衆議院

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第5号 平成22年3月9日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十二年三月九日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君 理事 富田 茂之君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    江端 貴子君

      緒方林太郎君    大山 昌宏君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    後藤  斎君

      佐藤ゆうこ君    坂口 岳洋君

      瑞慶覧長敏君    高井 美穂君

      高野  守君    中川 正春君

      平山 泰朗君    松本  龍君

      山岡 達丸君    湯原 俊二君

      横光 克彦君    横山 北斗君

      吉田 統彦君    遠藤 利明君

      北村 茂男君    塩谷  立君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    池坊 保子君

      宮本 岳志君    城内  実君

    …………………………………

   文部科学副大臣      中川 正春君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   参考人

   (日本私立中学高等学校連合会会長)        吉田  晋君

   参考人

   (全国専修学校各種学校総連合会事務局長)     菊田  薫君

   参考人

   (学校法人イーエーエス伯人学校理事長)      倉橋 徒夢君

   参考人

   (佐賀県教育委員会教育長)            川崎 俊広君

   参考人

   (社団法人全国高等学校PTA連合会副会長)    相川 順子君

   参考人

   (放送大学教授)     小川 正人君

   参考人

   (千葉大学名誉教授)   三輪 定宣君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  後藤  斎君     坂口 岳洋君

  牧  義夫君     緒方林太郎君

  横山 北斗君     山岡 達丸君

同日

 辞任         補欠選任

  緒方林太郎君     大山 昌宏君

  坂口 岳洋君     後藤  斎君

  山岡 達丸君     横山 北斗君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     牧  義夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 速やかに御着席ください。

 内閣提出、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、午前の参考人として、日本私立中学高等学校連合会会長吉田晋君、全国専修学校各種学校総連合会事務局長菊田薫君及び学校法人イーエーエス伯人学校理事長倉橋徒夢君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に対しまして一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場からぜひ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと思います。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないということになっておりますので、あらかじめ御了承願いたいと思います。

 それでは、まず最初に吉田参考人にお願いいたします。

吉田参考人 皆様、おはようございます。ただいま御紹介いただきました日本私立中学高等学校連合会の吉田でございます。

 本日は、私立高校の教育振興に対して日ごろから皆さんに御協力をいただいておりますところでございますが、さらにそれを深めていただく意味も込めまして、私立学校の立場で御意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、今回のこの法案についてでございますが、子供たちは親を選べない、したがって、事実上住む地域というものも選べないという言葉がございます。たまたま裕福でない家庭に生まれた子供も、財政的に厳しい状況にある県で生活する子供も、その学校の選択、教育の選択につきましては機会均等というものが担保されるよう、その経済的負担を家族だけ、家庭だけに強いるのではなく、国全体、社会全体で支援しようとする今回の考え方というものに対しては、社会の支持を得られると思います。また、その意味で、この高校無償化、就学支援金政策というものは、方向性としては正しいものと理解しております。

 しかしながら、私立高校の立場で申し上げさせていただきますと、今回の政策の中で、私立高校の生徒の取り扱いにつきましては若干の違和感を抱かざるを得ないというのが本音でございます。

 確かに、国公私立の高等学校生全員に対しまして一律年額十一万八千八百円を支給されるということは、形式的には平等な扱いというふうになっているわけでございますけれども、私立高校生は、それだけでは無償化は実現せず、有償部分が多く残るということになるのも事実でございます。一方で、厳しい財政状況を踏まえて考えれば、その実現には時間を要するかもしれませんけれども、私立高校生も含めた実質的な平等の実現に向けて、政策的な道筋が示されるべきではないかというふうに考えるところでございます。

 現在、この高校無償化、就学支援金政策につきましては、四月からの実施ということに向けましてさまざまな実際の事務手続の検討が行われております。私どもも、今現在、文部科学省の担当とその手続等について検討を加えているところでございますが、この際、私立高校として指摘させていただきたいのは、公立高校につきましては、無償化に要する国費というものが学校設置者に交付されて手続完了となる、要は機関補助そのものであるわけでございますが、それに対しまして私立高校につきましては、形式的には、都道府県が責任主体となりましてこれを実施することとなっています。しかしながら、その先を見ると、実際の事務手続の多くの部分というものは、私ども私立高校の現場、学校現場にゆだねられているというのが事実です。この関係の事務負担が学校現場にとって過重とならないよう、また根拠のない新たな支出を生じることのないように、極力手続の簡素化への配慮をお願いしたいというところでございます。

 つまり、私立学校の場合には、生徒本人が申請書を記入し、そしてそれを提出し、またそれから都道府県と対応する。特に二百五十万、三百五十万以下の部分につきましてはいろいろな手続がございます。そういう意味では、私立学校にとっては今非常に大きな問題となっていることも事実だということをおとめ置きいただきたいというふうに思っております。

 そして、何よりも、私立高校生は、なぜ就学支援金を受けるに当たって個別の署名入りの申請書を提出しなければならないのか、それが私どもには判然としないところでございます。

 そもそも、この政策の本旨は、すべての高校生の就学を社会全体で支援しようということでございまして、その対象者としての基本的要件は、あくまでも高校生であるということだと思っております。だとすれば、私立学校についても、学校に在籍することの証明で十分に足り得ることではないか。一人一人の子供たちが、それぞれ申請書にサインをし、住所を書き、みずからが過去にほかの高校に行っていたか行っていないか、もしくは支援金を受けるに当たっての誓約をするに近いような、そういった申請をしなければいけないという部分は、私ども疑問を持っているところでございます。

 さらに言えば、この政策をきっかけにしまして、比較的富裕な都道府県では上乗せ支援を実施するという動きが出てきております。そのこと自体は、その都道府県においては大変結構なことだと思っておりますが、結果として、今度は都道府県間で私立高校生が受ける就学支援に著しい格差を生じることになるのも事実だと思います。これを解消するためには、やはり国による支援内容を一層充実させ、国が国民に対する責任としてしっかりとした体制をつくっていただくということに大きな意義があるのではないかというふうに考えているところでございます。

 生徒や子供たちのだれもが経済的事情にかかわらずよりよい教育を受けるには、直接的な支援と並んで、教育を提供する学校の充実というものが必要でございまして、国公私立を問わず、多様な教育を提供される体制が維持されなくてはいけないものと思います。その観点から申しますと、公教育の多様性と健全性を確保するためにも、私立高校教育の振興充実が不可欠でございまして、まずは国による私学助成の充実が基本にあるのではないか、必要であるのではないかと考えるところでございます。

 現在、高校以下の私学助成の実施主体は制度上は都道府県となっておりますが、将来を担う国民の教育に係る事項につきましては、地方分権の理想をしっかりと超えて、最終的には国が責任を負い都道府県間の格差を是正するべきであるというふうに考えるところでございます。

 私どもにとりましては、そういう中で、今回の支援金の重要性というものは十分に理解しているところでございますが、それ以上に、やはり教育の中身ということ、それが大事だというふうに思っております。

 全国の高校が全部私立になればいいなどということを私どもは考えているわけではございません。やはり、現在の公私比率七対三というのは、ある意味ちょうどいいバランスではないかというふうに考えております。子供たちは、高校生段階になれば、個性を発揮し始め、多様化するのは当たり前のことであって、学校もさまざまな個性や能力を伸ばす教育を提供する必要があると思います。その意味で、設立の目的から考えても画一化せざるを得ない公立高校に比べて、私立高校は学校ごとに教育特色をしっかりと実施すること、それがまた存在意義である、このような公私が相まってこそ初めて、我が国の教育全体の健全性が保たれるものというふうに考えております。

 ちなみに、戦前、昭和十八年の統計でも、旧制中学校の私立学校シェアというものは、現在と同じぐらいで三〇%ぐらいだったそうでございます。

 そういう中で、やはり公立高校の無償化について私どもが一つ気になっておりますのは、確かに、戦前のナンバースクールがあったころの高等学校と今の高等学校は設立目的が大きく違うということです。戦後、日本の国民教育のレベルを上げるということで、高等学校を画期的な数ふやしてまいりました。そして、その結果として、もう九七%近い子供たちが高等学校教育を受けるようになってきました。その根底には、公立高校を増設する、それは何かといえば、その地域の子供たちの教育をレベルアップするということがあって、そういう意味では学区制がつくられ、ある意味中等教育として、義務教育各校の一つ上の高等学校教育という形で、最低限の教育を確保し、画一的な教育に近い部分を担う形でこの高校の教育というもの、公立学校教育というものがなされてきたと思います。

 しかし、今現在の公立高校のあり方というのは、私立学校が、私ども営々と実施してまいりました、例えば中高一貫教育にしろ、それから進路指導重点校教育にしろ、そういういいものはどんどん公立でも採用する、それは私も決して反対はいたしません。ただ、そこに受益者負担という部分でいえば、当然ながら、費用負担に大きな格差がある。それをそのまますべて無償化であり、私立学校教育はそのまま。確かに、九千九百円、十一万八千八百円は援助していただけるかもしれませんが、今現在の三・六倍であった私立高校の負担金というものが、これからは〇対幾つということです。つまりは、無限大になってきます。

 新たな教育が加わった場合に、それに対する学校の負担、それは、たとえ公費、私学助成で賄われるとしても二分の一ですから、その残りの二分の一は父母負担に頼らざるを得なくなる。そういう中で、御父母の負担にどんどん格差が開いていくということに対しては、私ども疑問を持っているということは事実でございますので、その部分においても、このすばらしい日本という国の、またこの二十一世紀を担う子供たちが、自分たちの将来の夢や希望を実現するために行きたい学校、夢を実現するためにこういう学校に行きたい、そういうふうにしたいために希望がある、それを実現できるような社会づくりに先生方のお力で御協力いただきますことをお願い申し上げまして、私の当面の意見陳述とさせていただきます。

 本当に本日はありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、菊田参考人にお願いいたします。

菊田参考人 おはようございます。全国専修学校各種学校総連合会事務局長の菊田と申します。よろしくお願いをいたします。

 私の方からきょうお話を申し上げるのは、視点は二つでございます。一つは、専修学校高等課程に関してのお話、それからもう一つは、各種学校に関するお話を申し上げたいというふうに思っております。

 専修学校高等課程の件でございますけれども、高等専修学校というふうに言われておる、高等学校と並びの専修学校の制度ということでございます。もともと、専修学校の制度につきましては、御承知のことと思いますけれども、昭和五十一年に、それまでの各種学校の制度をもとにしてつくられた、各種学校を振興するという意味でつくられた、職業教育を中心とする教育制度でございます。その中には、入学資格の区分によりまして、専門課程、それから高等課程、そして一般課程という三つの課程がございます。

 専門課程というのは、御承知だと思いますけれども、専門学校というふうに称されまして、これは高等学校卒業程度以上の入学資格ということになります。そして、高等課程でございます。これは、高等専修学校というふうに称されまして、中学校卒業以上を入学資格とする。そしてもう一つ、一般課程というのがございますが、こちらの方は入学資格に限定がございません。この三つの課程で専修学校の制度が成り立っておるわけでございまして、きょうお話し申し上げますものは、その中の真ん中の部分、高等専修学校、専修学校の高等課程、中卒以上の部分についてのお話ということになります。

 高等専修学校、専修学校の高等課程は、中学校卒業者を対象に、高等学校とは異なる柔軟な制度的特徴を生かして、職業や実際生活に役立つ教育を行っているところでございます。どんな生徒さんが来るかということですが、中学校卒業時点でみずからの職業的方向性を見出し、積極的に職業教育を受けようとする生徒、こういった生徒たちが多うございます。そのほか、九七%、九八%という今の高校進学率がございますけれども、やはり高等学校の教育あるいは高等学校の生活になかなかなじまない生徒もおるわけでございまして、高校の中退者あるいは不登校の経験者、そういった方々も積極的に受け入れて、職業教育を通じて社会的自立を支援する教育を行っているところでございます。

 高等学校はすべて三年制ということになっておりますけれども、この専修学校高等課程につきましては、専修学校の制度そのものが修業年限一年以上という規定になっておりますものですから、高等専修学校の中には、一年課程、あるいは二年課程、三年課程、そういう多様な学科がございます。例えば、調理師を養成する学科では一年制、それから准看護師あるいは理容師、美容師、そういった人を養成する学科につきましては二年制の学科もございます。そのほか、経理系とか服飾系、情報系、そういった学科の中では三年制の学科が非常に多うございます。その三年制の学科につきましては、文部科学大臣の指定を受けた大学入学資格、これを付与される学科ということになっております。これは、この制度自体は昭和六十年からできておりまして、この制度ができた時点で、三年制の高等専修学校につきましては高等学校と同等というふうな取り扱いを受けているところでございます。

 全体的な数字をちょっと申し上げますけれども、平成二十一年度では、高等専修学校全体で四百九十四校、約五百校ですね、そこに三万八千人ほどの生徒が学んでおります。今申し上げました大学入学資格を付与されている指定校というところにつきましては、百九十五校、約二百校でございますが、約二万一千人が学んでおります。

 先般、この委員会の方で視察なされたというふうに伺っております准看護の養成の高等専修学校につきましては、全国で約一万三千人が学んでおります。中卒者もおりますけれども、実は、専修学校の特徴といたしまして、高等専修学校というところだからといって中卒者ばかりがいるわけではございません。高卒者、そのほか、一度社会に出た人も戻ってきて高等専修学校で学ぶというようなこともございます。

 今回の就学支援金につきましては、私どもといたしましては、私立の高等学校と同様に措置をしていただけるというふうに伺っておりまして、大変にありがたいことだというふうに思っております。特に高等専修学校につきましては、実は、国からの財政的な支援というものは基本的にございません。そういう中で、就学に関する支援をしていただくという今回のケースは非常にありがたいというふうに考えているところでございます。

 あわせて申し上げますと、先ほど御紹介を申し上げたように、専修学校高等課程、この中には、一年制あるいは二年制という、三年制に満たない学科を開設している部分もございます。こちらにつきましても予算上計上されているということを伺っておりまして、私どもといたしましては、ぜひとも高等専修学校すべてが対象となるような制度としていただきたい、このように考えておるところでございます。これが専修学校高等課程に関するお話でございます。

 続きまして、各種学校につきましてお話を申し上げたいというふうに思っております。

 今ほど御紹介を申し上げましたように、各種学校の制度というのは、専修学校の制度ができましたので、実は専修学校の言ってみれば下、基準としては専修学校の基準を満たさない、そういうような学校群ということになっております。

 実際の各種学校は、千五百三十三校、約十三万五千人の生徒が学んでおるところでございますけれども、専修学校の基準を満たさないような規模の学校、あるいは修業年限を満たさない学校とか、あるいは外国人学校、日本語学校、それから珠算学校、そういったようなところがございます。そのほかにも、服飾系の学校、経理系の学校、情報系の学校、それから准看護の学校もございますし、調理系の学校、理美容系の学校、そういったものも実は専修学校と同様に設置をされているところでございます。

 専修学校とちょっと違うところは、入学資格そのものが法律上は規定をされておりません。したがいまして、実は、各種学校の中では、小学生、中学生、あるいは六十代、五十代というような人たちも学んでいるというところでございます。

 私どもの団体でございますが、全国専修学校各種学校総連合会、専修学校と各種学校の全国団体ということでございますけれども、各種学校の中の外国人学校に関しましては、実は私どもの会員校ではございません。したがいまして、きょうこれからお話しする中身につきましては、外国人学校に関してのコメントは控えさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほど御紹介しましたように、例えば調理師を養成する学科の場合には、入学資格が中卒以上で一年制の学科というようなものもございます。これは先ほど御紹介した高等専修学校の場合と全く同じでございます。そのほか、准看護、美容師、そういった学科も実は同様の形になっております。そのほか、服飾系の学校等につきましても中卒者を受け入れているところがございます。

 私ども団体の意見といたしましては、各種学校については余り議論はされていないというふうに伺っておりますけれども、各種学校につきましても、一定の要件を満たしている場合につきましてはこの就学支援金の対象としていただく方法はないだろうかというふうに考えております。

 特に外国人学校につきましては、各種学校の中でも対象となる可能性があるというふうに伺っているところでございますけれども、義務教育終了後、引き続き高等学校に相当する学校の教育を受ける権利を保障するという観点からすれば、日本人が通う各種学校につきましても、例えば、設置認可の際に所轄庁に提出する学則等で中卒ということが入学資格として明記されていること、あるいは一年以上の課程であることといったような基準要件で、学校からの申請によって個別審査で対象としていただく道はないかというふうに考えているところでございます。

 どのぐらいの人数がその対象となる可能性があるかということですが、実は、文部科学省の学校基本調査の数字からでは、残念ながら把握することができません。私どもの各種学校の会員校の抽出調査でも正確な数字というのは全く出ないんですけれども、さほど大きな数字には恐らくならないのではないかなというふうに思っております。おおよそですけれども、数百名程度ではないかというふうに思っております。

 ぜひとも、各種学校もこの制度の対象にしていただければありがたいというふうに考えておるところでございます。

 以上、申し述べましたように、高等専修学校、専修学校の高等課程につきましては高等学校と同様の措置をしていただくということで、本当にありがたいというふうに考えております。あわせて、各種学校に関しましても、そういった観点で御配慮をお願いできればありがたい、このように考えております。

 以上でございます。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、倉橋参考人にお願いいたします。

倉橋参考人 初めまして。倉橋と申します。

 初めてこういう場に来るものですから、ちょっと緊張しております。私は、緊張するものですから、この台本に従ってお話をしようと思います。

 私は、倉橋徒夢と申します。学校法人イーエーエス伯人学校の理事長をしております。ブラジルのコミュニティーの中では、エスコーラ・アレグリア・デ・サベール、知ることの喜び学校というふうに呼ばれております。一九九五年、愛知県は豊田市保見団地で日系ブラジル人の方が始められて、現在で十五年を迎えます。教育理念は、大学進学及び日本語教育、これを理念として掲げ、やっております。

 現在、二〇一〇年三月の初め、私たちの学校で生徒数は、幼小中高合わせて約千名おります。ブラジル人学校全体では六千か七千名ぐらいの生徒がいるのではないかと思っております。私たちの学校は、静岡、愛知、三重、三県五校ございまして、高校生は五校合わせて百五十名程度おります。

 私たちの学校はAEBJ、在日ブラジル人学校協議会のメンバーであります。私は、自分の学校のことはよくわかるので自分の学校のことと、そしてAEBJの一員としてブラジル人学校全体のことをあわせて申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

 では次、一に行きまして、ブラジル人学校とは。

 ブラジル人学校というのが世間的に認知され始めたのが本当にここ最近のことなものですから、皆さんもまだブラジル人学校というのがどんなものだろうと余り御存じないかと思います。ですので、簡単に御説明申し上げます。

 一つ目、無認可校というのがございます。これは、日本の政府にもブラジルの政府にも認可をいただいていない学校、いわゆる託児所が主です。小規模なものが主でして、生徒数も三名とか五名の、本当におばちゃん一人が自宅で子供の面倒を見る、そういう学校が多いです。また、中には、最近設立したばかりで、今ブラジルの政府の認可申請をしている途中だよという学校も含まれます。いずれにせよ、小規模の学校です。

 そして二つ目、認可校。これが数としては一番多いです。ブラジルの政府から認可をもらった学校。小規模から大規模まで。生徒数としては、五十名から、現在ですと三百名程度までの学校がございます。主に小中を対象としている学校が多いです。ブラジル人学校の中で高校課程までを持つ学校というのは、実は余り多くありません。

 そして三番目、各種学校。各都道府県から各種学校の認可をもらった学校で、かつブラジル政府からの認可を持っている。近年、愛知、静岡、そしてほか一部の県で、外国人学校、ブラジル人学校が各種学校になるための認可基準というのが緩和されまして、ぼちぼちと各種学校になるブラジル人学校がふえております。

 現在、私が把握している限りで、三重県に二校、愛知県に四校、静岡県に一校、群馬県に一校。また、静岡県ではほかにペルー人学校も一つありますので、南米系学校というくくりにしますと今日本全国で十校、次の四月になりますと十一校もしくは十二校にふえるというふうに聞いております。

 各種学校は一つポイントがありまして、生徒数が比較的多いということ。中規模校から大規模校。大体百二、三十から三百程度の学校が多いということです。そして、各種学校になったからには、必ずその経営に日本の方がどなたか関係されている場合が非常に多いです。なかなか在日ブラジル人の方が事務手続等はできないものですから、各種学校になるということは、財政基盤もしっかりしているし、かつ経営に日本人がかかわっていて日本のこともよくわかっている、そういう学校が多いです。

 そしてまた、この一、二、三とは別に、一部のブラジル人学校及びインターナショナルスクールには、その学校の高校生相当年度を卒業したら日本の大学へ進学を認めますよ、そういうふうに一部認められている学校もございます。

 そして次、注に行きまして、ブラジルの学制ということで、少しブラジルの学校制度のことをお話しさせてください。

 ブラジルの学制は日本と同じ、義務教育が九年間です。これは小一から小五まで小学校が五年間、そして中一から中四まで中学校が四年間、合計、義務教育は九年間です。その上に、高校生が三年間及び大学が四年間、もしくは中には三年間というところもございます。ですので、日本の学制に相当しております。

 あと、ブラジルの学校に行っていた生徒に関しては、すべて、ブラジルの政府の要請で学歴証明書というものを出さなければいけません。これは日本の通信簿を何枚も重ねたようなものでして、例えば、小学校一年生のときはどこの学校で勉強したか、学校名そしてその学校の成績及び出席率というのが年次ごとに載っている表です。これは生徒に所属する書類で、生徒が転校とか、もしくは引っ越しの際にその学校へ出すと、ああ、君はこの学校でここまでやったんだね、では次はうちの学校でここからやろうか、そういうふうになる書類がございます。

 そして、次は日本の学制との大きな違いなんですが、一番大きな違いというのが、ブラジル人学校は二月が新学期、二月から新学年ということ、そして十二月末で学年が終わるということです。一月は、向こうは南半球ですので夏休みだということになります。その夏休みも、成績が悪い子の中には進学のために補習授業を受けて勉強する方もいます。

 そして、違いの二つ目、それは留年制度があるということです。学力が身につかなかった、つまりテストで赤点をとってしまった場合、もしくは出席率が規定に満たなかった場合、これは小学校一年生でも二年生でも留年をします。

 そしてまた、日本の学校と大きく違う点、三点目なんですが、これは午前のみ、もしくは午後のみの四時間もしくは五時間程度の学校が多いということです。ブラジル本国の学校が午前、午後、夜と三部制をとっているということで、日本に来てもそれと同じようにやっていこうということでやっております。

 以上が、ブラジルの学制です。

 そして次、二番目、ブラジル人学校の役割というところへ進ませていただきます。

 ブラジル人学校というのは、在日ブラジル人のための母国教育を受け持つ学校です。ブラジル教育省のカリキュラムに基づいて教育を行っています。学科については、国語、算数、理科、社会、スペイン語、ほぼ日本の学科と相当するものがございます。ですから、大体海外の日本人学校と同様の役割を果たすものというふうに御理解いただいて構わないかなと思います。ですから、ブラジル人学校はブラジル人をつくっています。将来的にブラジルへ帰国するであろう保護者の子供を教育しています。学校は文化的再生産の機構だと考えておりますので、日本の学校へ通う子供が日本人になるように、ブラジル人学校へ通う子供はブラジル人になります。

 個人的には、在日ブラジル人というのは、実は言葉として非常に否定的なイメージを持つものですから、私たちは、子供を在日ブラジル人ではなくてブラジル人にしたい、そういうふうに思っております。ブラジル人学校が今までやってこられたのは、日本に来ていたブラジルの人が出稼ぎであり、将来的には母国へ帰るだろうと思ってこの学校を選んでいたことが挙げられるのではないかなと思います。また、一つ目として、ブラジル人学校というのは、将来ブラジルへ帰る子弟を預かる、これが第一義です。

 そしてまた、第二義として、現在では、日本の学校に適応できない子供の受け皿となっていることにも御注目いただきたいと思います。ポルトガル語と日本語の言語間の距離が非常に大きい、離れているということ、ですから子供たちが、大人もそうですけれども、非常に習得に困難、そして日本とブラジルの文化的な差異というのが子供たちに適応を難しくしている。

 簡単に言えば、日本の学校の子供たちというのは、周りの子供を見て、ほにゃほにゃちゃんがこうやっているから私もそうしようとか、ほにゃほにゃ君と一緒がいいやとか、こういうことが行動の一つの判断基準になるんですが、ブラジル人学校では自分がやりたいようにやれという形で、ちょっと違うんですね。ですから、結構日本の学校からうちへ転校してくる子だと、初めはちょっときょどきょどして周りをよく見て、周りに合わせようとするんですが、徐々になれてきて自分がやりたいようにやる。転校生なんかを見ていると、ああ、こういうところが違うんだなというのがよくわかります。

 そして、私たちの学校、浜松校、豊橋校を対象に二〇〇八年、保護者にアンケートを行ったところ、ブラジル人学校をなぜ選んだか、理由の一位が将来ブラジルへ帰国するから、七〇%。そして第二位が日本の学校でうまくいかなかったから、これが二五%。これは本音を申しますと、日本の学校でいじめに遭ったからというのが二五%です。

 いじめというのは、多分皆さんの想像するいじめではありません。一言で言えば、これは疎外感だと思います。自分が言葉がしゃべれない、友達ができない、先生の言っていることがわからない、何で僕は今ここに座っているのかわからないというところから、やはり寂しさ、子供ですから、寂しさというのは周りが悪いということになってしまいがちです。ですので、そういう意味で、広義的な孤立感というか疎外感というか、うまく適応できない自分へのいら立ちも含めて、この数字になっていると思っております。

 そして、現在では、ブラジル人学校は、日本の学校には適応できない、もしくは日本の学校を続けることで非常に不利益をこうむる可能性が高いという子供も預かることも多くなりました。また、ブラジル人学校へ通わせ、大学進学時点で母国へ帰ると思っていた家族が日本で就職し、大学進学を後回ししているケースも非常に多いです。さらに、日本の学校にはない独自のサービス、送迎、延長保育、休日保育などが必要だと考える方もいて、それがブラジル人学校を選ぶ理由にもなっております。一つ日本の学制の枠の外に今までありながら、子供たちの教育をする学校として機能していたことは評価をいただければと思います。

 さらに続けます。

 ブラジル人学校に通うブラジル人子弟も大半は将来ブラジルに帰るでしょうが、日本に親しみを持ち、また中には、日本で一生涯生活の糧を得ることを望む者もあると思います。しかし、現状では、ブラジル人でありながら日本の学校に行っていたとしても、労働可能年齢に達した子供で必要最低限のレベルを持たない子供も多数存在します。これは、現在二十歳前後の子に非常に多く見られることなんですが、まず日本語が中途半端。会話は一応できる程度、意思疎通は図れるというレベル。漢字、平仮名、多少は読める、書けない。ポルトガル語、ある程度意思疎通はできる。ですから、日本語もいまいち、ポルトガル語もいまいち、算数は私わからないという子供が実は結構多いんです。

 私、職業柄、面接をよくやるんですが、特に二十歳内外の子に一番こういう傾向が多く見られます。小学校の途中までブラジルにいてブラジルの学校へ通っていた、そして一九九〇年代の出稼ぎブームに乗って日本へやってきた、そこからは日本の学校にずっと行っているという子に多くこの傾向が見られます。ただ、これは子供のことですので、あくまでもこれは一例であります。全体として見るとこういう子が多いというだけで、中には日本語も堪能、ポルトガル語も非常に堪能という方も多数いらっしゃるというのは、ちょっと強く言いたいと思います。

 では、続けます。

 いずれにせよ、ブラジル人学校の月謝は高額です。通わせる保護者の方々にはそれなりの事情があり、収入の大きな部分を占める月謝を支払わなければならない理由があります。敷衍して言えば、その理由があるにもかかわらず、収入の十分でない家族は自宅待機を選択する可能性があります。AEBJの調査でも、二千六百八十八人、これは退学者です、ブラジル人学校をやめた生徒の一〇・五%に当たる二百八十三名が自宅待機となっております。この数字は調査対象のブラジル人学校からはじき出された数字ですので、実際の数字はAEBJの非加盟校もしくは回答を留保した学校、日本の学校からの退学者も合わせますので、大きな数の子供が現在でも自宅待機である可能性が高いと考えております。

 三番、二〇〇九年ブラジル人学校の現状、これはAEBJの調査で明らかになったことです。

 二〇〇九年のブラジル人学校を取り巻く環境は非常に厳しいものでした。二〇〇八年までは、学校間の競争、日本の公立学校へ通う子供の増加等のマイナス要因も、出稼ぎの増加に助けられてブラジル人学校は運営をしてこられました。しかし、二〇〇八年の十二月から二〇〇九年の三月まで、非常に日本の経済が急激に悪化したときに時を同じくして、ブラジル人の在籍生徒も約六〇%減りましたし、また十六校のブラジル人学校、一九%に相当するブラジル人学校は閉校しました。ここで一つ大きなあらしにブラジル人学校はまみれました。

