衆議院

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第20号 平成26年5月23日(金曜日)

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平成二十六年五月二十三日(金曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 小渕 優子君

   理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君

   理事 義家 弘介君 理事 笠  浩史君

   理事 鈴木  望君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      小此木八郎君    大西 英男君

      大見  正君    勝沼 栄明君

      神山 佐市君    菅野さちこ君

      木内  均君    熊田 裕通君

      小林 茂樹君    小松  裕君

      斎藤 洋明君    桜井  宏君

      新開 裕司君    鈴木 憲和君

      武部  新君    冨岡  勉君

      永岡 桂子君    野中  厚君

      馳   浩君    比嘉奈津美君

      藤原  崇君    牧島かれん君

      宮内 秀樹君    八木 哲也君

      菊田真紀子君    細野 豪志君

      吉田  泉君    伊東 信久君

      遠藤  敬君    椎木  保君

      三宅  博君    中野 洋昌君

      柏倉 祐司君    井出 庸生君

      宮本 岳志君    青木  愛君

      吉川  元君    山口  壯君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            吉田 大輔君

   文部科学委員会専門員   久留 正敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     勝沼 栄明君

  木内  均君     大西 英男君

  工藤 彰三君     大見  正君

  馳   浩君     小松  裕君

  宮川 典子君     藤原  崇君

  椎木  保君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     武部  新君

  大見  正君     牧島かれん君

  勝沼 栄明君     青山 周平君

  小松  裕君     馳   浩君

  藤原  崇君     鈴木 憲和君

  伊東 信久君     椎木  保君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     斎藤 洋明君

  武部  新君     木内  均君

  牧島かれん君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     宮川 典子君

  八木 哲也君     工藤 彰三君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)


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     ――――◇―――――

小渕委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

下村国務大臣 このたび政府から提出いたしました学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 大学は国力の源泉であり、各大学が人材育成、イノベーションの拠点として教育研究機能を最大限に発揮していくためには、学長のリーダーシップのもとで戦略的に大学を運営できるガバナンス体制の構築が不可欠であり、学長を補佐する体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選考の透明化等の改革を行っていくことが重要であります。

 この法律案は、このような観点から、大学の組織及び運営体制を整備するため、副学長の職務内容を改めるとともに、教授会の役割を明確化するほか、国立大学法人の学長の選考に係る規定の整備を行うなどの必要な措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、副学長が、学長の命を受けて校務をつかさどることとしております。

 第二に、教授会は、学生の入学や学位の授与等のほか、教育研究に関する重要な事項で学長が必要と認めるものについて学長が決定を行うに当たり意見を述べること、また、教育研究に関する事項について審議するとともに、学長等の求めに応じ意見を述べることができることとしております。

 第三に、国立大学法人の学長選考について、学長選考会議が定める基準により行わなければならないこととするとともに、国立大学法人は、その基準及び選考結果等を公表しなければならないこととしております。

 第四に、国立大学法人の経営協議会の学外委員を過半数とすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

小渕委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長吉田大輔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小渕委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中根一幸君。

中根(一)委員 自由民主党の中根一幸です。

 質問に早速入りたいんですが、その前に一言、下村大臣にお話ししたいことがございます。

 本日は、平成二十六年の五月二十三日、下村大臣の誕生日、しかも、見た目では全く想像できませんが、六十歳という還暦の、まさにお祝いをまず心から述べさせていただき、ますますの御活躍を祈っております。

 それでは早速、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 日本の生産年齢人口が減少性向になる中で、経済再生、国家再生を含めた国の基盤をどうやってつくっていくかということを考えた際に、今後、新しい知識や技術を生み出す場として、これまで以上に大学は非常に重要な役割を果たしていくものだと思っております。

 このような観点で大学を捉えたときに、日本の再生のために大学改革を行うという視点が重要かと思います。その改革のためにはどのような大学のガバナンスのあり方を目指すべきかを考えたときに、やはり、学長がリーダーシップをとって大きな改革をしていかなくてはいけないと思うわけでございます。

 日本の大学には多くの優秀な研究者がおり、ノーベル賞級の基礎研究が数多くなされております。また、これまでも、重要な制度改正を受け、多くの大学において、学長のリーダーシップのもとでさまざまな大学改革に取り組んできていることでございます。学長のリーダーシップのもとでいろいろな大学が改革を行われておりますが、大変強いリーダーシップがなければできないという現状もあるわけです。そのような個別な取り組みの中で、大学は我が国の発展の源泉になるわけでございますので、知識基盤社会をリードしていくことが求められていて、国としても、これらの目的に沿うような大学改革の方針を示していくことが重要であると思っております。

 この大学ガバナンスのあり方については、日本経済再生本部で、日本学術振興会の安西祐一郎理事長からヒアリング、また、そこにおられます丹羽文部科学部会長を中心に、文部科学部会において、国立大学協会、公立大学協会、また日本私立大学団体連合会の三団体の会長からヒアリング、また、私が担当させていただき、日本経済再生本部と合同で開催させていただいた四回の勉強会において、十人の有識者からヒアリングを行うなど、延べ十四時間をかけて、自民党内でも丁寧かつ集中的に議論を重ねてまいりました。

 これらの議論を通じて、大学は国力の源泉であり、我が国の国際競争力を高めるためには大学のガバナンス改革が必須であること、また、大学において権限と責任の一致が必要であり、学長がリーダーシップを発揮して改革を進めるためには、責任を持って学長が決定することを法律によって明確化することが必要であるという点が明らかになりました。このことは、大臣と我々では共通認識にあると考えております。

 それを改めてこの国会という場で確認させていただくために、まず、本法律案を提出することが必要な理由を下村大臣からお答えください。お願いいたします。

下村国務大臣 まず冒頭、誕生日の祝意をありがとうございます。

 また、中根委員におかれましては、今回の大学ガバナンス法案、当初は省令改正の予定だったものを法律改正案として今国会に提出することになったことに対して、大変に、党の中心的なメンバーとして取りまとめていただいたことを感謝申し上げたいと思います。

 そして、この本法案を提出する理由でありますが、急速な少子化に伴う十八歳人口の減少や、グローバル化の進展による国際的な大学間の競争等に各大学が適切に対応していくためには、予算や定員の再配分や学部編成などの組織の見直し等、学長のリーダーシップのもとで進めていく必要があります。

 一方、大学のガバナンスについては、現在、権限と責任のあり方が明確でない、また、意思決定に時間を要し、迅速な対応ができていない、あるいは、学内の都合の方が先行して、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘をされております。

 このため、今回の法律改正によりまして、学長補佐体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選考の透明化等の改革を行うことによりまして、大学運営に責任を負う学長が、教授会を初めとする学内の意見を聞きながら、全学的な視点で大学運営を考え、その権限において最終的に決定する環境の整備を目指すものであります。

中根(一)委員 ありがとうございます。大臣も我々と共通の問題意識をお持ちであるということが改めて確認できたかと思います。

 ところで、先ほど大臣も、この大学ガバナンスの権限と責任について明確でないとおっしゃっておりました。私は、この原因は、主に現行の学校教育法の九十三条に起因していると思っております。

 現行の学校教育法の第九十二条の三項には、学長の職務を、校務をつかさどると規定しております。現行法においても、学長は大学としての最終的な意思決定権を有するものとされております。そして、学校教育法の九十三条には、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」という規定がございます。この九十三条の規定が、いわゆる昔からの慣習による誤解であったり、また、拡大解釈により問題が生じているものではないかと思っております。

 例えば、先ほどお話ししたように、本来、学長が最終の意思決定権を有しているにもかかわらず、教授会が事実上の意思決定機関になっているところもたくさんございます。

 また、この九十三条の「重要な事項を審議するため、」という「重要な事項」が内容が必ずしも明らかではないがために、本来であれば、この法の趣旨からいって、教育研究に関する部門の重要な事項のはずが、大学の経営に関する事項まで、とにかく広範に審議されている。

 これらが結果的に学長のリーダーシップを阻害してきたのではないかと思っております。

 合同勉強会においても、権限と責任の一致が重要であり、責任を持って学長が決定することを法律によって明確化することが必要であるとされていましたが、今回の法律改正で、大学における権限と責任の一致が可能になるとお考えでしょうか、お答えください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 現行の学校教育法第九十二条三項におきましては、学長の職務を、校務をつかさどると規定をしております。現行法におきましても、学長は大学としての最終的な意思決定権を有するものと解しております。

 今回の法律改正におきましては、九十三条の教授会に関する規定の中で、教授会が教育研究に関する事項について、その字義どおり審議することを規定するとともに、決定権者である学長に対して意見を述べる関係にあることを明確にしたところでございまして、これによって、大学における権限と責任の一致が明らかになるものと考えております。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 ただいまお答えいただいたとおり、各大学において権限と責任の一致が明らかになるように、文科省においても、各大学に対して、法の趣旨に沿った学内規則の制定など、自主的なガバナンス改革の取り組みが行われるように促していただければと思っておりますので、よろしくお願いします。

 さて、次に行きます。

 中央教育審議会の審議まとめにもありますように、今後、少子高齢化の進展に伴い、大学の経営状況が厳しさを増す中で、大胆な組織再編や、限られた資源のより一層効率的な配分など、学長は、これまで以上に高い識見を持ちながら、強力なリーダーシップを発揮して大学改革を進めていかなければいけないと思っております。

 そのためには、学長選考組織が将来の大学のミッションを見通した上で、その実現に向けて大学経営を委ねられる人材を獲得するため、求められるべき学長像を明確に示して、候補者のビジョンを確認した上で決定すべきだろうと思っておりますが、現在、なかなかそのようにはなっていないようでございます。そのため、現在の学長選考方法について再点検し、学長を選考するために適した方法にする必要があると思っております。

 国立大学法人について言えば、学内で意向投票を行い、それを尊重して学長を選考しているところがありますが、今回の法律改正により、学長の選考にどのような変化が期待できるのか、また、文部科学省としてどのようにお考えかをお答えください。

吉田政府参考人 国立大学の学長選考会議の関係でございますけれども、大学のミッションを実現できる適任者を獲得するために必要となる、学長に求められる資質能力の明示が事前に十分になされていないとか、事実上、教職員による投票の結果を追認するような例が見受けられるなど、一部には、主体的に選考を行っているとは言いがたい状況があるという指摘がなされております。

 このため、今回、学長選考は、学長選考会議が定める基準により行うことを定めることによりまして、学長選考会議による主体的な選考を促進する必要があると考えております。学長選考会議みずからが大学のミッションを見通した上で、求めるべき学長像を明確に示した基準を定めることで、大学のミッションや社会のニーズに照らして、ふさわしい候補者の選定がより容易になるものと考えております。

 また、当該基準の公表によりまして、学長の選考手続が大学のミッションに照らして適切に行われたかどうかを広く社会に知らしめることが可能となり、社会からの信頼と支援の好循環を確立することや、学長選考会議みずからがより適切に説明責任を果たすことを期待しているところでございます。

中根(一)委員 ありがとうございます。

 各大学の特徴や今までやってきたこと、そして、これからその大学におけるミッションは何なのかということを学長選考会議でしっかりと議論をして、それを定義づけしていただいて、そのためにどのような学長が必要なのか、その資格、資質、また経験など、しっかりと公表しながら、オープンにしながら、選考基準、その仕方、プロセスも含めた中で公開していくということ、透明性の高い学長選考が進むことが非常に重要であると考えます。

 そのような取り組みを通じて、世界最高の教育研究拠点を目指す大学はもとより、地域活性化の中核となる大学においても、各大学における強み、特色を生かした機能強化を進めていただき、国立大学がより一層社会的役割を果たすことができることを期待しております。

 次に、国立大学の経営協議会についてお尋ねいたします。

 国立大学は、先ほど申し上げましたように、世界最高水準の教育研究の実施など、政策的に重要な役割を果たすことが求められていると思います。とりわけ近年においては、共同研究等社会との接点が着実に増加しており、地域が抱える課題解決や地域経済の活性化などについても、中核的な役割を果たすことが期待されるようになってきていると思います。

 この改正により、国立大学の経営協議会は学外委員を過半数とすることになりますが、その改正の理由についてお答えをいただければと思います。

吉田政府参考人 委員御指摘のとおり、近年、国立大学につきましては、共同研究や外部資金の増加、あるいは、地域活性化への貢献に対する要請の高まりなどが見られるようになってまいりました。こういった変化の中で、国立大学は、社会や地域のニーズを的確に反映した運営がより強く求められている状況にございます。

 また、中央教育審議会の取りまとめにおきましても、社会の多様なニーズを踏まえた大学の経営を確保する観点から、経営協議会の構成について検討すべきとされたところでございます。

 こうした状況の変化を受けて、経営協議会のいわゆる学外委員は、その経験と知見を生かして、より主導的かつ積極的に審議に参加することが必要となっております。

 このため、今回の改正では、学外委員の割合を過半数とすることで、より多くの学外委員の参画を促進しようとするものでございます。

 この改正によりまして、国立大学の経営協議会が国民や社会に対する説明責任を果たし、学外の有識者の意見を運営に適切に反映させつつモニタリングする仕組みとして、社会からの信頼と支援の好循環を確立することにつながるものと考えております。

中根(一)委員 どうもありがとうございます。

 私としても、本改正が、国民や社会に対する説明責任をしっかりと果たしていただいて、学外の有識者の意見を経営に適切に反映させるという目的に資するものとなることを心から期待しております。

 現在、文部科学省におかれましては、大学の国際競争力を高めるさまざまな取り組みを強力に推進しておられると思います。

 その中でも大学ガバナンス改革は、それ自体が目的ではなく、あくまで手段であり、大学の改革基盤となる第一歩であると思っております。大学が自主的、自律的な取り組みによって国際的な競争力を高めていく上で、本改正は非常に重要な意味を持つものだと思います。

 そこで、最後に、本改正を初めとして、大学改革全般に関する大臣の熱い思いを、誕生日になって六十歳になった、還暦を迎えた大臣にお答えいただきたく、よろしくお願いいたします。

下村国務大臣 経済を含めグローバル化が急速に進展する中、我が国は、二〇六〇年には全人口に占める生産年齢人口の割合が五一%まで減少すると予測をされておりまして、国力の低下が懸念される状況にあります。

 日本がこのような課題を抱える中で、国際的な大競争の中で社会の活力を維持発展させ、世界に貢献していくためには、一人一人の能力を最大限に高める必要があります。そのため、大学が果たす役割は極めて重要なものであり、事実、この二十年間、経済成長してきた国は、大学を含めた高等教育に大変力を入れているという正比例の傾向があります。

 まさに大学力は国力そのものでありまして、大学が変わらなければ、大学そのものが地盤沈下するということだけでなく、日本そのものも地盤沈下していくということにつながっていくのではないかと思います。

 我が国の大学力を強化するために、大学の教育研究について量的な拡大と質的な向上をともに進めていくことが重要課題であると考え、その方向性を明確に示す必要があると思います。

