衆議院

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第2号 平成19年2月21日(水曜日)

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平成十九年二月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 桝屋 敬悟君

   理事 鈴木 恒夫君 理事 田野瀬良太郎君

   理事 西村 明宏君 理事 平田 耕一君

   理事 松浪健四郎君 理事 藤村  修君

   理事 笠  浩史君 理事 伊藤  渉君

      阿部 俊子君    秋葉 賢也君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      浮島 敏男君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    小渕 優子君

      加藤 紘一君    小島 敏男君

      佐藤  錬君    柴山 昌彦君

      鈴木 俊一君    関  芳弘君

      西本 勝子君    馳   浩君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤井 勇治君    藤田 幹雄君

      二田 孝治君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    奥村 展三君

      田島 一成君    高井 美穂君

      野田 佳彦君    牧  義夫君

      松本 大輔君    松本 剛明君

      横山 北斗君    西  博義君

      石井 郁子君    保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山中 伸一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   真砂  靖君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤田 明博君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  福田 峰之君     浮島 敏男君

  藤田 幹雄君     関  芳弘君

  二田 孝治君     藤井 勇治君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     福田 峰之君

  関  芳弘君     藤田 幹雄君

  藤井 勇治君     二田 孝治君

    ―――――――――――――

二月二十日

 行き届いた教育の実現に関する請願(西村智奈美君紹介)(第四号)

 同(西村智奈美君紹介)(第三四号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第四二号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四三号)

 同(筒井信隆君紹介)(第六七号)

 同(漆原良夫君紹介)(第七九号)

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(山崎拓君紹介)(第二二号)

 同(原田義昭君紹介)(第一〇八号)

 すべての子どもに行き届いた教育に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二三号)

 同(武正公一君紹介)(第六八号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第八〇号)

 同(山口壯君紹介)(第一〇九号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(松木謙公君紹介)(第二四号)

 同(仲野博子君紹介)(第五二号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(黄川田徹君紹介)(第三三号)

 教育の機会均等を守り、学費負担の軽減と教育研究条件の改善を実現するための大幅な私学助成増額を求めることに関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第四〇号)

 私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第四一号)

 国による三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(藤村修君紹介)(第四九号)

 同(滝実君紹介)(第六九号)

 同(辻元清美君紹介)(第七〇号)

 小中高三十人以下学級の早期実現、行き届いた教育に関する請願(村井宗明君紹介)(第五〇号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(松本剛明君紹介)(第五一号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第八一号)

 同(山口壯君紹介)(第一一〇号)

 「改正」教育基本法の廃止を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第五七号)

 憲法九条を守り、「改正」教育基本法の廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五八号)

 同(石井郁子君紹介)(第五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六六号)

 行き届いた教育を進めることに関する請願(松原仁君紹介)(第七八号)

 同(保坂展人君紹介)(第一一一号)

 学費値上げストップ、大学予算増額に関する請願(田島一成君紹介)(第八九号)

 私学助成の大幅増額、教育費の保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(広津素子君紹介)(第九〇号)

 行き届いた教育に関する請願(奥村展三君紹介)(第九一号)

 同(田島一成君紹介)(第九二号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を実現することに関する請願(小川淳也君紹介)(第一三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

桝屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官山中伸一君、財務省主計局次長真砂靖君、文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長清水潔君、科学技術・学術政策局長森口泰孝君、研究振興局長徳永保君、研究開発局長藤田明博君、スポーツ・青少年局長樋口修資君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

桝屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

桝屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島夕雁君。

飯島委員 自由民主党北海道選出の飯島夕雁でございます。このたびは、質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 まず、この場をかりて、さきの伊吹文部科学大臣の力強い所信表明に敬意を表します。

 それから、少し前のことになりますが、いじめに悩んでいる子供たちへ大臣から直接メッセージをしていただいたことがございます。私の地元で、一人の子供が、あの大臣さんが子供に話をしてくれたという反応を示した子供がおりました。受けとめ方は十人十色かもしれませんけれども、しかし、実際に勇気をもらった子供が一人でもいるということは大変大きなことであると思います。

 それから、きょうテレビを見ていましたら、文部大臣が、一部の心ない教師もいるけれども、光の当たらないところで本当に頑張っている先生もいるんだというようなコメントを報道に対してされているのをテレビ番組のシーンで見ました。実際に、私自身も教育長という職業をしておりました経緯の中で、教育現場で本当に身を粉にして、自分の生活の中にも子供の人生を重ね合わせ、また休みの日も部活に専念して、休日返上で頑張っている、そういう先生方もたくさんおられます。

 一部の心ない教員の言動、こういったものがクローズアップされがちでありますが、教育現場の果たすべき役割と、その中で、よくないものはきちんと正しながらも、やはり頑張っている人たちにはしっかりその評価を国がしていく、そういう姿勢をこれからもこの文部科学委員会では示していかなければならないのではないかと思っております。

 さて、そういったことを踏まえまして、昨今の子供たちを取り巻く環境の難しさ、また自殺やいじめの多発している具体的な現状、こういったことについて改めて大臣にお伺いしたいと思います。

 私自身は、今の子供たちに、命の大切さとか、また生きることや死ぬことの意味というものを実感を持って学んでもらう機会を、いろいろな場面で積極的に、あらゆる場面でするべきだというふうに考えております。また、なかなか集団行動ができなくなっていると言われる現在ですけれども、お互い子供同士が認め合って協力をする、理解をするという力をはぐくむためにも、例えば今二泊三日の体験学習みたいなものがありますが、ある程度の日数でないと、子供たちはプランに乗ったお客さん的な状況で終わってしまうことが多々あります。私は、これを乗り越えるさらに長い時間、短期間のものではない、ある一定程度の期間を集団で過ごすという体験をぜひとも取り込んでいくことが学校現場の中にも必要ではないかというふうに考えています。

 一つの例として、酪農教育というのがあるんですけれども、これを学校授業に取り込んだ例がございました。継続して、えさをやりまして、また牛ふんを片づける、こういった作業を通じて命をはぐくむことを学んだ。また、ちょうど母牛が難産だったそうなんですけれども、結果それは死産だったということなんですが、その現場を見ていた子供たちは、生まれてくるということの大変さ、それからやむを得ず死んでしまうということの悲しさ、こういうものを大変心の中にしみ込ませたというふうに伺っております。やはり、子供たちは、乾いたスポンジのように、環境があればいろいろなことを吸収し、またそういったことを作文に一生懸命書いたそうでございます。そういったことも含めまして、酪農教育というものも大変いい教育の一つのきっかけになるのではないかというふうに感じております。

 また、酪農の場合は、種つけという形で、とかくナイーブになりがちな性教育についても自然な形で勉強することができます。

 こういったものを大いに取り込んで、今、心や、いろいろなものを問われている教育というものについて、ぜひ大臣の思いというものを一言いただければと思います。

伊吹国務大臣 先般、各党の御協力をいただきまして成立をいたしました改正教育基本法にも、「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養う」ということが「教育の目標」に入っております。

 いじめその他の現状を見るにつけ、他人を尊重する、生きているものに対する姿勢、こういうものがやはり非常に私は薄れていると思います。

 ですから、先生がおっしゃった酪農の教育というものも当然でございましょうし、酪農の結果、卵その他が生まれてくるわけですね。そして同時に、先生のお地元でいえば、バレイショ、トウモロコシ、これはもうみんな命なんですね。食育という場を通じて、命をいただきながら私たちの命は保たれているということもまた理解しなければいけません。

 総合学習という制度がございますから、その中で、地域地域の学校が、特に北海道はもう酪農、農業の一番大きな地方自治体ですから、おのおのの教育委員会が、あるいは学校現場が特色のある学習をやっていただくということは、御指摘のように極めていいことだと思いますし、また、全国の教育委員会の担当者が集まった場合にも、おのおのの地域の実情に応じて総合学習の時間を使うように私たちからも話をしたいと思っております。

飯島委員 大変ありがとうございました。

 やはり学校現場が柔軟に、なかなか学校カリキュラムが、年間を通じて非常にスケジュールが過密であるという中で、いろいろな取り組みにまだまだ消極的な部分があると思いますが、弾力的に学校現場がいろいろなものに取り組めるように、ぜひまた支援策を講じていただきたいというふうに思います。

 それでは、文部科学省の方に早速お尋ねをしたいのですけれども、今大臣がおっしゃっていただきましたように、義務教育という、学校の、共同生活の場というのは、多くの学びの場として大変有効であると思います。こういった中で改めて学校教育、特に小学校、中学校の義務教育の大切さというものを見直すべきときだというふうに考えておりますが、このような時期に、今、中高一貫教育とか、それから学校選択制という言葉も片方では飛び交っております。

 ところが、私自身の選挙区の方に目を落としたときに、それ自体を否定するものではないのですが、実際には、少子高齢化が進みまして、高等学校が削減傾向にあります。それから、学区域も大変広いエリアにありますので、学校を選択することが現実的に難しい、そういうこともございます。そういった中で、やはり、都会のように塾もありませんし、義務教育にかける周囲の期待というのは非常に大きいわけです。

 ですので、何としても、やはり小学校、中学校というものが、中高一貫校も学校選択制もいいでしょうが、まず地元の小学校、中学校、この義務教育というものが果たす役割というのを、どこの地域においても、日本各地、全国、都市であろうが僻地であろうが、地方であろうが過疎地であろうが離島であろうが、同じようにしっかり教育を受けられるという体制をどのようにつくっているか、文部科学省の方に改めてお尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 義務教育は全国で行われる教育でございますので、全国どの地域にありましても、学習指導要領に基づきまして一定の水準の教育を実施していただく必要があるというふうに考えております。そのための必要な財政的な措置も、教職員給与費の負担等を通じまして、国として行っているところでございます。

 また、ただいまお話がございましたように、地域によりましては、学校選択ですとか中高一貫教育とか、現在進められているさまざまな取り組みができないところがあるわけでございますけれども、そういう地域の小中学校におきましても、それぞれの地域の実情に応じて、それぞれの学校がさまざまなアイデアを凝らして特色ある学校づくりを進めていくということが大切だと思っております。

 例えば、僻地や離島などにおきましても、小学生、中学生がともに同じ敷地内で学ぶという利点を生かした小中連携を進める教育でございますとか、あるいは他校との交流学習を積極的に取り入れるとか、あるいは周辺の自然環境を生かしまして、まさに地の利を生かした農業の体験学習を学校独自の教育として積極的に取り組むとか、こういった意義のある取り組みが見られるところでございます。

 実際に、私ども文部科学省といたしましても、モデル事業でございますけれども、豊かな体験活動推進事業というものを実施いたしておりますけれども、こういった事業の中でこのような取り組みを推進しているところでございます。

飯島委員 ありがとうございます。

 なかなか、都会と地方でコンプレックスが生まれてしまうような傾向がございます。何でも都会の方に行けば最先端の、お医者さんもそうですけれども、最先端の技術が身につけられる、それで医療過疎地ができてしまう。ですけれども、子供については、やはり田舎から都会に流れが行ってしまっている現状がわずかありますけれども、でも地方には学べるフィールドが、今おっしゃったようにたくさんあるということをよりもっともっと発信していただきまして、地方へ逆に学びに来るという新しい流れができるように、ぜひ文部科学省でもこの豊かな学校教育の取り組みについてPRの方をさらに進めていただければ幸いに存じています。

 引き続き、地元の方に目を落としました場合に、地域には農業高校とか水産高校といったものもあります。都会には商業高校、工業高校といったものがあるかと思いますけれども、こういった専門高校についてちょっと考えてみたいと思います。

 高校進学率が高まった現在に、普通科をどうしても選択する傾向が強いようですけれども、私自身が、専門教育を志した子供たちがやはりその分野できわめていってもらいたいというような思いも持っております。また、実際に現実のところでは、農業高校や水産高校に入学した子供さんたちを見ましても、即、卒業後に地元の一次産業に携わっているわけではありません。先に農業大学や水産大学などにさらに進学するというケースもありますが、そうした場合は一次産業の研究分野のような方に行ってしまいまして、片や地元の農業地帯や水産地帯では、若い担い手がいないまま、やはり後継者不足に悩んでいるという状況が起きております。

 できれば、そういった専門高校を卒業した子供たちが若い担い手として現場で活躍してくれることを望むわけですけれども、そういう中で、普通科の高等学校以上にこの農業高校や水産高校といった、ともすると、普通科がまずあってそれ以外に専門高校があるというような位置づけに思われがちな専門高校がもっと魅力を出して、ぜひそこに入りたいというように子供たちが思うような、選択ができるような施策というものは何か取り組みをされておられますでしょうか。

銭谷政府参考人 農業や水産業などの地域産業の担い手の育成に当たります専門高校の活性化を図るということは私どもも大きな課題だと思っております。

 私どもが実施をしております事業といたしましては、例えば、平成十五年度から、地域の大学等と連携をして先端的な教育に取り組む専門高校を支援する目指せスペシャリスト事業というものを実施いたしております。例えば、北海道の例で申し上げますと、岩見沢農業高校では、北海道屈指の豪雪地帯という地域の特性を生かしまして、地域農業と連携を図りながら、雪の冷熱エネルギーを利用いたしました農産物生産の栽培技術の開発を実施しているといったような例がございます。

 また、専門高校の活性化のために、このほかに、地域の産業界と連携をいたしまして、学校での教育と企業実習を組み合わせました実践的な職業教育を行う事業を実施したり、さらに、十九年度から新たに、経済産業省とも共同いたしまして、専門高校と地域産業界が連携して若手の物づくり人材を育成するための事業なども実施することを予定いたしております。

 こういった観点から、関係省庁とも連携を十分に図りながら、専門高校の一層の活性化を図ってまいりたいと考えております。

飯島委員 ありがとうございます。

 党の農林水産部会等でも、若い担い手の育成ということで、農業高校、水産高校にしっかりと光を当てていきましょうという一言が入っているんですけれども、やはりこういったものは各省庁連携して省庁横断的に取り組んでいかなければならない事柄かと思います。

 私個人の発想なんですけれども、かつて自分が大学に行っていたころに、もし教員の免状を取ってその現場で働けば奨学金を返さなくてもいいよというのがありまして、結局私は、そういう、教育長になったのがずっと後だったので、奨学金を返さなきゃいけなくなっちゃったんですけれども、例えば、農業高校に行って将来農業に従事したら学費が返納されるとか、あるいは、今営農支援とか集落営農とか農業分野ではやっていますが、専門の研究機関のスペシャリストではなくても、現場の指導員になれるとか、何かやはり、農業高校を出た、水産高校を出たということになれば、その期間にこれだけのいろいろな、特典と言ったら変ですけれども、こういったものがありますよ、ですからぜひとも、こういうところに入るとそういう方向に将来行くのであればいいですよということを、やはりより具体的に、子供たちが選択できるようなオプションをよりつけていただいて、日本の貴重な一次産業をある意味では主体的に守っていくということも大切なのではないかと思いますので、これからぜひ画期的なアイデアを御検討いただけますようによろしくお願いいたします。

 質疑時間が五分という連絡が入りましたので、なかなか与党は短い質問時間しかもらえないのが残念でございます。あちこち話が飛んでしまうので恐縮なんですけれども、残りの時間にぜひともちょっと一つだけ、また専門学校のあり方についてお尋ねしたい件がございますので、よろしくお願いします。

 これは医療現場の実情と看護学校のあり方についてのことなんですけれども、例えば、看護学校では、職業についた新卒の看護師さんというのが、就職してから、現場で一人でまずできますと認識している技術というのを調べましたところ、実は、基本的なベッドメーキングとか、基本的なリネンの交換、それから呼吸とか脈拍とか体温、血圧の測定とか、身長、体重を正しく測定するといった、本当に基本的な四項目ぐらいしかないということが明らかになっております。

 こういった状況の中で、今度は、入職から三カ月たっても、緊急時の気道確保とかそういったことについてはやはりまだ自信がないなという人が三割近くもいるんですね。入職三カ月といいますと、そろそろ先輩たちの手を離れて、夜勤も一人でやらなきゃいけないというような事態も起きてきます。一生懸命頑張って現場を支えてきた看護師さんたちは責任感も強いので、夜勤の重圧と、自分ができないというふがいなさで、三カ月を一つの節目にしてやめていってしまうという人たちが大変多いというふうにも聞いております。

 こういった状態は、今看護師不足と言われている中で、免許をせっかく取得したのにもったいないということも一つありますし、事現場においては、危険な医療行為、医療補助ということになってしまいます。医療事故が起きないようにするためにも、また夢や希望を持った看護師さんがしっかりとその精神を全うできるためにも、お互いのためにも、やはりトータルの、さらなる教育の拡充というのが必要なんじゃないかということを感じざるを得ません。

 お医者さんの方に目を落としてみますと、やはり臨床経験が必要だねということで、臨床経験二年間が追加されました。これによって現場の医師の不足とかいろいろな問題も起きてはいるんですけれども、やはり現場の経験をたくさん積むということが医療ミスやヒヤリ・ハットを防ぐということで大切なのだと思います。薬剤師さんにおいても歯科医師さんについても、やはりそれぞれの時代に応じたいろいろな教育が加えられております。

 ところが、看護教育については五十年以上も以前のまま。現場については、訪問看護とか在宅介護とか老年看護とか、いろいろな分野がさらにふえている。こういう逆行する中でぜひとも看護教育のあり方というものも今見直すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

清水政府参考人 看護教育のあり方についてのお尋ねでございました。また、先生御指摘の中で、医療現場における看護師の卒後研修といいますか、全体の生涯研修の体制というお話もございました。

 まず、まさに医療現場に出た看護師さんという形で、私ども、医療現場としては大学の病院を抱えております。今、卒後研修においては、すべての大学病院で、そういう意味ではかなりマンツーマンの指導体制をとっておりまして、採用した看護職員についてその実務能力、実践能力をいかに高めていくか、これは喫緊の課題として、例えば接遇のみならず安全管理、あるいはいろいろな意味での、例えば導尿、採血、吸入等々の機器の習熟、あるいはインシデントの分析等々、まさに医療チームの一員として看護師さんに活躍していただく。そして、まさに、職については、入職の不安をどうなくしていくかという観点からの研修等が行われているという実態がございます。

 そういう意味で、看護師の養成は、御指摘のように、専修学校が大体六割、大学、短大等々で行われているというふうな状況にあるわけでございますが、専修学校それ自体については、例えば、厚労省さんでいろいろな看護師のカリキュラムについて指定の要件等々を定め、そして私ども大学におきましては、学部教育ですべての看護学生が卒業までに学ぶべき学習内容として、例えば、実践能力にポイントを置きまして、ヒューマンケアの基本、あるいはケア環境、チーム体制の整備とか、さまざまな区分に基づいて到達目標を定める、こういう形でやっております。

 いずれにしても、臨床、臨地実習の充実を初め、実践能力をどう身につけさせるかというのが大きな課題でございます。今御指摘の卒後研修のあり方について、全体のさまざまな医療現場での卒後研修をどうするかというようなことについて、厚労省で来年度より、いろいろそのあり方についての検討も始まっております。そういう中で、私ども、厚労省と協力しながら、全体として看護職員の資質あるいは養成の向上のために努めていきたい、このように考えております。

飯島委員 ありがとうございました。

 このたびは、義務教育から高等学校、専門教育にまで、ちょっと幅広く、上の方だけを質問させていただきましたけれども、ぜひとも、それぞれの子供たち、生徒学生がその時期、その時代のニーズに合わせてしっかりと教育が受けられる体制づくりのために、現実性を帯びた議論をこれからもしていきたいと思いますので、どうもありがとうございました。

 質問時間が参りましたので、これで終了いたします。

桝屋委員長 次に、馬渡龍治君。

馬渡委員 自民党の馬渡龍治でございます。

 時間が余りないので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 昨年の改正学校教育法で、今まで存在が法的に認知されていなかった、通常学級に通う身体的、知的に障害を持つ児童の位置づけがなされて、七十五条の一項にその位置づけがなされて、それで支援の対象となって、特別支援教育支援員の財政措置もなされるようになったことは大変喜ばしいことだと思います。

 文部科学省の報告によれば、全国の小学校への就学児童のうち、平成十七年度に義務教育の学校に就学した児童のうち、就学指導委員会で盲・聾・養護学校に通うべきと判定された六千二百五十三人のうち通常学級に通うことになった児童が二百三十一人、特殊学級に通うべきと判定された一万二十六人のうち通常学級に通うことになった児童が二千三百七十四人、合わせて二千六百五人の児童が通常学級に在籍していまして、このうち十一人は通常学級に通うべきと判定されたということで、差し引き二千五百九十四人、大体二千六百人のお子さんが、今までは、文部科学省的にはいるべきではない子、いるはずのない子という扱いだったんですけれども、これが変わって、いいことだと思うんですが、それを類推しますと、大体、小学校一年から中学校三年までの間に、二万人近い、障害を持って通常学級に通っているお子さんがいらっしゃると思います。

 ここまで来ているんですが、実は、再三、保護者の付き添いを強要されたり、ほかの学校に、要するに養護学校に行きなさいと言われたり、この間は、昨年は千葉の小学校で担任の先生がお子さんを言葉で随分傷つけたということもありますが、こういった、要するに差別、現場での差別を文部科学省はどのように受けとめていらっしゃるのか、お聞かせください。

伊吹国務大臣 先生、ちょっと、非常に大切なことなので、私からお答えをしたいと思います。

 私も、地元の京都で、ボランティアとして、身体障害者団体連合会の会長を二十年ばかりやっております。そして、障害を持つ方々を支援する議員連盟の一員でもあります。先般もメールが来まして、今先生がまさにおっしゃっている学校現場のことについては、いろいろお訴えがあるんですよ。

 なるほど、今までは、保護者や専門家の意見を市町村の教育委員会が伺って、そして、振り分けと言うと失礼ですが、養護学校にするか一般学校にするかを決めておられる。今先生から御指摘がありました学校教育法を受けて、施行令を変えて、必ず保護者の意見を聞かなければならないということを今文部科学省はやっておるんです。

 それで、文部科学省的にとはおっしゃいましたけれども、これはちょっと、文部科学省的にではないんですよ。どこの学校に入っていただくかというのは教育委員会が決めるわけですね。そして、これはいずれ地教行法の改正の問題にかかわってくるわけですが、教育委員会が余りにも差別的というか、自分たちが、障害を持っている人を一般の学校に受け入れるのを嫌がりますよ。率直に言えば、経費がかかるし、他の児童生徒との進捗度合いが違ってくる可能性がありますからね。それは、余りにも差別的なことをしたときにおかしいと言う指示命令権が実は文部科学省にないんです。ですから、文部科学省的にというのはちょっと御訂正いただきたいんです。

 現場でどういうことが起こっているかというと、確かに、学校現場の方々と保護者の思いが違う場合、それから、保護者の中でもお母さんとお父さんの意見が違う場合があるんですよ。その非常に微妙なところを調整しながら教育委員会はどちらでやっていただくかということを決めていると思うんです。

 インクルーシブ、インクルージョンという基本的な考え方からして、そして、我々も、必ず保護者の意見を聞かなければならないという施行令の改正をしようと思っているということからしますと、文部科学省的には、できるだけ、今養護学校へ行っている人たちでも通常学校でやれる人がいるんじゃないか、そういう人はそちらへ入ってもらいたい、これが我が省としての地方教育委員会への依頼というかお願いの基本的姿勢でございます。

 現場の教育委員会でいろいろな、今申し上げたようなトラブルがありまして、私のところにも一日に必ず二、三通、地元にメールが入ってまいります。必ず私は、当該教育委員会に御連絡を担当者からさせて、そして、温かくお話を伺って、納得を受けて仕分けをするようにということは申し上げておりますので、ひとつその点だけは御理解いただいて、政府参考人に質問してやっていただきたいと思います。

馬渡委員 今の大臣の御答弁で十分安心しました。文部省的にという言葉は改めて、ぜひ大臣の今のお考えを先に進めていただきたいと思います。

 実は、なぜこんな状況が起きるかというと、まだ、その施行令の中に第五条というのがありまして、二十二条の三の表に該当するお子さんには入学期日等の通知を出さないというのがあるもので、これが現場の先生方の中で、もしかしたら差別の発言につながるものがあるのかなと。

 ですから、前文科大臣の小坂大臣は、このインクルージョン、要するに分け隔てのない教育に対して前向きなお話をいただきましたので、この五条を変えていくということについて大臣はどのようにお考えか、お聞かせください。

伊吹国務大臣 御指摘の五条も含めて、当然そういう方向であるべきだと思います。これは文部科学省の一貫した考えでございます。

馬渡委員 次に、放課後子どもプランがこの四月から始まりますが、所信の中で大臣は、「放課後に子供たちが安全で健やかに活動できる居場所づくりを推進する放課後子どもプランを本年四月から全国の小学校区で実施いたします。」と述べられました。

 実は、これと、放課後児童クラブというのがありまして、今地元でちょっといろいろな心配があります。

 現状では、今一万五千八百五十七カ所で、登録された児童が七十万四千九百八十二人、これは小学校の一年から三年の三百五十九万人の二割近いんですけれども、その子たちがその放課後児童クラブ、一部では学童保育という言い方をしていますけれども、五歳の年長保育に通っているお子さんが五十万人ぐらいいるそうですから、例えば、小学校に上がるまでの一年間で急に経済状況が好転して、もう保育は要らないというのはまずそんないないと思います。そこから考えると、一年から三年まで預かっていただきたいというお父さん、お母さんが、年長の五十万掛ける三として百五十万ぐらいのニーズはあるんじゃないか。だから、今七十万ということは、まだこれは半分しか達成していないから、学童保育というか放課後児童クラブ、もっともっといっぱいできてほしい、よくしてほしいというニーズはあると思います。

 ところが、この児童クラブで今、私の地元ですと、名古屋市なんですが、月二万三千円の保育費を払っている。それでも足りないのは、土地を借りて建物の運営もやらなきゃならない。バザーを年に何回かやって、それで本当に必死になって稼いでいるんですね。それでもだめだとカンパになってしまったりということで。

 そんな中で、もう一つ、名古屋ではトワイライトスクールという、夕方預かる居場所づくりがありまして、それが何か、二時間延長したら、新しく入るお子さんのお母さん、お父さんが、こっちはただで、こっちの保育の方は月二万三千円かかるから、そのときに、安易にと言ったらおかしいけれども、お子さんを、ではトワイライトスクールに預けましょうとやったときに、ここの人数が足りなくなって、児童クラブが閉所になったんです。

 ですから、今、児童クラブの保護者の方たちは、今文科省と厚労省が一緒になって進めるというこの放課後子どもプランによって、ひょっとしたら児童クラブがつぶされてしまうんじゃないかというような懸念を持っていらっしゃる方もいらっしゃるんです。

 御承知のように、離婚をされて一人親で、一生懸命働くけれども、子供をやはりしっかり預かってほしい、保育してほしいという思いはありますから、そこのところは厚労省がしっかりやって、それで、ほかの事業に対しては文科省がしっかりやるというように、お互いが足りないところを相互扶助するような、そういうプランを立てていただきたいと思うんですけれども、このことについてどう思っていらっしゃるか。これは文科省、大臣ですか。

伊吹国務大臣 これは、各地で不満が起こっておる現象なんですよ。私の地元も、児童館を使ってやっておられるところ、それから保育関係のところ、放課後子どもプランが空き学級を使ってどんどん進んでくると、従来やっていた人たちのところへ子供を預けていたのが、放課後子どもプランの方へ移ってくる。

 ただ、これは、私は、各教育委員会がいろいろ計画を立ててやっておるんでしょうが、京都の教育委員会に言っているのは、これは縄張り争いのためにやるんではないよと。保育協会とか児童館の連盟だとか、あるいは小学校のPTAだとかというのが、お互いに自分たちの縄張り争いでやるんではなくて、子供のためにやるわけですから。だから、従来確立している地域、学校区では、あえてつくらなくてもいいものはつくらなくていいじゃないか。だけれども、そこですべての子供さんを預かれないところは積極的につくってもらわないと、放課後の子供の居場所がない。そして、お互いに地域の方々も協力をされて、どこに子供を預けるのがいいのかということは、これはやはり保護者が最終的に選択するんですね。そういう形がいいんじゃないか。

 だから、何か児童館や保育所でやっておられるものがあるところへ、それをつぶして入っていくということまでやる必要はない、こういう基本的な考えです。

馬渡委員 そこで、ぜひこれを機に、文部科学省からも厚生労働省側にいろいろサポートしていただければなと。そもそも、この児童クラブは、昭和四十一年に文部省が始めて、いろいろな経緯があったようですが、今は厚労省がやっておられる。

 そこで、何か、昨年二月に連携して通知を出して、市町村に協力を願うということで、その差出人が生涯学習政策局長と、厚労省側は雇用均等・児童家庭局長と、連名でなされたそうです。ことしまた二月にやられるんですよね。今度は銭谷局長のお名前も何か書かれてされるようなことを聞いていますけれども。パワーアップして。同じパワーアップするんだったら、一番強力なカードの大臣のカードを出していただいて、各市町村に、とにかく連携して一緒にやってくれということで。

 例えば、敷地とか、施設、教室を借りられないところもあるんです。それから、退職された先生方で優秀な方を指導員として、こちら側の、クラブ側の方で御活躍をいただける場もありますし、そういったところを文科省側からぜひ御指導いただきたいな。

 時間がないので続けて、一番ここが言いたかったので言わせていただきますけれども、実は、先ほど申し上げましたように、多くの障害を持つお子さんが通常学級に通われております。この四月から放課後子どもプランを実施するに当たって、障害を持つお子さんも一緒に参加をしたいといったときに、これを当然拒むことはできないと思います。ですから、その対応というのは大変大切なことだし大変だと思うんですね。

 ところが、文科省側の予算が六十八億二千万円ですか、これで、全国一万校でやるに当たって障害児童の対応もちゃんとできるのかなという、ちょっと不安があるんですけれども、そこのところは厚労省側としっかりと連携をとって協議をしていただいて、もう四月ですから時間もありませんから、万全の対応をしていただきたいな、こういう思いがありますので、まとめて、大臣と文科省からと、お願いします。

伊吹国務大臣 どの名義で出すかというのは、これは極めて事務的な訓令みたいなものがあるので、事務的にお答えさせます。

 障害を持っておられる方も、一番最初の先生の御質問の精神を踏まえて、十分温かく受け入れるように。ただ、通常の学校と障害、養護学校との割り振りと同じようなことはやはり若干は考えないと、これは膨大な予算になってしまってはいけませんので、その辺は注意しながら、温かい気持ちで対応させるようにいたしましょう。

