衆議院

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第7号 平成23年4月13日(水曜日)

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平成二十三年四月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    大山 昌宏君

      奥村 展三君    金森  正君

      川口  浩君    城井  崇君

      熊谷 貞俊君    佐藤ゆうこ君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      赤澤 亮正君    河村 建夫君

      北村 茂男君    塩谷  立君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      松野 博一君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       高木 義明君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   財務大臣政務官      尾立 源幸君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   文部科学大臣政務官    林 久美子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   泉 紳一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            倉持 隆雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           篠田 幸昌君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房技術総括審議官)       西本 淳哉君

   参考人

   (原子力安全委員会委員) 久住 静代君

   参考人

   (独立行政法人日本学術振興会理事長)       小野 元之君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     赤澤 亮正君

  田野瀬良太郎君    北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     遠藤 利明君

  北村 茂男君     田野瀬良太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員久住静代君及び独立行政法人日本学術振興会理事長小野元之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官泉紳一郎君、文部科学省初等中等教育局長山中伸一君、高等教育局長磯田文雄君、科学技術・学術政策局長合田隆史君、研究振興局長倉持隆雄君、研究開発局長藤木完治君、スポーツ・青少年局長布村幸彦君、厚生労働省大臣官房審議官篠田幸昌君及び経済産業省大臣官房技術総括審議官西本淳哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池坊保子さん。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 この法改正の審議に入ります前に、先週の委員会で、原子力賠償責任の委員会の設置を速やかにしていただきたいと大臣にお願いしたところ、十一日には設置される運びになりましたことは、真摯に受けとめていただいたと感謝しております。これから、与野党を超えて、被災者のためになることはどんどん進言してまいりたいので、対応していただけたらと思っております。

 まず、その法改正の前に、今、学校耐震化事業、もうじき第一次補正予算が始まりますね、私ども公明党は、一〇〇%の学校耐震化を目指して尽力してまいりました。昨年は、予算を政府がおとりになっていらっしゃいませんでしたので、田中眞紀子委員長のもとで、四月十四日、夏休み中にしっかりと耐震化を行うようにというふうに、たしか政府に強く求め、そして、これが夏休みに行われる、予備費を使ったのではなかったかと思います。今、御存じのように、八三%、それによって耐震化率を上げることができました。でも、一〇〇%ではございません。

 第一次補正予算は、今、東日本大震災の、学校が崩壊しちゃった、あるいは天井が落ちてしまった、壁がなくなったとか、そういうことのための補給に使われるんだと思いますけれども、今、全国どこで地震が起きるかわかりません。ですから、そういう意味では、第一次補正に計上しないと、夏休みに工事をすることができずに、来年持ち越しということになってまいります。これは、当初予算だけで三百四十億の不足が見込まれておりますけれども、三百四十億、もし出せなかったら、一千戸以上の耐震化が先送りになるんです。東日本大震災のときにも、天井が落ちて亡くなった子供もいました。

 ですから、ぜひ全国でこの耐震化を進めなければいけない、一〇〇%にしなければならない。これは、子供たちが安心して学べるというだけではなくて、何かありましたときの避難場所にもなります、拠点です。ですから、絶対にこれをしなければいけない。三百四十億ですから、財務省は何やかんや言うのかもしれませんけれども、これは大臣の御決断をぜひ伺いたいと思います。

高木国務大臣 池坊議員にお答えをいたします。

 今委員が、昨年からの公明党の皆さん方のお取り組みも紹介がございました。この学校の耐震化というのは、私どもも、この国会においても各党から御議論いただいております。特に今、本震に続いて余震というのがたびたび起こっておりまして、これまた懸念をされておるところでございます。

 東日本大震災においても、学校の施設が子供たちを守り、そして今でも避難所として機能しておる、そういう意味では、もちろん学校が壊れたところ、あるいは大きな傷を受けたところ、たくさんございますけれども、大きくは避難所として機能しておるように、耐震化の努力があらわれておると思っております。

 御指摘のとおり、平成二十三年度の予算におきましては、前年度と比べますと額は減っておりましたが、私たちは、一日も早くの耐震化を進めるために、平成二十二年度の補正予算において、また予備費、これは昨年の九月でございますが、前倒しをいたしまして、それらを合計しますと総額二千百四十二億円を確保しておりまして、概算要求した二千百九十二億円に対してほぼ満額の予算を確保したところでありました。

 ただ、御指摘のとおり、その後さらに多くの耐震化事業をしたいという要望が多く、ことしの二月に行った調査でも、約三百四十億円程度の追加要望がございました。これは約一千棟以上に上りますけれども、こういう要望があったのは事実でございます。

 一次補正予算の内容は、現在政府・与党としても検討中でございますが、文部科学省では、この追加要望を含めた地方公共団体の要望を踏まえて、あらゆる機会を通じて、夏休みの工事に間に合うように必要な予算の確保に努めてまいりたいと思っております。

池坊委員 夏休みに工事ができるように努めると言っていただきましたので、ぜひそうしていただけたらというふうに思います。

 では、法案に移ります。

 今回の科学研究費補助金の改正、主に、若手研究者を対象とする一部の研究費の基金化は、年度末に無理に予算を消化しようとするような予算の単年度主義の弊害を乗り越え、複数年にわたって効率的かつ柔軟に研究を進めることを可能にするものであり、若手研究者にとっては有益な改正ではないかというふうに私は思っております。民主党は、基金化というのは反対していらっしゃるんだけれども、科学技術費だけはいいよとお認めになったというようなことを聞いております。

 一方、研究現場の視点から見れば、科学研究費補助金を含むすべての研究費について無駄なく有効活用できるよう基金化していくことが望ましいと私は考えております。今回は、二千六百三十三億の中の八百五十三億ではないかと思います。

 今後どうしていらっしゃるかを、私、たくさんの質問をさせていただきたいので、ちょっと簡潔に御答弁いただけたらと思います。

笹木副大臣 今回、こうやって基金化を正式に科学研究費補助金に対して始めるわけですが、まずはその実績について検討することが必要だと思います。先生がおっしゃるとおり、こういう基金化の対象を広げていく、そういうことは必要だし、そうしてまいりたいとは思っています。

 しかし、まず、来年度からやる、これについて検討した上でのことだとは思っております。

池坊委員 順次結果を見ながら、推移を見ながら基金化して、単年度というのは使い勝手が悪いんですよ、それは現場の人たちにとって。そのために不正と言われるような、業者にちょっとお金をプールして、来年度使いたいからというようなことも起こっておりますので、ぜひそれは考えていただけたらと思います。

 このように研究費の使い勝手が改善したとしても、我が国の未来を担う若手研究者を取り巻く環境は依然として厳しいものがございます。

 近年、若手研究者の安定的なポストが著しく減少しております。例えば東京大学でいえば、二〇〇一年度から二〇〇九年度にかけて、五十六歳以上の教員の割合が一二・三%から二一・一%に増加しております。一方、三十五歳以下の教員は二二・八%から一五・七%に減少しているんです。このような安定的な教員ポストにつけない多くの若手は、数年の任期づきの不安定な雇用に甘んじているのが現状です。

 なぜこのようなことが起きたかというと、国立大学の教員については、一般の国家公務員と同様、五年間で五%の人件費削減、総人件費管理というのが課せられてきたことが私は大きいのではないかと思います。これによって、各大学は若手の採用を抑制することを余儀なくされました。これでは若い優秀な科学者が育たないのではないかと思います。

 さらに深刻なのは、修了しても安定的な職につけない先輩の姿を見て、大学院博士課程への進学者が近年大きく減少してきております。例えば、日本では博士課程の学生が最も多いと言われているのが数字的に東京大学ですけれども、過去五年間で博士課程への進学率が一〇ポイント以上減少しております。ほかの大学もほぼ同じような、もっと減少率が多いところもございます。

 中国を初め諸外国が博士号取得者を急速に増加させている中、研究の道を志す若手の減少は、資源の乏しい我が国の将来にとって極めて危機的な状況と言わざるを得ないのではないかと私は思います。

 特に、国際会議に出ますと、博士号を持っている、官僚の中でも博士を持っている方が大変多い。そういう人たちがいろいろ意見を言い合っている。日本で持っていらっしゃる方は少ないですよね。日本は、やはり社会が受け入れないような土壌ができているのではないかと思っております。

 一般公務員と大学教員の人件費を一律に削減するような扱いがそもそも間違っているんじゃないか。有為な若者が研究の道を志し、最先端の研究に安心して打ち込めるような安定的ポストの拡大や、多様な財源を活用した人件費システムの構築など、若手への支援の拡充に最優先で取り組むべきというふうに私は考えております。

 これは、十年後、二十年後、三十年後の日本の未来を見据えたときの国益にかなう、国力、そして、このままでいったら世界の中で競争できないのではないかと思いますけれども、いかがですか。

笹木副大臣 来年度の予算に対しても、この基金化においても、若手ということをかなり意識して幾つか、三つの事業ということで基金化を実行しております。

 それと、例えばテニュアトラック制の導入というのを今やっておりまして、これは、大体四十大学に対して一機関当たり二、三億円の支援。要は、今先生がおっしゃられたような、大学において、従来、指導の教授がいて、そのもとで必ずしも自由な、自立的な研究ができないとか、そういう問題も指摘をされてきました。そういうことも克服をしようということで、一定期間は自立した研究環境を与えられる。私もこの間東京農工大学に行って、そのテニュアトラック制度を受けている若手の研究者の方々六人から、実際のいろいろな御意見も聞いてまいりました。

 そういう自立的な環境で研究した後で安定した准教授等のポストを得られる、これがテニュアトラック制ですが、今言った、四十大学に対して支援を行っております。先生がおっしゃられたような問題をこういう制度によって克服していけたらいいと思って、制度を推進しているわけです。

 それと、各大学においては、競争的な資金を含む自己収入によって任期つき教員等を雇用する、こういう工夫も行っております。数字でいいますと、平成十九年度の数字で一万千百五十六名、四年ほど前の平成十五年に比べて約二倍になっております。こういう取り組みもあわせてやって、いろいろ工夫をしているところであります。

池坊委員 外部の資金を入れるということは、大変いいことではあると思いますけれども、どちらかといえば、外部の資金は短期的な計画にだけお金が注がれることが多いんですね。やはり私は、文部科学省として、国として、中期的、長期的な研究にもお金を使うべきだと思います。そういう環境整備が大切ではないかと思います。

 それと、任期制ですね。若手の人たちが、任期ですから、あれは多分二年でしたっけ、安心して研究に打ち込めないんですね。研究というのは、二年で成果を出さなければいけないといって成果主義になったら、必ずしもいい研究は私は出せないと思います。世界の中で伍していくためには、やはり無駄と思えても五年とか十年を見据える。それができるのが国だと思うんですね。だから、民間の資金とのやはりバランスというのはよく考えていただきたいというふうに思います。

 それと、さっきも申し上げましたように、社会の受け入れが、ポスドクなんかもなかなかないんですね。これは文部科学省だけで解決できる問題ではなくて、経済産業省などとも連携をとりながら、社会の中で、企業なんかももっともっと採用できるようなシステムにしていくことが必要かと思いますので、その御努力もしていただきたいと思いますが、副大臣いかがでございますか。

笹木副大臣 おっしゃるとおりだと思います。こういう制度で支援を受けた方々が、その後、今おっしゃられた民間企業で切れ目なく就職にもつながっていく、そういうことについてもさらにいろいろ工夫が必要だと思っています。

池坊委員 今回の原発事故の影響で、核物理や原子力関係の学生、研究者の就職や研究継続に赤信号が出ているのではないかと危惧いたします。

 これはアメリカのスリーマイル島原発事故でも行ったことですけれども、医学物理士としての道を開くことが重要なんじゃないかと思います。私は、がん対策基本法をつくりますときに、いろいろな病院などを回りましたとき、日本では放射線のお医者様が実に少ないと。それとともに、外国では、がんに関して緩和ケアということが行われておりますけれども、それが日本では、痛みは耐えなきゃいけないみたいなところがあって、その専門医も少ないという現状を知りました。

