衆議院

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第14号 平成27年6月3日(水曜日)

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平成二十七年六月三日(水曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 福井  照君

   理事 池田 佳隆君 理事 石原 宏高君

   理事 冨岡  勉君 理事 萩生田光一君

   理事 義家 弘介君 理事 郡  和子君

   理事 牧  義夫君 理事 浮島 智子君

      青山 周平君    安藤  裕君

      石川 昭政君    尾身 朝子君

      大見  正君    門山 宏哲君

      神山 佐市君    工藤 彰三君

      小林 史明君    櫻田 義孝君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      谷川 とむ君    長坂 康正君

      馳   浩君    鳩山 邦夫君

      船田  元君    古川  康君

      古田 圭一君    前田 一男君

      宮川 典子君    宗清 皇一君

      山本ともひろ君    菊田真紀子君

      中川 正春君    平野 博文君

      松本 剛明君    本村賢太郎君

      笠  浩史君    坂本祐之輔君

      鈴木 義弘君    初鹿 明博君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      宮本 岳志君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       下村 博文君

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   西田 安範君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          河村 潤子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          小松親次郎君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       川上 伸昭君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            田中 正朗君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        久保 公人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           三又 裕生君

   参考人

   (独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長)  河野 一郎君

   参考人

   (国立研究開発法人日本原子力研究開発機構理事)  三浦 幸俊君

   参考人

   (国立研究開発法人理化学研究所理事長)      松本  紘君

   参考人

   (国立研究開発法人理化学研究所理事)       加藤 重治君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     助田 重義君

  谷川 とむ君     宗清 皇一君

  前田 一男君     石川 昭政君

  宮川 典子君     長坂 康正君

  笠  浩史君     本村賢太郎君

  畑野 君枝君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     前田 一男君

  助田 重義君     瀬戸 隆一君

  長坂 康正君     宮川 典子君

  宗清 皇一君     谷川 とむ君

  本村賢太郎君     笠  浩史君

  宮本 岳志君     畑野 君枝君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     安藤  裕君

    ―――――――――――――

六月二日

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

同日

 教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(長島昭久君紹介)(第一三三九号)

 同(鈴木淳司君紹介)(第一三六五号)

 三十人以下学級実現と障害児学校に設置基準の策定など行き届いた教育を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第一三四〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一四六三号)

 専任・専門・正規の学校司書の配置に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三六六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

 文部科学行政の基本施策に関する件

 教育現場の実態に即した教職員定数の充実に関する件


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     ――――◇―――――

福井委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長河野一郎君、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構理事三浦幸俊君、国立研究開発法人理化学研究所理事長松本紘君及び国立研究開発法人理化学研究所理事加藤重治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主計局次長西田安範君、文部科学省生涯学習政策局長河村潤子君、初等中等教育局長小松親次郎君、科学技術・学術政策局長川上伸昭君、研究振興局長常盤豊君、研究開発局長田中正朗君、スポーツ・青少年局長久保公人君及び経済産業省大臣官房審議官三又裕生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

福井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平野博文君。

平野委員 おはようございます。平野博文でございます。

 朝一番の質問は大変きつうございまして、また、私、七年ぶりの質問でございますから、質問形態になるかどうかわかりませんが、よろしくお願いしたいと思います。

 また加えて、きょうは参考人、政府参考人の方がお越しでございますが、とりわけ松本理研理事長につきましては、突然のお越しで、業務多忙の中お越しをいただきましたことに、心から敬意を表したいと思います。決して厳しい質問をするつもりはございません。

 特に私は、松本理事長におかれましては、京都大学の総長時代に、いろいろな大学改革を含めて一生懸命やっておられた姿を見ておりますから、その力をぜひ理研でも頑張っていただきたい、そんな思いできょうお越しをいただきましたので、この委員会で初登板、こんなことでよろしくお願いしたいと思います。

 それではまず、お忙しい中お越しをいただきました松本新理事長にお伺いをしたいと思います。

 大学時代のガバナンスあるいはマネジメントと違いまして、新しい、理研という我が国最大の研究所にお越しになったわけですが、大学時代と今の心境はどんなものでしょうか。

松本参考人 御質問ありがとうございます。

 大学も研究所も、研究開発をするという重要な役割を国の中で果たしてございます。大学は教育機能もございますので、理研と同じというふうには認識しておりませんが、研究の成果を上げるという点におきましては同じでございますので、ぜひ、経験を生かして取り組んでまいりたいと思ってございます。

平野委員 そういう中で理研はいろいろな問題が山積をしている。特に、不正な状況もございました。

 しかし、研究開発という概念からいきますと、理研が創立以来持ってきた本来の基礎研究から次の新しいビジネスへの転換をする、やはりややもすると研究者というのは、基礎研究だけに、自分のところだけでこだわってしまう。これでは大きく科学の進展はないし、新しいビジネスモデルにつながっていかない。いわゆる死の谷をどう克服をしていくか、そんな大きな役割も実はあると私は思っております。

 そういう中で少し私、見させていただきましたが、松本理事長が理研改革と称してみずからの決意を実は述べておられるわけであります。

 改めてここで、新しい体制のもとにやられる松本理事長の決意をしっかりと、五分ぐらい時間をお渡ししますので、決意を述べていただきたい、かように思います。

松本参考人 ありがとうございます。お答えいたします。

 理化学研究所は、この四月一日から、研究開発成果の最大化をミッションとする国立研究開発法人になったところでございます。この重要な時期に理事長を拝命したことは、大変身の引き締まる思いでございます。

 私の使命は、理研を、ただいまございましたように、厳しい国際競争の中でさらに顕著な成果を上げる世界一流の研究機関に仕上げるということが私の任務であると認識してございます。

 このミッションを実現するために、私は、就任早々一カ月以内に、全国にございます七つの事業所、十七の研究センターを全て回りました。そこで、研究リーダーそして若手研究者の声をじかに聞きました。百五十名以上の方と面接したと思ってございます。

 そういうことを中心によく考えまして、理研科学力展開プランを取りまとめさせていただきました。そして、その内容は、理研の五つの柱として設定をさせてもらうことにいたしました。

 その五つの柱を簡単に申し上げます。

 一つは、現在、定年制と任期制の研究人事制度、二元ございますが、それを一元化をいたしまして、新たなテニュア制度を構築するなど、研究開発成果を最大化する研究運営システムの開拓ということに取り組みたいと思ってございます。

 二つ目は、社会のニーズに対応して、社会を引っ張っていく、牽引する研究開発を進めるために、至高の、つまり最高の科学力、至高の科学力で研究成果をつくり出していくこと、創出することでございます。

 三つ目は、全国の大学と一体となって科学力の充実を図ってまいりたいと思ってございます。そうするために、科学技術ハブ機能というものを果たしていくということが必要と思いまして、それを通じてイノベーションの創出を図ってまいりたいと思ってございます。

 四つ目は、優秀な外国人研究者にとって魅力のある研究環境を構築する必要があると思ってございます。それを通じて国際頭脳循環の一極を担うということでございます。

 最後に五つ目でございますが、安定的な雇用環境や多様なキャリアパスを設定することで、国際的人材交流を進めまして、世界的な研究リーダー、とりわけ若手の人の育成をすることとさせていただきました。

 この柱に沿って理研の科学力を大学やほかの研究機関へ展開をさせていただきまして、一体となって日本の科学力を高める、そして、産業界とも手をとり合って、科学技術ハブを形成いたしまして、日本のイノベーションを強力に進めてまいりたいと思ってございます。

 さらにその先に、発展途上国、新興国を含めた国際社会の課題解決、これも我が国にとって大きな重要な役割だと思いますが、その課題解決に向けて内外の関係機関と協力をさせていただきまして、科学技術イノベーションによる解決策というものを提案させていただいたり、人類社会への貢献を図っていきたいという所存でございます。

 先生方におかれましては、どうぞ引き続き御指導、御鞭撻いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

平野委員 今、いみじくも理事長言われましたが、五つの大きな柱、こういうことでありました。一番大事なところはいろいろあると思いますが、特に、イノベーションを生み出す、このことは非常に大事な思考回路だと私は思っております。

 そういう中で、理事長は就任されてまだ間なしですが、これをやるために今一番悩んでいる課題は何なのか。一つでいいですから、多く言われても、あとは大臣にそのことを私は言いますから、一つでいいですから、今一番これが困っているんだというのがあったら言ってください。

松本参考人 困っているというか、私が今一番大事だと思っていることを申し上げます。

 これは、理研、昨年のインシデントがございまして、本来、研究者は胸を張って世界の最先端を走っていただくという必要がございます。背中が少し丸くなっているのではないかという気がいたしまして、研究者をずっと見渡してまいりましたが、すばらしい研究者も理研にはおられますし、もちろん全国の研究者もそうでありますが、特に理研は優秀な人材がおられます。その方々の顔が上を向いて、プライドを持って研究を進める環境をつくるということが一番大事だと思ってございます。

平野委員 下村大臣が任命された理事長ですから、今、理事長が抱負を言われました。ただ、言いにくいんだろうと思って多分言われないんだろうと私は思いますが、やはり、研究資金をどういうふうに集めていくか、こういうことだと思います。まして、期間限定の有期雇用みたいな感じになっている。私が昔理研に行ったときに、優秀な研究者だけれども住宅のローンが組めない、こんな話も私は聞いたことがございます。

 改めて、もっと優秀な研究者をしっかりと確保していく、そういう研究者の、何と言うんでしょうか、安心して研究できる環境を整えてやる、こういうこともやはり大事な視点だろうというふうに実は思っております。

 そういう視点で、大臣、せっかくすばらしい人材を理事長として就任をしていただいたわけですから、今おっしゃった理事長の抱負、さらには、私自身が課題に思っている、研究者の一生懸命に頑張れる研究環境がまだまだ私は不足していると思うんですが、その点を含めて、大臣、理事長の今の決意に対してコメントがあれば。

下村国務大臣 おはようございます。ありがとうございます。

 今、平野先生から御指摘いただいたように、松本理事長は、京都大学の総長として大学改革に対して大変尽力をされ、改革を進められました。その突破力あるいは見識力、これは、理研の中でいろいろな課題が理研はこれまでありましたから、それを改革する、国民の皆さんに最も理研に対して協力をしていただけるような、そういうトップとしてふさわしい方であるというふうに確信してお願いしているところでございます。

 現在の理研の改革の実施状況につきましては、運営・改革モニタリング委員会において、理研改革に道筋がついた旨の評価を受けておりまして、今後とも、松本理事長のもと、役職員が一丸となってアクションプランの取り組みを継続し、取り組みの実効性を高めていくことが重要であるというふうに考えております。

 そのために、国会の御理解が得られるようであれば、できるだけ早く、本来世界トップレベルの研究開発法人の位置づけとしての理研、これは国内だけではなく、国際社会の中で優秀な人材を確保し、また、継続的な今おっしゃったような研究開発等ができるためには、新たなスキームとしての特定国立研究開発法人等にする必要があるのではないかと思っておりまして、これは、できるだけ早く、閣議決定を経て国会の同意が得られれば、国会審議に資するような準備をしていきたいというふうに思っております。

 そういう中で、世界じゅうのトップレベルの優秀な人材が理研に集まってくる、それから研究開発においても、今まで以上に柔軟に、もちろん無駄なことにならないような対応は必要でありますが、それは松本新理事長のもとでそのような対処をしていただけるのではないかというふうに思います。

 ぜひ、我が国の科学技術イノベーションを高めるということがこれから日本の発展に大変重要なことでありますし、その中の、我が国を代表する研究開発法人としての理研の果たすべき役割は大変大きなものがあると思います。

 そういうことについてぜひバックアップをしていきたいと思っておりますし、また、そのときにはぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

平野委員 それでは、十五分という約束ですから、理事長、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 さて、これから本番の質問でございまして、特に私は、国会に来て最初に入った委員会が、科学技術委員会に当初から所属しておりました。それ以降、文部科学ということになりました。この間、ずっと聞いておりますと、なかなか、科学技術に関する質疑というのがこの委員会で低調でございます。

 私、七年ぶりと言いましたが、七年前に質問したのが放射線の廃棄物の問題でございました。マンションにトイレがない、こういう言葉でよく言われておりますが、今でも相変わらずその問題がやはり続いている、こういうことでございます。

 したがいまして、きょう、高木副大臣がお越しでございますので、本来、別のところから行こうと思ったんですが、せっかくわざわざ来ていただきましたから、優先してそちらを先にやらせてもらおうかなと思います。

 特にきょう取り上げたいのは、低レベルの廃棄物と高レベルということがあるんですが、私、七年前は低レベルをやらせてもらいました。今回は、特に高レベルの廃棄物についてどのように我が国として考えているのか。長い歴史をたどっておりますから、遅々として進んでいないこの問題についてどうするのか。

 今やもうまさに廃棄物は大体どのぐらいあるんでしょうか。一万七千トンぐらいになっているんでしょうか。私が質問したころは一万五、六千でしたけれども。一万七千トンぐらい、今はとまっていますから二年ぐらい前の数字でありますが、それには変わりございませんか、その数字については。

高木副大臣 今委員御指摘がありましたように、二年前から、原発事故以降、原発もずっと停止しておりますので、今言われた一万七千トン、ガラス固化体二万五千本相当ということで今現在存在をしております。

平野委員 そこで伺いたいんですが、私は一貫して、国策事業で進めてきた原子力の平和利用、発電を含めてやってきたわけですが、まず、トイレの舞台をなぜ民間に委ねているのか、国が責任を持ってなぜ主導しないのか。このことは非常に大事な視点だと私思うんですが、政府としてはNUMOという民間法人に委ねておりまして、民間による選定プロセスをしていきましょう、こういうことでこの形にこだわってきました。その理由は何なんですか。

高木副大臣 原子力政策でございますが、国としても、これを推し進めてきた経緯もございます。そういった中で、今委員御指摘がありましたように、トイレなきマンションというふうに言われて、高レベル放射性廃棄物の最終処分についてどうするかということ、議論を進めてまいりました。

 そういった中で、発電事業者がこの原子力発電を運営しながら、そしてその廃棄物を出しているということで、まずは事業者の責任ということが一つございます。そういった中でこのNUMOを設立いたしまして、これまで取り組んでまいりました。