 このため、さまざまな課題を抱える大学の従来の教育研究のあり方やマネジメントのあり方などを抜本的に見直し、大学改革を力強く進め、優秀な学生を育てる、また、海外からも優秀な学生を集めるような、そういう知的基盤の中心として日本の大学が世界の中で十分戦っていけるような環境づくりをバックアップしてまいりたいと思います。

中根(一)委員 大臣、どうもありがとうございます。

 これで質問を終わりにします。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして、順次質問をさせていただきます。

 初めに、学校教育法の改正について伺ってまいります。

 現行法の学校教育法第九十三条の規定では、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」これだけが規定されている。この審議すべき重要な事項ということ、この範囲が法律上必ずしも明確になっていないということで、大学の経営上の決定権まで含むのか、こうした拡大解釈に基づく行き過ぎた権限の行使が学長のリーダーシップを阻んでいる、こういう指摘もあることから今回この改正につながったものである、このように認識しておりますが、特に教授会の役割について、まず少し伺っていきたいと思っております。

 今回の改正案による教授会の役割の明確化というのは、最終決定権者は学長であり、教授会は議決機関ではないということを明確にしたものである、このように認識をしております。

 これは、現行法における学長と教授会の役割を変更するものではなくて、あくまでも、拡大解釈によって教授会が議決機関として意思決定を行っている事例が見受けられる、法律の本来の趣旨と違う運用がなされている場合もあるということでこんなことになるという認識をしておりますが、その上で、まず、教授会の審議事項の透明化についてお伺いをしておきたいと思います。

 中教審の大学分科会の審議まとめでも指摘をされておりますが、教授会が具体的にどのような事項について審議をしているのかは、これは原則非公開になっていることが多くて、一般には余り知られるところではない。学生の入学、卒業の判定、学位に関する審査など、いわゆる秘密の保持にかかわってくることもございますのでこういったことになっているのかなとも思いますが、教授会に対する批判の多くは、大学の中で具体的にどのようなことが行われているのかがよくわからない、見えてこない、こういうことであるとすれば、教授会がどのような事柄を審議して、各大学の教育研究を高める上でどのような役割を果たしているか、こういった点について可視化を図るべきである、私はこう考えております。

 一つ具体的な例を挙げますと、東京工業大学、ここでは、項目だけですけれども、教授会の議事録をホームページで公表する、こういうことを行っておりまして、現にこうした大学も出てきていることから、国としても教授会の情報公開を促進するような支援をするべきである、このように考えますが、御見解を伺いたいと思います。

下村国務大臣 御指摘のように、各大学が教育研究を行っていく上で、教授会が実際にどのような事柄を審議し、どのような役割を果たしているのかを可視化していくことは、重要であると考えます。

 一方で、教授会での審議内容は、学生の入学の許可や卒業の判定、学生に対する懲戒処分の検討、教員の人事に関する審査など、公開に適さない事項も多いというところもあります。

 既に、御指摘ありましたが、一部の大学においては、教授会の議事概要や審議事項等をホームページで公開するなど、教授会の情報公開の動きも出始めており、各大学や学部等が積極的に教授会における審議内容の透明化を進めていくことが期待をされるところであります。

稲津委員 そうしたことに向けて国としても積極的にかかわっていただいて、これは大学の今後の発展にもつながっていく、そういう側面もありますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 二点目は、九十三条の二項における、教授会が意見を述べるとした事項の理由、それから、教育研究に関する重要事項とは具体的にどのような事項を想定しているのかということについて伺っておきたいと思います。

 これも、中教審の大学分科会の審議のまとめでは、教授会が審議すべき内容として、学位授与、それから、学生の身分に関する審査、教育課程の編成、教員の教育研究業績等の審査等について、教授会の審議を十分に考慮した上で学長が最終決定を行うべき、このようにされました。

 この本改正案の第九十三条の二項には、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるものとする事項に、学生の入学、卒業及び課程の修了、学位の授与及び教育研究における重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要であると認めるもの、こうした理由についてまずお伺いしたいのと、それから、学長が必要と認める教育研究に関する重要な事項とは具体的にどのような事柄を指しているのか、この点について見解をお伺いしておきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど委員御指摘のように、本年二月の中教審の大学分科会の審議まとめでは、教授会が審議すべき具体的な内容といたしまして、学位授与、それから学生の身分に関する審査、あるいは教育課程の編成、そして教員の教育研究業績の審査等を掲げて、こうした事項については、「教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」というふうな指摘を受けております。

 これを受けまして今回の改正案では、審議まとめで掲げられた事項のうち、学生の入学、卒業や学位の授与など、特に学生に直接関係する事項を学長が決定を行うに当たって、教育研究に関する専門的観点から、教授会が意見を述べるべき事項として例示したものでございます。

 また、教育研究に関する重要事項として学長が必要と認めるものということにつきましては、各大学の事情に応じてということになりますけれども、先ほど中教審のまとめにもありましたような、教育課程の編成や教員の教育研究業績等の審査等が含まれることが想定されていると思います。

稲津委員 関連してもう一つ、学校教育法施行規則について伺っておきたいと思うんですけれども、これは施行規則の第百四十四条の取り扱いのことなんです。

 ここには、「学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める。」このようにあります。この「教授会の議を経て、」とあるのは、今回の学校教育法九十三条の改正に伴って、この施行規則はそのままでよいのか、あるいはこの施行規則はどういう扱いになるのか、この点について確認をしていきたいと思います。

吉田政府参考人 御指摘のように、現行の学校教育法施行規則第百四十四条では、「学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める。」と規定をしております。

 今回の学校教育法改正案では、学生の入学、卒業につきまして、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるものとしたところでございまして、本改正法案が成立した際には、その法律との関係をよくよく見きわめて、この施行規則の見直しを行う必要があるものと考えております。

稲津委員 学長と教授会の役割、かかわりというのは今回のこの法律の一番の大事なポイントであり、教授会が何も意見を言わないとかそういうのではなくて、当然、意見の交換等は必要なことでございますけれども、ただ、あくまでも、この法律の改正に基づいたら、やはり施行規則についてもこれは変えていくということになると思いますので、この点、ぜひ御留意いただきたいということを申し上げておきます。

 次に、国立大学法人法の改正について数点伺っておきたいと思いますが、特に、学長選考の基準、結果の公表について、これは第十二条関係ですけれども、伺ってまいりたいと思っております。

 学長の選考は、現行法でいうと、「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者のうちから行わなければならない。」とあります。選考方法は、教育研究評議会に所属する学内委員と経営協議会に所属する学外委員の同数から構成される学長選考会議において学長を選考する、こうなっております。

 しかし、事実上、教職員による投票の結果を追認するなど、いわゆる過度に学内の意見に偏る選考方法の事例も見られることから、この趣旨に照らして適切に運営されるよう法改正を行うものである、このように認識をしております。

 そこで数点伺ってまいりますが、まず一点目は、学長選考基準の明確化と現在の各大学における学長選考規定との関係ということについて伺っておきたいと思います。

 一つ例を出させていただきますのでお許しいただきたいと思うんですけれども、東京大学の天野郁夫名誉教授、著書の「大学改革の社会学」の中で、学長は単なる行政者であっても困る、一番望ましいのは調整者型の学長だが、リーダーとしての役割も必要だ、また、大学の顔にもなってほしい、こうした全ての要求を満たしてくれる学長が現実に存在するはずもない、あったとしても、これは希有な例というほかない、裏返せば、日本の大学において学長は、一般の教員が確たるイメージやその像をつくり上げることができないほど存在感のない、影の薄い存在だということになる、このように申されております。

 まさにこの部分が今の国立大学に求められている側面ではないかと私は思います。それぞれの大学が何を目指すのか。例えば、グローバルな人材を一層輩出することを目指すのか、あるいはまた地域に根差した人材の輩出を目指していくのか、そういった大学の目指すべき姿があって、そしてどういう学長がその大学に望ましいか、本来そこが一番大事なことであるとも思います。

 そうした意味において、今回の法改正により第十二条七項において学長選考会議が学長選考の基準を定めることの意義は、これは大変大きいと思います。各大学が、具体的にどういう資質を持った学長を選ぶべきなのか、それを決めて、それに合わせて選考方法も決めていくことになると思います。

 そこでお聞きしたいのは、少し前置きが長くなりましたが、現在でも各国立大学法人において学長選考規定を定めている大学がほとんどである、このように思いますが、今回のこの基準の明確化によって各大学の選考規定はどのように変化をするものと考えるのか。また、既に現在、教職員による学内選挙を九五%の国立大学が実施をしている中で、学内選挙と学長選考との考えにおいてどのような変化が起きると考えるのか。この点についてお伺いしておきます。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 国立大学の学長選考の関係では、学長選考会議が、大学のミッションを実現できる適任者を獲得するために必要となる学長に求められる資質能力の明示を必ずしもこれまで行ってきていなかった、あるいは、事実上、教職員による投票の結果を追認するような例が見受けられるなど、主体的な選考を学長選考会議が行っているとは言いがたい状況が一部に存在する、こういう御指摘がございました。

 このため、今回の法改正におきましては、学長選考会議による主体的な選考を促進するため、学長選考は学長選考会議が定める基準により行うこと、また、当該基準や選考の結果等を公表することを義務づけることとしております。

 学長選考会議が定める基準ということにつきましては、まず、学長に求められる資質能力、また、学長選考の具体的な方法が盛り込まれることを想定をしております。各国立大学におきましては現在でも学長選考規定が整備されておりますけれども、必ずしも、学長に求められる資質能力に関する事項などが定められているわけではございません。

 この法案を成立させていただければ、各国立大学の学長選考会議みずからが、今回の法改正の趣旨や各大学の特性やミッションを見通した上で、学長に求められる資質能力に関する基準や選考の具体的な方法、その中には意向投票などの位置づけも含まれるということになりますけれども、その策定、見直しを行うということをやっていただくことになります。

 そういった取り組みを通じまして、より透明性の高い学長選考が行われるものと考えております。

稲津委員 次に、第十二条八項の新設により、学長選考の基準及び結果を「遅滞なく公表しなければならない。」こうしております。この公表事項に「その他文部科学省令で定める事項」とありますが、この「省令で定める事項」とはどのような事項を想定しているのか。

 それから、これまで学長選考会議が学内選挙と違う決定を行った際に、いずれも却下や棄却をされているものの、訴訟問題まで発展しているケースもあることから、このような問題の、何らかの対応ができるような仕組みが必要である、このように考えますが、見解をお伺いします。

吉田政府参考人 今回の改正案の国立大学法人法第十二条の第八項では、国立大学法人に、学長選考の結果その他文部科学省令で定める事項につきまして、これを「遅滞なく公表しなければならない。」というふうに定めております。

 その「その他文部科学省令で定める事項」としては、学長選考会議が学長選考の基準に照らして選考した学長を適切というふうに判断をした理由、選考の結果誰を選んだというだけではなくて、なぜその方が選ばれたのかという理由を明示していただくということ、それから、学長選考会議で行われた選考のプロセス、どういった過程を経てその方が選ばれたのかというこのプロセス、これにつきまして公表していただくよう、その省令の内容を固めていきたいというふうに思っております。

 それから、二つ目の、学長選考会議におきまして、各大学で行われました意向投票の結果と異なる候補者を学長として選考したという事例は、これまでのところ十九件ございます。

 今、裁判になった場合ということがございました。確かに、国立大学法人法が施行された直後に行われました学長選考でそのような事例が起こったときに訴訟になったケースはございますけれども、いずれも大学側がこれは勝訴をしているというふうなこともございます。まさにそういった積み上げの中で、やはり、学長選考会議が学長選考ということについては法的な責任を負って選考しているんだということが明確になってきたように思います。

 以上でございます。

稲津委員 時間の関係上もう最後になりますけれども、最後に一点お伺いしておきたいと思います。

 それは学長業務に対するチェック機能についてなんですけれども、今回の法改正では、新たに国立大学法人の学長に対し何らかの権限を付与するということではありませんが、教授会の役割の明確化、それから学長選考基準の明確化、公表が義務化されることによりまして、実質的に学長のリーダーシップを促そう、こういう趣旨であると認識をしております。

 これがよい方に働けば全く問題はないんですが、逆に、いわゆる学長の暴走、こういったマイナス面が働いた場合、これは大変問題でございまして、どこかでしっかりチェックをしていく、場合によっては罷免もできるような仕組みも必要ではないか、こういう意見もありますが、こうしたチェック機能についてどうお考えなのか、この点についてお伺いしておきます。

下村国務大臣 今回の法律改正は、学長選考会議などの国立大学法人の組織が果たすべき役割を明確化するものでありまして、学長に新たな権限を付与するものではありませんが、もとより、学長はその権限を適切に行使する必要があります。

 このため、御指摘のとおり、学長の業務に対するチェック機能が重要であり、その仕組みとして、監事による監査や、自己点検・評価、認証評価等の評価、学長選考会議による業務執行状況の評価等が可能となっております。

 このような仕組みを通じて、学長の適切な権限の行使を確保してまいりたいと考えます。

稲津委員 終わります。

小渕委員長 次に、吉田泉君。

吉田委員 民主党、吉田泉です。

 まずは下村大臣、お誕生日おめでとうございます。人生は六十からが本番という言葉もございますので、ますますの御活躍を御期待申し上げます。

 それでは私からも、学校教育法、国立大学法人法の改正案に関連しまして質問をさせていただきます。

 今回の法改正の趣旨、先ほど大臣から説明がありましたけれども、大学運営における学長のリーダーシップを確立するんだ、そうやってガバナンス改革を促進する、その関連の措置をとるんだ、こういうことでございます。それは一方では、今度は教授会のあり方の見直しにつながるだろうと一般には思われているわけであります。

 せんだって私のところに署名運動が回ってきましたけれども、かつての京都大学の総長、かつての立教大学の総長、さらには東京大学の副学長さん、こういうそうそうたる方々が今回の法改正の反対署名運動をやろう、こういう動きもあるわけなんですが、彼らの心配も、教授会というのが一体どうなるのかというところにあるんだろうというふうに思います。

 そこでまず、教授会の今後についてお伺いしたいと思います。

 明治以来、学部単位の教授会というのが、教学面を中心ではございますが、日本の大学自治の一翼を担って大きな役割を果たしてきたわけです。それが、昭和四十年代の大学紛争、さらには、十年前の国公立大学の法人化などを経て、随分と変化して今日に至っているのではないかというふうに思います。

 そこでまず、教授会の役割と権限、法制上そして実態上、歴史的にどのように変化してきたものか。今回さらにそれを変えようというわけですが、そこも含めて教えていただきたい。さらには、その変化してきた背景もどう見ておられるか、お伺いしたいと思います。