 そして、四番目、二〇一〇年ブラジル人学校の展望ですが、ブラジル人学校を取り巻く環境は、ことしもより悪くなる、もしくは変わらないと答える方が多いようです。在日ブラジル人はその仕事のほとんどが派遣労働者、特に工場労働者になっておりますので、派遣会社の働き口が少ない現状では、まだまだ保護者の収入は安定することはないと思います。

 最後、五番、提言です。

 以上見てきましたように、伯人学校、ブラジル人学校なんですが、ブラジル人学校は日本の学制と非常に対応している、日本の学校の高等学校に当たるものがブラジル人学校にはあります。ですので、まず一つ、私たちを高等学校の課程に類する課程の生徒として位置づけていただきたいという願いがあります。

 ブラジル人学校の立場からいえば、高校無償化法案は非常に必要です。リーマン・ショックに端を発した世界同時不況で、在日ブラジル人の失業率は一時五〇%以上まで上昇しました。収入のない保護者は子供をブラジル人学校へ通わせることはできません。ブラジル人学校全体で六〇%近い子供が退学をしました。彼らの多くは現在ではブラジルへ帰りましたが、一部不就学、自宅待機の子供がおります。私たちの学校でも、先月新学期が始まりましたけれども、新規入校者のうち、やはり二〇〇九年、一年間ちょっと家でぶらぶらしていたよという子が少なくない数でおります。

 文部科学省はこの現状を重く受けとめ、二〇〇九年秋ごろから、定住外国人の子供の就学支援事業を行ってくださいました。これによって不就学の子供たちは非常に助かりました。しかし、この事業も、二〇一〇年度からは高校生に相当する学年は対象外となります。予算の計上をしてはいけなくなります。ですので、義務教育年齢の不就学の子たち、教育の機会を奪われている子たちはこの文科省の事業で助けられます。しかし、高校生以上の年齢で学校に行きたくても行けない子に今差し伸べる手は余りありません。

 ブラジル人学校内での高校進学率は今まで五〇%ぐらいでした。二〇〇八年までは徐々に増加を続けてきました。しかし、本年度は四〇%に減少しました。一〇%の減少。余り減っていないかなと思われるかもわかりませんけれども、進学しない理由が例年とは変わっていました。例年であれば、就職が主な理由でした。二〇〇八年以前当時は人手不足ですから、若かろうが何だろうが仕事はあったんです。子供たちもすぐ派遣会社に仕事を見つけてそっちに行っていた。高校を出て十八の子が、高校を出ずに十六の子が、手取りで多数の、お小遣いの何十倍のお金をもらえる、ちょっと魅力的です。ですので、就職というのがやはり高校進学をしない一番の理由だったんですが、現在は経済的な理由というのが一番多いです。じゃ、何するのと言うと、お父さんが仕事見つかったら戻ってくるよとか、お母さんが仕事見つかったら戻ってくるよとか、私ちょっとバイトを見つけてそれから戻ってくるよとか、つまりそういうことですね。また、ちょっとうちお金がないから私通えないのとか、そういうケースが非常に多いです。

 子供たちは、アルバイトを見つけたらとかお父さんが仕事を見つけたら戻ってくると言いますけれども、なかなか今の段階でお父さん、お母さんが納得のいく仕事を見つけることは非常に難しいものですから、その子供たちが、では学校に戻ってくると言っても、本当に戻ってくるのか心配しております。

 子供たち本人も、私、高校は出たいんだけれども、大学に行きたいんだけれどもという夢は持っております。今までずっと勉強していて、何で高校二年生、次三年生になったら私やめなきゃいけないのと言う子もいます。そういう子にとっても、うちお金がないからというのは、もうどうしようもないということで受けとめられております。

 そして、この高校無償化法案なんですが、確実に彼らの背中を学校へと押し戻してくれますし、また、彼らが学校から背中を向けることを防いでくれます。月額一万円から二万円、私たちの学校では月謝の二五%から五〇%に相当します。ほかのブラジル人学校ではもう少し高い率になるかと思います。ですので、教育の機会均等という観点からも、すべての子供が安心して勉強を受けられる、そういう取り組み、そういう取り計らいがブラジル人学校にもぜひ必要で、ここにお願いを申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 ただいま、高校無償化法案に関しまして三人の参考人から意見を拝聴いたしました。それぞれが重い意見でございまして、十五分間といいながら、その中に込められた情報というものは余りにも多く、また私たちの肩に重くのしかかっているようなテーマであると思っております。

 しかしながら、時間の関係から、今お三方に意見陳述していただきましたけれども、本来それは二つに分かれるべきものではないかと思っております。

 一つは、例えば私学の問題でございまして、ここでのテーマは、公教育か私教育かということで、言うなれば代替関係といいますか、AかBかというところの選択の問題というのが深くかかわっていることだと思っております。

 もう一つの問題というのは、むしろ補完関係にありまして、今の日本の公制度、公的な教育制度というものが現在の環境変化に耐えられなくなってきている、あるいはそこにほころびがある、制度疲労を起こしている、そういうところに、それを救うために、あるいはそれを補完するために存在している各種学校の存在、そしてそこには外国人学校も入るわけですが、そうしたテーマがやはり大きな問題として私たちの前に立ちふさがっているわけでございます。

 そういうことを前提にいたしまして、高校無償化法案に関しまして、ただいまの三人の参考人に対して質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、最初のテーマでございました私立学校の立場でございますけれども、吉田参考人から、この無償化は、例えば公立高校であれば、それは授業料を徴収しないということでその行政コスト、管理コストというのは非常に低いかもしれないけれども、私学においてはそれが非常に大きくて、ある意味で私学経営にも大きな影響を与えている、そういう話がございました。

 そのことはごもっともと思いますけれども、そこでお聞きしたいんですが、このように公的な支援が高まってくる、また公的な補助が強まっていくということと、一方で、私学の基本でございます、やはり私学の経営、私学の存立理念というところを、一体どのところまでで線引きをしたらいいと思うのか。例えばそういうふうに、この無償化に関しましても、これによってさまざまなことをむしろ公的な機関が代行するようになる、あるいは直接するようになれば、それだけずっと学校の内部に公的な影響力が強まってくるということが当然予想されるわけですが、そういうことをお望みなのか、そうではないのか、あるいはそこにどの程度に線を引きたいのか。そこのところを教えていただきたいと思います。

吉田参考人 ただいまの御質問でございますけれども、私ども一つ理解できませんのは、今回の法案というのはあくまでも保護者に対する授業料の軽減の問題でございまして、学校に対する経費の問題、経常費の問題ではないと思っております。ですから、今の段階においては、私ども私立学校は私立学校の特色ある教育を実施するための授業料を徴収する、そして国からの経常費補助金をいただく、それによって学校教育を行っていくということでございますので、何ら影響はないんじゃないかというふうに考えております。

首藤委員 ありがとうございました。

 それでは吉田参考人、実際の教育現場の立場からこの問題についてお話をお聞きしたいんですが、吉田参考人はもちろん学校を運営されておられまして、吉田参考人の運営されている学校のホームページなどを拝見いたしますと、海外子女教育を大変長い間受け入れておられてそのプログラムが充実していると思っているんですが、その帰国子女プログラムは今どのような限界を持っているのか。例えばそういうところから、帰国子女問題というのは昔から、かなり以前からありますけれども、必ずしも十分ではなくて、一部の帰国子女がタレントなんかになってもてはやされる一方、多くの皆さんが結局は学校をやめていったり、あるいはそれを救っているものとして技術連携校があったりサポート校があったりするという現実があると思うんですね。

 ですから、吉田参考人の立場というのはある意味で後の各種学校の問題とも関係していると思いますので、そうした国際化に対応する現在の高校の姿というところから、御意見がございましたら陳述していただきたいと思います。

吉田参考人 今の国際教育という部分でございますけれども、私ども、帰国子女の生徒というものは、まず第一に何を考えているかというと、私は大きい言い方をすれば国の犠牲者と思っています。日本の国のためにお父様、お母様たちが働く、そのために海外に転住する、子供たちも一家転住ということで移っていく、そしてそこでの教育を受けざるを得ないということで、日本に一人で残るということは当然できないわけですから、ある意味でいえば犠牲者である。その子供たちに我々が何ができるかということを長年考えてきたわけです。

 そういう中で、私立学校といいましても、いろいろな学校がございます。帰国子女専門でやれるような学校もあるかもしれません。しかし、私どものような一般的な学校におきましては、帰国生というものを一つの特別扱いする部分と一般的な普通の教育を与える部分、その二つをうまく併合させなければいけない。

 そうすると、その特別な部分というのは何かといいますと、海外で長い間生活してきたために日本の学校文化というものに合っていない部分もありましょう。それから、英語はできるかもしれない、ただ語学はいいかもしれませんけれども、例えば数学とか国語とかで欠けている部分がある、そうすると、それをほかの生徒とは違った部分でいかにプラスアルファでその子供たち一人一人に対応してあげられるか。私は、それが私立学校のある意味フレキシビリティーだと思っています。

 ですから、通常の授業は授業として、その分放課後とかそういうところで担当者が個別にフォローしてあげる、そしてそういう生活をしている中で子供がだんだんと帰国子女という特殊な部分から一般的な生徒と同じように変わっていく、そういうことを個別にやっていけるような、そういうフレキシビリティーを持てるというのが私立学校のある意味よさだと私は思います。

 どうしても公立学校ですと、法律とまでは言いませんけれども、教育委員会等の一つの流れがあって、その枠の中でしか教育ができない。それを、私立学校はその枠を外して教育をさせていただける、その中で子供たちにいい教育をして、現実問題として、今帰国子女というものに対しましては大学等も大変大きな配慮が出てきたのも事実でございます。そういう中で、帰国子女というある意味犠牲者でありながら別の意味では特権になる部分、それをうまく利用しながら、子供たちがよりよき将来に向けて自分の将来の夢や希望を実現するために道を築いてあげる、それが私どもの教育だという気持ちでやっております。

首藤委員 吉田参考人、ありがとうございました。

 それでは、各種学校の問題について話をお聞きしたいと思いますが、各種学校は明治十二年の教育令に、学校を小、中、大、師範学校、専門学校、そのほか各種学校とすると規定しているところにその根拠があるわけでございまして、また昭和二十二年制定の学校教育法にもその定義がございます。

 しかし、今これほど各種学校の存在が私たちの教育において重要視されるようになったことは、我々の想像しなかった規模になってきていると思うんですが、一つは高齢化社会ということで高齢の方も含めて、あるいは家庭で子供の養育をしていて、そうした方がまた産業界に戻ってくる、そういうニーズもあるわけですけれども、現実に一つ問題となってきているのは、正規の教育制度、特に高校教育などのレベルの、義務教育と実際の職業との間をつなぐ段階での公的な教育制度というものは現実の社会変化に対応できていないというようなことがあり、それが現実のニーズとつなぐ役割を持っている各種学校にその存在価値が出てきたんだと思うわけでございます。

 私は、この各種学校の問題に関しましては、各種学校という一くくりではなく、これはもう再定義化、リディフィニションを行って、そろばんや自動車学校のような単一の技能を習得する機関と、技能連携校、サポート校、国際学校のように明らかに教育機関の外郭というような、あるいは周縁というような、社会変化に応じて拡大している機関を、例えば教育補完校のような名称できちっとカテゴリーづけしてやるべき時期に来ているんだと思うわけでございます。

 そういうことで、各種学校というのは今物すごい勢いでふえておりますけれども、一方、現実にニーズがふえておきながらこの不況において各種学校が大変な経営的な状況に陥っている、またそれよりも何よりも、各種学校に行く生徒が大変減っているということがあります。若者がよく利用するいわゆる2ちゃんねるなどを見ますと、各種学校、自分の通っている学校に対する恨みつらみを含めまして、こうした機関に対しての大変なクレームがついておりまして、本当に職業教育になっているのか、本当に大学へ行けるのかということも含めて、さまざまな問題を抱えておりまして、そこに菊田参考人のコメントなんかもいつも載っております。

 そこでお聞きしたいわけでございますけれども、こういう状況の中で、今の各種学校全体の状況というのは本当に今の若者のニーズに対応できているのかどうか、その根本的なところを菊田参考人にお聞きしたいと思います。

菊田参考人 今御質問がございましたけれども、恐らく各種学校の制度のお話というよりは、私どもの専修学校と各種学校の制度というお話だろうというふうに思っております。特に、例えば2ちゃんねるのお話もありましたけれども、そういったところでのいろいろ御批判を受けている部分につきましては、各種学校にとどまらず、いわゆる専修学校、特に冒頭で御案内を申し上げましたとおり、専門学校の部分が多かろうというふうに思っております。

 私どもといたしましては、今の日本の職業教育が果たしてこれでいいのかというような問題意識は非常に常々持っております。例えば、きょうは高校無償化のお話でございますので後期中等教育のお話が中心になろうかと思いますけれども、今の御質問で申し上げれば、高等教育の部分も職業教育という意味で申し上げれば、非常に危機的な状況になっているのではないかなというふうに考えております。大学に進学する進学率が非常に高くなって、大学がひとり勝ちというのが言ってみれば高等教育の現状だろうというふうに思っておりますけれども、一方で、先ほど御指摘がありましたように、学校教育から社会、職業というところに接続をしていく形が果たしてスムーズにいっているのかどうかというところは、非常に大きな問題だろうというふうに思っております。

 そういう中で、特に専修学校の中の高等課程もそうですし、専門課程もそうですけれども、専修学校としてやってきたことというのは、職業というものを通じて社会にアプローチしていける教育ということでやっているわけで、非常に実践的である、論理から入るよりも先にまず実践から入るというようなところがいわゆる普通教育と違うところだろうというふうに思っております。そういった教育をすることができるというところが言ってみれば専修学校の制度だろうというふうに思っておりますし、その専修学校の制度の母体となった各種学校の制度だろうというふうに思っております。職業教育の観点で申し上げれば、そういった専修学校あるいは各種学校の職業教育を担う部分、ここのところを学校教育全体としてどう考えていくのかということが非常に大きなテーマであるというふうに思っております。

 今文部科学省の中で、キャリア教育・職業教育特別部会というのが中央教育審議会の中に設置されて議論をされているところでございますけれども、その中で議論されていることがまさに今御指摘のあった大きなお話ということだろうというふうに認識をしております。

 当然、専修学校、各種学校としては、今後も社会情勢に合わせたニーズの高い教育というものをやっていく必要があると思っておりますけれども、一方で、やはりなかなか難しい問題というのもございます。

 先ほどありましたように、特に後期中等教育で申し上げれば、すぐに技術教育というところにいかない部分ですね、サポート校というお話もございました。専修学校の高等課程の中にも、技能連携校と言われるようなところもございます。これは、高等学校の卒業資格が必要であるというような部分もございまして、ニーズに合わせてやっているというところがありますし、サポート校として成り立っている部分というのは、やはりこれだけ高等学校への進学率が高い状況があるという中で、高等学校の卒業資格がどうしても必要だという感覚というのは十分にあるというふうに思っておりますけれども、一方で、やはり高等専修学校の大学入学資格付与指定校というような制度があるわけで、こういったものも十分活用していただくという方法があろうかなというふうに思っております。

 以上です。

首藤委員 菊田参考人、どうもありがとうございました。

 技能連携校やサポート校も含めて、今の高校のさまざまな制度的な欠陥というのをやはりこれからしっかりと支えていく必要があるということがよくわかりました。

 最後に、時間もなくなってまいりましたので、ブラジル人学校についてお聞きしたいわけでございます。

 ただいまのお話の中で、ブラジル人学校というものがあることによって、ブラジルの子女であって、しかし日本で将来をつくっていきたい、日本の学校に行って、日本の高校へ行って、日本の大学を出て、日本の企業で働いて、それは後でブラジルで活躍するか世界で活躍するかは別として、これからは新しい日本人として生きていこうというブラジル人の方もたくさんおられる、しかし、現実には今の高校の中からはじき出されてしまって、結局それを救っているのがブラジル人学校だという話がございました。

 そうすると、ブラジル人学校は、先ほどのちょうど技能連携校やあるいはサポート校と同じように、ある意味では、日本の高校教育の制度をブラジル人学校が支えている面も一部あるというふうに御自覚されておられますか。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。

 ブラジル人学校が日本の高等教育を支えているかというと、正直に申しまして、その貢献度はそれほど高くないと思います。

 なぜならば、日本の高校に入る子供は、日本の小中と行っていた子がほとんどだと思います。そうしたときに、日本の小中、そして高まで行くということは、もう日本人としてこの家族は生きていくんだと決めていることだと思いますので、そうすると、私たちはブラジル人をつくる、でもその生徒は日本人になりたいということで、そこですみ分けが発生します。

 ただ、日本の高校に通っていたとしても、やはりその保護者は派遣労働者の方が多いものですから、私たちの生徒とひとしくこの不況の影響を受けていらっしゃると思いますので、退学者も多いかなと思います。

 済みません、こんなところでよろしくお願いします。

首藤委員 今のことを一つ確認したいわけですけれども、そうすると、ブラジル人学校というのは、テンポラリーな、今の、例えば自動車工業が日本ですごくブームで、たくさん労働者が来てやがてみんな帰ってしまう、だからそのための、テンポラリーなそうした状況というものを救うためにだけあるとお考えなのか。あるいは、これは日本の今世界で起こっているグローバル化の一環であって、やがてBRICsと言われるようにブラジルが大発展していって日本との経済関係も深まっていく、そういうところで、これは今までの定義にない、日本とブラジルの間の高校生レベルの若者たちをしっかりと育てていく機関だと御認識ですか。どちらでしょうか。

倉橋参考人 ブラジル人学校がテンポラリーなものかどうか。当初は、テンポラリーなものだと思って設立された方が多いと思いますが、現状では、テンポラリーではなく、日本に必要なものとなっていると思います。

 ただ、それは、日本の製造業がまた再び活気を取り戻すということが一つ条件としてあるんですけれども、ブラジルの人に限らず、海外の労働力が日本に流入してくること、これは今後も続くと思いますし、その中で、やはり在日ブラジル人というのは一つの大きい部分を担っています。ですので、今後ともブラジル人学校というのは非常に安定して進んでいくものだと思います。海外の例で見ても、例えば、ある特定の地域の移民を大量に受け入れた国になりますと、その受け入れた国の現地の学校が続いているという事例もございます。これがまず一つ目です。

 もう一つ目。高校生に関することなんですけれども、私たちの学校に通っている高校生、これは小中学生もそうなんですけれども、日本とブラジルの、日伯両国のかけ橋となるような人材になってほしいというふうに私たちは願っております。そのための教育理念、そのための大学進学であり、日本語教育なんです。今日本にいるということは彼らにとってはマイナスにはしたくないんですよ。日本にいるというこの地域の特殊性というのは、彼らにとって、とらえ方を変えれば、努力次第で有利に変わることだと思うんです。日本語、つまり全く語学体系の違った語学を理解する機会でもあり、かつ、まだブラジルよりは日本の方がGDPも大きいですし、日本からブラジルへ進出している企業も非常に多い。その中で日本語ができるということは、彼らの今後のキャリア形成にとって実は非常に重要なんじゃないかと思います。

 ですから、その意味で、私たちの生徒に関しては一生懸命勉強してほしいですし、また、そのように指導しています。また同様に、日本の学校に行っている生徒とともに交流をして、互いに高め合っていく場というのは非常に必要だと感じております。

 ありがとうございます。

首藤委員 最後の質問になりますけれども、やはりブラジル人学校に関して、ブラジル人学校は、日本の中で外国人学校としては最も新しく、急成長して、ともかく時代の要請にこたえなきゃいけないということでスタートしてきたと思うんです。今、古くから日本にある、言うなれば明治からずっとあるさまざまな形での外国人学校、ドイツ人学校もそうですし、それからフランス人の学校もあれば、アメリカの学校もありますね、アメリカンスクールもある。最近ではインドやトルコの学校もあって、日本人のお母さんも、数学の能力を高めようというのでインド人学校に子供を送ったりするわけです。こういうところは、言うなれば長い間歴史があるがゆえに、ある意味で本国の政策との差とか、あるいは本国と日本との国際関係とか、必ずしもよくなかった時期もあり、教育理念がすごくしっかりしていると思うんですよね。

 その意味で、今聞いた限りでは、ニーズに対応しているブラジル人学校の努力というのは本当にホームページの一ページ、一ページから感じられるんですけれども、では、そうしたいろいろな国際関係の中で子供たちをどう育てていくという外国人学校としての教育理念というのは確立しているのか、あるいはこれから確立させようとしているのか、そこのところをお聞きしたいと思います。

倉橋参考人 教育理念というのは学校ごとにございます。ですので、ブラジル人学校全体で一つの確固たる理念を共有しているかといえば、そうではないというのが現状です。

 ただ、現在、多くの学校が大学進学の重要性及び日本語教育の重要性をうたっているところから、私たちの理念である大学進学、日本語教育という理念に徐々に集約されていくのではないかと考えております。

 ありがとうございます。

首藤委員 ありがとうございました。

 日本の各種学校、外国人学校も含めてそうでございますけれども、きょうのヒアリングでも、今回対象となっている各種学校の問題というのは本当に日本の教育制度において重要な問題であって、これに対しては、高校の機能を補完する機関として高校無償化の対象とすると同時に、このような機関を新たな教育補完機関として法的にも位置づけるということが非常に重要だなと、改めて私個人は思ったわけでございます。

 そうした思いを含めまして、きょうの私の質問をこれで終えます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文でございます。

 三人の参考人の方々には、お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございました。

 財源さえ確保されて、また、これがきちっと今後も見通しがあるということであれば、方向性としては、国民にとっては望ましいことであることはそのとおりだと思います。しかし、実際、高校無償化法案を行うに当たって、画一的な平等あるいは公正ということで、結果的に不公正になったり、あるいは十二分に、ある部分だけ、つまり高校無償化だけが対象になって、それ以外が対象にならないことによって、逆に、専修学校、各種学校も含め、私立学校は特にそうですが、さらにその格差が広がっていくということになってしまうのではないかと私は非常に危惧をしております。

 無償化の方向について、行うのであれば、トータル的に、より公正公平な形でどうできるかという制度設計をしていかなければ、これは拙速になってしまって、かえって国民にとって不公平になる、そういう法案だというふうに思っております。

 お一人お一人お聞きしたいと思いますが、まず吉田参考人にお聞きしたいと思います。

 これは我々も、吉田参考人も今お話の中でおっしゃっておりましたが、やはり公私間格差が結果的に拡大するのではないか。文科大臣は、相当額の支援をするということで、拡大することにはつながらないというふうに答弁をしているんですが、しかし、公立高校は無償化、私立高校はその分が相当額は減額されますが、事実上、一対四から〇対三、ある意味では精神的にも、無限大に広がりますから、片っ方は本当にただ、片っ方は有料、こういうことになると、私立よりは公立高校に行かせたいと親としても思いますし、また、ぜひ公立高校をもっと拡充してほしい、こういうところが出てくるというふうに思うんですね。その公私の格差の問題。

 それから、やはりおっしゃっておりましたが、本来これは国によっての施策であるにもかかわらず、結果的には都道府県格差がさらに拡大していく可能性が非常にあります。都道府県が私学に対する就学支援や奨学金等の上乗せが財政的にできるかできないかということになってくることによって、どこに住んでいるかによって、同じ準義務教育化で国が行うといっても、結果的には格差が拡大するということになるわけでありまして、これについては、国が導入するのであれば、両方、より責任を持って対応していくということが求められるのではないかと思います。

 まず、そもそも、先ほど吉田参考人からお聞きして私は驚いたんですが、公立高校は機関的に補助する、私立高校の場合は生徒一人一人が署名、サインして手続をしなくちゃいけない。お聞きしてびっくりしたんですがね。そんな煩雑なことを実際どうさせるのか。

 それから、さらに、親の所得が二百五十万以下、三百五十万以下で、それぞれ就学支援金についてもプラスアルファ支援することになっていますけれども、これも父母から証明書等をもらわなければ対象にならないのではないかと思うんです。きょうは三月の九日ですよね。時間的に事務手続が、果たして四月一日から本当にできるのか。これは、私立高校にとっては相当無理なことをしろというふうに言っているとしか思えないんです。

 まず、事務手続的に、今どんな準備をされていて、果たして本当に四月一日からスタートを、現実的に、実際、各私立高校ができる体制があるのかどうか、率直なところをお聞きしたいと思います。

吉田参考人 ありがとうございます。

 それでは、まず、何点かございましたので、お答えさせていただきます。

 公私間格差の件でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、今先生もおっしゃっていただきましたけれども、やはりゼロになるということは、これは広がる一方になると思っております。ということは、つまり、今まで、公立学校の方に例えば新たな教育で経費がかかるということになれば、やはり公立学校の方も受益者負担という部分での授業料の値上げというものがございました。そういうことによって格差が縮まるということもあるわけですけれども、これからはゼロということでございますので。その一方で、私立学校につきましては、これも先ほど申し上げさせていただきましたけれども、経常費補助には限りがございます。そうすると、当然ながら、父母負担教育費がさらに拡大するということになるわけですので、この部分に関しましては、どうやっても今の状態では解決されないのではないか、逆に広がるのではないかという危惧をしていることは事実でございます。

 さらには、それがまた都道府県格差という問題でございますけれども、現実に今、現状の、国とそれから地方交付税によります私学助成につきましても、先生方御承知のように、都道府県によって大きな格差がございます。それによりまして、例えば東京を中心として考えれば、東京のすぐお隣である神奈川とか千葉が財源措置額を下回っているとか、それこそ、そういう大きな違いがあって、同じ首都圏にありながら隣同士で大きく違うというのがあるわけですが、これからは授業料の支援についても、今回、九千九百円、十一万八千八百円が基本的に全員に出る、そしてそういう中で、二百五十万以下、三百五十万に対して上乗せがある。そうすると、それに対し、今度はさらに、各都道府県で今まで行っておりました、就学支援というよりも授業料軽減補助制度というのがございましたが、それを例えば上乗せしていっていただける県もあるし、逆に、今度のこの制度のおかげでそれを出さないで済んだという県もあるようでございます。

 ただ、現実に、まだこの法律案自体が正式に通っていないわけでございますので、その辺のことは、それこそ四月以降にならなければ各都道府県わからないという状況じゃないかと思います。

 ただ、私ども、やはり一番心配しておりますのは、その県に住んでいる子だったら同じ所得でもただで通える子がいる、しかし隣の県に行ったら、その子はそうやってただで通えないということがあるのは、やはり親が住居を変えなきゃいけないのか、住まいを変えなきゃいけないのかとか、そういうことによって教育を受けられなくなるということに対しては不安がございます。

 そういう意味でも、従前より私どもお願いしておりましたのは、国の責任として、子供たちに教育を受ける権利をしっかりと実行させてあげるためにも、都道府県に対する補助等につきましても、画一的なものでしっかりと国が基本を示していただき、それを実行していただきたいとお願いしていたわけでございますので、その部分については従来と変わらないんじゃないかなという気持ちがございます。

 それから、先生の方からございました、申請その他、四月一日から実行できるのかどうかというお話でございますが、今申し上げましたように、まだ、申請のやり方その他、文部科学省の方でも正式に決まっておりません。と申しますのは、法律案はできましたけれども、まだ省令その他がつくられる状況にはなっておりません。ということは、その次のステップであるところの各都道府県での今度は申請の方法その他につきましても、はっきり言って、案はつくれるかもしれませんけれども、それを外部に出せるという状態じゃないというようなお話を承っております。

 そういう中で、今我々心配しておりますのは、今の案として文科省から聞いたところによりますと、各都道府県が大体の概算数を国の方に申請する、そして私立学校の方は、四月の初めに、先ほど申し上げました申請書を生徒本人に記入させて、それを一覧表にまとめて、そして都道府県に提出する、それが四月の中旬ぐらいに戻ってきて初めて、認可されるか不認可かという決定がされる。それに基づいて、年に四回に分けて、四月、七月、十月、一月の四回に分けて国から都道府県に対して支援金が給付されるということだそうでございます。ですから、一回目は、四月の中旬に国から入った場合に、都道府県によっては四月の末までには入ってくるかもしれません。

 ただ、この時期も、実は、実際の実務は都道府県ということでございますので、たとえ文科省の方から都道府県に対してそういったお金が送金されたとしても、それをいつ支給しなきゃいけないというようなことは決定されているわけでもないですし、それを決めているわけでないそうでございます。

 私どもがやはり一番気になりますのは、国の方針としてこの支援をするのであれば、各都道府県に対して、責任が都道府県にあるのもわかるんですけれども、ぜひ国が責任をとっていただいて、はっきりと、何月何日までに各学校に渡すとか、それから申請は何月何日までにするとか、都道府県によって差異がないようにしていただきたいなと。つまり、こちらの県だったら、親が授業料を負担しなきゃいけないときにちょうど国から入ってきたために、その差額で相殺して払える県がある。ところが、こっちの県は、相殺したくても、国からというか都道府県から学校にお金が入ってこないために相殺ができない、そのために御父兄が負担しなきゃいけない。そういうような状況も出てきてしまうと思いますので、そういう意味での、私は、文部科学省の方でしっかりとしたリーダーシップをとって、都道府県に指示を出していただきたいというお願いをしているところでございます。