 事務的にお答えさせます。

加茂川政府参考人 二点お答えをいたします。

 委員御指摘の放課後子どもプラン実施に当たっての連携通知の名義でございますが、大変事務的なことで恐縮でございます。文部科学省が発します通知の名義につきましては、文書決裁規則というのがございまして、これに従って定まるわけでございます。この規則によりますと、地方公共団体その他の機関を含む行政機関等に対しまして通知を行うための文書の名義についてございますが、官房長、局長、いわゆる局長通知になるという定めがあるわけでございます。

 今準備をしておりますけれども、厚生労働省と十分連携をとりながらこのプランを進めようとしておりますけれども、改めての依頼通知につきましても、この規則に従って、私、すなわち生涯学習局長等の名義になる予定でございます。

 もう一点、放課後子どもプランで障害を持った子供さんたちを受け入れる場合の配慮についてでございます。

 委員御指摘のように、希望者がある場合には決して拒まず受け入れることでいろいろ準備を進めておるわけでございますが、当然、こういった特別なケアが必要な子供さんを受けとめる場合には、例えば専門的な知識を持つ支援員でございますとか、そういった方の配置が望ましいわけでございます。個々の学校の状況、地域の状況に応じた、いわば弾力的な対応が必要だと認識をいたしておるわけでございます。

 これまでの私どもの地域子ども教室推進事業におきましても、実は、事例としては少ないわけでございますが、例えば、養護学校を、その場を活用しての受け入れ事業でありますとか、NPOの協力を求めながら取り組んだ事業等、障害のある子供さんたちも含めた取り組みがなされて、そういう実績もあるわけでございます。

 こういったことも踏まえながら十九年度の事業を進めたいと思っておりますけれども、引き続いてこういった取り組みがより進んでいきますように、各公共団体に対しまして、実情に応じた、必要な人的体制も含めた協力が求められますようにお願いをしてまいりたいと思っております。

馬渡委員 きょうは大臣からも前向きな御答弁をいただきましてありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。

 時間が来ましたので、これにて質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、関芳弘君。

関委員 おはようございます。私は自由民主党の関芳弘でございます。本日は、藤田委員に交代をしていただきまして、ぜひとも大臣にいろいろな教育の夢をお伺いしたいと思いまして、質問をさせていただきます。

 私は、大学の受験で一回失敗しまして、浪人のときに京都の駿台に行っておりまして、大臣のおひざ元、京都でございますが、全然勉強もせずに、夜な夜な京都の御所に八人の浪人生が行っては、月を見ながら将来の夢を語っておりまして、僕は将来坂本竜馬みたいな人生を送りたいなとか、木戸孝允みたいなのがいいなと、天下の浪人のことを受験浪人が語っておったようなことで、夢ばかり語っておったような学生生活を送っておりました。そういうような、京都でいろいろないい文化の空気を吸わせていただいていましたので、本日は、大臣にも、京都御出身ということで、いいお話を聞けるのかなと期待させていただいておるところでございます。

 まず一つ目の質問でございますが、大臣が所信でおっしゃられておりますとおり、今、家庭や地域社会というものは実質的にもう崩壊しておるということをおっしゃっておりますが、私もまさにそのとおりだと思っております。社会全体が非常に無責任な体質になっているんだと本当に危惧をして仕方ありませんが。

 例えば、生徒が何か不祥事をしました、そのときにテレビに出て謝っている、会見しているのは親でなくて学校の校長先生とは、僕はそれは不思議で仕方がないんですね。それから、私もPTAの役員を何年かやりました。もうPTA大好きでございまして、やっておったんですけれども、PTAの方から的外れな要求とか無理難題の要求をいっぱい言ってきます。そんなの、親が子供に対してやらぬといかぬことじゃないのみたいなこともいっぱい言ってくるんですね。何だろう、親の責任は何なのかなとすごく思っておった次第でございます。

 また、地域社会の活動についても同じようなことが言えるのかなと思っておるわけなんですが、今いろいろな資料を見ていますと、地域の社会活動なんかに参加している人は二〇%にも満たないのかな、こんな状況だ。また、隣人の顔も知らないなというふうな人も多いみたいですね。よく、毎日の生活から見ておれば、例えば悪い子供がいる、それをしかる近所の人たちはどれだけおるんだろう、信号無視をしている子供がいたらだれが怒るんだろう、体の悪い人が電車で立っている、席を譲る人がどれだけおるんだろう、こんな世の中ですよね、今。これは社会全体が無責任な体質になっていて、本当に私は悲しいな、これはもう本当に時代を変えていかぬといかぬのだなと思っておるところでございます。

 このような中、大臣が所信でおっしゃられておりますことで、教育の再生は教員の資質に尽きるんだ、そのために人事管理システムの構築が必要だということをおっしゃってくださっています。

 私は、もう本当にこれは大事なことだなと思っておるところでございますが、ある資料によりますと、教師に、なぜあなたは教師になりたいんですか、そういうふうな質問をしたらしいんですね。子供をはぐくむために、本当にそれが大事なことだと思って私は教師になるんだと答えた人というのは三割にも満たないぐらいだと。残りの七割ぐらいの人は、自分の生活の糧のためですよ。それも仕方ないかもしれませんけれども、一般の企業なんかだったら大概そんな形だと思うんですけれども、ただ、教師というのは師でございます。いわゆる士師族である一つでございまして、代議士なんかも士と言われておりますが、一般の国民というのは、教師に対しては、士師族としての資質を非常に期待しているんじゃないかと思うんですね。

 こういうような中で、私は、本当にこの士師族というのはどういうものかなといいますと、例えば代議士なんかであれば、選挙を通して、この人はもうだめだと思ったら、もう次の選挙では通らない。また、お医者さんなんかでも医師ですね。余りいい医療、診療ができていなかったら患者が来ないという、やはり厳しい状況に置かれている。そのような中で、教師というのは今までちょっとぬくぬくしていたんじゃないかなというのが、正直ベース、私の感想でございます。

 企業であれば、組織に入って、社長の指揮命令系統の中、物すごい厳しい管理体制の中に入って、一糸乱れぬ行動をみんながとっていくような形でございますが、このような中にあって、非常に大事な教育という分野を担当される教師、その人事管理システムを今後確立していこう、大臣のその所信につきまして御説明をいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 教育の原点は、やはりどういう先生にめぐり会えるかということにかかっていると思います。これは、よき教師の基準というのは非常に難しいと思いますね。知識が十分なければならない、同時に、人間的な深さ、幅がなければならない、そして、単に児童と向かい合うだけではなくて、保護者や地域社会の方々ともある程度大人として話ができねばならない。

 しかし一方で、地域社会と家庭が崩壊しているというのは、これをどう直していくかということを考えないといけないと思うんですね。

 先進国では、経済が発展したときに必ず起こる現象は、土地というものを離れて生計を立てていく、つまり、農業から工業化が進んでいく。そうすると、土地に家庭というものが残りませんから、結局都会へ出ていく。そうすると、三世代一緒に暮らせるという基盤が崩れてくるわけですよ。同時に、女性は社会に進出して、いろいろな分野で活躍をしておられますよ。女性を産む機械なんて言って家庭に縛りつけちゃったら日本社会は崩壊しますよ。しかし、家庭ということから考えると、子供が学校終わったときに、御家庭へ帰ってきたとき、だれもいないんですよ、今は。その重荷を一身に教師はまた背負っているということも考えてあげないといけないんですね。

 マスコミや、我々も注意しないといけないんですが、何か事態が起こると、その一事をとらえてずっと教師を批判したり教育委員会を批判したりしますが、実は、平穏無事に、何も表に出ないためにどれだけの努力を教師がして、どれだけの教育委員会が頑張っておるかというのは何ら報道されないんですよ。

 ですから、先ほど飯島先生がおっしゃったように、十分知識を蓄えず、かついいかげんなことをしたり教育者の本分を忘れている教師については、今中教審に、認定だとか免許の更新だとか人事管理の厳格化だとかということをお尋ねしています。しかし同時に、教師というのは、やはり先生がおっしゃったように、まさに師ですから、この方々の待遇だとか何かについてはやはりそれなりの国民的な配慮をしないといけないですね。

 これは、去年の年末の予算編成で二・七六%カットするというのを私はけっ飛ばしたんですけれども、ことしの暮れの予算編成で、そこはひとつ勝負をしないといけないところだと思いますね。先般、優秀な教員を初めて、私の代になって、全国から出てきていただいて表彰しました。そして、安倍総理大臣も出てきて、教師の方々にお礼のごあいさつをされました。

 やはり、いい教師を守り立てていくということとそれから厳格にやるということは、両々相まって初めていい先生が出てくるんだ。こういう先生に教えてもらって、尊敬を受ける先生に教えてもらってという児童が一人でも多くふえるように、みんなで努力をしたいと思っております。

関委員 今大臣がお答えいただいたとおりだと私も思います。

 本当に私も、生まれは実は徳島でございまして、鳴門教育大学というのがございます。いわゆる文科系の学生で非常に優秀な学生はみんな徳島では鳴門教育大学、学校の先生になっていくんですね。たくさん友達も私もおるわけなんですが、本当に一生懸命頑張っている友達、先生、たくさんおります。やはり、そういう人たちがますますこの後本当に教育をしやすい環境にしていただくと同時に、また一方、そうでない方がいた場合には、その人たちをまた更生していただき、またそれなりの人事管理システムを導入していただくというところが大切だと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 そして、二つ目の質問なんですが、今も大臣御答弁いただいた中でございました。今、子供たちの教育というのは、いろいろなこと全体が一つとなって教育がなされていく。学校は一部分が担当となるんですが、当然、学校でもいろいろな制約があり一部分しか担えないというところだと思います。そのとおりだと思います。そして、家庭や地域社会が実質的に崩壊していっている、このような状況におきまして、実はこれを大臣に聞くのは的外れかもしれませんけれども、いわゆる学校の教育ではこの部分までが実際には範囲で限界なんです、それ以外のところをやっていって初めて教育は全体が成り立つんだというふうなところもあるかと思います。

 例えば、総務省の方では、コミュニティ研究会という、地域社会の交流についての研究会が立ち上げされました。

 また、このような中、私は、やはり子供の教育というのは愛だと思います。人が人を愛すること、子供が親を慕っていくという原則があるのは、やはり親が子供を愛するからだと思うんですね。その愛する気持ちが今何かなくなっていっている、それを本当に再生していかないといけないというのが世の中の最大の今ポイントではないかなと私は思うわけでございます。

 このような中にありまして、放課後子どもプランとか、いろいろ今、文部科学省の方でも大事な大事な施策にこれから取り組んでいかれようとしておるところでございますが、この愛の提供について、文部科学省がされるその項目とあわせまして、これは文部科学省以外のところにも頑張ってほしい、どうしても必要だというところにつきまして大臣に御意見をちょうだいしたいと思います。

伊吹国務大臣 先般各党の御協力をいただいて成立いたしました改正基本法では、児童の教育の原点は家庭にあるということを明記しておるんですね。それと同時に、学校、家庭、地域社会の相互の連携をやるということが十三条に書かれているわけです。

 ですから、私は、本来、従来の流れでいけば、やはり学校は知識を教えるところ、生きる知恵は家庭と地域社会で教えるんだと思うんですが、それがみんな今学校へ集中して、教師の肩にみんなかかっちゃっているわけですね。だから、先生がおっしゃった放課後子どもプランとかそういうものは、少しその教師の重荷を地域社会が引き受けていこうじゃないか、あるいは公的資金で、税金で引き受けていこうじゃないかという流れなんです。

 私は、一番大切なことは、これはやはり、教育は国家百年の計と言われますが、二百年ぐらい私はかかるんじゃないかと思いますけれども、同時に、公共事業の使い方、税制のあり方それから労働法制、こういうものを総合的に考えて、地域社会と家庭の復権をどういうふうに持っていくのか。本当は教育再生会議がそういう議論をしていただけるといい場所だと私は思うんですけれども、ここのところが少子化対策であると同時に教育再生のかぎだと私は思うんですね。だから、大平内閣のときに田園都市構想とかというものをずっとやっておられたんですが、あれが途中で途絶えちゃったというのは私にとっては大変残念だなという思いもあります。

 文科省の枠を超えてということでございますので、そんなことを私は考えております。

関委員 まさに大臣おっしゃるとおりで、私も教育再生会議の方でいろいろ議題としていただきたいのは、教育の枠を超えた、公共投資だとか税だとか労働法の関係とか、そういうふうな全般のところまで含めて、今それぐらいの取り組みが教育の再生には必要だろうと私も本当に思うところでございます。

 このような中、子供の教育、国家百年の計、大臣は今二百年かかるだろうとおっしゃられた、そんな状況にある中で、今、いじめの問題というのが非常に大きくクローズアップをされているところでございます。

 ちょっと皆様のお手元の方に配らせていただいたこの資料、日刊工業新聞の一月五日、ことしの新聞でございますが、伊藤忠商事の社長の小林栄三さんが福井県立若狭高校を卒業された。五十七歳でございますが、ホーム制というのがその高校ではございましたと。「先輩後輩絆強く」と真ん中のところで濃い字で書かれておるわけなんですが、ちょっとこれをまた後でも読んでいただきたいと思うんですけれども、学校に一組、二組、三組とありましたら、一組には一年から三年生が例えば十人ずついる、二組にもそのようになっていて、三組にもそのようになっていて、ホームルームという時間はそのホーム制で過ごして、学業としての授業は分かれてまた受けに行くというふうなところで運営がされていて、この一番左下のところに書かれていますが、十年前にはなくなったということなんです。

 そういうふうなときに先輩、後輩のきずなが強くなって、何があったか。ここには一つの家族のような、兄弟のような組織が存在していたんじゃないかな、意識が存在していたんじゃないかなと思います。例えば、一年生同士がけんかをしていたら、二年生、三年生がとめる。また、ほかのクラスと一年生同士がけんかをしていたら、お互いの二年生、三年生同士が話をするだとか、そういうふうないいつながりができていたのではないかなと思います。本当に愛を感じるような家族制度の一端がここにあったのかなと思って、なくなったことは私は非常に残念であったと思います。もちろん、プラスの面もあればマイナス面もあってそのようになったんだと思うんですが。

 このホーム制というふうな制度、いい制度だなと思うんですけれども、これを今後すぐに取り入れてくださいとか、そんなむちゃなことは言いませんけれども、このホーム制について大臣がどのようにお感じされますか、御意見をいただければと思います。

伊吹国務大臣 先生からいただいた日刊工業新聞の記事は読ませていただきました。

 これは、ないものを今さら話をしても、私も年をとってしまったということなんですが、我々が子供のころは隣組制度というのがまだありまして、ちょうど私、終戦のときが小学校一年生だったんですが、学校へ行くのも、六年生から一年生までみんな一緒に行くんですよ、集団登校というんですか。だれかがいじめられると先輩が出てきて、まあまあとかやる。同じ学年でも、いじめがあると餓鬼大将が出てきて、おまえ、いじめちゃだめじゃないかとか、こういうことをやっていましたね。私はそういう経験はないんですが、旧制高校は寮制度というのがあって、一年生、二年生、三年生が全寮制でみんなそこへ入っておられました。

 こういう試みは非常にいいことだと思います。教育委員会の担当者の会議がありますので、そういううまくいっている成功事例というのを各県からやはりアピールする場があるんですよ。それをいいなと思って持って帰ってやれる感性がある教育委員会と、ない教育委員会があるということなんですよ。それを、こうやってくれと言う命令権が実は我々にないんですよ。これは地教行法のときに、そういうことも含めてよく御議論いただきたいと思います。

関委員 大臣に余りたくさん、ちょっと時間がありませんでしたからお答えいただく内容が、もっともっとたくさんのことをお答えいただいて、いろいろな質問をさせていただきたかったんですけれども、ただ、そのお言葉の中にそれぞれ、教育はやはり愛情なんだな、地域のきずななんだなというふうな御発言、多々私は受け取れまして、それを具体化、法案化していくときの基本的なところが、今後ますます私もしっかりと頑張っていきたいと思いますし、その方針が私の思う方向性と、私も自分の考え方が間違っていなかったなと思って、本当に本日はうれしく思いました。

 やはり子供は日本の宝物だと思います。こういうような全員の子供たちに、教師、学校の先生方がしっかりとみずからの行動をもって、規範を守ることや組織の中で行動をとることの大切さを愛情を持って表現していって、規範を示す、また道徳心や倫理観を先生がみずからの行動をもって示していく、それこそが子供たちの中に、本当に心の中にしみわたっていくんだろうなと思うところでございますので、しっかりとまた、ことし、山場の年だと思います、私も頑張りたいと思いますので、大臣、どうぞ御指導のほどよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 おはようございます。松浪健四郎でございます。

 一月の二十四日に教育再生会議が第一次報告を発表されました。七つの提言と四つの緊急対応ということでございました。読ませていただいて、なるほどということがたくさんあるわけでございますけれども、私は、どうも残念だなと思う点が一点ございます。それは、申しわけなさそうに、体力をつける、本当のその一言なんですね。

 現在、いじめであるとかいろいろな、もろもろの問題が教育問題を席巻しておるわけでありますけれども、私は、体力をつけるということが学力をつけることと等しく論じられるべきではないのか、こう思っております。

 と申しますのは、体力がなければ勇気が出てこない、勇気がなければ犠牲的精神を発揮することができない。そう思いますと、人としての活動、行動をするには、やはりまず体力があった方が好ましい。それを初等中等教育機関できちんとやらないということになりますと、今問題になっております生活習慣病、これらはすべて運動不足からくる、こういうふうに言われておるわけですけれども、運動する、体力をつけるということは、小さいときから学校教育の中で行うべきではないのか。

 それで、統計的な数字を見ますと、一九六五年、いわゆる東京オリンピックが終わってから、日本の子供たちの体力はずっと上がってまいりまして、一九八〇年をピークに、今度は一転して下り坂に向かいます。そして、現在の子供たちの体力は、一九七二年から七三年程度のレベルに達しております。もしかしたならば、またもっともっと落ちていくのではないのか、こういうふうに心配をしております。

 そこで、学校教育の中で体力をつけるということ、これは必要だと私は思うんですが、まず大臣の所見をお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 これはもう、先生のおっしゃっていることに反対の人はだれもいないんじゃないでしょうか。

 今、小学校では週三時間、中学校でも週三時間、高等学校で大体二時間から三時間、これは高等学校によって違いますが、体育の時間をとっております。この時間は、実は我々、私が小学校にいたときとそう違わないんですよ。問題は、学校が終わった後、昔のように遊び回って体を動き回すというところがほとんどなくなって、食べ物が、メタボリック症候群の原因になるようなものばかり子供のころから食べているということですよ。

 そこで、先般、優秀教員の表彰式があったときに、有馬元文部科学大臣が来てお話しになっていましたけれども、日本人の学力は言われているほど落ちていない、特に理数系はすばらしいんだ、ただ、圧倒的に落ちているのは、先生の御指摘なんですよ、体力が落ちている、特に運動能力が落ちている、これだけは何とかしなくちゃいけませんよということをおっしゃいました。

 単に学校の中でやることだけではやはり追いつかないと私は思います。ですから、スポーツ振興基本計画というものがあるのは御承知のとおりですが、これを改定いたしまして、生涯にわたって、特に子供のときからいろいろ地域でスポーツに親しんでいけるような、そして、ボランティアとして、土曜日、日曜日、少年野球だとかサッカーだとか何かで子供をいろいろ支えてくだすっている人たちをどう評価していくかとか、そういうことも含めて、総合的にやはり体力をつけていきたいと思います。

松浪(健四郎)委員 ぜひそうしていただきたいんですけれども、もう一つのお願いは、生涯スポーツを文部科学省は一生懸命奨励し、それなりの施策を講じておることは承知しておりますけれども、大事なことはやはり、スポーツ好きになる、運動好きになるという動機づけなんですね。

 となりますと、小学校の体育の授業で、スポーツはおもしろい、運動はおもしろいということをきちんと教えるためには、教員の採用では、一流の有名なスポーツ選手等、活躍した選手等を優先的に採ろうというような方向にあることはうれしいんですけれども、やはり小学校では、教員免許の問題もございまして、音楽、図工そして体育、書道も入るかもしれませんけれども、この辺は専科教員を置いて、ちゃんとした専門的な教育を、動機づけを行う上においてやる必要があると私は思うんですね。

 ですから、小学校の先生方がすべての教科を教えるというのには無理がある、そういう意味では、一歩進めて、専門の先生を小学校に置く、特に体育、音楽、図工、書道、これは必要だ、こう思うんですが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 おっしゃっているようなことがあってもいいと思いますが、同時にやはり、生徒の生活指導その他と全く無関係というわけにはいきませんから。すべての教科を教えなければならないというやり方は、参考人に説明させますけれども、必ずしも今とっていないんじゃないかと思います。ですから、専門的な分野で教えていただく先生がおられても義務教育の中では私は構わないと思いますし、またそういう免許も実はあるわけですから。詳細は参考人から説明させます。

樋口政府参考人 御案内のとおり、小学校では全教科を先生方が担任されておられるわけでございますので、体育の指導の充実を図るために専科教員を私どもとしては充実するという方向で、今その方向での取り組みを進めさせていただいているところでございます。

松浪(健四郎)委員 ぜひお願いしたい、こういうふうに思います。

 と申しますのは、我が国は世界一の平均寿命を誇っておりますけれども、ただ生きているというだけでは物足りないのではないのか。やはり健康寿命を延ばす必要がある、そしてそれが社会保障費の支出を抑えることにもつながる、自分の体は自分で動かすことができ、自分で生活ができる、そういった国民をつくっていく必要がある。その意味においては、初等教育機関において、体を動かすというようなことに力を入れていただきたいというお願いでございました。

 次に、最近話題になっておりますことは、小児科の先生が足りない、産婦人科の先生が足りないということが一つの社会問題となっております。これを解消するためには厚生労働省が一生懸命やらなきゃいけないのか。私は、それよりもまず、文部科学省が医学部の定員をふやしたらいいのではないのか、こういうふうに、単純ではございますが、思います。それについて、どのように大臣お考えでいらっしゃいますか。

清水政府参考人 大学における医師養成につきましては、私どもと厚生労働省、かねがね連携を持って進めてきているところでございます。

 先生御案内のように、医学部の入学定員でございますが、昭和五十七年及び平成九年の閣議決定を受け、医療費の適正化等の観点から、医師の過剰を招かないという政府の方針のもと、厚生省から当時から示された医師数の削減の考え方を踏まえ、既存の入学定員の削減を行うとともに、新たな入学定員増は行わないとしてきているところでございます。

松浪(健四郎)委員 そうしたら、昨今の、小児科医が足りない、産婦人科医が足りないということについてはどのようにお考えですか。

清水政府参考人 御指摘のように、近年の医師の偏在等が指摘される中で、厚生労働省は、昨年の七月に、医師の需給に関する検討会報告を取りまとめ、医師不足県における定員の暫定的な調整の検討というものが示されたところでございます。そういう意味で、昨年八月に、医師不足県における暫定的な医師養成数の増等について、文部科学大臣、厚生労働大臣、財務大臣、総務大臣の合意が行われ、暫定的に、医師不足県十県におきまして、具体的な定員のあり方について関係審議会で検討を行うなどして、私ども、その対象県における大学医学部の定員増の実現に向けて取り組みを今進めている、このような状況でございます。

伊吹国務大臣 これは、松浪先生、医学部の学生を採用するときには、小児科医志望学生という募集はしないんですよ、産婦人科志望学生という募集はしないんです。ところが、少子化現象がずっと起こってきますから、どうしてもやはり……。

 それから、勤務実態が非常に厳しいですよ、小児科医や、特に産科は。産科の場合は、自分の過失じゃないんだけれども、生まれてきた子供に障害が生じた場合の求償の問題だとかいろいろなものがあって、そこへ希望される方が非常に少ないわけです。

 ですから、トータルの医者の数というのは、厚生労働大臣がたびたび予算委員会でも答弁しておるように、そんなに足らないわけじゃないんですよ。もちろん地域的に偏在していることと、診療科目による偏在があるんですね。ですから、これは入学定員をふやしたら解決するという問題じゃなくて、むしろ厚生労働省で、不足している科目の医師あるいは過疎地の医師について、診療報酬上どういう手当てをしてあげるとか優遇の手当てをしてあげるとかいう問題提起をして、そしてそちらへのインセンティブによって、医学部の中で、産科、小児科に行くという、手を挙げる人をもっとふやさないと根本的解決にならないんです。

松浪(健四郎)委員 いずれにいたしましても、お医者さんがいない過疎地、離島、これらがまだ我が国にあるということ、そして、これは厚生労働省だけの問題ではなくて、文部科学省にもその責任の一端があるという認識を持っていただいて、そして先進国としての医療行政に御尽力賜りたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、今一番話題として騒がれておりますのは、大相撲の問題であります。

 大相撲は、申すまでもなく、大正の初めごろから国技と言われております。一体、国技というのは、どんな面から、またどういう意味を持って国技と言うのか、それについて、ちょっと大臣、お尋ねしたいと思います。

伊吹国務大臣 これはちょっと、非常に難しい御質問で、国技の定義というのは政府が正式に決めたものではありません。

 しかし、日本の長い伝統の中で、例えばいろいろな古い、古典のようなものをひもときますと、奈良時代とか平安時代に禁裏において「すまふ」が御前において行われたとか、織田信長が相撲をとらせたとか、そういうことはよく出てきますね。ですから、やはり、長い日本の歴史の中で定着をしてきた日本固有の運動というかスポーツというものを総称して国技と言っておられるというようなことじゃないかと思います。

松浪(健四郎)委員 大臣がおっしゃったように、古事記の中に国譲りの相撲、そして日本書紀にも相撲については詳しく書かれてあります。そして、歴史を勉強すれば、節会相撲から、そして今日に至るまで、我が国の歴史と並行して相撲というものがこの国で行われてきた、こういう歴史、伝統がある、我が国を代表する一つの身体文化である、私はこうとらえております。そして、それであるがゆえに、天皇、皇后両陛下も時に相撲を観戦にお出かけになるんだろう、私はこう思っております。

 これは、スポーツ人類学的に言いますと、神占といいまして、相撲の原点は神占である、そして、我が国にありましては、五穀豊穣と天下太平を願って相撲をとったという神聖な、また崇高な歴史があるわけでございますけれども、どうもその相撲の内容がおかしい、こういうふうに強烈に報道されておるわけであります。そのことに対して、大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

伊吹国務大臣 いやもう、先生のおっしゃったことと同じように考えておりますけれども。

松浪(健四郎)委員 これは、戦後からずっと定期的にこのような疑惑がございまして、そして、今回の報道が一番深刻ではないのか、私はこう思っているんです。

 報道によりますと、文部科学省は、日本相撲協会から六日に事情聴取したというふうに報道されておりますが、その内容についてお尋ねすることができますか。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、大相撲のいわゆる八百長問題について一部報道等があったわけでございまして、私ども、これを受けまして、お尋ねの件の事実関係につきまして、この二月の六日に、財団法人の日本相撲協会にお越しいただきまして、御報告を受けたところでございます。

 相撲協会からは、八百長の疑いがあると報道されました関係の力士に対しまして事情聴取を個別に行ったところ、報道の内容は事実でないことを協会として確認したこと、そして、これに基づきまして、協会としては、弁護士とも相談をしながら、今後民事訴訟の提起を行う予定である、こういう報告を受けたところでございます。

 なお、その際、文部科学省といたしましては、協会に対しまして、公益法人として適正な業務運営を行うように指導したところでございます。

松浪(健四郎)委員 業務運営を適正に行うように指導したということですが、業務運営というのは一体何なんですか。

樋口政府参考人 相撲協会の業務運営というのは、これは大相撲の試合でございますので、それぞれの相撲のそれぞれの試合がやはり国民に信頼されるように、疑惑を招くことがないように、適正に行われるように、協会が主体的に大相撲の適正な業務運営に心がけていただきたいということを要望したところでございます。

松浪(健四郎)委員 これ以上深く追及はいたしませんけれども、相撲協会は刑事じゃなくて民事でもって法的措置をとるというふうに報道されておるんですが、文部科学省としては、この法的措置をとるということについてはどのような見解をお持ちであるか、お尋ねしたいと思います。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 この問題は、あくまでも財団法人日本相撲協会が自主的に、主体的に解決すべき問題であろうということで、私どもといたしましては、報道の内容が事実ではないということを踏まえまして民事訴訟を起こされるということでございますので、この民事訴訟等の行方を見守ってまいりたいと思っておるわけでございます。

松浪(健四郎)委員 この疑惑、私は八百長という言葉は一切使いませんでしたけれども、文部科学省がお使いになられたので私も使いますけれども、二〇〇〇年一月に、元小結の板井氏が八百長問題を提起して世界じゅうに報道されたことがありました。このときは、日本相撲協会は大人だな、私はこう思ったんですよ。お相撲さんが、力士が事実無根だ、こう言っているわけですよ。そして、今回もそう言っているわけですね。それをわざわざ裁判にまで持ち込んで、昔なら横綱というのは実は神様なんですよ、それを法廷にまで引き出して、それをやるということ。

 主管の文部科学省は、いや、相撲協会の自由だというような考えでいいのかどうか、指導が足りないのではないのかと私は思うんですが、いかがですか。

樋口政府参考人 この問題は、あくまでも公益法人としての財団法人日本相撲協会が主体的に行うべきものだと私どもは考えておりまして、この報道された件につきましても、相撲協会が、みずからが適切と判断した対応をおとりいただくことが肝要であろうかと認識しておるところでございます。

松浪(健四郎)委員 かつてオリンピックで、日本のエースであった山下選手が、決勝戦に臨むときにけがをしたんです。相手はエジプトの選手でした。そのエジプトの選手は、山下選手の弱い足を攻撃することはなく、敗れたんです。これは何と呼べばいいのか、ちょっと文部科学省の考え方を聞きたいと思います。意味わからないですか。

伊吹国務大臣 いや、ちょっとそれは、参考人に聞くのは酷だと思いますから。

 これはやはり、見方によって、勝負というのは厳しいものだから、けがをした足をラシュワンは攻めるべきだったということからすれば片八百長ですよね。しかし同時に、そういうことはスポーツの精神から適当じゃないと思えば、これはフェアプレーの精神ですよ。ですから、それは見る人によって違うことだと私は思います。