吉田政府参考人 まず、教授会の沿革ということについて触れさせていただきたいと存じます。

 教授会は、戦前期には帝国大学及び官立大学にのみ設置されるということにされておりましたけれども、戦後、学校教育法におきまして、全ての国公私立大学における必置機関として位置づけられてきました。

 教授会は、特に法人化前の国公立大学におきましては、教員人事について教育公務員特例法に基づく実質的な決定権を有したほか、教育課程の編成や学生の入学、卒業の決定など、学部や研究科などにおきます意思決定においても重要な役割を果たしてきたということがございます。

 しかしながら、その後、少子化やグローバル化が進展をし、社会経済状況が大きく変わる中で、教授会が、大学の経営に関する事項まで広範に審議をしておったり、実質的に決定機関として運用されているなど、学長による大学改革の取り組みを阻害している場合もあると指摘がしてこられました。

 今回の改正は、こういった状況を踏まえまして、大学における権限と責任を明確にし、学長がリーダーシップを発揮していくことができるよう、教授会の役割を明確化しようとするものでございます。

吉田委員 今回の法改正は、教授会の役割、権限を何か縮小したり限定したりするものではない、今までのあり方をより明確化するものだというような御答弁だったように思います。先ほどのお二方の質疑の際もそういうニュアンスの答弁があったかと思うんです。

 現実問題、本当に教授会の権限の縮小というようなことにつながらないのかどうか、そういう視点で幾つかお尋ねしたいと思います。

 今回の法改正に先立つ二月ですけれども、「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」という冊子が中教審の大学分科会から出されました。先ほどもそれは引用されましたけれども、改めて申し上げると、教授会については、専門的知見を持った教員から構成される合議制の審議機関であることを踏まえ、教授会が審議すべき重要な事項として、一つ、学位授与、二つ、学生の身分の審査、三つ、教育課程の編成、四つ、教員の教育研究業績等の審査等、これらについては、「教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」こういうまとめが出されたわけでございます。

 ところが、今回の改正案を見ますと、審議会が指摘したこの四項目のうちの一と二、つまり、学位の部分と学生の部分のみが改正案には盛り込まれた。なおかつ、教授会の審議を十分に考慮してという文言が採用されずに、法律の改正案の中では、「意見を述べるものとする。」という表現にとどまったというふうに思います。

 つまり、中教審のまとめに比べると、今回の改正案というのは、教授会の役割、権限がより限定的に、かつ、いわば曖昧にされたようにも思うんですが、どういう事情でまとめと改正案が違ってきたのか、どういう理由でそうされたのか、お伺いしたいと思います。

下村国務大臣 まず、冒頭激励いただいたことを感謝申し上げたいと思います。

 そして、御質問でありますが、今回の改正案の第九十三条第二項におきまして、御指摘のように、学位の授与、それから、学生の入学、卒業及び課程の修了、また、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要と認めるものについて、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるものとしているわけでございます。

 限定的との御指摘でありますが、中教審の審議まとめで挙げられた事項のうち、3の教育課程の編成、それから4の教員の教育研究業績の審査につきましては、これは各大学において多様な実態があることから、法律上はあえて規定をせずに、大学に対する新たな法律上の義務については限定的にしたという経緯がございます。

 また、曖昧との御指摘もありましたが、第九十三条第二項第三号は、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことを必要と認めるものと規定しておりまして、学長の裁量に基づいた運用を可能としたものであります。

吉田委員 そうしますと、大臣、ちょっと確認ですけれども、この中教審の答申を何か実質的に変えたわけではないんだ、いろいろな各大学校の多様な実態を認めるためにこういうミニマム的な書き方にしたんだという御趣旨かと思うんですが、先ほど申し上げた、教授会の審議を十分に考慮してという部分はいかがでしょうか。今回の改正案に反映されているんだというお考えなんですか。

下村国務大臣 先ほどからの質疑でお答えしてまいりましたが、これまでの法は、拡大解釈をされ、教授会の役割が大学の運営等まで重要な審議として位置づけられて解釈されて運用されたという大学もあったということから、本来の法の趣旨にのっとったより明確なものにするということでありまして、法律上、教授会の役割を限定的に変更したということではないということであります。

吉田委員 私の質問は、審議のまとめと比べて、十分に考慮してというところが的確に反映されたのかということでしたが、ちょっと後ほどまた尋ねたいと思います。

 さらに大臣にお伺いしたいと思いますが、中教審のメンバーの方のお話をちょっとこの間聞いたんですが、当初、大臣の方からは、教授会を重要審議機関としている現行の学校教育法九十三条は変えないんだ、そして、その審議すべき事項を省令で明示したいんだというお話があったというふうに聞きました。なぜそのとき大臣はそういうお考えだったのか、そして、その後方針が実際変わったということだと思いますが、なぜ変わったのか、その辺を教えてください。

下村国務大臣 現行法でも学長の権限や教授会の役割等について規定されていることを踏まえ、曖昧な点は省令で明らかにすることを一つの選択として当初考えておりました。

 ただ、この中教審の取りまとめのときに、私が出席をしたときに、これはメーンではなくて一部の議員からということでありましたが、省令改正では実際に各大学に対する徹底ができないのではないかという意見をいただきまして、その後、いろいろな関係者の方々にお会いをすると、省令も法律ではあっても、それが一般国民やあるいは大学関係者、十分な徹底にいかないということになってしまう場合がやはり多いのではないかということで、その後改めて、中央教育審議会の審議、それから大学関係者、また与党等からさまざまな意見を伺う中で、これは法律そのものを改正して、誤解のないように明確化することが最も重要である、そういう認識に至りまして、今国会、提出をさせていただいたという経緯がございます。

吉田委員 方針が変わったということですが、さらに九十三条の中身についてちょっと確認をしたいと思います。

 従来の九十三条は、「教授会を置かなければならない。」という規定でした。今回は「教授会を置く。」という言葉に変更するわけですが、これは何か特別の意味があるんでしょうか。従来は必置、必ず置かなければならないということだったんですが、それは変わりはないということなのか。さらには、「重要な」という形容詞が外れるわけですから、何か教授会の審議が学長から尊重されるべきだという法的な保障がなくなるということにはならないのか。その辺をまとめてお伺いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正で、従来「置かなければならない。」というのを「置く。」というふうに言葉を変えておりますけれども、この「置かなければならない。」も「置く。」もともに、いずれもその機関の設置を義務づけることを意味しておりまして、法的な差異はございません。したがいまして、今回の改正後でも、引き続き教授会を置く必要がございます。

 また、現行法におきまして、大学における最終的な意思決定権は学長にありまして、必ずしも教授会の審議結果に従う法的義務が存在するわけではございません。

 ただ、学生の入学、卒業、学位の授与等の学生に関する事項につきましては改正案の九十三条二項に列記をしているところでございますけれども、これにつきましては、学長はそういうものについては教授会に意見を聞き、また、教授会は意見を述べなければならない、こういう関係を法的に義務づけておりますので、学長は教授会が述べた意見を十分考慮した上で最終的な決定を行うということが適切であるというふうに考えています。

吉田委員 そうしますと、もともと法令上は尊重義務はないが、今回の改正案においても、学位の授与等については十分尊重されねばならないというような御趣旨の答弁かなと思います。

 私は、このあたりが今回の改正案の一番の論点のように思います。

 要するに、教育界の方々の方からは、今回の改正案になってしまうと、教授会がせっかく審議をしても、それが尊重されるというニュアンスがこの条文にない、単に学長が最終決断、判断をするときの一つの材料にすぎないということになってしまうんじゃないか、そういう危惧が出されております。

 今局長も触れられましたが、例えば学位の授与というのは、世界的に、教授会の審議が基本的に尊重されている。学位の証書にも教授会の審議に基づきというような文言が書かれる国が多いそうなんですけれども、今後は、学位の授与、確かに法定事項ではあるんだけれども、単に意見を聞くだけにすぎないということになってしまうのではないか、果たしてこういう書き方でいいのかという危惧が出されているところでございます。

 ちょっと話をかえますけれども、手元に、明治大学学部教授会規程というものがあります。これは昭和三十八年に制定されたものですから、ちょうど五十年使われてきたという規程であります。

 明治大学というのは、学生の数が三万三千人、受験生の人気ナンバーワンという私立大学だと思います。つまり、学校経営が大変成功している例でございます。

 その規程によると、教授会は次の十一項目を議決する、議決という言葉が使われております。そして、教育研究に関する事項から始まって、教育課程の編成、さらには教員の推薦、進退、兼職、つまり人事ですよね、こういう事項も教授会の議決事項だということになっているわけであります。

 今回この法改正がなされると、実際今まで使われてきたこの規程のどこかを見直さなければならないということになるんでしょうか。

下村国務大臣 御指摘の明治大学の内部規則においては、教育研究に関する事項や、学長、理事長から諮問された事項について議決すると規定されているというふうに承知をしております。

 今回の改正の趣旨は、学長が大学における最終的な決定権者であることを明確化するものでありまして、その趣旨を踏まえ、各大学において、内部規則やその運用の点検を行い、今回の改正の趣旨にのっとって必要な見直しの検討がなされるものと期待をしているところであります。

吉田委員 そうしますと、確認ですけれども、明治大学は従来の規定を変えなければならない、変えないと法律違反になるよ、こういうことでいいんですか。

下村国務大臣 改正の趣旨にのっとった内部規定であれば、それは問題ありません。

吉田委員 確認ですが、明治大学は、教授会は議決機関だとしているわけですよね。先ほど稲津議員の方からもあったと思いますが、教授会というのはもともと議決機関ではないはずだ、決議機関じゃないはずだというお話も先ほどあったんですが、それが今回の改正案でさらに明確化されるとなると、明治大学の規定は法律違反になるんじゃないですか。

下村国務大臣 この明治大学の学則でありますが、第四章の「学部教授会、連合教授会」という項目の中の第七条に「教授会は、次の事項を議決する。」ということで一から十一まで書いてあるということで、このまま読めばそのようにとれるということになるわけでありますが、その前提として、教育研究に関する事項や、学長、理事長から諮問された事項、これについて議決すると規定されているということで、議決についてはそういう前提条件があるというふうに聞いておりますので、前提条件があるということであれば、一概にこれだけをもって違反するということは言えないと思いますが、しかし、そういうふうな解釈が成り立つということになるのであれば、これは見直しをしていただく必要があると思います。

吉田委員 なかなか微妙ですよね。これは十一項目を学長が全部諮問するというプロセスがあれば。ただ、議決機関というところが微妙にひっかかるなと思います。

 それはそれとして、私は、日本で今一番最高級に成功している私立大学の運営の仕方を、何か上からの法改正で簡単に変えていいのかなという気持ちも反面あるところでございます。

 先ほどから出ているように、もともと教授会というのは審議機関なんだ、それを今回の改正ではっきりさせるだけなんだというような説明が文科省の方からはあるわけですが、私は、実態上は非常に法律が考えている以上の役割を果たしてきた教授会の権限を、今回法律をつくることによって実質的に縮小しようという法案ではないのかなと、実態は。そういうふうに考えないと、なぜ京都大学の総長までやった方が反対運動しようとしているのか理解ができないということになります。

 私は、中教審のまとめ、先ほど読ませてもらいましたけれども、四つの項目に限定してということは、例えば教員任用の人事というのは審議の対象からは外すとか、そういうふうに役割を、審議の対象を明確にした上、教授会の審議をきちんと尊重するということが、これからも、大学の運営の円満化、さらには活性化、そういうことにもつながるんじゃないかな。一概に、教授会を何かシンボリックな目のかたきにするような雰囲気がちょっと今回の改正案はあるように思うんですが、それでいいのかな、それだけでいいのかなという気がしているわけです。

 今まで教授会は長い歴史があるんですが、時代の変化もあります。今後、教授会の将来像について、大臣の所見をお伺いします。

下村国務大臣 当然ですが、教授会そのものの存在を否定しているわけでは全くないわけでありまして、我が国の大学の教育力や研究力は、教員一人一人、そしてその総体としての教授会が高い次元で教育研究に取り組むことができるかにかかっているというふうに思います。

 諸外国の大学におきましても、アカデミックな事項については教員組織が重要な役割を果たしており、我が国の大学が国際的通用性のある大学として評価されるためにも、教授会が将来にわたりその専門性を発揮して、教育研究力の向上に寄与することを期待しております。

吉田委員 やはり、学長に権限を集中すれば改革がうまくいくというものでもないと思うんですよね。なるべく教授会の存在も生かしながら、そういう発想も大事ではないかと申し上げたいと思います。

 次に、国立大学の学長選考に関する改正案についてお伺いいたします。

 現行法でも、学長は、人格高潔、学識にすぐれ、運営能力のある者から学長選考会議によって選考されるということになっているわけですが、今回の改正案では、それに加えて、選考基準というものをつくらねばならないと義務づけられることになるわけですが、その理由。さらには、先ほども出ましたが、学内意向投票というのがほとんどの国立大学、九五%以上で行われている。それも含めて、学長選考の実態をどう見ているのか、お伺いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回、学長選考基準の設定等を義務化する理由でございますけれども、学長選考会議につきましては、大学のミッションを実現できる適任者を獲得するために必要となる学長に求められる資質能力の明示が十分になされていない、あるいは、事実上、教職員による投票の結果を追認するような例が見受けられるなど、一部に主体的に選考を行っているとは言いがたい状況があるという指摘がなされている、これが背景にございます。

 このために、学長選考におきまして、学長選考会議が定める基準により行うことを定めることによりまして、学長選考会議による主体的な選考を促進する必要がある、これが法律の義務化の理由ということでございます。

 この改正によりまして、学長選考会議みずからが、大学のミッションを見通した上で求めるべき学長像を明確に示した基準を定めることで、大学のミッションや社会のニーズに照らしてふさわしい候補者の選定が進むものと考えております。

 学長選考の実態ということでございますけれども、私どもの調査によりますと、全国立大学八十六大学の中で、直近の学長選挙におきまして、まず、学長に求められる資質能力に関する独自の基準を定めていた大学は十四大学でございます。また、教職員によるいわゆる意向投票を行っている大学は八十一大学という状況でございます。

吉田委員 局長、ちょっと確認ですが、ここで今設定を義務づけられる基準というのは、私は何か二つあると思うんです。求められる人物像の基準なのか、さらには、意向投票をどう扱うのかといった選挙の方法を含めた基準なのか。両方ともあるのか、どっちかなのか、ちょっと。

吉田政府参考人 その点は先ほどもちょっと御答弁させていただきましたけれども、学長選考会議で定める基準には、今委員も御指摘のように、求められるべき学長像というものを明示するということと、それから学長選考の方法、その中には、意向投票をどういうふうに位置づけるのか、やるのかやらないのか、あるいは、やるとしても、どういう位置づけにするのか、そういうことも含めた方法を明示して、これが基準の中に含まれるというふうに考えております。

