衆議院

メインへスキップ



第18号 平成13年6月6日(水曜日)

会議録本文へ
平成十三年六月六日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      奥山 茂彦君    梶山 弘志君

      上川 陽子君    鴨下 一郎君

      木村 義雄君    北村 誠吾君

      熊代 昭彦君    小泉 龍司君

      佐藤  勉君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西川 京子君

      野田 聖子君    林 省之介君

      原田 義昭君    福井  照君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      吉野 正芳君    家西  悟君

      大島  敦君    加藤 公一君

      金田 誠一君    釘宮  磐君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      青山 二三君    江田 康幸君

      樋高  剛君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      中川 智子君    小池百合子君

      川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            田口 義明君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児

   童家庭局長)       岩田喜美枝君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     望月 義夫君

  松島みどり君     福井  照君

同日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     梶山 弘志君

  望月 義夫君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     小泉 龍司君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 龍司君     松島みどり君

    ―――――――――――――

六月六日

 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律案(内閣提出第四四号)

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案(内閣提出第八三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 確定拠出年金法案(内閣提出、第百五十回国会閣法第二一号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官田口義明君、厚生労働省労働基準局長日比徹君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、年金局長辻哲夫君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山井和則君。

山井委員 まず冒頭に、ハンセン病の控訴断念については、坂口大臣、すばらしいリーダーシップを示していただきまして、本当にありがとうございました。このことを契機に、二十一世紀が人権の世紀に、そして弱い立場の方々を隔離して収容することがないというような世紀にぜひともつくっていきたいと思っております。

 本日は、確定拠出型企業年金についての質問でありますが、大臣が最後の方でちょっと抜けられるということで、冒頭に一つだけ、介護保険のことも質問をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、この確定拠出型年金、最低三つの商品を提示して選ぶことになるわけです。ところが、要は中高年の世代の方が老後にどれだけ資金が要るだろうか、あるいは子供の教育にどれだけお金が要るだろうかということを考えるわけなんですけれども、そのどのパターンを選ぶかという中で、一つの大きな不確定な要素が、老後にそもそも介護の費用がどれだけかかるんだろうか、三百万で済むのか、一千万で済むのかによって全然老後の設計が違ってくるわけです。

 そういう意味では、私は、昨年の四月に介護保険が導入されましたことは、もちろんさまざまな課題があるとはいえ、大きな前進になっていると思います。やはり介護保険がなかったら、どれだけお金をためていいのかわからない。ところが、介護保険という一定のベースを持つことになったというのは、大きな前進であると思います。

 とはいえ、まだまだ介護保険は始まって一年で、さまざまな問題がございます。例えば、私も今週月曜日、神奈川県のある特別養護老人ホームに行きましたが、百人待っておられるわけですね。それで、ほかとのかけ持ちもありますので、その施設を待っているのは正味三、四十人であろう。しかし、言い方は悪いですが、年間六人か七人しか亡くなられないわけですね、いい施設ですから。というと、単純に考えても五年か六年待たねばならない。

 これは何も例外的なケースではなくて、首都圏ではこういうケースが非常に多うございます。あるいは、先日行きました東京都の療養型病床においても、自己負担が二十万円、そこに三百人の方が待っておられる。自己負担が月二十万円ということは、年間二百四十万円、五年間生きられたら一千二百万円、そういうところでも何百人の方が待っておられるということは、そういう現実を放置していると、この確定拠出型年金においても、一体老後幾らお金ためていいのかわからないという非常に不確定な要素になってくると思います。これは、私は、介護保険そのものが悪いんではなくて、まだ介護保険が本格的にやはり機能していないと思います。

 その意味で、大臣にもお示しさせていただきますように、民主党は過去九カ月の議論の中で、介護保険一年たって見直しへの十の提言というのを発表させていただきました。時間の関係上、全部は説明しませんが、十点の中で主な項目は、低所得者対策、そしてユニット型の個室の老人ホームを重点的に整備する、介護報酬の見直しを前倒ししてケアマネジャーやグループホームを整備していく。やはりこういう介護保険が本来持っている機能を十分発揮する体制に早急にやっていかないと、介護保険が導入されたけれども、老人ホームは入れない、選べるどころか入れない、そのために病院にたまる、自己負担も非常に高い、老後不安が一向に減らないじゃないかということにもなりかねないと思います。このあたりの点に関して、坂口厚生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 おはようございます。

 民主党の方で介護保険に対する御提言をしておみえになります。さまざまな現場の問題も踏まえながら、衆知を集めておつくりをいただいたものだというふうに思いますし、私も、事細かく全体をまだ拝見しているわけではございませんが、各項目を拝見させていただきまして、まことに傾聴に値するさまざまな問題を提示していただいているというふうに受け取っておる次第でございます。私も、よくまた勉強させていただいて、そして皆さんの御意見も十分に検討させていただき、また、取り入れさせていただく問題は取り入れさせていただきたいと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、今お話しいただきましたように、老後の問題、今までは老後の問題といえば、病気になったときという、いわゆる医療費がどれだけかかるかということが最大の問題でございましたが、今委員御指摘のように、病気になるという以前に、介護を必要とする状況が来るのか来ないのかといったことが最も大きな皆さん方の不安材料と申しますか、心配材料になってきていることは、私もそのとおりだというふうに思っております。

 そうした意味で、介護の制度を充実させていかなければならないのと同時に、やはりそれに対応できる年金制度、それは公的年金も整理をし、そして充実をさせなければなりませんけれども、しかし、それだけではなかなか足りないというふうにお考えの皆さん方も多いことも事実でございますし、私も、公的年金だけで足り得るかといえば、人によりましては、それは公的年金も多い人少ない人ありますから、一概には申せませんけれども、しかし、足りない人も多く出てくるのではないかというふうに思います。そうした場合に、やはりいわゆる自助努力もその中にプラスしていただき、あるいは企業の努力もしていただきまして、そしてトータルとして年金制度が充実をしていくことを私は期待している一人でございます。

山井委員 私たち民主党も、まさに今回の拠出型年金の趣旨には基本的には賛成しているわけですが、まさに今大臣もおっしゃいましたように、そのベースとなる公的年金、近い将来、特別養護老人ホームも個室化されてホテルコストを自己負担するようになる。そうなったときに、本当に個室に低所得者の方が入れるのか、本当にせっぱ詰まった問題にもなってこようとしております。

 それと、先ほどお話しした療養型病床の問題や特別養護老人ホームの問題も、残念ながら過去十年ぐらい放置されている問題でして、残念ながら一向に改善されていないように思いますし、坂口大臣も老人保健施設に一時お勤めになっておられたと聞いておりますが、老人保健施設でのたらい回し、特別養護老人ホームがあかないから、やはりそういう問題、早急に取り組んで、介護の安心と年金の安心、両輪で取り組んでいく必要があると思います。

 それで、確定拠出型企業年金についてなんですが、そういう意味では、公的年金を補完するものとして、またポータビリティーや選択肢をふやす意味として私たちも基本的には賛成でありますが、やはりさまざまな課題もあると思いますので、順番に質問させていただきたいと思います。

 まず、この年金制度は老後の安心のためよりも企業の負担が軽減されるとか、そういう面もメリットの一つとして言われております。それで、アメリカでは九〇年代にこういう株式のお金が企業や株式市場に流れ込んで、それが好景気を支えたとも言われておりますが、日本において、今回導入される確定拠出型企業年金が株価対策、そういうものにどれぐらい寄与するとお考えになっておられますでしょうか。

坂口国務大臣 確定拠出年金全体としましては必要性ということについてお認めをいただいておりますし、そして、この重要性を私も考えております一人でございますが、確定拠出年金も、これは企業が拠出をしなければならない年金でございますから、企業に特に有利になるというようなことでは決してないというふうに私は思っております。

 そして、株価に対してこれがどういう影響を与えるかということにつきましてはここでそう簡単に結論を出すことはできないというふうに私は思いますが、株式もその選択肢として選ぶことができるということでありまして、多くの方がこの株式の方に走られるということはないだろう。現在、日本の金融状況、金融の実態を見てみますと、預貯金は非常に多いわけでございますが、個人として株式に走られる方というのは、日本は非常に少ないわけでございます。

 したがいまして、この確定拠出年金ができたからといって年金により多くの人が走られるということではないんだろう、やはり年金でございますから、堅実に対応をされる人が多いのではないかというのが私の考え方でございます。

山井委員 まさに今大臣も御答弁されましたように、これはあくまでも年金なわけですから、堅実さ、安定性、安心感というのがやはり大事だと思います。アメリカで四〇一kが爆発的な人気を呼んだのは株価が九〇年代に上がっていたからで、今の日本の状況と大きく違うというように思います。

 そういう意味では、今の状況では、労働者、つまり加入者にリスクが非常に大きくなるのではないかということを心配しております。実際、アンケート調査で、導入しない企業のその理由のトップは、老後設計のリスクが非常に大きくなると答えられております。

 その意味では、そもそも確定拠出型企業年金は、運用コストが高くなって、そのためにリスクの高い商品を選ぶ、そういう方向に行くんではないかというような心配をしているんですが、もちろん、この年金が自己責任なのはわかるんですが、余りにもリスクが大き過ぎてはならないと考えます。

 株の急落もあり得るわけで、ハイリスクの商品に偏った運用をして老後の年金資産がなくなってしまわないように一定の制限を設けるべきだと考えますが、このあたり、いかにリスクを下げるかということについて何か方策はお考えでしょうか。

桝屋副大臣 今委員の方からリスクに対する対応ということについてお尋ねがありました。また、その前にも、こういう厳しい金融環境の中でこの制度を導入するのはいかがかというような話もいただいたわけでありますが、先ほど大臣もお話をいたしましたように、今回のこの確定拠出年金の制度、新たに導入するものでありますが、現在の雇用情勢の変化等を考えながら、企業あるいは国民にとって選択肢をふやすという観点で、大変厳しい環境ではありますが、ぜひとも導入したいというように考えているところでございます。

 加入者のリスクをいかにするかというお尋ねでございますが、この加入者のリスクを最小にしたいというふうにもちろん考えるわけでありまして、確定拠出年金は、これまでの確定給付型の企業年金とは異なって、委員おっしゃるように、加入者が自己責任で運用するという、国民にはなじみが薄い全く新しい制度でございまして、雇用の流動化あるいは企業再編が進むなど、経済や時代の変化の中で確定拠出型の企業年金も必要になってきているということで、今申し上げたように、この国会に提出をさせていただいたという背景であります。

 委員が一番心配されるのは、今大臣も言いましたように、我が国の貯蓄が、六割ぐらいが元利保証のある預貯金で運営されているということもあって、委員も重ねてその辺を心配されているんだろうと思いますが、法案の中では、このような実態にかんがみまして、加入者に運用商品を提示する際には必ず元本確保型の商品を選択肢の中に入れるということを義務づけているところでありますし、また、企業などは、資産運用の基礎知識、それからリスク、リターンの関係、長期投資あるいは分散投資の考え方など、一般的な投資に関する資料を加入者に情報提供するように努めるというふうにしているところでございます。また、運営管理機関は、運用商品を提示する際に、その商品の仕組みあるいは元本割れのリスクがあるかどうかというようなこと、あるいは過去の実績等の情報を加入者に提供するというふうにしているわけであります。この情報の提供ということが極めて大事だと私は思います。

 こうしたことを通じまして、自己責任での運用になれていない加入者のリスクができるだけ小さくなるように取り組んでいきたいと考えているところでございます。

山井委員 この年金の一つのポイントは、余りにもハンドリングコストが高くなり過ぎるとまたよくないわけなんですが、このハンドリングコストをいかに下げるか、このあたりについてはいかがでしょうか。

桝屋副大臣 今運用コストのお話をいただきました。これはきのうの委員会でも随分議論が出たところであります。

 確定拠出年金制度におきましては、企業や個人が拠出した掛金を資産管理機関などがまとめた上で大口扱いで運用するということによりまして、個人が金融機関と個別に契約する場合に比べて高い利回りが確保できるようにしているわけでございます。あるいはまた、運営管理機関に幅広い参入を認めるということにいたしまして、競争の促進ということで、適正なコストとなるような仕組みとしているところでございます。

 具体的には、各種商品の中でも、例えば利回りの低い預金の利率を見ましても、その預金を選択した加入者に係る資産が資産管理機関から一括して金融機関に預け入れられるということになるわけでありますから、金融機関では個々の加入者の口座管理等は行う必要がないということで、これらのコストが不要になるということも織り込み、一般の顧客に提示される利率に比べて高目の利率の提示が可能ではないか、これはきのうも議論があったところでありますが。

 今のところから、個々の加入者の口座管理等を行う運営管理機関の手数料が控除されることになるわけでありますが、それを考えても、一般の預金の利率と同程度以上の利回りが確保できるのではないかというふうに考えているところでございます。

山井委員 そもそも、この確定拠出型企業年金はどれぐらいの会社、加入者が利用すると予想しておられますでしょうか。例えば、朝日新聞の二月の調査では主要企業二百社のうち三十七社が導入したいと明言しているとか、社会経済生産性本部や中小企業団体中央会の統計などもありますが、このあたりの見通しについてお伺いしたいということ。

 それと、少なくとも三つのパターンの商品を用意して、一つは元本確保の商品を提示するとのことですが、聞きづらいことですが、元本割れをして損をする人はどれぐらい出てくると予想されているのでしょうか。といいますのは、大多数は元本確保の手がたい商品を選ぶと予想されておられるのか、逆に、大多数はリスクの高い商品を選ぶと予想しておられるのか。それによってこの年金の持つ意味も違ってくるか思いますので、そのあたりのイメージをお答えいただければと思います。

桝屋副大臣 二つお尋ねをいただきました。

 最初に、どれぐらいの企業がこの確定拠出年金を導入するのかということでありますが、実は、この委員会でこうしてこの確定拠出年金の審議が始まったということを多くの皆さんが関心を持って見ておられるわけで、今委員からも御紹介をいただきましたけれども、例えば東京商工会議所、これは昨年三月に実施した調査では、中小企業の約二割ぐらいの方が確定拠出年金の導入を考えているというような調査結果もあるわけであります。あるいはまた大企業の中でも、昨日の参考人質疑等でもいろいろ御議論があったようでありますが、相当多くの企業の方が研究をされておられる、興味を持って見ておられるというような状況も聞いているところでございます。

 ただ、委員からもお話がございましたが、私どもは、まず普及をしたい、多くの企業に取り組んでもらいたいということも期待をするわけでありますが、そうではなくて、まずやはりこの制度を国民に十分に理解していただく、そして納得をしていただいた上で、定着普及をするということを願っているわけでありまして、そういう意味では、導入時の対応といいますか、極めて大事だなというふうに考えているところでございます。

 それからもう一点、どのぐらいの割合の加入者が元本割れをするかという、聞きづらいというふうにお尋ねがあったわけでありますが、これは本当に答えづらい話でもあるわけであります。

 確定拠出年金におきましては、運営管理機関が加入者の立場に立って、専門的な知見に基づいて、預金、国債あるいは保険、投資信託など多くの運用商品の中から三つ以上のリスク、リターン特性の異なる運用商品を加入者に提示する、加入者はその中から自由に運用商品を選択できる、委員御説明があったとおりでございます。

 したがいまして、どのような運用商品が加入者に提示をされて、また加入者がどのような運用を行うかはまちまちではないか。委員からお話がありましたように、老後をどのようにお考えになるかということも個人あるいは企業の形態によって違ってくるわけでありまして、また投資信託などの運用商品の運用実績もその時々の運用環境に左右されるということもあるわけでありますから、どれぐらいの割合の加入者が元本割れするかという予測をすることは極めて難しいと思っております。

 ただ、既に導入しておりますアメリカの例では、当初は元本確保商品で運用するものが多かったというふうに聞いているわけであります。その中で徐々に株式での運用がふえていった、こういうことがあるわけでありまして、さらに、委員からも御指摘がありましたように、我が国では多くの国民の資産が元本確保商品で運用されている、こういう実態があるわけでありますから、こうしたことを考えますと、当初から多くの元本割れする商品の組み合わせが多く出てくるということはにわかには想定しがたいわけであります。

 いずれにしても、労使が協議をしていただくわけでありますが、企業型年金規約を定めるに当たっても、運用商品の安全性に一層留意をすることになるのではないかというふうに考えているところでございます。

山井委員 まさにこういう株式というのは、どちらかといえば日本人になじみのないもので、一割ぐらいの人しか株や債券、投資信託を今持っていないという統計もあります。

 そういう意味では、加入者がみずから運用を指示するこの拠出型では、運用商品の適切な選択と的確な指示をできるだけの投資教育と情報提供が極めて重要になります。運用リスクを最小限に判断する条件が整わなければ、加入者は金融市場の変動に無防備なままさらされることになると思います。競馬をしない人には確定拠出は向かないという指摘すらあるわけで、そういう意味では、投資教育が不十分なままで、加入者が投資判断が本当にできるのかということがあります。

 そういう意味では、実効力のある投資教育をいかにするかということをしていかないと、確かに元本保証もいいけれども、それこそ老後の介護にお金がかかるんじゃないかということを心配し出したら、よくわからないのに高い商品に手を出してしまって、後で老後の設計が狂ってしまった。言ったらなんですけれども、国、何とかしてくださいというふうなことになっても困りますので、そのあたりの実効性のある投資教育ということについてお伺いしたいと思います。

桝屋副大臣 我が国の国民の今の現状に基づいてお尋ねをいただいたわけであります。

 まさに投資教育という点で、これは大臣ともよく話をするんですが、大臣も私もこの道に余り明るくないものでありますから、競馬ももちろんいたしませんし、この確定拠出年金制度の導入に当たって、本当に大臣、副大臣として十分理解できているかということをいつも二人で話をするわけであります。

 いずれにしても、加入者がみずからの責任で運用指図を行うというこの確定拠出年金では、加入者が資産運用について適切な知識を持ち得るようにするということが、委員御指摘のとおり、極めて重要であります。まさに投資教育ということでございまして、事業主の役割も極めて重たいのではないかというふうに感じております。

 資産運用に関する情報提供につきましては、各加入者によって資産運用に関する知識水準あるいは老後の生活設計などが異なるということがございますので、どのような内容、方法でどの程度まで行うべきかについて一義的に決めることはなかなか難しいわけでありますが、確定拠出年金制度の仕組みでありますとか、あるいはリスクの内容、あるいはリターンとの関係などの投資に関する基礎的な知識、預貯金あるいは投資信託、保険商品などの各商品の特徴、あるいはリスク、リターンなどの主な金融商品の特徴や仕組みというもの、これは必要な情報ではないか、こう思っているわけでありまして、こうした事項について、最低限、加入者に情報提供をすべきものであるというふうに考えております。これをこれから通達等で明らかにすることとしているわけでございます。

 それを受けまして、企業等が個々の加入者に応じて、テキストの配付でありますとかビデオの上映、説明会の開催などの方法によりまして、わかりやすく、かつ丁寧な情報提供を行っていただきたいと考えているところでございます。

 現実問題としては、企業は投資教育を恐らく運営管理機関に委託することが多いのではないか、こう思っているわけでありまして、今後、運営管理機関となることを準備している者において、投資教育がより適切に行われるようなさまざまな方法を研究していただいている、工夫をしていただいているというように聞いておりまして、実質的な投資教育が適切な形で十分に行われるよう私どもとしても指導を続けていきたい、このように考えております。

山井委員 まさにこの年金は自己責任が原則なんですけれども、言葉ではわかっていても、日本人にはなかなか自己責任の風土というのはなじみにくいと思います。

 それで、今運営管理機関の話になりましたが、私はそこについてちょっと心配があるんですが、どうしても加入者は無知な人が多いわけですから、運営管理機関の担当者がリスクの高い商品をもし勧めたりしたら大変なことになるのではないかと思います。例えば、運用利回り二%で毎月二万で三十年積み立てたら九百九十三万円、それが、七%と考えたら二千四百二十六万円というふうに全然違うわけですね。

 それで、運営管理機関は忠実義務があるわけですけれども、それでも初心者はアドバイスを欲しいと言ってしまうのではないかと思うんです。そのときに、やはり運営管理団体は主に銀行や生保などの金融機関が社員の口座管理や投資教育などを企業から請け負うために設立しているわけですから、そこの担当者が、どうしても、老後そんな困っていられるんだったらこれをされたらどうですかともし言ったら、初心者は、ああ、そうしたらそれにしておきますわということになって、結果的には株が急落して老後の設計が立たなくなってしまったということになってはだめだと思います。

 運営管理機関への教育あるいは運営管理機関への義務、そのあたりについてお考えをお聞かせ願えればと思います。

桝屋副大臣 今委員から、株が急落してという話もありました。きのうのこの委員会を聞いておりましても、今回の確定拠出年金、これはまさにギャンブルの世界だという御指摘もいただいて、大変心配をしているわけであります。

 私は、やはり急落というような、株はもちろん動くわけでありまして、今回の確定拠出、まさに長期の投資という観点で制度が設計をされているわけでありますし、投機と違うわけでありまして、ギャンブルとも違うという意味では、ぜひその点を国民の皆さんにも御理解いただき、あわせて、さっきから委員が御指摘されていましたように、やはり国民の皆さんにしっかり教育を進めるということが大事だと思っているところであります。

 それからもう一点、今委員から、運営管理機関がリスクの高い商品を勧めたり、運用商品の乗りかえを頻繁にやってその手数料を稼ごう、こういう事例が出るのではないか、こういうお話もいただいたわけでありますが、今委員からもお話がありましたように、行為準則ということを定めるようにしているわけでありまして、こうした事例については、もちろん自己や第三者の利益を図る行為を禁止するということになっているわけであります。

 こうした、法律において禁止されている行為でありますから、運営管理機関が仮にこうした行為を行ったときは、改善命令あるいは登録の取り消しなど行政処分の対象になるというふうに考えているわけでありまして、ここはこの制度の信頼を確保するためにも極めて大事な点だろうというふうに思っております。

