衆議院

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第4号 平成23年3月25日(金曜日)

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平成二十三年三月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    小原  舞君

      大山 昌宏君    奥村 展三君

      金森  正君    川口  浩君

      城井  崇君    熊谷 貞俊君

      小宮山泰子君    佐藤ゆうこ君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    高橋 英行君

      中野  譲君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      北村 茂男君    塩谷  立君

      田野瀬良太郎君    谷畑  孝君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       高木 義明君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   文部科学大臣政務官    林 久美子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      辰野 裕一君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   参考人

   (放送大学教授)     小川 正人君

   参考人

   (元全国特殊学校長会会長)

   (東洋大学文学部教授)  宮崎 英憲君

   参考人

   (東京都教育委員会次長) 松田 芳和君

   参考人

   (茅ヶ崎市教育委員会教育長)           谷井 茂久君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     小原  舞君

  奥村 展三君     小宮山泰子君

  城井  崇君     中野  譲君

  本村賢太郎君     高橋 英行君

  遠藤 利明君     谷畑  孝君

  河村 建夫君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     石井登志郎君

  小宮山泰子君     奥村 展三君

  高橋 英行君     本村賢太郎君

  中野  譲君     城井  崇君

  北村 茂男君     河村 建夫君

  谷畑  孝君     遠藤 利明君

    ―――――――――――――

三月二十五日

 展覧会における美術品損害の補償に関する法律案(第百七十六回国会閣法第一四号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)

 展覧会における美術品損害の補償に関する法律案(第百七十六回国会閣法第一四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、放送大学教授小川正人君、元全国特殊学校長会会長・東洋大学文学部教授宮崎英憲君、東京都教育委員会次長松田芳和君及び茅ヶ崎市教育委員会教育長谷井茂久君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず小川参考人にお願いいたします。

小川参考人 小川です。よろしくお願いいたします。

 きょうは、今回の義務標準法の一部改正案に基本的に賛成する立場から、意見を述べさせていただきたいと思います。

 なお、きょうの参考人として意見を述べよというふうに言われたのが本当に二、三日前だったということもありまして、実は、資料を作成する時間が全くありませんでした。そういうことで、大変申しわけないんですけれども、きょうは資料なしで意見を述べさせていただきたいと思います。この点、御了解いただければと思います。

 また、この後、学校や教育委員会の参考人の方から、学校現場や教育行政の現場に近い方の視点で御意見があると思いますので、私の方からは、学級編制をめぐる大きな流れと課題についてお話しさせていただければと思います。

 今回の一部改正案をめぐっては、三十五人学級は教育効果が本当にあるのかどうかというふうな意見があります。確かに、学級規模の縮小というのは大変お金を要する施策であるにもかかわらず、その教育効果の検証というのが非常に難しい面があります。

 学級規模の縮小の教育効果を実証的に検証するためには、児童生徒の学力に影響を及ぼすさまざまな要因を厳格に統制した実験的な研究が必要ですけれども、この分野で先駆的であるアメリカなどでも、学級規模の研究というのは、ほとんどが自然にできた学級規模をそのまま活用して、学級規模別の成績の比較研究というふうなものにとどまっておりまして、その効果検証の信憑性についても、やはり現在では疑問が多く出されています。実際、アメリカなどにおける学級規模の教育効果検証に関する調査研究でも、実は、効果がある、効果がないというふうに評価が二分されてきたというのが現状です。

 ただ、そうした中でも、アメリカでは、一九九〇年前後から、学力向上策の一つとして少人数学級化が取り上げられて、現在では、半数以上の州で学級規模縮小の政策が進められてきたという経緯があります。そうしたアメリカにおける政策転換の契機となったのが、これはもう御存じかと思いますけれども、テネシー州で一九八〇年代半ばに試みられた有名なスター計画でした。

 スター計画は、十三から十七人の少人数、二十二人から二十六人の普通学級、そして普通学級にTTを配置したという、その三つの学級をつくって、それらの三つの学級に生徒をランダムに配置して、幼稚園から小学校三年まで四年間にわたって学級別の教育効果を検証したという壮大な実験でした。

 また、計画に参加した児童たちは、四年次以降は普通学級に戻るわけですけれども、普通学級に戻った後も、その後も追跡の調査が実施され、普通学級に戻った以降も少人数の教育効果がどう継続しているのかということも検証したものでした。

 その規模が数万人の児童生徒、そして調査研究の手法においても、非常に全米の注目を集めたという研究です。

 このスター計画で実施された少人数学級の教育効果については、おおよそ次のようなことが指摘されています。

 少人数学級に在籍した子供の成績はすべての学年、教科で向上した。また、少人数学級に早期に在籍し、在籍の期間が長い子供の成績ほど成績向上が大きかった。

 また、少人数学級の効果は、非都市部の学校の白人生徒よりも、都市部に在籍している生徒やマイノリティーの子供たちの方に大きかった。

 また、少人数学級が終わり、普通学級に戻った四年次以降の成績を追跡した調査でも、少人数学級在籍の子供の成績の方が優位であり、また、少人数学級に早期に在籍した、また在籍期間が長い子供ほど、その効果がより長く持続しているというふうな結果が出ました。

 このスター計画以降、アメリカでもほかの州でも少人数学級というものを導入し始め、特に、そうした流れの中で、アメリカでは、小学校の低学年においては大体一学級十八人以下という学級規模をとるような州が多くなってきています。

 今紹介した、アメリカのそうした学級規模の縮小とか効果検証の議論をそのまま日本に持ち込むことはできないと思っています。といいますのは、これから説明しますように、欧米と日本では、学級の役割、機能には違いがあるというふうに考えています。

 欧米では、通常は二十五人前後ないしは三十人前後、低学年においては先ほど言ったように十八前後以下というふうなことがとられていますけれども、学級というのはあくまで教科学習の集団であって、しかも学級内の学習指導は個々の子供の個別指導が重視されるために、一人の教員が子供の学習指導上において個別指導が可能な人数として、概して少人数に編制されるという傾向が欧米ではあります。

 それに対して日本では、御存じのとおり、学級というのは、教科学習の集団であると同時に、生徒指導とか運動会、発表会等々の学校経営の基礎的な教育活動の基盤としてとらえられてきましたので、集団的な諸活動ができるように、相対的に大きな規模で編制されてきたという傾向があります。

 こうした生活集団と学習集団を一体とした学級経営を基盤に教科指導と生徒指導の双方の取り組みを行う日本の学校というのは、これまで、子供の社会性、そして均質な高い学力の育成に成功しているモデルとして海外からも高く評価されてきたというふうに考えています。

 前政権で実施された第六次、第七次の改善計画の策定の際には、学級規模の縮小か、それとも少人数指導の拡充かということが重要な争点の一つになりました。ただ、その当時、少人数学級の教育効果に関する実証的、実験的な研究というのは日本では乏しく、また、当時やられていた調査研究でも少人数学級の効果を確定できるデータということが脆弱であったということもあって、少人数指導の拡充方策の方が選択されたという経緯がありました。

 その後、そうした中で、第七次改善計画の中で拡充されてきた少人数指導というのは、確かに学力向上面では一定の成果を上げてきたというふうに現在でも評価されてきていますが、他方では、学校現場とか地方の方からは、学力の向上だけではなくて生徒指導上のさまざまな諸問題の改善には、やはり少人数指導のみでは不十分であるという認識も生まれて、その後、地方の方では、小一プロブレム、中一ギャップ、不登校等々の生徒指導上の諸問題への取り組みも視野に入れて、単費、また国の加配の活用による少人数学級の導入を地方が国に率先して進めてきたという経緯があります。

 少人数学級を導入してきた多くの都道府県は、その教育効果の検証を現在も継続的に進めてきていますけれども、学力の向上の面だけではなくて、不登校や欠席児童生徒数の減少など、生徒指導面でも効果のあることが報告されています。また、ようやく日本でも少人数学級の教育効果に関する実験的な調査研究も少しずつ取り組まれてきておりまして、例えば十九年、平成二十年に実施された国立教育政策研究所が中心になって行った実験的な調査研究でも、少人数学級が、学力面でも、また、学校生活適応、生活態度育成の面でも一定の効果があるということが検証されています。

 以上のように、学級づくりを基盤に教科指導と生徒指導の双方の取り組みを行って、子供の社会性と均質な高い学力の育成に努めてきた日本の学校ですけれども、そうした学級づくりを通して双方の取り組みを行う日本の教育活動というのは、御存じのとおり、その分、教員に多様な能力とその開発を求めてきますし、また、教員の業務内容も多様にならざるを得ない。そのために、教員の超過負担が生み出されるというふうな一因にもなっております。

 また近年、家庭、地域との連携協力といった新たな課題、また、学校評価とか情報公開などの学校経営上の新たな取り組み等々で、教員の業務内容は従来と比べてはるかに増大してきています。また、児童生徒や家庭、地域の変容の中で、学級集団の指導、経営というのは、従来と比べて極めて難しくなってきていますし、もう一方では、新教育課程にもありますとおり、個に応じた教育、創造性の育成など、従来の一斉授業ではカバーできない新しい学習、教育指導の要請も高まっています。

 こうした日本の学校の教育活動と教師の業務の特徴を考えるならば、学級編制標準の引き下げというのは、アメリカ、ヨーロッパなどと比べて一層切実で重要な課題としてとらえられる必要がありますし、学級編制標準の引き下げを図るということは、日本の学校の教育活動の基盤である学級づくりの質的な向上を図ることができると考えます。

 なお、学級規模の縮小というのは、そういう意味では学級経営、学級を基盤とした教育活動を強化することになるわけですけれども、個別的な問題にはやはり個別的な対応が必要です。学級規模の縮小と同時に、個別的問題に迅速に対応できる加配教職員の定数改善も同時に図っていくことが大切であるということも指摘しておきたいと思います。

 もう一つ、今回の国の学級編制標準の引き下げに関係して、少人数学級を先行して進めている道府県の財政負担が国の三十五人学級化で単に国の負担金に置きかわるだけで、都道府県における改善の効果は限定的ではないかという疑問の声も出されています。

 ただ、そうした疑問に対しては、さまざまな調査データを見ると、それはあくまで一つの危惧としてはあるけれども、決して都道府県のこれまでの少人数学級、少人数指導の取り組みを抑制し、後退させることにはならないということがわかってきます。

 例えば、きょう紹介しますのは、ここに日経グローカルという、日本経済新聞社の産業地域研究所が昨年十二月からことし一月にかけて四十七都道府県と十九政令市の教育委員会に行った少人数学級にかかわるアンケート調査の結果が掲載されています。

 これの一部をちょっと紹介しますと、教育活動の上でこの間成果の上がっている取り組みは何かと聞いた質問については、三分の一強の自治体が少人数学級というふうに答えています。いろいろな項目の中では、少人数学級というのが効果の上がる施策としてトップとして上がっています。

 また、今回の小学校一年生での三十五人学級化については、多くの自治体、例えば他学年でももっと早く実施してほしいというのが三十四自治体、既に実施しているが、国が人件費を負担してくれるのがありがたいというのが十七自治体と、高く評価しております。国が一年生の三十五人学級をやっても実態は変わらないとか、ほかにやることがあるというふうな回答は、それぞれわずか一自治体ずつにとどまっています。また、財政負担は厳しいけれども、少人数学級・指導を今後とも続けたいと回答している自治体が三十八自治体にも上っています。

 こうした非常に簡単なデータですけれども、こうしたデータを見ますと、国の三十五人化によって、これまで進めてきた、都道府県が先行してきた少人数学級等々の取り組みが後退するというふうなことは、どうしてもこの調査データから読み取ることはできません。

 やはり、今必要なことは、国が明確に学級編制標準の引き下げについての計画を提示することであって、都道府県は、そうした国による明確な改善計画を見据えて、地方の実情に応じた独自の改善計画や教育条件の整備が可能になると考えます。

 特に、今回の学級編制の見直し、定数改善の計画というのは、一面では児童生徒の学習条件の改善につながるんですけれども、もう一方では、これは各都道府県における教職員の需要供給を規定するものです。今後十年間で現職の三分の一が入れかわる時期でありますし、また、近年、全教員に占める非正規の教員の割合が一五%を超えて、七人に一人が非正規の教員になっているという状況があります。

 こうした中で、やはり国が明確な改善計画を提示することによって、各都道府県が計画的な教職員の採用とか人事管理に取り組めるような環境を整えていくということが国の重要な責務ではないかと考えております。

 最後、今回の義務標準法の改正案に直接関係することではないんですけれども、三月十一日に起こりました東日本大震災で震災に遭われた県、市町村、学校に配慮した教職員定数の配置や加配を早急に検討していただければと考えます。

 震災に遭った児童生徒へのケアにとどまらずに、御自身も震災に遭いながら地域と生活の復興に当たっている教職員も多いと聞いております。被災地の県、市町村や学校に対しては、加配だけではなくて、基礎定数の面でも思い切った配置を検討していただきたいと思いますし、また、ほかの地域から、教育委員会の事務局職員とか教職員が支援とか教育ボランティアで被災地に行けるような、さまざまな措置等々も検討していくことが必要ではないかと考えています。

 以上、簡単ですけれども、私の意見として述べさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、宮崎参考人にお願いいたします。

宮崎参考人 おはようございます。ただいま御紹介を賜りました宮崎でございます。

 本日は、この文部科学委員会で意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案に関しての私の意見を申し述べさせていただきます。

 私は、東京都の養護学校の教員、教頭、校長として勤務をした後、東京都の教育委員会で教育行政、人事行政を主に担当いたしましたが、そこを経験した後、再度、学校現場に戻りまして、校長として全国の盲学校、聾学校、養護学校、現在の特別支援学校でございますが、そこの校長会の会長を務めました。そのような観点から、現場のことについて申し上げさせていただきます。

 まず、少人数学級を進めることの重要性についてお話を申し上げます。

 近年、インクルーシブ教育システムの構築をしていくということが世界的な潮流になっております。これは、多くの国々が国際化あるいは多民族国家化するに伴いまして、従来から進められてきました障害のある子供の教育だけではなくて、移民ないしは国籍の違いなどからその国の標準語が使えない子供たちが多数に上るというようなことが出てまいりまして、従来の、それぞれの国の教育制度上で完全に取り出しをして別指導するということが適当とされた子供たちを、できるだけ一般の子供たちと同じ学び場で同じ教育を受けられるようにしようというような動きが出てまいったということでございまして、まずその点を押さえておきたいと思います。

 日本でも、障害のある子供について、子供一人一人の障害の状態に応じて教育が受けられるようにするために、特殊教育から特別支援教育への転換が図られまして、平成十九年度から本格的なスタートをして、四年が過ぎようとしております。また、障害のある子供が、障害のない子供たちと交流及び共同学習を積極的に進めていくということが行われるようになっております。

 特に、小学校、中学校で新たな対応が求められるようになったものとしまして、学習障害、LD、注意欠陥多動性障害、ADHD、高機能自閉症といった、いわゆる発達障害のある児童生徒への対応が、これまでの視覚障害、聴覚障害、肢体不自由といった身体障害や、あるいは知的障害と異なり、これまで通常の学級の中で指導していくことが基本となっておりました。

 しかしながら、小学校やあるいは中学校の教員の間には、これらの子供たちの学習や生活上の課題に対して十分に対応できてきたかというと、甚だ心もとない限りであったと言えると思います。それは、これらのお子さんたちが知的なおくれはないとはいうものの、どう指導すればいいかといった戸惑いに加えて、指導に対する自信のなさなどからもたらされたものというふうに考えられます。今日、学校現場での指導、支援のあり方全体の見直しが必要であると今感じております。

 私が養護学校の教員、教頭、そして校長、さらには東京都教育委員会にいたとき、こうした発達障害のある子供たちのための指導、支援のための取り組みも努力をしてまいったつもりではあったのですが、小中学校では数多くの課題への対応に追われまして、これらの子供たちに対する指導、支援という点で、教員一人一人に十分な余裕がなかったのではないかというような印象を受けております。

 ところで、文部科学省の調査によれば、発達障害のある子供は通常学級に六・三%ほど在籍をしているということでございます。四十人学級ならば二・五人、三十人学級ならば一・九人、それぞれの学級にいることになります。四十人学級なら三人在籍している学級ができる可能性が高くなります。一人の教員だけで、そのような子供たちに対して十分な教育支援を行うことは大変難しいと考えられます。

 そのために、まず早急に、四十人学級という、国際的に見ましても比較的規模の大きな学級規模ということになります。先ほど小川参考人からお話があったとおりでございますが、少人数学級化を進めることで、教員が子供一人一人への目配りができることで指導の充実や保護者との話し合い等の余裕も生まれてくるということができ、まずはそのことが重要ではないかというふうに考えております。予算上の制約もあろうかと思いますが、まずは三十五人学級から始めるという今回の改正案には、基本的に賛同をいたします。

 その上で、私といたしましては、さらに一歩先を目指して、三十人規模学級程度を目指していただきたいというふうに考えております。

 次に、通級指導の充実という観点からお話を申し上げます。

 今まで申し上げましたことに加えまして、発達障害の子供たちが受けている教育の一部を、通級指導といった形で、取り出して効果的に教育を行うための教員加配措置もまだまだ足りておりません。これまで先生方の御努力、政府の御努力によりまして、平成十八年以降、発達障害のための通級指導の担当教員をふやしていただいておりますが、非常によくやっていただいているとは思いますけれども、残念ながら絶対数が足りておりません。加配があればあっただけ各都道府県は使いたいといった状況にあるというふうに思っております。

 小学校、中学校のすべての学校で通級担当教員一人いることが望ましいというふうに考えております。できるだけ速やかに多くの学校に通級指導教員の加配がされることが望ましいというふうに考えてございます。

 次に、特別支援学校の役割についてお話を申し上げます。

 特別支援学校は、学校教育法改正に伴いまして二つのミッションを持つことになりました。第七十二条の特別支援学校の目的に加えまして、七十四条によりまして、小学校、中学校等における障害のある児童生徒の教育に関して助言、援助をするという重要な役割を担うことになっております。特別支援学校のセンター的機能と呼ばれるものでございます。これは、特別支援学校が、特別支援教育コーディネーターを中心に大学や教育研究機関、地域の関係機関と連携して、小学校、中学校等へ実施している助言、援助の機能でございます。

 この助言、援助機能の充実のために、現在、特別支援学校における特別支援教育コーディネーターのための加配措置が進められているところと承知しておりますが、まだ、すべての特別支援学校への配置はできておりません。

 小学校、中学校等における障害のある子供たちに対する教育は、今後ますます充実させていく必要があります。小学校、中学校等において、障害のある子供たちに対する教育の充実を図るため、特別支援教育コーディネーターが置かれておりますが、専任ではなく、学級担任と兼務となっております。

 各小中学校におけるこれらのコーディネーターを支える仕組みとして、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターがセンターとして相談、助言に当たります。

 さらには、今後、先ほど申し述べましたようにインクルーシブな教育が進み、地域の小中学校に特別な支援を要する児童生徒がふえていくとすれば、それをサポートするために、特別支援学校のセンター的な役割はますます高くなり、この特別支援教育コーディネーターの役割、業務量は極めて大きくなると思われ、一層の加配措置が必要になってくると思います。すべての特別支援学校への特別支援教育コーディネーターのための加配措置を望みたいと考えております。

 最後に、特別支援学校の大規模化についてお話を申し上げます。

 特別支援学校は、現在、小学部から高等部まで、いずれも増加傾向にあります。特別支援学校の大規模なところは、百名を優に超える教職員を抱えている学校が少なくありません。このような大規模な学校を管理するためには、副校長や主幹教諭を複数配置することが必要と考えております。

 さらに、特別支援学校の養護教諭については、現在二区分しかなく、児童生徒数が六十名以下で養護教諭一名、六十一名以上で養護教諭二名となっております。これらについても、大規模校がたくさん出ている現状、さらには、児童生徒の障害の状態の重度重複化している現状からも、充実が図られることが重要と考えております。

 こうした管理職、養護教諭の配置にもぜひ配慮いただければというふうに思っております。

 今回の法律案とは少し違ったところも申し上げましたけれども、私からは、特別支援教育の観点から、必要な教員定数や加配措置について述べさせていただきました。

 最後に、今回の大震災に遭われたたくさんの教育関係機関、小学校、中学校、高等学校で大変苦労されている方々、先ほど小川先生からお話があったとおり私も考えてございまして、ぜひ、そういった学校への支援を重ねてお願い申し上げまして、私の話を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、松田参考人にお願いいたします。

松田参考人 御紹介をいただきました東京都教育委員会教育庁次長の松田でございます。

 本日は、このような場での陳述の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律、いわゆる義務標準法の改正法案について、東京都教育委員会の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず第一点としまして、小学校第一学年の三十五人以下学級についてでございます。

 私どもは、教職員定数の改善は行うべきという立場でございまして、この間も、さまざまな場面で国に対しても教職員定数の改善を要望してまいりました。多様な教育課題が山積している学校現場におきまして、教員がより多くの時間に子供と向き合う環境をつくることができるよう、教職員定数を改善することは非常に重要な課題だというふうに考えております。

 特に、小学校入学直後の時期は、その後の学校生活を送る上での基礎固めの時期でございまして、また、最近の事情で申しますと、それぞれの生活環境等の違いから個別の指導が非常に重要になってきておりますので、いわゆる小一問題を予防、解決することは喫緊の課題だというふうに考えてございます。

 東京都の直近の調査におきましても、一八・二%の学校でいわゆる小一問題が発生をしているという調査結果がございます。

 そういった状況にかんがみまして、都においても、今年度から独自の措置といたしまして、小学校一年生、二年生そして中学校一年生の学級編制の基準を三十九人、三十八人、三十七人と年を追って順次引き下げまして、対応する措置をとっているところでございます。

 そういった意味で、今回、小学校一年生において三十五人以下学級という案については、都の施策と一致するものだというふうに思っております。

 問題は、その事柄についてだれがどのように実現をしていくかということだと思っておりますけれども、そういう意味でいえば、地方の立場で申し上げれば、地方が困らないように、財政負担を含めて国の責任で実施をしていただきたいというふうに考えております。

 まず、人件費の原資につきましては、純増で確保していただきたいと考えております。今回は、原資の約半分は少人数指導の加配の転用で確保されておりまして、この部分は定数改善効果が実質的にはないのではないかというふうに考えております。結果として少人数指導の後退ということが起きれば、これは非常に問題ではないかと考えてございます。

 したがって、加配定数の削減は避けるべきだというふうに考えてございます。

 文科省は当初、振りかえる加配定数の千七百につきまして、小学校一学年における少人数学級への転用数相当というふうに私どもも説明を受けていたわけでございますけれども、その後、結果としては、全国一律の削減率を全都道府県に適用するという方針転換がございました。

 その結果といたしまして、東京都においては、少人数学級への転用を全く行っておりませんけれども、九十六人の加配定数が削減されるという結果になってございます。

 東京都においての少人数指導は、ほぼすべての学校、九〇%を超える学校において少人数指導が行われておりますけれども、その内容は、ほとんどの学校で小学校三年生から六年生までの算数の授業での少人数指導が実施されております。一部小学校二年生で行われておりまして、小学校一年生については非常にレアケースな状態になってございます。

 したがいまして、少人数指導の加配定数が削減されますとどこに影響があるかといいますと、小学校三年生から六年生までの少人数指導が実施されなくなって、そのかわり小学校一年生のクラスがふえるという結果になってしまいます。これは、少人数指導の効果は私ども非常に大きいと思っておりますので、こういったことがないようにぜひ考えていただきたいというふうに思っております。

 そもそも、教員加配につきましては、その必要性や効果についても極めて大きいものでございまして、今申し上げました少人数指導のほかにも、理数教育の充実、あるいはいじめ、不登校への対応、障害のある児童生徒への対応など、こういった問題については、柔軟な教員加配による対応が適当だと考えております。

 したがって、繰り返しになりますけれども、加配定数を削減することは避けるべきでありまして、その削減分を基礎定数の充実に振り向けることは、これは、その限りにおいては実質的な内容が乏しいのではないかと考えてございます。

 それからもう一点は、小学校低学年の児童は人間関係形成力が未熟であり集団の維持が望ましいことから、小学校一学年から二学年への進級に際して、これはクラスがえは好ましくないと考えております。少なくとも小学校二学年までは、一たんつくり上げたクラスの集団については、継続してこれを措置すべきだというふうに考えております。

 先ほど、東京都がことしから独自に小一問題、中一ギャップに対して加配を行いましてクラス規模を縮小しているということを申し上げましたけれども、私どもは、小学校一年生と二年生を見通したものとして実施をしております。

 それからもう一点は、生活集団としての機能を重視いたしまして、二十人以下の学級をつくらないということを条件としております。さらに、各学校、校長の自主性を重視するという立場から、学級を分割するのかあるいはチームティーチングで行うかの選択はそれぞれの裁量に任せる、こういった内容で東京都はことしから実施をしているところでございます。

 次の論点でございます学級編制権限の区市町村への移譲について意見を申し上げたいと思います。

 学級編制は、結果として学級数が固まってくるということになりまして、学級数が固まれば、それに伴って教職員の定数が固まります。それに伴って、給与等人件費の負担が生じてまいります。すなわち、学級編制権限は、この定数、給与負担、人件費負担等と一体のものだという性格を持っているというふうに考えております。

 義務教育に関しましては、国の責任で機会均等、水準確保を配慮すべきだというふうに考えてございます。

 でありますから、区市町村間の財政力等の格差、これが発生、拡大しないようにこれは十分に配慮すべきであろうというふうに考えております。

 それから、都道府県は現在も区市町村や学校の意見を十分聞いて対応しておりますけれども、教職員の適正な配置のためには、区市町村や学校の実情がより実質的に反映されるそういった対応が必要だろうというふうに考えております。

 それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、行き過ぎた小規模学級、これを防ぐための措置を国としても何らかの形で講ずるべきではないかというふうに考えております。

 学級は、先ほどもお話がありましたけれども、学習集団という側面と、それから生活集団という側面がございます。学習集団という側面も、それも、個の状況に応じた学習指導と、それから、例えばよく言われますけれども、チームプレーあるいは集団討論等のような集団的な教育活動もございます。一方で、子供同士の関係、これも非常に重要でございまして、今非常に問題になっております、子供たちの社会性をどう身につけさせるかといった観点でいえば、子供同士の関係、これには、やはり一定数の規模の学級規模が必要なのではないか、こんなふうに考えているところでございます。

 それから、政策の決定時期についてでございますけれども、これはぜひ早期に行っていただきたいというふうに考えております。

 法案が三月末までに成立しない場合には、四月当初の学級編制は現行法に基づき行わざるを得ないと考えております。現状におきましても、先行きが不透明のため、区市町村と学校では当惑が広がってございます。

 また一方、教員採用選考については前年度の秋に合格発表をしておりますことから、今回のように前年度末に事業化の成否が判明するという状況は、これはやはりかなりイレギュラーではないかというふうに思っております。

 東京都、区市町村、学校のいずれも、教員配置や教育課程の編成など、それぞれの教育施策や学校運営計画を立案する段階では国の方針が決定しておらず、先を見通した教育施策や学校運営計画を立案できません。ぜひとも、先々が見通せるような内容の措置を講じていただきたいというふうに切に御要望をいたします。

 以上、簡単でございますが、東京都の意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 次に、谷井参考人にお願いいたします。

谷井参考人 おはようございます。茅ヶ崎の教育長をしております谷井と申します。

 私はもともと学校の教員をしておりましたので、学校の現場に近い立場からきょうはお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 三十五人学級ということにかかわってのお話を前段で申し上げて、時間がありましたら、その他の部分についてもお話をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、教育委員会で実際に学校の方に足を向ける部分が多いです。先生が一人で多くの子供たちの学習をきちんと保障していくということが、以前に比べて非常に難しくなってきたなということを実感しております。これは、ある見方をすると、教師の指導力が落ちてきたんじゃないかという見え方もあるかなというふうに思います。

