衆議院

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第12号 平成13年5月18日(金曜日)

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平成十三年五月十八日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      佐藤  勉君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西川 京子君

      野田 聖子君    林 省之介君

      原田 義昭君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    吉野 正芳君

      家西  悟君    大島  敦君

      加藤 公一君    金田 誠一君

      釘宮  磐君    長妻  昭君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      青山 二三君    江田 康幸君

      樋高  剛君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      中川 智子君    小池百合子君

      川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括

   審議官)         木村 政之君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児

   童家庭局長)       岩田喜美枝君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局

   障害保健福祉部長)    今田 寛睦君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  三井 辨雄君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  長妻  昭君     三井 辨雄君

    ―――――――――――――

五月十七日

 社会保障の拡充に関する請願(岩永峯一君紹介)(第一五〇七号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一五〇八号)

 同(中川智子君紹介)(第一五〇九号)

 同(田並胤明君紹介)(第一五三〇号)

 同(阿部知子君紹介)(第一五五八号)

 同(後藤斎君紹介)(第一五五九号)

 同(大島敦君紹介)(第一五九三号)

 同(山田敏雅君紹介)(第一六一九号)

 同(五島正規君紹介)(第一六八二号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一六八三号)

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一五一〇号)

 同(五十嵐文彦君紹介)(第一五三一号)

 同(上川陽子君紹介)(第一五三二号)

 同(田並胤明君紹介)(第一五三三号)

 同(中村喜四郎君紹介)(第一五三四号)

 同(阿部知子君紹介)(第一五六〇号)

 同(上田清司君紹介)(第一五六一号)

 同(大出彰君紹介)(第一五六二号)

 同(後藤斎君紹介)(第一五六三号)

 同(佐藤謙一郎君紹介)(第一五六四号)

 同(永井英慈君紹介)(第一五六五号)

 同(葉山峻君紹介)(第一五六六号)

 同(堀内光雄君紹介)(第一五六七号)

 同(松沢成文君紹介)(第一五六八号)

 同(吉田六左エ門君紹介)(第一五六九号)

 同(渡辺周君紹介)(第一五七〇号)

 同(甘利明君紹介)(第一五九五号)

 同(江藤隆美君紹介)(第一五九六号)

 同(小此木八郎君紹介)(第一五九七号)

 同(首藤信彦君紹介)(第一五九八号)

 同(菅義偉君紹介)(第一五九九号)

 同(田中慶秋君紹介)(第一六〇〇号)

 同(高橋嘉信君紹介)(第一六〇一号)

 同(原陽子君紹介)(第一六〇二号)

 同(若松謙維君紹介)(第一六〇三号)

 同(渡辺博道君紹介)(第一六〇四号)

 同(熊谷弘君紹介)(第一六二〇号)

 同(河野太郎君紹介)(第一六二一号)

 同(近岡理一郎君紹介)(第一六二二号)

 同(中本太衛君紹介)(第一六二三号)

 同(山田敏雅君紹介)(第一六二四号)

 同(池田元久君紹介)(第一六八四号)

 同(衛藤征士郎君紹介)(第一六八五号)

 同(遠藤武彦君紹介)(第一六八六号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一六八七号)

 同(河上覃雄君紹介)(第一六八八号)

 同(五島正規君紹介)(第一六八九号)

 同(今田保典君紹介)(第一六九〇号)

 同(近藤基彦君紹介)(第一六九一号)

 同(樋高剛君紹介)(第一六九二号)

 同(横光克彦君紹介)(第一六九三号)

 同(米田建三君紹介)(第一六九四号)

 介護保険と国民健康保険の改善に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一五一一号)

 無認可保育所への公的助成等に関する請願(中川智子君紹介)(第一五一二号)

 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(川田悦子君紹介)(第一五一三号)

 同(北村誠吾君紹介)(第一五一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五一五号)

 同(中川智子君紹介)(第一五三八号)

 同(菅直人君紹介)(第一五七二号)

 同(坂井隆憲君紹介)(第一五七三号)

 同(大石正光君紹介)(第一六二五号)

 同(小渕優子君紹介)(第一六九五号)

 准看護婦等から看護婦等への移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一五一六号)

 同(川田悦子君紹介)(第一五一七号)

 同(中林よし子君紹介)(第一五一八号)

 同(不破哲三君紹介)(第一五一九号)

 同(北橋健治君紹介)(第一五三九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六〇六号)

 視覚障害者のパソコンと周辺機器・ソフトの購入への公的助成に関する請願(中川智子君紹介)(第一五二〇号)

 同(釘宮磐君紹介)(第一六二六号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(青山二三君紹介)(第一五二一号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一五二二号)

 同(佐藤観樹君紹介)(第一五四〇号)

 同(臼井日出男君紹介)(第一六〇七号)

 同(七条明君紹介)(第一六九六号)

 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一五二三号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一五二四号)

 同(中川智子君紹介)(第一五二五号)

 同(中林よし子君紹介)(第一五二六号)

 同(松本善明君紹介)(第一五二七号)

 同(大島敦君紹介)(第一六〇八号)

 男性助産婦の導入反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第一五三五号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一五三六号)

 同(中川智子君紹介)(第一五三七号)

 同(中川智子君紹介)(第一五七一号)

 介護保険の緊急改善に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第一五五七号)

 国立療養所香川小児病院の統廃合に関する請願(春名直章君紹介)(第一五九二号)

 同(五島正規君紹介)(第一六九七号)

 高齢者の生活安定と生きがいに関する請願(大島敦君紹介)(第一五九四号)

 保育・学童保育予算の大幅増額に関する請願(大島敦君紹介)(第一六〇五号)

 医療費負担引き上げの中止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一六八〇号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第一六八一号)

は本委員会に付託された。

五月七日

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(第三七四号)は、「佐藤勉君紹介」を「渡辺喜美君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 内閣提出、確定給付企業年金法案審査のため、来る二十三日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房総括審議官木村政之君、医政局長伊藤雅治君、健康局長篠崎英夫君、医薬局長宮島彰君、医薬局食品保健部長尾嵜新平君、労働基準局長日比徹君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局障害保健福祉部長今田寛睦君、老健局長堤修三君、保険局長大塚義治君及び政策統括官坂本哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。

金田(誠)委員 おはようございます。民主党の金田誠一でございます。

 坂口大臣には、再任まことにおめでとうございます。両副大臣におかれましても、まことにおめでとうございます。今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 まず、ハンセン病問題の全面解決についてお尋ねをしたいと思います。

 去る五月十一日、熊本地方裁判所におきまして、ハンセン病国賠訴訟の画期的な判決がございました。私は、この裁判史上に残る判決を、熊本地裁の法廷の中で同僚議員とともに聞いたところでございます。そのときは、体が震える思いでございました。日本にもまだ正義が残っていたと、本当に救われる思いでございました。原告の皆様はもとよりでございますが、各療養所でこの判決を聞かれた元患者の皆様のお気持ちはどうであったか、想像に余りあるものがございます。

 また、判決においては、国会議員の立法行為の国家賠償法上の違法性について、遅くとも昭和四十年以降に隔離規定を改廃しなかった立法上の不作為につき、国家賠償法上の違法性及び過失を認めるのが相当とされたわけでございます。

 私は、国会議員の一人として、この判決を重く受けとめ、原告の皆様初め元患者の皆様、さらに無念の思いを抱いて亡くなられた二万数千名の方々に、この席をかりて心からおわびを申し上げる次第でございます。

 他方、判決では、遅くとも昭和三十五年以降において、厚生大臣の職務行為に国家賠償法上の違法性及び過失があると認めるのが相当、このようにされました。

 一昨日、当委員会で坂口大臣のごあいさつがございましたけれども、大臣としても、一人の国会議員としても、一言の謝罪の言葉もなかったと記憶をいたしてございます。大臣は原告団の代表には直接謝罪されたと報道をされていただけに、残念でなりません。どうしたことなのか、まずこの点から御所見を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 その前に、再び皆さん方にいろいろとお世話になることになりますので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。

 今お話がございましたハンセン病判決に対しまして、患者の皆さん方に、十四日と思いますが、お会いをさせていただきまして、そのとき、人道的な立場から本当に皆さん方に申しわけない日々であったということを、心からのおわびを申し上げました。

 原告団の皆さん方からは、控訴を取り下げという前提の上で厚生労働大臣からそのお言葉を聞きたい、それまでその言葉はお預けにしておきたいというお話がございました。

 今そのことを、このようにいたしますということを申し上げることはできませんから、何はともあれ、私の気持ちとして、これは厚生労働大臣として心からおわびを申し上げますということを申し上げたわけでございます。

 きのうは、この委員会におけるごあいさつでございますから、そこでそうしたおわびをそのまま申し上げることがどうか。これは皆さん方に対するごあいさつでございますから、そこは割愛をさせていただきましたが、原告団の皆さん方に対しましては、そうした意味で、心からのおわびを申し上げたところでございます。

金田(誠)委員 厚生労働大臣として謝罪をされたということでお聞きをいたしました。

 大臣、国会の立法不作為も問われておるわけでございまして、大臣もまた議席を有するお一人でございます。そういうお立場からも、私は、本席はもとよりでございますが、機会を見て謝罪をしていただきたいものと強く申し上げておきたいと思います。

 今日時点の最大の課題は、ハンセン病問題の最終解決を図るということでございます。そのためには、国は控訴をせず、一審判決を確定させるところからすべてが始まる、このように考えます。厚生労働省に対しては、法務省の方から控訴について協議などがあるというふうに伺っております。これに対し、どのような態度をとられるのか、極めて重要でございます。

 判決は、御承知のとおり、極めて明快でございます。各メディアを初めとする世論は、国が控訴をせず早期に最終解決を図ることを求めていると思います。元患者さんの平均年齢が七十四歳を超えていることからすれば、人道的見地からも、控訴しないことが当然と考えます。私は、万が一にも控訴をすれば、その控訴自体が人権侵害に当たる、このように考えるところでございます。

 大臣は、この法務省の照会というのでしょうか通知というのでしょうか、これに対してどのような意思を示すおつもりか、あるいはもう既に意思表示をされているのか、その辺も含めて、明快なお答えをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 現時点でのお答えを申し上げますと、法務省から何ら通知をいただいているということはございません。むしろ私どもの方が原告団に早くお会いをさせていただいて、そして法務大臣の方が、きのうでございましたか、原告団にお会いになったということでございまして、こちらの方が早かったぐらいでございますので、現在のところ法務省から何ら、こういうふうにしようと思うとか、こういうふうに我々としては決定したとかというようなことをいただいているということはございません。これからはあるだろうというふうに思います。

 と申しますのは、やはり厚生労働省としての意見は申し上げますが、最終決定権と申しますか、それは法務大臣にあるのだそうでございますので、我々といたしましても、厚生労働省としての意見は申し上げなければならないというふうに思っております。

 現在の段階で、まだ総理との会談、総理との意見交換というのもいたしておりませんし、今の段階でどういうふうにするということを皆さん方に申し上げる段階でございませんし、そこまで固まっているというわけでもございません。

 ただ、私が考えておりますのは、原告団の皆さん方に対しても本当に申しわけないというふうに思っておりますが、これは原告団の皆さん方だけではなくて、裁判に参加をしておみえにならないその他約五千名、あるいは若干もう少し多い少ないはあるかもしれませんが、その皆さん方も含めて、元患者であった皆さん方に対して、我々は、本当に申しわけなかったということを申し上げなければならないというふうに思いますし、全体の皆さん方に対してその償いを一体どうするのかということを考えなければならないのであろうというふうに思っております。

 したがいまして、元患者の皆さん方の全体に対して我々がどう考えるかということを中心にしながら、我々の態度というものを決定していかなければならないと現在考えているところでございます。

金田(誠)委員 大臣、通知をいただいておらないという御答弁は非常に意外でございます。私、きょうの質問をするに当たって、この通知文書を厚生労働省にお願いしたところ、このコピーをきのういただきました。

 それによりますと、平成十三年五月十一日付でございますから、判決の日でございます。この日に、熊本地方法務局長から厚生労働省健康局長あてに「判決の言渡しについて(通知)」という表題で、「下記事件について、平成十三年五月十一日判決の言渡しがあり、同日その送達を受けたので通知します。ついては、本判決に対する上訴の要否及びその理由を平成十三年五月十六日までに回報願います。」というふうにございます。

 十六日はもう過ぎたわけでございますが、まだ通知はされていないとは思いますけれども、そこで大臣、この上訴の要否、これは大臣の権限でございます。上訴を要とするのか、否とするのか。

 大臣が原告の皆様に人道上からおわびした、その気持ちが真実であるならば、よもや上訴などなさらない、こう思うのが、受け取るのが当然だと思うわけでございますけれども、この場において、厚生労働大臣としては上訴を否とする、その旨を回答するということを明確にお答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 多少、御質問いただきましたことを私が勘違いをいたしておりました。「判決の言渡しについて」という通知はちょうだいをいたしております。先ほど私がお答えをいたしましたのは、法務省の方がこの決定に対してどういうふうにするかということの、法務省の意思というものを私たちは聞いていない、こういうことを申し上げたわけでございます。

 これによりますと、今御指摘いただきましたとおり、五月の十六日までに回報をお願いします、こう書いてございますから、十六日は既に過ぎておりますが、まだ私の方は法務省の方に答えを出しておりません。それは、総理とのお話し合いもまだ済んでおりませんしいたしますから、私たちの意見というものを申し上げる段階にないというふうに思っておりますので、いたしておりません。そういう状況でございます。

 ここに「要否及びその理由」と書いてございますけれども、これは厚生労働省としての意見というものを集約して申し上げるということだろうというふうに思います。しかし、それを最終決定するというのは、私も知らなかったわけでございますが、これは厚生労働省がするものというふうに初め勘違いをいたしておりましたが、そうではないようでございます。しかし、いずれにいたしましても、私たちは私たちとして責任を問われているわけでございますから、それに対する私たちの態度を明らかにしなければならないというふうに思っております。

 先ほどから何度か申し上げておりますように、我々が、人道上から申しますと、これはもう取り返しのつかない大きな過ちと申しますか、非常に長い間の隔離政策というものを、おくらせたその責任はあるというふうに自覚をいたしております。その上で、しかし、裁判というのは、法律というのは、法理論的になかなか難しい面がございまして、我々、なかなか読み切れないところもあるわけでございますが、その私たちの気持ちは、そういう気持ちがあるということは事実でございます。

金田(誠)委員 お尋ねしたことにお答えをいただいておらないと思います。再度お尋ねをいたします。

 法務省は控訴の方針であるということを私は仄聞いたしております。その根拠として、今裁判を闘っておられない方もいらっしゃる、あるいは一審判決で確定させるのがいかがかとか、前例があるとかないとか、お役人の論理を振り回していると伺っております。そういうお役人の論理を受け入れるのであれば、内閣は必要ないわけでございます。

 今、小泉さん、田中眞紀子さんの人気が非常に高い。その高い理由は、恐らくお二方はこのお役人の論理を超えて国民の立場で、政治的なリーダーシップを発揮していただけるだろうという国民の期待感だと思います。その期待感が現実のものになるかどうか、私は非常に危惧をいたしてございますけれども、この期待感は真実であり大切にしたいもの、こう思っているところでございます。そういう立場からしますと、政治の責任において、何としても控訴させてはならない、役人の論理に支配されてはならない、こう思うわけでございます。

 私は、熊本判決前日の夕方に、熊本市の白川公園というところで、二千名近く集まった大集会に参加をしておりました。集会のタイトルは「ふるさとに帰りたい」でございました。全国十三カ所の療養所の納骨堂の前で採火された十三個のランプがステージに飾られ、全員で「ふるさと」を合唱いたしました。

 現在、各療養所では、判決を受けて、これでふるさとに帰れるという期待が広がっております。来週月曜日、二十一日には、二百名を超える元患者さんが上京して、政府機関あるいは各党に要請行動を行うと聞いております。万が一にも控訴するようなことがあれば、不測の事態も起こりかねないことを憂慮いたしております。

 大臣は本件に対し直接責任を負う立場であり、大臣の責任において、厚生労働大臣としては控訴はしない、その旨を言明していただきたいと思います。一審判決だろうが正しいことは正しい、前例があろうがなかろうが正しいことは正しい、その姿勢を明確に貫いていただきたいと思います。

 大臣、いま一度明快な御答弁を、大臣としての御判断をお示しいただきたいと思います。

坂口国務大臣 先ほどから私が申し上げておりますように、私の考え方の一端は申し上げたとおりでございます。そして、その最終決断、どういう態度で臨むかということは、これはやはり総理と御相談を申し上げて決定しなければならないことでございますから、私が総理とお話し合いをする前にここで、こういうふうに私はしたいということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

 しかし、私の思いというものを私は固めているわけでございまして、それは、私を御信頼いただいてひとつお任せをいただく以外にないというふうに思います。

金田(誠)委員 再三お尋ねをしておりますが、明快な御答弁はいただけず残念でございますが、御信頼をという言葉でございますから、万々が一のことはあり得ないというふうに判断をさせていただきたいと思います。

 万々が一、厚生労働大臣の意思に反して控訴などという措置がとられるようなことが仮にあったとすれば、大臣、責任をおとりになる、このように理解させていただきますが、よろしいでしょうか。

坂口国務大臣 責任のとり方にもいろいろございます。先ほど申しましたとおり、私は、原告団の皆さん方に対しましてもおわびを申しましたし、何とかこの罪の償いをしなければならないというふうに思っておりますが、その皆さん方だけではなくて、やはり元患者の皆さん方全体に対してその償いをしなければならない。それをするためにはどうしたら一番いいかということを、今真剣に考えているということでございます。

金田(誠)委員 大臣の言葉、非常に気になるところがございます。原告団以外の方に対する責任云々と。そのことと控訴しないということとはどういう関係になってまいりますか。法務省の論理が大臣に相当インプットされているんではないか、そんな気がしてなりません。その最後のお言葉、非常に気になるところでございます。

 まず、第一審、熊本地裁の判決がありました。これを控訴を断念して、ほかはまだ係争中のところもございます、それらを含めて和解することは十分に可能でございます。あるいは、まだ提訴に及んでおらない方々を含めてどういう措置をとるかということも、十分可能でございます。控訴するかしないかは、今の判決を認めるのか認めないのか、その一点にかかる、それだけでございます。それ以外の理由は私は考えられないと思います。

 大臣、お言葉ですから、信頼をして引き下がる、私もそうしたいと思いますが、その一言がどうしてもひっかかってなりません。裁判の判決の内容について、大臣は、それに服すると。昭和三十五年以降責任があった、国会の立法不作為については昭和四十年以降と明快な判決でございます。この昭和三十五年以降の厚生行政に対する責任について大臣がお認めになるのであれば、裁判に参加しておらない方がどうであれ、この判決に服するべきであります。

 服するというおつもりなのか、これに異論があるというおつもりなのか。こういうことは余り再三立ちたくはないわけでございますけれども、大臣のお言葉、法務省の論理が組み込まれているようで心配でなりません。いま一度、判決に服する、判決は妥当であるというお考えをお示しいただきたいと思います。

坂口国務大臣 法務省のお考えというのは全く伺っておりません。したがいまして、私の頭の中に何らインプットされておりません。私は私の物の考え方でお答えを申し上げているわけでございます。

 先日も、記者会見で私は記者の皆さん方に申し上げたわけでございますが、今回の裁判の中で一番中心になりましたのは、隔離をするという、隔離行政というものが正しかったかどうかではなくて、隔離期間というものの、隔離の改廃が非常におくれたことに対して問われているわけでございます。

 この隔離の改廃について問われているわけでございますが、それに対しまして原告側は、昭和二十年代、プロミンという薬ができましたときに既にこれは改廃すべきであったという御主張をなさっておりますし、国の方は、多剤併用、プロミンだけではなくてそのほかの有力な薬も出てまいりまして、それらを含めました多剤併用が行われました五十六年というのを一つの基準にいたしているわけでございます。

 しかし、今回の判決は、そうした薬の効用の、いつからということではなくて、国際会議の結論を一つのメルクマールとして、一つの基準として判断をしておみえになるわけでございます。そして、少なくとも三十五年にはその判断ができたはずだということをお示しになっているわけでありまして、この判断基準につきましては、私は、一つの見識であるということを申し上げたわけでございます。この判決の考え方の方が私は妥当であるということを申し上げたわけでございます。

 したがいまして、そうしたこの裁判に対する考え方も一部明らかにしながら、しかし一方においてなかなか難しいのは、立法府における問題。立法府がどれだけ不作為の違法性が問われるのかといった、そうした問題につきましてのその法解釈上の問題というのはあるんだろうと思いますが、法律の専門家でありません私にはそこのところはなかなか理解のしがたいところでございまして、難しい面があることだけはわかります。

 しかし、中心であります隔離政策につきましての考え方は、私はそう思いますということを明確に皆さん方にも申し上げたところでございます。

金田(誠)委員 判決の内容は、「遅くとも昭和三十五年以降においては、もはやハンセン病は、隔離政策を用いなければならないほどの特別の疾患ではなくなっており、すべての入所者及びハンセン病患者について、隔離の必要性が失われた。 したがって、厚生省としては、同年の時点において、隔離政策の抜本的な変換等をする必要があったが、新法廃止まで、これを怠ったのであり、この点につき、厚生大臣の職務行為に国家賠償法上の違法性及び過失があると認めるのが相当である。」このように明確に判決をしているわけでございます。

 大臣の今の御答弁は、この判決を妥当であるというふうに認める、このようにおっしゃったと思うわけでございますが、再度確認させていただきたいと思います。

坂口国務大臣 旧厚生省がかかわりましたところの、いわゆる隔離政策というその期間を、隔離政策の改廃をいつするかということにつきまして示されました判決の判断基準というものは、それは正しいのではないかということを私は申し上げたわけでございます。

 したがいまして、それが、三十五年がよかったのか、四十年がよかったのか、あるいは本当は四十五年であったのかといったようなことは、その具体的なことは別にいたしまして、判断基準として国際会議というものを一つの基準にされたというそのことについては、それは正しいのではないかということを、私は、私の意見として申し上げたところでございます。

金田(誠)委員 それでは、大臣、まだ三十五年か四十年か、細部にわたっては、中身に踏み込んでは承服できない部分もあるということでしょうか。そういうこともあるけれども、言えばいろいろあるけれども、この判決に服するということなんでしょうか。どちらなんでしょうか。判決に服さないということなんでしょうか。

 厚生労働大臣としてどうなのか、そのお考えを持って総理との協議にも臨まれると思うわけでございます。総理、どうしたらいいでしょうかという話は、これはあり得ないことだと思うわけでございます。厚生労働大臣として、どのような根拠で、どのような判断を持って協議に臨まれるおつもりか。その厚生労働大臣の御判断というものが、この熊本地方法務局長に対する回答ということで出ていくことになると思うわけでございます。決定的な要素になるわけでございます。控訴になるかならないかの最も決定的な判断基準を今大臣が持っておられる。

 どのような根拠で、どうこの判決を判断されるのか。再三それをお聞きしているわけでございますが、いま一度、改めてお聞かせをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 先ほどから何度か申し上げておりますように、私は、旧厚生省にかかわりますところの隔離政策、そのことについての今回の判決、その判決の判断基準にされましたところにつきましては、この原告側や国側の主張の相違ということよりも、やはり裁判の方の判断基準の方がすっきりしていいのではないかということを申し上げているわけで、そして、それによってあの判断をされているわけでありますから、そのことを私は肯定をしていると申しますか、そのことはいいのではないかということを私は申し上げているわけです。

 だから、そのことは、先ほど申しましたように、三十五年とか四十年とかというような具体的なことのよしあしということではないということを申し上げましたのは、それは、その判断基準がいいかどうかということを私は申し上げたわけでありまして、だから、それに従っての判断というのは、これは多少の年月の相違はあれ、私たちもそのことはお受けをしなきゃならないし、自覚をしなければならないというふうに思っているわけでございます。

 そういう考え方のもとに、私の考え方を総理に申し上げたいと思っているところでございます。

金田(誠)委員 もう時間がございません。

 公明党は、控訴すべきではないということを正式に総理に申し入れをされたというふうに伺っております。そして、大臣はその公明党の所属でございます。そして、上訴の要否を答える立場でございます。上訴を否とする、これ以外の回答はあり得ないと思います。

 そのことを改めて申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、家西悟君。

 家西君、御着席のままで結構でございます。

家西委員 では、着席のまま質問させていただくことをお許しいただきますよう、よろしくお願いします。

 まず、大臣また副大臣、御就任おめでとうございます。

 一言申し上げるのなら、今、金田議員から出ましたハンセン病の控訴という問題については、ぜひともお考えいただきたい。私は、同じように感染症で、また薬害エイズという問題で苦しんだ者の立場から申し上げておきたいと思います。

 本題に入らせていただきたいと思いますけれども、大臣、近年、マスコミ報道を見ていますと、多くの著名人の方々が、C型肝炎が原因でお亡くなりになられたと思われる方々が、以前よりも多く見受けられると私は拝見しています。そして、これはプライバシーの問題にもかかわりますので具体的には申しませんが、旧厚生省の幹部の方も肝炎の病に冒されてお亡くなりになったというようなお話もお伺いします。

 大臣、今のC型肝炎等の問題について、また、著名人がそういうふうにお亡くなりになっておられることについて、大臣としてどのようにお感じになっているのか、その辺、お聞かせいただければと思います。

坂口国務大臣 C型肝炎でお亡くなりになります方で著名人にどんな方がおみえになるのかということにつきましては、私は余り存じ上げておりません。しかし、この三十年間の間に死亡率が三倍になったことだけは間違いがありません。したがいまして、このC型肝炎で亡くなられる方がふえてまいりますと、あらゆる層の皆さん方にその死亡者があることは当然だというふうに思います。

 こういう状況になってまいりましたから、今までにもいろいろと議論をしていただきましたように、このC型肝炎に対する有識者会議というものを省内にもつくりまして、そして専門家の皆さん方の御意見を聞いてきたところでございます。そして、いよいよその対策を立てなければなりません。

 その対策といたしましては、まず第一には、どれだけこのC型肝炎というものが拡大をしているのかということについての、その検査を行うということがまず第一というふうに思います。その検査を行いながら、そしてその次には、それに対する治療をどういうふうに全体として進めていったらいいかということの対策も立てていかなければならないというふうに思っております。