 それから、実際に、先生御承知ですけれども、私立学校の授業料の納付方法というのは学校によってそれぞれ違います。今現在、昨年、私どもが調べたところによりますと、毎月納入する学校が全体の五六・七%、そして、六期ですから二カ月ごと、六期に分けるところは一・二%と少ないです。それから、四期に分けるところ、三カ月ごとが一二・五%、そして三期に分ける、四カ月ごとが一九・一%で、大体これで八九・五%でございます。もちろん、前後期で五・七%、それから一括納入が一%ほどあるわけですけれども、それぞれそうやって違うわけですので、四回に分けて支給された場合のそのお金をどういうふうにしたらいいかとか、全くその部分がわかっておりません。

 私どもといたしましては、四月からこの制度をするということを言っていただけることはうれしいことだと思います。ただ、その申請や手続等につきましてはやはり慎重に判断していただいて、私どもの特に私立学校は公立学校と違って機関補助ではないわけでございますので、その部分において手続に誤りのないようにじっくり時間をかけ、そして所得制限の部分、二百五十万以下、三百五十万以下の皆さんに関しては課税証明をとらなければなりません。御承知のように、課税証明はその前の年度のが六月に出ます。今回の場合は、四月に申請をして、四月分、五月分については四月の課税証明で実施する。そして、六月にもう一度出して、今度、次の年の五月までの分を再度そこで審査するということになっております。

 ということは、そこで低所得の御父兄はさらに負担がふえ、そしてこの手続の、変な話ですけれども、申請書というか課税証明書というんですか、その費用負担の問題もございますし、今度、では各学校で本当に親がそれを出してくれるかどうか。今、御承知のように、個人情報の問題もありますし、私どもも父兄の所得というのははっきり言って皆目見当がつかないというか、調査することができません。実際問題として、今言われておりますのは、公立の上位校に通っている保護者の皆さんの方が所得が大きいと言われているような状況もございますので、ぜひその辺のところも慎重にしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

下村委員 お聞きしたいことは山ほどあるんですけれども、済みません、時間の関係で次に移りたいというふうに思います。

 いずれにしても、現段階においても私立高校の七割が定員割れをしておりますし、また、今の御指摘のように、例えば吉田先生の東京では、都立高校が十三万で私立高校は十七万、それも、相当近県から都内の私立高校に入学しているということで、都道府県の格差の問題、事務手続も含めて、相当の問題があるのではないかというふうに思います。

 次に、菊田参考人にお聞きしたいと思います。

 昭和六十年から大学入学資格が得られるようになったということで、今後、多様化教育の中で、厳しい経済状況であっても、しかし、ニーズとしては、方向性としてはこれから広がってくるのではないかというふうに思います。その中で、高校中退者が専修学校に入学をし直して大学受験をするという生徒もふえてくるのではないかと思いますが、これが今どれぐらいなのか。

 それから、今回の高校無償化法案については、トータルで三年間ということですから、例えば中途退学で入ったとしても、残りの年数、何年で中退したかによって支給される年数も限定しますね。これは相当混乱になってくるのではないかと思いますが、この中退者の率なり動向なり、あるいはこのことについて、つまり三年間の限度の支援ということについて現場としてどんなふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

菊田参考人 中退者をどれぐらい受け入れているのかという話なんですけれども、実は全国調査をすべてやっているわけではないんですけれども、入学者のうちの三%から四%程度ということになります。四百から五百という数字になろうかというふうに思います。中退者ももちろん受けているところでございますけれども、あと、ほかに既卒者という人たちも受けております。

 今後、こういった人たちを受け入れる素地がふえるかということについては、今申し上げました数字というのは、実は先生から今御質問があった、まさに大学入学資格を付与されているところはその程度なんですけれども、一方で、先ほど御案内申し上げましたように、一年課程とか二年課程のところもございます。そういったところにもたくさんの中退者、それから不登校経験者といった人たちが入ってきているという状況もございます。そういった人たちが、今後、既に高等学校の方でこの就学支援金を受けていた場合に、高等専修学校に入ってきたときにその期間が短くなるということは十分想定されるというふうに思っております。

 そこのところについては、個々人がきちんと履歴を学校の方に出すということになるんだろうというふうに思っておりますけれども、そのことと含めて、実は、先ほど吉田先生の方からお話がありました件なんですけれども、実は、一つ問題点がございまして、高等学校にいながら高等専修学校にいるという子、どちらかというと、高等専修学校にいながら通信制の高等学校にいる、先ほどお話がありました技能連携をやっているところにつきましては、文部科学省でつくられたQアンドAの中にも書いてあることなんですけれども、どちらかの、高等学校の方あるいは高等専修学校の方かで申請をするということになっております。高等専修学校の場合には、そういうどちらかを選ばなければいけないという選択肢がどうしても出てくる可能性が非常に多うございまして、そういう意味から申し上げると、今先生から御質問がありました、年次によって変わるだろうというお話とあわせて、そのあたりの煩雑さというのは、実は高等専修学校側では問題視をしているところでございます。

 そのことも含めて、私立の高等学校と同じように高等専修学校も対応していただくということになっておりますが、事務費といいますか事務に係る費用についても計上されているというふうにお聞きをしているところでございます。何とかその中で個別の学校としては対応していきたいというふうに考えているところでございます。

下村委員 特に菊田さんは専修学校各種学校総連合会事務局長というお立場ですから、吉田さんの私立学校以上に、省令で線引きをする、しかし、その省令でいまだにどこまでを線引きするかが決まっていないわけですから、本当に四月から対応していくということについて、現場の事務局長としては大変なお立場であるということを察し申し上げたいと思います。

 次に、倉橋参考人にお聞きしたいと思うんですが、確かに、高校部における相当額の授業料軽減策ということはありがたいことであるとは思いますが、先ほどもお話をお聞きして、ブラジル人学校全体から見たら、高校部というのは生徒からしてもごく一部なわけですね。

 本来、二〇〇九年に文科省が定住外国人の子供の就学支援事業を行っていて、それ以前から、日系ブラジル人の多いそれぞれの全国の自治体においてそれなりの自治体対応をしてきた部分はあったと思いますが、しかし、基本的に、日本に在住しているブラジル人の子供たちに対してトータル的にどう教育環境支援をするかということが問われるわけで、高校だけすればいいということにはならないと思いますし、それから、そもそもブラジル人学校においても、いずれブラジルに帰国するということを前提の子供が圧倒的に多いという話をお聞きしました。

 そういう部分で、これは無償化だけではありませんが、日本という国に対して、ブラジル人の子供に対して、これは小学校あるいはもっとそれ以前、幼児教育を含めて、本質的にどういうことについてもっと力を入れてほしいか、人的な部分を含めてお話をしていただければと思います。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に難しい質問なんですけれども、今回の高校の月謝が安くなるということについて、まず一つ私の方で意見を持っているのが、各自治体、特に集住地域の自治体からのブラジル人学校への支援というのはあります。ただ、それは自治体によって非常に差がある。そして、数としてはやはり小規模校の方が多いものですから、どちらかというとそちらに向きがち。かつまた、小学校、中学校の義務教育年齢をメーンにした支援がほとんど。ということで、今まで高校生を対象にした支援というのは余り思いつかないところでありますので、今回、この高校生にとっても、義務教育から外れても日本としてブラジル人子弟のことを考えてくださっているということで、まず非常にうれしく思っております。

 また、今のブラジル人学校の小中高含めたトータル的なことなんですけれども、先ほどお話にもありましたように、ブラジル人学校に通っていた子のほとんどはブラジルへ帰国する予定です。おっしゃるとおりです。ただ、ここで一つつけ加えておかなければいけないことは、現在、定住化が進んでいるということ。

 それはどういうことかといいますと、僕たちは将来ブラジルに帰って楽しい老後生活を送るんだ、将来ブラジルに帰るんだ、でも、それは二十年後、三十年後かもわからないことなんです。将来ブラジルへ帰るけれども、当面は日本にいるよ、子供が生まれた日本にいるよ、孫が生まれた日本にいるよということなものですから、ブラジル人学校としての対象となる生徒は今後ますますふえていく可能性は高いんですけれども、そうしたときに、今ブラジル人学校にとって一番弱い部分というのは、日本の社会とのかかわり方という部分が非常に弱いです。

 そこは各自治体さんもよく御理解していただいていて、一番基本的な日本語の部分に多大な支援、大きい支援をいただいていることがあります。ただそれは、日本語といっても、先ほど申し上げましたとおり、日本語習得が非常に困難であるということがまず一つあって、成果として上がっているかというと、もうちょっと欲しいなというのが正直なところ。

 もう一つ、こちらは喫緊の課題なんですけれども、中学校卒業時点もしくは高校卒業時点で、就職指導というのがブラジル人学校ではほとんどできていない。お父さん、お母さんの働いている派遣会社の友達から知り合って仕事を紹介してもらった場合がほとんどですので、日本の社会に今後適応していくためには、日本語教育が一番大事、そして就職支援、日本の中学校、高校のやっているような進路指導ですね、それがブラジル人学校にも非常に必要ではないかと考えております。

 以上、お答えになっているかわからないですけれども、よろしくお願い申し上げます。

下村委員 時間が来ましたので、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

田中委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 お三方には、現場からの大変いい情報をいただきまして、問題提起、私たちも、そうだったんだと納得したり、また、これは変えなければいけないのではないか、こうしなければいけないのではないか、そういうような思いを持ちましたこと、そのようなお話を伺いましたことを心から感謝いたしております。

 この委員会には、政務三役の政務官も出席していらっしゃいます。ですから、これをただ単に参考として聞くだけでなくて、それでは皆様方にせっかく来ていただいた意義がございませんから、その現場の声をしっかりと法案に、軌道修正しながら受け入れていただきたいと私は思っております。

 私は、すべての学びたい高校生が経済的理由によって学ぶことを断念しなければならない、そのような社会はいけないのだ、もっと自由に子供たちを学ばせてあげたい、そういう目的のために、高校生に光と希望を与え、二十一世紀の未来に活力を与えるための法案が不公平や不満、そして混乱を招いてはならないと強く願い、この新政権での第一歩の法案がいいものであってほしい、最善のものであってほしい、そう願っております。

 今、私もずっと気になりながら吉田参考人のお話を伺って、何で私立は機関支援でなくて個人なんだろうか。私、かつて、永住外国人が署名捺印しなければいけない、そのことで問題になったことをふと思い起こしたりいたしました。公立は機関でいいよ、私立は機関じゃいけないよ、個人申請だよということは何でなんだろうというふうにお考えになりますか。私は、在校生の人数だけしたらいいのではないか、そんなことをうそをつく私立学校というのはないと思うんですけれども、そのことを率直にどんなふうに考えていらっしゃいますか。

吉田参考人 全く先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも、公立学校はそのまま授業料が減免される、私立学校の場合は、少なくとも申請一つとっても、例えば在籍証明、私どもの学園の生徒であるという証明さえあればそれでできる方策もあるんじゃないかということで、今文科省の方にも再三申し上げているところでございます。

 と申しますのは、十五歳の子供がその申請書に署名するという意味をしっかりと教えて、それを説明してさせなければいけないと思っています、これは保護者でなくて本人でございますので。そのことを考えれば考えるほど、非常に難しいな、どうして私学だけはそうやってもらえるということを子供たちが申請しなきゃいけないのかというのは、いまだに疑問に思っているところでございます。

池坊委員 私も、なぜ私立だけなのか。

 私は、無償が当たり前だと高校生がすべて思うことがいいとは思っていないんですね。一生懸命大人が働いて税金を納めて、そしてあなた方はこうやって学ぶことができるのよと、この無償の意味をしっかりと知らすことは私は必要だというふうに思っております。ですから、証明書を書くときに、あなた方はこうした大人たちの力によって一部支援されているのよということがあってもいいとは思いますが、それなら公立でもするべきだと思うんですね。

 私立の学生にだけそれをして、公立はしなくていい。つまり、それならば、国は公立はしっかりと守っていきましょうと、公立と私立との間に何か差があるのではないかというふうに私は思えて、これはもう絶対にそうすべきである。これは、タッチしていらっしゃる方々にぜひ私は強く希望したいと思います。子供たちが、何で自分たちは署名するの、じゃ、公立学校の子は署名しているの、公立学校はしなくていいんだよ、どうして公立学校はしなくていいの、わかりません。わからないことを私はしてはならないというふうに思っているんです。

 個人の所得によって証明書を出さなければならないということに関しては、累進課税等でこれに対応することができるのではないかという意見書も私は読んだんですけれども、そのことに関してはどうお思いになりますか。先ほどおっしゃいましたように、これは公立、私立一緒のことだと思いますけれども、やはり個人情報等があって、親も、ああ、一・五倍もらいたいわ、二倍もらいたいわ、だけれどもそれをちょっと子供に持たせるのはとちゅうちょなさる方もあると思うんですね。このやり方等に対してはどのようにお思いですか。

吉田参考人 全くもうこれも先生おっしゃるとおりでございまして、私どもも、実際に、個人の所得というものを公表するということを父兄が嫌がるというのは事実だと思っております。

 これは東京のことで恐縮でございますけれども、東京都では今、授業料軽減補助制度というのがございますけれども、これがやはり、学校を経由することによって申し込みが少ないという部分も過去にございました。そんな関係で、東京都の場合は、今東京都が直接受けるというあれもできないので、東京都私学財団という外郭団体で、そこで一括して申し込みを受けております。そのおかげで、利用者の数は一気にふえました。

 そういう経験があるものですから、私ども最初から、今回のこの就学支援につきましては、できれば一万円の部分、全員に出る部分については、学校が代理受領をするわけですから学校の在籍証明で、そしてそのプラスアルファ、二百五十万以下、三百五十万以下の部分に関しては、直接都道府県なりもしくは都道府県のそういった団体にやっていただくようにする方がより合理的なのではないかということは、文部科学省に対してもずっと申し上げているところでございます。

池坊委員 先ほど、教育の中身というお話をなさいました。私も高校の歩むべき姿、高校はどうあるべきなのか、これからの子供たち、九八%高校に行っているよ、だから高校にみんな行くんだよ、高校に行く人たちには支援をするよというのは、私はちょっとおかしいのではないかなという気がしているんですね。

 これから国際社会の中で生きていくためには、多様な個性を持って、多様な生き方、価値観、それが問われていくと思います。ですから、これは政治家主導だそうですけれども、画一的な高校教育をみんなが、九八%受けた方がいいという考え方が、もしこれをおつくりになっている方にあるとしたならば、やはりそれは間違っているんじゃないか、方向がちょっと違うんじゃないかなという気がしております。

 教育の中身、これからいろいろな選択をする子供たちがいて当然だと思うんですね。私立というのはいろいろな形態があると思います。それこそ、富裕層な、この建学精神がいいからもう絶対にこれは入れるのだ、あるいはお父さんがこの学校に行っているから、お母さんがこの学校に行っているからという人もあれば、また時には、公立に行けなかったとか、公立の気風に合わない、校風に合わないでここに来たという子供たちもいる、そういう受け皿になっている私立の高校もたくさんございます。

 高校の中身ということに関してちょっとお触れになりましたので、そのことについて、これから特色化、個別化ということが、本来は私立だけじゃなく公立もそうでなければいけないと思うんですね。その点についてちょっと触れていただきたいと思います。

吉田参考人 その件につきましては、先ほども申し上げましたけれども、私は、各学校が特色化教育をするというのは必要だと思っております。

 公立高校の部分におきましても、現実に、既に、例えば英語教育を重視した学校とか、それからいろいろな種類の学校ができてきているのも先生御承知のようだと思いますが、にもかかわらず、今その部分においては受益者負担というものは全く平等になっております。その辺のところが、その教育を受ける内容によってやはり差があるのでなきゃ、義務教育ではないわけですので、高等学校においては私はその部分はあっていいのじゃないか。

 ですから、今まで私立学校というものがどうしてそういうふうに理解されていたかといえば、それは、公立高等学校の教育プラスアルファの部分、そこの部分に非常に大きなものがあったと思っております。その部分に対して保護者の皆さんがそれを負担していただく、そこに格差があった。それが、今度の法案によって公立高校すべて無償になりますが、そういう中でも、御承知のような、進路指導重点校だとか、それから芸術高校とか、実際に芸術をやっている学校なんかは生徒一人当たり二百万で済んでいないという学校も今まで十一万八千八百円、それが今度は無償になるわけですので、私立の芸術系の学校、音楽系の学校へ行ったりすれば当然年間百万円を超すという授業料になるわけですので、そういう部分を考えれば考えるほど、いい意味での特色教育が必要である、それに対してはやはり私は受益者負担の部分があっていいんじゃないか。

 そして、その受益者負担に対して、御家庭の経済的状況が厳しければ、それに対してはフォローしてあげるというか保護してあげる制度が必要でありますけれども、やはり、ある程度裕福な家庭の方で、別に授業料困らないという方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますので、そういう部分の格差はつけていただいていいんじゃないかと思っております。

池坊委員 私は、この法案は、ある意味では私立の自然淘汰をねらっているのではないか、氷河期を私立は迎えていくと思います。なぜならば、いい公立高校をたくさんつくるんですね。その公立高校は無償です。そして倍率も当然高くなる。だけれども、先ほど委員がおっしゃいましたように、これは格差を生むんですね。富裕層はこの余ったお金を何に使うか、塾に使います。所得格差によって教育格差を呼び、そしてそれが教育の、あそこの、好きな芸術をやっている公立高校に行きたいということになってしまうのではないか。

 大阪府は、授業料を少し高く上げても、いい公立高校をつくるのだと橋下知事は言っていらっしゃいます。ですから、こういう傾向を、まさかそれを予測してこの法案を出しているのではないと思いますが、そういうことがないように考えていく必要があるというふうに私は思っております。

 それから、地域格差、都道府県によって本当に差がございます。先ほどもお話にありましたように、ここには住めない、隣に住みたいということになってまいります。そういうことがないようにというきめ細かい法律、本当に法律をおつくりになる方、私どもがそうなんですが、真摯でなければいけない、現場をきっちりと見なければいけないと私は思うんですね。なぜならば、多大な影響を与える、特に子供たちに大きな影響を残したら、それは心の傷として残ってまいります。

 菊田参考人に伺いたいと思います。

 私も専修学校、各種学校の学園長などをしてまいりました。私は、先ほども申し上げたように、いろいろな選択肢があることはいいことなんだと思うんですね。例えば、どうも自分は国語は苦手だ、古文も苦手だ、漢文もやりたくない、あるいは数学が苦手だ、だけれどもこのことだけは自分は自信があるのだ、そういう子供たちを育てることこそが国のやるべきことではないかと私は思うんです。ただ高校に行かせたら、だから中途退学、不登校を十二万人出しているんです。絶対これは多くなると思います。

 そういう中にあって、これはすごく手続が煩雑なんじゃないかと思うんですね。先ほど准看護師の養成のお話が出ました。私ども視察に行ってまいりました。中学をやめてすぐに入ったら、これはすぐに申請してできるわけですけれども、年齢は何と三十歳前後の人たちなんですね。一度挫折をして、また立ち上がってそういう学校に通う、あるいは、高校ではどうしても学業になじめなかった、それで自分の行く末がもうだめなんだと思っている人たちもいますね。挫折したまんま立ち上がれない子供たちも多い。でも、もう一度立ち上がっていこうとする、これが私はとても大切なことだと思うんです。ところが、各種学校は今減少状態にありますでしょう。多分それは、社会的な風潮とともに、やはり文科の余り熱心でない姿勢もあるのではないかなという気がいたしますけれども。

 先ほど、一年制の各種学校で支援をしてほしい、それが数百名だと思うというお話で、ちょっとその辺が、今十三万人が各種学校に通っておりますね。救われる子供とか、子供だけでなく大人もたくさんいると思うんですけれども、そういうのはどうやって区分しようとしていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

菊田参考人 ありがとうございます。

 やはり、高等専修学校の部分と各種学校の部分は分ける必要があるというふうに思っておりまして、高等専修学校の一年制と二年制が対象になるかどうかということについては、予算上計上されているということは伺っておりますけれども、それが正式かどうかということは、まさにこういった委員会の中での御議論を経た上でというふうに伺っておるところでございます。そういう意味から申し上げると、やはり一年制でも二年制でも対象にしていただきたいというのが高等専修学校としての考え方です。

 先生から御指摘がありましたように、中学校を卒業してすぐ入る子もいますし、特に准看護の場合には、三十代、四十代、そういう年齢の方も、かつての看護師さんへのあこがれみたいなものがあって、子育てが終わってからそういったところに入っていらっしゃる方、そういう方は恐らく高校を卒業していらっしゃる方は結構多いんだろうと思うので、そこのところはまさに個別で申請を出していただいて履歴を明確にする、ただ、そこのところは、おっしゃるように非常に煩雑な部分だろうというふうに思います。

 一方、各種学校の部分につきましては、全く議論の対象に今なっていないというふうに考えております。つまり、予算上も、日本人の通う各種学校に関しては、たとえ高等専修学校と同じ准看護の学校であっても対象にならない、予算上はそういうふうになっていると伺っておりますので、ぜひともそこのところは対応していただきたいと思います。中身は高等専修学校と同じだというふうに思っておりますので、ぜひとも、何とかそこのところはお考えいただければありがたいというふうに思っております。

池坊委員 私もその辺が大変微妙だなと思っているんです。各種学校の認可というのは都道府県ですから、これによって地域の差も出てくると思うんです。割と寛容に認可するところと、もう認可されてもいいにもかかわらず認可されていないというようなところもあるかと思います。

 それから、調理師も、一年学んだ、次も行きたい、それからその次もと、一年学んだがために、そのよさというか、道をきわめることのすばらしさに気づいてまた一年ごとというのがありますね、華道でもそうですけれども。そういう子供たちを大切にすること、子供だけじゃないんですが、生徒を大切にすることが必要ではないかと思いますので、これはまた本当にきめ細やかに審議しなければいけないということだと思っております。

 それから、ちょっとブラジル人学校の倉橋参考人にお尋ねしたいと思います。

 私も、浜松を初めとして、各校のブラジル人学校に参りました。確かに子供たちが一生懸命勉強している、でも、親は不況のあおりを受けて経済的に大変厳しく、とても学校どころではない、突然帰国してしまった子供もいる。高校まで行けるのがむしろ恵まれているんじゃないか、小中学校に援助がないと高校まで行き着かないのではないかというふうに思いますことと、小中に通えなくて、勉学できなくて、突然、高校は支援してもらえるからということで支援された場合、学力の点でどうなのかという危惧もありますけれども、その辺は、現場のいろいろな声をお聞かせいただきたいと思います。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。

 まず一点目なんですが、高校まで行けるのが恵まれているか。おっしゃるとおり、恵まれております。この二〇〇八年の生産の急縮小によって、六〇%のブラジル人の子供は退学をしました。ですので、そのまま勉強を続けて高校生になれたということは確かに恵まれていることであり、小学校、中学校に通う子供に援助が必要かと言われれば、私は、とても必要だと答えます。

 ただ、ここに関しては、今、学校に通えない子供に関しては文科省の定住外国人の子供の支援事業というのがございまして、二〇一〇年度から、ブラジル人学校に通いながらもそのブラジル人学校に対して満額の月謝が払えない子供に関しては対象となるということですので、少し安心もしております。

 そしてまた、もしこれに私どもが入れていただいて、高校の授業料が安くなったから高校から戻ってこようとする場合、非常に困難です。なぜならば、私どもは学習履歴書が生徒一人にありますので、当該学年、つまり中学校三年生までの学習履歴書がないとスムーズに高校へ入学はできません。日本でも中学卒業試験があるように、ブラジルでも同じものがあります。もし学歴証明書に、あなたは中学校三年生まで勉強しましたという証明がない場合には、中学卒業認定試験に類するものをやはり受けなければなりません。すると、ブラジルの学校の小中を通っていない子供にとって、では、いきなりそのテストに受かるかといえば、正直言って非常に難しい。学校に行っていない子も難しいし、日本の学校に行っていた子でもやはり非常に難しい。

 日本の学校に行っていてブラジル人学校に転校してくる子は、やはり一年、二年、正規の年齢よりも下の学年で勉強をして、そして再クラス編制テストを受けて自分の年齢相当学年に戻るという大体のパターンがありますので、高校だけ少し安くなっても、では高校から入ってくるということは少し難しいかと思います。

 ありがとうございます。

池坊委員 教科書なんですけれども、日本語の養成というのはどういうふうにやっていらっしゃるんですか。つまり、日本に住んで日本の勉強をしているわけだから、私は、多少なりとも日本の歴史とか文化とか生活とか、日本人というものを知って、学んで、本国に帰る方も多いと思うんですね。そのときに、せっかくこうしてみんながブラジル人の学生たちに支援をしましょうというのは、やはりブラジルと日本とのかけ橋に将来なってほしいという希望もあると思いますが、その辺についてはどうなんでしょうか。

倉橋参考人 おっしゃるとおりでして、私どもも、私たちの子供たちに日本とブラジルのかけ橋になっていただきたいと思いますし、そのためには日本語が非常に必要だと思います。

 まずテキストのことなんですけれども、現在、在日ブラジル人に特化した日本語のテキストというものはありません。今、日本語教師になる方は、大抵、日本語教師養成講座四百二十時間を卒業されている方が多いんですけれども、その方たちは主にアジアの方たちの日本語教育の経験が多いものですから、南米系の、しかも子供たちということで、非常に苦慮されています。

 ですので、私の学校では、またほかの学校でもある程度同様だと思いますけれども、その先生がオリジナルの子供用のテキストをつくるということで対応しております。ただ、このテキストに関しては、いろいろな機関の方が在日ブラジル人のためにテキストをつくってくださっていますが、まだ現状ではどれか一つにまとまっているものはありません。

 そして、文化的なことなんですが、私どもの学校でも、例えば書道、例えば豆まき、ひな祭りなどなど、日本の行事を日本語のクラスの中で取り入れています。また、彼らは在日ブラジル人三世、四世ですので、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが日本からブラジルへ渡った人、もしくはその子供になります。ですので、日本の文化という意味では、多少なりとも聞きかじっている場合が多い。ですけれども、昔の文化なので今とちょっと違う場合も多い。

 ですので、日本語授業の中で指導していくとともに、やはり日本の公立学校との交流授業、これが望まれるところであります。うちの子供たちは、ふだん日本語を使う機会がないものですから、学校の外で日本語を使って、日本の社会、それがたとえマクドナルドの買い物であったとしても、触れ合う機会というのは非常に必要だと感じております。

 ありがとうございます。

池坊委員 この経済的支援が高校生の教育支援のまずは第一歩であって、次は必ず多様な選択がある、そのような中身濃い支援策ができる、あるいは設備、施設、また教職員の拡充等々も必要なんですから、そのまず一歩でなければならない。一歩にしてはちょっとずさんではある、大ざっぱではあると思ってはおりますが、皆様方の御意見もさらに伺いながら、いい法案にしていかなければいけないというふうには思っております。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 参考人の皆様方、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 世界の多くの国々で高校教育の無償化が既に広がる、常識となる中で、私ども日本共産党は一貫して高校無償化の実施を主張してまいりました。その実現に全力を挙げてまいりましたので、本法案で高校無償化の方向が出されたことは、国民の粘り強い運動、国民世論の成果であって、法案は当然のことだ、ぜひともこれは成立させていきたいというふうに考えております。一方で幾つかの問題点が残されておりまして、本日、皆さんの御意見も参考にして、今後の論戦、審議に役立てたいという立場で質問させていただきます。

 まず、吉田晋参考人にお尋ねするんですけれども、私はこの法案の審議、本会議から大臣と随分大きなやりとりをしてまいりました。それは公私間格差をめぐってのやりとりです。私が大臣に対して、公立の授業料を不徴収にする一方で、私立高校の授業料については一定額の補助にとどまり、公私間格差を助長しかねないと指摘をいたしましたら、大臣は本会議では、公私間格差は縮小するんだとお答えになりました。先日の委員会で、もっと突っ込んでやりとりをいたしまして質問いたしましたら、大臣も、格差の拡大感があるというのは事実でございますと、拡大感についてはお認めになったわけです。

 先ほどのお話でも吉田参考人からは、公立が無料になれば格差は無限大になるというお話もございました。今回の法案によって公私間格差が一体どのようになるのか、私学の経営者としてどう受けとめておられるのか、まずお話しいただきたいと思っております。

    〔委員長退席、笠委員長代理着席〕

吉田参考人 ありがとうございます。

 先ほど来申し上げておりますように、いろいろ、池坊先生その他の御質問にもありましたけれども、これから先、教育がどうなっていくか、現状の教育の段階においてはこの格差は変わらないのかもしれません。