松浪(健四郎)委員 ですから、法廷闘争なんというのは無理じゃないかということを私は申し上げたいんですね。当然のことながら、お互いに金銭のやりとりをして、そしてそれを仕組んでいたとしたならば、これはやはり国技として恥ずかしいことだ、こう思いますけれども、すべてがそうなのかということを私は法廷で明らかにするのは難しいだろう、そして、泥沼化することによって国技の名誉に傷がつくことになりやしないかということを心配しておるわけなんです。ですから、いろいろあっただろうけれども、この板井発言の問題があったときに、相撲協会は大人の対応をされた、そして鎮静化したわけなんです。

 私は、もうこの報道で十分綱紀粛正がなされた、こう思っておりますし、春場所を楽しみにしておりますけれども、やはり、我々が国技を汚してはならないし、そして、その中にいる人たちは堂々と胸を張って、おれたちはこの国の文化、伝統を担っているんだという自覚を十分に持ってもらうようにすることこそが大切だ、私はこう思っております。

 そして、八百長は、今大臣からお話がありましたように片八百長がある、そして、ある意味においてそれはフェアプレーの精神である、こういう評価も得るわけであります。現にラシュワンは、エジプトのみならず、イスラム教国の社会ではスーパースターになったんです。このことから見ますと、八百長をひもといて裁判で白黒つけるということは非常に難しい。それゆえに、やはり文部科学省としては、もっともっと深く一歩踏み込んで指導する必要がある、私はそう思っております。

 これは他のスポーツと違うスポーツだ、こういうふうに思うからなんですが、文部科学省、いかがでしょうか。

樋口政府参考人 今、松浪先生から、大変有益な御意見をちょうだいいたしました。私どもも、今後、相撲協会とのやりとりの中で、そういった御意見もあったことを相撲協会にもお伝えをさせていただきますが、あくまでも相撲協会が、みずからが主体的な問題として受けとめて、適切な判断をとっていただきたいというふうに思っておるところでございます。

伊吹国務大臣 松浪先生、先生のお気持ちはよくわかります。

 山下さんの場合は、明らかにこれは金銭のやりとりなんというようなものはなかったわけですよ。だから、まことにフェアな、さわやかな話だと多くの人は受けとめますよ。しかし、今回の場合は、金銭のやりとりがあったかどうかがむしろ疑われているわけですね。あるいは、金銭のやりとりがなくても、星の借り貸しによって、自分の地位が上がっていくことによって給金がふえてくるわけでしょう。だから、経済的な背景が伴っているわけですね。

 先生のおっしゃっていることも一つの御見識です。しかし同時に、これを司法の場で争わなかったら、金銭のやりとりがあったということを認めたまま、そうじゃないということが認定されないまま来るということも、これは、今問題になっている事務所費の問題も全く一緒なんですよ、これははっきりさせておかないといけない部分がやはりあるんですね。

 ですから、私は、公益法人として独立の法人格を持っておるわけですから、先生のような、国技を思うお立場もあるということは参考人から正確に伝えさせますが、こうしろと言うのはやはり少し、身の潔白をはっきりしておきたいという、公益法人として、国技であるからこそそうしたい、塩をまきたいという気持ちを、文部科学省としては無理にとめるということもちょっと難しいと思いますよ。

松浪(健四郎)委員 大臣のお気持ち、よく理解することができました。

 このような疑惑を持たれる要因は、いわゆるクンロク大関が多過ぎるというところにあるんですね。一言で申しますと、二場所連続で負け越すと大関は陥落することになっております。ですから、角番大関が常にいるんですね。そして、その角番大関がどうも救済される。このことにファンである国民が何となく気づいておる。これは、こういう疑惑を招く要因があって、そしてこのような形になっておって報道されているのではないのか、こう思ったりもしておるわけですけれども、相撲協会に対して、私は、もう少しいろいろなことを言うべきではないのか、こう思っております。

 かつては、公傷制度、これも国会でいろいろ話をしておるうちに、相撲協会は改めました。そしてまた、ドーピングの問題についても、相撲協会は謙虚に取り入れて、そして取り締まるというふうな前向きの姿勢をとっていただきました。

 私は、角番の制度についてやはりちゃんと相撲協会が考えるべきだろう、こういうふうに思うファンの一人でありますけれども、少なくとも、我が国の国技と言われる相撲が、健全な国民の娯楽、そして天下太平と五穀豊穣を祈る催し物であってほしいということを強く申しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

桝屋委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。今国会から文部科学委員会の一員としてこの場に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私も、政治の世界を志してから、大変厳しい現実はありますけれども、究極の目標は、一人一人の国民の幸福と社会全体の繁栄を両立させていく、ここにあると考えております。そのために、豊かな教育の力、これは各人の幸福を軸として、国力の発展と成長を支える大きな柱でございます。

 我が国の児童生徒の学力水準は世界でもトップクラスを維持しておりますけれども、近年、OECDなどの各種の世界レベルの学力調査結果が発表され、以前から憂慮されていた、子供たちの、特に理数科目、読解力における学力の低下が浮き彫りになってきております。

 平成八年七月、中央教育審議会の第一次答申は「子供に「生きる力」と「ゆとり」を」との提言を行っております。これはまさに、詰め込み教育の弊害を取り除くべきものとの一つの大きな方向性を示したものと理解をしております。その後、学校週五日制と総合的な学習の時間が学校現場に導入をされ、平成元年の学習指導要領による小学校の授業時間は五千七百八十五単位時間、これが、平成十年の学習指導要領の改訂によって五千三百六十七単位時間となり、四百十八単位時間の縮減となっております。

 今日までこの状態が続いているわけでございますけれども、文部科学省が推進をしてきたいわゆるゆとり教育に対する批判の中で、今回内閣に設置をされた教育再生会議は、一月に公表をされた第一次報告においてはっきりと、ゆとり教育の見直しと授業時間数の一〇%増加及び薄い教科書の改善を報告されているところでございます。

 では、このゆとり教育が、教員、児童生徒及び保護者に対して本当に何をもたらしたのか。

 ゆとり教育の実施によって授業時間数の減った公立学校の教育内容に疑問を持つ保護者が多くなり、経済的な負担が高いにもかかわらず、建学の精神に基づき独自の教育を行う私立学校を希望する保護者が増加をするということになったことも指摘をされております。私も小学生になる子供が二人おりますが、うちの子供は自分がかつて通った同じ小学校に通っておりますけれども、確かに自分が通った当時と比べると非常に多くの方が、庶民の町なので昔は私立学校なんというのはほとんど行っていなかったんですが、そんな町でも、今、半分ぐらいの方が私立の学校に行くような時代になっております。また、あるいは大学入試にかかわって、高校の教育課程にも深刻な影響を与えております。

 しかし、だからもう一度授業時間をふやすといったその方向性で本当にいいのか。例えば、授業時間数が少ないと言われるフィンランドの学力が高いといったデータ、こういったものをどう分析するのかというようなことが懸念をされております。

 そこで、大臣にお伺いをいたします。

 所信表明の中で、学習指導要領全体の見直しと必要な授業時間の確保を図ると述べておられます。大臣の考える学習指導要領の内容のあり方についてお伺いをいたします。

伊吹国務大臣 さきの臨時国会において、各党の御協力で改正教育基本法が成立をいたしましたので、まずやらねばならないのは、国会で成立した法律に基づいて、教える内容を少し変えるということが、これは根本だと思います。

 それと同時に、再生会議ではいろいろな御意見がありましたが、再生会議が何か言ったからやるということではないんですね。これは、再生会議の意見を受けて、行政権を持っている内閣の長である安倍首相がこういう形で教育を再生していきたいという決意を持たれて、そして、私にこの方向でという御指示があったので、私は法的な手順として中教審にそれをお願いしている。ですから、今、中教審で御議論が行われております。

 この議論の方向としては、まず、ゆとり教育という言葉そのものは私たち文部科学省にはございません。むしろ、先生の先ほどの御質問のお言葉をかりて言えば、詰め込み的な知識ではなくて、基礎的、基本的な知識を身につけさせた上で、それを現実にどういうふうに応用していくかという、いわゆる総合学習という時間をとったということです。これの理念は私は今も間違ってなかったんじゃないかと思うんですね。ところが、現場の運用では、基礎学力を十分つける前に、応用ということを重視する余り、先ほど先生のおっしゃったことでいうと、OECDその他の調査で基礎学力がずっと下がってきている、特に顕著なのが自国語、国語の表現力なんですね。このあたりのことを踏まえて、学校教育法を直し、それに伴う指導要領を少し手直しをしていくかということを今中教審にお尋ねしている。

 授業時間数をふやすかどうかは、これはやはり授業時間数と学力というのは完全に相関関係にあるかというと、必ずしもそうじゃないんですね。ですから、そのことも念頭に置いてやっていく必要があると思います。

 何よりも、御党の太田さんとも時々お話をするんですが、土曜日に授業をしろということを公明党は必ずしもおっしゃっているわけじゃありませんよね。土曜日をどう活用していくかということを御提案になっているわけですから、今東京都を初め、単費でかなりのことができるところは、土曜日で実質的な授業をやっておりますよ、補習という名目で。

 ですから、そういう実態の効果も見きわめながら、まず中教審の御答申をいただいて、学校教育法を国会に提出いたします。その後、これから御質問があると思いますが、かなりのプロセスを経て指導要領を直していかなければなりませんので、今すぐこのイメージということを、諮問している私がここで申し上げるのは不適当だと思いますが、方向としては、今私が申し上げたことでお酌み取りをいただきたいと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今大臣におっしゃっていただいたとおり、私も、ここまで進んできたその理念、考え方、これは決して間違っていなかったと思っております。だからこそ、一見、単純に授業時間をもう一回ふやそうかというような印象を持ったものですから、改めて大臣のお考えを確認させていただきました。

 その中で、土曜日の過ごし方の話も若干触れていただきましたけれども、今の指導要領の中で、学校週五日制の実施によって、土曜日、これが塾に通うような生徒がふえているなんということも指摘をされております。学力の向上、今大臣におっしゃっていただいたとおり、授業時間の確保がそのまま学力の向上につながると単純に結論づけていいのかということはおっしゃっていただきましたので、この学力の向上に必要な授業時間の確保が授業時間の増加と例えばつながっていくとすると、学校週五日制との関係がどうなってくるのかということを心配しておりました。

 また、子供たちの土曜日、こういった休日の過ごし方みたいなことを大臣としてはどうお考えになっているのか、その点についてもお伺いをいたします。

伊吹国務大臣 これは根本的な問題にさかのぼれば、単に小学校、中学校あるいは高等学校の問題としてだけでは論じられないんですね。日本社会のあり方、そして、まあ、どこが一流大学かは私はわかりませんが、日本社会のあり方、一流大学を出て社会で一流と言われる会社に入りという価値観までさかのぼらないと、いろいろな根本的な議論は私はできないと思うんです。

 ですから、最終的には大学の入試制度を含めて考えなければいけない問題を含んでいるんじゃないかと思いますが、私の考えている理想として言えば、土曜日は今多くの企業において、中小企業や零細企業はそうじゃありません、私の地元におきましても違いますが、大企業や官公庁においては週休二日制というものは確立しておりますから、子供と親との触れ合いの時間、あるいは家庭、社会全体で子供を育てていく時間として、かなり土曜日というものは有効ではないのかなという気がしております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。私も児童虐待というものについても若干勉強しておりまして、その中でいつも話題になるのは、孤立というキーワードです。家庭というものが社会から孤立をしている。

 確かに、私もなかなか子供と接する時間はないんですけれども、たまに子供の、今の子供たちの姿を見ていると、自分の子供のころと違うのは、例えば、ちょっとした時間に近くの公園で子供同士で遊んでいる姿を見なくなりました。せっかく土曜日も日曜日も休みなのにもかかわらず、大体家族連れでどこかちょっと遠くに、しかもお金をかけて遊びに行く方が多く、昔だったら、多分親がいろいろな意味で忙しかったのかもしれませんけれども、子供同士の世界というのがきっちりあったように思いますけれども、それが失われつつあるな。それはなぜなのかというところが私もまだ結論的にわからないんですけれども、その辺も社会全体のあり方として考えていかなければならないと思います。

 ちょっと次に行きます。

 大臣の所信表明の中で、学習指導要領全体の見直しや必要な授業時間の確保、それはその前提として現行の学習指導要領にもうたわれている、基礎的、基本的な知識、技能の確実な定着、また、みずから学び、考える力を育てることを挙げておられます。ゆとり教育の見直しには、授業時間、児童生徒の日常の生活の過ごし方、習慣、こういった子供たちの総合的な環境をさらに検証する必要があると考えますけれども、この点についても大臣のお考えをお伺いいたします。

伊吹国務大臣 ことし、御承知のように、全国一斉に児童の学力テストをやりますので、その結果も十分参考にしながらやっていかなければならないと思います。

 特に、一週間当たりの授業数をどうするかということ、そして土曜日を使うか使わないかということですね、このことをどこかでやはり決断しないといけないと思いますし、それから、いろいろな学校を私は拝見に行きますと、朝、地域の方が来られて、十分、十五分のいろいろな小説、小さな子供については絵本のおとぎ話の読み聞かしをしておられるんですよ。こういう時間をどういうふうにとっていくかとか。

 やはり音読とか計算とか、基礎学力をつけていくということに重点を置いて、少しカリキュラムの編成を変えていくような学習指導要領にするのかどうなのかということも、学力テストの結果も全体としては公表させていただいて、そして、中教審の御意見も伺って、教育というのはもう百人いれば百人とも意見がある分野ですから、政権政党の思いだけでやるというのは私は不適当な分野だと思いますから、一番大切にしているのは実は国会の審議なんですよ。国会の審議でいろいろ他党がおっしゃることも私は大切にしてやっていきたいと思っております。

 漠然とした答えなんですけれども、学習指導要領は少しそういう方向で見直していかないといけないのかなという気持ちは持っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。本当に難しいことをお伺いしているので恐縮ですけれども。

 その子供たちの総合的な環境という意味で、私は自分の反省も含めて、非常に感じるのは、子供にとって一番の環境はやはり親の背中であり、先生、またこの社会全体の大人の後ろ姿、これがとても大事だと思います。

 今、報道を初め、我々政治家も含めて、非常に、子供たちあるいは未来を生きようとする若者に対して、夢を失わせるというか、大人というものは信頼できないというか、そういう印象を与えてしまうようなことがたくさん世の中で起こっていること自体が一つの大きな原因だと思っております。ですから、私自身も、本当に後に続く子供たちに自信を持って自分の生きざまを示せる人生なのかどうかというのは、常に自分の心に確認をしながら生きていかなければいけないなと日々思っております。

 次に、いわゆるゆとり教育と言われている現行学習指導要領、これの目玉として登場した総合的な学習の時間についてお伺いをいたします。

 平成十四年の導入当初、新しい取り組みである総合的な学習の時間については、教科書も使用しないことで始められております。一方、五年経過したところで、ある程度定着もしたかと思いますが、同時に、実施後の課題も明らかになってきております。

 総合的な学習の時間は、一つ、みずから課題を見つけ、みずから学び、考える力を育成すること、二つ、問題の解決や探求活動に、主体的、創造的に取り組む態度を養うこと、三つ、ほかの教科などで身につけた知識などを相互に関連づけることなどを目的としております。

 一般に、どこの世界でもそうでございますが、新制度の導入では、注意深く準備をしても、中央から末端までその制度導入の趣旨がうまく伝わらないことがあります。ざっくばらんに言うと、今申し上げたような三つを具現化するためにはどうしたらいいんだと。非常に現場は難しいだろうなと、私は率直に感じました。

 昨年、平成十七年九月中旬から十月上旬にかけて行われました総合的な学習の時間についての実施状況の調査結果が国立教育政策研究所から発表されております。これによると、教材の開発あるいは活動に必要な予算などについて「課題があると思う」、あるいは「どちらかといえば課題があると思う」との回答が七割以上を占めております。

 そこで、まず文部科学省にお伺いをします。

 総合的な学習の時間をどのように評価されているのかということが一点。制度導入の趣旨をどのように徹底しているのかというのが二点です。また、先ほど引用をした総合的な学習の時間の実施状況の調査の結果が公表されておりますけれども、これをどう評価しておられますのか、三点お伺いをいたします。

銭谷政府参考人 総合的な学習の時間について、その趣旨等につきましては、ただいま伊藤先生の方からお話がございました。

 私ども、子供たちに学び方や自己の生き方、進路についていろいろ考えさせるための体験的な学習、問題解決的な学習を行う総合的な学習の時間の意味というのは現在でも必要なものであると認識をいたしております。

 このため、制度の趣旨の徹底につきましては、これまで、実践事例集の作成、配布でございますとか、あるいはモデル校を中心といたしました実践研究事業などの取り組みを行って、各学校にその趣旨あるいはその授業の展開ということがよく御理解いただけるように努めてきたところでございます。

 ただ、実施の状況を見ますと、ただいまお話のございました国立教育政策研究所の調査結果にも見られますように、知的好奇心とか自分で考える力などを育成する上で一定の成果は上がっておりますけれども、学校によってやはり取り組みにばらつきがあるといったような課題が見られるところでございます。また、ただいまお話がありましたように、例えば単元の開発でございますとか教材の開発、活動に必要な予算の確保等について課題があるというのが結果としてあらわれているわけでございます。

 私ども、引き続き、カリキュラムの開発や教材の共有化など、総合的な学習の時間の趣旨を生かす取り組みを進めてまいりたいと思っておりますけれども、実は小学校と中学校で若干事情が違うところもございます。ですから、子供の発達段階に応じまして、見通しを持った指導計画の作成、実施、それから地域の課題や子供たちの学習上の課題に応じた活動計画の作成といったようなところに力点を置きまして、かつ、学校においてこの時間の中核的な役割を果たす教員の育成、研修等の支援策をあわせて講じていきたいということで、十九年度予算案にもそれに必要な経費を計上しているところでございます。

伊藤(渉)委員 まさにこの総合的な学習の時間、これを趣旨どおりに実行することで相応な効果を発揮している学校もあると承知をしております。

 現行の学習指導要領、今国会でも教育の問題をさまざま議論するわけでございますが、この学習指導要領は現役でございますし、あと四、五年は続くことになると思います。さらにこの学習指導要領の定着に向けてさらなる改善を行っていかなければならないと思いますけれども、この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 まず、冒頭の御質問にお答えしたように、学校教育法の改正案をこの国会へ提出させていただきたいと思っております。これをどう御審議なさるかは立法府の御判断でございますが、我々としてはできるだけ早く成立をさせていただきたい。

 これができまして、そしてそれに基づいての告示が学習指導要領なんですね。この学習指導要領は、出すためには、中教審にお尋ねしたりしながら、どうしても大体一年間ぐらいはかかるだろう。それから、この学習指導要領に伴って各教科の教科書を完全に変えていかなければいけませんから、これが二年ぐらいかかる。そうすると、大体三年から四年はどんなに急いでも新しい制度に切りかわるまで時間がございます。四、五年かかるかどうかはちょっとあれなんですけれども。

 だから、先生がおっしゃった総合学習の時間をどういうふうに使うかということですね。これは一番大切なことは、これをうまく動かしていくための基礎学力が完全にあるかどうかということなんですよ。

 それで、政府参考人が申しましたように、その前提でうまく動いているところとそうじゃないところとがありますから、成功事例等は十分各教育委員会で共有してもらうように努力をいたしますし、同時に、全国一律の学力テストの結果を参考にして、基礎学力の充実については、これはやはり時間数の問題だけではないと私は思いますので、この点も、新学習指導要領を発出する前に、教え方あるいは重点の置き方等については各教育委員会にお願いをしていく。それが両々相まって、先生がおっしゃった総合的な学習時間の現制度のもとにおける定着が、定着というか、立派な運用ができてくるんだと思います。

伊藤(渉)委員 多分、世間はそういう時間的な流れを理解していないと思います。国会でこうやって議論がされると、もうすぐに変わっていくような印象を多分受けていますので、その辺が、世間が注目しているうちはいろいろなことが動くスピードが速いんですけれども、現実というのは世間が引いてからの闘いが大変なわけで、そういう意味で、我々もしっかり応援をさせていただきたいと思いますし、よろしくお願いします。

 この総合的な学習について少し残念な報道というのがございました。これは二〇〇六年八月十八日の日経の夕刊です。この総合的な学習の時間の趣旨とは若干違う、計算、漢字の反復練習や運動会、文化祭の準備などが一部の学校で実施されていたという記事を見ました。

 この総合的な学習の時間を本来の趣旨に合った魅力的な時間にしていくためにも、さらなる改善、そして支援をしていかなければならないと思います。

 そこで、文部科学省にお伺いをします。この改善策や支援策、具体的なものがあればぜひお伺いをしたいと思います。

銭谷政府参考人 私ども、総合的な学習の時間につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ学校間のばらつきが見られるということがございますので、すぐれた実践というものを広く共有して、それに基づいてまた各学校がいろいろと工夫をして実施をしていただけるような、そういうことがまず必要だと思っております。そのために、全国の教育委員会の指導主事などを集めました研究協議会での情報交流でございますとか、指定校における実践研究の成果を広く普及するモデル事業の実施でございますとか、こういったことを推進していきたいと思っております。

 それから、先ほどもちょっと申し上げましたが、学校で総合的な学習の時間の中核的な役割を果たしている教員の育成あるいは研修のための総合的な学習の時間コーディネーター養成講座というものを実施することといたしまして、そのために必要な経費も計上しているところでございます。

 いずれにいたしましても、総合的な学習の時間というのは、各教科と違いまして、その時間の目標や内容は各学校が設定するわけでございますので、その内容について、一義的にこれが総合的な学習の時間としてふさわしいふさわしくないという判断が難しいわけでございますが、冒頭、先生からもお話がございました、総合的な学習の時間の趣旨に照らして、子供たちに本当にどういう力をつけたいのかということをはっきりさせた上で、いろいろな体験的な活動、さまざまな工夫を生かした活動が各学校で展開されるように、私ども先ほど申し上げましたような取り組みを推進してまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今国会でさまざま議論されていく内容でございますけれども、私の地元の学校の先生は、いろいろやらなければならないことはあるけれども、その上で、ぜひとも人を欲しいということも単純明快におっしゃっていたことも、ぜひ大臣のお耳にお届けをさせていただきたいと思います。

 現実に課題がある以上、それに対処するのは当然でございます。そのときに大切なのは、どこまでも現場の声を聞くこと。どんなに高邁な理論も、現場が使いこなせなければ、むしろ混乱させるおそれすらございます。ゆとり教育も、その理念は正しかったけれども、十分に理解、運用がなされていないというところも散見をされるわけでございます。現場の声を大切にしながら打開策を見出していかなければならないと思います。また、そうでなければ違った問題が発生をしかねないと思います。広く現場の声を取り入れ、地に足のついた議論が教育再生においても展開されることを心より期待いたします。

 若干時間がありますので、一問だけ、話題をかえて、文化庁にお伺いをしたいと思います。本物の舞台芸術体験事業、これについてお伺いをします。

 私は、与党のバレエ文化振興推進議員連盟というところに所属をしておりまして、昨年の九月二十五日に三重県の桑名市の伊曽島小学校というところを訪れまして、子供たちにすぐれた舞台芸術に触れる機会を提供するという、文化庁の本物の舞台芸術体験事業、これによる財団法人松山バレエ団の学校公演の視察をしました。この公演には約三百五十人の児童、保護者が訪れておりまして、同バレエ団が新白鳥の湖やロミオとジュリエット、くるみ割り人形など、クラッシックバレエの作品を華麗に披露しておられました。また、バレリーナの基本練習を初め、日ごろは見られない裏舞台を公開するとともに、児童に実演指導を行うなど、充実した内容で、この公演を間近に見た私は大変感動いたしました。

 亡き父によく子供のころに言われたのは、とにかく本物に触れろ、本物に触れればあとはわかるということが私の父親の口癖でございまして、そういう意味で、本物の舞台芸術を学校の体育館、これはとても小さいところでやるものですから物すごく間近に見えて、私も感動しましたし、本当に子供たちが、静かにしなさいという言葉なく、水を打ったように静かにバレエの劇を見ていられた姿を見て、これは非常にいい事業だなというふうに思いました。しかし、現状では、年一回どころか義務教育九年間の中でも一度も見られない学校もあるわけでございます。こうした豊かな心を持たずして日本の発展はありません。子供たちにもこうした本物の舞台芸術をもっともっと見せてあげたいと思います。

 そういう意味で、この機会をふやしていくために、本物の舞台芸術体験事業の現状と拡充、これについてお伺いをするとともに、これは大臣にお願いをしたいのですが、義務教育期間中にせめて一回はみんな子供が見られるように、ぜひともしていただきたいなという、お願いにも似た質問ですけれども、大臣の御答弁を最後にいただいて終わりたいと思います。

桝屋委員長 では、高塩次長、簡単にお願いします。

高塩政府参考人 本物の舞台芸術体験事業につきまして、今先生から御指摘のあったとおりでございまして、この制度は平成十四年度から開始いたしまして、来年度にも拡充を図ることとしております。各学校からの要望を踏まえまして、子供の文化芸術体験事業は格段の充実を図っておりまして、今後とも一層の充実に努めたい。来年度は八百十二公演を予定いたしているところでございます。

伊吹国務大臣 ここに御参加いただいている芸術家の方は、コマーシャルベースに乗っかっておやりになれば入ってくるであろう収入を、もう全く恥ずかしいぐらいのお金しか払えないんですが、それでも努力をして来ていただいています。これに要するお金が大体、来年度で三十三億ぐらい、義務教育期間中すべてのところでやるということになると、これの五倍の国民負担が要ります。

 もちろん、先生の党も与党ですし、野党もこういういいことについては御協力をいただかなくちゃいけないですから、ぜひ、力を合わせて財務省を攻略していただきたいと思っております。

伊藤(渉)委員 しっかり頑張ります。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、藤村修君。

藤村委員 民主党の藤村修でございます。

 大臣の所信に対する一般質疑ということで、総括的にというか、あるいは非常に基本の問題をきょうは約一時間の範囲でお尋ねをし、議論を進めたいと思います。

 大臣、先ほどからおっしゃるとおり、本当にこの国会での議論が教育をよくしていく方向に働くべく、私どもは積極的な提案型の質問をしたいと思っております。

 ただ、この国会で格差の問題というのが一つの大きな、やはり教育の現場においての格差という問題も、これはそれなりに議論をしなければならないと思います。

 もう一つ、昨日の例の事務所費問題、我が党、民主党の小沢代表が発言をし公表しましたが、これについても後ほど同僚委員から質問をさせていただきます。十分御準備をされていることと思います。

 それで、格差について非常に大ざっぱにといいますか、教育の分野における格差。これは格差という言葉でなくてもいいんですが、とにかく、違い、差、いろいろなことがあるわけですけれども、これを一くくり、格差という言い方でこの議論は進めたいと思います。

 大臣におかれては、教育における格差というのがどんな分野にどういうふうにあるんだろうか、あるいはないんだろうか、そういう概括的な認識をお尋ね申し上げたいと思います。

伊吹国務大臣 むしろ私が藤村先生にお尋ねしたいのは、教育における格差という言葉を使われた場合に、何を指して格差とおっしゃっているのかということをお伺いしたいと思うんです。

 それは、例えば親の所得、親の学歴等によって子供の習熟度が違うというものもありましょう。子供が入れる学校が違うということもありましょう。住んでいる地域によってこれらが違ってくるということもありましょう。それから、やはりおのおのの子供の努力あるいは地域社会の努力によって違うということもありましょう。

 私は、結果について格差がある程度出てくるということは、これは自由競争社会という価値でもって社会を動かしている限りは、やはりあり得ることだと思うんですよ。それをできるだけ顕在化させないのか、あるいは顕在化させない努力をすることによって官が介入するからかえっておかしな社会システムができてくるという評価をするのか、この辺は非常に微妙なところですね。

 ただ、教育の分野でいうと、どちらかというとできるだけ競争条件の格差だけは解消をしておいた方がいい分野だと私は認識しています。しかし、ここの格差を解消していこうとしますと、かなり官が積極的に介入をしなければならない。

 藤村先生も民主党のお立場として、ぜひ私に教えていただきたいのは、かつて地方分権を推進するあるいは官の介入をできるだけ排除して民を中心に動かしていくということについて、どちらかというと自由民主党は古いシステムを利用しておってかえっておかしいんだ、おれたちこそ地方分権の推進者であり民主導の推進者だとおっしゃっていたと思うんですよ。ところが、予算委員会の質疑などを伺っていましても、何かちょっとこのごろ百八十度お変わりになったんじゃないかなという気が私は率直に言ってするんです。間違っていれば御質問の中で訂正していただいたらいいと思います。

 私はやはり、教育の分野においては、それはバウチャーだとかどうだとかいろいろなことを言う人がいますけれども、競争条件の平等だけは官がある程度入っていかなければ、子供が不幸になるんじゃないかというふうに思っているんです。ですから、従来の民主党のお立場とはちょっと違いますが、最近の民主党のお立場とはそう違わないと思っておりますが。

藤村委員 伊吹大臣は答弁の中で質問されますので、一々答えていると時間がなくなりますので、地教行法の話でまたそれはやりたいと思います。

 今格差のお話で、これは質問に答えないといけないんですが。

 私は、教育の分野で、特に国が考えるべき観点というのは、おっしゃったように、結果の平等じゃないんです、やはり機会の平等ですよね。それはすなわち、これは冒頭の答弁でもありましたよね、義務教育というものは基本的に全国津々浦々、どこに生まれようがどこに住もうが、基本的に、義務教育の分野においては、ある意味でスタート、最初の基礎的学力等、普通教育がどこにいても平等になされると。その後努力するかしないかは、それは結果に響いてきますけれども、そういうものだと思うんですね。

 ところが、格差というものを問題にするときには、今、全国津々浦々どこにいてもという部分が相当崩れているのではないか。ですから、教育の分野において国で議論すべきは、やはり住むところによって大分差があるんじゃないでしょうか。これはその後に、順にやっていきますが、結局、自治体の財政状況等々、具体的に後ほどまた示しますが、これによって差が実際に出ている、このことは国ないし行政がきちんと対応しないといけない分野だ、私はこういうふうに思います。

 それからもう一点は、親の経済力。親の学歴と子供の学歴は若干の相関関係があるようですが、それは今言ってもしようがないんですが、しかし、親の経済力によって子供の教育にスタートの時点で、あるいは教育を受ける機会の均等において大きく差が出ては、これは何とかしてあげないといけないというのは国が考えるべきことだと思います。