吉田委員 わかりました。

 二〇一三年、東京大学が全国の大学教員を対象に行ったアンケート調査によると、教員による学長選挙は不可欠かという問いに対して、「そう思う」が五〇%、「ある程度そう思う」が三〇%、合わせると八〇%の方が教員による選挙を支持しているという実態がございます。

 ただ、今の話で、今度は基準をつくって、意向投票の問題もここではっきりさせる、これは各大学それぞれがやるということになるんですが、そうすると、全くこの意向投票を外すという基準もつくられ得るし、意向投票を大変重視するといった基準もつくられるし、どちらもあり得るということなんでしょうか。

下村国務大臣 国立大学法人の学長選考は、学内のほか、社会の意見を学長選考に反映させる仕組みとして設けられた学長選考会議が、その権限と責任において主体的に行うものであります。

 学長選考会議は、原則として、教育研究評議会から選出された学内者と経営協議会から選出された学外者を同数として構成されているものとされており、学内者と学外者それぞれの意見が反映される仕組みとなっております。

 具体的な学長選考の基準については、学長選考会議が各大学の特性やミッションを見通した上で主体的に判断しつつ定めるものでありますが、学長選考の具体的手続、方法が盛り込まれることも想定しているところであります。その場合、学長選考会議の判断によりまして、基準において意向投票を行うことを位置づけないこともあり得ます。

 一方で、あくまで参考の一つとして意向投票を行うことを位置づけることも可能でありますが、その場合も、投票結果をそのまま学長選考会議の選考結果に反映させるなど過度に学内の意見に偏るような選考方法は、学長選考会議の主体的な選考という観点からは適切でないと考えております。

吉田委員 現実問題、その意向投票というのをどう扱うかというのが訴訟まで起こっている大変な問題で、これは法律の運用でこれからいろいろ文科省の指導ということも入ると思いますが、よく見守っていきたいと思います。

 もう時間なので終わりますが、要するに、私の最大の懸念、この九十三条によって教授会の審議が尊重されるのかどうかということをこれから審議の中で明らかにしていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

小渕委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会、伊東信久です。本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私自身、開業医でございまして、椎間板ヘルニアのレーザー治療という、先進医療のちょっと変わったところをやっております。レーザーというのは医学の分野なんですけれども、そもそもは工学部の分野です。同時に、大阪大学に医学部と工学部が融合した臨床医工学融合研究教育センター、通称MEIというんですけれども、そのMEIの招聘准教授もやっております。現在も籍を置いております。また、昨年まで大阪市立大学の医学部の非常勤講師もしていましたので、現場の先生からヒアリングしてきたわけなんです。医学部にしても工学部にしても理系ですので、どうしてもちょっと理系の意見になってしまうかもしれませんけれども、その点は御容赦いただければ幸いです。

 今、大阪大学と大阪市立大学の話をしましたけれども、大学の設置というのは、国立、公立、私立と、それぞれの法源が異なっております。そのことは認識しているつもりなんです。今さらなんですけれども、設置基準の違いや概要説明等、そして今回の法案に関しては、学校教育法及び国立大学法人法と書いてありますので、学校教育法の方は公立、私立をカバーすると思うんです。国立大学法人法は国立大学のこととなると思うんです。

 それぞれのガバナンスの改革議論の経緯について、まずはちょっと、きょうの質疑にも関係してくるので、簡単に説明ください。

吉田政府参考人 先ほども少し触れましたけれども、大学をめぐる社会的な環境の変化に伴いまして、大学は、みずから自主的、自律的にさまざまな改革を続けていかなければならないという状況が生まれております。

 その際、大学の学長が、これはリーダーシップをとって、大学のさまざまな意思決定をスピーディーに推し進めていくという必要がございます。この点につきましては、国公私、その大学の別を問わず、いずれの大学においても求められている事項だと思います。

 そういう意味で、今回、学校教育法の改正を行わさせていただいたという状況でございます。

伊東(信)委員 余り重箱のところをつつくつもりはないんですけれども、国立大学法人法の一部だけを改正したというか、公立大学まで及ばなかった理由みたいなのはあるのでしょうか。

吉田政府参考人 学長の選考等につきましては、国立大学法人法だけを今回改正しております。

 公立大学の学長選考につきましては、学長選考機関が行うということは法定されておりますけれども、その構成員等の具体的な内容につきましては、それぞれのその法人の定款で規定をするということになっておりまして、この点につきましては、設置者である地方公共団体が判断すべき事柄というふうにしております。したがいまして、今回の改正の対象とするには適当ではなかろうということで外しております。

 また、私立大学の学長選考につきましては、これは、各私学がそれぞれの建学の精神等に基づきまして、最終的な意思決定機関である理事会が任命権者として責任を持って学長を決定する、こういう仕組みになっておりますので、これについても、一律の何か規制を加えるのは適当ではなかろうということで、今回の対象から外しているという次第でございます。

伊東(信)委員 余り質問の趣意が偏るのはよくないので公立に関してはこのあたりにしますけれども、私自身、神戸大学という国立の大学医学部を出て、大学院の方が市立大学という公立の医学研究科の方なんです。確かに、何かガバナンスが異なるなという意識はございました、どちらがいい悪いというのはこの際は申し上げませんけれども。

 昨日、我が党の鈴木議員が登壇して皆様に質疑させていただいたわけなんですけれども、日本の教育において、中学校、高校と、日本が誇るべき、今後のリーダーとなるべき人物の教育がだんだんと先細りしていくような感じというのは否めないと思います。

 やはり、その中で改革がおくれているのは大学におけるガバナンスではないかということで、今回の法案自体を否定すべきものではないんですね。教授会のあり方ということ、大学のガバナンスということを見直そうということはよくわかるのですけれども、ただ、法案に関しても、いろいろなやはりメリット、デメリットというのはあると思うんです。

 実際、現場から聞いたデメリットというか、今回の法案に関しての危惧されるところをただいまから御指摘はしていきたいわけなんですけれども、いま一度、学長の選考基準と副学長の選考基準及び選考方法、これを御説明いただけますか、いま一度で。

下村国務大臣 大学の学長は、大学の最終的な意思決定権者でありまして、すぐれた大学運営の手腕が求められます。

 また、副学長におきましても、今回の法改正によりまして、学長の指示を受け校務を処理することが可能になるなど、学長の補佐役として、これまで以上に重要な役割を担うことが期待をされます。

 大学の学長選考については、国立大学法人については学外の有識者を含めた学長選考会議が、また、公立大学法人につきましては学外有識者を含めた学長選考機関が、その権限と責任により適任者を学内外から選考するということが定められております。私立大学におきましては、学校法人の理事会の権限と責任におきまして学長選考委員会を設置する等、さまざまな方法によって学長選考が行われております。

 なお、副学長の選考方法につきましては、国公私立を通じて法律上の規定はなく、各大学に委ねられておりますが、通常は、理事会によって選考されるというのが私立大学におけるパターンであります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 今、大臣、運営とおっしゃっていただきましたけれども、まさにそのとおりですね。

 CiRAの山中教授、私の神戸大学医学部、ラグビー部、もしくは大学院の先輩であるわけなんですけれども、山中教授が再三申し上げているのは、名研究者は名経営者になり得るかということで、やはり研究を推し進めていくには、さまざまなCEO的な役割、運営してくれる役割が必要だと言っていますので、そのこと自体は正しいことだと思うんですけれども、そのために、学外も含めた選考ということになると思うんです。

 では、逆に、例えば株式会社であれば、株価が下がったり決算で赤字が出たりすると、株主総会及び役員会ではたまた解任もあり得るわけなんですけれども、学長、副学長のいわゆる任期中の解任、いわゆる不祥事とかではなくて、運営面でうまくいかなかったときの解任、そういった手続もしくは方法とか規定とかがあるのでしょうか、御説明ください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 学長が十分にその成果を上げていない場合、まずは、監事や理事会などが、成果を上げられるよう可能な限りの支援や助言を行うというのがまずありきだと思いますけれども、それでもなお改善されない場合は、国公私立大学とも、制度上、任期途中での解任も可能な制度となっております。

 国立大学法人につきましては、文部科学大臣が、国立大学法人の業務の実績が悪化した場合であって、学長に引き続き職務を行わせることが適当でないと認めるときには、学長選考会議の申し出を受けて解任することができるということが、国立大学法人法の中で規定をされてございます。

 また、公立大学法人についても、同様に、設立団体である地方公共団体の長または理事長が、公立大学の業務の実績が悪化した場合であって、学長に引き続き職務を行わせることが適当でないと認めるときには、選考機関の申し出により解任することができるということが、これは地方独立行政法人法でございますけれども、そこに規定をしてございます。

 また、私立大学につきましては、学校法人の意思決定機関である理事会の権限として、学校法人が定める手続等に沿って学長を解任することができるということとされております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 であるのならば、大学改革をする上でそういったいわゆる業績とかを評価するのは、もう学長、副学長だけでなく、昨日の我が党の鈴木議員の質疑にもございましたけれども、教授会というか、教授自体、プロフェッサー自体もきちっとチェックして有期雇用にしまして、ある一定度の業績が上げられないのであればそこで解任もあり得る、そういった競争原理も、維新の会はやはり競争原理というのが党是でございますし、イノベーション、改革というのが党是でございますので、そういった教授会のあり方、教授の身分保障をしないということも大事だと思うんです。そのあたりを改めて御答弁ください。

吉田政府参考人 大学の活力を維持していくためには、やはり新陳代謝といいましょうか、新しい血が大学の中に入ってくるということが大変重要でございます。そのために、大学の人事給与システムの見直しといったものは非常に重要な課題である、こう思います。

 私どもの方では、今、特に国立大学につきましては、年俸制の導入というのを促進をするということで、その取り組みを各大学に求めているところでございます。そのような人事給与システムの改善を通じて人材の流動性を高め、その中で若手あるいは女性の研究者がポストが得られるような環境づくり、それをさらに進めてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 今、給与制の中で年俸制ということもおっしゃっていただきました。経済において、雇用の面においても年俸制というのは、少し前から議論している、もしくは導入している企業もあるわけなんですけれども、私どもの医療法人も、管理者は年俸制にしているわけなんです。

 ただ、いろいろな学部のプロフェッサー、教授がいてるわけなんですけれども、医学部の中でも、大きく分けると内科系と外科系があるわけなんです。外科系の医学部教員というのは、医療職としては雇用されていないわけです。このことは、現実、厚生労働省に厚生労働委員会でお話しするようなことも必要なんでしょうけれども、国公立病院の医師は医療職で、高給が比較的保証されているんですけれども、大学はやはり教員職でございますので、現場からしたら、ちょっと賃金が安いなと思っておられるみたいです。

 医師としての賃金が払われていませんので、外科系は、難関な手術、その中でも、朝の八時から夜の八時まで十二時間超えて、そのまま深夜に及ぶような難関な手術を週に何件しても給料には反映されないわけです。ではどうするかというと、そういった難しい手術の翌日に、民間で、外来といいまして診察のアルバイトをしたり、そういった医師免許を使ったアルバイトというのは医学部の内規の中で認められておりますので、全国の医学部教員の、低賃金とは言いませんけれども、思ったような給料がいただけない、そういうことを解消する暗黙の、抜け穴とまでは言いませんけれども、そういった方法となっています。

 それはまた別の改革になるとは思うんですけれども、問題は、このような状態でどこどこにアルバイトに行っていいかというのはその医学部の内規でございまして、そのまま学長が決裁権を持つ場合が多いわけです。その場合、やはり学長の人格次第では、申しわけないことに、そのことを使ってガバナンスしようとする問題も多々散見されました。

 つまり、この医学部発の問題というのは、教授会だけじゃなくて、その教授会をガバナンスする学長まで及んでしまうわけです。これが医学部の外科系教授を疲弊させてしまう、日本が誇る日本の外科系の技術を疲弊させるガバナンスになってしまっているのではないかと思うんですけれども、そのあたりの御認識というのはおありでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、前段の方の、医学部の教員の給与の話でございますけれども、国公立大学法人の多くで医学部の教員の給与体系は、他の学部の教員と同等の給与体系となっております。御指摘のように、いわゆる医師として国立病院ですとかそういうところに勤務をされている方よりも、平均的に低いということは事実でございます。

 また、国立大学等の医学部におきましては、医員という立場で、いわゆる非常勤の医師ということでございますけれども、大学病院で診療に従事してやられる方もございます。これはまた、教員とは異なる給与体系というようなことになっております。

 教員や医員とも、民間の病院で兼業を行っているという事実のあるのもそのとおりでございます。

 ただ、その理由としては、処遇面という問題もございましょうけれども、地域の医療機関からの要請に応えるとか、あるいはみずからの研究活動に必要な症例を確保するとか、そういった別の目的に立って兼業を行うというような場合もございます。

 国公立大学法人の職員の給与体系につきましては、各法人で決定をするということが可能でございます。病院勤務医の処遇改善のために、大学によりましては、医師の勤務実態に応じて独自の手当を措置しているところもございます。例えば診療従事等教員特別手当とかというような名称で、そういった特別の手当をつくっているところもございます。

 文科省としては、各大学におきまして、大学教員や医員の処遇について、病院での勤務実態に合わせた工夫がなされるのが望ましいというふうに思っております。

 最後の方の、兼業といいましょうか、そういった際に学長とか何とかの意向によりましてということですが、そこのところはきちっとその大学の中でルールをつくっていただく。そのためにも、学長がリーダーシップをとって、そのようなことについてもきちっとルールづくりに参画をしていただくということが重要ではなかろうかと思います。

伊東(信)委員 私の質疑の中で誤解を受けたら困りますけれども、医師免許を持っていたら誰でも優遇しなさい、そういう意味ではございません。教授の中でも、再三言われている話なんですけれども、頑張る人と頑張らない人がやはりいてる。そういった競争原理をしっかりと学長が反映してくれるのかどうかということです。

 学長も、管理者ではありますけれども、オーナーであるわけではございません、特に国立大学の場合は。だから、業績を評価する場合、運営面でいかに予算を確保するかというようなところもやはり出てはくるとは思うんです。私は理科系なので、科学研究費、そういったところの確保もあるとは思うんですけれども、要は、その大学のパイを大きくするわけです。そのために、教授会としっかりと、こういう提案がある、ああいう提案があるという話し合いをするというのがこれからの学長のあるべき姿ではないのかと思うんです。

 どうでしょう、株式会社とか会社であれば経費削減ということになってしまうのかもしれないんですけれども、人件費、経費を削っていると、やはりモチベーションなり士気も下がってくると思うんです。教授の立場になると、今度は管理者ではなくて、いわゆる雇用者であるわけなんです。だから、今回の改革によって大学自体の、教授会自体のモチベーションが下がらないように、そういった配慮というのはございますでしょうか。

吉田政府参考人 お答えします。

 予算ですとか、そういった必要な財源を確保していく上で、それはもちろん学長がリーダーシップを発揮していただき、さまざまなプロジェクトを企画したり、それを牽引をしたりするということは重要でございますけれども、当然それは学内がそれに協力をして、大学として一体となって取り組む必要がございます。

