衆議院

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第11号 平成20年5月23日(金曜日)

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平成二十年五月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 佐藤 茂樹君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小渕 優子君

   理事 塩谷  立君 理事 鈴木 淳司君

   理事 渡辺 具能君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 富田 茂之君

      阿部 俊子君    井脇ノブ子君

      石原 宏高君    江崎 鐵磨君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 紘一君    亀岡 偉民君

      佐藤  錬君    鈴木 恒夫君

      田中 良生君    中森ふくよ君

      永岡 桂子君    原田 令嗣君

      平口  洋君    福田 峰之君

      藤井 勇治君    保坂  武君

      馬渡 龍治君    松野 博一君

      山本ともひろ君    田島 一成君

      高井 美穂君    寺田  学君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学大臣政務官    原田 令嗣君

   文部科学大臣政務官    保坂  武君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   参考人

   (慶應義塾大学文学部教授)            糸賀 雅児君

   参考人

   (日本女子大学人間社会学部教授)         田中 雅文君

   参考人

   (社会教育推進全国協議会委員長)

   (千葉大学教育学部教授) 長澤 成次君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     永岡 桂子君

  近藤 基彦君     石原 宏高君

  藤田 幹雄君     亀岡 偉民君

  二田 孝治君     藤井 勇治君

  松本 大輔君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     近藤 基彦君

  亀岡 偉民君     藤田 幹雄君

  永岡 桂子君     田中 良生君

  藤井 勇治君     二田 孝治君

  寺田  学君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 良生君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、社会教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学文学部教授糸賀雅児君、日本女子大学人間社会学部教授田中雅文君及び社会教育推進全国協議会委員長・千葉大学教育学部教授長澤成次君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず糸賀参考人にお願いいたします。

糸賀参考人 おはようございます。慶応大学の糸賀と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速ですが、社会教育法等の一部を改正する法律案について意見を述べさせていただきます。お手元に資料を配らせていただきました。それをごらんになりながらお聞きいただきたいと思います。

 今回の改正案は、昭和二十五年前後に相次いで制定されたこの三つの法律についての改正案でございます。図書館法に関しましては、新しい条文がつけ加えられるということはこれまでなかったことでございまして、そういう意味では画期的な法改正だというふうに考えます。

 私は、きょう、大きく前半でこの改正案に対する期待ということを申し上げ、後半で残された課題を幾つか指摘したいというふうに考えております。

 まず初めに、この改正案への期待でありますけれども、社会教育を通じた情報化の進展への対応がこれによって促進され、国民の情報リテラシーの向上につながると思われます。

 具体的には、改正社会教育法第五条第十号に、教育委員会事務に情報化の進展への対応が盛り込まれました。また、改正図書館法第三条第一号に、図書館資料として電磁的記録を収集し、提供することが書き加えられました。さらに言えば、改正博物館法の第二条第三項におきましても、博物館資料としての電磁的記録が取り上げられております。こういったことは、それぞれの施設におきまして情報化の進展を促すことが予想されますし、特に図書館に関しましては、地域の情報拠点として、各種データベースの導入や図書館のハイブリッド化の促進が期待されます。

 次に、大学養成課程と研修機会の充実により、司書及び学芸員の資質が向上することが期待されます。

 具体的には、改正図書館法第五条第一号によりまして、大学での科目履修が明示されました。及び、同じ法律の第七条で、国と都道府県による司書、司書補の研修の努力義務が規定されております。同じく改正博物館法第七条におきましても、国と都道府県による学芸員及び学芸員補の研修の努力義務が規定されております。こういったことによりまして、図書館や博物館への高度化、多様化する学習ニーズに対し、より適切に対応することができるようになるものと思われます。

 こうした意味で、私は、この法案の速やかな成立を期待するものであります。

 しかしながら、これですべてが解決するというわけではありません。私は、図書館の政策を中心として、幾つか今後の課題を指摘したいと思います。

 まず初めに、図書館振興に向けた社会教育関係予算の一層の拡充が必要であります。

 具体的に申し上げますと、図書館の利用度は非常に高い。抜群に高いと申し上げても過言ではありません。具体的には、二枚目にあります表をごらんいただきたいと思います。

 この表は、生涯学習施設等の利用状況を全国から抽出して調査したものでございます。平成十七年度に文部科学省の委託調査で実施されたものですが、これを見ていただきますとわかるとおり、図書館がほかの生涯学習施設の中でも群を抜いて高い利用率を示しております。具体的には、過去一年間に四三・二%の人が図書館を使っている。続いて博物館・美術館が二一・二%、公民館が一九・二%と続いておりますが、図書館は博物館・美術館の倍の利用状況を示しております。ただ、残念ながら、このグラフの一番右側に「いずれも利用しなかった」という方が三五・五%いることが示されておりますが、それにしましても、図書館が各種の生涯学習施設の中で利用度が高いということがこれでわかります。

 この下の方には、具体的に、性別あるいは年代別、職業別、地域別の利用状況も示されております。

 中でも私が注目したいのは、年代別の中の、団塊世代の利用状況であります。団塊世代の利用状況を見ますと、図書館がやはり極めて高いことがわかります。十代の学生が多いことも多いですが、そのほかの中では、実は団塊世代が一番図書館をよく使っているということが示されております。ちなみに、一番右側の「いずれも利用しなかった」では、逆に団塊の世代は一番低い数字、二八・四%となっております。

 一枚目に戻りますが、そういう意味では、これからの日本の高齢化社会のあり方を考えたときに、図書館の整備充実ということは一層求められることになります。

 具体的には、例えば、東京の八王子市立図書館は、千人塾と申しまして、団塊世代を中心にした図書館による調べ学習ということを進めております。あるいは、長野県上田市立図書館は、団塊世代の仕事録といいまして、これまで団塊世代がしてきた仕事についての自分の記録をまとめるというふうなことを図書館活動を通じてやっております。

 さらに、図書館数が絶対的に足りないことについては、三枚目の第二表をごらんいただきたいと思います。

 第二表は、G7各国における図書館の整備状況を示したものでございます。洞爺湖サミットを前にして、G7の中でも、実は、日本の場合、図書館がほかの国に比べて極めて少ない、貧弱な整備状況だということがこれでわかっていただけるかと思います。

 十万人当たりの図書館数で見ていただきますと、日本はイギリスの三分の一程度。G7ではありませんが、フィンランドの数値を一番下に掲げました。フィンランドは御承知のように、OECDの学習到達度調査でも世界でトップ水準にございます。ここでは公立図書館の整備が大変行き届いている、これも学力の向上に結びついたというふうにフィンランドの教育次官も発言しております。

 ちなみに、日本の場合には、まだまだ図書館が整備されていない自治体も多うございます。そこに挙げましたように、町村部を考えますと、まだ四八%の町村には図書館が整備されておりません。このあたりについては、中教審の答申の中でも具体的に指摘があります。

 それから、資料費に関しましては、同じ三枚目の第一図をごらんいただきたいと思います。

 これは公立図書館資料費の経年変化を示したものでございます。棒グラフが図書館の数です。図書館の数は年々ふえておりますが、一館当たりの図書館資料費は、逆に減少してきております。これは、各自治体での取り組みがなかなか行き届いていないために、図書館は整備されたんだけれども、肝心かなめの図書館の資料が十分確保できていないということを示しております。

 地方交付税の中にこういった図書館の資料費も積算されておりますので、それがそれぞれの自治体において適切に措置されるということが必要だろうと思います。このあたりは、学校図書館において同じような措置があったんですが、実際に学校図書館で資料は十分購入されていないというのと同じような状況があることを示しております。

 それから、今後の課題といたしまして、二番目に、司書の採用、配置の促進ということが挙げられます。

 専任の司書の配置というものは、残念ながら減っております。司書資格を持って図書館長を務めている方は全国の図書館の二割にすぎません。せっかく今回の法改正によって司書の養成と研修のあり方が充実いたしましても、司書がその図書館で働いていないのではその意義も失われかねない、そういう懸念がございます。

 また、司書が配置されていないために、図書館サービスの地域間格差が拡大する傾向にもあります。司書の配置状況は、全国の図書館の中で平均をとりますと五一%、半分を少し超えた程度にしか司書資格を持った職員が配置されておりません。しかし、これを都道府県別に見ますと、例えば高い水準にある滋賀県では、八一%が司書資格を持って図書館に勤務しております。しかしながら、逆に、青森県は、残念ながら三〇%しか司書資格を持った方がおりません。倍以上、三倍近い開きがあるということになります。

 最後に、司書養成における大学院課程への重点移行ということを申し上げたいと思います。

 欧米におきまして、司書、ライブラリアンや、学芸員、キューレーターは、大学院での養成が主流になっております。これは、委員の先生方皆さんよく御存じだろうと思います。ちなみに、イギリスとかアメリカでは大学院の修士号を持つのが基本でありますが、アジアを見ましても、お隣の韓国では、図書館法に基づいて、原則として、一級の正司書、これが図書館長を務めるわけですが、これは大学院の修士以上であるということが規定されております。

 ちなみに、私ども慶応義塾大学大学院で、現職の司書を対象にいたしました夜間の大学院コースを五年前に設けました。これは、実際に図書館に勤めていながら、夜間と土曜日に大学に通ってまいりまして大学院の授業に出席し、修士論文を書いて修士号を取得する、こういうプログラムであります。これに毎年十人前後の大学院生が入ってきておりまして、既に五十人近い現職の図書館員の方が修士号を取っております。そういう意味では社会的なニーズも高いだけに、今回の法改正を一つの手がかりに、ぜひ、欧米のライブラリアンに匹敵するような、大学院での養成を中心にした体制に移行していく必要があるだろうと思います。

 最後に、実は、アメリカの上院議員、ウェンデル・フォードさんの言葉を紹介して私の発表を終わらせていただきたいんですが、ここに実は、アメリカの図書館協会のポスターを私は持ってまいりました。ここに、一九九八年ですからちょうど十年ほど前、アメリカのケンタッキー州選出の上院議員でウェンデル・フォードさんという方が図書館の年次大会であいさつ、スピーチをされました。そのときの言葉にこういうものがございます。「イフ インフォメーション イズ カレンシー オブ デモクラシー、ゼン ライブラリーズ アー イッツ バンクス」つまり、「イフ インフォメーション イズ カレンシー オブ デモクラシー、」情報が民主主義社会の通貨であれば、図書館はその銀行であるというわけです。

 つまり、民主主義社会は、情報が円滑に流通し必要な情報が手に入って初めて成り立つものであります。民主主義社会で多くの国民は必要な情報に基づいて判断をする。それによって国民の自律が促されるわけです。その場合、図書館はそうした情報を集めて必要な人に提供していく銀行だというわけであります。アメリカの上院議員さんがこういう大変適切な比喩に基づいて図書館の社会的な意義を示していただいているということで、御紹介させていただきました。

 ただし、一つだけ図書館と銀行で違う点がございます。図書館は銀行と違って貸し渋りはしません。

 そういったこともぜひお含みの上、これからの国会審議で社会教育法並びに図書館の政策について御審議いただきたいと思います。

 どうも失礼いたしました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 おはようございます。日本女子大学の田中と申します。よろしくお願いします。

 私は、自分の専門の関係から、社会教育法を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。

 お手元に私の資料がございます。この一枚目をごらんになりながらお聞きいただけるとありがたいと思います。

 初めに、総論なんですが、社会教育の現代的な意義というのを三つの側面から確認させていただきたいと思います。

 一つは、現代における公共の創造というものでございます。

 よく言われますように、もう行政が中心となって公共を運営していくという時代は終わりまして、地域の中の各セクター、機関、団体、人材が協働ないしは、英語で言うとコラボレーションをとりながら生み出していくということが必要だと言われております。しかし、往々にして、異なるセクター間が、個々の利害であったり、文化の違いであったり、それから価値観の違いであったりということでぶつかり合うことが多うございます。その壁を乗り越えるためには、これが必ず学習が必要になるわけです。例えばワークショップで議論をしながら価値観を練り上げていくであるとか、それから特定の知識を共通に得るために研修を開くとか、セミナーを開くとか、あるいはフォーラムを開いていくとか、そういうさまざまな学習プログラムが、現代の公共を生み出すための協働システムには必ずついて回るわけです。

 こういった学習プログラムは、地域の中で地道に社会教育の世界で積み上げてきたノウハウがございます。したがいまして、これからの地域社会における公共を生み出すために、社会教育のノウハウは、これまでは地道にやってきましたが、これをさらにブラッシュアップさせながら有効に活用していくということが求められていると感じております。

 二番目には、ソーシャルキャピタルの蓄積ということでございます。

 これもよく言われるように、現代の人々が孤立して、新しい形の信頼とか互酬性に基づくネットワーク、人々のつながりが必要だと言われております。実は、社会教育の世界では、グループ、サークル、それからスポーツ、レクリエーション、さらには現代的な課題を学習するためのワークショップといったさまざまなことによりまして、地域の人々のつながりがいろいろな形で生み出されてきております。これこそ、これからの地域社会の中でのソフトなインフラとして非常に有効に活用していけるものと考えております。したがいまして、さらに社会教育におけるソーシャルキャピタルの蓄積ということが大きな課題となってきていると思っております。

 三番目には、次世代の育成と地域教育のかなめということでございます。

 地域共同体の崩壊に伴いまして、自生的な教育のシステムがやはり壊れてきております。そういう中で、子供たちのさまざまな問題が起こり、そして、地域の中で子供たちを大人として育てるための新しい仕組みを再構築あるいは再創造しなければいけないというふうに強く言われております。

 ところが、当然のことながら、これにつきましては、家庭であるとか学校であるとか、個々のそういう組織なり家庭なりがこれを新たに生み出すというのはとても無理でございます。当然のことながら、地域の中でこれを再創造していかなければいけない。となると、社会教育に大きな期待がかかるわけです。さらには、地域と家庭と学校の連携ということが言われますが、この連携のためには、総合的なコーディネーターとなる人材なり組織が必要です。

 実は、私もそのメンバーの一人であります東京都の生涯学習審議会が、三年ほど前に、地域教育という概念におきましてこのような仕組みを提案しております。私の資料の最後のページをごらんいただけますでしょうか。地域教育プラットフォームという言葉でこういう図をかきまして、地域の各セクター、人材をつなげながら、コーディネーターのもとに、学校教育の支援であるとか、学校外教育を生み出すことであるとか、家庭教育の支援をやっていかなければいけないという提案をいたしまして、今現在、事例を開発しながら試行錯誤でノウハウを追求しているところでございます。

 このようなコーディネーターの中核となるのは、やはり社会教育にかかわる人材になります。というわけで、現代の子供たちを育成するための地域の仕組みにとって、社会教育の人材なり組織が今まで以上に力を発揮していかなければいけないというふうに考えております。

