衆議院

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第19号 平成18年6月13日(火曜日)

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平成十八年六月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 遠藤 乙彦君

   理事 小渕 優子君 理事 大前 繁雄君

   理事 小島 敏男君 理事 西村 明宏君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      川条 志嘉君    近藤 基彦君

      坂本 剛二君    篠田 陽介君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      戸井田とおる君    永岡 桂子君

      西本 勝子君    福田 峰之君

      藤田 幹雄君    馬渡 龍治君

      安井潤一郎君   山本ともひろ君

      吉野 正芳君    奥村 展三君

      北橋 健治君    末松 義規君

      田中眞紀子君    松本 大輔君

      山口  壯君    横山 北斗君

      笠  浩史君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       小坂 憲次君

   文部科学副大臣      馳   浩君

   文部科学大臣政務官    吉野 正芳君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   参考人

   (東京都立梅ヶ丘病院院長)            市川 宏伸君

   参考人

   (東京学芸大学教授)

   (日本LD学会会長)   上野 一彦君

   参考人

   (DPI日本会議常任委員)            姜  博久君

   参考人

   (NPO法人発達障害支援センターひまわり代表理事)            高原 孝恵君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     安井潤一郎君

  井脇ノブ子君     戸井田とおる君

  佐藤  錬君     越智 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     篠田 陽介君

  戸井田とおる君    伊藤 忠彦君

  安井潤一郎君     秋葉 賢也君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     井脇ノブ子君

  篠田 陽介君     佐藤  錬君

    ―――――――――――――

六月十二日

 視覚障害教育・職業教育を守ることに関する請願(小渕優子君紹介)(第三四四五号)

 国立バレエ高等学校の設立に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第三四四六号)

 同(小島敏男君紹介)(第三五五八号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(石井郁子君紹介)(第三四四七号)

同月十三日

 父母・学生の学費負担軽減を求めることに関する請願(鈴木淳司君紹介)(第三七九八号)

 すべての子どもに行き届いた教育に関する請願(今村雅弘君紹介)(第三七九九号)

 私学助成大幅増額、三十人以下学級実現に関する請願(西村明宏君紹介)(第三八〇〇号)

 一学級の定数を三十人にすることに関する請願(石井郁子君紹介)(第三八〇一号)

 私学助成の大幅増額、教育費の保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(今村雅弘君紹介)(第三八〇二号)

 同(大串博志君紹介)(第三八〇三号)

 国立バレエ高等学校の設立に関する請願(町村信孝君紹介)(第三八〇四号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(末松義規君紹介)(第三八〇五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

遠藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京都立梅ヶ丘病院院長市川宏伸君、東京学芸大学教授・日本LD学会会長上野一彦君、DPI日本会議常任委員姜博久君及びNPO法人発達障害支援センターひまわり代表理事高原孝恵さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず市川参考人にお願いいたします。

市川参考人 きょうは、このような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。私は、ふだん子供の精神科の医療に携わっている者として、本日お話を少しさせていただきたいと思います。

 私たちの分野というのは、必ずしも医療だけで解決する分野ではございませんので、他分野、特に教育等についても常に連携を図らなきゃいけないという立場でございます。私がふだん勤務している病院の中にも学校がございますし、あるいは、教育関係の方に連携ということで呼ばれることも多いという立場でございます。

 皆さんのところにございますレジュメに従ってお話しさせていただきたいと思います。

 今回の特別支援教育と法令の改正につきまして、私が中教審の専門委員としてお手伝いさせていただいた立場等から考えてみますと、やはり大きく分けると三点、もう少し細かく言いますと四点あるのだろうと思います。

 一点は、盲・聾・養護学校を特別支援学校に変えまして、小中学校等に助言、援助をするということでございます。それから、現在ございます特殊学級を特別支援学級としまして、小中学校等におけるLD、ADHD、高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒に適切な教育を行うということ。それから、教育職員免許状の一部改正ということで、これは大学で修得するべき単位数の変更も含まれているというふうに理解しております。もう一つは、久里浜にございます研究所を国立特別支援教育総合研究所と変える、こういうことと理解しております。

 この学校教育法改正の背景にあるものは、我々の分野とも関係しますが、やはり軽度発達障害と言われる方の増加ということが一つ大きくございます。LD、ADHD、高機能自閉症というふうに一括されておりますが、多くの方々の場合は、知的水準は高いのに友達関係をつくりにくい、あるいは知的水準は高いのに学校の成績がそれに伴わない、あるいは周りから見ますと理解できない行動上の問題があるというようなことがあるのではないかと思います。それから、この長い歴史の中で、障害種別の増加あるいは減少ということがあるようですし、あるいは、これらの中の重複、合併ということがあるように思います。これはもちろん、教育にとどまらないことでございますが、医療についても全く同じですが、やはりこういう変化に対応して専門性を向上させていく必要があるというふうに感じております。

 特別支援教育につきましては、特別支援教育の流れがなぜできてきたかと考えますと、私どもがふだん専門にしております知的障害あるいは発達障害の方を念頭に考えますと、やはり従来は知的障害の程度で分けていたのではないかと思います。私も就学相談等で少しお手伝いさせていただくこともございますが、プリントにございます三つの分け方、知的障害が重い場合は養護学校、軽い場合は特殊学級、知的障害に問題がない場合は通常学級という大きなくくりがあったのではないかと思います。もちろん、細かい点におきましては、単純にこれだけの問題では決まっておりませんが。

 しかしながら、通常学級にいらっしゃる子供さんの中で、対人関係ほかに困難を示す子供さんがふえてきているということを教育現場の先生方は非常に感じていらっしゃったのではないかと思いますし、そういうことで医療の方に御相談にいらっしゃる方も随分いらっしゃったわけです。これについて、どういう対応がよいかということで特別支援教育ということが始まったのだろうと私は考えております。

 してみますと、知的な問題は抱えていないと考えられる通常学級にいる特別な指導の必要な子供さんがどれくらいいるのか、これについては、印象はございましたが、それまではきちっとした数字的裏づけはなかったわけでございます。そのために、教育の場はどういうふうにしていったらよいか、対応はどうしていったらよいか、あるいは、それについてのモデル事業をどういうふうに実施していったらよいかというようなことが考えられていったのだろうと思います。

 この大きな流れの中で、私が医療の立場から見ておりますと、やはり以前は教育の場は教育の専門家だけで対応していたのではないかと思いますが、七、八年ぐらい前にスクールカウンセラーの導入等、ここに書いておきましたが、心理、医療、福祉、労働などとの連携の必要性ということが言われておりますし、今回の特別支援教育の中でも、専門的な知識を持っている方を対象にした専門家チームを組んで対応していこうということが含まれておりまして、私は、これは非常に賛同するところでございます。

 二〇〇二年の十月に文部科学省が行った、軽度の発達上の障害があり学校場面で不適応を示す子供さんたちへの教育の対象者の調査というのがございまして、これはあくまでも担任の先生がごらんになってそういうふうに判断したということでございますので、別にそういう方の数を調べたとか、そういうことではございませんが、全国調査が四万数千人を対象に行われまして、ここに掲げてありますような、学習障害的な面で著しい困難を示す方が四・五%、行動面で著しい困難を示す方が二・五%、対人関係面で著しい困難を示す方が〇・八%という数字が出ておるということは先生方も御存じのところだと思います。その後も、国以外の、都道府県でも幾つか調査が行われているようで、これより低い数字が出たところもあると伺っておりますが、逆に、一〇%ぐらいという高い数字の出た県もあるというふうに伺っております。

 してみますと、特別支援教育を推進するための制度のあり方をどうしていくかということで、中教審の特別支援教育の特別部会等で検討が行われたわけでございますが、一つは、通常学級にいらっしゃる特別支援教育対象者と考えられる方々、これに、従来の特殊教育の対象の方が一・数%いらっしゃるということでございますと、足しますと七・五%前後という数字が出てくるのではないかと思いますが、そのことが一つの問題だと思います。それから、盲・聾・養護学校制度の見直しということが一つ、それから、初めに申し上げたような教員免許制度の見直し問題がございます。

 特別支援教育の背景にあるものとしましては、先ほど申し上げました、増加ということがございます。これは教育だけではございませんで、医療現場でも感じているところでございます。障害種別的に申し上げますと、盲学校は、数の上でいくと、ほぼ現状維持かと言われておりますが、聾学校の生徒さんは減少傾向、あるいは肢体不自由の養護学校に通っていらっしゃる方はやや増加、それから知的障害の養護学校に通っている方は著明な増加というような全国的な傾向がございます。

 さらに、障害という分け方をしたとしても、合併重複障害ということが言われておりまして、例えば、肢体不自由の養護学校に通っている方につきましては、文科省の統計では、七〇%以上が合併重複障害を持っていらっしゃる。逆に言いますと、三〇%ぐらいの方は肢体不自由の問題だけを抱えていらっしゃるということかもしれません。この七〇%のうちの五〇%ぐらいは知的障害との合併だという報告も伺っております。してみますと、当然のことながら、一つの種別だけではなくいろいろな種別に対応できる専門性ある教員の養成あるいは増加が必要だということになってきていると思います。

 それからもう一つ、やはり軽度発達障害という子供さんは、通常学級にふだんはいらっしゃいますけれども、何らかの援助が必要だということになりますと、これは私見でもございますけれども、通常教育と特別支援教育の連携が恐らく必要になったきたのではないかと思います。

 これにつきましては、これまでの私の印象では、通常学級の先生方のお考えと特殊学級の先生の考え方はちょっと別ではなかったか、あるいは連携が不十分なところがあったのではないかなというふうに考えておりまして、こういうようなことでより連携が深められていくということはすばらしいことだというふうに思っております。

 この後は、やはり医療の面からのお話を若干させていただきますが、発達障害といいますと、ここに書いてあるようなきちんとした定義はないんですが、これは私がちょっと抜粋してきた定義でございますが、発達期に生じて、一生を通じて治療やケアの必要があるという考え方で、その代表例は、ここに書いてあるようなものではなかったかと思います。

 近年言われております軽度の発達障害につきましては、この定義につきましては若干問題があるという説もございますが、知的障害はほとんどないか、あっても軽い、発達期に明らかになるが、対応によっては援助が不必要になることもあるし、逆に、思春期以降、社会生活が困難になる場合もある。逆に言いますと、適切な教育が受けられるということが大きくその予後を左右するということになるかもしれません。

 してみますと、これは私見でございますが、障害というものをやはり連続体と考えるべきではないか。つまり、障害があるかないかではなくて、障害の中で丸もあれば、障害でないバツもある、そうすると、真ん中に三角がいっぱいあるというふうに思いますし、特に軽度発達障害と言われる方の中には、その中で移動もあるというふうに考えられるのではないかと思います。ある意味でいいますと、障害を固定的ではない、多少動きのあるものと考えていってよいのではないかと思います。

 してみますと、その子供さんへの援助というものもやはり状況に応じたものでなければいけませんし、変化に対応したものでなければならないのではないかと思います。

 それからもう一つ、若干混乱を来しているなと思いますのは、障害と疾患名ということで書いておきましたが、医療の方では、最近、疾患名を、ディスオーダーという英語を日本語で障害と訳すことがございます。広汎性発達障害あるいは注意欠陥多動性障害というときの障害は、これは疾患名でございます。一方で、知的障害あるいは視覚障害、聴覚障害というときの障害は、多分英語にしますと、ハンディキャップでございます。それから、神経心理学が用いております学習障害の場合は、これは英語はディスアビリティーでございます。日本語にしますと全部これは障害という言葉になっておりまして、どうもその障害の中に固定的なイメージがあるものと、それから変動的なイメージがあるものがあるということを頭に入れておいた方がいいのではないかと思います。

 それから、軽度発達障害の増加ということで書いておきましたが、これは医療現場で見ております。私どもが持っている数字としましては、実数として、受診者そのものが二・五倍ぐらいになっておりますが、その中に広汎性発達障害と考えられる方々、広い意味の自閉症の方々と考えていいと思いますが、特に知的おくれを伴わない方は、比率としても四倍ぐらいに十年間でふえております。逆に、知的おくれのある方も若干ふえております。注意欠陥多動性障害という診断をされる方も十年間で二倍前後の増加でございます。

 私が最後に申し上げたいのは、やはり障害といっても非常に幅が広い、従来の概念と若干変わってきているのではないかというふうに考えていただいて、これへの柔軟な対応が非常に期待される。そのためには、通常教育と特別支援教育の連携ということももちろんでございますし、教育以外の他職種の関与も必要ではないかと思います。障害者の側から見ますと、全日的な対応あるいは全生涯的な対応、きめ細かい援助をお願いしなければいけないと思います。

 予後はどうなるかということでございますが、やはり低年齢のときの対応は非常に重要でございまして、自己有能感を持って大人になれば、きっとすばらしい発想で、偉大な業績を残す研究者や芸術家を中心にいらっしゃると考えられておりますし、対人関係のスキルがうまく獲得できませんと、社会生活に困難を来すようなことがあるのではないかと思います。

 最後に、特別支援教育、この法律の改正も含めまして期待するものとしては、申し上げましたように、障害を連続体としてとらえていただけないか。低学年を中心とした対応、これはもちろん御家庭及び教育になると思いますが、これが非常にその後を左右するのではないかと考えております。また、重複障害への柔軟な対応もぜひやっていただければありがたいなと思っております。

 以上をもって、私の意見にかえさせていただきたいと思います。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、上野参考人にお願いいたします。

上野参考人 おはようございます。

 本日、ここで意見をお聞きいただけることに大変感謝しております。

 私は、東京学芸大学という教員養成大学におりまして、またLDということで、もう四十年近くこのことを啓発等に努めてきております。

 まず、私がきょう申し上げたいことは、主に四つの点に分けまして、真のインクルーシブな教育を実現するために、それから特別支援学校の制度の創設について、それから小中学校における特別支援教育の推進、そして最後に免許法のことについて意見を述べたいと思っております。それぞれその中で課題となりそうなことを三つずつ後でまた挙げております。お手元の資料を見ていただきたいと思います。

 まず、特殊教育から特別支援教育への転換というのは、私は、これは単なる名前の書きかえといいますか看板のかけかえではないということで、歴史に残る大きな教育改革ではないかと強く思っております。

 現在、子供たちを取り巻く学校、教育、家庭、社会、そのすべてにおいて必ずしもよい状態であるとは思いません。学力の低下、いじめ、不登校、授業崩壊、さまざまな問題が噴出しております。こういった問題というのは、特別支援教育の展開によって、恐らくその解決の一端になるのではないか。少なくとも、これは障害のある子供たちのためだけのことではなくて、すべての子供たちに資する人間尊重の教育のモデルあるいは教育のシステムというものを目指すものだというふうに信じるからです。

 さて、最初に、インクルーシブな教育を実現するためにということですが、現在、世界の教育というのは、すべての子供たちを区別や差別なく、その子供が求める教育サービスを公平かつ的確に提供する、そういった実現に向かっております。そういった場合でも、これは全体的な調和の中でそのことがひたひたと広がっていくということが必要ではないかと思います。

 今回の特別支援教育において掲げられる目標というのは、私は大変高い教育理念に基づくものだと思います。ただ、理念は理念として、これを実現していくための具体的な手段やプロセスにおいて、この基本的な精神が損なわれたりあるいは変質したりすることのないように配慮しながら、大事なのは、その歩みの速度を緩めてはいけないということです。時間の損失というのは、これは子供たちにとっては取り返しのつかない不利につながるからです。

 課題といたしまして三つ挙げておきましたが、この転換をよりスムーズに進めるために、その目標に向かっての速度ということが非常に大事だと思います。必要な法的整備、推進事業の展開、ガイドラインの提示等々ございます。これらは、国みずからがその役割を果たすという強い意思が必要であろうと常に思っております。

 例えば、ここに例として挙げた、矢印は例のつもりなんですが、ガイドラインが二つございます。平成十六年のガイドライン、それからこの三月のガイドライン。ここでは、かなり具体的な進み方の評価項目が挙がっていて、これは全国でサンプル調査しておりますので、これによって、自分のところはおくれているということで一気に変わっていったような実態があります。

 それから、よく本人や保護者の意思を尊重するということ、これはもう当然のことです。ただ、最後の決定権は保護者や本人にあることも言わずもがななんですが、十分な情報といいますか、意見の交換や相談ということがないままに、保護者の方が、例えば私はこうしたいというお気持ちを示すことがあるんですが、実際には、子供さんの教育権を侵害とまで言わなくても、本当にそれでいいんだろうかというような疑問を持つこともあります。したがって、私は、保護者の権利の擁護というのは、必ずそこには十分な情報の交換や検討というものがあった上でなされてほしいということを思います。

 そして、すべての問題というのは、やはり人にかかわります。こういった理念の実現のためには、恒常的に安定させるシステムという、もちろん人が主ですけれども、人が力を発揮するためにはシステムというものが絶対に必要だろうと思います。したがって、そのためのシステムというものがどうしても必要であるということです。

 このときに、もちろん財政事情が大変厳しいわけですから、単なる聖域意識というものではいかぬと思います。したがって、そこでは、理念実現のための骨太な施策展開がなければならないし、評価に基づく持続性ある計画も必要ですし、何といっても財政的な裏づけということは一つの命になってくるんではないでしょうか。そうでないと、現場は理念だけで混乱して、疲弊してしまうという危険度がかなりあると思います。

 それから、何といっても、努力する教員に対して正当な評価と待遇、公平さというものが担保されなくては、ある種のモラルハザードを起こしてしまうのではないか。そのことは、学校全体の教育力の低下ということにもつながりかねないと思います。

 そして、二番目に、特別支援学校の制度の創設でございますが、ここでは、現在の重度・重複化ということを踏まえて、障害種別を超えた特別支援学校に一本化するということは大変大きな進歩だと思います。それと同時に、特別支援学校というものが、閉じこもったものではなくて、むしろ障害の多様化に対応できる専門性と人材がそこにたくさん育つということ、それから教材教具や指導法のリソースセンターというような機能もあわせ持つことが必要であろうと思います。

 それぞれの地域によっていろいろな御事情があるかと思いますけれども、特定の障害に対応した学校という、かなり限定したコンセプトが現在併記されておりますけれども、私は、それは過渡的なものであろうかと思います。やはりこういったものは、いろいろな障害に多様にこたえるということ、これは最終形として大事にしなければならないと思います。

 特に、センター機能ということですけれども、そのセンター機能を本当に発揮するためには、特別支援教育の専門免許というものの保有教員の配置ということ、これはもう喫緊の課題であろうかと思います。現在、障害種によっては二〇%とか三〇%しか保有していないという実態もあるようでございます。

 それから、特に小中学校においての連携ということで、それをセンター機能の中で非常に重要視されているわけでございますけれども、認定就学というような、これまで養護学校適と言われたお子さんでも、条件が整っているのであれば地域の学校で受け入れるということも進められております。そういうことや、また近くに、数時間かけないと教育を受けに行けないというような、そういった交通の悪さみたいなこともないわけではないので、そういうことを考えますと、やはり身近でそれぞれの教育が受けられるというようなことも常に考えていかなければならないことではないか、そんなふうに思います。

 それから、課題の三つ目ですけれども、小中学校等においてこういったいろいろな支援を受けやすくするために、例えば特別支援学校の生徒さんの地域の小中学校における交流ということを考えたときに、東京都では副籍という考え方、それから埼玉県では支援籍という考え方、こういうようなものを設けて、地域の小中学校の行事等にも参加しやすいようにということが考えられておりますけれども、こういった学籍による分離を余りしないで、できるだけ一本化していくというようなことも課題ではないでしょうか。

 それから、三番目に、小中学校における特別支援教育の推進で、私にとってはここのところが一番関心の強いところではありますけれども、この下に図がありますけれども、今回、段階を踏んで実現を目指すということになって、現状から、この図の上にあります現行制度の弾力化と特別支援教室制度の検討というところから、一番最後の特別支援教室構想の実現へというところ、ここにいつ行くのかという、私は、ここが次の大きな課題であり、こういった本当の理念の実現ということこそ、我が国の特別支援教育の成熟を示すバロメーターではないかというふうに感じる次第です。

 この四月からは、現行の学校教育法の施行規則の改正によって、情緒障害の中から自閉が分離され、それからLD、ADHDというお子さんたちが通級による指導対象として明記されたことは大変大きな進歩ではありますけれども、この歩みをそこでとどめてはいけないというふうに思います。

 それから、特に学校教育法の第七十五条、これは特殊学級のことを七十五条学級というふうに別称することもある大事な法律なんですが、今回の改正案では、第一項で、これまでの、特殊学級を小中高等学校等に置くということを、その他の教育上特別な支援を必要とする児童生徒ということで広げたということ、これは高く評価いたしたいと思います。

 ただ、こういった特別支援教室への最終段階への移行というのは、経費の削減を目的とした特殊学級の廃止ではないか、そういった誤解も一部に根強くあります。そのことは、例えば通級による指導体制の拡充ということにも支障を招きかねないわけでして、我が国の教育というのは教職員の定数改善計画というものによってこれまで第七次まで行ってきたわけですが、今回、そこで一応途絶えてしまっている。少なくとも学級編制と教職員配置によってこういったものは維持されてきておりますので、通級による指導も含め、新たな教職員配置並びに加配の計画というものの必要性を感じます。

 今回、LD等に関しまして二百八十二名の加配予算がついたということで大変感謝しておりますけれども、これが単年度であっては本当の呼び水になるんだろうか。ここが施策の中心といいますか心、命であるならば、このことをぜひもう少し計画性を持って継続していただきたいということです。

 それからもう一つ、忘れてはいけないことが幾つかあるんですが、軽度の知的障害児のお子さんの存在が、ちょっと影が薄くなっていると思います。というのは、先ほど市川参考人の方からも全国実態調査の結果が出ましたけれども、六・三%というLD、ADHD等のお子さんの調査をしたときに、実は二、三%、軽度の知的障害のお子さんが通常学級の中に特殊教育を受けないでいるという実態も明らかになっているんですね。この子たちは、制度はあるけれどもその制度を非常に受けたがらないんですね。軽度であるがゆえに、特殊学級に籍を置くということに対して抵抗感があります。このこともあわせて考えていくべきではないかというふうに考えるわけで、現在は通級による指導の対象としては特殊学級がありますので、もちろん知的障害のお子さんは除くということになっておりますけれども、弾力化ということの中にはこういったところも含まれるのかどうかということです。

 それから、ここにおいては、一つの学校の中にすべての教育力を持つことは無理です。したがって、例えば中学校区あたりを一つのベースにした幾つかの小学校を巻き込んだ学校群というような形があってよいのではないか。現在全国では、特殊学級を全部ではなくて一部に置くという拠点方式、これは東京が代表ですけれども、それから、すべての学校にたとえ一人でも二人でもいれば置くという方式と二つありますけれども、ここの間の格差、これがだんだんだんだん差が詰まってきますけれども、そこをどういうふうにしてモデルをつくっていくかということが大事だと思いまして、こういった学校群の構想ということもぜひ御理解いただきたいと私は思います。

 最後に、免許法でございますけれども、学校種の一本化、あるいは総合性と専門性の組み合わせという基本原理は大変評価できるところです。しかし、免許法の改正の案を見ておりますと、まだ非常に伝統的な障害種にやや偏っていないかという気がいたします。これは特別支援学校の免許法ということで、学校ということをベースに置いた免許法なので、いたし方ないのかなと思いますが、必ずしもグローバルスタンダードとは合致していないと思います。

 特に障害種のことですが、例えば、自閉症などはあらゆる認知レベルで存在すると思います。しかし、これは、現在のところは通級による指導というところだけ初めて明記されたわけですが、特殊学級においても、特別支援学校においても、例えば重要な指導対象であることから、そういった点の法的整備は不十分な免許法の改定ではないかということでございます。

 そういたしますと、現行の免許法からの移行ということもありますからなかなか一気には行かないと思いますけれども、世界のグローバルスタンダードから考えると、短期間のうちに改正が必要になるのではないか。アメリカとイギリスの障害種の例をそこに挙げておきますが、日本の障害の考え方とは大分違うと思います。

 したがって、そういうことから、小中学校においてこういった専門教員がどういうふうにして支援していただけるかということになるわけですが、正直言って、LD、ADHD等の子供たちに対する支援が本当に特別支援学校の教員の中からできるんだろうかということについては若干疑問を持たざるを得ません。

 ただ、最後に、こういった免許の積み上げ方式、このことは大変評価したいと思います。逆に言えば、いろいろな障害に対して自分で免許を積み上げていく、そういう自己努力といいますか、そういう教員。あらゆる障害に対応できるというのは、これはスーパーティーチャーだと思いますが、こういうようなことが、自己努力だけではなくて、その暁として、それが何らかの形で評価されるということ、それがやはり必要であろう、そのことがまた、自己の研修力を高めるエネルギーにもなるのではないかというふうに思います。

 御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、姜参考人にお願いいたします。御着席のままでどうぞ。

姜参考人 おはようございます。

 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、大変感謝をいたします。私はDPI日本会議という障害者団体に属しております。

 DPIと申しますのは、一九八一年に、当事者の方々が、専門家による自分たちの人生決定を改めて、自分たちの人生を自分たちで決定していくという前提に基づいて世界で組織されたものであります。日本では、一九八六年に日本会議が結成されております。その後ずっと、障害者の権利擁護活動に取り組んでまいりました。そして、四年前には日本の札幌で世界会議も開催させていただきました。今DPIの役割としては、国連で検討されております障害者の権利条約について主導的な役割をもって国連の場で発言をしております。きょうは、そういった立場から、今回の学校教育法の改定について意見を述べさせていただきたいと思います。

 私自身は、今大阪の地域で、障害を持たれた方の地域での生活を支えるという仕事もしておりますけれども、その中でも障害を持つ子供たちを抱えた親御さんからの相談も多数受けたりしております。きょうは、そういった経験も交えながらお話をさせていただきたいと思います。

 まず、私自身の教育歴といいますか、そういったことを少し述べさせていただきたいと思います。

 私自身は、大阪の結構古い養護学校で学童期を過ごしました。小中とその学校で過ごしまして、高校になってようやく地域の公立高校へ入学をいたしました。今から思えば、養護学校時代の九年間というのは非常に平和な日々でありました。しかし、その平和な日々が、実は私自身にとって、いろいろな力を奪っていたのではないかと今振り返って思うことがございます。それは地域社会と途絶した中で学校に通わなければならなかったということであります。本来なら、地域の同年齢の子供たちといろいろなところへ出かけ、いろいろな遊びを工夫しながらおつき合いをすべきところを、私が外へ出れば、まずさらされるのは、そういった同年齢の子供たちからの好奇の目です。変な歩き方をしている、何かおもしろい歩き方をしている、そういった中で過ごしてまいりました。そして高校に入って、次に経験したのは、私自身が障害を持たない人たちとどうつき合っていいのかわからないという経験でした。

 その経験を踏まえて、今考えますと、やはり地域から途絶した学校に障害を持つ子供たちが行くのは間違いだと思っております。やはり地域の学校で、先生たちや周りの親御さんも協力する中で、いかに同年齢の子供たちと一緒に過ごすのかということが、私たち障害者にとっては後々の人生を大きく左右するものだと考えております。

 そこで、今回の学校教育法の改正の案に対する意見ですけれども、まず、評価できることとして、支援を必要とする子供たちの枠組みが確かに広がったこと、軽度発達障害と言われる人たちがようやく注目され、学校でのきちっとした支援を受けなければならないというふうにされたことはまことによいことだと思っております。

