衆議院

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第14号 平成23年6月1日(水曜日)

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平成二十三年六月一日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 糸川 正晃君 理事 高井 美穂君

   理事 野木  実君 理事 松崎 哲久君

   理事 松宮  勲君 理事 下村 博文君

   理事 馳   浩君 理事 池坊 保子君

      石井登志郎君    大山 昌宏君

      奥村 展三君    金森  正君

      川口  浩君   木村たけつか君

      城井  崇君    熊谷 貞俊君

      笹木 竜三君    瑞慶覧長敏君

      高野  守君    中屋 大介君

      平山 泰朗君    村上 史好君

      室井 秀子君    本村賢太郎君

      山田 良司君    笠  浩史君

      和嶋 未希君    あべ 俊子君

      遠藤 利明君    河村 建夫君

      塩谷  立君   田野瀬良太郎君

      永岡 桂子君    古屋 圭司君

      吉野 正芳君    富田 茂之君

      宮本 岳志君    城内  実君

      土肥 隆一君

    …………………………………

   議員           奥村 展三君

   議員         田中けいしゅう君

   議員           藤村  修君

   議員           遠藤 利明君

   議員           塩谷  立君

   議員           下村 博文君

   議員           馳   浩君

   議員           池坊 保子君

   議員           富田 茂之君

   議員           宮本 岳志君

   議員           城内  実君

   文部科学大臣       高木 義明君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   文部科学大臣政務官    笠  浩史君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          山中 伸一君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            磯田 文雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            藤木 完治君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       梅田  勝君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           雨宮 宏司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           杉浦 信平君

   文部科学委員会専門員   佐々木 努君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  松野 博一君     吉野 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     松野 博一君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 スポーツ基本法案(奥村展三君外十六名提出、衆法第一一号)

は本委員会に付託された。

六月一日

 スポーツ基本法案(森喜朗君外五名提出、第百七十四回国会衆法第二九号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 スポーツ基本法案(森喜朗君外五名提出、第百七十四回国会衆法第二九号)の撤回許可に関する件

 スポーツ基本法案(奥村展三君外十六名提出、衆法第一一号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 第百七十四回国会、森喜朗君外五名提出、スポーツ基本法案につきまして、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

田中委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長山中伸一君、高等教育局長磯田文雄君、研究開発局長藤木完治君、スポーツ・青少年局長布村幸彦君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長梅田勝君、農林水産省大臣官房審議官雨宮宏司君及び国土交通省大臣官房審議官杉浦信平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 さて、早速質問に入らせていただきます。福島県の小中高校のプールの使用基準の問題についてお伺いをしたいと思います。

 放射能汚染ということで、運動場の使用について、学校生活における子供が許容される放射線量についての議論がかまびすしくありますが、夏に向けて、学校においてはプールの利用がございます。部活動でもございます。これについて、今、文部科学省として定まった基準というのはございますでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学校のプールに防火用などでたまっている水の排水が今当面の大きな課題として存在してございます。

 この排水についてどうするかについて、関係省庁や、また福島県の教育委員会などとも調整を図っているところでございまして、国においてプールの水を排水する法的な規制は存在しないということから、現在、福島県の教育委員会において、下水道部、下水道を管理する部局あるいは農業用水を管理する部局等と調整をいただいているという状況にございます。

馳委員 国交省の審議官、来ていただいておりますね。下水道へ流されるプールの排水の基準について、何らかの規制というのはあると考えてよろしいでしょうか。

杉浦政府参考人 済みません、きょう御質問を直接いただいていなかったものですから、失礼しました。

 特に規制があるというふうには承知をしておりません。

馳委員 これは、保護者の心配という、ここの一点に尽きると思うんですね、大臣。プールを使用してもよいのかと。

 当然、使用するためには、冬の間防災用に水を張ってあった、それを流さなければいけない。今何か、下水道の基準はないというふうにお示しいただきました。これはやはり基準が必要だろうなと私は思います。と同時に、農業用水などに使われる可能性もあるので、それはやはり、地元の農業用水を管理している団体は、ちょっと待ってくれよ、国の方針を示してからにしてくれよとおっしゃるはずです。

 したがって、きょうは文科委員会ですから、大臣、プールを使用してもよいのかどうかについて、設置者である市町村に任せるのではなくて、やはり文部科学大臣として方針はお示しをする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、今、学校のプールにたまっている水の排水をどうするかという課題がございます。

 現在、福島県の教育委員会は、五月三十日に県の各学校あるいは市町村に対して、プールの排水について、各学校の実態に応じ、下水道の管理者などの機関と連絡、報告するなどの対応により排水をすることという通知を流したところでございます。また、その中で、排水が農業用水路に入る学校においては、当該農業用水路を管理する土地改良区などに連絡をし、調整した上で排水することという通知を流したところでございます。

 そして、福島県の教育委員会は、これから排水した後、清掃する段階では、教職員あるいは保護者の方々に清掃をいただくという配慮も加えて、水道の水などを今後満水にし、二週間ほどその状況を見つつ、今後の使用を国と相談しながら検討すると。それに向けまして、国としての基準をできるだけ速やかにお示ししたいというふうに考えているところでございます。

高木国務大臣 馳委員にお答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、防火用水ということで水がたまっておるのが普通じゃないかと思っております。この水をまず排出しなきゃなりません。一部は、下水道に行っておるのは、これはまた、今話しました、国土交通省の方で下水処理場との調整がございます。しかし、あと一つは、畑や田んぼに行くような排水の状況、あるいはまたすぐ川に流れる、そういうことも十分考えられます。したがって、今、福島県と連携をとり、しかも関係省庁との調整もあります。

 したがって、私どもとしましては、もうすぐ水泳の季節が来ておりますから、それまでに、水の基準も含めて、言われるように、プールを使用するかしないかというのは教育委員会なり学校の判断でありますが、それに役立つような一つの基準を示さなきゃならぬと思っておりますので、調整が済み次第、速やかにお知らせをしたいと思っております。

馳委員 既に、福島県内の小中高校で、プールを活用した授業や部活動、またグラウンドを活用した運動会、中止を決めた学校は幾つぐらいあるか把握をしておられますか。

布村政府参考人 まず、学校のプールの使用についての実態でございますけれども、福島県の教育委員会に確認したところ、現時点では、福島市において、プールの使用を今年度は見送ろうという決断をなされたようでございます。他の市町村については、中止の検討をしている市町村はございますけれども、三十日の県の排出に関する通知を踏まえて、今後の利用について検討をしているという状況でございます。

馳委員 私が提案するというのも変なんですが、もうきょう、六月に入りましたから、六月中に文部科学省としての方針をお示しをした方が、現場は、保護者からやいのやいの言われるじゃないですか、それで、設置者としての責任で中止をするのを決めたり、見送りをしようかという議論をしているんですね。だれに何を聞いて信用したらいいのかなという不安を持っておられますので、私は、文科省として、六月中にぜひお決めになって、お示しをした方がいいと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。

高木国務大臣 前々から、プールの使用についても、当然、当面の課題になりますから、そういう意味で、非常に関係各省の現状等の把握を含めて調整をしております。したがいまして、委員御指摘のとおり、できるだけ早く文科省としての一定の目安、基準を示していきたいと思っております。

馳委員 次に、小中高校の運動場に仮設住宅を建設するという予定が、どんどん建っているはずなんですけれども、そうすることによって、被災者の生活の場所と子供たちの教育の場所と、これ、正直、ごった煮になるわけですよね。それによって起こる教育上の課題というのは幾つかあると思うんですよ。その点を把握し、その準備をしておられるかどうかをお伺いいたします。

笠大臣政務官 今御指摘のように、仮設住宅が学校のグラウンドの方に、今承知をしているところでは、岩手県においては三十三地区、三十三校、また、宮城県においては、二十六地区、二十六校において、仮設住宅が学校のグラウンドに、運動場に建てられているというふうに承知をしております。

 ただ、教育委員会においても、今御指摘があったようなことにはやはり配慮をしておりまして、一定のスペースを確保する、あるいは仮設住宅を設置するに当たっては、体育館もあわせて有効活用をしっかりとしていくということで体育の授業を実施しているということで、グラウンドが全く使えないので体育の授業が行えないというふうなところはないというふうに承知をしております。

 また、運動部の活動についても、地域のスポーツ施設等に移動して実施している学校もあるということで、困難な状況の中でいろいろな工夫をしておりますので、そうしたことをまた私どももしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思っております。

馳委員 次に、被災地の学校の簡易給食についてお伺いしたいと思います。

 簡易給食というのは、主に何と何が提供されるわけですか。

布村政府参考人 被災地では、給食施設が損壊し調理ができないため、パンと牛乳のみなどの簡易給食で対応しているという実態でございます。

馳委員 これは恐らく学校給食の趣旨には合わないと思うんですよ。つまり、一日や二日、一週間ぐらいなら我慢できても、学校活動の中における栄養の補給ということを考えると、簡易給食を一カ月、二カ月、三カ月もずっと続けるということは、これはやはり次の段階として考えなければいけない。さりとて、学校給食の施設が壊れたりとか、共同調理センターが壊れたままとかとなると、衛生管理も含めてどのような対応をすべきかという問題になってまいります。

 その質問をいたします。簡易給食をそろそろやめて、普通の、できるだけ栄養も補給できる給食に移行できるめどは立っているんでしょうか。

布村政府参考人 簡易給食の学校が、四月の段階では、二十一市町村でそのような実態にあったということは把握できてございます。

 まず何よりも、地震等により被害を受けた給食施設についての災害復旧事業に早急に取り組むということが大きな課題でございます。第一次補正予算におきましても、給食施設も含めた学校施設の災害復旧事業に係る予算の確保ができておりますので、市町村からの要望に応じて、速やかに、早急に復旧が進むことに取り組んでいく必要があると思っております。

 それまでの間、先生御指摘のとおり、児童生徒の発達段階を踏まえたバランスのいい給食を提供するという本来の目的に沿って、簡易給食に加えて、仕出しの弁当のおかずを加えたり、コンビニ等の御協力をいただいておかずを追加したりと、そういう工夫も現在市町村では取り組んでいただいているところで、できるだけそういった面にも国としても支援をしていこうということで、第一次補正予算の中で、そういう補食に係るおかずの部分についても給食費を国として支援できるという措置をしたところでございます。

馳委員 次に、津波からの避難マニュアルについてお伺いをいたします。

 三・一一以降、被災をした、あるいはその周辺、全国でも結構ですが、まずは被災をした岩手、宮城、福島、そして茨城、千葉、こういった市町村の教育委員会で、改めて津波避難マニュアル、これを見直しをしているでしょうか。

 もう被災から二カ月以上過ぎました。例えば、保護者が迎えに来た、連れて一緒に帰した、途中に津波にのみ込まれて犠牲になったという事案も今回ございました。やはり想定外のことが起きましたが、今回の想定外も含めて、津波避難マニュアル、すべての市町村教委そして小中学校においてマニュアルを見直して、そしてその上での訓練のやり直しが私は必要だと思いますが、その状況はどうなっておりますか。

笠大臣政務官 今、馳委員御指摘のとおり、今回、岩手県にしても宮城県にしても、学校の現場において、特に岩手県においては、そこの学校で日ごろの防災訓練が生きて、学校現場では命を落とす子がほとんどいなかったということ。しかしながら、この震災発生時に親が連れて帰った子供たちが犠牲になった。こうしたことも踏まえて、本当に、災害における日ごろからのこうした防災教育は極めて重要だというふうに思っております。

 そして、私どもとしても、今回の震災の教訓をしっかりと次世代に受け継いでいかなければならないということで、こうした見直し、特に今回想定外と、しかしこの想定外をしっかり想定をする、津波も含めたこうした防災教育の充実にしっかり努めてまいりたいというふうに思っております。

馳委員 一例を言えば、津波警報が出た、注意報でもいいですね、それが解除されるまでは、保護者が迎えに来たとしても、校舎の上階の方にとどめ置いておくとか、あるいは、学校が定めた高台の避難場所に、その場にいてもらう、津波警報が解除されるまでいてもらうなどのマニュアルは、改めて見直しの上で、それを確認するという作業、訓練、これをしていただくことを私は強く求めたいと思います。

 では、次の質問に移りますが、スポーツ関係に入っていきます。

 先週、超党派のスポーツ議連の総会で鈴木寛副大臣が発言をされました。霞ケ丘の国立競技場の再整備の問題であります。国費の投入も含めて、あるいはtotoの助成予算も含めて、そろそろめどを立てなければいけない時期に来ている、そのタイミングだと私は思っています。