 このような考えから、今回の法改正案に対する意見として三つほどまとめてみました。

 一つは、第三条の二でございます。これは生涯学習に関することを書いた条文でございますが、どうも私の印象ですと、生涯学習の概念を非常に矮小化して使ってしまっているんじゃないかという気がいたします。それは、国民の学習に関する需要を踏まえたというふうな表現におきまして生涯学習の振興と書いております。この需要という言葉によりまして非常に消費者主義的なイメージが出るものですから、サービスを受ける国民というふうな立場がちょっと出過ぎではないかと考えます。

 ですから、先ほど述べました一から三のような非常に公共性の高い学習を進めるためには、例えば、ここには書いておりませんが、需要並びに必要という言葉、必要という言葉を加えていただけると幅広い生涯学習の概念が出るのではないかと考えております。

 それから、第五条の十五でございます。これは、学習成果の活用に関することでございます。

 これは、法律におきましても、当然行政のそれぞれの、縦割りと言うとなんですが、限界があるので仕方がないのかもしれませんが、先ほど申し述べました社会教育の現代的な意義からいきますと、ここに書かれてある学習成果の活用の領域が教育の範囲内にとどまっているというのが、やや狭く感じられるものでございます。幅広い公共性に向けての学習成果の活用というのを考えたとき、この条文の中では「その他の活動」というふうに表現されているんですが、具体的にはまちづくりであるとか公共的な活動であるとか、できればそういう言葉が入っていると幅広く理解できるんだとは思いますが、そのような印象を持っております。

 その他といたしまして、ソーシャルキャピタルにかかわる問題ですが、この問題につきましては、省庁でいくと内閣府がかなり力を入れて推進していることと思いますが、文部科学関係におきましても、社会教育を中心とした人々のつながりというものがソフトなインフラとして有効というふうな考え方に立ちますと、つながりを推進するための法制度というものをこれからもっと追求してもいいんじゃないかというふうに考えております。

 こういったことを踏まえまして、各論に入りたいと思います。

 各論へ行きますと、社会教育の中核的な施設の一つとしての公民館、それから中核的な専門職としての社会教育主事というのが重要になりますが、これにつきましては、最後に書いてあります法律案に対する意見ということを述べながら申し上げたいと思っております。

 一つは社会教育主事に関してでございますが、第九条の三でございます。

 従来からもずっと議論されておりますが、社会教育主事は、現実には、地域における社会教育のコーディネーターの役割あるいは計画立案の役割をかなり担っております。ただ、法律上は助言指導という範囲にとどまっております。今回も随分議論されたことは把握しておりますが、最終的に、法律の中では助言指導ということにとどまっているわけでございます。

 ただ、総論で述べましたような社会教育の意義を考えますと、もう少し幅広いコーディネーター的な役割が社会教育主事に求められてくることになるわけですが、これを法制度上でどういうふうに表現し、実体化していくかということが課題になるのではないかと考えております。

 さらには、地域の教育全体に対する支援ということで、今回の改正案の中では、学校の求めに応じて助言するというふうな意味の内容が書かれております。ただ、先ほど東京都の生涯学習審議会の図を見ていただきました。あの経過からしますと、単なる求めに応じた助言ではなくて、そういう消極的な役割ではなくて、もう少し、東京都が言いました地域教育という広い概念を担うような専門的な職員として、社会教育主事が、地域、家庭、学校をつなげながら、子供たちを地域の中で総合的に育てていく、そのための専門的な職員としての位置づけ、機能、力を蓄積していかなければいけないと考えております。これも、法制度上でどういうふうな形で今後位置づけ得るか、実体化し得るかというのが課題になっているというふうに考えております。

 もう一つ、公民館についてですが、最後の項目の、その他でございます。

 公民館につきましては、従来から主事を置くことが必置というふうにはなっておりませんで、「置くことができる。」というふうになっております。しかしながら、先ほどから、ソーシャルキャピタルであるとか次世代の育成であるとか、地域の中の公共を生み出すためのコーディネートであるとか、そういうことを考えたとき、公民館が施設的な拠点になるわけでございますが、単なる箱ではなくて、人材を置いてソフトなプログラムを持ち得る、そういうさまざまな役割を発揮し得る、その中核となるような人材がやはり必ず置かれるという形で、公民館がこれからの地域における社会教育の中核的な施設として機能していくために、そのような公民館の主事を必置とするような法制度に向けて、さらに御検討がされることを期待しております。

 そういうわけで、私が述べましたことは、現状の社会教育主事、この面から見ますと、議員の先生方から見ますと、かなり乖離があるというふうにお考えの先生方もおられるかもしれません。これは同時に、社会教育がこれからの時代においてさらに力を発揮していくための課せられた大きな課題とも言えると考えております。我々社会教育の研究者が、地域の社会教育関係者とともに、さらに機能の高い社会教育を発展させるために努力したいというふうに思うとともに、議員の先生方の方でも、社会教育の実態を把握されながら、さらに発展に力をかしていただけるとありがたいと思います。

 とりわけ、職員の問題につきましては、今、日本社会教育学会で検討中でございまして、文部科学省と連携をしながら、さらにいいものにしていきたいと考えております。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 次に、長澤参考人にお願いいたします。

長澤参考人 皆さん、おはようございます。御紹介いただきました社会教育推進全国協議会委員長の、千葉大学の長澤でございます。

 本日は、社会教育法等一部改正案の審議に当たりまして、このような場を与えていただきましたことに対し、衆議院文部科学委員会に対し厚く御礼を述べたいと思います。

 社会教育法が一九四九年に制定されてから、ことしで五十九年を迎えます。立法当時の文部省社会教育課長寺中作雄は、「社会教育の自由の獲得のために、社会教育法は生れた」と述べています。

 社会教育法は、人々の学びの自由と自治のシステムを豊かに持つ法律であると同時に、戦後、我が国の平和で民主的な発展を願って全国各地に設置を奨励された公民館を第五章で規定し、法制定後、今日に至るまで、全国の公民館は、文部省、国の行政的努力や、自治体、公民館関係者そして地域住民のそれこそ献身的な努力によって、地域住民の生涯にわたる学びと豊かなまちづくり、地域づくりに貢献してまいりました。学びを通したコミュニティー形成と住民の自治能力の向上が極めて重要な政策的課題になっている今日において、公民館、社会教育の役割というのはますます高まっていると考えております。

 このような中で、民間の非営利団体であります社会教育推進全国協議会は、一九六三年の発足以来四十五年にわたって、社会教育の民主的な発展を目指し、さまざまな活動を続けてまいりました。今回の法改正に当たりましても、この一月に文部科学省生涯学習政策局社会教育課とも懇談を持ちまして、特に、法の目的を明示した社会教育法第一条や、第九条の二の社会教育主事の必置制や事務局配置、そして社会教育法第五章公民館の関連条文の堅持など、全体として、現行社会教育法を堅持し、法の理念や制度を後退させないことを強く要望してまいりました。

 しかしながら、今回提出された法改正案は、極めて大きな問題を内包しているというふうに言わざるを得ません。

 時間も限られておりますので、ここでは社会教育法改正に絞って法案の問題点を指摘したいと思います。なお、資料については、既に各委員の先生方のお手元にございます「社会教育法改正に対する社全協アピール 住民の学習の権利と自由を阻害し、社会教育行政を後退させる社会教育法改正案の問題点」を参照しつつ、お聞きいただければ幸いです。

 まず第一は、本改正案の国会提出に当たっての法形式の問題です。

 一九九九年の地方分権一括法のときもそうでしたが、公民館運営審議会の必置制の廃止など、社会教育施設の住民参加の制度が大きく後退させられました。社会教育法、図書館法、博物館法は、それぞれ固有の理念や課題を持っています。ですから、一括審議ではなく、きちっと個別の法ごとに審議すべきだと考えます。

 第二は、社会教育法第三条改正案の「国民の学習に対する多様な需要」という文言です。

 今回の法改正案が、例えば一九八五年のユネスコ学習権宣言に見られるように、人々の生涯にわたる学びの営みを基本的人権として保障するという、国際的にも承認された学習権思想から離れているという点です。学びの営みを人権としてとらえるのではなく、需要、供給の市場メカニズムでとらえることは、受益者負担の導入に結びつき、地域間格差やあるいは格差社会を再生産することにつながらないでしょうか。

 第三は、二〇〇六年教育基本法第三条を受けて「生涯学習の振興」という文言が入ったことです。

 今、自治体社会教育行政は、行財政改革のもと、予算削減や職員削減、指定管理者制度の導入による社会教育施設のアウトソーシングなどの圧力が日増しに大きくなりつつあります。また、この四月からは、改正地方教育行政法によって、教育委員会のスポーツ、文化に関する事務を首長部局に管理、執行させることが可能になりました。総合行政の志向を持つ生涯学習振興行政によって、社会教育行政がさらに後退していく可能性があると私たちは考えています。

 第四は、今回の法改正が、社会教育を学校支援や地域・家庭教育との連携に特化していく、あるいはシフトさせていく方向を強く打ち出していることであります。

 この課題が極めて重要であることは私どもも十分認識しておりますけれども、例えば、大人の学びを学習の成果の活用の視点から学校支援に特化することは、大人の学びを行政が誘導し、自由で自主的な社会教育の学びをサポートするという社会教育行政の本来の任務、あるいは、まちづくり、地域づくりをめぐる今日のさまざまな課題にこたえていくという社会教育の本来の姿からいっても、かえって大人の学びの力と自治の力を弱めることにならないでしょうか。

 第五は、社会教育関係団体への補助金交付の際に社会教育委員の会議の意見を聞いて行わなければならないとした第十三条改正についてであります。

 もともと憲法八十九条との関係で疑義のあった補助金交付でしたけれども、一九五九年法改正のときに、補助金交付が適正に行われることを保障する措置として、参議院の修正によって導入されました。他の合議機関でもよいとする今回の規制緩和策によって、もともと任意設置である社会教育委員制度が廃止されたり後退していくことは、今日の自治体財政状況からして必至と考えます。

 また、法第十七条によって、社会教育委員の会議には住民参加による地域社会教育計画立案権が付与されておりまして、これから策定されるであろう自治体教育振興基本計画において、住民参加や市民と行政との共同による社会教育計画づくりの制度的保障が後退するという意味でも、極めて重大な改正案だと考えております。この点については、現行条文の維持を強く求めたいと思います。

 最後に、改正案の第三十二条と第三十二条の二に係る公民館の運営状況に関する評価及び改善並びに関係者への情報提供の問題です。

 公民館が地域において果たすべき役割については、二月十九日の中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」でも強調されているところであります。例えば、公民館事業を中心的に担う公民館主事については、今日まで専門職としての法制度的整備が進まず、自治体の自治的な努力に任されてきました。例えば、専任職員数を見てみますと、平成十七年度文部科学省社会教育調査報告書によれば、全国一万七千百四十三の公民館のうち専任職員数は一万一千九百八十二人で、平均しますと一館当たり一人を切るわけです。

 さらに、この間、公民館設置運営基準が地方分権、規制緩和政策のもとで改定されまして、御存じのように、一九九八年に旧設置基準の第五条から館長と主事の専任規定が外されております。それから、二〇〇三年改定では主事の必置規定も外されました。

 私は、今回、本委員会の理事と各政党の委員の先生方に「公民館で学ぶ3 私たちの暮らしと地域を創る」という本を参考資料として配付させていただきました。これは千葉県における公民館実践をまとめたものですが、全国の公民館が日々地域づくりに果たしている役割は極めて大きく、また豊かな可能性に満ちたものだと考えております。にもかかわらず、現実には、専門職制度が確立せず、公民館を支えるべき職員が数年で異動させられたり、あるいは非常勤嘱託化されるなど極めて貧しい状態にあります。

 公民館それ自体が自治体財政のもとで非常に厳しい状況に置かれていますし、公民館の学びは数値になじまないことなどを考えるとき、行政評価によって公民館がリストラされていく口実にされることを私は率直に危惧しております。私は、改めて政府に対して、公民館に対する一層の条件整備を進めていただきたい、そういう努力をしていただきたいということとともに、図書館、博物館と同様に、文部科学省内に公民館に関する協力者会議等を設置していただき、職員体制を含む公民館の制度的充実策をぜひ検討していただきたいと考えています。

 以上、ほかにも論点はございますが、社会教育法改正案に限定すれば、これまで見てきましたように、大変問題が多く、このまま法律が成立するならば、我が国と自治体社会教育行政のありように大きく影響を与えるというふうに考えております。本改正案について十分な審議を重ねていただくことを心からお願いして、私の発言を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

佐藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西博義君。

西委員 おはようございます。公明党の西博義でございます。

 きょうは、糸賀参考人、田中参考人、長澤参考人、お三方、大変お忙しいところ、当委員会で御意見をちょうだいいたしましたこと、心より感謝を申し上げたいと思います。

 まず初めに、糸賀参考人にお聞きをしたいと思います。

 先ほど、社会教育を通じた情報化の進展、これにいかに対応していくかということで何点か御指摘がございました。私も、図書館それから博物館等における情報化、特に電磁的情報をいかに活用していくかということが、これからの一つの大きな課題だというふうに思っております。

 おっしゃるように、収集、提供をいかにやっていくかということが重要なんですが、このことについて、先進的に今運営されている事例をもし御存じでしたら、お教えいただきたいと思います。

糸賀参考人 御質問ありがとうございます。

 電磁的記録ですが、図書館において考えますと、例えばデータベースの導入ということが考えられます。このデータベースといいますのは、新聞の記事を過去にさかのぼって検索したり、あるいは雑誌記事を検索したりすることがこれでできるようになります。アメリカあたりの図書館では、百を超えるような規模でこういったデータベースが入っております。

 今、御質問は、日本でそういったデータベースの導入が進んでいるというところだろうと思いますけれども、身近なところでは、例えば千葉県浦安市の市立図書館でありますとか、あるいはそういうデータベースを積極的に導入しているところでは鳥取県の県立図書館、そういったところが挙げられます。そのほかに、例えば仙台にはメディアテーク、これは仙台市立図書館でありますけれども、こういったところでもそうしたデータベースを導入しております。そういった政令指定市や都市近郊の図書館だけではなくて、例えば北海道の厚岸という町がございますけれども、ここは情報館というふうに言っております。北海道新聞の記事の検索ができるようなデータベースを導入しております。

 データベースの数は日本ではまだまだ、図書館の数もそう多くないし、データベースの数そのものも余り多くない。これが今回の法改正で、もう少し数をふやさないことには利用価値を増さないというふうには思っております。

 幾つかの例でございますが、紹介させていただきました。

西委員 少ないという実態が報告されましたけれども、もう一つは、必ずしもデータベースを置いておけば市民の皆さんがそれで自由に検索するというところまで実態は進んでいない。興味はある、いろいろ調べたいけれども、そこに行って、それが置いてあればすぐというわけにはいかないので、その辺にやはり図書館の職員の皆さんの、市民の皆さんとデータベースをつなぐ大きな役割がこれから出てくるんじゃないかなというふうに思っております。