 ただ、現実問題、二〇〇〇年に最終処分法が施行されて以来今に至るまで、この処分地の選定の最初のプロセス、いわゆる文献調査、これにも着手できておりません。

 これは、御存じのように、各自治体による手挙げ方式で取り組んでまいりました。一時期、高知県の東洋町がその手を挙げるという段階まで来ましたけれども、これも、住民の選択、いわゆる選挙によりまして推進派の町長が落選をして、この問題がまた白紙に戻ってしまいました。

 そういった観点を踏まえまして、一昨年から、最終処分政策の抜本的な見直しをしようということで、今般、最終処分法に基づく基本方針を七年ぶりに改定をして、国が前面に出てこの処分地決定について関与していく、このように決定した次第でございます。

平野委員 これが大体でき上がったのは二〇〇〇年ぐらいだと思いますが、ことしは二○一五年ですか、十五年間、このことを言われて放置してきた国の責任はありませんか。民間に委ねているということですが、これまで十五年間も遅々として進まない、この現象に対して国はどう考えていたんですか。

高木副大臣 御指摘のように、この十五年間一向に進まなかったということで、国としてみれば、大変大きな責任があると思います。

 そういった中で、今回反省をして、今申し上げましたように、一昨年、この基本方針をしっかりと見直していこうということで閣議決定をさせていただきました。

 実は私も、ゴールデンウイークのときに、フィンランドのオルキルオトの最終処分場オンカロを視察させていただきました。実は、昨年の夏以来、工事が本格化しておりまして、現場の中に入ることができない状況でございましたけれども、これまで国会議員が何人かこの現地を視察したとき、特に小泉元総理または菅元総理等は、このオンカロを視察して、日本にはできない、こういうような御判断で反原発に大きくかじを切られているという、こういう状況がございます。

 NUMOと同じような形のポシヴァ社という会社がございまして、社長といろいろとお話ししたところ、日本人は、見に来たらこの最終処分場についてなぜ否定的になるんだろうか、こういった御意見もございました。

 私も現場を見て感じたのは、フィンランドの場合には、一九七〇年代に原発一号機がスタートをして、それ以来議論を重ねて、私どもの最終処分法と同じ二〇〇〇年にオルキルオトにオンカロ、いわゆる最終処分場をつくるという方針を決めました。

 以来、十年以上にわたって工事を進めながら、丁寧に、いわゆる四百五十メーターの地層に埋めるということで、直接その穴を四百五十メーター掘るのではなくて、一メーター下がるごとに十メーターずつ掘って、約五キロのトンネルを掘っています。

 そして、この十年間にわたって、その地層を一つ一つ丁寧に確認をしながら、さらに、フィンランドの場合には直接処分でございますから、この燃料がいわゆる熱を持っているということで、熱がどのように地層に変化を与えるか、そういった研究を進めながらやってまいりました。

 一方、土木の問題でもございますし、日本の世界最高水準の土木技術をもってすれば、この最終処分場は日本にも確実にできるという確信を持って戻ってまいりましたし、きょうは文科委員会でございますが、委員の先生方に申し上げたいのは、今原発が四十八基ございます。これは、反原発であろうが原発推進であろうが、この原発の燃料はどうにかして処分をしなければいけない問題であると思います。

 そういった観点から考えますと、最終処分場につきましては、与野党を問わず、国会議員として、政治家の責任として判断をしていただかなければいけない問題ですし、そのためにも、国が前面に立って、この問題、決着をつけてまいりたいと考えております。

平野委員 国が前面に出て決着をつける、また、そういう基本方針を改正した、いわゆる閣議決定によって変更したということですが、これは大きな変更ですから、閣議決定ということではなくて、法律を改正してやるというのが筋ではないか、こういうふうに私は思っています。

 一方、今副大臣が力説されましたことは、私は多といたします。評価はしたいと思います。しかし、そうは言うけれども、現実的に、従来のプロセスで法定プロセスをずっとNUMOがやってきた。国が前面に出るというのは、前さばきのところだけ出て、あとはNUMOに任す仕組みになっているんですよ。

 これは、今副大臣がおっしゃった部分とある意味整合性がとれていないと思うんだけれども、どうなのか。

高木副大臣 今回の基本方針の見直しによりまして、まず、処分地選定の前段、これについてまず国民の理解を得ていく。NUMOという一つの団体だけで国民に御理解をいただくということは、これは不可能だと思います。

 そういった部分では、今現在、各地域でシンポジウム等を開きながら、国民の幅広い理解を得ていこうと。その前段として、例えば知事会、市長会に私も足を運びまして、そこで、こういった方針を変えました、その上で、国がまずは候補地を選定させていただきますと。

 例えばフィンランドの場合は、この候補地が、一番最初、百あったそうでございます。それが議論の中でずっと絞り込まれて、最終的には五つの候補地になった。そのときに、先ほど申し上げました、フィンランドの場合には、二つの電力事業者がお金を出し合ってポシヴァ社という、いわゆるNUMOみたいなものをつくっております。

 このポシヴァ社が説明をするんですが、国もしっかりと説明に加わるというような形で、今委員の指摘された、NUMOにその後をずっと任せるのではなくて、例えば国民に対する説明、自治体に対する説明、そういったものも国がしっかりとかかわりを持ちながら前面に立ちたい、このようなことでございます。

平野委員 ぜひそれをやっていただきたいと思いますし、逆に言いますと、それは、国会の中でしっかり議論をするためには、閣議決定とかそういうことではなくて、法律を改正して、そういうことを前面的に立ってやるんだよということを法文化すべきだと私は思うんですね。

 それと同時に、一生懸命やってはる高木さんだから、もうこれ以上この部分については詰めませんが、なかなか、時間軸との関係において非常に難しい問題だと私は思っています。

 といいますのは、では、国が前面に出て、どこをその候補地として申し入れするんですか。どこがあるんですか。文書を読んでいますと、よくわからぬ言葉が出てくるんですね。科学的有望地みたいな言葉が出てきたんですね。この科学的有望地というのは一体何なんですか。どうぞ。

高木副大臣 今現在、総合資源エネルギー調査会のもとで放射性廃棄物のワーキンググループ、専門家の皆様方で議論をしていただいておりますけれども、一つの例としまして、例えば、火山からの距離、または活断層の有無、さらには、過去の地面の隆起がどれぐらいあったのか、こういったところをいわゆる客観的な形で確認をしながら、そして、先ほど申し上げましたように、急にここですよということではなくて、やはり有望地ですから、複数、かなりの数の有望地を提示させていただく中で、それと同時並行で国民全体が御理解をいただく。その地域の方だけが御理解をいただいてもこれはなかなか進むことがございませんので、そういったことも同時に行ってまいりたい、このように考えております。

平野委員 それで、その地域が、私はできないと思いますけれども、例えばできたとしましょう。ではそこで、今の法律上では埋めていくしかないわけですが、時間軸でいいますと、完成はどれくらいを見ているんですか、例えばきょうできたとして、二十年後ですか三十年後ですか、実際に埋設できるのは。

高木副大臣 今の段階では、いつということははっきりと申し上げられません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、フィンランドのオンカロ、これを確認したときに、二〇〇〇年代、ここから約十年の工事、研究、調査、こういう形でやってまいりました。そういうことを考えますと、やはり早期にこの問題というものは決着をつけなければいけない。そうでなくても、冒頭に委員が御指摘ありました、一万七千トンの廃棄物が今現在あるというその中で、それ以外にも、原発本体の中にも燃料棒があるわけですから、そういった部分では、ここは鋭意努力をしてまいりたいと考えております。

平野委員 したがって、もう一万七千トンのものがある。今、原子力が再稼働しておりませんからいいわけですが、ある意味、安全性が担保されて再稼働をしていくとなってくれば、またさらにでき上がってくる、こういうことになりますね。一方、あふれてくる。私、この間ずっと見ておりました。中間貯蔵します、中間貯蔵的保管をします、いろいろな言葉のあやで今日まで来ているんですね。これではもたぬようになってくることはもう自明の理ですよ、時間軸と余裕度からいくと。

 そういう意味では、今の法律上の地中に埋める、こういう発想から、これをもっとこれからの新しい科学技術の進展に期待をして、埋めるということと同時に、また、いつでもその問題、後でちょっと時間があったら質問しようと思ったんですが、ないので質問いたしませんが、例えば「もんじゅ」のときに、核種変換をすることによって減量化をしていくとか、いろいろなテクノロジーがこれからも出てくると思うんですね。その点が今一向にまた進んでいない。こういうことも実はあるわけですよ。

 したがって、この問題は、この委員会で大臣なり副大臣が本当に真摯に答弁されていると思いますが、その言葉以上に重い中身を持った、大きな国民的課題であることはもう間違いのない事実だと思うんです。

 これを本当に真剣にやっていかないことには、いろいろなところに影響してくると私は思うんです。原子力に対する技術屋さんがほとんどもういなくなる、ごみだけが日本列島にたまっていく、国民が本当に安心して住めるのか、こんなことにもなりかねませんので、高木副大臣、最後に一言でいいんですが、これは経産省だからという問題ではない、国家として本当にやっていかなきゃいかぬ問題ですから、一言決意を述べていただいて、退席していただいて結構です。

高木副大臣 ありがとうございます。

 今現在、これまでも、経済産業省そして資源エネルギー庁を中心に、この問題というものを自主的に進めてまいりました。しかしながら、今、平野委員の御指摘のように、これは国家的な問題であると思います。そういった部分では、一つの省が努力をするという話ではなくて、まさに、いわゆる政府一体となって、政府だけではありません、まさに、国民の御理解を得ていかなければこの問題というのは進みません。

 この福島の原発の事故が起きて以来、私も今現在、原子力災害の現地対策本部長ということで、福島に週に一、二回入らさせていただいて感じるのは、やはりこの原子力の問題というものを、ただ単に、事故が起きてああ大変だったということではなくて、それをどうしていくのかという問題について、まさに国民的議論をしていかなければいけない。

 そういった意味では、この最終処分場の問題は、政府が一丸となって、そして、まさに国会の皆様方としっかりと議論を積み重ねながら、そして国民全体に御理解をいただく、このために全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

平野委員 あと三十分は別のテーマでとりたいものですからここでとめますが、高木さん、どうぞ結構でございます。また別の機会に厳しいお話をさせてもらいたいと思います。ありがとうございました。

 きょうは原子力機構の理事の方にも来ていただいておりますが、質問は少しやめますが、せっかく来ていただきましたので、先ほど言いましたように、核種の変換を含めて、「もんじゅ」は現実的にとまっている。私、大臣のときに、「もんじゅ」のあり方についてしっかり研究成果を刈り取るとともに、新しいテーマを出してもらいたい、その中に今御指摘しましたような問題を私はお願いをしてございました。これからしっかりとその問題を含めてやっていただきますよう、強く要望だけしておきます。退席していただいて結構です。

 さて、済みません、もう一つの大きなことで、これは下村大臣にしっかりお聞きしなきゃいかぬことでありますが、先般、国家戦略特区の問題が衆議院を実は通りました。その中に、文部科学の教育の分野にかかわる、いわゆる公設民営学校が実はございました。

 この法案というのは、八省府を含めて非常に多岐にわたる部分でありまして、本来、これは文部科学委員会でしっかりと議論しなきゃいかぬテーマだと思うのでありますが、なぜかわかりませんが、合同審査もなく一括で審議されて通ってしまったということで、私は極めて残念に思っております。

 私、せっかく時間をいただきましたので、この点について少し大臣の所見を聞きたいと思いますし、問題点をある意味指摘をしておきたいと思います。

 特に私は、公設民営学校の制度の概要を少し見させてもらいましたが、私が文科相でいるときに、公設民営ではありませんが、株式会社学校の問題が実はございました、課題として。

 平成十五年の構造改革特区において、特別なニーズのある場合に株式会社の学校の設置が認められたわけでありますが、この株式会社立の学校というのは今現在どういう状態になっているのか。これは大臣でなくて結構です、実務ですから。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 構造改革特区における、学校設置会社による学校設置事業、いわゆる株式会社立学校の制度でございますけれども、平成十六年から始まりまして、これまでに計三十六校設置がございました。

 この中で、学校法人立に移行したものが十校、廃校した学校が一校ということで、現在、株式会社立学校として存続しているものは二十五校になっているという状況でございます。

平野委員 しかし、大体残っている学校の中身を見ますと、通信制とかそういうところが大半であって、本来のもともと求めた部分ではなくて、実際調べてみたら、受講されているのかどうかよくわからぬ、あるいはメディアを経由してやっている。本当にこれが鳴り物入りでつくった株式会社の学校なのかと私は疑いたくなるような現実の姿があるんです。

 したがって、生徒さんがおられますから、安易にするわけにいかない、こういうことで学校法人に移行していただいたり、何とか軟着陸をして、要は、学生さんに迷惑をかけないようにしていこうとしてきたのが私が在任中のときでございました。

 その大きな原因は一体何だったんだろうというふうに私は思うんですが、安易にやはり学校に参入する、あるいは教育に参入する、結果として、採算がとれないから撤退をする、こういう、全てとは言いません、まだ残っておられますから言いませんが、傾向的に言ったら明らかではありませんか。その点はどうですか。

小松政府参考人 株式会社の設立した学校につきまして形態の異動あるいは撤退ということにつきましては、さまざまな事情があると考えられますので一概に言うことは難しゅうございますけれども、一方で、平成十六年から今日の間に計三十六校の設置が二十五校になっているというのは、一定の変動があったということだと思います。

 これにつきましては政府の方で評価を平成二十四年度に行いまして、ここでは、事業の効果が認められるという一方で、教育活動面、学校経営面等について問題点も指摘されたということから、運用の是正をしていくということを政府として決定いたしまして、その指導に努めているという状況でございます。

平野委員 大臣、今、局長は非常に答弁しづらい答弁をしていますよ。

 この株式会社立というのは成功だったんですか失敗だったんですか。大臣、素直な御見解を求めます。

下村国務大臣 構造改革特区における株式会社立学校につきましては、特区区域外での教育活動の実施などの問題点が指摘されたことを受け、平野委員が文科大臣のときが中心であったと思いますが、平成二十四年度に運用の是正を政府として決定し、文部科学省としても必要な指導に努めているということでありまして、それぞれの個々によって事情は違いますが、是正を求めるような課題があるということは、これは事実だと思いますし、今後、よりよいものを目指していく必要があると思います。

