衆議院

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第13号 平成26年4月18日(金曜日)

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平成二十六年四月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    神山 佐市君

      菅野さちこ君    木内  均君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    桜井  宏君

      新開 裕司君    末吉 光徳君

      冨岡  勉君    永岡 桂子君

      根本 幸典君    野中  厚君

      馳   浩君    福山  守君

      星野 剛士君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    渡辺 孝一君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      吉田  泉君    遠藤  敬君

      椎木  保君    三宅  博君

      中野 洋昌君    柏倉 祐司君

      杉本かずみ君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君

    …………………………………

   議員           吉田  泉君

   議員           笠  浩史君

   議員           鈴木  望君

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学副大臣      西川 京子君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          前川 喜平君

   参考人

   (三鷹市教育委員会委員長)            貝ノ瀬 滋君

   参考人

   (千葉大学名誉教授)   新藤 宗幸君

   参考人

   (大阪市教育委員会委員長)

   (首都大学東京大学教育センター教授)       大森不二雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  柏倉 祐司君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  山内 康一君     柏倉 祐司君

同月十八日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     末吉 光徳君

  比嘉奈津美君     渡辺 孝一君

  宮内 秀樹君     星野 剛士君

  柏倉 祐司君     杉本かずみ君

同日

 辞任         補欠選任

  末吉 光徳君     根本 幸典君

  星野 剛士君     宮内 秀樹君

  渡辺 孝一君     福山  守君

  杉本かずみ君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     木内  均君

  福山  守君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

四月十七日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(宮本岳志君紹介)(第六七八号)

 同(福井照君紹介)(第七〇一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七〇二号)

 同(武藤貴也君紹介)(第七〇三号)

 同(北村誠吾君紹介)(第七一七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七四四号)

 同(三日月大造君紹介)(第七八八号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七五八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、三鷹市教育委員会委員長貝ノ瀬滋君、千葉大学名誉教授新藤宗幸君及び大阪市教育委員会委員長、首都大学東京大学教育センター教授大森不二雄君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。両案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御了承ください。

 それでは、まず貝ノ瀬参考人にお願いいたします。

貝ノ瀬参考人 おはようございます。三鷹市教育委員会の貝ノ瀬でございます。よろしくお願いいたします。

 限られた時間ですので、ポイントを絞って申し上げたいと思います。主に与党案につきまして、賛成の立場からお話をさせていただきたいと思います。

 まず、既に御指摘がありますように、教育委員会の形骸化ということでございますけれども、これはやはり、率直に申し上げまして、私自身、一昨年まで二期教育長を務め、そして今現在教育委員長でございますけれども、両方経験してつくづく思いますのは、やはり、非常勤の教育委員、教育委員長と常勤の教育長というのは、もう圧倒的なこれは立場の違いがあるということでございます。

 情報量もそうでございますが、教育長は日々もう毎日のように何十件と決裁をし、現場の相談それから情報等を提供を受けながら判断しているわけでありますが、教育委員、教育委員長は、せいぜい月一回か二回という中でまとめてお話を伺って、そしてさまざま指示もするということになりますけれども、実情は、執行機関としてありますが、しかしながら、やはりそういう現状の中では、せいぜい事務局案に対して質問という形でもっていろいろ確認するというのが実情でございます。

 たまに、全国幾つかは議会にも教育委員長が出たりもいたしますけれども、その場合も、私も出たりします、私は教育長を経験しておりますので多少は対応可能でございますけれども、別な職業を持ってたまに議会対応となりますと、これはなかなか厳しいものがある。議員さんの方であらかじめ質問要旨が渡されていて、答弁も文書がつくられている、ただそれを読むだけなら別ですけれども、そうじゃなければなかなかこれは難しい。これはもう当然でありましょう。

 それから、ふだんもいろいろな会議等で教育長は出席して挨拶しますけれども、教育委員長は、一年間で何回か大きなイベントで教育委員会代表として挨拶するわけでありますが、そういう意味では、市民の側からしても、教育長が実際の教育委員会を代表しているのではないかというふうに多分受け取っていらっしゃるというふうに思います。

 そんなことで、教育長と教育委員長を一元化する、こういう案は非常に現状に合っているということでありますし、さまざまな課題に対して迅速に対応できるという意味でも、これはやはり理にかなったことであろうというふうに思います。

 それから二点目ですが、教育委員会制度は、戦後、政治的中立性、そして継続性、安定性ということが確保されてきたわけでありますが、住民自治というふうな観点からもやはりこれは継続すべきというふうに思いますし、教育再生実行会議でも、また中央教育審議会でも、これは確認されてきているところでございます。

 そうはいいましても、さまざまな御意見があるわけでありますが、特に、首長さんが総合行政をするに当たりまして教育についても関与できないというのは、民意を代表する立場からしてもこれはいかがなものか。これはやはり当然のことだろうというふうに思いますので、今回、特に総合教育会議を主宰するというこの規定については、これは非常にやはり当然のことだろう、こういう権限を持つというのはあっていいのではないかというふうに思います。

 首長さんからしますと、教育委員会が壁になって、さまざま教育についてはなかなか御自分のお考えが通らないという御不満があったかと思いますけれども、教育長、教育委員の側からも、これは同様に不満があります。

 これはどういうことかといいますと、結局のところ、例えばですけれども、交付税措置で図書費などが措置されているわけでありますが、実際は道路の費用に化けたり、そんなことがあって、つまり、どうしても首長側は財政論で物事を進めたい、しかし、教育委員会の方は教育論で子供たちまた市民の生涯学習を担っていきたいという思いの中で、なかなかその辺がうまく相互理解がないわけであります。

 しかし、今回、与党案の中では、総合教育会議という形で双方が同じテーブルに着いて教育の問題について協議し合うということは、まことにこれはいい場ができたというふうに思います。やはり、話し合いをして相互理解をするということが非常に大事だというふうに思います。これはお互いのためにとってもいいです。

 通常は、教育長と首長は、時々いろいろ情報交換したり、すり合わせをしたりしているとは思いますけれども、しかしながら、教育委員さんたち、教育委員長と首長さん、ましてや校長先生方と首長との関係という中では、ほとんど疎遠になっているという中で、やはり、現場のいろいろな課題について俎上にのせて議論し合うということは非常にこれはいいことだろうというふうに思います。

 そういう意味では、この総合教育会議というのは非常に適切な仕組みであるというふうに思います。

 一方で、首長さんの暴走を危惧するというような御意見もお聞きしているわけであります。

 しかしながら、今、全国幾つかそういう事例もありますけれども、教育委員さん自体がこれはやはり本来の機能をしっかり発揮していただく、そしてまた首長さんも、教育委員さんを選任するときに、ただ自分の使いやすい人、地域の名士とか選挙の論功行賞ということで選ぶのではなくて、しっかりと教育について見識があって、一定の敬意が払える、お互いに尊敬できるようなそういう方たちが選ばれてこそ、やはりこの総合教育会議でも対等な議論ができるだろうと思いますし、時々忘れ去られておりますのは、二元代表制の一方の議会、この議会の皆さん方がやはりしっかりとこの教育問題についてもお考えを持つということが大事だろうと思いますし、そういう意味で、首長をチェックするということが大事だろうというふうに思います。

 でも、大部分の全国の首長さんは、教育に対しては政治的中立性という観点から非常に抑制的な態度をとっていらっしゃるというのが大部分だろうと思いますが、そういう意味では、やはり、この与党案の仕組みをしっかりと機能させていくという中でそれは克服できるのではないかというふうに思っています。

 プラス、この仕組みがさらによくなるというふうに考えますのは二点、簡単に申し上げます。

 一点は、この教育委員さんは保護者一名というのが規定されておりますけれども、そのほかに、例えばコミュニティースクールで活躍している方、学校支援地域本部等で活躍している方等々、教育再生実行会議で記された、中央教育審議会でも記されておりますけれども、そういったことで活躍している方々も活躍する場として、教育委員さんに選任も考えていいんじゃないかというふうに思います。

 また、教育長ですが、教育長と教育委員長が一体化して責任も権限も大きくなりますが、当然、それだけに資質がやはり担保されなきゃなりませんので、教育長の資質向上、維持のために、やはりこれは、少なくとも自己研修、自己研さんの努力義務ぐらいは、法律の中に入れられなくても、何かそれ以外で、附帯決議とか何か違う形でもいいですから、それが入ってもらうとこれは非常によろしいのではないかというふうに思います。

 時間が来てしまいましたので、これでお話を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、新藤参考人にお願いいたします。

新藤参考人 おはようございます。

 時間が限られておりますので、用意しました文章を読み上げさせていただきたい、そう思っております。

 昨年来、地方教育行政についての改革議論が盛んに展開されております。とりわけ、一九五六年に施行されました地方教育行政法に基づく教育委員会制度のあり方が焦点とされております。

 教育委員会制度の改革はこれまで幾度も論じられていますけれども、今回の議論の直接のきっかけは、大津市教育委員会の、中学生いじめ自殺事件への対応にあると言ってよいように思います。ただし、この事件を契機として教育再生実行会議が一連の議論の中で教育委員会制度の改革を提起したのは、かなり文脈を異にしているように私には思えます。集権的ないし国家主義的教育を進めるためのシステム整備のように見えるわけであります。

 ともあれ、自民、公明両党の協議を経て、内閣から地方教育行政法の一部改正法案が上程され、また、民主党、日本維新の会から対案が提出されているわけです。私は、昨年十一月に岩波新書から「教育委員会―何が問題か」という本を出版いたしましたが、きょうは、それに基づいて、二つの法案について所感を述べさせていただきます。

 さて、政府案の最大のポイントは、教育委員長と教育長を一本化した新教育長を置き、彼に教育委員会を代表させることにあると言えます。そして、もう一つの大きな改革のポイントは、首長のもとに総合教育会議を設け、教育委員会と協議しつつ教育施策の大綱を決定するとしていることだと言えます。

 しかし、この提案された教育長任命と新たな地位についての改革案は、教育現場を御存じの方はよく実際には存じ上げているはずなんですけれども、現行のシステムを改めて制度化しようとするものと言えます。

 現行制度における教育長の任命は、首長が議会の同意を得て教育委員として任命し、次に、教育委員会の会議で教育長を互選することになっています。けれども、これは法の規定にすぎません。実際には、ほとんど全ての自治体、都道府県、市町村問わずですけれども、において首長は、教育委員候補を議会に提出するときに、彼が教育長の候補であることを明言しています。形式的には教育委員会会議で選任されているのですけれども、議会内でも委員会内でも、教育長の任命について議論が、激論が展開されるといったことはまずまれです。

 二〇一三年三月に鎌倉市議会は、市長が教育長含みで提案をした教育委員同意案件を拒否しました。理由はここでは述べないではしょりますけれども。要するに、教育長の任命は実質的に首長によって行われており、教育委員会の委員たちは影響力を持っていないと言ってよいのであります。

 総合教育会議の設置は、確かに目新しい、そういう要素を持っているように思います。ただし、教育長ポストの影響力は、二〇〇〇年の第一次地方分権改革で大きく変わった、とりわけ都道府県において変わったというふうに私は見ております。

 従来、都道府県には出納長、市町村には収入役が置かれ、首長並びに副知事ないし助役とこの出納長、収入役ポストは三役というふうに呼ばれてきたのは皆様方御存じのとおりであります。ところが、出納長と収入役が廃止されました。結局、かわってトップマネジメントを担っているのは、今や教育長がその代役をしているというふうに言ってよろしい要素がかなり見られます。

 とりわけ、教育長の任命方法が、特に都道府県の場合に、従来は、文部大臣の事前の承認を得て教育委員会が選任するという方式をとってまいりましたけれども、二〇〇〇年以降は先ほどのような仕組みに変わっておりますので、それだけ政治的正当性が高まったというふうに言えるわけであります。

 ですから、ここにおいても、実質的な首長と教育長の関係が改めて法制度化しようということが明らかなのではないか、そう言えると存じます。

 内閣提出法案には、法案の固まる以前から、これでは首長の影響力が高まり、教育における政治的中立性が侵される、一部の教育行政学者やマスコミが指摘してきました。しかし、この議論は、私から見ますと、非常勤の委員から成る合議体としての教育委員会と、教育長を長とする教育委員会事務局、都道府県の場合でいえば教育庁、庁はエージェンシーの庁ですけれども、教育庁を区分できていないと言えます。

 私は、日本の教育行政の特徴を縦の行政系列というふうに呼んできました。つまり、文部科学省初等中等教育局、都道府県教育庁、事務局ですね、市町村教育委員会事務局、学校長という縦の事務局支配のシステムが制度化されています。そして教育行政の頂点にあるのは、閣僚であり、内閣統括下の行政機関です。現行制度のどこが政治的中立なのですか。この教育行政学者たちの批判はいささかピンぼけであるというふうに繰り返し言ってまいりました。

 実際、文部官僚と全国都道府県教育長協議会は、極めて密接な関係を続けております。また、都道府県教育庁は、県内の小中学校教員の人事権を持っているわけであります。さらに、都道府県教育庁の主として学校行政部門の職員は、その多くが県費負担教員であり、エリート教員と目されている人々です。ですから、逆に言えば、もう大分前のことになりますけれども、大分県教育委員会のような不祥事が、教育委員会というか大分県教育委員会事務局と言った方が正確ですけれども、起きるというふうに言えます。

 結局、日本の教育行政の一大特徴は、この縦の行政系列にあるわけでありまして、この改革こそ、教育と地域の自治を考える基本に置かれるべきだと言えます。

 ところで、都道府県、市町村ともに、首長から相対的に独立した行政委員会として教育委員会は必置とされてきました。だからこそ、事務局支配であり、文科省を頂点とした縦の行政系列ができ上がってきたのです。

 中央から自治体に至る教育の事務局支配を排して教育を地域に取り戻すためには、市民による選挙によって政治的代表性と正当性を有している首長のもとに教育行政を置くべきなのです。私は、かなり早い段階から、教育委員会を廃止して首長のもとに教育行政を置くべきだと一貫して述べてまいりました。

 廃止論ではありませんが、教育委員会の選択制論は、二〇〇〇年の第一次地方分権改革後に、全国市長会、全国町村会などからも提起され、二〇〇五年十二月に第二十八次地方制度調査会も、教育委員会の選択制を当時の小泉首相に答申しました。昨今もまた似たような答申がといいますか、意見が六団体から提出されております。教育委員会の廃止でなくとも、任意設置するならば、縦の行政系列はかなり揺らぐと言えます。

 民主党と日本維新の会による共同提案は、教育委員会の廃止を示し、首長、教育長のもとに教育行政を置こうとするのは、大いに評価されるべきだというふうに考えております。また、この法案では、教育監査委員会を設け、首長のもとの学校教育行政の事務の実施状況を評価、監視するとされています。

 ただし、一言申し上げたいのは、教育監査委員会がどれほど市民への広がりを持ったものとしてつくられるか、設置されるかにもよりますけれども、民主党、維新の会による法案には、橋下大阪市長による、私からいえばかなり独善的な教育行政を多くの市民が見ていますから、首長支配の強化という批判が生まれかねないというふうに言えるわけであります。

 要するに、教育行政を縦の行政系列から切り離し、首長のもとの総合行政の一環として実施することと並んで、問われているのは学校教育行政の徹底的な地域分権化だというふうに申し上げて、とりあえず私の話を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 次に、大森参考人にお願いいたします。

大森参考人 どうも、おはようございます。

 本日は、地方教育行政制度の改革のための二つの法案に関し私見を申し述べる機会を頂戴し、まことにありがとうございます。

 さて、今、大阪市という名前も挙がりましたですけれども、大阪の方では、条例に基づきまして、首長の関与とそれから責任の明確化という面で、ある意味、国に先行するようなことを、現行制度の枠内ではありますが、開始しているところでございます。

 具体的には、総合教育会議に近いような形で、首長と教育委員の協議の場を経て教育振興基本計画というものを策定するということが、条例に基づいて行われております。

 そこで、今、橋下市長という御発言もありましたですけれども、さぞ、教育委員、教育委員会というのは無意味な存在になっているんじゃないかというふうに、報道を通じてしかわからない全国の方はお思いだと思いますけれども、全くそれは事実と逆でございます。

 橋下市長が私どもに一貫して言ってきていることは、全国のほかの教育委員会がどうであろうが、ここは、法律どおり委員が合議制の機関としてあらゆる権限と責任を担ってくれということをずっと言ってきておりまして、私どもも、それに応えるべく、委員として任命されて以来やってきております。

 ただ、これは大変なことでございます。書類は夜中に読んで、それに基づいてメールを事務局に返すとか、会議は毎週ほぼ朝から晩までかかるというふうなことをやっております。ちょっと非常勤の枠を超えております。

 何が言いたいかというと、こういうことを全国の教育委員会に求めることというのは、ほぼ無理、制度論として無理ということです。よく、大所高所の議論だけすればいいとか言うんですけれども、それは行政を知らない人が言うことでございまして、現実問題は、重要なことというのは、神は細部に宿るといいますけれども、ディテールにありますので、きちんと読んで、きちんとチェックして、きちんと、場合によっては事務局ではなくてというか、結構多いんですが、我々自身が提案するというふうなことをやらないと、とてもじゃないけれども、責任は果たせません。

 ということなんですけれども、では、無理だと、そうなったら、合議制のこの委員会にかわって誰が法律上の権限と責任を担うべきかということでございますけれども、それは教育長であってはならない、首長でなきゃいけないということですね。なぜか。この改革の発端というのは、もう先ほど来話に出ていますけれども、これは大津市の教訓でございます。

 大津市の教訓というのは何か。いじめの事案に関する第三者委員会が報告書で何と言っているかということを皆さん思い出していただかなきゃいけないと思うんです。そこで言われていることは、教育委員会が「組織防衛に走った」とか「隠蔽的行為」とか、こういう言葉がつづられております。ここで言う教育委員会というのは何か。先ほどの新藤参考人のお話にかかわりますが、これは実は事務局でございます。事務局を率いるのは教育長でございます。教育長、事務局に問題があったわけです、隠蔽等々。

 そういう中で、今般の改革というのはそこから始まった議論のはずなのに、どうして教育長の権限と地位を強大化するという答えになるんでしょうか。問いの立てとして、問題はそういう教育長率いる事務局の隠蔽体質、そういう問題意識で始まったはずなのに、その答え、答案は教育長の強大化です。それはおかしいんじゃないですか。私は大学教員ですので言わせていただけば、そういう試験の問いにそういう答案を出す学生には、零点をつけるしかないと思います。

 では、法律上の建前、建前というのは重要ですからね、本来、日本は建前と本音が離れていることが多過ぎるんです。ですから、建前どおりの法律を次はつくっていただきたいという願いがあります。それは首長をおいてほかにない、教育長に渡すというわけにはいかないということです。

 その面では、先ほどの新藤参考人と同じでしょうか、民主と維新の会の議員各位が提出された法案においては、そこが、首長が執行機関で、要するに、教育長はその指揮監督を受ける補助機関ということで明確化されているということで、すっきりしております。

 他方、内閣提出法案につきましても、私ども大阪市教育委員会では、与党合意の前に要望書を事前に出しております。一定評価あるいは歓迎させていただいております。総合教育会議の仕組み、そこで首長が大綱ですか、策定するということが明定された法案でございますので、ある意味、大阪のやり方に近いということもございますし、そこは評価させていただきたいと思います。

 ただ、今申し上げましたように、新たな教育長は、これはすごいですね。「会務を総理し、」委員長になかった言葉まであるんです、会務を総理というふうなこと。形式的には合議制の委員会であり続けるという建前ですけれども、これは実質的には教育長が独任制の執行機関じゃないかというふうな、そういう存在になるんじゃないかというふうに危惧しているところでございます。

 具体的には、教育長を監督する人間が、あるいは組織がないんですね。要するに教育委員というのは、言ってみれば格下の同僚みたいな存在になっちまいますから、首長は、任命はできるかもしれないけれども、その後は糸の切れたたこみたいなものですから、めったなことで首にできませんので、もちろん、指揮監督権というのは首長にはないということです。

 ですから、内閣提出法案は一定評価しながらも、この教育長の強大化、これは何とかしなきゃいけないという、最低限、任命した首長の任期よりも超えて教育長の任期が続かないように、そういう規定というのを、今までの法律にはその手のものはなかったかもしれませんが、ぜひ検討いただきたいなというのが私の考えでございます。

 大阪で起こったことというのは、自慢できることばかりではございません。あの桜宮高校の暴力行為がございました。あそこで指摘されたことも、大津の話だけして大阪の話をしないわけにいきません。学校と教育委員会事務局の各段階において報告がとまっちゃうんですよ、体罰、暴力行為の。最終的に処分権限、人事権を持っているのは我々教育委員ですので、そこに上がってこないんです。そのことが弁護士さんのチームによって明らかにされました。

 ですから、そこです。体罰はだめですよと言ってもだめで、何か起こったら必ず報告させる、報告しないことの方が厳しい措置が待っているというふうな形にその後しております。

 さて、現在の教育行政の問題というのは、いじめや体罰とか、それの隠蔽の問題だけではございません。それも大事でございますけれども、最大の問題は、民意が反映されないばかりに、例えば、学力を向上させてほしいとか、静かな環境で勉強できるような学校にしてほしいというそういう切実な保護者や市民の願いというものよりも、先ほどの新藤参考人の話にも関連すると思うんですが、どちらかというと、エリート教員、あるいは、そういった教育界の出世している人たちのお互いに困らないような教育行政それから学校運営というものになりがちだということ、これが一番困るわけです。さらには、これは教育界、学校現場でのイノベーションというのを阻んでいるということが言えます。

 時間の方がもうかなりあれですのでちょっと先を急ぎまして、ただ、隠蔽だとか閉塞感があるというのは、現場は今のシステムで決してみんなハッピーじゃありません。ハッピーなのは多分一部の人たちだけなんですね。ですから、それを何とか変えてあげたいと思います。

 ただ、この問題は、教育界だけが特殊なんじゃないと思います。オリンパス事件を見ても、閉鎖的な組織というのは、大体、村社会化、共同体化して、本来のその組織目的よりも、自分のボスとか自分自身の保身に走っていくということですので、そこを変えていく、教育界を風通しのいいものにしていく。

 その際、コーポレートガバナンスというのを、近年の傾向としては執行と監督を分けるという傾向が出てきておりますけれども、それに倣えば、現在出ている二つの法案につきまして何か接点があるんじゃないかというふうに思います。つまり、失礼ながら、どちらの法案においても、いわゆる委員の役割というのが私は余りぴんとこないんです。

 先ほど、内閣提出法案については、教育長より格下の同僚と言いました。それから、民主、維新の法案につきましては、評価しかやらない割には何か大げさな仕組みで、行革の時代にちょっとどうかなということがございます。チェック役という役割は明確なんですけれども。そこで、むしろ評価役以上にグレードアップして、内閣提出法案だって権限がある委員会としているわけですから、監督権限にしたらどうですか。今までと同じ執行では役割を果たせませんよ。教育長の言うことにうんうんと言うしかないですよ。

 ですから、そこを接点に、なぜ私がそんなことを申し上げるかというと、とにかく今の時点で考え得る最良の制度をこの機会につくってほしいと願う者の一人だからでございます。そうしないと、この知識社会を生きる今の子供たち、未来の子供たちのため、また、日本の経済、政治が世界に地位を築いて向上させていく上でその基盤ですので、ぜひとも、これまでの違いを超えて審議を尽くされて、最善の制度設計で合意に到達されるように願っております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

小渕委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。工藤彰三君。

工藤委員 おはようございます。自由民主党の工藤彰三でございます。質問する機会をお与えいただきましたことに、まずもって感謝申し上げます。

 ただいま参考人の先生方から、見識高い、教育に関する貴重な御意見を賜りました。深く感銘を受けております。せっかくの機会でございますので、質問させていただきます。

 今回の地方教育行政、教育委員会制度の改革は、五十八年ぶりの抜本改正であります。現在の教育委員会制度は、教育委員会、教育委員長、教育長の間で責任の所在が不明確であり、かつ、地域住民の意見を十分に反映しておりません。私は、これらの問題を解決するためには制度の抜本的改正が必要であり、この法案の早期成立を望んでおります。

 貝ノ瀬先生から大変わかりやすい御意見を頂戴いたしましたが、先生のこれまでの現場での豊富な経験に基づいた現状認識と改革の考え方に私も同感であり、日本の教育再生に資するものと心強く思っております。

 今回、貝ノ瀬先生が参考人としてお越しになられるとお聞きし、先生が「月刊教職研修」に書かれた論文を読ませていただきました。その中で、民意を反映する重要な鍵を握るものとしてコミュニティースクールを提言されておられますが、私の母校、地元の船方小学校の敷地内に、先月、老人福祉会館、いわゆる社会福祉会館と児童館、そしてコミセン、いわゆる公民館、学区のものが同時開設されました。

 私はこの施設がコミュニティースクールとしての機能を果たせるのではないかと期待しておりますが、先生のコミュニティースクールについての御意見をまずは頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。

貝ノ瀬参考人 御質問ありがとうございます。

 コミュニティースクールの推進でございますが、現在、全国小中学校、約三万校ございますけれども、残念ながら、昨年の四月一日で千五百七十校なんです。ことしはもう少しふえて二千校近くになっていると思いますけれども、教育振興基本計画の中では五年間で三千校という数値目標を立てているわけでありますが、残念ながらまだ五%という状況でありますけれども、委員の地元でコミュニティースクールの拡大に努められているということ、大変敬意を表したいというふうに思います。

 コミュニティースクールは、これはいわば学校とは限りませんが、公民館でもよろしいんですけれども、地域の公的な施設等を活用しまして、そこをプラットホームにして地域の皆さん方がそこに集い、子供たちの問題や、またさらに地域の課題についてみんなが話し合って、そして、皆さん方がまたボランティアなりという形で教育支援を行うということで、いわばコミュニティーソリューション、つまり、地域の問題解決を自分たちが自主的、主体的に行っていくという中で、これは、子供たちも非常に幸せになって自己実現に資しますし、市民の皆さん自身もまた市民力を上げていくということになりますので、これは本当に学校力も上がっていきますので、大変にいい制度だというふうに思います。

 ですから、そういう意味では、委員の地元でもそうでございますけれども、全国にさらにそれが広がって、そして強い市民、つまり、主体的な、自立した、自分の頭で考えて、自分の言葉で発言し語れるようなそういうしっかりとした市民の皆さん方が、ちょっとおこがましいですけれども、育っていく中でこれは民主主義がまさに成熟していくという状況になってきますので、これはさまざまな面で効果があるというふうに思っておりますので、さらなるこの推進方を私の方からも逆にお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

工藤委員 貝ノ瀬先生、ありがとうございました。

 少し議論はずれるかもしれませんが、貝ノ瀬先生は「月刊教職研修」において土曜授業についても触れておられます。私の地元でも多くの地域住民の方から、土曜授業を再開させるべきであるという意見が寄せられております。先ほど述べました私の母校の施設も、土曜日に開館しております。

 土曜授業に関して先生の御意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 学校週五日制は、土日、学校が休みになったときに子供たちの居場所が確保できないということで、地域の皆さん方が何とかしなければならないという機運が高まってきたわけでありますが、その中で、ただ単に子供たちに居場所という消極的な意味じゃなくて、さらに、子供たちの健全育成、さらなる成長ということを考えますと、地域の皆さん方が、土曜日、日曜日、または場合によってはふだんのウイークデーの放課後とか、そういうところでボランティアまたは幾らかの有償ボランティアで子供たちの世話をしてくれるということの中で、例えば、学習についても補助的に支援をするということもあってもいいのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、子供たちが行く場所がないとか、いるところがない、また、コミュニケーションする場がないということじゃなくて、さらに、子供たちがふだん十の生活をしていれば、十二ぐらいのさまざまな刺激やいろいろな世界を提供するという機会は大いにあった方がいいと思いますので、授業ということだけに絞らないで、さまざまな多様な体験を用意してあげるということは非常に有益だろうというふうに思っております。

工藤委員 大変貴重な意見、ありがとうございました。

 土曜授業について、幼いころ僕たちは、大抵、土曜授業が当たり前の時代で育ちました。この土曜授業が廃止されてから、だんだん学力、体力、知力、そして国力というものが落ちてきたような気がしてなりません。いきなり四日とも土曜日を戻すということは申しませんが、順次戻していただきたいな、そんな思いでございます。

 きょうはせっかくでございます。先ほど、大森先生がはきはきと、また手厳しい御意見を述べられました。大阪の市長、そして、私は出身が名古屋であります。大森先生に一点お尋ねしたいんですが、権限を首長にしっかりと教育長の指名そして議会の同意において持たせるべきだという話をしっかりお話しされましたが、逆に言わせていただければ、全く権限から逃げる、そういう体質の名古屋市長、こういう方に実は教育長の任命、議会とのやりとり、これをしていいものかどうか、その辺を大森先生に伺いたいと思います。

大森参考人 ありがとうございます。

 これは、最終的には有権者が選ばれることですので。制度というのは、個別に、いい人が選ばれたら、よくない人が選ばれたらどうしようということでは代議制民主主義は成り立ちませんので。教育行政に限らず、そこは、首長というものに権限と責任を委ねることが適切かどうか、他のもの、他の職、他の機関に比べてより適切かどうかという相対的な比較の上で、私は適切ではないかというふうに思っております。

