衆議院

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第2号 平成19年10月24日(水曜日)

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平成十九年十月二十四日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      飯島 夕雁君    小川 友一君

      岡下 信子君    加藤 紘一君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      鈴木 恒夫君    土屋 正忠君

      中森ふくよ君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福田 峰之君

      二田 孝治君    保坂  武君

      馬渡 龍治君    松野 博一君

      盛山 正仁君   山本ともひろ君

      楠田 大蔵君    田島 一成君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      藤村  修君    松本 大輔君

      山口  壯君    笠  浩史君

      西  博義君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      松浪健四郎君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  青木 一郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      舌津 一良君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        樋口 修資君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     盛山 正仁君

  藤田 幹雄君     土屋 正忠君

同日

 辞任         補欠選任  

  土屋 正忠君     藤田 幹雄君

  盛山 正仁君     近藤 基彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 この際、池坊文部科学副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。池坊文部科学副大臣。

池坊副大臣 引き続いて副大臣の任を受けました池坊保子でございます。

 子供たちの一人一人の光り輝く命が夢と希望を持って生き生きと生きられる学校教育を、そして願わくは、大人たちの姿を見て、生きるってすばらしいなと思えるような、そんなぬくもりのある社会をつくっていくことが私の十一年間の政治の信念です。

 子供に伸び伸びと自然体験をさせてあげたい、心豊かな文化芸術体験をさせてあげられるならば、いじめも減っていくのではないか、そして、そうするためには、まず大人たちが文化芸術を受けとめることができるような環境整備に努めていきたいと思っております。

 現在生きている私たちが、そして次世代の幸せのために何ができるかをみずからに問いかけながら、教育、文化、芸術、スポーツ、科学技術の進展に取り組んでまいりたいと思いますので、皆様方の限りない御英知をいただけますよう、心よりお願い申し上げます。

 ありがとうございます。(拍手)

     ――――◇―――――

佐藤委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房長坂田東一君、大臣官房総括審議官合田隆史君、大臣官房文教施設企画部長舌津一良君、生涯学習政策局長加茂川幸夫君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長清水潔君、高等教育局私学部長磯田文雄君、科学技術・学術政策局長森口泰孝君、研究振興局長徳永保君、スポーツ・青少年局長樋口修資君及び文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木淳司でございます。第百六十八国会、文部科学委員会の冒頭に質問の機会をいただきまして、まことに光栄に存じます。

 さて、まずは、渡海大臣、御就任本当におめでとうございます。

 大臣は、文部科学政策、とりわけ科学技術の御専門でありますけれども、科学技術関連では、このところ、民間移管後の初のH2Aロケットによる月探査衛星「かぐや」の打ち上げ成功と、地球深部探査船「ちきゅう」の稼働というよいニュースが続いております。言うまでもなく、科学技術は我が国のよって立つ存立基盤であるだけに、大臣のリーダーシップのもと、科学技術施策が大きく前進することを望むものであります。

 さて、昨年の臨時国会における教育基本法の六十年ぶりの改正と、さきの通常国会での教育三法の成立により、教育行政の面では大きな改革が進められました。それを受けて、今は、来年の予算化も含めて、これらの改革を実際の形にしていく、その具体の議論が必要なときと思われます。

 そこで、教育再生に関して、確認も含めて幾つかお尋ねをしてみたいと思います。

 まず最初に、学習指導要領の改訂と、いわゆるゆとり教育の見直しについてお尋ねをいたします。

 大臣は、あいさつの中で、改正教育基本法、学校教育法の一部改正を踏まえ、中教審での検討に基づき、授業時間数の増加や、国語力の育成、理数教育の重視、外国語教育の充実等を内容として学習指導要領を改訂するとともに、総合的な学力向上策を講ずることにより、子供たちに確かな学力を身につけさせると述べられましたけれども、私もその必要性の認識は全く共有をするものであります。

 PISAの結果を見るまでもなく、学力の低下傾向は顕著でありますけれども、このように学習指導要領の改訂の必要性が生まれた背景というものを大臣はいかに分析されるのか、それはどこに問題があったと考えられるのか、そして、それはいわゆるゆとり教育の見直しととらえてよいのか。私は、ゆとり教育の理念そのものが必ずしも間違っていたというふうには思いません。しかし、結果的に学力低下が生じたことは事実であります。とすれば、運用上それはどこに問題点があったと考えられるのか。

 ゆとり教育をめぐる評価、分析も踏まえ、改めて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 冒頭、科学技術に対して応援のごあいさつをいただきまして、ありがとうございます。

 ちょっと余分なお話をさせていただきますが、文部科学委員になりまして、私もこの委員会の筆頭理事もさせていただいたんですが、残念なことに科学技術の議論が実は大変少ないわけでございまして、また委員の先生方にも大いに科学技術の議論もここでしていただければな、そんな思いも持たせていただいておることを申し上げたいというふうに思います。

 さて、御質問の点でございますが、このゆとり教育という言葉、この言葉をどうとらえるかということもあろうかと思います。文部科学省としてはそういう言葉は余り使っていないということもよく言われるわけでありますが、しかし、社会でこれが一般的になっていることも事実だというふうに思っております。そういう前提に立って、この理念というのは、先生もおっしゃいましたように、基礎的、基本的な知識技能を身につけ、それらを活用する思考力や判断力を育成する、こういうことであろうと思います。

 そして、このことは、今回の中教審の議論においても基本的には変わらないというふうに認識をいたしておりますし、私も、この基本的な考え方は正しいというふうに考えておるところでございます。

 ただ、御指摘をいただきましたように、ではどうして学力が低下したのか、こういったことを考えてみますと、この理念のもとで行ってきたいろいろなことにやはり反省すべき点があるのではないかな。これは率直に認めなければいけない。

 その上で、やはり今後の教育課程の中においては、これも先ほど先生がお話しになったわけでありますけれども、例えば国語力や理数教育を重視するといったようなこととか、基礎的な、基本的な知識、こういうものをしっかりと身につけることによって初めて、例えば総合学習というようなものも生きてくる、こういった点をより加味した新たな教育課程、こういうものを、指導要領をつくっていこうということで、今議論が行われているというふうに承知をいたしております。

 三月末までにはまとめて、新たな指針としたいというふうに考えておるところでございます。

鈴木(淳)委員 それでは次に、文部科学省の概算要求についてお尋ねをしてまいります。

 教育再生の取り組みを実効あるものにするためには、大臣あいさつにありましたように、教員としてすぐれた人材を確保し、頑張る教員を支援することが肝要であります。しかしながら、三年間で約二万一千人の教員増を目指した文科省の概算要求というものは、昨年成立しました行革法との関係もこれあり、また財政的な見地からも厳しい反応があるのも事実であります。

 そのような中、教育関連に別格の予算措置、人員配置を可能とするために、その必要性をいかに社会に訴え、理解を得ていくのか、その御決意並びに見通しについて大臣にお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 お答えをさせていただきます。

 基本はやはり、教員が子供と向き合っていく時間をできるだけ長くすることによって、子供の適性なり、また子供の状況、先生、時間を気にされているようですから余り長くは言いませんが、それを的確にとらえて指導する、これが大事だと思います。そのためには、やはり現場で頑張っている先生方を御支援しなきゃいけない。

 具体的には、例えば教職員定数の改善であるとか、非常勤講師の配置などの外部人材の活用、また学校支援ボランティアを活用した事務の外部化などで、先生が、指導といいますか、できるだけ子供たちに向き合える、こういった時間を確保するということを基本に平成二十年度の概算要求というものを今要求させていただいておりまして、今後とも、この予算編成過程において、これは行革推進法との関連もありますから、そういったことも含めて、関係府省とよく協議をして予算獲得に頑張っていきたい、そういうふうに考えておるところでございます。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 さっきの質問にも関連し、また、一部関連するお話もありましたけれども、次に、教員勤務実態調査の分析についてお尋ねをしてまいります。

 文科省の昨年の教員勤務実態調査によれば、教員の月平均の残業時間が約四十時間とのことでありますが、一連の実態調査の中から果たして何を読み取るのか。例えば、今もお話がありました、事務に当たる時間が約一時間四十分程度となっておりますけれども、どこに課題があると考え、また、その点をどのように改善していこうとされているのか、お尋ねをいたします。

渡海国務大臣 昨年実施いたしました勤務実態調査、これによりますと、一日の勤務時間が十一時間近くに及び、また、デスクワーク的な事務負担が大きい。これは先生が御指摘いただいたとおりでございます。

 そういったことを考えますと、これは先ほどもお答えをいたしましたように、業務分担といいますか、そういったものをやはりしっかりと分析し、区分し、また、教員の勤務負担が過重とならないように、そういったことを考えていかなきゃいけないというふうに思います。

 先ほどお話ししました、教員増等もそれに資するような形で行っていかなきゃいけないということで、これから先生方が、これは繰り返しになりますけれども、できるだけやはり子供たちと向き合うという時間を多くとれるように考えていかなきゃいけない。そのための事務の整理合理化等もしっかりとやっていかなきゃいけないというふうに考えておるところでございます。

鈴木(淳)委員 できるだけ教員が子供と向き合う時間をふやすように、まさにそのとおりでありまして、ぜひ事務の合理化等も進めながら、その時間確保をお願いしたいというふうに思います。

 さて次に、めり張りある教員給与体系についてお尋ねをします。

 大臣あいさつの中で、今回、すぐれた教師、頑張る教員の支援のため、めり張りある教員給与体系の導入が盛り込まれております。

 頑張る教員を応援するという必要性は私も全く同感であります。しかし、実際に、果たしてこれが、給与という形での反映となると、現在教育の現場がそれを受け入れる環境にあるのかどうかについては一抹の不安があるわけであります。

 教員の評価は、だれが評価をし、その適否はどのように判定をされるのか、また、その妥当性はいかに担保されるのか。教員給与総額が増額をする中での手当増であるならば理解もできますけれども、もし全体予算の枠の中でのめり張りづけとなった場合に、その場合の不安と、教員の間に広がるいわゆる疑心暗鬼といいますか、こうしたものに対して文科省はどうおこたえになるのでありましょうか。

 また、それと密接に関連するでありましょうけれども、現行の教職員評価制度についてもあわせてお伺いしたいと思います。今、教員評価制度の提案と実施が各都道府県で進められていると聞きますけれども、これまでに得られた成果と経験から、教員評価の課題と望ましいあり方について文科省はいかに認識をされておられるのでありましょうか、お尋ねいたします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教育は人なりという言葉がございますが、教育再生の取り組みを真に実効あるものとするためには、学校教育のかなめである教員にすぐれた人材を確保し、頑張る教員を支援することが不可欠であると考えております。

 このため、私どもでは、教員の勤務実態を踏まえた適切な処遇の実現でございますとか、さきの学校教育法の改正により新たに設けられた副校長や主幹教諭等の新たな職の処遇、また部活動手当等の拡充などを通じ、すぐれた教員を評価し、めり張りある教員給与体系を実現できるよう平成二十年度概算要求を行っているところでございます。

 また、教員の評価についてお尋ねがございました。学校教育の成果は教員の資質に負うところが極めて大きいことから、教員一人一人の能力や実績をきちんと評価することが大切であると考えております。

 私どもでは、平成十五年度から十七年度まで、教員の評価に関する調査研究をすべての都道府県・政令指定都市教育委員会に委嘱するなど、新しい教員評価システムの構築や運用について指導してきたところでございます。各教育委員会では、それぞれの教職員に求められる職務遂行能力がどの程度発揮されたかに関する能力評価や目標管理型の業績評価など、民間企業の例も参考にしながら教員評価システムを導入しているところでございます。

 また、教員評価に当たりましては、主観性や恣意性を排除し、客観性を持たせることが大切でございまして、評価を受ける教員にかかわるさまざまな立場の人から多面的に意見を聴取することも効果的と考えております。今後さらに、各教育委員会において客観性の高い教員評価システムの構築に向けた取り組みが進むよう指導してまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 御答弁は、言葉はもちろんそのとおりだと思うんですが、ぜひ、現場でやはり教員の方々がどんな思いで今これを眺めているのかということをつぶさに感じていただきたいというふうに思います。教育は人なりと申しますが、まさにその根幹の教師がみずからの処遇や将来について不安を持てば、それは教育になりません。ですから、これはぜひ現場の感覚というものをしっかりと常に把握するようにお願いしたいというふうに思います。

 同じく、現場の不安から、教員の免許更新制についてお尋ねをします。

 教職員免許法の改正によりまして免許更新制の導入が決まったわけでありますけれども、やはりこれについても現場には不満と不安の声が高いように感じます。本来、この議論は、もともとは不適格者の排除の必要性から始まった話と私は理解をしますけれども、そして自分も当初それがゆえに、その必要性から支持をしたわけでありますけれども、法改正に至る議論の結果、免許の更新制は教員の資質向上というところに落ちついた感がございます。

 実際に不適格者の排除のための意味がなくなった、あるいは低下したというのであれば、免許更新制に伴う研修というものは、最新の知識技能の習得や刷新という積極的意義よりは、むしろ教員の負担感の方が大きくなる可能性が高いと思われますけれども、文科省はどうお考えでありましょうか。

 また、あわせて、研修費用の負担についてもいかなる方針かについてお尋ねをいたします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 免許更新制は、教員が最新の知識や技能を身につけますとともに、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ていくために重要な意義を有するものと考えております。

 この免許更新制の導入に当たりましては、教員の皆さんに負担感をもたらすことなく、むしろ積極的な受講意欲を喚起するものとなるよう、内容の充実や実施体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

 また、講習の受講料につきましては、教員免許は個人の資格でありますことから、教員個人の負担をもって充てるとする考え方がある一方で、免許更新制が国あるいは教育上の要請から導入されるものであることにかんがみ、一定の配慮が必要との考えもございます。

 国会の附帯決議にもございますように、免許状更新講習の受講負担を軽減するため、今後、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討してまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 それでは、今、現実の課題でありますけれども、全国学力テストの結果公表のあり方についてお尋ねをします。

 四月実施の全国学力テスト、いわゆる全国学力・学習状況調査でありますけれども、その結果につきましては近く結果が公表されるものと聞いておりますが、この公表のあり方は極めて難しい問題であろうというふうに思います。本来の目的を離れて学校の序列化につながったりする懸念があるわけでありますけれども、改めてここで、学力テストの本来の目的の再確認と、公表の仕方についての御見解をお伺いします。

渡海国務大臣 学力テストの公表というのはもう間近に行いたいというふうに考えておりますが、確かにこれが、序列化とか、それから過度な競争、こういったものが起こらないかという懸念がありまして、そうならないように細心の注意を払わなきゃいけないということであろうと思います。

 まず、この目的でございますが、全国一斉調査をすることによって、児童なり生徒が今どういう水準にあるか、水準という言葉はちょっと不的確かもしれませんが、どういうレベルにあるかということを正確に把握することによって、一人一人の能力に応じた指導というものがより的確にできるようになるということ。また、全体としては、都道府県は一応国の方で発表するということになっておるわけでございますけれども、都道府県がどういうレベルにあるかということをある程度県が把握をすることによって、これからの教育現場における指導のあり方なり、そういったことに役立てるというのが一番の目的でございます。

 全体的に日本の教育がどうあるかということであれば、これは全国一斉でやらなくてもよかったのかもしれません。ただし、やはり今回大事なことは、より、子供一人一人がどういう能力でどういう教育を必要としているかということをしっかりさせていくということであろうというふうに理解をいたしております。

 発表に当たりましては、先ほど来先生がおっしゃっているような懸念、そういったことが起こらないように細心の注意を払い、そして、都道府県教育委員会においては、ちゃんと、市町村の序列化をしないようにということを厳しく指導いたしておりますし、また、市町村においては、学校ごとのこういったものの発表を控えてくれということをしっかりと指導させていただいております。

 いずれにいたしましても、近いうちに発表されるわけでございますが、これをしっかりと、今後より分析をして、今後の教育また指導に役立てていきたい、そういうふうに考えているところでございます。

鈴木(淳)委員 公表については、序列化につながらないように、競争の激化につながらないように配慮しろ、こういうお話であったと思うのであります。

 それは同感でありますけれども、市町村別、学校別の公表というものは、それぞれ個々の教育委員会あるいは学校に判断をゆだねるというのが恐らく基本だというふうに思うんです。そうしますと、例えば市民、あるいは議会、あるいはマスコミ、一たんあるデータについては開示をしろ、こういう話がやはり昨今強いと思うんですね。そうすれば、現場はやはり大混乱だと思うんです。

 安易な公表というものは、本来の目的を超えた学校の序列化に向けてひとり歩きをする可能性があるわけであります。個々の教育委員会や学校にゆだねるというのは、言葉はもちろんそのとおりでありましょうけれども、それはやはりある面では安直で無責任と言うと言葉が過ぎますけれども、そのそしりも免れぬところがあるだろうというふうに思うんですね。したがって、こうしたことを現場に任せれば、現場がどのぐらい苦しむのでありましょうか。

 学校の序列化や過度の競争につながらないような配慮が必要とするならば、公表の仕方に至るまで、それぞれ個々の地域に任せないで、ある面で、文科省の判断で、一律に公表しない、こういうような決定をすることもまたその選択肢の一つかもしれませんけれども、そのあたりはいかがお考えでありましょうか。

渡海国務大臣 確かにこれは大変難しい問題だと思います。

 実施要綱においてはそういうふうに定めまして、きっちりとそういうことを都道府県教育委員会に、また市町村に申し上げているところでございます。ここのところは、私も、大臣に就任しましてから、正直、本当にこれはうまくいくのかなというようなことも随分議論をさせていただきました。ただ、これは検討委員会をつくっていただきまして、その検討委員会で公表の仕方、またあり方等についても議論をいただいて、今回このような決定をさせていただいた。それに基づいて、我々の方としては、できるだけ、序列化とか、そして過激な競争にならないように十分留意をしようということを都道府県なり市町村に申し上げているということでございます。

 懸念がないかと言われれば、ないとは言い切れない部分もあるわけでございますが、これは何も責任を逃げているということではなしに、やはり功罪あるんだろうと思うんですね、こういうときは。そういったことで、できるだけそういうふうにならないように、今後も見守っていきたいというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 ぜひとも、現場が本当に困らないような形で、細心の御注意を払いながら、全国の状況の把握に努めていただきたいというふうに思います。

 さて、学力テストについてもう一点。

 学力テストの対象は、現在、小学校六年生と中学三年であります。さきの大臣の目的の話でありますけれども、検証結果を教育の現場の改善策に反映するというのであれば、これはむしろ、小六や中三ではなくて、改善効果が出るであろう、例えば小四とか中一とか、そのあたりに前倒しながら、その三年間、六年間で結果が出るような、そういう工夫もあろうかと思います。今回、六年と中学三年ということになっておりますけれども、こうした声に対してはいかにお考えか、お尋ねをいたします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 全国学力・学習状況調査におきましては、全国の児童生徒の学力や学習状況を把握、分析いたしますとともに、学力と児童生徒の生活習慣などとの相関関係をさまざまな角度から分析することによって、教育や教育政策の成果と課題を検証し、その改善に活用することといたしております。このため、対象学年につきましては、義務教育における各学校段階の最終学年における学力や学習状況を把握するため、小学校第六学年と中学校第三学年としたところでございます。

 平成二十年度調査につきましては本年度とほぼ同様の枠組みで実施する予定でございますけれども、対象学年を含めた今後の調査のあり方やその活用方法などにつきましては、調査の状況等を踏まえながら、専門家や教育委員会など各方面からの御意見も伺いつつ、引き続き検討すべき課題であると考えております。

鈴木(淳)委員 それでは次に、教育の現場への市場原理、競争原理の導入についてお尋ねをしてまいります。

 教育の分野に、ある種競争や効率化の観点を導入して、少しく緊張感を持たせることも改革のためには必要でありますけれども、他方、それには絶対に侵されてはいけない部分も教育にはあろうかと思います。教育に健全な競争が必要であることは否定はしませんけれども、市場原理、競争主義の一律的な導入は教育現場になじまないものとも考えられます。果たして、教育の世界における効率化、競争原理の導入のあり方についていかなる考えを持たれるのか。

 また、あわせて、教育現場における主観的な評価と客観的な評価についてお尋ねをします。

 いわゆるいい先生、いい学校という主観的な評価は世間一般に通用する話でありますし、その評価はおおむね当たっているであろうというふうに思います。しかし、それが客観的な評価とどう結びつくのか、客観的評価でどう証明するのか。とりわけ、さきのめり張りある給与制度など実際の評定に結びつく場合、教育現場はやはりその評価に困ると思うんですね。主観的評価はある意味当を得ておりましても、それは客観的評価とはなかなか結びつけにくい。

 教育の世界における客観的な評価の難しさについて、文科省はいかに考え、またいかなる取り組みを進めていかれようとされているのか、大変難しい課題でありますけれども、御答弁をお願いいたします。

渡海国務大臣 私はいつも、実は、質問があったときに、市場原理になじむ部分となじまない部分、また競争原理になじむ部分となじまない部分、これは例えば、大きく言えば、ちょっと教育から外れて社会保障なんかも随分そういう部分があると思うんですね。そういうことをしっかりとやはり教育でも仕分けをしていかなきゃいけない。私の中でもまだきっちりと仕分けができているわけではありませんが、そういう物の見方というのはとても大事であろうというふうに思っています。

 特に義務教育というのは、憲法二十六条で保障された教育を受ける権利でありますし、受けさせなければいけない権利でありますが、こういうものをしっかりとやるためには、ある面、市場原理を超えてやらなきゃいけない部分が非常に多くなってくるのではないか、こう考えております。なじむ部分が、今いい例がぱっと思い浮かびませんが、そういったところもあっていいんだろうと思います。

 それから、この評価の問題も、確かにこれは科学技術の分野なんかでも難しいんですね、余計なことを言って申しわけありませんが。

 ただし、やはり、ルールを一つしっかりと決めて、それで、その中でまず基本的な評価をやっていく。ルールを決めることが、実は先生方に頑張っていただく上での目標にもなっていく、その中である競争が起こったとしても、その競争は私はいいんだろうと思うんですね。ただ、とにかく主観的に、これはいい先生だとか頑張っている先生だとか、一方的に見るというような評価ではなかなか理解は得られないんじゃないか。

 ばくっとしておりますが、基本的にはそういうことではないかなというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 先ほど、大変感動的なあいさつをされました池坊副大臣がお見えでありますので、少し文化についてお尋ねをしてみたいと思います。産業政策にも通ずる文化政策の多面的な意義という観点でお話をしたいと思います。

 実は、私は以前、ドイツの窯業都市ゼルプという町に行ったことがあります。まだ東西ドイツ国境のなくなる前でありますけれども、チェコの国境に近い町で、人口一万数千人、大変小さな町でした。ところが、そこに行ってびっくりしたのは、ミュンヘンやフランクフルトに負けないような、文化施策をとてもしっかりやっているんですね。

 そのゼルプという町は、フッチェンロイターとかローゼンタールという焼き物、洋食器を焼いている町なんですが、この町で一体なぜそんなに文化施策をやっているんだろうな、私は聞きました。対応していただいたのが第三市長、女性市長でありましたけれども、文化担当市長という名前でした。その方がおっしゃいました。

 ゼルプというのは東西国境に近くて緊張感が高い、その町に人がいてもらうためには町に魅力がなければいけない。同時に、そのときとても感銘したのでありますが、ゼルプは食卓の芸術品の町だ。食卓の芸術品と呼ぶんですね、焼き物のことを。これからもその町がそうした町であり続けるためには町や住民や職人が感性豊かでなければいけない、だから、ゼルプが文化施策に投資をするのは、住民サービスであると同時に、これは産業戦略の一環でもあるんだ。私はとても感銘を受けたわけであります。

 そうした、文化というのは多面の要素がありますけれども、文化施策の持つ多面的な意義について、ぜひ副大臣の御見解、またお気持ちをお伺いできれば幸いです。

池坊副大臣 鈴木委員は瀬戸でいらっしゃると思います。私も京都でございます。ともに文化によって立つ市であり町ではないかと思うんです。日本がもし観光立国としてよって立つならば、文化を離れて外国人が日本にやってくることはないというふうに考えております。文化は、私たちの心を豊かにし、活力を与えるだけでなくて、より質の高い経済効果をもたらすと思います。

 例えば、私ごとでございますが、きょうから日本生け花芸術祭という、各流派の生け花展がございます。天皇皇后両陛下もいらっしゃるんですが、このために花器を買う、花材を購入する、これは当たり前ですけれども、例えば入場券そしてまた交通費、みんな交通費をかけながらやってくる、ついでにちょっとお食事をする、パンフレットをつくる。そういう、投資額よりもはるかに、これは調査によりますと二倍と言われておりますが、私は二倍ではきかないというふうに思っております。一つの文化が興りますときには、そこに波及効果、その経済効果というのを忘れてはならないと思います。

