衆議院

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第5号 平成21年4月1日(水曜日)

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平成二十一年四月一日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 岩屋  毅君

   理事 木村  勉君 理事 佐藤  錬君

   理事 馳   浩君 理事 原田 令嗣君

   理事 茂木 敏充君 理事 小宮山洋子君

   理事 牧  義夫君 理事 池坊 保子君

      阿部 俊子君    井澤 京子君

      井脇ノブ子君    飯島 夕雁君

      浮島 敏男君    小川 友一君

      近江屋信広君    岡下 信子君

      加藤 勝信君    鍵田忠兵衛君

      亀岡 偉民君    谷垣 禎一君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      萩生田光一君    平口  洋君

      福田 峰之君    藤田 幹雄君

      山本ともひろ君    田島 一成君

      高井 美穂君    藤村  修君

      松本 大輔君    村井 宗明君

      山口  壯君    笠  浩史君

      和田 隆志君    富田 茂之君

      西  博義君    石井 郁子君

      日森 文尋君

    …………………………………

   文部科学大臣       塩谷  立君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   文部科学大臣政務官    萩生田光一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 泰藏君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  関  有一君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      西山 英彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院次長)    深野 弘行君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 小林 正明君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     近江屋信広君

  土肥 隆一君     村井 宗明君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     加藤 紘一君

  村井 宗明君     土肥 隆一君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 私学助成の拡充・父母負担の軽減で公平な教育を実現することに関する請願(石崎岳君紹介)(第一一三九号)

 教育格差をなくし、子供に行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(岩永峯一君紹介)(第一一五七号)

 教育格差をなくし行き届いた教育に関する請願(前原誠司君紹介)(第一一五八号)

 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額に関する請願(前原誠司君紹介)(第一一五九号)

 教育格差をなくし、すべての子供に行き届いた教育に関する請願(山内康一君紹介)(第一一六〇号)

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の拡充に関する請願(古川元久君紹介)(第一二一四号)

 学校事務職員等の定数改善と給与費等国庫負担の拡充に関する請願(古川元久君紹介)(第一二一五号)

 教育予算を大幅に増額し、行き届いた教育を求めることに関する請願(大島敦君紹介)(第一三〇二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)


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     ――――◇―――――

岩屋委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川泰藏君、総務省行政評価局長関有一君、文部科学省科学技術・学術政策局長泉紳一郎君、研究開発局長藤木完治君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長西山英彦君、原子力安全・保安院次長深野弘行君及び環境省大臣官房審議官小林正明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 きょうは原賠法の審議ということでございますけれども、私ども民主党、八十分時間をいただいておりますので、後半、我が党の松本大輔君にきちっと緻密に質問をしていただくこととして、私は、原子力政策一般について、まずは政府のいろいろなお考えをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。

 一概に原子力政策と一言で言っても、もちろん、原子力の研究開発、この辺のところが最も文科の果たすべき役割の部分なんでしょうが、今回のこの原賠法というのは、原子力施設におけるあってはならない事故に備えてのお話であろうかと思います。

 また、いろいろな視点から原子力政策というものをとらえれば、もちろんエネルギー政策の視点からもとらえなければいけない話ですし、また、地球温暖化対策等環境政策の一つの視点として原子力政策というものをどうとらえるか、こういうところも国の政策としてとらえなければいけないところですから、一言で原子力政策と言っても、かなり幅の広いものになろうかと思います。

 私も、昨日、この件についてきょうの質問の通告をいたしましたところ、内閣府やら、あるいは文科、経産、非常にうちの部屋に入り切れないぐらいの皆さんにおいでいただいたわけでございますけれども、それほど幅広く国が取り組まなければいけない政策であるということも、逆にこれははっきり言えるわけであります。

 安全対策については、これは、本当に幾重にも対策に対策を重ねてしかるべきだと私は思いますけれども、一方では、行政の簡素化という意味からすれば、いろいろなところの無駄は整理はしていかなければいけないなということもあわせて考えた次第でございます。とにかく、安全対策に関しては屋上屋を重ねるということにはならないわけで、幾重にも幾重にも考え得るすべてのことを我々は考えていかなければいけないということには、私は異論は全くございません。

 そんな中で、私なりに頭の中をちょっと整理しなきゃいけないと思うものですから、原子力政策一般についての質問をさせていただきたいと思います。

 三月二十四日に閣議報告をされた原子力白書、原子力委員会が作成したものだと思いますけれども、これをざっと私も目を通させていただいて、そこに記述をされている、これが今の政府の基本的な考え方だと思うんですけれども、一つ、環境の観点からまずちょっと質問させていただきたいと思います。

 洞爺湖サミットなどを通じ、原子力エネルギーは温暖化対策に有効という「国際的な共通認識が広まった」としつつも、国内では、原発の稼働率が低下、あるいはまた、使用済み核燃料再処理工場の本格稼働もおくれるなど、いまだ十分に期待される状況にないという原子力委員会の発表がございます。

 いまだ十分に期待される状況というのは一体どういう状況なのかということを、これから質問の中で少しずつ教えていただければと思うわけでありますけれども、まずは、地球温暖化対策における原子力エネルギーの果たすべき位置づけというものについての政府の所見を伺いたいと思います。

小林政府参考人 地球温暖化防止のための京都議定書目標達成計画がございます。ここにおきます原子力発電所の位置づけでございますが、「発電過程で二酸化炭素を排出しない原子力発電については、地球温暖化対策の推進の上で極めて重要な位置を占めるものである。」これを受けまして、「今後も安全確保を大前提に、原子力発電の一層の活用を図るとともに、基幹電源として官民相協力して着実に推進する。」ということとされているところでございます。

塩谷国務大臣 原子力については、発電過程において二酸化炭素を排出することなく、地球温暖化対策に大変有効である点、そして、エネルギー需要の逼迫化の点から、世界的にもその重要性が再確認されているところでございまして、我が省としましても、原子力政策大綱やエネルギー基本計画にのっとって、エネルギー効率を格段に高め、単位発電量当たりの放射性廃棄物の発生を抑える高速増殖炉サイクル技術、あるいは、豊富な資源、環境適合性、安全性の観点で多くの利益を有するITERの計画等、核融合技術等の重要な研究開発を、安全確保を大前提に、立地地域を初めとする国民の理解と協力をしつつ、ぶれることなく推進していくことが重要だと考えております。

牧委員 ありがとうございます。

 きのうの質問通告のときには、この問いについては、環境省からお答えいただける、必ずしも大臣からお答えいただかなくてもいいということでしたけれども、あえてお話しいただいて、私はありがたいなと思っております。

 この件については、本来、環境大臣ですとか、今の内閣のこの件にかかわるそれぞれの皆さんから所見を伺うのが最もふさわしいと私は実は思っておりました。それぐらいやはり政策としての整合性が問われる分野ではないかな、そう思ったものですから、あえて大臣からお話しいただいたことは、大変評価をさせていただきたいと思います。

 さて、それだけエネルギー政策の上でもあるいは環境対策の上でも重要な原子力政策であるわけですけれども、いかんともしがたい事態になる場合もこれは当然あるわけで、新潟中越沖地震に際しては、柏崎刈羽原発全七基が停止を余儀なくされるという状況が現在も続いているということでございましょうけれども、その後の状況について、また、その後のバックチェックの状況等についてざっとお知らせいただければと思います。

深野政府参考人 お答えいたします。

 柏崎刈羽原子力発電所でございますけれども、平成十九年七月の中越沖地震以来、全号機停止をしております。これにつきましては、設計の当初に想定をしておりました地震動を大変上回る地震に見舞われたということがございまして、設備に問題が生じていないかについて詳細な点検を行っているところでございます。

 また、想定すべき地震の規模についても、平成十八年に耐震設計審査指針という耐震性の評価の指針が改訂されておりまして、これに基づきまして、また、中越沖地震の状況も踏まえまして詳細な調査を行って、より大きな地震動を想定いたしまして、それでも施設の安全性を保つことができるかどうかといったことにつきまして、原子炉ごとに評価を行っているところでございます。

 このうち、現在七号機につきまして作業が最も進んでおりまして、ことしの二月十三日に、経済産業省として、設備の健全性、それから、より厳しい地震動を想定した上での耐震安全性といったことについて問題がない、したがいまして、その起動について安全上の問題はないという判断をいたしております。この結果につきましては、住民説明会等においても詳細な説明を行っているところでございます。

 また、電力の方からも、この私どもの判断を受けて運転の再開を地元に申し入れたところでございまして、現在、地元においてその取り扱いについて検討がなされているところ、そのように承知しております。

牧委員 もう一回教えていただきたいんです。これは質問の通告をしていなかったので申しわけないんですけれども、今お話を聞いていて、ごく一般の市民的な視点から申し上げて、新しい基準でのチェックをされているということでありますけれども、世間で俗に言う想定内とか想定外とかそういう話がありますけれども、今考え得る想定の中で、どんなことがあっても大丈夫と断言していただけるようなこれは基準なんでしょうか。そこら辺のところが今後の立地等についても非常に影響してくると思いますので、きちっとお答えをいただければと思います。

深野政府参考人 安全の確認につきましては二点ございます。

 一つは設備の健全性ということでございまして、これにつきましては、想定を超えた地震動がございましたので、大変細かいひずみ等々も含めて、設備の健全性に問題がないかという点がございます。

 これにつきましては、目視で点検をするとともに、地震でどれだけの力がかかったのかということを詳細に計算をいたしまして、それが基準値の中におさまっているかどうかということについてチェックをして、健全であるという判断をしたものでございます。そのように厳格に評価をしております。

 それからもう一つは、基準地震動でございます。これにつきましては、当初想定した地震動を大変上回る地震があったわけでございますが、なぜそうなったのかということにつきましてまず調査をいたしておりまして、これは、その地域の地下の構造、それが大変地震動を増幅する等の問題があったということを評価し、さらに、今後の地震動の想定において問題になるような断層があるかということにつきましても、従来よりも対象を広げて新しい指針に基づいて詳細な調査をしております。また、私どもも独自に海上音波探査等もかけておりまして、その上で専門家の意見も聞きまして、議論を尽くした上でこのような判断をしたものでございます。