工藤委員 大森先生、突然で申しわけないです。ありがとうございます。

 名古屋市で、実は、先ほど貝ノ瀬先生にお尋ねしましたコミュニティースクールというものに対して、トワイライトスクールという放課後授業があります。また、学童保育もあるんですが、当時、名古屋市長は、そのトワイライトスクールの選定に際し、要は、自分の知っているNPOを初め業者を入れようとして、大変議会でもめました。そのときの責任追及した質問者が私であります。

 大変なこの方に対して権限というものを持たせていいのか。そして、今、大森先生がおっしゃいました。議会承認というのは、多分、現在のこの名古屋市長と名古屋市議会においては、承認ということは議会で全くあり得ないのではないかと考えております。

 この新教育長制度が今議論されておりますけれども、これが一行政区、政令都市において全く機能しないという場合においてはどのようになるのか、お考えを頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。大森先生、お願いいたします。

大森参考人 教育長が選任されない、これは、現行制度においても、先ほど来お話しありましたけれども、実際の選任、任命のあれは実態的にはそんなに変わらないんじゃないかというふうなお話もありましたが、御質問の点についてはまさにそうだと思います。

 現行制度においても、教育長を予定して教育委員を議会に対して首長の方から提案するということでございますので、今の制度でも、あるいはこの二つの法案がどうなるにせよ、そこは結局、教育行政が停滞してもいいのかということの、その責任を両者が負っているわけです、首長も、また提案を受ける議会の側も。そこで延々と合意が成立しないということはどういうことなんだと。

 これは、教育長の任命にかかわることだけじゃなくて、あるいは教育行政に限らず、共通するそこは地方自治制度の根本的なところですので、そこにある種の良識が働くということを予定されているのではないでしょうか、この二元代表制は。

 以上です。

工藤委員 突然済みません、無理な質問を申し上げまして。ありがとうございます。

 十五分という限られた時間でございますので、さらに質問を続けますと答弁がなくなると思います。

 私は、選挙に出馬する前から、教育制度のあり方、また、熱意を持った教員の皆さんがしっかりと子供たちを教育して育んでいただいて、地域で育て上げる、これが大切だということを、毎朝毎夕街頭に立ち、訴えてまいりました。

 今回、この文部科学委員の一人として質問、発言できることを本当に誇りに思っておりますが、やはり、先ほどもお話しありました、いじめというものは絶対なくさなければいけません。私たちの小さなころ、近所の遊び場もありました。缶蹴りや鬼ごっこ、さまざまな遊び場がありましたけれども、今のお子さんたちには遊ぶ場というものもありません。教育の質を上げなければいけないと強く考えている一人でございます。

 皆様方、こういう言葉があります。子供たちを一人の成人に育て上げるには千人の大人たちの目や育みや声かけが必要だということを、お寺の住職から何度も教えられてまいりました。今、私たちの近隣で、自分たちの子供が近所のおじさん、おばさん、そして年配の方と触れる機会というのは実際何人いるんでしょうか。そんな思いで、今回、参考人の先生方の意見を聞かせていただきました。

 私も、今回の法案改正や、そして、今の現状におきますこの日本の教育制度についてしっかりと議論できる立場におりますので、これからも先輩、同僚の皆さんとしっかりと闊達な意見を述べさせていただくことをここにお誓い申し上げまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 きょうは、貝ノ瀬参考人、新藤参考人、また大森参考人、本当にお忙しい中、当委員会においでをいただきましたこと、私も心から感謝を申し上げたいと思います。

 それで、まず一点目は、今回、先ほど来ありましたように、大津のいじめの事件を契機としながら、これまでも指摘をされてきた現在の地方教育行政の問題点、すなわち、権限と責任の所在というものが最終的にどこにあるんだということをしっかり明確にしようということが、私どもは考えていかなければならないまず大きなポイントということで、我々は、これを選挙で選ばれる首長に一元化をいたしました。

 政府案とそして我々の案と、どこに権限を持っていくのがいいのかという議論はいろいろあろうかと思います。しかし、少なくとも、この権限を明確にしていく、最終的な責任の所在をしっかりと一元化していくという点においては、この両案の比較あるいは評価、どちらがその所在が明らかになっているのかということについてのお三方の率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。順番に貝ノ瀬参考人からお願いします。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 教育の権限や責任を明確にするということは、本当にこれは大事な問題で、これについては、政府案の方は教育委員会を執行機関ということで位置づけておりますが、同時に、首長については、これは今までも非常に重い存在でいらっしゃいますので、民意を反映された方でございますので、これは、一定のやはりきちんとした関与をしていただいて責任を持ってもらうということも大事だということで位置づけられているわけでありますが、何といっても、教育の政治的中立性、継続性、安定性ということを考えますと、今までの経験から学んでも、教育委員会を執行機関として残していくということで、教育行政の責任は教育長にあるとしても、合議制の教育委員会を執行機関として残していくということは、やはり私は適切だろうというふうに思っています。

 だからといって、従来のような、首長が教育のらち外にあるということではなくて、首長自身は予算権も人事権もしっかりと持っている存在でありますし、総合行政を進めるという立場でもありますので、それはやはり大事な存在として、総合教育会議でその会議を主宰していただくということでございますので、そういう意味では、非常にバランスのとれた政府案になっているというふうに考えております。

 首長が執行機関ということになりまして、また、教育長がいわば直に選ばれるということになりますと、これは率直に申し上げて、教育の政治的中立性についてはやはり危惧を抱かざるを得ないということでございます。

 私も過去に幾つかの自治体の教育行政を担当しましたけれども、その中で、首長さんが教育に対していろいろと日常的に指示をなさるという経験もしてまいりましたし、また、非常に困った状況も経験してまいりました。

 そこで、首長さんに対する一定の歯どめといいますか、教育問題については、教科書の採択とか、さまざま教育内容にかかわることがございますので、そこについてはやはりきちんと教育委員会で責任を持って執行する。そしてまた、総合教育会議を主宰するのが首長であったとしても、執行するのは教育委員会ということでございますので、その辺は非常にバランスのとれた案になっているというふうに私は受けとめております。

 以上でございます。

新藤参考人 お答え申し上げます。

 政府案について言うと、責任と権限というのは、私は、教育長にも首長にも明確ではないのではないかと。

 先ほど申し上げましたように、今回の議論で、都道府県教育委員会、それからその教育委員会の事務局について余り議論がされていないんですけれども、ただ、実際問題として言えば、教員の人事権は、都道府県教育委員会、実際には事務局にある。先ほど申し上げましたように、実際の教育行政を支配しているのは、教育庁と言われる事務局の学校教育部門、これは、県費負担教員の中でもいわゆるエリートと目される先生たちであるわけでありまして、そういう意味でいうと、この政府案は、まさに、文部科学省から下降するシステムがより強化されてしまうというふうに私は見ております。

 そして、民主党と日本維新の会の共同提案で、教育委員会を廃止して首長のもとに置く、これはある意味でもう当然の話でありまして、なぜ教育行政だけ、行政委員会としての教育委員会に分離しておくのか。

 戦後、実は、一般行政からの文部行政の分離独立ということが戦後の教育改革の大きいドグマにされました、というかテーゼにされました。いまだもって、内務省は解体されたけれども文部省がなぜ生き残れたのか、実に不思議な話でありまして、学問的にも解明されておりません。ただ、日本側には中央教育委員会プラス学芸省というような構想すらあったのですが、GHQは、文部省は残すというこの一言で終わっているわけであります。

 そういうときに、特に旧文部官僚たちが、その生き残りのために、一般行政から教育行政の分離独立ということを盛んに言います。それがずっと続いてきちゃっている。

 ただ、何で教育行政だけ別系統の組織に置かねばならないのか。しかも、現代の子供たちというのは、まさに、福祉行政あるいは保健行政、都市計画行政等々の町づくり全体から離れたところで子供たちの教育はできないのですね。そういう意味でいうと、私は、ぜひとも教育委員会というものをなくして、首長のもとに置きなさいというふうに言いたい。

 もしこれが政治的云々かんぬん言うならば、ほかの福祉行政についても都市計画行政にも言いなさいよと私言いたいんです、そういうことを言う人たちに。そっちは何も言わないで、教育だけそういうことを言う。そうではない。総合的な行政をやることが自治体の最大の目的です、あるいは使命です。

 そういう意味で、こちらの方がはるかに権限と責任は明確であると申し上げておきたいと思います。

 以上です。

大森参考人 お尋ねの点だけにお答えすれば、明確化ということでいえばもう明らかで、民主、維新案の方が、はるかに権限と責任が明確にされるものだというふうに思っております。

 余計な一言をつけ加えますと、内閣提出法案につきましては、民意の反映という点では現行制度よりも一歩前進、その考え方が制度上明らかにされているという点では一歩前進。ただし、総合教育会議における協議を経て首長が定めるところの大綱、これがどの程度のものになるのか、これが大切だと思っています。

 要するに、政策的な基本方針は首長が定める大綱で定まるんだということになれば、これは、民意の反映という点では民主、維新案に少しというかかなり近づいていくんだと思うんですけれども、そこすらわからないというところの不明確さというのが、やはりちょっと気になるというところでございます。

笠委員 ありがとうございます。

 大森参考人の方にお伺いをしたいんですが、先ほど、新しい教育長がこれはもう本当に独任の相当な権限を持っていくんだということで、首長に対する政治的な中立性からの一定の制限をかけていこうとかというのは、よくこれは議論になるんですが、私がやはりこの政府案で懸念しているのは、まさにこの新教育長が本当に大きな力を持つわけですね、最終的には。そのときに、ここにやはり歯どめをかけていくためには、その罷免をどうしていくのか、あるいは、選挙で選ばれる首長と、先ほど、任期はそれを超えていかないというような、そちらからの何らかの検討をやはり加えるべきであるというふうに私も思っておりますけれども、その点について大森参考人にさらにお伺いをしたいと思います。

大森参考人 ありがとうございます。

 これは、私が当初から、この地方教育行政制度の改革の議論が始まってから非常に違和感を持っていたことでございまして、現実の学校の現場、教育行政の現場で何が問題かということをわからない人が存在しない問題を大問題に仕立てて、それが証拠に、首長の介入の典型のように言われる大阪市では、いわゆる政治的中立性の問題なんて、そんなことは議論じゃないです。教育政策そのものをめぐる議論なんですよ。つまり、学力調査結果は公表すべきか否か、学校選択制を導入すべきか否か、それは中立性の問題じゃないでしょう。歴史認識だとか安保だとか、それをどう教えるかとか、そんな話じゃないでしょう。

 そういうことを言う方々は、先ほど来、大津にしろ、あるいは、非常に残念ながら私どもが責任を感じている大阪の桜宮高校の事案にしろ、現実の現場の問題、それは隠蔽もあり、また、イノベーションが起こらないような、閉塞している、先生方は何か元気がない。悪いけれども、一部の出世している先生方だけ、先ほど縦系列の話がありましたが、まさにそのとおりで、文科省、都道府県教委事務局、市町村教委事務局、それから、学校長もエリート組は一部でございますので、そういった方だけに都合のいいシステムで一体日本の教育はどうなっていくのかということ、それが問題なのに、首長が介入する、政治的中立だとか、これはつまり今の縦系列にとっては、教育長の権限強大化、地位強大化というのは非常に都合のいい話でございまして、ですから、内閣提出法案について私が一番懸念しているのがその点でございます。

 したがいまして、当初から文科省の方は教育長、教育長というふうに誘導しているのがどうも見え見えでございましたので、自民党の政治家の先生方も含めて、だまされないようにしっかりしていただきたいなと願っております。

 教育長を独任制の機関にしたかったんだというふうに聞いています。執行機関、独任制じゃ無理だということで現在のような姿になっちゃっているというのが恐らく真相だろうというふうに思っておりますので、あるいは、議員の先生方はそんなのは公然の秘密でみんなは御存じなのかもしれませんけれども、これはちょっと非常にここをきちんとしないと、官僚支配、官僚の中には、教員出身のこの教育行政では有力な官僚、そうなりますけれども、そうなっちゃうという危惧を持っております。

笠委員 ありがとうございます。

 時間が参りますので、最後に貝ノ瀬参考人に。

 私もコミュニティースクールを推進する立場でこれまで取り組んでまいりました。ただ、残念ながら、先ほどおっしゃったように、三千校すらまだいかないという状況です。

 私どもの法案の中には、附則で、学校運営協議会、現行のコミュニティースクールの小中学校必置へ向けた検討事項を盛り込ませていただきました。やはり何か法律の中で縛っていかないと、明確にしていかないと、やはり待っていたら広がっていかないという部分があろうかと思うんです。

 ですから、その点、これは政府案の中では、本来は地域住民の意向を十分反映するということを考えれば、学校運営協議会をどうしていくのかということを、私は半歩でも一歩でも前に出てほしかった。しかし、そこのところが検討されていないということは非常に残念だと思っておりますが、その点はいかがでしょうか。

貝ノ瀬参考人 委員の皆さん方の御提案の法案には附則にコミュニティースクールについて位置づけがございますので、これは私は一定の評価をしたいというふうに思っておりますが、ただ、全体として、それがいわば教育委員会制度にどうかかわっていくのかということについては、ちょっとわかりにくいというふうに思います。

 例えば、全ての学校が学校理事会制度なりコミュニティースクールになっているということであれば、そういうことで議論を進めるということであればまた違った展開があるかもしれませんが、そういうふうに読めませんので、これはやはり、なかなかちょっと全体としては整合性が難しいなという印象です。

 ただ、少なくともコミュニティースクールについては、やはりこれは、これからの時代を切り開いていく非常に重要なツールだというふうに私は受けとめておりますので、やはり何らかの形でこれが教育委員さんの人選等にでも反映されていけば、これはすばらしいことだなというふうには受けとめております。

 以上でございます。

笠委員 時間が参りましたので終わらせていただきます。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 日本維新の会の鈴木望と申します。

 貝ノ瀬参考人、新藤参考人、大森参考人のお三方の参考人の先生方には、お忙しいところ、貴重な御意見を陳述していただきまして、まことにありがとうございました。

 ぜひ、六十年ぶりの教育行政改革の大改革に先生方の御意見を生かすような形でもって審議を進めさせていただければというふうに思っているところでございます。

 私も地方の首長をしておりまして、教育委員会の形骸化ということについては身をもって実感をしておりました。そのことについては、またこの文科委員会の審議の中でもいろいろと自分の考えを述べさせていただきたいというふうに思っているところでございますけれども、特に貝ノ瀬参考人、教育委員会の委員長でもあられたし教育長でもあられたということで、その実情を詳しく述べていただきまして、ありがとうございました。

 今、笠委員の方から、教育行政における権限と責任を明確化するということについてお三方にお尋ねがございました。それぞれ御意見を伺ったところでありますが、それと裏腹の格好ではありますけれども、一方で、教育における政治的な中立性をいかに保つのかというのも、私ども、大きな論点ではないのかなというふうに思っております。

 今回の二つの改革案、そんなものを念頭に置いていただきまして、教育の政治的な中立性をどう担保していくのかについてお三方の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 やはり政治的中立性、継続性、安定性は、これは非常に重要でございます。おっしゃるとおりでございます。

 政府案の方は、これは教育委員会を従来どおり執行機関とするということでございまして、ここが執行機関として存在し、教育の中身についてしっかりと自分たちで議論して決定していく、そして政治的中立性については、事務局を指揮監督していくということでございますので、そこがしっかり機能することによって担保され得るというふうに思っております。

 一方で、もう一つの案の、首長、そして直接任命され、また場合によっては罷免もされるというそういう教育長の存在という中で教育委員会がないとすれば、これはやはり時の首長の意向が直線的に現場に反映されていくということになりますので、これは、ただ単に民意を体現しているからというふうなことで別に白紙委任をしているわけじゃありませんので、その中で偏った決定が行われていくというおそれは十分にあり得るわけで、そういう意味では、非常にこの政治的中立性ということについては、危惧を禁じ得ないというところでございます。

 以上でございます。

新藤参考人 教育における政治的中立性と、それから、教育行政の政治的中立性なるものを区分しないでぐちゃぐちゃに議論がされている傾向があると思います。

 教育における政治的中立性というのは、極端なことを言えば、教員人事とそれから教科書、これに政党政治は介入しないことです。

 それから、もう一つ挙げるならば、特に社会科等あるいは国語等に要請される話なんですけれども、教える方は自由な人格ですから、彼の解釈が当然教室で示されて当たり前だと思うんです。何年に何々内閣ができて、どういう法律をつくって何年にという年表みたいな教え方をしたって誰もわからない、あるいは興味を呼ばない。そういうことに寛容でなければならない。この二つだと思うんです。

 それから、教育行政の政治的中立性というのは、かなり高度のレベルから議論をせねばならない点があるんですけれども、基本的に言えば、教育行政の政治的中立性が行政委員会だから確保されるんだということがよく言われてきたわけでありまして、あるいは、現行の地方教育行政法にも、同一政党に二人以上の委員が所属している場合には首にするという規定すら置かれているわけです。

 ただ、これについて言えば、また同じことを繰り返させていただきますけれども、教育行政の政治的中立性に反する云々で議論があるけれども、これの頂点は何なんですかという話なんです。頂点は閣僚じゃないですか、あるいは内閣じゃないですか。戦後、日本の行政調査部がまとめたように、中央にこそ中央教育委員会をつくりなさいよと私は何度も言ってまいりました。それがあって初めて、教育行政の政治的中立性が確保されてくると思います。

 ただ、教育の政治的中立性というのは先ほどの二点なのであって、これは、我々が法律で明確にするのと同時に、それが行われているかどうかを監視していくということでかなりの程度確保できるのではないか、そう思っております。

大森参考人 この政治的中立性という言葉の定義をまずはっきりさせるべきだと思うんです。

 その定義としては、多分、今の新藤参考人のお話に私の考えは近いんだと思うんですけれども、安全保障をどう教えるかとか、歴史認識についてどう教えるかとか、まさに政治的な内容を党派性を持たない教育にするということでございまして、でも、現実にこの改革論議の中で政治的中立性はどういう文脈で使われてきたかというと、要するに、教育政策に首長は口出すな、危ないからという議論で使われていたんですね。

 ですから、先ほど私は申し上げましたけれども、学力調査結果公表だとか学校選択制だとか、まさにどういう教育政策がいいのか悪いのかということ、これに首長は口出すな、つまり教育委員会事務局に任せておけというのは、政策は官僚機構に任せておけ、民意の反映なんか要らぬ、こういうことですよ。民意の反映は国レベルでやっているから地方はいい、こういう考えに一番都合のいい考えなんですね、この政治的中立性という議論は。

 先ほど来ありますから繰り返しませんけれども、国において求められていない政治的中立性を、何で地方だけ求めるんですか。現実問題として、教育内容を、政治的なもの、党派性を持つ持たないは、地方ではそう簡単にできません。学習指導要領、教科書、これは国レベルでできちゃっているでしょう。何を言っているのか、私にとっては全くよくわからないということですね。

 それから、細かいことを申しますと、教員人事についても、では、今の制度で大丈夫かというと、全国あちこちいろいろなところで、うわさレベルでは、口ききだとかいろいろなことを聞くわけですよ。個々の人事に首長にしろ議員にしろ介入すべきではないけれども、どういうルールで人事をやるかというのは、官僚機構に任せるんじゃなくて、行政の責任を担っている人間、今は教育委員会ですけれども、それをちゃんと果たすべき。

 一つだけ例を申し上げますと、大阪市では、校長の定期異動人事、この間、権限行使しました。官僚機構に任せておくと、教育政策の重要な一手段が人事だという認識すらない。我々がやったことは、学力底辺校に対して評価の高い校長を配置するということです。それすらやっていないんですよ、はっきり言えば。幾ら予算をつぎ込んだって、校長先生が「ん」と言うのでは、学校はよくなりませんよ。

 そんなことすらやっていない人たちに、ひたすら民意なしに任せればいい、教育長に任せればいい、それはどうかしているんじゃないですかね、私に言わせれば。

 以上です。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 今回の議論の中核的部分が、教育における政治的中立性、また、教育行政における政治的中立性の論点だろうというふうに思います。それぞれ御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 あと一点、大森参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 大森参考人は、実際、教育現場と直接かかわりを持たれてさまざまな活動をされているわけでありますけれども、学校の管理責任を問われるのは言うまでもなく教育委員会でありますけれども、その責任に比して手段が、指導助言、援助が中心になり、いわゆる指導行政ということでやられているわけでございます。その点について相当歯がゆい思いをなされているのではないのかと思われます。

 そこで、この指導行政というものの問題点について、実際の経験などを交えてお話をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

大森参考人 ありがとうございます。

 先ほど桜宮高校のお話をちょこっとしましたけれども、暴力行為、体罰の報告が上がってこないということのほかに、こういうことがあったんですね。実は、お子さんが亡くなるような悲劇に至らない、チャンスと言うと変なんですが、機会が数回ありました。その最後の機会というのが、公益通報制度に基づいて公益通報があったということですけれども、通報を受けて調査が行われました。

 もちろん、我々教育委員は何も知りません。よかれあしかれ、公益通報を処理する仕組みはそういうものですので。私どもというか、私はいなかったんですが、その前任の委員たちも知らないんですけれども、どういう処理が行われたかというと、暴力を振るう教師がいるらしいというか、いるということでの通報で、その際の調査というのが、学校において教員にしか聞き取りを行っていないんですよ。それで、校長に対して当時の教育委員会事務局の職員、指導主事といいますけれども、指導主事の方から、生徒の聞き取りもやってくださいと話したんです。そうしたら当時の校長は何と言ったか。声を荒げて拒否したんです。それで指導主事は引き下がっちゃった。

 これは、弁護士さんの外部監察チームの報告書にあることを、もう公表されていますので何ら秘密がない話としてしていますけれども、引き下がっちゃった背景、要因としては、校長が教員仲間のうちの先輩、指導主事の方が後輩、かつて同じ学校に勤めていたこともあったというふうな、言葉は悪いですけれども、そういうなれ合いというか、けじめのない行政と学校の関係というのが、そういうことじゃいかぬのだと思うんですよ。

 問題は、その引き下がっちゃったそのときのやりとり、生徒の聞き取りしてください、声を荒げて拒否した、このやりとりは何だったんですかと。職務命令だとか指示なら、拒否したらそれは懲戒処分の検討対象になりますから。では、指導助言だったんですか、あるいは指導主事の個人的なアドバイスだったんでしょうか。全くそういうことが明確でない形で、残念ながらこれは、大阪に限らず、日本全国今だってそうだと思います。その教育委員会の職員と校長のやりとりは一体何なのかと。

 そこを明確にすべきだということで、大阪市の方では、指示命令すべきことはきちんと指示命令する、これは教育委員会規則の方で定めました。例えば危機管理に類すること、それから、大阪市としての教育政策を教育振興基本計画に定めていますから、その政策はやってくださいというときには、これは、やるのもやらないのも学校の自由だと言われちゃ困りますから、やってもらいます。他方で、それ以外のことは、特別な事情がなければ任せる。

 ですから、学校の自主性、自律性といったって、大体、教育委員会が何と考えているか、何と言うかというのを、顔色を見ながら、特に出世したい人たちはやっているのが現実でございますので、そうじゃなくて、校長が決めていいんだということはどの範囲かということを明確化し、行政として指示すべきことはきちんと指示する、そういうふうにするということが必要でございます、危機管理に限らず、体罰、暴力行為の問題に限らず。ぜひ全国もそういうふうになってほしいなと思っています。

 残念ながら、今般の改革ではそこは焦点になっていないと認識していますが、引き続き、教育委員会と学校の関係というのが非常に重要ですので、単に首長と教育委員会の関係とか、そこだけでとどまっていたら日本の教育はよくならないと思います。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 質問時間が終わりましたので終わりたいと思いますが、お三方の参考人には、本当にありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 まず、きょう三人の参考人の先生方に大変お忙しい中お越しをいただきましたことを、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。

 それで、まず最初に、これは先ほど来の先生方の最初のお話、それから、ただいまの質問の中にも幾つか出ておりましたが、改めて三人の参考人の先生方にお聞きしたいと思うんです。

 それは何かというと、いじめの問題やあるいは体罰等の問題で、子供の置かれている環境は非常に厳しくなってきているということ、そして、今回もそれが一つのきっかけになって制度改正の議論になっていっていますが、この教育問題における最終的な責任者は誰なのかということを、これは難しい問題ですけれども、お伺いしたい。

 例えば、教育長だと言う方もいらっしゃれば、いやいや、教育委員長だ、そうではなくてやはり首長なんだと言う方もいらっしゃいます。そうではないという御意見もあるやに聞いていますけれども、このことについてまずお伺いしたいと思いますが、時間の関係もありますので、できるだけ簡潔にお答えいただければと思います。

貝ノ瀬参考人 現行の教育委員会制度におきましては、教育委員長が教育委員会を代表しておりますので、最終責任というふうな言い方をしてもいいかと思いますが、今度の政府案につきましては、教育委員長と教育長を一体化したということで、教育長が教育行政の責任者というふうに明確に位置づけたということで、明確になったと思います。

 以上でございます。

新藤参考人 なかなか難しい問題だと思いますけれども、現行制度でいえば、教育委員会が実質的に機能しているかどうかは別にしておいても、教育委員会の委員長ということになりますね。それが、要するに、市民の代表機関であり自治体を統括している首長の権限から外れているところに最大の問題があるということですね。

 今回の政府案では、依然としてこの問題は解決されているというふうには私は思いません。そして、民主党と維新の会の法案で、教育委員会を廃止して首長だということになれば、それは、この問題も、いろいろな自治体で事件が起きるたびに、やれ福祉部長だ、都市計画部長だという話になりますけれども、最終的にはまさに首長の責任ということになると言ってよろしいと思います。

 以上です。

大森参考人 ありがとうございます。

 現行制度のもとでは、教育委員長でもなければ教育長でもなく、合議制の教育委員会でございます。これはもう法律上明らかでございます。委員長は、教育委員会の決定において少数派になることはございます。

 現に、大阪市においては、私の前任、余計なことを言わない方がいいかもしれません、前任者のときにはよくございまして、これはもうマスコミ報道されているから申し上げますけれども、桜宮高校の事案の後に入試をどうするかというときに、これは、市長は中止ということで主張しておりましたが、私どもとしては、実際に、学校の状況、つまり生徒や教職員の状況を見て、それから中学生、受験生のことも考えて、入試は行うけれども、とてもじゃないけれども、今の体育科のままやっては、学校の立て直し、再生、今のカルチャーを変えていくということでは非常にまずいということで、普通科にして、ただし、生徒の定員枠はそのまま設けて入試を実施したわけです。それに対してそのときの委員長は何と言ったか。その決定後の記者会見においてすら、看板のすげかえというふうなことを申したわけですね。

 これは私の個人的見解ですが、教育委員会は合議制の機関ですから、各委員が個人の自由な意見を持って述べ合うのはいいんですが、一旦決定したことについての信頼性を揺るがすようなことは、さすがに委員長の職にある者は記者会見の場で言うべきではない、私だったら言わないとは思いましたけれども、今お話ししている理由は、委員長は決して、そういう意味で最終責任者、最高決定権者ではないので、あくまで現行法制上は委員会、合議制の委員会ということであるという例としてお話ししました。

 将来の制度については、二つの法案に応じて変わってくるということでございますが、首長が執行機関になる場合はもうこれは明らか。他方で、内閣提出法案のようになった場合は、先ほど来ちょっと私が批判しておりましたが、教育長というのが強大化しますので、これは形式的には依然合議制教育委員会かもしらぬけれども、さらに、実質的には教育長が独任制みたいに責任を負ってしかるべき法案のたてつけかななんて思いながら読ませていただきました。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。

 それでは次に、教育委員の人選についてお伺いしたいと思いますが、これは、先ほど貝ノ瀬先生がコミュニティースクールのお話に触れていただきましたので、貝ノ瀬先生にお聞かせいただきたいと思います。

 現行法でも、教育委員の人選は「人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。」こうあります。

 そこで、いろいろ現場的にもさまざまな声があるのは、どうしてもやはり教育委員の人選において教育関係者が過半を占めるという意見もございまして、むしろそれよりは、コミュニティースクールとか地域の学校を支援するようなちゃんとした任意団体の代表の方が入ることによって、より民意が反映されるんじゃないだろうか、こういう声もございます。

 私もそうかなと思うんですけれども、一つは、民意が代表されるということが望まれるところもあると思うんですけれども、特に、コミュニティースクール等の代表の方が委員になることについての意義について、改めてお伺いしたいと思います。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。貝ノ瀬でございます。

 まさに、委員御指摘のように、教育委員の人選につきましては、教育関係者のみでということではなくて、地域の教育問題または地域活動等で積極的に活躍している方の代表がその中に人選として入るべきだというふうに思います。教育再生実行会議の方の提言の中にも、コミュニティースクール、また学校支援地域本部等で活躍していらっしゃる方とかスポーツアスリートというふうな面で、多様な市民の中から人選すべきだということでございます。

 特に、コミュニティースクールの場合は、学校支援の活動、そして学校をプラットホームとして子供たちの教育の問題について直接学校側と話し合いをしながら問題解決に汗を流している方々ですので、そういう方々が入るということは、教育委員としての立場が、当事者意識を持ってその仕事をしっかり全うできるということで、大変意味のあることだろうというふうに思います。

