衆議院

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第12号 平成23年5月25日(水曜日)

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平成二十三年五月二十五日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    大山 昌宏君

      奥村 展三君    金森  正君

      川口  浩君   木村たけつか君

      城井  崇君    熊谷 貞俊君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    玉置 公良君

      中屋 大介君    平山 泰朗君

      村上 史好君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    山田 良司君

      笠  浩史君    和嶋 未希君

      あべ 俊子君    遠藤 利明君

      河村 建夫君    塩谷  立君

      田野瀬良太郎君    永岡 桂子君

      古屋 圭司君    松野 博一君

      富田 茂之君    宮本 岳志君

      城内  実君    土肥 隆一君

    …………………………………

   文部科学大臣       高木 義明君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学副大臣      鈴木  寛君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   厚生労働大臣政務官    岡本 充功君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        布村 幸彦君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     玉置 公良君 

同日

 辞任         補欠選任

  玉置 公良君     熊谷 貞俊君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件(スポーツ施策等の諸課題)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する件の調査のため、来る二十七日金曜日午前九時三十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田中委員長 文部科学行政の基本施策に関する件、特にスポーツ施策等の諸課題について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長磯田文雄君及びスポーツ・青少年局長布村幸彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥村展三君。

奥村委員 おはようございます。

 きのう現在で一万五千二百二名の方が亡くなられ、そしてまた、行方不明、八千七百名になんなんとしている方、被災されて避難されている方も十万人おられるという数字がきょうも新聞に出ておりました。

 お亡くなりになった方々に御冥福をお祈りすると同時に、一日も早く行方不明の皆さん方の安否が明確になるように、関係の皆さんの御努力に敬意を表しながら、御尽力をいただきたいと思います。

 この中には、スポーツを愛して、あるいはまたスポーツに大きな夢を見て頑張ってこられた方々もたくさんおられたと思います。そういう方々がこの大震災によって命を絶たれたことを本当に残念に思うものであります。

 そうしたことは、私も現場へ行っていろいろと見せていただきましたが、スポーツ施設はもちろんのこと、学校教育施設、特に陸前高田の、黄川田先生のお住まいになっていたあの周辺の施設等を見せていただくと、本当にもう言葉が出ないというような状況のことを経験させていただきました。やはり、スポーツ施設あるいは教育施設をしっかりと再整備し、そしてまた、そういう場所も今後しっかり確保をしていかなければならないという思いをしてきたところであります。

 委員長を初め各先生方も御存じだと思いますが、五年前に、スポーツ基本法を何とかつくり上げようということで、これは超党派で、スポーツ振興議連の方で進めていただきました。下村筆頭初め馳理事も、当時の自民党の先生方も大変な御苦労をいただいて、私もその仲間に入れていただいて取り組ませていただきました。そして三年半前に、民主党として、この基本法についていろいろと皆さんと議論をしようということで持ち帰らせていただいて、進めてまいりました。

 ようやくといいますか、きのう鈴木副大臣のところに寄せていただきまして、遠藤先生とともにこれまでの経過、そしてまた、まとめ上げてきたことをお話しをさせていただいて、そして、議員立法として、この委員会の先生方にもいろいろ御協力をいただいてこれを仕上げていきたいということで進めてきたところでございます。

 特に、我々民主党としては、党としていろいろ考えたとき、スポーツをする権利といいますか、これを強調したいということと、そして、トップアスリート、確かに、これを養成し、そしてそれをしっかりと支えていくというのは当然でありますけれども、やはり、地域スポーツ、地域の皆さんのスポーツ熱、そのものが底辺にあってこそトップアスリートも生まれてくるんだという思いをいたしました。ですから、地域スポーツの充実、そして地域スポーツをしっかり支えていく、そういう体制をつくるのが基本であるという思いから進めてまいりました。

 大体今月中にまとめまして、宮本先生も、そしてまた公明党の先生方にもお願いをし、きのう、その会議を持たせていただいてお持ち帰りをいただいて、各党でまとめていただいて、そして最終的に、議員立法として田中委員長のもとで提案をしていただこうというように我々まとまったところでございます。

 今申し上げましたように、特に、スポーツをする権利、見る権利、そして支える権利という、この三つを基本にしていろいろこの法案をつくってきたわけであります。スポーツというものは幅広いものでありますけれども、一番の、前文の中で、「スポーツは、世界共通の人類の文化である。」というところから入ったわけであります。そして、その中で、今申し上げました権利の問題だとか、あるいは国民ひとしくスポーツに親しんでいく、そして、心身ともに健全な国民の醸成をしていくということを基本にしてつくり上げてきたつもりであります。

 そういうことで、ぜひ、また今後、各先生方の御意見を賜り、また御理解を賜って、立派なスポーツ基本法をつくり上げていきたいというように思っております。

 御案内のとおり、スポーツ振興法は、昭和三十六年、今からちょうど五十年前にできました。三十九年にオリンピックがあって、国民が戦後、何としても、明るい、そしてまた、みずからの健康を保持し進めていくということで昭和三十六年に制定をされたわけでありますが、後のオリンピックに向かってのいろいろなスポーツの体制をつくり上げるためにこれができたように聞き及んでいるところであります。

 ちょうどそのスポーツ振興法には、今もありますが、御存じだと思いますけれども、それぞれの市町村に体育指導委員という制度がございます。私も、昭和三十九年だったと思うんですが、町の方から御指名をいただいて体育指導委員に名を連ねさせていただきました。当時は、今もそうであるかもわかりませんが、町で五人の体育指導委員というのが選ばれたようだったと思います。

 そして、私は、特にその後、スポーツ少年団の設立に力点を置きまして、大人も大事でありますけれども、自分も若かったということもあって、地域の子供を寄せて、竹バットでテニスボールを使って野球を一緒にしながら、サッカーボール、その時分は、まだ我々のところではスパイクというような立派なものはなかったんですけれども、運動靴に縄で土踏まずのところをくくって、そしてドッジボールをサッカーボールにかえて、そして地域の子供を集めて、スポ少のはしりといいますか、そういうようなこともしたことを今になって思い出しております。それが今日のスポーツ少年団として、大きく、いろいろなところで子供たちが夢を見て頑張ってくれていることを本当にうれしく思っております。

 そういうスポーツ振興法の流れがありましたけれども、ここではやはり基本法としてしっかりとしたものをつくり上げていきたいという思いで、時間はかかりましたけれども、ようやく結びつけることができました。

 特に、鈴木副大臣は、私よりも早くこの基本法に対して取り組んでいただいて、今日までいろいろと、きのうもお話を聞かせていただきましたが、その思いというものを我々と共有させていただいたわけであります。まだ完全なものにでき上がっておりませんが、大体整理ができた状況できのうお話をさせていただいたことについて、副大臣の今日まで思ってこられたこともまた聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木(寛)副大臣 お答え申し上げます。

 本当にこの件は、当委員会を初めといたします超党派の議員の先生方の長年にわたる御尽力と、そしてスポーツ関係者、まさに全国のスポーツ関係者の皆様の御協力によってここまで議論が進められてきましたことを、私も大変うれしくまた感謝しているところでございます。

 文部科学省といたしましても、昨年にスポーツ立国戦略をまとめさせていただきました。そのスポーツ立国戦略を推進していく上でのまさにその柱となりますスポーツ基本法の制定、一刻も早く願っているところでございます。

 特に、これまでスポーツ権についての議論を深めていただいたと思っております。今もお話しございましたように、スポーツをする、見る、支える、あるいは育てるといった形でこのスポーツ権を議論してきたわけでございます。

 これは、ユネスコの国際憲章や新ヨーロッパ・スポーツ憲章などでも議論がなされ、あるいは位置づけがなされておりますけれども、日本もそうした国々、地域と並んで、世界、国際的なスポーツ界をリードする国に、このスポーツ基本法の制定によってそうしたポジションに立てるのではないかなといったことも期待をいたしているところでございます。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げたいと思います。

奥村委員 スポーツ立国戦略ということも昨年まとめられました。そうした、時あたかも、非常に連携をとりながら、この基本法やあるいは立国戦略や、文科省としていろいろ進めてこられたわけであります。

 高木文部大臣もスポーツに対しては、いろいろな御経歴の中にも、スポーツを愛するということは常に出てきておりますけれども、大臣、ひとつこの基本法を、我々こうして超党派で進めてまいりましたので、できれば今月の末にまとめて来月ぐらいに法案として提出をさせていただきたいというように、先ほど申し上げましたように進めてきたんですが、まだ、でき上がったところ、お目通しをいただいたかどうかわかりませんが、この基本法についての所見があればお伺いをいたしたいと思います。

高木国務大臣 奥村委員にお答えをいたします。

 委員もお話がありましたように、長いこと体育指導委員もなされて、そして、地域スポーツに対する思いは殊のほかお強いものがあるということを承知いたしております。特にこの数年来、スポーツ基本法の制定に深い関心を寄せられておりまして、敬意を表する次第でございます。

 先ほども鈴木副大臣からもお話がありましたように、文部科学省としては、昨年の八月にスポーツ立国戦略というものを打ち出しております。現在のスポーツ振興法は、これは議員立法で昭和三十六年の六月に制定をされたものでありまして、半世紀続いてまいりました。この期間にも多くの、さまざまな時代的な変化もあり、そしてスポーツに対する新しいニーズ、また課題も出ておりまして、私は見直しが必要になってくるものと認識をしております。

 そういう中で、これを全面的に改正して新しいスポーツ基本法を制定する、こういう視野を持って我々も今取り組みを進めてきたことについては御理解いただいておるものと思っております。

 「スポーツは、世界共通の人類の文化である。」こういう、関係議員の御尽力によって党派を超えたスポーツ基本法案の制定への取り組みが進められておりますことについては、大変喜ばしいことであろう、そしてまた、振興法制定の五十周年という一つの節目を迎えて、未来に向かう新たなスタートを切るという意味では、非常に意義あることであると思っております。

 したがって、スポーツを所管する大臣といたしましては、これからの我が国のスポーツの発展は何よりも望むところでございまして、スポーツ基本法案が、一日も早くこれをまとめて、制定されることを期待をいたしております。

奥村委員 特にスポーツ、施設もそうですが、運営、そしてまた選手の強化等いろいろあるわけなんですけれども、やはりこれには財源、いろいろな資金といいますか、要るわけであります。

 そして、totoがきょうまで販売もされ、それが進められているわけですが、私、当時参議院議員をさせていただいていたときに、ちょうど小渕総理に、このtotoというものに対して、青少年の健全育成から見てこれはちょっとおかしいんじゃないかと言って、ある意味では反対論をぶち上げました。

 ということは、スーパーだとかいろいろなところで子供たちが、サッカーに対する興味は当然持っているわけですから、それに対して投票券を買うんじゃないかということで、青少年の健全育成についてちょっと心配だということで反対論をぶち上げて、しかしながら一方では、スポーツの財源ということでこれが必要だということで、ちょっと矛盾したようなところでいろいろ議論をしたことがあるんですけれども、既に今は年間約八百五十億ですか、お聞きしますと売り上げがあるようでございます。

 ただ、これも、考えてみますと、五〇%は当選された方にお返しするというのは当然やむを得ないと思うんですが、ちょっとあとの五〇%の、本当にスポーツ振興になっているのかどうかなという思いを当時からしていたんです。

 当時は、一七%ぐらいをスポーツ全体に還元するんだとかいう話もあったんですけれども、経費が一三%ぐらい多分かかっていたと思います。そして、当時の経営が悪くて、銀行、その機関も全部かえられたようなんですが、現在、残りの五〇%の中の三分の一が国庫に入っているようですし、約八十億ぐらいが入っているようです。そして、地方の自治体、そういうところにも三分の一入っている。そして実際、スポーツ団体として、totoとしての収益、いろいろその流れの中で、スポーツの方には三分の一しか入っていない。

 これは法律を変えて見直していかないと、本当に本来のtotoの趣旨とちょっと私は違っているのではないかなという思いをして、もっともっとスポーツの関係にこのtotoの浄財が入ればなと思うんです。

 スポーツ・青少年局長にお伺いをしたいと思いますが、ちょっと私の数字が間違っているかもわかりませんので、正式なところ、現在のtotoの状況はどうなっているか、お答えいただきたいと思います。

布村政府参考人 スポーツ振興くじについてお答え申し上げます。

 先ほど、奥村先生がおっしゃられましたとおり、昨年度は八百五十八億円、ちょっと正確かどうかわかりませんけれども、それぐらいの売り上げがあったという状況でございます。売り上げのうち、半分は払戻金となりまして、残りの半分について、必要経費を差し引いた残りを、三分の一がスポーツ団体への助成、三分の一が地方自治体への助成、そして残り三分の一は国庫納付という仕組みになっておりまして、昨年度の例でいくと、およそ八十億円ぐらいが国庫納付をさせていただく、そういう仕組みになっておろうかと思います。

 今回は、大震災で少し売り上げが落ちているというのが今年度の状況でございますので、スポーツの力で震災の方々への支援をする、そういう観点からも、スポーツ界への寄附をできるだけまた皆様方から御協力をいただいて、スポーツの振興につなげていければというふうに今取り組んでいるところでございます。

奥村委員 今お聞きしたように、やはりもう少し配分そのものも、法律も変えてこれを変えないと、本来のtotoの趣旨とはちょっと違うのではないかなというふうに思います。

 それと同時に、このtotoのこともそうでありますけれども、やはり国を挙げてスポーツ振興、先ほどの基本法の中に取り込んでいるんですが、大臣、最終的にはスポーツ庁を我々はつくりたい。文科省の中に文化庁ありますね。スポーツ庁をつくって、国民にひとしく健康維持、あらゆるスポーツの振興に対して、我々目標にして、これを最終のところに、附則に入れさせていただこうと今考えているんですが、予算を見ましても、文化庁の予算は約一千億ぐらいだと聞き及んでいます。文科省の全体の中でスポーツに関係する予算が二百三十億ぐらいでしょうか、二百五十億行っていないと思うんですよ。四分の一ですよね。

 だから、それは、確かにカルチャー、文化も当然大事です。しかし、やはり、スポーツというものに対しても、トップアスリートもそうですが、地域スポーツ、先ほど申し上げたそういうようなことを考えますと、もう少し予算をしっかり確保するべき。しかし、今日の国の財政からいけば、スポーツにそれだけのお金が充てられない。そうすると、totoという一つのそういうものにもゆだねていかなければならない。

 しかしながら、やはり独立した組織の中で、こういう行政改革のさなかですから、ある意味では焼け太りをするようなことであってはならないし、しっかりとした組織をつくって、本当に意味のある省庁ということになれば、文科省の一つの関係省庁として私はスポーツ庁をつくるべきだということで、これはもう今回の基本法の中に織り込ませていただいておりますから、あらゆる政党の皆さん方も御協力いただけると思うんです。

 ぜひ財源確保という意味からそういう思いをしているんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

高木国務大臣 御指摘のスポーツ予算については、平成二十三年度については過去最高となる二百二十八億円を計上しておりますが、文化予算と比べるとかなり差があるというのは事実でございます。

 そういう意味で、厳しい財政事情でありますけれども、スポーツの役割、国民に夢と感動を与え、そして、地域を含めて我が国に元気を、活力を与えてくれる大きな役割を考えますと、私たちとしては、必要な財源はしっかり確保していかなきゃならぬと思っております。

 その意味で、今、スポーツ庁についてもお話がございました。私どもとしましては、スポーツ基本法案には、附則において、スポーツ庁の設置等について検討事項とされておると承知をいたしております。行政改革という政府全体の基本方針との整合性、特に、委員は焼け太りという言葉を引用されましたけれども、スクラップ・アンド・ビルドという行政改革、組織の再編の一つの考え方の中であります。

 私たちとしては、しかし、そういう中でやはり基本法の目指すところは、スポーツの振興、特に財源の確保も含めてであろうと思っておりますので、幅広い議論の中で、スポーツ庁という、まさにそれを進めていく主体としてこれは重要な課題であろうと私は考えておりますので、今後の課題として真剣に検討しなきゃならないと思っております。

奥村委員 ありがとうございました。

 二〇二〇年オリンピックの招致、東京都も石原知事が最近そのようなことをおっしゃっているようであります。

 私は、先ほど冒頭で申し上げましたように、東日本の大震災、世界百四十カ国になんなんとする国々から物心両面の応援をいただいて、いろいろと援助をいただき、頑張れ日本ということで、被災された皆さん方もおられるわけなんですが、きのう、おとついでしたか、岩手の達増知事が、二十八年の国体を返上するんだというようなことがちょっと報道されておって、びっくりしたんです。

 やはり、財政的に考えますと、今、国体を一つそれぞれの都道府県で開こうとすると、三百から四百億、スポーツ関係施設整備等に要るとも言われています。そういうような、国体そのもののあり方ももう一度ここで考えなければならないときであると思うんです。

 今の、復旧復興し、日本が一つになって、きずなを強くして頑張っていこうと。二〇二〇年のオリンピックを日本もしっかり手を挙げて、東日本を中心としたスポーツ整備をして、そして世界の皆さん方に、いろいろ御協力、御支援をいただいた方々に、日本はここまで復興し、そして国民が団結をして頑張ったんだというようなことを、確かに、東京を中心にすればいいのかもわかりません、私は、自分の考えとして、東北、東日本を中心にそうしたオリンピック誘致を進めるべきではないのかなという、私の個人的な考えなんですけれども。

 そういうことをすると、過去の経過からいっても、東京都だけの話じゃなくて、やはり国を挙げてそれを招致していく、そういうムード、そういう体制をしっかりつくってこそ、そういうものが実現するのではないかなというように思います。

 総理はきのうからサミットに行かれていますが、お帰りになったときに、JOCの方々と一度、総理の方に、こういうオリンピックの招致について私はぜひお話しに行きたいというように思っておるんですが、鈴木副大臣、ぜひ、文科省そして国を挙げて、この二〇二〇年オリンピック招致に手を挙げるべきだと思いますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 お答えを申し上げます。

 私も、達増さんと復興会議全般についての御議論をさせていただく中で、国体のお話も伺いました。委員御指摘のとおり、相当、県の出費がかかる。加えまして、県の職員を百人単位で何年か前から投入をしなければいけない。今まさに県職員の皆様方は復興に当たっていただいているわけでありまして、そういうことでもいろいろと困難を抱えていらっしゃる、こういうお話でございました。ここはよく私どももじっくりお話をしましょう、こういうことにいたしているところでございます。

 オリンピックでございますけれども、委員も御承知のとおり、ワールドカップサッカーの場合は、これは国を挙げて、国単位での立候補ということになりますが、オリンピックの場合は、都市がこれは手を挙げるという形に形式上なっております。もちろん、都市が手を挙げて、そしてそれを国全体で応援していくというこの御主張については、私も全く同じ考えを持っているわけでございますけれども、そういう意味で、その都市がどこになって、そしてその都市の首長及び議会というものがまず一義的にどういう御判断をされるかということが一つございます。

 それから、前回の東京オリンピックの招致、私もコペンハーゲンに最終選考の際に参りました。あのときの反省を申し上げますと、東京のプランというのは、プラン自体は大変高い評価を受けていたと思いますけれども、あのときに、二〇一六年の話ですが、要するに、立候補している都市の中で、国民の皆さんのオリンピックを望む声というものが立候補国の中では一番低かった、あるいはその都市民の皆さんのですね。

 そういう意味で申し上げますと、やはり、その地域の人々、そして日本国じゅうの方々の、まさに草の根からの盛り上がりというものがあって、そして地元の声があってということが非常に重要になるのかなと。

 もちろん、その際に、国民の御支持を前提に国として最大限の努力をしていくということは、昨年まとめましたスポーツ立国戦略の中でも明確に位置づけております。スポーツ基本法の中でもそういう御議論を深め、そして、位置づけていただくことでそうしたことになりますれば、我々は最大限の努力をしてまいる、こういうことだと思っております。

奥村委員 ありがとうございました。

 基本法、そしてまたオリンピック、そして国民体育大会等の見直し等も、いろいろ話題が多いと思います。ぜひ、委員長を初め、特に基本法につきましては、各委員の先生方の御指導、御協力をいただいて、何としてもこれを制定したいと思っておりますので、よろしくお願いをし、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、瑞慶覧長敏君。

瑞慶覧委員 おはようございます。民主党の瑞慶覧長敏です。

 文科大臣を初め、政府三役を筆頭に文部科学省の皆さんは、連日連夜、福島第一原発事故の対策で御奮闘なさっていますが、本当に御苦労さまです。原発事故の対応についても若干御質問したいと思いますが、本日は、スポーツ政策を中心に、プラスアルファでまた後ほど質問させていただきます。

 現在、国会でスポーツ基本法を制定するため、今、奥村先生からもありましたが、超党派の調整が続けられております。私も微力ながら議論に参画しておりまして、よりよいスポーツ基本法に仕上げていきたいと努力をしているところです。

 スポーツ好きの私ですから、特に私はボクシング、空手、柔道と格闘系が好きで、きょうは三十分、パンチ、キック、寝わざ、投げわざを使いまして質問を応酬していきたいと思います。特にハブパンチには注意してください。

 まずはジャブから。大臣、若いころでもいいんですけれども、スポーツの経験はおありでしょうか。

高木国務大臣 私は、小さいころからよくしておったのは野球であり、あるいは相撲でありましたが、本格的にしたというのはバスケットボールでございます。

瑞慶覧委員 お聞きしたところによると、国体選手までなったとお聞きしております。

 大臣、そのスポーツを通して何か学んだこと、そこら辺をお聞かせください。スポーツの意義みたいなものをお聞かせください。

高木国務大臣 そんなにうまくはなかったものですから大層なことは言えませんけれども、私の経験では、まず、自分との闘い、苦しいことに対していかにしてこれを克服したというみずからの闘い、その中で、汗を流す一つの努力、これが大事だなということを感じましたし、それから、バスケットボールの場合はチームプレーでございますから、一人のワンマン選手だけでは勝利には結びつかない。やはり、それぞれの持ち味、得意わざを生かして、チームで総合的に目標に向かって頑張る、そういうことを痛感をいたしましたし、それからやはり、先輩後輩のある意味では役割、こういったことも教えられたと思っております。

瑞慶覧委員 スポーツが人間形成をしていく上でいかに大事かだと思います。今は大臣が言ったように、自分との闘いもさることながら、チームプレー、そして、一人一人がそれぞれの役割を果たしてつくっていくんだと。震災に遭っている今日本の中でも、やはり、そういった助け合いというんですか、それもスポーツを通してつながっていくんじゃないかと思います。

 そこで、スポーツ施策の現状について、予算等について政務官にお伺いいたします。

 ちょっと古いデータになりますが、平成十九年の体力つくり国民会議の調査によると、体力づくり関係予算は、各省にまたがって、合計しますと二千三百億円、大きな予算になっていると報告があります。平成十九年の文科省のスポーツ関係予算が百八十七億円、その後も、平成二十年が百九十億円、平成二十一年が二百二十五億円、平成二十二年が二百二十七億円で、本年、先ほどもありましたが、二百二十八億円というスポーツ予算になっております。

 国民の体力づくり関係予算が二千三百億円だとすると、それの一割程度というふうに文科省のスポーツ予算はなっていると私自身は今とらえています。体力づくり関係予算について体力つくり国民会議は、その二千三百億円の中には、国土交通省の公園整備とか、あるいはまた厚生労働省の健康増進、さらには、経済産業省のサービス産業支援などに関する予算が含まれているからだと分析しています。

 いずれにしても、文科省所管のスポーツ関係費は、国民の体力づくりという観点ではちょっと足りないかなというふうに私はとらえています。

 この現状を政務官はどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか、御所見をお聞かせください。

笠大臣政務官 お答えいたします。

 現在、まず、政府関係八府省の平成二十三年度の体力づくり関係の予算は四百三十四億円でございまして、そのうち文部科学省の予算が三百十一億円ということで、約七二%ということになっております。

 この金額が多いのか少ないのか、いろいろな評価があると思いますけれども、いずれにしても、このスポーツ基本法等、今、国会で議論をいただくということでございますので、国民の健康を増進し、そしてまた体力の向上を図ることは、明るく豊かで、そしてまた活力ある社会を形成する上で重要であると思いますので、必要な体力づくりのための予算の獲得へ向けて、しっかりとこれからも頑張っていきたいというふうに思っております。

