衆議院

メインへスキップ



第6号 平成26年3月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十六年三月十九日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石川 昭政君    小此木八郎君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小林 茂樹君

      桜井  宏君    新開 裕司君

      冨岡  勉君    永岡 桂子君

      野中  厚君    馳   浩君

      比嘉奈津美君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    泉  健太君

      後藤  斎君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    田沼 隆志君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    宮本 岳志君

      青木  愛君    吉川  元君

      山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     伊藤  仁君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          清木 孝悦君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (文化庁次長)      河村 潤子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           高島  泉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部長)  宮川  晃君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十九日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     石川 昭政君

  菊田真紀子君     泉  健太君

  吉田  泉君     後藤  斎君

  三宅  博君     田沼 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     神山 佐市君

  泉  健太君     菊田真紀子君

  後藤  斎君     吉田  泉君

  田沼 隆志君     三宅  博君

    ―――――――――――――

三月十八日

 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官佐々木克樹君、復興庁統括官伊藤仁君、文部科学省生涯学習政策局長清木孝悦君、初等中等教育局長前川喜平君、高等教育局長吉田大輔君、科学技術・学術政策局長川上伸昭君、スポーツ・青少年局長久保公人君、文化庁次長河村潤子君、厚生労働省大臣官房審議官高島泉君、大臣官房審議官鈴木俊彦君及び職業安定局派遣・有期労働対策部長宮川晃君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。

後藤(斎)委員 民主党の後藤でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。大臣、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 二月の大雪の中で大学の受験機会を失った高校三年生、浪人生の方々に、大臣の指導力のもとで再受験の機会をつくっていただきました。

 私、常々思っているのは、今回の事例が典型なんですが、では、センター試験の一月のときに、大雪であるとか交通手段が失われたとか、いろいろな不測の事態というのは当然考えられて、対応をこれからももっとしていかなければいけないというふうに実は思っています。

 文科省の皆さんとお話をしたら、局長通達で事前に、春くらいに、災害等で不測の事態が起こった場合の再受験の機会等の要請というものはしているんですが、やはり、生徒さんや例えば高校の先生たちにそういうものが十分伝わっているかといえば、なかなかそうではないというふうに思わざるを得ないというのが今回の多分事象であったというふうに思っています。

 そして、大学の中でも、当初、なかなか再受験の機会というものをつくっていただけなかった事例もありました。再三、局長も含めて直接要請をした中で、かなりの大学が再受験の機会をつくっていただいていることは本当にありがたいことだと思っているんですが、やはり、これは平時からきちっと対応を明確にしていかなければいけないということに私は尽きるというふうに思っています。

 その点について、文科省、今回の豪雪という中で移動手段が失われた生徒さん、そして、これからも予想される災害等の不測の事態に備えるために、受験機会の確保という観点でどのような制度づくりを行っているのか、まず冒頭、お尋ねをしたいというふうに思います。

吉田政府参考人 後藤先生御指摘のように、文部科学省では、毎年各大学に通知をしております大学入学者選抜実施要項、これは局長通知でございますけれども、この実施要項におきまして、災害等の不測の事態に適切に対応できるよう、入学志願者への連絡方法や問い合わせ窓口の設置等、各大学に対しまして十分な準備、検討を要請しているところでございます。

 また、さらに、実際に災害等が発生した場合には、その都度、事案に応じまして、文書により改めて各大学に対して対応を依頼しているところでございます。

 今般の雪害の関係では、文部科学省からは、二月十七日付で全大学に再試験実施などの配慮要請を文書により行うとともに、十五日以降、試験を実施した大学につきましては、個別に電話による配慮要請等も行ってきたところでございます。

 今後、やはり今回の災害の教訓を踏まえまして、大学入学者選抜実施要項の見直しのほか、また、先生御指摘のように、各大学の取り組みにつきまして高校あるいは受験生等の関係者への周知方策等々、そういったものを含めまして、必要な方策について検討してまいりたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 局長、ぜひそうしていただきたいんですが、それがやはり生徒さんや保護者の皆さんにもきちっとわかるような形で、また、それぞれの大学のどういうふうな準備状況なのかも含めて、きちっと把握を時間をかけながらもやっていただきたいと強く要請をしておきたいというふうに思います。

 厚労省、来ていらっしゃるでしょうか。去年もちょっと指摘をさせていただいたんですが、医師、看護師が不足をしているというふうに言われて久しいところがあります。一方で、国家戦略特区の中で、どこの地域かは別としても、近々、医学部の新設も含めて決定をされるというふうなお話も聞いています。これは、その地域の医師不足というものに一つ応えるためということもあります。

 あわせて、一九八四年ですから、三十年前までは医師、看護師の国家試験というのは年二回かというふうに私承知をしておりますけれども、それが三十年前から年一回の試験になった。六年間勉強をさせて対応しているんですから、新しい医学部をつくるというものも一つの医師不足の解消に役立っているのは言うまでもありませんけれども、むしろ、受験機会、先ほどの災害時の部分ではありませんけれども、国家試験を年二回にもう一度戻しながら、できるだけ早く医師養成というものを目指した方がいいのではないかなと。

 これは、実は今国会に司法試験制度の改正も法案で出ています。ロースクールを出た人の三回の受験機会を五回まで認める、その拡大の部分もありますし、あわせて、大学もこれから多様な、例えば秋入学みたいなものを検討している大学も当然います。そういう部分にいろいろ備えるためにも、やはり制度というものを柔軟に対応する、すなわち、少なくとも年二回の国家試験の受験資格というものを与える中で、医師や看護師の早期の育成と、そして、それがそれぞれの地域で役立つようにしていくべきだというふうに私は常々主張させていただいております。

 昨年一年間たって、厚労省の方でどのような検討状況になったのか、そして、今後の見通しも含めて御答弁をお願いしたいというふうに思います。

高島政府参考人 お答えいたします。

 委員からは昨年も御質問いただいたところでございますが、地域におけます医療体制を整備するに当たりましては、医師の確保とか偏在の是正ということが非常に重要な課題であると考えております。

 この中で、委員御指摘の国家試験でございますけれども、五十六年の医療関係者審議会の医師部会、ここにおきまして意見書が出ております。その中で、幅広い知識、技能を問う問題の出題とか問題数の増加を行うべきである、それから、年二回の試験を厳正に行いながらこうした改善を実施することは困難ということから、年一回の試験とすることが妥当である、こういった意見書が出されたわけでございます。それを踏まえて、六十年から一回という形に変えてございます。

 これによりましてどう変わったかといいますと、五十九年以前と比較しまして、問題数が約二倍の五百問にふえた、以前は二百六十問でしたけれども五百問にふえたということと、それから、臨床の場面を想定しました臨床実地試験というのをやっておりますが、これも六十問から二百五十問ということで、大幅に質問数をふやしたということと、それから、医療を取り巻く状況、医療の進歩に合わせて医師国家試験の出題基準を改定していくという対応をしております。

 この結果、現在、問題作成に携わっている試験委員の方は百名を超えているという状況にございます。

 試験問題そのもの、これらの試験委員が集まりまして試験委員会というものをつくっておりますが、この中でおおむね一年間作成しております。この委員の方々は、地域医療を担っている医師の方々とか大学医学部の教員の方々でありまして、通常の診療とか講義の業務の中で大変忙しい中、時間を割いて試験問題の作成に携わっていただいているという状況でございます。

 これを年に二回つくるということになりますと、試験問題も二回つくらないといけないということで、医療供給体制とか大学医学部の教育体制への影響を踏まえると、さらなる試験委員の確保、それから、試験委員の負担をふやすということは極めて難しい問題があるんじゃないか、こういうふうに考えております。

 また、看護師試験におきましても、平成二年から医師と同様の事情で、年一回という形で実施しております。こちらにおきましても、質問数それから試験委員の数もふやしまして、より専門的な試験問題をつくるということで、労力を大変要しているところでございます。

 こういった事情から、今のところ、国家試験については年一回という形で考えております。

後藤(斎)委員 高島審議官、一方で、政府全体では、日本再生戦略の閣議決定の中では、国家試験、資格制度の検討というものを来年度までにやるというふうなことで、今お聞きをすると、完全にネガティブで、一回は絶対見直しはしないというふうにやはり聞こえるんですよ。

 先ほど、大学の再受験の部分でもお尋ねをしたように、やはり、ここは実は柔軟でなければいけない。確かに先生方が百人かかわるから大変だといっても、お医者さんの数が、十万という数が当然いるわけですし、私学も含めて大学の先生方というのは、当然、研究や治療という部分をやっていますけれども、五百問になったからそれがネックになるということは、どうも私は納得できないんです。

 ぜひこれは、去年桝屋副大臣も、きちっと勉強して検討するというお話をしていただいていますから、ここは改めて、もう少し柔軟にいろいろな人材を確保していく。それがやはり六年間という一つの節目の中で、では、インフルエンザで入院したときの六年生の生徒さんは、受験資格というか、試験に行けないということになってしまうわけですね。では、そのためのストックというのはつくってあるんですか。

高島政府参考人 委員の方から受験機会という話がありましたけれども、国家試験を受ける受験の回数については制限ございませんので、ですから、落ちた方は、今の年一回ですと、翌年受けていただくという形で受験の機会を確保しているところであります。

 年二回にしますと半年間早く受験の機会は来るわけでございますが、一回目の試験で落ちた方、合格率が九割ぐらいですから一割ぐらいの方は落ちられるわけですけれども、その一割ぐらいの方々が、第二回目の試験で受かれば半年間早く医師の道へ進むことができるんですけれども、そのためのコストというのを考えると、やはり非常に大きなものがあるという形で考えております。

 受験機会を絞っているわけではないということは御理解いただきたいと思います。

後藤(斎)委員 審議官、もう一度政務とも御相談していただいて、先ほどの、医師部会の意見を最大限尊重して二回から一回にしたというお話で、やはり、先生方の御都合というのがどうも優先をされていて、これからお医者さんになってちゃんとその地域のため、国民のために働いていこうというその視点というのが少し軽んじられているような感じもするので、ぜひそこは、今政府全体でやられている日本再生戦略の部分も含めてもう一度検討していただいて、柔軟な視点というものを持ちながら対応をしていただきたいというふうに、改めて要請をしておきたいと思います。

 大臣、地方大学というのがいろいろな意味で今難しい状況になっています。特に、子供さんの数が減った中で、国立、公立高校であれば、文科省からの交付金やそれぞれの地域が学校経営を支えるという視点も当然ありますし、今は、ポスドクも含めていろいろなたくさんの人材がなかなか学問の中だけではある意味では食べていけない、すなわち、講師にも例えばなれないという事例もたくさんあります。

 そういう中で、地方は地方でその地域を知り尽くしてそれぞれの課題というものをきちっとわかっているわけですから、やはり地(知)の拠点として、これは私も四年前からその部分を非常に強く思っていまして、それぞれの大学の持つシーズ、そして人材や知的な財産も含め、それぞれの地域で本当に生かすような施策をもっともっとやっていかなければ、地域の産業振興や地域の活性化と抽象的にはみんな当たり前のことなようなんですけれども、やはり、一番理解をしている地方大学、地方にある大学がそういう地(知)の拠点になっていくような施策をもっともっとやっていただく必要があると思うんです。

 確かに、地(知)の拠点事業という部分があって、ただ何となくそれが点になっているような感じがするんです。もっと広げて面にして、地域の自治体が困っている課題や、また、地域の中小企業の経営者の方が、こういう素材があったらおもしろいな、そういうお見合いの場ももちろんつくってもらっているのでよくわかっているんですが、もっとそれを充実強化していくという姿勢が、文科省だけではなくて政府全体が、不十分と言われると怒られるかもしれませんが、まだまだ十分ではないというふうに思わざるを得ないんです。

 その点について、地方大学をこれからどういうふうにそれぞれの地域の中で地(知)の拠点として対応させていくのか、ぜひ大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

下村国務大臣 地域に存在する大学や企業などの各機関やコミュニティーが連携し、地域の総力を挙げて地域の抱える課題を解決し、地域産業の振興につなげることは大変重要であり、ひいては、我が国の成長に寄与するものであると認識しております。

 後藤委員の地元の山梨においても、例えば、やまなし次世代環境・健康産業創出エリアという地域イノベーション戦略推進地域として活動されていたり、あるいは、富士山麓ファルマバレー戦略推進地域として指定されているということでございます。

 特に、その中で、地域にあって社会貢献をも重要な役割とする御指摘の大学でありますが、高度で豊富な人材やポテンシャルの高い知的財産を活用し地域活性化に貢献することは、非常に重要であるというふうに思います。

 文科省としても、イノベーション創出に向けた、地域主導のすぐれた構想を効果的に支援する地域イノベーション戦略支援プログラムや、地域の拠点として全学的な教育、研究、社会貢献活動を行う大学を支援する、御指摘がありました地(知)の拠点整備事業などを通じまして、大学の地域貢献、機能の強化を推進してまいりたいと思います。

 今後とも、地域にある大学が産業振興や地域活性化に貢献できるよう、必要な措置を講じてまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣がおっしゃるように、確かにいろいろなメニューもあるし事業もあると思うんです。その中で、やる気のある大学の学長さん、大学の教授の先生、いろいろな部分で、やる気のある部分との連携というのがまずなければいけない。

 なかなかやはり、地(知)の拠点といっても、裏返してみれば、自分の研究だけしたいという先生もたくさんいらっしゃるのも、これも多分事実だと思うんです。そうではなくて、もっと社会と融合していく、その地域ともっとかかわりを深めるということは、これから学長さんの権限も強くなりますし、やはり、大学全体を通じてその対応を進めていくということをまず前面に出していかないと、いろいろなメニューや事業があっても、では、それがどうしても予算が獲得できなかったらそれは諦めちゃうのかということであったら、それは途中でとまってしまうわけなんで、それはやはり前に進めるように、特に公立大学の部分でいえば、地方自治体との連携というのも非常に大切になると思うので、ぜひその点も含めて、大臣の指導力の中で真にこの地(知)の拠点になっていけるように、地方大学が活動できるように、さらに充実した施策をとっていただきますように、改めてお願いをしておきたいというふうに思います。

 実は、話を別に戻しますと、昨年、富士山が世界文化遺産に一応登録をされました。これも、正式登録なのかどうかというのは、正式だというふうに皆さんおっしゃるので正式なんでしょうけれども、宿題を与えられています。この宿題が、二〇一六年の二月ですから、あと二年後にどこまで保存計画も含めて進んでいくのかということが、本当に真に正式登録になって、世界の方々から富士山ここにありということを理解される一つの大きな前提だと私は実は思っています。

 そういう意味で、私は個人的には暫定登録だという謙虚な部分で、この二年間、きちっとした計画づくりをしなきゃいけないというふうに思っています。

 その中の一つの課題として、やはり入山規制をしなければいけないとか、そういうものがあります。

 実は地元でも、日本じゅうそうかもしれませんけれども、やはり富士山が世界文化遺産になったことが、すぐ観光客がたくさん来るとかたくさんの人が移動するということが前提であると、それはむしろ保存計画も含めて、これからの二〇一六年の二月に向けて、部分がマイナスになるという評価は実は余りされていません。規制や保護というものをする際には何らかの負の部分がかかるというふうなことというのは、地元でも理解をなかなかされませんし、むしろ、たくさんのお客さんが来てお金を落としてくれるというふうなことの方が前面に出過ぎる嫌いがあるというふうに私は思っています。

 そういう意味で、山梨県、静岡県を含めた関係自治体の調整も含めて文化庁が全体を取りまとめ、二〇一六年二月の正式な部分に向けて対応を、今は半年たちましたから進められているというふうに思いますけれども、現状についてどのように対応されて、これから二〇一六年二月に向けてどのような形で進んでいくのか、見通しも含めて教えていただきたいと思います。

河村政府参考人 お答え申し上げます。

 富士山は、昨年六月のユネスコ世界遺産委員会で世界文化遺産として登録をされましたが、その際、二〇一六年二月までに保全状況報告書を提出するように求められております。

 この保全状況報告書においては、ユネスコの要請を踏まえ、まず、富士山やその周辺へのアクセスや行楽の提供と富士山の神聖さ、美しさという特質の維持といういわば相反する要請に応える全体構想を立て、さらに、来訪者管理や情報提供などの戦略、現在は使用されていない巡礼路の特定の進捗状況、改定した包括的保存管理計画などを盛り込む必要がございます。