 最後のところで先生は、司書の養成に関する、これからもっと高度な、例えば大学院卒とかそういう条件をおっしゃいましたけれども、多分その辺と若干関係があるのかなと思いながらお聞きをしておりましたが、司書のこれからの能力のさらなる養成という観点からもあわせて御見解をお願いしたいと思います。

糸賀参考人 今申し上げましたように、これからの図書館は、データベースの導入をしたり、あるいはホームページを通じてさまざまな情報を発信していくことが求められます。そうすれば、図書館があいていない時間、図書館が休みの日でも、図書館のデータベースに自宅から、あるいは職場からアクセスすることもできるようになります。これが私、先ほど申し上げたハイブリッド図書館であります。

 ハイブリッドというのは、つまり、アナログの資料とデジタルの資料両方を組み合わせて情報提供をしていくわけでございます。このためには、図書館で働く専門的職員であります司書の情報に関する知識、さらに言えば、デジタルメディアあるいはインターネットに象徴されるようなネットワークを使いこなすスキル、そういったものが求められます。

 司書の現在の養成課程では、大学で図書館についての授業をやる単位数が二十単位しかございません。これだけでは十分ではありませんので、研修、さらには、私が最後に申し上げたような、大学院課程できちんとこれを修得するということが求められるだろうと思います。

 そういう意味では、司書の資格は、現在の法律で規定されておりますのは、私は、これは図書館の世界に入っていくためのいわば入場券といいますか最初の資格であって、その後、司書として働いていく過程の中でも、随時、そのスキルと知識といったものをふやしていく必要がある。それは、学びたいと思ったときに大学院で学べる、あるいは必要な研修が受けられるという仕組みをつくっていくことが求められるんだろうと思います。

 私どもの大学院では、図書館員に常に、図書館に入って例えば五年とか十年たった現職の図書館員を対象にしておりますが、マネジメントの知識とコンピューターを中心にした情報のスキル、これが身につけられるようにということでやっております。これは、司書の大学での課程だけでは私は十分とは思えませんので、今も申し上げましたように、大学院でこれを補っていくということが求められているだろうと思います。

 そういう意味では、国民の情報リテラシーの育成のためには、まずは司書自身がその情報リテラシーを身につけなければいけない。それをどこで学ぶかといった場合には、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで、図書館にいながらでも学べますが、それを改めて体系的に学ぶ、さらに言えば、いろいろな図書館の人との相互交流の中で自分の地域の図書館のあり方が見えてくるという意味もありまして、大学院での学習というものもこれからは強く求められるだろうと思います。

西委員 どうもありがとうございました。これからの図書館のあり方が少し見えてきたような感じがいたしました。

 続きまして、田中参考人の方にお伺いをしたいと思います。

 この「社会教育の現代的な意義」というところで、私は非常にそうなんだなと思ったのは、市民の皆さんが、みんなが寄って新しい公共を創造していく、つくり上げていくことが社会教育なんだと。教育といいますと、何か教え込むみたいなことがついつい思い出されますけれども、大変重要な御指摘だと思います。市民の皆さんが集まって、そしていろいろな意見を出し合って、一つの共通の方向性を見出していく、結論を見出していくという学習にこそ社会教育の意味があるんだというお話、大変興味深く拝聴いたしました。

 それで、具体的な東京都の例をお挙げになりましてお話をいただいたんですが、この中で、これもまた新しい発見なんですけれども、この一番最後の図がございます。この中で、地域教育プラットフォームというものを立ち上げられて、そして運営をされているんです。

 私ども、この委員会でも、今は、学校と家庭とそれから地域、今回の法改正の目的も一つはそうなんですが、この三つが共同して教育に参加するということが議論されておりまして、学校があり、そしてその周りに学校の支援体制があるというふうなイメージで私はとらえていたんですが、もう少し違う形、一つ一つの学校を核とした、そういう支援体制とは必ずしも考えなくてもいいということをこの図を見ながら感じたんですが、その辺の、学校とそれから社会教育との関連を、学校支援に対して、御見解をお教えいただきたいと思います。

田中参考人 御質問ありがとうございます。

 東京都の取り組みにおきましては、この何年かの間、事例として、幾つかの地域にお願いしながらノウハウの開発を進めております。例えば、小平市であるとか世田谷区であるとか杉並区であるとか、それぞれ従来からユニークな取り組みをしていた地域に対して、東京都が、プラットフォームの考え方のもとに、さらにブラッシュアップしてノウハウを開発してほしいということで、研究を一緒に進めてきたところでございます。

 学校というのは固有の文化を持っています。もう戦後六十何年、特定のがっちりした制度のもとにずっと運営されていますので、外の社会とはかなり違う文化が独自に形成されております。そこに対して地域が支援するといっても、学校の文化の枠組みに合った形で地域の方で支援するということが求められながらも、今度は、地域には地域の文化がある、あるいは企業の人が学校支援をやるとなれば企業の文化を背負ってくるということで、必ず文化のぶつかり合いというのが起こるんですね。

 よく言われるのが、学校には固有のスケジュールがあります。絶対に先生方が電話に出られない時間に地域の人が電話をして、出られませんと言われたら地域の人は怒ってしまう、それでけんかになるという、しなくていいけんかを始めてしまうということがよくあるわけですね。

 ですから、そこで、このプラットフォームの考え方の中の根底には、学校と地域のいろいろな文化を背負った人たちが共通の価値観、文化をつくっていく、お互いが文化の変容を起こしながら、そして共通の文化、子供たちを育てるという文化をつくりながら、その中で、学校は学校の役割を果たしていただく、地域は地域の役割を果たしていただくということで、私どもが考えていますのは、この地域教育プラットフォームの根底には、それぞれの固有の文化の壁を打ち破り、共通の教育観を練り上げていく、それが一番の基本的な条件だと考えております。

 以上です。よろしいでしょうか。

西委員 ありがとうございます。

 周囲が学校を取り囲むということだけではなくて、社会そのものを変えていくことによって、学校ないしは家庭に影響力を及ぼしていこうというお考えかと思いますが、基本的にはそれでよろしいでしょうか。

田中参考人 相互に変わり合うというイメージで考えております。学校自身が変わり、また地域の方々、それぞれの団体も変わり、そして、これまでにない共通の文化を持ったものとして生まれ変わって総合的になっていくというふうなイメージで考えております。

西委員 ありがとうございます。

 時間がもうほとんどなくなってまいりましたので、最後に長澤先生、一点だけ。

 きょうのお話とはちょっと違うんですが、先生の御著作を読ませていただきますと、公民館初め、そういう施設が今、運営上、指定管理者制度にだんだんと移りつつあることに対しての疑問といいますか、批判的なお考えだと思うんですが、お述べになっておられたのを拝見してちょっと気になったんですが、このことについての現場への影響をお教えいただきたいというふうに思います。

長澤参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、「公民館で学ぶ3」にも書かせていただきましたけれども、今自治体は、行財政改革の中で、指定管理者制度の施設への導入というのは大変圧力が強まっておりまして、私は、指定管理者制度というのは、いろいろな導入の理由が挙げられておりますけれども、基本的には経費節減というのが非常に大きな目的でございますので、やはりそれが、そこで働く職員の労働条件の問題とかいろいろなところに波及していく、非常に問題だというふうに考えております。

 それから、一番大きいのは、指定管理者制度の制度設計が、御存じのように、三年ないし五年というような形で、いわば期間が指定される。やはりこれが、教育というのは非常に息の長い、まさに五年、十年、あるいはもっとかかるかもしれない。特に、地域の社会教育というのは、地域のことを非常によくわかり、そしてまた、いろいろな人々のいろいろな要求をつかまえながら進めていく事業でございますので、一年、二年ではなかなかできないということがございますので、やはり長い継続性だとかというものが教育の営み、特に社会教育の営みに大変求められるというところでは、私は、やはり公民館、社会教育施設に指定管理者制度というのはなじまないのではないかというふうに考えておりますし、それが導入されるということは、やはり住民の学びへの影響というのも大変大きいのではないかというふうに考えております。

西委員 限られた時間でございましたけれども、お三方、本当に貴重な御提言、ありがとうございました。

 以上で終わります。

佐藤委員長 以上で西博義君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、糸賀参考人、田中参考人、そしてまた長澤参考人におかれましては、本当に貴重な御意見をいただきましたことに、まず冒頭、感謝を申し上げたいと思います。

 順番に、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、糸賀参考人の方から、図書館の充実ということですね。私も実は、一昨年フィンランドの方に参りまして、学校の現場あるいは図書館等々をかなり視察してまいりました。先ほど御指摘あったように、フィンランドが読解力も含め学力調査の中でも世界で最高水準にあるというところには、読書量の多さということと図書館の充実というのが一つの大きな理由ではないかと私は思っております。

 そうした中で、フィンランドのように、公立でさまざま充実をさせたり、あるいは過疎というか田舎の方には車の移動図書館なんかも来たりというような実にきめの細かい施策が行われているわけですけれども、現実、我が国でもっともっとこの図書館を充実させようと思うと、当然、数もふやさなきゃならないし、予算というものも確保していかなきゃならないわけですけれども、先生おっしゃるようなレベルに一気に行くというのはなかなか難しいと思うんですね。

 そうしたある限界の中で、現在、公立の図書館であるとか、あるいは学校の図書館、また私立の図書館、既存の図書館の数をふやすということは我々やらないといけないんだけれども、そこにある限界がある中で、どういう形で連携をしていくとか、あるいは工夫をしていけば図書館の充実というものを図っていくことができるのか。何かいい妙案があれば、ぜひ御示唆をいただければと思います。

糸賀参考人 御質問ありがとうございます。

 なかなか妙案はないのでございますけれども、一つ大事な点は、私は、図書館の司書をそれぞれ配置することで、今おっしゃる、ネットワークといいますか、足りない図書館の中での資源の有効活用ということが一層進むだろうと思います。

 ちなみに、よく言われることでありますけれども、図書館の運営の実績を決める要因は大きく分けると三つあるんです。一つは、施設、建物です。二番目は、その図書館に収蔵されている図書館資料、本だとか、先ほども御指摘ありましたように、例えばデータベースを入れるとか、雑誌や新聞といった資料です。最後、三番目が、図書館で働く職員です。

 この三つなんですが、この三つの中で、ウエートといいますか、比重はどれぐらいかといいますと、多くの図書館関係者、これはアメリカあたりの図書館先進国の関係者も言うんですが、施設が占めるウエートは一割だろう、資料が占めるウエートは大体二割ほどじゃないか、残りの七割は、実はそこで働いている職員の資質が決めるんだ、こういうことなんですね。

 そういう意味では、今、笠委員御指摘のような、日本でまだまだ図書館の整備が足りない、これをある意味では補っていくためには、司書を適切に配置する、専門的職員を配置するということが、結局は与えられた資源を有効に使うことに結びついていくだろうと思います。

 それから、やはり図書館の数はふやさなければいけないという御指摘が今ございました。私もそのように申し上げました。妙案になるかどうかわかりませんが、私は、大きく分ければその方策は三つ考えられるだろうと思います。

 一つは、現在の法律、つまり図書館法の第二十条にも、施設と設備についての補助金規定がございます。この補助金規定をうまく活用して国が地方自治体に対してそういった補助をすれば、図書館設置は進むだろうと思います。しかしながら、現在の財政状況を考えるとこれはなかなか厳しいかもしれませんが、それがやはり短期的には有効な方策の一つだろうと思います。

 二番目は、図書館を設置するのは当該地方自治体でありますから、その首長さん、いわゆる知事さんでありますとか市長さん、町長さん、村長さん、この方々に図書館が必要だということをもっと理解していただく。つまり、政策決定の優先順位を高めていただければ、今図書館のないところ、あるいは図書館が足りないところでもつくっていただくことができます。

 そういう意味での機運を盛り上げるような政策展開といいますか、国からの支援、例えばイベントの開催を支援するというふうにして図書館の機運づくりを盛り上げていくといいますか、高めていくということが求められるだろうと思います。これは、首長さんへのいわば戦略ですね。

 三番目は、やはり一番肝心なのは、国民、地域住民の方々です。その方々に図書館の本来のあり方を知っていただく。そのためにも、先ほど申し上げたようなイベントを開催するということも必要だろうと思います。

 ちなみに、二〇〇四年、四年前に文部科学省さんのお力添えで、ディスカバー図書館というイベントを東京で開催しました。このときに、図書館に関心が大変多く集まりまして、御茶ノ水にあります明治大学を会場で使ったんですけれども、千人近い方々がお集まりいただきまして、図書館機運が高まりました。

 さらに言えば、小学校段階からきちんと図書館の利用教育をやると、図書館が本来どういうものかがわかった大人が育つわけです。こういう人たちが、地域に図書館がないと基本的なインフラが整っていないということに気がつくわけなんですね。

 そういうふうにして、国からの働きかけ、首長さんの判断、優先順位を高める、そして国民の図書館の利用能力を高める。これはいわゆる図書館リテラシーと言いますが、図書館リテラシーを高めることがひいては情報リテラシーの向上にもつながっていく。そこらあたりが当面の策として考えられるだろうと思います。

笠委員 ありがとうございました。また本当に参考にさせていただきたいと思います。

 限られた時間でございますので、次に、田中参考人の方にお伺いをさせていただきたいんです。

 先ほど、学校自身も地域も相互に変わっていくんだということですね。その文化、その壁をぶち破ってということがあったわけです。

 田中参考人におかれましては東京都の生涯学習審議会の方で副会長をされていると伺っておるわけですが、きょう先生の方から御提案のあった地域教育プラットフォームなんですが、この中で、今、特に東京あるいは京都の方で大変進んでいる地域立学校、コミュニティースクールというものの位置づけはどのようにしていけばいいのかということを具体的にお話しいただければと思います。

田中参考人 非常に重要な御質問をありがとうございました。

 いわゆるコミュニティースクールと言われるものは、学校運営協議会というものをつくりながら地域住民が学校の運営に対して意見を言い、そしてまた協議会での質問なり指摘を学校長がきちんと受けとめて検討しながら運営しなければいけないという制度でございます。

 実は今、住民参画とか市民参加と言われるときに一つ問題がありますのは、平たく言いますと、汗を流さないで意見だけ言うという市民が実は行政への参画においても問題となる場合がございます。学校においてもそうでございまして、コミュニティースクールという制度のもとに学校に対して意見を言う、指摘をするというふうな市民が集まっての協議会というのになりますと、学校運営がむしろ非常に厳しくなるという面もございます。

 ですから、実は小平のがそうなんですけれども、意見を言うだけではなくて、まずは学校支援ボランティアで活動して学校のことを理解する、そして学校と地域の関係を体験的にわかる、把握する、その上で協議会のメンバーになるというのがやはり非常に必要な条件だと思います。ですから、活動し学校をまず理解する、理解した上でコミュニティースクールの協議会のメンバーになるということが必須の条件ではないかというふうに考えております。