 しかしながら、私は実際に学校の現場を経験した者として見ていきますと、大変子供が難しくなったということの方が実感です。まず、落ちつきがなかなか保てない。それから、ちょっとしたことで怒る子が多いです。また、キレたり、キレると怒るとはほとんど同じというふうに思いますけれども、それから、特に低学年を中心として、思ったとおりにいかないとパニックになる子供も非常に多い状態です。

 そういう中で、一つの学級、例えば三十五人なり四十人の子供たちすべての学習をきちんと保障していくことが大変難しい状況になってきたなということをまず実感をしております。

 それで、教師が子供の学びをきちんと保障していくためにまず一番大事なことは、三十五人いれば、三十五人の子供たちの状況を一つの授業の中できちんと見えていくことが大事だろうというふうに思っております。

 それでなければ、一斉授業といえども、単に三十五人の子供たちを相手にただ授業を進めればいいかということではなくて、一人一人がきちんと見えた上で一人一人にきちんと応じた形の授業をしていかないと、授業自体が成立しないし、子供にとって学びが成立していけない状況があるというふうに思っております。

 実際に学校の現場では、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、今までの加配の先生を使って、低学年、とりわけ小学校一年生は三十五人学級が実現している状況は現実には多い状況です。

 本当のことを言いますと、もし四十人の学級で授業がきちんと成立していれば、その加配の先生は担任じゃない方が、学校経営上も、それからあと学校の教員のいわゆる庶務的な忙しさも、実は、担任じゃない教員が多い方が軽減されるという状況が現実にはあります。さまざまな庶務的な、保険にかかわるいろいろ事務であるとかそういったものを含めて、その担任じゃない教員がそういったものを一手に引き受ける方が、本当は担任が子供にきちんと目が行くという状況が保障できることも、ある意味では、逆説的ですけれども、あるんですね。

 ですが、全国の学校の中で、そういったいわゆる加配の先生を使って三十五人学級のような少人数学級に充てていることの方が、実はもうほとんど現実的には多い。それは、多少の忙しさがあったとしても、きちんと少しでも授業が成立する状況をつくっていきたいという気持ちのあらわれではないかなというふうに思っております。少しでも子供の数がある程度少なくなれば、子供一人一人もより見えやすくなる。

 ですから、そういった迫られている選択の中でそちらを選んでいるという部分があるのではないかなというふうに私は感じております。

 そういう意味では、四十人の学級よりも三十五人の学級の方がより質の高い学習または授業を進めていくことができるというふうに、現場の先生方も、または管理の責任のある教頭、校長先生も、実感として持っているのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、小学校の低学年、一年生だけではなくて、これからも、三十五人学級または三十人学級が多くの学年の中で、そしてまた中学校の中で実現していくことが、私は、ベースの取り組み、子供たちの課題を解決する最もベーシックな取り組みとして大事であろうなというふうに思っています。

 しかしながら、同時に幾つかのことをまた考えなければいけないというふうに思っております。

 一点は、先ほど冒頭に申し上げました教員の資質の向上です。

 これは決して低下しているということでは私はないというふうに思っていますが、しかしながら、三十五人であったとしても三十人であったとしても、その三十人の子供たちの学習をきちんと保障していくための能力というのは、より以前よりも非常に高い能力が要求されている状況だというふうに思っていますので、そういう意味では、先生方の資質をきちんと向上させていくという取り組みが同時に必要であろうというふうに思っています。

 先生一人一人のいわゆる指導の技術であるとか指導力が高まることによって、多くの子供であっても、ある程度引きつけていく授業が当然ながらできるだろうというふうに思っております。

 それから、三十五人の学級または三十人学級が実現すれば、それだけでそれでは多くの課題が解決するのかということですけれども、もちろん、ベース的には多くの課題が解決することへつながるというふうに思いますが、しかし、規模を小さくしても、実は授業が成立しないことは幾らでもあります。

 先ほど特別支援のお話がありましたけれども、例えば学級の中に発達障害のお子さんは、文部科学省の調査では六・三%というお話が先ほどございました。私、茅ヶ崎の中で、これも医学的なきちんとした判断ではありませんけれども、いわゆる発達障害というお子さんがどれぐらいいるかということでちょっと簡単な調査をしたところでは、国の六%よりは少ないのではないかというふうに先生方は思っています。

 しかしながら、個別の特別な配慮をしなきゃいけない子供はむしろ六%よりも多い。ですから、八%ぐらいのお子さんは、本当に個別な対応をしていかないと学習が成立しにくいという、発達障害というふうなことがはっきり言えるかどうかは別として、八%ぐらいのお子さんについては、かなり個別の支援が必要であろうというような実感を持っているということでございます。

 ではどうすればいいかということですけれども、一斉授業の中で、例えば、発達障害であるとか、または特別に支援の必要なお子様がいるときにはどんな対応が一番いいかというと、だれか一人がその子についていてあげると随分違います。非常に落ちつきがない場合も、その落ちつきのない状況にちゃんと対応して、場合によっては、話をちょっと聞いてあげたりとかちょっと目先を変えてあげたりして、そして、ちょっと落ちついた段階になったらまた授業にちゃんと戻す。教室の中、同じ空間の中で、いわゆる全体を見る先生と同時にその個別の子供へ対応する方がいると、随分学習の状況が違ってきます。

 茅ヶ崎では、市の単独の事業として、市単としてふれあい補助員という制度を設けておりまして、全部で茅ヶ崎は小中学校合わせて三十一校ありますが、主に小学校、十八校でございますが、その十八校の小学校に百人ほどのふれあい補助員を配置をしている状況でございます。一校四人ぐらいのふれあい補助員さんがいる状況です。

 そうしますと、一つの学級の中で先生が一人一人の様子を見ながら授業を行う中で、そして、どうしても落ちつかない、またはパニックになっちゃったお子さんに対して、ふれあい補助員さんがそばについていてあげて、その子に少し落ちついた状況を取り戻して、先生こう言っていたよねというようなお話をして、また授業にその子供の集中力を戻してあげるというようなことをしております。

 今、茅ヶ崎では、そのふれあい補助員をもうはがせない状況です。要するに、いないと本当に授業が成立しない状況に対して、逆に、教室の中に一人でもそういう方がいるだけでも随分違ってくる。

 これは、必ずしも教員免許を持っていなくてもいいというふうに私は思っております。茅ヶ崎の場合は、教員免許を持つことが望ましいですが、そうではなくても、子供の面倒をきちんと見てくださる、そしてまた、年に数回の研修を行って、発達障害についてのきちっとした理解を持って子供に接して、そしてそばについていてくれる、そういうような方を茅ヶ崎では独自で雇用しています。こういったことも国の制度になっていくと私はいいなというふうに思っております。

 どんなに資質の高い先生がいても、やはり、特別の支援を必要なお子さんに対しての対応は難しいですね。一斉授業をやっている中で、どうしても立ち歩いてしまわざるを得ないお子さんがいる状況があります。昔だったら、怒ればいいんじゃないかというふうに思われる部分があるかもわからないんですが、実は、怒ってもそれは難しいです。どんなに怒っても、その子はもう体が動いてしまう状況なんです。その子自身も苦しんでいるんですが、動いてしまう状況があるというようなことの中で、そういった対応を現在しております。

 もう一点は、特別支援に関しての専門家のチームを持っています。そして、授業がなかなか成立しない、また、そういったお子さんに対して一斉の授業でどんな配慮をすればいいかということを、臨床心理士のかなり経験の豊富な方と実際の一つの授業の場面を見まして、そしてその後で、授業に関して、先生、また、場合によっては保護者も含めてアセスメントをしている状況です。

 例えば具体的な例でいいますと、どうしても、落ちつかない子供がいると先生は注意をしてしまうんですね。何とか君、席に着きなさいというような注意がどうしても多くなります。そうすると、その周りの子供たちも先生に協力しようと思って、何とか君、席に座りなよというようなことを周りの子たちが言い出すわけです。それは一生懸命先生に協力しようと思って言っているわけですけれども、実は、それは大きな課題をつくっていくことになります。

 それは、その発達障害のお子さんに対して周りの子たちが、いわゆるだめだというような見え方にだんだんつながってきやすいんですね。そしてまた、先生の協力をしているんだから、そういったことはだめじゃないかというような言い方をすることが正当化されやすい状況が生まれてくる。それから、その本人自身も、苦しいけれども体が動いちゃうような状況のお子さんがだんだん自信を失ってくるというようなことで、やはり専門家のチームで、そしてまた教員も一緒に交えてそういったことを見ていくと、では具体的にどうしたらいいかということがだんだん見えてくるわけです。

 目先を少し変えてあげるとか、その子のちょっとした発言の本当にいいところをきちんと取り上げることによってその子がまた授業に戻ってくるという、戻るというのはおかしいですけれども、気持ちが戻ってくるというようなことがあります。そんなようなことを毎日繰り返しているような状況です。

 中学生でもやはりそういった状況のお子さんがおりまして、例えば、自閉的な傾向が強い子はなかなか自分の思う気持ちを伝えることができません。それで、だんだん周りからいろいろなことを言われて、自分が思うことが言えませんから、ついに爆発してしまうんです。かつてはそういったお子さんが、爆発しちゃったということによって自分も後で非常に恥ずかしい気持ちになって、そして、例えば別室で、そういう爆発しちゃった後、落ちついていくようなそういった部屋を設けて、いわゆる爆発したことの罰みたいな感じでどこかの部屋で落ちつくというようなことがありました。

 しかしながら、そういったアセスメントを通して子供自身ともいろいろなことを話し合う中で、爆発する前に自分が自分をコントロールする仕方として、先生、今からちょっと隣の部屋で落ちついてきますというようなことが言えるようになってきたという例もありました。

 そういう意味では、一つの授業の中でさまざまな複雑なことが起きていますが、それをきちんと見て、専門家とそしてまた指導する教員が、協力しながらその状況をどうすればよくしていくことができるかということを話し合うようなそういったチームも、これも市単でやっていますけれども、できれば国の制度としてできてくるといいなというふうに思っております。

 ですから、あくまでも少人数学級は、すべての課題解決のベースとしても、非常に全体の教育の質が高まるという点でぜひ実現してほしいという部分でありますけれども、しかし、個々の授業を見ていくと、さらにそれだけではなくて、きめ細やかな、先ほど申しましたような対応が望まれるという部分があるのかなというふうに思っております。

 あと、先ほどの、子供の状況が落ちつかなくなったり切れたりということについては、茅ヶ崎では、例えば中学校の課題は、やはりよく見ていくと小学校の課題であり、小学校の課題をよく見ていくと、実は乳幼児期の課題であったりする場合が非常に多いというふうに感じております。

 ですから、いわゆる乳幼児期の子供への接し方または養育のあり方について、やはりもう少しきちっと光を当てていく必要があるのではないかということで、茅ヶ崎ではそこのところを、最もベースとしての研究として、保護者の方がいろいろな形で学んでいく機会が持てるといいなというふうに思っております。

 実は、さまざまな研究者の方のお話を伺う中で、私は、やはり、乳児期の共感性が育つというところがすべての教育課題または教育課題の解決につながるポイントだろうというふうに思っています。また、時間がありましたらその辺のお話もさせていただけるとうれしいなというふうに思います。

 時間ですのでこれで終わりにいたします。ありがとうございました。(拍手)

田中委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田良司君。

山田(良)委員 民主党の山田良司でございます。

 参考人の先生方におかれましては、ただいま大変貴重な、そして有意義な意見陳述をしていただきまして、まことにありがとうございました。

 まず初めに、今回の東日本大震災におきましては、被害に遭われた皆様そしてお亡くなりになられた皆様に心より哀悼の意を表したいと思います。また、救出に、復旧に御尽力されておられますすべての皆様に衷心より敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 一昨日でありますか、中学校の卒業式のテレビが放映されておりました。まだお母さんが見つからない子供が涙をこらえながら、でも前向きに頑張るという放映がされまして、私も大変感動したところであります。

 また、一昨日の春の甲子園開会式では、今の高校球児は、まさに十六年前、阪神大震災で被害に遭ったときに生まれた子供たちが今の球児である。何か不思議なあやのようなものも感じるわけですが、自分たちは皆さんのおかげで頑張れておる、今こそ日本国民、力を合わせて頑張っていこう、頑張ろう日本というような形で締めくくりました。本当に感動した次第であります。

 そういったことを見ると、本当に子供は宝だ、人が日本国の財産であるということを改めて感じるところであります。

 今回の震災を通じて、また改めて日本人のすばらしさというものも感じるところであります。こういった大災害、大震災に見舞われますと、ややもすると大暴動あるいは略奪があっても決して不思議ではない中で、本当に整然と、そして惻隠の情といいますか、こんな苦しい中でも、他を思いやる気持ちを持って助け合いながら耐え抜くというすばらしい国民性が内外に示された。本当に日本人というのはすばらしい国民だなということを、私も国民の一人として、強く、そして誇りに思うところであります。

 「疾風に勁草を知る」という言葉があります。強い風が吹いたときにこそ本当に強い草かどうかがわかる。ふだんは、生えている草も本当に強い草かどうかはわからない、大風が吹いて初めてその草が強いかどうかがわかるという有名な言葉がありますが、まさに日本国民は勁草であるということを改めて認識したところであります。戦後の廃墟、そしてオイルショック、阪神大震災、これまでも幾たびかの苦難を乗り越えてきた我が日本国民であります。この天から与えられた試練を日本国民全員が和の心でもって乗り切り、また新しい未来を切り開いていかなければいけないということを思う次第であります。

 さて、今回のこの震災を通じまして、学校というもののあり方、特に避難所としての学校というもののあり方、つまり、安全なところでなければいけないということが改めてまた認識もされました。これまで以上に学校の校舎における耐震というものを重視していかなければいけないということを痛感いたしました。

 また、これまでは行政の慣例として、こういった場合は原形復旧というものが一般的でありますが、今回の場合、仮に原形復旧をしたところで、同じ場所で同じように建てたところで危ないわけでありますので、改良復旧という視点の中でやはりもう一度町をつくり直さなければならないということも思います。

 さらに加えれば、この校舎における特に内装ですが、木質の内装というものをより以上に強化していく必要がある。これは子供の情操教育の面にもしかりでありますし、また自然教育という形においても、この日本の国産の木を使って再建していくという視点をぜひまた復旧において考えていかなければいけないと思います。

 公共の施設においてもしかりでありますが、私はちょっと残念に思ったのが、議員会館が新しく建てられましたが、内装においてもっと国産の木を使うべきでないかなと。なぜああいうコンクリートのものに、もっともっと内装において使うべきだ、決して木は弱いものでもありませんし……(発言する者あり)はい、わかります。

田中委員長 質問者に申し上げますが、参考人がお見えになっておりますので、当委員会の趣旨に沿って、今回の検討している法案と関連のあることを参考人にお尋ねください。

山田(良)委員 わかりました。今、これで終わるところですが、ただいまの校舎における、そして少人数教育におけるものと、今からちょっとこれはつながるところだったんですが、まことに申しわけありません。

 それでは本題に入っていきたいと思います。

 この少人数学級の効果についてでありますが、我が国の取り組みといたしまして、約五十年前ほどから五十人、そして四十年ほど前からは四十五人、そして三十年ほど前からは四十人という形の中で進められてきました。そして平成十三年におきましては、各自治体の自主性の中でさらに少人数というものの取り組みがされまして、徐々に徐々に、各一クラスにおいての少人数という取り組みがずっと今まで進んでまいりました。

 そして、その結果として、まさに不登校あるいは欠席の生徒の数が如実に減ってきたという現状があります。十年前は十三万七千人であったところが今は十一万九千と、確実に数の上で減ってきた。これ一つとっても、私は、少人数の取り組みというのは学校教育において大変有効なものであるというふうに言えると思います。それはその一つの大きな成果であります。

 その一方で考えたときに、一般的な現象として言われていることでありますが、これまでずっと少人数教育が日本において進んできた、この現状があります。その一方で、学力の面なんですが、二十年前、我が国が世界においても学力が大変すぐれておったというデータがある中で、学力が低下してきているという現実が指摘されています。現実としてあります。この反比例する現状というのをどのようにお考えであるかということであります。

 また、OECD三十二カ国の中において最もクラスの人数の多いのが韓国でありますが、韓国は、では学力が世界に比して劣っているかというと逆でありまして、大変学力の伸びておる国であるということも言われております。

 この少人数クラスへの推移と、そして学力の低下というこの反比例の現状についてどのように解釈されておられるか、あるいは分析されておられるかということを小川参考人にお聞きしたいと思います。

小川参考人 非常に難しい質問で、本来であれば、いろいろなデータ、実証的なデータを使ってお答えすべきかと思いますけれども、今手元にありませんので、おおよそのお話をさせていただければと思います。

 確かに、学級規模と学力というのはストレートに結びつくものではないというふうに私は思っています。つまり、その際、学力というのをどうとらまえるかによってもまた違うんですけれども、今御質問にあった、例えば韓国とか中国とか、あとはシンガポール等々のアジアにおいては、非常に学力が高い。しかしもう一方では、韓国なんかの学級規模というのは日本よりも非常に大きいわけですよね。

 そういうふうなことで相関についてどうかということですけれども、これについては、韓国、中国、シンガポール等々については、もう一方では背景として、いわゆる受験のプレッシャーというのがやはりかなりあって、そうしたものが全体的な学力水準というのをかなり高めているんじゃないかというふうに理解しています。

 もう一方、日本において、全体的に、従来の五十から四十五、四十ということで、学級規模が長期的なスパンで見れば減ってきているにもかかわらず、ここ十年程度、国際学力調査等々を見れば、やはり日本の学力は落ちてきているんじゃないか、その辺はどう解釈するのかというふうな御指摘です。

 一つは、やはり学力低下というのは、確かにいろいろな国際的な学力試験のデータを見ると全体的に落ちてきていますけれども、ただ、その詳細をきちっと見てみますと、それは子供全体の学力が低下しているわけではなくて、やはり、最近特に強調されているのは、学力の二極分解というふうなことが最も日本の学力低下の主要な要因ではないかということが指摘されています。

 つまり、従来、子供全体が、半ばぐらいの学力の子供たちが非常に厚くて、総体とすれば子供の学力というのは非常に均質で高い水準を持っていたわけですけれども、やはりこの十数年の経緯を見ていますと、その中位層が徐々に上位層と下位層の方に分解してきている、つまり、下位層の方が非常に膨れ上がってきている。そうした傾向が日本の子供の学力を総体として低めてきているというふうな、それがやはり主要な原因ではないかというふうなことが言われてきています。

 では、何で日本の子供の学力というのが二極分解を始めてきたのか。これはやはり、日本の社会経済の変化と密接な関係があるのではないかというふうに思っています。つまり、従来、国民総中流と言われていた時期から、明らかに、一九九〇年代以降のさまざまな構造改革の中で国民のそういう二極分解が進んでいますし、いわゆる生活保護層を含めて、そういう貧困層ないしは貧困層に近い層がかなりやはりふえてきている。そうした社会的な背景の中で、そうした学力の二極分解というのが大きな問題として顕在化してきているのではないかということです。

 ですから、そういう点では、御質問にあった、長期的なスパンでは少人数に確実に来ているのに学力が低下してきているというふうなところをどう説明するかというのは、今のような全体の構図の中で説明できるのではないかというふうに思っています。

山田(良)委員 ありがとうございました。

 私も、直接的に、少人数学級がゆえに学力が低下しているということは決して思いません。今言われたようなさまざまな要因の中でのことであり、直接的に今の話が少人数学級と結びつくということではない。これまでのゆとり教育等、やはりいろいろなさまざまな要因もあろうかと思います。

 また、教育というのは学力だけではない。心技体と言われますように、学校教育はトータルな人間としてのバランスをつくるところであり、健全な人間性を養う場であるということを考えたときに、やはり少人数教育というのはさらにさらに内容を濃くして進めていくべきであると私は思います。

 さて、次の質問でございますが、少人数といいましても、少な過ぎる人数という問題もあります。つまり、過疎地域における教育というものを御指摘させていただきたいと思います。

 例えば、一学年三人とか、そして何学年も一緒に授業をしなければいけないような自治体が日本じゅう数多くございます。そういう中で、今、各地域において議論されておりますのが、学校の存続かあるいはまた統合かということで、地域の大変な議論になるところであります。

 小学校というのはコミュニティーの核である、地域のよりどころであるという側面もありまして、その地域に住む人たちの大変大切な拠点であります。これがなくなるということはコミュニティーの崩壊にもつながり、ひいては限界集落というような問題にも発展し、これが地域主権の流れに逆行するという意見もあります。もう一つは、やはり教育である以上、ある一定の人数がなければ切磋琢磨できないんだ、統合はやむを得ないんだ、こういう両論の意見の中で、今、地域が大変議論の渦の中にあるわけであります。

 これにつきまして、どのような過疎地域における教育というものについてのお考えをお持ちか、宮崎参考人にお伺いしたいと思います。

宮崎参考人 過疎地域の教育ということについて、私は余り専門家ではないので十分お答えができるかどうかわかりませんが、地域住民にとって学校がとても大事であるというふうに今思っております。

 ただ、私は九州の片田舎の出身ですが、分校というのを抱えておりまして、本当に十数名の学校というのが存在していた地域でもございます。そのお子さんたちにとってやはり非常に重要な場所として存在するんだろうと思います。

 ですから、登校に関する距離の問題というんですか、登校時間のことなどを考えると、低学年、小学校の時期は、あるまとまりを持った学校が存在するということは大事なことだと思いますが、青年期の大事な時期は、ある一定の集団が保障されていくことが望ましいなというふうに思いますので、そういった点では、ある集団を保障してあげるような時期も必要だというふうに考えてございます。

 これは、地域がどういうふうに共存していくかということともかかわりますので、どのぐらいの規模が重要であるというふうな申し上げ方は、どうも私自身は申し上げられないところでございます。

 もう一つは、障害を持ったお子さんたちが地域で教育を受けていくというような視点からすれば、できるだけ近場で、地域の中で生活をしていくというようなことなども今後十分検討していかなければいけないというふうに思いますので、そういった点では、通常の学校と特別支援学校が地域の中で共存していくような仕組みなども含めて、やはり学校規模というのも考えていく必要があるかというふうに思っております。

 以上でございます。

山田(良)委員 ありがとうございました。やはり、この教育というものは一定の数が要るという御答弁でございました。

 実は私も一昨年まで岐阜県の山間地域の首長をしておりまして、特に、平成の大合併で旧五カ町村が一つになり四万人の市ができましたが、その中で全く小さな村がありました。そしてそこに二つの小学校があり、統合するかどうかという中でありましたが、保育園の統合というのはそんなには難しくないんですが、十四園を八園にして指定管理にするというようなこともしてきましたが、やはり小学校というのはなかなか難しいということがあって私もちゅうちょしておったんですが、実は、住民の皆さんの方から、ぜひとも統合してくれと。そして、ある一定の数がなければ子供たちの教育にとってよくないから、ぜひとも統合をということを、本当に今みずから、市民の方からわき出るような形で言われました。教育が大事なんだ、人が育てば地域は何とかなるというような声をいただきまして、まさにそうかなということを思ったところであります。

 地域主権においても、やはり子供が、そして人が財産であるということを改めて確信したところであります。

 次でありますが、谷井参考人のお話がございましたが、子供が難しくなってきたというお話がございました。これは本当に実感の中でそのように感じておられるか。

 といいますのは、子供の数がふえて、そして難しい生徒がそれにあわせてふえていくのならまだわかるんですが、少子化の中で、子供が減る中で難しい子がふえるということは大変我々国民にとっても気がかりなことだなと思うわけでありますが、そこら辺のところを、なかなかデータとしては難しいと思いますが、教える現場の実感としてそのように本当にお感じになられておるかということをもう一度お伺いしたいと思います。

谷井参考人 実感として感じております。それは、先生方の中にはいろんな場面を経験してベテランの先生がたくさんいますが、そういった方が今までの経験がなかなか通用しないという場面がたくさんあるという話を伺っております。

 ある意味では、ちょうど今は小学校は新採用の教員が大分多く入るようになってきましたので、その新採用の教員など新しい知見も含めてきちんとした、子供の見方も含めて、また授業の中でどんなことが起きているかをきちんと見ていくような学校での取り組みを進める中で、一人一人に応じた教育を進めるようにしているところでございます。

 ただ、先ほど言いました中に、非常に怒りやすい、要するに、うまくいかなくなると、それを爆発や、周りに対しての怒りとなってあらわれてしまうということが比較的多いというふうに感じております。

 これはある学者の方も、ここ三十年の中で、大人も含めて怒りやすくなってきているのではないか。例えば、いわゆる大きな社会不正に対しての怒りではなくて、身近な人に対しての怒りが非常に起きやすくなっている。三十年ぐらい前からというと、むかつくとかそういう言葉なんかがちょうど出てきたころ、それまで私は聞いたことがなかったんですが、もう一般的な言葉になってまいりました。

 怒りというのは、いわゆる自分の責任じゃなくて他人の責任だということがもとになって、他人に対して怒るというような状況になるという話を聞いたことがありますので、そういう意味では、自分を振り返るような機会というのがやはりなかなか少なくなってきているのかなと。

 そういった意味で、先ほどお話し申し上げましたように、幼児期の教育の基本になるというふうに言われているんですけれども、共感性をきちんと大事にして取り組んでいけるようになると、そういった大きな課題の解決につながっていくのではないかなというふうに思っています。

 ある学者の方は、知性は共感性を軸にして育っていくんだという研究成果を発表されている方がおられます。私は確かにそうだと思うんですね。学んでわかったとか、納得するということは実は共感性の一つであろうし、人の痛みを感じていくというようなことがもとになければ、学び自体が成立していかないのではないかなというふうに思っております。その辺のところを市の教育委員会としても、もっともっと深めていきたいというふうに思っています。

 以上でございます。

山田(良)委員 ありがとうございました。まさにそのとおりであろうと私も思います。

 今、小学生低学年、中学生も含めて、自殺とか、大変忌まわしい事態もあります。原因はいじめとか学校における疎外感とか言われておりますけれども、子供にとって一番つらいのは、だれからも相手にされないことと言われます。無視される、あるいは自分という存在に意味を見出せないというようなときが本当に、もちろん大人でもそうですが、大変つらいということであります。親が、そして先生が子供に対して一番かけてあげる言葉として大切なのが、大好きだよという言葉だそうでありますが、私は愛されている、ひとりじゃない、この人のためにもしっかり生きようということが一番大切な言葉、大好きだよという言葉だそうであります。

 特に、低学年、一年生なんかの場合は、少人数によるきめ細やかな授業を通じながら、本当に自分は大切にされている、もし親にそういう言葉をかけてもらえない子供がいるとすれば、かけてあげられるのは先生しかいない。先生がそういった子供に目を向けて、きめ細やかな授業というものを展開していく、教育指導というのを展開していく必要がある。そのために向けての三十五人以下学級の実現であると私は考えております。

 以上をもちまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、あべ俊子さん。

あべ委員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 まず初めに、東日本巨大地震に関しまして、お見舞いを心より申し上げます。また、今、被災地におきまして尽力されている皆様方、残されたその助かった命をもっともっとしっかり支えてあげようと御尽力されている皆様に、心から感謝を申し上げまして、私の質問をさせていただきます。

 今回、参考人の皆様におかれましては、非常にお忙しい中、お時間をいただきましてありがとうございます。

 皆様、四名の方々のお話を聞かせていただきまして、なるほど、そうだと思いました。特に、教員の方々の負担を軽減してあげなければいけない、教育を支える教員の方々の負担の削減をどのようにしていくかということだと私は思っております。そうした中、教育の質を上げていくためには、その削減が必須であるということは理解をしているところであります。