瑞慶覧委員 私の言った数字と政務官が言った数字が若干違います。若干というか、かなりずれがあります。

 ですから、こういった一つの数字だけにしても、スポーツをどうとらえているのか、体力づくりだけにするのかあるいはスポーツ全般にするのかによっても、私は二割程度ぐらいかなということですけれども、今、七割はスポーツ関係が文科省はあるんだという答弁でした。そこら辺も含めて改善が必要かなと思っています。

 もう一度政務官にお伺いいたします。

 スポーツ関連の予算を実施するに当たって、担当する省庁がこれはやはり複数に分かれています。かつ、縦割り行政となっている点が問題ではないかと思います。

 手元に「スポーツ法制等に関する資料」、これは、百七十七回国会、ことしの五月、衆議院調査局文部科学調査室が出した資料がありますが、皆さんにお配りしていません、その十四ページによると、「関係省庁における主なスポーツ振興施策」ということで省庁名が、総務省、スポーツ拠点づくり推進事業、厚生労働省、健康増進とかあるいは障害者スポーツの項目があります。それから農林水産省も、野外スポーツ・レクリエーションに適した環境の選定とか、あるいは経済産業省のスポーツ用品産業、スポーツに関する産業、企業スポーツ、それから国土交通省もあります。国営公園や都市公園の管理、プール等ですね。それから環境省、自然公園の整備、エコツーリズム等、これだけのリストがある。

 また、もう一つ省庁をまたがっている象徴的な例としては、具体的な例として、オリンピックは所管は文科だ、パラリンピックは厚生労働省だ、そういうふうになっています。

 スポーツ基本法をやはり制定するとなったら、このような縦割りの現状というのは是正していかなければならないんじゃないかと思うんですが、この点についての政務官の御所見をお願いいたします。

笠大臣政務官 御指摘のように、今、オリンピックが文科省でパラリンピックが厚労省というのが非常に象徴的な事例として今委員の方から御指摘ありましたけれども、やはり、現在も必要に応じて、文部科学省と厚生労働省を初めとする関係省庁で、局長レベル等々の緊密な連携を図っていくようなことは努力をしているところでございます。このことは、これからもしっかりと縦割りによる弊害というものがないように私どもはやっていかなければならないと思っております。

 パラリンピックについても、将来的には、オリンピックなどのトップスポーツ、これを一体的に支援をしていくような方向で、また、厚生労働省とも連携をしながら検討していきたいというふうに考えております。

瑞慶覧委員 ぜひその方向に向かって進めていっていただきたいと思います。

 続きまして、大臣にお伺いいたします。ストレートパンチですので、ストレートにお答えください。

 先ほどもありましたが、縦割りのそういったスポーツの政策を打破するのが、スポーツ庁設置のこれは大きな役目ではないかと思います。先ほども、真剣に検討するという御回答がありましたが、もう一度お伺いいたします。スポーツ庁設置の省庁縦割りを打破するものを含めて、大臣のお考えを簡潔にお聞かせください。

高木国務大臣 スポーツ庁の設置については、今、超党派の議連で検討中でありますスポーツ基本法の中に、附則で検討事項とされておると承知をしております。

 縦割りの弊害を除去するという意味で、まさに、その中での基本法、そして、それに基づくスポーツ庁ということでありましょう。私はその意義は非常に感じておりまして、私たちもスポーツ立国戦略というものを立てておりますし、こういったスポーツ政策を推進していく極めて重要な部署であり、そして課題であろうと思っております。

 ただ一方で、議員も御承知のとおり、政府としても不断の行政改革という取り組みもしておりますので、特に我が国の民意は、ある意味では行政の肥大化を避けるという、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドという思想もこれはまた一つ大きな課題でもございます。そういう中で幅広い議論がこれからも続けられると思っております。

 私としては、スポーツ庁の設置について真剣に課題として検討していきたい、このような思いがございます。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 続きまして、震災とスポーツについて御質問させていただきます。

 震災の日をゼロとしたら、震災からきょうで丸七十五日たったことになります。私自身もそうですけれども、体を動かすことが健康につながると思っております。被災地におけるスポーツの推進とか非常に大事だと思うんですね。文部科学省で、これまで七十五日間ですけれども、被災地におけるスポーツの推進あるいはレクリエーション等の推進策、具体的にどのように行ってきたか、お聞かせください。

高木国務大臣 七十五日の経過の中で、とりわけ被災地の方々、特に、避難所などで不自由な暮らしを余儀なくされておる方々、本当に日々大変なことだと推察をいたしますが、その中でも、やはり体を動かす、スポーツの機会を得ることは非常に大事なことだと思っております。

 特に、各避難所においては、関係地域のスポーツ関係の皆さん方あるいは学校の教職員の皆様方が、それぞれ手分けをして、そういうことを重んじて、できるだけの努力をされておると思っております。

 我々も、スポーツ関係団体の皆さん方の協力もいただきながら、できるだけそういう機会に恵まれるように努力をしてまいる。例えばスポーツ界におきましては、自発的に募金活動を行ったり、そして、被災地を訪れて励ましている人がおられます。ともに、一緒にスポーツ活動をやろう、こういう取り組みをさまざまな場所で重ねておることについては、私たちも本当にうれしく思っております。

 また、スポーツ振興くじ助成事業によってアスリートなどを被災地へ派遣する、いわゆる東日本大震災復興支援スポーツこころのプロジェクトというものを実施されておると承知をしております。

 私たちも、これらの事業がこれからも被災地で活用されて、体を動かす、スポーツに親しむ時間を少しでも多くとる、こういうことを努めてまいりたい、このように思います。

瑞慶覧委員 一生懸命に取り組んでおられるということです。スポーツこころのプロジェクトを推進しているということですけれども、もう少し具体的にどういったものがあるかというのが、事務方でもいいんですけれども、できるのであればお願いしたいんですが。

笠大臣政務官 今、スポーツこころのプロジェクトをもう少し具体的にということでございますけれども、これは、被災地で暮らされている、今なお避難をしている方、あるいは、いろいろな、子供たちを中心にとにかく元気と勇気を与えていこうということで、しっかりとスポーツ界一丸となって、今現在も行っていただいておりますけれども、アスリートを初め、あるいはさまざまな分野からそうした選手の皆様方に現地の方に行っていただき、交流事業をしていくということでございます。

 独立行政法人の日本スポーツ振興センターにも協力をいただきながら、もちろんこれを、日本体育協会、オリンピック委員会、あるいはサッカー協会等々に主催をしていただき、この事業を実施をしているところでございます。

 この平成二十三年度からおおむね五年間の事業で、参加の対象は、当面は小学校の五、六年生を中心に、また、これを拡大していけるように今後発展をさせていきたいというふうに考えております。

瑞慶覧委員 ありがとうございます。

 続きまして、政務官にお伺いいたします。少し震災のことから飛びますが、スポーツビジネスについて、先ほど、経済産業省の方も産業にかかわっていると私は言いました。

 実は、沖縄で恐縮ですけれども、ことしの春のプロ野球キャンプ、十二球団のうち十球団が沖縄でキャンプを行っています。昨年は九球団だったんですけれども、ことし一球団ふえて、その経済効果ですけれども、地元のりゅうぎん総合研究所というところが調査して、ことしは観客数が三十五万、そのうち、県外から五万人が沖縄に来た。球団等が直接支出をする額が、ことしは六十三億円、去年が大体三十四億円です。だから、かなりふえています。そしてその経済波及効果も、昨年が五十四億円、ことしは百一億円という数字、約二倍になっているんですね。非常に大きな数字だなと思っています。

 沖縄県においても、沖縄二十一世紀ビジョン、基本計画というのを今策定中で、このようなスポーツキャンプやイベントの誘致を行うなど、スポーツ関連企業の育成や、スポーツを活用した関連ビジネス、新たなスポーツビジネスの創出、拡大に取り組む方向を示しています。

 沖縄県のみならず、他の都道府県でも恐らくそういう取り組みはやられていると思うんですけれども、文科省としてこのようなスポーツビジネスの創出について支援策等も含めてお持ちであれば、お聞かせください。

笠大臣政務官 今、沖縄でのプロ野球のキャンプで本当に大きな経済効果があるということですけれども、私どもも、スポーツビジネス、スポーツによる経済効果というものは、これはかなり大きいのではないかというふうに考えております。

 これも民間の例えば調査ですと、二〇〇二年のFIFAのワールドカップ日韓大会においては、約三兆円を超える経済効果を生んでおりますし、また、スポーツ市場の規模ということになりますと、これは、具体的には、スポーツ用品であったりあるいは施設関連の市場、スポーツ観戦料なども含んで、年間約四・一兆円というふうに試算しております。

 こうした直接的な経済効果だけでなくて、やはり、今回、多くの人々がスポーツに親しみ、またスポーツ基本法においては、スポーツを支えることのできる社会を実現することが、このスポーツビジネスを創出する、すなわち、また雇用も創出をしていくということにつなげていかなければならないというふうに考えております。

 文部科学省としても、特に、地域住民が自主的に運営する総合型地域スポーツクラブの創設の推進等々を通じて、こうしたスポーツコミュニティーの形成とともに、スポーツビジネスの振興につながるよう、地域の活動を支援をしながら役割を果たしていきたいというふうに考えております。

瑞慶覧委員 ぜひ、そのことも含めてしっかり我々もまた取り組んでいきたいと思っております。

 スポーツ関係に続きまして、教育環境についてお伺いいたします。

 これは、普天間基地の近くですけれども、沖縄県に普天間第二小学校があるんです。スポーツ政策からは少しずれますが、教育上のこれは課題ですので、沖縄の基地問題の関連で一つ御質問をお許しください。普天間第二小学校における、米軍普天間飛行場の米軍機による騒音被害の問題です。

 まず端的にお伺いしますが、普天間第二小学校と普天間基地の距離が大体どのぐらいかというのを、どなたかお答えいただけますか。

笠大臣政務官 これは隣接しておりますので、ゼロメートルということでいいんですかね。

瑞慶覧委員 ゼロメートルです。フェンスのこっち側が普天間第二小学校、フェンスの向こう側が普天間基地、行ってみたら皆さんもわかると思うんですが、本当にびっくりする環境の中で子供たちは教育を受けている。

 大臣、この現状についてどうお思いになりますか。

高木国務大臣 御指摘の普天間第二小学校は、まさに普天間基地と隣同士、本当に隣接でございます。

 学校が安全でしかも静かな環境であることというのは、非常に重要でございます。ただ、具体的に学校の教育環境をどのようにするかということについては、市町村、いわゆる設置者が判断すべきものであろう、このように考えております。

 ただ、言われておりますような環境を私たちも考えますと、かなり児童生徒にとりましては大変な負担があろうということは、重々私もわかります。特に、毎日毎日そこで学習をする児童生徒、あるいは教職員、学校関係者、心労は本当に大きなものがあろうと推察をいたします。

 そういう中で文部科学省としましては、これまで学校施設等の整備については、それぞれ補助金を設けて対応しておるところでございます。本土に比べて補助率も高いものがあり、それは、そういう特殊事情を念頭に置いたものだと私は承知をいたします。

 例えば、冷房装置、空調設備につきましても、通常は三分の一でありますけれども、沖縄県は二分の一、こういう措置もございます。また、防音設備についても重要な設備でございます。

 そういった学校環境の改善に向けては、これまでも最大の支援をしておると承知をしておりますが、これからも私たちは、そういう状況があるということは十分承知しながら、必要な対応をしてまいりたい、このように思っております。

瑞慶覧委員 実は、昨年五月、当時の鳩山総理が普天間基地周辺の住民と懇談する機会がございました。私もその場におりました。席上、普天間第二小学校の先生から、毎日十分ほど授業を中断する、大まかです。そうすると、年間五十時間は大体授業を中断しているんだと、米軍機の騒音の実態が訴えられました。

 宜野湾市が実施している航空機騒音の測定結果等では、同小学校近くの新城という地区の測定地点では、平成二十一年四月から平成二十二年三月、一年間の調査ですけれども、いわゆるうるささ指数、年間平均が七十二です。環境基準値の七十をこれは上回っております。かつ、最大の騒音値、いわゆる騒音の最大ピークのレベルは百七・二デシベルになっています。

 こういったのは日常茶飯事で、皆さんにお配りしていませんが、これは五月二十四日付の地元の新聞です。二十四日ということは、きのうの新聞です。それで、普天間第二小学校のある新城地区で二十日の午前十一時二十一分、二十日ということは金曜日です、十一時二十一分ということは、まさに授業が行われている時間帯です。これで百デシベルが測定されております。電車が通るときのガード下の騒音が百デシベル、ですから、騒音のひどさというのは察していただきたいと思います。

 普天間第二小学校の教育現場でのこのような現実、年間五十時間も授業を中断されるということを文部科学省は把握なさっているのか。

 そして、それに対して、憲法二十六条、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とあります。しかし、普天間の子供たちは、ひとしく教育を受ける権利があるといっても、こういった騒音の中で、教育がひとしく受けられる環境にあるととても私は思えません。このような事態も放置することは、憲法の精神にも反するのではないかとさえ思います。

 そのことに関して、現地にみずから赴くとかも含めて、大臣の所見をお伺いいたします。

高木国務大臣 まさに憲法第二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」こういうことが規定されております。私どもとしましては、そのことを尊重しながら教育行政に携わっております。

 そういう中で、沖縄においての特異な状況下での教育環境、私どもとしましては、今できることを最善として進めてまいりたいと思いますし、これからもしっかり実情把握に努めてまいりたいと思っております。私も、できれば現場を視察をする機会を得たい、このように考えております。

瑞慶覧委員 ぜひとも、その実情を把握するということを早くスタートしていただきたい。そしてまた、大臣の方においても現場の方を一刻も早く視察をしていただきたいと、私の方からもお願いいたします。

 最後の質問、十時四分までですのであと一分ですが、沖縄の方にも、福島第一原発事故に伴って自主避難をしている子供たちがおります。文科省の出した数字が、四月二十二日の時点で沖縄は七十四名でしたか、になっています。その自主避難をしている子供たちに対する教育的な支援、それがどのように行われているのか、お聞かせください。私の最後の質問になります。

笠大臣政務官 沖縄も含めて、今回、あの福島を中心に、原発事故の影響で多くの児童生徒が避難をしている。こうした避難されている子供たちについては、例えば就学支援等々もしっかりと同じように受けられるように、どこに仮に転校していても、そういった形で私どもは対策を立てております。

 それとあわせて、転学をする際に、この緊急の事態でございますので、いろいろな手続等々、これは弾力的に取り扱って速やかに受け入れていただくように、これは、三月十四日の時点で各都道府県教育委員会の方にも通知を出しているところでございますし、当初、一部にはこうしたところの徹底ができていなかったということも御指摘ありますけれども、私どもは、いろいろな会議等々を通じましてこうした徹底を図っておりますので、今はしっかりとそうした形での受け入れもスムーズにいっているのではないかというふうに考えておりますし、今後も、そうした子供たちの支援については、万全を期していきたいというふうに思います。

瑞慶覧委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、下村博文君。

下村委員 おはようございます。自民党の下村博文です。

 スポーツ基本法が、いよいよ今国会、当委員会では来週にも提案される状況になったことを、関係の委員の皆様方に心より敬意を申し上げたいと思います。

 自民党におきましても、きょう朝七時半からスポーツ立国調査会・文部科学部会を開きまして了承され、また、九時からの政策委員会でも了承され、残り、今週中に総務委員会で了承されれば党内手続が終わるという状況でございますので、ぜひ、今国会、衆議院においては来週提案がされるように、私の方からもお願いを申し上げたいと思います。

 先ほど、奥村さんから、大変すばらしいオリンピック招致についての問題提起がございました。私もそのとおりだと思っておりまして、先ほど、鈴木副大臣の答弁は旧来の答弁のままで、三・一一以降の我が国の置かれている状況について全く考えていない答弁で正直がっかりいたしましたが、奥村先生が言われるように、私も、今回の東日本大震災のある意味では復興オリンピックと。

 確かに、オリンピックは国でやるわけでなく都市がやるものだ、ああいう答弁がありましたが、やるとしたらやはり東京都がやるにしても、東京都単独ということではなくて、これは北京オリンピックのときも、実際は北京市だけでなく、ほかの都市でも開催したわけです。ですからやはり、日本を挙げて、日本は元気なんだということを二〇二〇年を目標に世界に発信をする。

 本当の意味での日本の、これは東日本大震災だけでなく、日本そのものが復興するという、そういう意味では世界に対する大変なメッセージになるというふうに思います。積極的にこれについては国も挙げて対応していくことが必要ではないかというふうに思いますし、私もそれをぜひ問題提起をさせていただきたいと思います。

 実際に、今月の十六日にIOCが二〇二〇年オリンピック開催地選定に向けて正式なスタートをいたしました。我が国における立候補についてはJOCが検討するということになっておりますが、東京都の石原知事が四選を果たしたことを受けて、このJOCの市原則之専務理事が四月十一日に、東京は一六年五輪招致であれだけの計画を残した、復興のシンボルとしての五輪として世論をつくり、世界に訴えてほしいということを言っておられるわけでございまして、JOCも積極的にこれから取り組むということではないかと思います。

 まず、事実確認でこの二〇二〇年のオリンピック開催都市決定までについてのスケジュールをお聞きしたいと思います。特に、我が国における立候補地はいつまでに決定する必要があるのか、お答えいただきたいと思います。

笠大臣政務官 二〇二〇年のオリンピックについてでございますけれども、これは、日本オリンピック委員会、JOCが判断をするということになっておりますが、現時点においては、本年九月一日までに開催都市を決定の上、国際オリンピック委員会、IOCに申請する必要があるというふうに伺っております。

 そして、その後、IOCの評価委員会による立候補都市の訪問調査等を行った上で、二〇一三年の九月に行われるIOC総会、これは今回、ブエノスアイレスということでございますけれども、ここにおいて決定されるというふうに承知しております。

下村委員 国内においては九月一日ということですから、もうすぐですよね。実際に、広島がもう断念をしたということを聞いておりますので、東京が手を挙げるかどうかということしかないわけでありまして、東京が手を挙げることについても、実際に石原都知事がちゅうちょをしているということも事実です。

 つまり、これは東京だけの問題ではないだろうということを先ほども指摘をさせていただいたわけでございまして、私は、この二〇二〇年日本復興東京オリンピックは、仮称ですけれども、これはもう政府が復興計画の全体の中で対応を考えていくことが特に今回は必要ではないかと思います。

 ですから、先ほどの鈴木副大臣のような答弁ではなくて、ぜひこれは文部科学省として考えていただきたいと思いますが、政府における意思決定、それから、復興構想会議なんかにも関係するのではないかと思いますが、こういうことについても連動して考えていただきたいと思いますが、政府の中のやはり窓口として、文部科学省があるわけでございます。

 文部科学省として、ぜひこれについては積極的、前向き的に検討していただきたいと思いますし、あわせて、政府の関連構想の中で文部科学省としてもぜひ提案をしてほしいと思いますが、高木文科大臣の見解をお聞きしたいと思います。

高木国務大臣 委員御指摘の、先ほどの鈴木副大臣の答弁が引用されました。

 オリンピック憲章上、オリンピックの招致は、各国のオリンピック委員会、これが判断することとなっておりまして、JOCがどの都市を候補市として申請するのかということを正式に決定する前には、政府としては、招致の是非を明らかにすることは差し控えたいと私は思っております。

 また、委員御承知のとおり、被災地の都市との共催については、オリンピック憲章、一般的には一都市開催が原則と聞いております。共催という形では難しいと考えております。

 しかし、これは一般的考え方でありますが、北京オリンピックの際にも、サッカー競技の予選を上海とか天津で開催した事例もありますし、また、馬術競技においては香港で開かれた、こういうこともありまして、さまざまな工夫があり得るのではないかと思っております。

 委員御指摘のように、今回は、東日本大震災を受けての東日本においてのオリンピックの開催、あるいは世界選手権などの国際競技大会を開催することは、私は意義がある、このように思っております。

 そして、委員のお尋ねの一つには、我が国の復興のためにもこういったものを、二〇二〇年、これを一つの視点に据えるべきではないかということでございます。それは非常に重要なことであります。

 このことについては、復興構想会議が今運営されておりますので、どのような形で反映をしていくかしっかり考えて、いずれにいたしましても、文部科学省としては、委員御指摘のとおり、この二〇二〇年、これについての見通しも含めて我々としては取り扱いをしていきたいと思っております。

 JOCがオリンピックの招致活動を正式に決定した際には、私ども文部科学省、関係省庁と総力を挙げて、この二〇二〇年という大事なビッグイベント、これについての成功のために一体として取り組んでまいりたい、私はそのように考えております。

下村委員 二〇一六年の五輪誘致のときも東京都が独自に積極的に活動し、当時も東京都は、この三・一一のような状況がありませんでしたから、財源的にもきちっとやれるけれども、しかし、政府の担保保証がなければこれはIOCの評価として該当しないということで、最終的に政府も同意したと。

 ですから、当時の二〇一六年の東京オリンピック招致というのは、政府も最終的には賛同したけれども、追認といいますか、非常に消極的な支援というふうに我々は思っていますし、実際そうだったと思います。それは、先ほどの冒頭のちょっと答弁でもありましたが、つまり、これは都市がやることなんだということなわけですね。

 しかし、今回は、やはり日本全体の復興という立場から、日本全体を世界に対ししっかりとアピールしながら、また二〇二〇年、あと九年、もう十年を切っている中で、逆算していく中での日本をどう復興させるかという意味では、これは、いいイベント、日本全体を活性化させるということでもあると思いますから、旧来の発想ではなくて、積極的に文部科学省としても、スポーツ振興、それから、国民の前向きな意欲、やる気をこれからスポーツを通じて一致結束をしながら日本を元気にさせるという意味ではすばらしい取り組みだと思いますし、ぜひこれは文部科学大臣がしっかり先頭に立って、政府で主宰される復興構想会議、ここにどの程度該当するのかわかりませんが、政府全体に対して提案を高木大臣がぜひしていただきたいと思いますが、もう一度確認をいたします。

高木国務大臣 私も、過去の東京オリンピック当時のあの熱い思いを今思い起こしております。現在、大震災を受けて、頑張れ日本、こういう合い言葉でそれぞれの立場でみんな頑張っておる姿を見ると、このイベントをそういう意味で一つの目標としていろいろな面で取り組むことは、非常に我が国全体としても意義あることだと思っておりまして、できる限りそのようなことを提案もしてまいりたいと思っております。

下村委員 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 阪神・淡路大震災が起きたとき、幾つかプラス面でびっくりした部分として、ボランティアの人たちがたくさん現地に行った。日本人もこういう意識を持っている人がたくさんいるんだなというのが、大きな歴史的な評価だったと思います。

 今回の東日本大震災においても、全国からボランティアそれから救援物資等々本当に多くの方々の、これは日本国内だけでなくて世界じゅうからですが、そういう真心が現地に届いているということは、これは本当にすばらしいことだと思うんです。

 さらに、今回の東日本大震災で阪神・淡路大震災のときもなかったこととして、自衛隊が非常に活躍をしているのではないかというふうに私は思っておりまして、十万人を超える自衛隊員が、現地に行っていろいろな救援活動をしている。

 私もいろいろなところで自衛隊の方々とお会いすることがありましたが、高木大臣は、この東日本大震災における自衛隊の活動についてどんな見解を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

高木国務大臣 今回の東日本大震災における取り組みの中で、特に、初動において自衛隊の皆様方、十万人態勢でございましたけれども、被災地において、全くこれまでにない、甚大な、そして広域的な災害の中で、私は、日夜を分かたぬ、まさに寝食を忘れて取り組んでいただいたこの活動に対しては、本当に敬意を表したいと思っておりますし、その後の復旧にも大きな役割を果たしておる、こういうふうに考えております。

下村委員 私は四月一日、二日に気仙沼と南三陸に視察に行ったんですが、これは、マスコミでもかなり報道されていて、地元の町長さんや市長さんもよくメディアにも出ておられたそういう典型的な、本当に厳しい被災現場を私も見ました。行ったとき、後で宮城県の西村前代議士から連絡がありまして、同じ宮城でも、実は、マスコミには全く報道されていないけれども、今回、もっと大変な被災地域がある、その中の一つとして山元町というところがあると。

