衆議院

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第4号 平成21年3月25日(水曜日)

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平成二十一年三月二十五日(水曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      小川 友一君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      鍵田忠兵衛君    亀岡 偉民君

      篠田 陽介君    谷垣 禎一君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      山本ともひろ君    鈴木 克昌君

      田島 一成君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    藤村  修君

      松本 大輔君    山口  壯君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      渡辺  周君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   厚生労働副大臣      渡辺 孝男君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 團藤 丈士君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            徳永  保君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 木曽  功君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     篠田 陽介君

  田島 一成君     鈴木 克昌君

  藤村  修君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     飯島 夕雁君

  鈴木 克昌君     田島 一成君

  渡辺  周君     藤村  修君



    ―――――――――――――

三月十九日

 原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官團藤丈士君、文部科学省大臣官房長森口泰孝君、生涯学習政策局長清水潔君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局長徳永保君、スポーツ・青少年局長山中伸一君、国際統括官木曽功君、文化庁次長高塩至君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川友一君。

小川(友)委員 どうもおはようございます。自由民主党の小川友一と申します。

 大臣初め参考人に、国旗・国歌の関連で何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。

 桜の花の開花も宣言がされました。御案内のとおり、このシーズンになりますと、卒業式、入学式、いろいろな場面で国旗・国歌に関連した件でいろいろ物議を醸し出すわけでありますけれども、憲法で定められました内心、いわゆる思想、信条の自由というものを否定するわけでもありませんし、当然このことは事実として認識をしているところでありますけれども、いわゆる学校の教員が、御案内のとおり、国が定めた法律に基づいて免許を取得して、その免許を持つ者が児童生徒をしっかりと指導に当たるということが明記されているわけであります。

 そんなような中で、我が国の象徴というべき国旗・国歌について、学校現場で再三にわたり拒否をしているような実態が随所に見られるわけでありまして、私は、非常に残念なことだというふうな認識を持っている一人であります。

 そのような意味で、文科大臣、文科省の方でいわゆる国旗・国歌の意義とか重要性というふうなものをどのように認識しているのか、まず前段でお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 今、小川委員おっしゃったように、国旗・国歌については大変教育的な面でも重要と考えておりまして、学校における国旗・国歌の指導については、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものでございます。

 国歌の指導については、昨年三月二十八日に公示された小学校学習指導要領の「音楽」において、従来、「国歌「君が代」は、いずれの学年においても指導すること。」とあったのを、「国歌「君が代」は、いずれの学年においても歌えるよう指導すること。」と、指導の趣旨をより明確化するように改訂したところでございます。

 また、入学式や卒業式などにおいても、その意義を踏まえて、国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するように指導をするということで、引き続き規定をしたところでございます。

 文部科学省においては、国旗・国歌の指導を含めた、新しい学習指導要領にのっとった教育が各学校においてしっかりと行われるように、教員一人一人に新しい学習指導要領の冊子を配付したり、各種説明会を通じてその趣旨の徹底を図ってきたところでありまして、引き続き、しっかりと周知に努めてまいりたいと考えております。

小川(友)委員 基本的な文科省としての考え方を今お伺いさせていただきました。

 さきの百六十五臨時国会の代表質疑そしてまた十八年の当委員会での共産党の議員並びに委員の質疑の中に、この国旗・国歌の問題について質疑がなされました。

 私は東京都日野市の出身でありますので、特段、都教委の関連に関して質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、この質問の中で、東京都では、国旗・国歌の指導について教員を処分し、思想、信条の自由を侵すなど、教育にあってはならないことがまかり通るような異常な事態になっているというふうな趣旨の質問がありました。この質問に対しまして、まさに六十年ぶりに教育基本法を改正し、これからの新しい教育方針や国家観をしっかりと示し、その途中で体調不良によって座を去ってしまったんですけれども、私が大きく期待しておりました安倍総理は、この共産党の志位委員の質問に対して、

  学校教育において、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは重要なことであります。

  学習指導要領では、入学式や卒業式などにおいて、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとされていることを踏まえ、東京都におかれては、

ここからが大事なんですが、

 適切に判断し、対処していただいているものと考えております。

というふうな答弁がなされています。

 私も同じように考えているわけでありますが、たまたま私が、地方議会、いわゆる地方自治の現場で活動していた際に、私の住む町の小学校で同様な事案が惹起されました。私の体験から踏まえた中でこの問題をちょっと深掘りさせていただきたいというふうに考えます。

 その案件は、小学校の教員、いわゆる音楽の先生が、入学式の際に国歌斉唱の伴奏をするよう校長が指示をいたしました。このことによってその教員は、まさに思想、信条の自由ということを大義名分として伴奏を拒否して、その入学式はテープで国歌を斉唱したという事案であります。

 この件に関しまして、校長は教育委員会に報告をし、教育委員会が東京都の方に上申をいたしました。その結果、東京都はこの教員の申し出を棄却したという事案であります。これを踏まえた中で、この教員は司法の場にこの案件を持ち込みました。最終的には、最高裁の方でこの案件に関してはすべてが棄却されました。

 この問題に対して私は、現場でその校長の意見具申等もいただいた中で、非常に不満というんですか、こんなものでいいのかなということを強く感じました。

 そのことに関連して質問させていただきたいと思いますけれども、まず、この校長は、指導要領に基づいて、法令に基づいてまさに職務を遂行したにすぎないと思います。にもかかわらずこの校長は、何年間の間いろいろな面で精神的なダメージを受けて、まさに定年を二年残した中で、一身上の都合とはいえ、その職責を途中で放棄しなくてはいけない状況まで追い込まれました。

 私は、まともにしっかりと指導をしているその先生がいろいろな条件の中でそういうふうな状況に追い込まれるという実態を見たときに、しっかりとそういうふうな指導をしている先生が当然のごとく活動ができる環境というものを整えていくということが私は求められると思います。

 当初は、同じ学校の校長先生も教育委員会も教育長も了承をして、東京都の教育委員会に報告をした案件であります。最終的には、その校長は一人になってしまいました。

 極論を言えば、こういうふうな実態を見て、まともなことをやって、まともに教育に熱い思いを持って取り組んでいる教師が、最終的にはこういうふうな状況に追い込まれるということである。周りの校長がそういうふうなのを見ていれば、自分もこういうことをすればこういうふうになってしまうのではないかというふうなことで、だんだんまともなことを校長が行動に移さない。そのような状況に至ると考えても私は不思議ではないというふうに考えます。

 そこで、私は文科省にお伺いしたいんですが、やはりこういうふうな事案を体験した一人として、何らかの校長を擁護するような制度というんですか、そういうふうなものを構築していく、このことも私は求められるのではないかなというふうなことを感じています。御所見があればお伺いをさせていただきたいと思います。

金森政府参考人 このことは国旗・国歌の指導に限らないことだと存じますが、学校のさまざまな課題に適切に対応し、特色ある教育活動を展開するためには、学校が校長を中心に組織的、機動的に取り組むことが必要でございます。

 このため、平成二十年四月から、副校長や主幹教諭を学校に置くことを可能にしたところでございまして、これらの職が権限と責任を持って校務を取りまとめ、校長を補佐することにより、校長がよりリーダーシップを発揮し、学校が組織体として課題に対応することができると考えているところでございます。

小川(友)委員 今の御答弁いただいた中で、文科省の方ではそういうふうな文言をつらつらと述べればそれで済むかもしれませんけれども、要するに教育現場では、そのような言葉だけではどうにも対応がし切れないのが実態なんです。

 私が今お話をさせていただいたみたいに、最初は教育委員会も教育長もそうだそうだとエールを送っている、しかしながら、いろいろな圧力がかかった中でだんだん周りは引いていくんですよ。そのような実態は文科省というのは把握されているんでしょうか。いかがですか。

金森政府参考人 各学校の学校運営におきまして校長がいろいろと御苦労いただいているということは、私どももよく学校現場からお伺いをしているところでございます。

小川(友)委員 理解をされているのであれば何らかの方策というものを考えるべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。

金森政府参考人 学校が、校長のリーダーシップのもと、子供や地域の状況に応じた特色ある取り組みを進めていくためには、例えば予算や人事など、学校運営に関して学校の裁量を拡大するということも、ただいま申しました校長のリーダーシップのもと学校の組織体制づくりを行う上で、大変重要なことかと存じます。

 人事につきましても、また学校予算につきましても、近年におきましては、例えば学校予算について、学校の企画や提案に基づいた予算の配分でございますとか、使途を特定しない裁量的経費の措置など、学校裁量の拡大が進められているところでございます。

 こういったことを通じて、校長のリーダーシップのもと、特色ある学校づくりが行われるよう、今後とも取り組みを進めてまいりたいと考えております。

小川(友)委員 今、学校の校長の権限のことに関して御答弁がありました。学校教育法の中では、三十七条で「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」ということに明記されています。言いかえれば、学校校内で起こる案件に関してはすべて校長の責任ですよということだと思うんです。

 いわゆる責任はすべて校長にあって、今、人事権とか執行権とか予算権がある程度付与されているというふうな御答弁をいただいたんですが、現実的に、人事権とか予算権とか執行権というのは校長に付与されているんでしょうか。いかがですか。

金森政府参考人 少し、人事について校長の権限、御説明申し上げたいと存じます。

 例えば地教行法におきまして、校長は人事に関する意見を市町村の教育委員会に申し出ることができることとされておりますほか、最近は、各教育委員会におきまして、校長の教育理念や学校運営方針に基づいて一定の教員を公募する公募制でございますとか、あるいはフリーエージェント制、こういったものを導入するなどの取り組みが進められているところでございます。

 また、学校予算につきましても、学校裁量予算を導入している教育委員会の割合が、県立学校、市町村立学校、いずれも十年前と比較いたしますと増加をいたしているところでございまして、こういった面では、人事や学校予算について校長のリーダーシップが発揮できる取り組み、こういったものが進められているというふうに考えております。

小川(友)委員 今の御答弁をいただいた中で、校長がみずから人事権を行使できるような状況には私はないというふうに理解しています。いわゆる都教委なら都教委、県なら県にある程度上申をしていく。最終的には都教委が人事権を持っているわけであって、今のお話ですと何か校長に人事権があるような答弁なんですけれども、私はそういうふうにとらえていません。

 現実的に、このことでそれぞれの校長は非常に困っています。今、それぞれの自治体で、特色ある教育をしようとかと言って、学校を編入できるような制度、自由にその学校を選べるような制度がそれぞれの自治体で導入されています。特色のある学校をつくろうと言ったって、自分が考えていることが、予算も人事権もなければ、こういうふうな教育をやりたいと言って、教員が私はそうじゃないと言えば、校長はそれ以上言えないのが実態なんですね。

 私は、ある程度もう少し明確に校長の権限、裁量というものを付与していくということは、要するに、これからの教育をしっかりと再生していく中では最も大事なことだというふうに思いますが、再度御答弁をいただきます。

金森政府参考人 御指摘ございましたように、予算あるいは人事など学校運営に関して、学校の裁量、また校長の裁量、こういったものを拡大していくということは大変重要なことだと考えております。

小川(友)委員 都教委では、いわゆるこのピアノ伴奏の拒否の問題で、最高裁で結審がされた段階で東京都は、別建て、いわゆる管理運営規則という規則をつくって、ある程度の人事権や予算権を校長に与えたんです。この事件の後にです。

 都教委が、それぞれの教育委員会が独立しているからそういうふうなことができるわけですから、国全体の制度というものを整備していくということは文科省としての責任もあるんじゃないかと考えますが、いかがですか。

金森政府参考人 人事権について申しますと、最終的な権限といたしましては教育委員会にあるわけでございますけれども、その中でも、それぞれの教育委員会が工夫して、校長の人事に関する意見ができるだけ反映されるようなそういった工夫をしていただいているものと思います。

 私どもといたしましても、地教行法上の措置でございますとか、あるいは各教育委員会での取り組みといったものについて周知をしているところでございまして、他の教育委員会で校長の予算や人事に関する権限の拡大、こういったものについてどういう取り組みが行われているか、こういったことを周知することによって、他の都道府県、市町村においてそういったものの取り組みが進むようにということで、私どもの方も各都道府県、市町村の取り組みを促しているところでございます。

小川(友)委員 ぜひこの問題は、現場で働く校長先生方は異口同音に同じような感覚を持っています。今、それぞれいろいろな先生に聞きますと、余り校長先生になりたくないと言っていますよ。責任は負わされる、何かあれば周りがいろいろな面で批判し、校長先生になりたくないというような環境が教育現場であるということは、文科省でもある程度理解をされているというふうに私は思います。この問題に関してはしっかりと取り組んでいただきたい。このことをお願いさせていただきたいというふうに思います。

 あわせまして、きょうは法務省から参考人に来ていただいています。

 平成十一年にこの事案が発生して、結審したのが平成十九年です。いろいろな経過を踏まえた中でですけれども、おおむね八年間、この校長先生はいろいろな部分で、自分の瑕疵はないにもかかわらず、いわゆる被告人ではないですけれども、被告人に近い形でそのたびに裁判に参考人として呼ばれて、いろいろ罵声を浴びせられたり、いろいろ上告人から批判を浴びてまいりました。お会いしたときに、八年間も針のむしろに座っていたみたいだ、やっと解放された、そんな話をしていました。

 最終的にこの結審は、主文を読ませていただきますと、「本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。」終わってみれば、裁判費用を上告人が負担するだけで、その校長先生に対しては、精神的なダメージを受けたにもかかわらず、何の対抗要件もなく終わった状況です。

 こういうふうな国旗・国歌の案件というものは、今、いろいろな場面で、いろいろな形で、思想、信条の自由を命題として司法の場で争われているというふうに思います。私は、このことは、裁判闘争がより多くなることによって教育行政の空洞化を招いていく、こんな疑念もしている一人です。

 そこで法務省にお伺いしたいんですが、今のこのままでいきますと、終わってみれば裁判費用を出せばいいということになると、これは、やられた方はたまったものじゃないですね。極論を言えば、やり得みたいな形でこれが司法の場で議論されるということは、私はおかしいというふうに素朴な感覚を持つ一人なんですけれども、当然、裁判をする権利や、そしてまた、今の現行法の中ではこれしかしようがないというふうな感覚しかないのかなというふうに感じます。いわゆる被告人であれば名誉毀損で訴えられますけれども、これは参考人ですから、言われっ放し、やられっ放しです。法務省として、裁判のあり方として何か方策がないのかどうか。

 あわせまして、八年間もこの案件に対して時間がかかった。五月からは裁判員制度が導入される。これは、まさに司法のスピード化も求められているというふうに考えています。その辺を踏まえて法務省としての見解があれば、承りたいというふうに思います。

團藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に、個別具体の事件に関しましてはコメントは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として、御指摘の点を踏まえまして、何点かお答え申し上げたいと思います。

 まず、先ほどのお話でございますと、校長先生が法廷の場で非常に精神的な苦痛を味わわれたということでございますが、主としてその場面と申しますと、証人尋問などの際ではないだろうかと推察いたします。

 一般的に申しまして、証人尋問などの際に、その証人を侮辱したり、あるいは困惑させるような不適切な質問がされるという場合には、裁判所におきまして、申し立てにより、あるいは職権でこれを制限することができるという制度となってございます。

 もとより、この尋問がいわゆる反対尋問として行われる場合には、主尋問で行われました証言の弾劾という性格を持ちますために、相手方代理人によります質問が厳しいものになるということにつきましては、やむを得ない側面もございます。

 ただ、それを超えまして、例えば証人の名誉を毀損するような質問がされるというような場合には、その証人を申請しました側の代理人において、適宜適切に裁判所に対してそういった不適切な質問の制限を求めるというような対応をとっていただくことによりまして、証人に過度な精神的苦痛を与えることを回避するということが可能な制度となってございます。

