衆議院

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第14号 平成13年5月25日(金曜日)

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平成十三年五月二十五日(金曜日)

    午前九時四十二分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      佐藤  勉君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西川 京子君

      野田 聖子君    林 省之介君

      原田 義昭君    松島みどり君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    吉野 正芳君

      家西  悟君    大島  敦君

      加藤 公一君    金田 誠一君

      釘宮  磐君    古川 元久君

      三井 辨雄君    水島 広子君

      山井 和則君    青山 二三君

      江田 康幸君    樋高  剛君

      小沢 和秋君    木島日出夫君

      阿部 知子君    中川 智子君

      小池百合子君    川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   政府参考人

   (国税庁調査査察部長)  金井 照久君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

五月二十五日

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(岸本光造君紹介)(第二一〇四号)

 同(中山利生君紹介)(第二一〇五号)

 同(中林よし子君紹介)(第二一四七号)

 同(細田博之君紹介)(第二一四八号)

 同(松原仁君紹介)(第二一七〇号)

 同(丹羽雄哉君紹介)(第二一八二号)

 同(額賀福志郎君紹介)(第二一八三号)

 同(稲葉大和君紹介)(第二一九八号)

 同(海部俊樹君紹介)(第二一九九号)

 同(佐田玄一郎君紹介)(第二二〇〇号)

 同(西田司君紹介)(第二二〇一号)

 同(細野豪志君紹介)(第二二〇二号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二二四六号)

 同(山本公一君紹介)(第二二四七号)

 同(横路孝弘君紹介)(第二二四八号)

 男性助産婦の導入反対に関する請願(金田誠一君紹介)(第二一〇六号)

 同(中川智子君紹介)(第二一〇七号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二二一〇号)

 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(金田誠一君紹介)(第二一〇八号)

 同(丹羽雄哉君紹介)(第二一八四号)

 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(金田誠一君紹介)(第二一〇九号)

 同(中川智子君紹介)(第二二四九号)

 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(金田誠一君紹介)(第二一一〇号)

 同(中川智子君紹介)(第二一一一号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二一八六号)

 マッサージ診療報酬(消炎鎮痛処置)の適正な引き上げに関する請願(金田誠一君紹介)(第二一一二号)

 同(中川智子君紹介)(第二二五〇号)

 同(三井辨雄君紹介)(第二二五一号)

 社会保障の拡充に関する請願(伊藤忠治君紹介)(第二一四六号)

 同(加藤公一君紹介)(第二一八一号)

 同(左藤章君紹介)(第二二四五号)

 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第二一四九号)

 同(岩屋毅君紹介)(第二一七一号)

 中国帰国者(残留孤児・婦人)の老後の生活保障に関する請願(原田義昭君紹介)(第二一五〇号)

 小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願(松原仁君紹介)(第二一六九号)

 食品の安全を確保するための食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(松原仁君紹介)(第二一七二号)

 同(加藤公一君紹介)(第二一八五号)

 介護保険の改善と高齢者の医療費負担増の中止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二一九六号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二一九七号)

 雇用確保、働くルールの確立と社会保障の充実に関する請願(志位和夫君紹介)(第二二〇三号)

 年金制度の改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二二〇四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二〇五号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二二〇六号)

 同(中林よし子君紹介)(第二二〇七号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二二〇八号)

 同(松本善明君紹介)(第二二〇九号)

 じん肺根絶に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二二三六号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二二三七号)

 同(大島令子君紹介)(第二二三八号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二二三九号)

 同(児玉健次君紹介)(第二二四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二四一号)

 同(春名直章君紹介)(第二二四二号)

 同(松本善明君紹介)(第二二四三号)

 リンパ浮腫に対する治療の充実に関する請願(中川智子君紹介)(第二二四四号)

 中小自営業の家族従業者等に対する社会保障の充実等に関する請願(中川智子君紹介)(第二二五二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 確定給付企業年金法案(内閣提出第三四号)

 確定拠出年金法案(内閣提出、第百五十回国会閣法第二一号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、確定給付企業年金法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房審議官木村幸俊君、国税庁調査査察部長金井照久君、厚生労働省労働基準局長日比徹君、年金局長辻哲夫君及び政策統括官坂本哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大島敦君。

大島(敦)委員 おはようございます。民主党・無所属クラブ、大島敦でございます。

 先般、ハンセン病の裁判に関しまして、政府が控訴しないという御決断、決定に対しまして、坂口厚生労働大臣の大きな力が働いたと私は考えております。まことにありがとうございました。そして、今後ともハンセン病の患者だった方たちが正しい方向で救済されることを心より望む次第でございます。

 それでは、確定給付企業年金の質疑に入りたいと思います。

 まず、確定給付企業年金は、労使間で定められた年金規約でその給付内容が定められております。その内容は労働条件の一つと考えますが、それに対する御所見はございますでしょうか。

日比政府参考人 退職手当あるいは退職金と呼ばれるものにつきましては、支給条件が明確であること等々一定の要件を判断した上ということになりますが、一般的には労働条件であり、今般の確定給付企業年金というもの、これにつきましては労働条件の一つと考えております。