 これはなぜ報道されないかというと、福島県境で、放射能を恐れてマスコミが全く入ってこない。それから、この町は海岸線で、津波で半分以上をやられてしまって、とても一般の人やボランティアが入って復旧復興活動をできるような状況ではないということで、私がそこに行ったのが四月十五日だったんですが、自衛隊の方々が来られて復旧復興活動をしているんです。

 これは、今御指摘があったように、三月十一日のもうその日の午後八時に、全国から、それぞれの駐屯地から自衛隊の人たちが現地に向かっているんです。三十五部隊、千百人の方がこの山元町だけに来ておりまして、エリアを分けて、そして行方不明者の捜索や瓦れき処理や、あるいは道路の整備等々、本当に、普通の人が行ってもとてもできないようなことをやっている。なおかつ、全員が結集したのが、三月十二日の夜中の二時にはもう現地に入っている。これは政府から要請があったわけじゃない、それから地元から要請があったわけじゃなくて、自主的に入っていったんです。

 驚いたことに、四月十五日ですからもう一カ月以上たっているんですが、いまだにその三月十一日に現地に入った人たちが復旧活動をしているんです。途中でかわったわけじゃないんですね。

 なおかつ、自衛隊の方々の話を聞くと、自分たちが避難されている方々よりも恵まれた環境では申しわけないと。何が申しわけないのかわからないんですが、つまり、近くの駐屯地の近くに野営をして、そこにテントを張って、そして寝袋で生活をしている。そして自衛隊の方々は、ほかの地域では炊き出しとか手伝っている地域も相当ありましたが、ここの人たちは、みずからについては、炊き出しもしないで冷たい缶詰を食しながら、本当に、避難民の方々よりももっと厳しい環境の中で黙々と一カ月以上も活動をしている。

 まだ処理が終わっていませんでしたから、これからもいつ自分の駐屯地に戻れるかわからないけれども、しかししっかり対応をしたい、こういうことを言っていまして、余り日本のマスコミはこういうことを報道しませんが、本当に頭の下がる思いを私自身も実感をいたしました。

 そして、きょうは、自衛隊についてどういう記述をしているかということについて、新しい教科書がいよいよ採択されることになりました。来年四月から中学校の、特にきょうは、公民の教科書で自衛隊記述についてどんな記述をしているかということで一覧表をつくってまいりましたので、資料をごらんになっていただきたいと思います。

 今、公民の教科書は、旧教科書、前からある教科書会社が五社、それから、今回新しく参入した教科書会社が二社、全部で七社あります。この中で東京書籍というのが、シェアが六〇%から七〇%で圧倒的にシェアの高い教科書会社、特に、東北地方では一〇〇%に近い会社でありますけれども、この東京書籍が新しい教科書の中で自衛隊についてどういう記述をしているかということなんです。

 資料がたくさんありますので、これを全部読んでいると時間がなくなってしまいますので、私は、特に、憲法九条に関係してそれぞれの教科書会社がどんな記述をしているかということでアンダーラインを引きましたので、そこをちょっとごらんになっていただきたいと思います。

 東京書籍の三十八ページ、自衛隊について政府の解釈が書いてあって、その後、「しかし、平和と安全を守るためであっても、武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったのかという意見もあります。」それから三十九ページで、これは「これからの平和」という項目の中ですが、「一方で、このような自衛隊の任務の拡大は、世界平和と軍縮を率先してうったえるべき日本の立場にふさわしくないという声もあります。」

 それから、次が日本文教出版、これは七十一ページのところなんですが、「これに対して、第九条は武力によらない自衛権だけを認めているのだから、自衛隊は憲法に違反しているとか、自衛隊の装備は自衛のための最小限の実力をこえている、といった意見があります。」という記述があります。

 それから次のページ、教育出版です。これは六十六ページから六十七ページのところなんですが、「ただ、国民のなかには、自衛隊の海外派遣や装備の拡張が、自衛隊の本来の目的を越えているのではないかという意見もあります。」

 それから帝国書院です。「しかし、戦争の放棄と戦力の不保持、交戦権の否認を定めた憲法第九条、そして平和主義に反するのではないかという議論は、冷戦終結後の今日も続いています。」それから、次の三枚目です。同じ帝国書院ですが、「また自衛隊は、災害派遣などでも活躍しています。」

 それから、次が清水書院。「それに対して、いっぽうで、自衛隊は憲法に違反するという判例や学説があり、また自衛隊の縮小を唱える意見がある。他方で、憲法第九条を改正しようという主張も根づよく、議論がつづいている。」

 ここまでが旧来の旧五社の教科書の記述です。

 次からが、今度新しく参入した教科書会社の憲法九条に関係するところのアンダーライン、一つは自由社です。「しかし、世界的にも有数な実力を備えた自衛隊を「戦力に至らない」とする政府の憲法解釈には批判も多く、憲法改正を行って自衛隊の保有を宣言し、自衛隊をわが国の軍隊として位置づけるべきだという主張もあります。」同じただし書きでも、全く逆の立場で書いてあるんですね。

 それから、次が育鵬社ですけれども、「また災害時の救助活動などの面でも国民から大きく期待されています。」ということと、それから、「自衛隊の海外派遣については今でも懸念の声がある一方、国際平和や協力活動のために積極的に海外で活動できるよう法律を整備することも議論されています。」

 これが以上なんですが、つまり、今回の七社の教科書会社を調べたら、本文の中で災害救援活動に触れている教科書というのは二社しかない、そのうち一行か二行しか書かれていないというのが今回の問題として私はあると思います。

 それからもう一つは、自衛隊に対する評価というのは、旧教科書五社とそれから新教科書二社で全く違うような表現が、特に九条を中心としてとられているということでありますが、とりあえずここまでで、高木大臣としての御感想をお聞きしたいと思います。

高木国務大臣 今の自衛隊をめぐる教科書の記述についての御指摘がありましたし、大変詳しく調査をされておりますことは、敬意を表したいと思っております。

 自衛隊については、中学校においては、主に社会科の公民の教科書において、国際社会における我が国の役割の中で、日本国憲法の平和主義についての理解と、我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせることに関連をして記述をされておると私は承知をしております。

 具体的に、我が国の防衛を任務とするこの自衛隊については、政府見解に基づいた記述がなされた上で、他方で憲法上の論議があることを取り上げられておる、私はそのように思っております。

 また、先ほどの、自衛隊の今災害についての貢献について、私は敬意を表し、また評価をしておりますが、この自衛隊に関しては、防衛に関する任務のほかに、国連平和維持活動、いわゆるPKOへの参加、国際貢献に関する活動などを行っていることも、すべてのこれは教科書で取り上げられておりまして、また、自衛隊の災害派遣については、これは複数の教科書で取り上げられておる。

 今回の震災の自衛隊の災害救助活動については、先ほども申し上げましたように、当初から、まさに手のつけられないような深刻な事態の中に、行方不明者の捜索を初めとして、生活インフラの整備等について自衛隊の役割、活動が大きく貢献をしたということは、私は今なおそのように思っておりますし、この救助活動について、それをどう教科書の中に取り扱うということについては、今後、教科書発行者がこれはまさに自主的に検討し判断するものであろう、私はそのように考えております。

 以上でございます。

下村委員 最後の配付資料をごらんになっていただきたいと思うんですが、これは、自由社がこの災害派遣について、今回の東日本大震災、これは上のところの写真の解説だけですが、入っております。そもそも、今回の教科書は三・一一以前に既に検定合格をしていましたから、この東日本大震災は別に入れる必要はなかったというか、それ以前にできた教科書だったわけですけれども、自由社は急遽追加でこれを入れたんだと思います。合格以降、入れたんだと思います。

 今、大臣からちょっと発言というか答弁といいますか、質問していなかったんですがお答えがありましたが、私は、先ほど申し上げましたよね、検定合格している教科書ですからそれはそれで合格していますけれども、ただ、東日本大震災が起きたわけですよ。起きて、それだけ自衛隊の方々が、これは自衛隊だけじゃありませんけれども、消防、警察も含め、ボランティア含め、しかし、その先頭には、連日十万人の自衛隊員が本当に災害派遣で現地に入っている、これについては正しく中学生に伝える必要があるというふうに思います。

 ですから、改めて、文科省として各教科書会社へ、訂正しろということじゃありません、この東日本大震災についての災害派遣については、より詳しくやはり記述をすべきではないかと私は思うんです。

 そういう意味で、文科大臣として、この東日本大震災の自衛隊の扱いについては、さらに詳しく教科書で触れてほしいということを各教科書会社に追加として要請をすべきことではないかと思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 この点につきましては、国民の多くは、今回の震災における自衛隊の活動、いわゆる災害救助活動について、それぞれ評価をされておりますし、思いがあるものと思っておりますが、教科書の中で取り扱うかどうかについては、これは発行者が自主的に判断をし検討していかれるものだと、私はそのように思っています。

下村委員 いや、ですから、今回の東日本大震災の自衛隊の災害救助について、より詳しく教科書記述をすることによって中学生に教える必要があるのではないかということを、大臣として教科書会社に対して要請というか申し入れをしていただきたい、私はそういうふうにお聞きしているので、端的な答弁をお願いします。

高木国務大臣 これは、学習指導要領の範囲内で具体的な事項については、教科書の発行者に今ゆだねられておりますので、訂正申請も、この災害をとらえた記載についての訂正を申請するのも発行者の自主的な判断でございまして、それを基本としております。

 また、実際にどのような対応をするかについては、これは教科書発行者において適切に検討をするものだと考えておりまして、文部科学省としては、申請を受けて判断をしていきたいと思っております。

下村委員 そういう答弁を平気でするというのは問題だと思いますよ。

 それというのも、今月の二十日、政府の拉致問題対策本部、この本部の関係省庁対策会議で、人権教育の一環として、北朝鮮による拉致事件を全国の学校で取り上げるよう各教育委員会に指示することが決定したと書いてありますよ。この整合性をどうするんですか。

高木国務大臣 私どもとしましては、教科書においては、今ある教科書検定制度、これを遵守していくことに、私としてはそういう対応をすることにしております。

下村委員 完全にもうやる気がないということで逃げているわけですけれども、今の答弁は法律的に問題があります。ここにも、今の拉致問題ですけれども、文部科学省は具体的な教育などの検討に着手すると報道で出ておりますが、具体的に検定済み図書の訂正について、これはできるんですよ。

 検定済み図書の訂正、第十四条第二項、ここをちょっと読んでいただけますか。

高木国務大臣 教科用図書検定規則第十四条の第二項、「検定を経た図書について、前項に規定する記載を除くほか、学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載若しくは統計資料の記載又は変更を行うことが適切な体裁があることを発見したときは、発行者は、文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行うことができる。」ということです。

下村委員 文科大臣にさらに読んでいただくのは恐縮ですから、私の方から、四項をごらんになっていただきたいと思います。

 四項に、「文部科学大臣は、検定を経た図書について、第一項及び第二項」、今読んでいただいたところですね、「第二項に規定する記載があると認めるときは、発行者に対し、その訂正の申請を勧告することができる。」この中で、第二項の「更新を行うことが適切な事実の記載」、私はこれに当たると思います。別に、訂正しろという話じゃないんですよ。

 今回の東日本大震災が後から起きたことだから、教科書検定が終わった後ですね、実際に自主的にもちろん書いているところもありました。今、一社。ありましたけれども、改めて、こういうような状況ですから、文部科学省としても、すべての教科書会社に対して、この東日本大震災を受けた後、つまり、「更新を行うことが適切な事実」、この記載に該当するということで、最終的に書くか書かないかは、それはもちろん教科書会社の判断ですよ。強制的に書かせるわけにはいかないと思います。

 ただ、ここの四項であるように、文科大臣は、この二項に規定する記載があるわけだから、「発行者に対し、その訂正の申請を勧告することができる。」これに該当するんじゃないでしょうか。

 だから、文科大臣がやる気があったら、それは教科書会社に言えるんですよ、実際に拉致教育についてはしているわけですから。ただ、するかしないかは、それは検定教科書会社の判断にはもちろんなりますよ。でも、文科大臣がこの四項の勧告することはできるわけですから、これをしていただきたいということを言っているんです。

高木国務大臣 私は、先ほどから申し上げておりますように、教科書検定制度というのは極めて重要な制度でございまして、このことを尊重しております。

 したがって、今回の三・一一東日本大震災は新たな課題ではありますが、これは、国民の世論そしてまた各教科書の発行者においてもその認識は私はそれぞれあろうと思っております。したがって、文科省としては申請を受けて判断をすることになります。

 なお、御指摘の教科用図書検定規則の第四項でございました。これは、文部科学大臣がその訂正の申請を勧告すること、こういう規定でありますけれども、過去、この規定を適用したことはありませんし、また、特定の事項を記述することについて要請したことはあっておりません。

 したがいまして、いずれにいたしましても私たちは、やはり今の制度を慎重に取り扱っていかなければならないと思っております。

下村委員 まあ、本当にとんでもない話ですね。

 私は、拉致対策本部の見識は高く評価します。それに対して今の文科大臣の、それは千年に一度と言われている大震災なんですから、そんなしょっちゅうもちろん起きるはずがないことについて記述をしたらどうかと言っていることであって、それも、今までしたことがないからしないという典型的な役人答弁をそのまま言っていること自体、いかがなものかというふうに率直に思います。

 民主党の国会議員の多くの方々はそんなふうには思っていないというふうに思いますが、残念ながら政府の一部の中には、仙谷官房副長官のように、自衛隊に対して暴力装置だと発言されているような政権ですから、その中で、今のようなことについて仙谷さんと同じようなお考えをもし持っているとしたら、さらさら私の提案を受け入れるはずがないということを改めて感じました。

 ただ、旧五社の教科書と新二社の教科書ではそれだけ記述が違うということで、旧来のような発想と国民感情が相当ずれている、ぶれているのではないかということについては指摘をしたいというふうに思います。

 次に、やはり今、多くの国民の皆さん、特に子供を持っている親、特に福島県、きのうかおとといですか、文部科学省にも二十ミリシーベルトの訂正を求めて福島県内の保護者の方々が来られたというのも報道で聞いておりますが、これも非常に大きな問題です。

 第一原発だけでなく、第二、第三もメルトダウンをしている中でさらに不安感が広がっているわけです。政府といいますか文部科学省が定めた年間二十ミリシーベルト、これについて本当に大丈夫だと思っている人たちは現地ではいませんから。ですから、福島県内においては、福島市など六市村が、独自に校庭の表土除去の対象として二百十七施設、費用は六億円かかるそうですけれども、やろうということで進めているわけです。ですから、各自治体は、文部科学省、国の基準よりもさらに厳しい基準を独自で定めているわけです。

 しかし、そうはいっても、実際にこの残土については、なかなかそれを捨てるところも法律上はっきりしていないということで、校庭の隅に積み上げてブルーシートをかぶせている状態であって、根本的な対策ができていないわけです。

 これは、政府が屋内退避地域から自主避難をさせるとか、それから中部電力の浜岡原発の停止とか、政治主導でこういう決定をしているんですが、実際のところ、それが全部、現場、現地、地域住民、それから地方自治体の方々に後は任せるということで全く無責任な状況が今続いている。これは何としても解消していく必要があると思いますよ。

 だから、我々はただ単に政府に対して批判をしているわけではなくて、こういう悲痛な思いについては、やはり一緒に責任を持って対処、解決をするということが必要でありますから、高木文科大臣も、二十ミリシーベルトで大丈夫なんだと言い切れる実際専門家ではないわけですから、これについては、現地の状況について、実際に基準を下回っても健康にかなりの影響があるのではないか、それから、そもそも保護者がもう子供たちは外で遊ばせないというような状況があるわけでありまして、これについて対応していく必要があると思います。事実、福島県の災害対策本部への問い合わせ、これは、一番多いのが校庭の表土の問題であるということであります。

 まず、各自治体がより厳しい基準を独自に決めていることや、基準以下の放射線量であっても屋外活動を制限していること、これは、文部科学省が決定した暫定基準が自治体や住民に全く信用されていない、それを示すものです。

 文部科学省は、自治体が独自に決定した基準をどの程度把握しているか、それで、把握している際にその独自の基準についてどのような評価をしているか、お聞きしたいと思います。

高木国務大臣 校庭の表土の除去については、委員御指摘のとおり、自治体の判断で独自に目安を設けている例があるということは承知をいたしております。

 例えば郡山市においては、地表から一センチの高さの放射線量が、小中学校で毎時三・八マイクロシーベルト以上、保育所等で三・〇マイクロシーベルト以上、さらに、五月十六日の時点での地表から一センチの高さの放射線量が、小学校、保育所で毎時一・五マイクロシーベルト以上、中学校で毎時二・〇マイクロシーベルト以上、こういう基準を設けております。

 また、二本松市、本宮市、大玉村においては、毎時一・九マイクロシーベルトという数値を設けておると承知をいたしております。

 文部科学省としては、これまたこれまでもずっと申し上げておりますように、毎時三・八マイクロシーベルト未満であれば平常どおりの活動を行うことができるものと考えております。

 設置者である市町村の教育委員会において、児童生徒の安心という観点から、放射線防護によってこのような措置が行われておるものと理解をしております。

 私どもとしましては、二十ミリ浴びていいというのでなくて、できるだけ浴びないように努力をしていく、そういう考え方についてはこれからも踏襲をして、これまた私も今御指摘のとおり専門家ではありませんが、いわゆる国際的にも権威のある国際放射線防護委員会、ICRPの勧告に基づいて、見解に基づいて、そして、それぞれ専門分野である方々が組織をされておる原子力安全委員会の助言もいただいております。

 とりわけ、被曝医療に長い間携わってこられた専門家の方々や、あるいは放射線医学に携わっていた方々の意見も聞きながら、いわゆる、対策本部としてこのような暫定的な考え方を決めさせていただいたところでございます。

下村委員 郡山市が表土から一センチ、文部科学省は、小学生が五十センチ、中学生が一メートル。これも、一センチと五十センチとそれから一メートルで、同じ場所でも相当違いがあるんです。実際に転んだりしたら、それはもう一センチの方が正しいということになるわけであって、その基準の決め方もやはり問題があるというのは、当委員会でも何回も議論があったところでありますが、今、これはあくまでも暫定基準だと最後に言われました。

 では、その暫定基準の見直しをいつごろ行う予定ですか、また、行う場合にはどういう形で行いますか。

高木国務大臣 暫定的な考え方については、これは、一回決めてくるくる変えるわけにいきません。やはり、学校の児童生徒のストレス、心理的な影響、あるいは教育的な配慮を考えますと、私たちとしては、夏休み終了までと。したがって、二学期からどうしていくのかということについて一つの時期的なめどとして、夏休みにこのことについて見直しを行うというふうに考えております。

下村委員 言葉じりをとるわけじゃないんですけれども、くるくる変えることではないんです。暫定基準の見直しというのは、これは、下げるというのがそもそも前提ですよ。

 そうではないということだったら、それも含めて、暫定基準について夏休みをめどにそれ以降は下げる、どれぐらい下げるかについては今検討している、そういうことでしょうか。ちょっと詳しく説明してください。

高木国務大臣 下げるという言い方は私はしておりませんが、暫定基準を見直すということです。この見直しに当たっては、それぞれ専門家の方々の意見を踏まえて行うことは当然のことでございます。

下村委員 暫定基準の見直しというのは、世間の人はすべて、当然下げるんだろうな、つまり、より基準を厳しくするんだろうなというのが当たり前なんですが、大臣は下げるということも今の時点で言えないということなんですね。それも驚きました、はっきり言って。

 この暫定基準の見直しも必要ですけれども、今必要なのは、同時に、現在存在する放射能の除去なわけです。政府は、信頼回復のために、率先して学校施設の除染に取り組むべきだというふうに思います。

 これについて、それぞれの自治体がやっているからいいだろうということじゃなくて、政府として、この放射能の除染について取り組む意欲があるかどうかをお聞きしたいと思います。

高木国務大臣 私どもとしましては、時間当たり三・八マイクロシーベルトを超えるところ、そしてまた、それがなかなか下がらないところにおいては、表土の除去も含めて何らかの対応をしなきゃならないというふうには考えておりました。

 そのために、五月八日でありましたが、福島大学の協力をいただいて、実地の調査をいたしました。どのような表土の改善が適当だろうかということです。

 特に、委員も御承知のとおり、表土をはぎ取ってそれをどこかに処分をしていくということは、やはり処分先のこともしっかり考えていかなければなりません。

 もちろん、この処分に当たっては、今、規制官庁の協力の中で、特に環境省もそうでありますが、経済産業省あるいは厚生労働省とも一体となって対策本部の方で検討しておりますけれども、私どもとしましては、その持っていく先という問題を解消するためには、いわゆる学校内で処理をした方が現実的だろうと。

 その意味で、二つの方法、いわゆるまとめて地下に置く方法と、上下置きかえをする方法、これはいずれも、線量の低下を図る努力を我々はすると言っておりますが、そのために有効であるという確認をいただいておりますので、これを福島県の方には示したところでございます。

 したがって、私たちとしては、線量を下げるために必要な助言等を今後とも行っていきたい、このように思っております。

下村委員 二つあるんですが、まず一つは、放射能を帯びた、学校でいえば表土ですね、土壌、これについて処理できない、だから、その学校の敷地内の土の中に埋めろということですか。

 これ、もう二カ月以上たっているわけですよ。二カ月以上たっているにもかかわらず、瓦れき処理も含めて、放射能を帯びた災害廃棄物、土壌もそうだし瓦れきもそうだし、そういう部分についていまだに今協議中、法律をどうするかということについて検討中ということですか。

 これは、放射能を帯びた災害廃棄物それからこの土壌、いつごろ法律をつくって対処しようと文科省としては考えていますか。

高木国務大臣 いつごろという明確な時期をお答えすることはできませんけれども、これは政府として速やかに結論を出さなきゃならぬことだと思っております。

 そういう意味で、私も政府部内の中で努力をしております。

下村委員 速やかにと言ったって、もう二カ月もたっているわけですね。実際、郡山では、捨てる場所がないから、やむなく校庭の隅っこにそのまま山にして、ブルーシートをかぶせているということです。

 ただ、それを土の中に埋めると言ったって、例えば、これから梅雨どきです、雨が降ってそこから地下水に流れ込む、あるいは近くの川に汚染された放射性物質が流れ出すということがあり得ると思うんです。ですから、本当に土の中に埋めるということでいいんですか、それで。

高木国務大臣 先ほども、福島大学の協力をいただきながら私どもとして検討した中では、それは特に影響はないということもいただいておりますが、ただ、念のために、さらに安心を確保するためには、防水シートなどをきちっと置いた方がなおいいという意見もいただいております。

 したがって、私たちとしては、できるだけ安心に基づく方法でこれはやった方がいいと思っております。

下村委員 いや、国としてしっかりとした基準はやはりつくるべきだと思いますよ。

 この間、参考人で伊達の市長が来られたときも、プールの水が流せないと言うんですね。それが川に流れて、あるいは田んぼに行ってしまうとかいうことだと、周辺を逆に汚染させることになってしまう。だから流すこともできない。

 土壌だって同じですよ。土そのものが流れなくても、やはり、雨によってそれがどんどん周辺に拡散していくということはあり得る話ですから、これについてきちっとした対応をしていく必要があると思います。

 そもそもその費用については、私は国が責任を持って自治体に対して支援をすべきだというふうに思いますが、これについてはいかがですか。

高木国務大臣 これは災害復旧との関係もございますので、できるだけ、委員御指摘のように、どのようなことができるか、国としても考えていかなきゃならぬことだと思っております。

下村委員 これは自治体の責任じゃないですから。これは、東京電力に対して損害賠償の対象となりますか。

笹木副大臣 委員も御承知だと思いますが、原子力損害賠償の審査会で、第一次指針は四月二十八日に出たわけです。

 この中では、政府の指示による避難とかそうしたものにかかわる費用、そしてもう一つは、出荷制限にかかわる費用、これについて指針を出しました。

 学校の校庭の表土を除去した、こうしたものについてはこの第一次指針の範囲に入っていませんので、まだそれについての指針は出ていない。第二次指針以降、ここで検討するということになっています。今の時点ではまだ指針が出ていないということです。