 まずは、そのC型肝炎の広がり、そうしたものを、まず検査をするということを第一に徹底してやっていかなければならないというふうに今思っている次第でございます。

家西委員 それでは具体的にお伺いしたいと思いますけれども、有識者会議でも問題になって、そして、厚生労働省は先日、八百五の医療施設を公表されましたね。第四ルートと言われる非加熱製剤を使用されたケースを想定されて、この病院で受診された、またそういう血液製剤を投与された可能性のある方々に対してということで、病院名を公表されたと思うわけですけれども、その公表された後、厚生省に対して問い合わせ等どのような問題があったのか、具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。

 私が聞いている話では、厚生省の代表電話が通じなかったし、私自身厚生省に電話をかけたときにも、代表電話はその直後あたりは通じなかった。そして、代表電話の交換手の方はその後六時以降も任に当たられたというふうにお伺いしているわけですけれども、具体的に、どれぐらいの電話があったのか、またどういう内容だったのか、どういう人たちが多かったのか、その辺、もし詳細がわかるようでしたらお聞かせいただければありがたいと思います。

宮島政府参考人 今御指摘の相談なり問い合わせ件数につきましては、特にカウントしてございませんので不明でございますけれども、相談、問い合わせ体制につきましては、対象医療機関名が公表されますと非常に多くの問い合わせがあるということを予想いたしまして、これに対応するため別室を設け、通常の電話回線に加えまして専用の電話回線を増設するなどして対応いたしました。こういった対応をしたにもかかわりませず、今先生がおっしゃいましたように、特に初めの二、三週間は常に電話が鳴りっ放しというような状況であったところでございます。そういう意味では、相当数の問い合わせ、相談が押し寄せたということでございます。

 相談の内容といたしましては、地方自治体、医療機関、その他一般市民の方、さまざまな方からお問い合わせがございました。主なものは、一つは、調査研究の内容はどういうものかということ、それから二番目には、C型肝炎の主な症状や感染経路はどういうものか、それから三点目には、みずからの受診した医療機関が調査対象医療機関であるのか否か、こういったことを含めまして、非常に幅広い御質問、御相談があったところでございます。

家西委員 今お伺いすると、二、三週間続いたということですね。八百五医療施設を公表しただけで既にもうそこまでいったということだと思います。

 そして、第四ルートと言われる限定した部分については、七月三十一日までその投与されたであろう病院で無料で検査ができるというふうにお伺いしているわけですけれども、なぜそれが七月三十一日に区切られたのか。また、八月一日以降は、その投与されたであろう人たちがもし検査を受けた場合は、有料になるということなのでしょうか。お尋ねしたいと思います。

 八月以降に、全国調査の、検査を受けられた方々の数とか、実際どれだけの人たちがC型肝炎であったというようなこと、そして、非加熱血液製剤を使用してこれだけの方が事実感染していたということは、公表していただけるのでしょうか。その点についてお伺いします。

宮島政府参考人 御指摘の調査期間につきましては、一つには、対象者の方々が検査を受けることができる十分な期間を確保するという観点と、二つ目には、調査結果を取りまとめ、速やかに感染実態を把握することが必要である、この二つの観点から検討いたしまして、七月末までの約四カ月間が適当であるというふうに判断したものでございます。

 幾つかの医療機関から得た情報によりますと、かなり早い時期から相当数の方が検査を受診しておられるという感触を得ております。あと二カ月余りでございますけれども、この間に対象者の方が受診していただく機会は確保できるものではないかというふうに思っておりますけれども、なお七月末までに調査対象者の方々が検査を受診されるよう、引き続き政府広報などを通じて呼びかけをしていきたいというふうに思っております。

 また、調査結果につきましては、調査期間終了後、できる限り速やかに取りまとめ、公表したいというふうに考えております。

 この調査は、一応七月末までという期限を区切って調査しておりますので、八月以降につきましてはこの調査対象にはなりませんので、先ほどの有識者会議の報告書に基づきましていろいろな対策がこれから展開されていきますけれども、そういった対策で対応されることになるかというふうに思います。

家西委員 それは、七月三十一日までに調査はすべてできるということと判断していいのですね。非加熱血液製剤の投与を受けたであろう人たちの調査は、七月三十一日までにすべてが終わるというふうに判断してよろしいのですね。うなずいておられますけれども、いいのですね。

宮島政府参考人 先ほど申し上げましたように、各医療機関から得ましたいろいろな情報の感触、それから、まだ二カ月余りという期間等を勘案いたしますと、七月末までに一応私どもが予定しておりました対象者の方々の受診は十分確保できるのではないかというふうに今のところは考えております。

家西委員 ぜひともその日までに終わっていただければと思いますし、その広報をしっかりとやっていただきたいと思います。

 それでは続いて、一九六八年にB型肝炎はウイルスが同定されて、一九八八年にC型肝炎も同定されました。そして、検査が確立したのは、B型肝炎は一九七〇年、C型肝炎では八九年。そして、感染していると思われる人たちが推定二百万とも三百万とも言われています。この間かなりの年月、歳月がたっていると思いますが、厚生省として今までどのような実態調査を行ってきたのか、具体的にお示しいただければと思います。

篠崎政府参考人 今、先ほどから話題になっておりますC型肝炎のウイルス感染者の実態調査につきましてお話を申し上げますと、昭和六十二年、一九八七年以降につきましては、全国約五百の協力医療機関から新規患者の報告を受けておりました。そして、平成十一年、一九九九年以降は、いわゆる感染症新法の施行に伴いまして、今度は全医療機関から急性ウイルス性肝炎患者の届け出を行っていただいております。これらによりまして、新規患者発生の実態把握に努めているところでございます。

家西委員 それは新規であって、過去の部分については調査はできているのですか。だから、二百万、三百万というふうな憶測の数は言われていますけれども、この間、もう何年ですか。一九七〇年から計算しても、B型肝炎でしたら三十年余り、そしてC型肝炎でしたら、八九年ですから、もう十二年余りたっているわけですが、この間の調査というものはそういった調査だけで、新規の部分はおっしゃられましたけれども、過去についてはどうなんですか。

篠崎政府参考人 肝炎につきましては、初めは血清肝炎、それからA型肝炎、B型肝炎、そして非A非B肝炎、そしてC型肝炎と、医学の進歩に伴いまして同じ肝炎といいましてもその実態が逐次明らかになってまいりまして、それによりましてまた、肝炎から肝硬変等、継続していく患者その他の患者さんのこともだんだんわかってきたわけでございます。

 そのような意味合いから、先ほど御指摘の先生のお話の二百万から三百万、有識者会議におきましては百万から二百万程度ではないかという数字が述べられておりますけれども、その際の調査といたしましては、主として疫学調査の観点からいろいろな実態についての論述がなされている、このように承知をいたしております。

家西委員 結局は、数字ははっきりわからないということではないのかなというふうに推測するわけですけれども、実態は調査をきっちりとやってこなかったというふうに私は思えてなりません。

 要するに、B型肝炎の問題でいえば、一九七〇年にもう既にそういう検査が確立していながら、その調査もしっかりやらなかった。そして、C型肝炎においても、検査が確立して以降も何もしてこなかったということで、今になって大きな問題になってきたからこそやり出した、有識者会議を今般持ってやり出したというふうに私はとらえていますけれども、それでよろしいのですね。

篠崎政府参考人 昨年でございますけれども、当時の厚生大臣の方からの御指示を受けまして、肝炎につきましての総合的な対策をする必要があるということで有識者会議を立ち上げまして、その後、鋭意その具体策について、中長期的なものも含めて今検討をしているところでございます。

 御指摘のように疾患につきましてはその時々でいろいろなことがわかりますけれども、私どもといたしましては、それぞれの時期に必要な、また有効な対策は講じてきているもの、そのように理解をいたしております。

家西委員 だったら本当に、百万とか二百万とかいう数字とか、二百万、三百万という数字は出てこないはずで、大体これぐらいというのが、もう既にきっちりとした数字が出ていたはずですから、ここは手を抜いていたとしか私には思えません。

 こればかり言っていても仕方がありませんので、次に、こういう状況になってきた以上、私は、具体的に取り組むことも御検討いただきたいなということもあわせて申し上げたいと思います。

 私は、医療機関だけでこういうことをやろうというのはやはり無理があるだろう。そして、百万とも二百万、場合によっては三百万とも、また大きい数字では五百万とも言われるような人たちがB、Cの肝炎の問題に接しておられるということを考えたときに、その調査や検査の仕方、検査をする場所を医療機関だけに頼るのではなくて、これは公明党さんのホームページも見させていただいたら同じようなことを書かれて、要請をされたように仄聞しましたけれども、私も、地域の保健所を、今ある部分を最大限に利用すべきではないか。保健所で検査ができる、そして、ケアの問題、心のケアの問題という部分については、保健所の保健婦さんなんかを利用するということを最大にやってはいかがか。

 そして、国民全体にかかわる問題として考えたときに、四十歳以上の老人健康診断にC型肝炎、B型肝炎の検査を導入して、検査をやることなどを検討してみてはいかがかなということを私自身考えていますし、ぜひともそれを大いにやっていただけないかなというふうに思いますので、その点について御答弁いただければと思います。

篠崎政府参考人 先生の御指摘、そのとおりだと思っております。

 私どもも、保健所での相談指導体制の確立は非常に大事だというふうに思っておりまして、先般、四月の二十四日に肝炎対策関係全国衛生主管課長会議を開催いたしました。そこで、肝炎対策にかかわる体制の充実整備などにつきまして、保健所を中心としてその対策を立てるように自治体にお願いをいたしたところでございます。

 国といたしましても、都道府県などにおける取り組みに対する支援を積極的に行いたいというふうに思っておるところでございます。

家西委員 ぜひともそのようにして多くの人々に、自覚症状がない、だから大丈夫という話じゃなくて、自覚症状が出たときには肝炎というのは大変問題が大きい病気だと思います。私自身も、今現在、慢性肝炎です。そして、GOT、GPTと言われるGPTの数値は、大体八十がボーダーライン。八十以上が継続していけばいずれ肝硬変、肝がんへと移行するというふうに言われていますけれども、私自身、現在百二十余り、前後を推移しているというような状況で、これは大きな問題だということを私自身も思っています。

 ですから、今自覚症状のない人たちに、早くC型やB型の肝炎であるということを認識していただいて、それなりのフォロー体制、また医療体制の確立を急いでいただければなというふうに思いますので、できる限りそういった方向、方法を用いていただければと思います。

 そして、若干質問の時間的な問題がありますので、前後する部分もありますが、その辺御了承いただいて、フィブリノゲンの問題について先に触れさせていただければと思います。

 旧ミドリ十字が販売したフィブリノゲン製剤について、約十万人から四十万人に使用された、そして、それによって、出産、特に出血を伴う出産をした女性などに非常にリスクが高いというようなことが言われていますけれども、この件について具体的にお伺いをさせていただければと思います。

 そしてまた、フィブリノゲン製剤は、新生児出血やそういった人たちに多く使用されたと思うのです。この問題では過小報告やいろいろあるわけですけれども、旧ミドリ十字に対して厚生省として今どのようにお考えなのか、そこのところをお聞かせいただければと思います。

桝屋副大臣 お答えをいたします。

 マスコミでも出ておりましたけれども、フィブリノゲンの話でありますが、一つは、本年三月に、旧ミドリから新しくウェルファイド社になっておりますが、このウェルファイド社から厚生省に報告していた肝炎発生数が実数よりも大幅に少なかったという報告がありました。

 これを受けまして、厚生労働省では、三月十九日付でありますが、ウェルファイド社に対しまして、薬事法の規定に基づきまして、フィブリノゲン製剤による肝炎の発症状況等に関する報告命令を出しました。そして、三月二十六日に同社から報告をいただきまして、三月三十日に開催されました第五回の肝炎対策に関する有識者会議に報告をさせていただいたという状況でございます。

 有識者会議の報告書において、フィブリノゲン製剤は多くの診療科において広く使われていたと想定されるため、普及啓発等の対策の充実強化が必要とされましたので、これを受けまして、厚生労働省では、今先生からもお話がありました出産経験の有無にかかわらず、それだけではなくて、それ以外も含めて、フィブリノゲン製剤を投与された方々は肝炎ウイルス感染の可能性が一般の方々より高いということについて、国民に周知をしていかなければいかぬということで取り組みを始めたところでございます。

 ウェルファイド社は、医療機関の協力を得て、フィブリノゲン製剤の使用実態や、推定される肝炎の発生率等に関する調査を進めてきておりまして、本日、その結果について報告を受けるということになっております。

 今後、報告内容を精査した上で、さらにどのような対応が考えられるか検討していきたい、このように考えております。

家西委員 では、あわせてお伺いしたいと思いますけれども、これは過小報告ということで、当初、六千医療機関に納入した、そして四十万人に投与されたというふうに言われていて、一九九二年までに三百十五例の感染例があるのに、旧ミドリ十字は百八人の過小報告、そして、一九八九年にはフィブリノゲンのりとして十九人の感染例があるのに、ゼロと報告していたというふうに報道されていますけれども、これは間違いありませんか。

宮島政府参考人 少し経過を御説明したいと思いますけれども、平成元年に旧ミドリ十字社から、これは厚生省からの指示によりまして調査したことについての報告がなされました。そこでは、フィブリノゲン製剤をいわゆるフィブリンのりとして使用することによって非A非B型肝炎が発生した例は今のところ確認されておりませんという報告だったわけであります。

 その後、ことしに入りまして、二月に、肝炎有識者会議におきまして、このフィブリノゲン製剤の肝炎リスクについて問題提起されたのを受けまして、ウェルファイド社が再度過去に実施した調査について再確認作業を行いました結果、三月七日にウェルファイド社から厚生労働省に報告がなされました。その中では、フィブリンのりによる肝炎発症例が、加熱製剤で十九例、今先生が御指摘されていた数字だと思いますが、それから非加熱製剤で三十七例、合わせますと五十六例あったことが判明いたしました。

 こういうこともありましたので、より厳密にこの数字を明らかにするため、その後、三月十九日付で、報告命令という形で再度調査をお願いいたしました。それにつきましては、今副大臣からもお話ししましたように三月二十六日に報告書が提出されまして、このときさらにちょっと数字が修正されておりまして、フィブリンのりによる肝炎発症例は、加熱製剤で三十九例、非加熱製剤で二十五例、計六十四例があったというふうに報告されたところでございます。

家西委員 フィブリノゲンのりについても、十九例の報告は八九年、平成元年にあったということで認識していいのですよね。ああ、そのときはゼロか。

宮島政府参考人 ゼロです。それで、三月七日に十九例という数字が出まして、再度報告命令によって再び出てきました三月二十六日の報告ではそれがふえておりまして、トータルでは、これは非加熱、加熱両方合わせた数字でございますが、三月七日では五十六例が、最終的には六十四例という形に……(家西委員「のりだけですね」と呼ぶ)はい、のりの分についてだけです。(家西委員「五十六例がある」と呼ぶ)はい。

家西委員 そうなると、非常におかしな話だなというふうに一点思います。

 平成元年の時点でゼロという報告があった、そして今になって五十六例があるということは、このフィブリノゲンのりというのは、当時、許可医薬品だったのですか。報告をされていたということは、一九八九年の時点において許可医薬品だったということなのでしょうか。マスコミ報道では、そうではないというふうにも書かれていますけれども、どうなのでしょう。

宮島政府参考人 平成元年当時におきましては、フィブリンのりというものにつきましては、いわゆる承認外の使用という形になっております。

 平成元年につきましては、フィブリノゲン製剤をフィブリンのりとして使用するという形によって発生をしたいわゆる非A非B型肝炎の発症例は、当時の報告はゼロということです。

家西委員 だから、これはそうなると薬事法違反ということになりますよね、どう考えても。どうでしょうか。

宮島政府参考人 したがいまして、フィブリンのりとしてフィブリノゲン製剤を使ったという点につきましては、今先生おっしゃいましたように薬事法上の承認を受けていない使用の方法であったために、これにつきまして、三月十九日の報告命令の中で、あわせてその事実関係を今調べているということでございます。

家西委員 薬事法違反だということになると、またここで問題が起きます。どうして厚生省は許可医薬品でないものの報告を受けていたのですか。おかしいのではないですか。

 許可医薬品でないものの報告を、HCVやらの感染報告例を、どうして受けていたのですか。これはおかしい話ですよ、そのときに気づかないといけないのではないですか。薬事法違反だということで、あなたたちはその時点で問題視しなければいけないのに、どうしてそのときに放置していったのか。その点、明確な答弁を求めたいと思います。

宮島政府参考人 当時の状況を私どもの方で今調べる限りで、調べた範囲の状況を申し上げますと、フィブリンのりにつきましては、いわゆるフィブリノゲン製剤をそういったのりの形で使うという例が外国であったために、それを我が国でも、その使用の範囲を広げるというためのいわゆる研究のような形でやっていたという報告がされています。

 ただその後、本年二月に、先ほど申しましたように、ウェルファイド社が過去の状況を改めて再調査し、確認したところ、それがかなり広範に使われていた例もあったということでありますので、改めて私どもとしては、その事実関係をはっきりさせるために、先ほど申した三月十九日の報告命令をもちまして調査しているというところでございます。

家西委員 時間が来てしまいましたけれども、これは非常におかしな話だと思います。

 許可医薬品でないものの報告を受けて、そして、それはあくまでも研究、そういうことを言われていますけれども、今私は、これはフィブリノゲンの使用説明書というかパンフレットというか、そういうものを持っています。これには具体的に書いていますし、こういうものを販売したということで今回、きょう報告がなされるのだろうと思いますけれども、このこと自体もおかしいし、第一、旧厚生省自身も、私は全く理解できない。許可されていないものの報告を求めていながら、それに気づかなかったとかいうことは全くおかしい。

 今回、旧ミドリ十字、ウェルファイドに対して薬事法違反の容疑で真剣にやらないということになれば、それはあくまでも、そこを追及していけば自分たちの身にもかかってくる問題だから追及できないというふうに判断せざるを得ないということに言及し、またこのC型肝炎の問題については今後も追及していきたいと思います。

 私の時間が終わりましたので、これにて質問は終わりますけれども、そのように御理解いただいて、私の質問を終わります。

鈴木委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党・無所属クラブの大島でございます。

 きょうは、保育、新エンゼルプランについて御質問させていただきます。

 その前に、雇用問題なんですけれども、今回、小泉総理の所信表明、そして先日の坂口厚生労働大臣の所信表明に関して、若干落胆する面がございました。

 小泉さんは、前回の総裁選挙のときに、雇用保険制度とは別制度で雇用対策を打たなければいけないという御発言がございました。坂口厚生労働大臣が所属する公明党さんも、恐らくそのようなお考えを持っていたかと思います。今回の総理大臣あるいは厚生労働大臣の所信に関しては、従来の意見がずっと、現行の雇用保険制度の中で雇用対策を打っていく、そして新しい職場をつくるという従来の考え方の延長でございましたので、その点が非常に残念でございました。

 私ども民主党は、今回、四月の頭に新しい雇用対策の制度を提案しておりまして、三年間の時限立法で二年間、今雇用のテーブルから落ちてしまった方には、新しい能力、新しい技術を身につけていただく目的であれば、その就学費用あるいは生活も二年間に限り雇用保険制度とは別に面倒を見ようというようなことを考えております。

 今後、やはり、小泉首相がこの構造改革を抜本的にやるとすれば、非常に痛みを伴うと申しておりますので、その痛みの部分というのは、この厚生労働行政が担っていく部分であると思いますので、その点について、今後とも、従来の法体系プラスアルファで考えていただきたいなと私要請したいと思います。

 次に、今回の新エンゼルプランなんですけれども、私のこれまでの質問とは大分趣の異なる質問でございまして、KSD、雇用、そして年金と来ておりまして、今回は新エンゼルプランについてちょっと伺いたいと思います。

 新エンゼルプラン、非常にいい。やはり少子化対策は、二〇〇七年から日本で有史以来初めて人口が減るものですから、非常に抜本的に進めなければいけない。その際に、新エンゼルプランの中で、低年齢児受け入れ拡大についてどのように進めていらっしゃるのか。そして、その成果は昨年一年間でどういうものがあるのか。簡単に御説明いただければ幸いでございます。

岩田政府参考人 新エンゼルプランに先立ちまして、平成七年度から十一年度までの五年間に、緊急保育対策等五カ年事業を実施いたしました。この五年間で、ゼロ歳から二歳までの低年齢児につきましては、十万人の受け入れ増になっております。そして、平成十二年度から始まります五カ年の新エンゼルプランにおきましても、十万人の増加を予定いたしておりまして、この計画に基づいて順調に受け入れの拡大が進んでいるというふうに認識をいたしております。

大島(敦)委員 新エンゼルプランで、十万人の保育所の枠を広げる。特に低年齢の方、ゼロ歳、一歳、二歳の方、これが待機児童が非常に多いものですから、そこの間口を広げるということ、非常にいいことだと思います。

 しかしながら、今、文部省さんの所管の私立あるいは公立の幼稚園がございまして、これが三歳、四歳、五歳を受け入れているわけなんです。ですから、保育所のゼロ歳から五歳までと、三歳以降の幼稚園というのが、どうしてもバッティングしてしまう。

 今、私が地方に帰って各市町村のいろいろなお話を聞きますと、どうしても幼稚園のサイドから見ると、保育所ができてしまうために日常それで摩擦が起きている現状がございます。これは一カ所じゃなくていろいろな町々で摩擦が起きていまして、国として保育所を増強することは非常に大切なんだけれども、その辺の交通整理を図るべきではないかと私は考えているのですが、いかがでしょうか。

岩田政府参考人 先生御存じのとおりだと思いますが、地方分権に関しての議論の場で、あるいは教育改革に関する議論の場で、幼保の一元化も含めまして、幼稚園と保育所の連携のあり方、その役割について議論がなされたところでございます。

 それらの結論は、幼稚園、保育園それぞれ異なる役割がございまして、保育所については就労する親のニーズから、そして幼稚園については子供を教育するという観点からの施設でございまして、それぞれの役割を担いつつ、それぞれの枠の中で整備をしていこうということ、そしてそれとあわせまして、できるだけ両施設が連携できないかということでございました。

 そこで、旧厚生省と旧文部省の間で平成九年度に本格的な検討をいたしまして、例えば、施設を共用するということも今進めさせていただいておりますし、あるいは職員を兼務するというようなこともできるようになっております。またさらに、一年前に規制改革を保育所についてもやりましたけれども、幼稚園を運営する学校法人が保育所も経営できるといったようなこともやってまいりまして、その二つの機関がより連携をとる形で進められればというふうに思っております。

大島(敦)委員 今、保育所の開設については、社会福祉法人に加えて、株式会社、NPO、学校法人、農協と、ほぼだれでもできるようになっております。幼稚園というのは学校法人ですから非常に大きな縛りがございまして、ゼロから始まるゼロ、一、二の部分というのは競合しませんから、そこに限って認定保育所を増設するのは理にかなっているのかなと思います。

 しかしながら、幼保の一体化の議論というのは非常に先の長い議論で、一体化しようにもなかなか難しいなというのが私の実感でございまして、それよりも、現状のニーズがございますから、そのニーズを優先させて考えた方が早いのかなと考えております。

 もう一つは、予算の問題がございまして、幼稚園が大分今でも定員数に比べて皆さん定員割れを起こしている状態の中で、また町々に一カ所、保育所を一個つくると一億円、二億円という設備投資がかかるわけです。そのうちの半分が、社会福祉法人であれば国あるいは県、要は公のお金が半分入るわけですから、そことのバランスというのがもうちょっとうまくできないかなと考えております。

 その関連で、先ほどの地方自治に任せるというお話なんですけれども、特に社会福祉法人とかあるいは認定保育所の場合には、そこに雇われている先生方の身分というのは非常に安定するわけなんです。ですから、できればそういう認定保育所でやりたいなと考えておるのですけれども、ゼロ、一、二に限定した認定保育所の認可というのは妨げるものがあるのでしょうか。あるいは、それはもう全国の考え方に任せるのでしょうか。御所見を伺いたいと思います。

岩田政府参考人 ゼロ歳から二歳に限った低年齢児専用の保育所ということはあり得ると思います。また、そういった地域の需要があるところは、少なからず生まれております。

 特に今、待機児童が都市部、その周辺で多数ございますけれども、待機児童の三分の二くらいは、二万二千人くらいがその人数なんですが、二万二千人ぐらいはゼロ、一、二歳でございまして、そういう待機児童解消というような観点からも、ゼロ歳から二歳に限った保育所というのも現に生まれているというのはございます。

大島(敦)委員 都道府県によって、保育所が担う役割、幼稚園が担う役割が大分異なっていることは確かでございます。沖縄ですと、例えば五歳児をとった場合に、その八五%が幼稚園、残りの一二%が保育所。逆に長野県ですと、保育所の方が六四%で、幼稚園の方が二七%。地域のばらつきがございますけれども、ばらつきがあっても、おおむね幼稚園が六割、保育所が三割で、残りの一割が多分行っていらっしゃらない方だと思うのです。

 ですから、その辺を勘案しながら、できるだけ競合が起こらないように、ゼロ、一、二のところは保育所にやっていただく、三歳を超えたら幼稚園にやっていただく。幼稚園も、今四時間保育なんですけれども、もう、埼玉県ですと、大体八時あるいは七時半ぐらいから、夕方も五時、六時までお預かりして、その金額も非常に安い金額でできるような制度を導入しているところがふえておりますので、そんなところをちょっと御検討していただきながら、摩擦が起きないように進めていっていただきたいなと思います。

 以上でございますけれども、御意見ございましたらお願いいたします。

坂口国務大臣 確かに地域によりまして保育所と幼稚園とが競合しているところもございますし、逆に、どちらか一方に非常に偏っているところもございます。幼稚園ばかりに大変偏り過ぎて弱っているところもございますし、保育所だけに偏り過ぎて弱っているところもある。