 そういう意味で、私は、教育における格差というのは、住むところ住むところの、地方によっての差が出ないようにする、特に義務教育において。もう一つは親の経済的な差。スタートの、基本的な教育を受ける子供たちの機会均等が保障されるべきである。こういう二つだと思うんですね、私が考える教育における格差。

伊吹国務大臣 藤村先生を含め、教育特でいろいろ行われた議論も、私は非常に大切にしているつもりなんです。

 それで、あのときも、民主党の法案は、衆議院では廃案になりましたが、参議院では否決されたんですけれども、たくさん私は参考になることが書いてあったと思って、今後の地教行法や何かのときにも参考にさせていただきたいと思っているんです。国が教育の責任は負うけれども、実施の権限は地方自治体の首長に行く、こういう構成になっていたと思うんですが。

 私は、先生や自民党の文教関係の方は同じ気持ちで立ち向かったと思いますが、例えば義務教育の国庫負担金ですね、これを地方分権という名のもとで二分の一を三分の一にしましたね。そして、それに見合う税源をトータルとして地方に分与しているわけですよ。そうすると、トータルとしては国と地方との関係は合うかもわかりませんけれども、税源を移譲されても、税収が上がらない自治体は、補助金が来ないけれども税収はそれを賄うほど上がってこない。交付税でそれを完全に補てんしてくれるかというと、必ずしもそうじゃないという問題が起こってきているわけですね。だからこれは、与党としては、地方でできることは地方でというやり方が悪かったと多分おっしゃると思うんです。民主党は、地方でできることは地方で、補助金はできるだけやめろという主張でずっと来ておられるわけでしょう。ですから、私は、この分野は、教育だとか福祉というものはやはりある程度国が関与をする、先生はそういう立場であのとき御主張いただいていたと思うんですが、やはりそういうところまでさかのぼって考えないと、地域財政力による教育格差の問題というのは、なかなか議論が難しいなと。

 それから、いろいろ調べてみると、東京都はなるほど財政力指数は非常に高いんですよ。しかし、残念ながら、教員の加配の率だとかなんかが高いかというと、必ずしもそうじゃありません。これは、どこが高いかというと、例えば徳島とか香川とかですね。やはり知事さんの重点の置き方によって違ってくるわけです。だから、知事さんの重点の置き方によって先生のおっしゃるある意味での格差が出てくるということがいけないということであれば、この権限は国へ戻していただかないとできないんですね。

 だから、そこのところも、トータルで同じ方向なら、ひとつ民主党さんとも力を合わせてやりたいなと私は思っております。

藤村委員 我々の日本国教育基本法でも、伊吹大臣にもそれなりに評価をいただいたとおり、やはり教育の権限は最終的に国が責任を持つ、こういうことを我々は主張しているわけであります。その中で、説明しましたように、幾つかは財政ですね、これをきちっと国が面倒を見る。

 我々は、補助金が全部いけないというんじゃなしに、一括交付金として教育の費用、公教育財政というものを、これは後ほどまたちょっとやりますが、政府支出の何%とかあるいはGDPの何%、そういうしかるべき指標をもって確保するのが国の一つの大きな責任だということは何度もお答えしているので、もうこれ以上申しません。

 それで、今おっしゃったように、地方自治体のやり方によって差が出ているというのは事実であります。その事実を、私はきょう資料をお配りしているので、最初の一ページ目の資料で、これは一つの本当に狭い分野の例だけを申します。

 これは、さっきおっしゃった義務教育費国庫負担の話。伊吹大臣は、義務教育費国庫負担をきちっと国が責任を持つというお立場だと思うんですね。我々も基本的にそうです。ところが、過去、例えば今例に出ているのは、教材費とか旅費の話で、これは大分前、昭和六十年、このときに教材費とか教員旅費がいわゆる義務教育費国庫負担費の中から外されて、外されたらなくなるのかというと、いやそうではありません、地方交付税交付金できちっと、各都道府県によって指数があって、それに基づいて負担をしますと。だから、ちゃんと国が面倒を見るというところであったわけです。

 そのときに、指標で見ると、地方はもうちょっと頑張っていたということですね。左の一〇〇のところが一つの標準で、それだけはしてくださいよと、教材費とか旅費。その当時はまだ頑張っていて、旅費は一〇五とか、あるいは教材費は一二〇とか、地方はさらにそれに加えていたわけですね。ところが、見ていただくと、平成八年ですか、ここで教材費なんか一〇〇になってきましたね。それでやっと、何とかそれで標準は保っていたんですが、その後だあっと下がってきました。

 ですから、ちゃんと地方交付税交付金で手当てされますというときに、それは地方の責任でそういうふうにしてきたといえばそうなんですが、やはり国がきちっと、そこはちゃんとやってくださいと言うことと同時に、本当は国できちっと義務教育費国庫負担、我々は教育一括交付金という言い方をしますが、それで手当てすべき対象ではないだろうか、こう思うわけですね。

 これはなぜこうなってきたかというのは、地方債、地方がいろいろ事業をするのに、国の補助金とともに手当てして、箱物が多いんですが、いろいろつくっている、それで借金をしている。実はその当時自治省は、借金も、今後の返済についてはきちっと交付税で手当てしますと言っていた。ところが、今度は交付税をシーリングで切ってきたわけでしょう。そうすると、それはできなくなるわけですね、地方の側から言うとね。

 これは過去に一般財源化された教材費と教員旅費だけを言っていますが、もう一つ、しょっちゅう言われるのが図書費ですね。図書費の件も、調べてみますと、私ども、これは超党派の国会議員連盟がありまして、図書費を調べましたら、これは答えてもらう必要はないんですが、前回の委員会でもあったと思いますが、図書費をきちんと手当てしているというのは、小学校で多分三十数%、中学校でも四十数%、半分まで行っていないんですね、標準より。それでも、費用はちゃんと手当てしているはずです。

 だから、ここに、さっき申しましたように、自治体の財政事情によって、これは子供たちはどこに住んでいてもそんなの知らないんです、でも、財政事情のいいところ、大半が悪いですが、いいところならまだ比較的いいし、財政事情が非常に悪いところなら物すごく悪いし。夕張市なんかは学校までなくなる、こういう事態に今なっていることが、これが一つの格差ではないだろうかということを申し上げたかったわけです。

 それから、次に。

 さっき私、格差の基本の話を申し上げました、考え方を。外国との差というのは、これは格差とは多分言わないと思います。差と言った方がいいと思うんですが。この外国との差において一つだけ注意しておきたいのが、きょうお配りした図表二ということです。

 日本と諸外国との差というので、このごろ非常に話題になっているのが例のPISA。学力が下がっているのではないかと言われているわけです。これは、資料はおつけしませんでしたが、二〇〇〇年のPISAの調査で、例えば、読解力は日本は八位であった。一位はフィンランドなんですね。あるいは、数学的リテラシーでは、当時、二〇〇〇年、日本は一位であった。あるいは、科学的リテラシーでは日本は二位であった。それが、二〇〇三年の同じPISA調査で、時を経たときに、読解力は日本が十四位になった。すなわち八位から十四位に下がった。それから、数学的リテラシーも、トップであったのが六位に下がった。科学的リテラシーも、あっ、これは変わっていませんね、二位ですね。

 というふうに、何か下がったことがえらく注目されるんですが、これはしかし、OECD諸国の中で、きょうお配りした資料でいえば、これは結局、公財政教育支出ということで言っていますが、日本は公財政教育支出が非常に低いところにあるんですよね。例えば、一般政府支出に占める割合でいえば、これは下の方ですね、一〇・七%。よく使われるのは、この右の表のGDPに占める割合ですね。これも一番下、実は、二十九カ国中二十八位、日本とトルコが三・七%、GDP。

 GDPというのはその国のやはり経済力の規模ですから、単純には言えませんけれども、ただ、こういう指標がある、比較がある中で、日本は公財政教育支出が低い割にはPISAの成績は高いとむしろ言えるわけで、健闘しているわけですね、お金が少ない中で。こういう比較もしていかないといけないだろうと思います。

 それから一つだけ、これは質問としてお伺いしたいんですが、さっき申しましたように、やはり個々人のというか、家庭の経済力の差がスタートとかあるいは教育の機会の差になってはいけない。このことを手当てするのは、多分、特に高等教育では奨学金が非常に大きな役割を果たすと思うんですね。

 これは、質問で、通告もしなかったので、ちょっと数字だけ答えちゃいますけれども、私、今、緊急にこの格差に対応するときに、この点だけはどうしてもしないといけないと思うんです。

 大学の奨学金を受けたいと希望する、そして受ける基準に合格している、これは平成十七年度、文科省からいただいた資料で、実は、基準適格申請者、大学奨学金十一万一千人でありました、しかし採用は九万二千人しかできませんでした、そこで残存適格者が二万人残りました。これは数字としていただいたんですね。

 残存適格者というのは何かというと、つまり、受ける資格はあるんだけれども、この無利子奨学金は、結局、予算枠ではみ出た分はだめでしたと、こうなったと。じゃ、それはどう選択したかというと、一行だけあるんですが、予算枠があるため家計要件重視で採用したと。より厳しい人から採用したという。枠があるからそうせざるを得なかったということでしょうが。この際、十一万人の中で二万人ぐらいですから、これはぜひ本当に格差解消の大きな、緊急措置として考えていただけないか。

伊吹国務大臣 先生、その前に、先ほど国際比較のお話をなさいましたけれども、もうよく御存じのことですが、まず、日本の国の形として、アメリカと日本はGDPに占める政府支出の比率は非常に低い国ですよね。そういう国の形を実は日本はとっているわけだけれども、政府が積極的に介入していくという形をとるのであれば、そのことはそれで一つできるだろうと思いますし、それから、児童生徒の数が、少子化で、日本の場合は非常に少ないです。それから、御承知のように、私立が多うございますから、公的支出だけで判断できるかどうかという問題がもう一つ。それから、日本の場合は、人口に比べるとGDPが非常に大きくて、そして、一人当たりのGDPに占める教育費がどれぐらいかという比較をすると、日本は結構高いんですよ、GDPの総額が日本は世界で第二番目ですから。ですから、一概にこのGDPに占める公教育の比率だけで日本が教育に熱心かどうかということを判断するのは、私はやや誤解を生むなという気がいたしております。

 先生がおっしゃった、資格があるのに奨学金をもらえないという人がいるのかどうなのか、参考人にもう一度確認させますが、そういうことはできるだけそうじゃない方がいいわけですから、これは予算編成の中でまた頑張らねばなりませんが、その予算編成のトータルの裏っ側にはそういうことがあると。そして、できるだけ民でできることは民で、規制があるのはけしからぬということを言えば言うほど、やはり自由競争原理で社会が動いていると親の所得格差というものは出てきますから、そのことも民主党の基本政策としてどちらの方向へ行かれるのかということをやはりはっきりと定めながら進んでいかないといけないことだと思います。

藤村委員 奨学金については検討いただくということで。

 GDPに占める比というのは、さっきおっしゃった部分が確かにあるんですね。ただ、我々は指標としてという言い方ですから。むしろ政府支出に占める比率というときに、日本とお隣の韓国、OECD諸国の中ではアジアはこの二つだけですから、ここで見ると、実は、韓国は一生懸命政府支出に占める割合、これはさっきの図表二ですけれども、一五%かけているんですね。健闘していると思いますね。結果として、これは表は出しておりませんが、PISA調査、OECDにおいても、韓国は読解力は六位、二〇〇三年でいきますと、韓国は読解力二位、数学的リテラシー三位、科学的リテラシー四位。健闘していますよね。政府の中でどれだけ教育にお金をかけているかというところはやはりこうしてじわっと差に出てくるということは申し上げたいと思います。

 それで、次に移ります。

 もう一つの問題、きょう取り上げたいのが、大臣も所信でおっしゃっていますよね、先ほども取り上げられましたが、教員の資質の向上ということです。

 結局は、ここに、大臣が最初におっしゃっているとおり、教育の再生のかぎを握っているのはよき教師に尽きる。それはもう確かにそのとおりですよね。思い返してみて、自分の教育でも、あるいは現在の教育でも、やはり先生がどれだけ先生としてちゃんとやっていただくかというところが非常に重要だと思います。

 そういう意味で、きょうは、教育の質の向上、特に教員の資質、能力を高めていくための議論をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、これはデータの報告ということでありますので、四十年ぶりにされたということでありますが、教員勤務実態調査というのを昨年、今もまだずっと続けてやっていただいている、その中間的な報告、そもそもその調査をした目的と、それから最新データに基づく、認識というか、重要なポイントだけを報告いただきたいと思います。

銭谷政府参考人 お尋ねの教員勤務実態調査は、教員の勤務や給与のあり方を検討するための参考資料とするために、昨年の七月から十二月までの約六カ月間の勤務実態を調査したものでございます。現在、十月分までの集計が完了しておりまして、この暫定集計結果の分析を御説明させていただきたいと思います。

 七月、八月、九月、十月、この四カ月間の勤務実態が明らかになっているわけでございます。夏休みの八月を除きます七月、九月、十月の公立の小中学校の教諭の勤務日一日当たりの平均残業時間というものが出てまいりまして、これが各月ともおおむね一日約二時間程度ということになっております。

 なお、残業時間につきましては、残業なしという人もいれば、五時間以上残業している方もいるなど、残業時間には個人差がございます。

 それから、学校種別で見ますと、中学校の教諭の方が小学校の教諭よりも残業時間が長くなっております。これは、中学校では部活動の指導に時間をとられているといった側面がございます。事実、中学校の部活動の顧問を担当する教諭は、担当をしていない教諭よりも残業時間が長いという結果が出ております。

 それから、教員の中で残業時間が長いのは教頭先生でございまして、教諭と比べますと約一時間程度残業時間が長いという結果が出ております。

 それから、教諭の仕事の内容を見ますと、子供に対する指導といったようなのはもちろんあるわけでございますけれども、それがまた多いわけでございますけれども、会議、打ち合わせや事務、報告書の作成などの業務も一日一時間四十分程度となっておりまして、デスクワーク的な事務負担が大きくなっているといったようなこともうかがえるところでございます。

 十二月までのすべての集計結果を踏まえて、さらに分析をし、評価をすることが必要だと考えているところでございます。

藤村委員 今、調査の中間の報告をされまして、残業時間というのは、どういう考え方をもって残業時間というんでしょうか。つまり、教員というのは残業は基本的にないというか、命令もされないし、これはどういう位置づけなんでしょう。

銭谷政府参考人 今、私、残業時間というふうに申し上げたわけですけれども、この調査におきます考え方は、各学校における規定の勤務時間、つまり始業時刻から終業時刻以外に学校において教員が勤務をした時間を残業時間というとらえ方をいたしております。

藤村委員 今数字的な御報告をいただいたんですが、一言で言いますと、このごろの先生はというか、これは大臣も所信でおっしゃっているとおり、「今日の教員はかつてより多くの重荷を背負い、」というのは、そういうことだと思うんです。

 つまり、所定の勤務時間というのは、公務員ですから八時間ですよね。それを上回る時間が残業時間とされ、それを職場で行うと残業時間というカウントに多分なってくるんだと。もちろん、持ち帰りもあります。それは一般の会社員だって公務員だって、持ち帰って仕事する。そうじゃなしに、職場における時間ですよね。ですから、約二時間余り、結局十時間ぐらい働いているんだろうな。これは多いんですか、他の公務員などと比較したときには。

銭谷政府参考人 正確な統計的なデータ比較というのは非常に難しいのでございますけれども、例えば、一般の公務員の超過勤務手当の支出の状況を決算レベルなどで見ました数字と比べますと、先ほど申し上げた時間数が多くなっているというふうに受けとめております。

藤村委員 これは別な報告ですが、義務教育の教員さんは都道府県公務員ですよね。都道府県の一般事務職で平均が月々十時間、十・四時間ぐらい。これはちょっと古いんですが、その際の教育職、つまり先生については二十九・六時間、このぐらいの差が出ている。十あるいは二十九、まあ三倍近いですね。だから、やはり大臣の所信にあるとおり、今日の教員がかつてよりたくさんの負担を強いられているのは事実だと思います。ですからどうしたらいいんでしょうかと、こういう話なんですが、これは大臣に答えてもらえますか。

伊吹国務大臣 多分藤村先生と私と、自民党の教育関係に熱心な先生も、同じような気持ちを持っておられると思うんです。

 それで、少し整理してお話をしますと、昭和四十六年に給特法ができました。この中で、実は、教職調整額として超勤の四%が給与の中へ入っている。これは御承知のとおりです。それから、例の二・七六%という部分がある。そして、義務教育の教員の特別手当分がある。これを合わせると七・二六%です。この七・二六%と、先ほどの超過勤務相当額と言われる教職員調整額が四%ある。まずこういう給与体系が成り立っているわけですね。

 一方、夏休み、春休み、冬休みの教員の勤務形態をどう考えるか。授業のあるときのことは、七月とか六月とかの調査をすればわかるわけですが、休みのときを一年を通じてどう考えるか。

 それと、実は、比較をするのに、先生がおっしゃったように、地方公務員が勤務をしていて超勤手当をどの程度もらっているのか、超勤時間に合わせて。これは多分、単費でかなりの措置ができる東京都なんかは、よくわかりませんが、かなりもらっているんじゃないかと思うんですよ。交付税で随分やってもらっている地方自治体は、実態的には超勤は余りついていないんじゃないかなという気がするんです。

 これは、昨年の暮れ、民主党の皆さんにも御協力いただいて、閣議決定したから二・七六を削減するという予算編成のときの騒動があって、これはせめて、教育を最優先課題としている安倍内閣において、免許の問題もあるけれども、一方で待遇の問題もあるじゃないかというので、これは一年、安倍総理の決断で延期したわけですね。ことしの暮れ、今まさに先生がおっしゃっている問題なんです。私が言っているような優遇をされているのが一般地方公務員の超勤を加えて本当に優遇されているのかねということを見きわめて、予算要求で一勝負しないといけない部分なんです。そのための実態調査を今ずっとさせているというところです。

 ですから、決まったら一番に御報告に行かせますから、ひとつ御協力をいただきたいと思います。

藤村委員 そのことは、先日の副大臣の予算説明で、「人材確保法に基づく優遇措置の取扱いについて、平成十九年度予算からの縮減は行わず、」これではっきり表明されているわけですね。

 今おっしゃったのは給特法の方をおっしゃいましたが、実は、その後に、四十九年ですか、人材確保法、これが非常に重要だと思うんですね。

 人材確保法というのは、四十六年に中教審が答申して、当時は実は教員給与は一般公務員よりも低かったんですね。それで、中教審答申は、三〇ないし四〇%高いものという指摘をしたんですね。それで、四十七年、これは自民党の中の文教制度調査会、文教部会の合同で、ここでは、実は先生の給与は低い、これではいい人材は集まらない、だから現行の二倍程度の待遇改善を目標に教員給与を制定しという、自民党の中でそういう議論をまとめられた。それで、文部省に四十七年、教員待遇改善研究調査会ができて、それで、四十八年予算編成で、このときはとにかく第一次で一〇%相当上げた。それから、四十八年の二月には人材確保法という法律で、ここに今予算の中にも書かれたとおり、つまり、ちゃんといい人材をとるために教員というのは優遇しないといけないということを決められた、こういうことですね。

 それで、実はそれより前に、さっきおっしゃった給特法というのがあるんですね。この給特法と人材確保法の関係というのはどうなっているのか。これはちょっと事務方に、その関係のことだけ聞いておきたいと思うんです。

銭谷政府参考人 いわゆる給特法、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法は、昭和四十六年に制定をされたわけでございます。その内容は、教員の職務と勤務態様の特殊性を踏まえまして、勤務時間の内外を包括的に評価して教職調整額を支給する、そのかわり、いわゆる超過勤務手当、時間外勤務手当、これは支給しないということを定めたのが給特法でございます。

 その後、今先生お話しのございましたように、昭和四十九年に、教員にすぐれた人材を得て、安心して教育に専念できる環境づくりを目指して、教員給与を一般の公務員より優遇することを定める人材確保法が制定をされたということでございます。

 給特法は、先生のいわば実質的な時間外勤務の扱いをどうするのかとか、そういうことが、いろいろ課題があった中で、教員の職務の特殊性と教育の重要性にかんがみまして、一般公務員とは異なる給与上の処遇改善を行った法律だと私ども認識をいたしておりまして、人材確保法とあわせて、教員の給与上の処遇改善を定めた法律であるというふうに考えております。

伊吹国務大臣 今参考人が申し上げたことを私、さっきるる申し上げたつもりなんですが、要するに、四十六年の給特法で、超勤相当と今申しましたが、これがまず四%あるわけですね。それから、四十九年の人確法によって、一般職の行政公務員を上回る俸給表の二・七六と、義務教育の教員等給与の手当分とを合わせて七・二六の追加の優遇額があると。しかし、これで優遇されている、優遇されていると言うけれども、超勤をしっかりと一般の地方公務員がもらった場合には、果たして教員の方が優遇されているんだろうかどうだろうかという調査を今ずっとさせているということなんですよ。

 残念なのは、総務省が、東京都がどの程度の超勤を払っているのか、大阪市がどの程度の超勤を払っているかということを教えないというか、わからないわけですよ。これがわかりますと、夏休みも冬休みも計算に入れた上で、教員の超過勤務時間がこれだけだということであれば、その超過勤務時間にびしっと超勤を払って、地方公務員の本給で計算をしてみたら、実は人確法だとか給特法だとかを加えても少ないというケースがあるんじゃないかと私は思っているわけです。ですから、それを数字の上で裏づけて、予算編成でひとつやはり頑張らにゃいかぬなという作業を今進めているというところです。

藤村委員 その心意気はよしとしたいと思います。

 それで、ちょっと大臣の認識が違うかもしれないと思います。きょうお出ししている三枚目の表で、今おっしゃっている一般行政職と教員の給与の比較で、さっき、残業がどのくらいかわからないとおっしゃったが、これは一応文科省がつくっている数字ですから。一応、一般行政職は時間外勤務手当、これは月々ですね、このぐらい出ていると。先ほど伊吹大臣は、給特法における教職調整額というのがこれに見合うようなと。時間外はないわけですから、給特法においてそういうことであると……(伊吹国務大臣「給特法は超勤手当」と呼ぶ)指名がないんです。

桝屋委員長 質問を続けてください。

藤村委員 つまり、時間外勤務手当の、超勤手当のことですからね。ただ、そこの認識がちょっと。

 これは過去の委員会なり国会の審議の中で、給特法における教職調整額と下にありますよね、これが一般公務員でいう時間外、超勤に当たるという考え方を文科省は今でもされているんですか。

銭谷政府参考人 教職調整額は、教員の勤務の多様性と、あるいは特殊性ということにかんがみまして、時間外勤務手当の支給はなじまないということから、時間外勤務手当にかえて、勤務時間の内外を包括的に評価して、校長、教頭を除くすべての教員に対して一律に給料月額の四%を基準として支給される、そういう性格のものでございます。これは本給扱いとなっておりまして、退職手当等の積算の基礎にもなっているものでございます。

藤村委員 文科省はそういう認識なんですが、これは最初に法律をつくったときに、当時、昭和四十六年ですか、佐藤人事院総裁がこう答えているんですね、これは委員会、国会におきまして。

 勤務時間をはみ出した分について包括的ないわゆる超勤の包括払いというような意味では筋が通らず、勤務時間の内外を通じてその職務の再評価をし、つけ足しの手当ではなく、本俸そのものを引き上げる四%の調整額を支給する、基準として。

 つまり、お配りした図の一般公務員の時間外勤務手当ということと、それから、この下の教職調整額ということとは見合うわけでは全然ないというのがそもそもの法律をつくったときの給特法の考え方であったということ、これを一遍思い出していただかないと、今勤務実態調査をし、残業がこれだけ多いから、だから財務省と、これでは少ないんじゃないかというお話をする筋合いのものではないと私は思うんですね。

 大臣、何か御感想があれば。

伊吹国務大臣 今参考人がお答えをしたように、退職金の算定の中へ入っているというのは、まさに先生がおっしゃったような本俸的扱い。しかし、これができた、この積算をするための理由づけとしては先ほど参考人が説明したとおりのことでやってきたわけですから、だからそれを本俸から外すという意味じゃないですよ。

 私としては、一般公務員が超勤をもらっている金額に比べて、勤務実態から見て、きちっと超勤を教職員に払ったら一般公務員より低いという数字になっている限りは、人確法だとか給特法だとかという法律の意味がないじゃないかということを言わなければいけないから、調べさせているという理解をしていただいたら結構だと思います。

藤村委員 ですから、ここからは本当に私も悩むところなんですが。

 今現場の先生たちがこれだけ、さっき二時間超の残業で、大臣の所信にもあるとおり負担がふえている、そういう負担感の中で、いっそ人材確保法なんかなくして、給特法もなくして、一般公務員にしてくれという声も出てくるのかなと思うんですね。そのときに我々はどう考えるか。

 先ほど冒頭の方で話がありました、師族であると。教師、医師。代議士と弁護士は士の方ですけれども。師というのは、三歩下がって師の影を踏まずですから。つまり、そういう職にある人に残業手当を出すのかな。でも、現場ではだんだんそうなってきつつあるのではないかなというのが、私の今観測するところであります。

 大臣はどうお考えでしょうか。つまり、教師も一般公務員と同じようにしたらどうかという考え方が一方ではある。しかし一方で、いや、教師というのは一般の公務員とは大分違いますよと。文科省流に言うと、教師の勤務時間は二十四時間だそうです。つまり、八時間が現場における勤務時間で、残り十六時間は、実際残業して仕事をしているんです。あるいは家に持ち帰ってやっているんですが。夜中に保護者から電話がかかってくるんですが、これがまさにボランティアで、サービス残業だというわけですね。その状態でいいのかというと、ちょっと今悩むところでありますが、大臣のお考えを聞かせてください。

伊吹国務大臣 これはちょっと文部科学大臣としてはお答えしにくい質問だと思いますが、政治家として考えれば、やはり一般の地方公務員とは私は違うんじゃないかと。であるからこそ給与の体系も違っている。その給与の体系が実体的に揺らいでくる。そして、閣議決定で二・七六を削減するなどということを決めていれば、二・七六は削減しても、二・七六を上回る手当をやはり考えるというのが、文部科学大臣としては、私の責任じゃないか。しかし、その半面、一般地方公務員と同じような日々の争議行動や何かは慎んでもらいたい、これは当然のことだと私は思っております。

藤村委員 ですから、公務員のいわゆる労働三権云々の話が今後出てくるんでしょうが、やはり私も思うんです、教師は違うと。先生はまさに、もちろん教職という職業であり、それで対価を得るというのは当然のことですが、しかし、お金で仕事をしている人とはまた大分意味合いが違う、私はそういう思いなんです。ただ、今現場では、もう既に、一般公務員と一緒にしてくれ、残業、ちゃんとつけてくれという考え方が広まっていますよね。そういうふうに聞いています。ですから、ここはちょっと考えどころだと思うんです。

 そこで、もう時間的に迫ってきたのでちょっと飛ばしますが、要は、今議論しているのは、教員の資質の向上についてということであります。

 それで、私ども、実は今、教員の資質向上ということにおいて大きな転換をすべき時期だと思います。

 旧文部省から今の文科省に至る中でも、先生はある程度専修免許ということで、大学院にシフトを考えてこられたこと、これは私は正しい方向であったと思います。

 私たちはいよいよ、先生は大学院、六年、教員養成六年ということをここで打ち出すべきではないか。過去の例でいえば、お医者さんは確かにずっと昔から六年、それから、私の知る範囲では、割に最近の話で、獣医さん、犬猫の先生も六年にしましたよね。それから、ことしの四月から始まるのは、薬剤師が六年になりますかね。教員というのはぼちぼち六年にすべきではないか。

 かつ、私ども今後提案をいたしますが、法案にもしたいと思っておりますが、いろいろな仕事がある。私は、学校経営という分野を一つ、それから教科指導という分野を一つ、それからもう一つは生徒指導等、キャリアカウンセラーでもいいんですが、そういう指導面、この三つぐらいの道をつくってあげる。それぞれについて六年制のまさに大学院で専門的に勉強してもらい、今後採用していく。

 それから、現在の教員は、おおむね四年で出てこられた方が大半。この方は、先生になって七、八年ぐらい、更新ではなくて、サバティカルで一年間大学院マスターへ行ってもらう。それでまさにレベルアップして、その後の道を三つ、どれかを選択してもらう。私は教科指導でずっと最後まで行く、ですからこれは一教員で行くわけですね。私は経営で行く、教頭、校長の道ですよね。それから、私はやはりカウンセラーの道で行く、これは今のいじめ指導とか職業指導とか、そういうさまざまな、新たな教育分野に携わっていただく。こんな提案を、仮称公立学校教育力向上法案ということで、今検討し、出したいと思っております。

 今後多分出てくるんだと思うんですが、免許の更新制度、一般には運転免許も三年か五年で更新ですから、更新制度いいんじゃないのという考え方がやや風潮としてはあるかもしれませんが、ここはよく考えながら、目的はやはり教育力向上のための教員のレベルアップでありますから。だめな先生を外すというのは、これは地教行法で、既にもう法律をつくってやってきましたよね。これがちゃんとうまく働いていないというところを働かせるということだと思います。

 そういう意味では、いよいよ日本の義務教育諸学校というか公立学校の先生、これはもちろん免許の話ですから私立の先生もそうですが、六年を目指したいなと考えております。

 これについてのお考えと、それから、もう時間がありませんので、今文科省で考えている、今後教員の資質、能力を高めていく手段、方法について、現時点でのお考えもあわせて聞かせてください。

伊吹国務大臣 今、先生たちの御努力もあって、教職大学院がいよいよ実質的にスタートいたします。この前、大臣決裁をしたところでございます。

 六年制の御提案、三コースの御提案というのは、私は大変傾聴に値することだと思いますし、今後また御相談して、参考にさせていただきたいと思います。

 それから、教員の免許は、これは運用のやり方をやはり考えなくてはいけませんが、先ほど先生のおっしゃった六年制、そして三コース、そして免許のあり方云々ということは、本来はやはり私は先生の御提案に賛成ですね。

 しかし、残念ながら、教育現場でどういうことが行われているんだと。今度全国一律の指導、学習の習熟度試験をやろうとしたら、協力しないという教職員組合が現実に手を挙げてしまっているということでしょう。そういうところでどうしていくのかということもやはり考えないといけませんので、免許の問題については、やはり教えるということを中心に能力があるかどうかということは見きわめさせていただきたいなという気持ちがございます。