牧委員 よくわかりました。そうやって伺えばわかるわけでございますので、今後も、きちっと国民に対してしっかりとそこら辺のところを発信していっていただきたい。そこら辺のところをお願い申し上げたいと思います。

 そうはいっても、まだ現在の段階では稼働していないという状況なわけで、全体の総発電電力量に占める原子力発電の割合というのはその分下がっていると思うんですけれども、今現在どういう状況なんでしょうか。

西山政府参考人 今の柏崎刈羽原発もすべて動いたとしますと、発電電力量の大体三割ぐらい、三〇%ぐらいが期待されているところでございますけれども、今それが二割五分とか、そのくらいにおっこちておる状況でございます。

牧委員 そうやって稼働率が落ちているわけですよね。

 ちょっと私教えていただきたいのは、これはいろいろな省庁をまたがっているのでどこに聞いていいかわからないまま聞くんですけれども、今現在、京都議定書の約束を実現するためのいろいろな分野での取り組みがある中で、原子力発電所が果たすべき役割、どれぐらいの規模のものがどれぐらいの割合で稼働しているという前提でこの約束期間までに九〇年比の温暖化効果ガスの一定の削減というものを図ろうとしているのか。そういう数字的なものがあるのであれば、教えてください。

小林政府参考人 京都議定書の目標達成計画における稼働率の問題でございますが、原子力発電の稼働率自体に関しての目標はございません。電気事業者が、全電源の平均でCO2排出原単位、具体的には〇・三四キログラムCO2・パー・キロワットアワーと、こういうことでございますが、そういう目標を設けまして、これを全体で達成をしていただく、こういう計画になっているところでございます。

牧委員 わかりました。改めてそういったことの中での数値的なきちっとした基準はないというお話でございました。

 ちょっとこれから順次質問させていただきますけれども、私が今何を言いたいのかというと、いろいろ役所にまたがってこの原子力政策そのものが推進されることは、これは結構なことですけれども、本当にきちっと整理がされているのかというところが私ちょっと疑問に思うものですから、最初に申し上げたように、安全対策というのは、屋上屋を重ねるという表現は当たらない、これは幾重にもみんなが考え得ることをすべてやってしかるべきだと思うんですけれども、例えばこの目標に向けての取り組みだとか、そういうことについて各役所が本当に整合性のある計画を打ち出しているのかどうなのかということは、やはりもう一度政治家の立場で検証する必要があると私は思いますし、また、それ以上に、ひょっとして、その責任が余りに分散してしまって最終的にはこの目的が達成されなかったときに、一体だれが責任をとるんだというような話になりかねないと私は思いますので、温暖化対策の観点からのみでありますけれども、改めて今、幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 まず一つ、これは昨年発表されたものだと思いますけれども、総合科学技術会議の発表した環境エネルギー技術革新計画、これはどういうものなんでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 環境エネルギー技術革新計画についてのお尋ねでございます。これは、昨年の年初に行われました福田前内閣総理大臣の施政方針演説の中におきまして、地球温暖化問題の根本的な解決に向けて革新的な技術開発を行う必要がある、そのために環境エネルギー技術革新計画を策定する、そういった方針が示されましたことを受けまして、その後、総合科学技術会議におきまして計画の策定作業が行われ、同年の五月十九日に同会議において決定されたものでございます。

 この計画では、世界全体の温室効果ガス排出量を二〇五〇年までに半減する、そういった厳しい目標を達成するために、エネルギー供給分野及び産業分野、民生分野、運輸分野等のいわゆるエネルギー需要分野における温暖化ガス削減に貢献する主な技術を取り上げて、その技術開発のいわゆるロードマップ及びその普及シナリオといったようなものを示したものでございます。

 より具体的には、短中期的な対策といたしまして、この中には、例えば電気自動車でございますとか、あるいは燃料電池自動車、あるいは高効率ヒートポンプといったような技術の開発普及が大事だと。あるいは中長期的な対策の中には、非常に効率のいい太陽電池、第三世代の太陽電池と言われていますが、そういったものでございますとか、あるいは水素製造技術、そういったものの開発普及というのが含まれております。

 原子力に関しましても、短中期的対策の中に、軽水炉の高度利用、また中長期的な対策の中には、次世代軽水炉、あるいは高速増殖炉サイクルの開発普及といったような原子力関連技術も含まれているところでございます。

牧委員 それはよくわかるんです。原子力白書にも書いてございますので今の御説明の部分はわかるんですけれども、その中で、今、原子力政策の部分についても若干御説明がありましたけれども、きょうは原子力政策についての質問ですのでその部分についてちょっとお聞かせいただきたいんですけれども、この計画の中で、二〇五〇年までに地球規模で温室効果ガス半減という計画に向けて、今おっしゃったような次世代軽水炉ですとかといったもの、どれぐらいの規模でどういうふうに整備していくというそういう数値的な目標があるんでしょうか、ないんでしょうか。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 この計画の中では、非常に精緻な積み上げ的なことはいたしておりません。二〇五〇年でCO2の排出を半減するという目標を達成する上で、基本的な考え方といたしまして、革新的な技術の開発に負うところがやはり六〇%ぐらいを占めているのではなかろうか、一方で、今の既存の技術、それを普及することで四〇%程度は対応できるのではなかろうかといったような整理をいたしてございます。

 それで、先ほどちょっと触れました高速増殖炉でございますとか、そういった先進的な原子力発電といったようなものは、革新的な技術、すなわち、今後の技術開発が必要な技術という方に分類されているということでございます。

牧委員 私も頭のつくりがそう緻密な方じゃないので、とりあえずいろいろ聞くだけ聞いておいて、後で議事録をゆっくり見させていただいて全体のつじつまを合わせたいと思いますので、次から次へと質問させていただきたいと思います。

 次に、低炭素社会づくり行動計画、これも白書に出てまいるんですけれども、これはどんな計画で、所管がどこなんでしょうか。

小林政府参考人 低炭素社会づくり行動計画、昨年の七月二十九日に閣議決定をされまして、政府全体の計画でございます。

 我が国が低炭素社会に移行していくための具体的な道筋を示すものということで定めたものでございまして、その中では、我が国の長期目標として、先ほど地球全体で二〇五〇年半減というお話がございましたが、我が国としては、二〇五〇年までに温室効果ガス排出量を現状から六〇から八〇%削減するという目標を掲げまして、このために、革新的な技術開発、太陽光発電などを含む先進技術の普及というようなこと、あるいは、排出量取引ですとか税制のグリーン化などの経済的な手法を初めとした、国全体を低炭素へ動かす仕組みづくり、あるいは、ビジネススタイル、ライフスタイルの変革に向けた国民一人一人の行動を促すための取り組みというような、幅広いものが盛り込まれております。

 この中で、原子力の推進につきましても、「低炭素エネルギーの中核として、地球温暖化対策を進める上で極めて重要な位置を占める。」というような位置づけがございまして、「徹底した安全の確保を絶対的な前提として、主要利用国並の設備利用率を目指すとともに、新規建設の着実な実現を目指す。」というふうにされているところでございます。

牧委員 革新的な技術だとかいろいろなお話はいいんですけれども、そういうことを言っている間に、京都議定書が締約されてからずっとここまで来て、結局何もできていないという状況に至っているんだと私思うんです。それぞれの取り組みは取り組みとしてあるんでしょうが、その中で、例えば今議題になっているこの原子力政策について、どういうきちっとした目標がそこの中に織り込まれているのか、あるいはないのか。ちょっと、もう一回教えてください。

小林政府参考人 先ほど、原子力につきましての総括的な位置づけのところを答弁させていただきましたが、この計画の中では、具体的に、再生可能エネルギーと原子力を含めましてゼロエミッション電源というような位置づけをいたしまして、これが、現在四〇%のものを五〇%以上に二〇二〇年にはしていくというような位置づけがございます。

 それを受けまして、具体的に、先ほど申しました設備利用率の向上を目指すということとあわせまして、新規建設の着実な実現、現在十三基の建設を計画中であり、これを二〇一七年までに九基の建設を計画しているというような、具体的な設置数の数字なども挙げまして計画をつくっているところでございます。

牧委員 そうすると、二〇二〇年までにゼロエミッション電源を五〇%以上の中で、ゼロエミッションというと、例えば風力だとかあるいは太陽光なんかもその範疇に入ると思うんですけれども、その五〇%以上の中での原子力の占める割合というのはどのような想定なんでしょうか。

西山政府参考人 電源構成に責任を持っております電力会社各社がこの三月末に提出いたしました平成二十一年度の供給計画に基づきますと、この計画は一番最後の年度が二〇一八年度でございますけれども、二〇一八年度における電源構成は、原子力が約四〇%、新エネルギーなどが約一%、水力を約七%というふうに想定しておりまして、合計で、二〇一八年度ですけれども、ゼロエミッション電源が約四八%強というふうになっております。

 したがって、二〇二〇年五〇%目標の達成のためには、それぞれの電源の拡大を総合的に図っていく必要があると考えております。

牧委員 そうすると、二〇二〇年までに原子力で四〇%ですね。今の状況でそれは可能ですか。

西山政府参考人 いろいろな、地元の御理解とか得る必要がありますけれども、私どもは可能と考えております。

牧委員 しっかりと可能だとおっしゃっていただいて、力強い思いをいたしました。しっかりやっていただきたいと重ねてお願いを申し上げたいと思います。

 次に、問題は、この間もちょっと新聞報道等でも見たんですけれども、二〇二〇年までに国内でどれだけ温室効果ガスを減らすか、複数の中期目標案が示されたとあるんです。これもやはり環境省ですかね。今、これはどういうその進捗というか、今後の推移も含めてまだ見当がついていないということのようにもとられかねない報道だったんですけれども、これはどうなんでしょうか。

小林政府参考人 温室効果ガスの排出量を中期的にどうしていくのか、中期目標の設定につきましては、地球温暖化防止上大変大きな課題でございます。そういう意味で、内閣が全体を取りまとめ検討を進めているところでございます。

 基本的な考え方としましては、科学の要請にこたえることが重要だということで、科学的にどのぐらいのレベルが求められるかというようなことを中心にいたしまして、すべての主要経済国が参加する実効的な枠組みづくりに貢献できるような目標にしていこうということでございます。