 初めの全体構想や各種の戦略については、山梨県、静岡県、関係市町村によって構成される富士山世界文化遺産協議会において、二〇一四年、ことし中に策定される予定となっております。

 また、巡礼路の特定ということについては、調査研究に少しく時間を要するものでございますが、国としてしっかり進捗状況を把握することとしております。

 これらを受けまして、国において保全状況報告書としてまとめ、二〇一六年二月までにきちんと提出をすることといたします。

 文化庁としては、これまでも富士山世界文化遺産協議会に参加するとともに、日常的にも両県と連絡をとりながら、取り組みに対し、専門的な立場からの助言を申し上げてまいりました。今後も、両県や関係省庁と密接に連携をしながら、的確な対応を心がけてまいりたいと存じます。

後藤(斎)委員 今次長がお答えをいただいたように、関係自治体との連携もさることながら、きちっとした保存計画がやはり内容的にできるかというのが一番の多分肝だというふうに思っていますし、先ほどもお話をしたように、なかなか地元の皆さんは、それが経済的、観光的に大きくプラスになっていくんだということをかなりやはり強く思われている部分があるので、それをどう抑制をしながら最終的な保存計画をまとめていくかというのは、かなり本当に難しい部分がこれから各論になってくると出てくると思うので、その点については、文化庁も泥をかぶる覚悟でぜひお願いをしたいというふうに思います。

 大臣、今月中にも文化芸術立国中期プランというのをおまとめになるというお話を聞いております。

 この際に、私も少しかかわらせていただいた、平成二十三年二月八日に文化芸術の振興に関する基本的な方針、いわゆる第三次基本方針というのをまとめました。このときには、やはり文化庁だけではなかなか進まない部分を、関係省庁や自治体ともきちっと連携をしながら進めていかなければいけないということを強く書き込めたつもりであります。

 文化庁の予算、一千億を超えて四年か五年たちますけれども、やはりこれ以上、急激に倍や三倍になるということはないですし、ただ、世界無形文化遺産に日本の食がなったように、やはり農水省、今までなかったような食文化との連携や、経産省や官公庁も含めたいろいろな連携の仕方があると思う。

 ここはぜひ中期プランの最終的な取りまとめの中では、地域の活性化や関係省庁との連携、自治体との連携というものを少し強目に出していただく必要があると私思うんですけれども、その点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりでありまして、後藤委員も、政務官の御経験がある中での発言であるというふうに思います。

 私のもとで文化芸術立国中期プランを作成し、これは非常に野心的な、二〇二〇年までに倍増、予算を二千億にするということでありますが、これは、文化庁や文科省だけではとても到達するのは不可能でございます。

 幸いにも、昨年九月に二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックが開催決定をいたしましたから、これにあわせて、日本全体を文化芸術立国としてあわせてしていくという意味では、これは政府一体として取り組むような、そういうコンセプトにしていきたいというふうに思いますし、ぜひオリンピック・パラリンピックの中にも、組織委員会の中にも文化芸術関係の理事にも入ってもらうことになりましたし、オール・ジャパンで文化芸術について取り組むということの中で、政府の中でも、当然、中心は文化庁でありますが、文化庁の予算をふやすということよりは、他省庁と働きかけて、日本そのものを文化芸術立国としてどうするか、そういう視点から、これから多角的、多極的に働きかけてまいりたいと思いますので、御支援の方、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

後藤(斎)委員 大臣、最後の時間というか、項目だけまとめてちょっといろいろなお話をさせてもらいたいと思います。

 三年前の三・一一の後、特に福島の原発の事故の後、特に原子力関係の先生方が自分の思いをいろいろお話をし、メディアを通じた国民の皆さんから見れば、何が本当に真実なのかということが問われた時期がありました。そのときも、科学の限界、科学者の信頼の低下ということが言われました。

 今回も、理研のSTAP細胞にかかわる問題についても、当初、一月二十九日だったと思いますけれども、STAP細胞についての公表をした。そしてその後、総理も大臣も、これはすばらしいということで称賛をした。でも、その過程についていろいろな疑義が生じて、先週、その中間報告なるものを出した。

 この間のメディアの皆さん方も含めてですけれども、上げたり下げたりが余りにも激し過ぎて、今回は特に、博士論文の作成過程や、また、ノーベル賞ものだと言われたものの評価というものが、理研という組織自体も含めてやはり今問われていると思うんです。

 大臣もごらんになっているように、五十四年前に、当時の中曽根科学技術庁長官の時代に、「21世紀への階段」という本の、実は去年、復刻本が出ました。これはまさに、国民が科学技術を通じて二十一世紀がどのような時代になるのかということで、このうちの大体五割から六割が今達成をされたというふうに言われています。

 私が言いたいのは、やはり予算は限られています。そして、その予算を獲得する中でいろいろなやはり対応を虚々実々やらなければいけない。これもわかっています。ただし、その予算獲得や組織を大きく売っていくためだけにやっているのかどうかというのを、今、日本国民だけではなく、世界じゅうから、今回の結末というのがどういうふうになっていくのかということが多分問われていると思うんです。

 そういう意味で、私はぜひ大臣に改めてお願いをしたいのは、科学技術というものは、全て一人の天才だけでつくられるという時代はやはり終わった。ありていに言えば、純粋科学は収穫逓減の時代に入ったということをきちっとまずベースに据えるべきだと私は思っています。

 それは、予算や人材をたくさん投入をしても、それが本当にきちっとした成果が得られるかどうかという成果論だけでもちろん決められるわけではありませんけれども、やはり今、国民や世界から科学に求められているのは、科学的根拠とか科学的公平性というものが失われたら科学というものは絶対成立をしませんし、そこに研究費という税を投入しても、先ほどもお話をしましたように、自分の研究だけをしているという、非常に社会全体から見れば閉ざされた世界にいる。そのあかしが今回の事例になってしまったのかどうか。これは、時間をかけてやはり調査結果を第三者機関も含めてやっていただく必要があると私は思っているんです。

 理研は、一九一七年、もう百年近く前にできた組織でありますし、その七年後に当時の長岡半太郎先生が、水銀から金をつくるということを大々的に理研が、長岡先生が当時公表して、何で水銀から金がとれるんだ、錬金術じゃないかと言われたけれども、それが堂々とやはり論文として組織全体でそれを後押しした時代があったそうです。

 その轍を踏むかどうかは別としても、やはりもう一度、一人の研究者をやゆするのでは決してありません。そうではなくて、私は大臣にぜひお願いしたい、私もできなかったんですけれども、新しい二十二世紀はともかく、二〇三〇年でも二〇五〇年でも結構であります、やはり、科学技術というものを国民や一人一人の幸福のためにどう役立てるのか、その際に組織のあり方や研究者のあり方はどうなのかということを、大臣の主導のもとでぜひおまとめいただきたいと思うんです。

 それがなければ、一つの理研という組織だけではなくて、やはり日本全体の、博士論文をつくる過程やその組織というもの全体が多分問われているというふうに思ってやらなければいけないと思うんです。

 ぜひその点について大臣、時間がちょっと過ぎて大変恐縮なんですが、御見解と、そういう部分でもう一度日本の科学者や科学というものを、国民だけではなく、世界に向けてしっかりちゃんとこれから対応するというメッセージをお願いしたいと思います。

下村国務大臣 非常に本質的な、大切な問題提起だというふうに思いますし、じっくりお答えしたいんですが、もう時間がオーバーしておりますので、簡単に申し上げざるを得ないと思いますが。

 昨年一月、科学技術・学術審議会におきまして、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について」という建議の取りまとめがございました。私もここに出席をしておりました。

 この建議において、やはり、三・一一東日本大震災に対して科学は何ができたのかという非常に反省のもとで、社会のための、社会の中の科学技術等の観点を重視し、社会的ニーズを適切に課題に反映した、基礎から実用化までの全段階を通じた戦略的運営による研究開発の推進が必要という提言、要するに、もう一度本質的に科学技術のあり方について見直す中で、科学者が謙虚にこれから考えていこうということです。

 ただ、一方で、間違いなく人類の進歩発展は科学技術イノベーションによってもたらされてきたということは事実でありますし、これは一人では実際にできないわけですから、産学官連携の中で、日本全体でそういう科学技術イノベーションについてどういうふうなムーブメントをつくるかということは、日本の発展、同時に人類の発展もやはり問われているんだろうというふうに思います。

 その中で、個々のあり方については、国民から疑義が生じないような組織対応のあり方ということについては当然問われるべきことであるというふうに思いますが、ぜひこれからも、科学技術イノベーションについて我が国が世界で最高レベルの環境をつくっていく中で、しかし、一方でそれが貴重な税金によって賄われているわけですが、それが国民から疑義を生じさせないような組織のあり方については、しっかりと検討してまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 文部科学行政、本当にさまざまな課題が現在山積しているというふうに思います。

 今回私は、その課題の中の一つ、高校と大学の接続のあり方に絡めまして、具体的には医師の養成システムのあり方、特にメディカルスクールについて質疑をさせていただければというふうに思っております。

 その前に一つ、サッカーJ1浦和レッズのサポーターの不祥事に対する制裁措置について、大臣の御認識をまずお伺いしたいなというふうに思います。

 実は私、女子サッカーのなでしこチャレンジに所属しております磐田ボニータというところの代表をしておりまして、まあ名ばかり代表ですけれども、そんなこともありまして、この問題には相当危機感を抱いているというようなことがございます。

 事の経緯を申しますと、三月八日、サッカーJ1浦和対鳥栖の試合で、浦和のホームゲームでございましたけれども、浦和のサポーターが「JAPANESE ONLY」という横断幕を掲げたわけであります。当然人種差別とも受けとめられる横断幕でありまして、およそスポーツの基本的な精神、フェアプレー精神、人種であるとか国であるとか民族を超えて、スポーツはフェアプレー精神でやられなければならないというところに大きく反するわけであります。それに対してJリーグ側は、三月十三日、無観客試合の制裁措置を科したわけであります。

 私は、試合をする側にとってみると非常に厳しい措置であるというふうに思いますし、また、迅速に浦和の方が措置をとったというふうに評価をしているわけでありますけれども、およそこういったスポーツ精神、また、これからオリンピックも東京で開こう、ただ開催するだけじゃなくて、そこにあるオリンピック精神、スポーツ精神にも大きく反するような行為に対しては厳しい対応をすべきであるというふうに思っているわけであります。

 そういう意味では適切な措置であったのかなというふうな感じもするわけですけれども、その点についての大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 スポーツにおける人種的な差別については、スポーツ基本法やオリンピック憲章においても明確に否定されているところであり、決して許されるべきものではないと思います。

 御指摘の、三月八日に発生した今回の問題を受け、Jリーグは、その五日後の十三日に事実関係の調査を完了し、浦和レッズに対して、譴責及びJリーグ発足以来初めてとなる、御指摘のように、無観客試合の開催という制裁措置をとったというふうに承知をしております。

 二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される中で、我が国は、ややもすると島国的な発想であるところがやはりあるのではないか。これから国際社会の中で、大勢の外国人観光客も迎える、また、スポーツは国境を越えてアスリートが活躍するということの中で、今回のJリーグがとった措置は、一見厳しいようであっても適切な対処であるし、また、国際社会に対して、日本がこういうことに対して確固たる姿勢をとるという意味で私はいいメッセージになったのではないかと思いますので、サポーターの方々も十二分にその辺を配慮してもらって、今回の教訓をぜひ生かしていただきたいと思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 さて、本題のメディカルスクールについて質疑をさせていただきたいと思います。

 大臣、御存じかどうかよくわかりませんが、一橋大学医学部というのがありまして、一橋大学はもちろん社会科学系の単科大学でありますけれども、医学部を出たOBの集まりというのがあるわけであります。

 どういうことかといいますと、大学を出て、もちろん文科系の大学、小さい大学ですけれども、そこを出た後で、一旦社会人になるか、何か違った職業について、やはり医師になりたい、医師としての社会的役割を果たしたいという人がいて、医学部に入り直して、そして医学部を卒業、医師として働いている、そういう人たちの集まりなわけであります。

 そういったサークルをつくっているということからもわかりますように、少なからずいるわけでして、私の一年先輩にもいまして、大学を出まして民間会社に就職したんですが、やはり地域医療に従事したいということで、もう一回医学部に入り直して、今、地域で医療をしている。また、私の同級生ですけれども、探検部に入ってアマゾンか何かを探検しているうちに、そういった未開の国の医療に貢献をするには医師が一番だということで、もう一回医学部に入り直したというような同級生もいるところであります。

 ということで、医師という職業は、人の命に係る、いろいろな職業がありますけれども、普通の職業とは共通する部分ももちろんありますけれども、一線を画する部分もある職業であるというふうに思うわけであります。

 ところが、高校、大学の接続という観点から申しましても、もう医学部に入ったら医師という職業に大体普通は進むわけですけれども、医学部に入るというその進路決定が、高校卒業の十八歳という時点、またもう一つ、これも質問もさせてもらえればなと思うんですけれども、偏差値の高い人が医学部に行くということで進路が決定をされてしまっているという、一つこれが実態じゃないのかなと思うんですけれども、そういう実態があるわけであります。

 一旦違う進路を選択したけれども医師になりたいという人が少なからずいて、また、いることが社会の正常さをあらわすというふうにも私は思うわけですけれども、他学部または社会人から医学部に進路変更する実態について当局はどういうふうに把握をしているのか、また、そういった実態をどのように認識しているのか、お尋ねをしたいと思います。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 まず、実態の方からお話を申し上げたいと思います。

 他学部卒業あるいは社会人という学生が医学部に転入学をする、そういった制度は各大学で設けているところでございます。平成二十五年現在で、三十四の医学部におきまして二百六十一人の編入学定員枠を設けておりまして、進路選択の一助になっているものと認識をしております。

 委員御指摘のように、高校卒業段階だけではなく、他学部へ進学した後やあるいは社会人になった後でも、その志や適性に応じまして多様な進路選択ができるようにすることは、学生の学習機会の確保あるいは大学の多様性を確保する観点から重要なことであるというふうに認識をしております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 私もそう思いますし、そういった格好で、本当にやりたい、また適性のある人が医師という職業についてもらうというのは非常に重要なことだなと思うんです。

 ここに一つデータがありまして、要するに、偏差値でどこの大学に入れるのかというデータでございます。もちろん文科省の方もそういうデータを当然持っておられると思うんですけれども、私が持っているのはベネッセの模試データに基づいた偏差値一覧というので、それを見ると、上の方は医学部ばっかり。東大の医学部、理3を頂点として、医学部がずらっと並んでいる。同じ名前の大学でも、医学部はあるけれども、そうじゃない他学部はその上位の表の中にはない。医学部を抱えている地方の国立大学等は、医学部のみが東大より難しくて、あとはそうじゃないというふうになっているわけですね。

 これは私は、誰がどのようなことを言おうとも、大学の入学選抜に偏差値が絶対的な物差しになっていて、その頂点に医学部が君臨をしている。いわゆる進学校と言われるような高校も、医学部に入るということが一つの実績だということで、偏差値が高い生徒はそれでは医学部を受けなさいということで、本人の適性とか手先が器用だとかというようなことは全く考慮に入れないで、偏差値が高ければ、まず、進学校の実績を積むためにぜひ医学部を受けなさい、受かってくれと。受験産業もそうだろうと思うんですね。マスコミも医学部に何人入った高校は優秀だとかという報道を一方的にしているということで、私はやはり、このような実態は正常ではないと思うんです。

 医師も一つの技術職でありまして、向き不向きもある。IQが高ければよいというものでもないということで、送り込む学校側も、迎え入れる大学側も、生徒の適性を踏まえた進路指導、学生選抜を当然考えるべきであろうかと思うんですけれども、そこら辺で、どのような対応を考えているのかどうか、またどういう認識をしているのか、文科省にお尋ねいたします。