 一方で、御指摘のように、なぜ通信制を中心としてあるのかということについては、現実問題として、今、高校中退者が毎年五万人を超えている、それから、そもそも不登校もやはり五万人前後いるという、子供たちのその受け皿になって、そして、通信制高校に通うことによって、普通の高校ではハードルが高過ぎて、学びたいけれども学校に行って学べない、そういう受け皿となって子供たちの教育の環境、全面的に全てができているわけではありませんが、一定程度のチャンス、可能性に資するようなそういう受け皿になっていることも事実だというふうに思います。

 今、議連でフリースクールそれから夜間中学校についても、通常の学校に行けない、あるいは行けなかった子供に対するフォローアップをどうするかというようなことが、これは株式会社ではありませんけれども、あるいはフリースクールの中にはそういうところもありますが、そういうことが今超党派の議連で議論されている中で、同じような課題が出てくることもあり得るというふうには思いますが、子供の視点に立ったとき、できるだけそういう不登校とか中途退学者の受け皿として、しかし一方で、世間的に見てそれが単なる金もうけ、ビジネスとしての教育ではなくて、子供たちの視点に立ったときの学校というところから、株式会社立であっても、今後とも、創意工夫をしながら、国民の皆さんに信頼されるようなそういう努力をぜひ日々していただきたいと思います。

 その中で、財源問題がやはりありますので、先ほど局長からお話がありましたように、今まで三十六校の学校が設置されましたが、既に十校が学校法人立に変わってきたわけであります。そういう意味ではできるだけ学校法人というのは、一定の国民の信頼と理解と、また、基準をクリアしたということでありますから、やはり、そういうところを目指すということも必要なことだと思います。

平野委員 いや、大臣、今は議連でフリースクールであるとか夜間中学とか、この話は私も大事な視点だと思っていますよ。通信制だけは残っているというのは、そういうどうしても受けられない方々がいるというところにおいてこれが必要だと言うのであれば、これは株式会社立の問題と違うと私は思う。もっと別の視点の問題点としてこれからどうあるべきかという議論は、私もその一員としてはしっかりやっていかなきゃいけない、こう思っていますが、要は、株式会社というのはやはり営利ですから、利益が出てこなければ倒産ですから、それでは子供のためにならぬわけですから、それをやはりどうしていくんですかということをしっかり教育の場においては踏まえておかなきゃいけない、こう思います。

 さて、そういう中で今回、公設民営の制度設計が一応法案としては通りました。中身が全くよくわからない、わからない中で通されているということで、私なりに危惧しているところを少し大臣からお聞きしたいんです。

 指定を受けることのできる法人からは営利の会社は除外されている。これはある意味、教育の場に営利の機能を持たせるわけにいかない、こういうことですから、僕はそこは評価するね。ところが、さっきの株式会社の関係からいくと、私はだめだと思っていますから、ここは外されている、こういうことであります。

 しかし、一方でその指定法人に求められる要件というのが、もう全くよくわからない。どんな要件の法人だったらいいのか、これがよくわからない。これも地方公共団体に任せている。こういうことですよ。

 普通、一般学校法人には財産的な基盤あるいは教育体制の準備等々必要ですが、これについても全くそういう必要が求められていないと私は思っていますから、基盤の弱い法人がここに参入してくる可能性も極めて高いのではないか、こういうふうに思っていますが、このような、よくわからない制度設計をなぜしているのか。

 また、先ほど御指摘しました株式会社におけるこのような教訓を生かして、政令、省令でどれだけこの問題について縛りをかけていくのか。縛りをかけないと全くわけわからぬ指定法人が出てくるわけですから、これについてどういうふうに大臣はお考えでしょうか。

下村国務大臣 まず、国家戦略特区でありますから、国家戦略特区に指定されたエリア、自治体だけが対象ということでございます。

 そして、この公設民営学校をつくる意味というのは、国際理解教育や外国語教育に重点を置いた教育その他それぞれ産業の国際競争力の強化、それから国際的な経済活動の拠点の形成、これに寄与する人材の育成の必要性、これに対応するための教育が行われる、そのための特区としての公設民営学校であります。

 このために、民間の知見を活用し、それから、高度で専門的な知識、経験を有する教員や国際経験が豊富な教員を採用することが想定されます。

 一方で、地方公務員の給与は国の職員の給与等を考慮して定めなければならないということや、あるいは、外国人を学校運営に参画する管理職や教諭として任用することができないなどのことから、高額な賃金を柔軟に設定することなどによりまして、民間知見を活用し、国家戦略特区の趣旨に合致する教育を行うための優秀で専門性の高い教員を任用することは、制度実態として極めて困難であるという状況がございます。

 このため、公立学校を民間が管理運営する仕組みを特例として設ける必要があるということから設定したものであります。

 構造改革特区の株式会社立とどう違うのかということでありますが、株式会社立学校は、御指摘のように、営利を前提とする株式会社が設定し、その収益によって運営する学校であります。

 一方、公設民営学校は、国家戦略特区において認められ、これは、株式会社ではなく地方公共団体が設置をし、なおかつ非営利法人に管理を委託する。ですから、株式会社がもし受け皿になる場合であっても、そのままではなく、この非営利法人にかえて、そしてそこに管理を委託する。

 それから、公費によって運営される公立学校であるということで、その非営利性や公費支出の有無等の点で大きく異なるというスキームになっております。

 また……(平野委員「簡単でいいですよ、簡単に」と呼ぶ)よろしいですか。はい、簡単に。

 公設民営学校では、地方公共団体が法人が行う管理に関する基本的な方針等を策定するなど、設置者である地方公共団体の関与について必要な措置を講ずることとしておりますので、公立学校としての教育水準の維持向上と公共性の確保が図られるという点で、構造改革特区の学校とは大きく異なる点であります。

平野委員 いや、私はそういうことを言っておるのではなくて、国家戦略特区の指定された区域というのは、これは、資料を見ますと五カ所ございますよね。五カ所の中であれば、幾らでもできるスキームになっているわけですよ。特段、今大臣がおっしゃるように、産業に云々とか、云々というところに特にすぐれたということを言っておられますけれども、今のスキームでいくと、何校つくったってこれはいいわけですよ、その地方公共団体が認めれば。

 そうすると、教育の公平性、こういうところから考えますと、公教育も含んでいくわけですから、では、今大臣が指摘されるような問題点は、現行の公立高校ではできないからこういう特区でやっていきましょう。今、既存の私学においても、では私学とどう違うんですか。こういう素朴な疑問が現場的には起こっておるわけです。私学ではできないんですか、公立学校ではできないんですか。そういうことが今社会で求められておるのであれば、公立学校でもっとやれるように改革することの方がより混乱を招かないで済むのではないか、こういうふうに私は思います。

 もう一つは、過去にもよく似たこういうものがあるんですよ。これは余りよく知られていないと思うんですが、公私協力学校とか公私協力的学校とか、何かようわけわからぬものをつくっているわけだ。

 調べてみたら、公私協力学校というのはつくっているんです。自治体は、校舎等の施設を提供した上で運営費等を助成する、学校運営計画にも関与することができる、こういう学校ができているんです。これも構造改革特区のときにできているんですね。

 これをつくったけれども、実績はありますか、その学校。どうぞ。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の公私協力学校につきましては、設立されたものはございません。

平野委員 これはなぜ設立できていないんですか。

小松政府参考人 公私協力学校につきましては、その名前のとおり、公私の協力によってさまざまな工夫ができる余地があるようにつくりましたけれども、当初その方式を望んでいたところが計画を変更したり、あるいは平野委員御指摘のように、それぞれの部分については公立学校、私立学校で工夫をすることができるというようなことがあり、実際の申請には至らなかったということだと理解をいたしております。

平野委員 したがって、文科省が言ってきた今までの法解釈、特に設置者と管理者という概念からいくと、やはり一体であらなければならない、そうしなければいろいろな問題が起こってくるということをずっと文科省から言ってきたことも、私は頭にございます。

 今回、これを分離するわけですよね。それほど法解釈を、文科省が言ってきた主張を変えてまで、やっていくためにしなきゃならない公設民営がどんな特徴が出てくるというのが、余りにも我々には理解しがたい。特区だから何をやってもいい、こういうことには絶対ならないと私は思います。

 特区のメリットはメリットとして絶対あると私は思うんですよ。けれども、この教育に関してこの問題を、まして中身がよくわからない、そういう中で特区だから認めていくんだ、こういうことがもし許されるとしたら、では私学はどうなんですか。私学にもっとやらせたらいいじゃないですか。公教育をもっと改革して今大臣が求めている人材をつくっていくんだったら、公教育の中でできないからこういう問題をつくるんだということをもっと明確に、やはり我々に、国民に知らしめるべきだ、こういうふうに思うんです。

 仄聞しますと、外国人の学校長を入れなきゃいけない。今、公務員法等々含めて公権力の行使等々の部分から、外国人を学校長にすることができない。だからこういう格好だったらできる。公設民営だって公教育の機関ですよ。そう思うんです。

 だから、外国人の教員、私学は入れられるんです。公設民営でなきゃ外国人の校長先生を入れられないという今の規定があるんだったら、公教育の中にも、それは例外規定として入れられるという仕組みをつくってこの問題をつくればいいんじゃないかなと私は思うんだけれども、大臣どうでしょうか。

下村国務大臣 まず、平野委員がおっしゃった危惧の点はおっしゃるとおりだと思います。普通のほかの私立の学校でできるのであれば、あるいは既存の公立学校でいろいろな創意工夫の中でできるのであれば、それをあえて国家戦略特区としての公設民営学校をつくる必要がないわけであります。ですから、そういうつくれないものについて例外的に認めようと。

 何をもってつくれないかというのは、これは、産業の国際競争力の強化、それから国際的な経済活動の拠点の形成に寄与する人材の育成の中でできない部分を、実際、これは国家戦略特区に指定されている地方自治体からの手挙げ方式ですから、今おっしゃったように、それが既存のスキームの中でできるのであれば、それは認めません。

 ですから、できない中でこの国家戦略特区としての公設民営学校として申請をしてきたものに対して、文部科学省としては一つ一つ精査しながら、その枠の中でなぜできないのかということが理解されなければ、これはつくるということにはならないわけでございまして、地方自治体がどう挙げてくるかということでありますが、例えばなんですけれども、今、インターナショナルスクールの中にも、発達障害とかいろいろな障害を持った子供を請け負っている学校があるんですね。こういうところについては、インターナショナルスクールですから、財源もないし、また、そういう子供に対しての負担が外国人は多い。そのことによって、日本はそういう制度がないので、日本に勤務する場合でも、そういう家族がいるのは日本には勤務しないという事例が大使館関係でも相当あるということを聞いております。

 本当はそれは国立がやるべきことだと言われればそうかもしれませんが、地方自治体がそういうインターナショナルスクールとか、民間で実際やっているところがあります。それと組み合わせて、既存の私立高校や公立学校でできない部分、それをどう国家戦略特区で例えばできるかとか、そういうようなことが、一つは例えば考えられる具体的な事例でもあると思います。

平野委員 できないものを、今の既存の学校法人等々ではできないというところについては認めていくんだという、例外的だと言われますけれども、どういう基準でできないとこういうふうに認めていくのか。ここが出てこないものですから、何か今の理屈でいったら、歯どめがどこできいているのかよくわからぬわけですよ。

 今、大臣は賢明な御判断をされて、例外的に、こう言っておられますが、今の法律のたてつけでいけば、例外なんてどこにも書いていないわけですよ。こういう産業にこれこれがあれば認めていくという理屈でしかないものですから、今の既存の学校法人の中においては余計混乱を来す、こういうふうに実は思います。

 もう一つは、一個気になるのは、期間を区切ると書いてあるわけだ。教育委員会が法人を指定するに当たり、指定期間を定めることとする。学校の教育期間において、では五年間やらせてもらいます、あるいは六年間やらせてもらいますわというこの期間を切るなんという理屈が本来あってしかるべきなのか。普遍的なものだと私は思うんですね。これが一つ。

 もう一つは学校の責任という考え方で、そこで何か事故が起こったときに、これは設置者の責任なんですか、これは管理者の責任なんですか、この辺も協議をしていくべきだと言っていますが、これは公金も入っていくんですよね。そのときに、こんな曖昧なたてつけで本当に大丈夫なのか。

 だから、もっと明確に、特に教育を考えておられる委員のおる前で、厳格にこういう規制でもってやるから大丈夫なんだということが私には到底これは見られない、今の現実においては。

 この点、大臣は大丈夫だと言い切れますか。

小松政府参考人 恐れ入ります。法の仕組みのことについて少し御説明いたします。

 まず、指定の期間でございます。

 これは、指定をいたしますということになりますと、地方公共団体の公立学校でございますので、一定の期間で展開をするということについては、適切に地方住民の意思に沿って決められるということが必要でございます。

 ただ、おっしゃられるとおり、特定の期間を決めるというのも実情にそぐいませんけれども、継続的、安定的な教育を実施する観点から、そこを適切に考えるべきものだというふうに理解をいたしております。

 もう一点、責任の所在でございますけれども、公立学校でございますので、最終的な責任は設置者が負うということでなければならないと思っております。それで、その管理を委託して指定している間の個別の点につきましては、委託をされた法人に第一義的に責任がございます。

 ただ、例えば事故とかそういったことにつきましては、通っておられるお子さんのこと、あるいはそのほかの生徒さん等の教育の安定の観点からも、いわゆる国賠法が適用され、そして、その中で法人の方に落ち度がある場合には求償が行われるという形を想定しているところでございます。

平野委員 いや、少し学校の責任については、私は特別委員会の議事録を見たら、丹羽副大臣は、一義的には法人にある、こういうような答弁をされている部分やら、地方公共団体にある、こういうふうにされている部分やら、極めてそこはまた曖昧に聞こえるものですから、これはやはりしっかりと責任の所在というのは明らかにしておかなきゃいけない、こういうことです。

 やはり、実際の運営あるいは法人指定をしていくところの基準でありますとか、特区という名のもとにつくっていくと、ろくなものができてこない。さっき言いましたように、公私協力学校をつくっている。公私協力的学校、公私協力学校、つくるのは格好いいんですが、実態が伴っていない。

 このことは、大臣もそうでしょうけれども、文科省としても、これは特区だから官邸でやられているんだ、だからごまめの歯ぎしりじゃないけれども、じりじりしながらじっと見ているということではなくて、やはり教育を担当してきた役所として、だめなものはだめだとしっかりと言える役所にやはりなってもらいたいと思いますし、その先頭に立ってもらえるのが下村大臣だと私は思っています。