 そういう意味で、我が国を含む先進国が野心的な中期目標を掲げまして、中国、インドなど途上国の積極的な行動も引き出そう、こういうことでございます。

 一方で、この目標は経済面でも実行可能なものである必要がございまして、そういう意味で、専門家の参加も得ましてさまざまな検討をしております。

 一方で、こういった野心的な目標を設定いたしますと、技術の開発を促し、そこで生まれた技術が経済活性化につながるというような面にも留意する必要があるというような考え方で進めておるところでございます。

 場所としましては、有識者を含めたオープンな場で、科学的、総合的な見地から、幾つかの選択肢を提示いたしまして現在検討を進めているということでございます。

 時期としましては、さきのダボスの会議におきまして麻生総理から、遅くとも六月までには我が国の中期目標を発表するというような御発言がございますので、それに向けて全力で取り組んでいるところでございます。

牧委員 要するに、九〇年比で二五%減から四%増まで、かなり幅の広い中での今後のいろいろな選択肢がまだあるという話ですよね。

 そういう中で、経産省の考え方もこれ一つあり、あるいはまた環境省の考え方もあり、そこら辺の中での政策の整合性というものをよほどこれから心して考えていかなければ、この話というのは、先の二〇五〇年までのお話がありますけれども、では、差し当たって二〇二〇年あるいは二五年までに何をするのかということさえ決まらない中で本当にこんなことができるのかなと私は疑念を呈さざるを得ないわけでございまして、そこら辺のところをやはり政治主導で、環境政策とエネルギー政策そしてまた経済政策との整合性やら、縦割り行政の間の整合性やら、あるいはまた理想と現実との整合性やら、いろいろなことをこれからしっかり勘案していく必要が私はあると思っております。

 そして何より大事なのは、この例えば原子力で言えば、何年までにどれだけの規模のものを、これだけの技術革新とこれだけの立地の確保においてきちっと整備しなきゃいけないという、そういうことをいかに現実のものにしていくかということが私はやはり政治の責任において求められていることだと思うんです。

 そういう観点から、具体的にちょっとお聞かせをいただきたい幾つかのことがございます。

 まず一つは再処理工場の進捗状況について伺いたいと思うんですけれども、六ケ所村の核燃再処理工場について、そしてもう一つは「もんじゅ」再開の見込みについて、それぞれお聞かせをいただきたいと思います。

西山政府参考人 私からは、六ケ所再処理工場についてお答え申し上げます。

 六ケ所再処理工場と申しますのは、我が国の核燃料サイクルの中核的な役割を果たす施設でございます。平成十八年三月から実際の使用済み燃料を用いました試験運転が、事業者であります日本原燃株式会社によって行われております。現在、試験運転の最終段階でありますガラス固化体の製造におきまして、いろいろな課題の解決のため時間を要しております。しかし、日本原燃が、関係機関の協力を得まして、本年八月の竣工に向けて最大限の努力をしているところでございます。

 経済産業省といたしましても、安全の確保を大前提として、この稼働に向けた取り組みを進めてまいりたいと思っております。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 私の方からは、「もんじゅ」についてお答え申し上げたいと思います。

 「もんじゅ」は、核燃料サイクル確立のための中核となる高速増殖炉の原型炉でございます。残念ながら、平成七年のナトリウム漏えい事故以降停止中でございますけれども、平成十六年に改造工事の許可を得ました後、既に平成十九年五月には、安全性向上のための改造工事を完了しております。そして、同年八月から全体の健全性についての確認試験を行っていたところでございますけれども、昨年九月に至りまして、屋外排気ダクト、安全上重要な機器でございますけれども、に腐食孔が発生いたしまして、その補修が必要になったために、この確認試験が一時中断してございます。

 現在、日本原子力研究開発機構におきましては、この確認試験の再開に必要な屋外排気ダクトの補修工事、それから、その他の設備機器で同様の問題が生じないことを確認するための点検、さらに、新潟県中越沖地震の知見を踏まえました耐震安全性に関する規制当局の確認等を進めているところでございまして、それらの進捗状況を踏まえまして、運転再開時期の検討を鋭意行っているところと承知しております。

 この「もんじゅ」は、国際的にも運転再開が大変期待されている施設でございます。できるだけ早期にこの運転再開時期を確定できるように取り組んでいるというふうに承知しております。

 文部科学省におきましても、この安全確保を大前提に、この「もんじゅ」が地元の御理解をいただきながら運転再開できるよう、そしてそのために日本原子力機構が万全を期すよう、指導してまいりたいと考えているところでございます。

牧委員 しっかりやってもらいたいと思います。

 それから、時間が余りございませんので、途中ちょっとはしょって質問させていただきますけれども、原子力政策でもう一つ忘れてならないのは、やはり人材の育成だと思います。

 いつだったか私、テレビで報道番組を見ていて、あのアメリカで中長期的な原発のリプレースの需要にこたえる人材がいなくて、今は日本の人材がアメリカへ行ってそういうことに当たっているというような番組を見た覚えがございます。

 まさに、長期にわたって人材を育成するという観点というのはやはり非常に重要だと思っておりますけれども、そこら辺のところをどう取り組まれておられるのか、ちょっと簡単にお聞かせください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の原子力は、地球温暖化対策に有効である、あるいは、エネルギー需要の逼迫から世界的にその重要性が再認識されているというところで、御指摘のとおり、優秀な人材の需要というのはますます高まっているという認識を持ってございます。

 一方、我が国の原子力関係学科、これにつきましては、過去のさまざまな原子力発電所の事故あるいは大学教育の学際化等々ございまして、多くの原子力関係学科が他学科との統合等によりその名称がこの二十年ほど消えていっていたという状況がございました。しかしながら、近年におきましては、この原子力が地球温暖化等々に有効だという認識もまた深まってまいっておりまして、二〇〇五年には東京大学、二〇〇八年には東京都市大学、ことし四月には福井大学、そういった大学におきまして原子力安全工学科の設置等の動きが、いわゆる人材養成に向けての上向きの傾向がどんどん出てきております。

 文部科学省といたしましても、この傾向をさらに加速させたいということで、経済産業省とも連携いたしまして、原子力人材育成プログラム、平成十九年度から始めておりまして、大学や高等専門学校における原子力分野の特色ある教育、その活動に対しまして支援を行うようにしたところでございます。

 また、産業界との関係におきましても、産学双方で対話と取り組みを進める産学官人材育成パートナーシップということを始めまして、産業界、大学、関係省庁が集まって、これからの望ましい人材育成のあり方について検討を行っているところでございます。

 文部科学省は、大学、高専、関係の研究機関あるいは経済産業省さん等の関係省庁とも一体となって、これらをさらに強力に取り組んで、必要な原子力分野の人材育成がしっかりと確保できていきますよう取り組みたいと思っているところでございます。

牧委員 実際に日本の人材が世界のトップランナーとして原子力政策の発展のために貢献できる、そんなような状況をぜひ今後もつくっていっていただければと希望をいたします。

 そんな中で、そうはいいながら、やはり核拡散ですとか危険の拡散につながってはいけないわけで、そういう中での国際協力のあり方というものもやはりいろいろ難しいものがあろうかと思います。

 質問の時間もございませんので質問をしないですけれども、例えば、京都メカニズムのCDMの中にこの原子力の技術の供与みたいなものが本来取り入れられても私はいいのかなとも思いますし、核拡散にならない範囲内でそこら辺のところをどう整合性をとりながら進めていくかということも、今後検討を進めていただければとお願いを申し上げて、時間がございません、最後に、原子力研究開発のより一層の充実に向けての大臣の決意を一言お聞かせをいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 原子力につきましては、ただいまそれぞれ御意見等あったように、我が省としましても、エネルギー対策あるいは環境対策を踏まえて、しっかりと今後も推進していくことをお約束したいと思います。

牧委員 終わります。ありがとうございました。

岩屋委員長 以上で牧君の質疑は終了しました。

 次に、松本大輔君。

松本(大)委員 先ほど牧委員から、緻密にしっかりとハードルを高く設定していただきました民主党の松本大輔でございます。そうか、きょうはエープリルフールだったかと思ったわけでありますけれども、この間、現場の担当者の方々にしっかりと教えていただきましたので、一つずつ確認をさせていただきたいなというふうに思います。

 原賠法の改正ですけれども、今回、提案理由説明のところで、「平成十一年九月三十日に我が国唯一の原子力損害の賠償事例となった、株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工施設における臨界事故が発生いたしましたが、その際の経験を教訓とする」とあります。

 まず、このジェー・シー・オーの臨界事故の賠償額と、それからその当時の賠償措置額を確認させてください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、ジェー・シー・オー臨界事故の際に事業者が掛けていた賠償措置額等についての御質問でございます。

 当時、株式会社ジェー・シー・オーは、ウラン燃料の加工事業、五%を超える濃縮度のウラン燃料を取り扱っておりました。当時は、それに掛けられている賠償措置額は十億円ということでございました。

 それに対しまして、実際に多くの損害賠償請求が起こり、その結果として、現在までに支払われた賠償額は、約七千件の賠償の対象に対しまして、約百五十億円ということになってございます。

松本(大)委員 措置額が十億円で、実際の賠償額が百五十億ということであります。

 原賠法の十六条には、賠償措置額を超えた場合の国の措置が定められているわけでありまして、「必要な援助を行なう」とあるんですけれども、この十六条、国の援助を発動されたんでしょうか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御説明申しましたとおり、賠償金の総額が約百五十億円に対しまして当時の賠償措置額は十億円でございますので、その保険金を充ててもなお不足が生じましたけれども、当時、親会社であります住友金属鉱山株式会社による資金的支援により賠償が履行されたために、原子力損害賠償法の第十六条に基づく国の支援は行われておりません。

 ただ、一点補足させていただきますと、ジェー・シー・オー臨界事故後におきまして、賠償措置額の改定に係る政令改正が行われてございまして、このジェー・シー・オー臨界事故の教訓を踏まえまして、ウランについても、その濃縮度によってはプルトニウム等と同等な賠償措置額を講じることが適当と判断いたしまして、ジェー・シー・オーのようなウランを取り扱う施設につきましては、その後、百二十億円に賠償措置額の区分を改めたところでございます。

