衆議院

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第13号 平成22年4月21日(水曜日)

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平成二十二年四月二十一日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 奥村 展三君 理事 首藤 信彦君

   理事 松崎 哲久君 理事 本村賢太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 坂本 哲志君

   理事 馳   浩君 理事 富田 茂之君

      石井登志郎君    石田 勝之君

      石田 芳弘君    稲富 修二君

      江端 貴子君    勝又恒一郎君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    桑原  功君

      後藤  斎君    佐藤ゆうこ君

      斎藤やすのり君    瑞慶覧長敏君

      高井 美穂君    高野  守君

      玉木雄一郎君    中川 正春君

      平山 泰朗君    牧  義夫君

      松本  龍君    湯原 俊二君

      横光 克彦君    横山 北斗君

      吉田 統彦君    遠藤 利明君

      北村 茂男君    塩谷  立君

      下村 博文君    菅原 一秀君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    池坊 保子君

      宮本 岳志君    城内  実君

    …………………………………

   文部科学大臣       川端 達夫君

   文部科学副大臣      中川 正春君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   内閣府大臣政務官     泉  健太君

   内閣府大臣政務官     田村 謙治君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   文部科学大臣政務官    後藤  斎君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松田 敏明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      西阪  昇君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          板東久美子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         河村 潤子君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    木倉 敬之君

   文部科学委員会専門員   芝  新一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     桑原  功君

  牧  義夫君     稲富 修二君

  湯原 俊二君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  稲富 修二君     勝又恒一郎君

  桑原  功君     熊谷 貞俊君

  玉木雄一郎君     斎藤やすのり君

同日

 辞任         補欠選任

  勝又恒一郎君     牧  義夫君

  斎藤やすのり君    湯原 俊二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官松田敏明君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長西阪昇君、生涯学習政策局長板東久美子君、初等中等教育局長金森越哉君、高等教育局私学部長河村潤子君、文化庁次長合田隆史君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長木倉敬之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。本村賢太郎君。

本村委員 おはようございます。民主党の本村賢太郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずきょうは、認定こども園について数問御質問をさせていただきます。

 先日発表されました最新の集計で、認定こども園の認定件数は五百三十二件と、閣議決定に挙がった、平成二十四年度までに二千カ所以上という目標にはまだほど遠い印象があります。今まで認定こども園の件数が伸び悩んだ理由を何だと認識されているか、また、対策は講じられているのか、御説明をお願いいたします。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、平成二十四年度までにということでございますが、二千件以上とされておりました認定件数が、平成二十二年四月一日現在で五百三十二件でございます。十分に普及していないというのは、おっしゃるとおりだと思います。

 その理由といたしましては、まず、財政支援が不十分であるということ、それから、この会計基準が煩雑であるというようなことが指摘をされております。

 それに対しまして文部科学省といたしましては、厚生労働省とも連携を図りながら、まず、平成二十年度の補正予算で措置をされております安心こども基金による財政支援に努めているところでございます。加えまして、平成二十二年度から、学校法人会計基準の改正によりまして会計基準の簡素化を実施いたしておりまして、必要な運用改善に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、こうしたこども園に係る運用の改善や安心こども基金の活用などを図ってまいることで認定こども園の普及促進を努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

本村委員 次に、新たな次世代育成支援のための包括的、一元的なシステムの構築の検討を行うための検討会議が内閣府で開催をされておりますけれども、このシステムを構築することの利点を御説明お願い申し上げます。

泉大臣政務官 御質問をありがとうございます。

 今、子ども・子育て新システム検討会議というものをさせていただいておりますけれども、包括的、一元的なシステムがなぜ求められているのかといえば、これはひとえに、国民そして子供たちのニーズによるところだというふうに理解をしています。

 やはり、多くのお母さん方あるいは親たちにとりまして、子供を集団で学ばせるあるいは生活をさせる、これが成長に大きく役に立つということから、すべての親が何らかの施設に子供を通わせたいという時代になってきたということ、そしてまた、特に就労が男性、女性問わず求められる時代になってきたということ、もちろんそれは、生活・経済情勢、家庭の情勢、環境にもよると思いますけれども、そういったものの中で、今現在は保育所であればフルタイムで子供を見てくださるわけですが、基本的には教育機関ではないということでありますし、幼稚園であれば基本的には半日子供を預かってもらえるということで、両立支援という施設ではないし、子供の福祉施設ではないという考え方であります。

 そういうことからすると、親たちのニーズはそれなりに同じニーズがあるにもかかわらず、施設によってなかなか受けられるサービスが限定されているという状況をいかにして変えていくのかということが、今まさに問われているんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、保育所、幼稚園に限らず、その他の多様な保育メニューも考えながら全体的に制度を再構成して、今の家庭環境、今の時代にふさわしい保育サービス、幼児教育のあり方というものを包括的、一元的に考えることが必要であろうということで、まさにチルドレンファースト、そして、子供たちの視点に立ってということで今作業をしているところでございます。

 そういう意味で、認定こども園におきましても、先ほど鈴木副大臣からお話がありましたけれども、それぞれの制度を接着剤でとりあえずまずくっつけて、一部交流ができるという利点はあるものの、制度的にはまだ分かれているところが多々ございますので、そういったところをできる限り一本化をしていくということが大事だという意味でこのシステムをつくる意味があるというふうに訴えをしているところであります。

本村委員 検討会議の作業グループで示された「子ども・子育て新システムの構築に当たっての基本的な考え方」に、子ども家庭省の「将来的な設置に向けた準備をすること。」とございますが、マニフェストや閣議決定にある「検討」より一歩踏み出したものと理解してよいでしょうか。

 また、新しいシステムを省とすることの利点と現状での課題は何なのか、お伺いいたします。

泉大臣政務官 今まさに、子ども家庭省をマニフェストの方にも明記をさせていただく中で検討させていただいておりまして、今回のこの新システムの中での動きというのは、まさにその検討から一歩前へ踏み出したという段階に入っているというふうに思います。

 具体的には、一番最初には、まず、幼稚園と保育園のこの制度あるいは推進体制というものを一体化をしていくということができないだろうかというところで、具体的には、一つの案としては、文部科学省、ここは幼児教育課、そして厚生労働省保育課というところからの業務をどういう形で一本化するのかということも含めて、内閣府の中にまずはそういった室を置いていけるようなことを考えていきたい。将来的には、やはり子ども家庭省に結びついていくんだろうというふうに思います。

 ただ、一つの省をつくるというのは、一方で省庁再編全体の動きにもかかわることでありますので、すぐにまず省を立ち上げるということではなくて、そこは順序立てて行っていくのかなと思います。

 そうすることによって、まずは、この幼稚園、保育園の業務の政府の施策と体制の一本化、そこからさらに言えば、男女共同参画施策ですとかワーク・ライフ・バランス施策ですとか、あるいは子ども家庭省という意味では、これは将来的には学校教育のところも、子供たちの生活支援、親たちの生活支援というところもあわせながら一本化をしていくことになろうと思いますので、そうすることによって、子供を抱える、子供を持っている家庭全般を包括的にまさに一本で支援をすることができるという意味で、これまで、非行少年の問題でいえば警察庁や法務省であったり、あるいは児童相談所であれば厚生労働省であったり、学校教育であれば文部科学省と、では引きこもりの子供はどっちで見るんだなんて話が常に今まであったわけですが、そういったものを一本化することによってやはりトータルで支援ができるというのが世界の流れでもあるのかなというふうに思いますので、そういった理解で今これを進めているということでございます。

本村委員 泉政務官から一歩踏み出したものと御答弁いただいて、本当にありがとうございます。御期待申し上げます。

 省にするには時間がかかるかもしれませんけれども、現時点でも待機児童は存在をし、対処にはスピードが必要と考えております。できることを先行させる考えはないのか、お伺いいたします。

泉大臣政務官 ありがとうございます。

 今も、この新システム会議の中で待機児童問題というのは主要な論点の一つであります。

 一つ前提として確認をしておかなくてはいけないのは、待機児童問題というのは、すべての自治体で起こっている問題ではなくて、都市部を中心に起こっている問題だということであります。ですから、基本的に、保育の質というものを落とすあるいは緩和するというだけの考え方ではなくて、都市部における限定的な問題としてまた対処をしていく必要があるんだというふうに思います。

 そういった意味では、例えば東京都なんかでは、認証保育というものがありまして、特にゼロ、一、二歳を中心に受け入れをするような取り組みがなされていますが、まだそういった認証の取り組みというのは、待機児童を抱える多くの自治体で既に取り組まれているわけではないということもございます。

 あるいは、政府が数年間進めてきている保育ママの事業についても、当初考えていたよりかはまだ進んでいないという実態がございますので、そういったところを強力に進めていくためには、やはり何らかのインセンティブですとか、一層の制度のある種の行政手続の簡素化ですとか、そういったものをしていかなくてはいけないなというふうに感じております。

 そういったことについては、法改正が必要なもの、あるいは、制度の中で運用の改善で可能なものというものがあると思いますので、私は、できる限り早期に、具体的な問題についてできることについては実施をさせていただく方向で検討していきたいと思います。

本村委員 泉政務官、御答弁ありがとうございます。これで結構であります。ありがとうございました。

 認定こども園について、課題はたくさんございますけれども、ぜひ、文科省そして厚労省、内閣府と一体となって取り組みを推進していただきますことを要望申し上げます。

 次の質問をさせていただきます。次は、スポーツ基本法についてお伺いをいたします。

 るる、このスポーツ基本法に関しては、馳筆頭を中心に、与野党を問わずこの問題に取り組んできておりますけれども、確認の意味も含めて、まず、スポーツ基本法案について文部科学省内で検討されていると承知しておりますけれども、この法案の必要性と具体的な進捗状況を御説明お願い申し上げます。

鈴木副大臣 スポーツは、すべての国民の皆さんにとりまして、人格形成、体力向上、健康長寿の礎でございまして、加えまして、その地域の活性化あるいは観光といった点からも高い波及効果を有しております。スポーツの振興というものは、国の政策におきましても極めて重要な位置づけを担っているということが超党派で認識をされているわけでございます。

 しかしながら、このスポーツの振興に関する法律といたしましては、スポーツ振興法というのがございますが、これは昭和三十六年に制定をされておりまして、もう既に半世紀が経過をいたしております。現状や新しい課題に十分に対応し切れなくなっているという点がございます。

 例えば、このスポーツ振興法には、地域のスポーツクラブの育成でありますとか、ドーピング防止活動の支援でありますとか、選手の育成といった規定がございません。それから、スポーツ権の概念やスポーツ仲裁についての言及もございませんし、営利のためのスポーツというものをスポーツ振興法は対象にしておりませんといったようなことが、スポーツ振興法を見直すべきである、それにかわるスポーツ基本法をつくるべきであるという指摘の根拠になっているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、このスポーツ基本法案の検討を含めまして、今後のスポーツ政策の基本的方向性を示すスポーツ立国戦略を策定いたしますために、先月より五回にわたりまして、現場の第一線で活躍をしておられます指導者、元選手、研究者、そして、スポーツ関連団体の皆さんとの意見交換を行っているところでございます。

 ヒアリングにおきましてスポーツ政策全般にわたりさまざまな意見交換をさせていただいておりますが、スポーツ権やスポーツ仲裁あるいはスポーツ庁など、スポーツ基本法案に直接かかわる御提言もいただいております。

 こうした御意見も踏まえて、スポーツ基本法の検討を含め、スポーツ立国戦略の策定を急いでまいりたいというふうに思っております。

本村委員 スポーツ立国戦略、これは、副大臣を中心に随分先進的に、積極的にお進めいただいていることに本当に期待をしております。スポーツ基本法は出発点であり、ゴールではございません。基本法の早期成立が必要だ、これは、与野党を問わず、恐らく国会議員そして国民も求めている法案じゃないかなと思っております。

 そうした中で、この法案の提出時期は具体的にいつごろを目指しているのか、お伺いいたします。

鈴木副大臣 法案提出につきましては、これは内閣全体で判断をする話でございますが、スポーツ立国戦略につきましては夏ごろまでにはまとめてまいりたい。そのことを踏まえまして、スポーツ基本法案の提出できる環境整備に努めてまいりたい。この委員会におきます御議論もぜひ深めていただければというふうに期待をいたしているところでございます。

本村委員 ぶら下がりの会見で副大臣は、来年の通常国会あたりを目途にというお話もございましたけれども、それに関してはいかがでしょうか。

鈴木副大臣 私個人といたしましてはそうした強い意思を持っておりますが、法案提出は内閣全体の判断でございますので、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。(発言する者あり)

本村委員 今、頑張れというお声もあるように、ぜひ副大臣、団結をして来年の通常国会にはこのスポーツ基本法を提案できるように、ぜひ文科省内で意見を統一させていただいて、前向きにお進めいただきたいと思います。

 次の質問に入ります。次は、県費負担教職員について質問をさせていただきます。

 教職員の給与等の県費負担を地方に移譲することについて鈴木副大臣は、四月十五日の大阪の橋下府知事との会談で教育一括交付金として移譲するというアイデアを提示したとの報道のほか、記者会見でも、教育一括交付金などの議論と完全に表裏の関係と御発言をされております。

 移譲することの利点と課題について御説明をお願いしたいことと、また、教育一括交付金については文部科学省内で検討が始まったとする報道も最近ございますが、それら報道では、交付金は人件費以外の部分と報じられております。

 教育一括交付金には何が含まれ、何が含まれないのか、どのような検討の場が設けられているのか、御説明をお願いします。

鈴木副大臣 いろいろな報道がございますので、改めて、先般橋下知事がお見えになったときに私にお話がありましたのは、現行の地教行法の解釈として、給与負担ではなくて、人事権を条例で定めたならば市町村に移譲することができるのかという現行の法解釈についてお問い合わせがございまして、これについて文部科学省としては、法の解釈としてはそれは可能であろう、最終的には法制局との詰めが必要でありますが、こういうことをお答えをいたしたわけであります。

 それで、教職員の人事権を市町村に移譲するということで御質問を御理解させていただきますと、学校の設置者というのは、御承知のように市町村が設置者でございます。しかしながら人事権者は、県費負担教職員制度ということで都道府県、こういうことになっておりまして、人事権者と設置権者が別々であるということが、学校のガバナンス上、いろいろな問題を指摘されておりました。

 人事権が設置者であります市町村に移譲されるということになりますと、人事権者と設置権者が同じ市町村ということになりますので、より市町村が主体的に教育行政を責任を持って行うことができるということが期待をされます。このことは、平成十七年の中教審答申におきましても、人事権者と給与負担者はできる限り一致することが望ましいということはされております。

 一方で課題でございますけれども、単独市町村に移した場合には、市町村の人口規模というのはまちまちでございますから、単独では、採用でありますとか人事異動でありますとか研修というものを行いづらい小規模の市町村もあることは事実でございますので、その点については、市町村がまさに広域行政で一定の規模を確保しながらやっていくということが一つの課題。

 それからもう一つの課題は、何よりも、安定的で確実な義務教育費の財源保障を行えるかどうか、ここがまさに課題になっていくわけでございまして、この点を関係省庁と協議をしていかなければいけないというふうに考えております。

 そこで、お尋ねの教育一括交付金でございますけれども、先般、神野座長の地域主権戦略会議でヒアリングを受けました際に、こうした考え方について文部科学省内の検討状況を御報告申し上げたところでございます。

 教育といいますのは、まず、教育の機会均等あるいは全国的な教育水準の維持向上というのは、これはもう至上命題であります。と同時に、地域あるいは現場の状況に応じてきめ細かな対応をしていくという意味で、地域主権、現場主権を確立していく。この二つの課題を同時に追求をしていかなければなりません。

 したがいまして、教育以外への流用はできない、まさに教育分野に特化してこのお金を使っていくという意味での教育一括交付金というものを、しかしながら、その中では、現場の状況に応じて現場の首長さんあるいは市町村が判断をして、その御判断にゆだねていくという形での教育一括交付金ということについての研究、検討を今省内でしているところでございます。

 その際に、この教育一括交付金の対象経費としてどういうものがあるのかということについては、まさに今検討中でございますが、そもそも、教育関係経費といいますのは、教職員の人件費、学校運営費、施設整備費といろいろございまして、これを、国、県そして市町村というふうに今それぞれに負担をしているわけでありますが、理念的には、教育一括交付金を議論する際には、教育にかかわる経費全体をベースに検討をしながら制度設計をしていくということになるんだろうというふうに思いますが、いずれにいたしましても、関係省庁のあることでございますので、これから、そうした省庁との検討を進めていくということになろうかなというふうに思っております。

本村委員 教育一括交付金の、地方の裁量でしっかりと教育ができるように、ぜひ副大臣の御指導をお願いしたいと思います。

 次に、教職員の給与等の県費負担を政令指定都市に移譲する件については、関係する地方公共団体の足並みがそろっていないようでありますけれども、多くの指定都市とその関係府県から教職員の給与等の移譲の要望が出されていると承知しています。やりたいという政令指定都市と道府県については、構造改革特区法などを活用することでは先行できないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

鈴木副大臣 委員御承知のように、政令指定都市につきましては、人事権はもうあるわけでございますけれども、給与負担については県に残っている、こういうことでございます。これも、平成十七年の中教審答申におきまして、人事権者と給与負担者はできる限り一致することが望ましいとされております。

 文部科学省におきましては、この給与負担の移譲についても、県や市の教育委員会関係者から構成される協議会で意見集約を図ってまいったところでございますが、現状におきましては、すべての関係者の意見の一致を見るにはまだ至っておりません。協議中ということでございます。

 そこで、今委員の御提案もございました構造改革特区法の活用、こういうことになるんだろうと思いますけれども、この件につきましては、この制度を所管しておりますのは内閣官房でございます。それから、負担ということになりますので、地方税財政制度を所管する総務省の判断といったことも必要になってまいりますので、具体的に特区構想が提案をされた場合には、関係省庁と適切に協議をしてまいりたいというふうに考えております。

本村委員 教育における地方分権を進めるため、自主的、主体的に教育行政が地方で行うことができるようにお願いして、この質問を終わりにします。

 次に、拉致問題等も含んだアニメ「めぐみ」について。

 平成二十年に政府の拉致問題対策本部が作成したアニメ「めぐみ」があります。これは、昭和五十二年に、当時中学一年生だった横田めぐみさんが学校からの帰宅途中に北朝鮮当局に拉致をされた事件を、日本にいる家族の思いや、懸命に救出する活動などを描いたドキュメンタリーアニメであります。

 この対策本部のホームページには、「特に、映像による広報が効果的であると思われる若年層の理解増進を図るため、このアニメ「めぐみ」のDVDを積極的に活用しています。」とはございますが、具体的な取り組みを御説明いただきたいと思います。また、実際に活用されているかの調査を行っているなら、結果を教えてください。

田村大臣政務官 お答えいたします。

 今御質問いただきましたドキュメンタリーアニメ「めぐみ」でございますけれども、平成二十年三月に作成をして以来、各都道府県そして市区町村の教育委員会を通じまして、全国約四万校の小中高等学校、そして約三千三百カ所の公立図書館に無償配付を行っておりまして、御活用いただく、そして、若年層を含め多くの方々に御視聴いただいていると考えております。

 学校の視聴につきましては、視聴いただいた学校から送付されたアンケートの回答がございまして、今まで千三百五十五校で児童生徒向けに視聴が行われている、そして教職員向けには二千六百九十三校で視聴されているというのが、アンケートの結果として出ております。

 さらに、このアニメはインターネットで無料のダウンロードもできるようにしておりますし、加えまして、外国語で九カ国語の、字幕つきでDVDをつくっておりまして、国内外で無償配付をしたり、あるいは、我が国を訪問する海外の要人等へ配付を実施している。またさらに、全国の主要レンタルビデオ店における無償貸し出しですとか、ネットカフェにおける配信サービスを行うといったように、積極的に活用しているところです。

本村委員 小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、高等専門学校等で全国に約四万校ございますが、私にとっては、児童生徒、教職員の視聴がまだ少ないなというイメージがございます。ぜひとも、もっともっとたくさんの皆様にこの横田めぐみさんの事実を知っていただいて、拉致問題を風化させない取り組みをしっかりと教育の上でお願いしたいと思います。

 最後の質問になりますが、国連決議もあり、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律では、国と地方は拉致問題への国民世論の啓発を図るよう努めるものとされ、全国知事会を通じ、すべての都道府県の総意としての解決を求める要望を国に提出しております。この問題は、教育の不偏不党といった問題ではないと思います。

 川端大臣は拉致議連に加入されているということを承知しておりますし、また、最近、埼玉県教育委員会では、アニメ「めぐみ」DVD授業活用の教師用手引が作成をされております。同様の具体的な取り組みを、全国の都道府県教育委員会に対しもっと積極的な要請を行っていくべきだと考えておりますが、田村政務官並びに川端文部科学大臣の御見解をお聞きいたします。

田村大臣政務官 私も個人的には、確かに、各学校での視聴というのはまだ十分ではないなというふうに思っているところであります。

 後で大臣からも御答弁あると思いますけれども、拉致問題対策本部としましては、アニメ「めぐみ」の学校における視聴の促進もさらにしていきたいということで、各都道府県及び各市区町村の教育委員会に対して協力の依頼をしてまいりましたし、今後もさらに続けていきたい。そこは文科省と連携をしてやってまいりたいと考えています。

川端国務大臣 お答えいたします。

 拉致問題は、許されることのない、許してはいけない問題であるという認識の中で私も長い間かかわってまいりました。

 もっと前から言いますと、私は、いわゆる吉永小百合さんの「キューポラのある街」という時代が同じ時代でありまして、古い話ですけれども済みません。小学校、中学校のときのクラスメートに、五十人学級ぐらいで二、三人はいわゆる在日の方がおられまして、何人も高校ぐらいの年に母国へ帰ると言って帰って、それっきり消息がわからない友達がいっぱいいますし、御主人が朝鮮人だったということで帰られた日本人妻という問題が、当時は大変大きな問題として私たち一生懸命取り組んできた経過もあります。

 そういう部分で、人権問題というのは極めて大事であると同時に、拉致は許してはいけないということでのお言葉は、先生がおっしゃるとおりのことだと私も認識をしております。

 そういう中で、拉致の問題を取り上げると同時に、教育としては、いわゆる人権の侵害があってはいけないということが基本の理念でありますので、そういう意味での取り組みとしても、「人権教育の指導方法等の在り方について」ということで第三次取りまとめまで行っているんですが、その中でも、基礎的なといいますか、人権侵害があってはいけないという、今まで取り組んできたこと以外の最近の事例ということで、北朝鮮当局によって拉致された被害者等、あるいは性的指向による差別、ホームレスの人権等々の中に、あえて拉致問題による問題を人権の問題として取り上げて、こういうことをしっかり指導するようにということの手引書をつくりました。引用していただきました埼玉県においては、これを踏まえた形で指導の手引をつくられたというふうに伺っております。

 同時に、やはり今御指摘のように、もっともっとみんなで取り上げていただくようにということで、ことしの九月ごろに、都道府県、政令指定都市の人権教育担当者を集めた指導主事会議の開催を予定しておりまして、そこで、各学校、地域における人権教育の取り組み成果を発表する機会という中で、その中で北朝鮮当局によって拉致された被害者等に関する課題も取り上げて、各地域、各学校でこういうことを取り組んできたというのを、そういう研修の場で皆さんに広く知っていただくような場も設けたいというふうに思っています。

 基本的には、申し上げたように、人権を守るということをしっかり教育上教えなければいけないという一つの課題であるという位置づけでありますだけに、地域によっていろいろな課題がたくさんある中で、我々としても、これも大きな課題としてしっかり位置づけてやっていただくようにこれからも努力してまいりたいというふうに思っております。

本村委員 田村政務官そして大臣、御答弁ありがとうございました。ぜひとも風化させない取り組みを、みんなで一丸となって頑張っていきたいと思います。

 質問を終わりにします。

田中委員長 次に、熊谷貞俊君。

熊谷委員 熊谷でございます。

 まずもって、今回初めて質問に立たせていただきますが、日ごろ、大変真摯な質疑を展開しておられます委員各位に心から感謝申し上げます。敬意も表させていただきます。ちょっと興奮しておりますので、言葉はあれでございますが。

 私は四十年近く国立大学に勤めておりまして、国立大学のいいところ、悪いところを全部知り尽くしておる人間でございますが、そのような人間がこの場に立ちまして国立大学に対して質問をさせていただきます。大変不思議な運命だと思っておりますが、どうかよろしくお願いいたします。

 我が国は、教育に関しまして非常に特別な配慮と強い重大関心事を持ち続けてきたということ、これは、近代日本の建設時に、岩倉使節団がまだ帰朝する前に、明治五年、西郷首班政権のもとで学制が発布されまして、それから、憲法あるいは帝国議会が開設されるのに先立ちまして、明治十年、まさに西南戦争の時期に東京大学が設立され、そして帝国大学令が発布され、また、明治二十三年、国会開設と同時に教育勅語が発布された。教育勅語、素朴でありますが、非常に格調の高い教育理念を掲げて、また、その理念を国民すべてが共有するような、そういう強い意欲と信念でもって近代日本の建設者が尽力した、こういう伝統がございます。

 こういう伝統の中で、戦前でございますが、こういう教育システムが、その後の近代日本の建設、あるいはノーベル賞の輩出者を見てもわかりますように、非常な社会貢献をした、こういうことも事実でございます。

 それから百二十年後、二〇〇六年に教育基本法が六十年ぶりに改定されました。我が党民主党の対案であります日本国教育基本法の、特に高等教育に関する理念も踏まえまして、大臣の方からもう一度、現在の教育理念につきましての御認識をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 明治維新以来の日本の、世界に向けて成長していき発展してきた過程において、大変大きな役割をというよりも、中心的にその使命を果たしたのが教育であることは、間違いない認識だというふうに私も思っております。

 そういう中で、実は、そういう実績を積み重ねた教育制度でありましたけれども、その中核のいわゆる高等教育、大学教育に関して、今までの教育基本法では明確な位置づけというのがされていないままに来ていたという中で、平成十八年の改正、幅広いこの場での御議論も踏まえまして改正がされたわけですが、そのときまでは大学教育と幼児教育というのが実は記載がなかったということでありますので、もちろん、生涯教育というのは全部でありますけれども、教育期間という意味での幼児教育と大学教育の規定が設けられました。

 そういう中で、大学の役割として、教育基本法の第七条で、「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」という記述は、単に、そこに学ぶ者の個人の能力、知識を高めるということだけではなくて、積極的に社会に対しての貢献をするということを示されたという意味で、社会との関連づけにおいて非常に意義ある条文であると私は認識をしております。

 これを通じて大学における教育というのが社会全体の位置づけを明確にしたということで、高等教育の意義が新しい教育基本法のもとではっきりしたというふうに思っております。

 私の基本的な認識は、そういうことで御理解いただきたいと思っています。

熊谷委員 ありがとうございました。

 まさに大臣がおっしゃるように、高等教育の役割、これは基本法に明確に示された。学術、それから社会への門戸開放、それから高等教育へのアクセス、機会均等、こういうのを、三本柱ということで、大変明確な教育基本法の中の高等教育の位置づけ、理念が示されていると思います。

 これをぜひ積極的に、この理念に沿った高等教育施策が行われることを望むわけでございますが、現在、大学問題、大学の高等教育も含めましては、問題も多々ございます。

 これは日本経済新聞の先日の記事でございますが、大学の卒業生一人当たりの公費の投入額は二百三十万ぐらいである。しかし、これの税収増あるいは失業給付の抑制効果、こういうのを含めまして四百六十万ぐらいのインカムが、リターンがあります。これを、マクロ経済、国全体で見ますと一兆円の税収効果がある、あるいは、消費効果も含めますと全体で四・五兆円から五兆円のマクロ経済効果があるという、高等教育理念とは裏腹に、裏腹と言うとおかしいですが、経済効果を云々するのは少しはばかられますが、こういう効果もあるというのは事実でございます。

 その中で、では、高等教育に対する財政施策が、例えば、高等教育に対する公費の負担割合と私費の割合がOECDの二十八カ国の中で最下位である。五一%の私費負担を強いられているのが現状でございます。