下村委員 指針が出ていない、ですから損害賠償の対象になるかどうかわからない。

 大臣、結果的にだれが一番困るのかと。やはり、地元に住んでいる方々、自治体なんですね。国が国費として投入できるかどうかもわからない。しかし、そんなことを待っていたら、それぞれの自治体がもう財源的には大変厳しくても、それはほっておくわけにいかない。だから、お金の問題はもう後にしても、対処すべきことはして、できるだけ住んでいる方々が安心してもらえるようなことを少しでも解消するように努力しようということで、今、必死になって各自治体、各地域がやっているんです。

 それについて、まだ法律ができていない、あるいは損害賠償法について対象になるかどうかわからない、あるいは、国がこれについて出すかどうかも検討中だということでは、まさに無政府状態ですよ。日本国としての政府が存在していない。

 住民の方々からすれば、そういう怒りと思えるような大変な憤りを持っているということをしっかりと受けとめてもらって、文部科学省が、あるいは文科大臣が当事者意識を持ってこれについて対処しなければならないということを心よりお願いして、私の質問を終わります。

田中委員長 次に、遠藤利明君。

遠藤(利)委員 自由民主党の遠藤利明です。

 きょうは、スポーツに関してさまざまな角度からといいますか、これまでいろいろな取り組みの中で、思いも多くありますし、大臣ほか皆さんに質問させていただきますが、特にスポーツというのは思想、信条を超えるものですから、余り政党がどうのこうのという思いではなくて、率直な思いでぜひお答えをいただきたいと思っております。

 実は、きょう奥村展三先生がいらっしゃいますが、超党派のスポーツ議員連盟、この中にスポーツ基本法制定プロジェクトチームというものを、最初は平成十九年の十二月につくって、いろいろ議論をした上で、再度審議をして、そして昨日、奥村座長、実は私も共同座長をさせていただいておりますが、各党、皆さん方が協力できる案をということで作業し、大筋合意ができたかなと思っております。

 振り返ってみますと、たしか四年、もう五年ぐらい前になりますか、トリノ・オリンピックで予想外の惨敗をした。その前は、カーリングだとかジャンプだとかショートトラックとか、いろいろなメダルがとれますよと喧伝されておったんですが、結果的に、荒川静香選手が最後に頑張ってくれて金メダルをとったんですが、このメダル一個に終わった。

 しかし、何でこういうふうになったんだろうといろいろ考えておったときに、たまたま私は、文部科学副大臣としてスポーツを担当することになりました。そこでいろいろな議論をさせていただいたのでありますが、このスポーツというものの価値、これに対して、どうもまだ国民の皆さんの理解が得られていないのではないだろうかと。

 もともと日本のスポーツ、学校体育だったり、あるいは武道だったり、そうしたものからスタートしてきて、後でスポーツが入ってきたような、そんな感じでありますから、どうしても学校体育、いわゆる教育という感覚が強過ぎた。

 そうすると、何かスポーツというのは遊びですねと。もちろんスポーツは遊びですし、遊びからそれを鍛錬していったりきわめていったり、そしてあこがれの的になったり、それがまたスポーツを通じて地域に貢献をしたり、世界に貢献をする。経済的な価値ももちろんありますし、そうした多くの効用があるんですが、まだまだ皆さんの気持ちの中で遊びという気持ちが抜けない。

 例えば、ゴルフをするとだめですとよく言われます。ゴルフをして、委員長がどうのこうのという議論があります。しかし、二〇一六年にはもうオリンピック種目です。リオデジャネイロ・オリンピックでラグビーとゴルフを追加することになったわけです。では、もちろん仕事中にサボってというのは論外でありますが、ピアノを弾いていた人が糾弾されますかと。いや、文化的な活動をしていますねとだれも文句を言わないんだと思います。しかし、では、ゴルフをしていたら、野球をしていたらと。これは立派な活動です。

 スポーツというのは、唯一、世界同じルールで競われる、あるいは運営されるものです。言語にしても、あるいはいろいろなものがありますが、それぞれの国やそれぞれの地域の差がありますが、スポーツだけは、例えばオリンピックは、世界二百数カ国がすべて同じルールで競います。まさに、思想、信条だけではなくて、国を超えて世界が一つ、ワンワールドということになるのかもしれませんが、そうした力を持っている。しかし、それが日本ではまだまだ遊びですねという延長を超えていない。

 ですから、この基本法を審議したときに、それで何が変わりますかとよく言われます。何が変わりますかと。あしたから急に予算がふえたり、それから組織が変わったりするわけではありませんが、やはり、これをつくることによって、遊びがもちろん原点でありますが、これだけの効果がある、あるいはこれだけの影響があるスポーツを国が施策としてしっかり取り組んでいくんですよと。

 そういう意味では、まさに、この基本法の中に国としての責務を盛り込むということが私は一番大事な観点だと思いますし、同時に、それを推進するという観点から、当然、スポーツ庁という議論が出てきたんだろうと思っております。

 そうしたこれまでのいろいろな議論の中で、私からすると、取り組んでおよそ五年ぐらいになるわけでありますが、ようやく来週ぐらいには委員長提案として、もし皆さんからお許しいただければしていただけるのかなという思いをしておりますが、一日も早くこのスポーツ基本法を成立させて、そしてまさに、国際貢献であれ地域貢献であれ、先ほど、震災地でのスポーツの貢献はいかがという話がありましたが、そうしていろいろな活動をしっかり担っていける、こうしたスポーツのかなめ。

 ちょうど、昭和三十六年、東京オリンピックにさかのぼること三年前にこれまでのスポーツ基本法ができました。しかし、これまでのスポーツ基本法というのは、まさに、そうしたスポーツと体育の考え方の整理もできておりませんでしたし、時代に合わない、そんな状況の中でありました。そこで、こうしていろいろ議論をしてきたわけでありますが、当時からそのPTとして取り組んでこられた鈴木寛代議士は、今副大臣として、まさにスポーツを担当されていらっしゃいます。

 ちょっと順番は変わりますが、昭和三十六年にできたスポーツ振興法、これまでの振興法についての課題、そして現在的な問題点について、まず副大臣から見解をいただきたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 お答えを申し上げます。

 昭和三十六年の六月に制定をされましたスポーツ振興法が半世紀たっているわけでありますが、スポーツ振興法はプロスポーツが対象となっておりません。それから、いわゆるスポーツ権が規定をされておりません。あるいは、スポーツ団体のガバナンスの充実でありますとか、私もWADAの常任理事を務めておりますけれども、ドーピング防止活動などがございません。あるいは、スポーツに関するいろいろな紛争の解決への言及がございません。

 こうしたことから、今申し上げたような課題に対応した見直しが必要となったというふうに認識をしております。

遠藤(利)委員 今、アンチドーピング、あるいはプロスポーツ、ガバナビリティー、それから選手の権利、そして国民のスポーツの権利と、いろいろ現在の時代にそぐわない、あるいは問題となる課題、副大臣からお話しいただきました。例えばスポーツ・レクリエーションなんということも文部科学省が主催してやっておりますが、これもこうした考え方の中にはまだありませんでしたし、ましてや障害者スポーツがどうという記載も、まだその当時はありませんでした。

 そういうことを考えますと、まさに五十年たってちょうど節目の年、ことしは体育協会ができて百周年という節目の年でもありますが、まさに時宜を得た改正を私たちはしなきゃならないかと思っております。

 そうしたときに、少し整理をしていきたいんですが、副大臣に、スポーツと体育の違いについて。これはよく、スポーツと体育というのはどう違うんだと。実は私も、数年ぐらい前まで、この議論を始めるまでは、スポーツと体育、何が違うのかなと、頭の整理ができておりませんでした。

 文科省は、平成十一年の省庁再編のときにそうした点を整理して、そしてそれから基本計画等に進んでこられたと思うんですが、なかなか明快に国民の皆様に理解をされていない。改めて副大臣から、スポーツとそして体育、これについての見解をいただきたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 スポーツ振興法の制定当時は、学校教育と社会教育における体育、体育といいますのはまさに知育、徳育、体育の体育でありますから、これは教育活動の一環ということでございます。その体育の中にスポーツを含めて整理をする考え方が、昭和三十六年制定当時、一般的でございました。

 しかしながら、スポーツには、もちろん教育としての体育の側面はございますけれども、それではとらえられない、例えば人間の可能性の極限を追求するという、競技スポーツはそういう性格を持っているものでありますし、教育ではないけれども、健康を維持するという意味で生涯スポーツあるいは地域スポーツというのは意義を持っているわけであります。

 そうした、教育の範疇ではとらえられないスポーツの可能性、あるいはそうしたことを発展させていくということを踏まえまして、スポーツの中に体育が含まれるという考え方が定着をいたしてまいりました。

 そして、平成十一年に文部科学省の設置法が改められまして、その中での法令上の整理もそのように、法律上、平成十一年以降はなっている、スポーツの中に体育が含まれる、こういうことでございます。

遠藤(利)委員 今、大変わかりやすく御説明いただきましたが、そこはまだ多くの皆さん方に理解されていない。どちらかというと、どうもまだまだ、体育というものがあって、その中に遊びのスポーツがある、そんなとらえ方が多いのではないだろうか。

 しかし、そうではなくて、むしろ、スポーツがあって、そしてその中に、スポーツを通じて、あるいはスポーツを用いて教育をする、これが体育だと今おっしゃられたわけでありますが、まさにそうしたことをもう一回整理して、私たちは皆さんに納得をしていただかなきゃならないのかなと思っております。

 ちょっと順番を変えて申しわけないんですが、今、せっかく岡本政務官がお忙しい中いらっしゃいましたので。

 先ほど、障害者のスポーツという話をさせていただきました。政務官、今度二〇一二年にロンドン・オリンピックがありますが、ロンドン・オリンピックの組織委員会の正式な名称を御存じですか。これは通告していませんから、わからなくても結構です。

岡本大臣政務官 パラリンピックの組織委員会の正式名称ですか、それともオリンピックの方の……(遠藤(利)委員「一体として」と呼ぶ)一体としては存じておりません。

遠藤(利)委員 例えば東京オリンピックですと、東京オリンピックの招致は東京オリンピック・パラリンピック招致委員会なんです。ロンドン・オリンピックも、ロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員会になります。ですから、世界各国、もう既に、オリンピックもパラリンピックも一緒になって運営をする。

 私、何年か前にシドニーに行って、シドニー・オリンピックの会場とその周りのモニュメントを見てきたんです。例えば、百メーターあって、何秒で走る選手と、そして障害を持った選手はこれだけですよ、三段跳びでしたら、選手はこれだけの距離、そして障害を持っている人はこれだけの距離、棒高跳びはこうです、そういうようなモニュメントがあって、まさに同じ扱いをされている。

 実は、日本は役所が違って、オリンピックは文部科学省、パラリンピックは厚生労働省というふうなことになるわけですが、私はもう既に、オリンピックもパラリンピックも同じ組織、同じ役所の中で一体となって考えていいのではないだろうか、ずっとこんな提案をさせていただきました。もちろん、障害を持っている人でも医療行為がある人は、これはなかなかそういうわけにいかないのかなと思います。この区切りはなかなか難しいんだと思いますが。

 実は、いろいろな議論をしたときに、文部科学省だけでなくて、スポーツというのは、文部科学省で担う部分、そして、障害者のスポーツあるいは健康は厚生労働省、スポーツビジネスは経済産業省、施設を一番多くつくっているのは国土交通省、それぞれの役所が必要なものですから、これを一つにして考えていったらどうだろうと。

 いずれスポーツ庁なんという議論のときには、そうした議論をしなきゃならないと思うんですが、とりあえずこのオリンピックとパラリンピックを同じ組織の中でもうやっていくよ、もう縄張りを超えて我々は同じ組織になりますよ、そんな考え方を、政務官、これは役所じゃなくて政治家としてどういうふうにお考えか、お答えいただきたいと思います。

岡本大臣政務官 遠藤先生が大変スポーツの振興、とりわけ障害者スポーツについてもこれまでさまざまなお取り組みをされていて、特に自民党においてのスポーツの振興にかかわる取り組みをされていることに敬意を表する次第であります。

 今御指摘になられました行政組織のあり方というのは、なかなか正直難しいものがあるというのも一方でありまして、確かに、スポーツという観点、健康増進という観点で見るか、それとも障害者福祉の政策として見るか、いろいろな見方があると思います。

 そういう中で、これからスポーツに関する新しい立法をしていこうという観点の中で御議論いただくんだろうと思いますが、正直申し上げまして、課題が幾つかあるのかなというような思いは持っております。

遠藤(利)委員 実は、パラリンピック、障害者スポーツ連盟ですか、協会だったか、北郷会長とお会いしたときに、一緒にどうですか、いやいや、もう我々は同じ方がいいと思いますよと、厚生労働省の保険庁長官もされた方だと思いますが、そんな話をかつてされておられました。

 難しいのはよくわかっているんですが、場合によってはスポーツ庁をつくるときということになるかもしれませんが、ぜひそうしたことを御検討いただきたいということと同時に、健康も実は運動と一体です。

 厚生労働省が定めた二十一世紀における国民健康づくり運動、これに九つの分野を指定しておりますが、一番目に栄養・食生活、二番目に身体活動・運動と出てきます。そうすると、どこまでが医療でどこまでが健康で、そのすみ分けがどこかで、スポーツ庁をつくるときあるいはそれ以前かもしれませんが、必要になってくるんだろうと思います。

 そこら辺、健康について、ぜひこれもお考えいただきたいと思いますが、政務官いかがでしょうか。

岡本大臣政務官 御指摘のとおり、本当に健全な心身のあり方というのは、スポーツを含む体づくりも含まれるというふうに考えておりますので、またそういった、これからスポーツ庁の議論が始まる折には、先生を含めて皆さんの御意見を賜りながら、私も誠心誠意取り組ませていただきたいと思っております。

遠藤(利)委員 厚生労働省では、健康運動指導士という指定をして大学で単位をとらせるわけですが、文部科学省と何が違うのかといつもそんな気がしています。よく、日本は縦割り行政と言われますが、どこかのきっかけ、スポーツ庁だと思いますが、ぜひそうしたときに、それをきちっと整理されて、一体的に運営されるように御努力いただきたい。

 政務官、お忙しいですからこれでいいですが、一つだけ。

 きのう私は、政務官にぜひ出席をいただきたい、そして答弁していただきたい、これは役人の答弁では何ともならぬものですから、お話を申し上げたんです。そのときに、できれば政務官、だめなら、それは厚生労働委員会やあるいは災害もいろいろやっているし、そっちに出席があるならこれはやむを得ないですね、そのときは局長ですか、その次は障害保健福祉部長ですか、そんなことだったんです。

 そういう話をしましたら、政務三役は他の委員会に要請されて出られません、障害福祉部長が出席しますと。そういうことでしたら、厚生労働委員会も所管ですし、災害というのはすごく大事ですから、わかりましたと思いながらも、事務局を通じて、厚生労働委員会等で政務官は出席要請されているんですか、確認してくださいという話をしましたら、すぐに電話が来て、政務官が委員会で答弁いたしますと。

 きょうは追及いたしませんが、何かちょっと違うなと。もし、最初から、こういうことでだめですなら、だめですでわかるんですが、だめです、ほかの委員会に出ますと言って、本当にほかの委員会に行くのかと確認させたら、いやいや、政務官が文部科学委員会に出て答弁しますと。ちょっと変ですよね。

 きょうはスポーツの論議をしたいものですから追及しませんが、ぜひそこら辺については、少し真剣に答弁というものを、出席要請というのを考えていただきたい、これは御要望だけさせていただきました。あとはもう結構ですので、お引き取りいただいて結構です。

 続きまして、もう一点、先ほど奥村委員から、地方スポーツあるいは地域スポーツの振興という話がございました。これもスポーツの世界で、いつもゆゆしきといいますか、対立軸になっているというか、なかなか整理がつかずにお互いに牽制し合っているという部分があるんですが、普及と強化という部分があります。

 その普及と強化、普及というのは、一般的に言えば地域スポーツあるいはコミュニティースポーツ、そして強化スポーツというのは、主にトップスポーツあるいはエリートスポーツであります。これがよく、普及を大事にしなきゃならぬ、強化よりもまずは普及だ、片っ方では、いやいや強化をしなきゃならぬ。しかし、それには予算的にまず普及よりも強化が優先だとよく言います。

 普及と強化、コミュニティースポーツとトップスポーツ、好循環という、今回の戦略で書かれているんですが、このことについて副大臣はどうお考えか、見解をいただきたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 お答え申し上げます。

 まさに今、遠藤委員おっしゃいましたように、普及と強化は二者択一のごとく議論をされてきました。これは、大変不毛な議論だと思います。今回のスポーツ基本法の中で、それをそろそろ卒業してまいりたいと思いますが、まさに普及と強化はもう表裏一体だというふうに考えております。

 地域スポーツの中からすぐれたトップアスリートが生まれるわけでありますし、また、そのトップアスリートが活躍することが国民的なスポーツへの人気を上げ、そして、そのことがひいてはその地域スポーツへの参加者がふえる。あるいは、トップアスリートの方々が、現役あるいは引退後、その地域にそうした直接的にかかわっていただくということがさらにその地域スポーツが振興される。そして、そうした充実した地域スポーツの中からまた次の世代を担うトップアスリートが出てくる。

 まさにこれが好循環でございまして、今回のスポーツ基本法制定を機にそうした好循環を加速していく、そういった議論を進めていっていただければというふうに考えております。

遠藤(利)委員 まさしく、副大臣、いい言葉をつくっていただいたなと私も大変評価をしたいと思います。

 ただ、これは今まで現場サイドでは、どっちが先の議論が優先をして、なかなかお互いに協力体制ができなかった。ただ、一つは、多分これは理想論と現実論だと思うんです。すそ野が広くなれば、これは当然数が多くなって、その中から優秀な選手が出てくる、理想的にはそうだと思います。しかし、では、すそ野を広げるときどうしますか、これは、答えは簡単で、強化スポーツをして、目標となる選手をつくることです。

 サッカーがきょうあるのは、メキシコ・オリンピックで釜本、杉山、横山、そうした選手たちが頑張って銅メダルをとった、あれからサッカーブームが起きてきたわけです。卓球の福原選手もそうですし、フェンシングの太田選手がとった途端にフェンシングの選手がふえた。ゴルフなんかは、まさに石川遼、それから宮里藍選手とか。そういう、やはりあこがれを持つ、そうすると、自分もやりたいですねと、そしてそこに参画をしていく。そうすると、その中からまた優秀な選手も出てくる。

 ですから、理想的には普及が先なんだと私は思います。しかし、現実的には、むしろ、やはりトップスポーツをしっかりやって、そしてそこであこがれや、あるいは皆さんの尊敬できる強靱な体力、体をつくった、そういう人たちに対する尊敬、そういうものがスポーツへ入っていく、そしてすそ野が広がっていく。ですから、理想と現実が私はいつもけんかしていた。

 ですから、そういう意味では、まず現実的にはトップスポーツをしっかり強化しようと私は思っていますが、まさにそういう意味でも、副大臣がおっしゃった、好循環をぜひしっかり担っていただきたい。

 そうしたときに、実は、去年の八月、スポーツ立国戦略を文部科学省として策定をされました。スポーツを通じてどんな国づくりを目指すのか、その具体像、そしてその実現のために必要な施策は何だろうな、このスポーツ立国戦略の概要にも少しは書いてありますが、大臣から、この考え方について見解をいただきたいと思います。

高木国務大臣 遠藤委員にお答えをいたします。

 遠藤委員におかれましても、長い間スポーツの振興に対して、とりわけこの数年来はスポーツ基本法などの取り組みについて熱心にかかわってこられたということについては、敬意を表したいと思っております。

 今、お話がありまして、しっかり聞いておりました。まさに、スポーツ基本法ということを通じて、改めて、例えばスポーツ論、体育とスポーツはどう違うのかなど国民的な議論、あるいは、普及が先かトップアスリート養成が先か、そういったさまざまな議論が巻き起こってくること自体が非常に大きな意義があるのではないかと私は思っております。

 私どもとしましては、スポーツの持つ役割、特に体力、気力、それぞれを基本とするものでありまして、まさに、体力、気力の限界をきわめてわざと力を競う、そして、ともに勝敗を超えて、汗を流すことによってまさに理屈抜きの人間関係、そのことはお互いの友好、友情につながることでありましょうし、ひいては世界の平和に大きな役割を果たす、私はそのことに通ずるものだと思っております。

 そういう意味で、スポーツ立国戦略においては、その目指す姿としては、新しいスポーツ文化を確立していくということを掲げておりまして、国民、より多くの皆様方がスポーツの価値をお互いに共有して、みずからがスポーツを行う、する、あるいは見る、あるいは支える、こういった多様な形態で積極的にスポーツに参画をする、そういう社会を目指していくことが大事であろう、このように考えております。

 その戦略の実現のためには、とりわけ年齢や体力に応じた、いわゆるライフステージに応じたスポーツの機会をつくること、そしてまた、それぞれのスポーツ界の連携によって、先ほども議論がされておりますように、普及と強化、こういう意味のものをある意味では好循環にさせていく。そして、私どもとしましては、具体的に五つの重点戦略を掲げております。多くの分野でそれぞれの取り組みを進めていく。

 特に、何といいましても、普及にとっても強化にとっても避けられないのは、やはり地域スポーツクラブの存在であろうと思っております。そういう意味で、そこにトップアスリートを配置したり、あるいは学校体育、運動部の活動の充実を図ったり、そういう幅広い交流また指導等が重要になってくる。

 このように、私は、スポーツ立国戦略が目指す具体像の実現として、必要な施策についてそのようなことを考えております。

遠藤(利)委員 今、大臣から答弁いただきましたし、このペーパーを見ますと、ライフステージに応じたスポーツ機会の創造とか、その中には成人の週一回以上のスポーツ実施率を上げる、そうしたことやら、あるいはメダルをふやすことやら書いてあります。

 例えば、メダルにしても、実は、最近頑張っているんですが、個人種目がほとんどなんです。かつてはバレーボールとか、そうした団体種目で日本はメダルをとれたんですが、前回も、なでしこジャパンがどうかという期待はしておったんですが、とっているのはほとんど個人種目です。もちろん個人種目が悪いというわけではありませんし、しかし、もしかすると、金メダルの価値というのは、比較するのは必ずしも正確ではありませんが、一人で一つとる、しかし十一人や十五人で一つとる。これは、かなり重いんだなという気がいたします。

 ですから、そういう意味では、ただメダルが幾つですよということだけではなくて、やはり日本としての目標値、レベルもあるでしょうし、あるいは、それを通じて、では、施設を、たしか三千ぐらい全国に地域スポーツクラブですか、地域クラブをつくろうということでありますが、その施設をどうしましょう、学校の体育館もどう利用するか、あるいはプログラムをどうやって組んでいくか。こんなこともやはり、こうした、もう一歩進んで必要になってくるのかなという気がいたします。

 実は、今回のスポーツの効用の話の中で、先ほど瑞慶覧委員から話がありましたように、東日本の大震災、これは大臣も答弁されましたが、いろいろなアスリートが現地に行って、そしていろいろな活動をされている。

 きょうの朝日新聞の「ひと」の欄に、「気仙沼の子どもへ言葉を届けるパラリンピック選手 佐藤真海さん」と紹介をされています。母校の気仙沼の小中学校に全国各地の子供たちの言葉を届けている、そして勇気や励ましを与えている。

 あるいは、先日、十七日に、オーストラリアの大使館に私もお呼ばれいただいたんですが、オーストラリアから釜石シーウェイブス、これはラグビー、昔の新日鉄釜石ですが、そこの選手が、外国から来たかなりの皆さん方が自国に戻られたんですが、戻らずに、信念を通して、そして地域の活動をしっかりやった。それを、オーストラリア大使館としてこの二人を表彰した。こんなこともありました。やはりスポーツの持つ力というのは改めて大きいんだなという思いをしています。

 そうすると、スポーツ立国を実現するというふうなことは、もちろん地域のそれぞれの活動もありますが、国際的に日本のアイデンティティーをしっかり確立していく、あるいは好影響を与える、そういう観点が大変強いんだろうと思います。