松本(大)委員 聞いていないことには答えなくていいんですけれども、そうおっしゃるからちょっと打ち返しておきますが、当時十億の措置額が、もし五%以上の濃縮ウランがプルトニウムと同じだったとしても、当時は六十億なんですよ、最初から五%以上の濃縮ウランをプルトニウムと同額に少額措置設定したとしてもですね。つまり、それでもやはり百五十億の損害はカバーできなかったわけで、それは全く言いわけにはならないし、今私が聞いていることとは、十六条を発動したかどうかとは無関係であるというふうに思います。

 十六条では、措置額を超えた場合には国の援助を決めているわけですけれども、実際には超えたけれども発動されなかったわけですよね。住友金属鉱山という親会社がたまたまかぶった、引き受けたということで、その場はよかったということでありますけれども、これはあくまで結果論ではないかというふうに思います。親会社には、例えば法律上その責任があったかといえば、義務があったかといえば、それはどうかなという気がいたしますし、何よりも当時の科学技術庁には監督責任があったはずですよね。しかも、原則三百億に対して十億円の少額措置を設定していた、その措置額が果たして適切だったのかどうかという問題もあります。

 さらには、そもそも措置額というのは民間の保険会社の引き受け能力に左右されるわけでありますから、当然そういう制約を受けている。その中で、このジェー・シー・オーの場合には住友金属鉱山が負ったというわけでありますけれども、果たして、今後のことも考えて、何ら手当てがされないままでいいのかということを私はお尋ねしているわけであります。

 実際、原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会の一次報告書案ですけれども、それについてのパブコメが寄せられております。もう重々御存じだと思いますけれども、「JCOの事故の際には実際は親会社が支援するということで国の援助はなされなかったということですが、これはあくまでもイレギュラーなので、今後のことを考えるといろいろな措置として、例えば一たん国が賠償額を立てかえておくというような形のものも含めて検討すべきじゃないかというコメント」というのを、実際これは議事録でおっしゃっているわけですね。

 それから、「やっぱり何かあったときの補償を営利目的の民間企業だけに依存するということでは心もとないんじゃないか。特に電力会社はライフラインを維持しており、経営難に陥ると国民に影響が出る重大な問題になるということですから、損害発生時には国も前面に立って向き合う姿勢があることを報告書の中でもっときちんと検討したらいいんじゃないか」、こういう指摘もあります。

 「JCOの場合には国の援助が議論されることなく親会社が支援したことを踏まえると、国は事業継続についても原子力発電を維持するというのが国策であるならば国もそういう事業継続については責任を持つということから、何かあったときに事業者の経営を脅かすことがないように国が援助を行うというようなことをきちんと指針の中で書いたらいいんじゃないか」、こういった指摘があるわけですね。

 今回はこの事故の教訓を踏まえた改正なわけでありますから、ここについて何ら手当てがされていないという本改正案はどうなのかということであります。

 これは実際、今に始まった問題ではなくて、昭和三十六年にこの法律が制定されたときに、当時の補償専門部会長、我妻栄さん、岸信介さんと同級生だった方で、退陣勧告か何かを朝日新聞に寄せられた方だったと思いますが、この民法学者が、実際自分の思ったのとは違う子供ができたというような趣旨の発言をされているわけです。つまり、援助というのは法律上の義務じゃないんだ、それはどうなんだという疑義を呈していらっしゃるわけですね。これは昭和三十六年四月二十六日の議事録でありますけれども。

 あるいは、それから九年後、昭和四十五年十一月三十日、もう今から三十八年以上前ですけれども、原子力損害賠償制度検討専門部会、このときも部会長としてこの我妻さんが入っていらっしゃるわけですが、この原子力損害賠償制度検討専門部会の答申の中でも、同じように、「損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合には、一定の額までに限り、国が被害者のために補償するいわゆる国家補償制度が採用されている。」ということで、条約や欧米諸国の原子力損害賠償制度を引いています。

 「措置額をこえる原子力損害については、適正な補償料を徴収することを前提とする政府の損害賠償補償契約の拡大により措置することが望ましい方向であると考えられる。」ということも言っています。「国の援助の規定は、万一損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合の被害者の保護のための措置としては、必ずしも十分ではなく、」とまで言っています。「国家補償を拡大することが、被害者の保護という点においてもより確実な措置といえるのではないか」。

 さらに、「当面現行賠償法どおりとするが、原子力事業者の責任制限および国家補償の拡大については、将来の課題として検討すべき問題であると考える。」こういうふうに述べているわけですね。

 当面ということですが、このときから三十八年以上たっているわけです。実際に事故も起こった。そしてそのときの措置額も超えてしまった。しかしながら国の援助はされなかった。今回の改正でも、国の援助という規定ぶりについては変更がないわけですね。つまり、法律上義務がないと制定当時から我妻さんが指摘していた問題はここでも、今回もクリアされていないということではないかというふうに思います。

 こういう状況の中で、大臣、「その際の経験を教訓とする」、つまり、ジェー・シー・オー臨界事故の経験を教訓とするというのが今回の改正案であります。被害者の保護に万全を期すということで、この理由のところにも書いてあるわけです。これに照らして、どう思われますか。これは実際、今回の改正案は、ジェー・シー・オーの事故の経験を教訓としているんだ、被害者の保護に万全を期すものなんだと言えると思われますか。

塩谷国務大臣 今回の改正につきましては、ジェー・シー・オー臨界事故の経験を十分に生かしたいということで、ジェー・シー・オーの臨界事故につきましては、我が国の原子力利用の歴史上初めての臨界事故でございまして、原賠法の制定以来、最初にしてこれまで唯一の原子力損害の賠償事例でありまして、今般の法改正についても、この際の経験を適切に踏まえることが極めて重要であると考えております。

 ジェー・シー・オーの当時の賠償対応としては、総額百五十億円に及んだ賠償額のうち、当時の賠償措置額である十億円が責任保険により賄われたほか、残りは、今お話があったように、親会社である住友金属鉱山の支援により全額が被害者に対して支払われておりまして、当初は混乱もあったわけでございますが、必要な賠償は適切に履行されたものと考えております。

 当時の対応では、何よりも教訓とすべきことは、事故の直後から短期間に多数の賠償請求がなされたことや、初の臨界事故における現場の混乱等から、当初、被害者と原子力事業者の賠償交渉には行き詰まりが見られた中で、国が設置した有識者研究会、原子力損害調査研究会が賠償に関する基本的な考え方を整理して関係者に提供したことによって、賠償交渉が迅速に進んだわけでございます。

 今般の改正においては、この教訓を踏まえて、原子力損害の範囲や損害額の算定方法、当事者間の自主的な交渉の参考となるべく、支援を早期に提供する仕組みを制度化したわけでございます。また、ジェー・シー・オー臨界事故において多数の賠償請求が寄せられたことを踏まえて、今後、政府補償契約による補償金の支払いが生ずるような原子力損害発生の際に、賠償金支払い事務の迅速化が図られるように、また、政府事務の一部を損害保険会社にも委託できるようにするための規定をしたところでございまして、ジェー・シー・オー臨界事故の教訓を踏まえて今回の原賠法の改正をしたわけでございまして、その充実を図るものと思っておる次第でございます。

松本(大)委員 大臣、そんな官僚答弁、丸読みしちゃだめですよ。

 今の御答弁だと、この事故の教訓というのは、要するに、多数の請求があって、混乱があった、これは円滑に進むようにしなきゃいかぬな、混乱を避けなきゃいけないな、こういうふうに認識をされている。要するに、手続をスムーズに進めるんだというように聞こえたわけでありますが、この事故の最大の教訓とは、措置額を超える損害が発生する可能性は大いにあるんだということじゃないんですか。大臣です。大臣の答弁について更問いしているんです。

 ちょっと委員長、指名してないですから。

岩屋委員長 先に局長から答弁をさせます。

藤木政府参考人 それでは、事実関係の説明を申し上げたいと思います。

 先生御指摘のとおり、今回のジェー・シー・オー事故におきましては、損害賠償措置額を上回る損害賠償が行われてございます。

 我が国の原子力損害賠償制度、一義的には原子力事業の実施主体である事業者に責任を集中する、そしてそこに無過失無限の賠償責任ということを課しておりますので、損害賠償措置額を超えた賠償額が発生した場合におきましても、原子力事業者がきちっと責任を果たすということが原則となっております。

 ただ、その資力等が不足する場合において、必要な場合においては国がとことん支援をするという制度になっているということでございますから、今回の場合においては、政府が支援に出るというところに至らずとも、きちっと被害者に対して損害賠償が行われたという状況であると認識しておりますので、今回のジェー・シー・オー事故がこの法体系の結果になっているとは認識していないところでございます。

塩谷国務大臣 今回の改正については、今御指摘の点、政府が賠償を確保するために必要な援助を行うということ、これについても、措置額を超えた場合には、政府がしっかりとそれを担保するということも今回規定したところでございますので、その点については、我々の教訓として、今回の改正に盛り込んでおるところだと思っております。

松本(大)委員 措置額を超えた場合に必要とあらば援助するというのは、今回の改正で決めたことじゃないわけですね。

 さっき、とことんなんておっしゃっていましたけれども、とことんなんということは法律上一言も書いていないんですよ。極めて援助というのは生ぬるいんじゃないかという指摘は、当初の、昭和三十六年の議事録で委員が指摘している、そういう質疑もあったぐらい、弱いんじゃないかということが指摘され、かつ、この立法者の趣旨としても、法律上の義務じゃないんだ、果たしてこれでいいのか、個人的にはちょっと不満が残るんだというような趣旨の話を、さっき御紹介した我妻さんがおっしゃっているわけですね。

 実際、それから九年たって、一回目の改正を迎えようというときに、この答申においても、援助という規定は被害者の保護のための措置としては必ずしも十分ではなくということが指摘されているわけですね。実際、その措置額を超える損害が発生をした。