 この医学物理士というのも、私、正直言うと初めて知ったんですけれども、放射線の治療を行ったりいたしますとき、放射線のお医者様だけではなくて、それを支えるスタッフというのがやはり必要になってくるんですね。日本の場合は放射線医すら少ないんですから、それを支えるスタッフというのがなかなか育っていないのが現状ではないかと思います。アメリカでは、高精度の放射線治療を支える医学物理士が五千名いるそうですけれども、日本では、医学物理士認定機構の認定医学物理士が五百六十二名、専任で業務を行っているのが実質二百名弱にとどまっております。

 この原発の事故を受けまして、私どもは本当に無知だなと思ったんですね。何が事実なのか、情報に対しましても、それに対応するだけの知識を持っていないということを感じました。

 これからも、核物理や原子力関係の学生、研究者を放射線治療分野で吸収することが必要なのではないかと思いますけれども、そのような視点をお持ちになることができるのかどうかということをちょっと伺いたいと思います。

合田政府参考人 御指摘のように、放射線事故に対する対応を含めまして、被曝医療機関におきます診療等につきましては、医師あるいは研究者のみならず、看護師、保健師はもとより、御指摘のような医学物理士、あるいは診療放射線技師、臨床検査技師、あるいは薬剤師の方もおられるかと思いますけれども、そういったようなさまざまな職種の医療関係者が一丸となって取り組んでいただくということが重要であろうというふうに考えてございます。

 そういうことがございまして、放射線医学総合研究所がございますけれども、あるいは財団法人で原子力安全研究協会というのもございます。こういったようなところに委託をいたしまして、医療関係者の職種等に応じました研修を実施いたしますとともに、緊急被曝医療の訓練を定期的に実施するといったようなことで、被曝医療に関連いたします各種の専門人材の養成に努めてきているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今回の災害への対応に万全を期することはもちろんでございますけれども、原子力安全委員会の方で示していただいています方針なども踏まえまして、緊急被曝医療体制につきまして、御指摘のような関連の専門人材の養成も含めまして、一層の充実強化に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

池坊委員 医学物理士を置いていらっしゃる、こういう人たちが働ける場というのはどういうところに限定されるんでしょうか。今おっしゃったような放射線研究所だけなのですか。

合田政府参考人 先ほど申し上げました放射線医学研究所、あるいは原子力安全研究協会というところは、そういったような方々に対する研修をお願いして実施していただいているということでございまして、医学物理士の方々自身は、さまざまな高度の被曝医療の関係の医療機関等で活躍いただいているというふうに承知をしてございます。

池坊委員 私はまず、放射線医の養成をもっとしなければいけない。数をふやさなければいけない。それから、さっきも申し上げているように、それを支えるスタッフをそろえなければいけない。つまり、それは養成です。一点、養成がある。そして、養成をした後に今度活用ということがあるのではないかと思います。

 日本ではまだその認知度が低いのではないかと思いますので、文部科学省は、ぜひそれに対して注目を、育てるという気持ちを持っていただきたいと思います。

 例えば、食品の放射能の検査機を大幅にふやすというような報道を見ましたけれども、それを担当する人は一体どういう人なのか。ある市の担当の方が、病院を通して医学物理士に問い合わせをして、医学物理士が検査をしたというのを伺ったんですね。つまり、放射能検査機があっても、それを検査する人間がいなかったらこれは困るわけです。

 医療装置と物理的知識をあわせ持ったのが医学物理士であると思うんですよ。だから、その人たちがいる病院というのは極めて少ないので、これからちょっとそれは注意して、育てるという意識を持っていただきたいというふうに思います。

 がん対策基本法をつくりましたときにも、さっきも申し上げましたように、日本の場合は、外科医のお医者様は多いんですね。がんというと大概手術をする。だけれども、そうじゃなくて、今のがん対策というのは、放射線とかあるいは化学療法ということがなされております。それに対応できるお医者様というのが極めて少なかったので、それを思いますときに、やはりニーズに合って時代に合った分野での養成というのは、文部科学省の使命と責任ではないかと私は思いますので、これから科学技術の関係、科学者を育てるときには、そうした方々を育てていただけたらというふうに思っております。

 茨城には大型の加速装置があり、地震の影響でとまっております。また、電力事情も考えますと、しばらく実験をすることは難しいのではないかと思います。そこにも、グループの中にはポストドクターがいる。あるいは、東北大学も今実験ができない状況にあるんだそうですね。

 そうすると、その実験が、きっちりと整うまで一体どれぐらい時間がかかるのか。そして、その間、そうした研究者はどういう立場にあって、どういう研究を継続していくのでしょうか。

 私が懸念しておりますのは、今、海外の優秀な科学者を育てている方々は、日本の科学者の置かれている状況が極めて劣悪である、ましてや、こういう地震が起きて研究をする場所がない、だから、優秀な人は海外に行くようにと引っ張っているようなところもあるんですね。

 日本は本当にドクターが育ちづらい環境だと思いますけれども、東北大学だけでなくて、さまざまな、今、東日本では、病院そして大学、研究者が活躍できないし、研究を継続できないと思いますけれども、そういうことについてはどのように考えていらっしゃるかをちょっとお伺いさせていただきたいと思います。

笹木副大臣 今先生がおっしゃられた中で、私も、東海村のJ―PARC、これを実際に見てまいりました。実際、道路とか研究施設が一メートル以上陥没している、そういう場所もたくさんあって、非常に深刻なものです。電力を使ってこの加速器を動かすわけですが、今電源も来ていない状態です。

 こういう研究施設で被害を受けているところが全国で、このJ―PARC、あるいはBファクトリー加速器、これはつくば市ですが、を初めとして十八カ所あります。大学の中でも、研究機能を持っている、そういうところで今活動できていないところは、おっしゃるとおりたくさんあると思います。

 そんな中で、大学や研究機関において、被災地の研究者を優先的に受け入れる取り組みは今始めておりまして、日本学術会議のホームページでも、五十三の大学、研究機関等において、被災した研究者や学生の受け入れに関する情報の提供を今始めております。受け入れも既に徐々に始まっているわけですが、これをさらにスピードアップするべきだと思っています。

 おっしゃるとおり、ポストドクターを含めた研究者が非常に不安を抱えている状況があると思いますから、この体制を急いで、受け入れが進むように努力することが必要ですが、ただ、その一方で、余り外に出る方が多くなり過ぎると、もともとの研究所での復旧に差しさわりがまた人材の面で起こる面もあります。こうしたバランスを考えながら進めていくということだと思っております。

池坊委員 外にというのは、外国にという意味ですか。

笹木副大臣 外国だけじゃなくて、例えば東北のある研究機関とか大学、そこでも復旧をしていかないといけないし、研究環境の整備も復活させないといけないわけですから、国内も含めてです。

池坊委員 私、科学者のこういう振興費、研究費は当然あるべきですから、与えられなければいけない、今度はこれによって二万人の人が新たに得ることができるというふうに聞いておりますけれども、その中で、公私間格差というのを感じるんですね。

 つまり、国立大学は応募者数が多いのだ、だからどうしても国立大学に偏るんだという声がございますけれども、研究費を入れて国立大学としているから、国立大学にはいい研究者が育って、いい循環があるのじゃないのか。でも、私立だとそうした実験なんかをするだけの設備もない、だから育たなくて、そういうポストドクターなんかの申請も少ないのではないか。

 つまり、そこにやはり格差ができていくのではないかと思うんですけれども、これはぜひ私は満遍なく私立の研究者にも配られるようであってほしいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

倉持政府参考人 学術研究の振興という観点からは、まさに今、研究者の所属にかかわらず、すぐれた研究を支援するということが重要な観点でございます。したがいまして、この科研費制度におきましては、何といいましても、公正公平な審査を最も重視するということでございます。

 したがいまして、このために、審査員の選定に当たりましては、所属機関が重ならないようにするとか、国立、公立、私立のバランスをさまざまな観点から配慮するといったようなことを行っておりまして、申請であるとか審査の過程において所属機関による扱いの差がないように、これは意を用いているところでございます。

 ただ、先生御指摘のとおり、今、二十二年度の科研費の新規採択率を全体で見てみますと、国立大学の研究者ではその採択率が約二五%、私立大学では約一八%、こういう状況にございます。ただ、その中でも、それぞれ国立大学、私立大学とも、高いところ、低いところがございまして、私立大学であって応募件数が五十件以上の大学について見ると、採択率三九%という頑張っておられる大学もあります。

 したがいまして、全体、私立大学の研究環境を充実するというのは非常に大事な観点だと思いますけれども、この科研費につきましては、いずれにしましても、審査や申請の過程で所属機関による扱いの差がないように意を用いていきたいというふうに考えてございます。

池坊委員 科学者の世界でも村があるようでございますので、公平公正、透明性のある審査をしていただきたい、それから、そういう審査員を選んでいただきたいと切に希望し、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、松崎哲久君。

松崎(哲)委員 民主党の松崎哲久でございます。

 去る三月十一日に発生いたしました大地震に起因する災害は、東日本大震災と総称することになりました。私たち国会議員は、既に三月十七日の本会議、そして同二十三日の本委員会におきまして、犠牲者の方々に対しまして、黙祷をして哀悼の意を表させていただきました。

 しかし、一カ月たちますけれども、その後も被害はふえ続けております。犠牲になられた方々には改めてお悔やみを申し上げますとともに、今なお平常の生活、そして仕事が回復できない方々に対しまして、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

 今回の災害は、地震による倒壊、火事、大津波、そして原発事故が加わりまして、また、さらには余震もあり、広がりの大きさと継続する不安というものにおいて特筆すべきものでございます。

 しかしながら、私たち立法あるいは行政に携わる者たちが自戒、自制しなくてはならないのは、この災害を想定外という言葉でくくることではないかと思います。事態を想定外と表現する姿勢は、想定外だから仕方がない、想定外のことには責任がないというような逃げ口上につながってしまうのではないかとの懸念があるからです。

 そもそも、自然現象や自然に起因する災害に想定という言葉そのものがなじまない。なぜかといえば、すべてを想定できると考えていること自体に、人間のおごりというものが見えると思わざるを得ないのです。自然とは敵対するものではなくて融合するものだという東洋哲学の真髄を今こそ思い出して、謙虚な心で自然と向き合う、自然とつき合うということを、初心に戻って再認識する必要があるのではないかと思います。

 本委員会は、教育、文化芸術、スポーツなどとともに、科学を所管する委員会であります。だからこそ申し上げたいのは、科学とは、決してすべてを想定のもとに置くという前提に立っていないのではないかということです。だから研究をする必要がある。だから真摯に研究を続けなければならない。それが科学というものに対する科学者の原点でなければならない、こう考えております。それでこそ、科学者、研究者の研究環境を整えようという本法案の成立を図る意味があるというふうに考えるものでございます。

 本法案は、科学研究費補助金、略称科研費と申しますけれども、科研費を基金化する趣旨でございます。基金化することにより、先ほど御答弁もありましたけれども、複数年度の継続研究に対し、柔軟かつ機動的な支出を可能にすると趣旨説明にもございました。

 しかし、そもそも、基金化をすることによって、なぜ柔軟かつ機動的な支出が可能になるということなんでしょうか。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 学術研究は、国内外の最新の研究動向を踏まえながら未知なる世界を切り開くという性質上、事前に研究計画を決めますけれども、その研究の進展に応じてこれを随時並行しながら進めることが非常に多うございます。したがいまして、従来は予算が単年度でございますので、もちろん複数年度の研究はできましたけれども、予算が単年度ごとに措置されるということもございまして、あらかじめ設定した資金計画を研究の進展に合わせて前倒しで使うといったことはできませんでした。

 また、制度上、研究費を翌年度に繰り越すということは可能ではございましたけれども、これにつきましては非常に手続が煩雑ということもございまして、研究者のサイドから見ますと、これは相当な負担感を持っていたということもございます。

 そして、特に研究費総額が少ない受給者、研究者にあっては、なかなかそういう年度内の研究の進捗に合わせた資金計画の融通といいますか、余裕が少ないということで、今回の基金化というのは非常にメリットがあるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、こうしまして研究者が必要な時期に必要な研究費を使えるということになりまして、研究費のより効果的、効率的な活用を図ることができるというふうに考えております。

