衆議院

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第14号 平成18年4月18日(火曜日)

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平成十八年四月十八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 遠藤 乙彦君

   理事 小渕 優子君 理事 大前 繁雄君

   理事 小島 敏男君 理事 西村 明宏君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      飯島 夕雁君    小川 友一君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      川条 志嘉君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    坂本 剛二君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      永岡 桂子君    西本 勝子君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      馬渡 龍治君    矢野 隆司君

      山本ともひろ君    吉野 正芳君

      奥村 展三君    末松 義規君

      田中眞紀子君    松本 大輔君

      山口  壯君    横山 北斗君

      笠  浩史君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   参考人

   (品川区二葉すこやか園園長)           大竹 節子君

   参考人

   (白梅学園大学・白梅学園短期大学学長)      無藤  隆君

   参考人

   (帝京大学文学部教授)  村山 祐一君

   参考人

   (東洋大学社会学部教授) 森田 明美君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     矢野 隆司君

同日

 辞任         補欠選任

  矢野 隆司君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

四月十八日

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(坂本剛二君紹介)(第一四九六号)

 教育基本法の改悪に反対することに関する請願(仙谷由人君紹介)(第一四九七号)

 同(金田誠一君紹介)(第一五一一号)

 同(保坂展人君紹介)(第一五一二号)

 同(阿部知子君紹介)(第一五九七号)

 教育基本法の改悪に反対し、教育基本法を生かすことに関する請願(保坂展人君紹介)(第一五一〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五九三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五九四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五九五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五九六号)

 教育基本法の改悪に反対し、人間が大切にされる社会と教育を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五八八号)

 同(石井郁子君紹介)(第一五八九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五九〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五九一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一五九二号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(笠浩史君紹介)(第一六五一号)

 行き届いた教育を進めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一六五二号)

 視覚障害教育・職業教育を守ることに関する請願(笠浩史君紹介)(第一六五三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案(内閣提出第五八号)


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案及びこれに対する高井美穂君外一名提出の修正案を一括して議題といたします。

 本日は、本案及び修正案審査のため、参考人として、品川区二葉すこやか園園長大竹節子さん、白梅学園大学・白梅学園短期大学学長無藤隆君、帝京大学文学部教授村山祐一君及び東洋大学社会学部教授森田明美さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず大竹参考人にお願いいたします。

大竹参考人 皆様、おはようございます。東京都品川区から参りました二葉すこやか園の園長をしております大竹節子でございます。

 きょうは、お手元に、二葉幼稚園そして二葉つぼみ保育園、同じ屋根の下に入って、「二葉すこやか園 プラン」というのを資料として御用意させていただきました。

 二葉すこやか園は四年前、区立の二葉幼稚園の余裕教室を活用して、二葉つぼみ保育園を併設し、品川区型の幼保一体化施設として誕生しております。その後、平成十四年度からは総合施設モデル事業の対象施設の指定を受け、変化する時代の保育ニーズに応じた教育、保育の事業展開をしているところでございます。

 本日の意見陳述では、幼児の最善の利益を中心に据えた総合施設の事業展開に論点を当てまして、二葉すこやか園の運営の状況を紹介しながら、就学前の教育、保育を一体としてとらえた総合施設のあり方について、四年間の私どもの園の実践を土台として、今後の望ましい方向とあり方についてお伝えしたいと思います。

 私は、総合施設誕生の意義を次のように考えております。

 全国的に見ましても、これまで幼稚園、保育園の一体的な運営が少しずつ推進されてまいりました。今後は、総合施設の開設をきっかけに、幼稚園、保育園相互の垣根を低くした連携が求められていくことでしょう。また、一人一人の子供の育ちを支える教育の充実を目指すとき、乳幼児教育のあるべき姿を地域の人々にモデルとして示し、教育、保育、子育て支援の機能を果たす視点から、しっかりとした理念を持って運営されていくことが重要であると考えています。

 その一つ、教育機能では、学校教育の始まりである幼稚園教育の蓄積を土台に、その充実、発展が原動力となります。教育課程編成、指導計画の作成、環境の構成など、教育、保育の視点で専門性を生かし、多様な保育ニーズに応じた方向性を見つけて、幼児教育を高めていく必要があります。

 ところで、今の時代の保育ニーズ、特に若い子育て世帯が多く求めているものには三つあると思います。

 その一つは、時間のニーズです。今より少しでも長く子供を預かってもらいたいという、時間へのニーズ。それから、保育の機能に対するニーズもあります。困ったときに子供を見てほしい、ちょっと子供を預けたい、一時保育、それから休日保育、それから、親御さんのリフレッシュのためのオアシス保育もあります。そして、最近高まりを見せているのは、三つ目のニーズ、教育、保育の質を求めるためのニーズです。少子化で、各御家庭の保育は、〇、一、二歳までは安心、安全、安定を求める保育が好まれます。それを過ぎて幼児期になると、よい環境での教育を受けさせたいと願う親御さんのニーズがあります。これら多様な保育のニーズに応じて、なおかつ子供の最善の利益を中心に据えた総合施設のあり方は、一人一人の子供の育ちを支える幼児教育の実践を目指すことがまず重要であると考えます。

 このような時代のニーズに応じて誕生した二葉すこやか園の運営の状況をお伝えいたします。お手元の資料を参考にお聞きください。

 全国的に幼保の一体化施設は三百六十カ所あると伺っています。特徴はそれぞれの自治体や地域の実情に応じてかなり状況が違っています。私どもは品川区型の二葉すこやか園の誕生の背景について少しまとめましたので御紹介します。

 安心して子供を産み育てられる品川区のプランとして、仕事と子育ての両立支援ということが背景にあります。また、多様化した家庭のライフスタイルや保育ニーズに応じて、保護者が働いていても幼稚園教育を受けさせたいという願いが都市部では大変多うございます。そういった住民の期待にこたえて、品川区では子育て支援を一歩前進させた姿で、幼稚園、保育園の機能をジョイントさせた施設を誕生させました。

 続きまして、二葉すこやか園の特色についてお伝えいたします。

 幼稚園の空きの保育室を利用して、保育園と調理室を四年前に設置しました。〇歳から三歳までは保育園、四歳―五歳までは幼稚園というその年齢の区分で、合計百六十七名の園児が生活をしております。ここ一、二年は大変この人気が大きくなりまして、今は定員をはるかに超えまして、百八十三名の子供たちが生活しています。

 それでは、この桃色の「プラン」の一番下の方をごらんになってください。

 幼稚園は保育園の運営時間に合わせて、朝の七時半から夕方、夜の七時半まで開園しています。つまり、十二時間開園の二葉すこやか園の機能を持っています。また、保育園の機能を持ったことにより、幼稚園児たちも週二回の給食をいただくことになりました。保育園の三歳児は幼稚園と連携してカリキュラムを考えて、遊びや生活での交流を積極的に行っています。また、希望する世帯は、四歳になると幼稚園に進級することができます。

 二葉すこやか園の職員の身分は教育委員会の所管にありますが、運営は、住民サービスの視点から保育課が行っています。一人の園長が〇歳児から五歳児までの教育、保育を視点に入れた経営を行って運営の一体化をすることで、〇歳から五歳までの子供たちの就学前の教育の充実を図っています。

 保育所、幼稚園も、それぞれ機能と役割をしっかり持っていますので、幼稚園教育は、御承知のとおり、学校教育法七十七条に規定する目的を達成するために、幼児期の特性を踏まえた、環境を通して行う教育を行っています。また、保育所では、児童福祉法三十九条に基づいて、保育に欠ける幼児を保育することを目的とする児童福祉施設としての機能を失ってはおりません。

 我が国では、保護者が就労していれば保育所を選ばなければいけないという実態と、でも、働いていても幼児教育を受けさせたい、そのニーズの垣根を越えて実現したのが二葉すこやか園です。

 今後の幼保の連携のあり方として、就学前教育の充実を目指し、幼児の健やかな成長を願って、〇歳―五歳の発達を豊かな環境の中で促していく教育、保育の充実が今後の大きな課題です。その意味では、私たち、この四年間の実践の中で、子供の発達に応じた保育環境の充実、カリキュラムの作成、幼稚園教諭、保育士の合同の研修ということを行ってきました。

 今後は、この総合施設の制度が一つの幼児教育の現状の中に新しい命を吹き込んで、乳幼児教育のあるべき姿を地域の人々の中にモデルとして示して、教育、保育の機能充実が求められていくことを期待しております。そして、地域の子供たちの教育資産として、遊び文化の発祥になったり、親育ての場所になっていくことを期待しております。

 この四年間は、いろいろな実践の中で、どんなに曲がりくねった川でも、前へ前へ出ようとすることで大きな海原に出ていくんだなという実感を持っています。二葉すこやか園からの発信が子供たちの将来の大きな発展につながっていくことを願って、きょうは参考人の意見陳述とさせていただきます。十分ではございませんが、現場をお預かりしている園長としての立場で意見を述べさせていただきました。

 最後まで御清聴、ありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、無藤参考人にお願いいたします。

無藤参考人 白梅学園大学の無藤と申します。よろしくお願いいたします。

 私、資料なしで申しわけございません、お話ししたいと思います。

 私は、この認定こども園ができるに当たって、関係省庁の審議会で議論してまいりました。具体的には、文部科学省の中央教育審議会、また厚生労働省の社会保障審議会の合同部会で議論してまいりましたが、そこに参加させていただきました。また、いわゆるモデル事業を昨年度実施しておりますけれども、その評価検討委員会の委員長ということで、この三月末に報告をまとめさせていただきました。その過程の議論を反映していただいて、この法案ができ上がって、きょう御審議いただいているということで、私としては大変ありがたく思っている次第でございます。

 さて、私としては四点ほど申し上げたいというふうに思います。

 第一点は、この認定こども園がなぜ必要かということであります。

 言うまでもなく、既に、お手元の資料、また御審議の中で十分御承知のことの繰り返しになりますけれども、第一点は、やはり地域における保育ニーズというものが大きく変化してきているということがあろうと思います。

 一番大きな問題は、少子化ということに伴って、地域によって、幼稚園、保育園に通う子供の数が極めて減ってきている中で、その統合というものが求められているということがあるというふうに思います。それは、全国いろいろなところで調べますと、一つは、地方の農山村部のお子さんが非常に少ない地域でそういう事情が進行しているわけですが、しかし同時に、都会においても、東京都の二十三区の中でも、やはり子供の数が極めて少ない中で、従来、かなりの数の幼稚園、保育園がある、その統廃合の必要性というものが今まさに大きなものになり、その中で、総合施設というものへの期待も高まっているというふうに思います。

 また、同時に親の働き方の変化、多様な働き方というものがふえてきておりまして、典型的な意味での専業主婦、また典型的な意味での共働き、あるいは長時間労働の方と同時に、パートであるとか、その他さまざまな働き方があります。

 また、お子さんを子育て中のお母さん方にしても、子供が小学校に入り、あるいは中学校に入る中で働き始める方もおりますけれども、お子さんが三歳、四歳という中で働く、幼稚園から保育園に移るというようなことも頻繁になってきております。

 また、保育園にフルタイムとして預けているのだけれども、より高い幼児教育を求めるという形で幼稚園に預け、またそこでの預かり保育を利用するということもふえてまいりました。

 ちなみに、私は白梅学園大学というところにおりますけれども、そこに附属幼稚園がございまして、預かり保育を実施しておりますけれども、毎年かなりの数の希望者の親御さんが参ります。いささか断るぐらいになっておりますが、その大半の方はフルタイム、共働きで、私どもの幼稚園の幼児教育を受けさせたいということで希望されて来ているわけであります。

 また、そういう形が大きなニーズですけれども、同時に、やはり一部には待機児童もあり、また逆に一部の幼稚園はかなり定員が余っているというようなことの中で、新たなニーズがあるというのが第一です。

 第二のニーズといたしましては、子育て支援のニーズというものがさらに広がってきているということがあろうと思います。

 一つには、専業主婦層における子育て不安、育児負担というものの増大であります。これは、保育園に預けている場合と、幼稚園ないし専業主婦の母親の比較調査を通しまして、専業主婦層における子育て不安というものが軽減されていないということが明らかにされております。

 また、特に、幼稚園に預ける前の、三歳未満の在宅で子育てをしている親御さんにとっては、現在の段階ではその方々への子育ての支援の手だては極めて乏しいということで、それが全国的、どの地域においても生まれる必要があろうというふうに考えております。

 しかしながら、第三番目として、気をつけるべきことがあろうと思います。

 それは、全国さまざまな地域を見ますと、今のように、幼保合同の総合施設の必要性が極めて高い地域と、そうではなくて、従来の幼稚園、保育園という体制の中でしっかり行われており、必ずしも新たなニーズが大きいわけではない地域もあるということであります。

 そういう意味では、地域ごとのニーズというのは極めて多様であって、そのニーズに応ずる柔軟、弾力的な制度設計というものが望まれるというふうに考えております。

 大きく二番目の論点でございますけれども、本法案は、認定こども園ということで、認定制度をとるということが特徴であろうというふうに推察しております。

 その認定制度につきましては、最も基本にあるのは、全国共通な一定の基準というものを大まかには明示しながらも、都道府県、市町村ごとのニーズに応じて、それぞれの地域における弾力的な基準というものを設けるという組み合わせであると思います。その意味では、全国共通の質の確保と地域のニーズというものの両立を目指すという意味で、評価できると考えております。