 これは、閣議決定されました本年の文化芸術振興基本計画の中にも触れておりますけれども、私たち文化庁がもっともっと、文化、芸術は感動を与えるだけじゃない、より質の高い経済と深く結びついているのだということを多くの方々に知っていただく努力も必要ではないかと思っておりますので、これから、国土交通省やいろいろな省庁と連携をとりながら、文化の果たす役割というものの普及に努めてまいりたいと思っております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 とてもすばらしい御意見をいただきました。ぜひ文化施策に対する理解がさらに進みますことを期待したいと思います。

 きょうは質問の機会をいただきましてまことにありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わります。

佐藤委員長 以上で鈴木淳司君の質疑は終了いたしました。

 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 大臣、このたびは御就任まことにおめでとうございます。御活躍を心よりお祈りいたします。

 早速でございますが、質問に移らせていただきます。

 初めに、教職員の定数改善についての御質問をさせていただきたいと思います。

 先日の財政制度等審議会で、公立小中学校の教職員の定数改善について、児童生徒数の減少に伴い教職員数は実質的に増加しているなど、批判意見が出たという報道がありました。きょうのある新聞でも、「財政審の西室泰三会長は記者会見で「個人的に言えば(文科省の主張は)あっけにとられる。教育が注目されているのを利用した悪乗りだ」」こういう主張までしているという記事が出ております。

 現在、学校は、児童生徒一人一人に応じた指導などきめ細かな教育を求められている。加えて、開かれた学校を目指して、地域との協議、それから保護者への対応、特別な支援を要する学習障害や重度障害者の受け入れと、学校の様相は以前とは大きく変わっているわけでございます。それにつれて教員の仕事内容もふえているということを財政制度審議会のメンバーの方々にはまず正しく理解をしていただきたい。このことを大臣には強く望みたい、また御説明をいただきたいというふうに思うわけでございます。

 去年、ことしにかけまして、教育基本法それから教育三法の改正を受けて、国会は教職員の増加が必要であるとの結論を導き出したと私は理解をしております。それに対して、文部科学省は、財務省や財政制度審議会への説明をまず丁寧に行う、それから、法改正の趣旨を踏まえて、教職員定数改善の予算を、今概算の段階では要求をしておりますが、しっかりと確保していただく必要がある、こう思っております。

 この問題に対する文部科学大臣の取り組みと決意について、まず初めにお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 先生御指摘のとおり、財政審の方が、文部科学省は悪乗りをしている、こんなことを言っているということも聞こえてきております。

 ただ、先ほどの鈴木先生の質疑でもお答えをいたしましたように、これからのキーワードは、私はこれは今一番気に入っている言葉なんですが、子供と向き合う時間を確保する、充実する、これは大変大事だというふうに思っております。そのことを実現するために、やはり、定員増であるとか、また非常勤講師、こういう外部人材を活用するとかボランティアの活用、要は、学校の先生が十分生徒と向き合える時間を確保するために我々は予算を確保していきたいというふうに思っております。

 財政審と、財務省とこれはこれからやっていかなきゃいけないわけでありますけれども、そのためにしっかりとこちらも、言うべきことまた主張すべきこと、さらに整理をいたしまして、年末の予算編成に向けて頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。

西委員 大臣のおっしゃるこのキャッチフレーズ、私もまさしく、この教育基本法、教育三法の議論を通じて結論するならば、多忙な先生方に子供と向き合う時間を少しでも多くとれる、本来の教育、指導に時間を割いてもらえる環境づくり、これが今回の結論であったのではないかというふうに思っておりまして、ぜひともその方向で、実態調査等も既になさっておられますので、きちっと説得をし、予算の確保に向けて頑張っていただきたい、こう思います。

 続きまして、教科書検定についてお伺いをしたいと思います。

 先日、沖縄の方が私のところに見えまして、私、残念ながらいなかったんですが、教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会という、この代表の方が決議書を持ってお見えになりました。秘書の話によると、その中のお一人が、私たちは政治介入とか何かを求めているわけではない、歴史を正しく伝えたい、その思いだけで行動しているというふうに議員に伝えてほしいと言ってお帰りになったという話をお聞きしました。

 私自身も、歴史認識など教科書の内容に関しては当然政治介入はすべきではない、こういうふうに思っております。ただし、今回の問題では、現行の教科書検定に至るプロセスについて、制度的にやはり考え直さなければいけない問題があったのではないかという気がしております。

 そこで、きょうは、この点について改善点を探るべく若干の議論をさせていただきたいと思います。既に大臣もおっしゃっている部分もあると思うんですが、それを踏まえた上でお話し申し上げたいと思います。

 教科書用図書検定調査審議会は、学習指導要領や教科書用図書検定基準に基づいてその内容を審査する、こういうことになっております。その審議会の提言に沿って、文科省は、ふさわしくない文言について再度検討するように出版社側に伝える、それを受けて、また出版社が内容についての記述を検討する、こういう順序になっております。

 さて、今回の問題では、申請用の教科書の記述が変わった、つまり、まず初めに出版社側の記述が変わったということではないというふうに理解をしております。それでは何が変わったかというと、これはつまるところ、検定する側の基準が変わったということが今回のあの結論ではないかというふうに思います。

 審議会の審査に先立ち、検定申請のあった教科書については教科書調査官の調査が行われます。教科書調査官は、審議会に、調査審議の参考となる資料として調査の意見書を提出する。私は、この教科書検定制度の問題の一つは、この調査意見書の扱い、これをどうするかということにあるというふうに思っております。

 つまり、この意見書は、参考資料というものの、実質上、学習指導要領や教科書図書検定基準以外の基準というふうに個別問題としてはなっているのではないか。意見書は、教科書調査官が意見書をまとめるときに専門家の意見を聞くとか、審議会はそれを参考にしてしっかり議論をするということが前提となって初めてその意味をなすものだというふうに思いますが、今回は、残念ながらそういう前提が崩れている、十分な参考意見を聞き、十分な審議が行われた上で、その結果が出版社側に伝えられるという丁寧なプロセスが残念ながら崩れていたのではないかというふうに考えております。

 さらに、調査意見書によって歴史認識にかかわる記述が変更されるということを考えるときに、他の、学習指導要領や教科書用の図書検定基準の改正では、それぞれ中教審や教科書用図書検定調査審議会の議論を経て、その議論も周知されながら改正されることと比べると、その扱いが軽過ぎたのではないかというふうに思っております。

 もちろん、調査意見書のすべての意見についてこういうことをやろう、つまり、てにをはを変えることまでそういうプロセスを経るということを言うわけではありませんが、少なくとも調査意見書の歴史認識の変更にかかわるものについては学術的に公正にオーソライズするプロセスを明確にすべきではないか、こう考えているわけでございます。

 現在、審議会の透明性の確保や情報公開、さらに沖縄条項の設置なども検討課題となっているというふうに聞いておりますが、あわせて制度上の問題を見直すということを提案したいと思います。

 例えば、調査意見書にかかわる専門家の意見の聴取を、先ほどのように歴史認識にかかわる大きな変更の場合には義務づける、それから、変更の根拠となった資料等をきちっと添付する、それから審議会の専門家の議論の確保を要請する、それから議論となっているテーマの周知などが少なくとも必要ではないかというふうに私自身は考えておりますが、このことについて御意見を賜りたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教科書検定は、民間の教科書会社が申請した図書につきまして、内容が学問的に正確であるか、中立公正であるかなどの観点から、教科書検定審議会における専門的、学術的な調査審議に基づき実施しているものでございます。一方、現行の教科書検定制度につきましては、専門性や透明性の向上など、さまざまな御意見があることも承知をいたしております。

 ただいま御指摘いただきました、例えば調査意見書に関する専門家の意見の聴取の義務づけでございますとか、変更の根拠となった資料の添付、審議会での専門家の議論の確保につきましては、教科書検定における専門性を向上させるための一つの御提案と受けとめているところでございます。

 また、議論となっているテーマの周知につきましては、教科書検定における審議の公開性を向上させるための一つの御提案として受けとめているところでございます。審議の公開性の向上につきましては、これまでも、従来口頭で行っていた検定意見の通知を平成十二年には検定意見書による通知で実施することに変更したり、また、平成十三年には、検定結果の公開資料に検定意見書や修正表を追加するといった取り組みをしてきたところでございます。

 今後とも、専門的な見地からの学問的な正確性を確保いたしますとともに、審議の公開性の向上と静ひつな環境の確保についてバランスのとれた審議を行ってまいりますよう努めてまいりたいと存じます。

西委員 おおむね御賛成をいただけたように思いますが、例えば調査官から教科書会社に対する通知というのですか、これなども、表面上は一言、短い文章ですが、具体的なサジェスチョンはまた口頭であるような感じも受けておりまして、個々の問題に対してきちっとした透明性、公開性、これをできるだけ確保するようにお願いをいたしたいと思っております。

 続いて、学習指導要領の絶対評価についてでございます。実は、私自身もまだ十分な調査ができておりませんが、少しこのことについて考えていきたいと思います。

 今、中教審で学習指導要領の改訂作業が進んでおります。前回の学習指導要領は、子供の学力は国際的に見て上位に位置しており、全体としておおむね良好、しかし、学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などが必ずしも十分ではなく、高いレベルの学力を有する子供の割合がそれほど高くないなどの問題があるとの問題意識に対応すべく改訂が行われた。

 具体的には、授業時数の縮減と教育内容の厳選、それから個に応じた指導の充実、それから体験的、問題解決的な学習活動の重視、総合的な学習の時間の創設、選択学習の幅の拡大というようなことが図られて、十分ではないとされた学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などを培うための重要なツールとして総合的な学習が導入された。いわゆるゆとり教育の一環としての流れであったわけです。

 志水宏吉大阪大学教授は、「学力を育てる」という本を著されておりますが、この中で、学力とは分ける力とつなぐ力である、非常にわかりやすい表現だと思うんですが、わかるとは分かるであり、これは分ける、物事をちゃんと立て分けてとらえること、一方、その分けられたそれぞれの要素を関連づけて把握して、部分部分をつなぐことによって一つの全体を把握し、理解をする、分けるは分析であり、つなぐは総合、こういうことになるというふうにおっしゃっておられます。この二つをバランスよく子供に身につけさせることこそ学力を育てるということだというふうに論じておられます。

 今回の改訂作業では総合的な学習の時間を削減することが検討されているというふうに言われておりますが、つなぐ力が必要であるという前回の問題認識が変わったのだろうかということが一つの疑問でございます。

 私は、学習指導要領における教科内容の基準の示し方については、大綱化、弾力化を図っていくべきだと考えております。例えば総合学習の扱いについてもいろいろ議論がありますが、軌道に乗っているところもございます。それは大きな成果を上げております。そのようなところは、その努力を無駄にしないためにも、現行どおりでも選択できるような幅を持たせて今回の議論を行ってはどうかというふうに思っておりまして、この点についての大臣の御所見を賜りたいと思います。

渡海国務大臣 総合的な学習ということで御質問があったわけでありますが、総合的な学習というものを導入いたしましてから、この間、いろいろな調査もやってまいりました。試行錯誤しながらいろいろなこともやってきたわけであります。

 総合的な学習というのはつなぐ力である、先生、そんな感じのお話をされたわけでありますけれども、そのためにも、分ける力、わかる力がしっかりしていないと実はつなげないわけでございまして、そういうことを考えますと、ちょっとこの間、分ける力、わかる力、基本的な理解力というものが少し不足しているからこれを強化しなきゃいけない、全体で一〇%時間をふやそうとか、国語力とか、数学、算数の力、それから理科の基本的な実験の部分とか、こういったいわゆるわかる力、これをやはりしっかり持っていないと総合力も発揮できない、つなげない、こんなことが言われておりまして、そのために今回の改正というものが出てきたと理解をいたしております。

 なお、先生御提案の、現行でうまくいっているところというのは、総合的な学習の時間の授業数を、全体が負担にならないような形でとっていただくことも可能かというふうにも思えますので、それはそれぞれ教育委員会なり学校の判断でおやりをいただいたら、せっかくうまくいっている授業でありますから、お続けをいただけるんじゃないかな、そんなふうに判断をいたしております。

西委員 前回の議論では、大臣のおっしゃるように、もちろん授業時数は縮減しましたが、当然これは、教育内容を厳選して、基礎、基本をきっちり教えるということが前提で、この総合学習、いわゆるゆとり教育というものが導入されたということですので、もちろん分ける力なくしてつなぐ力も養成できないということは当然のことだと思います。

 そこの部分に関連して、まず、この間からの議論で、評価、先ほども若干ありましたが、評価の方法についてもちょっと議論をしてみたいと思うんです。

 この間、今まで長い間相対評価で子供の評価をしておりましたが、絶対評価ということに変わりました。子供たちの学習状況を的確に把握して、客観性、信頼性のある指導と評価を進めるために、目標に準拠した評価、いわゆる絶対評価が取り入れられております。

 一人一人の理解度を評価する以上は、教員は目標に達していない生徒を押し上げるという責任が今度は逆に私はできた。全体が低くても五から一まで評価すればいい、そういうものではなくて、一定のところまで、大勢、極端に言えば全員の子供たちを押し上げていくということが絶対的な評価の目標だというふうに思うんですが、そういう意味では、絶対評価というのは、子供たちにもそうですが、教員の指導力を鍛え直すという意味でも非常に厳しい内容のものではなかったかと思います。

 ところで、こうした絶対評価を行う場合に、まず、到達目標がどこなのかということをはっきりと押さえなければならないというふうに思います。中教審では、この到達目標の明確化が今後の課題となっているということでございますが、どんな観点でまず議論が行われているのかということをお教え願いたい。

 また、報道によると、評価観点に関する議論が行われているようですが、すべての子供たちに必要なこと、つまり、特に義務教育においてはここまではこの段階で理解してもらいたい、また習得してもらいたいということ、到達目標それ自体に関する議論なんですが、このことについてもあわせて報告をいただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 中央教育審議会におきましては、御指摘ございましたように、評価の指導への活用を促進するといった観点から、平成十七年十月の答申におきまして、到達目標の明確化が提言されたところでございます。

 現在、中央教育審議会の教育課程部会においてさらに具体的な審議が行われておりまして、その一端を御紹介申し上げますと、例えば、学習指導要領とは別に、習得していない子供に対しては履修する学年を超えてでも補充学習等により習得を目指すといった、指導上の工夫を図ることが必要な項目の例をわかりやすく示す必要があるのではないかといった議論がなされているところでございます。このためには、まず、教師が子供たちに対してめり張りのきいた指導を行う上で参考となるよう、社会的な自立に不可欠であったり、また子供たちがつまずきやすいといった事項を重点指導事項例として整理することが重要ではないかとの指摘もなされているところでございます。

 文部科学省といたしましても、こういった中央教育審議会の審議を踏まえ、さらに検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。

西委員 全国的な学力調査も行われましたし、いろいろな意味で環境は整っていくと思います。一人の落ちこぼれも出さない、そういう意味での、私は、ただ単に相対的な評価ではなくて、絶対的にどういう評価をしていくかということが大変重要な問題、そのためには到達目標を明確にして、ここまでは皆、子供に教えていくという、また理解をさせていくという、ここをはっきりと目標を持っていただいて、これからの教育を進めていっていただきたいと思います。

 私自身もまだちょっと、きょうは初めの段階で、もう少し調査研究を進めた上で、またこの点については、現状についても議論をさせていただきたいと思っております。

 最後は、世界トップレベルの研究拠点について、これは大臣も大変造詣の深い、熱心に推進されてきた内容ではないかと思って、私も理科系、工業高専の教師出身ですので、大変期待をしております。と同時に、これからの行方についても、若干、これは先々どういうふうなことになっていくのかという危惧も抱いておりまして、その点について御質問申し上げます。特に、世界トップレベルの研究拠点の永続性、自立性、各大学それから研究機関に五つできるわけですが、これについて質問したいと思います。

 基本的には、十年間にわたって一拠点当たり平均して年十数億円の資金を投入する、こういうビッグプロジェクトでございます。五年ごとに評価をする、場合によってはプログラムを打ち切られる場合もある、また、反対に、十年を経て、評価が高ければさらに五年延長ということで、最短五年、最長十五年の今回の研究拠点づくりになります。

 この五年ごとの評価について伺いたいと思うんですが、具体的には、四年目に中間報告を出して、そして五年目に評価を受けるということになるんだと思いますが、その確認と、その評価はどの機関が行うのかということについてお伺いしたいと思います。

松浪副大臣 お答え申し上げます。

 委員におかれましては、この世界トップレベルの研究拠点プログラム、どういういきさつ、目的でできたかということは御案内のとおりでございます。そして、このプログラムについて大変御理解をいただいておりますことをうれしく思うものでございます。

 この世界トップレベルの研究拠点プログラムにおける中間評価につきましては、まず、各研究拠点がそれぞれ設置する、外国人を含む外部評価委員会において評価を行います。その結果を踏まえて、文部科学省が設置する世界トップレベル研究拠点プログラム委員会で最終的に評価することになります。

 その具体的なスケジュールにつきましては、今後世界トップレベル研究拠点プログラム委員会におきまして検討していくことになるために、現時点では確定しておりませんけれども、五年目に当たる平成二十三年末を目途に中間評価を実施することになると考えております。

西委員 厳正なる評価をお願いしたいと思います。

 このプログラム、十年もしくは十五年後にはいずれ終了していくということになります。その後のことなんでございます、私が気にしているのは。これからずっとこのトップレベルの研究機関が、所期の目的を達して二十年、三十年と続いていっていただきたい、こういうことです。

 これはその後どうするんですかとお聞きしたら、ひとり立ちしてください、こういうふうに文科省の回答がありましたけれども、一年に十数億円もしくは数十億円の資金を自己調達するということになってくるわけですが、主に研究者の人件費だと思いますが、この資金が減っていくということは、すなわち研究者の数と待遇の低下に直結していくわけです。

 ところで、国立大学で四校、これを分担しているんですが、この主な収入は、運営費交付金、授業料や病院収入などの自己収入、それから産学連携研究収入、寄附金というようなものが収入になっているんですが、このうち、運営費交付金、授業料や病院収入などの自己収入は通常の大学等の運営に支出されておりまして、能力給や好待遇を支えるのは、民間からの産学連携研究収入、それから寄附金、さらに研究者個人の競争的資金に大きく依存しているというのが現状でございます。このように資金が限定している中で、ひとり立ちが本当に可能になるんだろうかという実は懸念を、先のことを懸念しております。

 世界トップレベルの研究拠点というのは、多分これはアメリカなんかの例を想定されて大きく踏み出されたんじゃないかと思うんですが、研究者みずからが獲得してくる研究資金、これがアメリカでは主流でございますが、それは、人件費を計上できて、研究者の報酬、給与を賄えるという仕組みになっていることは御存じのとおりです。ところが、日本は、なくはありませんが、ほとんど微々たる量しかそういうことには使われておりません。

 一方で、総合科学技術会議が平成十五年四月にまとめた「競争的研究資金制度改革について」にこのことについての問題点も指摘をされておりますので、それ以上申し上げませんが、現行の制度では相当厳しい状況になっていくのではないかと私自身は見ております。

 文部科学大臣には、研究拠点の永続性、自立性に関する見通しについて、ぜひとも御意見をお伺いしたいと思います。これは、今後の科学技術政策の大きな課題として、公正さ、透明性を確保しながらも日本で世界最高水準の研究環境を整えるというためにはぜひとも乗り越えなければいけない施策だと私は思っておりまして、科学技術システム自体の改革を行っていかなければいけない最初のケースではないかというふうに思っております。科学技術に大変造詣の深い渡海大臣のお考えをちょうだいしたいと思います。

渡海国務大臣 大変ありがとうございます。

 基本的に、このトップレベル研究拠点プログラム、これが終わった段階では、やはりある意味自立していただかなきゃいけないんだろう。これは、十年、十五年というタームで物を考えるわけでありますから、その間にそういったことも視野に入れてきっちりとやっていただくということがなければやはり私もこれはいけないと思いますね。

 その間に、当然、例えば競争的資金なり民間の資金がもっと使い勝手がいいように不断のシステム改革をやっていかないと、これは独立行政法人もそうでございますけれども、一部、独立行政法人は全部やめろというような話もありますが、そういったことも含めて制度改革というのはやっていかないと、確かに日本の研究というのは非常にタイトになっているというふうに考えております。

 しかしながら、これは非常にロングタームで考えていただいて、その中で、やはりしっかりとそういった先のことまで視野に入れながらやっていただく必要があるのではないかなというふうに考えておりますので、中間評価の段階でどういうことになってくるのか、始まったばかりでございますから、今からいくと四年先になるんですか、しっかりちょっと見守っていきたい、システム改革は不断にやっていきたいというふうに思っております。

西委員 時間が来ました。始まる前からこんな心配をしていてはいかぬのですが、それだけ大きなシステムの改革を展望した上での改革、私は科学技術政策の中核にも関係することだと思いますので、しっかりした議論をこれからも行わせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で西博義君の質疑は終了いたしました。

 次に、小宮山洋子さん。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。

 民主党の次の内閣で文部科学の責任者を務めさせていただいておりますので、きょうは、私は、皆様よりちょっと多い一時間、質問時間をちょうだいしていますが、すべて大臣とさしで話をさせていただきたいと思っています。細かいことを伺うつもりはありませんので、子供たちによりよい教育を行っていくための大臣の真摯な御意見を伺わせていただき、建設的な質疑ができればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、これからの教育の方向性とでも申しましょうか、先ほどからも学習指導要領のことは鈴木委員からも西委員からも出ておりましたけれども、やはり中教審で今学習指導要領の改正に向けて大詰めの作業が行われているわけですが、今回の改訂は、どうも一般的にはゆとり教育から学力重視に変えるというふうにとられているわけです。

 これはゆとりか学力かという話ではないんじゃないかというふうに思うんです。やはりそれぞれのそのときの理念に基づいた、環境をきちんと整備してその目的を達成させるようにしなきゃいけないのが、どうもゆとり教育の場合はそこのところのフォローが足りなかったのではないかというふうに思うんですね。

 先ほども、ゆとりももちろん大事にしていくというか、ゆとり教育といわれたことの中身を大事にしていく、判断力を育てたりというお話がございましたが、きょうの新聞の朝刊にも、「総合学習 もういいの?」と、総合学習の時間が三分の一削減されるというような記事も出ているんですね。ですから、大臣のごあいさつの中にも、総合的な学力向上策を講じて確かな学力を身につけさせますとあるんですが、そのあたり、一般の人がわからなくならないように、今後の方向性はどうあるべきだとお考えかをまず最初に伺いたいと思います。

渡海国務大臣 基本的には、基礎的な、基本的といいますか、知識をしっかりと身につけていただく、それを活用していろいろな問題解決能力を持つということをしっかり、どうやって組み合わせていくかということだろうと思っております。

 私も就任したばかりで、今まだ整理中でございますが、どうも今までの反省として、やはり基礎知識についてももう少ししっかりと教えなきゃいけない部分があった、そのためにはちょっと時間が足りないねと、こういう議論が行われております。

 ですから、さっき西委員が、しっかりと教えるということだったはずじゃないかと言っていたんですが、どうもその教えること自身が少し足りなかった、繰り返して少しやる方が必要だ、こういう議論があります。

 同時に、やはりこれは従来から言われていますように、我が国の教育というのは、非常に、基礎知識はレベルとしてそこそこ教えているけれども、どうも読解力とか応用力が弱い。こういったところをどういうふうにやっていくかというときに、総合力といいますか、そういったものが求められるんだろう。それをどういうふうに組み合わせていくかということも必要でありましょう。

 もう一つは、たびたび出ています、時間がありますから簡単にやりますが、子供と向き合う時間というのはとても大事だというのは、やはり子供の状態を知るという意味で私は大事だと思っております。その方がやはりきめ細やかな教育ができる。もう一点、これは先生も賛同していただけると思いますが、いじめの問題があります。学校のいろいろな問題があります。子供の状況を把握するのにも、先生がしっかりと子供と向き合う時間をこれからとっていくということが大事なんだろうなというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 この後、いじめのお話もいろいろ伺おうと思っているんですけれども。

 とにかく、学力を上げるにも、ただ授業時間だけをふやせば上がるというわけではないわけですよね。それで、総合力は求められるとおっしゃいましたけれども、やはり時間数が減るとそれを求めなくなるのかみたいな受けとめ方がどうしてもあるわけです。そこにやはり、大臣のごあいさつの中でも気に入っていると先ほどおっしゃった、教員の子供と向き合う時間の拡充という、確保、これは本当に大事なことだと思うんですが、そこがきちんとされないと、ゆとりにしろ、学力にしろ、求めるものがきちんと達成されないということだと思うわけです。