 ただ、いかんせん全国まだまだコミュニティースクールが十分に普及しておりませんので、そこは、学校支援地域本部とか、またはそれにかわる地域活動、そして学校支援をしている方々の代表が担っていくということは大変望ましいことだというふうに受けとめております。

 以上でございます。

稲津委員 それで、今度は、教育委員の皆さんの研修というかスキルアップというか、もともとそういうすばらしい方が人選されることが一番望ましいわけでございますけれども、それと同時に、やはりさまざまな諸問題に対応していくためにも、当然これは、先ほど教育長の自己研さんという話もありましたが、教育委員の研さんも非常に大事なことだと思っています。

 そこで、これも貝ノ瀬先生にお伺いしますけれども、現状を見たときに、そういった教育委員の研修というのは、実態としてどうお思いなのか。それから、先ほど、教育長の自己研さんは必要だと。これはある意味、努力義務を課すべきじゃないかというお話がありまして、なるほどと思ってお伺いしていたんですけれども、この辺について少し具体的に、先ほどは項目だけのお話でしたので、お聞かせいただければと思います。

貝ノ瀬参考人 やはり、子供たちの学びというものをしっかりとつくっていく、そして学校の質を上げていくということにかかわります教育関係者は、常に学び続ける存在であってほしいというふうに思います。そういう意味では、教育長はもちろんですが、教育委員もやはり学び続ける。別に仕事を持って、非常勤ではあったとしても、みずから主体的に学び、自分自身を向上させていくということであればこそ、子供たちも育っていきますでしょうし、学校の質も上がっていきますし、生涯学習団体の皆さん方も、その背中を見ながら頑張っていくだろうと思います。

 ただ、現状は、この教育長についての研修はなかなか整備されていないというのが現状です。また、教育委員さんは、各地区ごとに定期的に集まって、役員を決めて、研修的なことをやっておりますが、これは研修的なといいますか、もっと積極的な研修体系を組んでいく必要があろうと思います。

 国の方も、生涯学習局の方で世話をして年に何回かやっておりますけれども、もっと委員さんたちのニーズも受けとめながら、しっかりとした、学び続ける教育長、学び続ける教育委員ということになっていくようになれば、これは本当にすばらしいことだろうというふうに思います。

 以上でございます。

稲津委員 時間の関係でもう一問だけにさせていただきたいと思いますが、大変恐縮です、これも貝ノ瀬参考人にお伺いします。

 どのような制度改正であっても、最も大事なことの一つの要因として、やはり教育行政においては、政治的中立性、継続性、安定性、これを担保していくことが仕組みとして重要ではないかというふうに思っておりますが、このことについて、例えばどのようなことに留意すべきなのか。それは、担保するためにこういうような仕組みが必要だ、あるいは、こういうような考え方を維持していかなければいけないとか、その点についてお伺いしたいと思います。

貝ノ瀬参考人 政治的中立性ということは、教育行政におきまして、現在、教育委員会の方では、教育の政策の大綱も決め、また具体的な教育内容、例えば教科書の採択ですとか、それから教員の人事ですとか、それから国旗・国歌等の服務関係というふうなことも含めて、さまざま議論して決定しているわけでありますが、そういうことについて、合議制でしっかりと、公正な立場でやはり議論されるべきだろうというふうに思います。

 子供たちの成長ということを考えますと、短絡的に目先の判断ではなくて、長期的な展望を持って、人格形成ということを考えて、単に政治状況に左右されないような、しっかりした公正な見方、考え方で判断していくべきだというふうに思います。そういう意味では、合議制というのはやはり正しいあり方だろうというふうに思っております。

 今度、首長は今でも予算権、人事権を持っておりますし、総合行政をする、民意を代表しているトップでありますので、そういう方が教育に一定の関与をするというのは、これはもう当然だろうというふうに思います。その関与の仕方が、やはり今回の仕組みのように、総合教育会議というような形で大綱について決定する権限を持つということ、これは正しいことだろうというふうに思っています。

 ただ、例えば、ではそのほかのことについては何ら議論ができないのかというふうなことではなくて、会議の中で、この運営状況については、教育委員さんも入っていますし教育長も入るわけですので、また、場合によっては有識者の皆さんも入れていいわけですので、そこでしっかりと議論をして、政治的中立性ということもしっかり念頭に置いた上で、市民の皆さん方に不安を抱かせないような、そういうしっかりしたルールを決めて会議を運営していく。

 しかしながら、教育の中身、例えば教員の人事等、教科書の採択等については、教育委員会でしっかり議論をして決めていくということが、やはり政治的中立性を担保するということでは非常に大事だと思います。

 私の過去の経験でも、これは余り具体的には申し上げられませんが、首長さんがその校長人事についてこういう人をぜひとか、そういうことは現実にあるわけでございます。ですから、それはお気持ちはわからないことはありませんけれども、しかし、教育については教育委員会にお任せいただくということでやってまいりました。

 ぜひその点については、戦後の教育制度の根本でございますので、これはやはり維持されてしかるべきだというふうに思っております。

 以上でございます。

稲津委員 時間が来ましたので、三人の参考人の先生に厚く御礼申し上げまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみと申します。

 きょうは三人の参考人の先生方、お運びいただき、また十分余りのお時間で説明をいただき、そして質疑の中での御答弁をいただき、かなり参考になっておりますので、改めて敬意と感謝を申し上げます。

 それで、幾つか細かい質問が続いたので恐縮なんですが、また、大森参考人からは神は細部に宿るというお話がございましたが、これから三人平等にちょっと御答弁いただければと思います。

 ちょっと大上段に構えまして、そもそも論として、私が尊敬する村上誠一郎という衆議院議員がいらっしゃるんですけれども、あの方の書物に、国力は、国力イコール人口掛ける能力プラス資源、天然資源という意味ですけれども、要は、一人一人の子供たちの能力が上がることが大切で、これも私の考えとしては、金太郎あめではなくて、個性を発揮する大いなる能力を持った一人一人ということが日本の国力を上げることであると私はちょっと感じておるんです。

 そんな意味から、大上段でお伺いすると、文部行政における日本のあり方として、やはり中央がまとまって国家として教育の中身であるとか仕組みを考えていくべきなのか、あるいはそうではなくて、やはり地域主権であったり地方それぞれの独自性といったものを重視するべきなのかというそもそも論がいつも並走してある中で、今回の法案改正ということになっていると思います。

 また先生方の質疑の中で、教員の人事権について、これが都道府県にあって、移る部分もあると思うんですけれども、それが今回、首長にリンクするような市町村単位とか、そういうところに人事権が移るべきかどうか、こんなあたり、大きい話で恐縮でございますが、この人事権の問題を含めて、それぞれの先生から御答弁をいただければと思います。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 国は、全国的な教育水準の維持ということをやはりしっかりと果たしていただかなければならないと思います。また、財政的にもしっかりとした教育環境の整備についても最終的な責任を持ってもらいたいというふうに思っています。

 ただ、地方におきましては、個々の子供たちの教育につきましては、保護者、それから市民の皆さん方、地域の皆さん方がいる、学校、その地域社会の特性とか実態等も全国で随分違いますので、その特性や実情を踏まえた教育のあり方が望まれるというふうに思いますので、その辺のすみ分けに線を引いていくということは大事だろうというふうに思います。

 人事権につきましては、今御指摘のように、都道府県教育委員会が持っているわけでございますが、ただ、区市町村につきましても内申権というものを持っておりまして、何でもかんでも有無を言わさずというわけでは、もちろん今そうなっているわけではありませんけれども、しかし、人事権については地方にできるだけ、区市町村に任せてほしいというふうに思っています。それに伴う財源も同時に持たせてもらえるというふうなことがあれば、自立した、自主性を持った教育行政が展開できるだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

新藤参考人 まず、前者について申し上げれば、まさに生活者として地域に深く根をおろして、いろいろな人間の生きざまをきちんと理解できる、何よりもそのことを重視し、そこから、国あるいは国際社会をより見ていける子供たちを育てていくべきであるというふうに思っております。

 人事権については、これは私はもう長く言ってまいりましたが、それぞれの市町村に教員人事権を移しなさいと。

 こういうことを言うと、小規模町村に来る教員がいると思っているのか、こういうことを多くの方が必ずおっしゃいます。そのときに申し上げるのは、そのくらい小規模町村の職員に失礼な言い方はない、三陸沿岸の市町村を見ていらっしゃいというふうに私は反論をするのです。

 そのことを基本にしながら、先生たちの研修をどうするとか採用をどうするのかというのは、相互のやり方、協力の方法でいかにでも克服できることであり、現在の地方自治法の改正法案の中でもそうした方法を幾つもうたっているわけでありますから、何ら問題にならない。むしろ、地域にきちんと根差した、そういう教員をつくるべきだというふうに思っております。

 以上です。

大森参考人 これは原理原則の問題として明らかでありまして、現場に近いほどいいということは一般論として言えると思います。

 現実問題、地域の実情に応じた教育とかとうたい文句に言う割には、学校の姿というのはどこで話しても大体似ているんです。

 例えば、この間、山梨県のある小学校の先生とお話ししたら、その先生は教頭先生になりたくないと言うんですね。何でと聞いたら、朝一番に鍵をあけて入っていって、それで、夜遅くまで仕事して、出ていって鍵を閉めるのも教頭だと。そういう仕事だというのを先生はみんな認識しているわけですよ。

 この話というのは、大阪市で、もう耳にたこができるほど聞いた話なんです。結局、地域の特性とかいいながら、現実、金太郎あめです。

 なぜそうなのかというと、結局、先ほど指導行政ということについて教育委員会と学校の関係で申しましたが、実は、指導行政のその前の大きな問題として、国と地方の問題がございます。指導といいながら、結局、それに従ってやっておいた方が無難だということで、イノベーティブな体質が全国の教育委員会事務局に本当にないんですよ。それが問題だというふうに思っております。

 そこで、自治体ごとの行政、首長がちゃんと刺激を与えるということが必要でございます。首長には教育に関心がない人もいるだろう、それはそのとおりだと思いますけれども、そんなことを言ったら、あらゆる行政分野について、都市計画だとか離島の振興だとかいろいろなことについて、では選挙民は個別にイエス、ノーをやるんですかという話で、そこは割り切って考えなきゃいけない。民意の反映ということを、教育行政をどうすべきかということを自治体ごとにもっとやっていってほしいということ。

 それから、人事のお話がありました。人事というのは学校をマネジメントする究極のツールなんですけれども、校長をどうしたらいいのか。校長に人事権がないから、学校のマネジメントというのは難しいんですよ。そこは企業の社長とは全然違うわけなんです。校長が仕事を頼めるのは教頭だけになっちゃうから、教頭が物すごく忙しくなっちゃうという面があるわけなんですよ。雑用は全部教頭という現実がございます。

 だから、単純化した方がいい。新藤参考人は市町村とおっしゃいましたが、私は、究極は、一般教職員については学校長が最大の権限を持つべきだと思っているので、大阪市においては、小中学校四百三十校ほどあるんですけれども、とりあえずそのうちの百校ほどでまずモデル的にパイロット、試行を開始しましたけれども、校長による教員公募というのをやっています。

 これは、校長が教員を選ぶというよりは、教員が手を挙げるんですよ、この学校が公募していると。そこでどういう教員が求められているかということで公募していますから、教員の側に自由があるわけです、校長というよりも。それもなんですけれども、もちろん校長は、複数の候補者があれば選ぶということ。

 何が言いたかったかというと、もっとシンプルなシステムにしていかないと、本当ににっちもさっちもいかないような仕組みになっているのが今の地方教育行政制度、人事も含めた状況だと思っております。

 以上です。

杉本委員 どうもありがとうございます。大変参考になりました。

 次に、民間の力を入れるということで、昨日のニュースになっていました佐賀県の武雄市では、公教育に加えて、塾のノウハウを使って、たしか来年度からだったですか、授業を一部の学校で採用していくということです。子供たちに元気な形で発言させてとか、みんなで四文字熟語を大きな声で読ませてとか。

 そんなことで、今質問させていただいた関連になるかもしれませんが、地域の独自性の教育が、特に具体的に佐賀県の武雄市で始まっていますけれども、こういった教育内容について、その独自性の中で民間の力というか活力というような部分を入れていくことについてどうお考えになるかという点。

 もう一点は、安倍総理初め、各国との価値観の共有とかをよく言うんですけれども、本当にそういう価値観を子供たちが持っているかというと、私はちょっとどうなのかなということで、バリュー教育というか価値観の教育。強いて言うと、道徳とか倫理観とか、あるいは広い意味でのいろいろな宗教を学ぶということだと思うんです。

 こういった民間活力の問題と、価値教育というんですか、こういったことについて先生方はどういう思いかということで、逆に、今度は大森先生から順にお願いできれば。あと五分ぐらいですので、お願いいたします。

大森参考人 まず、民間活力ということですけれども、大阪市では、今般の国家戦略特区におきまして、公立学校の運営の民間委託ということで、いわゆる公設民営学校と言われていることなんですけれども、今現在、国際バカロレアの取得できる学校というふうなコンセプトを含めて検討をさせていただいているんですけれども、これは非常に重要だと思っています。

 ただ、勘違いしていただいては困るんですが、民営化みたいな議論になると、金持ちだけが得をするとかそういう話によくなるんですが、そういうことでは全くなくて、お金の面では公の責任をきちんと果たした上で、マネジメントについて、今の閉塞した公立学校の状況に大きな刺激を与えるということ。ただし実験的でございますので一遍にたくさんはやれませんから、少しずつそういった取り組みをやっていくということは、これは大阪に限らず本来はあっていいことなんだろうと思っておりますが、まず大阪の方でやらせていただきます。

 それから、価値教育でございますけれども、これはなかなか難しい。正直言いますと、それを推奨した場合に現実に何が起こりやすいかというと、ドグマの吹き込みみたいなことも起こり得る。

 ただ、他方で、私も大学の教員をしていますので、十八歳、高校三年生とそう変わらない子たちを授業で教えていますので、やはり、社会的な問題、イシューとか、世の中の仕組みだとか、そんなことは考えていない。半径何メートルの狭い、友達とか家族とかすごく狭い世界に関心がとどまっていて、その外は、何か教科書に何が書いてあったというのは覚えているけれども、それがどういう意味だか文脈が全くつながっていない子たちが、首都大学東京、偏差値はそんなに低くないんですが、そういう学生でもそんな感じですので、やはり社会のことを考えさせる教育というのは大事だと思うんですけれども、これは、先生が相当価値観的にもまた教育力でもちゃんとした人じゃないとかえって危ないという面もありますので、悩ましいなと。

 とりあえず以上です。

新藤参考人 前者の話で、民間と言って何をイメージされているのかもう一つはっきりいたしませんけれども。

 私は、最近の、やれ競争させて国際社会のエリートをつくるんだという話に非常に違和感を持っております。そんな、みんなエリートに、何千万人がなれますか。そのときのその社会がどういう社会か。

 私の個人的体験談でいえば、私の住んでいる学区、小学校で、暮らしている町という社会科の一授業があります。それは、もう長年住んでいるリタイアした人たちに、かつてのこの時代はこうだとかということを具体的に教えてもらっている。もっとそういう高齢化社会にどんどんどんどん入っていくわけです。ただ、皆さん元気なんだから、そういう形の教わり方というか、使い方、使い方と言っては悪いけれども、あっていいんじゃないかと。

 価値教育というのは、下手に強調すると、やれ戦争できる国にしようみたいな価値を押しつけて、それを学校現場でやるんだ、教育勅語的なものを学校で教えるみたいなばかな話になりかねませんから、私はそれを強調したいと思いません。ただ、今生きている社会がどういう社会で、どんな人たちがどういうふうに生きているのか、そういうことを先生たちあるいは学校を取り巻く地域の人たちと議論するような場をもっとふやしていくべきではないか、そう思っております。

 以上です。

貝ノ瀬参考人 最近は変わりつつありますけれども、学校の常識は社会の非常識というふうに言われたことがあります。つまり、それだけ一般社会とのギャップが学校にあるわけで、そういう意味では、塾に限らず、企業等もいろいろ含めて、やはり学校と接点を持って、子供たちに多様な価値観を知ってもらうということは大事なことだというふうに思います。

 ですから、そういう意味では価値教育というのも尊重されるべきでありますが、公立学校の場合は学習指導要領に基づいて教育が行われておりますので、そのすり合わせとか、やはり何よりも、公立学校の地方公務員としての教員たちの意識が変わらずに、対立的な関係でただ拒絶するとか、ただ無批判に受け入れるとか、そういうことにならないような、自立した教員というような存在を前提にしないとなかなかやはり難しいだろうというふうにも思いますが、ただ、やはり武雄市のような取り組みは、新しい取り組みとしてまずやってみる価値はあるんじゃないかというふうに思っております。

 以上です。

杉本委員 時間となりました。三人の先生、どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野県の井出庸生と申します。

 きょうは三人の参考人の先生、お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 三人の参考人の先生のお話を最初に伺っておりまして、与党の案を明確に肯定的にお話をされていたのは貝ノ瀬参考人かなと思うので、貝ノ瀬参考人にお伺いをしたいのです。

 貝ノ瀬参考人は、教育長も務められた、教育委員長も務められている、現行の教育委員会制度というものについて相当御経験、御見識も深いと思うんですが、今現行、教育長と教育委員長のその違いと申しますか、私がちょっと伺いたいのは、首長に対して物の言いやすさ言いにくさという点で、教育長と教育委員長にどのような違いがあるか、御経験も踏まえてちょっと教えていただければ。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 教育長と首長との関係は、これは率直に申し上げまして、私どもでいえば、経営会議が週一回、それから首脳部会議が週一回ありますので、絶えず日常的に情報交換をしたり、さまざま相談をしたりされたりというふうな関係でありますけれども、教育委員長と首長との会談というか会合というのは、多分私どもの市に限らず、全国的に定期的に持たれているというのは少ないかもしれませんね。

 そういう意味では、やはり教育長は首長に物を申しやすいということは一面ありますが、ただ、教育長は、一般職であると同時に特別職ということで、教育の行政のみならず、いわゆる福祉関係も、それから都市計画も、総合行政全てにかかわっての会議にも出ますし、意見も求められます、内部的には。議会では教育問題だけですけれども。

 ですから、そういう立場からすると、例えば、財政論などになった場合に、教育の論理だけを首長にぶつけるというのはなかなか、率直に申し上げて、相手の気持ちがわかるものですから難しいところはありますが、その点、距離がある教育委員長の方がむしろ率直にお話ししやすいということはあるだろうというふうに思います。それはもちろんその方の資質にもよりますが。

 一般論で言えばそんなことがあるかとも思いますけれども、何といっても、教育長は日常的に業務をしておりますので、その点で、微に入り細に入りさまざま話し合いをしていますので、相当程度、首長は絶対的に人事権も予算権も持っていますので、そういう意味では、圧倒的に、はっきり申し上げて、変な言い方ですけれども、盾突くとかそういうようなことは、私に限らず、全国、私も何百人とお会いしましたけれども、そういう方はまずいらっしゃいません。ですから、そういう現状、そういう関係でございます。

井出委員 ありがとうございます。

 今、教育長は首長の気持ちもわかると、教育論、財政論。

 私も同じ思いを持っておりまして、かつて宮城県が高校の再編をするときに、宮城県は男女別学の伝統校が多かったんですが、公立だし、学区も一つになるし、公立の高校はこれから共学化だろう、そういうことを県民の意向調査を踏まえてずっとやってきたんですが、男子校、女子校の出身の方は、母校の姿が変わってしまうということで大きな反対があって、それが知事選でかつて争点になったことがあります。結局その計画は守られたんですが、そのとき、首長と教育委員長の間で奔走して苦労していたのが教育長だったなと私は思いますし、そういった現状がやはりあるのかなと思うんです。

 その前提でさらに伺いたいのですが、大津のいじめの事件があった。それで、教育委員会の、特に事務局が委員に物を知らせないとか教育委員会のことがいろいろ問題になって、その一つの手法として、教育委員会を改革するときに、教育委員会そのものをしっかり改革するのか、それとその対極に、教育委員会ではなくて、民意の反映である首長に責任を与えていくのか、それが野党案だと私は考えているんですが、今回の与党案というのは、教育長と教育委員長が一本化をする、ただ、来年法律が始まるときに任期の残っている教育長はそのまま新教育長になると。

 私は、教育委員会と首長が意思疎通、連携調整が図れるようになるということは、それはそれで評価するべきことかなとも思うんですが、逆に、お互い情がわかってしまう、意思疎通がこれまであっただけに、そこがなれ合いになってしまうのではないかという不安があるんですが、そのあたりの私の懸念に対する御見解を貝ノ瀬さんに伺いたいんですが。

貝ノ瀬参考人 そういった御懸念もあろうかとは思いますが、ただ一方で、合議制の教育委員会というのも同時に存在するということで、教育長は教育委員会を総理するということでありますので、なれ合いがあるとすれば、その中でさまざまやはり教育委員さんがしっかりとした役割を果たしていただけるならば、それはあり得ないと思います。

 また、教育長自身も、例えば私がもし教育長、そんなふうに考えたときに、教育長の立場というのはやはり教育行政を預かる立場ですので、また同時に、議会の承認を得るわけですので、そのときに議会の皆さん方に必ずお約束をするということになります。ですから、そういう中で一定の緊張感や距離感を持って仕事をするということになるはずですし、なるべきだというふうに思います。

 ですから、むしろ逆に上司、部下のラインということになれば、なれ合いどころじゃなくてこれはもう一直線に指揮命令が行っちゃうわけですので、これはむしろそういう緊張感、距離感というものは全くなくなるというふうな危惧の方が大きいだろうというふうに思います。

 やはり教育長の資質もこれから重要になってきます。ですから、先ほど来ほかの委員の方も御質問がございましたけれども、やはり資質をしっかりと担保していくということで、できれば国が一番いいと思いますけれども、自治体、または自己研さんという努力義務を課すということで、絶えず自分自身をしっかりと身を正していく、同時に自分自身も向上していく、そういう存在であってほしいというふうに思っています。

井出委員 ありがとうございます。

 もう少し、教育長と教育委員長の御経験を踏まえた質問をさせていただきたいんですが、教育委員会は合議制で、例えば、教育委員会のメンバーが六人いて、同数になったら現行ですと教育委員長がお決めになる、そういう仕組みだと聞いております。

 ちょっとお伺いをしたいのは、教育長時代、また教育委員長をやって教育委員会というものにずっとかかわってこられてきたと思うんですけれども、平の教育委員が教育長や教育委員長よりも積極的に物を言って教育委員長の御意見と違う結論が出るとか、平の方のお立場というのは御経験で見てこられてどうですか。教育長、教育委員長を超えるような、そういう委員も時にはいらっしゃったりするんでしょうか。

貝ノ瀬参考人 教育委員さんの中には、私より人格的に上な人は全てそうです。しかし、だからといってというか、むしろそうだからこそというふうに言うべきかもしれませんが、議論が紛糾して話がまとまらなかったという経験は、私は今までのそういう生活の中では一切ありませんでした。

 やはり、話し合いをしっかりと合議制ということで尽くす中で合意に達するということでまいりましたし、私が教育委員長として会を運営していても、私の考えが一番正しいと思って最初は臨んでも、しかし、委員さんの話し合いの中で、ああ、私はやはり間違っていた、変えなきゃいけないなということも多々ありましたので、ですから合議的に話し合うということは非常に大事なことだというふうに思っています。

井出委員 話し合いが非常に大事で、それが尽くされてきた、それは大変すばらしいことだと思うんです。

 そこで一つ伺いたいのが、今度の与党案の教育委員会の改革の一つに、委員の三分の一以上の発議があれば委員の側から教育委員会を開くことが求められる、それに応じなければいけないと。こういうこともあるから教育委員会はしっかりと機能していくんだよということで与党案の説明を私は受けているんです。

 実際に、その三分の一、これは一人ではだめだと思うので、二人とか三人とか、複数の平の委員が声を上げなきゃいけないと思うんですけれども、そうやって、ふだんから話し合いを尽くしている、ましてや平の委員がそういう声を複数上げるということが、法のたてつけ上は可能ですけれども、現実的にそういうことは、御経験からして、これからそういうのが始まったらあるかなという、そのあたりのお考えを聞かせていただきたいと思います。

貝ノ瀬参考人 結論から申し上げますと、あります。

 それは、今回は三分の一というふうな数字を挙げていますけれども、現在でも、お一方でも、やはりもう少し時間をかけましょうよという話になれば、これは日程を、皆さんがそれぞれ仕事を持っていますけれどもやりくりして、時には夜に集まったりとかという形で会を開くということはやっております。

 ですから、あくまでも合意を目指すということで努力をするという会でございますので、三分の一というふうな規定ができれば、これはなお結構でありますし、やはりそうあるべきだというふうに思います。

井出委員 済みません、時間が終わりに近づいてきたので、最後に一つ、野党の教育監査委員のことに言及された大森さんにお伺いをしたいんですが、先ほど監督権限というお話もありまして、ちょっと今の状況だと心もとないというようなお話だったのかなと、聞いていてちょっと私の誤解でしたらあれなんですけれども、教育監査委員について、もっとこうすべしだというところを一言いただけないでしょうか。

大森参考人 ありがとうございます。

 今般の法案が最終的に法律になるときに、現実に大阪市の教育行政を現在担う一人として、とにかくベストなものになってほしいので、そういう観点から申し上げたのは、今の監査委員会の方ですけれども、こちらについては、勧告とか、何かあっせんとかそういうことはできても、実質的な権限を持った存在ではないというたてつけなんだろうと理解しています。

 監督機関というのは、例えば株式会社でいえば取締役会、これは最高経営責任者、CEOを監督するわけですね。究極の監督権限というのは本当は人事権なんですけれども、それは誰があるんだかわからないというか、任命はできても解職は難しいとか、内閣提出法案についてはそうですけれども、民主、維新法案の方は解職もできるということです。

 人事権を除く日常の行政運営についての監督権限というものを考えられないのか。つまり、監督となったら、単に評価して、その結果を発表して、勧告、提言するみたいなことじゃなくて、問題があれば是正させるというふうなことまで含むんだと思うんですね、当然のことながら。大きな方針を議論して、決定して、その方針に従って経営させて、どうしても経営がうまくいかない、言うことを聞かなければ首にするというところは、本当は株式会社だと取締役会はそういうことなんでしょうけれども、そこは別として、やはり単に評価、勧告じゃなくて、ある種の強制力を持った存在にすれば、監査委員会よりは意味があるんじゃないか。

 与党案といいますか内閣提出法案の方は、執行機関として残すということですので、これはもう権限そのものですね。でも、現実問題は、私が最初の方で申し上げたように、強大化した教育長の格下の同僚ですので、実際問題はついていくだけというふうになりかねないというふうに思っていますので、むしろ教育長という強大な存在から切り離してそれを監督する立場にした方が、それで、単に評価するだけじゃなくて、時には是正するような、そういう権限も持たせる。そうすると、何となく、民主、維新案と内閣提出法案というのはちょっと接点があるんじゃないかなと思いまして、冒頭の発言で触れた次第です。

井出委員 時間になりましたので終わります。

 三人の参考人の皆様の御意見を今後の議論で生かさせていただきたいと思います。きょうはありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思うんですけれども、貝ノ瀬参考人にお伺いしたいんです。

 貝ノ瀬さんは、雑誌の対談の中で、首長会が、教育委員会そのものが要らない、今の時代、政治的中立性をわざわざうたう必要もないなどと強硬な意見も出しますから、こう言ってはなんですが、首長としての力量不足や対応のまずさを制度の問題と一緒にしてしまった、そういう印象も受けましたと述べておられます。

 政治的な中立性というのは極めて大事なことだと私は思っておりまして、この間の世論調査を見ましても、七五%の方々が、政治家が学校の学習内容をゆがめることのないよう一定の歯どめが必要だ、こういうふうに答えておられるということもございます。

 まず、貝ノ瀬さんに、教育の政治的中立性、これをどう受けとめておられるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 私も、教育の政治的中立性、継続性、安定性というのは、長い目で子供たちの人格形成を図っていくというような観点からも、短絡的に、政権がかわるたびにころころといろいろ教育が、政策、方針が変わるようでは子供たちが非常に迷惑を受けるということになりますので、やはりこれはしっかりと維持されてしかるべきだというふうに思います。

 冒頭お話がありましたように、ある市でいじめ等の問題があって、そして、教育委員会からの報告がなかったとか動かなかったということで、教育委員会は要らない、そういうようなお話をしている首長さんがいらっしゃったようでありますけれども、私に言わせればというか、多くの教育関係者は、多分御自分の力量のなさを制度のせいにしているというふうに受け取ったというふうに思います。

 率直に申し上げて、教育委員会が、例えば、ずっと物理的にも離れているとか、それから、ほとんど連絡もつかないようなところにいるならまた別ですけれども、実際すぐそばで、同じ建物にあったりなどもしますし、すぐそばに教育委員会があって一緒に仕事をしているわけですので、これは御自分で行けばいいだけの話ですね。何しているんだ、報告しなさいというふうなことで、それで一言で済むわけでありますので、そういったこともされたのかどうかわかりませんけれども、やはり首長として、まさに市の民意を代表する方としての矜持を持って仕事をすればそういった問題は起きなかったんではないかというふうに私は個人的には思っております。