 最後に科学技術のイノベーションについて少しお話をしたかったんですが、時間が来ましたので、これも、先ほど理研の話をしましたが、非常に大事な我が国のこれからの大きな宝でありますし、飯の種でありますから、そこはしっかり、総合的な司令塔としてやはりどこが持つのか。ややもすると皆官邸がとっちゃって、各役所はばらばらになっちゃって、調整機能と司令塔とは違いますから、司令塔をやはりしっかりとしていかなきゃいけない。この質問についてはまた後日させていただきたいと思います。

 大臣、最後に。やはり教育というのは、非常に大事なテーマでもありますし、我が国の人材を育てていく基幹であります。いろいろな変化があると思いますけれども、やはり普遍的な考え方のもとに、時代の変化に今の仕組みで変えていく、公教育をどんどん変えていったらいいんですよ。それに対応していくような仕掛けにしないと、特区でやりますとか、変な例外的な行為でもってこの問題を振り回されることのないように私はぜひお願いしたいと思いますし、最後、大臣、一言お願いしたいと思います。

福井委員長 下村大臣、手短によろしくお願いします。

下村国務大臣 御指摘のように、国家戦略特区は構造改革特区とは異なりますので、手挙げ方式で申請してきたところが全部オーケーするという話ではなくて、これはよく文部科学省が個々の事例について地方自治体と相談しながら、既存のスキームでできるのはそれは既存のスキームでやっていただく、既存のスキームでできないこと、既存の私立学校や公立学校でできないことは何なのかということが誰から見ても明らかな形である中で国家戦略特区として認める、そういうスタンスできちっとやってまいりたいと思います。

平野委員 ありがとうございました。

 七年ぶりで緊張しましたが、ありがとうございました。

福井委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 維新の党の初鹿明博です。きょうも質問をさせていただきます。

 きょうはちょっと雨が降っていて涼しいですけれども、最近、本当に暑いですよね。三十度を超える日が続いていて、梅雨を通り越して真夏になったかのような天気が続いておりますが、先週とその前の週と二週にわたって、地元の小中学校の運動会、九校ぐらい出てきたんですけれども、炎天下の中で、子供たちも本当に真っ黒になりながら活動していて、見ている方の、保護者席に座っているおじいちゃん、おばあちゃんたちも汗だくになって見ていて、そろそろまた熱中症について心配しないといけない時期になったなというのを感じて帰ってきたところであります。

 きょうは、そういうこともありまして、学校の管理下における、特に部活動においての熱中症対策について、幾つか質問をさせていただきます。

 言うまでもなく、文部科学省としても、熱中症対策については万全を尽くすようにということで、毎年毎年、通知などを出して徹底していると思います。それでも毎年、熱中症になって救急車で何人も搬送されるというのが後を絶たないんですよね。毎年これが繰り返されている。

 これは、幾ら文科省が徹底をしても、それが現場で働いている教員にきちんと届いていないから、毎年のようにこういう、熱中症で救急車で搬送されてしまうようなケースが繰り返されているんだというふうに私は思っているわけでありまして、そういう意味では、油断することなく、ことしも各学校に対して、教員に対して、しっかりと徹底をしていくということを行っていただきたいと思います。

 では、まず最初にお伺いいたしますけれども、熱中症が原因で、まあ、救急車で搬送されるだけではなくて、自分で病院に行くというケースもあると思いますが、学校の管理下において熱中症または熱中症の疑いがあって病院に行ったという件数は、毎年、年間でどれぐらいあるんでしょうか。

久保政府参考人 お答えします。

 学校における熱中症による事故の状況でございます。

 小学校、中学校、高等学校におきます熱中症の発生状況につきましては、独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付事業によりますと、死亡見舞金支給件数は、平成二十三年度は五件、平成二十四年度は三件、平成二十五年度は一件で、いずれも高等学校における運動部活動中に発生したものでございます。

 また、医療費の支給件数につきましては、平成二十三年度は四千六百三十二件、二十四年度は四千九百三十一件、二十五年度は五千二百三十九件となっておりまして、特に中学校と高等学校に多く、そのうち約六割が運動部活動中に発生したものでございます。

初鹿委員 死亡した見舞金の支給件数もお答えいただいていますけれども、後で聞こうと思っていたんですが、まず、医療費が給付されている件数が、二十五年度について申し上げますが、小学校で五百件、中学校で二千三百五十八件、高等学校で二千三百八十一件あります。そして、その中で運動部の活動中というのが、中学校だと千五百六十六件で、高等学校で千五百二十四件というように、大体三分の二は部活動中だということですね。

 毎年約五千件ずつが熱中症で病院に行くような事態になっているというのは、やはり現場の指導者の方の意識が足りないんじゃないかと言わざるを得ない数字じゃないかと思います。

 しかも、死亡見舞金の給付がされているのが、二十五年度は一件でとどまっておりますけれども、二十四年度は三件で、二十三年度は五件もあるんですね。年々減ってきているとはいえ、死亡者が出ているというこの事実には変わりがないわけでありまして、やはり、学校の管理下で、特に部活動中に亡くなる生徒が一人もいないというふうにしていかないといけないんだと思います。

 そういう意味では、通知を出して終わりというわけにはいかないんじゃないかと思います。恐らく、文科省が都道府県の教育委員会に通知を出すわけですよね。そして、それを受けた都道府県は市区町村の教育委員会に通知を出して、それがそこから各学校に通知が行っている。では、学校でその受けた通知をどういうふうに扱っているのかというのが私は一番重要で、中には、毎年来ているから、職員会議とかで、ことしも文科省からこういうことが来ていますからということだけで終わってしまっているような学校もあるんじゃないかなというふうに思います。

 ですので、特に運動部の顧問をやっているような先生たちに、熱中症って簡単なものじゃないよ、場合によっては命を落とすこともあるんだというのを、具体的に件数が出ているわけですから、こういう事例も示して、しっかり徹底していただきたいと思います。

 前もここの質疑で質問させていただいたときに申し上げましたけれども、我が国の運動を教えている指導者の中には、いまだに根性論みたいなことを言って指導しているような方が多いんだと思います。特に、私は今四十六ですけれども、我々ぐらいの世代のときは、私はサッカー部に入っていましたけれども、当然、クラブの活動中に水なんか絶対飲んじゃいけなかった。それで、一年生のときなどは、一年生の中で一人がぐあいが悪くなって日陰で休んだりすると、連帯責任だということで、練習が終わった後、全員で校庭を何十周も走らされるとか、そういうのを当たり前のようにやらされていて、そういう練習の仕方をしていた人が今、クラブの顧問になっていたりするケースが多々あると思うんですね。

 だから、そういう人たちが、意識が変わっていればいいけれども、そうじゃなくて、同じような意識でやっているから、毎年五千人ものお子さんたちが熱中症で病院に行くことになっている。それでも、クラブ活動だけで三千人を超えているわけですから、やはりここはしっかりとした対策をとっていただきたいと思います。

 ですから、通知を出すに当たって、ただ単に通知だけ出すのではなくて、ここで、やはりこれだけ、平均して五千件も毎年病院に行っている、そして死亡も毎年必ず一件は発生しちゃっているんだと。どういう場合に死亡しているケースになっているかとか、どんな場合に大きな熱中症の症状が出ているかとか、そういう事例も示して通知を出していくようなことをして意識を持たせていくようにしてもらいたいと思いますけれども、大臣、御所見をお伺いいたします。

下村国務大臣 私も中学校までサッカー部に所属しておりまして、よくわからなかったんですが、当時はウサギ跳びをしょっちゅうやったり、それから、一切水を飲んじゃだめだということで、結構つらい思いをしたなという感じはいたしますが、おっしゃるところ、スポーツ医科学的な視点から、今後さらに、学校においても、部活動においてはより指導すべきだと思います。

 御指摘のように、平成二年度以降二十四年間で死亡事故は、学校管理下、熱中症、八十件発生をしている。その八七・五%、七十件が運動部活動のものであります。

 文科省はこれまでも、学校現場で熱中症の予防や発症した場合の対応が適切に行われるよう、毎年度、各教育委員会や関係団体に対して通知を発出するとともに、体育担当指導主事を対象とした協議会等での注意喚起を行い、さらに、熱中症の予防方法や応急措置等の対処法についてまとめたリーフレットや映像参考資料などを作成し、小中高等学校、特別支援学校に配付するなどしてきたところであります。

 それでも全然熱中症が減っていないじゃないかと御指摘で、具体的な対応でありますが、これまで全国三カ所で体育教員や運動部活動の顧問などを対象に行ってきた学校でのスポーツ事故防止に関するセミナーを、今年度から全国六カ所にふやして実施することとしております。

 御指摘がありましたが、今後とも、学校管理職を初め全ての教員、特に体育教員や運動部活動の顧問などへの理解の徹底を図り、学校における熱中症の事故防止にしっかり取り組んでまいりたいと思います。

初鹿委員 ぜひお願いをいたします。

 私が部活動での事故等にこだわっているのは、それは、部活動というのは、みんな生徒たちが自分で選んで入って活動しているわけですよね。何で選んでいるかといったら、そのスポーツが好きだからやっているんですよ、サッカーならサッカーが好きで、野球なら野球が好きで、バスケならバスケが好きで。そういう好きなスポーツをしていて、それが原因で亡くなったり障害を負ってしまったりということになったら、それはせつないじゃないですか。

 親御さんたちだって、やはり子供が熱中するものを見つけて、それを応援したいと思ってずっとクラブ活動の応援をして、本当にどろどろになったユニホームなんかを洗って次の日までに乾くようにしたりとか、乾燥機をかけたりとかしているわけですよ。それが、好きなことで子供たちが亡くなるなんということは本当につらいことだと思いますので、学校での部活動で亡くなるようなケースが本当にゼロになるようにしていただきたいと思います。

 特に、今回は熱中症の問題を取り上げさせていただきましたので、ことしは死亡事故はゼロになるように、本当に徹底していただくようにお願いをいたします。

 さて、六月になったということで、衣がえが学校では行われて、夏服になっていると思います。我々国会議員は五月からもうクールビズになっていますが、学生は六月一日から上着を脱いで衣がえをしていると思うんです。この夏服の制服について、ちょっと質問というか提案をさせていただきたいと思います。

 大体、上着を脱いで白いワイシャツや白いブラウスに夏服はなるわけですよね。私たちが中学生のころに比べれば、三十度を超える日が物すごい多くなっているわけですよね。八月だけじゃなくて、七月になったらもう三十五度を超えるような日もたくさんあります。登下校している学生を見ていると、汗びっちょりになっている中学生や高校生をよく見かけますよね。大臣、見かけますよね。

 それで、私はいつも感じているんですけれども、女子生徒は、汗でびちょびちょになって下着が透けたりするのがすごく抵抗がある生徒さんは多いんじゃないかと思うんですよ。私も、自分の娘が今高校三年生なんですね。私の娘の学校は、白いブラウスの上にニットのベストを着ているんですね。そのベストを着ていること自体、暑くて大変だと思いますけれども、透けるよりかはいいのかなと思っておりますが、やはり親としては、心配だな、嫌だなという感じはします。女子生徒さんたちも、恐らく、すごい抵抗感がある生徒は多いんじゃないかと思うんですよ。

 そこで、提案なんですけれども、夏も、今までともう気候が違うんですから、白いブラウスじゃなくて、ポロシャツとか、そういう汗を吸いやすい素材のものに夏服は変えるように勧めていったらどうかなと思うんです。もう一部の私立の学校では、夏はポロシャツにしている学校がかなりふえてきていると思うんです。ポロシャツだったら、白じゃなくて色のシャツを着てもおかしくないわけですから、そうやってやっていけば、下着が透けたりとか、そういう心配もしないでいいと思うんですよ。

 各学校で決めていることだから、文科省がああしろ、こうしろと言うのはなかなか言いづらい面もあるとは思いますけれども、でも、やはり実際に着ている生徒の目線というか、考え方というか、感じ方みたいなものも大事にしていただいて、できれば文科省として、こういうふうにした方が望ましいんじゃないかというような提言なり要請なりをしていただければなと思います。場合によっては、実際に今制服を着ている生徒さんの意見を聞くアンケートなどをとるというのも一つの方法じゃないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

下村国務大臣 熱中症対策としては、暑さを避けるための衣服の工夫も、おっしゃるとおり重要だと思います。

 日本スポーツ振興センターが、全国の幼小中高等学校、特別支援学校向けに作成、配付しているパンフレットの中におきましても、熱中症予防のための注意として、服装は軽装とし、吸湿性や通気性のよい素材にすることなどを挙げております。

 学校の制服については、御指摘のように、文科省があれこれ言うことではなく、基本的にはそれぞれの学校で判断することであります。文科省としては、そういうことで、状況を把握しているわけではありませんが、御指摘のように、中にはポロシャツを夏服として採用する学校も実際はあるというふうに聞いております。

 文科省としては、今後とも、さまざまな会議等の機会を通じ、通学も含めた学校生活における熱中症の予防のための対策や配慮を促して、子供たちの健康と安全の確保に努めてまいりたいと思います。

初鹿委員 恐らく、余り意識もなく、今まで決まっていたものだから変えることがなく続いているんじゃないかと思います。特に、それぞれの学校で制服を決めるのに、学校指定のお店とかがあって、そこから買うことになっていたりするから、なかなか変えづらいというのが自治体の中の理屈なんじゃないかと思いますけれども、でも、実際に着ている生徒さんが嫌だなと感じているんだったら、少しその辺も配慮をする必要があるのではないかなということをつけ加えさせていただきます。

 それでは次に、新国立競技場の建設について質問を移らせていただきます。

 お手元に新聞記事をお配りいたしておりますけれども、きょうの、六月三日の朝日新聞に、舛添知事と握手をしている写真が載っておりますが、お会いをされたということですけれども、ここで具体的に何かを話したということではないんですよね、大臣。会って、別に何かを話したというわけではないんですよね。

 ちょっとここに、この記事にも載っておりますけれども、知事と大臣との間で、費用負担をめぐってかなり意見の対立があるということでございますよね。

 十八日に大臣が舛添知事に説明に行ったということでありますけれども、そのときに、大臣から知事に何を言って、知事からどういう返答があったか、このやりとりがどういうことだったのか、ちょっとお答えいただけますか。

下村国務大臣 私の方から五月十八日に舛添東京都知事のところにお伺いいたしまして、新国立競技場の整備におきまして、東京都におきましてもぜひ一部負担をお願いしたいということをお話し申し上げました。