 去年の春だったか、一昨年の暮れだったかわかりませんが、私は「インビクタス」という映画を見て、大変感激をいたしました。これは、南アフリカで一九九五年にラグビーのワールドカップがあったんですが、一年前に就任したネルソン・マンデラ大統領が、どちらかというとあそこでは、ラグビーはアフリカーナーという、もともとオランダ系なのかもしれませんが、白人のスポーツ。そして、サッカーは黒人のスポーツ、地元の、南アの皆さんのスポーツ。国内の対立がスポーツを通じてもあった。しかし、あえてマンデラさんは、白人が、アフリカーナーがやってきたラグビーを支援した。そして、それを通じて南アフリカという国をまとめていった。

 ジュピターのテーマが流れて大変感動的な映画だったんですが、そのときのマンデラさんの言葉が、スポーツには世界を変える力があります、人々を鼓舞し団結させる力があります、人種の壁を取り除くことにかけては政府もかないませんと。まさに思想、信条、国を超えて、同じルールで一緒に活動できる。本当に感激をいたしました。

 そこで、副大臣に再度お伺いしたいんですが、こうした国際的な観点から、スポーツ立国がもたらす国益をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 委員からいろいろと御紹介がありました。もうマンデラさんのお言葉を超える言葉はないと思います。

 本当にスポーツというのは共通言語であります。いろいろな壁を越える力、スポーツにまさるものはないと思います。まさにスポーツを通じました国際交流、国際貢献というのは諸外国との相互理解を促進し、そしてスポーツをやっている期間、やっている地域というのはまさに平和が確立されるわけでありますので、国際平和にも大きく貢献をするというふうに考えております。

 ワールドカップ二〇二二年の招致のときにも、二百八のスマイルズということをコンセプトに招致をいたしましたけれども、まさにスポーツを通じて世界じゅうの人々がつながっていく、そのことに日本が汗をかくということが日本の存在感を高めていくことになると思いますし、国際的な地位の向上に極めて大きな役割を果たすというふうに思っています。

 そのためには、やはりスポーツの中で日本の選手が活躍をし、そして世界じゅうのプレーヤーとネットワークがあるということが非常に重要でありまして、したがって、トップアスリートそしてその指導者というものが世界的に常に活躍している、そのためのさまざまな研さんの機会ということをしていかなければいけないというふうに思います。

 それから、単にプレーヤーとコーチだけの問題ではなくて、例えばドーピングなどのスポーツ医科学の世界であるとか、あるいはそうした国際的なスポーツコミュニティーの大会をやっていく、これは大変な労力がかかります。その大会の運営あるいは国際的なスポーツ組織の維持発展のために、事務方として日本人がもっともっと活躍をしていくということも重要だというふうに思います。

 それから、特にジュニア世代のスポーツ大会、国際競技大会の招致であるとか開催であるとか、こうしたこともこれから大変大事なテーマではないかなというふうに考えているところでございます。

 こうしたことの積み重ねが、ひいては日本の世界における存在感を増していくというふうに考えております。

遠藤(利)委員 先ほど、副大臣、好循環という話をされました。これは普及と強化あるいはトップスポーツとコミュニティースポーツですが、日本と海外の国との好循環といいますか、人材の交流も大きいんですよね。

 さっき言いました釜石のラグビーチーム、ニュージーランドとそれからオーストラリアから来ています。サッカーを見ても、世界各国から多くの選手が日本で活躍している。もちろん日本からも行っています。長友だとか本田とか、もう向こうにいて大変存在を示している。それだけで日本というのは評価される。大変大きな力だと思います。そうしたときに、こうした人の交流、そうした一つ一つの積み重ねがありますが、やはり、そうすると国際大会の招致、開催というのは大きな効果を与えます。

 私も、副大臣、あのときたしかコペンハーゲンに一緒だったと思います、去年はチューリヒで残念でしたが、その前に二〇一六年東京オリンピックでコペンハーゲンに行ったときに、ある方から言われてなるほどと思ったのは、二〇一六年に東京オリンピックが決まったら、世界のスポーツ選手は常に東京を向いています、日本を向いています、それだけ大きな力を持つんですよと言われて、ああそうか、二〇一六年、ずっと先だと思ったけれども、それまでいろいろな大会を運営していくわけですし、やはり日本で勝つためにはといって日本のどこかで合宿をしたり、そういうことがずっとつながっていくんですねと。

 ですから、今回二〇二〇年、先ほど来話がありましたからもう重ねませんが、やはり東京オリンピックということで開催をしなきゃならないんだと思いますが、ぜひ復興オリンピックとして、例えば仙台で何かの種目をやるとか、これは採択にならなければだめなわけでありますし、もちろんJOCが当然手を挙げるというようなことになるわけですが、ぜひ、そういう意味でも、政府としてしっかり支援をしていただきたい。

 たしか北京オリンピックは三回目なんです、手を挙げてから。やはり世界二百カ国もの国が手を挙げるわけですから、そう簡単じゃないんです。

 ただ、そのときに、実は私、コペンハーゲンの総会に行って、やはり日本というのはまだまだ国際人を育てていないなという思いをいたしました。例えば、UAEの王妃は世界の馬術の会長だったかな、それからモナコの皇太子は何かの会長だとか、百何人のうち、ヨーロッパは四十何人といるんですが、残念ながら、今、日本人のIOC委員は間もなくゼロになります。世界の中に、いろいろな競技団体の中に、運営委員になる委員というのは、日本人はなかなか少ないんです。もちろん英語の問題もあると思います。それから、そうしたところでじっくり時間をかけてつき合える、そういうことはなかなか少ないと。

 さっきWADAの常任理事とおっしゃいましたが、多分まだ二年目だと思います。私もやったんですが、私も一年行って議論をしたら、みんな四年、五年やっているわけです。そうするとみんな、まさにファーストネームで、それで四年、五年のつき合いを経て議論をしている。そうすると、行って一年目でなかなかそうならないわけです。

 そうすると、やはり国際大会を招致あるいは運営するときに、そうした人材をやはり国としてしっかり育てていく、そしてそういうところに派遣をしておく。例えばJICAだとか、あるいは日本人学校のそういう人をもっとうまく使う方法もあるかもしれません。そうした人材の育成についてどう取り組んでいかれるか、副大臣にお伺いしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 委員御案内のように、柔道とサッカーにつきましては、日本人をそうした国際連盟の事務局に派遣するということを昨年から始めております。まだ一年目でありますけれども、やはり派遣をする前とその後とでは、いろいろな情報そして人的な関係の構築という意味で非常に効果があるなということを感じております。やはりこういうことを広げていく、そしてきちっと継続をしていくということが非常に重要だなというふうに思います。

 今の話は事務局レベルの話でございますが、と同時に、委員おっしゃいますように、やはりトップ、特に国際競技連盟のトップに、その会長あるいは副会長にやはり日本人が就任をし、そして長く活躍をするということは本当に大事だなと思っています。いきなり会長にはなれませんので、やはり理事あたりからきちっと実績を積んで、そしてその人を五年、十年、二十年、こういうスパンで日本全体として応援をしていく、こういうやはり戦略的な考え方は人事面においても非常に重要だなということを痛感しているところでございます。

遠藤(利)委員 柔道の山下選手さえも、実は理事選で落選している。しかし、私は、いろいろ議論しているときに、山下をロシア大使にしたらどうだろうと。プーチンにすぐ会える。大使の一番の仕事は、向こうの総理か大統領に会えれば、あとは公使か何かがしっかりサポートできればいい。例えば、元気だったら、王選手がキューバの大使になったらどうだろう、これは絶対、野球の国ですから大歓迎される。

 そういうふうな、これは先ほどセカンドキャリアの話にもありましたけれども、ただ単にスポーツ選手として終わるのではなくて、スポーツ選手からもう一歩踏み出す、セカンドキャリアをどうやって育成していくか。

 地域スポーツクラブの専任指導員なんという国内的な考え方はあると思います。しかし、世界の中にそうしたスポーツ選手、アスリートを位置づけていく、こんなことも私は取り組みとして十分効果があるんだろうと思いますし、そのために、セカンドキャリアの前に、実は私は本当はダブルキャリア、要するに、選手が終わってから、さあ改めてもう一回というんじゃなくて、スポーツをやっている最中から、英語であれ、あるいはその他の教養をしっかり身につけておかないと、世界の連盟に入ったときに話ができないんだと思います。

 私は、ジャック・ロゲという今のIOCの会長と話をしばらくしたことがありますが、彼はもともとベルギーのラグビーの代表で、そのあとセーリングでオリンピックに出たわけですが、彼はお医者さんです。ですから、日本のスポーツ選手で、ではスポーツをやめたときに、もちろん大学の先生として残っている、例えば馳先生のようにしっかり先生になっている方はいらっしゃる。しかし、ほかの分野で、スポーツをあれだけやっていて能力があるはずなんです、それがなかなか生かし切れていない、ですからセカンドキャリアの心配をしょっちゅうしなきゃならない。本来はダブルキャリアとして、しっかりそうした人たちが、スポーツと同時に、ほかの学科といいますか、英語であれ、そういうものもしっかり教育としてやらなきゃならない。

 そうすると、私は、実は大学の入試制度に問題があるんだと思っています。きょうは議論いたしませんが、大学の入試のために、みんな中学ぐらいで塾に行くかスポーツクラブに行くか分かれます。そうすると、幾らいいセンスを持っていても、オリンピックに絶対出られるという保証はともかくとして、やはり親からすれば、そう言わずに塾に行きなさいよと。それでスポーツをやめちゃうわけです。そうすると、ここで、塾かスポーツクラブへ、あるいは学校だけで分けてしまう。

 ですから、大学の受験制度、私は、これを変えない限り、そうした有為な人材というのはなかなかつくれないのかな。もちろん、その他いろいろな研修の仕組みはあります。これをぜひ、きょうは答えを求めませんが、御検討いただきたいと思います。

 例えば、大学入試で、今、どうやって英語教育をやるかと。答えは簡単なんですよ。大学入試、うちの大学はTOEFL何点と決めちゃえばいいんです。別に、高校で学ぼうが、中学で学ぼうが、塾で学ぼうが、親戚の人に学ぼうがいいんです。それで、TOEICは日本と韓国ぐらいしか使っていませんが、TOEFLだったら世界で、これで留学できるんですよ。うちの大学はこれですよと決めちゃえば、どこかで勉強して受験するんです。受験資格にしちゃえばいいわけです。そうしたら、有無を言わさず、高校や中学の先生だって、これを教えなきゃ要らないとなりますから、一発で英語教育は進むんです。ぜひこれも御検討いただきたいと思います。

 さて、そうした中で、運営をする、招致をするときに一番我々苦しんだのは、実は財政保証なんです。前回の東京オリンピックのときには、麻生総理に最後に決断をしていただいて、財政保証をいたしました。今回のラグビーワールドカップについては、大臣ほか副大臣等、大変御協力いただいて、何とかクリアできたなと思っています。

 北京オリンピックの話をしたときに、当時の中国の体育総局長が最初に言われたのは、財政保証できるかどうかがまず第一歩です、そこからスタートします、幾ら都市のスポーツといいながら、国が担保しなければもう招致の話になりません、IOCはそんなこと全く考えません、そういう話をされました。

 こうした財政保証について今後どう取り組んでいかれるか、お伺いしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 遠藤委員も数々の招致活動にこれまで携わってこられる中で、常に財政保証の問題で頭を痛められたことと存じます。私も、東京オリンピックあるいはワールドカップ等々の中で、もちろん協会から求められているものの政府保証はきちっとおこたえをさせていただいているわけでありますけれども、どうしても諸外国と比べますと、日本やアメリカといったところは、いわゆる政府による財政保証というところが総じて弱くなっているというのは現実だと思います。

 ここも、まさにきょう遠藤委員ずっとお話しいただいておりますように、スポーツというものが国民生活においてどういう位置づけにあるのかということを、やはり国民的な理解を深めていただいて、そしてそこに、納税者の皆様方がどういうふうに考えていただけるのか、あるいは、考えていただけるようになるための議論を深めていけるのかということが大事だというふうに思っています。

 そういう意味では、やはり地域のスポーツクラブをなぜ振興しなければいけないかということにもつながるんですけれども、これまで、スポーツ・体育というのは学校あるいは企業というものが担っていくという時代がずっと続きました。しかしながら、そのことが難しいと。そうなったときに、スポーツを親しみ、そしてスポーツを考える、そうした日常の活動の場を充実させていくことが、やはり最終的には、御指摘の納税者の理解を得ての国の財政保証というものの議論にもつながるんだろうというふうに思っております。これも好循環の議論だと思います。

遠藤(利)委員 そこは我々の努力も必要かと思っています。

 先ほどオリンピックの話をしたんですが、オリンピックと同時に、実はユースオリンピックというのがあります。これは、今のジャック・ロゲ会長が殊のほか力を入れて、十四歳から十八歳の若者の祭典と称して、昨年の八月、IOCに加盟する二百五カ国・地域から約三千五百人が参加して、シンガポールで開催された。

 そして、ただ単に競技をやるだけではなくて、まず、結果だけではなくて、大会期間中ずっと最後までいてくださいと、そして文化教育プログラムにも参加させる。このプログラムは国連と共同で開発をしているようでありますが、その中では、オリンピズムやアンチドーピングなど、あるいは環境などの世界にかかわる問題について学習したり、あるいはメダリストとの対話、あるいは、アイランドアドベンチャープログラムというらしいですが、孤島での共同作業体験、こんなこともやっている。

 オリンピックだと、どちらかというと勝ち負けで終わってしまいます。しかし、ここは、その期間、最初から最後までいて、もちろんスポーツで競います、しかし、共同作業をしたり一緒に学んだり、こういうすばらしい大会を昨年から開催をされました。

 競技では、国別じゃなくて大陸別チームだとか男女混合チームだとか、そういうふうな仕組みがあります。もしかすると、いずれ、例えば二〇一六年にラグビーがオリンピックに入りますが、今、男性と女性に分かれています。しかし、水泳なんかだったら、男女混合の大会をやるということになると、オリンピックだってなるかもしれません。

 そうしたユースのオリンピック、実は、第一回がさっき言いましたように昨年、そして第一回の冬季大会は来年の一月からインスブルック、第二回の夏季オリンピックは中国の南京で二〇一四年、その先はまだ決まっておりません。

 もちろん、規模からしても、それから国民が夢を持つ意味でも、オリンピックというのは大変我々も熱望しておりますし、二〇二〇年、頑張りたいんですが、このユースオリンピックは大都市でなくてもいいわけです。とすると、例えば仙台を中心にして、このユースオリンピック、第二回の冬季大会でしたら、多分二〇一三年に立候補して二〇一六年かな、そして、第三回の夏季大会だったら二〇一五年に立候補して二〇一八年かな、そういうふうなことになります。

 このユースオリンピック、これはもちろんJOCがいろいろ検討するわけでありますが、国として、復興オリンピック、これは私も大賛成です。しかし、同時に、こうしたユースオリンピックを政府として考えたこと、あるいはこれから取り組んでいこうという気持ちがあるのかどうか。私は、このユースオリンピックを、仙台を中心にして東北六県で運営していくということをぜひすべきかと思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 今御紹介いただきましたように、昨年から始まりましたこのユースオリンピック、これも御紹介いただきましたけれども、教育文化プログラムを合わせてやるという点も含めて、非常にすばらしいプログラムだと思っております。オリンピズム、能力の発達、健康かつ幸福なライフスタイル、社会的責任、豊かな表現、これは全部の教育的要素が入っているわけであります。前川端大臣も、シンガポールへ行かれて、すばらしさについて非常に感銘をしておられました。

 ユースオリンピック、私どもも大変関心を持っております。具体的には、今JOCがどういうふうなプロセスで開催地選定を行うかということ、JOC側も今、JOC側といいますかIOC側が詰めているところでございます。IOC側のいろいろな議論を踏まえてJOCが御判断されることでございますけれども、私どももJOCとよくよく相談をしてまいりたいと思います。

 具体的に、手を挙げるのか、いつ挙げるのか、あるいは、ではそれをどこの地域を中心にやっていくのか、こういった具体論については、これからJOCとよく相談をしてまいりたいというふうに思っておりますが、きょうの御議論を大いに参考にさせていただきたいと思います。

遠藤(利)委員 まさに、何年後かわかりませんが、その時期、世界の若人が滞在をして学ぶわけですから、そうすると、あれだけの大震災の後に、日本という国がどれだけ復興を一生懸命やってきたか、地域をどうつくっていくかということも、そうした共同体験の中に十分取り組みは可能かなと。その意味では、オリンピックも私はもちろんいいんですが、ユースオリンピック、まさに教育という観点から、ましてや東北、冬季も夏季もどっちもできるんです。我々も努力してまいりますが、ぜひ御尽力をいただきたいと思います。

 もう時間がありませんので最後になりますが、先ほど来スポーツ庁の話がありました。多くを申し上げることもありませんが、実はスポーツ庁は、基本法をつくろうとしたときに、やはり何かきっかけが要るよねということで基本法に盛り込もうとしたんですが、これは実は、別に基本法に入っていなくても、大臣と内閣がその気になればすぐできるんです。かつて消費者庁は、基本法などなくても、先に消費者庁をつくると決まりました。決めてから基本法をつくりました。

 大臣、すぐスポーツ庁をつくるという考えはないですか。

高木国務大臣 おっしゃられるとおり、基本法ができなければスポーツ庁ができないというわけではございません。

 私どもとしましては、先生もかかわってこられましたし、今現在、超党派で、議連でスポーツ基本法案が準備をされております。その中に、一つの目玉といいますか大きな課題としてのスポーツ庁の設置について掲げておりまして、これもいろいろな検討、御配慮があったんでしょうが、附則で検討するということにされておると承知しております。

 これはもう、まさにスポーツ政策を進めていく重要ないわゆる組織だと思っておりまして、これはぜひ何とか設置をする方向が望ましいと私は思っております。

 ただ一方で、これもまた長い間取り組まれてこられました行政改革の中での基本方針、これとの整合性もとらなきゃなりません。民意としては、行政改革に当たってはやはりスクラップ・アンド・ビルド、こういう精神もよく語られるところでございまして、そういう幅広い議論を通じながら、やはりここはスポーツ振興、スポーツの果たす役割というのは、地域はもちろんでありますが、世界を変えるほどの大きな影響力、役割というのがあるのが今議論の中でも出ておりましたので、私どもとしましては、今後真剣にスポーツ庁の設置について検討してまいりたいと思っております。

遠藤(利)委員 大臣から、あすにでもつくるとおっしゃっていただければと期待しておったんですが、そうは簡単でないのは承知しておりますが、観光基本法という法律ができて、その中に観光庁をつくる、そういうふうに盛り込まれて、たしか五、六年か六、七年たって観光庁ができた。そういう意味では一つのモデルですが、そういうふうに待たないで、ぜひつくっていただきたい。

 同時に、日本のスポーツ組織というのは今すごい複雑なんです。例えば、高野連は高体連より先にできた。言葉で言うと変ですが、威張っています、おれたちの方が上だと。それから、例えば相撲はスポーツか興行か、これはプロレスなんかもそうです。そういういろいろな観点、ですから、そういう組織をやはりスポーツ庁をつくるときにしっかり整理していく必要があるんじゃないかなと。

 私、オーストラリアへ行ったときに、スポーツを所管する省があって、その下にオーストラリア・スポーツ・コミッションというのがあって、そこの下に、日本でいえば体協や、スポーツビジネスやJOCや施設、学校体育、こうしたすごいシンプルな組織をつくっていました。いいモデルになるかなと。UKスポーツやあるいはフランスのナショナルトレーニングセンターを含めた施設なんかを見てきたんですが、かなりシンプルに組織が整理されています。

 せっかくですから、こうしたスポーツ庁をつくるときに、そういう縦割りとか、何やかんや今までのしがらみでなかなかうまく機能してこなかった部分もありますし、例えば障害者スポーツも、では、どうやって一体化していくかということもあるんだと思います。そうしたことを整理をしっかりしながら、これは我々も努力いたしますが、大臣を中心にして、このスポーツ庁をこれからつくる上でのいろいろな考え方の整理をぜひしていただきたいと最後にお願い申し上げまして、時間が来ましたので、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

田中委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。馳浩君。

馳委員 自由民主党の馳浩です。よろしくお願いいたします。

 一時間いただきましたので、きょうは、スポーツと学校体育、部活動、そしてスポーツの国際戦略、こういうテーマで質問をさせていただきます。

 スポーツ、いろいろな定義を包含しておりますが、教育の要素を位置づけたものが体育である、こういうふうな仕切りが午前中の鈴木副大臣の答弁でも間々明確にされてきて、スポーツ基本法を制定した後も、今後のスポーツ政策を進めていくに当たって、私もそういう仕切りでいいと思っておりますが、そうすると、これは大臣にお聞きしましょうか。

 体育の日という祝日は、そろそろスポーツの日というふうな国民的な祝日としての位置づけ、名前の変更というのも考えられてくるのかな。日本体育協会も、日本スポーツ協会という名前の方がふさわしいのかな。自衛隊体育学校は、これは自衛隊スポーツ学校というわけにはいかないよね。つまり、名は体をあらわすで、言葉の定義についても、基本法ができた後は、やはり文科省としても、より明確に、考えて規定していくべきではないかなと思うんですよ。

 さて、体育の日をスポーツの日とする、日本体育協会も日本スポーツ協会の方がふさわしいのではないかなという議論について、大臣なりにどのようにお考えですか。

高木国務大臣 馳委員にお答えをいたします。

 スポーツと体育については、今御指摘のとおり、午前中の議論にもありまして、鈴木副大臣の方から答弁をしております。

 私どもとしましては、大きな意味でむしろ、まさに、国内というよりも世界を視野に入れた大きな範囲でのスポーツ、こういう認識をしなきゃならないと思っております。

 体育の日をスポーツの日に改めたらどうかという御提言でございますが、これはこれで一つ御意見として承っておきますが、いずれにいたしましても、やはりスポーツの役割というのは、もちろん個々人の気力、体力、あるいは健康をつくることから始まって、地域のコミュニティー、そしてまた我が国の活力、そして世界の皆さん方との交流、これにとって非常に大きな役割を果たしてまいります。

 したがって、馳委員はスポーツに大変詳しいお立場におりますけれども、我々としても、このスポーツ基本法の議論を大きな一つのばねにして、我が国の政府としても、力を入れるそういう施策の一つに位置づけなきゃならない、このように思っております。

馳委員 さて、体育というと、社会体育と学校体育、それから、学校における体育、教育的な側面を考えると、実は、部活動の位置づけというものもございます。部活動の顧問、監督の過剰負担といったものが教職員にやはり重荷を乗せているのではないかというふうに指摘をされております。

 大臣は、この部活動の顧問のあり方について、今後何らかのやはりインセンティブを乗せていった方がいいんじゃないかな、そういうふうなお考えはありませんでしょうか。

高木国務大臣 後で笠大臣政務官が答弁いたしますけれども、私も、部活動に携わる先生の存在というのは、極めて重要なものがあろうかと思っております。本来の学校の教職員の皆さん方が当たられるケースもあれば、あるいは、ほかに仕事を持たれて、その仕事の終わった後にそういうことで指導される方々もおります。特に、青少年に与える指導者の役割というのは、大変なものがあると私は認識をしております。

 こういったボランティアにしても、安全面とかあるいはまた継続性を考えますと、やはり何らかの配慮も必要ではないかな、そのように個人的には思っております。

馳委員 では、笠政務官にお聞きしますが、部活動は教育課程の中に位置づけられていますか。

笠大臣政務官 学習指導要領において、部活動については、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。」という形で位置づけられているというふうに理解しております。

馳委員 つまり、明確な教育課程としての位置づけではなくて、学校教育の重要な活動の一つとしての位置づけという認識だと思うんです。

 でも、これは、保護者や部活動を頑張っている子供たちの立場に立てば、けががあってはいけない、事故があってはいけない、放課後や土曜、日曜などの休日に行われる活動、どう考えても、安全管理というものは必要になってきますよね。もう一つは、運動部の活動となると、やはり大会などの目標があって、それに向けて計画的な指導がなされなければならない。こういうことになってくると、より専門性が部活動の顧問にも求められると思います。

