。ソフトパワーで、まさにどういうふうな状況に現場がなっているかということをしっかり把握していただきたい。検診もしない、検査もしないでいきなり手術というのでは、これはもう言葉は悪いですけれどもやぶ医者の治療みたいなものでありますので。

 そこなんですけれども、文部科学省は果たして、そういう事後評価をする際の物差しをしっかり持っておられるんだろうか。

 学力調査について、我が党の鈴木寛議員が参議院で質問をいたしました。そのときの議事録を見ると、文部科学省の調査では都道府県別の、自治体別の学力の比較という点に関しては最近のデータはないという状況にございますというふうに銭谷局長がお答えになっておられるんですね。非常に学力調査については、何か実態がおぼつかない。

 私は、別に学力だけを申し上げようと思っていません。今文部科学省が、教育の現場がどうなっているかということを、これは数値化するのは難しいかもしれませんけれども、先生はみんな元気に頑張っているんだろうか、あるいは不登校の児童はどうなっているんだろうか、いじめや校内暴力はどうなっているんだろうか、そして学力はどうなっているんだろうか、こういう実態調査をきめ細かくやっているんでしょうか。そういう物差しをしっかり持って現場と向き合っているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。どうぞ、大臣。

中山国務大臣 教育費の国際比較の数字でございますが、私もそのことについてはいろいろ勉強させていただきました。

 日本は低いんですよね。低いんですけれども、これは一つには、日本の小さな政府といいますか、いわゆるGDPに占める公費支出の割合が少ないというようなこともまずあると思いますし、あるいは学校制度といいますか、日本の場合には私学が多いとか、それにまた、日本の場合には子供たちの数が少ないとかいろいろな条件がございましてそのような数字が出ているのかな、こう思うわけでございます。しかし、それだけで納得するわけにいかないので、やはりほかの国がどうなっているのかというようなことも考えながら私は検討していくべきだ、こう思っています。

 また、義務教育に関する費用が少なくて済んでいるというのは、これはそういう意味では非常に義務教育が効率よく行われていることの一つの証左じゃないかな、こう思ったりもしているんですけれども、やはり日本としても、世界各国の教育にかける熱意といいますか、教育改革の推進等も見ながら、負けないように頑張っていかなければいかぬ、こう思っているところでございます。

 そうした学力調査ということにつきましても、私は大臣になりまして、やはり競い合うといいますか切磋琢磨する、そういった雰囲気というのも必要じゃないか。さらに、やはりいろいろなことを、教育をやっていきましても、それが実際どうなっているのか、うまくいっているのかどうかということについてはちゃんと評価すべきじゃないか。そして、その評価に基づいてさらにどういった点を改善するのか。

 そういう意味で、全国的な学力調査というのも実施すべきじゃないかということを提案しているわけでございまして、これらについてはいろいろ御批判等もあるんですけれども、だんだんとそういう方向になってきているなというふうなことを思うわけでございます。

 これは、学力だけではなくて、体力とか先ほど言われました気力とか、いろいろな面において、どこの地域が、どこの県が、どこの市町村が子供たちを健やかに育てているか、そういう意味では、私はよく言うんですけれども、次世代育成コンテストといいますか、子育てコンテストと言えばやわらかくなりますが、そういったことによりまして、学校間あるいは地域間、都道府県間の競い合う、そういったムードというものを少しは高めながら全体として日本の教育水準を上げていきたい、このように考えておるところでございます。

長島委員 また次の機会にぜひ詳しく伺いたいと思います。

 今ちょっと大臣のお話の中で、これは一応食いついておかなきゃいけないなというポイントがあったものですから。

 義務教育が効率的に行われているというふうにおっしゃいましたけれども、私から見ると、学力調査の国際比較を見ると効率的にじり貧になっているというような、私はこんなイメージがあるんですけれども、今大臣が切磋琢磨するというお話をされました。私、ちょっとこれは気になるんですね。

 というのは、朝日新聞の昨年の十二月十八日の大臣のインタビューの中にこういうくだりがあるんです。「今までの教育に欠けていたものがあるとすれば、競い合う心や、切磋琢磨する精神だ。」と。しかし、ゆとり教育というのは、競争が余りにも過熱しちゃったからそういう方向にかじを切ったというふうに私は理解をしておりまして、この点については、子供を競わせて本当に学力が上がるんだろうかという疑問は専門家から呈されているんですね。

 例えば、東京大学の苅谷剛彦教授、テストの目的。私も大賛成なんです、全国学力テストをやるというのは。しかし、そのテストの目的は、あくまでも、競争意識の涵養ではなく、学習指導要領や学校週五日制など、文部科学省が進めてきた施策の検証という意味に用いるべきじゃないだろうか、こういうふうに言っております。

 それから、百升計算で大変有名な陰山先生もこんなふうにおっしゃっているんですね。百升計算をやらせるんだけれども、自分は他の子供と比べて、競わせるような指導はしたことはない、大事なのは、一人一人がどれだけ時間を短縮していくかだ、そういう評価をすることでみんなが自信をつけていくんだと。

 ぜひこの点、また切磋琢磨、競争というふうに追いやっていって、現場がまたなえてしまうようなことのないようにしていただきたいと思ったので、ちょっと引用させていただきました。

 最後に、大臣から御所見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 どうも学力テストと言うと、すぐまた昔みたいな競争じゃないか、こう言われるんですけれども、決してそういうことではなくて、やはり実際子供たちを見ていますと、結構競争するのを楽しんでいるんですよね。陰山先生のあれだって、いかに時間を短くするかということは、子供たちは結構競い合いながら、楽しみながら勉強している、そういう面もあるんですよね。自分たちの小さいころを考えてみてもそうだと思うので、そういった意味の切磋琢磨といいますか競い合う心というのは、私はこれは大きくなってからでも大事なことではないかな、こう思っていまして、ちょっとマスコミは大げさについつい取り上げ過ぎでございますが、決してそうじゃない、これは言葉を慎重に選びながら私は発言してきたつもりでございます。

長島委員 最後に一言。

 陰山先生は、学校現場を元気にするものでなければいかなる改革も失敗に終わるだろう、こういうふうにおっしゃっておりますので、ぜひ私たちも、大いに大臣と協力し合って、日本の教育現場を活性化していくように頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

中野(清)委員長代理 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤尚彦でございます。お疲れさまです。

 銭谷局長、冒頭で悪いんだけれども、中教審が三人欠員になっているんですけれども、今の質問の中でもごたごたしているという表現があったんですけれども、順調に決まりそうかどうか、ちょっと聞かせてください。

銭谷政府参考人 中教審につきましては、まず、総会メンバーでございます正委員三十人につきまして、文部科学省の方からは地方六団体に対しまして、費用負担者である都道府県の知事さんお一人と、それから設置者でございます市町村の代表の市町村長さんお一人、お二人を候補者として提示してほしいということを申し上げてきております。これについては、知事会、市長会、町村会と組織が別なので、知事、市長、町村長各一名、三人をぜひ候補者として推薦したいというのが六団体の御意向でございまして、現在なお調整が続いております。

 それから、義務教育のあり方を議論いたします総会直属の義務教育特別部会につきましては、私どもは、知事さん、市長さん、町村長さん、お三人、委員の候補者を提示してほしいということをかねて申し上げていたわけでございますけれども、昨日、六団体の方から三人の委員候補者の名簿の提示がございましたので、義務教育特別部会の方は、地方六団体の代表の方が二回目の会合以降御参加をいただいて審議できるというふうに思っております。

加藤(尚)委員 そろそろ決まるのではないかというふうに受けとめておきたいと思うんです。

 二月十五日、第一回が開催されて、中山大臣がごあいさつをされております。その中山大臣のごあいさつの中でちょっと気になることがあります。お手元にごあいさつの文があるかどうかわかりませんけれども、「甦れ、日本!」という、いわば大臣の持論の中で、答申に際しての中身の中で、順位を言うのはおかしいかもしれないけれども、義務教育費国庫負担問題について、第五順位なんですね。これが第一順位だったら、おととい、きょうと今までずっと言っていらっしゃったことの意気込みが伝わるんだけれども、このいわば「甦れ、日本!」の中で第五順位ということで答申の中身として説明すると、受けとめる中教審の人たちが少し大臣の力の入れぐあいが違うんじゃないかと思いそうな気がしましたので、ちょっとお聞かせください。