 これから概算要求にも入っていきますけれども、調査費も含め、今後の整備の見通しを文部科学省としても立てるべきではないかと思いますが、いかがですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 国立の霞ケ丘競技場は、御案内のとおり、昭和三十三年のアジア競技大会の会場としての建設以来、半世紀が経過しているところでございます。老朽化、耐震性の問題も抱えているという実態にございます。

 また、昨年のワールドカップ招致、あるいはその前のオリンピック招致においても、首都東京で大きなスタジアムがないということについて国際の競技団体からも指摘があったところでございますので、耐震性の問題も含めて、国立競技場につきましての整備あるいは再整備については、財政的な課題はありますけれども、できるだけ取り組んでいければというふうに考えているところでございます。

高木国務大臣 今、局長が答弁したとおりでございます。委員御指摘のとおり、私も何度か国立競技場で観戦をいたしまして、施設の老朽化の部分を実際感じる向きがございます。東京オリンピックはもとより、各スポーツにおいてもたびたび感動的な場面もございました。あるいはまた高校サッカーでは、優勝戦のメーン会場としてあこがれの競技場にもなっているわけです。

 そういう中で、私どもとしましては、東京都とも連携をとらなきゃなりませんけれども、財政的な問題あるいは建築制限等の問題等、課題があることは承知しておりますけれども、やはりここで何らかの形で、ある意味では我が国のスポーツ施設のシンボルとして、ぜひ新たな設備に耐震設計も含めてやらなきゃならない、このように思っております。

 皆さん方の御協力、御理解をいただきながら、何としてもそういう方向に行けるように最善の努力をしていきたいと思っております。

馳委員 ここは政治的に選択肢を示していく、そして物事を動かしていくという姿勢が必要で、私はそこを高木大臣に求めたいと思うんです。

 つまり、東京都とおっしゃいましたので、どこかほかの場所に今よりもちょっと広い場所を見つけて、したがって、場所を等価交換する。今の場所で、多分狭いと思うんです。しかし、立地条件としてはいい場所ですね、駅のそばでもありますし。とすれば、あそこの土地を欲しい団体、自治体、東京都ですけれども、要望も恐らくあるはずです。

 そうすると、ここまで東京都内が、いわゆる公共交通機関が発達しているということを考えると、ちょっと数キロでも外に出るとしても、その場所において、もちろん、耐震工事さえすればいいということを私は言っているのではありません。よりいいものをつくり、その周辺の都市環境整備とともに、建てかえると私ははっきり言いたいと思いますけれども、そういう選択肢も示しながら関係者の協力を仰いでいく。

 以前は、東京オリンピック招致に向けてというふうな言い方が強うございましたが、そうではなくて、今回、スポーツ基本法がきょう衆議院で成立させていただく運びになりましたけれども、スポーツ環境を整えていく、地域のスポーツ環境にとっても、あるいは企業、団体、大学等々、活用される方々にとっても、安心して、そして世界的な競技が行えるような環境として整備していくという責務を、国立競技場という名前が残っている以上は文部科学省が主導的な選択肢を示していく、そして関係者の協力を仰いでいく。

 その財源として、国費であろうがtotoの助成金であろうが、組み合わせて活用していく。民間からも出資を募ってもできるような、そういうやはり柔軟な姿勢で臨んでいく必要があると思うんです。今の場所に私はそんなにこだわるべきではないのではないかなとも思っています。

 改めて大臣の所見をお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 一般的にスポーツ施設をつくるときには、もちろん必要な広さ、あるいはまたサブグラウンドも含めて附帯設備、それより何よりも、やはり交通のアクセスあるいは駐車場、こういうこともその要素になろうかと思っております。

 したがいまして、現在地も含めて、委員御指摘のとおり、あらゆる選択肢を持ちながら総合的に検討していかなきゃならないと思っております。

馳委員 布村局長、今聞いていましたね。大臣のそういった姿勢というものは局長としてしっかり踏まえて、あらゆる選択肢、あらゆる財源を求めて、それをぜひ大臣に事務的に提出していくという積極的な作業を私は求めたいと思います。

 次の質問に入ります。

 日本クレー射撃協会の内紛の現状はどうなっていますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 社団法人の日本クレー射撃協会につきましては、平成二十一年三月の会長選出をめぐる混乱が継続的に続いているところでございます。

 日本オリンピック委員会の調整役としての役割も果たしていただいておりますけれども、平成二十二年十一月には調停がなかなか難しいという事態に至り、その後裁判にもなったところでございまして、平成二十一年三月の役員改選を無効とする東京地方裁判所の判決がことしの四月二十七日に出され、現会長ら新執行部がその後控訴をしたという、裁判で係争中という事案になってございます。

馳委員 中山由起枝選手を御存じですか。

笠大臣政務官 存じております。

 シドニー・オリンピック、あるいは北京オリンピックのクレー射撃の女子トラップ日本代表選手で、特に北京オリンピックでは四位入賞を果たして、また、さきの、昨年行われた広州アジア大会、これでは金メダルを獲得したすばらしい選手だと承知をしております。

馳委員 中山由起枝選手の所属がどこで、出身がどこで、高校時代にどんなスポーツをしていたか御存じですか。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

笠大臣政務官 今、日立建機株式会社クレー射撃部に所属ということで、済みません、ちょっと高校時代とかがどういうスポーツかというのは私は存じ上げないので、事務方の方から答えさせます。

布村政府参考人 中山由起枝選手について、高校時代の御活躍など、十分把握できておりません。またよく調べておきます。

馳委員 中山由起枝選手は、高校時代にソフトボールで活躍をされたそうです。茨城県結城市の出身だそうであります。我が党の永岡桂子代議士がとても一生懸命応援をしておられます。

 しかし、残念ながら、茨城県、地元には正式な射撃場はないんです。ふだんどこで練習しているか御存じですか。

布村政府参考人 国内で熱心に強化活動に取り組んでおられるとは思いますが、具体的な射撃場までは把握できておりません。

馳委員 大臣、ちょっと私は意地悪なことを今聞いたようでありますが、そうではないんです。今から言うことを聞いておいてくださいね。

 実は、この中山由起枝選手は、所属する日本クレー射撃協会の内紛のあおりを受けて、JOCから、つまり国からJOCを通じ、強化費の支援、世界大会に出場するための支援が受けられないままで努力をしている選手なんですよ。にもかかわらず、先般のアジア選手権で金メダルを初めておとりになったというのは、本当にやはり努力をされたと思います。

 そこでの問題なんです。競技団体のガバナンスの問題です。

 競技団体の内紛は想定外ではありません。今後ともいろいろな団体で起こり得る問題だと私たちは認識をしておくべきであり、文科省としてもみっともないと思いながらも、こういう問題は裁判までもつれ込んで起こる可能性はあります。

 しかし、そのときに選手は何も悪くはない。でも、世界的な活動ができるのに、日本代表として派遣される肝心の団体が内紛をしていて、JOCのルールによると、そういう団体からの派遣はされないんですよ、本来。けれども、特例などで何とか認められて派遣されるようになる。けれども、支援される強化費が支払われない、こういう状況に陥ってしまうんですよ。

 大臣、私は、こういう団体の内紛問題ということは、恥ずかしい話でありますけれども、想定内の問題として、こういう問題が起きたときに選手を守ってやる、そういう何らかの制度、救済措置が必要ではないかと思っております。改めて大臣として、御見解とともに、やはりそういう選手に対する支援策、救済策を求めたいと思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 今、クレー射撃の中山由起枝選手の件について、具体的にお尋ねもございました。言うまでもなく、それぞれ競技団体、数多くありますが、この競技団体のガバナンスの問題を理由に、アスリート、選手個人が不利益なことが出てくるようなこと、こういう事態はできるだけ避けなきゃならぬと私は思っております。

 そこで、スポーツ立国戦略の中でも、スポーツ団体の代表者あるいは学識経験者の有識者会議を設置して、これから秋以降になりますけれども、スポーツにおける組織運営のあり方、そういうものの指針のガイドラインを検討していただいて、その中で、アスリート個人に対する救済措置、こういったものをつくらなきゃならないのではないか、この点を十分配慮して今後進めてまいりたいと思っております。

 幸いにして、本委員会におきましても、各党派を超えたスポーツ基本法等の議論もございます。こういったことがまた一つの大きなばねになりながら、アスリートが努力をしたことが報われる、そういう環境整備をしていく、そのための救済措置は必要である、このように考えております。

馳委員 では、布村局長にお伺いします。

 大臣は今、救済措置が必要だと明言をいただきました。これは極めて重要な答弁なんです。どのような救済措置が必要だと考えていますか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 昨年のスポーツ立国戦略の中では、先生御指摘のような、団体のガバナンスに起因して選手に不利益が生じないようにという観点から、まずは、スポーツ団体の代表、学識経験者などによる有識者会合を設置いたしまして、スポーツ団体の組織運営体制のあり方についてのガイドラインをお示しするということを考えております。

 それとともに、日本体育協会や日本オリンピック委員会などスポーツの統括団体と連携をしながら、各競技団体が自主的に、それぞれの管理運営の目安となるみずからの運営の基準というものを作成し、透明性ある運営を行っていただくことが重要かと考えております。

 それとともに、現在、仲裁制度が日本でもようやく始まりつつありますけれども、極力迅速に解決するために、仲裁制度を活用していくという方向をスポーツ団体にも促していくという取り組みを重ねていきたいと考えております。

馳委員 局長、私、具体的に提案したいと思います。こういう場合の救済措置として、どういう点に配慮すべきか。

 まず、日本代表を決定するルールが必要です。そうですよね、当然。二つ目に、国際大会への出場の確約が必要です。三つ目に、そういった国際大会に派遣するための支援が必要です。全部自費で行ってこいというわけにはいきませんね、日本代表である以上は。四つ目は、先ほども申しましたが、茨城県にはクレー射撃の正式な競技場はありません。したがって、日常のトレーニング場所の確保の支援が必要です。五つ目、当然一人で強くなれるものではありません、コーチが必要です。六つ目、トップレベルの選手となれば、日常の活動を支援する強化費の支給が必要です。

 私は、こういう項目を考えた場合に、本当にやはり協会の内紛問題で選手に迷惑がかかることはあってはならないと思いますが、残念ながら、そういうことは幾つかの団体であります。そうなったときに、こういう部分の、選手個人の支援をする、当然その間にはJOCが入るべきだと思いますが、ここにJISSも絡ませることができるのではないのか。いわゆるマルチ・サポート事業を使いながら支援をすることができるのではないかと私は思いますが、布村局長の答弁を求めます。

布村政府参考人 今、先生具体的に御指摘をいただきました代表決定のルールなどの六項目については、アスリートファーストという、選手の目線に立っていかに選手を支援していけるか、そういう観点から重要な課題として受けとめさせていただきました。

 JISS、国立スポーツ科学センターにおいて、今、選手のマルチサポートという取り組みを積極的に行っておりますけれども、その中で、選手に不利益が生じた場合にいかにサポートするかということがどこまでJISSにおいて可能かどうかも、JISSとよく相談しながら、また、日本オリンピック委員会などとも相談しながら、検討していきたいと思います。

馳委員 布村局長、相談するなら子供でもできるんですよ。相談をした後に、先ほどの大臣の、救済措置は必要だという大きな方針に従って物事を決めていかなければいけないんです。

 今後、大臣が判断できるような政策を提示することをお約束してください。

布村政府参考人 お答えいたします。

 昨年のスポーツ立国戦略、また、今回御審議いただきますスポーツ基本法についても、そういうアスリートファーストの精神が生きております。また、そういうスポーツ界の紛争の処理については、速やかに、できるだけ迅速に解決に向かうようにという方向もお示しをいただいておりますので、その具体的な方策は、国として十分検討していかなければならない課題というふうに認識をいたしたところでございます。

馳委員 やりますねと、私は念押しをして聞いているんです。布村局長、やっていただけますね。

布村政府参考人 今存在しております日本スポーツ仲裁機構の活用のあり方、あるいは一つ前の調停のあり方を、より具体的な形で選手の支援につなげられるように、検討を重ねてまいりたいと思います。

馳委員 では、二〇〇三年四月にスポーツ専門の紛争解決機関として設立されたその日本スポーツ仲裁機構、JSAAと略称として呼びます、設立から今日までの処理した事案の数は幾つですか。

布村政府参考人 二〇〇三年四月にスポーツ専門の紛争解決機関として設立されました日本スポーツ仲裁機構において仲裁及び調停申し立てを受理した件数は、これまでの間で二十三件でございます。二〇〇三年には三件でございましたが、最近、二〇〇九年が四件、二〇一〇年が五件というような実態になってございます。