 立法時は、我妻さん自身も何と答弁をしていたかというと、要するに、措置額というのはどうやって決まるんですかという質問に対して、それを聞かれちゃ困るんですと言っているんですね。つまり、保険会社の引き受け能力に左右されているところから決まって、そういう制約も受けながら決まっているわけで、本当に起こり得る損害の発生額と比べて妥当な措置額なのかどうかというところは、明確には答弁されていないわけですよ。

 そこでどうやって逃げているかというと、当時の五十億という措置額を超えるようなことは極めてまれだろうということをおっしゃっているわけですけれども、実際には、我が国初の発動事例となったこの事故においては、その措置額を超えてしまったわけですよね。だから、私が思うに、極めてまれじゃないということなんですよ、この事故の最大の教訓は。

 ですから、保険会社の引き受け能力という制約もある。事故が起これば当然大きいものにならざるを得ない。もちろん、ジェー・シー・オーがバケツで何とかというような極めてずさんな管理をしていた、その責めは決して免れるものじゃありません。だけれども、無過失責任を課している以上は、その他のケースで大きな損害が発生して、きちんと措置されていない、あるいは保険としての措置額を上回った、でも、国として援助してもらえるかどうかが法律上の定めでは義務になっていない。つまり、被害者保護の観点からは極めて不安定な状況に置かれているわけですよ。

 これで果たして、この法律の目的とするところの原子力事業の健全な発達の大前提である国民の理解が得られるのかということを私は申し上げているわけでありますけれども、今回は提案理由説明の中でも「国際動向等を踏まえ、」というふうにあるんです。この国際動向等を踏まえた場合にも、今のこの規定ぶりはどうなのかという点をちょっと質問したいと思います。

 今回は、改正パリ条約に倣って措置額を、改正パリ条約は七億ユーロなので千二百億円に引き上げるんだという話でありますけれども、この七億ユーロを超える損害について手当てしている国も実はあるわけですよね。日本と同じ無限責任をとっているドイツは、改正パリ条約にも加盟をしています。改正ブラッセル補足条約も勘案して、これは幾らになるのか、答えてください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 現在パリ条約の改正は、既に署名されておりますけれども発効はされていない状況でございます。同じく改正ブラッセル補足条約も同じ状況でございますけれども、それが発効したとした場合に講じられる補償の措置は三段階ございます。

 第一段階は、パリ条約そのものに基づきまして、各国国内法が担保する七億ユーロ以上の賠償措置額をとるというのが第一段階でございます。(松本(大)委員「第三段階を答えてください」と呼ぶ)はい。

 第三段階は、各国政府補償十二億ユーロに加えまして、政府間の、締約国間の拠出金によりましてさらに三億ユーロを上乗せするということで、合計十五億ユーロまで補償を確保するという仕組みになるということでございます。

松本(大)委員 それは本当ですか。

 今皆さんのお手元にお配りをしている資料は、四枚とも文科省の作成資料なんですけれども、三枚目の五番、ドイツというところにあるんですよ。これは文科省がつくった資料ですからね。改正パリ条約発効後は二十八億ユーロと書いてあるじゃないですか。今十五億ユーロというふうにおっしゃいましたが、どっちが正しいんですか。これはうそですか。

藤木政府参考人 御説明申し上げます。

 ドイツにおきましては、民間責任保険のほかに事業者共済等々によりまして二十五億ユーロまで国内措置として既に講じてございます。したがいまして、この第三段階の改正ブラッセル補足条約が発効した場合には、そこに国際的な基金として三億ユーロがさらに上乗せされて二十八億ユーロになるということでございますから、ブラッセル条約そのものにおきましては先ほど申しましたような三段階で十五億ユーロということでございますけれども、ドイツ等々のようにそれをさらに上回る措置をもともと持っている国におきましては、それのもともとの措置がございますので、それを上回る措置額になるということでございます。

松本(大)委員 極めて不誠実な答弁ですよね。十五億ユーロというふうに先に答えて、これは私がもらっていたからいいけれども、なかったら、ああ、そうだったのかというふうにみんな思っちゃうわけでしょう。やはり誠意を持って答弁しなきゃだめですよ。

 今回の改正に当たっては、国際動向等を踏まえたものなのかどうかという検証をしなきゃいかぬのに、それを妨げてきたんじゃないかというような疑念を私は持っているんですね、これは後で触れますけれども。今みたいな答弁というのはもう体質的なものなのかな、非常にミスリーディングな説明を繰り返されていると私は思います。

 現場の方は本当に善意で正直に答えてくれたわけですけれども、責任者の方は果たしてどうなのかということについては、私は今のような答弁を聞くと本当に、「十分御審議の上、」と書いてある、これはまさにお題目になっちゃうじゃないですか。空文化しちゃうでしょう。要するに、国会での審議を何だと心得ているのかということを私は強く指摘しておきたいというふうに思います。

 国際動向等を踏まえた改正なのかどうかということを検証していますけれども、今お聞きのように、お手元の資料の三枚目にあるように、日本と同じ無限責任を採用して、改正パリ条約あるいはブラッセル補足条約に署名をしている、発効を待っている、国内法も改正した、そういうドイツにおいては、二十八億ユーロ、つまり日本が今回引き上げの際に見倣った七億ユーロの四倍近い金額を確保しているということなんですね。これはドイツだけじゃありません。

 さっきの十五億ユーロというものが何かというと、一枚戻っていただいて、四番のフランスですけれども、このフランスも、改正パリ条約発効後、ブラッセル補足条約というのもあるので、十五億ユーロまでは実は政府間拠出金としては担保されているわけですね。つまり、民間の責任保険は七億ユーロまでだけれども、実は政府による公的資金でそれを上回る十二億ユーロまでさらに資金を確保している。そして、政府間の拠出金という仕組みを通じて十五億ユーロまで措置している。だから、民間責任保険、国家補償、国際補償という三段構えで、措置額を上回る金額の損害が発生したときに備えているわけですね。

 それに比べて我が国は、七億ユーロというのは目標にしているけれども、千二百億を超えた後は援助にとどまっている。実際に、ジェー・シー・オーのときも、措置額を超えたけれども国は援助をしなかった。これが果たして、国際動向等を踏まえた、そして実際に措置額を上回る損害が発生した、その教訓を踏まえた改正だというふうに思われるのか、大臣の見解を伺います。

塩谷国務大臣 国際状況を踏まえて、今のお話にあった千二百億円までということで我が国等それに対応していくことが一つの今回の改正のポイントであることは間違いないと思いますが、今お話あったような政府の援助等のお話も、一応政府は上限なしということで援助をするということも、前からの規定ではございましたが、その点についても今回確認したところでございます。

 国際情勢等については、ヨーロッパ等の状況と我が国の、いわゆる条約等の関係も、今現在はこの近隣諸国との今後のこととして受けとめておるわけでして、おっしゃる点については、国際条約等を踏まえて、今後、より一層の政府の措置を考えていかなければならないという観点では、私もそういう理解をしているところでございます。

松本(大)委員 繰り返しになりますけれども、援助というのは今回の改正で盛り込まれたものじゃなくて、確認をしたとおっしゃいますけれども、その規定ぶりは弱いんだということは制度発足当初から、あるいは一回目の見直しの四十五年の答申でも弱いんだということが指摘をされ続けているわけですよ。

 その問題は、実際に措置額を超えた損害が発生をした、その教訓を踏まえた今回の改正でも見直されなかった。国際動向を踏まえた改正だとおっしゃるけれども、国際動向は、民間責任保険の措置額を上回る損害が発生したときのために、国家補償や国際補償の枠組みで迅速かつ確実な補償というか賠償を措置しているわけですよね。この点は、日本は国際動向に比べて劣後しているわけですよ。

 これは一枚目の表を見ていただければ一目瞭然だというふうに思いますけれども、制度比較図というものですね。前回までは、現行と言ってもいいかもしれません、日本は六百億、真ん中はパリ・ブラッセル補足条約締約国ですが、これも三億SDRですから六百億円程度、改正ウィーン条約も三億SDRということで横並びだったわけですが、今の国際動向はどうかといえば、実は二〇〇四年に改正パリ条約あるいは改正ブラッセル補足条約の議定書が採択をされて、発効を待っている。その状況から比べると、これは追い越されちゃっているわけです。

 今までは横並びだったわけだけれども、日本が今回倣ったんだと言っているパリ条約、ブラッセル補足条約も勘案すれば、これは劣後しているんですよ。日本は千二百億円、改正パリ・ブラッセル補足条約の議定書が採択をされ、その署名をしている各国は十五億ユーロということで、倍以上の金額を措置しているということでありますから、これは果たして国際動向を踏まえた改正と言えるのかということであります。

 しかも、私が問題だと思っているのは、先ほどの答弁にもあったように、ドイツはどのぐらいまで措置しているのと言っても、正しい答えが返ってこない。これにまさに象徴されているわけですが、原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会の議事録を読みますと、なぜこれはブラッセル補足条約に言及しないんだということを何と二度も注意されているんですよ、二度も。第一回と第六回。パリ条約ということは言っているけれども、なぜブラッセル補足条約があることにリファーしないんだと二回も注意を受けている。一回目で、まずしょっぱな注意を受けて、それでも是正されず、六回目でもやはり注意をされている。

 つまり、今回、ポンチ絵とか文科省からの説明では、多くの皆さんは多分、パリ条約に倣うんです、同じ水準ですというふうに説明を受けたかもしれませんが、実は、パリ条約の加盟国の大半はブラッセル補足条約というものも署名をしていて、それを上回る損害に手当てをしているんですよ。そのことを指摘されたわけだけれども、一回目と六回目、何と二回も注意を受けているわけですよ。

 ところが、これは調査室さんの資料、我々ももらうわけですけれども、このブラッセル補足条約も勘案すると十五億ユーロまでだよねとか、ドイツはそれを上回るよねというようなことは読み取れないんですよ。これはお手元の、お手元というか、ないかもしれませんが、これは調査室の資料ですけれども、国際条約の概要だとか主要各国の損害賠償制度の概要だとかというものからは読み取れない。