山井委員 ありがとうございました。

 私としては、この確定拠出型企業年金、基本的には賛成でありますが、先ほども申し上げましたように、やはり老後のリスクというものを自己責任で負うということに日本人はまだまだなれていないと思いますので、そのあたり、慎重な運用をお願いしたいと思います。

 それと、冒頭に言いましたように、介護と年金は車の両輪であると思います。

 月曜日に行きました老人ホームでも、個室がいいですか、四人部屋がいいですかということを囲碁をされていた車いすのおじいさんに聞きましたら、もう私なんかは預かってもらっている立場で、そんなぜいたく、どっちがいいと言えた身分じゃないよということをおっしゃっていて、自分の仲間もみんな戦争で死んじまって、この老人ホームも女性ばかりだということをおっしゃっておられました。

 やはり、そういう意味では、この年金の問題と介護の問題は車の両輪として、ぜひとも安心できる老後のために進めていっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島でございます。

 きょうは、確定拠出年金法について何点か御質問させていただきます。

 今回のこの確定拠出年金法案、まず読みまして、一番冒頭の部分、ここの第一条に「自己の責任において」ということが明確に規定されております。

 この自己の責任ということ、私はこの言葉について非常に重く受けとめておりまして、非常に冷たい感じがするんです。自己の責任。昨日の岩國議員のいろいろな質問も、岩國議員はずっと三十年間にわたり外資系で勤めていらっしゃって、この辺の自己責任原則ということを非常によくわかっていらっしゃる。多分、だから非常に保守的な質問をされたかと思います。私も、この一番最初の「自己の責任において」という、この非常に突き放した第一条というのは、非常に重く受けとめなければいけないと思っております。

 それで、自己責任がどういうものかということにつきまして、副大臣そして年金局長さんにお伺いしたいんですけれども、よろしいでしょうか。

桝屋副大臣 まさに今委員の方から、今回の確定拠出年金制度の法の根本の原則といいますか、そうした点で、自己責任ということについてのお尋ねをいただいたわけであります。

 確定拠出年金は、拠出した掛金をみずから運用指図を行うなど、自己責任に基づく年金制度であるというふうに私どもも考えて、この法案を提出させていただいた次第でございます。

辻政府参考人 副大臣の御指摘のような意味で、自己責任ということを前提とした制度であることは、率直に事実でございます。

 それで、制度的に私どもこれをどのように位置づけるかということでございますけれども、あくまでも、この自己責任による制度というのは選択肢の一つである、もうこの制度でなければならないという位置づけにしていないということが一点。

 それから、我が国経済社会の今後のあり方としても、さまざまな規制緩和が大きな流れでございまして、企業も個人も、透明化されたルールの中で自己責任を果たしていく、そして効率的で納得できるというような市場を形成していく、こういうことが求められているという状況のもとで、あくまでも選択肢の一つを加えるということでございますけれども、こういう自己責任もこれから問われていく時代ではないかというふうに考えております。

大島(敦)委員 この自己責任という言葉で私が直観的に感じるのは、若いときにドイツに駐在していまして、当時いろいろなところに行くと、観光地とかで、自分の責任においてこのさくの向こうに行ってもいいよと、自分の責任においてという標語があるわけなんです。このさくを越えて向こうへ行ってがけから落ちるのはあなたの責任だよというのが自己責任です。

 あるいは、日本人の駐在員が、子供が飛び出してひき殺してしまった、そのときにドイツ人の弁護士が言うのは、飛び出してきたやつが悪いんだから損害賠償しましょう、自動車が傷ついたから。そういう社会が自己責任の社会だと僕は思っているんです。非常にきついんです、自己責任。

 アメリカですと、今、ピストルを持っちゃいけない、ライフルを持っちゃいけないと言っていますけれども、やはり自分のことは自分で守ろう、そういう哲学もあるわけですよね。これが自己責任です。

 あるいは、今から六年前に、前の会社でずっとハイテクベンチャーの撤退案件をやっておりまして、そのときに、向こうのマウンテンビューにあるベンチャー企業の株主総会に出たことがあります。当時は二千億円の売り上げでした。十年間で、十億円の会社が二千億円の会社になりました。

 そこで、一時間半、高名な社長が自分でいろいろな経営戦略について説明した後に質問はあるかと言うと、こちらの方に白髪の四十歳ぐらいの御婦人とネクタイを締めた小学生が二人いまして、小学生が手を挙げるわけです。そして、あなたの会社のワークステーションのマーケティング戦略について教えてくれという質問をするわけですよ。その二千億円の社長もしっかり答えている。これが資本主義なんです。要は、こういう投資教育を受けた人間がアメリカの金融機関に入っていろいろな金融商品を開発している。

 自己責任、橋本内閣のときに何本かの金融の自由化の法案が通りました。私、それを見ていて怖いなと思ったんです。政治家というのは、具体的に橋ができたり、あるいは学校ができたり、目に見えるものについては具体的なイマジネーションがわく。しかしながら、こういう金融の法律というのは、重要さの度合いの割には余り具体的イマジネーションがわかなかったんじゃなかっただろうかなという危惧を私は持っておりまして、今回のこの年金法案を含め二本通るかもしれません、前回の確定給付の法案、そして今度は確定拠出の法案、このインパクトというのが非常に大きいと思っているんです。ですから、この運用に関しては、極めて保守的な運用を当初はとらざるを得ないのかなと思っております。

 そんなところを踏まえまして、質問していきたいと思います。

 具体的な各論に入ります。まず、確定拠出企業年金法について、厚生年金保険の適用事業所が対象になっております。適用が強制されていない事業所については入れないことになっておりまして、今回、確定給付の年金法も厚生年金の適用事業所が対象になっておりまして、そこからこぼれる企業がないのかどうかというところを伺わせてください。

辻政府参考人 まず、厚生年金のいわゆる適用強制になっていない事業所というのは、法人はすべて強制適用でございますが、個人事業所でございまして、まず一つは五人未満の従業員の個人事業所、それから常時五人以上の従業員を使用しておりましてもサービス業とか農業といった一定の業種につきましては非適用業種になっておりまして、これは任意加入ということになっております。

 このたび、御指摘の適年との関係でどうなるかいうことでございますけれども、まず、五人未満の事業所につきましては、御案内のとおり、平成十一年十二月までは、適格退職年金の方は契約締結時に、生命保険契約については十五人以上、信託契約については百人以上といった加入者数の要件がございまして、これは廃止されましたけれども、実際、経営合理性から見てこのような実態がございますので、まず、五人未満のものは実態としてはなかろうと。したがいまして、問題は、厚生年金を適用されない、今のレストランや理美容等が入っておりますけれども、こういう一部のサービス業を営む五人以上の個人事業所ということかと存じます。

 このようなところが適格退職年金との関係でどうかということでございますけれども、確定拠出年金は、あくまでもこれは公的年金の上乗せの制度としての選択肢の一つとして導入するものでございまして、やはり任意で厚生年金の適用事業所となる道を開いている以上は、まず、国が給付を保障する公的年金である厚生年金に加入していただく。公的年金という、いわば労使折半で、実質価値が確定された、そういうような意味における給付を保障することがまず最善であって、当然であるということで、やはりこの選択肢としての一つである以上、まず、厚生年金に加入できるわけですから、それを第一としていただきたい。

 では、どうしても適格退職年金が必要であるということであれば、それはむしろ、年金というより退職金のためということになろうかと思いますが、これにつきましては、法律に基づいて勤労者退職金共済機構が実施する中小企業退職金共済制度に移行した方がはるかに安定性があるのではないか、こういった考え方を持っております。

大島(敦)委員 今回の確定給付そして確定拠出のこの二法案につきまして、確かに、厚生年金の適用事業所以外は入れない、厚生年金の適用事業所をしっかりやっておかないと入れないよということは、今までの御答弁の中で中小零細企業を対象にしているというような御答弁があったかと思うんですけれども、そこの部分の企業が幾つか、このような制度からこぼれてしまうおそれがあるのかなと考えております。

 もう一つ、引き続き御質問したいんですけれども、中小零細企業において、退職一時金制度あるいは企業年金制度は、企業内ではどのような手続あるいは規定に基づいて制度が導入されているんでしょうか。

日比政府参考人 手続面でございますが、退職金制度、この場合には、一時金あるいは年金払い、どちらも含めて考えておりまして、また、企業外の制度を利用するという場合も含めてでございますが、企業におきまして退職金制度を設けるという場合には、企業規模にもよりますが、常時十人以上の労働者を使用する使用者の場合には、就業規則につきまして、作成、変更につきましては一定の手続がございます。

 退職手当につきましても、就業規則で、適用される労働者の範囲等を記載するということになっておりまして、そのような就業規則を作成または変更します場合の手続でございますが、その事業場の労働者の過半数を代表する組合がある場合にはその組合、そういう組合がない場合には過半数の労働者を代表する者、そういう組合なり代表者の意見を聞いて、その意見書を就業規則に添えまして監督署に届け出るという手続になっております。

大島(敦)委員 その際に、労使の合意というのは前提となるんでしょうか。

日比政府参考人 ただいま申し上げましたように、意見を聞いて、その意見書を添付する必要はございますが、これは意見を聞くということでございまして、合意の点につきましては、望ましいものと考えておりますが、法律上、要件とはなっておりません。合意までは要件とはなっていないということでございます。

大島(敦)委員 確定給付企業年金法そして確定拠出年金法におきましては、その制度導入に当たりまして労使合意は必要でしょうか。

辻政府参考人 御指摘のとおり、労使合意、具体的には労使の合意が必要でございます。

大島(敦)委員 今回導入が予定されている、多分、中小零細企業のために今回の確定拠出年金法をつくったというような御答弁があったかと思うんですけれども、中小零細企業において就業規則とか退職金規程をつくる際に、労使合意というのは必要とされていないわけです。今回、思うに、中小零細企業が労使合意を結んでまで、確定拠出年金法、このような制度を導入することが促進されるのか。どちらかといえば、制度導入を嫌がるおそれがあると考えますが、御所見はいかがでしょうか。

辻政府参考人 現在、今御指摘の適格退職年金につきましては、特に中小零細企業の場合、適格退職年金自体が事業主と信託、生保等の受託機関との契約に基づく制度でありますので、従業員のためのものであろうということでありますけれども、その実施に当たって従業員が全く関与していないケースがあるというふうに認識しております。

 この法案では、こうした点を改めまして、退職金の場合は、一般的に意見を聞くというのが労働法上の整理でございますが、一歩進めまして、労使で十分に話し合って合意していただいた上で確定拠出年金の制度創設を行い、その運営に当たっては、加入者に対して十分情報開示を行う。この情報開示というのは非常にこの年金の場合は必要でございますので、そういった形にする必要があると考えているわけでございます。

 確定拠出年金は中小零細企業の従業員に非常に大きなメリットがあり、またそのことを確保するためにこそ入れますので、この点は、事業主にその趣旨を十分御理解いただくように、私ども努力してまいりたいと考えております。

大島(敦)委員 二つ今まで質問させていただきまして、厚生年金保険の適用事業所じゃないと制度導入ができない、労使の合意も必要であるという、この二点がございました。

 念のために確認したいんですけれども、中小零細企業のそのような実態とか意見というのは、今回のこの法案をつくるに当たってヒアリングはされたんでしょうか。

辻政府参考人 この立法過程で、日本商工会議所から御意見を承っております。

大島(敦)委員 日本商工会議所にしても、そのトップの方というのは、大企業の経験者でいらっしゃいます。本当に中小零細企業の声というのがここまで届いているのかなと、私非常に違和感を覚えるんです、今回の確定拠出あるいは確定給付の法案の審議に当たっておりまして。実態が大きくずれている感じがするんです。

 ですから、これは、今後のいろいろな進め方として、商工会議所の方に聞くというよりも、もっと中小零細の方たちの直接的な意見を聞いて、実態をつかまれた方がよろしいのかなと考えております。私たちは、地元に帰ると、皆さん、各中小零細企業の方と個別にお話し合いをしたりして、その実態感を踏まえると、今回のこの法律というのが本当に中小零細企業のためなのかなと思っておりまして、もう一回確認したいんですけれども、中小零細というのはどのような企業をイメージすればよろしいでしょうか。

辻政府参考人 具体的には、何人というふうに申せませんけれども、百人未満、あるいは五十人未満といった事業所も入っておると考えます。

 そしてまた、私ども、この法案の審議の過程で、事業主がいわば、言い方が適切かどうか、安易に確定給付年金とか退職金を確定拠出年金にかえるというようなことがあってはならないという御指摘を強くいただいているわけでございますけれども、そのようなことを考えますと、従業員の方が納得されるということが非常に大切な要素になっておりますので、この制度におきましてこのような仕組みにさせていただいたという点について、何とぞ御理解を申し上げたいと思います。

大島(敦)委員 次の質問に移ります。

 税制適格年金、厚生年金基金、確定給付企業年金、中小企業退職金共済制度から確定拠出年金への移行は可能でしょうか。

辻政府参考人 既存の企業年金制度、それから確定給付企業年金制度、これから導入されますもの、こういったものが確定拠出年金に移行するケースといたしましては、将来に向けてのみ確定給付型の企業年金に係る掛金を減らしたり廃止をし、その分で確定拠出年金を実施する場合、あるいは、過去からの確定給付型の企業年金の資産の全部または一部を確定拠出年金に移換して、あわせて将来に向けて確定拠出年金を実施する場合、この二通りが考えられます。

 また、過去にさかのぼって確定拠出年金に移行する場合の移換できる積立金の額については、移行までの勤務期間を通算し、その期間において確定拠出年金制度があったとみなして拠出限度額に相当する額を拠出したとした場合に積み立てが可能となる額を限度としております。そのような形になっております。

大島(敦)委員 そうしますと、一つの企業が確定拠出企業年金、この制度を導入した、その場合に、他制度から移行する場合の積立金の限度額はございますでしょうか。

辻政府参考人 御指摘の限度額はございまして、具体的には、移換できる積立金の限度額は、単純に毎年の拠出限度額に過去の勤務年数を掛けたもの、そして、それぞれに過去の利子に相当する分を含めて、その合計額でございます。

大島(敦)委員 そうしますと、その金利分を除けば、十年勤務ですと四百三十二万円、二十年勤務されますと八百六十四万円が、確定拠出年金、この制度に移行できると考えてよろしいでしょうか。

辻政府参考人 御指摘のとおりでございます。

 ただ、申しましたように金利も加えますので、ただいまのもの、十四年四月から仮に実施するという場合には、金利を足しますと、十年勤務で約五百二十万円、二十年勤務で約千三百八十万円となります。

大島(敦)委員 今回のこの確定拠出企業年金の制度導入に当たって、最初は、会社に勤められている方は年間四十三万二千円という上限額があったり、あるいは、ほかに適格年金なりあるいは確定給付の年金をやっている場合にはその半分ぐらいの金額ということがあって、最初から大きい金額が確定拠出年金のこの制度に入り込まないかなと思っていたわけです。

 そうすると、ある程度、先ほど言っていた自己責任というのを勉強していきながら従業員の側も成熟していくのかなと思っていたんですけれども、一挙に、十年勤続の方ですと五百二十万円、二十年勤続の方ですと一千三百八十万円という金額がこちらの、確定拠出のポケットに移ってしまうということは、もうその日から従業員は運用というリスクに当たらなければいけないのかなと考えるわけです。

 それでは、運営管理機関、資産管理機関、運用機関を一つの会社が兼ねることは可能でしょうか。

辻政府参考人 結論から申しますと、運営管理機関、資産管理機関、それから運用機関、この三つを一つの会社が兼ねることは可能でございます。

 ただ、例えば資産管理機関の場合は、年金資産を会社財産から分離できる機能を有する信託、生保等の会社に限定されておりますので、これらの金融機関でなければ一社ですべてを兼ねることはできない。

 それから、運用機関が運営管理機関を兼ねる場合には、運用商品の営業に係る事務を行う者が運営管理業務を兼務することは認めないといった規定を設けることによりまして、兼ねることができますけれども、加入者保護は図られるよう十分留意をいたしております。

大島(敦)委員 その中の運営管理機関というのは、幾つかの機能があるかと思います。一つの機能としては、各従業員のデータベースを管理して、この従業員の口座がどれだけふえたのか減ったのかという個別管理をする業務、あるいは、商品を、こういう商品がありますよということで提供する業務というのがありますけれども、この運営管理機関、この中核となるところというのは、例えば制度導入する企業自身もこの運営管理機関になることは可能でしょうか。

辻政府参考人 制度を導入する企業がみずから運営管理業務を行うことは可能でございます。

 その考え方でございますけれども、考え方としては、本来、運営管理業務はこの確定拠出年金実施主体たる企業がみずから行うべきものであるという考え方になるわけでございますが、運営管理業務というのは、多額のシステム開発費用を要することや、資産運用に関する専門的知識が必要だというようなことから、運営管理機関に業務委託を行うことができるようにしたものでございます。

 そのようなことから、事業主としての忠実義務、個人の情報保護義務というものはもともとあるわけでございますが、運営管理機関としての専門的な地位に基づく注意義務といった受託者責任も、その場合は、兼ねる場合は全部かかることになりまして、非常に重い責任を持つことになります。

大島(敦)委員 プライバシーの保護の問題について伺いたいと思います。

 その制度を導入する会社が運営管理機関を兼ねた場合、例えば今回のデータベースを構築するような大手の金融機関というところは、多分この金融機関が自分の会社の運営管理機関になるのかなと思うんですけれども、そうした場合に、例えば、このお金ですよね、毎年四十三万二千円が振り込まれたりする、こういうお金というのが、その事業主が全部運用の指図もわかってしまう、自分の従業員がどういう資産をどれだけ持っているのかわかってしまう。こういうことはプライバシーの保護に反するかと思うんですけれども、その辺の御所見を伺わせてください。

辻政府参考人 加入者がみずからの責任で運用を行い、その結果に基づいて給付額が決まるというこの確定拠出年金制度におきまして、個人情報の保護は本当に大変な重要な問題だと思います。

 この場合、法案では、事業主が運営管理機関を兼ねました場合においても、個人情報を保管、使用する際の目的外使用を禁止しているということになっております。

 一般論としてでございますけれども、情報をつぶさにわかるのは、記録管理業務、記録関連業務を行っているからこの方はこれだけの資産といったようなことがわかるわけでございますが、これは大変な装置産業でございますので、一般論としましては、相当大手の事業主でない限りできないということでございますので、一般の事業主がそれを兼ねる、確定拠出年金を実施する事業主がそれを兼ねるということは、一般論としてはないものと考えております。

大島(敦)委員 今回のこの法律の書き方ですと、制度導入する会社が運営管理機関にもなれるということは、その前提として、その制度導入する会社は、自分のところの従業員がどういう口座を持っていて、幾らぐらい資産があって、それがどうやって指図して動いているかというのが一目瞭然なわけです。これは従業員にとっては非常に怖いことなわけです。大きい会社だったらそんなに怖いことじゃないかもしれない。皆さんがこれから加入が促進されると言われている中小零細企業の事業主が、自分のところの従業員が幾ら口座を持っている、幾ら資産があるよということがわかってしまう。あるいは、今回これはポータビリティー性が非常に利便性として強調されておりますから、いろいろな会社を渡っていく。そのときに、今度来た従業員は一千万円持っているんだな、あるいは、今度来た従業員は五百万円なのかなとか、そういうつまらないことを事業主が考えたりしてしまう。

 ですから、プライバシーの保護に関して、例えば、もう一回教えていただきたいんですけれども、事業主が運営管理機関を運営するときにはプライバシー保護はありませんよ、あるいは、外部に委託するときのデータベースに関しては事業主はアクセスできるんですか、できないんですか。そこのところをちょっと教えてください。

辻政府参考人 今申しましたように、事業主が記録関連業務を行う運営管理機関を兼ねるということは、一般的に、特に中小企業の場合は現実になくて、そのようなことがどんどん事業主に入ってくるということは余り考えられないのじゃないかと考えるわけでございますのと、それから、運営管理業務を他の機関に委託しているときに事業主にどんどん情報が返ってくるかといえば、これにつきましては、事業主に対して運営管理機関は守秘義務を持っておりまして、個人の情報というものを伝えることはできません。

大島(敦)委員 一応これは、今回法律を読んでいて非常にポイントだと思っておりまして、プライバシーの保護の問題が今回の法律のこの書き方ですと非常にあやふやな感じがするわけなんです。

 そのことについて今後とも、もう一度確認の答弁をいただきたいんですけれども、データベースを管理する会社、一たん事業主、会社側が従業員にお金を払った、そこから先の資産の管理とか、どういう指図、何をしているかということは、しっかり一〇〇%プライバシーが保護されるということは担保できるんでしょうか。あるいは確約していただけますでしょうか。

辻政府参考人 今申しましたように、記録関連業務を行うことを含めて運営管理機関、それを行っている運営管理機関は、事業主に対して、その運営管理機関の知っている個々の個人情報について守秘義務を負っておりまして、万一これについての義務違反を行った場合には、民事上の賠償責任の対象となるのは当然でございますし、この法律では行政処分の対象とするという形で法的に担保いたしております。

大島(敦)委員 では、次の質問に移りたいと思います。

 山井さんと同じ質問になるかと思うんですけれども、今回のこの制度導入に当たって、やはり商品の提供をすることについて専門性が求められると思うんですけれども、それはどのようなところで担保されるんでしょうか。

辻政府参考人 確定拠出年金の導入に当たりましては、加入者が制度の内容をきちんと理解して、その上で個々のニーズに応じて適切に運用できるような知識を持っていくというのは非常に重要でございまして、確定拠出年金法案におきましては、運営管理機関は加入者のために忠実にその業務を遂行するということで、専門性を持っておるからこそ加入者のために忠実にその業務を遂行することができるわけでございます。

 運営管理機関は、運用商品を販売することにより利益を上げようとする一般の運用機関とは異なりまして、加入者の立場で行動すべきである。そのような意味で、忠実義務のもとで専門家としての知見に基づき行うことを当然であるという義務づけを行っておりまして、そのような専門性に基づいた、運営管理機関としてそれぞれ詳しい情報提供が行われるものと考えております。

