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第1号 平成22年2月19日(金曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成二十二年一月十八日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君 理事 富田 茂之君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    江端 貴子君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    後藤  斎君

      佐藤ゆうこ君    瑞慶覧長敏君

      高井 美穂君    高野  守君

      中川 正春君    平山 泰朗君

      牧  義夫君    松本  龍君

      湯原 俊二君    横光 克彦君

      横山 北斗君    吉田 統彦君

      遠藤 利明君    北村 茂男君

      塩谷  立君    下村 博文君

      菅原 一秀君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      池坊 保子君    宮本 岳志君

      城内  実君

平成二十二年二月十九日(金曜日)

    午前十一時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    江端 貴子君

      川口  浩君    熊谷 貞俊君

      後藤  斎君    佐藤ゆうこ君

      瑞慶覧長敏君    杉本かずみ君

      高井 美穂君    高野  守君

      中川 正春君    平山 泰朗君

      松本  龍君    山本 剛正君

      湯原 俊二君    横光 克彦君

      吉田 統彦君    北村 茂男君

      佐藤  勉君    塩谷  立君

      柴山 昌彦君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      池坊 保子君    宮本 岳志君

      城内  実君

    …………………………………

   文部科学大臣       川端 達夫君

   文部科学副大臣      中川 正春君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十九日

 辞任         補欠選任

  城井  崇君     山本 剛正君

  牧  義夫君     杉本かずみ君

  遠藤 利明君     佐藤  勉君

  下村 博文君     柴山 昌彦君

同日

 辞任         補欠選任

  杉本かずみ君     牧  義夫君

  山本 剛正君     城井  崇君

  佐藤  勉君     遠藤 利明君

  柴山 昌彦君     下村 博文君

    ―――――――――――――

二月一日

 教育格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(長島忠美君紹介)(第三五号)

 同(木村太郎君紹介)(第一四八号)

 教育格差をなくし行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三六号)

 同(金子恭之君紹介)(第一三二号)

 教育費の無償化、大幅な負担軽減を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三七号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第四一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五号)

 教育格差をなくし、すべての子供たちに行き届いた教育に関する請願(鈴木克昌君紹介)(第一二九号)

 同(福田衣里子君紹介)(第一三〇号)

 同(牧義夫君紹介)(第一三一号)

 同(仲野博子君紹介)(第一四九号)

 学生・保護者の教育費負担軽減と私立大学への公費助成増額に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一四二号)

 教育格差をなくし子供に行き届いた教育を求めることに関する請願(鉢呂吉雄君紹介)(第一四七号)

同月十九日

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校をつくることに関する請願(大西健介君紹介)(第一五六号)

 教育格差をなくし、行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(江渡聡徳君紹介)(第一五七号)

 同(橘慶一郎君紹介)(第一七五号)

 同(山本有二君紹介)(第一七六号)

 同(福井照君紹介)(第一八五号)

 同(横山北斗君紹介)(第二一四号)

 同(村井宗明君紹介)(第二三七号)

 同(下条みつ君紹介)(第二四五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二四六号)

 同(漆原良夫君紹介)(第二九〇号)

 教育格差をなくし、すべての子供たちに行き届いた教育に関する請願(大西健介君紹介)(第一五八号)

 同(伊東良孝君紹介)(第一六三号)

 同(岸田文雄君紹介)(第一六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六五号)

 同(松本龍君紹介)(第一六六号)

 同(古賀一成君紹介)(第一七七号)

 同(石田芳弘君紹介)(第一九三号)

 同(吉田統彦君紹介)(第二一五号)

 同(野田国義君紹介)(第二三八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二四七号)

 同(黄川田徹君紹介)(第二六九号)

 同(園田康博君紹介)(第二七八号)

 同(山本剛正君紹介)(第二七九号)

 子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(高橋英行君紹介)(第一七二号)

 私学助成を大幅増額し、すべての子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(服部良一君紹介)(第一七三号)

 同(稲見哲男君紹介)(第二六一号)

 同(谷畑孝君紹介)(第二九二号)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第一七四号)

 同(稲津久君紹介)(第一九四号)

 学費格差を是正し、教育の公平を求めることに関する請願(村上誠一郎君紹介)(第一八二号)

 学費の負担軽減、高等教育予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一八三号)

 学費の負担軽減、大学予算増額を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一八四号)

 私学助成の拡充を求めることに関する請願(橋本勉君紹介)(第一九二号)

 教育格差をなくし、子どもに行き届いた教育を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二〇五号)