 それは、国立とはいってもオリンピック・パラリンピックに向けた整備でもあるということと、それから、オリンピック・パラリンピックの開会式や閉会式、メーン会場にもなることでありますし、あわせて、国立競技場の周辺整備、これは東京都に関係する場所も結構あります。一体となった取り組みをするということは東京都の便益にもなることでもあるということと、オリンピック・パラリンピックのメーンスタジアムでもあるということから、東京都においても一定の御協力をお願いしたい、こういう目的で行ってまいりました。

初鹿委員 その際、舛添知事の回答は、私の聞いたところによりますと、総工費も工期もわからない中で負担をお願いされても答えようがない、そういうお答えだったと聞いておりますが、そういうことでよろしいんですよね。

 やはりこの問題、突然、屋根はつけられなくなりました、計画が変更になりました、そして事業費は上がりますということが先にあって、それで、では東京都の負担をみたいな話になっているので、やや話がこじれる要因になっているんじゃないかというのは一つ感じるところなんですね。

 それで、舛添知事の話によると、その後、大臣は二十一日に首相官邸に報告に行って、そのときに東京都の負担分は約五百八十億円になるという報告をしたというふうに舛添知事は話をしているそうなんですが、そういう金額を示した報告を官邸にされたんでしょうか。

下村国務大臣 東京都にお願いするについて、積算根拠となる数字について、シミュレーションとして、このような数字が考えられるということを事前に総理には説明いたしましたが、それは東京都に出す数字ではなくて、政府の中における検討状況でございます。

 おっしゃるとおり、これはまだ設計者と契約締結はしておりません。価格の問題等もまだはっきりしておりませんので、それがある程度はっきりして、もう一度積算根拠を精査して、それから東京都には出すということで考えておりましたから、これは、政府内における、ある意味では現段階における検討状況の種類であって、それをそのまま東京都の方に提示するという考えはございません。

初鹿委員 そういう段階だったということなんですが、二十九日に文科省の担当者が都庁に出向いて説明をしようとしたら、都知事の指示で説明は要らないと断られたということですけれども、では、この二十九日は一体何を説明しに行ったんでしょうか。

下村国務大臣 ですから、行っていないわけですけれども、私の方でもともと舛添知事には、五月の末段階における状況について説明をしますということを五月十八日に申し上げておりましたから、途中経過を含めた五月の末段階における状況を、そういう意味では、契約したからこれでよろしくお願いしますということではなくて、これは記者会見のオープンの場で知事の方から、一方的にといいますか、今まで全く知らされていないのに突然言われても困るという話がありましたから、随時、こちらとしては途中経過を含めて詳細の、そのときそのときの状況についてはできるだけ東京都の方にも説明しておく必要があるのではないか。もともとそういうふうに約束をしておりましたから、五月の末に久保局長が行って、副知事に説明を申し上げたいということを申し合わせたわけであります。

初鹿委員 つまり、大臣としては丁寧に途中経過から説明をしようと思ったけれども、逆に東京都の側は、最終的な金額がわからないと協議のしようも検討のしようもないから最終的な報告を持ってきてくれと言ったのに、中間報告だから要らないよと。ちょっとその辺の意識のそごがあった、そういうことでしょうね。

 それが、きのうお会いをしたことによって多少ほぐれて、今後はある程度密に連絡をとり合いながらこの問題の解決に向かっていける、そういう理解でよろしいんでしょうか。

下村国務大臣 基本的には、これは都市の開催でありますから、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会は、まさに東京都として開催するものでありますけれども、しかし、これは東京都だけにとどまらず、日本全体が活力を取り戻すような、そういうことをぜひすべきだ。そのために招致もオールジャパンでやってまいりましたが、政府としても最大限、この二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを成功させるためのバックアップなり、あるいは政府が主体的にみずからやる部分もあります、それをやっていこうということで、先日は国会に御協力をいただいてオリパラ法案あるいはラグビー法案等が通ったわけでございます。

 そして、担当大臣も五年前から設置するというのも、今までのオリンピック・パラリンピック、冬季、夏季を含めて初めてのことでありまして、それだけ国としても最大限、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック成功に向けて、東京都あるいは組織委員会、またこれはぜひキャンプ地や事前合宿、あるいは同時に、来年リオでオリンピック・パラリンピックが開催されますが、その直後から二〇二〇年に向けて、スポーツ、文化、全国津々浦々がこのような形で活性化するようなことをぜひしていきたいと思っておりますので、オールジャパンで取り組みたい。そのために、メーンである東京都ともしっかり連携をとりながらやっていきたいというふうに思っています。

初鹿委員 そもそも、やはり最初の段階でこの競技場の費用負担についての取り決めがされていなかったことが、混乱をしている要因の一つじゃないかなというのを私は感じるんですね。

 最初に二〇一六年にオリンピックの招致を決めたとき、そのときは東京都がみずからメーンスタジアムをつくるという計画でありまして、そのかわり、費用の二分の一を国に負担をしてくれという求めをしていたのが二〇一六年でしたよね。

 二〇二〇年になって、今度は、会場は国立競技場にするからということになったわけですけれども、では、国の方は、二〇一六年の反対で、半分を都が負担をするという意識であったとしたら、やはりそこはかなり東京都の意識とは乖離をしているんじゃないかと思うんですね。

 東京都の都知事の話ですと、負担するのは五十億程度じゃないかみたいな発言をされていますよね。それは何を根拠にこの五十億というのを言っているかといったら、それはJSCのホームページにも今掲載されていますけれども、基本設計条件案というのが出されていて、そこの中に周辺整備工事の内訳が出されていて、都営大江戸線との接続で十一億円、そして立体公園で三十九億円というように、東京都がかかわっている周辺のインフラの整備について五十億程度だから、これは東京都で負担をしましょうということを知事は言っているんだと思います。

 ですので、東京都の側のイメージとしては、周辺のインフラの整備のところは、東京都でかかわることはやりますよ、持ちますよ、でも、本体については国が責任を持ってやってくださいというのが私は東京都の今のスタンスではないかと思いますけれども、その費用の割合について大臣はどう考えているのか。

 それとあと、そもそも、総工費と工期が一体いつはっきりするのか、それがわかるならばお答えいただきたいと思います。

下村国務大臣 東京都の五十億の根拠というのは、それはそういうことではないと承知をしております。

 それから、ただ、初鹿委員がおっしゃった最初のそもそも論はおっしゃるとおりなんですね。最初は、東京都がメーン競技場をつくるということについて、では半々で、つまり五百億、五百億でという経緯から今日のようなことは来ているということであって、私が初めて舛添知事に話したというよりは、実際その前から事務的には東京都と国とで、折半というよりは東京都の金額の問題、それでずっと継続して意見交換をしていたということは事実のことでありまして、私が突然、初めて東京都に要請したということではない、そういう今までの経緯があるということは御指摘のとおりであります。

 そして、これについては、今後、積算根拠をきちっとつくって、そして東京都の方に説明していきたいと思います。舛添知事も、その積算根拠がきちっとあって、東京都が払うべきということがあれば、それは五百億どころか七百とかいうようなことも記者会見とかどこかで発言されたりしていますから、必ずしも東京都は五十億ということではない。これはあくまでも、国が積算根拠を含めたものを出すことによって精査されることではないかというふうに思っております。

 具体的に、設計者側との契約については、六月末か七月の上旬ぐらいまでにかかってしまうというふうに聞いております。工事そのものは、今解体工事が九月末までに終わる予定で、ことしの十月から始まるということであります。

 そういう中で、二〇一九年のラグビーワールドカップの開催に間に合うように、必ず二〇一九年の春には竣工、完成をしてもらうということと、それから、もともとこちらの方で積算している予算がありますから、それに限りなく近い、相当幅があるということを聞いておりますが、それは今現場でそれぞれ当事者たちが交渉している最中でございますから、あらかじめ想定金額を言うということは今の時点で適切でないと思いますので、申し上げるわけにはいきませんが、丁寧にやりながら、しかし、ぜひ設計業者側にも理解が得られるような、そういうことをこれから鋭意していきたいと思います。

初鹿委員 そろそろ時間がなくなってきたので最後に一言申し上げますけれども、そもそも、やはりザハ・ハディド氏のデザインを採用したことが、費用も思ったよりも過大になったわけですし、屋根もつくれないということにつながっているんじゃないかと思うんですね。もうこれが決まった時点から、建築家の方からもさまざまな批判があったわけですよ。

 それで、きょう、新聞記事も載せていますけれども、槇さんという建築家の方から、「設計変更を提言」ということで、このザハ氏のデザインを諦めるような提言もされております。これは途中で計画変更したりしていますけれども、その計画変更したことについても、磯崎新さんは、当初のダイナミズムがうせ、まるで列島の水没を待つ亀のような鈍重な姿にいたく失望したと酷評している、そういう状況なわけですよね。

 このザハさんというのは、余りにも斬新なデザインのために、結局、設計ができなくて、つくれなくて、アンビルトの女王とまで言われているような方なわけでありますから、まだ契約をしていないということですから、根本的なデザインも含めて見直しをして、きちんと工期に間に合うような、できれば、屋根をつくるということになっていたんだったら屋根がつくれるような、そういう設計に再検討していただくようにお願いをしたいと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

下村国務大臣 開閉式膜、天井のところですけれども、一般の観客席のところは屋根があるんですが、それはつくりますが、二〇二〇年以降という切り離しでありますが、基本的に、ラグビーそれからオリンピックに間に合うような形で、それから、多くの方々の御意見をお聞きしながら、整合性を持ちながらも、しかし、それは柔軟に対応できるところは対応するようにしながら、多くの方々に賛同していただけるような、そういう取り組みをしてまいりたいと思います。

初鹿委員 では、よろしくお願いします。

 終わります。

福井委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、新国立競技場整備をめぐるこの間の混迷について質問をしたいと思うんです。

 言うまでもなく、この問題は、去る五月十八日、下村大臣が舛添都知事に対して、整備計画の見直しと東京都に五百億円を超える負担を要請したことが発端であります。都知事は、整備費の正確な見積もりを示すことを求めるとともに、当然のことながら、そのような負担を受け入れることを拒否いたしました。一方、ザハ・ハディド氏のデザインに固執し、開閉式遮音装置などにこだわる方面からは、見直しなどどこで決まったのかという反発が出され、議論が膠着をしております。

 今、各方面からは、このままでは二〇二〇年までに新国立競技場が完成しないのではないか、ラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックが成功させられないのではないかとの不安や危惧の声が上がっているのも事実であります。

 まず大臣に確認しますけれども、このまま膠着状態が続けば、ラグビーワールドカップが開催される二〇一九年春の竣工に間に合わないという事態も生まれ得るという危機感をお持ちでしょうか。

下村国務大臣 膠着状態ということではありません。ただ、いろいろな新たな課題がありますので、それについては適切に解決をしてまいりたいと思います。

 御指摘がありましたが、政府として、二〇一九年ラグビーワールドカップ、それから二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会、これを成功させるためには、両大会の主会場となる新しい国立競技場を二〇一九年春に竣工させる、これは必須条件であると思います。そのために、今、施工業者等と調整を行っているわけでありますが、大前提として、必ず二〇一九年の春に竣工させるということは当然の大前提で議論しているところであります。

 この事業主体である日本スポーツ振興センター、JSC、ここが第一義的に対応しているわけでありますが、その所管する文科省としても、JSCと緊密な連携を図り、必要なサポートを行いながら、必ず二〇一九年春の竣工に向けて対応するということで取り組んでいるところであります。

宮本(岳)委員 我が党は、二〇一九年ラグビーワールドカップ大会特措法に賛成をいたしました。また、オリンピック・パラリンピック特措法には反対をいたしましたが、それは、五年も前から担当大臣をふやし、全閣僚による推進本部まで設置して進めようとするその中身に、オリンピック・パラリンピックに乗じた大規模開発、東京外環道路の整備など、無駄なインフラ整備等も含まれているという理由で反対したわけであります。

 我が党は、オリンピック・パラリンピックの東京招致には批判的な立場をとってまいりましたが、二〇一三年九月七日、ブエノスアイレスで行われたIOC総会で東京招致が決定して以降は、総会決定を尊重し、スポーツを通じて国際平和と友好を促進するというオリンピック精神の実現に努めるという立場で、私もその成功に力を尽くしてまいりました。

 大臣、二〇一九年ラグビーワールドカップの成功及び二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックのオリンピック精神に即した成功というのは、アスリートたちの強い願いであるばかりでなく、国民的にもその要望は高いと思います。また、我が国の国際公約でもあると思います。政府がその責任を果たさなければならないというのは当然のことだと思うんですけれども、よろしいでしょうか。

下村国務大臣 それはおっしゃるとおりであります。

 ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピック競技大会の招致に当たって、大会招致の閣議了解を行うとともに、政府保証を発出するなど、国も東京都やJOC、ラグビーフットボール協会、両招致委員会と一体となって取り組んでまいりました。

 また、招致決定後は、両大会の円滑な準備に資するため、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会等に関する閣僚会議を設置するとともに、さらに、去る五月二十七日には、国会において特別措置法も制定していただいたところであります。

 今後とも政府として、両組織委員会や東京都を含む開催自治体と連携して取り組むなど、両大会の成功に向けて必要な責務を果たしてまいりたいと思います。

宮本(岳)委員 新国立競技場は、現在の計画では、ことし十月に着工し、一九年春に完成させて、同年九月のラグビーワールドカップのメーンスタジアムに使用するというスケジュールであります。これを成功させようと思えば、もはや残された時間は限られております。私は、きょう、混迷を抜け出し、成功させるために何が必要か、我が党の提案をお示ししたいと思って質問に立たせていただきました。

 日本スポーツ振興センターにきょう来ていただいておりますが、お聞きをしたい。

 下村大臣は、去る五月二十六日、参議院文教委員会で、JSCにおいて昨年八月から実施計画を行っており、その中で設計者側から、二〇一九年春に竣工させるためには整備内容の一部について工夫、見直しを行う必要があるとの意見が出されたとの報告が私の方にことし四月の時点であったと答弁をされました。

 河野理事長、どのような報告を行ったんですか。

河野参考人 施工予定者であります技術協力者から、二〇一九年ラグビーワールドカップに間に合わせるためには、開閉式遮音装置の二〇二〇年オリンピック・パラリンピック大会後の施工や可動席の仮設化などについて必要との提案を受けました。