 こういうことに対しまして、文科省としてはどういうふうなお考えでこの現状を認識しておられるか、お尋ねしたいと思います。

川端国務大臣 御指摘のとおり、OECD加盟国の中で、いわゆる高等教育においての公財政支出が極めて低い、一番最後かおしりから二番目、ほぼ同じぐらいの数字ということでありまして、アメリカ等々に比べても半分ぐらいしか出ていないんではないかという現実があることは承知をしておりますし、今先生御指摘のように、高等教育への教育投資に基づいた人材の育成は、まさに経済推進の原動力になる。

 そして、そういうことの認識の中で、今般の、昨年末にまとめました新経済成長戦略の基本計画の中でも、「高等教育の充実」というのを成長戦略の中にはっきり位置づけまして、具体的な中身に関しては、この六月に取りまとめる中でもそれをどう具体化するかということを検討しておりますので、認識として、まさに国の経済成長力、当然ながら、経済の発展ということに高等教育における人材の育成が大きなかぎを握っているということ自体の認識は持つ中で、客観的に言えば、公財政支出が極めて劣位にあるという現実を何とかクリアしていきたいという認識であることは、そのとおりであります。

 具体的には、財政状況等々もありますけれども、諸外国は、いろいろなこういう経済状況の激変の中でも、これは、いわゆる高等教育に限らず、研究開発投資における公財政支出も含めて、着実にというよりも、非常に加速をして伸ばしているときに日本はほぼ横ばいという状況も打破したいというふうに、方向性としては思っております。

熊谷委員 ありがとうございました。

 今の御認識の中で、ぜひ、国の手厚い施策が施されることを望む次第でございます。

 大学の高等教育の世代といいますかスパンといいますか、影響が及ぶ範囲というのは非常に長期にわたるというふうに考えております。戦前の帝国大学令以来、一九四九年の新制大学の設立といいますか、に改編されたというのが非常に大きな節目でございますが、この間が第一世代ということにしますと、新制大学が発足して以来、二〇〇四年の大学法人化、これが一つの画期で、ちょうどその間六十年ぐらいが第二世代というふうに私は位置づけております。そういう意味では、川端大臣あるいは高井政務官も第二世代で同世代なんでございますが。

 その間、一九七〇年、我々はちょうど学生で、川端大臣もよく御存じと思いますが、大学紛争が世界じゅうで非常に吹き荒れました。諸外国はちょうどその時期に、フランスではドゴール政権でございましたが、高等教育基本法が制定され、ドイツでも、大学大綱法、こういうのが制定された。

 我が国は、実にその間、二十年あるいは三十年にわたって、失われた二十年なんというふうに我々は言うわけでございますが、基本的な改革に着手してこなかったんですが、大学法人化の糸口、発火点になります努力といいますか、改善、改革の動きとしまして、大学設置基準の大綱化というのがございました。御存じと思います。大分昔のことになりますが、一九九一年、大学設置基準の大綱化、これによりましてかなりの自由度が国立大学に付与された。

 よろしければ、この大学設置基準の大綱化の内容あるいは目的につきましてお答えいただきたいと思いますが。

高井大臣政務官 御指摘ございました大学設置基準の大綱化についてですが、臨時教育審議会において、大学教育の個性化に関する提言という、昭和六十二年のこの提言に沿いまして大学審議会において審議を行って、大学設置基準を可能な限り大綱化し、個々の大学がそれぞれの理念、目的に基づき自由かつ多様な形態で教育を実施できるようにする必要があるというふうに、平成三年の答申の内容をさらに踏まえた上で必要な制度改革を行ったという経緯がございます。

 この主な内容といたしましては、一般教育、専門教育などの科目の区分や必要な単位数の撤廃、それから、学部の種類の例示の撤廃、それから、教育内容の豊富化に向けた大学外の施設における学修単位認定の制度の導入などでございます。

 特に教養教育においては、一般教育科目だけでなく、広く大学教育全体を通じて教養教育の理念、目的が実現されるように全学的に取り組むということが期待をされるということになりまして、各大学において教養教育に関する全学的な検討組織の設置が進むという、いろいろな取り組みが進められておるのが現状でございます。

 大綱化以来、教養教育の実施について、学内での責任体制が明確ではなくなったなどという一方でこういう御指摘もございまして、教養教育の機能をきちんとつくっていく上でいろいろと改めていかなければならない部分もあるとは思いますが、さまざまなこういう提言に基づいてこれからも努力をしていきたいと思っているところです。

熊谷委員 おっしゃいますように、理念といたしまして、目的といたしましては、そういう大学の自由度あるいは学科編成の柔軟性、こういうことが担保されるような大綱化であったように思いますが、これは現実は非常に裏腹でございまして、学科編成の自由化というのは非常に我々はありがたかったわけでございますが、一方、専門教育ファースト、エンジニアリングファーストと、私は工学部におりましたですが、一年次に、まだ非常にプリマチュアな、高校出たての学生に専門教育をどんどんおろしていこう、こういう風潮が非常に強くなりまして、基本的に、その後の人格の形成あるいは専門分野での活躍の素地になります教養教育、これが非常になおざりにされるようになった。これもまた事実でございます。だから、このあたりを今後見直していかないといけない、こういうふうに私自身は考えております。

 この大綱化がきっかけになりまして大学改革というのがどんどん進みまして、これは自主的に大学の中で行われてきたわけでございますが、一方、我々構成員にとりましては、降ってわいたように、大学法人化という動きが巻き上がってきたわけでございます。これがちょうど橋本行革の時期に当たっておりました。

 それで、行財政改革の、あるいは国家公務員総定員法が施行されて、十年間に、二〇一〇年までに二五%の削減、こういうことが小渕内閣で決定されまして、今になれば、ちょうど十二万人に相当するような大学の国家公務員の形でありました教員、教官、ちょうどこの法人化がそれの手段に使われたような気がしないでもございません。

 そこで、わずか一、二年の議論の中で、要するに第二の画期になりますようなこういう大学改編が行われるようになったその経緯をお聞きしたいと思います。

高井大臣政務官 法人化の経緯でございますけれども、中央教育審議会、臨時教育審議会の答申初め、平成十六年四月に法人化するまでに、政府の審議会等において、国立大学の自主性を尊重しつつ研究、教育の質的向上を図るという観点から、いろいろな議論がこの間なされてまいりました。

 平成九年十二月に、まず行政改革会議の最終報告におきまして、「大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図るという長期的な視野に立った検討を行うべき」というふうに指摘がなされまして、それを受けて平成十一年四月の閣議決定では、国立大学の法人化については大学改革の一環として検討する、そして平成十五年までに結論を得るというふうにされました。

 こうしたことの指摘を踏まえて、文部科学省として、大学関係者、経済界など各界の有識者が参画する調査検討会議において、平成十四年三月に「新しい「国立大学法人」像について」最終報告をまとめました。そして平成十四年六月に、国立大学の法人化を平成十六年をめどに開始するということを閣議決定いたしまして、平成十五年七月に国立大学法人法が成立して、十六年四月に法人化され現在に至っておるというのが現状でございます。

 この目的におきましても、先生御指摘があった、さまざまな自主的、自律的な裁量を認めていく、人事や予算権の規制を外して大学に大幅な裁量権を付与するなど、それから、学外理事を含む役員会の導入とか経営協議会の設置など学外の経営参画を制度化して、その知見を経営の改善に活用するとか、学長選考会議という学外の有識者が半数参加する会議をつくって経営手腕のある学長を選考するなど、さまざまな国立大学の自主性、自律性に基づいて進めやすい制度となるために、いろいろなことを目的として進めてまいりました。

熊谷委員 ありがとうございました。

 ただいまの経緯並びにその目的というのはよく理解をいたしておりますが、やはり、それまで進めてまいりました大学の自主的な改革の機運、これをうまく取り入れられたかどうか、その辺がちょっと疑問に思うところでございます。やはり、大学改革という本来の目的から、行財政改革あるいは公務員削減、こういうところの側面がやや強く押し出されるような施策で、改編であったというふうに私は今現在はとらえております。

 あと、もう限られた時間でございますが、実は、大学の構成員の側から、要するに現在の国立大学法人、これのいろいろなさまざまな大学の活動に対してどのような影響があったか、こういうことを筑波大学の産学リエゾン共同研究センターが調査しておりまして、そのデータに基づきまして少し問題点を挙げさせていただきたいと思います。

 まず、中期目標、中期計画、これを、非常に長期的なスパンで大学の運営をしなければならないそういう大学という特殊な法人に対して、一般の行政法人と同じようにこれを文科大臣に提出し、そして評価を受ける、こういう仕組みが果たして妥当なものかどうか。この辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

川端国務大臣 大学のまさに現場で、この一連の経過の中に、渦中におられた先生の御指摘ですので非常に重いものがあると思いますが、一貫してこのものに貫いている思想の一つに、やはり大学の自主は最大限尊重しようと。ですから、先ほど御議論ありましたいわゆる大綱化も、まさに理念的にはそういうことだと思うんですね。可能な限り大学で御判断をしてくださいと。

 結果として、幅広い多様なニーズにこたえるというカリキュラム等々の御検討はされたんですが、当時の背景としては、やはり難しいなと思いますのは、今までの仕組みでやってきたもので得られたものがあるときに、それは一応何か前提としてしまうんですね。そして何かよりよく変えたつもりであったけれども、その当時でいうと、一般教養というのは大事だけれども、専門が多様化しているから、そこにより特化した部分にしようではないかということをやっていったら、基礎的学力が大丈夫かと。

 あるいは、例えば私も理科系でしたけれども、そういう理科系をいろいろやるといって社会に出ていくときに、やはり倫理観とかいわゆる人文科学の素養や知識というものがないといけないというふうなことが言われてきて、しかし、教養部というのは基本的にほとんどなくなってしまったみたいな、そうすると、今までやってきたものとの兼ね合いというのは非常に難しいなと思うんですが、そういう中で最大基本に貫かれているのは、やはり大学の自主ということだと思います。

 そういう意味で、この中期目標、中期計画も、法人化したらやはり同じように中長期の目標を持って、そしてそれはしっかり評価されるべきである、自由奔放に好きにしろということであってはいけないという論理は当然出てきたところでありますが、そこにおいても、第三条で、いわゆる独立行政法人とは異なって、制度の運用に当たって、教育研究の特性に配慮すること、中期目標の策定に当たって、文部科学大臣はあらかじめ国立大学法人の意見を聞くとともに、その意見に配慮すること、中期目標の達成状況の評価に当たっては、教育研究の状況についての評価を独立行政法人大学評価・学位授与機構に要請し、当該評価結果を尊重すること等、国立大学法人については、大学の教育研究における自主性、自律性を保障するということに配慮したことで、一般の法人のように、成果はどうだ、計画はどうなっているのかというのをぎりぎりとやるということではないという意識でやっていることは事実であります。

 そういう中で、一定の自律性と同時に、創意工夫の中で大学自身がいろいろ検討しながらやってきておられる成果は私はこの制度改正によって大きくあると思うんですが、一方、このことと同じ時期に、いわゆる骨太方針によって大学の運営交付金をどんどん減らしていくとかいうふうな仕組みが、今の人の問題もありましたけれども、という形で入ってきた部分と、両方で必ずしも大学法人制度によって起こった問題ではなくて、大学はそれぞれ努力をして、多分、大学病院なんかもっと顕著でありますけれども、経営努力もしてしっかり頑張りなさいということで交付金はだんだん減らしていきますという骨太方針が出たということが同じ時期でありましたので、大学の困惑と混乱と不安と現状ということの認識が一緒の時期ということでの思いがあるんだと思いますが、厳密には、ある意味では分けて考えなければいけないだろうという部分もあるだろう。

 私としては、だからそういう部分で、いわゆる骨太方針による必ず減らしていくという部分には、一応今年度予算では、〇・一%ですから、歯どめをかけたという、あれはもう終わりましたよということの予算と同時に、大学法人のあり方については、一定の評価をしつつ、これからも検討してまいりたいというふうに思っております。

熊谷委員 大臣、どうも後の質問も全部まとめてお答えいただいたようでございまして、時間の都合もございますが、ぜひここで強調しておきたいのは、先ほど言いました調査研究の結果、構成員の大半が、要するに研究活動に非常に悪影響があった、それから、教育活動にも非常に、パーセントは申しませんが、大半の構成員がそういうふうに感じております。教育研究に対して非常に悪影響があった。ないしは大学の運営につきましても、リーダーシップといいながら、非常にこれが閉鎖的で硬直的なものになって、いわゆる構成員の自主性、意欲、あるいはモラルをそぐような悪影響が見られる。これも非常に大きいパーセントを占めております。

 したがって、交付金の削減は今歯どめがかかりましたけれども、歯どめがかかっただけでは、平成十六年、独法化前から二千億の削減、こういう巨額な削減幅がございますので、やはり、その一つは財政的自立を促すような施策、これは自由度をふやすということの一つの基本でございますが、もう一つは学内民主主義ですね。これは、各国の大学改革の中で一番基本になったのが学内民主主義の確立で、特に、学生の大学運営への参画、これが全部うたわれております。

 だから、学長のリーダーシップ、必ずしも大学のマネジメントにたけた人が選ばれているわけではございませんので、やはりそれを正すという意味で、構成員の民主的な動きの中で自主的な大学の運営と改革がなされるような、こういう形で独立行政法人そのものの抜本的な見直し、これを私は要望したいのでございますが、最後に、もう時間でございますので……。

川端国務大臣 大学の自主性を尊重する中で、大きな社会的役割を果たしていただきたい、そのときの統治機能の部分で学長のリーダーシップが大変大事であるということでありますが、そのリーダーシップというのは、学長が好き勝手にやっていいという意味ではありません。時代的な背景も含めて、学生あるいは教職員含めて総合的にみんなが生きがいを持って力を発揮できるようにガバナンスすることが学長のリーダーシップだと思っております。

 そういう方向でしっかりされるように、また、貴重な御経験をお持ちの先生なんかの御指導もいただきながら、しっかりと大学が機能を果たせるように、諸課題に取り組んでまいりたいと思っております。

熊谷委員 どうもありがとうございます。

 これで質疑を終わります。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。よろしくお願いいたします。

 まず、十四日のこの委員会で、また参議院の文部科学委員会でも決議をされました公立学校施設耐震化等の早期実施に関する件について質問をいたします。

 これは、野党にとっては非常にじくじたるものがございます。そして、鳩山政権あるいは文科省にとっても、これは謙虚に反省していただきたいと思うんですね。そもそも、国会のこの時期にこのような決議を国会でするということが異常だと思うんですね。文科省としては、これは当初から耐震対策について十二分な手当てをしてあれば、この手当てに予備費を使うということの決議についてはする必要がなかったわけでございます。

 そもそも、なぜこのような決議をせざるを得なかったかということですけれども、もともと学校施設の耐震化等については、昨年の予算編成、これは麻生政権時代ですけれども、地方自治体が平成二十二年度に約五千棟の耐震化事業を計画していることを踏まえて、文部科学省としても二千七百七十五億円を概算要求していたわけです。しかし、鳩山政権がマニフェストに掲げた施策の財源確保のため、つまり高校無償化法案ですね、このために、平成二十一年度当初予算より減額した要求を行うという制限をかけていたために、概算要求は一千八十六億円と大幅に削減され、そして最終的に、平成二十二年度予算では一千三十二億円、耐震化対策等も二千二百棟にとどまったということであります。ですから、高校無償化、授業料の無償化の財源確保を優先するために、必要な学校耐震化の予算が確保できなかった、そういうことなわけですね。

 しかし、鳩山総理も本会議で、命を守ると二十四回も表明されたわけであります。そして、これはもう党派を超えて全会一致だったわけですね、民主党の皆さんも含めて。やはり、国民の厳しい批判の中で、耐震化対策というのは早期に実現する必要があるんだということで衆参両院において決議をされたわけでありまして、この予備費の活用決定というのは当然のことだというふうに思うんです。

 ただ、前回も答弁されておりましたが、国会開会中に予備費についてそもそも議論すること自体が実際異常でありますし、また、それの活用についてどこまで答弁できるのかということがあるかもしれませんが、しかし、決議されたわけですから、これは明確に答弁していただけなければ夏休みの事業、工事に間に合わない、こういう問題が一方であるわけです。

 まずお聞きしますが、そもそも当初の概算要求、二十二年度ですね、これを前提とすると、不足する費用は一千七百億円なわけですけれども、しかし、予備費支出の額、報道によれば、朝日新聞では八百億とか、NHKでは一千二百億とか、読売新聞では三千億とか、それぞれいろいろな報道があって、実際幾らなのかということがわかりません。この予備費の支出によって自治体が求めている耐震化事業をすべて行うことができるのかどうかということもわからない。その辺で自治体も大変に不安に思っております。

 この支出の計画及び正確な金額について、まずお答えいただきたいと思います。

川端国務大臣 まず初めに、当委員会、参議院の委員会でも御決議をいただきました。そのことを踏まえて、閣僚懇談会における総理の私に対する指示が出ましたことは、前回の委員会でもここで御報告したとおりでございます。そういう経過自体は極めて珍しいというか、ほとんどない状態であることも事実だと思います。

 そういう意味での経過は重く受けとめてこれからも対応してまいりたいと思いますが、その趣旨の中で、この委員会でもいっぱい御議論いただいた中で、やはり夏休みにしっかり工事ができるようにということが一番の要請の中の、しっかりやるようにということと同時に、夏休みに間に合うようにというのがこの委員会の御意見の決議の背景にもあったというふうに思っています。

 ただ、御指摘のように、国会開会中に予備費の支出は行わないという閣議決定が踏襲をされているわけでありますので、非常に建前的な話かもしれませんが、総理の御発言も、予備費の活用も視野に入れてということは、この国会開会中に予備費を出すということまでの言及はしないということが、内閣として長年とってきた一応の姿勢であり、憲法解釈に基づくものだということは御理解をいただきたいと思うんですが、そういう中で、現実に七月に間に合わせるための大規模な耐震化の工事に関しては、相当前段階から設計をし、入札の公示を行い、議会においての予算手当ても行うという必要がありますので、こういう大規模な部分で、長期にわたる議会の準備も必要なものに関しては、当初予算の中でできるだけ早くに織り込めるようにということで今考えております。

 そして、ぎりぎり、国会が終わっていろいろな財源手当てがされて、決定をされたらすぐに実務に入れるようにするために、事前の準備をできるだけしていただくという工夫を凝らして、七月に間に合うようにということを想定しておりまして、現在、それぞれの地方においての御要望を取りまとめているところであります。

 その御要望に応じて、できれば事前の準備行為、想定した準備行為もやっていただけるのではないかということのすり合わせも含めて現在聞き取りを進めているところでありますので、その部分の積み上げを行わないと額的には確定をしませんので今申し上げることはできませんが、御指摘のように、八月の前政権の概算要求では約五千棟の御要求でございます。それが、今年度予算では二千二百棟、それから二十一年度で前倒しをしたのが四百五十棟ですので、今のところ、そのベースでいいますと、二千三百五十棟のものが御希望が今のところかなえられていない棟数としてあるんだというふうに思っております。

 それを見ながら、個別具体に今それぞれの地域と問い合わせをして、いろいろな事態を想定しながら、国会終了後の時点での財源手当てを想定しながら準備を行っているところでございます。

下村委員 大臣、その発想は逆なんですよ、地方自治体からいいますと。

 私は、東京都とそれから地元の板橋区で確認をしたんですが、東京都の方は、このように担当者が言っておりました。例年、今のように、例えば五千棟とか二千八百棟とかいうふうに、計画案件について補正予算も含めた国の予算措置がわかっていた、だから設置者、区市町村は、内定の見通しが立って契約に着手することができたと。しかし、今年度は予算措置がいまだ不透明である。今の答弁でも不透明なんです。不透明であることから、国の内定結果を待って着手せざるを得ない状況である。そういう状況なので、契約着手がおくれる可能性がある。そうすると、耐震化工事の延期や中止の可能性がある、つまり、夏休み工事は間に合わない。夏休み期間の工事着手に間に合う時期での予算措置を明確にしていただかないと、実際対応できないと。

 これが東京都、地方自治体の声です。いかがですか。

川端国務大臣 そういう事情にあることは承知をしております。

 そして、先ほど申し上げましたように、閣議決定事項の踏襲及び財政法上含めて、国会開会中に予備費云々に関して言及できない、決定ができないという仕組みで今動いている。ですから、そこの部分で、内定行為までは、財源措置が今のところ確定をしていないという意味で、内定までできるということは国会が終わらないとできないことは現実でございます。

 そういう意味で、非常に難しいんですが、どういう表現があれなのか、内定が確定をしていないという部分で不安に思っていただいていることは事実でありますが、実際には、こういう財源手当てが何らかの形で国会が終わったら直ちにされるということを踏まえて、やれるかどうかという御希望を伺って、できればそのことにおいてこういう準備をしていただきたいということの要請も含めて、事実上そう支障のない、最大の努力をさせていただきたい。

 そのときに、先生御指摘のように、内定をしたら一気に準備できるということが隘路になっていることは事実でありますが、その部分だけは、実務上、協議の中で準備していただくような相談はさせていただく中で乗り越えたいというふうに思っていることを、ぜひとも御理解いただきたいと思います。

下村委員 先ほど御答弁の中にありましたが、契約金額によっては議会承認が必要なものが出てくるわけです。そうすると、ゴールデンウイーク前までに決定が必要な案件がやはりあるんですよ。

 例えば、四月の下旬に起工して、五月の上旬に指名委員会を開いて、そして五月の中旬に入札をする、六月の上旬ぐらいの地方議会にかけるというスケジュールだったら夏休み期間中の工事に入ることができるということを考えると、逆に、夏休み中に工事をするためには議会承認が必要だと。議会承認に間に合わすためには、今月中に起工しなければ間に合わないということなんですね。今の御答弁ではできないんじゃないですか。

川端国務大臣 耐震工事にも、額においてそれぞれ大小いろいろ幅がありますので、先ほど申し上げましたように、先生御指摘のように、大体今月中に起案、公告を、できたら連休前ぐらいにして、そして五月の連休明けぐらいに入札、仮契約、そして六月の上旬に議会に上程をして、六月下旬に議会の議決をいただいて本契約をするということで、七月以降に工事に入るということが、大きい工事の場合は必要になるというふうに認識をしております。したがいまして、その部分は、一千億強あります耐震補強工事の本予算の中で、これはできるだけ内定を早く決定してそれに着手していただきたい。

 都道府県においては幾つかの案件を当然お持ちですので、その部分に関してはこの部分を内定させる。そして、それ以外の部分に関しては、追加財政措置が行われるということを想定したときに、五月中旬、連休明けぐらいに起案、公告をしていただいて、それまでには何らかの準備をしてくださいということは今月中ぐらいに我々から申し上げる。

 そういう中で、自治体と企業の努力として、事務手続とか公告、見積もりの期間をできるだけ短くしてくださいというお願いと同時に、六月下旬に入札、仮契約、議会は、七月中旬の議会上程、あるいは場合によっては臨時でやっていただければそれはありがたいんですがということで、議会承認を得て直ちに工事に入るという、これはかなり綱渡りなんですが、その部分は両方に分けて、個別にそういうことが可能かどうかということを今精査させて、それぞれ聞き取りながらやらせていただいているということでありますので、短期でも、六月中旬ぐらいに内定をするということで、いろいろな準備活動をしていただいて乗り越えられる案件と、それは全然無理であるという部分とを聞き取りながら、何とか全部がおさまるようにという努力を今やりつつあるところであるということだけ御理解いただきたいと思います。

下村委員 いや、無理なんですよ。まさに隘路に陥っちゃっているんですよ。

 例えば私の地元の板橋は、これは国庫補助金が出ても出なくてもつくるということでもう進めています。ですから、そういう自治体は、結果的にそれが国庫補助金の対象になるということであれば結果オーライということですので、そういう財源を比較的持っているところは何とかなります。

 しかし、東京都の方に確認をしてもらいましたら、中には、設置者、区市町村によっては、結果的に、契約着手のおくれによって耐震化工事の延期や中止をせざるを得ない、そういう財源不足のところは、出るか出ないのかわからないのに工事できないと言っているわけですね。

 ですから、せっかく国会でも決議をして、そして予備費を何とか使うということについては方向性としてはオーケーになっているわけですから、時間的に、先ほど言いましたように、そうすると、やはりゴールデンウイーク前までにほぼ、まあ決定までは行かないかもしれませんけれども、文科省なりの、例えば総額は幾らぐらいなんだ、大体どの程度まで該当するんだということの中で、自治体が独自に判断できるような指針がないと、これは実際は工事そのものができないんじゃないですか。いかがですか。

鈴木副大臣 今大臣から御説明申し上げましたように、追加財政措置の部分につきましては、もちろん自治体それから関係企業の御努力をいただかなければいけないわけでありますが、五月中旬起案でぎりぎり間に合う。しかし、その前までに、今委員の御指摘もございますので、今まさに綿密に、そのあたりも含めて、各地方公共団体と個別具体の事業計画について一件一件詰めさせていただいております。

 概算では五千棟というのはいただいていますけれども、いろいろな事情がございますので、そこを全部確認する作業を、今月中、鋭意、この委員会での大変貴重な決議を受けて、まさに今やらせていただいております。何とか多くの事業が夏休みに行われるように、工事日程をきちっと把握しながら対応しているところでございますので、ぜひ御理解と、関係自治体の、私も東京都でございますけれども、そのあたりの自治体とのコミュニケーションの方もぜひ御支援もいただければありがたいなと思います。

下村委員 いやいや、我々はフォローしようと思っていますけれども、これはそもそも、文科省がどこまできちっと把握をしながら対応できるかという話ですよ。我々の問題じゃないんですよ。我々としては国会で決議したわけですから、やっていただきたいということで。これはまさに副大臣、今言われた、あなた自身の努力の成果が問われるわけですよ。

 実際に東京都は、契約着手のおくれによって耐震化工事の延期や中止の可能性があると言っているわけですね。そのために、先ほどから申し上げているように、五月の連休前には明示していただかないと、これはおくれますよ。

 それについてどう間に合わせるかということを、きちっと文科省で個々具体的に一つ一つ案件について責任を持って対応するということについて、ではもう一度きちっと明言してください。

鈴木副大臣 ですから、通常のケースでいきますとそういう可能性があり得ますので、まさに日夜、関係自治体とコミュニケーションを極めて緊密にとらせていただきながら、貴重な予備費を使うという御決定を無にすることのないように、今も都道府県と調整をさせていただいておりますけれども、きょうの御指摘を受けて、さらにきちっと徹底してやってまいりたいというふうに思っております。

下村委員 私は、具体的に地元の板橋区で、ことし、二十二年度の小中学校耐震補強工事について聞いていて、ちょっとびっくりしたことがあるんですね。

 これは、総額で七十二億三千万を工事しようとして、国庫補助金が出る出ないにかかわらずやろうということでここは進めております。しかし、その中で国庫補助金の占める割合というのが、十三億三千九百万で、比率からいうと一〇%ちょっとぐらいなんですね。

 そもそも、耐震補強工事については国庫補助が二分の一出る、それから大規模改修あるいは改修については三分の一出るということを聞いていたんですが、実際、この板橋区の試算によると、耐震補強工事については国庫補助金は四一・四%、二分の一ではない。それから、大規模改修については九・〇%が国庫補助金ですね。それから、改築工事については七・二%しか出ない。驚いたんですね。

 実際、国が二分の一、三分の一。しかし、今申し上げたように、総額でいえば一〇%ちょっとですから、これは自治体にとっては、財源的に本当に今厳しい中で大変なことだと思うんですね。

 なぜ三分の一あるいは二分の一にならないのか、こんなに乖離があるのか、これについてはいかがですか。

鈴木副大臣 この補助スキームは基本的にこの間ずっと変わっておりませんけれども、これは委員もよく御存じだと思いますけれども、学校施設整備をする予算というのは、国庫補助の対象は施設整備でございますが、同時に、机、いすなどの什器、あるいは放課後児童クラブ関連施設の整備等、公立学校施設整備費という枠組みの補助対象外の事業もあわせて整備をするケースがある意味ではほとんどだと思います。