 要は、意見だけ言うのではなくて、教師とともに学校をつくり上げる体験をしながら、さらにはその上に立って意見を言えるような形にしていくということが重要だと考えております。

笠委員 もう一点、関連してお伺いをしたいんです。

 私は川崎の方を選挙区にしているんですが、昨今、公立の小学校や中学校に、例えばおやじの会であるとかさまざまな形で地域の方々が学校の運営にも参加していこうよ、あるいは、家庭と地域と学校というものの、先生おっしゃったような連携を強めていこうということで立ち上がっていただいているんですが、一方で、今おっしゃったように、なかなかそういう活動にかかわってこられない、もう一歩踏み出してこられない、そういう層というのをどうやって巻き込んでいくのか。そういった点について、ぜひ御示唆をいただければと思います。

田中参考人 ありがとうございます。私のキャンパスも川崎にございまして、川崎では、おやじの会で有名な方がいらっしゃいます。

 おやじの会の場合、どうしても平日はなかなか難しい。残業なども考えると、どうしても休日が中心になる。そうなりますと、休日にあえて出てくるためには、まず、これはどのボランティアでもそうですが、楽しみをいかに提供できるかということですね。ですから、おやじの会の場合には、価値意識であるとか公共性であるとかというところから入るのではなくて、まずは、飲み食いをするであるとか一緒に楽しむであるとか、そういう楽しみの場をどうやって提供できるか。

 ですから、そういう意味では、おやじの会は明らかにボランティア活動ではありますけれども、ただ、その入り口としては、余暇活動的なイメージで入れるような、楽しみの場を提供し、そこからだんだんだんだん役に立てる活動に入っていっていただくということだと思います。

 私も幾つかのおやじの会とおつき合いがございますが、まずは、やはり楽しみというところから入るケースが多いように見ております。

笠委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、長澤参考人の方にお伺いをしたいんです。

 先ほど、今回の法改正の中で、社会教育委員の制度について、これはもともと必置ではないわけでございますけれども、補助金を受けるときに、今回、社会教育委員を置いていなくても、審議会等々にかえることができるということが盛り込まれました。

 私、逆に、教えていただきたいんですが、この社会教育委員の制度自体がまだ置かれていないところももちろんある。あるいは、未設置の自治体にとどまらず、置かれていても形骸化あるいはマンネリ化しているんじゃないかという指摘もなされるわけですね。今後、この社会教育委員の制度これ自体をどのようにしていくことが望ましいのか、どういう形に持っていくことがいいのか、その点についてぜひ教えていただければと思います。

長澤参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、先ほど発言させていただきましたけれども、社会教育委員会議というのは、関係団体に対する補助金交付の際の意見を聞くというような、そういう機能もありますけれども、やはり、地域の社会教育計画を立案するというのが一番重要な職務内容でございまして、ですから、まさに自分たちの地域を、そこには住民の方たちも、要するに住民の代表の方たちも社会教育委員に入っております。その社会教育委員のあり方も、例えば委員の中に公募制を導入するとか、さまざまな自治体での御努力がなされているわけでありますけれども、自治体の社会教育計画を住民とともに行政がつくっていくという非常に大事な役割がある。

 今回の改正案は、やや補助金の問題との絡みで規制緩和されて、それが、もともと任意設置ということがありますから、社会教育委員があるところも社会教育委員を廃止して、別の、例えば生涯学習審議会やほかの審議会にその機能を持たせるということによって、一番大事な社会教育委員の会議の中身というものが、いわば委員の制度が後退することによって大事な社会教育委員の会議の仕事というものが、活動というものが後退していくのではないかというところを私は大変危惧しております。

 もちろん現状は、形骸化しているとかいろいろあるかと思いますけれども、まずは、それをどうやってよりよいものにしていくのかという、まさにそれが、地域の中で、あるいは自治体の中で求められていることだというふうに私は考えております。

笠委員 もう一点、今のことに関連してなんですが、社会教育委員の制度もそうなんですけれども、まず今、首長さんのいろいろな部局がございますね、また教育委員会がある、そして社会教育委員の制度もあり、あるいは今おっしゃったような生涯学習審議会みたいなものもあったりということで、なかなかそこらあたりの、もともとできたときにはそれぞれの役割があったと思うんです。もちろんあるんですよね。けれども、そこがまた、何か屋上屋を重ねるようなわかりにくさというものも整理をしていく必要があるんですが、その辺の、教育委員会とのかかわりを含めて、社会教育をしていく上で今後どういうふうに、そういう委員会等々の組織のあり方というものをもう少しシンプルにした方がいいんじゃないかと私は思うんですが、その点を最後にお伺いいたしたいと思います。

長澤参考人 ありがとうございます。

 そのあたりは今、まさに論点になっているところだというふうに思うんですね。教育委員会というのは、やはり一般行政とは独立した行政委員会として存在しております。また、社会教育というのは、公民館、図書館、博物館がございますので、それぞれ図書館協議会、博物館協議会あるいは公民館運営審議会というのがあるわけでありますけれども、私は、教育委員会は、住民の多様な声を直接聞くルートというものが豊かにあるということ、やはりそういう豊かさというのはあるんではないかなというふうに考えております。

 ですから、逆に、教育委員会の場合ですと、社会教育委員の会議と首長部局、生涯学習審議会の関係では非常に議論になるところでありますけれども、多様なルートの持っているむしろ豊かさというのをもっと追求する、そういう考え方、道もあるのではないかというふうに私は考えております。

笠委員 どうもありがとうございました。

佐藤委員長 以上で笠浩史君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 本日は、三人の先生方、国会の審議に当たりまして、それぞれの立場から貴重な御意見をお述べいただきました。本当にありがとうございます。

 早速御質問させていただきますけれども、まず、糸賀参考人に伺いたいと思います。

 先生の、大学の実践そしてまた図書館行政等々に対する研究を踏まえて、図書館の整備や司書の配置の重要性ということについて大変具体的に述べていただいたというふうに思います。また、きょうは先生の御発言になかったと思いますけれども、日本の図書館というのは発展途上国の状況だということがちょっと目にとまりましたので、そういう認識の上で伺うんですけれども。

 一点は、先生は中央教育審議会などの審議にも参加していらっしゃいますので、今、教育振興基本計画、数値目標を出す出さないで最後の詰めをしているところかと思うんですけれども、この問題で、教育基本法に基づく教育振興基本計画についての答申というのがありましたよね。この中では、「図書館が住民にとって身近な「地域の知の拠点」として、だれもが利用しやすい施設としての機能を果たすよう促す。」というのがあるんですよ。だから、こういう文言はあっても、これを具体的にどのように整備していくのかということがこれから問われるわけであります。

 一体、整備のあり方、また、数値目標がここでは入るのか入らないのかというような議論が中教審などではどうだったのかということを踏まえて、今後、図書館の振興を本当にどのように教育振興基本計画の中で図るべきなのか、その財政的な措置などをどのように考えていったらいいのかということについて、きょうは率直に御意見を伺えればと思います。

糸賀参考人 御質問ありがとうございます。

 今委員御指摘のとおり、本来は、この教育振興基本計画の中で具体的な目標値を掲げていっていただければ、図書館関係者の一人としては大変喜ばしく思います。

 具体的な数という意味では、先ほど私、第二表で、G7各国における人口十万人当たりの図書館数ということでお示しをいたしました。ここで見ていただきますと、現状では日本が二・三一、ほかの国々では、これが五ないし、一番多いドイツで十四というふうな数値が挙がっております。これを単純に考えますと、少なくともイギリス並み、つまり、現状の三倍近い図書館が必要になってくるだろうというふうに考えます。

 これの一つの考え方として、現在、各地域に中学校がありますが、中学校区に図書館を一つずつ整備していくということも一つの目安として考えられるだろうと思います。そのようにしていきますと、今も申し上げましたように、イギリス並みの図書館の整備水準になってまいります。

 ただ、図書館の数だけをふやせばいいというものでもございません。先ほど申し上げたように、きちんと司書を配置する、あるいは一つの図書館の規模というものも問題になってまいります。いろいろと調べ物をしようとする、あるいは地域の課題の解決につながるような図書館といいますと、やはり床面積や蔵書数、そういったものも一定水準のものがなければだめだろう。私はやはり、少なくとも十万冊ぐらいの規模の図書館でなければ使いではないだろうというふうに思います。

 そこらあたり、規模と数のバランスを考えた上での具体的な指標化ということができればいいだろうというふうに考えています。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 田中参考人にお伺いいたします。

 NPOが行う学習活動について、いろいろな実践またネットワーク等々をつくっておられますし、また研究もされているというふうに思いますけれども、一つは、NPOが教育の分野で、特に子育てという分野で、学習をするテーマとか意欲とかというのは近年どういう特徴を持っているのかということをちょっと具体的に伺えればということがあります。

 そして、同時にもう一点。先生の書かれた中で拝見したんですけれども、教育の分野にも市場原理が浸透してきている、特に指定管理者制度の導入が拍車をかけているという指摘がございまして、社会教育の分野では、行政の側が民間の企業と一緒になって事業を展開することもあるのが実情であるという指摘を見ましたので、こういう問題は、NPOの視点から見てどういう問題を投げかけているのか、もたらしているのかということをちょっとお聞かせいただければというふうに思います。

田中参考人 御質問ありがとうございます。二番目の方からいかせていただいてよろしいでしょうか。市場原理の話です。

 実は、NPOが民間の新しいセクターとして浮かび上がりながら、今、いろいろな方向が目指されていると思います。私なりの言葉で言うと、需給分離型と需給融合型を探る、NPOがそれぞれ方向を探っていると思います。需給分離型というのは、NPOがサービスする側、住民なりなんなりがサービスを受ける側。需給融合型というのは、住民なり市民と一緒になってNPOが何かをつくり上げていく。市場原理というのは、需給分離型の方でございます。

 例えば事例を挙げますと、ちょうどキャンパスが川崎なものですから、川崎の虹ケ丘小学校コミュニティルームというのがございます。そこでは、学校の施設一部を開放して、地域施設として市民ボランティア組織が運営しています。そこを調査したんですが、それは完全に需給融合型でやっています。今、NPO法人をつくっております。

 ここにつきましては、住民と一緒になって、新しいコミュニティーづくりの拠点としてこのNPOが頑張るという形でいっております。これは、市場原理に進むのではなくて、コミュニティー原理といいますか、コミュニティーの中でNPOが、そのコミュニティーのつながりを、先ほど言いましたソーシャルキャピタルを豊かにする方向で模索しております。ですから、こういうケースを参考にしながら、これからの需給融合型のNPOのあり方というのをもっともっと研究していく必要があると感じております。

 一番目の方で、子育てに関するNPOの話なんですが、先ほどの学校支援とかかわる問題ですが、杉並区は、学校支援をするための人材なり組織なりを、今、委託という形でかなり重視しております。そこの委託を受けているNPO法人、スクールアドバイスネットワークというNPO法人がありますが、これが学校と外の専門家をうまくつないで、学校の先生と一緒にプログラムを組みながらそこに必要な人材を張りつけていくという形で、いわゆる学校教育のプログラムを先生と一緒につくり上げるというふうな形をとっております。こういうものが一つのこれからの参考になるのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

石井(郁)委員 どうもありがとうございます。

 私も、確かに地域の住民がいろいろな学校にかかわっていくということは大変大事だと思うんです。しかし、そのかかわり方というのは、やはりなかなか考えないといけない問題をいろいろはらんでいるというふうに思いますし、また、教育というのは、本当に幼児の時期から、そして学校教育、そしてまたその後という、大人になっていく長い問題をはらんでいますから、学校だけにかかわるというやり方で考えると、どうなのかなということもちょっと考えておりまして、今お聞きしたところでございます。

 次に、長澤参考人に伺いたいと思いますけれども、先生から、この本を見てほしいということでいただきました。社会教育の分野でいろいろな法ができて以降、法成立以降、本当に研究と実践というのが積み重ねられてきたと思うんですね。それが公民館の職員と地域住民との共同という形でいろいろな実践がされてきた、もう五十年以上になりますから、そういうふうに思うんです。しかし、私どもも、公民館の中でどんな学習、学び、そういう住民と職員との共同が進められていたのかというのを余り知らなかったというか、率直に申しまして、今回の法改正を前にして、改めていろいろなことを学ばされたということがあるんですね。

 そういう意味で、先生に伺いますけれども、これは千葉での実践が書かれていると思いますけれども、住民が学ぶということを今どうとらえていて、そして、自発的に学ぶ要求というのは、どんなふうに職員の皆さんが酌み上げられてそういう活動を進められているのか。その何か典型的な例というようなことを御紹介いただけたらいいかなというふうに思いますが、どうでしょう。

長澤参考人 御質問ありがとうございます。それからまた、本もお読みいただきまして、ありがとうございます。

 公民館というのは、もうかなり、戦後六十年以上歴史がたっておりますし、全国に一万七千から一万八千の公民館がございまして、この実践を全部紹介するといいますか、あるいはそこで行われている住民の学びというものを紹介するというのはなかなか困難な部分もあるかなというように思うんですけれども、本当に、その実践については、例えば全国公民館連合会とかあるいは月刊社会教育だとか、さまざまな社会教育、公民館の雑誌等、出版物がございまして、そこで紹介されているかというふうに思います。

 今私たちは、自分たちの暮らしをつくっていくという、まさに自分の暮らしと生き方にかかわるような学びというのが、例えば子育ての問題やあるいは女性の生き方の問題あるいは環境問題、今、地域にさまざまな課題というのが噴出をしておりまして、まさに豊かな自分の暮らしとそれから地域社会を豊かにしていくという意味で、やはりこの社会教育あるいは住民の学びというのはとても大きな意味があるかというふうに思います。そのときに、住民とやはり行政、あるいは住民と公民館というのが協力、共同して進めていく、そういう実践ですね。

 そういう点では、実は今回の法改正でも、特に、ちょっと先ほど指摘させていただきましたけれども、公民館、特に公民館主事というのは、社教法二十七条で、必置ではなくて任意設置になっているんですね。ですから、社教法で主事が法制度化されていない状況の中で、いわば専門職制度、公民館職員の制度化というのを進めるのが自治体の努力に任されてきたというようなところが戦後日本の場合にはございまして、でも、そういうところでも、それを超えていく実践が随分出てきております。

 例えば、岡山県の岡山市では、三十七の公民館がございますけれども、そこに、もともと嘱託職員だった者をいわば正規職員にしていくという、社会教育主事有資格者の正規職員をほぼ公民館に配置するというような、そういう実践がありますし、大阪の貝塚、ここは公民館が拠点となって子育てネットワークが進められており、あるいは千葉県の木更津とか君津とか、そういう自治体における専門職制度の自治的な努力と住民が結びついて、住民の学びを援助していく営みというのがいろいろな各地で展開されていて、千葉もその事例の一つだというふうに私は考えております。