大島(敦)委員 ここで予定されている商品の提供者としては、銀行、証券会社、生損保、農協、郵便局等が挙げられております。その金融商品の販売なんですけれども、これは極めて専門性が必要とされるわけです。

 例えば、保険商品、生命保険あるいは個人の年金保険等を販売するときは、販売員が皆さんのところにお伺いをして、こういう商品がありますということで売り込みに入る。売られる方としては、一たん構えるわけです、そこで。この人はちょっとうそをついているんじゃないのかな、本当に正しいのかなということで構えるかもしれない。あるいは、投資信託もそうです。証券会社の店頭に行く。いろいろ説明を受ける。そこには買うという意思があるわけです。買うという意思がある。ですから、投資信託で損をしたとしても、自分で買いに行ったんだから仕方がない、そういうような自己納得ができると思うんです。

 今回のこの制度というのは、国の制度、公的な制度に近い形で出発するわけですよ。そのことは、従業員にとっては、多分この品ぞろえ、商品というのは基本的にいい商品が多いのかなということを考えるかと思うんですけれども、しかしながら、今までの答弁ですと、いろいろな商品が可能なわけですよね。

 一つ伺いたいんですけれども、その可能な商品の中で、ベンチャーキャピタルがつくったようなハイリスクの商品ということも品ぞろえの中で可能なんでしょうか。

辻政府参考人 確定拠出年金では、時価評価が可能であり、商品の預けかえなどにも迅速に対応できるといった要件を満たした金融商品であれば運用対象とすることができます。

 ただ、一口で、ベンチャーキャピタルあるいはベンチャー企業の株式ということを考えました場合に、種々のものがございまして、例えば、今の要件から見ましたら、市場価格が形成されないようなもの、未公開株が典型でございますけれども、これについては対象にできない、こういった整理になっております。

大島(敦)委員 きょうは金融庁の参事官の方に来ていただいておりまして、やはり、投資信託とか生命保険会社の変額保険を販売するに当たって今までいろいろな問題が起きたりして、制度が非常に充実してきたという歴史がございます。保険会社あるいは証券会社の販売に当たっての義務はどのようなものがあるんでしょうか。

田口政府参考人 お答えいたします。

 まず、投資信託の募集でございますが、投資信託の募集に際しましては、証券取引法の規定に基づきまして、証券会社は、投資者に対しまして、あらかじめまたは販売と同時に、申込手数料、投資対象とする有価証券等の種類あるいは投資の基本方針、こういったものを記載した目論見書を交付することが義務づけられております。

 また、変額保険の募集に際しましては、保険業法及び同法施行規則の規定に基づきまして、保険会社は、契約者に対して、書面の交付により説明を行うことが義務づけられております。この書面には、一つは変額保険を経理する特別勘定の資産内容とその評価方法、二番目に資産の運用方針、三つ目に、資産の運用実績によっては将来における保険金等の額が不確実である旨、こういったような内容を記載する必要があるというふうにされております。また、その書面を交付する際には、契約者から当該書面を受領した旨の署名または押印を得ることとされております。

大島(敦)委員 今、田口参事官の方から、いろいろと金融商品を販売するに当たっての細かい規定等を教えていただきました。今回の運営管理機関というのは、そのようなことができる担保はあるんでしょうか。保証はございますでしょうか。

辻政府参考人 運営管理機関の情報提供に関しまして法律二十四条がございまして、そこでは、商品に関して十分の説明を行わなくてはいけない、こうなっております。

 順を追って申しますと、その前提として、通常、実施事業者が投資教育の努力義務を負っておりますけれども、これは運営管理機関に委託することができるということになっておりまして、これは通常、もう当然のこととして、運営管理機関はまず投資教育も行うということから入る、また、そのような前提で関係者は考えております。

 そういうことから、まず投資教育というものを運営管理機関が一般的に相当行う。この投資教育の内容は私どもなりにきちっとこういうことということを示す予定でございますが、商品のことですのでそこはここではオミットさせていただきまして、具体的な商品につきまして、これはまた相当具体的に伝えなければならない内容を、法令で、この二十四条に基づいて定め、実施することになっております。

 それは、具体的には、例えば個々の商品につきまして、予定利率などの利益の見込み、これは元本保証かどうかということを含めてでございます。元本保証でない場合は損失の可能性はどのようなものがあるかといった、こういう具体的な商品の内容、仕組みということを説明しなければならない。また、加入者が長期的な視点に立って運用商品を選択できますように、それぞれの商品についての過去の長期間にわたる利益や損失の実績、これをデータとして示さなければならない、そういったこと。それから、一般的に金融サービス法で金融機関に対して顧客へ情報提供を義務づけている重要情報、これについてはそれと同じことを伝えなければならない、こういったことを法的に定めることといたしております。

大島(敦)委員 今回の確定拠出の制度に、例えば三年後とか五年後、何人ぐらいの方が加入されるということを想定されておりますでしょうか。

辻政府参考人 今申しましたようなさまざまな関係者のお話を聞いて、すなわち投資教育を受けて、そういう中で労使が納得をして、既存の仕組みとの関係も議論をして納得して、そして初めて導入する、こういう手順を経るわけでございますので、私ども、徐々に徐々にふえていくという形を想定しておりますが、では、三年後、五年後、どのくらいのボリュームになるかということについては、徐々に徐々にということを想定しておりますけれども、具体的には現在のところ見通しておりません。

大島(敦)委員 金融商品を販売するということは非常に専門性が必要で、金融商品というのは見方によってはいかようにでも説明できてしまう商品でもあるのです。今この日本にそういうことを説明できる人はいるのかなと非常に疑問を覚えているのです。

 いただきました資料を読みますと、生命保険会社では、生保の営業、生保レディーとか販売店、代理店を活用するとか、何か本当にこんなので大丈夫なのかなという感じがするんですけれども、それでも大丈夫だと思われるんでしょうか。

辻政府参考人 私ども、現在準備中の、もしこの法案が成立いたしましたときのために準備している会社のパンフレットとか、説明の方針とかいうようなものも見ておりますけれども、相当詳細に説明することを想定した資料を準備しておられるということから見まして、相当詳細に説明されるという準備が進んでおります。

 私ども、この運営管理機関の説明につきましては、これが不十分である場合、問題のある説明である場合、これはすべて法的な義務違反になりまして、損害賠償責任にもつながる、あるいは行政処分にもつながるというものでございますので、この法案の施行というのは相当しっかりとやらなくてはいけない、私ども、そのような気持ちでこの法案に取り組んでおります。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 そうしますと、罰則規定とかあったりして、運営機関の方もちゃんと構えてやるというような御答弁だったかと思います。

 例えば、こういう年金制度ですから、先ほどの山井委員からの御指摘もございました。やはり老後のお金なわけです。老後に備えてのお金ですから、運用というのは非常に保守的でなければいけないなと私は考えております。

 今回のこの制度というのは、財界、経済団体の方は、会計原則が一応できたので、毎年毎年退職金の部分を外出ししたいよということ、これはよくわかります。外出ししたんでしたら、この外出しした部分は確定給付型でもいいわけなんですけれども、ちょっと確定給付型から大きく品ぞろえを広げ過ぎているような感じが私はしておりまして、やはり確定給付には元本保証とか利回りが保証されているような商品の方が、このような制度を導入する場合にはまず適切なのかなと。

 特に、バブルの話がございます。ガルブレイスさんが書いている本もございます。忘れたころにやってくるのがバブルなわけですよ、忘れたころにやってくるのが。今皆さんはバブルを知っていますから、余りハイリスクの商品は手をつけないかもしれない。二十年、三十年、四十年たって、もう一回バブルがあったとき、会社の中で周りの人たちが、いや、年金がどんどんふえているぞと言われて、みんなそこに投資してしまって、結局、蓄えた一千万なり、二千万なりの資金がすべてなくなってしまうというおそれも今回のこの年金制度というのは非常に包含しているわけです。

 一条ですとこう書いてあるわけですね。「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」ということになっています。この国民の生活の安定と福祉の向上に寄与しないと私は思うんですけれども、御所見を伺わせてください。

辻政府参考人 この法案の仕組みといたしまして、提示される運用商品に、一つは元本保証のものを含まなければならないということといたしまして、しかも、それ以外の元本保証でないものが商品に提示されるといたしましても、今言ったような説明を十分行わなければならない、そして、行わなければこれは法令違反になるという仕組みのもとで実施しておるということでありますとともに、それから、制度面におきましても、規約を定めますときに、提示する運用商品の基本的な考え方ということをまず労使で話し合って規約で定める。

 こういった中で、立ち上がり、私どもはリスクを勧めるというような前提でこの法律を考えておりませんので、労使が十分話し合って、例えば、形としましては、労使合意の上で預貯金あるいは国債といったようなもの、元本確保型のもののみで方針を決めて運用することも可能でございまして、この点、リスクを抱いて、国民の資産あるいは財産が減ることということが一般的に含まれておって、福祉向上につながらないというようなことは決してないというふうに考えております。

大島(敦)委員 それでは、生命保険会社というのが昨今非常に破綻を来しております。これは、ソルベンシーマージン比率の低いもの順からずっと破綻を来しておるものですから、その点は私、よく理解できるんですけれども、生命保険会社の運用がどのようになっているかについて御質問したいと思います。金融庁の方、田口参事官、お願いいたします。

田口政府参考人 お答えいたします。

 保険会社の運用原資は、多数の契約者から継続的に払い込まれた保険料でもございますし、これを長期にわたり安全かつ有利に運用し、将来の保険金支払いを確実にすることが不可欠であるわけでございます。

 このため、保険会社の資産が、リスクの過大な資産でありますとか流動化が容易でない資産、こういったものに集中して契約者に損害を及ぼすことがないようにする必要があるということで、現在、保険業法上、資産の種類に応じました運用割合でありますとか、同一人に対する運用比率などの規制が設けられているところでございます。

大島(敦)委員 生命保険会社の運用というのは、非常に規制を設けて、かつ安定志向で運用しているにもかかわらず、幾つかの生命保険会社、プロでも破綻を来して、やはり加入者に対して迷惑をかけているわけです。

 それと同じ機能を今回は従業員自身がやるということですから、制度というのは、やはり私は品ぞろえというのは限定した方がいいと思いますし、先ほどの、きのうの答弁にもございました労使の自治という考え方でも、従業員、事業主も労働者側もこういう金融商品というのはよくわからないと思います。たくさん、細かくは規定されているかもしれないけれども、個別にこれがどういう意味を持つかということまではわからないと思いますので、その辺のところ、これから細かく制度を皆さんの方でつくっていく中で工夫していただきたいと考えます。

 もう一つ質問したいんですけれども、死亡一時金というのがあるかと思います。今回の死亡一時金の規定は、厚生年金保険とか国民年金保険の書き方と同じだと思うんですけれども、それでよろしいでしょうか。

辻政府参考人 御指摘のとおりでございまして、死亡一時金を受けることができる遺族は、原則として厚生年金、国民年金等に準じた体系になっております。

大島(敦)委員 坂口厚生労働大臣に伺いたいと思います。

 今回の確定拠出の年金法案というのは、一階、二階、三階建ての部分でございます。ですから、私的年金でございますので、今までの答弁ですと、多少いろいろな商品があってもいいよ、元本も含んでいる商品もあるものですから、品ぞろえとしてはある程度リスクがあってもいいよという御答弁だったと思うんですけれども、それでよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 今お話しになりましたように、年金制度の中で、今回御審議をお願いいたしておりますのは、いわゆる三階建て、三階部分と言われます部分の年金でございます。

 したがいまして、今までのいわゆる公的年金と言われます一階、二階の部分とこの三階の部分とは、若干趣はやはり異にしているのではないか。一階、二階をひとつきちっとしながら、そして三階のところには、それぞれ御加入いただいている皆さん方の御意思というものを踏まえていく、そうした側面もやはり一部あってもいいのではないかというのが今回の法案ではないかというふうに私は思います。

 しかし、そういう皆さん方の御意思を反映させていただくということが、また逆の方から見ますと、それがリスクになる可能性もあるではないかという御意見、昨日からたくさんお聞かせをいただいたところでございますが、それは確かに見方によりましてはそういうことでございますけれども、しかし、そこは賢明な皆さんですから、自分たちの意思も反映できるというところに喜びを持っていただいて、そして参加をしていただけるのではないか、そんなふうに私は考えております。

大島(敦)委員 今回の死亡一時金、例えば在職中に死亡した場合、あるいは年金を受給しているときに死亡した場合に、死亡一時金が支払われます。この死亡一時金の給付の順番というのが、厚生年金保険あるいは国民年金保険と同じであります。

 これは私的年金でございますので、制度は労使の合意に基づいて私的に始まっている制度でございます。ですから、死亡一時金というのは相続の対象として、順番づけも相続であるべきだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

辻政府参考人 この死亡一時金は御指摘のような対象になっておりますが、民法と比べまして、細かい説明は省かせていただきますが、生計を維持しておった関係、この方を民法の関係よりも少し重視する。こういった形で、生計維持関係を重視した関係になっております。

 これは、基本的には年金というのは老後の保障であって、老後の生活を営んでいる社会実態、それに合うようにという形で決められた。そして、いわゆる三階部分、二階の上に乗っているものから、むしろまず基本はこれに合わせるというのが、年金制度として構築した以上、素直であるという整理になっております。

 ただ、一点、これにつきましては、あらかじめ登録をすれば相続と同順位にできるという形で、もともとこの制度は柔軟な形に構成されております。

大島(敦)委員 最後の部分なんですけれども、あらかじめ登録すれば、要は、この人だけという限定するのではなくて、すべて相続の順番で死亡一時金が支払われる、給付されるということでよろしいでしょうか。

辻政府参考人 具体的には、死亡した人が、死亡する前に一定の方を指定して、その旨を企業型記録関連運営管理機関等に対して表示したとき、登録と申しましたけれども、あらかじめ表示したとき、その表示したところによるものとするということとあわせて、今の対象順位を決めたものの規定の中に入っております。

大島(敦)委員 これは相続ではなくて、要は事前に登録しておけばその方のところに優先的に給付されるということで、相続とは関係ないと思うんです。

 僕はちょっと、民法の相続ですと、ずっとその相続を追っていくというのかな、あくまで血筋のつながった方がいれば給付は受けられると思うんですけれども、今回の死亡一時金についてはどのように考えればよろしいんでしょうか。

辻政府参考人 今申しましたように、最終的には御本人の意思というものが担保できるようになっておりますけれども、あくまでもこの法の体系というのは、公的年金の上乗せで、六十歳まで取り崩しを認めない、そういったあくまでも国民の老後の生活保障の体系である。そして、その老後の生活保障の体系というのは、生計維持関係をしていた方の関係というものも考えたものでなければならない。したがって、このようなことが原則になっております。

大島(敦)委員 この辺のところが、確定給付の年金法案から始まりまして、非常に気持ち悪いところでございます。

 もともと、今回の確定拠出にしても確定給付にしても、退職一時金という考え方から派生した権利である、あくまで労使間の合意に基づいた労働条件の一つであるということで、今回のこういう私的な年金制度が始まっている。

 私は、公的な年金制度であれば、これはこのような相続順位でもよろしいかと思うんです。生計を維持したとか、あくまでこのような公共の福祉というのは社会の安定を目指したような仕組みでいいと思うんですけれども、私的な制度でこの死亡一時金を公的年金と同じようにする意味づけというのが、まだここまで求める必要があるのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

辻政府参考人 このように、確定拠出年金法という形で、公的年金の上乗せであるということを法的に位置づけて、そしてまた税制上の優遇措置をとって公的に位置づける、これは、私的な原理に基づいて自己責任で運用されるものでございますけれども、その形は国民の老後保障の一つの体系の中に入る、広い意味でその中に入る、こういう位置づけをしておりますので、このような、最終的には死亡者の意思というものが尊重される仕組みを担保しつつ原則としてこのような制度体系を持つということは、基本的にはこの制度全体の構造にかかわるものであると考えております。

大島(敦)委員 公的な制度の割には運用商品の幅が非常に広くて、今後、バブルが起きたときに不利益をこうむるおそれのある人も想定される制度でもありまして、もともとのこういう受給権が発生したのが労使間の合意に基づく私的な権利であるということを考えると、非常に確定拠出年金法というのは、厚生年金基金と言ってはなんなんですけれども、それに近いような気持ち悪さを感じるところがございまして、公的なものに私的なものを入れてしまって、また同じような制度が出発するのかなと思っております。この制度が今後続く場合には、よくよくその辺の商品の品ぞろえを、制度としては私は容認はする側ですけれども、ただ、品ぞろえ、商品構成としてやはり絞った商品構成で私は制度を運用していきたいと考えております。このことが、また何十年後かバブルが起きたときに不利益をこうむる。

 そして、もう一つ。金融というのは、確定拠出ですから、みんながうまくやったらみんな豊かになれる制度じゃないんです。これは四十兆円、百兆円というと、大きい集団の、例えば確定給付という一つの集団を見てみましょう。

 この運用利率というのは日本経済の経済成長率にリンクするわけなんです。例えば、日生さんというのが四十兆円の資産規模がある。ここの運用利率は、ほぼ日本の経済成長と変わらないわけです。それは、余りにも資産が多過ぎて運用できないから、小さな保険会社は小さいから運用できるから、いいところは伸びるし、悪いところはつぶれてしまう、こういうところがあるわけなんです。

 ですから、この確定拠出の場合のトータルの運用利率は、前回、先週の御答弁の中であったと思うんですけれども、確定拠出も確定給付もそんなに変わらないはずなんです。ただ、確定拠出というのは、損する人もいれば得する人もいる、こういう制度なんです。だから、貧富の差が開く制度なんです、これは。

 ですから、この制度運用というのは非常に厳格に、そして慎重に行わなければいけないと思いますけれども、その辺のことについて伺わせてください。

辻政府参考人 この基本的性格にかかわることでございますが、この制度は、六十歳まで引き出すことができない、長期運用を前提にいたしております。

 勝つ者があれば負ける者があるということはよく株などで言われることでございますが、これは、短期間の投資を行うときに、売りと買いが短期間に錯綜すれば得と損が生じる、端的に言えばそういったことでございますが、この制度は相当長期の運用を前提にいたしておりまして、短期的な売買者の関係ではなくて長期的に、例えば国内の投資に関しましては、日本の経済がどのように成長するか、そしてその成長を長期的にどのように加入者が享受するか、こういった観点から考えておりまして、あくまでも六十まで出せないわけでございますので、短期的に売り抜けたり買ったりといったことを私どもは制度の形としては前提といたしておりません。

 しかしながら、どのようにリスクをとるのかということは本当に慎重にやるべきでありまして、まずもってこの点、投資教育というものが十分になされ、そして十分に労使が話し合われ、そして納得した上で投入されますよう、私ども運用を所管する者としましても心して携わりたいと思います。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 辻年金局長、高橋課長、そして大臣、副大臣には、本当にありがとうございました。特に厚生労働省の皆様には本当に夜遅くまで頑張っていただいておりまして、私も、この六月になりますと昔は朝から晩まで株主総会のQアンドAを書いた経験がございますのでよくその御苦労はわかりますので。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、釘宮磐君。

釘宮委員 民主党の釘宮磐でございます。

 きょうは、私の余り得意分野ではないこの年金法案についての質疑でありますので、重複することや若干初歩的な質問もあろうかと思いますが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 まず、この法案の質問に入る前に、一点ほど質問をさせていただきたいと思うんです。

 それは、六月一日付の朝日新聞「相談所で消えたいのちのSOS」、これは町田で起こった四歳の保育園児の暴行死事件であります。この記事には、宮下直ちゃんというこの被害を受けた子供が、保育園でやけどの跡を見つけた保母さんがこの子にいろいろ尋ねているわけですね。

 そのくだりを若干紹介しますと、

 「ママのたばこにジューって触っちゃった?」

 「うん」

 「直っちが触ったの?ママがジューしたの?」

 「ママがジューした」

 「(あざや傷は)どうしたの?」

 「お兄ちゃんとけんかした」

  九歳と七歳の兄がつけられる傷ではなかった。しかし、傷害致死容疑で逮捕された高橋裕治容疑者のことは口に出さなかった。

 園側は、この状況を見て虐待と確信して、これを児童相談所に届けるわけですね。しかし、この児童相談所の児童福祉司が、直ちに危険な状態にないというふうに判断をして、しばらく様子を見る。その結果、二十九日の事件。ですから、保育園の方で察知をして児相に相談してから十二日後にこの子は暴行死を受けるわけですね。

 私は、二月二十八日の当委員会において、この児童虐待の問題の深刻さ、それから行政対応について検証しながら質問をいたしたわけであります。その中でも私が特に強く指摘を申し上げたのは、通報義務というものが児童虐待防止法でできて以来、通報がどんどんふえてきた、しかし、それを受け取る児童相談所が非常にお寒い状況にある、これで本当に大丈夫なのかという指摘をさせていただいたわけでありますが、またまたとうとい一人の小さな命が奪われてしまったわけです。

 私は、このことについて、正直申し上げて、自分自身、本当に責任を感じているんです。子供が本当に声を出せない、先ほどのこのやりとりを見ましても、やはり、それは言えないというのを子供なりにそこで感じ取っておるわけですね。

 私は、そういう意味で、先般のやりとりの中でも、児相の機能が非常に弱い、それは当時、岩田局長もそのことをちゃんとお認めになっている。しかし、現実としてこういう問題が起きたということについて、厚生省としてどういうふうに考えておられるのか。まず事務方の方から、この点について御答弁いただきたいと思います。

岩田政府参考人 児童相談所への通報は大変急増しております。そして、その中で、今先生御指摘の町田市の事件を初めといたしまして、児童虐待で子供が亡くなるという事案も頻発いたしておりまして、先生と全く同じ気持ちで、深刻に受けとめております。

 厚生労働省といたしましては、十三年度につきましても、児童相談所の体制の強化、児童福祉司という専門職の増員ですとか、その専門性の向上のためのさまざまな手当てを十三年度予算でさせていただいておりますけれども、引き続き早期の発見、早期の対応、そして被害に遭った子供の保護ということに全力を挙げて取り組んでいかないといけないというふうに思っております。