 そうしますと、それを埋めるために何があるかといえば、まず私学助成の充実になります。それがもしかなわないとして、そうしますと、今度は、例えば教員の配置をふやすとか、いろいろな新しい教育がまた加わってくる。そうすると、その経費がふえればふえるだけ学校負担、つまりは父母負担がふえてくる、それは仕方ないものと思っております。

宮本委員 ある県ではその格差ということを問題にして、公立の授業料も無償にすべきではないというふうにおっしゃる私学の経営者もいらっしゃると聞いたんですけれども、冒頭に、子供は親を選べない、子供たちの教育を社会全体で支えるという方向性は正しいとおっしゃっていただいたことに感銘いたしました。当然のことだと思います。ただ、本当に格差を広げないためには、やはり私立高校も無償にするというのが筋であって、その方向で前へ進めていかなければならないと私どもは思うんですね。

 とりわけ、今回、この法案で私は大事だと思うのは、あらかじめの概算要求の段階では年収五百万円以下のところを二倍の補助をする、こういうことになっておったわけでありますけれども、結果として本予算は、二百五十万以下が二倍、二百五十万から三百五十万は一・五倍、こういう制度に減らされました。私は、これで大体どれだけ予算が減ったのかとこの前お尋ねしたんです。そうしたら、わずか二百六十億円減額をしたと。二百六十億円のことであれば、最初のときの五百万以下はすべて二倍出そう、こういうふうにすべきだと私は思うんです。

 参考人は、東京新聞三月二日付の記事の中でも、私立高校生で一番苦しい世帯は年収三百五十万から五百万円だ、こういうふうに述べておられます。この三百五十万から五百万円の一番苦しい世帯ではどのような状況にあるのか、もう少し突っ込んでお聞かせいただけるでしょうか。

吉田参考人 私があの新聞で申し上げましたのは、これは社会全体を見ていての部分でございまして、父兄の年収が四百五十万だとか二百五十万だとかわかって言っていることではございません。

 ただ、そういう中で、やはりこの部分をお救いいただきたいというのは、何とかして学校選択の自由をしっかりとさせてあげたいという願いでございまして、その部分に対しての補助、当初そういうお話があったものですから、余計にその部分をお話しさせていただいたというのが事実でございます。

宮本委員 今回のこの法律が進められるならば、やはり格差という点でも、地方の間の格差ということももちろん問題になってくるでしょうし、それから地方自治体の問題でいえば、私立の高校に国から就学支援金が出るからといって、これまで自治体独自に行ってきた私学の授業料減免予算を前年度に比べて削減する、減額するという都道府県が続出しているわけですね。文部科学省の調査を見ても、四十五都道府県中三十三県、実に七三%の県が既に去年に比べて私立高校への授業料減免予算を減らす、こういう予算の流れになっているわけですよ。

 この減額が私学にとってどういう状況を生むのか、私学経営にとっても、子供たち、父母にとってもどういう影響が及ぶのかということについて、吉田参考人からお答えいただきたいと思います。

吉田参考人 都道府県の状況については、私どもまだ確実な調査はできておりません。ただ、現実に額が減ったというお話もございますし、逆に、減ったけれども実際には低所得の方に対しては増額されたという県もあるようでございます。ですから、そこの辺は私どもとしてはわかりません。

 私学の経営に対しての影響ということですけれども、経営の影響というのは何かといえば、私立学校を運営していくためには、生徒が来てくれない限り運営ができません。ですから、生徒募集にそれによって影響が出るのであれば影響はあるということだというふうに思っております。

宮本委員 私どもは、もちろん、公立はおろか私学も無償という方向をはっきり打ち出すべきだというふうに主張してまいりました。私学も学費無償化に近づけていくべきなんですけれども、少なくとも当面、私ども日本共産党としては、先ほどお話のあった年収五百万円以下の世帯については、授業料はもちろんのこと、施設設備費についても、あるいは入学金も含めて、やはりきちっと公的な援助で無償にする、そして年収八百万円以下ぐらいの世帯で半額補助、これぐらいして初めて公私間格差というものは埋まるというふうに考えてきたわけなんです。そういう提言も発表させていただいてまいりました。

 この我が党の提案について、ぜひ吉田晋参考人の方から、こういうことが実現したら私学の経営にとってもプラスだと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

吉田参考人 父母負担が軽減されるということであれば、それはいいことだと思っております。ただ、それによって私立学校の教育に対して逆の意味での影響が出るようなことでしたら、反対させていただきます。

宮本委員 私学が独自の教学の理念を持って、もちろん独立をしてしっかりとやっていただいていることはわかっておりまして、そういうことに政治が、政府があれこれ口出しをするというようなことについて、私どもも当然あってはならないことだというふうに考えておりますけれども、公私間の格差をしっかりなくしてこそ、今回のこの制度の趣旨も生かされるというふうに思っているところです。

 次に、菊田参考人にお伺いをいたします。

 私学の問題も今議論をしてきたわけですけれども、専修学校も各種学校も初年度納入金というのは随分高額だというふうに伺っております。初年度納入金の平均は、専修学校で九十八万円、各種学校で九十二万円というふうに私の方ではお聞きをしたんです。これに対して就学支援金が出されたとしても、十一万八千八百円しかなくて、差し引いてもまだ八十万を超える負担が残ってしまうわけでありまして、さらに通学にかかる費用などの負担も合わせれば、父母負担の軽減は私学以上に急務だと思います。

 そのための御要望であるとか今後の助成のあり方について、御希望をぜひお聞かせいただきたいと思います。

菊田参考人 御指摘をいただきましたとおり、専修学校とか各種学校の授業料、あるいは入学金、施設設備費、それから実習にかかる費用、そういったものは、高等学校とか、特に公立の高等学校よりはもちろん高いですし、私立の高等学校等よりも一般的には高額であろうかというふうに思っております。

 理由は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、実は専修学校は、私立学校振興助成法という法律の中で、ごく一部だけ振興助成法の対象になっておって、経常費の補助ですとかそういったものについては対象となっておりません。特に、高等専修学校それから各種学校につきましては、そういった国からの支援というのは基本的にゼロでございます。そういう中で、どうしても学納金による学校運営というのが基本的にはほぼ一〇〇%。

 一方で、都道府県からの支援というのは、国の予算の裏づけがない中で都道府県レベルでやっていただいているというのがありまして、ただ、地方交付税の中に専修学校に対する助成ということで積算の内訳の中には入っておりますけれども、実際には、その数字全体をはるかに上回る部分で既に専修学校に対しては都道府県からの助成がなされているところでございます。それでも、なかなか高等学校等と同等の助成を受けるというわけにはまいっておらない。

 そういう中で、今回のこの就学支援金というお話がありましたので、私どもとしては、ちょっと言葉は悪いかもしれませんけれども、ゼロからプラスになった、そういう意味で非常にありがたいというふうに考えております。

 当然、今後の職業教育を取り巻く教育制度全体の改革の中で、専修学校、各種学校に対する国からの助成等につきましてはお考えをいただければありがたい、このように考えております。

 以上です。

    〔笠委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 ゼロからプラスになっただけでもありがたいというのが率直なところだと思うんですけれども、そういう意味では、先ほど申し上げたように、とにかくこれで十分ととても言える状況でないことは確かだと思うんですね。それこそ公立高校は無償になるわけですし、私立の高校についても、先ほど申し上げたように、私どもなどは、無償に向かって進むべきだし、さらに一層拡充すべきだと考えておるわけですから、当然、専修学校や各種学校も同じように父母負担というものが軽減されるべきだというふうに思うんですね。

 その点で、今回のこの制度にさらにプラスして、こういうことをやってもらったら助かるということが具体的にございましたら、お答えいただけるでしょうか。

菊田参考人 私学に対する助成という意味で申し上げれば、今の制度上からいえば、基本的には機関補助というのが一番大きな柱であろうかなというふうに思っておりますが、設置形態といったところでなかなか機関補助というのが難しいということであれば、まさに個人に対する補助というのもあわせて、こういった制度をさらに膨らます形で考えていただくということがよろしいのではないかなというふうに思います。

宮本委員 次に、倉橋参考人にお伺いをいたします。

 経済不況や働き口が見つからないなどの理由から、授業料が払えずに学校をやめたり帰国したりと、外国人学校の経営は非常に苦しい、子供たちも大変な状況だというお話を聞きました。中でも、日本にあるブラジル人学校が、八十三校中、二〇〇九年で十六校、二〇一〇年で四校、計二十校ものブラジル人学校が閉鎖したという話は大変衝撃的であります。経済危機の影響でこういうことも起こっているというふうに聞くわけですけれども、倉橋参考人のイーエーエスという学校は各種学校に既になっておられて、相対的には恵まれた状況にある学校だと思うんですけれども、大半の学校が各種学校の認可も受けられない、受けていないという状況だと思います。

 この中で、公的支援を受けて、授業料など学費軽減とともに学校経営に対する補助もしっかりと進めていくという点では、どういうことを今我々行政としては求められているのか、ぜひその辺のところを、倉橋参考人のお考えをお伺いしたいと思っております。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、私どもは比較的恵まれております。ただ、それは私どもがある程度の規模があり、かつまた各種学校へ手続ができる日本人が在籍しているという点でございまして、生徒数の減でいえばどこもかしこも似たり寄ったり、四〇%から六〇%減ですので、学校の運営費の方も四〇%から六〇%減になっている。その余波、変な話ですけれども、給与が年四〇パーから六〇パー減って、普通に生活していくことは困難ですので、そのあおりを受けて、二〇〇九年十六校、二〇一〇年、今のところ四校ですが、まだこれからふえるかと思いますが、なくなっています。

 今後求められる支援ということなんですけれども、それは非常に答えにくいというか難しい問題でして、今ブラジル人学校の中でまず問題になっているのが、各学校の所属する自治体によって支援の色合いというか支援の度合いが非常に異なるということが一つ問題として挙げられます。

 なぜ問題かといいますと、大きい支援を受けた学校は当然大きい運営費補助が出ますので、大きい運営費補助は、その学校が小規模であれば小規模であるほどありがたい、その収入に占める割合が大きくなります。すると、その学校は勢い授業料を下げます。すると、ブラジル人学校間での生徒数の奪い合いというものが起きてしまい、支援の大きい学校は授業料を安く、生徒を集めやすく、支援のない地域にある学校は授業料は据え置かざるを得ず、生徒は月謝の安い学校へ流出していくということで、やはり一部厳しい学校がありますので、そこに対する何らかの配慮というものは必要かなと思います。

 ただ、これは各自治体さんとも善意でやっていただいていることで、なかなか難しいところではあるんですけれども、そこは一つ問題というか、ある学校、私どもの学校ではありませんけれども、ある一部の学校はそういう不利益をこうむる、直接的ではないですけれども、少し大変だという話を伺ったことはありますので、ひとつそこは格差のないようにしてほしい、ひとつガイドラインをつくってほしいというものはお伝えしているところです。

 そして、三つ目の質問なんですけれども、各種学校にならない学校が多数あるということはおっしゃるとおりです。

 ただ、これはブラジル人学校、AEBJを中心として、各学校に対して、各種学校申請をしたいところにはブラジル人学校全体として支援をしていこうという方向になっておりますので、今後徐々にふえていくのではないかと思っております。

 ありがとうございました。

宮本委員 あと五分ぐらい私の時間が残っているんですが、まず倉橋参考人、同じ外国人学校の理事長としての話なんですけれども、今回の高校無償化法案について、各種学校の中でも朝鮮人高級学校について適用除外という話が出て、今そのことは非常に日本社会で大激論になっておるんですね。

 それで、率直に倉橋さんから、この朝鮮人高級学校について適用除外という議論についてどのようにお考えかということ、そして、先ほど菊田参考人は外国人学校は各種学校の連合会に入っていないんだというふうにお話しになりましたけれども、各種学校ではございますので、参考までに菊田参考人にも同じ内容についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

倉橋参考人 朝鮮人学校についてどう思うかということなんですけれども、私はブラジル人学校の理事長でありAEBJの一員でありますので、ほかの、自分の領域に属することではありませんので、そこで軽々しく意見を述べるわけにはいかないと思いますので、非常にお答えしづらいんですが、ブラジル人学校として、また、私個人として、AEBJの一員として、それは今後ともAEBJを通じて、ブラジル人学校及び朝鮮人学校そのほか、学校との連携というところは進めていく必要がある。なので、今の段階でこの高校無償化法案について何かを言うのはちょっと難しいです。ごめんなさい。(宮本委員「失礼、もう一問だけお聞きします」と呼ぶ)

田中委員長 同じ質問を菊田参考人から、いかがですか。(宮本委員「後で聞きますから」と呼ぶ)はい。

 では、宮本岳志君。

宮本委員 失礼しました。

 こういう質問だとお答えしにくいことはよくわかっております。

 では、一般論として、特定の国をこの枠組みから外すということは、私どもはこれはよろしくないということで申し上げていて、特定の国を外す意図はないというのは日本政府の今の御答弁なんですけれども、そういうことについてはどのようにお考えになるか。もう一度、倉橋さんとそして菊田さんとお願いいたします。

倉橋参考人 特定の国のカリキュラムに基づいて運営されている学校を除外するのであれば、それはそれなりの理由が必要だと思います。

 例えば、私どもブラジル人学校なんですが、たまたまというか幸運というか、カリキュラム、学制が日本と非常に対応しているということで、各種学校、ブラジル人学校としてぜひとも適用の範囲内に入れていただきたいとお願いをしてあります。なので、ブラジル人学校、そのほか各種学校、ほかの国の学校に限らず、何かしら理由があればもちろん認める必要があると思いますし、もし何かしら理由があれば認めてはいけないと思います。

 私ども、ブラジル人学校についても現在協議の対象ということで伺っております。ですので、私どもは政府の皆様方の御判断に従うしかありませんので、私たちの学校の現状を説明して、ブラジル人学校というのはこういう学校ですよということを御説明して、あとは御判断にゆだねるということでございます。

 よろしくお願いいたします。

菊田参考人 御質問のございました件ですが、団体としては全く議論をしておりません。個人的にお話を申し上げたいと思います。

 例えば、朝鮮高級学校につきましても、高体連の参加なんというのは認められているということを考えましたら、特に今回のこの趣旨とあわせて考えれば、当然対象になるんだろうというふうに個人的には思っております。

 以上です。

宮本委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

田中委員長 次に、城内実君。

城内委員 無所属会派の国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。

 まず、無所属の私に対しましてこういった機会をいただきましたことを、田中眞紀子委員長、理事の皆さん、そしてきょういらっしゃっている委員全員に御礼を申し上げたいというふうに思っております。

 また、三名の参考人の皆さんの今までのやりとりをずっと聞いておりまして、大変勉強になりました。

 私自身、実は公立の中学校に通っておりました。高校は親の負担を軽減すべく国公立を受けたんですが、内申書がよくない、要するに美術とか音楽もよくないとこういう国公立というのはなかなか行けなくて、荒川区西日暮里にある、ある男子校に通ったんです。最初は、男性ばかりで女性がいなくて、何かすごく違和感があったんですが、しかし、私学のよさというのはありまして、文武両道と申しますか、余り勉強をさせずに、運動もさせ、勝手にやる人はやる。そういうことで、私は余り勉強しなくて、浪人して大学へ行ったんですけれども、本当に私学というのは通う生徒の個性を伸ばしてくれるんだな、勉強する人は勉強させる、あるいは一芸に秀でている者はそれをどんどん伸ばすという意味で非常に特色があるというふうに思っております。

 ただ、非常に残念なことに、今、私学が冬の時代ということでございまして、私の地元浜松の県立浜松西高等学校、これは私のおやじが出たところなんですが、そこが私学のように中高一貫教育をしておりまして、何か公立中高が私学のよいところをとっているということでございます。こういう状況でございますので、私の地元に西遠女子学園という高校がありまして、その校長先生の岡本先生などは非常に嘆いておられます。公立高校はただ、私立は有償、今そういうイメージがどんどん広がってしまって、結局みんなどんどん公立に行くんじゃないか。そうでなくても、私学は定員割れで今は大変な状況でございまして、私は、教育というものは、もちろん公立は公立のよさ、私学は私学のよさということで、いろいろな選択肢があってしかるべきだと思います。

 ここで質問なんですけれども、吉田参考人が先ほど教育の中身が大事であるということをおっしゃいました。全くそのとおりでございまして、教育というのは個性を伸ばす、個性の伸ばし方によってはやはりお金がかかったり、美術とかそういうものはお金がかかるという話がございましたけれども、その点について、ただお金を、公立の場合は授業料免除、不徴収、そして私立の場合は就学支援金という形で軽減するということですが、教育の中身という観点でもう少しそこら辺について、どのようにお考えでいらっしゃっているのかというのをお聞きしたいと思います。

吉田参考人 ありがとうございます。

 今先生おっしゃいましたように、この就学支援金は、ある意味公立も私立も、高校生として学校に通っている人には一律十一万八千八百円が支給されるという部分で、ただその部分が減った、負担が減ったというだけで、その他は、格差は全然変わっていないと私は思います。

 公立と私立、それから公立の中でも格差がある、教育費の内容に対して格差があるということは事実だと思っています。ですから、私は今回一番危惧しておりますのが教育の中身という部分でありますのは、今まで高等学校というところは、生徒本人が授業料を負担するという義務がございました、それに対して教育を受けるという権利がありました。今度は、授業料を支払うという義務がなくなって、権利だけが先行する公立学校、それに対して私立学校は権利と義務が両立する形になります。そしてそういう中で、公立学校の中でもいろいろな種類の学校ができてきている。

 先生御指摘のように、今、浜松西の話じゃないですけれども、私立の中高一貫と全く同様な形で公立の中高一貫ができ、そして、そこは本来入学試験をしてはいけない。そこで適性検査というものが行われておりますけれども、中学校入試と全く同様に適性検査という名前の入学試験が実は行われておりまして、文科省の判断でも、適性検査じゃなきゃいけない、入学試験はいけないと言っていますが、内容的には入学試験に近いですねという話はさんざん承っております。そうすると、私立学校と公立学校、どこが違ってくるのか。

 そこで、我々私学としてはその分の教育内容に対して努力をしていかなきゃいけないわけですけれども、そういった意味での受益者負担は当然ながらそのものによって違ってくることも必要だと思いますし、それから家庭の所得によって違ってくるのも当たり前じゃないか。そういう中で、やはり子供がいい教育を受けられるようにしていただきたいなというふうに願っているところでございます。

城内委員 あと、もう一点お聞きしたいんですけれども、個人の申請ということで手続がまた煩雑になるということをおっしゃっておりました。

 例えば、生徒の頭数、十一万八千八百円、年間ぼんと一括して交付して、そしてまた収入の、二百五十万円から三百五十万円以下の差額については後で調整するというような形も場合によってはあり得るのではないか。それによって手続を簡素化する。そして、これは議論が分かれるところですが、一括して交付したいわゆる補助金のような形で、それを授業料の減免にどれだけ反映させるかは私学側で判断する。

 要するに、これはほとんど補助金みたいになってしまって余り意味がないという話かもしれませんが、場合によっては、授業の中身をよくすることによって御父兄の皆さんの了解を得て、授業料の減額については十一万八千八百円じゃなくて例えば八万円程度にするとか、そういうことはお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

吉田参考人 私どもも授業料の軽減という意識でございます。ですから、それによって保護者の負担が減ったことは事実と今申し上げました。

 ですから、学校によりましては、十一万八千八百円が軽減された分、逆に内容をよくするためには授業料を値上げさせていただく。そうすると、結果的には八万とかそういう数字になるのかもしれませんけれども、あくまでも授業料軽減部分は十一万八千八百円ということだと思います。それに伴って授業料を値上げすれば教育内容はよくなるということになるんだと思うんですね。

 ただ、実際に大阪府が今度考えている案なんかですと、これをやりますともう授業料を上げられなくなりますので、その辺でまたいろいろな問題が生じるものと思っております。

城内委員 あと、一般的な質問で恐縮なんですが、よく言われている公私間格差是正ということについて、いろいろ要因があると思いますけれども、吉田参考人から見て一番ポイントとなる点というのはどういうところにあるんでしょうか。公立高校と私立学校の格差是正の問題について、御要望、特にこれはやってほしいということがございましたら。

吉田参考人 公私間格差是正の方策というのは幾つかあると思います。

 最初にお話しさせていただいたように、御父母の負担に対する軽減に対しては、今回のような、代理受給という形ですけれども、生徒あてに毎月九千九百円が支給されるもの。それからもう一つは、これもやり方かもしれませんけれども、例えば、医療費とかそういうのと同じように税額控除のやり方とかいうのもあるかもしれません、そういうやり方もある。これがあくまでも御父母の負担に対する軽減の方策です。

 それと、公私間格差を少しでも抑えていく方策のもう一つは、公立高校の授業料の値上げというのもございます。つまり、公立高校だって授業料が必要な部分はあるわけですから、今回無償化によって全くそれが違う方向になってしまいましたけれども、公立高校の授業料平均値が上がれば当然私学の授業料との格差は減るわけですから、その方法もございます。

 それからあと一つは、私学に対しての国ないし都道府県による補助がふえることによって授業料が安くなる、そういうやり方があると思いますが、基本的には、やはり父母負担の軽減というのはあくまでも御父母の皆さんに対する我々が出す授業料に対する補助という形が一番スムーズではないか。そのためには、そのやり方は税額控除みたいな方法はありますけれども、これはあくまでも所得の問題が出てくると思いますので、その辺のところをどうお考えになるかじゃないかと思っております。

城内委員 次に、菊田参考人に質問させていただきたいと思います。

 まさに今、大学進学率そして普通高校への進学率が非常に高い中にあって、専修学校、各種学校が大変厳しい状況であるというふうに伺っております。

 そういう中で、私は冒頭申しましたように、教育というのは多様性、みんながみんな大学に行って、特に最近言われているのは、大学に行って何か高校のおさらいを一年生でやる、そういう話も聞いております。大学へ行って大学らしい勉強をしないのであれば、やはり手に職を身につける。

 私はドイツに十年ほどおりましたけれども、ドイツはそういう発想でして、高校のいろいろな課程が、ギムナジウムとかレアルシューレ、あるいはハウプトシューレというふうに、ざっくり言うと三つに分かれているんです。そういう体験からしますと、やはり各種学校、専修学校がもっともっと日の当たるように頑張っていただきたいし、国でもバックアップすべきではないかなというふうに私は考えておるんです。

 そういう中で、先ほど議論がございましたけれども、高等専修学校については同様の扱いをする。それは非常に私はいいことだと思っておりまして高く評価しておりますが、各種学校でいわゆる高等専修学校に準ずる一定の要件を満たしたものについては就学支援金がもらえる、しかしその線引きというのはすごく大変だという話をお伺いしましたけれども、現状では、これは相当詰めないと、何でうちだけもらえないんだとかいう話になりかねないと思うんですね。

 そこら辺はどの程度準備ができているのか。準備ができていないから何とかしてくれ、そういう声をぜひもう一度上げていただきたいと思います。

菊田参考人 御指摘ありがとうございます。

 専修学校と各種学校の状況につきましては、いろいろお話がございますように、大学への進学率とかあるいは高等学校への進学率といったものの高まりと、特に職業教育というものをなかなか評価していただけない、そういう風潮の中で、厳しい状況というのは続いておるところでございます。今後、職業教育というのが非常に重要になるだろうなというふうに思っておるのは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 各種学校のお話でございますが、先ほどちょっとお話をしたとおり、制度上、そういう枠組みがもともとないものですから、個別審査ということが可能ではないだろうかということでお話をさせていただいたつもりでございます。

 すごくたくさんの中卒者が各種学校におって高校と同等の教育を受けているのかということについては、それほど多くはないというふうに思っております。その調査そのものがきちんとはありませんので何とも申し上げられませんけれども、各種学校につきましては、例えば予備校なんかも多うございまして、そういったところに中卒者が行っていたりということももちろんあるとは思っておりますが、個別の審査というものをやっていただけるのであれば、線引きをするというよりも、要件を明確にした上で申請を上げるという方法が可能ではないかなというふうに思ったりしております。

城内委員 今高校進学率が九七、九八%ということでありますけれども、実際、中学を卒業されて職についている方もいらっしゃるんですね。そういう方からすると、何でおれと同い年の人が高校に行って、しかも授業料まで免除してもらうのかと。そういうこともあるわけですから、逆に、私は個別審査もできるだけ緩くして、一定の要件を満たしたら基本的に就学支援金を与えるということでいいのではないかなと個人的には感じております。

 次に、倉橋参考人に質問をさせていただきたいと思います。

 私の地元の浜松からはるばるおいでいただきまして、ありがとうございました。うちの実家の隣の町ということで、本当にいつもありがとうございます。

 実は、私は小学校一年から四年生の四年間は当時西ドイツの現地校に通っておりまして、周りはほぼ全員ドイツ人なんですね。そういう中で、若干の疎外感もありましたが、ほぼ唯一の外国人ということで、疎外感どころか何となく半分ドイツ人になって、そして日本にまた帰国して日本の小学校に入ったんです。それに対して、私の姉はドイツのギムナジウムに通ってアビトゥアの資格を取ってドイツの大学に入りました。日本にいるときは、皆さんが見学された、当時は大森にあった独逸学園に通っておりました。ですから、私と逆で、姉は小学校四年生までは日本の教育、あとは全部ドイツの教育ということで、私の百倍ぐらいドイツ人のような日本人なんです。

 そういう中で得た体験を言うと、ドイツは非常に外国人に対してオープンで、私もアウグスブルク大学というところに留学しましたけれども、もちろん授業料はほぼただです。大勢の外国人が通っていまして、外国人に対するサービスが非常によかったなという体験がございます。

 そこで、一つ質問なんですけれども、実際、ブラジル学校を経営されて、いろいろ苦労されていると思います。就職の情報提供やら、予想だにせぬ、いろいろなことをしなければならないという話もお聞かせいただきました。ブラジル本国からの支援、あるいは現地の企業、雇用主側、あるいは自治体からの支援については、どの程度というか、全くないとか、不十分であるとか、もっとしてほしいというような声をこの場で上げていただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。城内様がいらっしゃると、ちょっと僕も心強いです。

 三つありまして、まず一つ目、ブラジル本国からどのような支援をいただきたいかということなんですけれども、ブラジル本国から金銭的な支援を、もしいただけるのでしたら、いただきたいです。ただ、ここも私の職分に関することではありませんので、今AEBJとして動いているはずです。

 私たちの学校として要望していることは、生徒の進学についての情報提供及びテスト実施です。ブラジルの大学も日本と同じようにセンター試験があり、二次試験があります。ですので、日本でセンター試験は受けられるようにしたい、並びに日本でも二次試験を受けられる、日本会場というもので大学の入学試験をやっていただきたいということで要望は出しております。

 次に、現地の企業からの支援はあるかということなんですけれども、私たちの学校を初めブラジル人学校全体を支援してくださっている企業に三井物産という企業があります。これはどこの学校とかというのではなくて、ブラジル人学校全体を支援しましょうと。二〇〇九年度までは指定された学校に対し物品的な寄附を、二〇〇九年の途中からは指定された学校に対し在籍生徒数の多寡に応じて生徒の授業料軽減のためのみに使える奨学金を支援してくださっております。ですので、三井物産さん及びその関係者の方にはブラジル人学校全体として非常にお世話になっております。

 また、そのほか、現地の企業ということで、一番多いパターンですが、派遣会社がブラジル人学校をやっている場合がございます。ですので、そういう後ろ盾のある一部学校は、その後ろ盾から何か補助をいただいていることもあるかと思います。

 そして、自治体からの支援ですが、自治体からの支援、浜松市、豊橋市、豊田市、碧南市、鈴鹿市に私たちの学校はありますので、それ以外のところはわかりませんが、現在、浜松市からは日本語教員の人件費の一定部分に関する補助が出ています。これは浜松市内のブラジル人学校に対して出ております。

 あとは人的な部分でして、浜松市は国際課さん及び教育委員会さんが非常に熱心で、いろいろこちらにコンタクトをとってくれますし、豊橋市さんなんかも、不就学調査を初め、さまざまな調査で来校されます。さらに、豊田市及び三重県は、定期的に学校間もしくは学校を含めたコミュニティーの中での会議を開きまして、ブラジル・コミュニティーと日本のコミュニティーの間の意思疎通を図っております。

 ですので、そういう公的機関、またNPOの方も非常に力になってくださっていますので、私たちはその方たちに支えられて、何とか今やっております。

 ありがとうございます。

城内委員 ありがとうございました。

 私の隣に座っていらっしゃる塩谷立先生、選挙区は違うのですが同じ浜松市でございますので、隣の選挙区ですが、塩谷先生ともども、浜松市にも働きかけて、もう少し積極的に支援をするように頑張ってみたいと思います。

 最後の質問ですけれども、先ほど倉橋参考人が、日本とブラジルのかけ橋という言葉をおっしゃいましたね。私は外務省に十四年ほどおりましたけれども、やはり二国間の交流という意味で、これはぜひ進めていただきたいと思います。