石井(郁)委員 今話されましたけれども、社教主事が任意設置という中でも、そういう豊かな実践というのはいろいろな形で努力されてきたということを伺うことができましたが、今回の法改正の中では、教育委員会、行政の側が学校支援地域本部などでの事業を行っていくということが強く出てきているわけですよね。それとの関係でいいますと、今お話しのような公民館側の自主的な取り組みとこの問題というのは一体どうかかわっていくんだろうかということをもう一点伺いたいことが一つです。

 それで、もう時間もあれですから重ねて最後にもう一点ですけれども、今回の法改正で、公民館、図書館、博物館にいわば評価というのが入ってきているんですよね。これは新設条項であります。いわば評価ということを法定化されるわけですから、この中身が問われなきゃいけないわけですけれども、私は、やはり公民館、図書館、博物館ともに、今るる各委員の方も言われましたように、予算、人的な補充とか拡充というのがどうなのか、そこが一番問われているときに、それの手当てがなくて、それで一方で評価、評価ということで来ると、本当に、果たして地域住民の期待にこたえるような活動が今後できていくんだろうかということを危惧いたします。

 やはり、評価をすることが逆に今の状況をもっと悪くするということにつながりはしないか。人を減らすとか、いろいろ予算も減らすとかいうことにつながりはしないかということがありますので、本当にこの施設の機能をより果たしていくためには、この評価という問題も、現場ではどう受けとめていらっしゃるかということも最後にお聞きしたいと思います。

長澤参考人 質問ありがとうございます。

 第一点目の教育委員会と公民館の関係ですけれども、先ほどの住民の学びというものを保障するというところでは、公民館というのは、住民の学びの要求とかいうものに基づいて、いわば自律的に公民館が学習活動を進めていくというところに特徴があるというふうに思うんですね。

 教育委員会事務局というのは、それをいわば条件整備していくということでございますので、そういう点から考えますと、今回の法改正もそうなんですが、私はこの間一貫して主張しておるんですけれども、社教法の第五条、第六条、教育委員会の事務ですよね、公民館、図書館、博物館というのは事業という概念で、事務と事業という概念が法の中で大変混同されているのではないか。

 二〇〇一年法改正の中にも事業という概念が入りました。今回も事業という概念がいわば教育委員会の事務の中に例示されるというのは、教育機関の事業、教育委員会の事務、その区別というものをやはり非常にあいまいにして、教育委員会が進めていくというところは、住民の学びを保障するという観点から、私は、その役割分担が大変あいまいにされてしまうのではないか。それが結局、住民の学び、自律的な公民館、教育機関としての自律性というのをやや脅かすのではないかというふうに考えておりまして、大変そこのところは大きな論点だというふうに考えております。

 それから、二つ目の評価の問題ですけれども、御存じのように、二〇〇三年の公民館設置運営基準が全面改定されたときに、公民館の事業の自己評価というのが入りまして、ですから、既に各公民館でそのような実践が重ねられているわけですね。

 今回は、事業の自己評価ではなくて運営にまでいわば評価の分野が拡大されておりますので、御存じのように、今大変自治体が厳しい状況にありますから、先ほど言いましたように、公民館というのは本当に条件としては非常に厳しいところで、しかし、全国各地でいろいろな形で頑張っているわけですよね。そういうときに、貧しい状況の中で評価がかぶされますと、やはりそれはもう要らないのではないかというふうになってしまう。そういう論理といいますか仕組みが出てきてしまうのではないか。

 ですから、私は、今回の評価の問題については、やはり公民館の条件整備といいますか、そこのところを進めていくというのが教育行政の非常に大事な役割なのではないかというふうに考えております。

石井(郁)委員 時間が参りました。三人の先生方、どうもありがとうございました。

 終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 きょうは、三人の先生方、本当に貴重な意見をありがとうございました。私で最後でございますので、簡潔に先生方に御質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、糸賀先生に御質問します。

 先ほど、なるほどというお話を聞きました。図書館の中で、書籍が一割、資料が二割、人材がどう活用されて、これはどういう仕事をしているのかということが実は七割なんだというお話をお聞きしまして、司書の役割がいかに重要かということを改めて認識させていただきました。残念ながら、であるにもかかわらず、司書が配置をされていないとかいう図書館がたくさんある。図書館自体も、先進七カ国で比べれば全く恥ずかしい限りの数でしかないということについて愕然たる思いがするんです。これはもう本当に、糸賀先生の意を体して、我々は頑張って、地域の情報拠点としての図書館というものをしっかりつくっていく努力をしなければならないと思っています。

 一方で、既存の図書館の中でも、それだけ司書の役割が重要視されているにもかかわらず、例えば、市区でも六割、それから町村では九割、図書館職員の研修が行われていないという実態があるようなんです。恐らく業務に忙殺されて、数も少ない、したがって研修など行っていられないというのが実情だと思うんですが、こういう現状について、ひとつどうお考えなのか。こういう現実だと、実際に地域の拠点としての図書館の業務が今ある図書館でも果たしていけないのではないかという心配がちょっとあったものですから、先生のお考えを、感想といいますか、お聞かせいただきたいと思います。

糸賀参考人 御質問ありがとうございます。

 今委員御指摘のとおり、特に町村部では専任で図書館で働ける司書の配置が大変おくれております。

 これは、現在の図書館法の十三条にも、教育委員会が必要と認める専門的職員を置くというふうになっているわけであります。この図書館法の第三条では、最前から御指摘もありましたように、図書館奉仕、いわゆる図書館サービスの規定が書かれております。この図書館奉仕として掲げられた規定を実践していくためには、専門的職員が少なくとも一人、本来ならば、その図書館の規模に応じて複数は配置されるべきであります。しかしながら、残念ながら我が国では、法律で規定されている資格を持った司書すら配置されていない、こういう実情があるわけでございます。

 これにつきましては、やはり当該自治体の任命権者、つまり首長さんでありますとかあるいは教育長さんが図書館の司書の働きを十分理解していただくことがまずは必要だろうと思いますし、同時に、司書資格を持っている人間、図書館で働いている人間も、やはり自分たちの存在意義というものが十分わかるような仕事の仕方ということを一方でやっていかなければいけないだろうと思います。

 そういう意味で、今回の法改正が研修についてきちんと国や都道府県に努力義務を規定したということは、私はすごく意味があるだろう。それだけに、そういう研修や教育を受けられるような環境になっていくよう、これも国あるいは都道府県の方で働きかけていかなければいけない。そうした上で、司書もやはり図書館で必要だということをもっとアピールし、同時に、首長さん方あるいは教育長さんも、図書館というのは本来司書がいなければ動かないんだと。七割は、先ほど申し上げましたように、司書、職員の占める割合が大きいわけですから、その実態を知った上で今後は司書の配置をふやしていって、少なくとも欧米並み、G7並みの図書館サービスが展開できるような状況に持っていっていただけたらというふうにお願いいたします。

日森委員 どうもありがとうございました。

 田中先生にお伺いをしたいと思います。

 先ほど、東京都の話、なかなか複雑怪奇で難しい話なんですが、何となくイメージとしてわかりました。

 先生は、異なった世代間交流の重要性ということを大変強調されておりまして、そう伺っているんですが、異なった世代間で交流を積極的に行うということが強調されているんですが、その中で、公民館の役割というのは、先生のお考えの中でどういうふうに位置づけをされているのか。具体的な例も含めて、もしありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 世代間交流とは、もう言い尽くされている言葉でございますが、見ていきますと、一般的には、大人ないしは高齢者が子供たちにいろいろなことを教える、学習支援するというふうなイメージが強いんですが、実は、大人自身が子供に何かすることで、そのはね返りで、大人自身の活性化であったり、大人自身が学ぶということが非常に多いわけですね。ですから、世代間交流というのは、異なる世代間の学び合いの仕組みだと考えております。

 具体的には、例えば、国分寺の本多公民館という活発な公民館がございますが、そこでは地域会議という名前で、地域のいろいろな立場の方々が集まって学習なり交流をする仕組みがございます。そういう仕組みの中で世代間の交流が行われていて、世代を超えた地域のつながり、先ほど申し上げましたようなソーシャルキャピタルというふうな概念でもとらえられる可能性のある、そういう芽が出てきております。

 ですから、公民館が、先ほども申し上げました地域の人々のつながりやソーシャルキャピタルを蓄積していく役割があるとすれば、そこには当然、異なる世代、異なる文化の方々が寄り集まる仕組みが必要で、そういう中で、お互い学び合い、そして、文化の交流を含めまして地域全体の文化を醸成していくというふうなことが見られると思います。事例として先ほど申し上げました本多公民館などは、その一つの芽が出ているというふうに見ております。

 以上です。

日森委員 ありがとうございました。

 続いて、長澤先生にお伺いをしたいと思います。

 いろいろ準備したんですが、前の委員がすべて聞いてしまいましたので、一点だけお聞きをしたいと思います。

 社会教育の充実ということで、今先生はちょっと批判的な御見解をお示しなさっているんですが、国や自治体行政が、社会教育の充実に向けて一体今何をしなければいけないのか、何をしてはいけないのかということについて、簡潔にお答えいただけたらと思います。

長澤参考人 ありがとうございます。

 行政というのは、特に教育行政の場合には、何度も繰り返しますけれども、やはり諸条件整備というのが非常に大事な役割でございまして、中身については、その住民あるいは地域がその学習内容というものを決めていくというような、住民の学びの自由と自治、この自由と自治というのが私はやはり社会教育の原理だというふうに思います。

 そのことを踏まえた上でさまざまな条件整備をしていく。一つは、職員体制も非常に大きいと思います。特に公民館の場合には、図書館、博物館に比較して大変法制度的におくれているわけですね。ですから、そういう職員体制の問題、予算の問題等々、そういう条件整備というところに本来力を入れていく必要があるのではないかというふうに考えております。

日森委員 それ以外のことはしてはいけない、なるべくなら、してはいけない、いやいや、してはいけないという意味でよろしいですね。

 ありがとうございました。終わります。

佐藤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼申し上げます。

 参考人の皆様には、それぞれの立場から貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。本日いただきました御意見につきましては、今後の委員会審議に生かしてまいりたいと思います。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより政府に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 参考人質疑に続き、政府に対する質疑で三十分をちょうだいいたしましたので、適宜明快な答弁をぜひお願いしたいと思います。

 実は、質問に入る前に、一昨日、私の地元、彦根市の教育委員会、そしてPTAの事務局から電話がありました。文部科学省が田島一成の社会教育委員の経歴を事細かく聞いてきた、PTAのこれまでの経歴を聞いてきた、答えていいでしょうかという、そんな電話でありました。

 恐らく、私、かつて社会教育委員をやらせていただいておりまして、その経歴を事前に調べようという思いであったんでしょうけれども、教育委員会の方は、何事があったのかと。理由も一切知らされずに議員の経歴を調べようとする、その魂胆がわからないものですから、心配になって、すぐに電話をしてこられました。

 うちの事務所に問い合わせてくれれば、すぐ答えられたことなんですね。そうやって教育委員会等々の仕事をふやさせているその一つではないかと私は大変不快感を覚えたところでございます。どうぞ、その辺は、調べたいならばいつでも聞きに来てください。教育委員会であるとかPTAの事務局なんかに余計な仕事をふやすことは今後ぜひ御遠慮をいただきたい、このことを冒頭に申し上げておきたいと思います。

 さて、社会教育法についてきょうは質問させていただきますが、実は今回、この社会教育をめぐるさまざまな調査データがないかといろいろと探してみましたが、なかなかこれという情報を得ることができませんでした。

 そんな折しも、平成十七年度に社会教育調査報告書というのが文部科学省から出されています。大変分厚いものでありますが、これを何とか手に入れようと思ったのですが、残念ながら、ホームページからダウンロードするしかない。といいながらも、文部科学省の方からわざわざプリントアウトしてお持ちをいただきましたので、これをもとにいろいろとお伺いをしたいというふうに思って中を拝見したのですが、残念ながら、この社会教育調査報告書は、三年間に一度しか調査を実施されていないということで、その前は平成十四年度、今回、一番新しいのが平成十七年度でありまして、おまとめいただき、出されたのは平成十八年のことでありました。

 平成二十年度がまとめられて提出されるのは来年というふうに聞いておりますが、この発行部数もわずか四百部ということで、この調査報告書自体、ホームページで調べていくのにもなかなかたどり着かないというような実態がありましたから、この調査報告書がどれぐらい今回の法改正に生かされているのかを冒頭ぜひお伺いをしたいと思います。

 三年に一度しか調査をされていない。今回、大変長い期間を経ての、ようやく改正に至った社会教育法でありますけれども、こうしてこれまで調査をされてきた結果がどれぐらい反映されているのか、浮き彫りになっている課題や問題点が今回の改正に十分生かされているというふうにお考えなのかどうか、冒頭ぜひお伺いをしたいと思います。

加茂川政府参考人 まず冒頭、委員御指摘のございました事実確認につきまして、委員に不快な思いをおかけしたことをおわび申し上げたいと思います。

 御質問をいただきました予定の項目を確認させていただきましたら、委員の御経歴について未確認情報がございましたので、確認をした上で御答弁をする方がより適切な答弁になるのではないかということで、私の指示で確認をさせていただきましたが、御不快な思いをさせましたことをまずもっておわびをしておきたいと思います。

 社会教育調査についてでございますが、お話にございましたように、社会教育行政に必要な社会教育に関する基礎的事項を明らかにすることを目的といたしまして、統計法に基づく指定統計調査として、これもお話にございました、ほぼ三年に一度の割合で実施をしております。最新の調査は平成十七年度調査でございます。

 この調査結果でございますが、国だけではなくて、地方公共団体におきます社会教育行政及び生涯学習の振興に資するための諸施策の検討、立案のための貴重な基礎資料として活用されておると理解をしております。このため、調査項目のほとんどが経年比較できるように構成されてございまして、社会教育行政上の要請を踏まえた見直しも必要に応じて行っておるという調査を行っておるところでございます。

 具体には、調査項目としましては、社会教育に関する職員数、あるいは公民館、図書館、博物館等、いわゆる社会教育施設の施設の状況、設備の状況、事業の実施状況、情報提供の方法等、広範にわたる調査を行っておるわけでございまして、我が国における社会教育の現状を明らかにしておるわけでございます。

 そこで、今回の法改正との関係でございますが、今回の法改正におきましては、まず、前提としまして、中央教育審議会で御審議をいただいたわけでございます。この審議の場で、社会教育調査を初めとする各種の調査の結果、または得られたその調査結果としましての現状や課題を基礎資料として、まず中教審に御提供申し上げたわけでございます。この場で総合的な検討に役立てていただいたとまず私どもは理解をしておるわけでございます。

 一つ例を申し上げますと、今回の法改正で御審議いただいております中に、社会教育施設における情報提供方法につきましての案件がございます。これにつきましては、調査としまして、インターネットを通じた手段が増加傾向にあるということが明らかになっておりました。これを踏まえまして、今回の改正法案におきましては、紙媒体による社会教育資料の提供を前提とした現行の規定を改めまして、新たに幅広く情報提供を行う規定に改めようとしておるわけでございますが、こういったところに調査結果が役立っているということが言えるかと思います。