 そして、今回のような深刻な事案につきましては、その都度都道府県から報告を求めておりまして、それぞれの事案から、我々行政として何をそこから教訓として引き出すことができるかということをやっております。そして、前回、先生から御質問いただいた後、三月でございましたけれども、各都道府県の担当課長を集めまして、そこで具体的な指示をいたしております。

 例えば、児童相談所には相談事案はたくさん参っておりますけれども、虐待事例というのは最優先で扱うべきということですとか、親との信頼関係を重視する余りに介入することをためらっているというケースもございますので、何よりも子供の命と安全を最優先にするということですとか、それから、今回も問題があったようでございますけれども、相談を受けた一個人が処理するのではなくて、受理会議というふうに言っておりますけれども、児童相談所全体として、組織としてどういうふうに対応するかとか、児童相談所だけで対応しにくいときには、それ以外の福祉関係の機関、医療機関、警察、そういうようなところと連携してやるようにということを、三月の会議でも徹底したところでございます。

 その後も引き続きこういった深刻な事案は続いておりますので、また、今申し上げましたようなことを中心に、六月の二十一日に全国の児童相談所長会議を開催したいというふうに思っておりまして、その中で、対応に誤りがあることがないように、児童相談所の方にしっかりとお話をさせていただきたいというふうに思っております。

釘宮委員 今の局長のお話ですが、そういう事案が起こった時点でまた新たな対応を考えるようなことでは、結局子供の犠牲が出ないとそれだけの緊急的なものが手が打てないというように私は聞こえるわけですよ。

 私は、前回の質問の際にも、児童相談所の児童福祉司、これが専門性に欠ける、ほかの職域にいた人が人事異動で来てしまう、そのことが、これだけ難しい対応を迫られる、専門性を要する職場に配置されること自体がおかしいじゃないかということも強く指摘をさせていただいたんですが、今回のこの町田の事件は、まさにそのことが原因になっていると言っても過言ではないわけですね。

 私は、局長の答弁とすればそういう答弁しかできないのかもわかりませんけれども、正直言って腹が立つんですね。そんな悠長なことを言っているときじゃないよと。今もそういう状況に置かれている子供があるかもわからぬのですよ。それが放置されている可能性だってあるわけですよ。ですから、もっとそういう立場におる子供のことを考えて、ぜひ今後の対応を考えていただきたい。大臣、ちょっとコメントをお願いします。

坂口国務大臣 二月でございましたか、先生にここで御質問をいただきまして、その後、私も機会がありましたら一度この児童相談所へ行きたいというふうに思っておりました。三月は行く暇がなかったものでございますから、四月の十八日でございましたか、所沢の児童相談所にお邪魔をさせていただきました。ここも以前に若干問題があったところでございますが、そこで、現場で皆さん方のいろいろと御意見もお伺いをし、そして現状をよく拝見させていただいて、一体どこに問題があるのか、どうしたら児童虐待のこうした悲惨なことをなくすることができるのかというので、いろいろお話を伺ったわけでございます。

 その所沢の児童相談所は、かなり増員にもなっておりましたし、そして、それこそ専門性を有するお若い皆さん方も新しく配置になっていることも事実でございますが、しかし、その件数の方は年々倍々ゲームでふえていっている。こちらの多少の増員ではいかんともしがたい、追いつきがたいほどの倍々ゲームで件数がふえてきている。その人たちも本当に一生懸命おやりをいただいているわけでございますが。そして、その中で、今お話しになったような、そういう何かの緊急性のあるものは、今までのケースの間に挟んで、優先的にそこへ行くようにしている。

 その皆さん方の御意見をお伺いして、皆さん方も非常に難しいというふうに言われて、私も、そこはなるほど難しいのかなというふうに思いましたのは、病気のように、家族の方が何とかしてほしいという話だとこれは処理しやすいわけでございますが、家族の方が、そんなことをしてもらう必要はない、なぜ来たかというふうに言われる中で、その子供を保護する、これは、した方がいいかどうかの判断というのが非常に難しい。後で、しまった、あのときにしておけばよかったということになるケースもあるわけでありますから、その判断というのがまことに難しいということをおっしゃったのは、私もそのとおりだろうというふうに思うんです。

 この児童相談所の皆さん方にお願いをすることも大事でありますが、それだけではなかなかいきませんので、関連をいたします、幼稚園でありますとか、あるいは民生委員の皆さんでありますとか、あるいは小児科の先生でありますとか保健婦さんでありますとか、あるいはそれは近所の人かもしれませんし、いわゆる子供にかかわります人たちの連係プレーをいかによくするかということに尽きるのではないか。そこをどういうふうに連携を密にして、そして、おくれをとらずにそれを取り上げていくという体制をどうつくり上げるかということが今問われているのではないだろうかという気がいたしております。

 今回のこの新聞を私も見まして、本当に肝をつぶす思いをしたわけでございますが、そこをどういうふうにつくり上げていくかというところに私はこの問題の解決の一番大事なところがあるというふうに思っているところでございます。

釘宮委員 確かに難しい、微妙な人間関係をクリアしなきゃならないわけですから。

 ただ、私は、やはり安全確保ですよね、まず子供をきちっと安全なところに置く、その原則というものは、早過ぎたって、これは別に、後で帰せばいいわけですからね。まずやはり、そういうふうな事例があったときに、これは若干問題があると思ったときには、そのために児相に立ち入り権も認めたわけですし、警察の介入権も認めているわけですから、やはりまず子供を安全に確保する、そういう状況が必要なのではないかなというふうに思います。

 この問題だけをやりますとあとができませんので、次に移りたいと思います。

 大臣、ハンセン病訴訟での大臣の対応を見て、本当に人間坂口と感じました。私は、この児童虐待の問題、私以上に心を痛めていると思いますが、ぜひ事務方を督励して、手を打っていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。

 次に、今回は年金でありますが、私は、社会保障全体の構造改革というものはまさに喫緊の課題だろうというふうに思っています。これは、小泉改革がまさに日本そのものの構造改革を言っているわけですが、私は、その中のかなり大きな部分を占めるのが、この社会保障の改革だろう。

 そういう意味で、今回、経済財政諮問会議の中で基本方針のたたき台が出されました。その中に、医療費の総額の伸びの抑制という項目が盛り込まれております。これは、医療費の総額に上限を設けて、年度中に使われる医療費をその範囲内におさめる、キャップ制の導入を促したんだろうというふうに受けとめられているわけですが、これについて大臣はどういう御認識をしていますか。

坂口国務大臣 経済財政諮問会議のいわゆる結論と申しますか、具体的にこういうふうにしようという提案が出るところまで至っているわけではございません。ただ、経済財政諮問会議の中のいわゆる主要メンバーの中でいろいろの議論がなされているようでございまして、その議論の中で、この医療費の問題をどうするかという話があって、それがだんだんと漏れていっているということでございます。

 先般ございましたときには項目だけが決まったわけでありまして、中身につきましての議論は、この十一日でございますか、十一日にやるということでございまして、まだそこまで本当は至っていないわけでございますけれども、しかし、新聞にあれだけ大きく漏れてくるということは、そうしたことが議論をされているのであろうというふうに私も予測をいたしております。

 それで、医療費が年々一兆円ぐらいずつこれで伸びてきているわけでございますから、この現状のままでこの伸びをそのまま放置するということにはいかないだろう。これは、このままでいきますと大変な額になってまいりますしいたしますので、この年々一兆円規模で伸び続けます現在の医療の内容につきましては、むだであるところは省かなければなりませんし、制度上こういうことになっておるところがありましたら、制度改革もやらなければいけないというふうに思っておるところでございます。

 ただしかし、この医療費の伸びの中の大きな部分、四〇%は、これはいわゆる高齢者医療でございまして、高齢者医療が非常に大きな分野を占めている。その高齢者の医療の中で、今度は高齢者のいわゆる人数がだんだんと今またふえてきている、高齢化がさらに進んでいる、こういう状況でございます。

 先日も会議がございましたときに、私は臨時委員ということになっていまして、常時そこに出席しておるわけではなくて、特別なときにだけ私は出席することになっておるわけでございます。この間、初めて私はこの経済財政諮問会議というのに出たわけでございます。そのときに、確かに伸びるけれども、しかし、高齢者が伸びる分は、それは伸びるのは当たり前だ、高齢者が伸びることによって医療費が伸びるのは、それはやむを得ない。そこまで伸びはけしからぬと言うのはおかしい。だから、高齢者の医療の伸び、そして高齢者がふえることによって伸びる分は、それは当然増だという感覚を持ってもらわなければ困りますということを私は発言したわけでございます。

 本格的な議論はこれからでございますが、これからいろいろの問題、医療制度の、高齢者の医療制度をどういうふうにしていくかということも含めまして、いろいろの議論になってくるんだろうというふうに思いますが、私はそういう考え方で、すべて込みで、ふえるからだめだというのには反対という立場を今とっているところでございます。

釘宮委員 いや、私がこのことについて大臣にお聞きをしたのは、これは六月二日の東京新聞、この財政諮問会議に対して不満続出と。その中に、坂口厚生労働相も医療費の抑制をけん制したというようなくだりがあるんですね。

 私はなぜ大臣にこのことの認識を問うたかといいますと、さきの参議院の予算委員会の総括質疑の中で、我が党の今井澄参議院議員の質問に対して、小泉総理は、やはりむだを省かないかぬと。そういう意味では、医療費の、診療報酬の問題についても出来高払い制度と定額制度があり、全部診療報酬費用は見ますよというふうに言えば、注射を打つ、要らない点滴も打つというような、こういう具体的なところまで踏み込んでおっしゃっているんですね。

 実は、この医療保険改革、抜本改革については、このことを我々はずっと言い続けてきたわけですけれども、なぜかこの問題はそこから前に行かなかったわけですね。これは、今回総理がここまで踏み込んで発言しているわけですよ。それに対して、僕は、主管庁の大臣でありますから、これはやはり総理とは一体であるべきだ。そういう立場からすれば、大臣にもう少し踏み込んで発言をしていただきたい。そうしないと、私は、この記事の中にも、不満続出、もう至るところから不満が出てきていますが、これ、最後はそれこそとんざしてしまいかねない。そういう国民の期待というものをやはり一身に集めた内閣だと思いますから、その点について、もう一回。

坂口国務大臣 先ほど申し上げましたのは、医療費の伸びる中で、伸びざるを得ない部分について私は申し上げたわけでございますが、全体でいきますと、それは三分の一、大体医療費全体が六%ぐらい伸びていくということになりますと、その中の二%ぐらいがいわゆる人口変化、いわゆる高齢化によりましたり、そうしたことによって伸びているものでございますから、残りはいろいろと節減をすることのできる部分だと私も思っております。

 総理がおっしゃった例は、それはまことにわかりやすい例で、自分勝手に食べ放題食べておいて、そして胃の薬をくれと言ったり、注射をしてくれと言うのはむちゃだというお話だったというふうに思います。それはそうだろうと思うんです。そこは個々人に気をつけていただかなきゃならないところでございます。しかし、言いましてもそこはなかなか直らないところで、一般の皆さん方はどちらかといえば、自分が抑制をするといいますよりも、一本の注射で、一服の薬で治してくれということの方がウエートがかかっておるわけでございますから、そこはなかなか僕は難しいというふうに思うんですが、医療そのもののあり方、これはやはり私は考えていかなければならない点が多い。

 例えば、ある病院でどこかの手術をしました。例えば内臓なら内臓の手術をしました。手術をした胃なら胃は治りました。しかし、胃を治しておりますうちに寝たきりになりました。こういう人はかなり多いわけです。そういう、もとの部分の病気は治ったけれども寝たきりになったとか、あるいはまた、若干、入院をしておりますうちに、拘縮と申しますか、腕が回りにくい、またが開きにくいといったような、関節が動きにくいといったようなことが起こってしまって、これはもう後、車いすになりましたり、寝たきりにならなければならないといったようなことが起こる。あるいは、褥瘡が大変ひどくなって、そして入院を続けなければならないという人も出てくる。やはりこれは病院が気をつけなければならないことだと思うんですね、病院自身が。

 ですから、私は、もとの病気もさることながら、そこから多くの病気を発生せしめるようなことはやはり病院自身が気をつけていただかなければならないことだし、そして、先にそうしたことは予防をしてもらわなければならないことであります。一日に一回関節を回しておけば拘縮は起こらないといったようなことはもうわかっているわけでありますから、それらをせずにおるということがそういうことに結びついていくわけでありますから、そうしたやるべきことはちゃんとやる。そして、そのやったことは評価をする。しかし、そういうことをせずに寝たきりになってしまったようなときには、それはちゃんとその病院で後、責任をとってちゃんとやってくださいよというぐらいなことを、どう言うかは別にしまして、言ってもいいんではないか、私は、個人はそう思っております。

 端的なことを今一つ申し上げたわけでございますが、もっとさかのぼりました、いわゆる予防医学的なことをもっとやはりこの制度の中に取り入れていかないといけない、そうすればもっと抑えることができる、私はそういう考え方であります。

釘宮委員 御丁寧な答弁なものですから、時間がもうなくなっちゃって、少しそれじゃ先を急がせていただきます。

 またここで私が言えば、また大臣は答えをするんでしょうから、要望だけしておきます。

 大臣のお説はよくわかりましたが、とにかく今国民にとって一番やってほしいことは、将来に対する安心感ですよね。そこをやはり政治に期待しているけれども、容易にこれが動かない。そこのところを私は、給付と負担という絶対に避けて通れないところを我々は決めていかなきゃならないわけですから、そういうことをぜひ御認識いただいて、一日も早く改革案をまとめていただきたいというふうに思います。

 年金の問題についても、正直言って私は、今回の確定拠出年金法案、この法案が年金改革そのものの中でどういう役割を果たしているのかというのがどうも見えてこないわけであります。

 特に、確定拠出については私的年金部分でありますから、公的年金との兼ね合いの中で、では公的年金はどの程度国民にきちっと提供する、そして足らざる部分を私的年金で賄うんだということになれば、少なくとも公的年金部分については、これは賦課方式ですから、これから支えられる世代の方が大きくなるということは、そこにどんどんと負担がかかっていくんですね。そこのところの整理というものを、私は今回の確定拠出の年金法案の中からは読み取れないんですね。その点、局長、どうなんですか。

辻政府参考人 今回の確定拠出年金法案提出の前提の公的年金との関係について御説明申し上げます。

 公的年金につきましては、さきに年金制度改正を行っていただきまして、まず基礎年金につきましては、国民生活上の基礎的な費用について保障するということで、現在一人六万七千円の水準でございますけれども、そこを確保する。そして、サラリーマンにつきましては、ボーナス込みの現役の平均賃金に対して五九%、約六割の水準を確保する。そして、将来に向けて負担可能な制度を維持する。こういった形でまず公的年金制度の体系を確保いたしまして、その上に、いわゆる三階といたしまして、私的年金でありますけれども、年金制度体系の中に企業年金を位置づける。

 そして、企業年金といたしましては、今まで確定給付の年金はございましたけれども、確定給付の年金は現実問題として中小零細企業に導入しにくいといった事態がある、そしてまた、雇用の流動性が高まる中で、むしろ、長期雇用を前提とするような確定給付年金ではなくて、いわば転職した場合にポータビリティーのある年金が欲しい、こういったニーズがあることから、確定給付年金とあわせまして、選択肢の一つとしてこの確定拠出年金を導入する。

 こういった形で御提案申し上げております。

釘宮委員 今、公的年金の補完的なことで、今回この確定拠出年金、要するに私的企業年金の中の選択肢の一つだということですね。

 実は私、公的年金の部分の負担を今後どういうふうにしていくのかというところが、我々の主張となかなか相入れないところがあるんですよね。しかし、保険と税を組み合わせていこうということは今の政府の方針だというふうに思いますが、そうなっていくと、いわゆる人口構造からいけば、どうしてもこの部分は若年層に負担というのが相当行くわけですね。若年層というか、支える世代が本当にこれで耐えられるのかどうかという部分では、私は極めて疑問に思うわけです。

 そういう中で、三分の一の国庫補助を今二分の一にしようということで、これも二〇〇四年までに結論を出すと言いながら、いまだに結論が出ていない。いわゆる実施時期ですね。これについては、当然、実施時期がおくれればまた若い人たちが、いずれこの部分の負担はまたふえていくわけですね。

 今、いわゆる年金そのものの展望が全く見えないという中では、若い人がどんどん年金から遠ざかっていっているというこの現実というものを総合的に判断して、政府としてやはりきちっとした年金のビジョンを、この確定拠出年金を出すときに当然ながらそういうのは出していくべきじゃないのかなというふうに思うんですが、いかがですか。

桝屋副大臣 釘宮委員には、この委員会で、医療保険制度の改革のおくれということについても厳しい御叱責をいただいて、今また年金の問題についても、確定給付等の企業年金の前に公的年金制度の問題をきちっと整理すべきではないか、それを国民に示しながらこの法案の審議をすべきではないかという大変厳しい御指摘をいただいたわけであります。

 委員お話しのとおり、国庫負担二分の一の引き上げについては既にレールに乗っかっているわけでありまして、問題は、委員の方から、いつまで、あるいはこの法案の審議の中で明らかにしていくべきであるという御指摘もいただいたわけでありますが、大臣もたびたび答弁をしております。

 結論からいえば、この問題のできるだけ早急な解決が必要である。十六年までに安定した財源を確保して、国庫負担については二分の一へ引き上げるということは既に決まっているわけでありますから、この問題をできるだけ早急に解決するという姿勢で我々も取り組まなければならないというふうに思っております。

 先般決定されました社会保障改革大綱においても、そうした方向、鋭意検討するとされているところでありまして、大臣を中心にしっかりと取り組んでいきたい、このように思っておるところでございます。

釘宮委員 もう時間がなくなりましたので、用意しました確定拠出年金の法案に対しての質疑を残りの時間でやりたいと思います。

 今回の確定拠出年金の導入は、正直言って投資経験というものは私もありません。したがって、自分がこの年金に加入をするというふうになったときは、相当不安がありますね。ということは、当然ながら、日本人はこういう投機的な商品というものには余り手を出さないこれまでの国民性があるわけですね。それを、今急に、年金という、いわば自分の老後のとらの子をその中に入れていこうというわけですから、やはり国民というか、この年金に加入している人たちの動揺というのは相当大きいというふうに私は思います。

 これまで、参考人の質疑から始まっていろいろ議論がありました。一に、今私が指摘したような部分というものは指摘をされてきているようでありますが、私は正直なところ、今回の法案の導入というのが、加入者のサイドに立って決めたのではなくて、何か企業側の論理が優先したような感がしてなりません。

 特に、確定給付そのものが、こういう低金利時代に入ってなかなか、積み立て不足が出て企業が苦しい、だから何とかそっちに乗りかえてくれぬかというようなことが、今後、労使交渉の中で当然出てくるだろう。お互い選択の話だから十分に話し合ってというような話をしていますけれども、会社が苦しい、まず会社がしっかりしなきゃというようなところからやはり押し切られていくということも、これは私の取り越し苦労ではないだろうというふうに思いますし、特に、国際会計基準の導入というものも一つの引き金になっているんじゃないかなと。

 そんなことも見ますと、やはりこの拠出年金の導入というのは、この議論の中でもいろいろやられていますけれども、よほど細かい部分までやっていただかないと、詰めていただかないと、問題が非常に多いということを指摘させていただきたいというふうに思います。もう時間がありませんので、その点については特に私の方の要望としておきたいと思います。

 一つ、ポータビリティーの利点というものが今回特に強調をされているわけですが、これはいろいろな方からの指摘もあるんですが、再就職をしたところが確定拠出年金を採用していない場合は、ポータビリティーというのは全く生かされないわけですね。

 それからいま一点は、そういう場合は個人年金に入りなさいということなんですが、個人年金に加入をしますと、従来の拠出限度額、要するに確定拠出年金に入っていた会社で拠出限度額は月額三万六千円、年間で四十三万二千円だったのが、個人年金に入れば、今度は月額一万五千円の年額十八万円というふうに大きく減額されるわけですね。これは私は、ポータビリティーという利点を強調しながら、一方で、非常に不利益な部分というか、整合性のない部分も内在しているように思えるんですが、その点はどうなんですか。

辻政府参考人 御指摘のとおり、企業型の確定拠出年金を受けておられた方が転職をいたしまして、何も企業から企業年金の支援がないというような企業に移られましたときには、個人型に移られ、その個人型の限度額が減るという関係は事実でございます。

 その場合に、個人型がなぜ認められたかということにかかわるわけでございますが、基本的には、この確定拠出年金の体系と申しますのは企業拠出を基本にしている、個人拠出というのはどうしても貯蓄奨励にかかわってしまうということから、企業型を基本とするという体系で、しかも、企業が、全くその支援がない場合に、いわば事業主にかえて個人型を認める、こういった沿革から個人型が認められた経過から、個人型の一万五千円という限度額といいますのは、企業が支援している場合の厚生年金の企業の支援額の実態と勘案して、それとのバランスで一万五千円は決まったという経過でございます。

 そういうことから、それぞれが認められたいわば沿革にかかわる公平性といいますか、バランスからこのようなことになっておりまして、ただ、長期的にそれをポータビリティーを持って積み重ねて運用していくということでございますので、そのような各仕組みのバランスからそのようなことが起こっているということについて、御理解を賜れればと思います。

釘宮委員 同じ企業年金で、そこにお互いの整合性というものがきちっとやはり担保されることが公平性を担保することにもつながっていくことですから、その辺はぜひ今後の課題として受けとめていただきたいなというふうに思います。

 この点については、社会保障制度審議会の答申の中にも、いわゆる個人型の限度額というものに対しての懸念を指摘しているようでありますが、私も、私なんか、もし入るとすればこれしかないわけですからね。自分のことを言うわけじゃありませんが、やはり少なくともこれは税の優遇というものが一つの誘導策になってきているわけで、この制度が本当に軌道に乗るか乗らないかというのは、やはりみんなが、それだけ魅力があるかどうか、公平感があるかどうかということにもなると思います。