 他方、非常に残念なことは、何かどうしても偏見があるというか、ブラジル人の方、外国人の方に対するそういう偏見、そしてそれに伴う、ブラジル人の方だけじゃなくてペルー人の方や、アジアからも大勢の方が、浜松は製造業の町ですから大勢いらっしゃっていますけれども、疎外感を感じているというふうに思うんです。

 そういう中で、先ほど回覧で倉橋さんの学校のいろいろな行事の写真を見せていただいて、非常に皆明るい笑顔で仲よくやっておるようですけれども、日本の方との交流についてはどのような形でやっていらっしゃるんでしょうか。

 私としては、ぜひ現地の日本の市民の皆さんともっと積極的に交流して、その垣根というのをとっていただくのがやはり大事じゃないかなと。言葉は通じなくても心は通じるということもありますので、その点について、最後の質問としてお聞きしたいと思います。

倉橋参考人 御質問ありがとうございます。

 まず一つ目、偏見に関してなんですけれども、確かに、感じていらっしゃる方は多いです。ただ、浜松市で起きました、在日ブラジル人の起こした強盗致死事件、並びに名古屋市熱田区でのひき逃げ事件等々ございますものですから、そういう事件があるたびに、ブラジル人コミュニティーの中では、本当は一部の人が起こした事件なんですが、それによってまた風当たりが強くなるということは聞きますので、残念に思いますし、在日ブラジル人の方がそのような犯罪を犯すことがまず非常に残念、そして、それに伴ってやはり風当たりが強くなるのも残念です。

 ただ、偏見に関しては、実は近年驚くほどよくなっております。以前に比べて、ブラジルの方たちを支援しよう、仲間と思おうという動きは近年非常に高まっておりますので、うれしく思っています。

 また、日本の学校との交流活動ですが、これは二つの点で非常に大事です。

 一つは、子供たちが学校の中で学んだ日本語を使う機会ということがまず一つ。そして、子供同士、ブラジル人学校も日本の社会の中で活動していかなければいけませんので、お互いに自分の文化、他国の文化に触れて、お互いの垣根を減らしてまた仲よくなるということで、非常にこれから促進していきたいと思っております。

 ありがとうございます。

城内委員 もう時間が終了したようですので、これで私の質問を終わります。きょうは、どうもありがとうございました。

田中委員長 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 貴重な御意見を皆様からお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十六分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 至急御着席ください。

 午前に引き続き、本案審査のため、参考人として、佐賀県教育委員会教育長川崎俊広君、社団法人全国高等学校PTA連合会副会長相川順子君、放送大学教授小川正人君及び千葉大学名誉教授三輪定宣君、以上四名の方々に御出席をお願いいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会のために御出席くださいまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたく存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたく存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようにお願いいたします。

 それでは、まず川崎参考人にお願いいたします。

川崎参考人 佐賀県教育委員会教育長の川崎俊広でございます。

 本日は、当委員会に参考人として意見陳述の機会を与えていただきました。大変光栄に思いますと同時に、深く感謝をいたしております。誠心誠意、意見を述べたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今回の公立高等学校の授業料を無償化する制度の導入につきましては、教育に係る経済的負担の軽減を図り、教育の機会均等に寄与するものとして、高く評価をいたしております。賛成する次第です。

 お手元に配付をさせていただいておりますけれども、確認いただければと思います。

 この法律の施行に当たりましては、法律案第三条第一項中、ただし書きをどのように解釈し、取り組むのか、どういう場合が特別の事由がある場合に該当し、授業料を徴収するのかということで、多くの議論をいたしました。

 このただし書きに関しましては、例外なく不徴収の対象とする、私どもはこれを完全不徴収と呼んでおります。原則として不徴収の対象としつつも、徴収しないことが適当でないと認められる場合のみ限定的に徴収する、原則不徴収と呼んでおります。それに、国庫負担の対象者のみを不徴収の対象とする、これを私どもは一般不徴収と。この三つの案について検討をいたしました。

 この検討に当たりまして、国庫対象の対象外と思われます留年者の留年理由や既卒者の再入学理由などについて調査をいたしました。この調査により、病気や不登校など、本人にその責任があるとは思えない理由で留年している者、必ずしも三年間で卒業する必要のない単位制高校に在学している者、特別支援学校の高等部卒業後に高等学校に入学しており、その就学をむしろ歓迎すべきものと思われる者など、必ずしも徴収すべきとは言えない場合が多いことがわかりました。検討の結果、ただし書きを適用して授業料を一律に徴収する具体的な対象は見出し得ないという結論に至りました。

 そこで、佐賀県では、授業料については原則として徴収しないこととし、例外的に徴収する場合には、教育委員会に諮り、個別具体に審査することといたしました。これにより、授業料を徴収するのが適当であると判断される場合は相当限定的なものになるというふうに考えております。

 例えば、留年の結果、三十六月を超えた場合でも、本人にその責めがない場合などにつきましては不徴収にすべきと考えます。また、高等学校を卒業した者であっても、一律に徴収すべきであるとは考えておりません。新たな就学がその生徒の社会人としての資質を高め、職業的自立などに必要と認められる場合については不徴収にすべきだと考えております。

 次に、条例の施行時期について検討をいたしました。

 条例の改正が法律の成立よりも先行する可能性があります。こうしたことから、条例の施行時期につきましては、条例の特例で規則委任をしており、法律の成立を受けて速やかに規則を制定することといたします。四月一日施行を念頭に置いて準備を進めております。

 次に、条例案の県議会への提出時期につきまして検討をいたしました。

 ただいま行っていますけれども、二月の定例議会冒頭での提案、会期途中での追加提案、一定のものが、法律が施行された後の六月の定例議会、もしくはそれ以前に開催されます臨時議会での提案などについて検討いたしました。また、法律の施行後に知事の裁決による対処の仕方ということについても検討した次第です。

 検討の結果、条例案の提出時期につきましては、法律成立後、適切なときに速やかに対処できるようにということで、県民の関心も高いことから、できるだけ早い時期に本県の取り組みを明確にし、論議して、県民に対する説明責任を果たすべきであるという考えに至り、二月定例議会の冒頭で提出いたしております。

 次に、私立学校との整合でございます。

 私立学校の担当部局、知事部局でございますけれども、本県では、私立学校においても、留年者などへの取り扱いについては、別途、公立学校と同様の措置を講ずることとして、バランスをとった次第でございます。

 次に、公立高等学校の授業料無償化は国の方針として実施するものであり、制度導入に伴う経費はすべて国で負担すべきだと考えております。我が県のように留年者や既卒者の授業料についても不徴収とした場合に、そこから超過負担が生ずることになります。こうした場合には、国の責任においてしっかりと補てんしてもらいたいと思います。

 このほか、私立学校を対象とする就学支援金への対応は教育委員会の直接の担当ではございませんけれども、本県の私学の中には専攻科を持つところがございます。修業年限が五年間の看護科の場合は、むしろ経済的な理由で自立を急いでいる生徒が多いと考えられます。看護科の四年、五年生についても支給対象に含めるべきではないかと考えます。

 私立高等学校との関係の変化でございます。

 実質的には私立高校の生徒も公立高校の生徒と同水準の負担軽減を受けられますが、その一方の授業料が無償になることによって、負担感に変化が生じるのではないかと考えております。生徒、保護者の学校選択性向の変化が公立高校と私立高校との関係にどのように影響していくのか、懸念しているところでございます。公私比率のあり方に影響するのかどうか、観察を要するものと考えております。

 最後に、この法律には県民の期待は大変に大きいものがございます。円滑な実施のためにも早期の成立を望みます。

 以上でございます。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、相川参考人にお願いいたします。

相川参考人 私は、一人の保護者として子供たちを育て、同時に、現在の立場は、さまざまな理由で親元から離れて生活をしております、児童養護施設の職員として、施設から高校に通っている子供たちの保護者の立場で、青森県立鶴田高校のPTA会長をしております。そして、青森県高等学校PTA連合会の会長をし、今年度、社団法人全国高等学校PTA連合会の副会長をしております相川順子でございます。どうぞ、きょうはよろしくお願いいたします。

 きょうは、高校生の授業料無償化につきまして意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 さて、高校生の授業料無償化につきましては、これまでさまざまな報道がなされて、私たち保護者としましても、今後どのような方向に進むか見守ってきました。

 現在の保護者の経済的負担に対する考え方の一つとしては、高校教育に対する親の考え方は一般化していて、高校卒業までは親の負担は義務と考えて、子供が社会的自立をするためには経済的な負担を惜しまないで育てていくという考え方で臨んできましたが、実際面では、教育にかかる家計負担が大きくなっていると考えます。

 親の収入減収や失業、そして不況で解雇というニュースが流れますが、授業料が払えなくなって退学をする生徒がふえているという声もあります。また、授業料を払えず、この三月の卒業式に出席できなかったことが先日も新聞で報道をされておりました。そういうことは、私たち保護者としては非常に悲しい思いをしておりますし、あってはならないことです。経済格差によって、子供たちが教育を受ける機会が不平等になってはならないというふうに思っております。

 親の経済的な負担を心配することなく、努力して、さらに高度な教育を目指す生徒、子供たちが生まれて、そして、今までと違う活力ある社会構造に変わっていくきっかけになるとすれば、この政策は評価されるものではないかと思っております。

 また、特に地方の小規模高校の問題として、統廃合が進み、地元に高校がないだとか、また、教育環境が充実していないなどの理由で下宿をする、あるいは遠距離を通学するなど、授業料諸費以外の部分の保護者の負担も大きくなっているということは事実としてあります。学びたいと願う子供たち、学ばせたいという親の願いをかなえるためには何らかの措置が必要だと思います。

 また、無償化によって、途中で退学しなくて済み、学ぶ場が確保できることを考えますと、保護者の立場としては、基本的に高校授業料無償化につきましては大変ありがたいことだと思っております。

 ただ、この無償化を考えたときに、心配されることも幾つかあるのも事実でございます。

 それは、授業料以外に学校徴収金があります。授業料は、入学金、授業料、教科書代、教材費、PTA会費、生徒会費、また後援会費、進学の指導費ですとか学年の運営費、そして入学に必要な制服代、靴代だとか教科書代、学校によっては修学旅行費だとか、空調を設備しているところは空調の使用料ですとか、そういう高校在学中に必要とされるさまざまな経費の一部でもあります。

 無償化という言葉が誤解を招き、すべて無償化になるととらえている保護者も出てくるのではないかということもあります。現実にそのように思われている保護者もいるという声も聞きます。本来の無償化の趣旨を広く広報し、周知も徹底していかなければ、お金があっても払わない保護者の意識やモラル低下の問題で子供に影響があったり、学校現場では教職員が対応に苦慮することになり、振り回される結果になると思います。保護者として、親としては、教員がじっくり教育に取り組める体制を早く固めてほしいということを強く願っております。

 また、私の所属している児童養護施設の子供たちも含めですが、支援が必要な家庭には今までも授業料の減免制度があり、これに伴う学校徴収金の減免もあります。無償化はこれまでと変わらないというところもございます。

 私の高校の場合の授業料の全額免除、生活保護世帯や母子低所得世帯の方々が対象になります。半額免除は非課税世帯や両親低所得世帯が対象になり、この免除制度を受けている生徒数は、現在、私どもの高校は定員が二百十名に対して、毎年三十数名は受けております。また、半額も三十名弱の生徒が受けており、トータルで六十名弱の生徒が何らかの免除を受けているという現状があります。この数値は、ここ三年ほど同じ数値が出て、さらには半額免除の生徒数がふえる傾向にあるということを聞いております。この現状を見ましても、保護者の負担に対する取り組みは急務と考えますし、授業料以外の費用に対するきめ細かい支援も必要ではないかと考えております。

 次に、生活保護世帯には高校就学費として入学金や準備金が給付されますけれども、低所得世帯にはそういった支援がなく、そういう必要なところこそ手厚く支援すべきと思います。また、無償化により誤解を招き、さまざまな奨学金制度への影響があるとしたら、本当に必要としている家庭への支援という面から見て問題が残るようにも感じております。奨学金を受けている生徒は、さらにアルバイトをしながら高校生活を送っている実態もありますので、今後のきめ細かな支援策もあわせて考えていただきたいというのが願いでございます。

 最後に、授業料の無償化の課題と問題点を少し私たちの立場で申し上げるとするならば、これまでお話をしましたことと多少重複するところもありますが、一つには、無償化により、保護者の経済事情で子供の教育を受ける権利が確保されるという反面、所得水準に関係なく一律の支給となるため、授業料を払わなくてもいい分、例えば塾や通信添削教材等の購入などでさらに格差が広まり、学力の二極化がますます進むことへの懸念もあります。高校の序列化もますます顕著になっていくのではないかと予想されます。

 二つ目は、高校の進学率は九八%にも達しているとされていますけれども、高校が義務化したと勘違いをして、高校教育のレベルの低下を招くおそれがあるのではないかということ。また、私たちはPTA活動をしておりますが、PTA活動を見たときに、教育はすべて国がやるものだという責任転嫁論のようなものが生まれ、PTA活動などが停滞するのではないかという心配もしております。

 三つ目は、先ほども申しましたとおり、授業料以外の諸費並びに入学金や制服代など、年間費用は約二十万円ほどあります。これに対する支援拡充が必要ではないかと思っております。

 四つ目は、留年者の授業料は負担をしないということで認識をしておりますけれども、県の負担になるわけですが、留年にもさまざまな理由があり、不登校や病気などで一概に本人の責任とは言えない留年に対しては考慮してほしいところでもあります。

 五つ目は、私は今、県立高校のPTAの立場でお話をさせていただいておりますけれども、私たちの会員の中には、私立高校の保護者も会員としております。その保護者の方々の声を聞きますと、私立高校の授業料の助成金との格差の問題があり、各県によってその対応に違いが生じて、公立、私立の格差がますます広がっていくのではないかという心配の声も聞かれます。

 これらのことを見ていきますと、ほとんどの子供たちが今は高校進学をする中で、偏差値による高校の序列化や大学進学実績の重視、教育困難校の問題ですとか少子化の問題など、課題として挙げられるのではないかと思っております。

 きょうは、私、会長の代理を務めさせていただいているわけですが、当連合会の高間会長が川端文部科学大臣を表敬した際に、文部大臣の方からは、この高校の授業料の無償化はあくまでも教育問題である、要素はあるけれども福祉問題ではないというお話をされたということを伺っております。その意味では、高校の無償化が実現し、さらに高校教育の将来像をどう描いていくのか、それらを明確にして、これからの日本を背負う子供たち、将来の子供たちのために継続的に教育活動が充実されていくことを願い、この取り組みを評価し、見守っていきたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、小川参考人にお願いいたします。

小川参考人 小川でございます。

 こういう場所に招待いただきまして、ありがとうございます。

 これから、今回の授業料不徴収、就学支援金支援への基本的な評価と、あと、今後検討すべき課題として、一つは、授業料実質無償化の意味をどう考えるか、二つ目には、経済的な困窮家庭の生徒に対する手厚い教育支援の必要性、三つ目には、高校教育制度を今回の措置を踏まえてどう考えていくか、最後に、私学助成のこれからの課題、およそ四点ぐらいにわたって、今後の検討すべき課題について私なりの意見を述べてみたいと思います。

 まず最初に、今回の施策について、基本的には、教育の家計負担が重い実態と、それが例えば少子化や教育格差の拡大等につながっているというふうな現状、また、高校段階におけるこれまでの教育支援制度が極めて不備であったというふうな点とか、また、中等教育の無償化という国際的な趨勢等々を踏まえますと、今回の公立高校授業料不徴収、また私学への就学支援金の措置というのは、高校教育の機会均等保障に向けた基礎となる施策の一つとして、基本的に評価したいと考えています。しかし、同時に、並行して検討されなければならない課題も幾つかあるかと思います。

 以下、その点について述べたいと思います。

 一つは、一律の授業料不徴収の意味をどう考えるかということですけれども、もう皆さん御承知のとおり、三月五日の読売新聞の朝刊の社説で、「所得制限を設けていれば、もっと低所得層支援や公私間格差の解消に回せる財源を捻出できたのではないか。」「目の前の格差縮小のほうが先決だ。」というふうな主張が書かれておりました。

 私自身も、確かにそういうふうな指摘については共感する面もあるわけですけれども、ただ一九八〇年代以降、特に一九九〇年代以降、国の財政事情もありまして、厳しく枠づけられた教育予算の中でのやりくりを余儀なくされてきた。この間の教育政策の動向を見てきた大多数の教育関係者にとっては、今回の授業料実質無償化の取り組みを、そうした一律、均等の教育支援か、あるいは経済困窮家庭への重点的支援かという、あれかこれかという二者択一の政策選択ではなくて、可能な限り、両方を同時に進めていく機会であってほしいというのが率直な思いであると感じています。

 今言いましたように、確かに、厳しい財政事情の中で、所得制限なしの一律の教育支援に対しては疑問を感ずる面もないわけではないんですけれども、しかし、教育に関係する立場からいえば、教育の場における学習環境は、生徒の家庭所得の差に関係なく、平等に整えていくのが望ましいと考えています。

 学校、特に公立学校のよさというものは、多様な社会階層、文化的な背景などを持ったさまざまな生徒が同じ空間、時間のもとに集団で生活し学ぶ中で、さまざまな立場や考え方に触れ、交流しながら成長、学習していくところにあります。そうした共同の生活と学びの場である学校の学習環境の整備に家庭の所得の差という影を落とすようなことは避けて、可能な限り、所得の差などに関係なく、公正、平等に保つことが望ましいのではないかと思います。そうした学習環境を整えることは、また他面では、多様な価値観と考え方に寛容で、幅広い社会性や公共心を身につけてほしいという社会からのメッセージを高校生に伝えることにもなるのではないかと思います。

 また、経済的な困窮など、さまざまなハンディを持つ者に対する処遇という点からも、所得の別なくアクセスが可能な、アクセスがやりやすい高校教育の仕組みをつくるということは非常に大切なことと思います。経済的な困窮などはだれにでも起こり得るというふうな認識のもとに、どのような経済的な困窮に陥っても、その国の、その時代における標準的な必要な生活と社会サービスは公正に享受できるようにすること、標準的で必要な生活と社会サービスにアクセスするための壁をできるだけ低くしておくことが重要であるという考え方があります。

 高校への進学率が約九八%に達している日本において、高校教育は、希望し、努力すれば、だれでもが公正、平等にアクセスできるよう、可能な限りその壁を低くしておくことが要請される、基盤的で重要な社会的仕組みであると考えます。その高校教育へのアクセスの壁を低くして、だれでもが平等に高校教育を受けられるようにする条件整備の一つが、今回の公立高校の授業料不徴収、私立等への授業料負担軽減の就学支援金であるととらえることができます。

 授業料実質無償化により、だれでもが平等にアクセスしやすい高校教育を整えると同時に、アクセスする上で、そうしたさまざまなハンディを有する生徒への支援の仕組みを創設するということは、財政上の事情は別にすれば、理にかなった、筋の通った考えであると思います。

 二つ目は、そうした高校実質無料化ということについては基本的に賛成ですけれども、しかし、もう一方では、高校教育には授業料以外にも多額の経費がかかっています。授業料の不徴収や授業料負担の軽減を図っても、それ以外の多額の高校教育経費の負担に苦慮している家庭も多く存在しています。すべての高校生を対象にした今回の措置によって、これまで経済的な事情で授業料を減免されてきた家庭、また生活保護で措置されている高校就学費の中から授業料分が削除されることなどを考えますと、今回の施策で、授業料として負担してきた経費を新たな学習費などに振り向けることのできる比較的経済的に余裕のある家庭との間で、差が新たに拡大するという懸念もあります。そうした点などを考慮しますと、授業料の不徴収や授業料負担の軽減というふうな問題とともに、経済的な困窮家庭に対する手厚い教育支援が同時に図られることが必要であると思います。

 実は、もともと高校は、義務教育と比べて教育支援の仕組みが全く未整備であったと私は考えています。義務教育では、ご存じのように、生活保護の教育扶助、また準要保護の就学支援がありますが、高校段階では、ようやく二〇〇五年度から生活保護の高校就学費の一部を生業扶助として支給するようになりました。しかし、義務教育の就学援助のようなすそ野の広い教育支援の制度はありません。

 義務教育段階で就学援助を受給している児童生徒数は、二〇〇七年度現在で約百四十二万人、全児童生徒数に占める割合は約一四%にも上っています。それに対して、高校段階で生活保護の高校就学費受給者はわずかに三万七千数百名、全高校生のわずか一%にとどまっております。また、奨学金もあるわけですけれども、奨学金受給者も現在約十六万人で、全高校生のわずか四%にすぎません。義務教育段階における就学援助受給者数を考慮すれば、高校段階のこれまでの生活保護の高校就学費や奨学金だけではカバーできない、経済的な困窮家庭の生徒が多数存在していることは明らかです。

 今回の授業料実質無料化の措置により、生活保護の高校就学費や授業料減免を受けてきた生徒世帯が不利益をこうむらないように、生活保護世帯や生活保護世帯に準ずる経済的困窮世帯を対象にした教育支援、名称は、高校版の就学援助制度でも給付型奨学金制度のどちらでもよいのですけれども、そうした公立、私立の区別のない、新たな経済的困窮家庭の生徒を対象にした教育支援の創設と充実を強く望みます。

 その他、幾つかの検討課題ということで、二点述べたいと思います。

 一つは、今回の高校授業料の実質無償化に向けた取り組みをさらに高校教育のあり方を深めていく論議に結びつけていくことも、今後の大きな課題であろうかと思います。

 確かに、今回の授業料実質無料化は、家庭の教育費負担の軽減とか、また、授業料などを捻出するためにアルバイトなどに時間を費やすことを余儀なくされている少なからずいる生徒が、勉学に専念できる時間をつくるなどの直接的な効果があるかと思いますけれども、これまでも準義務化していると言われてきた高校教育が、今回の措置によってさらに実質的に義務化に近づいてきたというふうに考えます。これまでも、中学校と高校、高校と大学の接続のあり方、また高校から社会、就職への移行など、中教審などでも広く論議されてきたところですけれども、それらの課題を、高校教育の質を高めていく方策とともに、さらに検討を進めていくことがますます必要になっているのではないかと考えます。

 また、今回の授業料実質無償化の措置は、私学との関係、また、これまでの私学助成との整合性を問うものにもなっているかと思います。最初の、新たな私学との間の格差感という話は、先ほどお二人の方からもお話があったかと思いますけれども、この点は、これまでも公私間の格差はありましたけれども、今回の措置によって公立学校が逆に無償化になった、そのことは私学との間の格差をより一層鮮明化したものと思われます。この点については、今後、公私間格差の是正をどう考えていくのかということは、これからの私学助成のあり方も含めて検討を要する課題ではないかと思います。

 さらにもう一つは、私学助成のあり方ですけれども、今回の授業料無償化というものは、従来の私学助成の基本であった機関補助重視の方法と明らかに異なるものです。従来の私学助成の方法と、今回の個人に対する授業料負担低減の措置という間の整合性をどう考えるのか、また、これからの私学助成をどういうふうな方向に進めていこうとするのか、今回の私学への就学支援金の支援方法というものは、そうした問題も新たに検討を要することかと考えます。

 最後に、今回の公立高校の授業料不徴収と私学への就学支援金の創設をベースにして、さらに経済困窮家庭への手厚い教育支援の仕組みを、できるのであれば、現在の教育予算の枠内でのあれかこれかといったやりくりでの検討からではなくて、歳入歳出の一体的な税財政改革により、教育予算の大幅な拡大を見通して、世界でも質の高い教育制度を構築していくという展望の中で御検討いただければ幸いと思います。

 終わります。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、三輪参考人にお願いいたします。

三輪参考人 三輪でございます。

 本日は、このような機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。

 私は、教育行政学、教育財政学という領域がございますが、そちらの方を専攻しております。また、奨学金の会という団体の会長も務めております。

 参考資料もごらんいただきながら、お聞きください。

 初めに、本法案の歴史的な意義について一言申し上げます。

 新制高校は、一九四八年度、戦後初期の教育改革、六・三・三制の一環として発足したその当時から、教育無償化が目指されていたということであります。例えば、一九四六年二月十三日の憲法マッカーサー草案には、無償の教育、フリーエデュケーションとありますし、また、教育改革の設計図となりました同年三月三十一日の米国教育使節団報告書には、下級中等学校の後に、無償で希望者はだれでも入学できる三年制の上級中等学校の開設を勧めるとあります。発足一年後の四九年四月には、文部省学校教育局から、新制中学校・新制高等学校望ましい運営の指針が出ますが、そこには、新制高等学校は義務教育ではないが、教育の機会均等の原則は新制中学校と同様に新制高等学校にも及ぶべきものである、授業料が不要になり、ほかのすべての安くなるときが期待され、学資を低減する方法を今からでもとることができるとはっきり述べております。

 遅くとも、高校進学率が八割を超えた、八二・一%に達した一九七〇年には全面実施されるべきでしたが、このたび、高校制度発足後六十三年を経て、無償化の第一歩が踏み出されたことは記念すべきであり、この流れを一挙に加速するチャンスと考えます。

 次に、国際的意義についてですが、国際人権A規約、社会権規約十三条二項(b)、(c)は、中等、高等教育の無償教育の漸進的導入、プログレッシブ・イントロダクション・オブ・フリー・エデュケーションを規定し、締約国は百六十カ国で、日本とマダガスカルは同項を留保中ですが、それと、子どもの権利条約二十八条も、中等教育の無償教育の導入、必要な場合における財政的支援を定めています。また、与党や日本共産党はその留保撤回をさきの総選挙に掲げ、本法案もその一部先取りと言えると思います。

 ただし、条約の無償教育とは、授業料無償のほかに、教育を受けるその他の費用に及びますので、法案はその意味では不徹底です。OECD加盟三十カ国のうち、高校授業料は二十六カ国で実施されており、日本は私学の授業料が完全無償化された時点でその仲間入りとなります。

 なお、朝鮮人学校を本法から除外するという議論もありますが、意見、出生等あらゆる差別を禁止した人権A規約の二条や、子どもの権利条約二条、人種差別撤廃条約等の国際法規はもとよりですけれども、信条等の差別を禁じた憲法十四条、教育基本法四条にも違反すると考えます。

 次に、法案の問題と課題ですが、第一の問題は、無償化が公立高校の授業料の不徴収、私立高校の授業料の月額の支給限度額以下に限定されていることです。膨大な家計負担教育費や私学の限度額以上の授業料は対象外です。

 家計消費支出は、一九八八年、二十年前から二〇〇八年度まで、三百五十八万円から三百六十四万円と、二十年もたっているのにほとんど横ばいでありますが、この間、貧困、格差が拡大する一方、教育費は上昇し続け、ごらんのとおり、二〇〇八年度、家計負担の高校教育費、年間平均ですが、生徒一人当たり総額が、公立高校で五十一・六万円、私立高校で九十八・一万円に膨張しています。家計に占める割合はそれぞれ一四・二%、二七・〇%ですが、二七%とは家計支出の丸々三カ月分です。そのうち、統計上の学校教育費、学校に支払う費用が、公立で三十五・七万円、授業料十一・四万円の三・一倍、私立で七十八・二万円で、授業料三十一・七万円の二・五倍に上ります。公私ともに授業料が完全無償化しましても、公立四十・二万円、私立で六十六・四万円の負担が残ります。現在の経済、家計の実態、貧困、格差のもとで、問題は依然深刻ということであります。

 本法案のこの不備を補うには、政令、省令等に私学の授業料あるいは公私立学校の学校納付金の軽減・無償化義務、設置者負担原則、保護者負担・便乗値上げ禁止等を確認、明記すべきではないでしょうか。ちなみに、公立高校では割当的寄附金が法律で禁止されています。地方財政法四条の五であります。それに沿って国、自治体、学校設置者が負担軽減に努力することで、無償教育の漸進的導入の要請にこたえることができます。現に、第二の授業料と言われる私学の施設設備費は授業料の平均二分の一を占めており、授業料を下げても、学校納付金をふやせば、授業料無償化は効果半減です。施設設備費、教育充実費、教科書代、図書費、教材費、修学旅行費、生徒会費、交通費などの学校納付金は教育を受ける上で不可欠の費用であり、無償教育の理念に照らして、今後、計画的に無償化すべきだと思います。

 子ども手当、中学生以下に年額三十一万二千円で、来年度は半額ですが、これと高校無償化との整合性、一貫性を図るためにも、高校の家計負担教育費の大幅軽減策が必要かと思います。

 次に、教育の機会均等を形骸化する教育費格差の問題。政令、省令、本法の改正を含む立法措置によってそれらの問題の解決が必要かと思います。

 まず、公私格差ですが、家計負担教育費の公私立格差は、総額で二倍、授業料で約三倍、私学の授業料が無償化されても約二倍の格差が残ります。生徒の三割、二九・八%を占める私立は特別の学校ではなくて、生徒の所得階層は多様であり、一部の私学を除き、学力などの都合で私学選択を余儀なくされている、そういう場合が圧倒的に多く、教育条件を含む公私格差の解消が重要な政策課題です。私立の小学校、児童の一・一%、中学校は七・二%ですが、この高い学費が費用負担困難な家庭の進学を阻んでおりまして、これも無償化の検討とすべきだと思います。