田島(一)委員 御指摘いただいた、情報ツールが電子媒体を通じてという傾向は、今回の法案にも盛り込まれています。しかし、もっともっとこの膨大な資料、基礎データを解析していくと、もっと手を加えなければならない部分があったのではないかと私は大変残念に思っているところであります。

 もちろん、これだけの膨大な基礎資料でありますから、中教審にこの資料を提供されたところで、一つ一つを解析していくのは大変困難なことでもありますし、ましてや、数字の網羅であって、この数字を一つ一つ、その背景を分析していくことは大変困難であります。私、どうせここまで調査をされているのであるならば、文部科学省としてはこれをどのように受けとめているのか、また、そういった解析、評価等々について検証を一定まとめていく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。

 平成二十年度のデータをもとにしてまた来年、報告書が提出をされるわけでありますけれども、数字だけを単に書き並べるだけでは、これはなかなか読み取ることができません。例えば前回の平成十四年度と平成十七年度を単純に比較しても、この間には大きく、各自治体で市町村合併という課題がありました、そのことによって基礎自治体の数も大幅に減り、その流れで施設の数等も大きく変化をしてきています。単純に数字を読むだけで、公民館の数が減った、職員の数が減った、主事の数が減ったというだけでは解決できない、いろいろな要因を踏まえている数字でありますから、こうした分析、検証について、次回、平成二十年度の報告書を出されるに当たってどのようにお考えなのか、そのお考えをぜひ御披露いただきたいと思います。

加茂川政府参考人 社会教育調査の調査項目、その性格については先ほど御説明を申し上げたとおりでございますが、これまでも、その調査結果に基づいて明らかになった課題や問題点については、私どもも必要な分析を行ってきておりまして、関係の施策の検討に役立ててきているところでございます。インターネットについては先ほど事例として申し上げたところでございます。特に、社会教育として学級、講座、どういった講座が開設されているか、受講者の実態はどうなっているかといったことについては、いろいろ分析すべき興味のあるデータも上がってきておるものと認識をいたしております。

 ただ、この調査はあくまでも指定統計調査でございますので、経年、基礎的なデータを蓄積した上で、それを社会教育政策全般に役立てていくという性格のものだと思っております。例えば、特定の政策課題について調査を行って、その結果を評価、検証して具体的な政策立案に役立てていくといった種類の調査もあろうかと思いますが、それとは基本的な性格が異なっておることもぜひ御理解をいただきたいと思っております。

田島(一)委員 性格の違いをとやかく私、申し上げるつもりはありません。しかし、やはりこういう基礎データがある、統計調査があるということは紛れもない事実として受けとめていかなければならないことであります。とりわけ今回こうして社会教育法の改正がされるわけでありますから、それのもととなる基礎データ、統計調査として、今回の平成十七年度に出された社会教育調査報告書というものを、私は、やはり最低限活用していくベースになるのではないかというふうに考えました。

 どうぞ、単なる統計調査だ、性格が異なるというふうにおっしゃいますけれども、この数字を、単に調査、各教育委員会から出していただいて、それで、はい、終わりです、出しましたではなく、これをもとにして、実態把握以上に、どのような施策が今後、地方自治体、教育委員会等に必要なのかという資料として十分にやはり御活用いただきたい。そのことを強く望んでおきたいと思います。

 さて、この社会教育法でございますが、そもそもこの法律は規制法ではありません。各自治体の裁量幅が非常に大きく、政策の内容等も自治体によって大変大きく異なっております。何をやってもオーケー、何をやらなくても決して法律違反に問われるわけではない。ですから、各自治体のこの社会教育に対する姿勢というものが問われている、これが現状ではないかというふうに思います。

 ですから、この場で議論をすることも大変難しいことでありますし、この社会教育法の改正の部分で自治体の裁量権に任されている部分が大半でありますから、国でいかに何をするかというのも非常に議論しづらい部分ではあります。そう考えると、この社会教育を法律できちっと規定していくということに対しても、もう一度原点に立ち返っていかなければならないのではないかと私は改めて考えるところでありますが、社会教育を法で規定する意義について、そして、規制法ではありませんから、各自治体においても大変温度差がある、取り組み状況に差があるという現状をかんがみて、大臣はどのようにお考えなのか、まずその御認識をお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 冒頭ございました話、私、きょう初めて聞いたわけでございまして、申しわけございませんでした。委員がどういう意識を持ってこの御質問をされるか、それに的確にお答えするためにという、私は悪意はなかったんだろうとは思いますが、ただ、率直に委員にお聞きすれば済む話でございますから、私からもおわびを申し上げたいというふうに思っております。

 今、社会教育法の意義ということが委員から御指摘がございました。確かにこの法律は、実施主体は地方自治体でございますから、そういった意味で、何かを縛るといったものではございません。また、やらなかったから何か罰則があるというものではないわけでございますけれども、これはやはり、国民共通の課題として社会教育というものをどうとらえるか、また、国民の中でどういう理解をしていただくかということを法の二条、三条等に書いてあるというふうに御理解をいただいたらいいんじゃないかというふうに思っております。

 私は、いつも簡単に、これはかたい言葉でとやかく言ってもわかりにくいわけで、いつでも、どこでも、だれでも学ぶ機会がある、こういう社会をつくっていくということが大事なんだということを申し上げておるところでございます。

 法律上は、学校教育というのがございますから、それを除いた部分、あらゆる部分が社会教育であろうという認識であり、なおかつ、それを推進していくためにやはり国や地方公共団体というのは環境をつくっていかなきゃいけない、その環境を奨励するためにどういうことが考えられるかということを書いてあるのがこの法律であろうというふうに思っております。

 加えて、温度差があるということがあったわけでありますが、これはまさに自主性にゆだねられているところから来ているというふうに思います。ここ一、二、三日、実は、民主党の議員にも大変お世話になっておるわけでありますけれども、学校の耐震化という問題がございますね。これ一つ見ても、同じ制度でありながら、実は進捗状況に随分差がございます。

 温度差というのは、やはり地域の財政状況も考えられるわけでありますし、その地域のいろいろな、議会もありますし、当然行政もあります、また地域の住民の意識もありますから、そういったことにおいて生じてくるということが一つ考えられるというふうに思います。

 そういった中で、やはり我々としては、できるだけさまざまな、例えばガイドラインを示すとか、また、我が省でいいますと、今、放課後子ども教室というのをやっておりますけれども、これは、子供たちが学校外でいろいろな活動をするときに、地域のいろいろな方々が参加をしていただいて、そして、子供たちがそこで学校では勉強できないようなことも実は勉強ができるという場を提供しようということで、今一生懸命努力をしております。また、今年度から、支援地域本部という新しい仕組みを立ち上げておりますけれども、こういった中で、いろいろな意味で社会教育という場が提供される。

 そういった施策を国としても講じていくことによって、社会全体で子供たちを教育していくといいますか、そういったことにも実は人材が活躍していただけるんじゃないか。こういったことを通じて国としてもいろいろな政策を講じていきたい。しかし、この温度差というのは、やはり地域の皆さんが努力をしていただくということが大事であるというふうに私は考えているところでございます。

田島(一)委員 温度差があって当然だと受けとめるか、もしくはこの差を埋めていこうと努力するのか、これはやはり文部科学省としての大きな私は責任だと思います。広く、どこの地域に住もうとも、いつでも、どこでも学ぶ機会が得られる、これがやはり国民として受けたいと思う社会教育の延長線、生涯学習ではないかというふうに私は思っております。

 地域の自主性に任せておく、もちろん、すばらしい考え方、底辺にあると思いますが、残念なことに、そのことによって、現実、トップの考え方であるとか、その自治体の社会教育に対する思い入れで、受けられる機会が多いところと少ないところがある。これはやはり大きな問題であり、そこを底上げしていくのが、私は文科省の仕事だというふうに思っています。

 とりわけ、近年の財政難等々から、教育予算全体も相当逼迫をしてまいりました。この社会教育法に基づくさまざまな事業展開は、それこそ自主的に行われている部分でありますから、事業を減らしたところで法律違反に問われるものではない。しかし、学校教育については一定予算も投入していかなきゃいけないからと、教育予算の中ででもその分配の比率が近年相当変化をしてきています。学校教育の方に重点を置く余り、社会教育が大変おろそかになりつつある。そんな財政状況等を考えていくと、やはり伴うもの、先立つものとして、予算の確保というものに社会教育担当者は一番頭を抱えています。

 私もかつて経験がありましたが、例えば、先ほどからもお話があった公民館活動等々では、なかなか事業展開の予算がつかないということで、その事業予算の捻出に本当に苦労をされています。私なども、それこそ印鑑だけを持っていったこともありました。何をか言わんやです。こうしていろいろな形で予算を捻出し、そして地域の皆さんにいろいろと学ぶ機会を提供しようと主事を初め公民館の職員がいろいろと知恵を絞っているんだけれども、残念なことに、思うようなことにはなかなか進まないとじくじたる思いをいろいろと吐露していただきました。

 こうした、予算が大変厳しいという状況、社会教育が結局財政難のしわ寄せを食らっているという状況をどのように受けとめ、今後どのように対応していこうというふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

渡海国務大臣 委員の今の御指摘、要は、現行の枠組みの中で考えていくか、それとも国全体の予算の仕組み、これは民主党さんも地方分権ということでお出しになっているわけですね、基本的には地方の自主性に任そうということで地方に財源を持っていく。それは、割り振りの問題はあります。ありますが、自主性に任せるということになりますと、結局は、その中でどういう選択をするかというのは地方の裁量権になってまいりますね。そういう形の国家を目指すということであれば、これは、我々がやれることはある程度限界があるということも言えるわけなんですね。

 ですから、現在の仕組みの中で、例えば、これは教育予算という中で何を考えていくかという課題だととらえれば、確かに学校教育がありますから、こっちにシフトされ過ぎているんじゃないかと言われれば、学校教育の方も苦しゅうございますから、これはやはり子供たちの予算というのを簡単に削るわけにいきませんから、我々としては今やらせていただきたいということをお願いしておるわけでありますけれども、やはり社会教育というのは大事な課題でございますから、今地財措置でやっておりますから、これは総務省の方ともよく話をしなければいけませんが、我々として、こういうものは地方財政の中でちゃんと組み込んで、地方にちゃんと交付税措置をしてほしいということを主張していくことが必要なんだろうというふうに思っております。

 それがちゃんと使われているかどうかということになりますと、これはまた地方の問題にならざるを得ないというか、これにまた一々色をつけて渡しますと、結果的には地方分権、地方の自主性ということにまた反するということになりますから、ここは非常に、これは委員もおわかりいただけると思うんですが、国の形としてどういう国家をつくっていくかというときに、その骨太の議論をしっかりやらないと、なかなか現行の枠組みの中でのお答えにしかならないということになるということも御理解をいただきたいと思います。

田島(一)委員 決して学校教育に予算を振るなと言っているわけではないので、その点は誤解をしないでいただきたいと思います。

 それでは、具体的な内容にちょっと入りたいと思いますが、私の県でも聞き合わせをいただいておりました社会教育委員制度についてでございます。

 私、もう古い話でありますが、平成五年から十年間、地元の彦根市の社会教育委員をさせていただきました。当時は一号議員、二号議員、三号議員というような委員の属性で区分をされておりましたが、地方分権一括法の改正に伴って、その構成であるとか区分というものも取り払われておりまして、最近ではどういうような方々がなっていらっしゃるのか、全体を把握するのが非常に難しい状況になっております。

 しかしながら、私がやった当時もそうだったのですが、学校の校長先生、この方々は当時一号議員という現職学校関係者の枠でお入りになっていたわけですが、現職の学校の校長先生であるとか、元学校の校長先生という先生方が大変多くいらっしゃるわけですね。ある意味、社会教育という学校教育の枠を飛び越えた大変広範な範囲があるんですけれども、どうも教育委員会から委嘱をするには委嘱しやすいという環境があるのでしょうか、学校関係者の割合が全国的に見ても非常に多いことがこれまでのいろいろな調査資料等々でもわかり知るところであります。

 社会教育と学校教育の独立性というものを考えたとき、この現状等も、私たちは当時から相当課題だというふうにも認識をしておりましたし、また、社会教育委員自体が一人一人委嘱されてのことなんですけれども、一応合議体という形で社会教育委員の会議というものが設置されて、そこで会合を持っては、さまざまな答申や建議等々を議論したりもしていたんですけれども、残念なことに、この社会教育委員の会議自体も、法的根拠がないと申しますか、その存在自体が非常にあいまいなところがあって、もうその当時から何度も何度もこの社会教育法の条文と照らし合わせながら、我々は何のために集まっているのだろうかということを自問自答していたことを思い出しているところでもあります。

 今、社会教育委員制度自体がマンネリであるとか形骸化だというような指摘も、先ほど参考人質疑の笠委員からも御指摘をいただいていたところなんですけれども、どうもあいまいな形でこれは進んできているように私には思えてなりません。

 例えば、未設置の教育委員会というのも、福井県に始まって三十五市十一町十村、組合立のところに至っては三十一組合というふうに、任意設置でありますから、設置していないからといって問われるわけではありませんけれども、未設置の教育委員会等々もあることを考えると、この地方の温度差、格差というものが非常に顕著にあらわれている数字ではないかというふうに思います。

 予算がどんどんどんどん逼迫している中で、この社会教育の重要性を説くフロントランナーとして、本来頑張らなければならない社会教育委員だというふうに私は認識しているんですけれども、こうした未設置の教育委員会等々への働きかけであるとか、また、社会教育委員のこの制度自体について、どのように評価をされているのか、まとめてお答えをいただければと思います。

加茂川政府参考人 何点か御指摘がございましたが、まとめて御説明を申し上げたいと思います。

 まず、社会教育委員の構成についてでございますが、委員御指摘のように、現在、社会教育委員は、学校教育の関係者、社会教育の関係者、加えまして家庭教育の向上に資する活動を行う者、そして学識経験者から、個人として委嘱されておるところでございまして、学校教育関係者が委嘱されることは法律の事項として規定をされておるわけでございます。

 その構成割合を見ますときに、いろいろな分類の仕方があろうかと思いますが、私どもの手元の資料で申し上げますと、学校教育関係者が約一七%、社会教育関係者が四一%、家庭教育関係者が九%、学識経験者が三四%程度といった構成になってございます。ただ、先ほどOB教員という指摘がございましたが、学識経験者の中には大学関係者あるいはOB教員も含まれておる可能性がございますので、学校教育関係者は一七%程度と申し上げましたが、もう少しその数は高いものと考えておるところでございます。

 ただ、今申し上げた数字を見ましても、社会教育の独自性が損なわれる、学校教育関係者が必要以上に多くかかわって構成しておって問題なのかということにつきましては、はっきりそこは断定できないのではないかと考えております。