吉田政府参考人 御指摘のように、学業成績のみだけではなく、医師としての適性なども踏まえた入学者選抜を行うことが重要でございます。そのような趣旨を踏まえまして、各大学では、アドミッションポリシー、いわゆる入学者受け入れ方針でございますが、これに基づいて、適切な方法を組み合わせて入学者選抜を実施しているものと認識しております。

 医学部の関係で申し上げますと、例えば、ほとんどの医学部では面接試験を実施しておりますほか、AO入試あるいは推薦入試を活用して、地域医療に高い意欲を持つ学生や研究志向の高い学生などコースの特性を踏まえた入学者選抜を実施するなど、各大学において工夫を凝らしているところでございます。

 引き続き、社会の要請に対応し、また適性を有する医師を養成する観点から、学業成績に偏らず、各大学において適切な入学者選抜が実施されるよう促してまいりたいと考えております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 それなりの努力はしているという御答弁でございまして、それは当然そういうことで、努力を、工夫を重ねていただくことを希望するわけですけれども、どうもそれだけでは足りないんじゃないのかな。現行制度をもう少し大きく変えない限り、現行制度の中でいろいろな努力をしていても、なかなか本当にいい人材が、適性を持った人材が集まってくるというのがかなえられるだろうかという疑問が当然残りまして、それを解決するのは、一つ、私は、メディカルスクールのようなアメリカの制度を参考にした制度の導入であるというふうに思うわけです。

 その前に、文科大臣は当然医師を養成する立場の行政を所管しておられますので、そういう立場から、医師に求められる資質であるとか特性について御見解をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 鈴木委員のおっしゃるとおり、私も、今の大学入学試験、選抜の仕方は非常に問題だと思っております。先日も、東大の浜田総長とこのことについて議論いたしました。

 御指摘のように、東大医学部は偏差値的には最も難しい大学、学部でありますが、どういうふうな形でその選抜試験をしているのかということの中で、東大も相当変わってきたというふうにはおっしゃっていましたが、学力だけで選ぶことに対してどういう意味があるのか。

 患者の立場から見れば、学校で勉強が一番だったということも、一定のもちろん知識は必要でありますけれども、同時に、患者に対する思いやりとか優しさとかいたわりとか、そういうお医者さんとしての人間性がやはり問われるわけでございまして、トータル的な入学試験に抜本的に変えていかなければ患者が求めるような医者の養成にはならないのではないかということから、これは医学部だけではありませんが、大学の入学試験の抜本改革をぜひ進めてまいりたいと思います。

 その上で、医師に求められる資質や特性でありますが、医師に対しては、医師としての職責を自覚し、常に患者中心の立場に立つこと、良好な人間関係を築くためのコミュニケーション能力を有するとともに、自己研さんを続ける意欲と態度を有すること、総合的な診療能力を身につけ、医療チームの構成員として、地域医療への貢献や医学研究への志向を有することなどが求められるというふうに認識をしております。

 文科省としては、このような観点を、医師として求められる基本的な資質として、医学教育の指針であるモデル・コア・カリキュラムに明記をし、全ての大学でこのような人材育成がなされるよう各大学の取り組みを促したいと思いますが、基本的には、大学入学試験そのもののアドミッションポリシー、先ほど局長から答弁がありましたが、これを抜本的に変えなければ、おっしゃるとおりやはり本質的な変革にはならないと思いますし、ぜひそういうふうに取り組んでまいりたいと思います。

鈴木(望)委員 大臣から御見解を伺いまして、大きな方向性で私が考えているような方向性と全く同じようなことをおっしゃっていただきましたので、非常に心強い気持ちになったわけであります。やはり、医は仁術、赤ひげ先生、例としていいのかどうかわかりませんが、医師としての高い職業倫理が求められる、命にかかわる職業であるというふうな認識で対応していただければなと思います。

 そういう観点から、メディカルスクールというような医師養成システムを日本にも導入したらいいんじゃないのかなというふうに私は思っているわけでありますが、メディカルスクールという養成システムに対する評価として、文科省はどのような評価をしているのか、また、評価を含めて、メディカルスクールのこれまでの検討状況について御答弁をお願いいたします。

吉田政府参考人 御指摘のメディカルスクールにつきましては、従来からさまざまな議論がございます。近年では、今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会において検討を行いました。平成二十三年十二月に論点整理を行ったところでございますが、結論には至っていないところでございます。

 メディカルスクールにつきましては、一つには、四年制大学卒業後に入学するため、医療への献身的な心構えを持った学生を確保できること、あるいは、人間的に成熟した学生を対象とすることにより、充実した臨床実習を行うことができることというような、これに賛成する意見がある一方で、医師免許取得が二年おくれることにより学費や時間的な負担が増すということ、あるいは、医学教育、医師、学生の質保証の観点からは、従来の医学部との複数の制度を併存させるべきではないという観点から反対の意見もあるところでございます。

 そういった意味では、まだこれについての結論は出ていないところでございますが、文科省としては、望ましい医師養成のあり方を検討していく中で、厚生労働省とも連携をしながら、医学教育充実のための多様な方策の中で検討を続けてまいりたいと思っております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 メディカルスクールについては、引き続き議論もさせていただければというふうに思っております。

 そこで、観点を少し変えまして、今メディカルスクールの設置を日本でもすべきだということを幾ら主張しても、現に日本の医師数が足りているということであれば、当然これ以上の医師の養成機関を設立するということはできないわけでありますので、医師は足りているのかどうかという議論を少しさせていただければというふうに思います。

 まず最初に、日本の医師数は諸外国に比べてどの程度の水準にあり、それをどう評価しているのか。

 今から三十年とかそのぐらい前には、OECD諸国との並びの中で、人口十万人に対して医師の数が二百人のレベルを一つのめどとして養成を図るといったような議論がなされていたような感じがいたします。現在では、そこら辺、どういう物差しでもって医師の需給関係を考えているのか、また、それに対する評価はどうなのかということについて御見解をお願いいたします。

高島政府参考人 日本の医師数の水準でございますけれども、人口千人当たりで医師数を諸外国と比べてみますと、今委員からお話のありましたOECD諸国、こちらの平均は現在三・二人でございます。それに対しまして日本は二・二人という数字でございます。この数字は、平成二十三年の数字でございます。

 医師の需給につきましては、平成二十四年の四月に社会保障・税一体改革に際しまして行った試算によりますと、平成二十四年の医師数が約三十万人でありますところ、二〇二五年、平成三十七年度には、医師数は三十二万から三十三万人必要という試算がなされております。この水準を満たすように医師を養成していかなければならないと考えております。このために、今、地域枠を活用しまして、医学部定員の増加とか、それから都道府県の人材確保への取り組みに対する支援などを行っております。

 今後の見通しにつきましては、総数として、二〇二五年度に必要数を満たすような数が養成できる、こういうふうに試算しているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 地域に医師がいない、大きな問題となりまして、それで地域枠奨学金というような制度を利用して、医師の養成を、再び増加の方向でかじを切っているというふうに私ども認識をしているわけでありますけれども、そういった観点とは別に、私自身は、構造的に医師数というのは足りない、従来のような尺度で医師を、何人いればいいとかということでは済まない問題があるんじゃないのかなというふうに思っております。

 一つは医療の高度化、専門分化化、もう一つは女性の医学界への進出、この二つじゃないのかなというふうに私自身は思っております。

 時間がありませんので、専門分化化については自分の考えを述べさせてもらいたいと思うんですけれども、こんな話があるんですね。

 一つの高度先進の医療という中で、脳神経外科の医師ということになると、相当高度な医学知識、技術レベルの医師だろうというふうに素人は思うわけでありますが、ところが、そういった医師であっても、盲腸の手術もできない。また、盲腸の手術は私はやったことがないし自信がありませんと脳神経外科のお医者さんが公言しているのを私も実際聞いたこともあります。

 ということは、昔だったら地域にいる普通のお医者さんが盲腸ぐらい当然手術をしていた。盲腸ぐらいと言ったら怒られるかもわかりませんが、普通の手術。ところが、医師の専門分化化が進んだ結果として、難しい頭の手術はできるけれども盲腸の手術はできないというお医者さんがいる。そうすると、脳神経外科のお医者さんがいただけでは足りないからまた別のお医者さんも必要というような格好でもって、専門分化化によって、必要とする、需要をきちんと満たす医師の数というのは当然ふえてきているというふうに私は思います。

 実際、専門学会は、八十五の専門学会がある。それだけ専門分化して、それぞれの道で研さんに励んでおられる。そのこと自身は悪くないんですが、必要とする医師数という観点から、専門分化化というのは、これは大きな影響を及ぼしているというふうに私は考えるわけであります。

 時間がなくなってきましたのでちょっと質問を省かせていただきますが、昭和二十三年の医療法制定時には、標榜診療科目は十、数え方によっては十二ということかもわかりませんが、今では標榜診療科目は二十八にふえている。数え方によってもっとふえる。ということで、標榜科目ですらもそれだけ何々のお医者さんというのがあるわけであります。

 ですから、例えば弘前大学だと思いますけれども、総合診療科、要するに、大体地域で必要とされる、昔のお医者さんだったらこなしていたような医療ができる医者をわざわざ養成しようというような動きすらもあるわけでありまして、これは、やはり専門分化化、高度化というのが不可逆的な流れであるとしたら、私は、それに対応して医師数をふやしていく必要がどうしても出てくるんじゃないのかなと思います。

 それと同時に、女性の医学部への進学というのが非常に多くなってきておりまして、現在三二%とか、医学部の三割ぐらいが女性で今占められているというような状況になってきているわけであります。

 現在、全部のお医者さんの中で女性の占める割合というのは二〇%ぐらいということになってきておりまして、それでは一つだけ簡単に御答弁をお願いしたいと思いますが、女性がついている、進んでいる診療科というのは非常にでこぼこがあるかと思いますけれども、それをちょっと御答弁をお願いいたします。

高島政府参考人 診療科別に、女性の医師の割合が高いものにつきましては、皮膚科におきまして四四・三%ということで最も高く、最も低いのは整形外科の四・四%ということになっております。

鈴木(望)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、女性の割合は全医師数の一九・六%、約二割。ところが、診療科目別に見ると、今言ったように、全医師の中の四割を女性が占めるような診療科目があったりとか、一方で非常に少ない診療科目がある。眼科は全医師の中で女性が三七・五とか、非常にばらつきがあって、私は女性の医学界への進出を決して否定するものではないんですが、それは女性の特質だと思うんですね。

 女性がどんどん医学界に進出する、これは喜ばしいことですけれども、昔のような、赤ひげ先生で、二十四時間すぐどんなところへでも往診に飛んでいく的な観点で医師の需給を考えていた時代とは大きく違ってくるわけであります。

 私自身は、医師数は、そういった状況、専門分化化、女性の進出というようなことを考えると、もっともっと多く養成をしていかなければいけないんじゃないのか。養成をする際に、私は、従来のような、どちらかというと適性を無視するような、余り考えないような医師の養成形態ではなくて、メディカルスクールのような養成形態というものは、全て変えるというわけじゃなくて、一定割合はメディカルスクールでの医師の養成ということも真剣に考えていく時期に来ているんじゃないのかなというふうに思う次第であります。

 時間が来ましたので終わりますけれども、そういったことを、引き続きこれからメディカルスクールのあり方等について議論をさせていただければと思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 今、鈴木委員から、メディカルスクール、さまざまな医療問題について議論がなされておりました。私も医師でございまして、議論をしなければいけないような内容を本当に直截に捉えられていて、非常にすばらしいなと思いました。私は内科医なものですから盲腸の手術はできないんですが、やはり地域医療におけるジェネラルプラクティスの必要性、これは地域医療に従事している身からしても痛切に感じるところでございます。こういったところ、感想なんですが、一言まず質問の前に申し添えたいと思います。

 それでは質問に入らせていただきます。

 まず、学校給食についてなんですけれども、最初はアレルギーの問題を議論させていただきたいと思います。

 これは資料にはつけておりませんが、昨年の十二月、公立の小中高校だけで四十五万人の方が食物アレルギーを持っているという記事が出ました。そのうち五万人近い方がアナフィラキシーを経験しているということで、これはこの統計には入っていないんですが、保育の現場も含めて教育現場はアナフィラキシー、こういったものとやはり常に隣り合わせの状況になっているというものが浮き彫りにされてきたというふうに思います。

 やはりこれは、徹底的に状況把握、個別の把握も含めて、保育、教育現場で徹底的にその対応策というものを練っていかなければいけない状況にもう来ているということだと思います。

 そこで、まず最初に診断をしっかりしなきゃいけない、これはもう当然のことですけれども、病院に行って診断書、何々アレルギー、そばアレルギーがあります、小麦にアレルギーがあります、チーズにアレルギーがあります、こういった診断書、そして学校生活管理指導表をしっかりと作成して学校側に提出する、こういった事務的なことから始まるわけですけれども、これもまだ三〇%ぐらいしか、本当に必要な人の三割の人しか書類提出も行われていないというような記事でございました。

 そして、やはり一番大事なのは、アナフィラキシーになったときの気管支拡張剤、これはエピペンという簡易式の注射、インスリン注射のようなものなんですけれども、この使用をやはりもっと普及していかなければいけない、浸透していかなければいけないということを痛切に感じるわけでございます。

 この五年間でエピペンを使った例、これはこの調査をした公立の小中高ですから、私立も含めれば倍近くになるとは思います。四百八例中、本人が使ったのは百二十二例、保護者が百十四例、学校職員百六例、救急救命士六十六例というふうになっております。

 私は、やはりこの気管支拡張剤、エピペンはできるだけ早く適切に使うことが救命に直結するというふうにも思いますし、国もガイドラインで、本人が打てない場合は教職員や保育士が打つということを求めています。この救急救命士六十六例、これはやはり学校の現場で、現場の教諭、保育士がしっかりと対応すべき案件であったのではないかなというふうに危惧しております。

 一方で、国のガイドラインで教員や保育士が打つように努力してほしいということもあるにもかかわらず、このエピペンの持ち込みや使用を、うちではできませんというような保育の現場もあるとのことです。行き場を失っている食物アレルギーを持つ子供さんたちが数多くいるということです。

 残念ながら、一昨年の調布の場合は、おかわりをしてそこにチーズが入っていたというかわいそうな例だったわけなんですが、この場合は、子供が自分で持っていた、それを使おうかどうか教諭が子供さんに聞いた、しかし子供さんは使いたくないと言っていたということなんですね。ただ、結果論ですけれども、このときにやはりその教諭がしっかりと判断をして、使うということをしていれば救われた命なんだと思います。

 そこで質問させていただきたいんですけれども、こういった教育の現場、保育の現場で、担当の先生、保育士の方が適切にエピペンを使えるようにするための啓蒙普及の今の取り組み、それについての政府の見解を伺いたいと思います。

久保政府参考人 文部科学省では、平成二十四年十二月の調布市における女子児童が食物アレルギーにより亡くなった事故を受けまして、昨年五月から有識者会議を開きまして、さまざまな関係者に入っていただいて、再発防止のための取り組みについての検討を進めてきたところでございます。

 この有識者会議におきましては、さまざまな調査結果、実態の調査結果も踏まえまして、学校生活管理指導表の使用を含めたガイドラインに基づく対応を徹底すること、教職員等の研修の充実、研修に資するDVDの作成や、職種に応じた研修あるいは校内研修の実施、さらに、緊急時におけるエピペン使用の徹底などを主なポイントといたしまして、最終報告書をこの三月中に取りまとめる予定にいたしております。

 これを受けまして、文部科学省といたしましては、エピペンの使用に関する講習会の拡充、学校を取り巻く関係機関等の連携体制の構築に取り組みますなど、学校における適切なエピペン使用を含めた食物アレルギー対策のさらなる充実を図ってまいりたいと考えているところでございます。

鈴木政府参考人 保育所における対応についてお答え申し上げます。

 先生御指摘のように、近年、さまざまなアレルギー疾患を持ったお子さんが通園していらっしゃいますので、各保育所で、アナフィラキシーショックに陥った後の事態を想定して対応を整えていくことが非常に重要だと思っております。