 これも今、前の両委員からも御質問ありましたけれども、やはり教員の定数改善、これはどうしても必要だと、本当に、本気で子供の教育のことを考えている人はだれしも思うはずですが、ところが、そこに立ちふさがるのが、行革推進法による、子供の数の減少以上に教職員数を減らすことということがあるわけですね。五年間で一万人減らすということが地方公務員の削減計画でも決められていることがあります。それに対して、文部科学省は三年で約二万一千人増の定数改善を求めていまして、これは本当に必要だと私も思います。ただ、そこに本当に大きな壁が、政府全体として取り組んでいる行革という壁があるので、それはやはり大臣が相当強い決意で臨んでいただかないと、そして、そういう声を国民的にも上げていかないと、先ほどの、財政審の「悪乗り」みたいな、ちょっと見当違いの話が出てきてしまうのだと思います。

 それで、ことし五月の教育基本法の審議の中でも、伊吹前文部科学大臣は、先ほどおっしゃったような、事務の外部化とかボランティアの活用とかそういう方法もあるけれども、やはり正攻法で、行革法案を改正して予算を大幅にふやして人員増をするか、三つの選択肢がある中で、その三つ目の正攻法で私は努力したいと思いますとおっしゃっているわけですよ。ですから、削減するというのを、もとへ戻して、さらにふやすというのは、相当これは大臣の決意、覚悟をお持ちいただかないとできないことだと思うんですが、ぜひ、前大臣よりも一層前向きの御答弁を期待したいと思いますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 詳細につきましては、今委員から御発言がございました。概算要求でそういうふうに要求をいたしております。

 ただ、私は、一つだけ申し上げたいのは、これはやはり決意だけあってもできないわけでございますから、必要性の論理、要するに、言葉は悪いですけれども勝てる論理をどうやって組み立てていくかということが一番大事だというふうに思っておりまして、今省内で、むしろ私が財務省的な立場に立って、これを論破しろ、要するに私自身を説得しろというふうな作業も通じて、腹にはめてこの交渉に臨んでいきたいということをやらせていただきたいというふうに思っております。

 以上が決意でございますが、よろしゅうございましょうか。

小宮山(洋)委員 いや、もちろんそのように策を練ってやっていただくのは大事なんですけれども、もちろん決意だけではだめですけれども、やはり情熱とか決意がないと物事は進まないと思いますので、ぜひぜひその大きな決意を持って臨んでいただきたいと思うんですね。

 ボランティアとか外部化と言っても、ボランティアを頼むのには、正規の職員がそのボランティアを指導しなければいけないとか、そこに任せられる部分とか、それに対する手間暇と言っていいんでしょうか、手をかけなきゃいけないとかで、必ずしもこれは、横から助けることにはなるかもしれませんけれども、正攻法では決してないわけですよね。

 だから、そういう意味では、やはりぜひ決意と作戦を持って、そういう世論の声も何とか、これは別に与党、野党の話ではないと思いますので、教育を考える人たちがいろいろな方法を使って、もちろん行革をしていく上には一律枠をはめなきゃいけない、その論理はわかりますけれども、やはり将来の日本にとって必要なものについては、これはやはりこういうことで扱うというようなことをきちんと組み立てていく必要があるかと思いますので、ぜひ御努力を年末に向けてよろしくお願いしたいと思います。

 それで、やはり学力といいますと、その一番のフィンランドに昨年、青少年特の方の視察で行ったんですけれども、そのフィンランドでも、地方自治体と協力して、かなり少人数の教育を行っています。ということは、やはり一人一人の子供と向き合う時間がそのことによって確保されるということがあると思うんですね。

 OECD加盟国で、GDP比の教育支出が、三十カ国中、私的負担を入れても下から五番目、公的支出は下から二番目という低さなわけですから、これはやはり国際的な比較からいっても、人が財産のこの日本で教育の予算にもっと力を入れるべきだということは、行革推進法を乗り越えていくための一つの大きな論拠になるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

渡海国務大臣 これも説得をしていくときの一つの壁なんですね。その辺も、私は、いつも海外と比較するときには、いろいろな比較があるんですね。例えば、人口の中に占める児童の割合が、これは財務省がそう言うんです、言わせておかないですが。そういったことをやはり言わせないようにしっかりと、どういうか、数字を分析していかなきゃいけない。どういいますか、これはきょうはできるだけ自由にということでしたから、簡単に向こうから論破されるような論理はとらないで、しっかりわきを固めて攻めていかなきゃいけないというふうに思います。

 加えて、さっきはちょっと決意が弱かったようでございますから、しっかりと御支援をいただきたいというふうにもお願いをさせていただきたいと思います。

小宮山(洋)委員 次に、中教審でこれからの方向性などを議論している一方で、安倍内閣でつくられました教育再生会議がありますね。けさの新聞を読みますと、どうも今までの既定方針どおりやるということで伝えられておりますが、この教育再生会議、ことしじゅうに第三次報告を出すという予定ですが、これも世間一般の受けとめとしては、やはり安倍内閣では力を入れられたけれども、福田内閣の場合はちょっと位置づけが変わってくるのではないかという受けとめがありますが、その点はいかがですか。

渡海国務大臣 昨日、私も、一時間弱でございますが、出席をさせていただいて、出席委員の意見を聞かせていただきました。基本的には位置づけは変わらないというふうに考えていただいていいかというふうに思っております。

 ただ、総理からお話がありましたのは、自分のこの日本の社会に対する理念は自立と共生であると。その自立と共生という理念に対して教育再生会議の委員の先生方が、それは教育再生でも非常にキーワードになるというふうな、そういうやりとりはございました。ただ、私の印象としては、やはり一次、二次で積み残された問題、そして一次、二次のある種のフォローアップ、こういう形で今後進んでいくという意味では、基本的には変わらないというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 また、副大臣のもとにも新たな会議がつくられましたよね。そうすると、中教審があって、再生会議があって、副大臣のもとの会議があって、みんなやはりこれからの教育の方向性を考えているというと、その位置づけというか役割分担を明確にしないと非常にわかりにくいと思うんですが、いかがですか。

渡海国務大臣 教育再生会議は、御案内のように、総理のもとに置かれました会議でございまして、私はこういうふうに受けとめております。非常に自由に、闊達に御議論いただく。その中で出てきたいろいろなメニューについて、中教審という審議会を持っている文部科学省は、制度にしていくもの、また法律にしていくものについては当然その御議論をいただきながらやっていくという、これは国家行政組織法上で位置づけられた審議会でございますから、そういう役割を担っているんだろう。

 さっき池坊さんはいたんですが、池坊さんの懇談会というのは、もう少し中長期といいますか、十年、十五年といったようなロングレンジで教育全般について意見を聞くといったような会合であるというふうに聞いております。月二回程度開かれている。この次に開かれますときに、ちょっと私も顔を出して、どういう議論をしているのかということも聞いてみたいと思いますが、それぞれ位置づけは違うんだというふうに理解をいたしております。

小宮山(洋)委員 池坊副大臣がいらっしゃるときにまたその話も伺いたいと思いますが、副大臣は今の再生会議の方向性にはちょっと批判的でいらっしゃるように報道をされておりますよね。

 教育再生会議、私が見るところは、かなり思い切ったというか、言い方によれば乱暴な議論も行われているように思います。いろいろと、ショック療法もないと変わらないということもあるのかもしれませんけれども、やはり中教審なら中教審で一本化してやる方が国民にとってもわかりやすいのではないかと私などは思います。

 例えば、教育再生会議には、昨年十月の発足以来ことし九月までに、人件費、謝金、旅費、事務費などで七千七百万円、予算が既に使われておりまして、今年度予算額まで含めると一億二千百万円になるんですね。これはある見方からすると、無駄遣いという見方をする方もあるということだと思いますので、やはり教育の予算は教育そのものにもっとかけなきゃいけないということもあるかと思いますから、私は、ぜひその会議の交通整理をして、無駄遣いをしている無駄な会議ができていると思われないような方向で進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 私は決して無駄なことをやっていらっしゃるとは思っておりません。きのうも、そういう意味ではなかなかおもしろいことを言っているなと。ただ、では、言われたことをみんなやるのかと。それはやれることとやれないことがあるでしょう、しかし、中教審という制度の枠の中にはまったところからはなかなか出てこない議論というものもやはりあっていいのかなと。ただ、それが一億二千万使っていて、無駄だと言われると、ちょっと考えるところもありますが。

 だけれども、やはりなかなか出てこない発想というものがあそこから出てくる可能性というのはあるんだろうなと。そういう思いでつくられて、教育基本法ができ、そして教育三法がという、こういう全体の流れの中で、途中まで来ていて、あそこでばったりやめてしまっていいものか、今までやってきたのは何だったのかということになるわけでありますから、私は、第三次の答申をおまとめになるはずでございますから、そのときに、それから先どうするのかということはあるかもしれませんが、今の段階においては、一次、二次をフォローアップする意味でもお続けをいただいて、いろいろな意見をいただくということで、ちゃんと役割は果たしていただいているんじゃないか、きのう、そんなふうに感じました。

小宮山(洋)委員 次に、私も教科書検定の透明化についてちょっと大臣のお考えを伺いたいと思います。もういろいろな議論が行われていますので、細かいことは申しません。

 一つ目は、やはり政治が介入するのは私もいけないと思います。ただ、福田内閣になって、やはりいろいろな世論の声も受けて、これは再検討するという方向が打ち出されると思っていまして、どうやるかということで大変御苦労いただいているんだと思うんですね。

 私どもの文部科学の部門会議でもヒアリングを二回ほどさせていただいて、局長にもおいでいただいていますけれども、その中で、私どもが聞いたところでは、教科用図書検定規則の第十三条「検定済図書の訂正」に基づいて訂正される、そして、その中身としては十三条の二項にある「学習を進める上に支障となる記載」に該当するということで訂正するというふうに聞いておりますが、そういうことでよろしいですか。

渡海国務大臣 この十三条の一項、二項というのは、実は教科書会社の方から出されるわけでございますから、我々が今の段階で、これはあくまで予想でしか言えないわけでございますが、今回の全体の状況を考えた場合には、恐らく今委員がおっしゃったような、十三条の二項ということになるのではないかなと、これはあくまで予想でございます、というふうに考えております、予想しております。

小宮山(洋)委員 今回の検定結果がどのように出されたかについては非常に不透明だと思っております。

 教科書調査官の調査した結果から出された沖縄戦の集団自決について、審議会では一切意見は出なかった。その調査官は四人おいでで、メーンの方、それに、サブでやる方と。最後は合議でやるということですが、その四名とも前回の教科書検定のときと同じメンバーなんですね。しかも、特に参考にしたとされる三冊の著作物、これも前回の検定前に出版されたものばかりなんです。それで、現地での聞き取り調査なども行っていない。そうすると、なぜ今回考えを変えて、こうした検定結果になったのか。それはやはり、そのときの政治のさまざまな空気などが影響したのではないかという意見も多く聞かれているのが現状です。

 渡海大臣は、十月九日の閣議後の記者会見で、検定審議会が非公開で開かれていることなど、今までのやり方でよかったかどうか検討してみたい、変えなければいけない部分があれば当然変えていく、基本は公開ということだが、さまざまな疑義が生じないようにという面において、公開ということが大事なのではないでしょうかという趣旨のことを述べていらっしゃいます。

 透明性をこれから高めていくということが大事だと思いますが、大臣のそれについてのお考えを伺いたいと思います。

渡海国務大臣 そういうふうに申し上げました。その後、いろいろな可能性について、私なりには、ああ、こういうこともできるかなとか考えておりますが、最終的には、やはりこれも審議会の先生方の意見も聞かなきゃいけない。と申し上げますのは、やはり大事なことは、審議会というものが、先ほどから盛んにお話が出ていますように、いわゆる政治的圧力がかかるとか、政治的じゃなくてもいろいろな圧力がかからないような静かな環境の中でやっていただく必要があります。そうしますと、今考えられるのは、やはり後からいろいろな疑義がかからないように、終わった後に何らかの公開というものを図れないかなと。

 基本的には、審議会は、特に部会は、今までも議事録も非公開でございますが、それを全部そのままいくのかどうか、そういったことも含めて、今、予断を持たないで、少し、審議会の委員の先生方にも御意見をいただきながら、今回これだけ疑義が出たわけでありますから、やはりその反省としてそういったことを考えていきたいという意味で申し上げた次第でございます。

小宮山(洋)委員 真剣に考えていただいているという姿勢は今の御答弁からもわかったんですが、静かな雰囲気の中でというのが、やはり密室で、見えないところで行われているということと同じことにならないようにしなければならない。先ほど西委員からも幾つか、参考にしたものをつけるとか、御提案がございましたけれども、私どもも、党の中で教科書検定の勉強会を立ち上げて、今いろいろ検討もさせていただいているところですので、どのように透明性のある教科書検定を行うかということについては、今後もぜひ建設的な議論をさせていただければというふうに思っています。

 ここからは、ちょっと幾つか、私もずっとこれまで、議員になって十年になりますが、その前からも含めて、子供の命とか子供のことをずっとやってまいりまして、今回こういう役目になりましたので、ぜひ、教育の中でも、子供の命とか尊厳が守られる、これは最も大事なことだと思っておりますので、そういうことについて少し具体的な点で大臣のお考えを伺っていきたいと思います。

 初めに、先ほど大臣からもちょっと言っていただきましたいじめの問題なんですけれども、このいじめにつきましては、メディアも含めてですが、大きな事件が起こるとどっと報道されるんですけれども、その後まるで何もなかったようになってしまう。ところが、やはり状況はそんなに変わっているわけではない。

 例えば、平成十七年度の都道府県別の公立学校のいじめの発生件数、これを見ますと、多い順に、愛知県の二千五百九十七件、次いで神奈川県、千葉県となっていまして、一千人当たりの発生件数で見てもこの順位は変わらないんですね。愛知県では、御承知のように、九四年の中学二年生の大河内君の自殺の事件以来、どんな小さないじめも見逃さない姿勢で取り組む、いじめを隠ぺいせずに報告するようにしてきている、そのために多いというふうに言われています。

 愛知県では福岡県の十倍以上という結果から見ましても、実態の把握というのは本当に難しいなと思うんですが、文部科学省としては、いじめの実態の把握にどのように努めておいでになりますか。また、大臣としては、どのように取り組んでいこうと思われているか。

渡海国務大臣 この問題は、本当に、今もう完全に社会問題化していますね。そういったニュースが流れない日がないぐらいという状況で、非常に深刻だと思います。

 そのために、今実態調査というお話がありました。実態調査の範囲というものをもっと、いじめの定義を変えて広げなきゃいけないということで、文部科学省としても、児童生徒の状況把握を十分行うという、この調査の見直しを行っているところでございます。

 私もよくわからなかったので聞いたのですが、いじめが見えたらいじめだといって調べるのではなくて、いじめられていると感じてないかということをこちらからちゃんと聞いて、それで子供たちにできるだけ聞くというふうな、そういうやり方に変えて、顕在化するまでにちゃんと把握をする努力をするようにという指導を行っているというふうに聞いております。

 ちょっとだけ時間をいただきたいのですが、簡単に言いますが、私は、子供と向き合う時間をふやすというのは、いじめ防止にとてもいいと思っているんです。先生が、この子きのうと違うねというふうに見ているわけですから、だから、そういう意味でも、私は、子供と向き合う時間をできるだけ充実させるという今回の我々の要望は間違っていないというふうに思っているということをお伝えをしたいと思います。

小宮山(洋)委員 その面ではおっしゃるとおりだと思います。

 昨年、北海道の滝川市で小学校六年生の女の子が、そして、福岡県で中学二年の男の子がいじめによって自殺をした事件などをめぐりまして、私がちょうど委員長を務めておりました青少年問題特別委員会でも、いじめの集中審議を昨年行っております。

 どのようにしたら防げるかという視点で、参考人の方に来ていただいてお話を伺って、さまざまな御意見があったんですが、その中で共通していたのが、やはり学校が閉ざされた組織で、内部だけで、なるべく事なかれというか、事がなかったように隠ぺいしていってしまうということが一番の問題なので、もっと外部からの目を入れた、開かれたものにしていく必要があるという御意見が大変多かったんです。

 確かに、子供の安全の問題とかで、校門を閉めなさいとか、これは物理的に閉めなさいということですけれども、そういうこととの兼ね合いもあると思いますが、やはり、学校の中だけでやっているというのは、どうしてもなかなか顕在化してこないことになるのではないかと思いますので、このような、外の目をもっと入れるということも含めた対応としては、どういうふうにお考えでしょうか。

渡海国務大臣 これはもう委員おっしゃるとおりでございまして、やはり、何か起こると外に出さないという体質はどこの社会にもあるわけでございますけれども、特に学校でもそういうことが起こっております。これは、やはりそれでは問題が解決しないということでございますから、教育委員会と家庭、地域というものがしっかりと連携もしなきゃいけないわけでございますし、また、必要に応じて教育センター、児童相談所、場合によっては警察も含めた、地域の連携というものを日ごろからつくり上げておかなきゃいけない。

 そして、さまざまな会合がございますから、主任会議とか教育委員長会議とか、そういうものを通じて、我が省としては、しっかりと連携を図りなさいということを常に指導しておりますし、また、今度新しく概算要求において、専門家から成る問題解決チームの学校派遣という、ちょっとこれはなかなかイメージできないんですが、お医者さんとか、それから、これは場合によっては警察のOBとか、そういうチームを問題が起こっている学校へ派遣する、そういった新しいプログラムも考えて、こういう問題に取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。

小宮山(洋)委員 教育の場である学校の中でいじめられる、そして命まで失うなどということは、本当にあらゆる知恵を出して防がなきゃいけないと思うんですね。

 それで、文部科学省の方でも、二十四時間いじめ相談ダイヤルというものを設置されていますが、これは教育委員会が窓口なんですね。校長先生をやめられた方などが電話の応対をされる。そうすると、実際のところ、なかなか子供はかけにくいという声もあるわけです。

 もちろん、これはこれでやっていただいていいんですけれども、そのほかに、民間のチャイルドラインというのを御存じだと思いますけれども、年間で十二万二千件の電話を受けています。これはイギリスで生まれまして、六十五カ国で活動しているんですが、専門の訓練を受けた人が、子供たちの悩み、寂しさ、苦しさを寄り添う形で聞く。しかも、秘密を守ることをしっかり約束をしているので、子供たちが安心してかけられるということがあるんですね。

 日本でも、一週間フリーダイヤルのキャンペーンをする期間などは、その一週間だけで二万七千件余りも昨年アクセスがあって、しかも、着信して答えられるのはこのうちの一〇%ぐらいしかないというような実態もありますので、実際にはその、話せている子供の十倍がチャイルドラインで話を聞いてもらいたいと思っているわけです。

 そうすると、そのことによって自殺も防げるかもしれないということがあるので、民間のいろいろなボランティアに対する活動への支援というのはやり方が難しいというお話はたびたび伺いますけれども、例えば、こういうしっかりとした国際的な仕組みで、実際に子供たちからも求められているところには、もっと国からも支援をしていいのではないか。諸外国の中では、全国共通の番号にして、学校とか子供が行くところではいつでもその番号がわかるようにしている、あるいは、それをフリーダイヤルにしてかけやすくするというようなこともあるので、これは超党派のチャイルドライン議連でもずっと要請をしているんですけれども、ぜひこういうことも御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 私は今回初めてチャイルドラインというのを知りまして、恥ずかしい話でございます。申しわけございません。(小宮山(洋)委員「資料をお届けしましょうか」と呼ぶ)いや、レクは受けたんですがね。これはなかなかいいねと。やはり、子供がそうやって何か困ったときに、逃げ込むという言葉はよくないのかもしれませんが、相談できる場所がある、これはとても重要なことだと思います。

 今も、このチャイルドライン支援センター等には、一応、支援をすることはやっているようでございますが、NPO等にも支援をできるというふうなことで、二十団体ぐらいですか、には支援をしているようでございますが、なお、そういった問題意識を持ちながら、今後、そういう支援をできるだけ拡充できるように頑張っていきたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 その支援センターへ支援があることは、先ほども申し上げたように知っているんですね。ただ、子供に向けて、子供がその番号を全国共通で知ることができるとか、フリーダイヤルでかけられるとか、子供に直接、わかるというか、届くような形の支援をぜひしていただきたいなというふうに思っているんです。

 校長先生をやめられた方が全部悪いと言っているんじゃありませんけれども、例えば、学校の中で先生とうまくいっていないというようなことを、教育委員会がやっているダイヤルにはなかなかかけられないということもあるわけなので、ぜひそのあたりは、また詳しく資料などもお届けいたしますから、これからは、有効なものは民間の力も大いに使って、専門性を発揮してもらわないと、子供たちを守ることができないと思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思っています。

 そして、次の具体的な例なんですけれども、不登校の子供たちのためのフリースクール、これが非常にふえてきています。フリースクール全国ネットワークの正会員の団体だけで四十あるんですね。いろいろな支援を必要としているわけですが、特にきょうお願いしたいのは、高等部に通っている子供たちに通学定期を適用してほしい、こういう声が非常にフリースクールの関係者から、また保護者の方、あるいは子供たちからも多いんです。

 このフリースクールの草分けの東京シューレ、ここでは、現在は約六割が高等部の生徒です。アンケート調査でも、回答した二十九校のうち十四校が義務教育終了以上の子供を受け入れていまして、全体を合わせた中でも、フリースクールに通っている子供の、義務教育を終了した年齢、それ以上の年齢の子供の割合が四九・一%と、もう今ほぼ半数に上っているわけなんですね。

 私も、実際にフリースクールに通っている三人の、今、中学三年生あるいは高校に通っている子供から声を聞いたんですけれども、例えば中学三年生の男の子は、現在は三カ月一万七千円の定期代が、高校生になると定期が適用されないので、二倍以上の三万八千円近くになってしまうというんです。また、群馬県から二時間かけて東京のフリースクールに通っている子供もいるわけなんですね。

 不登校の小中学生については、これは文部科学省も努力をされて公的支援が充実してきた、だからフリースクールに通う子供の高校生の割合がふえているということも言えるわけなので、義務教育終了後なのでいろいろ工夫が必要だとは思いますが、例えば、大臣御存じでしょうか、実習用通学定期というのがあるんですね。これは教育実習に行くときに、ふだんと違うルートで通わなきゃいけないときに、実習用の通学定期というものを出しています。例えば医学部の学生が実習に行くとかいうことなどにも出しますし、いろいろな実習のときに出している定期などもあるので、義務教育を終了したからもうフリースクールの子供には定期は出せないと言わないで、やり方はいろいろ工夫ができると思うので、ぜひ高等部のフリースクールの生徒にも通学定期ということを実現できるようにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 少しそっけない話になりますが、通学定期というのは基本的にそれぞれの鉄道会社等が判断をするということでございます。こちらからいろいろなことをお願いしてということもできないことではないと思うんですが、フリースクールの高等部というものをどういうふうに特定していくのかということがいま一つよくわからないということがまだあるようでございまして、そういうところをちょっと研究をさせていただいて、先生がおっしゃるようなことが可能かどうか、きょうの段階では、なかなか私はお答えができないという状況でございますが、もう少し研究をさせていただきたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 いろいろ歯切れよく御答弁いただいた大臣の中では、一番歯切れの悪い御答弁かなと思うんですけれども。

 検討していただくのは結構なんですが、私が聞いたこの中学三年生は、もう四月から高校生になるんですよ。それでまた、今高校生で現に困っている人たちもいるわけです。もちろん、鉄道の会社との関係があると思いますが、フリースクールというのも、今国でつくっている学校に通えないいろいろな事情の子供のために、民間でそれを受けとめるということをやってもらっているわけですから、そういう意味では、もう少し積極的に何とか、私が先ほど申しました実習用通学定期の考え方を当てはめるとか、そういうのがあるんです。そのほかにも幾つかやり方はあるようですので、ぜひそれは主導的に文部科学省から働きかけていただくよう検討していただけると、もう一声お返事をいただきたいと思います。

渡海国務大臣 検討はいたします。それでよろしいですか。余り無責任なことは言えませんのでね。

小宮山(洋)委員 では、どのように検討が進んでいるか、またしっかりと伺わせていただいて、また御提案もさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、これはかなり重たい話なんですけれども、先ほど、いじめ自殺のことも申しましたが、学校で子供の命が失われる、これは本当にあってはならないことだと思いますが、これも残念ながら後を絶たないんですね。

 学校での事故とか事件で大切なお子さんを失った当事者の皆さんが集まりまして、当初は全国学校事故を語る会と言っていたんですが、二〇〇三年からは全国学校事故・事件を語る会というのがつくられていまして、私も昨年、青少年特でやっていたこともあり、何回か皆さんとお会いをしています。

 今、代表世話人をされて活動されているのは、兵庫県の川西市で、ラグビーの練習中に熱中症で中学生のお子さんが死亡された宮脇さんという方で、もう一人は、やはり兵庫県のたつの市で、担任教師に暴行を受けて、その直後に小学生のお子さんが自殺をした内海さんという方で、今ここに書かれた本なども持ってきておりまして、私も全部読ませていただきましたが、やはり子供を持つ親として本当に耐えがたい話だというふうに思います。そのほかにも、町田市でいじめにより中学生のお子さんが自殺された方とか、福岡県の筑前町で、これは最近の例ですけれども、いじめにより中学生のお子さんが自殺された方、そういう、学校で大切なお子さんの命を失われた保護者の方、それを支援している弁護士さんたちからお話を伺いました。