 また、特に保育につきましては、国において、あるいは自治体において、ある基準を出したところで、実際の現場の実践においてはこれまた違う話であって、やはりこれまで幼稚園、保育園の長い歴史の中で積み上げてきた保育のノウハウをいかに活用するかということが大きな問題であろうと思います。その意味では、保育において、全く新しい制度をゼロからつくるということは非現実的でありまして、やはりこれまでの幼稚園、保育園の蓄積をどう生かしていくか、できる限りその従来のやり方を尊重しながら、それを上手に組み合わせていく工夫というものが望まれるのではないかと思っております。

 また、この総合施設をつくるに当たっても、全く白紙の状態から建物を初めとしてすべて新しくつくるやり方もあろうと思いますけれども、大部分のところでは既成の建物を使い、また既成の幼稚園、保育園で働いている方々が新たに認定こども園で働くという形をとるだろうと思いますので、そういう意味では、既存の幼稚園、保育園がいかにして認定こども園に転換できるか、その転換の易しさというものも配慮していただきたいと考えているわけです。

 論点の三番目でございますけれども、認定こども園というものの最大の特徴は、保育ということと子育て支援、その両方を一つの園で行う、さらに、単にその二つが並行するだけではなくて、それを一つの園の中で統合的に実施していくということが大きな特徴であると考えております。

 これは、一つには、幼稚園が預かり保育その他で子育て支援を既に拡大しておりますので、それを受けているということがあります。また、保育所におきましては、保育というものが、子供を預かるだけではなくて、子供の本来の意味での幼児教育あるいは育成というものを大事にしていくということで、保育所としても幼児教育機能をかなり高めてきているという現状がございます。そういう意味では、幼稚園また保育園の発展の中で、ある意味では自然に生まれたやり方であろうと思いますけれども、特に認定こども園ではその面を明確にして、保育、幼児教育と子育て支援というものの双方を義務づけていくという中で、日本において新たな保育のあり方がここで展開できるということが期待できると考えております。

 最後に、認定こども園をめぐっての第四の私の論点といたしまして、本法案を実施するに当たって、また今後への期待、希望というものを申し上げたいと思います。このあたりが、特にモデル事業の評価に当たって何度も議論して、報告に何がしか盛り込んだことでございます。

 第一点は、先ほどのことでもありますけれども、このようなモデル事業というものがかなり全国的に広がり、さらにまた、モデル事業の指定は受けておりませんが、しかし、幼保合同という形での施設の展開が相当にふえております。そういう意味では、各自治体ごとにこの法案の成立を待ち構えているということであります。また、この法案ができますと、恐らく文部科学省、厚生労働省の方での一定の指針と、またそれを受けて都道府県、さらに市町村で具体的な指針と認定基準をつくっていただけると思いますけれども、その作業というものに、どう考えても数カ月以上かかるわけでありますが、各自治体では現在その準備を進めている最中でありますので、ぜひ、遅滞なくこの法案の審議、また指針の作成に進んでいただけるとありがたいというふうに思っております。その際に、先ほど申し上げたようなことで、これまで幼稚園、保育園の実績がございますので、それを活用し、そこからの転換という形で認定こども園の実現を図っていただけると幸いに存じております。

 それから、今後の期待の第二点でございますけれども、モデル事業においてもその他においても、やはり最大の私どもの懸念、また期待は、保育の質をいかに保つかということにございます。したがって、認定こども園につきましても、従来の幼稚園、保育園からの転換を容易にするということを申し上げたわけですが、その容易にするということは、制度上あるいは施設上可能にするという意味でありますけれども、それは、認定こども園の保育の質を下げてもそうしていいと言っているわけではありません。したがって、弾力的な運営のあり方とともに、保育の実質的な質をいかに保つか、その組み合わせが必要であろうというふうに考えております。

 そして、その質を保つためには特に何に気をつけるべきかということでありますけれども、第一は、自己点検、自己評価というものを確実に実施していただいて、それを情報公開するということが基本であろうと思います。それから、第二点は、専門家との協力の中で、園内、園外における教職員の確実な研修の実施ということにあると思います。これは当然ではありますけれども、現実には、極めて業務多忙の中で研修の時間を確保することは難しいわけですが、ぜひ研修義務というものを入れていただきたいと思います。

 また、三番目でございますけれども、全体として、認定こども園においても、財政的な事情の中で、経費削減ということが問題になる。それはしようがないと思いますが、しかし、やはり保育というのは、最終的には保育する人間の資質次第でありますので、保育者の雇用に当たっても、経験のある保育者を雇用することが可能な制度設計をぜひお願いしたいというふうに思います。

 もう一点は、子育て支援というものは、保育の片手間でできる作業ではありませんので、幼稚園の預かり保育などを見ていると時にそういう例もございますので、保育とともに、子育て支援についても、ぜひ専門的な保育者の配置ということをお願いしたいと思います。

 今後の期待として、もう一点ございます。

 それは、特にモデル事業に加わっている各園の実態を見ますと、かなりよく動いているところもあるし、しかしながら、その一方で、必ずしもそうでない園もございます。その一番のポイントは、従来の幼稚園、保育園を合同させるときに、その幼稚園の保育のやり方、また保育所の保育のやり方、そのよい点をうまく組み合わせ、統合する、そこにあろうというふうに思います。逆に、うまくいかない場合には、合同と称しながらも、幼稚園は幼稚園、保育所は保育所というふうに分かれたままで進んでいるという例もあるわけであります。

 そういう意味では、幼稚園出身、保育園出身の先生方が統合されていく、一緒に仲よくやっていく、互いにノウハウを交換し、まとめていくということが必要だと思いますし、また、子供にとっても、四時間程度のお子さん、八時間、それ以上のお子さんがまざるわけですので、そういった保育時間の異なる中での子供の活動の指導の工夫というものが重要になろうと思っております。

 以上、幾つか申し上げましたけれども、最終的に私どもの期待、希望といたしましては、地域ごとに、幼稚園、保育園また認定こども園という形の並立があろうと思いますけれども、それらのすべてが連携しながら、地域におけるすべての子供の幸せのために幼児教育施設、保育施設が機能することを期待して、私の発言を終わりにしたいと思います。

 御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、村山参考人にお願いいたします。

村山参考人 ただいま紹介を受けました帝京大学文学部の教授をしている村山です。

 私は、皆さんに今レジュメとしての資料と、それから新聞の切り抜きをコピーしたものを用意させていただきました。お手元にあるかと思います。それに基づきながら、レジュメについては、皆さんのお手元の中に、赤く丸をつけてあります。そこを追って、今回の法案について、問題点と課題を述べさせていただきたいと思います。

 私は、それまでは現場と研究にかかわっていたんですけれども、八年前に、日本一人口の少ない、鳥取大学に赴任しました。そして、そこで学生と一緒に、千人、二千人規模の調査を毎年やってきました。それを踏まえて、文部科学省から助成金を受けまして、全国五万人を対象として、実際は調査の回答を受けたのは三万人、三万件ですけれども、その調査を実施してまいりました。

 そういうことを踏まえて、全国の実態、これは保育園、幼稚園、親、保育者、全部現場とやりました。恐らく、日本でこれを総合的にやった調査は、私の知っている限りございません。初めての調査です。その調査に基づきながら、少し問題点を考えたいと思っております。

 「はじめに」というところで述べてあるんですけれども、一つは、この法案を考える上で、保育というのは何かということを、やはりコンセンサスをつくっていく必要があるんじゃないのか。これまで保育という言葉は日本の法律の中で共通に使われています。それは、学校教育法でも幼児の保育です。それから、保育所の場合も保育です。そこでは統一されているわけですね。そこは大事な点です。

 そして、保育という中にはどういう考えが入ってくるかというと、それは、横文字にすると、ケア・アンド・エデュケーションという言葉なんですね。これは、日本の保育学会、唯一の幼児教育の学会、保育学会は、ここにも書いてありますように、ケア・アンド・エデュケーションです。それはなぜかというと、幼児は、生活の中でさまざまなことを学び、そして、生活の中でさまざまなことを教えてもらう。そういう意味では、生活と教育が一体的にされなければいけませんよ。これが保育なんですよ。その理念を、私は今、保育が大事だと言われる時期に、そこを国民的コンセンサスとして、これは世界的にもそうなっています、これを確立することが極めて大事だろう。これが第一点です。初めのところです。

 それからもう一つは、保育園や幼稚園という場は、子供を中心にしながら、親と保育者が日常的に交流し合う場です。それができるような条件整備が必要であるということ。

 それから三点目は、そこの主人公は子供たちですから、子供たちが本当に生活が豊かにできるように。現状は、寝るところ、食べるところ、遊ぶところ、みんな一部屋で済ましています。この水準は敗戦直後の日本の国民生活の水準です。これが保育園現場では当たり前になっています。それは日本の最低基準が変わっていないからです。そういうところをやはり考えないといけない。

 それから四番目は、ナショナルミニマム、保育というものはこういうもので、国としては最低限この水準までは確保しなくちゃいけないよという、その基準を今示すことが本当の意味での子育て支援につながっていくんじゃないだろうか。

 それから、この法案を考える上で大事なことは、現場の実態です。保育所、幼稚園の実態は、日本の場合はすごく格差があります。私は、日本一人口の少ない鳥取に行って、調査しながら、改めて感じています。

 例えば簡単に言いますと、二枚目の四ページの下に「最低基準と保育所運営費の関係」というのを表にしておきました。これは概略ですけれども、最低基準を一とした場合に、今の保育所運営費の国庫負担金はどれぐらいかというと、最低基準では保育園運営できませんから、大体二倍ぐらい、これは概略ですけれども、二倍ぐらいのお金が出ているんですよ。人の配置も一・六、七倍です。最低基準では運営できないんです。

 さらに、それでも不十分だから、自治体がお金を出しています。そのお金を出している自治体のところがかなり格差があるんです。東京の場合は、民間の保育園でも国の倍に当たる額を出しています。ですから、国基準の二倍で民間の保育園でも運営しています。公立の場合はさらに多いです。ですから、最低基準を一とした場合に、豊かなところは四倍、五倍の保育をしている。普通の地方都市は最低基準の二倍かちょっとしかないんです。国の運営費の一・五ぐらいにいけばいい方です。こんなに格差があるんです。その格差があるという実態を踏まえて法案をつくるときに、自治体側にちゃんとできるのかできないのか、このことを考えておくことが大事だろうと思います。

 それでは次に、今回の法案の中で問題点を少し述べてみたいと思います。

 認定こども園の中身のところで、これは国会資料集の二ページに載っていますけれども、幼保の連携型、幼稚園型は幼稚園と保育所機能、保育所型は認可保育所と幼稚園機能、地方裁量型は認可外、いわゆる無認可保育所と無認可幼稚園ですね、幼稚園機能というのは。つまり、幼稚園機能、保育所機能というのは認可外の施設のことを指すわけですね。この認可外の施設の状況がどうなっているか。残念ながら、ちゃんとした調査は一つもございません。

 例えば、どういう問題が起きているかというのをここに出しておきましたけれども、これは厚生省の統計です、認可外保育所は過去五年間で三十五件の死亡事故が起きています。そして、例えば新聞切り抜きで、私は資料の四のところに、これは最近のものですが、南日本新聞というのを載せています。この中身はどういうことかというと、認可外、無認可保育所を認可にしたら、今まで百四十人ぐらい収容していたところは認可にしたら六十九人になった、入れない子供がいっぱいいると。つまり、認可外の施設は普通の認可保育所の倍ぐらい子供が入っていると。これは地方へ行けば当たり前なんです。こういう実態の無認可施設、そして、無認可保育所という問題が大変深刻な問題を抱えている。もちろん、その中で一生懸命良心的にやっている人はいます。でも、そういう実態があるんだということ。

 そういう中で、地方裁量型とか保育所機能、幼稚園機能といって認可外の施設を入れていくということは、自治体のお金が、現在の認可保育所だって東京のような対応ができていませんから、それ以上のことはできないわけです。そうすると、条件の悪い、認可にとてもならない施設までが認定される。これは実質的にはダブルスタンダードになっていくんじゃないか。ダブルスタンダードになったときに、親にしてみれば、認定されて安心できるかと思ったら、これは安心できないと。入ってみて、だまされたんじゃないのかというふうに思うことも出てくるわけですね。だから、この無認可施設の問題を入れるというのは、慎重にやらないといけない。私はもっと無認可の調査をすべきだと思います。そういう意味では、この取り組みは、もし考えるとすれば、私は別に幼保一元とか一体化は反対じゃありません。無認可の幼稚園と保育所をどうするかということに限定して考えるべきじゃないのかと。

 そういう点では、これから望ましい、いろいろなことをやるということであれば、保育所の今までの最低基準やあるいは幼稚園の設置基準を見直して、そして改善をしようという視点から、新たな国のナショナルミニマムをつくる作業に取りかかれるような視点を出すべきじゃないんだろうかと思います。そういうことを考える上で、今の保育所や幼稚園の制度はどうなっているのかというのを少し述べたいと思うんですね。

 時間が限られていますので簡単に言いますと、幼稚園と保育所はかなり違います。それを簡単に一体化といっても、今の制度という枠の中では難しいです。どうしてかというと、まず、幼稚園は親が選ぶ、親と園との契約です。ところが、保育所はそうじゃない。