 また、審理期間についての御指摘がございました。これも、個別具体の事件につきましての審理期間、あるいはその中に含まれております争点等についてのコメントは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として申し上げれば、訴訟の審理期間、これは非常にスピーディーに行うべしということが最近意識されてきておるわけでございますけれども、ただ、そうは申しましても、個別具体の事案の難易度、争点、及び、それを明らかにするために取り調べることが必要な証拠の数量等によりまして、事案ごとに異なってまいろうかと考えてございます。

 今回、委員が御指摘になっておられますような行政訴訟におきましては、つまり具体的には、職務命令違反を理由とする戒告処分の取り消し訴訟というような類型のものでございますと、上告審で争われました思想、信条の自由を害するかどうかという点にのみに争点が絞られるわけではございませんで、一般的に申しますと、職務命令の存否等の前提となる事実関係、あるいは懲戒処分の相当性なども争点とされることが多いと承知してございます。

 したがいまして、そういった個別具体の事案におきまして、個別具体の事案で提示されました争点等々を踏まえて適切な審理が行われていく、裁判所の意図もそういった問題意識を持って審理を行っておられるものと承知しておるところでございます。

小川(友)委員 そういうふうな制度がしっかりとできればいいなという思いがありますので、検討していただければありがたいというふうに思います。

 続きまして、時間がなくなってまいりましたので、済みませんけれども、塩谷大臣にお伺いしたいと思います。

 一月の十九日に参議院の予算委員会で小池議員から、いわゆる民主党の輿石発言に対して質問がありました。日教組主催の新年会の集いが一月の十四日に開かれて、その中で、教育の政治的な中立はあり得ないという発言に対して質問がありました。その中で塩谷大臣は答弁をなされているわけでありますけれども、まだ真意がはかりかねない、今の段階でコメントを出すのはいかがかなというようなことで答弁をなされていますけれども、その後何か変化があったか。あわせて、この発言に対して所見を賜ればありがたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 この発言について一月に答弁したときに、今の段階ではということではなくて、直接聞いていないので真意がはかりかねるというふうに申し上げました。

 いずれにしましても、教育につきましては中立かつ公正に行われるべきであって、教育の政治的中立を確保することが大変重要であるということでございます。

 現在においてもその考えは変わりありませんし、また、教育基本法の十四条二項においても、学校における特定の政党を支持または反対する党派的政治教育などの禁止をするとともに、教育公務員特例法において、教員の政治的行為について一般の地方公務員より厳しく制限されておりますので、教育の政治的中立性を確保するための規定が設けられているということでございまして、仮にそういった規定に反するという意図であれば、これは大変な問題であると考えておるところでございます。

岩屋委員長 小川君、時間が参っておりますので簡潔に願います。

小川(友)委員 それでは最後、自分の意見を述べて終わります。

 この問題に関しては、民主党政権が誕生すれば、政治的に教育の場に介入していってどんどんやっていきますよというふうに私はとるわけですけれども、基本的に民主党の良識ある人はこのようなことは同意がされないというふうに思いますが、私は、このような状況がもし民主党政権が誕生して行われるということになると、教育現場は大変混乱してくるのではないかなというふうに思います。特に、この発言をした人は次の内閣の副総理だということでありますので、注視をしながらしっかりと選挙戦を戦っていかなくてはいけないなということを感じて、この質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

岩屋委員長 以上で小川君の質疑は終わりました。

 次に、池坊保子君。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 毎週、大臣と質疑を重ねることができますこと、教育行政を深めることができると大変幸せに思っております。

 きょうは二つのテーマがございます。一つは特別支援教育、そしてもう一つは、いつも私が言っております、文化芸術で経済対策をということでございます。

 まず、特別支援教育について幾つかの質問をしてまいりたいと思います。

 特別支援学校の小中学部や小中学校において特別な支援を受けている子供の割合は約二・一%、このほかにも、通常の学級で発達障害があると思われる子供が約六・三%在籍しております。障害のある子供の数は、少子化にもかかわらず増加傾向にございます。

 私が文部科学大臣政務官だったときに、障害を持ったお子様の保護者から、ぜひ普通学級に通学したいという要望を多く受けました。私ももし母親だったら同じ思いを持つのではないかと思いますとともに、また同時に、その子の状況においては、専門性のある特別支援学校に入れた方が段階的な勉学を進めることができるのではないかと思ったりと、大変複雑な思いになりました。

 また私は、皆様方のもとに配付されているかもしれませんけれども、副大臣のときに、障害のある方がおかきになった絵、私はそもそも障害という言葉それ自体が好きじゃないんです。私は生け花をやっておりますけれども、お花にもそれぞれの個性がある。同じ花というのがないように、自然にある生きとし生けるものはすべて違っている。だから、人の個性として受けとめることも必要なのではないかというふうに思っておりますけれども、それ、大変感動的だとお思いになりませんか。障害を持った方々がおかきになった絵なんです。ですが、障害があるなしにかかわらず、私は感動させられました。私などにはできないほど本当に緻密な作品であったり、あるいは思いもかけない発想で、え、こういう発想があるんだなというふうにも思ったりもいたしました。それで厚生労働省の岸副大臣とともに、こういう絵が評価されるようにと願って、毎週のごとくシンポジウムを開いてまいりました。

 その中で、芸術を学ぶ方々あるいは教員を目指す方々が障害者アートへの理解をもっと深めてほしいという願いを持っておりまして、それが結実いたしまして、平成二十年度に発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業として、東京で二校、京都で一校の特別支援学校に芸術系大学の教員や学生を派遣し、美術の授業で障害のある児童生徒に助言、援助を行う、特別支援学校における芸術系大学学生派遣事業というのが実現いたしました。東京では、東京都立田園調布特別支援学校、東京都立葛飾特別支援学校へ東京芸術大学美術学部の学生が行き、また京都では、京都市呉竹総合支援学校へ京都精華大学マンガ学部の学生が赴いて、精力的に子供たちに助言、援助を行っております。

 なお、現在、京都国際マンガミュージアムでは、五月まで「総合育成支援教育現場から創造の世界を学ぶ」と題した作品展示が開催されておりまして、私は、アウトサイダーアートと申しますけれども、障害を持った方々の絵画が広く広まりますとともに、いろいろな方面、いろいろな角度への障害者の方々への理解が広まりますことを大変望んでおります。

 それで、特別支援教育制度がスタートいたしまして二年が経過しております。その理念である、障害のある児童一人一人のニーズを把握し、それに対応した適切な指導及び必要な支援を行うという観点から、教育現場にどのように浸透していっているのか。今、二年を経過して検証しなければならない立場に立っているのではないかと思います。

 二月に文部科学省の特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議が、「特別支援教育の更なる充実に向けて」、中間取りまとめを行いました。私は、それを拝見しながら幾つかのことをきょう伺っていこうと思っておりますけれども、まず、就学先決定の仕組みについて伺いたいと思います。

 中間取りまとめでは、未就学の障害児の就学先を決定するための仕組みが示されております。障害を持つ子供の就学先は、原則として、就学健康診断に基づく障害の程度によって市町村教育委員会が決定するということになっております。このため、教育委員会の決定と保護者の意見が合わない場合の調整が問題とされてまいりました。私もたびたび障害を持つ保護者の方々の要望を受けますときには、自分の意見と地域の教育委員会との意見が違うのだということなんです。

 中間取りまとめでは、市町村教育委員会が保護者や幼稚園、病院などの関係機関と連携しながら、個別の教育支援計画を作成する中で、障害を持つ子供の就学先を柔軟に選べるようにという内容です。

 個別の教育支援計画の内容というのは、具体的にどういうものなのかということをちょっと大臣にお伺いしたいと思います。

塩谷国務大臣 まず、池坊委員が副大臣のときにまとめていただいた障害者アート推進のための懇談会、大変すばらしい絵がたくさんあって私も感動したところでございまして、これからも、この推進のために私どももしっかりまた努力をさせていただきたいと感じたところでございます。

 今御指摘の個別の教育支援計画、これについては、障害のある幼児、児童生徒等に、いろいろな環境の違いによって、学校や家庭、医療機関、福祉施設等の関係機関に行われる支援の内容をそれぞれ一人一人に対して作成するものでありまして、このような個別教育支援計画の作成、活用が十分に図られることにより、障害のある幼児、児童生徒にかかわる学校や福祉、医療、労働等の関係機関との連携や、乳幼児期から学校卒業までの長期的視点に立った、一貫した支援の実現につながると考えておるところでございまして、この支援計画をしっかりと立てることが必要だと考えております。

池坊委員 今までも教育委員会と保護者の調整というのは行われてまいりました。今後こういうことが、教育支援計画というのも立てますと、果たしてそれによって変わっていくのでしょうか。このまま同じようにいくのではないかと危惧するのですが、その辺は大臣、いかがでございますか。

塩谷国務大臣 これはやはり今までとは違った意味で、私どもとしては、この計画について、より一層お互いの理解あるいは連携によって立てていく必要があるということを感じております。

 先ほど、児童生徒の就学する学校の決定について等のことがお話しありましたが、これについても、今までは、就学基準に該当することを原則にそれで学校が決まっていたわけですが、そこら辺をやはり保護者と教育委員会が連携して、この支援計画をもとに、どこの学校へ行くのが適切かということを判断するということになっておりますし、より今まで以上に保護者の意見あるいはいろいろな関係機関の意見を聞きながら判断できるということになっていると思いますので、この点は強く私どもとしても今後とも指導していきたいと思っております。

池坊委員 幼児期から就労まで、その子供のライフスタイルの変化に応じた、一貫した支援を実現していくことが必要かと思います。これは、特に保健機関とか福祉と連携をとることが必要だと思うんです。

 その最初として、個別の教育支援計画の作成、活用が有効であるわけですけれども、現在、高校における個別の教育支援計画の作成率というのは、何と小中学校が約三〇%であるのに対して約三%と、低い数字にとどまっております。これがこれからの課題であると思います。

 障害者権利条約の批准に際しても、個別の支援計画の作成、活用を小学校、中学校で終わらせてしまうのではなくて、高校まで引き継ぐ必要があるのではないかと言われております。この点において大臣はどのようにお考えでしょうか。

塩谷国務大臣 今御指摘ありましたように、平成十九年度の高校の個別教育支援計画の作成率は三・六%でありまして、小中学校の三五・八%に比べて大変低い割合にとどまっておりますので、この高校での教育支援計画については、文部科学省としても、発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業を通じて、高等学校における特別支援教育体制の整備充実を図るとともに、今月告示しました新しい高等学校学習指導要領に新たに個別の教育支援計画を位置づけたところでございまして、今後とも、高等学校における個別教育支援計画の作成を促進してまいりたいと考えております。

池坊委員 小中学校で三〇%というのも、私はもっともっと普及しなければいけないと思うんです。それで、義務教育を終えて、では高校に行こうと思ったら、引き継ぎようにも三%しか引き継いではもらえないというのは、やはりこれは困ったことだというふうに思いますので、大臣、ぜひこれは、小中学校において三〇%ではなくて一〇〇%に近いように頑張っていただきますことと、高校においても、その高校に進学したい子供たちにはそれを引き継いで、その子供にとっての一生の問題でございますので、やっていただきたいと思います。

 それから次に、特別支援学校に通う児童生徒と地域とのかかわりについて伺いたいと思います。

 特別支援学校は、設置者である都道府県教育委員会等が、その地域における教育ニーズに応じて設置することとなっております。このため、障害を持つ子供が寄宿舎とかスクールバスなどを利用して、この寄宿舎というのも、今度廃止されるといっていろいろ問題になっておりますが、それはおいておくとして、居住地と離れた学校に通学することも多く、居住する地域とのつながりが持てないことを懸念する意見が出ております。

 中間取りまとめにおいては、障害を持つ子供が居住する地域とのつながりを深めるため、居住地の市町村教育委員会や小中学校がかかわる取り組みについて検討することが必要であるとされております。私はこれが大変必要なことではないかと思うんです。

 特別支援学校に通うと、地域とのかかわりがない。あるいは、本来自分が在籍するはずであった小学校に一度も通うことがなくて、そこに通っている子供と触れ合うことがない。保護者がいつも残念に思っているのはそこでございまして、地域ともっと触れ合いたい、あるいは、そこに通っている子供たちと通わせたいというのが保護者の願いであるわけです。

 それで、特別支援学校に通っていても地域の子供たちと触れ合う場があるということですと、保護者の方々も心強いし、また、いずれは障害を持ったお子様方は社会に出ていらっしゃるわけです。そういうときにも大きなプラスになっていくのではないかと思っております。

 東京や埼玉など、特別支援学校に在籍する児童生徒が居住する地域の小中学校に副次的な籍を持ち、他の子供たちと交流を行っているということです。私は、こういうことをぜひ広めていただきたいと大臣にお願いしたいんです。フランスでは、障害を持っている、持っていないにかかわらず、まずは地元の地域の学校に籍を置くということが原則だというふうに聞いております。

 具体的にどのような取り組みをこの東京や埼玉がして、今後どういうふうに進めていらっしゃるかを、これはインクルーシブ教育の方向性からも重要であると思いますので、ちょっとお答えいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今御指摘の、障害のある子供が地域とのかかわり合いを持つこと、これは、本当に一番それが最終的な目的というか、社会の中でこうやって一緒に暮らしていくことが大事でありますので、その点についてはこれからしっかりと推進してまいりたいと考えておりますが、やはり現状では、障害のある子供が特別支援学校に就学する場合には、地域とのつながりが大変希薄になっているという現状があるわけでございます。

 中間取りまとめにおいて、今お話しあったとおりでございますが、特別支援学校に在籍する児童生徒が居住する地域の小中学校に副次的な籍を持つ、これは、東京都では副籍という形、あるいは埼玉県では支援籍、あるいは横浜市の副学籍などということで呼ばれて、その地元の小中学校の学校行事やあるいは学習活動に参加したり、そして、学校・学級便りの交換を行う等の交流を通じて、居住する地域とのつながりの維持、継続を図る取り組みを行っていることでございます。

 これについては、障害のある子供の社会性の育成に大変資するものと同時に、障害のない子供にとっても、障害者への理解を深めるとともに、社会を構成するさまざまな人々とともに生きるということを学ぶ機会になるということで、双方の子供にとって大変意義あるものであると思っておりますので、私どもとしては、こういった取り組みについて、各学校や自治体において、この特別支援学校の児童生徒が居住する地域とのかかわり合いをより深く持つような取り組みについて、国においても指針を示したり、あるいはモデル事業を実施することなどによって、今後ともより一層の促進をしてまいりたいと考えております。

池坊委員 今大臣がおっしゃった、双方にとっていいんだということ、私も本当にそう思うんです。障害のあるお子様がいらっしゃる教室は、思いやりのある優しい子供たちが、自然のうちにそうした感情が芽生えてくる。さっきも申し上げたように、いろいろな人が生きているんだ、その人たちへの連帯というか、共有する思いというものをはぐくむことが私は学校教育の中で大変重要であるというふうに感じております。

 今の子供たちというのは自分のことしかわからない子供が多いので、これはすべての子供たちにとって有効だと思いますので、特別支援を担当していらっしゃる担当者は、ぜひこういう東京や埼玉のいい例をもっと全国に積極的に発信していただきたいと思います。私は、ぜひこれを全国的に進めてほしいというふうに願っております。

 次に、財政難と特別教育について伺いたいと思います。

 言うまでもなく、今、大変財政難ではありますし、片方では、特別支援教育支援員という方々が障害を持った方々への支援を行っているわけです。これは、平成二十年度では約三百六十億円、三万人相当。これは小中学校の数ですよね、地方財政措置が行われています。でも、地方財政措置なので、実際には、自治体の財政力によってその配置状況というのには大きな格差が生じております。神奈川では千二百八十四校に千九百七十七人を配置しているんです。でも、鹿児島では八百六十八校に三十人という、大変支援員の数が少ない。これも大きな格差がございます。