 皆さんが望んでいらっしゃるのは、事実を知りたいということなんですよ。安心して学ぶために行かせた学校で、なぜかわからないけれども、命が失われるような形で子供が帰ってきた。事実を知ることによって、二度とこういうことが起きないようにしてほしいというのが皆さんの強い願いなんですね。

 ところが、実際には、学校によって事実の隠蔽が行われて、事実を明らかにと願って行動すると、今度は、自分の子しか考えていない、風変わりな親だというように、周りから風評被害に遭うというような二重、三重の苦しみに遭われているということがあります。

 後ほど私、また大臣のところにもお届けしたいと思うんですけれども、一つ、例として、代表責任者をされている宮脇さんという、学校の先生をされた方だから自分の組織の学校のことも考えて、これだけきちんとした行動を組織立ってされて、本にもまとめられたと思うんですけれども、「先生はぼくらを守らない」という衝撃的なタイトルになっているんです。

 このお子さん、ラグビーの練習で、朝練で、真夏、これは本当は水を飲んだり休養をとらなきゃいけないのに、うまくいかないと、何か、罰ということで、キックダッシュというのを何度も何度もさせられて、一人の子供がだめだと周りの子も全部その罰を受けるということで、調子が悪くて倒れてしまったのに、みんなに引き起こされて走らされて、もう走れないと言ったら、そんな演技は通じないと言われて、やった結果、本当に倒れてしまって、本当に顔つきも変わり、白目をむくというか目も見開いてしまっているのに、それなのに一時間半も救急車も呼ばずに放置をしていた。その結果、運ばれた病院で熱中症とされた。これはまたどこかで時間を見てお話ししたいと思うんですが、スポーツの指導ということのあり方ともかかわると思うんですけれども、こういう根性主義なことでやられていた。

 それで、いろいろ運動をすると、周りから本当にいろいろなバッシングを受けられて、ただ、この川西市というところには、子どもの人権オンブズパーソン制度というのがあって、これによって救われて、民事裁判、そして刑事裁判で業務上過失致死の処分を、五年かけてとっていらっしゃるんですよ。だけれども、ここまで頑張ってやる親御さんというのはそう多くない。全国でそういう被害に遭った方を今この会がサポートをしてやっているんですね。

 文部科学省としても、やはりこういう事故や事件があったら事実を明らかにして、被害者にも、加害者にも、周りの生徒たちにも、保護者にも、地域の住民にも適切な情報開示をし、対応して、再発防止に取り組むという必要があると思うんですけれども、今、話をお聞きになってどのようにお感じになりますか。

渡海国務大臣 委員がお話しになった事例というのは、たしか私も以前聞いたことがあります。昔、今はいらっしゃいませんが、中川智子先生という先生がいらっしゃいまして、その方がたしか文教委員会でやられたという記憶があります。

 いじめの問題もそうですが、やはり常に連携がしっかり図られているという必要があるんだろうと思います。一義的には、やはり学校自身がしっかりと父兄なり教育委員会なりに対して事態の報告もしっかりやるということが大事なんだろうというふうに思いますが、文部科学省としてと言われますと、基本的に、常にこういうことに関しては、先ほどもありましたが、地域の教育委員会なり学校主事なりが集まったときには、常に連携を図りなさいとかいうことはやっております。加えて、家族と家庭というものが連携してうまくやっているということの具体的な取り組みについての事例集をつくりまして、配付をして周知は図っているところでありますし、するんですが、やはり基本は、地域の教育委員会なり地域の学校自身がしっかりと日ごろから連携の姿勢をとって、体制をつくり上げていただくということが大事なんじゃないでしょうか。我が省が出て行って調査をするというものではなかなかないんじゃないかなと正直思いますけれども。

小宮山(洋)委員 ところが、もう一つ、これは、小学校六年生の男の子が、宿題のことを聞いただけで、先生の機嫌が悪かったので、すごい勢いで友達の前で殴られて、その後、裏山で首をつって死んでしまったというのが、もう一人の代表をされている内海さんのお子さんなんですね。

 この両方の例とも、その担任の先生も校長先生も、最初は本当に申しわけありませんと親御さんに謝っているんですよ。

 ところが、今連携をとれと言われた、事実関係はわかりませんよ、ここに書いてあることをそのまま申し上げると、その連携をとって対応するべき教育委員会が、認めちゃいけないと言っているんですよ。教育委員会がいろいろ、PTAの方にも、この先生を守ってほしいということで嘆願の署名を集めさせたりとか、違った連携になっちゃっているんです、身内を守るという。だから、そのために、学校事故・事件を語る会の代表の皆さんが、昨年十二月とことし八月に文部科学省を訪れて、初等中等教育局の児童生徒課課長補佐の方が対応されているということですけれども。

 そういうような、学校と連携を、いい連携が図れればいいんですけれども、よくない連携で、隠ぺいをすることに今働いているので、これはやはり、第三者機関を設置するとか、文部科学省の方としてもきちんとそういうことを指導してほしいということを要望しているんです。もう一度、そのことを踏まえて。

渡海国務大臣 指導という意味ではちゃんとやっているんですよね。ただ、実際、それがなかなか働かない場合があると。

 教育委員会に隠ぺい体質があるというのは、私もよく知っています。兵庫県ですから、よく知っております。だけれども、そこの部分で、どういうふうにチェック機能を働かせるか。だから、隠ぺい体質があるのを、これは、例えば県の教育委員会もありますし、しかし、県教委がだらしないところも、どこかからしかられるかもしれませんが、ありますから、なかなかそこのところは難しい問題をはらんでいるというふうに思います。

 しかし、先生が今、先生と言っちゃいけないんですね、委員が今おっしゃいましたように、指導しろという意味では、こういうふうにしてやるんだよという事例もつくり、きっちり指導はしておりますから、さらに、あらゆる機会を通じてそういった指導をしっかりしていきたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 教育委員会の体質もよくわかっていらっしゃるということなので。ただ、今挙げられた事例が本当にふさわしい事例かどうかというのはちょっと疑問も残りますけれども。自治体が取り組むこと、それから教育委員会がやること、文科省がやることはあると思いますけれども、やはり、国の教育をつかさどる文部科学省としては、こういうものを看過すべきではないと思いますので。

 私は、数回お会いして、本当にこれは大きな問題だと思ったので、この学校事故、事件でお子さんを失った当事者、今百人ぐらいの方のケースを取り上げてやっている皆さんなので、大臣、ぜひ一度直接話を聞いていただけないでしょうか。そうすると、その中から文科省がやるべきことというのはもっと見えてくると思うので、会っていただけるというお約束がいただけるとうれしいんですが。

渡海国務大臣 前に一度お会いしたことがあると思うんです、正直ね。会う会わない、ちょっと、今ここで、別に逃げるわけじゃありませんが、お約束はすぐはできませんけれども、ただ、問題意識を持って臨みたいと思います。また、先生からも具体的に御提案がありましたら御示唆を……、あっ、先生、二回、言っちゃいけないんだね。(小宮山(洋)委員「はい」と呼ぶ)わかりました。御提案をいただきたいと思います。

小宮山(洋)委員 済みません、先生と呼ばれない議員をしているものですから、申しわけございません。

 今、会うか会わないかは、こういう公の場所で約束できないとはおっしゃいましたけれども、また私の方でも連絡をとらせていただくので、ぜひそういう方向で検討していただきたいというふうに思います。

 この問題は私もずっとフォローしたいと思いますし、また、そういう事実関係をどうやったら学校で明らかにできるのかということで、これも児童虐待防止法に取り組んだ超党派の議員で今検討しているところでもございますので、ぜひまた大臣にも積極的にかかわっていただきたいという、これはお願いでございます。

 次に、障害を持つ子供への支援のことについて伺いたいと思うんですね。

 大臣もあいさつの中で、「発達障害を含む障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育を推進します。」と述べておられます。自閉症、アスペルガー症候群、学習障害などの子供を対象にした発達障害者支援法、これは私も内閣委員会の方で一緒につくりました。こうした発達障害を持つ子供というのは、全体の約六%もいるわけなんですね。

 政府も子供一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進ということを掲げられていて、ことしは特別支援教育元年とも関係者の間では言われております。ところが、やはりまだまだ財政的裏づけが十分でなくて、人的配置を定める標準法というのが変えられていなくて、現場でやりくりに困っていたり、通常学級で学ぶ発達障害の子供たちの指導について、担任への研修が保証されていない。また、個別指導ができる教室、教材などの研究開発の予算もないというのが現状なんです。

 そうした中で、残念ながら現場では、自分がそういう子の担任にならなければいい、そういう雰囲気になってしまっているというんですが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。

渡海国務大臣 委員も御承知のように、この特殊教育、これが特別支援教育という形になり、制度が少し変わったことによって、多少現場で混乱しているというのは承知をいたしております。

 先日も、実はある市長さんが来られまして、いろいろな障害児の教育の問題で、とにかく先生の数が足りないという話をしていかれました。これは神戸市でございますから、かなり大きな市でございますが。

 そういうことも踏まえて、今、通級による指導を行う教員の加配措置というのを行うために、本年度より、これに加えて、特別支援教育支援員の配置というものを、これは平成十九年、ことしは二万一千人程度でございますが、来年は概算要求で三万人要求をいたしております。これは、標準法ではなくて、地方交付税措置で行うということでやっておりますけれども。そういったことを通じて、十分な特別支援教育というものが弾力的にできるように、これは学校もありますし、それから通級でやる場合もありますけれども、体制を整えていかないとなかなか可能ではないと考えておりますので、そういった支援を充実していきたいというふうに考えております。

小宮山(洋)委員 その一人一人の教育的ニーズに応じたというためには、やはり個別の教育支援計画をつくる必要がありますし、特殊学級や通級の指導制度を、通常学級に在籍した上で、必要な時間のみ特別支援教室で指導を受けられるようにするという必要があるんだと思います。

 また、特別支援学校は、地域の特別支援教育センター的機能を持つ学校として、地域の小中学校の発達障害を持つ児童生徒の教育について、相談、助言、援助、協力、こういうことをする役割を担う必要があると思うんですね。こうした施策を、やはり今後積極的に、ぜひ、ごあいさつにあったような、「一人一人の教育的ニーズに応じた」というところで力を入れていただきたいと思いますが、もう一言いただいてよろしいですか。

渡海国務大臣 委員のおっしゃるように、これからも頑張っていきたいと思っております。

小宮山(洋)委員 もう一つ、ちょっと別の視点というか、もとは同じかもしれませんが、国連の障害者権利条約には日本も署名をして、今、批准のための作業を政府で行っています。二十四条の「教育」の中に、あらゆる段階におけるインクルーシブな教育制度というのがあるんですね。政府は、包容する教育制度と訳していまして、普通訳すとそういうことになるのかもしれないんですが、当事者団体からは、社会が障害者を包み込めばいいというイメージで受けとめられてしまう、権利の主体のイメージをもっと出してほしいという要望があります。

 障害者基本法で、障害者を権利の主体と位置づけて、そこでパラダイム転換をしたはずなんですが、今回のこの権利条約の批准に際して行われていることで、どうもそこの権利と主体の、主体としてのパラダイム転換が行われていない、そのことがこのインクルーシブな教育の中にもあらわれているという意見があります。

 ぜひ政府の姿勢を、諸外国の取り組みなども研究をして、障害を持つ方御本人が納得いくような形ということにも視点を置いてやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 今、これは署名をしまして、これから批准をしていくという段階であろうと思います。条約でございますから、批准をするからには国内法がちゃんと整っていなきゃいけない。その中身をどうするかということで、新たな法整備が必要なのかどうかというふうなことを検討しているわけでございますが、このインクルーシブ・エデュケーショナル・システムというもの自身が、どうもまだひとつはっきりと確定していない。今まさにおっしゃいましたように、諸外国ではどういうふうにこれを考えて、どういうふうにしているのかということを見守りながら、我が国のこの取り組みというものも決めていきたいというふうに思っております。

小宮山(洋)委員 確定していないからこそ、ぜひ障害者の皆さんの意見も取り入れていただいて、ちゃんと権利を持って学べる、そういう形のものにしていただきたいというふうに要望いたします。

 もう時間もわずかですので最後の質問になりますが、学校施設の耐震化について、ひとつ伺いたいと思います。

 学校の施設というのは、子供が学習する場であると同時に災害のときの避難場所ともなるので、耐震化が急がれると思います。今年度の公立学校施設の耐震改修状況調査によりますと、公立の小中学校のうち、耐震性がないものと耐震診断を実施していないものを合わせますと、なんとまだ四一・四%、五万三千六百三十六棟にも上ります。現在のテンポでいくと、これは、すべて耐震化されるのは一体いつになるのかという思いがいたします。

 私ども民主党でも、子供の安全ということで、昨年、補正予算でこれをどっとやるようにという提案をさせていただいたこともあるんですね。文部科学省の予算だけでやるというと、どうしても何年も先まで耐震化されていない建物が残りますので、これはやはり政府を挙げて早急に取り組むべき問題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 政府を挙げて取り組むべき問題だと思っております。思っておりますが、要は、我が省が所管をして我が省の予算の中で今やっているわけでございまして、政府自身もそういうふうに考えていると思います。

 ただ一つ問題がありますのは、これは当然地元の負担もあるわけでございまして、その分についてちゃんと起債を起こせるか、そしてその交付税措置が講じられるかということについて言えば、全体を見ながらやらないとなかなかできないというふうなこともあります。

 それからもう一つ、これは私は建築をやってまいりましたからよくわかっておるんですが、要するに、夏休みとか、これは時期が集中するんですね、学校の場合は。冬休みでやれないこともない、簡単なことならやれるかもしれませんが。そういったことも含めて、やるとしても、ある程度そのスピードには限界があるということも御理解をいただきたいというふうに思います。

小宮山(洋)委員 おっしゃることがわからないわけではないですが、そこで理解しましたとはとても言えないので、これは命にかかわる、安全にかかわることですから、私どももしっかりそれは働きかけをしたいと思いますが、政府を挙げて一刻も早く耐震化を進めていただきたいと思います。

 きょうは、一時間にわたりまして、積極的な御答弁をありがとうございました。今後ともよろしくお願いしたいと思います。

佐藤委員長 以上で小宮山洋子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 渡海大臣におかれましては、このたびの御就任、心からお喜びを申し上げたいと思います。

 かねてより、私もひそかに尊敬をいたしておりました渡海先輩でありますので、もう今さら文部科学政策一つ一つ、どの程度の見識があるのかなというような質問も甚だ失礼かと存じますけれども、先ほど我が党の小宮山委員より、大局的、体系的に質問をなされましたので、私の方からは、思いつくままを羅列させていただいて、それを質問通告させていただいた次第でございますから、限られた時間ですので早速質問をさせていただいて、また、渡海大臣には、思いつくままに、端的にお答えをいただければと思います。

 最初からやや唐突な質問でございますけれども、渡海大臣との私の一番いい思い出は、ことし五月に、五月のたしか連休だったと思いますけれども、台湾に一緒に訪問をさせていただいて、陳水扁総統ともかなり時間をとって有意義な懇談の時間を持った、そういったいい思い出もございます。私は、中華民国、台湾という国は、あらゆる角度から見て、国家の要件を備えた、そして、なおかつ日本の国にとっては経済交流あるいは文化交流あるいはまた安全保障の観点からも必要欠くべからざるパートナーであると思いますけれども、渡海大臣の見解をまずお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 このような立場に立ちましたので、それについてのコメントは、現在、政府の一員として、差し控えさせていただきたいというふうに思います。

牧委員 大変残念なお答えでございました。

 去る十月の初旬にも、東京でも台湾国慶双十節のお祝いがございまして、渡海大臣の姿が見られなかったのは非常に残念でございますし、一説によると、外務省から、政府の要員たる者、この辺はよく考えて自粛してくださいというような文書も流れたように聞いております。首をかしげておられるので、多分事務所か、あるいはどこかでとまっているんじゃないかと思いますけれども、これはきちっとそういうものもございますので、私は大変残念に思うわけでございますけれども。

 なぜこんな質問をさせていただいたかというと、文教政策に戻りますと、台湾の故宮博物館、人類挙げての遺産ともいうべき非常にすばらしい所蔵物が多数あるわけですけれども、向こう側からの要望もあり、またこちらの関係者からも、ぜひ一度日本国内における展示会も実現してほしい、かねてよりそういうお話があります。ところが、日本に一たんこれを持ってきてしまうと、いろいろな国際関係の上で、大陸、中華人民共和国が、あれはうちのものだ、日本から台湾に持ち帰ることはまかりならぬ、これは民事訴訟を起こして、そこで差し押さえるというような懸念もあって、それが実現しないんだということは、これは紛れもない事実でありますけれども、日本の国がそれなりの決意を持って、きちっとこういうことは、もとの場所に持ち帰れるんだという国内法をしっかり整備すれば、台湾政府もそれを安心してこちらへ出すことができるわけです。これは現に超党派で、我々も、自民党、公明党の皆さんも含めて、こういうことをどうしたらいいんだろうという研究をする有志もいるわけでございますけれども、もしできれば、一緒に台湾に行った大臣に、そこら辺のところも、国内法を整備する決意がもしあるのであれば、お聞かせいただきたいと思った次第です。

渡海国務大臣 この話は、牧先生、よく知っております。例のあの、平山先生の法律をつくったときに、同じ問題をこの中に入れてしまおうという話もありました。ただ、これは、やるとするなら民事執行法をさわるという話でありますから、私が決意をしてできるというよりも、法律の世界でいえば、法務省がそういうことをやってくれるかどうかという話になるのではないかなというふうに思います。

 ただ、実態的には、今まで日本にいろいろなそういうものが持ち込まれて、途中でそういうことが起こったということはないと承知をいたしておりますし、この前も、どこですかね、ちょっと企業の名前は忘れましたが、故宮から、それはそんなにたくさんではありませんけれども、日本で展覧会をやるということで持ってこられた。恐らく、やろうと思えば、それほど心配されなくても、その展覧会はできるんじゃないかなというのが今の率直な気持ちでございます。

牧委員 冒頭からちょっと無理な質問をして恐縮でございますけれども、ぜひ、立場もおありと思いますから、また、大臣が閣外に出られた後ででも、一緒に民事執行についてきちっと詰めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、私も、前国会もこの委員会に所属をさせていただいて、伊吹前大臣とのいろいろなやりとりもございました。そこで、その伊吹大臣とのやりとりの中で、まだ今後も引き続いて、これからも少し追いかけていかなきゃいけないテーマもございますので、そこら辺のところをざっとおさらいしながら、二点だけ確認をさせていただきたいと思います。

 まず一つは、これは早速、前大臣にも動いていただいて、文科省としても挙げて調査をしていただいた。その結果も出ているんですけれども。

 というのは、大学入試における入試問題作成の外注という状況、民間に委託をして問題をつくらせるという状況はゆゆしき状況であるという指摘をしたところ、早速調査をして、十九年度の大学入試で実に七十一大学が外注に出していた、こういうことは文科省としても当然望ましいこととは思っていないと。私学は私学の建学の精神があるわけですから、どういう生徒を、どういう学生を採用したいのかということは、そのアドミッションポリシーというものが私学なりにあるべきであって、こんな、外注に出すなんということは、問題の機密性を考えても、あるいは私学の建学の精神を考えてもおかしいじゃないかという御返答もいただいております。

 十九年度においても七十一大学。これはマスコミの指摘だったんですけれども、さらにふえる傾向にある、そういう状況がはっきり数字であらわれてきているわけですけれども、この事態について、これからどういうふうに対処していくのか、どういうふうに文科省として指導するのか、ちょっと簡単にお答えをいただきたいと思います。

清水政府参考人 牧先生から、先国会、御指摘いただきまして、今御紹介いただきましたような調査結果と相なったわけでございます。

 私も、まさに御指摘のように、入試問題は、各大学が学生をどう受け入れるか、どのような学生を受け入れるかという、いわゆるアドミッションポリシーに基づいて、みずから作成することが基本だというふうに考えております。そういう意味で、外部機関に作成させる、例えば七十一のうち十八の大学が、全部の学部で、あるいは一部の学部で、問題作成を全部外注していた、こういう実態もあったわけでありますけれども、大学入試の機密性、公平性、中立性の確保という観点から、社会的な疑念を招くおそれがあって好ましくない、このような認識で、本年の四月に通知を発出して、各大学に対して、問題作成の外注について慎重な対応を行うよう指導を行ったところでございます。

 今後、各大学が通知を踏まえながら、入試問題の作成、管理について慎重な対応を行うよう、各種の会議等で周知徹底を図ると同時に、さらに状況を把握しながら指導に努めていきたい、このように考えております。

牧委員 慎重な対応という話だけでは事態は好転しないと思ったから私は質問させていただいているわけで、既に三年ぐらい前に最初に指摘があってから、その時点でも文科省としての一定の姿勢は示したわけです。にもかかわらず、改善が見られないからこそ、私はあえて今国会もこの質問をさせていただいているわけで、今の答弁では、物足りないということを通り越して、こんなもので改まるわけはないなと改めて感じたわけです。

 私から提案するわけではないんですけれども、例えば私立大学の現況、これは日本私立学校振興・共済事業団の調べですけれども、例えば、入学定員を充足していない学校というのは五百五十九校中二百二十一校というような数字も出ているんですね。こういうところに対して特別支援みたいな、経営改善努力をしているところには特別補助をしましょうというようなことも十九年度から始まっているやに聞いておりますけれども、例えばこういう学校と、必ずしもそうとは言い切れないと思いますが、きょうは時間の関係であえて聞きませんけれども、この七十一大学というのは恐らく、一事が万事というか、入試問題についても自分のところでつくれないようなところは、多分経営についてもいいかげんなところが多いんじゃないか、定員も割って、あるいはその帰属収入で消費支出を賄えないというような状況になっているところが多分あるんじゃないかと思う。これはまた改めて資料を要求しますけれども。そういう観点からして、経営改善に対する指導だけじゃなくて、そこであわせて、そういう学校がなおかつ入試問題も外注に出しているというようなところであれば、もうここは経営改善のための補助も打ち切るとか、具体的なそういうお話を私はしていただきたかったんですけれども、いかがでしょうか。

清水政府参考人 私ども、外注を行っている大学にいろいろな理由も聞き合わせてみました。

 御指摘のところで幾つか申し上げさせていただきますと、全体としていえば、小規模の大学が多うございます。例えば、入学定員ベースでいえば、三百人以内というのが二十五校、五百人で見ますと三十四校、大体半分近くになります。千人というのはちょっと中規模に近くなりますが、千人以内で見ますと七五%というふうな状況でございます。

 外注の理由を、特に、全部作成している理由を聞いてみますと、全体として、いわゆる一般教育科目の専任の教員が学内にいない。例えば数学、国語。多い教科は数学とか国語、理科等でございますけれども、専任の教員がいない。あるいは、専任の教員が少なくて、全体として、入試日程で幾つかの日程を組んでいるために非常に負担がかかるというようなのがその要因のようでございます。

 私どもとして、指導というふうに申し上げましたが、これは基本的には各大学の判断とはいえ、全体としていえば、学内でなかなかできないという場合に、それぞれ大学でいろいろな意味で協力し合うとか、外部の専門家のいろいろな方々、例えば他の大学、あるいは退職した方等もいらっしゃるわけですからそういう方の協力を求めるとか、いろいろな形の、協働とかそういう工夫が必要なんだろうというふうに考えておりまして、私ども、全体として、小規模の大学がいろいろな形の教育研究の実を上げていくというためにいわゆる大学間の連携をぜひ進めたいということで、予算要求も行うと同時に指導も行った、こんな状況でございます。

牧委員 ちょっと私の質問には的確にお答えいただいていないと思います。

 今、自分の学校で入試問題もつくれないような学校があるということをはっきりお認めになったわけで、私から言わせれば、学校の体をなしていない、だからこそ定数割れも起こす。そういうところを、定数割れというのがどんどんどんどんこれから先進んでいく中で、学校のあり方としてどう抜本的に考えるのかということを、今これ以上言っても、もう時間がありませんから、もうここまでにしておきますけれども、やはりこれをもうちょっと、今後煮詰めていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。では、端的に。

渡海国務大臣 先生が御指摘になった点という問題意識を私も持っております。特に、これから定員割れが多くなるような時代が来ますよね。そのときに、やはり、これから私学はどうあるべきかというのは、十分問題意識を持ってこれからも議論をしていきたいというふうに思っております。