 それから、教員の質の向上等については、同時に、研修あるいは不適格な職員の分限をどうするかということも含めて、今、中教審の御意見を伺っているところでございます。

 しかし、きょう先生から御提案いただいた六年制、三分野という話は大変参考になりました。よく受けとめさせていただきたいと思います。

藤村委員 法律でぜひ出したいと思います。必ずしも免許更新制度の対案と言えるかどうかは知りませんが、目的は一緒です。つまり、教員の資質、能力の向上ということを目指して何をすべきか、この時点で。

 更新制は、我々もうちょっと検討しますが、検討すればするほど、更新制度も、三十時間程度で何をだれが判断するのかなど考えていくと、なかなか。

 今の自動車運転免許にしても、その他、免許を更新する制度は幾つかあるんですが、海技士という、海上保安庁の人とか、狩猟の免許とか、幾つかあるんです。それらの不適格要素というのは、すべて身体的事情なんですよね。運転免許もそうですね。これは皆さんも持っているからわかると思う。つまり、不適格にするというのは非常に難しいことであろうと。運転の能力を問うわけじゃないですね、運転免許は。ところが、教員の免許更新を教育力の問題でもし問うならば、だれがどのようにどういう基準で判断するかは大変なことになるなと。これこそ、お金もそれなりにかかりますし、費用対効果という面でどうかなというのが私の考えで。

 かつ、フィンランドがよく例に出されますけれども、私、フィンランドの教育の中での特徴というか、いい点というのは、学ぶ点というのは二つ。一つは、まず教員がほぼマスターです、フィンランドの。それからもう一つは、少人数でやっています。十五人程度。この二つは学ぶ点だと思うんですね。

 それは、いずれにせよお金がかかる話になってきますから、まさに伊吹大臣には本当に、もと大蔵省にいらっしゃった関係からも、これはこの暮れにかけて攻防だとおっしゃいますので、これは私も助っ人いたしますけれども、とにかく教育にお金をかけないと日本は今後だめになるのではないか、こういう危機感をみんなで共有して持って進んでいきたいなと思いますので、また続きは次の法案審議でやらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

桝屋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

桝屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 ことしのこの百六十六通常国会、まさに先般大臣が所信でもお述べになったように、昨年の教育基本法改正の議論を受けて、さまざまな具体的な制度をどうしていくのかという本当に大きな教育国会でございますので、また、きょう午前中の質疑の中でも、大臣が、この教育の問題というのは国会での審議を重視していく、我々野党側のいい提案についてはそのことも十分に酌み取りながら一緒になってまた日本の教育というものを、再生というものを考えていこうというような御決意を示されましたので、私もそういう観点に立って、また提案型の質問をさせていただきたいと思います。

 そして、この教育の問題に入ります前に、一点、大臣の事務所費の問題をめぐりまして、予算委員会の中でも同僚議員から何度か質問があり、それに対する大臣の答弁も伺っております。

 私があえてここで申し上げたいのは、私どもの小沢代表が本会議で、みずから、同じようにやはり大きな巨額の事務所費について、いつでも公表する用意があるんだということで、閣僚の皆さんやあるいは与党の幹部の皆様にも呼びかけをしておりました。しかしながら、ここに至ってまだそういった姿勢というものが見せられていない中で、昨日、みずから小沢代表が御自身の事務所費についての公表を記者会見を開いて行ったわけです。

 確かに、政治資金の今の規制法について、法律にどうかという議論というのは、恐らくはそう反しているケースというものはないのかもしれません。ただ、そのことを明らかにするためにもしっかりと、やはり疑惑というものが国民の中にあるからには、それは全然そうじゃないんだということをお示しいただくことは、これは別にどの党がどうということではなくて、党の幹部であれあるいは閣僚の皆さんであれ、やはり範を示すということが大事なんじゃないか。

 あえて、ですから伊吹大臣におかれましても、改めてやはり、いつもおっしゃっているように、ある意味この問題が起こったときから正直にいろいろな形で記者会見等々でおっしゃっていると思います。また、大臣自身、いつでも出せるものはあるけれども、ただ、自分だけがということについてのこだわりがあるようで、でも、それだけしっかりとされているのであればその資料も含めて、ぜひ大臣のレベルで、まずは先頭を切って公表をしていただく、そういうお考えがあるのかないのか、その点をお伺いいたしたいと思います。

伊吹国務大臣 笠先生が個人的に、後輩として、どんな経理システムでやったらいいのか参考にしたいから見せてくれとおっしゃるのならいつでもお見せします。

 ただ、このことは、日本の政党政治のために私はしっかり考えておかなければいけない問題を含んでいると思うんです。

 この問題の発端は、日本共産党の機関紙である赤旗が、議員会館に主たる事務所を置いているにもかかわらず多額の事務所費を計上しているのはおかしいじゃないかと。これは一つの理屈なんですね。しかし、御党の鳩山幹事長がいみじくも言われたように、それは共産党のレトリックであって、主たる事務所以外に、私の場合でいえば京都と東京に事務所がある。その事務所の経費が大体約二千万弱あります。そうすると、主たる事務所を置いているからただだというこのレトリックは既にそこで崩れているんですよね。

 そして、その後今度は、それで疑惑があると、ずっと話が大きくなってきましたね。

 これは私は、私がマスコミ批判をするといけませんから、月刊文芸春秋の三月号の巻末の新聞エンマ帖というのがあるんですよ。

 新聞は記者という名の人間がつくっている、そこには感情もあれば思想もある、それで紙面が構成される、だがそれも程度問題だ、選挙の年、新聞の世界でも激しいバトルが展開されている、ある新聞は自民党の、ある新聞は民主党の代理として戦っている。これは書いてあるとおり読んでいるんですよ。例えば、その象徴的な例が伊吹文科相と小沢民主党代表の事務所問題云々、こう来ていまして、私は小沢さんと比べてもらうほど大物でもないんですが、そして結びは、何とはなしにアジビラ的雰囲気を感ずるのは筆者だけだろうか、こう書いてあるわけです。

 そうすると、資金の計上の仕方、そしてみんなこれは選挙のために戦っているわけですから、選挙の準備運動としての日ごろの政党活動のやり方はみんな人によって違うわけです。違うんですね。

 ある党は、これは予算委員会で質疑があったように、資金管理団体も政党支部もつくらずにやっておられます。そうすると、ここは政党の委員会を中心にやっておられる。この政党の委員会の、私の地元の委員会の総額だけで一億三千万の事務所費があるんですよ。どこかの政党の機関紙が疑惑があると騒いで、そしてマスコミが代理戦争をやったらこれが疑惑になるのかというと、これはちょっと恐ろしい世界なんですね。

 先生はまだ国会議員じゃなかったと思いますが、平成六年だったか七年だったか、資金管理団体の制度ができたときに、私は党内でこの仕事をやっておりました。当時は、資金管理団体にすべて資金を、入りを統一することによって政治活動を透明にするという立法趣旨だったんですよ。だから、私はその立法趣旨に従って、京都の事務所も東京の事務所もみんな今の明風会という資金管理団体で計上しております。

 ところが、人をあげつらうことは言いませんが、ある党の大幹部は十五の政治団体をお持ちですね。その政治団体の事務所費を合計していけば何千万という、あるいは四億何千万という数字になるわけですよ。ところが、資金管理団体で経理をする経理の仕方もあれば、地元の後援会活動を経理する団体をつくり、東京は別の団体をつくり、そこへ経費を入れておけば、事務所費は分散されてしまいますね。こういうものを、やはり人それぞれによってみんな事情が違うわけですよ。だから、私は何度も申し上げているのは、本会議でも注意深く私は言っているつもりですよ、政党及び政治家について、ある一定の基準を決めていただければ、私は喜んでそれに従いますと。

 ですから、私が申し上げたいのは、もし具体的に、収支報告書というのは政治資金以外のものは報告できないんですから。私的なお金を入れたり、架空のものを入れたり、選挙費用を入れたりしたら、これはすべて法律違反になるわけですから。だから、法律違反的なものがあるとかおかしいということがあるんなら、具体的に、例えば不動産がたくさんあるからおかしいじゃないかとか、そういう具体的なことを私に教えてもらいたいんですよ。

 ただ何となく金額が多いからといって、ある政党の機関紙が話し、それに、先ほど文芸春秋が言っているような代理戦争的なマスコミの中で、だれかが発表しなければならないということになりますと、例えば、この政党をやっつけてやろうとか、この議員の政治活動の中身を知ろうとかということになると、幾らでもそういうことは可能になってくるわけですよ。

 だから、政党政治のあり方として、私は帳簿もきちっとつけていますし、毎月毎月京都と東京の月計表をつけて、私がそれはみんな決裁していますから、秘書が間違ったなんということじゃなくて、すべて私の責任としてやっておりますから。政党間で、すべて政治活動の手のうちを、これ以上の人は明かすんだということを国会で決めてくだされば、私は喜んでそれに従いますが、私からその引き金を引くということになると、同じように皆さん公表しなければならないということになっちゃうと、私がやはり責任をとらなくちゃいけないので。法治国家のルールというのはやはり法律を中心に動くわけですから。

 例えば不動産を四億買ったというような、具体的な理由があるんなら言ってください。いつでもそれはこういうことだということを説明しますから。

 そして、私は、予算委員会でも今の場でも何度も答弁をさせていただく機会があるんですよ。だから、私は、御党の小川さんも予算委員会で質問してくだすったときには、本当にありがとうございました、先生が質問してくださるからこそ不透明だとか疑惑だとかいうことに対して説明のチャンスがありましたと。小沢先生はそれがないんでしょう。だから、小沢先生が公表されたというのは、政治家としての御判断として私は尊重しますよ。

 しかし、だれかが騒いだ、どこかの新聞が書いたということで、私がその引き金を引いちゃったら、これは、どの党を陥れる、どの政治家の政治活動費の中身をそういう騒ぎの中で手に入れるということができるということは、これは私はちょっとちゅうちょをしているということなんです。

笠委員 いや、大臣のおっしゃることもわからないではないんですよ。ただ、私どもも、今大臣がおっしゃっているある政党とは違う、ある意味じゃ自民党なんかと同じような政党でございますから、ですから、その問題はまたその問題として今後どうしていくのかということはあると思います、制度の上で。

 ただ、今大臣しきりに、この前もたしか、昨日ですか、御自身がその引き金を引くということはちょっとちゅうちょしているんだというようなことをテレビで、私もニュースで拝見しましたけれども、ちゅうちょしているということは、やはり大臣が率先をして、まずはですよ、今具体的にここをと、例えば不動産であれ何であれということであれば……(伊吹国務大臣「不動産なんてありませんよ」と呼ぶ)いや、大臣はないんですけれども。

 今小沢代表の例を挙げておっしゃいましたけれども、それだって、だから大臣なりに、ではこういうものを計上しているんだよということを、例えば、出し方というのは大臣なりのものがあっていいと思うんですよ。やはり、しっかりとそれをまずは出していただければ。

 私たちは別にこれで、これがおかしいじゃないかどうだということではなくて、この事務所費の問題というものは、先ほど、政治と金の透明性をということで、大臣もこれまでお取り組みに、議員としてその先頭に立ってやってこられた。ただ、やはりその制度自体が、現行の法律自体が、それではちょっと国民の不信というものを、やはり今この時代に果たしてこれを、不信を招かないということに合った形になっているんだろうか。あるいはあらぬ抜け道になっているんじゃないかとかいう、いろいろな疑問を持たれている。

 だから、これで何も私はマスコミがとか、あるいは一部のどうこうがという、だれかが騒ぎ出してという話じゃなくて、こういった機会にしっかりとその制度自体ももう一度改めて、これは全議員で、やはりこの制度というものをしっかりと変えていく、その議論をしていかないといけないと思うんですね、あわせて。

 ただ、今安倍内閣の中で、大臣だけじゃございません、総理も含め閣僚の中で、例えば一定金額以上の、どういう条件のというのは議論されていいと思うんですが、一つの条件のもとに、じゃこういう形で公開していこうというようなものが決められれば、例えば、それが政党であれ、あるいは議員であれ。お伺いしたいのは、例えば閣僚の中で、何か私語が多いとかいろいろ言っていますけれども、閣僚懇なり雑談の中で、あるいは正式でもいいんですけれども、じゃこういうルールで、まずは美しい国を掲げる内閣なんだから、じゃしっかりと出していこうよ。大臣がということではなくて。そういう話というのは全く出たことはないんですか。

伊吹国務大臣 それはありません。

 美しい国というのは、やはり規範意識を大切にしなければならないから、例えば、政治活動費で落とせるかあるいは個人で負担しなければいけないかというようなものは進んで個人で負担する、公私の峻別をきちっとしておく、これが規範意識の原点なんですよ。私は少なくともどちらにでも計上できるものを政治資金で負担するようなことは一度もやったことはありません。それが規範意識というものです。

 あとは、どこの科目に計上するかは、これはもう率直に言って、予算委員会の質疑を聞かれたらわかるように、総務省の指示だけじゃもう入り切れないものはいっぱいあるわけですよ。これをずっと二十数年来私の事務所はきちっと自治省と協議をしながら計上しているわけだから、マスコミが騒いだとか特定の党がと言われるけれども、ここへ至るまでのプロセスは、そういうプロセスで私は大いに名誉を傷つけられているわけですよ。これは平時においてね。

 だから、私は、十八年の収支報告をもう出しましたけれども、出したときは、主要なものを横へ書いておけと。そういうことは要求されていないけれども、総務省に出すときは、主要なものだけ横へ書いておけ、借料が幾ら、何が幾らと。それを書いて出しましたよ、私はね。

 しかし、今ここへ至った事態を振り返ると、特定政党の、これはやはり、共産党さんはしっかり見ておられるわけですよ、自分たちは資金管理団体がないんだから。だから、資金団体を取り上げれば自分たちは無傷なんですよ。

 だけれども、私の地元で言えば、ずっと私と戦って、私以上の選挙の準備活動をしておられますよ。これは政党委員会で経理されているわけです。そうすると、そこの事務所費は、京都は合計一億三千万だ。これは疑惑があると、私、自由新報が騒いで、どこかの新聞がそれをやったら共産党はそれを一切公表されるのかといったら、私はされないと思いますよ。それは、私の地元の、一緒に選挙をしている穀田さん、この方は、主義主張は違いますけれども、礼儀正しい、人間的には極めて誠実な人です。この人がそんなおかしな経理をしているとは私は決して思わない。思わないけれども、騒いだら、発表させられる、手のうちを明かさせられるという国は、やはり美しい国なんじゃないんじゃないんですか。

笠委員 いや、やはり私は若干、ちょっと違うんですよね。ただ、このことについてきょう確認をしたいことは、大臣が、まず自分が先立ってみずから公表する気はないということは確認をさせていただきます。理由はお伺いしました。

 もう一点だけ。先ほどもちょっとお伺いしたんですが、じゃ公表と、それで、今度私どもは民主党として、やはり政治資金の問題、これは全員にかかわる、これは何も大臣とか党の幹部だけにかかわる問題ではございませんので、近く、一万円以上について領収書添付をしっかりとして、もちろんそのときに何を事務所費とするのか、そういった問題もあるでしょう。あるいは、経常経費のことも含めて、この事務所費を含めた経常経費ということで、そういう議員立法を党として出させていただくことにしております。

 これは今、自民党の方でも、あるいは与党内でもいろいろな議論を行っているということを私も伺っておりますけれども、むしろ、透明に、しっかりと領収書も、一定の条件をつけるかどうかは別としても、きちっと添付して、それで公表していく仕組みというものを考えていこうということについては、個人的に大臣はどういうお考えをお持ちなのか、ちょっと端的にお答えください。

伊吹国務大臣 個人的にというんじゃなくて、これは議員として、かつまた政治に携わる者として、ただし、これは多分、政治活動にかかわることですから議員立法になると思いますから、国会の議決をしてもらって、そのとおり提出できるということになれば、こんな不愉快なことを言われなくて済むわけですから、こんなうれしいことはありませんよ、私は。

笠委員 もちろん、大臣なんですけれども、やはり議員の一人でございますので、当然ながら、そういう透明性の確保ということで、やはりこの国会で、全党で速やかに、そしてやはり国民の理解をしっかりと得る形での制度の見直しというものに、教育をここで審議する、そういう同じ立場にある、しかも大臣はやはり教育の責任者でございますので、やはりこれは、また総理とは違った意味で、ある意味じゃそれ以上にこの問題について先頭に立っていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 それで、続きまして、教育再生会議の一次報告というものが先般出て、教育の関連三法ですか、これを、安倍総理も重要法案としてこの国会で成立させるべく位置づけているんだということをおっしゃっているので、個々の法案の中身についてはまた今後議論をすることがあると思いますけれども、きょうは少し、幾つか全体の確認あるいはお伺いをさせていただきたいと思います。

 私ちょっとわからないのが、まずこの教育再生会議の位置づけ。これは当然、閣議決定されてできた総理の諮問機関で、総理に対してさまざま提言を行っていく機関ということは承知しておりますし、それぞれのメンバーの方々が大変熱心な議論をされて一次報告が出されたということについては評価をしております。

 ただ、じゃ、この一次報告というものがどういう形で、これからの大きな、またまさに制度を見直していく、この国会にも提出をされる法案、そういうものをどれくらい拘束していくというか、その中身も含めてテーマではなくて、そこで出されている非常に具体的な方向性がございますよね。それは、やはりそれに沿った形で、しっかりともうそのとおりにやっていくというものなのか。それとも、この再生会議の一部の委員の方もおっしゃっているんですが、やはりこれは国民的な議論を一つ巻き起こしていくためのたたき台という認識を持っているんだ、そういうものなのか。

 まず、前提としてどのように理解をすればいいのか、これはちょっと大臣の方にお伺いしたいと思います。

伊吹国務大臣 先生がおっしゃったように、再生会議というのは閣議決定でできた組織でして、安倍総理の肝いりでできており、総理に対して教育について広い立場から意見具申をするという組織だろうと思います。ですから、政治的な意味は私は非常に重いと思いますよ。

 しかし、国家行政という立場からいいますと、立法府に対して法案の御審議をお願いするのは、先ほど先生がおっしゃったような、例えば議員立法として出す、政治活動関係とかその他いろいろあっていいと思いますが、立法府が立法府に審査を求めるか、あるいは行政府が閣法という形で審査を求めるか、二つしかないんですよ、日本国の憲法の建前からすると。そうすると、閣法として法律を出すについてだれが責任を持つんだといえば、これはもう、日本の憲法、日本統治のシステムからいって、内閣がその責任を負うわけです。内閣の長は内閣総理大臣。

 ですから、再生委員会が安倍総理に対して、こんなものでしょうということを出してくれたのが、今おっしゃった第一次報告。安倍総理は、これをごらんになって、今おっしゃった三つの法案は通常国会に出したい、この内容は十分参考にさせてもらいたいというごあいさつをなすっている。これは政治的な意味合いですね。

 それを受けて、閣僚の一人である私に、自分はこういう考えだけれども、中教審の意見を聞いてくれないかと。これは、総理は独裁者じゃありませんから、国家行政組織法上の審議会である中教審に諮って、そして、中教審の所掌はこういうことだというのが文部科学省組織令に書いてあるわけですから、その手続を踏んでくれときちっと総理はおっしゃっているわけです。それで、今、中教審にお諮りしています。

 そのときに、再生委員会もこういうことを言って、総理もよくわかりましたということで受け取ってはおりますよ、それは参考にしてくださいと。しかし、同時に、先ほど先生がおっしゃったように、教育基本法の審議の中で、民主党さんからもこんな質問も出ております、民主党案は結局廃案になりましたけれども、こういう考えでしたと。そうすると、同時に、その後、中教審の方々が大体の方向を示してくだすった後、未履修の問題も出ました、いじめの問題も出ました、教育委員会のあり方についてこんな批判も出ております、そういうことを今みんな中教審はインプットしておるというところなんですよ。

 中教審がある御判断を出していただければ、私の責任でそれを法案化する。そのときに、総理に、大体こんなところでいきたいんだけれどもどうだろうと言って、じゃ、それでいきましょうとなるか、いや、伊吹さん、ここを変えてくれ、いやいや、それは変えられない、それは閣僚の中で、総理との間でも議論があるかもわかりません。最後にやはり総理の決断というものをもらわなければいけない、これもあるかもわからない。

 閣議決定をして、そして立法府にお願いする、こういう立場ですから、私の理解としては、下村副長官にまた聞いていただいたらいいですが、再生委員会が言ったからそのとおりしなければいけないなんというのは、超法規的な国では日本はないと思いますよ。しかし、同時に、再生委員会というのは極めて政治的に重いんだということを考えない人は政治家として落第だと思いますよ。

笠委員 大臣、再生会議なので、ひとつよろしくお願いいたします。(伊吹国務大臣「再生会議。ごめん、ごめん」と呼ぶ)

 下村副長官、きょうおいでいただきまして、ちょっと今のことで私が特に副長官にお伺いしたいのは、これが第一次報告で、この後五月に第二次報告、そして最終報告が年末というふうに伺っているんですけれども、今回法案を出される三つの点についても、これはやはりかなり時間のかかる問題が多いですよね。

 教員免許等々についてはこれまで中教審での一つの答申も出ていますし、ある方向性というのはあるかもしれません。しかし、教育委員会の問題であれ、あるいは学校の校長の権限をどうしていくというような問題も含めて、これは何か、一次報告ができたから、もうその一部だけをすぐ法制化してやっていこうというよりも、実は、やはり最終報告が出て、それとあわせて、並行して、例えば中教審での、中教審にどんどんいろいろとおろしていくのは私はいいと思うんですよ。

 ただ、それをいつまでに、例えば三月中旬までに間に合わせろということで、何かちょっと、言葉は悪いですけれども、つまみ食い的に一部だけを見切り発車的にやっていくというよりも、もし、やはり再生会議もまだ、本当に、何カ月ですか、四カ月、十月でしたよね、スタートしたのが。であるならば、最終報告なりあるいは中間報告、もう少しちょっと、五月以降とか、そういったところで、いろいろこれは並んでいるんですけれども、そこでももう少し深めていただいて、その上で政府としてのどうしていくのかというのは、文科省も含めて、進めていかれた方がいいような大きなテーマが入っているんじゃないかなという気がしているんですけれども、その点も含めて、その位置づけというもの、今後の二次報告あるいは最終報告の位置づけというものも含めてお答えいただければと思います。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 今笠議員から御指摘がございましたように、第一次報告、そして第二次を五月ぐらいをめどに、そして第三次報告を十二月ということで、今、教育再生会議で議論を進めていただく計画も含めて進行しております。

 特に第一次報告の中では、社会総がかりで教育再生をということで、今の公教育、学校現場、初等中等教育に絞って、今のとにかく学校現場で、実際子供たちが今学校で学んでいるわけです。こういう子供たちにとっても、いつまでも議論しているというよりは、すぐ改善改革できるところについてはすぐに取り組もうということで、一次報告におきましては、公教育について、特に七つの提言、それから四つの緊急対応というのを具体的に出していただきました。

 その中で、伊吹大臣からもお話ございましたが、特に四つの緊急対応の中で、一つは法改正を伴わないものとして、「暴力など反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導のための法令等で出来ることの断行と、通知等の見直し(いじめ問題対応)」ですが、これは総理が伊吹大臣に指示をされ、そして、伊吹大臣も、三月中にこれについては即対応するということで、既に動いていただいているわけでございます。

 同じように、今笠議員から御指摘ございました三つの重要な法案、教員免許更新制、それから教育委員会制度の抜本改革、三つ目に学習指導要領の改訂と学校の責任体制の確立、これはなかなか重いテーマでございますし、昨年教育基本法が改正されて次に下部法令という中では最も重要なテーマでございまして、本来であればなかなか簡単にすぐ改正できるというようなテーマではないわけでありますが、これは総理から、ぜひ今国会にこの三つの法案を出していただきたいということを文科大臣にお話をされ、本来であればこれは、中教審も、一つのテーマだけでも一年ぐらいはかかることだと思いますが、今回、伊吹大臣が本当に督励をしていただいて、三つのテーマいずれも、二月か、遅くとも三月上旬までには取りまとめをしていただける。中教審も休日を返上して、今議論をしていただいている最中でございます。

 ですから、それができる対応を今文科省がやっていただいておりますので、ぜひ政府案として三月には提案をさせていただき、そして、今国会でぜひ成立をさせるということがこの国のより早い教育改革につながるというふうに思いますので、ぜひそういう方向で努力をさせていただきたいと思っております。

笠委員 今、ちょっと確認ですけれども、この三つの法案についてはすべて三月中旬、まあ十五日ということになると思うんですけれども、そこまでには順次間に合わせて法案は提出されるということで、大臣よろしいでしょうか。

伊吹国務大臣 今、下村副長官と笠先生のやりとりを若干補足しますと、先ほど先生が教育免許の話をされましたけれども、教育委員会関係の法案それから学校教育法についても既に諮問はしてあるわけなんですね。そして、かなりの部分について御回答というか答申をちょうだいしているんです、既に。しかし、その後、いじめの問題があったとか、教育委員会の対応が非難を受けているとか、民主党はこういう考えを教育特でお述べになっているとか、それから再生会議がどう言っているとか、その後のことをすべて今インプットしながらやっていただいているということです。

 それで、総理の教育再生にかける強い思いがありますので、私も内閣の一員ですから、できるだけ安倍さんの思いは達成させたいという気持ちでおりますし、三月中旬というのは、これは民主党というよりも、国会のルールだとか何かで決まっているわけじゃないんですよ。これはどちらかというと、むしろ自由民主党と公明党の、与党の皆さんの国会対策上の要請としていついつまでと、こういうことは決まっている。だから、教育基本法なんかは去年は四月の何日かに出たわけでしょう。だけれども、私としては、やはりできるだけ決められた範囲に出せるように、担当大臣としては最大限の努力をしたい。

 そして、下村副長官はそんなことまで知っておるのかなと思いましたけれども、中教審は日曜日も土曜日もやっておられるんですよ。申しわけないんだけれども。ですから、スピードアップして、そして、ある程度ドラフトができたら民主党にだって事前にお示ししないといけないでしょう。だから、それぐらいの時間的余裕を見て、作業は急がせたいと思っております。

笠委員 作業をお急ぎになるということは、また、事前に私どもにもきちっと意見を聞いていただけるということは歓迎したいんですが、一点、大臣が所信の中で、ちょうど、初めにというところでお述べになっている、さきの臨時国会で教育基本法が改正された、改正教育基本法の成立によりすぐに解決できるわけではなく、改正教育基本法の理念のもと、多くの国民の声を聞き、そして関係法令を整備し、というくだりがございます。

 実は教育基本法が、改正も大きなテーマでございました。しかし、国民から見れば、やはり、実際にこの改正によって具体的に今後どう変わっていくんだ、どういうふうな制度があるいは見直されるのか、そういったことについてはまさに関心を高めていかなければならないと思うんですね。

 理念法ができたわけでございますから、それを具体化する。大臣が今確かに我々にまで、民主党にも配慮をいただいたということはありがたいんですが、本当にこの教育委員会のあり方というのは、これは国と地方の、あるいは自治体と、そして学校現場と、どういう責任の分担をしていくのかということも巻き込んだ、やはり大きな一つの議論というものが必要になってきて、その結果としてどういう形の教育委員会がふさわしいのかということになっていくような、大変、本当に重いテーマですよね、先ほど下村副長官がおっしゃったように。

 こういうことについて、例えば、国民の声を聞くという作業も法案提出の前に具体的にやっていくというような考えがあるのかどうか。あるいは、それはかつてはちょっと不幸な、一部やらせタウンミーティング等々ありましたけれども、文科省としてそういうものを、幾つかのテーマ、この国会に提出するに当たって、しっかりと設定して、それでそういう健全なタウンミーティングを開くとか、あるいは国民の皆さんの意見をじかに伺うようなことを今やっておられるのか、あるいはこれからやる予定があるのか、その辺を具体的にちょっとお答えいただければと思います。

伊吹国務大臣 再生会議も、国民、こういう層の方までが教育の議論に入ってこられて御意見があるのはなるほどなと私は思いましたけれども、極めて幅広い範囲から選んでおられます。中教審も、審議会の委員及び臨時委員をやると百人以上の方がおられます。

 笠先生、何よりもやはり一番しっかり我々が知っておかなければいけないのは、国民の声は笠先生だということなんですよ、国会だということなんですよ。この教育委員会の議論もずっと、今先生がおっしゃったようなことは教育基本法のときに、未履修だとか何かが途中で出て、いろいろな意見が出ましたよ。民主党案の中にも、国と地方との関係でいろいろな御意見が出て、民主党案にだって質疑があったじゃないですか。まさに、国民の声はどこで聞くかといえば、主権者である国民が選挙によって選んだ国会こそが国民の声なんですよ。それを私は一番大切にしていきたいから、民主党とのやりとりもすべてインプットしてありますと申し上げているんです。

笠委員 いや、私は、当然国会での議論も、これは十分にやらないといけないと思っていますよ。ですから、国会という場で法案を提出いただくわけですから、それをしっかりと国会の場が主導して、例えば公聴会をやっていくなり、本当にいろいろな形で、我々として意見をどうやって吸い上げていくのかということは、個々の議員のまた努力もさらにしていく必要はあると思いますよ。もちろん、我々の存在自体も、国民の代表として出てきているわけですから。ただ、そのときにやはり、私は一つは、今国会に提出されることはいいんだけれども、それくらいの思いでしっかりとした議論をやっていくというような形で審議は進めていかなければならない。

 いみじくも、下村副長官がフジテレビでおっしゃっていたように、いや、僕は正直だと思うんですよ。これは何も、我々先送りするとかそういうことじゃなくて、下村副長官は本当に正直だなと思ったのは、場合によっては参院選も含め徹底的に国民と議論した方がいい、成立してほしいと思うが、柔軟に考えてもいいと。もちろん成立を目指すのは当たり前ですよね、出す側からすれば。しかし、本当に場合によっては、安倍さんおっしゃるように、総理がおっしゃるように、これは参議院選挙の、選挙というのはまさに国民の審判を仰ぐわけですから、そこで争点にしていくぐらいのやはり覚悟を持ってやらなきゃいけない重たいテーマが含まれているなということを私は感じたもので、それは、大臣は結構なんで、副長官、その点について率直なお考えをお話しいただければと思います。