松崎(哲)委員 ありがとうございました。

 そこで、まず最も基礎的な質問からさせていただきたいんですけれども、科研費というのは、だれに、あるいは何に対する補助金なのかということです。もちろん、研究費ですから研究者に対するものというのは想像がつくんですが、では、研究者というのは、どういう人のことを実際に定義しているのかということを教えていただきたいと思います。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 科研費に応募できる研究者というのは、所属する研究機関におきまして以下の三つの要件を満たすということでございます。その三つの要件というのは、大学等の研究機関に、当該研究機関の研究活動を行うことを職務に含む者として、所属する者であることが一つ、それから当該研究機関の研究活動に実際に従事していること、そして大学院生等の学生ではないということでございます。

 以上の三つの要件を満たすことが認められている者を研究者と言っておりまして、現在約千七百の機関におきまして、合計約二十五万人の方が対象となってございます。

松崎(哲)委員 その二十五万人というのは、念のためですけれども、社会科学、人文科学等も含まれているわけでございますね。

倉持政府参考人 科研費では、御指摘のとおり、人文・社会科学も含め、自然科学にわたるすべての分野の研究者を対象に支援しております。

松崎(哲)委員 すべてというのはどのぐらいの分野があって、いろいろ、分科とか細目とか、こういうのもあると伺っているんですけれども、どのぐらい分類されているんでしょうか。

倉持政府参考人 科研費は、非常に広範な分野を対象としておって、すべての分野の研究者の御課題に対応する、審査で対応するということでございます。

 例えば、人文社会系を見ますと、社会科学という分野を設け、その中に分科として法学というものを設け、さらにその細目として民事法学というように、四段階の分野を、分類表を設けておりまして、実態を申し上げますと、四つの系、十の分野、六十九の分科、二百九十七の細目ということに区分しているところでございます。

松崎(哲)委員 それだけの分野、細目二百九十七あるということでございますが、そこに約二十五万人、研究者がいる。

 この研究者が科研費を、件数あるいは人数ですね、どのぐらい応募して、どのぐらい採択をされているかということを教えていただきたいと思います。

倉持政府参考人 科研費は、いわゆる競争的な研究資金でございまして、研究者からの研究計画の申請に基づいて、審査を経て採否を決定している、こういうことでございます。

 研究者からの応募件数は約十万件ございます。新規採択件数はそのうち約二万件でございまして、いわゆる採択率は、近年二〇%台の前半で推移をしてございます。継続課題も含めますと、約六万件の研究課題を支援しているところでございまして、複数の研究者でグループを形成している研究課題もございますけれども、二十五万人全員が科研費をもらっているということではないと思います。

松崎(哲)委員 二十二年度の科研費の総額は二千億円ということですね。二十三年度が二千六百三十三億円ということでありますが。二十五万人がもらうわけじゃなくて、十万人が応募して、実際には、継続と新規と含めて六万人ぐらいが採択されているということですから、割り算をすると、三百五十万ぐらいになるはずだと思います。

 平均が二百五十三万という数字も伺うんですけれども、これは、どうして三百五十万じゃなくて二百五十三万なんでしょうか。

倉持政府参考人 科研費は、直接研究費に使う部分と、いわゆる間接経費といいまして、その三〇%を間接経費として給付してございますので、その差であろうかと思われます。

松崎(哲)委員 今回、基金化の対象になりますのは、基盤研究C、挑戦的萌芽研究及び若手研究Bということで、内容は五百万円以下、こういうことになっていますが、実際の平均配分額は百三十八万、百五十九万、百四十四万、こういうふうに伺っております。

 そうしますと、先ほど、ここをふやすということは、言葉は悪いですが、少額で数をふやす。数をふやすことによって、何かその採択率を、二〇%、二二%のものを、総合科学技術会議が三〇%に上げろ、こう求めているという事情もあるんでしょうけれども、三〇%に上げるというそのパーセンテージの目標というのにどれほどの意味があるのか。

 実際に採択の件数だとか、それを上げていくことの方が意味があるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

倉持政府参考人 確かに、採択率三〇%が望ましいのではないか、こういう御議論がございます。

 それは、採択率が余りに低いと、なかなか研究者の方も、せっかく申請してもほとんど採択されないという、申請に対して余りインセンティブが働かない。逆に高過ぎますと、かえって甘い申請にも受けとめてしまう、こういう可能性がございまして、御議論といたしまして、三〇%がまず目指すべき目標ではないかというふうにされております。

松崎(哲)委員 私の問題意識といいますか、なぜ質問したかといいますと、要するに、二十五万人、研究者と称される人がいる。その中で、新規に対してと、それから継続をもらっている人と合わせておよそ半分の十二万人ぐらいがこの科研費を利用しようと応募している。それが、採択率を上げていくことによって、十二万人ではなくて、応募しようとする人がもう少しふえていくということは、いいことのようにも思えますけれども、実は、眠っている研究者をあえて起こすというか、そういうような側面もあるのではないかと思うんですね。

 ですから、これは審査の問題だと思いますが、本当に必要な人に必要な額をきちんと配分する、交付する。ですから、採択率という率を上げようとすれば、件数をふやすことになっていくわけなので、ちょっとその辺を、私はこれは、総合科学技術会議が三〇%という数字を出しているから三〇%というパーセントの問題ではなくて、実質的に必要とする研究者に対してきちんと渡されていくということを目標としなければいけないんじゃないかというふうに考えておりますが、御意見があれば、いかがでしょうか。

倉持政府参考人 実際、審査に当たられている審査員の方々の御意見等を伺いますと、いわゆる、ここで切らなきゃいけないというところで、まだまだいい提案もあるんですけれども、何せ資源にも限界があるのでここは足切りをしなきゃいけない、こういった声も聞いていて、やはりもう少しそこの採択率を上げるべきであるという御意見、本当に現場の御意見として承っております。

 したがいまして、やはり何といっても、中身のいいものを研究を進めていただくというのが主眼であるべきだと思いますので、そういった点の充実が必要だと思っております。

松崎(哲)委員 ありがとうございます。

 そういうことだと思いますが、せっかく新しい制度、仕組みになりまして、基金化ということで、より使い勝手のいい、また研究者の方々に役に立つ制度を始めるわけですから、これが本当に円滑に、かつ公正に運用されるということを期待いたします。そして、それが結果として日本の研究者、科学者の研究水準がどんどん上がっていくという成果をぜひとももたらすようにこの制度を活用していただきたいというふうに、研究者の方々にもお願いをいたしたいと思っております。

 次に、今回の東日本大震災への対応ということで、科学者、研究者の方々がどういう状況に置かれているかということが、科学を振興するという意味では大きな問題意識であるわけです。

 先ほど池坊委員の御質問にもありましたけれども、大学あるいは研究機関が、例えば、建物が倒壊するあるいはひびが入るというだけじゃなくて、研究の設備機器あるいは分析の機械とかそういうものが故障をしたり、いろいろな不都合が生じているということを伺っております。

 つまり、この大震災の結果、良好な研究環境というものが保たれていない、損なわれてしまっているという状況があると思いますが、文科省としては、被災県にある大学及び研究機関の現時点での被害、被災の状況をどのように把握されているんでしょうか、伺わせていただきたいと思います。

磯田政府参考人 四月十三日七時現在で、国立大学五十七校、公立大学十八校、私立大学百八十九校で物的被害が発生しておりますが、その多くの大学等で実験装置等が破損、故障しております。

 例えば、東北大学におきましては、大学内で共同利用できる、ナノスピンデバイス位相特性測定システムを初めとする各種の分析装置が破損し、幅広い研究分野の解析データ収集が不可能な状況にございます。

 また、高エネルギー加速器研究機構におきましては、電子や陽電子のビームを高エネルギーに加速し入射する装置が、地震の揺れで電磁石が落下して、今使用できないという状況にございます。

 また、震源から離れました和歌山県の串本にございます近畿大学の研究所では、津波の影響により生けすが約九十台破損し、研究教材である養殖魚、クロマグロにも甚大な被害が生じております。

 外見上は大きな損傷はなくても、先ほどの電磁石のずれなどで性能、精度の確認を要する実験装置が多数ございまして、専門家による被害状況の確認をしておりますが、来月を目途に、できるだけ早急に取りまとめたいというぐあいに考えております。

松崎(哲)委員 被害状況をまとめるのが来月ということですが、実際には、そういう設備や機械、分析装置を修理したり直したり、あるいは新規に入れかえということが必要です。研究環境が整備されるというためには、そこまでいかないと良好な環境が取り戻せないわけですが、それにはどのぐらい期間がかかるというように、お答えいただけるかどうかわかりませんけれども、教えていただければお願いします。

磯田政府参考人 物によりましては半年ぐらいの期間がかかるものがございますが、その間は、できるだけ他の応急措置あるいは共同利用等を考えてまいりたいと思っております。

松崎(哲)委員 それはぜひお願いをしたいんですが、一定の期間がかかるというのはやむを得ないことだと思いますが、その間、研究者の研究水準を、あるいは研究が中断されないようにしなければいけないわけです。

 今、応急措置と共同利用、こういうようなことをおっしゃいましたけれども、その他に何か、例えば、私が国大協さんから伺ったところによりますと、他大学でその研究者を受け入れて、しばらくの期間研究してもらう、こういうようなことも考えられるということを伺ったんですけれども、この辺、文科省としては承知をされていますか。

笹木副大臣 先ほど、五十三の大学、研究機関における、被災した研究者や学生の受け入れについて、これを日本学術会議のホームページで紹介しているというお話はしましたが、例えば愛知県岡崎市の大学共同利用機関、三機関共同で、被災地域の大学及び研究機関の研究者支援のプロジェクトを開始しております。これは、テーマを決めて公募をし、被災地の優先枠を設けている。旅費とか研究費、滞在費用ももちろん支給をするということです。既に十一件決まっているということです。

 こうしたことをほかの大学でも、例えば研究費とか施設の無料使用とか、あるいはデスクスペースとかインターネット環境とか図書の貸し出し、いろいろなさまざまなレベルがありますが、これを、五十三の大学でやっている取り組みをインターネットで紹介しているということです。

松崎(哲)委員 先ほど池坊委員が、研究環境が悪くなっている、それを海外の大学あるいは研究機関が誘いをかけてくる、こういうようなお話がありました。

 私は、そういう話を伺ってみると、むしろ積極的に海外に派遣をするといいますか、海外に研究場所を求めるというようなことも考えてもいいのではないかというふうに思います。それは、ヘッドハンティングのように海外に頭脳流出をさせるということではなくて、むしろ、そういう研究者に対して良好な研究環境を確保するというのは、この際、やはり政府あるいは政府系機関の責務なのではないか。

 ですから、国内でそういうふうに協力をしていただくということは、もちろん当然しかるべきだと思いますが、研究のテーマ等によれば、海外に出かけていってそこで研究をするということが、研究のブレークスルーにつながるというようなこともある分野もあると思います。

 ですから、何も国内だけというのじゃなくて、海外にも積極的に国の施策として出していくというようなこともお考えいただいてもいいのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

合田政府参考人 研究者が海外で活躍をしていただく、研究を継続していただく、あるいは研修をしていただくということは、非常に重要なことであるというふうに考えております。

 私どもといたしましては、平成二十三年度の日本学術振興会の事業の中で、頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業といったようなものを新規に予算措置いたしますとともに、海外特別研究員事業につきましても増額を図るなどの努力をしているところでございます。

 さらに、今回の震災の対応の中で、新しいそういった意味での共同研究プログラムを立ち上げようといったような動きもあるようでございますが、そういったようなことも含めまして、研究者を長期に海外に派遣する仕組みの充実につきましても努めてまいりたいというふうに考えてございます。

松崎(哲)委員 先ほど大学の数、国公私立、伺いましたけれども、このうち被害を受けた地域から、今まではどのぐらいの数の方が海外に一時的に、サバティカルという言葉でいいますけれども、サバティカルに限らず長期間の海外出張というような形でもいいんですけれども、どのぐらいの数、現在行っていただいているか、おわかりでしょうか。

磯田政府参考人 例えば東北大学を例にとりますと、現在は、可及的速やかに大学の研究機能を復旧するというのが第一であるということで、全教職員が院生等と一丸となってまだ復旧に努めているという状況でございまして、留学生につきましては、本国政府からの、御議論もいただきましたように、帰国されている方がいますが、研究者については、現在、国内で復旧に努めているという状況でございます。