 つまり、改正前の水準にとどめてこの一覧表をつくっているんですね。非常に意図的ではないかなという気がいたします。国際動向等を踏まえたものなのかどうかという真摯な検証を妨げている。もっと穏やかに言えば、その周知の努力を怠っている、極めて消極的ではないかという気が私はします。何よりも、これは二回も注意を受けているのに、この検討会の一次報告書の概要のところには、国際動向として入っていないんですよ、ブラッセル補足条約。全く入っていない。この原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会第一次報告書の概要、普通の人は多分、これ一枚、まずごらんになるんだと思いますが、国際動向のところには、二回も指摘を受けながら、パリ条約にしか言及していない。ブラッセル補足条約のことはカットしている。

 その結果、これは原子力委員会でこの一次報告書を審査してもらっているわけですけれども、この原子力委員会の審査のときにも、そのことは配付資料として恐らく配られていない、これを見る限りは。議事録を読みましたけれども、原子力委員会の中でも、やはりブラッセル補足条約については一言もこれは言及されていないんですよ。

 つまり、日本は七億ユーロに追いつくんだということは皆さん知っていたかもしれないけれども、実はそれを上回る措置もあるんですよということについて、どれぐらいこの検討会あるいは原子力委員会で周知をした上で、その認識を共有した上で、今回の改正に当たっていたのか、議論をしたのかということについて、私は疑義があるというふうに考えています。周知の努力を怠っている。

 先ほどの答弁ぶりが何より物語っているんじゃないですか。私が聞いたときには十五億ユーロだというふうにおっしゃるけれども、実際には二十八億ユーロだと。「十分御審議の上、」というこの文言、大臣の提案理由説明を没却してしまうような、そういう姿勢については、私は強く抗議をしておきたいというふうに思います。

 今回のこの改正、国際動向を踏まえたというふうに言っていますけれども、問題は、この措置額を超えた場合だけではありません。実は、少額措置というものがあることは、冒頭、ジェー・シー・オーの事故のときは十億だったというふうに申し上げたとおりでありまして、この少額特例措置、日本は今回、四十億だったというふうに思いますが、改正パリ条約ではこの少額特例措置の下限は幾らになるんでしょうか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 改正パリ条約における少額賠償措置額につきましては、低リスクの施設については七千万ユーロ、核物質の輸送については八千万ユーロ以上とされているところでございます。

松本(大)委員 つまり、下限という意味では七千万ユーロなんですね。下限という意味では七千万ユーロです。七億ユーロに見習って千二百億ということは、その約十分の一ですから、七千万ユーロということは百二十億円程度ということでありまして、今回の改正案で日本は下限が四十億になるわけですから、改正パリ条約とは三倍の開きがあるということですね。改正パリ条約では下限は百二十億、我が国は引き上げ後でも四十億ということで、これも国際動向に比べて見劣りがしているんではないかというふうに思います。

 この問題は、検討会の中でも、少額特例に係る問題として実際指摘をされていますよね。各条約では、これは賠償措置額との差額を補てんする公的資金の確保を義務づけているんだということでありますけれども、我が国は、今回の改正案でも、この少額特例措置と賠償措置額の原則、今回でいえば、千二百億と四十億との差額を埋めるための公的資金の確保というものは法律上担保されていません。

 ただでさえ、下限は改正パリ条約に比べて劣後している。原則との差額も公的資金で確保されていない。このことについても、引き続き、国際条約、つまり国際動向からは見劣りがしている。これは本当に国際動向を踏まえた改正であるというふうに大臣は思われますか。

塩谷国務大臣 今の少額賠償措置についての議論でございますが、パリ条約の中で規定されているものと、我が国がそこに追いついていないというような御指摘があったわけでございますが、我が国の現状を踏まえて、国際的な動向にできるだけ合わせるような形で今回、議論がされたと思っておりまして、必ずしも国際的な金額と一致するものではないかもしれませんが、我が国としてその状況を踏まえて今回の判断をしたと思っております。

松本(大)委員 これはそもそも、本来は民間の責任、民間の保険会社では負えないリスクを負うために国が補償をしているわけで、その民間の引き受け能力という制約もあるし、一方で、相対的なリスクに応じた保険料にしてくれという事業会社のニーズもあるし、そこを踏まえた知恵というのが、少額特例措置を設けるなら、差額は公的資金で確保してくださいよということでありましょうし、賠償措置額を超えた場合は国家が補償するんだということでありますけれども、この点については、引き続き今回の改正でも見直されていないということであります。

 そもそも、この補償というのは、日本ではこの補償料を取っているわけですけれども、これは累計幾らですか、端的にお答えください。制度発足当初から幾ら取ってきたんですか。

藤木政府参考人 現在まで、昭和三十六年以降、補償料収入として国庫に入った額の合計額は、百二十三億円でございます。

岩屋委員長 松本君、時間が来ておりますので手短にお願いします。

松本(大)委員 時間が来てしまいました。

 この百二十三億、一般会計で使っちゃっているんですよ。一回も発動していない。でも、スイスはこれを基金として積み立てているんですね。国際動向を考えれば、あるいは被害者保護に万全を期すなら、迅速かつ確実な措置ということを考えるのであれば、補償料のあり方を見直すべきですよ。

 原子力は国策としてやっているわけですから、事業者の無限責任というものを隠れみのに国は責任から逃避し続けている、私はどうもそういう感想を持たざるを得ないんですね。ですから、国がしっかりと腹を据えて、いざというときの補償も含めて国の責任を明確化していく、このことなしでは被害者の保護に万全を期すことはできませんし、原子力事業の健全な発達にも資さないということを申し上げまして、私の質問を終わります。

岩屋委員長 以上で松本君の質疑は終了しました。

 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 今回の法改正で、原子力損害賠償紛争審査会の事務として、原子力損害の範囲、損害額の算定方法など、当事者による自主的な解決に資する指針を定めることが新たに加わるわけでございまして、まず最初に、これは具体的にはどのようなことを指針として示されるのか、御説明いただきたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 新たに紛争審査会が定めることとなる指針と申しますのは、先ほども出ておりましたが、ジェー・シー・オー事故の教訓を踏まえたものでございまして、原子力損害が発生した際に、当事者間の和解による自主的な解決を促進するという趣旨でございまして、その損害状況に即して賠償の基本的な考え方を提示しようとするものでございます。

 その決め方につきましては、発生した事案に応じて、法律や医療あるいは原子力の専門家等々の専門性を有して、かつ、想定される当事者と利益相反関係のない中立的な方を委員として、その合議によって策定していただくこととしております。

 中身でございますが、当事者の和解交渉をできるだけ円滑に進めていただくための参考となる有意義な事項を示したいということでございまして、ジェー・シー・オー事故の際のさまざまな経験から、まず一つには、損害の類型を設定する。これは例えば身体への傷害、あるいは財物が汚損した、あるいは営業の損害が生じたといった損害の類型をまずはっきりと設定することでございます。

 また、その二点目といたしまして、損害の対象となり得る、事故があった場所からの距離、あるいはそれが起きたときからの時間、そういった距離的範囲、時間的範囲を一定のめどを示すということが二点目でございます。

 三点目は、それら各損害類型ごとに損害額をどうやって算定するかといったような標準的な方法を示すといったようなことを内容として想定してございます。

石井(郁)委員 損害の類型をまず決めるということですけれども、やはり第一に、身体の損害というのが挙がっているわけですね。そこで、それに関係して、やはり健康被害という問題で少し具体的にお尋ねしたいと思っております。

 今も出ましたけれども、我が国初のジェー・シー・オーの臨界事故がございまして、ここでは三名の従業員の方が重篤状態、二人が亡くなられました。周辺の住民も多くの方が避難されるということがあったわけですね。

 しかし、ここでは、周辺住民らの被曝線量ではがんなどの発生は極めて低いと原子力の損害調査研究会が判断したことなどが根拠になりまして、周辺住民に対して見舞金として一人五万円程度が支払われただけでありまして、ジェー・シー・オー側は健康被害の賠償には応じていないんですね。

 そこで、二〇〇二年に住民の側から健康被害の補償を求めた裁判が起こされて、係争中でございます。訴状を見ますと、こうありました。「あの事故の夜から、体のあちこちに斑点ができて、痛くてたまらない。どんなに痛さを訴えても、JCOは相手にしてくれない」、途中略しますけれども、「このような地域の中で、二度とこのような事故を起こして欲しくないという思いから、」「提訴するものである。」とございました。私はやはり、住民として、その地域に住む者としてこれはやむにやまれぬお気持ちだろうというふうに伝わってまいります。

 そこでお尋ねなんですけれども、では、周辺住民らの健康状態はどうなっているのか、その健康状態と被曝線量との因果関係というのを明らかにしたデータというのはあるんですか。また、被曝したジェー・シー・オーの従業員についてもどうなっているのか、お示しいただきたいと思います。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェー・シー・オー臨界事故によります周辺住民等の放射線影響につきましては、原子力安全委員会が健康管理検討委員会を設置しまして検討を行ったところでございます。その報告書が平成十二年の三月二十七日に出てございますけれども、その中では、急性障害等については、放射線による影響が発生する線量レベルではない、がんや遺伝的障害については、放射線が原因となる影響の発生の可能性は極めて小さく、影響を検出することはできないとなってございます。このため、周辺住民等の健康管理につきましては、放射線の身体的な影響の有無を確認するための特別な健康診断は考えられないが、周辺住民等の健康に対する不安に適切な対応をとることが必要というふうになっております。

 文部科学省といたしましては、ジェー・シー・オー臨界事故の影響の防止もしくは緩和またはその影響からの回復を図るということ等を目的としまして、茨城県に交付金を交付したところでございまして、その交付金で茨城県は基金を造成いたしまして、その基金を活用して、平成十二年度以来、健康診断を実施しているところでございます。

 そのほか、茨城県への委託によりまして、心のケアということで周辺住民に対する相談事業等を行っているところでございまして、文部科学省といたしましては、こういった取り組みを今後も着実に進めてまいりたいというふうに考えております。

 それから、低線量の放射線の影響についてのお尋ねでございますけれども、これにつきましては、百ミリシーベルト以下のいわゆる低線量域の放射線被曝による健康影響については、科学的になかなか明らかになってございません。