大島(敦)委員 労働条件の一つであるということで、それでは、この年金規約というのが労働条件の一つであれば、労使間の合意でありますから労働協約に該当すると考えるのですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

坂本政府参考人 年金規約と労働協約との関係でございますけれども、年金規約は大臣の承認を受けて初めて効力を生ずるということで、労働協約とは本来別のものではございます。ただ、単独の企業において実施します規約型の企業年金の場合、労働組合と使用者との間で、書面によって作成され、そしてまた両当事者が署名あるいは記名押印したものであれば、労働組合法で定める労働協約に該当するということになります。

大島(敦)委員 これも確認なんですけれども、会社が今回の企業年金の規約を定める際に、会社としては、一時金もありますし、年金もある、今回の確定給付企業年金もある、今後出てきます確定拠出の年金もある、そうしますと、一つの規約でこれを定めていくと思います。就業規則あるいは退職金規程で全体像を定めて、その中の一部分として今回の確定給付企業年金の年金規約があった場合に、今回の年金規約は労働協約に該当するものでございますので、もしもこの就業規則あるいは退職金規程というのが労使間の合意に基づかないで使用者が一方的に作成したものであれば、今回の年金規約の方が優先されると思いますけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

坂本政府参考人 就業規則等の一方的な不利益変更につきましては、その使用者の権利乱用に当たるということで無効となる場合もあるわけでございますけれども、その就業規則等の変更が有効であるとしましても、確定給付企業年金法案に基づきます年金規約の方の変更がなければ、その年金規約に基づいて、年金の支給は支障なく行われるということになろうと思います。

大島(敦)委員 今回の確定給付企業年金の法律に関しまして、適格年金の方から全部の会社が移行できるという御理解の方が多いと思うんですけれども、今回の確定給付企業年金について、あるいは今後出てくる確定拠出の年金に、適格年金から全部の会社、全部の従業員が移行できないわけなんです。

 これは二つございまして、移行できない会社としては、一つが、今回の確定給付企業年金においては厚生年金に入っている企業というのが条件でございまして、厚生年金保険法の中で、適用除外というよりも例外的に、サービス業とかあるいは農林水産業に関しては、個人としてその業を営む会社、会社というのかな、法人格がなくても、厚生年金に入らなくてもいいというところがございまして、その部分の会社で今入っていない会社があれば、今回の確定給付の企業年金の方には移れないというのが一つあります。

 もう一つが、今の中小零細企業の中ですと、中小零細企業でこういう小さな会社では、労使間の合意によって退職金規程が決まっている会社は少ないんです。使用主の方が一方的に就業規則あるいは退職金規程でそのような退職金あるいは企業年金のあり方を決めている会社が多いものですから、そうしますと、今回の確定給付企業年金では条件として労使間の合意という非常に強い規定があるものですから、その部分の会社が全部移行できなくて適格年金をやめざるを得ないと私は考えておるんですけれども、その辺のところ、御所見がございましたら伺いたいと思います。

桝屋副大臣 現在の適格年金の会社がこれからどうなるかというお尋ねでございますが、一つは、最初に後の方からの問題でございますが、いわゆる労使合意のお話がございました。

 適格退職年金契約のもととなる就業規則の作成または変更につきましては、労働基準法によりまして、労働者の過半数で組織する労働組合あるいは労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならないというふうにされているところでございます。しかしながら、適格退職年金自体は、事業主と信託あるいは生保等の受託機関との契約に基づく制度であるということもありまして、その実施に当たりまして従業員が全く関与していないというケースも実態としてはあるのかな、こういう御指摘だろうと思うんです。

 今回の法案では、こうした点を改めまして、労使で十分に話し合っていただいた上で企業年金の制度設計を行う。その運営に当たっては、加入者に対する情報開示などを通して十分なチェックが行い得る仕組みを整備しようというものでございます。

 したがいまして、まず、就業規則の内容を踏まえて労使合意に基づく規約を作成した上で、受給権の保護が図られる新企業年金に移行していただきたいというふうに我々は思っておるわけであります。

 それからもう一点、厚生年金の適用事業所でないサービス事業者等の事例もお話がございました。

 仰せのとおり、確定給付企業年金は、公的年金である厚生年金に上乗せをする、いわゆる三階部分の年金制度として位置づけられるものでございます。厚生年金が適用されている事業所が確定給付企業年金を導入できるという仕組みになっているわけであります。

 厚生年金の適用を受けていない事業所の従業員については、その公的年金は基礎年金のみでありまして、先生御指摘のように、適格年金があったけれども、ではそれがちゃんと今回の確定給付の形に乗ってくれるかということでありますが、当然ながら、公的年金は中小の事業者にとって基礎年金のみでありますけれども、もとより厚生年金の適用事業所となる道も開かれていることは十分御案内のとおりであります。そういう意味では、まず公的年金である厚生年金に加入していただくことが従業員の老後の所得保障のためには先ではないかというふうに考えているところでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。