 保育所は、どうして保育所というのがあるかというと、日中保育に欠ける状態にある子供がちまたに、路頭にさらされないために、そのためには常に市町村が責任を持って地域の子供たちを守る必要があるんだと。そのために保育所ができているんですね。その責任は当然市町村にあるわけです。民間ではこれはできません。だから、市町村が責任を持って、保育所運営に責任を持つ、入所についても責任を持つ、保育料についても責任を持つというシステムになっているんですね。そのシステムを、もし崩すということであれば、これは本当に大変な混乱が起きてくる。そこはやはりしっかり押さえる必要がある。そういう意味では、直接入所という形で、入所や保育料の責任を園に丸投げするということは、これは法律的にできない、明らかに。もしした場合は、園が全部責任を負うという形になりますから、裁判やいろいろな問題が起きてきます。そういう点で、この問題は慎重にしないといけない。

 それから、一元化と、保育所や幼稚園とか、夜間保育とか、多様な施設があるということは、別な問題なんですね。制度を一元化するということは、どの施設を利用しても子供たちがきちっと保障されるという理念が一元化だと思うんです。つまり、国が、一定程度、どの施設に入ってもここまでは面倒を見ますよ、これが一元化。だから、施設は多様です。その多様性を保障していかないといけないということでございます。

 それから、三番目ですね、五ページのところです。保育サービスのところでの中身ですけれども、例えば、いろいろな違いがある。ここに書いておきました。見てください。時間とか日にちとか、幼稚園と保育園はかなり違います。

 特に預かり保育の問題ですけれども、文部省の統計でも、預かり保育七割とか、開設しているよと言われています。私の調査でも六割とか七割という数字が出てきます。ところが、どれだけ利用しているのかという人数を確認してみたら、定員のたった六%しか入っていないんです、実態は。これは五十万以上の都市の幼稚園を調査したものです。まだ、預かり保育というのはスタートしたばかりです。これをどうするかということをもっと煮詰めないといけない。

 それから、共用化の問題がありますけれども、共用化はどれぐらいでされているかというと、全保育園、幼稚園の六%ぐらいです。まだ、取り組んで、実験的な段階なんですね。そういうところを踏まえて考えていかないといけないんじゃないのか。

 最後に、日本の保育の中で保育者のストレスが大変たまっています。これは、日本海新聞の記事と私の七ページのところでも見ていただければおわかりになると思います。これは大変深刻です。そしてもう一つは、そういう中で、日本の子育て支援の施策が国際的に大変おくれている。最低基準の職員配置の資料もこの資料の中に国際比較をまとめておきましたけれども、見てください、三十人という国はありません。大体、諸外国は十人です、受け持ち人数。そして、子育て支援の育児支援費は、日本は主要国で下位です。こういうことをやはりきちっと克服する方策を考えるという視点からこの事業なりこの法案をぜひ考えていただきたい。

 親も、父親も母親もストレスでいっぱいなんです。父親は長時間労働のために、母親が育児ストレスになっていても手が出せない。我々の調査でいうと一〇%ないし一五%ぐらいの父親が、母親の育児ストレスで仕事が手につかないと言っているんです。そういうときがあるとまで言っているんです。このことをやはり私たちは考えて、日本の社会が、子供に優しい環境づくりが本当に進められるような、そういう視点からこの法案を検討していただきたい。実態をやはりきちっと調べるということをやっていただきたいというふうに思います。

 簡単ですけれども、以上で私のまとめとしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、森田参考人にお願いいたします。

森田参考人 東洋大学社会学部の教授をしております森田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 一九六〇年代から、幼保の一元化とか一体化とか言われておりますが、私は、もう三十年ぐらいになりますが、その取り組みをしている現場を歩きながら、地域の中で子供を育てるということ、幼稚園、保育所の施設、あるいは学校の方たちは一体どのような努力をなさっていらっしゃるのかということをずっと研究してまいりました。また、ここ十数年間は自治体の中でそうしたことを具体的に実現していく取り組みや、幼稚園、保育所以外のさまざまな施設やあるいは機関との協働の中で、子供を地域で育てることにどうかかわっていくのかということを研究したりあるいは計画をつくったり実践したりすることにかかわってまいりました。そうした立場からきょうは意見を申し述べさせていただこうと思っております。

 先ほど少しお話し申し上げましたように、日本には既に一九六〇年代から、幼稚園や保育所を一体的に取り組んでいくという幼保一元化あるいは保育一元化という形で言われておりました仕組みがございました。一九九〇年代に入りましてかなりそうした取り組みがふえてまいりましたけれども、この六〇年代、七〇年代に、地域の子供たちは地域で育てていくんだという自治体の首長さんたちの強い願いあるいは研究者たちの非常に強い願いを実現した事業をうちの自治体でもやりたい、私もやりたいと思っていた方たちが、実は九〇年代に入ってようやく実現できたというように、十年、二十年かけて、各地域の中では幼保の取り組みということをしてまいりました。

 それが、具体的には二十一世紀に入りこの法案につながっていくような大きなうねりとなって、各自治体の変化、とりわけ、行財政の改革の問題や、あるいは地域の中での子供の減少あるいは増加、あるいはその自治体の中で抱えているさまざまな問題との関連の中で、ここ二十一世紀に入りまして急速にこの仕組みが変わってきております。

 私もレジュメを用意させていただきましたので、それに基づいて少しお話をさせていただこうと思っております。このA4の配付資料がございますので、ごらんいただきたいと思います。

 まず最初に、私は、三十年余りこうしたことにかかわってくる中で、一体、幼稚園と保育所の一元化に私たちは何を求めてきたのかということについて、まず三点についてお話をしたいと思っております。

 先ほど二葉すこやか園の園長先生もお話しになっていましたが、この一体化施設の中で既に七年ほど実践を行ってこられました神奈川県の秦野市の実践例を少し用意させていただきました。後でぜひごらんいただきたいと思いますが、先生が一体化の施設についての実情についてお話しをいただきましたので、私の方は、時間が限られております関係で、この特に後ろの方に、皆さんの配付資料の中でいきますと四ページ目の下の方からですが、ちょうどこの事業が始まって五年目のところでここで育った子供たちがどんな育ちをしてきたのかあるいは親たちはその中で一体どんなことを感じてきたのかということをアンケートしたものがございます。ちょっと親たちの意見をここでまとめてみたいと思います。

 特に、この中で一番特徴的なものがちょうど最後のページのところにありますので、ごらんいただきたいと思います。新聞記事の前のところです。

 真ん中あたりを見ていただきますと、幼稚園、保育園の合同でよい、よかったと感じている点ということで、保育所は小学校に上がったときに友達が決まってしまうのが多いと思いますが、幼保一緒だと友達もふえ、子供たちにとってもとてもよいことだと思います、小学校に入ってからお互いの友達の数が少しでも多いと安心できますとか。あるいは、下の方に行きますと、小学校に入学するに当たって孤立しないとか、子供たちはお互いにお友達いっぱいという感じがよいのではないかと思いますとか。一番下の方は、友達をたくさんつくることができたとか。

 こうした、地域の中で子供たちが、その地域の幼稚園と保育所が一緒になって保育をすることによって、やはり子供たちの中で、一緒に暮らす、一緒に育つという意識が大変芽生えているし、また、親たちの中にもそうした支え合いの意識が、丁寧にかかわることによって実現できているということを皆さんにまずお話しさせていただきたいと思います。

 私は、幼保の一元化とか一体化というのは、この四十年余りの実践者たちの取り組みの中で一番大切なことは、地域を育てる、地域の中で子供たちや親たちが育つということをどのような形で実現していくのかということにあったと思っております。

 二番目のところですが、その中で、先ほど無藤先生もおっしゃいましたが、実は、幼稚園、保育所というのは、養護と教育というのは一体的なものとしてとらえられてきた。これはもう教育あるいは保育の中では当然の認識でございます。私が大学時代に勉強したときにも、もう既に保育という言葉の中には養護性と教育というものを両方含んだものであるということを強く確認をして、大学教育の中でも行われてまいりました。もし仮に、今現在、ばらばらな施設の中でそれが統合されていないんだとすれば大変不幸なことであるし、むしろ私は、これまでの幼保のばらばらな動きの中で、本来子供たちが受けなければならない養護性と教育性の部分が残念ながら実現されてこなかったんだと。

 そうした意味で、現代の課題の中で見ていきますと、子供たちにとってみると、特に幼稚園にいる子供たちにも養護性は非常に強くなってきておりますし、保育所の中で過ごしている子供たち、先ほどの親たちの意見の中にもありましたように、たくさんの子供たちの中で健康に、健やかに遊びながら育っていくということがどんなに大事なことかということがこの中で語られていると思っております。

 そうした意味で、私どもは、総合施設あるいは合同、一体化、いろいろな形で歴史的な展開がございましたけれども、その中で期待したことは、幼稚園でもない、保育所でもない、第三の施設として、この現代社会の中で必要とされている幼保の一元化というものが実現できるということで期待を持ってまいりました。

 また、三番目のところに書かせていただきましたが、これは人口十七万ほどの千葉県の自治体でございます。これまで、三世代同居であれば、親は、おばあちゃんやおじいちゃんたちに支えられて十分子育てができると言われてまいりましたけれども、実は、ここで見ていただきますとおわかりいただけますように、三世代同居の場合でも、有職者と無職者を比較してみますと、二〇ポイント、多いところでいきますと三〇ポイント近くも保護者の健康度というのが、むしろ、在宅で三世代で育てている方の方にも子育て支援を必要としているような状況があるということがはっきりしてまいりました。

 そうした意味で、各自治体では、こうした在宅の子育て、これはとても大事なことなんですが、これを子育て力を奪うことなく子育て支援をしていく、そういう意味では大変難しい、しかも大切な事業にこの子育て支援という事業を位置づけて、そして展開してまいりました。

 今回の法案の中で幾つか気になることを指摘させていただきたいと思います。

 まず、大変大事な、今までの保育の中での取り組み、幼稚園の中での取り組みでございましたけれども、直接契約の導入の中で、障害を持つ子、あるいは外国籍の子、一般の両親世帯のみならず一人親家庭の子供たち、長時間保育の子、あるいは虐待をされている子供たち、たくさんの子供たちが乳幼児期にはおります。こういった子供たちは、特に今多くの支援を必要としております。

 もちろん、子育て支援というものに対する絶大なる支援が必要であると同時に、もう一つ、施設入所、その保育に毎日通うことによって支えられていくという仕組みをどうしても必要としている子供たちがおります。この子供たちに対して、きちんと認定こども園がケアできる、入所できる仕組みになっているのかということをぜひ御確認いただきたいと思っております。

 また、先ほど申し上げましたように、自治体というのは今大変大きな役割を担っております。都道府県が認定し、基礎自治体の方が総合調整機能を果たしていくといいますと、待機児が今大量にいるような地域で、認定こども園という直接契約の施設を一部分導入することによって、自治体の調整機能ということをどのような形で担保していくのかということが大変重要な課題になるだろうと思っています。

 私は、ある自治体で社会福祉のオンブズをしております。その中でも、やはり保育所入所をめぐって、適正な基準によって、正しくこの基準が実行されて自分が入所できなかったのか、この入所基準やあるいは入所の決定に対しての透明性を求める声というのは、大変待機児の多いところでは強くなってきております。こうしたことを、ぜひとも自治体がきちんとその調整機能を果たすような、そうした支援をしていただきたいですし、その支援ができるような仕組みにしていただきたいと思っております。

 また、最後に、保育料ですけれども、幼保の一元化、一体化施設の中でやはり大変問題になっていたのが保育料問題でした。時間で料金を決定するのか、あるいはサービスの種類によって決定していくのか。あるいは、直接契約の施設の保育料とそうではない施設の保育料、これも今、自治体の中でいいますと、多様な保育サービス機関に多様な形で自治体が補助金を出しています関係で、保育料が三通り、四通りもあるような自治体もあります。

 そうしたところで、市民に情報公開をするといったときに、その基準というものをどのような形で市民にわかりやすく情報公開していくのか、このあたりのことが大変問題になってくると思っております。

 これからの課題、時間がございませんので、要点のみ申し上げさせていただきます。

 まず、市町村の役割ということで、先ほども申し上げましたけれども、特に、地域ごとに次世代育成支援の行動計画ができております。この計画と認定こども園の計画、これをどのような形で各自治体の中で実施していくのか。とりわけ、子供の人数の増減など、各自治体の中ではその格差が非常に激しくなってきております。そうした意味で、市町村の責任ということをどのような形で指導なさっていくのか、これがとても重要になるのではないかと思っております。

 二番目に、少子化であるにもかかわらず保育所の希望者が増加していく中で、利用者が減少している幼稚園、ここが、在宅で子育てをしていらっしゃる、日本じゅうでいくと今約八割と言われておりますが、八〇%以上の在宅の子育てをしっかり支援していけるような仕組み、在宅子育て支援の財政的援助ということをぜひお願いして、幼稚園の力をかりながら子育て支援を行えるような仕組み、この一つの突破口としてこの認定こども園が扱えるならば、法外の事業が実現できるのではないかと思っております。

 それから最後に、行政の一元化の必要性です。

 私が三十年間、各自治体やあるいは実践園を見てきたときに、そこで実現できている、あるいはそれが持続できている背景には、自治体の職員あるいは首長さんの大変強い思いがそこに反映されて、実現されておりました。特にその中では、その実現のために自治体の担当部署を新たにつくったり、あるいは保育と教育の両方から職員を出して、共管の対策室をおつくりになったりしていました。今、大変、子ども部とかこどもみらい局とか、いろいろな形で自治体の行政の一本化、一体化も進んでおります。ぜひ国の中でも、子ども庁、あるいは子供にかかわる総合的な省庁をおつくりくださいまして、こうした子供施策の一元化、一体化に向けての取り組みを展開していただきたいと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤基彦君。