 また、私学特有の問題としては学校納付金の学校間格差がありまして、私学教育の公平性の観点から是正されるべきだと思います。ちなみに、千葉県の私立高校、全日制普通科の初年度学校納付金の最低と最高の倍率は一・六倍です。学費を高くすれば低所得者がおのずと排除されます。

 また、地域格差も問題です。本法のもとで、自治体の財政力、高校政策、高校無償化への対応などにより地域格差の広がりが懸念されます。現に都道府県の格差は、私学の学校納付金の場合、県単位ですが、一・六倍の差がありますし、公立の授業料減免率は十倍の差があります。

 もう一つ大きな問題は、経済的に困難な生徒の就学援助です。高額の学校納付金は、所得に関係なく一律徴収される。特に低所得家庭を直撃します。また、学習塾、予備校ほか家庭教育費は所得格差に規定され、それが学力格差とも連動し、貧困、格差拡大の要因となっております。当面、従来の授業料減免、補助財源とか修学支援基金の廃止あるいは縮減ではなくて、それを活用するとか、私学助成も削減ではなく増額して修学支援財源に充てるということ、また、小中学校に準ずる就学援助制度を高校にも導入すること、高校奨学金の抜本的な改善、例えば貸与制から給与制への転換とか、金額の引き上げ、対象人数の増加、成績基準の緩和、撤廃といったことであります。

 なお、増大する公費が効果的に使用され、不正や無駄がなく、透明性、責任性が確保されるような措置を講ずるべきだと考えます。

 最後に、無償化一般の理念と制度のあり方に触れさせていただきます。

 世界教育史を見ますと、十八世紀末のフランス革命期には既に教育を受ける権利と無償教育が一体的に提起をされ、その思想は、すべての子供の成人までの全面的発達の権利として深められ、国際人権A規約に集約されています。そこには、教育についてのすべての者の権利、その教育目的として、人格の完成と尊厳、社会参加、諸国民の友好、平和などが明記され、その権利の完全な実現のため、すべての段階の教育の無償教育の漸進的導入が規定されました。要するに、無償教育は教育の理念や目的と不可分だということです。

 教育を受ける権利は、人間が人間に発達し、社会の形成者として自立するための権利ですから、経済的地位にかかわらず、すべての人が平等に享受すべき基本的権利であり、受益者負担とか自己責任とかそういう考え方ではなくて、公費により社会的に保障されることがふさわしいでしょう。その成果は、個人の利益だけでなく、社会の各分野の利益や発展、困難な人類的課題の解決などに役立つのですから、そのような公益は公費負担がなじみます。また、かけがえのない教育の権利が公的に保障される社会環境で育つ若い世代は、教育を私利私欲や出世の手段ではなく、人々や社会の幸せや利益のために、学習、学歴の成果を生かし、社会に還元するような学びや人格形成が期待されます。

 教育を受ける権利は生涯にわたる国民の基本的権利でありまして、それぞれの発達段階には標準的な教育費用が必要です。それを制度的に保障するには、社会保障、生活保護基準、基準財政需要額、最低賃金制などに準じ、ゼロ歳から成人を含む人間の生涯の発達段階に応じた教育保障基準を設定し、経済的地位にかかわらず、すべての国民に保障する教育保障制度というような構想が検討されるべきではないでしょうか。

 高校の生徒は、高校だけが発達の期間ではなく、その前後も社会的に排除されず、家庭の経済的事情にかかわらず、希望すれば大学等の進路が保障されるなど制度の一貫した支えがあってこそ、安心して学べ、充実した高校生活、人生が送れます。

 国の借金が一千兆円に迫る、世界でも飛び抜けた借金大国日本の財政難は深刻ですが、主要国で最低水準の教育予算、OECD平均四・九、日本が三・三、二〇〇六年の数字ですが、これを平均並みに引き上げることは党派を超えて合意されております。若い世代の成長を支え、日本の未来を開くため、また、百年に一度と言われる世界的大恐慌に備え、無償教育を皮切りに、万全、盤石の無償教育体制の構築を超党派的課題に据えていただくことを切望いたします。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、四名の参考人の皆様方におかれましては、佐賀、青森といった、本当に遠路はるばる、わざわざこうして私どもの委員会に、そしてまた、学識経験者の小川先生、三輪先生におかれましても、おいでいただきましたことに、まずもって心より感謝を申し上げたいと思います。

 今回の高等学校授業料の実質無償化は、私どもが昨年の総選挙のマニフェストにおいて、これからはコンクリートから人へ予算の配分を大きく変えていく、この一丁目一番地の政策の柱でございますが、この法案、今議論をしているところでございます。こうした中で、今、一定の評価をいただき、またいろいろな懸念を、問題点を御指摘いただきました。

 そこで、まず冒頭に、それぞれの四人の皆様方に、まだまだこれだけでは十分ではないんだ、ここを第一歩として、さらなる、そして本当に学びの機会というものを、親の経済格差に関係なくどんな子供でもスタートラインに立てるように、高等学校で安心して学べるようにというような形で、一方で財源が、先ほどありましたように一千兆円近い借金を抱える中で、例えば私立に通われる生徒さんの授業料をすぐに無償化するとか、建学の精神からも果たしてそれがいいのかどうかという議論もございますけれども、なかなか一気にはそこまではいかない。

 そうした中で、今後、私どもが政府・与党として次に臨んでいくさらなる支援策としては、何が最優先されるのがいいのか、何を私どもが最優先で取り組むべきなのかというところを、少し端的にお一人お一人お答えをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

川崎参考人 私、教育長として申し上げます。

 一つは、今回の授業料無償化によりまして、育英資金をどのように構築していくのかということがあろうかと思います。さまざまな参考人からお話がございましたように、授業料だけではございませんで、学校の徴収金、さまざまなものがあります。

 それから、私どもが今検討しておりますのが、通学費が地方によっては随分高くかかっている、授業料よりも高いというのが相当ございます。こういったものにどのように対応していくのかということで、私どもの方では既に検討に入らせました。

 もう一つは、就学前教育、これをどうしていくのかということがございます。

 今、家庭の教育力が非常にばらつきがございまして、小学校一年生に入ってくる段階でしっかりとしたしつけができている子、できない子、また、幼稚園、保育園の対応の仕方もさまざまございます。しかし、五歳児は、私が調べたところ、佐賀県でも九十数%の子供が保育所か幼稚園、こども園に通っているわけで、この五歳児、いわゆるK、キンダーをどうするのか。私は、就学前の五歳児から高等学校まで、一貫して授業料を無償化するということをお願いする次第でございます。

相川参考人 私たち保護者の立場としましては、先ほども述べさせていただきましたとおり、学校の徴収金の兼ね合い、そしてまた減免制度を既に受けている御家庭との兼ね合いをまず大優先に検討していただきたい。そして、それに伴って、奨学金を受けている子供たちがさらにアルバイトをしながら学業をしていかなければならないという実情がありますので、そこの兼ね合いも考えていただければと思います。

 そして、今教育長さんがお話ししたとおり、高校教育をするに当たって、小中高大、その前の幼児教育も含めた取り組みを今後どうしていくのかというトータルなものを見きわめながら進めていけたらというふうに思っております。

 以上でございます。

小川参考人 質問の趣旨は、高校授業料の実質無償化に次ぐ最優先施策は何かというふうな御質問かと思いますけれども、高校段階の問題として考えますと、先ほどお話ししましたように、高等学校で生活保護、高校就学費及び授業料減免を受けている生徒が今、全生徒数の約一〇%ほどいますが、この層が、実質無償化によって支援がなくなるということが生まれてきますので、やはりそうした生活保護世帯及び生活保護に準ずる世帯への新たな教育支援策ということは次の喫緊の課題ではないかというふうに考えています。

 二〇〇五年度から生活保護で高校就学費が措置されたといいましても、先ほど述べたように、子育て世代の家庭に対しては稼働能力の有無などで厳しい生活保護の受給認定基準があるために、子育て世代においては生活保護をほとんど受けられないという実態があります。先ほど言いましたように、現在でも、生活保護の高校就学費を受けている生徒は、全生徒のわずか一%にすぎません。

 ですから、こうした生活保護をベースとした支援策にも限界がありますので、やはり所得という客観的な基準に基づいた、経済困窮家庭への手厚い、新しい支援方策ということを考えていただければと思います。

三輪参考人 私は、高校の授業料の無償化をさらに加速させるということ、それから経済的に困難な家庭に対する就学援助、あるいは奨学金も、借金で、返さなくてはならないものではなくて、返還不要な給付制の奨学金の導入拡大。やはり学力基準がございますと、勉強ができない、そういう家庭のお子さんは欲しくても奨学金の貸与がなかなか受けられないという事情がございますので、その点をクリアできるような改革が必要かと思います。

 それから、高校生といいましても、大学を視野に入れながら一生懸命勉強をしております。その大学の学費は、お手元の資料にもございますように、国立でも百五十万、私立でも二百十ですか、そういう金額がかかります。したがいまして、そこの軽減の光が見えてこないと、なかなか高校生の学ぶ権利を保障するための土台ができたというようにはなりません。

 また、大学の奨学金は高校生時代から予約奨学生としてチャレンジできますけれども、これもすべて借金、貸与制であり、有利子制でありますので、なかなか二の足が踏めないという事情がございます。

 そのあたりのところに、今回の予算では措置されておりませんけれども、大学の学費の軽減とか、それから給付制、給与制の奨学金に一歩でも導入の前進を図る、そういうことが今、青年たちに対して、高校生に対して、それも大事なメッセージではないか、そんなふうに思います。

笠委員 ありがとうございます。しっかりと今の御意見も踏まえながら、また私どもも取り組んでまいりたいと思います。

 次に、川崎参考人と相川参考人にお伺いをしたいんですが、まず川崎参考人の方に、今回、まさに四月一日、私どもはそこからの無償化を目指して今、国会で議論をしておるわけですが、やはり広報、あるいはそれをどのように周知していくかということが大変大事なのではないかと思っているんです。

 それで、県の教育委員会の立場から、いろいろな学校現場からの、私どもにも実はいろいろな問い合わせもあるんですけれども、そういった声というか御意見、こういったところの広報がまだやはり足りないんじゃないか、あるいはこういうところを徹底してほしい、そこらあたりの御見解あるいは現場の声というものを、まず川崎参考人の方にお伺いをしたいと思います。

川崎参考人 お答えいたします。

 私ども、政府でこういう方針が出された段階から、各市町教育委員会なり、また学校なりと連絡をとりながら、方向性については逐次広報をしてまいりました。ただ、法案が通っていないという中での広報、そういう中で、条例案を出して、まずは議会でしっかり論議することが一番の広報だろうという観点に立って、冒頭、提案したところでございます。

 物によっては、もう入学試験は終わっております。その都度、保護者会なり受験生には、こういうふうになりそうですよと。それから佐賀県では、二月議会で冒頭で提案しますということを、チラシを入れまして、その都度図っているわけでございます。

 ただ、広報の仕方といいますか、保護者の方からは、あたかも教科書代なんかも無料になるかのような印象をお持ちの方が相当おられる。授業料なんですよというところの広報が今後必要じゃないかと思います。

 いずれにしても、我々、広報を進める上では、一日も早い法律の成立をお願いしたいと思います。

相川参考人 先ほど私の方でも、広報の徹底というか、話をさせていただきました。

 これは、私どもPTAの組織としては、先ほど言いましたように、まだ法案が通っておりませんが、ただ、実際、新一年生、入学式、入学生の保護者の説明会というのは、私どもの高校では三月の二十三日にもう予定されております。そこの場で、例年、事務方より、ことしの経費、入学の手続はこういう形で銀行へ手続をしてください、そのような説明がされます。

 ですから、保護者の皆様は、この法案が通るだろうという、通ったことを前提に、通ったときはこういう経費、まだ成立できていないときはこういう経費という形で認識をされていると思いますけれども、学校、事務方、いわゆる県の対応としてはいろいろな準備が必要だと思われますが、三月の末というのは保護者にとっては説明会の時期になりますので、そこに合わせて、私たちPTAの役員も、いろいろな機会、今いろいろな事業も組みながら、事あるごとに私たちの方からPRをさせていただいております。

笠委員 とにかく、法案の成立へ向けて私どもも努力をしていきたいと思っております。

 それで、もう一点、川崎参考人の方に。

 実は午前中、私学の関係者の方々がおいでになりまして、逆に、私学の現場においては、個人がそれぞれに署名をしたり、あるいはどれぐらいの収入があるのかの証明書をしっかりと出したりということで、かなり現場の負担がふえていくんだというお話がございました。

 一方でいうと、公立高校の場合では、授業料の徴収事務というものはなくなるので、その点の学校現場の負担というのは軽減をされるのではないかと思っておりますが、その点と、そしてまた、これは知事部局ということになるのかもしれませんけれども、県というお立場で、私学の現場の負担というものを何かお考えになっているのか、あるいは、国としてしっかりここはこういうふうにやってほしいというようなことがございましたら、ぜひお願いをいたしたいと思います。

川崎参考人 実は、私、教育長の前は私学担当をしておった部長でございましたので、知事部局とも連携をとりながら進めております。

 確かに、事務は軽減されると私は思います。とりわけ今、授業料の滞納がふえておりますし、授業料の減免もふえております。そういったことで、ある意味、そういった事務作業がなくなるという意味においては少なくなってくるだろう。しかしまた、いろいろ冒頭申し上げましたけれども、徴収をどうしてもせないかないような事態も全くないわけじゃないと思いますので、そういったところでどうなるのかということはあろうかと思いますけれども、御指摘のとおり、総体として見たときには少なくなる。

 それから、私学についてでございますけれども、知事部局とも話をしまして、私どものところでは、私立学校も留年生等については同様の対応をするという方針を決めました。したがいまして、その分については県が単独で措置せないかぬだろうと思っております。その分をぜひとも何らかの形でと思うところでございますけれども、方法論としてはそういう方法をとって、バランスをとった次第でございます。

笠委員 ありがとうございます。

 本当に、佐賀県においては、こうやって前向きにしっかりと取り組んでいただいていることに感謝申し上げたいと思います。

 次に、時間の方が限られてまいりましたので、小川参考人と三輪参考人にお伺いをしたいんですが、先生方のお立場から、今回、きょうも皆様方から御指摘がありましたが、実際にこの法案が成立して制度が定着していく中で、今後、公私間格差、これをどうしていくのか。そしてもう一つは、やはり懸念として、都道府県による格差というものが出てくる可能性があるわけですね。そういったところのまた新たな格差を生まない。あるいは、公私間格差は、何とかこれを埋めていく努力というものは私どももやっていきますけれども、その点についての先生方お二人の御所見等々ございましたら、お一人ずつお願いをいたしたいと思います。

小川参考人 二つの御質問のうちの、まず最初に、公私間格差の件ですけれども、私学の授業料というふうな提案一つ見ても、やはり私学の間でも個々ばらばらであるのも事実です。高校のみの私立学校があるかと思うと、もう一方では大学の附属、なおかつ小中高も一緒にあわせ持った私立の高校という高校もございます。そういう点で、当然、公立学校ではできないプラスアルファの教育サービスを看板にして非常に高い授業料を徴収している高校がある一方、公立学校とそれほど変わらない授業料をベースにしながら、施設費云々ということで何とか踏みとどまっている高校もあるわけですね。

 ですから、そういうふうな、多種多様で、ないしは授業料でも非常に格差のある授業料について、それを全額無償とか、半額無償のための支援というふうなことを一律にやるということはなかなか難しいと思いますので、やはり何らかの標準的な私学助成額というものを算定して、それをベースにしながら私学助成を図っていくというのが最も現実的な考え方なのかなと思います。当然、全額無償というふうな考え方もあるかと思いますけれども、そういう主張を現実化する上では、二つも三つも高いハードルがまだあるのかなというふうに思います。

 二つ目の地方間の格差、これも、確かに私学助成の基本は都道府県が主体となってやっておりますので、当然、都道府県の私学状況というのは、都道府県によって全く違います。そこの私学の割合とか、ないしは公立と私立との関係等々によっても、私学の状況が全く違いますので、当然、都道府県ごとにおいて、私学助成の力の置き方、位置づけ方ということがやはり違うということと、もう一つ、やはり地方財政力の差があるということで、当然、地方を主体にして私学助成をお任せしていくというふうな現在の仕組みを維持していくのであれば、都道府県間の私学助成の格差、授業料を軽減していく施策上の格差というのはなかなか埋まらないのではないか。

 これを是正していくためには、国と地方の間の今の教育費負担のあり方、仕組みというものをやはり根本的に見直す。例えば、民主党の方でも御提案があるように、義務教育レベルでは教育一括交付金、ないしは、高校でも高校教育一括交付金とかという形で、国が多くの財政負担を負った上で、それをベースにしながら地方に交付するというふうな仕組みも視野に入れながら検討していかないと、なかなか格差というものは埋まらないのではないかなというふうに考えます。

三輪参考人 公私間格差の是正の方策としては、一九七五年に成立した私学助成法の目標が経常費助成の二分の一とありますので、それから三十数年たって、まだ到達よりはるかに及ばないというのは、国の責任として私は異常だと思います。早急にまずは二分の一にまで接近する、それに最大限の努力をすることが格差是正のポイントだというふうに思います。

 それから、第二番の御質問、都道府県格差の是正方策についてでありますが、これだけ財政力の地域格差が大きい中で、幾ら同じように努力をしても、やはりそれはおのずと格差となって子供たちを直撃するということは免れません。

 したがいまして、政府なり都道府県の教育長レベルで一定のガイドラインを設ける、高校の運営費標準といった、どこまでを公費負担で認めて、どこまではまだしばらく、それ以外は無償にするとか、そういう線引きを明確にして、熱心なところが突出して、財力のないところはおくれるということのないように、平等にそうした保障が行き渡るような制度の設計が大変重要ではないかと思いますし、同時に、制度の設計をしましても、それを裏づける予算がなければ、結局、絵にかいたもちになってしまうわけですね。

 ですから、これはしっかりと地方交付税の財源措置をして、そして、どういう自治体であってもミニマムな基準はクリアできる、そういう仕組みの創造が今後求められるのではないかというふうに思います。

笠委員 きょうは、四人の皆さん、本当にありがとうございました。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 この高校無償化法案の審議に際して、法案の論点、また課題、こういったことを浮き彫りにするために参考人としてお呼びをしたところ、こうしてお出ましいただいたことに改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 そこで、まず川崎参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど、配付資料をもとにして御説明をいただきました。佐賀県の教育委員会教育長としてという資料だと思いますが、改めてお伺いいたします。

 第三条第一項、このただし書きの部分について、「この適用については一律に適用する具体的な対象は見出し得ないところから、原則不徴収とし、」例外的に「徴収する場合は教育委員会に諮り、個別具体に審査することとしている。徴収する場合は、相当限定的なものになると考えている。 留年の結果、三十六月を超えた場合であっても、本人にその責がない場合などについては、不徴収とする。 また、高等学校等を卒業した者であっても、一律に徴収するとはしない。新たな就学が、その生徒の社会人としての資質を高め、職業的自立などに必要と認めた場合には不徴収とする。」。この方針について、教育長の権限で決めたのか、あるいは知事さんも了解の上で決めたのか、それから、議会に諮って、議会の了解を得たのか。これは、やはり判断が、お互いに、教育現場だけでもだめですし、知事は財政全体の責任を持っておられますから、知事の判断も必要でしょうし、当然、議会に承認を得なければいけない問題でもあろうと思います。

 教育長、知事、議会の対応、いずれについて、どういう対応だったのかということをお話しいただきたいと思います。

川崎参考人 お答えいたします。

 まず、法案が出された段階で、我々は直ちに知事の方に出向きまして、こういう法案が出されている、県としてどのように対応するか考えていきましょうということでお伺いをしたわけでございます。

 その中で、まず教育長の方で一つの案をつくってくれぬかということでございました。それで、先ほど申し上げましたように、留年者の現状、それから佐賀県で一度卒業して、また通っている者の現状を見たときに、これを直ちに徴収するということにはならない、むしろこういう者こそ支援をすべきだという判断をしたわけでございます。

 当然、そういたしますと、国からの補てんがない場合、交付金がない場合は、県の財政負担となるわけでございますので、そこは知事ともよく話をし、合意の結果でございます。したがって、私学においても同様の対応をするということで、別途対応するという方針を出したところでございます。

 そして、出した段階で議会の方にも我々は説明をし、今、県議会は一般質問がちょうど終わったところですけれども、冒頭に提案をするということも、それから、趣旨、内容につきましてもすべての会派に説明をし、今、県議会で議論を経ていますけれども、そこの条文についての異論はあっておりません。そうやろうということでございます。

 以上でございます。

馳委員 すばらしいですね。議会にも異論はなく、やろうじゃないかと。本当に、そういう意味では、随分、川崎教育長の根回しの周到さに敬服をするところであります。

 そうすれば、二番目に、やはり次に来るんですね、「条例の施行時期」、こういうふうになるわけですね。「施行の時期については、条例の附則で規則委任をしており、法律の成立を受けて、」速やかに「規則を制定することとしている。 平成二十二年四月一日施行を念頭において準備を進めている。」。

 そして三番目では、「条例(案)の議会への提案時期」については、「二月定例県議会の冒頭に提案している。」。そして今後、この国会での法案の成立の様子を見ながら、会期途中での追加提案、六月の定例会、あるいはそれまでに臨時議会を開いて対応する。こういうことをすべて、知事も議会も了解をとっている、こういうことでよろしいでしょうか。

川崎参考人 その文章、私の方でつくりましたけれども、ちょっと誤解があっては申しわけございません。

 二月定例議会で提案し、当然可決していただきたいと思っています。六月議会ということも検討をしましたということでございまして、それはしておりません。もとより条例提案権は知事にございますので、知事と相談せずして条例提案はございません。

 以上でございます。

馳委員 すばらしいと思います。

 しかし、これは佐賀県のことではないんですが、たまたま私の住んでおります石川県、今ちょうど知事選で議会が開いていないんですよ。つまり、骨格予算については二月中に議会をやって終わっちゃって、これはやっていないんですよ。したがって、全国四十七都道府県、佐賀県のような対応をしていない都道府県もあると思われます。

 そうすると、この第三条によりますと、ただし書きについて、条例で有償とするかどうかという対応を具体的に決めることになると、六月議会になってしまうところは、四月、五月の分は、これは法案では公立高校は無償ですから、取れないですね。したがって、このタイムラグによる、有償化をして生徒から授業料を払ってもらう分というのは、どうしようというふうな、ちょっと不安を抱えておられるんですよ。

 佐賀県は、それは多分この三月中に議会で可決をされると思います、ここまで根回しをされておられるのであるならば。しかし、ほかの都道府県のことも考えて、あなたが、やはりきょうは地方の都道府県の教育長という立場で来ていただきましたので、そうではない、あら、条例が間に合わないぞ、法案が先に成立してしまってはタイムラグが生じて、この差額をおれたちは財政負担しなきゃいけないのかなという不安を持っておられると私は思っているんですよ。

 そういう方々、そういう教育長の立場に立って何かおっしゃりたいことがあれば、きょうは高井美穂政務官もそこに来てちゃんと聞いておられますので、どうぞ率直にお申し出いただきたいと思います。

川崎参考人 当初の意見陳述のときに申し上げましたように、今回の法案を我々目にしたときに、ただし書きの運用が自治体に任されているということをお伺いいたしました。当然、自治体にお任せ願えれば自治体はそれぞれの対応をしていくことになるし、必ずしも同様の対応にはならないだろうと思っております。

 それならそれで、条例委任する旨を法案の中に書いていただければ、それは自治体できちんとしますけれども、あそこの解釈が各県によって違うのかということになることを非常に懸念した次第でございます。そこで、完全無徴収という問題、原則無徴収、それから言いましたように国庫負担される分の一般無徴収というようなさまざまな考え方があって、各県ともそれぞれの対応を考えられていると思います。

 それから、一般的には、相当法律が先行し、それを受けて条例で決めていくというのが一般的でしょうけれども、それについては私どもも、現実にこう審議されているわけですから。ただ、非常に県民も期待し、画期的な施策であろうと思うだけに、四月一日からの施行であれば、それをきちんと佐賀県としては論議をしようということでございました。

 したがって、法案が通ってから考えるということであれば御指摘のようなことも考えられますでしょうし、各県によってそこはばらついているというのが現状じゃないかと私は理解しております。いろいろ照会いたしましても、いろいろばらつきがございます。

馳委員 そうすると、今の教育長の答弁は深く心にしみて高井政務官も聞いておったと思うんですが、この省令の解釈が、やはり一定の解釈として、四十七都道府県すべてにおいて、なるほど、そういう基準で国費算定額が基準となっているんだなということがわかれば安心して準備にも入れると私は思うんですよ。

 教育長、私の解釈は間違っていますでしょうか。その省令の基準を早く、解釈をお示しすることが必要ではないかなと私は思っておりますが、教育長どう思われますか。

川崎参考人 示されればそれにこしたことはないと思います、県政を預かる者といたしましては。そうしないと、どの分が国庫によって持ってこられるのか、補てんされるのかというのがわからないわけですから。

 ただ、条文の中には私学への対応が記載されておって、その中で留年生と一度卒業した者というのがありますので、それが一つの線なのかなというイメージは我々持っているところでございます。したがって、本県の場合、そうであるならばということで、あえて超過負担をしてもという思いでございます。

 ただ、今日の現状からして、それぞれの自治体でそれなりの裁量権があるというのは、これまた必要ではないかとも思っております。

馳委員 私は、今教育長のおっしゃったことで、その県なりの裁量権、地方分権の時代に、我が県はこうしたい、それを我が県の財政負担によってしたいということはあり得べしと思うのですが、しかし、そこにゆだね過ぎてしまっては、いわゆる都道府県による教育格差が新たに生じるのではないのかなという不安を禁じ得ないんですね。

 したがって、川崎教育長がお出しになった配付資料の五番目が極めて大きな意味を持ってくるんですよ。改めて私が読みますね。「超過負担が生じた場合の補填」「これにより、超過負担が生じた場合には、」国の方針で導入するので「国の責任において補填してもらいたい。」。

 教育長は大変謙虚なので、補てんすべきだとは書きませんでしたね。まさしく要望ということで、恐らく地域間格差がこれによって起きないように、つまり財政負担の差によって教育の格差を起こしてはならぬよ、こういう御指摘であろうと思っておりますが、その解釈でよろしいでしょうか。

川崎参考人 若干遠慮しまして。負担すべきだと思います。

馳委員 高井政務官、この委員会審議を十分考慮した上で対応をお願いしたいと私は思いますね。

 さて、次に、学者の小川さんと三輪さんにあえてお伺いしたいと思います。

 大臣も、本会議での答弁でも、この委員会においても、高校教育、教育システムにおいてどうすべきかという議論があって、その上で教育費の負担軽減策、いわゆる機会均等ということを考えるべきではないかという指摘に対して、やはり学力向上、公共心の育成に資するのだ、社会全体が税金を使って皆さんの教育を支援しているんですよという自覚を求め、保護者にもそれを求めたいというふうにおっしゃったんですが、残念ながら、では高校教育においてどのように学力向上につなげたり、公共心の育成、また文部科学省的に言うと規範意識の醸成となろうと思いますが、この具体性が出てまいりません。

 私たちは、これは何度も申し上げております。毎年三千九百三十三億円、莫大な税金を使う以上、その理念というものをやはりまず示すべきではないんですか、このことを申し上げ、この政策を決定し、国会の審議に、俎上にのせるに当たっての審議経過を私たちは求めましたが、残念ながら、政務三役で決めました、中教審にも報告をしました、こういう答弁だったんですね。

 改めて、小川先生と三輪先生にお伺いします。

 我が国の教育システムのあり方、また、高校教育にこれほどの国費を投入する上において必要な理想というもの、このことについての見解をお述べいただきたいと思います。

小川参考人 極めて重要な問題指摘ですし、非常に難しい課題かと思います。

 ただ、今まで、日本の教育、いわゆる学校制度の議論を見てみますと、高等学校段階の教育の内実を規定していく作業というのはこれまで非常におくれてきたことは事実かと思います。

 つまり、小学校、中学校の義務教育というのは、義務教育を終えた段階で社会に出ても自立して社会参加ができる、そういう基礎的な能力を身につけさせるというのがやはり義務教育でありましたし、また大学は、そういう高度な研究や高度の職業人養成というふうな目的でありました。その義務教育と高等教育の間にあって、高等学校というのはなかなか明確にならないまま、大学受験の競争等々もありまして、結局、大学準備教育ということで片づけられてきた面があったのではないかと思います。