 では、部活動の顧問の専門性の研修について、これはやはり中学校や高校という言い方をした方がいいと思いますが、文部科学省は、今まであるいは現状においてどのような指導をしておられるでしょうか。

布村政府参考人 お尋ねの部活動の指導者の資質の向上は、体育の授業の資質の向上と含めて、特に体育の先生方につきましては、県のレベルあるいは市町村のレベルで、しっかりとした研修を組んで指導性を高めるという努力をしております。

 部活動につきましても、外部の専門家の方々に来ていただいて、教員の方々がより指導能力を高める、あるいは、より安全な部活動につなげる、そういう観点から、設置者である学校あるいは教育委員会におきまして適切な対応をしていただいているというふうに認識しております。

馳委員 では、笠政務官にお聞きをします。甲子園塾というのは御存じですか。

笠大臣政務官 私は、今回質問の通告をいただくまでは、正直、存じておりませんでした。馳委員からの御質問をいただき、それでそのことについて知ったところでございます。

馳委員 私も、実は昨年十二月の後半、甲子園塾に参加してまいりました。日本高野連それから都道府県の高野連が非常に協力をし合いながら進めておられる野球部の指導について、その指導者の育成について、毎年二回から三回行われるんですが、大体一回当たり五十人ずつです。そうすることによって、受講した先生が地元に戻って、周囲の先生方にその情報を共有し教えていく。なかなかよく練り上げられた研修方法だなというふうに納得をいたしました。

 では改めて、勉強された笠政務官、なぜ高野連は甲子園塾を始めざるを得なかったか御存じですか。

笠大臣政務官 高校野球の部活動顧問が、プロ野球球団からの金銭の受け取りをめぐって、これが大きな社会問題となりました。こうしたことを受けて、改善策をみずからしっかりとやっていこうということでこうした活動が始まったというふうに私は理解しております。

馳委員 では、次は鈴木副大臣に聞いた方がいいと思いますが、部活動の指導者がプロ球団あるいは大学関係者から金品等の物をもらったり接待を受けたりすること、これは、公平で公正なスポーツのあり方としてふさわしいと思いますか。

鈴木(寛)副大臣 今御議論いただいています基本法の精神に照らしても、ふさわしいとは思いません。

馳委員 するとここで、事前に言っておきますが、ちょっとこれはひっかけ問題ですから。

 私学は、建学の精神があって、建学の精神に基づいて特待生を受け入れるんだという主張をした場合には、公平や公正という議論とはまた一つ次元の違う議論に入ってしまうんです。公立高校もあれば私立の高校もあり、私立の高校の経営理念、教育理念、建学の精神に基づいての特待生というふうな制度をやっているんですよと主張されたときに、我々スポーツ関係者または文部科学省としても、また、こうやってスポーツ基本法をいよいよ世の中に打ち出そうとしているときに、どのように整理をしたらよいんだろうかというふうに私は思っているんです。

 副大臣としてはどのようにお考えになりますか。

鈴木(寛)副大臣 まず大前提として、学校教育法というのがあります。それに基づいて、学校とは何であるかということが、中学、高校、特に高校ですけれども、決まっているわけであります。単位なども学習指導要領において決めています。高校でありますから、それをきちっと履修するという前提がまずあって、そして、そこが損なわれていればこれはもう高校教育ではありませんので、そこはきちっと確保されていなければいけないと思います。

 その上で、まさに先ほど笠政務官からも御紹介させていただきましたが、学習指導要領に定められた範囲で、あるいはその位置づけで部活が行われている。

 それは、建学の精神、あるいは公立高校でも、例えば、国際的な教育に重点を置くような高校、あるいは、スーパーサイエンスハイスクールというような大学並みの実験設備を擁した高校、これは公立、私学問わずございます。そして、そこに対して今、公的な、そして私的な奨学金制度がございます。その一環として、私学が奨学金的色彩で授業料についての減免を行っていくというふうな範囲といいますか、そういう考え方に基づくものであれば、それは一つの特色ある教育の一環というふうに位置づけてよいのではないかというふうに考えております。

馳委員 でも、そこがやはり一定の自主的なルールが必要ですよねということで社会問題になったものですから、高野連としても、五人ぐらいまでですねとかというルールを決められたんです。高体連も私は一緒だと思います。最近はリトルリーグなんかでも活躍する選手もいますから、中体連においても同じような趣旨が必要だと思うんです。

 これは布村局長に聞いた方がいいと思いますけれども、やはりエスカレートするのはよくないですよ、選手の獲得について。しかし、奨学金的な考え方、特待生としての考え方は、学校教育の独自性としてあってもいいと思います。ただし、エスカレートしないように、やはりルールに基づいて、まさしく公平で公正なシステムが働くべきだと思うんです。そこを文科省としても確認する作業が私は必要だと思うんです。でないと、いたずらにエスカレートして、お互いにつつき合いになっちゃうんですね。局長、いかがですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 馳先生おっしゃるとおり、部活動につきましては、教育的な活動という範疇で、その趣旨を損なわないということに各学校において十分留意をしていただきたいと思います。

 現在、高野連におきましても、各私立の野球部の実態を踏まえて、一学年五人以内の特待生という一定のルールを自主的に決められたという状況でございますけれども、高野連の検討の過程で、文部科学省におきましても、逐次報告をいただきながら、万が一行き過ぎたような場合があれば適切に御指導申し上げる、そういう対応はしてまいりたいと考えております。

馳委員 私も今、専修大学レスリング部の監督として、選手のスカウトに全国走り回っております。やはりいい選手が欲しいので、虎屋のようかんぐらい持っていきますよ。これは社会的な儀礼でしょうけれども。

 ただ、大学側と話をして、私の部は専修大学において三人までしか特待生は認められていない。そうすると、選手の御家庭の経済事情をお伺いしながら話し合いをし、私は今まで、秋田、山形、先週は三重県、今度は長野県へ行ったり愛媛県へ行ったりするんですよ。こうやって足を運んで直接話をしながら、合意を得ながら、最終的に進学を決めていくというふうにしているんです。毎年そういうふうにやっているんです。

 先ほど布村局長もお答えいただいたように、一定のルールがあって、そういった特待生のあり方も公平に公正なシステムで認められるという、そこはやはりやっていただきたいと思うんです。

 野球の話にまた戻りますが、プロ野球の球団が中学、高校の段階から親子、監督丸抱えで接待をしたり接触したりするような姿は、二度とやってはならないという決意のもとでルールづくりを確認していっていただきたいと思います。

 実は、甲子園塾、私も受講してまいりましたが、資料を四枚、ペーパーを出しました。これは、こういうことをやっているんだということで皆さんにもお示しをしたつもりです。高校野球ばかりではなく、中学、高校、大学を含めて、部活動の指導者として、この程度はやはり研修をし理解をしておかなければいけない内容なんだろうなと思ってお示しをいたしました。

 一ページ目は実施要項でありまして、ここでポイントとなるのが「趣旨」のところです。「高校野球のよき指導者となるために、高校野球の歴史、規則、指導者としての心構え、指導方法を研修する。」二つ目が、「受講者同士の交流を深め、指導者としてのネットワークづくりの一助とする。」三つ目が、「都道府県連盟、審判員とのよりよき関係について研修する。」そして四つ目が、「全国大会を視察し、指導者としての予備知識を体得する。」

 ここでさらにポイントとなるのは、「経費の負担」ですね。旅費は都道府県の高野連、宿泊、食事費などは日本高野連が負担すると。

 二枚目に二泊三日のタイムスケジュールが載っております。野球に詳しい奥村先生でも、野球に詳しくない方でも、なるほど、新人部員の指導についてとか、体罰についてとか、不祥事についてとか、こういうやはり学生の管理についてもしっかり研修するということは、意味があると思います。

 三枚目をお開きいただければ、残念ながら、この技術・振興委員会委員長の尾藤先生は先般お亡くなりになられまして、近々、どなたかにまたおかわりになるそうであります。ここの技術・振興委員とある山下智茂さんというのは、星陵高校の元監督で、実は私の恩師でもありまして、馳君、ぜひこういう活動を参考にしていただきたいということで、私も受講させていただいたところであります。

 四枚目です。実は、一番きょう紹介したかったのが四枚目のレジュメのことなんです。

 大臣もバスケットボールで活躍されました。高校時代の部活動において何を学ぶのか、まさしく教育的な側面が大きいという意味、ここがやはりスポーツの範疇の中でも特筆されるべきだと思います。

 ここに、枠で囲んでありますけれども、例えば、「甲子園を目標にしながらの人間形成」、「プレーを通じた精神教育」、カバーリングは守備におけるマナーであり、バントは攻撃におけるマナーであり、全力疾走は控え選手へのマナーであり、バットを投げないというのは協力者へのマナーであるなどとか、あるいは、「言い訳の癖をなくす」、私なども見習いたいと思いますが、県立だから私学に勝てないというのは、それじゃないよと。「地域の協力者や生徒との縁を大切にする」、「進学校の生徒・親の長所を最大限にいかす」。

 当たり前といえば当たり前ではありますが、改めて、公立高校、私立の高校を含めてこういう精神を学んでいく、まさしく教育的な役割というものは多いものがあると私は思い、大変私自身も勉強になり、私は大学でのレスリング部の指導をしておるわけでありますが、非常に参考になりました。

 改めて、大臣も、スポーツの範疇における体育、そして、学校体育においては体育の授業と部活動がある。そして部活動は、当然、自主的、自発的な意思に基づいて行われるべきもので、強制されるべきものではない。そんな中でのこの指導者の研修について、御見解をいただきたいと思います。

高木国務大臣 甲子園塾について、私も不勉強でございましたが、きょう質問をいただいて、改めて、こういうものがあった、そして、その内容についても御紹介がございました。

 そういう中で、それぞれ実績を残した学校の指導者の皆さん方、お歴々だと私は承知をいたしておりますが、このレジュメの中にも書いておられます。私も、改めてみずからの一つの参考として、生涯的にこういうことは大事なことだろうと思っております。

 私も高校時代にバスケットボールの部活動をした経験がございますが、いわゆる、学校の教室では学べない、別の意味の、例えば、上級生、先輩のことの関係とか、あるいは下級生、後輩の人間関係、あるいは、まさに一つの目標を目指してチーム一体で頑張る、あるいは、部活動の先生は決して担任ではありませんが、担任の先生以上のいろいろなまた指導、こういったものは、私はみずからの半生を考えてみますと、非常にいい経験であったなと、このように思っております。

馳委員 今、大臣がお示しいただいた観点と、もう一つ、これはスポーツ基本法にも絡んでくる話ですが、安全であり、そしてけがとか事故というのは、これは実はつきものなんですよ。いかにそれを予測して、事前に準備をしてそうならない方向に持っていくかという部分を研修することと、事故や不祥事が起きた後に、どのようなルールでそれを修正、修復、取りまとめていくかということを指導者に学ばせるべきだと私は思うんです。これがないと非常にやはり人間関係がこじれてしまいますし、起きてはならない事故によって生涯を棒に振ってしまうようなこともございます。

 当然、新しいスポーツ基本法にも、スポーツにおける紛争の処理についての規定が設けられるところであります。来週にもこれについてはまた議論をさせていただきたいと思いますが、指導者みずからの研さん、研修によって、より成果の上げられるような部活動にしていっていただきたいということを改めて申し上げておきます。

 では次に、スポーツにおける国際戦略の強化についてお聞きしたいと思います。

 二〇一六年東京オリンピック・パラリンピック招致の失敗、二〇二二年サッカーワールドカップ招致の失敗と、相次いでビッグイベントの招致に失敗しております。もちろん、JOCや日本サッカー協会が主導であるべきことは言うまでもありませんが、国際戦略という観点から考えて、より国としての支援があった方がよかったのではないかという反省も指摘をされております。

 文部科学省としての御意見を伺いたいと思います。

鈴木(寛)副大臣 おっしゃるとおり、こうした大きな大会の招致というのは、まさに国ぐるみで、大変熾烈をきわめている状況にございます。

 私どもも、二〇一六年東京オリンピック・パラリンピックの招致がコペンハーゲンで敗れた後に、二〇二二年のサッカーワールドカップにつきましては、招致の段階から政府部内に関係副大臣会合を設置いたしますとか、あるいは、これまでは招致活動に対して国あるいは公的な支援というのは行っておりませんでしたが、二〇二二年のサッカーワールドカップの招致からはそれについても行わせていただきましたということ、それから、これまでも政府の関係者が招致委員会の顧問という形では入っておりましたけれども、今回は、副委員長ということで入らせていただいたわけでございます。

 しかしながら、サッカー二〇二二年ワールドカップ招致においてもカタールに敗れるという結果となってしまいましたことは大変残念に思っておりますが、これは、スポーツ基本法、あるいは我々が定めましたスポーツ立国戦略でも、やはり、この招致活動についての国一体となったあり方、体制強化については大変重要な課題だというふうに考えておりますので、このきょうの御議論、国会の御指導をいただきながら、強化をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

馳委員 二〇一九年ラグビーワールドカップ招致には成功しました。その勝因は何だと思いますか。

鈴木(寛)副大臣 馳先生を初めとする、携わられた方々の熱意というふうに思っております。

馳委員 鈴木副大臣、残念ながらそれは間違っています。

 国際大会の招致というのは、青少年を初め、国民が間近で本物を見ることができる。それから、経済波及効果もあります。最近余りこういう言葉は使われませんが、国威発揚といいますか、日本人もやればできるじゃないかという活力を国家的に与えることもできますが、そういう目標があるとしながらも、誘致に成功するには、段階があって、その段階においてハードルをクリアしていかなければいけないんですよ。

 鈴木副大臣、簡単にお伺いします。二〇一九年ラグビーワールドカップ招致に成功したのは、どの段階で、どの会議で、だれが賛成してくれたから成功したと理解しておられますか。

鈴木(寛)副大臣 それはあれでしょうか、国内での会議のことをおっしゃっているのか国際的な会議をおっしゃっているのか。

 国内においては、これまでの、ラグビーに限らずいろいろ、もちろん、オリンピックの場合は福岡と東京、こういうことがありましたが、決まった以降は、皆さん協力して携わってきたというふうに思います。

 国外の活動においては、さまざまなところでの、特に国際ラグビー協会での強い御支持と御指導といいますか、御支援といいますか、そうしたものが大変有力であったというふうには理解をいたしているところでございます。

馳委員 そうなんですね。IRB、国際ラグビー連盟の招致を決める会議で過半数を得たから、我が国は二〇一九年にラグビーワールドカップを招致することができるようになったんですよ。つまり、国際連盟の会議において、日本で国際大会を開催することに合意を得る調整力が働いて最終的に決まったということなんですよ。

 そうすると、国際大会の招致に何が必要かということが透けて見えてくるんですよ。鈴木副大臣、何が必要だと思われますか。

鈴木(寛)副大臣 やはり、それぞれのスポーツの国際的なコミュニティーにおいて、トップレベル、事務レベル、そしてプレーヤーレベル、あらゆるレベル、あらゆるグループにおいての人脈と、そして、人脈というのは一日にしてできるものではありません。さまざまなそのスポーツ界全体の発展にいかに貢献をしていくか、そういうことの積み重ねだと思いますけれども、そのような活動をやはりきちっとそれぞれしていくことだというふうに思っております。

 ちょっと余談になりますけれども、今回、例えば世界体操選手権、震災にもかかわらず御決定をいただきました。それから先般も、年末、サッカーのクラブワールドカップ、これも御決定いただきました。いろいろな困難があるときに、やはり、日ごろ培ってきた人脈というのは大変重要だなということを改めて痛感をしているところでございます。

馳委員 やっと私の期待するお答えになってきまして、やはり人脈なんですよ。そして、人脈といっても、毎年あるいは二年に一回ぐらい、日本を代表する役員が出ていっては、人脈をつなぐことはできません。そして、私はさっきちょっと笑い話で虎屋のようかんみたいな話をしましたけれども、なかなか空手ではそういった国際社会の交流も行っていくことはできません。

 しかるべき立場で、しかるべき発言力と知名度のある方が、そこまででもだめなんですね、その次の段階があるわけです。どういう説得力を持って調整をし過半数を得ていくかということの重要性を、ここを戦略として私は文部科学省に考えていただきたいし、そのためには、情報収集能力は必要です。

 それを集約できるようなコントロールタワーが私は文部科学省だと思っているんです。あるいは、文部科学省と意を同じくして活動できるJOCかNAASHか、どちらかだろうなと私は思っているんです。我が国のスポーツに関する組織を見る場合のリーダーシップを発揮するのは、文科省を頂点にしながらも、NAASHかあるいはJOCか。

 私は、このピラミッド形における文科省のリーダーシップは極めて重要だと思っているんです。なぜか。これは簡単です。文科省の大臣は基本的に政治職でありますから、調整能力を持っておりますし、言葉は悪いですけれども、国際社会の中においても顔がきくわけですよ。国会議員である、そして大臣であるという中での交渉能力というものは極めて高いものがあると思います。

 私は、そういう意味で文科省も、スポーツ立国戦略も読ませていただきましたが、ここをもうちょっと肉づけをしていただければ私はありがたいなと思っているんです。

 スポーツに関する団体は幾つもございますけれども、国際戦略、国際大会の誘致ばかりではありません。いろいろな会議等もございます中で、人材を発掘し育成し、継続して国際連盟に送り出していくというふうな役割は、やはり文部科学省がリーダーシップをとらなければいけないのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木(寛)副大臣 基本的に、おっしゃるとおりだと思います。

 したがいまして、おくればせではございますけれども、来年のロンドンに向けましては、ロンドンの強化を図るために、私が本部長となって、そして岡田武史さんに実行委員長ということになっていただいて、今、NAASHかJOCというお話がありましたが、NAASHもJOCもJISSもというオール・ジャパンの体制を組んでおります。

 それから、勝田副委員長にはこの四月から文部科学省に常駐をしていただいて、そうした来年に向けての体制を組んでおります。

 そうしたことをこの第一歩として、今馳委員おっしゃいました国際的な戦略、これをきちっとやはり統括して立てていくこと、非常に必要だなというふうに思っております。

 歴代文部科学副大臣あるいは政務官がWADAの委員になってきております。なかなか国会等々で毎回出席できるわけではないというところが少し残念ではございますけれども、しかしながら、そのことが、アジアにおける我が国のスポーツドーピングの地位の確保等々にはやはりつながっているのかなということも実感をいたしますので、もう少し積極的にこうしたことを取り入れて広げていくということは大事かなと思います。

 ただ、いかんせん、残念ながらこのところ、なかなか固定したメンバーでこの委員をやれないということが、これは別にスポーツだけではございませんけれども、我が国のガバナンスの問題としてありますけれども、おっしゃっていることは、基本的にそのとおりだと思います。

馳委員 そこで、今、副大臣もお示しいただいた国立スポーツ科学センター、JISSの情報戦略の役割というのは、今までるる議論してきた戦略を進めていく上で、まずはいち早く情報収集し、分析し、戦略を立てて進めていく上で、極めて役割が重要ではないかと思います。スポーツ立国戦略を出された中でも、ここの機能強化について書かれてありました。

 今現在、今後、この情報収集、分析、戦略の立案、政策の実行、これについてのお考えをお聞きしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 国立スポーツ科学センター、JISSにおきましては、スポーツ情報研究部が他国の戦力分析などに取り組んでいるところでございます。

 先生御指摘のとおり、今後は、これらに加えまして、国際競技団体に関する情報の収集や、他国の国際スポーツ大会の招致戦略の分析など幅広い取り組みが必要であり、スポーツ情報研究部のみならず、JISS全体で、また、JOCともよく連携しながら取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。

馳委員 布村さん、とてもよい答弁をしていただいて、ありがとうございます。

 そこで、これは一回、私は鈴木副大臣にも申し上げたことがあると思うんですが、JISSの所長の人事ですよ。ここをやはりきっちり文科省としても押さえておかなければいけないと思うんです。なぜか。

 確かに、スポーツ医科学の分野において、情報収集についての、言葉は悪いですよ、文科省の下請のような仕事をしているようにも思われますが、そうじゃない。JISSとしての役割を考えれば、政策を立案し、そして国策をリードしていくという使命感を持たせる上でも、私は、大臣、JISSの所長は正々堂々と文科省からも出向させるぐらいの大胆な人事によって機能強化を図っていく必要があると思っているんですよ。いかがでしょうか。

高木国務大臣 いわゆる国際競技大会などの誘致も含めた国際戦略については、これまでもそれなりの努力はされておりましたけれども、やはり、御指摘のような状況も一部に言われております。

 したがいまして、私どもとしましては、JOCそして競技団体も含めて、国際戦略を進めるその体制のあり方、これについてはしっかりと考えていかなきゃならないと思っております。

馳委員 そこで、現状をちょっと追及します。

 現在のIOC及びFIFA、国際サッカー連盟、ここに役員として日本人委員が何名いて、その方々の任期はどれくらいか、教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 国際オリンピック委員会の委員としては岡野さんと猪谷さんがお二人いらっしゃいますけれども、いずれの方も、ことしいっぱいで定年の八十歳になられるという状況でございます。

 また、日本サッカー協会の会長の小倉さんもFIFAの理事をしておりますけれども、今月いっぱいが任期になってございます。

馳委員 八十歳定年というのもびっくりするような話ですが、これは国際ルールですから、いたし方ありません。

 では伺います。岡野さんと猪谷さんの後任、FIFAの小倉さんの後任は決まっていますか、それとも決まっていませんか。見通しは立っていますか、見通しは立っていませんか。お伺いいたします。

布村政府参考人 国際オリンピック委員会の関係の後任につきましては、日本オリンピック委員会としては、ぜひ日本人からIOC委員を出したいという気持ちは強く持ってございます。日本オリンピック委員会としての見通しは持っておりますけれども、それが確実にIOC委員になれるかどうかのところまではまだ明確には申し上げられないと思いますし、また、国際サッカー連盟、FIFAにつきましても、同じような状況かと思います。

馳委員 大臣、お聞きいただいたように、猪谷さんと岡野さん、IOC委員を八十歳定年でことしじゅうに任期は終わってしまうんです。後任は決まっていないんです。小倉さんについても、任期が終わった後、決まっていません。後でちょっと紹介しますけれども、日本サッカー協会としてもちょっと下手を打ってしまって、後任は決まっていないんです。

 つまり、国際的なスポーツ団体の役員として日本人がいたにもかかわらず、いない状況になってしまう。その後任についての選任とか、また、それを選任と言ったって、これは選ばれるわけですから。過半数の合意を得て会議で決まるんです。根回しもされていなかったんですよ。

 今後の国際大会の招致ばかりではありません。日本がスポーツを国家戦略として世界に貢献していこうとしている中において、余りにもスポーツ外交戦略が整っていない、いなかったということを反省しなければいけないと思いますが、大臣いかがですか。

高木国務大臣 できるだけ我が国の方が、世界の、IOCを初め各競技団体の中枢に存在するということは、これは極めて重要なことでございます。その後任についても、絶え間なく人材の育成をそれぞれの団体でも図っていかなきゃなりませんけれども、そういうところに空白ができるということは、非常にこれは懸念されることでございます。

 私たちとしては、できる限りそういうポジションに我が国の方がなっていただけるように、文部科学省としても、関係団体とも十分連携をとって最善の努力をしなきゃならぬと思っておりますし、また、体制もさらに強めていく必要があろうかと思っています。

馳委員 ここは、実務を担当される鈴木副大臣あるいは布村局長、今の大臣の決意というものをやはり大事にしていただきたいというのが私の願いなんです。

 ちょっと、IOCの委員枠についてお伺いします。IOC委員の構成はどのようになっておりますか。それぞれの委員枠の人数を含めて教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 国際オリンピック委員会の委員の枠組みにつきましては、オリンピック憲章におきまして、まず、総数が百十五名以内というふうに決まっております。そしてその内訳として、個人から成る個人枠が七十名以内、アスリート委員枠が十五名以内、国際競技団体等の代表枠が十五名以内、国内オリンピック委員会等各国のオリンピック委員会の代表枠が十五名以内というふうに規定されているところでございます。