 教育格差をなくし、行き届いた教育に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇六号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二六二号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二七〇号)

 教育予算大幅増額、子どもたちに行き届いた教育に関する請願(志位和夫君紹介)(第二〇七号)

 教育予算を大幅増額し、子供たちに行き届いた教育を求めることに関する請願(松本龍君紹介)(第二〇八号)

 同(古賀一成君紹介)(第二三九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二四八号)

 教育予算を大幅に増額し、すべての子どもに行き届いた教育を進めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二〇九号)

 子どもに行き届いた教育に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二一〇号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の削減撤回・大幅増額等に関する請願(穀田恵二君紹介)(第二一一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二一二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二四九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五〇号)

 学費の公私格差をなくし、すべての子どもたちに行き届いた教育を進めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第二三五号)

 同(川島智太郎君紹介)(第二六三号)

 同(木内孝胤君紹介)(第二六四号)

 同(木村たけつか君紹介)(第二七一号)

 同(石毛えい子君紹介)(第二九三号)

 同(末松義規君紹介)(第二九四号)

 子供の貧困と教育格差をなくし、行き届いた教育を求めることに関する請願(村井宗明君紹介)(第二三六号)

 学校事務職員等の定数改善と給与費等国庫負担の拡充に関する請願(重野安正君紹介)(第二四四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二九五号)

 学費値上げストップ、大学予算増額に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二八九号)

 学生・保護者の教育費負担軽減と私立大学への公費助成増額に関する請願(宮本岳志君紹介)(第二九一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する事項

 生涯学習に関する事項

 学校教育に関する事項

 科学技術及び学術の振興に関する事項

 科学技術の研究開発に関する事項

 文化、スポーツ振興及び青少年に関する事項

以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田中委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 文部科学大臣から所信を聴取いたします。川端達夫文部科学大臣。

川端国務大臣 委員長、理事、委員の皆さん、またよろしくお願い申し上げます。

 第百七十四回国会において各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。

 日本は今、さまざまな困難に直面しています。長引く経済の低迷、国際的な競争の激化、少子高齢化は世界に類を見ない速さで進み、我が国の形が大きく変わりつつあります。

 これまで我が国は、長い歴史に裏づけられた豊かな伝統と文化を大切にしながら、世界的に質の高い教育と、それにはぐくまれた人材の活躍により、科学技術を発展させ、世界の主要な一角を占める成熟した社会を築いてきました。今、我が国は、直面する困難の克服に向けて自信と活力を取り戻さなければなりません。そのために何をなすべきか。

 このようなときこそ我が国は、人と知恵をはぐくむことを国政の中心に据え、未来を切り開く牽引力としなければなりません。国民一人一人がみずからの持つ潜在的な力を最大限に発揮し、個人と社会の成長につなげ、だれもが幸福を実感できる国にしていかなければなりません。また、厳しい課題を世界に先駆けて克服し、モデルとなる国家像や社会像を提示する国にしていかなければなりません。

 私が担当する教育や科学技術は、未来を担う人を育て、国の持続的発展を支え、世界に貢献する知恵を生み出すものです。また、文化、スポーツは、人々に喜びと感動、安らぎと活力をもたらし、人間が人間らしく生きることを実感させるものです。

 私は、人と知恵が輝き、尊敬される国を目指し、文部科学行政の充実発展に全力を挙げて取り組んでまいります。

 昨年の十二月、私は中央区の泰明小学校と都立文京盲学校を訪問しました。そこには、子供たちの元気と好奇心に満ちた笑顔、ハンディに負けずにひたむきに努力する姿、そして、温かく、時には厳しく子供たちを導く教師の姿がありました。私は、これらを見て、改めて自分の職責の重さを感じました。

 今後、私たちはどのような教育を目指すべきか。私は、人間の尊厳と平和、命のとうとさ、真理と正義を大事にする人間の育成であり、感性や創造性に富み、人格の向上発展を目指す人間の育成であり、そして、自立と自律の精神、豊かな人間性と公共の精神を持つ人間の育成であると考えます。

 このような理念のもとで、幼児教育を含め初等中等教育から高等教育に至るまで、学校間の接続と社会との連携を重視しつつ、個々人の潜在能力を高め、さまざまな分野で活躍する多様で重厚な人材層をはぐくむことが、我が国の成長と発展の土台となると考えます。また、その実現のため、現在、国際的に見て低い水準にある教育への投資をしっかりと確保し、ヒューマン、ソフト、ハードのあらゆる面において学校の教育力を高めていかなければならないと考えます。