 したがいまして、私も板橋区の事例は改めて確認をさせていただきましたが、補助対象外の事業も含めた総事業費と国庫補助額の比較をした数字を今御紹介いただいたんだというふうに思います。

 したがいまして、公立学校施設整備費の補助額が、補助対象となる事業費において国庫補助率との乖離ということで申し上げると、大きな乖離はないというふうに考えておりますが、もちろん、この枠組みを、まず額をきちっと確保しながら、それをさらに拡充していくという御議論は、それはあることは私もそのとおりだと思いますけれども、現行の制度の運用としてはそういうことだということで御理解をいただきたいと思います。

下村委員 私も、施設整備費等が入っていて、それは補助金の対象にならないということをお聞きして、さらに確認をしたんですね。

 施設整備費、例えば新たに校舎を建てる、そのときの机とかいすとか備品関係、実際聞いてみたら、これは金額的にはそれほど大した額ではないんですよ。例えば仮設校舎等、建てかえするわけですから、その間どこかで授業をしなくちゃいけない。こういう仮設校舎等、これは相当なお金がかかるんですけれども、こういう部分が該当しない。

 それから、そもそも、補助金対象となる経費の詳細について明確な基準が示されていない。だから、こういうものを工事しますよといっても、実際、後で国がチェックして、一件一件、実際は東京都がしているそうですけれども、これは該当させる、させない、後でわかる。

 こんな無責任なことでいいんですかね。最初から明確に、補助金対象となる経費の詳細はここなんだ。区の方で、自治体の方できちっと試算できるというふうにしなければ、これはいかにも、国が何でも面倒見てやるけれども、どこまで面倒見るかは後で国が判断するよ、そういうことになって、皆さんのおっしゃっている地方主権、私は地方分権だと思いますけれども、そもそも乖離している発想じゃないですか。いかがですか。

鈴木副大臣 繰り返しになりますけれども、公立学校施設整備費負担金制度というのは、現政権になってその枠組みを変えているわけではございません。運用についても変えているわけではございませんので、そこについては何ら変更がないということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、もちろん、改善すべき点は、この委員会でも審議を深めていただいて、私どももさらに検討、研究はきちっとしていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、まずは一刻も早く夏休みの手当てをきちっと行うということに精力を集中してまいりたいと思いますし、さらに、国会あるいは国民の皆さんの御理解も得て、この政策の充実を図ってまいりたい、そういう問題意識は共有をさせていただいております。

下村委員 これはおっしゃるとおり、別に昨年の九月から始まった話ではなくて、それまでのずっと経緯があるわけですから、当然のことだと思います。

 ただ、今回質問しているのは、今までは計画案件については国の予算措置が事前にわかっていた。もう当然ですよね、今回みたいに予備費を使うということではなかったわけだから。だから、それぞれの自治体としては、試算が、それでも今までの経験法則から、どれぐらい該当するかしないかも含めて、おおよそわかっているわけですね。

 特に、今回は予備費の問題があって、そもそも、それが契約対象になるかならないかという問題もあるわけで、なったとしても、では、実際に国庫補助金がどの程度出るのかどうかということと、それから中身はわからないという問題が同時に出ているわけでございまして、これはぜひ今後、仮設施設を含めて、国として新たな対応ということについては改めて考えていただきたいと思いますが、いかがですか。

鈴木副大臣 委員おっしゃるとおり、私も東京でございますので、東京とか都市部の場合は、特に仮設のときの、要するに、一時移転しているときのその費用というのは、土地代、校舎代の借り上げとか非常にかかるということで、そこはぜひ私も一緒に、改善に向けて検討、研究は続けていきたいと思っております。

 今までの箇所づけは、委員おっしゃるように、大体の額が決まって、それを市区町村の側が見当をつけて対応する、こういうことでやってきたわけでございますが、今回予備費の活用という非常に特別な状態でございますので、今回は一件一件、要するに、学校ごとに市町村と、もちろん都道府県通じてでございますが、文部科学省とで、これはやる、これはどうですかということを詰めさせていただくというプロセスに入らせていただきます。

 したがいまして、今回、ことしの特に追加措置分については、あるいは、その関係で既存予算分も同様の扱いになるわけですけれども、ことしに関して申し上げると、一つ一つについて、これは措置する、これは難しい。これはこちらの事情もありますけれども、市町村からの要求も概算で上がってきていますから、本当に市町村の枠内でことしでやるのがいいのかそうなのかということの状況をもう一回精査しておりまして、その詰めを今鋭意、今月中、一生懸命やらせていただいているということで御理解をいただきたいと思います。

下村委員 では、確認ですけれども、今の段階ではまだやっていないですね。具体的に、例えば都道府県に対して文科省から今のような問い合わせ等をしていないと思います。これからやっていって、少なくとも東京都にやっていないですよ。

 それから、都道府県から区市町村については一つ一つ個別具体的に聞き取りをするということですけれども、いつから始めますか。

西阪政府参考人 各都道府県を通じまして、現在、市町村の事業計画につきまして、既に中身の聴取を始めているところでございます。できるだけ早く全体の把握をしたいと思っております。

下村委員 いや、それを聞いているんじゃなくて、都道府県、区市町村で、具体的に、今回、補助費でそれぞれの耐震化対策等が対象になるのかどうかということがわからないので、つまり、国庫補助の対象になるのかどうか、それについて具体的に工事がやれる状況かどうか、中止にならない、きちっと計画を進めていいのかどうか、それについて個別具体的に聞いてほしい、言っているのはそういうことですから。よろしいですね。

 では、次の質問に移ります。

 全国学力テストですけれども、きのう行われました。私は、特にB問題等を見ると、かなり練れている、いい問題が結構あるのではないかというふうに思いました。

 大臣は、これをごらんになりましたか。

川端国務大臣 問題を報道で見るのは、二、三分しか時間がありませんでしたので、詳細には見ておりません。

下村委員 担当大臣として、ぜひごらんになっていただきたいと思うんですね。

 そして、大臣、PISAの調査で、我が国の学力が相対的にほかの国に比べてもどんどん下がっているということの中で、例えば読解力等のリテラシーは、直近ではOECD三十カ国の中で十五番目、真ん中なわけですね。これはやはり、読解力とか科学、数学リテラシーですけれども、それぞれどう高めるかということの中で、今回の小学校六年生の国語のB等は、こういう読解力を含めた、あるいは、一般社会においてもそういう能力がすぐ通用する、反映するという意味では、今までのような暗記、記憶中心的なことよりは、相当工夫した、いい設問になっているのではないかと私は思いました。

 こういうことを含めて、本来は三〇%が調査対象ということであったわけですけれども、各自治体からも、抽出ではあるけれども、ぜひ参加したいということの希望があって、対象から外れた公立小中学校約六割が問題の配付を希望した。そして、国からは予算が出ないけれども、採点や集計業務は自治体の自己負担であるけれども、また教師側の負担であるけれども、これをやろうということで進めたということなわけですね。この自主参加校が約六割ということで、私は非常に高いのでびっくりしました。

 悉皆方式、全員参加方式で効果が浸透して、各学校の学力向上の意識が高まった結果でもあるのではないか、また、この全国学力テストをプラスとして評価して、ぜひそれを定着させたい、またそれを活用したいという思いがそれぞれの中で広範に広がっているのではないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、川端大臣としては、この全国学力テストの参加を希望する学校がこれほど多い、こういう事実についてどのようにお考えですか。

川端国務大臣 悉皆から抽出に変えて行うということの我々の考え方は何度もここで申し上げたとおりでありますが、どれぐらい希望されるかなというのを別に予想、推定をしていたわけではありませんが、たくさんの方が希望されたという事実は、それなりに多かったなという印象を受けております。

 同時に、三年間の悉皆で、いろいろな知見の蓄積と対応も含めて、学力向上に資することを含めて、いろいろな施策を講じてきている中で、今回、抽出でやらせていただいたというのを受けて、これの検証が実は大変大事だというふうに認識をしております。

 そういう中で、今御指摘のありました、問題も、新聞記事みたいなものを取り上げての読解力向上の工夫とかいう評価も、いろいろまたこれからも出てくると思います。当然ながら正答率等々の中身もあると思いますが、この中で、調査として、要するに、自分たちの意思としての希望された理由あるいは希望されなかった理由等々も、検証する中ではアンケート調査もしっかり行って、中身の、テスト結果あるいは問題、運営方法等々だけではなくて、今回の抽出への切りかえに対してどう受けとめておられるのかということも各都道府県を通じて調査することによって、よりよい学力テストが行われるようにこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

下村委員 今回の学力テストの抽出への転換というのは、私は完全に拙速だったというふうに思います。

 同じテストをしていて、三〇%の抽出に選ばれた学校については費用がかからない。ところが、自主参加する学校、六割が希望しているわけですけれども、ここは先ほど申し上げたように採点とか集計業務が自治体負担。それから、採点は教師がしなくちゃいけない。あるいは、この採点、集計費用を自治体で、市町村で援助する予定の県、これは抽出と自主参加合わせた参加率が非常に高いわけですけれども、一方で、財政力の弱い自治体は、この費用負担の問題から自主参加を取りやめているという事例も出ているわけです。つまり、財政力があるかないかによって地域の格差が生まれてきているということも今回の中で出ているわけですね。

 高校無償化法案についても、財政力のある自治体は授業料負担軽減策をさらに手厚く行う、そういうところもあるわけですけれども、しかし、財政力のない自治体は十分な対応を行うことができていない。ですから実際は、今まで地方自治体がやっていた部分を今度国が授業料について肩がわりしているだけであって、自治体が今まで負担していたその対象の生徒にとっては何らさらなる軽減策になっていないという対象の県もあるわけですね。つまり、地域間での格差が新たな問題になっている。

 同じように、この全国学力テストについても同様のことが出ているわけです。

 ですから、今回、民主党政権になって、高校授業料無償化をした、それから、全国学力テストを悉皆から抽出にしたということによって、結果的に、地方自治体の財源力があるかないかによって、そういう教育における不公正、不平等が生まれてきているというふうに思いますが、いかがですか。

鈴木副大臣 お答えを申し上げます。

 実は私は、昨日、都内の小学校を、お邪魔にならないように見に行かせていただきました。今回、希望利用方式の学校ですけれども、希望利用方式の学校には、問題の作成、印刷、学校への配送は国の負担でやらせていただいております。したがいまして、現場への負担は採点なわけですね。もちろん、これは一つの事例でありますからいろいろあろうかと思いますけれども、私がお邪魔した学校の校長先生は、採点、大変ですかということを申し上げたら、いや、それは六年生の担任だけでやるんじゃなくて職員室全員でやりますので、そのことは教員の仕事として受けとめてやっておりますと。

 もちろん、制度にはいろいろ、いい点、悪い点あろうかと思いますけれども、今回は、希望利用方式の場合は、調査を実施した後、直ちに児童生徒にフィードバックできますし、それから、学校現場の判断でそうしたフォローアップもできます。もちろん、分析には、きめ細かくいろいろと、担任の先生、あるいはいろいろな、それこそ職員室全体で丁寧に時間をかけて対応していきたいけれども、そういったことはできるようになったという声もございます。

 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、私個人的には、採点の仕事というのは教員の本務でありますから、そこが御負担で、私も、委員おっしゃるように、これはいい問題だと思います。私が教育者であれば、あるいは校長であれば、自分が教えてきた生徒が、やってみて、どういうことになっているのかなと見たいということを希望されるのは、非常に素直なといいますか、ある意味で自然な思いだというふうに思いますし、そういうふうに通常の学校であれば御活用されて、それを指導に生かしていくということになるんだと思うんですけれども、財政負担を理由に、しかも、集計の点については、今回、集計支援ツールを文部科学省が教育委員会にも提供いたしておりますので、そういう中で財政負担というふうなことを報道されておりますので、どういうことになっているのかもう一度きちっと調べてみたいなというふうに、私は率直にそういう感想を持っております。

下村委員 副大臣、今の答弁の中身についてはわかりますよ。共有する部分はあります。しかし、答弁そのものは、これは副大臣の答弁としてなってないですよ。

 私が申し上げているのは、国が抽出したところについては全額出しているでしょう、希望のところは自治体で負担していますね、それから、財源がなくて自治体で参加しないところもありますね、こういう制度設計そのものが拙速だったのではないですかと。

 改めて、これについてもう一度、対象学年とか教科の問題、それから、私は基本的にきちっと悉皆にすべきだと思います。国が責任を持つということだと思いますが、財源の問題であれば、例えば何年に一度やるとかいうことも含めて、いろいろな工夫というのはやはりあるべきじゃないですか。今のまま、そのままやる予定なんですか。

鈴木副大臣 その点については、ことし、この学力調査全体のあり方ということについて、もう一度きちっと検討していきたいということは当初より申し上げてまいりましたし、今回の実施の状況等も踏まえて、そして、きょうのこの委員会での御議論も踏まえて、これは検討を行って、よりよい学力調査にしてまいりたいというふうに考えております。

下村委員 今回、成績が上位の、一番の秋田県とか福井県では、なぜ一番になったのかという中で、「早寝早起き朝ごはん」、そういう生活習慣をきちっと県ぐるみで徹底しているところが成果としてあらわれているのではないか。それが学力だけでなく、体育、健康的にもプラスになっているというふうな自己評価をしている県もあります。そういうプラス面からどう活用するかということが問われるんだろうというふうに思うんですね。

 一方、この全員参加方式に強く反対をしてきたのが、民主党の有力支持団体である日教組なわけですね。日教組は、自治体とか学校の競争や序列化をあおるというふうに批判してきたわけであります。

 その中で、北教組は、「全国学力・学習状況調査に関わる「道教委交渉」」、北海道の教育委員会との交渉の中で、全国学力調査について、こんなふうに道教委に対して言っているわけですね。

 「「全国学力調査」が子どもの実態を無視し、一人ひとりの子どもの成長を育むものではなく、国や企業が要請する「学力」を求めるなど「国家のための教育」を徹底するものであることから、実施断念・中止を基本に道教委交渉の中で強化した。」と。

 「平成二十一年三月、全道すべての市町村が「調査」を強行しようとしたことから、引き続き、実施断念、中止を求め、道教委交渉を強化した。1、子どもや保護者に説明する、」この全国学力調査についてだと思うんですが、それから「2、答えづらい項目は答えなくてもよいと事前に伝える、など改めて再確認し、各級段階で遵守するとりくみを強化した。」

 こういうふうに、北教組は北教委に対して、この全国学力・学習状況調査について対峙してやっているわけです。それは今回の調査の中にも書いてあることでもありますが、この北教組の姿勢について、大臣としてどうお考えになりますか。

川端国務大臣 この場で何度も御答弁いたしましたが、この学力調査の意義、意味というのは、文部科学行政を所管する立場として、全国の学力、学習状況の水準を把握して、今後の教育行政に資するために行うということにあわせて、学校における子供たちへの教育指導にも資するようにするというのが本来の目的でございますので、ここの御指摘の、北教組が、「子どもの実態を無視し、子どもの成長を育むものではなく、国や企業が要請する「学力」を求めるなど「国家のための教育」を徹底するものである」という認識には全く立っておりませんので、主張は当たらないというふうに認識をしております。

下村委員 ちなみに、北海道における今回の学力テストの参加率はどれぐらいですか。

金森政府参考人 今回の全国学力・学習状況調査における北海道の参加率でございますけれども、北海道は抽出調査の抽出率が小中学校合計で二五・一%でございます。それから、抽出対象以外の学校で希望利用する学校の割合が六二%でございまして、抽出と希望利用を足しますと八七・一%というのが北海道の状況でございます。(発言する者あり)

下村委員 では、札幌はどうかということですので、札幌市をお願いします。

金森政府参考人 札幌市における状況でございますけれども、札幌市における公立小中学校は三百九校ございまして、抽出調査の対象となった学校が六十七校、二一・七%でございます。全校が調査に協力をいたしました。ただ、札幌市の公立小中学校のうち、抽出調査の対象とならなかった学校で、希望利用による調査を希望した学校はございませんでした。

 それと、先ほどの御答弁の中で、希望利用の北海道の状況につきまして六二・〇%と申し上げましたが、希望利用対象学校のうち希望利用する学校の割合、それが八二・八%ということで、抽出と希望利用を合わせて八七・一%ということに訂正させていただきます。失礼をいたしました。

下村委員 北海道全体で希望と抽出を合わせて八七・一%ですね。ですから、今の御答弁のように、札幌市は実際は二一・七%しか受けていないのにかかわらず、札幌市以外の北海道における参加者が非常に多かった、これが八七・一%という数字だというふうに理解します。

 つまり、北教組がこれだけ全国学力テストに反対しても、道民としては、ぜひきちっと子供の学力の定着を図りたい、そういうのをこのテストによってきちっと明確に位置づけをすることによって、今後どのような学力をさらにつける必要があるのかどうかということについて非常に関心を持っているということだと思うんですが、前回、北海道におけるこの学力調査の結果はどうでしたか。

金森政府参考人 北海道における結果ということでございますが、平成二十一年度、昨年度の全国学力・学習状況調査におきましては、小中学校における国語及び算数、数学について、知識を問うA問題と活用を問うB問題に分けて結果を公表しております。

 北海道の小中学校の各教科の全国の都道府県の中での順位について申し上げますと、小学校の調査では、国語Aが四十六位、国語Bが四十七位、算数Aが四十七位、算数Bが四十五位となってございます。

 また、中学校の調査では、国語Aが三十九位、国語Bが四十三位、数学Aが四十位、数学Bが四十一位という結果になってございます。

下村委員 トータルすると下から二番目ということで、北海道の人たちは大変に教育について危惧をしている。

 私は、先ほど御指摘しましたけれども、北教組の影響等が相当にあると思うんですね。答えたくないところは答えなくてもいいみたいなことを先生がそもそも指導すること自体が問題あるのではないかというふうに思います。

 この間、「北海道教育委員会及び札幌市教育委員会における調査の状況について」ということで中間報告の前に、まずどんな調査をしているのかということについて御説明がありました。その後、この資料をいただきましたが、相当分厚い資料で、これをきちっと丁寧にするということであれば、これは相当の手間暇がかかるのかもしれませんけれども成果、効果も上がるのではないかということで、ぜひこれは期待をしたいなというふうに思います。

 まず、この分厚い調査ですけれども、これはどこがつくったのか、そして文部科学省はどの程度これにかかわったのか、そして今後これについて文部科学省としてはどのようなフォローを考えているのかということについて、この調査についてお聞きしたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもから北海道教育委員会及び札幌市教育委員会に対しまして事実確認を依頼いたしまして、調査の様式でございますとか、どういう形で調査をするかということにつきましては、それぞれの教育委員会の判断で作成をいたしたところでございます。

 私どもといたしましては、できるだけ速やかな報告がそれぞれの教育委員会から出てくることを求めているところでございます。

下村委員 文科省としては、調査の結果が出てからこれに対してどうかかわるんですか。

鈴木副大臣 道教委から報告を受けたいということでございます。

下村委員 時間がないので省略しますけれども、お手元に、きょう机上配付しております。この調査書の中で「教職員の政治的行為等に関する調査票」、これは校長が教職員一人一人から聴取した結果を出すということになっていますけれども、この結果を受けて、当然それは過去にこのような問題があるからこそ調査をしてもらっているわけで、全くないということは、つまり政治的行為が、問題にするようなことがなかったということはあり得ないと思っていますが、程度問題としてどの程度あるかということでこの調査をしているわけですけれども、その結果を受けて、文科省としてどう考えますか。

川端国務大臣 もともと当委員会で馳委員から資料が提出されて、これは学校における、教育現場における政治的中立が損なわれているのではないかという御指摘が端緒でございました。

 そういう意味で、詳細、その後幾つかの報道も含む資料提供も含めて問題指摘がありましたので、趣旨としては、やはり法令遵守されているのかどうかということを、学校現場を所管する教育委員会としてしっかり調査をしなさい、していただきたいというお願いから始まっていますので、これを受けて、私たちとしては、そういう意味での教育現場における政治的中立がどのような状況にあったのかということを把握して、基本は学校教育現場における政治的中立が維持されるように対処するための調査であると認識をしております。

下村委員 さっきの副大臣の答弁は腑に落ちませんが、これは結果的には道教委やあるいは札幌教委に任せて、はしごをおろすようなことを文科省としてはするつもりはないでしょうね。文科省として責任を持ちますね。いかがですか、これについて。その結果内容ですけれども。

川端国務大臣 現段階は、スタートですので、教育委員会が現場の責任を持っておりますから、教育委員会の責任において調査するようにということで報告を求めておりますので、これが出た時点で、適切にしっかり調査されているのかされていないのかも、当然ながら、中身以前の問題として、我々の判断としてそれを見きわめたいということで、それが適切であるかどうかによって、当然ながら、改めて要請するなりあるいは文科省が直接するなりということは、その結果によっての対応だというふうに思っております。

下村委員 これは五月の十四日それから五月の二十四日までを期限として回答が届くことになっておりますから、その後を受けて、これはぜひ引き続き議論をしていきたいところでございますが、これは調べればいいということではなくて、それぞれの北海道や札幌の教育委員会それから現場の教師等が心配をしているのは、その後、きちっと国がフォローしてくれるのかなということなわけです。

 私は、今回、私の支持者の三十歳の女性の方なんですが、その友人が北海道の教員をしていたけれども、この三月にやめたというので、いろいろと組合問題があるということを聞いていたものですから、直接その方を紹介していただいて、電話をしたんですね。

 この方は、非組合員で三十歳の小学校に勤めていた女性ですけれども、非常に端的に言うと、いじめられた。組合員でないということで、三十歳の女性ですけれども、つらい業務等を次々と当てられて、そして例えば、これは前年だそうですけれども、転勤せざるを得なくなった。そこの転勤先に引き継ぎで、北海道ですから車で三時間かけて行った。そこは組合員の人たちの構成している学校だったということが後でわかったそうですけれども、引き継ぎ対象者の先生、前任の先生が三人いて、そこで引き継ぎする予定だったけれども、結果的には、自分が非組合員だということがわかったということで、その日、ドタキャンで、対象になる人がだれもいなかった、引き継ぎできなかった、また三時間で戻ってきたというような、事ほどさように、自分が非組合員ということで相当いじめられた。

 それから、そもそも組合員の先生は、午前中は授業をしているけれども、午後になると組合活動のために自習をさせることによって、もうほったらかしだ、こんな教育現場でいいのかということについて、自分の無力感、それから今の組合体制の中でとてもこれは理想的な教育はできないということで、この三月に精神的にもつらくなってやめてしまったという事例だったんですよ。

 私はそのことを聞いただけだったんですが、彼女は、自分のことだけでなく、同僚の人たちも同じような思いを持っているということで、本当に芋づる式的にどんどん、別に私が紹介してくれと言ったわけじゃないんですが、ぜひ話を聞いてほしいというので、次から次へと非組合員の人たちからそういう現場の声が相当上がってきたんですね。きょうは時間がありませんから省略しますが。

 そして、その三十歳の三月に退職した元教師、地元の北海道の教育大学を出ているそうなんですが、同窓生二十人いるうち、二十人のうち自分を含めて十人、半分やめちゃったそうです。こんなことがあり得るのか、これは相当病んでいるなというふうに思いました。

 三十歳で、同僚の教師になった十人、半分がやめる、これは余りにも多過ぎるのではないかと思いますが、ぜひ、北海道の中途退職者の割合、それから全国平均、中途退職者の割合について教えていただきたいと思います。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 中途退職者の割合ということでございますけれども、平成十八年度間の離職者のうち定年のため退職したという方を除きまして、平成十八年五月一日現在の教職員数で割ったものを出したわけでございますけれども、それにつきましては、小学校では北海道で一・二%、全国でやはり一・二%という数字でございました。また、中学校についても同様に見てまいりますと、北海道で一・五%、全国でもやはり一・五%という同じ数字が出ているところでございます。

 先ほど御質問のように、同期の中で、例えば三十歳でどうなっているかというようなところについては残念ながら数字は持っておりませんけれども、全体で見たときにこういう数字ということでございます。

下村委員 もう時間になりましたので、また引き続き機会をいただいて、この北教組問題については取り上げさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 まず最初に、障害という言葉の表記について質問をいたします。

 まず、政府に伺います。政府の障がい者制度改革推進本部の表記は、障害者については害の字が平仮名で表記をされております。どうして仮名まじり文字になっているのか、お答えをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、笠委員長代理着席〕

松田政府参考人 お答え申し上げます。

 障害の表記をめぐりましては、国民の間にさまざまな御意見がございまして、合意が形成されていない状況にございます。

 このような背景から、障がい者制度改革推進本部それから障がい者制度改革推進会議の立ち上げに当たりまして、本部及び会議の名称に限って、特定の漢字を用いず、平仮名を交えて「障がい」と表記することとしたものでございますが、これは、障害の表記に関しまして今後の検討に対して予断を与えることにならないといった配慮によりまして、平仮名を特段推奨したものではございません。

 なお、総理の所信表明演説あるいは民主党のマニフェストにおきましても、平仮名まじりで「障がい」と表記されているところでございます。

馳委員 この仮名まじり表記のあり方について、文部科学省の見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 国語の先生にお答えするのが大変この間からプレッシャーになってしまっておりますが、いわゆる仮名と漢字をまぜて表記するということは、そのことによって読み取りが困難になったり、語の意味が把握しにくくなったりする場合は避ける必要があるが、そのようなことがない場合には、むしろわかりやすくなるということも含めて、必ずしも問題があるというふうには思っておりません。

 なお、文部省用字用語例、昭和五十六年十二月においても、「漢字書きで示した語についても、場合によっては、仮名書きにしても差し支えない。」と明記されておりますので、特段の問題があるという認識ではありません。

馳委員 文字には表意文字と表音文字とあるんですよね。漢字はどちらですか、大臣。

川端国務大臣 基本的には、万葉仮名を除けば表意文字であるというふうに思っております。

馳委員 そうなんですね。別に今から国語の授業をするわけではありませんが、ちょっと肩の力を抜いて、そうは言っても、漢字は表意文字である。そして、その漢字を見て成り立ちを理解し、意味を理解し、これはまさしく教養なんですよ。

 したがって、私は、最初に自分の見解を言いますが、小学校から漢字を習う我が国の教育の中においては、一年生で習う漢字、二年生で習う漢字、順番になっておりまして、最終的に高校三年生で習う漢字を全部含めると常用漢字すべてを習うということになっておりますが、そういう輪切りで理解をするというよりも、国語の教科書には、あるいは他の教科書にもいろいろな漢字が使われますから、まだ習っていないとしても、読み仮名をつけて意味を理解するということを訓練する、これによって教養を身につけさせる、この方針というのは必要なのではないかと私は思っています。大臣、どう思われますか。

川端国務大臣 漢字で書くということは、それぞれの漢字の由来も含めて視覚で入ってくるという部分で、私も何か脳の学者に聞いたところ、仮名で入るのと漢字で入るのでは記憶される場所が違うということを伺いました。

 そういう意味で、漢字にも独特の、特有の意味があり、教育上も大変大事な問題であることは事実でありますし、今の制度の中で、先生御指摘のような論も根強くあることも事実でありまして、たしか世田谷区においては、小中学校で、いわゆる「日本語」という科目をつくって、教材として、小学校一年生からすべて、古今東西の、西はどうかわかりません、漢文も含めて、仮名まじりで、漢字、原文を書いて音読させるということで効果を上げている例もありますので、先生の御主張にも認識としては共有するものがたくさんあると私も思っております。

馳委員 一定の理解をいただいて、ありがとうございます。

 スケジュールを確認しますが、文化審議会の国語分科会の中の漢字小委員会において常用漢字の追加漢字を協議している、それはことしの六月までに最終的な決着を図る、まずこのスケジュールについて、私が今申し上げたとおりでよろしいでしょうか。

川端国務大臣 スケジュールではそのように予定をしておるということでございます。

馳委員 そこで、報道でもされておりますし、私は、きょうはプラカードを準備してまいりましたので、まず行きますよ。これは、政府の改革本部、「障がい者」と表記をしております。「障がい者」、平仮名ですね。速記の方も一応見ておいてくださいね。