馳委員 現在、スポーツ仲裁規則による仲裁は、五万円の申し立て料金で手続を行うことができます。しかし、被申立人、競技団体を限定しているので、規定された競技団体以外に関する紛争であれば、特定仲裁合意に基づく申し立てを行うことができますが、通常の商事仲裁と同様の費用が規定されており、現在のところ利用がほとんどなく、スポーツ仲裁規則に規定している団体以外は申し立てをしづらい傾向にございます。

 今後、日本におけるスポーツ仲裁機構の利用をふやすためには、何らかの措置をとる必要があるのではないかと考えております。

 スポーツ基本法の今般の第十五条にも、スポーツに関する紛争の迅速かつ適正な解決についての項目が盛り込まれ、この後採決されるところであります。看板倒れになってはいけませんよね。スポーツ仲裁機構の今後の有効な活用のあり方についての課題をお示しいただき、その解決に向けての方針をお示しいただきたいと思います。

笠大臣政務官 今御指摘ありましたように、五万円の申し立て料金で手続を行うことができるわけですけれども、加盟をしていないとその対象にならないということで、まず一点は、高体連や一部のスポーツ団体でなおまだ今加盟をしていない状況にあるそういう団体に対しても、しっかりと加盟を促してまいりたいというふうに思っております。

 また、あわせて、今ありましたように、スポーツ基本法がきょう衆議院を通過し、この国会で成立をする運びになるということで、御指摘ありましたように、今年度から新たにスポーツ仲裁活動推進事業も実施しているところでございますけれども、引き続き、日本スポーツ仲裁機構の支援をしっかりとやっていきたいというふうに思っております。

馳委員 大臣、そういうことなんですよ。

 公平で公正なルールのもとで競技者が仲裁を申し立てる。しかし、団体側が加盟していなければ、その仲裁は宙ぶらりんになってしまうんですよ。私は、今そのことを指摘しているんです。一言で言えば、これは応諾義務という言い方をしているんですよ。

 今現在、加盟している団体は全体の何%ですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 日本スポーツ仲裁機構に加盟しているのは、スポーツ団体のほとんどが加盟していただいております。具体的には、先ほど笠政務官から御説明させていただいたとおり、日本体育協会あるいは日本オリンピック委員会、障害者スポーツ協会などの加盟団体はすべて仲裁機構に加盟しているという実態にありまして、高体連ですとか、プロ野球機構など一部のプロスポーツ団体は加盟していないという実態になります。

 また、応諾義務については、全国レベルの団体で現在把握できているところでは、約半数のスポーツ団体が自動受諾条項を団体の規則に明記しているというような実態でございます。

馳委員 残り半数の団体に対しても、自動受諾、つまり、仲裁の申し立て、調停の申し立てがあったらそれに応じますよという、同じ土俵に乗って、速やかに調停に応じますよという姿勢が実は必要になってくるんですね。まだそこが半分しか仲裁条項を採択していない。文部科学省としても、やはりここがスポーツ関係団体のしりをたたくポイントだと思うんです。

 法案はきょう衆議院の委員会で採決されますけれども、今後進めていただけますね、局長。

布村政府参考人 御指摘の点につきましては、スポーツ立国戦略においても、そのような観点を明記させていただいたところでございます。

 また、スポーツの統括団体であるJOCとも十分連携していく必要があると考えておりますが、JOCでは、スポーツ基本法案の制定も見据えながら、加盟団体がいわゆる自動受諾条項を設けるよう積極的に働きかけていきたいという意向を持ってございますので、JOCあるいは仲裁機構とも連携しつつ、競技団体への理解の促進に努めてまいりたいと考えております。

馳委員 ちなみに、私が副会長を務めている日本レスリング協会は自動受諾条項を採択していますか、していませんか。

布村政府参考人 ガバナンスのしっかりしておられる日本レスリング協会であれば、当然、条項を置いておられると思います。

馳委員 残念ながら、どうもしていないようなんですね。

 したがって、これは、各団体の会長さんあるいは役員さん方の理解を丁寧に得ていく必要があると私は思っています。本当に、今回基本法ができる。そして、その中に、スポーツに関する紛争の迅速かつ適正な解決をするというふうな項目が設けられた。スポーツ界のたっての希望でもありました。ここを動かしていくための今後の文部科学省としての支援も必要だと思っています。

 最後に、大臣にその決意をお伺いして、私の質問を終わります。

高木国務大臣 今審議されております、まさに議員の皆さん方から提起をされておりますスポーツ基本法案においても、スポーツ団体がスポーツに関する紛争について迅速に、適切に処理、解決に努めるということと同時に、国に対しても、スポーツに関する紛争の迅速な解決に当たる施策を講ずることが新たに盛り込まれたことは、大変意義があると思っております。

 文部科学省としては、今年度から新たにスポーツ仲裁活動推進事業を実施しているところであります。研修会や講習会を開き、競技団体やあるいは競技者などにより普及の徹底を図ったり、あるいは海外へ派遣をして、海外の法整備、環境等についても調査をする、こういったことを行っている日本スポーツ仲裁機構の支援に今後とも努めてまいりたいと思っております。

馳委員 手続をより簡単にするとか、あとは費用、つまり財源の支援などなど、課題は多うございますが、今後とも全面的な支援をしていただくことを求めまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

松宮委員長代理 次に、あべ俊子君。

あべ委員 おはようございます。自由民主党、あべ俊子でございます。

 本日は、文部科学行政全般に関して、特に高等教育に関して質問をさせていただきたいと思います。

 特に今、人口推計、中学生、高校生、大学生が減っていくという中、二〇二五年には高校生が三百二十五万人、現在の九割ぐらい、また、十九歳から二十二歳に関しては四百六万人で現在の七割ぐらいになっていく中、やはり教育全般の見直しも、私は、少子化に向けて検討をしていかなければいけないと思うところであります。

 大臣、これに対して、これからの取り組みに関してお言葉をいただければと思います。

高木国務大臣 あべ委員にお答えをいたします。

 私どもとしましては、我が国が世界でもトップレベルの学力また教育力をつける、そういう目標を持っておりますが、これの大きな力は、まさに高等教育であろうと思っております。

 高等教育については、これまでもさまざまな取り組みがされておりますけれども、今後さらに我々としては、財源の確保も含めて積極的に対応してまいりたい、そして教育立国を目指していきたい、そのような決意を持っております。

あべ委員 そういう中にございまして、平成二十三年一月三十一日に、中央教育審議会における「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申が出されました。そうした中で、若者の現状が大きな困難に直面している、産業構造、就業構造の変化、職業に関する教育に対する社会の認識、子供、若者の変化など、社会全体を通じた構造的問題が存在するというふうに出されているところであります。

 特に、学校から社会、職業に対しての移行が円滑に行われていない、早期離職が高卒で四割、大卒で三割、短大などでは四割あるという中、このキャリア教育、職業教育を充実していかなければいけないと出されているところであります。

 そこで、今回、高専に関して質問をさせていただきたいと思います。

 この高専に関しましては、実践的技術者育成を担ってきたというところでありますが、中学を卒業して五年間を出ると準学士が受けられるということになっています。しかしながら、その後に専攻科に行く学生が、今、現在ある高専一万人の学生のうち一五%、千五百人が専攻科に行く中で、この五年制の後の専攻科に行っても、いわゆる学位が受けられないという仕組みになっているわけであります。

 これに対して、専攻科がプラス二年の位置づけでありながら、学位授与機構、これを個人で申請し、レポートを提出し、さらには、違った場所に受験まで行かなければいけないという問題は、私は、この高専が担ってきた役割、また、五年間プラス二年間の教育を受けた後でこのことに関してもっと円滑に学位を授与する仕組みが必要ではないかと思いますが、これに関してはいかがでしょうか。

磯田政府参考人 学位につきましては、大学がその教育の修了者に対し授与するものでございますが、大学教育修了の能力証明として国際的に通用性を有するものとして、歴史的な経緯の中で発展してきたものでございます。学術の中心として自律的に高度の教育研究を行う大学がこの学位を授与するという原則は、国際的に定着しております。

 一方、委員御指摘のとおり、我が国の高等専門学校制度は、実践的技術者の養成という目的を達成するための学校制度でございます。その目的として、研究を行うことが含まれず、教育研究を行う学術機関でないこと、自律的な運営について制度上定められていないという点で異なる仕組みになっております。

 そのことから、まず、高等専門学校卒業者に対する学位の授与並びに御指摘の専攻科卒業者に対しましても、現在、制度的には授与がなされないということになっているわけでございます。

 このため、現在では、委員御指摘のとおり、大学評価・学位授与機構が認定しました専攻科において所定の単位を修得した者に対し学位が授与されるということでございますが、優秀な学生に適切な学位を授与するということで、現在、この中央教育審議会の答申を受けまして、大学学位授与機構と高等専門学校機構で柔軟な対応の方策について検討中という状況でございます。

あべ委員 この柔軟な対応に関して、学位授与機構と高専のこの機構との結論はいつ出るんでしょうか。

磯田政府参考人 高等専門学校側の御提案は、小論文を十二月に学位授与機構の方で課しているわけでございますけれども、それにかえて、高等専門学校で実施されております特別研究の内容に関する面接試験等を導入してはどうかというようなこと等でございますが、実は、大震災がありましてその後の検討が中断しておりますので、速やかにこれを立ち上げ、回復し、早急に検討を進めてまいりたいと考えております。

あべ委員 早急に結論を出すために、その結論を出す時期はいつごろになるんでしょうか。

磯田政府参考人 学位制度にかかわることでございますのでそれなりの時間は必要ではございますが、同時に、やはり卒業の資格を得るということ等も考えますと、そこについては、両機関により早く実施するよう促したいと思っておりますが、今、いつまでということは、両機構のお話をまだ確認しておりませんのでこの場では申し上げられませんが、できるだけ速やかに検討を得られるように努力してまいりたいと思っております。

あべ委員 今年度の専攻科の卒業生が卒業するまでに間に合うということでよろしいのでしょうか。

磯田政府参考人 両機構の御意見を確認してみないと今の段階では申し上げられませんが、今そのような重い御指摘があったということは十分両機構にお話をし、検討を促進したいと思っております。

あべ委員 特に、この高専の役割が実践的技術者育成ということで、世界の国際学位標準を批准していないという話もございますが、実は、企業の中には、高専の学生が非常にいい、優秀である、欲しいと言う方がかなりいらっしゃる中にありまして、大学ということの位置づけが、研究ということが入っているとしても、私は、高専の中でもかなり研究が産官学の中でされているというふうに理解しています。

 特に、大学工学部、これはさまざまでございまして、高専と違って、非実践的、さらには技術能力も余り養われていない、研究も余りされていないという大学工学部の一部のものに比較すれば、私は、この高専をもっと高い位置づけにしていくということが、将来的には必要ではないかと思うわけであります。

 将来的に、学位の与えられる位置づけにするという方向性も私は検討課題であると思っておりまして、大臣、これに関して高専のこれからのあり方、少子化、大学全入時代にあって、この高専の位置づけをこのままにするのか、それとも、しっかりとした学位の与えられる、例えば、高校大学一貫教育というような考え方の仕切り直しも御検討いただけるか、教えてください。

高木国務大臣 あべ委員が御指摘の、高専の専攻科を卒業した者についての学位の授与についてであります。

 まさに今、大学のあり方についてもその検討がなされておりまして、特に高専においては、実践的技術者養成という趣旨を持って、これまでその活動が進めてこられております。

 一般的に学位の授与というのは、大学がすることが国際的にも一般的でありました。ただ、中学校から五年一貫のいわゆる高専を卒業して、さらに二年の専攻科を修了した者については、これは、大学評価・学位授与機構が学習成果を審査した上で学士の学位を授与することが可能になっております。

 現在、この仕組みについては、高等専門学校の専攻科においてすぐれた学習成果を修めた者に対して、我が国の学位制度の質を担保しながら、スムーズに学位審査が実施されるように、高等専門学校機構及び大学評価・学位授与機構の関係者に検討を求めているところでございます。

 実践的技術者養成を目的とするこの高専の趣旨にかんがみれば、高等専門学校専攻修了者に直接学位を授与するということについては慎重を要しますが、両関係者の意見を伺いながら、また、先生の御提案もこれを御提案として受けとめながら、学位授与の運用改善の検討が進められるように支援をしてまいる考え方でございます。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

あべ委員 ありがとうございます。

 今、制度の上では、その学位を直接上げることができないということは理解をしております。ですから、学位授与機構とその円滑化を図るということを現在取り組んでいらっしゃるということも理解をしております。

 私が大臣にお尋ねいたしましたのは、これからの大学全入時代に向け、また、高専の優秀な学生たちのこれからも考えたときに、これを制度として学位を直接上げられるように、文部科学における現在の位置づけを将来的に変更する可能性はないんでしょうかという質問でございます。