 このため、厚生労働省といたしましては、保育所におけるエピペンの使用も盛り込みまして、アレルギー対応ガイドラインを作成いたしております。これをもとに、保育所の職員に対しまして講習会を累次にわたり実施いたしております。加えて、厚生労働省のホームページ上でもこうしたエピペンの取り扱いの動画を閲覧できるようにするなど、アレルギー症発生時点におきまして保育所が適切に対応できるように取り組んでいるところでございます。

 今後とも、こうした対応を徹底してまいりたいと思っております。

柏倉委員 積極的にこれから取り組んで、ぜひ、現場で教諭そして保育士の皆さんがためらうことなくすぐ処置できる、これは非常に医学的な行為ですから、ためらうなといってもなかなか、ためらってしまうかもしれません。ただ、しっかりとした知識、そしてトレーニング、これは講習というところでなされるんだと思いますが、医療行為に準じるものですから、やはり実際に体を動かす、体で覚えるというところが私は一番大事なんだと思います。ガイドラインやDVDできっちり教育をするということ、その後には、やはり実際に体を動かしてエピペンを操作する、このトレーニングもぜひ加えていただきたいと思います。

 次ですが、次は給食についてです。お手元に資料を配らせていただいております。

 これは、和食がユネスコ無形文化登録を受けて、前々から米飯給食を進めましょうという流れとこの流れとで、さらに米飯給食がどんどん加速していくという中の、京都の事例でございます。

 この事例をかいつまんで説明しますと、京都では、月曜から金曜まで全部米飯給食でいいじゃないかというような意見もある。学校給食をということでパンを納めていた業者さんたちの声が紹介されているわけなんですが、パン食を守れという趣旨ではなくて、ここに書いてあるこのアンダーラインのところを読ませていただきます。

 「同組合によると、」組合というのは京都パン協同組合ですね、「市内には給食用のパン工場が五カ所ある。給食用米飯も炊いており、もしパン給食がなくなっても経営的な影響はないという。ただ、大規模災害時に府内自治体にパンを提供する府との協定があるため、既存設備を常時使わないと緊急時の稼働に支障が出ると説明する。」ということであります。

 このように、米飯給食を推進するに当たり、問題が出てきてしまっている自治体もあるというわけなんですね。この場合は、現実には災害時の食料供給計画との調整がやはり必要になってしまうわけなんです。

 そこで伺いたいんですが、米飯給食を推進するに当たって、この京都のようなケースが今まで報告されているのかどうか、調整が必要になるケースですね、これから調査するのかも含めてお答えいただきたいということと、あと、これは総論になりますが、政府の大規模災害時の食料供給政策についてお伺いしたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 大規模災害時におけます政府の食料供給についてのまず取り組みでございますけれども、大規模災害時におきまして、まず基本は、被災自治体におきまして、必要な日数といいますか、外部からどのぐらいの日数で支援が来るのかとか、被災の状況とか地域の状況に応じまして必要な備蓄をしていただくということが基本になりますが、その上で、実際に食料が不足するという場合には、国の方におきまして、内閣府が中心になりまして、物資調達省庁あるいは輸送担当省庁と連携いたしまして、必要な物資を被災自治体に送り込むような体制を構築しているところでございます。

 米飯給食の関係についての調査というのは私どもの方では承知いたしておりませんけれども、一般的には、先ほど申しましたように、自治体におきまして、備蓄をしていただいた上で関係の業者といろいろな協定を結んでいただくということは、積極的に取り組んでいただくことが重要かと思っております。

柏倉委員 米飯給食を推進する上でも必要ですし、そういった食から派生するさまざまな諸問題、これは大規模災害の食料供給のところに今回行き着いたわけですけれども、やはり、こういうところをきめ細かく対応していっていただくということが、今後、日本の食文化を守っていく上でも必要なんだろうなというふうに思います。

 ぜひ、こういった京都のようなケース、今後出てくるかどうか注視も含めまして、分析の方をよろしくお願いいたします。

 最後なんですけれども、福島県の小学生の肥満について伺いたいと思います。もう時間がありませんので、まとめて一問だけ伺いたいと思います。

 福島県の小学、特に低学年の方が、小学校一、二、三年生が、やはりこの震災後どんどん肥満傾向にあるという記事が去年の十二月に出されております。そして、この原因として当然子供が屋外で遊べないような状況になっている、これはやはり福島県の教育委員会も指摘をしているところでございます。そこをどのように今後打破していくか。

 やはり子供の肥満というのは、これは医学的に見て糖尿病、動脈硬化、そういったところに将来直結するリスクになりますので、そのリスクをケアしていくということも私は政府の大きな仕事だと思っております。三十年後、四十年後に出てくるかもしれないそういう成人病を今から予防する。放射線災害で苦しんでいる子供さんにもそういうところを手厚く、やはり私は、体育館を増設するとか、そういう運動の場を提供する、こういったところ、具体的な切り口、政策というのが必要になってくると思います。

 この福島における子供の運動不足をどのように解消するのか、御答弁をいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、原発事故の影響によりまして、屋外で十分に運動をする機会が減少しておりまして、福島県において、子供たちの体力あるいは運動能力の低下や肥満傾向が続いていると認識しておるところでございます。

 この観点から、二十五年度、本年度でございますけれども、子ども元気復活交付金というものを政府において創設いたしまして、子供たちの運動機会の確保のための施設整備を現在進めているところでございます。

 これまでのところ、この交付金によりまして、屋内の運動施設は十四カ所、あと屋外の運動施設も十九カ所、それ以外に、学校や公園におけるさまざまな遊具の更新といったようなものを採択して、事業に取り組んでいるところでございます。

 来年度以降におきましても、子供たちが生き生きと遊び、体を動かすことのできる環境の整備を国として進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

柏倉委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 時間ですので終わります。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 質問の前に、我が党の参議院議員の藤巻幸夫さんが去る十五日に亡くなられまして、この場をおかりして、心より御冥福をお祈りさせていただきます。

 きょう質問でお伺いをしたいのは、教育委員会制度の改革もそうですが、教育について、特に政治的中立性の確保、文部科学省の教育委員会制度を説明しているホームページの部分にもそういうことが出ておりまして、特にその中で中立公正を守っていく旨も書かれていて、ただ、私は、この政治的中立性を守ることですとか中立公正というのは、言葉で言うのはそのとおりなんですけれども、これは突き詰めると非常に難しいなと。

 教育の内容もそうですし、また、これから議論の始まる教育委員会を初めとする制度の問題もそうなんですが、そこで、まず、教育の政治的中立性の確保、特に中立公正を守ることについて大臣の御所見を伺います。

下村国務大臣 まず、結いの党の藤巻議員に対する御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 そして御質問ですが、教育の政治的中立性確保でありますが、この中立性確保とは、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれてはならないことを意味するものであるというふうに理解をしております。

 教育行政は、教育の中立性、不偏不党性を保持、確保しつつ行われるべきものでありますので、教育基本法第十六条においても、一般原則として、教育行政は、公正かつ適正に行わなければならないと明記しているところであります。

 教育は、人格形成の途上にある児童生徒に対して重大な影響を与えるものであることから、とりわけ政治的中立性や公正性が保たれることが重要であるというふうに認識しております。

井出委員 今、子供の人格に重大な影響を与えるというお話もありました。

 この中立公正というのは本当に考えれば考えるほど難しいと思っておりまして、一つの例をもってきょうはお聞きをしたいんですが、これは昭和五十年後半から六十年ごろにかけての話なんですが、ある小学校で六年間一切君が代や日の丸に接する機会がない。入学式、卒業式、そういった行事を初め、教えられない教えられるという云々より、接する機会がなかったわけですね。そういった学校があることについて、まずどのように大臣は感想を持たれるか、伺います。

下村国務大臣 児童生徒が将来、国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長していくためには、我が国のみならず、他国も含めた国旗・国歌の意義を理解し、それらを尊重する態度を育てることが重要であります。

 このため、小中学校では、社会科や音楽科において国旗・国歌の指導を行うとともに、学習指導要領において、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めているところでございます。

 文科省としては、今後とも国旗・国歌の取り扱いやその意義について、学習指導要領の定めるところに基づき、各学校において適切な指導が行われるよう指導を行ってまいりたいというふうに思います。

 なお、仮に国旗掲揚、国歌斉唱に関して不適切な実態があれば、文部科学省としても必要な指導を行い、学習指導要領に即した教育が保障されるよう取り組んでまいります。

井出委員 この話には続きがありまして、その学校にいたある児童が六年生の夏に転校をしまして、ですから、二学期に転入した学校で、そこの学校は二学期の始業式から君が代を歌う、国旗も掲げる、その子供は非常に戸惑った。しかし、そのときの思いがあって、その子は君が代を覚えた、大人になっても、君が代を歌う機会があるときに、周りの人が目を閉じて口が動いていなかったりとかしていても、大きな声で歌うようになった。そういうこともあるのかなと。

 その子に関して言えば、逆にそういう環境にいたことが、結果として君が代・日の丸に対する思いを形成したのかなと思うんです。私は、大臣がおっしゃったように、子供の人格に重大な影響がある、そういうことだとその子のことを考えても思うんです。

 ですから、そのとき何が正しいのか、適切なのかというのは、私は非常に難しいんじゃないかなと思うんですけれども、この事例についてはどのように御感想をお持ちか、伺いたいと思います。

下村国務大臣 実は先日、亡くなった藤巻さんのお兄さん、参議院議員をされていらっしゃいますけれども、党は違いますが、同じような御質問がございました。

 藤巻さんのお兄さんの方の経験は、アメリカに行って大リーグの試合を見たときに、アメリカの星条旗、そして国歌が演奏され、それにショックを受けた。

 実は私も同じ経験がありまして、大学一年生のときにアメリカにホームステイの家族と大リーグの試合に行ったとき、ショックを受けました。つまり、それまでは日の丸・君が代についてはやはり否定的な教育を、私も群馬の山の中で小中学校を過ごしましたが、そういう影響がありました。しかし、大リーグのアメリカでの試合を、開会式といいますか、最初、試合の前ですけれども、体験して、改めて日の丸・君が代について学び直して、それ自体が問題であるということではないし、国際社会から見たらまさに非常識な教育を受けていたのではないかということを感じたという経験がありました。

 そういう意味で、学習指導要領にうたわれているからということだけでなく、ある意味では国際社会における常識としても、あるいは、我が国に対して誇りに思うということは別にこれは国家主義的な発想とかいうことではなくて、日の丸・君が代、つまり国旗掲揚や国歌斉唱を学校できちっと教えるということは、当然のことだというふうに思います。

井出委員 大臣も群馬でそういった否定的な教育を受けられたというお話が今ありましたが、私がお話しした子供というのは、実は私なんです。

 私は、君が代を最初にいた学校で聞かなかったことをよしとはしておりませんし、やはり教えてもらったらという思いもあったんですけれども、逆にそういう機会がなかったことで、結果として今君が代をしっかり歌っているのです。

 ですから、恐らく私がいた学校というのは、中にはそれを偏っている、偏った教育だということを言われるのかもしれないんですが、実際、大臣も今アメリカでの学び直しということもおっしゃいましたし、子供のトータルの人生を見ると、何が適正な教育なのか、何が一体偏っているかというのは、そのときそのときでも決められるような簡単な問題ではないのではないか、そう思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 何をおっしゃりたいのかというのが、真意がよくわからないんですが、私はやはり、子供の発達段階に応じて適切な教育をするということは、これは当然必要なことだというふうに思います。大人になってから気がついて学ぶからいいということではなくて、逆に、子供のときからきちっと習っていない、教えていないということ自体が問題であるというふうに思うんですね。

 例えば、ソチ・オリンピック・パラリンピックが終了いたしましたが、羽生選手が金メダルをとって、そのときに日の丸掲揚、そして国歌斉唱がありましたが、かつて、オリンピック選手がそのときに帽子をかぶったままで、そして君が代も歌わなかったという事例がありましたが、これは国際社会的に見たら非常識なんですね。やはり常識は常識としてきちっと教えるということをしていなかったために、その子は恐らく、かつての話ですが、別に反国家、反社会的な形で抗議の意味で帽子をかぶって、君が代を歌わなかったということではなくて、子供のころそういう教育をされていなかったために、私から見たら、国際社会的に見たら非常識な振る舞いだったと思うんですね。

 そういう意味で、やはり、発達段階において教育できちっと教えるということは、これは必要なことだと思います。

井出委員 発達段階できちっとした教育をすることは私も非常に大切だと思うんですけれども、逆に、大臣もおっしゃいましたし、私もそうでしたし、学び直しの機会もありますので、何が発達段階で適切なのか、ちゃんとしたものなのかというところが、私は非常に難しい、難しいと言ったらあれですけれども、そこはよく突き詰めていかなければいけない問題じゃないかなと思っております。

 私は、教育の政治的中立、また中立公正を守っていく一つの考え方としては、子供のときにいろいろな多様な知識ですとか情報、またそういった機会を与えて、子供が、そのときでもいいですし将来でもいいですし、いろいろな物事を考えていく前提となる材料や機会をいろいろ提供していくことがある意味中立公正なのかな、そういう自分なりの答えを一つ今感じているんです。大臣、私の考えについて御感想をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 井出委員のお話を聞いていると、例えば国旗掲揚、国歌斉唱そのものが政治的中立性に疑義があるような発言のように聞こえてならないわけでありますが、これは政治的中立性とは全く別次元の話だと思うんですね。これは、学習指導要領の中で、社会における、あるいは国際社会における常識を子供たちに対して教えているという意味であって、これは政治的中立性とかいうのとは全く別次元の話だというふうに思います。

 そもそも、先ほど冒頭で申し上げましたけれども、政治的中立性というのは、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれるということでありますから、それであってもならないわけでありますが、それは今の学習指導要領の中には当然、そういう一党一派に偏した政治的主義主張は書かれていないわけでありますし、それを守るということは当然のことだというふうに思います。

井出委員 私も疑義はないんですが、疑義はないんですけれども、教育がお子さんのそのとき、またその後の人生に与える影響というものは非常に多様である、そういうことをきょう申し上げたかったんです。

 時間が来てしまったので終わりにしますが、これから、教育の内容もそうですし、教育委員会の制度の大きな改革が始まっていくかと思うんですけれども、そこをぜひ、法案がおくれているというような話も少し聞いておりますが、議論を尽くした上で時間がかかっていくことには私はいいと思いますので、しっかりと時間をかけた議論が尽くされることを、私自身も一生懸命やりたいと思いますので、それをお願いして終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、青山周平君。

青山委員 自由民主党の青山周平でございます。

 質問の機会を頂戴いたしましたこと、本当に心から感謝を申し上げます。

 本日は、文部科学省の所管であります幼稚園が今直面する課題について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、衆議院議員になる前、幼稚園の園長として現場で幼児教育に携わってまいりました。平成十八年十二月、第一次安倍内閣において教育基本法の改正がなされ、その第十一条において幼児期の教育が新設をされました。そして平成十九年六月には、学校教育法の改正により、学校種の規定順の変更がなされました。幼稚園がそれまで一番最後にあったんですけれども、それが一番最初になった、小学校の前にしていただいた。大きな変更だと私たちは思いました。現場で働く幼稚園の教員だとか園長、職員にとって、本当にうれしいことでありました。

 そんな中でありましたが、時期を同じくして、急速な少子化の進行や子育ての支援の質、量の不足、深刻な待機児童の問題などが顕在化してまいりまして、幼児教育、保育の大きな改革が行われました。さまざまな議論の末、平成二十四年八月に子ども・子育て関連三法が成立いたしました。

 そして、いよいよ子ども・子育て支援の新制度が、来年、平成二十七年四月に本格的に施行を迎えようとしております。新制度により大きな制度変更を強いられるのは文部科学省が所管する幼稚園であり、とりわけ私立幼稚園であります。制度の変更を一年後に控え、関係者からは本当に多くの不安の声が上がっているところであります。