大島(敦)委員 厚生年金に事業所が加入した方が、あるいはこれが任意適用事業所に当たるかと思うんですけれども、そちらの方がいいことは確かなんですけれども、中小零細企業の実態を考えてみたときに、どうして企業年金を導入するかというそもそも論になりまして、そのときに、坂口大臣の御答弁の中で、年金というのが退職金の形を変えたものだというような考え方、あるいは、そうじゃなくて、年金は独自であるという考え方もありまして、今の使用者の団体の方あるいは労働組合の方に聞いても、そこのところはなかなか、年金として単体であるんじゃなくて、やはり年金規約の中で、その支払い方法について、何年勤務したからこれだけだとか、あるいは給与がこれくらいだからこれくらいもらえるかということで、労働に対する対価というような感じが強いものですから、そのところが厚生年金の延長上で考えるとどうしても無理があるのかなと私は思っているわけなんです。

 そのところが、今回の確定給付企業年金の中で、一つには、厚生年金の対象ではない例外的なサービス業とか農林水産業の方の一部の方が移行できなくなってしまうということ。

 もう一つが先ほどの冒頭の指摘の中なんですけれども、今のところ退職手当というのは就業規則の中の絶対的必要記載事項じゃなくて、どうしても書かなくちゃいけない事項じゃなくて、相対的必要記載事項ですから、ちょっと弱いところに位置づけられておりまして、やはり権利というよりも、使用者の方がある程度条件を出すようなところがまだあるのかなと思いまして、その辺のところのバランスというのが今回の確定給付企業年金だと何かとれていないような感じがするものですから、小さなところがこぼれてしまうおそれが非常にあると考えておるんですけれども、何か御所見がございましたらいただきたいと思います。

辻政府参考人 確かに、小さなところについて、この制度によってこぼれるのではないかという御指摘、本当に私ども注意しなければならないと思うのですが、適格退職年金の場合、今までの経過からいきますと、生命保険契約であれば契約時十五人以上、信託契約であれば契約時百人以上といったような基準があって、これは規制緩和で十一年十二月以降緩和されましたけれども、やはり相当規模のものがあって適格退職年金に合理性があるという前提で現実にこの仕組みはありますので、適格退職年金はそのような規模のものでなければもともと適用されておりませんし存在いたしませんので、実態面としてそのようなことが余りないのではないかという認識を持っておりますこと。

 それからもう一つは、退職金といった面も強いという御指摘であるとすれば、適格退職年金というのはあくまでも確定給付の年金でございまして、まさしく積み立てが不足しておれば事業主に積み立て義務が生じる。それを積んでいないということは、やはり不十分だという状態にあるわけです。

 例えば、中小企業退職金共済組合の場合は、そのような積み立て不足はないという形で、きちっと納められれば退職金は保障されるわけですから、その場合は中小企業退職金共済制度に移行していただいた方がむしろ安定性があり、そのような意味における問題点の解消につながるのではないかというふうに考えます。

大島(敦)委員 今の辻年金局長のお話の中で一つ私の認識と違うところがございまして、十五人以上の会社であれば、就業規則なりそこに定められている年金規定なりが労使間の合意に基づいているというような御発言があったんですけれども、多分これは私たち地元に帰って各経営者の方とお話しする身の方がわかりやすいと思うんですけれども、十五人、二十人、五十人ぐらいでも労使間の合意に基づいて退職金規程をつくっているところはなかなか少ないんです。一方的に事業主の方が退職金規程をつくられて書いているところが多いものですから。

 私が気にするところは、おおむねそのような実態がある中で、今回の確定給付企業年金、あるいは今後出てくる確定拠出をつくってしまいますと、その辺の小さなところ、町場の会社の人たちが、年金規定が面倒くさいからやめてしまおうかなというようなことになってしまうのかなというおそれがあるものですから、それを指摘させていただきました。

 最後になりますけれども、また御所見があればいただきたいと思いますし、なければここで終わりたいと思います。いかがでしょうか。

桝屋副大臣 大島委員が中小の事業主の皆さんの立場、あるいは現場の実態ということを踏まえて御指摘をいただいたことはよく理解をいたします。

 ただ、私どもも、そうした中で、二十一世紀の少子高齢化社会の中で、企業年金の体系というものを一つはやはり働く人の立場に立ってもう一回再編をしようというのが今回の確定給付、確定拠出、両方あわせて考えているわけであります。事業主にとっては大変に厳しい道になるということも十分理解をしながら、したがって中小企業等にはさまざまな配慮をしようということにしているわけでありまして、我が国の中小企業の事業主の皆さんにぜひとも御理解をいただきながら進めていこう、このように考えております。

坂口国務大臣 御主張もよくわかりますので、十分検討させていただきます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、金田誠一君。

金田(誠)委員 おはようございます。金田誠一でございます。

 私も、さきの大島議員同様に、大臣にまずはお礼を申し上げてから質問すべきところでございますけれども、実はきょうは確認質問ということになっておりまして、時間がまた限られてございまして、その仕事の方を先に済ませて、それから改めてお礼を申し上げさせていただきたい、こう思うところでございます。