宮本委員 ありがとうございます。

 次に、新藤先生、お久しぶりでございます。

 新藤先生は、先ほどの冒頭のお話でも、教育長をトップとする教育委員会事務局と合議制の執行機関である教育委員会とを区別する必要ということをお話しになりました。私は、まさに非常に大事だと思うんですね。そして、そのもとで、実際は上意下達の、文科省からの事務局を通じた支配の仕組みというものがあると。

 これは私、実は、この前の衆議院本会議でも、私たちも現在の教育委員会には少なからず問題があると考えている、教育委員会は地方の教育行政の意思決定を行う住民代表の合議体としての役割が今十分に発揮できていない、その背景には、歴代の自民党政権が、日の丸・君が代、全国学力テストなど、国の方針どおりの教育を学校現場に押しつけるために、教育委員会事務局を通じて教育委員会の自主性を奪ってきたことがある、こう指摘したんですけれども、このあたりのところ、新藤先生、どうお考えになるか、お話しいただきたいと思います。

新藤参考人 まさにそうでありまして、国旗・国歌法が制定されたときに、当時の野中官房長官は、衆議院本会議で、これは決して学校現場に強要するものではないと議事録に明確に残っておりますけれども、それが、なぜ学習指導要領に小学校、中学校、高校の分まで全部あって、その遵守が行われるのか。しかも、遵守しろと言うだけならまだしも、処罰を伴って行われているのかというのは、まさに教育委員会という合議制の機関の問題ではなくて、事務局レベルの、私の言葉で言えば、縦の系列の話です。国立教育会館の中に全国教育長協議会という組織の事務所があって、この教育長協議会が四つの分科会を昔から持っていて、そこで文部官僚並びに国立教育政策研究所の官僚たちとさまざまな議論を交わしている。

 だから、要するに、勤務態度の悪い、何をもって悪いというのかというのは、私も大学の教師を長くやりましたが、指導力不足というのはそう簡単に言えるものじゃないんですよね。でも、ともかく何かの基準をつくる、そしてそれをまた下達する。これは一つの例ですけれども。

 ですから、結局、この問題にもっと目を向けない限り、日本の教育、もっと地域に根差した教育なんて言ったって、ほとんど私は無意味だと。むしろ、あえてこういうところで申し上げたいのは、我々は、そういう縦の行政系列こそ問題にして、同時に地域の豊かな教育をつくるべきだというふうに申し上げておきたい、そう思います。

宮本委員 ありがとうございます。

 それでは、大森参考人にお伺いしたいと思うんです。

 冒頭の話で、さぞかし教育委員会は無力になった、無意味なものになっているだろうと思うだろうがそんなことはない、大阪は頑張っている、こうおっしゃったわけですけれども、大森参考人が大阪市の教育委員におなりになるときの新聞報道を見ますと、橋下市長の側は、僕がどういう教育をしようとしているのか理解してもらった上で一緒にやってくれる人ということで参考人をお選びになったと御自分が語っておられます。また、参考人は、自分が提言している教育改革に近い改革が大阪で取り組まれつつあり、ぜひ貢献したいと語っておられます。

 つまりそれは、思いがこうして一致して教育長になったから、これはさぞかし無力になっただろうと思うだろうがそんなことはないとおっしゃられるのであって、私は、首長と教育委員会とで意見が違った場合には、こういう今回の法改正のようなことをやるとさぞかし教育委員会は無力になると思うんですが、そうじゃありませんか。

大森参考人 今回の改革というのは、内閣提出法案の方のことですかね。(宮本委員「どちらにしてもです」と呼ぶ)だってもう民主、維新案の方は首長が執行機関になりますから。

 まず申し上げたいのは、たまたま何か教育政策に対する考えが近いからとおっしゃったんですけれども、これは近くなきゃ困るんですよ、正直言って。どちらの法案にしろ、これはですから、その点で民主、維新法案の方がすぐれていると申し上げましたけれども、執行機関として明確に首長がなるという点のほかに、きちんと、教育政策が混乱しない、その自治体の教育行政が混乱しない。

 これは、現実問題起こり得ると思いますよ。つまり、首長の考えと全然違う考えの前任の首長さんが任命した教育長がそのまま結構任期が残っていて続けるというような場合、これは、その首長が定める大綱というものと日々の行政運営を担う教育長の強力な強大な権限と地位、この中でどうなるかというのはよくわからない。その混乱で被害を受けるのは子供や保護者や市民、住民ですよ。ですから、きちんと制度というものは組み立てなきゃいけない。

 一つの選択をしているわけですから、民意というのはそういうことですから、この人を選んだ、それは都市計画だとか農林業振興だとか教育振興だとか行政分野はいろいろ無数にありますから、白紙委任しちゃうわけじゃないとかいう議論はありますけれども、そんなことを言ったら政治というのは成り立たないわけでして、ですから、任せた人に一つの方向でやってもらうというしかないんですよ。次の首長になってその方針、政策が変わったらそれは混乱だとかおっしゃるけれども、国では起こってもよくて何で地方だとそれはだめなんですかとさっき申し上げましたけれども、それなんですよ。

 要するに、教育政策というものを国が定めたとおりに官僚機構がやればいいんだという選択をするのなら、はっきりそうおっしゃってください、中立性なんて言わないでそうはっきり言ってくださいと私は言いたいですね。

 お答えがずれましたかね。以上です。

宮本委員 さまざまな問題意識をお持ちなことはよくわかりました。

 しかし、同時に、やはり教育委員会というものをなくしてしまって、では首長にしたら全てうまくいくかというと、そうでもありません。

 例えば、冒頭、大津市のことについてお触れになりましたね。いじめの隠蔽というのは、大森参考人も事務局の隠蔽体質だとおっしゃっている。そのとおりです。しかし、事務局の隠蔽を教育委員会がチェックできなかった、だから教育委員会をなくして首長をとおっしゃるんですけれども、実は、全国には首長が教育委員会事務局と一緒になって隠蔽の側に立っているという場合が多々あります。ですから、やはりここはそういう単純な話でもなかろうと思うんです。

 それで、四月十六日付の毎日ですけれども、大阪の教育界の戸惑いということについて少し報道されております。大阪市立小学校のある校長はということでありますけれども、「今の教育委員会は、変える必要がある」と言いながら、「人気取りで首長によって政策が変われば、現場は混乱する。教育は失敗したら取り返しがつかない」、こういうふうに述べたということがありますし、この記事では、その「橋下市長の肝煎りで導入した民間人校長も不祥事が相次ぐ。」こう書いているわけです。やはり誤ることはあると思うんですけれども、このあたり、大森参考人はどうお考えになりますか。

大森参考人 先ほども申したと思うんですが、個別の首長全員が完璧になるというのは、教育長が全員、あるいは教育委員が全員完璧になるということが常識的にあり得ないと同じでございまして、制度論というのは、やはり、神様もいなければ大悪党もそんなにはいないだろうという、普通の人がどう運営していくかという中で、どういう職にどういう権限を担わせ、チェック・アンド・バランスで誰に牽制させるか、チェックさせるかということでございますので、私自身も、首長に全部やらせれば大丈夫だなんてそんなことを言ったつもりはございません。

 今の教育界の縦系列と、実際、現場のことをコントロールしている事務局の状況というものを考えた場合に、やはり閉鎖的な今の状況は変える必要があるということで申したわけで、そこで首長というのは、まあ、できふできはあるかもしれないけれども、民意の、住民の意思の負託を受けた存在でもありますから、役割をもっと果たしてもらいましょうよ、ほかにもっと適任者がいますかということで申したわけで、それに対するチェック役というのは必要だと私も思います。

 ですから、それは、民主、維新案にしろ内閣提出法案にしろ、そこはちゃんと、どちらも首長に任せればいいなんということでは言っていないと思いますけれども、それぞれやり方は違いますけれども、私自身もそこは全部任せりゃいいなんて言っておりません。

宮本委員 きょうのお話を伺って、一層議論を深めていきたいと思うんですけれども、私は、もちろん教育委員会の形骸化ということは問題だと思っております。これは、大体みんな衆目の一致するところだと思うんですけれども、形骸化しているからもういっそのことなくしてしまえとか、形骸化しているから意味がないじゃないかという議論をするんじゃなくて、本来教育委員会の果たす役割はいかなるものであって、それをどう再生させるかという議論こそ必要だということを申し上げて、きょうの質問を終わります。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。きょうはまことにありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、三名の参考人それぞれにお伺いをさせていただきます。

 多少質問が重なりますけれども、改めて、大津の事件、また桜宮もそうでありますが、この事件に対する教育委員会の不適切な対応というものをどのように調査、分析されているのか。本改正の端緒でありますので、一口に教育委員会といいましても、教育長、教育委員長、また委員の皆さん、また首長、学校長、さまざまな方が教育にかかわっているのですが、この事件の不適切な対応というものをどのように分析されているか、それぞれの参考人にまずお伺いをさせていただきます。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 先ほども申し上げましたけれども、特に大津の方の問題は私は詳細には承知していないんですけれども、少なくとも、我が市に同じような状況が発生した場合には、私どもの市長、女性ですけれども、ああいう事態にはなっていないというふうに、これははっきり申し上げられると思います。

 それは、教育長と首長が意思疎通しているからということだけではなくて、首長さんが、市長が、抑制的ではあっても教育問題にも大きな関心を持って見守ってくれているという中で、できるだけ私どもの、いろいろ無理はあっても聞こう、聞いてあげようという中での関係ですので、当然のことながら、これは、そういう意味ではお互い敬意を持って仕事を進めているという関係です。

 ですから、首長さん自身も、自分が使いやすい人を教育委員にしているとか、使いやすい人間を教育長にしたとかということじゃなくて、やはり、この方ならこの町の教育について、私が言うのもおこがましいんですけれども、任せて心配ないのではないか、自分が仮に将来市長の座をおりてもやってもらえるような人をというふうなお気持ちのようであります。

 そういうふうに考えますと、やはり、それぞれの御自分の仕事に対する自覚というものをしっかりもう一度改めて見直してみるということも大事でしょうし、あの問題についてはしっかりと検証していって、その中で教育委員会制度が、つまり教育委員さんが、先ほどのほかの参考人もお話がありましたけれども、教育委員会事務局のいろいろな問題と、教育委員さんの問題、教育長含めて、そういうこととちょっと区別して考えた方がよかったのではないかというふうにも考えております。

 詳細は私承知しておりませんので、その程度ということで御勘弁いただきたいと思います。

新藤参考人 大津の事件というのは、いろいろな理由が複合的に重なっていると思います。したがって、これ一つだというふうになかなか私は言うのは難しいと思うんです。

 そもそも、一つは、きょう政府案そして野党案を議論していますけれども、市町村の教育委員にもっと、何でなっているのか、自覚が必要ですよね。スケジュール化された会議には出ていく、その中にはもちろん会議もあれば懇親会まであるわけですが、そういうのと別に、自分が地域の学校を歩いてみたらいいと思うんですよ。

 例えば、大津の問題だけじゃなくて、尼崎でしたか、「はだしのゲン」を閉架書庫に隠したというか、しまった。そうしたら、あそこの教育委員は、我々は新聞が報道するまで知らなかった、事務局がやったので、わしは知らぬ。それはないだろうというふうに思うんです。余りにも名誉職で踏ん反り返っている。私はアメリカで子供らを地元の学校に行かせましたが、何かというと集会に日本でいう教育委員が出てきて、子供らに、おい、どうだというような話をしているんです。もっと活発に、名誉職で踏ん反り返るのをやめろと。それで、大津もそういう要素があったというふうに私も市民から聞いています。

 ただ、もう少し根本的なことを言いますと、事務局も、さっきから言うただの行政系列も、そして現場も、学校も含めて、私はこの手の事件が絶えない一つの原因に学校選択制があると思います。

 先生たちは、うちの学校に来てくださいと、就学予定の子供たちの家庭をめぐってどうのこうのとやっています。彼らはセールスというふうにそれを自虐的な言葉で呼んでおりまして、東京二十三区でこれを一番最初にやったのは品川区なんですけれども、足立区の区の学力テストの不祥事、御記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが、これは、成績を学校順に明らかにしたわけですけれども、そのときの理由は、父兄が学校選択の参考になるために、こういうことをやっているんです。

 こういう一種の疑似市場を公立の小中学校の部分につくろうとすれば、あそこの学校でいじめが多発しているなどというのはあってはならない話なんですよ。だから、先生たちも、もちろん校長も、そんなことは外に出ないように、そんな事件があるなんということを言ったら、生徒は減るわ、挙げ句の果てに予算を減らすわなんという首長が出てきますから。

 そういう公的な部分に市場化をしていくということを我々は本当にどう考えるのか。その話を私は日本社会が忘れている、だからああいう事件が一つ起きてくるんだ、そういうことも申し上げておきたい、そう思っております。

大森参考人 今、新藤参考人から学校選択制のお話があって、関西は関東と状況が違いましてほとんど導入されていなかったと認識していますが、大阪市の方で導入いたしました。

 そのことと、いじめですとか体罰、暴力行為の隠蔽とか、これは全く関係ございません。これは断言いたします。それは、学校選択制なんてないところでも、いじめや暴力、体罰の隠蔽はあちこちで現実に起こっています。それが大きな事件であればあれだけ大きく報道されますが、そうじゃない場合はそうならないだけの話でございます。

 御質問の本題に戻りますと、もう大津の件は私から述べるべきじゃない、桜宮の件について述べます。

 まず、事件後の対応といたしましては、私ども教育委員としては、口幅ったいですけれども、大きな落ち度はなかった、最善を尽くしたと思っています。スピーディーに事務局との連絡もとっているということです。また、この件についての事後の対応という意味では、それなりに事務局もしっかりやってくれたのかなと思っています。ですから、事後対応という意味では、余り大津と一くくりにされると、ちょっと何かという気もするんですね、並べてよく言われるので。

 ただ、事前については大きな問題がございました。言いわけめいて聞こえるかもしれませんが、先ほど公益通報の話をした際に、委員は全く知りませんでした。ですから、本当にこの学校は大変な状況だという情報はなかった、私がいない時期も含めて、委員は認知していなかったと思った方がいいかとは思います。

 体罰事案で処分事案が、この教員じゃないあれであったようでございますけれども、それは私がいないときでありますけれども、ただ、それは結構な数の体罰、まあ、こう言うのも問題ですけれども起こっていますので、大きな問題があるというところまでは委員が認知しなかったのはしようがないと思います。

 問題は、先ほどの公益通報の話は繰り返しませんが、この桜宮の件をきっかけに中学校とかの状況も調べていただいたんです、弁護士さんのチームに。その結果何がわかったかというと、もうこれはある種普遍的なんですけれども、教師が生徒に暴力を振るっても、保護者が納得すれば上がってこない。それは、校長にすら言わない場合もありますし、校長が知っても、それが教育委員会事務局には伝えられない。

 あるいは、教育委員会事務局でも、学校の先生系の職員というのは指導主事というんですけれども、指導主事が固まっているのは大体指導部とかそういうセクションなんですけれども、指導部に報告が上がってきても、それが教職員の服務監督、処分、人事を担当している教務部の方に回ってこない。教務部というのは、大阪市の場合は事務職員中心で教員系は少ないという特殊性があるんですけれども、この教務部に回ってこない。さらには、教務部に回ってきても、そこから教育委員に来ない。

 各所でとまっちゃうところだらけで、その教員の将来とかいうことを校長とか事務局の職員がおもんぱかるのはいいんですけれども、やはりルールはルールでしょう。学校の中は教育だから聖域だ、市民社会の法秩序が入らないというふうな感覚があるのは、私はおかしいと思う。もっとルールに基づいてちゃんとやるべきだ。先生に対しても、それから子供の、生徒の教師に対する暴力も、あるいは生徒の生徒に対する暴力も同じだと思っています。

 やはり法律に基づいて、犯罪であれば犯罪としての対処。学校というのは、そんな閉鎖的な別世界、治外法権の地域であっては、それで本当に不幸になるのは、いじめられたり教師の暴力にさらされた子供たちですから、そこをちゃんとしたいと思います。

青木委員 ありがとうございました。

 あともう一点、三名の先生方にお伺いしたいんですけれども、先ほどから、縦の行政支配といいますか、その弊害についてそれぞれ語っていただいているのですけれども、上からのコントロール、また責任の押しつけ合い、この部分、これが、指導助言という曖昧な表現が原因なのではないかという指摘もあるのですけれども、この縦の系列の弊害というものはどういうもので、どうすればこれが解消されるのか、この点についてぜひお伺いをさせてください。

貝ノ瀬参考人 現状でも、例えば教育委員会と学校との関係の中で指導助言ということはしょっちゅうあるわけでありますが、指導助言ということについて、従わないというような学校もあるかもしれませんが、校長、教員もいるかもしれませんが、しかし、今はむしろ上意下達が過ぎちゃって、逆に適応過剰といいますか、主体性を持って、本来自分たちが権限も責任もあるのに、それを行使しないで指示を待つというような、むしろそういうような風潮が一部にはあるということがやはり問題だというふうに思います。

 ですから、あくまでも指導助言というのは指導助言でありますので、それを受けとめながら、やはり主体的に、自分の責任と権限において、例えば学校は学校で、きちんと学校教育法で明確になっているわけですので、それをしっかりと行使していくということがあればそういった問題もないわけでありますが、現状はなかなか難しいところがあるというのが実情でございますので、そこはやはり改善の要があると思います。

新藤参考人 文部省は、戦後日本の教育行政は指導助言行政だ、権力行政ではないということをずっと言ってまいりました。実際問題としまして、文部省時代に所管していた二〇〇〇年までの機関委任事務の件数というのは、他の省庁と比べれば非常に少ないです。

 しかし、問題なのは、まさに指導助言、勧告、これこそが教育行政の本質である。これは、もちろん、一見ソフトな行政なんですが、実は、それを簡単に受容しているというのが地方教育委員会側の実態であることもまた事実です。

 と同時に、先ほど私は全国教育長協議会の話をしましたが、そこの分科会では、そういう指導助言の原案をつくっているんですよね、かなりの部分。だから、私は、共同統治ルールをつくっているというふうに申し上げてきました。ただ、この問題は、教育行政だけではなくて、日本の、とりわけ、ついこの間までの産業行政あるいは金融行政等にはかなり濃厚に見られた部分であります。

 したがって、今何をどう改善するのかというのは物すごくいろいろありますが、一つは、自治体側あるいは地方教育委員会の側が、その意味内容をきちんと自分たちの能力で判断するということが必要なんだろうというふうに思いますし、竹富島のような問題であるならば、そのためにこそ国地方係争処理委員会がつくられているわけですから、そこでどちらの言うことが正しいのか一回やってみたらいいと思うんだけれども、やめる、やらないというので、何ともしようがないんですけれども、そういうことだろうというふうに思います。

大森参考人 指導行政といいますけれども、実は法的な組み立てとして、文科省と地方自治体の教育委員会の関係というのと、教育委員会と学校の関係というのは全く違うんです。

 文科省の権限ということは、法律上、直接ということは限られていて、だから指導助言というのが地教行法に基づいてあるということで、それは事実なんです。

 教育委員会と学校の関係というのは、これは同じ地教行法の解釈として明確なんですけれども、学校設置者であるところの自治体の教育委員会の管理権限、管理運営に関する権限というのはもう全能に近いと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、そういう存在なんです。指示命令、いかなることについても究極的には出し得るんですよ。ただし、それを連発することがいいのかどうかということの問題であって、なので、法律上、指導助言に限られているなんということはありません、教育委員会と学校の関係は。

 実際どうするかという部分については、私は、国と地方の関係にしろ地方自治体と学校の関係にしろ、できるだけ指導助言は避けるべきだと思っています。なぜか。指導助言というのは曖昧性でしょう。権力というのは曖昧性に宿るんですよ。つまり、曖昧性というのは、解釈の裁量なんです。役人の、官僚の解釈の裁量の源泉は何か。法規というのは曖昧なほど役人にとってはありがたいわけですよ、自分で解釈できるから。

 だから、文科省は何と言っているかとみんなが上を向く。学校の中で出世したい人は、教育委員会は、教育委員会というのは事務局ですけれども、何と言っているかと上を向く。上向き人間で成り立っていて、イノベーションが起こってこないというのが大きな問題だと思っています。

 だから、ルールとして透明化して、上から指示すべきことはきちんと指示する。それ以外はもう下に任せる。これは法の支配ですね、言ってみれば。透明なルール、そのルールは少なければ少ないほどいい、どれぐらい少なくできるかは別問題として。そういうシステムこそ、教育に限らないんですけれども、教育についてぜひそういうふうにしていくべきだと思います。

青木委員 大変ありがとうございました。

小渕委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 三人の参考人の方、長時間にわたって大変ありがとうございます。私で最後でありますので、もうしばらくおつき合いをいただければというふうに思います。

 まず初めに、三人の参考人の方それぞれからお話を伺いたいというふうに思います。

 きょうのお話もそうですし、また、前の委員会でもそうなんですけれども、民意ということについてしばしば言及をされますし、民意をどう反映させていくのかということ、これも大きな課題なんだろうというふうに思います。その場合によく言われているのが、首長というものは民意を反映している、もちろん選挙ですから、当然、民意を反映して出てこられるわけです。

 ただ、私がどうしても疑問に思うのは、教育に熱心な方が第一の公約として教育ということを掲げて選挙を戦われる方もいらっしゃいますし、もちろんあるんだけれども、それほど大きな比重を置いていないという方もいらっしゃいます。また、有権者の方からしても、実は、自分の家の前、この地域の活性化を、あるいは農林水産業を、あるいは福祉政策をということで投票して、その総合としての首長ということになっていくんだろうというふうに思います。そういう面でいうと、これは間接民主制ということであればどの選挙も同じなわけですけれども、選ばれたから何でもできるんだということには私はやはりならないだろうというふうに思います。

 それともう一つは、やはり、首長といえども選挙で選ばれるわけですから、民意といいますか、そのときの一時的な世論に左右をされるということも当然あるだろうと思います。

 実は、私はまだ一年生議員でありまして、初めて国会で、この委員会で質問をしたのは、まさに桜宮高校の自殺の案件でありました。先ほど大森参考人の方から、入試の際のお話がございました。あの当時、市長は体育科の入試はやめるということを言われました。それに対して、教育委員会、それから文部科学省もそうだと思いますけれども、それはだめだというような話の中で、最終的に体育科の募集はせずに普通科でその人数を入れるという話になったように私は理解をしております。

 確かに、この解決策というのは、市長も、それから教育委員会も、文部科学省も、三方一両損と言えば変な言い方ですけれども、お互いにメンツは保たれたのかもわかりませんけれども、私自身が思ったのは、実際に体罰が起こっているのは部活動の場であって、それは体育科の授業の中で起こっているわけではないわけです。なぜそれでもって体育科の生徒募集をやめるのか、それは結局子供たちにそのツケといいますかというものを回しているだけなのではないかというふうにも感じました。

 そういう面でいいますと、やはり、首長が民意を反映しているとはいいながらも、それぞれ選挙事情もありますし、そのときのマスコミの取り上げ方を含めてかなり強く影響されていくというふうに思いますので、まず初めに、この民意の反映ということについて、特に首長との関係においてどのようにお三方は考えておられるか、尋ねます。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございます。

 民意の反映ということでいえば、首長さんは、まさに民意の反映された、選挙で選ばれた方だということでありますので、また、その方が総合行政を進めていくという中で、教育についても選挙公約で挙げられて当選してくださることもあるということはもちろんだろうと思います。

 それだけに、この首長さんが、民意が反映されているということであっても教育については一切関知できないというのは、やはりこれはおかしいというふうには思います。だからといって、白紙委任されて、教育問題については何でもオールマイティーということではないということでもありますので、そういう意味では、やはりしっかりと仕組みを、きちんとルールを決めてやっていこうということでありますので、その一つのあらわれとして、この教育委員会制度改革の案があるわけであります。

 そういう意味では、やはり民意の反映というのは、首長さんはもちろんでありますが、同時に、先ほども申し上げましたけれども、議会の皆さん方も、これは二元代表制としての民意の反映でありますし、教育委員さんも、これも民意の反映ということで選ばれてくるわけで、やはりそこの三者が上手にかみ合うようなそういう仕組みが一番望ましいわけでありまして、そういう意味では、現在出されている政府案がよりよいものだというふうに私は受けとめております。

新藤参考人 なかなか難しい問題だと思います。

 ただ、言えることは、選挙で私は当選したのだ、だから、私のやろうという、あるいはしようとしていることに、民意はまさにそれを支持しているんだという直截的な行動があちこちで見られますよね。こう言ってはなんですけれども、大阪の当初の話なんというのはまさにそうだと私はあちこちで言ってまいりました。

 ともかく、全てのことを選挙でつまびらかに細かく投げかけて議論をするというのは、あれは不可能です。したがって、言うならば大綱的な話を選挙で訴える以外ないけれども、それを具体的にやるという形になるならば、徹底した熟議が必要だろう。

 それから、あえて教育ということで言うならば、さっきの、冒頭で一番最後に申し上げましたが、全体的な統括を首長がやるにしても、より地域に徹底的に分権化する、もっとはっきり言えば、学校単位に分権化する、その仕組みをきちんとつくっていくということが必要なんだろうと思います。

 日の丸・君が代の通達に従わないから首だ、首までいかないにしても懲戒処分だ、こういうことをあちこちでやっているようなことが民意だという話に本当になるのか。そういうこともその地域できちんと議論をするべきであって、わしは選挙で勝ったんだから従えというような態度だけは、教育の場合においてとりわけあってはならない、そう申し上げたいと思います。

大森参考人 どうも、桜宮の件を取り上げていただきましたので、最初にそのことをお話ししたいと思うんです。

 国政調査を担われる議員の先生におかれては、当然そういった疑問なりお持ちいただくというのはすばらしいことだと思うんですが、例えば文科省の官僚、役人が現場の状況も知らずに、表面づらの報道だけで何をやっているんだというふうなことを言うとすれば、それはやはり本当に、それこそ中央集権の弊害だろうと思っています。

 これは三方一両損とお話がありましたけれども、そんな考慮をして決めたことじゃございません。現実問題として、市民の皆さん、特に受験生を抱えた保護者の皆さんからの声は、入試をそのままやってくれという声が、当初は圧倒的という状況でした。ただ、そこで一人の子供が亡くなっているんですね。そういう中で、学校の状況というものが非常に問題がありそうだ、一人一人の親御さん、保護者、あるいは一人一人の先生がどうというよりは、どうも学校の長年にわたって築かれてきたカルチャー。

 それで、先生おっしゃるとおり、部活なので普通科の生徒も入っています。だけれども、体育科の存在というのがこの学校の大きな特色、これがこの学校のカルチャー。部活動の空間が閉鎖的、スポーツの指導の中で何が起こってもみたいな、先生にお任せします、あるいは、そういう全国大会に出るような先生が大きな力を学校運営の中でも持っている。この構造全体を、現に、校長だけじゃなくてかなりの数の先生方や生徒さんともお会いしてお話ししました。これは何とかしなきゃいけないと思ったんですよ。この伝統は一旦やはり断ち切らなきゃいけないという首長の判断は、その部分は正しい。ただし、全部入試、体育科をやめちゃったら大変な混乱が、この学校だけじゃなくてほかの学校にまで波及するんですよ。

 そのことを考えると、我々は、やはり混乱を最小限にするとともに、この学校の伝統を一旦断ち切るということの両立ということが、普通科として入試をやるという解だったんです。今でも、それ以外の最善の解があればぜひ教えてほしいと思っています。責任を持つ立場にあってほかの案があるのなら、おっしゃってください。そんなものはありません。

 それから、首長の、何でしたか……(吉川(元)委員「民意」と呼ぶ)民意、失礼しました、申しわけございません。

 民意につきましては、おっしゃるとおり白紙委任じゃないということなんですけれども、ただ、もう再三申し上げましたが、個々の政策分野についてそれを確認するんですかという話ですね。そうじゃないでしょう。それで、白紙委任じゃないけれども、では皆さん、逆に何の政策もとらない、アクションを起こさない、行政、政治が動きを起こさないことがいいと思っていらっしゃるんですかということです。

 選ばれた首長が、こういう方向に教育なら教育、行政を動かしていきたいと思った場合に、やはりその最善の職、最善の存在は首長ではないかということで、それは民主、維新法案に限らず内閣提出法案のもとになっている与党合意においても同様のお考えだと思いますけれども、そこでありますよ。

 やはり、何もやらないことのメリット、デメリットと、首長がよくするためにこうしたいということのメリット、デメリット、その均衡を考えた場合に、私はやはりこの地方自治、教育行政というのは地方にということでございますので、その建前が本物になっていないところが問題でございますけれども、やはりそれは、動かす力というものを地方地方に持たせるべきだと私は思っています。

吉川(元)委員 ありがとうございました。

 続きまして、新藤参考人の方に伺いたいと思います。

 非常に大変参考になる意見をたくさんいただきましたし、私も全く同じ意見だなと思うことも多々ございます。特に、いわゆる縦系列という話でありますとか、先ほど少し冒頭の十分の意見陳述の際に、エリートとしての教育長、エージェンシーとしての教育庁、特に県のところがという問題が非常に多くあるんだという、大分の問題、実は私も選挙区が大分でありまして、非常によくわかる話であります。そういうことで、この今の制度、いろいろな問題があるところだろうと。大分でいいますと、まさにその上意下達というのがあの事件以降もさらに強まっているという状況であります。