 先生の、もう少しうまくすみ分けができないかというお話は、なるほど御指摘のとおりかなと僕も思いながら今聞かせていただいていたところでございます。しかし、どちらかにぱんと二つ割りにしてしまって、ここは幼稚園、ここは保育所というふうに明確に割ってしまうというのもなかなかできないのだろうと思いますが、先生が御指摘になりましたすみ分けを極力進めていく、そういう気持ちというのは大変大事だと思いますから、その辺のところ、我々もこれからの保育行政を進めていきます上でよく検討させていただきたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 こういう行政というのは非常に、一〇〇%の前提で始めたとしても、時代の変化、あるいは一年二年やってみますと、これから質問に立たれる山井委員の介護保険もそうなんですけれども、ある程度の問題点が出てくることも確かでございます。今、全国の幼稚園の経営者の方、あるいは幼稚園に携わっている方というのは、保育所が非常にできつつあるものですから、皆さんびっくりされてしまっているというのが現状なんです。やはり、幼稚園の近くに保育所ができてしまって、どうしても、少ないお子さんを奪い合うというのか、減ってしまうというのが実態としてあるわけなんです。

 幼稚園というのは今までの実績というのがございまして、大体今皆さん、二十年、三十年、長いところでは五十年間ぐらいは幼稚園の実績を積まれておりまして、そこでのノウハウというのか経験というのが非常に生かせるわけなんです。ですから、設備投資をしなくて済むものですから、そこのところの充実を図ることによって、今後そのニーズがふえると思います。実は私のおやじが幼稚園をやっておりまして、例えば延長保育をやると、潜在的なニーズがあってふえるのです。

 ですから、これから男女共同参画社会の中で、潜在的ニーズも喚起しながらやっていかないと日本の経済は人口減に耐えられないものですから、その辺のところを摩擦が起きないようにうまくやっていただければ幸いでございます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、山井和則君。

山井委員 このたび、坂口大臣、厚生大臣に留任されまして、おめでとうございます。今までから、公明党さんそして坂口大臣、非常に福祉に力を入れておられるということで、留任していただいたことを私は非常にうれしく思っております。

 小泉首相は構造改革ということを言っておられます。そのことをこの厚生労働委員会、厚生労働部門に当てはめますと、私は三つのことが言えるのではないかと思います。構造改革というとどうしても財政の問題が先走りますが、事この厚生労働部門におきましては、次の三点を私は挙げさせてもらいたいと思います。

 一点目は、日本版ADA。アメリカでは一九九〇年に障害者差別禁止法ができました。日本はまだそれができておりません。そのことに関して、先日の代表質問でも公明党の神崎代表が、公明党は一貫してこういう問題に取り組んでいるということを言ってくださいました。私も非常に感激をして、拍手もさせていただきました。民主党の鳩山代表もこの問題に精いっぱい取り組みたいということを言っておられます。やはり、体の不自由な方々が安心して地域で暮らせる、自己決定で、住みたいところで暮らせる社会づくり、これこそが第一点目の構造改革ではないかと思います。

 第二点目は、同じく住みなれた地域で、あるいは自己決定で暮らしていくことができていないのが精神障害者の方々の問題であります。これは後ほど質問でも触れさせていただきますが、やはり、そういう精神障害の方々が地域で暮らせる社会づくり、これこそ抜本的な見直しを二十一世紀していかねばならないと思います。

 そして、三つ目が、ほかでもありませんが、このハンセン病の問題。

 日本版ADA、日本での精神障害者の多過ぎる精神病院への入院の問題、そしてこのハンセン病の問題。残念ながら、この三つに共通して流れているのは、強制隔離。弱った方、病気の方々を必要以上に日本という国は隔離してきた。欧米や世界では住みなれた地域で暮らせる方が、この経済的に豊かなはずの日本で、残念ながら病院や施設やあるいは療養所で暮らさざるを得なかった。残念ながらこの二十世紀の反省の上に立って、二十一世紀、まさに厚生労働行政の構造改革というものを、坂口大臣を先頭に進めていただきたいと思います。

 そして、まず第一点目ですが、私、きょうの新聞報道を見てびっくりいたしました。このハンセン病の問題に対して、もしかしたら国が控訴をするかもしれないという報道であります。

 私、坂口大臣が留任されたと聞いて最も喜んだのが、このハンセン病の問題であります。今までから人権と福祉を旗印とされておられた坂口大臣が留任されたら、今までから公明党さんもこの問題に熱心に取り組んでおられたので、これは大丈夫だ、この問題をきっかけに日本の福祉のこの収容隔離というものが大転換するというふうに期待をしておりました。

 先日も、私は多磨全生園というハンセン病の方々の療養所に行かせていただきました。全生園と書いて、全く生きる園。つまり、ここで人生を全うしなさい、人生の最後までここで暮らしなさいという、ある意味では私は非常に厳しい名前だと思います。

 先日来られた患者の方々も、自分は小さいとき、昭和三十七年に療養所に入れられた、今回の判決でもわかるように、三十七年だったらもう隔離しなくていいとわかっていた年じゃないんですか、自分はお母さんと一緒に住みなれた地域で暮らしたかった、どうして隔離されないとだめだったんですかと。そのような問題。

 二万三千七百人もの多くの方々が無念の思いで亡くなっておられまして、先ほどの金田議員の質問にもありましたけれども、死してなお地元に帰れない。その多磨全生園を案内していただいた平沢さんという方も、私は今もう自由の身になったけれども唯一行けないのが自分の生まれ故郷である、ここに帰ると家族に迷惑がかかるから帰れないんだとおっしゃっておられるわけです。

 そこで、お伺いしたいと思います。

 御存じのように、平均年齢七十四歳、これ以上引き延ばすということは、生きてこの結審を迎えることができないという方がますます多くなってしまうということになります。坂口大臣、先ほど、小泉首相と相談、法務省との協議ということがありました。しかし、明らかなのは、まさに厚生労働大臣である坂口大臣がどう決断をするか、それを今日本じゅうの国民が注目しているわけであります。政治家として、今坂口大臣が厚生大臣になっておられる歴史的な意味を認識していただきたいと思います。

 謝罪の問題がありました。控訴しないことこそが最大の謝罪であります。控訴をして謝罪ということはあり得ません。坂口大臣、明確な答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 金田議員にもお答えをいたしましたとおり、私は私の考え方を今固めつつございます。そして、総理とお会いをして、総理に私の考え方を申し述べたいと思っているところでございます。

 私も、ことしになりましてから全生園にお邪魔をさせていただきました。そして、あの中の隅々を拝見させていただき、あの中で生活をしておみえになります皆さん方とも御懇談をさせていただきました。いろいろな、本当に今までの御苦労のお話を聞かせていただきました。今おっしゃいましたように、あの自治会の会長さんもおっしゃいましたけれども、やはり唯一帰れないところがある、そのことを私にもおっしゃったところでございます。

 そうしたお話を聞くにつけ、今まで国として、そして厚生行政として誤っていたところは、これははっきりとやはり誤りだということを明確にしなければならないだろうというふうに思っております。既に菅大臣がそうした点も踏まえて謝罪をしておみえになりますけれども、私もそうした思いは一緒でございますが、今回はこうした裁判のこともございますので、この裁判の結論をどうするかということにつきまして、最終、私の意見も申し述べて、そして最後の断を仰ぎたい、そういうふうに思っているところでございます。

山井委員 大臣のその言葉をとにかく信じていきたいと思います。

 一九六〇年代にアメリカで公民権法というものが成立いたしまして、その中で人種差別のない社会にアメリカは向かったわけであります。それも、小さなときから人種差別というものに苦しんでいたケネディ大統領という人間が命をかけて政治決断をした。それによって社会が変わったわけです。

 政治というものが何のためにあるのか、それは流れを変えるためにあると思います。どうか坂口大臣、よろしくお願いいたします。そして、いい意味で歴史に名を残す厚生大臣となっていただきたいと思います。

 次に、私は、このハンセン病の問題、そして多磨全生園に行って考えさせられたことがありました。隔離されて住みなれた地域に帰ることができない。しかし、これはハンセン病という過去の問題だけではないと思います。きょう、資料を七ページ、お配りさせていただきました。このハンセン病の問題と一緒とは言いません、しかし精神障害者の問題と非常に共通する部分があると思います。

 それは、ここのデータにもありますように、日本という国は精神病院の数が非常に多い。多いだけではなく、まさにハンセン病の問題で問題になったように、世界ではもう精神障害者に対して入院というやり方は必要ないということがわかった時期から、この冒頭の資料にありますように、日本という国は世界の趨勢に反して精神病院のベッドがふえてきました。そして、その次の平均入院日数のグラフにもありますように、世界の中でも飛び抜けて精神科の平均入院日数は長い。全国で約三十四万人の方が入院しておられます。

 そして、この下のデータにもありますように、一番下だけを見ますと、例えば文部科学省の研究によりますと、一年以上の患者のうち退院可能な方は五〇%。すなわち、地域にしっかりとしたデイケア、グループホームやケアハウスやいろいろなサービスがあって、また、精神病院での治療がしっかり、もっとお医者さんや看護婦さんやいろいろなマンパワーの部分、そして整備の部分を厚くしていくということをやれば、地域に帰れる人が、この一年以上の入院で五〇・五%もおられます。精神医学のいろいろな論文や学者の方々の発言を聞いてみても、適正な病床数というのはほぼ二十万ベッドぐらいであろうということが言われております。皆さんの方がよく御存じだと思います。

 次のページを見てみてください。

 そんな中で、厚生労働省は、平成十四年までに障害者プランで三十三万人の入院患者さんを三十万人に。本来だったら、二十万人ぐらいに減らせるという思い切った取り組みをすべきではないでしょうか。先ほども言いましたように、一年以上の入院患者さんのうち半分以上が、地域の十分なバックアップがあれば帰れるということがわかっていながら、三万人しか病院から出ない。これはまさに、ハンセン病の問題と共通するような、日本の国のやはり隔離的な考え方があるからではないでしょうか。

 ぜひとも大臣には早急にこの障害者福祉プランを見直していただいて、やはり世界の流れと同じぐらい、日本でいうと約二十万人ぐらいの方々が入院、それ以外の方々は地域で暮らせる、そういうふうな大転換をしていただきたいと思います。大臣の答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 確かに日本の中には隔離、そういう風潮と申しますか、そういうふうにしたいという思いというのがいろいろの疾病に対しましてあったことは事実だと私は思います。今御指摘になりました精神障害の皆さん方に対しましても、そういう傾向が本当になきにしもあらず。なきにしもあらずというのは少し言葉が足りないので、かなりそうした傾向があるというふうに私も思っております一人でございます。

 ハンセンの問題もそうでございます。私、ことしになりましてからいろいろハンセンの勉強もずっとしてまいりました。そのときに一番愕然としましたのは、これは厚生省の局長さんもされました大谷さんという方がございますが、この方が本を出しておみえになりまして、その本を読ませていただきますと、昭和三十三年にハンセンの世界会議、国際らい会議というのを東京でやっているわけです。インドで初めやる予定だったのですけれども、インドができないというので急遽日本が引き受けてやることになった。そのとき既にその中で、いろいろの分科会がございましたが、その中の社会分科会というところで、隔離政策というのはやめるべきである、そういう政府がありましたら、その政府に対して厳しくそのことを言うべきであるという決議をしているわけです。

 ところが、そのときの学会の決議、そこでの議論というものがほとんど外に出なかった。専門誌も含めて、そういうことをきちっと明確に伝えている雑誌がなかった。外国から多くの人を呼んで非常に苦労したという話、苦労話は大変書いてあるけれども、その、隔離をしてはならないということが公にならなかったということが書いてある。私はそれを読んで愕然としたわけでございます。

 そうしたこともありまして、精神病につきましても、やはりどうしても隔離をしたいという気持ちが先行していることは事実でございます。これはやはり日本人全体の疾病に対する意識改革をしなければいけないんだろうというふうに思っております。とりわけ精神病に対する意識改革というものをしていかなければならない。やはり、私たちがこの社会の中で同じに手をつないで暮らしていける相手であるという気持ちを持たないといけないだろうというふうに思っております。

 緊急に入院を必要とするような人たちも中にはあるだろうというふうに思いますが、しかし、そうでない人まで隔離をしているというケースがありますことも事実でございますから、そうした点につきまして、十分にこれから配慮した行政というのをやっていかなければいけないというふうに私も思っております一人でございます。

山井委員 今大臣がおっしゃってくださいましたように、本当に精神医療というものは重要であります。そして、現場の方々も本当に、お医者さんを初め、頑張っておられます。しかし、現場の方々でさえ、もっと多くの方々が地域に帰れるということをおっしゃっておられます。

 ですから、二点、お願いしたいと思います。

 先ほど言いましたように、やはり二十万ベッドぐらいを精神病院として残すとして、残りの十四万人分ぐらいは速やかに、地域で暮らせるようなケアハウスやグループホームやデイケアや、共同作業所、支援センター、そういうものをつくっていくというプランを新たに作成していただきたい。

 それとともに、地域に戻るためには、今の精神病院の医療体制、看護体制ではまだまだ非常に弱い部分があります。精神科特例の問題、やはりこういうものを変えていっていただきたいと思います。

 今、大臣がおっしゃったように、隔離をして悪いという情報がなかなか入ってこなかったという答弁がありましたけれども、少なくとも、ハンセン病の問題で明らかになったように、精神障害者の問題は、日本では病院に入っている人が多過ぎるというのはもう明らかで、今わかっているわけですから、ここでまさに仕事をしないということは許されないと思います。

 そういう意味では、厚生労働省のお役人の方々とも議論するのですけれども、非常に言いづらいのですけれども、お役人の方々は、自分たちでは余り大きなハンドルは切れない、やはりそこは政治家の方々にお願いしたいと。まさにその、今ハンドルを切るのが坂口大臣であると思っております。

 では次に、このことにも関連しますが、介護保険の問題に移らせていただきたいと思います。

 介護保険から一年たちました。しかし、導入してからさまざまな問題点も出てきております。このことに関しては、サービス利用量がふえたり、またサービスを気兼ねなく利用することができるようになった、あるいは身体拘束ゼロ作戦の問題や、グループホームという新しいメニューが加わった、さまざまな大きな前進があると思います。しかし、現場の方々に聞くと、問題点も非常に多いように思います。

 そこで、まず第一点目。一番深刻な問題は、特別養護老人ホームがますます入りにくくなったということであります。

 例えば文京区では、くすのきの郷という老人ホームで、百五十人の待ちが、一年で三百人になった。あるいは京都市では、各特別養護老人ホームで二百人から四百人待っている。もちろんこれは、介護保険になって、重複して申し込んでおられるということがありますが、それを差し引いても入れない。

 そして、介護保険の理念である、本来、老人ホームが選べるようになるというのが理念であったと思いますが、選べないのが現状であります。逆に、痴呆症のお年寄りが、手がかかるからといって、逆選択ということで、逆に入りにくくなっている部分があります。

 その点、坂口大臣は老人保健施設にお勤めであられたということもお聞きしたのですが、どういう現状か御存じだと思います。特別養護老人ホームに入れないから老人保健施設で待っている、ところが、老人保健施設は半年か一年で出されてしまう。それをまた老人保健施設のほかのところに入れると、都道府県から老健のたらい回しはだめですよと怒られるから、一カ月病院に入れたり、二週間自宅に帰して、一たん老健の関係を切って、また老人保健施設に行く。それをぐるぐる二、三年回っている。

 先日も私、ある老人保健施設に行きましたら、お年寄りの方々が、おれは一体最後までどこにいられるんだ、ついの住みかはどこなんだ、家から老健に入っただけでも悲しいのに、またこの老健から半年で出ていって、次に行く先もまたどこかわからない、早くついの住みかを決めてほしいということをおっしゃっておられました。

 また、老人保健施設の現場の方も、一回老人保健施設を出て次の老人保健施設に行って、また戻ってこられたら、変わり果てて弱っておられる。すぐに特別養護老人ホームに入れたら、こんなに弱ったりしないのになということをおっしゃっておられました。

 そういう意味で、このような特別養護老人ホームをふやしていただきたいと思います。坂口大臣もおっしゃっておられますが、これからは個室の、そしてユニット型の特別養護老人ホームを、新設される際にはふやしていただきたい。しかし、この場合には、家賃や生活費、ホテルコストを自己負担する必要も出てくると思いますので、この点に関しては、低所得の方が、それを理由に個室の老人ホームに入れないということが決してないようにしていただきたいと思います。

 それとともに、既存の特別養護老人ホームに関しては、十カ年戦略でもつくって、順次計画的に個室に転換していくという取り組みも必要ではないかと思います。そういう意味では、個室になったという段階でもはやこれは施設ではなくて住居なのだというような大転換が、これも必要になってくると思います。

 この点に関して、坂口大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

坂口国務大臣 特別養護老人ホームを御希望になる方が在宅介護ができました後も非常に多い、予想以上に多いということは事実のようでございます。

 私も経験がございますけれども、やはり特別養護老人ホームに入れないとそれが老健施設の方に回ってくるというのも事実でございます。今までは、老健施設には三カ月、長くても六カ月ということでございまして、それで御指摘のようにぐるぐるとたらい回しの状況が続いていたことも、これも御指摘のとおりであったと思います。最近はそれが緩和をされて、長くてもいいということになってきたそうでございますけれども、前にはそれはもう限定されて、そこにもう三カ月なり六カ月で出なければならないということが厳しく言われたものですから、もうたらい回しであったことは過去にはそのとおりでございました。

 いずれにいたしましても、高齢者の皆さん方が御家庭で在宅介護が受けられない状況、それは身体的な問題とあわせて、それは家族の環境にもよるというふうに思いますが、そういう状況の皆さんにつきましては、本当に、おっしゃるように、安心をしてここでいつまでもいられるという場所をやはり決められるようにしていかなければいけないのだろうというふうに私も思う一人でございます。余り遠くの老健や特養にやられて、全然だれも来てくれないというようなことであってはいけないというふうに思いますから、その辺のところも考えながら、これから施設整備というものをしていかなければならないというふうに思っております。

 しかし、ただ、そうした特養や老健施設というだけではなくて、ケアハウスなり、あるいはまたグループホームなりといったような中間的なそういう施設もこれからふやしていって、そういうところで生活のできる人はできる人としてまたお願いをする、選択のできるような形にしていかなければならないと考えているところでございます。

 個室の問題は、御指摘のとおり、私もそうした問題をこれからきちっとできるようにしていきたいというふうに思っております。

山井委員 ありがとうございます。

 個室の問題、きちっとしていくという御答弁をいただきまして、私も四人部屋の老人ホーム、一週間ぐらい泊まったことがありますが、横の方のポータブルトイレの音で目が覚めるとか、一週間、一カ月は我慢できても、あそこはついの住みかとは決して言えないと思います。

 そして、老健の問題も、介護保険になってから、残念ながらこれはたらい回しがなくなっておりませんので、取り組みをどうかよろしくお願いいたします。

 今も大臣に触れていただきましたグループホームの問題に移りたいと思いますが、やはり隔離主義を変えていくというときに重要なのがこのグループホームの問題であります。千二十五カ所までふえましたが、まだ七割以上の自治体には一カ所もありません。

 そして、この資料の四ページにも出ておりますが、下から二番目、グループホーム、痴呆対応型共同生活介護にどんな方が入っているかということを見ますと、要介護三以上の、ある意味で中度以上の方がもう三〇%になっているわけであります。前回の質問で、坂口大臣、軽度な痴呆の方がグループホームという御答弁ございましたけれども、確かにそういう議論もあったかもしれませんが、実際にはもう中度の方も入っておられる。それで、ある調査では、半数以上のグループホームがもう夜勤体制でやっているということであります。

 それで、先ほどの老人ホームの問題にも関係しますが、では、中度、重度になったから特養に移したいといっても、そこが三年待ちなわけですから、移せないわけなんですね。そういう意味では、前回もお願いしましたが、やはり介護報酬の見直しというものを早急にお願いをしたいと思っております。

 実際、ある都道府県に私の知り合いがグループホームをやりたいということで相談に行かれたら、都道府県の担当者が、あれは痴呆のお年寄りにとって非常に居心地がいいけれども、採算はとれないからやめた方がいいよと都道府県からアドバイスを受けてやめたとおっしゃるわけなんですね。

 もう一つ、介護保険の介護報酬のことに関して、ケアマネジャーさんのことについても触れさせていただきたいと思います。

 また、この次の、朝日新聞のケアマネジャーの全国調査を見ていただきたいのですが、五ページ目でございます。右端にございますように、ケアマネをやめたいと思ったことがあるという方が六一%。この右端のデータですね。六一%の方がケアマネをやめたいと思ったことがある。そして、月平均のケアプランの作成数は、二四%が一番多くて、五十件以上ということになっております。

 そういう意味では、十分なケース検討会議も開けない、あるいは訪問も十分にできないということで、施設志向がふえて、在宅サービスが伸びない理由の一つが、このケアマネジャーさんにもあると思います。

 その意味で、三十件くらいできっちりと生活が成り立つように、ケアマネジャーさんの介護報酬も引き上げるべきだと私は思います。

 上げる上げると言うと、保険料が上がって困るという議論があるかもしれませんが、グループホームをふやすと、特養に入る人が減るわけですし、療養型に入る人も減るわけですし、ケアマネさんがきっちり仕事ができるようになれば、施設に入る人が減るわけですから、結果的には保険料はそれほど上がらないと思います。

 坂口大臣、このあたり、二年後を待たずに介護報酬をやはり大臣の決断で上げていく。私の愛読雑誌の一つであります月刊「潮」を読ませていただいても、坂口大臣、必ずしも二年後にこだわる必要はないと御発言されていたようですので、ぜひとも御英断をよろしくお願いいたします。

桝屋副大臣 大臣にお尋ねでありますが、大臣、「潮」の関係もあってお答えが難しいのではないかと思いまして、私の方から順次、まずはお答え申し上げたいと思います。

 毎回、介護保険の内容をお取り上げいただきましてありがとうございます。

 最初に、グループホームのお話がありました。

 資料を見させていただいております。グループホームについては、委員御指摘のとおり、七割以上がまだない。しっかり全市町村で展開できるようにという御指摘がありました。おっしゃるとおり、ゴールドプランの中でやはり一番難渋をしている事業でありまして、先ほど市町村の指導で取りやめたケースのお話をいただいて、一体どこか教えていただきたい心境でありますが、ゴールドプランに基づきまして着実に進めていきたい、やっとその流れができたかなというふうに思っております。

 そうした中では、この資料で、要介護三以上の方が入っておられる実態ということもお示しをいただきました。大臣も、先般、やはり介護保険が用意しておりますグループホームの調整の方の想定している介護の実態というものから見ると、ちょっとこれは十分検討しなければいかぬなと思っておりますが、ただし、やはり今のグループホームはどうしても中程度の痴呆症に対応するという形が現状だというふうに思っております。

 これを今後どうするか、介護報酬も含めてどうするかということにつきましては、見直しを待たずにという話がありましたが、私どもは、ぜひ、状況を見ながら、今整備が進んでいる状況でありますから、整備がいま少し進んだ場合にどういう展開になるのか、これは見きわめる必要があるのではないか、こう思っているところであります。

 それからケアマネジャー。これも実は、現場の多くの方の声を私ども聞かせていただいております。この資料でもお示しをいただきましたように、五十程度のケースを抱えて、ケア担当者の日程調整が難しい、ケアの担当者会議もなかなかできないという声もいただいておりますし、それから対応困難事例というものがケアマネジャーさんのところに結構集まってきておりまして、大変に処遇に苦労しておられるという話も伺っております。

 そういう意味では、この評価を早く見直すべきではないかということが御指摘をされているわけでありますが、今までもできることはしてまいりましたけれども、いま少し、例えば在宅介護支援センターのケアマネジャーさんとか、それから実際に民間事業者でおやりになっているケアマネジャーさん、それからケアマネジャーさんがケアプランと同時にハンドサービスまで従事しておられるという実態もあるわけですから、その辺のところをよくよく見きわめて、どういう見直しができるのか、検討を続けていきたい、このように思っております。

山井委員 ぜひグループホームの問題も力を入れていただきたいと思います。

 例えば、この三ページにもございますように、朝倉病院という病院の保険医指定取り消しへという記事が朝日新聞に出ております。グループホームが足りないから、そして老人ホームへ入れないから、精神病院もすばらしい精神病院もありますが、やはりこういう劣悪な病院、私もここへ行きました。八割以上が痴呆性高齢者、半数以上が東京の痴呆性高齢者が埼玉の劣悪な精神病院に入って、不正請求でこういう問題になっているわけですね。まさにそういう流れを坂口大臣に変えていっていただきたいと思います。

 そして次は、介護労働者の待遇と労働条件のことについてであります。

 南野副大臣も、このような看護婦さんの労働条件など、本当に夜勤の問題も含めて長年取り組んでこられたと思いますが、今、介護保険になって、ますます労働条件、待遇が悪くなったということを私は非常に多く聞きます。

 例えば、全国老人福祉施設協議会、老施協の調査によりますと、特別養護老人ホームは、収入が介護保険によって七・五%ふえたけれども、人件費率は五・七%減ったという調査が出てきているわけですね。私は、昨年末の委員会でも、介護保険の利用者の方々にとってはサービスがふえた部分があるかもしれないけれども、ホームヘルパーさん、ケアマネさん、施設の職員さんは逆に苦しくなったと言っている、その調査をしていただきたいということをお願いしていたわけであります。改めて、雇用形態や、介護保険の前後で労働がよくなったのか悪くなったのか、そういうことも含めて介護労働者の労働条件と待遇の問題について調査をしていただきたいと思います。

 御答弁お願いいたします。

南野副大臣 グループホームについてとても熱心な先生の本当に心熱い思いを、私も同じ思いで聞かせていただいていたところでございます。

 このたびのお尋ねは介護労働者の労働条件ということでございますが、昨年末からことしにかけまして、介護労働者の賃金、労働時間を初めとする雇用管理の実態調査を実施しているところでございます。そして、それを現在集計中でございますが、できるだけ早く結果を取りまとめ、公表したいというふうに思っております。一月末に返送を締め切るというような形での作業を進めておりますので、十三年度早期に結果を取りまとめ、公表という方向で進んでおりますことを御報告いたします。

山井委員 そのような調査をやっておられるということで私も感謝しておりますが、その調査については私も聞いておりますが、ただ、例えばケアマネジャーさんや施設職員さん、そして何よりも介護保険によって労働がどう変化したのか、そういうようなことも調べていただければと思います。