松崎(哲)委員 ちょっと質問の趣旨を取り違えられているんじゃないかなと思いますけれども、時間がないので私が自分で申しますと、長期の海外出張が東北大学で四十三件、二十一年度かな、十九年度かなの資料であるということですし、それから他の大学を含めますと五十二件あるというふうに事前に伺っております。

 私は、今のお話で、復旧が最優先だから全教職員がそこに一丸となっているということは、よろしいようでよろしくないというふうに思います。

 私は、研究者の方が、日本の最高の頭脳が、今この時期に瓦れきを片づけることが日本の科学の発展に資するかというよりは、それは頭脳を使っていただいて、良好な研究環境で研究をしていただく、それが、復旧するまで大学にいないのであれば、国内の他大学でもいいし、共同利用機関でもいいし、あるいは海外に派遣をしてそこで研究を続けていただくのがいいのではないか、こういう趣旨でございます。

 私が数字を伺いましたのは、東北大学で四十三件とか、岩手、宮城、福島の三県で五十二件、こういう数字であれば、仮にこれを倍にしたとしても、復旧するまでの半年間海外に行って、一人当たりの旅費、滞在費を入れても、五十人を倍にして百人、あるいは三倍にして百五十人だとしても、仮に百人ふやしたとしたって、二億から三億ぐらいの予算で済むんじゃないでしょうか。

 ですから、ぜひこういうときに、平成二十三年というのは東日本大震災があって大変な年だったけれども、二十年後、三十年後、彼らがノーベル賞をとれるようなときになって振り返ってみれば、あの年に政府の資金で海外に派遣をしてもらったことが自分のこの研究のブレークスルーにつながったんだ、こういうふうに思っていただけるような施策を今、政府あるいは政府関係機関は行うべきではないか、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

笹木副大臣 先ほどもちょっとお話をしましたが、科学技術振興機構とアメリカのNSFでこの震災の被災を受けた地域を意識した共同の研究プロジェクト、特にこの場合は、地震と津波防災、原子力、放射線安全、こうしたテーマを設定してやっておりますが、いろいろな若手の派遣も含めて、先生がおっしゃったようなことを検討していく必要はあると思います。

松崎(哲)委員 時間が参りましたので最後になりますけれども、この法案は、従来は二千億円を下回っていた科研費を、昨年度、二千億円にしました。そして今年度、さらに増額して二千六百三十三億円にすると。その増額を前提に、そのうち八百五十三億円を学術研究助成基金に係るもの、こうする予算を実現するための立法措置でございます。そういうことを確認したいと思います。

 そして、これは一部に、民主党政権は科学に冷たい、理解がないんだというような誤ったメッセージが伝わっていて、そう誤解されている方が世の中にたくさんいらっしゃる。そういう方々に対して、そうではないんだと、民主党政権は、日本の未来というものを考えるときに、まさに科学を重点的に施策として考えているんだということをぜひ理解をしていただきたい。その最大の証拠となるのが今の法改正なんだということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。

 本題に入る前に、非常に重要なことでございますので、昨日のレベル7、これについてお聞きをまず冒頭させていただきたいと思います。

 この福島第一原発の事故の評価、事故発生直後の4が、最初は4だったわけですね、三月十八日に5になった。そして、さらに二十日以上たった四月十二日になって7に変わった。専門家の方々は、国が事故を過小評価してきたのではないか、こういう批判の声が、これは内外から聞こえてきております。

 この事故直後からフランスの原子力安全局は、レベル6、それからアメリカの民間機関、科学国際安全保障研究所も、レベル6から7という見解を示していたんです。保安院は、健康にかかわるものではないとして、見直す姿勢を今まで見せてこなかった。

 しかし、昨日突然レベル7に変えたということでありまして、これは明らかに政府の初動対策ミスであると思うんです。役人の狭い専門範囲の判断に任せ切っていて、そして、最終的な判断をどこがするのかというのは、もちろんこれは官邸であるわけですけれども、菅総理の全般的な中での判断が的確にできなかったというのが今回のミスになっているというふうに思います。

 そういう意味で菅総理の責任は大変重いというふうに思いますが、その菅内閣の中で文部科学大臣をされていて、これについても全く関係ない立場じゃないわけでありまして、高木大臣の責任も重いというふうに私は思いますが、まず、昨日レベル7にしたこと、そして、その政府の責任について高木大臣としてはどう考えられておられるか、お聞きいたします。

高木国務大臣 昨日のINES評価においては、今御指摘がありましたように、三月十八日以降の得られた情報を踏まえてレベル7と暫定評価したということは、承知をいたしております。

 また、この評価は現段階での結果であり、今後も継続して放射性物質の環境への放出などを情報収集し、最終的には、有識者、専門的な立場、技術的な検討を踏まえてのまた正式な評価がなされると承知をいたしております。

 私どもとしましては、想定とか、そういう話は科学にとってはふさわしくないという議論もございました。まさに一つの真理であろうかとは思っております。まさに、絶対ということはあり得ないということを、この災害で私も認識をしていました。だからこそ、今後の原子力発電所のことについても、今回のことをきっちり検証し、そして教訓を生かさなきゃならぬ、このように思っております。

 菅内閣の一員としてどうかということでございますが、私としては、今回の事故については、私もこれまで、原子力の平和利用、あるいは我が国にとっても、安全を前提にした原子力発電所の建設について推進の立場で取り組んできた一人としては、まことにじくじたる思いはするわけです。

 しかし、今後のことについても、もっと冷静な立場から、多くの専門家あるいは多くの議論を踏まえて、それはそれとして総括をしなきゃなりません。

 ただ、今はとにかくあの原子力第一発電所の事態、これを一日も早く収束をさせる、そういう強い決意で、事業者を先頭にしながら、我々も最大の取り組みをしなきゃならぬ、そういう思いでございます。

下村委員 この最悪の評価レベル7、これはチェルノブイリと同じなわけですけれども、ただ、このチェルノブイリは、ほぼ十日間で放射性物質の大気への放出はとまったわけです。我が国の場合は、今回の福島第一原発は、放射性物質の汚染、チェルノブイリに比べれば十分の一以下であるというふうに言われておりますけれども、これはとまっていない。今も進行形なわけです。そういう意味では、これは国民だけの問題ではなくて、もう世界じゅうの人たちが大変な不安に陥っておられるわけです。

 新聞報道で、韓国の国会でも、韓国の野党から韓国の政府に対しての強い批判が出た。それに対して韓国政府が、無能なのは自分たちじゃないんだ、日本政府が無能なんだ、批判はそちらに言ってくれというのが韓国国会の中でも議論になったそうです。そういう、今、世界じゅうにある意味では大変な迷惑をかけている状況でもあるわけでありまして、これはしっかりと、この余震が続いている中、我が国が対応していくということが必要であるというふうに思います。

 この危機に際しての政治の役割というのは、突き詰めれば、国家目標を明示して、政策の優先順位をどうするか、そうした判断能力を最終的には総理が持ち、それから各担当大臣が持って、国民に明示するということが必要になってくると思うんです。

 この中で、文部科学省に関係する部分として、ちょっとお手元に資料を用意させてきました。この計画的避難区域というのが新しくできた。それから緊急時避難準備区域という命名が、これも十一日に原子力災害対策本部で発表された。これも、地元の人たちにとっては大混乱を引き起こしております。

 お手元にあるように、この計画的避難区域の中に新たに入った中で、飯舘村、実はあさって、我々はこの飯舘村に行く予定になっておりまして、地元の村長さんや教育長さんから現場の状況をよくお聞きして、対応を我々も御協力をさせていただきたいと思っています。

 前回の委員会でも質問いたしましたが、もう一つのペーパーにありますように、「SPEEDIによる甲状腺の内部被曝量の試算」、これを見ていただきますと、今まで政府は、同心円的に二十キロ、三十キロ、こういうふうにしていたわけですが、どの程度の意味があったのかと。

 前回も御指摘をさせていただいたように、同心円的に広がっていくわけではなくて、これは、風それから地形、それから、ある意味では雲のように遠くに行って、そこで濃度が非常に高くなるということもあるわけで、形式的な距離ではなくて、このような、放射線量がどこにどれぐらい拡散しているかどうかという、しっかりしたモニタリングをしながら的確に対応していくということが文部科学省の役目であるというふうに思います。

 その中で、まず確認をいたしますが、二十キロ圏内は既に避難指示が出ていて、地元におられる方々はもうどなたもおられないと思いますが、この二十キロ圏内の教育機関はどれぐらいあるのか、それから対象の子供たちは何人なのか、今、その子供たちはどうしているのか。同じように、緊急時避難準備区域、これは二十キロから三十キロですから今までは屋内退避のところでしたけれども、ここの子供たちは対象が何人いるのか、今はどうしているのか。これについてまずお聞きしたいと思います。

山中政府参考人 まず、緊急時避難準備区域でございますけれども、緊急時避難準備区域は半径二十キロから三十キロの範囲内のところでございますので、ここにあります学校が、小学校が十六、そして中学校が十、高等学校が五つでございます。子供の数は、以前の状態で六千六百人程度でございました。

 ここの地域につきましては、屋内退避で、それから自主退避というのを求められておりました関係上、ほとんどの子供さんが外のほかの地域に出ているという状況がございます。

 ただ、南相馬市等ではまだ残っているお子さんもいらっしゃいますけれども、この地域につきましては、この中で、南相馬市の場合はそのうちの一部が緊急時避難準備区域ということになるということで、今後、そこの地域について、市とも調整した上で決まってくるということになるということになっております。

 多くの子供たちはほかの地域の方に避難して、そちらの方の、避難先にある学校に転学あるいは就学する、あるいは、ほかの市町村の施設を借りて、そちらの方に移転して授業を再開しているといったような状態になっております。

 今後、この緊急時避難準備区域というものの区域が明確になりますと、そこの区域の子供たちは、外の地域の方に出ていって、そちらの方で就学していただくということが明らかになってくる。

 今、ここの区域では、学校は入学式とか始業式等はやっていない、まだ再開していないという状態になっております。

 それから、計画的避難区域でございますけれども、今後、この区域につきましては、一カ月ぐらいで移転をしていくということ、また、川俣町とか南相馬市はその一部がその地域になるわけですけれども、その辺の地域についても決められるわけですけれども、この市町村につきましても、多くの学校では、今、この区域の外の施設の方に移転して、そちらの方で学校を再開したり、あるいは避難先の学校に転学または事実上の就学という形で受け入れていただいているというところです。

 今後、ここの計画的な避難区域ということの区域が決まってきますと、それに伴って子供さんがさらにその地域から外の地域に移転していって、そこの外の地域での就学ということが図られるということになると思っています。

下村委員 よくわからなかったんですが、それぞれ簡単にお答えいただきたいんです。

 まず、二十キロ圏内の避難指示のところについてはお答えありませんでしたが、これはもうゼロでいいのかどうか。つまり今はいないのか。それから、緊急時避難準備区域については、これはもう休園、休校しろということですが、そういうふうに指示して、実際はこの四月から一切授業をしないということでいいのか。それから三点目、計画的避難区域についてはどうするのか。学校の話ですね。もう一度明確にお願いします。

山中政府参考人 失礼いたしました。

 まず二十キロ圏内ですけれども、ここには小学校十八、中学校八、特別支援学校一、高等学校六ありますけれども、ここの地域はすべて子供は残っておりません。ほかの自治体への転学、あるいは、ほかの自治体で学校を分校として開いて、そこに移転しているという状況になっております。

 それから、二十キロから三十キロ圏内、ここが、小学校が十六、中学校十、高等学校五ございますけれども、この地域の学校につきましては、三十キロ圏外の学校の施設を使い学校を再開するという方向でいくか、あるいは、避難先の学校の方に転学あるいは事実上就学という形で移っているという状況でございます。

 計画的避難区域になる地域につきましては、既に子供がもう避難して移っているというところが多いというのが実態でございますけれども、ここのところは三十キロよりさらに遠い地域でございましたので、この地域については、今後、学校の再開とか、それについて検討するということになろうかと思います。