 まず、給付の引き下げについてでございます。

 給付引き下げなど受給者にとって不利益な変更は、確定給付年金である以上は原則としてあってはならないことであり、そのために法案にはさまざまな仕組みが設けられている、こう思うわけでございます、したがって確定給付ということだと思うわけでございます。しかし、それにもかかわらず、不利益な変更が起こり得ることは否定できないわけでございます。

 そこで、新企業年金において、真にやむを得ず受給者の給付水準の引き下げなどの不利益変更が行われる場合であっても、受給者の権利を保護するため政府として十分な措置を講ずると理解してよろしいか、大臣にお尋ねをいたします。

坂口国務大臣 母体企業の経営状況の悪化などによりまして企業年金を廃止するという事態を避けますために、次善の策として、加入者のみならず、受給者の給付水準の引き下げを行うことも労使合意による選択肢の一つであると考えております。しかし、この場合、受給権保護の観点から、通常の規約変更の手続と比べてより慎重な手続が必要であると考えており、現在の厚生年金基金におきましても、受給者の三分の二以上の同意等の追加的な要件を課しているところでございます。

 新企業年金においても、このような厚生年金基金における取り扱いを基本的に踏襲して、政省令で規定することによりまして受給権の保護を図っていく考えでございます。

金田(誠)委員 ありがとうございます。まず、原則として不利益変更はあってはならないことである、これが大前提だと思いますし、万々が一の場合はただいまの御答弁のようにしかるべく対処をされるということで理解をいたしました。

 次に、支払い保証制度についてでございます。

 支払い保証制度を設けることについては、労働側のみならず、多くの学識者からもその必要性が指摘されているところでございます。一方、主として経営側からは、支払い保証制度によるモラルハザードということが強調されているところでございます。しかし、これに対しては、支払い保証制度に対する拠出金といいますか保険料といいますか、こういうものに格差を設ける、あるいは資産の査定を厳格に行うなど、モラルハザードを回避する方法はいろいろあると思うわけでございますけれども、その辺の御見解を伺いたいと思います。

辻政府参考人 今御指摘の点、まず第一点には、支払い保証制度における拠出金に格差を設ける、すなわち積み立て不足の額に比例した拠出金を設定すべき、例えばこのような考え方でとれないかという御指摘かと存じます。

 まず、これにつきましては、財政が悪化している企業年金にとってより重い負担になるという形になりますので、むしろそれを回避するために結局は積み立て不足を抱えたまま終了しようという傾向が強まる可能性がございましたり、あるいはまた、査定を厳格に行うべきというような御指摘があったわけですが、これらの問題というのは、そもそも支払い保証制度を導入する大前提として、加入する各企業が相互扶助を行うという共通の基盤認識というものを持っているかどうかで、今言いましたように、むしろ逆に振れるという可能性を持っているというように考えます。

 このように考えますと、あくまでも企業年金は労使による自主的な運営が基本である中で、従業員の老後の所得保障のためには積み立て義務を果たすということが不可欠であるという土壌をまず形成することが今第一に必要なことと考えておりまして、まず本法案の適正な実施を目指させていただきたいと存じます。

金田(誠)委員 預金保険機構でしょうか、こうしたところでも、自己資本比率その他さまざまな要件に照らして保険金の格差がついているとかいうようなことを仄聞しているところでございますが、そういういわばペナルティーあるいは優遇保険料、あめとむちみたいなことになりますでしょうか、そうしたことなども適切に組み合わせることによって、積み立て不足をまず起こさせないというインセンティブにもなろうかと思います。局長がおっしゃったようなことも一面から言えるかもしれませんが、逆の側面からは、そのことが積み立て不足を回避しなければならないということを奨励することによって、支払い保証制度を適用するような事態をあらかじめ回避できるというメリットも含まれているんではないかなと思いまして、一概にモラルハザードであるということでこの検討を回避するべきものではない、こう思うわけでございます。

 そこで、確認をさせていただきたいと思います。

 支払い保証制度については、企業年金の加入者や受給者の受給権保護を図る観点からさらに検討すべき課題であり、法施行後の状況を勘案しながら政府として引き続き検討していく考えであると理解をするところでございますが、それでよろしいかどうか、大臣、御確認をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 御指摘のとおり、法施行後の状況を勘案しまして、引き続き検討してまいりたいと思います。

金田(誠)委員 重ねて確認をさせていただきたいと思います。

 支払い保証制度については、附則第六条、これは五年後の見直し条項になっているわけでございますが、この附則第六条の検討事項の対象に含まれているということを確認させていただきたいと思います。