 といいますのは、やはり厚生労働省さんであるわけですから、介護保険によって介護労働者の労働が悪化したということであってはならないと思います。私も、看護婦さんの問題もライフワークとして取り組みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それで、最後の質問になりますが、これは低所得者対策、一割負担の問題であります。

 私も毎週、週末、介護者家族の会などに行って国政報告をさせていただきますと、介護しておられる御婦人の方々が机をたたいて、山井さん、しっかりしてよ、山井さんが推進した介護保険だけれども、利用者負担が重くなって十分サービスが利用できない、何とかしてよと、ある意味で全く政治に関心を持っておられないような方が必死にそのようなことをおっしゃっているわけであります。

 このようなことに関して、データを調べてみますと、例えば六ページ目、四国新聞の調査では、一六%の自治体が一割負担がネックで在宅サービスが伸びないというふうに答えております。

 それで、最終ページ、厚生労働省の資料を見ますと、介護保険によって七割の人がサービスがふえた、しかし一七・七%の方が減ったと。

 結論を言いますと、その中でも、一割負担を払うのが困難だったためサービスが減った人は二・五%だから、二・五%しか低所得者の一割負担の問題はないんだということなんですけれども、私は正直言ってこのデータはだめだと思います。なぜならば、一割負担が重いから、ふやしたかったけれどもふやせなかった人の数が入っていない。本当はもっとふやしたかったけれどもちょっとふやすにとどめたという人のデータも入っていない。

 介護保険、一年たって、さまざまな新聞社が結果を発表しましたが、すべての世論調査でこの低所得者対策が最も深刻だというふうに出ております。また、坂口大臣も、このような低所得者の問題に取り組みたいとおっしゃっておられたと思いますが、もし、この二・五%しか数字がないから低所得者問題はそんな大きな問題じゃないんだとおっしゃるんなら、私は現状認識が間違っていると思います。

 今、民主党の介護保険ワーキングチームでもこの問題に取り組んでおりますが、私たちは、基本的には、やはり分かち合うということで一割負担はやむを得ないだろう、でも、本当に払えない方々に関しては早急に対策を講じねばならないと思っております。

 この利用者負担の低所得者対策について、御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 この利用者負担の問題につきましては、これはデータのとり方によりまして随分違うんですね。

 例えば、どれだけ下がったということをいわゆる市町村単位でとりますと、その市町村の中で一人でも下がったということを言う人があれば下がったというふうにしてとれば、かなりなパーセントになりますし、全体の中で利用者負担を理由にサービス利用を減らした人がどれだけかという、人間を中心にして考えるとまた違った数字が出てくる。いろいろ出てきますので、そこはデータのとり方がいろいろだというふうに私は思っております。

 しかし、いずれにいたしましても、低所得者の皆さん方の利用料、それから保険料、この両方にいろいろな皆さん方の御意見が集中していることだけは間違いがございません。市町村におきましても、どこへ行きましてもそのお話が出るわけでございますから、そうした問題、先生からも御指摘をいただきましたので、よく検討し、そして、この辺のところにも十分配慮しながらこれから考えていきたいというふうに思っております。

山井委員 大臣、よろしくお願いいたします。

 最後の締めくくりになりますが、二十一世紀、これから福祉も改革を進めていかねばなりません。私は原則は三つだと思います。

 一つは、ハンセン病の問題に象徴されるように、収容隔離をやめて、望めば住みなれた地域で暮らせる、そういう本当に豊かな社会をつくっていく。

 二番目は、当事者本人の自己決定、やはり本人が住みたいというところで住める社会をつくっていく。残念ながら、それが今、精神障害者の問題、痴呆性高齢者の問題も、グループホームや十分なサービスがあれば地域で暮らせる人が、今はそれができていない問題があります。

 そして三番目は、哀れみではない権利の福祉。やはりそういう住みなれた地域で暮らすということは、かわいそうだからそうさせてあげようとかじゃなくて、住みなれた地域で、本人の住みたいところで暮らす権利があるんだ、そのことを最も象徴的に訴えかけているのが今回の判決であると思います。

 正直言いまして、こういうハンセン病の問題についても精神障害者の問題についても、例えば政治家にとったら、特にやったからといって票になる問題でもありません。しかし、やはり政治家の何たるかということを考えたときに、目先の票やそういうことになるということでなくて、命や暮らしを守っていくということを、坂口大臣、先頭に立って何としてもやっていただきたい。そして、そういう収容隔離から住みなれた地域に暮らせるという福祉への大転換を二十一世紀に進めた厚生大臣として、坂口大臣に歴史に名を残していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 先ほど同僚の山井議員から、精神科医療のどちらかというとハード面に関しての質問がございました。私は、それ以外のソフト面について、ちょっときょうはお伺いしたいと思います。

 まず、精神療法についてお伺いします。

 精神療法というのは、一般に心理療法、カウンセリングなどと言われているものでございますけれども、精神科臨床においては薬物療法と並んで非常に重要な治療法でございます。特に、後ほど取り上げさせていただきます摂食障害などにおいては、精神療法なくして有効な治療は成立しません。

 ところが、今までの日本の厚生行政を振り返ってみますと、薬物療法と比べると、精神療法については恐ろしい野放し状態であったと言わざるを得ません。有効性も安全性もほとんど検討されてこなかったため、効果のない精神療法を何年もだらだらと続けて貴重な人生をむだにしている人もいますし、有害な精神療法のために深く傷つき、自殺にまで追い込まれる人もいます。

 精神療法についても、人を対象とした治療法である以上、有効性と安全性をきちんと検討すべきだというのが国際的な流れでもあるわけですが、まずこの点について大臣がどうお考えになるかを教えていただきたいと思います。

坂口国務大臣 水島議員が御指摘になりました精神療法ということについて、私、そんなに深く知っているわけではございません。もう初めに白状をいたしておきますが。

 ただ、現在までの精神医療というものが、薬物療法オンリーとは申しませんけれども、そこに非常に偏り過ぎてきたことだけは間違いがないというふうに思っています。

 この精神療法、その中にいろいろのものが含まれるんだろうというふうに思いますが、そうした療法を順序よく、そして論理的に踏まえることによって、この治療ということに随分大きな貢献をするのであろうというふうに思いますし、また、それは多分そういう治療も行われているのだろうというふうに思いますが、少なくとも、それに対する評価が十分でなかったという御指摘は、私もそれはそのとおりではないかと反省をする一人でございます。もう少し、専門家からの意見を言わせていただきたいというふうに思います。

水島委員 ありがとうございます。

 大臣も、もし御家族が心の病になられて、精神科を受診したけれども、医者は全く口をきいてくれないで薬だけをぽんと出された、どうも、この子の心の悩みをもっとよく聞いて、いろいろなアドバイスをしてほしいと思われると思います。

 そういったときの精神療法でございますけれども、薬と違って、飲んだらすぐに副作用が出るとか、そういうことが客観的にわからないために、効いているんだか効いていないんだかわからない。効かない場合にも、今までは、本人が悪いというふうに言われていたような流れが日本にはございまして、諸外国ではそうではなくて、きちんとしたやり方に基づいて行えばこういう効果がこのくらいの期間で出るというようなことも、きちんとデータがとられているわけでございますので、ぜひその辺、大臣もこれから積極的にお勉強いただきたいと思います。

 さて、精神療法の有効性についてのエビデンスは、特に認知療法あるいは認知行動療法や対人関係療法については、欧米で広くデータが得られ、アメリカ精神医学会のうつ病や摂食障害のガイドラインでも、実証的研究を踏まえながら採用されております。

 昨年十月の厚生委員会で、私が認知療法と対人関係療法について質問しましたところ、厚生省の方の答弁は、「人間関係療法というふうなものはまだ確立された療法ではないというふうに私どもお聞きしているわけでございます。」というようなもので、私は大変驚いたわけでございますが、その後、精神療法の効果についての検討状況を国際的な視野でお勉強していただけましたでしょうか。アメリカ精神医学会のうつ病や摂食障害のガイドラインなどを御承知かということも含めて、お伺いいたします。

今田政府参考人 まず、御指摘の精神療法一般に係りますいわゆるEBM、根拠に基づいた評価が必ずしも行われていないのではないかという御指摘ございました。現在、学会の方でガイドラインをつくろうという動きがございまして、これにはぜひ我が省としても応援をしていきたいと思っております。

 御指摘の、精神療法の一つであります認知療法あるいは対人関係療法でございますが、御指摘のように、アメリカの精神医学会の診療ガイドラインの中で位置づけられておりまして、今おっしゃっていただいたように、一定の有効性というものは認められております。

 ただ、こういったいわゆる精神療法、あるいは行動療法も若干加味されているのかと思いますが、こういったものにつきましては、我が国において、我が国の文化あるいは社会、言語、そういった背景の中で認知療法を、先ほどのEBM、つまり、どういう根拠で、どういう方法で、どういうやり方をすればいいかといった検討については、必ずしも十分な検討が行われていなかったものというふうに承知をいたしております。

 これらにつきましては、ぜひ関係学会の取り組みに期待をするとともに、私どもといたしましても、どのような支援をすればいいかという点については、今後、積極的に検討していきたいと考えております。

水島委員 何か質問していないことまでお答えいただいてしまったのですけれども、私が聞きましたのは、対人関係療法について、きちんとそのガイドラインの中で、また今までの実証的なデータに基づいて、有効性が確立されている治療法であるということをきちんとお認めいただけますかということです。

 十月の御答弁の時点では、対人関係療法について知識がゼロの状態であったと私は判断しておりますけれども、その後、その点についてお勉強いただけましたかということにお答えいただければいいのです。

今田政府参考人 失礼いたしました。

 対人関係療法につきましては、米国におきまして、精神医学会のガイドラインによって、うつ病、摂食障害の治療方法の一つとして一定の評価を得ているということで承知いたしております。

 アメリカでこのガイドラインに載るということは、当然、その根拠、評価、こういったものを明確にするからこそガイドラインに載せられるんだというふうに理解しておりますから、米国において、そういう手続、そういう評価がきちっと行われている療法であるということについては、私ども、今はそういう認識で理解をいたしております。

水島委員 それでは、昨年十月の御答弁を訂正していただけたということで、次に進ませていただきます。

 今現在、通院個人精神療法については、病院三百四十点、診療所三百九十二点ということになっており、このほかには標準型精神分析療法というのが三百九十点というふうにございます。前者の場合、初診以外は特に時間の決まりがないため、三分間診療であろうと、定型的な認知療法を四十分かけて行おうと、診療報酬が全く同じということになっております。うつ病や摂食障害に対しての効果が実証されている治療法とそうでない治療法が全く同じ扱いというのは、余りにもおかしいのではないでしょうか。

 三分間診療であれば、四十分間に十人以上の患者さん分の通院精神療法を算定することができますので、医療側の事情からいっても、わざわざ四十分かけて認知療法を行おうとはしないのではないでしょうか。こんなことでは認知療法が普及するわけがないと思います。その結果として、国際的に見て質の低い治療法に甘んじなければならない患者さんが最大の被害者であると思います。

 既に有効であるというエビデンスが得られている認知療法あるいは認知行動療法、対人関係療法についてきちんと診療報酬を与えるべきであるという質問を十月の厚生委員会でさせていただいたわけでございますけれども、その後、その検討状況はいかがでございましょうか。

大塚政府参考人 今先生お話がございましたように、精神療法に関する診療報酬の大きな枠組みは今おっしゃったような内容になっておるわけでございます。

 精神療法に関する治療法、その内容、方法は、恐らく相当多岐にわたる、ケースによっても幅が広いというような状況でございましょうから、精神療法に関する診療報酬としては、今おっしゃいましたように、通院精神療法あるいは入院精神療法といったような大きな枠組み、そういう枠組みで評価を行っているわけでございます。そういう設定の仕方で、むしろ臨床上のさまざまな、多岐にわたる療法に対応できるという形になっておるのだろうと思います。

 その上で、個別診療技術の評価についてどう考えるかということになりますと、そういう全体のいわば診療報酬体系の中で、個別に診療技術を評価するかどうか、これは、その必要があるかどうかも含めまして、その実態に応じて検討するわけでございますけれども、やはり関係学会を中心とした専門家の御意見あるいは御要望を伺いながら、個別具体的には、いずれ中医協という場で御議論いただく、そういう性格のものであろうと考えておるわけでございます。

水島委員 ここからは大臣にお伺いしたいと思います。

 今の御答弁でも認められているわけですけれども、今、厚生労働省では、診療報酬体系を見ますと、すべての精神療法を対等に扱っているわけでございます。

 ところが、先ほども申しましたように、そのうちの幾つかの治療法については、ほかの治療法に比べて明らかに効果があるということが外国ではわかっているわけでございます。欧米では、この病気にはこの精神療法というふうに、きちんと有効性のエビデンスを積み上げているわけです。外国で既にエビデンスが得られている治療法が日本でも有効かどうかを検証することは極めて重要であると思われますけれども、それについての御同意はいただけますでしょうか。

 そして、後で述べる摂食障害もそうなのですが、日本では有効な治療法が確立していない、でも欧米では治療法のスタンダードがほぼでき上がっている、そういう場合に、厚生労働省として、その治療法を日本に取り入れることができるかどうかについて何らかのリーダーシップを発揮すべきだと思いますけれども、それについてはどうお考えになりますでしょうか。

坂口国務大臣 厚生労働省が、医療の中の医療保険、とりわけその中の医療点数等の配慮をいたしますときに、それは、厚生労働省が最初から全部そのことを知っていて、そのことをやるということにはなかなかいかないのだろうと思うのです。

 その場合には、それぞれの学会等でその治療方法が採用されて、やはりその中で確立をされていくといったようなことが先行してあって、そして、精神療法としてこういう治療方法がやはり望ましいといったようなことが一般化されてくる中で、よしそれではこれを取り上げていこうということに、手順としてはなっていくのだろうというふうに思います。専門の先生に入っていただいて、そこから提案をしていただいてということになっていくのだろうというふうに思っています。

 ですから、今先生のお話をお伺いしておりますと、アメリカではもうかなり一般的な治療方法になりつつあるように思いますし、こういうグローバルな時代ですから、日本の中にも早急にそれはもう入ってきているのでしょうし、普及しつつあるのだろうというふうに私も思いますが、その辺のところを学会の先生方にもひとつよくお話しをいただいて、そうした中でその点数等は組み立てていくということになっていくというふうに思います。

 厚生労働省も一生懸命勉強いたしますけれども、厚生労働省の人間が勉強するのは限られておりますから、それだけではなくて、やはり積極的な先生方の御指導というものもあってそれは前進するというふうに思っております。ですから、その辺のところも、ひとつまた御指導をいただければというふうに思います。

水島委員 今大臣がおっしゃったことは正論のように聞こえるわけでございますけれども、実際に今、日本の専門家と言われる人たちの中でも、たまたま運よく外国に留学することができた人は外国の流れをよく知っております。でも、大多数の人は、日本の国内で日本の医学教育を受けて、日本の臨床現場でトレーニングを受けているわけですので、私は、精神科医療の一部を見ておりますと、ちょっと鎖国状態ではないかなと感じるようなところもございます。

 外国ではどんどん治療法が進んでいって、外国に行けば助かるのに、日本にいるからという理由で、それも日本の専門家のコンセンサスが得られないという理由だけで、外国にはこんなにいい治療法があるのに、日本ではそれを全く受けられないというのは、私は、これは、専門家の責任というよりも、やはり行政の責任ではないかと思っております。

 学者の意見を聞く場合にも、国内でずうっとそれこそ守旧派のように学問をされている方の意見だけではなくて、きちんと外国で学ばれた方であるとか、そういう方の意見を聞かれたり、外国人の学者の意見を聞いたり、また、私自身も、留学経験としてはございませんけれども、また当時国から何も税金で給料ももらっておりませんでしたけれども、個人の努力で幾らでも外国の論文を調べて訳したり、いろいろなことができるわけですので。

 それは、私一人なんかよりもよほど大きな組織力を持っている、そして、何といっても税金で賄われている厚生労働省ですので、ぜひその辺は、専門家の意見を待つというような姿勢ではなくて積極的に、外国にこんないい治療法があるのだったら、そして日本にもいい治療法があればいいですけれども、日本ではそういう人たちは助かっていないわけですから、そういうのは日本で使えるものかどうかというのをちょっと試してみようではないか、そういう姿勢をぜひ強く打ち出していただきたいものであると思います。

坂口国務大臣 そこは、国際派の意見もしっかり聞くようにいたします。

水島委員 そして、鎖国状態でもあったような専門家集団ではございましたが、もちろん、最近では一生懸命勉強されている方もたくさんいらっしゃいます。

 そして、今私が聞いている情報によりますと、現在、主任教授の集まりである講座担当者会議というところで治療ガイドラインを作成しておりまして、その中で、うつ病の治療法として認知療法や対人関係療法が大きく取り上げられる見通しでございます。また、精神神経学会でも治療ガイドラインをつくっておりまして、そこでも対人関係療法と認知療法は組み入れられそうだということでございます。これは日本の専門家の意見ということになるわけですけれども、そういったものが上がってまいりましたら、これはかなり真剣に、厚生労働省としてきちんと診療報酬に算定するように検討いただけますでしょうか。

 と申しますのは、先ほど大臣は、アメリカでこれだけ一般化しているものだから日本にもさぞ普及しているに違いないとおっしゃったのですけれども、こればかりは、治療を行うために四十分ぐらいかかる治療法ですので、普及させるには、医者も道楽でやっているわけではありませんから、三分診ても同じ値段、四十分診ても同じ値段という場合に、わざわざ四十分かけた治療法をやるという人はごく限られてまいりまして、病院もつぶれてしまいますし、そんな状況で普及する方がむしろおかしいと思います。

 普及させるためには、きちんとそれ相応の報酬を与えていかなければいけないわけでございますので、これは私は、もう学会から意見が上がってまいりましたら速やかに御検討いただいて、来年度の診療報酬改定の中にぜひ取り入れていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

大塚政府参考人 現在の精神療法に関する診療報酬の体系につきましては、先ほど申し上げましたところでございます。

 私の方から事務的なことをまず申し上げますと、診療報酬上の新たな技術の評価をする場合に、当然のことながら、その技術の有効性、安全性あるいは効率性、それから技術的な成熟度、と同時に、その普及の度合いというのも、ただいまの先生のお話とは逆になるようなことになるわけでございますけれども、公的な保険としてカバーするというためには、限られた患者さんがいわば受益を受けるというのでしょうか、アクセスをできるということでは、なかなか公的保険の対象にならない、また、しにくい。これはやはり公的保険制度運営上の基本的な考え方の一つであるということも、あわせて御理解を賜りたいわけでございます。

 したがいまして、関係学会の意見などを十分お聞きしながら診療報酬も検討いたしますが、一方ではそうした公的保険制度運営上の考え方というのもあることにつきましては、ぜひ御理解を賜りたいと思う次第でございます。

水島委員 私は、先ほど私が申しましたように、きちんとした診療報酬がつかなければ普及しないと思っております。

 今、その逆をおっしゃいましたけれども、診療報酬もつけないで自動的にどうやって普及していくのか、そのウルトラCがあるのでしたらぜひ教えていただきたいと思っておりますけれども、ちょっと時間がありませんので、次に進ませていただきます。

 今の点につきましては、恐らく大臣は十分その本質を御理解くださっていると思いますので、ぜひ前向きに、来年度、診療報酬の改定がございますので、それをタイムリミットとして、ぜひ取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、摂食障害についてに移らせていただきます。

 これも、今の精神療法と非常にかかわりの深い問題ではございますけれども、この摂食障害というのは、拒食症や過食症という名で一般にも知られるようになってきておりますけれども、臨床現場の実感からは明らかに患者数がふえているのに、日本が摂食障害の治療において国際社会から大きく立ちおくれているのはよく知られた事実です。私自身、精神科臨床においては摂食障害を一番の専門としておりましたが、そのような治療者は日本ではごくまれであって、東京で臨床をしていた私は関西の患者さんまで診なければなりませんでした。選挙に出ることになって、自分の患者さんをほかの治療者に紹介しようとしたわけですが、適切な紹介先を見つけることができずに、患者さんともども大変苦労をいたしました。

 また、最近でも、国際摂食障害学会の仲間である外国人治療者から、日本人の患者さんを帰国させたいが、専門機関を紹介してほしいと言われるのですが、日本の治療が極めておくれており、専門機関はないということを告白せざるを得ない状況です。治療のために日本に帰国できなくなった方も、実際にいらっしゃいます。国会議員や支持者の方たちからも、身近な症例についての相談をよく受けておりますけれども、自分が執筆した本を読んでいただくくらいで、大したお役に立てないのが現状でございます。

 まず、こうした摂食障害を取り巻く現状について御承知かどうか、大臣にお伺いしたいと思います。

鈴木委員長 障害保健福祉部長。

水島委員 時間がないので、大臣に答えていただきたいと思います。

今田政府参考人 現状だけを、ではちょっと申し上げます。

 御指摘のように、摂食障害は非常に増加をいたしております。と同時に、そういったいわば思春期にもよく見られます疾患に対しまして、それにかかわる精神保健医療を適切に提供できる医師あるいは医療機関が少ないということも事実であります。そういった観点から、現在、思春期精神保健対策研修事業をことしから実施することにしておりまして、そういった場を通して、こういったことに造詣の深い医師の養成あるいは相互理解に努めていきたい、このように考えております。

水島委員 大臣にお伺いしたときは、ぜひ大臣にお答えいただきたいと思います。

 今、恐らく大臣の心の中を代弁してくださったと思いまして次に進ませていただきますけれども、摂食障害の治療が日本ではきちんと受けられないということの理由の第一は、摂食障害の治療には高度の専門性が要求されるということです。通常の精神科臨床のトレーニングを受けた程度では、摂食障害を正しく治療することはできません。日本にも専門的な治療機関をつくって治療を受けやすくすると同時に、専門家を養成することの必要性がしばしば指摘されてきましたが、専門機関をつくろうというようなお考えはございますでしょうか。以降、大臣にお願いいたします。

坂口国務大臣 私が習いました医学はかなり古い医学でございまして、先生のような新進医学のことにつきましては、まことに私も疎いわけでございます。申しわけありませんが、きょうも先生からの御質問が出まして、これはどういうことといって私が担当官に聞いたぐらいでございますので、私の知識はまことに微々たるものでございますが、いずれにいたしましても、しかしなるほど、そういう療法、そういう分野があるかと。それは、最近、拒食症でありますとか、あるいはその逆の場合の皆さん方が非常にふえているわけでございますから、なるほどなというふうに今思いながら、先生の御質問の要旨を拝見した次第でございます。

 さて、そういうことになれば、この分野を何とか育てていかなければなりませんし、そして一つの大きな医療分野として成長させていかなければならないわけですが、さて、私もそれだけの知識が十分にありませんから、今ここでこういうふうにいたしますというところまでは申し上げることはできませんが、よく検討させていただきます。それで、そういう方面をどう育成していったらいいかということを、その周辺も含めて検討させていただきたいと思います。

水島委員 前向きに御検討いただけるということですので、こちらで問題点をもう一つ挙げさせていただきます。

 今は専門機関ということで述べさせていただきましたが、もう一つ、やはり診療報酬の問題もございます。摂食障害の患者さんの場合、治療に手間がかかるという現実がございます。認知行動療法ないし対人関係療法を行う必要性がありますし、家族にも十分なケアをする必要があります。身体的にも、特に低体重の場合には常に死と隣り合わせという状況で、大変難しい治療を余儀なくされます。精神療法にきちんと診療報酬を与えるということである程度は解決される問題ではありますが、摂食障害の治療に特別の診療報酬を与えるということも必要であると思っております。

 今、大臣は古い医学の教育を受けられたというふうにおっしゃいましたけれども、こういう摂食障害の患者さんというのは今むしろふえておりまして、本当に、こちらにいらっしゃる方のどの御親戚、御家族に突然それが発生するかわからないというくらいふえてきておりまして、いざ当事者になられて病院に行ってみますと、何でこんな医療しか受けられないのかということで必ず憤慨されると思います。ぜひ、身近にそういう方がいらっしゃいましたら、よくその意見をお聞きいただきたいと思いますし、後ほどこれについて私が書きました本を大臣にお届けいたしますので、ぜひしっかりと現状を勉強いただきたいと思っております。

 実はイギリスでは、昨年の六月にロンドンでボディーイメージサミットというものを政府が開きまして、摂食障害とやせたモデルをもてはやすメディアとの関係について検討し、多様な体型のモデルや女優を起用するよう、自主的な基準をつくるようにメディアに要求しております。このような取り組みは日本のはるか先を行っていると思いますけれども、ほかの国の政府はそこまでやっているのだということを、ぜひこの際御認識いただきたいと思います。

 また、摂食障害は、日本では医療者の間でも不治の病などと言われることもしばしばでございますけれども、欧米では実証的なデータに基づいて治療法のガイドラインもできておりますし、決して治る率が悪いという病気ではございません。先ほどの繰り返しになりますけれども、外国で有効であるというエビデンスがある治療法を日本で検討することの必要性は、摂食障害の場合には特に高いと思います。そのためには大規模な臨床研究が必要になると思いますけれども、そのような研究にこそ厚生労働省は研究費をつけていくべきだと思いますが、この点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。

坂口国務大臣 そうしたお話が出ますと、私たちのときでありますと、それはもうホルモン異常だということで、ホルモン異常で一言ですべて片づいていたわけでございますが、今お話を聞いておりますと、そんな単純なものではなさそうでありますから、よくこれは検討していかなければならないし、多方面からの、やはりいろいろのファクターの入りまじったものだというふうに思いますから、そうした研究も、それは当然やっていかなければならないだろうというふうに思います。

 さて、その場合に、それはどこでどういうふうに研究をやっていったらいいのか。厚生省が担当いたしますその分野の中にそうしたものも入っていけるのか、そこまで私、ちょっと今正式にお答えするだけの自信がありませんから、一遍調べまして、後で先生にお答えをいたします。