 教育の機会均等を考える上で、この格差を少なくする取り組みが必要であると思っておりますが、これに対しては、大臣、どのようにお考えですか。

塩谷国務大臣 特別支援教育支援員につきましては平成十九年度より地方財政措置を行っておりまして、平成二十年五月一日現在では、全国で約二万六千人の特別支援教育支援員が配置されております。

 今お話しあったように、地域格差があることも事実でございまして、神奈川と鹿児島の例、これは、一方では神奈川県が一四三・八%の設置率、鹿児島県では逆に二二・七%という低い設置率になっているわけでございまして、この格差を是正することが必要だと考えております。

 文部科学省としては、地方財政措置の趣旨、内容や人材確保の必要性について周知を図るとともに、各都道府県別データを公表して、積極的な取り組みを促してまいりたいと考えております。また、全国の教育長会議や特別支援教育担当者会議等を通じてきめ細かく周知し、また、都道府県において必要な学校に支援員の配置が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

 そして、二十一年度予算につきましては、小中学校に加えて、新たに公立幼稚園にも地方財政措置を行う予定でございます。

池坊委員 障害者の権利に関する条約について伺いたいと思います。

 障害者の権利に関する条約については、障害者の尊厳、自立及び差別されないこと、社会参加等を一般原則として規定して、障害者に保護されるべき個々人の人権及び基本的人権について定めた上で、これらを確保し促進するための措置を締結国はとることとされております。

 この条約は、平成十八年十二月の国連総会によって採択され、平成十九年九月に日本も署名し、日本はまだ批准しておりませんけれども、平成二十年五月に発効したと思っております。

 それで、そこの中でたくさん伺いたいんですけれども、余り時間がございませんので、教育については障害者の権利に関する条約第二十四条で規定しておりますけれども、日本で行われております幾つかの教育制度とここに書かれておりますとの間に差異があるのではないかと思います。今はどちらかというと分離教育が行われておりますが、ここにおいてはインクルーシブ教育の実施というのを言っております。これは、条約が求めているインクルーシブ教育を障害を持つお子様方へのこれからの教育の理念にしていかなければいけないし、そして、それを実行していかなければいけないと思います。

 現在の制度や実態との差異を考えますときに、克服していかなければならない幾つかの問題があると思いますけれども、どのような方向性を持って大臣はこれからこのインクルーシブ教育をやっていかれるのでしょうか。

塩谷国務大臣 障害者権利条約につきましては、今御指摘の教育について、その条約の二十四条に、「障害者を包容する教育制度」、つまりインクルーシブエデュケーションについて記されているわけでございまして、しかしながら、あの条約上、定義規定は置かれておりませんので、一般的には、障害のない児童に通常提供される教育の場に障害のある児童を組み入れることと考えられておりまして、当然これは一つのあるべき姿だと思っておりますし、インクルーシブ教育を志向することが国際社会の中で大きな流れとなっていると考えております。

 一方、本条約が特別支援学校制度を必ずしも否定するものではないと思っておりますし、現実のやはり対応として、当然特別支援学校制度も必要でありますし、諸外国でも、多くの障害のある児童生徒のための特別な学校制度を設けていると承知をしております。

 そして、我々としましては、特別支援学校を含めた学校教育全体を通して、障害のある児童生徒一人一人に教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行うことが重要でありまして、条約の趣旨を踏まえて、今後、特別支援教育の充実に向けて、引き続き必要な体制整備を行ってまいりたいと思います。

池坊委員 障害者の権利条約についてはもっと大臣に伺いたいこともたくさんございますが、時間もないので、例えばそこにうたわれております「合理的配慮」、では、具体的に合理的配慮というのはどういうことを指すのかというようなことも私は伺いたいと思いましたけれども、次の問題にちょっと入らせていただきます。

 もしこれから新たな経済対策をするとしたら、私はぜひ大臣に頑張っていただいて、教育、文化芸術で経済対策をしていただきたいと願っております。オバマさんも、三つの柱という中で、環境、エネルギー、二つ目は医療、三つ目に教育を挙げているんですね。日本はもっともっと経済対策に、人材確保とか技術開発とか文化芸術政策とか、こういうものを挙げなければ本当の意味の経済対策に私はならないと思いますので、これからは大臣の出番ですから、ぜひ頑張っていただきたいというエールを私は送りたいというふうに思っております。

 この間、土日、休日、高速道路が千円になりましたよね。例えば兵庫県から淡路島に行きますときも、五千幾らかかるのが千円なんです。すると、たくさんの人が行って、その浮いた分でお昼を食べるとかごちそうを食べる。つまり、それがきっかけになったんじゃないかと思います。今、何か国民はきっかけを欲しいんだと思うんです。夢や誇り、希望がなければ、この経済対策を幾らやりましても、経済不況を乗り切ることができないと思います。

 先日、新聞を見ておりましたら、今、イタリアでは文化芸術が非常に盛んになっている。金融危機というのは欧州で最も深刻なのがイタリアだと言われております。ですが、この危機のときこそ目を肥やして心を豊かにしようということで、ことし二月のイタリア国内の美術館入場者数は昨年の二月比で三一%ふえたんだそうです。カラバッジョ展が開かれているミラノのブレラ絵画館は五割増し、イタリアン・ルネサンス作品が集まっておりますフィレンツェのウフィツィ美術館は四五%増なんです。スポーツ観戦も約一八%ふえております。きのうは野球が勝って株価も上がったようでございますが、コンサートは七%増加している。それで、何と書籍も五%売り上げが上がっているんですよ。

 ある新聞社、これは、イタリアの新聞社の十八歳から五十四歳の男女四百人を対象にした世論調査でも、最多の四八%がこの先も文化に消費するというふうに答えているんです。そうした心の豊かさが危機を追い出す。大恐慌の一九二九年にも映画と書籍が伸びた。激動、不安のときこそ芸術が人を和ませる。危機のときイタリア人は人と交わり外に出る傾向があると言われているんです。私はぜひ日本もこれを見習っていただきたいなと思うんです。

 官邸で行われた有識者会議でも慶応の塾長の安西さんが、今、教育格差を生まないために、こういうときこそ授業料を減免にしてくださいとおっしゃったようでございます。

 私は、例えば一千億、文化芸術基金というのを積みまして、財務省はこれを聞いたら絶対嫌がるとは思いますが、例えば今、留学生三十万人計画、受け入れるだけですよね。受け入れるだけでは双方向にならないじゃありませんか。これは、日本からも教育者や科学技術それから文化芸術を送り出さなければ私は意味がないと思うんです。それを送り出す基金にするとか、あるいは町おこしで、祇園祭が京都でありますとたくさんの方がいらして、あの京都の町が活性化するんです。あるいはねぶた祭り、七夕祭り、いろいろな祭りがございます。こういうようなことを地域と一緒になって伝統のいろいろなお祭りを支える、イベントを起こしていく。

 それから、地域地域でも、私はよくこれを引き合いに出すんですけれども、京都の龍池小学校というのは廃校になったんです。それで国際マンガミュージアムというのをつくったんです。そうしたら、一年間に二十万の人が来て、これは子供たちからお年寄りまで大変仲よくみんなが楽しんでいるんです。心の交流の場でもあるので、ぜひこういう基金をつくって、それもそんなちっぽけじゃなくて、一千億とか二千億とか積むという心構えで、それでいろいろな英知を出し合って、文化芸術政策というのをやっていただきたいんです。

 これは経済不況を乗り越える一つの大きな意義があるということだと私は思いますので、大臣、ぜひこのエールにこたえていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩谷国務大臣 池坊委員から、前々からその持論をお伺いしてきたところでございます。特にアメリカのニューディール政策の成果があったわけでございまして、特に我が国は、この文化芸術について、まだまだ諸外国と比べて政策的にもまた予算的にもなかなか弱いところがあるわけでございまして、しかしながら最近は、世界的にも、アニメとか漫画等だけではなくて、この前はアカデミー賞で二作品の受賞をされたし、いろいろな意味で、この文化芸術について、より我々日本人が自信を持っていろいろ政策的にも取り組んでいく必要があると感じておりますし、特に、こういった今回のような大変厳しい経済状況にあるときにこそ、またそういった分野でより一層の文化振興、あるいは、雇用的にもいろいろな人にそういった能力をもっともっと発揮してもらうような場をつくるとか、いろいろと今後取り組んでまいりたいと思いますので、また具体的に今後検討して、また御指導もいただきたいと思います。よろしくお願いします。

池坊委員 心の貧困では経済不況を乗り切ることはできないと思いますので、ぜひ大臣に頑張っていただきたいとエールを送って、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で池坊君の質疑は終わりました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 きょうは、御配慮をいただきまして、質問時間を変更させていただきました。委員長並びに各位に心から御礼を申し上げたいと思います。

 また、大臣、先日は甲子園ですばらしい投球を拝見させていただきました。高校球児の励ましになったというふうに思います。届かないかと思ったんですが、大丈夫でした。

 文科省は、平成十八年に教員勤務実態調査というのを行って、教員が非常に忙し過ぎる、その多忙化の実態が明らかになりました。

 一方、国民教育文化総合研究所というのがあるんですが、ことしの二月に教職員労働国際比較研究委員会報告書というのを公表いたしました。

 この調査結果によると、日本とフィンランドを比較しているんですが、教員の合計千百人が回答しているわけですが、日本の小中学校の一日の平均勤務時間は十一時間六分。これに対して、PISA調査でいうフィンランドの場合、六時間十六分。日本と比較して五時間近くフィンランドの方が短いという結果も出されているわけです。

 さらに、出勤時間などを比較してみると、日本の場合は、フィンランドよりも二十分早い七時三十六分に学校に到着。学校を出る時間になると、フィンランドと日本を比べると、日本の場合、四時間も遅い午後七時二分になっているという結果が出ているようです。

 教員勤務実態調査においても、教員の多忙化が著しいということが明らかにされていたわけですが、この報告書の中でも、その多忙化が改善されていないということが言えるんだと思うんです。

 そこで、この間、かなりこの問題、私も何度か取り上げたことがあるんですが、教員の多忙化の実態について、改めて、文科省がどう認識されているのか、お聞きをしたいと思います。

塩谷国務大臣 甲子園の投球を見ていただいて、ありがとうございます。子供たちが頑張っていけるようにという思いで投げましたので。きょうも大分いい試合が行われているのではないかと思っております。

 今御指摘の教員の多忙化については、我々も長い間いろいろ議論してきて、今おっしゃったとおり、文部科学省で実施した教員の勤務実態調査によりますと、一日の勤務時間が十一時間近く、また、事務・報告書作成や会議・打ち合わせの事務的な業務の負担が大きい、そういう結果が出ております。

 このために、私どもとしては、学校現場の負担を軽減して、教員ができるだけ子供一人一人に向き合う時間を拡充するために努力をしているところでありますが、なかなか改善をされないということで、私も、省内で改めてこの問題、具体的に何が必要で何が足りないかというようなことも、現場ともうちょっと話をしていかなければならないんだろうし、もちろん、定数の問題もあり、少人数学級等への移行等もあり、さまざまな要因があると思いますし、我が文部省からのいわゆる調査等のアンケート、これが多いのではないかという指摘もあって、現実的に、年間通じてやる調査を二十八から二十一ぐらいに減らしたり、そういうこともしておりますので、ここら辺、さらに努力をしてまいりたいと思いますが、もう少し具体的にまた検討も進めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕

日森委員 恐らく今の御答弁は次の質問とも関連するんでしょうが、学校現場の負担軽減プロジェクトチームというのが、去年の三月ですか、まとめを発表いたしました。このまとめに基づいて、これがどのように具体化されているのか、また、学校現場でこのまとめに基づいてわずかでも負担が軽減をされているのか、学校現場ではどのようにこのまとめについて受けとめられているのかということについて、今の御答弁と重複するかもしれませんが、改めてお聞きをしたいと思います。

金森政府参考人 文部科学省に設けました学校現場の負担軽減プロジェクトチームでは、平成二十年三月、学校現場の負担軽減のため、当面取り組むべき事項について取りまとめたところでございます。

 この取りまとめにおきましては、調査文書等に関する事務負担の軽減でございますとか、調査研究事業、いわゆるモデル校のあり方の見直し、また、学校の校務運営体制の改善などについて提言がなされてございます。

 文部科学省におきましては、こうした提言も受け、文部科学省がみずから実施している調査の統合一括化でございますとか、調査研究事業の重点化や精選、また、主幹教諭に係る定数改善や校務の情報化の推進などに取り組んでいるところでございます。

 こうした取り組みを通じ、例えば、主幹教諭の配置によって学級担任の外部対応の負担軽減がなされたとか、校務の情報化によって教員の事務負担が軽減したなどの報告を受けているところでございます。

 引き続き、学校現場の負担軽減に取り組んでいくことが重要と考えておりまして、今後とも、教員が子供一人一人に向き合う環境づくりに努めてまいりたいと存じます。

日森委員 ぜひ引き続き努力をしていただきたいと思います。

 厚労省の方にきょうはおいでをいただいております。

 ちょっと専門的な話で、私もよくわからないところがあるんですが、うつ病にかかる人の性格について、何か特徴がございますでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の、うつ病と申しますのは、医学的には、気分や意欲の落ち込みあるいは強い不安が見られる、あるいは不眠等が見られる、これがある程度長期間にわたって持続をしてしまう、それで回復しない状態になったということをとらえて、これを精神的な疾患、うつ病というふうに称しております。

 このうつ病につきましては、ストレスや環境あるいは体の状況等々、多くの要因が組み合わさることで、だれもがかかり得る可能性がある疾患であるというふうに考えられるところでございます。

日森委員 報道によりますと、自民党の笹川総務会長さんが、今月の十四日、「学校の先生で、うつ病で休業している人が多い。国会議員には一人もいませんよ。気が弱かったら、務まりませんから」と。私なんか一番危ないんじゃないかというふうに思うんですが。

 改めて伺いたいと思いますが、気が弱いと、うつ病になっちゃうんでしょうか。

木倉政府参考人 先ほど申し上げましたように、一般に医学的には、うつ病は、さまざまな要因がある、ストレス、環境要因、心身疲労、お疲れになったというふうな体の状態、こういう多様な要因が組み合わさることで発病に至ってしまうというふうに言われておりますが、性格面で、きちょうめんであるとか気にしやすい等の性格との関連もあるとは言われておりますけれども、特定の性格があるからといって、うつ病になりやすいと一概に言えるものではないというふうに考えられております。

日森委員 国会議員もうつ病になる可能性があるということですね。まあ、それはどうでもいいことなんですが。

 文科省が委託をした新教育システム開発プログラムの調査によりますと、仕事に意義ややりがいを感じるというふうに答えた教師が全体の九〇%いらっしゃる。これは一般企業の方よりもはるかにやる気を持っているという統計上の結果が出ているようです。その一方で、この一カ月間の生活の中で気持ちが沈んで憂うつになったと、うつ傾向を示している教師が全体の二八%、これは一般企業に比べると二・九倍の数になっている。それから、一週間の中で休める日がないと答えた教師が四四%、勤務時間外でする仕事が多過ぎると答えた教師が八九%。いずれも一般企業を大きく上回って、教師が多くの業務を抱えてストレスを非常に感じているということが、この実態からも明らかになっているんだと思います。