坂口国務大臣 これも御指摘のとおり、支払い保証制度につきましては、附則第六条の検討の対象に含まれております。

金田(誠)委員 これで、きょう確認をすべき点、確認をさせていただいたところでございます。

 改めて、大臣にお礼を申し上げたいと思います。

 一昨日、二十三日夕刻でございますが、政府が控訴を断念する旨の発表がございました。最初、知らせを聞いたときに、自分の耳を疑った、そして本当に喜びが心の底から込み上げてきた、こんな思いでございました。この決定に当たりまして、坂口大臣の特段の御尽力があったと報道もされておりましたし、あるいは仄聞もいたしているところでございます。心から感謝と御礼を申し上げる次第でございます。

 また、この委員会で何度かこの件で質問に立たせていただいて、当時の状況の中で、多少言葉が走った点もあったと思うわけでございます。その点、事情を御勘案いただきまして、お許しをいただければと思うわけでございます。

 そこで、今後の対応についてでございます。

 いろいろ報道をされてございます。一審判決の確定を受けて行われる対策でございますから、私は、まず原告団との協議があり、さらに患者、元患者を代表する、これは全療協しかないわけでございますが、全療協との協議があって、その合意のもとにすべてが始まる、そうでなければ再び過ちを犯すことになりかねない、こう思い、懸念もいたしているところでございます。

 具体的な対策の中身については、来週の火曜日、二十九日に集中質疑の時間が設けられるということで、そちらに譲らせていただきたいと思いますけれども、この場では、すべてに先立って原告団、全療協との協議のテーブルがまず設けられるべきだということを強く申し上げさせていただきたいと思いますし、このことを含めまして、今後に向けた大臣の御決意のほどをお聞かせいただければありがたいと思います。

坂口国務大臣 金田議員にはもう何度かにわたりましてこの問題を御質問いただきました。しかし、事の経過を十分にその場で御説明を申し上げることができなかったこともございまして、歯切れの悪い答弁を繰り返さざるを得ないこともございました。私の方こそそれはひとつおわびを申し上げたいと存じます。

 今後のことでございますが、これからが大変でございまして、大きな仕事をしょいながらこれからいかなければならないというふうに思っております。今御指摘のように、原告団の皆さん方との会談、あるいは全療協の皆さん方との会談、そうしたことをこれからやっていかなければならないだろうと私も思っている次第でございます。

 まだ詳細に日程等の検討に入るところまで至っておりませんけれども、前回、原告団の皆さん方にはお会いをいたしましたけれども、一応これで正式の決定をいたしましたので、まず正式に決定しましたことをお伝え申し上げ、そしてそこで正式のおわびも申し上げるという、一度そうした儀式が必要であろうというふうに思っておる次第でございます。そして、その後の交渉等につきまして、どういうふうにこれから進めていくのかということにつきましては、よく相談をしながらこれからいきたいというふうに思っているところでございます。

金田(誠)委員 ありがとうございます。

 今後ともよろしくお願いを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小沢和秋君。

小沢(和)委員 質問に先立ちまして、今回のハンセン病熊本判決に対して、政府が、原告たちの必死の訴えと世論に押された結果にせよ、控訴しないとの決断を行ったことを心から歓迎したいと思います。また、そのために坂口厚生労働大臣が奮闘されたことにも感謝をしたいと思います。

 この問題については、来週集中審議が行われますので、きょうはこのことだけ申し上げて本題に入ります。

 一九六五年に、高度成長の最盛期でありますが、企業の要求で厚生年金基金制度がつくられ、国に納付すべき厚生年金保険料の一部を企業が代行することが認められました。これによって多くの企業が、バブルがはじけるまでの三十年近く、その代行分の運用で年金の利率をはるかに上回る運用益を稼いだことは周知のことであります。ところが、九〇年代に入って、バブルがはじけ、逆に差損が生じるようになるや、今度は邪魔だというので代行返上するというのでは、余りに企業の身勝手ではないでしょうか。

 ところが、企業は、代行返上に当たり、手持ちの株の物納を認めろと言う。今回の法案はこれを認めております。このことについて政府は、現に年金財源を株で運用しているからお互いに現金にかえたり株にかえたりする手数料が助かるとか、ここ三十年では株は有利な投資だったとか答弁しておられますが、問題はここ数年急激に株価が下がり続けていることであります。物納を認めたため三千万人を超える年金の加入者の大切な年金財源を減らすようなことになったら、だれがどのように責任をとるのでしょうか。これは大臣に。

辻政府参考人 ちょっと株のこと等、技術的なことがございますので……。

 まず、代行返上を認めるというこのたびの趣旨は、厚生年金基金は公的年金の一部を代行しておるわけでございますが、それがゆえに終身年金を原則としておる。これまで、この終身年金を原則ということについては、もう少し柔軟な設計にしてほしいという希望が相当ございました。また、適格退職年金を実施している企業と基金を実施している企業とが合併する際には、合併後の企業は基金しか採用できないということで、企業合併にも影響を与えておりました。

 こんなことを解決しようというのが第一義でございまして、企業年金はあくまでも従業員の老後の所得保障を目的とするものでございますので、民間企業においても、短期的な運用環境が悪いから、単なる損得でこのような代行返上という判断をしているものではないと私ども考えております。