 そういう意味では、教員組織がまさに協力関係をつくって、学長と一緒になってそういうプロジェクトなどに取り組んでいくということが大事でございまして、学長も、そういう意味では、学内の協力体制の確立ということについて意を用いていく必要があるだろう、こう思います。

伊東(信)委員 教授会から選挙によって選ばれる学長も、副学長もそうなんですけれども、各学部に特色がありますので、確かに、経済学部のプロフェッサー、文学部のプロフェッサーが医学部の内情のことをよくわかっているかというと、それはまた難しいと思いますし、逆に、医学部の出身の学長が、教育学部とか文学部とか経営学部とかそういった内情とかをよくわかっているかというと、そうでない面もあるとは思うんです。

 ところがやはり、各デパートメント、学部によって、特色も、抱えている生徒の人数も違うと思うんです。例えば国立大学の工学部の教授であれば、百人を超すような教授の数がいてるところもあるわけです。実際、百三、四十人いてるところも、関西の国立大学にもございます。そうなると、それぞれのパートにまた分けていかなければいけないんです。

 例えば、建築、土木とかを一緒にしたりとか、エネルギーとか私のやっているレーザーとか電磁波とかを一緒にして、そしてユニットをつくるわけです、十個か二十個の。その十個か二十個のユニットの中で選考の選考長というのを選んで、教授会自体がいわゆる代議員制度になっているところもあるわけなんです。全ての教授が参加できない。

 そこと、例えば医学部であれば、臨床十九科が基本なんですが、基本というのはおかしいですね、内科でも二つあるところと三つあるところとかいろいろありますけれども、でも、二十を超えることはそうそう多くは、そんなこともないか、二十から三十ぐらいですね。

 そういう各学部によって特色があるわけですけれども、それをまた学外から選ぶには、まずそのことを理解するだけで一年ぐらいかかってしまうのでガバナンスがおくれてしまう危惧があると思うんですけれども、学長、副学長のそういったガバナンスというのはどのようにして担保するわけですか。

下村国務大臣 先ほど伊東委員が言われていましたが、山中教授の話ですね。これは野球でも、名選手必ずしも名監督ならずという言葉があるように、すぐれた教授であっても、学長や副学長としてすぐれた手腕を発揮できるかどうかはまた別の能力ですから、そういう意味で、今までは教授からそのまま学長に上がってくるというパターンが多かったわけでありますけれども、それでは、グローバル社会の中で日本の大学そのものが相対的に地盤沈下をするという危機感を持っております。

 その中で、最近、京都大学が学長を、学内外どころか世界から公募して、世界のトップレベルで最も学長にふさわしい人をぜひこれから公募の中で決めたいということを表明されているわけでございまして、もちろんそういうレベルでありますから、大学内部におけるガバナンス的なこともできなかったら意味がないわけで、しかし、それはもちろん学長や副学長が独善的にできるわけではありませんから、既存のいろいろな教授会なりあるいは学部の意見をトータル的にコーディネート、反映しながら、そして、最もそこの大学が将来に向けて教育研究において貢献できるようなことができるかというそういう視点から学長を選ばなければ、国立大学であっても今後廃校になることもあり得るという、そういう危機感を持ってやっていく必要があると思いますし、そういう学長をどう選ぶかということが、今後、国立大学、もちろん私立大学もそうなんですが、大学側に問われている。

 そういう中での、今回、法案をお願いしているということであります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。確かにそのとおりでございます。

 山中先生は非常に謙虚な方なので、自分自身は臨床医に向いていないとかということもおっしゃっていましたけれども、決してそんなこともなかったわけなんですよ。たまたま上司との相性とかいろいろな問題があったわけで、ラグビーをやられているときも、繊細なプレーは余りやられていなかったんですけれども、ただ、スタミナとか持久力とか、基礎体力は非常にありまして、それで今、マラソンを走られて御自身で研究費を獲得する、そういったことをやられているわけなんですけれども。

 今の大臣がおっしゃったことはリーダーシップ論なんですね。リーダーシップ、つまり、幾ら優秀な人間でも、たくさん集まって合議制でやっていくと、船頭多くして船山に登るではないですけれども、どうしてもうまいこといかないので、リーダーシップを発揮する。そうなる場合、トップダウン形式になるわけなんです。

 私自身の今回の質疑、どうしても研究費とか、どうも経営の話に終始する傾向には行きたくないので、教育という面で考えて、やはり大学は学生のものであるということで、学生の立場で考えますと、残念ながら、今の大学生を見ていますと、私自身も今は医学部の方のラグビー部の生徒と仲がいいのでよく試合を見に行っているわけなんですけれども、総合大学なのでほかの学部の学生とも交流するわけなんですけれども、三回生ぐらいかな、なかなか言いづらいことだと思うんですけれども、やはり就活に終始していることが多いわけです。

 これは、四年間の教育において、三回生、四回生のあたりからほとんど就職活動であったりとか、もしくは、昨日の我が党の鈴木議員の質疑にもありましたように、大学が学問を学ぶ場ではなく、ちょっとレジャー化している、モラトリアムの場であると。

 二極化されていくと、今度は、では学問をどうして学ぶんだというところで、それがボトムアップからなっていくべきなんですけれども、学長のトップダウン、トップダウンばかりでしたら、その辺の現場の状況とか現場の改善点がなかなか議論されづらくなってくると思うんです。

 そのあたりの御認識というのはございますでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。

 今回の改正は、学長が大学としての最終的な決定権を有することと、それから、教授会が学長に対して意見を述べる関係にあることなど、学長や教授会などの学内組織の役割を明確化するものでありまして、ボトムアップを否定するものではこれはございません。御指摘のとおり、大学の運営においては、トップダウンが必要な部分と、それからボトムアップの必要な部分、そのバランスがやはり重要だというふうに思います。

 特に大学は、研究者一人一人が主体的、自律的に研究活動を行っていくということは極めて重要でありまして、トータル的なそういうチーム力といいますか組織力、それをどう活性化するかという視点をガバナンスの観点から考えていく必要があると思います。

 それから、就活の問題でありますが、これは昨年、安倍内閣として、経営者団体に対して就職活動の後ろ倒しをお願いし、三年生のときから就活をしなくても済むように、四年生の八月から各企業においては採用試験を実施するという後ろ倒しについてお願いをいたしました。

 このことによって大学において少なくとも三年間はきちっと学習時間がとれるようなことと、それから、留学についても今は「トビタテ!留学JAPAN」を進めて、民間ファンドにも協力してもらって行っておりますが、海外にも留学をしやすい、そういう可能性をつくるように政府としても応援していきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 もちろん学問というのは、実学というかプラクティカルでいかなければいけないので、ある程度の、就職ということを意識した学問も全否定するものではないんです。

 だけれども、一方で日本の大学が、客観的評価かどうかは別として、世界の大学ベスト百の中で二校しか入っていないというこの現実は、やはり、リサーチといいますか研究機関の問題があると思うんですけれども、この問題はやはり大学院の方、グラデュエートスクールの方に関係してくると思うんです。大学を充実させるだけじゃなく、大学院まで充実させるために大学院大学という名前の改革もされていったわけなんですけれども、この新しい国立大学法人法及び学校教育法の一部を改正する法律案において、大学から就職、大学から研究に行く、こういったところに対しての学長のガバナンスなり配慮なりは盛り込まれておるんでしょうか。

吉田政府参考人 学部生がその大学院に行く、あるいはほかの大学院に転学するというような、学生の異動ですとか、そういったことについて今回の法律改正は直接関係するわけではございません。

 ただ、例えば、時代の要請に応じて大学院あるいは学部の組織を変更していくですとか、あるいは、留学ですとか学習を進めるためのさまざまな新たな教育プログラムもつくっていくですとか、そういった、大学が前向きにさまざまなことに取り組む際に学長がリーダーシップを発揮しようとした際に、それの阻害になるようなそういった要因はこれは取り除いて、そういった取り組みをより円滑に進められるような、そういった狙いも今回の法改正の結果としては出てこようかと思います。

伊東(信)委員 実はこの御質問というのは、ちょっと聞きたいことをマスクして質問したんですけれども、教授会の役割の明確化の中で、やはり学位の授与というのが重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要であると認めるものについて学長が決定を行うに当たり意見を述べる。再三質問の中にもありますけれども、学位というのは、大学院へ行っての修士課程、マスターだけじゃなくて、PhDまであるわけなんですけれども、医学部において大学院は、四年間のPhDだけなんです。我々は臨床をできたりしますけれども、いわゆる研究者においてPhDのポスドクの問題もあります。そういったガバナンスに関して学長は、学位というのが入っているから、このことがきちっとわかってできるのかということなんです。

 時間も迫ってきましたので、こういったポスドクとかに関して、もしくは研究者の受け皿として、大臣の中で、全体的な御所見でも構いませんので、最後あれば、お話ししていただきたいんですけれども。

下村国務大臣 ちょっと質問の趣旨が、何を一番お聞きになりたいのかということがよくわからなかったんですが、一番の危機感としては、このままでは日本の大学は地盤沈下してしまうのではないか。つまり、国内の優秀な高校生も、これから国際バカロレア等によって一気に海外の大学に日本の高校から進学できるという状況の中で、国内の学生だけではなく、いかに海外から優秀な学生、大学院生も含めてですが、日本の大学がとれるかどうか。

 それから同時に、学生だけではなく教授も、国立大学が年俸制をこれから相当導入してくると思いますが、海外の優秀な、ノーベル賞受賞者のような学者を日本の大学に呼び込めるかどうかという意味でのガバナンス改革をやはり今この時期にしていかなければ相当潰れてしまうのではないかという危機感を持って、ぜひこれから、知識基盤社会の日本として、大学そのものが世界から期待されるようなそういう大学改革をバックアップしたいということでこの法案をお願いしておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 よくわからないというのはよく言われることなので大丈夫ですけれども、お答えとしてはそのとおりだと思います。要するに、日本の大学をグローバルスタンダードにしたいということで認識は共通だと思いますので、これできれいに終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

小渕委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 みんなの党の柏倉でございます。よろしくお願いいたします。

 先日、相撲の質問をさせていただきましたら、地元紙で非常に大きく取り上げていただきまして、いつもは、本当に相撲でいうところの二段目、三段目ぐらいの大きさでちょこっと載せてもらえるだけなんですが、相撲の話で今度は幕内ぐらいの大きさで載せていただくことができまして、ぜひ、最後は横綱級の記事になるようにどんどん頑張っていきたいと思います。冒頭、雑感を述べさせていただきました。

 それでは早速、法案審議に移らせていただきたいと思います。

 私も先ほどの伊東先生と同じく医者でございまして、大学でもこれまで勤めておりました。それで、医者が学長になって本当に大丈夫なのかなということは、やはり思うこともございます。そんなことを言うと同門の先輩から怒られますけれども、やはり経営センス、経営感覚、これは、ずっと大学という閉鎖的な社会の中で生きてきて、ある意味そのトップまで上り詰めたのかもしれませんが、先ほど大臣がおっしゃいました、名選手必ずしも名監督ならず、名力士必ずしも名親方ならずというところだと思います。ここのところを私も非常に心配をしております。やはり、スペシャリティーというのがかなりもう限局しているそういう集団が何個集まっても、大きな目で、正しい方向、自律、自治の方向に経営観念を持ってやっていくというのは非常に難しいんだろうなと思います。

 そういう意味で、この法案に関しては、内容的にも、審議の上でですけれども、非常に魅力あるものだというふうに考えております。

 そこでまずお伺いしたいんですが、やはり大学というのは、今まで自律、自治というのが原則だったと思います。この法案によって大学学長がリーダーシップを発揮しやすくするということなんですけれども、教学の部分、経営の部分、それ以外にもいろいろなところでのガバナンス、これが必要になってくると思うんです。この法案でいいますと統督という言葉が出てきていますけれども、この統督の部分、どういうガバナンスを今大学が求められているのか。今までは、いろいろな思想的な対立、授業料、こういったものの議論があった。ただ、だんだん今度は何とかハラスメントだとか、そういったものもやはり処理しなきゃいけなくなってくるような状況になっているわけです。

 大学学長が求められるリーダーシップ、その統督の部分がどのように変わってきているのか、その政府の認識を聞かせていただきたいということと、では、なぜそれが大学の自治に委ねられることが現状では難しいのか、そこの政府の認識を聞かせていただければと思います。

下村国務大臣 急速な少子化に伴う十八歳人口の減少や、グローバル化の進展による国際的な大学間の競争等に各大学が適切に対応していくためには、予算や定員の再配分や学部再編などの組織の見直し等を迅速に進めていくことが必要であり、学長のリーダーシップの確立が重要であると考えております。

 一方、大学のガバナンスについては、権限と責任のあり方が明確でない、意思決定に時間を要して迅速な決定ができていない、また、学内の都合の方が優先して、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないといった課題が指摘されているところであります。

 このため、今回の法律改正によりまして、学長補佐体制の強化、大学運営における権限と責任の一致、学長選考の透明化等の改革を行うことによりまして、学長がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備を目指すものでございます。

 こうした大学への期待に応えるために、学長がリーダーシップを発揮するような機動的な大学改革を進めていく必要があるわけでありまして、今回の法律改正によって、学長補佐体制の強化、それから、学長と教授会との関係の明確化、学長選考の透明化等を行うということは、同時に、大学の自主性、自律性を尊重するということも必要だと思いますし、学長がリーダーシップを発揮しやすい法的基盤を整備することによって、より大学が主体性を持って、そして、それぞれのルールと責任、権限のもとでダイナミックに社会の変化に対応できるような、そういうことについての支援を行うという改正案であります。

柏倉委員 大臣、答弁ありがとうございます。

 今、大学で問題になっているのは、経営も独立した経営体として頑張らなきゃいけないという部分と、あとは、先ほども申し上げた統督。ハラスメントというものの処理がだんだんとこれは膨大になってきて、どうやってハラスメントを処理していったらいいのかというところの、当然そういう規定はあるんですよ、規定はあるんですけれども、なかなかその規定にのっとってスムーズにハラスメント処理というのもできていないというのも実情としてあるようです。

 これは要望になりますけれども、そういったパワハラ、アカハラと言われるようなもの、セクハラも含めてですけれども、そういったハラスメント行為の裁定、そういったものがより円滑に行われるべく、やはり本法案でそういったところも考えてやっているんだというところをしっかりとアピールしていただければ、学校関係者も納得できるものになるんだと思います。よろしくお願いをいたします。

 次になんですけれども、今回、学長選考に関する国立大学法人法の改正、これは当然、国立大学法人法ですから私立大学は関係ないということなんですが、私立大学では学長選考等に関しては委ねられるということだと思うんです。