 それと、最後に、同じくそのポータビリティーの活用の中で、公務員、そして第三号被保険者、いわゆる専業主婦ですね、これが除外されています。私は、これから、別にそれを奨励しているわけじゃないですけれども、離婚をするとか、いろいろな状況が起きてくると思うんですね。ですから、やはり、少なくともそこから排除される層というのは極力少なくしていくべきだというふうに思いますが、その点について。

辻政府参考人 第三号被保険者、いわゆる専業主婦、それから公務員、この二つがこの制度の対象として入っていないということについての考え方でございますが、まず、専業主婦、第三号被保険者につきましては、これは一定の拠出に対して税制上の優遇措置を講ずるという前提でございますので、拠出を行うべき所得がないということから対象とされなかったという経過でございます。

 ただ、そもそもこの第三号被保険者につきましては、拠出しない、保険料を負担しないということが公平なのかといった議論を含めまして、女性と年金の問題として総合的な検討が行われておりまして、このような検討の状況も踏まえながらさらに検討してまいりたいと思います。

 それから、公務員制度との関係でございますが、公務員については、民間準拠ということを原則とする公務員制度のあり方を考えますと、まず民間企業における普及の程度等を勘案すべきだということで、それを見きわめた上で検討することということになっておりますが、いずれにしろ、これは公務員制度との関係で、公務員関係省庁とも十分連絡をとり合って検討させていただきたいと思います。

釘宮委員 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、政府参考人として厚生労働省政策統括官坂本哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑を続行いたします。佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。

 またきのうに引き続き、きょうは一時間おつき合いを願えればありがたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。毎回毎回私で、ちょっと物足りないかもしれませんが、申しわけございませんがよろしくお願い申し上げます。

 きのうの引き続きなんですけれども、局長の方にお尋ねをしましたが、余り事例はないというか、はっきり出ていないということなんですが、その後、一日でこんなものは出るとは思いませんが、アメリカでのERISAやなんかを使ったトラブル、事例とか統計というもの、また民事的な裁判等の状況というのが、何かおわかりになったことというのはありますでしょうか。

辻政府参考人 現時点としては、まだ把握できておりませんし、あるということも認識いたしておりません。

佐藤(公)委員 やはり、全くないということはないと思いますので、どうか一回その辺はきちんと、アメリカの方でもどの程度それを統計的に見ているのか、事例として扱っているのか、私も調べましたけれども、なかなかまとまったものがないのが事実でございまして、その辺は、今後、日本のこの確定拠出年金がうまく運営される上で、事前にいろいろな予測ができると思います。

 この法案がアメリカのやり方を非常に勉強しながらまねてつくられたということでございますが、ではそういう中で、厚生労働省としては、一応トラブルということをいろいろと想定してこの法案の組み立てにかかっているかと思いますが、そのトラブルというのが、どんなものが発生するであろう、もしくはそういうものが多いであろうということをお考えになられたのか、教えていただきたく、お願いします。

辻政府参考人 確定拠出年金は、加入者個人が運用方法を選択するということでございますので、加入者が適切に運用方法を選択できることが何より重要ということでございます。その関係から、想定される具体的なトラブルとしましては、加入者に対して、運営管理機関が、元本割れするリスクがあることなど運用商品の選択に当たり不可欠な情報提供を行わなかったり、ある特定の運用商品を推奨した結果、加入者が損害をこうむる、あるいは加入者の個人情報が本人の意思に反して漏れる、こういったことが考えられます。

 このような事態を未然に防止するよう、加入者保護の観点から、事業主、運営管理機関そして資産管理機関の三者に受託者責任を明確化しております。

 具体的には、受託者責任、網羅的に申しますと、事業主や運営管理機関の忠実義務、加入者のためのみに義務を果たすというようなこと、それから個人情報の保護義務、加入者への情報開示の責務。運営管理機関につきましては、商品の説明はもとより、専門家としての注意義務を払わなければならない、それから自己ないしは第三者のために利するような行為をしてはならないといった禁止規定。資産管理機関につきましては、忠実義務。こういった規定がこの法案の諸所に盛られております。そして、それに違反した場合は、規約や登録の取り消しなどの行政処分、一部行為については罰則の対象となる。こんな形になっております。

 先ほど述べた想定されるトラブルに即して説明をいたしますと、加入者に対して運用商品の選択に当たり不可欠な情報提供を行わなかったり、それから特定の運用商品を推奨した結果、加入者が損害をこうむってはいけないということで、今申しました運営管理機関の忠実義務、それから自己ないしは第三者のための行動をしてはならないという禁止というのが定められております。また、加入者の個人情報が漏えいすることのないように、個人情報保護義務を規定しているわけでございます。

 これらのことにつきまして、その遵守と申すものにつきましては、情報開示をベースとした労使によるチェックということで、わかればこういう規定が適用されるわけでございますので、十分、情報開示を通して労使にチェックをいただきたいと思っております。

佐藤(公)委員 まさに今局長がおっしゃられましたように、元本割れのクレームとか、個人、個々の意思に反してみたいなお話がございましたけれども、本当に個人的なトラブルというのが非常に多いのかなという気がいたします。

 まず一つ言えることは、その個人的な部分でのクレームの中で、やはりクレーム、トラブルが起こった場合に、一体全体、問題が起こったときにその問題をどこに相談したり、持っていけばいいのか、その辺のあたりの厚生労働省の考え方がいかがかというのをお聞きしたいんです。

 このクレーム処理というかトラブルに関して、やはり企業側とか労働組合側、もしくは国がやるべきことというのが、おのおの違う部分もあるかと思います。その辺のあたり、国がまずやるべきこと。そして、労働組合、企業、また機関等にそれを、きちんとしたことでの指導。具体的に、どういう窓口、こういう人を置くように指導する、もしもトラブルが起こった場合に聞き入れるきちんとした体制。こういうものを、国、企業、組合、機関等においてどのようなことを考え、どのような指導をしていくつもりなのか、お答え願えたらありがたいと思います。

桝屋副大臣 総論的な話をまず私の方から申し上げたいと思います。

 今委員からのお尋ねでございますが、先ほどから出ております受託者責任、これが守られない場合でありますとか、あるいは加入者からのさまざまなクレーム、この処理をどのようにするのかということでありますが、企業型の年金につきましては、基本はやはり労使合意でございまして、労使合意による年金規約に基づき実施がされるものでなければならない、事業主は加入者のため忠実にその業務を遂行しなければならない、いわゆる忠実義務を負っているということでございます。

 事業主が万一この忠実義務に違反をしたときは、加入者から損害賠償責任を問われかねないということになりますし、行政処分の対象にもなり得るということでございます。

 加入者からのクレーム等があった場合に、行政として事業主に対してどうするかということでありますが、一つは報告の徴収をいたしまして、関係者への質問、あるいは必要に応じて実地検査を行うことができることとなっておりまして、これらによりまして、違反していると認めるとき、あるいは企業型年金の運営が著しく適正を欠くと認めるときは、改善命令などの行政処分を行うこととしているところでございます。

 いずれにいたしましても、企業型年金が適正に運営されるように適切に指導をしてまいりたい、このように思っております。

辻政府参考人 今の副大臣の仰せのような、国自身が運営管理機関等について監督責任を負っておりますので、それに基づいて対応するということで担保する前提としての苦情の流れと申しますか、このようなものをどう想定しているかを申し上げたいと思います。

 基本的には、どんどん情報開示をして、問題があれば、これは問題だったんだということに加入者個人が気がつくことが大切でございます。そうすれば、加入者個人は、労組で話し合ってやったことでございますので、例えば労働組合に話をされる。そういった形で、基本的には、最終的に、問題のあるところへの監督をしている国、ここに情報が来れば、その問題についてさまざまな指導をする、こういう形でございます。

 そういうような意味で、最終的には、監督するためのさまざまな情報が入ってくるように努力いたしたいと思いますけれども、これだけの苦情窓口みたいなものは、どの行政もいっぱい同じような問題を持っておりますが、一般的には、例えば国民生活センターでは、金融に関することを含めて国民生活全般に関する苦情などに対応する相談室が設けられておりまして、そのようなものも活用していただいている。しかし、一義的には、トラブルになるのは恐らく運営管理機関と加入者との関係であろうと思いますので、それを監督している国というものに情報が集まってくれば、適切な指導をするといった形で対応いたしたいと考えております。

佐藤(公)委員 今おっしゃられました、情報収集を適時していきながらやっていくということなんですけれども、この辺のまた、生活センターで、クレーム、いろいろなトラブルやなんかの相談に乗る、個人において乗るということになっていますが、それである程度十分トラブルというか問題点を受け入れる、解決していく方向性になると思われますでしょうか。

辻政府参考人 あらゆる消費者にかかわる行政について、相談、苦情というものをどう処理するのかということは、恐らくあらゆる消費者にかかわる分野において同様に持っている問題だと思います。そういう観点で今申し上げたわけでございますけれども、結局、運営管理機関というものがその話を丁寧に聞いて誠実に処理するというところでない限りは、苦情を申し立てても聞いて終わりということになっては、それだけではいかがかということになりますので、私どもとしては、国自身、そういう監督指導という権限を持っておるところへいろいろなルートから情報を集めていただいたら、誠実に運営管理機関にその処理をするようにつないでいきたいと考えております。

佐藤(公)委員 その辺のことは、当初、出だしのときにはかなり注意をして、幅広い形での情報、現状、そして困られた方々に対しての窓口、また指導をきちんとしていただくことをお願い申し上げたいと思います。

 それで、先ほども副大臣がおっしゃられました、労使の間における協議ということの話、常に出てくるのですけれども、労使において導入について同意をすることになっていますけれども、労働者の代表をどのように決めていくことになるのでしょうか。

辻政府参考人 労働者の代表というお尋ねでございますが、具体的には労使合意の手順、どのようなことかと御説明申しますと、従業員の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、労働組合自身が代表する。それから、過半数で組織する労働組合がないときは従業員の過半数を代表する者、この形で代表していただく。こういうふうに整理いたしております。

佐藤(公)委員 ただ、実質的には企業側が優位に立つこととなるケースというのが非常に多いと思うのですけれども、労働組合でもいろいろな労働組合があると思います。そういう中で、労使の同意が非常に形の上のものであるというようなことが多いようにも思えるのですけれども、その導入の選択の自由が、労働者に保障されたものがあり得るのかどうか。いかがでしょうか。

辻政府参考人 個々の労働者の意向といったことを含めて、どの程度丁寧にそういう反映がなされるのかということについてでございますけれども、基本的に、この確定拠出年金を導入するかどうかということは労働条件の一つでもある。退職金に関することというのは労働条件でございまして、これについても、今申しましたのと同じような手続を経て、それを定めたり変えるときには意見を聞くということになっておりますけれども、それと同じレベルの、あるいは同意ということですから、それよりも少しある意味では丁寧な手続を経ているわけでございます。

 そしてまた、丁寧であるがゆえに、この合意を得るプロセスで相当な議論が起こるということを私どもも想定しておりますし、期待もしておりますし、その中で組合員あるいは従業員の方々の意見が収れんしていくということを心から期待しておりますが、ただ、現時点でも、労働条件を定めたり改めたりするときに、どうしても、ある方々、あるいは納得できない方がいるという中で意思決定をするというプロセスで行われていることもあるやもしれません。そのようなことがないよう極力十分な御議論をいただきたいと思いますけれども、基本的には、このような労働法制上からも来ている手順というものを経て決められることが適切な決定であると考えております。

佐藤(公)委員 それで、企業型年金の導入について、先ほどからおっしゃられているように、事業主や労働者側の代表の同意を必要とあるわけでございますけれども、その過半数を代表する労働組合がない場合、おっしゃられましたね、被保険者等の過半数を代表する者の同意を得て規約をつくっていく。この、過半数を代表する者とは、だれを指しているのでしょうか。

辻政府参考人 これは、現実に規約を承認いたします際に、その過半数で確保する労働組合がないときは、従業員の過半数を代表する者というものが本当にどのように実体として存在し、その方との手続というものが適正になされたか、このことを規約承認の際にきっちりといわば確認させていただく。それを通して、逆にその決定の過程が適正なものであり、また十分議論されているように担保いたしたいと思います。

佐藤(公)委員 済みません、しつこいようなんですけれども、きっちり確認をするという確認の手段というのはどういうことを思われているのか、具体的に御説明を願えればありがたいと思います。

辻政府参考人 細かい申請書類等はこれから定めることになると思いますが、規約承認のときにさまざまな意思決定過程を証明する資料を出していただくというのが通常でございます。もし、それに虚偽の事実があれば、それは法令に触れます。そのようなことから、プロセスを、承認の際に書類をもって確認するということでございます。

佐藤(公)委員 局長のおっしゃられることはわかります。わかりますが、私も現実にいろいろな企業、組合もしくは従業員の方々とお話をする中、ちゃんとした健全な組合というものが存在をしているのであれば問題はないと思います。また、企業の経営者の方を含めてきちんとしていれば私は問題ないと思います。ですが、多くはない、多くはないですが現実に、組合があったとしても、やはり加入者、組合員の方々含めて、自分たちは正直に言ってよくわからないまま同意をしていたり、判こを押したり、名前を書いたりしているということがたくさんあるというような話も聞きます。また、組合がないところに関して言えば、ある程度、従業員の方をまとめる方に、ほとんどわけのわからないまま一任をした状態というのがたくさんあるように私は聞いております。

 それは内部的な問題だといえば内部的な問題かもしれませんが、ここで、一体全体、厚生労働省としては組合の現状を今どういうふうに把握をされ、どういうような状況にあるのかをある程度つかまれているのかどうか、お答え願えればありがたいと思います。

坂本政府参考人 労働組合法におきましては労働組合が労働組合法上の労働組合であるための要件を規定しておるわけですけれども、その中におきまして、その労働組合のすべての問題に参与する権利や均等の取り扱いを受ける権利を有する旨、そういう規定をちゃんと設けなさいということが求められているわけでございます。

 したがいまして、労働組合は労働組合法で定められました規定にのっとって活動することが求められているというふうに理解をいたしておりますが、ただ、個々の労働組合の管理運営につきましては、それぞれ、組合の内部の問題というふうに理解いたしております。

佐藤(公)委員 内部の問題とはいいますが、現行の厚生年金基金においても、労使同数から成る代議員制によって運営されているはずです。実際、どの程度代議員が労働者、被保険者を代表しているのか、代議員の選挙の実態とか、その把握というものはそちらの方でとられていますでしょうか。――いいです、わかる範囲で結構ですから。

辻政府参考人 少なくとも私の承知する限りでは、代議員会での意思決定が必要な事項につきましては、意思決定に関する資料が上がってまいります。そのときに、どの方が、あるいはどのような数で具体的に労働組合を代表される方であるか、従業員を代表する方であるか、率直に言いまして、そこまで一つ一つ吟味しているかどうかまでは、ちょっと私、今承知しておりません。

佐藤(公)委員 実際問題、労働組合側の、または従業員側の、やはり現場での、より把握というか認識、調査というものが、こういうものの法案を通すに際しては非常に大事だと思いますので、そういう部分は、より正確なものを得た上で考えていかなくてはいけないんじゃないかというふうに思います。

 また、厚生年金法をいろいろと読ませていただく中、百十一条に厚生年金基金の設立の要件がございますが、確定拠出年金の導入の要件と異なっているように思われますけれども、この違いの根拠はどういうことなんでしょうか。――説明しましょうか。

辻政府参考人 恐れ入ります。

 まず事実関係を申し上げますけれども、厚生年金基金を設立する際に必要な手続は、被保険者の二分の一以上の同意、それから被保険者の三分の一以上で組織する労働組合があるときはその同意を得て、規約をつくり、厚生労働大臣が認可する、こうなっております。

 不十分な説明かもしれませんが、このたびの確定拠出年金の導入というのは、例えば退職金の一部が振りかわることもあるといったようなことから、既存の労働条件との関係ということが一番、この御審議でも改めていただいておりますように、論点になっております。

 そのようなことから考えますと、既存の労働条件についての手続、これは、労働法制におきまして、今言いました、組合があれば代表者といった、これと同じ手続。ただ、厳密に言うと、意見を聞かなければならない、こっちは同意を得なければならない、むしろこっちは少し付加しておりますけれども。そういう労働条件の変更手続とのバランスで決められた、そういったところが厚生年金基金独自の手続と違うところではないかと認識いたしております。

佐藤(公)委員 というのは、この設立に関しての手続の中で、確定拠出年金、これは給付もそうですけれども、被保険者二分の一以上で組織する労働組合、保険者の二分の一以上を代表する者の同意ということになっておりますけれども、厚生年金基金の方は、確かに被保険者の二分の一以上の同意ということなんですが、これは事業所ごとなんですが、被保険者の三分の一以上で組織する労働組合の同意。

 この三分の一という部分と二分の一というあたりが、何か、組合員の方の数からすると、ハードルをあえて高くした拠出の規定というものになっているのかなという気がするんですが、それをなぜあえて変えているのか。当然、厚生年金基金ができたときの労働組合環境もしくは社会状況というものが今と違うことはわかります。ただし、労働組合の加入率が非常に低い中、そこの率を上げているという部分、それは組合の加入率が低くなっているせいなのか。その辺の根拠があればお聞かせください。

辻政府参考人 基本的な比較でございますけれども、厚生年金基金の場合は、被保険者の二分の一以上の同意ということが、これは、二分の一以上で組織する労働組合の同意。あるいは、二分の一以上で組織する労働組合がないときは、被保険者の二分の一以上を代表する者というよりも、二分の一以上の方がこれは全員同意しなくちゃいけない。代表する場合は代表が決める意思決定で、最初に御指摘がありましたように全員合意でないかもしれませんけれども。そういう意味では、確定拠出年金よりもはるかに厳しい手続であるというふうに考えます。

 その大きな違いは、今の労働条件の変更とのバランスの説明もいたしましたが、厚生年金基金そのものとの関係を申しますと、厚生年金基金は、これは設立が決まりますと全員強制適用されます。非常に大きな拘束を受けます。それに対しまして確定拠出年金は、これは、この確定拠出年金を選択しない者は、それにかわって掛金に相当するものを、いわばそれに入りたくない者は選択できるということで、全員一つのルールに服せしめるというほど厳しいものではない。そのようなことから、この二つの手続の違いが説明できるのではないかと考えます。

佐藤(公)委員 本当に、組合もしくは、先ほどもお話ししましたように、やはり、従業員の方々が非常にわけのわからないまま物事が進む、一任をしてしまうということがかなり多いと思いますが、その辺のあたりというのは十分、特に最初の段階というのは大事ですから、よくやはり厚生労働省として見ていただけたらありがたいかなと思いますので、それはぜひお願いします。

 そういうことにも関連するんですけれども、運用コストとかハンドリングコストに関してなんですけれども、先ほどからもお話がございます、きのうもございました。

 コストを下げることに関しては、金融市場に対しての余りにも介入になり、健全な市場ではなくなり、また、それより、自由に参入して競争原理によってコストダウンを図るという話で今進んでいると私は思います。それには当然、前提としては、正しい情報公開とか市場の監督とか監視ということがかなり重要になってくると思うんですが、この健全な市場の中で、加入者の意識とか教育、そういったものを啓蒙していくということは最も大事なことだということは、きのうからもうずっと大臣含めて皆さん方がおっしゃられていることで、私もそう思います。

 ただし、現実、米国においても投資知識や投資判断における問題があることは、これは幾つかの事例を見て、出てきているのは事実だと思います。まして、我が国におけるより一層の教育、意識づけというのが必要だと思います。その導入に際しては本当にかなりの労力が必要になると思われますが、その労力、教育ということに関してのコストという問題もやはり発生してくると思います。このコストの部分というのはどこが負担をしていくことなんでしょうか。

辻政府参考人 御指摘のとおり、加入者の方々が、事業主はもとより加入者の方々が運用というものについてどれだけの知識を持っているかというのは、この制度の帰趨を本当に決めると言ってよいと思います。ただ、もし、これは本当に御指摘のようなトラブルが後を絶たないことがあれば、この規約を決めた労使そのものにとって大変深刻な問題でありますし、もとより私どもの責任は多うございますが、これは個々具体に降りかかってくる問題でございます。

 運営管理機関の方も、事業主の委託を受けて投資教育を行うということを前提に準備しているというふうに認識しておりますが、その点、長期の、六十歳まで出せないという制度の運用担当機関として、これは本当に、信頼を失えば事業所内部でも大きな混乱になりましょうし、運営管理機関にとっても大変大きな痛手になるという深刻な問題でございます。

 私ども、この投資教育そのものにつきまして、具体的にどのような事項について行うべきかといったことを通達等で明らかにする予定でしておりますけれども、これはもうこの運営管理機関として、イロハのイといいますか、当然なさなければならない、この点でのきちっとした情報提供をしないで仕事はできない、こういう基本的な事項であると思います。したがって、このためのコストがこれだけというより、運営管理機関そのものがその力を持たなければならないような事項であると考えております。

 したがって、それはこの運営管理機関の担当者の人件費の一部とも言えるのかもしれませんが、これは、今まで御指摘いただいています運営管理機関の管理費用の一部に含まれます。これにつきましては、私ども、実際に規約を決めますときに、管理費用の額を確認することになっております。そして、運用管理費用につきましては規約の中に定めることになっております。これにつきましては、逆に言えば、運営管理機関の方も、そのサービス内容とコストということで、競争で相当しのぎを削ると思います。

 そういったことから、コストは運営管理機関の管理費用に含まれるわけでございますが、基本的な事項として、吸収されて提示されるものと考えております。

佐藤(公)委員 やはり、今のお話を聞いて、局長も本当にそう思われているんだと思いますが、全体のコストと、教育の内容、量、質、達成度を、どれぐらいのことを考えてバランスをとり、競争原理の中でコストダウンを図るのか。ERISAでも投資教育は義務とされていませんし、一般的な基準も定めにくいと思いますし、企業に求めることも無理なことも多いと思いますが、ただ、やはり、特に今日本の投資教育というものをしていくに際して、初期においてはかなり膨大な労力とコストがかかると思います。