 そこで、きょうは、幼稚園について何点か質問をさせていただきたいと思います。

 子ども・子育て関連三法が成立して新制度の内容を見たときに、正直、私は不安を感じました。幼稚園を支える者として不安を感じました。

 と申しますのは、幼稚園は、先ほど申し上げましたとおり、教育基本法そして学校教育法のもと、それぞれの施設が教育施設である自覚を持って、幼児の心身の発達を助長することを目的として努力をしてきました。それが、施設型給付の形の中で幼稚園、保育所、認定こども園が一くくりになっているということ。

 それと、所管が内閣府であり、文部科学省、厚労省はもちろん同じように幼稚園、保育園を見ていくわけでありますが、主として内閣府が見ていくこと。

 また、その法案の審議が社会保障と税の一体改革に関する特別委員会の中で審議がされている。幼児教育は教育であるのに、社会保障の論議の中でされていくのかということに不安を感じたわけであります。幼児教育の質の向上よりも、待機児童の解消などの、保育の量的な拡充に重点が置かれているように感じたわけであります。

 それとともに、国の根幹である教育が社会保障財源によって賄われていること、これにもまた違和感を感じたわけであります。これから十年、二十年先、幼児教育がこの制度の中でしっかりと保たれていくのか、不安が拭えない状況であります。

 現制度に残る幼稚園に関しては今までどおりでありますので文部科学省所管でやっていくわけでありますが、新制度に移ったところ、先ほど申し上げた内閣府に移されたものに関して、文部科学省としてどんなふうにかかわって、幼児教育の質の向上、そういった発展を図っていくのか、大臣にお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 子ども・子育て支援新制度においては、新制度に移行して施設型給付を受ける幼稚園と、新制度に移行せず施設型給付を受けない幼稚園、つまり現存の幼稚園、その二つが存在することになるわけでありますが、いずれの幼稚園であっても、幼児教育の振興については、引き続き文部科学省が責任を持って対応してまいります。

 新制度に移行しない幼稚園については、子ども・子育て関連三法に対する附帯決議において私学助成及び幼稚園就園奨励費の充実に努めるものとすることとされていることを踏まえ、引き続き、私学助成、幼稚園就園奨励費の充実に取り組んでまいります。

 また、新制度に移行する幼稚園についても幼児教育の質の保証は極めて重要な課題であり、施設型給付の公定価格において、職員配置や処遇の改善、幼保小連携や第三者評価の推進等を通じた幼児教育の質の確保に取り組むこととしておりまして、文部科学省としては、おっしゃるとおり、幼児教育の無償化を含め、そして、教育も広い意味では社会保障的な一体の中、しかし、ただの既存の社会保障というよりは、教育的な視点から、さらに幼児教育については責任を持って対応していきたいというふうに思います。

青山委員 ありがとうございます。心強いお答えをいただきました。

 本当に不安に思っております。この新制度の議論がなされて内容が出てきたときに、このまま幼稚園は大丈夫なのかなと現場では本当に感じておりました。

 やはり、今まで自信を持って、文部科学省の管轄であり、学校教育の中で我々はやっているんだというところがあったわけでありまして、施設型給付の方に入ったときにそういったものがしっかりと保てるのか、さらには、私学の建学の精神だとか、そういったものが市町村が管理する中で保てていくのかというところが本当に不安に思っているところでありましたので、ぜひ、幼稚園が頼るところはやはり文部科学省でありますので、しっかりとこの後、制度移行した後も文部科学省として見ていっていただきたい、そんなことを強く思う次第でございます。

 それとともに、これからの幼稚園のことで、私の思うところで大臣にお伺いできればと思うところが一つあります。

 実は、先ほどの話と少しつながりますが、昭和三十八年当時の文部省と厚生省両省局長通達で、「保育所のもつ機能のうち、教育に関するものは、幼稚園教育要領に準ずることが望ましい」というような発表があったわけです。

 私は法改正はまだ議員になっておりませんでしたので、審議の過程の中で、将来的には全ての子供たちが幼児教育を受けて小学校へとつないでいく、保育指針は幼稚園教育要領に準じてつくってあります、ですので、今、保育の中で同じような教育がなされていることは承知の上でありますが、イメージとして、文部科学省の所管する幼児教育というのが全部の子供たちに教育がなされる、その上で成っていくような一体化の改革がなされるんじゃないかなということを幼稚園の園長としてずっと思っていたわけでありますが、今回の制度はそういう状況ではなくて、幼稚園、保育園それぞれ独立した形であります。

 そこに関して、小学校に入るときに全員が幼児教育の要領における幼稚園教育を、遠い将来でもこれからそういった意思だとか、そうなることが望ましいと私は思いますが、大臣、どういうふうに思われるか、御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。

 これから幼児教育の無償化に向けて、ことし平成二十六年度からその第一歩のスタートをすることになりました。それは父母負担の軽減、無償化ということだけでなく、やはり幼児教育というのは、その人にとって将来にかかわる大変重要な時期で、このときにどのような教育を受けたかどうかということが大きく影響する。

 そういう意味で先進諸国は、幼児教育の無償化をするということが、結果的には将来における社会保障、年金、医療、介護等の軽減にもつながる、大変重要な、ある意味では人に対する投資だというふうに各国位置づけて、幼児教育の無償化を進めているというところがございます。

 ですから、お金を出せばいいということではなくて、当然、そこでどんな教育をきちっと施すかということが必要でありまして、幼児教育については、教育内容を含めた内容の充実を当然図っていく中で無償化を進めるようにしてまいりたいと思います。

青山委員 ありがとうございました。

 それでは、新制度に係る細かな内容について御質問させていただきたいと思っております。

 二十七年度の四月から、もう既に幼稚園の一部、希望したところが新しい制度に移行していくわけでありますが、今本当に地元に帰っても、いろいろな方々からどうなっていくのかということを聞かれております。

 子ども・子育て会議の中で今検討であるということは存じておりますが、どのようなタイムスケジュールで移行へと向かっていくのか、それに関して、日程だとか、幼稚園に対して文部科学省からどういうような通知をしていくのか、そういった方法について教えていただきたいと思います。

前川政府参考人 子ども・子育て支援新制度の円滑な運営に当たりましては、実施主体であります市町村や当事者であります幼稚園の関係者が、新制度の趣旨及び内容を十分に理解するということが極めて重要であると認識しております。

 こうした観点から、文部科学省におきましては、関係府省とも連携いたしまして、新制度に関する事務連絡や通知の発出、新制度に関する各種説明会の開催、関係団体主催の会議等における担当官からの説明、また、ホームページ、パンフレット等による新制度の情報提供等によりまして、制度の趣旨及び内容について周知を図ってきたところでございます。

 御指摘のとおり、現在、子ども・子育て会議におきまして議論が行われているところでございます。特にその中で重要なものが公定価格についての議論でございますが、その方向性が定まり次第、速やかに周知することを予定しております。

 引き続き、幼稚園を初めとする関係方面に対しまして、新制度の趣旨及び内容についてしっかりと周知してまいりたいと考えております。

青山委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げたとおり、保育所、認定こども園などは今の制度とほとんど変わらないわけでありますので、特に幼稚園に関して、しっかりと、しかも早く周知をいただきたい、そんなふうに思っております。

 それとともに、その周知をいただいた後のことでありますが、公定価格のお話が先ほど出ましたが、二十九年度に消費税増税の財源が満年度化するということで、二十九年度の議論が今既になされていると思います。

 幼稚園も随時新制度へ移行していくところが多いと思いますけれども、この制度自体、二十九年度だとか三十年度だとか、そのときに手を挙げなくても、二十九年度以降にもいつでも新制度へ移行できるのかどうか、その点について教えていただきたいと思います。

前川政府参考人 子ども・子育て支援新制度におきましては、幼稚園が新制度への移行を希望する場合には、子ども・子育て関連三法の施行日以後のいつであっても、新制度に移行するということは可能であるということとされております。

 したがって、いついつまでに移行しなければ新制度に移行できないという期限があるわけではございません。

 文部科学省といたしましては、このことにつきましても地方公共団体や幼稚園にしっかり周知いたしまして、幼稚園の新制度への移行が円滑に行われるように取りはからってまいりたいと考えております。

青山委員 いつでもいいというお話をいただきました。これはしっかりと通知していただきたいと思うんです。

 それというのは、今、特に私立幼稚園に関しては、私学助成、大半は国と県のお金で賄われているところでありますが、就園奨励費に関しては市のお金も使っているわけですけれども、市町村によって、もう遅いからだめだとか、そういうことが絶対に起きないようにしていただきたいと思うんです。今度は市町村からお金が出ることになりますので、しっかりと通達をして間違いのないようにしていただきたい、そのように思います。

 続きまして、先ほど申し上げました、二十九年度に公定価格が満年度化する、それが七千億円なのか、一兆円超、一・一兆円とも言われておりますが、のお金の中でやるのかという議論になっていることと思いますが、幼稚園が新制度に移行するときには、やはり様子を見ながらやっていくと思うんです。そんな中で、二十七年度ももう既に新制度には移行できるんですが、二十七年度、二十八年度の公定価格に、幼稚園に対するといいますか、質の向上、質をよくしていくことにお金が使われていかないと、そこの額が極めて低いものだと、移行する幼稚園というのは少ないと思うんです。

 だから、その二十七年、二十八年というのはとても重要な時期だと思うので、その二十七年から優先的に質改善に関して力を入れていただきたい、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 幼稚園が子ども・子育て支援新制度に円滑に移行するためには、幼稚園が特色ある教育活動を実施できるように、施設型給付によりまして十分な財政措置を行うことが必要であると認識しております。

 現在、施設型給付につきましては、子ども・子育て会議におきまして、子ども・子育て支援新制度における教育の量的拡充と質的改善、この二つを車の両輪として取り組むということが必要であるという認識に立ちまして議論が進められているところでございます。この中で幼稚園における質の改善にかかわるものといたしましては、職員の配置、あるいは処遇の改善、保幼小連携、第三者評価など、こういったことを進める方向で議論が行われております。

 文部科学省といたしましては、新制度のスタート段階、二十七年度から幼児教育の質の改善が着実に行われることが重要であると考えておりますので、関係省庁と連携しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

青山委員 ありがとうございます。

 本当にここの部分も、施設型給付に入らないと、消費増税がなされた後の増税分が幼稚園に使われていかないわけであります。現行制度にたくさん残っているという状況であると、消費増税の子育て部分に係るお金を幼稚園の施設が受けられないという状況が生まれてきますので、何とかそこの推進に関して力を入れていっていただきたい、そのように思います。

 次に、幼児教育の無償化について質問させていただきます。

 先ほど、大臣の答弁の中からも無償化のお話がございました。この文部科学委員会の中でも話があったところでありますが、二十六年度の、今審議中の予算、参議院にて審議がされております予算で、多子世帯の負担軽減の拡充と、あと、生活保護世帯の無償化というのが決められまして、公定価格の議論を見ていますと、その中に、今年度決められた就園奨励費の増額といいますか、段階的な無償化が公定価格の中にももう既に取り入れられているような雰囲気を見ますので、ことしの予算でそれを立てていただいてそれが入ったということは、すごく大きなことだと思って喜んでおるところであります。

 がしかし、何回も話があるように、七千九百億円でしょうか、財源を必要とする幼児教育の無償化、これに対して、本当に実現するためにどのように段階的に取り組んでいくのか、そういったところをまず大臣にお伺いをしたいと思います。

下村国務大臣 幼児教育無償化については、昨年六月に幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議におきまして今後の取り組みの基本方向が取りまとめられ、財源確保等を図りつつ、まずは五歳児を対象として無償化を実現することを視野に置いて、平成二十六年度から段階的に取り組むということが決められました。

 これを踏まえ、平成二十六年度予算案では、今御指摘がありましたように、幼稚園就園奨励費におきましては、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る観点から、低所得世帯、多子世帯の保護者負担について、保育所と同様の軽減措置を行うことといたしました。

 今後さらに幼児教育の無償化にどのように取り組むかということについては、先ほど申し上げた取りまとめを踏まえまして、まずは五歳児を前提として、どのような対象、方法とすることが適切かどうか検討しながら、段階的に、全部で七千九百億円予算がかかるわけでございます、ぜひ進めてまいりたいと考えております。

青山委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 といいますのも、政権公約といいますか、約束したことの中で、幼稚園の施設がよくなること、そういったことに関しては、保護者といいますか、子育て世代も喜んでいただくことだと思っておりますけれども、無償化という言葉がやはり頭に残っていると思うんですね。ですので、そこのところはしっかりと力を入れないと、我々も約束したことを果たしていかなきゃいけない、そんなふうに思っておりますので、ぜひお願いを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

小渕委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 本日は、私は、大学のグローバル化、またグローバル人材の育成、こういう観点で質問をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 このグローバル人材の育成につきましては、私、昨年も、通常国会でも、また臨時国会でも、二回続けて取り上げさせていただきまして、問題提起もさまざまさせていただきました。

 昨年来、下村大臣の大変な力強いリーダーシップによりまして、いろいろな取り組みを進められておられます。例えば、就活の後ろ倒しという話もございました。あるいは、来年度予算案において奨学金を大幅拡充する、こういうお話もございました。こうした取り組みにまずもって感謝を申し上げたい、このように思います。ありがとうございます。

 グローバル人材の育成ということでよく言われますのが、留学生数がピーク時から大きく減っている。ピーク時八万二千人でございまして、今五万八千人ぐらいでございますので、大変大きく減っている。この原因として、若者が内向き志向になっているんじゃないか、こういう指摘がよくありますけれども、私、日ごろから学生に接しておる立場から申しますと、私は大変違和感があるわけであります。本当に内向き志向になっているんだろうか。

 公明党でも学生局で調査を行ったりしておりますけれども、留学に行きたいか行きたくないか、こういう質問をしたときに、留学をしたいと答えた方の割合が五一%でございまして、二人に一人が、行きたいか行きたくないかと言われると、行きたいなと答えている。これはもちろんいろいろな調査があると思いますし、過去に経年で調べているいろいろな調査があるのかどうかは私わかりませんでしたけれども、昔に比べて本当に急激に減っているのかな、こう思います。むしろ、意欲はあるけれども、いろいろな理由があってできていない、こういう学生の後押しをしていかないといけない。

 大学や大学院の学生の数というのは、平成二十五年でいうと二百八十六万人いるわけでございますので、今留学している方が約六万人弱ということを考えると、この半分ぐらいの方が潜在的には行きたいと思っている、仮にこうすると、やはりこの人たちの何か後押しをしていかないといけないな、こう思っております。

 この留学をしたいという学生の皆様、また、実際にグローバルということで世界から日本に来られた留学生の皆様からもさまざま意見を聞いてまいりましたので、こうした学生の視点からもきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 多くの学生が留学を希望している一方で、いろいろな障害がある。この阻害要因を解消していこう、これは政府も今はこの方針で取り組みを進めておられます。就職の問題、非常に大きな問題でございまして、今は取り組みを進めておられます。経済的な問題もある。これも、奨学金の拡充という対応をされておられます。

 ただ、根本的には、英語力に自信がないんだ、こういう意見が残念ながらやはり多いわけでありまして、留学したいけれども何でできないのか、公明党がアンケートをとったときに、やはり六割ぐらいの方が、ちょっと英語に自信がないんです、こういう御意見でございました。

 これは、語学力に自信がない、英語を読めるか読めないかというと、恐らく、皆さん読めるんだと思います。先生方も恐らくそうだと思いますけれども、では、読めるからといって外国人の方とディスカッションをしてください、こういう話をすると、それはちょっと勘弁してくれ、こういう話なんだというふうに思います。小学校、中学校、高校におけるいろいろな英語教育、やはりこれを強化していかないといけない、こう思います。

 昔からさまざまな議論があることは承知をしておりますけれども、これも、大臣のリーダーシップで昨年の十二月に、グローバル化に対応した英語教育改革実施計画、これを国として策定をされた。そして大きく前に進めようとされている。これを大変高く評価したいというふうに思います。

 この実施計画の中身、例えば、小学校の今は高学年で英語をやっておりますけれども、例えば中学年ぐらいから始めた方がいいんじゃないか、こういう議論もございました。そして、コミュニケーション能力を養う授業をした方がいいんじゃないか、こういう指摘もございました。