 だとすると、大臣、笹川さんだからしようがないやという気持ちもあるかもしれませんが、これはそういう問題ではないということで、こういう実態から、笹川発言について文科大臣はどんなふうに考えられるのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 笹川総務会長が、本人が感じたことをお話ししたと思うんですが、逆に、政治家がどちらかというと異例なのかなという感じもしないでもないわけでして、一般的には、社会のいろいろな複雑な状況で、うつ傾向の人が多いというのは最近の現状だと思っております。

 同時に、教員の特に精神疾患による休職者数は平成十九年度には四千九百九十五名となっておりまして、年々増加傾向にあるということは大変深刻な問題であると思っております。これについては、すべての教育委員会に対して、通知や情報交換の機会を通じて、原因の把握、分析、それに基づくきめ細かな取り組みも求めているところでございまして、今後とも、教職員のメンタルヘルスの保持にかかわる取り組みをさらに充実させていくことが必要であると考えております。

日森委員 ぜひ積極的にやっていただきたいと思うんです。

 ちょっと補足的なお話になりますけれども、全体の八割の教育委員会がメンタルヘルス対策は必要だというふうに認めているようですが、十分に取り組めているというふうにアンケートで答えたのは一%に満たない。ほとんどのところで、必要だけれどもできないということになっているわけです。

 現状のままですと、これは何か手を打たないと、教員で不調者がさらに増加してしまうだろうというふうに予想している教育委員会が全体の七割を占めているということで、かなり深刻な状態なんです。教員の精神的な健康上の問題もそうなんですが、子供と向き合うわけですから、こうした問題が放置をされていると、子供の教育上も重大な問題を生じてしまうのではないかという思いがあります。

 問題は、要するに専門家がなかなか配置できない、それをやるにしてもお金がないというのが半分以上を占めていて、もう少し教師が、九〇%の人はやる気があるわけですから、子供たちとしっかり向き合って、能力を十二分に発揮できるような、そういう環境をつくっていかなければいけないというふうに思うんです。だから、これは人と金の問題、これはぜひ大臣の方でも御配慮していただきたい、そう思います。これはお願いだけしておきたいと思います。

 それから、次に奨学金の問題について、先回もこの委員会の中で議論になりました。私も大変気になっているものですから、改めて御質問をして、文科省の御見解を伺いたいと思うんです。

 学生支援機構ですが、〇九年度から奨学金の返還を滞納した場合、個人信用情報機関に登録されちゃうということがありまして、その奨学金を借りたいという希望者に登録されることの同意を義務づけているということがあって、先日も、この話で大臣は、個人情報に問題ないように対応したいという趣旨の御答弁をされておりましたが、これは非常に問題だと思うんです。

 これは文科省が指導されたのか、あるいはこうした問題について事前に相談を受け、協議をしてオーケーをしたのか。それで、同意を取りつけるのを義務化したというのは、一体どういう意味合いでここまで踏み込んだ措置をとるのかということについて、最初に改めてお聞かせいただきたいと思います。

    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕

徳永政府参考人 お尋ねの、奨学金の返還を滞納した場合に個人信用情報機関に個人情報を登録することにつきましては、日本学生支援機構がその中に設置をいたしました有識者から成る奨学金の返還促進に関する有識者会議、これが昨年六月に取りまとめをいたしました奨学金返還促進策についての提言を踏まえ、学生支援機構において実施をするものでございます。

 文部科学省といたしましても、延滞者の情報を個人信用情報機関に提供することにより、延滞者への各種ローン等の過剰貸し付けを抑制すること、あるいは多重債務化への移行を防止することになるため、延滞者の返還能力の確保につながる効果が期待され、返還促進策の一定の効果が期待できるというふうに考えております。

日森委員 これは理由によると思うんです。この前もそういう話になりましたけれども、ちょっと時間がありませんので簡単にお聞きしたいと思います。

 実際に返還が滞っている理由、これについてはどの程度きちんと把握されているのかということと、先回、たしか経済的な理由等々でどうしても、多重債務云々かんぬんではなくて、そういう理由で返還できないという方々がたくさんいらっしゃるということも聞いております。

 例えば、そういう理由の場合でも、これは義務化されているわけだから、無理やり個人情報機関に登録してしまうのかということになると、将来的な問題も含めて、個人が、奨学金を借りている方がさまざまな影響を受けていくということになると思うんですね。

 この辺について、改めてお聞きをしたいと思います。

徳永政府参考人 日本学生支援機構が延滞者に実施をしました調査、これは平成十九年十二月に実施をしておりますが、これによりますと、延滞理由の上位三つは、一つは低所得という方が四〇・八%、そして親の債務を返済しているからという方が三七・八%、奨学金以外の借入金の返済があると答えた方が二三・八%、もちろんこれは重複しております。こういった理由になっております。

 私どもとして、失業や低所得などの経済的理由や病気などによりまして奨学金の返還が困難な方々につきましては、その方々の申請によりまして、返還猶予という制度がございます。こういう返還猶予手続がとられた場合には、延滞者とはなりませんので、個人信用情報機関に個人情報が登録されることはございません。

日森委員 その猶予もなかなかすんなりいかないというお話も伺っておりまして、それもぜひいろいろ御配慮いただきたいと思うんです。

 特に、支援機構は、これは新規の人だけではなくて、返還をしている方や継続的に貸与されている方にも同意書を提出させて、拒否した場合、これは貸与をやめる、こういうふうに言っているようなんです。だから実際、強制的に同意書、あなたの個人情報を個人情報機関に登録するぞということを提出させているのではないかということで、非常に反発も出ているわけです。

 これは貸与契約を一方的に変更するもので、実は、本当に教育の現場でこういうことがなじむのかというふうに思うんですが、これについて最後にお答えいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今の同意書につきましては、新規の採用者については、最初にそういう取り決めだということで同意を得ることは必要だと思っておりますが、特に貸与中の者に対して、同意書を提出しない場合には奨学金貸与が受けられませんということは、ある面では粘り強く同意書の提出をお願いして返還を求めるということは必要かもしれませんが、しかしながら、やはり最初にそういった約束をしたわけではない中で貸与している最中の者に対して、こういった問題については、やはり同機構に対して私どもとして、文章も見ながら、注意を促していきたいと考えております。

日森委員 義務づけなどというのはぜひやめていただきたいという思いがありますので、そのことだけ申し上げて、時間ですので終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終了しました。

 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 塩谷大臣と厚生労働省の副大臣にいらっしゃっていただいておるはずでございますので、お二人に対して、今回、一般質疑ということで取り上げさせていただく一つの病気の件でございますが、調べましたところ、どうも過去にこれを真っ正面から取り上げた質疑は今までなかったようでございますので、少しお二人に、政治家として前向きに対処していただきたいという気持ちを込めまして、最初に私の方から、今回これを取り上げるに至った経緯を御説明いたしたいと思います。

 資料がそれぞれ委員各位のお手元にも配付されているところでございます。

 今回取り上げようとしております病気の名前は、色素性乾皮症という病気でございます。英語名の略称をとりまして、XPというものでございます。

 大臣のお手元に、よろしいでしょうか。

 この病気のこと、私自身も今回、地元、広島県の福山市でございますが、こちらの有権者の方からお伺いするまで全然存じ上げませんでした。そうした意味で、委員各位にもぜひこの機会に知っていただければというふうに思います。私自身も、最初にお話をお聞きしておりまして、世の中にこういう病気があるものなのかというふうに、非常に不思議にも、また深刻にも感じました。

 今、お手元にそろそろ資料が行き渡ったかと思います。

 そこに書いてございますが、この病気の特徴といたしまして、皮膚と脳神経に重い障害が生じる、進行性で治療法が未確立というふうに厚生労働省もお考えのようでございますが、まだ原因不明だと言われている病気でございます。

 そういった意味で、特徴として、先天性でもあり、それがだんだん進行していくものでもあり、さらにこれが深刻化しますと、本当に死に至ってしまうということのようでございます。

 こうしたことがいろいろ学術的に研究されている中で、厚生労働省におかれてもいろいろ前向きに対応してくださった結果でございます、大いに評価いたしたいと思いますが、この資料にありますとおり、二〇〇七年、二年前の三月に特定疾患対策懇談会において、原因不明なんだけれども、また、治療法が確立されていないんだけれども、これから先この病気について研究していこうということで、難治性疾患克服研究事業の対象に取り上げるという結論を導いていただいたところでございます。

 この病気は、先ほど申し上げたとおり、先天性でもあり進行性でもあり、かつ、深刻な場合に死に至るということが相まちまして、実態上、この病気にかかっていらっしゃる方は、ほとんど学童期を通じて症状が悪化してしまい、むしろ成人としての、社会人としての人生を送るよりも、学童期の人生を送っただけで世の中から去ってしまわれているというのが実態のようでございます。

 こういった病気が紫外線の影響とともに進行していくわけでございますが、こういった方々が生活していくためにいろいろな環境が必要でございまして、今そこにお書きしましたとおりでございますが、できるだけ紫外線を浴びないように窓ガラスにフィルムを張ったり、窓をできるだけあけないようにということで室内にエアコンを施したり、また、こういうふうに部屋の中を照らしております蛍光灯などが若干なりとも紫外線を発しておるがために、こうしたものをほかのものに切りかえるだとか、さらに換気扇に至るまでも暗室用の換気扇を使うだとか、こういったことが必要な状況のようでございます。

 私も本当にショッキングだったんですが、皆様方、ぜひこの資料の写真をごらんになっていただければと思います。

 子供さんが育っていく過程で、先ほど申し上げたとおり、日の光の中に含まれている紫外線を浴びるたびに症状が悪化するものでございますので、本当に私は最初見たとき、宇宙服か、ハチみつをとるために服を着ている光景かなと思ったんですが、まさにこれは小学校に通う児童が、こういった服を着てでないと表に出られないということでございます。

 御参考までに書きましたけれども、子供が成長していく過程でこうしたものをつくらなければいけない親の方々の御負担は大変なもののようでございまして、工夫に工夫を重ねて、生地を若干ずつ伸ばしながら生き抜いていっているというのが、現在までに私の知り得たこの病気の情報でございます。

 もう一つ、資料の下の方をごらんになっていただければと思います。

 先ほど申し上げたとおり、ほとんどがお子さんなのでございますが、今この病気を抱えますお子さんをお持ちの親御さん、保護者の方々が全国で、何とかして子供さんたちに少しでも充実した人生を送らせてあげたいという気持ち、一念のもとに、二〇〇四年の十月にシンポジウムを開催された後、全国で細々とやっていらっしゃった患者の会を統合しまして、全国色素性乾皮症連絡会というものを立ち上げていらっしゃるわけでございます。

 実は、きょう、当事者二人に傍聴にいらっしゃっていただいております。ぜひ大臣、副大臣におかれましては、先ほど塩谷大臣には、甲子園で高校球児に元気を送るためにあんなにすばらしい始球式をやっていただいた大臣でございますので、あらゆるお子さんたちに元気を送るべく、御答弁いただければというふうに思います。

 こういったことが動きとして起きておったところ、今から三年ほど前になりますが、二〇〇六年にこうした病気を映画とドラマで取り上げていただいたようでございます。これが「タイヨウのうた」という題名の映画であり、また同じ題名ですぐ直後にドラマ化されております。

 大臣も副大臣も御存じかどうかわかりませんが、私自身もインターネットで調べたぐらいでございますが、映画ではYUIさんというシンガーソングライター兼女優が主演され、ドラマでは、有名になられましたが、沢尻エリカさんが主演されておられるということで、実は、これを契機に、随分世の中でこの病気に対する認識が広まりました。

 実は私、今回これを取り上げるに当たりまして、地元でお聞きしました案件だけに、その周囲の関係者の方々にこの病気のことについてどれぐらい知っていらっしゃるか聞いて回りました。およそ三十人ほど当たったのでございますが、ほとんどの方がこのドラマや映画を御存じで、実際相当大変な病気なんだなということを、少なくとも私が当たりました有権者レベルでは非常に認識が高まっており、しかも、先ほど申し上げたように、有名な女優さんやシンガーソングライターが主演されただけあって、若い世代の方々にはほとんど一〇〇%の認識度でございました。

 そうした意味におきまして、私自身、今回この件を積極的に立法府で何とか対処策を講じていくことによりまして、若い世代の方々にも政治的な関心度を高めていただきたい、自分たちが何か声を上げれば実現するのではないかという希望を抱いていただきたい、そういった意味を込めまして、質疑に取り上げさせていただいた次第でございます。

 大臣、副大臣には、きょうは、かなりそうした意味で、お話をお聞きいただきましてコメントをいただきたいという趣旨でいらっしゃっていただきました。

 まず、渡辺副大臣の方に一言コメントをいただければと思うんですが、私が今回この案件を取り上げようと思いまして、厚生労働省の事務方との間で何度かやりとりをさせていただきました。

 先ほど申し上げたとおり、私はこの病気を、今申し上げたとおりですが、研究対象事業として取り上げていただくに至ったことは大いに評価させていただければと思います。厚生労働省の本来の責任を大いに果たしていただけるのではないかと期待しております。

 ただし、これから先、こういった病気のことについて、国民の皆様方のより一層の理解や、しっかりやっているという感触を持っていただくための対処策として考えれば、今は仕組み上難しいのかもわかりませんが、厚生労働省がこのような難病指定を行うに至ったものについて、もう少し関係諸機関に周知徹底せしめてはいかがかというふうに感じるわけでございます。

 後でちょっとコメントをいただくようにしますけれども、今回この案件をお話ししてくださったお母様によれば、私のお聞きしました事例ですが、小学校までは随分個々の保育所、小学校の理解ある先生方、そういった方々の間で良心的に対応していただいたというのが恐らく概括的な実態だろうと思います。

 もう少し学校教育の現場で文部科学省がこういったものを詳細に認識し、子供たちによりすばらしい思い出を残させてあげるべく義務教育を充実させるという観点から、厚生労働省として、こういう難病指定を行った際、特にこの病気につきましては、先ほども申し上げたとおり、子供の時代に人生の大半が過ぎてしまうという病気でございますので、政府部内で難病指定を行ったことの周知徹底、もしくは、この難病にかかっている方々に対する保護の観点から、どんな対処が必要なのか、そうしたものを政府部内でもっと回していただいてよろしいのではないかというふうに考えて、きょういらっしゃっていただいた次第でございます。

 今の仕組み上どのようなものがあるのか、私は存じ上げないでお聞きいたしておりますが、こういったものをまず、政治家として、今の行政府が持っている仕組みが限界なのであれば一歩踏み込んで対処策を講じてもよろしいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

渡辺副大臣 色素性乾皮症の方々に対して、また御家族に対して、本当に御苦労があるということは存じております。

 先ほども御紹介がありましたとおり、難治性疾患克服研究事業に含まれるようになったということで、これも関係者の皆様の大いなる努力が実を結んだものと考えております。

 今質問の、周知をきちんとやるべきだということ、これも大変厚生労働省としても大事なことだと考えております。

 今、具体的には、これは先ほどの特定疾患対策懇談会、今百二十三疾患が指定されておりますけれども、そのような難治性疾患克服研究事業のことに対していろいろな検討を行っているのですが、どういう検討を行っているかということを厚生労働省のホームページに掲載をしている。

 それから、難病相談・支援センターというものが運営主体であります都道府県で設置されておりまして、そこでいろいろな相談を受ける、また問い合わせがあれば周知をしているということであります。そしてまた、実際いろいろなサービスが必要になりますと、ホームヘルプサービス事業は市町村でやっておりまして、そういう県と市町村に対して、しっかり厚生労働省としても周知をしているところであります。

 それから、文部科学省等とも連携をしながら、もし学校生活でいろいろな相談等がある場合にも、先ほどの難病相談・支援センターあるいは保健所等で必要な相談に対して対応しているということであります。

 御指摘のとおり、これからも教育現場において難病患者さん、御家族の方々の理解を深めることは大変重要だと思っておりまして、連携をとりながら周知を充実していきたいと考えております。