 それから、株価の低迷、そしてそれが資金運用に大きな差しさわりを生じせしめるんじゃないか、そして、この代行を物納で返上を認めることはそれに輪をかけるのではないかという御趣旨の質問かと存じますが、これまで御説明申しましたように、基金の方ももともと株を含めた資産運用をしている、政府の本体の公的年金の方も株を含めた資産運用をしている、したがって、資産を移しますときに、わざわざ売ってまた買うというのは非常に不効率であるし、場合によっては株価に不必要な変動が生じてマイナスになる場合もあるというのがこのたびの物納の趣旨でございます。

 そのような意味での物納、政府の公的資金の運用方針に沿った範囲でしか受け入れないということを厳格にチェックをいたしてやりますので、今回の物納がこの資金運用に悪影響を及ぼすということはそのような意味でありません。

 ただ、そもそもこの資産運用に株を入れること自身が近年の株価の状況においてどうかという御指摘があるわけでございますが、これにつきましては、やはり数十年という非常に超長期では株の収益率というものは債券の収益率を上回っているという客観的事実は今後もあるという観点から、関係審議会の専門家による十分なチェックを受けまして、将来に向けて一定限度の範囲内で株を組み込む。もちろん債券運用が基本でございますが、一定限度内で株を組み込むということにつきまして専門家の意見も十分承り、そのようなもとで運用しようとしているものでございます。

小沢(和)委員 私、黙って聞いていましたけれども、今あなたが答えられたようなことは、私は今、そう答えたがと質問の中で言っておるんですよ。そんな同じようなことは二度も三度も言わないでいただきたい。

 特定の銘柄の株価を操作して政府に高値で引き取らせるぐらいのことは、やる気なら私は簡単にできることだと思うんです。そういう形で損害をこうむるようなことが絶対ないと言えるのか、私はそのことを強く懸念するわけでありますが、きょうは大臣に質問をしますので、そのことは懸念の指摘だけでとどめておきます。

 次ですけれども、厚生年金基金や適格退職年金に巨大な積み立て不足が生じ、給付の切り下げ、解散も激増しております。私的年金であっても、公的年金を補完し、老後の生活保障に重要な役割も果たしている以上、その受給権を保障することは緊急の課題であります。しかし、この法案を見ると、適格年金の積み立て不足解消が義務化されるなどの前進面はありますが、積み立て不足の解消、給付切り下げ、解散などに対応する受給権保護のやり方はほぼ従来の範囲であります。これでは多くの加入者の間に広がっている企業年金の不安を解消できないのではないか、大臣に質問をいたします。

坂口国務大臣 今回の法案におきましては、受給権保護を図りますために、一つとしては年金資産の積み立て基準及び積み立て義務を定めておりまして、さらに運用機関等の受託者責任を明確化をさせたということもございます。それから、事業主等に財政状況等についての加入者への情報開示を義務づけているということもございます。従来の企業年金にはなかったり、あるいはまた不十分であった事項に対応する措置としてこれらのことを講じているということも御理解をいただきたいというふうに思います。

 こうした措置が着実に実施されるよう最大限の努力を行う所存でございまして、御指摘のような不安は解消されていくものと考えています。また、解消されていくように今後努力をしなければならないと思っているところでございます。

小沢(和)委員 政府の基本的な姿勢というのは、企業年金は私的年金だから労使の自由な運営に任せるべきだということだと思います。確かに、私は、給付内容などは労使で自由に決めてよいと思うんですが、その約束が確実に実行されるよう保証する公的な制度が必要だということを強調したいわけであります。

 先日、アメリカの例を紹介しましたけれども、アメリカのERISA法、日本語で言えば従業員退職所得保障法ということになると思いますが、この法律と比べてみても、今回の法案の内容では受給権保護の仕組みが余りにも貧弱ではないでしょうか。大臣。

辻政府参考人 事実関係だけ申し上げますが、今までの適格退職年金には積み立て義務さえなかったわけでございます。

 積み立て義務さえなかったところで、まず積み立てていただくというところが今回のスタート時点でございまして、そのような観点からは、掛金の拠出状況が加入者に周知される、加入者への周知によるチェックというのは大変な力になると思います。そしてまた、決算報告を行政に行っていただき、行政も指導させていただく。こういったことで、積み立て義務のなかった制度について積み立てをしていただくように努力するということはまず第一かと存じます。

小沢(和)委員 企業年金への不安解消の決め手は、何といっても、先ほども出ました支払い保証制度の確立だと思います。

 一昨日も指摘したとおり、政府は、当初これに積極的に取り組んだ。しかし、経団連から反対された途端に腰砕けになり、今回の法案には支払い保証は一言も出てまいりません。この点では、現行制度にある厚生年金基金連合会の部分的な支払い保証さえなくなるという後退も起こっております。