 文部科学省では、この低線量域の放射線が人体に与える健康影響につきまして科学的知見を得ることを目的に、平成二年度から、当時は科学技術庁であったわけですけれども、原子力発電施設等で放射線業務を行う者を対象とした疫学的調査を行ってございまして、この調査はこれまで五年間ごとに三回調査結果をまとめてございますけれども、直近の第三期調査におきましては、「低線量域の放射線が悪性新生物の死亡率に影響を及ぼしている明確な証拠は見られなかった」との結果を取りまとめてございまして、文部科学省としましては、今後ともこの調査を継続しまして、科学的知見の収集に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 文部科学省と茨城県とが協力して住民の健康調査をしている、御被害についての調査をされているということはわかりました。

 これは大変重要でありまして、住民の側にとっても、やはり健康異常あるいは悪化に苦しんでいる、将来への不安を抱えていらっしゃるということが今もってございますので、これは本当によりどころとして健康調査というのはずっと続けていただく必要があるというふうに思います。

 あの事故から九年たっても、受診者数というのはほぼ横ばいなんですね。二〇〇八年度でも二百五十八人が受診していらっしゃるということでございますので、これはぜひ続けていただきたい。

 しかし、次に問題は、この健康診断だけで終わっていいのか。今、後半の部分で、被曝線量との因果関係はそれとして、科学的知見を得ているということも御説明ありましたけれども、この地域の周辺住民の被曝線量との関係で、もう少しきちんと見る必要があるんじゃないかという気がするんですね。

 二〇〇〇年の原子力安全委員会の健康管理検討委員会の報告には、放射線の身体的な影響の有無を確認するための特別な健康診断は考えられないとしているわけで、その前提で、将来にわたり日常的に健康的な生活を過ごすための一般的な助言に資するために、独自の健康診断を当分の間行うということにされておりまして、やはり被曝との因果関係というのはここからは導き出されないというか、よくわからないものになっているということがあります。

 この点は、現地の関係者は、繰り返し、身体の異常等々いろいろあるわけですから、何らかの因果関係があるんじゃないかという不安はあるわけですから、ここについてやはり見ておく必要があるんじゃないかというふうに思うんですね。

 それで、対象者は一ミリシーベルト以上の被曝者です。これは今すぐではないかもしれないけれども、十年、二十年たって突然何らかの病気を発症するということがあるかもしれない。健康異常などの事例が起きてもこれは不思議ではないわけですから、被曝しているという事実はあるわけですから、その辺で、この健康診断をただ健康診断しているということに終わらせないで、被曝線量との因果関係をここでも継続的に調べる必要があるのではないかというふうに私は考えますが、この点はいかがかということと、そうした問題をこの指針なんかにも反映させるべきではないのかという点でお尋ねをしたいと思うんです。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどのやや繰り返しになりまして恐縮でございますけれども、先ほど申し上げました健康調査、それから低レベルの線量域での放射線の影響に関する調査、これを今後とも着実に継続してまいりたいというふうに考えております。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 最新の知見の指針への反映という点でございます。この指針は、損害賠償に係るすべての当事者に関して共通して参考となるような基本的考え方を提供するものということでございますが、その指針は、個々の原子力事故ごとに、その規模や態様に応じた適切な内容にすべきものと考えておりまして、具体的に身体の傷害に関する賠償に関する部分の指針を策定するという際には、放出された放射線量やその人体に与える影響の評価などにつきまして、最新の知見も踏まえまして、科学的な調査分析を行ってその結果を反映すべきものというふうに考えてございます。

 なお、ジェー・シー・オー臨界事故の際、先ほどから原子力安全委員会の健康管理検討委員会の分析結果が出ておりますけれども、そういった当時の科学的知見を踏まえまして、原子力損害調査研究会における賠償の基本的な考え方を策定していったということでございますので、当然その時点における最新の科学的な知見を反映して指針を策定すべきものというふうに考えてございます。

石井(郁)委員 その辺はしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 法案で出されている問題は原子力の損害賠償ということでありまして、損害に対する備えということはそれとして大事なんですけれども、やはり車の両輪として原子力の安全研究、これをもう一方できちっとしておかなきゃいけないというふうに思うんですね。

 そこで、この点でお伺いいたしますけれども、ちょうど、これは二〇〇四年の十一月、当委員会で日本原子力研究開発機構の発足の審議がございまして、そのときにこの安全問題が議論になりました。私も質問いたしまして、やはり安全研究の関連予算というのはずっと減らされてきたんじゃないかということで大臣に当時伺いましたら、中山大臣でございましたけれども、このような御答弁でした。原子力に関しましては、まずは安全、安全、安全だろう、こう思うわけでございまして、省略しますが、安全関係の研究開発ということに関しましては最優先で措置すべきものであると考えておりますということでございました。

 まず大臣に、この立場は今もお変わりございませんね。

塩谷国務大臣 原子力につきましては、中山大臣がかつて答弁したように、私も安全第一と考えておるところでございます。

石井(郁)委員 それではちょっと具体的に伺いますけれども、機構の原子力安全研究の関連予算、一般会計とエネルギー特別会計、それぞれございますが、過去五年分、ちょっと数字をお示しください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 日本原子力研究開発機構におきます過去五年間の原子力安全研究の予算でございますが、平成十六年度は総額百七十五億円、一般会計が三十九億円、特別会計が百三十六億円。平成十七年度におきましては総額百七十三億円、一般会計三十六億円、特別会計百三十七億円でございます。平成十八年度、総額百六十五億円、一般会計三十三億円、特別会計百三十二億円。平成十九年度、トータル百五十九億円、一般会計二十九億円、特別会計百三十億円。平成二十年度、トータル百五十六億円、一般会計二十七億円、特別会計百二十九億円でございます。

石井(郁)委員 ちょっと私どもがいただいた数字と少し違いますから、トータルは少し変わるんですけれども、一般会計では五年間で約十一億円減少になっていると思います。そして、エネルギーの特別会計でも七億円減少ですね。一般会計と特別会計の分でいうと、けたが違いますから、私は、一般会計での減り方というのは比率としては非常に大きいんだろうというふうに思うんですね。

 そこで問題なのは、この一般会計分の減少の大きさというのは、やはり安全研究の研究成果というか中身に関係してくるんじゃないでしょうか。実際見てみますと、安全研究、二〇〇六年度の主な研究成果として挙げられているもの、二〇〇七年度の研究概要等々見ましても、原子力安全基盤機構とか原子力保安院とか文科省などからの受託研究なんですね。もう一つ、資源エネルギー庁の公募によって決まった研究など、そういうものが上がってきて、どうも機構自前の研究というのが見えないんですよね。私は、これはやはり一般会計の予算の減少と関連しているんじゃないかと思わざるを得ないわけです。

 機構発足のときは、当委員会でも安全研究の重要性を繰り返し強調してきたところでありましたが、研究費を確保するために、受託した側が、期間内に求めるとおりの結果を出す、受託研究に日々追われているということでいうと、機構独自の研究が行われるような一般会計というのをもっとふやす、十一億円も五年間で減っているわけですから、この辺はやはり大臣としてきちんとそういう御決意で立っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塩谷国務大臣 ただいま御説明申し上げましたように、予算についてはここ五年で大分減少しているところでございます。そういう点では、我々、原子力研究開発機構が安全に対しても中核的役割を担っていくために、何としてでもこの予算確保、そして自前の研究もしていかなければならない、そのとおりだと思っております。

 大変厳しい財政事情の中で、効率化も含めて現在のような予算になっておりますが、今後とも、特にこれから原子力政策については、環境面あるいはエネルギー面で重要視されてきておりますし、また、高経年化や燃料の事故等がある中で、しっかりとこの研究開発について改めて予算等も確保するべく努力していく所存でございます。

石井(郁)委員 もう一点ですけれども、やはり研究というのは人がやるわけでして、人が極めて大事なんですね。もう言うまでもありません。

 その人の問題なんですが、機構が公表している安全研究センターというのがありまして、人員構成を見ますと、三年から五年程度の任期づきでの特定課題を研究するために外部から採用されている人が非常に多い。特に二十代から三十四歳までの若手研究者、職員の半分が外部から採用されている研究者なんですね。これは、五年、十年先まで安全研究が継承されていくのかというのが不安だ、これは現場の実感、現場の声でございます。

 それで、もう時間ですので、大臣、最後に、やはり今、安定したポストを優秀な若手研究者は本当に求めていますから、そういう多くの若手研究者を機構の正式職員として採用する、こういう方向に大いに切りかえていくべきだと思いますし、安全研究の分野で専門性を発揮していい研究をしていただくようにサポートするというのはいかがでしょうか。最後に御答弁いただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今御指摘のあったように、安全研究に対しても人材が大変重要でございまして、私どもとしても、人材の養成事業を実施するとともに、大学等の研究機関に対して協力を推進しておるわけでございまして、今後とも、特に今御指摘があった若手の専門的な人材確保に対してはしっかりと対応してまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 以上で終わります。

岩屋委員長 以上で石井君の質疑は終了しました。

 次に、日森文尋君。

日森委員 ジェー・シー・オーの臨界事故は、原発の安全神話を打ち壊してしまった、こう言えるのではないかと思います。そういう意味では、絶対安全なんというのはこの世の中にないぞという思いを強くしたんです。

 このジェー・シー・オーの臨界事故で、被害の申し出数が八千件、被害総額が百五十億円に上ったというふうに聞いております。なかなかこの補償が進まないという状況の中で、行政による支援の一つとして原子力損害調査研究会というのが設置をされたというふうに聞いておりますが、この研究会が果たした具体的な役割についてまず教えていただきたいと思います。

塩谷国務大臣 ジェー・シー・オーの臨界事故につきましては、我が国最初の臨界事故として賠償請求件数が七千件ということでございまして、当初は現場の混乱等からなかなか賠償交渉が進まない中で、専門家による原子力損害調査研究会を設置して、賠償金額あるいは基本的な考え方を整理して交渉の円滑化に努めたわけでございます。

 同研究会につきましては、損害費目を分類するとともに、当事者間で主張の隔たりが大きかった損害の範囲や損害額の算定方法について損害の分類ごとに基本的な考え方を取りまとめまして、関係者に提示をしたわけでございます。