中山国務大臣 順番は、一番最初がいいのか最後がいいのか、本当は最後が一番大事ではないか、こう思ったわけでございますが、この中央教育審議会特別部会で教育全般について議論してもらいたい、そういう議論の中で、一体この費用をどうするんだというようなことも議論していただいて、結論を出していただきたい、こういう思いでございましたから、最後にこう来たということでございます。

加藤(尚)委員 今度の法案について、今度は、今度はという言い方はいけないかもしれませんけれども、やはり中教審の役割が物すごく大きいように思います。これは単に政府・与党だけではなくて、あるいは文科省だけじゃなくて、我々委員だけじゃなくて、全国の自治体の教育長あるいは全国の小学校、中学校の校長先生も含めて、物すごい大きな関心がある、今渦巻いていると僕は想像しているんです。

 その意味で、秋まで時間がある、それまでにいろいろな方向性が出てくるだろうということだけではなくて、大臣初め、文部科学省のすべての公務員を初めとして、我々もそうですけれども、挙げて中教審、特に代表である鳥居泰彦会長さんが我々にとっての全権大使だと。いわゆる政府・与党という物すごい大きな力に対して、文科省初め、我々が全権大使として指名したぐらいのつもりで期待をしているんですけれども、その点について、御感想はいかがですか。

中山国務大臣 それこそ、きょう小泉総理が四十七年ぶりにこの文教委員会に出てこられた。それから、先ほどお話がありましたように、いわゆるゆとり教育ということですか、そういった流れでずっと来た。この三十年ぐらいそうでございますが、その見直しをしようと。いろいろなことを考えますと、まさに、戦後の義務教育の中で大きな転換点といいますか、もう一回考え直そうじゃないか、そういうとてもとても大切な時期だな、こう思っているわけでございまして、教育関係者のみならず、国民のいろいろな方々がこの中央教育審議会の存在を知り、その重さを改めて認識していらっしゃるんじゃないかな、こう思うわけでございます。

 その中で、中央教育審議会の会長であられます鳥居泰彦会長でございますが、平成十三年の新しい中央教育審議会の発足以来、ずっと会長の任に当たっていただいておるわけでございまして、今回はそれに加えまして、義務教育特別部会の部会長として、この義務教育費国庫負担制度のあり方を含めて、全般的な義務教育のあり方について御審議いただくということで、鳥居会長の御尽力に本当に心から感謝を申し上げるわけでありますが、鳥居会長のすばらしい識見によりまして、この義務教育費国庫負担制度を含めたすべての教育改革についてすばらしい答申がいただけることを私も期待しております。

加藤(尚)委員 中教審のことについて、後ほどもう一回だけ議論したいと思います。

 きょう出がけに、私の質問の紙をうっかりげた箱に置いておいたものだから、家内に見られてしまったんですね。私の最初のページを見て、こんなことを大臣に聞いたら失礼じゃないのと言われちゃったんですよ。私の家内は割と常識的なんですけれども、家内の話を続けるつもりはないんですけれども、我が家では、僕のものは家内のもの、家内のものは家内のもの、こういう家庭だから、勝手に見られても怒るわけにいかなかったんです。

 でも、やはり私としては、私がかつて大変尊敬した文部大臣、当時は文部省だったですから文部大臣でありますけれども、言葉が乱れると国が滅ぶと言われておる。今でも同じだと思います。でも、今言葉が、我が国の子供たちの言葉もそうですけれども、テレビなんか見ていると、例えばダーとかハッスル、ハッスル、何でもいいけれども、幼児言葉がはやっちゃって、それが子供にどんな悪影響を与えているか、心配でならないわけですけれども、それはそれとして。

 きょう申し上げたいのは、この法案について、例えば、気になってしようがないことだから、ぜひ私は質問もしたいし自分の意見も申し上げたいんだけれども、お経読みという言葉があるんです。大臣が法案を説明するときに、どういうわけか委員に回ってくる言葉は、お経読み三分とか、場合によっては一分というのもこの前ありましたね。お経読み一分、行政監視委員会で。そういう言い方で来ましたけれども、気になってしようがない。ある割と優秀な国会議員のホームページにも、お経読みという表現は当局に大変失礼だし、国会の重要法案審議の言い方としてはなじまないんじゃないかということをホームページにも書いています。

 また、私も、当選してまだ短い間だけれども、いろいろな方に聞いた。このお経読みのいわば出どころとか、どうしてこういうことになってしまったかわからない。どこへ聞いてもわからない。衆議院では、三十年、四十年かかっているんじゃないか、前の話じゃないかといいますけれども、これはわからないです。

 大臣は、このお経読みという表現について、例えば法案を出された、そして一字一句真剣勝負でつくられたと僕は思うんですよ。それを、いわゆる単純にお経読みという表現で我々委員に伝わるということに対してどうでしょうか。

中山国務大臣 いや、私も、国会に出てきてというか、その前から役人をしていましたから、何でお経読みというのかなと。趣旨説明のことだと思っていましたけれども、眠くなるからとかそんな話じゃなくて、やはりありがたいお経を読むときに、心を込めてお願いしますという気持ちで趣旨説明をするからお経読みと呼ぶのかな、そんなふうに考えたりしていたんですけれども。

加藤(尚)委員 私も割と興味を持つ方なものだから、高野山の真言宗の高僧とか曹洞宗の高僧に聞いてみたんです。お経読みというのはその世界ではどういうふうに受けとめているんですかと聞いてみたら、語源はともかく、お経読みというのは物すごい歴史があって、そしてインドから中国、中国から日本と、たくさんの人が命がけで経典を持ってきて、そしてそれをお坊さんが読むわけですけれども、読む中に、生きている人だけじゃなくて、死んだ人も含めて、真剣勝負で命がけでお経を唱えるものだと。国会の方で、もし万が一、今大臣が言われた意味でならいいけれども、いわゆる単純に門前の小僧習わぬお経を読むという式のものであったら重大なことだとそのお坊さんが、罰当たりめと物すごく怒っていましたね、これはこの程度にいたします。

 もう一つ、三位一体という、先ほども総理が、三位一体改革について、三位一体の語源についてはだれがつくったかわからないと言っていましたけれども、これは重大なことなんです。やはり重大なことだと思うんです。つまり、三位一体はキリスト教ですね、ローマ教皇の。やはり、父と子と聖霊なんですよ。これはもう絶対的に不可侵なんですよ。不可侵の言葉なんです。だから、三位一体という言葉で我々に伝わったときに、えらい言葉を使ったなと。そして、これは不可侵ですから、もう絶対的な決心でこの改革案を出したというふうに私は個人的に受けとめたわけですよ。

 だけれども、お経読みもそうだけれども、三位一体のキリスト教語も、国会の中で宗教語をやたらめったら使うことについては、文科委員会としては厳に慎むべきだというふうに私は思っているんです。

 その意味で、大臣、この三位一体改革について、もうなれちゃってみんな使っていますけれども、やはりそう軽々しく使うものではない。そして、これも横浜の大きなカトリックの牧師さんに聞いてみたんだけれども、やはり違和感を感じますと。そうやってどう説明されても違和感を感じます、こういうふうに言っていましたけれども、いかがですか。

中山国務大臣 三位一体という言葉をこの補助金改革でだれが使うようになられたのか、よく知りませんが、最初は、基本方針二〇〇二、平成十四年の六月二十五日から、「国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討」する、これが最初のようでございますが、私も、余りいい言葉じゃないな、こう考えております。

 また、三位一体ですから、三つが一緒になって協力して何かでき上がるということだろうと思うんですけれども、中身はどうもそうじゃない。特に補助金改革はこれは大変だよという気持ちもありまして、余り三位一体という言葉を使いたくないものですから、時々私は、補助金改革、地方分権という言葉で言っておりまして、余り三位一体という言葉は使わないようにしているわけでございます。

加藤(尚)委員 私も同感でございます。

 やはり言葉、読み書きそろばんとよく言いますけれども、その言葉を、かつて私の尊敬する文部大臣のお話じゃありませんけれども、やはり国が乱れるもとだから、ましてや国会でわけもわからず使うなんということは、我々も戒めなくちゃならぬし、政府も、そして当然与党の皆さんもそういうふうに考えてもらいたいと私は思います。