 大臣、このことに関して御意見を伺いたいと思います。

高木国務大臣 先ほども御答弁いたしましたが、両者の間でスムーズな運営についてさらに検討を求めておりますし、私どもとしましても、大学のあり方あるいは高専のあり方、これについてはしっかり検討しなきゃならない、このように考えております。

あべ委員 本当に、この高専の優秀な学生たちの、これからの日本の科学技術立国としての特に技術者がどのような技術者が必要なのかということを考えたときに、ここの部分は、制度を変えていってでもそのようなあり方を守っていくということは重要であると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

 次に、高校の専攻科について質問させていただきます。

 高校の専攻科、今幾つかございまして、看護、これが一番多いわけでございますが、水産、工業、農業、普通科にもございますが、現在、八千四百三十八名の方々がいらっしゃるんだそうであります。

 特に、一番多いのが看護の七十四校、この高等学校の専攻科五年一貫教育というものでございまして、現在一万八千七百九十五人、一学年に四千人近くいるわけでございますが、この子たちが、実は、中学を卒業して学校を五年間卒業しても、大学に編入することができないという問題があります。なぜかというと、高校だからであります。

 問題は、その五年制一貫教育、さらには高校の専攻科、水産、農業、普通科も含めてでありますが、初等中等教育局児童生徒課産業教育振興室管轄というところになっているところにも問題があるように思います。

 この、大学編入ができない、中学を卒業して五年間もしくは四年間学校に行っている子たちのこれからをどのように考えていらっしゃるか、教えてください。

山中政府参考人 委員御指摘のとおり、高等学校の専攻科でございますけれども、高等学校を卒業した上で、さらに、特別の事項を教授し研究を指導するということで、修業年限一年以上の教育ということを行っております。

 例えば、御指摘のように看護部門におきましては、看護師の資格の関係もございまして、高等学校の三年間と専攻科の二年間、これで五年間の一貫教育を行っているというところが多い。そこで在学している生徒も八千四百名ぐらいいるという状況がございます。

 そういう生徒、あるいは学校の方からも、ここの五年間の一貫教育を卒業した後で大学に編入学ができないだろうか、看護大学とかございますので、そういう御要望もあるということは承知しているところでございます。

 この点につきまして、位置づけが高等学校ということでございますので、高等学校の専攻科を出て、それが大学の方の三年生に例えば編入学するということでございますけれども、この点は、制度が高等学校の卒業ということになりますので制度的には難しいところでございますけれども、例えば、ことし一月に中央教育審議会答申、先ほど委員の方からも御指摘ございましたけれども、一定の条件を満たした高等学校の専攻科の修了者、これが高等教育機関に編入学するということについて、これについて積極的に検討することが必要ではないかということも指摘されているところでございます。

 その場合、専攻科というのが、修業年限とか入学資格は決められているんですけれども、そこの教育課程や授業時数等の基準がないということがあるので、そこの役割の明確化とあわせて、体系的な教育を行う機会としてのその位置づけをより明確にするために、具体的な基準なんかを明確にしたらどうか、そういうことを、しっかりとした教育が行われているというところを担保した上でそういう編入学も認めるというふうなことについて積極的に検討すべきだという提言をいただいているところでございます。

 文部科学省としても、この答申を踏まえまして、しっかりと検討していきたいというふうに思っております。

あべ委員 あくまでこの高校の専攻科に関しましては、初等中等教育局ということの管轄になりますので、教えていらっしゃる教員の方々も、基準をもう少し上げていかなければ大学編入ができないという制度上の問題も確かにあると聞いております。

 そうした中で、私は、高等教育局に入れていく選択基準を明確にすると今おっしゃったのだと思いますが、この選択、これから十年先にどのようにしていくのかということを設置者が決定していくことができるのか、それとも、この制度の中の、初等中等教育局の中にあったままその制度の見直しをすることなのか、選択をして担当課局をかえていくことができるのか、ここを明確に教えてください。

山中政府参考人 これは高等学校の専攻科ということでございますので、高等学校を所管している初等中等教育局の中でこの仕事をやっておりますけれども、ここの高等学校の専攻科自体をどういう形で高等教育機関の中で評価していくかということと、初等中等教育局にあるから、例えば看護の五年制の一貫教育の専攻科が編入学資格が得られないということには必ずしもつながらないというふうに思っておりますので、どこの局でその専攻科について所管するのかということと、看護一貫五年制を卒業した生徒たちが大学の方の三年生に編入学できるかどうかということとは、直接は関係してこないと思っております。

 そこの編入学を認めるというところは高等局の方でどういうふうにやるかということにはなりますけれども、そこの所管と必ずしも一致しないといいますか、そこは、初等中等教育局の中で専攻科も含めた高等学校を所管していて、それを高等教育機関の方で編入学を認めるということも当然可能ではないかというふうに考えております。

    〔委員長退席、松宮委員長代理着席〕

あべ委員 そうすると、今のお話ですと、初等中等教育局であるままにおいて大学に編入できるような制度のつくり込みを、教員の教育的バックグラウンドも含めた体制づくりの基準を明確にして、それは、今ある学校が基準が明確になった段階で選択するということですか、それとも、すべてを大学編入可能なようにつくりかえていくということですか。教えてください。

山中政府参考人 これは、これからどういう形でつくっていくかということになると思いますけれども、本年一月の中教審答申でも、具体的には、例えば看護の専攻科二年でございますと、看護師資格のこともございますので、その教育内容とか一定のところがございますけれども、専攻科自体としては、教育課程や授業時数の基準等が設けられていないということ、そこで、体系的な教育を行うということの位置づけをより明確にする、そのために具体的な基準等を明確にすべきであるということでございますので、そこの具体的な基準というものを明確にして、それが高等教育機関の方で一定のものとして評価できるということになれば、そこのところで編入学が認められていくということになろうかと思います。

 そういう基準を満たすような形にするかどうかというのは、まさに高等学校の方で、では、そういう専攻科、その基準を満たす専攻科をつくろうということにするかどうか、学校の方で判断していくということになると思います。

あべ委員 その結論はいつ出るんでしょうか。

山中政府参考人 これは、まさに中教審の方で一月に指摘されたところでございまして、ただ、先生御指摘のように、こういうことについては、関係者の皆様方からの御要請というか要望が今まであったことも事実でございますけれども、今後、そのあり方について具体的な検討を始めるということになります。

あべ委員 そうすると、基準をつくってからその基準に合わせていくのに学校が何年かかかっていく、もしくは、基準に合わせることをあきらめる学校等出ていくんだと思っております。そうすると、今から議論という話はいつも出てくるわけですが、一年ぐらいかかりそうでしょうか。

山中政府参考人 この中教審の方の指摘も受けてこれから検討を始めようと、積極的に検討すべきだということで検討するということでございますので、いつまでにというところまでまだ申し上げられるという状況ではないということでございます。一年以内とか、そういう状況ではないということでございます。

あべ委員 大臣、一月三十一日に答申が出ておりますが、大臣として、これはどれぐらいの期間で結論を出せという御指示を出されているのか、教えてください。

高木国務大臣 特に方針は出しておりません。

あべ委員 特に専攻科の学生たち、八千名ぐらいいる中で、編入ができないということが実は大きな障害になり、入学希望者が減っている段階であります。このままおいておくと、私はフェードアウトをしてしまう可能性もあるのではないかと思いますが、大臣、この一月末に出た結論、やはり早く出されないと、非常に今政局も厳しいときでございますが、ぜひ加速をさせていただきたいと思います。

 大臣、その御決意のほどを聞かせてください。

高木国務大臣 あべ委員も非常に詳しい分野、特に、高等学校の専攻科の中でも、看護学科は非常に多くの方々が教育を受けておられます。そういう方々については、これは、今の社会、国民の需要の中でも非常に高い。まさに地域での人材需要というのは、これはこれからも重要になってまいりますし、専門的な職業人材の教育機関としては、さらに充実をさせなければならぬと私は思っております。

 今御指摘の編入問題も含めて、私どもとしましては、こういった社会的な要請も十分勘案しながら、できるだけ早く検討が進むように、また改めて関係者の御意向等も十分聞いてまいりたいと思っております。

あべ委員 このことに関しましては、ぜひ早急に結論が出るように、大臣の方からも応援をしていただけたらというふうに思います。

 次に移りますが、大学に関してであります。

 今、私立大学、特に定員割れを起こしている中でありまして、大学のあり方というのが、教育研究機関だけではないという形になっています。ところが、大学経営のあり方が、経営主体があいまい、さらには、設置者の学校法人と教授会の二重マネジメントになっているなどがあります。

 特に、私ども自民党の方でも、学校教育に関して、また教育全般に関して分科会をやっているわけでありますが、その中で、大学の改革をしたいろいろな大学の方々をお呼びしますと、やはり、この大学改革のためには教授会というのが大きな問題ではないかと言われておりまして、その大学のガバナンスの中核が、理事会と教授会、二本になっているということがあります。

 この教授会に対して、特に、決定機関なのか、審議機関なのか、意見集約機関なのか、決定事項の伝達なのか、さまざまございますが、私は、この教授会のあり方の、大学がよくなっていくための一番の根は教授会の人事権の問題であると思っておりますが、大臣、これに関しては御意見ございますでしょうか。

磯田政府参考人 教授会は、学校教育法第九十三条の規定に基づきまして、大学における重要な事項を審議するために置かなければならない機関とされております。

 この教授会における審議事項につきましては省令で定められておりますが、学生の入学、退学、留学、卒業等に関する事項が明記されているほかは特段の法令の定めはなく、各大学の自主的な判断によるべきものとされております。

あべ委員 この各大学における判断というあたりが非常に難しく、日本の大学全体の文化として、教授会が非常に権限が大き過ぎるということがあると思っています。

 そうした中で、大学経営をしていく中で三つの利害関係があるんだということが、諸外国の文献からも日本の文献からも見られるわけでございます。政府が一つ目、二つ目が市場、さらに三つ目が教授会、この利害関係が大学の経営に非常に大きく影響を及ぼすと言われております。特に、市場におきましては経営感覚が重要になってくる。

 教授会に関しましては、教育研究、人材の育成に関してかなめとなっているところでございますが、私は、この大学のあり方に対して、もっともっと政府が、日本はどういう人材が必要であるのか、また、どういう人材がこれから国家戦略として必要なものであるかということが明確になっていく必要があるんだと思っております。

 文部科学省としては、この大学の人材育成に関して私はもっともっと全般的な戦略を立てていく必要があると思いますが、このことに関して御意見をお願いいたします。

磯田政府参考人 昭和五十年代におきましては、計画的な養成ということで、医師を初めとして幾つかの職業分野につきまして計画養成をしてきたわけでございますけれども、その後、大学の主体的な柔軟な対応を促すという観点から、そういう計画よりも、誘導という観点に移行してきておりまして、現在、中央教育審議会はもとより、政府全体の政策方針を各大学にお示しをしながら、各大学では、そのような政府の大きな流れの中で主体的に新しい分野に果敢に取り組んでいただく、そのような考え方を基本にしているところでございまして、現在、特に、大学の機能の分化、それから、今御指摘ございましたガバナンスの強化ということ、それから、教育の質の向上ということに力点を置きまして、国公私立の大学に、その改善、あるいは、それに必要な条件整備に努力をしているところでございます。

あべ委員 今おっしゃった、教育の質、さらには機能の集約、さらにはガバナンスの強化ということでございますが、それは、やれと言っても、どういう形でアウトカム、すなわち結果の評価をしていくことが私は特に重要だと思いますが、これは文部科学省としてはどのようにお考えでしょうか。

磯田政府参考人 まず、国民並びに学生、そして社会の方々に、その活動についてよく見ていただき評価をいただくということが大事であろうということで、本年四月一日から、大学の運営並びに教育内容等につきまして情報を公開するという制度をスタートさせていただいたところでございまして、まず情報公開を始め、その中で社会の御批判を受けながら、かつ、そのプロセスにおいて各大学が自主的に改善をしていく、それをまず始めてまいりたいと思って実施しているところでございます。

あべ委員 では、大学のこれからの改革に関してはまだまだ始まりだというふうに理解をいたしました。

 ところが、この大学のあり方は、本当に、日本におけるどのような人材をどのように育成していくかということがかぎだと思っておりますし、さらには、今の教授会のその権限の強さが、大学改革に、特に人事権を握っているところが、大学が変わらない大きな要因だと私は思っております。