 その中で最も重要なのは、教員の質と数の充実です。今後、教員の資質向上方策の抜本的な見直しについて、学校関係者、大学関係者、保護者等の意見を把握しながら、あらゆる課題について幅広く検討を行ってまいります。

 教職員定数については、子供一人一人と向き合う環境をつくり、新学習指導要領を円滑に実施するため、来年度四千二百人の改善を行うこととしています。平成二十三年度以降の学級編制及び教職員定数の改善のあり方についても、本格的な検討に着手します。

 また、教材のデジタル化、ICTの活用、指導方法、学習方法の変革と、変革を支える学習環境づくり、環境教育、コミュニケーション教育など、二十一世紀にふさわしい学校教育への転換を目指します。

 子供たちが一日の大半を過ごす活動の場であるとともに、非常災害時には地域住民の応急避難場所ともなる学校施設の耐震化は極めて重要です。予算を効率的に執行し、より多くの耐震化事業を行うよう努めるとともに、地方公共団体のニーズを把握しながら耐震化の推進に取り組みます。

 さらに、教育への財政措置や地方教育行政、学校運営など、学校教育環境の将来像や整備のあり方についても検討してまいります。

 鳩山総理は、先般の施政方針演説において、命を守ることを強調されました。人と知恵をはぐくんでいく上で、子供の命を守ることは最も大事な課題です。

 先般、江戸川区で起こった親による子供の虐待死事件で、私は言いようのない憤りと深い悲しみを感じました。今回の事件では、子供の変化の把握や関係機関の連携において問題がありました。二度とこのような事件が繰り返されることのないよう、また、いじめや不登校などの子供たちの悩みを受けとめ、その解決に導くよう、スクールカウンセラーの配置や二十四時間いじめ電話相談、関係行政部局と民間団体のネットワーク構築など、子供が安心して相談できるさまざまなチャンネルをつくってまいります。

 昨今、経済と雇用の状況が悪化する中で、子供たちが保護者の失業などにより学業を続けられなくなることが心配されています。また、少子化の要因の一つである経済的負担への不安をぬぐい去り、お金を理由に子供を持つことをあきらめるような社会を変えていくことが必要です。

 そもそも教育は、個人の豊かな生活ばかりでなく、社会全体の発展と活性化を実現するものです。したがって、教育は社会全体で助け合い負担するという考えのもと、いかなる環境にあっても、すべての意志ある人が安心して質の高い教育を受けることができるようにしなければなりません。

 このため、公立高校の授業料は不徴収、私立高校等では就学支援金を支給することにより高等学校を実質無償化することとし、予算案と関連法案を今国会に提出いたしました。今春から確実に実質無償化を開始できるよう、速やかな御審議をお願い申し上げます。

 また、各大学が実施する授業料減免の拡大への支援や日本学生支援機構による奨学金事業を拡充することとしています。国際人権A規約における漸進的無償化条項の留保撤回も視野に、これらの施策を進めてまいります。

 学生生徒の就職環境は、大卒予定者の内定率が今春過去最低水準となるなど、非常に厳しい状況にあります。若者が自分たちの将来に希望を持てないようでは、国や社会の発展は望めません。このため、今後、政府の緊急雇用対策を踏まえ、関係省庁と協力して新卒者の就職支援に努力します。

 一方、若者の非正規雇用の増加や新卒者の早期離職など、学校から社会、職業への移行をめぐる課題が顕在化しています。今後、初等中等教育から高等教育までを通じ、社会、職業との関連を重視したキャリア教育、職業教育の充実を進めることにより、社会人、職業人として必要な能力を身につけ、勤労観、職業観を確立した人材の育成に努めてまいります。

 鳩山内閣の基本的な施政方針の一つに、新しい公共があります。

 新しい公共とは、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、例えば学校支援地域本部など、地域による教育支援を初めとした身近な分野で活躍していくことです。

 新しい公共を実現する上で、学校教育や社会教育を通じ、担い手となる人材を育成することが大きな課題です。また、教育、文化、スポーツは特に新しい公共の発展が期待される分野であり、学校や社会教育・文化・体育施設、NPOなどのネットワーク化を推進します。これは、地域のきずなの強化や活性化にも効果をもたらすものであり、積極的に取り組んでまいります。

 また、NPOなど多様な新しい公共の担い手の活動を支えるために、寄附文化の醸成や寄附にかかわる税制の整備等が重要です。総理が開催する「新しい公共」円卓会議における議論などを踏まえつつ、検討を深めてまいります。