和田委員 今、副大臣に御答弁いただいたところは、まさに今の仕組みの中でできることをやっていただいているということでございます。それそのものは私自身も評価させていただきたいというふうに思うわけでございますが、今回の場合、私が感じましたのは、今例えば副大臣の御説明なさったホームページの内容が文部科学省にきちんと、この件について指定したときに通知が行われてさえいれば、もっと考えようもあったのではないかというふうに思っております。

 実は、こういったお子さんが通われる学校環境というものを考えていく際に、症状があらわれたときには、先ほども脳障害があらわれるなど申し上げましたが、いわゆる障害のおありのお子さんとしていろいろな手当てが打てるように、文部科学省としましても今回特別支援学校等の仕組みを充実させるなどされているわけでございます。しかし、症状が出る前のお子様について、こういったことが、難病として厚生労働省の判断が至っているこのものについても何も対応がなされないというのでは非常にまずかろうというふうに考えるわけでございます。

 そうしたこともありまして、ここから先は、まさに役所の中に入っておられる政治家の指導力の発揮しどころではないかというふうに思うのでございます。そうした意味で、これから先ほど御説明いただいたところからさらにプラスアルファで、いろいろな関係機関への連絡徹底をお願いしたいというふうに思います。

 さて、塩谷大臣、今お聞きいただきましたような症状の病気でございますが、現在こうしたお子さんの方々が、私の先ほど申し上げました連絡会の方々からお聞きしている限り、全国で数百名いらっしゃるみたいです。この数百名という規模をどのように考えるか、非常に国の判断としても難しいところではあろうというふうに思います。ほかにもたくさんの病気があり、そうした中でそれぞれの子供が充実した教育を受けられるよう努力していくのが国の責務でございますが、逆に、今数百名であれば、何とかして対策を講じてあげたとしても、それがそんなに深刻な財政負担になるものではなかろうというふうに、もと財政当局におった人間として直観的に思うわけでございます。

 大臣、今回、このお子さんの事例では、今まで保育所や小学校ではそれぞれできる限りの手を打ってきていただいておるようでございます。本当にそこは文部科学省の御指導もあってのことだろうというふうに思います。今現在、実はつい先日、小学校を御卒業になりまして、これから中学校の課程に進まれることになります。

 実は、どうも全国でもよくあるケースらしいんですけれども、だんだんと年次が上がっていくところで学校の数も当然少なくなってまいりますので、こういったものに対応できる学校というのが限られてまいります。

 今回、このお子さんにつきましては、まさに数年前の学校教育基本法の改正のときに同時に行っていただきました特別支援学校の方に就学なさる予定なんでございますが、子供たちの本当の就学環境から考えて、このような病気の場合、症状が、いわゆる障害という言葉の定義に当てはまるようなものがまだ出ていないような児童の場合、普通の学校に通ってもらって、普通のお子さんというんですか、みんなと一緒に学ぶ環境を用意してよいのではないかという御意見もありますし、いや、やはり特別なケアが必要だから、そういった特別支援学校の方に通っていただいて、その中でできるだけ子供さんたちと一緒に過ごせるような環境を整えていくというのでもよいのではないかというふうなお考えもあったり、世の中まだまださまざまでございます。

 ただ、私が大臣にぜひコメントをいただきたいと思ってお伺いするのは、先ほどの映画やドラマの件もあって、世の中ではこうしたことに随分国民各層が理解を深めていらっしゃいます。

 実は、今回、特別支援学校に就学なさるということを前提にいろいろ相談に行かれている具体的なケースでございますが、学校の方からは、こういったことに対して特別な配慮をしようとすれば、ほかの就学児童に対して、またその就学児童の保護者の方々に対してなかなか理解が得られないのではないかというふうな答弁が、学校側から、また教育委員会の側からあったりするようでございます。しかし、先ほど申し上げたとおり、私がこの件を聞きまして周りの方々に聞く限りは、既に国民の皆様方の方が理解が進んでいらっしゃり、かつ、ほかの就学児童の保護者の方々までもが、こういったことはぜひ前向きに対処してあげてほしいというふうにおっしゃっておられた次第でございます。

 確かに、全国各地にある県や市町村の教育委員会の立場にある方々が踏み込んでいろいろなものに対処することには、財政資金も伴うわけでございますので非常にちゅうちょがあると思います。そういったところを国としてブレークスルーさせる意味でも、文部科学省の指導力が問われているというふうに思うわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。コメントをいただけますでしょうか。

塩谷国務大臣 今回の色素性乾皮症という、なかなか治療もできない状況で、本人はもとより家族の皆さん方がかなりのいろいろな御苦労をされているということで、私も地元の方で相談を受けたことが数年前ありまして、たしかそのときはこの支援の協議会をつくることの内容だったと思います。大変な難しい病気があるものだと認識をしたところでございまして、何とかこういうお子さんが不自由なく学校生活を送れるようにすべきだなということで思っているところでございます。

 今実際に、特別支援学校へ行くのがいいか、あるいは通常の学校へ行くのがいいかということ、これは当然、当事者あるいは保護者、そして学校関係その他の関係者とよく協議をしていただくことが大事であると思いますが、できれば、この病気のお子さんであれば、いわゆる普通の学校へ行って、同じように例えば勉強したり行動したりすることはできると思いますし、今お話があったように、一般的にそれだけ知られるようになっているという現状を踏まえれば、できるだけそういう一般の公立の学校へ行く方がベターではないかなと私は感じております。

 そこら辺は、やはり当事者同士でよく話をして、そして我々文部科学省としては、こういった病気に対する対応に対しては、できるだけいわゆる一般的な周知度等も理解しながら、そして当然本人とか家族の意向も踏まえながら、十分に丁寧に対応していくことが必要だと感じております。

和田委員 大臣の前向きのコメントをいただきまして、非常に心強い思いがいたします。

 質疑時間も限られておりますので、私が最後にコメントをお二人の大臣、副大臣にお求めしたいのは、実は私ごとで恐縮でございますが、先週月曜日にうちでは家族が一人ふえまして、これからまた子育てに従事していくことになります。(発言する者あり)ありがとうございます。

 その際に、周囲にいらっしゃいます妊産婦の方々、またお子さんを出産されたばかりのお母様方、こうした方々とお話しした際にも出たことでございます。

 私ども、これから国を挙げて少子高齢化に対応すべく、みんなで子供を産んで育てて、立派な社会人に育てていこうというふうにしているわけでございますので、どうやったら産みやすい環境を整えられるかという視点から、厚生労働省と文部科学省にぜひ手をつないで頑張っていただければと思います。

 そうした意味におきまして、現代にありましては高齢出産の割合が随分高くなってきております。そういった意味で、現代社会のいかんともしがたい現状としまして、先天性の異常を抱えて生まれてこられる子供さんも、どうしても数としてふえてまいります。しかし、そうした方々にもきちっと国が対応できるんだ、対応しますという宣言を行うことによって、より女性の方々が産もうかという意欲を持てるんじゃないかというふうに思っています。

 そうした意味におきましても、全国でこれから出産を考えていらっしゃる皆様方に向けて力強いメッセージを、まず少子高齢化御担当の厚生労働副大臣から、そして最後に文部科学大臣からいただけますでしょうか。

渡辺副大臣 少子高齢化対策というのは国にとっても大変大事な事業だ、そのように思っております。妊婦健診等の無料化、それから出産の費用の軽減等、厚生労働省としてもやっているところでありますけれども、お子様が生まれたときに本当に産み育てやすい社会をつくるために、本当に一生懸命取り組んでいきたいと考えておるところであります。

 万一、脳性麻痺とか、残念ながらそういう障害の方がお生まれになったときにきちんと養育ができるような、そういう制度も準備したところでありまして、これからもしっかり、多くのお子様、すべてのお子様を支えられるような対応をしていきたいと考えております。

塩谷国務大臣 このたび、お子さん御出産、おめでとうございます。(和田委員「ありがとうございます」と呼ぶ)

 私ども文部科学省としましても、少子化を踏まえながら、できるだけやはり子供たちが安心して育つ環境、また、親御さんにおかれましては安心して育てられる環境をつくるべく、努力をしてまいりたいと思っております。

 特に、教育費の問題等も、子供たちを育てる上でいろいろな問題になっている点もあるし、また障害者の教育に対しても、特別支援学校という形で新たに体制を整えてまいりたいと思っておりますので、そういった今後考えられる、今、高齢出産の場合に障害のあるお子さんを多く出産する可能性もあるというお話でございますので、こういったことをできるだけ社会全体で、ごく一般的な案件として我々が感じられるような社会をつくることが大事だと思っておりますので、そのためにも、学校教育等の中で努力をしてまいりたいと思っております。

和田委員 ありがとうございます。

 こうした案件は、本当に、与野党を問わず国会全体で前向きに取り組んでいくべき案件であろうと思います。教育投資、こうしたものも含めれば、もっともっと必要であることをみんなで盛り上げてまいりましょう。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了しました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。

 このたび文部科学委員会で質問をさせていただく機会をつくっていただきました我が党の理事初め、本日委員会室にいらっしゃる皆様方に御礼を申し上げます。

 私、文部科学大臣にこうして文部科学委員会で質問するのは実は初めてでございまして、きょうは、限られた時間でありますけれども、一点、大変大きな問題になっております財団法人日本漢字能力検定協会につきまして質問をさせていただきます。

 もう既に私にも事務方の方から説明をいただいておりますけれども、現在、二月九日に実地検査をされまして、この漢字能力検定協会に対して、三月十日付で実地検査の結果という形で通知がなされております。そして、改善を要する事項ということで指摘をされておりますけれども、具体的に、まずは、この実地検査、どのようなことをしたのか、どのくらいの時間をかけて、どのような検査をしたのかということにつきましてお答えをいただきたいと思います。

清水政府参考人 お答え申し上げます。

 二月九日の実地検査でございますが、一つは、公益事業における多額の利益発生について、例えば、利益が発生したことに対する考え方、二十年度の収支見込み、あるいは今後の収支見込みというような観点が第一であります。第二点は、同協会役員が代表を務める企業との取引につきまして、関係四社の登記上の所在地、実作業地、あるいは四社との取引の総額、取引の理由が第二点目でございます。第三点目は、広大な土地建物などの購入ということで、資料館、土地建物の現地確認、あるいは天龍寺におきます供養塔の現地確認という、正味二日ということでございます。

渡辺(周)委員 これは二日間をかけて、今お話があったように、この漢字能力検定協会が取引をしている株式会社オーク、株式会社メディアボックス等々の四つの関係企業との取引についても調べたと。

 今のお話ですと、取引先企業の所在地等を確認したのではなくて、実際どのような取引があったかということについても調べたということでよろしいですか。

清水政府参考人 実地調査とあわせまして、その後、資料等を取り寄せておりまして、取り寄せる等によりまして、全体として、それぞれ、統計事務センターあるいはオーク、メディアボックス、文章工学研究所、四社につきまして、御指摘のようなことについて調査したということでございます。

渡辺(周)委員 今の答弁ですと、取り寄せたというんですけれども、取り寄せたのではなくて、その所在地に行かれて、その会社が実体があって、どのような取引をしてきたとかという取引の明細なり契約書なりを見たということでよろしいですか。

清水政府参考人 御指摘のとおりでございます。

渡辺(周)委員 その取引されていた会社というのは、どのような会社だったんですか。

清水政府参考人 全体として、それぞれ取引の内容によって、この利益相反関係企業四社と取引関係がいろいろございます。いろいろな取引の内容において、例えば書籍の編集、在庫管理という関係ですと、印刷会社、製本会社等々が入るわけでございます。

渡辺(周)委員 いや、そんなことを聞いているんじゃなくて、その会社に足を運ばれて、その会社に、一部報道では実体がないということまで言われているんですが、実体はありましたか。

清水政府参考人 四社のうち、広報、広告等を行っているメディアボックスにつきましては、いわゆる登記上の所在地とは別に、この会社の所在地が漢字検定協会の中にございました。それから、文章工学研究所についても同様でございます。また、従業員等は、メディアボックスについては二人、それから文章工学研究所については一人というふうなことでございます。

 実体があるかないかということについては、非常に言葉としては微妙でございますけれども、私どもとして、実体がないとまでは言えないけれども、なかなか難しい、ちょっと疑わしいところもあるなというふうなことでございます。

渡辺(周)委員 今、疑わしいということをおっしゃったんですけれども、つまりそれは、漢字能力検定協会の中に会社が所在しているということで、でもそこには取引が発生をしていて、ここには、例えばメディアボックスには、業務委託という形で三年間で六十六億円、あるいはそれ以外にも、統計事務センターというところには採点や決済業務を委託していて、二〇〇六年から八年におよそ三十一億円を三年間で払っている、年平均十億円。となると、そこで採点作業をするなりの、何かやっているという実態を把握しましたか。

清水政府参考人 先生の御指摘は、今いわゆる採点業務を委託しております統計事務センターということだろうと思いますけれども、統計事務センターにつきましては、当時、採点等の時期ではなかったこともありまして、その場所について、あるいはそこに置かれているいわゆるコンピューター端末等については確認しておりますが、実際の採点作業については確認しているわけではございません。

渡辺(周)委員 年平均十億円の契約をしているんですよ。これまでに年間二百七十万人もの人がこの漢字検定というのを受検しているわけでして、これは採点するとなると膨大な作業ですよね。当然その何らかの採点業務を、例えばそこでやっているのか、あるいは外部に発注、委託してやっているのかわかりませんけれども、その点については、常識的に考えて、どれぐらいの時間をかけて、あるいはどれぐらいの人員を割いてこういう採点作業をするのかわかりませんけれども、こういう点について厳密に調べたんですか。その会社がちゃんと委託を受けてそれをやっているということについては、どこまで調べられたんですか。それは調べていないんですか。

清水政府参考人 失礼いたしました。私の説明がちょっとわかりにくかったかもしれませんが、統計事務センターで採点作業をしておる部屋を見、あわせて、それと同時に、一部、採点に関する事務、いわゆる漢字検定は御案内のように季節的に一定の期間集中してやるものでございますので、その時期ではなかったことはありますけれども、そこで実作業をしている人員がいることは確認いたしました。

 なお、そこに置かれているコンピューターは、約百台のコンピューター端末を確認しております。

渡辺(周)委員 ということは、現場は見ていないけれども、採点業務をやっているという気配はうかがわれたといいますか、当然やれるだけのファシリティー、設備があったということでいいんですね。

 ここから先なんですけれども、その業務委託にかかった費用が、先ほど申し上げたように、例えば統計事務センターであるならば年平均十億円を払っている。メディアボックスという広報、PRをする会社には、最近三年間で六十六億円を出しているということなんでありますけれども、実際、そのコストが適正な契約額なのかどうかということについては、これは調べてはいないんですか。

清水政府参考人 メディアボックスにつきましては、メディアボックスで、例えば十九年度売上高、全体として契約額二億九千万というふうなことでございまして、再委託ももちろんされておるわけでございますが、その再委託の内容、それとあわせてメディアボックスで行っている業務、広告代理店業務でございますけれども、そのことにつきまして、私どもとしてそういう観点で見た場合に、取引の必要性全般ということから、先ほど疑わしいと申し上げさせていただきましたわけでありますけれども、そういう取引の必要性ということについて、その必要性は疑わしい、そういう判断をしたところでございます。

渡辺(周)委員 もう一回言ってください。取引については疑わしい、その会社が存在していることあるいはそういう形跡はあるけれども、その存在がその取引の必要性について疑わしいということですか。それはどういうことでしょう。