牧委員 それでは、ちょっと次の話に移りたいと思います。

 前回、これも伊吹大臣のときに質問させていただいた内容ですけれども、主に小学校の学校の教室の現場で、ワークテストあるいはドリルといった、紙の教材が使用されているのが現状であります。その学校図書教材の中身を見ると、これも例をお示ししましたけれども、実際に開いてみると、教科書の何ページを開いてこの問題に答えなさいというようなところがいっぱいあるんですね。これはどうしてこういうことが起こったかというと、その教科書会社に対する編集著作権みたいなものは、その補償という形で謝金を日本図書教材協会が支払っているけれども、その教科書に記載をされているそのもとの原著作者の著作権に対する補償がなされていないために訴訟が起こって許諾が得られない、そういう不完全な教材を父兄に買わせて、学校の現場で使っているという実態がいまだに横行している。

 そのことについては、恐らく文科省からも、学校で使うそういったものについては基本的には学校の先生がつくりなさいという指導もされていると思いますけれども、相変わらず現状は変わっていないという残念な状況であります。そこら辺について、もっと文科省として毅然たる態度をとるべきだと私は思うわけですし、現に今例えば訴訟になっているとか、そういうもの以外にでも、これから先そういうこともまたさらに起こりかねないし、また、そういうときに、教材会社、あるいはその協会なりなんなりが組織的にそれをまた隠ぺいするようなことがあった場合に、本当に文科省としてそういった教材を学校の教育現場から排除するぐらいの決意を私は持っていただきたいと思うんですけれども、大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 こういうことで係争が起こるというのはやはりよくないと思いますね。ですから、そういうことがないようにしっかりとやっていただきたいということはこれからも指導していかなきゃいけないというふうに思っております。

 それから同時に、それを避けるために、よく穴あき、こういうことが起こっているわけですね。これも子供たちにとってみれば、片っ方では教科書を持ってこうやってやるわけですから、余り好ましくないということはやはりはっきり言わなきゃいけないというふうに思います。そういう形で、できるだけそういうことが起こらないようにという指導はしっかりと、我が省としてもいろいろな機会を通じてやっていきたいというふうに思います。

 これは、裁判の問題は民間同士の話ですから、こんなことはやはり起こさないように、ちゃんとやりなさいということしかないというより、しっかりと指導したいというふうに思います。

牧委員 本当にしっかりやっていただきたいと思います。子供たちに著作権の教育をするための教材ならわかるんですけれども、そうじゃないわけですから。

 それで、著作権侵害というのは、場合によっては刑事罰も問われる重いものですから、そこら辺の認識をやはり所管する文科省、文化庁がまずしっかり持っていただくことは私は大切だと思います。今後ともよろしくお願いいたしたいと思います。

 次に移ります。

 山形大学の学長選について、大臣の所感をお聞かせいただきたいんです。これが新聞等でも取り上げられたのは、一つは、学長に選任された方が、つい七月まで文科省の事務次官をされていた結城章夫氏であるということ、そしてもう一つは、この学長選の選考の過程そのものがやや不透明じゃないかなというような指摘もあったことで、これがマスコミにも取り上げられたんだろうと思います。

 この学長選挙というのは四人が出馬をされて、当時、工学部長が三百七十八票でトップですね。これは教職員の選挙です。結城氏は三百五十五票で二位だった。その後の学内外の委員による選考会議で、教職員の意向が覆されて、結城さんが学長に就任をされたということですけれども、これは表面をとらえれば、一般的には、だれが見ても、これは天下りなんじゃないかなというふうに言われても仕方ないと思うんです。これは、国立大学法人化で、学長を選考するその仕方についても規定をしていますから、これは法律違反ではないと多分おっしゃると思うんですけれども、ただ、これは世間から見たら、天下りじゃないかと言われてもいたし方ないと思うんですけれども、大臣、どう思われるでしょうか。

渡海国務大臣 牧委員、今お話しになりましたような経緯で選考されております。ですから、これは決まったルールに基づいてそういう投票が行われて、結果として結城さんが選ばれたということでありますから、それをもってどうのこうのということはないんだろうというふうには思います。ただ、意向投票というのを教授会が行っておりますから、その結果が選考会議でひっくり返されたというところで、そういう意見が出ているというふうに承知をいたしております。

 ただ、これは天下りと見るかどうかということにつきましては、これはやはり通常の天下りとは違うんだと思うんですね。違うと思いますよ、これは。これは、要は、学校側がそういう形で要請をし、そして立候補して選挙が行われたということ。では、そのルールは一体何だったんだと、こういう話になるわけでありますから、意向投票と選考会議の投票が違って裁判になったという大学もあると聞いておりますから。意向投票をやるやらないの議論も出ているようでございます。

 ただ、選考手続として、この選考会議を設けて、しかも片っ方には外部委員を設けてという制度の中で行われていることでありますから、やはりこれは天下りというふうに一概に言い切ることはできないというふうに考えております。

牧委員 確かに大臣がおっしゃるとおりだとは思うんですね、形式的には。ただ、この選考がほかの大学でもあったと。要するに、学内の選挙が覆された例、それはいろいろ、事件と言うとあれですけれども、裁判になっているのもあるわけですね。岡山大学、新潟大学、滋賀医大等々であるわけですね。

 やはり、きちっと透明化を図るべきであるとまず一つ思うことと、もう一つは、やはりこれには一定の背景があると私は思っております。先ほどの経済財政諮問会議の話じゃないですけれども、国立大学法人の運営費交付金そのものもこれから先は競争資金化していこうじゃないかというような話も出ている中で、特に地方の国立大学法人は大きな危機感を持っていると思います。そういった危機感については文科省の中にも私はあるんじゃないかなと思うわけで、先ほどの私学の定員割れの話とも相通ずるところがあると思うんですけれども。

 そういう中で、ここはやはり元次官に一遍ここへ来てもらって、地方国立大学の経営のあり方というのはこういうものだと、ひとつ全国に範を示すような意気込みで結城さんが乗り込んでいってこれをやってやろうというのであれば、これは余人をもってかえがたい人事であるという形で、説明も私はある意味ではつくんじゃないかなと思うわけです。

 何となくこういうわかりにくいやり方で決まってしまったというのは、これは不幸の始まりであって、私は善意に解釈をしながら、今勝手に申し上げたんですけれども、逆に悪意でとらえれば、今度その国立大学の、特に地方の大学の運営がこれから厳しくなるという中で、これから文科省の天下りをどんどんどんどん採用していかないと、もう経営が立ち行かなくなるよという一つの前例に、悪意の意味で見れば、そういうふうにもとられかねないわけですよ。

 私は、だからこそ、これはやはりきちっとした基本を定めるべきだと思うし、今回の人事についても、たまたまこうなった、向こうから要請があってこうなったというような話じゃなくて、文科省なら文科省の言い分があるのなら、意向があるのなら、それはやはりきちっと私は示すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 私が思いますのは、これはやはり基本的にルールがあって、そこで選挙が行われている。確かに牧先生おっしゃるように、私も初め何ということだと正直思ったんですが。ただ、基本的にそういうルールが決められているわけですね。ただ、内部の意見としては違う意向が出たから非常に複雑になっているということだと思うんです。それだったら、初めからやはり教授会で物を決めるというふうなルールをつくらないと、このルール自身がこれでよかったのかという話になると思います。

 それからもう一点は、不透明だとおっしゃいますが、これはちょっと違うと思うんですね。それは牧先生のことを否定するわけじゃないんですが、ちゃんと、何票あって何票でと、こうやられておる。

 それからもう一点は、これもあえて言わせていただいたら、これから国立大学法人は、運営費交付金というのは、これも基本的な決まったルールで算定をされて配られるわけでありますから、あとは競争的資金というのは、いわゆるグラントのとり方というのは、それはノウハウがあるかもしれません。あるかもしれませんが、基本的に、やはり申請をしていただいて、それをちゃんと評価すべきところで評価をしていただいて、とるわけですから、学長がとるわけじゃありませんから。それは個人の先生方がお出しいただいて、もちろん研究でとる場合もありますけれども。

 ですから、そこの部分について、確かに説明されるということはいいことだというふうに思います。ただ、ここで説明されるということでありましたが、それは国会のお決めいただくことでございますから、私がとやかく言うことではないと思いますけれども。

牧委員 これもまた別途、ちょっと時間をとって、深いところで話さなきゃいけないと今改めて思いました。

 私が申し上げたのは、科研費の競争的資金の話だけじゃなくて、運営費交付金の部分にまで競争資金化を図ろうという経済財政諮問会議の話があったから危機感があるんじゃないかという意味で申し上げたのであって、そういう意味で、またこれから、さらに深い議論をしていきたいと思います。

 最後に、時間がございませんから、先ほどもちょっと話題になっておりますけれども、教科書検定問題について、私も時間の限り、一つだけちょっと聞かせていただきたいんです。

 さっきの検定規則十三条二項に基づく訂正の申請が出るであろうという予想をしているというお話ですけれども、ただ、例えば十月一日の町村官房長官の記者会見、ここでの発言を聞いていると、沖縄の皆さんの気持ちを何らかの方法で受けとめ、修正できるかどうか、関係者の工夫と努力と知恵があり得る、渡海文科相にもそのように指示をしているというお話があるわけです。私は、実はこれに基づいて教科書会社に訂正の申請を出してくださいと言っているんだというのが一番正直なところだと思うんですけれども、そうじゃないんですか。

渡海国務大臣 記者会見で言われた言葉の意味というのは、私も当時、実はそういう指示を受けたというような認識は余りありませんでした。

 官房長官とはお話をしました。こういう状況を受けてしっかりと対応してくれということは言われました。しかし、それは具体的な内容は一切ありませんでしたし、その後官房長官とお話をしたことも、かなりたってから、今こんな状況ですという御報告は、ちょっと今明確に日にちは申し上げられませんが、いたしましたけれども、二週間ぐらいたった週末だったと思います。

 その記者会見で、それは文部科学大臣のあなたがしっかりしなきゃいけないことでしょうということを言われたんだというような思いでございました、私は、あの町村さんの言葉を。ですから、指示をされて何をやったというより、この問題にしっかりとあなたが対応するんですよと言われたというふうに私は理解をいたしております。

牧委員 ちょっと時間がないのでここでやめますけれども。本当はもっと深くお話ししたかったんですけれども。

 この問題にとおっしゃいましたけれども、この話についてはもう既に通常国会でも質問がされて、伊吹大臣も、今事務次官になられた銭谷事務次官、当時初中局長も、的確に答弁されているんですよね。それがなぜ変わるのか。私は、なぜこれが今問題になって、問題というのは一体どこにあるのか。

 恐らく、あの沖縄の集会に集まった人たちの頭の中にも、いろいろな思いがそれぞれあると思うんです。違った思いもあると思うんですね。実は、検定の内容について、趣旨について理解をしていない人も大勢いるんじゃないかなと私は逆に思うんですよ。中には、あたかも軍による強制がなかったと記述させたかのように誤解をしている人も、あるいは国民の中にも大勢いるんじゃないかなと思うんですよ。

 文科省として、やはりきちっとそこら辺のところはまず国民に説明する。一体この何が問題になっているのかということを説明していただきたかったな。今からでも遅くないと思うんですけれども。

 そして、さっきもお話があったように、私たちも、あるべき検定制度の姿については、これからこの問題とは切り離してじっくり議論していきたいと思っておりますけれども、事今回の話にしても、余り変な、ふらふらした態度をとって将来に禍根を残すことがないように私からお願いを申し上げて、時間が過ぎましたので、何か一言あればおっしゃっていただいて、質問を終わります。

渡海国務大臣 ふらふらしておると言われると私も困るんですが、検定制度はしっかりとやはり守らなきゃいけないというのは、これはもう皆さんお考えですよ。その中で、やはり今起こっていることをどう受けとめて、どう対処していくかということなんだろうと思います。

 私は、一切の自分のある意味の思いなり、それから自分の政治的な考えは捨ててこれにかからなきゃいけないんだ、そういうつもりで今までやってきたつもりでございます。

 それから、牧先生のおっしゃる、もう少し説明をしなさいということに関しては、もちろん国会では説明をしておりますが、そういうことを考えながらこれからもやっていきたい。また、今回もしそういうものが出てきましたら、それがどういう経緯で最終的にこうなったということを当然説明する時期が来るでしょうから、そのときにはきっちりと説明責任を果たしたいというふうに思っております。

佐藤委員長 以上で牧義夫君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官青木一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 質疑を続行いたします。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。三十分という時間をちょうだいし、大臣所信に関連し、質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、大変ショッキングな新聞のニュースを拝見いたしましたので、この事実関係だけちょっと確認をさせていただきたいと思い、きょうは松浪副大臣にもお越しをいただきました。

 先般、大阪府熊取町の町営住宅の建てかえ工事をめぐる談合事件、皆さんも新聞等で御承知とは存じますが、この熊取建設事業協同組合の理事長北川一彦容疑者らが二十日に逮捕をされたところであります。

 文部科学行政とは直接関係がないことではありますけれども、この談合事件について、ぜひ、政府の一員として、冒頭、渡海大臣の御所見、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 談合というのはあってはならない行為だというふうに思っております。

 また、松浪副大臣がその熊取建設協同組合から顧問料や献金を受け取ったということについては御報告をいただいておるところでございます。松浪副大臣は、既に、顧問料や献金の返金を含め、対応を検討しているということであります。

 いずれにいたしましても、これは与党とか野党とか問わず、政治家に対して何らかの疑惑がある場合は、本人がその説明責任を果たすということが大事であろうというふうに考えております。

田島(一)委員 先にその辺の話まで大臣の方からしていただきましたので、改めて申し上げるのもいかがかと思いますけれども、きのうの読売新聞の報道で私も初めて知りました。

 報道によりますと、松浪健四郎副大臣は、この熊取建設事業協同組合の顧問を務め、二十万円の顧問料を受け取っていたということ、さらに、副大臣が代表を務める自民党の三支部も、二〇〇七年までの四年間で同組合から合計六十万円の政治献金を受けていたということが判明したとの報道でありました。

 今し方、大臣からもお話がありましたけれども、この件について、事実かどうか、御自身のお口からぜひ語っていただきたいと思います。

松浪副大臣 お答えいたします。

 今委員から御指摘をいただき、新聞に報道されたとおりでございます。

 それで、私が外務大臣政務官を拝命した折に顧問を辞任いたしました。そして、今回、実は、我々は説明責任を果たさなきゃならない、そういう立場にございますので、記者会見を開いて御報告を申し上げようとしておりましたところ、読売新聞に報道されたというのが事実でございます。

 それで、我々政治をする者は、多くの人たちの浄財をいただいて、そして、政治を何とか国民のために、また国のためにやろう、こういうふうに努力をするわけでございますけれども、今回、応援をしてくださっておった団体がこのような形になったというのは、私にいたしましても痛恨のきわみでございます。

 いずれにしても、このようなことがあってはならないし、議員として襟を正し、そして説明責任を十分に果たしてまいりたい、このように考えております。

田島(一)委員 私は、この新聞記事しか情報を入手するすべがありませんので、この記事に基づいてお尋ねしたいんですけれども、記事によると、同組合は松浪衆議院議員の後援団体の一つで、顧問というのは名前だけだ、談合などは耳にしたことがないと事務所の方が話していらっしゃるようでありますが、政務官就任のときに顧問を辞任されたと今御説明がありましたけれども、本当に名前だけの顧問だったのか。そして、もう一歩、やはりあってはならないと大臣もおっしゃったこの談合事件に関与が一切なかったのかどうか。お答えをいただけますか。

松浪副大臣 新聞の報道にあるとおりでございます。

 先日、きのうですか、小沢代表が山田洋行から献金を受けていて、そしてそれを返金された。返金の理由は、あらぬ誤解を与えてはならないからということでございました。私もそうでございますし、新聞の報道のとおりでございます。

 私も、経歴を見ていただければおわかりになりますように、私は大学という教育の場におりました。しかし、国会で事件を起こして以来、私に対するイメージが大分違っておるようで、大変残念に思いますけれども、私は、今御指摘されたようなことは一切ございませんので、御理解賜りますようお願い申し上げます。

田島(一)委員 余りくどく聞くのもなんですけれども、この逮捕された組合の理事長北川一彦容疑者と松浪副大臣というのはどういう関係だったのか、深い関係は全くないというふうに言い切れるのかどうか、それだけお答えください。

松浪副大臣 深い関係というのは、夫婦の関係のようなのを指すのか友人関係を指すのか、いろいろあろうかと思いますが、私の高校時代の先輩でございます。

田島(一)委員 了解をいたしました。先輩後輩という関係の中での支援であったというふうに受けとめさせていただきます。

 それでは、本題、大臣所信についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 副大臣、お忙しいようでしたら、どうぞ御退席いただいて結構ですので。

 教育は国家百年の大計であり、最優先に取り組むべき課題である、大臣所信の冒頭ででもおっしゃいました。社会の将来を決定する未来への投資として教育には大変重要な役割があると私自身も認識をしているところであります。

 冒頭、もうこれまでにもお答えいただいていた部分に重複するかもしれませんが、改めて、大臣が教育にかける理想、そして将来展望を手短に語っていただきたいと思います。

渡海国務大臣 手短にということでございますが、日本において、資源のない国、そういったことを考えますと、やはり人材というのは、ある意味、唯一の資源でございます。そういった意味で、これからの子供たちをどういうふうに育てていくかということは大変重要な課題であると認識をいたしております。

 そして、その中で、先ほど来いろいろと答弁をさせていただいておりますけれども、私はやはり、そのキーポイントは、学校で先生が十分に向き合える、そういったことによって子供が、学習意欲もまた出てくるという、私は教師の役割というのは非常に大きいと思っておりまして、頑張る先生が頑張れる環境をつくっていく、それが学校教育においては今一番求められていることではないかな。そのことができれば自然と学力も体力も、また最近徳育という言葉が使われているようでありますが、上がってくるというふうに確信をいたしております。

田島(一)委員 ただいまの答弁の中ででも、頑張る先生を応援すると、所信表明の中にもあったキーワードでありますけれども、この頑張るというキーワード、これは大変、解釈によっては難しいところがあろうかと思いますね。

 語源をたどっていきますと、我を張る、いわゆる自分の考えをどこまでも押し通すという意味もありますし、眼、いわゆる目を張るの語源もあります。みはるであるとかよく見る、そういう意味が転じて頑張るというふうになった。このことは、文部科学行政を預かっていらっしゃる大臣を前にして私が改めて申し上げるまでもありませんけれども、どうも何かしっくりこないな。

 本来ならばいわゆる困難に耐えて努力するというニュアンスでお使いいただいているんだろうというふうに思いますが、耐えて努力する教員を応援したいとおっしゃいますけれども、頑張ったかどうかの評価であるとか判断というのは非常に難しい課題だと私は思います。

 今日のように成果主義の中では、結果を出して初めて頑張ったかどうかという物差しになり、例えばどんなに寝食を忘れて努力を重ねてきたとしても、結果が悪ければ頑張ったと評価されない、そんな傾向があるのではないか。そう考えると、大臣が支援をしようとされている、頑張る教員というのは、やはり結果を出さないとだめだというふうになるのか、それとも結果が出せなかった場合であっても頑張った先生というのをきちっと評価する物差しというのをお持ちなのかどうか、お聞かせいただけますか。

渡海国務大臣 これは大変難しい御質問をいただいたと思っております。しかし、ある程度成果の指標みたいなものは持たなきゃいけないんだろうというふうには思います。しかし、ではそれだけで評価するのか、それはやはりそれだけで評価してはいけないんだろうというふうに思っております。基本的な状況というものは整える必要があると思いますが、評価という点についてはなかなか難しいものがあるというのが正直な実感でございます。

 しかし、では評価をしなくていいのかといえば、やはり評価はしなきゃいけないんだろう。それはやはり、当然その地位にあるといいますか、その立場にある校長先生なり、また上位の先生方が先生を見ていくということもありましょうし、先ほど言いましたように、一定の基準、一定の結果をもって評価するということもあると思います。

 時間があれですから言いませんが、実は去年、あるアメリカのレポートを見たときにすごいことが書いてありました。これがアメリカなんだな、でも日本ではやりたくないねと思ったのがあります。これは実は科学技術のレポートでございますが、その中に、子供がある資格を取れば、その一人に対して教師に百ドル与える。多分ブッシュの教書に入っていると思うんですがね。これがアメリカのやり方です。しかし、日本では多分それだけではだめなんだろうというのが正直な私の感想でございます。

田島(一)委員 そこで私は、見えない、結果にはあらわれてこない頑張る先生を評価する物差しはお持ちなのかどうかというのをやはり聞きたかったんですね。

 今おっしゃったように、それは、アメリカのように、いわゆる資格を一つ取れば一人につき百ドル、そういった評価の仕方、頑張る先生を応援するやり方ももちろん存在することは理解もします。しかし、ふさわしくないというふうに今おっしゃってくださったわけですけれども、それでいても、頑張る先生を応援すると、こうして所信の中でおっしゃったわけですから、では結果としてあらわれてこない頑張った先生をどう評価するのか。ここはやはり相当覚悟を決めて、その物差し、指標をお持ちいただかないと、つくっていただかないと、現場の先生のいわゆるモチベーションにも相当影響してくるのではないかと私は思うわけであります。

 なかなかこれを今このやりとりの中で即答というのは難しいかもしれませんけれども、その点については、結果が出てこないけれども頑張った先生を評価する方法、これをぜひ大臣御就任の任期中にお示しをいただきたい、私はこのことだけをぜひ強くお願いをしておきたいと思います。

 先ほども、また福田総理も随分引用されている、先生が子供たちと十分に向き合える時間をふやすことが重要だ、きょうの答弁ででも何度使われたか、ちょっとカウントしていないんですけれども、随分大臣の口からも発せられた言葉であります。子供たちと先生が十分に向き合える時間をつくる、そのためにどういうことが必要なのかというのを、大臣所信の中からは、教職員の定数改善、それから外部人材の活用、事務の外部化というのを方法として、具体例として示されていると私は受けとめました。

 ますます深刻化する教員の多忙化、これを解決したいという思いは共有しているところでありますけれども、教職員の定数改善、平成二十年度の概算要求でもお示しをいただきましたけれども、この概算要求の中での定数改善についてどのようなお考えをお持ちなのか。そしてまた、これを一〇〇%実現していくためにどのような決意を持って臨まれるのか。この点についてお伺いをしたいと思います。

渡海国務大臣 御案内のように、これは行革の問題もございます。しかし、昨年は教育基本法が成立し、通常国会では三本の法律も通していただいて、教育を再生するためにこれから頑張っていこうという初年度の予算が実は来年度の予算でございます。

 この予算を実現するためにということでありますが、これは先ほどの小宮山委員の御質問の中でもお答えをしましたが、まず、こちらがしっかりと、やはり理論的根拠といいますか、それをもっと持たなきゃいけないだろう。私は、まだまだちょっと甘いと正直思っております。ですから、それをしっかりとまず、あらゆる方面からしっかりと主張できるように裏づけをつくっていきたいというふうに思っておりますし、同時に、やはりこれは私一人が頑張ってできるものでもありませんから、多くの応援をいただける先生方ととともに、今このことが本当に必要なんだということをあらゆる機会を通じて訴えることによって、御協力もいただきながら頑張っていきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 私、今回お示しいただいたこの概算要求というのはやはり最低ラインなのかな、そんなふうに実は思っております。その点については、十分に向き合える時間をふやすという一念のもと、ぜひ折衝の場で頑張っていただきたい、そのことはもう心からお願いをしておきたいと思います。

 ただ、定数改善とは別に、外部人材の活用、事務の外部化というのも挙げていらっしゃいます。

 この事務の外部化についてお尋ねしたいんですけれども、勤務実態調査でも明らかなとおり、子供と向き合う時間以外の教員の事務負担が大変大きなウエートを占めているということは、私もさきの通常国会で伊吹文科大臣に相当指摘をしてきたところであります。

 この事務負担の主な内容、これをひもといてみますと、子供の成績関連の書類作成であるとか、子供への指導記録、それから保護者との面談記録など、実際に子供と向き合っている教員でないとつくることができない、意味がないものがほとんどなわけですね。

 では、果たして、事務の外部化とおっしゃいますけれども、子供と向き合わなければならない事務量がほとんどである中で、それを、何を一体外部化させるのか、外部化させることによって本当に先生が子供たちと向き合える時間をふやすことに結びつくのかどうか、私は大変これに疑問を感じているんですけれども、どのようなことをとらえて事務の外部化というふうにおっしゃっているのか、お答えをいただけますか。

渡海国務大臣 私も詳細に一つ一つまで承知をしているわけではございませんが、先生方からいろいろなことを聞きましても、いわゆる雑用と言われるような作業が非常に多い。

 今、実は文部科学省にも、これはきのう指示を出したところでありますが、要するに文部科学省自身が学校現場を忙しくしていないかということをよく考えてやってみろということも申し上げております。そういった、いろいろな作業が非常に多様化しまして、結果として雑用が多くなっていないかということをもっともっとやはり精査をして調べていかなきゃいけない。

 そういう部分で外へ出せる部分があれば、やめられる部分があればやめたらいいんですが、やめられない部分で外へ出せる部分があればそれは出すということはやはりきっちりとやる必要があるのではないかなというふうに考えておるところでございます。