 そういう中で、先ほど非常に、ああ、そうなのかなと思ったのは、教育の政治的中立性と教育行政の政治的中立性というお話がありまして、これは非常に参考になるお話だったと思います。

 それで、一点少し、できれば教えていただければと思うんですけれども、首長に教育行政の執行権を置いたとしても、法的な規制と公開性、さらにはコミュニティーレベルの分権化を促せば、教育の政治的中立性の問題は解決できるというふうに著書の中でも述べておられますし、今ほどもまさにそういうことをおっしゃられたと思うんです。

 そこで、教育行政の執行権を首長に付与した場合の法的な規制のあり方ということについて、もし何か具体的なお話があれば、お聞かせ願えればというふうに思います。

新藤参考人 首長に対しては、当然のことながら、まず、教育行政のというよりも、教育の政治的中立性を守る。だから、当然のことながら、教員人事であるとか、あるいは教科書の採択であるとか、その他いろいろございますが、そういうことへの介入をきちんと厳しく規制することが必要だと思います。

 あと、法改正まで、なかなか法制度の改正、ああいうふうに私が書いたところで事態が動くとは思いませんけれども、より地域への分権化した、そういう教育システムを日本に築くという形で法制度の設計を図っていく必要がある。そんなところです。

吉川(元)委員 続きまして、貝ノ瀬参考人の方に伺いたいというふうに思います。

 今回、政府案も出されておりますし、ここでは教育委員会というのは残ります。ただ、今の教育委員会の活動、大変改善すべき点も多々あるのではないか。時間が余りありませんので細かくは言いませんけれども、例えば、傍聴者の数がゼロである市町村、七割近くなっている。あるいは、学校や事務局に寄せられた意見等を紹介した回数というのも、一回も実施していない教育委員会等々も多々、圧倒的多数がそういう状況になっております。

 そういうことでいいますと、地域の人々のつながりの連携が保てていない、そういうところが一つまた隠蔽体質を生み出す原因ではないかというふうに思いますが、これらの点についてどういった改善が可能なのかということについて、少し御意見をいただければと思います。

貝ノ瀬参考人 ありがとうございました。

 確かに、教育委員会の形骸化ということはもう御指摘のとおりでございますが、やはり、ただ単に教育委員さんがいわゆる地域の名士というようなそういう方々で占められていますと、どうしてもなかなか実のある議論というのは難しいことが多いのではないかと思います。

 先ほど来申し上げておりますけれども、地域活動を積極的にやっている方とか、それからコミュニティースクール等で活躍している方、学校支援地域本部等で活躍している方、スポーツアスリートで一生懸命やっていらっしゃる方、また、地域のいろいろな奉仕活動などもやっていらっしゃる方とかいうことで、さまざま教育に、命をかけるまでいかなくても、相当汗をかいていらっしゃる方の代表を登用していくということが、やはり活性化の道につながっていく一つの方策だろうというふうに思います。

 以上でございます。

吉川(元)委員 貴重な御意見、大変ありがとうございました。

 以上で終わります。

小渕委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長前川喜平君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中根一幸君。

中根(一)委員 自民党の中根一幸です。よろしくお願いいたします。

 一昨日、当委員会で前に我が党の義家先生が、教育委員会制度の改革のために自民党内では野党の時代からずっと、インナーの会議も含めて二百時間に上る会議を行ってきたという、ちょっと苦労話みたいなお話も聞かせていただきました。その野党時代からずっと苦しい中を、この教育委制度改革の法案をつくるために一番中心になって御尽力されたのが大臣でございます。

 そして下村大臣は、義家先生も言っておられましたが、教育委員会制度は十年はかかるだろうと言われたものをわずか一年数カ月でここまで持ってこられました。やはり、大臣のこの熱い熱意と御努力、本当に心から私も敬意と感謝をまずもって申し上げる次第でございます。まさにこの法案が成立すれば、歴史に名を残す大臣になるのではないかと思っております。

 私も、この教育委員会制度の改革の会議、自民党内でことしから、部会またインナーの会議を含めて五十時間ぐらいですか、参加させていただいております。ここにおられます義家先生や、渡海元大臣や、また丹羽部会長が中心になりまして、一つ一つこの事案に対していろいろな角度から丁寧に、また慎重に審議をしてまいりました。時には、誰とは言いませんが、意見が違うということで、殴り合いにはならなくても、どなり合いといいますか、言い合いになるようなことも幾つかありましたが、諸先生、諸先輩方を見て、おのおの、教育に対する、また改革に対する熱い思いというのがぶつかり合った大変有意義な会議だったと私は思っております。

 そうした中で、今回、一部でこの政府案に対して、妥協の産物だとか大変中途半端な改革案だというような意見が言われておりますが、それは意見として当然拝聴いたしますけれども、私は、こういったことを考えると非常に残念でなりません。

 それの証左に、一昨日は、当委員会は朝から夕方まで約七時間ですか、審議をしました。そして本日も、午前中、三人の参考人の方から聴取を聞きながら三時間、審議しております。どの先生方もいろいろな角度から多方面にわたってすばらしい御質問をされており、大変有意義な会議を続けていると思っておりますが、これら全てほとんどが、先ほどお話しした自民党内での会議で議論をされてきた内容であることも事実であります。これから委員会また公聴会などでさらに議論を深めていけば、この政府案が当初の目的に対して一番ベストな案であり、また、バランスのとれた法律案であるということがわかっていくのではないかと思っております。

 今回の教育委員会の改革のポイントというのは、御承知のように、もう私が言うまでもなく、いわゆる教育委員会の教育の無責任体制をなくして、有事の際にも迅速でかつ的確な対応を行える、そのためには責任と権限を明確化する、それと同時に、その一方で、教育の中立性、また継続性、安定性、これをどう担保するかというところが一番大事になってくるかと思います。

 本日は、この観点の中から、確認事項も含めまして質問をさせていただきたいと思っております。

 まず新教育長についてでございますが、法改正をして教育長と教育委員長を一緒にした。この新教育長を設置しても、今までと実は余り変わらないんじゃないかという御指摘がございます。

 改めてもう一度、これらについて御説明をお願いいたします。

西川副大臣 中根先生の今の御質問のお話を聞いておりまして、本当に私も、審議会等の民間の先生の御意見も拝聴しながら、最初、A案、B案という案が出てきて、かなり対立したような議論がありましたけれども、その中で、やはりお互いが議論を深めることによって、お互いの立場で実は気づかなかったこと、違う案に対する理解が深まること、そういうことを法案提出以前に大変長い議論が行われたということが、本当にある意味ではこういう今の形になったことだと思っておりますので、これは決して妥協の産物ではなく、お互いの立場が理解を深めた結果だと、私はそんなふうに思っておりますけれども、その中で特に、常勤の教育長ということで、責任体制を教育委員長さんと一緒にするということで明確化したということ、これはやはり大変大きな改革の一つだと思っておりますので、これは、改革のメッセージということで一番大きなメッセージになるのではないかなと思っております。

 それとやはり、常勤の教育長さんが教育委員会の代表者として常時迅速に会を招集したり、あるいは情報が速やかに教育委員会の中に届くということで、教育委員会のある意味では活性化、議論の活性化がなかなか見えないという御指摘がかなりあったと思うんですが、その辺の改革が進むのではないかと、そんなふうにも思っておりまして、そしてやはり、民意の反映である首長さんがきちんと総合教育会議という場を設けて、しっかりと意見を述べながらお互いに意思疎通をしっかり果たしていくという、これはやはり大変大事なことで、改革の意義、新しい制度の意味はすごく大きなものがあると思っております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 教育行政の一義的な責任を新教育長に一本化した、責任を明確化された、もうおっしゃるとおりだと思っております。

 今までの制度は、御案内のとおりでございますが、非常にわかりづらかったわけですよ。一般的に、今でも教育長という方が教育行政ではその町の、その県のトップだと思っておりますが、実際はそうでない。教育委員会の一委員であって、そこには教育委員長がいた。しかも、教育委員会という合議体で決められて、教育長はそこから任命を受けている、事務局長的にやっているということ。全くこれだけでもわかりづらかったわけですが、それを今、副大臣がおっしゃったように、一本化した、新教育長にした、それを代表にしたということ、これは大変明確になっていると思いますし、また、その新教育長が教育委員会の代表者になりました。

 これによって、先ほど言ったように、今まで教育委員長というのがいたわけで、委員だったわけですが、それがなくなり、それが代表者になったわけでございますから、当然、いろいろな情報提供を含めて迅速に行われるし、また、会議を招集することは可能でございますから、いろいろな面で教育委員会の活性化ということが起きてくるのではないか。

 もう一つ、教育長の任命権、任命責任を負うことになるということでございます。これも明確化になったということでございます。

 今までは、教育委員の合議体が教育長を任命をするということでしたが、これからは、首長さんが任命または罷免をするということになり、首長さん側もしっかりと責任を負う、または、これから質問をさせていただきます総合教育会議などでいろいろと話し合われて、連携を密にしていくことになる、責任を負うという体制もでき上がったということでございます。

 続いてもう一つ、この新教育長の任期について質問なんですが、今まで四年ということでございましたが、三年にしたということ、これについても詳細な御説明をお願いいたします。

西川副大臣 この新教育長の任期については、やはり教育委員の代表であるということで、同じように四年だ、そういう意見もありました。あるいはまた、権限が集中するのでやはり二年だろうという意見もあったことは承知しております。

 そういう中で、首長の任期が四年ということで、四年になってしまうと、民意を代表する首長が教育長を任命できる機会が一度もないこともあり得るということで、そういう意味で三年という案が浮上したと思っております。それと、一定の仕事をするのにやはり二年という期間ではなかなか厳しいだろう、教育長さんとしての仕事をある程度きちんとやり遂げるという意味では、やはり最低三年は必要だろうと。

 そういう意見の中で、教育長の権限が大きくなることをまた踏まえ、教育委員よりも任期を短くする、そして、委員によるチェック機能と議会同意によるチェック機能を強化する、そういうことも加味いたしまして、三年ということになりました。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 民意を代表して選ばれる首長さんの任期より一年短くすることで、首長の任期中、少なくとも一回はみずから教育長を任命することができる。そして新しい新教育長ですが、権限と責任が重くなるということで、教育委員よりも任期をやはり短くしなきゃいけない。そして、教育委員の三分の一の招集をかければ教育委員会ができるわけですから、また、議会の同意などを入れることによってチェック機能を強化した。

 そういうようなことで、チェック機能を強化するんだったら、短い方がより強化できるということで二年という案もございましたが、教育というものはやはり時間がある程度かかる、計画性を持って一定の仕事をやり遂げるには、やり続けるには、二年じゃなくて最低やはり三年はかかるだろうというような、いろいろな御議論の中でこの三年ということが出てきたというお話をしていただきました。

 きょうは時間があれなのでまた詳しくこのあたりもやっていきたいんですが、この今のお話だけでも、先ほど来お話しした、余りこの改革は変わらないんじゃないかというのには当てはまらないということがこれだけでもおわかりになってきたのではないでしょうか。

 次に、そもそも今回のこの改正のきっかけというのは大津市のいじめの事件が発端ですが、それを調べるに当たり、いろいろな問題が出てきたんですね。責任の所在が不明確であることや、首長と教育委員会との意思疎通また連携に課題があったなど、教育行政全体のいわゆる無責任体制というのが浮き彫りになってきた。これはもちろん大津市だけではなくて、全国の市町村の自治体、県にも当てはまることであり、今般のこの抜本的な改正になったと私は承知しております。

 そこで質問ですが、今回、この改正により、大津市のいじめ事件のような事案に対して、起きた場合、迅速に誰がどう対応していくのか、そして、今まで機能しなかったと言われている教育委員会はどうなり、さらに、首長はこの事態で何ができるのかということを改めてお伺いいたします。

前川政府参考人 今回の改正におきましては、責任の明確化を図るために、従来の教育委員長と教育長を一本化した新たな教育長を置くこととしているわけでございますが、いじめ事件などが生じた場合には、まず、この教育長が責任を持って迅速に対応するということになると考えております。

 また、常勤の教育長が教育委員会の代表者となりますので、教育委員会に対する迅速な情報提供あるいは会議の招集ということが可能になるということで、教育委員会としての対応も迅速化が進むと考えております。

 また、首長は、これは昨年つくっていただきましたいじめ防止対策推進法に基づきまして、教育委員会または学校が行った調査について、必要と認める場合には再調査を行うなどの権限を持っているわけでございますけれども、そういった首長の立場から、緊急の場合として対応が必要だと判断する場合には、総合教育会議を招集し、講ずべき措置について、首長と教育委員会との間で協議を行うということができます。

 その際に、教育委員が参集できないというような時間的余裕のない場合には、首長と教育長のみで会議を開く、その上で協議をするということも可能でございます。

 こういった形で、いじめ等の対応につきましては、迅速かつ責任ある対応ができると考えているところでございます。

中根(一)委員 ありがとうございます。緊急時で、今までと違って、迅速な対応ができるというようなお話をいただきました。

 そして、今、大津市のいじめの事案に照らし合わせてお話をいただいたと思うんですが、この総合教育会議、いろいろと利用することができると思うんですけれども、当然、この緊急的な対応の総合教育会議を行った、そして、その次もいろいろなことができると思うんです。そのあたりについてもちょっともう一度。

 特に、子供たちのことになりますので、いろいろな個別情報、個人情報もあります。そのあたりが全て原則公開になっているということでございますけれども、それらは非常に慎重にしながら、もちろん基本的に公開にしなきゃいけないことなんですが、かといって、全て公開にすると、いじめとかを含めた二次的な被害にもつながることもあると思いますので、それらについて、もう一度ちょっと詳しくお尋ねいたします。

前川政府参考人 総合教育会議におきましては、いじめのような事案が起きた場合、例えば、学校や教育委員会の対応を検証すること、あるいは、事件発生後の対応方針を改めて検討すること、その他、当該学校あるいは自治体全体としての再発防止策の検討や立案について議論するということが考えられるわけでございます。

 特に、いじめ防止対策推進法におきましては、いじめによる重大事案が発生した場合、教育委員会または学校が行う調査の結果につきまして、首長は、必要があると認めるときには再調査を行うことができるということになっているわけでございますが、この再調査の必要性を判断するに当たりましても、総合教育会議を活用することが考えられます。

 総合教育会議は原則公開でございますが、個人の秘密を保つため、必要があると認めるときには、非公開とすることができるわけでございます。

 具体的には、例えばいじめ事案におきましては、児童生徒等へのアンケートの実施方法やスクールカウンセラーの増員等の再発防止策を検討、立案するというような場合につきましては、これは個人情報にかかわらない議論になるということで、公開の場で行うということが考えられるわけでございますけれども、一方で、生徒の氏名や学校名、学年等の、個人の特定につながりかねない個人情報を取り扱う場合も多々あると考えられます。また、不確かな事実関係を共有することによって二次的な被害が新たに生じるというようなおそれもある場合がございます。こういった場合には非公開で扱うということが適当であるというふうに考えております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 もう一点だけちょっと総合教育会議について、たしか今までの質問がなかったと思うので御確認させていただきたいんですが、これは首長の意見を反映させるだけの場ではなくて、当然、教育委員会側から首長との協議を呼びかけるということができると思うんですが、それについて御回答願います。

前川政府参考人 改正法案の第一条の四第四項におきまして、「教育委員会は、その権限に属する事務に関して協議する必要があると思料するときは、地方公共団体の長に対し、協議すべき具体的事項を示して、総合教育会議の招集を求めることができる。」という規定がございます。こういうことからいたしまして、教育委員会は、総合教育会議において、具体的な協議体を設けるように求めることが可能であるということでございます。

 教育委員会の側から積極的に総合教育会議で協議することを求めるということが想定される事項といたしましては、例えば、教職員定数の確保でありますとか、学校の耐震化の推進でありますとか、学校の図書費や教材費の確保でありますとか、ICT環境の整備でありますとか、こういった政策の実現のために、予算の調製、執行等の首長の権限との調整が必要な事項、こういった事項が想定されるところでございます。

中根(一)委員 時間が来まして、これからまたさらにいろいろ議論を深めさせていただきたいと思いますが、最後に大臣に、こういうシステム、多分、公明党の稲津さんがこれからお話しすると思いますが、どんないいシステムができても、それを使う人、運用する人によって大きく変わってきてしまう。問題になっております、教育委員のメンバーの構成とか、教育委員の選任の仕方、教育委員会の開催の仕方、また、教育事務局のあり方、教職員の政治的な中立のあり方など、今後どのようにしていくのか、大臣から決意を含めた御所見を伺って、質問を終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。

下村国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 これから、教育委員については地域の多様な民意が反映されるよう、例えばコミュニティースクール等の関係者を選任したりとか、教育に関する高度な知見を有する者も含めることも有効な方法と考えられます。

 また、教育委員会の開催の仕方についても、会議の開催前に事前資料を配付してよく勉強しておいてもらう、あるいは、平日の夕方以降の時間帯とか、土日、休日の開催などの工夫が必要だと思います。

 文科省においても、都道府県、指定都市の新任教育委員に対して研修を行っていることに加えまして、文科省と都道府県教育委員会との共催で、市町村教育委員会の委員等を対象にした研修会の実施をさらに充実させていきたいと思います。

 また、教育委員会事務局に対しても、教育の専門性のある行政職員を計画的に育成していくことが有用であるというふうに考えられます。

 任命権者である教育委員会が、法令違反等を行った教育公務員に対して厳正な措置をとることも一方で教職員の政治的中立性の確保については必要でありまして、政治的行為に該当する行為があった場合は、文科省として、各教育委員会に対しても指導を徹底するということもあわせてやってまいりたいと思います。

中根(一)委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 それでは、通告に従いまして、順次お伺いをさせていただきます。

 最初は教育長の人選についてということでございますけれども、これも、これまでの本会議、委員会等でも議論をされてきました。改めてのお伺いになりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 教育長の任命については、当然、首長が議会の同意を得て任命されるということでございまして、中教審の答申の中でも、「教育長としてふさわしい人物であるか、その資質能力や適格性を担保するため、議会の同意を得ることとすることが適当である。」このように具体的に示されておりました。

 その上で今国会の中で議論されているのは、例えば、その選考の過程を公開、あるいは議会同意の過程で所信表明の機会を得るとか、そういったことを踏まえて、言うならば、丁寧なそういう人選の過程を踏んでいくべきだ。そうした選任の方法を工夫するという必要性も実はこの中教審の答申の中に書かれているというふうに私は認識していますが、ただ、法律上は、結果として、議会の同意を得てということしか明記をされていない。

 したがって、これまで議会で議論をしてまいりました丁寧な手続、それが可能になるような機会、あるいは資料の提供とか、そうした必要性があるということをこれは施行通知等で周知することが必要ではないかな、私はこのように考えておりますが、見解を伺いたいと思います。

前川政府参考人 新教育長は、現行の教育長と教育委員長の職務を一本化した職でございまして、教育行政における大きな権限と責任を有しまして、従来に比べその職責が重くなるということでございますので、その資質能力を議会において丁寧にチェックするということが必要であるというふうに考えております。

 そのため、議会同意に当たりましては、例えば、地方公共団体において教育長候補者が議会における所信表明を行うなど、丁寧な手続を定めることも一つの方策であると考えております。

 法案が成立いたしました場合には、施行通知や改正法の説明会等を通じまして、議会同意に当たっての所信表明などの、教育長の資質能力をチェックするためのさまざまな工夫について周知してまいりたいと考えております。

稲津委員 成案にした際には、ぜひ、そういった点をよろしくお願いしたいと思っております。

 次に、教育委員会の機能の強化についてということで、これは大臣にお伺いしたいと思っております。

 私も本会議で、新教育長の資質というものについて非常に大事だ、かつ、やはり教育長としての機能をしっかり高めていく、そういう研修の必要性も大事だという話を申し上げました。

 先ほどの中根議員の質問と関連するんですけれども、確認も含めてお伺いしたいと思いますが、教育の行政力を高めていくために何が必要かと。これはいろいろな視点があるんですけれども、やはり教育職、行政職員の資質を高めていくということがこれは現実の問題として非常に大事だろう、このように考えております。

 午前中の参考人の質疑の中で参考人の方からも、この教育長の自己研さん、こういったものがやはりきちっとしていかなければいけないという大変的確な、そういった御意見もありました。なるほどと思って伺っておりましたが、あわせて、職員の方をどうするかということなんですね。

 それで、指導主事等の教育職、これは専門職としての資質の向上とか、それから、行政職の方も予算の関係だけ見ていればいいということにならないと思うんです。したがって、予算の管理も含めてですけれども、もう一方で、やはり教育の専門的な分野についての資質も十分身につけておく必要がある、このように思っております。さらに、教育行政部局内を横断的にコーディネートするようなそういうスタッフの必要性ということもこれは必要になってくるんだろう、このように思っております。

 いずれにしても、この教育職、行政職、双方の資質の向上、体制強化、それから機能強化、教育行政力をいかに高めていくのかという視点に立って、こういったことを大臣はどのようにお考えかということをまず一つお伺いしたいのと、あわせて、採用の段階からあらかじめその教育委員会事務局のプロパーとして採用していく、そして、長期的に人材育成しながら専門分野の機能、資質をどんどん高めていくといった採用の仕方も、これは既に取り入れている自治体もありますし、都道府県の方ではそういう採用もしておりますけれども、こういったことについて何らかの方策も検討すべきじゃないかな、このように思っておりますが、この二つの点について大臣にお伺いしたいと思います。

下村国務大臣 現在、教育委員会がみずからに期待されている機能を十分に果たしていくためには、教育委員会を支える事務局職員の資質能力、御指摘のように、さらに向上させていく必要があると考えます。

 各教育委員会においては、教育職、行政職、いずれの職員についても、一層の行政能力の向上の観点から、教育的内容等専門的な内容と管理的業務の双方についてバランスよく職務を経験させるなど、計画的な人事異動を行うとともに、職員に対する研修の実施に努めていくことが必要であるというふうに考えます。

 また、教育行政に高い専門性を有する職員を確保するため、教育委員会プロパーとして職員を育成することも、御指摘のように、一つの方策であるというふうに思います。教育委員会事務局と首長部局が連携して人材育成の方針を検討することが重要であるというふうに考えます。

 国においては、現在、さまざまな研修を実施しているところでありますが、今後、各都道府県教育委員会等とも連携して、さらにその充実方策について検討してまいりたいと思います。

稲津委員 次に、総合教育会議についてお伺いしたいと思います。

 これも今回大変な論点になっておりまして、さまざまな議論がこれまでなされてきました。かなり重複すると思うんですけれども、お許しいただいて、確認ということでさせていただきたいと思っています。

 一つ目は、この総合教育会議の会議の中身の透明性の確保ということについて伺いたいと思っていますけれども、簡単に言うと、会議の原則公開とか議事録作成をどう担保するのかということでございます。

 この総合教育会議、首長と教育委員会で構成する、大綱、それから重要な教育施策の方向性及び緊急事態の対処、こういった事項を協議、調整する、そういう大変重要な会議であるというふうに思っております。

 そうであるからこそ、住民に開かれた、透明性のあるそういう会議にしなくてはいけないとこのように思っておりますが、この透明性の確保ということを考えたときに、やはり、その会議の公開の方法ですとか議事録の作成それから公開について、それがしっかり促されていくようなそういうことが必要であろうと。

 具体的に言うと、こうしたことについても施行通知等によって明らかにする必要があるのではないかと思いますが、見解を伺いたいと思います。

前川政府参考人 総合教育会議は、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進するために設置するというものでございます。

 総合教育会議における議論を住民に公開し、住民への説明を果たすとともに、その理解と協力のもとで教育行政を行うという趣旨をより徹底する必要があると考えておりまして、この改正案におきましては、会議につきましては、公開を原則とする、また、議事録の作成、公表を努力義務とするということとしております。

 法案が成立した場合には、この施行通知や改正法の説明会等を通じまして、議事録の作成、公表につきましては、可能な限り行うよう指導してまいりたいと考えております。

稲津委員 成案できた場合には、ぜひそういったこともやっていただきたいと思っております。

 もう一点、この総合教育会議について伺いたいのは、実際に会議を進めていくということに当たっては、やはり実効性のあるものにしていかなければならないだろうと。これは当然のことなんですけれども、そのことを一つ伺っておきたいというふうに思っているんです。

 地域の教育行政をどうしていくのかということについては、このまさに総合教育会議の中でいろいろな協議をしていく必要があるだろう。そこでどうしてもやはり求められるのは、首長もそうですけれども、この教育委員会側の方の質の向上というのが挙げられると思っています。

 そういう意味では、もちろん、教育に対する深い関心とか熱意とか、あるいは専門的知識、これを有することが非常に大事ですけれども、あわせて、会議においては、当然、その首長に対してもしっかり意見具申できるようなそうしたことも必要だろうし、いずれにしても、この総合教育会議が非常に機能を持って、そして会議そのものが実効性があるものにしていくための視点が私は非常に大事だと思っていますが、この点についての文部科学省の見解を伺いたいと思います。

前川政府参考人 総合教育会議は、首長と教育委員会という執行機関同士の協議及び調整の場として設置するものでございまして、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政が推進されることが期待されるものでございます。

 この会議を実効性あるものとするための方策といたしまして考えられるものとしましては、例えば、あらかじめ定例日を設定しておくというようなこと、あるいは、協議題をあらかじめ定めて、そのために必要なデータや事実関係に係る資料を事務局においてしっかりと準備をするというようなこと、あるいは、協議題を精選した上で、重要な事項について時間をかけて議論を行うというようなこと、地域の教育課題について日ごろから情報共有を図っていくというようなこと、さらに、保護者、住民、教職員等の関係者や、あるいは教育問題について詳しい専門家の学者などから協議題に関して意見を聞く機会を設けていく、そのようなことを通じて会議を実効性あるものにしていくことができるのではないか、そのような工夫が考えられるのではないかと考えております。

稲津委員 今の答弁にもありましたけれども、具体的な会議の中身についても少しまた触れていただきました。大変大事な視点だというふうに思っております。

 それで、最後に、教育委員会による教育長のチェック機能ということについて伺っておきたいと思うんです。ちょっと、きょう伺うのは少し細かな話になって恐縮なんですけれども、大事な視点だと思っていますので、確認させていただきたいと思っております。

 一つは、教育委員会が委任した事務についても、必要と認めた事務については教育委員会がその方針を定めるべきではないかということでございます。

 教育委員会から教育長への委任事務というのは大変広範にわたる。その全ての事務について執行方針を定める必要があるかどうかというのはこれはまた別ですけれども、ただ、その中でも、教育委員会がこれは本当に必要だということを認めた事項については、例えば、教育委員会はその執行方針を定める必要があることを施行通知において明らかにすべきではないか、このように考えますけれども、この点についての見解を伺いたいと思います。

前川政府参考人 教育委員会は、教育委員会規則の制定でありますとか学校の設置、廃止など、改正法案の第二十五条第二項におきまして教育長に委任できないものとされている事項を除いては、その権限に属する事務の一部を教育長に委任することができるということでございます。

 教育委員会は、合議制の執行機関といたしまして、教育長に委任した事項についても必要に応じて教育長からの報告を求めることができるということにしておりますが、あわせまして、教育委員会会議で議論し、この委任する事項についての方針を定めるということは可能でございます。

 この方針を定めた上で委任するということも可能でございますので、法案が成立した場合には、施行通知や改正法の説明会等を通じまして、こういった方向で適切な運用が行われるよう周知してまいりたいと考えております。

稲津委員 では、最後にもう一点このことに関連して、これは確認という意味で伺っておきます。

 教育長は教育委員会の意思決定に基づいて事務を執行しなければいけない、これは当然のことだというふうに思います。教育長は合議体の教育委員会の構成員でございますので、当然、教育委員会で定められた事務の方針ですとか決定には、そのとおり進めていくのは当然だと思うんですけれども、改めて、教育長は教育委員会の意思決定に基づいて事務を執行しなければいけないということを周知すべきではないかというふうに思っています。

 この点についての見解をお伺いして、私の質問を終わります。

前川政府参考人 教育委員会は合議制の執行機関であるということでございまして、教育長は、教育委員会で意思決定されたことに基づいて事務を執行しなければならないということは当然でございます。

 法案が成立した場合には、教育長の適切な事務の執行が行われるように、こうしたことにつきましても、施行通知や改正法の説明会等を通じて趣旨を徹底してまいりたいと考えております。

稲津委員 終わります。

小渕委員長 次に、菊田真紀子君。

菊田委員 民主党の菊田真紀子でございます。

 もうかなりほかの委員からいろいろ御質問がありまして、重複するようなところもあると思いますけれども、質疑を深めるという意味で質問させていただきたいと思います。

 今回の政府の改正案では、教育委員長とそして教育長を一本化して新教育長の権限が従前よりもかなり強化されることになるという御説明をいただきました。まず、この新教育長と教育委員の関係について伺います。

 先ほど、午前中、貝ノ瀬参考人からもお話がありましたけれども、教育長というのは常勤です。したがって、さまざまな情報が毎日集積される、収集されるわけでありまして、決裁もさまざま毎日こなしている、どこの地域のどこの学校でどんな問題が起こっているのか、こういうことも大体把握できるということであります。