 今回、先ほども御指摘ありましたように、これまでも高等学校については公費は当然支出されてきていたわけですけれども、今度は、明らかに保護者への、授業料負担という目に見える具体的な形で四千億近いお金を投資する以上、それによって実質的に義務教育に近づいた高等学校の教育の中身を、義務教育としての高等学校の教育内容は何かということはやはりきちっと定義しながら、高等学校教育の改革ということは進めていくべきだと思います。

 基本は、先ほど言いましたように、義務教育というのは、義務教育を終えた段階で社会に出て自立し社会参加していく、そうした基本的な能力や資質を身につけるということがやはり義務教育の最も基本的な押さえかと思います。そういう点では、今の高等学校が、高等学校を終えて自立して社会参加できる、そうしたさまざまな能力、資質をしっかり身につけているかどうかということについては、やはり甚だ問題もあるのかなと。

 そういう点では、卒業時点での学力のきちっとしたチェックとか、または、例えば、少なくとも、大学に進学しないで高校を出て就職する、社会に出る方も五〇%近くいるわけですから、これまで高等学校の普通高校では余り重視されてこなかった職業的な教育をきちっと身につけさせて、高等学校の終了段階で、そうした職業的な能力、知見も、基本的なところでしっかり押さえた上で高等学校を終えるとか、そういう教育内容の見直しにも連なるような議論をこれからしていく必要があるのではないかというふうに考えます。

三輪参考人 教育制度上における高校の位置づけをどう考えるかという御質問だったかと思いますが、先ほども紹介しましたように、戦後初期、既に、中学校と高校を接続して、一貫した中等教育体系として構想されておりました。これは、アメリカの教育使節団報告書のサジェスチョンというよりは、それを受け入れるための日本側の委員会が既に、資料にございますように、そうした制度を立ち上げていたわけでございますね。

 青年期というのは、第二の誕生と言われるように、本当に人生で一番難しい時期です。そういう時期に、十五の春を泣かせて、また、せっかくの学習集団、これもばらばらにしてやり直しということでは、そういう大事な青年期の形成を制度が損なってしまう、そういう問題がございます。

 ですから、それは戦後初期からの課題でありましたが、今回、このように教育費が、授業料が無償化されるということをきっかけにして、そうした不連続の部分、なおかつ、このままでは中学と高校との間は断絶しております、そういう制度の有機的なつながり、これをしっかりすることが課題ではないかというふうに思います。

 それから、普通教育の年限は寿命とともに伸びております。人生五十年の時期と人生八十年の時期とでは、その基礎的な土台づくりというのが全く違うわけですね。今や人生八十年という時代にあって、その基礎をしっかりと培う、そういう意味では、この高校教育の改革というのはとても大きなテーマだというように思います。

 そして、四千億くらいの費用を投入することで果たして効果はどうかという御質問が最初にあったかと思いますが、やはり、公立高校であれば年間十二万円、これが負担から解放されるということは、それはさまざまな学習費に充てることができます。本を買ったり、旅行に行ったり、いろいろ調べたり、そういうことはすぐ学力形成に直結するという効果が期待できますね。家庭によってはいろいろな使い方があるにしても、基本的には、そういう形のゆとりが家庭に出てくるということではないかと思います。

 それから、規範意識のことの御質問がありましたが、やはり社会全体で包んで青年を育てるということは、それだけ社会に対する自覚も連帯意識も深まって、そういう部分についても大変効果的ではないか、こんなふうに思います。

馳委員 では最後に、相川参考人と川崎参考人にお伺いして終わりたいと思いますが、私は、法案をよく読んでみて、ちょっと不公平だなと思っているところがあって、それをあえて二点、見解をお伺いします。

 まず、相川さんにお伺いしますが、実は、公立は無償なんですよ。私学の場合には、申請をし、認定をし、そのときに署名が必要なんですね。そして、低所得の方については、所得証明書を持っていって確認をするわけですね。事務的な手続は雲泥の差であります。

 特に、児童養護施設に通っている、住んでいる子供たちがこういう手続を私学においてさせられる、しなければならないということの負担というものも考慮し、私学の場合には、在籍証明があればそれでいいんじゃないのかな、法案にも罰則規定等があって、不正に手続しちゃいかぬよということになっているんだから、それで十分なんじゃないかなと。公立と私立での負担の重さということについて、私は心配しております。このことについての見解を相川参考人にお伺いしたい。

 もう一つは、大所高所からという意味で川崎参考人にお伺いしたいのは、実は、御存じのように、子ども手当は、定住外国人の子供、それも本国に残してきたお子さんにも支払われ、その手続については市町村が確認するというふうに今言われております。ところが、この法案では第四条において、日本国内に住所を有する者という限定がされていて、これは明確に教育基本法第四条に違反していると私は思っています。在外日本人のいわゆる対象となる子供には支払われないんですよ。私は、これは不公平ではないかなと。

 この二つの不公平感を私は感じておりますが、相川参考人と川崎参考人から、こういう論点についての見解をお伺いし、私の質問を終わりたいと思います。

相川参考人 お答えします。

 ただいま養護施設の子供たちのことで御質問をいただき、むしろ私の方で大変ありがたいと思っております。

 養護施設の子供たちは、十八歳まで施設で生活をすることが可能でございます。そして、その子供たちも高校へ進学をするということが、一般の高校進学率が九八%になっているのに対して、養護施設の子供たちの進学率というのはまだそこまで達しておりません。その中で、私たちも、十五歳の子供たちを社会に出すということは非常に懸念されることがたくさんありますので、公立高校、私立高校への進学ということを推しております。

 そして、今、事務的ないろいろな経費、証明等のものに関しましては、やはり子供個々が、一人一人がその証明をするということではなくて、私たちの養護施設自体が一つの家庭としての機能をしておりますので、そこでは事務担当職員がすべての手続をしております。それは、公立高校の場合はそういう手続が必要でなくて、私立高校の場合は事務職員としても手続の時間を要するわけですけれども、そういう形で、私どもの方の子供たちは、多分全国の養護施設の子供たちは、すべてが公立高校ではなくて、私立高校に通っている子供さんもいると思いますので、そこはそこで、子供たちにかかわっている職員が対応しているという形だと思っております。

川崎参考人 お答えいたします。

 私学と公立学校で、手続の煩雑といいますか、手続が違うということでございますが、我々教育に携わる者としては、手続が簡略であることにこしたことはないわけですけれども、そこは政策当事者の制度設計上の問題だろうと思います。

 それから、外国の人であってもという言葉でございますけれども、国家論、国民論は別として、同じ学校で学ぶ者が外国人だというゆえんをもって不徴収にならないというのはどんなものか。教育論として見たときには、それは整合性をとられた方がいいだろうというふうに考えます。

馳委員 私が指摘したのは、この法案は、海外にいる日本人はもらえないんですよ。子ども手当は、定住外国人の、自分が本国に残した子供の分まで出るんですよ。これはやはり整合性が政府としてないんじゃないんですかね、こういう御指摘なんですね。

川崎参考人 私も同様に考えます。

馳委員 ありがとうございました。

田中委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四人の参考人の皆さんには、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、川崎参考人にお伺いしたいんですが、この委員会でも、都道府県の私立高校生への授業料減免補助、これが〇九年度と二〇一〇年度当初予算で、今回の就学支援金ができたということでかなり減額になってくるんじゃないかというのが話題になっていました。

 それで、文科省の方がつくった資料ですと、佐賀県は、二〇〇九年度の当初予算が三千四百万、ところが、二〇一〇年度でやはり二千四百万に減額されています、数字上は。私、千葉県なんですが、千葉も三億が八千二百万に減額されていたので、どうなっているのかなと思いまして、実は昨日、千葉県の学事課の方にお伺いして中身をいろいろ聞いてみました。

 数字だけ見ていると、やはり減額されてしまって、本当に援助の必要なお子さんたちに援助が行かなくなるんじゃないかというふうに数字では見えるんですが、学事課長さんにいろいろ聞いてみましたら、千葉の場合は、二百五十万以下の収入の世帯については十分の十、全額補助している、この制度は変えないんだと言うんですね。それだけ金額が少なくなってもここは全部維持しますと。

 ただ、この十分の十の補助をしているのは、四十七都道府県のうち十県ぐらいじゃないか。この十分の十の補助がないと、就学支援金が下支えしても、上をカットされちゃって穴があいてくる可能性があるんじゃないかな。

 佐賀県の場合は、補助対象とか補助額がどうなっているんでしょうか。その点、まずちょっと教えていただきたいと思います。

川崎参考人 ちょっと私の理解がどうなのかでしょうけれども、私学のこと……(富田委員「そうです、私立高校生」と呼ぶ)私立高校生ですね。先ほど言いましたように、教育委員会で担当していないものですから。ただ、私も私学の担当部長をしておったということを先ほど申し上げたところでございますけれども。

 佐賀県の場合は、おおよそ私学助成法の限界に近い、五〇%近くの運営費補助を行っております。そのほか、授業料を減免したときに、減免に相当するもののおおよそ半分程度だろうと思います、それが下がることによって学校の減免額が下がってくるんだろう、そういうものが影響しているんじゃないかと思います。ちょっと私も手元に詳細なものを持ちません。申しわけございません。

富田委員 済みません。御担当されていたというので、おわかりかなと思ってちょっとお聞きしたんですが、申しわけございません。

 千葉県の例で、先ほどお話ししましたように、三億が八千二百万になったので大丈夫かなと思いましたら、私立高等学校入学金軽減事業補助とか私立高等学校生徒奨学資金の貸付事業の助成、こういうところはふやしているんですね。やはりそれぞれの都道府県でいろいろ工夫されて、就学支援金制度ができたということによって、本当に大変なお子さんたちにきちんと援助していくんだということをそれぞれ都道府県で考えていただいているなというのがよくわかりました。

 ただ、文科委員会で議論していても、そこは、今各都道府県は予算を審議していますね、そこでどうなってくるかがわからないと、本当に穴があくかどうなのかがわからないというところがあると思いますので、ここはこの法案審議の間にわかればいいんですが、できなくても、ぜひ文科省の方から、そのあたり、各都道府県にきちんと問い合わせをしていただきたいし、その際に、現実問題として、本当に大変なお子さんたちが援助を受けられなくならないように、現場からもきちんとこういうふうになっているんだというのを上げていただきたいと思うんですが、そのあたりはどうですか。

川崎参考人 実は私どもも、昨今の社会経済情勢で、授業料は減免されるにしても、まだまださまざまな負担、かかりますので、育英資金も伸びてきております。それで、来年度につきましては育英資金の額も相当ふやすつもりでおりますし、授業料とは違う校納金の減免をどうしていくのか、これまた別途検討しているところでございます。それぞれの学校ではもう既に実施しているところもありますので、授業料が不徴収になったから直ちに県のいろいろなものがということにはならなくて、むしろ、ふえている部分も多かろうと思います。

富田委員 ありがとうございます。

 川崎参考人、もう一点、先ほど最後のところで、公私間格差、公私の比率にどう影響があるかというのを心配されているという御指摘がありました。

 私どもの党の議員さん、埼玉の議員さんからちょっとお話がありまして、実は、埼玉県では、今回の県立高校の入試制度が、今までは、内申書等で最初二割合格者を決めていた、残りの八割が実力試験で合格者を決める。それが全部逆転して、内申書等で八割を決める、実力試験で二割を決めるというふうに、制度改正が今回あったらしいんですね。

 今回の高校授業料無償化法案の影響で、内申書の八割の段階で公立高校の希望者がどっとふえた。これまでのレベルだとこの公立高校に行けた子がはじき出されちゃって、やむを得ず私立に行かざるを得ないという、現実問題としてもう埼玉では起きているという指摘が我が党の地方議員さんからありました。

 佐賀県等でこういう実際の影響があるのかどうか、また、我々議員の間で話していても、公立が無償なんだから公立高校の定員枠を広げろとか、そういう現場での要求が出てくるんじゃないかという懸念もあるんですが、そのあたりは現場ではどうですか。

川崎参考人 当初の意見陳述のときに申し上げましたように、ことしは出ておりません、まだこういう状況でございますので。

 ただ、負担感としては、同じように、絶対負担としては私立も公立も少なくなるわけですけれども、負担する感覚としては私立の方が高くなっていくだろう。それが行動にどう変わっていくのか。むしろ、負担が少ないなら私学の方に行こうという行動に変わっていくのかどうかというのを見きわめなくちゃいかぬだろう。

 佐賀県の場合は、非常に公立学校志向が強いところでございますので、公立志向が強まるであろうという一定の考えを持っています。そうしたときに、公立と私立は、協定といいますか、公私比率を定めてそのルールの中でやっていますので、そういったものにどう影響していくのか、それが今進めております高校の生徒減少に向けての再編整備にどう影響していくのか、そこはしっかりと見きわめていかなくちゃいかぬだろうと思っています。

富田委員 ありがとうございました。ぜひそういうふうにしていただきたいと思います。

 次に、相川参考人にお尋ねしますが、相川さんの方から、課題として五点挙げていただきました。

 所得に関係ない一律支給ということで格差が広がるんじゃないか、また、学力の二極化、高校の序列化が出てくるんじゃないか心配だ、これが第一点。また、第二点として、高校の義務化というふうに誤解されるんじゃないか、教育はすべて国がやるものだということでPTA活動等が停滞していくんじゃないか、これを二点目に挙げられていました。三点目として、授業料以外の諸費用が約二十万かかる、これに対する支援もやはり考えてもらいたい。四点目で、留年者には、いろいろ不登校とか病気とかあるんだから、これへの支給も考えるべきだ。五点目として、私立高校の授業料助成というのは、公私間格差が広がる懸念がある。

 本当にこのとおりだと思います。ここをいろいろ我々は委員会でこれからも審議していかなきゃいけないと思うんですが、特に相川参考人のお立場だと、PTA活動の停滞というお話がありました。この法案は、高校を義務化するものではないと委員会でもきちんと答弁は出ているんですが、やはりなかなか広報がいまだ十分ではない。私の周りでも、本当に授業料はただになるのと聞いてくる方がいらっしゃいますので。

 そういった意味で、この授業料の実質無償化に向けた動きの中で、PTA活動というのは今後どうあるべきだというふうにお考えになっていますか。

相川参考人 お答えいたします。

 PTA活動というのは、公立も私立もなく、私たちは、私たちのスタンスは、常に子供たちの応援団であるというスタンスでPTA活動をしております。ただ、PTA活動そのものが、いわゆるPTA会費というものを授業料の並びの中で徴収を各学校で、各学校の予算規模で徴収しておりますので、そこでPTA活動がいろいろされていくというところがまず一点あります。

 それが、いわゆる高校の授業料が無償化ということで誤解を生じて、PTA会費も納めなくてもいいというようなとらえ方をされる。そうすると、そういう教育にかかわるものは国がやっていくという保護者、現在でも、PTA活動に参加をいただくというところでは、小学校のときは一生懸命だった保護者、中学校そして高校というふうに段階が進んでいくと、なかなかPTA活動に積極的に参加いただけない、保護者の意識が少し遠のいていくという現状もありますので、そういう意味では、この授業料の無償化が、すぐに活動が停滞していくという、私は懸念としてお話しさせていただきましたけれども、すぐに活動が停滞していくということではないとは思いますけれども、会費の問題も絡めて、PTA会費等の問題も絡めて、少し保護者の意識が遠のいていくのではないかなという心配があります。

富田委員 もう一点、この高校無償化の法案とちょっと離れちゃうんですが、児童養護施設の職員をされているということで、先日、衆議院の予算委員会で、子ども手当が、親御さんのいないお子さんあるいは児童施設にいるお子さんたちに法案上は支給されないという問題を私の方で取り上げさせていただきました。長妻厚生労働大臣からは、安心こども基金の中から同額をそういうお子さんに絶対支給するという御答弁をいただいたんですが、やはり本来おかしいと思うんですね。

 一番、本当に苦労して、大変な思いの中で生活しているお子さんに子ども手当が行かない、制度上行かないというのは、やはり政治としてどうなのかなという思いで質問をしたんですが、現場で実際にそういうお子さんたちと接していらっしゃる相川さんとして、ちょっとこの委員会とは離れてしまうんですが、子ども手当の支給に関して何か御意見があったら、ちょっとお聞かせいただきたいと思うんですが。

相川参考人 子ども手当に関しましては、私たちも、この手当がどういう形で支給をされるのかということは、私は、先ほども申しましたとおり、施設の職員として、この高校の授業料の無償化と同様に、子ども手当の問題も注目をしておりました。

 それは、本来、子育てをしている保護者の方へこの子ども手当が支給をされていくとするならば、保護者と子供は今離れて生活をして、施設の中で子供たちは生活をしているわけです。本来、直接子供にかかるべき費用だというふうに私は認識をしておりますので、そういう意味では、直接子供たちが今生活している場のところで支給をいただくということであれば、子供に有効に活用できるのではないかというふうに思っております。

 それが、子供は施設にいて、そして保護者の方へそのお金が行くとなると、一番必要な子供のところには届かないという現象が起きるというふうに考えております。

富田委員 ありがとうございました。

 続いて、小川参考人にお尋ねしますが、先ほど、高校版の就学援助あるいはまた給付型奨学金を考えるべきだというのは本当に鋭い御指摘だなと思いますし、私たち公明党も、ここのところをずっと取り組んできました。

 先日も予算委員会でこの点を質問したんですが、塩谷先生が大臣のときに、二十一年度の一次補正予算で、高等学校授業料減免事業等支援の臨時特例交付金ということで、三年間の事業ですけれども、四百八十六億、基金として積みました。これが二十一年度末で五十一億しか恐らく使われないということが、文科省の方の調査に出てきています。

 これは使い勝手が悪いんじゃないかなと。高校生修学支援基金事業の実施要領で施設整備費もオーケーになったのに、なかなか都道府県の方では、これは二分の一を自分たちで出さなきゃならないからできないというようなところもありますし、私は予算委員会で、授業料に限定しないで、生徒の納付金全体、あるいは入学金までここでできるようにしたら、本当に大変な世帯で頑張っていらっしゃるお子さんのためになるんじゃないかなというふうに思って質問したんですが、まだここは検討中だということで、なかなか明確な答弁が出てきません。

 ここの部分を改定していく、あるいは、この実施要領の中で年収三百五十万以下の世帯については取り崩し額が所要額の二分の一になっているんですね。この二分の一を全額基金の中から出せるようにすれば、小川先生がおっしゃった、実質上の高校版の就学援助にかわるものになるんじゃないかと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

小川参考人 今の御指摘のとおりだと思います。

 確かに五十一億円しか使われていない、つまり、そういう基金があるにもかかわらず地方が十分活用していないということは、交付税で措置されたとしても、あとの財源については地方の自主財源でもって負担せざるを得ないというふうな実態がありますので、これくらい厳しい財政事情のもとでは、地方がそういう地方交付税で措置されている基金を活用するということにやはり二の足を踏むというふうな実態があるのではないか。

 私は、就学援助、義務教育段階の就学援助もそうですけれども、高校レベルでのそういう高校版就学援助をつくる際、これは教育の機会均等の最も根幹となるシステムですので、今のような国と地方が負担し合って、そして裏財源でもって地方交付税で措置するというふうなことではなくて、やはり、七割、八割、希望であれば全額国が負担して、しっかり、地方の財政力に左右されない、国としての機会均等保障の就学援助制度ないしは高校版就学援助制度をつくるべきだと私自身は考えております。

富田委員 ありがとうございます。

 小川参考人にもう一つ。今回、この三千九百三十三億の財源について、参考人の皆さんからお話がありませんでした。どれが財源になっているのか、これは恒久法化していくわけですから、私たちにもよくまだわからない、あしたもそういう質疑をしようと思うんですけれども、とりあえず特定扶養控除の加算分を縮減して、国税で一千億、地方税で三百五十億増収になるというので、三分の一ぐらいここで一応財源的な手当てができているのかなとは思うんですが、本来きちんと国が全部面倒を見るべきだという三千九百三十三億の財源論については、小川参考人はどうお考えでしょうか。

 また、もう一点、これだけの制度改正なので、私は中央教育審議会できちんと審議すべきだったと思うんですが、政府は、制度の内容じゃないのでこういうのは審議会の審議になじまないんだとすぐ答弁するんですけれども、かなりの大転換だと思うんですね。教育の無償化という点に関しての大転換だと思うので、中央教育審議会への諮問が必要だったんじゃないかと思うんですが、その点、財源論と諮問の点について、どうでしょうか。

小川参考人 非常に難しいというか答えづらい質問なんですが、率直に言わせてもらえば、今回の授業料無償の財源を特定扶養控除の方の圧縮とか云々ということで代替するというか、そういうのはちょっと、私から見るとやはり少しこそくなのかなという感じがないでもありません。しっかり、消費税を含めた、歳入歳出の財政の改革というのをきちっと据えながら、恒久財源を国民の理解を得て確保していくというのは、筋とすれば筋だと私は思います。

 あともう一つの質問がありましたが……(富田委員「中教審」と呼ぶ)これはやはり、先ほど言いましたように、今民主党の政権がどういうふうな形で中教審を活用しようとしているのかというのは、私自身もよくわかりません。私も今、中教審の正委員をやっていますけれども、中教審の分科会、総会、なかなか開いてもらえないということがあります。

 ただ、伝え聞くところによると、財政とか教育条件等々については中教審でかんかんがくがく議論するような筋ではなくて、これは政治主導で、トップダウンでやるのが正当で、教育の中身とかそういうことについてはやはり中教審でじっくりやってもらう、そういう使い分けが民主党の政権の中ではどうもあるかのように聞いております。

 ただ、今回の無償制というのは、先ほど私もお話ししましたように、高等学校の教育内容とか教育制度のあり方にも密接にかかわることですので、法案の成立後でも、これは重要なテーマですので、ぜひ、実質義務化に近づきつつある高校教育制度、高校教育内容のあり方については、じっくり中教審等々で審議していくのがやはり望ましいのではないかと考えております。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に、三輪参考人にお尋ねします。

 三輪先生の教育は無償とすべきという御意見、また先生のもともといろいろ書かれたものも調査室の方から資料をいただきまして、大変感銘を受けました。本来、憲法解釈はこうあるべきなんじゃないかと思うんですが、現在の通説とか最高裁判例は授業料無償説になっています。ただ、今回、民主党連立政権が高校実質無償化の法案を出してきたということは、私はかなりの政策転換になって、立法府が一歩踏み出したと思うんですね。

 こういうふうな法律が出てきたら、私はあした委員会でいろいろ質問しようと思うんですが、私立高校生に就学支援金を支給するということであれば、では、義務教育課程の私立の小中学校の授業料はどうするんだと。高校生にいきなり実質無償化みたいな形で払うのに、義務教育課程の子供たちが置き去りにされているのではないか。

 また、もしこの法案がずっと恒久法化していったときに、今度、私立小中学校の生徒の親御さんが、なぜ我々は無償化にならないんだという立法不作為の訴訟でも起こしてきたら、これは本当に立法不作為になって、国としては負けてしまうんじゃないかと思うんですね。高校授業料の実質無償化というなら、授業料だけじゃなくて教科書も無償にしたらどうだというふうにも考えますし、そのあたり、先生の憲法論とかを考えた場合に、今私が幾つか挙げた点なんかはどういうふうな御感想をお持ちになりますか。

三輪参考人 おっしゃるように、憲法学関係の学説でも、また最高裁判決でも、義務教育無償というのは授業料不徴収というのがこれまでは主流でございました。そういう意味では、民主党政権になってその基調が大きく変化したというふうにとらえることができると思います。

 その意味では、これから大きな変化が生じてくることは間違いはないわけでありますが、その一つとして、従来、私立の小中学校は義務教育でもらち外に置かれておりました。小学校は大体一%くらい、中学校は七%くらいの子供たちが私学に行っている、そういうこともあって、国民教育の観点からするとやや特例的な扱いをされてきたのだと思います。

 しかし、一般の家庭でも、やはり私立小学校や中学校にも行きたいという家庭は東京を初めとしてたくさんいらっしゃるわけですね。そういう子供たちはアクセスできませんし、また、私立小中学校の方からすると、そういうお金持ちのお坊ちゃんしか集まらないということは、公教育の中の私学のあり方として、やはり子供たちにさまざまな人間的な形成上の問題を、ある意味の汚点を残していくことにもなるのではないかというふうに思います。

 したがいまして、私は、幼稚園も含めてですけれども、私立の小中学校も今後無償化の検討をスタートさせるべきだ、関係団体もいろいろ調整がございますでしょうけれども、そんなふうに思っております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 参考人の皆様方には大変貴重な御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございました。

 今日、世界の多くの国々で高校無償化が広がるもとで、私ども日本共産党も一貫して高校無償化の実施を主張してきたものでございます。その実現に全力を挙げてきたわけですけれども、本法案で高校無償化の方向が出されたことは、大変よいことだと思っておりますし、ようやく国際人権規約A規約の第十三条二項の(b)、(c)というものを撤回する、こういう可能性も広がった、これは本当に国民の粘り強い運動の成果であり、法案には賛成すべきものだと考えております。

 一方で、幾つかの問題点が残されておりますので、先ほどお伺いした中身にも触れながら、皆さんの御意見をお伺いして、今後の審議に役立てたいと思っております。

 まず、川崎俊広参考人にお伺いをいたします。

 佐賀県では、公立高校の留年者についても原則授業料不徴収とする、こういうことでございましたし、本日のお話をお伺いしますと、留年の結果、三十六月を超えた場合であっても、本人にその責がない場合などについては不徴収、こうおっしゃいました。本人にその責がない場合という場合について、病気とか不登校ということも挙げておられましたけれども、これは具体的にどのような場合を指すのかということをお聞かせいただきたいというのが一点。

 もう一つは、また、高等学校を卒業した者であっても、一律に徴収するとはしない、新たな就学がその生徒の社会人としての資質を高め、職業的自立などに必要と認めた場合には不徴収とする、こういうふうにおっしゃっておりました。高校を卒業してももう一度学びたいと願う県民を応援するもので、これは非常によいことだと県民も歓迎されているだろうというふうに思います。

 こうした方針を出すに至った理由や経過について、改めてお話しください。

川崎参考人 お答えいたします。

 私ども、調査をいたしまして、不登校でございますとか病気、それから経済的理由で学校に行ったり行かなかったりせざるを得ないというようなことで留年をしたというケースが非常に多い、むしろ、そういった者の自立をさせていくことが必要じゃないかということで、それを外すとしたわけでございます。

 それから、調べたら、一度卒業した者でというのが私どもの中で一名ございました。これは、特別支援学校の高等部を卒業したけれども、改めて勉強をし、普通の学校で学びたいという意欲のある者でございました。これこそ我々としては自立を支援したいということでございます。

 そしてもう一つは、佐賀県では、学び直しの学校をつくろうじゃないか、不登校経験者や一度退学した者、それから、学んだけれどももう一度学び直そうとする者の全日制高等学校を再来年開設することで今準備を進めております。

 そういうものも念頭に置いて、知事部局とも話をし、私立学校にも同様の対応をするということで決めた次第でございます。

宮本委員 私は、現場を本当に御存じの方であれば当然の思いだと思いますし、大いにこういう立場で進めていただきたいと思うんですね。翻れば、本来、この制度設計、国でもこういう制度設計にすべきだったというふうに思うんですね。

 先ほど教育長、私立の場合に三十六カ月、三年というふうになっているので、恐らく公立もそういう扱いなのだろうと理解したというふうにおっしゃいましたけれども、実は今回の法案で、もともと四年制の公立定時制高校、もとからそういう課程になっている公立定時制高校については四年間不徴収というふうになっておるんです。ですから、本来、当人の責任なく一年延びたという場合でも、これを不徴収にするというのは、何も県に任せなくても、国がそういう形で制度設計することも可能だったのではないかと私は思うんですね。

 できれば、そういう国の制度であった方が望ましい、これは教育長、そのようにお考えになりますか。

川崎参考人 定時制については、四年間ということで制度設計できていると私は理解しています。

 ただ、要するにただし書きのところじゃないかと思います。不均等だというような判断をする場合には徴収することができるという規定、しかもそれは、私どもが理解している限りでは、国は政省令でその詳細を定めないと聞いておるわけでございます。そして、その中身は都道府県に任せるんだ、地方分権を進める上でも、それも一つの方法だろうと私は思います。しかしながら、その財源を持てというのはあんまりじゃないかということでございます。

 そして、地方に任せるんだったら、その法律なり法令の中で、自治体の条例に任せるという条例委任の条文を書いてほしい。そうじゃないと、法律そのものに書いていないならば、そこの解釈が県によって違うということになりはしないかということを懸念しているわけです。

宮本委員 私は、佐賀県のような取り扱いが全国に広がることを心から希望いたしますし、そして、国の制度としてそれは当然だとなる方向が正しいというふうに思っております。

 次に、相川順子参考人にお伺いをいたします。

 公立高校で授業料不徴収となったといえども、父母負担がなくなったわけではないというのはお話しのとおりだと思うんです。文部科学省が一月に公表した子どもの学習費調査というものを見ますと、公立高校の授業料、修学旅行費、通学費など、教育費の平均は三十五万六千九百三十七円にもなっておりまして、授業料として十一万八千八百円の補助をもらったとしても、二十三万八千百三十七円の父母負担が依然として残ることになります。