 また、建設コストにつきましても、施工予定者であります技術協力者の見積もりとして、予定を大幅に上回るものが提示されました。

 この二点につきまして大臣に報告させていただきました。

 ありがとうございます。

宮本(岳)委員 私は、そもそも、千六百二十五億という額自身が、北京オリンピックの北京国家体育場、いわゆる鳥の巣、総工費約五百億円、ロンドン大会のメーンスタジアム約八百億円に比べても、二倍、三倍の巨額となっていると思うんです。これは、採用されたザハ・ハディド氏の設計デザインが、巨大で超豪華、特殊な工法を必要とするものであることに端を発しております。

 この総工費をそのままにして、あれこれと資金稼ぎの段取りをしても、いたずらに混迷と迷走を続けるだけであり、事態は打開できないと思うんです。ましてや、混迷に乗じたサッカーくじの拡大や野球くじの導入などは、こうした事態を一段と混乱に巻き込むものであり、不見識、不真面目な議論だと言わなければなりません。

 そこで、国立競技場は国立である以上、国が責任を持って建設すべきである、これは極めてシンプルで真っ当な意見であります。マスコミが報じる町の反応でも識者のコメントでも、こういう声が圧倒的に多かったと思うんです。そもそも、政府自身がもともとはこの原則を当たり前のこととしてきた歴史がございます。

 スポーツ・青少年局に確認いたしますが、もともとの国立競技場は全て国費で建設されたのではありませんか。

久保政府参考人 国立競技場は、昭和三十三年に開催されるアジア競技大会の主競技場に充てるために、昭和三十一年に着工し、昭和三十三年三月に完成したものでございます。この国立競技場につきましては、全て国費により建設されたと承知してございます。

宮本(岳)委員 一九五八年に国立霞ケ丘競技場が竣工した際には、国会において国立競技場法という法律がつくられました。これは、国費をもって建設された国立競技場を特殊法人国立競技場に運営させるための法律でありました。

 昭和三十三年二月二十七日、衆議院文教委員会において、当時の臼井荘一文部政務次官は法案趣旨説明でその内容をどのように述べましたか。

久保政府参考人 当時の次官は、国立競技場を最も適切かつ効率的に運営するためには、特殊法人国立競技場を設立し、これによって運営するのが最も適当であることから、競技場の施設設備等の財産を政府から現物出資し、その価格の合計額に相当する額をこの特殊法人国立競技場の資本金とし、運営費についても国庫補助を行い、この競技場の運営を行わせるとともに、体育の普及振興を図らせたいことを、法案を提出した理由として説明しております。

宮本(岳)委員 このときの会議録を私は詳細に読みました。

 当時の文部省福田繁社会教育局長は、今建設中の国立競技場においては全部政府が責任を持ってこれを建設するという建前をとってきたので、将来これの整備あるいは拡張という問題が起こっても、いわば政府としてこの競技場の整備などは責任を持ってやりたいと述べるとともに、管理運営費についても、かような施設については全く独立採算制でもって収入、支出のバランスがとれるということも考えられないので、当分の間、運営費については、これを国から補助してやる、こういうような考え方で経営の方針といたしておると答弁をしております。これも間違いないですね。

久保政府参考人 昭和三十三年三月十八日の参議院文教委員会のやりとりでございまして、御指摘どおりの答弁を行っているところでございます。

宮本(岳)委員 この国立競技場法が一九八五年に日本体育・学校健康センター法、こういう名前に変わりました。今日の独立行政法人日本スポーツ振興センター法に発展をいたしました。

 これは日本スポーツ振興センター河野理事長にお伺いしますが、この国立競技場法の精神、目的は、今日の日本スポーツ振興センター法に受け継がれておりますね。

河野参考人 今御指摘いただきました旧国立競技場法、旧日本体育・学校健康センター法、そして現行の独立行政法人日本スポーツ振興センター法のいずれにおきましても、体育、スポーツの振興を図ること、施設の適切かつ効率的運営を図ること、もって国民の心身の健全な発達に寄与することということで、その趣旨は受け継がれております。

 ありがとうございます。

宮本(岳)委員 受け継がれているわけです。

 ならば、国立競技場の整備は、シンプルに、原点どおり、国費をもって行うのが当然ではないかと思うんですが、文科省スポーツ・青少年局の御答弁を求めたいと思います。

久保政府参考人 独立行政法人の施設の整備についての基本原則は、先生おっしゃったとおりだと思います。

 国立競技場につきましては、二〇二〇年オリンピック競技大会等の東京招致に係る平成二十三年十二月の閣議了解というのがございまして、「施設の新設・改善その他の公共事業については、その必要性等について十分検討を行い、多様な財源の確保に努めつつ、その規模を通常の公共事業費の中での優先的配分により対処し得るもの」とすることが定められております。

 国立競技場の改築事業につきましては、国費による措置に加え、そういう意味で多様な財源の確保に努めることとしているところでございまして、平成二十五年の独立行政法人日本スポーツ振興センター法の改正によりましても、スポーツ振興くじの売り上げの一部を改築事業費に充てることが可能となるとともに、東京都に対しても、事業費の一部負担を要請しているところでございます。

宮本(岳)委員 平成二十三年十二月、これは民主党政権下の閣議了解であります。これが文部科学省と財務省の取り決めの大もとにあるから、都に対して五百億もの負担を求めたり、サッカーくじの売り上げ拡大みたいな話ばかりが出てくるわけであります。

 きょうは財務省主計局に来ていただいております。

 財務省に聞くけれども、財務省は、国立競技場の整備について、多様な財源の確保ができなければラグビーワールドカップ日本大会や二〇二〇東京オリンピック・パラリンピックは成功しなくても構わないという立場をとっておられるんですか。

西田政府参考人 お答えを申し上げます。

 二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会は、日本の経済社会全体を再活性化させる好機でもあり、確実に運営して成功させなければならないものであると考えております。

 一方で、現下の財政状況は非常に厳しく、また、二〇二〇年には国、地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するとの健全化目標も実現をする必要があるという状況にございます。

 こうした状況のもと、所要経費につきましては、その必要性、妥当性について十分精査をいたしますとともに、多様な財源の確保に努めていくということが必要と考えております。

宮本(岳)委員 だから財務省は愚かだと私は思うんですね。

 国の財政事情が大変だから多様な財源の確保と今答弁、それも一つの理由で述べられました。しかし、財政が厳しいからといって国費で整備せずに多様な財源でとしたことによって、国会や国民の監視がもはや外れて、三千億円などという法外なデザインが採用され、逆に財政規律を失った計画が進んだ。

 国費であれば予算ですよ、国会でこれを議論することになります。決算だってすることになります。ところが、多様な財源で整備しろと言ったものだから、多様な財源なんだから、我々が段取りしたお金も使ってやるんだから、幾らになったって構わないじゃないか、そういう財政規律に反する事態がやはり進んだ、膨れ上がったと私は思うんですね。

 こういうやり方で本当に国立競技場の整備がやれるのか。いかがですか、財政規律という点で。今はまだ額が出ないんですよ、千六百二十五億をはるかに上回る額が出されている。しかし、こういうことでは本当に財政規律という点でも問題があると私は思うんだが、主計局はどう思われますか。

西田政府参考人 お答えを申し上げます。

 多様な財源を確保するということがあることをもって全体の事業費が放漫なものになっていいというふうに別に考えてはおりません。先ほども申し上げましたように、所要経費については十分精査をして、必要なものにつきまして対応するということであろうと思います。

宮本(岳)委員 大臣、私は今、政治が決断すべきときを迎えていると思うんです。その決断は、今や政治家でなければできないです。

 私は、以下の五点を提案したいと思います。

 一つは、設計デザインを含む当初計画を抜本的に見直し、開閉式ドーム等はつくらず、観客収容八万席のうち一定数は仮設とすること。その際、建築家などの意見を取り入れて、特殊建築工法によるコスト高を削って、そのほか徹底した簡素で無駄のない総工費に抑えるということ。

 二つは、建設に際して周辺住民の生活環境の保持を最大限に尊重し、景観に対する配慮を心がけること。

 三つは、総工費の資金確保について国が責任を持つことを明確にし、そのために総工費の上限を明確にすること。この資金確保には、もとよりサッカーくじや野球くじなどは想定しないこと。

 四つ目には、工費とその進捗状況に係る情報を全て開示し、その膨張を監視し、可能な限り民意を反映して、国民の施設としての機能が発揮されるものにしていくこと。これは、オリンピックアジェンダ二〇二〇が透明性の確保と強調していることにも合致するものであります。

 そして五つ目に、オリンピック・パラリンピック後の使用と維持管理についても、やはり国が責任を持つ。大体、開閉式の膜というものも、音楽のコンサートを開催するために、遮音するための装置でありますから。

 本来、競技場のランニングコストというのは、国立競技場法をつくったときには、これは独立採算にならないんだ、だから国が一定持つのは当たり前なんだというところから始まっているわけですから。もちろん、それは、コンサートをやって悪いとは言いませんけれども、コンサートをするために、わざわざそのための設備に何百億とかけるというのは、余りにも本末転倒していると思うんですね。

 この五点を提案したい。こういう政治的な決断をやって、関係者が集まって、成功のためには本当になすべきことは全部やる、こういうことをやらないと間に合わなくなると思うんですが、いかがですか。

下村国務大臣 批判ではなくて、前向きな、具体的な提言をいただいて、ありがとうございます。

 御指摘の五点でありますが、認識が一致する点もあります。また、一致しない点もありますので、個別具体的に答弁をさせていただきたいと思います。

 まず一つ目の、当初計画の基本的見直しについてでありますが、オリンピック招致を前提とした基本構想のデザインの公募、選定から、基本設計、実施計画と、ルールにのっとって計画的に進めてきた経緯は、これは踏まえる必要があると思います。しかし、余りにも、もともとのザハ・ハディド氏のデザインをそのまま活用すれば三千億というところから縮小して、それでも相当予定よりは高騰しているし、また工期も延びるというところから、いま一度見直しているという経緯がございます。

 抜本的な、ゼロからの見直しということについては、今までの整合的な部分から可能なのかどうかというのはあるとは思いますが、そういう意味で難しい部分もありますが、しかし、基本的に、総工費の抑制、設計の前段階における建設規模の縮小、それから経費の縮減、また、設計作業に入ってからも、工法等の工夫による低コスト化、こういう部分も含めて、トータル的に、この十月にスタートする以前のラストチャンスだと思いますので、しっかりこれは、政治的な決断、判断も含めた見直しについては柔軟に、もう一度総おさらいを私自身としてもしてまいりたいと思います。

 それから二つ目の、周辺環境への配慮についてでありますが、基本設計において高木植栽等の緑化計画を盛り込み、実施計画においてはさらなる充実を図っております。また、国立競技場記念作品等の保存、活用については、改築後においても全ての作品が国立競技場の敷地内に保存、活用されることが望ましく、JSCではその方向で取り組んでいるものと承知をしております。

 それから三つ目の、国による総工費の資金確保でありますが、独立行政法人が保有する施設の整備費は、基本的には国において財源を確保しつつ取り組むこと、それはそのとおりでありますが、先ほどからの答弁にありますように、国立競技場の整備に当たっては多様な財源の確保に努めるとした、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会招致の閣議了解を踏まえ、スポーツ振興くじによる財源の確保や、開催都市である東京都に対して費用の一部負担を要請してきた経緯もありますし、このスタンスは変えないつもりであります。

 それから四つ目の、工事費の情報公開と民意の反映については、工事調達の観点を前提としつつ、随時、開示、説明を行うとともに、さまざまな意見に耳を傾け、民意に配慮する計画となるよう努めていくことが必要であるというふうに考えます。

 それから五つ目の、国による大会開催後の運営管理費の継続的な確保につきましては、独立行政法人が保有する施設の運営管理費、管理費用は、基本的には運営費交付金により賄われるものでありますが、改築後の国立競技場の運営に当たっては、多目的な利活用による収益性の向上や、民間のノウハウを最大限活用することによって、できるだけそれ以降国民の税金を投入しなくてもいいような、やはり効率的な運営は図ることが必要であると考えます。

宮本(岳)委員 一定前向きな御答弁をいただいたと思うんですが、私は、今のままの計画に固執すれば、ワールドカップも、また二〇二〇年東京も、開催そのものがますます危ぶまれる結果となるというふうに思います。

 閣議了解と言うんですけれども、これは民主党政権時代の決定でありまして、あのときと今とでは、もちろん条件も状況も変わっていることもまた事実であります。

 東京オリンピック・パラリンピックの成功は安倍内閣の最重要課題の一つだと大臣もおっしゃってまいりました。我々は反対いたしましたが、こういう決断をするためにこそ、安倍総理を本部長に、全閣僚をメンバーとする東京オリンピック・パラリンピック推進本部を置いたのではないか、特措法をつくったのではないか。閣議で決めたことであれば、閣議で変えればこれは変えられるわけであります。

 ですから、本当に、みんなの知恵をまとめて、徹底的に計画を見直して、せめて一千億を切るところまで建設費を抑えて、そして、もちろん、さまざまな財源ということが、今の時点では閣議了解がかかっているんでしょうけれども、やはり国が成功のためにいわば腹をくくる。さまざまな財源財源と言うだけじゃなくて、仮にそれだけの他の財源がなくても、その分については国がちゃんと責任を持ってやるんだということも財務大臣ともはっきり調整して、もう早くこの方向で踏み出していくということが成功のために必要だし、これが最も原則的で、最も現実的な解決策だというふうに思います。

 重ねて大臣、そういうことについては同意していただけますか。

下村国務大臣 資金調達については、民主党政権のときに閣議決定されたからということではなくて、これはやはり、できるだけ多様な調達ということについては、そういうスキームの前提でしてきた中で、国費と、それからスポーツ振興くじについても売り上げの五%、これは、国立競技場の建てかえについては出していただけるというスキームを改正していただいているわけでありますから、それはぜひ有効活用させていただきたいと思いますし、また、東京都についても、先ほど初鹿委員からもお話がありましたが、これは二〇一六年の招致からの経緯がありますので、ぜひ、引き続き理解を得るようにしていく中で資金調達については考えてまいりたいと思います。

 これからの新国立競技場につきましては、しっかりといろいろな方々の御意見をお聞きしながら、柔軟に、しかし必ず間に合うように、二〇一九年の春の竣工に間に合うように、それから、コストについてもできるだけかからない、そういう創意工夫については十分行うことによって、広く国民の皆様方に理解をしていただけるように努力をしてまいりたいと思います。