 他方、非常勤の教育委員というのは、多くの場合がその地域、その町の名士でありまして、例えばお医者さんであったりとか弁護士の先生であったりとか、本業を持ちながら、その仕事の傍らでこういった教育委員をお務めになっていただいているケースが多いというふうに思います。

 そのため、月に数回開かれる会議におきましては、事務局からまとめて報告を受けて、どうしてもそれを追認するというケースが多いように思われるわけでありますけれども、教育長と教育委員では圧倒的に情報量が違うということからしても、なかなか、教育委員が事務局の提案をひっくり返したり、あるいは教育長の方針とは全く違う方針、あるいは考え方と違う意見を述べていくということは、現実には難しいのではないかというふうに思うわけであります。

 こういうことが、結果として、現在の教育委員の会議におきまして事務局の提案を追認するだけの形骸化という指摘を受ける原因の一つ、要因の一つではないかというふうに思うわけでありますが、この改正案によりまして、教育長と教育委員のいわゆるパワーバランスというものがどういうふうになるのか、まずお伺いしたいと思います。

前川政府参考人 今回の改正案におきましては、教育行政の責任の明確化を図るため、現行の教育委員長と教育長の役割を一本化した新たな責任者である新教育長を置くこととしております。これによりまして、緊急の対応が必要な問題に対しても、迅速かつ適切な教育委員への情報提供でありますとか会議の招集といったことが可能になりまして、教育委員会の活性化にも資するものと考えております。

 教育長の職責が重くなるということが、教育委員の職責が軽くなるということを意味するわけではございません。一方、教育委員会による教育長のチェック機能というものも強化しなければならないという観点で、教育長の任期を教育委員よりも一年短い三年としているほか、教育委員による招集の請求に関する規定でありますとか、教育長に委任した事務についての報告に関する規定などを盛り込んでいるところでございます。

 加えて、教育委員会の審議を活性化するためには、教育委員の人選が重要であると考えております。これは首長が行う事務でございますけれども、この教育委員には、教育に対する深い関心や熱意を持っている、そういった人を選ぶ、また新教育長の事務執行に対するチェック機能を果たすという自覚を持つ、そういった方々が必要である、その中には、教育に高度な知見を有する人も含めまして、幅広い人材を得ることが必要であるというふうに考えております。

菊田委員 そのとおりでありまして、教育長の権限、教育長の力が大きくなるということは、普通の一般の教育委員の権限が小さくなるということではないわけでありまして、教育長が権限を前よりも大きなものを持つとしても、教育委員もあわせて教育長と同じレベルで情報を収集したり、みずから率先して行動したり、そして本当に連日会議に主体的にかかわっていく、こういう努力をしていかなければならないわけでありますが、現実としまして、非常勤である教育委員が、本業を持ちながら、言葉は悪いですけれども片手間といいますか、あいている時間でやりくりしながら教育委員のメンバーとして教育行政にかかわっていくというのは、私はもう限界に来ているのではないかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 改正法案におきましても教育委員は非常勤とするという前提でできているわけでございますけれども、非常勤の教育委員がその職責を十全に果たすためには、確かに教育委員会の会議の持ち方などについての工夫も必要であるというふうに考えております。夕刻あるいは土日に開くというようなことを含めまして、会議の持ち方について工夫をすることによって、教育委員会の会議の活性化が図られるように促してまいりたいというふうに考えております。

菊田委員 政府案におきましては、総合教育会議が新たに設置されるということでありますけれども、その役割というのは協議と調整でありまして、平時はともかくといたしまして、やはり緊急の、子供たちの本当に身体にかかわる問題、あるいは安全にかかわる問題、命にかかわる問題、そういうことが発生したときに、まさに緊急時において、迅速な対応、そして迅速な決定ができるのかどうかということであります。

 これは、先般、我が党の細野議員からも同じような質問があったと思いますけれども、今までと同じような繰り返しでは、何のための新たな組織かということが問われるわけでありまして、大事なことは、繰り返し繰り返し何度も会議をやることではなくてきちっと決定をしていくということが求められる、これは大津の教訓の一つではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

前川政府参考人 いじめによる自殺等の重大な事案が生じた場合、まずは、教育委員会の責任者として設置されます新しい教育長が責任を持って対応するということが必要でございます。

 その緊急事態が生じた場合に、首長は首長の立場から必要な対応をする、そのために総合教育会議を随時招集することができるわけでございまして、総合教育会議は全ての教育委員が出席することが基本ではございますけれども、緊急事態で教育委員を招集する時間の余裕がないというような場合におきましては、この会議の定めるところによりまして、首長と教育長のみで会議を持つなど、柔軟で迅速な対応も可能でございます。

 このような仕組みによりまして、明確化された責任体制に基づいて、迅速な危機管理体制の構築が可能になっていくと考えております。

    〔委員長退席、丹羽(秀)委員長代理着席〕

菊田委員 この総合教育会議は原則公開だというふうに伺っていますが、緊急の場合、全員がそろわない、首長と教育長だけでこの会議をやることもあるわけだと御説明がありましたけれども、その場合も公開が原則ですか。

前川政府参考人 その場合も公開が原則でございます。

菊田委員 それから、議事録については、先ほども御質問がありましたけれども、やはり私は、努力義務だけではいつまでたってもできるところしかやらないということにとどまるというふうに思います。これはやはり、しっかり義務づけるということを目指すべきだというふうに考えますが、いかがでしょう。

前川政府参考人 現行の教育委員会におきまして、私ども調査したところによりますと、平成二十四年度の数字でございますが、教育委員会の議事録を公開していないという一般市町村が四八・七%となっているところでございます。

 教育委員会における議論を住民に公開し、住民への説明を果たすとともに、その理解と協力のもとで教育行政を行うということは非常に重要でございますので、この教育委員会で何が議論されているかということを住民にお知らせするということは大変大事なことであると考えております。

 もともと、教育委員会の会議そのものが公開でございますので、住民がそれを傍聴するということができるわけでございますけれども、この改正案におきましては、公開の原則をさらに徹底して、教育委員会の会議の透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化するという観点から、従来から会議を公開しているという原則に加えまして、議事録を作成、公表するという努力義務を規定しているところでございます。

 同じ行政委員会でございましても、公安委員会あるいは労働委員会といったところにつきましてはこのような規定は存在していないわけでございまして、この教育委員会につきましてこのような努力義務を課すということは、大きな前進であるというふうに考えているところでございます。

 法案が成立した場合には、施行通知や改正法の説明会等を通じまして、可能な限り、議事録を作成、公表するよう指導してまいりたいというふうに考えております。

菊田委員 教育委員会会議の原則公開というのは、これは、平成十三年の法改正により、日本全国全ての教育委員会が公開されているということですね。確認をさせてください。

前川政府参考人 おっしゃるとおり、平成十三年の法改正によりまして原則公開ということが義務づけられておりますので、全国全ての教育委員会でそのとおりの実践が行われていると考えております。

 現行法におきまして、人事などにつきまして、三分の二以上の委員の議決により非公開としたときを除いて公開するということが法定されているわけでございますので、この点について改正後も変わりはございません。

菊田委員 ありがとうございました。

 やはり、原則公開、これは当然でありますけれども、平日あるいは日中の時間といいますと、これを市民が、住民がどれだけそこに足を運んで傍聴するということができるかといいますと、現実にはなかなか難しいということもありますので、私の考えは、これはできるだけ早く努力義務ではなくて義務づけるというふうにしないと、事務的な処理体制が不十分だということで、できないところ、しないところはいつまでたってもそのままになってしまうということでありますので、問題提起とさせていただきたいというふうに思います。

 続きまして、大臣にお聞きかせいただきたいと思いますが、当初、全国市長会からは、地方教育行政の実施につきまして、教育委員会を設置して行うか、あるいは市長の全面的な責任のもとで行うか、選択可能な制度とすべきだという提言があったというふうに聞いておりますが、こうした意見について大臣はどういうふうに考えておられますか。

    〔丹羽(秀)委員長代理退席、委員長着席〕

下村国務大臣 どの地域においても、責任ある地方教育行政を構築する観点からは、統一的な教育行政の仕組みであることが必要であり、こうした考えから、今回の改正案においては、全国全ての地方公共団体において同様の仕組みをとるということにしているわけであります。

 なお、全国市長会会長は、三月十四日付で、教育委員会制度の改革に関する与党合意についてと題するコメントを発表しておりまして、総合教育会議の設置により、「首長の権限が強化され、指摘されていた責任の所在の明確化が図られることになることを期待する。」と述べているところでありまして、また先日、全国市長会の森会長が私のところに参られまして、今回の教育委員会改正案については評価をしたいということで、わざわざお礼に来られました。

菊田委員 ありがとうございました。

 大臣、そもそもどうしてこういう意見が出たというふうにお考えでしょうか。

下村国務大臣 それはやはり、首長が選挙で教育についての公約をしても、なかなかそのとおりに教育委員会が自分の意向どおりに反映してくれないということから、権限を例えば一本化して、そして住民に対しては選挙公約についてはしっかりとそれを実行、実現をしていきたいという思いの中から、一方で、教育委員会制度がきちっとうまくいっていて、あるいは首長と教育委員会のコミュニケーションがとれているというところは、あえて選択しなくてもいいというところもある、そういうそれぞれの自治体の首長さんの状況によって、選択可能な制度というような要望が出てきたのではないかというふうに思います。

菊田委員 政府案にあります地教行法五十条の文部科学大臣の指示に関して、運用の仕方によっては教育の根幹をなす地方自治を否定しかねないのではないか、極めて抑制的に発動されなければならないと私は考えます。

 先ほどの全国市長会からこのような御意見が出たということに関しまして、私は、地方自治体からすると、教育の中央集権化に対する警戒感、国による地方教育行政への過度な介入に対する警戒感というものが背景にはあるのではないかというふうに思いますが、そういう観点から、繰り返しますけれども、むやみやたらに文部科学大臣がどんどん指示を出して地方教育行政に対してさまざまな影響を与えるということは、極めて抑制的に発動されるべきだという考えについては、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

下村国務大臣 現行の第五十条は、平成十九年改正において、いじめによる自殺等の事案において教育委員会の対応が不適切な場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の指示ができるよう設けられた規定であります。

 しかし、大津市におけるいじめによる自殺事案の際に、「児童、生徒等の生命又は身体の保護のため、」という要件について、当該児童生徒等が自殺してしまった後の再発防止のためには発動できないのではないかという疑義が生じたわけでございます。

 今回の法改正は、事件発生後においても、同種の事件の再発防止のために指示ができることを明確にしたものでありまして、要件を拡大して国の関与を強化するというものでは全くありません。

菊田委員 それでは、民主党、日本維新の会の共同提出案に対して質問いたします。

 この改正案では、教育委員会を廃止するという抜本改革でありますけれども、中教審で公表された全国の市区町村長、教育長を対象としたアンケート調査では、首長の七割弱、教育長の八割が、現行の教育委員会に関して、よく機能していると回答しています。

 なぜ教育委員会を廃止するのか、余りに拙速ではないか、こういう意見もあるわけでありますが、こうした声にどう答え、そして理解を得ていくのか、改めて説明を求めます。

笠議員 市町村の教育委員会は、非常勤の教育委員により構成され、その多くが月に一、二回しか開催されていないという実態がございます。結果として、事務局の提案を追認する機関となっている例が多く、また、教育予算は首長が決定をする、教育行政については教育委員会が行うという二元行政となっていることを、これから権限と責任の所在というものをしっかりと明確にしていかなければならないことや、あるいは、地域の住民の意向をどのように反映していくのか、さらには、指摘されている教育委員会の審議等の形骸化というものについてどう応えていくのか、こういったものを、しっかりと現実を踏まえた改革を行っていかなければならないと思っております。

 そして、こうした指摘がある以上は、やはり、現行制度がよく機能しているという声には相当な疑問を持つ国民や住民は多いのではないかというふうに私は考えております。何よりも、子供の命にかかわる事故や、こうした重大事案が繰り返し発生して、その都度、制度疲労というものも指摘をされて、厳しい批判がございます。

 したがって、子供たちの立場に立ち、保護者の思いに立った思い切った改革を断行していくためには、住民から選挙で選ばれた首長に、私どもの提案を十分御理解いただけるのではないかというふうに考えております。

菊田委員 私も、このアンケート調査は、首長や教育長に現行の教育委員会制度はうまくいっていますかと聞けば、非常に問題があって機能していないとはなかなか答えないと思うんですよね。しかし、一般の住民であるとか保護者であるとか、そういう人たちから見ると、現在の教育委員会というのは何をやっているのか全然わからないというような批判もいろいろ聞こえてくるわけでありますので、ぜひ、この民主党の基本的な考え方、なぜ教育委員会を廃止しようとしているのか、きちっと皆さんの理解を得ることが重要だというふうに思っております。

 それでは大臣にお伺いしますけれども、都道府県の教育長におきましては、教職経験者の割合が三割を超えています。また、市町村の教育長は、約七割が教職の経験者であります。教育委員や事務局も教員の経験者が多いわけでありますので、どうしても内輪の意向に沿う傾向があるというふうに指摘されていますが、大臣、この現状をどういうふうに捉えておられますか。

下村国務大臣 御指摘のように、平成二十三年度の調査では、教育長における教職経験者の割合、都道府県で三四%、市町村で七〇%となっております。地域において状況はさまざまでありますが、教職出身の教育長の是非について一律に論じることは適切ではないと思いますが、各地域において最も必要とされる者がそれぞれ任命されているというふうには考えます。

 いずれにせよ、教育長については、今回の改正により一層その職責が重くなるものであり、大局的な立場に立って教育行政の責務を果たし得る識見と能力を備える者が任命されることを期待したいと思います。

菊田委員 政府参考人に伺いますが、教育長の平均年齢はどれぐらいでしょう。それから、女性の割合はどれぐらいでしょうか。

前川政府参考人 平成二十三年度の調査によりますと、教育長の平均年齢は、都道府県で六十・五歳、市町村で六十三・四歳となっております。

 教育長のうち女性の割合は、都道府県で四・三%、市町村で三・五%となっております。

菊田委員 いずれも、六十歳を超えておられて、女性の割合は非常に低いということでありますが、大臣、どういうふうに評価をされておられるでしょうか。これは、教育行政をより一層活性化させていくということからも、私は世代交代や女性の教育長の登用を推進すべきではないかというふうに思いますが、大臣のお考えをお伺いします。

下村国務大臣 教育委員はもっと若い平均年齢になるべきではないかというふうに、印象として、今聞いていて思いました。

 教育長は、やはりそれだけ、教育行政においても、いろいろな直接的、間接的含めた経験と、それから社会全体的な良識、見識を兼ね備えるということで考えると、やはりそれなりの人生経験は必要だと思いますので、一概に年齢が高い低いというのはちょっと言えないのではないか、やはり人物次第ではないかと思います。

 それから、女性が、都道府県が四・三%、市町村が三・五%ということですから、これは低いわけですが、ここだけが低いわけではなくて、例えば国会議員でも実際に似たような数字でしょうし、今、安倍内閣においては、それぞれの省庁、幹部女性、二〇二〇年までに三割を目指すということでありまして、ぜひこれから、全ての分野において女性が社会の中で生き生きと活躍できるような環境をつくっていくということは、あらゆる部分についても言えるのではないかというふうに思います。

菊田委員 大臣からは、これまでは六十歳を超えた教育長が多かったけれども、ぜひ、若い教育長から出てきてもらって、ばんばん現場に立って頑張ってほしいというふうに御答弁をいただければよかったなというふうに思いますし、それから、女性の教育長ももっともっと出てきてほしい、文部科学大臣として期待をしている、こういう御答弁をいただけるとまた変わってくると思うんです。それから、女性の国会議員は一割です、大体一割。ですから、それよりも随分低いということであります。

 それから、教育長の権限が強化される中で、議会の役割というのが非常に重要になってくるというふうに思います。

 教育長の任命については、首長が議会の同意を得た上で任命することになっているわけですが、どうしても人事案件ゆえに、実際には、本人の質がどうなのか、かなり踏み込んで審議をする、議論をする、例えてみますと、国会における日銀総裁人事のように、厳しく審議している議会というのがどれだけあるのか、私は疑問に思うわけでありますけれども、このチェック機関としての議会の役割についてどのように考えておられるか、政府参考人に伺います。

前川政府参考人 教育長の任命につきましては、改正後の新教育長につきましても、首長が議会の同意を得て任命するということになるわけでございますけれども、その同意に際しましては、教育長候補者に所信表明をしてもらうというような方法が考えられるということでございます。

 現行の教育委員会制度のもとにおきましても、議会での丁寧なチェックをしているという例はございます。直近の例でいきますと、長野県教育委員会の教育長の同意の際に、候補者の職歴でありますとか人物等につきまして議会で質問がなされまして、知事が答弁をし、説明しているというような例がございます。

 今回の改正案におきましては、教育長が任期が三年になるということでございますが、議会におきまして、従来以上に職責が重くなる新教育長につきまして、この三年の間隔でその資質能力を丁寧にチェックするということが期待されるわけでございます。

 現行法におきましても、これは改正後も同じでございますが、教育委員会の事務の管理及び執行状況につきまして、点検、評価の報告書を議会へ提出するということが規定されております。

 これらの機会を通じまして、議会のチェック機能が十分発揮されていくことが重要であるというふうに考えております。

菊田委員 それでは、民主党、日本維新の会の案では、教育行政に対するチェック機関についてどういうふうに考えているのか、また、教育行政に関するチェック機関として議会はどのような役割を果たすべきと考えるか、伺います。

笠議員 この法律案では、地方教育行政における権限と責任の所在について首長に私どもは一元化をしたものでございますが、もちろん首長が、思いのまま、やりたい放題、独善的なやり方で教育現場を混乱させるようなことはあってはならないというふうに思っております。

 このための、今御指摘のあったチェック機能として、新たな機関として教育監査委員会を設置し、そして、今委員が御指摘があった、議会とともに首長の権限行使を監視することとしております。

 まず、教育監査委員会は、首長から独立をした専門的な機関であり、首長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行うとともに、その結果に基づいて、首長に対し、事務の改善のために必要な勧告を行うものであります。この勧告は、議会にも報告されるとともに、公表されることになっております。

 次に、議会の役割については、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定にあらかじめ議会の議決を経なければならないものとして、教育行政に対する事前のチェックを可能とし、また、首長に対する質疑などを通じて、適宜、教育行政に対するチェックが行われていると考えております。

 以上のように、議会もまた民意によって選ばれた議員によって構成されておりますので、監査委員会とともに、しっかりと議会が首長に対するチェックをまた重層的に行っていくことが極めて重要であるというふうに思っております。

菊田委員 ありがとうございました。

 それでは、学校運営協議会について伺いますが、民意を教育行政や学校運営に反映させ、住民自治を生かすという観点から、この学校運営協議会が果たす役割というのは非常に大きいわけであります。

 政府の改正案には、この学校運営協議会、コミュニティースクールについて全く触れられていないのはなぜでしょうか。

 平成二十五年四月現在で、導入校が千五百七十校ということでありまして、五年間で三千校を目指すというふうに聞いておりますが、現状、どういう理由で余りふえていないのか、政府参考人に伺います。

前川政府参考人 文部科学省におきましては、保護者や地域住民の参画を得ながら、学校運営の改善や学校支援の充実を図ることが重要と考えており、コミュニティースクール、学校運営協議会制度の設置を促進しております。

 平成二十五年四月現在で、御指摘のとおり全国で千五百七十校で導入されておりまして、取り組みは着実に進んでいるわけでございますけれども、必ずしも十分とはいえない状況でございます。

 私ども、当面、全公立学校の一割、三千校を目指して導入を促進しているところでございますが、その際の課題といたしましては、教育委員会や校長、教職員の理解や実践経験の不足があるということ、また、学校運営協議会の委員等の地域人材の育成や確保に課題があるということが言えると存じます。

 また、地域間の取り組みの差があるということも事実でございます。全国の市町村のうち、導入している市町村は百五十三にとどまるということでございます。

 その理由といたしましては、当該市町村や周辺市町村で、学校運営協議会を設置した学校における成果を実感し、あるいは取り組みの導入や拡大に積極的な市町村が一方である、それに対して、取り組みの目的や成果等への理解が不足している、あるいは周辺によい事例がなく、導入に消極的になるという市町村があるということで、結果として、地域差が生じているというふうに考えております。

 このため、文部科学省におきましては、導入に向けた体制づくりなど、未導入の地域に対する支援を講じるとともに、教育委員会担当者に対する説明のほか、多くの有識者の協力を得まして、全国各地で説明会やフォーラム等を開催することによりまして、よい事例の普及や意識の啓発などを図っているところでございます。

 文部科学省といたしましては、引き続き、教育委員会や学校、地域の関係者等に対し、成果の普及と理解の促進を図りながら、コミュニティースクールの一層の拡大と充実に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

菊田委員 今政府参考人から御答弁をいただきましたが、地域差ですね。青森、栃木、富山、石川、福井、こういう県は一校も学校運営協議会、コミュニティースクールというのがまだ実現していないわけでありまして、今お話がありましたとおり、全国にコミュニティースクール、学校運営協議会をつくっていくということであれば、やはりまだ未導入の地域にとりわけ力を入れて、さまざまな導入策、支援をやっていっていただきたいというふうに思います。

 そしてもう一つ、地方教育行政法の四十七条の五に、「学校運営協議会は、当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができる。」というものがあります。

 実は教員は、人事に関していろいろ口出しをされることを嫌がるということもありまして、実はこれがネックになっていて、先ほど答弁がありましたように、なかなか教職員あるいは校長の理解が進まないというような話も伺うんですが、御認識はどうでしょうか。

前川政府参考人 私どももそういう認識を持っております。

 教職員の人事につきましては、県費負担教職員制度のもとで、市町村立学校の教職員につきましても、都道府県教育委員会が市町村教育委員会の内申を得て任命権を行使するという建前で運用されているわけでございますけれども、そこに、学校運営協議会が人事について意見を言う、また、それを任命権者が尊重しなければならない、こういう規定がございますので、従来の人事を続けていくことが難しくなるのではないかというような無用な警戒心があるのではないかというようなことは感じているところでございます。

 いわば食わず嫌いのようなところがございますので、これは心配は要らないんだということをさらに説明してまいりたいというふうに考えております。

菊田委員 現状、こういう課題もある中で、民主党、維新の案では、学校運営協議会、コミュニティースクール、これをどのようにしていくのか、伺います。

 それともう一つ。もともと民主党は、学校理事会を公立の小中に必置をして、そして保護者や地域住民が参画した中で、学校の運営や学級編制、教育課程などの基本方針を協議、承認するということを目指していたはずでありますが、学校理事会というのはどういうものなのか、この際、ぜひ御説明をいただきたいというふうに思います。

 そして、なぜ、今回の改正案におきましては、目指していた学校理事会というものが実現されていないのか、その理由、そして今後はどうするつもりなのか、御説明をいただきたいと思います。

笠議員 私ども、コミュニティースクール、学校運営協議会の推進をということは、これまでも、政府・与党の立場にあった三年半のときにも、三倍ふやしました。しかしながら、先ほどあったような現状は、平成二十五年四月段階でまだ千五百七十、恐らくこれが二千校近くにほぼなるんじゃないかということですけれども、全国の小中学校約三万校のうちの、まだまだそれに比べると非常に不十分であるというふうに思っております。

 そこで、私たちは、やはり、教育の分権を推進するため、学校運営に地域の住民の意向を反映し、そして、地域に開くことによってさまざまな創意工夫が発揮できる学校運営というものを目指していくという思いを持ちまして、今回、私どもの法律案では、将来的には全国各地において地域住民の意向が学校運営に反映されていくべきとの考えから、この法律の施行後できるだけ速やかに、原則として地方公共団体の設置する全ての小学校及び中学校に学校運営協議会が置かれるようにすることに向けて検討を加え、必要な措置を講じる旨の規定を置くこととしております。

 そして、もともと民主党案では学校理事会というものを目指していたではないかという御指摘でございますが、私もその政策をまとめた一人でございますが、今回、できれば、私たちが首長に権限を持たせるのと同時に、それぞれの学校現場、地域からのさまざまな声を反映させていったそういう地方教育行政というものを目指す観点から、学校運営協議会をさらに一歩進めて、私どもは、この学校理事会とは、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画して、学級の編制やあるいは教育課程の編成等の学校運営に関する重要事項について、校長が作成する基本的な方針の承認を行う合議制の機関というものをもともとは想定しておりました。

 ただ、なかなか、まだ今の学校運営協議会、コミュニティースクールもない、全く設置をされていない県もある、あるいは広がりを十分にまだ持っているとは言えない状況の中で、まずはこの学校運営協議会の数をしっかりと拡大させて、そしてその活動の状況等を勘案し、将来的には住民の意向が学校運営に反映されていくべきであるという考えから、この法律の施行後できるだけ速やかに、この学校運営協議会が全ての小中学校に置かれるように、その検討条項を盛り込ませていただいたところで、その先には学校理事会というものがまた定着していくことができるような、次の段階では、私どもとしては目指していきたいというふうに考えております。

菊田委員 ありがとうございました。

 もう時間が参りましたので、もう一問で終わります。

 今回の民主、維新の案におきましては、教科書の内容とか教材、それから教育内容、こういった取り扱いがどうなるのか、それから、教職員や事務局職員の人事等はどうなるのか。いわゆる政治的中立性、安定性、継続性の担保という観点からも、明快に御説明をいただきたいと思います。

吉田議員 政治的中立性、継続性、安定性に関するおただしでございます。

 学校が一党一派に偏した立場に利用される、あるいは学校の教育活動自体が一党一派に偏してしまうということは、もちろん、教育基本法の趣旨からいって許されることではないということであります。

 我々は、首長に教育行政の責任と権限を一元化するということでありますが、逆の面では、首長の暴走ということも抑えないと中立性を保てないということで、先ほどから御説明がありましたが、議会とか教育監査委員会とか、重層的なチェックをするような仕組みにしたということであります。

 おただしの教科書等の選定については、特に、現行の研究班を使った慎重な検討を経てというスタイルは、変わることはないと思います。

菊田委員 終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、鈴木望君。

鈴木(望)委員 それでは、通告に従いまして質問をさせていただきます。

 これまでの議論、まだこれからも地方教育行政の改革の議論の中では教育委員会のあり方というものについて議論がされていくものと思いますけれども、教育委員会が形骸化しているということについては、もう政府、与野党を問わず一般的になっているんじゃないのかなというふうに、私は今までの議論を聞いて思うわけであります。

 だから、教育委員会を私どもは廃止をして、違う格好でもって教育の政治的な中立性を保つような仕組みにするのか、それとも、教育委員会は残して、そこに政治的な中立性の担保を置くという二つの考え方に分かれたようでございます。

 いずれにしても、教育委員会の抜本的な改革が不可欠である、そういう認識は共通しているのではないのかなと思うわけでありますけれども、一般的に、感覚的に教育委員会がどうも形骸化しているというふうに今捉えられているものを、どのように形骸化しているのか、何が問題なのかということを私は一回ここできちんと議論をさせていただければというふうに思うわけであります。

 私も地方都市の首長をしていたわけでありますけれども、当然のことでありますけれども、私が首長をしていた自治体にも、教育に関するさまざまな問題が起こってきたわけであります。

 クラスがうまくまとめられないということで、悩んだ若い女性の先生が自殺をしてしまったというような事案もございました。

 また、差別的な内容を含む劇を市民文化会館で上演をしてしまった、その責任は誰がとるんだというようなこともございまして、私も市民文化会館の前に並んで謝罪したこともございます。

 また、学級崩壊を起こした先生がいまして、その先生を配転させたい、どうして首長のおまえはそういうことができないんだというふうに保護者の若い母親の方々から詰め寄られまして、制度的にできないということを汗をかいて説明してもなかなか理解してもらえなかったというようなこともございました。

 そのほかにも、もちろん、いじめの問題や外国人子弟の教育の問題等さまざまな問題が、当然、私のいた自治体にもあったわけであります。

 そんな中で、こんなことがございました。議会を中心に、教育委員会の責任者は誰なんだ、それは教育委員長じゃないか、それなら教育行政の最終の責任者にこれからは議会に出てきてもらおう、いろいろな問題についてどう考えているか答弁をしてもらおうという動きがございまして、具体的な検討が議会の若い議員を中心になされたことがございます。

 そんな動きがありましたところ、実はここからが皆様方に知ってもらいたいなと思うことでございますけれども、教育委員長が、それならやめると言ったんですね。その理由としては、自分は常勤じゃない、月に数度の会議ではとても議会の追及に耐えられない、非常勤の枠を超えているんじゃないのか、自分はそんなつもりでなったわけじゃないということなんです。これは、実態を考えてみると、そのとおりの本当に正直な気持ちであるなということであります。

 また、職員のサイドからも、議会で教育委員長がたびたび答弁するんだったら、現在の少ない手当を抜本的に見直す必要がある。だから、予算の組み替えとかそんなことにも、議員の先生方、地方議会ですよ、よく考えてくれというような指摘も議員の側にしまして、結局沙汰やみになったということがございました。