 ただしかし、私自身の目から見ると、今回の改正案の中、特に現在の、原則的に養護学校へ行く人たちを一部に決める、そして軽度の障害であれば通常の学校に受け入れる、そういった枠組みを残したまま制度改正がなされることは非常に残念でなりません。

 今、世界では、インクルージョンということで、どんな障害を持っていようとも、どんなニーズを必要としていようとも、できるだけ通常学校の中で教育を受けることによって社会をつくっていくんだということが進められようとしております。障害者の権利条約でも、今案が示されておりますけれども、その方向で検討が進んでおります。そういった中で、日本の障害教育をめぐる動きは、依然としてこれまでの構造をそのまま残しているということについては非常に残念でなりません。

 きょうお示しした資料を見ていただければわかりますけれども、私たちが本当に必要としている部分は、地域の中でいかに過ごすかということです。きょうお示しした資料、世田谷の方で、最近、地域の学校に障害を持つお子さんを入学させたお母さんの手記であります。中には学校に対する不安感を述べられた部分がありますけれども、特に太字にした部分を読んでいただけばおわかりのように、周りの子供たちと保育所で一緒に過ごしたことがその子にとって、またお母さんにとっていかによかったのかということが書かれてあります。そして、学校に入った後も、学校側の工夫や先生たちの意識によって、いかにその子供が有意義に毎日学校生活を送ることができているかを述べたものであります。ぜひとも皆さんも目を通していただいて、そこにこそ学校教育の本質があるのだということをわかっていただきたいと思います。

 しかし、現実はまだまだそう簡単ではありません。お手元にお配りした資料の四ページ以降に示してありますけれども、これは私がいつも関係しておる、障害児を普通学校へ全国連絡会というところでつくっていただいた資料です。相談の中に、通常の学校へ行くという意思を示したときに、いかに地域の教育委員会といろいろな話し合いを重ね、あるいは拒否され、学校側とも話し合いを重ね、そういった親の努力の積み重ねなしに障害児が普通学校へ入れる状況にはまだないわけです。私どもの生活しております大阪などでは、一応、親御さんあるいは本人の方が望めば、原則として地域の学校で受け入れるという体制はとられておりますけれども、やはり現場現場で、学校学校で問題がないわけではない。

 そこの問題点はどこにあるかというと、原則的に、地域の学校へ障害児は入ることができるという原則がまだ打ち立てられていないからだと思います。やはり先生たちあるいは教育関係者の方々が、障害を持つ子供に対しては何が一番大切なのかといった場合、障害に、先ほど上野先生や参考人の方がおっしゃったように、ディスオーダーに注目したまま就学先を振り分けてしまっている。

 でも、私たちは、自分たちの体が動かないことで生きているわけではありません。障害は社会との関係で変わっていくものです。そういった中で考えていけば、地域の学校で生き、周りの友達をつくり、その力をかりながら生きる、あるいは自分たちの、障害を持つ子供自身の存在が周りの子供たちの心を変え、意識を変えていくということができるものだと信じております。

 実際に、私ども大阪の一地域であります豊中市では、長年、地域での障害児の受け入れということをやってまいりました。その結果、今どういう状況になっているかと申しますと、障害児とともに過ごした、今青年になった方々が学校の教員として大阪府下で活躍されている場合もあります。そういった方々が豊中以外の地域へ行ったときに何に戸惑うのか。子供のときに自分たちは周りに障害児がいることは当たり前だったのに、それが当たり前になっていないことに戸惑われるわけです。いかに長年の教育の成果が周りの障害を持たない人たちの意識を変えてきたかということの一つの例示だと思います。私自身は、こういったことは全国で実践できるものと信じております。

 きょういただいた今回の関連資料の中に、サラマンカ宣言という資料が入っていると思いますけれども、そこに、こういった一節があります。インクルーシブ教育は何のためにあるのか、差別的な態度と闘い、それをなくしていく社会を建設するために一番有効な手段なんだということをうたっております。私はこの言葉が大好きです。私たちが目指すべき社会はどういう社会なのか、それはやはり障害を持っていてもこの社会から排除されない状況をつくり出すことだと思います。そのためには、学校教育こそ一番の近道だと思っております。

 ここにお集まりの先生方もノーマライゼーションという言葉をお聞きになったことがあると思います。ノーマライゼーションの標語の一つに、一部の者を締め出す社会は弱くてもろい社会だという言葉があります。そういう点からすると、まだまだ学校教育の現場は弱くてもろい社会づくりをしているのではないかと危惧されます。

 ぜひとも、弱くない、もろくない、障害児も含めた本当に強い社会をつくっていただくために就学基準をもう一度見直していただき、根本的に、原則として障害を持っていても地域の学校へ行ける状況を法制的に整備していただきたいと思います。そうすることがやはり私たちが望む本当の意味でのノーマライゼーション社会の実現になると思いますし、インクルーシブ教育はそのための大変有効な武器になると思います。そして、その中で育った子供たちが将来大人になったときに、本当の意味でこの日本の社会を強くしていってくれるんだと思います。

 今回の改正案で、一応、教員免許状の話も改正の方向で出ておりますけれども、私たちは、今の段階で専門家の方々が不足していることはある意味認識しております。しかし、そういった部分を一部の人たちに限ることはないのではないでしょうか。将来的には通常の学校で、どんな子が入学してきてもそれに対応できる人材は普通学校の先生方によってもなされるべきだと思います。したがって、通常学校の先生方にも障害児教育に対する認識を深めていただくことを枠組みとしてつくってもいただきたいし、そういったことがインクルーシブ教育を進める上で非常に助けになるのではないかと思っています。

 ぜひとも、今回の改正、少しでもインクルーシブ教育を充実させる方向、また私たちが目指す社会をつくるための障害児教育の体制をとっていただきたく思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 次に、高原参考人にお願いいたします。

高原参考人 皆様、おはようございます。このような場で意見を述べさせていただきますこと、ありがとうございます。

 お手元の資料、私の場合かなりはしょっております。なぜかといいますと、個人情報的なこともございますので、このような書き方をさせていただきました。

 私は、埼玉県で、NPO法人発達障害支援センターひまわりということで活動をさせていただいております。なぜそのような活動をしてきたかといいますと、私の長男、現在中学三年生になりますが、この長男が五歳のときにADHDという診断を受けました。今から十年ほど前になりますので、今のように特別支援教育ですとか、まずADHDといったこと自体もわかってもらえない時代でした。

 なぜ診断を受けるいきさつになったかと申しますと、まず、生まれて、多動傾向というか、重い方の多動だと思うんですね、私自身育ててきまして。十カ月を過ぎたあたりからなんですが、周りの保護者というかお母さん方からもマイペースな子だねというようなことをよく言われていました。私自身、初めての子でしたので、ああ、男の子ってこんなものなのかなというような形で来ていました。

 すぐ下に、年子で一つ下に弟がおりますが、ここと比較ができるようになって、この子はやはり違うなというのを感じましたが、それは二歳を過ぎたあたりからだったんですね。遊びですとか興味が非常にころころと変わっていくんです。ものの何分ももたないんですね。これで本当にいいのかなとやはり親として心配になりまして、三歳三カ月という小児の健診が各市であるんですが、そちらの方でまず相談をいたしました。

 当時、まだやはりこの発達障害というのをわかっていただけるお医者さんもいらっしゃらなかったんですね。ただ、保健婦の方からは、はっきり多動だということではないんですが、このような症状の病気もありますよ、もしお母さんが心配であれば専門医を紹介しますということがあったんです。当時、手先の不器用さが伴うとかとよく言われて、今は全くそういうのは関係ないと言われていますが、それが唯一うちの場合は当たらなかったんですね。それで、では様子を見ましょうということになってしまったんです。

 そして、公立の保育園に通っていまして、これは二歳から保育園の方に通っていたんですが、そこで、やはり年齢が上がるとともに、問題が非常に出てきました。

 まず、担任の保母、今は保育士さんですが、この子がこういうことをするのはこの子の個性だねというふうにとらえていただける担任の先生とは比較的うまくいっていました。ところが、これをしなければいけないんだというような形で、がんじがらめといいますか、そのような先生とはとことん相性が悪くて、よくやったのが、かみつくですとか、とにかく行ってパニックを起こすですとか、必ず行くと、ひどい場合は、私には見られませんと迎えに行った玄関先でよく言われて帰ってくるような次第でした。ですから、親としては隠れて送り迎えをして、そっと置いてそっと逃げてくる、ほかのお母さんたちとなるべく顔を合わせないように、合わせれば、済みません済みませんと頭を下げて回っている毎日だったわけなんです。

 それが、五歳のときに一番悪化をしまして、ちょうどそのときだったと思います、マスコミでこのADHDというのを取り上げられた時期だったんです。その症状を映し出されたのを見まして、自分としては非常に当てはまることが多かったんですね。そして、三歳のときの健診の病気としてありますというそれがずっと頭にあったものですから、そこで市内の保健所の発達相談というのを受けました。そこで、小児科の先生から、この子は多動傾向があるから一度診てもらった方がいいということで専門医を紹介していただきました。そこで受診をしました。

 私自身、やはり周りから、保育園の先生からも、お母さん、ちょっと愛情が不足していますよとか、いろいろ言われていましたので、非常に自信もなくしておりました、やはり私の育て方が間違ってしまったのかなと。だから、余計子供を締めつけるということもありました。結果として、やはり小学校に上がった時点で、既にもう行為障害というものまで起こしていました。ですので、就学前に至っては、とにかく少しでも面倒見のいい担任の先生に振り分けてもらうように、当時であれば、とにかくわかってもらってください、周りの人にこの子の状態をわかってもらってくださいというのが主治医の先生からの指導でした。

 そこで、教育委員会の就学相談を受けまして、こういう子なんですと、三回ほど受けたんですね。ところが、やはりこの発達障害自体、今でもそうですけれども、この子に合った場というのはないんです。今ある中では、通常学級、いわゆる特殊学級、そして養護学校、あとは情緒障害の通級がどうかすれば適用するかなというようなところでしたので、まず選択肢としてはやはり選べなかったですね。就学相談を受けた結果、知的にも問題ないですし、衣服の着脱もできますし、通常どおり学区内の小学校に入学しましょうということで、小学校への入学となりました。

 やはり学校でも、まず、この軽度発達障害、ADHD、これ自体がわかっていただけませんでした。入学して十日目に校長から呼ばれました。私も、この子のことに関しては隠すつもりもありませんでしたし、わかっていただくというのが一番だと思っていましたので、まず先生と、ああよかったということで早速伺いました。十日間のいろいろやったことを全部羅列されまして、結果、とにかくお母さん、この子がこういうことをするのはADHDとかじゃないんですよ、親が原因です、とにかくあしたから学校へ来なさいと。

 それから毎日子供に付き添って、一年近くです、学校通いが始まりました。ひどいときには、休み時間だけ来てくださいと。うちの場合は、教室の中で席には比較的座っていられたんですね。ところが、対人関係ですとか、やはりそういったところでのトラブルが多いものですから、休み時間での問題が大きいんです。例えば、友達とけんかを始めてしまった、かんでしまった、たたいてしまったということがありますので、二時間目の休み時間というのは二十五分間と比較的長いですから、そういう時間ですとか昼休みですとか、そのときだけ今度は来てくださいと。

 あとは、夏場になりますと、今度はプールなんですね。水遊びが好きな子でしたから、非常に興奮するんです。そうすると、やはり危ないですから、お母さん、プールサイドに立っていて見ていてくださいと。そのために毎日学校へ行くような次第でした。

 時には、朝行きまして、きょうは急に担任の先生が休みになりました、ほかに先生がいないので、お母さん、ずっと後ろにいてくださいと。玄関のかぎも閉めずに行った状態で、一日ずっと学校にとどまりました。そんなこともあったわけですね。

 私としては、いろいろなことを校長先生ともお話しました。担任の先生にもこの子の状態というのを伝えていきました。ところが、やはりなかなかわかっていただけなかったんです。なぜかといえば、発達障害というのは見てわかる障害ではないんですね。見ても全く普通なんです。ですから、何でこの子がというようなことなんですね。中には、元気がよくていいじゃないと言われてしまったりするわけです。そうすると、どうしてもわかっていただけないというのが一番ありました。

 それと、現実問題、やはり、一クラス三十何人、四十人いるクラスの中では、場合によっては、先生によっては、わかってはいるんですけれども、でもできません、はっきりそうやっておっしゃる先生もいらっしゃるわけです。

 そこで、では私がどうしたかといえば、教育委員会に、例えば、この子に対しての支援員さんを派遣してください、つけてください、そういうお願いもまずしていきました。ところが、やはり返ってくる答えは、お金がないです、そういう人的な配置をできるだけ余裕がないです、それができるだけの人材がいません、このことが、いつも、どこへ行っても返ってくる答えだったわけですね。

 その中で、とうとう三年生に上がる段になりまして、いろいろなことが情報として回っていきますので、この子と同じクラスになったら嫌だわというようなことも言われるようになりました。

 そこで、私は、二年生のときに合同懇談会を開いてくださいということで学校側に申し入れをしまして、一カ月間、やるのやらないの、そのすったもんだの繰り返しをしまして、二クラスだったんですけれども、五十何人のお母さん方を一堂に集めていただきまして、私の口からこの子の状態というのをやっと説明させていただきました。中にはそれで納得されたお母さんもいらっしゃいますが、こじれてしまった関係というのはなかなか修復ができない、そういった方もやはり何名かはいらっしゃいました。

 その中で、三年生、四年生、とうとう五年生に至ったときに、子供は不登校になりました。やはり今までの対応をしくじってしまった、だからこそ幼年期の対応というのは大事だというのは私自身が体験した思いです。その中で、学校に行きたくないになってしまったんです。

 私の場合は、もうこれはどうにもならないということで、実を言うと、こちらにいらっしゃいます市川先生に今現在お世話になっておりますので、梅ヶ丘病院の方に七カ月間入院ということをしました。

 本人は、最初はやはり嫌がっていました。病棟に入って、病棟だけでいいと。青鳥養護学校の梅ヶ丘分教室というのがあるんですが、そちらに通っていいですよという許可がおりたんですけれども、本人はとにかく嫌がりました。もう学校自体も嫌になってしまったんですね。その中で、とにかく七月一日から行くということになりまして、毎日電話をかけることができましたから、夜本人から電話がかかってきた中で、どうだったと聞くと、楽しいとなったんですね。何でこんなに変わるんだろうというのが不思議でした。よく分教室の先生ともお話ししたのは、医療機関の中にある学校ではなくて、通常の中で、一般の中でこういう子供たちを受け入れてくれる場があったらというのをよくお話をさせていただいた次第です。いつまでも病院にはいられないわけです。ですから、七カ月たって退院をしてきました。

 では、今度退院をした後に受け入れてくれる学校はどこか。私は、この子たち、この子たちといいますのは、今ひまわりとしていろいろ療育活動なんかもしておりますので、感じるのは、この子たちに適した環境が必要だと思います。それは、教育もそうです。親子関係も友達も兄弟関係ももちろんそうだと思います。現にうちのすぐ下の弟も、兄のことが原因で周りからいろいろ言われるものですから、やはり不登校ということを体験しております。それで、私は、支援というのは、その環境の度合いによって必要か不必要かというのが決まると思います。適した環境であれば支援というのは要らないと思います。けれども、そこが適してないから不適応状態を起こすわけですから、支援の手というものが必要になってしまうのではないかと思います。

 今現在、中学もう三年生で、今度いよいよ次のステップになるわけなんですが、この間、小学校、中学校、いつもずっと思ってきたことは、やはり発達障害をわかってくれる人はほとんどいないな、余りにも理解されないんだなというのを一番感じています。

 ここに、次の二番目のレジュメの方になりますが、そんなことがありまして、四年ほど前に、実を言うと、親の会としてひまわりは立ち上がりました。当初は親同士の慰めの場だったわけです。愚痴のこぼし合いです。わかってもらえない。親同士、わからないんですね。同じ学校に通っていても、まずそういう情報が入りませんから、わからないんです。会員で入ってきて同じ学校のお母さん方が三人そろったとか、そんなことがあるわけなんですね。中には、私、こんな思いをしているのは市内で私一人だけかと思っていましたとか、中には、お母さん自身が精神科に通ってうつ病の薬を飲まなければ夜も眠れないとか、そこまで悩んでいる方もいらしたわけです。

 そこから始まってきまして、今度は、子供というのは日々成長していきます。今必要なんですね、今生きているわけですから。今きちんとした療育とか、この子たちに適した学びの場というのが必要だと思います。教育というのは子供が自立していくためにあるものだと思うんですね。それをやはり、なかなか今の学校現場の中にはないんです。居場所がまずないですから。

 そこで、今度はNPO法人化をしまして、子供たちの支援というような形で今活動をさせていただいております。その内容が、こういったパンフレット、ここにある事業なんですね。

 これはなぜ始めたかといいますと、私自身体験をしてきまして、こういったものがあればいいなという思いでつくりました。ですから、これを見た保護者の方には、親が望むものばかりですねと言われた方がいらっしゃるんです。つくったのが私、親ですからとよくお話をするんですね。専門の先生方ですとかいろいろな研究者の方々が、何かそれぞれの研究の場としていろいろなものはあるんですが、どれもやはりしっくりこない。やはり当事者の親のもどかしさですとか、そういったものをわかっていただける場ってなかなかないなというのがあるんですね。そこで、当事者として、当事者の思いがわかるものとしてこのようなものを活動事業として行っています。

 ここで、その次の資料になりますが、このサポーター養成講座というのは、わかる人材が余りにもいないということで、今年度から始めました。実を言いますと、これを受けている方の大半は保護者なんですね。自分はエジソンの母にならなければいけないのかと。余りにも、学校というものに期待できないと思っていると思うんです。だからこそ自分がきちんと学んで、この子をという思いなんだと思うんですね。

 そして、これだけの長い期間です。なかなか余り、これだけやるところがなくて、いろいろこれをやるに当たっては、本来もっと長かったんです。それを切り詰めまして切り詰めまして、なぜかといいますと、ボランティア講座ですとか、いろいろな研修会ですとか、一日ですとか二日、三日、その程度のものはあるんですが、さらっと、ああそうかなという程度で終わってしまうんですね。真に支援できるだけの人材までは至らないのではないかなというのを感じています。

 そこで、実習まで入れたこのようなサポーター養成講座というのを、これは今年度から毎年開校していく予定でいます。こちらは基礎コースですから、今後は、子供たち、いつまでも子供ではいません、成人になっていきますから、今度は成人のサポートですね。

 そして、私自身、子供を育てていて一番感じているのは、家庭の中においてもサポートしてくれる人がいたらいいなと思っています。なぜかといいますと、非常に活発に動く子たちですから、お使いなんかに行っても大変なんですね、大体余計なものまで買い込んでくるような。普通であれば、隣の人へ、済みません、ちょっと見ててもらえますかと普通に気楽に頼めるんですが、この子を持っていますととてもそれはできないんですね。かなり迷惑をかけてしまうかなとか、誤解されちゃうかなとか、何、あのうちはどういうしつけをしているんだろうと思われちゃうだろうなと。であれば、実を言いますと、現に私も親の葬式にも出られなかった次第なんです、子供を見てくれる場がなかったものですから。やはり家庭でもそういうサポートは必要だと思います。

 結果として、こういう子たちです、決して褒められるようなことをする子たちではないものですから、どうしても親としてはしかってしまうのが多いんですね。これは学校でも同じだと思います。それはやめよう、やめさせたいという思いでしかるものですから、果ては、虐待ですとかそういったものにもつながるケースが非常にふえています。一番怖いのは、子供を受け入れられなくなってしまう関係なんですね。こういったケースも何例か私どもの相談の中には来ております。

 そのような点で、ぜひ、教育の場でも、発達障害というのを、子供にかかわる方々というのはすべてまず理解していただきたいな、学んでいただきたいなと思います。

 それともう一点、この子たちの場というのは、今のところどこにも属してないんですね。通常学級でもだめなんです。では、今ある特殊学級でどうかというと、ここでもやはり居場所がありません。就学相談もわかっている方が担当されればいいんですが、そうでない場合は、通常学級がだめだとでは特学、特学がだめだったらもう養護。養護なんかに行きますと、逆に言うと、今度は養護のお母さん方から、あんたたちは軽度なんだから、ここは軽度の子たちの来る学校じゃないんですよということで言われるんですね。もっと軽度のお母さんたち頑張りなさいよと、そういうようなことが返ってくるわけです。

 ですから、私としては、この子たちの学ぶ場、そういったものがきちんとあれば、適切な療育、そういったものがあれば、何の問題もなく社会の中で自立していける子たちだと思います。その場においても、やはり教育の場というのは大事なものだと思います。

 それから、実を言いますと、二〇〇二年に親の会を立ち上げまして、まず一般の方々にも、社会の中でやはりこの軽度発達障害というようなものの市民権を得なければいけないという思いがありますので、理解促進ということで、後援会ですとかセミナーなんかを毎年ひまわりとしては開催しています。

 ところが、それを休日、まして民間団体でやる、お金も払って参加するというと、やはり意識のある方なんですね。本当は、意識が薄い、その他大勢、大多数の方に私なんかは聞いていただきたいことなんですが、なかなかそういう方の参加というのは得られないんです。

 そこで、今年度、実を言うと、この三冊、これは絵本なんですが、各百部限定で私どもがつくったものなんです。これは軽度発達障害をわかっていただくという意図のもとでつくりました。ですから、親しみやすい絵本という形に置きかえて出させていただきました。これは、学校ですとか児童相談所、それから教育センターですとか、そういったところに無料で配付をさせていただいている資料なんです。今回、ちょっと八十部御用意できなかったので何部かだけなんですけれども、ぜひごらんいただきたいと思います。

 一番は、やはり教育というのは絶対大事なものだと思いますので、十分に、こういった子供たち、人もそれから時間もかけていただきたいなと思います。発達の度合いに応じた学校、今回の法案の中にも障害の種別をなくすということが言われていますけれども、やはり、個々に応じた専門的な教育というのは必要だと思います。もし言うのであれば、私は、障害児学校の総合病院のような、間口が一つとしても専門の科に分かれていくような、そういうきちんとした学びの場ですね、そして、発達の保障というのをきちんと得られる、こういう教育の場というのをつくっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

遠藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸井田とおる君。

戸井田委員 自由民主党の戸井田とおるです。

 きょう、ここの委員に所属はしていないんですけれども、どうですかと言われて、ある意味で簡単に受けてしまったんですけれども、勉強すればするほど頭が混乱してきて、しかし、ここに来て、今それぞれ四人の参考人のお話を聞いていたら、非常にある意味でよくわかってきた。

 また同時に、高原参考人も、本当にお母さんというのはやはり強いんだなと改めて思いました。自分のことに置きかえてみると、そういうことに耐えられるのかな、日々のそういう生活の中で、まして自分の子供がということになると、本当にこれは厳しいなと。まして、だれも周りに理解者がいないという状況でそれに対応していくというものは、まさにスーパーお母さんと言えるような感じがするんですね。

 しかし、我々はそれでおさまっていたら仕方ないわけであって、少しでもそれに近づいていこう、そういう体制を整えていこうということで今回の法改正になったんだと思います。

 また、私自身も子供は三人おりますけれども、三人とも全部成人してしまいました。しかし、その子供が成長する過程の中でもって、小学校、中学校の、特に義務教育の時代にPTAでかかわることになって、その場で実はいろいろなことを勉強させていただきました。障害者との関連、また、障害のある子供を持った親御さんが、何としても普通の学校で教育を受けさせたいということでもって、学校サイドも一生懸命それを受けようとして努力はするんですけれども、しかし、なかなかなれないもので、逆に手をとられてしまう。

 そのことを振り返ってみて、かつて、そのときにいた校長先生のところに実は電話をしまして、当時のことを、簡単にしか聞いておりませんでしたので、もう一度いろいろ確認しながら電話でお話ししていたんですね。そうしたら、大変長い時間になってしまったんですが、その当時の受け入れていたお子さんが、もう成人になっているわけですね。中学校でも、特に肢体不自由児でしたら、見たらわかるわけですけれども、松葉づえをついて、運動会でもやはり参加するんですね。マラソンがあって、それには参加するのかしないのかといったら、やはり本人は参加したい、非常に前向きな子でしたから、みんなと一緒にスタートするわけです。

 ところが、松葉づえをついてのマラソンですから、なかなか帰ってこない。しかし、子供に聞くと、みんな、じゃ、その子が帰ってくるまで待とうということで、運動会でも会場全体で待つんですね。そこに本人が一生懸命帰ってくるわけです。今思い出しても感動的な場面だったんだなと改めて痛感しますけれども、その話をするだけでも込み上げてくる部分があります。その努力というものを、やはり本人も大変だし、家族も大変だけれども、逆にその姿を見ていて、子供たちに何よりもましての教育になったんじゃないかなというふうに思うんですね。

 同時に、そこにかかわっている子供たちが一番だれよりも理解している。身近にいて、そばにいて生活を一緒にしている子供たちが、その障害を乗り越えてというか、障害を障害と見ていないというか、自然にそれを受け入れて、クラスメートとしていく。

 ほかにも、重度の障害、重度といっても学校に通えるぐらいでしたが、その女の子がいて、先生は何とか、養護学校へ行った方がいいんじゃないかとかいう話があったらしいんです。親が何としてもということで、卒業して、よかったわけなんですけれども、後で養護学校の先生から、やはり今養護学校に通わせておいた方がよかった、それはなぜかというと、生活の基本的な、排尿の訓練だとかそういうことができていなかった、そう言われて、その先生もやはりまずかったのかなと思いながらも、今大人になって訪ねていくと、学校時代の友達でできたネットワークというか友達の関係というか、そういうものがやはりその人の財産になっているなということを思ったら、そのとき、本当に養護学校へ行ってしまった方がよかったのか、それともこっちでみんなと一緒にしていたのがよかったのか、実は正直言ってわからないところもあるんですというようなことも言われておりました。

 ましてや、今お話のありましたLD、ADHDという障害になってくると、一般の人にはなかなか理解できない部分があるということになると、専門家をやはりたくさん養成していくということが大事なんだろうというふうに思いますし、また同時に、一般の人にそのことを知ってもらうことが大切だということを、今お話を聞いていてもよくわかりました。

 しかし、では、どういう方法でということになってくると、私は、最終的にはやはり学校なんじゃないかなという気がするんですね。学校の中でそういう体制をつくっていって、大人が理解できなくても、子供が、今のその先生の話を聞いていたら、非常に理解が早い、また、それに対応できるということを考えてみると、小学校の教育、中学校の教育というものをしっかりとこうした制度の中に立ち上げていって、多くの理解者をつくり上げていくということなんだろう。また、そんな子供たちが将来ボランティアで参加してみたり、そういう中でより理解を深めていくことにつながっていくんだろうというふうに思います。

 ノーマライゼーションという言葉を聞いてからかなり時間がたつわけでありますけれども、その後にインクルージョンというような話も出てくる。最初は何なのかなと思いながらも、やはり少しずつ理解が進んでいくということ、そのことの大切さというものを改めて痛感いたしております。

 そこでお伺いしたいんです。

 今回のこの体制をつくっていって、実際に今の状況の中に十分対応できるだけの体制がとれるんだろうか、その辺のところをそれぞれのお立場からコメントしていただけたらありがたいと思うんです。

市川参考人 先生の御質問は、教育の中においてという御質問。

 基本的に、きょう高原参考人がお話しになりました軽度発達障害の方というのは、今までと同じような指示をしても、指示がうまく入らないところがございます。そうすると、これまでの対応ですと、指示が入らない、困った子供だ、もっと指示を強くしていってやらなきゃいけないだろうというふうになるかもしれませんが、これは逆でありまして、指示の仕方を変えればいいという発想にもし先生方が立っていただくと、うまい指示の仕方ができるはずなんですね。ですから、こういうような発想を先生方が持っていただけるかどうかが非常に重要な問題だと思います。