 例えば高校ですと、既に二十五年度から、英語の授業は英語を用いて行うことを基本とする、実際の授業でコミュニケーションがとれるようにする、こういうことにもなっておるわけでございまして、これを中学校でもやっていこう、こういう意見も出ております。

 しかし、私、この英語の授業を英語で教える、本当にどこまでできるのか、これを少し危惧しておりまして、実際にネーティブのALTの方を入れるというならともかく、英語の先生が本当にそこまで対応できるのかな。

 英語教員の英語力ということで国の方でも目標が掲げられておるわけですけれども、例えば公立中学校、高校でどのくらいの方が達成をされておられるかというと、中学が約二八%、高校でいうと約五二%ぐらいだ。現場の方からも、こういう英語に力を入れますという話をしたときに、しかし実際に学校側が本当に対応できるんですかね、体制の整備がちゃんとできるのか、こういう危惧の声を大変にいただいております。

 私も、コミュニケーション能力を高めるということで大変に大事な改革だと思いますけれども、実際に教える側の体制が整わなければ、これは残念ながら絵に描いた餅になってしまう、このように思うわけでございますけれども、この英語を教える体制というのを具体的にどうやって整備していくのか、先生の英語力というのをどうやって身につけていくのか、これについて文部科学省の御意見を伺いたいというふうに思います。

前川政府参考人 御指摘のとおり、英語教育の強化に当たりましては、高い力量を持つ指導者の確保が極めて重要でございます。

 昨年十二月に大臣から公表いたしました英語教育改革実施計画におきましては、中学校、高等学校の英語担当教員の研修に関しまして、地域における英語研修の指導者、これを英語教育推進リーダーと呼んでおりますが、この英語教育推進リーダーの研修を国が行う、また、中学校、高等学校の英語担当教員につきまして、各地域でその英語教育推進リーダーが研修を担う、こういった方法によりまして全国の英語担当教員の資質向上を図ろうということとしております。

 また、JETプログラムによりまして来日いたしました外国語指導助手、いわゆるALTでございますが、これにつきましても、日本の学校環境になじみながら円滑に指導に当たれるように、来日前、来日後の研修を国、都道府県等におきまして実施しているところでございます。

 引き続き、英語担当教員やALTの英語力、指導力を高めていけるように、文部科学省としても継続的に支援してまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 始まったばかりの取り組みでございますので、実際にどういう状況になっているか、しっかりと現場の声を聞きながら進めていただきたいというふうに思います。

 そうして、中学、高校の英語教育を考える上で、私は、大学入試における英語のあり方というのは、間違いなく同時に考えていかないといけないなというふうに思います。

 私の経験からしても、大学入試というのはスピーキングがございません。自分が勉強したのは、文法、英語を日本語に訳す、英作文をやる、こういうことをほとんどやったようなふうに記憶をしております。ですので、私、英会話となると、やはり苦手意識がありました。アメリカに留学もしましたけれども、どうしてもスピーキングは非常に苦手意識がある。

 これは、高校生、今は推薦やAOの方もふえておられて、私大の過半数は推薦やAO、一般入試は受けておられない方であるような状況もあって、これはこれで、学力到達度をどうするか、こういう議論もあるというふうには承知はしておりますけれども、やはり大学入試における英語のあり方を変えていかないと、高校生がどういう形で英語を勉強していくのか、こういう姿勢が変わっていかないのではないか、このように考えておりますけれども、文部科学省の御見解を伺いたいというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、これまでの大学入試におきまして特に代表的な例といたしますと、大学入試センター試験では、読むことに加えまして、平成十八年度試験から聞く能力についても評価してきておりますけれども、話すあるいは書くという能力については評価ができていないという状況がございます。

 このようなことも踏まえまして、文部科学省では、学部等の特性に応じて、入学者選抜において、英語の四技能、すなわち、聞く、話す、読む、書くを適切に評価する観点から、TOEFL等の資格検定試験などを活用することを要請してきたところでございます。

 また、大学入学者選抜のあり方につきましては、現在、中央教育審議会高大接続特別部会におきまして、能力、意欲、適性を多面的、総合的に評価するものに転換していくための具体的な方策を検討していただいているところでございますけれども、その中でも、TOEFL等の資格検定試験の一層の活用促進についても論点として取り上げているところでございます。

 さらに、文部科学省としては、入学者選抜の改革や徹底した国際化を推進する大学に対する財政的な支援なども通じてTOEFL等の入学者選抜への活用を一層促進し、高等学校段階で育成された英語によるコミュニケーション能力が入学者選抜においても適切に評価されるよう、取り組みを進めてまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 続きまして、経済的な側面、奨学金のお話をさせていただきます。

 来年度予算案におきまして、海外に留学をしたい方への奨学金、大変に拡充をしていただいております。また、「トビタテ!留学JAPAN」ということで、留学促進キャンペーンもただいましていただいておりまして、企業を精力的に訪問されて、民間の資金もしっかり集めてやっていこう、こういうこともされて、今まさに説明会等もされているところだ、こういうふうに承知をしております。

 来年度に拡充をしたものとして、大学院への留学の奨学金、これを拡充をしました。大学の短期留学、これも拡充をいたしました。高校生の短期留学も拡充をいたしました。

 現在は、残念ながら、学部留学というのは有利子の貸与のものしかないわけですけれども、こういうものも含めて、再来年度、二十七年度以降においても引き続き拡充をしっかりしていっていただきたい、また、今まさにやられている民間資金をしっかり確保してやっていく、こういうのも引き続き充実をしていっていただきたい、このように思うわけですけれども、大臣の御決意を伺いたいというふうに思います。

下村国務大臣 社会や経済がグローバル化をし、日本企業等が世界に展開していく中、個々の能力を高め、グローバル化した社会で活躍する人材を育成すること、これは喫緊の課題であり、昨年六月に閣議決定された第二期教育振興基本計画及び日本再興戦略において、二〇二〇年までに日本人の海外留学を倍増させるということを決定いたしました。

 文科省においては、留学促進キャンペーン、御指摘がありました「トビタテ!留学JAPAN」によりまして、若者の海外留学への機運醸成を図るとともに、官と民とが協力した経済的負担の軽減等の新たな仕組みとして、民間資金を活用した官民共同海外留学支援制度、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムにおきまして、民間からのニーズを踏まえた、実社会で求められる資質、能力の育成を集中的に支援をするということにしております。

 このたび、AKB48等に協力してもらってキャンペーンをしまして、これは文科省に対するアクセスがもう五十万件を超えておりますが、実際にこれにかかった費用は九十八万円で、あとは全部協賛によって協力していただいたということで、税金の無駄遣いはしていないということはまず御報告を申し上げたいと思います。

 国費においては、国全体で必要となるグローバル人材を幅広く支援するため、来年度予算案におきまして、海外留学に係る派遣人員を倍増することとしております。

 このように、官と民とが連携して取り組むことによりまして、留学の阻害要因となっている就職への影響や経済的負担、また保護者などの理解など、一体的に解消し、日本人の海外留学者数の倍増に向け、さらなる支援に努めてまいりたいと思います。

中野委員 ありがとうございます。

 私は、実際、学生といろいろな意見交換をしてまいりました。大臣の推し進められている大変力強い取り組みで、皆さん大変に喜んでおられます。私、ただ、少し気になりましたのが、大学の制度的な部分で奨学金とかはもらえても、いろいろなものが阻害要因となっているという話も聞きまして、例えば私立大学などですと、休学をして留学するわけですけれども、休学するときに授業料は全部払わないで済むかというと、半分ぐらいは引き続き払わないといけない、こういう話があったりですとか、あるいは医学部の方、理系の方など、スケジュールがかなり詰まっていてなかなか留学をするのが難しい、こういうお話も伺っております。やはり、留学をしやすい制度をつくるような大学を応援しないといけないなというふうに思います。

 例えば、海外大学と単位互換を進めて、医学部の方でも、一年間は海外の医学部で勉強したら、それが全く単位が認められるということであれば留学も割と進みやすいわけでございますし、そもそも、ダブルディグリーとかジョイントディグリーとか、半分は日本で学ぶけれども、半分はどこか提携している大学で勉強して学位を取る、こういうものも進めていけば、どんどん留学はしやすくなるんじゃないか。

 こういう留学をしやすい制度を持つ大学を応援する、これも大事ではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。西川副大臣、よろしくお願いいたします。

西川副大臣 先生、御質問ありがとうございます。

 留学生の倍増計画、これは本当に文部科学省としても省を挙げて頑張っているところでございますけれども、その中で、先生が御指摘のそれぞれ海外の大学との相互互換制度、この辺を整備するということも非常に大事だということをよく認識しております。

 その中で、現時点で我が国の大学でもこうした連携の強化に取り組んでいる大学が、平成二十三年度時点で、外国の大学と単位互換協定を締結している大学が三百三十六校ございます。そして、その中で、国内の大学と外国の大学の双方で学位を取得できる、御指摘のダブルディグリープログラム、これを実施している大学が百四十三校ございます。

 また、文部科学省としては、外国の大学と単位互換やダブルディグリープログラムなど、質の保証を伴った教育連携プログラム、これの開発、実施をする大学に支援をする、大学の世界展開力強化事業を実施しております。平成二十六年度予算で二十八億円を計上しております。

 さらに、二十六年度からは、特に、日本の大学がトップ百に余り入っていない、この日本の大学の大学力を高める、そういう意味でも、このディグリー制度、こういうのをこれから推進していくということは大変大事なことだと思いますので、海外の卓越した大学との連携など、徹底した国際化に取り組むスーパーグローバル大学、これを三十校選定いたしまして、これに予算をそれぞれつけております。

 現在、我が国の大学と外国大学が連携して教育課程を編成し、連名で単一の学位を授与するジョイントディグリー、先生も御指摘になりましたが、一本の学位ですが連名で取れる、それぞれの大学で勉強していいというような、そういう制度の、これはちょっと制度改正を伴いますので、制度改正をしながら、早期実現に向けて予定しております。

 今後とも、質の高い学生交流をしっかりと積極的に取り組んでまいります。

中野委員 ありがとうございました。

 少し時間がなくなってまいりましたので、準備していた質問がございましたけれども、これを最後にしたいと思います。留学生の送り出しの話をさせていただきまして、今度は受け入れの話をさせていただきたいと思います。

 今、諸外国は、いろいろな戦略的な狙いを持って留学生の受け入れというのをやっております。例えばオーストラリアのように、教育は輸出産業だ、こういう位置づけにしてやっている国、あるいは、最近中国も、送り出すだけではなく、留学生が来ると経済的な利益を得られる、こういう観点や、高度な人材を確保できる、こういう戦略的な観点から留学生受け入れをやっておりまして、日本もやはり進めていくべきだろう。

 私、実際、東大の中国人の留学生の方、そういう会がありまして、お話を伺いました。実は東京大学、二万八千人学生がおりますけれども、中国から既に千名の方が来られている、多いか少ないかあれですけれども。

 いろいろな御意見を伺いましたけれども、留学される側からすると、やはり日本の住環境というのは大変だという話を聞きます。外国に行くと大体寮がありまして、そこに入ればいいんですけれども、日本だとなかなかそうもいかない。日本の居住ですと、例えば、保証人を大学や教職員の方がやられているケースがあると聞きますけれども、敷金、礼金もある、こういうハードルが高い、こんな話もある。

 あるいは、皆さんは日本にわざわざ留学しに来られていますので、やはり将来日本で働きたい。しかし、実際に希望している人が日本で就職できたのは四割ぐらいだ、こういうデータもいただいております。

 これから留学生を受け入れるに当たりまして、やはりそういう受け入れ体制をしっかり整える、あるいは、働きたい人はしっかり就職もできるような体制をとっていく、こういうことが必要だと思いますけれども、まず、生活面、住環境などについては文部科学省、そして就職の関係は厚生労働省だと思いますので、それぞれお話を伺いたいというふうに思います。

吉田政府参考人 住環境につきましての御質問がございました。

 外国人留学生が我が国において安心して充実した留学生活を送るためには、住環境の整備というのが非常に重要でございます。

 このため、文部科学省におきましては、奨学金の支給等による経済的支援に加えまして、日本学生支援機構が保有する国際交流会館等を活用した宿舎の提供、それから交流事業の実施、あるいは、大学などがアパートなどの民間宿舎を借り上げるに当たりまして、契約時の礼金、仲介料、保険料等にかかる費用を補助する留学生借り上げ宿舎支援事業の実施を行っております。

 また、先ほど保証人の話もございましたけれども、その関係につきましては、公益財団法人日本国際教育支援協会では、そういった保証人の負担を軽減するための留学生住宅総合補償事業といったものも講じておりまして、今後とも、外国人留学生の住環境確保に係る支援の充実に努めてまいりたいと考えております。

宮川政府参考人 海外からの留学生の就職支援についてお答えさせていただきます。

 我が国の経済社会の活性化の観点から、専門的、技術的分野の外国人労働者の就業を促進することとしておりまして、厚生労働省におきましては、外国人雇用サービスセンターを中心に、ハローワークの全国ネットワークを生かしまして、外国人留学生に対するマッチング、インターンシップ及び定着支援など、多様な就職支援を行っているところでございます。

 また、日本再興戦略におきましても、我が国に来ている外国人留学生の就職あっせん支援の推進が求められているところでございまして、平成二十六年度、来年度からは、全国七都府県の新卒応援ハローワーク、ここに留学生コーナーを設置するなど、外国人留学生の就職支援体制の強化を図ることとしております。

 今後とも、関係省庁と連携をとりながら、優秀な外国人材が能力を十分に発揮できるよう、働きやすい環境の整備に向けた取り組みを推進していきたいと考えております。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私は、去る二月十七日の予算委員会の質問でも、大学生向けの給付制奨学金の実現を求めて、総理からも引き続き検討したいという答弁をいただきました。

 長野県は全国で初めて、二〇一四年度から、入学一時金に相当する学生向けの給付型奨学金を創設いたします。上限額は三十万円で、三十人程度に給付し、他の奨学金との併給も可能と報じられております。

 まず、学生向け給付制奨学金についての文部科学大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 今般の長野県を初めとする自治体において、経済的な理由により進学等を断念することのないよう給付型奨学金が導入されていることに対しては、積極的に評価し、こうした取り組みが広がることを期待しております。

 現在、政府としては、大学生等に対する給付型奨学金については設けられてはおりませんが、成績優秀な大学院生に対する返還免除を実施するほか、平成二十六年度予算案においては、無利子奨学金の貸与人員の増員や、授業料減免等への支援の拡充を図るとともに、延滞金の賦課率の引き下げなど、真に困窮している奨学金返還者への救済措置の充実など安心して奨学金の貸与等を受け大学等に進学できる環境を整備することとしております。

 昨年四月より、学生等への経済的支援の充実を図るため、効果的な支援のあり方について検討を行っているところでございますが、今後とも、経済的理由により学生等が進学を断念することがないよう、大学生等の給付型奨学金の創設を目指し、大学等奨学金事業の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 今お話しになった学生への経済的支援の在り方に関する検討会でありますけれども、昨年の四月一日、私は、予算委員会でこの日本学生支援機構の奨学金の問題を取り上げました。私の質問に対して下村文部科学大臣が、「真に困窮されている方に対して適切な対応を学生支援機構としても考える時期に来ているのではないか」、こう答弁をされました。

 その質問の三日後の四月四日に今の検討会が立ち上げられて、昨年八月にはこの中間まとめが発表されました。

 まず、これも前提を確認するんですけれども、この一連の動きは、少なくとも文部科学大臣も、現状の機構の奨学金制度にはまだまだ改善すべき問題点が存在する、こういう問題意識は共有していただいているというふうに考えてよろしいですね。

下村国務大臣 これは宮本委員もおっしゃったように、奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います。ぜひ本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく必要があるというふうに認識しております。

宮本委員 おっしゃるとおりだと思うんです。

 そもそもこの学生向け奨学金というものは、十八歳の無職の学生に数百万円というような大金を担保もとらずに貸し付ける制度なんです。

 教育の機会均等に寄与するという目的があるからこそこのような貸し付けが行われているわけでありまして、したがって、ここで問題になるのは、借り入れるときの目的や動機が確かに奨学のためであるかどうか、ここを見きわめて奨学金というものは貸与されているわけですよ。