 ここから明らかになったのは、教育委員会の甚だしい形骸化ということであると私は思っております。

 教育委員や教育委員長は町の名士であります。その町の名士が、自分の仕事を持ちながら、委員会では報告や結果を受けるだけで、先ほどからもいろいろ出ておりますが、単なる教育長の追認機関となっている。そういうことになってまいりますと、実態はどこにあるかといいますと、それは、教育長以下、教育委員会事務局の教員免許を持っている方々を中心としたいわば教育一家の方々が結局は実権を握って、そして教育行政を動かしているということであります。教育委員長は今言ったような状況にある。

 そして、その教育長をトップとした教員一家の方々が教育行政を実際は動かしていて、ここが問題なんですけれども、政治的中立性の名目のもとに余り追及を受けないということであります。要するに、言葉を選んで言わなきゃいけないと思いますが、これは本当に、教育行政については自分たちが専権事項的に行っているというのが一つの実態じゃないのかなというふうに私は思います。

 私はこれではいけないんじゃないのかなというふうに思いまして、たまたま全国市長会の社会文教委員長をやっていたときに、教育委員会の廃止を主張させてもらいまして、結果としては、選択制ということが、全国市長会の社会文教委員長をやっていた私の前の代の委員長が出したわけでありますけれども、私も、教育委員会については、これは本当に抜本的に改正をしなくちゃいけないというふうに思って今ここに至ったわけでありますが、これはある意味では私の個人的な思いでございます。

 私は、自分自身の主観的な思いじゃなくて、これが多かれ少なかれ教育委員会の全国的な実態じゃないのかなというふうに思いまして、そういう観点から、全国の状況を客観的な数値でただしていければなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、教育委員の概要でありますけれども、平均年齢そして職種、教職経験者の割合についてお答えください。

前川政府参考人 教育長を除く教育委員につきまして、平成二十三年五月一日現在でございますが、平均年齢は、都道府県で五十九・五歳、市町村で五十九・三歳。

 職種は、割合が大きい順にいきますと、都道府県では、会社役員等が四四・八%、医師、大学教員等が四〇・九%、商店経営等〇・九%、農林漁業等〇・四%、その他が〇・九%、無職一二・一%となっております。市町村では、医師、大学教員等が二三・六%、会社役員等が一八・九%、農林漁業等が九・六%、商店経営等が六・九%、その他が五・六%、無職が三五・三%となっております。

 教職経験者の割合は、都道府県で二二・四%、市町村で二八・三%となっているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 それでは、教育委員のうちの教育委員長について、平均年齢、職種、また教職経験者の割合について、データがありましたらお答えください。

前川政府参考人 教育委員長につきまして、平成二十五年の五月一日現在で、平均年齢は、都道府県が六十三・八歳、市町村が六十四・八歳。

 職種は、割合が大きい順に申し上げて、都道府県では、会社役員等が四六・八%、医師、大学教員等が四〇・四%を占め、無職が一二・八%でございます。市町村では、医師、大学教員等が一八・八%、会社役員等が一七・四%、農林漁業等が一〇・三%、商店経営等が四・八%、その他が二・八%、無職が四六%でございます。

 教職経験者の割合は、都道府県が三一・九%、市町村が四二・八%となっております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 続いて、教育長について、平均年齢と教職経験者の割合をお答えください。

前川政府参考人 教育長につきまして、平成二十三年五月一日現在で、平均年齢は、都道府県で六十・五歳、市町村で六十三・四歳、教職経験者の割合は、都道府県で三四・〇%、市町村で六九・八%となっているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 今、教育委員の概要、教育委員長の概要、そして教育長の概要について具体的なデータをお尋ねしたわけでありますけれども、ここからわかることは、教育委員は、特に都道府県でありますけれども、医師、会社役員を中心とした町の名士である、もちろん自分の職業は持っている。市町村の場合大きい小さいがありますので一概に言えませんが、大同小異というふうなことが数字からあらわれてまいりました。

 そして、教育委員に占める教員OBの割合は、都道府県の場合が二二・四%で市町村の場合が二八・三%ですから、そんなに教職員のOBの方が、四人に一人ぐらいの割合というような感じだということが浮き彫りになったわけであります。

 それが教育長になるとぐんと教員OBの割合が高まって、市町村では約七割ということでありますね、六九・八%。教育長の約七割が教員OBであるということであります。

 そこで、まずお尋ねをしたいと思いますが、政府・与党案のように教育長が教育委員長を兼ねると、新教育長は、特に市町村ではほとんどが教職経験者になってしまうんじゃないでしょうか。これではレーマンコントロールと言われる、良識のある素人がコントロールをするという教育委員会の趣旨が大きく損なわれるのではないのかなという気持ちを持つわけでありますが、その点についてお尋ねいたします。

前川政府参考人 新しい教育長につきましては、改正法のもとで、教育行政に識見があるものを法律上の任命の要件としているわけでございますが、これは教職経験者や教育委員会事務局の出身者だけではなく、教育行政を行うに当たりまして必要な資質を備えていれば幅広く該当すると考えております。

 これをどのような方にお願いするか、この教育長の人選につきましては首長の重要な責任であるというふうに考えております。この改正をもちまして教職経験者の教育長がふえるということを想定しているわけではございません。

 また、新教育長は教育委員会を代表する立場に立つわけでございますけれども、教育委員会が首長からの独立した執行機関として残り、教育長は合議体の教育委員会の意思決定に基づき事務を執行するという立場にございますので、今回の改正案が教育委員会制度の趣旨を損なうということになるものではないと考えております。

鈴木(望)委員 趣旨を損なうかどうかは別にしまして、新しい政府・与党案でもこの点については余り、要するに、私が何を言いたいかというと、政府・与党案であっても教育委員会の実態は何も変わらないんじゃないのかなという感じがいたします。教員のための組織が温存をされる、教育村と言われる組織がますます強化されるだけではないのかなと危惧するものであります。またこの問題についてはいろいろと議論をさせていただきたいと思います。

 次に、教育委員会の活動状況についてお尋ねをさせていただきます。

 教育委員会会議の開催回数は、年に何回ぐらいでしょうか。よろしくお願いします。

前川政府参考人 平成二十四年度の間の数字でございますが、教育委員の協議会等を含めまして、教育委員会の会議の平均開催回数でございます。これが、都道府県、指定都市では二十九・八回、市町村では十五・四回となっております。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 要するに、一カ月に二回か三回。都道府県の場合、二十九・八ですから、一カ月に二、三回。市町村の場合に至っては、一年で十五・四回ですので、一カ月に一、二回というところであるということが明白に数字で出てきたということであります。

 それでは、回数は一カ月に二、三回とか一カ月に一回だったら、一回の会議で相当内容の濃い、時間のかかる会議をやってもらわないと、教育行政の執行機関が教育委員会ということですので、中身が伴わないんじゃないかなと問われかねないと思うわけですが、一回当たりの平均開催時間はどのくらいでしょうか。

前川政府参考人 教育委員会の会議の一回当たりの平均開催時間につきましては、協議会等のケースを含めまして、都道府県、指定都市では平均一・七時間、市町村におきましては平均一・六時間となっております。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 今数字をお述べいただきましたけれども、これでわかることは、執行機関である教育委員会の会議は、月に二、三回開かれて、一回当たり多くても二時間ということであります。

 こういう現状の教育委員会の会議のあり方ということを考えますと、緊急事態への対処として、緊急に会議を開催して機敏に対応することは、委員の役職が医師であるとか会社役員といったような仕事を持っている町の名士の方々、もちろん一人一人はすばらしい人格と能力を持っておられる方はたくさんいらっしゃるというのは私もよくわかっておりますが、現状のような委員構成、会議の開催状況では、到底緊急事態に教育委員会を機能させるということは、もう幾ら口でこういうふうにやります、ああいうふうにやりますと言われても、統計上、数字上まず不可能じゃないかというふうに私は思わざるを得ません。

 次に、地域住民への情報公開という観点から質問をさせていただきます。

 土日祝日の教育委員会会議の開催状況はどうなっていますでしょうか。お答えください。

前川政府参考人 平成二十四年度間で、教育委員会会議を土日祝日に開催した自治体は、都道府県、指定都市においては全体の七・五%、六十七地域中五地域でございます。市町村におきましては全体の六・七%、千七百二十地域中百十六地域となっているところでございます。

鈴木(望)委員 ありがとうございます。

 それでは、夕方以降の時間帯の開催、これは、土日祝日または夕方という時間帯に開催したら、当然、地域の仕事を持っている住民、親御さんも教育委員会の審議状況を把握することができるという観点でお聞きしているわけですけれども、夕方以降の時間帯の開催はどうなっているでしょうか。

前川政府参考人 平成二十四年度間で、教育委員会の会議を夕方以降の時間帯に開催した自治体は、都道府県、指定都市においては全体の七・五%、六十七地域中五地域。市町村におきましては全体の一五・二%、千七百二十地域中二百六十二地域となっております。

鈴木(望)委員 加えて、いわゆる住民の民意を酌み取るという観点、また住民の意見を聞くという観点で聞くわけですけれども、教育委員会による保護者や地域住民の意見聴取の回数については、どのように統計上なっているでしょうか。

前川政府参考人 教育委員会またはその事務局におきまして、保護者や地域住民の意見、要望、苦情等を聴取し、意見交換を行う機会を設けたという自治体は、都道府県、指定都市で全体の五一・五%、市町村で全体の三〇・六%となっております。なお、このうち、教育長以外の教育委員も参加した意見交換を行う機会を設けたという自治体は、都道府県、指定都市で全体の三二・八%、市町村で全体の一六・一%となっております。

鈴木(望)委員 裏返しして申し上げますと、要するに、保護者や地域住民の意見聴取を全くやっていないという教育委員会は、都道府県のレベルで四八・五%、全体の約五割、市町村に至っては六九・四%、約七割の教育委員会は、口では住民の方々の意見を聞かなきゃいけない、聴取しなきゃいけないと言うけれども、実際に意見聴取をやっているというのはこういう割合なんですよ。七割がやっていない。要するに、教育委員会は、今の教育委員会でありますけれども、自分たちの審議内容を余り外に公表も発信もしていないということが、これは統計上明白になっているわけであります。なぜでしょうか。

 これは私の考え、これを言っておかなきゃいけないんですけれども、審議内容が、単なる報告等の形式的なことばかりで、余りにも内容がお粗末、だから公表したくない、そういうことじゃないでしょうか。だから議事録の公表を義務化したくないんですよ。

 私どもの椎木委員がなぜ議事録公表を義務化しないのかと尋ねたときに、さきの政府側の御答弁では、小さい自治体は、議事録をつくるのは能力的に難しいと、そういう御答弁でした。しかし、私、首長の経験をした観点でいいますと、どんな小さな自治体でも、議会の議事録はちゃんとつくっていますよ。また、教育委員会の会議ということになれば、当然、議事録署名人を入れて、ちゃんと議事録はつくっているんです。会議内容はどういうものかということが、後々問題を起こしてはいけないから、ちゃんとそういうものはつくっているんですよ。つくっているけれども公表したくない、それだけなんですね。だから、小さい自治体のせいにしないでほしいなというふうに思います。

 この議論については、後ほどまた椎木議員、ほかの党の各会派の方々がすると思いますので私はこの程度でとどめたいと思いますけれども、教育委員会の活動状況は、実態は教育長の附属機関ないしは諮問機関程度の役割しか果たしていないというふうに言わざるを得ませんし、また、実質上の責任者である教育長は、議会も含めて、余りチェックはされていない。ましてや、責任者である教育委員長は誰からもチェックされていない。これが教育委員会の実態であると、私はそう思います。

 これまでの質問で明らかになった教育委員会の現状をまとめてみますと、教育委員会の実態は、月に二、三回の会議。一回当たり多くて二時間程度。委員構成は、医師、会社役員等の町の職業を持った名士の方々。実際上は常勤の教育長が圧倒的な情報量を握っているわけです。そして、教育長は、市町村の場合は、その約七割が教職経験者、OBということであります。これでは、必然的に、教育長をトップとする教育委員会事務局の教員一家の人々が事実上教育委員会の実権を握り、教育行政を動かしていると言っても、これは過言ではないと私は思います。

 しかも、実際に動かしているこれらの人々は、責任をとらない。議会のチェックもままならない。責任をとるのは教育委員会という合議体。また、そのトップは教育委員長という、実際は、議会で追及しようとしたら、では私はやめるというような、立派な方なんですけれども、そういう認識でもってトップについている人。これが、私はあえて言わせてもらいますと、日本全国の教育委員会の実態じゃないのかなというふうに思います。だから、身内だけの隠蔽体質になるわけです。また、時代の変化にも容易に対応しない。何かあったら、まず考えるのは教員の側の保身、自分たちの側の保身。だから、私は、大津の事件のようなことが起こるんじゃないのかなと。

 こんなに、既に存在意義がなくなった、形骸化した組織に、まだ教育の中立性の役割を保つというようなことを期待する、これは、私はおかしいんじゃないのかなというふうに思います。

 教育委員会制度、制度自体に政治的中立性を担保する機能が果たしてあるのかどうなのかというような問題、少し議論をしようかと思っていたわけでありますが、時間が迫ってまいりましたので、この点については、実は午前中に新藤参考人が来られまして、その中でそこら辺のところを述べておられました。

 地方レベルでは教育委員会制度、行政委員会制度、ところが、教育行政については、中央レベルでは中央教育委員会というような行政委員会制度をとっていない。これは、戦後の行政組織の中の謎の一つだというような言い方をされておりまして、私もそう思うわけであります。

 なぜなら、国家公安委員会は、国のレベルでも国家公安委員会がある、そして地方レベルでも都道府県公安委員会があるということで、行政委員会方式で貫徹をしているわけですが、教育行政についてはそうはなっていない。

 なっていないから今のものが悪いというわけじゃなくて、私も新藤参考人のように、国が教育委員会制度をとらずに、行政委員会制度をとらずに、大臣がいるという体制をとって、しかも、地方レベルの教育委員会がこんなにも形骸化しているんだったら、なぜ、教育委員会をやめる、そういう決断ができないのかなというふうに思うわけであります。

 もちろん、教育の政治的中立性、継続性、安定性を保つことは重要であります。維新、民主案では、教育委員会を廃止し、かわりに、教育の振興に関する総合的な施策の方針、これを議会の議決を経る、議会のチェック、それと教育監査委員会によるチェックという二重のチェックを首長にかけました。

 首長の暴走をチェックする仕組みをとった上で教育委員会を廃止するというふうにしているわけでありますけれども、大臣は、この仕組みがどこかおかしいとか問題があるというふうにお考えでしょうか。大臣にお尋ねします。

下村国務大臣 今、鈴木委員の質疑をお聞きしておりまして、非常に実証的、論理的に展開されていて、大変説得力があるお話があったなというふうに思いますが、ただ、では教育委員会を廃止して今おっしゃったようなことが全部クリアできるのかどうかという問題で、教育における政治の中立性、継続性、安定性をどう担保するかという話になったのではないかと思うんですね。

 その中で、維新、民主案は二重のチェックがあるから大丈夫だということを言われているわけでありますが、議会が本当に政治的な中立性を担保するのかどうか、これは相当、議会の構成によって違ってくるというふうに思うんですね。現状ある地方自治体の議会が本当に政治的中立性を全て担保できるような議会かどうかは、やはりその構成によって違いますから、できる議会もあるかもしれませんが、そうとも言えない議会もやはりあるのではないか、これは率直な感想として私は持っております。

 また、教育監査委員会についても、これは事後的な評価、監視、勧告にとどまるということであって、そのときに、よくも悪くも暴走した首長のもとで既にやってしまった後、どの程度教育監査委員会が能力を発揮できるのかどうか、つまり、政治的中立性を確保するということができるのかどうかということについては、事後チェック機能ではやはりこれは難しいのではないか、そういう感想を持ちました。

鈴木(望)委員 ありがとうございました。

 この議論についてはまた引き続きやって、よりよい制度をぜひ、今後六十年間にわたっていろいろな時代の変更に耐えられるような制度の確立に向けて、私も努力をしてまいりたいというふうに思います。

 さて、最後になりましたけれども、教育委員会と総合教育会議についてお尋ねをさせていただきます。

 時間がなくなってまいりましたので一点だけお尋ねして、あとはまた次の機会に譲りたいと思いますけれども、政府・与党案では総合教育会議が創設をされたわけでありまして、この会議が、首長の教育に責任を行使する手段として重要な意味を持っているわけであります。一方で、素直な印象としまして、教育委員会、残すわけですけれども、これは相対的に弱体化するんじゃないのかなという印象をどうしても禁じ得ないわけでありまして、具体的に、教育委員会が固有に持っている業務というものはどのようになるのか、総合教育会議に協議、調整ということでかけられる事項はどういうものがあるのかということで、いろいろと御答弁がありました。

 その中で、もう時間もありませんので一点だけお伺いをさせていただきたいと思います。

 前の政府の御答弁では、総合教育会議の、まず、一項の一号で、「教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育、学術及び文化の振興を図るため重点的に講ずべき施策」の例として、学校施設、教員の定数等の教育条件の整備に関する施策、予算の編成、執行権限や条例の提案権を有する首長と教育委員会が調整をすることが必要なもの、二つ目として、保育と幼稚園、青少年健全育成と生徒指導、放課後子どもプランのように、首長と教育委員会の事務の連携が必要なものという二点を例示として挙げられました。

 第二号としましては、「緊急の場合」等でどういうものがあるのかということで、いじめ問題により児童生徒の自殺事象が発生した場合、また、通学路で交通事故が発生した後の再発防止を行う必要がある場合等というものがあるということで、具体例を示されたわけであります。

 その限りにおいては非常に明確になったなという感じはするわけでありますが、一つ言えることは、例えばそれ以外のことで教育委員会の固有の業務というふうに思われる、例えば、教育課程に関すること、もう一つ、今回もいろいろと議論がありましたけれども、土曜授業のことなどを教育委員会で議論をする、その場合に、このような教育委員会専管のような事項であっても、教室の拡充等が必要となれば総合教育会議に当然かけなきゃいけないというふうに思うわけでありまして、そういうふうに考えていくと、ちょっと考えると教育委員会で審議して足りるなと思うことでも、よく考えると全部総合教育会議にかけざるを得ないということになってくるんじゃないのかなという感じもいたします。

 その中で、例えば全国学力テストについてはどうなんでしょうか。これは総合教育会議にかけるべき事項でしょうか、かけなくてもいい事項なんでしょうか。お尋ねをします。

前川政府参考人 全国学力・学習状況調査に係る結果の公表等につきましては、予算等の首長の権限にはかかわらない事項でございます。したがって、総合教育会議における首長と教育委員会との間の調整の対象となるわけではございません。

 しかし、総合教育会議は、幅広く教育に関して協議ができる場でございますので、自由な意見交換というような意味での協議をするということは可能でございます。

 ただし、あくまでも、その場合におきましても、最終的な決定権限は教育委員会に留保されているものでございます。

鈴木(望)委員 確認して終わりたいと思いますが、ということは、全国学力テストで、例えば校長先生の名前を公表するというようなことを、これを首長がリーダーシップを持って、自分の責任でもって決定するということができるんですか、できないんですか、新しい制度では。

小渕委員長 前川初等中等教育局長、申し合わせの時間が過ぎていますので、簡潔にお願いいたします。

前川政府参考人 学力調査の結果の公表は教育委員会の権限、責任でございますので、首長が決定することはできません。

鈴木(望)委員 後でもう少しいろいろと議論させていただきたいと思います。

 終わります。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。

 時間がございませんので、早速質問に入らせていただきます。

 今回は、閣法よりも、維新、民主さんの案に関して主に質問させていただきたいと思います。

 まず、民主、維新案での教育長の任期に関してお尋ねいたします。

 野党案では、教育長の任免に議会同意が要件とされていないわけでございます。そしてさらに罷免要件も規定されておりません。これはどれぐらい任期があるのか、ちょっと私もわからないんですが、これは、事実上、任期というものはないんでしょうか、それともあるんでしょうか、まずお願いをいたします。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

吉田議員 民主、維新案では、教育長が首長の補助機関として首長の指揮監督のもとで教育に関する事務をつかさどる、そして首長が教育長を任命するということになっております。教育長は首長が在職している間、首長の意向に沿って一定の成果を出すということが期待されているわけでありますから、首長と同じ四年の任期がふさわしいということにしたところでございます。

 なお、教育長は再任されることもできる、かつ、その回数については特に法律上制限はしておりません。したがって、再任並びに回数については、これは首長が判断すべきことであるというふうになっております。

柏倉委員 では、一点確認させていただきたいんですが、首長の下に完全に置かれるということで、途中での罷免というのも、当然それは首長の意思で行われ得るということでよろしいんでしょうか。

吉田議員 解職の問題だと思いますけれども、教育長がなかなか成果を上げていないとかサボタージュがあるとかそういう場合も考えられますので、そういうときには首長による解職もあるというふうになっております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、次は、学校運営協議会に関して質問させていただきたいと思います。先ほど民主党の菊田委員の方からも質問がございました。一部重複しますが、質問させていただきたいと思います。

 平成十六年の地教行法改正により、コミュニティースクールに指定される学校に、市町村の教育委員会の判断により設置できるということなんですね、学校運営協議会は。全国でまだ一割ぐらいだということですけれども設置され、自由闊達な意見交換、そして、あるところでは当然意思決定機関としてあるわけです。

 そこで、野党案でも、この学校運営協議会、野党案附則第五条において、任意であるが、法律の施行後速やかに、全ての小中学校に原則設置することを検討することとしているということでございます。

 ちょっと言葉尻を捉えるようで申しわけないんですが、これは任意なのか、原則必置なのかというところをまず確認させていただきたいと思います。

笠議員 その点は、現行と同様に任意でございます。

 ただ、今委員御指摘のように、まだ一割、三千校にもいっていない、昨年四月段階で千五百七十、これを広げていくためには、私どもは、将来的にはやはり小中学校に必置できるようにということで、その検討事項を附則の中に盛り込ませていただいたということでございます。

柏倉委員 この学校運営協議会、レーマンコントロールの性質を帯びるというわけでございますけれども、民主党案さんだけのとき、維新案さんとまだ別個のときは、御説明いただいたときには、学校理事会という名称であるということで、運営、学級編制、教育課程などの基本方針を協議、承認する機関であるというふうに位置づけていたと思います。

 この基本方針をしっかりと委ねられるような学校運営協議会をやはり将来的にはつくっていくという、この野党案でも同じような機能は想定されているんでしょうか。

笠議員 そういう思いでおります。

 今御指摘がありましたように、当初私どもが出しておりました法案の中では、学校理事会を全ての小中学校で必置ということで、これは、今回の維新の会の皆様方との実務者による政策協議の中で、なかなか、今の学校運営協議会、コミュニティースクールすらが、先ほどのような我々が推進していきたいと思ったペースでは進んでいないという状況の中で、あるいは自治体の規模によっては、小さな自治体ではそういった学校運営協議会にかかわっていただく人材を見出すことがなかなか難しい、さらには、かえって学校の現場が、そういういい人材を集めることができればいいんですけれども、そうではないときに混乱というものもあるんじゃないかということで、まずは、コミュニティースクールをしっかりと着実に推進するところから始めていこうということで、今回のこの合意案の中では学校運営協議会に戻したということでございます。

 将来、何とかこの学校理事会というものを次のステップとしてしっかり進めていきたいという思いは、私どもは持っております。

柏倉委員 維新の皆様の提案を伺ったときは、なかなかここのところが議論が分かれるところであるということでございました。今お答えしていただくには難しいかと思いましたが、一応、その確認という意味で質問をさせていただきました。

 私もやはり、コミュニティースクールというものは、できるところではどんどん設置していく。アメリカではもともとそういったものが土台としてありました。ただ、現状、やはり首長の権限も持たせていこうという、日本とだんだん似たような環境になっております。世界標準とは何かというのは難しいと思うんですが、やはりこのコミュニティースクールというものも、できるところではしっかりつくっていただきたいというふうに思っています。

 ちなみに私の地元は栃木県なんですが、栃木県はまだ一つもできていないということでございまして、もしそういうことがございましたら、御尽力、お力をかしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 次は、学校管理規則、これも先ほど民主党の菊田委員の方から質問があったかと思います。教科書採択の問題がございました。これは今までどおり教育委員会の方でやるという御答弁をいただいたかと思います。

 野党案の第十四条で、学校管理規則は首長の判断で決定できることとなり、合議による審議、議決が事前チェックとしてなされない可能性もあるのかなという心配がちょっとあるんです。

 なぜなら、これを見ますと、この学校管理規則に、教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取り扱いその他学校その他の教育機関の運営管理の基本的事項についても必要な規則を定めるものとするというものがございます。これは、教育課程、教材の取り扱い等々、今までかなりもっと上位のところで決めてきたものを学校管理規則で決めるということになると、学校でそれぞれやはりばらばらになってくるのかなという気もします。

 ここで、この学校管理規則でどこまでをコントロールしていくのか、そして、これは合議による審議、議決がない、首長がこれを決めるということになっていますから、事前のチェックがないということになってしまうんじゃないか。教育監査委員会を事後的につくっても、事前のチェックというのがどこかでないといけないんじゃないかなという印象がありますが、そこのところをお答えいただければと思います。

鈴木(望)議員 民主、維新案につきましては、地方教育行政における権限と責任の所在につきまして、首長に一元化をしたものでございますが、思いのままに首長が権限を行使し、独善的なやり方で教育現場を混乱させることがないよう、この法律案におきましては、新たな機関として教育監査委員会を設置し、議会とともに首長の権限行使を監視することとしております。

 また、事前のチェックについては、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に、あらかじめ議会の議決を経なければならないものとしまして、教育行政に対する事前のチェックを可能とし、また、首長に対する質疑などを通じまして、適宜、教育行政に対するチェックが行われることにより、教育の水準や教育の中立性は担保されるものと考えているところであります。

 さて、お尋ねの件でございますが、この法律案において、教育行政の責任は首長のもとに一元化されることになりますけれども、教科書採択におきまして、首長の責任のもと、教科書の研究、教科書展示会への参加、教職関係者、学識経験者等の専門家から成る審議会による調査研究及び意見聴取等、現在行われている方法を維持して、適切な教科書採択がなされるものと考えているところでありまして、最終的な責任は誰であるのかということを定めたものでございます。

 当然、専門職の方々が知恵を働かせ、教育の中立性が損なわれないように、きちんと御指摘の事柄が遂行されるものと想定をしております。

柏倉委員 ありがとうございます。議会がちゃんとチェックをするということで理解をさせていただきました。

 やはり、首長の権限が強くなるということは結構なことなんですが、しっかりとしたチェック機構、それを働かせていただきたいと思います。

 次に、野党案の第六十三条に関してなんですが、「教育に関する事務を行うに当たっての配慮」というところの第六十三条、これを見ますと、「地方公共団体の長が教育に関する事務を行うに当たっては、当該地方公共団体が設置する学校においてその管理運営が主体的に行われるようにする」、それとともに、児童の生命もしくは身体、教育を受ける権利を保護する必要がある緊急の事態においても適切に対処することができるよう、配慮するものとするというふうに書いております。

 私の理解では、いじめというのは、今回、維新、民主案では、首長さんが責任を持って対処するのかなと思うんですが、これは文言の理解の問題かもしれませんけれども、この第六十三条を読みますと、学校が管理運営を主体的に行わなきゃいけない。いじめの問題も、「適切に対処することができるよう、配慮するものとする。」と書いてありますが、適切に対処すべく動かなきゃいけないということだと思うんですね。

 この関係が少しちょっと不明確なものですから、学校と首長と、いじめに関してはどういう命令系統といいますか、指揮系統といいますか、分担といいますか、そういったところは実際どういったものを想定しているのか、細かいところなんですが、教えていただきたいと思います。

鈴木(望)議員 お答えをさせていただきたいと思います。

 基本的に、首長に責任を一元化し明確化するということでございまして、それが大きな大枠でございますけれども、一方で現場のことは現場に任せるということで、教育における現場、これは学校でございます。学校現場は、これは責任者が校長先生でありますので、校長先生がなるべく、いじめの問題も含めまして対応する。

 ただし、指揮命令系統で申しますと、教育長は、私どもの制度でいきますと補助機関ということになります。当然のことですけれども、指揮命令系統の体系下の中にあるわけでございますので、大津事件のような事柄であるとか、そういった大きな事件に発展する可能性を秘めたようなものについては、これは機動的に対応をして、しかるべき指揮命令を校長に対しても行うということをきちんと、配慮規定でございますけれども、私どもの法案では配慮規定として、実際の運用が数々の現行における失敗事例からきちんと学ぶようにということで、配慮規定を入れさせたものであります。

 以上です。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

柏倉委員 原則、首長が上位に立って校長に指示するというイメージでよろしいわけでございますね。わかりました。

 では、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 きょうはまず、この改正案と、あと、いじめの重大事案、お子さんが命を落とすようなことが起こってしまったときに、いじめ防止対策推進法の方で定めている再調査の実効性、この二つの、改正案との絡みについて伺いたいと思います。

 本会議のときに私が質問させていただいて、大臣から、まずそういうときは教育長が迅速に対応して、必要に応じて総合教育会議で協議をすることになって、さらに、必要に応じていじめ防止対策推進法に基づいて再調査ができる、そういうお話があって、再調査ができるというところは私も何ら異論はないのですが、今回の改正法は、新教育長と首長がふだんから連携をしてやっていこう、そこが改正法の大きなポイントだと思うんです。