田島(一)委員 外に出せるものがあればというお話ですが、ほとんど少ないんじゃないかなと私は思うわけですね。それだけに、何か事務の外部化で、それこそ先生が生徒と向き合う時間がふえると短絡的にもし信じ込んでいらっしゃるんだとするならば、やはり現場の実態というのを、調査結果はもちろんですけれども、ぜひ現場を見ていただきたい、そんな思いが私はしております。

 もう一つ、外部人材の活用で、ボランティアの導入等も例に挙げられました。本当に教員の負担がそれで解消されるのかどうか、実は私も疑問に思っております。

 九月の上旬、六日、七日と二日間にわたって、実は私、地元の滋賀県彦根市の公立中学校で、社会科の授業を頼まれて、ゲストティーチャーで教えてきました。三年生が四クラスある中で、ちょうど、公民的分野の中で、国会の仕組み、国会議員の仕事や役割という内容で、ぜひ現場の人間に教えてほしいというような依頼を受けて、六日の日には三校時分、そして七日の日には一校時分、これで四クラス、ローテーションで順番に、僣越ながら教えてまいりました。

 四十五分授業をやって十分間休んで、四十五分やって十分休んで。百三十二人の生徒をまとめて一度にやるかという提案をいただいたんですけれども、どうせやるんだったら現場の先生と同じように一クラスずつ見て回ろうということで、あえて授業のスケジュールを狂わさないように、社会科の先生がいつも教えていらっしゃるスケジュールで、三組、一組、四組、二組という順番で回らせてもらいました。

 これが実は精神的にも肉体的にも本当に大変だったというのを、私は教壇に立って初めて理解しました。十分間休みがあるというふうに言われているんですが、残念ながら、この十分間なんというのはほとんど休めるような時間ではありません。延長することもあります、生徒から質問が来ればそれに答えなければなりません。正直、校長室と往復し、手を洗うのが精いっぱいでありました。

 では、そういう中で、当の担任の先生、いわゆる教科担当の先生は何をしているかといえば、私が変なことを言わないか、もしくは私がきちっと指導しているかというところに気も配りながら、ずっとその教室につきっきりなんですね。そしてもう一つ、その授業を担当するに当たって、事前に案内のプリントも、依頼文書もつくらなきゃならない、そしてまた打ち合わせもやらなきゃならない。外部人材である私に依頼をされているんだけれども、実際は、自分が教科を担当する以上に気を配り、また時間を費やしているというのがこれは実態だと思うんですね。

 先生が子供たちと十分に向き合う時間をふやすためにという理由にこの外部人材の活用というのが本当につながるのかどうか。外部人材の活用自体を私は否定していません。しかし、おっしゃる、子供たちと十分に向き合える時間をつくるのに外部人材の活用が効果をもたらすというふうに、大臣が所信の中でおっしゃるような認識が果たして正しいのかどうかというのを私は疑問に思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 先生が実際の現場で体験されたことでありますから、そのことを真っ向から否定するというつもりはないわけでありますが、しかし、例えば外部人材もいろいろいらっしゃるわけでございまして、それから非常勤講師のようなものも考えております。テンポラリーなものと、例えば週二日ぐらいでも定期的にちゃんと枠内に入って働いていただくというものは大分差がありましょう。

 それからまた、ちょっと話をもとに戻しますが、先生がおっしゃいました、現場を見ろという意味では、それぐらいのことはやっているんだろうなと言って実は確認をしたんです、まだ少ないですが、若手の職員を一年間学校の現場に文部科学省も出しております。そういうところから、実情をよく見て、何がやれるか、何が問題かということもしっかりと確認をしながらやらせていただきたいというふうに考えております。

田島(一)委員 私でもできたという表現は不適切かもしれませんけれども、実際に政治また国会にこうしてかかわらせてもらっている私初め、この委員会にいらっしゃる諸先生方でしたら、恐らく教壇に立つだけの力は皆さん持っていらっしゃると思うんですね。私は、決してうちの彦根市だけが珍しいわけではなく、どこででも、そういう機会があればぜひ、もちろん大臣もそうです、一度教壇に立っていただいて、子供たちがどういう感じで受けとめてくれるのか、そして、一時間だけではなく、休憩時間を挟んで半日、一日と、一度どっぷりと体験をしていただくのが何より現場を知る有効な手だてではないかというふうに思うわけです。

 残念なことに、これまで、文部科学大臣が現場視察となると、現場の受け入れ態勢の難しさ、それは恐らく副大臣の当時からもお聞きになっていらっしゃるというふうに思いますけれども、私も、ことし、教育再生特別委員会で、富山県のある小学校に視察に寄せていただきました。つくられている資料の、本当にこんなのが必要なのか、避難経路の図まで、文科省がお願いをしてつくらせたのか衆議院がお願いをしてつくらせたのかわかりませんが、学校現場は本当にてんやわんやだったというふうに、私はその資料や説明等々からも拝見をいたしました。ましてや、運動会を数日後に控えているさなかに、いわゆるカリキュラムを変えなければならないと、もうてんやわんや。

 こういうようなことを引き起こして、先ほど文科省からの依頼事務等々で現場を困らせているのではないかという御認識の御答弁もいただきましたけれども、こういう視察もあえて黙って行く、もしくは隠密裏にやられるということが、私は現場を本当に生で知る一番のいい手だてではないかというふうに思うわけです。

 大臣だけではなく、ここにいらっしゃる議員の皆さんにもそのような経験をぜひしていただきたいというふうにも思いますし、私は、今申し上げた、学校の先生が子供たちと真剣に向き合っていくためには、単に小手先の外部人材の活用であるとか事務の外部化といったような問題だけでは当初のねらいとするものは達成できないんだ、やはりここは、大事なのは、私ども民主党がこれまで少人数学級の推進ということをずっと申し上げていましたけれども、この点に重きを置いて考えていただきたい。そのためには、現場の、いわゆる子供たちに直接指導に当たる先生の数をふやすしかないんだということをぜひお願いしたいところですけれども、大臣のお考えをぜひ聞かせてください。

渡海国務大臣 もちろんそのことも念頭に置いて、今私は三点セットと言っているんですが、定数の改善、それから非常勤講師の活用、もう一つは、事務などを行う、ボランティアも含め外部人材の活用といった、この三つをセットにして、先生が生徒たちと向き合う時間、これを確保するように頑張ってまいりたいというふうに思っております。

田島(一)委員 時間も残りわずかとなりました。次の設問、教員免許更新制についてお尋ねをしたいと思います。

 さきの国会で、それこそ強行採決の中でこの三法が通ったわけであります。私たちも、先ほど大臣が三つの法律を通していただきましたのでというふうに答弁いただいた中で、いや、おれは通してないぞというような思いもありましたけれども、実際に成立をして今進行しているわけでありますけれども、あの前国会での議論、それから、つけられた附帯決議に基づいて教職員免許法が進んでいるのかどうか甚だ疑問でもあります。

 中教審の報告書を拝見したんですけれども、附帯決議に盛り込まれた点に沿って審議が進められているかといえば、私はどう探しても見つからない部分がたくさんあります。例えば講習に関して、受講者のニーズの反映に努めることを附帯決議に盛り込まれましたけれども、どのような方法で現場のニーズを吸い上げられているのか、中教審での審議状況について御報告をいただきたいと思いますが、どうですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教員免許更新制につきましては、平成二十一年四月から導入されることになっております。

 現在、中央教育審議会では、教員養成部会に具体的な運用方法を検討するためのワーキンググループを設けまして、関係者の御意見も伺いながら検討が進められているところでございます。

 その中では、附帯決議の趣旨や内容につきましても事務局から十分説明し、審議に生かしていただいているところでございまして、教員のニーズについての把握のお尋ねがございましたけれども、教員免許更新講習の開設に当たりましては、教員の知識技能の刷新に資するよう、受講者の課題意識も踏まえつつ、講習の質の向上を図ることが必要であると考えております。

 このため、現在、中央教育審議会の教員養成部会におきましては、講習の開設者である大学などが受講者に対し事前の課題意識について調査を実施し、その結果を講習内容に反映することや、講習の後、受講者による事後評価を行い、その結果を公表することなどについて検討をいただいているところでございます。

 今後、この中央教育審議会の議論を踏まえながら、受講者の課題意識を踏まえた質の高い講習が実施できるよう努めてまいりたいと考えております。

田島(一)委員 制度設計上の問題が相当山積みだなというふうに私は受けとめております。

 例えば、免許更新講習の修了認定における公平性の担保。規模であるとか特色が異なる大学がいわゆる講習開設者となるというふうな今御説明もいただきましたけれども、大学での修了認定でも、規模も特色もそれぞれ異なっております、どのように公平性を持たせていくのか。これは私、非常に大きな課題だというふうに思いますし、もう一方では、免除者の基準の判断をどうするのか、これも大変大きな課題だと思います。

 中教審でというふうにおっしゃいましたけれども、全然そのあたりの議事録では読み取れない、本当に議論されているのかというふうに思うんですが、あわせてお答えいただけますか。

佐藤委員長 質疑持ち時間が終了いたしておりますので、簡潔にお願いします。

 金森初等中等教育局長。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 中央教育審議会の教員養成部会におきまして、ただいま御指摘のございました教員免許制の運用に当たっての公平性の確保というのは大変重要な課題と考え、審議が進められているところでございます。免許更新講習の免除の対象者につきまして、あるいは免許更新講習の内容や講師の資格の基準について検討がなされているところでございます。

 今後、十分審議を深め、全国的に一定以上の質の確保を図ってまいりたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 時間が参りました。

 例えば教育委員会自体が講習開設者となり得ることもあるというふうになっているわけですけれども、教員に対する分限処分の権限を持っている者がこの修了認定の権限を持つのが果たして好ましいのかどうかという課題もあります。

 また引き続き、この点については、中教審の議論も踏まえてこれから議論を重ねていきたいと思いますので、どうぞその点はよろしくお願いをし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で田島一成君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 本日は、独立行政法人の科学技術振興機構について伺います。略称JSTだそうですけれども、この機構については、二年前、平成十七年の四月十一日、参議院の決算委員会で西田実仁議員が取り上げていらっしゃいます。この質疑の中で、「サービス始めてから黒字になったことはあるんでしょうか。」文献情報提供業務のことでありますけれども、政府参考人は「ございません。」というふうに答えています。

 文献情報提供業務、始まったのはいつですか。

徳永政府参考人 科学技術振興機構の文献情報提供事業が始まりましたのは昭和三十二年度でございます。

松本(大)委員 質疑の中では、一度も黒字になったことがないというような話があるんですが、この間、つまり五十年ということですけれども、この五十年の間、この業務自体が黒字になったことはありますか。

徳永政府参考人 この文献情報提供事業は、研究論文の抄訳等を企業あるいは研究者に対して提供するというものでございます。毎年三千万件程度の利用があるわけでございます。(松本(大)委員「端的に答えてください」と呼ぶ)はい。

 その中で、収入として数十億円規模の事業収入を計上しておりますが、法人の損益計算上、形成をいたしました文献情報データベースが取得後五年間で減価償却をするという取り扱いをしているため……(松本(大)委員「黒字になったかどうかを聞いているんです。端的に答えてください」と呼ぶ)はい。その関係で、そういう多額の償却費があるという関係から、平成四年度を除き、すべての年度におきまして、損益計算上、損失を計上しております。

松本(大)委員 今、平成四年度とありましたけれども、この平成四年度は、移転に伴う土地売却益、つまり特別利益なんですね。こういう特殊要因があって、そのときだけ、たった一度だけ黒字になっていますが、つまりは、本業自体はこの五十年間の長きにわたってずっと赤字なんですね。

 この決算委員会の審議の中では、「累積の損益というものの解消に向けて、まずは単年度から、単年度黒字化に向けて努力したい」というふうに政府参考人は言っていますが、累積の損益の解消というのは、これは累損のことだと思いますが、その額は幾らですか。

徳永政府参考人 おおよそ七百五十五億円でございます。

松本(大)委員 すごい金額ですね。五十年にわたって、特殊要因があった年を除いて一度たりとも黒字化していない、その結果が七百五十億を超える累損、こういうことです。

 これは十七年度中の質疑ですけれども、このときの政府参考人の答弁、「まずは単年度から、単年度黒字化に向けて努力したい」、累損の解消に向けてということですが、十七年度、十八年度、当期利益、どうだったんでしょうか。累損がどのぐらい減っているのかとあわせてお答えください。

徳永政府参考人 科学技術振興機構におきましては、平成十六年度に経営改善計画を策定いたしまして、その中で、毎年九十万件に上るデータベース経費の経費削減、あるいは利用件数、当時二千八百万、大体三千万以上に上るような営業活動、そういったことを通しまして、各年度の、いわば減価償却を除いた事業支出・収入ベースでは改善をしております。

 その結果、平成十六年度では二十六億円の経常損失、十七年度では二十一億円の経常損失、平成十八年度におきましては経常損失十二億円でございますが、事業支出入ベースではほぼ均衡する状況になってきております。

松本(大)委員 今、一つお答えになられていないのは累損がどのぐらい減ったかということですが、要するにこれは、十六年度も、この質問が行われた十七年度も、十八年度も、いずれもこれは単年度黒字化はできていないんですよ。マイナス二十六億、マイナス二十一億、マイナス十二億、こういうことなんですね。これはいつ累損、繰欠を解消するんでしょうか。めどは、年限は区切っていらっしゃるんでしょうか。

徳永政府参考人 現在、先ほど申しましたように経営改善計画を実施しておりまして、ようやく二十年度には産業投資特別会計からの出資金を受けずに自己収入のみで事業運営を行うというところに達したわけでございます。このままいきますと、平成二十一年度におきましては単年度黒字化を達成するというふうに私どもは考えております。

 そういう中で、さらに今後とも業務の重点化等の見直し、あるいは、経営努力ということも図りまして、そういう中で着実に経常収益の増加を図って繰越欠損金を継続的に縮減していく、そういう努力をしていきたいと思っております。

松本(大)委員 私は、年限は区切っているのか、いつ累損を解消するんですか、繰欠を解消するんですかと申し上げているんですが、お答えください。

徳永政府参考人 私どもといたしましては、まずは平成二十一年度に単年度黒字を実現するということが最優先の課題であると考えておりまして、繰越欠損金の解消の時点につきましては、現時点で申し上げる状況にはございません。

松本(大)委員 大臣、お聞きになりましたか。要するに、めどは立っていないということなんですよ。七百五十億を超える累損を出している、だけれども平成二十一年度に何とか単年度黒字化するかもしれない、だけれども累損解消、累損一掃に向けてめどは立っていない、端的に言えばこういうことなんです。

 大臣、よく御存じのとおり、民間の平均給与は九年連続減少中ですね。民間ということに限らず、一世帯当たりの平均所得、過去十七年間で最低です。そういう中で、六月には定率減税が全廃されました。年金保険料も四月あるいは九月、ことしもまた引き上げられましたね。政府の無駄遣いについての視線というのはとりわけ厳しくなっていると私は思うんですね。

 大臣とはこの夏まで決算行政監視委員会の理事として御一緒させていただきました。貴重な税金の無駄遣いは一円たりとも認めないという気持ちは恐らく共有させていただいていると思うんですが、今のような悠長な話でいいんでしょうか。単年度黒字化をすればいいという話ではありません。累損の解消のめどが立っていない、いつになるかわからない。だけれども、これは一千億円近い運営費交付金を出している先ですから、漫然と公金投入を続けていいのか。これで納税者の納得を得られると思われますか。

渡海国務大臣 今委員が御指摘をいただきましたような状況にあるということでございまして、この繰越欠損金の早期解消というのがなかなか容易でないというふうに思います。

 このような欠損金が生じたということについて、もっと早い時点で経営改善計画というものをつくる必要があったのかなというふうな思いもあるわけでございますが、会計上の仕組みにも非常に大きく起因しているというふうに認識をいたしております。

 御案内のように、特殊法人のときは出資金という制度がございました。これは、宇宙開発等もそうでございますけれども、そういった仕組みそのものが、累損といいますか、こういうものをつくり出したという半面もあるわけでございますし、同時に、今も局長から説明がありましたように、データベースにたまっている、ある意味価値があるものでありますけれども、これをもう五年で減価償却する、こういうルールそのものが果たしてこのままでいいのか。

 こういったことを総合的に見直した上で、全体の累損というものをこれからどういうふうに解消していくかということについて検討していかなきゃいけない、そんなふうに考えておるところでございます。

松本(大)委員 今大臣から、もっと早く経営改善計画をということだったんですが、収支改善計画、初めてじゃないですよね。参議院の決算委員会でも取り上げられていますが、平成十四年九月、十二月、平成十五年九月、黒字化しますから、改善しますからということで、累損減っていきますからということで、一度も達成できていないわけですよね。

 今回何度目ですか、これは。

徳永政府参考人 たびたび国会での御指摘を受けまして、JSTにおきまして具体的に文献情報提供事業に係る経営改善計画というものを策定いたしましたのが十六年度でございます。したがって、十六年から十八年度までの一期、そして現在、第二期目に入っているという状況でございます。

松本(大)委員 これはやはり、何度も、再三にわたって国会で指摘されながら、そのたびに計画を下振れているというか、いまだに累損解消のめども立っていない。大臣の御答弁もわからなくはありませんが、そもそもこの事業自体が必要なのかどうかということと、必要であれば、では本当に独法でやらせる意味はあるのか。論点はあると思うんですが。

 この独法、いろいろ見てみますと、やはり問題が多いように私は思いますね。財政状況が厳しくなった場合、民間企業であれば、これは当然代取を含めた役員報酬の見直しと待遇の見直し、こういうことになろうかと思います。決算委員会で取り上げられた、これは参議院ですが、十七年四月ということなので、では十七年四月を含む、つまり十七年度と翌年平成十八年度では、役員報酬はそれぞれ幾らなんでしょうか。

森口政府参考人 科学技術振興機構は、国の指定職の給与改定に準じまして、平成十八年四月に役員報酬規程において報酬月額を平均六・六%減額しております。

 それと、今御質問の点でございますけれども、平成十七年度の役員報酬の総額は九千四百十八万七千円、平成十八年度は九千七百十九万八千円ということで、役員報酬、総額としてはふえてございます。

 なぜ、規程を六・六%下げたのにふえたかということでございますけれども、これは国家公務員も同様でございますけれども、在任中に経過措置として現給保障をするということで、六・六%の減額についてはすぐには適用せずに、いわゆる現給保障、そういうことをやってございます。

 それが一点と、あと、十七年度というのは特別な事情がございまして、理事二名と監事一名が交代をしておりまして、その関係で、交代していった前任者の支給の額が減っておりますので、そういう形で、結果として十七年度から十八年度については総額としてはふえている、そういう状況になっているところでございます。

松本(大)委員 大臣、今お聞きになられたとおり、国会で指摘をされた十七年度と十八年度で三百万も役員報酬の総額はふえているんですよ、逆に。

 今いろいろ御説明ありましたが、要するに、現給何とかという、在任中の経過措置というのは要するに既得権だと、退任するまでは減給させないんだということでしょう。本当にそんなことでいいのかと私は率直に言って思いますよ。

 しかも、六・六%減額改定とおっしゃいましたけれども、JSTのホームページを見るとそういうふうに書いてあるんですよ。報酬月額六・六%減額改定と書いてあって、下に役員報酬等の支給状況、平成十八年度年額報酬と書いてある。これだけ見ると、いかにも平成十八年度から既に六・六%減額済みですというふうに多くの人は多分誤解されるんじゃないかと思うんですね。こそくと言っちゃなんですけれども、私は、控え目に言っても、これはミスリーディングな記載じゃないかなというふうに思いますね。

 十九年度どうかというふうに聞きましたら、ようやく減るんだと。それは退任されるからですよね。

 何でこんなことになるかというと、冒頭の繰り返しになりますが、要するに、今いる役員が在籍している間はその人の役員報酬は見直さない、手をつけないんだ、その人が退任して初めて純減になるか、あるいは新しい人の給料は減額をしていくか、こういうことであります。

 民間企業で、業績が堅調ならいざ知らず、累損が七百五十億というような法人で、単年度で一千億を超える運営費交付金が、公金ですよね、流れている、累損一掃のめどもついていない、こんな先なのに、役員の待遇が、その人が退任されるまで見直されないというような甘いことが許されていいんですか。大臣、いかがですか。

渡海国務大臣 これは国家公務員の給与に準じてという適用がされているわけですね、今。仕組み上そういうふうになってしまうという御説明だったと思います。次の年に今度移行するときにはちゃんと確かに落ちているんですね。そのことを今六・六%というふうに言われたんだと思っております。

 こういうことについても、国家公務員、これは定数も給与も含めていろいろな議論があるところでございますから、その全体の中で、やはりこれは独法といえども判断をしていかなきゃいけないんだろうな、そんなふうに思います。

松本(大)委員 六・六%減額というのは、新しく着任した人、交代した人に適用しているのであって、既存の人には適用していないわけですよね。

 問題は役員だけじゃないんですね。総務省ですか、政策評価・独立行政法人評価委員会、平成十七年度版の独立行政法人評価年報がことしの一月に発刊されていますが、その百四十五ページに、JSTについて「特記事項」というのが掲載されています。「職員の給与水準が国家公務員の給与水準に比べてやや高くなっているが、今後ともその要因について十分に分析、検証を行い、所要の措置を行うべきである。」つまり、役員のみならず職員の給与水準も国家公務員の給与水準に比べて高いという指摘が行われています。

 分析、検証、所要の措置は行われたんでしょうか。

森口政府参考人 今御指摘の政策評価・独立行政法人委員会の指摘などを踏まえまして、科学技術振興機構におきましては、高い給与水準となっている要因の分析とその削減措置を進めてきているところでございます。

 具体的には、国家公務員に比べまして給与水準が高い理由として、一つには、科学技術に関する高い専門性あるいは知識や経験、これを必要とすることから、高学歴の職員が多いということがございます。大卒以上の学歴の職員が国家公務員に比べてかなり多いという点が一点ございます。それから、地域手当が給与に加算されるわけですが、地域手当の高い地域に在職する職員が多い、そういうことによって平均的な給与として高くなっているという点が挙げられるところでございます。

 しかしながら、その給与水準の削減措置といたしまして、平成十八年度以降、役職員手当あるいは期末手当の引き下げ、これを実際に実施しているところでございます。

 もう一点、あと申し上げるとすれば、やはり、最先端の研究開発をやる、そういうマネジメントもやるということから、それなりに優秀な人材を確保する、こういう必要もあろうかと思っております。

 いずれにしましても、イノベーションの創出という機構本来の役割の発揮と給与水準の削減、このバランスをしっかりとりながら、今後も人件費の削減に努めてまいりたいというふうに思っております。

松本(大)委員 今、理由を二つ挙げられましたね。一つが学歴、二つ目が地域手当の高い地域に在籍している職員が多いと。JSTのホームページを見ましたら、今おっしゃったような要因分析がされていましたが、ただ、「在職地域及び学歴を勘案した給与水準の比較指標は、一一五・九となっている。」ということで、結局墓穴を掘られているんですよ。学歴が違うから、地域手当の高い地域に勤めている人が多いから。でも、その両方を勘案して、その影響を勘案して引き直してもやはり一一五・九になっているということじゃないですか。つまり、やはり割高なんですよ。これは私が言っていることじゃなくて、JSTがみずからのホームページにそう書いているんです。

 大臣、このJSTに対しては、要するに予算の九割は国庫で見ているわけですね。予算の九割をわざわざ国が手当てしてやっているのに、にもかかわらず、そこの職員の給料が国家公務員よりも一一五%という水準にあるんなら、何もあえて外注して、外に出してやらせる意味ないんじゃないですか。大臣、どうですか。

渡海国務大臣 今後、より一層、そういった件について厳しく我々としてもチェックをしていきたいというふうに思います。

松本(大)委員 ぜひ厳しく行っていただきたいと思いますが、国家公務員より高くなっている、独法でやらせる意味がなくなっている、まさに本末転倒ということですけれども、やはり、こういうのを見ると、天下り先の確保自体が優先されていないか、存続自体が目的化していないかというふうに私は思うんですね。ですから、そもそもこういった天下り先自体が本当に必要なのかという原点に立ち返って検証していただきたいと思うんです。

 天下りは、実際、このJSTにはたしか役員として二名、文科省だけでも職員としてさらに十名在籍をされていると思いますが、文科省から、当然この独法だけじゃありませんね、文科省から財団法人、独法から財団法人、独法からグループ企業と、いろいろな天下りが行われていて、まさにファミリーを形成して、その中で必要性の乏しい事業が発注されたり、あるいは割高な買い物がされているんじゃないかという疑念がやはり頭をもたげてくるわけですね。

 その象徴は随意契約です。衆議院の調査局が調べているわけですが、この独立行政法人科学技術振興機構、略称JSTですが、二百四十五ページのところに、平成十七年度、支出の総件数は四千九百四十一件、随意契約件数は、うち四千七百八件。極めて随契が多い。異常に随契の比率が高いわけですよ。