 そうしたときに、ガバナンスが適切に機能しているかどうかということは、その情報の透明性だけではなくて、どのような結果が出たのかということを、国策としての人材教育、高等教育ということで、大学教育に関してもっともっと政府が関与していく必要があるんだと私は思います。その昭和五十年代の合ったやり方に戻せとは申しませんが、やはり教育はこの国の根幹でありますから、もっともっと政府が主導していくことが重要ではないかと思っているところであります。

 それに続きまして、最後に医学教育課についてお尋ねいたします。

 文部科学省の中に、高等教育局の下に医学教育課が位置づけられているところであります。医学教育、特に医学部、薬学部、さらには、歯科医師の方の歯学部、看護学部などを医学教育課が担当しているんだと思いますが、免許を与えるのは厚生労働省で、教育をするのが文部科学省ということに関して、私は違和感を常に抱いています。

 諸外国においては、この教育と免許を一体化しているところもありますし、また、この問題に関しまして、医学教育課の位置づけ、特に厚生労働省との連携をどのように今とっていらっしゃるか、教えてください。

磯田政府参考人 医学教育につきましては、厚生労働省の特に医政局と緊密な連携を行っておりまして、人材の交流、並びに、共同での例えば審査の実施、あるいは、審査会あるいは検討会が別でございましても、一部の委員について重複して委員になっていただく、さらには、それぞれの厚生労働省の検討会あるいは文部科学省の検討会におきましても、他省の、相手方の省の担当課長に出席をいただき実施するということで、私どもとして、厚生労働省と一体として社会のニーズにこたえられるよう、医療人材の養成に努めているところでございますが、基本的に、私どもが医師養成を担当させていただいている基本的な考え方は、医師養成を大学において実施するということについて合意があるからと理解をさせていただいております。

あべ委員 私は、医療系の教育に関しまして、この医学教育課が高等教育局の中に埋もれてしまっているということも大きな問題ではないかと思っています。

 特に、医療というのは国民の安全、安心の部分でありますから、文部科学省がその管轄をするのであれば、厚生労働省との連携をもっともっと強めていくということが私は重要であると思いますので、ぜひともこれはお願いしたいというふうに思います。

 大臣、このことに関して、特に、厚生労働省との関係の中で医学教育を行っていくということに関して、何かお考えがありましたら教えてください。

高木国務大臣 大学のあり方については、さらに検討を進めていくべきものであります。我が国はもとより、国際社会において問題解決を図れるまさに教育の最高のレベルとして、これからもその充実は必要でございます。

 今、医学教育についてのお尋ねもございました。文部科学省が言うまでもなく、国民の健康と医療を主に担当する厚生労働省とも、十分、教育と実践、そういう観点から連携を深めてまいりたいと思っています。

あべ委員 大臣、心強いお言葉をいただきまして、ありがとうございました。

 時間となりましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松宮委員長代理 次に、池坊保子君。

池坊委員 おはようございます。公明党の池坊保子でございます。

 まず最初に、大臣に、東日本大震災によって多くの人たちが被災しました。被災者は、弱者がより一層その被害を受けたのだと思います。乳幼児、高齢者、そして学生。学生たちに、その青春の大切な時期、心置きなく勉学をさせてあげたい、それは先を歩んでいる人間の私たちの役割ではないかと思っております。

 大学では授業料の減免措置が行われておりますが、ともすれば、専修学校、専門学校においては、日の目が当たらないことが多い。現時点で千九百名が、自宅が全壊した、半壊した、あるいは両親が失業した、学業困難な子供たちがいる。そういう人たちに、ぜひとも早く授業料減免とか、さまざまな措置を講じていただきたいという要請を五月十八日にいたしました。

 そのとき大臣は、被災地の状況を踏まえ、被害が多かったので、専修学校の役割も考え、今後、文部科学省はどのようなことができるのか、実態の把握を踏まえながら、被災生徒の授業料減免について引き続き検討してまいりたいとお述べになりました。

 何か明るい兆しが見えつつあるのではないか、あるいは見えてきたのではないか。学生たちには、百十三億、いろいろな予算がとられておりますけれども、その中の一割でも一割五分でも、専門学校や専修学生たちにも手当てをしていただけたらなというふうに願っておりまして、何か明るい希望の兆しが見えつつあるように思いますが、大臣の御意思あるいは御決意をさらに伺いたいと思います。

高木国務大臣 池坊委員にお答えをいたします。

 先生も御指摘になりましたように、専修学校などの全国的な組織の代表者も私のところに来られております。先生初め、この国会の中でも、被災された学生の窮状を訴えられて、私たちとしても、非常にその御苦労に深く心を痛めておるところであります。

 我が国の専門的な人材を育てていくという専修学校の生徒たちが、この急激な災害による家計の急変によって、学業を断念せざるを得ないということがあってはならない、私はそのように考えておりまして、何としても修学の機会を確保していかなきゃならないと思っております。

 今回の震災におきましては、家計が急変をした専修学校の生徒が多数に上っております。今千九百名という数字が出ておりますが、また、この被災地も広範にわたっております。岩手県とか福島県では専門学校への進学率が非常に高うありまして、被災した東北の三県においては、高等教育機関における専修学校の役割が極めて大きいという実態もございます。

 したがいまして、こういった実態を踏まえ、また国会での御指摘などもいただいて、文部科学省としましては、具体的な支援のあり方についてこれまで検討を進めてきたところでございます。

 専修学校に対する授業料減免措置については、何としても支援の早急な実現に努めてまいりたい。具体的なことについては、この場ではまだ申し上げられませんけれども、何としても実現に向けて努力をしたい、こういう気持ちを持っております。

池坊委員 それでは、具体的にどのような金額というのは今おっしゃれないと思いますけれども、第一次補正予算で手当てをするということで了解してよろしゅうございますね。

 一言でお願いいたします。

高木国務大臣 今の財源の中でやりくりができるかどうか、その辺も含めて、早急に検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 わかりました。

 大臣、検討という言葉はお使いにならないで歯切れよくおっしゃっていただくと、大臣の偉さがさらに上がるような気がいたします。

 きょうは、議員の方々の長年の御苦労が実って、スポーツ基本法が成立するようでございます。私も提出者の一人ではございますが、議員の方々が本当に長年にわたって尽力されたことに対して、本当にそうだと賛同しながら、きょうの日をただただ待ちわびてまいりました。

 スポーツというのは、幼い子供たちから高齢者、特に高齢社会になってまいりますときに、やはり体を動かす、ちょっとでも自分が動かせる範囲の中で動かすことが、介護などに頼らないで済む一つの予防にもなると思いますので、生涯にわたって人々が心身ともに健やかに生きていくためにスポーツ基本法がつくられましたことを、心よりうれしく思っております。

 それとともに、きょうはスポーツ基本法ができますので、私は文化の方の話をしたいと思います。

 文化芸術振興法ができまして、日の目の当たらなかった文化に日が差してきたのではないかと思います。

 展覧会の支援及び海外美術品の公開促進について、これは御存じのようにこの三月に、展覧会の開催の支援、美術品の公開促進、これは、私たちが大切な美術品を鑑賞するための支援、手助けになるということで、二つの法律ができました。

 展覧会における美術品損害の補償に関する法律、きょうが実は施行日なんです。そういう意味では、私は大切な日ではないかと思います。

 国民が美術品を鑑賞する機会の拡大に資する展覧会の開催を支援する、その主催者が展覧会のために借り受けた美術品に損害が生じた場合に、政府が当該損害を補償する制度、これは大切な制度だと思います。

 美術品国家補償制度は、展覧会の主催者などを対象とする説明会が今月から開催される予定であるということも伺っております。

 二つ目は、海外の美術品等の我が国における公開の促進に関する法律でございます。

 これは、言うまでもなく、海外の美術品等の我が国における公開の促進を図るため、海外の美術品等に対する強制執行等の禁止の措置を定めるとともに、国の美術館等の施設の整備及び充実について定めること、そして、国民が世界の多様な文化に接する機会の拡大を図るもの。

 この二つがこの春成立して、国民の美術鑑賞の機会がふえたなと喜んでおりましたときにこの東日本大震災が起こりました。それとともに、東京電力の福島第一原子力発電所の事故も起きてまいりまして、さまざまなイベントが中止されてまいりました。

 例えば、山梨県立美術館では、フランス人の人気画家モーリス・ドニの作品百点を展示する展覧会を中止しました。この展覧会では、ドニの遺族が秘蔵する十点を世界初公開する計画であり、全作品の八割をフランスから借りる予定でしたが、作品がフランスにとどまって、こちらの日本にやってくることができなくなり、中止になりました。これは、フランス政府の美術館総局が三月十六日に、自国の国立や国立級の美術館に対して、危険の情報が十分得られないとして日本への美術品輸送停止を通達したためです。

 また、広島県立美術館では、フランス印象派の作品の展覧会、これは五月二十九日までを予定したにもかかわらず、中止になりました。この展覧会は、ゴッホ、モネ、ルノワールなど印象派と、その源泉となる巨匠の作品八十点のうち、約六割をフランス国内の四つの美術館から借りるという壮大な計画だったんです。

 それから、横浜美術館。横浜だから関係ないんじゃないかというふうに思うんですが、ロシアのプーシキン美術館の展覧会、これも、六月二十六日まで開催するはずだったのに中止になりました。フランスだけでなくてロシア連邦文科省が、震災や津波、原発事故などの諸条件にかんがみ、現時点では貸し出しできないと。

 それから、アメリカ・ホノルル美術館から作品を借り受ける予定であった東京の三井記念美術館の葛飾北斎の展覧会、これも中止になりました。

 なぜ、こんなに中止になるのか。日本は怖いんだというような意識が世界じゅうに蔓延してしまったからではないかと思います。諸外国が我が国への作品の貸し出しを停止する理由、調べておりましたら、天災などによる危険性ということもございますが、クーリエと呼ばれる学芸員の問題も大きいと聞きました。

 クーリエは、作品輸送に同行し、作品の状態をチェックして美術館との受け渡しをする学芸員でございますが、今回の原発事故を受け、放射線被曝の危険性を過度に心配して、我が国への渡航をやめている。そのために作品の輸送ができないということではないかと思います。

 また、保険会社が不確定要素を理由に作品の保険を拒否しているため、輸送ができないということも聞いております。首都圏の美術展では、湿度や温度など作品の保管にかかわる停電の心配、計画停電とか言われておりました。

 文化庁は、このような状況をもちろんきっちりと把握されていると思いますけれども、今後に向けて、我が国への美術品輸送停止を通達したフランス政府の美術館総局などに対して、もう二カ月たっております、この輸送停止の解除とか、そのようなことを申請したり、あるいは、もう今、日本は大丈夫なんだよというような発信をしていらっしゃるのかどうかを、ちょっと伺いたいと思います。

    〔松宮委員長代理退席、委員長着席〕

高木国務大臣 委員御指摘のとおり、去る三月に、美術品損害補償法と美術品公開促進法、二つの法律が成立をいたしました。委員各位の熱心な御努力のおかげだと思っております。

 そういう上で、これから我が国においても、世界のすぐれた美術品を国民が親しく鑑賞することができる、私もそういう期待をしておりましたところ、三月の十一日の東日本大震災の影響によりまして、直後から、諸外国から作品を借りることができない、中止または延期になる例が相次いだことになっております、一部紹介をされておりますが。

 私どもとしましては、例えば、政府として、美術品の輸送停止の措置を講じていたフランスに対しては、四月の段階で、文部科学省から外務省に働きかけ、外務省は、在京のフランス大使館に対して、美術品輸送制限の緩和について申し入れを行っております。

 また、外務大臣からは、在外の公館に対しましても同様の対策を講じておりまして、いっときも早く風評ということを取り払う、そういう努力をこれからも政府一体となってしっかりやっていかなきゃならない、このように思っております。

池坊委員 日本は、今、外国人が観光に来なくなって、非常な打撃を受けております。私が住んでおります京都もそうですけれども、自然の景観だけでなくて、美術展などが中止されるというのは大変に遺憾なことではないかというふうに思っております。

 この六月に、ICOMと言われております国際博物館会議などが開催されるというふうにも聞いておりますので、例えばクーリエの渡航問題、学芸員は渡航しても大丈夫なんだよというのを、これはフランスだけではない、さっき申し上げたように、ロシアもアメリカも、すべての国が心配しておりますので、さらに強いいろいろな発信の方法を考えていただきたいと思いますが、再度、いかがでしょうか。やはり広報というのは大切と思います。

高木国務大臣 学芸員、クーリエの渡航問題は、これまた重要な話でございます。フランスについては、四月八日付のフランス政府からの指示によって、渡航延期措置というのは緩和されているところであります。