 先生御心配のように、そういう人材というか、そういうのがあるかということでございますが、私自身は、年間、昨年五、六十回講演をやっておりますけれども、そのうちの四分の三は教育関係です。ということは、教育の現場の先生方が、実はクラスの中にそういう子供さんを抱えて困っていらっしゃるという現実もございます、これは保護者の方も当然困っているわけでございますが。

 してみますと、そういう先生方が非常に今ふえてきておりますので、私は、今すぐにというわけにはいかないかもしれませんけれども、こういうような改正を行って、さらに人材の養成の速度を上げていただくということで、少しずついい方向に行くというふうに考えております。

上野参考人 こういったことが学校での理解からスタートしていくというのはそのとおりだと思います。その場合に、子供たち自身がそういったさまざまな人たちがいるということを理解することはもちろんですが、やはり教員養成という立場からも、教師もそうでなきゃいけない。そうしますと、一般の通常の免許であっても、そのことについての新しい知識をどんどん入れなきゃいけないし、今度の特別支援学校の総合的なところ、そこでもそのことが必要になると思います。

 私は、その場合に、よい教育というのは、非常に多様なサービスが準備されていて、それが選べるということ。今私たちは、そういう観点からいいますと、サイズにしてもデザインにしても、わずかな靴を無理やり履かせようとしている、そこがもっと多様になることだと思います。

 ただし、このことが、先ほど私が申し上げた中で、聖域化といいますか、確かにこういった領域というのは、アメリカでも数倍のお金がかかるようです。しかし、聖域的にどれだけかかってもそれを実現するのかというと、私はやはり全体的な調和の中で、多くの方たちがそのことを、その意義を認めた中で進めていくということが大事ではないかと思います。そういう形の中で、必ず学校というところを中心にしてこのことは促進していくと思います。

姜参考人 私の居住しております大阪の現状を考えますと、現在の状況で、数値的には、養護学校へ行く子供さん、あるいは特殊学級へ入学する子供さんが少しずつでもふえているわけです。この少しずつふえているという理由が、少し考えないといけない部分があると思っております。

 といいますのは、子供の数が少なくなっていく状況の中で、実は地域の学校に入ってくる障害児の数が多くなってきているんですね。そして、それに対して学校の体制がどうとられているのかといえば、毎年毎年新学期を迎えるごとに、校長先生が、ああ、来年うちにはこれだけの障害を持つ子供たちが来るんだ、教育に関しては、何とか教員の数をふやしてくださいというふうにお願いをして回らないといけない状況が続いているわけです。そしてその中で、もし教員の方々の確保が難しい状況になれば、補助教員という形でアルバイト的な人たちを入れて補うという状況になっていると思います。

 そういった現状を考えたときに、今回の法改正の中で、法文の中にそこまでは触れられておりませんけれども、いかに人的配置を適正にして学校で受け入れる体制をつくれるのかという部分がどうもまだ見えてこないというところは、私としては懸念されるところです。もし、今のこの法改正の状況でやっていただくとすれば、その部分、今現に地域の学校に行っている人たちはいるわけですから、そういった人たちをどう、ちゃんと支援していくのかという枠組みも同時になければ、これからまた軽度発達障害の子供たちに対する支援も学校側に求められてくるとなれば、余計に学校現場での重荷が非常に大きくなってくるのではないかと思われますので、ぜひとも国の方でも、こういった体制づくりを明確にしていただきたいと思っております。

高原参考人 先ほども申し上げたとおり、四十人一クラスという中に今いるわけですから、国で出たのが六%、埼玉県は、実を言うと一〇・五%、一割なんですね。というと、一クラス大体三人から四人いる計算になります。

 その中で、例えばこの子たちが何らかの原因でパニックを起こしてしまった場合に、先生がその子にかかわっている間、ほか三十何名というのは待ったを食らっている状態です。そうなると、ほかの保護者から、先生、うちの子だっているわけです、そういう苦情がやはり来るんですね。果ては、おたくのお子さんがというようなこともじかに来ることもあるわけです。

 ですから、そういう点にいきますと、確かに発達障害に関して言えば、先生方がそれぞれ知識というのを持っていただくのはもちろんのことですけれども、やはりそれだけでは足りないものがあると思います。現に環境に応じてというのも先ほど申し上げたとおりで、例えば、多動のお子さんであれば、大体集中力は十五分と言われています。ですから、理解をされる先生であれば、四十五分を一回の授業ではないんですね、この子たちは四十五分が三回ですと。そういう区切りの中で十五分単位で軽く場を転換するような、そういう指導をされる先生方もいらっしゃいます。これはやはり理解をされている先生方なんですね。

 ところが、それが何人もいて、ましてこの障害というのは、ではADHDだから一律同じかというと、全部違います。そのお子さんによって全部症状の出方が違いますから、それぞれに対応していくということであれば、私は人的な配置ももちろん必要だと思います。それと全体的な教育のカリキュラム、そういったものもこの子たちに適したものというのが必要だと思います。

戸井田委員 どうもありがとうございました。

 先ほどの私の小学校のときの先生が、やはり同じように、多分発達障害の子供だと思うのですけれども、教室に入ってくるなりいきなりドアで寝転がって、それからすると、ふっとしたら、後、わあっと走り回るらしいんですね。教室じゅう走り回って、それから自分の席にぽんと座ると、今度は人に絵本のあるページを読んでもらって、それを読み終わると後は普通に授業に入っていけるということで、最後、私はずっと絵本を読む役でしたということで言っていたんですけれども、その子の場合にはそれで何とか学校を卒業できたということでありました。

 ケース・バイ・ケースで一つ一つに対応していくということは、教育に携わる人の、まさに人材の内容というか、その知識があるだけでなくて、知識がなくても、またそういうことを勉強しよう、またそういうことを理解しようとする、そういう姿勢が大事なんだなというふうに思うのですね。画一的なものであってすべてが理解できるものであればいいのかもわかりませんけれども、ましてやそうでないというお話を聞いてくると、やはりそれに対応する人間の質によって随分変わってくるのかな。そういう中で子供をある期間育てなければならない。また、将来にわたってその責任、責任というか子どもを自分が育てていかなきゃならない、大人になったときはどうなっていくんだろうか、そういう不安感というのは当然つきまとうんだろうと思います。

 それを親だけに押しつけるというのは大変なことだろうと思いますし、また、その理解を社会全体でもって深めていくということの意義、今回のこの法案を提出し、そして成立させると同時に、そういったことを改めて広めていく責任が当委員会にもあるんじゃないかな、私はそういうふうに思っております。

 国民の中にも、多くの方は前向きにそれをとらえようとすることがある、だけれども、個人的に自分の子供が例えば同じ教室でということになると拒否反応が出てきたりするという実情がある、そういうものをどう解決していくのか。まさにそれに携わる人によって随分大きな差が出てくるんだろうと思います。それをいかに普遍化してどう積み上げていくかというのが、やはり行政に課せられた大きな責任だと思っております。

 そのためにも、ぜひ今回のこの機会に、発達障害、また、新たに出てくる、障害名だけを理解するのではなくて、そういう感覚よりも、もうちょっと広く、どんな人間にもいろいろなプラス面もあればマイナス面もある、それを自分で背負いながら生きていく、それを自分一人でなく、周りの人が知らず知らずのうちにサポートできる、そんな社会をつくっていく責任があるんだろうと思います。

 きょうは参考人の四人の方々には、それぞれ大変お忙しい中、大変いい話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。姜参考人、そして高原参考人も、また大変でしょうけれども、頑張って、御活躍を祈念しております。

 以上で質問を終わります。

遠藤委員長 奥村展三君。

奥村委員 おはようございます。どうも、四人の参考人の皆さん、お忙しいところありがとうございます。民主党・無所属クラブの奥村展三でございます。

 それぞれの立場で、いろいろ御体験なり、また、姜さんのようにみずから障害をお持ちで、いろいろな御苦労をされてきたお話を聞かせていただきました。きょうこうしておいでをいただいたわけですから、私がしゃべるよりも皆さんにいろいろなお話をお聞かせいただきたいと思っておるところであります。

 まず、市川先生、お話の中に、やはり教育だけではなく、福祉だとか医療だとか、あらゆる分野の連携といいますか、専門チームという言い方をされたかもわかりませんが、特別支援教育という中にはいろいろあるんだよという意味のことをおっしゃったと思うんですが、それをもう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。

市川参考人 先ほども申し上げましたけれども、私は、軽度発達障害の方は、通常教育の中にも特別支援教育の中にも、両方に関係してくるということと、それから、他職種でございますね、これは、教育の中でコーディネーターが校内の問題を、そして、さらにその場合、難しい場合は専門家チームの意見を求めるという格好になっておりまして、これにつきましては、医療あるいは福祉、心理、労働等の関係者というふうに理解しておりますが、やはりその中で、先ほどもちょっと出ておりましたけれども、その子供さんの状態をどうとらえるか、どうしたらいいかということについて、やはり教育の観点から見るだけではなくて、ほかの観点から見ていく、あるいはどうしたらいいかということを一緒に考えていくという点で意味があると思います。

 これとともに、昨年の四月から、議員の先生方がつくってくださいました発達障害者支援法というのもございまして、これは文部科学省と厚生労働省が一緒にやっておりますので、この延長上にさらに広域的な支援体制をつくるということも含まれておりまして、子供さんは学校に行っているだけではございません、その後学童クラブに行ったりする方も当然いらっしゃるわけですし、そういうような、広域的に考えていかなきゃいけないという意味で、ぜひ他職種の方も入っていただくということに意味があるというふうに私は考えております。

奥村委員 ありがとうございました。

 先生のおっしゃるとおり、本当に広域的にこれに取り組んでいかなければ。お子さんお一人お一人の症状もまた違うわけですから。

 特に義務教育のいろいろな問題を今我々も議論してきたわけなんですけれども、教育の現場だけにそれを任せていく、教育が悪いんだから教育の現場だなんぞと、そうじゃなくて、やはりあらゆる皆さんとの連携をとりながら、先生のように医療の方でいろいろと、先ほどおっしゃったように、高原さんとのいろいろな御指導もしておられるようですけれども、そういうようにしてやはりセンター的な流れでみんなが連携をとってやっていただくというのが一番大事だというように思います。本当にありがとうございました。

 次に、上野先生、長年の御経験でいろいろきめ細かくお話しをいただいたわけです。特に、この改革が歴史に残る改革だとも先ほどおっしゃいましたけれども、一番、私は、人間尊重の教育のモデル、教育システムをしっかりと構築していかなければならないというお話をいただきました。

 そうなりますと、先ほど来いろいろお話を聞いていますと、小学校、中学校、その段階の話は非常に我々も国等を挙げてやっているんですが、就学前の保育所あるいは幼稚園、こことの連携といいますか、生まれて、お母さんの手、御家族の手から離れて集団生活に入るわけですから、そこは保育所でありあるいは幼稚園であるわけですね。そこからスタートなんですから、小学校、中学校に行ったとしても、その環境を、ある意味では、お子さんがどれだけ持っておられるかということも大きなウエートがかかってくるのではないかなというように思うんです。

 ですから、先ほど上野先生がおっしゃったそういう流れの中にも、小学校、中学校だけではなくて、私は、保育所だとか幼稚園、そういうものが連携をとりながら、それがまた高校へ行かれても、あるいは社会人になられても、一体化したものの連携がなければいけないと思うんですが、たっての私の思いですが、上野先生、ひとつまた御意見を賜りたいと思います。

上野参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、これまであらゆる障害というものが、まずは学校教育、特に義務教育段階からその制度を整えていくという、これは平成十七年から小中学校のところが大体体制が整ってきましたので、この領域に関しては、幼児と、それから高等学校にウイングを広げておられるようです。それは大変正しい方向ではないかと思います。特に幼児は、早期発見と早期対応ということ、それからまた保護者の方の本当に最終的な子供さんに対する責任やその重さを考えるときに、やはり早くからきちんとした専門家との情報の交換とか相談をしなきゃいけないので、そういう意味ではまず幼児教育が子供の発達の中で大変大事な時期であるというふうに思います。

 広域の問題もそうですけれども、時間的にも幼児からずっと始まってきますし、それからまた、横にも、教育だけではなくて、さまざまな子供さんの生活に横に広い連携システムということが大変大事だろうと思っております。

奥村委員 ありがとうございました。

 それと、やはり環境整備といいますか、先ほども先生がおっしゃったように、閉じこもったような形じゃなくて、高原さん、お名前出してあれですが、御経験談を今お聞かせいただきましたが、やはり保護者の方々がオープンで、地域なりあるいは学校なり保育所なり幼稚園なりにそういうものを出していけるような環境をまずつくってあげなければ、結局、義務教育なんだから教育だというふうなことで、教育の現場も戸惑われる。そういうことを考えますと、ハンディがあってどうのというのじゃなくて、共存している人だ、ともに生きているんだという、そこに着目しながら、社会がそのように変わっていかなければならない。それは、教育の問題だけではなくて、あらゆる環境を整えていくというのは大事であろうと思います。

 私は滋賀県なんですが、御承知のとおり、第一びわこ学園と第二びわこ学園。第二びわこ学園はもう私の地元なんですが、あそこなり、近江学園等もあるんですが、一麦寮だとか全部あるんですが、糸賀先生が大変全国的、世界的にも有名ですが、本当に御苦労いただいて、私もいろいろお出会いさせてもらって御指導を仰いできたわけなんですが、これを見てやってくれ、本当に汗してみんな頑張っている、子供も一生懸命努力している、しかし、これをみんなが支えないかぬのや、一部の職員だけが支える、保護者が支えるんじゃないんだ、地域の人なり、みんながこうしてやってくれなかったらあかんのだということを、よく、行くたびに糸賀先生、私にも御指導くださいました。

 そういうことを思いますと、大変皆さんそれぞれのところで御苦労があろうと思うんですが、きょうは姜さん、遠いところからありがとうございます。わざわざ大阪から来ていただきました。厳しい社会の中で、本当に、こうして頑張ってこられた。今の改正案についても、もっともっとこういうようにしてほしい、ああいうようにしてほしいという思いがあろうと思います。どうぞ時間の許す限りゆっくりやってください。

姜参考人 いろいろとあって、全部言い切ると時間がなくなってしまいますので、重要な点、二、三申し述べたいと思います。

 一つは、やはり先ほど来私申し上げさせていただいているように、地域でともに生きてきた生活というのが、今どういうふうに生かされているのかということを、本当に考えていただきたいということです。

 例えば、この間、大阪では、知的障害を持つ子供たち、これまで学力検査のために高校へ入学することはなかなか果たせませんでした。ぎりぎり、定員割れをした高校に入学が認められるというようなレベルでとどまっていたものです。それがやはり、地域の中学校あるいは小学校時代からともに一緒に過ごしてきた仲間と一緒に高校に行きたいという思いがずっと続いてきて、それが制度的に押し上げられ、今般、大阪府の方で特別コースというものがつくられ、知的障害の生徒さんを、まだまだ制度的には不十分ですし、入学定員も数が限られておりまして、希望する知的障害の方々がすべて入れるということにはなっておりませんけれども、やっと制度的に発足したということがあります。

 これはやはり、地域でともに育ってきた子供たちが、高校でも一緒に、高等教育機関でも一緒に過ごしたいんだ、そしてその中で生きていくためのいろいろな努力をしていきたいんだということのあらわれだと思っております。それがまず第一点です。

 この制度の意義をぜひとも知っていただきたいということが一つと、あと一つは、就学時健診というものが小学校に入る段階でありますけれども、そこで、やはりお母さんたちは、いわば専門家と言われる就学時健診の担当の方々にかなり振り回されてしまっている部分が多い。

 先ほど来、ほかの参考人の方々が、的確な情報が必要なんだということをおっしゃっておりますけれども、その情報が何分にも、私、今大阪の地元で障害を持たれた方の相談活動をやっておりますけれども、やはり相談に来られる方の心理状況というのは、弱い立場に置かれているわけですね。何もわからない、どうしたらいいのかわからない。それに対して、僕なんかまだ素人の方ですから、なるべく同じ目線で話をしようとするんですけれども、やはり相手にとっては、相談に乗る方は大きく見えてしまう。そうすると、やはり就学時健診で、そこで何か言われてしまうと、もうそれに従わないといけないとか、あるいはどうしたらいいのか、ますます困惑に浸されてしまうということだと思います。

 先生先ほどおっしゃったように、幼児期からの連携が必要ではないかということでありますけれども、まだまだ大阪の地でも、保育所には行けても、小学校に入る段階で壁になり、そういった健診の中で問題にされたりして、保育所でせっかく一緒に学んできた成果がそのまま小学校にストレートに伝わらない、あるいは小学校で培ってきたその子をめぐる人間関係や教育的なノウハウも、やはり中学校に行くときにちゃんと伝わらないという現状があります。

 入学するたびに、親が、学校やそういった周りの関係機関に流されてしまいかねない状況がまだまだあるということで、やはり親へのサポート、それも地域を含めたサポートをどう打ち立てるのかということが必要なんではないかな。

 その際、やはり就学時健診というものが強制であってはならないと思います。一部の地域では、ちゃんと広報に、これは障害児の行き先を決めるものではありませんということで、受診の義務はないということが知らされておりますけれども、そういった専門的な判断ということが、時に、当事者や親を逆にしんどくさせる、あるいは苦しめてしまうことが多々あるということをわかっていただきたいし、その仕組みをもう少し、本人や親の意思をもっと酌み上げる形にしていただければなと思っております。

 以上です。

奥村委員 ありがとうございました。いろいろと、本当に頑張ってこられたお話も聞かせていただいたです。

 先ほど、私は、お話を聞いているときに、同級生との触れ合いがなかったとおっしゃっていましたね。どうですか、今はそういうことはありますか。

姜参考人 おかげさまで、高校で初めていわば現実社会の冷たさも知り、でも、その中で、ようやく高校を卒業する時分には一緒に映画を見に行く友達もでき、今でもその同級生たちとは連絡は時たまあります。

 ですから、私にとっては、ある意味、高校というのは現実社会を知る現場でありましたし、その中で、いかに自分が周りとのかかわりをつくって生きていくのかということを初めて身にしみて体得したところでもあります。その結果、今こうしてこのような場で、お呼びいただいて、お話をするまでの人間関係をやはり私自身がつくれてきたのだと思います。

 そういった意味で、決してつらいことばかりではなかったけれども、それをきっかけにして、障害を持つ人たちは決して弱い力を持っていない、みずから生きるためのいろいろなすべを、周りとの関係の中でつくり出せるんだということを今実感しているところです。

奥村委員 ありがとうございました。頑張ってください。

 高原さん、いろいろ御経験のお話をいただきました。実は私も幼稚園を経営しているんです。それで、保育所に入れるか私の幼稚園に入れるかということで、結局、行政側が振り回すんですよ。これは私もじかに毎日毎日出会っているわけじゃないんですが、職員なり園長から聞きますと、保育所がとらないから、うちでどうしてもとりなさいというように行政指導があると。しかし、それには職員なり、環境整備、私立ですからしなければなりませんね。ですから、そういうようなことを現実に私も体験しています。

 それと、先ほど申し上げたように、保護者の皆さんがなかなかオープンにしようとされないんです。これはやはり地域で、特に私なんか田舎ですから、隣近所、本当に何百年という歴史のあるところですから、そういうところの人の、本当にハンディをお持ちになっているということになると、萎縮されるんですよ。だから、オープンにされて、もっと保育所や幼稚園へ連れてきて、あれさしと言う、気張って努力しなさいと言ってあげるんですが、やはりそこらは難しいところですね。

 ちょっといろいろ御経験の、御苦労いただいているお話を聞かせていただきました。時間、もうわずかしかありませんが、どうぞひとつお聞かせいただきたいと思います。

高原参考人 確かに、以前、十年前です、以前の親御さんはやはりどちらかというと、わかってください、何でわかってくれないのというパターンだったと思います。でも、最近は、今言われたとおり、診断が下っていても、例えば、先生黙っていてください、絶対隠してとか、学校に言わないとか、何とかやり過ごせば大丈夫じゃないかなという方も非常にふえています。ですから、そういう中で、もっともっと親子関係も悪化してしまったりとか、学校または幼稚園ですね。

 最近、私、本当に保護者から反感を買うような発言をよくしてしまうんですが、最近は、保護者の立場で、子供さんたちをきちんと見据えていない、障害を受容できていないということが非常に強いかと思います。それにはやはり、これを言ってしまったら何と思われるかなとか、よく言われるのが、いじめられてしまうんではないかとか、あと、言ってもわかってもらえないだろうというお母さん方もいらっしゃるんですね。それと、成長すれば何とかなるんじゃないの、だったらば、今、何も無理をして言わなくても済むんじゃないかとか、そういったのがあると思います。

 ですから、そうではないんだというのを、特に学校ですとか園ですとか、そういった集団の場の中で、他のお母さん方から逆に指摘をされてしまって、それもいい指摘ではなくて、どうもあなたのお子さん違うんじゃないの、何かこうじゃないのと言われてしまうと、すごく親というのは閉ざしてしまうんですね。そうなってしまうと、非常に悪化してしまいます。

 ですから、そうではなくて、まだお母さん方も真っさらな状態、先ほど就学時健診とおっしゃいましたが、私の場合、乳児健診、こういう場できちんと、担当している保健婦さんですとか小児科の先生方ですとか、そういった方がやはり早期に発達障害等を見定めて、専門的にきちんとした指導をしていく。そこで第一歩の、幼稚園ですとか保育園ですとか、そこできちんとした対応をされていく。そして、お母さんたちもまだその状態ですから、真っさらなんですね。いろいろ言われていませんから、ああそうかなと素直に受け入れていただけるような場が多いと思います。

 そして、乳児健診というのは大体一〇〇%の方が受けますから、まず、ここの機会を逃さないでいてほしいなと思います。そして、身近に相談できる場、そういったものがあったらもう少しお母さん方も変わってくるかなと思います。

奥村委員 ありがとうございました。

 四人の先生方、お忙しいところ、どうもありがとうございます。終わります。

遠藤委員長 池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 四人の参考人の方には、お忙しい中、当委員会に御出席いただき、そして大変有意義なお話を伺うことができまして、心よりお礼申し上げます。

 四人の参考人のお話を伺って強く思いましたことは、障害児に対する知識が少ないのではないか。特に、知的障害に対しては、このごろ、ようやっとこういうものだ、こういうことなのですよということが知れ渡るようになりましたけれども、まだまだ知識がないからどう対応したらいいかがわかっていない人が多いんだと思います。私の友人も、車いすの方がいらっしゃる場合、道を譲ったり、車を押したりしようと思う、でも、知的障害の人にはどう対処していいかわからないんだよ、だから、これをもっと、きちんとした知識をみんなに広めなければいけないんだという思いをいたしました。

 それからまた、地域、社会、共同体の中でさまざまな人が一緒に生活しているのが当たり前だという社会をつくっていかなければいけない。同世代の友人との交流がない、地域の人との交流がないというのは、やはり私は問題だと思うんですね。

 豊中市の教育のお話をなさいました。私も大阪に属している政治家ですけれども、ごく自然の中で、豊中市の方は、一般の人も、それから、将来教員になる方も、障害を持っていらっしゃる方への知識とか対応がきちんとできるのではないか、そういうことが必要なのではないか。

 それからまた、教育というのは何のためにあるのか。それは、社会人になるための基礎なんだと思うんですね。だから、社会人になったときにどういう生活ができるか、それを考えなければいけないんだというようなことなどを今伺って、考えさせられました。

 市川参考人にお伺いしたいんですけれども、市川参考人は梅ヶ丘病院、そして青鳥養護学校分教室というのを併設されていて、医療と指導というのをきちんとやっていらっしゃると思います。先ほど、高原参考人のお子様が市川参考人のところにいらして、最初は嫌がっていた、でも、そのうちに、楽しいんだよと。私はすべてはこれに尽きるのではないかと思うんですね。つまり、楽しいということが大切なんだと思いますけれども、こういう指導、連携の中でどのような困難がおありになるのか。それからまた、成果をたくさん上げていらっしゃいますけれども、単純に、何で楽しいと子供が思えるのか、それを伺いたいと思います。

市川参考人 一言で言いますと、やはり自分のことをわかってくれているという気持ちではないかと思います。

 基本的には、これは保護者の方にも通じるものだと思いますけれども、その子供さんの状況をきちんと把握して、その子供さんの考え方を理解してあげられるかどうかだろうと思います。それができると、次にどういういい対応ができるかわかってきますので、そういう状況になりますと、子供さんの方でも、自分を受け入れてくれる、これは楽しい環境だというふうに感じるのではないかと思います。

 先ほどからの質疑の中で聞かせていただいておりますと、保護者の方についても全く同じことが言えるんだろうと思います。私は医療という立場におりますけれども、基本的にはそういう人間関係というものが非常に重要だと思っておりますので、一つ挙げるとすればその点かなというふうに考えております。

池坊委員 知識とともに、それの上に立った理解、そして愛情なんだということだと思います。

 上野参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、国の意思が大切だというふうにおっしゃいました。手段やプロセスによって理念がゆがめられてはいけない、このことはしっかりと受けとめていかなくてはならないと思います。

 国際的水準からいっても、日本はインクルージョン教育が低いのではないかと思います。先ほど、アメリカやイギリスの例をペーパーの中に出していらっしゃいました。また、教員の免許法についても、必ずしもグローバルスタンダードとは合致していないんだ、特別支援教育全体を視野に入れた障害種の考え方への転換がまだ不十分だというお話をなさいました。

 アメリカやイギリスの例を拝見したら、確かにきめ細やかにいろいろな種別に分かれている。日本の場合にはまだ、何か、全部一くくりみたいな感じがするんですけれども、その点についてちょっとお伺いしたいと思います。国際的水準もあわせて伺いたいと思います。

上野参考人 姜参考人も申されましたけれども、やはり、世界の流れというのがインクルーシブな教育ということですね。このことは、知らないということ、あるいは一緒でない、分離するということの中でたくさんの差別が生まれる可能性があるということですね。ですから、お互いに、場をなるべく近くして、知るということが大事だと私は思っております。

 ただ、そのことを、特に視覚障害、聴覚障害あるいは肢体不自由というような障害種の方と、それから知的障害の方と、必ずしも同じ障害理解ではないんだろうと思っております。つまり、いろいろなIT機器とかさまざまなものによって、今、身体や感覚や、そういうところの障害の方というのは、一般の方たちとともにやる条件がどんどん整ってきております。ただ、知的障害の方の場合にはそういう点が必ずしも同じではないので、やはりその障害の特性というものをきちんと理解した上で、何が一緒にできて、何をその子のために、その社会自立に向けてした方がよいのかということ、そういう中身をきちっと考えたインクルーシブな教育が大事だというふうに基本的には思っております。

 さて、免許のことになりますが、これは、例えばアメリカあたりを一つの例にとりますと、全就学児童生徒の大体一一%、そのうちの約半数がLDだと言われております。ですから、LDが最も多くて、それから言語障害、知的障害というふうな順序で。もちろん、どんなに数が少なくても、それぞれの障害というのは大事なんですけれども。ではありますけれども、そういう中でどう対応していこうかということが全体的に考えられる。