近藤(基)委員 自由民主党の近藤でございますが、参考人の皆様においては、大変お忙しい中を委員会にお越しをいただいて、貴重な御意見をお述べいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 限られた時間の中でございますので、早速参考人の方に御質問をしたいと思います。

 まず無藤参考人と森田参考人にお聞きをしたいんですが、子育ての支援、先ほど在宅子育て支援という言葉も出てきましたけれども、いわゆる〇―二歳、〇歳から二歳の保育に欠けない子供を持つ家庭、そういう方は在宅で子育てをなさっているということになるんですが、大変重要だと私も考えておりますけれども、こういった子供を認定こども園で預かることとするのは、私自身はどうも親の教育の放棄につながるんではないのかなと。先ほど無藤先生の方からも子育て不安という言葉も出てきましたが、では、不安だから預けちゃえというのではちょっと親が無責任かなという気がするんですが、そういう観点から、無藤参考人、どうお考えになるでしょうか。

無藤参考人 今の点、お答えいたします。

 この認定こども園の構想といたしましては、この法案の範囲、あるいはモデル事業の評価などで議論してまいりましたのは、〇から二歳の在宅で子育てをされている家庭への支援としては、認定こども園でお子さん自体を預かるということではなくて、親子登園などを可能にする中で、親の子育て力を増していくということを考えております。親子登園というのも、預かるといえば預かるで、言葉の定義次第でございますけれども、もし預かるということが、保育園のようにそのお子さんだけを預かるということであれば、それは認定こども園の範囲ではないというふうに考えております。

 そして、それが親の育児力にどうつながるかということでいえば、基本的には、特に小さい時期は、家庭での養育、また親御さんが責任と愛情を持ってお子さんを育てるということが大事だと思いますので、そういう意味では、むしろ親御さんが子供をよく育て得るようなやり方であるとか、あるいは不安の軽減であるとか、あるいは子供をよりかわいく思えるような状況をつくるとか、そういう形での支援を認定こども園を中心につくれればというふうに願っております。

 以上でございます。

森田参考人 私は今まで、在宅で暮らしていらっしゃる、子育てをしていらっしゃる方たちともたくさん出会ってきました。そうした中で感じておりますことは、親が子育てをする力をつけていくということ、それは大変難しいことで、私は、妊娠の時期から、あるいは下手したら妊娠の前から、子供がどう育っていくのか、親はどう子育てにかかわっていくのかというようなことを体験的にすることも必要だと思って、今は、保育所なんかに御協力いただきながら、そういったプログラム開発なんかもしているところでございます。

 そうしたことを含めて考えてみますと、継続的に親子登園する、これがとても大事なことで、継続的にという言葉を私は申し上げたいんですが、単発で一度、二度、年に何回やるぐらいのことではなかなか力は育っていかない。やはり必要なときにきちんと相談できて、そして、そのグループの中での活動ができる。時に、またグループに入れない方たちというのもたくさんいらっしゃいますので、そういった方たちを含めた支援ができるような、地域をしっかりカバーできる地域子育て支援を専門にできるような人たちの育成と配置というものが、この子育て支援には必要だと思っています。

 また、この認定こども園の中で、子育て支援ということで申し上げますと、通園だけだったんですが、こういうところで時々親がリフレッシュできて、子供がかわいく思えるような形で、一時保育などもできるような仕掛け、あるいは幼稚園の預かり保育なんかを延長するようなこと、あるいは保育所の一時保育を延長するような形で、こうした在宅の親にも一時的な保育がなされることによって、私はよりこの子育て支援というのは強調できていくんじゃないかと思っております。

 以上です。

近藤(基)委員 大竹参考人にちょっとお聞きをしたいんですが、二葉すこやか園、幼稚園が最初で、それから保育園の機能をあわせたということですが、今言ったように、親の教育放棄を、幼稚園ではそういうことは余りないでしょうけれども、保育園を併設なさって保育園児を預かるようになってから、親が子育てが不安だということで預けるわけではなくて、専業主婦で、まだ若いので遊びたい、遊ぶ時間がないので子供を預けちゃうというような、余り言えないかもしれませんが、子供たちを預かってみて、その親御さんに実際にそういう人がいますか。答えにくいかもしれませんが。

大竹参考人 今の御質問は、本当に今の子育て状況を反映しているかなというふうに思っています。

 二つあると思います。総合施設になりましたら、働いている世帯の方と、家庭で保育に専念している方々が、双方の子育てを見る機会になったということが大きなメリットです。今まで一生懸命働いてきた方々にとっては、髪を振り乱し、子供を抱いて、時間で保育園に預けてさっと行っていたような保護者の方が、ふと立ちどまったときに、幼稚園の親御さんのゆっくり子育てをしている姿を見て、自分の生き方は何だったんだろうかといって、働き方を変えるケースが最近多くなりました。やあ、これは意外な成果だなと私どもが感じていることが、まず一つです。これはいい方の話ですね。

 それから二つ目。今まで子育てに縛られて、本当は自分にはこんなにキャリアがあるのに、子供のせい、お父さんのせいで、うちにいてばかり、何とか外に出て働きたいといって預かり保育を利用するケース。これはやはり女性自身の自己を実現していく場にもなったということですね。

 そして、最後の三つ目は、言いにくいかもしれないけれどもというお話なんですが、これは現実にあります。

 例えば、勤務時間が終わっているはずなのに、お子様が熱を出しているのになかなか迎えに来れない状況があったり、そのときはやはり園長として、子育ての主体者はだれということを親御さんと面談する形で少しずつ伝えていきます。やはり、それは子供のかわいさ、子供を育てることによって親になっていく充実感を少しずつ渡していきながら、親自身が子育ての楽しさを味わえるような、できれば二人目も産もうかなと思ってくれるような親育てを、現場の幼稚園、保育園は、保育士そして幼稚園教員もしているところです。

 以上でございます。

近藤(基)委員 親がパチンコをやっていて、車の中に放置していて、日射病で死んじゃったとか、そういう話がよくマスコミ等で流される。あるいは、幼児を虐待するという。虐待するぐらいなら、預けておいた方がよかったのかなという気もするんですが。しかし、そうならないように地域の中で、幼稚園、保育所の行う役割というのは、やはり非常に大事なものが実はあると思っています。

 ですから、もう一度大竹参考人にお聞きしますが、地域の中で在宅で育てていらっしゃる方々、それとすこやか園とのかかわりというのは何かあるんでしょうか。園に登園している親御さんも、PTAでしょうから当然いつもかかわっていらっしゃるでしょうけれども、地域の中での保育に欠けない子供たちとのかかわりというのは、例えば休みのときには園を少しオープンにして、園児以外の子供も遊ばせるとか、何かそういう取り組み的なものはやっていらっしゃるんでしょうか。

大竹参考人 すこやか園の取り組みということと同時に、品川区の子育て支援室の活動のことを御紹介させていただきます。

 幼稚園、保育園が一体になって運営を始めた二葉すこやか園、大変親御さんに人気がありまして、今お子様があふれ返っています。それと同時に、地域の方々も気軽に園を訪れるということが可能で、正直言いまして施設はもう満杯ということなんです。

 それで、園の中に地域の方々をお招きするスペースがあればいいんですが、私自身としては、昔はポストの数ほど保育園をと言われていたものが、今はコンビニの数ほど子育て支援をというような時代に変わってきていると思います。そのことに着目いたしました品川区の方では、今、保育園の方に子育て支援室の機能をつけまして、〇、一、二歳の在宅の保護者の方とお子様が気軽に、コンビニに通うような気持ちで、気軽に来れる場所をふやしております。

 それは大変な利用ニーズがありまして、つくると、本当に、親子で、子供たちそして若いお母さんたちがお昼を持っていらっしゃるようです。それはなぜかというと、母子カプセルというんでしょうか、繭玉のような中にお子さんと若いママが二人きりになっていて、何を食べさせたらいいんだろう、おむつはどうやってとるんだろうか、この夜泣きは何とかしてくれないという叫びを、多くの同じことを経験している若いお母さんの話を聞くことによって自分が知恵をもらっていく。

 そういった子育て支援室をつくっていくスペースとして、品川区では、二葉すこやか園のほかに、公立幼稚園、公立保育園のジョイント型で今後幾つかふやしていく計画を持っています。このことが、子育てを不安に思わない、家庭支援になっていけばいいというふうに区の方では考えて推進をしております。

 以上でございます。

近藤(基)委員 モデル的なすばらしい取り組みを、品川あるいはすこやか園の方でおやりになっていらっしゃるということでありますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 村山参考人にちょっとお聞きをしたいんです。

 この認定こども園制度、幼稚園とか保育所を通じた機能の強化を図って地域のニーズに応じた柔軟な対応を可能としているものだと思っておるんですけれども、参考人は、こういった施設、制度自体が必要はないんだ、幼保一元の施設というよりも、今ある保育園、幼稚園の機能を強化していけばそれでいいんだとお考えなのか。あるいは、そういった省庁の垣根を取って、一体型の施設もつくれるようにした方がいいのか、中身は別としてですよ。最低基準が云々という話は、それは最低基準に合わせるよりは、それ以上のものを当然望むべきものだし、私自身は、国がしっかり教育というものに金を出すということはまさに必要だと考えていますので、何だったら、義務教育は全額国庫負担で、人件費以外も全部ですよ、全額国庫負担でやるぐらいのことはやった方がいいとは実は思ってはいるんですが、なかなか財政的に許さないという面もあるので、そこを効率よく使うにはこういう制度も必要ではないのかなと私自身は考えているのですが、制度自体、必要かどうか、御意見をお願いいたします。

村山参考人 幼稚園と保育園を一体的連携をもって進めていくということについては異存ありません。そういう意味では、どういうふうにこれを進めるか、そのときに大事なのは、保育園や幼稚園にいる保育者の状況、これはやはりしっかり押さえてもらいたい。

 今、地域格差があるということも言いました。一体化は必要なんですよという形で進んだとしても、その財政的裏づけがないと、どうしてもそれは安い方安い方に流れていく。現実に、地域の保育所というのは本当に、例えば鳥取の場合ですと、県が指定して研修に出てくれと言っても、忙しくて出られない。もっと大変なのは、研修はもう土日でやってくれという状況になり始めているんですね。そういう中で形だけそろえても、これは悪い方に流れちゃうんじゃないのか。そういう意味で、その辺は、実態を踏まえた慎重な論議と慎重な検討をぜひやっていただきたい。

 東京のすぐれた実践というのは、私はすばらしいと思います。だけれども、それは東京の事例であって、そういうことを含めて、全国的な視野でぜひ御検討をお願いしたいというふうに思います。

近藤(基)委員 時間もないので、最後になるかどうかですが、森田参考人にお伺いしたいんです。

 御著書の中で、今後、全国一律の幼稚園、保育所などはあり得ないと思うというくだりがあるんですけれども、深く地域に根づいた幼稚園、保育所を活用して、その地域の子育てニーズに合わせた施設に変えていく取り組みが求められているんだろうと思っております。

 認定こども園制度というのは、そういった地域の実情に合わせたニーズに取り組めるということでは、理念的には同じ考えに基づいているものだと思っておるんですが、いかがでしょうか。

森田参考人 読んでくださいましてありがとうございます。

 私も、認定こども園の仕組みそのものについて異論はございません。問題は、その認定こども園をコントロールできる各自治体の機能をきちんと持っているのかどうかということだと思っております。

 地域の子供の成長、発達、そして親の子育てをそこで楽しいものにできるかどうかということは、やはり自治体の責任というものが非常に重要でございます。そこのコントロール機能をきちんと持った自治体にできるかどうかということが、私は一番大きなポイントではないかと思っております。

近藤(基)委員 最後に、無藤参考人にお聞きをしたいと思うんですが、モデル事業に関する評価を無藤参考人はなされていたわけでありますけれども、その評価結果が生かされた制度になっているのかどうか、端的にお答えをいただきたいと思います。

無藤参考人 モデル事業における基本的な評価の考え方、またそこでの議論の大枠は、この法案に実現されているというふうに考えております。ただし、私の意見で申し上げましたが、具体的な基準、またそこでの財政措置は、この法案のいわば外にある問題ですので、そちらについても十分配慮をお願いしたいというふうに考えております。

 以上でございます。

近藤(基)委員 どうもありがとうございました。これで終わります。

遠藤委員長 奥村展三君。

奥村委員 民主党・無所属クラブの奥村でございます。

 きょうは、四人の先生方、大変お忙しいところをありがとうございます。御苦労をいただいていること、そしてまた、これからのことに対してもいろいろお考えをお聞かせいただきました。まさしく子育て支援というものがもちろん基本にあるわけですが、今回のこの法案につきましても、今後いろいろ参考にさせていただきたいというように思います。

 まず、大竹園長先生にお伺いをいたしたいんです。

 四年間、併設されて御苦労いただいたんですが、お話の中に、やはり地域との連携を特にしておられたと思うんですけれども、具体的に、地域から、あるいはもちろんこれは保護者の皆さんもそうでございますけれども、公立のあれですから、いろいろやっておられると思うんですけれども、園の目標といいますか、先生御自身がどういうような指針を持ってこれを推し進められておるかということを、まずお聞かせいただきたいというように思います。