下村内閣官房副長官 私の一月二十八日のテレビでの発言だというふうに思いますが、その後、私は訂正をさせていただきました。

 それというのも、先ほどからお話をさせていただいておりますように、通常であれば、なかなか、中教審で議論していただくだけでも一年ぐらいかかる重要テーマでございますし、与党の中だけでも何カ月も議論をするような重要なテーマでございます。にもかかわらず、総理の方で、ぜひ今国会でということで指示され、そして、それを受けて、今文部科学省の方でも急いでいただいている。また与党の方でも急いでいただいているということでございますので、また、総理も今国会が教育再生国会だということを言われておりますし、やはり国会は国権の最高機関ですから、国会の場で積極的な議論をしていくことによって国民にわかる形で、そしてなおかつ、いつまでも議論してもなかなか実際は現場がよくならないということでは、これは国権の最高機関として国民に問われるというふうに思いますし、いいものはできるだけ早く成立をさせるということが国民に対する役目ではないかとも考えます。

笠委員 私は、ちょっと物足りないなと思っているんですよ。

 これは逆に大臣に確認したいんですけれども、この三法について、午前中に私どもの藤村筆頭の方からも質問させていただきましたけれども、例えば、教育再生会議の中に、教員の質を向上させていこう、これはまさに同じ思いですね。これは教育基本法でも随分議論しました。その中で、これまでの中教審の議論の中でも、確かに免許制というものもやっていこう、同時に、やはりその養成課程をどうしていくのかとか、これはこれだけやればいいという話じゃないですよね。ですから、まさに本当に骨太のものを出されるのであれば、法案としては、この免許の部分の、更新制を導入するための改正もあっていいんですけれども、質を高めるための一つのパッケージとして政策を出していただく、政府の考え方を。

 あるいは、教育委員会の問題についても、先ほど申し上げたように、何か今の教育再生会議の議論を聞いていると、私の受けとめ方では、現存の、今の教育委員会制度を、もう少し見直してはいくんだけれども、国がそこに関与を強めていこうとしている方向なのかな、この教育再生会議の方向というのが。我々は、教育委員会については廃止をして、そして首長に権限を持たせて、一つの監査委員会をあわせて、それをチェックする仕組みで一つの中立性を担保していこうというようなこと、これも随分議論させていただきました。学校現場の責任と、あるいは国と自治体の教育の責任の持ち方については、じゃ、どういうふうにそもそも考えるんだということ。

 あるいは、学校の、校長の権限という部分が、副校長を置くとかいろいろありますけれども、そういう制度以前に、公立の学校を再生させていくときに、特に大臣の京都では日本でも一番先行して取り組んでおられますけれども、コミュニティースクール、学校にどこまでの権限を与えて、それを担う校長と、そしてその評議会というものを、どれくらいの権限を持たせていくのか、あるいはそれを普及させていくのか。

 そういう一つ大きな、骨太の、それぞれその質を高めるため、あるいは公立の学校をよくするため、あるいは教育行政をもっとしっかりと明確にしていこうというものがあって、そのもとで何か法案が出てくるということであればわかりやすいんですけれども、何かそこがちょっと見えてこないんですね。この教育再生会議の提言はわかりますよ。しかし、それを政府として、そこから何を、まさにこの部分はそのとおりにいこう、あるいはここはこういうふうにした方がいいというようなパッケージで出していただくようなことの方が、もっと議論がわかりやすくなるんじゃないかなということで、これは私の考えなんですけれども、いかがでしょう。

伊吹国務大臣 笠先生のお考えは一つの考え方だと思います。

 先生も政治活動をされると、今後いろいろな場面に遭遇されると思いますよ。こういうふうにトータルの姿を描いて、それをすべて示しながらやっていくのがわかりやすいけれども、それだとかなり時間がかかって、学校現場がこのままの、荒廃のままじゃよくないんじゃないかという決断をしなければならないときもきっと将来お出になると思う。そして、今はやはり、学校現場の荒廃というか、荒れ方は、もう限界に来ているというふうに安倍総理は考えているわけですよ。

 ですから、今先生がおっしゃったような全体図は当然頭の中にみんな我々入れながらやっておりますよ、作業は。そこまでいいかげんなことをしているわけじゃありませんから。だから、国会でそういうことについてもお聞きいただけば結構だし、どういう形で審議をしていただけるのかは、これは我々が申し上げることじゃありませんから。

 ただ、今先生がおっしゃったようなことも、できるだけ国会の審議の中で、先生御自身が国民の代表なんだから、主権を持っておられる国民の代表としてここへ全員来ているんだから、それは、国民の気持ちを体してやりとりをして、いいものがあれば修正していただいたらいいんじゃないんですか。そして、なるほどと思われたら賛成していただいたらいいわけだし、それが国会なんじゃないんですか。

笠委員 時間が参りましたので、また個々やらせていただきますけれども、まさに、最後に一点だけ。

 だから、私は、何を安倍総理が焦っておられるのかなと。我々も急ぐという気持ちは一緒ですけれども、何も時間をここで区切ってとかいうんじゃなくて、もう論点は出ていますから、むしろそこあたりはぜひ軌道の修正を、また大臣に、前向きな形での、そういった形での議論をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

桝屋委員長 次に、奥村展三君。

奥村委員 民主党・無所属クラブの奥村展三でございます。

 歴代文部大臣にずっと私はお願いもし、お尋ねもしてきたのが、やはりスポーツ振興なんです。けさほどの質疑の中にもありましたように、国民の健康ということ、これはやはり基本であろうと思います。これは学校におきましても、きょうは大臣、朝から、学力につながるというお話をされておりました。

 私、参議院時代に、有馬文部大臣にも、スポーツ振興について、やはり健康な体には健康な心が宿るということを申し上げたことを思い出していたんですが、今日、体力的に、ある意味では、言葉がいいかどうかわかりませんが、先輩なんかに聞くと、日本人の体は西洋化してきたんだというような言い方を、昔ははだしで走って、いろいろなところで泥んこになって、そういう自然な姿で体力がついてきたんだ、しかし、食事もいろいろな環境も変わってきて、どんどんと、ある意味ではスマートな体になって、ひ弱な感じになってしまう。田舎のそうした、我々もそうであったんですけれども、川で泳ぎ、山へ行ってドングリをとり、いろいろなことをして、そういう自然の中で体力ができてきたと思うんですね。

 昭和三十六年にこのスポーツ振興法等ができているわけなんです。その都度その都度、いろいろと、時に改正なされたり充実をなされたりしてきてはあるんですけれども、まず大臣の、就任なされて、今の教育基本法の問題だとかいろいろなことで御苦労いただいていますけれども、やはり、冒頭申し上げましたように、人間として体力というのは非常に大事なことです、健康というのは大事なことですから、大臣のスポーツあるいは体力向上についての所見をまずお伺いしたいというように思います。

伊吹国務大臣 午前中にも松浪先生から同じような御趣旨の御質問がありまして、私、それにお答えしたとおりのお答えになると思いますが、やはり人間に必要なのは、まず体ですよね、それから知識ですよね、それから、ある意味では心、徳ですよね。知徳体、この三つのバランスがとれた人をつくっていくということが教育です。

 先生がまさにおっしゃっていたように、昔は、昔という言葉を使うと、お互いに年をとっちゃったということになるんですが、放課後、随分遊びましたよね。いろいろなことをして遊びました。それで体力がついてきたという面があります。

 しかし、豊かになることによって、核家族になり、地域コミュニティーが崩壊を始め、一緒に遊ぶ子供の数も少ないし、ましてや、やれおけいこごとだとか塾だとか、いろいろなことをやるほどの余裕がある経済レベルに達しちゃったわけですよね。そのことの結果、子供の教育も、もう家庭を離れて、家庭と地域社会が崩壊したから、ほとんど学校へ押しつけられている。

 体力の問題も一緒なんですよ。ですから、これを、体力という面からすれば、何とか回復しないといけないですよね。今、学校を中心に、地域社会でスポーツ少年団だとかいろいろありますけれども、この二つを組み合わせて、これをつくり直していかないといけない。

 そのつくり直す根本は、先生が先ほど来おっしゃっていただいた三十六年のスポーツ振興法だと思います。予算が必ずしも十分とれていないので申しわけないんですが、今まで、国民体育大会をやる、スポーツ団体への助成をやる、各種のスポーツ振興や地方のスポーツ行政の体制を整えるとか、そして生涯スポーツの社会をつくるとか、いろいろなことをやってきておるわけです。

 今後とも、先生にも御助力いただいて、少しでも予算を多くとって、そして子供の体力の向上に努めていく。体力の向上というのも、体重がふえたとかそういうことじゃなくて、運動能力を高めないといけないと思いますね。

奥村委員 御持論をまずお聞かせいただきました。

 後半に、予算を確保しなければならないというお話があったんですが、平成十三年には、やはり生涯スポーツ社会の実現という項目で十九億からの予算があったわけですね。これ、十九年度の予算案、いろいろ今審議されていますが、見ましたら、十億しかないんですよ。昨年は十二億、約十三億なんです。

 大臣が所信でお述べになりましたように、だれもがいつでもいつまでもという云々で生涯スポーツ社会の実現を目指しますという力強い言を発せられたんですが、私は、来年度のこの予算も見まして、予算分野別に推移をずっと見てみますと、確かにチャンピオンスポーツといいますか、ナショナルセンター等、今充実をいただいて、北京オリンピックやいろいろなことに対しては非常な力を入れている。これは国力に匹敵するわけですから、大いに賛成です。

 しかし、先ほど来申し上げていますように、国民の健康、そういうものにしっかりと目を向けて、生涯スポーツなり、あるいは地域スポーツ、それぞれの地域に合ったスポーツを実現させていこうと思いますと、やはりそこにお金がかかるんですよね。スポーツ少年団のお話もありましたが、今現在いろいろなところで、地域で頑張っていただいている方々は、みんなボランティアで無報酬なんです。

 ですから、そういうことを考えますと、伊吹大臣が今おっしゃったように、やはりしっかりと予算を確保して、それが国民の、けさのお話にもありましたように、国民が健康になれば社会保障の費用はどんどん減っていくわけですから、寝たきり老人をなくしていこうとかそういう運動も厚生労働省なんかでもおやりなんですが、そういうように持っていけば、いろいろな問題が解消もしていきます。

 また、現在、大臣もお感づきになって、京都だったら特に交通頻繁なところですが、私の田舎でも子供が外で遊んでいるという姿を見ないんですね、日曜日、土曜日、帰りましても。ほとんど一体どうしておるんやろうというようなことで。私の孫はいつもスポーツに興じて家にちょっともおりませんけれども、外ばかり走り回していますけれども、そういう姿は本当に見られない。

 そういうことも、地域に根差したスポーツをさせていこうと思えば、指導者あるいは保護者、そういうものとの連携というのも大事ですし、やはり予算をしっかり確保していただきたいというように思っております。

 まず、大臣、生涯スポーツ社会実現ということをおっしゃったんですけれども、どういうように具体的に進められようと思っておられるか、お尋ねをいたします。

伊吹国務大臣 生涯スポーツ社会の実現について、昨年約十三億あった予算がことしは十億六千万になっているということなんですが、これは、約二億ほど落ちているのは、総合型地域スポーツクラブ育成推進事業というところのお金がそれだけ少なくなっているんです。生涯スポーツ社会の実現というトータルの予算の中で、その部分の予算が少なくなっている。

 これは一種の奨励予算ですから、ある程度地域社会にそういうものができてきますと、これはやはり地方自治の建前で、単費でやっていただかないと、いつまでもいつまでも国費でずっとお世話していくというわけにもいかないんですね。ですから、まさに民主党さんがおっしゃっているように、地方分権はむしろ民主党の非常に主張してこられたところですから、地域が力を入れていくところは、国の予算に頼らずに、やはり地域の特殊性を出してやっていただく。

 必ずしも財政指数が高い東京都やなんかが立派なことをやっているかというとそうじゃなくて、案外、財政指数が低いところの方が教育関係の経費が多いという地域もたくさんあるんです。我々も予算を獲得して、後押しはできるだけしたいと思いますが、助成的な、助成的というか、やや導入時を助成していくというこの予算のお金は、できるだけやはり地域で引き継いでやっていただくということをぜひお願いしたいなと思っております。

奥村委員 地域でしっかりやれということなんですが、実は、これはもうきょう余り取り上げるつもりはなかったんですが、ことし秋に滋賀県でマスターズ大会が開かれます。これは日本体育協会ですね。二〇〇一年からずっとやられてきたんですけれども、ことし、二〇〇七年びわこ大会と銘打ってやるんですが、第七回目なんです。富山、広島、滋賀と、こうくるわけなんですが、文部科学省はこれは主催ではないわけです、後援です。

 しかし、今おっしゃったように、これとて地域スポーツの一端で、滋賀県の競技団体がやるんですが、競技団体が持ち出しなんですよ。私も野球、ソフトあるいは陸上等に絡んでおりますが、実は野球なんかは審判の費用が出てこない、弁当代が出てこない。この間の日曜日に総会をやったんですが、会長、一体これはどうなるんやろうと。マスターズゲームですから、全国からおいでになるから、去年天皇賜杯を滋賀県でやったんですが、今度、三十二チーム、五会場でやるんですが、そこの費用が出てこないんです。これは文科省に関係ないんですよ。体協に関係あるんですから、いろいろ進めておられるんですけれどもね。これはざっと七千人おいでになるんですけれども。

 本当に、ある意味では、もう今の予算は二億減ったけれども、そうして地域で、おまえら、まあ気張ってやれよという言い方だと思うんですけれども、一方で、こういうような大会をすることによって赤字になって、それが、競技団体が登録料をもらって一年間の運営をやって、何か大会をしてもみんな赤字なんです。それにマスターズゲームをやって、また赤字なんですよ。だから、大臣、こういうのがやはり実態なんです。

 だから、私が申し上げたいのは、やはりスポーツを振興していく、国民の健康をしっかり維持していこうと思えばお金がかかるんです。これは何かといったら、指導あるいはそれの運営、そういうものなんです。ほかの方に使われるお金じゃないと思うんですよ。だから、やはりそういうものをしっかり文科省としてもこれから確保していただくように、それは我々も努力をいたしますけれども、やはり大臣初め省庁の皆さん方も実態をしっかりお考えいただいて、確保していただきたいということを強くまず要望しておきたいというように思います。――わかりますか、マスターズの。

樋口政府参考人 今委員御指摘のスポーツマスターズにつきましては、平成十三年度からこれを体協と都道府県の主催で行わせていただいているところでございまして、文部科学省としては、これに対しての後援名義を与えるにとどまっているわけでございます。

 この開催経費については、今委員御指摘のように大層な額がかかるわけでございますが、体協からの資金援助等もありながら各都道府県の自己負担分があるという状況は私どもとして理解をしているところでございます。私どもとしても、簡素で効率的な大会を心がけていただくように、体協を通じてさまざまな働きかけをしてまいりたいと思っております。(発言する者あり)

奥村委員 そうですね。

 それと、先ほど、午前の話もありまして、今大臣もおっしゃいましたが、実は、先ほど、子供が外で遊んでいないというようなことを言いましたけれども、放課後子どもプランというのが十九年からスタートいたします。これは厚生労働省とタイアップしてやられるわけなんですが、こういうこともしっかり着実に進めていく。こういうことがやはり地域の連帯感、放課後に、塾に行くんじゃなくて、子供同士で肌で触れ合う、スポーツをしたり駆けっこをしたり、あるいはまた文化に触れ合うとか、そういうものにして、地域で子供たちの情操をはぐくんでいく、そういうことにもやはりこれからも力を入れていただきたいということを強くこれは要望させていただきたいというように思います。

 そこで、私、従来からこれはずっと言い続けてきているんですが、実はスポーツ振興くじなんです。

 これは、大臣、お聞きになってびっくりされていると思うんですけれども、もう私も聞いてびっくりですね。

 当時、これは参議院のときにかかわらせていただいたんですが、スポーツ振興議連等で、もう鳴り物入りで、二千百億ぐらい売り上げができるんだ、悪くても一千六百億ぐらいだとおっしゃっておったんですね。これがもう御承知のとおり、一番最初、七百億を切れております。ことしは、まだあと六試合ぐらい十八年度は残っていますけれども、百三十億ぐらいでしょうね。去年が百四十八億ぐらいでしょうか。そういうようなことで、もう十分の一なんですよ。

 そして、それは何かといったら、先ほど来申し上げているように、やはり地域スポーツなりいろいろな競技団体、いろいろなところが、補助というか、いただいて、地域に根差したスポーツ、国民の体育振興という形でやったわけなんですが、結局これはもう本当に、小泉総理も去年の六月の参議院の委員会でこんなふうにおっしゃっていますよ。「これは私は見直しが必要だと思っています。」「今までどおりでいいと思っておりません。」「役所がこういうものを考えて、売上げ上げようと言ったって上がるかどうか、私ちょっと疑問に思っているんですよ。」ということで、小泉総理も去年言うておられます。

 実はきょうのこの委員会においでになるかならぬかどうかだったんですけれども、元総理の森先生が日本体育協会の会長になられた。本当に、国民総スポーツ、そしてこのサッカーくじ、当時スポーツ振興議連の会長もなされておりまして、麻生、今の外務大臣が当時の幹事長だったんですよ。我々はこれは一生懸命になって、言われたからやったんですが、結局こういうざまなんですよ。

 だから、私は、きょうこの委員会においでをいただきたいと、わざわざお願いに部屋まで行って言ったら、後で電話がかかってきたんですよ。奥村、あんなものつぶせ、あんなもの何にもならぬぞとおっしゃったんです。これは事実なんです。うそだと思ったら、大臣、一遍、お出会いになったら聞いてください。私、あしたはどうしても午後に予定が入っておるから、申しわけないけれども出られぬ、しかし、あれはちょっとは本当に根本的に考えなあかんぞと言って、私に言うてもろうても困ります、私、質問者ですからねと、きのう言うたんですけれどもね。

 結局、これは考えてみても、十三年度にスタートして、先ほど言ったように六百四十三億しか売り上げがないんですよ。そして、十七年度で百四十九億、この配当が一億二千万ですよ。一億二千万、どうして振り分けるんですか。これは、もしも四十七都道府県の体協なりいろいろな、まあ以前は三千二百ほど市町村がありましたけれども、現在千八百ぐらいですが、ここに一億二千万、要望していたところへ全部これを上げたらどうなるんですか。十万も行きませんよ、これは万の台ですよ。

 こんなことで、結局、スポーツ振興くじというけれども、振興くじじゃなしに、これは以前も言ったんですけれども、これは職員振興くじなんですよね。理事長が年額一千九百十九万九千円取っておられるんですよ。理事長ですよ、皆さん。そして、理事、一人当たり一千五百十三万一千円、これは四人おられる。そして、常任監事、この方が一千四百五十四万円お取りになっています。こういうのが実態なんです。そして、学校法人梅村学園の理事長、中京大学、ずっと三重高校やらの方は、年額報酬として、これは非常勤ですから、二十万四千円しかもらっておられません。

 これがどうということじゃないんですが、日本スポーツ振興センターというのは、決してスポーツくじだけをやっておられるところではないのはわかっています。これは戦後の給食会から設立、スタートして、脱脂粉乳からのいろいろなことをやり、その後、学校安全会、この安全会にも実は問題があるんです、大臣。

 今、強制的なんですよ。それを、今ここに田島議員がおられますけれども、ある委員会でやられたら、ようやく保護者に対して任意に入るか入らないかということをとるようになったんです。私の孫にも聞いたんです、若嫁に。そうしたら、強制的です、全部学級費と一緒に納めていますと言うんですよ。だから、そういう運営もなされているんです。やはりここの利益もありますよ。

 しかし、そういうものを統合して、この独立行政法人日本スポーツ振興センター、私も、最初のこの独立法人ができる前、日本体育・学校健康センターというような名前だったから、これは給食等もいろいろありまして、おかしな名前やなと言うたことがあるんですけれども。現実にこういう問題があるんですけれども、私は、やはりこれは抜本的に考えないと、このままで……。

 そして、サッカーのファンから私にお手紙いただいたんですけれども、こんなややこしい売り方、何かもう売れなくなったら次から次にいろいろな商品を出してきて、そして実際に自分が見ている試合のあれは買えないとか。それだったら、この人が言われるのは、入場券に三百円オンしたらええやないかと。まあ、いろいろ理解を得て、三百円あれして、そしてその中で、その試合を見ている中でそれに自分が投票して、そこですぐ当たる、おもしろみも出てくる、だいご味も出てくるということで、くじの意義があるというようにおっしゃっていたんですけれども、大臣、今ちょっと大まかな話をしたんですが、どのようにお思いでしょうか、このサッカーくじ。

伊吹国務大臣 このスポーツ振興くじがうまくいっていれば、ればというのはよくないですが、先生が先ほどおっしゃったようなマスターズだとか何かへの助成がみんなきちっとできているはずなんです、率直に言えば。

 申しわけありませんが、ありていに言えば、私はこの法律が議員立法で出るときには反対でした。それはなぜかというと、スポーツをくじの対象にするというか、賭博の対象にするというのは私は反対でした。しかし、これは議員立法でお出しになった法律なんですよ。小泉さんが何か、役人が幾ら頑張ってもなんというようなことをおっしゃっているということのようだけれども、議員立法としてこれが出る、こういうことが本当によかったかどうなのかということは、まずこれ、責任問われますよ、率直に言えば。

 そして、この運営がこのままでいいのかどうなのかということは、私は今厳しくやらせています。こんなものを野方図にしておいたら、最後は、赤字がたまったら国民の負担で償却しなければいけませんから。それは先生のおっしゃっていることは十分わかっております。同時に、会社を再建する場合は、どういうふうな形で再建するかというのは民間的に考えないかぬですよ。まず、経費を落とさないけませんよね、今おっしゃっている。それから、同時に、不要不急の資産、営業のれん料も含めて、どんな感じでどういうふうにこの評価をしながらやっていくのかということはありますよね。

 そういうことも含めて、売り上げをできるだけ伸ばしながら、去年は、率直に言って、ワールドカップがありましたから、これでかなり売り上げが落ちたと私は思うんですよ。できるだけ売り上げを伸ばすと同時に、再建をするためにはよほど厳しいことをやらないとだめなんで、それは今事務局を督励してやらせております。

 せっかく議員立法で出たものですから、私はやはり、同僚議員の中で当時の判断が失敗だったなんというようなことにはならないようにしたいと思っています。

奥村委員 確かに、これは議員立法だったと思います。

 しかし、大臣、スポーツ振興センター設立のときには、これはその中で運営されていくわけなんですが、政府から千九百五十億出資されているんですよ、このセンターを設立するために。そして、一方で、このtotoの、りそな銀行とずっとやってきたけれどもうまくいかなかった、この借金約百九十億ほどありますね。昨年の九月二十九日、二百十六億五千八百万円余をりそなに返す分、そしてこれはシンジケート、参加金融機関、つくって、これだけの分、実は借金しているんですよね。これを、十九年から二十八年まで十年間返済していくというんですよ。先ほど大臣がおっしゃったように、これ、焦げついたら全部また税金でやらなならぬです。

 私は昨年か一昨年に当委員会で申し上げたんですが、国立競技場だとかいろいろありますね、これを担保に金を借りたらいいんだと言った人もこのセンターの中におられたようなんですよ。だから、そういうような考えでやっておられる人たちもおられるし、そして、今申し上げた約二百十七億ぐらいのお金を返していかなならぬですよ。収益、年間二億一千万。配当なしです。配当というか、こんなもの、分散するお金ありませんよね。

 だから、やはり根本的に私は思うんですが、こういうスポーツのサッカーくじがいいとか悪いとかいうことも踏まえて、このスポーツ振興センターは振興センターとして、サッカーくじならサッカーくじ、totoならtotoだけをしっかりとできるような形でやらなかったら、こんなもの、人件費は先ほど申し上げたようなべらぼうな金額。文科省の人おいでになりますけれども、これは四人文科省の天下りなんですよ。理事が一人と監事一人は財務省の天下りなんですよ、これ。これは、理事長初め四人の理事、監事一名、全部天下りなんですよ。だから、こういうような運営をしていて、そんなもの、収益を上げると先ほど大臣も言われた。小泉総理が言われたのは私は当たり前やと思うんですよ。やはり発想の転換をしなければ、これはうまく運営ができないと思いますね。

 ですから、やはり、今いろいろなアイデアを出しながらということで、りそなから新たないろいろな知恵を出されたんですが、私は実は去年、御紹介をしたんです。地方競馬でいろいろアイデアを出してやられたチームがありますからね。文科省を通じて、一度、こういうアイデアもあるからといって、その人は行かれたんですが、文科省の人の御紹介はよかったんですけれども、実際に行かれたら玄関払いやったんです。日本ユニシスでやっていますから関係ありませんということで、けんもほろろだった。いろいろなことで、このサッカーくじをうまく進んでいくようにと思っておられる方々でも、そういうような思いをして、これはもう税金をつぎ込んでまた借金を返しよるねやというような言い方をしておられましたけれども。

 だから、実態はこういうことなんですが、大臣、本当にこれ、真剣にひとつ考えていただかなければならないんですが、大臣よりも、ひとつ局長、ずっと私はこれを言い続けてきているんですけれども、元総理、森日本体育協会の会長までがやめよとおっしゃっているんですから、一遍じかに行ってきて、ほんまですかと聞いてきてくださいよ。本当なんですよ。きのう、そうして電話があったんですから。わざわざお電話いただいたんです。ちょっと、局長としてどういうふうに今後考えておられるか、一遍聞かせてください。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のように、十三年度からこのくじ事業がスタートいたしまして、毎年、販売開始以来売り上げが減少してきておるのは事実でございます。先ほど大臣から御指摘申し上げましたとおり、十八年シーズンは百三十二億円の売り上げにとどまりまして、対前年比十一億円の減になったわけでございます。ワールドカップの開催がございまして、くじが販売できなかったという要因もあって減少したわけではございますけれども、当初期待した助成額も確保することができないという状況に立ち至ったことは、私どもとしても非常に遺憾なことであると思っております。

 スポーツ振興センターにおきましては、十九年シーズンは、昨年の後半から売りに出しまして売り上げ増が図られました新しい商品でございますBIGが、これは全シーズン販売することができることでございますとか、あるいはコンビニエンスストアの販路を拡大するということによりまして売り上げ拡大を見込みたいと思っております。また、業務経費については一層節減をしていきたいと思っておりまして、こういった取り組みを通じまして、私ども、売り上げの回復が図られるのではないかということで、その取り組みについて注視してまいりたいと思っております。

 ただ、当然、今後のくじの売り上げ状況を十分踏まえながら、このくじの事業のあり方については、抜本的な見直しも含めてこれは考えていく必要があるというふうに認識をしております。

奥村委員 一月の二十三日に、業務に係る評価をやっておられますね。こういう売り上げの現況ではという云々で、これは文科省の皆さんも入っておられる。確かに、ワールドカップがありましたからその間は売り上げはなかったと思いますけれども、ここにはっきり、「センターにおいてはさらに売上向上及び経費節減に取り組んで本事業の財務内容改善を進めるとともに、文部科学省においてはくじの売上状況等についての評価を踏まえて、センターの今次中期目標期間の最終年度である平成十九年度中に実施体制の在り方も含め本業務の抜本的見直しの検討を行うべきである。」ということを言われていますね。今言われたように、これは本当に抜本的にやらなかったら、大臣の先ほどの答弁のように、最後は税金で全部あれなんですよ、しりぬぐいしていかなならぬですよ。

 こんなことをして、やはり僕は、本来スポーツというものはそういうものじゃないと思うんです。やはりもっともっと汗して頑張って、それこそが本当のスポーツなんですよ。それをあたかも、スポーツ振興くじに頼って、そしてスポーツ振興だ、向上だといって、それは、当時議員立法で、今の日本体育協会の会長の森さんが提案者ですから、その人がやめようと今おっしゃっているんですから、おかしな話やなと思っているんです。

 我々、地域でスポーツをいろいろ運営させてもらっているというのは、本当に、土曜日、日曜日、またその大会をするにはやはり木曜日、金曜日ぐらいからみんな役員が出て準備をして、ラインも引き、そして試合ができるようみんな準備をして、朝早くから、天気がどうだろう、いろいろなことがどうだろうということで、その状況をしっかり把握しながらいろいろなことを運営している。まさしく汗してみんな頑張っているんですよ。

 だから、補助金をくれとかいろいろなことをしてくれというんじゃなくて、それだけではなしに、大会運営にはやはりいろいろなお金がかかるけれども、そういうように一方でやっているということ、ですからそこをはっきり、私は文部科学省として認識を持っていただきたい。

 そして、先ほど冒頭に言いましたように、国民総スポーツ、そして健康維持、向上ということにかんがみて、やはりそこの点を、予算確保なりあらゆる問題をしっかり受けとめていただかないと、ある意味ではスポーツ振興センターに任せて、サッカーくじが売れぬの、しようがないのう、おお、赤字か、税金で賄ってやるわというようなことで、今までみたようなパターンでこれを推し進められたらたまったものじゃない。片っ方で汗して頑張っている者もおりますし。

 それと、大臣、指導者の人たちの身分といったら、けがをしたとき大変なんですよ。自分が指導者でやりながら、今度、スポ少で、生徒たち、子供たちにけがをさせたとき、これもまた責任を負わなければならない。こういう問題もしっかりとトータル的に考えてやってもらわなかったら、私はやはりスポーツというのは伸びていかないというように思います。

 今のサッカーくじを踏まえて、いろいろスポーツ振興について、もう一度大臣にお聞かせをいただきたいというふうに思います。

伊吹国務大臣 サッカーくじにつきましては、私は、今後売り上げがどうこうという程度の話ではなかなか解決しないと思いますね。

 例えば、先ほどおっしゃった、りそなに最初業務委託をしていたわけでしょう。それで、契約を解消してりそなに支払いをする、そのためにシンジケートからお金を借りて、それが借入金に上がっている。りそなに払ったお金の見返りである当時のシステムの資産価値というのは一体どうなったんだというようなことは、やはりきちっと、普通の経営者だったら考えますよ。そこをお金だけ払って、当時向こうで設計したソフトから何からの評価は全くただになっているとしか考えられませんよね、お金をそれだけ払うというのは。