 結局、今のお話からすれば、全体のコスト、運営コストも含めてかなりのコストがかかってくることになると思いますけれども、そういう部分で、実際問題、先ほども最初にお話ししました、幾ら競争原理の中でとはいうものの、かなり、厚生労働省が考えている以上にコストがかかるのではないか。これはどれぐらいやっていくかという質と内容の量にもよります。そういう部分をどうお考えになられているのかということに関してお尋ねしたいと思います。

辻政府参考人 運営管理費用、まさしく企業が市場で形成して、競争の中で決めるものでございますので、私どもが規制的に決めるとか、あるいは断定的に言うというものではございませんが、現実として認識いたしておりますのは、アメリカの四〇一kのいわゆる運営管理費用、これが大体〇・六%ぐらいという情報を得ておりますが、これを目安に、日本の運営管理機関を想定している関係者は準備をしていくということでございます。

 申しましたように、運営管理機関というものそのものが、投資教育ができなければ成り立たないという存在でございますので、その点、むしろ運営管理機関に整えるメンバーの質の問題だと思いますけれども、そのようなきっちりした体制をとるという意気込みで、関係者が今準備していらっしゃると考えております。

佐藤(公)委員 ここで、自分自身、よく考えていただきたいことは、教育ということとサービスということが、やはり考え方が基本的に違うことだと思います。当然ダブる部分もあり、表面上は全く同じにも見えるかもしれませんが、やはりしなくちゃいけない教育というコストの部分というのは、これは最低限必要なものというのがあると思います。そういう部分をやはり今回、初期に当たってはかなりの投資をしなきゃいけない。先ほど〇・五%というようなことのお話をされましたけれども、実際もっとかかるのではないかなという心配がございます。そういう部分はよくよく厚生労働省さんの方で見て、考えて、状況が変わってくるんであれば直ちにそれなりの方策、手を打つようなことをきちんと考えていただけたらありがたいと思いますので、それはよろしくお願いします。

 また、これは後の質問にもなりますけれども、先にお話ししますと、今回のことで、企業側がやるべき教育、そして国側がやるべき教育ということがあると思いますけれども、国側がやるべき今回の教育というのは、具体的なものも含めてどんなものがあり得るのか、もしもお答えができる部分、今案があれば御説明を願えたらありがたいと思います。

辻政府参考人 私どもは、今申しました考え方で、今申しましたというのは投資教育というのは非常に大切だという考え方で、具体的には、この事業を実施しようとする、すなわち確定拠出年金を導入しようとする事業主の方々、厚生年金の適用事業所ということになると思いますが、その方々、それから事実上そこから委託を受けて投資教育を行われると見込まれる運営管理機関、この方々に対する訴えかけというのは、具体的に国の行うべき投資教育の姿だと思いますけれども、これにつきましては、通達等によりまして、最低限情報提供すべき事項を明記することを考えております。

 それは、一つは、確定拠出年金制度の具体的な内容をまず知っていただく必要がある。確定拠出年金の特徴、まさしく自己責任の制度ですよというようなこと、それから加入のメリット、掛金の拠出、運用、給付、税制などの制度の具体的な仕組み、まずこれを知っていただく。

 それから次に、投資に関する基礎知識が要る。これにつきましては、リスク、リターンの関係。リスクとリターンということ自身がわかりにくい言葉でございますけれども、要するに、元本商品と元本割れする商品の属性の違い、そういうことを十分説明する。それから、元本保証商品以外のリスクのある商品を導入しますときの物の考え方というのは、分散投資の考え方、長期投資の考え方。要するに、分散投資をして長期に運用すれば収益はある程度高く安定する、こういった考え方があるからやるんだといったような基礎知識。リターンを高くとろうとすればリスクも高くなる、そういった物の考え方。

 それから、主な金融商品の特徴や仕組み。これは多くを語りませんが、今言った延長上で、これはハイリスク・ハイリターン、これは確実なリターンだけれどもリターンのレベルは低いといったそれぞれの商品の説明。それから、運用プランを策定するときに、個々に、ではどのように長いライフサイクルでこの確定拠出年金を自分の人生設計に入れていったらいいのだというような参考になるような情報の提供。

 るる申し上げましたが、こういうことを一連説明していただく必要があると思います。

 したがって、確定拠出年金導入を行うに際して、これだけのことをまず運営管理機関が説明して、企業が納得して、よしやろう、このプロセスが必要でございまして、そういう意味でも、私どもはじっくりとこの制度が定着していくということを想定いたしております。

佐藤(公)委員 内容的な説明を丁寧に、ありがとうございます。

 もう一つ、私はそこで聞きたいことは、国がやるべきことを具体的にどうするのか。内容は今わかりました。わかりましたけれども、例えば、それはメディアというものを通って、テレビとかラジオとか新聞とかいうものを通して、これだけの規模のものを今回のこれに合わせてやっていきますということを考えているのか。また、そういうものを含めて、この次、やはり学校教育というもの、当然、働くべき前の高校、中学という人たちに対してそういうものを指導していこう、教えていこうということをお考えになられているのか。その辺のあたり、局長もしくは大臣、いかがお考えになられていますでしょうか。

辻政府参考人 まず、私ども、実務的な現在の認識から申し上げますと、あくまでもこれは確定拠出年金、国民の資産運用のさまざまな場面の中で年金制度の三階部分の選択肢の一つを導入するということに伴って生じた問題でございますので、厚生労働省が国民の皆様に投資教育を担当するというのは、正直申しまして少しおこがましいかなという気持ちがいたします。

 したがいまして、厚生労働省が国民の皆様に投資教育一般についての担当をするということまではいかないかと存じますが、この制度の性格というものにつきまして、さまざまな資料を用いまして各方面、やはりこの制度の運用からいいますと、今申しましたように受け手は事業主あるいは国民の皆様ですので、厚生労働省としての行政の広報プロセスを通じて、十分その点も含めた広報をさせていただきたいと思います。

佐藤(公)委員 ぜひ、やはりその辺は力を入れてやっていただきたい。私どもの考える、義務と責任を踏まえ権利を大切にする自立した自己責任というのは、こういう一つ一つのことから組み立てていかなくちゃいけないことだと思いますので、国の方でもこれに関しての広報関係をかなりやることによって、それをやることによって企業、組合の方のいろいろな進展があると思いますので、これはぜひお願いしたいと思います。

 僕はこれがなぜ大切なのかといいますと、きのうも参考人の高山さんの話の中で、第二点目ということで、非課税拠出枠の年齢別設定というようなことで、年齢の層をある程度区切る中で、やはり年齢の高い人、上の人ほどその切りかえは容易となるということで、非課税拠出枠を高める、こういうことをお話をされておりました。でも、これもそうなんですけれども、私の言いたいことは、年金のことに関しての話というのが、非常に、中高年、年の上の方々の話ばかりが多過ぎると感じることなんです。

 わかります。僕らより下の若い連中。今の現実の日本を見た場合に、この財政状況を見たときに、非常に現実、ある意味で暗い話というか、行き詰まっている話というところがあるということはわかっています。実際問題、やはりこの議論でもっと目を向けなきゃいけないのは、若い人たちに対して、どういう明るい将来またはやる気のある社会をつくることができるのかという、もっともっと明るい話というものがあってもいいんじゃないか、議論があってもいいんじゃないかというふうに思います。

 少子化の傾向は実際本当に今とまらない状態ですけれども、実際の出生率は人口推計の低位推計に接近して、今後も厚生年金の支給水準の引き下げやあるいは給付の縮小は避けられないように思います。

 経済財政諮問会議でかなり議論されている厚生年金の民営化、これは今話の上でのことですけれども、移行期の二重の負担や何かというのは、それこそ、私どもより以下、四十歳以下の世代に集中する話だと思います。

 そういう中で、確定拠出年金は厚生年金民営化の一つの受け皿という考え方もあるのかもしれません。あるのかもしれませんが、民営化等が、いろいろな、今小泉総理がされておりますけれども、厚生年金を補完する手段でもあると私は思います。単純な貯蓄手段ではないと私は思いますけれども、こうした厚生年金の補完手段として確定拠出型年金の性格を考え、考慮していくのであれば、やはり私が思うことは、税制上の優遇措置の拡大、特に僕は若い人たちに対して、年代層別に、上の方の方々も当然かもしれません、でも、若い人たちに対してもっと税の優遇措置を行うことによって、若い人たちをこちらの方に引きつける一つのポイントというか大事なことなのではないかなという気がいたします。

 そういう意味で、私がお聞きしたいことは、若い人たちに対しての今後の年金における対策。確定拠出年金というのは、考えようによっては、若い人たちを税の部分でより優遇することによって、みんなが、おい、僕ら若いのをみんな国も考えてくれているじゃないか、これだけ税の優遇措置をしてくれるんだったら、みんなでどんどんこっちにやっていこうぜ、こういう一つの関心と引き込みが持てるというふうに私は考えるんですけれども、若い人に対しての年金、これは三階建て部分の話ですけれども、全般も通じて厚生労働省としてどのようにお考えになられるのか。もしもできることなら、この答弁は大臣、副大臣の方でお願いできればありがたいと思いますし、また足りない部分は局長の方でお願いしたいかと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 初めの厚生年金の民営化の話につきましては、現在、総理も私も民営化をするつもりというのは一切ございませんので、それは御安心をいただきたいと存じます。そして、現在の年金の上に、三階建てとして現在二つの新しい企業年金をお願いしているわけでございます。そして、今御指摘になりましたように、若い人たちが本当に喜んで年金に参加をしていただけるようにしなければならないと私も思っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、年齢構成がどういたしましても高齢化が進んでまいりまして、若年層が少なくなり、そして高齢者が多くなるという年齢構成があるものですから、計算をいたしますとやや不利ではないかという、そういう計算がどうしても先に立ってしまいますのは、これは無理からぬことだというふうに私も思います。そこをできる限りやはり、高齢者の皆さん方のいわゆる保険料の方を、現在の皆さんとはそんなに重くしない、できるだけ抑制をする。保険料を将来ともに抑制したその形の中でどれだけの年金が確立できるかというのが、現在の考えております年金制度になっているというふうに思います。

 それを考えずに、高齢者の年金の給付額だけを考えておりましたらもっといい給付が欲しいわけでございますけれども、しかし、そうではなくて、若い皆さん方の掛金をしていただく額を中心にして考えるものでございますから、そこに限界ができてくるということでございます。そこを私たちももう少し声を大きくして言わなければならないのかなというふうに思うのですが、お若い皆さん方がこれから将来に向けましてこの年金に参加をしていただきますときに、現在の中年、あるいはまた年金を間もなく受け取る時期をお迎えになった皆さん方と比較をして、それほど遜色のない年金が待ち受けているという図柄を描いていかなければなりません。しかし、だからそのためには、我々が努力をしなければならないことがございます。

 それは、どういたしましてもこれから先の高齢化は来るわけでございますから、それを緩和していきますための、女性の皆さんと中高年の皆さん方の働く場所をいかにしてふやしていくかということに全精力を我々が費やす。そして、そのことによって、皆さん方に現在と同じような年金、希望に満ちた年金とまで言えるかどうかわかりませんけれども、現在と変わりのない年金を約束をお願いできますということを胸が張って言えるようにしなければならないと思っている次第でございます。

佐藤(公)委員 ありがとうございます。

 本当に、大臣のおっしゃるように、確かに、財政上考えれば、また現実、給付を受けられる高齢の皆様方を考えなくてはいけないのは十分わかります。わかりますが、若い人たちと話すと、今までのツケ、責任を自分たちに押しつけてばかりいるという感覚が非常に強く出てきております。

 では、今までの責任はだれが、ツケはということで、その責任は一体全体どこにあったのかということを考えた場合には、何でこうなっちゃったのかということを考えた場合には、非常にあいまいな形で終わっているのが実情。そういうところに非常に若い人たちが不信感を持っているのは事実だと思います。

 国民にいつも負担というよりも、今だんだん出てきていることは、若い人たちへの押しつけじゃないかと。勝手に決めておいてこういったことが結果的に、きのうの委員会でもありましたけれども、年金未納者、納めていらっしゃらない方々、若者がふえているということですが、こういうことにも大きくつながっているかと思います。

 その若い人たちに対して、実際問題、いつも、給付を受けられる、もしくは受けようとする上の方たちばかりの話が多くて、やはり若い人たちに対しての、厚生労働省がこれを考えている、明るい話題提供づくりというものが年金に関しては必要なのではないか。そういう意味では、この拠出というのは非常にいいチャンスじゃなかったかと僕は思います。

 そういう意味で、若い人たちにおいての拠出限度額を、逆に、上の方の人たちだけじゃない、若い人たちを上げることによって、若い人たちに明るい、そして意欲の持てるような年金であり社会づくり、やはりそういうものを持たせるチャンスだったんじゃないかなという気がいたします。その辺のあたり、ぜひ若い人たちの、年金だけのことじゃございませんが、拠出の限度額を上げることも含めて考えていただけるのかどうか、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 それは大変貴重な御意見だというふうに思います。今お話をお伺いして、私もそう思います。ありがとうございました。そのつもりでやらせていただきます。

佐藤(公)委員 本当に時間もだんだん押し迫っているわけでございますけれども、幾つかのまた補足ということで質問をさせていただければありがたいと思います。

 ぜひこれは、厚生労働省の方々、そしてきょういらっしゃる委員の方々にも僕は訴えたいことであり、やはり若い人たちのことをより考えた明るい議論がしたいな、そんな思いでおりますので、何とぞ、大臣以下幹部の皆さん方、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 そしてまた、次の質問に移らせていただきますけれども、財形の年金というのが非常に確定拠出年金と似通ったところがあると思います。根本的にその出どころ、種別というものが違うということはわかりますけれども、財形年金から確定拠出年金というものが実際問題考えられなかったのかどうか、その辺のあたりはいかがでしょうか。

辻政府参考人 財形年金でございますが、財形年金の中身と申しますのは、一つは、勤労者だけを対象として、自営業者は活用できない。それから、勤労者自身の、事業主じゃなくて勤労者自身の拠出による貯蓄制度である、こういった特徴がございます。

 したがいまして、企業のサラリーマンだけでなく、自営業者も対象とする、それから、公的年金の上乗せの年金制度ということで、六十歳以降の年金というものを形成するために行うという確定拠出年金は、財形年金の拡充で対応することは困難であるということで、このような提案に至りました。

佐藤(公)委員 今のお話を聞いていても、確かに現実そうなんですけれども、ここで大臣にあえてお話をさせていただければ、大変大きい話にもなりますし、また社会保障全般の基本的考え方や、まさに抜本的見直しの話にもなりますが、年金税制のあり方について、公的年金、私的年金、総合的に再構築というか構築というか、議論が本当に抜本的に必要な時期に来ているんじゃないかと私は思います。

 当然これは財務省の関係もあるかと思いますが、年金としてのやはり税制というものが、何か今までの継ぎはぎ状態の中でかなり来ているのかなという気がいたしますが、その辺のあたりの御所見に関して、大臣、副大臣、結構でございます、お聞かせ願えればありがたいかと思います。

桝屋副大臣 年金に対する税制全体のお尋ねでございます。

 その前に、先ほど大臣にお尋ねになりました、若い方に対して拠出限度額をぜひ考えてもらいたいという強い要請をいただいたわけであります。大臣の方からは、ぜひ委員の御要請を受けてというお話もあったわけでありますが、一点だけ、やはり今回の確定拠出年金、今までの適格年金とか企業年金を移行するという形で今考えているわけでありますが、拠出限度額については税制との絡みがなかなか難しい問題もあって、確かに御指摘もありますけれども、現在の制度から移行するということで拠出限度額も設定されているということもぜひ御理解をいただきたいと思うわけであります。

 そこで、年金全体に対する税制をどうするかということでありますが、これもこの委員会でさまざまに議論されております。

 拠出、運用、そして給付、各段階において税制をどうするかということでありまして、いろいろな意見があると思うんですが、大臣がいつも言いますように、これから二十一世紀の少子高齢社会を考えますときに、やはり今までのような形にはいかない。これは総理も申し上げているとおりであります。そうした少子高齢社会の中で、本当に、委員がおっしゃるように、若人の方も、あるいは給付を受けるお年寄りの方も大体了解ができるような税制というものを考えていかなければならぬ。そのためには、やはり今の税制については見直しをしなければならぬということは、これは多くの国民の皆さんの相当共通認識になりつつあるのではないかな、私はこう思っているところであります。

 そういう意味では、今回の、三階建ての年金制度を組み立てるわけでありまして、こういうものを機会に、これから年金、医療、それから介護、これも含めて全体の姿を今から改めて再編成をするわけでありますから、その中でぜひとも二十一世紀にふさわしい税制のあり方については委員の御指導もいただきながら検討していきたい、これは手をつけなければならない、こんなふうに思っているところでございます。

佐藤(公)委員 ありがとうございます。

 副大臣からの年金税制に関する全体の大変前向きな御答弁だったと思いますが、今副大臣のお話を聞いて、ぜひ近いうちに、早い時期にこの年金の税制全体の議論をしかるべきテーブルでしていただくように、やはり私は強く副大臣、大臣にお願いをしたいと思います。やはりそういうことが、私どもを含めて、将来の安心、安定ということにまさになってくると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それで、多少話が戻りますけれども、運用に関してのことでちょっと最後にお聞きをしたいと思います。

 運用に関して、このたびの確定拠出年金法案におきまして、事業主証券というか、そこの会社の労働組合なら労働組合、そこの、所属している会社の株の証券関係の取り扱いに関してどういう規定があり得るのか。済みません、これは事前通告をしておりませんが、局長の方でわかる答弁をいただけたらありがたいと思います。

辻政府参考人 いわゆる自社株といいますか、みずからの、確定拠出年金を実施する会社の証券というものを運用商品の一つに入れられるかどうかという御指摘かと思います。

 結論から申しますと、それを一つとして選定提示することは可能でございます。

 ただ、この場合におきまして、単に、自社の株式だ、あるいは自社の社債も含めて、自社のものだからというだけで選定することは、これは注意義務、忠実義務に違反するものとなります。といいますのは、注意義務は専門家としてこのような商品を入れることが今後の運用の方法の一つとしてふさわしいという判断が要るということと、それから、例えばそれを入れることが加入者のためではなくて会社のためだけだ、加入者にとってはそれは危険であるという場合は忠実義務に反することになります。そのような観点から、今申しましたような注意義務、忠実義務に沿うものとしてそのものが評価されますときには可能だという意味でございます。

 それにいたしましても、最低限共通の要件といたしまして、時価評価が可能であること。時価、そのときの価格の客観的な評価が可能であること。それから商品の、言えば取りかえといいますか、入れかえなどに迅速に対応することができる。こういった要件をすべて満たしているということがもともと提示する商品の基本要件でございますので、そういった要件もクリアしなければならない。こういった形になっております。

佐藤(公)委員 今おっしゃられました自社株の取り扱いについては、もうこれは私が話すまでもなく、局長以下幹部の方々はよくおわかりになっていると思います。確かに、忠実義務ということでやること、枠組み、大変厳しいことがあることは事実ですが、実際、やはり見えないところでこの自社株というのがいろいろな使われ方をする可能性が十分あると思います。その辺のあたりは十分目を光らせて、とりあえず見ていただくことをお願いし、続きは次回の委員会とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

谷畑委員長代理 小沢和秋君。

小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。

 法案の質問に入る前に、去る一日に判決がありました韓国人被爆者郭貴勲さんの問題でお伺いしたいと思います。

 被爆者援護法に基づいて健康管理手当を支給されていた郭さんに対し、一たん国外に出るや、それまでの手当などをすべて打ち切った政府のやり方は誤りだという判決は、だれが考えても当然のことであり、今回もハンセン病判決に倣って控訴を断念すべきではないか、大臣にまずお尋ねいたします。

坂口国務大臣 六月一日の大阪地方裁判所の判決の取り扱いにつきましては、現在検討中でありまして、今後、関係省庁と協議の上、決定してまいりたいと思います。

 昨日もお答えをしたところでございますが、平成六年の十二月一日でございますが、衆議院のこの厚生委員会におきまして、共産党の岩佐委員が御質問になっておりまして、それに対しまして政府の方から、日本の国内に居住する者を対象として手当を支給するということで考えているわけでございますというふうに、はしょって申しましたけれども、このときに、国内に居住する人だけ手当を出すという答弁をこの中でいたしているわけでございます。

 したがいまして、当時、村山内閣のときでございますが、その当時の内閣の意思としては、この法案を出して、そして、その手当は国内に居住する人に限るということをここで意思表示している、こういう経過があったということでございます。これらのことを踏まえながら、どういうふうにしていくかということを今後考えていきたいというふうに思っている次第でございます。

小沢(和)委員 だから、政府がこれまで、海外に出れば被爆者であっても被爆者として扱わないような、そういう姿勢を持っていたことが誤りだということが今度の判決で指摘されたのではないんでしょうか。

 郭さんは、日本兵として徴兵され、広島に連れてこられて被爆したわけであります。彼を被爆者にしたのはそういう意味では日本政府の責任であり、政府が援護法に基づいて手当を支給することは最低の義務であります。彼が被爆者であることは、日本にいようと韓国に帰ろうと変わりはありません。郭さんだけでなく、海外には日本人を含め多数の被爆者がおります。半世紀にわたって海外被爆者を苦しめてきた政府の誤りを認めるのが当然ではありませんか。

 ハンセン病判決は認め、これは控訴するというのでは、行政の筋が通らないのではないか。重ねて大臣にお尋ねします。

坂口国務大臣 ハンセンの問題はハンセンの問題としてまた大変重要な問題がございましたし、今回の問題はまた今回の問題として大変重要な問題があるというふうに存じております。

 したがいまして、今回提起されましたのは、現在あります法律そのものが果たしてこれでいいのかどうかという問題点もあろうかというふうに思いますし、そして、現在のこの法律に従いますならばどうかという問題もあるだろうというふうに思います。