 例えば、こういうお経読みにしろ三位一体にしろ、例えば記者クラブで翻訳した場合、これは難しいですよ。私は英語の達人にどうやって訳すんだと、例えば記者会見で。法案説明やお経読み、そして今度の三位一体改革について、外国人記者クラブで翻訳するとしたらどういう英語を使うんだと聞いてみたけれども、相当理解している人でもやはり解釈しませんでしたね。

 それは言いおいておきますけれども、そういうことで、やはり私たちの国会での質疑は常に外国に伝わる、その日のうちに伝わる、そういうふうに思いますので、言葉そのものはお互いに気をつけたいということをちょっと申し上げておきたいと思います。

 引き続き質問させてもらいますけれども、国家の最も柱というか、国家そのもの、存立の柱は、言うならば、教育、そして外交、防衛、安全保障と思うんですね、もちろんそれからいろいろありますけれども。

 教育を一番目に私あえて挙げているんですけれども、これはおとといの質疑でも、ブッシュ大統領もそうだったし、あるいはイギリスのブレア首相などは、一に教育、二に教育というふうに言っているじゃないですかとか、あるいは同じアジアのマハティール前首相など、今の首相も同じ表現を使っていますけれども、一に教育、二に教育、三、四がなくて五に教育というふうに言っています。これはタイ国もそうですけれども、アジア共通なんです。一に教育なんです。

 でも、我が国は、今度の法案を見ていても、一に教育とはとても思えない。ですから、結果的に中教審にゆだねてしまう。つまり、責任を負わない。政治が責任を負う、政府・与党が責任を負うというのは当たり前のことだし、文部科学省が責任を負うというのが至極当然だと思います。その姿勢、きょうは、おとといからそうですけれども、前大臣もそうだったけれども、一連の決意表明はずっと流れてあって、私はそのまま信じたいと思っている。

 ましてや文科大臣というのは、私のこの数字でいうと、日本の学校へ通っている子供たち、保育園から大学院までですけれども、二千百五十九万人いますね。子供がいるということは、当然、平均的には両親がいる。出生率一・四と大ざっぱに計算しても、三千万人の人が我々文部科学の仕事に大変重要なかかわりがあるということです。その総帥でいるのが文科大臣です。その意味で、その責任たるや物すごいものがあります。ですから、教育というのは国の礎だし、国家百年の計という言葉があるのは教育だけだと思っています。

 そういう意味で、やはり大臣の、今度の法案に対してふんまんやる方ないと。しかし、政府・与党と言っている。政府・与党というのは一体だれのことを言っているんですか、個人的に。わかったら教えてください。

中山国務大臣 政府・与党というのは、政府、内閣と、与党というのは自民党と公明党、そういうふうに考えています。

加藤(尚)委員 それでは、文科大臣もこの政府・与党会議に出席された上でのこの法案ですか。

中山国務大臣 法案ですか、会議ですか。(加藤(尚)委員「会議の上で、今度の法案ですね」と呼ぶ)

 使いたくない、いわゆるとつけますが、いわゆる三位一体の議論の中には私も参加させていただきました。

 まさに私も文部科学大臣として、日本の教育に責任を持つ立場から、いわゆる補助金改革、地方分権改革の中で余りにも財政論的な議論しかなされていないということについて本当にふんまんやる方なかったものですから、義務教育制度のあり方から始めていろいろな議論を展開したわけでございます。

 そういう意味で、私はやはり文部科学省の話も聞いてほしいと。文部科学省、文部大臣の話も聞いてほしいということは、中央教育審議会というものをもっと大事にしてほしい。ここで、やはりお金の問題だけではなくて教育論そのものにさかのぼって議論をした上で、補助金改革、義務教育費国庫負担制度の改革についての結論を出してほしいということを終始一貫主張したわけでございまして、そのことが政府・与党の合意の中に取り入れていただいたということはよかったな、こう思っておるわけでございます。

 今後とも、中央教育審議会でしっかり議論していただいて、それを踏まえた結論が出されるようにまた、これは私としては頑張っていかなければいかぬ、こう思っております。

加藤(尚)委員 よかったなと思うのは時期尚早だと思いますよ。やはりこれは押し切る決心が入っています。ですから、「中教審等」と「等」が入っているのは、今回の大きな理由の一つだと思っていますけれども、それは後でもうちょっと議論したいと思います。

 私は、今、大臣もいみじくもおっしゃったように、教育を財政論で語る。今日本は借金だらけ、大借金だらけの国ですよね。これはもう現実であります。世界一であります、政府の借金高は。そういう中で、しわ寄せを全部教育におっかぶせている。今度の地方分権化の中でも、表をいただいていますけれども、文科省分が五三%だから、いかに教育を軽々しく扱っているかというふうに僕には思えてならないんです。

 その上で考えながら、私は今度の通常国会ではたくさんのことを尊敬すべき中山大臣、そして、しかも三千万人を超える人たちの代表ですから、その意味で真剣勝負の議論をするという意味で、私自身も昨年から引き続いて委員にさせてもらっています。

 ですから、昨年からことしにかけて百三十一の自治体の教育長と面談しました。そして、そのほか、行かれないところについては折々教育長にアンケートをとっております。その上で学校訪問も六十を超えるわけですけれども、大臣は三百校、これからみんなで手分けして学校訪問して、学校の現場を見よう、そういう姿勢をたびたびおっしゃっています。それはすばらしいことだと思います。

 その中で私が感じたことを申し上げると、意外に百三十一の教育長、三千の中の百三十一ですから大したことない。でも、アンケートをとったのは三百近いです、何回も何回もとって。ですから、そういうのを総合してみると、捨てたもんじゃないという言い方は失礼だけれども、真剣勝負ですね。

 例えば仙台でいうと、仙台の教育委員会では暴走族を一台も走らせないという決心のもとに、教育長以下、教育委員会の人たちが体を張ったんです。たまり場所に行って、それで解決しちゃったんです。今仙台には暴走族は一人もいないというふうに聞いています。それはすばらしいことだと思います。

 あるいは、きょうも二冊の本を持ってまいりました。皆さんの席にも恐らく配られたと思うんですけれども、「ほんとうの学校」、山崎愛子さんという、これは群馬県の小さな寒村の校長先生、去年やめた人なんだけれども、本をいただいたものだから、すぐ日曜日読んでこの方に電話しました。やはり感じとしてすばらしい先生でした。御主人は高崎経済大学の学長だそうですけれども。やめた後、今やりたいことはいっぱいあるんだけれども、御主人のお母さんが寝たきりだ、だから二十四時間介護しているんだというほどすばらしい人なんだ。この本の最後に、僕は感動したんだけれども、私の学校は日本一の学校を目指すということで締めくくっているんですけれども、そういう方もいらっしゃる。

 あるいは、コミュニティ・スクール法案、地域学校に関連して、京都市立の高倉小学校というのがあるんですけれども、京都の教育長からこれだけ立派な本を送っていただきました。私は懇意にしていますので送っていただいたんですけれども、特にコミュニティ・スクール法案とかボランティアとか、あるいは、いま一つ加えると、たばこ問題で全国を歩いていますので、その意味で送ってくれたと思います。

 そして、この高倉小学校というのは、お見えですけれども池坊の、まさに華道の発祥の地と言われている池坊があるところなんです。この町は物すごい繁華街で、そして歴史、文化いっぱいのところなんです。全く繁華街の真ん中の小学校ですから、コミュニティ・スクール、地域学校をつくるのにもってこいだということで、京都大学の大学院、教育研究所も近いということもあって、教授も大学院も全面支援ですね。そういうことでこの本をつくられて、日本一のコミュニティ・スクールをつくろうというものであります。

 これはまた参考までに後で大臣に見ていただければと思いますし、京都の教育長から送っていただいてもいいです。もし、望むならば送っていただいてもいいと思います。

 そういうことで、要するに全国の教育委員会を歩いてみますと、みんな真剣勝負している。学校の校長先生も、私はわずか六十校しか歩いていないけれども、みんな真剣勝負している。でも、問題になっている学力低下の問題とかあるいは非行の問題とかいろいろある。さっきちょっとたばこ問題で申し上げたんだけれども、これは非行化の第一歩である、お酒、たばこが。そのことで前年もたびたび質問させてもらいましたけれども、一向にとまっていないわけであります。そういったことをこれからも大臣とは議論していきたいというふうに思います。