馳委員 実務的なことですから、布村局長にまたお伺いします。

 猪谷さんと岡野さんが任期を終わった後、今のところ、お示しいただいた委員構成の中で、どの枠でだれが委員になれるかという見通しは立っていますか。立っているはずなんですけれども、それをわかっていて聞いているんですよ。だれですか。

布村政府参考人 御指摘の猪谷さん、岡野さんは、お二人とも、個人枠という形でIOCの委員になってございます。

 また、今後、日本としては、個人枠あるいはまた国内オリンピック委員会の枠というもので手を挙げていければという気持ちは持ってございますけれども、人事にかかわることでございますので、ここでどなたがというのはなかなか申し上げにくいというのが実情でございます。

馳委員 局長の立場で言いづらいと思いますから、私の立場で言いますよ。これは報道もされていますから、私の立場で言えると思うんですね。いわゆる、JOCの竹田会長ですよ。竹田会長がなるとすれば、これはNFの枠、NOCの枠ですよね。

 そこで、竹田さんがNFの枠、NOCの枠で来年ロンドン・オリンピックのときの総会で入ったとして、年齢的に何年間委員を務めることができるか、御存じですね。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、猪谷さん、岡野さんにつきましては八十歳の定年制が適用されておりましたけれども、今後委員になられる方は七十歳の定年ということで、先ほどお話があった方は六十代前半であったかと思います。

馳委員 そうしたら、まあ私が名前を言う分には大丈夫だと思いますので、竹田さんが委員となったとしても、六十代前半とはいっても、そうはいっても、五、六年後に同じことが繰り返されるんですよ。だから戦略と体制が必要だということを大臣に御理解いただき、今のうちにその体制を整備しておいていただきたいという、それこそ戦略ではありませんかということを実は申し上げているんですよ。

 さて、では次の問題に移りますと、実はアスリート委員枠というのがありまして、十五名、これは毎回候補を出せるのではありませんか。

布村政府参考人 御指摘のように、先ほどアスリート枠十五名というふうに申し上げましたけれども、欠員が生じるごとに、オリンピックの大会でオリンピック参加選手の投票によって決まるという形の選出方法になってございますので、毎回、日本人から立候補することは可能という実態です。

馳委員 そこで、二〇〇二年冬季ソルトレーク・オリンピックと二〇〇六年冬季トリノ・オリンピックで荻原健司元参議院議員が立候補しましたが、残念ながら、二回とも落選しています。その後、二〇〇八年北京オリンピックで室伏広治選手が立候補しておりますが、落選しております。

 このアスリート委員の立候補そして落選という事態において、文科省は何らかの指導あるいはサポートをいたしましたか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 オリンピックの選手枠の、立候補された荻原選手それから室伏選手の件につきまして当時の状況を確認いたしましたけれども、文部科学省において十分な支援は行えていないという実態でございました。

 また、お尋ねになかったかもしれませんけれども、JOCについても、なかなか組織的な応援という形は十分にはとれていないというふうに認識しております。

馳委員 二〇〇八年北京オリンピックのアスリート委員選挙においてトップ当選を果たした韓国のテコンドーの金メダリスト、この人はアテネ・オリンピックの金メダリストですね。毎日、選手村のレストラン前で試合用のユニホームを着て名刺を配り、笑顔で握手をし支援を求めていたんです。それから、そのほかにも当選したアスリート委員の選手の中には、選手村の中に選挙対策本部を設置して支援態勢をとっておりました。これらのことは何を意味するのか。

 今、文科委員会に出ている先生方は、うなずきながら話を聞いておられますよね、選挙のプロのおれたちに聞いてくれれば。そうなんですよ。アスリート委員は、欠員が出れば、毎回、オリンピックの大会ごとにアスリート委員選挙がなされるんです。そこでは何が当選の要素になるのかということも、これも国際戦略の分析の一つではありませんかということを私は言いたいんですよ。

 布村局長、したがって、JOCが一義的な責任があるかもしれないし、あるいは文科省としても何か支援ができるかもしれないし、我々国会議員というのは、みんな選挙のプロみたいなものですよ。政治家の選挙に強い人、ここに遠藤さんもいますけれども。これはそこまで真剣に取り組まないと、スポーツの国際団体の役員として籍を置いて、情報を収集し発言力を持っていくことはできないという現実なんですよ。そこまで韓国のこのテコンドー選手は、韓国を挙げて取り組んだんです。

 ここは、今後の文科省としてのリーダーシップを発揮する上においての一つの戦略のポイントになると思われるんですが、いかがですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの荻原選手の件で、正式な敗因分析まではいけておりませんけれども、当時の状況を確認しますと、選手の投票による選考のため、冬季のオリンピックの場合には、参加選手数の多いアイスホッケーなどの団体種目の出身の選手が有利であったり、それから荻原さんの場合には、選挙の際には同じノルディックの混合競技の参加選手数が少なかった、そういう実態もあるようでございますので、そういう参加する選手あるいは投票する選手の情報を収集して分析すれば、より確実な形で票を得る、そういうことも先生の御指摘のとおり可能かと思いますので、そういう反省の上に立って、今後またJOCとよく連携しながら取り組んでいきたい。

 これまで、委員候補として立候補される話も事前に余り文部科学省には来ていなかったようでございますので、その辺のお互いの連携もよく工夫していきたいと思います。

馳委員 実は、FIFAの理事についてもそうですよね。

 小倉さんが国際サッカー連盟の理事を今年度でおりることを受けて、ことし一月に開催されたアジアサッカー連盟の総会で田嶋副会長が立候補しました。しかし、残念ながら、アジア選出の二枠に入ることができませんでした。アジアサッカー連盟の総会には四十五カ国が参加をし、それぞれ二票ずつの投票権を持っております。その中でアジア選出の二枠に入ったのは、タイとスリランカ、それぞれ二十四票と二十三票を獲得しており、田嶋副会長は十九票で落選をいたしました。つまり、票読みの段階において戦略的に負けていたんですよ。

 大臣、ここがやはりポイントになってくるんです。FIFAの役員をとるのに、たかがアジアのサッカー連盟の理事の枠からとらなきゃいけないのかよと思いますが、そうなんですよ。そこを戦略的に組み立てていくからこそ発言権を持つことができるし、その発言権が国際大会の招致にも密接にかかわってきたりルール変更にもかかわってくるという、実は、スポーツの世界において重大的な国際戦略にかかわるということを指摘を申し上げているんです。

 FIFAの理事選挙の問題は、一競技団体の問題とは片づけられない側面を有しているのは、これは、鈴木副大臣もサッカーワールドカップ招致にかかわって、よく御存じだと思います。今回のアジアサッカー連盟の総会では、西アジア連盟と東アジア連盟の闘いとも言われましたが、結果として、東アジア連盟の中国、韓国、日本は全敗したんです。負けてしまったんですよ。

 そう考えると、国際戦略を掲げる上で、アジア諸国の中でリーダーになっていく。そのために、日本のプレゼンスを高めて、協力、貢献活動を推進していく必要があるし、発言力のある人材を国際社会に送り込んでいく。そのためだったら、JICAであろうと外務省であろうとユネスコであろうと、何でも言い過ぎますが、国際的な外交戦略を総動員するぐらいの連携が必要になってくるし、そうなるとやはり、文部科学省のリーダーシップは避けては通れないというか、必要になってくるんですよ。ここのやはりポスト、体制、戦略づくり、そのための情報収集を進めてほしいということなんですね。

 最後に私の提案というか、政務三役は言いづらいと思いますので、はっきりと申し上げて、最後に大臣の見解をお伺いしたいと思います。

 私は、まず国内のスポーツ団体の連携が必要だと思います。これは、文部科学省がトップになり、JOC、JISS、NF、NAASH等との連携をしながらも、文部科学省が絵を描いていく、シナリオづくりをする役割があると思っています。そして、それを統括していくためのポイントを、やはり文部科学省が人事も予算も握るべきであると私は明言したいと思います。

 その上で、招致については、最新情報、領収書の要らないお金も時には必要です。政務三役は言いづらいでしょう、この話。ロビー活動、人脈、語学、アピール力、そして、やはり経済的に考えても、損得勘定のそろばんをはじけるようなことも必要です。私は領収書の要らないお金と言いましたけれども、ロビー活動をするには、そこまでして身を削って、わかりやすい意味で言えば、自分のお金を削ってでも参加し人脈をつくり、相手の合意を得る作戦というものは必要なんですよ。

 そう考えると、日本の場合には、特定のお金を持っている人、その人の実力だけにすがって、全く国家戦略もなく進められてきたんじゃないんですか。だからポストにみんなしがみつくんですよ。ポストにしがみつくようなことをさせてはいけないということを私は言いたいんです。

 改めて、ちょっと言い過ぎたかもしれませんが、大臣のスポーツにおける国際戦略の考え方についての決意を伺って、私の質問を終わります。

高木国務大臣 馳委員は、今、約一時間の間、国際戦略についてさまざまな方向からの質問がありました。

 私もしっかり聞かせていただきまして、我々がやるべきことは、やはり、国際的に人脈をいかにして常日ごろからつくる努力をしていくことか。それにはいろいろなツールがあると思っておりますけれども、できるだけのツールをそろえて、そして、粘り強くしたたかに挑戦をする意気込みを持って取り組まなければならない、このように痛感をしておりますし、ある意味では、その中心的な役割を果たさなきゃならないのがやはり文部科学省だ。

 と同時に、今議論がされておりますスポーツ基本法を含めたスポーツの振興の国民的な議論をバックに、支持をバックに、これから一層の努力をしていかなきゃならぬ、こういう思いをいたしております。

馳委員 終わります。どうもありがとうございました。

田中委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 きょうはスポーツ施策等の諸課題についてということですが、実は、先週の十八日水曜日、予算委員会の理事として岩手県の方の視察を担当させていただきまして、宮古から釜石まで、沿岸部をずっと視察してまいりました。

 最後の釜石市で、中学生と小学生が一緒に避難して全員助かったというところを、たまたま現場を見ることができまして、そこでいろいろ説明を伺いました。その件について、震災での質問ができませんでしたので、まず質問させていただきたいというふうに思います。

 釜石東中学校と鵜住居小学校というのが、大槌湾から鵜住居川というのが少し入ってきているんですが、その真ん前に二つ並んで建っていました。裏手が山で、避難の道というのは片方にしかずっとないんですね、見てみますと。

 地震があった直後に、中学校のグラウンドでサッカーの練習を始めようとしていた子供たちが、余りの地震の大きさに、これは避難しなきゃいけないということでわっと走り出して、それを見て校舎にいた生徒たちが続いて、中学校のお兄さんたちがばっと逃げたので、隣の小学校の子供たちは三階に一たん上がったらしいんですが、それを見て追いかけていった。避難場所にされていた五百メートル先のところまで児童生徒がたどり着いたんですが、その裏手の山が崩れかけていたということで、中学生がここも危ないということで、もっと高台にということで全員で移っていった。

 石材屋さんがあったんですが、たまたまそこも行かせていただきましたが、そこを目指してみんな行って、ここは高いから安全だと。その石材屋さんのちょっと上に、たまたま三月五日に開通した有料道路が高架式で建っていたんですね。そこの上まで逃げて、五百六十二人全員が助かった。

 その有料道路は、実は、鵜住居小学校の子供さんたちを開通式に呼んでいて、この子たちは有料道路の上で風船を飛ばしていた。ここが一番高いところで、大槌湾を見渡せるということで、体験としてわかっていたらしいんです。先生たちに言われないのに子供が先に飛び出して、両校の子が助かった。釜石市では本当に大勢の方が亡くなったけれども、三千人の児童生徒、学校に来ていたお子さんたちは全員助かったということで、幾つか報道されていました。

 いろいろ見てみますと、群馬大学の片田先生という方が、何年も前から防災教育を釜石市の皆さんと一緒になって小中学校でやっていて、文科省の防災教育支援推進プログラム、これは平成二十年から二十二年までのモデル事業だったようですが、昨年度は、このモデル事業によりまして、市内の小中学校全学年で防災教育プログラムを片田先生を中心に実施した。ちょっとホームページからプリントアウトしたんですが、これは九十ページ、「津波防災教育のための手引き」、釜石市案というのがあるんですが、各学年ごとに、どんなふうなことをしたらいいか、どういうことを教えていくかというのが実に詳細、物すごいいい手引になっています。これをやったということで、中学校や小学校の子供さんたちが自分たちで判断できた。

 片田先生が後で振り返っていますけれども、避難所の地図を親子でつくったりした。この中学校と小学校は一緒に並んでいますから、避難道路も一本しかないので、合同の避難訓練もしていた。釜石の地区はもう何度も大津波に襲われていますから、大津波の史跡があるんですね。そこもきちんと、ここまで津波が来るというところを三十八カ所に置いてあるそうで、そこも全部自分たちで見ている。

 ところが、ハザードマップから外れたところだったのに、この小中学校は全部浸水しちゃったんです。マニュアルをきちんと教えたけれども、マニュアルどおりにはいかないんだということをきちんと防災教育で受けていて、最後は自分の判断で逃げないと助からないよというところをかなり強調して指導していた。

 東北地方の言葉で津波てんでんこという言葉を小学生の間から何年もかけて教えて、このてんでんこというのはどういう意味なんだ。てんでんばらばらに、もう家族のことも捨てて、とにかく自分の命は自分で助けるんだ、まず自分で逃げる。家族で避難の経路とかやっても、子供さんが学校にいるときお母さんと一緒にいませんから、子供は子供で逃げる、お母さんは子供のところへ行くんじゃなくて自分で逃げるんだということをきちんと小中学校でずっと教えてきた。この成果で今回助かったというふうに言われているんです。

 この津波てんでんこという言葉を聞きまして、私は千葉県の銚子の生まれなんですが、銚子の利根川の河口に、銚子川口てんでんしのぎという言葉がある。全く同じなんですね。銚子の利根川の河口は物すごい波が荒いですから、もし何かあったときに隣にいる人を助けようと思ったら自分が死んじゃう。自分の命はまず自分で守るんだというのがてんでんしのぎの由来だと思うんですが、釜石にも同じような言葉が明治の津波のときからずっと続いていたということで、やはり浜の地域というのは、命を守るための独特のあれがずっと続いてきているんだなと。

 これを文科省の防災教育の中でたまたまやられていた、防災用のプログラムとして釜石市が採用していたということはすばらしいことだと思うんですが、大臣、釜石市の奇跡というふうに報道している新聞もあるんですが、小中学生が全員無事だったという防災教育支援プログラムの成果についてどう感じられますか。

高木国務大臣 富田委員におかれましては、現地の視察をされて、あるいは見舞いをされて、今、釜石市の東中学校、鵜住居小学校の避難の実態についてお話をいただきました。まことに心が打たれるといいますか、本当に大変な状況の中でよくも子供たち、児童生徒が行動したな、このように私、本当にある意味では頼もしく、うれしく思っております。

 学校の管理下で亡くなった児童生徒は一人もいなかった、こういうことはまさに日ごろの防災教育といいますか、委員が触れました、マニュアルにはとらわれない、いわゆる生きた防災教育が日ごろからなされておった結果だろうと私は思っております。

 そういう意味で、こういった津波など災害を受ける可能性の高い海岸近くに併設している両校は、合同で避難訓練を定期的に実施しておるということ、あるいは、津波の来襲時には中学生が訓練どおりに小学生を助けたり、あるいは避難支援をしたり、こういう適切な避難行動がとられた、こういうことだろうと承知をいたしております。

 私は、この事例はまさに本当に教訓に生かすべきものだと受けとめておりまして、実際の避難訓練あるいは防災教育、こういったことを多くの方々にも紹介する機会をとりたいし、今回の事例として今後にしっかり残されるべきだ、このように思っております。

富田委員 実は、これは、平成二十年度の文科省の防災教育支援推進プログラムということで、二十年度の概算要求段階では新規事業ということで三億円の概算要求をしているんです。すごくいいことが書いてあるんですが、我々自公両党は反省しなきゃいけないんですけれども、概算要求で三億の要求があったのが、実際に二十年度予算では八千八百万に削られちゃっています。十カ所でのモデル事業ということで、たまたま釜石市が二十年度に津波を対象にしてこの事業をやったんですね。

 これは、もともと二十年から二十四年まで概算要求で文科省は出していたんですが、削られまして、二十年から二十二年までになっている。二十二年でこれは終わっちゃっているんです。残念ながら、民主党政権になって多分これが入らなかったんだ。自公がやったことはみんな悪いことだみたいな雰囲気が一時ありましたからね。

 これは本当にいいことなので、しかもこれだけの成果が出たわけですから、ぜひきちんと検証していただいて、来年度予算なり、また二次補正等いろいろ考えられるんでしょうから、東海地震、東南海地震、南海地震が予測されているわけですから、それぞれの地域で同じように、モデル事業からでもいいですから予算をつけて、子供たちに対する津波に対する避難訓練、そういったところを、この群馬大学の片田先生からいろいろアドバイスいただくなりして、きちんと予算化していくべきだと思うんですが、大臣、その点どうですか。

高木国務大臣 特に災害時に安全な行動ができるように、そういった力を身につけておくという防災教育というのは極めて重要でありまして、今回、特にそのことは改めて痛感をしております。

 既に、防災教育における教材やあるいは参考資料については、それぞれ作成をしながら配付をしてきておりますけれども、今回は、またそういうことについてもう一回、それも見直しながら、本当に生きた防災訓練、こういったことになるように、私たちとしてはしっかり、予算も含めて考えていきたいと思っております。

富田委員 大臣から、予算を含めてという答弁をいただきましたので、ぜひそうしてもらいたいと思います。

 昨日、文科省の方では、施設整備基本方針と施設整備基本計画の改正について発表されましたよね。その中で、やはり津波に襲われる地域については、児童生徒の避難経路を確保するということも明確に書かれています。避難経路の確保だけじゃなくて、その避難経路をきちんと児童生徒がたどれるように、そういった訓練も含めて、この基本計画の中で実施していっていただきたいと思いますので、その点、ぜひよろしくお願いします。この質問はこれで終わります。

 午前中来、オリンピック招致の話、また、先ほど馳委員の方からは、国家戦略で立ち向かっていかなきゃいけないんだという話を聞いていて、そのとおりだというふうに思いました。

 昨年の十一月二十九日から十二月三日まで、私もチューリヒに行かせていただきまして、今横にいらっしゃる遠藤先生と鈴木文科副大臣と御一緒したんですが、残念ながら、二〇二二年FIFAワールドカップ招致については負けてしまいました。カタールが勝利された。

 プレゼンテーションで鈴木副大臣は、非常に流暢な英語で、またサッカー選手からもいろいろ声をかけられるようなところもあって、プレゼンは絶対勝ったと私は思ったんですが、残念ながらその前段階が負けていたし、先ほど馳委員が言われたように、根回しの部分で相当だめだったのかなというふうにも思います。

 鈴木副大臣、正直言ってどこが敗因だったというふうに今感じられていますか。

鈴木(寛)副大臣 富田委員には、身銭を切って遠藤委員ともどもチューリヒに駆けつけていただいたこと、本当に改めて感謝申し上げたいと思います。

 先ほど来議論になっておりますけれども、やはり、国際的なネットワークというものを本当に日ごろからきちっと構築していかなければいけないなということを痛感いたしたところでございます。

 敗因ということで申し上げると、先ほど馳委員からも御指摘のあった点も含めてのネットワークづくりということと、それから、二〇二二年の招致ということだけで申し上げると、二〇〇二年に引き続き二回目であった。一方、カタールは中東で初ということでありましたし、同時に決まりましたロシアも東欧での初ということで、サッカー人口をそうした十分にサッカー人口が多くない地域に広めていこうという大きな流れはあったかと思います。

 それともう一つは、決勝あるいは準決勝で使うとされているいわゆるメーンスタジアムについて、日本は、それ以外のクラスのスタジアムについては二〇〇二年のレガシーといいますか遺産がございますので、そこについては十分しっかりしたファシリティーを擁しているということを提示できたかと思いますが、肝心のといいますか、まさにファイナルの大規模スタジアムについて、これがまだできていないということ、これがどうなるのかということ等々、構想は、今御指摘いただいたように、関係者の皆様方のすばらしい御提案でいいものができたと思いますが、それについての裏づけというものを十分に固め切れなかったということではないかと思っております。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

富田委員 スタジアムの部分は、プレゼンの前から、理事の皆さんが事前に調査した報告書の中でも指摘されていましたし、そのとおりだと思います。

 また、招致にかける予算も、二〇〇二年に比べると十分の一以下ということで、先ほど馳委員は、領収書の要らない金も要るんだというふうに言われていましたが、領収書のある金すら足らないという、予算的にも非常に規模が小さかったし、そういった意味で、国民的なコンセンサスもなかったのかな、ちょっと無理をしたのかなという思いもあるんです。

 小倉さんたちが随分指摘されていましたけれども、政府保証の件でもかなりFIFA側からはいろいろ言われたと。これは、我が国の憲法とか財政法の関係で、いまだきちんとしていないものについて債務負担はできない。また、FIFAの方からいろいろな要求が出てくるけれども、税制改正とか法改正が必要で、具体化しない限り日本の法制度の中ではできない。でも、FIFAはそれを各国に要求して、それを全部こなしていく国の方が有利になる。先ほどの馳先生の戦略の一つだと思うんですが。

 こういったところも少し考えていかないと、二〇〇二年のときには直前に全部やったんですね。いろいろ、法律改正から債務負担についても、間に合わなくなるということで国会でわあっとやったんですが、今回はそういうこともできなかった。そういった意味で、大きな大会をやるときに政府の保証のあり方というのも、やはり文科省を中心に考えていく必要があると思うんです。

 もう一つ、鈴木副大臣たちが出席されたプレゼンテーションの後に、実は岡野俊一郎さんと二時間ほどお話しする機会がありました。

 そのときに岡野さんが、今回のようなやり方ではやはり難しいんじゃないか、日本というのは、どうしてもいいとこ取りに行く、大きなものをとろうとする。例えば東アジアの女子サッカー、そういった大会を日本でやってくれと言うと、やっても価値がないというか、余り興行的な価値もないしどうかなとなっちゃうし、理事会の前段階を日本の会議場でやらせてくれと言っても、そういった負担を日本はすごく嫌がる。表に見えない小さなことを、どうもちょっと日本の国民的な感覚として嫌がっていると。岡野さんのこれまでのずっと歴戦の経過からいくと、そういったことを一つ一つ積み重ねていくのをFIFAの理事たちというのはみんな見ているんだと。

 先ほど馳先生は、文科省が中心になって一つずつやっていくべきだというふうに言われましたけれども、やはりそういう部分も本当に大事だと思うんです。

 そういう意味で、先日、鈴木副大臣が総理のところにブラッターさんを連れていかれましたけれども、クラブワールドカップ、この冬にやるということで、もともとは前身はトヨタカップだと思うんですが、ああいうものの積み重ね、そういう中で、またFIFAの皆さんも来られるでしょうから、日本で今後開催するときには本当に大丈夫なんだというようなことをどうプレゼンしていくかというのはすごい大事になると思いますので、そのあたり、小さなことの積み重ね、また政府保証のあり方について、大臣なり副大臣、ちょっと感想がありましたら。

鈴木(寛)副大臣 おっしゃるとおりで、今回ももちろん、求められたものについては、皆様方の御理解を得て、全部対応をさせていただきました。しかしながら、アメリカと日本はどうしても、政府の財政保証のことを招致の段階からコミットする、最後、決まれば出すんですけれども、招致の段階からコミットするということができませんでした。

 これは、二〇〇二年のときも、私もJAWOCの委員をやっておりましたし、当時は通産省でありましたが、招致に携わって見ておりましたけれども、あのときも、招致段階では必ずしもそういうコミットではなかったと思います。しかし、決まった後はやる。日本というのは、決まればちゃんとやる国なんですけれども、決まる前からそういったことについてのコミットをするということに、どうしても政策形成過程上、そういう特質といいますかはございます。

 しかし、そのことが一つの課題ということは我々も認識をいたさなければならないというふうに思っております。

 それからもう一つ、岡野俊一郎先生の御指摘は、本当に大事な御指摘だと私どもも思っております。女子のワールドカップなどもございます。あるいはアンダー20とかアンダー17とかそういう大会の招致など、あるいはいろいろな理事会などの運営、あるいはそういうテクニカル、メディカルのサポート、やはりこうしたことの積み重ねというのは非常に重要だと思います。