 特に、学校教育関係者、OBも含めましてでございますが、委嘱するに当たりましては、現在社会教育が、社会総がかりで子供を育てていこうという課題に直面しておること、大臣のお話にもございましたが、学校内外で子供を育てる際に、放課後子ども教室事業あるいは学校支援地域本部事業が大きな課題で、これに対応していこうとします際には、地域との連携、あるいは、よく言われます学社連携の観点がますます重要になってくるわけでございまして、これらの課題にも適切に対応ができるふさわしい教育委員が委嘱されることが望ましいと考えておるわけでございます。

 こういったことから、社会教育委員の構成についても判断していく必要があろうかと思っております。

 また、社会教育委員の未設置の自治体についてどう考えておるかということでございました。社会教育委員は、個人に委嘱されるわけでございますけれども、社会教育行政に広くその地域の意見等を反映させるという観点、あるいは、社会教育委員としては、その豊富な知識経験を生かしながら、社会教育に関する計画の立案あるいは社会教育に関する諮問に対して答申を提出していただく、さらには、青少年教育に関する助言指導を行うといった広範な役割が期待されておるわけでございまして、社会教育振興の観点からは大変重要な役割を担っていただいておるものと認識をいたしております。

 この観点からしますと、御指摘のような未設置の県あるいは町村があることも事実でございます。ただ、率を申し上げますと、これは十七年の数値でございますが、都道府県では、この時点で四十六都道府県、九八%設置されておりますし、市町村、少し古い数字になりますが九六%以上設置をされておりますから、数値としてはそれほど遜色ないとは思いますが、社会教育委員、またはこの制度の重要性を考えますときに、私どもとしては、未設置の自治体に対してこの制度の重要性を再度御理解していただくための周知を図りながら普及に努めていきたい、社会教育委員制度の活性化にも努めていきたいと思っておるところでございます。

 具体の活性化の方策としましては、最近の例でございますが、平成十三年の社会教育法の改正の際に、社会教育委員として委嘱される者として、先ほど申しました「家庭教育の向上に資する活動を行う者」というものを加えたところでございまして、社会教育委員制度についても必要な見直しを逐次行ってきておりますことも御理解をいただきたいと思っておるわけでございます。

 各教育委員会におきましても、社会教育委員の活性化につきましては、研修活動でありますとか、活動内容の広報活動でありますとか、さまざまな工夫をしていただいておることを承知いたしております。ただ一方で、社会教育委員の構成を見ますときに、平均年齢が高いでありますとか、日常活動が必ずしも活発でないといった課題もあることを承知しておりますので、社会教育委員制度の重要性を改めて地方公共団体に御理解をいただきながら、十分連携を図りつつ、本来の役割が果たせるように努めていきたいと思っておるところでございます。

田島(一)委員 各委員の認識不足であるとかモチベーションの低さ等々も、やはり停滞している原因ではないかというふうにも思っております。

 どうぞ、地方分権のこの御時世でございますから高圧的な話はなかなか申し上げられないだろうというふうに思いますが、ぜひ御理解いただける働きかけを進めていただくようにお願いをしておきたいと思います。

 さて、この社会教育のステージは、何も文部科学省の所管の施設、公民館等々だけではございません。文科省が所管をしないさまざまな地域の施設等も一定以上の社会教育の推進に大きな役割を果たしていることは御承知のとおりだと思います。

 例えば、人権問題等々を普及啓発していくために設置をされている教育集会所や隣保館、こちらの方は同和対策事業ということで総務省と厚生労働省等が補助金を出し、人権教育の重要性、そしてまた地域の教育力の向上に一定以上の効果を発揮してきたところでありますが、残念ながら、人権教育の重要性もこの社会教育の中でうたっているにもかかわらず、閉館されているケースが大変多く見られます。

 こうした施設の存続が、近年、財政難であるとか首長の独断等々で廃止をされていくということは、それこそ社会教育、とりもなおさず人権教育等々がおろそかになりつつある傾向に拍車をかけているのではないかというふうに考えます。

 もちろん、所管が違うわけでありますから、この縦割り行政の中では踏み込めない課題だというふうに思いますけれども、どのようにお考えいただいているか、ぜひお聞かせください。

渡海国務大臣 今御指摘ございました隣保館につきましては、市町村統合とか、建物が大分古くなったりして、それがなかなか新しいのにかわらないといったような事情があるというふうに承知をいたしております。私の地域にもたくさんありますから、よくいろいろな話は聞いております。そして、この館が果たしてきたさまざまな役割というものにつきましてもよく承知をいたしているつもりでございます。

 ただ、言えますことは、この人権教育ということは、むしろ非常に幅広い範囲において今とり行われているのではないかなという印象を私は持っております。

 人権大会とかそういった、これは隣保館がベースになって発展してきた、そういった催し物にもよく私は出席をいたしますけれども、子供たちからお年寄りまで広く小学校区で行われておりますし、また、これは憲法上の当然の権利でございますから、そういった意味では、国際的にも、ただ単に今までは、例えば歴史的社会的事由等ということで説明をされてきたわけでありますけれども、そういうことだけではなくて、人間の大事な権利としてのこの人権というものをどういうふうに考えていくか、守っていくか、また教えていくか、こういうことについては大変大事なことだというふうに思います。

 隣保館との関係ももちろんございますけれども、そういうことではなくて、この人権教育というものに対して、我が省としてもしっかりと取り組んでいかなきゃいけない、そういうふうに考えているところでございます。

佐藤委員長 田島君、質疑時間が終了しています。

田島(一)委員 ありがとうございました。終わります。

佐藤委員長 以上で田島一成君の質疑は終了いたしました。

 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 図書館法は、制定されてもう六十年近くなりますが、図書館法の改正という形で出されたのは初めてのことかと思うんですね。それだけに、図書館の関係者の間では大変関心と期待が高まっていると思います。

 もう既に幾つか論点が出されておりますので、きょうは重複しない形で、しかし、確認も含めて図書館問題で質問させていただこうと思います。

 まず、司書の問題でございますけれども、今、図書館司書は大学で一体どのくらい養成されているんだろうか、そしてまた、資格を取っているのはどのくらいの方があるのかということと、その方々が司書として公立図書館に採用されているのは一体どのくらいなのかということを、まず端的にお示しいただきたい。

加茂川政府参考人 司書の養成課程を設置している大学の数でございますが、これは、最新、平成十九年度末現在で、短期大学を含めまして二百十九大学ございます。この大学で資格取得ができている者の数でございますが、約九千百名でございます。

 ただ、司書の資格を取得する方法は、その大学での養成課程を修了する以外にも、主に社会人を対象とした司書講習において資格を取得する方法がございます。この講習の修了者が約千二百名ございますので、合わせて約一万名が司書資格を取得していると言うことができるだろうと思います。年間約一万人ということでございます。

 このうち、実際司書としてどのくらい採用されておるかということも御質問いただいたわけでございますが、毎年調査しておるデータが残念ながらございません。

 私ども手元にございますのは、大変古くて恐縮でございますが、約十数年前になりますが、平成三年の数値で申しますと、公立図書館あるいは学校図書館等の図書館関係職員に採用された者が、この時点で約四百名あることがわかっております。ただ、このときの資格取得者が、母数としましては約八千八百人でございますから、そういった関係で大体現在も比率になっておるのではないか、理解できるのではないかと思っておるところでございます。

石井(郁)委員 私は、やはりちゃんと数字は文科省として把握すべきだと思うんですね。公立図書館にどのぐらい採用されているのか、それは基礎データとして必要ではないかというふうに思うんです。

 ずっとこの委員会の中での質疑でも、司書が少な過ぎるという問題がありましたけれども、現場では、公務員の削減ということで、退職者が出ますと補充されないということになって、司書の資格を持っている方がだんだんやはり少なくなっているということが起きているわけですよ。一方で、資格を持った人はたくさんいらっしゃるわけですから、何で採用できないのかという点で見ますと、本当に大きな矛盾を抱えているというふうに言わざるを得ません。

 さて、司書は図書館にとって非常に重要だということは、いろいろな方がもう御指摘されました。私も、本当に、司書がいる図書館、いない図書館と一体何が違うんだろうかということを改めてやはり確認しておく必要があるんだというふうに思うんですね。

 このことについて、日本図書館協会から教えていただいたんですけれども、司書の比率が高いところほど、人口当たりの年間貸出点数、貸出密度が高いというんですよ。つまり、やはりそれだけサービスがよく行き届いているということにもなるんです。市町村の、全体の正職員に占める司書率が四九・七%、約五割なんですけれども、そこでの貸出密度は五・一六だと。貸出密度が高い上位一〇%の市町村では、貸出密度が一一・九三と全体の二倍以上になるというんですね。そこでは正職員に占める司書率も五六・七%、六割に届こうかなというようなところになっているわけです。これは、そうしますと、年間で住民一人当たり十冊以上の利用が行われている、そういう状態になるわけで、そういう状態に図書館の機能を高めていくということが非常に重要ではないかというふうに思うんですね。

 図書館の充実にとって司書の存在、これがやはりサービスという点からも、図書館の機能を高めるという点からも、本当に急がれるし重要なんだということについて改めて認識を伺っておきたいと思いますが、いかがですか。

加茂川政府参考人 司書という専門的な職員が図書館の役割において大変重要な位置を占めておるというのは、委員御指摘のとおりでございます。

 特に、図書館がその地域の知の拠点としての役割を果たすことがますます高まってきておりますから、専門性を備えた司書が、多様化、高度化する利用者のニーズに適切に対応して、その専門的な知識や経験を十分に発揮することがますます求められておるんだと思っておりますし、役割の重要性については多言を要しないと思っております。また、一般的にでございますが、司書が配置された方が図書館におけるサービス向上につながる、利用者にとってメリットが大きいというのも御指摘のとおりだと思っております。

 私どもの資料としましては、具体にどういうサービスが司書の配置によって向上しているのか、または配置されないことによって劣っているのかといった、その明確な相関があるデータは持っておりませんけれども、一般論としては、おっしゃるように、司書を配置する方が、利用者の観点に立ってサービス向上等メリットが大きいことは御指摘のとおりだと思っております。

石井(郁)委員 私は、この点でも文科省としてきちんとしたデータに基づいて、図書館の機能を高める司書の有効性、有用性ということについてやはり論議をしていただきたいというふうに思います。

 もう一点ですが、司書のいる図書館ほど実は障害者サービスも充実しているんですね。図書館の障害者サービスということとして音声資料の作成、対面朗読の実施などあるようですけれども、音声資料を作成している図書館は全国で三百二十一館です。これは全体の一〇%。対面朗読サービスが五百十二館で一七%。この程度にとどまっているわけですよ。これでは到底障害者の皆さんにサービスしているということにならない。しかし、大事なのは、ここでも、そういうサービスが実施できるところはやはり司書の配置率が高いところになっているということなんですね。六〇%以上の図書館がほとんどです。

 今図書館では、子供の調べ学習、例の総合的学習時間ということが導入されて、一層そういうことにもこたえる、イベントの開催なども求められている、さまざまな機能があるわけですが、ぜひこの障害者サービスということにも留意をしていただきたい。その点でも、サービスを担う専門職員、図書館司書、これはもう絶対欠かせないわけですね。公立図書館にそういう点からも配置するということを再度求めたいと思います。

 この点で、私は、この審議の中でも出されました、文科省の図書館の在り方検討協力者会議の「これからの図書館像」というのを見ましたけれども、言葉としては大変いいことを書いているんですよね。例えば「困ったときには図書館へ」、「分からなければ司書に訊け」とあるんですよ。そして「役に立つ図書館」をと。やはり司書がいないということは放置できないじゃないですか、そうなると。本当に司書を配置するという決意で臨まれるのかどうかということで、再度伺いたいと思います。これはいかがですか。

加茂川政府参考人 先ほどの御説明の繰り返しになりますが、司書の持っております専門性を十分に果たしていただくことが、図書館奉仕、図書館における利用者に対するサービス向上につながることは共通の認識を持っておるつもりでございますし、図書館に司書が配置されることが望ましいという観点から、私どもも、いわゆるその望ましい基準を持って、各設置者であります地方公共団体にその取り組みを促しておるところでございますので、引き続きこういう努力を続けてまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 次に伺いたいのは評価に関してでございまして、これも新設の条項になっているわけですね。

 運営状況に関する評価及び改善並びに関係者への情報提供ということで、それぞれ、公民館では三十二条で、図書館でも第七条の三、七条の四、博物館でも九条、九条の二というふうにあります。これは図書館でいえば、どんなことを評価するということになるんでしょうか。

加茂川政府参考人 図書館奉仕の水準の維持向上でありますとか、図書館運営の適正確保等を図るために、御指摘のございました七条の三におきましては、図書館についての評価と、それによる運営状況の改善に努めることを規定しようといたしておるところでございます。ただ、具体的な評価の内容につきましては、第一義的には評価の実施主体である図書館が定めることを私どもは考えておるところでございます。

 評価の項目についてでございますが、一般的には、来館者・利用者数、蔵書数等がまず考えられるわけでございますが、このほかにも、例えば住民の利用状況、所蔵資料、図書館サービス、図書館資料のレイアウト、施設、職員等についてそれぞれ点検項目を設定いたしまして、定量的または定性的に評価を行うことが考えられると思っております。

 また、利用者、住民の満足度についても調査を行うといったことで、多面的、多角的な評価に資することになるのではないかと思っておるところでございます。

石井(郁)委員 ちょっと確かめたいんですけれども、今話されたのは、そういう評価を幾つか出されましたよね、これは国が行うということなんですか。それとも自己評価としてそれぞれの図書館にお任せするということなんですか。そこをはっきりさせてください。

加茂川政府参考人 先ほども御説明を申し上げましたが、この評価は、評価主体であるのは各図書館でございますから、図書館が評価を行う。その際に、どういった評価項目で評価をするかといったことも図書館が判断をしていただくことになります。

 図書館自身で評価をするということについて、図書館同士で連携をするということも私どもは期待をしておりまして、図書館関係の団体が評価、点検項目について各図書館に支援をする。例えばガイドラインを自主的に定めて支援をするといったことも視野に入れながら、私どもはこういったことを支援する立場をとっていきたいと考えております。

石井(郁)委員 大変重要な問題をはらんでいると思うんですけれども、今、評価ばやりでもあるんですが、一定そういうことを各図書館の自主的にと、自己評価ということを言われても、連携ということもあって、そうすると、この図書館はこういう項目で評価していると。評価というのは必ずまた公表もされますから、そうするといろいろなことが出てくるわけですよね、その実態が。

 私は、きょうはもう時間の関係で一つだけ指摘をしたいんですけれども、先ほどの話の中で、来館者の状況とか利用状況というのを言われましたよね。それは、まさに司書が置かれているところと置かれていないところでは本当にその機能が変わってくるんじゃないんですか。だから、そういう実態を抜きにして、あらわれた数字だけで見ちゃうと、実態を正確につかむことにはならないというふうに思うんですね。