 ところで、いわゆる財政論でどうしても質疑せざるを得ないということで申し上げますと、政府・与党の合意のもとで今度の法案ができ、同時に中教審にゆだねたということになるわけです。そして、先ほどもちょっと触れましたけれども、中教審というのが今度ぐらい大きな存在として私たちが認識しなくちゃならないかということの事例だと思っています。会長さんも、去年の段階ですけれども、もし義務教育費の問題が今言われているようなやり方で通るならば辞任も辞さないと言っていますね。会長が辞任すると言うんだから、副会長も右同感であると。あわせて委員の方々もと言っていました、去年の段階では。その委員の方々だけでも、今私の手元にある中教審の委員、そこにもおありだと思いますけれども、大分入れかわったんですか。会長は再任されましたけれども、その他はどの程度かわったんでしょうか。

銭谷政府参考人 第三期の中央教育審議会は二月一日に発足をいたしました。委員が現在のところ二十八人でございます。

 それで会長と副会長は、第二期の会長、副会長が継続をいたしております。それから委員につきましては、ちょっと今ぱっと数があれなんでございますけれども、半分近く新しい方にお入りをいただいております。

加藤(尚)委員 新しい方も入られて第一回が開催されて、第二回はいつになりますか。

銭谷政府参考人 中教審の総会、第一回を二月十五日に開催をいたしまして、第二回はまだ日は未定でございます。一方、義務教育特別部会は、先般第一回を開会いたしましたが、第二回は来週開催の予定でございます。

加藤(尚)委員 十月に答申しようということですけれども、今回、中教審そのものは何回程度予定していますか。

銭谷政府参考人 主として義務教育のあり方については特別部会で議論をするわけでございますけれども、特別部会をしばらくの間は月二ないし三回ぐらい開催する予定にいたしております。最終的にはことしの秋までに結論を得るということでございますが、大体しばらくの間は、今申し上げましたように月二回ないし三回ぐらいのペースで特別部会は開催して御議論いただくというふうに思っております。

加藤(尚)委員 この特別部会は、会長ないしは副会長が出席する会ですか。

銭谷政府参考人 この義務教育特別部会の部会長は鳥居会長が兼ねております。また、副部会長は木村副会長が兼ねて副部会長を務めておられます。

加藤(尚)委員 そうすると、秋まで待つまでもなく、もちろん義務教育費国庫負担問題だけを扱っているわけじゃないから当然いろいろ議論をするんですけれども、今度の出された法案については、去年の意思があるわけですね。だから、鳥居会長ほどの人が辞職も辞さず、辞職するとは言っていないんですよ、辞職も辞さずの決意、これはもう大変重い言葉だと思います。

 その意味で、この辞職を辞さずという部分について、そこにゆだねた。そして私の言葉で言えば、我々すべての国民の大げさに言えば全権大使だということになるんですけれども、政府・与党と違う答えが出る、先ほども議論されていますけれども、その予測は十二分にできると私は思いますけれども、事務局長の銭谷さんでもいいし、大臣、どうぞお答えください。

銭谷政府参考人 中央教育審議会の義務教育特別部会は、これから義務教育のあり方、その中には費用負担のあり方も含む問題について議論するわけでございますけれども、現段階で、どういう方向の結論になるか、それについてはちょっと申し上げるというわけにはいかないと思っております。

加藤(尚)委員 中教審については、この委員会すべての方々も、この義務教育費国庫負担堅持について昨年から議論されてきました。議事録を見ればわかることなんですけれども、同じ方向だと思っています。

 そうは言っても、政府・与党の法案でありますから、そういった意味で、与党の皆さんがこの法案を採決するときにどういう態度をとられるか。非常につらい思いでそこにいらっしゃると思いますけれども、それは別としても、やはり大臣を中心として文科省、そして我々も、中教審のことを一事が万事注目していく、そういう見方がありますよということを強く伝えておきたい。

 それは、先ほど申し上げましたように、私たちだけじゃなくて、少なくとも私が歩いた百三十一の教育長さん、これは知事は分権を言っているんです、でもそこの教育長が、義務教育は別なんだ、首をかけてもいい、このことをもしうちの知事がこれ以上積極的にやるなら、私は反対だから、あんたやめろと言われたらやめてもいいという都道府県の教育長もいたし、市町村の教育長もいたし、ある長野県の小さな村の教育長さんも同じようなことを言ったんだ。

 それぐらい現場では決心と決意が強いということを、きょうこういう公の場で伝えておきながら、この伝えたことが中教審、特に鳥居会長ほか皆さんに伝わるようにしていただきたいと思いますけれども、事務局長、どうですか。

中山国務大臣 先ほど来加藤委員が、私どももやっておりますけれども、本当に地方の意見を幅広く聞いておられる、このことについては本当に敬意を表したいと思っております。

 それで、私も全く同じように、知事会はああいうふうに言われますけれども、本当に地方の声を真摯に聞きますと、これは義務教育費国庫負担制度は堅持してくれという声が本当に強いということも、これも私も経済財政諮問会議等でも何度も発言したところでございます。今回、私ども文部科学省としてアンケート調査をしようということで今もう既に発送したところでございますが、これは保護者から子供から学校の先生、プラスいたしまして、要するに教育関係に携わっている教育長とかあるいは首長なんかにもお願いして、出して、話を聞きたい、こう思っておるところでございますが、そういった地方の声というのはしっかり踏まえた上で当然やっていきたい、こう思っているところでございます。

加藤(尚)委員 引き続き努力をお願いしたいと思いますけれども、一般財源化されてしまうとねということについては、きょうも、あるいは去年から引き続きずっと議論されていますけれども、多くは言いません。

 その中でも、一つだけちょっと気になるのは、耐震化の問題、これが重大問題だと思っています、日本は地震国ですから。その意味でいうと、耐震化ではゼロのところもあるし、あるいは一〇〇%近いところもあるし、このばらつきは物すごいんです。

 だから、耐震化のことについて、やはり一般財源にするとそういうことになってしまうという一つの事例なんだけれども、耐震化のことはちょっと不安ですので、銭谷さん、ちょっとお願いします。

中山国務大臣 この耐震化につきましては、予算委員会でも何度も取り上げられましたので私も記憶していますが、全体としてまだ四九%ぐらいしか耐震化がされていないということでございまして、いろいろな先生方も御要望がありますし、地方からも御要望があるわけでございまして、このことをしっかり踏まえてやっていきたいと思っています。

 何といいましても、子供たちが一日のほとんどを過ごす施設でもありますし、また、一たん災害が起こったときには地域住民の人の避難場所にもなるわけでございます。早く整備を進めていかなければいかぬ、こう思っているところでございます。

加藤(尚)委員 その中で、次の質問なんですけれども、地方財政法というのは御存じだと思うんですけれども、その十条です。やはり地方は地方で、二十六項目ある中で、一が義務教育、二が義務教育、三が義務教育と掲げて、四に生活保護の問題が書かれていますけれども、そのように、地方は地方できちっと義務教育の問題を掲げています。

 しかし、そうはいっても背に腹はかえられないということが必ず起きてしまう。今の地域格差のお話から、皆さんがおっしゃったのと同じような意味で、地域格差が出てしまう、そうすると公正公平ということがなくなってしまう。

 だから、今、世界の趨勢と逆行している日本の政治が、このことが、例えば十月に出た答申が政府の考え方と全く違うものが出た場合、これは倒閣に相当するんじゃないかと私は心配しているんです。ですから、それぐらいのやはり答申の課題だというふうに思っています。

 その意味で、その意識の中で、もし地方にゆだねるなら、民主党がたびたび申し上げているように、僕の言葉で言えば、政府・与党の三位一体改革の中で交付税の見直しということを言うなら、義務教育交付税とかあるいは義務教育税とか、そういう税の問題でちゃんと縛っちゃう、一般財源化の中でも縛っちゃう、こういうことを申し上げてきているんですけれども、このことについて、義務教育費の教育財源、文部省の言葉で言うと保障システムと言うんですけれども、文科大臣の見解をお聞かせください。

中山国務大臣 この義務教育関係の予算の重大さという要請はよく認識しておりますが、一政治家としては、例えば環境税だとか何とか税とかいういわゆる目的税については余り賛成じゃないものですから、ちょっと義務教育税について進めるという気はございませんが、国としてしっかりとした予算を確保すべきだという点では一致していると思います。