大竹参考人 きのうも、ちょうど幼稚園の方の保護者会がありました。そのときにお話ししたことです。親子で通って楽しいすこやか園というお話をしました。

 子供は幼稚園、保育園に来て楽しく遊ぶということ、もちろんそれが第一番なんですが、地域が本当に今あるのだろうかと思ったら、地域は意外とつながりが薄いんですね。つまり、マンションの一部屋から幼稚園、保育園に通ってきて初めてお友達ができるというのが現実でございます。そうすると、若い保護者の方は、意外とつながりが地域にはなかったり、出会ったところでおはようとあいさつしたところ、あいさつが返ってこなかったから意外に大人が傷ついたりとか、そんなことがあります。まず、保護者同士がネットワークをつくっていって、我が子の育ちを中心につながっていくことが、初めて出会う子育ての場で、親御さん自身も親になるために地域の方とのつながりを持つ場である、そのことをお話ししました。親子で通って楽しい幼稚園ということをいつもお話しします。

 それと二つ目は、私どものモデルのプランにも書きましたけれども、よさと可能性の発揮ということは子供だけに限ったことではありません。親御さん自身がやはり生き生きと子育てをしながら、保育園や幼稚園に来たことで、自分自身の生き方を存分に楽しんでいけるような人との出会いができるように、そんな幼児教育施設に認定こども園が、そして今は総合施設というような場所がなっていけばいいなというふうに、親御さんにはメッセージとして伝えています。

 以上でございます。

奥村委員 本当に御苦労いただいているお気持ちがわかりました。ありがとうございます。

 大竹先生、もう一度申しわけないんですが、今回、この法案に目をお通しいただいたかもわかりませんが、問題点、こういうようにしていただければもっとよくなるなという思いのところをお聞かせいただきたいというように思います。

大竹参考人 もっとこの法案に命を吹き込んで、そして子供たちの保育、教育の現場がよくなるためには、それは保育にかかわるスタッフの研修に尽きると思います。法案の中でもこのことがしっかりと位置づけられ、それが実現できるようなサポート体制がやはり必要です。

 というのは、今や幼児教育現場は、子供さんへの教育、保育ということよりも、親御さんへの保育サポートが私たちの日常の仕事の半分以上を占めています。極端なことを申し上げますと、いただいているお給料の半分は子供たちの幼児教育へ、半分は親御さんたちの保育へのアドバイスや悩みを聞いたりすることです。そのスキルを、大学や養成機関で学んできたことから、さらに仕事をしながら重ねていくということが大変重要です。

 若い保育者が親御さんの気持ちを受けて、そして子供のことを、さらに指導を進めていくためには、新任の時代、中堅の時代、そして園を担っていく、管理職にならなくてもリーダーになるような仕組みをとっていけるように研修をする機会を、そして研修をするだけの人的なゆとりを持った、こういう制度になっていくことが日本の子供の未来を約束していく近道になるのかなと実感しております。

奥村委員 ありがとうございました。

 無藤先生と村山先生に、ちょっと時間がなかったから、もう少しお述べになりたいことがあったのではないかなと思うんですが、いよいよ我々も、きょう皆さん方の御意見を賜りながら今後審議をしていくわけなんですが、両先生に、まず、今回のこの法案について、何か問題点、指摘をいただくようなところがあるか、御意見を賜りたいというように思います。

無藤参考人 私自身は、先ほど申し上げましたけれども、この法案について、基本的な、大きな問題があるとは思っておりませんけれども、むしろさまざまな、私以外の参考人の方もお述べになったようないろいろな問題については、一つは時間の経過の問題だろうと思うんですね。つまり、今、私の理解では、認定こども園は本年度中という一つのめどの中で、また、これからの数年間どういうふうに認定こども園を全国的に実現するかというところで考えて、今のような法案というものを議論しているわけでございます。

 それに対して、幼稚園、保育所、また認定こども園というような体制を将来的にどうしていくかということは、これまた私承るところでは、幼稚園の無償化その他いろいろな議論があるということでございますけれども、そういうこともあわせながら、やはり五年、十年というかなり大きなスケールの中で、国民の皆様のさまざまな議論をあわせながらしっかりとした体制をつくっていくべきではないかというふうに考えているわけです。

 その際、先ほど申し上げたように、幼稚園は百二十年、また保育所も百年近くの歴史の中でしっかりノウハウを蓄積してまいりましたので、ぜひその専門的な知見を生かす体制を議論していただきたいというふうな希望を持っているわけです。

 以上でございます。

村山参考人 問題点として、一つは、現実に保育所の保育者の調査をしましたら、ここに書かれていますように、ストレスをためている保育者が大変多い、疲れている。それは母親のストレスとダブって出てくるんですね。データは見てください、時間がないので。日本海新聞にも、親のストレス、母親、父親と保育者のストレス、全部出ています。それは何かといったら、現実には、保育園では朝七時から夜七時まで、鳥取の場合なんかはほとんどやっています。子育て支援事業もやっているところを私たち調査しましたから。

 そこの中で、もう一つ大事なのは、親と保育者が話し合っているかというと、それがほとんどできていない。だから、日常的に、一週間に話ができるというのは四割しかいないんですね。あとは、ほとんどないというのが二割ぐらいあるんですよ。

 つまり、子育て支援にとって大事なのは保育者なんですね。だから、保育者をちゃんと配置して、そして保育者はいつも親とのかかわりが持てる。親のニーズも保育者のニーズも、もっと親や保育者と話し合える時間とスペースが欲しいというのが要望の中で大変強いんですね。共通しているんです。そういう意味で、この基準の問題をやはりもっと考えていただきたい。これが一つ。

 それから、一人親や、今いろいろな問題が出ています。子供を持っている親の中にも格差が明らかに出ています。

 例えば、三割ぐらいは八時ぐらいまでに帰ってこられる。日曜日でも三割ちょっとは完全に休める。ところが、残りの六割近くは夜遅い、日曜日もなかなか休みにくいという状況、これは明らかに格差ですよね。そういう格差の中で、まず安心して保育園やどこかに預けられるという市町村の保障をきちっとしていかないと、できたけれども使えないとかいう形になったら不信につながるんじゃないのか。

 例えば、育児休業がとれることになっていながら、ほとんどとれないですよね。だから、育児休業の話をすると、多くの親は、私にもう関係ないというふうに言います。そういう意味で、全国いろいろなところで、地域でちゃんとできるような、市町村の保育所の責任というのをもっと法案の中に位置づける、そういうことをぜひ御検討願いたいなというふうに思っております。

 以上です。

奥村委員 いろいろ問題点、指摘をありがとうございました。

 先ほど冒頭で無藤先生からお話をいただいたときに、公立の場合は幼稚園の資格を持った職員と保育所との交流なんかはできると思うんですけれども、今度の法案の中に四通りのやり方があるわけなんですが、特に私立の幼稚園なんかでは、幼稚園の資格は持っているけれども保育所の資格は持っていない、保母の資格は持っていないというのがあるわけですね。

 そういう流れの中に、公立の場合だったら市の職員ですから、いろいろ調整をしながら確保はできますけれども、これをどんどん考えていきますと、すぐにこの体制を整えようと思うと、特に私立なんかは、相当やはり無理をしなければならないということがわかってきたんですけれども、そこらの点、いろいろ審議会の中で御苦労いただいたようですが、そういう問題点はなかったでしょうか、お聞かせをいただきたいというように思います。

無藤参考人 今の点につきましては、公立、私立というだけではなくて、一般に、幼稚園が保育園機能を取り込む場合に、やはり保育所の経験のある保育士の方々が必要になるわけですね。またその逆は、当然、保育所が幼稚園機能を持つ場合にも、幼稚園教諭の免許、資格だけではなくて、経験者を必要としているというふうに思います。そういう意味では、おっしゃる問題点はさまざまな地域で見られるというふうに思うわけです。

 比較的うまくいっているところは、先ほどの大竹先生のところもそうですが、やはり公立の保育所と公立の幼稚園の合体の中で運営している、これが比較的うまく動いているケースだと思います。

 それ以外ではどうかということですけれども、例えば、私立の幼稚園が保育所の機能を含みながら総合施設化している例、あるいはそれに近い例というのは、言及いたしました私の大学の附属幼稚園もそれに近いものですけれども、基本的には、一つは預かり保育というものをかなり丁寧にやりながら少しずつ拡大してきたということがあります。

 それからもう一つは、今度の法案でもそうですが、学校法人の中で保育所の運営というものが可能になり、あるいは社会福祉法人の中で幼稚園の運営が可能になるという方向に今動きつつあるわけで、これが広がる中で、それぞれ、これまで異なったものの経験をかなり持てるようになっていくというふうに思います。

 それからまた、もっと現実的に申し上げると、総合施設化する中でやはり経験者を新たに雇用するという形で、具体的な運営に差し支えないような方式もとっております。

 しかし、いずれにしても、恐らく経験のないところで新たに始める場合の、特に最初の二年間ほどの混乱は予想できますので、その際に、公立のみならず、私立を含めた自治体からの支援というものが大いに望まれるというふうに考えております。

 以上でございます。

奥村委員 ありがとうございました。

 最後になりましたが、森田先生、どうもありがとうございます。私は感銘を受けました。我が党も子ども家庭省を実現したいということで頑張っているわけなんですが、先ほど、子ども庁だとかいろいろおっしゃっていただいたわけですが、まずどのように推し進めたらいいかということは、これはもう我々が政権をとらぬ限りはなかなか難しいと思うんです。

 そこで、特に保育料の問題なんです。厚労省と文科省、これはもちろん制度が違いますから、この問題について、特に、今後認定こども園がどんどん実現をして、進めていく場合に、これは根本的に変えていかなければならないと思うんですね。ですから、森田先生、そこの点を一つお聞かせをいただきたいというように思います。

森田参考人 子ども庁あるいは子ども家庭省をぜひ実現していただきたいと思っております。自治体の中で子供の総合施策を担当する部署ができますと、子供施策は進んでいきますので、ぜひ実現の可能性を探っていただきたいと思っております。

 今、保育料の問題点について、もう一点御質問をいただきました。

 具体的には、東京の中にもう既に見られているんですが、東京都には独自の認証保育というものがございます。この認証保育がたくさんある地域では、認証保育の中での実質上のダンピング、具体的に言えば、保育料は同じであっても、例えば給食費を無料にするとか、あるいは延長保育料を無料にするとかという形でのダンピングがもう既に起こっております。

 これから、恐らく、認定こども園が独自の保育料を定めていくことになりますと、自治体の調整機能が余り働かない地域ですと認定こども園がふえてくる、あるいは保育の供給量がふえてくる過程の中ではそういったことが起こり得るだろうと思っております。

 また一方では、今、待機児がたくさんいる地域の中で、こういった認定こども園のように、直接契約の施設だけが数園入るということになりますと、そこに、保育を希望していて、なかなか認可保育園あるいは従来型の保育所では入りにくいと思われる人たちが殺到することが予想されます。

 そうなりますと、そこはかなり高額な保育料を規定していくということにもなりかねませんので、そうした意味で、自治体がきちんと調整機能を持って、そして独自の保育料を設定しようとも、そこに調整機能をきちんと持たせて、そして各自治体の中で、全体として保育所、幼稚園あるいは公私立含めた保育料の安定的、あるいは子育てをしている家庭が子育て可能になっていくような適正な保育料の設定というものを、きちんとコントロールするような機能を持たせていただきたいと思っております。

奥村委員 ありがとうございました。

 子供は国の宝でございますし、もちろん今のこの法案でもそうですが、やはり政治は子供を中心に考えていかなければならないというように思います。

 各先生方が今日までも御苦労いただいているわけでありますが、また我々も、この法案を審議する中で、きょうお述べをいただいたいろいろな御意見を参考にさせていただいて、常に子供を中心に考えて推し進めていきたいということを申し上げておきたいと思います。

 お運びをいただき、いろいろ開陳いただきましたことに心から感謝を申し上げて、終わります。ありがとうございました。

遠藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 四人の参考人の方には、お忙しい中、御出席いただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、四年前に品川区で二葉すこやか園ができましたときに、早速に党として視察に参りました。私どもは、保護者の立場から、幼稚園と保育園の一体化がもっともっと進んでいけばいいなという思いがございましたので、先駆けとしてそのような施設ができたこと、その中で実際にどういう運営をしていらっしゃるのか、そして子供たちはどんなふうに遊び、学んでいるのか、それを知りたかったからです。子供たちがおおらかに、伸びやかに生活していることに安堵をいたしました。

 先ほど、三つのニーズがある、時間と機能と質だとおっしゃいました。その時間なんですけれども、そちらは七時半から夜の七時半まで十二時間、たしか、品川区では十時まで預かっていらっしゃるところもあると伺いました。

 そのとき思いましたのは、働いている女性にとっては、保護者にとっては、十時までというのはいいなと思いました。と同時に、子供の視点に立ったならば、これは、十時までお母様、お父様に会えない、それから、もう一度家に帰ってきて本格的に寝なければいけない、子供の視点に立ったらどうなのかしらんと思ったんですね。