 ただ、日本の場合には、やはり歴史的な経緯で、これはもう昭和二十三年から、盲・聾の義務化から始まりまして、三十年おくれで知的障害。そして、知的障害が中重度の養護学校をつくるということに物すごくエネルギーがかけられたために、そこに軽度の問題が少し時間的に、空白の時間があったのではないかと思います。したがって、重い軽いにかかわらず、どの子供たちも支援が必要なわけですから、やはり全体的な視野ということから、また免許法についても考えていかなければならないんだろう。

 今回の免許法については、盲・聾・養護学校の三特殊免許を一本化したということ、総合性を持たせたということ、それから、それぞれの専門的なところに関しては、それをまた積み上げていくような形でいくというような方向は、一つの改善として大変よいと思うわけです。

 諸外国を見ておりますと、例えばスペシャルエデュケーションという言葉を使った方がいいと思いますけれども、そういう場合にも、必要な子供さんに対する免許を、大学院レベルも含めて、どんどん修得していくという形で指導力をきちっと持った教員を育てていく。

 こんなふうに考えますと、一気に変えていくことはなかなか難しいし、現実の特殊教育諸学校を特別支援学校に変えます、それから現在持っている免許も新しい免許に切りかえていきますね。ですから、時間は多少かかると思うんですけれども、私は、こういう改革において一番大事なのは、最終ゴールという、これは理念につながるものですけれども、そういうものをしっかり持って、そしてその間、移行の間に、移行という名前のもとに子供さんを犠牲にしてはいけないので、そこのところを大事にしながら変化させていくということが大事だと思っております。

 そういう意味で、今回はやや、これまでの現状に少し配慮していて、その先の、数からいったら軽度の方が絶対多いわけですよね。だから、一体、こういうふうな新しい次の体制に向かってどういうふうにプログラムしていくかというところがちょっと見えにくいのではないかなという点で、免許についても、少し言い過ぎたかもしれませんけれども、そういう意見を述べさせていただきました。

池坊委員 私も勉強会を重ね、さまざまなところに視察に行ってまいりましたので、まず教員のあり方は現状のままで移行するだけでは絶対だめだということは深く感じております。今の体制では、なかなかこれは難しいのではないかと思うところがございます。

 姜参考人にお伺いしたいと思います。

 インクルージョン教育は障害教育の理想であると思います。でも、現実には、今の財政、今度第八次定数改善は見送られました。単年度として二百八十二人が配置されただけなんですね。それで、また指導内容といったら、なかなかまだみんな指導の仕方がわかっていないというのが現状ではないかと思っております。

 その中にあって、参考人はどういうようなインクルージョン教育が理想というふうに思われるか、お伺いしたいと思います。

姜参考人 まず、私自身は、学校でできることはまだたくさんあるのではないかと思っております。先ほど人的配置のことで御要望させていただきましたけれども、それだけではなくて、学校の先生方の工夫、それも学校全体での工夫がまだまだ足りないのではないかなというところは感じるところです。

 それと、これは発達障害の方々も推進されようとしているところですけれども、やはり地域で私たち障害を持つ者自身が、今同じ障害を持つ仲間を支えようとしております。その社会的資源をぜひとも学校で使っていただきたいという思いがあります。

 今現在、私どもも、時々学校へお伺いするなり、あるいは学校から呼ばれてお話をさせていただくことがあるんですけれども、単に、障害者はこうやって生きてきているんだよ、こんなに困っているんだよというだけではなくて、どのようなものを一緒に学んでいけば効果的に有効な教育がなされるのかというカリキュラムづくりも、先生たちだけで考えるのではなくて、私たち地域で生きる障害を持つ仲間と一緒に工夫して考えていただきたいなと思います。

 一つだけ例を申し上げさせていただきますけれども、実は一昨年、文部科学省の事業の一環として、学校からの要請に基づいてNPOとの協調で進める事業というのがありまして、私もその一員として参加した経過があります。

 その中で、学校の生徒さんが障害を持つ方々を調理実習に招待してくれるというカリキュラムを先生と一緒につくりました。ただ、やはり私たちがここは学校の限界かなと思ったのは、障害を持った方五名、視覚障害やその他、言語障害も含めて、多種多様な障害の方と一緒に行ったわけですけれども、生徒さんが駅まで迎えに来てくださいよと。近くなんです。本当に学校の近くの駅です。そこで自分たち障害者がどんなふうに乗り物に乗ってくるのかとかいうところも知ってもらおうと思って提案させていただいたんですけれども、やはり学校の側は壁が厚くて、駅まではちょっと無理です、校門のところまでしか行けませんということで、少し残念に思ったわけですけれども。

 でも、それでも、やはり私たちはその事業で改めて実感したのは、先生と私たち障害を持つ者が一緒にこういったものをやれば、生徒さんたちはいろいろなことを考えてくれるんじゃないかな、いろいろなことを自分たちで考えてくれるんじゃないかということで、カリキュラムづくりを進めていったこと、その成果はやはり今後も生かしていきたいし、なかなか学校というものは外部の人たちとのつながりを持ってくれようとはしないわけですけれども、そういった取り組みを進められるようなことがあれば、よりインクルージョンの教育というのは幅広く取り組むことができるのではないかと思う次第です。

池坊委員 確かにそのとおりで、健常者の視点でいろいろなカリキュラムがつくられるわけですよね。だけれども、そうでなくて、障害者の側、視点から、指導ということも見直されていかなければいけないんだというふうに思います。

 高原参考人にお伺いしたいと思います。

 サポートというのは、サポーターは私は大変大切だと思うんですね。例えば知的障害を持っていらっしゃる方も、信頼しているアドバイザーが幼稚園について来てくれると、そこにいるだけで安心してみんなと溶け込むことができる。でも、なかなか現状では幼稚園もそれを阻む、それから小学校も阻むということなんですけれども、私はきめ細やかな対応は教員だけではもうできないと思うんですね。だから、やはりサポーターがどんなふうに学校と連携をとっていくかが大切になっていくと思うんですけれども、どういうサポーター体制がいいというふうにお考えでしょうか。

高原参考人 今、学校現場におけるサポーターということでよろしいでしょうか。

 確かに今、私どものいる埼玉県でも、私が住んでいるのは志木市というところなんです。志木市では、確かに支援員という制度はあります。必要に応じて派遣をします。ただ、発達障害に関しては、やはり知識としてないんです。ですから、逆に対応を悪化させてしまうというケースもあります。

 逆に今度は、支援員さんが学んでいらっしゃる方もいらっしゃるんですね。ところが、まず先生との連携が図れないというのが一つの問題にあります。なぜかというと、先生が非常に忙しいということで、例えば支援員さんといっても、一日二時間、週二回ですとか、一日フルにいるわけではないんですね。規定がありますから、その時間の中でいるという状態です。その中で同じ教室にいても、先生と支援員さん同士が連絡を図れないというのがあります。そこで、中には、先生の側からは、では連絡ノートで、というようなやりとりをするとか、それもあります。

 それと同時に、あともう一つは、志木の制度の場合でいきますと、支援員というよりも、何かその場の応急の処置をするというような担当の中に置かれてしまっているように思います。そして、先生の指示に従ってくださいというのがまず限定でついてくるんですね。そうであるなら、先生がきちんと適宜の配置をして適切な指示を出される先生であればいいんですが、そうでない場合は多分、支援員さん、もしきちんとした知識をお持ちの方であっても、生かされないと思います。ですから、そういうのを超えられるような場というのは必要だと思います。

 そして、その子にはもちろん、時には他の教室等でも適宜指導できるような、そして、できれば私は、本来でいけば確かにサポーター、もちろんそれが必要でもありますし、実を言いますともう一点、副担任というような制度がもしあったならばというふうに思うんですね。なぜかといいますと、サポーターということでは授業ができないんですね。ですから、先生の補助という形ではつけますけれども、やはり学校現場としては副担任制ですとか、子供さん一人に先生がかかった場合、もう一人先生がいれば、他のお子さんたちの授業もスムーズにいきます。

 その点で、学校現場では、まず副担。そして、サポーターというのは、あくまでも補助というような形で。どうしてもいられない場合に、そのサポーターさんが別の、別室ですね、学校の場においてはできれば避難場所を、よく避難場所という言い方をしてしまうんですけれども、そういう場が余りにもなくて、例えば要求すると、先生方はちょっと用意できませんというのが今の現状ですから、そういった点、サポーターとあわせて、場所ですね、その点もぜひ配置していただきたいなと思います。

池坊委員 確かに、学級のクラスの人数ばかりを言われるんですけれども、私は副担任というのは必要じゃないかなと思うんですね。つまり、人数が少なくても、そこで動き回る子供がいたときに一人の担任じゃ対処ができないから、その担任をサポートする人があったら、私は四十人学級でもきちんと対応できることもあるのではないかというふうに思いますので、これは、それぞれが英知を出し合いながら、画一的ではなくて、この場所においてはどういう体制がいいのかということも考えていかなければいけない問題だと思います。

 これから地方格差が出てくると思うんですね。志木市は進んでいる方だったというふうに私は思っているんですけれども、いろいろな問題をそれぞれが抱えている。これをどうやって私たちが解決することができ、そして、子供たちに、二十一世紀を担う子供たちですから、この国に生まれてよかった思えるような教育ができるか、あるいはコミュニティーをつくっていけるか、それは私たちの責務でもあると思いますから、連携をしながらこれから頑張っていきたいと思います。どうぞ、皆様方、また力をかしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

遠藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 きょうは、参考人として御出席いただきまして、本当にありがとうございます。皆様方から、発達障害についての、長年取り組まれていらっしゃる御経験、そしてまた知見もお聞かせいただきまして、大変勉強させていただきました。今回の法案改正に本当に生かしていきたいと思っているところでございます。

 私自身も、特別支援という形で言われているように、一人一人のニーズに合った教育ということが、ようやくというか、言われるようになりまして、これは障害を持った子供さんにはそのことは本当に大事ですけれども、それはすべての子供たちに当てはまることだろうと私は考えているんですね。そういう意味で、そのような教育の環境をぜひつくっていきたいなということを強く思っているところでございます。

 それで、最初に市川参考人に伺いたいと思いますけれども、軽度の発達障害について、その概念だとかその実態、実情をいろいろ整理していただきまして、ありがとうございました。それで、軽度の発達障害が増加している、その中でも特に高機能群の著しい増加だ、比率として四倍、十年間に四倍というのは大変な数だと思うんですけれども、等々をお知らせいただきました。

 それで、私ちょっと一つ、きょうの話に出てきませんけれども、今子供の事件などで、この十年の間に出てくることでいいますと、行為障害だとか人格障害だとかそういう概念が出てきていますよね。これは私たちはなかなかなじみがない、まだ日本でも研究が十分されていない分野かと思うんですけれども、こういう軽度発達障害、先生も、中教審ですか、の専門委員としても加わったと思いますけれども、そういう中では、こういう障害というのは、どのように議論されて、あるいは今回の中には入っていない、入っていないと言ったらいいのか、これはどのように考えたらいいのかということについてちょっとお知らせいただければと思いますが。

市川参考人 軽度発達障害という言葉は、障害が軽いという意味ではないんですね。知的障害が軽い発達障害というふうに理解いただければいいので、これは造語だと思います。はっきりした定義はないんですが、その代表例として、きょう論議になっておりますLDあるいはADHD、高機能自閉症等がある、こういうことになっております。

 それから、今マスコミ等では、確かに、子供さんの場合ですと触法行為ですか、そういうものとの関係ということが言われておりますが、直接的な結びつきは証明されていないと思いますが、ほかの人とのコミュニケーションをとりにくい、あるいは意味をとりにくいようなところがございますので、思春期以降になりまして、どうして自分はこんなに努力しているのにみんなに認めてもらえないんだろうということが続いていきますと、普通、子供さんに限らず、だんだん自信がなくなっていったり、いらいらしてきたりする方がいらっしゃるわけですね。これは私見ですけれども、発想が逆転しますと、世の中が悪いんじゃないかというふうに思う方が出てくるかもしれませんね。そうしますと、その中の一部ですね、やはりマスコミ等で取り上げているようなことにつながる方があるかもしれません。

 逆に言いますと、先ほど申し上げましたけれども、すばらしい業績を残している方もいっぱいいらっしゃいますし、医者の中にも実はその関係者は多いと言われておりますし、学校の先生にも、もしかすると議員さんにも多いと言っている方もいらっしゃいますので、決してそれが悪いことではないわけでありまして、いい方向に行くと、すごくエネルギッシュですばらしい業績を残す。ただ、思春期以降になりまして、つまずいてしまって、社会からの疎外感ばかりが積み上がっていきますと、逆な方向に行く方もあるんではないかというのが今の一般的な考え方だと思います。

 逆に言いますと、思春期以前の、特に低年齢のころに、先ほどちょっとこの文書の中では自己有能感という言葉を使っておりますが、自分はこういうことで自信がある、自分はこういう点はほかの人よりできるというところをどれだけふやせるかということが、逆にいい方向に行くということだと思います。

 そういう点でいえば、この法律の改正によって学校の先生方の対応が少しでもよくなって、いい方向に行く方がふえたらすばらしいなと私は考えております。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 いずれにしても、やはり教育的な関係というか、働きかけというか、それが大変大事だ、こういうふうに思うんですね。そういうことで、教育関係者がやはり発達障害についての深い認識をもっと広げる必要があるなというふうに私も感じたところでございます。

 それで、上野参考人に伺いますけれども、先ほどお述べになりました中で、今回の特別支援教育については、通常の学級に在籍する特別な教育支援を必要とする児童生徒の全国実態調査で六・三%という結果が出た、しかし、そのときに、通常の学級に明らかに知的発達のおくれを持つと推定される児童生徒は少なくとも二%はいたと。これは大きな数だというふうに思うんですね。

 それで、先生は、LD学会の会長さんでもいらっしゃいますけれども、そのLDの子供への指導という点では、今回の法改正というのはどういうことが期待されるんでしょうか。もちろん十分ではないということはお互いにわかっているわけですけれども、本当にさらにどういう点が改善というか、必要と認められるかということについてお聞かせください。

上野参考人 一九六三年にアメリカでLDという概念が教育用語、法律用語としてブレークしていったんですね。そのとき、軽度のお子さんたちを広くとらえる、アンブレラ、傘の概念と言われました。その後、だんだん、例えばADHDのようなお子さんは、重なりやすいけれども、別の障害であろうとか、あるいは自閉症の高いお子さんは自閉症として診断すべきであってLDと分けておいた方がいいんじゃないかとかというようなこともありまして、そういう最初の広い傘から少し厳密になってきております。そういうことの中で概念というのは変化していくわけですね。

 学校の中で大事だと私が思うのは、特にこの軽度のLD、ADHD等のお子さんというのは、見ようによってはできることがある。あるいは、逆に言えば、過集中といいますか、よく言うんですけれども、二倍集中して二倍疲れる、自分の好きなことだと集中するというような特徴もあって、これは他の障害とは少し違った様子ですね。したがって、先生の方も、それをお子さんの方の発達の特性としてとらえないで、努力とかあるいはしつけとかそういうふうにして考えやすいということがあります。ですから、まず何といっても、そのお子さんたちのきちんとした発達の特性ということを先生自身がまず知るということが基本ではないかというふうに思うわけです。そのことが、ただいま議員が、これは障害ということだけではなくて、すべての子供に広がることだというのは、いろいろな子供さん、これからもいろいろな名前で支援が必要だということで出てくる可能性があります。だから、そういうようなことも含めて、私たちは常に、子供たちがどんな状態で何を求めているのか、何が提供できるのかということに対して敏感であるべきではないか、まずそのスタートは学校ではないか、そのように思います。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 私も、小学校のときに特定の能力分野だといえば書くとか読むとかあるいは計算とか、そこで非常につまずいてしまうという場合を指しているように思うんですけれども、それでもってもう学校全体についていけないということで、別なところへ行かなきゃいけなかったという子供さんを知っておりまして、しかし、その子供さんは音楽でまた大変能力を発揮されたということもあるんですね。それは本当に、おっしゃるように、子供というのは多面的な能力を持っているわけですから、決められた枠だけではかってはいけないなというようなことを感じているものですから、今のお話、そのとおりだというふうに思いました。

 高原参考人に伺いたいと思います。

 先ほど、私も親として、本当に胸が詰まる思いで、お子さんの歩みを聞かせていただきました。十年前というのはまだまだ社会的にこういうLD、ADHDについても本当に認識が広まっていないという中での大変御苦労があったと思います。最後に、しかし今日なおこの子たちの居場所がないと言われたのに私ははっとしまして。今回の法改正では何が一歩前進になるのか。

 私たちは、今度の法改正を契機に、本当に、こういう軽度発達障害についての社会的な認識、関心がもっと高まって、そしてその対応をちゃんとしなきゃいけない。ただ知っているだけではだめですよね。対応しなきゃいけないということだと思うんですけれども、本当に今学校それからまた関係機関でいろいろ、連携等々、努力をされていると思いますけれども、現状について、どこをどういうふうにまず手がかりとして直していくべきなのかというような点について、もう少しお聞かせください。

高原参考人 私の子供がちょうど中学三年生で、ですから、小学校六年間、中学三年間という中で一番感じた居場所がないという発言の大もとは、まず、担任の先生がかわった場合に引き継ぎがどうも何かスムーズにいかない。人によって対応が変わってしまうわけですね。本来であれば、教育の場なわけですから、人がかわって対応が変わるというのは何か変じゃないかなと思います。

 ですから、今言われたとおり、きちんと理解をされて対応していただく先生もいらっしゃるわけです。そうかと思うと、逆に、よく言うのは、学校全体で、校内委員会ですとかコーディネーターですとか、そういったものを配置するというようなことも今は言われていますけれども、まず先生方同士の共通認識を持ってその子に当たるというのがどうもできていないんじゃないのかなというふうに思います。

 なぜかといいますと、実際、私なんかもよく先生とお話をする際には、実を言うと、お母さん、職場の中で職員同士の共通認識を図ることの方が実際問題大変なんです、中には理解をされて対応された先生が逆に非難をされてしまっている、前の担任が甘やかすからこういう結果になるんだと。これは、とりもなおさず発達障害の認識が甘いというか、薄いのではないかなと思います。

 それと、やはり子供というのはその場その場だけではないと思うんですね。継続してずっと、例えば就学前、幼稚園、保育園、そして小学校、中学校、そして、まあ、今うちはまさに高校という問題を控えていますけれども、年を追うごとに何か受け入れ間口が狭くなってしまう、これも感じています。

 特に学校の先生というのは転任されてしまうのがあります。担任の先生も、何か今は一年でかわってしまう。子供は、もともと順応性がいい子でもないわけですね。やっと先生になれた、一年かかってなれた、先生も一年かかってこの子の対応わかりましたと。それで担任がかわってしまうんです。そのときの引き継ぎというのが、ですから、みんな親御さん、新年度早々は、まず先生がだれになるのか、だれになったら、また脈々と今までの経過をお話しする、先生がかわるたびにそれを繰り返す。それでも、何か、同じように一貫して受けられない、でこぼこが、非常に波があるというのを一番実感しています。

 ですから、できることであれば、先生、いわゆる個人の質ということではなくて、教育全体の中で位置づけていただきたいというのがまずなんですね。個々の先生方の努力だけではなくて、全体として、制度としてそこをきちんと位置づけていただきたいな、そういう意味で、やはりこの子たちの居場所がないというのを実感しています。

石井(郁)委員 ありがとうございました。

 残りの時間、ちょっと角度を変えまして、先ほど来、幼少期というか、低年齢のときにきちんとした診断が大事だということはお聞かせいただいたとおりですけれども、高原さんの子供さんももう今度高校というところにきていると思うんですが、やがて思春期に入ってなおまた難しさも出てくるかなと思いますし、それから高校に入ったけれどもその先はどうなんだ、あるいは受け入れてくれる高校自身が非常に限られているというお話もあったかと思うんです。

 その問題でちょっと伺いたいんですけれども、今回の法改正には高校でも特別支援教育をということが明記されているという点は私は大変評価をしているんです。それで、ここは姜参考人に伺いたいと思いますけれども、たしか高校から通常学級へ入ったというふうに聞いているところでございますけれども、その高校での生活を振り返って、苦しかったことや、よかったことや、それからまたその後の進路、障害を持っていらっしゃる皆さんにとっては、その後の進路について、何か御要望等々あればお聞かせください。

姜参考人 私自身は高校での生活というのは、先ほども少し述べさせていただきましたけれども、最初は頑張る頑張るでやってまいりました。ただ、その頑張るは、自分一人ではどうにもできないことに関して、やはり自分が無力であるということを思わざるを得なかったですね。自分は一人ではこの社会ではやはり生きていけないんだということ。その中で、ふと気がついてみれば、自分が声を出して協力してもらえる人、あるいは自分が困っているときに、これちょっと手伝ってくださいと言えるような関係が、なかなかつかめなかったことがやはり一番しんどかったことです。

 それがようやく三年目にして、周りの雰囲気もよくて、先ほど来申し上げているように、一緒に出かけたり遊びに行ったりする同級生ができたことは、私自身が、健常児と言われるクラスメートの中でいろいろなことを感じて、この社会で生きていくにはどうすればいいのかということを身にしみて感じてきた結果だろうと思っています。

 高校卒業後の進路、私は幸運にも大学へは行かせていただきましたけれども、今現状、大阪では、知的障害を持つ高校生の人たちが卒業後どうなるのかということ、非常に大きな問題となっておりますし、現に、定時制高校やそういったところに通っている障害を持つ子供たちが、やはり行き先がなくて困っているという現状があります。どうしても先生たちは、学校側は、簡単に、作業所はどうかとか、デイサービスに行ったらどうかというような形での答えを出してしまうんですけれども、私たちの経験の幅を広げる、あるいは可能性に挑戦するということであれば、やはり普通のクラスメートと一緒に職場実習をしたり、あるいはその職場開拓をしていただいて、ちゃんとした働く前の経験を積んでいく必要があるんではないかと思っているわけです。

 そのためには、まだまだ一般企業や受け入れ側の事業主の理解というのは不可欠なわけですけれども、徐々に今労働施策の中で実習の場が広がりつつありますけれども、養護学校の生徒さんについてはかなり制度化されているんですけれども、やはりまだ通常学校の中に通っている障害児、通常学校の中に通う生徒さんについては、なかなか就職へのパイプが強くなっていっていないという現状がありますので、ここら辺も少し是正をしていただきたい点ではあります。

 以上です。

石井(郁)委員 大変貴重な、というか、重要な御提案をいただいたと思います。ぜひ、そういう御要望を受けとめて、私たちはしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

 きょうは、本当に、それぞれのお立場から貴重な御意見、どうもありがとうございました。

遠藤委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 まず、市川参考人に伺いたいんですが、きょうのお話でも、軽度の障害を持っている、発達障害のお子さんだとか、十年前と比べて大変ふえているんだというお話を聞かせていただきました。他方、梅ヶ丘病院も含めて、では、ますます医療の現場でも子供の心や発達にかかわる取り組み、もっともっと増強されなければいけないと思うんですが、これも例外なく行革の波でいろいろ大変なところだと思いますが、この分野で、今実際にそれだけお子さんたちがかつてよりふえている中で、研究ないしは治療の取り組みについて体制はどうなのかということについてお聞きしたいと思います。

市川参考人 何人ぐらいいるかというのはなかなか難しいところなんですが、現在、治療についてお話しいたしますと、関係しているのは、小児科でこの分野に非常に興味を持ってくださっている小児神経科の先生あるいはアレルギー科の先生、それから精神科の分野でこの発達障害の部分を扱っている子供の精神科というものでございます。専ら専門に扱っているという医師の数は、恐らく全国でも三けたか、もうちょっと多いかぐらいだろう。ただ、ふだんはほかのことをしているけれども、そういう方も診察するという方はもっと数が多いと考えております。

 現実問題として、今回のこの特別支援教育でも、専門家チームという格好で医療の方の方もということで話はありますけれども、大都市はともかくとしまして、地域によりましては、実はその専門家のドクターが足りないというようなことも言われておりまして、この養成ということは我々は前からお願いしておりましたし、人数が限られた中でやらなきゃいけないということで、受診まで相当お待たせしなきゃいけなかったような事実もございます。

 今は実は、この委員会のあれかわかりませんけれども、厚生労働省の方の母子保健課の方で、子供の心の問題を専ら専門にする医師の養成を早めようということで、現在、検討会が進んでおりまして、中間報告が三月の時点で出ていると思います。この中では、そういうドクターを三つの段階に分けて養成していくということで、まず小児科と精神科の中で、その分野に興味を持つドクターをふやすというかレベルアップを図るということ。それからもう少し定期的に、規則的にといった方がいいんでしょうか、そういう方を診察するドクターをふやす。それからもう一つ、専門的に診られるドクターをふやすという三つの段階で今は行っておりますので、今すぐ答えは出ないかもしれませんけれども、今後、少し長いスパンで見れば確実にふえていくだろうというふうに思っておりますが。

保坂(展)委員 ありがとうございました。

 続いて、上野参考人に伺いたいと思います。

 この法案の審議でも、世の中全体がインクルージョンの世界的な趨勢にあって、分離ではなく統合、なるべく一緒に教育を受けていく。教室も、なるべく一緒にいられる時間は一緒にいるようにする。例えば、今、特殊学級に籍を置いてという形で、これが制度が変わりますけれども、普通学級にむしろ籍を置いて、必要のあるときに出かけていくみたいな形がいいのではないかという文科省とのやりとりをしているんですが、なかなか文科省の方は、学級として現在ありますのでというところにとどまってはいるんですけれども、先生のお考えで、特別支援教室へ移行していく、これはどういうふうに実現していくといいのか、そのイメージについてもう少しお話しいただけないでしょうか。

上野参考人 私の資料の中に図がございます。これは、中教審の答申の最後のところにある図の一部でございますけれども、結局、特殊学級というところで、知的なお子さんたちはそこを中心にというのがこれまでの考えでした。

 ただ、今回、制度上、特殊学級にたとえ籍を置いたとしても、通常の学級にほとんどの時間いながら必要に応じて通うというような、交流するという形での知的障害の方に対する交流及び共同学習の促進ということを一つ掲げたわけですね。これと、それからもう一つは、これまでの言語や情緒の一部のお子さんたち、それから新たにLD、ADHD等に関しましての通級による指導教室という、この二つの形態を次の段階、まあこれからですけれども、そういったことをやるという次の段階へ入ったわけですよね。

 ただ、本当のことを言いますと、これもやはり二重構造でして、そういうふうにいっても、軽度のお子さんたちが、ほとんどの時間、通常学級に籍を置くといいながらも特殊学級に籍を置くという形で、これを利用できるかどうかというところが大きなかぎになるのではないか。

 そういうふうに考えますと、やはり最終段階の、すべての子供さんは、小中学校において一つの通常学級に籍を置きながら、必要に応じてそれこそ一時間から二十数時間までいろいろなサービスを、子供にとって必要なサービスを受けられるような形、これが非常に子供にとってはよいのではないかというふうに考えるわけです。

 ただ、これまでも特殊学級という形でやってきた歴史がありますので、そこのところを丁寧に移行していかなきゃいけないということは確かですし、また、ここで先ほど、親御さん、保護者の意思の尊重ということはありましたけれども、明らかにこれは、子供さんの将来を見ていて、今この子にこういうような社会自立の力をつけた方がいいなと思う例でも、親御さんの方は結構だと。通常の学級で、例えば、一つの教科書で、一人の先生で、みんなと一緒にということで望まれる場合があります。そのお気持ちの出てくる背景というのは私たちは十分理解しなきゃいけないんだけれども、でも、そういうふうなことで、逆に言えば、子供さんのある種の教育権は奪われていく姿も少なからず見るわけで、そういうときにもっとお互いにわかり合って利用しやすい特別支援のあり方というのはあるのではないか。