 実際、これも本会議の答弁を引用します、安倍総理大臣が、「今回の改正案では、総合教育会議の設置や大綱の策定を通じて、首長が連帯して教育行政に責任を果たせる体制を構築する」、この連帯という言葉は先日の委員会でも何度か出てきたと思うんですが、新教育長、教育委員会と首長が連帯して一体感を持ってやっていく、そういう方向に進むと、それは結果として、いじめの重大事案があったときの再調査ができる規定があっても、ふだんから連携して協議しながらやってきている教育長、教育委員会が主体となってやったいじめの調査に対して再調査を首長が決断する必要もなくなってしまうのではないか、そういう疑問があるんですが、まずそれにお答えをいただきたいと思います。

下村国務大臣 まず、いじめ防止対策推進法は、重大事態発生の報告を受けた首長が当該報告に係る重大事態と同種の事態の発生防止のため必要があると認めるときは、教育委員会等が行った調査の結果について首長が再調査することができるというふうになっているわけでございます。

 首長が教育委員会と総合教育会議においてあらかじめ協議した上で教育委員会が調査を行った場合であったとしても、調査結果が不十分であるとして関係者や地域住民の納得が得られない場合、家族の方とか、場合によっては、亡くなった場合遺族の方とか、そういう方々から納得ができないという場合には、これは首長が再調査を行うということは十分に想定される場合があるわけであります。

 その場合に、総合教育会議で教育委員会と十分に意思疎通を図ることで、より実効ある再調査を行うことができると考えられます。

井出委員 その再調査を行うかどうかのタイミングで総合教育会議を開くかどうか、先ほど前川局長が中根委員の質問のお答えのときに、そういうことも考えられると御答弁があったかと思うんです。

 私はここは非常に大事だと思っておりまして、調査結果が出る、それが少なからず賛否両論がある、そのときに、総合教育会議をやって結果として再調査をするというのであれば、これは首長が毅然と必要な権限を行使したんだなと。逆に、協議の結果再調査はしません、ましてやそれが、仮に公開の原則と違う、例外の、これはちょっと非公開でやった方がいい、非公開で行ってそういう結論が出たら、外から見ている人は、首長がやはりあそこは何かふだんから仲よくやっているから取り込まれちゃったんじゃないか、そういう話になってしまうんじゃないかと私は思うんです。

 さっきお話しのあった再調査をするか否かの総合会議というのは、私は、少なくとも必ずこれだけは公開しなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。

前川政府参考人 いじめ事案における総合教育会議についてでございますけれども、これは、住民の関心も非常に高い事柄になるだろうと思われますので公開の原則にのっとって行われなければならないと思いますが、その場合、児童生徒等へのアンケートの実施方法でありますとか、スクールカウンセラーの増員でありますとか、再発防止策の検討、立案、こういったことにつきましては、公開の場で行うことは問題ないと考えられます。

 しかし一方、具体の事案に即して、生徒の氏名あるいは学校名、学年等の、個人の特定につながりかねない個人情報を取り扱うというような場合につきましては、非公開で扱うということが必要になってまいります。

 また、不確かな事実関係につきまして、これが風評被害を及ぼすというようなことがあってはならないということもございますので、そういった観点からも、慎重な扱いが必要な場合が出てくるだろうというふうに思っております。

井出委員 そういう重大な問題があったときに、スクールカウンセラーが生徒たちの心のケアをやっていくですとか、学校のアンケートをするとか、現状でも、そういう重大事案があった後、やはり、そういうのがすぐ報道されるケースが多いですね、学校や教育委員会がそういうケアをやっていく対策を決めたことを発表したとか。ですからそれは、そういうスクールカウンセラーの配置、学校でアンケートをとることにしたということは、現状でも、何ら総合教育会議がなくてもオープンになっていると思います。それはもう私は、何か言わずもがなかなと思うんですよ。

 私が端的に伺いたいのは、一番大事なのは、その調査結果が本当に信用できるものなのか、それを調査結果とするのかどうか、再調査の必要があるのか、そこは、ではどういう理由で再調査をする、しないという説明責任というものは必ずあると思うんです。それを首長が独断で、教育委員会の調査を見てきて、こう思うからやるというのも一つあるんでしょうけれども、そこで総合教育会議をやって一次的調査をやってきた教育委員会と協議をするからには、なおさら説明の責任が出てくると思いますが、いかがでしょうか。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおりで、井出委員の問題認識は、私は、前川局長の答弁とは全くずれていないというふうに思っているんですけれども。

 今回の改正案は、例えばいじめ等の緊急のとき、首長が総合教育会議を主宰者として緊急に開くことができるわけです。そのことによって対応するということであります。ただ、そういう名前とかプライバシーの部分で逆に問題になる部分は別にしても、しかし、総合教育会議を開くわけですから、その結果について住民に説明責任を伴うのは当然の話でありまして、これは、当然公表するということが前提の総合教育会議でなかったら意味がありませんから、それはもちろん当然の話であります。

 ただ、プライバシーといいますか、名前とか固有名詞、そういう意味でのプライバシーですが、それが出ることによってかえって関係者間にマイナスになることについては配慮をする必要があるということを言っているわけであって、総合教育会議の内容そのものは公表するというのが前提であるということは、これは当然のことだと思います。

井出委員 今回の法改正のきっかけが大津の事件であるということはもう皆さんどなたもおっしゃっていることであって、ただ、実際いじめを未然に防いでいくというのは、私は、ふだんの学校の取り組みですとか児童生徒さんに近いところに負うところが大きいと思っておりますので、この総合教育会議ですとか今回の法改正の枠組み、また、昨年成立したいじめをなくしていこうというこの法案が、今私が申し上げた、そういった再調査をするかしないかとか、そこのところは、現場から少し離れている行政にとっての一番重要なところだと思いますので、そこはしっかりとお願いをできればなと思います。

 次に、先日の質問の続きになるんですが、首長と新教育長の関係、先日、大臣が、最も信頼できる人を幅広く選任をというようなお話も私の質問で御答弁いただきましたが、そうなれば、必然的に首長の新教育長に対する任命責任というのは極めて大きなものになってくる。何か大きな問題があって新教育長がその職を辞さなければいけないようなことになれば、それはもう必然的に首長の責任も問われかねないような、それぐらいの任命責任があるのかなと思うんですが、この首長の新教育長への任命責任について、大臣の見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 現行の教育長は、首長により議会の同意を得て教育委員として任命され、その後に教育委員の中から教育委員会が任命することとなっている。それを今回、首長として教育長としてふさわしいと考える者を教育委員として任命しても、教育長の任命権者はあくまで教育委員会であり、任命責任が曖昧だということで、今回は、新たな教育長は首長が議会の同意を得て直接教育長として任命するということで、御指摘のように、首長の任命責任は明確になり、それだけ責任が重いわけでございます。

 ですから、何かあったときにはそれは首長としても任命責任はもちろん問われるわけでありますが、同時に、同意事項でありますから、議会の方でも、教育長の問題については議論の対象にもなるわけであります。

井出委員 ありがとうございます。

 政府案は、教育長の資質もかなり重要になってくるかなと思いますし、今申し上げた任命責任もある以上、首長のまた資質も問われるところもあるかなと思うんです。ですから、新教育長が首長のイエスマンになってしまってはいけないと思いますし、また、最初のいじめの再調査で申し上げましたけれども、教育委員会や新教育長に首長が取り込まれるような、そう見えるようなこともあってはいけないなと思って、この二人が機能していくことが大事なのかなと思うんです。

 一方で、民主、維新の案について伺いたいのですが、この民主、維新の案は、首長の資質いかんによってはとんでもないことになる、そういう懸念の声が上がっております。

 ただ、そのときに民主、維新案には教育監査委員会がある。その教育監査委員会が首長部局からしっかりと独立したものになって機能をするのであれば、教育の政治的中立性を求めてきた教育委員会制度本来の、教育委員会制度のもともとの理念のところにも私は十分対応できる可能性はあると思っております。

 そこで伺いたいのですが、教育監査委員会事務局をどのように置くのか、本会議で御答弁をいただいたときに、教育監査委員会事務局が、首長部局の、それも教育部局と一体となったら、これは中立性が担保されるのか、形だけになってしまうのではないかと懸念をしているんですが、それに対して、一体になることはないことになる、そういう御答弁をいただいているんです。

 実際、都道府県や市町村、これは市町村も設置するとなっておりますが、教育監査委員会事務局をどのように設置していくべきなのか、お考えを伺います。

吉田議員 教育監査委員会の事務局の設置についてのお尋ねでございます。

 我々の法案によりますと、監査委員会の事務局というのは、教育監査委員会の事務を処理させるために置くものであり、その職員は委員会が任免し、その職員の定数は条例で定めるということになっております。

 この事務局においてその職員の数をどのように定めるか、そして、お尋ねの、その職員をどのように集めるのかということについては、各地方公共団体等のその規模によって相当変わりが出てまいる、異なってくるというふうに考えております。

 いずれにしろ、我々の法案においてこの教育監査委員会というのは非常に重要な役割を担いますので、その事務を処理するための事務局に必要な職員が適切に確保されるということは、極めて重要であるというふうに思います。

井出委員 役場、役所の人間が事務局になるかならないかですとか、私はならないのが理想だと思うんですけれども、現実的にはならざるを得ないのかなという、そこは悩ましいところもありまして、今、市町村の規模のお話がありましたけれども、私は、しっかりと独立した教育監査委員会を本当に何千人単位の村などが新しくつくれるのかなと。

 自分の地元で考えたときに、例えば広域連合的な、二町二村がまとまって監査委員会の事務局を設置する、もともと首長と独立した機関であるわけですから、むしろそういう方が、違う町の人が違う村の教育のものを監査できるし、体制も人員もとれるしと思っておりまして、必ずしも全ての市町村にこだわる必要はないのかなと思うのですが、市町村にはやはり必ず設置する必要があるのでしょうか。そのあたりのお考えをお聞かせください。

吉田議員 基本的に、御指摘ごもっともだと思います。

 規模が小さい地方公共団体の場合、この監査委員会ないし事務局を単独でなかなか設置できないということがあると思います。現在、地方公共団体がそういう場合に共同して機関を設置することができるということが地方自治法上認められておりますので、その制度を使って、近隣の市町村と協力をしてこの教育監査委員会を共同設置するという方法も考えられます。

 それからまた、教育に関する事務の全部または一部を処理する地方公共団体の組合を設置するという方法もあると思います。

 我々の法案では、そうした組合が設置される場合に備えて、そのような組合を組織する地方公共団体においては教育監査委員会を置かず、当該組合に教育監査委員会を置くものとするという規定、これは六十一条の四項ですが、それを整備しているところであります。

井出委員 時間になりましたので、また今後の議論の中でやっていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 まず冒頭、一問お伺いしたいんです。

 前回の質疑で私が、教育委員会の教育長に対する指揮監督権をなくしてしまえば、首長は、自分の意を酌んだ教育長を選任すれば教育委員会を意のままに操れるようになるのではないか、こう質問を大臣にいたしました。

 これは杞憂ではありませんで、実は、本日午前中の参考人質疑でも、大阪市教育委員会委員長の大森不二雄参考人が見えられておりまして、大森さんは、さぞかし教育委員会が無意味なものになっているだろうと思うだろうが、そんなことはない、元気いっぱい大阪では教育委員会は頑張っている、こうおっしゃるので、それはまさに首長の意を酌んだ教育委員長、つまり、就任するときも橋下市長は、僕がどういう教育をしようとしているか理解してもらった上で一緒にやってくれる人、こうして選んでいるし、選ばれた大森さんの方も、自分が提言している教育改革に近い改革が大阪で取り組まれつつある、ぜひ貢献したい、意気投合してやっているからそれはそういうことなんだろうが、これが食い違った場合はそういう話じゃないんじゃないですかというやりとりが先ほどありました。

 そういう場合には、結局、首長と教育長が同じ方向で独走するんじゃないかという私の質問に対して、前回、大臣は、首長が教育長を任命する、それに対しては議会の同意という担保が入っておりますのでその心配はないとお答えになったんです。

 ところが、先ほど、鈴木委員の質問に対して、そこまで議会というものが政治的中立性の担保になるかどうか疑問だとお答えになりましたので、これはちょっと人によってお答えが変わるのかと聞いたんですが、いかがですか。

下村国務大臣 それは一面的な言葉のとり方での御質問としか私は思えません。

 そもそも、新教育長を任命するのは、当然それは首長は信頼関係があって、その人が最もその地方自治体において、教育行政において識見を持って、そしてそれだけの能力を発揮できる人だという前提があって教育長を任命するというのは、当然の話だというふうに思います。

 ただ、首長とそれから教育委員会はそれぞれ別々の執行機関としてあるわけでありますし、新しい教育委員会においても、今までと同じような教育委員会としての執行機関としての機能はそのまま残るわけでありますから、これは、政治的中立性、それから継続性、安定性の中で対応してもらうということは当然の話であります。

宮本委員 僕は、実態的には、大阪の事例じゃないですけれども、そういう形で首長と教育長がどんどん走っていく、これに対する歯どめの機能というのはどこにも担保されていないと思いますし、議会というものはそういうものになり得るかという点では、大臣まさにおっしゃったとおり、全てがそれでチェックできるというものじゃない。大体、任命時の一回限りじゃないかということも言いましたけれども、ここは実に、やはりはっきりさせなければならない問題があると思うんです。

 それで法案について聞きますけれども、法案第一条の三において、首長が、教育基本法第十七条第一項に規定する基本的な方針を参酌して大綱を定めるということになっております。なるほど、教基法を見ますと、第十七条一項は、国の教育振興基本計画について、基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について基本的な計画を定めるとなっているわけです。

 私はてっきり、国の教育振興基本計画というものは、基本的な方針というものと、講ずべき施策というものと、その他必要な事項、こういう順番に分けて書いてあって、その基本的な方針だけを参酌するんだろうと思って改めて第二次教育振興基本計画を見てみたら、そのような区分はどこにもありません。

 そこで、これは局長に聞くんですが、参酌すべき教育基本法第十七条一項に規定する基本的な方針というのは、この国の教育振興基本計画のどこに当たるのか、お答えいただけますか。

前川政府参考人 大綱が参酌することにしております基本的な方針の部分でございますが、具体的に国の第二期教育振興基本計画で申しますと、主として、その「第一部 我が国における今後の教育の全体像」、この部分が基本的な方針に該当するものと考えております。

宮本委員 昨日説明を受けたんですけれども、この第一部だけではなくて、第二部の八つの成果目標のそれぞれ冒頭部分というものも入るんだという説明だったんですが、これは入らないということでいいですか。

前川政府参考人 場所としてこの第一部の部分が該当するわけでございますけれども、第二部の、第二部というのは「今後五年間に実施すべき教育上の方策」について記述している部分ですが、その中で目標として設定している部分、これは基本的な方針に該当し得るものと考えております。

宮本委員 この八つの成果目標の中身、特に冒頭部分については該当し得るという答弁だったと思うんです。

 それで、この国が講ずべき施策の具体的部分というものは、つまりほぼ全てに当たるんです。この第二次教育振興基本計画というのは八十ページの冊子ですけれども、今お話しになった第一部と第二部のもちろん項目のところですが、を全部数えれば、最後の十ページを除くほぼ全てにわたるんです、一応範囲は。

 これは確認するんですけれども、濃淡はありますよ、どれだけ具体的な中身まで参酌するかは別として、この冊子のほぼ全部の部分にわたって参酌する必要が出てくるということになりますね。

前川政府参考人 先生おっしゃいましたとおり、この教育振興基本計画は、基本的な方針と講ずべき施策その他の必要な事項をきちんと分けて書いているわけではないということでございますので、今御指摘のあったページの中でも、基本的な方針に当たる部分と、そうでない、講ずべき施策に当たる部分とがあるということでございますので、大部分がこの基本的な方針に当たるというわけではないと考えております。

宮本委員 分けて書いているわけではないので、大部分の中でもちろん抜ける部分も出てくるわけでしょうけれども、領域はほぼ全体にわたる、最後の十ページ以外は。事実、見てもらえばそうなっております。

 そうなりますと、教基法十七条二項に定める地方教育振興基本計画というのはあくまで努力義務ということになっておりまして、まだ都道府県段階でも定めていない県も残されております。しかし、今回のこの大綱というのは、全ての地方公共団体で定めることとすると、義務規定になっているわけです。

 つまり、本法案の大綱というものは、教基法十七条二項が努力義務としていた地方教育振興基本計画を、具体化の程度にこそ差があるにせよ、国の計画の基本的な方針だけは必ず参照して、義務化して全ての自治体につくらせよう、こういう結果になるんじゃありませんか、これは大臣。そうじゃないですか。

下村国務大臣 今、言葉をかえておっしゃっていましたけれども、実際は参酌です。(宮本委員「参酌です」と呼ぶ)参酌と今おっしゃいませんでしたけれども。

 参酌というのは、これは参考にするという意味でありますから、これは強制的ということではありません。

宮本委員 この参酌というものがどういう意味を持つかということについては、また追って議論をしたいと思っております。

 次に、教育長の服務という規定がございます。改正案の第十一条八項で「第一条の二に規定する基本理念及び大綱に則して、」「教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならない。」と規定し、さらに十二条では、教育委員にも同様の規定を準用しております。この意を用いるという規定は、平成十九年改正で入れられたものであります。

 ここに言う「第一条の二に規定する基本理念」というものは何かといいますと、「地方公共団体における教育行政は、教育基本法の趣旨にのつとり、教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」というものでありますけれども、今回は、これに並んで大綱が入るわけです。つまり、教育長や教育委員は、首長が策定する大綱に則して教育行政が行われるように意を用いなければならないことになります。平成十九年改正で入れられたこの一条の二の意を用いるということについても、我が党は当時反対をいたしました。

 しかし、これらの法令に並んで「大綱に則して」というのは余りにもおかしいんじゃないですか。それこそ、首長の意に沿って教育行政に当たれと指示するようなものだと私は思いますが、大臣、そうじゃないですか。

下村国務大臣 大綱は、執行機関である首長と教育委員会とが当該地方公共団体における教育の目標や施策の根本的な方針について協議、調整した結果を示したものでありまして、教育委員会には大綱に沿った教育行政運営が期待されることから、教育長及び教育委員の責務について規定した第十一条第八項及び第十二条第一項において、大綱にのっとった教育行政を行うよう訓示的に規定するものであります。

宮本委員 先日も議論しましたけれども、総合教育会議で調整が尽くされなかった事項であっても、大綱自体は首長が定められるんです、調整がつかなくても。しかし、その場合は第一条四の八に定める尊重義務はかからないという答弁が何度も繰り返し出ております。

 では聞きますけれども、調整が尽くされず一条四の八に定める尊重義務がかからないような大綱にも、この十一条及び十二条によって教育長や教育委員は意を用いることが求められるのか。どうですか、大臣。

前川政府参考人 この尊重義務と申しますのは、これは、お互いの調整がついたものにつきまして尊重するということでございます。

 大綱につきましても、教育委員会の了解のもとでつくられるものにつきましては、尊重の義務及びこの「意を用いなければならない。」という条文に係るものになるということでございますけれども、教育委員会の了解のない部分がもし仮にあるとすれば、この部分について、意を用いなければならないということにはならないと考えております。

宮本委員 それはおかしいと思うんです。第一条の四の八の書きぶりは、調整が整わなければその尊重義務がかからない、つまり、調整が整った場合に限り尊重義務がかかるという、ちゃんと条件つきの書きぶりになっているわけです。

 ただ、十一条及びそれを準用する十二条は全く無条件に「大綱」と書いているわけですから、大綱の中に調整が整ったものと整わない部分があった場合に、それは意を用いるべきであったり、なかったりするということはどこにも書いていないわけですよ。これは全く欠陥じゃないですか。

前川政府参考人 尊重義務との関係上、そのように考えるべきであるというふうに考えております。

宮本委員 何の関係上、そのように考えているんですか。

前川政府参考人 大綱の中には、教育委員会と首長とのそれぞれの権限が関連するというものがございますので、ここにつきましては、お互いに調整を尽くした上で記述するということが原則であるというふうに考えております。

 教育委員会の職務権限にかかわる事項につきましては、教育委員会がここに載せるという意思を持っている場合には載せることができるという考え方でございます。そのようなものにつきましては当然に教育委員及び教育長は意を用いるべきであるということになりますけれども、そうでないことにつきましては、この条文上、意を用いる対象として考えているわけではございません。

宮本委員 時間が来ましたので次またやりますけれども、第一条の三の書きぶりは、大綱は、調整が整わなくても首長が定められるんです。整わなければ定められないとなっているんだったらまた話は別ですよ。定められるんです。ところが、一条の四「総合教育会議」では、調整が整わなければ尊重義務はないとなっているんです。しかし、十一条や十二条では「意を用いなければならない。」無条件にそう書いているから、まさに三すくみのような形にこれはなっているんですよ。

 私は、そもそも形式上も欠陥だということを申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。

小渕委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木でございます。よろしくお願いいたします。

 繰り返しになりますが、生活の党といたしましては、教師を国家公務員として身分保障することを主眼に、義務教育の最終責任は国が負うようにするべきだという考えがございます。そして、教育内容等については、教育の地方分権化方針を一層進めるべきだというふうに考えております。

 まず、確認の意味でお伺いをいたしますが、義務教育の最終責任は、誰が、どこが負うべきと考えておられるか、それぞれ、下村大臣と衆法提出者にまず確認をさせていただきます。

下村国務大臣 義務教育については、教育基本法第五条の規定に基づき、「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。」とされております。

 このため、国は、学校教育法や地方教育行政制度など基本的な制度の枠組みの制定や、学習指導要領等の全国的な基準の制定、地方の教育条件整備に対する財源確保を担う役割と責任を担うものである一方、地方自治体は、地域の実情に応じて学校を設置管理するなど、実際に教育を実施する役割と責任を担うべきものでありまして、こうした国と地方の適切な役割分担と相互の協力のもと、教育行政を行うことが必要と考えます。

 なお、地方教育行政において、法令違反や事後の怠りによって、教育を受ける権利や児童生徒等の生命、身体が脅かされるような事態が生じた場合には、指導助言や是正改善の指示等により、国が最終的な責任を果たすことが必要であると考えます。

鈴木(望)議員 教育基本法五条三項には、今、文科大臣が言われましたように、「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。」とあります。

 また、この法律案の三条には、「基本理念」としまして、「地方公共団体における教育行政は、教育基本法の趣旨にのっとり、教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、その責任体制を明確にした上で教育の中立性を確保しつつ、公正かつ適正に行われなければならない。」と規定をしております。

 このように、国と地方公共団体が適切な役割分担と相互協力のもと義務教育の責任を負うべきものでありますが、我々が考える義務教育のあるべき姿としましては、国が教育水準の維持、機会均等、予算確保等について最終的な責任を持つことを前提に、原則として学校現場が主体的に管理運営を行い、各学校が子供たちの個性を大切にし、地域の実情に合わせた、特色ある学校づくりを目指すことのできる環境整備が進められていくことであると考えているところでございます。

青木委員 明確な、ずばりどこに最終責任があるのかということをお伺いをしたかったのですが、何かこうした事件等々が起きた場合の最終責任は、大臣がおっしゃるのは、国が責任を持つということでよろしいのでしょうか。

 今回の法改正の中では、教育長なのか教育委員会なのかちょっとわかりにくい部分があったのでお伺いしたんですけれども、こうした案件の対応については、国が責任を持つということでよろしいのでしょうか。

下村国務大臣 地教行法第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が最終責任者であり、教育に関する予算の編成、執行等については首長が最終責任者であると考えますが、合議体としての教育委員会が決定した方針に基づき、具体的な事務の執行については教育長が第一義的な責任者であるということが法律のたてつけでございます。

 私が申し上げたのは、この地方教育行政において、法令違反とか事後の怠りによって児童生徒に生命とか身体が脅かされるような事態が生じて、そして指導助言、是正改善の指示によって国が最終的な責任を果たすということはありますが、地方教育行政における最終的な責任は、これは教育長が責任者ということであります。

青木委員 ありがとうございます。

 それでは次の質問に移らせていただきます。午前中の参考人質疑の中でも若干出ておりましたが、県費負担教職員の人事権、給与負担のあり方についてお伺いをさせていただきます。

 現在、公立小中学校の教職員につきましては、身分は市町村の公務員でありますけれども、給与は都道府県が負担をする県費負担教職員制度となっております。本来は市町村が市町村立の学校の教職員の給与費を負担するべきところを、今、都道府県がそれにかわって負担をしているということでありまして、平成十八年度に国庫負担率が二分の一から三分の一に引き下げが行われ、今、国庫の負担は三分の一でありますので、残りの三分の二が都道府県の負担ということであります。実質は国からの交付税で賄われているということでございます。

 この制度については、平成十七年の中教審の答申を踏まえて、中核市等の一定規模の市などからは、地域の実情に応じた教育の展開、地域に根差した人材の育成という観点から、指定都市と同様の人事権を早期に移譲することを求めています。そして、一方で、離島、山間地域など、人員の不足などで広域人事がやはり必要だという状況もあって、町村単独で人事を行うことは困難であるという御意見、小規模の自治体で採用試験の業務は困難ではないかという御意見等、人事異動はできるだけ広域性が必要であるという一方での意見がございます。

 生活の党といたしまして、国が教員の身分を保障するという方針のもとでは、こうした地域の事情、考え方に差異がある中でそれぞれの課題を解決する方向につながるのではないかと考えるわけではございますが、一方で、きょうの参考人の議論の中で、より一層、地方分権あるいは学校単位の分権化を進めるべきだという参考人の御意見もございました。

 そういう方向性の中で、実際、今、小中学校の設置者である市町村において、全額費用負担をして常勤の教員を独自に任用している市町村もございます。千四百八十六名、平成二十五年現在ということであります。全体から見ればまだまだ少ない人数ではありますけれども、きょうの大森参考人のお話の中にも、大阪で百校のモデル校を選んで、校長による教員の募集、教員が手を挙げる形で学校が教員採用するという試みをしているということがございました。校長に人事権限がないから学校のマネジメントができないのだということでそういう試みをしているんだというお話も伺ったばかりでございます。

 こうした流れといいますか、実際のいろいろと試みがある中でこの点についてお伺いをしますが、まず、衆法の附則の四条にございます、このまま読まさせていただきます。「政府は、この法律の施行後三年を目途として、県費負担教職員の任命権に関し、市町村長に属することとすることに向けて検討を加えるとともに、義務教育費国庫負担法第二条第一号に規定する教職員の給与及び報酬等に要する経費に係る国の負担の在り方を含む県費負担教職員に係る人件費の負担の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」という規定がございます。

 今後どのような方向での検討を想定されているのか、まず、衆法の提出者にお伺いをさせていただきます。

鈴木(望)議員 私どもの法律案では、教育委員会制度を廃止し、首長が地方教育行政の最終責任者となる新制度に移行することとしているところでございます。したがいまして、学校の教員の人事権については、教育委員会から首長に移ることとなります。

 一方、現行制度ではいわゆる県費負担制度が採用されておりまして、市町村が設置する学校の教員については、都道府県がその給与を負担するとともに、都道府県の教育委員会が人事を行っております。

 私どもの法律案におきましては、当面の結論としていわゆる県費負担制度を維持することとしているため、市町村が設置する学校の教員、県費負担職員の人事については、都道府県知事が行うこととなります。

 我々としましては、学校の設置に関する権限と教職員の人事に関する権限が異なる主体に属することは、地方教育行政の運営のあり方としては望ましくなく、市町村が設置する学校の教職員の人事権につきましては、都道府県から、義務教育の実施主体である市町村に移譲する方向が望ましいと考えております。

 そこで、施行後三年を目途として、県費負担教職員の任命権者を市町村長とすることに向けまして検討を加え、必要な措置を講ずる旨の規定を置くこととしたものでございます。

青木委員 大変よくわかりました。

 この件について下村大臣にもぜひお伺いをさせていただきたいと思います。やはり原点は教師ということで、その教員の身分保障ということについてお考えをお聞かせいただければと思います。

下村国務大臣 これはおっしゃるとおり、設置主体が学校は市町村ですから、ところが、学校の先生は県費負担ということで、いろいろな構造上の問題点もあるわけです。

 ですから、設置主体に沿った人事ができるような方向性をとることは望ましいことでありまして、文部科学省でも、中核市や一定規模以上の市町村に移譲する方向で検討する必要があるとして、累次にわたり、中教審答申等にも記載されているところでございます。

 ただ、青木委員もおっしゃっていましたが、一方で離島とか中山間地域では、管理職の不足など広域人事が必要となる状況があり、町村単独で人事を行うことが困難であるということで、特に離島等を抱えている都道府県等からは、逆に、いい先生が中心だけ集まって周辺に来なくなるという都道府県からの主張もあって、それはそのとおりの部分がありますので、地域事情に応じた、いい先生がうまく配在されるような、そういうことは考えていかなければならないと思いますが、基本的には、設置主体に合わせた教職員の採用ができる方向に行くというのは、これは望ましい方向だと思います。

青木委員 ありがとうございます。

 この点については、下村大臣のお考えとまた衆法提出者のお考えは、同じ方向を向いているんだということは確認をさせていただきました。

 それでは時間ですので終わらせていただきますが、アンケート調査の結果も踏まえてもう一点お伺いをしたかったのですが、また次回にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小渕委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会


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