 私どもとしましては、これまた関係省庁、外務省等とも十分連携をとりながら、諸外国に対して働きかけをする。また、国際会議等を通じて、国際博物館会議などもその一つでありますけれども、情報の提供を行って、我が国の現状に誤解がないように、ぜひひとつ、美術品が借りられる状況に一日も早くなるように、そういう働きかけをしてまいりたいと思っております。

池坊委員 これ以上、イベント、すばらしい美術展が中止にならないような御努力を、どうか文部科学省として発信して、広報に努めていただきたいと思います。

 もう一つ私が伺いたいのは、五月二十五日に、ユネスコの記憶遺産というのが登録されました。ここにいらっしゃる方も、新聞やマスコミで、初めて、えっ、記憶遺産というのがあるのかなとお思いになったのではないかと思うんです。

 私も、実は、文化には一生懸命いつも関心を持っておりますけれども、世界遺産は、自然遺産と文化遺産がある、あるいは複合がある。それからまた、お能とか歌舞伎の無形文化遺産というのもある、これは人類口伝とか無形遺産傑作などをやるのだと。

 私は、記憶遺産などというのがあるということを実は知りませんでした。日本の絵師、山本作兵衛の炭鉱記録画などを登録するらしいですが、これは、福岡県田川市と福岡県立大学が共同で、山本作兵衛が描き残した筑豊の炭鉱絵画など約七百点の推薦書をユネスコに提出し、これら六百九十七点の山本作品が初めて国内で記憶遺産となったわけです。

 ところが、調べてまいりましたら、日本では初めてなんですけれども、実は、韓国では九点もあるんですね。熱心にそういうことを進めていらっしゃった。

 日本でも、ことしの五月十一日、日本ユネスコ国内委員会の記憶遺産選考委員会では、御堂関白記と、これは陽明文庫の中にあって、道長の自筆というふうに聞いておりますけれども、慶長遣欧使節関係資料、これも国宝ですけれども、来年三月までに推薦書をユネスコに提出して、二〇一三年の登録を目指すということを伺っております。

 初めて調べましたら、二年に一遍しかこれは開催しなくて、それで、一回に二件しか取り上げられないということも伺ったんです。日本ユネスコ国内委員会の下部組織だと思いますけれども、簡単に、どのようなメンバーで構成されていて、推薦までにどのような選考基準があるのか、大臣、ちょっとお知らせいただきたいと思います。

高木国務大臣 日本ユネスコ国内委員会では、御指摘のユネスコの記憶遺産事業に推薦する候補物件について調査審議することになっております。二〇一〇年三月に、日本ユネスコ国内委員会の委員、有識者など計八名から成る選考委員会を設置したところでございます。

 今回は第一回目の推薦ということで、まずは、国宝そして重要文化財の中から、広く国民に知られておる物件を推薦するという方針で、ユネスコの審査基準を満たす候補から選考を行ったものと承知をしております。

池坊委員 これは一九九二年に設立されて、十余年、登録事業が継続しているわけですね。新たにことしは四十五件が登録されて、二百三十八件が今まで既に登録されていた。調べたところ、そう書いてございましたが、日本は一件だというのは、考えてみたら、日本というのはすごく歴史がある、だから、顕彰ができるようなものをたくさん持っているんじゃないかと思うんです。

 そういう意味では、今まで文化庁が余り認識してこなかったのではないかというふうに思うのですが、これに対して、もっともっと積極的に採択できるような努力をやはり重ねていかなければいけないのではないかというふうに思うんです。

 今度、先ほども申し上げましたように、二点出されるんですけれども、これもほっておいてはそのまま見過ごされると思うのです。それに対して何か努力していこうとか、こういう広報、広報というよりは、それはユネスコに推薦をプッシュするということなんだろうと思いますけれども、大臣、これに対してはどのようにお考えですか。

高木国務大臣 このたび、田川市の山本作兵衛さんの炭鉱の図ということが登録をされまして、私も、この件については本当に大変うれしく思ったところです。これまでの発想といいますかを変えたような、まさに庶民の目線といいましょうか、あるいは、我が国の近代産業が抱えた実態を絵によって表現をしておる、こういうところが世界から高く評価をされたのではないかと思っております。

 文部科学省では、五月の十一日に、ユネスコ国内委員会に設置された選考委員会においては、御堂関白記及び慶長遣欧使節関係資料の二点を選定したことをもって報道発表したところであります。

 この記憶遺産事業については、ユネスコのガイドラインによれば、各国の推薦の上限を、委員も御指摘されておりますように、隔年で開催される一回審査当たり二件に制限をしておるというところでございまして、そのようなことになったと承知をいたしております。

 今回のこのことを私たちは改めて認識して、これからも積極的に本事業の推進に取り組んでいかなきゃならない、またいくべきだと思っております。

池坊委員 私は、広報というか、広く世界に、日本の人たちに記憶遺産の存在と意義と価値を広めるためには、二つあると思うんです。

 まずは、国内に広めなければだめだと思うんです。ここにいらっしゃる方だって、初めて聞いたよとおっしゃる方が多かったのではないか。つまり、世界遺産ばかり有名になって、記憶遺産は、でも、本当はとても大切だし、次の世代に残していく重要な価値あるものだと思うんです。その価値を世界の人が認めたからこそ、こうやって登録され、採択されたんだと思います。

 まず国内に、記憶遺産というのを初めて聞いたという方も多いと思いますので、ぜひこれをきめ細やかに発信していただきたいということが一つです。

 それから二つ目には、さっきも申し上げたような、日本というのは数多くの史料が残されていると思います。それがやはり日本の財産ではないかと思います。日本へ観光客が来るというのは、自然の美しさだけに引かれて来るわけではございません。神社があったり仏閣があったり、あるいは日本に温存している文化、さまざまなものに引かれて来るのではないかと思うんです。

 私は、ユネスコに採択される場合には、ロビー活動というのも極めて重要ではないかと思います。

 例えば、島根県の石見銀山、私ももう十何年前に、これを世界遺産で登録したいからということで見に参りましたときに、こんなアクセスの悪いところで大丈夫なのかななどと思いましたけれども、本当に地域の方々の、これを世界遺産にという熱い思いがあって、道路も整備されたり、いろいろな環境整備をなさりながら、それとともに、文化庁も本当にたくさん資料もつくりまして、またその当時の大使たちも、ユネスコ大使もロビー活動をなさっていただいて、こうした採択があり得たと思うんです。

 ですから、私は、ぜひ、そうした日本の埋もれている記憶遺産、これこそが日本の宝ではないかと思いますので、これに努めていただきたいなというふうに思っております。

 今回、記憶遺産に登録が決まりました山本作品というのは、先ほども申し上げましたように、福岡県田川市と福岡県立大学が推薦したわけです。これからも、文部科学省がくまなく地域をといっても、埋もれたそのような宝物を見出していくのはなかなか難しいと思うんです。ですから、やはり、地方公共団体や大学、学術団体との連携こそが私は必要なのではないかというふうに思いますので、これからどのようにそういう連携をとっていらっしゃるかをちょっと伺っていきたいと思います。

高木国務大臣 今回の件をしっかり我々は受けとめなければなりません。

 これまでは、国宝や重要文化財を中心として推薦された経過がございます。もちろんそのことも重要であろうと思っておりますが、今回の件については、地域あるいは地方の熱い思い、そして長い並々ならぬ努力、こういうことがあってこのようなことを認められたと思っておりますので、これからも私たちは目を大きく開いて、地域に埋もれたそのような遺産、価値のあるもの、これについてしっかり選考ができるような、そういう姿勢を持っていくことが大事だと思っております。

池坊委員 私、記憶遺産だったら万葉集や源氏物語があるんじゃないかと真っ先に思ったんですけれども、私たちの頭の中に、万葉集、源氏物語というのはすごく焼きついておりますよね。でも、自筆でなければだめだと。

 自筆でなければだめだと言われますと、本当にそれが自筆であるかないかというのは、その当事者じゃなければわからない。当事者と文化庁との連携の中で初めて、うちにもこういう自筆のいいものがありますよということで、埋もれていた宝物が出てくるのではないかというふうに考えておりますので、ぜひきめ細やかな連携というものをお願いしたいと思います。

 そして、何よりも民間の活力ですよ。民間の人たちが持っている力とか、民間の方たちがまだまだ持っていらっしゃるものもあると思いますので、そういうものを掘り起こしていくのが私は文化庁の仕事ではないかというふうに思っております。

 きょうは、スポーツ基本法が成立する記念すべき日でもございますし、三月にできました美術品の損害賠償法がきょうから施行されるという日でもございます。これから文部科学省とともに国民生活が本当の意味で豊かになっていくために、スポーツと文化芸術は双璧だと思います。

 そして、この二つによって被災者の方々も救われたとおっしゃる方があります。初めは、まず命が助かった。そして、食料の支給によって飢えを満たされた。だけれども、次には、精神の飢え、渇きをいやさなければ生きていけないというときに、スポーツや文化が支えになったと思うとき、それの中核をなしていらっしゃる文部科学省がさらに頑張ってほしいという思い、そして私たちも頑張っていきたいという思いでございますので、大臣にはそのことを強く願い、一言おありですか。

高木国務大臣 とにかく、スポーツと並んで文化の振興というのは重要でございますので、これからも、委員の御指摘も踏まえてしっかり取り組んでまいります。

池坊委員 以上で終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 いよいよ大詰めを迎えたスポーツ基本法案にかかわって、前回やり残した、スポーツの担い手などの人権、安全問題をまず聞きたいと思います。

 来年四月から中学校での武道必修化、これを目前にしながら、依然として、授業や部活あるいは民間の教室などで柔道の事故が後を絶ちません。独立行政法人日本スポーツ振興センター発行の「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」二〇一〇年度版には、部活動で乱取りの練習中、ある生徒が顧問に大外刈りをかけ、返しわざをかけられた後、意識不明となり容体が急変、病院に運ばれ、手術を受け治療を受けたが後日死亡というような事例がたくさん紹介されております。

 柔道事故の事例を調べてみると、一九八三年度から二〇〇九年度までの二十七年間で百十人の子供が亡くなり、一九八三年度から二〇〇八年度までの二十六年間で、二百六十一人の子供が何らかの後遺症が残る重い障害を負っております。

 こうした現状に、事故被害者家族や子供たち、あるいは関係者も危惧の声を上げておりますけれども、こういう紹介した事故には少なからず顧問がかかわっており、指導者という役割に照らしても、看過できない問題だと思うんです。

 まず大臣に、こうした現実をどのように受けとめておられるか、お答えいただきたいと思います。

高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。

 体育の授業において、平成二十四年度、来年度から中学校において武道が必修化になっておりまして、御指摘の事故はあってはならないものでありまして、各学校において、部活も含めて、安全の確保は最重要であろう、このように思っております。

 そういう中で、昨年ですが、二十二年七月には関係機関に対して、柔道における安全指導、こういったものの文書を発出しておりますし、くれぐれもこの事故防止の注意喚起を怠らないように、そのようなことを指導しております。

 特に、教育研究センターや武道関係団体とも連携をいたしまして講習会なども開催をしております。今年度は新たに体育活動の中の事故防止に関する調査研究を行いまして、事故の分析あるいは防止策、こういったものについて検討して、学校体育の安全確保に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 事故を医学的、科学的に解明をして、再発防止策を立てて、急いですべての指導者に研修を行って指導水準を向上させていく、あるいは体育館の床を一層安全なものにするなど、柔道事故をなくすための一層の取り組みを急いでいただきたいと思います。

 同時に、こうした事故の背景に、練習や指導に名をかりたしごきや体罰があるという指摘がございます。

 昨年、大阪市内の柔道教室で起きた死亡事故では、亡くなった小一の子供が初心者と知りながら、さらには体調不良を訴えていたにもかかわらず、根性をつけるためとして繰り返しわざをかけられ、死亡したという事例が起こっております。

 一方、欧米では、子供たちが柔道によって命を落とすことはほとんどありません。

 イギリスの例を紹介いたしますけれども、イギリス柔道連盟では児童を保護するためのガイドラインをつくっておりまして、けがをするとわかっていながらわざをかけることも、根性をつけるためと繰り返しわざをかけることも、勝利の価値を強調し過ぎることも、虐待であるというふうにガイドラインで定めております。イギリスでは、指導者になるためには、この研修は必修だということになっております。

 柔道などの武道では、スポーツ活動を通して、相手への尊重と協同する精神、公正な規律をたっとぶ態度などを培っていく。そうした精神を指導者らの規範として確立していくことは、スポーツを担うすべての人々の人格、人権を守ることや、これからの我が国のスポーツの発展にとっても必要なことだと私は考えますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。