 経団連の反対理由はモラルハザードを起こすということでありますけれども、アメリカでは、積み立て不足を起こせば起こすほどペナルティーが大きくなる。倒産しても積み立て不足を最大限埋めさせるため、年金給付保証公社に先取特権を与えるなどの工夫をして、ほぼ二十年がかりで完全にモラルハザードを防ぐ仕組みをつくり上げているわけであります。日本でもこういうアメリカの経験や到達点を取り入れたらいいんじゃないですか。大臣、いかがですか。

坂口国務大臣 これはもう委員御存じのとおりでございますが、積み立て義務のあります厚生年金基金からの移行グループと、積み立て義務のない適格退職年金からの移行グループとでは、当面、企業年金の積み立て状況にかなりの違いが生じますことから、現時点で支払い保証制度を創設することは公平の観点からもなかなか困難である、そういったことで法案に盛り込まれなかったわけでございます。

 また、これまでの検討では、モラルハザードのお話がございましたが、支払い保証制度の導入は積み立て不足を放置するような状況を招くのではないかといったような基本的な異論もございまして、答えが出ていないのが現状でございます。

 しかし、いずれにいたしましても、この支払い保証制度につきましては、引き続き検討していかなければならない課題であるというふうに考えております。

小沢(和)委員 結局、問題は、支払い保証制度をつくれば企業に新たな若干の負担がかかってくる、それが嫌だということ以外にはないと思うんです。

 支払い保証は何もアメリカ独自の制度ではありませんで、ドイツでもイギリスでも独自の制度をつくって企業年金への信頼を確立しております。初めに述べたとおり、企業の身勝手を許していては信頼される安定した年金制度はできません。国民の大多数を占めている労働者の老後のために、今こそ支払い保証制度の確立を決断すべきときだと思います。

 先ほど答弁で、政府は、法案附則六条に今後支払い保証制度を検討することを盛り込んでいると言うんですが、文言を見る限りでは全くそういうふうには読めません。先ほどの答弁はそれとして理解しますが、もう一度確認の意味でお尋ねしたいのは、そうすると、支払い保証制度の実行を近く行う必要がある、こういう方向で取り組むというふうに理解をしてよろしいでしょうか。大臣、いかがですか。

坂口国務大臣 先ほどの繰り返しになって恐縮でございますけれども、御指摘の支払い保証制度というのが大変大事な問題だということの認識は私たちも持っているわけでございますが、それをこれからどのようにしていくかということにつきましては、今後検討をさせていただきたいということを申し上げているわけでございまして、ぜひひとつ引き続き検討をさせていただきたいというふうに思っております。

小沢(和)委員 大事だという認識はわかりましたけれども、大事だし、年金に対する信頼を高めていくためにもどうしてもこれを実現しなければならない、だから、そういう立場から検討する、こう理解しましたが、よろしいでしょうか。

坂口国務大臣 重要であればこそ検討するわけでございますから、その点は御理解をいただきたいと思います。

小沢(和)委員 では、前向きで検討していただきたいということを申し上げて、終わります。

鈴木委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、本案に対し、森英介君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。古川元久君。

    ―――――――――――――

 確定給付企業年金法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古川委員 民主党の古川元久でございます。

 ただいま議題となりました確定給付企業年金法案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、確定給付企業年金を実施する事業主等及び厚生年金基金は、加入者等に対し行う業務の概況についての情報提供を、受給者に対しても同様に行うよう努める旨の規定を追加するものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。

木島委員 私は、日本共産党を代表して、確定給付企業年金法案原案に対して反対の討論を行います。

 本法案は、現行の厚生年金基金や適格退職年金とは別に、新たに二種類の確定給付年金をつくり、現行制度からの移行を誘導しようとするものです。厚生年金基金の代行制度の返上を可能にし、適格退職年金は十年間の期限内に廃止されることになります。

 今日、厚生年金基金、適格退職年金の加入者は、合わせて二千二百万人です。この加入労働者にとって、企業年金が退職後の所得保障の一部を担うに足る制度であるためには、受給権保護を中心とした共通の基準づくり、支払い保証制度の創設、代行制度のあり方、退職金を含めた退職給付全体との関連性、公的年金との役割分担など、企業年金制度全体について検討し、企業年金基本法という包括的な法整備の必要があるという認識に立って、この間論議がされてきました。

 ところが、本法案で、そのどれもが徹底されず、かつての運用利差益を保全してこなかった責任を棚上げにして、ここ数年来の厚生年金基金の積立金不足を理由に、労使の合意ならば給付の切り下げも可能にできる内容に改悪してきたのであります。

 本法案に反対する第一の理由は、労働力の流動化政策が今後一層進められる中で、本法案が、企業年金に対する企業の負担と責任を放棄する確定拠出企業年金の導入に向けた制度的整備であるということです。

 今日、いわゆる労働移動の円滑化として、短期雇用や裁量労働の拡大、解雇規制の撤廃、有期雇用契約の拡大などが強引に進められています。この不安定雇用の受け皿として、積み立て義務のない、そして運用リスクも労働者任せで企業が責任を負わない確定拠出企業年金が導入されようとしていますが、それと一体のものとして本法案が提案されていることを厳しく指摘したいと思います。