 そういう意味で、私は、現行は現行として、一気に変えていくということの中で子供が犠牲になってはいけませんので、丁寧に考えながら、なるべく早く最後の特別支援教室の構想の実現へというところへ向かうこと、これが恐らく我が国におけるインクルーシブな教育のまた一つの形ではないか、そんなふうに思います。

保坂(展)委員 続いて、姜参考人に伺います。

 先ほどの御発言でも、インクルージョンの趨勢そしてサラマンカ宣言の一部を紹介していただきましたけれども、大変はっきりした宣言で、各国政府にこれを求めていて、非常に大きなエポックというか、この宣言というのは非常に貴重なものだというふうに私は思います。

 ただ、実際、姜参考人の経験あるいは障害を持っているお子さんやその親御さんなどの経験で、この宣言が、例えば自治体の窓口や、あるいは学校や、教育委員会や、実際に障害をお持ちのお子さんが教育にアクセスするというときに、では、頭に入っているかどうか、どのくらい浸透しているんだろうかというところが問題だろうと思います。

 その点についてお感じになっていることを述べていただけないかと思います。

姜参考人 私自身の経験はまだ狭くて、大阪という地域に限られたりしていますけれども、現状、インクルーシブ教育というものについて、理念的には、言葉のいかんにかかわらず広がっている部分があると思います。ただ、それが制度的に、あるいは、学校に入る子供たちの側、親御さんとの間でちゃんとしたリンクをとって一緒に進めていこうという状況にあるかといえば、まだまだないのではないかなというふうに思うわけです。

 例えば、先ほど来出ている特別支援教室をめぐっての問題ですけれども、今引き続き、この学校教育法の改正案では学級という形で残ると言われておりますけれども、現状、大阪でもどのような事例が出ているかといいますと、学校が生徒の管理をしやすいように、一日何時間は特殊学級に入ってください、来てください、そうしないと、人手が足りなくて大変なんですよというような形で、暗にあるいは直接に親御さんにそのことを申し出てしまう学校の管理者がいるわけですね。

 ということは、私たちがきょう述べさせていただいた中で言われている本人のためあるいは保護者の意思、そういったものではなくて、学校側の管理の都合で子供たちが行き先を決められてしまう、あるいは行くことを求められてしまうという状況はなかなか改まらないのではないか、有効な手段を別に求めないといけないのではないかということがあると思います。

 ですから、この教室への移行ということも、やはり私としては、具体的に筋道をつけていってほしいことでもありますし、子供たちに、先生方の都合や学校の都合ではなくて、本人がどこでの学びを求めるのかということを前提にした支援のあり方をぜひとも考えていっていただけるような内容であってほしいと思っています。

保坂(展)委員 もう一問、姜さんにお聞きしたいんですが。

 普通学校でぜひ学びたいという、障害をお持ちの子供さんたちの声、当事者の声は、ずっと長いこと、長い道のりをかけて歩んできたと思うんですね。今ここに資料でいただいたいろいろな声の中にも、まだまだ苦労されている、壁があるという感じもするんですけれども、ここ十年とか十五年とか長いスパンで見ると、やはりこれは統合教育に向けて一つの流れはきちっとできているというふうにお感じでしょうか。

姜参考人 社会全体の流れからいうと、そういう方向に確かにあるのではないかと私は思います。ただ、それが円滑にあるいはうまくかみ合って進んでいっているのかといえば、決してそうではなくて、現場現場あるいは学校学校では親御さんが苦労を強いられたりしているわけですね。そういった中でいえば、まだまだ、理念もそうですけれども、内容を伴った支援策というものを具体化していかないと、大勢的には大きく変わらないのではないかなという気持ちがあります。

 ですから、まず、原則をどこに置くのか、やはり私たちは地域で生きることが中心になるわけですから、地域での受け入れということを原則としていただいた上で、特別な支援をどう、一人一人の子供たちを大切にする支援をつくっていけるのかということを考えていっていただきたい、そういうふうに思っています。

保坂(展)委員 続いて、高原参考人に伺いますが、当事者の親として、やはりいろいろな形で苦労されていらっしゃると思います。その声を上げるといっても、ふだん、声を上げるというようなことで、大勢の人に対して、子供の学ぶ権利、それをしっかり保障してもらうために、時として、学校あるいは周りの父母たちにも聞いてもらわなきゃいけないときもあるかと思いますね。

 この制度、この問題の中で、統合教育、一緒にいるということの楽しさと意味と、また個別に支援を受けていく、その部分の大切さと両方あると思うんですけれども、そういった親たちの声を、我々国会もそうですけれども、きちっと聞き込んでいくというか、意見をしっかり述べていただき、また、それがきちっと反映されるということが必要だと思うんですが、その点についてお感じになっていることを率直に述べていただきたいと思います。

高原参考人 私も、今まで何度となく、行政サイド、最初は市教委から始まり県教委、そういった場にお願いというか、まあ、陳情ですね、時には議員さんも、お願いをして、上がっていく。その中では、確かにその必要性はあります、ただ現状の中でどうにもならないんですと、実際のところ予算的なものとか、そういったものが必ず返ってきてしまうんですね。

 それと、あと、実際の学校現場でも、やはり今は、この発達障害に関して言うと、保護者の方、非常に知識をお持ちの方が非常に多いんです。下手をすると先生以上に知識はお持ちなんですね。それを、学校と家庭というのは役割は違うと思います。学校というのはあくまでも集団の場ですし、家庭というのは個の場ですから、そこを多分わきまえていないというか、わからない状態で、こういうことが何で先生はできないのかというような話の持っていき方をしてしまうと、逆にそこでマイナスの結果に行ってしまうと思います。

 そうではなくて、お互いの立場を理解するような発言の仕方をしていくですとか、それと同時に、やはり私は今まで、まず、こういう場で審議されてこなかった、これは十年間の中で、今日本という国の中でやっとこの発達障害というものを考えられるようになってきた時期だと思います。だから、これですぐ変わるとは思いませんが、ぜひ、こういう場ですとかいろいろ、皆さん議員さんですから、地元のそういう保護者の方、こういった方々の声というのをつぶさにまず拾っていただきたいと思います。

 そして、まず、保護者のサイドとしては、私、これは保護者の立場で思うんですけれども、やはりそこも保護者はきちんと学ぶ必要があると思います。ただ単に発達障害の知識だけではなくて、全体的な物の見方ですとかとらえ方ですとか、そういったものも含めて、あわせて話を持っていける、そこで対等に、行政の立場の方ですとか、もちろん学校の先生方ですとか、きちんとそういった方々と話の場があれば、もう少しスムーズに流れるかなと。

 お互いに話に行くまでに壁ができてしまっているとか、当然何か、よく行政の方なんかは、保護者が来ると、また苦情を言いに来たかと。そういうような対応が多いんですね。まあまあ適当に聞いておけばいいかと。中には、要望書だけもらって、はい、わかりましたと。それで門前払いじゃないんですけれども、そういったこともあります。

 ですから、やはりお互いに意見を述べられる場というのはもっともっと広げていく必要もあると思います。それをもっともっと、地元というか地域でできたらいいと思っております。

保坂(展)委員 ありがとうございました。

 地域でそういう声を聞くとともに、これは大きな流れというわけで、制度が看板のかけかえであってはならないという言葉、非常に受けとめて、しっかりした制度になるように我々も努力をしていきたいと思います。ありがとうございました。

遠藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十分開議

遠藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君及び初等中等教育局長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

遠藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

遠藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村明宏君。

西村(明)委員 自民党の西村明宏でございます。

 学校教育法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。

 障害のある子供については、より早い時期での対応が重要であります。これまでも、盲学校や聾学校におきまして、ゼロ歳児を含めて教育相談といった形で就学前の指導や支援が行われてきたものと承知しております。

 今回の法案で特に重視されておりますLDやADHDの子供については、各地域の学校で、学校サポーターや支援員など外部の協力も得ながら支援が行われてきているところであります。私の妹も支援員として、アスペルガー症候群など、こうした子供たちのサポートをした経験がございます。話を聞きますと、就学する前から子供たちの状況を把握して適切な支援やプログラムを実施するということは有意義であるというふうに申しておりました。

 発達障害者支援法にも規定されているように、LDやADHDの子供に対する早期発見、そして早期支援は極めて重要であると考えますが、まず、取り組みの状況についてお伺いいたします。

馳副大臣 発達障害者支援法第三条においても、国や地方公共団体の責務として、早期発見また早期支援の重要性がうたわれ、責務としてとらえられているところでありまして、現状を報告いたします。

 すべての都道府県に委嘱して実施している特別支援教育体制推進事業において、昨年度より幼稚園を、また本年度からは保育所も対象に含めて、発達障害児に対する乳幼児期からの支援体制の整備を図っております。また、校内委員会と専門家チーム、巡回相談員との連携による継続的な相談を行うとともに、早期発見、早期支援体制づくりを行っているところであります。

 さらに、独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、小中学校や養護学校等における手引書や事例集の作成などに取り組んできているとともに、今後、発達障害のある子供の早期からの総合的な支援に関する研究を行うこととしております。この分野においても、厚生労働省と連携し、各学校において必要な支援体制の整備を図ってまいりたいと考えております。

西村(明)委員 今、御答弁いただきましたように、早期発見、早期支援の重要性ということを考えますと、この分野の専門家である小児精神科医をしっかりと確保することが重要であると思います。今、馳副大臣からも、厚生省との連携という話がございましたけれども、小児精神科医が不足していて大きな課題となっているこの現状を十分認識していただいた上で、厚生労働省としっかりと協力をして小児精神科医の確保に努めていただきたいと強く要望いたしておきたいと思います。

 障害のある幼児の幼稚園の受け入れについてお伺いいたします。

 私立幼稚園での障害児の受け入れについて、国としても特別助成を行うなどの措置を講じているということは承知しておりますけれども、私立幼稚園の中には、保育士の人数でありますとか施設の状況でありますとか、そういった諸事情によって受け入れが十分に進んでいないということも耳にいたします。

 障害のある幼児の幼稚園の受け入れ状況は、現在どのようになっているんでしょうか。そして、今後、積極的な受け入れを検討すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

馳副大臣 国公立の幼稚園においては、国公立幼稚園長会の調査で、約三千九百名の障害のある幼児が在籍しているものと承知しておりまして、私立の幼稚園においては、私学助成による補助の執行を通じ把握しているところでは、約八千三百名の障害を有する幼児が在籍しているものと承知をいたしております。

 幼稚園における障害のある幼児の受け入れについては、平成十五年度から、幼稚園における障害のある幼児の受け入れや指導に関する調査研究を実施しており、教育課程や指導計画の工夫、指導体制の整備や教員の専門性向上、家庭、地域や専門機関との連携について実践的な調査研究を行っているところであります。

 文部科学省としては、今後とも、厚生労働省と連携を図り、これまでの幼稚園における障害のある幼児の支援体制整備の取り組みや調査研究の成果も踏まえつつ、また特別支援学校のセンター的機能も活用しながら、就学前の障害のある幼児に対する積極的な取り組みに努めてまいりたいと考えております。

西村(明)委員 今後、地域において特別支援教育を推進していくためには、各学校内で完結するというだけではなく、地域の関係機関をぐっと巻き込んで、乳幼児のときから就労まで、障害のある子供に対する総合的な支援体制を整備する必要があると思います。このためには、特別支援学校が地域に開かれた存在になっていくことが重要であると思います。

 特別支援学校を地域に開いていくための取り組みとして、例えば、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正によって創設されました学校運営協議会の制度を特別支援学校でも活用することなども考えられるのではないかと思います。

 また、より積極的に特別支援学校が地域に貢献していくためには、今回の改正案に位置づけられているセンター的機能、今、副大臣の御答弁にもございましたけれども、このセンター的機能を活用して、特別支援学校が持つ高い専門性を地域の特別支援教育のために還元するということが大切であると思います。こうした取り組みを進めることによって、特別支援学校が地域に対して開かれて、そして信頼される存在になることを期待しているところでございます。

 地域において、特別支援教育の推進のために、特別支援学校のセンター的機能の活用を推進していくことに対しましての見解をお伺いしたいと思います。

馳副大臣 委員御指摘いただいたとおり、学校運営協議会という組織を設けることができるわけですから、そういったところからのアプローチというのも必要だと思っております。

 具体的なことを申し上げますと、特別支援学校のセンター的機能としては、小中学校等への支援機能、これは小中学校における研修の際の講師となることや指導方法の助言。また、保護者への支援機能、これは就学前の子供についての保護者の相談対応であります。また、地域の関係機関との連絡調整機能、これは福祉、医療、労働などの関係機関との連携協力などでありますが、こういったことを想定しております。

 御指摘のとおり、特別支援学校となってセンター的機能を発揮することが法律上明記されるわけでありますから、現場においてそれが推進される体制づくりに取り組んでいきたいと考えております。

西村(明)委員 ありがとうございます。

 平成十六年に改正されました障害者基本法の第十四条におきまして、障害者の教育に関する規定が置かれました。その中で、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習を積極的に推進することが規定されています。

 本法案の審議におきましても統合教育に関する質疑はかなりなされているところでございますけれども、交流及び共同学習も重要な取り組みの一つであるというふうに考えます。文部科学省として、この取り組みの状況についてもお伺いいたします。

馳副大臣 具体的には、例えば、学芸会や運動会等の学校行事、各教科等の学習、クラブ活動、給食や清掃の時間における交流等学校行事への地域の人々の招待、地域で催される行事への参加等さまざまな交流活動が行われております。

 このため、文部科学省としても、指導資料の作成や国立特殊教育総合研究所における交流及び共同学習に関する講習会の実施等を通じて、その趣旨の周知を図るとともに、交流及び共同学習が積極的に進められるよう取り組みの指導に努めております。

 また、現在、改訂作業を行っている学習指導要領においても、交流及び共同学習の取り扱いを含めて検討することとしております。

 今後とも、障害のある児童生徒の状況や学校、地域の実情に応じて、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流及び共同学習の積極的な推進に取り組んでまいりたいと考えております。

西村(明)委員 三月の文部科学委員会での審議の際に、ちょうど小中学校の空き教室についての話がございました。その中で、子供たちが図書を読むスペースや、あるいはPTAの方がそういった空き教室に常駐するなどして安全対策のために活用するなどを提言させていただいたところでございます。また、あわせて、地域のお年寄りの活動にも空き教室が活用できないかというお話も申し上げました。お年寄りと子供たちとの交流、そしてお年寄りの知恵を子供たちに教えていただいて、世代間のよき伝統、文化が伝えられていく一助になればいいなというお話をさせていただいたところでございます。

 一方で、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒がともに学ぶ形態として、小中学校の空き教室を近くにあります盲学校や聾学校、または養護学校の分校や分教室という形で利用するという取り組みが進められているというふうに聞いております。こうした取り組みは、交流及び共同学習を促進するとともに、空き教室を有効に活用することができ、また、本日の参考人の方からもお話ございましたけれども、ともに学び、そしてともに生活することによって双方が大きなものを得ることができる、そういった効果的な取り組みができるというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 近年、盲・聾・養護学校に在籍をする児童生徒数の増加を背景といたしまして、一部の都道府県におきましては、分校や分教室を地域の小中学校や高等学校の余裕教室に設置するといった取り組みが進められているところでございます。こうした取り組みにつきましては、先生御指摘のように、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流及び共同学習や地域の方々との交流を進める観点から、また余裕教室の有効活用の観点から有意義な取り組みであると考えております。

 文部科学省としては、こうした取り組みを含めまして、盲・聾・養護学校と小中学校等との交流及び共同学習の推進方策について事例収集等を行い、各地方公共団体に対しまして必要な情報提供などに努めてまいりたいと考えております。

西村(明)委員 関連してお伺いします。

 学校施設というのは地域社会の中核的な施設でもあります。災害が起きたときに、その地域の皆さんがそこで避難する場所、そしてまた子供たちが一番長くいる場所として耐震化も進めていただいておりますけれども、それと同時に、障害のある子供とない子供が交流して、そして共同学習を推進していくためにも、耐震化と同時に、学校施設内のバリアフリー化、これを一層推進していただかねばならないと思いますけれども、その推進の方策についてはどのようにお考えになられて、そしてどのように今着手されているんでしょうか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたように、障害のある児童生徒等が小中学校等において支障なく交流及び共同学習などが行うことができるようにするという観点からも、学校施設のバリアフリー化の推進は極めて重要であると認識しております。

 このため、文部科学省では、従来から、学校施設のバリアフリー化のための国庫補助をまず行ってきているところでありますし、また、平成十四年にいわゆるハートビル法が改正されまして、学校施設が新たにバリアフリー化の努力義務の対象となった、こういったことなども踏まえまして、バリアフリー化を推進するための指針を策定し、各学校の設置者に対しまして、所管する学校施設に係る合理的な整備計画を策定するように指導しておりますし、それとともに事例集を作成し、周知をしてきたというところでございます。

 文部科学省といたしましては、バリアフリー化に関する整備計画の作成状況を把握するなど適切なフォローアップを行うとともに、引き続きバリアフリー化の取り組みを積極的に支援してまいりたいと存じます。

西村(明)委員 障害のあるお子様の教育を充実させるためには、本日参考人でおいでいただいた障害児教育に関するNPOの皆様や地域のボランティア、そういった皆様としっかりとした連携協力を行うことも非常に効果的だとは思いますけれども、それについてはいかがお考えでしょうか。

馳副大臣 極めて重要だと考えております。

 私の身近な例をちょっと紹介いたしますが、石川県金沢市でも、あの発達障害者支援法ができた後、これまでも活動してこられた保護者の会、アスペの会、エルデの会、パルの会等、派閥なのかどうかよくわからないんですけれども、それぞれの団体がNPO的な活動をしておられるわけですね。当然、西村委員おっしゃるように、専門的な役割をする方々との連携協力も必要ですし、これらも今、文部科学省としても、先行的な事例集をつくったり、事業として取り組んでいくように努力していますけれども、こういった保護者の会の皆さん方に協力していただくことも必要だと思っています。

 なぜかというと、教育を考えると、保護者が安定的な心の状態でお子さんを学校に預けていただかないと、保護者が十分な情報を知らない、どう対応していいかわからない、ほかのお子さんやほかの保護者との対応の中で、疎外感を感じた状況の中ではやはり子供の教育にとってもよくないということを考えると、ぜひこういった保護者団体の方々も入っていただいて、専門的な知見も積み重ねてもらい、また、新たにうちの子はどうだろうかといって相談に来られたときの相談相手にもなっていただければ、そういう障害をお持ちの子供のお母さん方が、それぞれの家庭で抱えている悩みというものも打ち明けることができて、安心してお子さんを教育機関にゆだねるということにもつながるわけでありますから、委員御指摘のように、NPO団体また保護者会との連携協力といったものは今後とも進めていきたいと思っています。

西村(明)委員 今回の改正法は、障害のある児童生徒の教育について、中央教育審議会の答申で示されていますように、障害の種類や程度に応じて盲・聾・養護学校や特殊学級といった特別な場で指導を行うことによって、手厚くきめ細かい教育を行うことに重点を置く特殊教育という考え方を大きく転換し、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援するという視点に立ち、子供たち一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善、克服するための適切な指導と必要な支援を行う特別支援教育に改めることを基本的な考え方としております。

 こうした考え方の転換は制度改正のみで可能となるわけでは当然ございません。学校教育関係者や今お話のあった保護者の皆さんはもとより、国民に対して広くこの特別支援教育の理念が普及し、そして啓発を行うということが重要であり必要であると思いますけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、今回の法改正は、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導と必要な支援を行う特別支援教育の考え方に立っているものでございます。そのために、特別支援学校の創設や小中学校における特別支援教育の推進等を図ることといたしております。障害のある児童生徒に対する教育が充実をし、障害のある児童生徒が社会の一員として主体的な生活を営むことができるようにしていくためには、社会一般の障害のある子供とその教育に対する正しい理解と認識が不可欠であると考えております。

 文部科学省といたしましては、法改正を機に特別支援教育普及啓発事業を拡充、充実いたしまして、保護者、教育関係者等を幅広く対象とした特別支援教育全国フォーラムの開催を初めといたしまして、啓発冊子の作成を行うとともに、交流及び共同学習指導資料の作成、配付、国立特殊教育総合研究所からのホームページを通じての情報提供等、多様な啓発活動を計画しているところでございます。

 今後とも、障害のある児童生徒に対する特別支援教育に関しまして、理解、啓発を積極的に推進してまいりたいと考えております。

西村(明)委員 この特別支援教育は、障害のある児童生徒の自立と社会参加のために、一人一人の教育ニーズに対応した支援を行うということであります。私の身の回りでも、障害のお子様を持たれた皆様、たくさんいらっしゃいます。こうした障害のある子供さんを持たれた保護者の方が最も気にかけておられるのは、子供が将来自立、自活していけるだろうかという心配であります。

 例えば、一人息子、一人娘の方が障害を持たれている。そうすると、自分たちが元気なうちは面倒を見られるけれども、もし自分たちがいなくなったらこの子はどうなるんだろう、そういった心配をされておられます。

 つい先日も私の地元で、ある社長さんの御長男が病気で亡くなりました。そのときに、息子が亡くなったことを非常に悲しんでいると同時に、もう一つ心配していることがございました。それは、弟さんがやはり重度の障害児であり、長男がいたら、自分たちがもし順番でいなくなっても、兄貴だから弟の面倒を見てくれるだろうと思っていた。それが、健康な兄貴が先に行っちゃった。この弟の将来を考えると本当に心配だということで、悩んでおられました。

 親としては当然、その子供が一般就労できるようになれば一番ありがたい。そうでなくても、授産施設で一生懸命勤労して、そして生活できるような状態、そして重度の方は、国として、また地方自治体としてしっかりとそれを支えていく、そういったセーフティーネットが準備されていれば、親のそういった心配も払拭されるのではないかと思います。

 そうした中で、一つ一般就労の問題がございます。今のこうした学校を卒業した後の一般就労は、二割程度だというふうに聞いております。この就労率を高めていくためには、もちろん本人の資質や能力、技術を向上させていく、こういった取り組みが重要であります。そして、それと同時に就労の場所の拡大、これが必要であると思います。このためには、文部科学省としても、労働機関などとも連携した取り組みが重要ではないかと思うところでございます。

 こうした取り組みについての現状、そしてお考えをお伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま、障害を持つ子の親の気持ちにつきまして、先生からるるお話がございました。私も全くそのように感ずる次第でございます。障害のある児童生徒の職業的な自立を促進する、そのための職業教育、進路指導というものは、やはり盲・聾・養護学校の教育において大変重要な課題であるというふうに思っております。

 まず教育内容について申し上げますと、現行の盲・聾・養護学校の学習指導要領におきまして、例えば産業界との連携を図った就業体験の機会の拡充ということを今行うようにいたしております。それから、第三次産業に対応した専門科目、流通サービスを新設するなどの改善を図ってきているところでございます。また、進路指導につきましては、文部科学省と厚生労働省が連携をいたしまして、各都道府県に特別支援連携協議会というものを設けていただいております。これは、地域の労働関係機関や企業等との連携のもとに、養護学校等の卒業後の受け入れ体制について連携した取り組みを進めていただいているものでございます。

 特に今後は、一人一人の子供について在学中から卒業後までをにらんだ個別の教育支援計画の策定ということが必要になっておりますので、こういう観点からも、労働関係機関、医療、福祉関係機関との連携を一層強めていきたいというふうに考えているところでございます。

西村(明)委員 障害を持って生まれたお子様は、きょうのある新聞のコラムではございませんけれども、昔は随分いじめに遭ったり、そうしたつらい目に遭ってきた。しかし、障害を持っているということが、あすへの生きる希望、本人も努力していただく、そして周りもその努力する姿でともに勇気と元気をもらって歩んでいこう、これが今の世の中の皆さんの考え方じゃないかと思います。そのためにも、ぜひとも文部科学省を挙げて御支援を賜りたいと思うところでございます。

 特別支援教育の推進に当たって、LDやADHDの児童生徒が新たに対象となることや、特別支援学校がセンター的機能を発揮することが努力義務として規定されるということを踏まえれば、当然それに応じた条件整備が必要となります。特別支援教育をより推進していくためには、財政的な支援を含めたさまざまな施策が必要であると思います。

 最後に、熱心に御答弁いただいた馳副大臣と、そして大臣に、この特別支援教育推進への決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

馳副大臣 今回の法改正、皆さん方に御理解いただいてこの法案を通していただければ、特別支援教育に向けての理念とか、しなければならないことが整備されるわけですから、我々とすればこれを根拠にして、次の段階である条件整備、これは教職員の資質の向上であったり、人的配置であったり、また地域の皆さん方との連携であったり、こういったことに取り組んでいかなければいけないのは当然の話でありますので、また委員初め先生方の御理解をいただきながら進めていきたいと考えております。

小坂国務大臣 西村委員には熱心に特別支援教育についてお取り組みをいただいておりますが、私ども文部科学省といたしましても、そういった皆さんの声にお答えをするために、平成十八年度の特別支援教育に係る教職員配置におきましては、今日的な教育課題への対応のために、LD、ADHDへの対応として二百八十二人の定数改善を行ったわけでございます。この際、第八次定員計画を策定はしなかったわけでございますけれども、しかし、現場での対応が十分に可能になるように、こういった少数教育及び特別支援教育のための定員改善を行いました。この点については財務省との合意もできたわけでございます。

 今後どうするかということになりますと、十九年度以降の予算編成の過程でこれは交渉をしていくことになります。そういった中で、今後とも教職員の定員については、今御指摘がありましたような事情を踏まえましてしっかり取り組んでまいりたい、このように考えております。

西村(明)委員 ありがとうございました。

遠藤委員長 伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 自由民主党の伊藤忠彦でございます。私からも、学校教育法等の一部を改正する法律案につきまして、しばらく質問をさせていただきたいと存じます。

 平成十五年の三月から準備に次ぐ準備を重ねてまいりまして、いよいよこの法律案を可決させていただきますと、十九年四月一日から実施の予定となっております特別支援学校制度につきまして、その理念というのは、障害を持っている子供たちといえども、子供のそれぞれの教育ニーズに応じた教育を施してあげたいということが大事な理念だというふうに理解をいたしておりますし、そのことについては大変崇高な理念だというふうに理解をいたしておりますが、いよいよその本格実施に向けた準備はどんな状況だろうかということをいろいろと関係の方に聞いておりますと、まだまだ不十分なところがあるのではないかというふうに見ております。

 私どものおります愛知県の、しかも選挙区内にございます養護学校の校長先生、いろいろな機会にお目にかかります。お目にかかると、養護学校の現場の先生、校長先生、どっちが校長先生かわからないぐらい本当に一生懸命やっておられます。本当に頭の下がる思いでございます。

 その先生が、現時点での指導体制においても、もう限界でありますと。ましていわんや、実は、センター的機能と申しますけれども、別段新たにセンター的機能と言われなくても、この養護学校の周りにございます、小学校低学年のLDやADHDの子供たちの相談は、随時行って話を聞いているぐらいでございます。そして自分の学校の子供たちも、いろいろな意味で教育に大変に手間をかけてやっております。

 例えば、聾学校の子供たちの七割は知的障害でありますという資料がございましょうし、また、盲学校の子供たちも七割は知的障害だというふうに出ております。知的障害の子供たちがほとんどいる養護学校に、例えばこうした聾学校、盲学校の子供たちもやってくる。そしてそれぞれ授業をしていく。まさか同じクラスで授業をしていくような状況になるとは思いませんけれども、しかし、教科書も違えば教え方も違う。ましていわんや、教員として単位を取得してやっていけばいいんだよといいながらも、この二つを一緒に取るなんということも大変なことじゃないかなというふうに、現場の先生方は今の状況の中から言っているわけであります。