 これは高等教育局長に確認するんですけれども、そもそも奨学を目的ともしないような、浪費のための奨学金の貸与申請があった場合、日本学生支援機構はそんなものは認めていないと思いますけれども、間違いないですね。

吉田政府参考人 日本学生支援機構によります奨学金は、あくまでも学資の確保ということでございまして、御指摘のような事例ですと、そういうのは入らないと思います。

宮本委員 そもそも奨学金制度というものは学ぶために必要なものでありますから、学んだ結果、その金を返すことが可能な経済状態になるかどうかについては、あらかじめ確たる保証はありません。したがって、諸外国では、貸し付けでなく給付、つまり返済の必要のない給付型の奨学金が当然のものとなっているわけです。

 ところが、我が国では、これを給付せずに貸し付けているところに覆いがたい矛盾が生じてくる原因があるわけです。

 つまり、貸し付けるときの機会均等のための奨学金というきれいな言葉と、返済させるときの借りたものはどんな事情があれ返すのが当たり前というこの前の麻生財務大臣のような言い分との間の矛盾なんです。借りるときにはただの借金ではなかったはずなのに、返すときにはただの借金と同じ取り立て方になってしまっている、私はここに問題が生じていると思うんですよ。

 では、現場ではどのような事態が起こっているか。現場では、いきなり膨らんだ延滞金を含めて一括請求が来たという相談が多く寄せられております。

 平成二十年四月に大学に入学をして、二十四年三月まで月額八万円の有利子奨学金を借りた人の事例でありますけれども、利子は年率一・一七%、卒業の六カ月後、平成二十四年十月から四十四年九月までの二十年間、二百四十回、毎月一万八千四十三円を支払う返還計画でありました。

 しかし、本人の手取り収入が十万から十五万だったため、返済ができずにいたところ、平成二十五年八月十九日に、返済期日到来分約十八万円、当月分一万八千円余りに、何と返還期日未到来分元本、利息含めて約三百七十万円、合計三百九十万円余りを支払え、こういう請求がありました。訴状によりますと、合計三百九十万円余りと、平成二十五年八月二十五日以降、完済に至るまで年一〇%の延滞金を払え、こうなっております。

 返還日到来分十八万円が払えない者に、三百九十万円を請求して払えるわけがないんですね。これは、一体どういう法的根拠があってこのような無理な請求を行っているか。これも高等教育局長、お願いいたします。

    〔委員長退席、義家委員長代理着席〕

吉田政府参考人 法的な根拠ということになりますと、独立行政法人日本学生支援機構法施行令第五条第四項に、「学資金の貸与を受けた者が、支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは、」「機構の請求に基づき、その指定する日までに返還未済額の全部を返還しなければならない。」という規定がございます。それが根拠ということでございます。

宮本委員 この施行令五条四項には、二つの要件が定められております。一つは、「支払能力があるにもかかわらず」ということですね。もう一つは、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」、こういうことであります。

 そこで聞くんですが、機構は、滞納者につき、施行令五条四項を適用するに当たって支払い能力の有無を確認しておりますか。

吉田政府参考人 繰り上げ一括返還請求に係ります現在の運用では、機構と連絡がとれない返還者につきましては、支払い能力があるものとみなして、先ほど言いましたような一括の返還請求をしているわけでございます。

 本来、支払い能力の有無の確認は、収入の状況などを、返還者側からの情報提供を受けて判断すべきものでございますけれども、そういうことが今なかなかできない、こういった事情がございます。

 このため、機構側からの再三の督促にもかかわらず、何の情報提供もない者について、それをそのまま放置すること、これはやはり、返還者からの返還金を次の奨学生への貸与の原資としている奨学金事業の健全性にもかかわることから、返還未済額の全部の返還の請求を行っているところでございます。

宮本委員 いやいや、その連絡がつくつかないということと支払い能力のあるなしとは何の関係もないんですね。

 文科省の担当者は、連絡がつかなければ支払い能力があるかないかもわからない、こう言っておられましたけれども、仮にあるかないかわからないにしても、一体それがなぜ支払い能力があるという判断の、つまり施行令五条四項の発動要件になるのか、その説明になっていないわけですよ。

 なぜ連絡がつかないということをもって、「支払能力があるにもかかわらず」というこの五条四項の発動要件にしているのか、お答えいただけますか。

吉田政府参考人 先ほど申し上げましたように、支払い能力があるかどうかということについては、その返還者側からの情報提供がなければ判断できないわけでございます。

 そういった事情がわかりませんので、そのときに、そのまま放置するということではなくて、やはりこれは支払い能力があるものとみなして一括請求の方をさせていただく、こういうこととしています。

宮本委員 この事例でいいますと、一括請求された三百九十万円に対して年率一〇%の延滞金ということになりますと、年三十九万円の延滞金がこれは乗ってくることになるんです。

 月額が一万八千円で、今既に年間二十万弱の支払いが滞っている人に、毎年毎年三十九万円の延滞金を乗せ続ければ、それこそ元金や利子どころかその延滞金すら支払えず、どんどん雪だるま式に債務が膨らんでいくだけだ、こういう事例ですよ。

 これはさすがにぐあいが悪いということで、今回延滞金その他について改善がされるようでありますけれども、今後これは改善されるんですか。

吉田政府参考人 延滞金の賦課率が従来は一〇%でございましたけれども、この平成二十六年四月以降につきましては、これを五%という形に引き下げて適用することとしております。

宮本委員 こういう延滞になって一括請求を受けている場合、今回、一〇%から五%に引き下げると。あるいは、返済猶予も、この事例などは手取りが十万から十五万だったということですから、間違いなく返還猶予が受けられる年収のはずなんです。一括請求を受けた後でも、いやいや、実は猶予を受けられたんだということがわかった場合に、これを救済するということも聞きましたけれども、このあたりはきちっとやられるわけですか。

吉田政府参考人 連絡がつかなかった方に連絡がつく状態になりまして、そこで延滞状態が存在するということになりましても、過年度、つまり、過去におきまして返還猶予の事由に該当する事情がある、例えば、経済困難を理由に返還が困難である、こういう方につきましては、独立行政法人日本学生支援機構に市町村等が発行する所得証明書等を提出していただくことによりまして、過去にさかのぼって奨学金の返還期限を猶予するという柔軟な対応をしているところでございます。

 また、こうした対応によりまして、証明された期間における延滞金は解消される、こういう仕組みになっております。

宮本委員 五年から十年に猶予期間を延ばして遡及適用する、その場合には、延滞金についても減額するという今答弁でありましたけれども、しかし、役所の所得証明は大体五年前までが一般的で、それ以前はとれないんじゃないですか。

吉田政府参考人 御指摘のように、過年度の所得証明書等の発行期間は自治体によって違いがございます。したがいまして、返還猶予制度をさかのぼって適用できない期間が生じる可能性があることは事実でございます。

 その場合、所得証明書等で確認できた範囲内で返還猶予制度を遡及適用して適用期間に生じた延滞金を解消したとしても、延滞状態が解消されないために返還猶予制度を適用できなかったというのがこれまでの取り扱いでございましたけれども、この平成二十六年四月からは、このような延滞の状態が残るものに対しましても、返還猶予制度を適用するように運用の見直しを行っているところでございます。

 こういったところで、返還が経済的に困難な方に対する負担軽減を図ってまいりたいと思っております。

宮本委員 一〇%の延滞金、これを五%に引き下げる、こういうことでありますけれども、今既に一〇%で延滞金を請求されている人についても、これは五%で再計算をするということになるんですね。

吉田政府参考人 これにつきましては、過去に発生をしております延滞金についてはそのままでございまして、この平成二十六年四月以降に発生をする延滞金分について、先ほどのような形で軽減を図るということでございます。

    〔義家委員長代理退席、委員長着席〕

宮本委員 それはおかしいと思うんですね。一〇%が高過ぎるという認識で五%に引き下げたわけですから、過去の一〇%の延滞金もそれは高過ぎるということであれば、これまでの分についても当然減額すべきだと思います。そもそも、この延滞金というのは私は問題だと思うんですね。五%でも高過ぎますよ。廃止すべきだと思います。

 聞きますけれども、日本学生支援機構の延滞金収入はどのようにこの間推移してきたか。平成二十年度から二十四年度まで、年度を追って答えていただく。またあわせて、この延滞金収入は、機構の経理上はどのような費目に計上されておりますか。

吉田政府参考人 まず、延滞金収入の推移について御説明を申し上げます。

 これは、無利子奨学金、有利子奨学金合わせまして、平成二十年度におきましては二十五億八千万円、平成二十一年度におきましては三十億二千万円、平成二十二年度におきましては三十七億一千万円、平成二十三年度においては四十一億二千万円、平成二十四年度においては四十三億二千万円、こういった推移をたどっているところでございます。

 この延滞金収入は、日本学生支援機構の雑収入として計上をされておりまして、いわゆる奨学金貸与の原資としては充てられていないということでございます。

宮本委員 奨学金の原資としては充てられていないと。この延滞金は、四十三億に既に上っております。

 議論すると、必ず、奨学金事業の返還金は基本的には次の学生への貸与の原資である、だから返還金の回収は大事だと、さっきもそういう答弁がありましたよね。

 それならば、この原資を回収することが非常に大事になっているはずなんですが、この延滞金というものは、幾ら回収しても一円たりとも次の貸付原資には回りません。延滞金よりも元金の回収こそ一番ですね、元金を回収すればそれがまた次の貸与になるわけですから。そういうことになるわけです。ならば、滞納者の返還に当たっても、まず真っ先に元金から充当すべきであって、なぜ延滞金から充当しているのか。

 先ほどの三百九十万円一括返還の例でいいますと、仮にあなた方が引き下げる年率五%に下げたとしても、年間約二十万円の延滞金になります。今十八万円が払えず滞納している人から二十万円を取り上げても、延滞金から充当すれば、延滞金ばかりが支払われて元金は一円も減っていかないということになりますね。つまり、次の貸付原資は一円もふえないんです。雑収入ばかりふえていく。

 大臣、この制度が次の学生への貸与の原資だから返還金の回収は大切だ、そう言うのであれば、滞納者が納める返還金も、まず何よりも元本に充当して直ちに次の貸付原資にすることこそ本来の精神だと私は思うんですが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 まず、延滞金の使途でございますけれども、これは奨学金の原資ということにはなっておりませんけれども、日本学生支援機構が奨学金にかかわるさまざまな事業を展開する必要がございますから、その資金として使われているわけでございます。

 それで、今御指摘の返還金の充当順位の問題でございますけれども、日本学生支援機構においては、これは民法四百九十一条におきまして、その規定に準じた形で、学生支援機構の業務方法書において充当順位を決めているところでございます。

 文部科学省におきましては、現在、学生への経済的支援の充実に関する検討を行っているところでございます。この充当順位の点も一つの論点として考えられるかと思います。

宮本委員 これは先ほど前提で議論したとおりですよ。最初はただの借金じゃなかった話から始まっているのに、いつの間にか民法四百九十一条で民間の借金の場合はこの順位だという話に行っちゃうからおかしくなる。だから、やはり建前は、貸付原資を一日も早く回収して次の人に貸すということであれば、本来の制度の趣旨でいえば充当順位も元本から充てるべきだというのは当たり前だ。ぜひ検討会で検討していただきたいというふうに思うんです。

 さて、日本育英会から日本学生支援機構、こう名前が変わった二〇〇三年の法改正時に、機関保証というものが導入されました。その後、実は、この奨学金については人的保証から機関保証にどんどん移っておりまして、機関保証がふえ続けております。最新の実績で、機関保証は全奨学金貸与者の何%になっているか、これも局長で結構です、お答えください。

吉田政府参考人 機関保証を選択している率でございますけれども、平成二十四年度の新規貸与者におけます選択率は四六・七%となっております。

宮本委員 この日本学生支援機構の奨学金の機関保証というものは、日本国際教育支援協会という公益財団法人が一手に引き受けて行っております。

 きょうは資料を配付しましたので、資料をごらんいただきたい。

 この資料一の上の図を見ていただきますと、この財団法人は、日本学生支援機構と双子のような法人であります。この支援協会の機関保証事業は日本学生支援機構の学資貸与事業の保証のみでありまして、他の保証事業は一切やっておりません。下の円グラフ、収入、支出というものを見ていただくと、この財団法人の収入、支出の約八割は日本学生支援機構の機関保証事業が占めております。

 一枚めくっていただいて、資料二を見ていただきたい。

 平成十六年、二〇〇四年に二万八千件余りから始まった保証件数は、年を追ってふえにふえ、二〇一二年には百二十六万件、実に四十四倍に急増しております。この日本国際教育支援協会の機関保証を受けておりますと、返還が滞った際、日本学生支援機構の求めに応じて、元金、利子、そして延滞金まで一括で代位弁済してくれることになっております。

 聞きますけれども、支援機構は、奨学金返済の遅延期間がどれだけに達したら代位弁済を請求することになっておりますか。

吉田政府参考人 この公益財団法人日本国際教育支援協会の規定によりますと、延滞が十二月以上になった返還者につきまして、日本学生支援機構からの請求に基づき、審査の上、代位弁済を履行するとされております。

宮本委員 ここに私、国際教育支援協会の業務方法書というのを持っておりますけれども、第十一条では、今お話があったように、「履行遅延の期間が一年に達したときは、機構からの請求に基づき、当該保証債務の残額について保証債務を履行するものとする。」第二項では、「前項の代位弁済は、機構から本協会に対する請求があった後、速やかに行うものとする。」一年で、請求されたら速やかに、延滞金まで含めて、さっき言った三百九十万を代位弁済しちゃうわけですよね。こういうことになります。

 ところで、そういう形で全額代位弁済が終わった後で、先ほどの例のように、まだ十年の返済猶予期間を使い切っていないじゃないか、もう一度猶予を受けて延滞金は減額してもらいたいということがわかった場合、先ほど新年度から弾力運用すると答弁されたような、猶予期間の遡及適用や延滞金の減額を受けることができるか。局長、いかがですか。

吉田政府参考人 これは、日本学生支援機構が行う学資の貸与に関する保証に関する業務方法書というのが日本国際支援協会の方では定められておりますけれども、この中ではまだ、今先生御指摘のような、日本学生支援機構の方での制度改正のものは必ずしも反映されていないという状況でございます。

宮本委員 いやいや、その保証債務が元金、利子、延滞金に至るまで三百九十万と確定して、この協会が一括弁済した、その一括弁済が終わった後で、いやいやそれはちょっと実は違うんだ、猶予が受けられたんだといった場合に、代位弁済の後で事態を変えることができますかと聞いているんです。

吉田政府参考人 日本国際教育支援協会が行いました代位弁済、これ自体は、その後で返還者の方の事情で返還が困難であるという事情が判明したといたしましても、日本国際支援協会自身が行いました代位弁済を取り消すことはできません。

宮本委員 確定しちゃうわけですよ、これは。もちろん、確定した後で、その三百九十万円、実は借金がチャラになるわけじゃありません、今度は支援協会から三百九十万円一括返還の請求がされます、本人に対しては。

 しかし、支援機構の間には、先ほど、検討会で検討していただいて、一旦一括請求を受けた場合でも後から融通をきかせてちゃんと弾力的に運用しますよと言ってくれているんですが、一括代位弁済がされてしまうと、もはやこれは動かなくなっちゃうんですよ、延滞金まで含めて。

 そして、返し方は相談に乗るそうであります。分割返済も相談に乗る。あるいは、経済的に困窮、特別な事情がある場合には、返済猶予というものもこの協会もちゃんと定めているとは聞いておりますよ。しかし、総額についてはもうここで固まってしまうんですね。

 あわせて聞きますけれども、では、代位弁済後に協会に対して返済がまた始まった、これがまた延滞した、おくれたという場合に、何%の遅延損害金が上乗せされることになっておりますか。