 といいますのも、私も、子育てと仕事の両立に必死になっている若い母親でした。私にとって、どちらも大事な、かけがえのない宝であり、命であった。その中で、いろいろなジレンマもありました。子供の視点に立つということが、そのときは必死で余り考えられなかったんですね。今になると、ゆとりができて、子供にかわいそうな思いをさせたのではないか。娘にそう言いますと、大丈夫よ、ちゃんと育ったんだから、それはママの考え過ぎと言って慰めてもらうんですけれども。

 働く保護者のニーズに合わせる時間の体系にすると、子供にとってはどうなのかという気が私はいたしますけれども、現場にいらして、園長先生はどうお考えか、伺いたいと思います。

大竹参考人 四年前に本園を視察していただきまして、ありがとうございました。

 子供の視点に立って、やはり時間というものをどう考えたらいいかというような御質問だったと思います。

 しばらく前までは、子供たちは親の背中を見て育つというようなことも言われていたんだと思うんですが、やはり今のお子様の状況を見ていると、背中というよりは、少しでも長く親が子供のそばにいることも大変重要です。

 品川区が夜間の長時間の保育を始めた理由は一つあります。それは、どうしても長時間の保育を必要としている世帯があるということです。

 それは、女性の社会への進出ということを考えてみましたら、例えば、看護師の仕事をしている方、マスコミや締め切りのある仕事をしている方、弁護士の方とかどうしても働かなくてはいけない方。それから、おうちが自営で飲食店ですと、お客様のいる時間がどうしても九時ぐらいまでが盛んですので、どうしても必要な世帯の子育てを見ていますと、二重保育という現実がありました。六時半までの保育園を、まただれか近所の人に頼んでその方のおうちにいるような、お子様にとって二重に保育をされる、大人の手を二回も三回も渡り歩かなくてはいけない、これが子供にとって本当にいいのだろうか。そういうことに疑問を持った本区の区長が、それなら公立で十時まで預かろうという仕組みをつくりました。

 ですので、本当に必要な世帯に使ってもらうという意味で、多様な保育サービスということで十時までの保育を設定しました。

 ここは保育者の振り返りなんですが、最初は、保育サービスを多様にすればいいということで、十時までの夜間の園では、御飯を食べさせて、大体六時半過ぎにおふろに入れるところまでやっていました。

 ところが、それはやめました。というのは、子供をおふろに入れるところまで保育者がやってしまったら、親子のきずなはどこではぐくまれるんだろうか。汗をかいた体を子供の一日のにおいから感じて、おうちに帰って親子でふろに入ること、そのことが逆に、子育てをしている実感、それから、親の懐に抱かれておふろに入る楽しさを子供は感じるのではないだろうか。

 そういう意味では、保育を提供しながら、先ほどもお話ししましたように、親御さんに子育てをする楽しさとそれから大変さを引き渡ししていくという、そんなことを現場では工夫しております。

池坊委員 ありがとうございました。

 村山参考人にお伺いしたいんですけれども、子供に優しい社会の構築は私も大賛成です。もっと子供に予算をとらなければ一流の国とは言えないのではないか、それから、ナショナルミニマムをつくるということもぜひ必要なことなのではないかというふうに私は思っております。

 確かに、保育園には格差があり過ぎです。

 無認可保育園なんですけれども、私の孫もずっと生まれてから無認可保育園に行っておりますけれども、これはやはり保護者のニーズがあるから存在していると思うんですね。無認可保育園をこども園の中に入れないということは、どんどん環境が劣悪になってしまうのではないか、何か無認可保育園を救う方法というのがないかなと私は思っているんですね。政府の支援はオール・オア・ナッシングで、全然ないか、あるか、どっちかなんですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。

村山参考人 無認可の問題ですけれども、無認可もさまざまですね。それで、まず第一点として、無認可を認可化するということなんですね。ただし、無認可の認可化の場合に、設置する人が、私は無認可でいたいんだという選択をする設置者もいるわけです。だから、そこまでは指導できません。

 そういう意味では、まず、無認可の認可化を進めていくという政策をむしろ強力に推し進めることが必要じゃないのか。そして、それは子供の条件が、無認可のときよりも、認可になればはるかによくなるわけです。そういうことをやはりわかってもらう施策を打ち出すことじゃないんだろうか。それで、計画的に無認可をなくしていく、少なくしていく。

 ただし、無認可の方がいいんだという親もいるわけですから、そこは、例えばどういう親がいるかといいますと、私もいろいろかかわっていて、無認可だったら何でも自分の思いでやってもらえるとか、保育者の思いだけでできるから無認可の方がいいんだという方もいるんですね。そういう意味で、その辺の難しさはあるんですけれども、そこの施策を打ち出していただくと、むしろ待機児解消が大幅に進んでいくんじゃないのか。無認可を放置しておきますと、入れない人が無理して入っていくわけで、嫌でも入るわけです。ところが、無認可にいて、大変なときだけ乳児にいて、幼児のあきが公立にでも民間でも出れば、そっちへすっと移っちゃいますよね。

 そういう意味で、ぜひ無認可の深刻な問題の実態調査をしてもらうということと、もう一つは認可化を進めることで、こども園の中にそういう施設を位置づけながらということであれば、私は、それはそれなりの意味があるだろうというふうに思っております。

池坊委員 無認可の中には、認可をしてほしいんだけれども、そばに認可の保育園があるからしてもらえないというところもあって、それは残念だなと思いますので、参考人の御意見は本当に、そういうところはやはり認可すべきというふうに考えます。

 森田参考人に伺いたいんですけれども、地域の中で子供を育てるということは私も賛成です。

 ただ、今、核家族になっておりますから、地域といっても、子供を連れて保育園あるいは幼稚園に行く。それで、働いている方にとっては、地域はどこかというと、土日でしかないんですね。むしろ働く場所の近くの、一番理想なのは職場の中に保育所、保育園、幼稚園があることだと思うんです。だけれども、これは無理ですよね。

 そうすると、職場の近くにこうしたこども園がありますと、ちょっと熱を出してもすぐ駆けつけることができる、あるいは近くに子供や保護者がいるという連帯感がある、あるいは帰るときに一緒に帰ることができるとか、今、こども園とか幼稚園、保育園を中心とした新しい人間関係、地域にかわる人間関係が構築されるのではないかと思うんですね。

 ですから、地域地域と言われると大変に耳ざわりはいいんですけれども、現実の保護者にとっては、地域との結びつきというのはなかなか薄いのですね。そういう点について、新しい人間関係、新しい地域というものが出てきてもいいのではないかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

森田参考人 今の御意見、ひょっとしたらそういった関係ができてくる方たちもいらっしゃるのかもしれないと思っております。

 ただ、そのためには、小中も含めた組織、学校教育のあり方というものを考えていかなければならないし、あるいは、そういうところを意識したときに、初めて職場の近くに保育所を、あるいは幼児教育の施設を求めていくという方が出てくるだろうと思っています。

 具体的に申し上げますと、先ほどの七年目に入りました幼保一体型をやっている秦野市などでは、小学校に入ったときに子供たちが非常に関係ができていて、そして、その地域の中で親同士の声かけもあって、子供たちの中で過ごすときに、安心できる地域というのができ上がっていくわけです。

 そういう意味で、もし仮に職場の近くにこども園をつくるならば、そこにまた小中ぐらいまで、つまり、子供が自分の足でその先展開できるようになってくるのは中学校卒業後ぐらいになってきますので、そういったところでの教育体制というものを見直す必要があるのではないかと思っております。

 私は埼玉県飯能市で「もりのようちえん」というのをつくることにかかわりました。そこは、地域の子供たちが学校から帰ってきたり、あるいは土曜日や日曜日、休みのときに、森の中で子供たちだけのプレーパーク、あるいは親と子で一緒に遊べるような場所、これを地域の中につくっていこう、それを幼保あるいは小学生も含めた地域の子供たちの遊び場としての機能を持たせていこうという考え方です。

 そういったものを何かプラスしないと、恐らく、子供たちが一人で歩き始めたときに、その地域の中での安心、安全というものが確保できないのではないかと思っております。

池坊委員 これからの地域はどうあるべきかということもちょっとみんなが考えなければならない視点なのではないかと思います。今までのような、自分が住んでいるところが地域なのか。では、そこの中で何をするのか。小学校が遠いところに通っていらっしゃる、そういう子供たちもいるわけですよね。ですから、そういう子供も含めて、これは考える必要があるのではないかというふうに思います。

 無藤参考人にお伺いしたいんですけれども、参考人は、このたびの合同検討会議の委員でもあり、それから、総合施設モデル事業評価委員会の委員長として総合施設モデル事業の評価についての最終まとめをまとめられましたことに、私は敬意を表したいと思います。

 いろいろな問題が多岐にわたって議論されたのではないかと思います。保育とか教育内容、あるいは教員資格、施設など、一口ではおっしゃれないと思いますけれども、どういうことが一番議論されたかということをお伺いしたいのと、先ほどおっしゃった中で、五年、十年とおっしゃいました。私は十年一昔と言いましたが、今、五年一昔と言うぐらいに急速に社会情勢も変わってきておりますのに、十年のスパンは余りにも長過ぎるのではないかと思うんですね。これがせっかくスタートして、四年前は品川区では既にスタートしているんです。だから、これをどんどん全国的に広めようというようなお考えはないかもあわせてお伺いしたいと存じます。

無藤参考人 二つのことについてお答えしたいと思います。

 一つは、モデル事業評価委員会その他で議論してまいりました点、多岐にわたりますけれども、特に委員が力を込めて議論した点を申し上げたいと思います。

 それは、最終的には認定こども園の保育の質をいかに保つかということにあります。一つの考え方としては、国が全国一律にかなり高い基準を設けてそれを必ずやらなければならないというやり方であろうと思いますけれども、これは必ずしも現実的ではないだろう、これはやはり地方のニーズ、具体的には財政事情も配慮しなければ広がりませんし、また、何度も申し上げますが、既存の幼稚園、保育園が転換する中で可能な範囲というのがあります。

 しかし、子供のためということを考えたときに、必ず満たすべき最小限の質のレベルがありますので、それを国としては責任を持って実施してほしい、また、その趣旨を十分自治体にも伝えて、自治体における認可、認定基準を明確にしていただきたい、こういうことが第一点でございます。

 もう一点は、これは私の陳述でも申し上げましたけれども、やはり基本的には認定こども園の実態を明確に情報公開しながら、さらに専門的な研修を十分に積めるような体制を各園でつくっていただきたい、そこがしっかりできれば基本的な質は確保できるのではないかというふうに考えております。

 それから、第二点でございますけれども、私は、五年、十年と申し上げたのは認定こども園自体のことではないわけで、認定こども園としては、途中でも申し上げたように、平成十八年度後半、少なくとも十九年度から全国的にかなり展開できるような用意を各自治体、またはその自治体において広げたいと考えているさまざまな法人、公立の準備が今進みつつあるというふうに考えております。

 私が五年程度で少なくとも考えるべきだというのは、そういったことを含めて、幼稚園、保育所、認定こども園の全体の保育の仕組みというものを国としてどういうふうに保障していくか、これについてはぜひ先生方に御議論いただきたいということでございます。

 以上です。

池坊委員 最後に、大竹参考人にお伺いしたいのですが、四年前に一体化の運営をしていらっしゃいました。昨年四月からは総合施設モデル事業としてなさったわけですね。そうやって切りかわってきて、村山参考人だったでしょうか、会計が三通りも四通りもしなければならないというようなお話もございましたけれども、例えば会計処理とかさまざまな問題で、何か変化があったか。そして、政府に、こういうことはもうちょっと手続上簡略にしてほしいとか、そういう要望がおありになるかをちょっと最後に伺いたいと思います。

大竹参考人 品川区の事例を御紹介させていただきます。

 四年前に開園したときは、幼稚園、保育園、それぞれお財布が別というんでしょうか、片方は学校教育費の中の幼稚園という位置づけでいただきました。そして、片方はやはり保育園の運営費ということですので、どうしたらいいのかというところで、品川区はいろいろ改革をどんどんしていく区でございますので、幼保一元化事業費というので、幼稚園の教育費の中にお財布を、お財布が一つで仕切りは二つのようになっていたんです。

 ところが、このところ、さらにどんどんよい方向での教育改革が進んでいく中で、やはり住民の方々にとって窓口を一本化しようということが始まりまして、幼稚園、保育園、もちろん公私立あわせて、区民の皆さんが子供を預けたいんですけれどもといってやってきた場合は区の保育課というところに行くように、窓口の一本化を昨年から始めました。

 これによりまして少しずつ予算の配当も変わってまいりまして、今年度になりましたところ、やはりもうお財布は一つ、仕切りはなしということで予算を幼稚園の方におろして、すこやか園運営費というんですね、そういう名前に変えていきまして、私がここが一番大事かなと思いましたのは、一般財源の中に入りながらも、教材費という仕切りを必ずつけておかないと、例えば一〇%シーリングとかになってきたときにどんどん子供に係る予算が減ってしまいます。ですので、財布が一つになって運営費となったときにでも、やはり子供への教材費、例えば絵本を買うための図書費、そういう形でしっかりと各自治体が位置づけていくことが今後幼児教育の質を落とさないためには大変重要なことだと考えております。

池坊委員 これから、窓口の一本化、手続の簡素化というのはぜひ進めていかなければならないと思います。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 幼児の保育、教育にかかわる問題で、参考人の皆様方はそれぞれの立場でいろいろな取り組みをしていらっしゃる。きょうは、その中からの問題点やまた御意見を伺うことができまして、本当にありがとうございます。