 では、次。これはいわゆる一般的に今常用漢字にも使われている「害」の字を使った「障害者」であります。

 きょうの私の、今の質問の目的は次なんです。(資料を示す)この漢字を使うことによって、障害者に対する政府の政策をより一層前に進めてほしいという願いを込めて、こういう表記を、いわゆる公文書あるいは法律用語に使って、ぜひ国民に意識の啓発をしていただきたいという願いであります。

 そこで、この「碍」の字は、今常用漢字に採択されていますか、いませんか。

川端国務大臣 入っておりません。

馳委員 実は、昭和二十一年、当時は当用漢字という言い方をしましたよね。当時、この漢字は採択をされませんでした。いろいろな事情があったと思います。

 これは実は俗字と言われておりまして、もともとの漢字はこの字なんです。「礙」。共産党の宮本さん、読めますか。(発言する者あり)なかなか読めないとは思いますけれども。

 私は、その漢字の語源というものを調べてまいりました。私だけの知識ではおぼつかないので、玉川大学の中田幸司准教授にも、日本文学の先生ですが、裏をとるというか、事実関係も調べていただいてきました。

 さて、行きますね。つくりの部分が疑うという字ですね。それから、そこに石というへんがついておるというふうな漢字であるということは一目瞭然であります。

 この疑うという漢字の語源というものを御存じでしょうかというところから入りたいと思います。これは、思い迷うさま、とどまる、立ち尽くす、そういう語源がございます。そして、それに石があることによって、石を目の前にして立ち尽くす、そこから派生をして、妨げるというふうな意味になっているそうであります。

 そして次に、今現在、常用漢字にも採択されておりますうかんむりの「害」、非常にマイナスのイメージが多くございます。この「害」の字の語源について御存じでしょうか。

川端国務大臣 承知しておりません。

馳委員 これは、ぜひ皆さん、私が掲げているプラカードを見ていただきながら、ちょっと解説をいたします。

 うかんむりですね。うかんむりというのは、まさしくこれは傘を意味しておりまして、覆い隠す。まさしくこのうかんむりで、かぶせる、妨げる、覆い尽くす、こういうふうな意味がありまして、その下ですよ。語源を調べて、私も、ああ、なるほどなと改めて思いましたが、口、これは祈りの言葉を意味しているそうでありました。祈りの言葉。祈りの言葉を切り刻んで覆い隠すというところから「害」という漢字が成り立ってきたという意味を伺って、例えば自害という言葉がありますよね。自害というのはどういう意味か御存じですか。

 では、鈴木副大臣に聞いてみましょう。自害。余りいいイメージじゃないですね。自害、自害する。

鈴木副大臣 まさに、みずから、みずからの命、体を切り刻んでという意味だと思います。

馳委員 そうなんです。この「害」という字には、傷つける、そして殺すという意味までも含んでいるんですよね。

 そして私、もとに戻って、あえて、いしへんに疑うと書いて「礙」の、ここでちょっと皆さんにも説明したいと思うんですけれども、障害者にとっての石はなんでしょうか。先入観であったりとかあるいは社会環境の不備であったり政策の不備、英語で言えばバリアと言えばいいのでしょうか、まさしくそれを前にして障害者の方々が立ちすくんでいる、そして、障害者が社会環境や政策的な不備に妨げられている状況にあるというふうな読み方をすることができるんですよ。

 さっきのに戻ります。

 したがって、大臣や、また内閣府の松田さんもちょっとごらんいただきたいんですが、現在の表記の「障害者」、障害者自身が妨げられているわけですよ。害を社会に与えているわけではありません。当たり前の話ですね。むしろ、私たち国会の責任であったり、政策の責任であったり、あるいは国民全体の障害者との距離感の問題でもあろうと私は思っているんです。

 だから、今、文化審議会の漢字小委員会で議論をされておりますが、あえて言いますが、この「碍」を常用漢字として採択するという方針を政府が示し、「障碍者」という漢字は、公文書にも法律にもこの漢字を使うことによって、先入観とか政策の不備、社会環境によって妨げられ、立ち尽くしている障害者を支援する、そういう国家となっていかなければいけないという意思を表示する、そういう段階ではないのかなというのが、実は私の、あえてきょう申し上げてきた意見なんです。

 大臣、これは最終的に専門家の漢字小委員会のメンバーで議論されておりまして、実は私もその議事録を全部読みました。読みましたが、漢字の語源にさかのぼっての議論は残念ながら見ることができませんでして、ちょっと残念だなと私は思いました。私が今申し上げてきた議論というのは、実は、高校レベルか、大学生に漢文学の授業でちょっとするような話なんですが、むしろ、常用漢字に採択をする追加の文字を議論している今この段階でこそ、私はもっと踏み込んだ議論をしてほしいなと思っているんですよ。

 大臣の見解を伺いたいと思います。

    〔笠委員長代理退席、委員長着席〕

川端国務大臣 改めて、先生に国語を習った生徒は、漢字に対して非常に興味を持ち、勉強するという子に育つだろうなと、やはり教育というものの何か大事さというのを感じて、漢字は本当にもっと勉強しておいたらよかったなというふうに今は思っております。

 そういう中で、国語審議会の立場で申しますと、この漢字を入れるかどうかは、よく使われる漢字ということ、それから、今回でいいますと、県の名前であるのに入っていないというのは、そんなに使われないかもしれないけれども、やはり一般的に使われるから、熊本の熊とか栃木の栃とかいうのも入れようということであります。

 今御指摘の「碍」の字は、いわゆる電柱の上にある碍子、それから障碍以外はほとんど使われる場所がない漢字でありまして、漢字の何かランキングと言うと変ですけれども、よく使われるランキングがあって、「碍」の出現頻度というのが三千四百六十一位ということで、表外漢字として二千五百一位以下のものについては個別に採用する、常用漢字表に入れるということで、例えば、肥沃な土地とかいう沃というのは三千二百六十八位ですが採用するとか、進捗の捗とか、訃報の訃とかいうのは採用するんですが、障碍、融通無碍の碍、それから碍子という以外には余り言葉としてないという意味で、今入っていないんです。入れるところにも、議論としてはなかなか難しいなと。

 ただ、御指摘のように、障害者の「障害」というのをどう表記するべきかが一方で議論されております。そういう中で、これは、今のようなお話も含めて、この委員会でどう表記するかというときに、その動向によっては、それが例えばこの字になるということであれば、改めてそういう、非常にあまねく使われる漢字としてはこれに入れるべきかどうかという判断は入るべきものだと思いますから、順番としては、こちらが入れてということの環境にはないけれども、この結論は非常に注目をしていくというふうに伺っております。

馳委員 大臣の今の答弁を融通無碍というんですよ。

 ちなみに、ガイとも読みますし、ゲとも読みますが、これは漢音か呉音かという、その違いなだけなんですよね。そうなんですよ。呉の時代、漢の時代にどう発音していたかという違いから、ガイという読み方をするか、ゲという読み方をするかというだけの問題であって。

 もう一つ、なぜ私が大臣に失礼にも融通無碍という言い方をしたかというと、常用漢字に採択されていないから積極的に使われていないという見方をすることもできるんですよ。鳩山総理は、障害者という呼び方をそもそも変えた方がいいんじゃないかと。例えばチャレンジドというふうな言い方もおっしゃいました。これは、私は鳩山総理なりの一つの配慮だと思っているんです。ただし、障害者をチャレンジドと変えたからといって、根本的に何かが解決するかという問題ではないとこれは思いますよ。

 あえて言うならば、私は、漢字の語源にさかのぼった上で、今表記しております「碍」という漢字の成り立ちを考え、今まさに「障碍者」は、社会環境や政策的な不備によって立ちどまり、考えて、思い悩んでいる状況にあるんですよ。そこを政府の意思として、今、内閣が議論をしておられますけれども、ここは私は政権交代の一つの象徴とすべき問題でもあると思って、だから私は今あえて、ちょっとしつこく追及をしているんです。もちろん、私たち政治家が文化審議会の国語分科会漢字小委員会に圧力をかけるものではありませんが、より多くの国民に理解を求める、それはやはり政治の仕事ではないのかなと思って質問をしているんですね。

 改めて大臣の見解をお伺いいたします。

川端国務大臣 何か鶏と卵みたいな話で、融通無碍に答弁をしてしまったかもしれませんが、改めてこの漢字の持つ意味というのは再認識をさせていただきました。

 おっしゃるように、この審議会に、入れたらどうかということを言うものではないというふうには思っておりますが、私も障がい者制度改革推進本部のメンバーでもあります。そういう意味で、先生御指摘の部分で、漢字を先に入れて、あまねくそういうことが、もっと本来の意味でしっかり使われるようにということを行い、その結果も含めて、「障碍者」という言葉がこの漢字で使われることが望ましいという御意見、御主張はよくわかるんですが、今までの漢字の位置づけ、こういうものを採用するというときにおいては、これを広く、あまねく世の中に使われるようにしようという意図で漢字を決めるという概念はどうも余りなくて、先ほど申し上げました、よく使われているとか、それから、造語としてその組み合わせによる言葉もたくさんあるとかいう判断で今まで審議をされてきたということがありますので、この議論は大変本質的な、大事な議論ですので、漢字として採用するかどうかというよりも、やはり本旨は、障害者という表記が、本当にこの漢字が持つ意味を含めてやるべきではないかというのが先生の御趣旨の一番根幹だと思いますので、そういう御議論はしっかり私も踏まえながら、これからいろいろな部分に参考にさせていただきたいというふうに思っております。

馳委員 しばしば報道されているとおり、最近もこの「碍」の字を常用漢字に採択するかどうかというのは本当に注目されているんですよね。

 では、内閣府の松田政策統括官にあえて伺います。現状、本部においてどういう議論がされているんでしょうか。

松田政府参考人 先ほどちょっと申し上げませんでしたけれども、昨年十二月に障がい者制度改革推進本部を設置した閣議決定におきまして、第三項でございますが、本部で「法令等における「障害」の表記の在り方に関する検討等を行う。」ということで、きちっと閣議決定で、この本部の使命として検討を行う、こういうことがまず決まっておりまして、それを受けまして、本部のもとに置かれました障害当事者の方々等から成ります障がい者制度改革推進会議、これで検討を行っているという段階でございます。

 去る三月十九日に一回目の議論があったわけでございますけれども、「障害」の表記のあり方について議論があった。その際の議論の結果でございますが、今後、インターネットによる意識調査を実施して、再度課題を整理した上で、推進会議でまた再度議論を行おう、今そういった状況にあるということでございます。

馳委員 そのとおりなんですよ。そして、漢字小委員会においても、障がい者制度改革推進本部の議論を踏まえて最終的に判断しましょうということで、今私が指摘をした「碍」の字が入るかどうかという瀬戸際は、内閣府の障がい者制度改革推進本部の議論に実は決着がゆだねられている状況でもあるし、そのメンバーに川端文部科学大臣が入っているからこそ、あえて、私はきょうはこの「碍」の字の語源にまで踏み込んで質問をさせていただいているんですよ。

 これは政府が進めようとしている政策、国民にあまねく広く障害者政策を理解し、協力し、また税金も使いますよ、その姿勢が問われているんですよ。ただ単に、仮名まじり文字はちょっと読みづらいですねというレベルの話ではないんですよ。だから、私は、民主党政権の政策の方針として極めて重要な問題でありますよということを指摘しているんですね。改めて答弁をお願いします。

川端国務大臣 まさに改めてでありますが、漢字が一文字で持つ意味というものを語源にわたって御紹介をいただき、まさにこれからの障害者のいろいろな施策をするときに非常に適した字であるという御認識は、私も改めてお教えをいただき、認識を持たせていただきました。

 今おっしゃるように、委員会においてこの表記をどうするかというのはかなり大きなテーマの一つでもございます。そういう部分で、関係団体、関係者、あるいはネットを含めて、いろいろな御意見を今聞いているところでありますが、非常に説得力のある、深い意味を持つ御主張として、当然議事録もこれはでき上がりますので、そういうものを皆さんにお披露目もしながら、これからの議論の参考にさせていただきたいというふうに思っております。

馳委員 ちなみに、夏目漱石の代表作である「吾輩は猫である」には「障害」という言葉を使っております。そして、森鴎外の作品である「金貨」、これには「碍」を使って「障碍」と表記をしております。森鴎外はお医者さんでもありますよね。私は、なるほど、やはり配慮をして使っているんだなと。「吾輩は猫である」の方が先に世に発表された作品で、「金貨」の方は後に発表された作品でもあり、あえて世の中に使い分けを問うたのかなと私は国語の先生として思っております。

 最後に、済みません、皆さんのところに資料が行っておりますけれども、私のはホームページから、インターネットからとりましたので、カラーで衝撃的な広告になっております。これは私、代表的なところを読んだ上で政府の見解を問います。この問題でもう終わりますね。

 「緊急告知 これが最後のチャンス! まだ間に合う!! 入学するなら今!! 就学支援金!春の特別キャンペーン」、キャンペーン期間、二月十五日から四月十六日まで。正規年間学費四十七万円が、何と二十五万円。「キャンペーン期間中の“うれしい特典” キャンペーン期間中に本校へご入学いただけますと入学金十万円が全額免除の“ゼロ円”に! 国による“就学支援金”十一万八千八百円を一括で全額返金いたします!」キャッシュバックですよ。

 大臣、これは私は、エコポイントとかなら、量販店でこういう広告をつくって、買ってねというのは意味がわかりますよ。でも、ルネサンス高等学校、インターネットハイスクール、全国広域制の通信制の学校ですよ。学校教育法上、私学法上、こういう特区の通信制のインターネットハイスクールというのは何でもやっていいんですかね。私はあえてそう言いたいんですよね。これはけしからぬというのが私の主張です。

 もうこれで質問を終わりますが、この見解を大臣に問い、私の質問を終わります。

川端国務大臣 このチラシと先生の宣伝の口調を聞いておりますと、深夜にテレビをつけたらケーブルテレビで何か通販をやっているのと同じような感じを私も正直言って受けました。

 中身的に申しますと、制度上でいうと、この十万円の入学金を免除するというのは、学校の制度として担保されているものでないという意味で、ある種の、好ましくないという問題指摘のことと、「一括返金は本校だけのスペシャル特典!」というのは多分うそだというふうに思います。ということはあるんですが、法令的に、あと何か問題があるかと言われると、微妙なところの世界にあることは事実だと思います。

 ただ、印象として、学校がこういうセールをするということがいかがなものかというふうに恐らく先生は受けとめられたんだろう。私も感想としてはそう思います。法令に何か違反するかどうかというのは今のところわかりませんが、特段これにひっかかるということはありませんが、やはりある種の大きな検討課題として、それと、いわゆるこういう広告のあり方というのは、学校教育に係る問題でない別の法律の仕組みもありますので、そういうことを含めて、素直に違和感を覚えるものを適切にするということは大事な仕事だと思っておりますので、一度よく各方面から検討してみたいというふうに思っております。

馳委員 終わります。

田中委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 大臣に質問させていただきます。これはちょっと事前通告はしていないんですが、一言、大臣の見解をお伺いしたいと思います。それは、永住外国人に参政権を与えるかどうか、この問題について御見解をお伺いしたいと思います。

 というのは、去る四月十七日に全国大会が、武道館で反対の集会が行われまして、このときにゼンセン同盟の石田副会長が出席をされて、この問題についてはゼンセン同盟としては反対をすると。それは、基本的人権とは別次元であるとか、あるいは、国民の主権として担う権利であるからだ、納税と参政権は全く結びつかないとか、国民の固有の権利であるというような趣旨で反対をされたということを私も聞いております。

 大臣は組織内候補でもあられます。そして、ネットで調べてみましたら、前の選挙のときにも、外国人参政権については慎重に取り扱う、こういうスタンスで、公表された世論調査でもそれが出ております。

 もちろん、これは閣議決定されたわけでもないし、あるいは、提出をするということを決定したわけでもない法案でございますので、現に亀井大臣などは反対の意向を表明しています。これはやはり、閣僚とはいえ、自分の意思を表明するということに何の差しさわりもないと思いますので、ぜひ、この永住外国人に対する参政権の問題について川端大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 永住外国人の地方参政権問題については、幅広い国民のいろいろな議論があることは承知していますし、私も議論にかかわってきた経過もございます。

 民主党としての選挙までの対応としては、方向性としては、そういう問題を前向きに検討していって実現するべき課題という認識を示しつつも、法案化するに関しては、世論の動向を見て慎重に時期を対応すべきであるというのが、党としての、渡部恒三先生が座長のもとでの取りまとめでありました。そういう意味で、マニフェストに記載せずに今日に至っているということであります。

 私も、地政学、地域上、在日の方はたくさん周りにおられますし、そういう方の交流の中で彼らの願いと希望の理由もよく承知をしておりますが、ただ、いろいろな議論の中で、大変難しい問題であることも当然だと思います。

 そういう意味で、今、閣僚でなく何でもなければ私の意見は申し上げますが、閣僚として文部科学大臣という立場では、内閣の一員として内閣での議論に参加する中で、所管の部分として決められたことに従うのは当然でありますが、具体的に賛成、反対の部分に関してこの場でのコメントは差し控えたいと思います。

 なお、そう申し上げますと、亀井さんは言っているではないかというふうに言われるのかもしれませんが、大臣大臣のそれぞれのお立場と同時に、国民新党の代表としての、党としての決めもあるんだというふうに理解しておりますので、御容赦いただきたいと思います。

古屋(圭)委員 この問題はこれ以上言いませんけれども、今、やはり大臣としては、旧民社党の政策理念からしたらやや歯切れが悪いかなという感じがしますね。前の選挙でもアンケートで反対と答えているんですから、やはり、そういうことをはっきりこういう場で率直にお答えいただいた方が大臣らしいんではないかなと思います。これはこの程度にさせていただきます。

 それでは質問に入ります。

 まず、この新しい内閣でのキャッチフレーズの一つに「コンクリートから人へ」というのがありますよね。これは、コンクリートは非常に悪いものだというようなイメージを醸成する戦略には成功したのかなという気が私はいたしますけれども、しかし、この言葉というのが教育現場で結構深刻な状況になっているということは、実は事実なわけであります。

 ファクトベースからまず申し上げますと、全国の工業高校の土木科に入学した生徒、これは、例えば岐阜県内で見ますと、平成二十年は百二十四人いたんですけれども、二十二年は八十人になっているんですね。激減しているんですよ。それからもう一つ、全国の工業高校、これは新しいベースでも二十年までしかないんですが、平成十五年が四万二千人、平成二十年が三万三千人なんですね。

 現場の教師の声を聞いてみますと、土木事業というのはやはり社会の生活の基盤であって、生命や財産を守る重要な仕事であるのだけれども、残念ながら世間では悪いイメージが非常に定着して、そのイメージが先行する結果、土木を目指す生徒というのが急激に減っている、そういう深刻な話を伺いました。もちろん、公共事業の減少による将来不安というものから土木を目指さないという事実もあろうかと思いますよ。この日本の国土を守るという観点からも、私は非常にこれは不安を感じているんです。その学校の現場の教師も同じことを言っていました。

 さて、この現状について、これだけ生徒が減っているという状況について文部科学大臣はどういう御認識をお持ちですか。まずその見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 民主党がコンクリートから人へというのをある種のコピーの一つとして使ったことは事実でありますが、それは、先生御指摘のコンクリートは悪者であるという意味ではなくて、私たち教育現場の政策においては、ハードからソフト、ヒューマンへという、コンクリートという言葉は使いませんでしたが、要するに、税金の使い道の中でソフト、ヒューマンを重視しようという方向をあらわす言葉として使ったことは事実でありますが、必ずしもそれが、受けとめによってコンクリートは悪いもののシンボルだというふうに受けとめられる部分が、ないとは申しませんが、そんなに多くあるのかなというのが個人的な感じとしてあります。

 今言われた部分の土木関係は、確かに、直近のデータの比較、去年とことしみたいな志望者に関して正確な、例えば、去年から民主党がこういうことを盛んに言う中でことしの入試はどうなったのかというデータはちょっと把握を申しわけないがしておりませんが、全体的、長期的に、土木ということじゃなくて大学の工学部自体、平成十一年度が六十九万四千人が平成二十一年度で五十四万六千人で、十年で二一%減、工業高校の土木学科は、平成十一年度一万一千八百六十五人が、平成二十一年度、十年後に七千八十人で四〇・三%減と、激減をしていることは事実です。

 そしてそれは、いわゆる土木、建築に係る産業が変化してきている。建設投資額が、平成十二年度六十六兆一千九百四十八億円が平成二十年度で四十七兆二千三百億円で約二八・七%減、建設業就業者は、当然ながら、平成十二年六百五十三万人が平成二十年度五百三十七万人ということで、産業構造の変化で雇用構造も大幅に変化する中でのこういう状況が生まれてきている流れはあるんだというふうに我々も認識しております。

 しかし先生御指摘のように、一方、やはり土木事業というのは、国の根幹の部分の、例えば治水、利水、国土保全、そして、新しいいろいろな住も含めたインフラ整備という部分で大きな役割を担っていることは当然でございますので、中学校や高校の時代からそういうことをしっかり認識して、そういうことに夢を持ってやってみようというふうな思いを醸成するような工学教育のトータルとしての育成に関しては、今までもこれからも力を入れてやってまいりたいと思いますし、大学においての技術者教育のあり方に関しては、これは専門の委員会を含めて今御議論をいただいているところであります。

 社会のニーズに応じて適切に人材が育っていくように、教育の分野としては取り組んでまいりたいと思っております。

古屋(圭)委員 そういう御認識をいただいていることはありがたい話なんですが、実際、土木に従事している人というのは、御承知のように、年齢的には五十代が四七%ぐらいなんですよ。もうほとんどこれはやめていきますよ。それで、土木の技術を育成するのに、これは結構時間がかかるというのも事実なんですね。

 そうなりますと、このままいくと、現場を預かる技術者が極端に減っちゃうという事態を招きかねないんです。だから、将来、例えば大規模な災害なんかが起きたときに本当にどういう対応をするかということは、これは単に国土交通政策ではなくて、やはり教育政策の視点からも極めて重要なんですね。

 日本の土木技術は、これは世界最高です。現場の技術もいい、そしていわゆるトップの技術もすばらしい。そして、世界にしっかり貢献をしているんですね。せっかく築いたこういう伝統を崩壊しかねないと私は思うんです。

 だから、今大臣がおっしゃったように、やはり土木教育というものに対してさらに充実をしていく。こういったコンクリートから人へと言われて極端にそういったマイナスイメージが横行している今こそ、大胆な転換をしていく必要があると私は思います。今、大臣からそういったお話を伺いました。しっかりそれは加速していただきたい。

 もう一歩違う視点から申し上げますけれども、それは教育基本法です。

 教育基本法は、御承知のように、公共の精神をたっとび、国家、社会の形成に主体的に参画する国民の育成という教育目標が掲げられていますよね。この視点からすると、土木というのは、みんなのための公共的な取り組み、これは、道路にしても、治山にしても、治水にしても、砂防にしてもということだと思う。すなわち、公共性とか自然や歴史面から、土木構造物というもののいわゆる教育的素材としての価値は私は決して低くないというふうに思っています。それは、それぞれの郷土とか地域に身近にあるということもあるんですね。

 ということは、やはり、現場などで実際の取り組みを学んだりだとか、あるいはまた参加する、あるいは公共の精神をそういうことによって身につけるということになるのではないでしょうか。教育基本法に定める教育目標を達成するための教材になり得ると私は思うんです。

 私の地元でも実はこんなことをやっているんです。砂防事業は山奥ですよね。見る人はだれもいない。しかし、地域のいわゆる工事事務所とか自治体関係者とかが、学校関係者も含めて、やや危険ですから、相当事前にブリーフをしてそういったところに行くんですが、そうすると、みんなびっくりするんです。これだけやっているからこの下流域の安全が保てるんだね。だれも一般の国民は知らないんですよ。やはりそういった教育というのは非常に重要である。

 要するに、教育現場でどのようなテーマやプログラムが必要なのか、あるいは、その位置づけであるとか支援体制を具体的につくり上げて、それを実施していく必要が私はあろうかと思います。今やっている取り組みよりもう一歩踏み込んで、そういう取り組みを具体的なアクションプログラムをつくってやっていく必要があろうかと思いますけれども、大臣のこれについての見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 教育全体として、実社会とのつながり、自分たちが学ぶこと、あるいは、自分たちが暮らしている世の中というのはどういうことなのかというのを実社会を通じて学ぶことが、勉強への意欲と目標意識を持ったということが大変大事だと思って現在取り組んでおりますが、その中で、先生が言われたことは非常に大事だと思います。

 「黒部の太陽」という映画が昔ありました。これはまさに、あの不可能と言われた場所にあれだけの巨大な世界に最大のダムをつくるということで映画になりましたが、近年、舞台化して、これがまた好評を博しました。やはり、いつの時代でもああいう問題をとらえると人の心を打つということの証明でもあり、先生の御指摘のとおりだと思いますし、実は先日、オランダのカウンターパートの大臣が来られたときに、オランダとは修好四百年を超えましたが、江戸時代はいわゆる蘭学ということで全部技術はオランダから入ってきたんですが、明治時代に私の地元の山奥にオランダ堰という砂防ダムがあって、いまだに、もう百年以上たって機能を果たしております。

 そういうようなのを子供たちが見ますと、ああ、すごい技術があるんだな、それもオランダからみたいなことで、教育に対しても非常に効果があることは事実であります。

 御指摘のように、やはり子供たちにとって、現場の、実際の世の中が動いていることを見聞きすることが教育の一番の好奇心を含めた原点だと思いますので、今言われた土木事業、土木の大切さを含めては、いろいろな工夫を凝らして、また御指摘のことも参考にしながら取り組んでまいりたいというふうに思います。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 実は、これもネットで見ておりましたら、札幌市の平岡公園小学校というところで、「みんなで創ろう美しい道」ということで、六年の総合授業で実際に、子供たちにとって一番身近な公共物だ、毎日利用しているにもかかわらず意識していない、全国どこでも存在するんだ、自然、歴史、地域性、多くの要素があるということで、非常にいい学習をされておられるんですよ。こうやって先進的にやっておられるところもあるんです。

 だから、こういうものをやはり全体の計画の中でしっかり盛り込んでいただいて、具体的なプログラムをつくり上げて、ぜひ教育現場で徹底するように取り組んでいただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 実は、こうやってコンクリートから人へということで昨年からこういう話がずっと横行するようになった結果、大学の教授も大変な危機感を抱いていまして、例えば、昨年八月に、これは多分選挙のころだと思うんですが、京都大学の藤井聡先生が、恐らく御存じじゃないですか、「土木と学校教育」というタイトルで初めてシンポジウムをやっているんですよ。これはかなりいいことを取り組んでいます。ぜひこういったものも参考にしながらやっていただきたい。そのためには、やはり文部科学省だけが取り組んでいても限界があるんですね。

 そこで具体的に要請をさせていただきますが、やはりこれは、国土交通省、国土交通大臣とも密接な連携をしてそういう取り組みをしていく必要があると思います。この点についてぜひそういう取り組み、協議会等々をつくって、具体的にそのアクションプログラムをつくるために対応していただきたいと思いますが、この点についての大臣の見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 先ほど申し上げましたように、産業としての、特に、公共事業を中心とした土木事業が前政権までも含めてもどんどん減ってきて、ある種の社会的な役割という意味で、総額としてはずっと減少しているという状況にあることは事実だと思いますが、この技術の大切さそして技術力を世界に発信していくというときに、同時に、技術が世界一で、人材も非常に優秀な人材が最先端から現場の人まで抱えていることは事実ですが、ところが、世界の土木事業が全然入札できないという現状にあることも、やはり国際競争力が問われているという課題もあります。

 そういう中で、これからの土木教育がどうあるべきか、それから土木産業がどうあるべきかということとあわせて、教育においてそういう子供たちにどういう教育をしていくのかというのは極めて大事だというのは、先ほど申し上げたとおりであります。

 藤井先生のシンポジウムは私はちょっと承知しておりませんでしたが、そういうようなのもまたちょっと調べさせていただいて、国土交通大臣とも意見交換をしてまいりたいというふうに思っております。