加藤(尚)委員 先ほども大臣が、いろいろあった、一〇〇%通ったわけじゃないけれども、少なくとも自信を持って言えることは、あるいは、大臣以下皆さんが自信を持って我々にも言っていただいていいと思いますけれども、問題はありますから後でちょっと言いますけれども、少なくとも、附則で今年度限りという限りという言葉をかち取ったということと中教審にゆだねたということは、私、大変な努力の結果だと評価しているんです、実は内心は。そして、一連の大臣の姿勢、決意、これも評価しているんです。

 だからこそ、かち取らなくちゃいけないんです。だからこそ、中教審でのいい答えを我々が待っているわけですけれども、我々が単に待っているだけじゃなくて、国民総意ということにならなくちゃいけないし、私はなると思うんです。ですから、中教審といえども、もし違う議論がされても、国民世論がどんどん高まっていって、そして、義務教育はほかの国のように国庫負担だというふうに改めて、世論が盛り上がるということを強く私自身は望んでおります。

 それについて再度お答えをということはつらい要求ですから、これはしません。だけれども、再度申し上げますけれども、附則の中にきちっととどめた、そして、十七年度限りということと中教審、これを二つ相当粘ったと思います、想像ですけれども。だから、そのことを我々は評価したいと思っています。

 その上でですけれども、附則というのは、調べてみたら最近では八項目ぐらいの附則表示がありましたけれども、どれもこれもやはり憲法に抵触するようなものではないと思います。その意味で、今回の附則はやはり憲法に触れることだから、附則で終えたということに対しては、実は不満もあるし、不安がある。でも、戦術的にはやむを得ないというふうに思っています。

 その意味で、だんだん時間がございませんけれども、中教審の鳥居会長、正副会長、あるいは委員の方々、そして、私、中でも物すごく注目したのは、あのノーベル物理学賞をとられた方ですね、小柴先生、ノーベル賞を受賞された小柴先生、地方財政の三位一体改革で知事会が廃止を求めたという項の中で見解を求められて、やはり我々と同じ考えを持たれたわけですね。やはり何といったって、ノーベル賞をとられた方が我々と同じ気持ちで意見を言われたということでありますので、その意味で、これも重く受けとめていらっしゃると思います。どうか中教審の諸先生にも、去年でありますけれども、このことはやはり再度資料として出してほしいと思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 御指摘のように、小柴先生を含む、全部で何名でしたかね、三十名近い方だったと思いますけれども……(加藤(尚)委員「二〇〇四年十月二十一日」と呼ぶ)ああ、そうですね。小柴先生とか文部大臣も務められた有馬先生とか本当にそうそうたる方々が、義務教育費国庫負担堅持というふうなことについての緊急メッセージを出されたということについては、本当に重く受けとめております。

加藤(尚)委員 小柴先生もそうですけれども、繰り返して申し上げておりますけれども、今回の法案については、一文科省で法案審議だけではない、全国が注目している、しかも三千市町村の教育長を初めとして、三万五千の学校長を初めとして、そして親も含めると三千万人以上の人が注目した法案審議だというふうに重ねて私は強く申し上げておきたいと思います。よって、こういう場で言う言葉じゃないかもしれないけれども、心して今後の中教審の会議の行く末を見ていきたいと思っています。

 よって、最後の質問になると思うんですけれども、中教審の議論の中身というのは全く伝わってこないんです。ホームページである程度理解するんですけれども、いわゆる中教審のやりとりそのものは我々がきちっと具体的に聞くチャンスがあるかどうか、お聞かせください。

銭谷政府参考人 現在、中央教育審議会は審議を原則として公開して実施をいたしております。また、会議の議事録等についてもホームページ等で公開をしておりますが、私ども、今後とも、審議の状況についてはできるだけつまびらかにするように努めてまいりたいと思っております。

加藤(尚)委員 中教審の会議はそうだと思いますけれども、部会はどうですか。

銭谷政府参考人 これは総会に限らず、義務教育特別部会でも同様でございます。

加藤(尚)委員 今後、しっかりと注目しながら、私自身もいろいろな機会にその議論をより多くの人たちに伝えていきたいというふうに思っております。

 きょう質疑したことは、言葉を大事にしようということもありますけれども、いわゆる教育論、今本当に、これからゆとり教育のことも議論は真剣にしなきゃいけないんだけれども、それぞれの自治体あるいはそれぞれの教育委員会、それぞれの学校で死ぬ思いでやりながら、文部省が出された指導に対して真剣に受けとめてスタートする、そうするとまた次の注文が来る、また次の注文をする、そういう現場の混乱も私は身をもって知ってきたわけであります。

 よって、最後に一言申し上げますけれども、学力低下問題だって、決して、授業数が減ったから学力低下した、こういう議論は議論としてあると思います。しかし、それ以上に、それを超えたことをそれぞれの地域でやっているということも知っておかなくちゃいけないと思います。そのことは次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

中野(清)委員長代理 武山百合子さん。

武山委員 武山百合子です。

 きょうは本当に、一年以上たちますかね、文科で質問する機会がなかったものですから、きょうはいいチャンスだと思いまして、最後のトリをしたいと思います。あと四十五分間皆さんにおつき合いいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、きょう総理大臣が来られまして、これからの教育に対して、地方にできることは地方にという理念で、国の関与を縮小して、地方の権限そして責任を拡大するということを以前から言っておるわけですけれども、この総理大臣のいわゆる教育に対する青写真に対して、文部科学大臣として、実際に実行する立場なわけですけれども、総理大臣からどんなことをやるようにと言われているか、中身をぜひ聞かせていただきたいと思います。もちろん、先ほどから議論しておりましたように、お金の面も一緒にお答えいただけたらと思います。

中山国務大臣 お答えいたします。

 文部大臣を拝命いたしましたときに総理から手渡されたメモでございます。

 一つは、義務教育費国庫負担金などの文科省関係の補助金については、地方からの改革案を真摯に受けとめて積極的に見直しに取り組まれたい。

 教育基本法問題については、精力的に与党間の協議を進め、取りまとめに努力されたい。

 体験学習や習熟度別指導の促進、高等教育の活性化など、人間力向上のための教育改革をさらに前進されたい。

 教育分野における規制改革については、規制改革・民間開放推進会議の中間取りまとめで指摘された重点事項の実現を図られたい。

 職業教育の推進など、若年者の自立、挑戦を支援するための実効性ある施策を関係各大臣と連携しつつ進められたい。

 科学技術創造立国の実現に向けて、厳正な評価に基づいた重点的な研究開発の実施、産学官連携などを積極的に進められたい。

 国民スポーツ担当大臣に協力してスポーツの振興のための施策を推進されたい。

 このようなメモを手渡されました。

武山委員 今まで総理は文科大臣に対して、いろいろ今のようなお話をぜひ実行してほしいということで言ってきたと思いますけれども、文科大臣が拝命を受けて、今その内容はどのように進み出しましたでしょうか。その内容についてぜひお話しいただきたいと思います。

中山国務大臣 一つ一つ御説明すると時間が長くなりますが、主な点を申し上げますと、まず補助金、いわゆる三位一体改革につきましては、地方からの改革案を真摯に受けとめ、積極的に見直しに取り組まれたい、このことがございまして、来年度予算で四千二百五十億円の削減、暫定ではございますが、このことが盛り込まれたわけでございます。

 さらに、教育基本法問題につきましても、これは与党間で本当に精力的に議論いただいておりまして、私としては、できるだけ早急にこれを国会に提出したい、このように考えております。

 それから、人間力向上のための教育改革をさらに前進されたい、こういうふうな指示もございましたものですから、これにつきましては、教育改革を今全省を挙げて取り組んでおるところでございます。

 それから、規制改革につきましても、これは特区の問題もございまして、まさに弾力的に、前向きに取り組んでいるところでございます。

 それから、職業教育の推進など、若年者の自立、挑戦、これにつきましても、具体的に、若者自立・挑戦プランに基づきまして、来年度予算に計上させていただいているところでございます。

 それから、科学技術創造立国の実現に向けて、厳正な評価に基づいた重点的な研究開発の実施、産学官連携などを進められたい、これにつきましても、御承知のように、来年度予算におきまして、本当に苦しい財政事情の中ではございますが、大幅な予算増を認めていただいているところでございます。

 それから、スポーツ振興につきましても、スポーツの拠点づくりというのを一生懸命実施しまして、相当な数の拠点づくりが進んでいるところでございます。(発言する者あり)