 先生方のお話をお聞きいたしますと、やはり教員定数の標準、この部分を変えていくべき、さらには加配もすべき、両者の方が非常に多いようにお見受けいたします。

 そうした中、四千人の教員をふやす中、どちらをとるかということにもなるわけでありますが、両方できればそれにこしたことはないという中にありまして、さまざま文献も読ませていただきますと、学級規模の縮小が財源投資の最優先事項かどうかということになるわけでありますが、このことに関しては疑問があるものも少なくない。投資する場合は、一律ではなくまず最初にやらなければいけないのは、先ほど宮崎先生がおっしゃいました、やはり低所得者層、さらには問題のある子供たちに対してその対象を絞っていくのがまず優先事項で、これが効率的ではないかという文献があるところであります。

 これに関しまして、宮崎先生、ぜひ御意見をいただけたらと思います。

宮崎参考人 今、あべ先生から御質問の趣旨は、低所得者層への配慮という考えはどうかということでございますが、確かに、先ほど小川先生からお話があったように、日本の社会が二極分解して、特に児童の中で学力差異が出てきているのが、従来は、能力の高いというか学力の高い層、それから中間層、下位層というふうに分かれていたのが、中間層が低学力層に引っ張られていっているという課題を指摘している文献が非常に多いんですが、そのあたりについて、確かに、課題を持っているお子さんたちに低所得者層が多いというような傾向があるという指摘はそのとおりだと思います。

 ただ、そこに対する配慮というのは、学校の中でさまざまな試みがなされてございまして、これに関しては先ほど来さまざまな参考人からお話があるように、加配の対応をもって対応するとか、あるいは学力の向上を旨とするTT加配等で補いをつけるということで対応をこれまでしてきているところでございまして、このことも視野に入れながら今回の学級定数改善というものが考えられているというふうに私は見ているわけですが、そのことも十分念頭に置きながら学校の中では対応すべきだというふうに考えております。

あべ委員 宮崎先生が特におっしゃいましたインクルーシブ教育ということでございますが、これは、国連の障害者権利条約の中で共生社会の実現をしていかなければいけないといった中にあるところで、加配ということは、標準ということの全国一律よりも、やはり本当に焦点を当てなければいけない子供たち、また特別支援教育の、また通級の子供たち、ここに対する加配という部分が私はまず優先されるのではないかというふうに思うわけであります。

 このことに関しまして、松田先生が加配定数削減はすべきではないというふうに明言をされたわけでありますが、その部分に関しまして、やはり加配がまずあるべきだということに関して御意見を松田先生からいただきたいと思います。

松田参考人 現在、学校現場におきましてはさまざまな教育課題がございまして、先生御指摘のような特別支援に関する課題も、今後この点に関しては、今現在、対象となる児童生徒の数が急増しているという状況もございまして、非常に重要な課題だと思っております。それ以外でも、よく言われておりますけれども、いわゆるいじめあるいは不登校の問題、あるいは体力が低下しているというふうな問題、規範意識が低下している、さまざまなことが言われております。

 それらの出方といいますか状況は、やはりすべて一律ではないわけでございまして、例えば、あるところでは平均から比べると不登校の発生率が非常に高いとか、あるいは、障害を持ったお子さんも、平均値は出ますけれども一様にいらっしゃるわけではないわけであります。

 したがいまして、限られた資源を有効に活用するという意味では加配措置というのは非常にすぐれたものでありまして、多様な教育課題に適切に対応していくという観点で加配の活用というのは不可欠だろうと思います。

 一方で、いわゆる基礎定数といいますか、今回の小学校一年生の問題についても、基礎定数化という方向でございますけれども、それも重要なんですけれども、そのことによってその加配が削減されるという事態というのは、これはいかがなものかというふうに私ども考えておるところでございます。

あべ委員 松田先生がおっしゃるように、私ども、党の方ではこの議論をずっと重ねてまいりました。特に文部科学部会の幹部会は、毎週、週に一回、二回と重ねまして、このことをどう考えるべきか、特に地方と都会の格差をどう考えるべきか、さまざまな子供がいる中、全国標準的にやっていくことの問題とどちらを優先すべきかということで、本当に議論を詰めてまいりました。

 そうした中にありまして、また、地方の問題を考えたときに、都会と地方が異なるという観点からお聞きしたいわけでございますが、特にここの教員の加配の部分で、専科の教員配置というようなことに加配をすべきではないかということを考えたときに、特に山間地区と都会における教員の確保の問題点は、私は大きく異なるんだと思っています。

 そうした中におきまして、茅ヶ崎の教育委員会にいらっしゃいます谷井先生にお聞きしたいわけでございますが、専科教員の加配という問題と、さらにはもう一つ問題がございまして、この都道府県の条例で定められている市町村立の学校の教員定数でございますが、やはり教職員の適正な配置には、市町村、学校現場の実情、これが実質的に反映されなければ、このことに関しての改正案、全く意味をなさない、問題になってはしまわないかと私ども懸念をするわけでございますが、このことに関しまして、谷井先生の御意見をお伺いしたいと思います。

谷井参考人 初めの一点目のお話でございますけれども、専科の教員の加配の件でございますね。

 学校の教員が、先ほど冒頭でお話ありましたけれども大変忙しいという状況の中で、専科の加配の先生というのは、その専門性を生かすということができると同時に、担任の負担を軽減するということにもつながるというふうに思っております。ですから、非常に大切な視点だというふうに思いますし、学校現場の非常に大きな課題を解決することへつながっていくものだろうというふうに思っております。

 それからあと、市町村または学校の現状を生かしての制度にしないといけないということでのお話、まさしく私はそのとおりだというふうに思っております。一律にすべてをやるのがいいかどうかということについては、もちろん私は若干疑問もあります。

 例えば、先ほどの前問者の御質問にもあったかなというふうに思うんですけれども、三十六人になったときに、十八、十八という学級編制が本当にいいのかどうか、そういったことも検討する必要があるだろうというふうに思っております。

 ただ、やはり学校の実情、例えば十八、十八の方がよい場合が間違いなくありますし、逆に、三十六の方がまたそれでやっていけるという状況も、子供たちの集まり方とか状況によって違うのではないかなというふうに思うんですね。

 ですから、そういう意味では、学校の裁量の自由度がきちんと保障されることが大事ではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

あべ委員 ありがとうございます。

 やはり、地域、地域によって、また学校、学校によって問題点は大きく異なり、これに対しての裁量権がしっかり与えられる加配措置ということが優先されるべきではないかというふうに私は考えるわけでございます。

 また、今回のいわゆる少人数学級に関しましてさまざまな意見が出ているところでありますが、いわゆる全国一律的にやっていく問題よりも、定数の算定方式を学校単位で変更する、さらには、カテゴリー別の加配の廃止、加配一括配分の学校の裁量権を拡大する、そういう視点が大切ではないか、さらには、徹底した権限移譲、自治体の教育長、学校長の責任の明確化、評価システムの確立などが指摘されている点でございますが、ここに関しまして、小川参考人、ぜひ御意見をいただきたいと思います。

小川参考人 まず、私も少しお話ししたいんですけれども、一つは、少人数学級か加配かという二者択一でどちらが有効かという話ですけれども、学校の現場を考えますと、基本的にはこれは対立するものではなくて、その二つが同時並行的に行われることで、それぞれの方策というのが非常に相乗効果を持ってより効果が上がるという関係にあるのかなというふうに思っています。

 確かに今、限られた予算の中でどちらが有効かというふうな問題セッティングをされていますので、特に地方の教育委員会の方に伺えば、現状でももう少人数学級というのが進んでいる段階ですので、加配を減らして少人数に振り分ける、つまり、地方にこれまで多く来ていた加配の分が減るということで、非常に抵抗感を感じられている方もあると感じています。

 ですから、率直に言いますと、今の限られた予算の中でどちらを優先するかというふうな問題のセッティングではなくて、もう少し文教予算をふやす中で二つの施策が同時並行的に進められていくような、そういう文教の枠組みをぜひつくっていただければというふうな強い希望、これが率直な学校現場の方々の思いではないかなと思っています。

 それとあと、今の学級編制の定数算出のあり方については、正直言って、これもいろいろ議論があるのは事実です。果たして今の学級規模をベースとした算定方式がいいのか、それとも児童生徒数をベースとした算定方式がいいのか。そのことによって市町村、学校レベルに定数を配置した場合に、どちらがより弾力的に学校現場の事情に応じた定数運用ができるか。その辺のところはかなりいろいろ議論がありまして、これはやはりそれぞれに功罪がありますので、ちょっと私の今の段階ではどっちがいいというふうなことは言いかねますけれども、ただ、今の標準法の全体の枠組みについては、検討する余地は大分あるのかなというふうに考えております。

あべ委員 小川先生が最初に今回の案に対して賛成ということをおっしゃっておりまして、先生の書かれました論文を幾つも見せていただきますと、同時にやるべきだというふうな論文が多く、さらには国庫負担に関しての御意見もさまざまな文献で拝見させていただいたところでございます。

 そうした中で、柔軟性、中長期的に、やはり学校の標準の人員に関しましては指標を出していかなければいけない。しかしながら、限られた財源の中で今回何をしていくかということに関しては、やはり単年度で出された予算に関して今何をすべきかという選択をしていかなきゃいけないわけでありまして、そうした中、地方から出ているこの加配措置、さらには、非常に問題点がある子供たちがどこにいるかということが必ずしも標準的ではないということを考えたときに、私は、中長期的に両方やっていくという小川先生のスタンスには全く異論のあるところではございませんが、しかしながら、今何をしなければいけないかということに関しては、やはり私ども練り上げてまいりました加配措置をまずとるべきではないかというふうに議論を進めさせていただいたところでもあります。

 そうした中にありまして、特に小川先生がおっしゃっている、生徒指導と教科指導を一体的に行う教育活動は三十から三十五人学級をベースとして、必要に応じて十五から二十人程度の少人数教育を合わせる方向が日本の教育活動の取り組みに適しているという御意見も論文の中で見せていただいたところであります。そうした中におきまして、人数の問題よりも学級集団の状態や雰囲気、人間関係が児童生徒の学級生活の満足度に大きな影響を与えるという分析もあるわけであります。このことに関しまして、やはりこれは人数だけの問題じゃなく、教員の質も含めた制度全体のものであると私は思っております。

 特に、こういう制度を考えていくときに、評価の仕方が三段階ございまして、すなわち構造の問題。それは、学校の教員の人数をどのようにしていくのか、学級の生徒の人数をどのようにしていくのか、そういうシステムとしての問題が一点目。次は、どのようにその教育を行っていくことによって質を担保していくのか、すなわち教育方法。

 教員の質の担保の方法、カリキュラムのあり方、学級運営のあり方全体も含めたこのプロセスという方法と、さらにはアウトカム。これは学力テストということであると思っておりますが、やはり学校の、また教育の質を上げていくときに、この構造としてのストラクチャー部分の人数にこだわる以上に、どういう教育が必要なのかというこのプロセス部分をもっと明確にしていかなければ、学力だけの結果を見て教育の質を語っていくのは大きな問題があるんだと私は思っております。

 これに関しまして、松田先生、御意見いただけましたらと思います。

松田参考人 先生おっしゃられるように、確かに学校における教育活動というのは、学力が非常に根幹をなすものではございますけれども、決してそれだけではございません。いわゆる体力の問題もございます。それから社会性をいかに身につけていくか、あるいは規範意識をどのように身につけていくか等々、さまざまな課題があるんだろうというふうに思っております。それらについて、必ずしも学級の数がすべての場面において、例えば小さければ小さい方がよいということでは決してないということは、この間のお話の中でもたくさん出てきているんだろうというふうに思っております。

 例えば東京都で申し上げれば、学力に関していえば少人数の指導がやはり望ましいというふうに思っておりますので、クラスの規模をさらに小さくした少人数指導を現在でもやっておりますけれども、これをもっと拡充していきたいというふうに思っておりますし、各区市町村の教育委員会等からもそういった声は私どももよく聞いているところでございます。

 したがいまして、あと、先生がおっしゃられたような教員の質、指導力等々の問題も大変重要な問題でございまして、そういったものがいわば重層的に重なり合って教育活動のあり方を考えていかなければならないものだろうというふうに思います。

あべ委員 ありがとうございます。

 あと、参考人の先生方のお話を聞いていて、教員の質ということを明確におっしゃったのが、茅ヶ崎市の教育委員会の教育長でいらっしゃいます谷井先生でいらっしゃいました。

 このことに関して、教員の質、特に今、人数の話をしているわけでございますが、しかしながら、学級の定員が必ずしも教育の質に直結するわけではないという中にありまして、先生がお考えの教員の質ということに対して、もう少しコメントをいただけたらと思います。

谷井参考人 教員の質について御質問いただきました。

 教員の質を語るときには、教員が何を目指さなきゃいけないかということがまず前段にあるというふうに思っております。

 御承知のとおり、教育の目的は、教育基本法にもうたわれておりますけれども、一言で言えば、人格の完成というふうになっていると思います。では、日常の授業の中で人格の完成が本当に図られているかどうか。例えば算数であるとか理科であるとか、そういった学習が、本当に子供自身の物の見え方とか世界観とか人生観につながるようになっているかどうか。そこへきちんとつなげていかないといけないだろうというふうに私は思っております。

 世界の学力調査の中でも、日本の子供たちは落ちてはきているけれども、比較的まだまだトップグループに近いところにいる。しかしながら、中を見ていくと、非常に子供たちが学習に対しては意欲を失っている状況です。点はとれるけれども好きじゃない、学ぶことを愛していないという状況です。それはやはり非常に問題があるというふうに私は思っております。

 子供たちが、これから本当の意味で生きていく力、または競争に勝っていく力、これは、競争に勝つためだけの学習をしたのでは私は競争に勝てないと思っているんです。それから、未来に自分がこうなりたいというだけの学習をしたのでは自分の未来が明るいものにはならないと実は思っているんです。それは、例えば、自分が今学習すること自体が本当に楽しいという状況になっていかないと、結局ははがれてしまうんですね。すべての知識やまたは学習がはがれていってしまう、何もわからなくなる、そのときは点はとれたとしてもですね。

 実際、授業をやっていて、子供からの質問で、いろいろな考え方などを話をしますと、先生、早く解き方を教えてよ、こう言うんですね。それはもう、子供の学習が手段だけになってしまっている、学習することが楽しいのではなくて、何かをするための、例えば高校に受かるためだけの手段になっているような状況があるかなと思っているんです。

 そういったことを改善していく、そしてその目標のもとに、実際の授業の中でどんなことが子供に起きているかということをきちんと見ていくことが、実は教員の資質を高めるということにつながっていくというふうに私は思っております。

 以上です。

あべ委員 ありがとうございました。

 おっしゃるとおりでございまして、子供たちが希望を持って楽しく教育を受けることができる、そのためには、教員だけが苦しくて希望が持てないという状態はよろしくないでございますし、やはり学生が教育に対しての満足度を上げていくためには、教員の満足度が必ず連動するものだと私は思っております。

 また、小川先生がおっしゃったように、中長期的には、OECDと並ぶような教育に対する予算を日本がつけていく必要は私はあると思いますし、そのためには、義務標準の法として学級の定員を引き下げていく、すなわち三十五人などにしていくということはしていかなければいけないことだと思いますが、財源が限られる中、どちらの部分が、地方、またその必要性の高い発達障害の子供たち、軽度障害児童に対する対応、この部分を考えていったときに何をしなければいけないかといったときには、やはり加配措置、これが重点的にされるべきであると私は信じております。

 さらには、やはり現場のことを考えたときに、都道府県が主導的な地位ということをとっていくことではなく、市町村や学校現場の実情が実質的に反映される、これを私は何よりも優先するべきだと思っております。

 時間となりましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 きょうは、四人の参考人の方々には、急なお願いにもかかわらず、やりくりしていただきここに御出席いただき、また、大変有意義なお話を伺えましたこと、心より感謝でございます。

 小川先生、宮崎先生、何回も私も勉強会でともに勉強させていただきましたが、きょうもまた新たな問題提起をいただいたような気がいたします。

 小川先生が最後におっしゃった、被災に遭った児童あるいは学校に対して特別な加配をするように、私も、もしこの法律ができますならば必ずやそれを入れたいというふうに願っておりましたが、その中で、ほかのところから来た先生方がやりやすい環境づくりもまた国としてやるべきなのだということは、ちょっと私は、被災に遭った児童生徒並びに学校が加配されるように、そしてまた、その子供たちがほかの地に行きましたときにもきっちりと対応されるようにということばかり頭に入れておりましたが、ああそうなんだと、全国から支援に来たいと願っていらっしゃる先生方にどう対応するかということも、これからの大きな課題だというふうに私考えました。

 谷井教育長のお話の中で、私は全く同じ考えでございます。三十五人学級を軸にしながらも、それぞれの学校の事情に応じた加配がなされなければならない。それができるような法律にしていかなければいけないと私は考えております。

 松田参考人のお話にも触れていらっしゃいましたけれども、私は、例えば三十八人でもいいクラスがあるとしたなら、三十八人でもいいんだと思うんですね。

 ただ、その三十八人の場合ですと、例えば、これを本来的には二クラスに分けたら二人の先生が配置される。ところが、三十八人だったらこれは一人だよというのでは困るので、三十八人のクラスであっても、一人の先生とプラス一人の加配がなされるべきである。そのような法律にしていかなければいけないというふうに私は思っております。

 谷井教育長がおっしゃいましたように、私は、例えば、二十五人だからきめ細やかな教育ができるとは思わないんですね。今、宮崎先生のお話がありましたように、特別支援学校に対しては私たちの党はいつも一生懸命力を注いでおりますけれども、例えば、二十五人のクラスに一人のADHDのお子様がいらっしゃる。その子供も大切に見なければならない。でも、その子供が騒いでいると、二十四人の児童たちは本当に動揺しちゃって、やはり授業が受けられない。だから、二十五人だからきめ細やかに教育ができるか、一人一人の児童と向き合うことができるか。そういうことではないと思うんです。そのクラスの事情に応じた加配がされるべきだというふうに私は考えております。

 そういう意味では、ふれあい補助員を使っていらっしゃるというのを私は大変力強く思っているんです。

 本来、スクールカウンセラーの導入ということを、国の仕組みとして私たちは頑張って今日を迎えました。スクールカウンセラーも、今、保護者と教員と向かい合うことが多くて、余り児童と向かい合っていることが少ないのではないかと。これは、もうちょっと私もこれからの課題として勉強していきたいと思うのです。

 もう学校を定年退職した先生だとか、あるいは、私はメンタルフレンドというものの導入に力を注いでいるんですけれども、大学生で教職を勉強している人たちが子供たちに手を貸してあげるとか、そういうふれあい補助員の制度を国の仕組みとして制度設計できたらいいなというふうに私は思っておりますが、どのようにしたら制度設計できるのか。この輪を広げるようなそういうことをお考えかどうかが一点と、特別支援学校の専門家のチームがアセスメントからも必要だというふうに言っていらっしゃいました。

 さっき宮崎先生のお話にありましたように、コーディネーターのセンター的機能を果たしているところであります。それが今東京都なんかもだんだんと減ってきているように思うのですが、その専門家チームというのとコーディネーターのセンター機能とが一緒になるような、これも、国の仕組みとして、あるいは都道府県の教育委員会の仕組みとしてできたらいいなというふうに考えておりますが、それについて、まず谷井教育長、そして宮崎先生、それから松田参考人に伺いたいと思います。

谷井参考人 ただいま御質問いただきましたふれあい補助員の制度、本当に必要に迫られた茅ヶ崎では、市の単独事業として行っている状況でございます。

 先生たちの悲鳴のような、先ほどお話しいただきましたように、二十五人だとしても、お一人のお子さんが、苦しみながら、授業の邪魔をしているように周りから見ると見えるんですけれども、実は自分の中でも非常にジレンマに陥っているという、そういう意味では、残りの二十四人の子たちの学習も保障しなければいけないし、そのお子さんお一人にきちんと学習の保障をしていく必要があるし、先生がまた苦しんでしまうんですね。自分の力量がないためにこんなになっちゃっているのかなというようなジレンマに陥るということもあります。

 ですから、茅ヶ崎では、これはいわゆる非常勤の扱いで、日額たしか六千四百円だったか六千二百円だったか、それぐらいの金額で年間百五十日という形で勤務していただく形になっています。学校の授業とか取り組みに合わせて、その百五十日を学校のニーズに合わせて割り振るような形でやっています。

 ですから、茅ヶ崎のような、小学校で十八校程度の余り大きくない規模の市なんですが、トータルで年間の予算が約一億近くですね。そういう意味では、それだけの予算をつぎ込んでもそれが必要だという認識に立っておりますが、恐らく、全国の市町村の学校でも状況は同じだというふうに思うんです。

 そういう意味では、国でそういったことも制度化されると、それで、先ほど申し上げましたように、教員免許を必ず持っていなくても茅ヶ崎ではやれている状況ですので、それについての研修を少し深めていって、発達障害のお子さんへの本当に適切な対応をしていって、そして大事なことは、授業へ戻すことなんですね。外へ取り出すということじゃなくて、授業の中でも一たんその方が引き受けて、ちょっと何か対応していただいて、先生はこう言っているよねというようなことで授業の中で戻っていくようなそういう取り組みを、制度として確立できると本当にうれしいなというふうに思っております。

 それから、専門家のチームは先ほどお話をしたとおりですけれども、専門家チームとさらにほかの関係の機関と連携した例なんかもあります。

 例えば、結局、発達障害のお子さんをお持ちの保護者の方は非常にやはりつらい思いをされるんですね。自分の子供が学校でみんなに迷惑をかけているというようなことで半ばノイローゼになってしまったり、また、発達障害のお子さんの知識自体が保護者の方に余りないと、子供を責めてしまって虐待になってしまっているような例がありました。

 ですが、そこも保護者ときちんといろいろ発達障害の子供の特性のお話をし、そしてまた、家庭児童相談所へつなげたりすることによって虐待の状況を回避する。保護者の方自体も楽になっていったと。

 茅ヶ崎ではCSP事業というのをやっておりまして、コモンセンスペアレンティングということで、要するに、しからなくても、またはどなったりしなくても子供にきちんと対応できますよという取り組みをしていますので、保護者の方をその取り組みにつなげていくなんという例がありました。これも、国の制度として確立していくと本当にうれしいなというふうに思っています。

 以上でございます。

宮崎参考人 実は、特別支援教育の推進体制整備事業というのを文部科学省が進めておりまして、平成十七年に全国展開をしていただいている事業でございます。

 モデル事業は平成十五年から始まったのでありますが、この基本的な考え方は、各都道府県に支援連絡協議会をつくっていただく、これを、教育の部局だけではなくて、関係の首長部局も含めた対応をしていただくというネットワークづくりをしてほしいということで進めていただいていることでございますが、今お話がありました専門家チームの設置、それから、各小中学校に特別なニーズを持っているお子さんへの支援をするための巡回相談の仕組み、それから、各学校の特別支援教育コーディネーターを養成する研修の仕組みをつくる、この三本柱で体制整備事業が各都道府県で進んでいるというふうに思っております。

 ただ、課題になりますのは、例えばコーディネーター養成の研修というのが、それぞれの都道府県あるいは市町村で行われているというようなことがありまして、かなりばらつきがございます。例えば、十時間の規模でコーディネーター養成が行われたり、二回ぐらいで終わってしまっているというような、非常に格差というか、温度差も含めて申し上げれば、あるというふうに思っておりますので、このあたりの充実をしていく必要がある。

 それから、専門家チームということで、ここのところ、特に発達障害に関していろいろ都道府県で御努力をなさっていただいているところなんですが、非常に限られた専門家しかいないというような現状がございまして、それぞれのチームを設置するにしても、複数の専門家があちこちのチームに所属をするというようなことで、非常に厳しい現状がございます。

 そういう意味では、全国展開を図らなければいけないのが、必ずしも充実した中身になっていないという問題が指摘をされておりまして、このあたりをどんなふうにしていくかというのが大きな課題になっております。

 ただ、先般行われました学習指導要領の改正では、校内体制の整備ということが学習指導要領できちっと打ち出されまして、校内委員会の設置、それからコーディネーターの指名、それからもう一つは、特別なニーズのあるお子さんについて具体的な個別の指導計画と支援計画をきちっと整備をしていく、策定をしていくというようなことが位置づきましたので、これからは、さらに具体的な、お子さんの教育の充実に向けた対応がされていくものというふうに思っておりますし、そういったような視点からの研修のありよう、あるいは、教員のそういったものに対する専門性を向上させる支援の仕組みをつくらなければいけないというふうに考えております。

松田参考人 特別支援教育に関しまして、いわゆるコーディネーターのセンター的な機能、それから専門家チーム、これを充実、機能させていくということは大変重要なことでございまして、東京都の方でも特別支援教育推進計画を、先般、第三次の実施計画を発表したところでございます。

 その中でも、エリア・ネットワーク構想という名称をつけておりますけれども、特別支援学校と地域の小中学校と日常的な連携を図る。それだけではなくて、福祉や医療、保健、労働等の各分野との連携をその地域の中でつくっていきまして、その中で個々のお子さんの多様な問題について連携をしながら対応していこうという構想が、一部始まっているんですけれども、その充実について、今後重要な課題として取り組んでいこうとしているところでございます。

池坊委員 ありがとうございます。

 東京都は基本的に、教育は国の根幹にかかわる問題であるから、国が責任を持ってやるべきではないかというお考えが基本にあるのではないかと思います。

 数年前に、教職員の国庫負担金が二分の一から三分の一になりました。これは、地方分権の大きな流れの中で、知事会は、全額地方が負担したい、地方に移譲しようという中にあって石原知事は、とんでもない、国が教育をやるのは当たり前のことではないか、人件費はしっかりと担保すべきだとおっしゃったことを私は心強く思っております。

 それで、先ほどは松田参考人が、行き過ぎた小規模クラスはよくないのではないか。私も、小川先生がおっしゃったように、やはり、欧米と日本とでは学校の果たすべき役割や機能が異なっていると思います。

 欧米ですと、教会だとかスポーツセンターなどで共同生活をする場というのが提供されております。日本の場合は、全部を学校でしなければならない。つまり、生活集団であり、そして学習集団でもある。だから、個々の指導も大切だけれども、学校において連携というのが大切である。公共性だとか、あるいは何というんでしょうか、ともに友愛の精神とかいろいろなことを学んでいくのが学校であるわけですね。

 そういうときに、では何名ぐらいがふさわしいというふうにお考えでしょうか。加配なども考慮しながら、今の現状についてお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

松田参考人 非常に難しい御質問でございまして、いわゆる学級規模とその教育活動の効果についての実証的なデータというのが非常に不足しているのが実態だろうというふうに思っております。

 都の方でも、先ほど、小学校一年、二年生について学級規模を縮小することを始めたと申し上げましたが、それらについては、三年後に検証をするということになっております。したがって、今、規模を縮小した学級について具体的な実態調査を詳しくしているところなんですね。

 ただ、そうは申し上げても、具体的にどういう方法、手法でその調査をすべきなのかという確定的な方法、手法というものが実はないわけでございまして、ある意味、手探りでやっているところなんです。

 そういう点では、ぜひ国の方でも、その点についての実証的な研究もしていただきたいと思いますし、地方に対して、それらの理論的な面も含めた御支援をいただきたいというふうに考えているわけでございますけれども、少なくとも小学校に入った段階では、四十人というクラスの数というのは多いだろうというふうに、これはもう確実に言えるのではないかというふうに思っているわけであります。

 今のところ、実施をしている各学校長、教員等の意見についても、このクラス数を減らすことについて非常に評価をしているところでございます。

 ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども、そんなふうに思っております。

池坊委員 日本としては、少人数学級の方が学力が上がるというような検証は、小川先生、まだできてはおりませんでしょう。ですけれども、欧米においては学力は確かに上がっているのではないか、先ほど小川先生もおっしゃったので後で伺いたいと思いますが。ですが、学力だけが子供の養育に必要であるというふうには私は思っておりませんので、それとプラス、ではその兼ね合いですね。いろいろ付加したものをどういうふうに加味していくかということが必要なのではないかと思います。