清水政府参考人 会社としてのありようはさまざまだろうというふうに思っております。いわゆる、例えば特定目的会社等、いろいろな会社の形態は今一般企業等であるわけでございますけれども、メディアボックスについては広告代理業務でございます。したがって、再委託ということで、広告代理店と似たような業務をしているわけではございますけれども、現実には再委託がされている。そしてそういう中で、例えばそこの中で、広報、広告に関する連携あるいは調整業務というのは、私ども、よくわからないということでございまして、そういう観点から、漢字検定協会とメディアボックスとの取引というものについてどこまで必要なのか、そういう意味で、疑わしいという意味で申し上げたわけです。

渡辺(周)委員 この議論をしていると時間がなくなりますから、ちょっと先に行きますが、それでは理事会の理事、評議会の評議員には何らかの形で聞き取り調査等はしましたか。

清水政府参考人 私ども、理事会、評議員会の開催、議事録及びそこに提出された資料、出欠状況等について確認いたしております。

渡辺(周)委員 いや、出欠状況じゃなくて、出席された、あるいはされていない方に対して、理事の方か評議員の方には直接聞き取りをしましたかと聞いているんです。

清水政府参考人 直接聞き取りはしておりません。

渡辺(周)委員 では、書面をあくまでも調べて、見ただけということですね。

 つまり、そうしますと、後になって、例えば講談社の野間さんという方が評議員をもう辞任するようなことをほのめかしたということも新聞等に出ておりますけれども、実際、理事会や評議会ということは一体どういう意味があったのだろうかというふうに思わざるを得ないんです、公益法人の理事会として、あるいは評議会として。この点については、実は実地検査についても調べていなかったということで理解をします。つまり、全く形骸化をしていたということなんです。

 この点については、文部科学大臣、塩谷大臣は、一連の発言にもございますように、やはり甘かった、正直、この実地検査も含めてですけれども、甘かったというふうにお認めになりませんか。

塩谷国務大臣 今それぞれ、実地検査等、私ども、それに基づいて指導も行ってきたわけですが、正直、甘かったという印象は持っております。

 今回、二日間、改めて実地検査を行って、改善の点等、また回答を得るように、三月十日に改善通知を発出しまして、四月の十五日までに回答をするようにということで、今私どもとしては、いわゆる回答を待っているところでございますので、それを受けて、またその内容によって判断をしていかなければならないと考えております。

渡辺(周)委員 ここで一つ。この問題も報道もされていますし、過去にも何回か委員会で取り上げられていますので、これ以上聞く時間がちょっとないのが残念なんですが、そもそも検定料、二〇〇七年に一級の料金を六千円から五千円に引き下げた。しかし、これ、引き下げたといっても、受検者の一%にしかすぎないんですね。

 これはもう二〇〇四年からずっと指摘をしていて、もうけ過ぎじゃないかとこれまでも指摘してきた。だけれども、結果的には、指摘はしたけれども効果がなかったと我々は認識しているわけなんです。

 そもそも、この検定料というものの算定根拠、これは文部科学省として、御存じかとは思いますけれども、八級から十級は千五百円、準二級から七級までが二千円、準一級が四千五百円、一級になると五千円とはね上がるんですけれども、この検定料の算定根拠というのは、文部科学省としては把握しているんでしょうか。

清水政府参考人 検定料については、これは同種の検定を行う英検の場合も同じでございますけれども、受検者数の規模とか多様な受検形態、申し込み方法等を念頭に置いて、全体としてのコストとの相関において積算されているというふうに考えております。

 具体的に、例えば漢検について言えば、各級における対象層の相違でありますとか、先ほど申し上げました受検形態、申し込み方法等の多様性あるいは各級で共通な経費もあることから、検定事業全体の収入、支出をもとに、受検者一人当たりの収入、支出、つまりコストを算出した上で、検定料について検討する場合の指標としている、こういうふうに承知しております。

渡辺(周)委員 では、この漢字検定協会の検定料を決めたのはどなたですか。それは文部科学省ですか。承知していると今言いましたけれども、これは普通、理事会か何かで決めるんじゃないですかね、意思決定としては。でも、その理事会でそういうことを決めたかどうかは御存じないわけですよね。それはいかがなんですか。

清水政府参考人 この法人は平成四年設立でございますので、平成四年設立当時の理事会でどういう検討をしたのかということについては、ちょっと私、今手元に資料は持ち合わせておりません。

 ただ、今答弁申し上げましたように、例えば私ども、検定料の引き下げも含めた、公益事業の過大な公益上の利益について指導した際に、理事会におきましてそれをどういうふうに考えるかということについて検討された資料をベースに、あるいはその聞き取った考え方をもとに、今御答弁申し上げたわけでございます。

渡辺(周)委員 二〇〇四年からもうけ過ぎだというふうに指摘をしているわけですよ。それで、これだけ右肩上がりでどんどん受検者数がふえているわけですから、これは当然のことですけれども、受検料がそれなりの金額を取れば、利益が上がっていくのは当たり前なんであって、普通はそういう意見が出なければおかしいわけですよね、理事会等で。だけれども、それは手元にないから今わからないということでございます。

 ここで実は、時間も余りありませんが、大臣にぜひ申し上げたいんですが、大臣の地元も私の地元も同じ静岡県ですが、今大変厳しい経済状況の中で、子供さんたちが、あるいは中学生や高校生たちが、自分たちのスキルという中で、これから上の学校に行くのだって、もう学校の名前や学校の推薦だけではそう今までのようにはなかなか就職、社会に出られなくなってきたという中で、やはり自分たちに、社会的に認められるためにも、スキルとしてこういう漢字検定のようなものを一生懸命、私の子供もそうですけれども、取り組んでいるわけですよ。

 実際、学校でも奨励しています。だから二百七十万人もの子供たちが、大人も含めて受けている。大体、漢検の取得を評価基準にしているという大学、短大だけで、全国で四百九十ある。そしてまた、これは例えば上の学校を推薦するときに、漢検の何級を持っているということは、推薦を志望する上での一つの大変な武器になるわけですね。

 この中で、子供が二人、三人いて、やはり一番安くとも千五百円、それ以上になりますと、これはもう大変な、年三回ありますけれども、出費になるわけですね。私は、こういうところで教育費のコストを下げると、小さい額かもしれませんけれども、これだけもうけ過ぎの団体があるんであれば、この後、いっそのこと、もう千円均一にするとか、あるいはただにするとか、何らかの形でこれは考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、この検定料のあり方について、大臣はどうお考えでしょう。そのことについて御質問したい。

 もう一つ言うと、漢検だけじゃないんです。いっぱい、調べたら、もう財団法人日本数学検定協会だとかスペイン語の検定協会だとかいろいろな、もっと言うと、有名なのでは簿記能力検定試験とか、あるいは工業英検なんというのもあるわけなんです、英検は先ほど例にも出ましたけれども。こういう検定を今若者たちが、取れば何とか就職や進学のときに有利だろうということで、一生懸命努力しているわけですね、この厳しい経済状況の中で。

 こういう検定料の引き下げということは、私はもう一回、さっき漢検の例を挙げましたけれども、どういう算定根拠でこの検定料というのが決まっているのか。

 大体、一番安いのが千五百円で、一番高いのが五千円。私、これ、漢検の一級の試験問題とそうでない、小学校のドリルみたいな、これはもっと等級の低い八級と比べて、果たしてそんなに採点時間にどう違いがあるのだろうか、そんなに専門性を要するほど、難易度によってそんなに検定料が違うのだろうかと思うわけですけれども、これはもう一回調べていただいて、そもそもこういう検定の検定料の根拠とは何かということを、ぜひ大臣、一回調べていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

塩谷国務大臣 検定料につきましては、漢検については、今御指摘のとおり、毎年大変な利益が出ているということで、これについては当然将来的に検定料を下げることは一つの大きなこれからの対策だと思っておりますし、私は、今あるこの利益をどうするかという処分に対して漢検がどう考えているかということも判断の一つとなると思っておりますし、個人的には、返還したらどうだというぐらい言ってもいいのかなと思っております。

 しかしながら、今御指摘の、検定料のいわゆる算出根拠、ここら辺はもう一度きっちり私どもで把握していく必要があると思っておりますので、ほかのいろいろな検定もあるということで、今回の問題を一つの契機として、そういった検定のあり方、そういうところも含めて私どもとしては把握していく必要があると思いますので、今後検討してまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 所管は違いますけれども、これは厚生労働省になるのかもしれませんが、簿記能力検定ですと、例えば四級が千円、三級が千二百円、二級が千五百円、一級でも千五百円なんですね。上級まで行くと七千円というふうにはね上がるんですけれども、例えばこういう簿記能力検定だと、そんなに一級から四級まで違いがない。あるいは、その他もろもろ、私も今回のことでいろいろ調べてみて、いろいろな検定があるんだなと思いました。

 この検定料を引き下げるだけでも家計の負担減にもなるし、特に今回のような、公益と称する法人が莫大な利益を上げて、それが非常に不明朗な取引の上で、何かよくわからないことにも使われていた、そういうことにお金を使うんだったら、今こういう経済状況の厳しい中で、資格を取れば何とか上の学校に行くときや社会に出るときに有利だろうと思って一生懸命努力をしてきた人たちに、本当に少しでも還元をしていただきたい。本当に教育に関してはコストがかからないんだというふうな努力を、不断の努力をぜひしていただきたいというふうに思うわけでございます。

 もう一回、その決意を聞きたいというふうに思います。

塩谷国務大臣 御指摘のとおり、今回の漢検につきましては、検定料が非常に問題だと思っております。ほかの検定についてはどういう状況か私も把握しておりませんので申し上げませんが、少なくとも漢検についてはこれだけの利益を得ているということで、今後その対応をしっかりと注視しながら、改善なり指導していきたいと思っておりますし、教育費全般においても、現在の経済状況を考えれば、将来的にもさまざまな形でできるだけ負担を軽減することが一つの国としての方向性で、検討してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 もうちょっと時間がありますので、もう一回大臣に質問します。

 先般、大臣、先ほどの三月十日付で出された通知でさらなる改善を求める、その改善の回答が出て、それでも解消されない場合には解散もということも言及をされていらっしゃると思いますけれども、私は漢字検定の制度というのは必要だと思っているんです。先ほど申し上げましたように、もう学校の現場でも奨励していますし、また、漢検の評価基準というものが、例えば学校の国語の単位に認定をされていたり、あるいは推薦入試の要件の一つになっていたりして、これはかなり客観的な基準だと必要なんです。

 解散をする、これはなかなか大変なこととは思いますけれども、漢検の協会の解散というのはちょっと現実的ではないのかなと思いながらも、もしそうであった場合、この漢字検定の制度というものはどうなるか。その点については、大臣、現状、今どうお考えですか。

塩谷国務大臣 私も、この漢字検定の意義は非常に大きく評価をしておりますし、それだけ国民の多くが受検をしておりますので、こういった事業については継続されることが大事だと考えております。

 ただ、今回のいろいろな問題等に対して改善指示を出して、それが行われない場合は、この協会自体、解散命令も視野に入れて今後対応していかなければならないと思っておりますが、そういう場合に検定事業等をどうするかというのは、またそれはそれで検討していく必要があると思っております。大事なことは、やはりこういった公益性の高い事業をいかにしっかり継続させるかということで、その内容を私どもとしては指導していくことが大事でありますので、そういう考え方で、今後対応してまいりたいと思います。

渡辺(周)委員 初めての質問ではございましたけれども、ぜひ子供たちが一生懸命競い合うように、子供たち同士勉強して、学校現場で一生懸命、土曜日なんかに行っているわけですよ、この漢字検定、友達と一緒に競い合いをしながら。こういうけなげな子供たちが一生懸命やっているものを、利益をむさぼっているような、もしこういうことが今後あるようでしたら、ぜひ厳しく対処していただく、そしてまた、それ以外の公益法人に対しても、やはり今回のことを契機として、厳しくその内容についての指導をする、監督するということを切にお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で渡辺君の質疑は終了しました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 きょうは、高校、大学の学費の問題で質問をさせていただきます。

 この間、卒業式が行われまして、しかし、高校の卒業式では、山口県の私立高校の七校で、授業料滞納で卒業証書を回収した、別の高校では卒業式に出席を認めないということが起きました。山梨県、佐賀県、長崎県などの高校でも、一度渡した卒業証書を回収するということが行われております。香川県では、PTA会費や学校徴収金を全納していないことを理由に卒業証書を回収していると。

 まず伺いたいと思います。

 文部科学省として、授業料滞納、学費未納などを理由にして、卒業式に参加させなかった、卒業証書を回収するというようなことが行われた県、高校数、生徒数、どのように把握していらっしゃいますか。

金森政府参考人 ことし三月の高等学校卒業予定者に対しまして、授業料未納を理由に卒業証書を渡さない、あるいは回収するといった県について、文部科学省として全国的な調査をしているわけではございませんが、幾つかの県でこのようなケースがあったことが報道されておりまして、都道府県教育委員会等に確認いたしましたところ、例えば、三年生の全保護者に対して、二月分及び三月分の授業料を期限までに納入しない場合は卒業証書を渡すことができない旨の授業料等の口座振替に関する通知文を発出したケースでございますとか、卒業式で卒業証書を授与された生徒について、授業料等の滞納を理由に、生徒、保護者の了解のもとで、卒業証書を一たん預かり、授業料等の完納を待って、証書を改めて渡すという取り扱いをしていたケースがあったところでございます。

石井(郁)委員 もう少し県とか学校数、具体に調べていらっしゃらないんですか。

金森政府参考人 報道を通して確認したケースについて申し上げますと、卒業式後に卒業証書を回収したケース、また、卒業式で卒業証書を授与しなかったケースなど、合わせて二十一校で四十四人がこうしたケースに該当しているところでございます。

石井(郁)委員 私は、やはりこういう点はきちんと把握をしていただきたいというふうにまずは申し上げておきたいと思います。

 そこで、このような学費未納という理由で卒業証書を渡さない、回収するというようなことは、本当に教育の現場であってはならないことだというふうに思うんですね。学校教育法の施行規則の五十八条には、このようにあります。「校長は、小学校の全課程を修了したと認めた者には、卒業証書を授与しなければならない。」これは小学校となっていますけれども、百四条によって、五十八条の規定は高等学校にこれを準用するとあるわけですね。だから、全課程を修了したと認めた場合に卒業証書を渡さないということは、これは法令違反ではありませんか。

金森政府参考人 御指摘のように、学校教育法施行規則には、御紹介がございましたような規定がございます。

 卒業証書の授与につきましては、校長は、全課程を修了したと認めた生徒に対して卒業証書を授与しなければならない、こう定められているところでございます。

石井(郁)委員 きちっとはっきり御答弁ください。

 私が質問したのは、そういう規定からすると、これはもう法令違反だということになりますね、どうですか。

金森政府参考人 学校教育法施行規則の規定から申しましても、経済的理由などやむを得ない事情による授業料の未納は、生徒個人の責任ではございませんので、生徒の心情を最大限配慮した対応をとることが望ましいと考えているところでございます。

石井(郁)委員 もっとすっきりと御答弁された方がいいと思うんですけれども。

 要するに、課程を修了したら証書は渡すということになっているんですよ。でしょう。だから、それに即してちゃんと判断していただきたいというふうに思うんです。

 そこで大臣に伺いますけれども、やはり今後こういう事態をなくすということが文部科学省のとるべき立場だと思うんです。ですから、学校現場でこんなことが起きているわけですから、やはり文部科学省として、こんな卒業証書の回収などということがあってはならないという立場からも、きちんと通知を出すなどして、周知徹底を図るべきではないでしょうか。ちょっと大臣の御認識を伺います。