 こうした父母負担の現状ですけれども、青森県の場合はどのような状況であるのかということを具体的にお話しいただきたいのと、もう一つは、今全国で進んでいる高校の統廃合によって、通学の区域が随分広域化しておりまして、通学費が随分重くのしかかっているというふうに聞いております。青森県ではどのような実情になっていて、具体的に通学費、どんな感じの負担なのか、このあたりをもしおわかりであればお答えいただきたいと思います。

相川参考人 今の授業料のほかのいわゆる学校徴収費につきましては、結局、それは直接保護者の負担になっているわけです。ですから、先ほど私の方で述べさせていただいたように、今後、この法案の見直しをもししていくとなれば、学校徴収費に対する支援、ここを強くお願いしたいというふうに保護者としては願っております。

 そして、青森県として徴収の方法が具体的にどうなっているかというのは、ちょっと今持ち合わせておりませんので、お答えをしかねるところでございます。

 そして、統廃合の問題、青森県でも統廃合の問題は今進められております。二十五年度に後期の統廃合が提示されて、進めていくような情報がありますが、それに伴って、通学に関して、先ほども言いましたとおり、地元に学校がないがために、そしてまた地元の学校の設備等の問題で子供がどうしても遠方に行きたいという場合は、当然通学費がかかります。保護者は、下宿をさせるか、通学をさせるか、それとも保護者が送迎をするかといういろいろな選択がなされるわけです。

 その選択の中で、通学費というのは、バス等に関しましては、バスの割引というようなそれぞれの企業の割引制度、高校の学割という制度で補っておるところもありますし、近隣の町村がスクールバスのような形で提供をして通学するところもありますけれども、大方は個々の家庭が負担を強いられている、そういう事情でございます。

 詳しい金額についてはちょっとわかりませんので、申しわけありません。

宮本委員 ありがとうございました。

 本当にそういうものにもしっかり手当てをしていかなければならぬというふうに思います。

 そこで、お二人の専門家の方、小川正人参考人、三輪定宣参考人にお伺いいたしますけれども、私は、今回の無償化法案というものは、やはり歴史的画期をなすものだと思っております。

 冒頭にも申し上げましたけれども、国連人権規約のA規約十三条二項(b)、(c)というものを本当に長年留保してきたわけでありますけれども、ついにそれを撤回するんだという方向が打ち出された。文部科学大臣の法案の趣旨説明でも、世界が大半無償になっている中で日本がおくれている、これを取り戻すんだという趣旨のことが述べられました。

 まず、大きな問題として、これまでの日本の現状が国際的に見て立ちおくれにあったということ、そして今回の法案がそれに照らして画期的な意義を持つものだと考えますけれども、それぞれ御見解をお伺いしたいと思います。

小川参考人 もう既に御指摘のように、私自身もそのように考えております。

 これまでの日本の教育政策を見てきた場合、基本的には義務教育のところに重点を置きながら、高等教育については国立を中心としたところに重点配分、それ以外については私的負担をベースにしながら教育政策が進められてきたのが、基本的な方向、政策だったと思います。

 そういう点で、幼児教育、高等学校、そして大学、八割を私学が占める大学のところにやはり私費負担が非常に重くのしかかってきた。ある意味では、諸外国と比べてみた場合、諸外国といっても特に欧米等々ですけれども、少し形態の異なる特殊な形であったというふうに思います。

 そういう点で、今回の措置というのは、やはり私自身も画期的であるというふうに評価しております。

    〔委員長退席、奥村委員長代理着席〕

三輪参考人 国際人権規約十三条二項(b)、(c)の留保が続いた一つの理由は、日本に私立学校が非常に多くて、ほかの国とはちょっと事情が違うという理由がございました。そのこと自体がやはり今後、同時に検討されるべきテーマになるんだろうと思います。

 私学はどうしても学費を高くしないと経営ができませんので、どんどん学費も上げていきます。そうすると、進学要求の強い人たちは当然ながら非常に無理してでも私学に行くということで、高校でも三割、大学では八割くらいの人が私学にお世話になっているわけですね。ここのところは、国際的な視野からもう一度再検討すべきだというふうに思います。

 例えば、OECDの三十カ国で見ますと、後期中等教育、高校の段階ですけれども、独立私学、これは政府に依存せずに主として学費収入で学校を運営している私学なんですが、その割合が日本は三〇・八%、OECD三十カ国は平均五・三%ですし、また、EU、欧州連合十九カ国の平均は三・七%なんですね。そのように、日本は高校レベルでも私学が突出して膨らんでしまったということは、国の特別な事情だということじゃなくて、やはりもう一度広い目で見直す必要があるというふうに思います。

 ちなみに、大学型高等教育で日本のような独立私学の割合は、日本が七五・七%で、OECDは一三・七%、そしてEU諸国はわずか七・三%にすぎないわけですね。圧倒的に国公立によって、そういう形で教育を受ける権利という公的な権利を社会的に保障する土台が欧米各国ではもう根づいているわけで、そこのところは日本は特殊だからやはり国際人権規約になじまないという論理は、これからの二十一世紀の国際社会に通用しない、そんなふうに思います。

宮本委員 先ほどから議論があったように、貧困と格差が広がる中で、授業料以外の学校教育費、制服代や教科書代、施設整備費などの費用負担をどう軽減するか、これが次の大きな課題であると考えるんです。

 先ほど小川参考人は、高校版就学援助制度ということにも触れられました。三輪参考人は、教育保障制度とか給付制奨学金ということにもお触れになりました。お二人からそれぞれ、これらの点についてもう一度簡単にお答えいただければと思います。

小川参考人 既に先ほどのところで述べたことの繰り返しになるかと思いますけれども、高等学校は、ほかの小中そして大学と比べてみた場合、そういう経済困窮家庭の生徒に対する教育支援というのがほとんど未整備であったというのが現実であろうと思います。

 御承知のとおり、小中の場合には生活保護の教育扶助、そしてそれに準ずるものとして就学援助があって、就学援助は大体一四%前後、つまり生徒七人に一人ぐらいが就学援助を受けているという、ある意味ではすそ野の広い教育支援ですけれども、ただ、就学援助も、受給基準の全国平均を見ると、生活保護基準の大体一・三というのが平均になっています。ですから、生活保護基準の一・三をさらに一・四、一・五というふうに広げていった場合、恐らくそういう義務教育レベルでの就学援助を受給する児童生徒数というのはさらに拡大していくだろう。実際、そういうふうな状況がやはり義務教育段階でもあるかと思います。

 そうした状況がある中で、高等学校レベルにおいては、先ほどから言っておりますとおり、ようやく二〇〇五年度に、生活保護の中において、生業扶助の一部として高校就学費ということが措置されたというふうなこと、それ以外はいわゆる授業料減免しか教育支援はありません。今回、授業料実質無償化によってそうした減免を措置された層がほとんど教育支援を受けられないというふうな状況があります、公立学校の場合は特に。ですから、そういうところに新たな教育支援の制度を創設するのが喫緊の課題かというふうに考えております。

三輪参考人 御承知のように、教育基本法四条には、教育の機会均等原則が明記されておりまして、経済的地位によって教育上差別されない、国及び地方公共団体は経済的理由によって修学が困難な者に対して奨学の措置を講じなければならない、このように明確に法的義務が課されているにもかかわらず、低所得の家庭の子供の学習権が長年放置をされてきていました。

 したがいまして、私は、新政権はこの問題に正面から向き合って、本当に教育の機会均等を実現するためのグランドデザインを描いて、そこから個別の制度も点検していくという視点に立ってほしいわけです。そういう意味で、私案ではございますけれども、教育保障制度というものを提起させていただいたわけです。

 今、幼児から大学へと無償教育の波は確実に広がっていくと思います。ただ、それはなかなか一朝一夕に、みんなが負担が軽減されるというわけにいかないわけです。現に、先ほど資料で見ていただいたように、義務教育は無償というふうにされている公立小学校でも三十万、中学校で四十八万もかかってしまうんですね。これが現実ですから、そういう教育が必要とされる基準というものが、標準的にもう今、現にあるわけです。

 ですから、その現実に向き合って、経済的地位にかかわらずどの子供たちにも保障する、そういう生活保護基準と同じような発想で教育もしっかり守る、教育のセーフティーネットをしっかりとつくり上げるという視点に立つ必要があるというふうに思います。

 ただ、恐らく御心配になりますのは財源の問題かと思います。ですから、私は、最も困難な家庭の人には全額保障する、それから、多少裕福な家庭は、少しその額を減らして、奨学金を減らし、就学援助を減らして家庭の負担額というものを持ってもらう。その辺のさじかげんは、それぞれの財政事情によってまた検討しなくちゃなりませんので、大ざっぱな発想なんですけれども、そういう形で、幼児から大学まで、さらに先まで、自分はこの社会に、この国に生まれたからしっかりと勉強ができるんだという希望のコースをしっかり示してあげること、これが大事だろうというふうに思います。

 ですから、就学援助とか奨学金というのは、ばらばらで立ち上がっていますのでなかなか整合性がないんですが、そういう大きなスケールの中でもう一度活性化させていく、できればそういう形で教育保障法というような法律を統一的に、体系的につくって、しっかりと次の世代を守る、そういうかじ取りが今必要なのではないかというふうに思っております。

宮本委員 いよいよ最後の質問になりましたけれども、本法案をめぐっては、特定の国籍を有する子供たちが通う学校を法案の対象から排除しようという動きが報じられております。

 それで、きょうは教育行政学のまさに専門家のお二人の先生に来ていただいているわけですけれども、国際人権宣言や子どもの権利条約において教育における差別というものは禁止されているわけでありますけれども、私は、その批准国である日本がそうした排除を行うことはあってはならない、こう考えておりますけれども、両参考人から、このことに、先ほど三輪参考人は最初のお話でも触れられましたけれども、改めてお触れいただくとともに、小川先生からもひとつこの点についての御見解をお述べいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

小川参考人 少し理念的な話になるかと思いますけれども、私は基本的には、教育というのは、現在の政治やその支配的な価値から一定程度距離を置いて、未来志向的に、次世代を担う子供の成長と学習を励ますものというふうに考えていますので、現実の政治的な配慮というよりも、あくまで教育的な議論としてこの件は進められるべきではないかと。

 具体的に言えば、法案にもあるように、支援対象の教育機関というのは、高校に類する課程を置くものであるかどうか、そのことをやはり精査し、客観的な基準に従って判断していくべきであると思います。

 それ以外の点については、ちょっと私自身、やはり答えることが難しくて、外交上、政治的な判断もあるかと思いますけれども、できれば、今言ったような教育的な配慮、教育的な議論としてこの問題は処理していただければと期待しております。

三輪参考人 先ほど来申し上げてきたことでありますが、もしこのことが現実になりましたら、国際的に相当大きな問題に発展するという危険を、私、直観ですけれども、感じております。

 といいますのは、世界の国際法規は、すべて、あらゆる種類の差別を厳しく禁ずるという流れがあって、しかも、それがどんどん強くなっているわけですね。そういう中で、国際人権規約も、教育の目的として、諸国民の間の友好と平和を促進するということを明確に示しているわけですね。そういう立場の教育が民族的な差別を是認するようなことでは、到底、その条約の精神とも合致しないわけですね。

 ですから、もちろん今議論の最中ではありますけれども、私は、やはりそこは本当に冷静になっていただきたい、本当に長い目でアジアの友好とか世界の友好について考えていただきたい、そんなふうに強くお願いをしたいと思います。

宮本委員 まことにありがとうございました。

 以上で終わります。

    〔奥村委員長代理退席、委員長着席〕

田中委員長 次に、城内実君。

城内委員 午前中に引き続いて、無所属、国益と国民の生活を守る会の城内実でございます。

 二回も機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、川崎参考人と相川参考人お二人に、留年者の扱いについて質問させていただきたいと思います。

 川崎参考人よりいただいたペーパーで、留年の結果、三十六カ月、要するに三年、三十六カ月を超えた場合であっても、本人にその責がない場合などについては不徴収とすると。そしてまた、相川参考人も、先ほど、さまざまな理由があり不登校になった生徒さんもいらっしゃるのでぜひ考慮してほしい、そういう話をされました。

 実は、私、落選中に星槎国際高等学校という通信制の私立高校の職員もしておりました。ここは、普通の高校を退学したり、不登校になったり、あるいはいじめに遭って行けなくなった子供たちなどを中心に受け入れている、非常に貴重な受け皿となっているんです。もちろん、バイトをして稼いだお金を遊興費に使って学校にろくに出てこないなどというのは論外ですが、心の問題で不登校になったり、環境になじめなくて留年してしまったという方については、やはりより手厚くすべきではないか、ちゃんと平等に扱うべきじゃないかと私自身も思うんですが、その点についてのお二人の参考人の先生方の御意見を賜りたいと思います。

川崎参考人 私どももそのように考えてのことでございます。そういった者こそ社会的自立をさせていかなくちゃいけない、丁寧な教育が必要である、そういった者を退学させるということにはいかないだろうということでございます。

 それで、私どもが特別な場合にということを考えていますのは、複数年留年をし、その理由が、どうも意欲なりなんなりがないんじゃないかと思われるような特別な場合には、ただし書きを運用しよう、しかしそれは、一人で判断することはいたしません、教育委員会に諮って個別具体に審査をしますということでございます。

相川参考人 留年の扱いにつきましては、いわゆる不登校の問題というのは、高校に始まったわけではなく、小学校から中学校、そして幼稚園でも、そういういろいろな年齢層でも、登園拒否ですとかが問題として挙げられております。

 実際不登校になった子供たちがどういう道を進むかということで、私が経験していることとすれば、全日制の高校へ通っている子供たちが不登校状態になったときに、校内でいろいろなケアをしますが、その後、高校に籍が置けないといういろいろな規定がありますので、最終的に、その本人の意思で学校を定時制に変更する場合もありますし、通信制を利用する生徒もあります。

 そして、今、私たちが子供たちを見ていて感じるのは、どの高校においても発達障害の子供さんたちがふえております。そういう子供たちがどうしても学校という環境の中になじめないという事態が生じているのも事実だと思っております。

 ですから、そういう子供たちが、それでは三年で社会に出してということを考えたときに、私たちとしては、子供が社会で自立していく力ができているかというところを考えると、いろいろな場面で支援をして、定時制に回る方法も一つですし、通信制へ回る方法も一つですし、そういったときの支援をやはりしていただきたいというふうには思っております。そこが、ある意味、子供たちの教育を平等に扱って、平等に教育をして、見ていただいて、子供たちを社会に出していくというのが私たち大人の役割ではないかというふうに思っております。

城内委員 まさに、今おっしゃったこと、そのとおりだと思います。先ほど述べた星槎国際高等学校、発達障害の方も大勢来ていらっしゃいますし、やはりまず学校に来てもらうことから始めているというような指導もしていますので、ぜひそういった配慮を、特に、私は、川崎参考人の方で、個別具体に教育委員会で審査する、これももちろん結構ですし、佐賀県はしっかりしていると思いますが、都道府県間で差がないように、ぜひ文科省の方でも何か統一のガイドラインをつくっていただいて、佐賀県では大丈夫だけれども隣の○○県では徴収されてしまうなんということのないようにぜひお願いしたいなと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 引き続き川崎参考人に対しましてですが、今回の授業料無償化あるいは高等学校等就学支援制度、これはあくまでも生徒及びその御家庭に向けられたものでありますが、現場の教職員の皆さんが直接恩恵を受けているわけではないですね。もちろん、そういう趣旨のものなんですが、その点について、まさに教育長として現場の教職員の皆さんを監督されている参考人から御意見をちょうだいしたいと思います。

川崎参考人 父母負担の軽減を図って教育の機会均等を目指すということは、教職員一致した気持ちだろうと思っています。それをもって教職員が何か仕事の軽減になるとかならないとかという問題じゃないわけでございますので、それは私もしっかりと教職員を指導してまいります。

城内委員 ありがとうございます。

 次に、三輪参考人そして小川参考人、お二人にちょっと絞ってお尋ねしたいんですが、まさに教育基本法第四条では、「教育の機会均等」、そして「経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。」というふうにうたわれているわけですけれども、生活保護を受けている方々あるいは低所得者に対して、やはりそれなりの配慮をしなければいけないと思います。

 先ほど小川参考人が、経済的困窮はだれにでも起こり得ると。実際、私も、四年前の選挙、刺客を送られまして、そして離党勧告という事実上の除名になりまして、収入は途絶えて、政党交付金も入ってこない、そして借金だけ残るということに遭いまして、別にそれは私ごとでどうでもいいんですけれども、そのとき私は、まだ子供二人が幼稚園生でよかったなと。これが私立高校だったらと思うとぞっとするんですね。ですから、まさにあすは我が身だということを小川参考人の言葉で私も痛切に、胸にじんときました。やはり経済的余裕のある家庭とそうでない御家庭の差というのをしっかりやらなければいけないんじゃないか。

 そこで、いわゆる学校徴収金とか納付金というものについて、要するに授業料だけではなくてさまざまな、生徒会費、学園運営費、PTA会費、そして部活動、そしてさらに、何度か御指摘ありましたように、今学校の統廃合、私の選挙区も山の方ですけれども、山の方はどんどん統廃合して、物すごく通学に時間がかかるようになってしまって、通学費の負担というのもばかにならないわけなんですね。

 そこで質問なんですが、どこで線を引くのか。そういった学校納付金について、全部ただにするのか。あるいは、例えばたまたま野球部が甲子園に行くことになった、その費用までただにするわけにもいかないですから、やはりある程度ケース・バイ・ケースで分けていかなきゃいけないですし、また、学校によって徴収するもののお金が違う。ですから、これは非常に難しい作業であると思うんですね。一律にただにするというのも何かおかしな感じもしますし、どこでそういう線を引くのかということについての御意見を賜りたいと思います。

小川参考人 学校徴収金のどこまでが私費負担でどこまでが公費とすべきかという議論ですけれども、これは実は、もう既にいろいろな自治体で学校標準運営費というふうな基準を設けて、学校徴収金をどこまでするかということはいろいろな自治体で試みられてきていることですので、やはり、現時点に即してもう一度、そうした公費と私費どちらで負担すべきものかということをしっかり基準を定めながら、その辺のところの精査はする必要があるのではないかと思います。

 例えば、教材費といっても、今までの基準であれば、笛とかハーモニカなんかは直接本人が口にするし、またそれを家に持ち帰って使用するというふうなことで、これは公費で購入してすべての子供に配るということではなくて、やはり私費に回すべきだとか、例えの話ですけれども、そういうふうな一つ一つの教育に係るさまざまな品目、経費を、そうした公費か私費か、その辺のところの区分けをしっかりしながらやるということはこれまでもやられてきていることですので、そうした作業をしっかりやっていくこと、自治体がそうした取り組みを進めることはやはり必要かと考えています。

三輪参考人 御指摘のように、貧困格差の拡大というのは私たちの想像を絶する勢いで今進行しておりますね。先日、厚労省が相対的貧困率という数字を発表しましたが、一五・七%。これは大体、生活保護基準と同じ水準なんですが、その層が二千万人という発表でした。実際に生活保護を得ている人数は百六十万人ですから、したがいまして、生活保護基準以下の人でわずか八%しか捕捉できていないわけですよね。だから、本当に見えない形で多数の人たちがそういう生活保護以下の中で暮らしているという現実を直視した場合、これは並々ならぬ、丁寧な、しっかりした制度を立ち上げていかなくてはいけないだろうというふうに思います。

 それから、個々にそれぞれということもありますけれども、小学校、中学校では教科書無償措置法がありまして、教科書代は必要ないわけですが、そういう優先的に学校徴収金、納付金の中から重要と思われる分は取り出して、まずは部分的にせよ、そういう無償措置というものを講ずるということが一つあるかと思います。これは、何でもかんでも盛り込むとまた大変ですけれども。

 それから、義務制でありましたら、一九六七年に教育長協議会が公費私費負担区分というものを設けて、これからここまでは公費にして、それ以上は私費で当面お願いしようというような、そういう基準をつくられたことがあるんですね。

 それを、高校、またもう一度、義務も含めて、私学も含めて、やはり無償化のための段階的なステップとして、当面ここまでは地域にかかわらず平等に負担が軽減できるようなことにしていこうじゃないか。それを、同時にまた、地方交付税その他によって財源措置をしていけば、そういう低所得に対する就学援助的な制度というのは可能になるだろうと思います。

 それともう一つは、やはり、そうはいっても、なかなかそこのところは、制度の網に漏れることもありますので、先ほど来からお話が出ておりますように、特に高等学校のレベルに義務教育の就学援助制度を拡大していく。それによって、生活保護基準や生活保護に準ずる人たちが、一定の枠の、これも実際には限られますけれども、そこは学力とかにかかわらず、公費にて補助されるということはぜひやっていただきたい。

 そういう目の前の深刻な現実を直視しながら行政は展開していくべきだというふうに思います。

城内委員 御答弁ありがとうございました。

 また質問の切り口を変えて、再び三輪参考人にお聞きしたいと思いますが、三輪先生は教育行政学の大家ということでいらっしゃいますけれども、先ほどヨーロッパの、フランス革命から、要するに無償教育思想というのがずっと広がっている、また先生が書かれた文章にも、日本の寺子屋においても、あれは授業料ではなくてあくまでも感謝の気持ち、謝礼であるということであって、教育というものは無償であるべきだという御議論は、本当に説得的で、まさにそのとおりだと思うのです。

 他方、先ほど、私学も完全無償化すべきであるという御指摘があったんですが、そうなってくると、では、何かもう高校も義務教育化するかどうかという話と、また、中学校を卒業して就労している方々、これは一、二%にすぎないのかもしれませんが、そういった方々とのまさに格差の拡大という現実にまた直面するんじゃないかなと思います。

 確かに、教育というのは一〇〇%受益者負担あるいは自己責任になじまないものの、やはり私学が特徴ある教育をする上においては、受益者負担の原則というのもあるんじゃないかな、そういう感じが私はします。

 また、三輪先生は、OECD加盟国三十カ国のうち高校の授業料を無償化しているのが二十六カ国あるとおっしゃっておりまして、日本はそこに入っていない、私学が無償化しないとそこに入れないということをおっしゃいましたけれども、それはなかなか現実的には難しいんじゃないのかなという感じがします。その点について、御意見をお聞きしたいと思います。

三輪参考人 高校の授業料無償の国、二十六カ国について先ほど申しましたけれども、これはあくまでも授業料無償ですので、その部分が解消されればその仲間入りができるということでございます。やはりどの国も公費助成などを膨らませて私学の無償化を実際にやっているわけですから、これは国際的な協調に沿って日本も努力する必要があると思います。

 そのほか、納付金についてはどこまでが限度なのか、ある程度受益者負担もあり得るのではないかということであったかと思いますが、しかし、基本的には、学校教育が一律に徴収する場合には、それはある種の授業料であるわけですね、学校納付金という形でありますけれども。そういう本を買ったり、修学旅行に行ったり、クラブ活動の経費を捻出したりということは、公教育活動の全くそぎ落とせない部分ですから、そこは原則公費負担、どこか父母負担をするべき部分があるんじゃないかよりは、やはり原則公費負担という考え方が適切ではないかというふうに思います。

 ただ、いろいろな財政的な事情もあったりしますので、そこのところは、段階的にということではありますけれども、やはり必要なお金は、子供たちの発達に必要なお金は税金で全面的に支える、こういう精神が基本的に求められるというふうに思います。原則的な話で大変恐縮ですけれども。

城内委員 確かに、原則として公費負担というのは理想的ではありますけれども、やはり財源の問題もあります。また、クラブ活動について先生述べておられましたけれども、例えば陸上部と剣道部だと、やはりお金のかかる度合いが違いますし、また吹奏楽部などは、高い楽器を使う人とそうじゃない人もいるというふうに聞いていますので、そこら辺はどうなのかなという感じはしますが、大体よくわかりました。ありがとうございます。

 最後に、四人の参考人の先生方に、本当に一言ずつで構いませんので、御意見をちょうだいしたいんです。

 公立高校の無償化、そして私立学校の就学支援金については、四千億円近い多額の国費が使われるわけですね。もちろん、教育というのは、未来に対する投資、子供たちが社会に出て、あるいは家庭で活躍するということにおいての将来への投資ですから、惜しみなく使うべきだとは思うんですが、これだけの国費を使う以上、教育の内容や質についても大事にしていただきたいと思いますし、単に家計が楽になっておしまいではなくて、家計が楽になった分、家庭教育をしっかりやるという義務が発生するというようなことを、なかなか家庭教育には口を差し挟めないというのがあるのかもしれませんが、やはりそういう雰囲気を醸し出すことが大事なんじゃないかと思うんですね。

 やはり、権利があったら義務も発生する。家計が楽になって親がパチンコに使ってしまったみたいな、楽になった分を使ってしまうなどということがないようにしていただきたいと思いますが、一言ずつ、その点について御意見を述べていただきたいと思います。

川崎参考人 教育の目的は、言わずもがな、人格の完成にあると我々は思うところでございます。

 私は、教育制度として一歩踏み出されたと。今後どういう先行きになっていくかということを我々は強い関心を持つわけですけれども、我々教育を預かる者としては、一人でも多くの者を自立させ、社会的に役に立つ人材をつくることだ、こういったことを改めて考える機会にもなっていくものと思っております。

相川参考人 教育の内容の充実というのは本当にこれから大切なところだと思いますし、今お話にありましたように、家庭教育というところになりますと、私どもPTAの役割、保護者の役割というのはとても大きなものだと思っております。

 そういう意味で、PTAがまずいろいろなものを学んでいくという機会を持ちながら、私たちが無償化で助かる、助かるだけじゃなくて、私たちがやらなければならないのは何かというところを今後いろいろな場面で話し合いをしていかなければならないというふうに思っております。

小川参考人 先ほどから私も言ってきているんですが、これまでも高校教育には相当の公費が使われてきていたわけですけれども、今回さらに、直接目に見える形で授業料負担の軽減というかなり大きな改革をやる場合には、そうした多額の公費を投入することで高等学校の教育の質が上がるというか、質が向上する、そういう成果を示すことがなければ、多くの国民は納得しないのではないかというふうに思います。

 実際、例えば、アメリカの教育費というのは、いわゆる直接目的税ということで教育税を支払う。六〇年代、教育税が上がるにもかかわらず、公立の学校が非常に荒廃する、そういうところで、我々が投資した税がどう使われているのか、そういう批判が生じたというアメリカの事例もありますけれども、今回の授業料無償化に伴って、そうした高校教育の質を高めるための諸施策と、先ほどから言ってきた、実質義務教育化しつつある高等学校制度のあり方ということをもう一度きちっと議論していくことが大切ではないかなというふうに考えています。

三輪参考人 確かに、日常の感覚からしますと、四千億円近いお金というのは巨額ではありますけれども、しかし、先ほども指摘させていただきましたように、OECD並みに接近させれば、その一・六%というのは、五百兆円の一・六%ですので、八兆円近い。文科省の予算が五兆円台ですから、その一年分以上の予算が返ってくるわけです、教育界に。

 だから、そういうことを視野に入れながら、必要なお金はしっかりと他省庁も説得しながら、今どうして未来の世代の育成のための大規模な投入が必要なんだということをしっかりと説得しながら、理解していただくということがとても大事だというように思います。

 先ほども、同じ繰り返しみたいになりますが、十二万円から二十四万円の補助があるということは、それだけ家庭の支出は浮くわけですね。その部分はいろいろな学習費に使えるわけですね。それは、当然、さまざまな教育的な効果が確実に上がってくるというふうに思います。

 また、十二万、二十四万円のお金を家から出す必要がないということになれば、そのためにアルバイトをしたり、パートで家庭を留守にして働いていた、そういうお母さんたちも、もっと子供としっかり向き合って、家庭の教育が充実できる、そういう家庭教育の効果も出てくるのではないかというふうに思いますね。

 ですから、それは決して少なくない効果をこれから及ぼしていくと思いますし、そういうことに向かって今まで余りにも抑制し過ぎた結果、結局みんなが我慢して、ろくに勉強もできない状態でこのようになってしまったということがあると思います。

 したがいまして、少ない財源の中、厳しい財源の中ではありますけれども、今これだけ陥没してしまった、一種の政治災害だと私は思うんですよ。ここまで、世界最低レベルに落ち込んでしまったというのは、政治災害だと思います。今、本当に災害復旧が国民的な課題になっているというふうに思いますので、特に説得に当たる方はこの委員を初めとする教育関係の皆さんですので、本当に教育にはお金がかかり、そうすれば確実に効果があるということを説きながら、新しいシフト、流れをつくり出していただきたいというふうに思います。

城内委員 これで質問を終わりますが、四人の参考人の先生方、ありがとうございました。大変勉強になりました。

田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に対しまして、一言御礼を申し上げます。

 きょうは、長時間にわたりまして、また遠隔地からお出かけくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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