宮本(岳)委員 舛添都知事は、新国立競技場建設問題は今や全国民的課題になっており、それをこれまでのように、一部の政治家、一部のスポーツ関係者、一部の設計者、建設業者の密室の会議で決めるのは不可能であると指摘をして、政府は各界を代表する識者を集め、マスコミに公開して透明性を確保し、公平な視点から国民的合意を形成すべきである、こうおっしゃっております。もう答えは問いませんけれども、今大臣も、さまざまな意見に耳を傾けてというふうにおっしゃいましたから、ぜひそういう方向で進めていただきたいと思うんですね。

 ところで、私、委員長に提案があるんですけれども、私は、混迷した新国立競技場建設問題の解決のためにも、国立競技場の規模や設計の見直しについてさまざまな提案をされている建築家、設計士の方々をお招きした参考人質疑が必要だと考えますが、追って理事会で御協議いただけますでしょうか。

福井委員長 追って理事会で協議させていただきます。

宮本(岳)委員 これまで政府は、我が党の反対を聞き入れずに、本来国が国費で確保すべきスポーツ振興の予算を、専らサッカーくじの収益に頼るという誤った道に踏み込みました。当初の言い分は、国の予算もくじの収益もという話でありましたが、結果は、くじが売れれば売れるほど国費は減らされ、最後には、予算が必要になるたびに、くじの拡大に走らざるを得なくなりました。この道がこのような深刻な誤りをもたらすからこそ、私は、スポーツ基本法制定時に、サッカーくじの活用などという規定を入れることに断固反対したのであります。

 二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを本当に成功させたいのであれば、改めて原点に立ち返ることを強く求めて、私の質問を終わります。

福井委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時四十六分開議

福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元でございます。

 本日は、午前中、理研の話が出ましたが、私も、前回の一般質疑に引き続いて今回も、ちょっと角度が違いますが、理研の改革について尋ねたいと思います。

 ちょうど一年前の今ごろ、まさにSTAPの問題で日本じゅうが大変大きな騒動に巻き込まれました。当時、STAPの問題については、世界三大研究不正の一つだという話も聞きました。アメリカのベル研究所での高温超電導に関する研究不正、それから、韓国でのES細胞をめぐる捏造事件と肩を並べる、そういうふうにも言われておりました。研究不正の問題というのは、これは理研に限られませんが、それだけ社会に与えた影響というのは、非常に大きな、甚大であるというふうに言わざるを得ません。

 最近、新聞等々を見ておりますと、やはり画期的な発見というのは時々新聞に出ますけれども、今では、本当なのかと半信半疑で、その姿勢の方が正しいのかもわかりませんが、半信半疑で見るようにもなっております。

 著名な生物学者のエドワード・ウィルソンという方が「若き科学者への手紙」という本を出されておりまして、その中で、最後に研究の倫理について書いているところがあります。その中では、「不正行為はけっして赦されない。不正を行った報いは研究者生命の死だ。科学界から追放され、二度と信用を得ることはない。」こういうふうに述べておられます。

 個人に言えることというのは組織にもしばしば当てはまるのだろう。そういう面でいいますと、失われた信用を全力で取り戻すことが科学界に対する理研の責務だということをまず私は申し上げまして、質問に入っていきたいと思います。

 前回も触れましたが、昨年六月十二日、理研が設けた外部有識者によってつくられた研究不正再発防止のための委員会の提言書と、それから、それを受けて八月二十七日に理研自身が発表されたアクションプラン、これの関係、前回、時間がなくて聞けなかった点もありましたので、まずこの点について幾つかただしていきたいと思います。

 提言書では、「理事及びこれと同数の外部委員からなる「経営会議」を新設する」というふうになっておりますが、まず確認したいのは、アクションプランの中にある経営戦略会議がこの提言書の中にある経営会議に当たると考えてよいのか、お答えください。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございました改革委員会の提言書にございます経営会議でございますけれども、これにつきましては、理研といたしましては、経営戦略会議という形で平成二十六年九月五日に設置してございます。

吉川(元)委員 提言書ではこの経営会議の役割として、予算の作成、執行、決算、中期及び年度計画、経営に関するもの、組織の改廃、その他理研の経営に関する重要事項の決定に当たっては、事前に経営会議での審議を経た上で決定し、実行状況を経営会議に報告すること、それから、これは午前中も少しお話が出ておりましたが、特定国立研究開発法人を視野に入れることに鑑み、社会的視点で理研のガバナンスに参加、研究不正防止の実行状況のモニタリング、報酬基準の妥当性を担保すること、それから、年六回以上この会議は開催することなどとされております。

 今述べた、事前の審議、それからモニタリング、あるいは報酬基準の妥当性の担保、さらには年六回以上の開催ということについては、経営戦略会議の方ではどのようになっているんでしょう。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 提言書におきましては、理事及び同数の外部委員から成る経営会議を新設しまして、理研が経営に関する重要事項を決定するに当たり事前に審議すること、また、理研の外から社会的な視点で理研のガバナンスに参加していただき、研究不正防止の実行状況をモニタリングすることなど、「常に経営について討議できる体制をとることが必要」とされているところでございます。

 理研では、この提言を真摯に踏まえまして、その趣旨が達成されますよう、理事長及び理事、合わせて六名でございますが、それと、全体の過半数となります七名の外部委員から成る経営戦略会議を設置したわけでございます。座長は外部委員にお願いしてございます。

 この会議におきましては、所全体の予算要求ですとか資源配分の方針、また、中期計画ですとか年度計画の策定、変更など経営に関する重要事項に係る事前の審議、また、理事長の経営理念ですとか研究所の国際化などのあり方といった研究所のトップマネジメントの機能強化に関する事項でございますとか、研究所のリスクマネジメントなどの経営の重要事項に係る討議をお願いしているところでございます。

 経営戦略会議の座長のお考えに沿って幅広く活発に討議いただける体制を整備いたしておりまして、四半期に一度、開催してきているところでございます。

吉川(元)委員 年四回ということで、この点は六回とは違います。この点は数字ですから、状況状況によって変えていくというふうに私自身も思っておりますが、ただ、今ほどの答弁の中で、お願いをしているというふうにおっしゃられました。アクションプランを見ますと、諮問をする会議だというふうに書かれております。提言書の方では、諮問する会議ではなくて、もっと強力な会議、強力な組織としてイメージされているのではないかというふうにも感じます。

 前回、モニタリング委員会の質問をさせていただいた際にも、提言書では監査委員会として恒久的に位置づけろというふうになっていたものが、いつの間にか諮問委員会、まあ、格下げという言葉がいいかどうかわかりませんが、諮問委員会というのはあくまで諮問されたことについて答えるのが諮問委員会でありまして、提言書が想定しているのはそういうことではなくて、モニタリング委員会にしろ、この経営戦略会議にしろ、諮問されなくても積極的に、主体的に動いていくということをイメージされていたのではないかというふうにも思います。

 何でこういうことを提言書がわざわざ言っているかというのを見ますと、提言書でこういうふうに書かれています。

 これはガバナンス改革についてですけれども、理研のトップ層において、研究不正を抑止できなかったみずからの組織の問題点や深刻な社会的疑義を引き起こした責任についての自覚が希薄である、こういうふうに非常に厳しい指摘がされているわけで、その上に立って諮問ではなくて監査であり、もっと強力な組織ということが提言をされたんだろうと。その観点からいえば、やはり、アクションプランもこの線に沿ってつくられるべきではないかというふうに私は思います。

 そのことを指摘させていただいて、次に、提言書では理事指名諮問委員会を設けるということになっていますけれども、これがどうなっているかということ、あわせて、研究担当理事を二名以上置き、生命科学担当の理事は必置というふうになっていますが、この点がどうなったか。二点について尋ねます。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 提言書では、産学官から適材適所の人材を理事として登用するために、経営会議の外部委員から構成される理事指名諮問委員会を設置し、理事の人選について理事長に助言することが必要というふうに述べられてございます。

 経営戦略会議では、理事が行う業務も審議の対象とすることから、理事が適切に任務を果たしているかが審議を通して明らかになるわけでございます。理事長が理事の人事を行う際には、当然ながらこれらも考慮することになりますので、適材適所の人材を理事に充てるという提言の趣旨は達成されているものというふうに考えてございます。

 それから、研究担当理事の任命についてでございます。

 理研では、提言書の指摘を踏まえまして、それまで一人でありました研究担当理事が所掌していた業務を、この四月一日から、研究センターのマネジメント経験があるライフサイエンス系の研究者を研究担当理事に任命するとともに、大学の副学長の経験がある理工学系の研究者を研究評価担当理事に任命するということで、研究所としてのガバナンスの強化を図ったところでございます。加えて、昨年の十月二十四日から、研究担当理事を補佐する研究政策審議役として二名の現役研究者を置いてございます。

 こういったことによりまして、研究担当理事の職務に万全を期してきているところでございます。(吉川(元)委員「生命担当は」と呼ぶ)

 ことしの四月一日から研究担当理事に任命された者はライフサイエンス系の研究者でございます。

吉川(元)委員 ライフサイエンス系の方ではありますけれども、これはほかの分野も含めて研究担当をされるわけですから、これはやはり少し違うんじゃないか。

 それからあと、理事指名諮問委員会というのは、経営戦略会議の中で個々の理事の仕事ぶりを評価するのはそれはもちろんですけれども、指名諮問をする会議というのとは全くこれは性質の異なるものでありますから、これもちょっとどうなのかなというふうに思います。

 提言書が、二人以上の研究担当理事を置き、一人は生命科学担当を専任で置けというふうに言っているその理由というのは、理研の研究のうち、その六割から七割が生命科学分野に関係がある、ですからそこは専任で置くべきだというのが提言書の意味するところだろうというふうに私は思います。生命科学をやっていた人を置いているからだということではなくて、そこのみに特化した人を置けというのが提言書の中身だと思います。

 ここに「背信の科学者たち」という、この本自体は出版されているのは新しいんですけれども、書かれたのは非常に古い、一九八三年に書かれた本があります。「背信の科学者たち」というタイトルは非常に刺激的なんですけれども、内容は至って真面目なものです。研究不正というのは昔からあった。それこそプトレマイオスの時代から研究不正というのは存在をしてきて、それはどのように行われ、また、それに対して社会やあるいは科学界がどのように対応してきたのかというのが書かれています。読めば読むほど、今回、STAPの問題がありましたけれども、あれと同じ構図の研究不正というのは山ほどこの中に書かれているわけです。

 今ほど、一九八三年の本だというふうに言いましたが、巻末に、一九八三年以降、昨年のSTAP問題までを含めて、どんな研究不正、重立ったものがあったかというのを一覧にしております。世界のもの、それから日本のものが書かれていますけれども、その日本の中の不正のうち、おおよそ八割は生命科学に関する分野で研究不正が発生しております。つまり、生命科学の分野というのは非常に研究不正が起こりやすい分野だとも言えると思います。

 だからこそ、提言書の方はそこはそういうふうには書いておりませんが、生命科学を専任で見る理事が必要だということを私は書いているんだと思います。

 ただ、質問のレクをする際にも教えていただいたんですが、今もおっしゃられましたけれども、理研の場合は理事の定数が六人しかいない。その中で、マネジメントだとかコンプライアンスだとかいろいろやらなきゃいけない分野がある中で二人そのまま研究分野に持っていかれるというのは、なかなかこれは厳しいんだというようなお話を伺いました。

 そこで、きょうは経済産業省の方に来ていただいておりますけれども、経産省が所管する産業技術総合研究所、いわゆる産総研ですけれども、ここの理事の数というのはどのようになっているのか、お答えください。

三又政府参考人 お答え申し上げます。

 産総研の理事長、副理事長、理事の合計数は十二名でございます。

吉川(元)委員 今、理研は改革の真っ最中でありますけれども、産総研と理研というのは、ある意味では日本の研究分野のツートップ、先頭を走るところで、片方は十二人の理事がいらっしゃる、もちろん、研究分野も違ったり、いろいろな諸事情はあるとは思いますけれども、片や理研の方は六人しかいない。これは法律事項でありますから、理研が、ではふやしましょうということは勝手にはできないわけで、そういう点からいっても、研究不正を防止する観点からも理研の理事の拡充というのはこれは必要だと考えますけれども、この点について大臣、どのようにお考えでしょうか。

下村国務大臣 独立行政法人の役員定数につきましては、業務の効率化という要請を踏まえて、法律で定められているところでございます。

 理化学研究所は、今理事が五人でございますが、昨年八月に策定した理研改革に関するアクションプランに基づき、十月から研究政策審議役を配置するなど、役員を補佐する体制を強化したところであります。

 まずは、現行の理事体制のもとで適切に業務執行してもらいたいと考えております。

吉川(元)委員 理事長を含めて六人ということで言いましたので、理事は五人ということですけれども。

 ただ、今回の問題を含めて文科省としてもしっかり指導助言していくというようなことも言われておられますし、その点からいうと、いろいろな補助をつけるということと理事がいるということは、これはやはり重みが違うわけで、だからこそ理事をというふうに提言書は書いているということも考えれば、ぜひこの点については今後も検討していただきたいというふうに思いますし、効率化ということもありますけれども、やはり、研究不正を起こしてはならないという観点からも、役員の充実というのは必要なんだろうというふうに私は思います。

 次に、これも、前回尋ねてちょっとやりとりができなかったものですから、改めて伺います。

 今回の問題では、直接の原因、提言書の方でも何度も指摘しておりますけれども、PIの採用経緯にあると提言書が大変厳しい言葉を使いながら指摘しているのは前回紹介したとおりです。前回の答弁では、さまざまな制度上の取り組みのお話がされました。

 ただ、提言書が真に問題としているのは、制度上に不備があったということではなくて、理研が持つ体質、提言書の言葉をかりれば、「画期的な成果の獲得の前には、」「いともたやすく必要な手順を省略してしまう。」そこに問題があった、そういうふうに指摘をされています。

 つまり、幾ら立派な制度をつくったとしても、それを簡単に破ってしまう、特別だということでその手順をすっ飛ばしてしまうということが、そこの部分が変わらない限り、私は、改革は絵に描いた餅なのではないかというふうに思います。

 なぜこういうことを聞くかといいますと、問題が発生した当時、その対応をされていた理事の方、今は理事をやめて理事長の特別補佐という立場に移られていらっしゃいますけれども、その方がインタビューで、STAP問題での採用について特に異常とは思っていない、ことしの三月の段階でこういうふうに答えられています。これこそ提言書が問題にした体質なのではないか。