 現在、この中で再開しているということはないというふうに思っています。

下村委員 私の方から確認しますが、二十キロ圏内の公立の小中学校八千九百四十三人はもういない。ゼロということですね。それから、二十キロから三十キロ圏内の公立小中学校生徒六千五百二十九人、これもここで授業はもうやっていない、ゼロということでよろしいわけですね。次の計画的避難区域ですが、これは今はっきりされませんでしたが、ここはもう事実上授業はできないんじゃないですか。

 ただ、これは私が今手元に資料で配付しているのは朝日新聞の資料ですけれども、これはマスコミによって区域が違うんですよ。確定していないんです。このラインが違うんです。ですから、飯舘村が例えば全部入るのか、それから川俣町がどの程度まで線引きされているのかどうかというのも、実際のところはわからないんですよ。

 先ほど、もう一枚のペーパーでお示ししましたように、この二十キロとか三十キロとか五十キロで同心円で被害が同等に拡散しているわけじゃなくて、その地域によって、特にこの飯舘村、川俣町ですか、こういうところというのは非常に放射線量が多いところなんです。だから、その中でこの計画的避難区域というのが十一日に急遽決まったわけです。

 これは、しっかりと国がどうフォローアップをするかということをしてあげなければ、これはもう町民、村民、あるいは周辺の方々にとって、そして、そもそもこの二つだけでいいのかどうか、それ以外のところについてはどうなのかという不安感はあるわけで、この自治体どおりぴったりとそこに放射線の量が多い少ないで定まるわけではありませんから、その辺の見通し等含めてお答えをいただきたいと思います。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、計画的避難区域には、葛尾村、浪江町、飯舘村、これは町村という行政単位でありますけれども、あと川俣町の一部、南相馬市の一部ということで、その区域につきましては、今後、政府と地元自治体で調整し決定するということになっておりまして、具体的にそのうちのどこが計画的避難区域に当たるのかということについては、今後調整して決めるということになっております。

 それから、今まで三十キロより遠い地域がこの計画的避難地域の中に入ってきておりますので、その地域では自主的に避難されて子供さんもいられないという場合が多いんですけれども、まだ子供さんが就学されているというところもあろうかと思いますので、この地域については、これは一カ月以内にどういう形で移転していくのかということを決めるということになっていますので、それに従って決まっていくということになる。

 今まで移転された家族それから子供さんにつきましては、移転先の方の学校に転学する、あるいは事実上そちらの学校の方で教育を受けるという形で、既にかなりの学校が福島県内でも入学式等が始まって、始業式も始まって学校が始まっている。避難先のところから通うとか、いろいろな形態がございますけれども、そういう形で教育が始まっているという状況でございます。

下村委員 もっと詳しくお聞きして、国民のといいますか、特にその地域の方々に対して安心を提供していただきたいと思います。ちょっと本題ではありませんのでここまでとしますが、これは国が定めているんですから、しっかり国がこれは主体的に対応してくださいね。いや、それでいいです。結構です。

 それで、次にもう一つ、ちょっと本題以外なんですが、先ほど池坊委員が御質問されていましたが、高木大臣の答弁で明確でなかったのでもう一度明確にお聞きしたいと思うんですが、学校耐震化対策です。この第一次補正予算の中に文部科学省は要求をしなかったんですか。どうですか、これは。

笠大臣政務官 先ほど高木大臣の方からも答弁したとおり、私どもとしては、一次補正に盛り込むべく要求はいたしました。ただ、結果として盛り込めるかどうかというところは、今なお検討しているところでございます。

下村委員 文科省としては一次補正に要求で入れたということですね。新聞報道によるとこれは入っていないということになっておりまして、それで財務省に来ていただいたわけです。

 これは先ほども議論があったんですが、一次補正に入らないと、実際、夏休みに工事するんですね、学校現場というのは。つまり、二次補正に入ってしまったら、ことしはもう該当しませんよ。来年度以降の話になっちゃうんですよ。

 今、このようにこの委員会の最中でも余震が続いているわけでしょう。こういう中で、これは被災地だけの問題じゃなくて、日本全国どこだってそういう危惧はあるわけですから、これについてはしっかりと国が一次補正予算の中で学校耐震化予算三百四十億を入れるというのは、優先順位からしたら当然のことだと思いますが、いかがですか。

尾立大臣政務官 お答えをいたします。

 公立学校の耐震化については、地方公共団体の皆様方からも強い要望をいただいておりますし、また、重要な事業だと認識のもと、これまで予算措置をさせていただいているところでございます。

 二十三年度の本予算におきましては、学校の施設整備費九百十二億ございます。その中に耐震化事業費七百五十四億が既に措置をされておりますので、まずは、この中から優先順位の高い事業を耐震化事業として進めていただきたいと思っております。

 その心は、この一次補正予算につきましては、東日本大震災の地元の皆さんの救援がまず第一、そして復興が第一というふうに考えておりますので、資源を集中的にこちらに投下するということが大事と考えております。私はちなみに関西の大阪の方の出身なんですけれども、今、お金があっても、物資、資材等がなくて工事がなかなかできないということもございます。そういう意味で、人、物、金をこの震災の方に振り向けるべきだというふうに考えて予算編成を今行っておるところでございます。

下村委員 我々は、四Kですね、その中に高校無償化も入っていますが、これを予算から外して削除して、そして国民の安心、安全に振り向けるべきだということを要求をしております。今申し上げたように、一次補正予算に入れなければ、事実上ことしの夏休みに耐震化対策できなくなってしまいますから、これについては、今の政府の認識がその程度であるということについて、我々とは全く見解を異にしますが、指摘をしておきたいと思いますし、今後も、しっかりと一次補正予算の中で入れるように野党の立場からも要請をしていきたいというふうに思います。

 それでは、本題に入ります。

 本題に入りますが、本題のこの独立行政法人、これは高木大臣に、民主党の代表のお一人として確認をいたします。

 民主党のマニフェスト二〇〇九で、独立行政法人については「ゼロベースで見直す」というふうに掲げておられます。「独立行政法人の実施する事業について、不要な事業や民間で可能な事業は廃止し、国が責任を負うべき事業は国が直接実施することとして、法人のあり方は全廃を含めて抜本的な見直しを進める。」

 この民主党のマニフェスト二〇〇九とそれから今回の基金化についての整合性について、大臣からお答えをいただきたいと思います。

高木国務大臣 今、独立行政法人のあり方についてのお話でございます。

 民主党の政権では、不要な事業や民間で可能な事業の廃止等により税金の無駄遣いの根絶等を図るため、すべての独立行政法人の全事業等を精査し、基金についても、見直しが必要なものは国庫への返納等を行っております。

 一方、今回の科学研究費補助金、いわゆる科研費については、研究の進展に伴って執行されることが予想されるものでありまして、使途がこれは明確です。また、無駄遣いにつながるようなものではない。あるいは埋蔵金と言われるようなものではない。そういう判断の中で、税金の効率的な使用にもこれは資するものだ。こういうことで、政策効果が非常に高い。こういうことを私たちは判断しております。

 また、この振興会においては、これまでも科研費の運営等を適切かつ効率的に行ってきた実績もございます。したがって、科研費の基金を創設するにこれは適した組織だ、私たちはそういうことで判断をして、今、そういうことで今回の法律の改正案も出させていただいたと思っています。

下村委員 民主党の主張も一〇〇%批判をするわけではなくて、確かにそのとおりという部分として、基金化によって無駄等が、あるいは不透明な予算が計上されることもあるかもしれない、使い方ですね、それはそのとおりだと思います。ですから、この基金化によって、絶え間ない効果の検証、それについての方法を新たにどうするか。

 それから、そもそもこの基金化の適用については、この科研費の、今回は、特にニーズの多い、また少額の分野に限定をしておりますけれども、これを今後は他の種目等にも拡大していくということも考えるべきではないかと思いますが、その二点についてお聞きしたいと思います。

笹木副大臣 拡大するべきじゃないかという点についてですが、これは、研究者から毎年度の報告を受けて、分析して検討していく、その中で拡大をしたいという気持ちはあります。

 しかし、まずやって、その後の検討を待つことは必要かと思っています。(下村委員「もう一つ、効果の検証」と呼ぶ)

倉持政府参考人 基金化によりましてこの研究費の柔軟な執行が可能になるわけでございますけれども、しっかり管理していかなければいけないということは御指摘のとおりでございます。

 文科省におきましては、従前より、不正使用を防止するためのガイドライン等をつくっておりまして、これを踏まえまして、文科省や日本学術振興会では、研究機関に対する実地検査も行っているところでございます。

 この基金におきます助成につきましては、研究者から毎年度、研究費の執行状況をまとめた実施状況報告書というものが振興会に提出されて、必要なチェックが行われることになります。そして、その振興会は、毎事業年度、基金による助成事業の実施状況について文部科学大臣に報告書を提出しまして、文部科学大臣はこれに意見を付して国会に報告を行う、こういう仕組みとしてございます。

 このような取り組みによりまして、基金の適切な執行や事業の透明性の確保というものに努めてまいりたいと思っております。

下村委員 こういう大災害が起きた国難のときであるし、また、原発に対する不安感が消えない中、もう一度我が国がよみがえるような国になるためには、科学技術の振興を国家戦略として求めていくことが必要であるというふうに思います。

 我々としても賛成をし、また、これについてさらに拡充をすべきであるということを主張いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。よろしくお願いいたします。自由民主党の馳浩です。

 麻生内閣、塩谷立文部科学大臣のもとで平成二十一年六月十九日に改正をした日本学術振興会法と、平成二十一年五月二十九日に成立をした平成二十一年度第一次補正予算によって、先端研究助成基金補助金と研究者海外派遣基金補助金が予算化をされました。平成二十六年三月三十一日までの期限をつけた基金です。それぞれ、当時幾ら予算化をされましたか。

倉持政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十一年度第一次補正予算におきまして、先端研究助成基金補助金につきましては二千七百億円でございます。そして、研究者海外派遣基金補助金につきましては三百億円がそれぞれ予算措置をされたところでございます。

馳委員 これは、鳩山政権、川端文部科学大臣のもとで平成二十二年一月二十八日に成立をした平成二十一年度第二次補正予算で減額修正されました。それぞれ幾らになりましたか。

倉持政府参考人 平成二十一年度第二次補正予算におきましては、先端研究助成基金補助金につきましては、二千七百億円から千五百億円でございます。それから研究者海外派遣基金補助金につきましては、三百億円が七十五億六千四百三万円にそれぞれ減額修正されてございます。

馳委員 第一次補正と第二次補正の差額は、それぞれ幾らですか。

倉持政府参考人 第一次補正予算と第二次補正予算の差額でございますけれども、先端研究助成基金補助金につきましては千二百億円でございます。研究者海外派遣基金補助金につきましては二百二十四億三千五百九十七万円となってございます。

馳委員 その差額は何に使われましたか。財務省にお伺いしたいと思います。

尾立大臣政務官 二次補正予算におきましては、今、委員から御質問のございました一次補正予算で計上した一部施策の執行見直しということで、千四百二十四億円を含む約二・七兆円の減額を行い、この財源をもとに、当時、経済雇用情勢が非常に厳しいということで、明日の安心と成長のための緊急経済対策、その中身としては、雇用対策、環境対策、景気対策、医療対策、地域支援、このような対策に使わせていただきました。

馳委員 ちなみに、尾立政務官、いつも文部科学委員会に来ていただいてありがとうございます。緊急経済対策に使ったその中に学校耐震化に使った分は入っていましたか。

尾立大臣政務官 済みません。私の今の手元の資料では少しそこまで記載がないもので、恐縮でございます、わかりません。

馳委員 一たん予算化された補助金が減額修正されたことによって、執行機関である日本学術振興会の現場でどのような困ったことが起こりましたか。補助金を期待していた研究者には、予算減額によるハレーションが起こりましたか。それとも何も起こりませんでしたか。

 日本学術振興会の理事長にお伺いをしたいと思います。

小野参考人 お答え申し上げます。

 研究者の多くは、新しいシステムによる補助金でございますので、大変期待をしておったわけでございます。それが政府の事情で減ったということで、一部には、研究者の方で困った方とか、それから計画変更を余儀なくされた方、それから、予定した計画を少し縮小するというような対応を迫られた方等がおられたと思います。