中野(清)委員長代理 速記をとめます。

    〔速記中止〕

    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕

斉藤委員長 速記を起こしてください。

 質疑を続行いたします。武山百合子さん。

武山委員 何かちょっと出ばなをくじかれたような。やはりこれはあくまでも政権与党自民党と政府の方から出てきた法案ですので、しっかり出席して審議しなければいけない大切な義務教育費国庫負担の改正案の法律ですので、しっかりとみんな審議しなければいけない、我々一人一人委員にとっては義務があると思います。

 それでは続きを、まず、国の関与を縮小して地方の権限をどう拡大するのか、中身をもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。

中山国務大臣 小泉総理が先般、「教育の地方分権を進めることは重要な課題」としながら、「国は、全国的な教育水準の確保と教育の機会均等についての責務をしっかりと担いつつ、その上で、各学校が保護者や地域住民の声にこたえ、創意工夫を行えるよう、市町村や学校の裁量を拡大していきたい」、このように述べられているところでございまして、私もこの総理のお考えについては同様に考えております。また、地方分権の重要性についても十分に認識しているところでございます。

 これまでも文部科学省は、教育長の任命承認制度を廃止するとともに、教育課程の基準の大綱化、弾力化や義務教育費国庫負担金へ総額裁量制を導入するなど、地方の自由度を大幅に拡大してきておるところでございます。また、人事や予算に関する学校の裁量拡大も推進してきているところでございます。

 今後とも、国は、全国的な教育水準の確保とそして教育の機会均等についての責務をしっかり果たしながら、現場主義を徹底して、現場の創意工夫が生かせるような教育改革に積極的に取り組んでいきたい、このように考えております。

    〔委員長退席、中野(清)委員長代理着席〕

武山委員 それでは、地方にとって権限は、この意味というのは前とどれだけ違うんですか。総理大臣が行おうとしている、地方を中心にしたこのいわゆる権限の拡大というのは以前とどのように違うんですか。言っていることの内容が、以前と今とどう違うんでしょうか。地方の権限を拡大する、裁量権を拡大する、財源も渡す。では、今までと新しく改正することと、それから権限と、どう違うんですか。前とこれからとの大きな違いをぜひ御説明いただきたいと思います。

中山国務大臣 今までとこれからということは、この法案に関してですね。

 法案に関しましては、先ほど申し上げましたが、四千二百五十億を十七年度に暫定的に削減するということでございまして、そのことに関しましては、まさに地方側の意向を踏まえたものでありますが、このこと自体はすぐどうこう変わるということではないというふうに考えております。

武山委員 国民が一番気にしていることは、内容なんですよ。義務教育の本質、根幹そのものをちょっと私は聞きたいんです。お金のことは十分。何しろ、今緊縮財政であるということで、あちらこちらから持ってきてこうだ、これはもうお金のことはわかっているんです。

 お金じゃなくて本質論で、今までとこれからがどう変わるのか。地方の裁量権、地方のいわゆるここでうたっている権限、責任、では、そこの部分が今までどのくらいあって、今度はどのくらい広がるのか。今までなかったのか、あったのか。その辺も詳しくお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 今回の法案については、金額が、四千二百五十億が削減されるということでございまして、地方分権の流れというのは、これまでも文部科学省としてもやってまいりましたし、これからもやってまいる、そういう流れの中にあると考えておりまして、今回のことでどこかが大幅に変わったとか、そういうようなことではないと考えております。

武山委員 そうしますと、これですと、地方の権限、責任を拡大するということは、お金だけの話のように聞こえるんですけれども、お金が中心なんですか。それとも、地方の裁量権を、本当に実質的に権限とそしてお金とついて、その地域が主権になった方法でできるという意味なんですか。

 今まで国が関与してきて、なかなか自分たちで権限と財源を持ってできない。すなわち、例えば学校の先生も県が採用しますよね、でも、今、その地域地域によって、個性を生かしたい、歴史的なものを本当に中心に据えた教育をしたい、そのときに、やはりできなくなっているわけですよ。画一的な方向にずっと来ちゃったわけですよ。

 実際は、裁量権というものは前からあったわけですよね。でも、実際に機能していなかったわけですよ。機能していたんでしょうか。硬直してきた問題というのは、どこに原因があるんですか。

 それをやはり、きょうは私は本質論を議論したいと思いますので、この権限というもの、責任というものは、きょうのお話ですと法案ではお金という、すなわち財源のような、でも、権限、責任、この本質論なんですよね、義務教育の一番したいのは。そして、一番していないのもここの部分なんですよ。お金は国が全部出すのか部分的に出すのかというのは、本質的なものが決まれば、お金は後からついてくると私は思っているんですね。

 今、緊縮財政の折で、こういうお金の出し方しかないということで、法改正をしてくれということが出ているんですけれども、お金ではなく、私は、義務教育の教育の本質を聞いているんです。

中山国務大臣 地域に応じた特色ある教育を実現するためには、できるだけ市町村や学校に権限を移して、それで学校や地域がみずから創意工夫をして、責任を持って教育が実施できるようにしていくこと、これが義務教育のまさに地方分権だろう、こう思っているわけでございまして、そういう意味では、文部科学省もこれまで総額裁量制というようなことをやったり、さっき言いましたけれども、教育長の任命についても地方に任せるとか、そういうことをやってきたわけでございます。

 先ほど言われました先生の任命、これについては、今都道府県が持っているんですけれども、これをもっと市町村、広域に渡せないか、そういったこれからのことについては、今中央教育審議会におきまして都道府県と市町村の関係のあり方についても審議が行われているわけでございまして、まさに御指摘のように、今都道府県が有しております教職員人事に関する権限とかあるいは学級編制とかあるいは教職員定数に関する権限を市町村に移譲することなどにつきまして、今中央教育審議会で議論をいただいているということでございます。

武山委員 そうしますと、ここで地方の自立を可能にしと書いてあるんですね。それで、一層の地方分権を進めていく。地方の自立というものは、個人の自立、それから地方の、ここでは地方の自立は財源のことを言っているんだと思いますけれども、地方がみずから権限と財源を持って、では、自由にできるということですか。全く自由にできるということですか。

 先ほど、教職員の採用は県が今持っているから、地方にできるようにしたいというふうに言っていましたけれども、あらゆるいわゆる自治事務で、やはり国の機関委任事務という形で事務をやっていますね。それは結局、権限は国が持っているわけですね。それは、もちろん人事権、それから給料だとか財源、それも最も大事なんですけれども、もっと子供の教育の、義務教育の根幹に対してはどうなんですか。

中山国務大臣 地方事務ということ、これにつきましては、平成十二年度の地方分権一括法で規定されたわけでございますが、実際に自治事務というのがどういうものか、これはさまざまな性格を有する事務の総称でございまして、地方公共団体がどのような裁量を有するのか、国がどのような関与を行っていくことができるか、これはそれぞれの法令とか規定によって定められているものでございまして、全部地方といいますか市町村ができるということではない、このように思っていまして、国が一切の関与もできないということではなくて、国の責任としての基準を設定したり必要な財政負担を行うことは当然であろう、このように考えております。

武山委員 私も、子供たちの教育の根幹である、将来、日本の子供たちをどう育てるかという義務教育の教育の基本法、その基本法はやはり国がつくるべきだと思います、私自身は。

 それで、地方でできる裁量、今、財源は十分議論してまいりました。しかし、自治事務の中で事務的なことというのは、もう国がやっても地方がやっても、それはどちらでもいいと思うんですよね、ペーパー上の機械的なことは。

 しかし、もっと根幹である、本当に生き物を育てるわけですよね。子供を育てる、その基本的な、すなわち根幹の義務教育そのものに対する権限そして責任、それをどれだけ拡張するのかということですね。その辺に対して大臣が思っていることを言っていただきたいと思います。

中山国務大臣 根源根源と言われると、何が根源か、私もよくわからないんですけれども、私は、義務教育に関しましても、国と都道府県、市町村、また地域とか家庭とか学校とか、いろいろなところがそれぞれの役割分担に応じて責任を持ってやるべきだ、こう思っているわけでございまして、何もお金だけの問題じゃございませんが、しかし、地方がそれぞれ自主性を持ってやろうとしても、先立つものがなければ困るわけでございますから、その辺のことについては国が最終的には責任を持つということではないか、このように考えております。