 そこで大臣、インタビューで、やはり私立大学というのは、これは建学の精神も異なるし、最初からの経営母体も違うという意味で、なかなか一概に政府が今回のような要望なり指導なりを入れることは難しいというお答えになっているかと思います。

 そこで私は、では、国立大学の建学の精神というものはどんなものなのかというのをふと疑問に思ったわけでございます。単科大学もあります、総合大学もある、それぞれ建学の精神というのは、やはり国立大学でも、地域地域、学部学部、その特性があると思うんです。

 国立大学のそもそもの建学の精神、その目的、これはどのように考えているのか、政府の答弁を求めます。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 国立大学の建学の精神と申しましょうか、設置の趣旨ということでございますけれども、これは、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡のとれた配置によりまして、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するという重要な役割を担うべきものということでございます。

柏倉委員 ボトムアップ型の建学の精神といいますか、設立趣旨というふうに捉えたんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 国立大学の場合には、私立大学のように、ある趣旨を持った方の寄附によってということではなくて、国として、この国全体のことを考えて、国立大学がどのような役割を果たすべきかというところから、先ほど申し上げたような役割が期待されているということでございます。

柏倉委員 そこで、今回の学長選考基準についてお伺いしたいんですが、学長選考基準を透明化するということなんですけれども、実際的に広く公募をする、そしてその選考基準にかなう人を選ぶというやり方も、確かに大いに賛同はできるんですけれども、逆に、まず人ありきという選び方をする場合もあるんではないかなと思うんです。この人に任せてみようというこれはコンセンサスがあれば、そういった人に任せるというのは、私は一つやり方だとは思います。

 逆に言えば、学長像を決めたからといって、そういう人が必ず来るとは限らない。ほかの人になる、違う、一〇〇%マッチしない、五〇%マッチしない、そういう人もなる可能性もあるわけです。事後的にもいかようにでも正当化できるわけです、何の賞罰規定もありませんので。

 この学長選考基準、これは有名無実化するという可能性も大いに懸念されるんですが、この懸念に対する政府の答弁を求めます。

下村国務大臣 おっしゃるとおり、誰が見てもこの人に任せれば大丈夫だというような人が学長になれば一番いいかもしれませんが、そういう判断能力を持っている人が果たしているのかどうか、つまり選ぶ側の問題ですね、それはやはりあるわけで、そのために、学長選考会議ということを設けることによって、大学のミッションを実現できる適任者を獲得するために必要となる、学長に求められる資質能力の明示、こういうことを事前に十分されることによって、あるべき像が出てくるのではないかと。

 また、現在においては、先ほどからもちょっと質問も出ましたが、ただ単に教職員による投票の結果を追認することによって学長を選ぶというような、主体的に選考を行っているとは言いがたい状況があるという、そういう現状もあるわけでございます。

 今回、学長選考は、学長選考会議が定める基準により行うことを定めることによって、学長選考会議による主体的な選考を促進する必要があるものと考えております。この改正によりまして、学長選考会議みずからが、大学のミッションを見通した上で、求めるべき学長像を明確に示した基準を定めるということによって、大学のミッションや社会のニーズに照らして、ふさわしい候補者の選定が進むものと考えております。

 また、今回の法改正においては、当該基準や選考の結果等、公表することを義務づけることとしておりますが、当該基準は、学長の選考に先立ち、あらかじめ策定、公表されることを求めているものであります。

 このため、学長選考会議は、当該基準の内容や選考の結果等について社会に対しても説明責任を果たすことが求められるようになるというふうに考えておりまして、この基準が有名無実化することにはならない。このことによって、それぞれの大学のミッションも、また、学長のミッションも明確化することによって、適切な人選がより行われるようになるのではないかというふうに期待をしております。

柏倉委員 大臣、答弁をありがとうございます。

 やはり、社会に広く認知される人に来てもらえるそういう努力も大学はしなければいけませんし、そういった人に来てもらって再生をしていかなければいけない。そういうことをきっちりと法改正で後押しするというのは、私も必要なことだと思います。

 ただ、小さい大学と大きい大学、その規模の違いで、やはりどうしても、いいところはますますよくなっていく、小さいところはますますしぼんでいくというようなことがないように、そこの具体的な方策は今私も思い浮かびませんけれども、ぜひ注意を払って、そういう意味でのボトムアップも図っていただければなと思います。

 最後に、この経営協議会の学外委員を過半数としたということについてお伺いしたいんですが、正直申し上げて、冒頭にも申し上げましたとおり、例えば、医者が、医学部の教授が学長になって、果たしてちゃんとした経営ができるのかというのは非常に心配でございます。私は、もっとどんどんこの経営なんかに関しては、かなりの率、外部委員を入れて、経営のノウハウを生かしてもらうべきだと思います。

 これを今回過半数以上としたんですけれども、私はもっとどんどん入れるべきだと思いますが、政府のお考えを聞かせてください。

吉田政府参考人 国立大学の今後の運営につきまして、これまで以上に、社会や地域のニーズを的確に反映した運営が強く求められるというふうに考えております。

 そういう観点から、経営協議会の学外委員が、その経験や知見を生かして、より主導的かつ積極的に経営協議会での審議に参画する、これを促進しようということで、今回、学外委員の割合を過半数ということにしたものでございます。

 このことによりまして、国立大学の経営協議会が国民や社会に対する説明責任を果たし、学外の有識者の意見を大学の運営に適切に反映させつつモニタリングする仕組みとして、大学の社会からの信頼と支援の好循環を確立することを期待をしているということでございます。

柏倉委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

小渕委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 きょうは、法改正による学長の選任からまず伺っていきたいのですが、先ほど下村大臣は、吉田委員に対する答弁の中で、学長の選任は選考会議が主体的にやっていく、参考の一つとして意向投票を位置づけることも可能ではあるが、過度に偏るような考えは適切ではないと。先ほどの柏倉委員とのやりとりの中でも、選考会議が投票の結果を追認している、主体的とは言いがたいというお話があったんですが、意向投票というのは、教員のみならず、職員も含めて意向投票をやっているような大学もあるように聞いております。

 私が何人か現職の学長または経験者に伺ったところ、意向投票をひっくり返したこと、ひっくり返ったことは自分の経験ではないという声を幾つかこれまで聞いてきているんですが、大臣は、意向投票の結果を重んじて学長を選ぶということはもうはっきりと適切でない、これは変えた方がいいということで先ほどの発言をされたのでしょうか。

下村国務大臣 御指摘のように、国立大学法人の学長選考会議については、主体的な選考が行われているとは言いがたい状況が一部にあるという指摘がされているということについて申し上げました。

 このため、今回の法律改正におきまして、学長選考会議による主体的な選考を促進するため、学長選考は学長選考会議が定める基準により行うこと、また、当該基準や選考の結果等を公表することを義務づけすることにいたしました。

 この改正によりまして、学長選考会議みずからが、大学のミッションを見通した上で求めるべき学長像を明確に示した基準を定めることで、大学のミッションや社会のニーズに照らしてふさわしい候補者の選定が進むものと考えております。

 御指摘の、教職員による意向投票を実施するか否か、仮に実施する場合にその結果をどのように取り扱うかについても、学長選考会議の判断によるものではありますが、文部科学省としては、過度に学内の意見に偏るような選考方法は、学長選考会議の主体的な選考という観点からは適切でないと考えておりまして、こうした考え方については、法律の施行通知等におきまして各国立大学法人に周知を図っていきたいと考えております。

    〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕

井出委員 選考会議の判断というお言葉がありましたので、意向投票をする、またそれを尊重するというところを必ずしも全て否定はされていないのかなと受けとめてはおりますが、主体的な選考というお言葉ですね。私は、意向投票を実施する、結果の公表もしかりですし、これまで以上に経過をクリアにやっていけば、それは学長を選任する一つの方法として、大学として、選考会議として十分主体的に行い得る一つの手段だと思うんですが、どうして意向投票というのが主体的でない、そう分けておっしゃるのか、そこのところを御説明いただきたいと思います。

下村国務大臣 選考投票そのものがただの人気投票であっては意味がないわけでありまして、学長ですから、そこの大学のガバナンス的な能力があるのかどうか、こういう視点から選考されることがやはり必要なわけであります。そのために、国立大学においては学長選考会議を設け、その学長選考会議の定義のもとでより適切な人を選ぶということであります。

 ですから、投票の結果が、そのままそれが多数だから、学長選考会議のそのミッションの方向性の選考すべき学長と重なる場合もあるでしょうけれども、一〇〇%重なるかどうかということは、これは過去の事例からいえば、例えば平成二十六年一月現在、学長選考会議が意向投票の結果と別の候補者を選んでいるという事例が十九大学あります。これは訴訟はありますが、しかし訴訟がひっくり返るということはない、つまり違法ではないわけですね。ですから、そういう形で責任を持って学長選考会議が選ぶべきものである。

 その中で、参考事例としてこの意向投票を否定するわけではありませんが、意向投票の結果が即次の学長ということであれば、これはそもそも学長選考会議そのものを否定することになるわけでありますし、会議を設ける必要がないわけでありまして、この学長選考会議とその位置づけを法律上明記しているということは、そういう意味で申し上げているわけであります。

井出委員 選考会議が、教職員の投票で学長を選ぶべきだということを決定する、そこは否定はされないということでよろしいんですよね。

下村国務大臣 いや、それは先ほど申し上げているように、意向投票の結果が次の学長になるということを学長選考会議が認めたら、学長選考会議をつくっている意味がないわけですから、あくまでも参考とする分にはいいと思いますが、学長選考会議で、決まった人がそのまま学長ということを決めるべきではないということを申し上げたわけです。

井出委員 どうして意向投票が参考にとどまるというところにこだわられるのか私はいまだ理解ができないのですが、選挙、投票というのは人気投票だという今お言葉がありました。確かに、今回の法改正の議論でそういった声もあります。

 例えば、五月十九日の日本経済新聞、芝浦工業大学理事長の五十嵐さんという方がインタビューに答えられているんですが、「選挙の本質は人気取りだ。誰もが嫌われたくないと考える。嫌われたら、学長にも、学部長にも、理事にも、評議員にもなれない。 これで本当に大学改革ができるのだろうか。」と。

 これは、学長のリーダーシップにもかかわってくると私思うんですが、教職員の投票で選ばれて、教職員、教授会とコミュニケーションをとりながら改革を進めていくこと、職員と一体となって改革を進めていくことこそが本当のリーダーシップであって、あらかじめ学長の個人の裁量が認められるような制度をつくった上で学長を選ぶという、今回、教授会の役割を明確化する、そういう法改正の趣旨だとおっしゃられますが、教授会の力が弱くなるということは、多くの懸念の声が上がっております。

 私は、本当のリーダーシップというのは、教職員、教授会ともうまくやっていける、それでも改革ができることが本当のリーダーシップだと思いますが、リーダーシップについては、私の考えというのはやはり違うんでしょうか。

下村国務大臣 何をもって本当のリーダーシップというかは定義によるというふうに思いますが、今、井出委員がおっしゃったような学長は理想ではありますが、しかし、先ほど伊東委員の質問でも出ておりましたが、改革をやるということは、痛みを伴うことが多々あるわけですね。

 ですから、教授会からすれば、一旦教授になればずっと定年退職まで教授ということについて、果たしてそれで時代の大きな変化の中で対応できるのかということの中で、例えば年俸制を導入するということを国立大学でも今進めているわけであります。当然、既存の教授会からすれば、自分の教授という立場が有期雇用になるかもしれないということであれば、それでも大学のためによかれと思ってみずから犠牲になっても同意するという人の方が残念ながら少ないというのは、やはり人の情としてあるのではないかと思うんですね。

 ですから、過去の事例でも、そういう改革をする学長が選ばれた大学というのはたくさんありましたが、残念ながら継続性がなくて、次で選ばれなくなってしまう。あるいは、逆に、教授会等を敵に回すことによって、敵にというのは、つまり、教授会にとってメリットがあれば賛成しますけれども、デメリットがあれば反対をするというのはある意味では当然の話でありますが、その教授会のメリット、デメリットが、大学におけるこれからの改革、世界の中で通用するような、あるいは国内の中でも社会的なニーズに的確に対応した経営を行うというところでの利害関係が一致している分には問題ないと思いますが、相反する部分については、必ずしも、教授の立場からすれば大学の全ての改革について賛成しがたいという部分はあるわけであります。

 そういう部分での大学ガバナンス改革を今着手しなければ、我が国の大学そのものが相対的に世界の中で取り残されてしまう。そういうことで、今回、大学ガバナンス法案を国会に提出しているところであります。

    〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕

井出委員 リーダーシップということについては、例えば自由民主党の総裁、総理大臣をされていて、それが、与党の皆さんの御意見、すり合わせの上にいろいろ政策をお示しになっていると思うんですけれども、やはり総理大臣官邸と与党の意向が違えば、官邸主導と与党から批判の声というような新聞記事も私も何度か見たことがありますので。私のリーダーシップの考え方というのは先ほどお話しさせていただいたとおりなんですが。

 実際、先ほど吉田高等教育局長の吉田委員に対する御答弁の中で、八十一の国立大学が意向投票をやっていると。今回の法改正の際に、あくまでも参考なんだ、主体的にやっていただきたいと。おっしゃることはよくわかるのですが、実態として八十一もの大学が意向投票をやってきている。そこを大きく変えるということは、もともと、今文部科学省がやっている国立大学改革の一環でもあると思うんですけれども、その中の自主的、自律的な改善、発展を促す仕組みの構築と。

 私は意向投票というのも大学の裁量の一つだと思っておりますし、何よりも、教育基本法の第七条の二項、「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。」ここにも自主性、自律性というものがはっきりと書かれている。

 ですから、意向投票をそこまで否定的におっしゃられるということは、この大学の自主性、自律性に踏み込んでしまうことにならないかと危惧いたしますが、それはいかがでしょうか。

下村国務大臣 先ほどから申し上げていますが、別に意向投票をやめろとは一言も申し上げているわけじゃないですね。ただ、意向投票の結果について、そのまま学長選考でそれを学長にするということについては、これはそうすべきでないということを申し上げているわけであって、意向投票そのものを否定しているようなことは一言も申し上げておりません。

 今回の改正案は、そもそも、従来の学長と教授会との関係が曖昧であったことから、その関係性を明確化するものであり、必要であると考えております。

 また、教育基本法第七条第一項が「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」としていることを学長、教授会が深く自覚し、それぞれの役割を果たすことも重要であると考えます。

 大学は、本来、学長と教員組織との理解と協力のもとで運営されるべきもので当然ありまして、今回の改正を踏まえ、学長が教員に改革のビジョンを伝え、その意欲と能力を最大限に引き出して大学の教育研究機能を高めること、これが必要だと思いますし、そういうふうに期待をしているところであります。

井出委員 私がお話を伺った大学の学長さん、関係者の中でも、今回の法改正というので、学長や教授会または教職員が、大学に求められていることやそれぞれの役割分担を、大臣は深く自覚とおっしゃいましたが、学内でも再認識する必要があるのではないか、そういうお話もありましたから、それは一つの大きな御見解なのかなと私も思っております。