 ただ、これはその後で、十一月十一日だったと思いますけれども、研究計画書の再提出を求めておりました。この段階では、各研究者は、この補助金を有効に使おうということでさまざまな工夫を行っておりました。

 困ったりぼやいたりした方はいらっしゃると思いますけれども、新しい計画に基づいてしっかりと研究したいというのが多くの研究者の考えであったというふうに思っております。

馳委員 小野さんに伺います。

 この日本学術振興会、いわゆる文部科学省の別働隊とも言われておりまして、私も、小野理事長が文化庁の次長の当時、参議院で大活躍されたことをよくよく覚えております。

 執行機関としての責任者である小野理事長は、確かに、研究者から、困った、計画を縮小しなければならないという声を受けとめて、再提出をしたからそれでよかったんだというふうな表現をされましたが、実際には、先端研究で千二百億円、海外派遣で二百二十四億円も減額されている事実は事実として、恐らく、期待していた人の中で残念ながら選に漏れた方はいらっしゃるはずなわけですよ。

 そういう方々に対して、執行機関である日本学術振興会の責任としてどういうふうな説明をなさったのか、教えていただきたいと思います。

小野参考人 私どもは基金の管理団体でございますけれども、この基本的な補助金のシステムにつきましては総合科学技術会議の方でお決めいただくことになっているわけでございますが、先生が御指摘ございましたように、私どもは研究者の身近にいるわけでございまして、研究者の方々には、政府全体でいろいろお考えになられて、やむを得ず予算減額ということになったわけでございますけれども、しかし、この新しい最先端研究のシステム自体は、長年にわたり使える、そして研究者の自由度を高めるということで、大変考え方として私は本当にすばらしいものだと思っておるんです。

 その意味で、減らされて残念ではあるけれども、再計画、出し直していく計画の中でしっかりとぜひ成果を上げてほしいということをお願いしているわけでございます。

 もう一点でございますが、減らされたのでございましたけれども、もう一つ、五百億の次世代基金が認められておりまして、これは、若手研究者や女性研究者にとっては非常にありがたいシステムでございますので、そちらの方でもぜひ頑張ってほしいというようなことも申し上げたのでございます。

馳委員 本来ならばこの時点で、当時、計画また法案立法の担当者だった塩谷さんと、あるいは、減額されたときの担当者である川端さんに出てきてもらって話を伺いたいところではありますが、とりあえず小野さんの今の一つの御見解で、承ったということにしておきたいと思います。

 そこで、現大臣である高木大臣に、政権交代の結果こういうことが起こるということは当たり前だと思いますか、お伺いしたいと思います。

高木国務大臣 先ほどからのお話をお伺いしておりまして、今、代表である理事長の所見もお聞きをいたしました。

 これは、平成二十一年度の第一次補正予算について、当時、国会審議においてさまざまな問題が指摘をされておりまして、政権交代以降、政府としての方針に基づいて全体を見直したという経過もあります。

 その際、基金についても、個別に政策で必要性等を点検した上で必要な見直しを行う、こういうこととされたものであります。

 この中で、最先端研究開発支援プログラムまた若手研究者海外派遣事業に関しては、事業規模を精査をして予算額については減額をしておりますが、あわせて、総合科学技術会議において、政策効果を高めるために、まず一つの、若手研究者等に対する新たな支援制度、最先端・次世代研究開発支援プログラムの創設をしております。

 また、二つ目には、この最先端研究開発支援プログラムについては、研究者の本プログラムへの専念義務の解除、専念義務を解除しておりますことや、また、研究者が日本に帰国するという義務、これの弾力的な運用を可能にしております。

 こういう見直しも行われておる、このように承知をいたしております。

馳委員 実は、平成二十一年六月十九日に成立したこの日本学術振興会法の改正のときに、民主党の皆さん方の強い強い提案もありまして、修正しているんですよ。その修正を塩谷さんものんだわけです。その一文を申し上げますよ。大事なところなんですね。「現下の厳しい経済情勢に対処するための臨時の措置として、」という一文を削るべきだ。経済対策としてというよりも、現場の研究者のために、日本の将来のためには、そういう理念ではなくて、いわゆる恒久的な形としてでも、やはり基金として年度を挟んででも有効に予算を活用できるようにすべきだと、これは民主党からの要請で修正に応じたんですよ、ねえ塩谷さん。そうなんですよね、うなずいておられますけれども。

 という趣旨から考えれば、私は、この減額がこれほどまでの大きな金額になってしまったということについては、大変やはり残念に思っております。

 その上で次の質問に入りたいと思いますが、ちょっと細かいですよ。

 研究者海外派遣基金による交付が決定したのは平成二十二年二月二十六日であり、六十九億一千五百八十四万四千七百八十二円です。先端研究助成基金による最先端研究開発支援プログラムの交付が決定したのは平成二十二年三月二十五日であり、九百九十八億七千五百万円です。しかし、今ほど高木大臣や先ほど小野理事長もおっしゃられた先端研究助成基金による最先端・次世代研究開発支援プログラム、これの交付が決定したのは、何と一年後の平成二十三年三月十日であり、四百八十六億九百六十万円です。どうしてこれだけのタイムラグが起こってしまったのか不思議に思います。

 これは日本学術振興会の執行機関としての問題なんですか、それとも総合科学技術会議の審査の問題なんですか。ぜひお答えをいただきたいと思います。

泉政府参考人 お尋ねの最先端研究開発支援プログラムと最先端・次世代研究開発支援プログラム、このタイムラグといいましょうか、交付決定の違いでございますけれども、最先端研究開発支援プログラムにつきましては、先ほど来御答弁ございましたように、平成二十一年度の第一次補正予算で計上されていたわけですけれども、その見直しの過程で、さらに、それに伴う事業規模の見直し、精査等によりまして、平成二十一年の九月に実際の研究者は決まっておったんですけれども、先ほど小野理事長からの御答弁もありましたように、研究計画の出し直し等がございまして、それで最終的には、先ほど御指摘いただきましたような、平成二十二年の三月二十五日の交付決定ということになったわけでございます。

 それから、いわゆる若手研究者等を支援する最先端・次世代研究開発支援プログラム、この交付決定でございますけれども、これにつきましては、これも先ほど高木文部科学大臣の御答弁にもございましたけれども、最初の最先端研究開発支援プログラム、この基金の執行見直しの過程で、新しく若手研究者等を支援するプログラムをつくるべしということが決まりまして、これが、総合科学技術会議でこういう制度をつくるという方針を受けて決めましたのが平成二十一年の十二月でございまして、それから具体的な運用方針、それからさらに公募等を行いまして、その公募の審査等を経まして二十三年の三月十日の交付決定ということになったわけでございまして、制度の設計それから公募の時期が非常に違っておりますので、それで、こういった最先端研究開発支援プログラムの交付決定とそれから最先端・次世代研究開発支援プログラムの交付決定の時期の違いが生じているということでございます。

馳委員 ここはやはり小野さんに登場していただかないといけないですね。

 というのは、私は何で最初に平成二十一年のときの法改正からきょうの議論をスタートしたかというと、そのときに麻生政権で、経済対策でやりましょう、基金化が必要ですねということでスタートしましたよね。平成二十一年度、二十二年度、二十三年度と足かけ三年かかっているわけですよ。

 最終的にはこの次世代基金というのは、小野理事長もおっしゃったように大変期待が高く、今後とも若手研究者のためには進めていきたいというふうな希望もおっしゃいました。私もすばらしいと思います。しかし、最終的に決定したのが三年間もかかっているんですよ。最初の計画立案から始まり、法改正から始まり、補正予算も組んで、政権交代になって減額補正をされて、さらに一年たってようやくこの間ですよ、三月十日に決定したという。このタイムラグは、希望していた研究者に対して、これはさすがに時間がかかり過ぎたのではないでしょうか。

 そう考えると、私は執行機関の小野さんにぜひ聞きたいんです。あなたは執行機関の責任者でありますけれども、審査機関に対してもうちょっと、確かに、政治のスケジュールが皆さんに影響を与えたという責任は、これは私たち与野党ともに感じなければいけませんが、余りにも審査がちょっと遅過ぎるんじゃないんですかね。今後のことを考えると、今後、年度をまたいで決算としていくことができるので、私は、執行機関である小野理事長のところでもうちょっとリーダーシップを発揮していただきたいなと思って、小野さんの答弁を求めたいと思います。いかがですか。

小野参考人 御指摘にございましたように、この次世代プログラムについては大変期待の大きいものでございましたから、私どもも、できるだけ速やかに審査をさせていただいて、結果を早目に研究者の方々にお示ししたいというふうにも思っておりました。

 一方、全体の流れから申し上げますと、総合科学技術会議で基本的なスキームをお決めいただきました。それを、私ども独立行政法人ですから、文部科学省の方から指示を受けてそれからスタートするわけでございますけれども、その御指示をいただいたのが平成二十二年の三月でございまして、私どもは四月に公募をいたしました。研究者から研究課題の公募を行いました。五月に締め切ったわけでございますが、大変数が多くて、五千六百十八件もの応募があったわけでございます。これを、私どもとしては六月から八月までに書面審査をいたしました。そして八月中旬から九月までヒアリング審査を行いまして、その結果を、十月に総合科学技術会議の次世代プログラム運営会議の方にも報告をさせていただいたわけでございます。

 新しいスキームでございます。金額も比較的大きいものでございますから、ある程度しっかり書面審査をする、そしてヒアリング審査をするということは必要だったと私ども思っておりまして、できるだけ急いだのでございますけれども、十月には学術振興会としての結論は一応出させていただきたいというふうに思っております。

馳委員 泉さん、あなたはいつから内閣府の方に行ったんでしたっけ。そして、そこに行く以前の役職をちょっとここでお伝えください。

泉政府参考人 前職は文部科学省の科学技術・学術政策局長でございました。(馳委員「いつから行ったんですか」と呼ぶ)昨年の七月三十日付で異動いたしております。

馳委員 申しわけないですね、私も知っていて聞いたんですけれども。

 つまり、文部科学省、企画立案や参加につけての政治力を発揮する。学術振興会、執行機関として厳粛に、厳密に、そして研究者の皆さん方の相談に乗る。それから総合科学技術会議、審査の機関として公平公正で、透明で、そういう審査を行うべき機関という役割がちゃんと機能しているのかな、今後我々が期待するように機能するのかなという不安があって、まさしくこれをつなぐ役割が泉さんにあるのではないかなと思いますが、泉さんの決意をまずお伺いしたいと思います。

泉政府参考人 総合科学技術会議は、科学技術の施策全体の総合調整を行うということで、科学技術政策全般の基本的な方針を示すということでございますけれども、文部科学省あるいは日本学術振興会は、その方針を踏まえて、直接的な研究資金の提供機関あるいはその所管官庁として御対応いただくということかと思っております。

 それで、このプログラムにつきましては、従来にない、大変新しい制度の創出であったということで、この総合科学技術会議が、制度の企画立案から運用方針の決定、それから、これに基づいた研究課題の決定、評価等を実施することとなったものでございますけれども、プログラムを実施するための基金をつくる、あるいはその執行につきましては、科研費等の研究費の助成業務も行っておられます資金配分機関の実績、あるいはそのための専門的な知見、ノウハウを持っておられる日本学術振興会、そしてこの振興会の所管官庁である文部科学省が御担当いただく、こういうことであろうかと思っております。

馳委員 何か一緒にした方がいいような気もするんですけれどもね。昔、文部科学省にいたような人ばかりそこに並んでいるじゃないですか。

 ということは置いておいて、改めてこの点については、政治的なマターだと思いますので置いておきますが、総合科学技術会議は先端研究助成業務について選定プロセスを公表していますか、議事録を公開していますか。私はすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

泉政府参考人 総合科学技術会議といたしましては、この最先端研究開発支援プログラム及び最先端・次世代研究開発支援プログラムの研究者、あるいは研究課題の選定プロセスにつきましては、このプロセスを、まず公募、選定の方針といたしまして、公募、選定の方針というのは、具体的には、選定の手順あるいは選定を行う体制等でございますけれども、これを定めまして、事前に公表をいたしております。

 それから、総合科学技術会議における研究者、研究課題の選定にかかわる審議あるいは検討そのものの会議は非公開でございますけれども、議事要旨を事後に公開をいたしております。