 それで、二〇〇二年のときは、そのときは、では文科省、財務省、つき合っていたかというと、決してつき合ってはいなくて、むしろそのときは日本の民間企業にそうした御負担、御協力をかなりお願いしていた。これはサッカーだけじゃなくて、日本のスポーツ全体がこれまで、やはり企業にいろいろな意味でおんぶにだっこといいますか、お願いをしてまいりました。いろいろな人的な関係あるいはいろいろな経済的なサポートを含めてですね。

 しかしながら、この十年間、日本の企業がそれだけの持ち出しがなかなかできなくなってきたという中で、それを埋める存在というものがない中で、そうしたものがかなりできなくなってきている。そこを他の国が国一体となって、特に中東の国などは、まさにロイヤルファミリーも一体となっておやりになっている、こういうのが実態であろうかと思っております。

 したがいまして、今回のスポーツ基本法の御議論を通じて、本当に国民全体として、そうしたものの負担のあり方、御協力のいただき方ということを御議論いただいて、やはり、市民、国民の皆さんからそうしたドネーションも含めて集めていくというようなことの可能性を探っていくということも大事ではないかなというふうに思っております。

 もちろん政府も、こうした問題についてきちっと正面から、これまで企業任せにしてきた部分というものを、政府としてやるべきものはきちっとやはりやるんだという御議論もぜひ深めていただきたいし、我々も深めてまいりたいと思っております。

富田委員 ぜひよろしくお願いします。

 あと、残りも五分ありませんので、最後に、日本相撲協会の件についてちょっと質問したいと思います。

 先週の五月二十日付の日経新聞で、「年寄株の売買容認 相撲協会方針」、独立委の提言見送りとか、「文科省、指導の可能性」という形で大きく取り上げられていました。二月に、日本相撲協会の公益法人化に向けての改善策ということでガバナンスの整備に関する独立委員会が答申をしています。この答申の提言を見送るんだというようなことを相撲協会が決めたということを報道しているんですが、これは事実かどうかわかりません。文科省も、もしそうだったら指導するんだというような報道になっています。

 大臣の方で、改革実現に向けた工程表を出すようにというふうに御指示をされていると思うんですが、その工程表が出てくるまでの中で、こういったふうに年寄株の売買についても容認、師匠と協会理事の兼務禁止についてもこれまでどおりだ、また、五十ある相撲部屋を三十程度に減らせという案についても、これもなかなか受け入れがたい。ただ、事業内容の改善など新公益法人移行に当たり法律上必要な改革は、独立委員会の提言を基本的に受け入れるというような報道になっています。

 ちょっと事実関係がまだはっきりしませんので何とも言えませんが、仮にこういう工程表で出てきた場合に、大臣としてはどんなふうに指導していく所存でしょうか。

高木国務大臣 御承知のとおり、先週まで技量審査場所という名をもって十五日の取り組みが終了されております。この評価は、それぞれ観戦をした皆さん方の思いはまちまちであると思っておりますが、専門家からは、かなり緊張感のある力のこもった勝負が見られたということも聞き及んでおります。したがって、国民あるいはまたファンの信頼を回復して、一日も早く本場所が開催されるように私たちは望んでおります。

 御指摘の点につきましては、これは日本相撲協会として、ガバナンスの整備に関する独立委員会が本年二月に取りまとめた答申の提言を踏まえて、現在、改革の実施に向けた具体的な工程表を作成していると聞いております。

 したがって、具体的な工程表の内容を決定したとの報告はいまだ受けておりませんで、今後の動向を見守ってまいりたい、このように考えております。

富田委員 実は私も、もともと弁護士ですので、相撲協会の関係で大麻事件が起きたりあるいは野球賭博が起きたときに、私の経営している法律事務所の方で幾つか関与させていただきました。

 そういった意味で、相撲協会なりこういう独立委員会の方の法曹関係者の動向をいろいろやったりしたこともあります。だから、その経験を踏まえると、委員会の皆さんの考え方がすべて正しいというふうには思えません。かなり踏み込んだ、きちんとした改革案を出していただいているのも本当にいいと思います。

 ただ、年寄株の扱いのところなんかの提言を見ますと、では、どうすればいいんだというところまで踏み込んでいないんですね。年寄株の譲渡について金銭の授受がある、これはやはり公益法人化に当たってはおかしいと。それをおかしいというふうに指摘されるのはいいんですが、では、現実に、今まで何億円か出して取得している人からその株を取り上げちゃうのか、協会が預かって協会の方できちんとするのか、そういったところの具体的な踏み込みまではないんですね、全部読ませていただきましたけれども。

 そういったところも踏まえて、今後、公益法人化したいのであれば、一層の透明性が求められると思いますので、相撲協会側の努力も本当に必要だと思うんですが、何か相撲協会が全部悪いんだみたいな、ちょっと偏った報道もありますので、そういったところは、その工程表が出てきたときに大臣の方できちんと指導していっていただきたいというふうに思います。

 また工程表が出てきましたら、この委員会等でも議題になると思いますので、そのときに質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松宮委員長代理 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 スポーツ基本法にかかわって、その中心的な柱の一つである高水準の競技スポーツの問題と、スポーツ振興のための財源措置、予算の増額等の問題できょうは質問をしたいと思います。

 今回の東日本大震災の復興あるいは救援、こういう活動に、卓球の福原愛選手あるいはプロ野球楽天の田中将大選手ら、日本のトップ選手が被災者を激励するなど、こぞって大きな役割を発揮しております。

 私は国会のラグビー議連のメンバーでありますけれども、震災で壊滅的な打撃を受けた岩手県釜石市では、北の鉄人の異名を持つ釜石シーウェイブスの屈強なラガーマンたちが、震災直後から被災者支援に奮闘しているという姿が報道されました。また、国際的にも、世界フィギュアスケートやヨーロッパサッカーなどで義援金を募るチャリティーが開催をされております。

 こうしたスポーツ選手の災害支援にかける熱い思いと連帯には、心から勇気づけられるものがあります。被災地に炊き出しの応援に入った大相撲のある力士は、被災者から初めて笑えたと言ってもらい、すごくうれしかったと語っておられます。

 こうしたスポーツ選手による支援行動が毎日報道されておりますが、競技に専念し、社会に連帯する、ここにスポーツ精神にのっとった崇高な役割が発揮されていると私は思うんですが、まず大臣の見解をお聞きしたいと思います。

高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、今回の東日本大震災において、各被災地に励ましの気持ちを持って、トップアスリートを初めスポーツ関係者の皆さん方、あるいは団体の皆さん方、それぞれの思いで激励に当たっておること、あるいはもちろん募金も含めてですけれども、そういう姿を見ると、私、本当に心を打たれます。特に、被災者の皆さん方に不自由な生活の中でも夢と希望を与える、本当にすばらしいことだろうと思っております。

 さすがに、スポーツマン精神といいますか、お互いにチームプレーを大事にしながら困難にめげずに頑張るという、そういう思いがそれぞれに伝わってくるようでございます。

宮本委員 こうしたトップスポーツ選手、高水準の競技者の活動を社会の財産として激励、支援していくことが極めて大事でありまして、スポーツ基本法の根幹をなす問題の一つであると私どもは考えます。しかし、我が国では、高水準の競技スポーツ、そして選手や指導者の役割、社会的な位置づけがあいまいなままにされてきた面があるんですね。

 現行のスポーツ振興法では、スポーツの水準の向上のための措置、あるいは顕彰、あるいは競技技術の活用など幾つかの施策は示しておりますけれども、位置づけは極めて不十分であると私どもは思うんです。大臣の御見解はいかがでしょうか。

高木国務大臣 御指摘のように、まさに高水準のスポーツ選手の育成については、現行法上の位置づけは必ずしも明確ではないと認識をいたしております。

 文部科学省としては、トップスポーツ選手の育成のために、財団法人日本オリンピック委員会が行う選手強化事業への支援などを行っております。これらの施策の充実を努めてまいりたいと思います。

宮本委員 この高水準の競技スポーツの位置づけが、今大臣もお認めになったようにまだまだ不鮮明なために、この分野でも、社会的な支援の制度や措置が本当に求められていると思うんです。

 先日、私は、二〇一九年のラグビーワールドカップの日本開催問題で、日本ラグビーフットボール協会とも懇談をさせていただきました。お伺いすると、その準備に相当苦労されているという状況もお伺いしたわけです。

 一つは、企業がスポーツから撤退しているために、選手の養成が安定しない、安定して競技に打ち込めないという問題がございます。また、就労との関係もあって、遠征や対外試合、国際試合に出場するのに経済的負担がかかる。経費がかかるので国際試合もなかなか招致できない。秩父宮や花園には立派なラグビー場があるんですけれども、それ以外は大変少なくて、グラウンドコンディションも悪いために、けがが多い。ナショナルトレーニングセンターもまだまだ整備がおくれている。このような状況に置かれているということを、直接お伺いもいたしました。

 今、ラグビーの話をしましたけれども、他のスポーツも同じような環境に置かれていると思います。

 競技団体は、選手強化に懸命な努力をしておりますけれども、社会的な支援策が講じられていないことがやはり決定的であると一様に語っておられまして、スポーツ界の共通認識になっていると思うんです。

 こうした環境整備にかかわる施策を抜本的に講じる必要があると私どもは考えますけれども、この点での大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 今回のスポーツ基本法に対する超党派の議連の取り組みは、まさに国民レベルで、スポーツの役割、あるいはスポーツが果たす国民生活への寄与、また国際社会における平和あるいは連帯、こういったことに大きく力を持つものであるという議論の高まりを私は期待しております。

 したがいまして、スポーツに励むそういう方々、特にトップアスリートなどの社会的位置づけについても、ある意味では物心両面でしっかりしたものになる方がいいことにこしたことはございませんで、我々としても、何らかの方策についても今後とも検討しなきゃならぬと思っております。

宮本委員 大臣は御存じだと思うんですけれども、フランスにはスポーツ法典というものがございます。一九八四年に制定をされて、二〇〇六年に改定をされております。

 参考になる条文が幾つかあるんです。例えば、このフランス・スポーツ法典の第二編「スポーツ選手」の第一章「ハイレベルのスポーツ」第八条には、次のような規定が置かれております。

 スポーツ担当大臣は、企業委員会の意見を受け、公私の企業との間で協約を結ぶ。この協約は、ハイレベルスポーツ選手の雇用及び転職を促進するためのもので、企業との関係において規定するとともに、ハイレベルのスポーツ選手に対して、トレーニングや競技会参加を可能にする特別な勤務条件を保証し、職業教育及び職業的地位向上を促すことを目的とする。協約期限満了時における選手の再就職あっせんの条件についても協約に規定されるというものであります。

 我が国も、高水準の競技スポーツの多くが企業に依拠しているのが現状であります。それだけに、フランスのスポーツ法典なども参考にして、企業スポーツ選手、指導者、チームなどの活動保障と支援の施策を講じていくように努めることが大事だと私たちは考えるんですけれども、大臣いかがでしょうか。

高木国務大臣 御紹介のありましたフランスのスポーツ法典、お聞きをいたしました。

 各国の法制度あるいは行財政制度は必ずしも一律ではありませんので、我が国において、フランスのスポーツ法典にあるハイレベル選手への支援策などが同様の法制度の中で採用できるかどうか、これは慎重に検討する必要があると考えております。

 しかしながら、我が国の国際競技力の向上を図るためには、プレーヤーズファーストの精神、国際競技の最前線に立つトップレベルの競技者、そしてまた、その指導者に対するきめ細かい支援というのを充実させることが必要であろうと考えております。

宮本委員 こうした社会的な支援がまだまだ我が国では明確でない状況のもとで、高水準の競技スポーツ選手あるいはコーチは、一方ではオリンピックなどでのメダル獲得目標をスポーツ振興基本計画で定められて、押しつけられていると私たちは考えるんですけれども、そういう状況にあるわけですね。

 そもそも、オリンピックでどのような成績をおさめるか、メダルの獲得や上位入賞などの目標を追求する活動は、本来的には競技団体が自覚的、自主的に進める活動であり、国がメダルなどの目標を定め、それをあおるというやり方は、これはやはり本末転倒のやり方だと私たちは言わざるを得ないと思うんです。国の立場は、その目標達成への努力に対して必要な支援をしていくというのが基本的立場であるべきだと考えます。

 こうしたメダル獲得を目標で、数で押しつけるというやり方をやはりこの際根本的に見直して、国や地方公共団体は、高水準の競技スポーツのさらなる水準向上に必要な支援に力を注ぐべきだと私たちは考えますが、この点についての大臣の御見解を聞きたいと思います。

高木国務大臣 各競技のメダル獲得、上位入賞等の目標は、それぞれの大会において各競技団体が定めております。国はそれを踏まえた上で、トップアスリートの適切な支援のための国としての目標を掲げておりまして、各施設の充実に取り組んでおります。

 文部科学省では、平成二十二年八月、スポーツ立国の戦略でありますけれども、これを策定いたしまして、「今後の夏季・冬季オリンピック競技大会について、それぞれ過去最多を超えるメダル数の獲得を目指す。」などの目標を掲げたところでありますが、これは、各競技団体を統括するJOCが、二〇一六年オリンピック夏季大会で世界第三位の金メダルを獲得することを掲げていることなどを踏まえたものでございます。

宮本委員 私は、今ここにスポーツ振興基本計画という中での、スポーツ振興施策の展開方策、政策目標という文書も持っておりますけれども、もちろん、JOCと無関係に決めたとは言いません、しかし、相当細かく、「メダル獲得率が一・七パーセントまで低下したことを踏まえ、」云々とか、「早期にメダル獲得率が倍増し、夏季・冬季合わせて三・五パーセントとなることを目指す。」というふうに、数値も含めて書き込まれているわけです。もちろん、それぞれの競技団体が目標を数で持つことは当然でありますけれども、振興基本計画の中にこういう数値まで盛り込むと、どうしても国がそういうことをあおり立てているというふうに言われかねませんので、この点はやはりしっかりと配慮する必要があるというふうに思うんです。

 我が党は、高水準のスポーツの健全な発展を目指すための支援として、高水準にある競技者がオリンピック等国際的な競技大会で活躍を目指す活動については、スポーツ団体等の要請に基づき、必要なトレーニング、遠征、派遣、大会への出場などに対し支援が講じられる必要があると考えます。

 また、オリンピックに出場したなどの競技実績は顕彰されるとともに、スポーツの文化的発展の遺産として、指導、研修などを通じて社会に還元される必要があると考えます。

 さらには、高度な水準を目指す競技者の養成強化は、選手の安全と人権の尊重、心身の健全な発達に即した医科学的なトレーニングの享受、諸民族との相互理解を促進するものとして奨励されなければならないとの条文をぜひとも定めるべきだという提案をさせていただいてまいりました。

 きょうは参考のために御紹介申し上げましたけれども、このような規定が盛り込まれることを強く期待したいと思っております。

 さて次に、スポーツ活動と地球環境の保全との一体化の問題を聞きたいと思います。

 スポーツ交流の活発化と大会等の巨大化によって、大規模開発と結びついたスポーツ施設の建設、あるいは野外スポーツによる自然環境の荒廃と破壊などが懸念されております。この点でオリンピック憲章は、「環境問題に関心を持ち、」「持続可能な開発を促進すること。」を明記しております。こうして自然に優しいスポーツの探求が問われ、地球環境を守る世界の運動と共同してあらゆる努力をしていくことが求められております。

 二十一世紀のスポーツのあり方として、自然環境、生活環境とともに地球環境に配慮し、その保護、保全に寄与すべきものであると私どもは考えますけれども、この点での大臣の御見解を聞きたいと思います。

高木国務大臣 屋内スポーツあるいは屋外スポーツ、最近では特に野外でのスポーツの活発化が目を見張るようでございます。

 御指摘のオリンピック憲章においては、国際オリンピック委員会の役割として、「環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、」「特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること。」こういうことが触れられておりまして、スポーツと環境問題の兼ね合い、環境への対応というのは非常に重要な課題になっております。

 スポーツ基本法は、その意味で、議員立法として検討されておりますので、文部科学省としては特にコメントはありませんけれども、御容赦いただきたいと思っております。

宮本委員 先ほど来、オリンピック招致の議論もされております。私どもは、オリンピックの招致については、それぞれの住民の方々の理解、そういったものもありますから、頭から招致すればするほどよいという立場ではありませんけれども、しかし、今本当にそういう国際競技大会を日本に招致したいと思えば、やはり地球環境の保全という理念をしっかりと掲げている国だということを世界にアピールする必要があると思うんです。

 その点でも、これはむしろ本当に、こういう世界で議論になっていることを私たちの国のスポーツ基本法案にも盛り込むというのは非常に意義あることだということを申し上げておきたいと思います。

 さて次に、スポーツ振興のための財源確保と予算の増額についてお伺いをいたします。

 前回の質疑の冒頭にも強調いたしましたけれども、スポーツ基本法という名前の法律をつくるのであれば、スポーツの振興や推進に果たすべき国と地方公共団体の責務は非常に大きいです。そして、それは口先で宣言するだけではなく、そのための財源確保と予算の増額についても法文上担保しなければならないと考えます。

 と申しますのは、平成十三年に文化芸術振興基本法という法律が既に制定をされております。これは同じく文化芸術について大いに振興する、そのための基本法としてつくられたものでありますけれども、この法律がつくられた後も、残念ながら文化関係予算は平成十五年度以降横ばいでありまして、現状でも一千億円を超える程度で推移をしております。

 昨年、私もこの委員会で取り上げましたけれども、文化芸術予算については、人間国宝でもある野村萬日本芸能実演家団体協議会会長らが先頭に立って、劇場や路上で、また駅頭などで署名活動を行い、国家予算に対する文化予算の割合をせめて〇・五%にと訴えました。その署名は六十万筆を超え、国会に提出をされました。しかし、今年度の文化芸術予算は〇・一一%と、前年度と変わりがなかったわけであります。

 文化芸術振興基本法がありながら、抜本的に予算をふやせていないということについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。

高木国務大臣 先ほど、スポーツ振興予算との関連で、文化芸術振興基本法の制定の経緯、文化予算の増額についてもございました。

 御承知のとおり、平成十三年の文化芸術振興法の制定後十年間の文化予算、文化庁の予算というのは約百二十二億円の増額となっておりまして、去る二月に策定されました文化芸術の振興に関する基本方針を踏まえて、平成二十三年度の文化庁予算は過去最高の総額一千三十一億円を確保しております。

 文部科学省としては、スポーツと並んで文化芸術立国という実現を図っておりまして、文化予算の予算を初め、これに負けないぐらいの、またスポーツ予算の確保についても一層頑張らにゃならぬな、このような思いをいたしております。

宮本委員 ちょっと再確認したいんですけれども、もちろん、わずかながらでもふえているということに異議を挟むつもりはないんですけれども、当事者の方々は本当に、せめて諸外国並みに〇・五%というような運動もされているわけです。

 だから、やはり当事者の方々にしてみたら、文化芸術振興基本法の理念にかなうような抜本的な増額はまだされていない、してもらえていないという思いが現場の方に多いですし、私たちも、例えば率などで見たときにはほぼ横ばいであって、いや減ったとは言いませんよ、横ばいであって、いわゆる文化芸術振興基本法にふさわしいものにはなっていない、これは言わざるを得ないと思うんです。

 今の文化予算で十分だとお感じになっていますか。そんなことはないでしょう。大臣いかがですか。

高木国務大臣 我々としましては、なお増額が望ましいわけでございますが、今後、さらに一層、予算の確保について努力をしていかなきゃならぬと思います。

宮本委員 そうなんですよ。なお努力しなきゃならないんです。

 そのなお努力しなきゃならないものに比べてもスポーツがおくれているということはありますけれども、そのなお努力しなければならない文化程度にスポーツを持っていくというのではだめなのであって、文化ももちろん思い切ってふやすわけですけれども、やはりスポーツについても、このたび、もしスポーツ基本法というものができれば、しっかりと抜本的な予算の拡充を進めなければならぬと思うんです。

 ところで、文部科学省のスポーツ関係予算というものは、現状は一体幾らになっておりますか。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

高木国務大臣 議員御指摘の平成二十三年度のスポーツ予算でありますが、スポーツ立国戦略の策定後の初年度となる重要な年でありました。我が国のスポーツ予算としては過去最高となる二百二十八億円を計上したところでございます。

宮本委員 過去最高がお好きなようですけれども。

 かつてに比べて額が最高かどうか、それはあるんですけれども、しかし、実際にそれが、今求められているスポーツ、我が国におけるスポーツの振興、推進にふさわしいものかどうかが問われていると思うんです。今年度二百二十八億円と、ふえたのはわずか一億円の増額だと思うんです。私どもは、余りにもこれは少な過ぎると。

 そこで、諸外国と比較をする議論をしたいんですけれども、諸外国では学校教育費は入っておりませんので、学校教育費を除いたスポーツ関係予算額を、日本、イギリス、フランス、韓国、この四カ国について、それぞれお答えいただきたいと思います。

高木国務大臣 我が国の学校体育を除くスポーツ予算としては、平成二十年度で見ますと百五十八億円となっております。

 各国のスポーツ予算の比較については、これは制度の違いなど、単純な比較は困難な面があると私は思っておりますが、民間の調査によりますと、イギリスは平成十九年度で二百四十九億円、フランスは平成二十年度で二百六十三億円、韓国は平成二十年度で百三十億円であります。

宮本委員 今も民間とおっしゃいましたけれども、国際比較を行うために学校教育を除いた額の比較をしたものがございます。笹川スポーツ財団が出しているスポーツ白書二〇一一、これは国際比較をする場合にわかりやすいと国会図書館が推奨してきたものであります。

 これによると、今お話があったように、日本は二〇〇八年で百五十八億円、イギリスは二〇〇七年で二百三十五億円、フランスが二百三十四億、この資料では韓国が百四十九億、こうなっております。韓国より少し高いぐらいで、イギリス、フランスの三分の二にしかすぎない。しかも、このスポーツ白書は述べていますけれども、三カ国ともこれらの国の人口はいずれも日本の半分以下なんです。としますと、結局、国民一人当たりでは日本は極めて少ないと言わざるを得ない状況だと思います。

 大臣、この認識は共有できますか。

高木国務大臣 午前中から午後に至りまして、スポーツ政策についてきょうは御議論をいただきました。スポーツの持つ意義あるいは役割については、これは我が国のみならず国際社会の中でも今後大変重要な政策の柱にしなきゃならぬと思っております。

 まさに夢と希望を、感動を与えるスポーツ、そして、国の活性化とあわせ、しかも今、東日本大震災で被災された方々の励ましも含めて、我々としてはこの議論を通じながら、必要なスポーツ振興予算の確保について、これは全力で取り組んでまいりたいと思っております。

宮本委員 日本の体育・スポーツ予算は極めて少ないわけです。だから、文科省がスポーツ振興基本計画でメダルの目標を掲げて幾らあおってもなかなか実効が上がらないわけですよ。さらに社会的な支援、バックアップが必要な選手強化、競技力向上に係る補助も少ないために、もっと増額してほしいという切実な声が、競技関係者やスポーツ関係団体から寄せられております。

 国として、抜本的に予算を確保、増額する、財源確保をしっかりする。我が党は、そのためにスポーツ基本法の法文上もしっかりとそのことを規定すべきだと考えているわけでありますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 財政状況が厳しいながらも、私どもは、この基本法の議論を一つの大きなばねにいたしまして、さらに予算の確保についてこれからも努めてまいります。

宮本委員 今回、競技力の向上に必要な社会的支援のあり方の問題、それからスポーツ予算の確保の問題、それから国際的には、もう既にスポーツと切っても切り離せない問題になっている地球環境の保全という問題、こういった基本問題を取り上げてまいりました。

 我が国のスポーツの発展を促進し、それを奨励、支援するためには、ほかにも、スポーツの担い手、愛好者や選手、指導者などの人権の保障等々、検討しなければならない重要問題は少なくありません。それらについても我が党は、今後も引き続き本委員会で取り上げて、改善のために努力をしていきたいと思います。

 そのことを表明して、第二回目の質問を終わります。

田中委員長 次回は、来る二十七日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十九分散会


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