 一年生から二年生のクラスがえはするべきではないというお話でしたが、現実には三十五人学級がほぼ九三%できております現状においては、二年生になったからクラスがえをしなくても済む状態にあるのではないかと思いますけれども、現場においてはどうかということを、ちょっと松田さんと茅ヶ崎の谷井参考人に伺いたいと思います。

松田参考人 東京都においては、小学校の一年から二年に関しては、約九〇%、クラスがえはいたしません。そのまま持ち上がる、担任もほとんどの場合持ち上がるというのが実態でございます。

 ところが、もし今のまま、要するに、小学校一年だけ三十五人、小学校二年は四十人ということになりますと、クラス数が変わるケースが出てまいりますので、その場合に当然クラスがえをせざるを得なくなります。

 これはやはり、保護者も含めて現場の方では相当異論が噴出するのではないかと、こんなふうに思っております。

谷井参考人 小学校一年生三十五人学級に伴う二年になったときのクラスがえのことということで御質問いただいているというふうに思います。

 茅ヶ崎の現状からいきますと、二年生で少人数の学級編制、いわゆる先ほどの加配の分を使って行っているという学校は、半数に満たない状況です。ですから、そういう意味では、一年生が三十五人学級が実現をして、二年生になるときに学級編制がえが起こる学校の方が多いかなというふうに思っています。

 ただ、茅ヶ崎の場合は、かつては、二年単位、要するに、低学年一、二年生、それから中学年三、四年生、そして高学年五、六年生という単位で二年ごとに学級編制が変わるということが多かったんですが、今現在は、ほとんどの学校、多くの学校が単年度で学級編制がえをしている状況です。

 これは、先ほどの、学級の中の指導がなかなか難しいという状況なども含めて、本来はそれが必要なんですけれども、子供たちをきちんとこの二年間で育て上げるということの難しさがかなり出てきているかなというふうに思っております。

 ということで、学級編制がえは、日常的に毎年行っている学校がほとんどの中ですので茅ヶ崎は支障は起きないんですけれども、また、そういう意味では、二年間の長期的な展望がつきにくいという点での課題もあるかなというふうに思っています。

 以上です。

池坊委員 お話を伺って、ああそうかと。つまり、九三%、現状で三十五人学級をやっているところはいろいろと苦労をしながら二年生に持ち越しているんだというのが実情であるということでございますね。それから、残されました七%が、では、三十五人学級を四月からしようよというときに、教室が足りないとか、あるいはまた、クラスがえをしなければいけないというような問題が出てくるということはあるということなんだなということの、当たり前のことながら、再確認をさせていただいたという気がしております。

 さっき松田参考人がおっしゃったように、国の方針が決まらなければ、それぞれの地域においても、都道府県の教育委員会も、それから市町村の教育委員会も、学校現場も困るんだよ、それはどうやって政策をきめ細やかにやっていくんだとおっしゃることは、そのとおりだと思います。こうやってこのような期末にやらなければならないということは、私どもの責任でもあるというふうに私は痛感いたしております。

 最後に小川先生、先ほどの、少人数学級における少人数授業が子供に与える影響、私は功罪あると思うんです。すべてのことがいいことばかりではないと思います。それについてちょっと触れていただけたらというふうに思います。

小川参考人 先ほどからお話いろいろあるように、特に、日本において少人数学級がどういう教育効果があるのかということについては、残念ながら、実験的な調査研究というのがなかなか進んでいないという中で、やはり評価するというのは非常に難しい状況にあります。

 同時に、では、アメリカにおいてもその少人数学級の効果検証が進んでかなりのことがわかっているのかというと、決してそうではなくて、先ほどちょっと紹介しました一九八五年のスター計画においても、確かに、少人数の方が効果があったというふうなことがいろいろなデータで出てきているんです。

 ただ問題は、少人数にすると、特にマイノリティーとか、都市部のそういう貧困層の子供を中心とした、白人でない層の子供たちに効果があるのか、なぜなのかということについては、実はいろいろな議論があるんですね。

 それは、ただ単に子供の数が減ったから教師の方の何かそういうきめ細やかな指導ができるんだというだけでは、そういう顕著な少人数の効果というのはやはり説明できない。少人数にすることによって子供たちの方の集団の質が変わったとか、子供たちの学習の構えが変わったとか、そういう心理学的な要素もあるんじゃないかとか、そういうスター計画、アメリカなんかの少人数学級が一定度効果があるぞというふうに今ある方向で来ているんですけれども、ではそれはなぜ効果があるのかということについては、実は、研究の上でもさまざまな議論が今あるということなんですね。

 そういう点では、少人数学級の教育効果については、なかなか一筋縄では議論はいかないという、そういうふうな現状にあるのかなと思っています。

 日本はそういうふうな議論をまともにまだやれるような状況ではありませんので、それくらいで御勘弁ください。

池坊委員 いつも法律ができましたときに、現場がそれを生かしてよりよいものであると言われるような法律をつくっていかなければいけないと私は思っておりますので、現場の声を大切にしてきたつもりでございますが、きょうの参考人のお話を伺いながら、まだまだ足りなかったのかなという思いを持っております。

 この法律ができますならば、絶対に私は、都道府県、市町村の教育委員会そして学校現場の裁量権があるような、弾力性のある、それぞれの学校の事情に応じた加配ができるようなそういうものにしていかなければいけないというふうに思っておりますし、また、松田参考人がおっしゃったように、加配は削減するべきではないと思いますので、そのことを念頭にしっかりと入れたいと思っております。

 きょうはありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 本日は、参考人の皆様から貴重で示唆に富んだ御意見をお伺いをいたしました。ありがとうございました。

 まず、小川参考人にお伺いをしたいと思うんです。

 先ほども、アメリカ・テネシー州のスター計画ということについても触れられました。私も前回のこの委員会の質疑でスター計画について取り上げたわけでありますけれども、この計画、十三人から十七人の少人数の学級と、二十二人から二十六人の普通学級で比較をしたということなんです。そういう点でいいますと、少人数に効果があるかどうかという比較にしても、このレベルでやっているわけです。今我々が議論しているのは、四十人を三十五人にという話なんですね。

 それで、アメリカでは十八人学級というものが今ほぼ低学年では定着していると。私、実は、在日米軍基地の中にある米軍の子供たちの学校のクラスサイズというものを調べて驚いたんですけれども、米軍基地内の小学校、これはやはり小一から小三までは十八人学級でやっておりまして、それ以外も二十五人学級ということであります。

 この四十人学級というものが世界的なレベルに比べたら本当に立ちおくれている、これはもう間違いないと思うんですけれども、まずそこのところをお話しいただきたいと思います。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

小川参考人 私の方から特に説明はないんですが、もういろいろなデータでおわかりのとおり、欧米は大体二十五ないしは多くても三十、そして先ほど言ったように、今、アメリカやヨーロッパでは幼児教育の重要性というふうなことが非常に語られ始めていますので、小学校低学年等々については、さらにそれよりも学級の子供の数は減らすというような方向に来ております。

 ただ、日本を含めてアジア領域というか、日本、韓国云々というのは、アジア的な従来のような、生活集団と学習集団を一緒にして、学力だけではなくて、社会的な規範とか社会性を育成するというようなそういうふうな発想で学級を把握してきましたので、欧米なんかと比べると、そういう学級集団の数というのは多目であるというのがやはり事実です。

 ただ、これからは、個性とか創造性ということをやはり考えていった場合には、たとえ従来の生活集団と学習集団を一体にする手法、そういうふうに学級の機能をとらまえるということは、私は、今後もやはり日本の教育の強みを維持していくためには必要だと思いますけれども、もう少し分業化をしていくことは必要だし、その分業化の中で、もう少し先生方が教科指導等々に専念できるような状況をつくっていく必要がある。

 そういう点では、四十というのは、欧米等々の流れからしても、やはり多過ぎるというふうに実感で思っています。

宮本委員 昨年の八月に文部科学省は、やっと、来年度から小学校一、二年生から三十五人学級を実施するという概算要求を出しました。その後の予算折衝で、これは一年のみの実施ということになったんですね。

 それで、少人数学級のこの効果については、既に前回の委員会でも、私の質問に答えて文部科学大臣が、学校現場からも、保護者、児童生徒からも一定の評価を得ている、学力の向上という点で、あるいは不登校や欠席率の低下という点で一定の効果があると。少人数学級の効果は、既にほぼ間違いのない、議論の余地のないところになっているわけです。

 ところが、前回の委員会で財務省の答弁を見ておりますと、小学校一年生については小一プロブレムの解消があるのでこれはやるんだと。しかし、小学校二年以降については、学級規模と教育成果の相関性についても検証する必要があると。財政的見地だけでなくて、二年以上はまだこの教育成果との相関性が明らかでないかのような答弁を財務省はしたわけですよ、この委員会で。

 私、これは少し違うんじゃないかというふうに思うんですけれども、小川参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

小川参考人 学級規模の話と学力の相関関係なんですけれども、これは、先ほど自民党の委員の方もお話しされているとおり、私は、ストレートにそれが直結しているというふうに因果関係があるとは思っていません。

 やはり、学力を規定する諸要因というのはさまざま複雑に構造的になっていますので、学力が向上するためには、先ほどからの議論があるように、教員の質を高めたり、学校全体の構造を変えて教師の創意工夫というのがより発揮できるような仕組みをつくるとか、あと、家庭や地域の教育力を回復して、家庭や地域での子供の学習とかさまざまな諸活動を保障していくとか、あらゆることの相乗効果の中で学力というのがやはり出てくるんだろうと思います。

 そういう点で、私も基本的には、学級規模の縮小が学力にストレートに結びついているとは思っていません。そこには複雑にいろいろ絡んでいます。

 ただ、そうは言いつつも、先ほどから言っているとおり、日本の学校の生活集団と学習集団を一体にして学級経営をする、その学級経営というのがやはり学校の教育活動の最も基盤的な要素であるのは、これは変わりません。これは、欧米なんかと比べると、はるかに学級の持つ意味というのは重いと思っているんです。

 そういう点で私は、日本の学校教育を語る際、学級をどうするか、学級の規模をどうするかということは、欧米と比べてより重い、重要なテーマだと思っています。

 一応それは前提としつつ、もう一つは、日本でなかなかその効果検証がないというふうなことも僕は話していますけれども、全く皆無であるわけでもありません。都道府県等々が追跡調査でずっとやっています。

 そこではもう明らかに、これはちょっと調査としては弱い面があるんですけれども、例えば、先生方の実感調査で、少人数になってよくなったかどうかとか、そういうふうな実感調査が一つベースになっているのと、もう一つは、一般的な学力調査の結果を使っていますよね。これは、学級をきちっと操作して正確な調査研究かというと、やはり不正確な点があって、しかし全体とすれば、学校現場を預かっている先生方の実感として、少人数になることでいろいろなことが可能になって子供も教師も非常に活性化したという、そういう実感のところについては僕は重視すべきだと思っています。

 ただ、やはり重要なのは、それプラス、もう少し実験的な実証研究をつけ加えられないかなと思っています。

 この点についても、少し先ほど意見陳述でお話ししたように、国立教育政策研究所が、ようやく平成十九年、二十年ごろからそういう実験的な少人数学級の効果検証を始めています。私もそれは幾つかかかわっていますけれども、明らかにやはり少人数の方が、圧倒的な上位のデータではないんですけれども、一定度の成果、少人数の効果はあるというのはそういう実験的な調査研究からも今出始めていますので、今後さらにそういうふうな調査研究、特に実験的な調査研究はもっと国が責任を持ってやりながら、この義務標準法がもしも成立した場合には、その検証というのは、やはり国のもう一つの責務としてやっていくべきではないかなというふうに思っています。

宮本委員 先ほどの国立教育政策研究所の調査については、それも私、前回この委員会で取り上げたんですが、しっかりそういう効果というものははっきりしているということで受けとめる必要がやはりあると思うんです。

 一言だけもう一度お答えいただきたいんですが、一年生には効果があるが二年生にはという言い分には根拠がないと私は思うんですが、ちょっと一言だけ。

小川参考人 基本的には、先ほど言ったように、学級づくりをベースとした日本の教育活動にとっては、やはり一つは継続性が重要だと思いますので、一年で少人数で、二年で急に三十五とか四十とかというふうになるのは、教育の継続性ということから考えるとやはり望ましいことではない。できれば、一年生がそうであれば、二年以上の学年もできる限りそうした環境をつくるべきだと思います。

宮本委員 ありがとうございます。

 中教審のこの提言を受けて文部科学省は、三十五人学級を、来年から一、二年生、そして小中全部に、そして小学校一年生、二年生はやがて三十人学級、一応こういう八年計画を昨年立てたわけですよね。ところが、それが三大臣合意という形で、「予算編成において検討する。」というふうに、計画としてはまだ認められていないという状況に今なっております。

 中教審の提言では、「国が教育条件整備の責務をしっかりと果たし、都道府県等が計画的かつ安定的に教職員配置を行うことができるよう、早急に新たな教職員定数改善計画を定め確実に実施する必要がある。」というふうにしていたにもかかわらず、それは残念ながら、そういう計画としてまだ今は確定していないわけです。これでは、教職員を計画的、安定的に採用、配置できなくなるというおそれがあると思います。

 これは、小川参考人、松田芳和参考人、それから谷井茂久参考人、教育委員会の方々についても、都道府県教委、地方の教育委員会の教員採用を計画的に進める上で、この点でどういう問題があるかということをお話しいただきたいと思います。

松田参考人 やはり採用する立場からいえば、さまざまな要素を勘案して、当然、例えば退職者の動向、それから学級数、いわゆる子供たちの自然増減の動向、それから施策的な面での動向、それらを勘案いたします。かつ、人事管理的に長期的なスパンで見ての採用計画、これも立てていくわけでございます。

 あわせて、私どもの立場でいえば、都道府県の中で財政当局とのさまざまなやりとりがございます。今後の教員の定数管理がどうなっていくのかということは非常に大きなテーマでございまして、そういった観点からいっても、将来の見通しがきちんと立っているということが、確実に教育条件を進めていく上では非常に重要な要素だろうというふうに思っております。

谷井参考人 茅ヶ崎の場合は、政令市でもないし県ということではありませんので直接の採用はしていませんけれども、計画的な採用が難しいことによって茅ヶ崎であらわれる現象ということで考えますと、恐らく、臨時的な任用の教員が多くなるだろうなというふうに思っております。

 県の方では、やはり不確定な分だけはっきりした採用の数が採れないということになると思いますので、そしてまた、市町村の教育委員会としては、臨時的な任用の教員が多い分だけ、計画的な、例えば教員研修とかもなかなか難しい状況になりますし、たった一年きりの先生というようなことが多くなってしまうという、そういう弊害はあるのかなというふうに思っています。

 以上です。

小川参考人 今お二人の答弁とほぼ同じなんですが、やはり一番今懸念しているのは、この間、改善計画が本当にストップしまして、毎年度、概算要求の中で国のそういう定数というのが決まっていく中で、都道府県が計画的な採用ないしは人事管理というのがなかなかできにくくなっているのは事実です。

 そういう結果が、この数年間の推移を見てみますと、全教職員の中で非正規の教員がやはり徐々にふえてきて、最近のデータでも、先ほど言ったように、一五%を超えて、七人に一人が非正規になっている。

 これは、都道府県からすると、そういう非正規の教員を採用、人事のある意味では調整弁にして学校現場のニーズに対応できるようにするという、調整の役割としては、そういう非正規の教員がやはりふえているのではないかなと思っています。

 そういう点では、そういう非正規の教員を減らすことも考えると、国が数年間にわたる定数改善の計画をきちっとやはり提示していただきたい。そのもとでやはり計画的な都道府県の人事、採用が安定的にできるのかなと思っていますので、ぜひその点はよろしくお願いしたいと思います。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 ことしの四月から新学習指導要領の本格実施が始まるわけです。それで、小学校では、現行学習指導要領のもとでの時間よりも授業時間が五・二%増になる。教科内容、授業時数の増加する一方で、教員の多忙化は既に深刻な状況です。

 二〇〇六年に行われた文部科学省の調査、東京大学に委託した調査ですけれども、平日のみで三十四時間の残業時間を抱えて、年々、精神疾患などで倒れる教職員は増加の一方だ、こういうふうに言われています。これがさらに多忙になろうとしているという状況であります。

 この調査は小川参考人も中心になって進められたと思うんです。少人数学級の実施とともに教職員の増員がなければ抜本的な解決はないと私は思うんですけれども、このことについて小川参考人の御意見をお伺いいたします。

小川参考人 これももう私から特別言うことでもないんですが、今、学校現場のいろいろな関係者に聞きますと、新教育課程でもって授業時数が確実にふえていますし、なおかつ教科書の中身もかなりふえていますので、果たして、この四月から小学校、来年度から中学校とスタートする中で本当に対応し切れるのかどうかということで、非常に大きな懸念の声が出ていることが事実です。

 実際、東京都を中心として、これまでの週五日ではこなし切れないということで、五日制をとるところでは七時間、八時間というふうな時間割りを組むところも出始めていますし、また、土曜日の授業開講ということを真剣に検討している教育委員会というのは、東京都以外にもかなりあるというふうに伺っています。

 そういう点では、新教育課程のそういうふうな内容を考えれば、やはり、それに対応した定数配置、改善ということが必要かと思います。

 それに関して、私今は中教審の副会長というふうな立場ですので、そういう懸念もありまして、二〇〇六年の勤務実態調査に引き続いて、できれば、中学校の新教育課程がスタートする再来年の後半以降にぜひ同じような勤務実態調査を国として実施していただけないかというふうに今お願いしているところです。

 そういうことをすることで、この二〇〇六年以降の教員の負担軽減の取り組みというのが各教育委員会等々で行われてきていますので、そういう成果が実際あったのか、なかったのかということを検証しながら、新教育課程の内容に対応して今の定数配置で十分対応できるのかどうかということも検証できるというふうに思っていますので、ぜひこれも、再来年後半以降、二〇〇六年度に引き続いた勤務実態調査を実施してほしいということはお願いしているところなので、そういうところで検証をさらに深めていっていただければなと思っています。

宮本委員 ぜひ、私の方からもそういうことを求めていきたいというふうに思っております。

 それで、先ほど非正規教員の問題も出されました。これは東京の松田参考人にお伺いしたいんですけれども、東京では、公立小学校、中学校の教員定数の標準に占める正規教員の割合が一番高くて、定数を超えて一〇二・二%の正規教員が配置されている。これはなかなか他の府県ではそうなっていなくて、定数よりも正規教員の数の方が少ないんですね。

 それで、ぜひ、東京でこういう状況に努力されている、どういう哲学のもとに正規の教育を行うための努力をされているのかということについて披瀝いただきたいと思っております。

松田参考人 私ども教育行政の立場で申し上げれば、やはり、人材の確保といいますか人員の確保というのは、教育条件の中でも最も重要なものだろうというふうに思っております。したがいまして、定数については、必ず確保をしていくというのが従来から基本的なスタンスとして持っております。

 一〇〇%を超えているのは、都単独の加配の部分があるからではないかと思います。

宮本委員 宮崎参考人、大変お待たせをいたしました。

 発達障害を抱える子供たちへの丁寧な指導が求められている、これはもう言うまでもないことでありますけれども、発達障害を抱える子供たちの多くは学校生活の大半を通常学級で過ごしているわけで、通常の学級においても丁寧な指導が行えるようにするには、学級編制規模の縮小が欠かせないというふうに思います。

 それで、全国特別支援学校長会としても少人数学級を要望されておりますけれども、特別支援学校の学級編制規模について具体的なお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

宮崎参考人 特別支援学校の現在の学級編制基準は、諸外国に比べて格段に劣っているということではございませんで、おおむね一定規模の学級編制基準ということで私は考えております。

 ただし、どういうところが諸外国と比べて違いがあるかといいますと、重度重複に対する対応の仕組みが少しまだ弱いかなというふうに考えてございます。

 それから、特に医療的なケアなどを必要とする肢体不自由校あるいは病弱の特別支援学校にありましては、そこへの配慮、支援というのが非常に欠かせない課題になってございまして、これは単に教員で補充をすればいいということではなくて、いわゆる専門的なスタッフをいかに学校の現場に活用していくかということが求められる。そういった意味では、多様な専門家との連携のもとに学校教育が行われていかなければいけない。

 この点が現在の仕組みの中ではまだ十分ではないのではないかというふうに考えてございます。

宮本委員 おっしゃるとおりだと思っております。

 ところが、特別支援学校では、教職員定数に含まれる教員についても、時間数で細切れに勤務する非正規教員がこれは逆にふえているという状況がありまして、定数崩しということがやられているわけです。私の地元大阪では、特別支援学校で働く教員の三割以上が非正規教員という学校もあると伺っております。

 個々に抱える障害等に配慮しながら教育を行うべき特別支援学校こそ、専門性を持ち合わせた正規教員の配置をもっと重視すべきだと私は考えますけれども、この点、宮崎参考人の御意見をお伺いいたします。

宮崎参考人 先生のおっしゃるとおりであろうかというふうに思っております。

 それからもう一つは、実は、特別支援学校の教員の免許状取得率が大変今課題になってございます。

 というのは、教員養成の中で特別支援学校免許状を課程認定している大学が非常に少ないということがございまして、これも障害種によって大分異なっているわけですけれども、そういったような意味では、教員の資質向上というようなことも含めて、今後の教員養成のあり方でこの点は検討していただく課題になろうかというふうに思っております。

 特に、出現率が極めて少ない障害種の専門家、スタッフをどんなふうに整備をしていくかというのも、大きな課題になっているかというふうに思っております。

宮本委員 私、大阪の特別支援学校にも現地にお伺いをして、先ほどお触れになった養護教員の配置基準の問題、これも当委員会で取り上げたんです。

 それで、特別支援学校の教室不足も極めて深刻でありまして、校庭をつぶして教室をつくっているとか、音楽室や図書室を普通教室に転用するとか、廊下にまで教室をつくっているとか、本当に深刻な状態がある。現場でこの目で見てまいりました。

 少し、そういう実態についても宮崎参考人の方からお話しいただけますでしょうか。

宮崎参考人 先ほど、私が最後に触れさせていただきました特別支援学校の大規模化というのは、まさに、今先生がおっしゃったような状況で生まれているところです。

 私も全国あちこちの特別支援学校にお伺いしているわけですが、どこも手狭で、大変厳しい状況にあります。校長室までなくなった学校などもありまして、大変厳しい状況があるというようなこともあったりいたします。

 これについては、各都道府県の実情等厳しい状況もございますが、ぜひ大規模化に関しては支援をしていただきたい。決して特別支援学校が大規模化することは望ましいことではありませんので、その点では、今後とも、学校建設等も含めて支援をお願いしたいというふうに思っております。

宮本委員 本当に大事な問題だというふうに思っております。

 最後に、これは谷井参考人にお伺いしたいんですね。

 市町村で独自に学級編制を行う場合、これまでは都道府県教委と事前協議に基づく同意が必要とされましたけれども、今後はこれが事後届け出制ということになります。こうした規制緩和についてどのように受けとめておられるか。これは、市町村教委の立場でひとつお話しいただきたいと思います。

谷井参考人 規制緩和に関しての御質問ですけれども、先ほど申し上げましたように、まず、学校の現場をきちんとやはり大事にしていきたいというふうに思っています。

 そして、それを市町村教育委員会で吸い上げまして、そのことの判断のもとに、現在では県の方に相談するという形になっていますけれども、独自でできるという部分に関しては、本当に学校の現場をより吸い上げやすいという状況が確保しやすいのかなというふうに思っていますので、賛成でございます。

 以上でございます。

宮本委員 本日は、本当に貴重な御意見、数々と承りました。ありがとうございました。

 私の方からも心からお礼を申し上げまして、私の質問を終わります。

田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房文教施設企画部長辰野裕一君及び初等中等教育局長山中伸一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。室井秀子さん。

室井委員 民主党の室井秀子でございます。

 質問に入ります前に、去る三月十一日に発生いたしました東日本大震災でお亡くなりになられました方々に心より御冥福をお祈り申し上げます。あわせて、被災されました皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 また、震災の惨禍の中、乳児、幼児、児童生徒の生命を守るため、懸命に御努力いただきました教職員の皆様に心より御礼と感謝を申し上げます。震災直後より対応に取り組まれております高木文部大臣初め副大臣、大臣政務官の皆様、大変お疲れさまでございます。ありがとうございます。

 私は、十六年前、阪神・淡路大震災で我が家も半壊しまして、窓をあけましたら、隣の家は全壊しておりました。私は三人の子供がおりますが、上の子はまだ小学生、一番下の三番目の子は乳児でした。本当に余震のたびに震えていたその体験がまざまざとよみがえってまいります。

 阪神・淡路大震災の小中学校では、実は、復興担当教員として、子供の心に寄り添った心のケア担当教員が配置されました。一九九七年から九九年度、兵庫県教育委員会の集計によりますと、震災の影響で教育的配慮が必要な児童生徒は、実は四千人にもなりました。今回の大震災に対しても、ぜひとも児童生徒の心のケアのための教員の加配、スクールカウンセラー等派遣のことを心から私はお願い申し上げます。

 また、今回の震災は、午後二時四十六分、多くの学校の授業中でもありました。両親、片方の親が津波に巻き込まれ、親子を引き裂く悲劇が多く、家族が一緒に被災した阪神大震災とは大きく異なります。そうした意味で、震災遺児や孤児の心理的なダメージははかり知れません。早急な遺児、孤児への支援を立ち上げてほしいと心から思っております。

 そこで、質問に入らせていただきます。

 「地震本部ニュース」という、こういう冊子が皆様の議員会館に届いていると思います。これを発行しているのは、実は文部科学省です。そしてもう一つ、今回の東日本大震災の震源地は宮城県三陸沖ですが、ことし、二〇一一年一月一日の時点で、文部科学省研究開発局地震・防災研究課、ここに書いてあるんですけれども、海溝型地震の長期評価の概要、このページです。

 海溝型地震の今後の地震発生確率によりますと、今回、三陸沖北部のプレート間地震は十年以内に六〇%、三十年以内に九〇%、また、宮城県沖は十年以内に七〇%、三十年以内には、実は九九%になっております。

 また、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に該当します三十年以内発生確率は、南海地震で六〇%、東南海地震では七〇%、想定東海地震では八七%と、いずれも高くなっております。この赤いところが全部そうなんです。このような長期評価を、政府初め文部科学省としてどのようにとらえ、政策に盛り込んでいるのか。

 実は事業仕分けでも、公立学校施設整備事業の事業評価のコメントで、緑化事業、太陽光発電をやめて、耐震化事業に限定すべきであるという意見も述べられました。このことを考えれば、確率が高い地域を中心に、学校の耐震化はより進めるべきではないかと私は考えておりますけれども、文部科学副大臣でございますか、どのように考えていらっしゃるか、御返答をお願いいたします。

笹木副大臣 まず、今お尋ねがありました地震調査研究の推進本部についてですが、文部科学省に設置されている推進本部、主な海溝型地震について、今後三十年以内に発生する地震、発生が予測される地震、その規模と発生確率、お話にあったようなその評価を行って、その結果も公表しております。この評価の結果は、政府の中央防災会議での地震の被害の想定、地方自治体においては防災計画の検討、それに用いるという形で活用されています。

 今回の地震と津波による巨大な被害を見るにつけても、今後は、この地震研究とその成果を政府と地方自治体の政策に反映すること、これをさらにしっかりと取り組んでいかないといけない、そう思っております。

室井委員 せっかく文部科学省でこういう立派なものをつくって研究されているわけですから、ただ防災会議に提出するだけではなくて、文部科学省としてはどう考えるのか、そのコメントをつけて、ぜひともこれから活用していただきたいと思います。せっかくのものが無駄になっては何の取り柄もございませんので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次の質問に入らせていただきます。

 今回の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案によりまして、一九八〇年、昭和五十五年以来、約三十年ぶりに学級編制基準が改定されると伺っております。