馳委員 議事が非公開、そして議事録公開、これは一つのルールが何かあるんですか。

泉政府参考人 定まったルールということではないかと思いますけれども、審査の公平性とそれから透明性を図るということの中でこういった取り扱いになっているということでございます。

馳委員 いや、言っていることは矛盾しているんですよ。審査の透明性、公平性だったら、全部審議も公開し、議事録もオープンにホームページに載せればいいじゃないですか。

 ただ、審査するときに、その場にいろいろな人が周りにいたら確かに審査しづらいのはあるでしょう。それは私もわかります。だったら、議事録ぐらい全部出すべきじゃないですか、後から検証できるように。私はそのことを言っているんです。それはしちゃいけないんですか、してもいいんですかということを聞いているんです。後で公開するんだから、議事録ぐらいすべて公開してもいいんじゃないんですか。

泉政府参考人 審査過程では、個々の研究者の着想とか、そういうことにかかわるやりとりもなされるわけでございますので、そこのところについてはすべて公開ということにするのは必ずしも適当ではないのではないかと考えてございますけれども、それ以外の情報につきましては、先ほど議事要旨というふうに申し上げましたけれども、基本的にどういう議論がなされたかということがわかるような、ほぼ議事録に近い形のものを公表いたしております。

馳委員 わかりました。研究内容の機微にかかわる問題であるというふうなおっしゃり方でありますので、それならそうなのかなと思いますが、ただ、できるだけ議事要旨が、より細かく、その審査した側の意思がしっかりと伝わるような議事要旨が公開されることがやはり私は望ましいと思いますので、検討してください。

 次の質問に移りますが、そこで、研究成果を評価する機関はどこですか。

 今回の法改正でも、我々自由民主党も基金化には大賛成です。しかし、今後の課題として、研究成果がどれだけ我が国の国益にかなったのかの中期的な評価、検証と、その結果をさらに国家予算にフィードバックさせるということが必要だと思います。科研費が年度をまたいで有効に使われるというだけでは制度の趣旨が生かされないと思います。

 このプラン・ドゥー・チェック・アクションのサイクルについての見解と具体策を大臣にお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 委員御指摘のとおり、これらの研究は長い間の積み重ねによって成果があらわれる、私はそう認識をしておりまして、まさに、そのことは国益にかなうものでなければならない。

 この科研費については、ノーベル賞を含むすぐれた研究成果、これが生み出されたところでございますし、成果のさらなる向上に向けて、科学技術・学術審議会の研究費部会等においては、科研費の制度の不断の見直しを行っておるところであります。

 その上で、科研費の制度については、文部科学省が毎年度行う政策評価においても、制度改革の進捗状況あるいは研究成果の発表状況などの観点から評価を行っております。

 さらに、予算編成過程においては総合科学技術会議の評価を受けており、例えば平成二十三年度におきましては、基金化はぜひ実現すべきとの見解が出され、これが今回の法案の具体化になったわけであります。

 今後とも私どもは、科学研究費制度の評価、検証を進めて、委員御指摘のとおり、厳格な審査の中で、スピード感を持って改善充実に努めていきたいと思っております。

馳委員 最後の質問にさせていただきます。

 平成二十三年度の科研費は二千六百三十三億円でありまして、そのうちの基金分が八百五十三億円であります。私は、法改正の趣旨からすると、もうちょっと基金の分をふやしていくべきだと思っておりますが、大臣の今の見解が実はもしかしたらすべてなのかもしれません。

 この基金分を今後よりふやしていくという方向性についての見解をお伺いして、私の質問を終わります。

高木国務大臣 御指摘のとおり、今回のいわゆる若手を中心とした対象範囲、また、ほかの研究種目についての基金化についても御意見があっておりますので、国会の議論あるいはまた研究現場のニーズ等々を幅広く聞きまして、趣旨に沿うような形で、とりわけ財源の確保に最大限努めてまいりたいと思います。

馳委員 終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 独立行政法人日本学術振興会法改正案は、研究者らの声にこたえて科研費を複数年度にわたって使用できるよう基金を創設するもので、私どもも賛成であります。

 まず、この基金の対象でありますけれども、若手研究者を対象としたものなど、今年度新規採択の約八割にもなります。今後は、基金の対象を広げることなども視野に入れて科研費の大幅な増額を図るべきだと私どもも考えますけれども、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 今回の法改正においては、科研費のすべての研究種目を基金化するのではなくて、特に、複数年度にわたる研究費の使用の政策効果が高いと見込まれる研究種目を対象にすることにいたしました。具体的には、柔軟な発想が期待される比較的小規模の研究種目を対象として基金化を行うこととしております。

 ほかの研究種目の基金化につきましては、これは、国会の御審議あるいはまた研究現場のさまざまな御意見を聞きながら、研究費に係る基金制度の効果を確かめながら今後検討してまいりたい、このように思っております。

 科研費につきましては、全国の大学あるいは研究機関において行われるさまざまな研究活動を支える重要な制度でございますので、今後とも、その改善並びに充実に努めてまいりたい。

宮本委員 今回の東日本大震災では、地震や津波によって未曾有の被害が発生をいたしました。地震防災対策特別措置法第十三条では、「国は、地震に関する観測、測量、調査及び研究のための体制を整備するとともに、」「必要な予算等の確保に努めなければならない。」としております。地震や津波から国民の生命財産を守ることは国の重要な仕事であります。

 地震、津波などの調査研究に関する文部科学省の予算、それから、それを担っている独立行政法人防災科学技術研究所に関する予算は、この四年間どう推移してきたか。二〇〇八年度から二〇一一年度までの四年分をそれぞれ分けて答弁していただきたいと思います。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 地震、津波等の調査研究に関する文部科学省のまず本省の予算でございますが、地震研究プロジェクトや活断層の評価等に係る予算として、平成二十年度、六十四億三千九百万円、これは補正予算の十五億五千七百万円を含んでおります。平成二十一年度には四十六億八千三百万円、平成二十二年度は四十五億三千万円、平成二十三年度が四十二億七千七百万円でございます。

 引き続きまして、防災科学技術研究所の予算でございますが、平成二十年度、八十六億二千四百万円、この中には補正予算一億五千四百万円が含まれております。平成二十一年度、八十三億九千百万円、この中には補正予算四千万円が含まれております。平成二十二年度、七十九億七千三百万円、平成二十三年度、七十五億八千六百万円でございます。

宮本委員 きょうはそれを資料にして配付をいたしました。補正予算の分は除いてあります。これは文部科学省が私の手元に出したものです。

 予算の推移は右肩下がりであることは、もう一目していただいて歴然です。文部科学省分でこの四年間に六億円、防災科研の予算で九億円、計十五億円の減となっております。

 自民党政権のもとで防災科学研究所は独立行政法人化されました。そして、毎年数%、一律削減のシーリングが課せられてきました。それが政権交代して民主党政権にかわっても、事業仕分けの名で、基盤的経費の削減や地震調査研究に係る分野のプロジェクトの予算縮減などが行われてまいりました。

 防災科学技術研究所が集めている地震観測のデータは、ほぼリアルタイムで気象庁や大学に送り、公開もされております。気象庁が発表している緊急地震速報で使われている観測点の八割は防災科研のものであります。現場からは、全国で二千弱の観測点の地震計の老朽化が指摘をされております。

 例えば、阪神・淡路の大震災の後、補正予算などによってK―NETと呼ばれる強震観測網用の震度計が全国千カ所に設置されましたけれども、大震災から既に十五年を過ぎ、そのほとんどが更新時期を迎えているということであります。震度計にはコンピューターの機能がついておりまして、震度計のシステムや部品の状態などから、十二年から十四年で更新する必要があります。中には、七年前後で更新すべき部品もあるということでありました。

 ところが、防災科研全体の予算が減らされていることから、震度計の更新計画を出しても、更新の優先度の高いものからだとか、できる範囲で少しずつなどと言われて、更新がままならない状況があるとお聞きをしたわけです。

 いざ地震が発生したときに、老朽化して使えなかったとか地震検知のタイミングがずれたなどということがあってはなりません。まさに、国民の命を守る一番大事なネットワークが財政的理由で甚だお寒い状況にさらされていると言わなければなりません。

 大臣、こんな状況でいいと思われるか。震度計の更新に必要な予算ぐらいは確保すべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

高木国務大臣 現在、防災科学技術研究所においては七百八十八台の高感度地震計を用いておりまして、地震観測、予測研究に必要なデータを取得しております。そのデータは、お話にもありましたように、気象庁が運用する緊急地震速報等にも活用されております。

 この高感度地震計は、全体として九五%以上の稼働率となるように計画的に維持管理をしております。平成二十三年度においても、環境条件が悪く、特に劣化が著しい八台の高感度の地震計の点検、更新のための予算を計上することによりまして、目標とする九五%以上の稼働率を維持することとしております。

 東北地方の太平洋沖地震による停電などによって一時的に九十七台の地震計が観測できない状況となりましたが、現在は復旧して稼働しております。

 言うところの予算確保でございます。我が国はまさに地震国であると同時に、こういった必要な知識あるいは研究ということについては重要な課題でございますので、私たちとしては、必要な地震観測データが常に取得できるように、今後とも、予算の確保について取り組みを進めてまいります。

宮本委員 幾らシステムがあってもデータがきちっと集まらなければ役に立たないわけですから、しっかりとこれは予算を確保して、老朽化ということのないようにしていただきたいと思うんです。

 それで、この間、本委員会でも議論になってきた放射線量の調査ですけれども、これも、測定点を抜本的にふやし、大規模に調査を行う必要があると考えております。

 日本学術会議は四月四日に、「福島第一原子力発電所事故後の放射線量調査の必要性について」という緊急提言を発表いたしました。

 そこでは、「避難地域での復興活動及び避難している人々の帰還時の安全性の保証には詳細な汚染分析が必須」だとして、一キロメートル四方に一点なら千五百点、数百メートル四方に一点なら一万五千点で、地表の表面汚染、空気中放射能濃度、地表の放射線量率、住民の被曝線量等々について、多数の測定者による大規模調査を早急に実施することを求めております。

 この緊急提言にどのように対応するのか、お伺いしたいと思います。

高木国務大臣 このたびの福島第一原子力発電所からの放射性物質の放出を把握をして、これはもう国民の安全と安心を確保するために政府として必要な対応の中で私ども文部科学省が特に取り組んでおりますのが、放射線のモニタリングでございます。これは、極めて正しい値を速やかに計測をし、そしてそれを皆さん方にお示しをするということは、何よりまず大事な話でございます。

 文部科学省といたしましては、二十キロ以遠の地域における空間放射線量の計測、そして、水や土壌などのモニタリング、そしてまた、空から海から航空機、船を使った調査、こういったことでさらにその拡充をしておるところでございます。

 引き続き、放射線のモニタリングということについての強化をしなきゃならぬと考えておりまして、現在進められております補正予算も念頭に置きながら、モニタリングの数の増加、そしてまた、原子力安全委員会の適切な助言も踏まえながら取り組みを進めてまいりたい、このように考えております。

宮本委員 今、補正予算も念頭に置きながらという御答弁もいただきました。

 前回の当委員会の議論では笹木副大臣の方から、一生懸命やっているが、なかなか百、二百のオーダーで機器や人材がすぐに調達できる状況ではないという答弁もありましたので、ここはやはりしっかり補正予算で予算を確保して、こういう不安にしっかりこたえるように、測定点を学術会議の提起にこたえて抜本的にふやすということを求めておきたいというふうに思っております。

 次の質問に入りますけれども、昨日、政府は、東京電力福島第一原発一―三号機の事故について、原子力施設事故の深刻度を示す国際評価尺度で最も深刻な事故を意味するレベル7に相当すると発表いたしました。いよいよ、史上最悪の原発事故と言われた八六年のチェルノブイリ原発事故と同じレベルに並んだということになります。

 それで、去る四月六日、衆議院経済産業委員会で我が党の吉井英勝衆議院議員は、今回事故を起こした福島原発について、既に五年も六年も前から、全電源喪失による炉心溶融の危険を何度も指摘してきたにもかかわらず、政府も東電も、原発は安全だという安全神話にとらわれて耳を傾けず、対策もとらなかったことを厳しく批判をいたしました。