 そういうことも含めて、少し、トータルののれんというものをどういうふうに考えるのかということをしっかりとやっていかないといけない。当初千何百億お金を入れたとおっしゃいますけれども、それはやはり議員立法を、これは彼らも片棒を担いだんだと思うんですよ、率直に言えば。それで甘い将来像を描いて、自分らが助成する権限を手に入れられると思ったのかもわからない。それはだから、その当時のことはわかりませんけれども。これはやはり、国会もひとつ御協力いただいてやりませんといけません。

 もちろんそれに寄生虫のようにくっついて高い給料をもらっているなんというようなことは、それは規範からいって許されないことですから。

 それから、指導者の問題。私も実は京都、先生のお隣なんですが、少年野球大会の名誉会長をしていますから、少年野球チームの指導者、それからその奥さん、これはどういう立場におられるかというのはよく知っているつもりなんですよ。それから審判の人たちですね。

 これはしかし、先生、国費で地域スポーツのところをやっていくのか、自治体の事業としてやっていくのか、ここはやはり詰めないといけないと思います。ただ、それを生涯スポーツだとかどうだとかいって振興していくのであれば、教育委員会や何かの担当者の会のときには、地方自治体にある程度の面倒を見るようにということはこちらからお願いしなくちゃいけませんし、呼び水的に補助金を出すというような必要があるのなら、それはそれでまた努力をさせていただきたいと思います。

奥村委員 確かに国費で云々というよりも、本当に、地方みずからいろいろな基金をつくりながらやっているところもありますし、今大臣がおっしゃったようなことで、やはり、ぜひそういうことも頑張っていただきたい、我々も一緒になって頑張っていきたいと思います。

 八月の末に、大臣の地元の西陣のシニアのソフトボールチームが毎年私の地元で、四年間、大会、あと三年間やるんですけれども、六十歳以上の方々が全国で六十五チームおいでになります。今ちょっと病気で倒れられたんですが、西陣御出身の加藤鼎介という方が全国の会長でそれをやられて、そして、ハイシニアといって、六十五歳以上のハイシニアのソフトボール大会もまた私のところでやっているんですが、十五回まであと四回なんですけれども、毎年やるんです。それはもうまさしくお元気で、年金をもらいながら、全国を駆けめぐって体力に挑戦をしておられる大会があります。

 ぜひ、機会がありましたら、京都で、いつも朝早くから西陣で練習されているということを聞いておりますから、そういう皆さんにも励ましをしてあげていただきたいというふうに思います。

 ぜひ、国民総スポーツ、体力向上、そしてサッカーくじだけは本当に抜本的にお考えいただくようにひとつお願いをして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

桝屋委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 民主党、横山北斗です。

 きょうは、科学技術をキーワードに全般的にお尋ねしていきたいと思います。

 大臣の所信の中では、イノベーションと人材育成という部分であったと思いますが、その中で、大臣は、「我が国の経済発展と国民の豊かな暮らしを支えるイノベーションの創出には、科学技術・学術の振興が不可欠」である、こう表明されました。

 安倍内閣も、高市大臣をイノベーション担当大臣として任命いたしまして、イノベーション戦略会議を立ち上げ、日本社会への新たな活力となり経済成長に貢献するイノベーションの創造に向けて、医薬、工学、情報工学などの分野ごとに二〇二五年までに、それを視野に入れた長期の戦略指針イノベーション25をまとめる、これを政権公約といたしました。

 我が国の科学技術政策の方針を定めている第三期の科学技術基本計画においても、イノベーションについて、科学的発見や技術的発明を洞察力と融合し発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新、こう定義をしております。

 先日の予算の概要説明の中でも、今度は地域イノベーションという言葉が使われまして、その強化がうたわれております。

 イノベーションの創出というものは我が国の経済発展、国民の暮らしを支えるものとして政府の役割は重要であると考えますが、他面、昨日の本会議におきましても、イノベーションという言葉についてのイメージ、言葉だけが随分先行しているようなイメージを私も持ちます。何かノーベル賞を将来とるような研究のことを指しているようにも聞こえますし、地域イノベーションなんというと、今度は、それもそれで非常に重要なんでしょうけれども、町おこし、村おこしのようなイメージも受けます。

 そこで、まず最初に、文部科学大臣として、大臣がまずイノベーションという言葉にどういうイメージを持ち、そしてその創出にいかなる決意で臨もうとしているのか、最初にお尋ねしたいと思います。

伊吹国務大臣 私は、イノベーションという言葉のイメージは、やはり、シュンペーターが考えていた大きな波を起こす力だと思います。具体的には、新しい技術あるいはシステムによって社会を大きく変化させていくものという定義じゃないでしょうか。

 具体的に言えば、例えば自動車だとか航空機だとか、インターネットだとか携帯電話というのもイノベーションの一つの形なのであって、実際は、大きく社会を変動させていく技術でありシステムであり、またそれを使う人間の能力のようなものの集合体、これが私はイノベーションだと思いますが、こういうものをつくり上げるためには、やはり研究開発と、それを支える人材と、それから、資金的な面も含めて、何よりもそれを許す社会環境、この三つが整わないとできないんですね、市場経済だけに任せておくと、かなりリスキーな分野がありますから。であるからこそ、政府が入っていくという理屈づけが私は出てくるんじゃないかと。

 我々の所掌している範囲では、大学というものをお預かりしていますから、人材の育成という意味でもまたイノベーションに深くやはりかかわっている。それから、旧科学技術庁系のナショナルプロジェクト的な分野で国民の税金をお預かりしながら事業を進めているという意味でも、イノベーションということに関与している。

 しかし、これは、将来やはりパブリックセクターから民間へ技術移転をして、そして民間の市場経済の中で社会を発展させるように使っていただく、あるいは人間が幸せになるように使っていただく、こういう性格のものだと思います。だから、何ももうけ仕事にかかわらなくても、人間の健康にかかわる部分であっても構いませんし、いろいろな部分がイノベーションという言葉には含まれていると思います。

横山委員 ただいま大学、国立大学ということを想定されていると思いますが、イノベーションに必要な人材の育成に関しまして、改めてどういうビジョンを持っているか、もう一回お聞かせ願えればと思いますけれども。

伊吹国務大臣 まず、単に私は国立大学に限定しているわけじゃなくて、私立にも優秀な人材はたくさんおられますから、そしてその方々に研究助成を国民の税金をお預かりしている中からやらせていただいているわけですから。

 やはり、先ほど申し上げたようなイノベーションということになると、既存の価値観というものに必ずしもとらわれない、そして挑戦をするという意欲を持っている科学者、技術者というものがいてもらわないと困るわけですから、そういう人たちは、子供のころからどういう形で教育をし育てていくかといえば、やはり理科に興味のある子供、それから柔軟な発想、応用力のある子供、それから、日本人だけじゃなくて、国際的にも柔軟に対応できる人材、こういうものを小学校からやはりずっと育てていく人たちが大学に入ったり研究機関に分散していただいてイノベーションの基礎を支えていくということじゃないでしょうか。

横山委員 また後に質問いたしますが、研究の世界では他人と違うことをやるからこそ新たな知見が得られるというのはあります。それだけに、人材育成というものも難しい問題であろうかと思いますけれども、ただいま大臣の方から、私学に対しましてもそういう重要性を持って考えているという御発言がありましたし、とりわけ幼少、小学生のころからということになると、特徴ある私学教育が果たす役割というものも極めて重要になると思いますので、何とぞ、それが予算配分の点などにもしっかりとあらわれてくるようにお願いいたしたいと思います。

 それでは次の質問に移りますが、研究費の問題なんですけれども、最近、大学の研究費などでいわゆる一律に提供される研究費というのが縮小している。大体、文科系の先生なら、例えば、単純に一年間五十万とか、理系なら百万とかいう形でどの先生にも一律に渡されていたお金が、それは教授、助教授、講師によって額が違ったりもしますけれども、そういう金額は予算の関係で全体として減る傾向にあります。

 他方、文科省の予算を見ると、競争的資金というのを拡充しているわけですね。科学研究費をとることが一つの、何か、権威ある研究であるとか、それから産学協同研究などの中で、外部資金をとってくる研究をやれる研究者が社会的に求められているんだみたいな、そういう傾向が今どんどん出てきているわけですけれども、ここまでの科学技術振興を目的とした競争資金の拡充の経緯、それから平成十九年度における運用の方針につきまして、全般的な説明を文科省の方にお願いしたいと思うんですけれども。

森口政府参考人 御説明申し上げます。

 今先生から御質問ございました競争的資金のこれまでの経緯、あるいは十九年度の運用の方針でございますけれども、まず、平成八年に科学技術会議、これは各省庁再編前の科学技術会議でございますが、それが第一期の科学技術基本計画、こういうものを定めてございます。その中で、いわゆる研究者の研究費の選択の幅、それから自由度を拡大する、そういう観点から競争的な研究環境の形成に貢献する競争的資金の大幅な拡充を図ることということがこの第一期の計画で位置づけられてございます。

 その次の第二期の基本計画でございますが、これはその五年の計画の次のステップですが、平成十三年に策定されておりまして、これは新たに省庁再編後の総合科学技術会議というところでやってございますが、競争的資金の倍増という形で、一期を引き継ぎ、さらにその倍増を目指す、そういう目標を掲げて競争的資金の拡充が図られてきたところでございます。

 そして、今年度、さらにそれから五年経過しまして今年度に策定されました第三期の基本計画、この中でもやはり、引き続き拡充を目指す、そういうことが明記されてございます。また、それと並行しまして、こういうある程度の拡充がされてきた競争資金ということを考慮しまして、特定の研究者に対する研究費の過度の集中とかあるいは不合理な重複、こういったものを排除して、研究開発の効率的、効果的な推進を図る、こういう点が書いてございます。

 来年度の十九年度におきましては、この第三期の計画を踏まえまして、それに従って運用するわけでございますけれども、特に昨今、若干話題になっておりますが、研究費の不正使用、こういうことについてもしっかりと防止をするという点で積極的に取り組んでいくということも運用の方針として考えているところでございます。

 以上でございます。

横山委員 ただいま研究費の不正使用ということを最後におっしゃられましたけれども、これが昨今非常に話題というか問題になっていて、特に早稲田大学の理工学部の教授のケースでは、この方は文部科学省の研究不正防止を検討する委員会の主査代理だったんだそうです。そういう方が不正をやるということ。それからまた、論文の盗用というようなことも非常に目立っていて。

 こういう科学技術の進歩に水を差すような行為というのが何で行われるのかな、独立で、学問の自由とかいっている研究者たちが何で始めたのかなということ。前々から全くなかったわけではないんだけれども、最近よく指摘されるようになった背景に、例えば、耐震強度を偽造しようが粉飾決算をやろうが、消費期限を偽ろうが、ばれなければいいんだと、格差社会の中で勝ち組になるためには手段を選ばない、そんな研究者が学者たちの間にも出てきたのかな、何かそんなイメージを今のこの社会の風潮の中で私は感じたりしておりますけれども、こういう研究費の不正、論文盗用、こういうことが起きてきた問題点、大臣はどういうところにあったとお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 大変的確な社会状況に対する御指摘だと思います。

 横山先生、あらゆる制度は完全無欠なものはないんですね。ある制度の欠点を正そうと思って別の制度を入れると、なるほどある制度の欠点は正されるんですけれども、別の制度に伴う欠点が必ず出てくるんですよ。

 私は、再三申し上げているように、国立大学を国立大学法人化するのには反対だったです。しかし現実には、国立大学では、ある研究費や、教室への資金配分の、ある意味では悪平等化が行われて、それに対していろいろ批判等をすると、学問の自由を侵すという旗を立てて、私は間違っていると思いますが、反対をする、これが目に余るというので法人化をした。

 そうすると、法人化をすれば、ある程度の利潤、運転資金を、キャッシュフローを確保しながら、経営体として回していかねばならない。そこで何が起こるかというと、市場経済に乗りやすい研究が幅をきかせてくる。そして、民間とうまく話をしながら資金をとってくる人はえらいと。そして、そのためには自分が評価されねばならない。そうすると、先生のおっしゃったような問題が起こるんですね。これは学問の、研究の世界の村上ファンドなんですよ。この前の未履修の問題は、私は高校教育における村上ファンドだと思いますね。

 では、そういうことが起こるから厳しくやったらどうだというと、また祖先返りしちゃうわけですね。ですから、ここは最後はやはりおのおのの人間の力に頼らざるを得ない。しかし、人間の力には限界があるから、制度的にある程度競争的研究資金の不正利用だとか何かを抑えていかなくちゃいけないというので、私が大臣になりましてからは、使いでがいいように繰り越しは認めたらいい、しかし、年度末の銀行口座の預金残高の証明だけは必ずとりなさい、そして使いでをもって使ってもらったらいいと。それをこの前、総合科学会議に御提案して、今後は国の資金はそういう方向で使っていこうということになっております。

 だから、余り厳しくやると闊達な研究開発はできないんですよね。といって、野方図にさせておくと、先生今おっしゃったような問題が起こってきますから、その辺を研究者にもよほど理解してやってもらうように、我々も一層注意を喚起していきたいと思います。

横山委員 完全無欠な制度はない、最後は人間の力だと言われてしまうと、ここから先の質問も進まないので、それはそのとおりだと思いますが、問題の解決と新たな問題の発生、またその解決という繰り返しをしていくのだなということで十分理解できました。

 ただいま大臣が言われましたさまざまな改善策以外で、文科省の方で考えておられます研究費の不正等に対しましての対策など、ありましたらお聞かせ願えればと思います。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣から申し上げたことに、ある意味、尽きるかと思いますが、事務的には、具体的にどういう状況でそういう不正が起こったかとか、そういった点について分析、検討をする検討委員会をつくりまして、昨年の十二月に報告書をまとめてございます。東大名誉教授の石井先生に座長になっていただいて報告書をまとめてございます。その中で具体的なガイドラインというのをつくりまして、これは今大臣が申し上げたように、個人のモラル、そういうことも当然あるわけでございますけれども、研究機関の資金管理を研究者に任せて、組織的なチェックがなかった、そういう点もございましたので、研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン、こういうものをつくりまして、これはパブリックコメントもいたしまして、今月に各研究機関に周知をしてございます。

 それを受けまして、各機関は体制整備なり、そういうことを進めていくと思いますし、これも、ガイドラインを出しっ放しではなくて、文部科学省の方でやはりしっかりとチェックをする必要があるということで、今大臣が申し上げました資金使用の状況のチェック、これはもちろんやるわけでございます。それに加えまして、ガイドラインの達成状況といいますか、そういうものをしっかりと確認していく、そのための専門のポストも設けまして今後やっていきたいと思っておりますし、必要があれば改善、是正措置もしていきたい、そういうように思っているところでございます。

横山委員 ありがとうございました。

 科学技術といえば、ほとんど理系のことをイメージしていると思いますが、文系と理系とでさまざまな処罰、処罰というんですか、にしても違いを設けていかないと、単に研究費を削るというだけだと、余り文系の方にいたくなかったりもしますし、そのあたりは細かく御検討を願えればと思います。

 次に、先ほどいわゆる科研費をとることが権威ある研究だみたいなイメージが今の流れの中で一つできてしまっていると、例えばこんな問題も生じてきます。これも新しい制度をつくったことによって生じているところの問題には違いないんですが、例えば、自分がある科学技術の振興のためのプロジェクトを立ち上げる、それは自分の中では三年でできる計画であっても、申請のときには五年と申請するわけですね。あるいは、本当はもっと高いレベルの成果が期待できるのに、あえて低いレベルに申請しておく。そうすることによって、資金を受けた後に、それに対する成果というのが求められますから、わざと低い目標を設定する。今そういう傾向が出てきているんだろうなと私は思っています。

 一番難しいのは、こういうハイレベルな研究というのは、結局、研究している本人とかそのグループしかわからないんですよ。周りで判定している人たちというのは実はよくわかっていなかったりして。だから、そういう、科学技術の進歩を阻害するような研究、阻害とは言わないですね、本当はもっともっと高いレベルを目指せるのにあえて低いレベルの研究をというようなこともあって、私なんかは、したがって、結果を見て資金交付とかいうようなことに偏るとそういう問題を助長すると思うんですけれども、大臣、この点についてどんなお考えをお持ちでしょうか。

伊吹国務大臣 公的資金を申請してくる審査は、もちろん、私はもう全くそれを審査する能力はありませんし、ここにいる政府参考人たちも多分その能力はないと思います。そのために、専門家の方々に集まっていただいて、その専門家の方々も能力はないじゃないかと言ってしまえばもうそれまでのことなんですが、かなりその分野に通暁している人たちがどれを採択するかどうかということを決めながら、国民の税金を交付しているわけですね。

 ですから、先生がおっしゃったように、三年を五年と言ったときに、見破れない審査員も困るんだけれども、見破られたらもうお金はおりないというリスクも負いながら、先生の言ったような、成果を高く評価させようという行為にあえて出るかどうかということだと思いますので、審査をする人たちに多方面の能力の高い人たちを選びながら、御指摘のような事態が生じないように、できるだけ担当局でやらせたいと思います。

横山委員 わかりました。

 私も、ではおまえならどんな対策があるんだと言われてもなかなかいいアイデアがない質問をしていることを承知で、引き続き聞いていきたいと思いますので、何とぞ御了承ください。

 この競争的資金獲得について、一般的に、基礎研究は不利だというようなことが言われております。大臣の所信の中にも「独創的、先端的な基礎研究」と書いてあって、ちょっとよく意味がわからなくて。研究者の研究というのは、普通みんな独創的なものですし、同じことをやっていたら研究者になれませんから、それはみんな先端的なんでしょうけれども。だから、あえてこういうふうに「独創的、先端的な基礎研究」と書かれると、何か別の基礎研究を要求しているのかなみたいなふうにも思ってしまうし。不利だと言われているようなことに関して、そうじゃないですよというような、誤解を解くような御答弁を文科省の方からいただければと思うんですけれども。

森口政府参考人 まず、いわゆる独創的、先端的基礎研究という意味は、研究の中にはいわゆる基礎研究、それから目的基礎、応用研究と、幅があります。そういう意味で、今先生がおっしゃられた独創的、先端的というのは、その中でもスタートに近い部分の基礎研究、そういう趣旨かと思います。

 それで、競争的資金について、基礎研究は不利ではないかという御質問だと思うんですけれども、仮に競争資金が一本しかないとしますと、そのときに、社会に役立つどういう成果が出るかということが評価の基準になりますと、どうしても基礎研究は不利になる、そういう点はあろうかと思いますが、現実問題、競争的資金といいましても、これはいろいろなものがございます。先ほど申し上げた、研究の基礎の基礎の部分から応用の部分までと幅広い競争資金がございます。文科省だけをとりましても、いわゆる競争的資金というのが十五ほどありまして、これが、いわゆる基礎的な研究である科研費、科学技術研究費というものから、それから、もうかなり実用化に近い部分のものもございます。それが一つでございます。

 では、具体的に、その競争資金の中で、全体の予算がどういう配分になっているかと申し上げますと、今申し上げましたいわゆる科研費でございますけれども、これを中心とする基礎研究の部分ですね、全体の予算の中では六割がこれに当たっております。そういう意味から見ますと、文科省全体で見たときに、基礎研究が不利になっているということは必ずしもないのではないかなというふうに思っているところでございます。

横山委員 わかりました。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 イノベーションを興すために、研究に対する先行投資が必要になると考えておりますが、平成十三年度から十七年度までを対象期間としました第二期の科学技術基本計画において、政府は、政府研究開発投資の総額を二十四兆円と設定しておりました。しかし、経済停滞等を理由に、目標は達成されませんでした。

 一方、昨年の三月に閣議決定されました第三期科学技術基本計画においては、今度は、平成二十二年度までの五年間における政府研究開発投資の総額を二十五兆円と記載してあります。

 第二期に達成できなかった額以上の額を第三期の目標額として設定した理由、そしてこの目標達成の見込みについて、大臣、お聞かせ願えればと思います。

伊吹国務大臣 これは、経済見通しと同じように、非常に難しいと思います。

 この前提は国の経済見通しをなぞりながらつくっておりますので、実際、我々が使うお金は名目成長率なんですよ、実質成長率じゃありませんので、名目成長率が、計画期間、三・一という数字になっているんですね。この三・一という名目成長率は、少なくとも今年度を見る限りは非常に難しい数字です。そして、それで積み上げたGDP、名目GDPの一%ということで二十五兆という数字だろうと思います。

 もちろん、計画ですから、それを前提に、毎年毎年、予算編成において、概算要求をして、財務省との間の折衝をしながら、内閣として最終的に予算案を閣議決定して国会へ提出しているという仕組みでございますので、ことし、今御提案している予算も、社会保障費以外は軒並みマイナスになっちゃったんですけれども、科学技術費だけはプラス一%という、辛うじてプラスは確保しているんですが、今後の経済動向等にもよりますが、毎年の予算編成でもひとつ頑張って計画達成をやらなくちゃいけない。しかし、ことしの名目成長率がこんなに低いと、なかなかやはり、率直に言ってしんどいなという印象は持っております。

横山委員 同じ質問を財務省の方にお聞きしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

真砂政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の発展基盤となる科学技術を振興する予算につきましては、第三期科学技術基本計画のもとにおきましても、厳しい財政事情の中、今文科大臣から御答弁がありましたように、他の政策的経費に比べ高い伸びを確保するなど特段の配慮をしてきているところでございます。

 一方、先生るる今まで御指摘ありましたような、例えば研究費の不正使用問題、あるいは不合理な重複投資というような問題もございまして、選択と集中を強化しつつ、不正対策など、科学技術予算の一層の質的な向上を図るための努力もこれまた確実に進めていく必要があると思っております。

 いずれにいたしましても、毎年毎年の予算編成過程の中で、関係府省ともよく議論をさせていただきまして、厳しさを増す財政事情を踏まえながら、第三期科学技術基本計画の効率的な推進に向け真に必要な経費を確保してまいりたい、このように考えております。

横山委員 そう言われますと、もう、はいよろしくお願いいたしますと言うしかございません。

 それでは次に、人材育成という点につきまして、質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、これは私の方の理解が違っている場合もあると思いますので文部科学省の方から御答弁願いたいんですけれども、平成八年の第一期科学技術基本計画の中で、ポストドクター等一万人支援計画、平成十二年度までに達成するという方針が示されました。

 大学院の博士課程を、単位修得かあるいは論文を書いて博士になるかして、いずれにしても博士課程を終わった後に就職できない人をオーバードクターという言い方をして、私の理解では、そのままにさせておいてはいけないからポストドクターという、博士研究員というような立場にして、大学院修了後、短ければ一年、長くても最長五年、それから三年というのが多かったと思うんですけれども、国が研究費を、研究費というか、生活費といってもいいのかな、多い人だと四十万ぐらい支給するというような形で支援をする。

 この支援計画の中には、日本がアメリカとかに比べてドクターになるのが難しい、だから博士の数をもうちょっとふやさなきゃいけない。その前に大学院をどんどんつくりなさいという計画もあったわけですから、それと呼応して、博士の数をふやして、しかし、博士になってすぐに就職できないというケースも含めて、では、その場合は博士研究員として三年間ぐらい国の方で面倒見ましょうというような計画だったと思います。

 まず、この点についてはどうですか。

森口政府参考人 先生おっしゃられたことと若干ニュアンスが違うのかなと思っておりますのは、まず、我が国においてはいわゆる博士号の取得者数、これが少ない、そういう状況がございまして、これはもう大分古い平成三年当時でございますけれども、大学審議会の方でもやはり、我が国においてもそういう博士課程取得者をふやしていこう、そういう方針があって、それを踏まえて、それに応じて大学院の拡充、こういったこともやってきたわけでございます。その結果として、おっしゃられるように、博士号を取った後に職につけない方、そういう方が出てきたということは事実でございますけれども、ただ、そういうことで、消極的というより受け身的に、ではそれを何とかせないかぬのでポスドク支援一万人ということではなくて、むしろ、そういう博士号を取られた方は、ある意味、非常に優秀な方々でございますから、それをしっかり活用して我が国の研究開発に生かしていこう、そういうことのいわゆる前向きな方向でポスドク一万人支援計画というのをつくったわけでございます。

 これは、今おっしゃられたように平成八年からスタートして、一年前倒しで平成十一年にはもう一万人が達成しております。

 そういうことで、ポスドクになられて短期的、任期つき等で職につかれた方々を今後どう活用していくかというのが次のステップの問題として今起きているということで、若干同じようなことを申し上げているのかもしれませんけれども、ちょっとニュアンスが、受け身的というよりはむしろ積極的に活用していこう、そういう趣旨であるということでございます。

横山委員 よくわかりました。

 そういう意図を持って政策を進めて、今このポストドクターの後のその次の段階を考えておるというお話でしたけれども、現状、大学院というのは博士課程を修了する年齢が二十七歳ですから、その後大学に就職はできないでポストドクターになって三年、五年たつともう三十、三十二歳、結構な年になるわけですね。

 ところが、今少子化の影響で大学、研究機関の雇用はふえておりません。つまり、大学の先生の職は以前よりも狭まっている状況があります。結果的に、その人たちがまたいわゆるオーバードクターという立場に戻って、収入が一体どれぐらいあるかといえば、研究をしながら何とか食べていこうというようなこともありますから、普通の仕事にはつかないで、あくまでも研究者を目指しているわけです。ですから、一週間のうち二日とか三日ぐらい、大学で非常勤講師を二こま、三こまぐらいやりながら、収入にすると、恐らくいわゆるフリーターと言われるような、一カ月十万にいかないぐらいで研究を目指している人というのが大勢出てきている現実があります。

 末は博士か大臣かという言葉がございますけれども、まさに博士になった人たちが、現実にそういう収入の面で生活していけないような人が大勢出てきている。それはどうなんでしょうか。こういう科学技術立国を目指した一つのとうとい犠牲者ととらえるべきなんでしょうか。どういう対応を考えておられるのでしょうか。

森口政府参考人 今先生がお話しになられたいわゆるオーバードクター、これは定義がなかなか難しいですけれども、今先生おっしゃられたように、博士課程を修了して博士号を取った後に定職につけない方ということかと思います。これにつきましては、正確なデータというのが必ずしもないんですけれども、我々が把握している範囲におきましては、先ほど申したように博士号取得者はふえております。そして、いわゆるポスドクという任期つき任用等でそれなりに次のステップに行こうという人たちも、国の施策もあって、ふえております。そういうことで、その差の部分がオーバードクターになるかと思うんですけれども、これは数字的に見ますと、全体、ドクターコースに行かれる方がふえていますから割合的にはそんなにはふえていないということで、ここはちょっと事実認識が先生と違うのかもしれませんけれども、我々としては、いわゆるオーバードクターについて大きな問題は生じていないのかなというふうに思っておるんですけれども。

 先ほど申し上げたように、ポストドクターの任期つきにそれなりについておられる方々の次のステップをどうするか、そこは先ほど申したように今課題として取り組んでいるところでございます。

横山委員 それほどふえていないと。

 ふえていないにしても、五千人以上はいるんじゃないですか。いかがですか。

森口政府参考人 これもいろいろな統計の仕方によるのかもしれませんけれども、我々がいわゆるオーバードクターということで把握しておりますのは、二千人弱ぐらいというふうに一応把握しておるのでございますけれども。

横山委員 わかりました。

 次の段階をということで、新しい職を見つけて違う方向性へ行けばいいんだと言えない部分もあろうかと思いますので、これから先、さまざまに御考慮ください。

 では、次の質問に移ります。

 大臣の所信の中で、ロケットの成功例を誇る記述がございました。しかし他方で、JAXAによる小惑星探査機の「はやぶさ」が小惑星イトカワまでは行ったけれども試料の採取に成功したかどうかは地球に戻ってくるまでまだわからないとか、その帰還時期についてもおくれているとか。月探査衛星LUNAR―A、これは月探査のための観測機器の開発が大幅におくれて計画も中止になったとか。あるいは、LNG推進ロケットは、開発期間の延長、予算が膨張し、計画が大幅に変更になっているとか。こういう宇宙開発のような前例のない革新に挑戦していくと、失敗はつきものだと思うんですね。

 しかし、こういう巨額な予算を必要とする先進的研究について、例えば、二十年以上前のイギリスでも、アメリカでスペースシャトルをやっていたころに、水平に飛び立って離陸するという、これはHOTOLと言うのですかね、HOTOL、HOは水平ですね、TOはテークオフで、Lが着陸という意味の、それを組み合わせた造語なんですが、そういう、スペースシャトルに対抗するようなロケット開発が進められていた。それが、サッチャー政権当時の一九八五年に計画ができたんですが、八八年、わずか二、三年で中止になっている。

 この中止になったときに、当時のイギリスの新聞は、これはサッチャーが民営化を推進した結果だ、競争社会の中で、こういった将来イギリスにとって大きなプラスになるような政策であっても、経済効率とかいうことを考えて中止になったんだということを、当時、イギリスメディアが報じておりました。

 今安倍政権が進める政策との関係の中で、失敗したようなプロジェクトも含めて、成功しないプロジェクトにつきましても、こういう先進的研究について、予算的な評価含めて、大臣、どのようにお考えか、お聞かせ願えればと思います。

伊吹国務大臣 非常に悩ましい御質問だと思いますね。宇宙開発の、先生が先ほどおっしゃった、「はやぶさ」、LUNAR―A、GXロケット、これはみんな宇宙開発にかかわってくることですが非常にリスクが高いです。国民の税金を使っておりますから、やはりできるだけ失敗しないようにやりたい。事前の検討だとか、計画の綿密性だとか、机上でのいろいろな検討は最大限やって、失敗しないようにやっておりますが、それは机上の空論どおりはいかない現実があるわけでして、それを恐れて結局おくれをとるということがあってもまたいけませんから、最大限失敗をしないように努力しながら、国民の税金を使わせていただくという意識を持って、ある意味では勇敢にチャレンジしないといけないと思います。

横山委員 ありがとうございました。

 時間もありませんので、同じ質問を財務省に。成功しなかったプロジェクトの予算的な評価についてお聞かせください。

真砂政府参考人 今の大臣の御答弁に尽きるわけでございますけれども、確かに、先端的な研究開発、これは失敗を乗り越えていかなきゃいかぬ部分というのはあると思います。

 その際、厳しい財政事情の中で、税金でその財源を措置しているということにかんがみますれば、成功した場合、あるいは不幸にして所期の成果が得られなかった場合におきましても、研究開発投資の結果について納税者に対する説明責任をきちんと果たしていく必要がある、このように考えておるところでございます。