水島委員 今日本がこれだけ立ちおくれている現状を何とか回復して、日本に生まれた方たちもまともな治療を受けられるようにしていくには、私は、恐らく、専門機関をつくって、そこに患者さんと質のよい治療者を集めた上で、どういった治療法が、例えば認知行動療法を日本人に行う場合にはどういう修正をすべきか、そういったことをかなり大規模にその機関の中で研究していく必要性があると思っております。そこには、私はかなり行政側のリーダーシップが必要になると思っておりますので、ぜひそういった観点も含めて御検討いただけますようにお願い申し上げます。

 もうすぐ時間ですけれども、最後に保育の問題について、一点だけ質問させていただきます。

 昨年六月に園長が逮捕された神奈川県大和市の無認可保育所、スマイルマムでの子供の虐待死事件では、虐待の通報がたびたびあったにもかかわらず、行政が責任を持って対応しなかったために、幼い貴重な命が失われました。この一件を調査していて感じたのは、無認可保育所については都道府県に監督指導する権限があり、悪質な場合には営業停止まで命じることができるというのに、肝心の無認可保育所の存在については、届け出が義務づけられていないため、電話帳やチラシなどを通してその存在をつかんでいるという実態のために、都道府県が十分な責任を自覚できてはいないのではないかということでございました。

 既に先日、予算委員会で我が党の岡田克也代議士が取り上げておりますけれども、私たちは、無認可保育所の開設時届け出を義務づけるよう、児童福祉法一部改正案を提出する予定でおります。無認可保育所と一言で言いましても、本当に質のよい無認可保育所もございます。そういった保育所が汚名を着せられないためにも、届け出を義務づけることによって最低限の質を確保していくという、このような措置は必要だと思いますけれども、この届け出の義務化ということについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

坂口国務大臣 先日も、岡田議員に対しまして、それを一遍ちょっと私も検討しますというふうに申し上げたわけですが、とりあえず、現在のところ、この立ち入り権限を都道府県が有しておりますので、都道府県が市町村や関係機関と連携をして認可外保育施設を的確に把握をして対応してもらうように、まず当面は、都道府県に対しまして指導監督のあり方みたいなところをよくお話をして、至急、体制を、ひとつ各都道府県の状況を把握してもらう。

 それで、今後の問題につきましては、この無認可保育所の問題もあわせて今検討しておりますので、その結論をちょっとお待ちいただきたいというふうに思っております。

水島委員 私たちも、保育に関してはいろいろな点から検討しておりますけれども、その中でも、とりあえずの緊急措置として、無認可保育所の届け出を義務づけることが必要ではないかという点から検討させていただいております。今都道府県が責任を持っているとおっしゃいましたけれども、どこにあるのかわからないようでは監督指導もできるわけがないわけでございまして、なぜそのような権限が与えられていながら実際に届け出というものがないのかということについては、私はちょっと法体系上の矛盾があるのではないかとも思っております。

 いずれにしましても、この法案を提出させていただく予定でございますので、大臣も、必要な法案だとぜひ評価をしていただきまして、御協力をいただけますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 かつて、私が森内閣に質問主意書を出しまして、その回答をいただきました。

 その質問主意書の内容と申しますのは、欧米で禁止をされた食品添加物のうち日本国内で今使われている添加物はどういうものがありますかというのを聞きましたところ、二つだけそういうものがありますという回答をいただきました。

 一つが食用赤色二号という食品添加物で、これは回答書のそのままの文言を読ませていただきますと、食用赤色二号は、「米国において昭和五十一年に動物実験における結果から発がん性が疑われ、食品への使用を禁止する措置がとられた」と。これは政府が書いてきた文書でございますが、アメリカでは食用赤色二号が昭和五十一年に発がん性の疑いがあるということで禁止をされました。

 これは日本ではいまだに認められて使われていると聞いておりますが、なぜ日本ではまだ使われているんでしょうか。

桝屋副大臣 お尋ねにお答えをいたします。

 既に質問主意書もいただきまして、先生のお話のとおり、回答を差し上げているところでありますが、今お尋ねがありました食用赤色二号の件でございます。

 先生から、米国において動物実験における結果から発がん性が疑われたということで、昭和五十一年に食品への使用を禁止するという措置がアメリカであった、それがどうして我が国でというお尋ねでございます。

 我が国におきましては、食品衛生調査会の委員等によります検討を行った結果、アメリカの禁止の根拠となりましたデータは発がん性を疑う根拠とはならないという結論を五十一年当時得たものでございます。

 また、国連食糧農業機関、FAOと言われておりますが、あるいは世界保健機関、WHOの合同食品添加物専門家会議におきましても、昭和五十三年に、それまで得られた知見からは発がん性が認められないという見解が示され、あるいは昭和五十九年には、長期投与の動物試験によりましても発がん性が認められない、こういう見解が示されているところであります。

 それから、赤色二号につきましては、EUにおいては使用が認められているところでございます。

 こうしたことから、今日まで赤色二号は我が国では禁止をされていない、こういう状況でございます。

長妻委員 今のお話でありますと、基本的に、昭和五十一年にアメリカで禁止されて、その後日本国内で検討をした、あるいは、WHO等の海外のデータを見て、そちらの方が正しいのではないかということで追認をしたというようなお話だと思うんです。

 いずれにしても、そういうWHOのデータが出ても、アメリカ自身は態度を変えずに、今もこの食品添加物の赤色二号は禁止をしておるわけであります。そうであれば、ある意味ではアメリカの実験とEUの実験の結果が異なっているわけだと思いますので、これはぜひ日本独自で、それでは本当にそれが安全性があって発がん性がないのかどうかを検査する必要があると私は思うんです。

 日本には赤色二号を製造しているメーカーが二社あるというふうに聞いております。アメリカにはそういうメーカーがもう今は一社もないというようなことも聞いておりまして、ちまたでは日本には製造メーカーがあるからそういう検査がされないと言う方もおられますけれども、そういうようないろいろな安全性の不安を払拭するためにも、日本国内でぜひ一度発がん性のデータを、実験をしていただきたいということを強くお願いしたいんですが、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 今お答えを申し上げましたように、我が国独自でやっていないではないか、こういう御指摘でございましたが、五十一年の当時に、食品衛生調査会の委員等によります検討を行った結果、禁止の根拠となったデータは発がん性を疑う根拠とはならないという一定の結論はその当時に得たということでございます。そして、その後今日に至るまで、委員御指摘のように、やはりもう一回改めて知見を得て検討しなきゃならぬという状況があるならば、それは当然ながら引き続きやらなければいけませんが、五十一年当時のアメリカの内容も十分検討した、私も見させていただきましたけれども、改めて検討するという必要性はないのではないかというふうに私は考えておりまして、今日、そういう状況になっているということでございます。

長妻委員 それでは、食用赤色二号を認可したときの安全性のデータというのは、今、厚生省内部には保管されているんでしょうか。

尾嵜政府参考人 現在、当時の資料につきましては保存されておりません。そういうことで、資料についてはないということでございます。

長妻委員 アメリカとEUの実験の見解が異なって、かつ、日本で認可したときの当時の資料はもう破棄されて当局は持っていないということでありますので、ぜひ再検査をしていただきたいと思うんですけれども、では実際、食用赤色二号は日本国内でどのような食品に使われていて、その食品がどれだけの量流通しているか、こういうことは把握されておられるんでしょうか。

尾嵜政府参考人 赤色二号は、指定添加物として認めた際に、それを使ってはならない食品、特に概括的に申し上げますと、いわゆる鮮度を新しく見せるような、そういう赤い色によって鮮度が新鮮だというふうな誤解を与えるようなものについては使ってはならないということにしておりますが、それ以外のものについては、特別に使用を禁止している内容はございません。

 それで、量につきましては、正確な量については私ども把握しておりませんが、一つは、添加物の流通関係、量について調査をした部分がございます。あるいは、マーケットバスケット方式と申しまして、摂取量について調査をしておりますが、そういった中で、現にまだ使われているという実態はもちろん把握しておりますけれども、詳細な数字についてはちょっと今手元にデータを持っておりませんが、そういった調査の中でつかんでいる部分はございます。(長妻委員「把握はされておられるか」と呼ぶ)はい。詳細なデータではありませんが、つかんでおるということでございます。

長妻委員 結局、欧米で発がんの疑いで禁止をされた添加物で、日本国内で使われている添加物というのは二つしかない。今申し上げた食用赤色二号と、もう一つは臭素酸カリウムという二つしかないわけでありまして、臭素酸カリウムの話を申し上げますと、これも森内閣からの質問主意書の回答でございますけれども、臭素酸カリウムは、「英国において平成二年に動物実験において発がん性が認められ、当時定められていた使用基準では最終的に食品に残留しないという確証が得られないとされ、食品への使用が認められる添加物リストから削除された」と。

 英国は平成の二年にこういう措置をとりましたけれども、その後に、日本国内で、臭素酸カリウムの再度の検討あるいは国内での実験というのは行われたんでしょうか。

桝屋副大臣 次に、臭素酸カリウムのお話でございます。

 英国の状況は、今委員の方からお話がございました。一方、我が国におきましては、昭和五十七年の食品衛生調査会におきまして、臭素酸カリウムが食品に使用されても最終食品に残留しない限り問題はないのではないか、あるいは、パンについては一定量以下の添加である限り臭素酸カリウムは残留しないという結論をいただきました。さらに平成九年には、パンの中の臭素酸カリウムの分析法について、高感度な液体クロマトグラフ法を導入いたしまして、科学的な実証を得たところでございます。

 なお、臭素酸カリウムにつきましては、米国ではパンへの使用が英国と違いまして認められている、こういう状況でございます。

長妻委員 今のお話でも確かに、日本の臭素酸カリウムの使用基準は、臭素酸カリウムが最終的に除去されること、それが条件とされているわけですが、実際、英国では、最終的に食品に残留しないという確証が得られないというような判断をしたわけで、日本の判断と違っております。

 いずれにしましても、赤色二号と臭素酸カリウムは、アメリカ、イギリスと日本の判断が違っている。そして、日本は、EU等の判断、あるいは臭素酸カリウムの場合は米国の判断を見て国内で認可をしているというお話でありますが、いずれにしても、両方とも日本の国内で独自に試験をしたということはない。

 そして、私もまた二回目の質問主意書で問いましたれども、臭素酸カリウムも食用赤色二号とも、もう当時の認可した安全性のデータは廃棄をされてしまって、今当局にはないというようなことでありますので、たったこの二つだけが、海外では発がんがあるということで欧米で禁止をされていて、それで日本で使われているものでありますので、ぜひ、その二つでありますから、そして市民団体等からも常にこの二つというのが問題になってきて、本当に安全なのかと。

 国として、あるいはどこかの研究機関で国が委託するなりして、きちんと、本当に発がんの可能性はないというようなことを日本独自に、世界の意見が対立しているわけですので、ぜひやっていただきたいと思いますが、坂口大臣に、前向きに検討するというか、そういうお言葉をぜひ、たった二つでございますので、いただければ大変ありがたいと思うのですが。

坂口国務大臣 食品添加物につきまして、いろいろと御心配をいただいて感謝申し上げます。これはもう、いろいろなものを念には念を入れてやはりやらなければならないことだけは御指摘のとおりでございます。

 それで、少しデータは古いわけでございますが、前回、質問主意書を多分御提出いただいたときだったというふうに記憶をいたしておりますが、先生からいただきましたその質問主意書に答弁をいたしますときにも、私かなり当局にチェックをして、本当にこれで大丈夫なのかということを言った記憶がございます。少しデータが古いわけでございますが、その当時としては大丈夫だという認定をしたということで、そのときに聞いた記憶がございます。

 それ以後、現在、それが使用されておりますものによって何らかの障害が起こるとか、あるいはそれによって人体に何らかの影響が出るとか、何か起こってくるということでありましたら、これはもうほっておくわけにまいりません。

 しかし、起こってしまってからでは遅いではないかというお話もあるわけでございますから、外国がそういうふうに一応これはだめだと言っているものというのは、それで日本はいいと、どこかでそれは考え方に若干の違いが今御指摘になりましたようにあるということもあるんだろうというふうに思いますし、それは境界線上、どちらともとれるなということではないかというふうに思いますから、その辺のところを、ほかの問題も率直に言ってございます、添加物等の問題ございますから、あわせて一遍検討させていただきます。

長妻委員 今大臣言われたように、食用赤色二号というのは昭和二十三年に安全性の検査をして日本国内で認可をされておりますので、昭和二十三年、大昔であります。臭素酸カリウムもかなり前に認可をされておりまして、やはり、影響が今出ていなくて、何か被害の報告がないからというのではなくて、これは必ず、いろいろな今までの、厚生労働省、かつての厚生省の話でも、ないけれども実はあったとか、被害が出てからでは遅いわけです。

 たった二つしかありません、欧米で発がんで禁止されていて日本で認可されているものは。ぜひ再度、一言で結構ですので、再度の国内の検査を前向きに御検討すると、最後に御答弁いただきたいと思います。

坂口国務大臣 きょういろいろ御指摘がございましたから、先生の御意見というものも十分に踏まえさせていただきたいと思います。

長妻委員 日本の国内のこういう問題に取り組まれている方は、この二つの問題を本当に気にされておりますので、「買ってはいけない」とかいろいろなそういう本が売れるのも潜在的なそういう懸念がかなりありますので、この二つに関してはぜひよろしくお願いしたいということを申し添えまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小沢和秋君。

小沢(和)委員 まず第一に、ハンセン病患者に対する熊本地裁の判決についてお尋ねをいたします。

 去る十一日、ハンセン病患者に対する判決が熊本地裁から出されました。私も前夜から熊本に駆けつけて傍聴してまいりましたが、百年近くにわたるハンセン病患者の隔離絶滅政策について、国の責任が厳しく断罪されました。国会も新らい予防法廃止をおくらせた責任を問われました。

 日本共産党は、敗戦直後の時期からほとんどの療養所に党支部を組織し、その後今日まで、新旧のらい予防法に反対し、廃止を要求し、患者の処遇改善を求めて闘ってまいりました。しかし、私自身は、その党の一員でありながら、昨年からようやくこの問題に取り組み始めたところでございました。熊本の菊池恵楓園、鹿児島の星塚敬愛園、東京の多磨全生園などをお訪ねいたしまして、現憲法下でこんなひどいことが行われてきたのをこれまで見逃してきた責任を痛感しております。この機会に患者の皆さんに心からおわびをしたいと思います。

 ところが、この問題の責任者である大臣は、一昨日の所信で、大変厳しい結果、対応を検討などと述べるにとどまっておられます。なぜこの判決を正面から受けとめ、患者に謝罪し、控訴しないことを決断し、問題の全面的解決に取り組む姿勢を表明できないのか、お尋ねをいたします。

坂口国務大臣 けさからもお答えを申し上げておりますように、十一日、判決が出まして、その内容につきましては、まことに厳しい内容の判決であったというふうに受け取っておる次第でございます。

 そして、十四日の日に原告団の代表の皆さん方とお会いをさせていただきまして、今日に至りますまでの数々の生活の状況、そしていろいろと受けてまいりました悲しい思い出、そうしたことにつきましてのお話を伺ってきたところでございます。そうした中で、本当に人道的な立場で考えますならば、これはもう我々がどれほどお断りを申し上げてもお断りを申し切れるものではないと思うほどの内容でございましたし、私はそのときに心からおわびを申し上げた次第でございます。

 そして、これに対してどう対応をしていくのか。それが、二十五日だったというふうに思いますが、二十五日までに結論を出さなければならないということになっているわけでございます。

 この結論につきましては、今朝来お話を申し上げておりますように、小泉総理とよく相談をさせていただきまして、そして結論を出させていただきたいというふうに思っておりますが、総理の日程等のこともございまして、まだお話し合いをさせていただく時間をちょうだいしておりません。できるだけ早くお会いをさせていただいて、そしてこのことにつきましての話し合いをさせていただきたいと今思っているところでございます。

小沢(和)委員 今の答弁やけさからの各委員への答弁を伺っておりますと、大臣は、原告に心から謝罪したい、判決の内容も積極的に評価しているということであります。そうだとすれば、控訴の理由はないと思うのです。けさの新聞には、大臣自身は控訴断念を主張しているが、事務当局が抵抗していると報じられております。こういう抵抗を押し切って決断することこそ政治家である大臣の仕事ではないのか。

 ハンセン患者の平均年齢は七十四歳を超えており、ここでさらに裁判を続ければ、最終的に結論が出るときには大部分の患者が亡くなって、救済の意味が失われてしまいます。人道的立場からも、今決着をつけ、患者を救済しなければならないと思います。

 重ねて大臣の控訴しないという決断を求めたいのですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 お気持ちは十分に拝聴させていただきましたし、私は私としての意見を固めているところでございます。

 ただ、先ほどから何度か申し上げておりますように、総理とお会いしてお話をさせていただきます前に、ここで私のこの考え方というものを先に申し上げるということはできません。よくお話をさせていただいて、そのときに、私の思っておりますこと、私の論理構成と申しますか、私の考えておりますことを率直に申し上げたいというふうに思っている次第でございます。

 けさからも申し上げておりますように、とりわけ、長い隔離生活というものが続いてきたわけでございますが、隔離政策というものをここまで長引かせたのは何か、そこを私たちは十分に考えなければならないというふうに思っております。やはりそこには重い責任があるというふうに感じながら、私は、私の思っておりますことを率直に総理にお伝えしたいと思っているところでございます。

小沢(和)委員 どうも大臣がそれ以上言われないので先に行きたいと思うのですが、大臣が本当に今の事態について責任を感じ、問題を解決しようと思うのであれば、今回の判決に服するだけでなく、今提訴中の人々、さらに提訴していないすべての患者や家族に謝罪し、その償いのために全力を挙げるべきだと思います。

 大臣も所信で、入所者の方々に対する医療、福祉、社会復帰等の改善に全力を尽くすと述べておられますが、私も入所者から、夜間の介護体制を三交代で実施してほしいなどの切実な声を聞いております。この問題で原告や患者団体などと早速話し合って、具体的に改善に乗り出すべきだと思いますが、いかがですか。

坂口国務大臣 これもけさからの御質問に私お答えをしたところでございますが、今回のいわゆる原告団の皆さん方に対しておわびをしなければならないのと同時に、裁判に参加をしておみえにならない皆さん方に対しましても同じようにおわびをしなければならないというふうに思いますし、五千数百人というふうに言われておりますが、あるいはもう少し数字が大きいのかもしれません、その元患者の皆さん方全体に対してどういう償いをするかということを私たちは考えていかなければならないというふうに思っております。

 全生園にも私もお邪魔をさせていただきまして、そして自治会の皆さん方の御意見もお伺いをしてきたところでございます。とりわけ高齢化が進んでおりまして、いわゆる不自由棟というふうにおっしゃったと思いますが、その不自由棟の中での、夜間におきます徘回でありますとか、あるいはまた夜間トイレに起きられた皆さん方がお部屋に帰りにくいといったような問題もこれあり、やはり今よりももう少し厚く手を差し伸べてほしいというお話がございました。

 これらの点も踏まえまして、これから考えていかなければならないと思っているところでございます。

小沢(和)委員 大臣は社会復帰等の支援にも触れられておりますが、その最大の障害は、国の長年の誤った政策によって社会に広がっている偏見、差別だと思います。

 国民全体に、これまでの国の隔離絶滅政策が間違っていたこと、ハンセン病は今では確実に治ることなどを徹底的に啓蒙宣伝し、患者の人々に故郷から帰ってこいと声がかかり、今なお施設内の納骨堂に眠っている二万三千を超える遺骨がどんどん引き取られるような状況を早急につくり上げなければならないと思います。

 国としてこの問題にどう取り組むか、伺いたいと思います。

坂口国務大臣 ハンセン病療養所に入所しておみえになる皆さんの社会復帰につきましては、現在、社会復帰者支援事業といたしまして、社会復帰者に対する相談等に応じております一方、社会復帰準備費用、これは約二百五十万というふうに聞いておりますが、準備費用の支給などをして支援を行っているところでございます。こうした社会復帰支援の実施に当たりましては、平成十一年の十一月に設置をいたしました社会復帰支援方策調査検討会におきます検討も踏まえて行っているところでございます。

 今後とも、社会復帰を希望されるハンセン病療養所入所者の方々の高齢化、そしてまた雇用等の実情を踏まえまして、引き続き社会復帰促進のための検討を行っていきたいというふうに思います。

 御指摘になりましたように、一般社会におきますハンセン病患者の皆さん方に対する偏見といったものがあるわけでございますから、これらを取り除いていくためにどうしたらいいかということを真剣にやはり考えていかなければならないというふうに思っているところでございます。

小沢(和)委員 私は、特に今大臣が最後に言われた、偏見や差別をどう社会的に取り除くか、国の責任が大きいということで、その点をどう取り組もうとしておられるかということを聞きたかったのですが、それについては今後取り組んでいただきたいということで、先に行きたいと思います。

 第二にお伺いしたいのは、不良債権処理と雇用対策についてであります。

 小泉首相は、これまでの自民党ではだめだ、私が変えると訴えて、高い世論の支持を得たわけであります。国民がこの場合一番期待したことは、今の生活不安を解決し、景気を回復してほしいということであります。小泉内閣が果たして本当にその期待にこたえられるのか。

 今我が国の完全失業率は四・七%と史上最悪の水準でありますが、ここで二年から三年以内に不良債権の最終処理をすればさらに失業者が百万人以上増加することは、多くの調査研究機関が一致して指摘しているところであります。坂口大臣も所信で、失業情勢は不良債権の最終処理等の構造改革を実施する過程で厳しさを増すことが考えられると認めておられます。これでは景気はさらに落ち込み、不良債権がまた新たに発生するという悪循環に陥るのではないでしょうか。

 大臣にお尋ねしたいのは、これでどうして国民の期待にこたえる、景気を回復することができるのか。きょう頑張れば明日は明るい展望が開けてくるというのなら国民は我慢すると思うのですが、明日はもっと悪くなるということでは、国民はそういう政治には失望し、怒るに違いないと思うのですが、この悪循環がどこで断ち切られるというふうにお考えなのか、お尋ねします。

坂口国務大臣 不良債権の問題は、どれぐらいのスピードで、あるいはまたどれぐらいの額を行うかということによって、与える影響というのはかなり違うというふうに思いますが、いずれにいたしましても、構造改革なくして景気回復なしというふうに総理がおっしゃっておりますように、この構造改革、すなわち不良債権処理を含めました構造改革といったものが、やはりやらないことには展望が開けてこないというのはそのとおりだろうと私も思います。

 それじゃ余計に悪くなるじゃないかというふうにおっしゃいますけれども、その一時そういうところを、トンネルの中を越えないことには明るい社会の中に出ることができないということだろうというふうに思います。それは、一時期そういう時期があったといたしましても、その向こうにこの経済の活性化というものが行われるということであるならば、一時期、国民の皆さん方にもその御辛抱をしていただかなければならない時期があるのだろうというふうに思います。

 その皆さん方に御辛抱いただく時期をできるだけ短くし、そして程度をより軽くしていくというのが雇用政策でなければならない、それをどうしていくかということを私たちは真剣に考えていかねばならない。その内容は、先ほど申しましたように、その大きさと、いわゆる不良債権処理の額と、いわゆる規模と、そしてそのスピードによってかなり違ってまいりますけれども、それをあわせて考えながら、そこに雇用対策というものを大幅にひとつ拡大をしていく検討をしなければならないと今思っているところでございます。

小沢(和)委員 私は、不良債権処理をここで強行すれば、失業が大量に発生してさらに悪循環に陥るというふうに考えますが、きょうはそのこと自体を論ずることが目的ではありませんから、先に行きたいと思うのです。

 新聞報道によると、小泉首相は、これまで一年間だった短期雇用の期間を三年に延長することを検討するよう指示したというのですが、厚生労働省はこれで雇用がふえるとお考えなのかどうか。解雇が簡単にできる派遣、パートなどは、この措置で雇用しやすくなるには違いない。この部分はふえるかもしれませんが、それは正社員を不安定で賃金の安い労働者に置きかえるだけ。働く者全体で見れば、一層みじめな不安定就労者がふえるということにしかならないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 まだ直接そういう話になっているわけではございませんが、しかし、そういうことがお話の一端に出たことは確かなようでございます。

 それで、いわゆる有期雇用というふうに専門的には言うそうでございますが、一年ではなくて、二年とか三年間の契約で雇用するといった雇用の仕方でございますが、これは、平成十一年の四月から施行されました労基法の改正におきまして、いわゆる士資格を持っている、いろいろの技術を持っている、そういう人たちに対しましては、三年という年限を切ってその雇用をしてもいい。弁護士とか何々士とかという資格を持った皆さん方に対してはそういう雇い方をしてもいいということに今なっているわけでございますが、その範囲を多少拡大するのかどうか、あるいは、そこにはかなりな条件が幾つも幾つもついておりまして、現実問題としては非常にできにくいような形になっておりますが、その条件を若干緩和するのか、そうしたところが議論の的になるんだろうというふうに思っております。

 これはしかし、そういうふうにするということを決めたわけではございませんで、そうしたことが一つの課題になるという程度のことでございます。

小沢(和)委員 大幅に拡大するわけではないというお話でしたから、先に行きたいと思うんです。

 坂口大臣は、規制改革等を通じた新規雇用の創出というふうに述べられております。これまでも、規制を緩和し競争を促進すればITなど新規成長分野などで新たな雇用がふえるというふうに言われてまいりましたが、実績はどうなっているのか。この間、競争の激化によって、NTTグループでも先日また六万人の人減らしが新たに発表されたのを初め、NEC、セガなど、この分野の有力企業が次々にリストラを行っております。全体で見れば成長分野でも雇用は減っているのではないかという感じさえするんですが、いかがでしょうか。

坂本政府参考人 成長分野における雇用の状況についてのお尋ねでございますけれども、例えば情報通信ですとか、あるいは医療・福祉分野につきまして、総務省でとっております事業所・企業統計調査、これによりまして平成六年から平成十一年までの五年間の従業者の増減について見てみますと、まず、ソフトウエア業及び情報処理・提供サービス業、この二つにつきましては、平成六年が六十一万人、これが平成十一年には七十一万人ということで、十万人の増加でございます。率にしまして一六・三%。また、医療業、それから社会保険、社会福祉について見ますと、平成六年は二百六十万人から平成十一年には三百十九万人ということで、五十九万人ほど増加をいたしております。