 民主党政策集インデックス二〇〇九に「教員が子どもと向き合う時間を確保し、教育に集中できる環境をつくるため、経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国平均水準並みの教員配置(教員一人あたり生徒十六・二人)を目指し、少人数学級を推進します。」と明記されております。私は、この民主党政策集インデックス二〇〇九にある「教員が子どもと向き合う時間を確保し、教育に集中できる環境をつくる」、このことが今回改正されます法律案の中心であると思います。

 かつて、高度成長時代には、六十人学級も存在しましたし、今の四十人学級は恵まれている、学級規模が小さくなり過ぎると社会性をはぐくむ上で問題がないかという意見も一方にあるのはわかっております。しかし現在、大きく環境が変わっております。現在は、子供一人一人の学習状況に応じた授業が求められ、保護者の対応も昔とは比べ物にはならない状況であり、教師の悲鳴すら聞こえてくるのも現状です。

 昨年十二月二十四日に発表された文部科学省の調査でも、二〇〇九年度にうつ病などの精神疾患で休職した全国の公立学校の教職員は、前年度より五十八人もふえて、過去最多の五千四百五十八人となり、病気休職八千六百二十七人中、精神疾患によるものが実は六三%も占める状態になっております。

 そこで、文部科学省にお伺いいたします。この三十五人以下学級を導入することにより、学校現場にどのような効果が期待できるのか、具体的に教えてください。

山中政府参考人 委員御指摘のように、三十五人以下学級、少人数学級の推進ということでございますけれども、これによりまして、先生が子供たちの教育に集中できる、一人一人の個性を見、よりきめ細かい指導がしっかりできる、そういう環境をつくっていこうというものでございます。

 文部科学省が把握しているデータといたしましては、例えば、ほかの県に先駆けて少人数学級を導入しております秋田県、山形県、こういうところでは、全国学力・学習状況調査、こういう結果において、学力についての向上が見られるというところでございます。また、こういうペーパーテストの学力というものだけでなく、例えば大阪府、山形県といったところ、ここでも、少人数学級というものを導入した後、不登校の子供の数が減る、あるいは欠席率が低下するといったデータがあるところでございます。

 現在、少人数学級につきましては、すべての都道府県において、何らかの形、いろいろ県によって違う形ではございますけれども、取り入れられておりまして、これは、それぞれの先生方、あるいは学校の校長、教育委員会、生徒、保護者、そういう方が少人数学級の効果というものを身をもって感じられ、それがそれぞれの市町村あるいは県の政策として反映されているものであるというふうに考えております。

室井委員 成果が見られるということです。小学校の小一プロブレム、そういうものが解消されて、幼児教育から小学校教育への円滑な移行が図られる、そういうふうに三十五人学級をとらえればよろしいかと思っております。

 しかし、この法案が成立すれば、二十三年度、一年生の三十五人学級ができますが、その児童が二年生に進級する平成二十四年度には、このままでは、せっかく小学校になれた子供たちがクラスがえをしなければならないという問題が生じます。私も、子供が小学校に入ったとき、一年生、二年生、一緒に通年で上がっていきました。でも、この少人数学級の場合は、もう来年はだめだ、再来年はだめだということになりますので、ぜひ、このことについて文部科学省のお考えをお聞かせください。

山中政府参考人 小学校二年生以上はどうなるのかということでございますけれども、来年度、平成二十三年度の予算編成に際しまして、国家戦略担当大臣、財務大臣、文部科学大臣、この三大臣合意で、学校教育を取り巻く状況、あるいは財政状況等を勘案しながら、小学校二年生以上については来年度の予算編成において引き続き検討するというふうにされたところでございます。

 このことを踏まえまして、この法案では、学校教育の状況、あるいは国、地方の財政状況を勘案しながら、小学校二年生以上の学級編制の標準を順次改定することなどについて検討を行い、その結果に基づいて法制上その他の必要な措置を講ずるという規定が設けられたところでございます。

 これから、来年、平成二十四年度以降の予算についてまた検討が始まるわけでございますけれども、そういう中で総合的に検討されていくということになろうかと思っております。

室井委員 少人数学級は国民の声ですので、これからも期待しておりますので、私どもも努力いたしますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 小学校一年生の三十五人学級実現のために必要な教員が四千人、今いつも問題になっておりますその四千人、現行の加配定数の転換、現行で六万人ほど加配が全国にされておりますが、その中の千七百人が今回プラスされているわけです。現行の加配定数の千七百人プラス定数増の二千三百人で、四千人で対応するとされています。

 野党の皆様方の中には、同じ四千人の定員であれば、小学校一年生に限定されることなく、学校現場の実情に合わせて少人数指導を充実し、特別支援教育や指導困難児への対応、専科教員配置などに活用できるように加配教員を充実すべきだとする意見もございます。実際、児童支援専任教諭により、担任一人ではどうしても目が届かないいじめや暴力行為などに対して成果を上げているのも事実です。また、チームティーチングにより効果的な学習成果も上がっています。

 そこで、今回の改正で、特別支援教育における通級指導、児童支援専任教諭、チームティーチング等がどのようになるのか、皆さん心配しているわけです。ぜひそのことについてお答え願います。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、加配教員は、基礎定数のところで、学級数、それに対応した先生の数というのが計算されまして確保されるわけでございますけれども、そういう教員の数だけでは足りない、障害を持った子供について取り出して、通ってきてもらってそれで指導するという通級指導でございますとか、あるいは、いじめとか不登校が多いというふうなそういう学校について先生をふやして、そういう子供たちに対するしっかりとしたきめの細かい指導を行いたい、そういうふうな課題、いろいろな課題がございます。

 そういう課題に対応する形で、きめ細かく、地域、地域、都道府県、市町村の課題に対応する、それに必要な先生を確保しようということで加配教員というものが、現在、今年度でございますと六万人程度措置されているところでございます。この中には、少人数指導のための加配教員という方、そういう形で加配措置されているという数もございます。

 そういうこともございますので、今回の予算案作成の過程におきまして、小学校一年生について三十五人学級にその規模を引き下げる、これに四千人の先生が必要だということになるんですけれども、そのうち千七百人という部分については、この六万をちょっと超えます加配の先生方のうち、小学校一年分の少人数学級のために使われているその相当分として千七百人というものを、同じ目的であるということでそちらの方に振りかえさせていただいて、そしてあと、子供の数が減るということによりまして先生の数が、学級数が減りますので基礎定数が減っていきますので、その数がちょうど二千人ほどございます。

 この二千人と千七百人、プラス三百人という先生の数、これを予算の中で措置いたしまして、合計四千人ということになったわけでございます。

 千七百人という数でございますけれども、これは一応、従来、小学校一年の少人数学級相当分というところでこちらの方に振りかえたというところでございます。六万人からその千七百のところを除いたそこの加配の定数、五万数千というところでございますけれども、これはそのまま維持しております。

 ですから、先生御指摘いただきましたような、通級指導でございますとか、あるいは児童生徒の支援でございますとか、チームティーチングでございますか、そういう形で使われてきたこういう加配の先生方の数というものは、そのまま引き続き維持した形で平成二十三年度の予算案というところに盛り込んでいるという状況でございます。(発言する者あり)

室井委員 いえ、私は答弁はしっかりしていたと思います。千七百人に対しては、今までも少人数学級に使われていたわけですから、子供の数が少なくなるにもかかわらず先生方の数はふえるわけですから、少人数指導や通級指導などを実施するための加配定数は減ってはいません。だから、実質的に減らないわけですから、私は先ほどの答弁で正解だと思います。

 そして、ぜひ申し上げたいのは、その事実を周知徹底して理解させてほしいんですよ。理解させていただかないからこのように野党から追及されるわけです。ぜひお願いいたします。

 次に、今回の改正法律案のもう一つの柱であります、市町村教育委員会が学級編制する際、都道府県教委との事前協議を不要とし、事後の届け出制に関しましてお伺いいたします。

 二〇一二年度、平成二十四年度から、学級編制の上限の基準を厳格にとらえず、市町村教育委員会が地域や学校ごとの実情に応じて柔軟に学級を編制できるようになると伺っておりますが、どのような取り組みが行われると考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

山中政府参考人 今回の法律案におきましては、都道府県の教育委員会、それと市町村の教育委員会がございます。この関係をどうするかということで、今まで、都道府県の教育委員会が県内の市町村につきましての学級編制、今までは従うべき基準ということでございましたけれども、これを標準としての基準ということにいたしました。

 また、市町村の教育委員会が事前に都道府県教育委員会の方に協議して、その同意を得て、それで初めて市町村の教育委員会がそれぞれの市町村の学校の学級編制基準を決められるというところでございましたけれども、これを廃止して、それぞれの市町村の教育委員会が学級編制基準を作成して、それを都道府県の方に事後に届け出るという形にしたところでございます。

 それでも、小中学校の先生は県費負担教職員が基本でございますので、そうすると、その定数を都道府県の方が握っているので、やはり市町村は都道府県の方を見て顔色をうかがいながら、そういう形での編制になるんじゃないかというところもあろうかと思いますけれども、私どもとしては、ここのところを事後届け出という形で制度的に改めたところでございます。

 これによりまして、例えば都道府県からの定数配置に加えまして、市町村が独自に教職員を雇う、雇用するということで、都道府県の教育委員会よりも進んだ形で、例えば、都道府県は小学校一年は三十五人だったけれども、ここは三十人にしようといった市町村独自の少人数学級を行うというようなことでございますとか、あるいは、小学校一年は三十五人ということでございますけれども、例えばうちの町のこの学校では、父母の要請とかその地域の状況、そういうことを見て三十六人ということで学級を編制したいというようなことが、そこには、学級は二つに割りませんけれども、もう一人の先生はぜひチームティーチングでつけてもらいたい、そういうふうなことも、標準としての基準ということ、あるいは事後の届け出制ということでございますので、市町村が学校の実情に応じた学級編制、これをより柔軟に従来より実施できるようになるというふうに考えております。

室井委員 きめ細やかな教育ができるというふうに理解いたしまして、次の質問に入らせていただきます。

 平成二十年のOECD調査によれば、教員一人当たりの児童生徒数が、前期中等教育段階で、中学校で日本は十四・七人に対し、OECD平均は十三・七人となっています。OECDの比較では辛うじて実は一人多い現状ですが、その数字には免許外教科担任が含まれています。二〇〇二年、平成十四年に、文部科学省より各都道府県教育委員会に教員の適正配置を求める通知が行われ、ここ数年、免許外教科担任は減少傾向にあるのは事実です。

 そこで、文部科学省にお伺いいたします。

 現在の教科担任の現状に関しまして、どのようになっているか、今後どのような適正配置を担保していくのか、お伺いいたします。

山中政府参考人 委員御指摘のように、公立の中学校は免許担任制でございますので、免許外教科担任の許可数というのが、過去五年間の推移を見ますと、平成十六年に一万七百九十二件、これが二三%減少いたしまして、平成二十一年には許可件数が八千二百六十四件というふうになっております。ただ、減少しているとはいえ、八千二百六十四件でございますので、非常に多い件数でございます。

 今まで、文部科学省としても、各教育委員会に対して、その解消を図るように、許可件数について調査を行って都道府県別の数を出すといったことも踏まえまして、その減少を図っていただくように努めてきたところですけれども、引き続き計画的な採用、配置、学校間の兼務発令、いろいろな形で免許外の教科担任の方、この数を減らすように努めていただきたいというふうに考えております。

室井委員 保護者の立場からいたしますと、数学の免許がないのに体育の先生が数学を教えていたとなりますと、やはり知ったときには驚くと思います。そういうことが現実にありますので、今後、大量退職が見込まれますので、新規採用に関しましては、ぜひとも免許外教科担任をなくすよう積極的な教員の採用をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に入らせていただきます。

 来年度から新学習指導要領を先取りして授業量はふえてまいります。いじめ、不登校の生徒指導、保護者の対応、地域住民の意見、要望の多様化など、ただでさえ教員がやることは多く、教師の中には、このままでは子供と向き合う時間がとれなくなるという不安に常に悩まされているとお聞きします。このように、学校現場では多くの困難な課題に向き合いながら日々の教育活動に取り組んでいます。小学校では事務職員が少ないため教員の事務分担も多く、その負担感も大きいものがあります。

 教員が担っている事務を事務職員が担えるように体制を整備する必要があり、それには事務職員の定数改善が不可欠であると考えますが、文部科学大臣の見解をお伺いいたします。

高木国務大臣 室井委員にお答えいたします。

 御指摘のように、教員が教育に集中できる環境をつくることというのはまことに重要でございます。今回の法改正においては、小学校一年の学級編制の標準を四十人から三十五人に引き下げることによって学級数がふえますので、これに伴って、四千人の教職員定数のうち、事務職員の複数配置分として百人の事務職員定数の改善を措置することにいたしております。

室井委員 今こそ大臣のリーダーシップでぜひ、期待いたしますので、教員が子供の教育に専念できるようよろしくお願いいたします。

 次に、小中一貫校についてお伺いいたします。

 平成二十二年度、小中一貫教育全国連絡協議会が実施いたしました小中一貫教育全国実施状況調査速報によりますと、調査対象千七百五十市区町村のうち、回答を得られた千百二十一市区町村の中でおよそ半数の五百四十四の自治体で小中一貫教育、連携教育を実施しています。

 中高一貫教育は実は一九九一年度から制度化されているのに対し、小中一貫教育の方は実は公式な制度ではありません。文部科学省の研究開発学校や政府の構造改革特区といった特例を使っているか、または実際の運用として実施しています。市町村によっては独自の予算でこのような教育施策を工夫できるわけです。そうしますと、個々の自治体間で差が生じるのではないか、そういう懸念をしておりますけれども、文部科学省として小中一貫校をどのように考えているのか、お聞きいたします。

高木国務大臣 いわゆる小中一貫校を設置する市町村は、例えば、子供たちから学習上の負担を取り除く、あるいは人間形成上連続性を持たせる、またいわゆる地域社会、地域と一体となった学校づくりを進める、こういう観点から取り組みを進められていると私は承知をいたしております。

 文部科学省といたしましては、これは、市町村が設置者としてその地域の実情に応じて独自の教育方針あるいは基準を設定するなど、地域の実情に応じた教育が実現できるようにしていくことが大切であると私は考えております。

 小中一貫校の取り組みについても、こうした市町村の特色ある取り組みの一つとして受けとめております。

 学習指導要領に基づいて教育がなされ、そして義務教育というのは国の責任である、こういうことからも私たちは、教育の水準維持についてはこれからも果たされるのではないかと思っております。

室井委員 自治体の特色によって行われるのは、それはそれでいいと思いますけれども、教育の水準に格差ができるのはいけないと思いますので、ぜひそのことを文部科学省としてもきめ細かく指導していってほしいと思っております。

 私たち日本というのは、私は小さいときから、資源がない国だと教えてもらいました。戦後三十年で経済大国になりました。その背景には、国民皆教育があったおかげだと私は思っております。今後は、経済の二文字を外し、大国として我が国が持続的に発展するには、教育を国の基本と位置づけていかなければならないと思います。

 今回の三十五人学級の導入が、経済戦略ではなく、我が国の成長戦略の中で実施されることが何よりも必要だと思っております。保護者の収入によって、受けられる教育に差が出るということであってはなりません。このような格差をなくすことが政治の役割だと思っております。子供たちの将来、未来への投資である三十五人学級が実施されますことを改めて強く望みます。

 私の持論でありますが、学校においてお利口な子、頭の賢い子をつくるだけが教育ではありません。教育の真価が問われるのは、社会に出てからその子がどれだけ人間力を持っているか、自立して歩いていけるか、社会の中でしっかりと生きていけるか、どんな状況でも耐え、生き抜いていけるか、これが教育だと考えております。

 新しい学習指導要領では、生きる力をはぐくむことを目指しています。どうか、今後も日本の教育はすばらしいと世界に称賛されますよう、教育に携わるすべての皆様が、胸を張って、日本の宝であります子供たちへの教育にしっかりと取り組んでいただきますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、東日本大震災の被災地及び被災されました皆様への一日も早い復興計画が策定され、実現されますよう重ねての御努力をお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文でございます。

 私は、いい意味で文教族というふうに自称しております。そういう立場から率直に申し上げたいと思うんですが、新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画、これがもとになって義務標準法改正案が今回も出されているわけでありますけれども、これは、私は改めて、計画の見直し、廃止まで含めて行うときにもう来ているのではないかということを冒頭申し上げます。

 それというのも、これは自戒も含めて申し上げるんです、別に今の民主党政権に対する批判ということではなくて。そもそも文部科学省というのは、本来、優秀な頭脳の人たちの集まりであるべき役所だと思うんですが、残念ながら、戦後ずっと文部科学省としての政策戦略というのはなっていなかったというふうに、これは反省も含めて申し上げざるを得ないというふうに思うんです。これが非常に後手後手だった。

 結果的にこれは、対財務省、財務省だけではなくて、そもそも、国家戦略としてこの国の教育をどうしていくかということを文部科学省としてきちっと考えて先導してこなかったというところが、今日の後手後手の教育政策の部分があるのではないかと私は思っております。

 その中の一つとして具体的に申し上げますけれども、今回のこの議論の中で財務省がもうはっきりと、この三十五人学級の実現化に向けて二十四年度以降どうするか、評価基準が四つあるんだということを明示していますよね。

 一つは、学習成果とどのぐらい関係があるのかという相関性の問題。二つ目には、財政上の後年度負担に耐えられるかという問題。そして三つ目は、これは直接文科省だけの問題ではありませんが、民主党政権の問題でありますけれども、しかし我が党も同じことを実際言っているわけですが、公務員人件費二割削減問題です。これは、民主党でいえばマニフェストとの整合性の問題。それから四つ目が、もう既に地方の自主的な措置で三十五人学級が普及している。実際、小学校一年生でも九二・九%は実現しているわけです。その中で、今後、国と地方の役割分担。

 これをはっきり明確に方向性を打ち出せなければ、財務省としては、来年度以降の三十五人学級の実現化に向けては難しいと結果的には言っているわけです。

 そのときに、一昨日も大臣は、頑張る、マイナスシーリングも、削減されないように頑張ると言っても、そういう玉砕型では、これは大臣に対する批判ではありません、そもそも文科省の役所としての存在そのものが私は問われていると思うんですが、という中でこれをどうしていくかということについて、この四つについての文科省としての理屈づけをしたところで、私は相当これは難しい問題であるというふうに思っております。

 それというのも、今回は、このことだけでなく、大震災が起きたということですね。これはもう想像を絶する被害が日々刻々と国民にマスコミを通じて情報として流されておりますけれども、本当に、二十年、三十年かけてももとどおりに回復できるかどうかという、これは大変なことだというふうに思います。

 これはもちろん教育だけではありません。我が国の総力を挙げて日本復興のためにどうやっていくかということを考えると、今までの政策延長線上では対処できない問題がたくさんあるわけです。わかっているにもかかわらず、もう既に走っている電車の中で、つまり今回の三十五人学級ですね、これはこれで通してもらいたい、しかし復興は復興で別なんだということは、もう理屈としては私は通らないと思います。

 なぜかというと、これは、もちろん予備費等、あるいは復興に対する国債も大幅に発行しなくちゃいけないでしょう、いろいろな対策をしなくちゃいけないでしょう。しかし、実際に四月一日から、もう来月から新学期も始まるわけですから、そのときに、予備費で手当てをするとか補正予算で手当てをすることでは間に合わない。

 四月一日から、我々は今回の中においても、この復興についての先生の予算も、これは加配等で手配をしながら、それだけでも十分ではないわけですけれども、しかし、四千人の中相当の部分を思い切ってシフトして、そして、この東日本巨大地震に対して対応を柔軟にすぐできるところから考えていく。そのための法律改正、修正も含めて国会がしっかりと対処する必要があると私は思っているわけでございます。

 確かに、少人数学級についての国民の期待が高いことは事実ですし、我々もそれは否定しません。しかし、それを一年生だけに、今のような状況、つまり、財務省が言っているような四つの問題提起、それから今の我が国の国難、地震が起きている、こういう惨状の中、本当にことし一年生三十五人だけでいいのかどうか、では来年度以降これは担保できるのかどうかということを考えると、客観的に見て、これはもう相当大変な問題だということを考えると、わかっているわけですから、今からどう対処するかということを考えていく必要があると思うんです。

 その中でまず一つは、今までの定数改善計画それからこの義務標準法改正案、これについては、これからの計画ですけれども、改めて見直す。ことしについてはとりあえずは一年生とこうなっていますけれども、しかし、根本的に見直すということが、誠実な、あるいは頭脳集団だと文科省が自負できるのであれば、そこから根本的にもう考えていかなければならない、今はそのときだと思いますけれども、大臣の認識をまずお伺いいたしたいと思います。

高木国務大臣 下村委員にお答えしますけれども、まさに今みずから文教族と、そういう紹介もございまして、それだけに、これまで文部科学行政にはかなり深い見識をお持ちだ、そのように思っておりますが、私どもとしましても、震災という、かつてない、ある意味では本当に戦後初めての体験であるし、これまでの常識が通じないようなことだってあり得る、そういう思いは持っております。

 そういう中で、今から復興にかけて、それこそ国を挙げて総力を結集して物事に取り組まなきゃならぬ、このように思っております。それは私も同じ認識でございます。

 ただ、それはそれとしましても、この国は今から大きくまた生きていかなきゃなりません。教育の継続性というのもございますし、私どもとしましては、これまで長い間取り組まれておりますけれども、やはりまだまだ不足した面、その一つが私は少人数学級ではなかったかと思っております。

 きめ細かい、質の高い教育、子供と向き合う時間をできるだけ確保するという意味で、遅きに失したという御意見もございますけれども、本当ならば私どもは、義務教育、小学校、中学校すべてに少人数学級をしたいというのがやまやまでございますが、政府の一体としての検討の中で、今回、小さく産んで大きく育てるという話もございますけれども、一年生からやることになったと、こういうことでございます。

 国家戦略を持てということは全くそのとおりでございまして、我々としては、成長戦略の中で、とりわけ人材の育成、教育、科学、文化・スポーツ、この持つ意味は非常に大きなものがある。したがって、人を育てること、人材の育成に当たっては、成長戦略のまさにプラットホームだ、こういう思いで私も今この仕事をさせていただいております。

 しかし、おっしゃるとおりの趣旨は、経験や惰性に流されるのではなくて、やはり日々改善、改革の姿勢を持たなきゃならぬ、そういう思いは私も改めて今しておるところでございます。

下村委員 具体的にはお答えになっていませんけれども、中学三年生までの定数改善法、これは事実上計画どおりにもう初年度からいっていないわけですけれども、今後もいくのはもう不可能だと思います。

 別の視点から、少人数にしながらきめの細かい対応をどうしていくか、違う発想を今の現状の中で政治家が柔軟に考えていく。役人がつくるのはいいですけれども、しかし政務三役がいらっしゃるわけですから、その中で国家戦略として、財源もあるわけです、文科省としてやりたいと言ったって実際はやれるかどうか、お金の問題もあるわけですから、そういうことも考えながら、より成果、効果、そして今何が必要なのかということを柔軟に考えていくべきであって、この定数法があるから粛々ととにかく愚直に財務省に頼みながら、たとえ一年おくれても中学三年生まで実現をしていくんだということよりは、今の災害等を踏まえながらどう柔軟に対応するかということが求められているというふうに思います。

 その中で、ちょっと一つ一つ具体的に申し上げたいと思うんです。

 おととい、我々は対案のポンチ絵をお示しいたしました。その中で、先ほど山中局長が事後届け出制について答弁をされていましたが、都道府県教委の定める基準に従い学級編制した、これを、市町村教委が地域や学校の実情に応じ、より柔軟に学級を編制できるように改め、新たな法改正の中で事後届け出制と。しかし、先ほどの答弁も間違ってはいないんですけれども、相当勘違いされた答弁を意図的にされたとしか私は思えないんです。

 これは、東京都の教育委員会、きょうはおっしゃっておりませんでしたが、県費負担の教員については、この人事権は都道府県教委が持っている。ですから、たとえ事後届け出制であっても、やはり目安があって、その目安のとおりにしていなければ基本的にはそれは認めない。ですから、山中局長の先ほどの答弁も間違っているわけじゃないんですが、区市町村が独自に先生を採用してやるんだったら別ですよと。つまり、県費負担についてそういうことができるかのような答弁を、聞く人が聞くと間違って聞いてしまうのではないかと思うんです。これは、東京都はできないと言っているんですよ。認めない、そういう法律には読めないと。

 ですから、我々は、一昨日のように、市町村教委の、あるいは学校現場の意見をより尊重するというのを法律の中に修正案で入れることによって、事実上、学校現場や市町村の教育委員会が事後届け出制でその辺は柔軟に先生の配置ができるようにするというのを、より法律の中で丁寧に修正することによって都道府県教委にそれを理解してもらうということが必要ではないかというふうに思っているわけですが、これについての御見解をお聞きしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 委員御指摘のように、今回、事後届け出も意味があるんですけれども、基準を標準ということに変えました。したがって、できることにはなってはいます。

 そこは御理解いただいておりますが、ただ、より丁寧に学校現場の声を聞くべきであるという御提案といいますか、これは、政府の立場としては、お出ししているものの成立をお願いし、立法府において御議論されるべきことだと思いますが、それは極めて丁寧でありますし、そのことが、我々が目指すべき方向をより現場の方々に周知するということには資するのか資さないのかというお問い合わせだというふうに理解すれば、私は資するというふうに理解をいたしております。

 もちろん、法律の書きぶり等々については、これは立法府で御議論をされることでありますから、それに我々は従うという立場でございます。

下村委員 そういうことですから、与党の方でもよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 そして、先ほどの、被災した地域に対するフォローアップを今回のこの法律案で私は書き込む必要があるのではないかと思っているんですね。それはおととい提案した内容でありますけれども。

 この加配について、そういう意味では、機械的に振り割られる基礎定数ということではなくて、より柔軟な運用ができる加配定数、つまり、今回のような災害が起きたときにそれが対応できるということでありますけれども、それは我々は、学校現場の実情に応じて、少人数指導の充実、特別支援教育、指導困難児への対応、それから専科教員、これを入れたわけです。

 さらに、既に、阪神・淡路大震災のときに復興加配教職員が配置をされました。それから、平成十九年の新潟中越沖地震の際にも教育復興加配教員が配置されました。このときでも六十五人が配置をされているんです。このときのことあるいは阪神・淡路大震災のときのことを考えると、これは、数百人、数千人、四千人でも多分足らないかもしれないというぐらいです。

 これはつまり、特に被害の多かった岩手、宮城、福島県以外でも、そこから疎開して、あるいは避難して東京に来られている方々も実際かなりおられます。そのときに、東京都だけでやれということではなくて、周辺県、あるいは関西の方まで避難されている御家族の方も結構いらっしゃいます。そういう方々に対して、こういう形で国が復興加配教員を配置するということを今回の中で入れ込むということが必要ではないか。

 せっかくこの二十三年度予算で二千三百人の教職員を確保できるわけですから、復興加配を優先して措置をする、そういう政策転換であれば、小学校一年生の三十五人学級にこだわらなくても国民の理解は得られるのではないかというふうに思いますが、この教育復興加配教員についてはどんなふうにお考えか、お聞きしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 このような本当に未曾有の事態を踏まえますと、阪神・淡路大震災あるいは中越のときに復興加配という措置がとられましたけれども、そのようなことを参考にした加配措置ということは必要だという御主張は私も共有するところでございますし、私どもも、文部科学省として、そのような手配が必要であるという基本的な認識は持っております。

 ただ、今回の御議論は、委員はよくよく御承知でございますが、これは議事録にも残りますので申し上げますと、総定員をふやしていこうということについては、恐らく、すべてのここにお集まりの各会派の御意見は同じだと思います。しかしながら、その総定員は、大きく申し上げますと、基礎定数とそれから加配定数によって構成をされています。

 基礎定数について申し上げますと、基礎定数についての手配というのは三十年間やられてこなかったわけですけれども、とりわけ平成十七年以降、加配対応というのが続いて、そして三分の一ということが進む中で、これは直接の因果関係まではございませんが、かなりの有意な相関として、おととい、馳議員の御説明で申し上げましたけれども、いわゆる非正規比率が、一二・三%から平成二十二年ベースで申しますと一五・六パーまでふえてきているわけです。そのバックグラウンドには、要するに、基礎定数についての改善方針ということが示されなかったということが背景にあります。