吉田政府参考人 これは、日本国際教育支援協会の業務方法書の十二条によりますと、一〇%の遅延損害金の支払いを求めることができるとなっています。

宮本委員 結局一〇%ですよ、これは。延滞金を五%に引き下げるとか、猶予期間を十年に延ばして弾力的に延滞金の減額をするとか、あたかも返還困難者を救うようなことを言うけれども、今どんどん機関保証がふえている。四六%ですから、もう半分近く機関保証になっている。一年たったら代位弁済を求め、保証機関である支援協会に債務が移ってしまえば、もう支援機構の側は延滞金まで含めて一〇〇%回収、こうなるんですよ。

 今、回収率八十数%というふうに支援機構は言っていますけれども、その中には代位弁済を受けた数もカウントされておりますね。

吉田政府参考人 その方もカウントされております。

宮本委員 大臣、冒頭、問題意識をお持ちだ、共有していただいている、だから検討会が立ち上がった、八月まで議論してきて中間まとめが出た、それを反映した予算も組んだ、こういうふうにお話しになりました。

 しかし、幾ら検討しても、まさにこういう実態、実際は、代位弁済という制度があって、そっちへ移っちゃえば支援機構の方はもうおしまい、一〇〇%回収済み、こうカウントされている。ところが、実際、当人との関係では、代位弁済後も一括で、しかも、そうなっちゃうとこの数字は動かない、三百九十万の場合はもう三百九十万が確定しちゃう。そして、それがおくれたら、支援機構の本体の方は五%に引き下げたと言うけれども、支援協会の方の遅延損害金は相も変わらず一〇%でまた積み上がっていく。こういう制度になってしまっている。

 私は、こういう実態をリアルに先生方にわかっていただかなくては、検討会は救済策は立てられないと思うんです。私は、検討会の場に、現場の実務にかかわっている、携わっている弁護士さん、司法書士さんなどに加わっていただいて、こういうリアルな実態をどんどん出して先生方に議論していただくことがどうしても必要だと思うんですけれども、最後に大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。

下村国務大臣 先ほど申し上げましたように、返還困難者に対する対応については、より充実する方向で今進めているところでございます。

 その中で、日本国際教育支援協会における課題については、今、宮本委員からお話がありました。

 これは、今の御提言を検討させていただきたいと思いますが、まずは景気をよくし、そして、借りたものは返さなきゃいけないという、やはりモラルハザードをさらに増長させるようなことがあってはならないというふうに思いますし、その上で、真に困窮している方々に対する適切な対応については考えたいと思います。

宮本委員 麻生さんともそういうやりとりになったんですけれども、諸外国では、だからこそ貸していないんですよ。借りたものは返さなきゃならないと言うけれども、日本が貸し付けているからそういうことになるのであって、やはり給付で本来やるべきだということを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、全国学力・学習状況調査の結果公表に関連して何点かお尋ねをしたいというふうに思います。

 まず初めに、二〇一二年にOECDが実施をした国際学習到達度調査、いわゆるPISAの結果に関連し質問いたします。

 昨年十二月に結果が公表されましたが、数学、科学、読解力ともに上位に復帰をいたしました。過去二回の調査ではPISAショックとまで言われましたけれども、今回の結果を見れば、学力について悲観するものではなく、また、遅刻やサボりの調査結果でも群を抜いてよい結果が出ております。学習態度や規範意識といった点でも、問題があるようには思えません。

 まず、この結果についてどのように認識し、どんな課題があると受けとめているのか、尋ねます。

下村国務大臣 御指摘のように、PISA二〇一二の我が国の結果は、読解力、科学的リテラシーの二分野において、調査開始以来初めて、OECD諸国の中で一番になりました。また、数学的リテラシーについては、OECD諸国の中では第二位でございます。全分野において下位層の割合が減少し、上位層の割合が増加するなど、過去最高の結果でありました。

 その要因としては、文科省、各教育委員会、学校等が一体となってこれまで進めてきた習熟度別指導など少人数教育の推進によるきめ細やかな指導体制の整備、いわゆるゆとり教育から脱却し、学習指導要領に基づく基礎的、基本的な知識、技能と、思考力、判断力、表現力など確かな学力を育成するための取り組み、全国学力・学習状況調査の実施による教育施策や教育指導の改善の取り組みなど、着実な成果を上げたものと考えております。

 一方、シンガポールなどほかの上位国も平均得点をさらに上げるなど、世界的に学力の向上に熱心に取り組んでいる状況が見られます。

 このような世界的な状況を踏まえ、文科省としては、学力水準の維持向上を図ることが重要と考えており、今後とも、世界トップレベルの学力と規範意識を備えた人材を育成するため、一層の取り組みを進めてまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 今回の結果についてですけれども、OECDの教育次長は次のように言っております。日本の好成績について、学校施設などの教育資源が平等に行き渡っている点、こういうものを挙げております。また、学習院の佐藤教授によりますと、学校と教師の献身的な努力の結果だと。そうしつつも、教師の努力も限界に来ているとして、教師の多忙化解消などの必要性も一方で指摘をされております。私も全く同感です。

 次の質問にも関連をいたしますけれども、過度な競争を助長するよりも、教育の基盤整備、教育機会の平等に力を注ぐことが結果として総合的な学力を引き上げるものではないかというふうに思います。

 そこで、全国学力・学習状況調査の結果公表のあり方について質問をいたします。

 昨年十一月二十九日、文科省は来年度の実施要領を公表し、これまでの市町村別、学校別の結果公表は行わないという原則を変えて、配慮事項は示しつつも、教育委員会の判断で結果を公表することを可能といたしました。

 これに先立って文科省は、昨年、結果公表のあり方についてアンケートを実施しております。各学校の結果、各市町村の結果の公表のあり方について、都道府県あるいは市町村の教育委員会、市町村長、学校、保護者ともに、「従来どおり、学校だけが公表できるように」するという回答、これがトップです。知事の回答だけが「教育委員会も公表できるようにする」というのが一番多かったのですが、それでも過半数は超えてはおりません。

 このアンケート結果に基づけば、教育委員会の判断で市町村別、学校別の結果公表を可能にするという結論にはならないのではないかというふうに思いますが、この点いかがでしょう。

下村国務大臣 平成二十六年度調査における結果公表の取り扱いについては、教育委員会など関係者へアンケート調査を行い、その結果も参考に行われた専門家会議の議論も踏まえて見直しを行いました。

 アンケートの調査では、教育委員会による公表を一律に禁止していた従来の実施要領のままの扱いを求める意見が多かったということは、吉川委員が指摘のように事実でありますが、学校を設置管理している教育委員会も公表できるようにすることが適当と回答した教育委員会も、都道府県で約四割、市町村は約二割ありました。また、保護者の約四割も同様の回答がありました。

 今回の見直しは、保護者や地域住民への説明責任等の観点から、教育委員会としても、設置する学校の結果を公表できるようにしてほしいとの要望があることを踏まえ、一律に公表できないこととするのではなく、教育委員会が必要と判断する場合は公表することを可能とするものであります。

 ですから、公表したくないという教育委員会は公表しなくてもいいわけでありまして、別に、全員一律、全てに公表させるということではなくて、公表するかしないかはそれぞれの教育委員会で判断するということであります。

 ただ、その際、序列化や過度な競争による弊害が生じないよう、専門家会議において、議論も十分踏まえて、公表する際の配慮事項について詳細に定めてもいますので、これはまさに、実態に合った、説明責任もまたあわせた判断であるというふうに考えております。

吉川(元)委員 説明責任については、また後ほど少し尋ねさせていただきます。

 それで、専門家会議で議論をしたというふうになっておりますけれども、これを見ますと、非常に拙速ではなかったかというふうにも思います。文科省のホームページでその議事録等々が公表されておりますけれども、この案件では、協議は二時間の会議が二回開かれています。事実上最後の会議となった十一月十五日の第四回会議の議事録を読んでおりますと、教育委員会による町村別、学校別公表を可能にすることで委員の専門家の意見集約はできたというふうにはちょっと幾ら何でも読めない、賛否が、両論が出されているというふうに見えます。

 議事録では、公表に基本的に賛成というふうな立場の委員でさえも、「反対意見が強いようであれば、」「一年十分に検討して、じっくり話し合ってからやるべきだと思っている。」というようなことも述べておられます。

 それが、トータル四時間、たった二回の会議で公表可能の結論に至ったことは、もちろん教育委員会ごとに判断するというようなことはあるにしても、やはり公表可能の結論に至ったということは、最初から公表ありきではないかというふうにさえ勘ぐってしまいます。

 結論は拙速ではなかったかと思いますけれども、この点いかがでしょう。

下村国務大臣 専門家会議ではさまざま賛否両論出されましたが、全体としては、設置管理者である市町村教育委員会が学校の結果について説明できるようにすることは重要であること、一方、序列化や過度な競争が生じないよう、単に平均正答率を一覧することはしないなど、公表を行う際の配慮事項を明確にすること、また、教育委員会としての今後の改善策をあわせて示すことが必要などの意見があったということは承知をしております。

 これらの意見を十分に踏まえ、教育委員会はそれぞれの判断によって、学校名を明らかにした結果の公表を行うことができることとするとともに、公表に当たっては、平均正答率などの数値のみの公表は行わず、分析結果や改善方策を公表するなどの配慮事項を平成二十六年度の実施要領に定めたものでありまして、繰り返すようでありますが、公表するべきでないという判断をした教育委員会は今までどおりでいい、そういうことであるわけですから、その中でそれぞれ教育委員会が独自に判断できる、そういう本来の、教育は地方自治の中で判断するというその趣旨にまさに合っているということでもあると思います。

吉川(元)委員 独自に判断できるということですけれども、恐らく教育委員会制度の議論もこの後行われますけれども、非常に強い圧力が教育委員会にもかかっていくということも予想されますし、その点でいうと、やはりもう少しじっくりと時間をかけて議論をしなければいけない問題ではなかったのかというふうにも思います。

 そこで、説明責任について少しお伺いしたいと思います。

 来年度の実施要領によれば、教育委員会や学校が保護者、地域住民に対して説明責任を果たすことの重要性が指摘をされております。大臣も、今ほどもおっしゃられましたが、記者会見で、市町村別、学校別の結果公表に関して、「説明責任を果たすべき役割もある」というふうにも述べられております。

 そこでお伺いしますけれども、逆に言いますと、従来の結果公表のあり方というのは、これは説明責任を果たしていなかったということなんでしょうか。また、今、教育委員会の判断に委ねられるというふうに言われましたけれども、仮にその結果を公表しないと判断した教育委員会というのは、これは説明責任を果たしていない、そういうふうにお考えなのでしょうか、お答えください。

下村国務大臣 教育委員会や学校が保護者や地域住民に対して説明責任を果たすために、子供たちの学力の状況等について積極的な情報提供を行うことは重要であります。これまでの調査結果についても、教育委員会や学校がみずからの調査結果について公表することはできるということになっていたわけでありまして、それぞれが、地域の実情に応じて保護者等に対する説明責任を果たすよう取り組んできたと考えております。

 説明責任を果たす方法はさまざまな形がありますが、これまで、教育委員会による学校の結果の公表については、国において一律にできないこととしてまいりました。

 しかしながら、今回、専門家会議の議論も踏まえまして、学校の設置管理者かつ調査の参加主体であり、学校の結果に最終的な責任と域内の教育の状況に関する説明責任を有している教育委員会が、地域の実情に応じて基本的に判断することとしたものであります。

 文科省としては、各教育委員会において、教育上の効果や影響等を踏まえ、地域の実情に応じて、適切に説明責任を果たす方法について判断していただきたいと考えております。

吉川(元)委員 それでは次に、もう一点お聞きしたいんですけれども、実施要領で、例えば市町村の教育委員会が個々の学校名を明らかにした調査結果を公表する場合、当該する学校と公表する内容、方法などについて事前に十分に相談するよう求めております。

 そこで尋ねますけれども、例えば当該の学校の学校長が学校別の結果公表に反対しても、教育委員会が公表する判断をした場合はそちらが優先をされるということでよろしいんでしょうか。また、市町村の教育委員会が学校別の結果公表を決め、当該する学校の一つあるいは複数の校長が公表を拒んだ場合はどのようになるのでしょう。

前川政府参考人 平成二十六年度調査に関する実施要領におきましては、教育委員会は、みずから設置管理する学校の状況につきましてそれぞれの判断において公表する場合、「当該学校と公表する内容や方法等について事前に十分相談する」ということとされておる。このことは先生御指摘のとおりでございます。

 最終的な公表の判断は教育委員会が行うということでございますが、各学校の状況や公表の内容、方法による教育上の影響などにつきまして、個別の状況についてよく把握した上で判断することが重要であるということでこのような取り扱いにしているわけでございまして、教育委員会においては、最終的な判断をするに当たって、学校の意見をよく聞いていただきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 もう時間が余りありませんので最後に一言言わせていただきたい、こういうふうに思います。

 なぜこういうことを言うかといいますと、説明責任等々いろいろ言われますが、やはり、この結果公表というのが学校間の過度の競争だとか序列化を招くのは、これは事実だろうというふうに思います。

 実際、例えば不動産関係の会社というのは、色めき立って周辺の学校の平均点だとかあるいは順番だとかということを、恐らく、説明する際にそういうものを資料として提示するというようなそういうことを考えておられる不動産の会社もいらっしゃるというふうに聞いております。

 また、これは以前当委員会でも悉皆化の関連を尋ねた際にお話しした話ですけれども、過去の問題集、いわゆる過去問を集中的にテストの前にやる、いわゆるテスト対策をやる、あるいは、成績が平均以上だった自治体では紅白まんじゅうを配る。あるいは、上位十位に入った学校について百万円配るというような県も実際に今は出てきております。

 そういう意味でいうと、今回の公表、これについては、過度な競争あるいは学校の序列化ということを招くのではないか。

 最後にこの点だけ、大臣、どのようにお考えなのかをお聞かせください。

下村国務大臣 調査結果の公表に当たっては、教育施策や指導の改善につなげることが重要であるとともに、序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮することが必要だと思います。

 このため、実施要領におきまして、各学校の平均正答率のみの公表は行わず、分析結果や改善方策をあわせて公表すること、また、平均正答率による順位づけは行わないこと、さらに、公表の際には、調査の目的や調査結果は学力の特定の一部分であり、学校における教育活動の一側面であることを明示することなどとしております。

 各教育委員会においては、実施要領に従い、地域の実情や教育上の効果や影響等を踏まえ、調査結果の公表について適切に判断するとともに、公表の趣旨について広く御理解いただくことが重要であるというふうに思います。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、以上で終わります。

     ――――◇―――――

小渕委員長 次に、内閣提出、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

下村国務大臣 このたび政府から提出いたしました義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 市町村立の小学校及び中学校において使用する教科書については、都道府県教育委員会が設定する採択地区が二以上の市町村の区域をあわせた地域であるときは、そのような共同採択地区内の市町村教育委員会は協議して種目ごとに同一の教科書を採択することとする、いわゆる共同採択制度を採用しています。

 この法律案は、義務教育諸学校の採択の制度の改善を図るため、近年、共同採択に当たって協議が難航する事例が生じていることを踏まえ、共同採択地区における市町村教育委員会の協議の方法に関する規定の整備を行うほか、柔軟に採択地区を設定できるようにするための採択地区の設定単位の変更、教科書の採択に関する信頼を確保するための採択結果及び理由等の公表について定めることをその内容としております。

 以下、項目ごとにその概要について御説明申し上げます。

 第一に、共同採択地区内の市町村教育委員会は、協議により規約を定め、当該共同採択地区内の市町村立の小学校及び中学校において使用する教科書の採択について協議を行うための採択地区協議会を設けなければならないものとするとともに、共同採択地区内の市町村教育委員会は、採択地区協議会の協議の結果に基づき、種目ごとに同一の教科書を採択しなければならないものとすることとしております。

 第二に、都道府県教育委員会が設定する採択地区を、市もしくは郡の区域またはこれらの区域をあわせた地域から、市町村の区域またはこれらの区域をあわせた地域に改めることとしております。

 第三に、市町村の教育委員会等が教科書を採択したときは、遅滞なく、当該教科書の種類、当該教科書を採択した理由その他文部科学省令で定める事項を公表するよう努めるものとすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十六日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.