 今回、認定こども園ということでの法案審議でございますけれども、その提案理由の一つのキーワードが子供の教育及び保育に関する多様なニーズ、先ほどからお話がございましたけれども、その多様なニーズに対応するということがあるんですね。

 そこで、私はまず無藤参考人にお伺いしたいと思いますのは、最初の陳述の中でもそのことに触れられまして、地域の保育ニーズが変化しているということの中で、子供の数が減って、やはり幼稚園、保育所の統合というか施設の統合が求められているということをおっしゃいました。その問題と、一方では、待機児問題というのは、これは国政でも、小泉首相も言及されますように、やはり重大な問題ですよね。待機児は一方では二万、三万とある、しかし一方で、地域を見ると子供の数は減っているんじゃないかという問題と、これはどのように考えたらいいんでしょうか。

無藤参考人 今の点ですけれども、多様なニーズというときに幾つかに分けられるわけであります。一つが、今の少子化によって幼稚園、保育園ともに定員に満ちていない場合です。それから二番目は、その待機児童の問題。また三番目は、中間的ニーズと呼んでおりますけれども、パートその他のさまざまな、多様な雇用形態の問題などが主だと思います。

 それらは互いに少しずつ違うところでありまして、実は、よくさまざまな地域を調べますと、幾ら少子化といってもかなり待機児童が多く、また、むしろ幼稚園、保育園ともに不足している地域もあります。また、幼稚園は余っているけれども保育所は足りないとか、あるいは保育所の中でも、〇歳、一歳については希望者が多いけれども三歳以上についてはかなり定員が余っているという場合、また、公立、私立、いろいろな形態の中で特定の運営形態のところについては統廃合の危機に直面している場合、また保育時間についても長時間保育について不足しているとか、要するに非常に多様なわけですね。

 したがって、従来の幼稚園、保育園の体制で十分やれて現状を変える必要がない地域も一方にあるわけですので、全国一律の統計を見ますとちょっと矛盾しているように見えますが、地域ごとに見れば、その地域における固有のニーズというものがある。しかも、その地域というのは、例えば千代田区あるいは新宿区という一つの地域をとっても、その中のどの町かによってかなり変わりますので、そういう意味での多様性というふうに申し上げたいと思います。

 以上でございます。

石井(郁)委員 ありがとうございます。

 今の御意見を伺いましてもまさに多様でありまして、私は、そういう点でいいますと、認定こども園という新たな仕組みを入れるということで、果たしてそれにこたえられるのかというのが私の疑問でもありましたので、伺ったところでございます。

 この問題で、村山参考人にも一つ伺いたいと思います。

 先ほどの御意見の中でも、無認可保育園の実態というのも私も大変深刻だなというふうに思いました。それからまた、預かり保育が、文科省の統計ですともう七割の園で受け入れているという話でしたが、しかし、実際子供の数でいうと六%ぐらいだというのはちょっと驚きましたね。そういう点でも私たちはやはり実態というのをまだまだつかみ切れていないのかなというふうに思いましたが、村山参考人のお考えとして、今の話との関連で、本当にこの保育のニーズというのは一体どう見たらいいのか、地域のニーズというのはどう見たらいいのかということで、今の待機児との関係など、少しお聞かせいただければと思います。

村山参考人 多様なニーズですけれども、親の生活状況がかなり多様になってきているというところが私は一つあるんじゃないのかと。先ほども言いましたように、働いている親の状況が本当に階層化が進み始めている、そこからくるニーズが一つあるということ。

 それから、家庭にいるお母さんでも子育てに大変ストレスを感じていて、そして、とにかく、三歳とか四歳で幼稚園に入れるけれども、友達をつくるにも友達がなかなかできない。そういう意味では、今幼稚園や保育園で子育て支援センターの取り組みがあります。これはそういうところに部分的にはこたえてきているんですね。

 しかしながら、実態を見ますと、例えば子育て支援センターでちゃんと人を配置してやっているところではかなりできるんですけれども、その子育て支援センターの開設状況を見てみますと、やはりこれも多様で、毎日やっているというのは人員配置がちゃんとできているところだけなんですね。だから、子育て支援センターは何曜日ならやりますよとかそういう形になっていて、親が自由に使えるような状況にないのは、現実的には何かというと、職員、スタッフの問題なんです。

 審議会のこども園の論議の中でもありました。議事録を読んでいただくとわかりますけれども、そういうニーズに、親や子供の問題にこたえていく、いろいろな対応をするというには、総合的な力が必要だ、職員の力とスタッフがそろっていないとなかなかできにくいんだというような発言も委員会の中ではあります。

 だから、ただ頭数さえそろえばいいということでもない。その辺で、多様な時間の問題、そういうのを全部、朝早くから夜間の保育もある、それから一時預かりも出てくる、幼稚園でやっている預かり保育もある、それから、ちょっと預けたい、遊びに幼稚園に行って、あるいは保育園に行って、子供と一緒に交わる中で親が、自分の子供を遊ばせながら友達とのかかわりを初めて知るんですね。

 そういう意味で、今保育園でやっている子育て支援センターの取り組みというのは大変大事なんです。ただ相談を受けるだけじゃなくて、保育園の子供と地域の子供が遊んで、そしてその中で子供同士が遊ぶ姿を親が見ている、それで先生と話し合える、そういう状況を幼稚園や保育園でつくっていくことが大事じゃないのか、それは各園で主体的に取り組めるような人員配置と条件をどうつくるかということじゃないんだろうか、そのことがやはり多様なニーズにこたえる基盤をつくっていくことじゃないのかなというふうに思います。

石井(郁)委員 どうもありがとうございます。

 次の論点なんですが、今回の法案では幼保一元化に向かう一歩という評価もあったり、また幼保の一体化という点での促進という点もあるかと思うんですが、この点で大竹参考人と森田参考人に伺いたいと思います。

 もうそれぞれ幼保の一体化というのは進んで実践されているわけですよね、四年、七年と。そういう現実が一方である。その中で新たに認定こども園という仕組みをつくるということになりました。では、今進んでいらっしゃる皆さんの園は、率直なところ、皆さんというか例えば大竹参考人のところは、今度は認定こども園というふうに手を挙げられるんでしょうか。それとも、そうじゃなくて、これはこのままでいいですよというふうにお考えになるのか。つまり、お伺いしたいのは、この新たな法律というのは現在一体化を進めている皆さんから見たらどういう意味を持つんでしょうかということです。

大竹参考人 認定こども園という形で、総合施設が名前が変わってくるんだろうということを時代の流れの中で感じ取っております。

 最初は私どもの施設、四年前は幼稚園、保育園の一体化施設、同じ屋根の下にある合築型ということでスタートしました。それは、最初は幼稚園、保育園の垣根を低くして、スタッフが皆子供たちの教育の充実のために、保育の充実のために尽くしてきたことです。

 時代の流れの中で変わってきたことといえば、やはり各幼稚園、保育園がこれまでのあり方では違うものを、機能充実を求められてくるという時代になったんだと思います。それはとりもなおさず、やはり、今ずっとお話の中に出ているような多様な保育ニーズということが、幼児教育をするだけの施設ではなく、もっといろいろ、子育て支援も含めて、それも在宅の子育て支援も含めて、それからスタッフも、それにかかわる幼稚園にいる教員、それから保育士、そのほかに医師、看護師、カウンセラー、また近隣の小中学校の教員の方々、ボランティアの方々、そういう地域の人材も全部総合的に子供の育つ場所に入り込んでいって、保育、教育、やがては子供たちの児童文化や遊びの発祥になるような場所に変わっていくように機能が拡充されていくことだと思います。

 今、二葉すこやか園は品川区型の幼保一体化施設として運営をしておりますが、認定こども園は恐らく東京都が認定していくことになるのかと思いますが、品川区がそれを申請したときに新たな機能充実として何が生まれるかと考えたときに、やはり在宅の〇歳から二歳までのお子様を抱えたお母様、御家族が気軽に入り込んでこれる、ちょっと遊んでいる様子を見せてください、今でもいらっしゃるんですが、一緒に過ごさせてくださいとか、そういった新たな子育て支援をしていく機能を充実させていくことができるのではないかと思います。それはもしかしたら状況を変えて、土曜日のファミリーサポートとか、もしかしてお父様も一緒に来れるような場所になるとか、もっと気軽にそしてフランクに御両親で来れるような場所に変わっていくことも、私どもの施設の機能が認定こども園になったときには変化していく姿かなというふうに予想しております。

 以上でございます。

森田参考人 認定こども園につきましては、過疎の地域等で今公的な幼稚園だとか保育所をばらばらに運営しているところにとってみますと、恐らく、子供たちを地域で育てていくというときに、この認定こども園という仕組みができる中で改めて公立の施設をどう使っていくのか、どのように子供たちの育ちや子育てに活用できるのかという可能性を開くという意味では、一つの法律ができるということは全国的な浸透度としては非常に重要なものだと私は思っております。

 また、民間のいわゆる私立の幼稚園等の施設というのは日本の中にまだ多数あって、そこがまだ〇、一、二歳のとりわけ在宅の子供たちに十分に活用されていない。この施設の方々に地域の子育て支援、とりわけその後幼稚園に行くお子さんたちが大変多いわけですから、その子供たちの在宅子育て支援のところにしっかり目を向けた実践をやっていただくためには、これまた認定こども園の仕組みということは恐らく可能性を開いていくものになるだろうと私は思っております。

 ただ、もう一つとても大事なことは、この幼保の一元化というときには、今の既存の保育制度の中で支えられている地域の子育てというものにどのようにこの認定こども園の仕組みが影響を与えていくのかということをやはりしっかり見てみる必要があるだろうと思っています。

 そういう意味では、この法案の改正ということを割と早い時期に視野に入れながら、過疎や過密、地域の中でも子供のいる地域というのが今格差が出てきておりますので、その地域によってどういうふうな影響を与えるかということをしっかり見ながら法案の行く末ということを見ていきたいと思っております。

石井(郁)委員 時間もわずかですけれども、ずっと議論されております一つが、やはり保育には本当に人件費というのは大変かかるわけで、そのコストを避けるわけにいかないという問題があると思うんですね。だから財政問題というのは国として一番支援しなければいけないことだというのは言うまでもないんです。

 さて、そういう国の保育、教育の基準というのは、一応最低基準があるわけですけれども、今回、その基準はありつつもというか、どういう形で示されるかというのはありますけれども、認定こども園は結局都道府県の条例に任される。都道府県が認定するということになりまして、るるお話ありましたように、今都道府県の財政事情が悪化しているし、また非常に都道府県の格差が広がっているというもとで、果たして本当に日本全国すべての子供たちが、大事な幼児期にいい保育をひとしく受けることができるのかという心配が一番あるわけでございます。

 それで、この点は村山参考人に伺いたいと思うんですけれども、国が決めたとしても今の都道府県の状況によってはその国の基準が守られないということは想定できるんじゃないか、その場合に一体どういうことが起こっていくのかというような問題について。そしてまた、国として本来保育で担う責任は一体何なのかという問題でお聞かせいただければと思います。

村山参考人 お金がないという中で進めていく場合に一番出てくるのは、職員を少なく置くということです。これしかできないですよね。それとスペースをなるべく狭くする。こういう問題になってきます。

 そうしますと、今の現実の保育所、幼稚園ですら、私たちの調査で見ますと、親と子供が触れる、親子で触れる、まずスペースがないんですね。保育者と親が話し合えるスペースがない。どの保育園にもほとんどありません。だからプライバシーが守れないんです、保育者と親の会話。

 そういう現実があって、それよりも低い水準でやるということで、何でもやってもいいよということになったときに、やはりスペースがなくて職員がない中に、親子で来たりあるいはいろいろなニーズにこたえようと思えば、そこで形だけの対応になっていかざるを得ない。そのときに何が起こるかというと、やっていると言うけれどもあれじゃという話になってくる。これが一番私は政治不信につながるんじゃないのかと。

 今大事なことは、そういう財政的なことを考えたときに、今ある保育園、幼稚園、約四万カ所あるわけでしょう、かなり多いわけですよね、それをちゃんと有効に使う、これがまず大事じゃないのか。

 だから、私は、こども園の問題を考えるときに、すべての認可施設をやはりちゃんと位置づけて、そこで半分以上のところが子育て支援をやってもらえれば、このこども園の問題というのはかなり達成できるんですね。そのことを念頭に置いた場合に、それは今ある施設の活用ですから、財政的にもうんとかけなくても、それにプラスアルファさえ出していただければできるんじゃないのか、そういうことを少し御検討願えればというふうに思います。

石井(郁)委員 これでちょうど時間になりました。どうもありがとうございました。

遠藤委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、村山参考人に伺います。

 日本の児童福祉施設のスペースが戦争直後のその時期の基準ということで、私ども、児童虐待防止法をつくる際に、虐待された子たちがどのような環境で過ごしているのか見てきて、そのことは痛感をしているんです。

 今回、規制改革・民間開放の会議の方で、幼稚園あるいは保育園のどちらか緩い方の水準以下とする、この考え方に沿っていくと、施設の問題でどのようなことが言えるのか、そのお考えをまず伺いたいと思います。

村山参考人 日本の最低基準が大変低い。幼稚園の基準と最低基準と考え方が基本的に違うんですね。よく三十五人が幼稚園で、四―五歳児三十人が保育所、何か保育園の方がいいみたいに思いますけれども、そうじゃないんです。