 国の政策形成に当たっても、審議会における専門家の議論に加え、現場との対話やウエブを活用した議論の活性化など、現場レベルの意見の吸い上げと自由闊達な議論による熟議を行い、施策に反映します。

 高等教育については、我が国の将来や世界、そして地域に貢献する機能を充実していくことが必要です。このため、学生の学力や就業力の育成など社会の期待にこたえる大学教育の推進、多様かつ高度な教育研究活動に向けた大学間連携や人的、物的資源の共同利用の推進、イノベーションの創造に貢献し世界をリードする大学院の形成、強化に取り組みます。また、社会人が何度でも大学で学び、その成果を社会で生かせる環境づくり、大学の教育研究資源の活用による地域産業の活性化と人材育成についても支援してまいります。

 また、喫緊の課題である医師不足解消のための医学部の入学定員の増員や、社会の要請にこたえるすぐれた医療人の養成、地域医療において中核的な機能を担い、高度医療を開発、提供する大学病院の充実に努めます。

 これらの前提として、大学教育を支える基盤的経費である国立大学法人運営費交付金や私学助成等の確保が重要です。これまでの削減方針を見直し、必要額を確保しつつ充実に努めます。また、老朽・狭隘化した施設設備の整備に取り組みます。

 アジアにおける国際交流を進める上で、大学が大きな役割を果たすことが期待されています。昨秋の日中韓首脳会談において合意された、質の保証を伴う大学間交流や高度専門職業人育成を推進するとともに、大学間の単位互換などの大学の国際化や、留学生の受け入れと派遣の大幅な拡充、若手研究者の交流、国際共同研究の強化に取り組み、今後の東アジア交流やアジア太平洋協力を支える人材の育成と域内の共通課題の解決に長期的視野を持って貢献します。

 科学技術は、資源の乏しい我が国にとって、国家の将来がかかる重要な柱です。そのため、昨年末に閣議決定された新成長戦略の基本方針において「成長を支えるプラットフォーム」と位置づけられています。六月に策定される予定の新成長戦略や今後検討が進められる第四期科学技術基本計画において、科学技術が我が国の成長と発展のためにしっかりと貢献できる戦略を打ち出せるよう努力してまいります。

 昨年十一月に総理とともにノーベル賞受賞者にお会いした際、受賞者の方々は、科学技術をしっかり支えてほしい、特に、科学技術を目指す我が国の、そして世界の若者がここで研究したいと思える国であってほしいとの思いを強く述べられました。国際的な頭脳獲得競争がますます激しくなる中で、私はこの思いを真摯に受けとめ、次代を担う人材が無限の可能性に挑むための場づくりと人材活用に着目して、世界トップレベルの知恵を生み出し、人類の発展に貢献する国づくりに取り組んでいきたいと考えております。

 そのためにまず、理科や数学の好きな子供をふやし才能を伸ばすとともに、トップ人材への支援強化やキャリアパスの明確化により、若者が将来への大きな期待を胸に研究者などの道を志し、活躍できるよう体系的な人材育成を進めます。女性や外国人など多様な人材の活用を促進し、科学技術に新たな活力をもたらします。

 また、研究資金の拡充、自立的な研究環境の整備などを通じた基礎科学力の強化により、すぐれた研究者が独創的なアイデアを思う存分追求できる場を提供します。最先端の研究インフラの整備とその利用支援体制の充実、国際的に開かれた研究者の採用などにより、世界の卓越した人材を引きつけ、また、積極的に人材を送り出し、世界の頭脳循環の中で存在感を発揮できる拠点を構築してまいります。

 次に、人間と地球の命にかかわる課題の解決、人間の幸福を実現するための経済に貢献する成長分野について、戦略的にプロジェクトを展開します。産業活動と生活様式を低炭素型に切りかえるためのグリーンイノベーション、人が一生を通じて健康に暮らせる社会を実現するライフイノベーションにおいて、我が国が誇る研究開発の成果から効果的に革新的技術を生み出す取り組みを進めてまいります。

 将来の価値創造に向けて、シーズ段階から実用化段階への「明日に架ける橋」を築くため、ビジョンと課題の共有のもと、研究者と企業が適切な役割とリスクの分担を行う共創モデルについて検討を行うとともに、科学技術による地域活性化に取り組みます。研究開発法人のあり方に関しては、国内外の専門的知見を結集したグローバル標準のマネジメント手法、府省横断的なプロジェクト遂行の仕組みなど、その特色を生かせる制度づくりを目指して検討を進めてまいります。