 愛知県の教育委員会あるいは教育長の皆さんとも話をしておりますけれども、来年の四月一日から本当にすぐにこの枠組みを変更していけるかなということで、大変不安を覚えている言葉も実際に聞いております。

 これらは、一体どうしてこういうことがみんなの気持ちの中に去来するかといえば、先ほど西村先生から大臣に御質問をいただき、大臣からも力強い御答弁がございましたけれども、やはり第八次定数改善計画の見送り、加配をして教育基盤の拡充をしていくというところがなかなか認められなかったというところに大きな原因があるようであります。

 ぜひ、そうした教育基盤をしっかりしておかなきゃいけない。ルールをつくって、ルールができたから、ようやくこれできちっと予算折衝ができるような段階に入ってやっていくわけですから、十九年四月一日という日付自体も、恐らく後で御答弁いただきたいとは思いますが、柔軟に考えながら、崇高な目的に向けて早く到達ができるようにしていくために、私は、これから質問を幾つかさせていただきたいと存じます。

 まず、文部科学省といたしましては、特別支援学校制度の必要性そのものについては、都道府県等設置者に十分説明をしておられると思いますが、その設置者である都道府県の人たちは、今度は市町村の皆さんにもお話をしております。市町村の人たちとの会話の中には、本当に不安に次ぐ不安がいろいろ上がってきているんですけれども、こうした言葉を十分キャッチして、またコミュニケーションをするような、そうしたたび重なるコミュニケーションをして現時点に来ておられるんでしょうか。その辺の御認識と申しましょうか、現場の状況をまず教えていただきたいと存じます。

銭谷政府参考人 ただいま伊藤先生からいろいろお話がございましたように、この特別支援学校制度の構想につきましては、長い期間をかけて文部科学省として検討してきたものでございます。特に中央教育審議会においてずっと御審議をいただいてきたわけでございますけれども、その過程で、教育委員会の関係者からヒアリングを行ったり、あるいは校長先生からいろいろお話を伺ったりすると同時に、答申が出された以降も、答申の内容につきまして、教育長会議、校長会等を通じまして、都道府県教育委員会等に対しまして説明を行ってきたところでございます。

 今回の特別支援学校では、障害の重複化に対応した体制をとりたいというようなこととか、地域の特別支援教育のセンター的機能を担うこととか、いずれにいたしましても、一人一人の教育的ニーズに対応した特別支援教育の推進を図ろうということが大きなねらいでございますので、この点につきましては繰り返し御説明を申し上げ、また同時に、各県の今後の状況につきましても、いろいろお話を伺って、それぞれの県の実情に応じた取り組みということを御一緒に考えさせていただいているという状況でございます。

 今後とも、私どもといたしましては、この法案の内容、それから、成立後、特別支援学校の創設に向けての各県との緊密な連絡ということを心がけてまいりたいと考えております。

伊藤(忠)委員 ただいま御答弁いただきましたけれども、恐らく都道府県でばらつきがあるのは当たり前だと思います。例えば、後ほどお話ししますけれども、私ども愛知県でございますとかあるいは大阪府なんというところは、人口比の中で考えますと、養護学校の数が少のうございます。特に、愛知県なんかは、実は平均児童生徒数、学級数は全国平均で比べると二倍以上なんであります。二倍以上、一〇〇%を超えちゃっているんですね。

 そういうところでございますので、そこへ新たな機能を設けて、新たなということになりますと、私どもの教育長が悲鳴を上げると言っては恐縮ですけれども、大変だなという気持ちになるのも僕はうなずけるなという気がいたします。そうしたばらつきのあるそれぞれの都道府県についても、本省と一緒にしっかりフォローアップをやっていただいて、何とかこの崇高な目的に向けて一歩ずつ着実に進めていただけるように、繰り返しお願いをしておきたいと思います。

 そこで、文部科学省としては、十九年四月以降、都道府県等の設置者に対して、特別支援学校がより多くの障害種の教育を実施することができるようにするためにどのような指導を具体的に行っていかれるのか、ここのところをお聞かせいただければと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、都道府県によりまして、盲・聾・養護学校の設置の状況というのが必ずしも全く同じような状態ではないわけでございます。今お話にございましたように、例えばでございますが、愛知県の場合は、比較的大規模校が特に養護学校には多いという実情がございます。そういう中で生徒数の増ということがございまして、今、愛知県におかれましても、養護学校の新設あるいは分校の設置といったようなことに取り組んでいただいている、特に知的障害の養護学校にそういうことで今取り組んでおられるということを私ども承知いたしております。

 今回の法改正に基づきます特別支援学校は、基本的には、児童生徒の障害の重複化に適切に対応することができるように、盲・聾・養護学校を障害種別を超えた特別支援学校に転換することとしておりますけれども、設置者の判断によりまして、地域のニーズに応じて学校を配置していくということが基本的なあり方になろうかと思っております。

 この点につきましては、今回の法案の基となりました中央教育審議会の答申におきましても、いかなる形態の特別支援学校をどのように配置していくかについては、都道府県等において、地理的な状況や障害種別ごとの教育的ニーズの状況など、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かい検討に基づいて判断されることになる、その際、障害のある幼児児童生徒ができる限り地域の身近な場で教育を受けられるようにするといった視点も考慮されるべきであるということを言っておりますので、私どもとしても、各県に対しましては、特別支援学校の理念を踏まえつつ、それぞれの地域の実情に応じた学校の配置というものをお考えいただく、かつ、そのことが、障害を持つ児童生徒の教育にとってより身近な場で、また障害種別ごとの専門性に留意した教育が行われて、一人一人の教育ニーズに応じた教育となりますように、県の方ともよく御相談をしたり、また必要な支援を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

伊藤(忠)委員 そこで、次に具体的な中身になってくるわけでございますけれども、例えば、盲学校に知的障害を持った子供たちが入ってくるとか、あるいは養護学校に盲学校や聾学校に通っている子供たちが入ってくる、それぞれの建っている地域が別々でございますので、本当に地域に近いところ、自分の住んでいるところに近いところに通っていこうという形になれば、インディペンデントにそれぞれの学校が建っているものが三つ四つの機能を全部持ち合わせていくことが最終的には望ましいのかもしれませんけれども、先ほど冒頭に申し上げた私の地元の半田にあります養護学校の校長先生が赴任してきて初めて見た姿というのは、聾学校に通うべき子供たちや盲学校に通うべき子供たちと知的障害の皆さんが一緒になって運動会をやった、ところが、これが運動会にならなかったそうです。運動会という形で子供たちに教育的な指導をしていきたいと思っていたけれども、とてもそういうところに至らないような状況だった。それはなぜかというと、やはり教えるべき中身がそれぞれ違うものですから、先ほど局長のおっしゃった、きめの細かい教育というのなら、実は一緒にしてしまうと難しいこともいろいろ起こるのではないかというふうに、私の養護学校の校長先生との会話の中では想像されるわけであります。

 したがって、こうした三つの学校が、もし一緒にあわせ持って教育する拠点としてやっていく場合に、どうしたカリキュラムをどんなふうに子供たちに教えていくのか、具体的に、少し詳しくお話をしていただけるとありがたいと思います。

銭谷政府参考人 特別支援学校制度の発足によりまして、例えばこれまで、これは例えばの話でございますけれども、盲学校としてあった学校に知的障害の子供さんを受け入れるコースができて、そういう盲学校プラス知的障害の特別支援学校になるといったようなケースもこれは考えられるわけでございます。

 そうなった場合に、問題は、今先生がおっしゃいましたように、各学校における実際の指導をどうするのかということでございますが、まず各学校における学級の編制でございますけれども、これは障害種別に行うことといたしまして、その旨、関係省令に規定することを予定いたしております。ですから、いわゆる視覚障害の子供さんは視覚障害の子供さんとしての学級編制、それから知的障害のお子さんは知的障害の学級編制ということで授業を受けるということになります。さらに、両方の障害が重複をしている重複障害というお子さんがいる場合には、また重複障害の学級ということで編制をして授業を受けるということになります。したがいまして、例えばこの学級編制を踏まえますと、標準法によりまして、一学級の児童生徒の基準は六人ということになりますし、重複学級の場合は三人を標準として学級編制がなされることになる。

 そして、それぞれの指導に当たりましては、視覚障害あるいは知的障害の子供さんに応じたカリキュラムの編成ということで教育が行われる。ただ、特別支援学校として、一つの学校体としての全体的な活動はもちろんあるでしょうけれども、基本的な指導としては、障害種別ごとに教職員定数が算定をされ、学級を中心とした指導が行われるということになるわけでございます。

伊藤(忠)委員 今、学校教育の中身につきましてもるるお話をいただきましたけれども、つまるところはマンパワーの整備というのが非常に大事なんだなということを改めてこの委員会の場で明らかにしていただいたんだというふうに思っております。

 それから、もう一つ。

 私、今回、この質問をして、いろいろなところで話を聞いていて、とにかく基盤のマンパワーと、それから、愛知県は先ほど申し上げたとおり二倍なんですね、一つの学校で。これは、私、昨年の一月、二月は県会議員をいたしておりまして、県議会で安城の選出の県会議員さんがこの現状を全部吐露いたしまして、どうですかね、これはという話で、実は、施設の整備の方も一刻も早くお願いを申し上げたいということなんであります。

 実は施設整備ということになりますと、新しく建ててほしいというようなことがあちこちから希望も出るんでしょうけれども、私どもから考えますと、今の国の財政ですとか裏負担をする県の財政も考えると、なるべくお金を使わないで早く対応できるようにしたい、この二つは物すごく大事な問題だというふうに思っております。

 愛知県なんかでも、ほかの都道府県でもそうでしょうけれども、子供の数が減ったということで、例えば高校の再編でございますとか、いろいろやっております。先ほど来お話が出ているとおりの空き教室でございます。この空き教室を使って、あるいは空き学校を使ってやる手法でございますとか、あるいは、もうこんなことを言うとひっくり返っちゃうかもしれませんが、設置者管理主義というものが大事なポイントだとは思いますけれども、例えば設置者管理主義でやっていくというところをちょっと度外視して、民設で官営でやってロングレンジで設備を使わせてもらって拡充をしていくとか、何かとにかく安くて早く、この子供たちがもっと教育を受けるによい環境づくりができるような努力というのをどのように進めていっていただけるか、ちょっとお伺いをさせていただければありがたいと思います。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今いろいろ施設の整備に関して御指摘ございました。これまで盲・聾・養護学校の施設の整備に係る経費につきましては、従来は各設置者の要望に沿う形で必要な国庫補助を行う、こういうことでやってきたわけでございますが、確かにいろいろ整備のおくれているようなところがあちこち見られるところはございます。

 そういう中で、今幾つかの御提案がございました。一つは、いわゆる統廃合されたときの廃校となった施設をうまく活用してはどうか。私ども、それはまさしく一つの有効な方法ではないかというふうに見ているわけでありまして、あるいはもう既に御承知かもわかりませんが、統廃合、廃校等の一層の有効活用を促進するということから、これまで国庫納付金を不要とする範囲を拡大する、あるいは手続を簡素化する、こういった取り組みを既に行っているところでございまして、若干要件がございまして、一つは同一の地方公共団体における転用であること、あるいは国庫補助事業完了後十年経過、そして無償による処分、こういったことの若干の条件はありますが、これだけクリアすると国庫納付金不要で、文部科学省へ報告だけ、これをしていただければ手続を済ませる、こういったことで廃校施設を知的障害の養護学校として、例えば転用する、こういった工夫もあり得るんだろうというふうに見ているところでございます。

 こういった場合で、今度は廃校した学校について転用する際に改修等必要になる、これについては国庫補助を行うことはできるというふうになっておりますので、こういったことも一つの方法ではないかというふうに考えています。

 また、後段、先生お話しになられた方法は、あるいはずばり当たっているかどうかわかりませんが、一つはPFIといった方法に近いのではないかなというふうに受けとめているわけですが、最近、公立学校整備におけるPFI手法の導入、こういったものにつきましても、やはりそういう地方財政が非常に厳しいという折から、コストの縮減あるいは維持管理等のサービス向上を図る、こういった観点から多くの自治体が高い関心を寄せているという状況がございます。

 文部科学省といたしましても、このようなPFIによる公立学校整備の場合でありましても、都道府県等の学校設置者から申請がありましたら、審査の上、適切なものと認められれば、国として必要な財政支援をしっかりとやっていきたいというふうに考えているところでございまして、こういったさまざまな工夫をしながら、特殊諸学校の施設整備についても必要な支援をしっかりとやってまいりたいと存じます。

伊藤(忠)委員 私ども愛知県の県下の情勢だけじゃなくて、大阪府でございますとか、全国の中でも本当にあふれんばかりの子供たちを今預かっているところにつきましては、早急に文科省の方から地方政府に対してのお声がけをいただきながら、何とか早く、そしてお互い安く、気持ちよくできるような体制づくりのために、ぜひ御指導いただきたいというふうに思います。

 ずっとお話を申し上げてきましたとおり、特別支援学校のセンター的機能というのは、今本当にマンパワーに欠けるところでございまして、これでは十九年の四月に実施をしていくにも大変苦しいんじゃないかというのが現状でございます。この現状を何とか打開していくために、何かつなぎと申しましょうか、教員をふやすということは後で伺いますけれども、ふえるという瞬間までの間のつなぎを何かお知恵を持って考えておいていただければありがたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

銭谷政府参考人 今回の法改正の一つの大きな内容として、特別支援学校のセンター的機能ということが挙げられるわけでございます。この点につきましては、小中学校や保護者の方に対するいろいろな助言、援助ということが特別支援学校に期待をされているわけでございますけれども、同時に、そういうセンター的機能を発揮するためには、ただいま御指摘のように、人的なパワーというものも整備をする必要があるということは、私どももそのように思っているところでございます。

 センター的機能につきましては、これまでも各盲・聾・養護学校におきまして、相当程度取り組まれてはきているわけでございます。今回の改正においては、これを法律上明確にして努力義務として規定をすることとしたわけでございますが、今申し上げましたように、相当程度取り組まれているという中で、第七次の定数改善計画、これは平成十三年度から十七年度までの五カ年計画で実施をしたわけでございますけれども、その中で、センター的機能の一部でございます教育相談の充実、それから、特に聾学校における小中学校の児童生徒に対する通級による指導といったようなことの実施のために必要な定数措置を、五年間で三百二十四人、措置をしてきたところではございます。

 なお、私どもとしては、今後もっとセンター的機能に係る教職員の定数改善を進めたいと思って、実は第八次の定数改善計画の中に盛り込んでおったのでございますが、残念ながら、平成十八年度からの第八次の定数改善計画の策定は見送りということになったところでございます。

 今後、このセンター的機能に着目をした定数措置を含めて、今後の教職員配置のあり方については、総人件費改革を進める中ではございますけれども、平成十九年度以降の予算編成過程においてしっかり十分検討してまいりたいと考えております。

伊藤(忠)委員 最後に、一つ伺っておきたいんですけれども、実は、私ども愛知県のある養護学校では、現行児童生徒数が四百四十九名、学級総数が八十五学級、普通ですと、大体三百ということで二倍という話でございますが、これが例えば平成二十五年度以降どんなふうになっていくかというと、まだ高校生がふえてまいりまして、五百名を超えていくだろうというふうに予測されるわけでございます。つまり、人数が減っていかないということでございます。

 先ほど来申し上げておりますけれども、こうした子供たちがふえていくこと自体がひとつ残念なことではございますが、ふえようと何をしようと、この子供たちに同様に教育の機会を与えて生きていく道を教えてまいりたいというのが今度の法律改正の大事な趣旨だというふうに理解をいたしております。その崇高な理念をどうしても実施していくためには、何が何でも次期定数改善計画というものには必ず増員をしていただいて、加配をして、マンパワーの基盤をどうしてもつくっていただきたいというふうに思っております。

 私もここでこうして発言をさせていただいた以上は、何としても増員計画に向けて一人の政治家として頑張っていきたいというふうに思っております。そして、地元の子供たちに幸せを運んでやりたいというふうに思っております。

 ぜひとも、大臣におかれましては、この改善計画における特別支援教育関係の教員加配につきまして、御決意を一言お伺いをしたいと存じます。

小坂国務大臣 大変御熱心なお取り組みの決意を表明していただきまして、ありがとうございました。私ども、それをしっかり受けて、第八次という、この前見送った形の中で、同じような形、すなわち名前のようなものを使うかどうかはともかくといたしまして、今御指摘の、教育現場での教職員のしっかりとした少数教育、また今回の特別支援教育に取り組めるように、定数改善のために、先生と一緒になって全力を尽くしたい、このように決意を申し上げたいと思います。

伊藤(忠)委員 ぜひとも、ともどもで、この世界をきちっと光が当たるように、差していただけるように、くれぐれもお願いを申し上げまして、質問を終わります。

遠藤委員長 奥村展三君。

奥村委員 民主党・無所属クラブの奥村展三でございます。

 けさほどは参考人の方々からいろいろ貴重な御意見をいただきました。今も最後に大臣が答弁されましたように、今回の改正案でありますけれども、人間尊重の教育モデルといいますか、こういうシステムをしっかり構築をするんだ、そういう目的を持ってこの改正案が出されたと思っております。そういうようにあってほしいと私は思っております。

 なお、今質問された方がおっしゃっていましたが、全国都道府県、それぞれの地域によって多少の格差があるようでありますけれども、余りこれは私はあってはならない、地域のニーズ、それぞれあると思うんですが、やはりできるだけ全国どこでもひとしく受けられ、そしてしっかりとはぐくんでいけるような体制をつくっていくべきだというように思います。

 それには財源が常について回るわけであります。これの財源をしっかり文部科学省としてこの分野におきましても確保していただけるように、そして子供たちの幸せを願って我々大人がしっかりそういう環境をつくっていく、政治に課せられたことではないかなというように思います。

 それでは、まず具体的に質問させていただきたいと思います。

 一つ目でございますが、児童生徒の就学をされる学校の決定についてであります。

 これは御案内のとおり、本人、保護者そしてまた専門家の意見をお聞きになって決定されていくというように理解はしているわけなんですけれども、実際いろいろお聞きをいたしますと、そうではないということも実は現実にあるわけです。これはやはり、保護者の皆さん方が子供のことを思ってこうだと思っておっても、現実は、就学先をこちらにと強制されるような事態も起こっているというのも事実であります。このようなことが今回なくなっていくのかどうか、まずこれも一つお聞かせをいただきたいというように思います。

 やはり関係機関と連携を図っていって、私は、就学相談機能、これをより強化する必要があると思うんですよね。ここで選択機能をしっかりと持っていくというようなことも大事でありますから、この点についてもどのようにお考えなのか、お聞かせをいただきたいというように思います。

 先ほど冒頭に言いましたように、本人あるいは保護者の方がこうと思っておられても、それがうまくいかない場合は、意見の相違があった場合には、私は、第三者機関とでもいいますか、意見調整の機能がまず発揮されることが望ましいというように思いますが、いかがでしょうか。

小坂国務大臣 委員御指摘のように、障害のある児童生徒の就学につきましては、保護者や専門家の意見を聞きつつ、当該児童生徒の自立と社会参加のための適切な教育が行われるように市町村教育委員会において総合的に判断されるべき、こうされておりますし、現実、そのように運用されなければいけないと思っております。その際、特別支援学校と小中学校、それぞれの教育内容の特色や条件整備の状況等について児童生徒本人及び保護者に対する的確な説明それから情報の提供が重要でありますが、相互に考えを述べ合ってその理解が得られるよう努めることが第一であろうと思います。

 今後とも、市町村教育委員会において、保護者の意見を十分に聞きながら、児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応した適切な教育がなされるように努力してまいりたいと思っております。

 また、そういった際に保護者と教育委員会の意見の相違が生じた場合、第三者機関による意見調整の機能を付与される、こういうことがいいんじゃないかという御提案もございました。これにつきましては、市町村の教育委員会が行う就学に関する相談機能を充実させるために、幼児期からの体制の構築を含めた相談の充実、そして御指摘のように専門家から成る就学指導委員会を通じて、児童生徒の教育的ニーズの的確な把握をするために、必要に応じ、まずは市町村において地域で適当な団体を見出すことも考えると、具体的には困難な場合もありますね。その場合には、必要に応じて障害当事者団体との連携協力も図っていくことが一つの方策になるかと思います。

 そういう場合には、就学する学校を最終的に決める際には、保護者の意見を聞いて、そして専門家と十分に協議した上で、教育委員会による総合的判断を下すようにということで、間に入っていただくといいますか、連携協力の中で適切に行われるように今後とも努力をしてまいりたい、このように考えます。

奥村委員 大臣、ありがとうございます。今まさしく御答弁いただいたようなことがしっかりと行われていかなければならないと思います。

 現実は、今申し上げましたように、それぞれの地域によってそれぞれの状況が違いますから、そこの点がなかなか大変なところでありますが、今おっしゃったようなことで事がしっかり進んでいくように期待をさせていただきたいし、ここはしっかりと国として、そして都道府県と市町村と連携をとっていただくようにお願いをしておきたいというように思います。

 その次に、二番目でございますが、学校教育法施行令第二十二条の三の規定についてお伺いをいたしたいというように思います。

 いろいろとこれは細かく分けて、盲・聾・養護学校という形で就学されているわけでございますけれども、就学させるべき者、つまり就学しなければならないというように読むことができるんですが、当改正案に伴ってどのように改正されていこうとしているのか、お伺いをしておきたいというように思います。

小坂国務大臣 ただいま御指摘のありました学校教育法の施行令の第二十二条の三の規定、これは御指摘いただきましたように「盲学校、聾学校又は養護学校に就学させるべき盲者、聾者又は知的障害者」云々、こうなっております。

 この読み方でございますけれども、就学をすべき方というより、むしろ就学が対象となる方というような意味合いを強調した方がいいと思うんですね。盲・聾・養護学校が対象とする障害の程度を明確にする観点からこのような規定を設けていると思うわけでございます。ところが、書きぶりが「就学させるべき」と書いてあるものですから、委員が御指摘のような解釈も生じてしまうと思います。

 これは今回、私は改定を考えたいと思いますね。今申し上げたように、盲学校、聾学校、養護学校が対象とする方々というような意味合いをちゃんと理解できるように、「しなければならない」というような表現でないように、検討をさせたいと思っております。この規定に該当する者がすべて就学しなければならないという運用は行っていないわけでございますので、あくまでも盲・聾・養護学校が対象とする障害の程度を示すということを御理解いただきたいと思いますとともに、この規定の善処を考えさせていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、この規定に該当する児童生徒の方については、保護者や専門家の意見を聞いた上で、小中学校において適切な教育を受けることができると市町村の教育委員会が判断する場合には小中学校に就学させるなどの弾力的な対応が可能となっているところでありまして、認定就学制度を今後ともしっかりと活用しながら、適切な運用と、それから保護者の、また当事者の理解が得られるような形にしてまいりたいと存じます。

奥村委員 大臣、ありがとうございます。

 くれぐれも、今おっしゃっていただいたことが改定されまして、進めていただくことを特に重ねてお願いしておきたいというように思います。

 次に、第七十五条の一項におけることなんでございますが、その他の教育上特別な支援を必要とする児童生徒及び幼児云々ということがあるわけなんですが、これについてお伺いをいたしたいんですが、LD、ADHD、高機能自閉症などのいわゆる発達障害の子供たちだけではなくて、通常学級に在籍する子供たちも特別支援教育の対象であるというように私は理解しているんですが、そのように理解していいんですか。

馳副大臣 御指摘のとおりです。

奥村委員 わかりました。このことも今お聞かせいただいて位置づけがはっきりしましたので、ありがとうございます。

 次に、文部科学省でいろいろ調査をなされているわけなんですが、市町村就学相談委員会等における調査審議及び実際の就学先の状況についてという調査をなされているんですが、そのデータを見せていただきますと、小学校に在籍する調査審議の対象となった学童、学齢児童は総数で二万六千百七十二人であったと思います。実際の就学状況は、盲・聾・養護学校が四千九百四十一人、特殊学級が八千八百四人、通常学級が一万二千三百九十七人となっていたわけなんですが、ここからうかがえることは、私は、在籍する障害のある子供、その程度は不明なんですけれども、ざっと七万人を超えているんではないかなというような推測をしているんですけれども、いろいろ考えてみますと、今回のこの特別支援教育が始まることによって、通常学級から特別支援学級へ在籍をするように強要されたり、そしてまた特別支援学校への転学を強要されたりすることが、あってはならぬと思うんですけれども、先ほど申し上げた数字がいろいろあるものですから、通常教育で学ぶこと、今までやっていることがしっかり保障されるのかどうかというところにちょっと心配をいたしておりますが、いかがでしょうか。

馳副大臣 今回の法改正によって特別支援教育に対する体制を充実していこう、理念を明確にしていこうということでありますから、強制されたり、こちらはあちらへというふうに転籍とか、そういうことがあってはならないと考えておりますし、そのことについては、法改正をいただいた後に、都道府県の教育委員会や市町村の教育委員会等担当者にしっかりと周知徹底を図ります。

奥村委員 ありがとうございます。

 今、最後におっしゃったように、やはり周知徹底をしていただいて、その内容等を明確にしていただきたいということを要望しておきたいと思います。

 次に、ちょっと具体的になるんですけれども、学習支援についてお伺いをいたしたいというように思います。

 この支援を必要とする子供、つまり児童生徒及び幼児に対してどのように学習支援を提供されていくのか、まずお伺いをいたしたいというように思います。

銭谷政府参考人 小中学校の通常の学級に在籍をする障害のある児童生徒につきましては、指導の仕方としては、一つは、ふだんの授業は通常の学級に在籍をして、必要に応じて、週に一回とか、いわゆる通級による指導ということで、その障害に係る特別の指導を受けるような、そういうやり方が一つございます。それからもう一つは、ずっと通常の学級に在籍をしたまま、担任とかあるいはチームティーチング、こういった指導による個別の配慮が行われた指導といったようなことがあろうかと思っております。

 今回の法改正では、小中学校等における特別支援教育の実施について明示的な規定を設けて、すべての小中学校等において学校全体としてこうした取り組みが一層進められるように促すこととしているところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。ぜひそのようにしっかりと御利用いただけるようにお願いをしておきたいというふうに思います。

 次に、特に通常学級内で学ぶ障害をお持ちの子供、児童生徒、これの支援は具体的にいかがでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、通常の学級に学ぶ障害のある児童生徒については、担任の先生とか、それからチームティーチングの場合にはチームを組むもう一人の先生がいろいろと配慮をしながら指導するというのが通常の指導のあり方でございますが、学校によりましては、そういう通常の学級に学ぶ障害のある児童生徒の支援として、支援員とか介助員といったような職員を配置して指導の補助をしているというケースもございます。これは通常、市町村の単独の財政措置というのが多いのが実情でございます。

奥村委員 きょうの午前中の参考人の方も障害をお持ちのお子様をお持ちですから、付き添いを、今介助員やいろいろなお話をなされましたけれども、大変御苦労なされた体験談を聞かせていただきました。