古屋(圭)委員 それは非常に大事な視点ですよね。やはり、国土交通政策とこの土木の人材を育てるという教育政策は両輪なんですよ。これはぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 今後この公共事業がさらに削られるということになると、私が冒頭に申し上げましたように、十年後には本当に大変な状況が起きかねないということでありますから、ぜひ、その取り組みをよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 さて、次もある意味では共通の視点だと思うんですけれども、御質問させていただきたいと思います。

 それは、医療というのは御承知のように厚生労働省が所管をしておりますが、この医療の中でも、最近は、産婦人科であるとか、特に産婦人科はいろいろな対応が始まっていますけれども、外科離れというのが非常に深刻になっているということであります。医療というのは厚生労働省マターということはもちろん承知しておりますけれども、実は、大学における外科の学科への志望者というのが激減していまして、深刻な状況なんです。

 例えばある有名国立大学、これは大臣の出身校でありますけれども、受験者数、外科系が昭和四十年代は五年間で百七人いましたが、平成十年代は五年間で三十一人、七〇%減ですよ。それからいわゆる脳外科、これは一九九二年に全体で四百人いたのが、二〇〇九年には二百九十人まで減っているんですね。そしてもう一つ、外科学会というのをどれぐらい入会しているかなと思って調べましたら、一九九〇年に千五百人いたのが二〇〇七年八百人、これも半減。これは、要するに新しい人が入っていないという証左なんですよ。これは深刻な話で、これは医療問題ではないんです、教育問題なんですよ。

 この現状に対してどういうふうに思われているか、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 医師不足が言われて久しいんですが、特に大学の学生においてそういうことが顕著にあらわれているのは、御指摘のとおりであります。

 私も先般、母校の総長とお話をしたときもこの問題が出まして、その前に、基礎医学に進むという学生がことしはゼロであったということがあります。それでちょっと調べますと、診療科別でいいますと、外科が、平成十年に外科医師として二万四千八百六十一人が平成十八年で二万一千五百七十四で、三千二百八十七名減っている。産婦人科が、一万九百人が九千五百人というふうに、千三百人減っている。一方で整形外科が、一万七千二百二十九名が一万八千八百七十で、一千六百四十余名ふえているという現実があることは事実です。

 そしてこの問題は、一つは、これは小児科のときも言われたんですが、悪循環なんですね。お医者さんが少ないと患者さんの数がふえて、勤務が非常にハードになる。そうすると、肉体的に大変厳しいのと同時に、ミスが許されないというときに万が一ミスをすると、これは医療ミスということで、大変重い責任を負う危険性を持っているということで避けると、余計人が減る。あるいは、体がもう悲鳴を上げてやめざるを得ないというふうな悪循環に陥っているということと同時に、やはりいろいろな背景があります。

 大きく言えば、特に大学病院においては、要するに、診療報酬の改定、そして、自分たちの努力で何とか稼げるようにしなさいということで、救急とか外科とか産科とか小児科とかいう、二十四時間対応をして、採算ベースでいえば効率がよくないというところは、やはりどんどん民間でもやめていくということの中で余計負担がかかるというふうな、トータル、いろいろな切り口でしわ寄せが全部ここへ出ているのではないかというふうに現象としては認識をしております。

古屋(圭)委員 今、幾つか原因を挙げていただきましたけれども、一番決定的な原因は、やはり、医療事故のリスクが高い、訴訟リスクが高いということに尽きるんですよ。脳外科なんかは特にそういったリスクが高いということもあって、実際、手術しない脳外科がすごいふえていますよ。だから、厚生労働省のデータを見ると、これはトリックなんですよね、余り減っていないんです。でも実際は、手術しない外科では意味がないんですね。そういうことになりますと、よい医師というのは、結局海外で育成せざるを得ない。海外依存をせざるを得ないという状況ですよ。

 現実に数%の医療事故のリスクがある。すぐそれで刑事訴追になってしまう危険性が今は現実に増大していますよ。そうなると、医者はその医療を避けようとする。その分野の医者は減る。先ほどの土木と同じように、十年後は恐ろしい世界になります。

 例えば、例は悪いですけれども、プロ野球の選手がエラーした場合に刑事責任をとらされるとか、あるいは極論すれば、テストで六十点以下だったら逮捕するぞとか、そういうようなことになりかねないんですよ。これは私、非常に危機を抱いております。

 やはり、リスクの高い外科系というのは行かないで、リスクの低い学科はたくさん来ます。そうすると、いつまでたっても、リスクの高い分野、外科であるとか脳外科の医師を育てることはできません。

 この観点から私は、これはむしろ教育政策というのが非常に重要だというふうに思っておりまして、文部省が手をこまねいていることではない。やはり、これに対して抜本的な政策を取り組んでいかなければ大変なことになるというふうに思います。いかがですか。

川端国務大臣 いわゆるトータルの医者の数をもっとふやしたいという部分の定員とか教育環境とかいうのとは別にして、今御指摘の問題は別のところに問題がある。

 これはやはり、医学という大変崇高な使命と責任を負った分野で、例えばテレビでも、今はスーパードクターというたぐいの番組は非常に視聴率がよくて、だれでもあの先生に診てほしいということでいうとそういう道を志す子が多いかというと、先生言われるように、リスクが高くて必ずしもそうでないという、両極化しているという変な状況があります。

 そういう中で、今、大学の中でいわゆるリスクマネジメントを一生懸命教えようということで、医学教育のモデル・コア・カリキュラムにはそこに位置づけをさせてもらって、先進的に熱心に取り組んでいただいている大学も幾つも出てまいりましたけれども、そういうことはやれても、果たして、トータルとして今御指摘の問題がどこまで解決できるんだろうかというと、志を高く持ってほしいとはいえ、現実に、言われたように、エラーしたら罰金だけではなくて捕まるぞという世界がプロ野球にあったら多分プロ野球に行く人はいないというのと同じようなことを、世界の医学界と同じようなスタンダードというのはどうあるべきなのかというふうなことも大変大きな要素であります。

 大学としては、やれることをしっかりやってまいりたいと思っています。

古屋(圭)委員 今、大学でのリスクマネジメントということがありましたが、私、これは非常に重要だというふうに思っています。

 実際、現在でもリスクマネジャーというのは一部の大学では存在して、一定の成果を上げているというのは承知はいたしておりますけれども、現実は、事故が起きたときにつくるレポートというのが、極めて精神的というか、表面的、精神論的なものが多いですよね。なぜか。やはりこれは本音が出ない。真実を語らないですね。どうしてか。それはやはり、真実を語らなければ原因究明もできませんよ。結果として、それはこのレポートが訴訟の現場で活用されてしまうからなんですよ。だったら本音を言いたくないということになって、これは非常に悪循環になっているんです。

 そうすることによって本当の原因追及ができないから、もしかしたら不可抗力だったのかもしれないし、違う新しい方法があるのかもしれない。そういったときに本当の原因究明ができないということは、医療現場の技術水準ということでも極めて問題があるんですね。

 産婦人科なんかは、いわゆる民事については無過失補償制度がありますから、例えば、外科もそういうのをつくって、とりあえず民事だけはクリアするということは必要でしょう。これは厚生労働省の問題。

 しかし一方で、医科大学において、例えばモデルケースとして、弁護士などの専門家も参加をしてもらって評価委員会をつくって、刑事訴訟については、その許される合理的な範囲内でそういった書類は一切活用しないんだ、本当に真の研究をしていくんだというようなことも私は必要だと思うんです。それはもちろん、モラルリスクだとか重大な過失がある場合は、当然のことながらその限りではないということは申し上げるまでもないですけれども、それぐらいちょっと踏み込んで対応していかないと、これは、大学の現場、大学病院の現場でまず始めていくべき。全校でやるわけにいかないから、やはり、そういったモデルケースをつくってそこまで一歩踏み込む。

 私は、それをしていかないと、受験する学生が安心して脳外科、外科に行くことができないと思いますけれども、いかがですか。ぜひこの提案を検討していただきたいと思います。

川端国務大臣 恐らく、問題意識と対処の方策に関して私もそんなに認識は違わないと思うんですが、この問題は、大きく言えば、いわゆる民事も刑事も含めて、その責任の持ち方と社会のあり方ということの国民性も随分違います。

 ちょっと話がずれますが、薬の認可が日本は非常に長いという部分もやはり同じところにある。要するに、一つでも過ちがあってはいけないという立場をとるのか、多くの人が救われるならばそれにリスクは伴うものだと言うのか、リスクは許さないと言うのかというのは、国民性もあります。

 そういう意味で、法的な問題に間違いなくかかわりますし、原因究明という意味での、その被害に遭われた方の周辺の方から見ると、すべての真実を知りたいという部分と、それを知ると責任に及ぶから、真実を、できたら余り言いたくないと言ったら語弊がありますが、という部分との葛藤みたいなのが必ずいろいろな事件で全部出てまいりますので、大学だけでモデル的にシミュレーションすることは可能なんですが、実際にできるかどうかというのはなかなか難しい問題もあります。

 もちろん、先生御指摘のように、厚生労働省も、それから法務省も含めて幅広くやらないといけないということだと思いますので、これは大きなテーマとして認識しておりますので、我々としても、提起をしてくる大きな課題だと思っております。

古屋(圭)委員 質疑時間が終わりました。今最後におっしゃったことは非常に重要です。ぜひそういった検討を始めていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

田中委員長 次に、塩谷立君。

塩谷委員 私が今までちょっと質問できないでずっと温めてきたことは学力調査と学習状況調査のことで、たまたまきのう、今年度の調査があったということで、この機会に改めてまたちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 既にけさ、下村委員の方からも質問あって、多少ダブるかと思いますが、その点は御容赦いただきたいと思っております。

 昨日無事実施したということで一安心だと思いますが、今回の学習・学力調査については、二〇〇七年に四十三年ぶりに復活をして、三年間、ほぼ目的に沿った形で実施されてきたと思っております。また、その成果も上げてきたと思っておりますが、今回、悉皆調査から抽出調査に変更された。改めてこの理由を、もう一度大臣、お聞かせいただけますか。

川端国務大臣 先生が大臣のとき、それ以前も含めて、大変な御苦労の中で三年間悉皆調査を行われた。この結果は私も高く評価をしておりますし、その成果は非常に大きかったというふうに思います。

 そういう中でいろいろなことがわかってまいった。当然ながら、全国的な学力水準を把握すると同時に、都道府県レベルでの状況も国としては見たいということまでは、悉皆から抽出に変えても、私はその基本的な国としての目的は達せられているんだというふうに思います。

 そういう中で、この三年間の中でいろいろなデータが蓄積される中では、逆にいろいろなこともわかってまいった。きのうの知見でも、国語A、B、それから算数のAとB、いわゆる基礎的な問題と応用問題ということで言うと、基礎的な問題に関しては一定のレベルがあるけれども、応用問題はやや弱い、あるいは、大都会と地方、小規模、大規模等々あるいはいわゆる僻地校と言われる部分で余り差がない、逆に、生活習慣は非常に学力に影響している等々、それからやはり、小規模で個別も含めた指導というのが非常に効果があるとか、いろいろな知見、これからの学校教育の基本となるべき知見はしっかり得られたというふうに思っていますし、これは、逐次できるだけ早くにフィードバックするということで現在の教育に生かしてきているんだというふうに思っております。

 そういう意味では、三年を経ていろいろな御議論もあると思いますが、トータルとしては、国レベルでの学力水準の推移を把握することと、統計上有意差を持って道府県レベルの差がわかる範囲で抽出で行い、利用希望の学校、抽出の対象にならなかった者に対しては、問題の作成、送付含めてはすべて国が持って、採点だけは学校でやってくださいということで、やりたいという御希望のところはやっていただくと同時に、採点が、一番初めはあれをフィードバックするのに今やって十一月ごろだったのが夏休み明けまでに改善されたので、今回は七月ぐらいに間に合うようにということで努力をいたしますが、自分のところでやったところは、極端に言えばきょうにでも採点できるというフィードバックの早さということも含めて、地方の自主的な判断、ある市においては、自前でふだん学力の把握はやっているので今回は希望参加はしないとか、いろいろなケースが出てまいっておりますので、この経過を踏まえて今回はそういう趣旨でやらせていただきましたが、今回また、多分いろいろな知見がこの実施方法も含めて得られると思います。

 しっかり検証して、科目をふやすかどうかの検討も含めて、よりよい学力テストが実施できるように取り組んでまいりたいと基本的には思っております。

塩谷委員 今大臣からお話しいただきましたように、十分な成果は得られているということで、まさにそのとおりだと思っておりまして、ただ、それを今回抽出にしたという本当に大きな理由というのが、今の答弁からちょっと私はお伺いできなかったわけでございます。いろいろな御意見があるのは私も承知をしておりますし、当然ながら、こういった学力調査等は常に改善をしていく必要がある。

 しかしながら、三年間やって、悉皆調査の大変すばらしいところ、これは、全国的な学力のレベル、あるいは県ごと、あるいは、悉皆である場合は学校ごと、そして、個人もしっかり自分たちの位置づけそして結果が得られて、それがまた自分たちの学習に改善という形で明確にそれぞれ取り組んでいただいた。この調査の結果、いろいろな県ごとの交流が始まって、指導をお互いにしているとか、あるいは、その調査結果を個別の指導に使えるように、そのデータを調査して、そして精査をして、また個々の指導に使っている。

 私の地元も、きょう持ってきましたが、浜松市の中でそういったものを全部まとめて、それを実際の現場の教育に生かしているということがあるわけでして、まさに、三年間やって、やっとそういったことが緒についた段階だと思います。

 したがって、今後いろいろ検討することは大事でありますが、私から言わせれば、今回いきなりこういうことになったというのは、非常に理解ができない。

 そして、どの程度意見を聞いたのか。昨年の秋に有識者から御意見を聞いたという話があって、その状況も聞きました。確かに、いろいろな意見があって、悉皆は必要じゃないかというような意見があったことも事実だと思いますが、私は、大体有識者というのは、きょう犬山の石田市長さんもいらっしゃいますが、しっかりやっているところは多分大丈夫だ。もともとなかなか厳しいところがやはりこういうことが必要であって、例えば大阪府の橋下知事なんかは、この結果をもとにまさに一生懸命その対策を積んで、そして昨年は多分成果を出してきたわけでして、この調査のそういう取り組みが一番大事だ。いかにこの結果を学習の改善に使っていくか、そして私は、個々の生徒にとっても、自分が受けるんだというこの気持ちも非常に大事にしていきたいと思っておりまして、そういう面では、悉皆調査というのは、全体の学力に対する意識を高める、そういうことが大事だと思って今日まで悉皆でやってきて、今回それができなかったことが非常に残念であります。

 むしろ今回、当初から、例えば高校無償化の財源とか、そういったものに対してその財源を見つけるためにいろいろな予算を切っていくような、そんな結論ありきのようなふうに私からは見られて、二十数億カットしたわけですが、それが高校の無償化四千億を出すための一つの予算を切ったということになったのでは、これは本当に問題だと思っております。

 そこまで初めから考えていないとは思いますが、ただ、それにしては非常に拙速で、どの程度の議論をして、あるいは新聞等によりますと、やはり全員受けたかったとか、保護者なんかもこれを拒否する人はだれもいないだろう、現場の先生方の話も聞いてもらいたいという話がたくさんあって、そういったところを今回どういった議論がされたのか、その点をもう一度明らかにしていただきたいと思います。

鈴木副大臣 この導入に当たりましてもいろいろな御議論があったというふうに把握をいたしております。

 そもそも、「全国的な学力調査を実施することが適当である。」これは中教審でまさに答申をされております。そこのところは私どもも踏襲しているつもりでございますが、当時のその答申では、導入のときも、対象教科や学年、調査の方式について触れているものではございませんで、別途、専門家により構成する検討会議で検討が行われたものと承知をいたしております。

 ことしの平成二十二年度の調査につきましては、今御紹介もいただきましたけれども、有識者からの御意見も踏まえましたし、その後、都道府県の教育委員会等の御意見も聞いた上で、専門家によります検討会議を再度開きまして、この実施要領を定めさせていただいたわけでございます。

 委員もよく大臣時代から御存じのように、これについてはさまざまな意見があって、そういう議論の中で、単に抽出にするということではなくて、まさに希望利用方式ということが出てきたのも、こうした有識者、あるいは、都道府県あるいは市町村の教育行政の方々からの声を参考にしながら、より速く結果をフィードバックしてほしいという声もございましたので、今回、希望利用方式を導入することによって、受けたまだその記憶が新しい段階できちっと指導にも生かせる調査という点は進化をさせていただいたというふうに理解をいたしております。

塩谷委員 残念ながら、今回本当にこの変更した理由というのは、どうも余り明確に伝わってこない。むしろ、何か弊害があって、これは全国悉皆でやると大変な問題があるんだというようなことがあれば別でありますが、そういったことがなくて、いい形で三年間進めてきていただいた、そしてしかも、大変貴重なデータ等、あるいは、それに基づいて教育改善がなされているという事実があるだけにまことに残念でありますので、ぜひ今後、ことしの実施をまた検証していただいて、今後のやり方について十分な御議論をいただきたいと思っております。

 昨日の実施した状況というのは、先週お聞きしたんですが、抽出校が九千九百七十九、希望校が一万三千八百九十六、合計二万三千八百七十五、こういうふうに聞いておりますが、パーセンテージとして、いわゆる抽出されなかった学校の六〇%以上が希望を出したということ、午前中、これは下村博文委員からも質問あったと思いますが、そういった、予想より多い学校が希望してきたということは、まさにこの学力調査が必要である、現場にとって大変重要であるということ、それから保護者等も、ぜひ格差なくやってもらいたい、受ける子供と受けない子供がいたのでは、やはりこれまた教育格差につながるだろうというような意見もあって、私は、やはりそれだけ三カ年のこの実施が、そういった面では非常に学校あるいは生徒諸君に、あるいは保護者に対しても、学力向上の意識が高まっているのではないかなということを受けとめております。

 改めて、今回の抽出でやった実施に対して、漏れた学校の希望の多さ、それからもう一方で、希望校については独自で採点するということ、これについては、かなり採点の労力がかかって教員に負担がかかる、それから、実際に費用も地方で負担するということで、これで控えたという学校もあると聞いております。もし費用とかそういうことがなければ、当然もっと多くの希望校が出てきたんだと思いますが、そういった今回の実施状況を踏まえて今大臣はどのようにお考えでしょうか。

川端国務大臣 午前中にも御答弁いたしましたけれども、どれぐらいの利用希望が抽出以外であるのかは想定をしておりませんでしたのですが、現実的には高い数字があったことは事実だというふうに思います。

 なお、どういう理由でこういう希望をされたのかということ、あるいは、今先生御指摘がありましたが、どういう理由で希望しなかったのかということは現時点では把握ができていませんので、この採点もお願いをし、ガイドラインの指標もお出しし、問題の意図するところ、それから、記述式なんかの採点の方法等々を詳細に書いたガイドブックも既に配付することにしておりますので、そういうことも、トータル含めてはしっかり先生御指摘のように検証することにしております。

 今、採点の負担が、費用がかかるからやめたのではないかということを個別具体には承知いたしておりませんし、どういう理由でと網羅的に調査しておりませんが、問題数は、例えば小学校の国語のA問題で十五問、B問題が十問です。小学校の算数はA問題が十九問、B問題が十二問、中学校の国語はAが三十五問、Bが十問、中学校の数学はAが三十六問、Bが十四問ということで、解答用紙を見せてもらいました。これがAで、これが算数、これが国語ということでいいますと、先生が通常三十人から四十人の児童生徒に試験をして点数をつけるということでいうと、大変な負担であるということでは私はないような気もいたします。

 それと、外注した場合の費用は、これはちょっと私は逆に意外に思ったのは、外注したときの一件当たりの採点のコストは非常に高くかかっています。逆に言うと、本当にこれが適正な価格なのかと私は素直に疑問に思いましたので、今度、教育委員会で負担したところもありますので、こういうことも含めて見直したいと思いますが、詳細がまだ把握できていないので、本当にこの費用負担が大変だから泣く泣く希望をしなかったというところがどれぐらいあるのかも含めてしっかり把握をして、今後に生かしたいというふうに思っております。

塩谷委員 採点等には余り負担がかからないだろうというお話がございましたが、いずれにしましても、採点の基準とか評価の基準とかというものが、読解の問題がかなりあるので、やはり統一的にやった方が結果の見方等にばらつきがなくなるということでは、私は、悉皆でやった方がいろいろな意味でそのデータ、結果を利用できるだろうと思っておりますので、改めて今回の結果を精査して、今後検討いただきたいと思っております。

 私が心配しているのは、かつてこの学力調査をやって、やはり同じ道をたどっているということ。実際に、日教組が相当な反対をしてボイコットをしたりしたということで、次に悉皆をやめて抽出に、そして、抽出になったら余り意味がないというような、というのは、例えば全国の学力の状況というのは、今も別の形で学習指導要領の定着度をはかるような調査をして、それでも大体学力の状況はわかるんだからそれは必要ないんじゃないかというそんなような議論が出てくるのを私は恐れていまして、そして、それが結果的にこの学力調査は廃止になるのではないかということを大変恐れているわけですね。

 最近の北教組の問題等大変ゆゆしき問題がたくさんある中で、ごく多くの教師はこの学力調査についてまじめに取り組んでいると私は思っております。ですから、それをやはり生かして、今後、日本の子供たちの教育にもっとよりよい方向へこの調査というのは活用できるだろうと思っておりますので、ぜひそういう点を考えていただければ、今回、ある面では試しに抽出でやった、やはり悉皆と比べたら悉皆の方がスムーズだろう、しかも私は、我が国の教育行政、一番基礎的な義務教育にかかわる膨大な資料が、いろいろなこれからの時代の変化に伴ってそれをいかに活用するかによっても教育行政に大きな影響があると思っておりまして、貴重なデータだと思っておりますので、ぜひその点を考えていただきたいと思います。

 特に、今後、いわゆる悉皆をやめて抽出になったからこれは余り意味がないのではないかなんという議論にならないように、ここは、川端大臣初め文科省の皆さん方には、子供にとってやはり必要だということを改めて認識をいただきたいと思っております。

 そういう点において、今回の抽出というのは、今後継続していくのか、あるいは、結論を出したときに、これからずっと抽出でやるのかということをどの程度将来を見越して結果を出したのか、その点を教えていただきたい。

川端国務大臣 冒頭申し上げましたように、過去三年の悉皆も含めた学力テストで得られた知見は極めて大きなものがあり、それ以降の教育行政に大変役に立った。そして、引き続き国として、全国レベルの学力の水準の把握と、最低限、都道府県レベルの水準の把握と同時に、その結果によって得られる知見に基づいての、教育行政、教育の現場のあり方を含めた部分に役に立てていくために大変大事であると同時に、このことは、抽出であっても、希望利用も含めて、各学校現場においても児童生徒の指導においても大変有意義なものであるという基本的な認識は一緒でございます。

 そういう部分で、何か将来やめていくための一里塚として今回こう切りかえているという認識は全く持っておりません。

 そういう意味で、先ほど申し上げましたように、今回こういうやり方に変えて、いろいろなまた情報、知見が得られるものと思います。そういうものもまた工夫を入れながら、より役に立つ学力テストであるように、これからも取り組んでまいりたいと思っております。

塩谷委員 ぜひ、今回の結果を踏まえて、改めてこの学力調査あるいは学習状況調査をしっかり日本の教育行政に生かしていけるよう、また、現場あるいは子供たちにとっても、やはりそれが自分たちの学習あるいは将来に向けての一つの指針になるような形でこれからもより改善、発展をさせていただきたいと期待を申し上げる次第でございます。

 それでは次に、これもきのう、事業仕分けについて昨年に引き続いて第二弾と言われておるものが行政刷新会議で決定したということでございます。新聞報道にここのところ大分出ていましたので大体予想どおりの内容だと思いますが、四十七法人、百五十一事業をするということで、昨年の十一月については予算の財源捻出という大きなまず視点だったと思いますが、特に今回は、官僚OBの天下りを含めた独法の不透明な事業の実態を明らかにして、国民から見えにくい無駄の削減に力点を置くということだと報道されております。

 そういう中で、文部科学省の所管の法人が、十四法人そして五十三事業、最も多いということでございます。

 私が心配するのは、昨年の事業仕分けでも、科学技術研究独法に対して大変間違ったというか、そういう判断がされた。それは、最終的には、いろいろ科学者の意見とかいろいろな方面の意見で予算的には復活したような結果になったわけでございますが、今回、特に独法の研究開発法人についてどういうような事業仕分けがされるか、この点は非常に私も心配しているわけでございますが、そういう中で、新たに国立研究開発機関、これを、研究開発法人をより発展させるような形でこれから設置しようという報道もされております。これは、我々与党のときに研究開発力強化法の法案をつくって、その附則でうたわれた中でこの案が出てきたと承知をしております。

 事業仕分けが殊のほかいろいろな形で進展している中で、一方で、国立研究開発機関を検討しているという、鈴木副大臣を中心にやっていただいておりまして、ここら辺のところが、私はもちろん、科学技術をしっかり充実させていくためにはこの国立研究開発機関をしっかりと構築することが大事であると思っておりますが、この事業仕分けと研究開発機関、これの位置づけみたいのを文部科学省としてはどうとらえてこれから取り組んでいくのか、その点をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 今御紹介いただきましたけれども、研究開発力強化法の附則、それから両院の附帯決議も踏まえて、これから国が中心になってやるいわゆる研究開発のあり方についての議論が、鈴木副大臣、古川副大臣のもとで構成される研究開発を担う法人の機能強化検討チームということで、いろいろ今精力的に議論をしていただいております。

 これの大きな議論の背景というのは、どうしても大きな研究、国の根幹にかかわる研究は、昔でいえば国がやっておりました。それがいわゆる研究開発の独法になり、今やっているというときに、テーマを追うとか選ぶのは国の大きな政策の意思があるからそれでいいんですが、仕組みとしてやはり国がやるというのは、国家公務員の世界があり、その中の研究機関が独立していったという意味で、処遇とか人事管理とかいうシステムが基本的に国に準じる形になっている。そうすると、例えば、非常に優秀な研究者をどこかから、外国からというときに、その処遇では全く当てはまらない、あるいは、この部分を強化したいときに人数の制限がかかるというふうなことが研究力を強化していくのにしばしば大きなネックになるという指摘は、もう大臣をやっておられるときからの指摘ではありました。

 そういうことを踏まえて、研究開発力強化の精神はより強化しようということを踏まえて、今回の御議論では、組織の形態はいろいろ議論があるけれども、その中身においては、研究環境においては、世界の水準をベースにするという位置づけをしない限り世界の中で落後してしまうというのが大きな今論点として位置づけられ、議論をしていただいております。

 一方で、いわゆる行政刷新会議の方では、またこのいろいろな研究独法も含めて仕分けの対象にする。ややもすると、前回の仕分けもそうだったんですが、今いみじくも前大臣から、間違った判断をしたのではないかという御指摘なんですが、メディアを通じては、幾ら削ったか、三兆円という何か棒グラフがあって、まだここだ、もっと行け、もっと行けみたいなことで、今回の仕分けに関しても、どれぐらいの財源削減を目標にしているんですかという、何かばっさばっさと切っていくというのが快哉を叫ぶような印象がややあるんですが、本来の目的とやっていることが違いまして、この政策の是非を問うのではなくて、仕組みとして税金、公金が流れている以上、適切、効果的に無駄なく使われる仕組みになっているのかどうか、そして、そこの部分に天下り者や天下り団体みたいなものがそこからスポイルするようなことをしていないかどうかをメスを入れるということでありますので、それはどの分野においても大変大事なことだから、しっかりやっていただきたい。

 そして、研究法人も含めて独立行政法人、文部科学省は所管において法人が一番たくさんありますので、当然、対象の法人も一番多くなったということであります。中身の議論と横ぐし的な、効率的な運用とはしっかり仕分けする中で、これは担当の枝野大臣に対しても、我々がやる研究開発法人のあり方の議論はこういう趣旨でやっているので、まさに車の両輪、そちらの趣旨と全く別の次元の話だから、連携しながらそごのないようにやりましょうという話はさせていただく中で、これからも進めてまいりたいと思っています。