 だから、本当に文科省はすぐ評価を導入してやりますけれども、やはり予算が、例えば資料代の予算も、聞きますと、三年前二千万あったのが今千六百万だとか、ぐんと各図書館減っているんですよね。だから、予算上で資料も買えない、そして人的な補充もない、専門の司書もいないというような中で苦労していらっしゃる中で、こういう評価だけが入ってくるとどういうことになるんだろうか。私は、本当にこれが文科省のやるべきことなのかどうかということをまず根本に疑念を持っているし、逆さまではないのかというふうに思っているんです。

 だから、こういう現状、本当にきちんと充実させるという、財政的な裏づけもしないで、人も配置をしないで、そういう評価だけを入れてくるというやり方はおかしいということを指摘したいと思うんですが、何か大臣、手を挙げていらっしゃるので、どうですか。

渡海国務大臣 この評価と情報提供というのは、私も突っ込んでかなりレクを受けました。やはり一つの大きな意味は、状況が情報公開されることによって、その中身が、すべてとは言いませんよ、でも、かなり明らかになる。明らかになるということで、住民がその図書館の内容について知ることができる。知ることができることによって住民の意見というものが現実には出てくる。私はそう思っております。

 いろいろな説明を聞きましたけれども、やはり詰めていくと、そういった中で、今先生がおっしゃったような実態も明らかになってくるわけでありまして、基本的ないわゆる地財措置というのは行われているわけなんですね。ただ、それがどう使われているかということになりますと、結果的には必ずしも、配置をされているところも配置をされていないところもある。

 地方自治体にとって、この評価が出てくるということは、自治体が図書館行政をないがしろにできない、そういった意味では効果があるというふうに私は受けとめました。これは、この情報提供というものが今後行われた段階でいろいろ明らかになってくるというふうに思いますが、そのことを情報公開の意味、また評価、調査の意味だというふうに私は理解をいたしております。

石井(郁)委員 私は、この評価がただ外形的にというか、数字がひとり歩きしないで、本来文科省がやるべきことは、やはり専門の職員がいるところといないところでどんな違いがあるのかだとか、予算がないもとでどういう違いがあるのかだとか、そういうデータこそきちんと出して、評価をしてお示しをするべきだというふうに思うものですから、予算の措置とか司書の配置とか、そういうことの確保にこそきちんと力を注ぐべきだということを強調しておきたいというふうに思います。

 さて、もう一つの問題が研修なんですね。研修も新設をされております。今回の法改正で、国とか都道府県による研修ということが位置づけられているわけであります。

 まず、文科省に、国としては図書館職員の研修ということでどんなことを行っていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

加茂川政府参考人 司書に対する研修についてでございますが、現在、文部科学省では、都道府県における指導的立場に立つ司書でありますとか図書館長等を対象に、高度かつ専門的な内容の研修を行っております。これらは、都道府県が行う研修を担当できる指導者の育成も目的としておるわけでございます。

 具体には、今、三つほどの研修プログラムがございます。

 一つは、図書館司書専門講座という講座でございまして、ここでは経験年数が七年を超える者、七年以上の指導的立場にある司書を対象としまして、サービス計画あるいはマネジメントといった図書館経営に関する管理職として必要な知識、技術の習得を図る研修を行っておるものでございます。

 また、二つ目には、ブロックごとに図書館地区別研修というのを行っております。これは、経験年数がおおむね三年程度の中堅司書を対象といたしまして、レファレンスサービスのスキルアップでありますとか著作権の問題など、図書館業務の専門的な知識、技術の習得を図る研修でございます。

 また、もう一つ、第三番目の研修でございますが、新任図書館長研修というのも行ってございます。就任一年未満の新任の図書館長を対象といたしまして、図書館の管理運営能力の向上を図る研修を行うものでございます。

 こういったように、司書等が経験年数に応じて求められる適切なテーマについて研修を行う。司書等が受講することによりまして、地域社会の課題でありますとか、それに対する行政施策、手法、地域が求める情報内容、あるいは図書館サービスについての発展性や可能性、情報技術、さらにはコスト意識を含む経営能力を身につけることが期待できるものと考えておりまして、これらは、これからの図書館に求められる課題について適切に対応できる能力を、特に指導的立場にある図書館職員に身につけることができる有意義な事業だと思っておる次第でございます。

石井(郁)委員 時間もありませんので、少し短目に答弁いただきたいんですけれども。

 専門講座というのは東京での開催しかなくて、勤務経験七年以上の方が対象で、中堅の方とおっしゃったけれども、現場では七年というと、もうベテランの域だそうですね。これでは本当に現場のスキルアップにつながっていかないんじゃないかという声もありますので、この見直しが必要じゃないかということですね。つまり、都道府県でももっと実施ができるようにしなければいけないという問題。

 それから、研修には図書館の関係団体、民間団体などがもっと関与してもいいのではないか、また、ゆだねてもいいのではないか、あるいは協力してもらうということがあってもいいのではないかと思いますが、その点でちょっと簡便にお答えください。

加茂川政府参考人 このたび、社会教育施設の専門的職員について国と都道府県に研修義務を課しましたのは、国がすべて研修をやる義務を負うのではなくて、都道府県とも連携をしながらという趣旨でございますので、委員御指摘の観点も踏まえたものと御理解をいただきたいと思っております。

 また、民間団体もさまざまな研修機会を提供しておるようでございますので、必要な連携につきましても、基本的には、研修の実施、任命権者である地方公共団体の責任者の判断のもとに適切な連携が図られることが望ましいと思っておる次第でございます。

石井(郁)委員 もう時間が参りましたので、最後に大臣に、今後の図書館のあり方、今後の充実について御決意を伺いたいんです。

 子供のときから図書館に親しむ、大人になったらもちろん図書館を利用する、やはりこういう社会にぜひしたいな、すべての人がそれが可能になるようなこういう図書館でありたいというふうに私は思っておりまして、ぜひ大臣のこの点での御決意を最後にお聞かせください。

渡海国務大臣 これは委員のおっしゃるとおりだと思います。

 地方分権の時代ですから、先ほどの田島委員との議論にもありましたように、どこが地方が責任を持って、国として何をするかという、まださらなる整理が必要だと私は思いますけれども、地域の知の拠点として、より機能が発揮されるように、我々もより振興の努力を図っていきたいというふうに考えております。

石井(郁)委員 以上で終わります。

佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 私は、二点について、大臣に確認だけさせていただきたいと思っています。

 この間の委員会の議論の中で、いろいろありました。ありましたけれども、基本的に今回の法改正が、国、地方自治体を含めて行政が社会教育について介入するようなことがあってはならないというのが私たちの思いでありまして、その意味では、本当に住民の側の、教育する側の自主性をしっかりと重んじていくということが基本でなければならないと思っているんです。

 その意味で、今回の法改正が、教育委員会、公民館、図書館、博物館、これらの活動を通じて、国や地方自治体の行政組織が国民の権利である学習、その内容や家庭教育に介入する意思はないんだ、あくまでも社会教育が発展をしていく基盤整備にしっかりと行政は取り組んでいくんだ、そういう趣旨であるというふうに私たちは理解をしているわけですが、これで間違いがないのか、大臣はどうお考えなのか。一点目、それだけお聞きしたいと思います。

渡海国務大臣 委員がおっしゃるとおりだと私は考えております。

 つけ加えますと、特にこの前、家庭教育の議論が何点かございました。これは、しっかりと法律にも、国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、その支援に努めるということが書いてあるわけでございますから、私は、家庭に介入をするということはできないことであるし、そういうことにはならないというふうに理解をいたしております。

日森委員 仮に、そういう流れあるいはそういう兆候などがあったときは、これはもちろん市民の側もそうですが、そういう法をしっかりと堅持するという立場で厳しくチェックをしていって、公平中立、そして国民の学習権が侵されないようなそういう指導をしっかりするように、お願いをしておきたいと思います。

 二点目は、私は前回の質問でも、ちょっとくどいように財政の問題について質問させていただきました。もちろん、大臣も大変頑張っていらっしゃって、それに対して、どこかの省がつまらぬ反論を、我々から見るとつまらぬ反論をして、本当に教育行政、その基盤づくりをしっかりやっていこうということがなかなか困難になるような、そんな展開もあるようです。

 しかし、きょうの参考人の皆さん方の御意見を聞いても、例えば図書館、余りにも少ない、恥ずかしいぐらい少ない。特に、村、町に行ったら、これはもう、本来、公民館もそうでしょうが、コミュニティーの中心となっていくし、同時に、そこで情報を知りあるいは発信していく、そういう拠点である図書館そのものがないとかいうことが随分明らかになって、各参考人の皆さん方も、これは何とかしなきゃいかぬということをおっしゃっておりました。

 それから、先ほどの質問にもありましたけれども、司書もいない。こういうことをしっかりと実現していく。公民館でも、ちゃんと主事を置いて、しっかりとした地域の拠点、コミュニティーの中心としての役割を果たしていく。

 これは、お金の問題を除いてはできないことだと思うんですよ。これは最初に、この前の質問のとき申し上げたけれども、すばらしい絵をかいても、それを裏づけする財政的な基盤がないとこれは絵にかいたもちになってしまうじゃありませんかということを申し上げたんですが、その意味で、大変御苦労なさると思うんです。私たちも全面的に応援したいと思いますが、この間の答弁では、これは自治体がやることというふうな話だけで、なかなかお金の話をしていただけなかった。非常に残念なんですが、とりわけ自治体における社会教育の発展、これは断固として実現するぞ、そういう強い意思があるならば、社会教育の制度的枠組みの充実と同時に、その財政基盤の拡充にも国としてしっかり努力をしていかなければだめだというふうに思っているんです。

 その決意を、もちろん、ここで決意されて、どこかに行くと、違う違う、出さない出さないと言う連中もいるから大変かもしれませんが、大臣としてのそういう思い、決意をぜひ語っていただきたいと思います。

渡海国務大臣 私は、今、これから大きな課題を抱えているわけでありますが、その中で思いますのは、これが必要だ、そのために頑張る、そしてこれだけ要るんだと、各分野こういう声を上げるのは簡単なことであります。しかし、国家全体の財政、国と地方の関係、こういったことも含めて、我々は政府として責任を持っているということもまた事実であります。その中で政策選択を何に振り向けていくかという、ここの部分、限られた財源でありますから、やはり、そのときに我々はどういう物の言い方をしていくか、何を主張していくか、こういう話になってくるんだと思います。

 それで、ここからが先生に対するお答えでございますが、私は、教育というのは国民全体の問題であり、国家にとって大きな未来への課題であるというふうに考えておりますから、そういった中で社会教育というものをとらえて、そして、広く国民が、地域において、日本の社会で格差がないように、常に図書館のサービス、また社会教育のサービス等が受けられる、そういった環境をつくり上げていくというのは、我々文部科学省としてといいますか、私からすれば文部科学大臣としての責任といいますか使命であろう、このように考えておるところでございます。

日森委員 ありがとうございました。

 必要な道路は着実につくると言っていらっしゃる方もいらっしゃいます。国民生活にもっと必要な社会教育の基盤整備は何としてもやり切ると、その道路何とかという方々を上回る決意でぜひやっていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 以上で日森文尋君の質疑は終了いたしました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子さん。

石井(郁)委員 本法案は、二〇〇六年十二月の教育基本法の改定を受け、新たに規定された生涯学習の理念(第三条)、家庭教育(第十条)、学校、家庭、地域住民等の連携(第十三条)などを社会教育法等に明記し、社会教育分野でその具体化を進めるものです。

 法案では、三法案ともに学習の成果の活用が強調され、その具体化として学校支援地域本部などが挙げられています。自由で自主的、自発的な学びが制限され、行政が地域住民の学習内容にあれこれと枠をはめるようなことになりかねません。

 また、家庭教育に関する情報の提供を教育委員会の事務に追加し、図書館にも「家庭教育の向上に資する」など規定しています。これは、家庭教育という私事に教育行政の関与を強めることになり、特定の価値観に基づく家庭教育の情報の提供につながるおそれがあります。

 法案には、規制緩和の一環として、補助金交付の際の社会教育委員の会議への意見聴取について、他の審議会等にかえることができるとしています。他の審議会にかえることができれば、任意設置である社会教育委員の廃止が進み、現状でも進行している社会教育行政の生涯学習を担う首長部局、一般行政への移管をさらに加速させるものです。

 社会教育法第三条第一項は、国と地方公共団体の任務として、「社会教育の奨励に必要な施設の設置」など、「すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」としています。しかし、この役割を十分に果たし得ていない現状にあって、行政に都合のいい学習の成果のみが強調されれば、全体として社会教育の縮小の方向に向かわざるを得ないことを指摘し、反対の討論とします。

 以上です。

佐藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、社会教育法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木淳司君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。高井美穂さん。

高井委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 国民の生涯にわたる学習活動を支援し、学習需要の増加に応えていくため、公民館、図書館及び博物館等の社会教育施設における人材確保及びその在り方について、指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮し、検討すること。

   また、その際、各地方公共団体での取組における地域間格差を解消し、円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めること。

 二 生涯学習・社会教育に係る個人の学習成果が、学校、社会教育施設その他地域において行う教育活動として生かされるよう、各個人の学習活動と地域社会の教育活動との循環につながるような具体的な取組について支援に努めること。

   また、その際、自発的意思で行われる学習に対して行政の介入とならないよう留意すること。

 三 公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点から、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国がガイドラインを示す等、適切な措置を講じるとともに、その評価結果について公表するよう努めること。

 四 生涯学習の振興、社会教育の推進に当たっては、各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供を行うとともに、様々な生涯学習・社会教育のための機会の整備充実やこれらを推進するための改善等を図ること。

 五 地域における教育力の向上のため、学校、家庭、地域等の関係者・関係機関の連携を推進し、各施設資料の相互利用や人材の相互活用などを図るとともに、多様な地域の課題等に応じた機能を持つネットワークの構築を推進すること。

   なお、その際、学校、家庭、地域の連携を推進する上で重要な役割を果たすPTAについて、その活動や運営などの実態把握に努め、「学校支援地域本部事業」における連携が円滑に進むよう十分配慮すること。

 六 社会教育主事、司書及び学芸員については、多様化、高度化する国民の学習ニーズ等に十分対応できるよう、今後とも、それぞれの分野における専門的能力・知識等の習得について十分配慮すること。

   また、各資格取得者の能力が生涯学習・社会教育の分野において、最大限有効に活用されるよう、資格取得のための教育システムの改善、有資格者の雇用確保など、有資格者の活用方策について検討を進めること。

 七 社会教育の推進に当たっては、社会教育委員の制度等を積極的に活用・活性化するとともに、社会教育委員がその重要な職責と役割を十分に認識するような環境整備を図ること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡海文部科学大臣。

渡海国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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