 したがって、それらのことを総合的に考えて、これからどうしていくかということを検討しなければならないのではないかというのが私の現在の考え方でございます。

小沢(和)委員 だから問題は、長年、政府の余りにも明らかな誤りが続いてきた、これを是正しろという判決が出た、これに従って是正するいいチャンスが来たという点では、ハンセンの問題と同じじゃないかと私は言っているわけです。ぜひひとつ、この際、きっぱりと控訴をしないということでこの問題について決着をつけていただきたいと思います。

 さて、法案の質問に入ります。

 まず、これも大臣にお尋ねしたいんですが、今なぜ確定拠出型年金を制度化しなければならないのかということであります。

 私の理解では、九〇年代に入って多くの企業が確定給付型で巨額の積み立て不足を生じて、その対策として確定拠出型に切りかえれば、一たん企業が拠出すればそれで責任を果たしたことになる、非常に身軽にこの問題に対処できるようになる、これがやはり決定的な理由ではないかと思いますが、いかがでしょう。

坂口国務大臣 見方はいろいろあるんだろうというふうに思いますが、これまでの企業年金を見てきましたときに、企業年金が、右肩上がりの経済状況のときには破綻をするなどというようなことはだれも考えていなかったわけであります。したがいまして、順調に進んできたわけでございますけれども、バブル以後、この企業年金の方も大変な状況になってまいりました。

 したがいまして、現在の公的な年金の上に企業年金をさらに上乗せしていくということを考えていきますときに、この上乗せをする部分が現在のままでいいかどうか、現在のように、そして御指摘になりますように、この企業年金が非常に厳しい状況になったことは事実でありますから、こういう状況にならないように、もっと国民の皆さん方に迷惑のかからない形で進める方法はないか、そうしたこともいろいろ検討をしました結果、今回のこの二つの新しい企業年金、これを上乗せするということになったわけであります。

 決して、今までの企業が犯しました点を帳消しにするためにつくったということではなくて、働く皆さん方に今後御迷惑をかけないようにするために、また信頼をしていただく年金を築くためにどうすればいいか、そういう立場で今回この三階建ての年金をつくり上げたわけであります。

小沢(和)委員 私がお尋ねしているのは、経済界が自分たちの都合でこういう制度が必要だといって要求したから、こういう制度は導入されることになったのではないかということなんです。

 実際、私の知る限りでは、拠出型年金の導入を要求しているのは、経団連、日経連、日本商工会議所、経済同友会とか、こういうような経済団体ばかりのようなんですが、これ以外に、ほかにもこういうようなことを要求してきているところがあるんでしょうか。その点、重ねてお尋ねします。

辻政府参考人 関係者の要望の状況でございますが、団体としてあらわれておりませんが、東京商工会議所の調査などでは、やはり傘下の中小企業でも、二割ほどの中小企業はこの確定拠出を望んでいるというような情報も入っておりまして、形として書面で出されているものはそのようなことでございますけれども、実質として、そしてまた、さまざまな企業からのお尋ねとかお話も聞いておりますけれども、こういう必要性というものがあるという認識をいたしております。

小沢(和)委員 中小企業団体関係からもそういうような要求は出てきているというようなお話だったかと思うんですけれども、調査室からいただいた資料などを見ても、大企業の方は、関心がある、やろうと思っているという比重がかなりあるけれども、中小企業などについては、非常に関心も低い、そういうことは考えていないという答えの方がうんと多かったんじゃないですか。

辻政府参考人 先ほど申しました調査結果もございます。それで、そういうところが一つの組織として代表してという形になっておりませんけれども、東京商工会議所傘下の中小企業の二割というのは、それなりのものであります。それから、私ども、さまざまな個別の方々から意見を聞いておりますけれども、現実問題として、特に雇用が流動化していくという中で、生涯、いわば終身雇用で勤務する考え方自身が御本人にないし、それから、そういうことでない勤務形態というのがふえている中で、ずっと、いわば退職するまで待つのではなくて、現実に早い時点できちっと切りかえてほしいという要望があるということは、これは厳然たる事実として私どもは認識いたしております。

 そのような要望というものが一つの団体として、形として出てきていないということでございまして、そのような必要性があるからこそ、私どもは提案させていただいております。

小沢(和)委員 今の答弁はかなり苦しいものだと思うんですけれども、先に進みたいと思うんです。

 私どもは、こういう、企業に一方的に有利になるような転換が何の制約もなくどんどん行われるというようなことは許されないと思っております。先日からの答弁を伺っておると、労働者との合意、それから積み立て不足の解消などが、給付型から拠出型に転換する場合の最低の条件として挙げられておりますけれども、積み立て不足の解消というのは、これは考えようによってはなかなか高いハードルだと思うんですが、それを緩和するようなことは今後も絶対にあってはならないと思うので、念のため確認しておきます。

辻政府参考人 移行をいたしますときに積み立て不足がありますときは、それを解消するために、確定給付年金でございますけれども、確定給付年金の積み立て不足がありますときに、例えばそれを移行させるといたしましたときに、その積み立て不足を解消するために給付の引き下げといったことは考えられるわけでございますが、その給付の引き下げの条件は、これまでより緩和するという考えはございません。

小沢(和)委員 確定給付型からの転換だけでなく、これまで企業年金制度を持たなかった企業の中で、退職金の支払いを、この機会に確定拠出型を利用して月々前払いするような制度に切りかえようという企業が出てくることも十分に考えられると思うんです。こういうような形で、退職金の一時払いをやめてこの制度に乗りかえるというようなことも、この法案の中では認められることになるわけでしょうか。

辻政府参考人 御指摘のように、退職金を振りかえるということにつきましては、各企業の労働条件にかかわるものでございますので、労働条件の変更としての手続を経た労使合意を経ますと、切りかえることは可能でございます。

 その考え方でございますけれども、やはり現に、私ども申しますように、そういう強いニードがあるということを個別によく聞いておりますけれども、転職の際に持ち運びたい、長期同じところに勤めなければならないというのでは、結局そのメリットが非常に薄いというような方々、これは本当に、このことによってそれが保障されます。それから、企業が倒産したりあるいは縮小いたしまして、そのときに、期待していた退職金というものが得られないというような見方もあるかと思いますけれども、それにつきましては、みずからの年金資産、必ず外出しで保存して、みずからものとして持ち歩ける、こういった多くの利点がございます。

 そのようなことで、しかも、退職金の振りかえという場合に、確定拠出年金を選択したい者は一時金でもらえるという、選択という前提でございますし、そのようなことを労使で十分話し合って、しかも、メリットあるものとして納得したときにそれを転換するという前提で、そのことは可能でございます。

小沢(和)委員 このことが退職金の水準を切り下げるというようなことにならないということを、私は強く要求しておきたいと思うんです。

 さて、企業にとって拠出型に大きなメリットがあるということは、これは別の角度からいえば、労働者には大変なデメリットがあるということになると思うんです。拠出された後は、その原資を自分の責任で運用しなければならなくなる。その結果次第では、年金額が大きく減ることもある。これでは老後の生活設計ができなくなる。

 拠出型は、労働者にとって、老後の安心どころか、逆に不安をかき立てるような制度ではないでしょうか。

辻政府参考人 確かに、確定拠出年金は加入者みずからの運用結果によりまして給付額が決まりますので、老後に受け取る年金額が事前に決定されないということになります。これにつきましては、いわば確定給付と異なるメニューとして、そのようなタイプのものも望まれているということで導入したものでございます。

 重ねて申しますが、労働移動が非常に今始まっている、産業構造も変わっていっているという状況で、政策として、私どもは、それにこたえるものが必要であるし、そのような要望が行われている。あるいは、確定給付につきましては、確定給付を導入しにくい中小企業がある場合、企業年金が何もないよりも、この確定拠出年金があれば、それは福利向上になる、こういった利点があるという中で導入するものでありますし、あくまでも、これは選択肢の一つでございまして、今までのいわば労働者に保障されてきたものをこれに振りかえなければならないというものでは全くございません。

 そういうことで、労使で十分協議していただきたいと考えておりますし、それから、労使の協議の結果、確定拠出年金が導入されるわけですが、その導入は具体的には規約の承認によって成立いたしますが、その規約の承認の際に当たりましても、労使合意というものが丁寧に行われ、労働者の利益のために行われておるということを、よく手続的に確認させていただきたいと思います。

小沢(和)委員 さらに具体的に伺っていきたいんですが、企業から運営管理機関、資産管理機関を経て、最終的には金融機関が年金資産を運用するということになります。その役割を兼任することも認められているわけですけれども、これら全体を通じて、労働者が負担する手数料というのは何%ぐらいになるんでしょうか。

辻政府参考人 確定拠出年金における手数料についてでございますが、まず、この手数料の概念について御説明しますが、記録管理、資産管理という、いわば常に要する管理手数料というものと、それから運用商品を選択した場合に、その運用商品によってはかかる手数料、これは具体的には投資信託に関するものを選択したときの運用手数料でございます。この二つに分けられます。これらの手数料をどのように負担するかということは、労使で協議した上で、確定拠出年金規約に手数料の負担については定めることになっております。

 現在の企業年金の状況にかんがみますと、一般的には、管理手数料につきましては、これは確定給付の企業年金もそうでございますが、いわゆる手数料といいますか、事務費的なものにつきましては、企業がその全額あるいは相当程度負担することが多くなるものと聞いております。企業年金の現状とのバランスから、そのようになるものと聞いております。

 投資信託に関する手数料というのは、これは個々に、投資信託の商品ごとに決まりますので、それにつきましてどのように労働者が負担するのか、従業員が負担するのかということはその都度でございますが、いずれにしろ、確定拠出年金規約におきまして、その負担方法につきましても、どうするのか、事業主が負担するのか加入者が負担するのかといった負担方法も規約で定めることになっております。

 それで、どのくらいのものになるかということでございますが、確定拠出年金の管理手数料の方でございますけれども、まず申し上げますと、米国労働省が一九九八年に公表した調査結果によりますと、米国の四〇一kでは、記録管理などの運営に関する、今申しました管理手数料は、年間平均で資産額の約〇・六%ということになっております。その他、運用報酬に係るものを含めて全手数料を合算すると、年間平均で資産額の約一・三%というデータがございます。ただ、アメリカは、四〇一kプランで、加入者自身に四〇一kプランから貸し出しをするといった、我が国では導入していない制度でございまして、そのような手数料も込みでございます。

 したがって、一概に比較できないわけでございますが、少なくともこの管理手数料に関しましては、現在準備中の民間金融機関におきまして、アメリカの管理手数料というものを参考にして検討が行われているということと聞いております。

 いずれにしろ、運営管理機関につきましては、過剰な規制を行わず、一定の基準をすれば登録を認めるということで、相当競争が展開されるということを想定いたしておりまして、適正な手数料水準が決まるものと考えております。

小沢(和)委員 今のお話ですと、管理手数料の方は、アメリカの実例でいけば〇・六%程度だと。それで、実際問題としては企業がこれをほとんど負担することが多いというようなお話もあったんですが、日本でも大体そういうような考え方で設計すると。

 そうすると、次の質問にも入りたいと思うんですけれども、今我が国では、いわゆる預金などの金利というのは、一年預けたって一%にもならぬというようなひどい状況ですよね。この一番確実な元本確保商品というものの金利と比較をしてみた場合、ほとんど企業側が出すというのだったら、その差額というのは黒字になるのかなという感じもするんですけれども、間違いなくその差額は出る、黒字になる、こういうふうに認識していいでしょうか。

辻政府参考人 いわば元本保証商品の中でも利率の最も低い一般の預金、これで元本割れが起こるかどうかという御指摘でございます。

 それで、この一般顧客向けの預金の利率は現在大変低いものでございますけれども、これは、運用をしている各金融機関の口座管理、通帳発行、それから、もちろんさまざまな日常の管理費用、こういう各種のコストを控除した後で出てくる利回りでございます。

 ところが、この確定拠出年金に関しましては、企業型の年金というものが運営管理機関で束ねられまして、これが大きなロットで一括で運用される。その一括の運用をする場合には、今の一般の顧客向けの通常の預金のようなコストがかからないわけでございますから、その分、控除抜きに、一般の、私ども、市中で得られる預金の利回りに比べれば相当高いものが出てまいります。

 そういう相当高いものから、今申しましたような管理料を控除して、それでどれだけが出てくるかということで、これは事業主負担があるなしにかかわらず、事業主負担前の問題として、これが赤字になるということは私ども考えておりません。起こらないと考えておりますし、現に民間金融機関からも、その逆転コスト割れというものは、事業主が負担しなくても、例えば従業員負担であるとしても、従業員が、その部分が赤字になるということはない、それなりの利回りがあるというふうに考えております。

小沢(和)委員 今、要するに、局長の答弁というのは、個々の契約といっても、数がまとまれば節約される効果というのも出てくるから、市中の預金金利よりは高いものになる、こういうようなお話だったように思うんですけれども、今よりもさらに金利が下がってくるというような状況になっても大丈夫なのかどうか。

 さっきお話があった〇・六%というのは、これはあくまでアメリカではこうですという話ですよね。私は、アメリカというのはこういう金融商品とかいうのは非常に発達していますから、全体としては日本よりは低くなるんじゃないか、だから日本の場合には、この手数料というのはどうしてもアメリカの〇・六よりは高くなるんじゃないかという感じがするんです。だから、その点、大丈夫なのかということを重ねてお尋ねします。

辻政府参考人 まず、現在の日本の金利というのは、御承知のとおり歴史的に未曾有の低金利でございますし、一般的に、私ども、民間金融機関から聞きますことは、歴史的には、タイミングはまだ不明でございますけれども、一定の時期を経て反転していくのではないかというような一般的な見通しがございます。

 それにいたしましても、本当にそういう、さらに金利が落ちたとしても元本割れしないのかという御指摘でございますが、この確定拠出年金は、六十歳まで引き出せない、長期運用をする、これを前提に制度が成り立っておりまして、長期運用を前提にするということで運営管理機関は参入をしようとしております。そのようなこと、それからもう一つは、かりそめにも元本割れするようなことがあれば、これはむしろこの年金規約を策定するときに手数料が高過ぎて合意が得られないはずでございます。

 そういうようなことを考えまして、そして、現に、民間の金融機関に現在聞いておりますところ、これはもう絶対にそういうことはないというふうに聞いておりまして、今後ともこの点については、今言いました背景から、そのような御懸念は当たらないものと考えております。

小沢(和)委員 それから、今の点でもう一言確認をしておきたいのは、アメリカでは企業の側が管理手数料は大体受け持っているのが通例だというふうなお話だったように思うんですが、我が国でそれが通例になるかどうかということについては、これははっきりしないんですが、それは大丈夫なのか、それは何を根拠にして大丈夫だと言えるのか、お尋ねしたい。

辻政府参考人 一つの根拠は、現在、確定給付企業年金、これは現に運用されておりますが、その場合のいわゆる手数料に相当するもの、現に運用を行ってもらうときの運用の事務費でございますけれども、これにつきましては、いわゆる事務費掛金として事業主が負担しているのが通例でございます。そのような状況のもとで、私ども、企業関係者から内々お話を承るところによると、全額あるいは相当程度負担することになるのがケースとして多いのではないかということを伺っております。

    〔谷畑委員長代理退席、吉田(幸)委員長代理着席〕

小沢(和)委員 元本確保商品のことはそれでおよそ理解がつきましたけれども、それ以外のことが一番問題になるわけですね。それ以外といえば、投資信託や有価証券が一番考えられるわけですが、現在、投資信託は平均するとどれくらいの利回りになっているのか、今、日本でどれぐらい売り出されて、その中で赤字のものはどれぐらいあるのか、お尋ねをします。

辻政府参考人 ちょっと私ども所管官庁でございませんので、結論から言うと、そのような意味での数字は把握しておりません。そしてまた、投資信託の内容はさまざまでございまして、日々商品が入れかわるというようなことで、逐一把握しておりませんので、把握しておりませんということをお許しいただきたいと思います。

 ただ、そのような全体の投資信託がどうなっているか、平均でどうなっているかというお尋ねでございますが、確定拠出年金制度におきましては、どのような商品を組み込むかということは、まず規約を定めるときに労使でその基本方針を決めるわけでございます。そのときに、これはあくまでも労使の話し合いでありますが、投資信託を入れるのかどうかということさえまず御議論いただくことだと思います。そして、投資信託でも、公社債投資信託それから株式投資信託とございますし、株式も、いわゆるインデックス運用というのは、いわば日本の株式市場そのものを組み込むというような、投機的なものでは一切ないものもございます。そういったものをどのように組み込むのかということによりますので、一概に、現在のこの平均的な状況というものがこの確定拠出年金の実際の運用に反映するかどうか、これは別事であると思います。

小沢(和)委員 今のお話では、結局、投資信託というのはいろいろな種類があって、いろいろな運用の結果がある、だから何とも言えない、こういうようなお話のように思うんですけれども、そういうような漠としたことでは、これはますますこの法案に賛成できなくなるんじゃないかと思うんです。いかがですか。

辻政府参考人 申しましたように、投資信託そのものは多様でございますので一概に言えないわけでございますが、ただ、確定拠出年金で商品として投資信託を入れるという方針になりましたときに提示される投資信託の手数料についてどうなるであろうかということについて、現時点での考え方を述べさせていただきますと、まず、一般的には、投資信託というのは販売手数料というものが相当込められております。

 これはまず、投資信託を買っていただくというのに大変大きな販売手数料がかかっております。これが、運営管理機関が確定拠出年金の対象者に対して、これを組み入れるという方針が決まりましたら一括して提示して、十分説明の上、加入者が納得されたらそれをまとめるということになりますので、実は、これはいわゆる一般の市中の投資信託の販売手数料というものに相当するものはほとんどかからない、徴収しても極めて少額であるというところで一つ差がございます。

 それから、預貯金と同じでございまして、投資信託につきましても、今度は一括して運用されますので、個々の投資信託をいわば金融機関が販売して、それで販売のプロセスでさまざまな、販売費用以外の管理コストをかけるわけでございますけれども、その管理コストも全部一括されてしまっているということで、それも、その手数料というものは軽減されるということでございます。

 別途、運営管理機関の手数料、先ほど申しました管理手数料というのはかかるわけでございますけれども、そのようなことから、手数料につきまして、一般の顧客向けの投資信託と比べて決して不利になるというものではないというふうに認識いたしております。

小沢(和)委員 今のお話を聞いても、結局、投資信託とかあるいは有価証券とかいうようなものを三つの、あるいは三つ以上の商品として提示する、こういう仕組みをつくることについて政府としては責任を持てるんですかね、そういうようなことで。私は、そういう漠としたことで、とにかくいいものになるのかどうかわからないけれどもやってみようじゃありませんかというような法案を出してくるというのは、これは余りに無責任じゃないかと思うんですが、いかがですか。

辻政府参考人 まず、先ほど申しましたことは、この確定拠出年金という仕組みに投資信託が組み入れられたとしても、その手数料というものは決して一般の投資信託に比べて不利ではない、したがって加入者に必要以上の負担を課するものではないということを申し上げましたが、そもそも、投資信託を入れるかどうか。法律的には、三つのリスク、リターン特性のある商品を組み入れなければならない、元本保証商品がその中の一つであらねばならないということを決めておるわけでございまして、投資信託、まあ投資信託の中でもリスクが高いのは株式を組み入れた投資信託だと思いますけれども、株式を組み入れた投資信託をその中に入れなければならないかどうか、これは、まずもって労使で話し合う規約の基本方針によるわけでございます。

 再三申しますように、そのようなリスクは今とるべきではないという御判断であれば、よく例に出させていただきましたが、大臣のおっしゃいます預貯金、十年物国債、二十年物国債、この三つのリターン、リスク特性の違うものだけに限定しても法的に問題ございません。

 そのようなことから、私どもは、株式の入った投資信託を必ず組み込まなければならない、あるいはそれが選択されなければならない、こういったような運用は考えておりませんので、そのような意味で、この法案が問題があるというふうには考えておりません。

小沢(和)委員 だから、くどいようですけれども、投資信託というのは、商品によっては、最悪の場合、大部分の元本を失うというようなこともあるようなものじゃないんですか。そうしたら、私は、老後を保障するということでは最大限に安全でなければならないと思うんだけれども、そういうような危険性を含んでいるものも提示商品の中に入れて結構ですというような姿勢そのものが問題じゃないか。

 それは、失うのも、やはり自己責任だということで済ませていいのか。どうしてもそこが納得いかないんですが、いかがでしょうか。

辻政府参考人 昨今、未曾有の株式の下落によりまして、株式を組み入れたものが元本を割るといった事態が生じているということは認識いたしておりますが、基本的に六十歳まで引き出せないという長期運用におきまして、そもそも収益率というのは、私どもデータとして把握しておりますけれども、例えば債券の過去三十年の収益率とそれから株式の過去三十年の収益率、これは平均いたしますと株式の方が高うございますし、これはアメリカでもそうですし、まさしく、そうならなければ市場が成り立たないというものでございますので、長期的には株式が上回る、こういったことから、対象として株式を含んだものを組み込むことには合理性があると判断しております。しかし、それがリスクを伴うものでございますから、それを選択するかどうかは別でございます。

 そういうことから、私ども恐らく、当初は元本保証商品というものが中心で伸びていくということを想定しておりまして、決してそのような、今言ったように、もしチョイスの対象として組み込む場合には組み込む合理性のあるものでございますが、これを組み込まねばならないといったことを前提にした運用というものは考えておりません。

小沢(和)委員 きのうは、参考人がこのリスクをめぐっていろいろ意見を述べておられます。このうち、高山参考人の、事業主が元本または最低利回りを保証することも考えられるという意見については、そうなれば事実上拠出型でなくなるのではないかと私思って聞いたんですが、局長は、そういう規約をつくったら法違反になるから認めないというふうに述べられました。

 私がさらに注目したのは、渡部参考人が述べた、収益の範囲でしか手数料を取れないようにしてはどうかという意見であります。受託して運用したが思うように利益を出せなかった責任をこういう形でとるということも考えられるのではないかというふうに思いますけれども、この意見についてはどうお思いでしょうか。

辻政府参考人 手数料は、あくまでも市場における競争によって決定されるものでございます。現に多くの運営管理機関は、確定拠出年金の運営管理機関のいわば委託を受けるために相当な競争を繰り広げるものと考えております。