塩谷委員 昨年の事業仕分けで、とにかく、二番ではだめなんですかというのが象徴的な仕分けの考え方のようにもう伝わっていますし、予算もばっさりやられたわけですから、そのようなことで仕分けをやられたのではとんでもないと思っております。

 もともと、今大臣がおっしゃったように、研究独法については、給与のこともそうだし、本当に独立行政法人でいいのか。そこら辺は、通則法なんかもぜひこれは変えていかないとだめだという考え方は私持っています。ですから、今回の国立研究機関をぜひいい形でつくっていただきたい。

 そのときに、事業仕分けでどう対応するかを間違えないようにしてもらいたい。場合によっては、ぜひ大臣、副大臣が出ていって、そこら辺はしっかりとその文科省の立場を伝えていくことが大事だし、政治主導と言われていて、昨年の事業仕分けのときにも役所のメンバーがいろいろやったようですが、やはり、あそこで大臣がそうじゃないんだということをしっかり言ってもらいたい。そのぐらいのことをやって初めて政治主導と言えると思いますので、今回も、必要があれば、大臣初め政務官、副大臣、ぜひ事業仕分けの場へ出ていって、この件については強く訴えていただきたいと期待を申し上げます。

 以上で終わります。

田中委員長 次に、松野博一君。

松野(博)委員 自由民主党の松野博一でございます。よろしくお願いします。

 冒頭に、まず大臣にお願いをさせていただきたいというふうに思いますが、高校無償化の議論をしているときに、高校教育の多様化を進めなければいけないという議論がありました。

 先ほど古屋委員からの質問の中にも、土木工学系の学部が大分落ち込んできているという御指摘もいただきました。

 その中で、専門高校、工業高校、商業高校、農業高校の受験者数というのが低迷をしている状況が続いています。しかし、工業高校の例を挙げますと、これだけ厳しい就職の状況の中でも大変高い内定率を誇っておりますし、企業に就職した生徒たちの評判も大変いいんですね。工業高校に普通高校から赴任をした校長先生のお話を伺うと、初めて専門高校に来たけれども、こんなすばらしい授業をやっているとは正直知らなかったというようなお話もいただきました。しかし、状況的には大変厳しいわけであります。

 これは、質問通告もしていませんし、お願いの話なんですけれども、大臣、専門高校の受験者が低迷をしている理由についてどうお考えですか。

川端国務大臣 いろいろあると思うんですが、私も先生と同様に、工業高校あるいは商業高校、私の生まれ故郷にも古い歴史と伝統のある商業高校がありますが、非常に地域での信用が高く、就職率も内定率も早い時期からほぼ一〇〇%というところがあります。

 そういう意味での社会に果たしている役割は大変大きいし評価も高いと思うんですが、やはり全般的には、大学への進学率が非常に高いという世の中になって、普通科に行くというのが第一選択肢というのが本人それから家族含めての選択肢という何か優先順位的なものがあるのではないかな。

 そして同時に、逆に言いますと、そういう意味で、大学に行くということの意義が本人、周りにどういう動機づけと意志を持っているのか。将来の社会参加における自分の位置づけ、あるいは職業観、それからそのための勉強をするという意欲含めてが、ややはっきりしないまま何となく大学というコースを選んでいることが多いのではないかという私の感想ですけれども、そういう意味での大学における学力の問題、勉強に対する意欲の問題、それから、就職が、企業から見ると余り欲しい人材がいないのではないかという評価に結果的につながっている裏返しに専門教育の高校が置かれているのではないか。

 そういう意味では、逆に、やはり将来自分は社会の中で一番こういうことをしたい、だからこそそういう勉強をしたいという意欲を、職業意識を含めて、しっかりとむしろ小学校や中学校のときから教えていって、選択肢としてしっかりと普通高校に並ぶものとして位置づけることをしないと向上しないのではないかというふうに思っております。

松野(博)委員 大臣から御指摘をいただいた点が大変大きな理由だと思います。

 そして、もう一つ、これも実際に専門高校の先生から私も教えていただいたんですが、要は、中学校の先生というのはほとんどが普通高校の御出身の先生なんですね。ですから、どうしても専門高校に関する知識、意識が低いということが一つの原因でありますし、十五歳の中学生に、あなたは工業高校に行きなさい、あなたは農業高校に行きなさいというサジェスチョンをするというのは、ある意味、その子の人生にとって相当大きな責任を持つことになるので、モラトリアムという言い方が適切かどうかわかりませんが、まだやりたいことがわからないんだったら普通高校に行ってゆっくり考えなさいというようなことも、要は、教師の専門高校に関する認識の低さというのも大きな原因になっているというお話をいただいて、確かにそうだなというふうに思いました。

 そこで、私も文科省にいるときに、中学校の先生の専門高校に関するしっかりとした研修であったり、学校訪問等々を通してその意識を高めていくことをやろうという話をさせていただきました。

 ちょうどこれから新中学三年生が来年の進路に向けていろいろと教師と相談に入る時期になると思いますので、ぜひ、これは政権がかわってもこの問題に関しては積極的にお取り組みをいただきたいというふうにお願いを申し上げます。答えは結構でございます。

 質問に入らせていただきたいと思います。

 先週の、主に与党民主党の先生方の文教委員会での質問をお聞きして、先生方のお話の中に、地方主権という言葉が何度も出てきました。教育の地方主権を確立しなければいけないという趣旨でありますし、民主党は、地方主権というのが民主党の一丁目一番地だというお話もありました。その質問に関して、大臣のお答えが、大事なことであるし地方分権という考えを超えて教育の地方主権を確立していくんだというようなお答え、御答弁があったかと思います。

 大臣が例示をされた内容を私も聞いておりまして、地方主権というか、それは地方分権の確立ということではないかなというふうに思っておりました。

 この主権という言葉は、憲法で規定されている国民主権、主権在民であったり、国際関係のプレーヤーとしての主権国家であったりというふうに用いられるものであります。

 これが選挙のスローガンとしての地方主権というのだと、うまいコピーだなと。民主党さんは選挙のコピーをつくるのがうまいので、私たちも勉強しなきゃいけないなと思っているんですが、しかし、それが委員会の中の議論であったり大臣のお答えの中に地方主権という言葉が入ってくると、これは法律的に、行政用語的にどういう定義であるのかというのをしっかりと知っていただかなければいけないのかなというふうに思います。

 主権という言葉を辞典で引くと、国が意思であるとか政治のあり方について最終的に決定をする権利というふうに書かれているわけでありますけれども、大臣が教育における地方主権というお話をされるときに、これは主権でありますから、まず主権者がだれか、その主体がだれかということがあります。地方の主権というと、それは県が主体者であるのか市が主体者であるのかということもあると思います。

 まず、この主体者がだれかということについてお伺いをしたいと思いますし、もう一点は、地方が国から等の干渉を排除して最終的な決定者になる部分というのは教育の一体どの部分なのかと大臣がお考えなのかについて見解をいただければと思います。

川端国務大臣 確かに、地方主権というか地域主権という言葉を民主党さんはよくお使いになるんだというふうに思っておりますが……(発言する者あり)民主党は。失礼しました。民主党の言葉で、ワーディングで言うと、地域主権という言葉を使っておられるというふうに思います。

 そういう中で、先生言われるように、厳密に法的な意味で主権はどこにあるのかというふうな意味の主権、まさに主権在民というベースから発してという、行政権をどこまでどこが及ぼしているのかということまで含めた形で、教育における地域主権をこれからも進めなければいけないということは何をもって言ったのかと言われると、正直申し上げて、そういう厳密な部分はややあいまいだと思います、言葉の定義でいいますと。

 ただ、その答弁のときも申し上げましたけれども、教育の分野でいけば、今も学校の設置者、運営の責任者は地方の教育委員会であり学校長ですという位置づけになっています。そういう意味で、基本的には、学校の運営に関しては、地方の自治体の長を含めて地方公共団体みずからが学校運営には責任を持ってやっていただくというのが、教育における地域主権というので私が申し上げている意味であります。

 そして、国はそうしたら学校運営の主体ではないということであるけれども、先ほど来の議論がありますけれども、学力テストはなぜやるのかといえば、学力水準の維持と向上というのは国の責任であるということでの、国は教育を、機会均等、それから教育水準の維持向上、そしてそのための環境整備、それに伴う財源確保には責任を負っているというふうに思いますので、この部分に関しては国の責任だという位置づけで教育行政をつかさどる。そして、その範囲のもとに、学校運営の主体は地方公共団体の責任においてやっていただきたい。

 先般の議論では、それはもっと任せろというお話もこちらでは出ていたというふうに思いますが、私としては、そういう意味で、今、党全体としても内閣全体としても最終の方向がまだ議論の途中でありますが、いわゆる地方への財源移譲の一括交付金の部分が、まさに本当に丸めた一括交付金なのか、一定の補助金とかはできるだけ大ぐくりをするけれども、一定水準を確保するというのは国が財源を手当てするのかというのは、これからの議論がまだ余地はあると思うんです。

 教育の分野においては、いわゆる地方交付税措置して、財源を事実上カウントはしているけれども中身の使い方は任せるというやり方と、義務教育の国庫負担金のように、これだけはその分に見合いで渡しますよという部分と、性格が二種類ありますから、これをどうすみ分けるかということはまだまだこれからの議論だと思っていますが、基本的な理念は先ほど申し上げたとおりであります。

松野(博)委員 大臣は正直な方なので、あいまいですと言われちゃうと、そうですかということになってしまうんですが、しかし、民主党さんももう与党になられたわけでありますから、やはり地域主権という言葉をお使いになるのであれば、それは国民に関しても明確に定義をするべきだと思います。

 民主党の文部科学委員には大政治学者の松崎先生もいらっしゃるわけでありますから、これは党として、地域主権と言うときには、主体者がだれで、そしてどの部分に関しては国からの干渉を受けずに地域が最終的な決定権者になるんだということはぜひお示しをいただきたいと思いますし、当然、政府側としては、大臣答弁の中にも地域主権という言葉があり、また法律案の名前としても御検討されているということを伺っておりますので、ぜひ今後議論の中で明確にしていただきたいというふうに思います。

 私個人的には、地方分権の確立であって、国、地域、それぞれの機能を明確にしていくということだと思いますし、また、もっと積極的に考えれば、国に教育の主権があるか地域に教育の主権があるかという議論よりも、むしろ、国や県や市や、教育サービスを提供する側の権利と義務の問題と、教育サービスを受けるというか学ぶ立場の人の権利と義務というのを整理して議論をしていくということの方がより新しい議論展開につながるのかなというふうに思っております。

 そして、国や県の教育サービスを提供する側の権利義務と、それを受ける、学ぶ側の権利義務という話に関係があるんですが、午前中の下村委員から大臣に対する質問の中で、北教組が学力テスト反対の理由として国家のための教育はだめだというような見解を示しているけれども大臣はどういうようなお考えかという質問で、大臣は、今回の学力テストの意義というのは全国的な学力水準を維持するという目的があるもので、国家のため云々の指摘、批判は当たらないという御答弁をされたと思います。ちょっと耳で聞いていただけで議事録を見ていないから間違っていたら申しわけないんですが、そういった趣旨の御答弁だったと思いますけれども、僕は大臣のお話をお聞きしていて、別に言葉じりをとるわけではないんですけれども、非常に重要な観点があるのではないかなというふうに思いました。

 それは、やはり教育というのは、国家が税金を投入してやるものでありますから、当然、教育の目的としては、もちろん個々の教育を受ける人たちが自分たちの能力、個性を最大限に発揮をさせるということは第一でありますが、国の方の目的として、当然、国家共同体に関して有用な人材を育てるということも大きな目的であるべきだというふうに思います。

 このことに関して、もう一度大臣の御見解をいただければと思います。

川端国務大臣 先ほどの下村委員の御指摘は、北教組の文書を引用されて、「「国家のための教育」を徹底するものであることから、実施断念・中止」を求めているという立場には立たないということを申し上げました。

 結果として、それだったら「国家のための教育」でないと思っているのかということでありますが、ここは私は、教育は、その人の人格、教養を高め、技能を高めると同時に、社会に貢献をする人材を育てるというためにやっているということで、あまねく恩恵を社会がこうむっているということから、社会全体で人を支えるために高校を無償化するんだと何度も申し上げたのはまさにそのことであって、先生の御指摘の意見は、私はそのとおりだと思います。

 ただ、こういう表現で言われるときの国家というものが、広く普通に言われるときの国家という概念よりは、多分私の解釈ではより狭義に、いわゆる国家主義、戦前の、国のためという価値観のためには個人というのは従属するという、お国のために何でもしろということのイメージにかぶった表現ではないのかなというふうに思います。

 書いた人の立場でありませんから勝手な憶測はいけませんが、そういう意味で使われる国家のため、ここには「国家のための教育」とあります。国の一員として国に役に立つ人になるべき教育は当然必要でありますが、ここで表現されている「国家のための教育」というのは、何か別人格として国家というものが非常にあってというふうな、いわゆる、ある種、戦前の一部批判されているような部分に重複するような表現なのかなというふうに勝手に類推をするんですが、そういう意味ではないということも含めて、彼らのこういう主張の立場には立たないということを申し上げた。

 誤解を招くといけないので申し上げますと、世の中に役に立つ人を育てることは教育の根幹にかかわる大きな目的の一つであって、その人は世の中のために役に立ってほしいし、それは世の中というのを言いかえたら国家のためという表現であるならば、国家のために役に立つ人であることは当然のことだと思っております。

松野(博)委員 日本の風土で、子供たちのためにという話はしやすいんですが、国家に有用なとかいうことがなかなか言いづらい風潮があります。欧米の教育論議だと、明確に、よき納税者を育てるということが教育の大きな目的だというふうに言い切っているわけでありますから、そろそろ教育の政策目的というのを明確に打ち出しながらやっていく、議論をしていくということが必要なのかなと思いましたので、確認をさせていただきました。

 また、これも民主党の委員からの先週の質問で、先ほどの国と地方の関係に関するものでありますけれども、「自公政権のもとでの地方分権、三位一体改革において義務教育費の国庫負担金が二分の一から三分の一に引き下げられる、こういったことが代表するように、地方への財政負担というのがかなり深刻な状況になっております。こうした義務教育費国庫負担率の引き下げによって本当に地方分権が教育の行政において進んだのか、日本の教育はよくなってきたのかということについて、」大臣のお話をということに関して、大臣は、これが二分の一から三分の一に引き下げになったということで地方の教育費が大変苦しくなってきているという趣旨の御答弁があったかと思います。

 大臣の御答弁を聞いていて、これは大臣は、義務教育費の国庫負担をもとの比率に戻す、もしくは全額国庫負担にするということに関して積極的なお考えをお持ちなのかなというふうに期待をしたものですから、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

川端国務大臣 権限と財源を移譲するということで地域、地方の自主的な裁量をふやしていく、まさに先生の歩んできた地方分権を進めるということの理念は、私は三位一体のときも、その理念はいいことだと思うんですが、実際現場で義務教育の国庫負担金の二分の一を三分の一にすることで起こったことは、決められた教員の手当の財源ができないのでという事態を招いているという意味では、やはり地方の非常に財政の厳しいところは教育の現場で影響が出ているということを申し上げました。

 そういう中で、これは事業仕分けの中でも、国と地方の義務教育の国庫負担のあり方についてはやはりいま一度検討し直すべきではないかという御意見もいただきました。先ほど少し触れましたけれども、全体としての一括交付金の議論もあります。そういうことを含めて、今のままは、やはり地方は非常に苦しんでおられるという現実がある。

 それから、いわゆる地方の財政措置としていろいろな項目を、教育にかかわる部分も計上いたしますが、それは、結果としては、まさに金に色がないという部分で地方自治体の自由裁量に任せる中で、やはりある部署においては濃淡が出てきていることも事実でありますので、そういうことを含めて、大変中央も地方も厳しい財政だけれども、これのあり方はやはり一度しっかりと議論をしなければいけないと私は思っております。

松野(博)委員 三位一体の議論があったのは今から四年ほど前だと思うんですが、当時、私は自民党の文教部会長をやっておりまして、この義務教育費国庫負担の議論をしておりました。

 それで、そのときに、その議論のカウンターパートが、知事会、市長会を初め、地方六団体だったんですね。地方六団体の皆さんの御主張が、地方の教育の自由度を高め、地域特性に応じた教育をするために義務教育費国庫負担金をやめろ、一般財源でやらせろというお話でありました。別に、これは自公政権で決定をしたことですから、議論の経過にこんなことがあったといっても、これは最終責任は自公政権が負うべきものでありますし、現状として三分の一にして厳しいということであれば私は改善をしたいなというふうに思っておりますが、しかし、地方分権を考えるときに、だれと話すのかというのは非常に難しい問題だと思うんですね。

 地方六団体の皆さんは、いや、私たちの団体は地方自治法に設置の根拠がある団体だ、自分たちが地方の意見の代表なんだというので議論に臨まれました。そのとき、私たちは、教育の地方分権というのは進めなければいけないけれども、しかし、基本的な部分の財源というのは国が保障するべきだ、むしろ私たちは全額国庫負担にするべきだというふうに考えています、その上で、地域の独自性を出すためには、それぞれの地方で御努力をいただいてそれに付加をしていただければいいのではないですかという主張を私はしたんですが、地方の方の代表者が、いや、だめだ、これは国庫負担金をなくすんだという御議論の中で、結果として三分の一というところに落ちつきました。

 責任転嫁をするつもりは全然なくて、そういった議論の経過があるということを踏まえて、今後、文教委員会の中で、民主党さんがおっしゃられた地域主権、私たちの地方分権の議論を進めるときには、カウンターパートをどうするかという議論も、ちょっとこれは与野党を通じて話し合わなきゃなというふうに考えております。(発言する者あり)教育長にすればいいじゃないかというような議論もありますが、それも一つの考え方だというふうに思います。

 本当は、きょう私は「もんじゅ」の再開に向けて原子力の話を質問しようと思って通告をしていて、皆さん準備をされていて申しわけないんですが、何か馳筆頭の方で、これから毎週一般質問ができるというお話をいただいていますので、「もんじゅ」の話はそのまま次の機会に聞かせていただきますので、準備をされた皆さんに本当に申しわけなく思います。

 「もんじゅ」の話が出たから原子力発電に関する大臣の意識をお聞きしたいと思いますが、きのうの本会議場で、鳩山総理が、鳩山内閣としては、エネルギー問題、環境問題も考えて、内閣は一致をして原子力発電を推進するということになっておりますと答弁をされた直後に、総理の目の前で福島大臣が、私たちはCO2削減や環境のために原子力発電を推進するという立場にありませんと明言をされました。

 これは文化が違うのかなと思いますが、従来の内閣で、総理があれほど言い切った後で大臣が全く逆方向の発言を本会議場ですれば、当然、本会議場から出て辞表を出すというのが今までの常識でありましたけれども、福島大臣の議論というのは全くわからないなと思いますし、福島大臣だけじゃなくて、環境委員会において小沢大臣が、我が党の吉野議員の原子力推進に関する意識に関してはどうかという質問に関して、チェルノブイリやスリーマイルなんかの問題があるから、私は真っすぐに、ちょっと正確なのは、要は、そう行け行けどんどんで原子力をやろうという考えではないんですというような発言をされて、吉野議員が、いや、しかし、大臣の所信の中で原子力推進に関する国民の理解を求めると言っているじゃないですかという再質問をしたところ、技術的には詳しくないものですからしっかり頑張りますという、ちょっと意味不明のお答えをされていました。

 そこで、原子力の研究開発を所管する川端大臣に、ぜひ力強く原子力発電、また原子力研究推進のお考えを述べていただきたいと同時に、所管大臣として、鳩山内閣の各大臣が総理の意見を全く無視して、てんでんばらばらの話をしているようなこの状況に関して、ぜひこの委員会で苦言を呈していただきたいというふうに思います。

川端国務大臣 きのう私も本会議場におりまして、福島大臣の答弁はお聞きをいたしました。一番初めに社会民主党はとおっしゃったのを記憶しておりまして、辛うじて社会民主党の立場だけをお述べになって、閣僚として答弁をされなかったのかなと私は聞きましたが、基本的な方針としては内閣で一致したことでございます。

 そして、私の所見を述べよということでございます。民主党時代に、私は民主党のエネルギー政策調査会会長をしておりまして、基本認識として、世界各国で原子力発電の再評価の動きが加速する中で、日本は唯一の被爆国として、核不拡散に資する原子力の平和利用に積極的に貢献することは国際的な責務である、安全と透明性を前提とした原子力政策を進めるということで、このときに、日本国のエネルギー戦略を確認するということで、その中では、原子力は現在我が国の総発電電力量の約三割を占める基幹エネルギーであり、エネルギー需要、温暖化の防止の観点からも、安定的なエネルギーとしてエネルギー安全保障上欠かせない存在であるという取りまとめをさせていただきました。

 それを踏まえて、民主党のマニフェストの中でも、原子力エネルギーを基幹のエネルギーとして位置づけるということでの、エネルギーの安全保障をしっかりやるということを政権公約の中でも、もちろん安全性の確保と平和利用は最優先であることは当然のこととしてでありますが、という位置づけをさせていただいておりまして、原子力を所管する大臣として、安全性を確保する中で、サイクルも、それから高速増殖炉の問題も含めて、これを積極的にしっかりと進めてまいりたいという覚悟でおります。

松野(博)委員 時間ですので質問を終わらせたいと思いますが、大臣から力強い明確な御発言をいただいて、ありがとうございます。

 しかし、一点、社民党党首としての発言だというのはあり得ないんですね。本会議の壇上で国務大臣に関して質問をしているわけですから、その答弁が社民党の党首としての答弁だからというのは私は成り立たないというふうに思います。

 次回、個別の、「もんじゅ」の再開に向けてのことに関して質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 昨晩は、川端大臣、ありがとうございました。大変感謝いたしております。

 きょうは、がん医療に関する質問をいたしますけれども、その前に一つだけ伺いたいのは、私、地方に参りますと、よく首長さんから、朝鮮学校はどうなっているんですか、地方の判断に任せると言われるけれども、国が決められたことに関して地方が判断するなどというのは困りますと。

 もう省令でお決まりになっていらっしゃるのではないかと思いますので、簡潔に、地方に任せるなどということはありませんねと、そのことに対してだけ伺いたいと存じます。

    〔委員長退席、笠委員長代理着席〕

川端国務大臣 きのうは盛会で何よりでございました。おめでとうございました。

 一部報道で、何か都道府県とかに判断させるという報道がありましたが、事実ではありません。

 今、省令では、いわゆる本国に問い合わせる方法と、国際的な評価機関、その他文部大臣が認めるやり方で認めたものということまで書きました。今、検討の場の部分の人選を進めております。その人たちの御答申をいただいて、御答申いただいた基準と方法に沿って、最終的には私が判断をさせていただきたいと思っております。

池坊委員 ありがとうございます。マスコミがミスリードして、都道府県は大変混乱をいたしておりますので、今の御答弁を伺って、みんな安心することだと思います。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 今、がんは国民病と言われております。二人に一人ががんにかかり、三人に一人が亡くなっていく。その三人の中でも、死亡のときには心不全とか内臓疾患ということがあるので、本来的にはがんであったという方が多いのではないかと思います。だとするならば、やはり予防と対策が必要なのではないかと思います。

 私は、きょうはがん医療専門家の育成と、義務教育段階でのがん教育ということに対して質問をしたいと思っております。

 平成十八年六月十六日に、がん対策基本法を私たちは成立させました。私、本当に、東大病院とかがんセンターとか、あるいはさまざまな先生方のお話を伺いながらこれをまとめましたときに、ちょっと安心いたしましたのは、一点は、がんというと外科手術、手術をしなければならない、私などは手術が大変怖い人間だから、そうじゃなくて放射線治療もあるんだ、化学療法もあるんだということで、胃がんは外科手術が必要ですけれども、ほかではこういうほかの治療があるということにちょっと安心いたしましたのと、それから、日本はまだまだ緩和ケアということに対して力を注いでおりません。外国だったら痛みや苦しみを和らげる、それによってまた生きる意欲もわいてくる、このことに注目いたしましたときに、まず何かちょっと一安心みたいな気持ちになりました。

 御存じのように、がん医療の推進というのは、医師のみではなくて、多くのがんチームというのが必要なのではないかと思っております。高度ながん医療に習熟した看護師、薬剤師あるいは医学物理士その他の医療スタッフが参画して、これはチームとして対応していかなければならないのではないかと思うのです。放射線治療の認定医が今何人いるか、大臣は御存じですか。六百四十四人しかいないのです。

 このような中で、これではいけないということで、専門的な知識、技能を有する医師その他の医療従事者の育成というのが、このがん対策基本法の中には挙げられております。

 平成十九年六月に閣議決定されましたがん対策推進基本計画において、これは二つございます。一つは、大学におけるがん治療に関する教育を専門的に行う教育組織の設置等の環境整備です。二つ目に、緩和ケアに関する大学の卒業前教育の充実及びがん治療に携わるすべての医師に対する緩和ケアの研修の推進という具体的な課題が挙げられております。

 このプランを通じて各大学の取り組みを支援するなど積極的な対応を図り、がん医療に関する質の高い人材養成推進体制をさらに充実することが求められていると思うんです。特にこの緩和ケアというのは、日本の医学においては大変劣っております。これに対する知識を持っているお医者様というのが少ないのです。

 文部科学省は、平成十九年度から、大学と大学病院が連携して、すぐれたがん専門家を養成するための横断的な教育プログラムを構成いたしました。これが、御存じのように、がんプロフェッショナル養成プランでございます。私もこのときは副大臣をいたしておりましたので、これを強く推進してまいりました。

 このプランは三つございます。一つは、がん医療にかかわる専門医師養成コース。二つ目には、がん医療に携わる専門の、さっきも申し上げました看護師、薬剤師等の医療スタッフ養成コースです。三つ目には、がん医療に携わる専門医師等の研修。この三つが重要ではないかと思います。

 さっきも申し上げましたように、お医者様だけ養成するのであってはならない、やはりチームとしての養成が必要である。それから、専門医が必要である。

 このプランでは、平成二十一年度現在で、放射線治療などを専門とする医師は八百七十六名、がん治療を専門とする薬剤師、医学物理士あるいは看護師、医療スタッフは六百五十一名を受け入れ、養成を行っています。

 だけれどもなんです。大臣、これをお聞きになって、これで十分とお思いになりますか。日本には一億二千万の人がいて、今も申し上げたように、がんにかかる人が二人に一人なんです。だけれども、これだけの医療スタッフしかいないというのは、私は余りにもお粗末過ぎるのではないかと思います。

 大学のすべての医学部、今、医学部というのは七十九学部ございますけれども、放射線療法、化学療法、緩和ケアに関する教育を実施するようにいたしておりますけれども、平成二十一年度現在では、放射線治療に特化した講座を置く学部が二十七学部しかございません。化学療法に特化した講座を置く学部が十七大学、緩和ケアに特化した講座を置く大学が八学部しか設置されていない。これが現状でございます。

 がん医療に携わる医療人の育成のため、がんプロフェッショナル養成プランというのは、私は一定の役割を果たしていると思います。ですけれども、その支援期間というのは平成二十三年度までの予定というふうに言われております。

 この問題に関して、文部科学省が支援することなくしては、どこがするのか。もちろん、厚生労働省もこういう問題に対しては注目していると思いますけれども、お医者様、この教育というのは、私はやはり文部科学省がやるべきだと思います。

 がん医療に携わる専門家の養成の人数、養成体制、これは本当に不十分だというふうに私は思っておりますけれども、これについて、今後、川端大臣はどのように支援をしていらっしゃるおつもりかを伺いたいと存じます。

川端国務大臣 がん対策に本当に、それにかかわる医療関係者の養成に大変今までも御尽力をいただいてまいりました。

 そういう中で、先生おっしゃるように、がんプロフェッショナル養成プランで、放射線治療を専門とする医師や、薬剤師あるいは医療の周辺の物理士等々の養成は進めてまいりましたが、総数としては、おっしゃるように、放射線治療腫瘍医という専門医が、日本は約五百名、アメリカが五千名。腫瘍内科医が、日本百三十名、米国一万人。物理工学の専門家、日本約千六十人、米国五千人ということでいうと、もう圧倒的に劣っている。圧倒的に劣るというのがいい使い方かどうかちょっと自信ありませんが、という状況であることは間違いありません。