 確かに、今、最終的に市町村のということを局長がおっしゃったんですが、これはいつも申し上げていることです、私は幼稚園を経営しているんですが、その地域によっては、保育所は公立であるものですから、私は私立なんですけれども、公立の保育所でとらないで、もう就学前教育のお子さんですから幼稚園へ行きなさい、そういう指導をしてしまうんですよね。集団生活がいい、こちらの方がいいですよと言うから、そちらへ子供が行く、それを受け入れる。そうしたら、毎年毎年ある意味では症状の違うお子さんをお受けしなければならない。それに対応するために正規の職員を実際に雇用できるかというと、現場はそうじゃないんですよ。そうなると、パートで雇う。そうすると、一年間、まあ三百六十五日毎日はないですが、そのパートで来ていただく職員は、もう粉骨砕身、本当にその子に命をかけるんです、一対一、マンパワーで。そうなると、一年で、もう退職させてください、精いっぱいやりました、そういうようなことを言う職員と、まだまた来年も続いて頑張りますと、いわゆるケース・バイ・ケースなんですが。

 そういう状況を本当に考えますと、そのお受けする方もそうですが、一方、やはり保護者の人との信頼関係、そこにしっかりしたキャッチボールがなければいけないわけなんですが。やはり先ほど来の市町村の財政力だとか、環境によってケース・バイ・ケースが出てくるんです。ですから、付き添い、これは学校の場合ですが、私は今幼稚園の場合を言っているんですけれども、やはり親御さんにとってみれば、朝送ってきて、道中でどうもないかなと思って電話をかけてこられる。職員は、その都度主任なり園長なりがお答えしているようなんですが、本当にあらゆるケース・バイ・ケースがあるんです。

 ですから、決してそれが重荷だとかどうのこうので私は言っているんじゃない、それは当然お受けをしなきゃいかないんですが。そういうようなシステムだとか。それに、学校の場合は、やはり先ほど最後の方におっしゃったように、支援員や介助員の配置、本当にこれは大事になってくると思うんです。これもやはりお金にまつわることでありますし。そしてまた、先ほど馳副大臣が、強要したりすることは絶対いけませんとおっしゃいますが、そのとおりなんですけれども、やはり付き添いをしなければならないという、強要されるようなことが絶対私はあってはならないと思うんですよ。

 ですから、それらのところもしっかりと、今度の改正によって、先ほどおっしゃったように、御答弁いただいたように、支援員やあるいは介助員の配置というのもしっかりやっていただけるように、もう一度、局長、お考えをお聞かせいただければというように思いますが。

馳副大臣 御指摘の支援員、介助員の配置については、認定就学制度ということがある観点上、基本的には市町村の教育委員会の責任ということになるんですが、実態を言うと、今委員御指摘のように千差万別なんですね。これに対して、いかに国として支援することができるかということが今後とも大きな課題だと考えておりますので、できる限りそういった支援員、介助員の配置に配慮できるような、財政的な措置も含めて、ちょっとこれは局長答弁ではなかなかこれ以上は言いづらいと思いますので、私の方も検討する課題であるということを申し上げさせていただきたいと思います。

奥村委員 ありがとうございます。そこは、副大臣がおっしゃったように、ある意味では、財政、その環境を整えるということになったら政治的な判断も必要ですし、やはりきめ細かな政策の中に取り込んでいただくようにお願いをしておきたいと思います。

 今のとよく似た、そういう流れの中に、親の付き添い。そういうことが入学当時に条件として、あってはならないことだと思うんですが、課していくということになると、親御さんにとってみれば問題になるようなことに、私は結びつけてしまうんですけれども。

 今日の社会状況から考えて、大変厳しい経済状況ですから、お母さんもやはりちょっとでも収入を得られるようにパートに行ったり、あるいはいろいろな人とのお仕事なんかのつながりでお手伝いに行ったりされる方もあろうと思うんですが、入学をされても今と同じような付き添いがずうっと続いていくということになると大変なことになると思いますから、こういうことのないように、お願いをしておきたいというように思います。

 けさほども参考人の方に申し上げておったんですが、これは養護学校ではなしに、障害児の施設なんですが。大臣、御承知のとおり私は滋賀県なんですが、第一びわこ学園や第二びわこ学園等々、そういう施設が大変多いんです、私の滋賀県には。これは糸賀一雄という大先輩がそれに力を入れてこられて、田村先生という方もおられたんですが、そういう人たちが滋賀の瀬田川の周辺、今は私の湖南市の中に一麦寮だとか、びわこ学園も隣なんですけれども、そういう施設がたくさんある。やはりこれは地域みんなが理解をしながら応援をし、運動会に行ったり、もちつきに行ったり、行事があるとみんな出かけていっているんですけれども。時には芋掘りを一緒にやったり、泥んこになってやったりしてきたんですけれども。そういう、地域との連携。そこにお互いにみんなが理解し合っていく、私は、それがやはり一番大事なことだというように思って、けさも参考人の皆さんとの話の中で、しておりました。

 これはもう文部科学省だけの話ではなくて、グローバルな関係でこういうことをしっかりこれからも推し進めていただきたいなというように思っています。

 この間もこの委員会で申し上げましたように、琵琶湖の体験学習船「うみのこ」フローティングスクールも、こうした障害をお持ちの子供さん、小学校五年生になれば一緒に乗っていただいて、みんなが力を合わせて障害をお持ちのそのお子さんを支えていく。共同生活をする。一泊二日の生活をして、お互いに理解を深めていく、こういうことも実はやっているわけなんですよね。そういうことによって、いたわりの心も出てくるし。この間、何日もかけて教育基本法の中で、ありました。確かにそうなると心と態度が一緒かなというように思うんですけれども。それはともかくとして。やはり心があってこそ態度が伴ってくるのかなというような思いもしていますが。そういうようなことも思ったものですから、ちょっとお話をいたしましたが。

 次に、就学の決定についての本人及び保護者の意見の尊重についてであります。

 先ほど来、いろいろと同じようなことを申し上げているんですけれども、特別支援教育の目指す方向性について、これは障害児教育をめぐって、統合教育かあるいは分離教育かという議論がありますし、国連総会におきましても、障害者権利条約の策定に向けて今日議論をされているわけであります。そうしたことで、この特別支援教育の目指す方向性について、まず一点目にお伺いをいたしたいというように思います。

銭谷政府参考人 障害を持つ児童生徒の教育につきましては、いわゆるノーマライゼーション、インクルージョンということが国際社会の中で大きな流れになっていると認識をいたしております。

 こうした中で、我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、だれもが相互に人格と個性を尊重し合える共生社会であるというふうに考えます。その意味で、先ほど先生からお話のございましたびわ湖フローティングスクールの事業というのは、共同あるいは交流学習という観点から、お話をお聞きして、なるほどと思った次第でございます。

 ただ、同時に、世界の各国を考えてみますと、特別な学校を設置するということを含めて、一人一人のニーズに応じた教育を実施していると承知をいたしております。

 今回の特別支援教育という考え方も、一人一人のニーズに応じた適切な教育を行うということを大切にする考え方でございまして、国際的な大きなノーマライゼーションの中で交流や共同学習をさらに進めるとともに、保護者や専門家の意見をよく聞きながら、一人一人の教育的なニーズに合った特別支援教育が行われるように進めていくということが私どもも重要であるというふうに考えているところでございます。

奥村委員 ありがとうございます。ぜひ、今言われたようにしっかりとおやりをいただきたいと思うんです。

 学校教育法施行規則の第三十二条とのバランスを考えますと、やはり本人や保護者の意見を十分聞くということ、私はこれは大事なことだと思いますし、やはり政省令にまず盛り込んでいくべきだというように考えておりますが、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 学校教育法の施行規則第三十二条におきましては、市町村教育委員会が複数の小中学校から就学する学校を指定する場合には、あらかじめ保護者の意見を聴取することができる旨の規定が置かれているわけでございます。

 この学校教育法施行規則第三十二条は、同一設置者における取り扱いについて規定をしているものでございますが、就学する学校について、最終的には市町村教委の判断になるにしても、保護者の意見を聞いた上で判断することができることを確認的に規定しているものでございます。

 障害のある子供の就学先の決定に当たりましても、学校教育法施行規則第三十二条と同様に、保護者の意見を聞いた上で就学先について総合的な見地から判断することが大切である旨指導しているところでございまして、認定就学の制度も活用されてきているわけでございます。

 今後とも、障害のある児童生徒の就学する学校につきましては、保護者の意見を十分に聞くという方向でさらに十分な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

奥村委員 冒頭にも申し上げましたし、今も申し上げたとおり、保護者の意見をぜひしっかりと尊重いただけるように、お願いをしておきたいというように思います。

 最後に、特別支援教育の今後についてお伺いをいたしたいというように思います。

 特別支援教育は、当面は、障害のある幼児や児童生徒の個別なニーズに応ずるものだと思います。将来はすべての幼児、子供、児童生徒に私は保障されるべきものであると思っておりますし、すべての教職員、先ほどもいろいろな御質問あるいは御意見の中にもありましたように、教職員一丸となって取り組んでいただかなければならないというように思います。私自身、皆さんもそのようにお思いだというように思います。

 現場では大変な御苦労もあろうと思います。しかし、児童生徒あるいは幼児の命、尊厳というものをしっかりと大切にしながら、そこに、教職員としての使命、それを支える学校関係者、あるいは地域、それとの連携をとりながら支えていく、はぐくんでいくんだという思いをしっかり基本的に持っていかなければならないというように思います。

 学校教育だけではなく、先ほど申し上げたこと全般についてのこともありますし、特に学校教育の全般に係る理念でもありますし、今やかましく言われております不登校やあるいは学習面でのつまずき等、子供たちが、生徒たちが抱えるニーズというのは多岐にわたっているわけでありますから、これの対応をしっかりしていく姿勢が、これからの学校教育、先ほども言いました教育基本法云々、あの中のいろいろな問題も、時代がどんどん変わってきているわけですから、そうした流れにしっかりと、我々なりに議論をして、そして、障害をお持ちの皆さん方、この方々にもしっかりとした教育を受けていただけるような環境整備をしていくということが一番課せられた問題だと私は思います。

 最後に、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。

小坂国務大臣 今回のこの法案は、特別支援教育を推進して、LD、ADHD、高機能自閉症等の児童生徒等への支援を含めた、障害のある児童生徒一人一人のニーズに応じた教育的な支援を行うことを目的としたものでございます。

 したがいまして、こうした取り組みは、特別支援学校の教職員や特別支援学級を担任する教員のみならず、すべての教職員の課題となるものであるわけでございますので、文部科学省としては、教員養成や現職研修などの充実に努めてまいりたいと存じます。

 また、このような取り組みが、障害のある児童生徒等のみならず、不登校等その他の特別なニーズを有する児童生徒の教育においても有効なものと考えられます。

 文部科学省としては、一人一人の教育的ニーズに応じた支援を行うという特別支援教育の理念が学校教育の基本姿勢となるように、普及、定着に努めてまいりたいと存じます。

奥村委員 ありがとうございました。

 大臣もまた、意気込みといいますか、前向きにしっかりととらまえていこうとする御答弁をいただきました。ぜひ、そのことが進んでいきますことをお願い申し上げておきたいというように思います。

 持ち時間もう少しありますが、横山北斗議員がたくさんの質問項目を持っておられますので、これで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

遠藤委員長 横山北斗君。

横山委員 民主党の横山北斗です。

 私は、法案に示された柱の中の特別支援教育について主に質問をしていきたいと思います。既に参議院の方での質問、また、本日も各委員との質問が重なり合う部分もあろうかと思います。また、午前中の参考人への質疑を通して、ああ、そういうことだったのかなということで後々、この質問をつくった後で理解できてきた部分というのも自分なりにはありますけれども、まだ私の不勉強もありますので、改めての質問も多くなるかと思いますが、何とぞよろしくお願いいたします。

 まず最初は、本法案の第七十五条におきまして、「その他教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。」というものがありますが、具体的にどのような児童生徒が対象になるのかを改めてお聞かせ願いたいと思います。その際、例えば心的外傷後ストレス障害と言われているPTSDなども対象になるのかどうか、このあたりを知りたいので、よろしくお願いいたします。

銭谷政府参考人 特別支援教育の対象につきましては、まず特別支援学校で学んでいる児童生徒、それから特別支援学級で学んでいる児童生徒、こういう方が対象になるわけでございますが、それ以外で特別支援教育の対象となります者は、障害だけ申し上げて大変恐縮でございますが、いわゆる視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱、それから七十五条の第二項第六号に当たります言語障害、情緒障害のお子様、それ以外に、学習障害いわゆるLD、注意欠陥多動性障害ADHD、高機能自閉症等の発達障害、あるいは言語障害などによりまして教育上特別の支援が必要となり得る者、こういう方々がその対象となるものと考えておりまして、いずれも継続的に障害による生活上及び学習上の困難が伴う方というふうに認識をいたしております。

 先ほど例に出されましたPTSD、心的外傷後ストレス障害の方は対象になるのかどうかということでございますが、実は、これは大変難しいお尋ねでございまして、御案内のように、PTSDは、事件とか事故等に遭遇をいたしまして、恐怖や喪失体験などによりまして心に傷を受けるものでございます。そのときのことを繰り返し思い出す情緒不安定、睡眠障害があらわれ、生活に支障を来すこともございます。時間の経過とともにそういうことは薄れていくわけでございますが、状態が長引いているという方もいるわけでございます。

 したがって、PTSDは、特別支援教育の対象というよりはむしろ心のケアの対象と考えられるわけでございまして、スクールカウンセラーあるいは養護教諭の方々による対応が求められるものと考えられているところでございます。

 ただ、PTSDの症状の長期化によりまして入院などの医療を必要とする場合とか、あるいは症状が悪化していわゆる情緒障害となる場合もございまして、そういう場合には特別支援教育の対象となるというふうにも考えられる場合もあろうかと思います。

横山委員 どうもありがとうございました。

 今幾つか列挙していただいたのを聞いておりますと、先天的なものを対象にしているのかなという気はいたしますので、それは理解できました。

 そのような障害を対象として対象者を選ぶといいますか、なるわけですけれども、その基準について、入学時に心理テストのようなものを実施するということも伺っておりますけれども、その試験というのがどういうものなのか、いま一つまだ理解できないところがありますので、わかる範囲で教えていただければと思いますが、よろしくお願いいたします。

銭谷政府参考人 お子さんの障害の判断というのは、これは大変難しい側面があるわけでございます。

 通常、いわゆる健康診断、三歳児健診とか、こういった就学前の診断等、あるいは、いろいろな教育相談、医療相談などを通じまして、医学的あるいは教育的な観点から、このお子さんはもしかしたらこういう障害をお持ちかもしれないといったような御相談を親御さんとお医者さんあるいは教育関係者の間でしていくという中で、どういう障害をお持ちかということがだんだんわかってくるというのが通例だと思います。

 学校に入る場合には就学時の健康診断ということがございまして、そこで、いわゆる身体的な健康診断、それから簡単な幾つかの問いと答えとか、そういったようなことをやりまして、そういう中から、専門家の御意見を聞いたり、親御さんと日ごろの生活の様子をお聞きしたり話し合いしながら、その子の障害がどの程度のものであるかということをだんだん判断していく。

 したがって、当該障害がどの程度のものが特別支援教育の対象になるかということにつきましては、やはり個々の児童生徒の障害の状況や程度に応じまして、専門家の意見を聞きながら、適切に判断をしていくということになるのかなと思っております。

横山委員 ありがとうございました。

 では、もう一つ、確認なんですが、そのテストみたいなものというのは来年の四月の入学生から行うということでよろしいんですか。ちょっとその点、お聞かせ願えればと思います。

銭谷政府参考人 ちょっと話は長くなりますけれども、出生をしましたら、通常一歳半の健診がございまして、さらに三歳児健診というのがございます。そして、入学をする前の年の十一月末日までに就学時健康診断というのを受けるということになっておりまして、こういったいろいろな健診とかあるいはいろいろな教育相談とか医療相談とか、こういうものを通じてそのお子さんの状態について専門家の方がいろいろと判断をしていくということになるわけでございます。

横山委員 わかりました。ありがとうございます。

 それでは、次の質問です。

 今現在、障害を持ちながら通常学級に所属している児童や生徒、幼児は特別支援を受ける対象になるのかどうか。この点、参議院の方でも審議されましたが、改めて特別支援学校に転校するということではなく、今通っている学校において新たに支援を受けることが可能なのかどうかについてお尋ねいたしたいと思います。

馳副大臣 この法律ができたからといって、特別支援学校へ行けとか特別支援学級に行きなさいと、そういう強制するような筋合いのものではなくて、今現在も通常学級において受けられている障害のあるお子さんに対する支援は行われるものであります。

横山委員 それでは、先ほどの奥村委員の質問とも重なり合いますが、いま一度、大臣に、特別支援の対象になる児童生徒が通常学級に在籍するか否かの判断はどこが行うのか。それから、いま一度、学校の判断で強制的に特別支援学級に在籍させられることがあるのかどうか。そして、これまでどおり通常学級で学ぶことのできる保証についてお伺いしたいと思うのですけれども、大臣でも副大臣でもどちらでもお答えいただければと思います。

馳副大臣 小中学校に学ぶ障害のある子供が通常の学級で学ぶか、通常の学級に在籍し通級による指導を受けるか、特別支援学級で学ぶかは学校長が判断するところであります。その場合でも、保護者や専門家の意見を聞きながら、その子供の教育的ニーズに合った教育の場がどこかを総合的に判断することになります。

 したがって、現在、通常の学級で学んでいる子供が強制的に特別支援学級に在籍させられることはないと考えられます。

横山委員 どうもありがとうございます。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 この法案をつくるに際して、各県で特別支援教育のモデル事業というものを行ってきました。それは、LDやADHDなどの発達障害のみを対象に行った地域が多いと私は聞いておりますけれども、この点、実際のところ、どうであったのか。また、そういうLDやADHDのみを対象に行った地域というのは全体の何%ぐらいあったのか。このモデル事業がどういうものであったかみたいなことも含めて御説明願えればと思います。よろしくお願いします。

銭谷政府参考人 多少経緯的な御説明になって恐縮でございますが、文部科学省では、平成十一年に「学習障害児に対する指導について」という報告書を出しております。その報告書を踏まえまして、平成十二年度から十四年度にかけまして、LDの児童生徒に対する指導体制の充実事業というものを全国展開し、支援体制の整備を図ってまいりました。

 その後、十五年に「今後の特別支援教育の在り方について」という報告書を出しておりまして、それを踏まえまして、十五年度からは、それまでのLD児に対する支援事業を拡充いたしまして、ADHD、高機能自閉症の児童生徒もその対象といたしまして、発達障害の児童生徒に焦点を当てた特別支援教育推進体制モデル事業を全都道府県に委嘱して実施いたしました。そして、翌十六年度からは、この事業の対象をLD、ADHD等の発達障害児から障害のあるすべての児童生徒を対象として本事業を推進しているところでございます。

 ですから、十六年度、十七年度、そして本年度は、障害のあるすべての児童生徒を対象とした事業として実施しているところでございます。

横山委員 そういたしますと、十六年度、十七年度、二年間ではすべてを対象にしているということであれば、私の方では、このモデル事業の対象者と、七十五条の一項で規定する、先ほど幾つか挙げていただいたさまざまな対象となる障害を持った方々との間に調査のギャップがあるんじゃないか、十一年からずっと見てきているのであれば。それで、LD、ADHDのみを対象としているのでは問題があるのではないかなと思ったんです。

 そうすると、十六年度、十七年度は全部のものを対象にしたということであれば、そのモデル事業というものは信用性を持ってやっているというふうに大臣もお考えでありましたでしょうか。どうでしょうか。

馳副大臣 今局長が答弁したとおり、十六年度、十七年度で第七十五条第一項で規定する特別支援教育の対象者としてすべてを対象としておりますので、このモデル事業でやってきたことは十分に整合性を持って対応してきている、こういうふうに考えていただいて結構です。

横山委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 今回の改正で、LD、ADHDは通常学級の中で学習支援員の支援を受けることができる、しかし、同じ障害でも、知的障害の場合ですと、自治体によって支援するところとしないところがあるということも話を聞いておりますが、このあたり、実際のところどうなのでしょうか。よろしくお願いいたします。

銭谷政府参考人 小中学校におけるいわゆる学習支援員や介助員など教員や児童生徒の支援を行う職員の配置につきましては、基本的には各市町村の教育委員会の判断に基づいてなされておりまして、率直に申し上げまして、自治体により差があるということは承知をしているところでございます。

 一方、盲・聾・養護学校におきましては、介助員など教員や児童生徒の支援を行う職員を配置するための経費が地方財政措置として措置されているという状況にございます。

 したがいまして、小中学校におけるこういう学習指導員や介助員などの職員の配置について、私ども、国としてどういう支援が可能かということについては検討課題だと思っておりまして、先ほど副大臣の方からも御答弁がございましたけれども、今後、よく検討していかなければならない課題だと思っております。

横山委員 知的発達障害に関しては今後の検討課題だということですね。今言われたとおりですね。わかりました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 学習障害にはさまざまな症状がありまして、もちろん、落ちついて座れないとか左右の認知、平衡感覚、聞き取り、そういうさまざまな症状があって、そういう子供たちを受け入れて、朝礼から昼休みから含めて、一日の学校生活というのが送られていくわけですが、それを行う学習指導員に対しての今現在の活動の指針といいますか、研修といいますか、そういうようなことについては何かあるんですか。

小坂国務大臣 横山さんはよく研究をされていますのであれなんですが、LDやADHDの児童生徒に対する支援のために、現在、御指摘のような学習指導員やアシスタント等の名称で学校外の人材を活用している状況があるわけですね。

 ただ、これらの取り組みやその職員に対する研修等は、各市町村などの工夫と判断によっているわけでございまして、統一的な指導指針は定めておりません。

 一方、文部科学省では、全都道府県に委嘱して実施している特別支援教育体制推進事業におきまして、特別支援教育体制の一層の充実を図るために、今年度から新たにボランティア等の地域人材を活用した支援体制のあり方についての優良事例を収集しておるんですね。この中で、研修のよい事例などを含めて、普及を図ることにいたしております。

 こういったことを市町村の方でも活用していただきまして、今後とも、このような取り組みを通じて、障害のある児童生徒に対する適切な支援体制の整備に私どもも努めてまいりたいと存じます。

横山委員 そういたしますと、もちろん、この法律が成立してから取り組むべきものもあるでしょうし、それから、それを実施してからさらに見直すというか整備していく部分もあるだろうと。

 今の大臣のお話を聞きますと、今は各自治体ごとで工夫、判断を持ってやっていく、その中でとりわけ先進的な試みとか、これはいいなと思う試みを取りまとめて、すぐにでなくても、何年か先ぐらいにそういうガイドラインをつくっていくという方向性だということで、改めて、そういうことでよろしいのでしょうか。お願いいたします。

銭谷政府参考人 いい事例の紹介等は、何年も先ということではなくて、本年度の事業でやっているわけでございますので、速やかにやっていきたいなというふうに思っております。

横山委員 私は、別に何年か先というのは遅いとかいうことを言いたかったわけではなくて、データの収集にはそういう時間も必要だろうという意味で申し上げましたので、どうぞお気になさらないでください。

 それでは、次の質問に行きます。

 現在、通常学級に所属している児童生徒の中に、教師が今はLDとは認識していないが実はLDであるというケースがあるかもしれません。先ほど、一歳児、三歳児そして就学時ということですが、今三歳以上の子供というのは、もう既にここら辺の対象者から外れているわけですね。現在在籍中の人が、将来的にそういうことがわかったときに、そういう状況に直面したとき、いかなる対応を考えておられるのかについてお聞かせ願えればと思いますけれども。

馳副大臣 一昨年、発達障害者支援法という法律ができた。昨年の四月一日から支援が各都道府県で始まって、また、発達障害相談支援センター、これが徐々に徐々に整備されてきて、ことし、来年のうちにも全都道府県でこのセンターが整備されるということになっておりますが、委員御指摘のように、まだ始まったばかりということを考えると、残念ながら、やはり十分な支援体制が整っているわけではないという認識をまず持つべきだと思うんですね。

 その上で、当然、今現在、小中学校、高等学校においても、在籍している児童生徒で、LDではないかと。ADHDは、何となく、多分すぐわかりそうな気がするんですけれども。つまり、現状、十分な教師や保護者の認識、理解が深くなければやはり見過ごしてしまう可能性もあるわけですよ。

 そういったことを考えると、まずは基本的には、教職員の研修を通じて気づき、しっかりと把握していただくということ、それから、そういう症状をお持ちのお子さんの保護者も、お持ちでないお子さんの保護者も、いずれも、こういった理解を深めていただくことが必要であるというふうに考えておりますし、これはLDではないかなというふうな、こういう発見があった場合には、当然専門的なお医者さんによって十分診断を受けて対応をお願いするということも必要になってくると思っています。

 それで、平成十六年にLD、ADHDの児童生徒の支援体制を整備するためのガイドラインというものを作成して、この中で、行政機関や学校における保護者への理解推進や相談の必要性、保護者における子供の障害の理解や子供とのかかわり方など、必要な配慮事項等を示しておりまして、LDの判断に際しても役立つものと考えております。このガイドラインの活用を促しながら、現場で適切な対応ができるようにしていきたいと考えています。

横山委員 ありがとうございました。

 では、それとまた関連する質問になるかと思いますけれども、自分の子供がLDである、ADHDである、これは、保護者がそういう認識をしていない中で宣告されるということは、親にとりましてはやはり大きな戸惑いになろうかと思います。

 こうしたケースで、学校側と子供、保護者との連携、信頼関係というようなことがこれから非常に重要になってくると思いますけれども、この点についてのお考えをお聞かせ願えればと思います。

馳副大臣 今申し上げたガイドラインに沿ってやはり対応していただきたいと思っております。

 実は、私も発達障害者支援法の立法に携わり、三年ほど前から勉強会にも出させていただいておる中で、保護者、とりわけお母さん方の相談は非常に深刻なんですね。つまり、障害のないお子さんとうちの子はどのように関係性を持っていったらいいのだろうか、こういう点が一つ。次に、この子を今後どういうふうに、義務教育、高等学校、そして就労まで含めて、総合的に人生を支えていったらいいのだろうかという不安。

 さらには、ほかの障害のないお母さん方との壁というのは出てくるんですね。こういうところにお父さんというのはなかなかかかわってきづらいのか、かかわってこないのかわかりませんが、お母さん同士に壁ができてしまうことが一番保護者にとって不安の大きいことなんですよ。ましてや、ここまで言うとあれですけれども、嫁という立場になると、私の育て方が悪かったのかしらとか、あるいはおしゅうとめさんとの人間関係がまずくなったりとか、非常に不安が不安を増幅させる可能性が極めて大きいんですね。

 そういうことを考えると、ガイドラインの中にはいろいろと保護者に対する相談のあり方というのもありますが、ここは教職員にも十分に理解を深めていただきたいんです。また、発達障害者支援センターを通じて、そういう保護者の集まり等もございますし、また専門的なNPO等の方もいらっしゃいますし、そういう意味では小児精神科の専門的な方も育成していくことを通じて、安心して相談に乗れる体制をとるということも必要です。いわゆる総合的な対応ができるような体制が必要であると考えていますし、やっていきたいと思っています。

横山委員 ありがとうございます。

 そうすると、いわゆるコミュニティーの形成というような部分がこれからますます教育の分野で必要になってくるんだなということを認識いたしました。

 では、その上で、今もう一つ関連する質問ですけれども、学校側が特別支援が必要であるという判断を示したときに、保護者の方がそれは要らないと言ってきたときに、今ガイドラインということもありましたけれども、どういう説明、対応、説得等を考えておられるのか、大臣でもどちらでも、皆さんのお考えをお聞かせ願えればと思います。