 したがって、いろいろ各党がマニフェストを出されておりますが、少人数学級というメンションがあるマニフェストは、基礎定数についてもきちっと拡充をする、そして加配定数についてもきちっと拡充する、両方相まって、それぞれ役割が違います、その両方が必要で、その結果、総定数をふやしていこう、こういう御主張の党と、民主党もそういう考え方であります。それで、加配定数をふやそうというところも、恐らくどの党も違いはないんだと思います。

 最後残った問題は、基礎定数の傾向。今、生徒数が減ります、学級数が減ります。そうしますと、基礎定数の実数はどんどん削減傾向にこのままほっておくとあります。そのことを放置するのか、それとも基礎定数の実数を改善の方向に一歩踏み出すのかというその基本方針をめぐって今御議論がされていて、私は、先ほどの下村委員の、そういったことも含めてきちっとこれから、まさに国会、政治主導で定数のあり方について議論をしていこうということは大変すばらしい御提案だと思います。

 ただ、大きな議論をする上で、基礎定数をこのまま自然減に任せるのか、それともそれに歯どめをかけるのかというのは、これはまさにこの計画をつくる上での一番の大前提となる認識の相違と方針の相違でありますから、ここさえ決まればあとのところは、恐らく今のこの深刻な状況、それから、もちろん震災だけではなくて、学校現場は、いじめの問題とか、外国語指導の問題とか、あるいは学習指導要領の追加とか、いろいろなそういうことについてしっかりやっていかなきゃいけないという加配の必要性について、否定する党は一つもないと思います。

 ただ、これは委員、自民党最高の教育族でいらっしゃるのでよくおわかりだと思いますが、例えば教頭先生とか副校長をダブル配置しようと思ったら、基礎定数の改善をしなければできません。ここは委員よく御存じのとおりだと思います。加配でやれるのは主幹教諭までです。

 例えば、マネジメントを強化しなければいけないということについても我々は問題意識を共有しています。しかし、そのときに、加配でやる主幹の部分と基礎定数でやる教頭、副校長の部分と、これは、合わせわざで現場に応じてやれるだけのこの措置というものを国としてはやっておいた方が、使い勝手がいいのではないかというふうに私は思っております。

 以上です。

下村委員 我々、今何をやるかということと、それから長期的展望の中でこれからどう考えるかということ、二つに分けて議論すべきだと思っています。

 長期的という意味では、先ほど冒頭に申し上げました対財務省の四項目、それから今回の大震災、これを受けて、そもそも基礎定数の見方そのものを大きく変えていく必要があると思っています。学級編制等々じゃなくて、加配も含めた、そもそも基礎定数を何をもって基礎定数とするのかというそもそも論から議論をしていかないと、これは絶対に財務省には勝てません。

 この延長線上で中学三年生まで本当に三十五人ができるのか。それは、自然数の減によって少人数制になって、人口動態によって結果的にクリアするということはあり得ます。しかし、これを本当に五年も十年もこの基礎定数的な考え方で教職員をふやすということ自体は、私は既にもう無理だと思っていますから、ここから根本的に考えてく必要がある。ですから、加配も含めた中での基礎定数のそもそものあり方を根本的に考える必要がある。それが今後の課題としてあると思いますね。

 それからもう一つは、今すぐに何ができるのかと言っているときに、今はもう危機対応ですよ。つまり、昨年の十二月までの議論といいますか、三月十日までの発想と三月十一日以降の発想は、もう明らかに国民の意識まで含めて変わってきているんです。そのときに国会が柔軟に対応できるのかどうかということを考えたら、この四千人についても、より現場ですぐ対応できるようなタイムリーな方向性というのは考えるべきではないですかということを申し上げているわけです。この四千人の使い方の問題ですね。

 さらに、もちろんこれだけでは足りませんから、これから補正予算等の中で文部科学省も、現場に対して、心のケアを含めたいろいろな形での震災復興加配教員というのは、プラスして当然必要になってくると思いますよ。しかし、それは後の話であって、今目の前にある法律案の中でそれをしっかりと入れるということについては、これは立法の立場のことかもしれませんけれども、しかし、文科省としても一緒に考えていくべきことではないですかということで申し上げているんです。

 後半の部分についてはいかがですか。

鈴木(寛)副大臣 加配については、まず、今回の予算案でも五万八千人という加配がございます。今の御議論も踏まえてもしも都道府県教育委員会の御議論がいただけるのであれば、五万八千人の使い方について弾力的にせよと、こういう御意見が国会でそれがコンセンサスということであれば、それは一つの大変貴重な御意見としてございますが、しかし、今我々は法案の御議論をしていただいているわけで、法案というのは、やはりそれの前提となる基本的な考え方、これもまた都道府県に示してあげないといけないと思います。なぜならば、都道府県は、長年にわたって基礎定数の改善ということについて強く強く要望をしてこられました。そのことは委員もよく御承知のことだと思います。

 今回、私どもはその声にこたえて、基礎定数について今の現状は問題である、それについて改善の、小さな一歩かもしれませんけれども、踏み出すという意思を今回法案の形でお示しをしています。これについて国会がどういうふうな御判断をされるかということも大変に都道府県の教育委員会、都道府県教育関係者は注目をしておりますので、これについては意思表示をする。それともう一つ、この緊急時の対応を、あわせ協力をいただきながら考えていくというこの二つのことを同時に御議論をいただくということではないかと思います。

下村委員 おととい提案しているように、我々は、残りの五万九千人の加配についてどうシフトするかということについては、今回は対象にしていません。あくまでも、今回の四千人のふやす教職員の数の中で、これを加配要員としてより柔軟に対応できるようにすべきだということを申し上げているわけで、法律案については既にポンチ絵として出しておりますから、これはこれで議論をしていく必要があると思います。

 ちょっと時間の関係で、もう一つ重要な問題として、教員をふやすということは、これは現場ニーズがあるということはよくわかりますが、しかし、同時に教師の質をいかにこれからアップしていくか。質の向上ということも、同時に、現場ではない国民、子供たちの親から見たら、やはり教師に対して、量とともにその質をどうするのかということについては強い要望があるということは御承知のことだと思うんです。

 この中で、教員免許更新制度が平成二十一年四月から導入されました。いよいよ今月末で最初の更新時期を迎えます。具体的には、現職教員に対して十年ごとに三十時間以上の更新講習を大学などで受けることを義務づけ、講習後の認定修了試験に合格しないと免許が失効するという制度であります。

 しかし、民主党政権になってからこの教員免許更新制度、これは、政策集インデックス二〇〇九及びマニフェストにおいて抜本的に見直すとされており、鈴木副大臣もそうですが、当時の川端文科大臣初め政務三役は、就任早々、免許更新制の見直しを表明されましたね。

 実際に、平成二十二年の六月には中教審に教員資質の向上方策を諮問し、その中で免許更新制の見直しも検討項目に加えました。さらに、鈴木副大臣は、平成二十二年中に中教審で中間報告をまとめてもらい、平成二十三年一月、つまり今通常国会に関係法案を提出するという具体的日程まで明示されていました。教員免許更新制に係る予算も大幅に削減したため、現場の教員には免許更新制が廃止されるというメッセージだと受け取られ、更新講習の受講者がその後激減しました。

 しかし、昨年七月の参議院選挙の結果、民主党が大敗したため、免許更新制度を廃止するための法律改正案が事実上不可能になったといいますか、難しくなったということである今現状ですね。

 しかし、実際に文部科学省が更新講習の受講状況、これは昨年の九月現在ですが、点検したところ、更新対象者八万五千四百八十七人のうち、約五千百人が更新講習の必要時間が足らなかった。さらに、そのうち二千百人は全く受講していないということが判明をしました。最悪の場合、三月末までに全国でこの二千百人の教員が失職するという可能性さえあるわけですけれども、そういう状況に対して文科省は、都道府県教育委員会などに、失職者を出さないよう更新講習の受講徹底を呼びかけてきたはずです。

 既に年度末を迎えておりますけれども、今この時点でこの更新対象者の免許更新等の状況はどうなっているか、お聞きいたします。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、免許更新制を始めまして、第一グループというふうに通称しておりますけれども、八万五千余の先生方が三月三十一日に初めの免許更新制の修了期限を迎えるところでございます。

 これで昨年の八月末から九月、これはサンプル調査でございますけれども、それをやって推計したのが、委員御指摘のとおり、五千百人がまだ全部の受講を修了していない、あるいは、そのうちの二千百人の方は受講の申し込みをまだその時点でしていないという状況でございました。

 この後、私ども文部科学省としましても、都道府県あるいは知事さんの方にも通知もいたしまして、まだ受講させていない方、こういう状況ですよということで、受講をされるようにという呼びかけと申しますか、その働きかけも行ったところでございます。

 これらの教員の皆さんにつきましては、その多くは、冬休みの期間などを利用して履修して、その必要な申請を済ませているのではないかというふうに考えております。

 平成二十三年、ことしの一月三十一日が、更新講習修了、その確認を申請するという期限でございましたので、今、二月一日現在のそれぞれの都道府県の修了確認の申請状況、その調査を行っているところでございまして、まだその集計中というところでございますけれども、多くの方が受講をして申請を行っているという状況でございまして、未申請者の多くは、退職予定ということで未申請という方が多いという、まだ途中の状況でございますが、そういう状況となっております。

下村委員 十年で退職予定というのはそんなにいるんですか。

山中政府参考人 まず、多くの方は受講をして、もう更新の申請をしているという状況でございます。

 残った方、申請をしていない方等ありますけれども、残ったそれほど多くないその未申請の方の多くが、退職予定、五十五、そのあたりで退職をもうしようという形で申請をしていないという方が多いというふうな状況、今のところの把握の状況でございますので、トータルがまたわかりましたところで詳しい数字になると思いますけれども、そういう状況でございます。

下村委員 五千百人が更新講習の必要時間数が足らなかったということは、これはサボっていたというよりは、今の政局の中、もう必要ないんじゃないかと判断をした先生方も結構いたのではないかと思います。

 これはどうしますか。この免許更新制、民主党政権としてはこれは廃止するのか、見直すのか、その方針はいかがですか。

鈴木(寛)副大臣 先ほど来いろいろ経過について委員御説明いただきましたとおりなのでございますが、今、中教審で御議論をいただいております。この結論を今は待っているところということでございます。

 ただ、この委員会等々でも御議論がございましたけれども、十年経験者研修と免許状更新講習の重複といったことなどについては、一定のそこについての改善をしなきゃいけないということについての問題意識は共有されているのかなというふうに思っておりますので、この点も含めて今中教審で御議論いただいておりますので、その御議論がまとまったところで対応してまいりたいというふうに考えております。

下村委員 では、今御指摘のあったことを先に聞きますけれども、我々もそれは問題だと思っているんですよ。この免許更新制で、十年たったら三十時間、それから、もともと十年研修がありますね。これはやはり重複をしていて、かなり負担もあるのではないかと。ただ、詳しく聞くと、実際は重複部分というのはクリアカットされるから、事実上の重複はない。

 ただ、研修時間が長いという問題はあるかもしれないと私も思いましたが、一方で、この三万円の費用が個人負担。しかし、実際現場の人たちにお聞きすると、交通費とか宿泊まで含めたら、平均するとこれは十万ぐらいはかかっていて、この負担感が相当あるという話もありました。

 それで、我が党も参議院選挙の公約において、「教員免許更新制度の運用面での課題を是正し、実効ある制度設計を行います。」ということで、免許更新制度を前提に検討を行っているところであります。

 そういう意味でもう一度確認したいんですが、この免許更新制度について、我々はこれは絶対必要だという前提の中で、しかし、それ以前の既存の制度とどうその重複なり負担感をなくしながら成果、効果を上げるか。そういう改善は必要だと思いますが、どういう視点でこの免許更新制度について検討しようと考えているのか、お聞きしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 重複の部分については、更新講習の場合は十年までに修了しないといけないということがございます。十年研の場合は、までにやった分を少し勘案するよということなんですけれども、それと、御案内のように、更新講習は大学等が主催をしていて、個人が個人の負担で受講する。十年研の方は、これは教育委員会が教育委員会の負担、要するに自己負担なしでやる。こういうことでございます。

 十年という、中堅教員になりかかる、あるいはこの講習を経てまさに学校の中核となる中堅教員になっていただく。その際に、何らかのスキルアップのために講習が必要である。まとまった研修、それを講習と呼ぶか研修と呼ぶかは別問題として、そこでバージョンアップのために、それまでは自分の持ち場をちゃんとやるということでありましたけれども、ちゃんと学校全体のある部分について責任を担うということで研修なり講習が必要だという認識は私どもも持っております。さらに、そういったことを促すようなインセンティブもつけていきたいという考え方を持っています。

 しかし、今回のことで明らかになったように、その講習を、いろいろな理由で受けられないケースがあるわけでありますけれども、その際に講習を受けなかったからといって免許が失効して、そして失効すると直ちに教育現場を去らなければいけない、こういったことについては、今委員の御指摘の点とあわせて検討をしていく必要があるのではないかと思いますが、いずれにしても、いろいろな課題、やっと第一グループが出ましたので、その検証も含めて中教審で御議論いただければいいのではないかなと考えております。

下村委員 では、もう一度確認しますが、民主党政権において、とりあえず今、政務三役の立場において、この免許更新制度は廃止しないということですか。

鈴木(寛)副大臣 単純に廃止するとか廃止しないという議論を行っておりません。あるいは、そういうことを中教審にゆだねているわけではありません……(下村委員「いや、だからイエスかノーかで答えてください、イエスかノーかで」と呼ぶ)いや、そのような単純な議論ではないと思っております。

 教員の養成というのは、まさに、大学時代の養成段階、採用段階、それから六十歳までの全段階を通じて議論すべき課題だという認識で我々は中教審に諮問をいたしております。

下村委員 いや、ごまかさないでください。これは民主党のマニフェストに書いてあるんですよ。それから、日教組でもそもそも免許更新制廃止というのを主張しているんです。ですから、単純云々じゃないですよ。皆さんだって言っているんですから、はっきり答えてください。

鈴木(寛)副大臣 今、十二月に議論の整理という形で中教審の、これはまだ中間報告でもございませんが、議論の整理ということの取りまとめが行われております。

 その取りまとめでは、十年程度たったところで、基本的に教職大学院などが主催をする、さらにバージョンアップするためのプログラムを履修して、そして専門免許状というものを取っていただく、そういうような制度設計になっております。

下村委員 全然答弁になっていないですよね。副大臣ですから、なぜ副大臣がそもそも答弁するかというのもおかしいわけで、高木文科大臣、教員免許更新制度、廃止するかしないか、端的にお答えください。

高木国務大臣 今、教員の資質の向上のために教員免許制度というのがあるんですけれども、私どもとしましては、また違った意見を持っておることも事実です。

 ただ、これに対してどうしていくのがいいのかというのは、今、中教審に御議論いただいておりますので、非常に重要な問題です、この結論を踏まえて我々としては判断をしたいと思っています。

下村委員 民主党のマニフェストには廃止をすると書いてある。日教組も言っている。

 高木大臣、いいですか、お聞きしているんですけれども、そうすると、今時点で廃止するかしないかはまだ検討中ということですか。もう一度明確に答弁をお願いします。

高木国務大臣 マニフェストには教員免許更新制については記述はありません。これは御理解ください。

 それで、大事な問題ですから、今まさに専門家たる中央教育審議会で御議論をいただいておる。私たちはそのことを踏まえて判断をしていきたいと思っております。

下村委員 失礼しました、インデックス。これは民主党は主張していましたよ。どうするんですか。

鈴木(寛)副大臣 これは私、公式の場で何度か御説明申し上げたことございますけれども、マニフェストというのはマニフェストで、きちっと党内手続をとってマニフェストという形になって、これを選挙のときにお示しをしているものであります。インデックスというのは、これまで民主党で部門会議などを中心に議論のあったことを整理したものであって、ということのインデックスとマニフェストの違いについては御理解をいただきたいと思いますし、そのような、これまでも記者会見等々でも御説明をしているところでございます。

下村委員 そうすると、マニフェストは守らなくてはいけないけれども、インデックスは守らなくてもいいということですか。そういうことですね、今の答弁は。まあいいです。これは改めてきちっと議論をしたいというふうに思います。

 いずれにしても、教員をふやすということだけでなく、どう質を高めるかということの中で、これは今議論している中で検討中ということではやはり困りますよ。やはり皆さんは政権をとっているわけですから、政権をとっておるところが、政務三役が、政治主導と言いながら、全部実際は中教審に丸投げじゃないですか。中教審に丸投げして、中教審が答申をしてこないとこれは答えられないというのは、何のための政治主導かがやはり問われると私は思いますよ。

 それだけ指摘して、とりあえず私の質問を終了いたします。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 自民党の馳浩です。よろしくお願いいたします。

 教員の資質向上についての今のやりとりを拝聴しておりまして、多分こういうことだったと思うんですよ。大臣、こういうことなんですよ。要は、民主党を一生懸命応援してこられた日教組の皆さんが、これはやはり負担が多い、十年研修と重なるよ、廃止だ、ずっとこうおっしゃっておられたんです。そういう主張をされる民主党の候補者も二年前のときにはおられました。

 政権交代の後、文部科学省としては、教員免許更新制度の抜本的な見直し、こういうふうに方針を示されたと思うんですね。ところが、それから半年ぐらいたった後、去年の六月に、教員の資質向上についての抜本的な見直しというふうな文言になったんですよ。免許更新制度の抜本的な見直しという文言を見て、全国の皆さん方は、よし、我々の期待にこたえて多分廃止してくれるだろうと思って、それで、講習をちょっと様子見ようかなという人がふえたんですよ。その人たちが実は、大臣も先般おっしゃいました、去年の九月時点でまだ五千人も残っていると。現状でも結構残っていると思うんですね、講習を受け切っていない人が。

 ただし、文科省としては、去年、資質向上についての抜本的な見直しという方向になって、中教審で丁寧に御議論いただいていると。その結論を受けて最終的に判断されるということでありますから、教員の資質向上について抜本的に見直しをしながら高めていこうということについては、これは我々自由民主党も大賛成です。ただし、それによって、現状の教員の養成課程、それから教育実習を受け入れる側の問題、それから教員免許を取って、取ってもどうでしょう、どの程度本当に実際に現場の教員として教壇に立っているか。多分、随分少ないですね。

 それを考えると、むしろ大学の養成課程のハードル、単位の取得とか、より実務的なこととかは、ここはやはりハードルを上げた方がいいし、実際に現場に出て学び直し、きょう実は放送大学の小川先生が来られていました。おっしゃっておられましたよ。現場の教員の方々や中間管理職、教頭や校長が随分と放送大学を受講されていて、来年は大学院の博士課程までやろうとおっしゃっていましたよね。非常に希望が多いんだそうですね。

 そうやって現場にいる教員が、自分の責任範囲の中でより資質向上のために学び直しをしようとするなら、そういう体制を整えるのも私は文科省の責任でもあると思うんですね。そういう意味での教員の資質向上に向けての抜本的な見直しを進めていく、幅広い議論をしていくということは、今後ともぜひやっていただきたいと思いますし、自由民主党としても、大いに我々なりに努力をして、よりよい制度になるように提言も続けていきたいと思いますよ。

 さて、財務省から尾立さんにきょうも来ていただきました。引き続きお伺いしたいと思いますが、財務省の吉田政務官は、三月九日の質疑でシーリングについてこう答弁されました。社会保障とか地方の交付税を除いた約二十五兆円の経費を対象にして一〇%削減の要求をしていただいた、この答弁に間違いはありませんね。

尾立大臣政務官 お答えをいたします。

 いわゆる平成二十三年度の概算要求組み替え基準における九割要求、逆に言いますと一〇%削減でございますが、この対象となる経費について、改めて正確に申し上げたいと思います。

 まず、基礎的財政収支対象経費、これは約七十一兆円ございますが、ここから年金、医療等、さらに地方交付税交付金等、そして予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費を除いた総予算組み替え対象経費二十四・九兆円というのがございます。ここからさらに、高校の実質無償化等マニフェスト主要政策及び国会、裁判所、会計検査院に係る経費を除いた二十三・三兆円というものがこの九割要求の対象になっておるということでございます。

馳委員 対象外とした地方交付税交付金、これには教職員給与の三分の二負担の部分も含まれていると思いますが、間違いありませんね。

尾立大臣政務官 はい。国庫負担を伴います義務教育職員の給与費については、その全体が地方財政計画の歳出の項に計上されておりまして、給与関係経費ということで計上をされております。

馳委員 大臣、教職員給与は、三分の二地方負担とはいえ、実質的には全額国が負担をしている。あっちはシーリングの枠外で、こっちはシーリングをかけるというのはおかしいんじゃないかというふうには当時思いませんでしたか。

高木国務大臣 私は、義務教育国庫負担金は国が責任を持って対応すべきものだ、このように考えております。

馳委員 そこで、先般の下村委員に対する尾立政務官の答弁をちょっと私なりに読みこなしてみたんですよね。つまり、こういうふうな言い方だったと思います。国庫負担金の三分の一の額に合わせながら地方交付税の三分の二の負担額を合わせるようにしたと。つまり、予算編成の過程もあって、決定までの作業でそごのないようにした、そういう趣旨で答弁をされたと思いますが、多分間違いないと思うんですね、今から私があえて言いますから。

 これは、地方交付税の三分の二にシーリングをかけたら、まさか元気枠、復活要望額ですか、これにかけるすべがなくなるから外したという言い方もできるし、そもそも民主党は、経済状況も厳しいですから、地方交付税交付金にはやはり手をつけないという民主党としての方針があったのかもしれませんね。そういうことで義務教育費国庫補助負担金の方だけかけたということの私の理解でよろしいですか。

尾立大臣政務官 済みません、これもまた正確にちょっと申し上げたいと思います。

 先ほども申し上げましたように、国庫負担を伴う義務教育職員の給与費については、全体が地方財政計画の中で歳出として計上されておりまして、その三分の一は国庫支出ということ、御案内のとおりでございます。残りの三分の二は地方交付税交付金等に含まれる中で処理をされるということでございまして、地財計画と義務教育費の総額というものは、これはベースが同じだ、また国庫負担のベースもすべて同じだという意味で、そごがないというふうに申し上げました。

馳委員 なかなか一回聞いただけではよくわからない説明なんですよね。

 でも、尾立さん、この三分の一の国庫負担金が現場で全部使われていると思っていますか。

尾立大臣政務官 はい、適切に使用されているものと承知しております。

馳委員 細かい数字は山中局長が持っていると思いますが、二十二の県から国庫に返納になっているんですね。なぜだと思いますか。

山中政府参考人 数は年度によっていろいろ違うところでございますけれども、その最高限度額のところまでそれぞれの県の教員給与費の総額というものを確保できていないという県があるということでございます。

馳委員 尾立さん、そういうことなんですよ。国庫負担三分の一、三分の二が地方交付税の地財計画の中に入っているから、全額使われているものだと思いますよね。ところが、三分の一の部分も返ってきているんです。なぜか。私、今二十二と言いましたが、これは、具体的な数字はまた、多分文部科学省持っておられると思いますけれども、地財計画に入っている三分の二の部分が、三分の一に見合っていない、少なく渡されているということなんですよ。だから、三分の一の部分に合わせようとしても、地方で給与負担ができないので、お返ししますといって国庫に返納されているという実態があるんですね。

 したがって、我々からすれば、我々というのは、あなたを除いた我々文教族の我々ですよ。それはやはり、教職員の給与というのは、憲法第二十六条の精神からすれば、ちゃんとやはり国が責任を持って、義務教育無償化の観点からも保障してやらなきゃいけないじゃないかというふうな議論になるんです。

 これはあなたを責めているだけではなくて、我々自民党のときに、二分の一から三分の一に減らした小泉構造改革が悪かったんですよ。それを受け入れて総額裁量制にした我々も反省しなきゃいけないという意味で私はあえて、こういう実態になっている中でありながら、でも文科省は、工夫に工夫を重ねて現場の教職員の給与を何とかして安定的に確保しようと艱難辛苦をして、あなた方財務省と闘っていると。

 私の指摘に間違いはありますか、大臣。

高木国務大臣 私どもとしましては、義務教育国庫負担金は、シーリングにかけるべきではない、これは当然国が措置をするものだ、このような立場は堅持をしております。

馳委員 だから我々も、去年、高校無償化法案の審議のときに財源の問題で、当時は副大臣であった野田財務大臣にも、特定扶養控除の分の削減を随分中川正春副大臣努力されてやりとりしておられましたけれども、文部科学省をいじめるなよと随分とバックアップしてきているんですよ。今後とも、この後も厳しく財務省に対して追及したいと思いますが。

 そこで、概算要求では、シーリング要求枠と元気枠での要望という合わせわざでの予算要求でしたが、柔道では合わせて一本というのはありますが、予算要求ではわざの意味が根本的に違います。シーリングをかけていいものといけないものとの峻別が必要です。義務教国庫負担金は、補助金ではなく負担金です。憲法の義務教育無償化の規定により、国が保障しなければならない負担金です。

 財務省に改めて伺います。二度と義務教の国庫負担金はシーリングにかけませんね。

尾立大臣政務官 お答えいたします。

 二十四年度予算、来年以降につきましては、財政運営戦略、これは昨年の六月に政府で決めておりますが、これに基づき、まず予算編成の基本理念というもの、さらには経費の性格等を勘案して、中期財政フレームと整合性があるような形で概算要求の基準を設定していくことになろうかと思います。具体的な内容については、今後、概算要求がこれから始まっていきますけれども、その過程で検討されると思っております。

馳委員 あなた、さっきから、私の話を聞いているようで全然聞いていないじゃないですか。

 では、しつこいようですが、高木大臣にお尋ねいたします。二度と義務教の国庫負担金にシーリングをかけさせませんね。

高木国務大臣 平成二十四年の概算要求については、今後、政府としてその考え方を決めるときが来ると思っております。私としましては、義務教育国庫負担金の重要性を強く訴えてまいりたいと思います。

馳委員 ここが本当に最重要なポイントであると私たちは考えています。文部科学省にとっての大黒柱であります。ここがあいまいでありますと、来年も一〇%シーリングと特別枠という合わせわざを財務省に持ち出されてしまいます。合わせわざの可能性はないと改めて否定できますか。尾立さんに伺います。

尾立大臣政務官 繰り返しになるかもしれませんけれども、二十四年度予算の概算要求基準についてはこれから決定されていきますので、現在、予断を持ってお答えすることができません。

馳委員 これから文部科学委員会があるたびに、あなたをここに呼び出したいと思います。

 ましてや、東日本の大震災からの復興財源が膨大な額になります。平成二十四年度の予算編成は、ことし以上の財源不足で厳しくなります。先行き不透明であり、めどが立たないと思います。

 そんなときに、文部科学省の新定数改善計画は、平成二十三年度でさえ、初年度から頓挫したのでありますから、計画的な改善に向けての見通しは五里霧中なのではありませんか。つまり、見直しせざるを得ないのではありませんか。見直しをするのであるならば、私は、この法案というのは遅かれ早かれ、四月中には処理がされると思いますが、四月中にも速やかに見直しの作業に入ったらいいんじゃないかなと思います。そして、見直しをするときには、ぜひ野田財務大臣にもメンバーに入っていただくべきだ。いや、野田先生が忙しいなら、尾立さんでも結構です。

 ぜひ、財政的な観点からも、政策の優先順位としてこれは絶対守らぬといかぬという、その確定的なものを政府として持つべきではないかなと思うんですが、大臣、どのようにお考えですか。

高木国務大臣 今回の震災については、範囲もかなり広範囲にわたっておりますし、その災害たるや甚大なものであろう。当然、復興にかかる経費は相当、ある意味では予想のつかないものなんですけれども、それはそれとして、これは、我が国がこれからもしっかり立ち直るためには避けて通れないものだと思っております。