 今回のこのプロフェッショナル養成プランが非常に大きな役割を果たすと同時に、大学も、それを受けて一生懸命独自にいろいろな工夫をしながら、本当にいいお医者さん、あるいは周辺の技術者が育つように工夫をしていただいておりますので、大変有効に機能していることは事実だと思います。

 一気に量を拡大することがどこまでできるかわかりませんが、今のこの制度は二十三年度までということで、来年度までやります。その間に推移を見ながら、非常に有効なものでありますので、どういうふうに継続、発展させた形がとれるのかを私としては取り組んでまいりたい。必要性は増しこそすれ減ることはないというふうな認識で考えておりますが、時間的にはあと一年半、約二年残っておりますので、その間の推移を見ながら積極的に取り組んでまいりたいと認識をしております。

    〔笠委員長代理退席、委員長着席〕

池坊委員 私の友人は白血病にかかって余命三カ月と言われました。翌日にすぐアメリカに飛んで、アメリカで治療して、今元気で仕事に頑張っていらっしゃいます。それほど日本というのは、がん治療に関してはやはりおくれているのではないかと思いますので、これはぜひ大臣、力を注いでいただかなければ、みんなの命がかかっております。アメリカに行ける人はいいですけれども、行けない人の方が多いんですから。ぜひ、これは注目して、みんなが、政務の方々がぜひやっていただきたいことだと思います。

 二点目には、大学病院の医療制度の充実ということを私はお願いしたいんです。

 このがん対策基本法をつくりますときに、私はいろいろな病院を見て回りました。本当にまだまだ足りないんだ、医療設備が充実していないなというのを痛感いたしました。

 例えば、がん医療の重要な部分である放射線治療の担当の先生からいろいろ御説明を伺って、その先生のお話では、高精度放射線治療が、がん治療の中でますます重要な役割を担ってきているそうです。

 その中で最も注目を集めているのは、日本では東京大学病院において初めて導入された回転型強度変調放射線治療なんですね。新規照射技法による高精度治療にもかかわらず、治療時間が大幅に短縮することができて、これによって患者の負担を軽減して、貢献をどんどんしております。本当に科学、医学というのは日進月歩だというふうに思っております。

 ところが、この難しい名前の機械、実は東京大学病院の三台しかないんですね。それで、三台の放射線治療装置のうちの一台しか高精度治療には対応できない。一日に治療可能な数というのは制限されてしまっているので、その最新の治療を受けるのに半年近く待つんですよ。半年近く、がんの患者の方が待ったら、それこそ末期の方はこれを受けられないという現状なんですね。

 東大病院に私も根掘り葉掘りいろいろなことを聞きましたら、その東大病院にある三台のうちの一台の装置は、耐用年数である十年を超えた装置で、故障も多く、部品の供給すらストップされるというのが現状らしいんです。そうすると、治療を待つ患者さんというのは年々ふえて、もうどうしようもなくなっていく。

 放射線治療の推進というのは我が国におけるがん対策の骨子の一つでございます。東京大学病院の状況、これは憂慮をすべきだと思いますけれども、やはりこれだけじゃなくて、今、大学病院というのは本当に科学的な治療設備というのが不足しているのが現状ではないかと思います。

 がん医療の重要な部分を担う国立大学病院における、これは国立大学というのは一つの拠点ですから、やはり、ここで治療をしてもらいたい、あるいは、ここからいいことを、いいデータを発信するとか、いろいろな役割を担っていると思うんですが、この設備の充実についてはどのようにお考えでしょうか。

 私、先ほども申し上げましたように、今までがんというのは外科手術だった。だけれども、化学療法、放射線療法で治すことができる。でも、放射線だと機械が必要なんだ、設備には高額なお金がかかる。でも、これは人の命を救うために大切、重要なことだと思います。民主党は、いつもいつも命を大切にとおっしゃる。その具体的なこれは一つの例だと思いますので、川端大臣の御見解を伺いたいと思います。

川端国務大臣 がんが国民の死亡原因の第一位であって、何とか克服しなければならない。それから、先ほどありましたように、一時期というか、がんと闘うという言葉が割にはやったんですが、緩和ケアというもので、最後の残された人生を意味ある生き方をしたいという部分でのニーズも非常にふえてきた状況はありますが、とはいえ、やはり治療が命綱であるという中で、放射線治療が非常に重要度を増してきて、技術も進歩してきたという中で、現在あるものが非常に古くなってきているという環境にもあります。一方で、いわゆる独立法人という仕組みの中で、いろいろな設備の更新に関しても、財政的な部分でのいろいろなハンディキャップを負っていることも事実であります。

 そういう中で、医療技術の高度化に伴って、がん診療連携拠点病院という役割を担う国立大学病院の機能強化のために、最先端機器を大学からの要望に基づいて重点的に整備するという必要があると認識をしておりまして、前政権における二十一年度の第一次補正予算では、がん治療機器で百五十二億円、十九大学。二十二年度の予算で、これは財投資金としての貸し付けでありますが、十大学、四十五億円。二十一年度の第二次補正で八十二億円、三十一大学、がん以外の治療設備ということで、がん以外が第二次補正でありましたが、引き続き各大学のがんの特色のある部分に関しては個別にも支援を行っておりまして、群馬大学では、小型重粒子線がん治療機の整備で、ことし三月から重粒子線の治療ができるようになったということもあります。

 それぞれ高額な機械でありますが、まさに命がかかっているという部分と、大学病院において先端的にやっていただいている、これは非常に、最先端の技術は、それを使いこなすという技術もまた一緒にないといけないということで、大学がその大きな役割を担っていただいておりますので、大学の附属病院が教育、研究、診療の場としての機能を十分に果たせるように、設備整備の充実を含めて支援を充実してまいりたいと思います。とりわけ、がんに対しては、教員、医者、周辺の養成、先ほどのプロフェッショナルの養成とともに、設備の充実においても力を入れてまいりたいと思っております。

池坊委員 国立大学が果たすべき役割はあると私は思います。国立大学法人だから、まさか事業仕分けで、こういうような医療設備をすることを、二番目でいいんですねなんということはおっしゃらないと思います。命にかかわることはすべて一番でなければならないと私はかたく信じております。

 では、次なんですけれども、義務教育段階でのがん教育の推進というのを、私はぜひしていただきたいと思います。実は私は、教育の中に、健康教育、健全教育、その中には時間があったら性教育というのも含めて申し上げたいのですけれども。

 子宮頸がんというのが認可されたのを機に、公費負担ということが求められております。公費負担は、厚労省は今消極的ですけれども、地方自治体では独自にワクチン接種公費助成の働きが出ております。このこと一つをとってみても、私は二つの問題があるのではないかと思うんですね。

 一つは、当然ながら、ワクチンを打つことの意味です。これを打つことによって、子宮頸がんが性行為によって感染するウイルスである、こういうこともちゃんと性教育を兼ねてしっかり行っていかなければいけないというふうに私は思いますし、これはウイルスですから、だれでもかかるんですね。ですから、そういうことで、これは必要ですよということとともに、学校におけるきっちりした性教育が必要と思います。

 それから二つ目は、ワクチンを打ったからといってすべての人に効くわけではなくて、当然、七割の効果があるんですね。ワクチンを打った人も含めて、全員が二十までの検診が必要ですよという認識、これも必要なのではないかと思っております。

 こういうことがちゃんと行われているのかな。教科書とか、家庭科とかいろいろ保健体育を見ましても、なかなか行われていないんですね。

 佐賀県の武雄市で、小中学校の先生方にアンケート調査をしたところ、子宮頸がんがウイルス感染であることを知っていたのは四〇%、ワクチンの存在を知っていたのは何と二五%なんですね。性行為さえしなければいいんだから、うちの子供たちは大丈夫よとか、安易にそういうふうに思っていらっしゃる保護者もあったりして、これも含めて、保護者の認識というのも私は必要であるというふうに思いました。

 武雄市では、ことしの二月に、東大病院のがん専門の先生を講師として招き、がん教育というのを行っていらっしゃいます。授業後の感想文を読ませていただきましたけれども、児童は、がんは怖いと思っていたが、検診での早期発見で治ると聞き安心したとか、親に検診を受けるように言う、これは子供が認識を持って、親をちゃんと教育しなければいけないんだというふうに思って、子供というのは頼もしいなと思いました。あるいは、たばこは吸わないなどと書いているんですね。子供だから、素直にそういう教育というのも受けているわけです。

 先生方はどうかというと、ある女性教師は、非常にわかりやすく、がんができるメカニズムや生活習慣と検診の大切さを話していただき、勉強になった、児童生徒向けの教材としてわかりやすい形のものを開発すると、保健の学習でだれもが指導できるのではないかと思うと。また、男性教師は、思い違いをしていることがあって、目からうろこが落ちましたとおっしゃっているんです。現場の先生が、がん教育はどう教えていいかわからない。これはまた、次回させていただく性教育もそうだと思うんですね。

 この東大の先生は、そのことに関して、補助教材として十五分程度のDVDを作成して、全中学三年生に配付する運動をされています。対がん協会の中にがん教育基金というのを設立して、企業からの寄附を募って年間一億二千万円を調達して、保健体育の時間にDVDを見せ、がんとは何かなど、がん対策全般を含むがん教育を目指していられます。

 私はやはり、教育というのは文部科学省だけではできなくて、こうした民間の方々の連携というのが必要だというふうに思っておりますから、これを大変心強く思っておりますけれども、私は、本来これは国がやるべきことではないかなと思うんですね。もちろん、予算もないし、補助教材の内容もわかりやすくつくらなければならないし、手間暇もかかるということですけれども、私はやはり、がん受診率五〇%実現、それから、国民の命を守るということで、せめてDVDなどをつくって、お休みの時間だとか放課後とか、今、放課後子供クラブというのがあると思います。そういうところで流すとか、そういう工夫を私はするべきではないかというふうに思っておりますが、大臣はいかがでしょうか。

川端国務大臣 がん、とりわけ子宮頸がんに関しては、公明党の皆さんが本当に早い段階から熱心に主張され、大きな前進を見てきたことは敬意を表するところでありますし、先進国の中で日本だけが、子宮頸がんにより、特に三十代の女性が亡くなることがどんどんふえていて、世界じゅうではほとんどもうなくなりつつある病気が日本ではふえ続けているという現状が、これによって大きく改善されるのではないかと私も期待をしております。

 そういう中で、やはり接種の義務化、あるいはワクチンの費用の負担というものもありますが、明らかに、若い女性、周りも含めてですが、知識がない、知らないというのが圧倒的に多いということも現実であります。

 そういう意味で、先生御指摘のように、子供のときからいろいろな機会を通じて、いろいろな病気、特にがんも含めて教育することは極めて大事だというふうに思いますし、高校の部分においては、文科省で高校生用のこういうパンフレットをつくった中にも、子宮頸がんは二十一年度から書かせていただき、たばこのがんの問題、あるいは生活習慣病等々記載をしておりますが、小学校、中学校においては、現段階においては、規則正しい生活をしないと生活習慣病になりますよとか、いろいろなことを書いておりますが、今の子宮頸がん等々に関してはここの段階ではまだ書けておりません。

 そういうものをどういうふうに指導要領を含めて工夫していくかと同時に、先生御指摘のように、いろいろな機会にいろいろ啓蒙していくということが、実は大変工夫をすればいっぱい可能性のあるやり方がたくさんあると思いますので、そういうことは、今までの部分でいうと、国が推奨することと実施例をお知らせするという効果があったというか、お知らせすることが今までやってきた方向です。こういうことも含めて、いろいろな実例集も含めて啓蒙することはより積極的にやる必要があるというふうに思っております。

池坊委員 私が文部科学省におりましたときに「早寝早起き朝ごはん」というのをいたしました。私は、「早寝早起き朝ごはん」なんて本来国がやるべきことではなくて家庭がやるべきことではないか、家庭に介入していいのだろうかという、すごい本当は抵抗がございました。でも、家庭でやらないならば国がやらなければいけないんだ。

 今、私は、しつけもそうだし、それからこのようながん教育とか、あるいは性教育とか健康教育とか、健全に人々が生きるための教育というのは本来だったら地域社会とかあるいは親が知らない間に子供に伝達していた、この伝達方式が今ないならば、それを補うのがやはり学校教育なのかな、そうでなければ子供たちの環境や健康が保たれないのが現状ではないかと思います。

 例えば、がん教育もそうですね。がん教育だけじゃなくて、健康に対して書かれておりますのが、日本の教科書は大変少ないんです。覚えていらっしゃいますか、ある人気女性歌手が、三十五歳を回るとお母さんの羊水が腐っちゃうんだよと言ってすごく物議を醸したことがございます。羊水が腐るということは絶対ないんですよね。でも、その歌手は非常なバッシングを受けました。なぜならば、羊水に関する知識なんて私たちは学校で教わりませんでしょう。ところが、日本の教科書には出ていないんですが、ほかの各国の各学校の教科書にはきっちりと出ているんですね。それから、人の発生、こういうことも出ているんです。羊水とか、羊水診断とか、避妊とか、人の妊娠とか、胎児を含む仕組み、こういうことがしっかりと書かれております。

 次回、このようなことでも大臣に質問させていただきたいと思いますが、まず私は、がん教育ということに対してもっともっと積極的に推進していただきたいとお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十九分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 最初に、公立学校施設の耐震化等の早期実現に関しまして何点か質問をさせていただきます。

 四月十四日の当委員会におきまして、委員会決議で、耐震化をしっかりやっていこうということを全党の賛成で決めていただきました。この決議に対して大臣から、

  ただいまの決議につきましては、その趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

  今後とも、地方自治体が計画的に整備を行うことができるよう、学校施設の耐震化や老朽化対策等を積極的に推進し、子供たちの安全、安心の確保等に全力で取り組んでまいります。

という御発言がありました。

 通常、附帯決議とかこういう決議を見ますと、大体、大臣の発言というのは、「ただいまの決議につきましては、その趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたい」、ここで終わっちゃうんですが、今回は川端大臣、かなり踏み込んだ決意を表明していただいて、私は、もうこれは積極的に評価をさせていただきたいと思いますし、大臣の思いがしっかり入り込んだ御発言だったというふうに思います。

 私ども公明党も、二月三日、山口代表が参議院の本会議でこの耐震化早期実現の質問をしてから、衆参の予算委員会、文部科学委員会で、ぜひ予備費を使ってでも積極的にやるべきだという質問、私も、予算委員会またはこの当委員会でもさせていただきました。

 参議院の予算委員会の締めくくり質疑で、総理の方から、予備費の支出というのは閣議決定もあってちょっとなかなか簡単にできないんだというような御答弁があって、それを見ていまして、あれれれ、今までの衆議院の予算委員会とか文部科学委員会等の各大臣の答弁とちょっと後退しちゃったのかなというふうな印象を私は持ちました。

 ちょっとこのままではまずいな、予備費を仮に閣議決定していただいて使うに当たっても、総理の指示なり発言があってから閣議決定まで、これまでの例ですとやはり二、三週間かかる。それから配賦されていくわけですから、きょうは午前中、下村先生の方から御地元の板橋と東京都のお話がありましたけれども、間に合わなくなってしまう。閣議決定に余り縛られてしまうと困ったことになるなという思いがありましたので、三月三十日の日に、今いませんけれども、池坊委員と斉藤政調会長と三名で官邸を訪ねまして、総理に申し入れをさせていただきました。

 ぜひ経済危機対応・地域活性化予備費を積極的に活用して、地方自治体が要望している五千棟、概算要求段階では五千棟でしたけれども、午前中の大臣の御答弁だと、二千二百棟など全部合わせて、おおむね四千六百ぐらいになるんですかね、その分について、何とか地方自治体の要望に沿うような形でやってもらいたいというお話を総理に要望させていただきました。

 総理からは、大事なことだからしっかり検討するというお話と同時に、閣議決定についても、いろいろ知恵を出して工夫をすれば何とかできるんじゃないかというようなお話もありました。

 ぜひそういうふうな形で取り組んでいただきたいなと思っておりましたら、総理は、十日の日でしたかね、西新宿にある芸能花伝舎、空き教室を使ってNPOとか芸能関係の方たちがそこを練習場にしたりしているところを視察されたようであります。私も斉藤さんと一緒に五年ぐらい前に行かせてもらいましたが、実に画期的な取り組みで、都心で子供たちがいなくなってあいてしまったところはこういうふうに活用できるんだというような思いがありましたけれども、総理はそこをごらんになったときに、いわゆるぶら下がりで、予備費の活用も視野に入れてやるんだというようなお話をされたと伺っていましたので、当委員会で決議ができて本当によかったなというふうに思うんですが、やはり、この委員会での先日の大臣の一般質疑での答弁等を聞いていまして、閣議決定が結構ネックになってくる可能性があるなというふうな思いがいたします。

 そこで、きょうは財務省の方から大串政務官に来ていただいています。「予備費の使用等について」という閣議決定がありますが、これが、どうもやはり官邸を初め、財務省はもうこれを盾になかなか簡単にお金は出さないぞというような姿勢なのかもしれませんが、この「予備費の使用等について」という閣議決定、これは本来どういう趣旨なのか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 今の、予備費の使用に関する閣議決定がございます。予備費は、御案内のとおり、憲法において、予見しがたい予算の不足ということのために設けられたものでございますけれども、この閣議決定は、財政法の三十五条の第三項において、予備費を使うときには原則として閣議決定を経て使用するということが決められております。

 その縛りの中で、あらかじめ閣議の決定を経て財務大臣が指定する経費については、閣議を経ずとも、使用を財務大臣が決定することができるという規定になっておりまして、その内容を決めるために、「予備費の使用等について」ということで閣議決定が行われているという性質のもの、この側面が一つと、もう一つその閣議決定の中では要素がありまして、それは、国会開会中の予備費の使用については、国会の予算審議権を尊重するという観点から、この閣議決定の中で、義務的な経費や災害その他緊急に処理する必要がある場合などに限って、国会開会中においても予備費が使用できる、こういうふうなことを規定している、そういう趣旨の内容でございます。

富田委員 政務官が今言われたのは、「予備費の使用等について」という閣議決定の第三項、「国会開会中は、第一項の経費及び次に掲げる経費を除き、予備費の使用は行わない。」この規定の説明をされたと思うんですが、これは、文言をそのまま読むと、国会開会中は予備費の使用は行わないと書いてあるんですね。閣議決定しちゃだめだとは書いていない。

 別に今すぐ使用するというわけじゃないんだから、ちゃんと八月の工期に間に合うようにきちんと閣議決定していただいて、その後配賦して、文科省の方で各自治体から国庫補助申請が出てきたらちゃんと協議してというようにする分にはこの規定に違反しないと思うんですが、どうですか。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 基本的には、予備費を財政法三十五条によって縛りをかけ、かつ、この「予備費の使用等について」という閣議決定である一定の考え方を示しているのは、いわゆる国会開催中においてある一つの行政行為を予算的な措置も含めてやろうという場合には、基本的には、国会における民主的統制、すなわち予算という形でそれを担保するのが必要であるという憲法上の理由に基づくものでございます。

 ですから、ここに「予備費の使用は行わない。」というふうに「予備費の使用等について」の閣議決定に書かれておりますけれども、この「使用」がどこまで含むかというところの判断はあろうかとは思いますけれども、基本的には、予備費の閣議決定も含めて、これを使っていくというときには、基本的には、国会開催中であれば、民主的統制、すなわち何がしかの予算という形を使うのが原則だろうと思いますし、そういう考え方からいくと、「予備費の使用は行わない。」予備費を使用する、予備費を使うということを決定することも含めて、国会開催中じゃない場合を原則とするというのが考え方なんだろうというふうに思っています。

富田委員 役人がつくった答弁を読むんじゃなくて、委員長もうんうんとうなずいているけれども、政務官は政治家なんだから、しかも、もともと財務省でよく中身を御存じの上で答弁されているので、「使用は行わない。」と書いてあるんだから、閣議決定と使用は違う。今は、基本的にはと何度もおっしゃって、閣議決定も含めて使用は行わないというふうに読むんだと言うんですけれども、これは読めないですよ、まともに考えたら。「使用は行わない。」というのは、使用のところまで行っちゃったらだめだけれども、閣議決定して地方自治体に準備してもらうのはいいというふうに解釈するのが政務三役じゃないんですか。どうですか。

大串大臣政務官 この予備費の決まり及び「予備費の使用等について」という閣議決定は、これは、予算を使わないためにというそういうふうなものではございませんで、予備費という性格のものを適切に執行していくためにはどのような仕組みをつくる必要があるかということで考えられた仕組みでございます。

 他方、総理の方からも先般ありました。夏休みに工事が行われる面が多いということを踏まえて、予備費の執行も含めて検討を始めていただきたいというふうな指示が全政府におりております。ですので、今、富田委員いみじくもおっしゃいました。閣議決定やあるいはいろいろな準備も含めてやっていくことはできるんじゃないかというふうな話がありました。

 まさに、総理からの指示がありますように、夏休みに多くの事業が行われるということを踏まえながら、その中で予備費の活用も視野に入れて検討を行っているというのが今の現状でございます。

富田委員 大串政務官は午前中の審議を聞いていなかったからわからないと思うんですけれども、下村先生の方から、それでは要するに自治体は準備できないんだ、何らかの内示なり具体的な指示が文科省の方からもらえない限り、自治体の執行部としては簡単にその準備行為にも踏み出せない。そういうのがあるので、この閣議決定の趣旨をきちんと考えると、準備行為に踏み出すには、閣議決定はとりあえずしてもらって、実際に使用するのは国会が閉会してからなわけですから、そういったことができないのかなというふうに考えて政務官に来ていただいたんです。

 この閣議決定の中に、三項の(3)として、「災害に基因して必要を生じた諸経費その他予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費。」これは使っていいと書いてありますよね。まさにこれに当たりませんかね。私は読めると思うんですけれども、どうでしょう。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 まさにこの「予備費の使用等について」の閣議決定の三の(3)に、今委員がおっしゃったような言葉があります。「災害に基因して必要を生じた諸経費その他予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費。」まさにこの指摘がございます。

 ですので、これを踏まえながら、かつ、先ほど総理からも指摘のあった、夏休みに事業ができるような形をとっていく。その中で、何をどこまで進めていけば夏休みに事業ができるのかということを含めて検討を行っているということでございます。

富田委員 大串政務官はわかっていらっしゃってそこまでしか答弁できないのかもしれませんけれども、これは、参議院の方の予算委員会でも民主党の辻先生の方からも御指摘ありましたけれども、経済危機対応・地域活性化予備費と従来の通常の予備費というのは違うんじゃないのかと。主要経費分類でも目的別分類でも、予算書の中で全然通常の予備費と違った扱いをしている。だったら、この「予備費の使用等について」という閣議決定にとらわれなくてこの経済危機対応・地域活性化予備費は出してもいいんじゃないかという議論があると思うんですが、その点はどうですか。

大串大臣政務官 お答えします。

 まさに、通常の予備費三千五百億円、そして今回の経済対応予備費一兆円、名前ももちろん違いますし、予算書上の書き方も違った形になっております。それぞれのある一定の意図、目的をもって個別につくられてはおります。

 ただし、憲法上の位置づけ、財政法上の位置づけ、これはあくまでも予備費でございまして、その使い方及び使われ方に関しては、同じような手続なり考え方を踏襲しなければならないというふうに思っています。

富田委員 それでは、しつこいようですけれども、こういうアイデアはどうですか。

 閣議決定の第一項で、財務大臣の指定する経費というのは別表に載っていますよね。別表で、「一 扶養手当」、「二 地域手当」からずっと来て「三十三 農業共済組合連合会等交付金」と三十三決めてあるわけですよね。この三十四にこの耐震化対策の費用を書き込めばいいだけの話だと思うんですけれども、これを閣議決定でやれば、何の問題もなくできるんじゃないかと思うんですが、どうですか。

田中委員長 大串政務官、ちょっと申し上げてよろしいでしょうか。

 財政法三十五条の解釈を聞いているのではなくて、当委員会で全会一致でこれを決議としておりまして、総理にも申し上げてありますし、大臣もおられますので、やはり閣内の人間として、法律の解釈ではなくて、もう少し違う表現でお答えいただきたい。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 一のところで、財政法第三十五条第三項のただし書きの規定に基づき指定する経費ということで、別表が定められてございます。この別表は、国会中に使える、使えないということを定めたものでは実はございませんで、この一項のところは、閣議を経ることを必要とせず、財務大臣が予備費使用を決定することができる経費として別表に並んでおります。

 ですから、国会開催中に使える、使えないとはまたこれは別の次元の話でございまして、このほかに、国会開会中に使用が行われるかどうかという別の仕切りがあるということでございます。

富田委員 今、委員長の方から政務官に指示があったように、委員会で全員一致で決めたわけで、決議して、総理もずっとその趣旨に合った答弁を各委員会でやってこられたわけですよね。今の政務官のかたい解釈を前提としたとしても、両院の委員会でこういう同じ決議をしたわけですから、使用はできない、法文上使用はしない、閣議決定も含めて使用はしないというような政務官の答弁を前提としたとしても、後でちょっと大臣に質問しますが、事実上、今どれだけの棟数が本当に必要なのか文科省の方で調査していただいていると思いますので、そこが確定して金額もはっきりしてきたときには、財務省の方で、ではそれは、きちんと国会が閉会して閣議決定ができたときに最終的にゴーになるけれども、内々、文科省の方として各自治体と協議するのはいいですよというふうに財務省の方で縛りを解くべきだと思うんですけれども、それはどうですか。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 まさに今いみじくもおっしゃいましたように、この予備費も含めて予算をつくり、かつ執行をする際には、いろいろな準備行為があろうかというふうに思います。ですので、いろいろな準備行為が検討行為も含めて行われるということ自体は、予算が使われる前の段階でも必要ですし、ある一定行われるということは事実上あろうかというふうに思います。

 こういうふうな過程を経ながら、当委員会でも御決議いただいた内容を重く受けとめて、かつ総理からも指摘のあった、夏に事業が行えるように、ニーズをきちんと把握しながら検討を進めて、予備費の活用も視野に入れていくというようなことが順々と進むような体制をつくっていき、それを検討の俎上にのせていくということだというふうに思います。

富田委員 では大串政務官、最後に聞きますけれども、文科省のは、多分各自治体から、こういう審議経過また決議、総理の発言とかをずっと見た上で、自分のところが予定しているものが実際にできるのかどうか、本予算の方で入っているものになるか、あるいは予備費を使ってやっていただけるのかということで、文科省にいろいろ県の教育委員会等を通して相談もあると思うんです。今の事前の準備行為もあると思う。そういったことをやっていくことに対して、財務省として邪魔はしないと約束できますね。

大串大臣政務官 お答え申し上げます。

 今、邪魔をする、しないという話もありましたけれども、まさに今申し上げましたように、予算を執行していく準備段階はたくさんな段階があろうと思います。それ自体を妨げるということはないというふうに思いますし、いずれにしても、当委員会で決定をいただきました議決の内容を重く受けとめて、それを受けとめられるように、いろいろなステップを政府内でタイムリーに踏んでいくということだというふうに思っています。

富田委員 意は酌んでいただいたと思いますので、財務省の政務三役も、川端大臣初め文科省の政務三役としっかり連携をとっていただいて、地方自治体が安心して夏休みの工事ができるように、ぜひ御協力をお願いしたいと思います。

 政務官もこれで結構です。ありがとうございました。

 あと、大臣に、地方自治体の実際のニーズをどう把握するかという点について確認をさせていただきたいんですが、前回の委員会のときに大臣はこういうふうに答弁をされております。笠委員からの質問だったと思いますが、

 地方の皆さんに、きょうこういう総理指示が出たということは、早速に私の方から地方自治体にはお伝えをすると同時に、今どういう希望を持っておられるのか、そして、その準備はどういうふうにされようとしているのかということも、意思疎通を図りながら、最終的な趣旨である学校の子供たちの安全、安心を確保するために、可能な分が夏休み中に工事ができるということの指示が実現できるように、いろいろな手当てを準備としてやってまいりたい。