 大学改革、特にガバナンスについては、十年前の法人化の際にも同じ方向性が明確になった。私は、この十年間の検証であるとか反省であるとか、そういったことを踏まえた今回の改革なのかなと。掲げる目的とかを拝聴しておりますと、確かにいい方向性だなと、きょうの趣旨説明もそのように伺っていたんですが、果たして法人化以降のこれまでの改革の検証、反省というものがなされてきたのかを伺いたいと思います。

吉田政府参考人 平成十六年に国立大学が法人化をされました。これまでも文部科学省におきましては、例えば、平成二十二年に国立大学法人化後の現状と課題、中間まとめ、また、平成二十五年には国立大学改革プランをまとめるなど、時宜に応じまして国立大学の法人化に関する成果と課題について検討を行ってきたところでございます。

 昨年来、中教審の大学分科会におきまして大学のガバナンス改革の推進について議論が行われまして、今回の法案につながっていくわけでございますけれども、その際には、国立大学の法人化以降のガバナンスの状況も踏まえながら審議を行ってきたところでございまして、その部分、今回、法律案の中にも附則で、さらに引き続き国立大学法人法については見直しを行うというのを入れておりますけれども、一定のこれまでの見直しの結果は、今回の法案に反映をさせていただいているところでございます。

井出委員 私がこれまで大学関係者に伺ってきた声を聞けば、この改革の方向性をよしとする方もいれば、改正の必要ではなくて、制度の問題ではなくて、運用の問題ではないか。教育委員会のときもそういう議論がありましたが、制度と人という問題なのかなと思うのです。

 きょう最初に質問しようと思っていたのは、大学のこれからの計画であったりですとか、予算、人事、カリキュラムの意思決定、これは、法改正によれば、役割を明確化するんだ、曖昧だったものを明確化するという御説明がこれまであったかと思うんですが、当然、教授会、教職員からは不安の声が上がっている。

 その不安の声は、きょうお示ししております、私が資料として提出しているアンケートなんですが、例えば、二ページの問八、今後教員が大学のさまざまなことにかかわっていくかどうかというアンケート、右側の四角なんですが、カリキュラムの編成から教員の採用、昇任、ポスト、学内予算、大学の将来計画とこれだけの項目がある中で、現状でよいと答えている部分が極めて多い。もっと教員の関与をふやしてほしいと。

 教員の関与を少なくしていいと答えているのは、どの項目を見ても一%、三%といった数字になっておりまして、現場の意向は、教職員、教授、これまでどおり、現状でよいというのが一番多いので、変える必要はないと思っているのかなと思うんですが、このあたりの、大学の意思決定、そうしたさまざまな項目に対する意思決定について、今回の法改正で教員の関与というものが変わってくるのかどうかを伺いたいと思います。

下村国務大臣 今回の改正案では、教授会が教育研究に関する事項について審議する機関であること、教授会が大学の最終的な意思決定権を有する学長に対して意見を述べる関係にあること、これを法律上明確に規定をしたというところであります。

 法改正の趣旨を踏まえて、各大学においては、教授会を含めた学内の意思決定手続を点検し、例えば、教授会が経営事項についてまで広範に審議していたり、実質的に決定機関として運用されている場合などについては、学長の判断を踏まえて適切な内容に見直しを行っていただきたいと考えております。見直しの結果として、大学の意思決定における教員の関与のあり方も変わり得るものと考えております。

井出委員 さまざまな団体から反対の声が上がっていることも、さきの委員の先生方もおっしゃっていたと思いますし、何よりも、私がきょうこのアンケートを資料として提出させていただいたのは、現場の意向を今回の法設計に当たってどれだけ見ていただいたのか、現場の意向、教職員、教授の意向を法律をつくる際にどこまで勘案していただいたのかというところを伺いたいのですが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 今回の法案は、中教審の大学分科会における議論ということで、そこの中には大学の関係者にも多数お入りいただいております。また、法案を作成する過程におきましても、大学関係の団体の方にも私ども何度も御意見を伺いながら、また、与党の、自民党の中根先生の方から御紹介ありましたけれども、検討においても大学の関係者の方のヒアリングも重ねながら法案をつくり上げてきたものでございますので、そういった大学の関係者の意見にも十分配慮した結果だというふうにお考えいただければと思います。

井出委員 確かに、私も、学長経験者や学長の方に聞けば、法改正は必要だ、そういう声も伺ってはきたのですが、ただ、一つ私がなるほどなと思ったのは、ふだん学生に接しているのは教職員だ、学長と教員の関係というのはヒエラルキーではないんだ、そういうところをしっかり気をつけていただきたいというようなお声をいただきまして、そこは私も大変そのとおりだなと思って拝聴をしていたのです。

 今回の法改正で役割を明確化した。とはいっても、学長のリーダーシップというものが前面に出ている。私は、この法案を考えていたときに、学生さんが少なくなっていくようなことを考えれば、これから大学が、例えば経費の削減や人員の削減、いわゆる痛みを伴う改革をやっていくことも考えていかなければいけない。こうしたときに、なかなか教授会、教職員の総意は非常に得にくいテーマだと思うんですが、こういった痛みを伴う改革をやっていく、そういうことを見据えて、それも目的の一つとして今回の法改正を掲げられているのかどうかという点を伺います。

下村国務大臣 それは結論から言うとうがった見方でありまして、そのための法改正では全くありません。

 基本的に、先ほどから申し上げていますように、社会をめぐる状況が大きく変化する中で、我が国の大学には、グローバル人材の育成や研究を通じたイノベーションの創出、経済再生、地域再生、活性化への貢献、これが今まで以上に期待をされるわけです。こうした中で、我が国の大学の国際競争力を高めていくためには、学長が戦略性を持って大学をマネジメントすることが必要であるというふうに考えております。

 私は、大学の質も高めていくことが必要ですが、量も高めていくことが必要だと思います。それは、少子化だけを考えればそのとおりの危惧はあるわけですが、しかし、今後、社会人の学び直し、それから女性の活用を考えれば、我が国は二十五歳以上で学生の割合が二%、しかし、先進諸国、ヨーロッパは二〇%、二五%を超えているところがたくさんあります。

 ですから、対象は十八歳の学生ではなくて、もちろんそれもありますけれども、それ以上に、社会の一旦就職した人がもう一度大学や大学院、あるいは専門、専修学校に入って学び直しをするというようなことを含めた大学教育のより充実が必要であるというふうに思いますし、これから先細っていくということで考えて、マイナス的なそういう発想で今回の大学ガバナンス改革法案を出しているということではございません。

 ただ、時代の変化に対応する努力をしなければ、結果的には、人員削減を伴うような、つまり痛みを伴うような改革をせざるを得ないような大学は出てくることも事実ですから、厳しい社会の中でどうチャレンジしていくかという意味でのガバナンス能力は、まさに大学が個々に問われていると思います。

井出委員 今の質問をさせていただいたのは、そういった痛みを伴うような改革は、特に、私が最初に申し上げた、学校関係者の総意で経営をしてきた学長にとっても難しい問題で、いずれ直面せざるを得ない、そういう厳しい御認識を持って、その学長さんからすれば、この法改正をよしと捉えての御発言だったのですが。

 ただ、一つ最後にちょっと御紹介をしたいのが、これも日本経済新聞の学長のアンケートなんですが、学長がリーダーシップを発揮するときに必要なものは何か、それは、学長裁量の経費の拡充、これを求める声が七四・七%で、教授会の権限を弱めるという項目は、四つの選択肢の中の四番目、二五・三%にとどまっているということもあります。今、大学の運営交付金が年々減らさざるを得ないという実態ももう皆さん御存じのとおりだと思いますが、その辺も踏まえて今後の議論をやっていきたいと思います。

 最後にお誕生日のお祝いを申し上げて、質問を終わります。どうもありがとうございました。

小渕委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 そもそも大学は、十三世紀に西ヨーロッパで生まれ、世界各国で高等教育機関として発展をしてまいりました。その歴史の中で、国家権力の干渉から学問研究と教育の自由を守るために大学の自治というものを形成してきた、これは世界共通の原則でもあります。

 昨日の本会議で指摘いたしましたように、我が国の大学は、戦前、官吏養成機関として出発し、帝国大学令第一条では、「帝国大学ハ国家ノ須要に応スル学術技芸ヲ教授シ」、こう定められていたわけです。

 しかし、敗戦を迎え、戦後の大学は、国家目的への奉仕機関から学術の中心の機関に転換をいたしました。憲法二十三条が定める学問の自由と、そこから要請される大学の自治は、その保障だと言わなければなりません。

 そこでまず冒頭、大臣に確認するんですが、大学の自治というものは、大学における学問の自由を保障するために、大学の自主性を尊重する制度と慣行であると言われておりますけれども、これは一般論として、大学の自治を最大限に尊重するのは当然だと私は考えますが、よろしいですね。

下村国務大臣 おっしゃるとおりです。

宮本委員 では、その大学の自治にとっての教授会の役割とはどういうものかということであります。

 学校教育法は、この大学の自治を具体化し、第九十三条で、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と定めております。

 学校教育法制定当時、昭和二十二年三月二十六日の貴族院教育基本法案特別委員会の会議録によりますと、教授会が中心で大学の自治というものをやらせるのかとの質問に、当時の剣木亨弘文部省学校教育局次長は、原則としては、大学の自治のためには教授会が当たる、積極的にそういう意味をもってここに法律上規定したと答弁をしております。

 我々は、大学の自治は本来大学の全構成員の参加で行うものである、こう考えておりますけれども、学校教育法制定時の政府の立場は、大学の自治の中心的な担い手として教授会を位置づけて、それをこの現行九十三条の条文に法律上規定したというのが当時の答弁であります。

 これは局長に確認いたしますが、間違いないですね。

吉田政府参考人 昭和二十二年三月二十六日の貴族院教育基本法案特別委員会の剣木文部省学校教育局次長の答弁の部分は、このようになっております。

  只今大学に付ては或は職員組合、或は学生運動等が起りまして、甚しきは学生が大学の行政にまで参加すると云ふやうなこと迄も言ひ出して居るやうな趨勢であります、そこで矢張り原則と致しましては、大学の自治の為には教授会が当ると云ふことを、積極的にさう云ふ意味を以ちまして、此処に法律上規定した方が宜いのぢやないかと云ふ気持もあつた訳であります

と答弁しております。

宮本委員 余計なところまで答弁されましたが。だからこそ私たちは教授会の自治に限らないということを申し上げているわけですが、少なくとも、教授会の自治が中心である、こういう答弁だったわけですよ。

 それで、この九十三条の言う、教授会が審議すべき重要な事項の範囲とは何か。あなた方が中教審大学分科会組織運営部会の第三回に提出した資料、「教授会に関する法令上の規定」というペーパーによりますと、「教授会が審議すべき「重要な事項」の範囲は、各大学の判断に委ねられている。」こう書かれてありますけれども、これも局長、間違いないですね。

吉田政府参考人 御指摘の資料は、昨年九月九日に開催されました中央教育審議会大学分科会組織運営部会第三回の会合におきまして、論点整理補足資料として事務局から提出した資料にあったものでございまして、現行法における九十三条の状況について説明したものでございます。

宮本委員 現状は、教授会が審議すべき重要な事項の範囲は各大学の判断に委ねられていることが確認されました。

 大学ごとに異なりますけれども、教授会は、教育研究費の配分や教員の業績評価、教員採用などの人事、学部長の選任、カリキュラムの編成や学部、学科の設置、廃止など、大学の重要な事項について幅広く審議をしております。

 ところが、実態がそうであるにもかかわらず、あなた方は、新制大学発足時の文部省答弁の原点すら投げ捨てて、一貫して教授会の権限を弱めることに躍起になってきたと言わなければなりません。

 それでも、旧国立学校設置法七条の四の四では、教育課程の編成や、入学、卒業または課程の修了その他在籍に関する事項や学位の授与など、教育研究に関する重要事項についての教授会の審議権を認めてきましたし、また、法人化前は、教育公務員特例法第三条では、学長や学部長の選任、教員の採用など、人事についても教授会の議に基づくことが定められてまいりました。これも事実としてはそのとおりですね、局長。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 現在廃止されておりますけれども、旧国立学校設置法第七条の四第四項におきましては、国立大学の教授会の審議事項として、

 一 学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項

 二 学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項

 三 その他当該教授会を置く組織の教育又は研究に関する重要事項

が規定されたところでございます。

 また、教育公務員特例法第三条におきましては、大学の教員の採用及び昇任の方法について規定をしておりまして、学長の採用のための選考は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、評議会が行うこと、学部長の採用のための選考は、当該学部の教授会の議に基づき、学長が行うこと、学部長以外の部局長の採用のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、学長が行うこと、教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、教授会の議に基づき学長が行うこと等が規定をされたところでございます。

宮本委員 教授会の議に基づきということも定められていたわけですね。

 ところが、次にあなた方は、大学のガバナンス改革などという看板のもとで、学長のリーダーシップの確立、こういうふうに言って、中教審大学分科会に、大学自治の土台である教授会をいわば骨抜きにし、学長独断の大学運営に道を開く審議まとめなるものを出させたわけですよ。

 局長、そこで聞きたいんですが、ことし二月十二日に発表されたこの中教審大学分科会の審議まとめでは、学校教育法九十三条に基づいて教授会が審議することが求められる重要な事項をどのように述べておりますか。

吉田政府参考人 御指摘の、二月十二日にまとめられました中央教育審議会大学分科会の審議のまとめにおきましては、「教授会が審議すべき「重要な事項」の具体的内容として、1学位授与、2学生の身分に関する審査、3教育課程の編成、4教員の教育研究業績等の審査等については、教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」と記述しております。

宮本委員 先ほどの教育公務員特例法第三条が定めていたような人事に関する関与などはどこにもなくて、大幅にその審議の範囲や権限が弱められてしまっております。

 我々はこれ自身が大問題だと考えるわけですけれども、政府が出してきた法案は、さらに教授会の権限、役割を狭めております。

 改正案九十三条では、教授会が審議できる事項を、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与の二つに限定し、その他は、学長が意見を聞くことが必要であると認める場合に限るとしております。

 これも局長に聞くんですが、審議まとめから法案作成に当たって、教育課程の編成や教員の教育研究業績等の審査を除外したのは一体どういう理由ですか。

吉田政府参考人 これは先ほど大臣の方から御答弁もいただきましたけれども、改正案の九十三条の第二項では、学位の授与とそれから学生の入学、卒業及び課程の修了、そして、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要と認めるものについて、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるものとするというふうにしております。

 これにつきましては、教育課程の編成、それから教員の教育研究業績の審査については各大学におきまして多様な実態があることから、法律上は規定はせず、大学に対する新たな法律上の義務については限定的にしたものでございます。