 なお、先生お話ございましたNTTの関連の分野でございますけれども、電気通信業の従業者数について見ますと、平成六年から平成十一年の間に、全体としては三万人の減少ということでございます。その中でも、携帯電話などの新しいサービス分野では増加をいたしておりまして、携帯電話小売業などを含みます電気通信附帯サービス業というのがございますけれども、これで見ますと、平成六年の二万人から、平成十一年には五万人ということで、三万人の増加という状況でございます。

小沢(和)委員 現実には、新規雇用の創出とか円滑な再就職の促進などとかけ声をかけてもなかなか成果が上がらないというのならば、私は、失業しても生活を支える仕組みを強化すべきだと思います。

 ところが、一昨日の大臣の所信には、そのことについては一言も触れられておりません。これは、大臣はそのことに関心がないということなんでしょうか。せめて雇用保険の失業給付日数の延長とか、あるいはドイツなどでやっておりますように、失業保険の給付期限が切れた後も失業扶助を受けられるようにするなど、今の深刻な失業情勢に見合う緊急措置を講じるべきではないか。この点はいかがでしょうか。

南野副大臣 お答え申し上げますが、雇用保険制度ということにつきましては、緊急経済対策として、倒産または解雇などによる離職者に対して手厚い給付日数を確保した改正雇用保険法、これの円滑な施行を図ることといたしております。

 さらにまた、先般設置されました、御存じのとおり、産業構造改革・雇用対策本部におきましては、経済財政諮問会議に置かれました雇用拡大に関する専門調査会と連携を図りながら、民間有識者の御意見もお伺いしながら、早急に産業の構造改革に対します新規雇用の創出、能力開発支援などの対応策を検討してまいりたいと思っております。

小沢(和)委員 今、改正雇用保険法の話が出ましたけれども、実際には、ごく一部が給付期間延長になったことは私も承知していますけれども、多くの失業者は、むしろ今回のこの措置によって給付日数は短くなっているというのが実態じゃないんですか。

 私は、今日本では、企業にもっと競争をやらせ、つぶれるところはつぶれてもよい、失業者はどんどん吐き出せばよい、こういうようなアメリカ流の経済政策が、その本家のアメリカでも景気の急速な後退でその政策が万能でないということがはっきりしてきたことにぜひ注目する必要があると思うんです。

 私は、日本はもっとヨーロッパに学ぶべきだと思うんです。ヨーロッパでは既にドイツ、フランスなど十三カ国で、五十人規模以上のすべての企業に労使協議機関の設置を義務づけ、大量解雇はそことの協議抜きにはできないようになっております。日産に乗り込んで大リストラをやっておりますカルロス・ゴーン氏の出身企業であるフランスのルノーは、工場閉鎖をこの手続を無視してやろうとして裁判所からやり直しを命じられたりしております。こういう制度のもとで、EUでは、各国で失業が大幅に減り、年二、三%の経済成長を着実に実現しております。

 日本もこういう経験を学ぶ必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

南野副大臣 本当に先生いろいろと御研究されておられますが、我々といたしましても、労使との関係がございますので、一層研さんを重ねていきたいと思っております。

小沢(和)委員 それでは、次の質問ですけれども、リストラを規制して雇用を守ると同時に、さらに雇用を拡大していくには、労働時間の短縮がどうしても必要だと思うんです。

 どうもきょうは外国の話をしばしば言って恐縮なんですけれども、フランスでは九八年に三十五時間労働法が実施されて、既に今日までに二十六万人の雇用をふやしております。

 日本では、週四十時間制を実施したといっても、例外がいろいろ認められ、労使で残業協定を結べば年間三百六十時間まで、特別な場合は五百四十時間まで残業することが許されております。これでは、年間総実労働時間を千八百時間にすると世界に公約しても、いつになっても実現しないのは当然ではないでしょうか。

 せめて残業をもっと厳しく規制して、雇用の拡大につなげるというような努力が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

南野副大臣 今お話ございました時短ということについてでございますが、これはワークシェアリングという言葉が今盛んに使われております。それにつきましては、雇用の維持、創出という観点から労使の問題提起が今なされているところでございますけれども、現時点におきましては、労使間において二つのポイントがあるのではないかなというふうに思っております。

 一つは、就労時間が減少しても賃金の低下が伴わないという片っ方の考え、これはどういう方々の考えかは先生御存じと思いますが、もう一つは、就労時間の減少分の賃金の減少が伴うという考え方、この二つの大きな考え方があるのではないかなと思っております。

 そういうワークシェアリングの導入の前提といたしましては、時間当たりの賃金が明確化されていない、明確化することの必要性があるというふうに思いますが、我が国におきましては、生活手当または勤務手当、そういうものを含めました月給制というものが定着いたしております。そういうことにも留意する必要があるのではないでしょうか。

 さらに、ワークシェアリングによります雇用を創出するということでございますならば、景気変動に対しましても所定外労働時間の調整で対応するという我が国の雇用慣行になじみにくい面があるのではないでしょうか。

 したがいまして、先生がいろいろとフランスの例を引用して教えていただきましたが、当面は、労使を初めとしまして十分な議論を行い、社会的コンセンサスを形成していく必要があるのではないかなと考えているところでございます。

小沢(和)委員 言いたいことはあるのですけれども、ぼつぼつ時間の方が気になりますので、先に行きたいと思うのです。

 去る四月六日、厚生労働省は、サービス残業をなくすための画期的な通達を出しました。これは、我が党を初め国会での長年のたび重なる要求にようやくこたえたものとして、遅過ぎる感じはしますが、評価をしたいと思います。

 サービス残業は、労働者に支払うべき割り増し賃金を企業が奪い取る明白な犯罪であり、これを完全に禁止すれば、九十万人の雇用を新たにふやすことができるわけであります。今まず必要なことは、この通達の内容をどうやって徹底していくのかということでありますが、厚生労働省の方針、計画を伺いたいと思います。

南野副大臣 先生御指摘の問題でございますが、サービス残業を解消する、これは、残業をサービスというのかどうか、そこら辺の言葉の文言はあると思いますが、サービス残業の解消ということにつきましては、御指摘のとおり、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を発したところでございます。

 本基準につきましては、労働基準監督署の窓口または各種説明会など、あらゆる機会を通じて集中的な周知活動を行うとともに、その厳守を図るために監督指導などに努めることといたしているところでございます。

小沢(和)委員 私は、この通達を生かす一番のポイントは、日本じゅうのすべての職場にタイムレコーダーを設置し、出退勤時刻を客観的に記録して労働時間を管理する仕組みを確立することだと思うが、いかがでしょうか。

 さらに、通達では、自己申告制により始業、終業時刻の確認を行わざるを得ない場合とありますけれども、今のように日本じゅうにサービス残業が蔓延したのは、この自己申告制の無限定な乱用、導入の結果だと思うのです。例外として自己申告制の存続を認めれば、今回の通達はたちまち骨抜きになってしまうのではないか。どうしても自己申告制でなければならぬ場合というのはどういうようなケースが想定されるのか、お伺いします。

日比政府参考人 この通達の内容につきましては既に小沢委員御案内のとおりでございますが、この通達につきましては、労働時間を適正に把握するために事業主が講ずべき措置を示す、それがねらいでございます。

 そして、労働時間を適正に把握するためにということで、把握すれば確認し記録すること、これが重要であるわけでございますが、これはいろいろな職場というものを想定いたしておりまして、使用者がみずから現認することによって確認し記録すること、この手法も当然ある。比較的小人数職場ではおわかりのとおりだと思います。また、タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎として確認し記録すること、この方法ももちろん非常に重要だ。この二つの方法というものを原則的な方法としつつ、適正な時間管理をやっていただきたいということでございます。

 そうしまして、自己申告制でございますが、今委員がおっしゃったように、自己申告制につきまして、私どもも昨年調べた際、いろいろ問題のあるケースがあったことは十分承知いたしております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、例えば使用者がみずから現認して時間を管理するというやり方もございまして、タイムカードを一律にということでないのはもちろんでございますし、また自己申告制につきましても、先ほど申し上げましたが、これが適正でないものというのは私どもも承知いたしておりますが、タイムカード等とあわせ、あるいは使用者が現認するという場合であっても自己申告ということはあり得るものと思っております。

 ただ、私どもこの通達におきまして、自己申告制を用いる場合には当然のことながらそれが適正に行われる必要がございますので、自己申告制を用いるのであれば、必要に応じ実態調査をするとか、労働者の適正な申告を阻害する要因というものを排除する等、そういうことを行うのが前提だ、そういう意味で、やむを得ず自己申告制を導入する場合にも、これこれをしていただきたいということを示しておるところでございます。

小沢(和)委員 私は、自己申告制というのは原則として認めないということで厳格な指導をしていただかないと、すぐこれは骨抜きになるということを警告しておきたいと思うのです。

 それで、一番サービス残業がひどいのは官庁、とりわけ霞が関の中央官庁ではないかと思うのです。今回の通達では、職場単位ごとの割り増し賃金に係る予算枠がサービス残業を生み出すことを指摘しておりますが、その弊害がとりわけ官庁ではっきりしている。この予算枠にある制限を撤廃すべきではないか。

 それから、ここに、厚生労働省で働く職員の組合であります全厚生本省支部の残業の実態調査があります。調査が行われたのは一昨年三月、課長補佐以下八百五十名から回答を得ておりますが、月間残業五十時間以上が六二・六%、二百時間を超える人も三・一%おります。そのうち、四〇%以下しか残業手当が支払われていない人が五二・四%に達している。この質問には答えていない人が一五・五%いますから、実際はもっと高いはずです。すさまじいサービス残業を余儀なくされている一端がここに出ております。

 まず通達を出した厚生労働省からタイムレコーダーをつけてサービス残業を一掃すべきではないか、この点をお尋ねします。

木村政府参考人 国家公務員の労働時間の短縮対策につきましては、各省庁の官房長等のメンバーによります人事管理運営協議会決定といたしまして、平成四年十二月にその対策が図られまして、昨年五月に改めてその具体的な縮減対策が各省庁に示されたところであります。

 厚生労働省におきましても、従前から、長時間に及ぶ超過勤務は、職員の健康管理の面や疲労の蓄積による事務能率の阻害といった問題も生ずることから、管理職員による部下職員への早期退庁の指導、それから毎週水曜日の全省庁一斉定時退庁日の徹底等によりまして、行政サービスの低下を招かないように配慮しながら超過勤務の縮減に積極的に取り組んでおりまして、今後とも、その実効が上がるように徹底してまいりたいと思います。

 それから、超過勤務手当の確保につきましても、できる限りの努力をしてまいりたいと考えております。

小沢(和)委員 残念ながら時間がありませんから、最後の質問に入りたいと思うのです。

 原爆被爆者の認定問題で二点お尋ねします。

 一つは、被爆者の認定問題であります。

 昨年、長崎の松谷英子さんの認定についての最高裁判決に続き、京都地裁でも高安九郎さんについて認定すべしとの判決が出されました。これらの判決によって、これまでのDS86の機械的適用などによる認定拒否が通用しなくなってきたために、厚生労働省も認定基準の見直しを進めており、そのために、一年余り被爆者認定の作業が事実上とまっていると聞いております。基準見直しはいつごろまでにできるのか、認定作業はいつから再開されるのか、お尋ねをいたします。

 もう一つは、長崎の被爆地域指定拡大の問題であります。

 昨年八月、私は当委員会で、原爆の被害はほぼ同心円状に発生したはずなのに、行政区域で被爆地域を指定したために長崎の指定地域が細長く、実態に合わないことを指摘し、早急な見直しを求めました。その後、長崎市が提出した証言集など新しい資料に基づいて、厚生労働省の研究班による大がかりな現地調査が行われたと聞いております。調査の結果はどうなっているのか、いつごろ地域指定拡大問題の結論が出る見通しか。

 以上で質問を終わります。

桝屋副大臣 小沢委員から三点まとめてお尋ねをいただきました。

 最初の二つが原爆症の認定の問題でございます。

 お尋ねありましたように、昨年の一連の判決を踏まえまして、最高裁と高裁の判決の結果を踏まえまして、個々の被爆状況をより詳細に把握するなど、従前にも増して慎重な認定審査を行っているところでございます。

 原爆症認定基準の策定を進めているのじゃないか、こういうお尋ねでございましたが、認定基準といいますか、今後の認定審査の方針について、実は本年四月十六日に、疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会におきまして、今申し上げました原爆症の認定審査に資する研究報告をもとに、今後の認定審査の方針について議論が行われたところでございます。次回五月二十五日、この審査会において、次回の議論を踏まえて原爆症認定に関する審査の方針について御議論をいただき、早急に取りまとめを行っていただく、こういう予定でございます。

 それから、二点目の認定作業でございますが、御指摘のように、昨年の夏以降、半年間、事務処理のおくれによりまして通知が相当滞ったということがございます。こんなこともありまして今申し上げたことで対応しているわけですが、本年二月に疾病・障害認定審査会の原子爆弾被爆者医療分科会を開催いたしまして、答申を受けまして、その結果を通知したところであります。その後、三月にも審査会を開催しておりますし、その結果も既に通知をしております。速やかな認定に努めているところであります。

 引き続き六月にも審査会を開催し、認定審査を行う予定であります。今後は、五月中に取りまとめる審査の方針に基づいて、認定審査の効率化を図るなど、より迅速な認定が行われるよう努めてまいりたいと思います。

 それから、長崎の原爆被爆地域の指定拡大の問題でございます。毎回関心を持っていただきましてありがとうございます。

 これも今委員からお話があったとおり、本年三月に、放射線被爆による心理学的影響の有無の調査を目的といたしまして現地へ行きまして、七百五十四人の御協力をいただきまして、面談等による現地調査が実施をされたところでございます。

 今お尋ねのように、研究班において、これらの調査結果の取りまとめ作業が進められております。近々、調査結果の集計が出るのではないかと思っておりますが、今後は、検討会においてできるだけ早期に結論をまとめていただくようお願いをしていきたいというふうに思っております。時期については、ちょっとこの場でまだ明確に申し上げることはできないと思っております。

小沢(和)委員 終わります。

鈴木委員長 次に、中川智子君。

中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。

 坂口厚生労働大臣、お二人の副大臣、今後とも厚生労働行政への御貢献に対して期待しておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、五月十一日に判決が出されましたハンセン病のことについて伺います。

 私も五月十一日、熊本地裁の法廷でこの判決を聞きました。これは、九十年にわたる隔離政策が壁の中に大切な一人一人の人生を閉じ込めてきた、それもまた法律によって人生を暗やみの中に生きざるを得ないことを強いてきたということに対して、あの判決は、私は重く受けとめ、そして一日も早くその方たちが当たり前の人間として生活できる、そのような環境づくりに取り組まなければいけないと考えておりますが、そのスタートは、まず控訴をしない、この決断に限定して私たちはその態度を明らかにしていくべきだと考えております。

 午前中の金田議員の質問の中で、坂口大臣は、総理とお話をして、そして総理にみずからの思いをお伝えするということを考えていらっしゃるということでした。

 総理との会見はいつ行われる御予定になっているのか、その時点で大臣はどのような言葉で小泉総理に思いをお伝えしようと思っているのか、端的にお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 総理にいつお会いをしてお話ができるかは、総理の方の日程等がございますので、今、明確でございません。恐らく来週の月曜日から水曜日の間ぐらいのどこかの時点というふうに今思っているところでございます。

 その中で私が総理にお伝えをしたい私の思いは、けさからも金田議員その他の議員の皆さん方に申し上げたとおりでございまして、隔離政策というものにつきまして、やはりこれは誤っていたということにつきまして、この隔離政策の改廃がおくれたということにつきましては、私もそれは認めざるを得ない、そのとおりというふうに思っている次第でございます。

 そして、とりわけ元患者の皆さん方のいろいろのお話を聞くにつけまして、その心情を本当にもうお聞きすることがつらい、そういうお話の数々を聞かせていただいて、ただただこの皆さん方におわびを申し上げる以外にない、そういう思いで先日もお話を聞き、そしておわびを申し上げたところでございます。

中川(智)委員 一審で確定するということに対しては、非常な英断が必要だと思います。でも、これは、明らかにおかしいと、議員一人一人もそのことに対しては、患者の、元患者の人々の苦労を考えるともうむやみに争うべきでないということに対しても、国は常に控訴。そして最高裁まで行き、その最終判断を見なければということを言われてきました。

 でも、今回は立法府としての責任が問われています。今大臣がおっしゃったように、九十年間の隔離政策、それを法律によって縛ってきた、その中で行われてきたあまたの人権侵害、そのことに対して立法府が明確に責任を言及された判決でした。

 今、大臣が、そのような御苦労がわかる、九十年間の隔離政策はやはりある時点において間違いだったということでお話しになるということでしたが、神崎代表は昨日官邸に行って、総理に会って、控訴すべきではないという言葉で総理にきっちりお話をしてまいりましたね。神崎代表が、控訴せずと公明党として言われた。

 今、大臣は、厚生労働大臣として、党とは別のお立場でいらっしゃいますが、控訴せずというお気持ちをしっかり持って総理にお会いしようという受け取り方でよろしいのでしょうか。そこがあいまいなまま総理にお会いになっても、総理も、患者の、元患者の方々の苦労とかもよくわかっていらっしゃいます。私たちが望んでいるのは、控訴をしない、そこからしかスタートが切れないんだ。その後でどんなに対策を講じようと、控訴したという姿勢は、もう国は続けて争うということ、立法府もその責任を認めないということなのです。

 いかがでしょうか。神崎代表の控訴せずという意向を伝えるのと、大臣がお持ちの控訴をせずということは、同じだというふうに理解していいんでしょうか。

坂口国務大臣 神崎代表は党を代表してのお話でございますし、私は厚生労働省という行政の長としての立場があるわけでございますから、よって立つ立場は違います。したがいまして、私は私の論理構成でお話をする以外にございません。しかし、対象の人たちが高齢化をしてまいりますことは、これはもうそのとおりでございますし、この現状を見ましたときに、早く決着をつけた方がいいということもこれまた事実でございます。

 そうしたことを全体で踏まえながら、私の考えておりますことを、私の考え方を固めて、そして私の考え方を率直に総理にお話を申し上げるということでございまして、総理にいかがいたしましょうということを申し上げるわけではございません。私の考え方を総理に申し上げたいと思っております。

中川(智)委員 さまざまなところから情報を今いただいているところですが、きょうにでも控訴をするのではないかという情報が今入っております。そのようなことはないでしょうか。大臣としてこの態度を明確にしていただかないと。来週総理にお会いして控訴云々は決定する。きょうの時点で控訴をするということは、大臣の意思とは別のところで決定が行われることを認めることになりますね。

 これは、きょうの時点で控訴をしない、そして厚生労働大臣として来週お会いになって、そこで控訴云々のことが議論されるという判断でよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 きょう、そういうことが行われるということは、絶対にないと思います。私がお会いをさせていただいてお話を申し上げる前にその決定がなされるということは、あり得ないと思っております。

中川(智)委員 つらいことですが、本当に今は坂口厚生労働大臣を信頼して、私たちの意思、気持ちは、もうむやみと争うことはやめて、一日も早く、患者の方たちの人間回復の道を控訴断念からスタートするという思いを真剣に受けとめていただきたい。これは伏してお願いいたします。

 続きまして、私はずっと、子供たちの環境ホルモンの影響について国会の場でも何度か御質問してまいりましたけれども、続いて環境ホルモンの問題をぜひとも伺います。

 今、幼児、特に三歳以下の幼児のおもちゃなどに、塩化ビニールなど多種多様な化学物質が使われております。中でもフタル酸エステル類の有害物質の危険性はいろいろな方面から厳しく指摘されていますが、EUなどでは塩ビ製品の規制を始めていて、特に感受性の強い子供たちのためには予防原則に立つべきだということで適切な措置がとられておりますが、我が国では何の規制もなく、子供たちが、おしゃぶりで日々その危険な環境ホルモンの被害に遭っているということでございます。

 科学的な因果関係が解明されてから対策を打つということがずっと答弁で繰り返されていますが、軟質の塩ビは、可塑剤を含んでいる限りその溶出の危険を避けることはできないわけですので、きっちりと予防原則に立って法整備をすべきだと考えておりますが、この問題に関しての大臣の御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 塩化ビニール類、すなわちフタル酸エステル類というのでしょうか、これが乳幼児の健康に影響する可能性があるということが言われておりますことは、私もよく承知をいたしております。

 それで、現在、関連いたします厚生科学研究に参加されております専門家、それは医療関係者もおりますし、いわゆる小児科の先生あたりもお入りをいただいておりますし、それから合成樹脂等の専門家もお入りをいただいておりますが、毒性の専門家等の意見を聞きながら、現在、その内容につきまして、どうかということを検討をしている最中でございます。

 もう近いうちにその結論が出る予定でございます。結論が出ましたならば、薬事・食品衛生審議会におきまして、規制の必要も含めて御審議をいただきたいというふうに思っております。もう間もなくというふうに思いますので、しばらくお待ちをいただきたいと思います。

中川(智)委員 先日、五月十五日の毎日新聞でも、低濃度でも生物に影響するというきっちりした見解がアメリカの方で出たという報道もございました。日々子供たちが、かなり強い感じでかみかみするわけですね。電車なんかに乗っていても、しょっちゅうおしゃぶりを口にくわえている子供たちをたくさん見ます。ぜひとも規制を、食衛法の改正で十分できますので、前向きな御検討をぜひともお願いいたします。

 最後になりますが、この間多発している医療事故の問題について、これは継続していろいろ伺いたいことがございます。

 まず一点質問いたしますが、坂口厚生労働大臣もお医者様でいらして、本当に、大臣のいろいろなお話を伺っていますと、世の中すべて大臣のようなお医者さんならいいなと思います。そしてここにも、委員の中にもたくさんお医者様が、すばらしいお医者様が多いのですが、もう何度も何度も裁判で負けたって、まだまだお医者さんでいられる、普通だったら、医師免許取り消しなんていうことを最初の段階でやれば被害は少なくて済むんじゃないかと思うようなことが、すごくたくさんございます。今、裁判を起こすのだって、決死の覚悟で裁判を起こしますし、ほとんど大体泣き寝入りというのが現実です。

 昨年の十二月二日の新聞報道によりますと、一九八五年から九九年までの間に業務上過失致死罪で有罪が確定した医師のうち、旧厚生省が十六人について把握できなかったという事実が明らかになっています。厚生労働省は、有罪確定の医師について、都道府県の衛生部局の報告で把握しているようですが、その情報収集は、その大半を新聞記事に頼っているというのが現状で、ですから漏れが起こるのだと思います。

 当然検討されていると思うのですけれども、現在の情報システム、これはどのようになっているのかを伺いたいと思います。

伊藤政府参考人 情報収集の方法でございますが、医療事故につきましては、医療監視や報道等を通じまして、発生からできるだけ早い時期に把握するように努めているわけでございます。その上で、事故に関係した医師の所在する都道府県関係者でございますとか勤務先の医療機関等の協力を得ながら、その医師が刑事上訴追されるか否か、また訴追された場合に裁判所においてどのように処分されるかということでございまして、それらの情報を引き続き追跡調査を行うことにより、都道府県が、裁判の結果有罪が確定した場合に、その医師について行政処分の進達を厚生労働省に上げてくるというのが実態でございます。

中川(智)委員 伊藤局長に伺いたいのですが、今の御答弁では、発生が早い時期に把握できるようにと。その発生が早い時期にどうやって把握しているのか、そのシステムはどうなっているのかという質問でした。

伊藤政府参考人 現在におきましては、事故につきまして、正直申し上げまして報道によるものが一番多いわけでございます。そのほか、医療監視。したがいまして、事故が発生いたしましても、全く報道されないケース、それからさらに、それが業務上過失致死なり傷害で裁判になっても、簡易裁判所等で略式で判決が出たりした場合につきまして全く報道されないというようなケースにつきまして、行政庁として把握できないものがあるというのは事実でございます。

中川(智)委員 それでは、そのシステムをどうつくるかという話し合い、検討は現在されているのでしょうか、今後される御予定はありますか。システムがなければどうしようもないですね。入り口の部分で把握できなくて、その後幾らやったって取りこぼしばかりですしね。いかがですか。

伊藤政府参考人 やはり医療事故に対しまして本格的に対応していく必要があるというふうに考えておりまして、実は、本日午後、私どもは、総合的な医療安全対策を御審議いただく医療安全対策検討会議をスタートさせます。有識者にお入りいただきましたその検討会議におきまして、さまざまな観点から、特に今議員御指摘のように、報告制度なり他のいろいろな法令との関係も含めまして、法律的な面から医療安全対策をどうするかということが大変大きな問題でございますので、これらの問題も含めまして御審議をしていただきたいというふうに考えているところでございます。

中川(智)委員 今の局長の答弁は、最後からしゃべってくれたら非常によくわかりやすかったですね、どうぞよろしくお願いいたします。

 坂口大臣、やはりこういうシステムをつくっていく。薬害ヤコブのことでもそうでしたが、何だか、きっちりみんなで情報を共有して今後をやっていかなきゃいけないのに、最初の共有のシステムとか情報の把握のシステムがばらばらになっていることによって、その被害とか対策とかがおくれるということがたくさんございますが、そのシステムづくり。今局長の方が前向きにやっていくということでしたが、大臣、そこのあたりはどのようにお考えでしょうか。医療事故が頻発しているわけで、そこの問題に対しての大臣の御所見はいかがでしょうか。

坂口国務大臣 ただいまの局長の答弁のとおり、それに従いましてシステムづくりをきちっとしたいと思います。

中川(智)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 そして、私たちも首をひねらざるを得ないようなことなんですが、いわゆる医療ミスを何度も繰り返す医師はリピーターと呼ばれるそうなんですね。

 これも報道によりますと、横浜のある産婦人科の院長が死亡事故を含めて六件もミスを繰り返したために、県の医師会は出産時の医療行為をやめるように指導したそうなんです。産婦人科のお医者さんに、あなたはミスばかりで大変だから出産時の医療行為をやめるようにと。そのような指導をされた医師がいるそうですが、この院長はその後もそのことを守らずにやり続けていて、またもや死亡事故を起こして起訴されました。