 それに対してさすがに寺坂信昭原子力安全・保安院長も、当時の認識に甘さがあった、深く反省していると述べ、当時の原子力安全委員長であった鈴木篤之原子力研究開発機構理事長も、「私自身、痛恨のきわみ」、「このような事故が現実に発生した以上、過去のことが正しかったということはない」と答弁をいたしました。

 まず大臣に基本的認識を問うわけですけれども、今回のような深刻な事故が現実に発生した以上、原子力発電所は絶対に安全だというようなことは正しくなかったと、このことはよろしいですね。

高木国務大臣 絶対にということはあり得ない、このようなことを認識をいたしております。したがいまして、今後とも安全には重ね重ね注意をしながら進めていかなきゃならぬ、このように思っております。

宮本委員 あの事故を前にして、原発が絶対に安全だと言う人は、もう今は一人もいないと思うんですね。

 ところが、こういうことを子供に教え込んでいる書物があるんです。きょうおつけした資料の三枚目、資料三を見ていただきたいと思います。

 本文の下から四行目、原子力発電所について、「大きな津波が遠くからおそってきたとしても、発電所の機能がそこなわれないよう設計しています。さらに、これらの設計は「想定されることよりもさらに十分な余裕を持つ」ようになされています。」一番下の「ココがポイント」というところを見ていただきますと、三つのことが書いてありまして、「原子力発電所では、事故を未然に防ぎ、事故への発展を防止する対策が取られている。」「原子炉は放射性物質を閉じこめる五重のかべで守られている。」「大きな地震や津波にも耐えられるよう設計されている。」こう書かれております。

 大臣、こういう書物が作成され学校で使われているということを御存じでしたか。

高木国務大臣 使用されておるということは知っておりましたが、この文面、今改めて見まして、今回の事故について、全くあってはならないことが起きたと、このように認識をしております。

宮本委員 これは、文部科学省と経済産業省の資源エネルギー庁発行の「チャレンジ!原子力ワールド 中学生のためのエネルギー副読本」の内容です。

 こちらは小学生向けの「わくわく原子力ランド」という副読本でありますけれども、こちらの方は、資料の二、一ページ戻ってもらったところへつけてございます。「原子力発電所では、放射性物質が外にもれないよう、五重のかべでしっかりととじこめています。」また、別のページでは、「もし地震が起きたとしても、放射性物質をあつかう原子炉などの重要な施設は、まわりに放射性物質がもれないよう、がんじょうに作り、守られています。」まさに同様の内容になっています。

 これはまさに、吉井議員の指摘に原子力安全・保安院や原子力安全委員会が、反省している、痛恨のきわみと述べた原子力安全神話そのものだと言わなければなりません。

 これは文科省の研究開発局に聞くんですけれども、この副読本は、小学生用、中学生用、それぞれ何校、何人に配付されているか、そして予算は幾ら使われているか、お答えいただけますか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 この資料で配付いただきました冊子、平成二十二年二月、昨年の二月に作成されたものであると思いますが、これにつきましては、まず、小学生用の副読本「わくわく原子力ランド」につきましては約二万五千部、中学生用の副読本「チャレンジ!原子力ワールド」につきましては約一万四千部を作成し、全国に配付したところでございます。

 また、それに要しました予算額は三千四百万円でございました。

 以上でございます。

宮本委員 私が問題だと思うのは、この副読本は、原子力のメリット、デメリットを客観的、科学的に子供たちに理解させようとするものではありません。一方的な安全神話を子供たちに振りまいている、そういう内容であるとしか言いようがないですね。まさに電力会社の宣伝冊子そのものなんですよ。これは決して言いがかりではないんですよ。

 それは、東京電力のホームページというのを私ここに持ってきましたけれども、原子力発電所の安全対策は多重防護を基本とし、放射性物質を五重の障壁で閉じ込めていると電力会社のホームページに書いてあります。まさに、副読本と言葉遣いまで全く同じところがたくさんあります。

 また、「地震対策」としてこの東電のホームページでは、建設予定地周辺を徹底的に調査、揺れの少ない強固な岩盤上に建てる、原子炉は安全に自動停止、考えられる最大の地震も考慮して設計、そして津波への対策、これもこの副読本とほとんど一緒、うり二つなんです。

 この副読本の作成、普及や授業での活用には、国の支援事業として二〇一一年度予算で四億八千六百万円も支出をされております。

 研究開発局、文部科学省は国費を使って電力会社の安全神話の宣伝をしてやっているんですか。いかがですか。

藤木政府参考人 昨年の平成二十二年二月に発行されましたこの冊子につきましては、その作成に当たりまして、原子力の専門家の方、そして、小学校の、あるいは中学校の理科の先生の方々の意見を討議していただきまして、その結果作成したものであると承知しております。

 その時点におきましては最新の情報をもとにつくられたというふうには認識しておりますけれども、現にこういう福島の事故が起こっているという状況でありますので、先ほど大臣からお話しありましたように、絶対はないということでございますので、今回のこの記述につきましては、改めて見直していく必要があるのではないかというふうに思います。

宮本委員 それは、こういう事故が起こって見直すのは当然ですけれども、しかし、こういうことを今までやってきたということについての責任は免れないと言わなければなりません。

 それで、この副読本には「新学習指導要領対応」と左上に大きく、中学生用にもあるいは小学生用にも書かれてあります。この副読本の企画制作委員会のメンバーを見て私は驚きました。資料四をごらんください。清原洋一文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官(理科)、澤井陽介、社会の教科調査官、田村学、総合的な学習の時間の教科調査官、この三名が加わっております。教科調査官が先頭に立って、新学習指導要領をもとに原子力安全神話を広げていこうとするものだと言わなければなりません。

 そもそも、こういう電力会社の宣伝のような副読本の企画制作に教科調査官がかかわるということ自体、大問題ではありませんか。いかがですか。

藤木政府参考人 エネルギー、あるいは原子力、あるいは放射線につきましては、学習指導要領においても一定の記載がございます。したがいまして、この副読本、冊子をつくる際にも、そういった指導要領の内容と整合性があるものにすべく、そういった方々にも参画をいただいたという状況でございます。

宮本委員 この副読本の今見ていただいた企画制作委員会、上から七人目、そこには電気事業連合会の広報部部長という人も加わっているわけです。まさに、電力業界の宣伝担当者が加わって、教科の調査官と一緒になってこの冊子をつくっているわけですよ。ですから、本当に、電力業界と一緒になって安全神話を子供たちに小学校のうちから植えつけてきたと言われても仕方がないと思うんです。

 それで、文部科学省研究開発局が財団法人日本原子力文化振興財団に作成させたこの冊子、「原子力・エネルギーに関する教育の取組への支援事業案内」というものを見ますと、「学校教育の現場では、平成二十年三月に小・中学校、平成二十一年三月に高等学校の学習指導要領が改訂され、」云々、「社会科や理科などの教科において、原子力の利用などに関する内容の充実が図られたことから、今後、原子力を含めたエネルギーに関する適切な教育・指導の充実が必要不可欠となります。」こう述べた上で、そして「原子力に関する副教材等の作成・普及」というページ、ここをあければ、まさにこの「わくわく原子力ランド」とこの「チャレンジ!原子力ワールド」という二つの冊子が掲げられて、そしてそれがこの支援事業なんだという説明になっているわけですよ。

 ですから、これは文科省ぐるみで進めたことだと言わざるを得ないと思うんですが、そうじゃないんですか。

藤木政府参考人 先ほどと同様でございますけれども、この副読本をつくる、あるいはその関連の事業を当時行うに当たりましては、原子力の専門家の方、あるいは小中学校で教育に携わっておられる方等も含めまして、その時点における最新の情報を踏まえてつくったというものでございます。

 したがいまして、特段の何かに偏った宣伝的なものをつくろうという意図ではなかったと理解しております。

宮本委員 確かに、学習指導要領を新しく改訂されたわけですね。前の指導要領と新しい改訂後の指導要領と、この原子力に関して、エネルギーに関してどういうふうになっているかと私も一応調べてみましたけれども、改訂前の指導要領は、長所と短所をそれぞれのエネルギーについてきちっと教える、つまり、両面きちっと教えるということになっていたんですけれども、今度の改訂された以降のものはそういう表現が見当たらないんです。

 ですから、やはり原子力安全神話に文科省もとらわれてきた、これはもう認めざるを得ないことであって、こういうことをやってきた責任は本当に重大だと言わなければなりません。

 しかし、支援事業のこのパンフレットの中には、「副読本を含め副教材等の授業での使用など学校教育の場での活用を図るための普及活動を実施し、原子力を含めたエネルギーに対する正しい知識や適切な判断力を身に付けることができる環境を整備すること」を目的とするんだと。ここには「正しい知識」、「適切な判断力」とこうなっているんですけれども、あなた方がそれに基づいてつくったこの副読本は、正しい知識でもなければ適切な判断力でもなくて、まさに、先ほど指摘したように、原子力安全神話、原子力は安全だ安全だということを子供たちに植えつけると言わざるを得ないものになっていると思うんです。

 これはもう大臣、冒頭にも絶対ということはないということをおっしゃいました。先ほど研究開発局も、もう今日においては適切ではないというふうにもお考えだと思うんですけれども、少なくとも、このような原発安全神話に立った副読本は今や子供たちに使わせてはならないと私は思いますけれども、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 今回の議論におきましても、科学の世界においては想定外という言葉は使ってはならない、こういう御指摘もございました。現実に、あってはならない事故に遭遇しました。したがって、我々はこの現実に立ち向かわなければなりません。

 したがって、まずはとにかくあの事態を、レベル7という指定もされたようですけれども、とにかくこういった事態が一日も早く収束されなきゃならぬ。そのために、我が国の総力を挙げて最全力を尽くすということがまず大事と思っております。

 その上で、児童生徒のみならず、さまざまな場において、原子力について、あるいはまた放射線について、客観的な知識あるいは多様な意見を学び合う、それに基づいて判断をする、こういうことが大事であろうと思っております。

 今私たちは、この事態、大変苦しい事態でございますが、科学立国という我が国の誇りにかけても、何としてもこれを克服をし、そして世界に向けて新たな発信をしなきゃならぬと私は思っております。その意味でも、科学技術に取り組む研究者の皆さん方の存在、そしてまた育成というのが極めて大事でございまして、その意味で今法案も御審議をいただいておるということでございます。

 今後とも我々は、今回の事態をきっちり検証しながら、安全点検をしながら、前に向かって進まなきゃならない、このような決意でございます。

宮本委員 いや、大臣の見識はわかるんですけれども、私の問いに答えていただいていないんですね。

 少なくとも、この副読本は子供たちに現時点では使わせてはならないんじゃないですかと。そして、やはりこれは回収して見直すべきだということを申し上げたいし、そして、この原子力エネルギーに関する教育の取り組みへの支援事業というものも改めて見直す必要があると私は思うんです。

 見直す必要がある、大臣、それぐらいのことはお認めになるでしょう。

高木国務大臣 見直してみたいと思います。

宮本委員 しっかりと見直していただくことを求め、そして、こういう副読本は本当に絶対使わせないということを強く求めて、私の質問を終わります。

田中委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、松崎哲久君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本共産党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。下村博文君。

下村委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人日本学術振興会法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 本制度について、研究機関及び研究者に対する周知・説明を十分に行い、円滑な運用に最大限努力すること。

 二 基礎研究の更なる充実を図るため、科学研究費補助金をはじめとする研究予算の確保に努めるとともに、制度改正後における科学研究費補助金の執行状況等を踏まえて基金化による効果を検証し、必要に応じて、基金対象の拡大を含めた制度の改善を図ること。

 三 科学研究費補助金の執行について、不正使用防止対策を徹底し、その適正な執行を図ること。

 四 将来を担う若手研究者の育成の重要性に鑑み、若手研究者を対象とする科学研究費補助金の研究種目については、採択率の向上に努めること。

 五 東日本大震災で被害を受けた大学等及び独立行政法人の研究施設・設備の早期復旧に万全を期すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。高木文部科学大臣。

高木国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいりたいと思います。

    ―――――――――――――

田中委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十四分散会


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