馳副大臣 実は、これが一番深刻な問題なんですよ。認めたくないんですね、保護者からすれば。うちの子に限って、うちの子は違う。

 ところが、適切な指導とか助言とか教育プログラムを受けることができなければ、一番悲しい、つらい思いをするのはその児童生徒であり、また保護者でもある。このことを理解してもらうために、先ほど申し上げたように、ガイドラインの中では、保護者の心を開いていただくということ。それから、社会的な認知を我々は求めて、法律もつくられて昨年から支援が始まっているわけでありますが、その情報も的確にお伝えしながら、まさしく保護者の理解を求めるための作業を続けるべきであるというふうに考えております。

横山委員 ほかに文科省の方で技術的な何か作成マニュアルみたいなもの、もしございましたらお聞かせ願いたいのですけれども、今の質問に関連して。

銭谷政府参考人 私ども、平成十六年にLD、ADHDの児童生徒の支援体制を整備するためのガイドラインというものを作成いたしまして、これは全国の教育委員会、学校に配付をして、これに基づいて、学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症の生徒への教育支援を、各学校、教育委員会に御理解をいただいた上で取り組んでいただいているわけでございます。

 本年度から省令改正をいたしまして、LD、ADHD等の発達障害のお子さんも通級指導の対象にしたわけでございます。今まで、通級指導というのは最低週一回以上という枠があったわけでございますが、月一回でも、本当にその障害にかかわる指導が有効だという場合もあるということで、今回は、合わせて月一回以上であれば通級の指導の対象にするということで措置をしたところでございます。

 そういう意味でことしから通級指導も始まったわけでございますので、私どもとしては、こういう発達障害のお子さんに対する指導事例、こういうものをいろいろとこれからも御紹介していくということ。

 それから、先ほど来副大臣の方からお話がございましたように、やはりその保護者の方がなかなか、自分自身お子さんのことで、こういう発達障害ということで納得できないということがあるわけでございますので、そういった保護者との関係づくり、あるいは、今度、特別支援学校がいわば地域のセンターの役割もするわけでございますので、そういう特別支援学校のセンター的機能の強化といったようなことをこれから取り組んでいきたいというふうに思っております。

横山委員 どうもありがとうございました。

 それでは、また次の質問に移らせていただきます。

 今回、先ほど厚生労働省の協力とか、いろいろな指導員とかいう言葉も出ておりますが、小中学校の教員免許の取得に際して、障害に関する知識、技能の修得に関しましては、既に平成十年に、障害のある児童等の心理発達、学習過程にかかわる内容を必修化するという措置をとっているということなんですが、正直、大学教育の現実は必ずしもそうなっていない部分があります。

 例えば、そういう科目を一つ設けた場合に、新しい先生を採用するということも財政上困難であるということから、何かそれに近い科目を教えている先生が担当をする。しかし、半期十五回の授業で二単位にせよ、一年間三十回の授業で四単位にせよ、それを一人で担当し切れないので、いろいろな先生方が自分の話せる範囲で、それこそ体験談を含めて九十分間の授業をやる中でそういった授業を一つ構成するとか、あるいは、もっと別の広い総合講座みたいな中で、障害のある児童に対する授業を専門の先生が非常勤で一こまなり二こまなりやって、それをこの授業科目として履修したという形で読みかえているようなケースというのもあると私は思っております。

 それからまた、教員採用試験にあっても、したがって、LDについても、参考書等を見て、みずからその学習した知識の範囲内で試験を受けて合格できているという現実があります。きちんと履修して、そこまでやらずとも、今はまだ本当に参考書の知識、受験参考書だけから得た知識で合格できて教員になっているという現状もあるわけです。

 ですから、今回の改正で教職員の一層の認識、理解を図るために、今後、こういう特殊教育の対象となる障害についての単位取得の厳格化ということを含めて、どうお考えなのかなということについてお尋ねしたいのですけれども、よろしいでしょうか。

馳副大臣 どう考えているかと言われれば、これはしっかりやっていかなきゃいけないというのは、それに尽きると思います。

 大学教育の現状は、横山委員は現場におられましたので、社会的要請のある新しい分野の教員、こういう講座を開けと言っても、教員の配置がなかなか難しいということもあって、教育関係の先生方に、これやってあれやってということになるんだと思います。

 そういう懸念も持っておりますが、やはり、去年から発達障害者支援法が施行されたと。その法律の中においても、各国公私立大学において教員の養成についての努力義務を課しておるわけでありますから、これは、去年のことし、ことしの来年と徐々に徐々にやはり充実していかなければならないというふうに考えております。

 ましてや、今回この法律によって、十分、小中学校においても、特別支援学校においても、また通常の学級、特別支援学級においても支援することが明確化されたわけでありますから、教職員の十分な資質向上がなされないで法案の趣旨というものは徹底されないということは、もう重々承知しております。

 そういったことを踏まえて、今後の教員の養成の段階でも、採用の段階でも、研修の段階においても、また、モデル的な研修については横須賀の特殊研においてもしっかりとやっていくように督励したいと思いますので、ある意味でいえば、横山委員も大学教育の現状をよく御存じなので、折に触れてまた叱咤激励、御指導もいただきたいと思います。よろしくお願いします。

横山委員 どうもありがとうございました。

 確かに、文部科学省が新しい制度をやるたびに、教える現場というのは混乱をするんですね。それで、この程度でいいだろうかということで書類申請して、認めてもらうと、もうそこから先は自分の研究の方を重視するということになってしまいます。

 しかし、今回のこの法案は、先ほど来、大臣からのお話もいただきましたように、本当に地域ぐるみで、みんなで解決していかなきゃいけない。国立大学も、本当に地域に対し、世界に発信することはもちろん、地域に貢献するということをやっていかないと生き残れない時代ですので、そういう意味でも、きちんとした単位として認定すると、教員の確保、もちろんそのためには予算の確保も必要になってくると思うんですけれども、含めまして、号令を出していただければなと思っております。

 では、最後になりますが、この法案について、私は先ほど来の質問の中で、一番、例えば親にとって、自分の子供がそうだと宣告されることのショックと戸惑いというようなこともあろうかと思います。そして、本人だけじゃなくて、クラスの中の児童、子供たち、それから子供がいることによってその周りの保護者含めて、そういった、これからの教育というのはこうなっていくんだよということを広く社会に認知させていく必要性を私は感じております。もちろん教員の指導を含めまして、総合的にどのようにお考えか、今のところのでき上がっている部分だけでも結構ですので、その周知徹底策ということをお聞かせ願えればと思っております。

馳副大臣 横山委員にも、数々御質問いただいて答弁させていただいた中で、今後の文部科学省の姿勢も御理解いただけたと思いますが、ただ、法律をつくって予算をつくれば事足れりというものではありませんので、当然、今後法改正をさせていただいた後には、各都道府県の教育委員会、また特別支援教育の担当主事など、そういった方々に法律の趣旨を周知徹底して、また、現場において取り組んでいただく。当然、各都道府県においての教員研修もやっていただく。そういったことで、この法改正の趣旨と、今後進めていくべき特別支援教育の充実を図っていきたいと考えております。

横山委員 どうもありがとうございました。

 私はあしたもまた質問時間がありますので、もう一回よく勉強して、質問したいと思っております。ちょっと早いですが、これで終わります。失礼いたします。ありがとうございました。

遠藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 きょう最後の質疑者でございますので、長時間にわたっておりますけれども、どうかよろしくお願いいたします。

 教育上特別な支援を必要とする子供たちの問題で審議が続いているわけでございますけれども、私は、そういう子供たちと高校での教育について、まずお尋ねしたいと思っております。

 高校などへの進学はもう既に全国的には一〇〇%近いという状況かと思いますけれども、定時制、通信制だけでなくて、一部の学校では希望者全員を入学させているというところも少なくないかと思うんですね。そういう状況では、障害を抱える子供、発達障害を抱える子供も高校へ進学していると、当然そこでの成長できるような体制、保障ということが求められているというふうに思います。また現実に、もう既にそういう子供たちを受け入れているという学校も多くございます。そういう高校への支援というのは本当に急がれているというふうに私は感じております。

 そこで、まず確認させていただきたいのでございますけれども、今回の法改正では、高校でも特別支援教育を実施する義務が生じたという理解でよろしいですか。

馳副大臣 今回の法律案では、学校教育法第七十五条第一項において、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園においては、教育上特別の支援を必要とする児童生徒及び幼児に対し、障害による学習上または生活上の困難を克服するための教育を行うものとするという旨の規定を新設したところでありますから、高等学校を含め、障害のある子供が学校に通う場合には、これまでも小中高等学校に通う場合には必要な支援が行われてきたところでありますけれども、今回、こうした取り組みについて法律上も明確化することを意図したものであり、各学校における取り組みがより一層充実することを期待しております。

石井(郁)委員 そういう法改正になったわけでございますが、既にこの法律以前にも受け入れて、いろいろな実践や取り組みをしておられるということがあるかと思いますが、そういうことも含めて、LD、ADHDの発達障害を抱えているこの子供たちを受け入れて、高校では一体どのような支援を現実に受けることができるのか。その点ではいかがですか。

馳副大臣 現状では十分ではないと考えております。

 実は、私も高等学校の教員としておりました。あれっと思ったお子さんが大学に進学し、一流企業に就職した後に、十数年たって授産施設で会ったという、大変私はショックでありました。そういうことを思えば、まだまだ高等学校の方はそういう意味では、小学校の先生あるいは幼稚園の先生ほどは認識が強くない現状であるというふうに思っておりまして、ここはやはり大きな課題であると思っております。

石井(郁)委員 そのとおりかと思うんですけれども、まずどういう支援を必要とするか、また、していかなくちゃいけないか、そのことを考える上でも、やはり障害を抱えている生徒たちがどのくらい普通高校、あるいは定時制、通信制などに進学しているのか、あるいは現に在籍しているのか、その辺もつかむ必要があると思うんですね。それは文科省としてはどのように把握されているんでしょうか。

小坂国務大臣 障害のある生徒の高等学校への入学につきましては、それぞれの高等学校長が生徒の障害の程度等を考慮して、入学後に当該高等学校の教育を履修できるか、また、それに足りる能力、適性があるかどうかという観点から判断をしているわけでありまして、発達障害のある生徒が在籍している可能性はあるわけでありますけれども、現時点では、その在籍状況について把握ができておりません。

 一方、十七年十二月の中央教育審議会答申におきましては、高等学校に在籍しているLD、ADHD、高機能自閉症等の生徒に対する指導及び支援のあり方についての早急な検討が必要である旨を指摘されているところでございます。本提言を受けまして、文部科学省としては、平成十七年度から高等学校も対象として実施をいたしております特別支援教育体制推進事業の実施を通じまして、高等学校における実態把握についてその方法を検討するなど、調査について、今後ともよく検討をしてまいりたい、そして、そのような形で対応してまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 きょうは、午前中の参考人質疑の中でも、高校で普通高校に進学された、楽しいことも、いろいろなこともあって、高校を終えることができたという話もありました。

 それから、参考人のお一人の市川先生からは、病院を開設していらっしゃるわけですから、その初診者の中で見ますと、やはり思春期では約一〇%が不登校の子供たちだと。思春期の問題というのは、私、大変注目をしていまして、そこでは、青年期になって解決するというケースもあるけれども、より問題が深刻化するというケースもあるわけですから、そういうことを全体としてつかむのが、高校での在籍の実態等々かというふうに思うんですね。

 今、文科大臣は、現状はつかまれていないけれども、今後そういう方向で進めていきたいというようなことかとお聞きしたんですけれども、高校でどういう支援が必要か、高校ももう今度は特別支援教育を義務として行うということがある以上、今、現状がどうなっているかということについて、やはり正確な調査なり把握が必要かというふうに思うんですが、それをきちんとされるおつもりがあるかどうか、その必要性を感じていらっしゃるかどうかについて、もう一度お答えいただければと思います。

小坂国務大臣 高校における不登校生徒の数は、平成十六年度のことでございますが、六万七千五百人であり、不登校は教育上の課題であると認識をいたしております。不登校となった直接のきっかけとしては、文部科学省の調査によれば、友人関係や学業不振などの、学校生活に起因するものが三九%、直接のきっかけになるような事柄は見当たらないけれども、極度の不安や無気力であるなど、本人の問題に起因するものが三九%を占めておるわけでありまして、なお、発達障害とのかかわりについては、この調査単体では明らかではございません。

 高校における不登校の対応につきましては、わかる授業を行うなど、楽しい学校の実現が一つ。それから、スクールカウンセラーの配置等によります教育相談体制の充実が二番目。そして三番目に、教育委員会が設置をする教育支援センター等を中心とした関係機関が連携して、不登校生徒の状況に応じた支援の実施を行うことなど、こういった事柄が必要と思って取り組んでいるところでございます。

 今後とも、発達障害を抱えている場合なども含めて、不登校生徒の状況に応じて必要な支援が行われるよう、関係機関と連携をしつつ、支援の一層の充実に努めてまいりたいと考えておりますが、いずれにしても、御指摘のような、実態をしっかりつかまえてやっていくということは必要だという認識を持っております。

石井(郁)委員 大臣の方から、不登校の高校での実態を既にお示しいただきましたけれども、私の最初の質問は、今法改正で、いわゆるLD、ADHDの子供たち、高機能自閉症の子供たちも対象にするということですから、そういう子供たちが高校に現にどのぐらい入っていらっしゃるのか、また入る要求などがあるのかということについてきちっと把握していただきたいということが一つだったんです。その関連で不登校の問題もあるわけですが、不登校の子供たちの中には発達障害を抱えている子供たちがいるだろうというのは当然考えられるわけですね。それは大臣がおっしゃったとおりだというふうに思っております。

 それで、昨年九月文科省が発表した、児童生徒の問題行動等の状況というのがありましたけれども、これは高校での不登校生の実態を初めて文科省として明らかにされたと私は承知しております。大変大事なことをしていただいたというふうに思っているんですね。

 これまで高校では、毎年毎年高校中退者が約十万人だ、この数はよく聞いていましたけれども、同時に、こういう不登校の子供たちもおられるだろうと。この調査によりますと、今大臣もお示しいただきましたけれども、トータルで長期欠席が十一万人ですよね。これは高校生の約三%にも上るんですよ。そのうち不登校の子供というのは六万七千五百人で、これは一・八二%、なかなかの大きい数だというふうに思うんですね。

 不登校の子供はなぜそういうふうになっているのかということについて、大臣もこれからもしっかりとつかんでいきたいということでしたけれども、この問題は私にとっても、これは青少年の特別委員会だったと思うんですけれども、やはり思春期の問題というのは今社会的な問題、青年期の問題になっていますから、高校のこういう実態というのは本当につかんでほしい、文科省はやってほしいということをずっと言っておりまして、こういう結果がようやく出たということを大変歓迎というか評価しているところなんです。

 だから、引き続いてもっと実態をよく把握されて、そしてこれに対してどういう対応をするのか、調査で終わらないわけですから、その対応が非常に求められているというふうに思います。

 それで、もう大臣の御答弁をいただきましたので、先に行きます。

 高校の場合は、小中以上に教職員の間での理解がまだ進んでいないというのは馳副大臣からもお話がありましたけれども、先ほどの参考人の話でも、小学校でたくさんの、いわば多動性とかいろいろな問題が見える形であるわけですから。それでもなお、先ほどの学校の実態で伺いますと、教職員の間の連携とか継続性というのは非常に弱い、親から見たら本当にたくさん解決してほしいことがあるという話でしたけれども、私は高校の場合は本当にこれからだという気がするんですよね。一部の高校では一生懸命取り組んでいらっしゃるところがあると思いますけれども、全体としては本当にこれからだというふうに思います。

 それで、先ほどもお触れになりましたけれども、やはり高校でも特別支援教育をやるんだ、これはもう義務づけられているということになりますと、文科省としては、教職員の間の理解や、あるいは教員の専門性を高める問題だとか、その支援をどういうふうに制度化、充実していくのか。子供にとっての選択肢というのは、結局、障害を持った子供たちは、高校に入って教育を受ける、その選択肢というのは一体どのぐらい準備されているのかというような問題でもう少しお聞かせいただければと思います。

馳副大臣 石井委員、私、これは重要な御指摘だと思っています。

 法改正をお認めいただければ、やはり都道府県の教育委員会を通じて、高校の教員、これは恐らく生徒指導とか養護の教員とか、こういった形が中心になるかもしれませんが、理解を深める十分な研修をしなければいけないと思っておりますし、先ほど大臣が申し上げましたように、やはり実態を十分把握して、現在高等学校に在籍している生徒さん、また不登校の原因としてこういった発達障害という問題を抱えているのかどうかということの把握も含めて、その上で次の対応として考えられるのは、各科目、各教科を学ぶときに、そういう発達障害の問題を抱えている生徒にどういう個別の指導ができるのかとか、当然これは、高等学校ということになると、就労支援との連携がなされなければ、絶対に意味をなさないんですよね。

 その場でこういう教育プログラムをしましたというだけではなくて、私の先ほど申し上げた例もありますように、大学に進学もしているんですよ、また社会にも出ていく、また、高等学校を卒業した後に社会人となるという選択肢の中で、ここは連携が十分なされなければ、その子の生い立ちの中で、どのような教育的な支援を受けてきて、どこまで十分対応できるのかということがわかっていなければ、それは恐らくジョブコーチにしたところで、十分に予備知識がなければ、また十分に高等学校においてもそういう生徒に教育の支援がなされていなければ、就労先にもどう紹介していいか、どう間を取り持っていいかわからないんですね。

 この辺はきょう非常にいい御指摘をいただきましたが、高等学校における実態の把握と支援のあり方というものと教員の研修というものは当然一体として、総合的になされなければいけないと考えておりますので、今後さらに進めていかなければいけないと思っています。

石井(郁)委員 就労の問題も在学中の教育プログラムとも関係があるのはそのとおりなんですが、それはもう少し先の話でお聞きしようと思っていたんです。

 まず、在籍している、そういう障害を抱えた子供さんが高校へ入った、では、そこでどんな支援というか教育を受けられるのかというのがありますよね。現状はどうなんですか。通常学級に入る、あるいは特殊学級的なもの、特殊支援学級というのをつくるのか、あるいは通級だと思うんですが、高校では通級というのは現実にどのぐらい実施されているんでしょうか。あるいは、今後それを充実していくというお考えはございますか。通級指導についてはいかがですか。

銭谷政府参考人 現在のところ、高等学校においては通級指導ということは行われておらないわけでございます。

 高等学校においては、障害のある生徒などの指導に当たりましては、結局、各教科、科目等の選択とか内容の取り扱いについて必要な配慮を行って、指導内容や指導方法を工夫するということを中心に配慮をするということになっているわけでございます。

 ただ、先ほど来、大臣、副大臣の方からずっとお話がございましたように、やはり高校における発達障害に関する指導という点ではまだまだ不十分だという認識を私どもは持っております。大臣からもお答えがございましたけれども、実態についてどういう把握が可能か、そういう点も含めてよく検討していきたいというふうに思っているところでございます。

石井(郁)委員 現状はそういう状況だということですけれども、知的障害、発達障害を抱える生徒たちを受け入れて、しかし支援体制がないという学校は少なくありません。

 私は、埼玉で発達障害を抱えている生徒たちを指導している教員の話を伺ったんですね。その学校ではこう言っていました。

 ここでは、学校全体で生徒一人一人の障害、生徒の特性を理解して、日々の学習から卒業後の就労まで支援している。本当に大変だ。他校では生徒に何かあったときの対応とか生徒のフォローなどを一緒に登校してくる母親がしている。先ほど小学校でもありましたよね、結局、母親に一緒に来てくださいということでお願いをしているという例になるわけです。しかし、そうではなくて、教職員が力を合わせて、母親に頼るんじゃなくて、教職員でやっている、乗り切ってきている、こういう学校をつくっているんですね。しかし、生徒に何かあったときにすぐ相談できたり対応してくれる経験や知識を持った教員が必要だし、また医療面からのサポートをしてくれる専門家の存在が必要だと常々感じている。教職員で非常に頑張ってこういう対応をしているところもあるけれども、それでも及ばないというか、もっとサポートが必要だというのが現場の声だというふうに思います。

 そういう意味で、私は、通級についてもこれからだという話ですけれども、ぜひ高校でも通級というのは早く実施に道を開いてほしいなというふうに強く思います。

 同時に、今申し上げたように、専門性を持った教員の配置、それから必要な条件の整備、それからいろいろな関係の専門家との連携等々もあるんでしょうけれども、そういう配置についても、今後文科省としてお考えになるかどうかということを伺っておきたいと思います。

馳副大臣 考えます。

 ただ、発達障害児、十八歳以前はそうですけれども、加齢に従って徐々に徐々に状況がよくなるということもまたございますし、さはされども、実際に高等学校の教員が研修会に、何も指示はないけれども、自分のクラスにいるからやってきたということもよくあるんですよね。

 そういうことを考えると、委員も指摘されたとおり、まず最初に実態を把握して、どの程度の支援をどのようにしたらいいのか、ここが私は一番大事なところだと思うんですよ。そして、高等学校に入学した以上は卒業まで面倒を見るというのが学校としても当然の仕事でありますから、この辺を軸に、今後支援体制を考えていきたいと思います。

石井(郁)委員 馳副大臣から大変前向きな御答弁をいただいておりますけれども、私申し上げたように、日本の高等教育、ほぼ一〇〇%近い子供たちを受け入れているというのはあったとしても、中退者が十万人も毎年いるとか、長期欠席者が十一万人もいるだとか、不登校の子供たちが六万七千人もいるだとか、これは本当に日本の教育の解決しなきゃいけない課題だ、このまま放置しておくことはできないというふうに思うんですね。そういう意味でも、ぜひ一つ一つ取り組んでいただきたい。

 きょうはもう一点、先ほども馳副大臣から言われました就労、卒業後の進路の問題がもう一つありますよね。高校は何とか入った、問題は、後は出る段階の話にすぐに突き当たってくるわけでしょう、高校の場合は。自立、社会参加をどうするのか、あるいは就職をどうするのか、それを考えなくちゃいけない、それが高校でもあるわけですね。そういう意味で、この点でも、盲・聾・養護学校には高等部などがあって、就職問題というのは長年の経験がかなりあるというふうに伺っているんですね、就職担当者の方がいらっしゃったりして。

 そういう点のノウハウなんかもしっかり受けとめる必要があるというふうに思いますけれども、先ほど御紹介した教員はこのように言っていました。就職先には生徒が抱えている障害や特性をきちんと伝えた上で雇用してもらっているけれども、職場で人間関係が築けずに一、二年で解雇されてしまうとか、進路指導をしていく上で、地域でそうした生徒と職場をつなぐなど、サポートしてくれる人がいなくて困っているということをおっしゃっていました。

 ですから、地域の支援体制もあるんでしょうけれども、社会的に就労先の皆さん方との理解を深めていただいたりして、学校との連携を本当に強めていくことが一人一人にとっては必要なんだろうなというふうに思うんですね。

 この点では、私も、就職というとすぐ厚生労働省みたいなことになっちゃって、ニート対策、何対策という話がよくありますけれども、高校にそういう子供たちを受け入れている、その子供たちの進路あるいは就職先ということについて、文科省としてでき得る対策というのは何なのか、そういうことを当然お考えになるべきじゃないかと思いますけれども、その辺について、馳副大臣、いかがですか。

馳副大臣 高等学校ということになると、各都道府県の教育委員会が指導的な一つの役割を果たすことと、今、法律によっていよいよ全国に発達障害者支援センターというのができておりまして、ここが福祉関係との連携役になっております。そして、就労ということを考えると、産業界との連携ということになっております。そして、現実にそういう発達障害の症状をお持ちの方と職場をつなぐときに補佐をしてくれるのがジョブコーチ。

 こういう労働機関との連携が必要になってきますから、ここはやはりネットワークを活用しながら、まず高等学校の進路指導の先生方には、発達障害のそういう症状をお持ちの生徒に対する個別の指導、それから的確なマッチングができますように、就労先を探してくるということに当たってはまた発達障害者支援センターとの連携をしていただく、そして現場に入るに当たっては、産業界の方に、こういう症状で、こういう作業はできるけれども、こういうふうな人間関係はちょっと難しいですよとか、こういうことを伝えていただくということによって、生徒一人一人に責任をすべて負わせるのではなくて、うまくサポートできる体制をつくっていくことが必要と考えております。

 これに関しましても、センターについても、去年がまだ全国で十六ほどしかなかった、ことしで三十ぐらいになったのかな。徐々に徐々に全国でもセンターが設置されて、そしてその機能を拡充していこう、充実していこうという段階でありますから、石井委員御指摘のことを踏まえて、教育関係者にもそのことは促していきたいと思っています。

石井(郁)委員 最後に、寄宿舎の問題で、一点伺っておきたいと思っています。

 今回、法案の七十三条の二に、「特別支援学校には、寄宿舎を設けなければならない。」ということがありますけれども、この寄宿舎について、教育的意義と役割、特別支援学校になっても本当にその充実ということは変わらないというふうに受けとめていいですか。いかがですか。

銭谷政府参考人 特別支援学校の寄宿舎につきましては、改正法案におきましても、これまでと同様に、設置を原則としつつ、特別な事情がある場合には設置しなくてもよいとしているところでございます。

 それで、寄宿舎自体につきましては、やはりそこに寄宿する児童生徒の日常生活の世話と生徒指導の場として非常に重要な役割を担っているというふうに考えております。

石井(郁)委員 やはり寄宿舎は大変重要な役割をしているんですね。

 それで、少し具体的なことで一、二点ですけれども、やはり今度、特別支援学校として障害種などがふえたりしていくわけでしょう。それで、入寮する子供たちの障害種もふえてくるということを考えなければいけないということになりますね。

 そうすると、指導員の配置というのはどうなんでしょうか。また、指導体制とか居住空間も障害種ごとに配慮が必要だということを考えられると思うんですけれども、そういう場合の財政的な保障などがどうされるのかという点はいかがですか。

銭谷政府参考人 寄宿舎の指導員は、児童生徒の日常生活の世話と生活指導である養育に従事する役割を担っておりまして、盲・聾・養護学校が特別支援学校に一本化された後においても引き続きその重要性は変わらないわけでございます。

 寄宿舎指導員の配置につきましては、現行の配置水準を維持するという方針のもとに、標準法に基づきまして、現行と同等の寄宿舎指導員の定数を算定することといたしております。その上で、特別支援学校の寄宿舎の運営が円滑に進むようにしているところでございます。

 具体的には、寄宿舎に寄宿する肢体不自由者を除く児童生徒数掛ける五分の一、それから、それにプラスをして、寄宿舎に寄宿する肢体不自由者の児童生徒数掛ける三分の一という数の合計数が定数ということになるわけでございます。

 寄宿舎指導員の定数につきましては、こういった児童生徒数の数に着目し算定しつつも、肢体不自由者など手厚い支援の必要な児童生徒についてはこういう手厚い算定方法を今後とも維持していくということにいたしております。

石井(郁)委員 この問題を質問いたしましたのは、お聞きしますと、全国的には寄宿舎の統廃合だとか、あるいは職員の非常勤化だとか、あるいは入寮の条件を遠距離に限定する、実質的に入寮規制をしていくということが伝わっておりますので、やはりそれはうまくないんじゃないかというふうに思います。

 この寄宿舎については、文科省も、毎日の生活を営みながら、生活のリズムをつくるなど生活基盤を整えるという役割、また、自立し社会参加する力を培う重要な場だということは認めておられるわけですから、また調査協力者会議の最終答申にもそのように書かれていたと思いますけれども、ぜひ寄宿舎も充実させていただきたいということも最後に申し添えまして、きょうの質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

遠藤委員長 次回は、明十四日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十四分散会


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