武山委員 ずっと一般財源化したいということで、地方も望んで、ある部分、一般財源化したわけですよね。この法案でするわけですよね。しかし、地方は、自由度のある財源というものは、お金の方はそういうものを求めているわけです、ある程度お金は自由に使いたいと。

 でも、裁量権の中身の議論をちょっとしたいと思うんですね。裁量権なんですけれども、今文科省はどのくらい裁量権を地方に移譲したいというか、権限を渡したいと思っているんでしょうか。その裁量権の中身なんですね。

中山国務大臣 人事に関する学校裁量の拡大ということを御説明いたしたいと思いますけれども、市町村立の小中学校等のいわゆる県費負担教職員といいますけれども、この人事につきましては、まず校長が市町村教育委員会に対して意見具申を行って、さらに市町村の教育委員会が都道府県教育委員会の方に内申を行う、その内申をもって都道府県の教育委員会が人事を行う、こういうふうになっているわけでございます。これは、あらゆる地域で必要な人材を確保したり、広域的な人事によりましてバランスのとれた配置を行うなどの観点から、最終的な人事権は都道府県の教育委員会にあるということにされているわけでございます。

 一方、今委員の御指摘のように、現場の裁量権限をふやしていくという観点に立ちまして、国におきましては、平成十三年に、教職員人事に関する校長の意見を市町村の教育委員会の内申に添付して、その意見の一層の反映を図る法改正をしたところでございます。

 また、各教育委員会におきましては、例えば公募制とかあるいはFA制などの取り組みが行われているところでございまして、公募制というのは、御承知のように校長先生を民間から採用するとか、FA制につきましては、一定の条件を満たす教員が異動を希望したりした場合、受け入れを希望する校長との協議が調えばその学校に異動する人事が行えるということで、できるだけ教育現場の意見が反映できるようにということになってきておるところでございます。

武山委員 そうしますと、人口にもよりますけれども、村とか町とかでも人口の少ないところは難しいかと思いますけれども、ある程度の人口のところでは教育委員会がみずから人事権を持って、自分の町にはこういう教師が欲しいとか、あるいは逆に先生があの町に勤めたいとか、そういうことで採用ができるようにこれからなっていくわけですね。

 今、それはどのくらいになっているんですかね。いわゆるプランとしては、今までの経過を見ますと、すぐにはならないと思います。ある程度、特区だとかあるいは人口の多いところだとか、また、まとまった広域で教育をやれるようにもこれからなっていくんだと思うんですね。それで、実際に人事権を持っているところはどのくらいあるんでしょうか。

中山国務大臣 私も、自分たちの子供は自分たちの地域で、地区で育てる、これが基本だろうと思うわけでございます。

 先ほど申し上げましたが、人事権を都道府県が握っているのじゃなくて市町村、だけれども、それも小さな村はどうかと思いますから、ある程度広域で採用したり、任用したりできるようにするのが望ましいかな、こう思っているわけでございます。今特区という形で市町村でもできるようになっていますが、全体につきまして、今、中央教育審議会において議論をしていただいているところでございます。

武山委員 そうすると、特区以外はその中央教育審議会の議論を待ってするという方向なんですか。

 どうして文科省が、例えば、自分たちはここで、自分たちの町の自立ということで、自分たちが採用したいというところもあると思うんですよね。そういうところはないんでしょうか。

中山国務大臣 今まさに、文部科学省もそういう方向でやっていこうということで、今申し上げましたように、内申制度を変えたり、あるいは特区で認めてみたりとか、いろいろやっているわけでございまして、これにつきましても、やはり中央教育審議会の議を経るべきだろうということで、今検討いただいているところでございます。

武山委員 正直言って、ちょっと情けないですね。数が少ないということですね。特区以外はほとんどまだ申請もない。

 いろいろなことを今大きな変わり目でやろうとしている、また、進み始めているという中ですけれども、あらゆるところにチェックをして、新しい教育の根幹をつくらなきゃいけないということで、日夜みんなが思っておるわけですね。

 今一番やってもらいたいのは、地元に行きますと、やはり教育なんですよ。年金もそうだけれども、教育を考えてほしい、あしたの子供たちのことを何とかしてほしい。ですから、そこは本当に真剣になって、そこのところは裁量権というものを本当に拡大していくということが必要だと思います。

 今、ちょっとそういうデータを持っている方がそばにおりまして、十九カ所しかない、そういう申請が出ているのはと言っております。ですから、数にしたら、小中学校の数が相当ある中の本当に十九校しかないとなると、これから大変だということですので、ぜひともそこの決意をお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 まさに、こういうふうな面に関しての分権化というのはもう急速に進んでいくのだろう、こう思うわけでございまして、私どもも、中央教育審議会の議論を経てできるだけ早くそういった方向に進めてまいりたいと考えております。

武山委員 いや、できるだけ早くというのは、非常に都合のいい言葉であって、それでいてだれにでも言える言葉であって、それでなかなか進まないというのが、決意を聞くのに、できるだけ早くというのは、また本当に日常的な言葉で言われたら、やはり皆がっかりするわけですよね。ですから、そこをしっかりと肝に銘じて、地域に合ったそういう裁量権の拡大、そして、人事権を持って、その町に勤務したい、あるいはこういう先生を雇いたい、そういう希望を、地域の現場の声にやはりこたえていく、これが今、小泉内閣の地方への分権化という大きな柱なわけですね。ですから、声だけで中身が伴わないというのは、やはり非常に強く感じます。

 そういう中で、全国的な教育水準の確保とか、それから、ここでやはり小泉総理が答弁している中で、教育の地方分権を進めて、先ほど大臣が言いましたように、現場の裁量でこれから変えていく。しかし、変えていく、変えていくと言いましても、基本的なものがまだ議論されていないわけですけれども、教育の憲法と言われます教育基本法についても聞きたいと思います。

 この教育基本法は、今後どのようなプランで国会に提出されますでしょうか。

中山国務大臣 御承知のように、教育基本法に関しましては、平成十五年の三月、もう二年前でございますが、中教審の答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」におきまして、国と地方が適切に役割分担しながらそれぞれの責務を果たすことについて、新たに教育基本法に規定することが提言されているわけでございます。この提言を受けまして、現在、与党の教育基本法改正に関する協議会におきまして精力的な検討が進められているわけでございます。

 文部科学省としては、今後とも、国民的な議論を深めながら、中央教育審議会の答申及び与党における議論を踏まえて、教育基本法の速やかな改正に向けてしっかりと取り組んでいきたい、このように考えております。

武山委員 今の答弁を聞きましたら、前の答弁と一緒で、本当にいつ出てくるのかなということなんですね。今平成十五年というお話ですけれども、十六年、もう十七年。

 そして、今、教育の現場のことはもう本当にだれもが周知の状態だと思うんですよね。みんな待っているんですよ、本当に。事件が起こると、そのとき対症療法で終わり。幾つも幾つも学校で事件が起きたり、子供たちが校外で事件に巻き込まれたり、また中学生、高校生が、自分が殺人を犯したり、自分が被害に遭ったり、もう本当にあきれ返るほど量が多いわけですよ、そういう事件の件数が。そういう中で、今の答弁を聞いていますとがっかりします。

 本当に教育基本法が、与党の中で議論されていることはもちろん周知です。しかし、どのような方向性でこれから提出していくのか、その辺はっきり聞きたいと思います。今の答えでは非常に残念です。もう少し道筋を聞きたいと思います。

中山国務大臣 まさに私も、本当に一日も早く出したい、議論していただきたい、そういう思いで各方面に働きかけているところでございます。

武山委員 また自民党政権の同じようなやり方かというふうに思うんですよね。いつもかけ声だけで、もう本当に遅々として進まない。何がネックなんですか。

中山国務大臣 この教育基本法の改正というのは、戦後一回も行われていない、しかし、やはり教育改革をいろいろと進めてまいりますと、どうしてもこの教育基本法の改正に突き当たるわけでございます。

 ですから、一日も早い改正をしたい、こう思っているわけでございますが、それだけ非常に重い法律、基本法でございますから、私は、国民的ないろいろな議論を踏まえ、いろいろな声を聞きながら、改正する以上は本当にすばらしい基本法をつくるべきだ、こう思っているわけでございまして、まだ議論が調わないうちに見切り発車とかそういうことはしたくない、できるだけ皆さん方のいろいろな合意を踏まえた上でやっていきたい、こういう思いがあるものですから、今のところ、もう少し待っているというのが実情でございます。