 どういったことをやられているのか施設助成課の方に伺いましたら、もう四月の八日の時点で、今実際三月議会でどういった準備がされてきたのかということも含めて、二十二年度に計画している全事業についてきちんと報告を上げてくれという照会を施設助成課長名で各都道府県の教育委員会施設主管課長あてに発していられました。タイムリーにやられているなというふうに思いましたし、四月十六日、この委員会があった日ですが、その日にも、施設助成課長名で「公立学校施設の耐震化等への対応にかかる総理指示について」ということで、総理の指示または各委員会の決議文も含めて都道府県教育委員会の方に発信されていました。

 大変タイムリーでいいと思うんですが、この四月十六日付の通知を見てみますと、一番下に「(本事務連絡については、域内市区町村へも情報提供をお願いいたします。)」とわざわざ括弧書きで書いてあるんですが、ここが大事なんだと思うんですね。各自治体の方がしっかりここを掌握した上で準備を進めていく必要があると思います。

 四月八日付の通知ですときょうがタイムリミットになっているような、きょうまでに報告しろというようなのも出ていました。本当に、午前中の大臣のお話ですと、二千二百棟を含めて四千六百棟ぐらいになっているんじゃないか、五千棟じゃなくて、いろいろ精査してやっていった、また、前倒し分で三百五十棟は済んでいるというようなお話もありましたので、そういったところをしっかり把握していただいて、予算額を確保する必要があると思うんですね。

 三千億とか九百億とかいろいろな報道がされていましたけれども、それは事実無根だというふうに午前中に答弁がありましたので、ぜひ、この二つの通知でしっかり地方自治体と連携をとった上で、正確な数字を把握してしっかり財務省の方と交渉をしていただきたいと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

川端国務大臣 今のにお答えするまでに、午前の下村先生の御議論でもそうでしたけれども、今回、この委員会の審議あるいは衆参の予算委員会も含めて、各党からこの問題に対する御指摘と御要請をいただき、国会決議までいただき、総理もそれを踏まえて閣僚懇での私への公式な指示もしていただいたのを踏まえ、こういう事態まで来られたのは、それぞれ各委員会の皆さんのこういう御議論のたまものだというふうに思っております。重く受けとめております。

 そういう中で、今はまた、私にかわって財務省との交渉までしていただきました。

 午前中も申し上げました。隘路といいますか立場といいますか、その部分はいろいろな部分があるんですが、国会開会中は、これは閣議決定を含めてできないという立場はあるとはいえ、事実上は、それを視野に入れた部分で事前の準備はしっかりしなさい、してもよろしいということを踏まえて、今、御紹介いただきましたように、初めの部分は、二十二年度予算をできるだけ早くにやるということで早く準備をしなさいということで、これはもうほぼ確定した予算ですからということでありますが、その後の部分は、御指摘いただきましたように、もともと予定していたものから既に実行したものを差し引いた部分で、アバウトで言えば約二千三百数十棟あるのかなと。

 ただ、これは、毎年の部分でもそうなんですが、と思っていたけれども、やはり学校統合があるから、予定はしているけれどもすぐには間に合わないとか、あるいは、財政の裏打ちができないからちょっと我慢するとか、いろいろなことで今までの分でも実際にはその数に行かなかったこともあります。そういう部分で、今回、それと同時に、これは午前の御指摘、今の御指摘も含めて、本当につくのかということがわからないとなかなかうんと言えないみたいな部分もあります。

 そういう意味で、きょうの午前の御議論もいただきましたので、昼休みに、改めて原局に対して、詳細に地方のニーズを本当に把握して、それにいかに時期を間に合わせて対応するかというのが総理の指示であり私の指示であるという趣旨を踏まえて数字をしっかり把握するように、それと同時に、地方に対しても、いろいろな御心配の部分は、やりたいという意欲があって手続が可能な部分は、最大に努力していただくというのとセットで夏休みに間に合うようにという工夫を凝らしたいので、率直な希望を聞き取るようにということも指示をいたしました。

 そういうことを含めて、正確な数字の把握と地元の理解を最大限これからも努めてまいりたいと思っております。

富田委員 残り五分を切りましたが、最後に、当初予算の事業と仮に予備費を使ってやれるようになった事業、このスケジュールの確認をちょっとさせていただきたいんです。

 当初予算ですと、四月上旬に起案、公告して、五月中旬ぐらいまでに入札あるいは仮契約まで行く。六月に各自治体で議会が開かれますから、そこに議案を上程して議決してもらう。議決した日が本契約になるんだ。これで七月以降の工事に間に合うというスケジュールだと思うんですが、予備費でもしやっていただくという場合には、これが多分一カ月ぐらいずつずれてくるんだと思うんです。そうすると、入札、仮契約が六月の下旬ぐらいに一カ月ずれてくると、本契約を結ぶための議会への提案あるいは議会での議決というのが七月にずれ込んできますよね。地方自治体は大体六月に議会が終わってしまいますので、臨時議会とかそういう必要が出てくる。

 そういうことも想定して事前の準備をしていただく必要があると思いますし、そうなったときに、国庫補助申請等事前協議がどんなふうに手順が進んでいくのかというあたりも、多分、地方自治体の皆さんは心配になると思うんです。ずっと後ろに詰まっていって、工事は夏休みにやらなきゃならないというのは決まっているわけですから、通常よりもおくれていても、きちんと事前準備をしていただいて、文科省の方も補助申請が出てきたときの協議もきちんと進めていきますよというようなスケジュール観がないと自治体としては動きにくいと思うんですが、そのあたりは大丈夫でしょうか。

川端国務大臣 今おっしゃったように、大体六月、通常国会がどういう日程かわかりません。一区切りをついた時点で閉会後閣議決定ということになりますと、どうしても七月に臨時議会を開いていただくということが必要になるということは十分想定をされるので、そのことも踏まえた御準備をいただきたい。

 ということで、正直申し上げて、今月いっぱいぐらいから、連休で間があきますが、その直後までには、先ほどの大串政務官の話でいうと正式なお墨つきではありませんが、事実上文部科学省としてはそういうことを想定しているので、できる限りの準備と協力をお願いしたいということは、確定をさせないとできない話になっておりますので、そのつもりも含めて、今、最終の詰めをさせていただいております。

富田委員 ぜひ、地方自治体が安心して工事できるようにお計らいをいただきたいと思います。

 ほかに質問を用意していましたが、時間になりましたので、これはまた別の機会にさせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 質疑に先立って、先日の委員会の冒頭、文部科学省から「北海道教育委員会及び札幌市教育委員会における調査の状況について」とする報告がございました。

 今回の問題の発端となった民主党小林千代美議員の陣営関係者が政治資金規正法違反で起訴されたことは極めて重大で、政治的道義的責任をはっきりさせる必要があります。証人喚問に応じ国民に説明すべきだし、企業・団体献金、やみ献金、さらには北教組による特定政党支持押しつけという民主主義に反する問題の真相と一連の事実を明らかにすることが求められていることは言うまでもありません。

 しかし、先日の報告なるものは、北教組による政治資金問題とは直接関係のない、教職員組合の日常活動、教職員の政治活動全般について文部科学省から教育委員会に調査を求めるものとなっており、午前中の質疑の提出資料にもあったとおり、教員一人一人にまるで思想調査のような詳細な聞き取りを行う事態となっております。こんな調査をする必要は全くなく、教職員組合、教員個人の政治活動にまで不当な制約を加え、学校現場を混乱させていると言わなければなりません。

 私どもは、このような調査は直ちに中止することを求めるし、また、このような報告を委員会の場で行うことには反対だということをはっきり申し上げ、質問に入りたいと思います。

 きょうは、特別支援学校の問題について質問いたします。

 この間、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室など障害児教育の場は在籍者数が増加し、特別支援学校の大規模化、マンモス化が大問題になってまいりました。我が党は、東京、大阪などの実情を調査した上に立って、本日皆様方に配付させていただいた、「障害のある子どもたちの教育条件を改善するための緊急提案」を発表いたしました。

 私は、その一環として、大阪府泉佐野市にある知的障害の養護学校、佐野支援学校を先日視察させていただきました。この学校には、小学部、中学部、高等部がございますけれども、この間、生徒が急増し、ついに四百五十名を突破いたしました。やむなく、ことし高等部に分校をつくりまして、そこに五十六名が移動したんですけれども、それでも、昨年本校の方は二十名減っただけで、本校の方にやはり四百三十名以上が在籍するというかなりの大規模校となっております。

 朝の子供たちの登校の様子から私は見せていただきました。当初は登校が終わった後から伺う予定でありましたが、お父さん、お母さんあるいは教職員の方々から、登校時が大変なんですよ、こういう声を聞きましたから見せていただいて、驚いたんです。五市三町から十二台のバスが次々と到着をし、所狭しとバスが並ぶ中、校長先生初め教職員が総出で子供たちを受け入れておりました。先生方が子供たちを両手に、二人、三人と手をつなぎながら教室へと連れていく。毎日、登校させ、無事に学校に受け入れることそのものが大変な状況がよくわかりました。

 バスを見れば、子供たちがすべての席にぎゅうぎゅうに余裕なく座り、しかも五市三町ですから、本当に校区も広く、一番遠い岬町から来るバスは片道一時間半以上かかるということでありました。しかも、そのバスの乗降場所まで、さらに家から車で親御さんが二、三十分かけて子供さんを送り届けている、こういう話も聞きました。障害のない大人でも席に余裕のないバスに一時間以上も乗っているのは大変でありますけれども、障害を抱えた子供たちにとってはなおさらのことだと思います。

 そこで、まず、このスクールバスについて聞くんですけれども、特別支援学校のスクールバスの実情がどのようになっているのか、つまり、片道通学時間一時間以上バスに乗らなければならないという事例がどれぐらい全国にあるのか、これをひとつ文部科学省、お答えいただけますか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 特別支援学校のスクールバスについては、児童生徒の通学困難の解消等を図るために、学校の設置者である各地方公共団体の判断により運営されているものと認識をしておりまして、文部科学省において各学校におけるスクールバスの実情については把握をしておりませんが、特別支援学校に在籍する児童生徒の通学が困難となることがないよう、おのおの設置者においてその実態を適切に把握した上で相応の措置が講じられることが重要と考えておりまして、こうした点については、機会をとらえて各教育委員会等に周知をしてまいりたいと思っております。

宮本委員 把握をしていないという御答弁でありますけれども、実態を私、見せていただいて、これは本当に大変だと。実は、我が党から大阪府会議員の方も御一緒していただいた。その方は元府立高校の先生の方でありましたけれども、その方の率直な御感想は、毎朝、修学旅行の朝のようですねと。つまり、普通の府立高校であれば修学旅行の朝のような状況が、特別支援学校では毎朝引き起こされている。

 本当に、スクールバスの状況、登校の状況というものをしっかりとつかんでいただいて対策を立てるべきだと思いますけれども、改めて大臣、そういう掌握の必要性をお認めになっていただけますか。

川端国務大臣 私が一般に持っている特別支援学校のイメージと今先生御紹介の部分では、随分、随分というか、考えていないような実態を御報告いただきました。

 スクールバスの状況を含めて、一度私なりに該当のところから状況は伺ってまいりたいというふうに思っております。

宮本委員 もちろん、都市部と地方では状況が違うということはよくわかっているわけですけれども、特に東京、大阪というところが大変な状況になっているというふうに私たちも認識をしております。

 それで、まず事実を確認したいんですけれども、佐野支援学校のような知的障害の支援学校について、学校の適正規模の基準というものを国は定めておられるのか、文科省は生徒数何人程度が適正だとお考えになっているか、お答えください。

川端国務大臣 一学級の児童生徒数あるいは学級の編制、教員数の基準等々は、学校教育法の施行規則で当然ながら決められておるんですけれども、特別支援学校については、その障害の種類も多岐にわたるということで、それに応じたいろいろな多様な施設設備が必要とされるということと、その折々によって、在籍する児童生徒の障害の状況あるいは地域等々にもいろいろな変化もありまして態様はさまざまでありますので、現時点において、各学校の状況で柔軟な対応が可能なようにということで、設置に当たっての基準は特に設けられておりません。

 文部科学省としては、特別支援学校の適正規模について、障害のある児童生徒の状況や地域の実情を考慮した上で、個々の学校の設置者の責任において適切に判断されるべきものという位置づけになっております。

宮本委員 実は、特別支援学校、特に障害のある子供たちの教育条件という点でいいますと、この人数がやはり急増している。その一つの原因は、御承知のように、二〇〇七年に発達障害の子供も新たに特別な教育の対象に加えたということもあって、実は一九九九年に約十八万人だったものが、今日、この十年間に三十万人にふえた、急増しているわけですね。その結果、マンモス校があちこちに生まれてきているということなんですよ。その中で、今大臣がおっしゃったように、全体としての特別支援学校の適正規模の基準がないんです。国が定めていないんですね。

 それで、どこにもないかといいますと、私の地元大阪府には、大阪府学校教育審議会の答申としておよその目安が示されておりまして、精神薄弱養護学校については、効果的な指導や円滑な学校運営に配慮し、さらに将来の児童生徒数の動向を見きわめつつ、児童生徒数百五十から二百人程度の規模で学校を整備していくことが妥当と考えると。これははっきり大阪府の学校教育審議会の答申で示されておりますから、大阪府自身は百五十から二百人が妥当と考えているわけなんですね。

 ところが、そう言っている大阪府自身が、大阪府にある特別支援学校、実は知的障害の支援学校十七校のうち十二校が、十二校ですから実に七割が、その二百人を超えております。そのうち六校、つまり三分の一程度は、三百人さえ超えております。だから、もう全然、百五十から二百なんという基準は、大阪でいっても満たされていないというのが現状なんですね。

 そこで、これも事実を文科省に確認いたします。

 学校児童生徒数が二百人以上になっている知的障害の特別支援学校は全国に幾つあり、割合はどれぐらいになっているか、お答えいただけますか。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 全国特別支援学校知的障害教育校長会及び独立行政法人特別支援教育総合研究所が平成二十一年度に実施をいたしました調査によりますと、全国特別支援学校知的障害教育校長会に加盟する特別支援学校五百五十校のうち、在学者数が二百人以上の学校数は百三十五校でございまして、その割合は約二五%となっているところでございます。

宮本委員 今お話があったように、全国特別支援学校知的障害教育校長会の調べでありますけれども、加盟五百五十校のうち百三十五校、つまり二五%ですから四校に一校が、大阪府が適正だと言っているような規模も超えているというのが全国の状況であります。

 それで、学校の大規模化というのは教育活動に大変な支障を来しているということを現場でもお伺いいたしました。薄いカーテン一枚で仕切った教室は狭く、隣のクラスの先生や子供の声も筒抜けだ、落ちついた授業にならない、こういう実態も聞きました。特別教室をつぶして普通教室に転用する、パソコンを使った授業ができなくなったとか、カウンセリングルームがなかったりという事態も生まれています。佐野支援学校の校長先生も、努力と創意で頑張る、こうおっしゃっておりましたけれども、一方で、努力や創意ではどうにもならない限界もある、こういうふうに率直にお話しになっておりました。

 特別支援学校の大規模化、狭隘化が、現状、教育活動に支障を来している。これは非常に放置できないという現状認識、これは大臣も共有していただけると思うんですが、いかがでしょうか。

川端国務大臣 特別支援学校の在籍児童生徒数が大変ふえているということで、各都道府県からの意見、実情を御報告いただく調査をさせていただきました。

 そこで出てきましたのは、今もお触れいただきましたが、普通教室、特別教室、職員室など管理関係諸室、更衣室、トイレ、スクールバスなど、不足が多く挙げられ、具体的な内容として、一つの教室をスペースを区切って使用していることにより他の児童が立てる音等が学習の妨げになっていること、特別教室を使用する授業の時間割りの設定が困難であることなど教育指導面にかかわる課題、あるいは、安全管理、教職員の服務管理が困難であることなど学校管理運営上の課題が多く挙げられた。それから、児童数が増加すると将来設計が大変立てにくいという指摘もありました。

 そういうことを踏まえて、主体は都道府県の教育委員会が基本ということでありますので、二十年の三月には、文部科学省から、各都道府県教育委員会の施設主管課長と特別支援教育主管課長に、こういう実情があるので適切に、なかなか予算が厳しいということはあるんだけれども十分に、こういう指摘があるので、「特別支援学校の在籍児童生徒等の増加に伴う大規模化・狭隘化への対応について」ということで、こういう調査があるのでしっかりと現状を認識して対応していただきたいという文書を発令しているところでありますが、実情がそういうところにあって、支障を来していることの現状は承知をいたしております。

宮本委員 支障を来していることは現状は承知していただいているということですけれども。

 今、一つの教室をカーテンで仕切って使っているとか特別教室の転用ということを、大臣も、事実があることはおっしゃいました、お認めになりましたし、実情調査でも出ていると思うんですけれども、ちなみに、では、特別教室の転用が全国でどれぐらいの数、行われているのか、それから、カーテンで仕切って一つの教室を二つに使っているという事例が全国にどれだけの数あるのか、この数は掌握しておられますか。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣の答弁でもございましたが、平成十九年に、私どもで、全都道府県に対しまして、特別支援学校の現状と課題につきましての聞き取り調査を実施しております。

 その中で、特別教室を普通教室に転用して使用しているというところが三十八都道府県でございました。ただ、何教室転用しているかということにつきましては把握をしてございません。

 また、一つの教室をカーテンで仕切っているような事例ということで、こちらは三十都道府県でそのような実態がございました。こちらも、どのくらいの数の教室がなされているかということにつきましては把握をしておりません。

宮本委員 何でこんな数もつかまれてないのか。都道府県数は出るけれども、実際の教室数、実際の事例数がつかめないというんですね。

 それで、そもそも、文部科学省は、昨年の二月に特別支援学校の教室不足の実態調査というのをやりました。私の手元にも、きょうは実は皆さん方にも、そのときに都道府県別にどれぐらい教室不足があるか、文科省が出していただいた都道府県別の資料を配付してありますけれども、そもそも、この調査、昨年二月に行った教室不足の実態調査というものはどのような方法でやった調査ですか、お答えいただけますか。

西阪政府参考人 平成十九年に、先ほど申し上げました全都道府県の実態の聞き取り調査によりまして、いろいろな課題等がございました。それのフォローアップの意味も込めまして、昨年二月に、特別支援学校の教室不足の実態調査ということでお聞きをしたものでございます。

 各学校の御協力もいただきまして、私どもの方で調査票をお示しして、アンケート的にお答えをいただくということで調査したものでございまして、その結果で、それぞれの都道府県の不足教室数ということを集計したものでございます。

宮本委員 この集計の票の下にはっきり書いていますけれども、児童生徒数の基準日となる平成二十年五月一日時点の現状を、昨年の二月にアンケート形式により聞き取ったものだと。だから、都道府県教委に、教室数は幾ら足らない状況がありますかということを基本的には聞き取って、各都道府県教委から出された数を集計したというだけの話なんですね。

 その証拠に、今議論になっている大阪府は、わずか十九という数が出ているわけですよね。それから、埼玉県に至ってはゼロという答えになっているわけですよ。そして、川端文部科学大臣の地元滋賀県もゼロというふうに、不足はないですというお答えになっているんですけれども、私、大阪で十九というのを、大阪の地元の、まさに特別支援学校に子供さんを通わせている親御さんたち、学校の先生たちに見ていただいたら、もう何たることか、そんなはずはないとかんかんに怒っておられました。また、埼玉県や滋賀県も、念のために現地に聞いてみましたけれども、不足ゼロなんというのはとんでもない、やはり不足していますよという声もお聞きしたところなんですね。

 だから、何かきちっと掌握されないまま、あるいは、大阪でいえば、そのときの数が十九ということであって、現場の行き着くところまでちゃんとつかまれたことになっていない状況だと言わざるを得ないと思うんです。

 それで、やはり、こういう状況になるのはなぜかというと、冒頭に確認したように、適正規模が例えば二百とかというふうに決まっていて、二百を超えている学校が幾つあるかと調査すれば、びしっと、それはうその報告はなかろうと思うんですよ。ところが、文部科学省のところではそういう基準がない、全体の適正規模というのは何の基準も持っていないと。それで、不足していますか、していませんか、どれぐらいですかみたいなことを聞くと、それは都道府県によって、受けとめによってもさまざまな差が出る。

 だから、東京あたりは六百三十九というのは割と正直だなと。東京で六百三十九で、大阪で十九ということはなかろうと思うんですけれども、そういうばらつきになって出てくるわけですよ。だから、二千八百というこの集計した数も、これはどう考えても、これで十分とは言えない数なんだろうと思うんですね。

 そこで、大臣にお伺いするわけですけれども、やはり、この際、しっかりと特別支援学校の設置基準を定める、そして、そういう基準をはっきりさせた上で、これを超えているところがどれだけあるか実情をつかんで、そして、マンモス化している、狭隘化しているところについては、やはり思い切って特別の改善策を持つべきだと私は思うんですけれども、川端大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

川端国務大臣 実態として、大変マンモス化した部分があるということは、現実、そうだと思いますし、大変な支障を来す事態も地元の声としては上がっている。そういう中で調査をしたら、実情の調査結果は実情を反映していないのではないかという御指摘だと思います。

 これは、ちょっと見ましても、一月二十七日に調査の書状を出して二月四日までに返事というと、非常に短いなと私もこれを見たときに思いました。それと、おっしゃるように、何をもって不足と言うのかというのは、確かにこれでは難しいなと。

 ただ、その設置基準というのが、確かに、いろいろな特別支援の中身もありますし、その年によっての変動もありますし、ということの実情で、基準をすぱっと決めるというのはなかなか難しい部分もあるんだと思います。特に、いろいろな特別支援を必要とする者を定義として拡大をしてから以降の話でありますが、そういう意味では、まず実情をよく把握するということが大事で、そのときのことでやったんだと思うんですが、果たしてどうなのかということも含めて一度検証してみたいと思っております。

宮本委員 もちろん、障害の種類によって一律にいかないという、その議論はわかるんですよ。ただ、やはり規模のマンモス化が支障を来していることは本当に事実でありまして、例えば泉佐野の支援学校では、運動会が、これまでは全校の児童生徒が参加して、つまり小中高等部全員が一カ所に集まってやられていたものが、四百三十とか四百五十になるともうやれないんですね。だから、今は高等部と小中学部は分けて開催するしかなくなったんだと。

 これについては、小学部、中学部の親御さんからすると、高等部の子供たちの姿を見て、ああ、うちの子も何年か後にはあんなふうに成長するんだなという、やはり安心にもなるし励みにもなる。また、子供たちも励みにして頑張る。こういう教育的効果すら、やはり一堂に会して運動会ができないことによって発揮できなくなっているという切実な声もあって、僕は本当にそのとおりだと思うんですよ。

 だから、やはり運動会をそうやってみんなでやれるような適正な規模というものをきちっとお示しする必要があろうかと思うんですが、大臣、改めて御答弁いただけますか。

川端国務大臣 御指摘のように、運動会とかいろいろな学校行事は、やはりそれぞれの学年を通じての成長が具現される場でもあり、励みにもなり、あるいは、それぞれの同じ学年においても、連帯感やいろいろなことで、非常に教育的効果の大きいものであることは、そのとおりだというふうに思います。

 そういう意味で、できるだけ実施をされるのが当然望ましいことであって、そのときに、先ほど申し上げましたように、大規模化したときにいろいろな問題が指摘をされているので、各都道府県教育委員会においては、限られた予算の中で施設整備に努めるとともに、いろいろな、こういう事態は避けるように配慮してくださいという、まさに独自の活動としてはという要請の文書は先ほど御紹介したように出させていただいておりまして、建前から申せば、そういう部分を含めて、それぞれの設置者において工夫、努力をしていただきたいということでありますし、実態の部分がどういう状況かが基本的に一番のベースになると思いますので、先ほどの不足の教室を含めて、改めて、どういう形で実情把握できるのかということを検証したいというふうに思っています。

宮本委員 あと五分という紙が回ってきましたので、あと二問だけぜひ聞きたいんです。だから、簡潔に答弁をいただきたいと思うんです。

 一つは、学校が大規模化している中で、先生や教職員もやはり多くなっているんですね。泉佐野の支援学校、二百人を超える教職員がいて、とても職員室で職員会議なんかできないと。四月にお伺いしたので、先生の顔を覚えるだけでも大変だというような話でありました。それから、保健室の先生、養護教諭の定数も、実は規定では六十一名以上で複数配置と決まっているんですが、六十一名以上、あとは天井知らず、二名のままなんですね。だから、四百名いても二名なんですよ。これはひどいという声も出されておりました。

 私たちは、やはり小学部、中学部、高等部ごとに一名の養護教諭が配置できるようにしないと、あれだけ大きなマンモス校をお二人で見ているというのはもう大変なことだということも思いました。

 今、定数の改善ということが検討されておりますけれども、特別支援学校の定数についても、こういうことも含めて検討していただけますね。

川端国務大臣 御指摘のように、六十一人以上の学校で二人となっているんですが、それ以上の規定がないので、制度的に二人なんですよね。

 それで、今御指摘のように、学級編制や計画的な教職員定数のあり方を今検討、議論しているときに、全国特別支援学校長会からは、特別支援学校の養護教諭の複数配置の実現を求めるという意見も我々のところに出ております。

 同時に、今年度予算では、特別支援教育の充実のための千七百七十八人の大幅な定数増ということと、今のヒアリングの実態も踏まえて、中教審でも御審議をいただいて、八月ぐらいに概算要求を行いますので、それに向けて今議論の集約を行っているところですので、当然、議論の俎上には上がっているテーマであることは御了解いただきたいと思います。

宮本委員 最後に、必要となる特別支援学校の新設や教室不足の解消などに必要な予算の確保についてお伺いしたいんです。

 先日の委員会で、先ほど来議論になっている公立学校施設耐震化等の早期実施に関する件、全会一致で決議をいたしました。この学校耐震化を進めるために予備費を活用するということでありますけれども、実は、特別支援学校の教室不足解消のための予算とこの学校耐震化の予算というのは、同じ公立学校施設整備費に計上されているわけなんです。それで、耐震化の方をしっかり予備費を充てて進めていくということになれば、一層、この公立学校施設整備費の中で、やはり特別支援学校の教室不足、この解消のために予算も確保できるということにもなろうかと思いますので、この予算をしっかり確保して進めなければならないということが一点。

 同時に、この間議論されているように、今の補助率ではなかなか二の足を踏んで進まないという面があるんですよね。それで、私は、緊急に進めるためには、我が党のこの緊急提案にも書かせていただいたんですが、国の建設費の補助金を現行の二分の一から三分の二に引き上げるというようなことも提起をしておるわけですけれども、もっと補助率も上げるし、そして予算も確保して進めていくということが求められていると思っています。

 これは最後に大臣のそういう予算確保についての決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

川端国務大臣 予算で申し上げますと、平成二十二年度、当年度予算においても、耐震化に特化をして優先的にということが、一般的な表現として使っておりますけれども、特別支援学校の小学部及び中学部における教室不足等のために教育上支障が生じている特別支援学校の整備状況について優先的に配慮するということで、学校施設整備費の執行方針の中では優先的に配慮する事項ということで挙げておりますので、これを最優先の一つとして予算は配置をするということで、二十二年度予算の中で優先順位を特記しておるところであります。

 事業別の方針としても、特別支援学校の幼稚部及び高等部における整備事業、教室不足のために教育上支障が生じている特別支援学校の整備を中心に事業採択するということで、耐震化事業、アスベスト対策事業、特別支援学校、体育館というのを採択する優先順位として特記しておりますので、その方針であることは間違いございません。

 なお、二分の一の補助率を三分の二にかさ上げすることは、直ちにはほかの全体のバランスで難しい部分がありますので、二十三年度予算の要求においては、先ほどのいろいろな配置と同時に、この部分に関しての特段の予算の確保ができるように、しっかりと努めてまいりたいと思っております。

宮本委員 時間が参りましたので終わりますが、ぜひ特別支援学校の現場を当委員会としても視察に行くことを御提案申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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