 したがって、教育関係費の補正予算を含めては、それはそのときにしっかり議論しなきゃなりませんけれども、私どもとしましては、当面、平成二十三年度予算あるいは関連法案、この中で、学校関係者、全国の自治体の皆さん方からもこれまでも強かった少人数学級、中学校までになりませんけれども、少なくともぜひ一年だけからはスタートさせていただきたい、こういう決意でございます。

馳委員 またまた新定数改善計画の見直しについての具体的な答弁がありませんでしたので、でも、これはどっちみち残りますよ、初年度でちょっとつまずいたわけですからね。それはもちろん文科省の責任ではなく、あそこにいる財務省の責任ですよ。でも、政府としてとる姿勢を考えると、やはり早く見直し、と同時に、財務省も説得できるような論拠というものを持って闘うべきではないかなと私は思います。

 そこで、今から申し上げることは、政府に申し上げるという以上に、隣にいる松宮さんに申し上げたいなということを今から申し上げます。

 今の法案のままでは自由民主党は賛成できません。一〇%シーリングを義務教国庫負担金へかけてしまった間違いという筋論と、現実的に少人数学級や少人数指導が進んでいることと、加配定数への振りかえで十分少人数学級や少人数指導への対応もできているということが明らかであるからです。

 今回は、三十五人以下学級を見越した平成二十三年度予算が成立をすることになっています。したがって、今から六点申し上げます。

 一、四千人、八十七億円を加配定数に振りかえること、二、学級編制や教育課程の編成に向けては、学校現場や市区町村教委の意見を都道府県が尊重する規定の追加、三、加配事由への特別支援教育、四、同じく加配事由への専科教員の追加、五、東日本大震災対応の特別加配措置の規定の追加、六、教育公務員特例法の改正で、違法な政治的行為制限の恒久制度化や国家公務員並みの罰則付与という教育現場の正常化、これは、多分に北教組の問題が全く改善を見ていないという実態を踏まえた提案でもありますが。

 これは、提案として、与野党と政府も含めた話し合いのスタート地点であると自由民主党は考えています。

 また、平成二十四年度に向けては、教育振興基本計画の見直しや教員の資質向上計画の実施、一クラスの下限人数も含めた学習成果や学級経営論、教職員の倫理規定の制度化など、総合的に取り組むべき問題を提案したいと思います。

 こういう制度改革は、数字のつじつまが合えばそれでいいとか、計算式はちょっとよくわからなかったけれども何となく答えが合っていたからそれでよいというものではありません。政策の立案形成プロセスも重要であると思っています。

 大臣の見解を伺いたいと思います。

高木国務大臣 お尋ねの少人数学級の実現については、これは昨年以降、平成二十三年度の予算等に関して、全国の知事会あるいは全国市長会、全国町村会、こういった地方団体からも要望されておりますし、また、教育委員会やPTAを初めとする諸団体からも強く要請を受けてまいりました。

 昨年の八月に、そういうことを受けて、少人数学級の推進を柱とする、いわゆる、先ほどから御意見があっております新しい教職員の定数改善計画を策定して、概算要求においては小学校一、二年の三十五人以下の学級の実現を特別枠として要望させていただいたところでございまして、この点については、政策コンテストという新しいシステムの中でパブリックコメントを行っております。この中でも約四万二千件の方々の御賛同をいただいておりまして、非常に心強く思ったところでございます。

馳委員 次の質問に移りますが、済みません、質問通告したその二の方に入りますから。

 加配定数が制度化をされた昭和四十四年以来の経緯について、少し聞いていきたいと思います。

 一九七〇年、八〇年、九〇年、二〇〇〇年、二〇一〇年、十年区切りで今申し上げましたが、それぞれの加配定数の数の経緯を教えてください。

山中政府参考人 一九七〇年の加配定数というのは、ちょっと年次が古いため、その七〇年が幾つかという数字がちょっとないのでございますけれども、第三次定数改善計画というのが昭和四十四年から始まりまして、これが完成いたしました昭和四十八年、一九七三年でございますけれども、この数が千七百八十七人でございます。その後、一九八〇年度、これが四千六百十五、一九九〇年が千四百十三、二〇〇〇年度が三万二千七百四、二〇一〇年度が六万五百五という数字になっております。

馳委員 先般も質問をし、お伺いしましたが、これは何で一九九〇年だけ千四百十三人と急に少なくなったんですかね。

山中政府参考人 恐縮でございます、間違えました。一九九〇年度は一万四千十三でございました。訂正いたします。失礼いたしました。

馳委員 びっくりしました。急に政策の方針がこの年だけ変わったのかと思ったじゃないですか。

 数字だけ見て大変失礼ではありますが、伸びてきていますよね、数字は。これはやはり文部科学省としても、いわゆる基礎定数プラス加配定数ということで、うまく合わせわざで、これこそ本当に合わせわざで現場の要望にこたえてきたのかなと。余りこの数字を言うと尾立さんが何かうれしそうな顔をするので、別に私はそういう趣旨で今質問しているわけじゃないですよ。でも、加配定数を現場の要望にこたえて順調に伸ばしてきたという事実は、それは言えると思うんです。そうすると、今後この加配定数が減っていく傾向なのかふえていく傾向なのかということは、やはり政務三役としても今後の見通しとして考えていくべきところなのかなと思うんですね。

 どうでしょう、私は、自戒というか反省も込めて、やはり総額裁量制にしたことというのは本当にやはりよかったのかなという思いを今でも持っておりますが、現実的に定着をしてきている中で加配定数もこうやってふえてきているということを考えると、文部科学省として、今後、基礎定数プラス加配定数、これをどのようにハンドリングしていったらいいのかなというふうに考えておられますか。お伺いします。

鈴木(寛)副大臣 先ほど来御議論になっておりますように、まさに基礎定数と加配定数、このバランスということが大事でございます。

 基礎定数というのは、客観性があって、透明性があって、であるものですから、きちっと計画的に、安定的に教員の配置といいますか、確保というものができる。そこで確保された教員というのは基本的には何にでも使える、要するに活用目的が限定されていない、こういうことです。

 加配定数の場合は、今るる御説明を申し上げましたように、まず活用目的が極めて明確に決まっております。かつ、これは自動的に、客観的に加配されるわけではなくて、まずは都道府県が申請をするかしないかということ、意思判断があります。申請が上がってきたものを今度文部科学省が裁量権を持って査定するということで決まってまいります。

 現場は、御案内のように基礎定数もふやしてほしい、加配定数もふやしてほしいということでやってきて、加配については一定程度の現場の声にこたえてきたわけでありますが、基礎定数については残念ながらこたえてこなかった。そして、先ほども申し上げましたように、特に平成十七年、十八年以降、そのことがかなり現場にひずみというものを与えてきているので、両方ふやしてほしいけれども、これまで余り十分というか、三十年間こたえてこなかった。そして、その中でいわゆる基礎定数、実数の減というものがずっと続いているわけですね。これに歯どめをかけてほしい、こういう声があるわけでありますから、それに私どもまずこたえていきたい。

 それから、当然、加配についてもいろいろな、多様なニーズがございます。そして、今回復興という問題を抱えました。したがって、そういった問題についてきちっと現場の声、これについてもこたえていきたい。

 この両方の要望にきちっとこたえていきたいということでありますが、今年度あるいはこの数年間のことで申し上げると、まさに基礎定数について、ずっと基礎定数が削減をされてきたということについてはやはりもう歯どめをかけるんだ、こういう意思は我々としては示したいということで今回の法案提出をさせていただいているわけであります。

 もとより、加配についてもきちっと現場の声にこたえていきたいと思いますし、今回もこうした厳しい財政状況でございましたが、加配は維持をいたしました。もちろん、ふやしたいのはやまやまでございますけれども、維持をいたしました。ですから、私どもとしては、加配も基礎定数も両方ふやしていく。

 ただ、これも委員御承知のとおり、基礎定数というのは客観的に決まるわけでありますから、この世界で客観的に追える数字というのは二つしかないわけですね。つまり、実生徒数かあるいは学級数か、この二つしか客観的な数字はありません。

 実生徒数というのは年度中にかなり、もちろん確定日を決めればいいわけでありますが、移動します。ただ、実生徒数だけでやりますと、要するにいわゆる中山間地域をいっぱい抱えているところとか抱えていないところによって、そこのところが加味されません。ということであれば、学級数をベースに基礎定数をカウントするのがいいのか、生徒数をベースにカウントするのか、どちらがいいかといえば、それぞれの地域のそういった地域の事情といいますか、人口の密集あるいは過疎、こういった実態をより踏まえた学習ニーズとか教育ニーズにこたえた数字としては学級数というものをベースに考えるのが望ましい、こういうことで義務標準法というのがこの三十年間、できてきた。

 もちろん、いろいろな修正、改善というのは必要だと思いますけれども、基本的にはこういう考え方を踏襲しながら、基礎定数問題についてどうするのかということにこたえていくということが大事だというふうに考えております。

馳委員 実数の話で私ちょっと思ったんですけれども、児童生徒数は減っていく、当然学級数も減っていく。もう一つの実数があるんじゃないかなと思うのは、教員の退職ですよね。

 そうすると、基礎定数というのは今後減ることはあってもふえることはないというふうに考えざるを得ないですよね。そうすると、加配定数の方で振りかえて、特に退職教員というのは今後年齢構成もありますからふえていくということを考えると、だったらその分、新採用ですか、新卒ですね、新採をがばっと採ればいいかという問題でもなく、当然、退職教員の再任用という形で。

 退職教員は、再任用のときには多分給料の額が随分減って、それでもいいですねというふうな合意の上で採用することになりますよね。そういう意味では、基礎定数は減り続けるんだけれども、それをやはり加配定数でうまいこと振り向けていくという作業も必要なんじゃないかなと、都道府県の財政当局や人事当局のことを思うと想定できるんですけれども、これにはどういうふうにこたえていきますか。

鈴木(寛)副大臣 先ほど六つの御提案をいただきましたけれども、論点はそこに尽きていると思います、大きな論点は。もちろん細かい論点はいろいろあると思いますが。

 ほっておくと、今のフレームワーク、制度を変えないと、おっしゃるように基礎定数が下がっていきます。したがって、下がらないようにしましょうということなんです。なぜならば、基礎定数というのは客観的に決まるし、その活用目的というのは何にでも使えますから、しかも今回標準ということにしましたから、何でも使える、いわゆるフレキシビリティーがどんどん増すわけですね。その両方を要望されて、それの要望にこたえているわけであります。

 ですから、基礎定数をふやすためには、あるいは基礎定数が減らないようにするには、あるいは基礎定数の減り方を少なくするにはどうしたらいいかというと、その基礎定数の算定根拠になる学級数をふやしていく、こういう制度を導入しましょうというのが今回の御提案であります。

 では、その学級数というのは何によって決まっているかというと、まさに一学級当たりの生徒数ということによって学級数というのは決まっています。あと、特別支援のものがありますが、大きく言うとこの二つしかないわけです、特別支援学級の問題と普通学級の問題で。普通学級の一学級当たりの生徒数、上限というものを四十から三十五に引き下げることによって学級数がふえていく、これは委員もよく御承知のとおりですが、議事録にとどめていただく、より多くの方にわかっていただくということで申し上げているんです。

 そういう意味で、まさに学級数をふやしていこう、それには、三十五人以下学級制度というものを要するに基礎定数の算定根拠の中に入れましょう、そのことによって地元から要望の強い基礎定数増あるいは基礎定数減に歯どめをかける、こういったことについてどうするのかという御議論ではないか。そのことを多くの都道府県あるいは学校現場、市町村現場は待ち望んでいる。そしてもちろん、それによって措置された基礎定数はより使い勝手よく、現場のニーズにこたえていく。これも要望でございます。

 我々は、できるような規定にはしましたが、できるということをより徹底するために、学校現場の声を聞けというようなことをもっと明確に、単なる答弁や通達ではなくて、そのことを法律によってもっと明記した方がいいんじゃないかということは、恐らくその方が我々の答弁や通達よりも現場にきちっと、法律だけ読めばそれでわかるわけですから、そういう御主張については、より現場に対する周知徹底の効果はあるというふうに私は思いますが、その一点目の、まさに基礎定数問題についての基本方針、ここが恐らく私どもとそれから自民党の御提案の基本的な理念の違いであり、これをまさに国民の皆さん、教育現場の皆様方に、大変いい議論といいますか、きょうの御提議の中で深まっております。

 これは政策論でありますから、いろいろな考え方はあろうかと思いますが、私どもはそういう考え方でございます。

馳委員 そういう議論だったら、やはり二つしかないんですよ。第三条のところの、財務省は聞いておいてくださいね、一学年だけ三十五人という、何となく財政状況か財務省の方を見ながらあそこだけ変えるのではなくて、根本的に四十を三十五と変えてやろうじゃないかと言って財務省を説き伏せる。今の議論で説き伏せるか、私たちが言っているように、現実問題としてのことを考えると、加配の活用というのは現場に任せていく、することはできるのだから、やはり加配の方で十分にやっていくことができるのではないかというふうな、多分こういう議論のかみ合いになってくるんじゃないかなと私は思っているんです。

 次の質問に行きますので、加えて御答弁いただければいいんですが。

 鈴木副大臣は前回、加配定数の場合は、毎年毎年、各都道府県教委の申請に基づき文部科学省が査定すると答弁をされました。ということは、文部科学省に幾ばくかの調整の役割、裁量権、判断がゆだねられていると考えてよろしいですね。

鈴木(寛)副大臣 そのとおりでございます。

 したがって、その点が中教審の提言においても指摘されておりますし、だからこそ、計画的な定数改善が都道府県教育委員会、人事権者においてしづらいという御指摘、あるいはそこを何とかしてほしいという御要望が上がってきているということでございます。

馳委員 私が今から言おうと思ったことを先におっしゃっていただきました。

 まさしく、加配定数の決定プロセスの透明性と配分の客観性、予測性はまだ確定されていないのではありませんか。だから、中教審の議論でも懸念事項となっており、今後の課題となっているのではありませんかということに今答えていただきましたね。どうぞ。

鈴木(寛)副大臣 そのとおりなんです。

 ただ、結局、活用目的を限定すると言った瞬間に、活用目的に沿っているのか沿っていないかというのはだれかが判断をしなければいけません。そうしますと、国の予算である以上、それは文部科学省が判断をするという、これは制度的にくっついてきてしまうわけです、加配定数というのは。ですから、加配定数を増して文部科学省の関与をゼロにするということは、制度論的にはあり得ないということなんです。

 だから、基礎定数であれば、児童数がわかりますから、確定しますから、これは文部科学省の査定の余地はありません。それから、おおむね、おおむねというか、ほとんど面積とかは変わりませんから、そうすると、もちろん合併とかいろいろなことはありますけれども、少なくとも、学校が今幾つ設置されているのか、そしてそこにどれだけの児童生徒が就学するのかというのも、これも自動的に決まります。そうしますと、その市町村の中に学校が幾つあって学級が幾つあるか、これも文部科学省の査定が入りません。なので、地元の都道府県は基礎定数ということを求めているということでございます。

馳委員 都道府県の現場からは、加配定数の申請手続の簡素化や活用目的を限定しない教職員配置を求める声が多いそうですが、文部科学省の見解をお伺いします。むしろ、この調整をする権限を持つということの方が文部科学省としての役割ではないでしょうか。

鈴木(寛)副大臣 御案内のように、加配の目的というのは法令で限定列挙されているわけですね。これまでも、平成十四年、十五年に、地域の特性への対応と不登校への対応という二つの目的であったものを一つに合併いたしました。そのことによって、これを児童生徒支援加配というふうに統合したことで、そういう意味では、なるべくであれば統合する方向にしていけば相対的に自由度は増しますということと、それから一方で、ニーズはどんどん出てきます、教育現場は多様化していますから。そうしますと、新しいニーズを足していかなきゃいけない。それから例えば、今であれば、学習指導要領が新しくなりますから、そうすると、学習指導要領をきちっと徹底するための支援ということが必要になってきます。

 といったこととの中で、もちろん一定の方向性を、文部科学省がその現場の声を吸い上げて、そして調整をするということは必要です。したがって、私どもも、加配定数の存在を否定しているわけでは全くございません。加配定数は加配定数の意味があります。基礎定数には基礎定数の意味があります。

 しかし、この国は、三十年間基礎定数についての手当てを何にも行ってきませんでした。加配定数については、先ほど御議論いただいたように、千七百八十七から始まったことが六万まで行きました。もちろんこれは、私ども、ことしもこの水準は維持しております。そして、財政状況が許せばこれをさらにふやしていきたいと思います。

 ただ、三十年間放置されてきた中で、そして児童数が減る中で、基礎定数減にどうやって歯どめをかけていくのか。これをやりませんと、非正規教員がもう一五%です。これが二〇%になる、さらに二五%になる。この事態に対して国家はどういうふうな問題意識とそれに対しての改善方針を持っているのかということを、学校現場の人たちは、きょうの議論も含めて本当に注目をしていただいている。私どもは、現場の実態にきちっと根差した現場の声に最大限こたえていきたい、こういうふうに思っております。

馳委員 私が心配するのは、ことし、一年生だけの三十五人学級を実現しても、来年度以降の法改正が不透明であるからです。政府案でも、来年度以降については附則にしか書かれていません。それも、国と地方の財政状況に配慮となっておりまして、財務省の思うつぼではありませんか。何よりも、財務省がまた一〇%シーリングをこの負担金にかけるかもしれないのです。これだけは、義務教育の重要性を理解している文部科学省は絶対に譲ってはならない一線だと思っています。

 中学校三年生までの三十五人以下学級を実現するという見通しが立たない以上は、加配定数と義務定数をセットで有効に活用する権限をできる限り学校現場や市区町村教委に一定程度ゆだねるという政策方針が必要なのではないでしょうか。そのハンドリングを文部科学省も調整役として持つべきではないでしょうか。

 加配定数制度が始まって以来、四十年たっております。加配定数の役割も、大変貴重なものとして現場でお使いいただいておりますから、私はやはりここの点の議論がさらに深まればよいなと思って、きょうの質問を終わらせていただきます。

 以上です。

田中委員長 次に、池坊保子さん。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 先々週の一般質疑、そして先日水曜日の質疑と、この三十五人学級の問題についてはこれで三度目の質問となります。もう夢の中でも三十五人学級が出てくるほど、この問題にずっと終始かかわっております。

 これまでの質疑の中で、政府提出法律案の問題点や不備な点はどういったところにあるのか、子供一人一人に対してきめ細やかな対応ができるようにするにはどうすればよいのかといった点について、今まで政府の考え方をただしてまいりましたし、私ども公明党の考え方も示してまいりました。これに対して、高木大臣や鈴木副大臣を初めとして政府の皆様方には、真摯に耳を傾け、誠実な対応、答弁をしていただいたと、そのことに対しては私は評価をしていきたいというふうに思っております。

 このように、政府との質疑のやりとり、また、他の政党の質問者の方の質疑、それに対する答弁を伺いながら、私は、公明党が目指す教育のあり方と政府の考えていること、そして他の政党の方々が考えていらっしゃることの間にはそれほど差がないのではないかというふうに考えております。いい意味で教育に携わってきた文教族の私たちは、日本の未来を担っている子供たちに対して、先を歩んでいる人間として何を残していくことができるのか、いい環境整備をしていきたい、その点においては、私は思いは共有しているのではないかと思っております。

 私は、政策というのは、一挙に高い目標に向かって進むことは難しいのではないかというふうに思っております。児童手当も、本当に段階的に、非常な苦労の中で拡大をし、所得制限あるいは年齢制限、支給額、さまざまな段階を経ながら今日を迎えてまいりました。そういう意味では、文部科学のマターではございませんが、一挙に子ども手当でばんと支給するというやり方は、私はすべてにおいて反対なんですね。

 そういう意味では、三十五人学級というのを公明党がこだわっているというか提唱しておりますのは、少人数学級、ではこれは何人がいいのか。それは三十人の方がいいのかもしれません。当然ながら、一年生だけなどというのは不十分なわけです。二年生も三年生も、中学三年生までそうするべきというふうに思っております。ですけれども、すぐにできないならば、高い目標に向かって順次地味な努力の中で必ず目標を達成していきたいというのが、今まで私たち公明党が歩んできた道のりではないかというふうに私は思っております。

 そういう意味で、基礎になる、まさしく基礎定数ですよね、基礎になるものがあって初めて加配もあるのじゃないか。加配だけがあるというのはおかしいと思うんですね。基礎になる定数、まさしくその基礎になるものが、学級によって義務標準法が定められているわけですから、これが定められるのはある意味で当然です。私は、そのことに関してはこれでいいというふうには決して思いませんし、ある意味では、もう財務省の方はお帰りになっちゃったのが残念ですけれども、財務省との対策の中で……(発言する者あり)はい、来週は呼びます。来週はぜひ呼んで私は問いただしたいと思いますけれども、財務との関係の中で、まずは基礎的なものをしっかりと確保するという意味でその三十五人というのがあるのではないかなというふうに考えております。

 ただ、先ほども申し上げましたように、政府提出の法案、これ、同じような目的であったとしても、前も申し上げましたように、登り方というのが大切だと思います。ヘリコプターで目的地に着くのか、あるいはブルドーザーで周囲を無視して登るのか、あるいは周囲に咲いている草花にも目をやりながら、それらのことを大切にしながら登っていくのか、そういうようなやり方に違いがあるのではないかというふうに私は考えております。

 このような未曾有の大震災に遭遇したり、あるいは財政事情ということがございますから、ベストのことをすぐにはできなくても、やはりベターな方法は何かということで、私はさまざま政府に対して問いただしてきたつもりですし、これからもそうしていきたいと思っております。

 午前中は参考人質疑がございました。その中で参考人の方がおっしゃったことは、加配の削減はやめていただきたい、それから、国がしっかりと政策を定めてもらわなければ、都道府県、学校現場はそれを受けてきめ細やかな施行をしていくのにできないではありませんか、いつまでもこれをほっておくのですかというお話がございました。私は本当にそうだなと。四月一日からすると言ったって、もう現実には配置もしていらっしゃるし、採用もしていらっしゃるわけでしょうけれども、そういうことがないようにしなければいけないと思います。

 それからもう一つは、それぞれの学校事情に応じて加配というのは必要なのです。ですから、それぞれの学校現場で弾力的に自主性を持って加配できるようにしてほしい。今度のこの法律に対してもそのような運用をしてほしい。ですから、先回も言ったかもしれませんけれども、三十八人で、二クラスにしたら二人の先生ですよね。でも、三十八人でもいいというと、大概一人になっちゃうんです。これは一人じゃなくて、三十八人でも一人プラス加配を入れてほしい、こういう意見がございましたので、これはぜひこのように修正をしてほしいというふうに私は思っております。

 茅ヶ崎では、私も同じ考えを持っているんですが、例えば二十五人でも、一人の発達障害のお子様がいらっしゃる、ADHDのお子様である、そのお子様が走り回っている、その子供も大切にしなければいけない。それでその子供を大切にすると、二十四人の子供たちがやはり振り回される。だから、二十五人であっても一人の先生でいいか、そんなことはないんです。

 それで、ふれあい補助員というのをおつくりになっていて、これは大体経費が一億かかるということです。私は、総額裁量制になったのはいいなと思いますことは、あれは平成十七年でしたね、一人の専任教諭を採用するなら二人の非常勤でもいいですよと。つまり、学校現場に応じてそれぞれの裁量を持たせるというやり方は、やはり加配のいいところではないかというふうに思うんです。特に、この大震災に対しては、ふれあい補助員のようなスクールカウンセラーだとか、メンタルフレンドと私は提唱しておりますが、そういう人たちをぜひ入れてほしいなというふうに思ってもおります。

 これは一昨日にも質問させていただきましたが、きょうの午前中の参考人の質疑の中でも、やはり被災地に対してはきめ細やかな加配をしてほしい。私は、ぜひこれはこの法案の中に、もし成立するなら入れたいと思っておりますが、その中で、被災を受けた学校と生徒、その人たちへの加配、それから、その子供たちがよそに行きましたときの加配、私はそれだけと思っておりましたが、それだけでなくて、ほかの全国にいる先生方も被災地に支援をしたいと思っている、そういう人たちへの便宜を図ってほしい。だからそれは、この法律に入る入らないは別にして、ぜひ政府も、そういうことに対しては配慮をしていただきたいというふうに思っております。

 一昨日にも質問させていただいたことですけれども、東北地方太平洋沖地震によって被災した子供への対応について、もう一度お伺いしたいと思います。

 この前の私の質問に対して高木大臣は、大胆な発想を持ってしっかりと取り組んでいくことが政府の責務であると御答弁なさいました。その取り組みの具体的な内容、大胆な発想は、極めて大切なことではあると思いますけれども、もうきょうは三月二十五日でございます。新年度を迎えるまで既に一週間を切っております。今回の大震災によって学校自体がなくなってしまった、あるいは全く機能しない状態になってしまっているというところも、ニュースにより私たちは見ております。

 現在、福島原子力発電所で起きている事故の関係で避難勧告が出ておりますが、そうした避難指示の地域内にある学校もございます。こうした学校に本来ならば通うはずであった子供は、今、自分はどこの学校に行けばよいのだろうかと、大変不安な毎日を送っているに違いありません。もちろん、いきなり別の学校を建設したりとか、別の学校に行けということ、別の学校をすぐ建てるなんということは不可能なんですけれども、この子供たちにどのように学びの場を与えてあげるのか、そういう必要に迫られていると思うんですね。

 このことは、自治体の方々が中心になって対応策を検討していらっしゃると思いますけれども、やはり、文部科学省が先頭を切って、具体的に助言とか指導をしていかなければいけないと思っておりますので、しっかり教育を受けさせるためにどんなふうに考えていらっしゃるかを伺いたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 国の仕事は二つあると思っています。

 おっしゃったように、現場に、そのための職員をまた週末から送りますけれども、かなりきちっとコーディネーションまでできる能力と権限を持った者を送りますが、まず、個別の学校あるいは地域におけるそれぞれの児童生徒の学ぶ機会というものをしっかり確保していくための具体的なコーディネーション、これは、県内の学校間のものもありますし、県をまたぐものもあると思いますが、これをしっかりやるということが一つ。

 それから二つ目は、では、それをやるために、財源といいましょうか、そうしたいろいろなケースが出てまいりますときに、それについてきちっと教職員の定数というものを、それぞれの御協力していただいた都道府県、そして被災地の県が対応できるための、まさにその財政的な定数措置ということが国の仕事だと思っています。基礎定数については、まず、教職員定数の算定の基準日が普通は五月一日でございますが、これをずらすということが必要ではないかなということで、今、内部的に検討に入っております。

 それから、まさに一時的に避難をしている、あるいは必要になるケースがあります。かなり年度の中で異動といいますか、これはいろいろなケースが出てきます。今、いろいろなケースを想定しておりますが、いずれの場合にもきちっと、基礎定数の政策が不十分なことによって不利益が出るということがあってはならないと思っていますので、そのことが安心してできるような定数算定の弾力的措置ということをやらなければいけないというふうに思っています。

 それから、前段、委員がおっしゃいました心のケアの問題でございますが、まず、被災県に対しましては、まさに児童生徒の学習進度がおくれます。始業式があれする、あるいは通常どおりの時間数をどうやって確保していくのか、場合によれば夏休みなどの変更なども行われると思いますけれども、そうした学習進度のおくれへの対応であるとか、心のケアを必要とする児童生徒への対応のために、あるいは教育復興支援の観点から、児童生徒支援加配、あるいは養護教諭加配を被災県各県からの要望に応じて可能な限り措置をするということが必要だというふうに考えております。

 それから、今もお触れになりましたけれども、被災県以外の県に対しましても、学習支援や心のケアが必要な被災地の児童生徒が多数受け入れられることが想定をされますので、そうしたケースには一定の要件のもと、受け入れ県からの要望に応じて、可能な限りの加配措置をしてまいりたい。