 帝王切開ができないらしいのですね。そうしたら、この間も、四千四百グラムの子供さん、既に大きいというのがわかっていて、帝王切開をやらなければいけないねといいながら、帝王切開をせずに無理やり分娩したことによって重度の障害が残るとか、そのようなことがもう六件も同じ病院で、同じ院長でされている。こういうリピーターと呼ばれる医師が全国にかなりいるということなんですね。やはり医師免許を与えた国が責任を持って対応すべきだと話しています。

 このようなリピーターの存在について、厚生大臣は把握されているかどうか。そしてまた、医師免許を与えた国の責任として、このようなリピーター問題を放置できないと思いますが、今後どのように対応されるか。大臣に最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

坂口国務大臣 そういう医師がいるのかどうかということを今まで余り考えたことがございませんでした。

 何回もそうした失敗を繰り返す医師がいるということになれば、それは再教育をするのか、それとも根本的に医師という職業が合わないのか、それは、その人のケース・バイ・ケースによって違うのだろうというふうに思いますから、一遍その辺のところも検討しなければいけませんが、とにかく医師になるスタートのところで、どういう人が医師として適任かという、スタートのところの医師としての適格、不適格というところももう少し考えないといけないというふうに思う次第でございます。

中川(智)委員 もう終わりますが、大臣、控訴しないように闘ってください、よろしくお願いします。

鈴木委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社民党としていただきましたお時間、多少延長しておりまして申しわけありません。私は二番手の阿部知子でございます。

 さきの小泉新総理の誕生に伴い、神崎代表が代表質問の折に、二十一世紀は平和と人権の世紀であり、その中で特に公明党は人権、生命、環境ということに重きを置いてこれからの世紀をよい世紀にしていきたいということでの御発言があったと思います。その公明党からこの厚生委員会に、坂口厚生労働大臣、桝屋副大臣が担当してくださいます。そしてまた、私にとっては、私は医療分野に働いておりましたから、南野さん、さんと言っては失礼です、南野副大臣、看護分野で御経験の深い南野副大臣という、盤石の布陣をもってこの二十一世紀の厚生労働委員会を迎えられることを大変うれしく思います。

 そして、本日は、金田委員の御質問に始まりまして、ただいまの中川智子委員の御質問、どなたの御質問の中にも、ハンセン氏病問題のいわゆる控訴問題、控訴はしないでくださいという御発言があったと思います。私もその思いは同じでありますし、恐らく坂口厚生労働大臣も、一人の医師としてこの問題を考えた場合に、やはりなすべきではない、本当にお年を召していかれる患者さんに対して人間としてできることは何であるのかというふうにお考えであろうと思います。

 その上に立って、私は、いわゆる厚生行政として一点確認をいたしたいことがございます。

 実は、この一番目の質問は、申しわけございませんが、質問通告はしてございません。きょうのいろいろな皆さんの御意見を聞きながら、私としてぜひとも確認したいという一点ですので、御答弁等々、資料がございません、あるいはこれから調べますということでも結構ですので、一点目のお時間をちょうだいいたします。

 今回の熊本地裁の判決は、いわゆる立法の不作為、こうした状態をずっと放置したまま来た私たち国会議員の一人一人にもその責任を問うた、極めて異例の判決でございます。

 私は、この判決に接しましたとき、一体法律というのは何なんだろう、そして自分たちが法律をつくる場所にいるということは何なんだろうということを改めて考えました。そうした法律、法と人権、あるいは法とそれに縛られざるを得ない、あるいは逆に言えばそれによって守られる命ということについて一点、厚生労働省に確認をいたしたいと思います。

 実は、九六年三月二十五日の百三十六国会で、衆議院厚生委員会での御発言で、当時の松村保健医療局長の御発言の中に、いわゆるハンセン氏病の療養所の中で、半強制的な優生手術については、「おおむね昭和三十年代前半、遅くとも昭和四十年代以降には行われていない」という御答弁がございました。

 そして私は、先ほど坂口大臣の御発言の中に、昭和三十五年ごろ、これは国際的にらいの感染についての知見が広まり、プロミンの使用を初めとして、医学的に見ても隔離の必要のないものという判断がおりた時点が、やはり坂口厚生労働大臣としても、妥当な感染についての判断の時期ではないかとおっしゃられましたことを受けての御質問でございます。

 実は、優生保護法の三条三項に基づきまして、三条三項と申しますのはらい条項でございます。らいが感染をいたしますので優生保護手術を施行いたしますという条項でございますが、坂口厚生労働大臣が認識された昭和三十五年以降、すなわち一九六〇年以降も、いわゆる瀬戸内の三園、長島愛生園も含む三園で、この優生保護法の第三条三項にのっとった手術が現実に行われ、統計上も報告されております。

 となりますと、この感染については世界的な認識に従うとされたただいまの坂口厚生労働大臣の認識と逆に、この優生保護法のよって立つ根拠が全く背反してまいります。こういうふうに法がお互いにそごを起こすということは、法治国家にとっては大変な問題でございます。

 私は、しみじみ今般の事態を考えますに、法の重要性でもございますし、いかにひどいらい患者の隔離をしてきたか。実は、次の世代を産む権利も、子供たちの生まれ出る権利も奪ってきた法律でございます。この認識に立ったときに、今般の、ぜひとも坂口厚生労働大臣から首相に上申されるべきお答えは、これは厚生行政の誤りの一部でもございます。何度も申しましたが、優生保護法三条三項はらいの感染性に基づく条項で、これによって堕胎処置を受けております長島愛生園で調べられた計数については、実はさきの熊本地裁の中でも資料として出されておりますので、恐らく他のハンセン氏病の施設についても同じようなことがございますでしょう。

 そして、残念なことにも、厚生労働省のかつての、何度も申しますが九六年三月二十五日の松村氏のお答えでは、昭和四十年代以降は全く行われていないと認識していると。こうしたことは、実は、厚生労働省による実態の誤認、御認識の違いでございます。認識が誤っているということでございます。

 こうしたことについて、責任省庁としても、きちんとこのらい問題の見解をいただきますようにお願いいたします。私は、これは質問通告してございませんでしたので、お答えはきょうは結構でございます。

 ただし、きょうずっと皆さんの意見を聞いてきまして、私は、優生保護法という法律は非常に心にかかる法律でございました。そして、その三条三項がらいの条項で、いつまで現実にそれで行われていたのだろうということを調べてまいりました。そして、先ほどの坂口厚生労働大臣のお答えをいただきましたので、それでは大きな行政上の過ちであったのだなということになりますので、あわせて御検討をお願いいたします。

 では一点目、これも質問通告とは多少ずれますが、皆さん、この間の委員の御発言は、控訴をしないように、国がこの地裁の判決に基づいてこれからの救済をするようにということでございましたが、厚生労働省管轄ではございませんが、非常に残念なことに、水俣病におきまして、先般四月に関西での高裁の判決に対しまして環境庁がまた上告なさいました。

 果たして私は、裁判というものは患者にどのような負担と苦しみを与えるのか、このことは、実は私どもは立法府におります人間でございますが、もしこのハンセン病がさらにまた上告されますような事態を多少なりとも予想しましたときに、裁判というものをもう一度考えてみなければならない。水俣病におきましても、患者さんたちは御高齢化されますでしょう。そして、水俣病におきます健康被害についても、実は、厚生労働省の疫学的調査が国として系統立っておれば、今般のような悲しい裁判を繰り返さなくてよかったのではないかと思っております。

 どういうことかというと、知覚の麻痺のある患者さんが知覚麻痺だけを持っておられる場合、水俣病と認定するか否か。実は、水俣病は、人体を用いた水銀中毒の実験でございました。そして、因果関係と申しますのは、再実験ができない以上、綿密に何十年にわたる患者フォローアップをしないと、実相は浮かんでまいりません。患者側からそのことを証明するのは、死して遺体になって解剖して初めて真実がわかる。非常に悲しい構図でございます。

 私は、国の政治というものは、その根本に大きな人間への愛情、これを神崎代表は人権と平和の世紀とおっしゃったと思います。そのようなものを失ってしまっては、私どもが幾ら、例えばこのハンセン病も、次に国として上告された方が今の裁判中の患者さん以外の患者さんにもよいことがあるかもしれないやの新聞報道もございますが、裁判というものは過酷な、そして、被告になるのももちろん大変ですが、原告として患者側が少ないデータで闘うのは非常な労苦でございます。

 私も、二十年前、医療被害と闘う医師・弁護士の会を立ち上げまして、ずっと医療被害裁判にかかわってまいりました。そして、二年半前、実の兄が医療被害で亡くなりましたときに、私自身が裁判を起こすかどうか考えました。私は、裁判を起こすよりも、いわば医療被害を起こす構造を改めようと思い、議員になることを決意いたしました。そして、今日この場におりますけれども、それほどに、例えば、医者である私が裁判を起こすということを考えても非常に大変なことでございます。長い苦しみ、本当に今闘ってこられたハンセン病の患者さん、水俣病の患者さん、私は、けさの金田委員も、中川委員も、涙声をもって坂口厚生労働大臣に控訴しないようにとお願いされましたが、それと同じ分の思いを、我が身の経験、そして、長年かかわってきた医療被害の経験から、私は一言申し添えたいと思います。

 そして、医療被害問題、薬害問題の次に、エイズに関係する血液行政に移らせていただきます。

 これも私は今日坂口厚生労働大臣で本当によかったと思うことの一端でございますが、実は、エイズ薬害裁判については、和解の後に、平成八年に患者さんたちも交えた薬事審議会の場で、これからの血液行政の見直し、とりわけ、血液の自給体制、国内で自給を図る体制、あるいは供給体制、安全体制、そして起こり得る副作用について、被害対策等々の話し合いのテーブルが持たれ、昨年の十二月に一応の答申は出て、それ以来、立ち消えになっております。

 どういうことかといいますと、私どもの日本という社会、そして、とりわけ担当省庁でありました厚生省、今は厚生労働省は、薬害エイズ被害を教訓に、今後、血液事業というものについて、日本の中で本当に国民の命を守れる行政をしこうというふうに決意されて、患者さんが参加するテーブルを持たれたのだと思います。

 きょうの午前中の質問で、家西委員がC型肝炎の件、これも血液製剤の持つさまざまな問題でございます。そして、私の後には川田委員も御質問でございましょうが、現在、こうした被害者の方たちがまた国会の場で変えたいと思っていらっしゃるのも、命を守る厚生省であってほしいという思いだと思います。

 そして、つい近々では、輸入の血液製剤、いわゆるバイエル社の輸入血液製剤が不足するという事態が一たん報道されまして、当時は厚生省が、この三月、四月、日赤等々にサプライをお願いいたしまして事なきを得ましたが、やはり供給体制が国内できちんと保障されないということは大変不安でもございます。

 血液行政に御造詣の深い坂口厚生労働大臣に、ぜひとも、去年十二月をもって中断されております、この薬事審議会の中の患者同席の血液事業についての見直しテーブルの再開について、御見解を伺いたく思います。長い前ぶれで済みません。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、血液供給体制を含めました血液事業の一致しなかった点、各代表の間で合意を得ることのできなかった点は二点でございます。一つは、血液製剤の製造、供給体制をどこが責任を持って行うかということでございます。もう一つは、血液製剤にかかわる安全監視体制をどうするかという、この二点でございました。その他の点は大体合意をされておりますので、この二点につきまして、これからどうするかということになっているわけでございます。

 もう一度審議会等をつくってということになりますと、また時間的にもかなりかかるわけでございますので、一つは、赤十字など現在の血液事業に携わっておりますところと、それからもう一つは、HIV等の患者団体の皆さん方と、この両方との話し合いをどうするかということになっておりますので、これは積極的にこの話し合いを進めさせていただきたいと思っております。

 これはもう時間を置かずにやらせていただきたいというふうに思っています。赤十字の方にも、そういうふうにもう既に申しております。ここでいいますと、家西さんに対しましても、近いうちにぜひお話し合いしましょうということを申しておるところでございます。そうした皆さん方とのお話し合いをして、そして、まとまらなかったところを詰めたいというふうに思っております。

 まとまらなかったことではございますけれども、そんなに難しいわけではないというふうに思っておりまして、合意が得られるものというふうに思っておりますから、皆さん方とお話し合いをさせていただいて、一刻も早く、血液事業法と申しますか、そうしたものをひとつ早くつくり上げたいと思うんです。

 そうしませんと、今はただ閣議におきますところの一つの了解事項と申しますか、そんな形で現在進んでいるわけでございまして、血液事業は何ら法律によらないものでございますので、これだけ大きな事業でございますし、そして我々の健康に大きくかかわる問題でございますから、早く整備をしたいと思っているところでございます。

阿部委員 非常に前向きな御答弁を本当にありがとうございます。

 最後に一点、先ほどの医療被害関連に関しまして、中川智子議員の方から、ミスばかり起こすリピーターお医者さんの話もございましたけれども、医療ミスが生じる構造というのは本当に多種多様なものが考えられております。そして、その原因のいかんにかかわらず、失われるものが命であるということにおいて早急な対策が必要とされる。

 私自身の経験から、特にきょうもう一点お願いしたい件がございます。

 実は、私は、長い間、重症の心身障害児あるいは呼吸器を使わなくてはいけないような小児の管理に従事しておりました。そして、ことしの三月でございましたでしょうか、新聞紙上で、人工呼吸器に用います器具がメーカー同士で違っておりましたものを接続いたしましたために、赤ちゃんが二例亡くなられた例の報道もございました。そもそも人工呼吸器というのは、ふだんは自分でしている息を機械がついていたしますから、非常にミスが多発しやすい。

 そして、これは南野副大臣にもぜひともこれから御尽力いただきたいのですが、これにかかわる看護婦さんの数というのは、いわゆるこれまでのいろいろな二人夜勤、三人夜勤という体制をもってしても、なかなか労働強化でございます。私自身も、一晩に六台の呼吸器を管理しているときに、医療ミスを起こしたことがあります。リピーターでなかったので今日ここにいられるのかなと思いますが、看護婦さんに至っては、医師以上の厳しい体制の中、大体お小水にも行けません。そして、一つの病棟に四台あるか五台あるかで本当に医療ミスの起こり方も違うというデータも出ております。

 私があらかじめの質問のときに申し述べましたが、厚生省にあっては、そのような人工呼吸管理下の医療ミスの実態について、何か分析データをお持ちか否か、まず一点。そして、お持ちでなければ、今後そういうところにきちんとした調査を、受け皿をおつくりいただきたいということで、お願いいたします。

伊藤政府参考人 まず、人工呼吸器にかかわる事故の問題点の把握でございますが、二点ほどございまして、一つは、製品を要因として発生するものと、主に人的要因により発生するものがございまして、それぞれについて私どもは問題点の分析を行っております。

 故障のような、製品を要因として発生する事故といたしましては、部品の不良や劣化といったものが主でございまして、これは医療機関から報告があった場合に、製造業者等に対しまして改善を指導するなど、製品ごとに安全対策を実施しております。

 また、人的要因により発生する事故といたしましては、例えば、警報装置を解除したために呼吸装置が外れたときに発見がおくれたケースなどがありまして、これらにつきましては、警報装置に自動的に解除から復帰する機能をつけるよう製造業者に指導する等の安全対策をとっているところでございます。

 そこで、これらいろいろな事例につきまして集めて原因の分析を行っておりますが、これらの事故の実態と、御質問のような看護婦の勤務体制等との分析について行ったデータは、現在のところ持っておりません。

阿部委員 もうお時間ですので、一言だけ。

 やはり人の手によってしか守られない部分が、医療、介護、福祉の本質でございます。これからますますどこの場に雇用を創出していくかという中にあって、特に女性の働く場所として、そして末永く働ける場所として、南野大臣の見識ある御検討と今後の御回答をお願いいたします。

 ありがとうございました。

谷畑委員長代理 次に、川田悦子君。

川田委員 川田悦子です。よろしくお願いいたします。

 今お手元に個人メモというものをお配りさせていただきたいと思いますけれども、実は私、国会議員になってからすぐに質問主意書を出させていただいたんです。その回答の中に、九六年、菅直人氏が厚生大臣になりましたときに、いわゆる郡司ファイルというものを提出してきました。その郡司ファイルの一ページ目、個人メモというのが差しかえられていたんですけれども、それは、今お配りしているメモというものは、一昨年、八三年当時の厚生省の薬務局生物製剤課の課長であった郡司篤晃氏と私の息子龍平がNHKで対談を行いました。そのときに郡司氏が持ってきたものをデジカメで撮影させていただいたものなんです。

 私は、その質問主意書で質問して、お答えをいただいたんですけれども、この「「個人メモ」については、厚生省において全く判読不明なものに該当すると判断し、当該資料自体は非公開とし、当該資料がつづられていた箇所に「個人メモ」と記載した紙をとじて公開したものである。」というふうに回答をいただきました。

 皆さん、今ごらんになっていて、これが判読不能だというふうにお思いになるでしょうか。そのことについてお答えをいただきたいと思います。

宮島政府参考人 今御指摘のございました、平成八年の郡司元厚生省薬務局生物製剤課長が個人的に作成したファイルの公開に当たりましては、当時、厚生省としましては、さきに御回答させていただきました質問主意書の答弁書にもございますように、当時のファイルの公開の基準といたしまして、症例中の固有名詞に係る部分、あるいは全く判読不明なもの、個人の論文で当該個人の了解が得られなかったものなどを非公開とする範囲ということを対外的に明らかにした上で、整理して公開が実施されたものというふうに理解しております。

 なお、当該の個人メモにつきましては、現在、他のファイルとともに捜査当局に押収されている状況にございます。

川田委員 お答えになっていないと思うのです。

 これは郡司氏から見せていただいてデジカメで撮影したわけです。私はそれをここにきょう印刷して持ってきたわけですけれども、これはトラベノールというのが一番上に書いてあります。なぜこれを郡司氏が隠してきたのか、そして、菅直人氏が出してきた郡司ファイル、その一ページ目から抜かれたのか。

 このことは、トラベノールの回収報告について郡司篤晃氏はずっと言い続けてきたのです。それは民事裁判でも、そして国会の証言でも、マスコミのインタビューでも、トラベノールの回収報告についてはさほど重要な情報でないと判断したから、第一回のエイズ研究班の会議にも報告をしなかったと思うと言い続けてきたのです。でも、この個人メモにはトラベノールということが書いてあるのです。ですから、このメモを出せば、会議できちんと報告をしたということが知られてしまう、そのためにこの個人メモ、差しかえを行ったのです。

 私は薬害エイズの原告として、厚生省と闘ってまいりました。大変卑劣なところだと思ってきました。八三年当時、情報を一切出しませんでした。そして、きょうも坂口厚生大臣は、先ほど山井議員の質問にお答えになりましたときに、大谷さんの本を読まれて、そして、そのとき国際会議で隔離してはならないという決議がなされ、そして政府に勧告すべきだということがあった、しかしそれは一切外に出なかったということを知って愕然としたというふうにお話をなさいました。

 私は、この日本という国は、まさに情報の隠ぺい、隔離の社会だというふうに思ってきました。とても悔しいです。なぜ八三年だけでなく、九六年以降も、そして現在に至っても情報の隠ぺいをし続けるのか、そのことについて納得がいきません。ぜひ、今情報公開法に基づいて、どのようなものが押収されていったのか、その押収目録を出してほしいということを請求しております。必ず出していただきたいと思います。

 それは、私は今回のハンセン病裁判についても、これから質問をしたいと思いますけれども、同じことが言えると思っています。

 私は、実はハンセン病の療養所を知ったのは一九八七年です。一九八六年十二月に、私は息子龍平に、感染しているということを話しました。当時息子は十歳でした。翌年、一九八七年一月、厚生省は、日本で初めての女性のエイズ患者が神戸にあらわれたと発表しました。そのとき、女性の患者は百人以上の男性と性交渉を持ったという、全くでたらめなことを厚生省は発表しました。その女性は既に意識がありませんでした。まくら元で、どのくらいの男性と性交渉を持ったか尋ねたとき、百人というところで首を縦に振ったから百人とされました。売春をしていたという女性になっていって、マスコミはスキャンダラスな報道を始めていきました。

 厚生省が発表すると、直ちに兵庫県は対策本部を設置し、この病気を法定伝染病と指定するようにと要請しました。間もなくこの女性は亡くなりました。亡くなった女性の葬儀に女性週刊誌と写真週刊誌の記者が出かけていって、そこに掲げられていた遺影を撮影しました。エイズは怖い、だからエイズ患者・感染者に人権やプライバシーはなくていいのだ、そういう報道が繰り広げられました。当時の新聞は社説にこう書きました、恐怖感を植えつけることが蔓延防止につながる。まさにこれは、日本の厚生行政がとってきたハンセン病患者さんたちに対する同じ政策であります。同じ思想です。そして、私たちはこのとき驚いたわけですけれども、震え上がりました、マスコミは一色に塗りつぶされていって、例外はなかったのです。

 そして翌月、高知事件というのが起きました。皆さんも御記憶にあると思います。高知で、妊娠している女性がHIVに感染している、そしてその女性に感染させたのは血友病患者であるということも報道されて、血友病患者はまるで加害者のように描き出されていったのです。そのときお医者さんは、産むべきでないというコメントも出しました。産む産まないを決めるのはお医者さんでしょうか。マスコミでしょうか。国家でしょうか。もしそのようなことが行われたならば、それはまさに恐ろしい優生思想であり、ナチの優生思想につながるものです。

 そして、そのとき、厚生省はエイズ予防法という法律を打ち出してきたのです。感染させる可能性があると判断した場合、その患者・感染者を取り締まっていいという法律です。これは、らい予防法を下敷きにした法律でした。私は、この法案が出されてきて、二年間、国会や厚生省に足を運びました。全国の血友病の子供を持っているお父さん、お母さんに呼びかけて、血友病の子供を守る親の会というのをつくって反対運動を行ったのです。しかし、八八年十二月に国会はこの法律をつくりました。先進国でこのような人権侵害の法律をつくったのは日本だけでした。私はそのとき、とても悔しかったです。どうしてこの日本では、いつも隠ぺいと隔離の思想が、そのもとで法律がつくられていってしまうのだろうか。

 私は、今回、この元ハンセン病の患者さんたちが国を相手の裁判に立ち上がったとき、勝てるだろうかととても心配でした。しかし今回、すばらしい内容の判決が出されました。心が震えました。今回の判決は、国の責任、そして国会がこのようなひどい法律をつくり、そしてこれを放置してきた、それを断罪しています。私は八七年、八八年、国会に通い詰めました。そして今回、このハンセン病裁判で判決が出た日、国会議員でいる、そのことに運命的なものを感じました。私は、一人一人の国会議員の責任が問われていると思いました。

 坂口厚生大臣は、自分の考えをしっかりと持って小泉首相と相談をします、そうお答えになられました。今、小泉首相の人気は大変なものです。なぜそのように人気があるのか。それは、解党的出直しと言って、変えたい、変えようということで訴えを行いました。そして密室政治ではなく、派閥政治ではなく、開かれた選挙を行い、そして一本釣りというようなやり方で組閣も行いました。官僚の用意した答弁書を読むのではなく、自分の言葉で話をする、そのことで多くの人たちは、今の政治が変わるのではないか、そういうことを期待しているわけです。

 私は、息子龍平が十八歳のとき実名公表することを決意し、そして集会で訴えた言葉を忘れません。

 十八歳の夏、横浜で国際エイズ会議が行われました。そのときに、世界じゅうの被害者たちがやってきて、ノーモア・サイレンス、もう黙っているのはやめよう、世界の血友病患者は連帯して闘おうと呼びかけられました。そのとき、どうしてこの日本では隠れるようにして生きなければならないのだろうか、そんな社会はおかしいのではないか、息子龍平は、名前を出して闘うことを決意しました。原告団の会議で、こう発言しました。名前や顔を公表できない人の気持ちや立場を尊重します、でも僕は、名前や顔を出して生きていきたい。

 私は、その言葉を聞いたとき、とてもうれしく思いました。だれかに言われて決めるのではなく、自分自身が自分の生き方を決めた、そして、それぞれいろいろな闘い方がある、でも自分は、名前を出して生きていきたい。

 私は、ここで坂口厚生大臣にお願いをしたいと思います。心からのお願いです。

 今回の判決、これは、私たちに与えてくださった最後のチャンスであります。国会議員がこのような法律を放置してきたのです。そして、裁判長がすばらしい内容の判決を出してくださったのです。そのことにきちんとこたえることが、今、私は、国会に籍を置いている者の責任だと思っています。だから、だれかに言われるのではなく、御自身がきちんと判断し、そして、ぜひ控訴しないでほしいのです。これが、私の心からの願いです。

 らい予防法が廃止されてから、元ハンセン病の患者さんたちが裁判を始めたのです。なぜだと思いますか。なぜ、法律が廃止されてから裁判に闘い始めたのか。それは、何よりも人間の尊厳を取り戻したい、そのことなんです。だからこそ、今回、この判決を受けて、控訴しない、控訴させない、これが、私たち一人一人、やっていかなければならないのではないかと思っています。一人の力は小さいです。でも、私は、一人から始まると思っています。

 どうか、日本じゅうが注目をしております。そして、日本だけではありません、世界じゅうが注目をしております。今度の判決に対して、国がどういう態度をとっていくのか、国会議員がどのような態度をとっていくのか。私は、ぜひ坂口厚生大臣が、しっかりとハンセン病の患者さんたちの思いに立って判断を下してほしいと願っています。

 私は、十九歳で、どんなことが起きるかわからない、勇気を持って立ち上がった息子龍平、そして、それに続き、大阪の原告である家西さんも、実名公表し、闘い始めました。どんな思いで、今、薬害エイズの被害者、水俣病の被害者たち、そしてハンセン病の患者さんたちが国の行方を見守っていることでしょう。必ず控訴させない、そのために先頭に立って行動してくださることをお願いいたします。