塩谷国務大臣 今御指摘のとおり、学校教育法の五十八条で、全課程を修了したと認めた者に対して卒業証書を授与するということになっております。これを実行するために、ただ単に経済的な理由で、やむを得ない場合には、例えば奨学金とか授業料減免の措置をとったりいろいろな方法があると思いますので、まずはそういった丁寧な対応をして、生徒の心情を最大限に配慮した手続をとることが必要だと思っております。そういう点で、県の教育委員会あるいは学校に対して適切な指導助言を行ってまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 次ですけれども、これから入学式シーズンを迎えるわけでございます。

 昨年、千葉県、長崎県で、入学金を納めなかった生徒、新入生を入学式に出席させないということが報道されました。こうしたことが起きないようにするということも文部科学省として立場を明確にすべきだと思いますが、この点も大臣、いかがでございましょうか。

塩谷国務大臣 昨年の春だと思いますが、千葉県の公立学校において入学金未納で生徒を入学式に出席させなかったということでございますが、これにつきましては、入学金が納入されない場合には原則として入学は許可されないこととなっているということでございまして、昨年の三月には入学許可候補者の説明会において、入学金が納入されない場合には入学が許可されない旨を説明したと聞いております。

 入学式に出席させなかった生徒については、入学式当日に至って入学金納入の見込みが明らかになったということで、学校長が許可したというふうに聞いておりますが、今後とも、校長及び設置者である教育委員会においては、生徒や保護者に入学金の納付期限の猶予も含めて、入学金の納付については十分理解が得られるようにするとともに、生徒や保護者の気持ちに配慮した対応をされるように期待し、また、私どもとしてもそういう指導をしていかなければならないと思っております。

石井(郁)委員 入学式というのは、子供にとっても親にとっても、やはり本当に、教育の始まりというか学校生活の始まりということで晴れがましい場所でもありますよね。そして、生徒にとっての大きな人生の節目でもあるというふうに思うんですね。

 だから、入学金未納を理由にして入学式に出席させない、これもまた本当に非教育的なことでありまして、あってはならないことだというふうに私は思います。

 いつも言いますけれども、教育基本法、経済的地位によって差別されない、国及び地方公共団体は、修学が困難な者に奨学の措置を講じなければならないと。これは、国と地方自治体がともにその責務を負っているわけですよね。ですから、奨学の措置をとってこなかったというか、国や地方自治体の責任が一義的には問われる問題だというふうに私は思うわけであります。

 入学式がもう迫っておりますから、今大臣がいろいろ御答弁いただきましたように、再度、昨年のような事態が本当に起きてはならないわけですから、文科大臣として明確な御見解を現場に出す必要があるのではないかというふうに思いますが、この周知徹底はいかがですか。再度伺っておきます。

塩谷国務大臣 おっしゃるとおり、時期がちょうど卒業そして入学の時期でありますので、今、私も答弁したとおりでありますが、卒業証書あるいは入学について、そういった経済的な理由で、いろいろな状況があると思いますので、できるだけ丁寧に対応して、その状況に応じては、先ほど申し上げましたように、授業料減免とかあるいは奨学金の活用とか、そういったことをしっかりと指導して、こういうことがないように周知を徹底してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私は、先月二十三日の予算委員会でこの学費問題、滞納で卒業できない生徒がたくさん出てきているという問題、また、学費未納で入学できない生徒が出るかもしれない、こういう問題で質問をいたしました。

 その際、河村官房長官がこのように御答弁されています。特に、家庭の状況等によって修学の機会が失われるということは、何としても避けなきゃならぬということでございました。文科大臣も、学ぶ意欲のある高校生が経済的理由によって修学を断念することのないように、支援に努めてまいりたいという御答弁をいただきました。

 そこで、その後、具体的に、例えばどのような支援をされたんでしょうか。いかがですか。

塩谷国務大臣 たしか二月の二十三日に答弁した、そういう方向で今後の支援策等も今考えておるわけですが、まずは今までの支援策について各都道府県や学校に周知徹底することが大事だと思っております。

 二十年度の二次補正における地域活性化・生活対策臨時交付金については、各都道府県に対して情報を提供したところ、各都道府県においては、私立学校が行う授業料減免措置への補助の財源としても積極的に活用するということが言われておりまして、高等学校の修学支援に取り組んでいくと承知をしております。

 さらに、二十一年度の予算案につきましては、都道府県による私立学校が行う授業料減免措置の補助について、国庫補助の予算額を増額するとともに、授業料減免事業にかかわる新たな地方交付税措置が講じられることになっております。

 本年三月十三日には、学生、児童生徒の修学等支援に向けた主な施策について、現下の厳しい状況、雇用状況に対して、子供たちの教育を受ける機会が損なわれないように、教育費負担軽減に向けた各種支援策をまとめて報道に発表するとともに、ホームページにも改めて掲載したところでございまして、そういった周知徹底を図る上で多くの方々に活用してもらうということで今考えているところでございます。

石井(郁)委員 この間、政府が取り組んできております幾つかの施策はそれとして周知徹底することは必要なんですけれども、非常に事態は緊急でかつ深刻だというふうに私は思っておりまして、さらに幾つか突っ込んだお話をさせていただきたいと思うんですね。

 これは三月の八日と九日の二日間、全日本教職員組合、日本高等学校教職員組合、全国私立学校教職員組合連合の三団体が共同で、経済危機の中での雇用危機、生活破壊から子供たちの就修学それから進路などを守る緊急行動ということで、入学金・授業料・教育費緊急ホットラインということで電話相談を受け付けたんですね。総勢四十三名で三本の電話を引いたそうですが、もう鳴りっ放しだったと。一日目が百九本、二日目で百七本、計二百十六本ですから。十時から夕方五時ぐらいまでだったと伺っているんですけれども、電話が恐らくつながらなかったということを考えますと、数倍に上るだろうということなんですね。

 この結果を踏まえまして、三団体の方が緊急提言を発表されたんですが、その中にこのように書いてありました。

 ホットラインでは電話相談が絶え間なく続いた。非常に深刻で緊急性の高い相談、訴えが多数寄せられた。数日後に迫った授業料納入期限を前に、途方に暮れる私立学校の保護者も多数ありました。私たちの予想をはるかに超えて、卒業、入学、進級という節目の季節を迎えて、子供たちの就修学をめぐる状況は極めて憂慮すべき事態であることが明らかになりましたということを言っていまして、これは私も見せていただいて、箇条書きにして、もうびっちりあるんですね。

 その本当に一部だけ申し上げたいと思うんですけれども、相談には、もう額は言いませんけれども、今月中に何円が必要です、それから今週中に何円が必要ですということの相談だと。切迫している。その中で、どこに相談していいかわからないということがあって、この電話につながっているわけですね。

 だから、改めて奨学金制度、学費減免制度、政府は、この間、こういうことがありますとおっしゃいますけれども、やはり周知されていないな、何を使えばいいのか、どこに行ったらいいのかということがあるんですね。ですから、この緊急提言の中で、このようにありました。ホットラインの電話相談では、さまざまな就修学援助があるにもかかわらず、それを知らない事例が数多くありました、現行制度の周知徹底が求められていますということですね。

 こういう事態ですから、今この三月という時期で、やはり文部科学省として、あるいは学生支援機構として、それから各県教育委員会、教育事務所等々、やはりそういうところを窓口にして緊急電話相談ホットラインというものが必要ではないのでしょうか。学生支援機構に電話したけれども、一方的にテープが流されるだけで相談にならないという声もあったようです。

 どうでしょう、大臣。本当に生の声を聞く、深刻なそういう訴え、相談に乗るというようなホットラインをつくってはいかがでしょうか。

塩谷国務大臣 私どももこの周知徹底が大事ということで、マスコミ等も通じてお願いをしているところでございますし、もちろん、教育委員会、学校等への周知徹底を図っているところでございます。

 したがって、改めてどこまでそれが浸透しているかということを確認することが必要だと思っておりますし、ホットライン等、一番有効な方法は何かということも検討していきたいと思います。

 ただ、先ほど来、この授業料等の話、私どもとしてはかなりの支援策を今実行しているつもりでございますが、経済的な理由は、ただ単に授業料だけ払えれば大丈夫だということではなくて、経済全体、生活費全体の問題もありますので、授業料だけで解決する話ではないなということもたくさんあります。ここは私どもと、あるいは生活保護とかいろいろな社会的な支援、こういうのとあわせて行わなければいけないと思っておりますので、また、その連携といいますか、そういうことも考えていきませんと、授業料だけで、それじゃすぐ払って学校へ行ける、いや、そうじゃなくて、授業料はもらっても生活費になっちゃうとかそんな場合も考えられるわけですから、もう少し全体的な支援のネットワークをつくることも必要だと考えております。

 いずれにしても、私どもの授業料減免等のそういった措置に対する周知徹底は、今後とも、しっかりチェックしながら図っていきたいと思います。

石井(郁)委員 支援策は幾つかございますけれども、しかし、なかなか有効に働いていないという部分もあるんですね。

 それで、少し具体的に次にお尋ねしたいんですけれども、その相談の内容には、入学準備金が用意できない、あるいは、入学金の援助をしてくれる制度があるのかということで、入学金に関する相談というのが非常に多いということがわかりました。その際、子供が大学入学で奨学金をもらうことはわかっている、しかし入学金を借りられるところはないのか、つまり入学金がやはり高いわけでしょう。

 それで、次のケースでいいますと、大学院に合格したけれども、十六日までに六十万円払わなきゃいけない、二十六日までに二十八万円入学金が必要だ、奨学金の手続はあるけれども、今当面の入学金がない、こういう問題ですね。これは、ちょっと新たな措置というのが必要なんじゃないでしょうか。

 例えばこういうことなんですね。つまり、今の奨学金制度では緊急時に対応できないという問題があるんですよ。こういうケースを申し上げたいと思います。十一月から一月にかけてはAO入試があって、推薦入試などで合格します。その段階で入学金二十万円前後を払わなきゃいけない。前期分の授業料五十万から七十万支払いを用意しなければならない。だから、それができないために断念をするという事態まで起きてしまう。

 つまり、奨学金貸与というのは入学後になるために、入学前の支出というのは銀行借り入れなどをしなければいけない。今本当に国民の生活は、親の減収とか、いろいろ突然の解雇等々で非常に切迫した状況にありますから、なおこういうことが起きているわけです。奨学金の場合、支給されるのは、学校に入って最短で五月ですよ。だから四月の入学時に間に合わない。どうでしょう、こういう今の制度上の問題があります。推薦入学の支払いに間に合わない。

 私は、やはり入学金を準備するために、必要なときに借りられる、そういう見直しということも今大事ではないかというふうに思うんですが、この点はいかがですか。

塩谷国務大臣 入学金については、これは入学時の資金需要に対して一時金の増額をして貸与する制度があるわけでございます。特に二十一年度予算につきましては、学生のニーズに細かく対応するために、従来三十万円のみという一時金の金額でありましたが、十万円から五十万円までの十万円刻みで選択できるように制度改善を行ったところでございます。

 また、四月に申し込まれて五月に振り込みが行われるということでありますが、これについては、大学院等は四月にすぐ手続で振り込まれるようになっていると思いますので、これは普通の学部の生徒に対しても即振り込みが行われるようにできるのではないかと私ども考えておりますので、実際にそういった指導をしていきたいと思っております。

石井(郁)委員 高校や大学に入学した、奨学金も受給できるようになっているということでも支給が数カ月になるということで、やはり当座の入学金、授業料の工面ということが非常に大事になっているんですね。

 そこを苦しんでいらっしゃるということがありますので、私はもう一つの問題として、奨学金の受給が明らかになった方々に対しては入学金の支払いを当面猶予、先ほども、必要なお金は借りられるということが必要ですけれども、当面猶予というのがあってもいいんじゃないかというふうに思うんですが、その辺はいかがですか。つまり、入学金の納入、授業料納入の猶予制度ということももっとあってもいいんじゃないか。これはもう通知によってできるのではないかというふうに思いますが、どうですか。

徳永政府参考人 入学金につきまして、入学前の支払いということにつきましては、奨学金貸与が確約されている予約採用内定者につきましては、入学前に支払いに充てられますよう、奨学金が交付されるまでの間、全国の労働金庫においてつなぎ融資が受けられるという制度が設けてございます。ぜひそういった制度を御活用いただければと思っております。

 ただ、具体的にいわば入学金を猶予するかどうかというのは、それぞれのまた大学等の御判断だと考えております。

石井(郁)委員 今幾つか例を申し上げましたけれども、入学金、授業料がやはり払えない、当面の工面ができないんだということが起こっているのは、やはり今の非常に深刻な生活困窮者の実態、家計の急変等々があるわけですね。自己破産しているので国民金融公庫のローン、銀行などから借りられないということがあるわけでしょう。だから、つなぎ融資といってもそれは大変難しいわけですね。実際、短大の卒業が確定したけれども授業料未納、二百六十万用意しなきゃいけないだとか、そういう本当に深刻なケースが出てきているわけです。

 私は、緊急に貸し付けを申請したい、もう退学するかもしれないのでそういう道はないのかというような声もいっぱいあるわけでありまして、そういう意味で、緊急時に対応できるような無利子の無保証人、返済猶予の貸し付けというような緊急融資制度ということも考えるべきではないのかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

徳永政府参考人 奨学金につきましては、既に融資の場合、緊急採用制度がございます。通常の奨学金でありますれば、年度当初から借りるということが原則でございますが、いわば年度途中でも緊急採用制度がございます。

 ただ、今委員御提案の、例えば無利子におきまして緊急に貸与するような一時金を創設するということにつきましては、これは通常の貸与月額と比べてより大きなものでございます。そのためには新たな財源を必要とすることになりますので、その点については困難であると考えております。

石井(郁)委員 最後、ここに来て新たな財源という話になりましたけれども、しかし、子供たちに本当に、これは実際にどのぐらいの財源でできるかという試算もしていただきたいと思うんです。それほどのことじゃないんじゃないかというふうに思いますし、中小零細企業向けの無担保無保証人の緊急融資制度というのがありますよね、こういうふうなことをやはり子供の学費についても考えていいのじゃないかというふうに思います。

 もう時間で最後になりますけれども、いつもこの問題で最後は財政難だということに行き当たるわけですけれども、改めて、これは私は予算委員会でも指摘したんですけれども、OECD加盟国三十カ国で高校の授業料を無償化していないという国は、イタリア、ポルトガル、韓国、日本、四カ国だけですよ。大学でも十四カ国は授業料無償です。奨学金も給付制です。本当に大きな違いがあるわけですね。

 大臣も私の質問に対して、「委員の主張としては高校の無償化ということだと思いますので、」「そういった基本的な考え方も入れながら、私ども、検討してまいりたい」ということをちょっとおっしゃっていただきました。私は大変これは前向きな答弁だと受けとめているんですけれども、やはり、財政難ということを言うんじゃなくてというか、今本当に経済危機というこの時期だからこそ、未来への投資として、この教育予算の抜本拡充ということに政策転換をすべきだというふうに私は思うんですね。

 再度、どのようにしてこの無償化という方向を検討されていくおつもりか御決意を伺って、終わりにします。

岩屋委員長 塩谷大臣、時間が参っておりますので、お願いします。

塩谷国務大臣 現在の大変な緊急的な経済危機の中で何ができるかということと、将来的にこの教育費の問題とあわせて検討していかなければならないと思っておりますが、OECD等の諸外国との比較でいきますと、やはり家計負担が非常に多いということが明確でございますので、我が国において、将来のあるべき姿、教育費全体の公財政支出、そして特に高校あるいは高等教育の家計負担というものがどうあるべきかということ、それを経済的な状況も踏まえて今後検討してまいりたいと思っております。

 かなりいろいろな数字とか将来的な見通しとかも今検討を始めているところでございますので、国民の皆さん方にも御理解いただけるように、財政の問題もあわせてしっかり検討していきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