 それから、被災県の学校支援のために一定期間教職員を派遣する都道府県に対しましては、研修等定数というのがございますが、その枠組みなども活用して、派遣職員の代替要員を確保できるようにすることなどをやらなければならないと認識しておりまして、その検討を今行っているところでございます。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

池坊委員 副大臣から具体的なお話が出て、ちょっとほっと安心いたしました。

 教育復興加配教員を配置することは極めて重要で、最近の事例で言いますと、平成十九年に起きました新潟県中越沖地震のときには教育復興加配教員というのが六十五名配置されました。今回はどれぐらいの人数とか配置の規模というのを、概算で結構でございますから、現段階で考えていらっしゃるのか、あるいはそれはまだなのかをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

山中政府参考人 文部科学省では、今回の震災によりまして被災した子供たちの心のケアということで、加配の定数に基づく措置を講ずることについても検討を開始しております。

 また、例えば岩手ですとか宮城県とか福島県の方からその追加的な要望は出されているのでございますけれども、具体的な数までは出されていないというところでございます。これは加配教員の方の関係でございます。

 このほかにも、スクールカウンセラー、臨床心理士といった臨床心理の方の専門家、心のケアの相談に乗る専門家についての要請がございます。これについては、今年度の委託事業がまだございますので、これを活用して対応しようというふうに考えておりまして、臨床心理士などのスクールカウンセラー等の専門家、これについては具体的な要望が出されてきているところでございまして、これにこたえたいというふうに思っているところでございます。

池坊委員 ぜひその要望に迅速にこたえていただきたいと思います。それは大切なことだと思います。

 それから、スクールカウンセラーを今ある予算の中でやりたいとおっしゃるんですけれども、それだと百四十四名とかで少ないのではないですか。中越地震のときには百四十二人でしたね。それを考えますと、とてもそんなのでは足りないということを私は申し上げたいと思うんです。ですから、これはしっかりと。

 いかがですか、ほかにありますか、局長。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、要望が出てきております数が今のところ、また現場の状況とかそういうことがあるかと思います、今出てきている数が、幾つかの県市で百四十四名という御要望が出てきているという状況でございます。これはまた、被災市の方の避難所の状況でございますとか、あるいは学校の復興の状況でございますとか、そういうものによってどんどんふえてくるんではないかというふうに思っておりますけれども、現在はそういう要望の数が出されている、これにこたえようとしているというところでございます。

池坊委員 実は、この教育復興加配教員にしても、結局、その具体的な配置を決めるのは、今の法律のもとでは都道府県の教育委員会なんですね。ですから、幾ら政府が教育復興加配教員でしっかり対応しますといっても、都道府県の教育委員会にも多大な努力をしてもらわなければ、これを実行することはできません。

 もちろん、今地方分権という時代の流れではありますけれども、こういうときには国がしっかりと指導をするべきであるというふうに考えております。この法律案の中で、政府も都道府県の教育委員会も、被災した子供にしっかり対応するため、教職員の定数や配置に関して特別の措置をとるんだということを明記してはどうかというのは私が先回も申し上げているところです。

 これに対して、これは立法府で決めることであるとしても、政府はどういうふうに考えていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 大変重要な御指摘だと思います。先般も事務的な打ち合わせの中で、私から担当局にも、やはり県費負担教職員ではありますけれども、その県が実際に負担する三分の二のところを、県が今負担能力がない、あるいは、通常の交付税スキームでは算定も含めてどうしてもタイムラグが出てきてしまうというような中で、しかし教員の配置というのは速やかに行っていかなければならない、今御指摘のとおりでございます。

 したがって、そこについては、まず予算的な対応、これは文部科学省と総務省と両方の対応ということになろうかと思いますが、これは問題認識を持っております。そういうニーズといいますか必要性の中で、立法府においてただいまのような御議論を深めていただくということは極めて有意義なことだというふうに思っております。立法府でそのような御議論をしていただいて決めていただければ、私どもはきちっとそれに従って、遺漏なきよう万全に、全力で取り組んでいきたいと思います。

池坊委員 ありがとうございます。ぜひそれは実行していきたいというふうに思っております。

 今、国は三分の一ですよね。三分の二は地方が持たなければいけないというのは大変に苦痛なことでもあると思います。先ほどもちょっとお話に出ていましたが、小泉政権下の中で、地方分権の流れの中で二分の一から三分の一になりました。でもあのときは、全額地方にしろというのを本当に体を張ってという感じで三分の一にとどめられたことは、私は次の世代のためにもよかったなと。私どもは本当にそのことは頑張ってきたつもりです。

 教職員改善計画について質問させていただきたいと思います。

 一昨日の水曜日の質疑のときに、学級編制の標準の順次改定を実現するための、現段階において政府が考えているタイムスケジュールはどのようなものですか、また、それに必要な財源をどのように確保なさるおつもりですかと質問いたしましたら、鈴木副大臣にしては割と消極的で、速やかに教職員改善計画を練り直すとか、できるだけ追加的財政投入をすることなくやっていきたいということでした。

 私は、法律の附則ということであっても、政府として、すべての義務教育の学年で学級編制の標準の順次改定を検討するんだということを明言されるべきであるというふうに思っております。

 なぜならば、昨年八月に出されました新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画もあるわけですから、この計画のどこを変更するとか、期限を少し延長するとか、もう少し具体的なタイムスケジュールをこの場でおっしゃっていただけたらうれしいなというふうに思っております。この検討条項は、検討の期限も明記されていないわけですから、最悪このまま棚上げになっていくということは避けたいというふうに私は考えております。

 私は、さっきも申し上げましたように、目標に向かってやはり順次していくことが必要であって、小学校一年生で終わりだよということだけでは、そんなことは政府も考えておられないと思いますけれども、それでは不完全というふうに思っておりますので、ちょっと歯切れいいお答えを望みます。

鈴木(寛)副大臣 小一から中三までの義務教育段階すべてについて順次改定をするということについて、検討するということは明記をしておりますが、御指摘のとおり、ではそれをいつまでにやるのかということについての規定ぶりはございません。これは、この委員会でも大臣から何度も御答弁申し上げておりますように、三大臣の合意という中では期限を、最終目標年限を明記するということには至らなかった、こういうことでございます。

 ここは、まさに国民の皆様方にこの問題についてぜひ御議論を深めていただいて、そして、これは別に財務省にということではなくて、財務省の先にいらっしゃる納税者の皆様方の御理解をいただくということでありますから、そうした国民の皆さん、納税者の皆さんの理解をいただくために我々も全力を尽くしてまいりたいと思いますし、また、国会におきましても、そうした御議論を今深めていただいていることは大変ありがたいことでございます。

池坊委員 計画の練り直しをいつから始めるとか、どこの箇所を見直すとか、来年には法案提出の予定があるんだとか、そういうことを伺えたらうれしかったなと私は思いますが、それは無理ですか。

鈴木(寛)副大臣 基礎定数をしっかりとふやしていくという方針で定数改善計画がつくられました。この基本方針は堅持していきたいというふうに思っております。

 しかしながら、いわゆる計画改定の初年度に一、二年生ということになっていたわけでありますが、そこの年次計画の配分のところは事実上改定をしていかなければいけませんが、その土台になる考え方、これについては中教審から御提言いただいたことを変えるつもりはございません。それをしっかりやっていくということだと思います。

 ですから、変える部分は、何年に何人というところについての見直しは必要ですが、その方向性、あるいはその重要性等々については、ここはしっかり守っていくということでございます。

池坊委員 納税者というのはつまり国民なんですけれども、国民は、教育にお金をかけるのは当たり前というのが日本人の気持ちの中にはあると思います。ですから、積極的にいい方向を政府としてはお示しになるべきであると私は考えております。

 一〇%のシーリング、先ほど自民党の方からもこれは反対だよとおっしゃった、私もそれに対しては全くそのとおりであるというふうに思っております。子供の自然減とか、定年退職に伴う教職員年齢の若返りによる給与費用の減少などで対応するのでは限界があるのではないかと思います。

 その証拠に、今申し上げた新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画にも「平成二十六年度以降の改善増に必要となる恒久的な財源確保について理解を得ることが必要」と明記されておりますよね。この明記されているということは重いのではないかというふうに私は思っております。

 追加的財政投入が必要であるという認識に文部科学省も立っていらっしゃるということなのではないかと思いますけれども、そういうことであるならば、恒久的な財源確保についてどのような見通しを持っていらっしゃるかということを、もう時間も来てしまいましたので最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 安定的な財源の確保は極めて重要だと思います。これはまさに少人数学級の推進のかぎを握るというふうに私どもも思っております。

 この点については立法府において具体的な御審議を深めていただくべきことだと思いますけれども、その結果については私どもとしては従ってまいりたいと考えております。

池坊委員 安定財源の確保というものを絶対に立法府として明記したいと考えておりますことをお伝えして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松宮委員長代理 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 前回、国民の声、教育現場の声、そして世界の流れも三十人以下学級であるということを中心に質問いたしました。しかし、そうした声や世界の流れにもかかわらず、文科省は昨年八月、三十五人学級を今年度から小学校一年生、二年生で実施する、そういう概算要求を行いました。今年度、一、二年生で三十五人学級を実施し、六年間で三十五人学級を小学校、中学校全部に広げ、その後に小学校一、二年生だけは三十人学級にする、そういう計画でありました。

 ここには、できれば三十五人よりさらに少人数の三十人学級にすることが望ましい、そういう当然の姿勢が示されていると思いますし、大臣も、前回の質疑で望ましいというふうにお認めになりました。ところが、予算案の編成過程で、三十五人学級の導入さえ一年生のみとされてしまった。

 まず聞きますけれども、大臣、なぜ小学校二年生の実施を見送ったのか。お答えいただけますか。

高木国務大臣 平成二十三年度の概算要求において、元気な日本復活枠によって要望したこの三十五人学級、これについてはいろいろ議論があったところでございます。

 私どもとしましては、委員指摘のとおりにいわゆる増員計画を持っておりましたが、ぎりぎりの予算編成の中で、財務大臣、戦略大臣、私どもという三大臣の会合において、厳しい議論の中で、最終的にはやむなしということを判断をさせていただきました。

 しかし、同時に、この法案にも盛り込まれておりますけれども、今後、学校教育の状況や国、地方の財政状況等を勘案しつつ、学級編制の標準を順次改定することなどについて検討を行う、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずる、こういう規定を盛り込んだことは事実でございます。

 このことについては、財務大臣もあるいは戦略大臣も、教育予算の確保の必要性についてはしっかり腹におさめたものだと私は考えております。

宮本委員 予算委員会の質疑で大臣は私に、小学校二年生分実施のためにはあと九十三億円必要だったとお答えになりました。

 あのときも、わずか九十三億円のことで小学校二年生の子供たちの三十五人学級の実施を見送るなどということは余りにもひどいと私は申し上げましたし、日本政府が米軍に対して出している思いやり予算についても触れたわけでありますが、概算要求どおり千八百五十八億円、満額でこちらの方は通っている。

 その思いやり予算でつくられている米軍基地内の小学校は、小学校一年生から三年生まで十八人学級でやられている。それ以外の学年も二十五人学級でやられている。一方で日本の子供たちは、ようやく一年生だけ三十五人、それ以外は四十人学級のまま。米軍基地内の小学校の教室面積は八十平米で、この八十平米に十八人、我が国の子供たちは六十四平米の教室に四十人詰め込まれている。

 こういう不合理が日本国民に理解されると思うかと思うんですけれども、大臣、どうお感じになりますか。

高木国務大臣 しばしば国会の中でも、いわゆる先進諸国、主要国の少人数学級の実態の資料が出てまいりますが、我が国としては、これを一つの目安にして、なお一層少人数学級を進めなきゃならぬ、こういう思いでございます。

宮本委員 私ども日本共産党は、もちろん、米軍の子供たちに行き届いた教育をすることに反対するものではありません。しかし、米軍の子供たちの行き届いた教育は、アメリカのお金、米軍のお金でやってもらうべきであって、私たち日本国民の税金は、やはり日本の子供たちの少人数学級のためにしっかり使っていただく。九十三億円というのはこの千八百六十億の二十分の一ほどですから、なぜ小学校二年生をこうやって削ってしまったのかと、本当に私はこれは許されないというふうに思うんです。

 それで、先ほど来議論になっております、果たして来年度以降も少人数学級の推進が図られるのか、その保証があるのかということについてきょうは議論したいと思います。

 昨年十二月の文部科学・財務・国家戦略担当三大臣合意には、「平成二十四年度以降の教職員定数の改善については、学校教育を取り巻く状況や国・地方の財政状況等を勘案しつつ、引き続き、来年以降の予算編成において検討する。」こうなっており、この法律の附則にも同様のことが書かれてあります。これでは、この三十五人学級が、次年度以降、小学校二年生、三年生と拡大されていくのか、それともされないのか、よくわからないわけですね。

 次年度以降、ちゃんと二年生、三年生と順次拡大していくんだと、こういうふうに文部科学省として明言すべきだと思いますが、大臣いかがですか。

高木国務大臣 三大臣の協議については御紹介あったところでございますが、先ほども申し上げましたとおりに、今お願いをしております法案の中にも、必要な措置を講ずるということについて盛り込んでおります。

 学級編制の標準のさらなる改定等については、この法案の成立後、できるだけ速やかにこの検討の着手に入り、小学校二年生以上における三十五人以下学級の推進のためにも、来年度以降の予算編成過程の中で政府全体としてしっかり取り組んでいかなきゃならぬ、しっかり検討しなきゃならぬ、このように思っております。

宮本委員 そもそも昨年の中教審のこの提言は、「国が教育条件整備の責務をしっかりと果たし、都道府県等が計画的かつ安定的に教職員配置を行うことができるよう、早急に新たな教職員定数改善計画を定め確実に実施する必要がある。」と提言をいたしました。それを受けて、昨年八月に新しい教職員定数改善計画というものが策定された。きちんと計画を持って進めるのは当然のことだと思うんですね。

 中教審の提言の中には、「教職員定数改善計画が策定されない場合、都道府県等の教育委員会は前年十二月の政府予算案決定まで定数改善の見通しを持つことができず、仮に一定の定数改善が行われたとしても、計画的に教職員の採用や配置を行うことが難しい。」と、計画がないために生じるマイナスもあわせて指摘をされております。

 先ほど、大臣からも、小さく産んで大きく育てるという言葉も出ましたけれども、この八月に策定した新教職員定数改善計画、これについては、文部省としてはこれを進めていくということでよろしいんですね。

高木国務大臣 私どもとしましては、その少人数学級の計画的な推進については、今も考え方は変わっておりません。

 これからも、諸般の情勢もありますけれども、今後、小学校二年生以上における三十五人以下学級の推進について、政府全体として取り組めるように検討してまいりたいと思います。

宮本委員 計画がなければ地方も計画的な採用ができない、毎年の予算編成を見ないと対応できないというのでは、現場は混乱するわけですよ。

 午前中の参考人質疑でも、教育委員会関係者、東京都教委の方も茅ヶ崎の市教委も、やはり中教審副会長の小川先生も、計画的採用をするためにも、きちっと計画を見通しを持って定めてもらわないと現場は困るというふうに述べられておりました。

 そういう意味では、計画をきちっと定める。例えば、今回は三大臣合意ということになりましたけれども、次の検討というときには、やはり、これまたきちっと計画として見通せるように定めるということでよろしいですか。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

高木国務大臣 先ほども申し上げましたように、この法案が成立をした後に、速やかにその点も含めて検討していかなきゃならぬと思います。

宮本委員 そもそも定数改善計画というものは、昨年の八月に案として、ことしは残念ながらそのとおりにいかなかったわけですけれども、これが定められるまでは定数改善計画というものはないわけですよね。これがないということに関していえば、旧政権、自民党や公明党もその責任を免れないのです。

 私は、前回の質疑でも、学級定数の改善計画の歴史に触れました。五十人から四十五人に引き下げた昭和三十九年からの第二次定数改善計画以来、ずっと五カ年計画をもって進められてきたんです。四十五人を四十人に引き下げた三十一年前の改正、これは第五次定数改善計画ということになります。これは十二年計画でありました。それまで五年なのになぜ十二年なんだという議論が盛んにやられたと前回も指摘をいたしました。

 その後も第六次、第七次と、とにもかくにも定数改善計画はほとんど切れ目なく続けられてきたんですね。ところが、平成十七年、二〇〇五年を最後に、この六年間は定数改善計画が策定されてこなかったというのが事実なんです。

 まず確認しますが、二〇〇五年以降昨年八月まで定数改善計画が定められなかった、これは事実ですね。

高木国務大臣 第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画、平成十七年度に完成して以降は、計画は策定されておりません。

宮本委員 事実、私の手元に、平成十七年、二〇〇五年に文科省が作成した第八次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画案というものがありますけれども、これは策定されなかったわけであります。

 だからこそ、民主党はかつて野党時代に、教職員の配置、学級編制などについて、少なくとも五年ごとに整備指針の見直しを図るという内容の学校教育の環境の整備の推進による教育の振興に関する法律案を提出し、我が党も賛成して、参議院でこれは可決をされました。一昨年の通常国会であります。このときの法案発議者は、鈴木寛議員、現在の副大臣であります。

 会議録を私読ませていただきましたけれども、鈴木副大臣は当時、二〇〇〇年から二〇〇九年まで、国費ベースで二兆円の教育費が削減されてきた、それを計画も目標も持って盛り返していくのだと力説をされて、学校教育環境整備指針を定め、五年ごとに見直して計画的に進めるのだと答弁をされております。

 このときの法案では、政府が、整備指針の達成のために予算の確保及び充実の目標を定めることや、国と地方の財政支出の国内総生産、GDP比率まで定めるものとなっております。財政的にお金がなければできないなどというような立場に立っておりません。

 鈴木副大臣、政権をとったら話が変わってきているように思うんですけれども、いかがですか。

鈴木(寛)副大臣 その法案の考え方に従って、我々は今回三十年ぶりに新定数改善計画をつくり、そして概算要求を行い、もちろん不十分な形ではございましたけれども、小学校一年生の定数改善をすることによって基礎定数を改善し、そして、これは弾力化できますから、まさに小一から中三までの弾力化につながるということでありますが、今お示しをいただいた計画に比べればもちろん不十分であるということは、御指摘のとおりのことは、それはもうそのとおりでございます。

 我々、少なくとも文部科学省といたしましては、その趣旨に沿って全力をこれまでも尽くしてきましたが、なお一層頑張っていくということだと思います。

宮本委員 本当なら、GDP比で教育予算を引き上げるという非常に高い志を持った法案だったわけですけれども、それがこの九十三億で二年生が見送られたと。本当にやりきれない思いで私たちは見ているわけであって、教育予算の問題については、これはまた本格的に議論しなければならないと思っております。

 ただ、財政的な面で考えても、計画的に進めることはそれほど難しい話ではありません。

 これは大臣にお答えいただきたいんですが、来年度以降の児童生徒の自然減に伴う教職員の自然減の数の推移を、平成二十三年から平成三十年まで、順次お答えいただけるでしょうか。

高木国務大臣 今後の児童生徒の減少に伴う教職員定数の自然減でありますけれども、平成二十三年度は二千人減、二十四年度は四千九百人減、二十五年度は三千三百人減、二十六年度は四千人減、二十七年度は三千八百人減、二十八年度は四千四百人減、二十九年度は五千百人減、三十年度は四千九百人減、こう見込んでおります。

宮本委員 ずっとこれから大きな教職員の自然減が出るわけですね。

 二十三年度は、三十五人学級実施のために必要な教職員四千人に対し千七百人の加配定数の取り崩しで対応し、残る二千三百人のうち、今お答えいただいた二千人が自然減で対応すると純増は三百だ、こういうことになりますね。

 二十四年度、二年生で三十五人学級を実施するとしても、必要な教職員数、ことし見積もったのが八千三百人で、二年生を見送って四千人ですから、その差に当たる四千三百人ということになると思いますが、大臣、間違いないですね。

高木国務大臣 御指摘のとおり、仮に平成二十四年度に小学校二年生の三十五人以下学級を実施する場合は、四千三百人程度の定数改善が必要と見込んでおります。

宮本委員 そうすると、四千三百人の増に対して、ただ、先ほど御答弁いただいたように、二十四年度は四千九百人の自然減が出るわけですよ。ですから、やったとしても、差し引き六百人の減となるわけですね。ですから、結局、二年生で三十五人学級を実施しても、マイナス予算で済むという計算になります。

 何も、三大臣合意で言うような「国・地方の財政状況」などを勘案しなくても、これはむしろ、三十五人学級をやっても予算は減るということになるんじゃないですか。いかがですか。

高木国務大臣 この改善数の四千三百人、自然減の数を下回っておりまして、このことのみをとらえれば、御指摘のとおり、国庫負担金の予算額は減額となると予想されております。

宮本委員 ですから、本当にやろうと思えば、そんな莫大なお金がかかる話じゃないんですよ。私は、これはやはり計画をしっかりと政府として策定して、ぜひ進めていく必要があると思っております。

 しかも、退職年齢に達する者が多く出ることによって全体の給与水準も低くなることが予想されております。先ほど答弁のあったような自然減の状況であるならば、昨年八月の新改善計画以上に早期に三十五人学級を実施し、三十人学級を、一年、二年と言わず、中学校まで進めていくということも可能になるはずだと私たちは思います。

 ですから、毎年毎年、年末に折衝をして来年度のことを決めるというようなやり方はきっぱり改めて、今年度こそ、三十五人学級を計画的に進め、三十人学級に向かうきちんとした計画を持つべきだと思いますけれども、大臣、その決意を改めて表明してください。

高木国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、この法律案が成立した後、速やかにその点について検討してまいりたいと思います。

宮本委員 ぜひ頑張って、そういうふうに進めていただきたいと思います。

 今回、加配教員のうち、千七百人を取り崩してこの三十五人学級実施のために振り向けることになっております。加配教員を活用して、三十人学級など少人数学級を地方自治体独自で実施しておりますけれども、この地方自治体独自で実施している場合の先生は、やはり、ほとんど臨時教員など非正規の教員が多いと思われるんです。

 この点、確たることはなかなか言えないでしょうけれども、単年度で予算措置を講じなければなりませんので非正規が多いと思われるという点は、文部科学省もお認めいただけますでしょうか。

鈴木(寛)副大臣 御案内のように、基礎定数と加配定数、総定数の中で採用するわけでありますけれども、正規教員ということになりますと、これはパーマネントということになりますから、基礎定数の枠内で採用を抑えておこうという採用方針に傾く、傾きがちになる。もちろん、最終的には人事権者の判断でありますが、その枠内に抑えておかないと、それを超えてしまった場合に、その差分は、県費負担、県単独でそれの分を負担しなければいけないというリスクが生じますので、そうしますと、人事権者である県当局は、その範囲に抑えようとしていく傾向になるということは事実だと思います。

 現に、先ほど来申し上げておりますように、基礎定数はどんどん減っておりますので、その結果、これは一対一の対応ではございませんが、この相関はあるというふうに認識しております。

 だからこそ、このような法案を提出しているところでございます。

宮本委員 相関はお認めになるということでありました。

 そうなると、先日私が本委員会で取り上げたように、政府の手で三十五人学級が実施されようとしているのに、半数近くが正規の教員でなく、臨時教員でなされる。つまり四千人のうち千七百人、これが臨時教員でなされることになるともとれるわけです。

 正規の教員でこれはやはり実施する、この四千人を正規の教員で実施するようにすべきだ、教員加配を取り崩すのではなくて、正規の教員を配置して実施すべきだというふうに考えるんですが、いかがですか。

鈴木(寛)副大臣 したがいまして、今提出をさせていただいております義務教育標準法の改正案で一年生の学級編制標準を三十五人に引き下げることで、学級数がふえます。そうしますと、基礎定数の算定が変わりますので、基礎定数が下げどまります。そのことによって、将来に向けて安定的、計画的な教職員の採用、人事というものが行われる。

 しかも、先ほど何度か申し上げておりますけれども、この十年で教職員全体の三分の一が入れかわります。この時期にこそ安定的なそうした方向を示すことが重要だということで、この法案の成立をぜひお願いを申し上げたいと存じます。

宮本委員 ぜひ、その定数は正規の先生でしっかりやるという方向で取り組んでいただきたいと思うんです。

 それで、この四月から小学校で新しい学習指導要領が全面実施をされます。中学校でも来年四月から全面実施となります。これにより、教科内容も授業時数もふやされることになります。

 小学校では授業時数の増はどれだけを見込んでおりますか。お答えいただけますか。大臣、お願いいたします。

高木国務大臣 新学習指導要領における小学校の授業時数については、小学校の件ということでございますが、小学校一、二年で週二時間、三年生から六年生で週一時間増加をして、六年間で計二百七十八時間、約五・二%の増加を図っております。

宮本委員 現行学習指導要領のもとでの時間よりも、今お話しあったように、五・二%の増になるわけです。

 教科内容、授業時数の増加の一方で、教員の多忙化は既に深刻な状況です。文部科学省が二〇〇六年に行った教員勤務実態調査によれば、平日のみで三十四時間の残業時間を抱え、年々、精神疾患などで倒れる教職員は増加の一方だと。これがさらに多忙になろうとしております。

 少人数学級の実施とともに、教職員の増員をしなければ抜本的な解決にならないというふうに思いますけれども、これは大臣、そうお考えになりますね。

高木国務大臣 だからこそ、これまでも議論があっておりますように、教職員の基礎定数、もちろん加配定数というのがあります。加配定数は、歴史の経過もあり、地域の事情によって決められてきております。

 それはそれとして柔軟に対応できるというメリットもございますが、計画的、確実性のある基礎定数をふやすことが教職員の安定的な人事、採用にも貢献するし、そして、今言われておりますような、いわゆる、本来学習活動に専念できる体制ができるものだと、そのように思っております。

宮本委員 これに関連してですけれども、先ほど午前中の参考人質疑でも、中教審副会長の小川正人先生も、新学習指導要領がことしから順次実施をされていく、この機会に改めて二〇〇六年にやったような勤務実態の調査を、新しい指導要領のもとでどうなっているかということを再度やっていただきたいということをこの参考人質疑でも述べておられました。

 文科省、こういう調査をこの新学習指導要領実施の後やるということでよろしいですか。

高木国務大臣 新学習指導要領は、御案内のとおり、来年度から小学校で完全実施されますし、それに続いて、中学校では平成二十四年度から実施されます。高等学校においては平成二十五年度から年次進行で実施されていくこととなっておりますが、その影響については、全体の実施状況を踏まえながら検証してまいりたいと思っております。

 また、この少人数学級については、まさに今それぞれ御審議をいただいておるところでございます。学校現場の負担軽減を図る観点からも、校務の情報化を図って、業務の能率の向上、あるいは会議を極力減らすなどして負担の軽減を図る、こういったいろいろな工夫をしなきゃならぬと思っております。

宮本委員 参考人からもそういう要望がありましたので、ぜひとも調査をやっていただく、検証していただくということをお願いしておきたいと思います。

 法律案は、三十一年ぶりに少人数学級に踏み出すという意味で積極的なものであります。しかし、国民の声、現場の声ということでいえばまだまだ不十分な面がありますし、計画にもなっていないという点は非常に重大だと思います。

 日本共産党は、計画的な教職員増を図るために、三十人学級を六年間で実施する修正案を提出する予定でありますけれども、与党の皆さん、野党の皆さん問わず、賛同いただくことを委員各位にもお願い申し上げて、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、本日付託になりました第百七十六回国会、内閣提出、参議院送付、展覧会における美術品損害の補償に関する法律案を議題といたします。

 本案は、前国会において修正議決の上参議院に送付したものを、参議院において継続審査に付し、今国会におきまして、附則第一項中「平成二十三年四月一日」を「公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日」に改める等の所要の修正を行って本院に送付されたものであります。

 したがいまして、本案の趣旨の説明は省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 展覧会における美術品損害の補償に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 展覧会における美術品損害の補償に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十一分散会


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