 本年は、いよいよ野口宇宙飛行士と山崎宇宙飛行士が同時に宇宙ステーションに滞在し、宇宙で日本人が活躍することが当たり前の時代に入ります。このように、国民の夢と希望を膨らませる新フロンティアを開拓するとともに、地球規模の課題解決にも貢献し成長を先導する、宇宙、海洋、原子力分野の基幹的な技術の開発利用を着実に推進します。また、先端技術を駆使して防災・減災対策を講じます。さらに、地球規模課題の分野を中心として科学技術外交を積極的に推進し、あわせて、米国や国際社会との協調のもと、核兵器のない世界の実現に向け、核物質検知技術の開発などを通じて貢献してまいります。

 昨年、私は東京海洋大学を訪問しました。古くて狭い施設の中で、旧式の設備を使いながらまじめに研究に取り組んでいる研究者の姿を見ました。また、廊下には、何十年も前の海洋生物のサンプルが多数保管されていました。こうしたサンプルの採取、保管は、地球温暖化の影響を知るために重要となっています。このような地道な研究活動は、すぐには成果が見えにくいものですが、腰を据えて取り組むべきものです。それを国民に理解していただく努力を積み重ねながら、未来への投資として、予算の確保を含め戦略的、継続的に科学技術の振興を図るため、体制づくりを進めてまいります。

 文化芸術が人々を引きつける魅力や社会に与える影響力、すなわち文化力が国の力であることは世界的な共通認識となっています。また、文化芸術は観光振興等の経済活動において新たな需要や高付加価値を生み出す源泉でもあり、今こそ文化芸術を国家戦略として振興していくことが必要です。

 先ごろ、文化芸術の振興のための基本的施策のあり方について文化審議会に諮問いたしました。文化芸術振興の意義や今後の政策の方向性などについて、改めて原点に立ち返り、幅広い観点から議論してまいりたいと思います。その際、文化資源の活用を通じて、心豊かな国民生活や活力ある社会の構築につなげるという視点も重視してまいります。

 文化審議会の審議状況も踏まえつつ、引き続き、人材の育成や活動支援、地域文化の振興、メディア芸術の振興、子供の文化芸術体験の機会充実、文化財の保存、活用、国際文化交流の強化、日本語教育への支援、著作権施策の推進等に取り組み、新たな文化芸術立国の実現を目指します。

 現在、バンクーバー冬季オリンピック大会が開催されています。大会での日本人選手の活躍は、国民に大きな感動とあすに向かう勇気をもたらしてくれています。また、国を代表する選手たちのすがすがしい姿とひたむきに競技に打ち込む熱意は、子供たちの心身の健全な発達に大きな影響を与えるものです。

 スポーツは、すべての国民にとって人格形成、体力向上や健康長寿の礎であるとともに、地域活性化や観光などの点からも高い波及効果を有しています。学校体育の充実や地域に根差したスポーツクラブの育成など、ライフステージに応じたスポーツ振興を図ります。また、二〇一二年のロンドン五輪を一つの目標に、世界で競い合うトップレベル競技者の育成強化に力を尽くすとともに、ワールドカップサッカー大会などの招致を支援します。

 さらに、スポーツ基本法案の検討も含め、現場の声に耳を傾けながら行政課題を点検し、スポーツ立国戦略を策定してまいります。

 以上申し上げました課題以外にも、文部科学行政においてはさまざまな課題が山積しております。私は、職責の重さを十分にかみしめ、国民の皆様の期待を背に全力で課題の解決に取り組んでまいりたいと思います。関係各位の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 次に、平成二十二年度文部科学省関係予算の概要について説明を聴取いたします。中川正春文部科学副大臣。

中川副大臣 平成二十二年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成二十二年度予算の編成に当たっては、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の振興についての施策を総合的に展開するため、文部科学予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省所管の一般会計予算額は五兆五千九百二十六億円、エネルギー対策特別会計は一千四百十二億円となっております。

 以下、平成二十二年度予算における主な事項について御説明を申し上げます。

 第一に、初等中等教育の充実を図るための関連施策を総合的に進めることとしており、中でも、家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、公立高校の授業料無償化及び高等学校等就学支援金の創設に三千九百三十三億円を計上しております。

 また、教員が子供と向き合う時間を確保するとともに新学習指導要領の円滑な実施を図るため、七年ぶりの純増になる四千二百人の教職員定数の改善など義務教育費国庫負担金に一兆五千九百三十八億円を計上しております。