高木国務大臣 スポーツの指導者の責務、役割というものは極めて重要でございます。したがいまして、しっかり講習会等も行いながら、安全確保のための資質を向上させていく、こういうことで努めていきたいと思っております。

 今御指摘の、いわゆるしごきや体罰というテーマでございましたが、これは我々としては、まずは、武道というのは我が国の固有の文化でありまして、勝負の勝敗もさることながら、相手を尊重して試合を全うする、そして、勝負の終わった後はお互いに励まし合ってまた次を目指す。こういう、ある意味では武道の意義をこの授業においてはしっかり体得をしていただく。このことが一番重要なことでございまして、これをもって人権を侵害するとか、あるいは健康、安全を害すとか、こういうことが絶対あってはならない、このように思っております。

宮本委員 柔道の事故の問題、引き続き本委員会で取り上げていきたいと思っております。

 次に、どうしても聞いておかなければならない問題があります。五月二十七日に文部科学省が発表した「福島県内における児童生徒等が学校等において受ける線量低減に向けた当面の対応について」、この文書についてであります。

 まず、校庭、園庭の表土除去による線量低減策について「設置者の希望に応じて財政的支援を実施する。」としたことは、この間、私も繰り返し要求してきたことでありまして、歓迎をしたいと思います。

 これは、公立だけではなく、当然、私立学校・園も国庫補助の対象にし、全額国が出すようにすべきだと私は思うんですけれども、大臣いかがですか。

高木国務大臣 先日、文部科学省あるいは福島県の調査を踏まえて、空間線量率が毎時一・〇マイクロシーベルト以上の学校などを対象として、線量軽減のための土壌の改善、このことについて、財政の支援をしていくということを決めました。

 今御指摘の私立学校についてということでありますが、この私立学校については、原則二分の一の災害復旧費の補助に加えまして、いわゆる経常費の助成に対する補助、これを行うことによって、公立学校と同様、あるいは実質的な設置者の負担分は相当程度軽減される、このように認識をいたしております。

 この件につきましては、私学関係者について先日もお伝えをしているところでございます。

宮本委員 放射線被曝から子供たちを守らなければならないのは、公立も私学も違いはありません。公立は国がほぼ全額出すと言うのであれば、私学も同じようにすべきだと申し上げておきたいと思います。

 郡山市のように既に表土除去を行ったところでは、その表土の処分先が見つからずに、校庭、園庭にはぎ取った表土を山積みしている。また、ビニールシートを敷き、埋設したところもあります。それらの撤去や搬出、処分費用についても、当然、国庫負担の対象にすべきだと思うんです。それから、はぎ取った表土の上に安全な新しい土をかぶせる、これにもぜひ国庫補助、国庫負担すべきだと思うんですが、いかがですか。

高木国務大臣 御指摘のように、既に表土を削り取った場合、これは、処理が完了し、土壌に関する線量の低減が図られる場合においては、積み上げた表土を撤去、搬出、処分する費用についても、補助対象とする方向で検討をしております。

 また、除去した後に必要に応じて行う土の補充、整地する費用についても、補助対象とする方向で検討しております。

 これからも、現地、学校設置者などと十分連携をとって適切に事を運んでいきたい、このように思います。

宮本委員 さて、これまで四月十九日に発表された「暫定的考え方」、ここでは、子供の年間被曝放射線量を二十ミリと定めて、校庭などの使用基準を定めました。ところが、五月二十七日の「線量低減に向けた当面の対応について」では、今年度、学校における児童生徒等が受ける線量について、「当面、年間一ミリシーベルト以下を目指す。」とされたわけであります。

 子供の被曝線量を少なくすることはもちろん歓迎でありますけれども、一体、どういう根拠をもって年間一ミリシーベルト以下にするのか、まずお答えいただけますか。

高木国務大臣 既に御承知のとおり、「当面の対応について」という五月二十七日の表明でございますが、これは、これまでも、「暫定的考え方」を踏まえて、国際基準である一ミリから二十ミリシーベルト、この目安、今後できる限り児童生徒の受ける被曝線量を低くしていく、こういうことを基本に立って示したものでございます。

 実質的には、今、児童生徒の受ける量についてはかなりの低減をされておりまして、「当面、年間一ミリシーベルト以下を目指す。」こととしたものでございます。

 既に現在、比較的に線量の高かった学校に積算線量計等を配付をして、教職員の方々に協力をいただいて携帯をしていただいて、実際の児童生徒の受ける積算線量を測定しております。その結果によりますと、年間積算線量は約〇・一一から約一・二六ミリシーベルト、こういう試算がございます。

 このうち、積算線量の高い学校等でも、土壌の改良等を行うことによって、児童生徒が受ける線量が年間一ミリシーベルト以下に抑えられることは十分可能である。こういうことで、より安心感を持っていただくために、財政措置を含めて示したところでございます。

宮本委員 実は、この「当面の対応について」、これは説明も受けましたし、今も大臣のお話がありましたけれども、これは、年間二十ミリが一ミリ以下に引き下げられたと世間が考えておられるのは、完全な誤解なんです。そういう話ではないんです。

 今、大臣が紹介された線量、これは、子供を代表する教員が持っているポケット線量計の積算線量をもとに話をしている。そして、そもそもこの「当面の対応について」というのは、学校内での被曝に限っているわけです。「暫定的考え方」では、二十ミリという議論をやっていたときには、これは当然、二十四時間三百六十五日、一年間分の計算、学校内も学校外も含めた計算をしておりましたが、今、この一ミリシーベルト以下というふうに出されているものは、学校にいる八時間だけ、それも、休みを除いた年間二百日だけというものなんですね。だから、全く別の問題なんですよ。

 これは、子供たちの学校外での残り十六時間の生活や学校に来ない百六十五日間の生活や活動はどうでもよい、こうお考えになっていると言わざるを得ないと思いますが、いかがですか。

高木国務大臣 今お話がありました件については、私どもとしましては、主に、学校活動における子供たちが受ける線量率を可能な限り低減をさせるという努力、この一環として、先ほどから示した土壌の改良等、あるいは線量計の配付等、これを財政負担も含めて示したわけでございます。

 子供たちは、おっしゃられるとおり、学校だけではありませんで、通学路や遊ぶところや、そしてまた家庭での生活、これがございます。こういったものについては、これはもう政府全体として取り組むべきものでございまして、当面、私たち、学校のグラウンドの線量率が高いということを何とかしなきゃならぬ、こういうことからこれまでそのような方策を練ってまいりまして、今回お示しをしたことになるわけであります。

宮本委員 これまでの議論というのは、校庭の放射線量をはかって、それが三・八になればどうこうという議論をやったわけですよ。ところが、今のこの当面の対応の議論は、教師が持っているポケット線量計の積算線量の議論に変わってしまっているわけなんですよ。

 あなた方の簡易型積算線量計、つまりポケット線量計のモニタリング実施結果というものを見ましたら、五月九日から十五日の一週間で見ると、時間平均でゼロから〇・七マイクロシーベルトと低かったと。当たり前なんです。私が前回指摘したように、現在は教師も子供も屋外にほとんど出ていない。鉄筋コンクリートの校舎内は、屋外に比べて十分の一程度の極めて低い放射線量なんです。そこにいる教師が持っているポケット線量計は低くなって当たり前なんです。

 しかし、これからは子供たちが屋外に出ることになります。子供たちが屋外に出ると、このポケット線量計を持った教師と子供たちの行動とが本当に一致するかどうかが問われることになります。子供は校庭を走り回るでしょう。教師が子供と全く同じに振る舞うことは不可能です。子供は遊んでいても、教師は職員室にいなければならないこともあるでしょう。

 まさに、このポケット線量計だけが低い値を示し、子供たちはそれ以上の放射線を浴びるということがあり得るんじゃありませんか。いかがですか。

高木国務大臣 したがいまして、私どもとしましては、学校の活動については先ほど申し上げたこと、同時に、さきにロードマップを発表いたしましたけれども、原子力災害対策本部の「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」の中で、被災者住民の安心、安全のための取り組み、こういったものも盛り込まれておりますので、同本部のもと、私どもとしましては、関係省庁、これは一体となって線量の軽減に努めなきゃならぬ。

 その最たるものが、一日も早く原子力発電所サイトの事態の収束を図ることに私は最大の課題があると思っておりますので、持てる全知全能、それぞれの皆さん方で力を合わせてそういう体制を図らなきゃならぬ、このように思っております。

宮本委員 ちなみに確認いたしますが、この文書で、「今年度、学校において」一ミリシーベルト以下にとなっておりますが、この「今年度」というのは、ことし四月十四日の授業開始日以降ということでよろしいですね。

高木国務大臣 五月二十七日の「当面の対応について」は、児童生徒の学校教育を受けることができるよう、まずは学校においての線量の低減策を示したものでございます。

 したがって、「今年度、学校において児童生徒等が受ける線量」というのは、今年度、始業日以降に学校内において受ける線量という意味でございます。

宮本委員 今年度の始業日は四月十四日ですよ。

 お手元にお配りした資料を見ていただきたい。これは、文部科学省が五月十二日に発表した「校庭等の空間線量率三・八マイクロシーベルト毎時の学校の児童生徒等の生活パターンから推定される児童生徒等が受ける実際の積算線量の試算について」と長たらしい、そういう名前の文書に添付されていた、文部科学省がつくったグラフです。

 グラフの、児童生徒が受ける線量では、Aという記号が打たれたこの間、つまり、三月十一日の震災時から四月十四日の授業開始時、学校開始時、この間にピークがある。そして、このピークの間に子供たちが受けた被曝線量は、二・五六ミリシーベルトと積算されているわけです。これがすっぽりと抜け落ちてしまっているんじゃないですか。いかがですか、事実関係。

高木国務大臣 三月十一日以降、福島県内のほとんどの学校は休校状態でございまして、事故から学校の開始日までに学校生活等で児童生徒が受けた線量はほとんどないものと考えております。

 なお、文部科学省では五月十二日に、児童生徒の生活パターンをもとに、実際に児童生徒が受ける積算線量について試算を発表いたしましたが、その中では、今御指摘のとおり、学校開始日の前日までの間の積算線量については、二・五六ミリシーベルトとしております。

 私たちとしては、これからさらに線量の低減を図る努力をしていって、年間の線量について一ミリシーベルトを目指すという努力をこれからさらに強めていかなきゃならぬ、このように思っております。

宮本委員 済みません、もう一問だけ。

 原子力安全委員会の助言は受けられましたか。

高木国務大臣 この件につきましては、五月二十六日に文部科学省から原子力安全委員会に対して、「当面の対応について」の方針に対して説明を行っております。

 原子力安全委員会からは、学校生活での被曝量をALARAの原則に従ってできるだけ低いように下げていくということでありますから、そういう努力をするということは結構であろう、こういう趣旨のコメントをいただいております。

宮本委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ICRPの基準は、子供であれ大人であれ、一日二十四時間、一年三百六十五日の積算被曝線量を問題にしているんです。あなた方は、その限度を二十ミリとしたことは撤回しておりません。そして、それを学校だけに限って、しかも、もう既に一ミリを超える二・五六ミリシーベルトも始業以前に被曝していること、これも事実であるにもかかわらず、こういう物の言い方で、まるで二十ミリを一ミリに引き下げたかのように受け取られるような発表をするというのは、私は、国民をたぶらかすものだと言わざるを得ない。

 これは引き続き追及するということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

田中委員長 次に、城内実君。

城内委員 城内実でございます。

 きょうは、原子力損害賠償に関する第二次指針と、お茶の風評被害について質問させていただきたいと思います。もし時間がありましたら、いわゆる君が代訴訟に対する最高裁判決が出ましたが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 まず、昨日、原子力損害賠償紛争審査会が、「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針」、今私の手元にありますけれども、これを公表いたしました。このたびの第二次指針では、四月末の第一次指針では盛り込まれなかった損害被害について、新たに賠償方針や算定方法が提示されたわけであります。

 このうち、私の質問は風評被害の扱いについてなんですが、地元は静岡県でありまして、お茶の産地なんです。今、その風評被害が非常に広まっております。

 と申しますのは、神奈川県と茨城県で国の暫定規制値を上回るお茶というものが出まして、そうすると、お茶は放射能とかで汚染されているということが静岡にも広まってきているわけでございます。実際、私の知り合いの茶農家の方は、お得意さんからことしの新茶ではなくて昨年のお茶を売ってくれと言われて、困っているということなんです。

 まず、この指針についてですが、風評被害の範囲について、五月以降発生した風評被害については、まさにこのお茶が該当するんですけれども、その賠償対象とされていないわけであります。そしてまた、政府が出荷制限指示等を出した地域のみが対象となっております。