 これで私の発言を終わらせていただきます。

谷畑委員長代理 次に、樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。

 本日発言の機会を賜りましたこと、委員長さん初め委員の皆様方にまず感謝を申し上げます。

 また、大臣、副大臣、御就任まことにおめでとうございます。特に坂口大臣は、日本を代表する政策のエキスパートである、論客である、そして、厚生労働分野に限らず多くの成果を上げてこられた方でありまして、日本の政策をリードしてこられた第一人者であると私は思っているわけであります。一方で、大変な人格者であるというふうにも同僚の先生方から伺っているわけであります。どうか、天下国家、国民の視点に立ちまして、我々の生活に最も身近な分野であり、最も大切な、我々の生活に密着した部分であります厚生労働行政につきまして力強くリーダーシップを発揮していただきたいと願っているわけであります。

 今回は、厚生労働委員会になりまして私は初質問でございます。自由党では最年少の議員でございますので、どうかお手やわらかにお願いをいたします。

 さて、一問目からでありますけれども、質問通告をしておかなくて大変恐縮なんですが、大臣に一問伺いたいと思います。

 先般、厚生労働大臣あいさつということで承ったわけであります。私は、この六ページのあいさつ文を見て、一点、どうしても気にかかる、どうしても気になることがあるわけであります。私の思い過ごしであればそれでいいのかなと思うのでありますけれども、どうしても気になって、質問しないつもりでいたのですけれども、ちょっとお伺いをしたい。

 それだけもったいぶってもそんな大したことではないのでありますけれども、要は、厚生労働行政は多岐にわたります、大変な分野にわたるわけですけれども、この六ページの紙の中で、冒頭の四行が、失業率について書かれているわけであります。

 今、大変な雇用情勢、失業率が厚生労働分野では直近の一番重要な問題だということで、多分、一番前に置かれたものだと私は推察をするわけでありますけれども、旧労働省の流れをくんでおります厚生労働省でありますから、既に数字をつかんでいて、もしかしたら、失業率が、場合によっては五%に乗ることも踏まえた上で、冒頭で失業率の問題について触れているのではないかな。

 うがった見方といえばうがった見方なのかもしれませんけれども、そもそも、これから構造改革を進める上で、失業率が上がるとも限らないわけでありますけれども、まさか大臣、失業率の数字については厚生労働省に日本で一番最初に入るはずですし、今既に入っていらっしゃると思うのであります。それが公になっていないだけだと思いますが、もしかしたら五%にも乗るかもしれないことも、私は大変な心配をいたしているのでありますけれども、大臣、そんなことはございませんですね。よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 失業率につきましては、御承知のとおり、現在は四・七%でございます。昨年暮れには四・九までいったわけでございますが、ことし、四・七まで少し下がったわけでございます。

 一方、労働省がとっております有効求人倍率、これは、去年一年間は、一月から十二月まで、なだらかですけれども、どんどんとよくなってまいりまして、〇・六四まで回復したわけでございます。これは、去年の一月のことを思いますと、かなりよくなっております。この十二カ月の間に一度も後戻りすることなしによくなったわけでございます。有効求人倍率の方は、ことしになりましてから悪くなり始めまして、今〇・六一までまた下がってきたわけでございます。

 御承知のように、有効求人倍率は半年先ないし一年先の雇用状況をよく反映するというふうに言われておりますだけに、昨年は上昇してきたものですから安心をいたしておりましたが、ことしはこれが少し低下をし始めましたので、正直なところ少し心配をいたしております。

 そうしたこともございますが、現在の雇用情勢に加えまして、これから先、不良債権の処理の問題でございますとか構造改革等の問題が出てまいりましたときに、それらが余りにも急激なスピードで進むというようなことになってまいりますと、失業率も四・七からさらに悪化することも覚悟をしなければならないのではないかというふうに思います。

 私は、そういうふうな危険性もはらんでおりますので、この四・七という現在の失業率をこれ以上悪化させないように、できれば四%台におさまっておれるようにどうしたらいいかということを考えておかなければならないというふうに思っておりまして、それに対する対応としてさまざまな雇用政策というものをつくっていかないといけないというふうに思っております。

 具体的に、今各分野別の、ここをこういうふうにやったら大体これぐらいの雇用が出てくるのではないかという具体的な問題も今詰めているところでございます。とりわけ不良債権と関係のあります業界、サービス業でありますとか、あるいは流通業でありますとか、それから建設業でありますとか、不動産が一番不良債権が多いわけですけれども、しかし、ここはそんなに、雇用者の方は六十万少々ぐらいでございまして、そんなに雇用率が高いわけではございませんので。一番多いのがサービス、流通そして建設、この辺のところは一千五百万、一千万、五百万と大体このぐらいの数字でございますから、この辺のところを中心にしながら、その部分の対策をどうするかということもより具体的に考えておかなければならないと今思っているところでございます。

樋高委員 先ほど環境委員会でもちょっと雇用の話をいたしました。いわゆる新しい産業をつくり上げて、創出して育てて、そして雇用を創出しなくちゃいけないということで、エコビジネスについてさっき環境大臣とちょっと議論をしたところなんでありますけれども、どうかこれ以上本当に失業率が悪くならないように、やはりセーフティーネットをきちっと整備すること。

 やはり、今我々庶民というか国民、市民は何が不安かというと、将来が不安、今の生活が不安、お父さんの会社が不安、日々の生活が不安、病気が不安、不安だらけであります。そういった意味におきまして、きちっとした職場がある、そして、そこで生き生きとやりがいを持って働けるということは本当に基本的な部分であるというふうに思いますので、どうかこれ以上失業率を悪くいたしませんように、構造改革だからといって失業率を上げていいということではないわけであります。そのことは重々大臣も御承知のことと思いますけれども、強く要望をさせていただきたいと思います。

 さて、この後、食品の安全の問題につきまして取り上げさせていただきたいと思います。

 我々国民が毎日口にいたします食べ物が安全なものであること、安心して食品を口に入れることができるということは切実な願いでありまして、当然そうでなくてはいけないと思うわけであります。大臣のあいさつの中でも、国民の健康と安心を確保するため、食品などの安全性確保対策に万全を期すとおっしゃっておいででございます。

 しかしながら、現実はいかがでしょうか。サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、O157など、食中毒事件が毎年のように大規模に発生をし、狂牛病、食品添加物や残留農薬などの化学物質の問題に加えまして、クローン牛、また遺伝子組み換え食品、また一方で環境ホルモンなど、近年、科学の進歩によってもたらされた食品の安全性につきましても世の中の関心が高まっているわけであります。

 また、食べ物の多くを日本は輸入に頼っているわけでありまして、食の安全基準が国によって違っているため、必ずしも、国内に流通しているすべての食品が安全であるとは少なくとも言い切れないのが現状であります。

 安全性についての不安は大きくなる一方であります。幾ら自己責任だと言われたところで、最近の状況、そういった流れを冷静に見ますに、もはや消費者個人だけの判断では食品の安全性を確保することは困難であります。現実に無理であります。やはり行政が責任を持って安全を担保しなくてはならない時代にいよいよなったと私は認識をいたしているわけであります。そのための構造改革、つまり、社会的な仕組みを整備しなくてはならないと思うわけであります。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

 そこで、今回、食品衛生法に着目をさせていただきたいと思います。この法律は、御案内のとおり、戦後間もなく成立をしたものでありまして、いわゆる粗悪品ですとか不衛生な食品の規制が当初の目的でありました。

 食品衛生法の第一条では、このようにうたわれております。「この法律は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」つまり、国民の健康のために食品の安全性を確保するという言葉がどこにも実は入っていない。旧来型の法律の典型でありまして、あくまで生産者の立場からつくられた法律でありまして、消費者の立場に立っていないということを御指摘申し上げたいわけであります。

 したがって、この第一条の目的の文言に、食品の安全性の確保という文言を入れるか、もしくは全く新しく、消費者の立場に立ちました新たな食品衛生法をつくらなければならないという結論に至っているわけであります。新しい法律を制定するとはいかないまでにいたしましても、この食品衛生法の目的、第一条に、国民の健康のために食品の安全性を確保するという趣旨を明記する必要があるのではないかと私は考えます。

 しかしながら、一方でこういう反論もあります。食品衛生法は憲法二十五条の規定を踏まえたものであって、現在の食品衛生法が国民の健康の保護を目的としていることは自明でありますと。また一方で、消費者保護に関しましては、御案内のとおり、消費者保護基本法で規定されていて、食品衛生法はその関連法令として消費者保護の考えに基づいた法律になっているから、そんなことをわざわざやる必要ないじゃないかという御意見も聞かれるわけであります。

 しかし、私はこのように考えます。

 まず一点目でありますけれども、憲法や基本法などに定められている場合にありましても、個別法におきましてその目的を明示して、その目的に沿って法制度を整備することが求められているわけでありまして、そうした例はほかの法律にも存在するわけであります。

 例えば、個別法の目的規定にいわゆる国民の保護、消費者の保護を明記している事例でありますけれども、消費生活用製品安全法という法律があります。第一条の目的のところでは、「この法律は、消費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生の防止を図るため、特定製品の」「安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進し、もつて一般消費者の利益を保護することを目的とする。」とはっきりうたっている。

 また一方で、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、いわゆるJAS法という法律でありますけれども、この第一条でも、「この法律は、」「農林物資の品質に関する適正な表示を行なわせることによつて一般消費者の選択に資し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」とうたわれているわけであります。

 また、かつて平成四年から十二年まで行われておりました残留農薬基準取り消しを求める訴訟におきまして、いわゆる東京地裁と東京高裁でありますけれども、厚生省が裁判で陳述しております。食品衛生法は国民個々人の健康などの権利及び利益の保護を意図した法律ではない、消費者は、行政が事業者を取り締まることでその利益を享受する立場であると陳述しているわけでありまして、消費者の立場が余りに弱過ぎるのではないかと思うわけであります。

 また一方で、消費者保護基本法は、消費者保護の目的のために、国は必要な関係法令の制定または改正を行わなければならないと規定しているわけであります。しかし、この間の食品衛生法の改正はあくまで小幅な改正にとどまっているわけでありまして、改めて、消費者保護基本法の趣旨に沿った内容に早期に改正されることが求められていると考えるわけであります。

 また一方で、平成七年の食品衛生法改正のときでありますけれども、衆議院の厚生委員会、今から六年前でありますけれども、附帯決議が採択されております。「食品の安全を確保し、積極的に国民の健康の保護増進を図るため、食品行政の一元化と統一的な食品法の制定とを指向し」との附帯決議が採択をされているわけであります。

 食品衛生法は、国の裁量権のみを規定して、この権限で事業者を取り締まるものでありまして、国の責務規定がない法律となっているわけであります。国民の健康のために食品の安全性を確保するという趣旨が目的に明記されることが、そして国の責務もあわせて明記されるということが必要であると私は考えるわけでありますけれども、いかがお考えでしょうか。

桝屋副大臣 樋高委員から食品衛生法、特に第一条の目的規定について、るる、今私たちも随分いろいろな方から伺っておりますさまざまな論点を、まさに全部取りまとめていただいて御主張いただきました。第一条の中に、食品の安全性を確保する、この目的規定をぜひとも入れてもらいたい、そういう時代が来ているのではないか、こういうお話をいただきました。

 私、ここで申し上げようと思っておりました憲法第二十五条、これで反論を申し上げようと思っておりましたら、そのまま御紹介をいただきましたので、委員も先刻御承知であります。いろいろ議論がございましたが、私どもは、食品衛生法第一条、委員おっしゃったように憲法二十五条の規定に根拠があるというふうに思っておりまして、したがいまして、今日もなお食品衛生法が国民の健康の保護を目的としているということは明らかだというふうに思っているところであります。

 ただ、今委員からいろいろ御指摘のありました、例えば、例で言われましたけれども、消費者保護基本法との関係の中で、食品衛生法の改正というのはなかなかできていない、小幅だった、消費者の立場が弱過ぎるというような御指摘もるるいただいたところであります。時代にマッチしていないではないかという御指摘もいただいたところでありますが、御指摘の趣旨も何度も聞かせていただいております。

 実は食品衛生法、今日まで、消費者保護基本法が昭和四十三年でありますが、その前後、主な食品衛生法の改正の流れを見ましても、四十七年には食品等の検査制度の実施、これはきょうの午前中も議論がありましたが、検査命令制度でありますとか、平成七年には化学的な合成品以外の添加物に対する指定制度の導入でありますとか、あるいは栄養成分等の表示基準制度の導入とか、さらには最近では、十三年にアレルギー物質を含む食品を原材料とする食品を表示対象に追加する。こうした改正も、食品衛生法の改正ということも取り組んできているところでありまして、現実的には、消費者である国民の強い要望を受けて、私は、今なおこの制度は生きておりますし、十分機能しておる、こういうふうに思っているところであります。

 委員御指摘のように、食品衛生法第一条の目的の中に食品の安全性、安全確保ということを入れるということについて、いろいろ議論の御紹介もありましたけれども、立法論としてもここは慎重に検討する必要があるというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、私どもは、食品衛生法の運用は、国民の健康のための食品の安全性を確保するという観点でいま一層取り組んでいきたい、このように思っているところであります。

樋高委員 今お話ありましたけれども、この要望につきましては、日生協さんが、もう御存じでありますけれども、今、請願署名を集めていらっしゃる。昨日伺いましたところによりますと、一千三百八十九万筆、約一千四百万筆。これは、日本の人口の十人に一人以上、本当に赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんまで含めて、十人に一人が実は署名をしているという重みがある請願、要望なのであります。

 そして、実は百を超える自治体からも意見書が上がっているわけでありまして、今、桝屋副大臣、私も去年まで厚生委員会で御一緒させていただいて、さまざま御交誼、御指導いただいてきたのでありますけれども、若干失望せざるを得ないお言葉でなかったかなと私は思うわけであります。

 坂口大臣にお伺いをいたしますが、これは一番重要な点でありますので、日本人の約十人に一人を超える方々が、これはおかしいといって署名をなさっていらっしゃる、その重みをかんがみますときに、先ほどの、あくまでああいった御答弁でありましたけれども、そういうふうにおっしゃる気持ちもわかりますし、そのように言わざるを得ない部分も確かにあるし、きっと心中お察しはいただいていることと私は思うわけでありますけれども、しかし、ここは勇気を持って一歩踏み込んでいただきたい。これこそ、総理が進めている構造改革ではないかと私は思うのでありますが、大臣、いかがでございますでしょうか。

桝屋副大臣 大臣、また多分私の後に御答弁をされると思います。

 今委員御指摘のありました、日本生協さんが大変な署名活動をされて、国民的な運動の中で強い要請をされておられるということは私自身も十分伺っており、もう昨年来から伺っておりまして、御要請をいただいております請願項目も一つ一つ私どもも聞かせていただいておりまして、あるいはまた内容も精査をしているところでありますが、委員も御承知だと思います。

 そういうことも受けて、実は、きょうは福島前総括政務次官も座っておられますが、前総括政務次官のときからこうした内容をいただいて、これはやはり、食の安全を確保するということを、今の署名の重さというものを受けとめて取り組まなければならぬということで、実は厚生労働省、旧厚生省挙げて食の安全ということを再度総検討いたしまして、食の安全推進アクションプランというものを策定させていただいたところであります。

 これについては相当、さまざまな分野について、それこそ十四項目について一つ一つ点検をし、今何が欠けておる、それから将来を展望して、中期的に展望して今何をしなきゃならぬかというようなことまで検討いたしまして、食の安全推進アクションプランというものをつくらせていただいて、そして今取り組みをさせていただいているところですが、この内容は、私どもは日本生協さんがおっしゃっている内容と十分かみ合える内容だというふうに思っておりまして、こうした内容を材料に、生協さんがおっしゃっていることも今後とも研究をし、検討もしていきたい、このように思っているところであります。

樋高委員 全国で一千四百万人の方が署名する案件というのは、私はそうたくさんあるものではないと思うわけであります。どうか、今、新しい内閣ができ上がったわけでありまして、全国民が注目をしているわけでありますから、むしろここで思い切って、確かに痛みを伴う部分があるのかもしれませんけれども、でも、そこで勇気を持って一歩踏み出す、きっと踏み出してくださるものと私は理解をいたしているわけであります。

 時間がありません、次に進みたいと思います。食品衛生法に関する政策決定過程への消費者の参加と情報公開につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 食品衛生法は、あくまで行政が事業者を取り締まるという性格が強くて、消費者について一言も触れていない、るる申し上げてまいりました。食品については、国民みんながわかる、そして消費者が参画して、いわゆる納得できる食品安全行政でなければならないと思うわけであります。

 そのためには、ずっと前々から言われてきたことでありますけれども、食品の安全行政に関する施策について積極的に情報公開を進める、そして、消費者の参画を法律にきちっと明記するということが必要ではないかと思うわけであります。

 しかし、このことに対しての反論は、食品衛生調査会の審議内容を原則公開しておりまして、消費者参画についても、同調査会の常任委員十八名中二名が消費者代表になっているんだ、また一方で、パブリックコメントについては、インターネットなどで広く国民の意見を募集して政府の施策に反映をしている、また、厚生省のホームページにおいても情報提供を行っているじゃないかという御反論でございました。

 しかし、私はこう考えるわけであります。

 食品衛生調査会の議事資料に関する公開規定は、いわゆる部会終了後に閲覧すると決められていますけれども、議事に使われた資料についてはコピーが禁止されて、見て書き写すしかできませんし、遺伝子組み換え食品の安全性に関する資料についても、実は全国で二カ所だけ、東京と大阪のみで閲覧できるだけであります。しかも、資料のコピーは禁止されておりまして、公開日時も週に三日間というふうな限定的なものであります。

 また、インターネットと言われましても、今まだ普及率は二割ということでありますから、ホームページだけでは到底足りなくて、複数の媒体を併用する必要があると思うわけであります。

 そもそも、審議会への消費者の参加は、いわゆる学識経験者の拡大解釈で実施されている。消費者の参画を明文化することが求められているわけであります。実質的な論議が行われる専門部会が十五設置されておりますけれども、消費者代表はそのうちの一つの部会、いわゆる表示特別部会にしか参加できていないのが現状であります。消費者の参加する部会も拡大をすることが必要なのではないかと思うわけであります。

 また、国際的な食品の安全に関する規格基準を策定する機関、いわゆるコーデックスでは、食品の規格基準を策定する際の消費者参画、そして情報公開を明文化、はっきりと文書になって書かれているわけであります。しかし、食品衛生法には、情報公開、また消費者の参画について明文化された規定はないわけであります。

 このことにつきまして、いかがお考えになりますでしょうか。

桝屋副大臣 続きまして情報公開、それから消費者の参画という点で厳しい御指摘をいただきました。

 私が反論を用意しておりましたら、全部言われましたので反論ができないわけでありますが、委員おっしゃるように、まだまだ不十分な点もあるかと思いますが、できることについては、本年四月から情報公開法も施行されたわけでありまして、私どもも懸命に取り組んでいきたい、このように思っております。

 先ほど申し上げました食の安全推進アクションプラン、これは委員はホームページで見ていただいたでしょうか、相当アプローチが、アクセスが見やすくなっておりまして、全部出すようにしておりまして、そうした努力もしているわけであります。

 それから、ホームページだけではだめだ、複数の媒体でというお話もいただきました。

 私も先日、検疫所を自分でこの目で見てまいりましたけれども、そこへいらっしゃる関係者の方にはいろいろなパンフレットも用意しておりますし、平成八年から毎年「食品中の残留農薬」という書籍も出しておりますし、それから各種パンフレット作成、積極的に、できる限り取り組んでいるところであります。

 あと、利益代表、これも随分いただいている点でありまして、委員も利益代表ということで参画いただくことの難しさということも御理解をされた上でおっしゃっているんではないかと思うんですが、消費者を代表する立場の委員にはできるだけ参画をしていただくということで努めていきたい、このように思っているところでございます。

樋高委員 次に、食品の表示についてであります。

 食品衛生法第十一条には公衆衛生の見地からということで書かれているわけでありますけれども、食品の表示は主に危害の防止を目的に行われているわけでありまして、これはもちろん大切であります、それはそれで。しかしながら、消費者が食品を選ぶための表示、例えば、今目の前にある食べ物、食品につきまして、これは成分はこれこれで、アレルギーの方は注意してくださいというふうにちょっと一言書いてあるとか、例えば、環境ホルモンを考えて容器の材質はこれこれですから大丈夫ですよとか、また一方で、遺伝子組み換えの品種は、原料段階でもこの食品は使用しておりませんよとかしっかりと表示をして、納得して安心して食品を購入し、そして口にすることができる体制をつくっていかなくてはいけないと思うわけであります。

 したがいまして、食品の表示、第一条の目的に、消費者の選択に役立つという趣旨を加えることが必要ではないかと思うわけであります。公衆衛生の見地からの表示は、単なる衛生上の危害発生防止にとどまるのではなくと。

 例えば、食品添加物表示のように、食品の内容を理解し選択するための情報として添加物表示が重要との考え方に基づいて実施するものであるからという御反論でございましたけれども、厚生省は、消費者が求める遺伝子組み換え食品の表示については、安全性に問題はないゆえ、食品衛生法上から表示を行うことは必要ないと約四年間、平成八年から十二年まで説明し続けてきたわけであります。こうした対応の背景には、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、」という現行の食品衛生法の目的規定の限界がある、私は明らかな限界があると感ずるわけであります。

 そして、厚生省さんが監修いたしました「早わかり食品衛生法」でも、食品表示の目的について、消費者や関係営業者に対し、その食品等に関する適切な情報を提起し、これらのものの合理的な認識や選択に資する上で不可欠なものであると記載されておりまして、この点からも、食品衛生法の表示の目的に、消費者の選択に役立つという趣旨を明記することが望ましいと思うのでありますけれども、いかがお考えでしょうか。

桝屋副大臣 今度は十一条の表示のお話でございます。

 これも随分議論を御紹介いただきました。しかし、食品衛生法第十一条の規定については、今委員も御紹介いただきましたけれども、単なる衛生上の危害防止にとどまるものではないというふうに我々も解釈をしておりまして、今御紹介いただいた添加物表示対象として、例えば添加物を表示対象としているのは、国民の健康に対する関心の高まりなどからという御紹介をいただきましたけれども、やはり国民が食品の内容を理解して選択するための情報として添加物表示が重要だという考え方に立って今既に行っているわけであります。

 消費者の選択に役立つということは、既に我々もまさにアクションプランの中でそういう方向で取り組んでおるということで御理解をいただきたいと思います。

 もちろん、本年四月から遺伝子組み換え食品についての表示も義務化したところでありまして、アレルギー物質を含む食品についても同じく表示を義務化したところであります。そうした取り組みをしているということで御理解をいただきたいと思います。

樋高委員 日生協さんが取り組んでおります請願項目がほかにもたくさんあるのですけれども、ちょっと朗読をさせていただきます。「全ての添加物の指定制度への移行を計画的に進めること」、そして「農薬・動物用医薬品の残留基準の設定を計画的に進め、残留基準の決められていない食品の流通・販売ができないようにすること」、そして「化学物質や新技術に関わる食品・容器包装の新たな不安や疑問に対応した予防的な調査・研究の充実、検査体制の充実など、法制度の運用を強化すること」。強く要望させていただきたいと思います。

 時間でございますが、最後、一問質問させていただきたいと思います。

 一九九九年、今から二年前でありますけれども、いわゆるサルモネラ食中毒の事件が起きました。これは、四十六都道府県で千六百一名の食中毒が起きたわけであります。そして去年、厚生委員会でも集中審議を行いましたけれども、いわゆる加工乳による黄色ブドウ球菌食中毒、これは全国で一万四千七百八十名以上ということのようであります。そしてことしに入りましてから、いわゆる加工品によるO157の食中毒、栃木県で発生をし、七都県で二百八十八名、これはわかっているだけの数字であります。

 いわゆる散発的に、毎年のように定期的に、しかも集団で、集団でといっても二、三十人の話ではなくて、二、三百人の話でもなくて、二、三千人の話でもなくて、一万を超える、とても信じられないような食中毒事件が起きているわけであります。しかも毎年起きている。やはりこれらには、きちっとした対応を国で最低限していかなくちゃいけないと思うわけであります。

 例えば、けさ皆様方も朝食をとった、そして先ほど昼食もとられたと思いますけれども、その中に、もしかしたら何か入っていた可能性もあるわけであります。また、今晩、この後、夜、家に帰りましておいしいものを食べたら、もしかしたらその中にいろいろな菌が入っているかもしれない。本当にそういう、我々は食べ物と切っても切れない関係にありますから、この食中毒の問題というものも大変重要な問題であると思うわけであります。

 これらの問題につきましてどのように対応しようとしていらっしゃるのか、厚生大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 食中毒も時代とともに大分変わってきたような気がしますね。昨年の雪印の一件なども、今までは余り考えられなかったような形で起こってきておりますしいたしますから、大変巧妙と申しますか、今まで考えられなかったような形で起こってきている。

 食中毒というものは、今までの、例えば魚でありますとかあるいは何かのあえ物でありますとか、そうしたことが中心で、まないたをきれいにしておけばいいとか、ただ単にそうしたことではなくなってきているという気がいたします。したがいまして、食中毒に対します処理要綱というのも、今までとは、うんと幅も広がり、そしてまた内容も変化を来しておりますから、もう少しあらゆることを想定した食中毒対策というものを検討しておかないと間に合わないのではないかというふうに思っております。

 O157なども、これは食中毒とは少し違いますけれども、しかし、こうしたO157なども体に対する一つの被害を与えるわけでございますから、食中毒とあわせてそうした問題も注意をする必要がございますしいたしますから、食中毒並びにその周辺の疾病、細菌、ビールス等々に十分に配慮した体制というものが大事になってきたなというふうに思っております。

 これはもう煮ても焼いても起こるというものはありますから、そうしたことも注意をしなければなりませんし、きょう御指摘いただきましたとおり、全体にわたりまして、食品の問題につきましての法律ができましてからかなり日時もたっておりますし、現状と合わなくなってきている部分もありますから、そうしたことも踏まえながら少し食中毒の問題も整理をしたいというふうに思います。

樋高委員 我々の生活に密着した食べ物の安全、やはり安心して食べ物を食べられるということは、もちろん健康のためでもありますし、また精神的にも、おいしいものを食べる、そのことを、冗談ではなくて、どうか厚生労働省さんが国の責任で担保するということをしっかりとこれからも行っていただきたいと思うわけであります。強く要望させていただきまして、きょうの質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、来る二十三日水曜日午前九時理事会、午前九時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十六分散会




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