岩屋委員長 以上で石井郁子君の質疑は終了しました。

 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 きょう、お時間をいただきまして、国民体育大会につきまして若干御質問をさせていただきたいと思います。

 国民体育大会のまず定義を確認させていただきたいと思うんですが、国民体育大会は、戦後の荒廃と混乱の中で、スポーツを通じて国民に、とりわけ青少年に勇気と希望を与えようと、関係者の熱意と努力により、昭和二十一年に、京都を中心とした京阪神地域で第一回大会が開催された。以来、国体は、広く国民の間にスポーツを普及し、アマチュアリズムとスポーツ精神を高揚して国民の健康増進と体力向上を図り、あわせて地方スポーツの振興と地方文化の発展に寄与するとともに、国民生活を明るく豊かにする、これが目的であるとこのように承知をいたしておりますが、まず確認ですが、おおむねそういうことで間違いないでしょうか、御答弁いただきたい。

山中政府参考人 先生御指摘のとおりだと思います。

鈴木(克)委員 そこで、今申し上げた目的を達成するために、都道府県対抗、そして全国持ち回り方式という形が導入されたと理解しております。それで、日本体育協会、文科省、そして開催都道府県の三者によって主催をされる。このことについても間違いありませんか。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、国民体育大会、広く国民の間にスポーツを普及し、国民の体力向上を図る、あわせて地方スポーツの振興、地方文化の発展に寄与する、こういうことで昭和二十一年の第一回以来開催されているところでございますけれども、現在は、主催は、日本体育協会、国、それから開催地の都道府県ということで開催されているというところでございます。

鈴木(克)委員 国民体育大会と言わずに、これからは国体というふうに短くさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 そこで、日本体育協会では、この国体委員会において、国民体育大会の改革ということで御検討に入られたやに伺っております。国体改革の二〇〇三プロジェクトにおいて参加人数の削減等々について改革を行われ、現行の国体改革プロジェクトにおいては、実施競技や規模について検討されておる。二〇一三年度の大会から、毎年実施する競技種目と隔年実施する競技種目の振り分け基準を策定されていると伺っておるわけであります。

 そこで、二〇一三年の東京国体からの国民体育大会参加競技種目の現状について、どのようになっているのかお示しをいただきたいと思います。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、今、国体では、正式競技が四十競技、それからあと、開催県と競技団体が協議いたしまして決めます公開競技、これを実施しているところでございます。

 一方、国体につきましては、地方の厳しい財政状況というふうなことも踏まえまして、知事会等からも、簡素化、効率化を図るように、こういう強い要請もございます。

 こんなことも踏まえまして、日本体育協会の中で、一方で大会の充実、活性化というものを図りつつ、大会の簡素化、効率化をしなきゃならない、この二つの観点から、競技種目の見直しも含めました国体改革というものを検討してきたところでございます。

 昨年の日本体育協会の理事会におきまして、二〇一三年の東京国体から実施する競技ということで、正式競技のうち毎年実施する競技、これを、水泳や柔道などの三十七競技、それから、正式競技ではありますが隔年で実施する競技、これを、軟式野球、なぎなた、銃剣道、トライアスロン、この四つのうちから三競技、それから、公開競技として新たにゲートボールなどの四競技、これを実施するというふうに決定したところと承知しております。

鈴木(克)委員 そこで、少し具体的にお話を伺ってまいりたいわけでありますが、いろいろな経緯の中で、特に、人数の問題、経費の問題等々で今お示しをいただいたような状況になっておるということについてはわかりました。

 ただ、新聞報道によりますと、今回の改革で、評価方式というんですか、いろいろな基準をお示しになっておるんです。その中で、オリンピックの種目は三百点加点をするんだ、そして、我が国古来の伝統競技については百点を加点するんだ、そして、国際的に普及をしている競技については百点の加点をするんだ、こういうふうにあるやに伺っておるわけでありますが、まず、なぜそのような形になったのか、経緯をお示しをいただきたいと思います。

山中政府参考人 委員御指摘のところは、正式競技を選定していくという際に、評価していく配点基準というものを決めているようですけれども、その中では、オリンピック競技は三百点とか、伝統的競技、国際的な競技がそれぞれ百点といったような配点になっている、そこのところだと思います。

 これについては若干経緯があるんですが、まず日本体育協会におきましては、平成十年及び平成十四年、これは、国体開催予定の七人の知事さんあるいは知事会からの国体の簡素効率化に対する要望、緊急決議、こういうものが行われました。これを踏まえまして国体改革について検討を行ってきたと。その中で、競技種目についても、どういう形でやっていくのかということを検討したところでございます。

 具体的には、体育協会の中の国体委員会というところでここを議論することになっていますので、その中にまたさらに、国体の今後のあり方プロジェクトですとか競技種目、大会の規模検討プロジェクト、先生御指摘のそういうところで検討が進められたところでございます。

 まず、平成十五年に「新しい国民体育大会を求めて 国体改革二〇〇三」という報告が出されまして、この中で、国民体育大会、国体の基本的方向として、国内外のスポーツ界の状況や将来というものを見据えながら、国体をより競技性の高い、我が国最高の総合的なスポーツ大会としよう、こういう国体改革の基本的な方向が示されまして、このような基本的な考え方に基づいて、平成十九年には、正式競技というものを、毎年実施する競技と隔年で実施する競技、この二つにしようということで、さらに正式協議については、国内において広く普及して、競技性が高くて、オリンピックなどの国際大会で実施されている競技または我が国の伝統的な競技とするというふうな考え方、それで、競技の種目は今と同じ四十だというふうな、「国体の今後のあり方プロジェクト提言骨子」というのがまとめられたところでございます。

 これを受けて、こういうものも踏まえまして、平成二十年、昨年の八月に、国体実施競技と大会規模の検討プロジェクトというところで、国民体育大会における実施競技についての報告が行われたと。この中で具体的に正式競技の選定基準それから評価方法というものが示されまして、正式競技については、先ほど御指摘ありましたような、オリンピック競技、我が国古来の伝統的競技、国際的に普及し、競技性が高く、国際競技力向上を担う競技、これのいずれかに該当するということを基礎的な条件としつつ、競技の普及状況、あるいはその競技団体の組織体制、環境の整備状況、こういうものも加味しつつ評価するということで、総合点としては千八百点で評価していたということでございます。

 具体的にどうしてそういう配点になったというところにつきましては、ここは、各強化項目の重要度を勘案して配点したというふうにされているところでございまして、長年にわたる検討、あるいは競技団体への調査、都道府県の体育協会へ意向を聞いたりという調査も行っております。

 そういうものも踏まえながら、また一方で、簡素効率化して開催県の負担を減らすという要請がありますけれども、一方で、国体を競技性の高い、我が国最高のスポーツの総合大会としたいという基本的方向、こういう二つの要請も勘案した上でこんなような配点になったのではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 オリンピックについては、別にJOCという組織がありますよね。だから、そこでもちろん徹底的に議論をいただくのはいいんですが、今私たちは国体のことを議論するわけですよ。そして、国体というのは、先ほど私申し上げましたその目的があるわけです。そうすると、明らかにこれは、国民体育大会というその趣旨、目的からいっても、オリンピック参加種目に三百点で、そのほかに百点、こういう点数のつけ方というのは私は何かおかしいんじゃないかと。とりわけ、日本体育協会というのは、要するに国民スポーツの振興を図っていくという組織なわけです。

 くどいようですけれども、オリンピック競技をと言うのならJOCで徹底的に議論をされればいいわけでありまして、私はそこのところに何かこう違和感を感ずるんですが、大臣、いかがですか。

塩谷国務大臣 この国体の競技については、かなり国体改革の中で議論が長年続いていると私は承知しております。

 その中で、今お話しあった一つの基準の中で、オリンピックで実施している競技かどうかということが一つのポイントとなっているということでございますが、これは、国体の一番の目的である国の中でのスポーツの振興ということを考えると、オリンピックでやっているかどうかというのは余り関係ないだろうという御意見だと思いますが、そういうことも考え、また、いろいろないわゆる競技の普及度合いとか国民的浸透とかということを考えると、オリンピックで競技しているというのは一つのやはり基準であることも考えられるわけでして、ここはいろいろな御意見があると思いますが、ぜひこういうことについては、できるだけ国民の理解を得られるような判断が必要だろうと思っております。

 ただ、開催県の決議等で、できるだけ簡素化とか財政的にも効率化ということがありますので、そこら辺の中で今検討している。

 こういう中で、そういった基準ではないけれども、地域に浸透しているとか国民的なスポーツであるという点で幾つかの競技が公開競技として今度やるわけでして、いろいろなこの議論の中でまた今後のことも検討していかなければならないと考えております。

鈴木(克)委員 実は、きょう大臣の御答弁には約三十万人のゲートボール協会の会員がまさに今注目を集めておりまして、競技人口というのは百五十万から二百万人ぐらい実はいます。ですから、これは大臣に今まさにゲートボーラーの注目が一身に集まっている、このように御理解をいただいて、以下の御質問にまたお答えをいただきたいんです。大臣も、常日ごろゲートボールには大変御理解をいただいておって、競技のときに開会式なんかにも本当に足を運んでいただいて、非常に熱心な国会議員だということでゲートボーラーの中ではとみに評価が高いわけでございます。

 そこで、ゲートボールについて少しお話をさせていただきますけれども、これは日本で誕生したゲームであります。そして、今はまさに三世代とかいろいろいまして、ジュニアから高齢者まで、高齢ということになれば恐らく九十歳を超えるような方まで、本当に幅広くやられております。しかも、世界三十三の国に普及をしておりまして、国際大会も実は開催をされておるわけであります。日本でもこれは何回も国際大会やられておるわけでありますが、そしてなおかつ、四十七都道府県すべてに組織があります。そして、都道府県の体育協会にも加盟をしております。そして、先ほども申し上げたように登録会員が三十万人、かつてはもっとあったわけでありますが、今現在はそれぐらいは下回らないということであります。

 まさにこの国民体育大会の目的に、私はほかの競技がどうのこうのとか言うつもりは全くありませんけれども、少なくともゲートボールという競技は非常に目的に沿っている、私はこのように思っておりまして、なぜそのゲートボール競技が正式競技種目として参加をできないのか。大臣、ぜひひとつ、三十万人と言わず、百五十万、二百万人のゲートボーラーが注目をしておるという視点でひとつ御答弁をいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 ゲートボールにつきましては、今、鈴木委員お話しあったように、私も地域で熱心に大会等に出席をさせていただいて、地域スポーツとしては大変普及をして、多くの方々が参加していると認識しております。

 これについては、当然、日本ゲートボール連合あるいは議員連盟も大変熱心に活動いただいて、私もそのメンバーの一人でございますが、署名等もたくさんいただいて、これについて、できるだけ私としてもしっかりとその実現に向けて努力をしてまいりたいと思っております。

 昨年の十一月の決定が最終的にはまだ正式じゃないと聞いておりまして、あと半年をめどにこの再検討をするということを聞いておりますので、そろそろまたその半年の期限が近づいてくるということで、日本体育協会の会長さんも大変な方でございますので、しっかりいろいろとその会長の御意向も伺って、最終的にはいずれにしてもあの体協で決めるということでございますので、できれば実現していきたいと私個人は考えておりますので、努力をしてまいりたいと思います。

鈴木(克)委員 今の大臣の答弁を聞いて全国のゲートボーラーは大変喜ぶのではないのかなというふうに思っておりますが、本当に難しい問題だと思います。それぞれ関係する競技がたくさんありますし、一つ入れれば一つ落とすとかいろいろな問題が出てくるわけでありますが、私は、ゲートボールというもののいわゆる必要性、重要性、そして今までの経過、今申し上げたように、国際的にも認知をされておるし、全国都道府県にその組織もできておるしということを踏まえて、本当にしっかりとひとつ御検討いただきたいというふうに思っております。

 それで、時間もだんだん迫ってまいりますけれども、今回の改革で、従来の競技種目と変わらない、新たに参加競技になったのはトライアスロンのみのように伺っておりますが、例えば、仮にゲートボールを除いても、こういうものの見直しとかそういうようなものは今どのようにお考えになっておるのか、その辺をお示しをいただきたいと思います。

山中政府参考人 現在の改革では、二十五年の東京大会以降、まずは正式競技を、毎年実施する競技と、それから隔年で実施する競技、そういう形で正式競技をやっていることになっておりますけれども、公開競技としてやってきた競技というものもまた何年か続けていくということで、その実施状況とか体制とかいろいろな変化もあるということもございますので、そういうことも踏まえて、正式競技については四年ごとに見直すということになっております。

鈴木(克)委員 最後、再度申し上げて私の質問を終わりたいと思うんですが、いずれにしましても、いろいろな競技が正式に国体競技になる、ならないというのは、やはり競技をしておる人たちにとっては本当に大きいんですよ。だから、確かに財政面それから参加人数、いろいろあると思います、会場の問題から何から。だけれども、であるならば、やはり知恵を使って、本当にどうしたら多くの国民、くどいようですけれども、一番最初に私がなぜあえて国体の目的を確認をしたかというのは、本当に原点に立ち返っていただけば、予算がないからとか、人数を制限しなきゃならないとか、そして、オリンピック競技だから三百点ほかの競技よりも高くするんだというようなことは、やはりこれは国民的合意が得られないと正直私は思っています。

 もっと文科省も、冒頭申し上げたように主催三団体の中の一団体ですから、しっかりと指導力を持って、この際やはり、多くの国民の、そして国威発揚になるような、青少年に夢を与えるようなそういう国体にしていただきたい。このことを強くお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で鈴木克昌君の質疑は終了しました。

     ――――◇―――――

岩屋委員長 次に、内閣提出、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。塩谷文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩谷国務大臣 このたび、政府から提出いたしました原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 原子力の開発利用を進めるに当たっては、安全の確保を図ることが大前提でありますが、さらに万が一の際における損害賠償制度を充実し、被害者の保護と原子力事業の健全な発達に資することが必要であります。

 このような観点から、原子力損害の賠償責任を無過失責任とし、原子力事業者への賠償責任の集中、損害賠償措置の義務づけ等から成る原子力損害賠償制度が、我が国における原子力の本格的な導入に合わせて昭和三十六年に整備され、その後の諸情勢の変化に対応して所要の法改正が行われてまいりました。

 原子力損害賠償補償契約の締結及び原子力事業者が賠償すべき額が賠償措置額を超える場合における政府の援助に係る規定が適用される期限が平成二十一年十二月三十一日までとなっておりますが、今後とも新たな原子力事業が予定されており、その期限の延長を確実に行うことが必要であります。

 また、前回改正時以降、平成十一年九月三十日に我が国唯一の原子力損害の賠償事例となった、株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工施設における臨界事故が発生いたしましたが、その際の経験を教訓とするとともに、近年の原子力損害賠償に関する国際動向等を踏まえ、原子力損害賠償制度の見直しを適切に行うことが必要であります。

 この法律案は、このような観点から、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律について所要の改正を行おうとするものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、原子力事業者が原子力損害の賠償に備えあらかじめ講ずべき損害賠償措置に係る賠償措置額について、現行の六百億円から千二百億円に引き上げることとしております。

 第二に、原子力損害賠償補償契約の締結及び原子力事業者が賠償すべき額が賠償措置額を超える場合における政府の援助に係る期限を延長し、平成三十一年十二月三十一日までに開始された原子炉の運転等に係る原子力損害について、これらを行うことができることとしております。

 第三に、原子力損害賠償紛争審査会は、原子力損害の賠償に関する紛争について、原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定めることができることとするものであります。

 第四に、政府は、原子力損害賠償補償契約に基づく業務の一部を損害保険会社等に委託することができることとするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

岩屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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