 当時理事の方がどう考えていたのかは別にして、理研として、この採用過程について、手順を飛ばして採用するというようなことが行われたことについてどういうふうに考えておられるのか、答弁を求めます。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のSTAP問題に関します研究室主宰者の採用でございますけれども、研究室主宰者を採用する際の選考では、一般的に、書類審査とか面接を通じた総合評価により実施してきたところでありますが、STAP問題の事案に関しましては、研究不正再発防止のための改革委員会報告などにおきまして、過去の論文や応募書類の精査の不足、また、英語によるセミナーの省略といった、過去の採用の慣例に照らしまして必要とされるプロセスが省略されていたという指摘がなされておりまして、これらについては真摯に改善を図るべきものと認識してございます。

 理研といたしましては、採用時のリスク管理、また、客観性、公平性の担保のためには、採用手続の透明性を高めることが必要でありまして、また、そのプロセスを明文化して、基本原則からの逸脱を未然に防ぐ必要があるというふうに認識してございます。また、それでもなお残る採用リスクについても、外部からの視点を取り入れるなど、採用手続の過程においてできる限り低減する必要があると認識してございます。

 こうした認識のもと、昨年十二月には研究室主宰者採用にかかわるガイドラインを制定いたしまして、公募で行うこと、それから、委員会において選考することを原則とする、採用に当たっては理事会議における審議を必須のものとすることなど、採用手順を明確にいたしまして、理研全センターにおきまして、このガイドラインに沿って公正な選考を実施しているところでございます。

吉川(元)委員 また再び制度のお話をされましたけれども、一番肝のところは、先ほど言った、画期的な成果が出そうだと思った瞬間にその手順を省いてしまうというところがおかしかったということを、理研の方でもそういうふうな認識をされているということですけれども、文科省としてはどのような認識をお持ちでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 理化学研究所が設置した外部有識者委員会におきまして、研究不正再発防止のための改革委員会等において、過去の採用の慣例に照らし必要とされるプロセスが省略されていたという指摘がございましたことについては、先ほど理化学研究所の方から御説明があったとおりでございます。

 これを踏まえまして、理化学研究所において研究主宰者採用の手続に係るガイドラインを策定いたしまして、研究室主宰者の採用手続の明確化などの改善を行っている。この内容につきましても、先ほど理化学研究所の方から御説明がありました。

 文部科学省といたしましては、理化学研究所におきまして新たにこういう形でガイドラインを整備したわけでございますので、そのガイドラインに基づいて適切な採用手続が行われるように引き続き指導してまいりたいというふうに考えてございます。

吉川(元)委員 それでは、けさも少し話題に上りましたが、五月二十二日に理研の松本理事長が、現在の研究者について、任期制から定年制へ移れる制度をつくるというようなことを改革案として発表されております。

 まず理研に伺いたいんですけれども、その意図というのはどの辺にあるのでしょうか。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 理研といたしましては、任期制により若手を中心とする多様な人材を積極的に登用することによりまして、独創的な研究や新たな研究領域の開拓など多くの成果を上げ、また、研究経験を積んだ優秀な人材を社会に供給するということができてきたというふうに考えてございます。

 一方で、松本理事長が着任後、理研の全センターなどを回ってセンター長、若手研究者などとディスカッションした際には、特に若手研究者からは、任期制の研究者からは、任期を気にせずに十分に力を発揮したいという意見も多く寄せられたところでございます。

 このことを踏まえまして、短期的成果主義からの脱却を目指しまして、優秀な若手研究者を長期的、安定的に雇用するキャリアパスを構築することが必要であると考えるに至ったわけでございます。

 このため、定年制と任期制の長所をうまく活用できるように、新たなテニュア制度を構築すべく、その検討を進めているところでございます。これによりまして、若い研究者にとって将来のキャリアパスを見えやすくしたいというふうに考えてございます。

吉川(元)委員 ここに理研の概要説明というのがありまして、見させていただきますと、本当にほとんどの研究者の方が任期制ということで、やはり今回の問題の根底には、短期でとにかく成果を上げなければいけない、そういうことを求める理研の体質といいますか、そういう状況があったんだろうということは明白ではないか。その体質を変えていくことが理研改革の肝だというふうにも私は感じます。

 短期的な成果を求められてしまう制度、つまり、最たるものがこの任期制ですけれども、これを定年制に移していくということについて、松本理事長が発表された改革案ですけれども、これについて大変評価できるのではないかというふうにも私は考えておりますし、その方向で若い研究者が安心して研究に取り組める環境を理研としてもつくっていただきたいというふうに思います。

 この制度について文科省はどのように評価をされているのか、お聞きします。

常盤政府参考人 ただいま理化学研究所から説明がございましたとおり、松本理事長が発表いたしました理研科学力展開プランにおきまして、「定年制と任期制の研究人事制度を一本化し、新たなテニュア制度を構築する」という方向性を示しているわけでございます。

 任期制につきましては、研究者の流動性を高めるということで、研究の活性化、組織の柔軟な見直し、競争的環境の創出といった利点がございます。一方で定年制につきましては、安定的な環境のもとで腰を据えた研究を行うことができるという利点がございます。

 理化学研究所におきまして、ただいま説明がございましたように、新たなテニュア制度の構築ということで今後検討を進めるということでございます。研究開発成果を最大化するための検討の方向性として適切に判断されるものというふうに考えてございます。

吉川(元)委員 前回と今回、提言書とアクションプランの対応関係についてかなり細かく尋ねました。もちろん、一字一句同じでなければいけないというふうには言いませんし、多少名称が変わったり回数が変わったりというのは、それは構わないというふうに思います。それぞれ現場に合わせた形でつくっていただければと思いますが、ただやはり、提言書の精神、そこに貫かれている考え方というものはそのまま受け入れるべきだというふうに私は思っております。アクションプランを見ますと、率直に言って、提言書の精神、これが十分に反映されていない部分があるのではないかという危惧も感じます。

 先ほど、採用過程で紹介した当時の理事の方の発言、実は採用問題以外にもいろいろなことをしゃべっておられます。今回の問題について、世界じゅうにいろいろな不正問題がある、その中でどれくらいたちが悪いかと考えるとどうなのと思うところなきにしもあらずでありますとか、それから、提言書では、当時のセンター長の責任を非常に厳しく問い、相応の厳しい処分をというようなものが提言書の中に書かれておりますけれども、インタビューの方では、パニッシュメント、罰ではない、つまり処分ではないということもおっしゃられております。

 もう退任されていますから今の理研の理事ではありませんけれども、ことし三月の段階でそういう理事の姿を見ますと、本当に提言書のその中身といいますか精神を真摯に受けとめているのか、疑問に感じざるを得ません。

 そこで文科省に聞きますけれども、今回のアクションプラン、この提言書の精神といいますか、それを十分に反映したものというふうにお考えなんでしょうか。

下村国務大臣 理化学研究所において、研究不正再発防止のための改革委員会の提言、これを踏まえまして昨年八月に策定したアクションプランに基づき、組織改革に取り組んできたところというふうに認識しております。

 改革委員会の提言書におきまして、STAP論文に係る研究不正事案が発生するに至ったプロセスについて検証を行い、研究不正の再発防止等のための改革案が提言されております。

 アクションプランはこれらの提言の趣旨に沿って策定されているものというふうに認識しております。

吉川(元)委員 もちろん、タスクフォースをつくって、そこでいろいろ理研とも意見交換しながらやられているということですから、アクションプランが提言を受け入れていないというふうには、それは文科省としては当然言えないと思いますけれども、ただ、先ほど言ったようないろいろな事例があります。それが少しずつレベルが落ちている、あるいはなくなっている。なおかつ、当時の理事の方のこういう発言というのを聞くにつけ、やはりなかなかそうなっていないんじゃないか。

 大臣自身も、昨年の六月十三日、ちょうど提言書が出た翌日の会見で、まさにこの点について記者の方から、理研は提言書のとおりやらないのではないか、外部の指摘を受け入れ、実行することが大切ではという質問に対して、そのとおり、提言を受けとめ、そのまましっかり対応していくことが大切というふうに答えています。果たしてアクションプランがそのまましっかりなっているのかというのは、私はやはり疑問が解けないところであります。

 先般、モニタリング委員会の方から、アクションプランに基づいて一定のめど、成果が出ているというようなお話もありましたけれども、このアクションプランそのものがきちんとしたその提言書の精神を受けとめていないとすれば、改革というのはまだまだ続けていかなければならないというふうに私は思っております。

 もう時間もありませんので、最後に一点だけお聞きしたいと思います。

 研究不正、論文不正というのは、古くて新しい問題です。先ほど紹介しましたこの「背信の科学者たち」でも、まさにそのことを全編を通じて指摘しております。

 最後にこんな言葉で締めくくられています。科学は、人間による自然の理解である。希望やプライド、欲望といった通常の人間の感情などによって支配されている人間的な過程である。科学者もつまりは人間であるということだろうと。普通の人と同じように、名誉欲や出世欲、金銭欲を持ちます。

 特に、二十一世紀の科学と言われる生命科学の分野では、研究費獲得あるいは莫大な富を生み出す特許などをめぐって激しい競争が行われております。そういう面で言いますと不正が起こりやすいということだろうと思いますが、他方で、不正を起こりにくくしていくこともできる。それが一つ、今回の理研の改革だと思います。

 それとあわせまして、これは文科省もやはり大きな責任があるんだろうと。研究資金も、短期的な成果を求める背景には、運営交付金の削減、理研のも見ましたが、ずっと減っております。それから研究費の競争的配分があります。これは理研に限らず、大学も同じです。

 こうした姿勢を変えない限り、研究不正を起こしにくい環境をつくるというのは困難ではないかと思いますけれども、最後、この点についてだけ伺って、質問を終わります。

下村国務大臣 吉川委員がおっしゃる指摘も、そのとおりの部分があるというふうに思います。

 そういう中で、午前中も来ていただいた松本新理事長のもとで理研改革を進めていくということでございます。このアクションプランにのっとって、新たな体制の中で、先ほどの任用制の問題についても話がありましたが、トータル的な形で、京都大学で実績のある松本新理事長のもとで、国民に信頼される、また、研究不正が起こらない、そういう理研改革を進めていただきたいと思いますし、政府の方も、財政的な支援についてはしっかり対処してまいりたいと思います。

吉川(元)委員 以上で質問を終わります。

     ――――◇―――――

福井委員長 次に、内閣提出、国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。下村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

下村国務大臣 このたび政府から提出いたしました国立研究開発法人放射線医学総合研究所法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、近年、イノベーションを支える基盤として量子科学技術の重要性が高まる中、日本原子力研究開発機構の量子ビーム研究及び核融合研究に係る業務を、研究分野としての親和性が高く、重粒子線がん治療など量子科学技術に関して国際的にも高い優位性を有する放射線医学総合研究所に集約することで、新たに量子科学技術の推進を担う研究開発法人とするためのものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、法人の名称を、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構に改めます。

 第二に、法人の目的に、量子科学技術に関する基礎研究及び量子に関する基盤的研究開発等を行うことにより、量子科学技術の水準の向上を図ることを追加します。

 第三に、法人の業務の範囲に、量子科学技術に関する基礎研究及び量子に関する基盤的研究開発等を行うことを追加します。

 なお、この法律案は、一部の規定を除き、平成二十八年四月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

福井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

福井委員長 次に、文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、池田佳隆君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による教育現場の実態に即した教職員定数の充実に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。郡和子君。

郡委員 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    教育現場の実態に即した教職員定数の充実に関する件(案)

  公立小学校一年生の学級編制の標準については、平成二十三年に改正された義務標準法において、四十人から三十五人に引き下げられたものであり、同法の附則第二項においては、政府は公立の義務教育諸学校の学級規模及び教職員の配置の適正化に関し、小学校二年生以上の学級編制の標準も順次改定すること等について検討を行い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとされている。

  また、本委員会では、全会一致で可決された同法案に対して、政府及び関係者は、同法の施行に当たって、「必要かつ十分な数の加配教員が配置できるよう予算の確保に努める」とともに、「義務教育費国庫負担金について、現場の要望を十分かつ確実に反映できるよう予算の確保に努めること」とする附帯決議を全会一致で付した。

  去る五月十一日、財政制度等審議会財政制度分科会において、義務教育予算について、平成三十六年度までに約四万二千人の教職員の合理化が可能であるとの機械的な試算などが示された。同分科会においては、昨年十月にも、公立小学校一年生の学級編制の標準の四十人への引上げ等についての提案がなされており、これらの提案は、平成二十三年の改正法及び同法案に対する本委員会の附帯決議の趣旨に反するものであり、到底容認できない。また、高等教育に関し、国立大学法人は多様な収入源の確保を目指すべきではないかとして、授業料の引上げを示唆する見解も示されている。

  教育への投資は「未来への先行投資」であり、その効果は、教育を受けた個人にとどまらず、社会全体に及び、中長期的にはイノベーションを生みだし、国の成長の原動力となる。教育にどれだけ投資するのかは、国家としての重要な政策上の選択である。

  このため、政府は、これからの時代に応じた新しい教育を実現するため、単なる財政面だけではなく、長期的な我が国の在り方を見通す広い視野を持ち、教育現場の実態に即した教職員定数の充実に向けて、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 児童生徒の創造性や考える力を培う授業への転換を図り、これからの社会に対応する主体的、協働的な学びを実現するため、教職員が児童生徒一人一人と向き合うことのできる環境整備、教員の指導力向上を図る体制の充実に努めるとともに、学校現場を取り巻く課題が複雑困難化し、教職員が多忙化しているなどの実態を踏まえ、教職員定数を計画的に改善すること。

 二 教職員定数の計画的な改善に当たっては、義務標準法を改正し、小学校二年生以上においても、学級編制の標準を三十五人に引き下げるなど、平成二十三年に改正された義務標準法の附則第二項の趣旨の実現を期すべきこと。

 三 いじめ対策や特別支援教育、貧困による教育格差の解消など、社会の変化によって、学校が対応しなければならない現代的な教育課題が増大している実態に鑑み、児童生徒に対するきめ細かで質の高い教育を実現するため、必要かつ十分な数の加配教職員が配置できるよう定数を確保すること。

 四 義務教育環境の整備に当たっては、財政面からの視点だけでなく、教育現場の声を十分反映させるとともに、実態に即した検討・議論を行うこと。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

福井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

福井委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。(拍手)

 この際、ただいまの決議につきまして下村文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下村文部科学大臣。

下村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

福井委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十六分散会


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