 加害者であるジェー・シー・オーの方が被害者側に対して補償基準が受け入れられない中にあって、同研究会が客観的な立場から提示した基本的な考え方が当事者間における交渉の目安となって、円滑な紛争解決に向けて大きな役割等を果たしたわけでございまして、この研究会の果たした役割は大変大きかったと考えております。

日森委員 その原子力損害調査研究会の活動を踏まえてということだと思いますが、今回の改正で、原子力損害賠償紛争審査会、これが定める、原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針、これは先ほど説明がありました、が作成されることになります。

 そういう意味では、原子力損害調査研究会については一定の役割を果たしてきたというふうに評価をしておりますが、現実には、研究会見解に納得できないで裁判に持ち込まれている事例も見られるわけです。

 今回、その紛争審査会が賠償に関する指針を定めても、納得しなければ裁判に訴えればよいということになるわけですが、公的な機関がそれなりの見解を出せば、原子力事業者はそれを盾に補償を拒むということにもなりかねないという心配をしているわけです。したがって、紛争審査会の見解は、そういう意味では、科学性であるとか、中立性であるとか、客観性であるとか、そういうものは十分に担保されていなければいけないということは当然のことだと思います。

 しかし、その原子力損害調査研究会は、平成十一年の十月末から翌年の三月末まで、わずか五カ月の間に十七回の会議を開催して、いわばかなり短期間で集中して見解をまとめたというふうに聞いております。大変慌ただしい作業だったと思うんですが、この中でその中立性、科学性、客観性みたいなところは、この担保はどういうふうに確保されているのか。お考えをお聞かせいただきたいと思います。

塩谷国務大臣 今の御指摘の点については、大変重要な点でございまして、この原子力損害賠償紛争審査会を今後設置するに当たって、当事者に信頼されるように、中立性あるいは専門性を備えていくことが大前提であるわけでございます。

 この委員について、政令において、人格が高潔であること、これは中立性を担保するということでございます。また、法律、医療、原子力工学等の学識経験を有すること、これは専門性を定めたわけでございますが、そういった要件を定めておりまして、事故発生事案に応じて、当事者と利益相反関係がなく中立的で、専門的な知識を有する放射線医学、原子力工学等の学識経験者や弁護士から委員を任命することとなっております。

 こういった中立性や専門性を有する委員の合議により、事態に即して客観的な指針を検討することで、指針に対する信頼性を確保していくつもりでございます。

日森委員 ここは、本当に被害者も含め国民から信頼されるものでなければならないというふうに思いますし、今後も一層、中立性、専門性、客観性、科学性ということが担保できるようにしていただきたいと思います。

 それから、これまでのジェー・シー・オーの事故の経験を踏まえてということだと思いますが、原子力損害賠償補償契約に基づく業務の一部、これが損害保険会社に委託できるように改正をされるということになっているわけですが、ジェー・シー・オー事故の際は、補償業務というのが、これはさっき若干お答えありましたが、どのように処理されて、どんな反省点があったのかということについて、改めてお伺いをしたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェー・シー・オー臨界事故の際には、比較的小規模な施設の事故ながら、東海村だけでなくて広範な周辺地域から、健康診断、避難費用、休業損害、営業損害など多種多様な案件につきまして七千件を超える賠償請求がなされ、迅速な対応が求められたところでございます。

 それで、このジェー・シー・オー臨界事故の際は、事業者の作業ミスに起因するという事故であったために、民間損害保険会社が保険金の支払い事務を行いました。しかしながら、もし地震等に起因する事故が起こりますと、それにつきましては政府が補償金の支払いを行うということになります。

 今回のジェー・シー・オー臨界事故の経験を踏まえますと、大変短期間に多くの賠償請求案件を処理するということが被害者保護のために必要になるわけでございまして、これまで政府は、そういった補償金の支払いを行うことに至った事故の発生はなく、したがって経験の蓄積もないということでございますので、万が一の際に膨大な数の補償金支払いの業務を円滑に遂行するという方策を講じておくことが大変大事だということで判断いたしまして、今回の法改正におきまして、補償契約と類似の保険契約に関して深い知識と能力を持つ保険会社への関係事務の委託を可能とすることにしたものでございます。

日森委員 資料によると、想定される十五業務のうち八業務が委託されるというふうに聞いておりますが、これは、その業務の内容によって委託する、しないということを判断されるんですが、これはどんな基準で委託する、しないを御判断されたのか。ちょっと確認のために聞いておきたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、政府補償契約の支払いに関する事務は多種多様でございますが、補償金の支払い額の最終的な決定あるいは支払いの実施そのもの等の意思決定に係る重要事務、これは国みずからが引き続き実施することにしたいと考えておりますが、被害者から原子力事業者への賠償請求に係る書類の受理あるいは管理、そういったもののデータの作成、それから損害額の算定原案の作成等々、損害保険会社の業務内容と類似性がある事務的業務につきましては、そういった保険会社に委託することを考えているということでございます。

日森委員 さらに、資料によると、ことしの二月に、「原子力の防災業務に関する行政評価・監視 行政評価・監視結果に基づく勧告(第二次)」という文書が文科省、経産省に出されているわけです。

 そこで総務省にお伺いしますが、どのような調査を行って、どのような勧告を出したのか。それから、続けてお聞きしてしまいますが、経産省は、その勧告を受けて具体的にどのような措置をとられるお考えなのか。お聞かせいただきたいと思います。

関政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査は、原子力発電所の周辺住民など国民の安全、安心を確保する観点から、原子力災害の予防対策や緊急事態の応急対策につきまして、関係行政機関など業務の実施状況を調査したものでございます。それで、今先生お話にございましたように、文部科学省それから経済産業省に対しまして勧告を行っております。

 その内容でございますけれども、一つは、原子力災害時におきまして応急対策の拠点となりますオフサイトセンター、そこにおきましてきちんとした対応がなされるように、マニュアルの整備をきちんとやってほしいということ、それから、災害時には現地対策本部が設けられるわけですけれども、そのときに機能別にグループができまして対応するということになっておりまして、そのグループの名簿ができておるわけなんですけれども、そこに必ずしも必要にして十分なリストが整備されていなかったという状況がありましたので、そこをきちんとやってほしいということを言っております。

 それから、原子力災害時に、緊急時の迅速放射能影響予測ネットワークシステム、SPEEDIシステムというふうに呼んでおるようでございますけれども、これで放射能の影響予測をするわけですが、そのシステムの中に集落単位の年齢別の人口とかあるいは避難施設の状況などが入っているわけですが、そのデータの更新が十分でなかったということで、ここの運用改善をしてほしいということを言っております。

 それから、被曝患者の搬送体制といたしまして、三次の被曝医療機関、これは、東日本は放射線医学総合研究所、西日本は広島大学でございますけれども、そこへの搬送体制が十分実行可能なものとなっていないのではないかということで、そこのところの支援を行っていく必要があるだろうということを言っております。

 それから、原子力保安検査官等の研修につきまして、現場でのトレーニング、研修を有効に取り入れた、技術の継承を含めた研修の方針を作成して効果的に実施していってほしい、こういうことを勧告しておるわけでございます。

深野政府参考人 お答えいたします。

 総務省からことしの二月十三日にいただきました勧告につきましては、指定された内容について、現在改善に取り組んでいるところでございます。

 一点目のオフサイトセンターの運営に関するマニュアルでございますけれども、この防災活動の際に参集した関係者の防護対策あるいはその防災活動の班編成の名簿、こういった点については、勧告を適切に反映した対応を行うべく、マニュアルの今修正作業をしておりまして、関係する自治体とも調整をしているところでございます。

 それから、原子力保安検査官等の研修でございますけれども、人材育成でございますが、赴任の前に基礎的な研修は施しているわけでございますけれども、さらに能力向上のための研修をどういう考え方で受けさせるか。それから、OJTの状況についての把握をきちっとやって、それを指導に反映させていく、そういったことによって検査官の力量をきちっと管理していく。そういった体制の整備についても現在取り組んでいるところでございます。

日森委員 先ほど研修の話が出ましたが、この調査結果でも、「原子力に高度な知見を有するメーカー等からの中途採用者の確保が難しくなることが予想される」というふうにありまして、原子力保安検査官の問題で、ここにはメーカー出身者が多いのではないかというふうに聞いております。

 その際、研修の中身だとかその他の制度の必要もあると思うんですが、メーカー出身者でも、原子力事業者に対して適正に指導するということが当然必要なわけで、ここもかなり独立性とか公平性とかを持ってなきゃいかぬということなので、この辺を具体的にどういうふうに担保しようとしているのかをお聞きしたいと思います。

深野政府参考人 お答えいたします。

 原子力安全・保安院では、現在百三十四名の保安検査官がおります。その中で、メーカー等の民間企業の出身者は六十五名ということでございます。その多くが現地の保安検査官事務所で勤務をしているという状況でございます。

 それで、これらの関係者でございますけれども、これはまず、民間企業を退職した上で正式に正規の国家公務員として採用しているものでございまして、国家公務員としての倫理や業務内容といったことについては、当然、そういうものを理解してきちっと業務に当たっていくということが要求されているものでございます。

 具体的にこの保安検査官につきましては、そういった国家公務員としての基本的な点に加えまして、原子力安全に関する法令等々を含めて、研修においてきちっとそういう知識と能力を備えるようにしているところでございまして、具体的には、赴任の前に必ず、二週間程度でございますけれども、そういう研修をいたしまして、そういったことでそういった資質の担保をしているところでございます。

 それから、この検査の結果につきましても、原子力安全委員会への報告あるいはプレス発表、そういったことを通じまして透明性の確保に努めているところでございまして、それに加えまして、原子力安全・保安院の本院からも、この現場の状況について管理部門による定期的な巡回をしておりまして、そういった中で、検査を受ける事業者あるいは地域の自治体、そういった方への訪問、ヒアリングなんかも行いまして、活動状況の把握に努めているところでございます。

日森委員 どうもありがとうございました。終わります。

岩屋委員長 ただいまの日森君の質疑をもちまして本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

岩屋委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

岩屋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岩屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

岩屋委員長 次回は、来る八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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