 適格退職年金は、新型企業年金への移行で積み立て義務が課されますが、積み立て不足が深刻である中小企業の経営実態を見れば、結果的に、適格退職年金は廃止の方向か、あるいは確定拠出企業年金へと流れていかざるを得ない、その可能性は極めて大きいと言わざるを得ません。

 反対の第二の理由は、今日、厚生年金基金の解散や給付の削減などが行われているもとで、受給者の権利を保護する制度的枠組みこそが求められています。にもかかわらず、新型の企業年金では、積み立て義務の実効性が十分担保されていない点です。

 受給権保護の名目で導入される新型の企業年金の積み立て義務は、義務の明示はするものの、情報開示と労使による監視以外に、企業に対して積み立て義務を履行させる担保はどこにもありません。しかも、労使の合意があれば給付の削減も自由にできるものであり、現在の労使関係の状況のもとでは、受給権保護は名ばかりになる重大な懸念があります。

 反対の第三の理由は、支払い保証制度の創設が先送りされ、五年後の検討とされたことです。

 企業年金が積み立て不足のまま解散した場合に加入労働者の給付を保障する支払い保証制度の創設は、企業年金論議の最大の重要課題でした。これを見送ったことは、企業の責任と企業の拠出負担を回避したものだと言わざるを得ません。

 以上三点を指摘いたしまして、反対討論といたします。(拍手)

鈴木委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、確定給付企業年金法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、森英介君外六名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、本案に対し、谷畑孝君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    確定給付企業年金法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるよう努力するべきである。

 一 企業年金の加入者及び受給者の受給権保護を図る観点から、セイフティネットとしての機能をもつ「支払保証制度」について、モラルハザードの回避などに留意しつつ、引き続き検討を加えること。

 二 企業年金受給者に対する情報開示について、事業主等に対し、実情を踏まえた適切な指導を行うこと。また、給付額の減額など、受給者にとって不利益な変更が行われる場合の手続について、適切な措置を講ずること。

 三 受託者責任については、事業主や資産管理運用機関など企業年金の管理・運営に関わる者は、その内容を十分理解し、受託者責任を踏まえて行動すること。また、政府は、受託者責任の理念が十分に浸透するように努めること。

 四 適格退職年金から確定給付企業年金等への移行が円滑に行われるよう、適切な経過措置を講ずること。特に、中小企業については特段の配慮を行うこと。

 五 転職に伴う年金原資の移管制度(ポータビリティ)について、引き続き検討を加えること。

 六 厚生年金基金の今後のあり方については、法施行後の制度間移行の状況等を踏まえ、必要な検討を行うこと。

 七 厚生年金基金連合会の財政については、引き続きその情報開示を進めるとともにその健全化に努めること。

 八 年金課税のあり方について、制度間のバランスに留意しつつ、拠出時・運用時・給付時を通じた負担の適正化に向けて検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたします。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 確定拠出年金法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂口国務大臣 ただいま議題となりました確定拠出年金法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 我が国は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の需要の多様化、雇用の流動化等社会経済情勢が大きく変化しており、このような変化に対応しつつ、国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する制度を創設することが要請されております。

 このため、厚生年金基金、国民年金基金等の年金制度に加えて、新たな選択肢として、個人または事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができる制度を創設するための確定拠出年金法案を第百四十七回国会に提出いたしましたが、衆議院の解散に伴い廃案となり、成立を見るに至りませんでした。

 しかしながら、この法律案は、老後の所得の確保を一層充実したものとするために新たな制度を創設するものであり、一刻も早くその実現を図る必要があることから、ここに再度この法律案を提案し、御審議を願うこととした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、確定拠出年金は、事業主が労使合意に基づいて実施し、六十歳未満の従業員が加入者となる企業型年金と、国民年金基金連合会が実施し、国民年金の第一号被保険者及び公的年金に上乗せする給付のない六十歳未満の厚生年金保険の被保険者が申し出により加入者となる個人型年金の二種類とすることとしております。

 第二に、掛金は、企業型年金においては事業主が、個人型年金においては加入者が拠出することとしております。

 第三に、加入者は、個人ごとに管理された資産について運用の指図を行うこととしております。このため、加入者に対して十分な情報の提供等が行われるよう所要の措置を講じております。

 第四に、給付は、原則として六十歳に到達した場合のほか、高度の障害を負った場合または死亡した場合に支給することとしております。また、加入者が離転職した場合等においては、他の企業型年金または個人型年金に個人ごとに管理された資産を移換することとしております。

 第五に、個人に関する記録の保存、運用の方法の選定及び提示等の業務を行う者は、確定拠出年金運営管理機関として厚生労働大臣及び内閣総理大臣の登録を受けなければならないこととするとともに、両大臣が必要な監督を行うこととしております。

 第六に、加入者の受給権保護等を図る観点から、関係者の行為準則を定める等必要な措置を講ずることとしております。

 最後に、掛金、積立金及び給付について、各税法で定めるところにより、税制上必要な措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。よろしくお願いします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十二分散会




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