 どういう考えかというと、幼稚園の場合はクラスで、一クラス三十五人になっています。だから、絶対三十五人以上は入れないんですね、入れちゃいけないわけです。ところが、保育所は、一人当たり一・九八平米となっている、クラスという規模はありません。だから、今現実に、地方の保育園では多くが、乳児で二十人、三十人が一クラスになってくる、幼児で四十人、五十人が一クラスになる、こういうのはざらにあるんですね。

 そこで、保育者は人数が決められていますから、例えば、幼児の場合だと五十人から六十人いてそこに二人の職員がつくとか、乳児ですと、六人に一人、三十人いればそこに五人から六人がついて、ごちゃごちゃごちゃごちゃして大変やりにくい保育になっている、こういう訴えが出ているんですね。

 そういう意味では、まずスペースが狭いということで、その上、寝るところも遊ぶところも食べるところも皆同じです。そのために、職員はみんな、机を出したり片づけたり、布団を敷いたりということに追われる。この状況が、こども園でもし無認可も含めてやっていけば、もっとひどくなっていく。

 例えば現実の無認可の例で言いますと、どういう状況になっているか。これは、補助金をもらって一定程度無認可の基準をクリアしているところでも、そういうスペースですから、ワンルームに何人入れると、三十人とかそこへ詰め込むんですね。そうすると、片づけるのが大変だから食事のときはどうするかといったら、机にみんな一人一人座らせておいて、汚すから自分で食べるということをさせないで、口にスプーンで入れてあげる、こういうことは現実に都市部であるんですよね。そうすると、親はそこを見ていないわけですから、子供は自分で食べたいという思いを一歳、二歳で持っていて、でも、食べさせてあげない。それは、汚れるから、狭いからです。寝ているときにトイレへ行くのに人の布団を踏んでいく。こういう狭さの現実の中で子育て支援を幾ら呼びかけても、親はその実態を見たときにやはりうんざりすると思います。

 そういう意味で、今このままで子育て支援を進めると、やはり保育園に対する不信、幼稚園に対する不信、保育者に対する不信、最後は政治に対する不信ということが、大きく心の中にわだかまっていく状況をつくり出すんじゃないのか。

 そのことを私は、条件の問題というのは、条件が悪いということは、保育者も子供も親も夢が持てないんです。夢の持てない施設を幾らつくっても、そこからは夢を持った子供は育っていかないんじゃないのか。施設の制度の問題は、子供自身が、それぞれの大人や保育者が、夢の持てる環境をつくるということをぜひ心がけていただきたいなと思います。

保坂(展)委員 ありがとうございました。全く同感でございます。

 次に、森田参考人にお願いいたします。

 お配りになった資料で、これは沖縄県の宮古島だと思いますけれども、市立幼稚園の保育料を三カ月以上滞納している保護者に対して園児の登園停止措置ということをめぐって、新聞の記事を拝見しました。

 先日、この委員会の最初の審議のときに、認定こども園でもこうした事態が起きたらどうするんだ、その場合は、そこから出ていってもらうけれども、自治体の方でうまく措置するんじゃないかというような答弁がありましたけれども、この件でまずお考えをお聞きしたいと思います。

森田参考人 これは、一昨年になりますけれども、沖縄であったことでございます。この地域というのは五歳児がほとんど幼稚園に入っているという地域状況の中での市立幼稚園の問題ですので、今回の議論の中で少し参考になるかと思ってつけさせていただきました。

 問題は二つあって、一つは、市の財政の困窮の中でこういった滞納が出てきたということ、一方で、親たちが困窮したときに、その保育料を免除してもらうというような仕組みが考えられていなかったという二つの問題があったわけです。

 この中で一番大事なことは、私は、親も含めた議論、要するに、自治体というのは、本来、自治体財政をどういうふうに動かしながら、自分たちの子育てというものをその中で自分たちが必要としているものにつくり上げていくか、そういう議論が本当は必要なんだと思うんですが、そういったことが行われないで、単に施設はそのまま使いながら、滞納した子供だけを来させないというような措置をとろうとしたというところに私は問題があると思ったわけです。

 今回の認定こども園の場合も、恐らく、保育に欠けるというふうに判定された子供については当然自治体の関与があるんだろうと思うわけですけれども、その場合に、都道府県の認定ということと市町村の保育に欠ける判定というものの、そこの調整をどのようにとっていかれるのかということは大変難しいし、そこが透明性が確保されないと、その地域の親たちは大変不満と不信を持つことになる。このあたりをどういうふうに調整されるのかということが、この認定こども園と地域の保育のサービスを展開している自治体との中での調整というのが非常に難しくなってくるのではないかと思っております。

 そうした意味で、では滞納したときに、その子供の保育料の減免など、そういった家族のありようあるいは家庭のありようというところに、ある意味即応できるような自治体のそういった支援ということ、あるいは認定こども園それ自体の対応ができるのかどうかということがここでは問われているのではないかと思っております。

保坂(展)委員 もう一問、森田参考人にお願いしたいんですが、今のお話と重なる部分があると思いますが、この認定こども園自体は県で認定をしていくということだと思います。

 例えば、この認定こども園の中の保育所の部分も直接契約というか直接入所という形になっていて、そうすると、市町村窓口の待機児などがたくさんいる場合に、扱いが違うわけですから、優先的にそっちへ入っていくというようなことが起きて、不公平感みたいなことを招かないか。その場合、では、実際自治体はどういうふうに総合的な調整機能を持つんだろうかという点で、こうするべきだという御意見がありましたら、お願いします。

森田参考人 今も既に東京の自治体の中では認証保育という仕組みがあったり、あるいは東京都が補助金を出しております無認可保育室という制度があったり、あるいは保育ママという仕組みがあったり、先ほども意見のところで申し上げましたけれども、大体五種類から六種類ぐらいの保育施設、保育制度に補助金が出されています。

 そこを、都道府県がお金を出しているから、あるいは都道府県が認定をしたから自治体はその責務を逃れられるかというと、決してそうではないんですね。一般的な市立、公立の保育園であったり認可保育園というのは、基本的には自治体を通して、市町村を通して保育の認定をしていきますので、そうした意味でいうと、市町村責任ということは、それから逃れることはできないわけです。

 具体的には、今私が東京の世田谷で行っていることを少し御紹介させていただきたいと思っておりますが、私のレジュメのところの最後に書かせていただきましたが、今、世田谷では社会福祉サービスの苦情の審査会が直接請求としてやれるということと、それからもう一つ、やはり、そこに対して質の向上のためにはどうしたらいいのかということを議論する、あるいは考えていく仕組みを今つくろうとしています。

 特に、質の向上のための子供とか子育て家庭のところへの支援ということでは、今、地域ごとにサービス向上のための組織というのをつくろうとしています。これは、行政的にはある程度のサポートはするけれども、主体は地域の子育て機関がネットワークを組んでいくという形で、ここでは私がかかわっております烏山の保育ネットというのを御紹介いたしましたけれども、この地域の中で、認可保育所あるいは無認可保育室、保育ママ、認証保育所、幼稚園、こういったところが集まりまして、今、学習会や防災訓練やあるいは入所相談会なんかを開こうとしてきています。

 そういった中で、やはり地域というのは競争するものではない、多様なサービスの提供機関であっても、やはり子育て支援機関というのはつながっていかなければならない、約一年以上こういった会を積み重ねてくる中で、皆さんがおっしゃるのはそういうことなんですね。補助金の額も違う、法律も違う、だけれども、地域でやはり子供や子育て家庭を支えようとするときに一番大事なことは、子育て機関がつながっていくことである。

 そのつながっていくためにどういう努力をその地域がするのか、あるいは子育て機関がするのか、そして、それをどのような形で自治体がサポートするのか。そういう仕組みをつくり上げない限りは、自治体の中での調整機能ということは果たし得ないんじゃないかと思っております。

保坂(展)委員 次に、無藤参考人に伺いたいと思います。

 先ほどもちょっと取り上げたんですけれども、子供たちの安全ということを考えますと、幼稚園、保育園、どちらか緩い方の水準以下にするとした、これは規制改革・民間開放推進会議の考え方ですが、これではちょっと不安だというふうに思いまして、その辺の議論がつい最近に至るまでどのようになされてきたのかという点について。

 もう一点、地方裁量型という類型が加わったと思うんですが、これがなぜ出てきたのかという点についてお答えをいただければと思います。

無藤参考人 その二点ですけれども、一つは、具体的な基準について、御指摘のように、幼稚園、保育園等での一番緩やかといいますか、低い水準でよろしいのではないか、そういう御意見も出てきたわけでありますが、委員会、審議会等では、そういったやり方は好ましくないということが大半の意見であります。しかし、逆に、では最高の基準ですべて統一できるかというと、これまた地方の実情としては難しい面もあるということであります。

 したがって、大枠として国としてのガイドラインを出していただく中で、各自治体が基準をつくると思いますけれども、そのときに、一律に高い方、低い方ということではなくて、それぞれの実情の中で、具体的に子供にとって最良の保育の形態のための基準は何かということを、個別にもう少し議論して決めていくべきではないかということです。

 例えば、例を一つだけ挙げますと、調理室を設けるか否かということも、それは設けて完璧なものにするのがベストかもしれませんけれども、現実の実情の中でもう少し簡便なやり方もあり得るし、業者等による食事の搬入もあり得ると思いますけれども、しかし、その際でも、子供にとって、二歳児にとって、一歳児にとっての給食のあり方というものをもう少し個別に考えながら、仮に業者搬入とするにしても、業者に任せるのではなくて、もう少し細かいところまで自治体として監督してはどうかというようなことに考えをまとめたわけでございます。

 それから二番目ですけれども、地方裁量型ということで、四つの類型の一つとして挙げたわけです。

 私どもとしては、その四つの類型の中で、幼稚園でありまた保育所が兼ねるという、幼保両方というものが一番よいのではないかというふうに考えております。つまり、幼稚園に該当する部分については幼稚園のやり方で、また、保育所に該当する部分は保育所のやり方でやりながら、全体として総合的なやり方をとるということが望ましいし、そちらへの移行を推進するような方策をとっていただきたいと考えております。

 他方で、現実に、例えば東京都でいえば、東京都の中の認定保育所というのが現実に動いておりますし、また、既に幼保合同の、各自治体における特区その他で認可されたものの中に、必ずしも従来の幼稚園、保育園ではないような形での認可も現実にあるわけですので、やはりそういうところで、既にかなり現実に動いているものについては、自治体の責任において認めてもいいのではないか。

 その際に、地方裁量型が、幼保合同のもの、幼稚園、保育所をベースにしたものよりもかなりレベルが低くてもいいということを認めたわけではなくて、最初に申し上げたようなことで、子供にとって満たすべき基準を、自治体として責任を持ってきちんと基準を認定し、また監督していただきたいという前提のもとでの四つの類型であるというふうに御理解いただきたいと思います。

保坂(展)委員 今の点なんですが、村山参考人にもう一度伺いたいんです。

 地方はどこも、東京は特別にいいわけですけれども、非常に財政的に逼迫をしていて、保育の予算も一般財源化されていることと思います。今回、地方裁量型で地方が基準を決められるということになりますと、いわばそこにゆだねられるわけで、背に腹はかえられないということで、安上がりの保育所機能を認可外で持つ認定こども園を増設することで、既存の、今ある、いわばそれでもまだまだ改善が必要な保育園、保育所部分が予算が行かなくなるとか、地方裁量型ということを導入することによって起きてくる問題点についてお述べいただきたいと思います。

村山参考人 自治体は財政が大変逼迫していて苦しい中で、今ですら国の保育園の運営費だけでは保育所はできなくて、それにプラスして運営しているわけですね。財政力があれば東京のように二倍、三倍と出せるんですけれども、ほとんどそれはできません。そうすると、今ですら保育園の運営で困っているのに、それでこども園をつくるといったら、当然それより低い水準をやらざるを得ないんですね。

 そうしますと、国が何らかの財政負担をしない場合は何が起こってくるかというと、やはり保育に欠けていて、本来なら保育所で保育すべきなのに、安上がりな施設で、まあ給食も十分ないけれどもそっちで賄っていくとか、そういう安上がりの方向に行かざるを得ない側面があるだろう。

 それともう一つは、結局は、新しい場所はできないから、そうすると保育園とか幼稚園を活用するということを当然考えないといけないというところに出てきますよね。そのときに、もっと安くできるんだよという話になったときに、では、保育所やそういうところでやらないで、もっと安いところで、子供を、一人ぐらいで、そして相談だけでやってみようとか、あるいはそこで一時保育もやってみようとか、資格者がいなくてもいいじゃないかとか、そういうことが出てくる。

 そうしますと、同じ保育を親が預けたり相談するのに、片方はちゃんとした施設でそれなりに園長さんがいるというのに、片方は非常に未整備な中でやっているよという形になっていく。当然、保育園とか幼稚園の方は今いる子供の処遇をちゃんとしなくちゃいけないから、そちらを優先せざるを得ないですよね。そういう形になったときに、矛盾が大変広がっていく。低い水準というふうになったときには、やはりそのしわ寄せは子供のところに行くんじゃないか。

 そういう点で、私は、今の保育所や幼稚園の実態をもう一回きちっと見て、少なくとも、この総合という名前をつけるならば、それよりもいいレベルの水準確保を目指していかないと夢が持てないんじゃないか。ぜひ夢の持てる方向をこの審議の中で打ち出していただきたいというふうに思います。

保坂(展)委員 ありがとうございました。終わります。

遠藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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