 このほか、地域に根差した道徳教育や芸術表現を通じたコミュニケーション教育の推進、いじめ問題等への対応など生徒指導、進路指導等の取り組みの推進、充実した教育を支える環境の整備の一環として幼児教育や特別支援教育の推進、子供の心身の健康を守り安全、安心を確保するため、学校保健、子供の安全対策、学校における食育の推進を図ることとしております。

 さらに、地震により倒壊等の危険性がある学校施設の耐震化の推進などのため、公立学校施設整備費一千三十二億円を計上しております。このうち、特に耐震化関連分としては、九百十億円を計上しております。

 第二に、地域全体で教育に取り組む体制づくりを支援するための施策を幅広く展開することとしており、引き続き、学校支援地域本部事業や放課後子ども教室推進事業を実施するとともに、スクールカウンセラー等の配置を充実するなど、学校、家庭、地域の連携協力に関する事業について百三十一億円を計上しております。

 このほか、体験活動や読書活動、青少年を有害環境から守るための取り組みなど青少年の健全育成の推進を図ることとしております。

 第三に、新たな状況変化に対応した大学改革を推進するため、大学教育の質保証や高度な教育研究拠点の形成支援、大学生の就業力育成の支援等のために四百十億円を計上するとともに、大学病院の機能強化のため四十八億円を計上しております。

 また、国立大学等における教育研究の充実と活性化を図るため国立大学法人運営費交付金に一兆一千五百八十五億円、国立大学法人等施設の耐震化、大学附属病院の再生等を図るため五百三億円を計上しております。なお、医学部定員増に伴う教育環境の整備については、国立大学法人運営費交付金及び私学助成において対応することとしております。

 第四に、学生が安心して学べる環境を実現するため、奨学金事業については、貸与人員を三万五千人増員し百十八万人に貸与するため、事業費で一兆五十五億円を計上するとともに、学生への就職支援の強化等の取り組みを推進するため、四十七億円を計上しております。

 第五に、私学助成について、私立の大学や高等学校等に係る経常費補助に総額四千二百二十億円を計上するなど、私学の振興を図ることとしております。

 第六に、留学生交流の推進と、日中韓の協力強化など国際的に開かれた大学づくりと国際的な枠組みでの質保証の推進のために三百九十三億円計上しております。

 第七に、スポーツ立国の実現を目指したスポーツの振興を推進するため、トップレベル競技者の育成強化などの国際競技力の向上の推進、地域スポーツ環境整備の推進、学校体育の充実などを図り、過去最高となる二百二十七億円を計上しております。

 第八に、文化芸術立国の実現と文化発信を図るため、すぐれた文化芸術活動への支援やメディア芸術の振興など、ハード整備からソフト、ヒューマンへの支援に重点を置くことにより、過去最高となる一千二十億円を計上しております。

 第九に、低炭素社会の実現に向けて、温室効果ガスの削減に資する先端的技術開発等のグリーンイノベーションを目指した研究開発を大幅に強化し、九十八億円を計上しております。また、科学研究費補助金に二千億円、戦略的創造研究推進事業に五百五億円、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築に二百二十八億円、最先端研究開発支援プログラムの加速、強化や若手、女性等研究者への支援強化のために新設する最先端研究開発戦略的強化費補助金に四百億円を計上するなど、成長の源泉となる基礎科学力の強化に重点的に取り組むこととしております。

 第十に、将来の我が国を支える科学技術人材の育成、確保に三百九十九億円を計上することとし、特に若手研究者に対しては、研究費を加えると八百二十六億円の支援を行うこととしております。また、科学技術外交の戦略的推進、世界の頭脳獲得のための知的拠点形成と科学技術システム改革の推進、我が国の成長力強化に資する技術基盤の確立や産学官連携によるイノベーションの加速と地域科学技術の振興について、それぞれ着実に推進することとしております。

 第十一に、iPS細胞研究等の健康長寿社会の実現に向けた研究の推進に五百九十四億円計上するとともに、宇宙基本計画等を踏まえた宇宙開発利用の推進千八百十億円を含め、原子力、南極観測、海洋・地球科学技術、地震防災など、大型国家プロジェクトとして四千五百四十六億円を計上し、戦略的に研究開発を推進することとしております。

 以上、平成二十二年度文部科学省関係予算の概要につきまして御説明を申し上げました。

 なお、これらの具体的な内容につきましては、お手元に資料をお配りいたしておりますので、説明を省略させていただきます。

 どうぞこれからもよろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 以上で説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


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