横山委員 どうもありがとうございました。以上です。

桝屋委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 政治資金の問題につきましては、先ほどの御質疑の中で伊吹大臣から我が党についての言及もございました。この件につきましては私は質問を用意しておりますので、別の機会にまたよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、四月二十四日に予定されております全国一斉学力テスト、このことで質問をいたします。

 この一月に、全国学力・学習調査の予備調査の問題例についてという教育委員会からの事務連絡が学校におりていると思うんですが、こういうものですね。予備調査の問題例等を文部科学省のホームページに掲載している旨、文部科学省初等中等教育局学力調査室から連絡がありましたのでお知らせしますと。これは、昨年十一月から十二月にかけて行われました全国学力テスト実施に向けた予備調査の問題を公表すると。文部科学省として教育委員会にこのような連絡を行ったのかどうか、一応確認をさせていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 予備調査の問題を公表し、その旨連絡をしているところでございます。

石井(郁)委員 事前にこういう予備調査を公表するというのはいかがかという問題はこれとしてあるんですけれども、それはさておきまして、そうしますと、二十四日の本番で行われる内容というのは、教科に関する質問、国語A、算数・数学A、国語B、算数・数学Bの試験問題、その解答用紙とともに質問紙調査というのがあって、児童質問紙は小学校、生徒質問紙は中学校、学校質問紙は小中ということで配付される。そこには、児童生徒の学校名、学級名、出席番号、個人名を書かせて実施するということになりますか。

銭谷政府参考人 ただいまお話がありましたようなことを考えております。

石井(郁)委員 そうしますと、学校とか個人の名前を書き込んでテストを行うということになりますと、全国の学校の序列化、あるいは個人の序列化にもつながる重要な問題をはらんでいると私は考えます。また、個人情報としても、その管理というのは問題になるのではないでしょうか。

 それから、学習状況調査というのがあるんですよね。これが、私はちょっと驚いているんですが、学力テスト、教科のテストだけかと思ったら、違う。学習状況調査というのがあって、ですから、これまた個人情報の保護というのは重大問題となるというふうに思います。

 そこで、一つ一つお尋ねしたいんですが、まず、全国一斉学力テストの実施はどこが行うんですか。それから、試験問題の作成はどこが行ったんでしょうか。

銭谷政府参考人 本年の四月二十四日に予定をいたしております全国学力・学習状況調査につきましては、文部科学省が実施主体となりまして、小学校、中学校の設置者である市町村の教育委員会の協力を得て実施するものでございます。問題の作成は、国立教育政策研究所が中心になりまして作成を行っているところでございます。

石井(郁)委員 それでは、試験の採点、集計、あるいは児童質問紙、これなどの集計はどこが行いますか。小学校、中学校、それぞれについて言っていただきたい。また、基本データ、個人情報というのはどこが保管することになりますか。

銭谷政府参考人 まず、調査の全体的な概況から御説明をさせていただきたいと存じます。

 先ほどお話を申し上げましたように、今回の調査は、文部科学省が実施主体となりまして、小中学校の設置者である市町村の教育委員会の協力を得て行うものでございます。

 小中学校を設置する市町村の教育委員会等は、文部科学省からの要請を受けまして、その判断に基づき調査に参加するか否かを決定するということになります。

 現在までに一市を除きすべての市町村の教育委員会が参加をするという意向を確認しているところでございます。

 参加を決定いたしました教育委員会等は、所管の学校に対しまして、必要な指示、指導を行いまして、校長を調査責任者として調査に当たるというのがまず全体のスキームでございます。

 その際、この調査の実施におきましては、調査問題の発送、回収、調査結果の採点、集計、教育委員会及び学校等への提供作業等、事業の一部につきまして文部科学省が民間機関に委託をして実施するということにいたしております。このような民間業者に委託をして実施するというのは、教育委員会や学校等の負担の軽減、迅速かつ客観的な採点の実施などの観点から行うものでございます。

 今回の全国学力・学習状況調査は、小学校と中学校、それぞれ最高学年について行うわけでございますけれども、小学校事業は株式会社ベネッセコーポレーションに委託をいたしております。また、中学校事業は株式会社NTTデータに委託をしているところでございます。

 学力・学習状況調査の調査票はそれぞれ、小学校についてはベネッセ、中学校につきましてはNTTデータにおいて集めまして採点等の業務を行うということになります。

石井(郁)委員 ベネッセコーポレーションとNTTデータが委託先としてこの業務を行うということですが、この二つの会社がかかわる範囲というのはどんな範囲かということ、もう一度ここをはっきりさせていただきたいんですけれども。その委託内容は何なのか、もう一度ちょっとはっきり言っていただきたいことと、それぞれその委託費は幾らでございますか。

銭谷政府参考人 小学校の事業を委託しますベネッセコーポレーション、それから、中学校の事業を委託いたしますNTTデータとは契約書を取り交わしているわけでございますけれども、その中で、委託の事業としては、調査問題の発送、回収、調査結果の採点、集計、それから学校等への提供作業といったようなことが委託の主な内容となっております。

 それから、委託の経費でございますけれども、平成十九年度政府予算におきましては、全国学力・学習状況調査の実施等に係る経費として、約六十六億円を計上いたしているところでございます。このうち、民間機関への委託経費は約四十九億円を予定いたしております。内訳といたしましては、十九年度の調査実施にかかわる経費が約四十四億円、二十年度の調査のための準備の経費が約五億円でございます。

 また、平成十八年度におきましては、この十九年度調査の調査準備事業のため、これら二つの民間機関への委託経費は十八億円ということになっているところでございます。

石井(郁)委員 伺いますと、問題の作成と分析以外、ほとんどの業務ですよね。これがベネッセとNTTデータがかかわることになるということが明らかになりました。しかも、この委託費の予算というのは、全体の学力テストにかかわる予算の三分の二にも相当するような、かなり膨大なものだ。それが二つの企業に支払われるという問題は、私はこれとしていろいろあるだろうと思うんですが、まず、ベネッセ及びNTTデータというのはどのような事業をこの教育に関して行っているんでしょう。

銭谷政府参考人 まず、小学校事業を委託いたしますベネッセコーポレーションでございますけれども、この会社の事業内容は、教育、語学、生活、介護の四つの領域に分かれております。具体的には、小学校から高校生を対象としました通信教育講座のほか、語学教育事業、翻訳事業、通訳事業などを行っている会社でございます。

 それから、中学校事業を委託いたしますNTTデータは、データ通信に係るソフトウエアまたは装置の開発、保守、販売事業などを行っている会社でございます。また、このNTTデータの関連機関として、採点等の再委託先として、株式会社教育測定研究所がございまして、ここは、テスト事業者向けのテスト分析等を行っている会社でございます。

石井(郁)委員 いろいろ御説明いただきましたけれども、肝心なことを答弁なさらないんですよね。局長、いかがかと思うんですよ。ベネッセというのは進研ゼミというのをやっているでしょう。まさに受験産業ですよね、進研ゼミ。それから、NTTデータというのが、今教育測定研究所を指定していると言われましたけれども、旺文社グループの一員として、テスト分析などをしている。だから、片や進研ゼミ、片や旺文社、どちらも受験産業を担当している会社ですよ。進研ゼミといいますのは、小学校から高校まで二百七十四万人を擁する一大受験産業ですね。相当な規模ですよ。こういうことになっているんですね。

 さて、それで、その予備調査での児童及び生徒の質問紙というのを、私、見て、これも驚いたんですけれども、「一週間に何日、学習塾に通っていますか。」「学習塾では主にどのような内容の勉強をしていますか。」こういう項目もあるんです。あなたは今までにおけいこごとに通ったことがありますか、こういう項目というのは、まさに受験産業が欲しくてたまらない情報じゃないんでしょうか。

 こういう質問で、児童生徒の質問用紙に学校、学級、出席番号、個人名まで書くということになっているわけですね。そうすると、こうした個人情報が、まさに一手にこういう受験産業に集中する、握られるということになりますよね。

 大臣にこれは伺いたいと思うんですが、これはもうまさに受験産業がさらに拡大をする方向にもつながるし、また受験競争を一層助長するということにもつながるということについては、どのようにお考えですか。

伊吹国務大臣 受験競争を助長するという以前に、特定の営利企業が公費をもって、国民の税金をもって自分たちに有利なデータを独占的にとるということはあってはならないことですね。ですから、今先生のお話を伺って、今回調査をしたものは必ずその子供に返してあげる、これがまず一つあるんですよ。

 それから、もう一つは、各教科の調査結果と質問用紙の結果を符合させながら集計するということでありますから、名前を書かさないというわけには私はいかないと思うんですね。

 ですから、先ほど来、局長が答弁をしていたことを聞きまして、これはもう当然、その契約の内容とかなんかをもう少し参考人に聞いていただきたいんですが、守秘義務をかけて、そして公費でもって先生が今御指摘になったような、調査項目を調査したものを自分の言うならば営業とか利益活動に使わないというようなこと、それがきっちりしていなければ、こんなことが許されるわけはない、私はそう思って聞いておりましたし、その点は、私のところへ報告に来たときも、厳しく、先生と同じようなことを私は言っておりますから、していないということはないと思いますよ。

石井(郁)委員 今回の調査の目的なんですけれども、こういうのをきのういただきましたが、何かこれから学校に配られるという話なんですが、「全国的な義務教育の機会均等と水準向上のため、児童生徒の学力・学習状況を把握分析することにより、教育の結果を検証し、改善を図る」が一つですね。「各教育委員会、学校等が全国的な状況との関係において自らの教育の結果を把握し、改善を図る」と。だから、この目標を考えますと、要するに、全国的な状況との関係で、平均点でどのレベルにいるかということを見て改善を図りなさいということのようですね。

 そうしますと、どうして個人名が必要なんでしょうか。今、大臣から、一人一人に返すというお話もございましたけれども、この目的の範囲で見ても、個人名というのは必要ないんじゃないか。

 つまり、個人名を書けば、点数、児童生徒の生活、その家庭ですね、回答すべては個人情報になるんですよ。個人情報の保護法第三条、「行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。」というのがございますね。これに照らしても、私は今回個人名は本当に必要ないんじゃないか、個人名を書くということは重大な問題を引き起こすというふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 幾つかのお尋ねの点がございますので、まとめて御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の調査におきまして、子供に名前を書かせて調査をするということでございますけれども、これは学力調査でございますから、きちんと子供に、特に小学生の場合は名前を書かせてテストをするというのが普通の考え方でございます。その上で、特に今回の調査においては、正確に結果を返却すること、各教科の調査結果と質問紙調査の結果を符合させ集計や分析を行うことなどから、氏名を書かせた個人情報を取得することとしているわけでございます。

 先ほど来申し上げておりますように、今回の調査では、調査問題の発送、回収、調査結果の採点、集計、学校等への提供作業等を民間企業に委託しているわけでございますけれども、その際、個人情報保護法等の定める安全確保措置や従業者の監督を確実に履行させるということは、これは当然のことでございまして、私ども、そういう措置を講じているわけでございます。

 委託先に対しましては、契約書におきまして、秘密保持や個人情報の取り扱いにおいて遵守すべき事項を明示いたしております。委託先においては、これに基づいて、個人情報取り扱いに関する内規等の整備、安全性確保のための研修、データベースのアクセス制限等を行っております。委託先における個人情報の取り扱いについては、個人情報保護に関する法令の規定を受けて必要な措置をきちんと行っているところでありまして、個人情報の保護ということについては最大限の配慮を行っているところでございます。

 なお、今回の学力・学習状況調査におきまして、子供たちの学習状況というものもあわせて質問紙調査で行うわけでございますが、これは、学習意欲、学習方法、学習環境、生活の諸側面等に関する調査でございまして、児童生徒の生活習慣や学習環境と学力との相関関係などを分析し、今後の指導の改善に役立てるためのものとして実施をするものでございます。

 予備調査の質問紙調査の中に、先ほど御指摘のありましたような内容が含まれていたわけでございますけれども、質問紙調査につきましては、予備調査実施校からの意見等も踏まえまして、プライバシーへの配慮という点を考慮に入れて、必要な項目については、現在最終的な検討を行っているところでございます。

石井(郁)委員 本当に時間がなくなって私も残念なんですけれども、大臣に伺いますが、予備調査の質問項目はごらんになったでしょうか。(伊吹国務大臣「見ております」と呼ぶ)見ていますか。

 生徒の質問紙を見ますと、「あなたの家には本が何冊くらいありますか。」とか、携帯電話や通話、メールをどのくらいしていますかとか、あなたは家の人と次のことを一緒にしますか、美術館、劇場に行っていますか等々、本当にこれは、プライバシーというか、家庭生活に立ち入った、家族の状態などを質問しているということがありますね。

 それから、予備テストで実施された学校調査を見ても、生活保護世帯の生徒はどのくらいいますかとか、就学援助を受けている生徒の割合等々、不登校やいじめの生徒のこともありますけれども、校長の裁量経費があるかとか、予算に関し、校長の意向がどの程度反映しているか等々、学校運営協議会はあるかなしやとか、私は、これが学力テストとどう関係するのかというのを非常に疑問に思うわけですね。

 だから、今回、何か学力テスト、テストと言われていますが、こういう重大な内容を含んで、そして名前を書かせる。つまり、学力調査を口実にして、一人一人の個人情報、学校の直接情報をやはり文科省が一手に握ってしまうという、大臣がよく言われるように、文科省が本当に直接統制に乗り出すような、その条件づくりになっているんじゃないのかと言わざるを得ないわけですよ。私は、やはりこの個人情報と学校情報の収集というのは大変重大な問題をはらんでいる、やめるべきだと思うんですね。

 それで、もう本当に時間がないので、大臣に伺いたいと思うんですが、今度毎年これを行うというんです、これだけの予算をかけて、民間企業に委託をしてというのが今の文科省のお考えのようですから、そうすると、教育に関する個人情報が、一私的な企業と、あるいは国の文科省とが握っていくということになりますよ。

 そういう意味で、最後に、私は大臣に、こういう個人情報に関する問題ですから、参加するしないというのは、生徒個人、学校あるいは教育委員会の判断にゆだねるべきだと思いますがいかがかということと、また、個人、生徒は、学校が個人名を書かないということはあり得る、それに対して文科省が介入、干渉などはできないはずだと思いますが、これは大臣としてのきちんとした御見解をお示しください。

伊吹国務大臣 これは先生、例えば、日本共産党もいつも御質問になるじゃないですか。家庭の所得の状況によって子供の教育の格差があるのかとか、あるのはけしからぬとか、あるいは生活保護世帯の人たちは就学についてこういうふうに差別をされているとか、そういう実態、みんなこの調査をしなけりゃ調べられないじゃないんですか、学力テストとあわせて。学力のレベルと所得の水準がどうなんだ、あるいは、塾へ行っている人はどうなんだ、塾へ行かない人の学力はどうなんだ、みんなそういうことを調べて、これから、共産党も御批判になっているような教育行政に対して答えを出していかなければいけないから、調査をさせていただきたいと申しているわけです。

 そして、この情報を何か特定企業が独占するようなことをおっしゃいましたけれども、契約書の内容からして、これを企業が私的な自分たちの営業活動だとか何かに使うようなことがあれば、たちどころに情報公開法と民法上の契約違反で処罰されますよ、それは。

 ですから、そういうことはきちっとやりながらやっているわけですから。そして、あと、個人のお名前を書かなければ個人に返ってきませんよ、この調査は。そして、いろいろなデータとの突合もできないです。ですから、これは、私どもが必ずこうしろということを学校現場に強制する力は現在の地教行法上ありません、それは。しかし、それは各教育委員会と校長との間の服務上の問題として処理をしていただかなければならないということです。

石井(郁)委員 もう時間ですけれども、私は、今の学力や、あるいは子供をめぐる環境、生活の問題というのは、もういろいろなデータがありますよ。何も一斉にこれだけの予算をかけてやる必要があるのかどうかというのは、そもそもの議論だと思います、それは。もう十分検証できるようなことがありますから、そういう意味で、私は、今回のようなやり方でやはり個人情報に関係するような問題、それからまた、一層のテスト競争に子供たちと学校を追い込むということについて、私たちは再三これには反対を表明したところでございますので、そのことを申し上げて質問を終わりたいと思います。

桝屋委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 昨年、教育基本法の審議の入り口のところで、新聞記事だけで二十八件、いじめが理由と思われる、亡くなっている子供のニュースがあるではないか。文部科学省では、これについてゼロと答えているけれども、どうだろうかということについて、調査を先日発表していただきました。そうやってしっかりやっていただいたことについては、大変よかったというふうに思います。私が指摘したのに加えて四十件をお調べになったということなんですが、これは私、意見としてきょう申し上げておきます、受けとめていただければと思います。

 四十件中十四件にいじめがあった、その児童生徒がいじめを受けていたということが認定されて、亡くなっているわけです。しかし、いじめが主たる理由であるというふうに文科省の調査で認定したのは三件なんですね。

 私は、これは事務方から説明を受けたときに言いました、こういう発表の仕方をしたら誤解を生むのではないですかと。つまり、いじめが主たる理由ではないがその一つというのは六件あるんですね。ということは、お子さんを失った親御さんが、あなたのお子さんはいじめを受けていたけれども、いじめが主たる理由じゃなくて、ほかの理由で亡くなったんですよという報告をされたということになります。その意味で、この調査、ちょっと残念だったなと。少し発表の仕方を変えていただけるかとも思ったのですが、残念ながらこのままになってしまったということで、文部科学省として、いじめの評価について、これは旧来的な尺度で見ていたということだと理解しますので、今後非常に神経を配ってやってほしいと思います。では、一言、短く。

銭谷政府参考人 先生から御指摘を受けた二十八事例に、それ以外いろいろ御指摘のありました十三事例加えまして、四十一事例について聞いたわけでございます。

 このうち、自殺であるとされた四十件について、自殺した児童生徒へのいじめがあったとされたものが十四件でございます。ただ、従来、文部科学省はいじめ自殺の理由として主なものを一つ挙げるという調査の方法をとっておりましたものですから、それと同じやり方でやると、この十四件のうちいじめを自殺の主たる理由とするものが三件であったということで、そのような発表をしたところでございます。

 それで、この点については、自殺の理由について、複雑であり、必ずしも一つに割り切れるものではないから、これまでも、主たる理由の中にいじめが出てこなかったということもやはりあったわけでございます。

 それで、先生の御指摘あるいはこれまでの文部科学省の調査についてのいろいろな御批判等を踏まえまして、今後の調査におきましては、平成十八年度分以降の調査におきましては、当該自殺をした児童生徒へのいじめの有無を含めた状況というものを報告させるような改正を今行おうとしておりまして、より状況が実態に即して把握できるように努めてまいりたいと思っております。

保坂(展)委員 答弁もいただきましたけれども、きょうの質問に当たりまして、伊吹大臣に。

 これまでいろいろ、文部科学省の行政について、いじめ対応について、批判を主にしてまいりましたけれども、きのう、こちらのいじめ問題に関する取り組み事例集というのをいただきまして、読ませていただきました。これを見ると、大変すばらしいなと。どこがすばらしいのかというと、やはりこの間、日本じゅうの学校で、長いこといじめの問題があって、それぞれ創意工夫して取り組んできたというのがよくわかるんですね。

 例えば、県内の臨床心理系の大学院のボランティアのお兄さん、お姉さんに入ってもらっている。あるいは図書館、これをもう一つの保健室として活用している。あるいは、特に私が注目したのは、生徒の力を生かすという取り組みです。

 これは、私自身も、十年ちょっと前ですけれども、イギリスで、子供が、上級生が下級生の相談に乗るという、いじめ解決クラブみたいな、そういうイギリスの若者たちを日本に呼んで交流をした事業をやったことがありますけれども、ピアフレンド、あるいは君を守り隊、そういうことはずっと実践として続いている。あるいは、加害者の立ち直りを図っていく例とか、これはいじめられている子を救出するだけじゃなくて、加害者がいじめをやめるというのが本当に一番究極の解決でありまして、そういう事例も入っていますし、CAP、これは子供が危機にさらされたときに自分が自分を守るトレーニングをしていこうというすばらしい実践ですし、また、各地域ではオンブズパーソンとか、こういうこともある。もちろん出席停止やゼロトレランスということも書かれていますけれども、私は、これを見て、日本じゅうの学校はやはりいろいろ一生懸命やっているじゃないか、いじめに関して。

 ところが、最近、出席停止とかあるいは体罰の見直しとか、どちらかといえばこわもての、北風といえば北風の政策が何か強調されていて、子供が本来持っている力を生かす、それから学校現場でそれぞれ創意工夫が生かされている、こういう取り組みをもっと前に押し出して、自信を持って現場が取り組めるようにされたらどうなんだろうかというふうに思いましたが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 これは先生、要は、私はやはりバランス論だと思いますよ。

 今見ていただいたのは、全国の教育委員会の担当者を、例のいじめ問題がずっと顕在化、教育基本法の審議の中で顕在化してきたときに、集まってもらって、お互いの成功事例を共有しようじゃないかということでやったわけです。だから、それはもう基本なんですよ、やはり。

 しかし、学校現場は、それだけではやはり解決できないケースもそれはあります。

 出席停止も、単にいじめのために出席停止というのではなくて、学校現場を暴力によって混乱させている場合の出席停止の問題もあります。これらについては、毅然としてやりなさいということを通知していると同時に、私は、必ずその際に言っていることは、まず先生の今の例でいえば、それが基本であって、教師は安易に出席停止や体罰に逃げ込むことがあってはならない。だから、通知は、必ず、日ごろのおのおのの生徒の性格、そして家庭の環境も含めてでしょう、そういうものを十分把握する努力をしてもらいたいというところから始まっているんです。そして、その後、やむを得ず出席停止の措置をとる場合は、これは先生とお考えが違うと思いますが、地域で人権だとかどうだとかということを振りかざして一部の団体や何かが学校やそういう措置をとった教師を難詰した場合には、校長以下、地域社会が一丸となってその人を守ってあげてもらいたいということまで書いてあるんです。

 だから、こわもてのことをまずやれ、やれという通知にはなっておらないんですよ。

保坂(展)委員 新聞によると、教員養成系の大学進学希望者が少し減っているという記事が出ておりました。つまり、ここにあるようなさまざまな、学校が本来持っている教育力、あるいは子供自身が本来持っている生命力というものをしっかり重視して積み上げていく、これは地味だけれども非常に有効です、いじめ対策。ということもしっかり私はメッセージしていただきたい。

 ということで、関連なんですが、ちょっと教育再生会議の議事録についてだけ。安倍総理に前回予算委員会でお聞きしたところ、開示しますという答弁をいただいているんですが、速やかにすぐ、もうされているのか、どうですか。短くお願いします。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 教育再生会議の議事内容の公開の問題でございますけれども、教育再生会議の議事につきましては、議事要旨、それからさらに議事録という形で公開をしております。これは、委員の皆様に最後にチェックしていただいて、その上で公開するということになっておりますので、そこのチェックの状況によるところでございます。

 今まで、本会議ですと第四回まで、また、第一分科会、第二分科会、第三分科会、今の問題につきましては第二分科会のところでございますけれども、その第三回までの議事録というものは公開されているところでございます。これはホームページで公表しております。

保坂(展)委員 議事録を公開してほしいという声が教育関係者からもいろいろあったようですから、速やかに公開を、さらに努力をしていただきたいと思います。

 もう一点、このいじめ問題等に文部科学省でいろいろ対策を立てられて、補正でも今回の予算でも、いろいろ予算項目がございます。

 これはたびたび超党派の議員連盟で応援しておりますチャイルドラインについてなんですが、文部科学省からもらった予算の内訳によると、例えば子供と親の相談員の配置で五億円というのがございますが、これはまさに子供との相談ということで民間のチャイルドラインなんかに行くのかなと思うと、これは退職教員や民生委員、児童委員、警察関係OBの方ということで、主に教員OBの方なんでしょう、対象が。これはどうも当てはまらない。とすると、問題を抱える子供等の自立支援事業、これならぴったりだなと。いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、高校中退の未然防止、早期発見・早期対応、取り組みについて調査研究。じゃ、その調査という形で、それぞれの地域でさあ頑張ろうというところにつけたらどうだ、こう聞きますと、これも何か難しいと。

 一応、問題行動に対する毅然とした対応の促進ということで、これは一億円でしょうか。それを大体三十カ所ですか、ということで数百万、三百万ぐらいですか。何か、予算的な規模からいっても、これだけ民間の機関でもう電話が鳴りやまないという状態があって、これはもう少し柔軟に、不登校の子の問題行動に対する毅然とした対応の促進一億円というところだけではなくて、問題を抱える子供たちの自立支援事業、これは十二億円ですね、こういうところからも出せるものは出すというふうにされたらどうでしょうか。局長。

銭谷政府参考人 不登校児童生徒あるいはいじめの問題の指導に係る文部科学省予算は、今先生からお話があった予算が中心でございます。

 特にNPOや民間施設等に対して効果的な活動プログラムの開発などを委託いたしますNPO等の活用に関する実践研究事業、これが一億円でございますけれども、こういう経費が、民間の団体の方々に私どもが支援できる一番適切な経費かなとは思っております。

 ただ、今先生お話ございました、問題を抱える子供等の自立支援事業、これは予算規模は大きいわけでございますけれども、都道府県、市区町村の教育委員会に委託をする事業でございますので、都道府県、市区町村の教育委員会がこの事業を実施する中でNPOとの連携なども図っていただければ、私どもはそれはそれで結構だと思っております。

保坂(展)委員 時間が限られていますので、ちょっと科学技術の方にもいきたいと思います。

 「もんじゅ」について、一月に社民党調査会として、「もんじゅ」の方は今どうなっているのかと見てまいりました。あのナトリウム漏れ事故が起きてから既に十年以上たつと思うんですけれども、運転再開に向けて改修が進んでいました。事故現場も見てまいりました。

 そこで、時間がないので二点続けて聞きます。

 耐震性をチェックするため、原子力保安院から、日本原子力研究機構、機構と言います。ここに指示が出ている。敦賀半島に原子力施設を有している日本原電、関西電力、日本原子力開発機構が協力して地質調査を行っているという説明がありましたが、日本原電が新たな海底活断層を発見した、こういうふうに聞いています。この活断層の「もんじゅ」への影響をどういうふうに考えているのかというのが一点。

 二点目なんですが、運転再開に当たって、蒸気発生器の細管、伝熱管ですね、これについてさまざまな検査を行うというふうに聞いています。事故を起こした、二次系のナトリウムが流れている管については酸素濃度で管理をしているというふうに聞きました。しかし、事故時に管内に酸素が混入していた可能性もあって、内部のカメラチェックなどの必要があるんじゃないだろうかという点。この二点についてお答えいただきたいと思います。

藤田政府参考人 御説明を申し上げます。

 先生御指摘のとおり、高速増殖炉「もんじゅ」につきまして、平成十八年九月に原子力安全・保安院から原子力機構に対しまして、改定されました新しい耐震設計審査指針に照らした耐震安全性の評価を実施し、報告をするように、指示を受けているところでございます。

 この評価作業の一環といたしまして、「もんじゅ」周辺の海域及び陸域において地質調査を実施しているところでございまして、今先生御指摘のとおり、この地域、「もんじゅ」の近くに日本原子力発電と関西電力の原子力発電所がございますので、三者連携協力をして現在地質調査を実施中でございます。現在まだ地質調査が鋭意継続実施されているところでございまして、いまだ結果がまとまっていないというふうに私ども聞いておるところでございます。

 そういうことで、現時点で海底の断層が「もんじゅ」にどう耐震性の面で評価を与えているかどうか、地質調査の結果をまとめた上で、原子力機構の方できちっと耐震安全性の評価を行うということで、本年末に原子力安全・保安院に報告をする予定でございますので、まだ現時点で影響等について申し上げられるというふうな状況にはないというふうに御理解をいただきたいと存じます。

 それから、伝熱管の問題でございますけれども、運転再開に向けての「もんじゅ」の蒸気発生器伝熱管の検査につきましては、本年中に次のような形で検査を行うことといたしております。

 まず一つには、通常の軽水炉の蒸気発生器の伝熱管について、通常行われております渦流探傷装置、傷があるとその周りに渦電流が流れるのでそれを検知するというふうな検査方法でございますが、これによりまして、伝熱管の内側それから外側に減肉、傷等があるかどうかなどを検査するということがまず第一でございます。

 それから、これに加えまして、先生御指摘されましたように、伝熱管の内側、水側でございます、これにつきましては、ファイバースコープカメラによって目視確認を行うということで、傷等がないことを確認させていただく。それから、さらに伝熱管の外側、これがナトリウム側でございますが、これにつきましては、蒸気発生器の構造上の理由から、ファイバースコープカメラによる目視確認ができないということでございますが、先ほど申し上げました渦流探傷検査に加えまして、アルゴンガスを、ナトリウム側から圧力をかけて入れまして漏えい試験を実施するということで、内側の方にアルゴンガスが漏れ出ているかどうかを確認するという形で詳細に検査を行うというふうな予定で考えておるところでございます。

保坂(展)委員 御丁寧な説明、ありがとうございました。

 先ほど、ことし中にというふうにあったんですが、一点だけ確認ですが、一番目の質問のところで、日本原電が新たに発見した活断層のデータと突き合わせをして、総合してきちっと調査するということをぜひやってほしいと思います。いかがですか。

藤田政府参考人 御説明申し上げます。

 日本原電が新たに発見した活断層と先生おっしゃられましたけれども、それは浦底断層の北方延長海域に新たに断層があるのではないかということではないかと思うのでございますけれども、この浦底断層の北方延長海域の断層につきましては、今回の調査で新たに発見をされたものではございませんで、平成十六年三月の原電の敦賀発電所三号機、四号機の増設等にかかわります設置変更許可申請の中でも既に指摘をされている断層でございます。

 この断層につきましては、五万年前以降の活動が認められないということから、昔の旧耐震設計審査指針におきましては考慮対象外ということで評価されていたものでございますけれども、今回の新しい耐震設計指針では、これも考慮に入れるべし、活動時期が後期更新世以降というふうなことになりましたので、この断層も考慮対象の断層となりましたので、今回の地質調査におきましても、この地域も含めて、海域も含めて調査を行っておるところでございます。

 それらの結果も踏まえて、「もんじゅ」の耐震安全性について評価を行うこととしております。

保坂(展)委員 私、一泊泊まりがけで行って、その日の深夜に地震がありました。局地的な地震だったそうですけれども、ぜひ慎重に調査されたいというふうに思います。

 終わります。

桝屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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