宮本委員 いや、この審議まとめは、四つの事項を並列して明示して、その間に区別を置いていないんですよ。にもかかわらず、法案は、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与の二つだけを、学長が教授会の意見を聞くことを義務づける、まさに二項の一号、二号に定めて、他の二つは三号に落として、学長が意見を聞くことが必要であると認める場合に限ってのみ意見を述べることができる、こういうふうに差をつけているんです。

 なぜこのように差をつけたのか。審議まとめでは四つとも大事だと言っているのに、なぜ多様だからということでこれを落とせるのか。そこを聞いているんです。

吉田政府参考人 改正案の九十三条の二項というのは、学長も一定の事項については教授会の意見を聞かねばならず、また、教授会はそれに対して意見を述べなければならないという義務づけをしているものでございます。

 その観点からいたしますと、先ほど申し上げたように、教育課程の編成ですとかあるいは教員の教育研究業績の審査、これは大学におきましてさまざまな実態がございます。例えば、学長が主導いたしまして実験的な教育プログラムの策定をするとか、あるいはプロジェクト型授業の実施に伴いまして特任教授を採用するとか、そういったものにつきましては必ずしも既存の教授会での審議を必要とするかといいますと、必ずしもそうではないというふうに考えられます。そういった柔軟な運用も許すという意味で、ここのところでは明記をしなかったということでございます。

宮本委員 おかしいじゃないですか。この審議まとめでは、四つを並列した上で、「教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」つまり、教授会の審議が十分考慮されなければならないと言っているのに、勝手な解釈でそうやって落としてしまったわけですよ。

 大学の自治を最大限に尊重すると大臣はおっしゃるけれども、新制大学発足時には、貴族院の答弁にあったように、教授会が審議すべき重要な事項とは大学に関するほぼ全ての事項、まさに教授会が中心になって決めていくんだというところから出発したはずなのに、事あるごとにそれを切り縮めて、そして、みずからが中教審の大学分科会に出させたこの審議まとめが出てもなお、そこよりもさらに絞り込んだ。だから、教授会の審議内容の権限、審議権は狭ければ狭いほどいいという、まさにあなた方のずっとこの間やってきたやり方がここに示されていると言わなければならないと思うんです。

 そこで、一つ別の視点で聞きますけれども、審議まとめの「学生の身分に関する審査」というものと法案の「学生の入学、卒業及び課程の修了」というものは決して同じことではありません。現行学校教育法施行規則第百四十四条では、「入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める。」とされております。

 この両者を比べたときに、退学、転学、留学、休学というものが抜けているわけですけれども、これは一体どこに行ったんですか、局長。

吉田政府参考人 御指摘のように、九十三条二項第一号では、「学生の入学、卒業及び課程の修了」ということについては、学長が決定を行うに当たり、教授会が意見を述べるものというふうにしております。一方、学校教育法施行規則第百四十四条では、それ以外に退学、転学、留学、休学ということについても、「教授会の議を経て、学長が定める。」というふうな規定を置いております。

 これの関係につきましては、この改正法案が成立した際には、法律と省令との関係をいま一度見直しをしておきたいというふうに思っております。

宮本委員 いや、いま一度見直すということは、先ほど私が申し上げたようなものは抜け落ちるということを意味していると思うんですけれども。

 では、逆の聞き方をいたしましょう。学長が教授会の意見を聞くことが必要でないと判断すれば、教授会の議を経ずに学生を退学させることができることになりますね。

吉田政府参考人 そこのところは、まさにその法律と省令との関係を再検討する際の一つの論点として考えております。

宮本委員 いやいや、法律がそうなれば、省令の方を法律に合わせるんでしょう。

吉田政府参考人 法律では、入学、卒業、課程の修了という、まさに一つ身分が大きく変わる部分を、代表的なところを捉えてやっております。

 もちろん、例えば退学とかそういったものも身分の変動は伴いますので、そこの部分について、今省令で書かれている事項、それについて引き続き省令でどのような形で定めるのかということについては、この法律改正と連動させながら見直しを図ってまいりたいと思っております。

宮本委員 いやいや、退学も大きく身分が変わるわけですが、そうしたらあれですか、省令を変えずに、退学についても議を経るということを残すということを今おっしゃっているんですか。

吉田政府参考人 その点は、そういうものも選択肢としてあって、検討したいと思っています。

宮本委員 もしもそれが入るんだったら明示すればいいんですよ、今までどおり。全く入っていないじゃないですか。入学と卒業、それしか入っていないから、では退学については教授会の議を経ずに学長が勝手に決められる、そうとしか条文上は読めないわけですから、これは大問題だと私は言わなければならないと思います。これは引き続き徹底的に、はっきり答弁いただいて審議を進めなきゃならぬと思うんですね。

 それで、改正案は、国立大学法人法の当時の審議での政府答弁とも矛盾をしております。国立大学法人法の審議の際に、我が党の児玉健次衆議院議員が教授会の審議事項について質問をしたのに対して、当時の河村副大臣はこの当時どのように答弁しておりましたか。局長、お願いいたします。

吉田政府参考人 御指摘の平成十五年五月十六日の衆議院文部科学委員会の会議録で、当時の河村副大臣が児玉健次衆議院議員の教授会の審議事項についての質問に対して、次のように答えております。

 法人化後は、非公務員型の法人ということでございまして、教員の任命権者は文部科学大臣から学長になるとともに、教育公務員特例法の適用がなくなって、人事については教授会の議に基づいて行うということの規定の適用はなくなるわけでございます。したがって、教員人事については、今後は各国立大学法人の創意工夫にゆだねられる、これが原則になるわけでございます。

  ただ、その国立大学法人制度は、各法人の自主性、自律性を高めて自己責任の拡大を図っていくという面もございまして、こうした観点から、内部組織については可能な限り法人の裁量にゆだねていきたいということでありまして、今回の法律等では規定されておりません。これまで教授会の設置の単位とされておりました学部や研究会については、法律上、規定はないわけでございます。こうした点を踏まえて、どのような教育研究組織の単位にどのような形で教授会を置くか、これについては法人の定めにゆだねることになるわけでございます。

  そういうことを考えますと、法人化後の大学に教授会の形があって、それがどのような形でこれから運営されていくかということについては、それぞれの大学が自主的にお決めをいただくことになる、このように考えております。

との答弁がございます。

宮本委員 法人化のときの約束は、「それぞれの大学が自主的にお決めをいただくことになる、」と。法人化は、各大学の自主性、創意性を最大限発揮するための法人化だ、こう言って、やったわけですよね。

 そのときの議論に照らしても、今やられている教授会の審議内容を法律で一層絞り込むというのは、本当にひどい、明確に反していると言わざるを得ません。

 本会議で大臣は、教授会の審議事項が経営に関する事項にまで及ぶのは問題だと言わんばかりの答弁をされました。教育研究に関する事項と経営に関する事項がそんなに明確に分けられるのか。

 これは審議まとめでもそのことについて触れてございます。審議まとめの二十七ページ、下から三行目以降には何と書いてあるか。局長、お答えいただけますか。

吉田政府参考人 審議まとめ二十七ページの下から三行目以降、このような記述がございます。

  もっとも、大学の目的が教育研究そのものにあることから、教育研究に関する事項と経営に関する事項を明確に分けることは困難な面がある。例えば、学部・学科の廃止やキャンパスの移転といった事柄については、純粋に経営的な事項であるとする指摘もあるが、大学における教育研究―そこで学んでいる学生の教育環境や、研究の多様性・継続性の維持等―に大きく影響する事項でもある。

ただ、その後、引き続きまして、

  問題は、本来学長や理事会に最終決定権がある事項について、直接責任を負う立場にない教授会の議決によって、学長や理事会の意思決定が事実上否定できるような、権限と責任の不一致が生じる場合である。

との記述もございます。

宮本委員 ここでは、明確に切り分けることは困難な面があると述べた上で、キャンパスの移転等についても、では完全に経営的な問題かといえば、そう言い切れない面もあるんだというふうに触れているわけですよ。

 大臣は、昨日の本会議答弁でも、あたかもキャンパス移転等について教授会が意見を述べることが問題であるかのような答弁でありましたけれども、これは本当に、この審議まとめでも、別にキャンパス移転が完全に経営だけにかかわるものではないというふうに言っているわけですね。

 それで、経営の面についてもきちっと教授会が審議をすることが可能であるということは、国立大学法人化時の政府答弁でも出ております。

 二〇〇三年七月八日の参議院文教科学委員会、国立大学法人法の審議で、野党議員が「教授会が審議する重要事項には経営的な事項が含まれていると考えるが、どうか。」と質問したのに対して、遠藤純一郎高等教育局長はどのように答弁しておりますか。

吉田政府参考人 平成十五年七月八日の参議院文教科学委員会における当時の遠藤純一郎高等局長の答弁の内容では、このようになっております。

  法人化後の国立大学におきましても、学校教育法第五十九条

これが今、現行の九十三条になっておりますけれども、この

 第五十九条の規定に基づきまして教授会が置かれるということには変わりがないわけでございます。教授会におきましては、引き続き当該教授会が置かれている学部や研究科の教育研究に関する重要事項を審議するものでございまして、そうした事項を審議する中で予算や組織編制など経営的な事項について議論することもあるというふうに考えておるわけでございます。

と答弁しております。

宮本委員 遠藤局長は「予算や組織編制など経営的な事項について議論することもある」とはっきりこのときは答弁しております。法案は、法人化の際の、教授会の役割は変わらないとした政府答弁にも反するものだと言わなければなりません。

 法案の提出理由として、政府は、学長のリーダーシップを確立して大学改革を進める、こう言っております。しかし、教授会の権限を弱め、学長選考にも教授会の意向を反映させることを否定すれば、学長のリーダーシップが逆に発揮できなくなるのではないかと私は言わなければなりません。こんな法改悪をやれば、上意下達で強権的に改革なるものを断行することになるだけであって、結局、その改革なるものも成功するはずがないと思うんです。

 大学は、多様な見識や価値観が存在するからこそ学問の府と言われるわけです。そうした多様な立場からの意見の中で、全学的な合意を形成する能力、そういう資質、それこそが学長に求められる本当のリーダーシップだと私は思うんですが、これは、大臣、そうお思いになりませんか。

下村国務大臣 今回の改正案は、権限と責任の一致の観点から、大学の決定権者である学長がリーダーシップを発揮し、教授会を初めとした学内の組織との適切な役割分担のもとで、責任ある大学運営を行っていくことを目指すものであります。

 改正案では、教授会が教育研究に関する事項について字義どおり審議することを規定しておりまして、教授会の審議権そのものを奪うというものでは全くありません。

 また、学生の入学、卒業や、学位授与権に関する事項については、学長が決定を行うに当たり、教授会が意見を述べるものとしておりまして、学長が教授会の意見を踏まえて意思決定を行うようにしており、学長の独断を認めるということにもならないということであります。

宮本委員 前段でやりとりしてきたように、事実上、教授会の審議内容をどんどんどんどん狭めてきたことは客観的な事実なんですよ。中教審大学分科会の審議まとめで、「我が国の大学が国際的通用性のある大学として評価されるためには、アカデミックな事項についての教員参加は必須」、こうもちろん述べております。

 皆さん方が中教審に提出した資料でありますけれども、「外国の大学における教授会に相当する組織の状況」というこの資料も私いただきました。この諸外国の状況を見ると、こうなっております。

 フランスでもドイツでも、大学運営は、主に教員から構成されている評議会が行っております。学長の推薦や学長部の選挙、予算案の作成、学部の設置廃止、教授の招聘に至るまでの権限を持っているわけです。

 それから、イギリスやアメリカでも、アカデミックな事項については、教員を主たる構成員とする大学評議会やセネトというものが決定権を持っているというふうに、これは文科省が出している資料ですよ、書かれております。

 英国オックスフォード大学、これは世界ランキング二位とされておりますけれども、「全教職員約四千五百人から構成されるコングリゲーションが、大学の諸規定の承認、カウンシルからの提出案の修正・廃止、学長の承認・任命等」を行っている、これは文科省がここで説明をしております。

 アメリカのカリフォルニア大学バークレー校、これは世界ランキング八位でありますけれども、全学的な教員組織である大学評議会が、「学生の入学、カリキュラム、学位授与、」はもちろんですけれども、「予算、教員人事について学長執行部に助言・推薦する権限を、理事会から認められている。通常、学長や理事会が大学評議会の見解を無視することはない。」これは、文科省が組織運営部会に提出した資料にそう書いているわけですね。

 あなた方は、日本の大学が世界の大学ランキングでおくれをとっているということを盛んに言って、世界の大学トップ百以内に十校を、こうおっしゃるわけですよ。しかし、それならば、その世界の百のランキングに続々と送り出している欧米の事例、これはみずからお調べにもなっているわけで、調べてみたら、まさに人事やあるいは教員の採用に至るまで、予算案に至るまで、ちゃんと教員が参画する仕組みがある、そして、学長や理事会はその見解を無視することはない、こういう形でやられている。

 本当に日本の大学を世界レベルに引き上げたければ、こういうものをしっかり踏まえて学ぶ必要があると思うんだけれども、やろうとしていることは、全然、世界から見てもこれは逆じゃないですか。大臣、一体何をやりたいのか私は理解ができませんが。大臣、いかがですか。

下村国務大臣 非常に都合のいいところだけとっているとしか思えないですね。世界百大学全てがそうだと言いかねないような発言ですけれども、具体的には一つ、二つの大学の事例をおっしゃっていたわけですけれども、そうでない大学もたくさんあるわけでありまして、もちろんそれ自体を否定するわけではありません。

 ですから、今回の九十三条の教授会の役割の中においても、例えば三号におきまして、前号に掲げるもののほか、つまり、学位の授与とか学生の入学、卒業及び課程の修了ですが、それ以外のほか、「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」、そういうことが入っているわけで、別にアカデミックなものを含めて全て否定されているわけでは全くないわけでありまして、当然、先ほど申し上げましたように、最終決定は学長でありますが、しかし、教授会の審議等を聞きながら大学経営をしていくということは大変重要なことだと当然考えております。

宮本委員 これは明確に、中教審大学分科会第三回組織運営部会に文科省が出した各国の資料ですよ。私が勝手にどこかから持ってきたものじゃないですよ。だから、それに基づいてやるというんだったら全然逆の結果になるではないかということを私は言いたいんです。

 結局、あなた方がやりたいことは、財界の強い要望に応えて、政府、財界、文科省言いなりの大学に変えよう、文句を言うような教授会には物を言わせないようにしよう、それがこの法案のまさに狙いだと言わざるを得ません。それでは教育研究への教職員の主体性や活力が失われ、トップ百どころか、逆にむしろ大学の教育研究の質の低下は免れないということを申し上げて、きょうの質問は終わりたいと思います。

    ―――――――――――――

小渕委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る六月四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時八分散会


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