 これは本当は、財政状況が厳しい法人なわけですから、調達コストの見直し、当然、役員報酬の引き下げに続いてやらなきゃいけないのに、にもかかわらず、いまだに、財団法人科学技術広報財団、ここは文科省とJSTからそれぞれ天下りをしています。財団法人全日本地域研究交流会、ここは文科省から天下りをされていて、これは私の推測ですが、文科省からJST、さらにJSTからこの財団へという天下りが行われている。社団法人新技術協会、ここにもやはりJSTから天下りが行われている。そして、ここに対して多額の随意契約が行われているんですよ。JSTの財務諸表によれば、先ほど挙げたような財団法人のこのJSTへの依存率ですけれども、八三・三から九四・一。極めて、要するに独法丸抱えの財団法人というわけですね。

 これについては、独法の整理合理化というのは骨太にも盛り込まれましたし、今ちょうど行革推進本部がやっていますね。十二月に計画を出されるそうですが、各府省から出された提案に対して、極めて不十分だと渡辺大臣は言っているわけですが、そこで、行政減量・効率化有識者会議なるところで文科省が説明を行っていたというふうに思います。この説明資料には、随契は見直していきますよ、一般競争入札にしていくんだというふうに書いてあるんですが、これは、「少額のものを除」いてとか「一般競争入札等」というふうに書いてありまして、この少額のものを除いてというところと一般競争入札等というところが、私はこれは抜け道になっていく可能性が非常に高いと思っています。

 実際、これは、たとえ一般競争入札にされたとしても、ひょっとしたら、引き続き同じところに高い落札率で落とされて、同じところが結局受注し続けるんじゃないか、丸抱えが続くんじゃないかという疑念を私は持っています。

 財団法人科学技術広報財団、先ほど御紹介しました天下り先です。日本科学未来館の運営業務等に関する業務を受託してきたわけですが、これは平成十九年度から一般競争入札が導入というふうに、先ほどの、御紹介したこの行政減量・効率化有識者会議で説明されています。どこが落札したんでしょうか、落札率とあわせてお答えください。

森口政府参考人 落札したのは科学技術広報財団でございます。落札率は九九・八%だったかと思います。

松本(大)委員 私、これは文書で回答をいただいています。九九・九八%です。限りなくこれは一〇〇に近いわけですよね。しかも、さっきおっしゃった財団法人科学技術広報財団、つまり今までと同じところが、同じ天下り先財団法人が引き受けているわけですよ。九九・九八ですよ。しかも、この入札に参加したのはここ一社だけ。しかも、入札回数四回と書いています。ということは、これは予定価格をクリアするような札入れというか、四回で初めて行われたということじゃないですか。

 これは、私は、本当にこんなので問題ないのかと非常に疑問に思いますよ。きょうはちょっと時間の関係がありますからほかのこともやりますけれども、大臣、これはぜひ問題意識を持ってほしいと思いますよ。九九・九八ですよ。異常ですよ。これはぜひ、ちょっと大臣、厳しく見ていただきたいと思いますね。

 こういう実例に当たると、幾らこうやってこの行政減量・効率化有識者会議で、いや、一般競争入札にしていくんだ、まあ正確には等がついていますけれども、小口のものを除くということですが、一般競争入札と言われても、こういう、科学未来館のように九九・九八とかというような異様な落札率で、結局同じところが引き受け続けるんじゃないかと、私はその疑念がぬぐえないわけですよ。

 問題は、これは財団法人ばかりじゃありません、実は。衆議院調査局、さっき御紹介したこの予備的調査ですけれども、JSTの主な支出先十社というのが、平成十七年度、挙げられています。一位が、先ほど御紹介した、九九・九八%の財団法人科学技術広報財団、五位に株式会社アイ・エス・シー、八位に日科情報株式会社という株式会社が掲載をされていますが、日科情報の社長はだれですか。JST出身者じゃありませんか。アイ・エス・シーの社長はだれですか。JSTの出身者ではありませんか。

森口政府参考人 恐縮でございますけれども、事前に通告がございませんでしたので、その名前等については後ほど御報告申し上げたいと思います。

松本(大)委員 私は、今までの文科省さんとのやりとりを通じてこの株式会社のことを聞いていますし、きのうの問取りのときも、財団法人だけじゃないよ、株式会社も聞きますよというふうに言っていますが、まあいいですよ。

 日科情報の社長はこの独法出身ですよ、JST出身。以前にも、齋藤和男さんという、やはりJST出身の人が社長を務めています。平成八年以来実に十三名ものJST出身者の天下りを受け入れています。アイ・エス・シーの社長、これもやはりJST出身。同じく、平成八年以来七名ものJST出身者を受け入れてきた。しかも、この両社とJSTの契約は、平成十七年度は全額随契ですよ、全件随契です。とんでもないですよ。

 日科情報の齋藤元社長、その後、株式会社ディック・アルファというところの社長に就任しています。この株式会社ディック・アルファは、支出先トップテンではありませんが、やはり先ほどの二社と同様、平成八年以来五名の科学技術振興機構出身者を受け入れてきた天下り先なんですよ。今の社長はさっき紹介した齋藤さんじゃありませんが、齋藤さんから宇津野さん、さらに現社長の西田さん、三代続けてJST出身者ですよ。このディック・アルファとJSTの契約も、全額、平成十七年度は随契です。

 つまり、先ほどの齋藤氏の例を取り上げると、JSTから日科情報さらにディック・アルファということで、わたりが行われた。つまりは、文科省からJSTに行った運営費交付金が、随契の形で、OBのわたりに必要な報酬や退職金に化けたということですよ。これはとんでもない話だと私は思いますね。

 売上高に占める依存率も八割から九割、極めて丸抱え的体質なわけですけれども、この見直しのところには「関連公益法人等との契約の削減」とあるだけで、直接的な言及はこの株式会社についてはありません。きのう定義ももらいましたが、確認です、この「関連公益法人等との契約の削減」、「関連公益法人等」には先ほどの三社は含まれているんでしょうか。

森口政府参考人 今先生御指摘の関連公益法人等には株式会社は含まれておりませんけれども、いわゆる整理合理化計画の中で、随契の見直し計画というのを別途計画をつくっておりますけれども、その中では、民間企業、株式会社も含めた一般競争への移行、そういうことで今検討を行っているところでございまして、その方向でやるということになってございます。

松本(大)委員 私は極めて不自然だと思いますね。支出先のトップテンに二社も入っているんですよ。それで、JSTの出身者が社長になっている。

 しかも、さっき紹介した三社、平成八年からいずれもJST出身者を受け入れているんです。この平成八年の意味、わかりますよね、科学技術振興事業団ができた年なんですよ。統合によって人をどこかに配置しなきゃいけないと、株式会社に押しつけたわけでしょう。

 こういう、まさにファミリー企業、グループ企業になっているところでトップテンに二社も入っているようなところなのに、あえて、あえてこの説明資料から省く。私はやはり、こういう体質を見るにつけても、本当に改革するのか大いに疑問です。

 最後に、大臣と内閣府の副大臣に伺いますが、運営費交付金一千億もつぎ込まれている、だけれども累損解消のめどは立っていない、七百五十億ですよ。そういう先が、予算の九割つけているのに、国家公務員より高い職員給料を享受していて、しかも、そこの独法OBが天下った財団法人やファミリー企業といまだに丸抱え的体質を続けているわけですよ。

 私はやはり、こんな甘っちょろい改革案じゃ納税者の納得は到底得られないと思います。平成二十一年度に単年度黒字化すればよいという話ではなくて、今すぐ事業廃止等の抜本的見直しに踏み込むべきだと思いますが、最後に文科大臣と内閣府の副大臣の御見解をお伺いして、質問を終わります。

渡海国務大臣 先生からきょうお話をいただきました件について、私ももう一度よく全体を見直してみたいというふうに思います。

 ただ、一つだけ御理解をいただきたいのは、実は研究開発の世界では、簡単に入札にかからないものというのもいっぱいあるんですね。私も、従来、建築でございますが、実はコンサルの仕事をしておりましたからよくわかるんですね。そういう企画物に対してこれからどういうやり方をやっていくかというのは一つの大きな課題だと思うんです。相手を選んで、なおかつ安い値段で税金を使っていくかということは、方法は私はあると思います、あると思います。アメリカなんかうまくやっていますよ。そういうことも含めて物事を考えていきたい。

 ただ、JST全体の、今御指摘をいただきました問題につきましては、もう一度よく検証させていただき、きっちり改善をすべきところは改善をしなければいけない。JSTも今大変重要な仕事もしていただいておりますので、そういうふうに思っております。

山本副大臣 松本委員の質問にお答えしたいと思います。

 今、百一の独法すべてにつきまして行政合理化、整理合理化について検討中でありまして、先ほどお話がありましたように、行政減量・効率化有識者会議は連日大変な勢いでやっておりまして、今、多くの独立行政法人のことについてヒアリングを各省庁から行っております。科学技術振興機構につきましても行いました。先ほど松本先生から話がありましたような点についても、厳しい指摘を委員の方からいただいております。

 そうしたことも踏まえまして、まさに原点から出発をしてこの合理化を行っていきたい、こんなことを思っていますので、渡辺大臣とともに頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

松本(大)委員 ぜひ改革の原点に立ち返って、大なたを振るっていただきたいと思います。

 終わります。

佐藤委員長 以上で松本大輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 きょうは、渡海大臣、池坊副大臣と政治家同士の議論をさせていただきたいと思います。

 私もそうですが、戦争が終わって十年後に生まれる、同僚国会議員の多くも戦後世代だと思います。

 ところで、今回沖縄で教科書の問題、私もその集会にも行ってきましたけれども、大変多くの方が集まる、そして声を上げるということがあり、この委員会でも議論がされています。ところが、この沖縄戦で何があったのかという問題は、今こうやって議論ができるのは、実は私もその集会の翌日に渡嘉敷島というところに行って、当時十五歳の小嶺さんという方と、当時三十代で、お子さんを連れて集団自決の日を迎えた北村さんという九十代の方ですけれども、お話を聞いてきました。十年後にこれができるのかな、あるいは十五年後にはどうかなと思うと、今しかできない議論なのではないかというふうに思います。ですから、修羅場をくぐって九死に一生を得られた方たちがまだお話ができるというところにいるわけですから、きちっとした議論をしていきたいというふうに思うわけです。

 まず、渡海大臣に伺いたいんですけれども、さきの沖縄戦、国内で唯一地上戦が行われたということで、たくさんのことがあるわけですけれども、特に印象に深いこと、沖縄戦についてこの点が特徴的だと思うという認識を端的に伺っておきたいと思います。

渡海国務大臣 保坂先生のお話、前にも聞かせていただきました。

 沖縄戦についての印象といいますと、我々は読んだり、聞くしか仕方がないわけでありますが、しかし、要するに住民を巻き込んだ地上戦であるというのが一番の特徴であろうというふうに思っております。

 それと、一点、いつも私は思い出すんですが、初めて沖縄に行ったときに、海軍のごうへ入りまして、そして大田中将の言葉が書いてありますね。要は、沖縄県民かく戦えり、県民に対して後世の特別の御高配を賜らんことを、これが、いつも私自身も考えていることでございます。

保坂(展)委員 この点について、池坊副大臣はどうでしょうか。

池坊副大臣 私は先日、沖縄の方々の代表者から集団自決のことに関しての要望書をいただきました。また、きのうも、八十二の私の知人が、私は体験したんだと言って、私、しかられました。

 沖縄に参りまして初めて、と言っては沖縄の方に申しわけないんですが、初めて行ったときに、ああ、そうなんだ、本当に日本で唯一、地上戦で激しく県民の方々が苦しんだ地なんだという思いを実感として受けとめました。

 それと同時に、そういう痛みや苦しみを我が事として受けとめて、国民一人一人が自分のこととして痛みや苦しみを分かち合っていく、共有していく。そして、戦争というのは、本当に罪のない、まじめな人たちを不幸に陥れていく。その戦争の悲惨さとか苦痛さ、そういうものを次の世代に受け渡していかなければいけない、伝えていかなければいけないんだな、それを伝えていくことが世界平和に結びつくんだなという思いを私は沖縄に立ったとき感じましたし、今もその思いを持っております。

 人の痛みに思いをはせるというのは、私は、人間として持つべき、持たなければいけない人間としての最低のルールであり想像力だと思います。それを教えていくのが、私は教育の大きな役目の一つだというふうに今思っているところです。

保坂(展)委員 それでは、渡海大臣に具体的にちょっと聞いていきたいと思うんですね。

 まず、私が行った渡嘉敷島というのは、米軍が最初に大艦船軍団で来て、そして、空襲から艦砲射撃から、そして上陸ということがあった、一番最初の時期の戦闘があったところ。そこで三百人を超える方が亡くなっている。いわゆる集団自決ですね。そういう現場もこの前行ってまいりました。

 生存者の方、そしてもう亡くなった方が過去に村史とか県史でお話しになっていることを総合すると、必ずしも同じ場所で同じように手りゅう弾が渡っているというふうには言っていらっしゃらないんですが、大筋、防衛隊の方にもらったとか、あるいは、二発もらった、一つは敵を撃退し、一つは捕らえられるぐらいだったら自決しろと、こういうふうに言われたという人もいるし、ただ黙って渡されたという人もいるわけなんですね。

 そこで、立場を置きかえてみると、もし、そうした見たこともない米軍の艦船に囲まれて、そして手りゅう弾を二つ渡されたときに、住民の方はどう感じたかということを渡海大臣ならどう考えますか。

渡海国務大臣 その場に立ってみないとこれはわからないと思うんです。といいますのは、例えば、私は、多分こう思うだろうというのは、大変これは重い発言だと思っております。

 いつも私は、保坂先生とはちょっと世代も少し上ですが、私の地元に、特攻隊、知覧へ行くまでに加古川におりたんですね。その碑があるんです。その供養に行くときに、では、その状況で自分がその年齢であったらどう思うかということを、毎年そこの碑に行くたびに考えるんですね。同じように行けたかどうか、いや、そうじゃなくて、おれは怖くて乗れなかったんじゃないか。

 多分、そこでその状況のときにそうされたらといっても、これは実はなかなかお答えにくい質問でございますけれども、一般的に、二つ渡されたら、一つはこれに使え、一つはこれだというふうな感じ方をされるんじゃないかなというふうな想像ぐらいはできるのかな、そういうふうに答えさせていただきたいと思います。

保坂(展)委員 そうした集団自決から生き残った方の証言には、やはり、捕虜になって敵の手に落ちるぐらいだったら、敵から凌辱を受けるのは確実だからみずから死を選ぶべしというふうに常日ごろ言われていた。それは教育の中でもあったし、その後に、戦争というか米軍が近づいてくる過程の中でもあった。

 問題は、手りゅう弾を渡されたときに、果たして、何も言われなくても、そしてまた、あす米軍が上陸だというような状況で、大変緊張が高まっている状況で渡されたというのであれば、今ちょっと明快に、そんな感じというふうにおっしゃったんですけれども、やはりみずから死ぬ道具として一つはあるなというふうに住民の方が感じたとしても、これは不思議じゃないと思います。その点はいかがですか。

渡海国務大臣 先ほども申し上げましたように、これは想像の域を出ないわけですね、正直言いまして。それを、多分そう感じられたと思うということを言い切ることもできないし、また違う受け取り方もあるんじゃないかな。やはりこれは、ある意味での極限の状態の中での人間の思いでありますから、それを断定的に今私が言い切ることは正直なかなか難しいな、そう思います。

保坂(展)委員 実は、この問題のポイントは、今非常に抽象的な議論をしているようですが、ここに尽きると思うんですね。

 もう一つの使い方というのは、両方とも投げるということですよ。つまり、敵と戦うということですね。では、住民は、ふだんから手りゅう弾の扱いになれていたかどうか、あるいは投てきする訓練などをしていたかどうか。記録を読む限りないんですね。先ほど言ったような、一つは敵に向かって、一つはみずからというようなことは言われていたという証言は多々あるわけです。

 だから、そういう証言が、沖縄の集会では、じいちゃん、ばあちゃんがうそをついていると言うんですかという高校生の訴えもありましたけれども、つまり、一つは自決用にというふうに受けとめたとしても不思議ではないのではないかというふうに私は言っているんです。いかがですか。

渡海国務大臣 決して否定をするものではありません。そういうふうに受けとめる方もいらっしゃっただろうし、その状況の中でそれぞれがいろいろな判断をされたんだろう。一番しょっぱなに、保坂先生、割と親しくしていただいて甘えて言いますが、先生ならとおっしゃったものですから、これはなかなか難しいなというふうに思います。

保坂(展)委員 では、続いてですけれども、慶良間諸島で、渡嘉敷島以外にもそういった集団自決は起きているんですね、何カ所かで。ところが、集団自決が起きていない島もあって、前島という島なんですけれども、そこには軍隊がいなかったんですね。つまり、軍隊がいないということと集団自決がなかったということと関係があると私は思うんですね。

 というのは、武器弾薬というのは厳重に管理されているわけで、だれもが自由に持ち出すような状況には当時とて絶対なかっただろう、軍が管理している手りゅう弾ですから。その軍が管理している手りゅう弾を島の人が、軍に参加をした防衛隊、この人たちが配ったという記録があるわけで、手りゅう弾の出どころはどこなんだというと、軍なわけですね。

 つまりは、軍が沖縄戦の一番の、最先頭の、これは特攻作戦だったと思うんですが、こういう中で陸上戦など想定していなかった、しかし、手りゅう弾はあった。その手りゅう弾を防衛隊を通して渡したのか、その辺は明確に道筋は私も記録上見つけられないんですけれども、受け取ったという証言はある。一方で、武器は厳重に管理されていたというのも、当時の軍隊、今もそうでしょうけれども、鉄則であるというところから見ると、軍が島に入るということ、そして軍が管理している手りゅう弾であるということ、その手りゅう弾が住民に渡るということを考えると、やはり大きな関係があると思わざるを得ないんですね。そこはどうですか。

渡海国務大臣 それは先生のおっしゃるとおりだと思います。基本的に、住民がもともと手りゅう弾を持っていたということはないわけでありますし、軍の関与がなかったということは、これはだれも言っていないというと語弊があるかもしれませんが、これは検定でもそのことは認めた検定になっておるわけでありますから、軍が関係なくそういうことが起こったということはないというふうに判断しております。

保坂(展)委員 それでは、その検定の内容に入りますけれども、清水書院の日本史Bでは、当初には、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。」という部分が、検定意見、これは「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現である。」ということで、「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた。」というふうに変化したんですね。

 これは、他の議員も指摘しているかもしれませんが、渡海大臣、よろしいでしょうか、つまりは、すべての集団自決は日本軍によって、例えば軍の命令によって強制され行われたとは教科書も書いていないんですね、「なかには」ですから。多分その幾つかのケースでは、あるいはそれはパーセンテージはわかりませんけれども、これだけ読むと、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。」ということですから、これはどういう誤解が生じるんでしょうか。

渡海国務大臣 この検定意見は、すべてにおいて軍が強制したものではなかったという、誤解が生じるおそれがあるということでつけられたという報告を受けております。

保坂(展)委員 私も決算委員会などで、渡海大臣に本当に厳しいアドバイスというか激励もいただいて、非常に論理的に、もうおわかりになっていることだと思います。私の意図はわかると思うんです。大臣という立場でなかなか答弁は難しいのかもしれませんが。

 もう一度、よろしいですか。今の大臣の答弁をそのまま当てはめても、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。」という日本語は、つまり、すべてというふうには言っていないわけですね。そうすると、どういう誤解が生じるんでしょうかということについて、もう一度お答えいただけるでしょうか。

渡海国務大臣 強制という言葉の意味をどういうふうにとるかということで誤解があると解釈をされたんじゃないかというふうに報告はいただいておるところでございます。集団自決をされた沖縄の住民すべてに対してその自決の軍命が下ったか否かを断定できないという判断に基づいてあのような検定がなされたというふうに報告を受けております。

保坂(展)委員 そうすると、論理的に進めていくと、今大臣がおっしゃったように、強制というところが引っかかったということですね、強制。

 そうすると、日本軍によって集団自決を強制された人はいなかったんですか。つまり、すべてそうだったという話じゃなくて、沖縄戦の中で日本軍によって集団自決を強制された人もいたんじゃないですか。これは県民大会の皆さんの主張なんかで大きく沸き立っているところなので、お答え願います。

渡海国務大臣 私が理解しておりますのは、報告を受けていますのは、すべてにおいてそういう強制、一部においてもその強制みたいなものが行われたかどうかがすべてにおいて断定をできない、断定をできないから誤解をするおそれがある、そういうふうに検定がなされたというふうに報告を受けております。

保坂(展)委員 伊吹文科大臣は、議事録を読むと、すべての集団自決が軍によって強制されたということではないという趣旨の答弁をされているんですね。

 今のお話は、「人もいた。」ということですから、つまり、集団自決の中にはいろいろなスタイルがあるでしょう。しかし、その中で、軍に強制された人もいたという表記が誤解だということであれば、当時の日本軍に集団自決を強制されたケースは文部科学省としては今のところ確認していない、つまりは、それがあったということは言えない、教科書で書くのはやはり誤解を招く、そういうことなんですか。

渡海国務大臣 ちょっと言葉が足りませんでした。申しわけありません。

 伊吹さんが説明をされていたのが、一応この検定意見のつけた理由でございます。すべてにおいて強制されたということは断定できない、これは教科書検定委員会において付された意見でございますから、そういうことで付されたということでありまして、検定委員会で調査書が出されて、検定委員の、審議委員の先生方が、一応これでいいだろう、そういう手続においてこの検定意見が付されたというふうに承知をいたしております。

保坂(展)委員 ですから、軍の関与というのはお認めになったけれども、私も、もうああいう戦時中の極限状態ですから、その強制なりなんなりということが文書とか口頭命令という形じゃなくても起こったんだと。それは伊吹さんが言うように、すべて、あらゆるケースにおいて軍が強制した、それは言えないかもしれない。しかし、その伊吹大臣の話は、すべてそうじゃないという話であって、部分的にはあるという話じゃないですか。そうなれば、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。」というのは余り誤解は生まない表現なのかなと。

 沖縄県民の方ももっと違う記述の、これはわかりやすいからこの例を出したんですが、大臣、教科書検定の検定意見というのは、一度ついてしまえば未来永劫変えられないんですかね。文部科学大臣の当委員会における答弁と、教科書調査官の意見ですか、これとどちらが重いんでしょうか。

渡海国務大臣 どちらが重いかというよりも、検定制度というものは、私が諮問はします、答申はしますが、その中身について、要は、政治的な介入といいますか、自分の意見でもってこれこれこういう検定意見をつけろとか、こういうふうな変更を行いなさいということはできない、できない仕組みになっている。また、だからこそ政治的中立なんだというふうに理解をいたしております。

保坂(展)委員 今の議論を聞いていて、池坊副大臣、やはり沖縄の人たちの、私も実は百回以上沖縄に行っているんですが、沖縄戦の話も随分聞いたつもりではありましたけれども、今回その現場に行って、もう本当に背筋が凍るというか、まだまだその当時の生々しい記憶を抱えて、高齢になりながら、もうむせび泣きながら、やはり自分の手の中で子供が死んでいった様子であるとか、そのときの何とも言えない恐怖と、そして、何が起こったんだろうか、次々と人が亡くなっていくという話を聞いて、ああ、私もわかっていなかったなと思いますよ。

 ですから、沖縄の人たちがこれだけ大勢集まり、そして声を上げたということは、私は技術的な問題じゃないと思うんですね。もう一度沖縄戦であったことというのを、しっかり事実をきちんと見て、そして、先ほどの検定意見は、軍が強制した人、場合もあったということについても誤解があるというふうについているわけですから、そうすると、論理的に詰めていけば、軍による強制はなかったということを文部科学省は、この検定で歴史を塗りかえてしまうんだ、現にこういう声が上がっているわけですね。そして、検定意見を撤回してほしい、そして記述を復活してほしい。記述の復活については訂正申請というようなことが言われていますけれども、先ほど言ったように、一回つけた検定意見は残るわけですね。

 これについて、今しかできない議論だと思うんで、どうですか、副大臣。

池坊副大臣 私は、日本軍が強制したかどうかはわかりませんが、関与したことは事実ではないかというふうに思っております。

 検定委員会が一度決めたこと、それは検定委員会がなさったことですから、私どもが、それが間違っているとか、それを訂正しろとか言うことは、やはり民主主義、公平性といった視点からは正しいというふうには思わないんです。

 県民の方々のお気持ちを考えますときに、教科書会社も、これはもうちょっと考え直した方がいいんじゃないかというような動きも今あるようです。そういう申請を受けましたならば、もう一度検定委員の方々がこの問題について審議なさるということは、私はあってしかるべきというふうに思います。文部科学省がそれをするべきだというふうなことの指示はしてはならないのではないかなというふうに今考えております。