 こうなりますと、静岡県、ひいては神奈川、茨城も含めてですが、今のところ対象外ということになっていますが、これは今後対象になるんでしょうかどうでしょうか。それについてお答えいただきたいと思います。

高木国務大臣 城内委員にお答えをいたします。

 この原子力損害賠償紛争審査会においては、事故との相当因果関係が明らかなものから順次この指針を策定していくということになっておりまして、四月の第一次指針に続いて、昨日、五月三十一日、第二次指針を決定したところでございます。

 この第二次指針では、委員御指摘のとおり、農林産業の風評被害について、平成二十三年四月までに政府等の出荷制限指示等が出されたことがある区域において産出されたすべての農林産物について今回の事故との相当因果関係を認める、そして賠償されるものとしております。

 静岡県の農林産物については、これまで政府等の出荷制限指示等が出されておりませんので、お茶についても、指針の賠償とすべき対象と今なっておりません。

 今後ですけれども、委員の御意見もございます、静岡のお茶も含めて指針の対象となっていない被害については、被害の実態、まさに広範囲にわたっておりますし、事故との関連性、こういったものを詳細に調査をする必要があります。

 したがいまして、七月ごろには原子力損害の範囲の全体像を中間指針として取りまとめるようになっておりますので、ぜひその中に取りまとめていただきたい、このように私は思っております。

城内委員 ぜひ、静岡県のお茶のみならず、東日本全体のお茶もこの風評被害の対象にしていただきたいと思います。

 第二次指針の中で非常にこれは参考になる文章がありまして、ちょっと読み上げさせていただきますが、「食品である農林水産物については、以下の特徴が認められる。」「消費者が摂取により体内に取り入れるものであることから、放射性物質による内部被曝を恐れ、特に敏感に敬遠する傾向がある」と。

 要するに、検出ゼロというんだったらいいですけれども、本当にもう微々たる量であっても、非常に不安になるという傾向にあるということなんです。全くそのとおりだと思います。

 実際、私も、一キログラム当たり五百ベクレルとか二百ベクレルと書かれても、それがどれだけの、五百というと何かすごい量なのかなと思って農水省の方に聞いたら、大したことありません、全然問題ありませんということも伺っているんです。

 ですから、本当にこれはちょっとした放射性物質の量であっても、これはやめよう、外国産にしよう、そういう傾向があるんです。

 また、もう一カ所ありまして、「食品である農林水産物は、日常生活に不可欠なものであり、また、通常はさほど高価なものではないから、東日本大震災自体による消費マインドの落ち込みという原因で買い控え、取引停止等に至ることは通常は考えにくい。」車とかピアノだったら、今はちょっと震災があって買い控えようとなりますけれども、お茶がだめだったら紅茶を買おうということなんですね。

 こういうことで、例えば、東日本のお茶が汚染されているんだったら鹿児島産を買おう、あるいは紅茶を飲もう、ウーロン茶を飲もう、そういう影響を非常に受けやすいということで生産農家の方は困っているんです。この点について農水省の方の御意見を伺いたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

雨宮政府参考人 お答えをいたします。

 現在のところ、静岡県で生産されたお茶につきましては、生葉の検査では、暫定規制値を超える放射性セシウムは検出されていないと承知をしてございます。

 損害賠償の関係につきましては、ただいま委員御指摘いただきましたように、今般のお茶からの放射性セシウムの検出が五月の事案ということで、第二次指針の風評被害に係る損害には位置づけられていないということでございます。

 農林水産省としましては、お茶農家の風評被害の影響もさまざまなものが予想されると認識しておりまして、原子力損害賠償紛争審査会に対しまして、今後、状況などを説明してまいりたいと考えているところでございます。

城内委員 ぜひ農水省の皆さんも農家の皆さんの声をしっかりと聞いて、やはり対策を早急にしていただきたいというふうに思っております。

 次に、これは厚生労働省にお尋ねしたいと思いますが、では、その暫定規制値というのは何かと思って調べてみましたら、食品衛生法上、確かに、放射性セシウム、飲料水二百、そして野菜類、穀類、肉、卵、魚、その他五百、単位は一キログラム当たりのベクレルという放射性物質の量なんですけれども、これはそもそも暫定規制値であって、いわゆるジェー・シー・オー臨界事故が起きたときに、急場しのぎでこれぐらいの暫定の規制値を設定しようということで、その後もう何年も変更せずに、そして、一体この数値が本当に適正かどうかも検証せずに、科学的な精査もせずに来てしまっているがために、この数字をちょっと超えると、これは危険だ、こういうのが実態なんです。

 さらに、お茶の場合は、生葉であれば、これは恐らくその二百という基準なんでしょうか、であっても、これを乾燥して販売直前の荒茶にする、当然重さが減るわけですから、放射性物質も濃縮されてしまう。しかし、それをまたお湯をかけると、その濃縮されたものはまた薄まってしまうわけですね。そうすると全然問題ない。生葉は問題なくて、飲用するときのお茶も問題ないけれども、荒茶だけがちょっと規制値を超えてしまう。

 そもそも、荒茶に暫定規制値というものを設定するのはおかしいんじゃないかという考え方もあると思うんですが、それについてどうでしょうか。

梅田政府参考人 まず、この暫定規制値全般についてお答えをさせていただきます。

 これにつきましては、議員御指摘のように、この放射性物質に関する暫定規制値につきましては、食品の安全性を確保する観点から、原子力安全委員会より示された飲食物摂取制限に関する指標値を食品衛生法上の暫定規制値としたものでございます。この規制値の詳細につきましては議員御指摘のとおりでございまして、この放射性物質について、現在、内閣府の食品安全委員会において健康影響評価が行われております。

 それで、その評価状況を踏まえながら、厚生労働省の審議会におきましても規制値の再検討を始めているところでございます。

 また、お茶の件につきましては、お茶の放射性セシウムの暫定規制値、先ほど議員の御指摘のございましたカテゴリーの中では、肉、卵、その他の類に入っておりまして、五百ベクレル・パー・キログラムとされているところでございます。それで、お茶は、生葉から荒茶へと加工され、最終的に飲用茶となりますが、どの段階で五百ベクレル・パー・キログラムを適用するかにつきましては、原子力災害対策本部において現在議論が行われております。

 今後、原子力災害対策本部におきまして新たな方針が示された場合には、厚生労働省としても、それに従い、対応してまいりたいと考えております。

城内委員 ぜひ、早急にしっかりとした規制値を設定していただきたい。

 実際、乾燥された状態の荒茶を毎日どんぶり三杯ばりばり食べるなんという人はいないわけですから、そもそも意味がないんですよね。やはりそこは、最終消費の段階の飲用する状態でどれだけ入っているかというのを基準にしないと全く意味がないし、本当にどんどん風評被害が広がっていくと思いますので、これまでその暫定数値をずっとほっておいていたというのは、やはりこれは国の怠慢だと思います。

 二つの利益があるわけですよ、農家の利益と国民の健康、この二つをよく考えて基準値を設定していただければ幸いです。

 最後に大臣に、第三次指針でこの問題についてしっかりと取り入れていただいて対象にしていただくというお約束をしていただけますでしょうか。

高木国務大臣 公正中立で審査を行っている審査会の皆さん方の議論でございますので、私は立場がこういう立場ですから差し控えさせていただきますが、先ほどお答えしたように、こういうものが反映できるように私たちとしては願っておるところでございます。

城内委員 確かに、公正中立な立場でこういう指針をつくっておりますけれども、大臣としての御認識をしっかり深めていただいて、こういったお茶のような、ある意味では特殊な加工物について暫定値をどう設定するかということについては、より認識を深めていただきたいというふうに思っております。

 最後に、もう時間も余りありませんが、いわゆる君が代訴訟の最高裁判決について大臣に質問させていただきます。

 一昨日、公立学校の卒業式で君が代を斉唱する際、教諭を起立させる校長の職務命令をめぐる訴訟につき、最高裁で、命令は憲法十九条が保障する思想、良心の自由に違反しないという判断を示しました。大阪府の橋下知事などは、条例でこの起立斉唱を盛り込むというようなこともやっているそうでございます。

 それで、大臣はこの点についてどのようなお考えでしょうか。私が承知しているところによりますと、大臣は国旗・国歌法に反対されたと。これは事実かどうかちょっと私は確認したいんですけれども、どうでしょうか。

高木国務大臣 よく調べていただければわかりますが、私は、国旗・国歌法は賛成をいたしております。

城内委員 済みません、これは私の認識違いだったかもしれませんが、いずれにしても、この最高裁判決について、大臣としては前向きに評価するんでしょうか。どうでしょうか。

高木国務大臣 児童生徒が国際社会において尊敬され、また信頼される日本人として成長していくためには、我が国のみならず、他国の国旗・国歌の意義について理解をする、そして、それらを尊重する態度をはぐくむことが重要であろう、これは私たちの基本的な認識でございます。

 今回のいわゆる判決についての対応でございますけれども、入学式とか卒業式等の国歌斉唱などの実施方法については、これは、社会通念に従いまして、学校の所管をする教育委員会あるいは校長が適切に判断するものだと思っております。

 教職員が校長などから起立して国歌を斉唱するよう職務命令を受けた場合は、それに従うものだと考えております。

城内委員 済みません。時間が来ましたのでこれで終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、奥村展三君外十六名提出、スポーツ基本法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。遠藤利明君。

    ―――――――――――――

 スポーツ基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

遠藤(利)議員 スポーツ基本法案、提案理由の説明をさせていただきます。

 ただいま議題となりましたスポーツ基本法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 スポーツは、世界共通の人類の文化であります。心身ともに健やかな人間を育て、人々に大きな感動や楽しみをもたらし、また、明るく豊かで活力に満ちた社会を形成するとともに、国際的な交流や貢献を果たす上で欠かすことのできないものであります。

 さて、スポーツ振興法の制定から五十年がたち、スポーツを取り巻く環境や国民のスポーツに対する認識が大きく変化する中で、時代にふさわしい法を整備することは、我々国会議員はもとより、多くのスポーツ関係者にとっても急務の課題となっておりました。

 このような状況のもと、ここに各会派の御賛同を得て、本スポーツ基本法案を提出できる運びとなりましたのは、超党派のスポーツ議員連盟において長く議論を重ねてこられた方々や民間のアドバイザリーボードの皆さん、多くのスポーツ関係者の皆さん、法案の提出者及び賛成者に名前を連ねていただいた諸先生方、そして、参議院の取りまとめに奔走いただいた橋本聖子先生、谷亮子先生、松下新平先生、友近聡朗先生、前議員の山下栄一先生を初めとした諸先生方の御尽力のたまものであると衷心より御礼を申し上げる次第であります。

 本案の主な内容は次のとおりであります。

 本案は、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の心身の健全な発達、明るく豊かな国民生活の形成、活力ある社会の実現及び国際社会の調和ある発展に寄与するため、スポーツに関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務並びにスポーツ団体の努力等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、前文において、スポーツを通じて幸福で豊かな社会生活を営むことはすべての人々の権利であることや、スポーツに係る多様な主体の連携と協働による好循環の創出など、スポーツの意義、効果等について明記するとともに、スポーツ立国の実現を目指し、国家戦略としてスポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進することを明らかにしております。

 第二に、総則において、スポーツに関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務並びにスポーツ団体の努力等を明らかにするとともに、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めることとしております。

 第三に、国は、スポーツ基本計画を定めなければならないこととし、地方公共団体は、地方スポーツ推進計画を定めるよう努めるものとしております。

 第四に、基本的施策として、指導者の養成等の基礎的条件の整備、地域スポーツ振興のための支援等の環境整備、優秀なスポーツ選手の育成等の競技水準の向上並びに国際競技大会等の招致及び開催の促進等に必要な施策を講ずることとしております。

 第五に、政府は、スポーツに関する施策の総合的、一体的かつ効果的な推進を図るため、スポーツ推進会議を設け、また、市町村の教育委員会は、スポーツ推進委員を委嘱すること等について定めております。また、国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、政令で定める経費について、その一部を補助することとしております。

 なお、附則において、政府は、スポーツに関する施策を総合的に推進するため、スポーツ庁及びスポーツに関する審議会等の設置等行政組織のあり方について、行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、必要な措置を講ずることとしております。

 以上が、本法案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 最後になりますが、このたびの東日本大震災において多くの方々が被災されております。その中にあって、世界で活躍する選手が支援を呼びかけたり、実際に被災地に赴いて支援を行ったりするなど、スポーツを通じた活動が被災者に生きる勇気と喜びを与え、我が国が明るさと元気を取り戻すきっかけの一つとなっております。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 奥村展三君外十六名提出、スポーツ基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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