武山委員 百も承知かと思いますけれども、欧米の憲法、本当に長い時間の中で、もう数年で、一年でつけ加えて、スクラップ・アンド・ビルドでみんなできているんですよ。戦後六十年間やはり何も変えてこなかったというところに大きな問題があって、そこをほとんど変えてこなかった、何も変えてこなかったから、今大変なわけですよね。

 ですから、今からの問題としまして、問題が起こったときは常に変えていく、そういうことを後世に残していかないといけないと思うんです。変えないから変えられないんですよ。ですから、問題があったらその都度、難しく考えないで、もっと子供たちのことを、日々犠牲者が本当に出ているわけですよ。時間を延ばせば延ばすほど、みんな硬直状態なんですよ。元気が出ないんですよ。そして、手をこまねいているんですよ。そこの一番の根幹がおくれているために、本当に閉塞状態なんですよ。

 ですから、そこは勇気を持って、意見はもう十分出尽くしていると思います。六十年間の反省、六十年間の中でよかったこと、全部もう現実にあるんですよ。その中で、あとは政権与党が、私たち残念ながら野党ですので、政権与党が決める、決断する、それだけなんですよ、問題は。本当にもう百年の河清を待たないとできない、そういう印象なんですよね。

 ですから、そういう印象を国民に持たせて、一番子供たちに、本当にあしたの私たちを支える子供たちに、やはり勇気と夢を与えられないという現状は、解決しなきゃいけないと思います。

 もう一回、教育基本法はどうなるのか、聞きたいと思います。

中山国務大臣 変えてこなかった、変えられなかったということだろうと思うわけでございまして、確かに外国と日本は違うわけでございますけれども、もう少し憲法なんかについても自由に改正できてもいいのかな、そんな思いもございますが、憲法そしてこの教育基本法というのは非常に重い法律である、私はこう思っているわけでございます。

 しかし、実態を知れば知るほど、本当に教育基本法、早く改正して、そして、まさにおっしゃいました、これからの時代を生きる子供たちのために私はしっかりとした教育を授けたい、その基本になる教育基本法の改正については、本当に速やかに国会に提出したい、こう思っております。当委員会にも、保利座長もいらっしゃいますし、公明党の方々もいらっしゃるわけでございますが、今精力的に議論を詰めていただいている、こう思うわけでございます。

 また、先般は、文部科学省に対して、草案をつくってみろ、こういう御下命もありまして、今、文科省の方でも草案作成をやっているところでございますので、できるだけ早く国会に提出できるように精力的に進めてまいりたい、このように考えております。

武山委員 それでは、もう一つ、青少年健全育成にかかわる家庭の価値と役割ということで、私は、この青少年健全育成基本法、これからの本当に大きな変わり目に、新しい教育基本法と同時に、名前もこれでいいのかなという疑問はありますけれども、いわゆる文科省にかかわる青少年健全育成基本法、これについて今どんな考えを持っているか、中山文科大臣にお聞きしたいと思います。

中山国務大臣 これは、子供は社会の宝、国の宝、小泉総理も所信表明でも言われましたが、未来に向けてみずから行動し、新しい時代を切り拓いていく心豊かでたくましい日本人の育成に社会全体の責任として取り組む必要がある、このように考えているところでございます。

 このため、文部科学省におきましては、平成十五年十二月に策定されました政府の青少年育成施策大綱を踏まえまして、教育の原点である家庭教育に対する支援の充実のため、さまざまな機会を利用した家庭教育に関する学習機会の提供とか、学校教育における道徳教育や体験活動の充実、子供たちがスポーツや文化活動などの多彩な活動ができる子供の居場所づくりへの支援、あるいはまた、社会教育における青少年の自然体験や社会体験活動の推進、こういったことを通じまして、家庭、学校、地域を通じた青少年の健全育成を推進しているところでございます。

 今後とも、関係省庁と密接な連携を図りながら、青少年の健全育成施策の一層の充実に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

武山委員 家庭の位置づけ、社会の位置づけ、地域の位置づけ等、地方は大変待っているわけですね。私も、去年、青少年問題特別委員長をしまして、そのとき、やはりこれはつくりたいなとつくづく地方の声を聞いたとき思ったんですけれども、地方は大変待っています。本当に地方は待っています。やはり国の関与が今まで大きかったということで、地方は、もう手も足も出ないような状態で教育を行ってきているというような印象が非常に強いんですよね。でも、国は、地方には裁量権があるんだ、あるんだと言いながら、実際は、地方はその裁量権のなさで、なかなかできないものが教育の現場というのはすごく多いんですよ。

 ですから、この健全育成基本法、これは地方が大変待っている。これはやはり認識していただいて、早急に、実は民主党はこの件に対して別な考えを持っているものですから、対案という形で出るかと思いますけれども、これも早急に議論していただきたいと思います。

 それから、ジェンダーフリーのこともちょっとお聞きしたいと思います。

 このジェンダーフリー、すなわち女性とか男性とかというこの性、それをフリーですから、自由にするというわけですね。ですから、男性とか女性とかないということで、内閣府の方で、男女共同参画ということで、大人の社会は、この法案をつくった精神、目標、いろいろあると思うんですね。しかし、このジェンダーフリーという問題が学校教育の現場にも入ってきて、本当に混乱をしているというのが現場の声でもあるわけですね。

 その中で特によく言われることは、クラスの生徒の名前を男女別々につくるクラス、それから混合のクラス、私は、そういう意味では、どちらでもいいと思っているんですね。それはクラスが本当にやりたい方向でやったらいいかなと思っておるんですけれども、そういうことも手とり足とりきちっと、こういうふうに決めてほしいとか決めないでほしいとか、いろいろ言っているわけですね。

 それから、小学校の現場では、男の子、女の子、その名前を呼ぶとき、さんづけ、君づけ、そういうことも私自身は、クラスで、男の子だったら何々君、女の子だったら何々ちゃん、小学校だったら、大体そういう関係の中で、子供同士の中で生まれてきて、先生がどう呼ぶかはまた別問題ですけれども、そういう中で、いわゆる名簿の問題、それから呼び方の問題とか、これは一つの事例ですけれども、これに対してどう思っているか、ちょっと見解を聞きたいと思います。

    〔中野(清)委員長代理退席、委員長着席〕

中山国務大臣 その前に、青少年健全育成法案について、武山委員いろいろ御尽力をされたということは聞いておりますが、これは議員立法ということでございますから、私どもとしてもぜひ早くこういった法案が成立するように御尽力いただきたいなと、個人的に考えておるところでございます。

 それで、ジェンダーフリーのことについて御質問がありましたが、私自身は、このジェンダーフリーという言葉は余り使いたくない、使う人によっていろいろ意味するところが違ったりするものですから、教育現場でも混乱しているというのが実情じゃないか、こう思っているわけでございます。

 男女共同参画社会、これは賛成でございまして、これは性別にかかわりなく個性と能力が十分に発揮できる社会、そういう社会を目指すものであります。男だからとか女だからという理由で特定の型にはめ込む、はめ込むことによって本来持っている可能性を狭めることのないように広く個性を伸ばしていく、これは非常に重要である、このように考えております。

 文部科学省といたしましても、男女共同参画社会の実現に向けて、性別に基づく固定的な役割分担、そういう意識にとらわれることなく、人権尊重を基盤とした学習、教育の充実に努めているところでございます。

 そこで、さんづけや君づけの呼称でございますけれども、これは本来個人の自由の問題じゃないか、こう思うわけでございまして、学校等において使用される場合には、学校において、現場現場において適切に判断をされるべき問題ではないかなと。文部科学省として一律にこうしろああしろと、まさに今現場ということで言われましたけれども、現場の裁量といいますか、これは現場で判断していただきたいし、こんなことまで文科省が口出しをするようではとてもとても地方分権には反する、このように考えております。

武山委員 大臣と一点だけ一致しました。このジェンダーフリーという言葉は、私も使いたくありません。子供たちの教育の現場では使うべきじゃないと思います。しかし、大人の方はまた性の差ということで、また男らしさ、女らしさとかというものもかかわってきて使い方はいろいろあると思いますけれども、少なくとも子供の現場は私も使うべきじゃないというふうに思っております。この点は、はっきりときょうここで言えたということはよかったと思います。

 それでは時間でございますので、最後のトリ、皆さん長いことありがとうございました。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十三分散会


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