保坂(展)委員 過去、検定制度が今と違った八六年の新編日本史のときには、検定が終わって、そして、これは見本本ですかね、そういった本が最終的に出る前に、これは当時の、八六年ですから、その前の近隣諸国条項ができたときの教科書問題を踏まえて、異例ではあったけれども、検定そのものを修正したという経過があったようであります。

 渡海大臣、前予算委員会で、文部科学省の検定制度にも幾多問題もあり、その透明化ということをおっしゃっていますね。ただ、この沖縄戦の集団自決のこれだけ重い実態について、それは、私は研究していますよという方は、委員の中に必ずしもいらっしゃらなかった。その調査官が論拠とされたのは、訴訟が起こったりしたことも配慮したということでありますけれども、もっと実態を踏まえた、これはもう国民的な議論、特に沖縄の人たちの問題であるとともに、日本にいる我々がこれからどういう国づくりを目指すのかという問題でもあり、沖縄の問題で沖縄の方の話ということじゃないんですね。

 そういうことから考えると、一体何があったのかと、今渡海大臣ともちょっと議論がありましたけれども、一体何があったんですかということを、これは体験者が存命のうちにしっかり聞いておく、そして、もし事実を、文科省の検定意見が誤っていたのであれば、あるいは踏み込み過ぎたり、あるいはその本質からずれたところにあったのであれば、これはどうしたらいいのかということを本気で考えていただきたいんですね。

 今の制度では、検定意見がついたら、これは今、訂正申請を待つということで、検定意見そのものは残るわけですね。ただ、沖縄の人たちが大きく声を上げたのは、この検定意見そのものを撤回してほしいと。渡海大臣がおっしゃっているのは、それは政治介入になるから、これはなかなか難しいんですよと。しかし、これだけの議論があって、今新たに随分証言も出てきました。そうすると、新たに現時点における認識を反映させて、やはり教科書の記述というものを正確なものにしてほしい。そのための制度を見直したりすることも必要なんじゃないですか。

渡海国務大臣 問題は、大きく分けて二つあると思っております。

 一つは、今先生おっしゃいましたように、最終的にこの問題に今回どのように対応していくかということでございますが、これは今池坊副大臣からもお話がございましたように、すべての、五社から訂正申請が出るということで、手続の相談がございます。これについては真摯に対応していきたい。そして、やはりこれは再度審議会の委員の先生にお諮りをして、今先生がおっしゃいましたように、この間の状況の変化というものがあるわけでございますから、そのことも踏まえて最終的に御判断をいただくということが適当であるというふうに考えております。

 もう一点は、この検定制度が、今回のことを受けて今のままでいいのかどうか、これは幅広の議論と、それからもう少し絞った、透明性を上げていくという議論と二つあると思いますが、後者の方は、ぜひ私の責任においてやらせていただきたい。それは、やはり検定というのは静かな環境のもとでやっていただかなきゃいけないということは、これは先生も御理解いただけると思います。そのもとで、今回もし出されて、終わったら、その終わった段階でしっかりと途中の経緯も、今までは全部これは非公開であったわけですが、部会の議論も少しは出していただくようなこともお願いをしたいというふうに考えているところでございます。

 それと同時に、この検定制度、最後の改正が平成元年ですかね。それら少し時間がたっておりますので、少しいろいろ検討するのも必要かなと考えております。

保坂(展)委員 どうも、文科省からこういった調査意見書ですか、こういうのをいただいて、見ると、これは一つ一つ議論し出すと切りがないんですが、調査官の方が、この会社の何カ所というのを出して、それによって流れ作業で検定が進んでいくというふうになっているようですが、これだけ問題になって、例えば訂正申請が、今御相談があったということですけれども、審議会でお話しになったら、その審議委員が調査官に対して、この意見についてまた意見を出すというような回路がないんですね。調査官が意見を出して、これはずっと永劫残るんだけれども、審議会が相談して、例えば、この意見について、こうですよ、誤解を与えていないですよという意見を出すようなこともあっていいと思います。それについてだけ。

佐藤委員長 質疑の持ち時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

渡海国務大臣 それは、原則的に、調査書は出しますが、この検定意見でいいかどうかというのは審議会で審議をするわけですね。今回、特段な意見が出なかったということで、してないじゃないかという御指摘がありますけれども、それは一応そういう手続を踏んでやっておるわけですから、審議会の委員が、これじゃおかしいよ、この検定意見じゃだめだよと言う機会は現行の検定制度の中でも担保されているというふうに考えます。

保坂(展)委員 では、終わります。

佐藤委員長 以上で保坂展人君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 保坂委員に続きまして、私も教科書検定問題について質問をいたします。

 先日の大臣あいさつの中で渡海大臣は、「沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については、沖縄県民の思いを重く受けとめるとともに、教科書検定の公正中立性の確保に十分意を用いつつ、」というふうにお述べになりました。大臣は、今回の教科書検定において、厳正かつ公正中立に行われたという御認識でいらっしゃいますでしょうか。

渡海国務大臣 所定の手続に基づいて行われたというふうに報告を受けております。

石井(郁)委員 私は、公正中立に行われていれば、今日のような、こういう沖縄の県民挙げての皆さんの御要望とか、あるいは大きな社会問題というふうになってないだろうと思うんですね。そういう点で、きょうは幾つか確かめもさせていただきたいと思うんですけれども。

 まず、先日、予算委員会で、我が党の赤嶺政賢議員が明らかにしたところでございますけれども、文科省職員の教科書調査官が、沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある表現という検定意見をつけるという、これがその原議書ですよね、局長までの印鑑が押してありますけれども、これを作成すると。この案を検定審議会の小委員会にかけて、これが検定意見となって教科書会社に伝わるということになるわけですが、しかし、沖縄の集団自決に対する軍の関与について、その審議会の専門委員、臨時委員などから意見があったわけではない、教科書調査官四人の合議によって作成されたということがわかりました。審議会の小委員会でも総会でも、それについて意見も出なかったと。しかし、この検定意見によって、今問題の、「日本軍に集団自決を強制された人もいた。」という最初の記述が、「集団自決に追い込まれた人々もいた。」というふうに改められたり、要するに、誤解を招くということで改められたということになって、日本軍による強制とか関与ということは削除されたんですよね。これが今回の一連の経過だというふうに思います。

 ですから、このように見ていきますと、教科書検定審議会というのは隠れみのになっていたんじゃないのか。これは文科省による自作自演の押しつけではなかったのかということが明白になったというふうに私は思うんです。

 そこでお聞きしますけれども、では、教科書調査官の日本史担当の方のお名前、出身大学、学部、専攻学科を教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 お尋ねの件につきましては、個人情報が含まれますため、本人の了解がとれた範囲でお答えすることをお許しいただきたいと存じます。

 現在、日本史を担当する教科書調査官は四名でございます。まず、照沼康孝主任調査官は東京大学大学院を修了しております。それから、村瀬信一調査官は東京大学大学院を修了しております。それから、高橋秀樹調査官は学習院大学大学院を修了しております。それから最後に、三谷芳幸調査官は東京大学大学院を修了してございます。以上が、現在、日本史を担当する教科書調査官四名でございます。

石井(郁)委員 学部、専攻をおっしゃいませんでしたけれども、これは本人の了解が得られなかったということなんですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 各調査官の出身の学部、学科や専攻につきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

石井(郁)委員 ここで個人情報を盾にとられて。おかしいですよね。だって、文科省の職員なんですから。何で卒業学部、学科、専攻を言えないんですか。しかも、明らかにしてほしいと。

 これは大事なんですよ。何で個人情報、了解を得ないんですか。得て断ったのなら、それはそういうこともあるでしょうけれども、得もしない。これが文科省のやり方なんですか。私は大変問題だというふうに思います。

 大学院までしか言われませんでした。大事なのはやはり学部、専攻なんですよ。主任の照沼氏は東大の国史学科卒業です。村瀬信一氏も東大の日本史学科卒業です。このお二人が今当面問題にしたいことなので、私の方から申し上げておきたいと思うんですけれども。

 要するに、この近現代史専門は照沼氏と村瀬氏なんですよね。お二人です。このお二人は、後で問題にしますけれども、扶桑社発行の教科書監修者である伊藤隆氏が一九七一年から東大文学部助教授を務めていた時代の教え子であります。師弟関係なんですよ。そのことを一点お尋ねしたい。

 そして、照沼氏及び村瀬氏について、調査官になるに当たってはこの伊藤隆氏からの推薦というのがあったんじゃないんですか。あるいは、両調査官の採用の経緯を教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 それぞれの教科書調査官の専門分野に関しまして、だれから指導を受けたかということにつきましては、個人情報に該当するため、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、教科書調査官の職務といたしましては、学問的、教育的見地から教科書が適切なものとなるよう、公正かつ中立的な立場から調査を行っているところでございます。

 次に、推薦があったのかというお尋ねでございますけれども、教科書調査官に関する選考の際、推薦書があったかどうか、また、だれから推薦があったかについての資料につきましては、人事管理に関する個人情報でございまして、お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

石井(郁)委員 非常に何か、隠そう隠そうとするところが見えるわけですけれども、これ自身が非常に問題だというふうに思うんですが、伊藤隆氏と照沼氏、村瀬氏は、伊藤氏が東大文学部助教授だったときにこの二人との師弟関係があるわけですね。

 それだけじゃないんですね。もう一つの問題は、この伊藤隆氏と照沼氏は、一九八三年には「陸軍 畑俊六日誌」という共同著作も出しています。共同著作です。

 それから、村瀬氏も、文科省の科研費補助金が出ている、平成九年から十年、日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究及び平成十一年度、十二年度の日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究、そういう研究に参加していまして、これは伊藤氏が統括責任者なんですね。そのもとに共同研究を行っているわけであります。

 そして、二〇〇〇年の四月、「新しい歴史教科書」、これは文科省に申請本として出されましたけれども、このとき同時に村瀬氏が教科書調査官になっています。照沼氏とともにこの教科書の検定に当たっております。

 こうした事実、文科省はお認めになりますか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 伊藤隆氏が受けていた科研費の研究グループに共同研究者として村瀬教科書調査官が参加していたのは御指摘のとおりでございます。著書につきましては承知をいたしておりません。

 ただ、先ほども申しましたように、教科書調査官のそういった関係と現在の職務とは関係がないものでございまして、教科書調査官の採用に際しましては、学問的、教育的見地から教科書が適切なものとなるよう公正かつ慎重に調査を行うという教科書調査官の職務にかんがみ、慎重に選考を行っているところでございます。

石井(郁)委員 次に、審議会について伺いますが、教科書検定審議会に日本史の小委員会がありますね。この日本史の委員の、近現代の専門家についてお名前を明らかにしてほしいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会の委員につきましては、古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をしているところでございます。

 審議会委員の氏名の公表の扱いにつきましては、正委員、臨時委員につきまして氏名や職名を公表しておりますけれども、静ひつな環境における委員の自由闊達な意見交換を確保するため、委員の分属については公表していないところでございます。

石井(郁)委員 何でこの審議会委員の、専門委員の名前は出せないんですか。おかしいでしょう。公正中立な審議会だ、そこで学術的に審議を行っているというわけですから、どういうふうにそれが行われたのかという点で、どなたがその専門委員なのかということは最低必要な、明らかにすべきことだと思うんですが、おかしいんじゃないですか。

 この点は、大臣はいかがお考えですか。

渡海国務大臣 この委員の先生方につきましては、実は名前が知れたことがありまして、非常に、家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして、そして、そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして、今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います。

 名前を出さないから中立、公平、公正にならないということではないというふうにも考えます。その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

石井(郁)委員 しかし、今大問題の教科書問題、教科書検定のあり方をめぐっての議論をしているときですから、やはり調査官、そして審議会の委員、どういう方がいらっしゃるのかというのは、私、隠す必要はどこにもないと思うんですよ。それは、マスコミが来るというのは別の問題としてあると思うんですけれども、やはりこの委員会の審議のためにはぜひそれは公にしていただきたい。

 これは、委員長に、ぜひお取り計らいをお願いしたいと思いますが。

佐藤委員長 ただいまの御要求につきましては、理事会において協議をいたします。

 では、質疑を続けてください。

石井(郁)委員 私が調べてみたところ、日本史小委員会で近現代史の審議委員四人の方がいらっしゃるんですけれども、一人は駿河台大学教授の広瀬順晧氏、九州大学大学院教授の有馬学氏、国学院大学教授の上山和雄氏、筑波大学教授の波多野澄雄氏、これは間違いありませんか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 審議会の委員の氏名につきましては、正委員、臨時委員とも氏名及び職名を公表しておりますけれども、その分属、日本史小委員会にだれが属しているかということにつきましては、公表を差し控えさせていただいているところでございます。

石井(郁)委員 非常にかたくななんですけれども、この四人でこれは間違いないと思うんですね。もし間違っていたら大変大問題になりますけれども、間違いないという前提でお話をさせていただきます。

 さきに挙げました伊藤隆氏、統括者の文科省の科研費の、共同研究でありましたけれども、日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究、それから日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究、ここには、今申し上げました有馬学氏、広瀬順晧氏、そして先ほどの調査官の村瀬信一氏が共同研究者として参画をしているわけであります。だから、まさに教科書調査官、審議会委員の中に伊藤門下生がきちんといらっしゃるということなんですよ。

 それから、村瀬信一と照沼康孝、有馬学氏らが共同で執筆した「近代日本の政治構造」という本があるんですけれども、この中で有馬氏はこのように述べていらっしゃいます。これは後書きなんですけれども、本書の執筆者は、いずれも先生が、先生は伊藤隆氏です、東京都立大学、東京大学に在任中学恩に浴し、学術事業に何らかの形で参画するという貴重な経験を与えられた、伊藤政治史学として結実したのであると絶賛をされているんですね。

 こうして見ますと、教科書調査官は四人ですよ。この四人のうち二人、また審議会委員の近現代史の専門家四人のうち二人が伊藤隆氏の門下生です。あるいは共同研究者、共同著作者です。どうでしょうか。これで検定が公正中立に行われたと言えるんでしょうか、大臣。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 教科書調査官の採用に当たりましては、それぞれの分野に対応する専門の学識を有するかどうか、また、視野が広く、初等中等教育に関し理解と識見を有するかどうかなどの能力、適性を総合的に判断して、大学の教授等や中学、高校教諭等から担当の初等中等教育局におきまして慎重に選考を行い、採用いたしているところでございます。

 教科書調査官の他の人との関係が教科書検定の公正中立性に影響を与えるということはあり得ないと考えておりまして、今回の検定に当たってもそのようなことはなかったと考えております。

石井(郁)委員 人選が公正中立とか慎重に行われているという話ですが、そういう形のことではなくて、選考の経過もおっしゃらないわけですから、そういうことではなくて、今挙げました事実そのもの、こういう関係の方じゃないですか、このことを私は申し上げているんですよ。これをしっかりと見ていただきたいと思うんですね。これは重大な問題をはらんでいるんです。

 これは先ほども申し上げましたけれども、扶桑社発行の新しい歴史教科書、これは検定を合格したときには国内外から非常に厳しい批判というか反響がありまして、大問題になりました。この歴史教科書というのは、自虐史観からの脱却を掲げました。さきの戦争は自存自衛の戦争、アジア解放の戦争という、靖国史観と私たちは言っていますけれども、に基づくものでして、これまでの村山談話、河野談話など日本政府見解からも到底認められない、逸脱したものでした。

 実は、この新しい歴史教科書の監修者が伊藤隆氏なんです。これはしっかりここに名前が出ています、監修者です。そして、この歴史教科書の検定に当たったのが照沼氏であり村瀬氏です。まさに伊藤門下生のお二人なんですよ。どうですか、これは。ちょっと余りにも何か、こういうことがあっていいのかと言わざるを得ません。

 伊藤隆氏について私はもう少し付言させていただきたいんですけれども、安倍内閣のときには、戦後レジームからの脱却、教育再生ということが掲げられましたけれども、それをバックアップする教育改革の、日本教育再生機構というのができましたよね。伊藤隆氏はその設立代表発起人です。そして、今日、教育再生機構の教科書改善の会というのがあるんですけれども、歴史教科書の編集座長になっていらっしゃる方です。

 「教科書改善に向けての私どもの思い」というのをこの会が発表しておりまして、日本教育再生機構の八木秀次理事長はこのように言っています。「捏造が明らかないわゆる従軍慰安婦の強制連行については記述しません。南京事件については事件そのものが虚構であるという有力な説があることにも言及します。その意味で、扶桑社版教科書はじめ、これまでの教科書改善運動の精神は正しく継承して参ります。」だから、こういう立場の教科書こそ発行していきたいということを表明している団体であります。

 だから、従軍慰安婦の強制連行はもう載せない、これはかなり教科書から削られていきましたけれども。南京虐殺についても虚構だというふうに言っている。それから、沖縄の集団自決については、この教科書には集団自決という言葉もないんですよ。沖縄戦で何人が亡くなったという数字はありますが、集団自決という言葉さえない、こういう教科書です。だから、こういう教科書の発行を続けようとしていることですよね。

 だから、私は、この団体、こういうグループというのは、本当に歴史の事実をゆがめようとして、そういう教科書を子供たちに押しつけようとしているのではないかと言わざるを得ないわけです。

 問題は、こういうことにこたえるような教科書調査官あるいは審議会委員、専門委員が配置されているということが私は重大ではないのか。こういう人たちが検定意見をつけているんだ、そして、沖縄の集団自決に対する軍の関与の削除につながっているんだと言わざるを得ないわけですが、これはまさに文科省による教育内容への政治介入そのものと言わざるを得ません。これはぜひ大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

渡海国務大臣 先生が感じておられるような、そのものではありませんが、似たような、疑義を持たれないかということで、私も、調査官等がいつ採用されたのか、それから、どういうことで配置をされているのかということで、随分いろいろ聞きました。

 ちょっと今手元に資料がありませんが、要は、今回こういうことをやるためにそういう陣容が組まれたということがないのかという疑いの目を持って実はチェックをさせていただいたんですが、それはそうではなかったですね、少なくとも。例えば村瀬氏でいえば、今ちょっと、そっちから後で説明をさせますが、十年ぐらい前に採用されているわけでありますし、去年までの検定にも参加しているわけですから、その限りにおいてはそういうことではないというふうに考えております。

 ただ、なお、そういう力が働いてはいけないわけでありますから、私の立場からも、今後とも、公正、公平、中立に審議が行われるようにいろいろな配慮、また指導してまいりたい、そういうふうに考えております。

金森政府参考人 補足をさせていただきます。

 日本史を担当する教科書調査官四名が採用された年でございますけれども、照沼康孝主任教科書調査官は昭和五十八年に採用になってございます。それから、村瀬信一調査官は平成十二年に採用になってございます。それから、高橋秀樹調査官は平成十二年の採用でございます。それから、三谷芳幸調査官は平成十四年の採用でございまして、いずれも今回の問題の以前に採用された調査官でございます。

石井(郁)委員 私は、今の御説明というのは、本当に何というか、文科省は歴史を踏まえていらっしゃるのかなと改めて本当に思ったんですけれども。

 教科書調査官が教科書行政にどのようにこれまで介入してきたか、あなた方が一番御存じじゃないんですか。これは歴史がありますよ。

 一九九八年、約十年前ですけれども、福地惇という方は教科書調査官でしたけれども、この方も伊藤氏の教え子だったんですよね。そして、このときに、近隣諸国条項があるから、日本は侵略戦争をして悪かった、書いていないとまずい、こういう発言をして調査官を解任されているんですよ。舌禍事件というのを起こしているんですね。今その方は新しい歴史教科書をつくる会の副会長を務めています。

 等々いろいろあるんですけれども、系統的に、やはり教科書の内容を、ある特定の考え方といいますか、特定の事実を持ち込みたいという人たちが日本の教科書問題をずっと起こしてきたんじゃないんですか。それはもうざっと見ただけでも、教科書調査官制度そのものが一九五六年から始まりました。これ自身もちょっと始まり方がおかしいんですけれども。その前年に憂うべき教科書問題というのがあって、それに呼応するかのように、日本の教科書がちょっと平和と民主主義を強く出し過ぎている、もとに戻せというような形で出してきたんですけれども、例えば平泉学派、天皇中心主義を信奉するという皇国史観の東大朱光会というのがあるんですけれども、それに所属した村尾次郎氏、この方が主任調査官になっているんですよ、この当時。それ以降、朱光会の山口康助氏、時野谷滋氏など、ずっとこういう考えの人たちがやはり調査官に座ってきた。そして今、戦争で侵略したということを、侵略という言葉はやめよう、進出だと、書きかえの事件があったじゃないですか。これも国会で大問題になりました。国際的にも問題にもなりました。

 だから、一貫してこの侵略問題、そして戦争責任、あるいは日本軍の関与という問題については、先ほどの従軍慰安婦のことについても非常に激しいこのことがあって削除されまして、今は載らなくなりましたよ、教科書から。そして、今度は集団自決の問題だという流れで来ているんですね。ここはもう紛れもない歴史の事実です。

 私は、だから、今回の件についての、先ほどもお話ありましたけれども、今回の検定意見、こうした文部科学省の中にある、やはり偏った教科書調査官の人選というのがあります。歴史を逆行させる地下水脈のようなものがどうも一貫して流れているんじゃないかと言わざるを得ないんですね。それがやはり政治介入を起こして、政治問題化しているわけですよ。ここをしっかりと見ていただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

渡海国務大臣 よく政治介入というお話が出るんですが、実は、ある政党の代表が来られましたときにも、では具体的にどういう政治介入があるのか、どういう力が実はそこに働いてゆがめられたのかということを言っていただければ我が方で調査をいたします、こういうふうに申し上げました。それ以上お言葉はなかったわけでありますけれども。

 基本的に、先生、今調査官にお触れになりましたが、当然、これは審議会というのは審議の委員もいらっしゃるわけでございまして、調査官の仕事は、もちろん検定意見のたたき台、調査書というのを出すわけでありますが、それに基づく資料もこういうものをそろえましたというのが基本的な仕事でございます。あくまでその部会において審議委員の先生方がそれをそのままつけるかどうかという作業もされるわけでありまして、そういったことを通じて中立公平、一部の方が例えばそういう色合いが見えるということだけで物事がそういうふうに流れているというふうに断定されるのは、ちょっといかがかなというのが正直な感想でございます。

石井(郁)委員 最後、時間がありますので。

 今問題になっていますのは、教科書検定の審議会がある、これがあるから公正中立が保たれているというのが伝わっているわけですけれども、本当にそれがきちんとした担保する機関になっているのかどうか。これは一教科書検定審議委員が発言をされていらっしゃいますけれども、独立機関ではない、やはり調査官の意見というのがかなり強く作用しているというようなこともおっしゃっていますから、そういう権限を本当に調査官がどこまで持ち得るかという問題としてもありますけれども、本当に教科書検定制度というのが公正中立だとは到底言えない中身になっているということが大事だということを申し上げているわけです。

 最後になりますけれども、これは今回の一連の問題について、教科書会社の申請があれば、それで一定、記述をもとに戻すようなことがあり得るような発言に聞いておりますけれども、私は、やはり今回の検定意見、今のこういう申し上げました中身で出てきている検定意見そのものが非常に問題を持っているわけですから、この撤回以外にないわけですね。そこは私は文科省が本当に蛮勇を振るってというか、誤りを正すというか、そのことでこそ、きちんと公正中立な教科書行政をやる省として、大臣がしかるべき責任を果たしていただきたいというふうに強く申し上げたいと思います。

 最後に、大臣のその点での御答弁をいただきたい。

渡海国務大臣 検定そのものはやはりちゃんと手続に基づいて行われたと何度も申し上げております。そして、この検定制度、民間の教科書会社がとにかく教科書をつくって、それに間違いがないかどうかということをチェックする、こういうことを審議会というある意味の第三者的な立場の専門家、これが学術的な、専門的な見地から行っていただくという制度でございまして、我々がこれを撤回しろとかそういうことが言えないというところに実はこの制度の中立性、公平性が保たれている一つの理由もあるわけでございまして、その点を御理解いただきたい。

 ただ、先生も今いろいろなことをお話しになりました。その中で、やはり我々も考えなきゃいけないこともあるなというふうに思っておりますので、審議会のあり方等については少しいろいろと検討をしてみたい、透明性も少し上げるように工夫をしてみたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 これは先日の朝日新聞だったんですけれども、文科省の、いつごろでしょうか、教科書検定課長の方が登場されていましたよね。それでこうおっしゃっていましたよ。「当初の意見がなぜついたのか、説明が十分されているわけではない。この経過をどう社会に説明するのかは、文科省に課せられた宿題だ。」やはりそうおっしゃっているじゃないですか、中の方自身が。国民はやはり納得していませんよね。何でこういう検定意見がついたんだ、急に今ついたのかという問題ですよ。

 だから、きちっとやはり透明性そして公正な教科書行政を本当にするというところが文科省に今課せられているんだということを重ねて申し上げまして、きょう申し上げた幾つかはぜひ検討していただきますようにお願いをして、質問を終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時八分散会


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