 そのときに一定の保証をするかどうかという御議論でございますが、今申しましたように、現実問題として、一番利回りの低い元本保証制の預貯金であってさえ逆転することはないという状況のもとで、そのような必要性は、あるいはそのような市場的な競争を何らかの形で拘束することは妥当ではありませんし、それから、もしもっともっと手数料を下げたいと考えるときには、複数の企業が複合して規約を結んでロットを広げることもできます。

 そういったことで、そのような必要性はないものと考えております。

小沢(和)委員 大臣に一つお尋ねしたいんですが、きのうは、今のような経済情勢の中で投資信託や株式に手を出すことがどんなに危険なことか、専門家の同僚議員が生々しく語りました。これに対して大臣は、株などを買うと大変だから私なら預金や国債を選ぶと答弁をされました。

 これは大臣自身が株などに手を出すということのリスクを認められたということだと思うんですが、大臣が手を出さないような商品を、金を運用した経験など全くない一般の労働者にどうして選ばせるのか。こういうものを新しい年金制度として育ててほしいというふうにもきのう大臣は言われたんですが、これは責任がない態度だと言わざるを得ないと思うんですが、いかがですか。

坂口国務大臣 私は株だとか信託だとかというようなことにつきましては全くの素人でございますから、私は素人ですのでそういうところには手を出さないということを言ったまででありまして、一般の労働者の皆さん方の中にも、株のことにもあるいは信託のことにも大変詳しい方もおみえになるわけでありますしいたしますから、私は私、そしてよく御存じの方は御存じの方ですから、それはそれぞれに対応されるだろうというふうに思います。しかし、私がきのう申し上げたのは、それは何も、年金のことでございますから、堅実にいきたいというふうに思われる方は堅実な道をお選びになればよろしいのではないか。

 ただし、小沢委員は減ることばかり、負けることばかりおっしゃいますけれども、株だとかいうのは負けることもありますけれども倍になることもあるわけでありまして、だから、そこがまた妙味でございますから、そこのことを覚悟の上で、おやりになる方はやっていただける範囲を、選択肢をつくったということであります。こういうことによって年金に対するいろいろの関心をお持ちいただいて、そして、よし、やはり将来に備えようというふうに思っていただければ大変ありがたい、そんなふうに思っております。

小沢(和)委員 だから、将来に備えて選択肢を広げるというその選択肢が、先ほどから問題点にしているように、リスクの非常に高いような選択肢を広げるということは政府のやるべきことではないのじゃないのかという立場から私は質問をしているわけです。

 次の質問に入りたいんですが、商品を提示するだけだというふうに言いますけれども、実際には推奨したりすることが多いのではないかと思うのです。特に、企業に対する忠誠心を高めるためにも自社株を買うように勧めるというようなことがあり得るのではないか。アメリカでは、自社株の比率はかなり高いわけであります。運用は自己責任といっても、こういうアドバイスをしたり、場合によったら圧力もかけたりするというようなことになれば、そうした側の責任は当然問われるのではないでしょうか。

辻政府参考人 まず、運用商品を選択する、そして指図するというプロセスで運営管理機関がその指図を受けますし、その指図を受ける前提として運用商品についての説明を十分するわけでございますが、このときの運営管理機関の立場というのは、これは商品をいわば売って収益を上げるという立場ではなく、加入者の立場に立って忠実に業務を行わなければならない、加入者のみの立場に立って忠実に業務を行わなければならないという法規定がございます。

 そしてさらに、具体的には、加入者保護の観点から、一定の商品を、個別の商品、個々の商品を推奨する、勧める、そういう行為をすることは禁止されております。したがいまして、この禁止に違反した場合、この場合は改善命令や登録の取り消しなど、行政処分も行えるということですし、損害があればもちろん民事上の賠償責任にもかかわります。そういったことから、相当厳しい規定を入れております。

小沢(和)委員 推奨することは禁止だというんですけれども、実際には、十分に説明をするということになるとその辺は非常に微妙な問題が出てくると私は思うのです。

 この前も私はアメリカのERISA法のことを少し言わせていただいたんですけれども、ERISA法では受託者責任というのは厳しく定められております。この法案でも受託者責任は定められてはおりますけれども、やはりアメリカに比べれば不十分ではないでしょうか。いいかげんな商品を勧めたり自社株を押しつけて損害を与えた場合には、きちんと賠償をさせるのか。

 きのうは、受託者の義務に反すれば民事責任を問われたり行政処分を受けることもあるというような答弁だったんですが、刑事責任はどうなのか。アメリカでは受託者責任を問われて刑務所に入れられている金融機関の幹部もいるというんですが、こういうような厳しさが必要ではないでしょうか。

辻政府参考人 まず、アメリカのERISA法との比較から申し上げたいと思います。

 アメリカのERISA法は、加入者のためのみに忠実に行うという受託者責任が、日本で言う運営管理機関に当然かかっております。そして、少なくとも三種類のリスク、リターンが異なる運用商品を加入者に提示して、加入者みずからが運用方法を決定するという方式をとるようにと、このあたりは日本とアメリカは同じでございます。ただ、日本は、むしろ元本確保商品を一つ以上提示しなければならないということが加えられているという意味で、内容的により慎重な形になっておる。

 米国のERISA法では、そのような受託者責任に違反した場合は民事責任だけでございます。少なくとも、このことについてERISA法によって罰則が科せられ、ましてや監獄に入るというような仕組みにはなっておりません。民事責任だけでございます。

 確定拠出年金法案におきましては、これらの違反につきましては、民事責任のみならず、行政処分や一部違反については罰則を科するということになっておりまして、むしろ、全体としては、米国のERISA法より厳しい受託者責任を課していると考えております。

小沢(和)委員 私も十分調べているわけじゃないから、ERISA法でそういう処罰を受けているのかどうかは確認しておりませんけれども、しかし、アメリカの場合には、こういう責任を問われて刑務所に入っている金融機関の幹部などもいるということは事実なんですよね。その点は改めて指摘をしておきたいと思うのです。

 次ですが、今金融機関の倒産が各地で起こっております。この拠出型が動き出した後に、資産管理機関などとなった金融機関が倒産するということも当然考えられると思います。今までの給付型だったらその被害は企業が受けることになると思いますが、今後は、これは労働者個々人が受けることになるのか、こういう場合はどう処理されるでしょうか。

辻政府参考人 まず資産管理についてのこの法案による形でございますけれども、確定拠出年金におきましては、加入者の資産保全が極めて重要でございますので、企業が倒産した場合などにありましても保全されますように、運用する企業の企業財産から分離するということが必要でございます。

 信託銀行、生命保険会社、損害保険会社といったところが資産管理機関になるわけでございますけれども、これらにつきましては、そのような資産の保全をできるものであるということで対象といたしております。

 具体的には、資産管理機関が破綻した場合には、信託銀行が破綻したときは、信託法により信託財産は他の財産と区分して分別管理を義務づけられているために、破綻しても信託財産は全額保全される。それから、生保、損保が破綻したときは、保険契約者保護機構の資金援助により責任準備金の最大九割までが保全される。それから、全共連につきましては、全共連も資産管理機関に入りますが、それ自体についての保全措置はないものの、もともと共済事業の再保険機構であり、また十分な支払い余力を確保しているといった状況にございます。

 そのようなことから、私ども、あるいは日本でだれが一定の資産運用をしても、究極的には、運用先が破綻したときはこれと同じことになるわけでございますが、なおかつ確定拠出年金はあくまでも労使合意によって実施するものでございますので、企業型年金を実施する企業は、労使十分協議した上で、こうした点を踏まえて、各金融機関の財務状況などを十分踏まえながら資産管理機関を選ぶ、こういった形で保全が可能であると考えております。

小沢(和)委員 一般の、こういう金融機関の倒産などで被害を受けた場合の救済と同じような仕組みで救済をされるという説明だったと思うんです。

 それで、私がお尋ねをしているのは、これまでの確定給付型だったら、そういうような運営を預かっている金融機関が倒産したような場合には、これは企業が被害を受けるということで、あくまで給付をするという責任は企業は持つわけですよね。しかし、この場合には本人がかぶるということになるんでしょうということをお尋ねしているんですが、その点はそうなんでしょう。

辻政府参考人 その場合、企業には給付義務は残るというのは事実でございます。

 ただ、もともとこの制度そのものが、確定給付年金が持てないという中小零細企業に、持てないよりもこれが導入できるといったことや、それから、そもそも確定給付年金のような長い長い雇用の上でもらうという状況でない、むしろその時々に欲しい、そのためにこの制度が必要であるというところに違いがあるわけでございまして、そのような意味で、この点、法案の問題点ではないと考えます。

小沢(和)委員 それで、我が国では、労働者は資産をほとんど貯金しておって、株などで運用するという人はまだ例外的であります。

 だから、そういう人たちに自主運用させるということになれば、いわゆる投資教育や情報提供というのが非常に重要な意味を持ってくると思うんですけれども、幾らそういう教育をしても、今までほとんどそういう経験がないような人たちにちゃんとした自主運用ができるようになるのかどうか。どういう教育をするのかということをお尋ねします。

辻政府参考人 まさしくその点、極めて重要なことと思います。

 運営管理機関が実際はその投資教育に当たることになると思います。そのときに、この教育が不十分であって、本人が十分理解せずして本当に思わぬ被害をこうむったというときには、これは本当に大問題になると私ども考えております。そのようなことを、もちろん一義的に投資教育を行う事業主、そしてその委託を受ける運営管理機関に十分認識してもらう。また、今準備されている方々も認識していると思いますが、その点、私ども、心して徹底いたしたいと思います。

 その場合に、具体的な投資教育、情報提供の内容でございますけれども、この制度の説明はもとよりでございますけれども、特に重要なことは投資に関する基礎知識で、いわゆるリスク、リターンの関係、収益率が高いものには逆に収益率のぶれがあるということからリスクもある。そして、過去にどうであったかということもきちっと勉強していただく。こういった最も核心に触れるところの投資教育というものがしっかりなされるように、その点、徹底をしてまいりたいと思います。

小沢(和)委員 こういうような教育をする、あるいは情報提供をするということは、単なる拠出型の運用のためにという範囲を超えて、今日本の国民の中にほとんどそういうような空気がない、資金をどんどん運用するような空気というのをつくり出して、株式市場に個人投資家を呼び戻すとかいう形で今の不況に刺激を与えようというような思惑もあるのではないかと私は思いますけれども、しかし、そういうようなことで市場に活気が出てくるのかどうかという点では、私は大変疑問だと思うんです。

 いずれにせよ、金融機関にとっては、拠出型によって新たに多くの口座がつくられ、その管理を任される、信託などの契約がふえる。間違いなく金融機関にはビジネスチャンスがふえると思うんです。だから、一番もうけるのは金融機関という結果になるのではないか。不良債権を多く抱え、経営危機に陥っている我が国の金融機関に、いわば拠出型の導入で長期安定的な収益源を提供しようということになるのではないか。この点、お尋ねしたいと思います。

辻政府参考人 金融機関との関係でございますけれども、確定拠出年金を実施いたしますときに、運営管理機関、資産管理機関、これは非常に幅広く、要件にかなうものは参入させるという基本方針でございます。したがって、これは相当激しい競争のもとで、手数料、あえて申しますと収益が手数料になるわけですが、ここのところが競争によってコントロールされると考えております。

 それから、現在の確定給付型の企業年金におきましても一定の手数料はかかっておるわけでございますが、この制度だけが特に金融機関にメリットを与える、そういう位置づけではございませんし、よもやそのようなことからこの制度を導入するといったような発想は全くございませんで、これまで申しました、今の社会の状況の動きに対応してこの制度の導入が必要だということに尽きるわけでございます。

小沢(和)委員 ぼつぼつ時間も迫ってまいりましたので、ポータビリティーという点についても一言お尋ねしておきたいと思うんです。

 転職の多い中小労働者にポータビリティーがあることが拠出型のメリットだということがよく言われるわけでありますが、転職先の企業に拠出型がなければ、ポータビリティーということは全く意味をなしません。

 アメリカでも、四〇一k導入以来二十年以上かかって、まだ労働者の半数にようやく達したという程度の普及の状況であります。きのう、アメリカの企業年金に詳しい渡部参考人は、アメリカでもポータビリティーの享受はまだ不可能だと言い切っております。

 今のように深刻な不況が長く続いている中で、中小企業がこういう年金制度をどんどん始めてポータビリティーが生まれてくるというような現実的な展望があると大臣はお考えですか。

坂口国務大臣 やはり、これからの雇用関係を考えてみますと、今よりももっと流動化することだけは避けられない、間違いないというふうに思います。

 そうした状況を考えますと、今申し上げておりますように、今回のこの拠出型の年金というのは、持ち歩きと申しますか、ついて回ると申しますか、そうした意味では意味があるというふうに私は思っております。これが御指摘のように三十年も四十年も積み重なるのには随分先の話でございますけれども、しかし、その一歩にはなるというふうに私は思います。

小沢(和)委員 終わります。

吉田(幸)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時五十六分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 今、坂口厚生労働大臣がお見えになるのを、半分は首を長く、半分はどきどきしながら待っておりました。理由は、昨日もお伺い申し上げました在外被爆者の方々に対しての大阪地裁判決について、再度控訴せずという御判断をいただきたい旨、私は、きょうはまた冒頭、お願い申し上げます。

 実は、本日の午前十一時に、郭貴勲さん、大阪地裁の原告となられた方ですが、この方が、この控訴をしない、控訴の断念を求める議員連盟の議員三名とともに、法務大臣の森山眞弓さんにお目にかかることができました。その森山大臣との会合を踏まえまして、重ねて、坂口厚生労働大臣にもぜひこの郭さんにお会いいただきたく、私はきょうここでお願いを申し上げようと思います。

 前回のハンセン病の熊本判決後、坂口厚生労働大臣は、真っ先にお会いいただきまして、苦しい、被害者と申しますか、患者さんたちの状況についてみずから耳をおかしくださいまして、そのことが大きくハンセン病に対する取り扱いを前進させたと思いますので、ぜひとも今回の在外被爆者の方たちとの直接の会見をお願いしたいと思います。

 それに先立って、幾つか私の方から御質問をさせていただきます。

 まず、先ほども小沢委員の御質問にございましたが、同じように控訴せずという御判断を伺いますに際して、昨日私も質問させていただきましたが、坂口厚生労働大臣のお答えは、平成六年当時の共産党の岩佐委員の御質問への関係局長の答弁が、これは在外に居住している方を含むものではないという認識にのっとっておるというふうな御発言でもございましたが、実は、坂口厚生労働大臣にあっては、今回の大阪地裁の判決全文をお読みいただけましたでしょうか。まず第一点、お願いいたします。

坂口国務大臣 まだ拝見いたしておりません。

阿部委員 所用お忙しい中とは存じますが、ぜひとも御一読いただきたい。

 実は、この判決文の中に、「立法者意思も第一次的には当該法文に表われた合理的な立法者意思を探求すべきであって、国会における答弁等を過大視することは許されず、これらは、あくまでも解釈の参考資料として位置づけられるにすぎない。」という一文がございますが、何を言っているかというと、当時の岩佐委員への答弁をもってこの法案の全文を解釈すべきではない、これは法案の審議過程で質問に立った委員への担当部署の回答ではございますが、その後に立法化された段階で、本来の立法趣旨ということを深く酌み取って判断すべきだという裁判所の判断でございます。

 ここの部分、ぜひとも厚生労働大臣には今回の地裁判決全文をお読みいただきまして、きのうの御答弁、さらにはきょうの小沢委員への御答弁についてもう一度御考慮願いたい。なぜならば、私ども、国会、立法府におります者は、その立法の本来的趣旨ということをさらに深めて生かすべく鋭意努力することを課せられた者だと思います。

 そして、昨日、坂口厚生労働大臣は、もともとの被爆者援護法の前文をお読みいただいたというふうに承りましたから、ここにはやはり、我が国が唯一の被爆国として、核兵器の根絶的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきたという一文がございますように、世界の垣根を越えてこの原爆の悲劇というものを乗り越えていくべき道を我が国が指し示すべきであるという法文の前段になっております。そういうことになりますと、果たして居住区の日本国内外にあることを分けることが、本来的に、被爆者援護法の本来の趣旨に合うかどうか、いま一度その原点に立ち戻ってぜひともお考えいただきたいものでございます。

 引き続いて御質問がございます。

 坂口厚生労働大臣にあっては、この被爆者援護法を、いわゆる人道的見地から成り立つ、より高次な判断に基づく立法というふうに認識しておられますでしょうか。

坂口国務大臣 平成六年でございましたか、その法律ができましたときにいろいろと議論をした記憶がございますが、大変その法律はさまざまな思いを集約する形ででき上がっているというふうに私は理解をいたしております。原爆に遭われました患者の皆さん方の気持ちというものもある程度その中に織り込みながら、しかし、言葉としては余り明確な言葉を避けて、そうしてでき上がっているように思います。

 その当時もいろいろと議論をいたしましたが、やはり、その当時としてはこれが精いっぱいの法律なんだろうということで通過をしたように記憶をいたしておりますが、そんなに詳しく私も理念のところまで整理をして今読んでいるわけではございませんが、当時を振り返って、そんな思いを今いたしております。

阿部委員 私は当然、当時国会の場にはおりませんし、この前文を読むのは今回こういう判決がおりましてから改めてということでございますが、この大阪地裁判決にも言うように、一つには国家賠償的、もう一つには人道的見地の法律であるという認識を私はこの法律から受けとめます。そして、もしそうであれば、いわゆる人道は国境を越えると思っております。例えば国境なき医師団というものもございますように、あれは人道的見地から、他国に起きたいろいろな戦禍を医師たちが救援するという仕組みでもございます。ぜひとも、再度のお願いでございますが、大臣にあっては、この法律の掲げる高い理想というものに一歩でも近づくべく御判断をいただければと思います。

 それから、一文訂正ですが、私はきのう、外務省と大阪府と申しましたが、法務省でございました。田中眞紀子さんの御活躍が華々しいもので、つい間違えまして、これは法務大臣と関係省庁特に厚生省、それから大阪府、小泉内閣総理大臣となっております。

 けさの森山法務大臣と郭貴勲さんのお話し合いの中で、森山大臣が郭さんに伝えられた中身は、これは厚生労働大臣の判断が大変に重要に響くのだというふうに森山さんは御認識だというふうに伝えられた由です。これは私が郭さんから伺ったことですので、どこにどういう文面で残っているということではございませんけれども、そういう意味で、厚生労働大臣としての御判断をお願いいたします。

 そして、この件に関しての最後の御質問でございますが、その判断をなさるにも、ぜひとも患者さんに直にお会いいただきたく、きょうはこの一点のみ、坂口厚生労働大臣が郭さんにじかにお会いいただくことのお約束をこの場でいただければ、まずもって胸のどきどきはおさまって次の質問に行けますので、この点だけ、きょうは一点、よろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 何か、前に私は一度お会いしたことがあるそうでございます。私もうすっかり忘れておりますけれども、御本人が一遍会ったというふうに、一度か二度かわかりませんけれども、お会いしたということを言っていただいておるようでございますから、多分お会いしたんだろうというふうに思っております。

 決してお会いしないというわけではございませんが、この二、三日はまことに国会の方がびっしりなものでございますから、少し時間を置きまして、機会がございましたら、その機会もまたつくりたいと思っております。

阿部委員 確認事項でございますが、少し時間を置く間に控訴とかが判断されてしまいますといけませんので、これは坂口厚生労働大臣の記憶に深く残るような会い方をぜひしていただきたいと思います。

 やはり、じかにお声を拝聴するということは、患者さんたち、あるいは実際にこういう立場に立たされた方たちの声をじかに聞いていく政治というのが大変に重要な時代になってございますので、再度、しつこくお尋ねするようで申しわけございませんが、控訴についての坂口厚生労働大臣の、これは直に大臣だけが判断するものではございませんが、お心を決める、判断をなさる前にぜひ一度お会いくださいますように、お約束をしてくださいますでしょうか。

坂口国務大臣 それは了解いたしました。

阿部委員 いつもありがとうございます。

 では、引き続いて、心置きなく次の確定拠出型年金の法案の審議に入らせていただきます。

 きょう、私より何人か前に、民主党の釘宮議員が幼児虐待のことをここで御質問でございました。委員は、本来の確定拠出型年金とは少しかかわりのないテーマであるがというふうに前振りなさいましたが、私は、今の幼児虐待という現象は、非常に、社会の不安定、それから今の社会のあり方ということを強く反映しているように思います。

 私は小児科の医者でもございますが、実は、幼児虐待をめぐっては、働くお母さんも専業主婦もどちらにもふえております。その大きな原因は何かというと、きょうもキーワードになっておりますところの、自己責任という言葉が非常にひとり歩きしております。実は、育児をめぐっても、育児をしているお母さん、あなたの責任ですよということは、これはある意味で当然なのですが、そのお母さんが育児の責任を全うできるような社会のセーフティーネットがないと、自己責任は機能しないのでございます。

 そういう意味でいえば、今回の拠出型の年金の法案審議の中で、何もこの法案自身が悪いと申しているのではなくて、この法案の趣旨を生かすべく、まずセーフティーネットをもっと確実にしなさいということが各委員の共通した認識であろうかと思います。

 それに対していただきます辻局長初め皆さんのお答えは、何でこんなにいいものをつくったのにだめなんだろうというところで大きくすれ違っているように私には見受けられます。どんな法律もそうですが、やはり順番と時期をたがえては、いい法律でもその時節に合わないで期待した効果が上げられないということがあると私は思います。

 私自身のこの法案への認識を申しませば、これ以前になすべき三つの事柄がまずあると思います。

 一番目は、昨日のこの質問でも伺わせていただきましたが、公的年金にかかわる部分の充実でございます。この部分について国民が安心感を持たないと、その次は進めません。これが、育児におけるお母さん方の自己責任と社会が持つべきセーフティーネットのかかわりと同じ図式を持っております。今盛んに自己責任と言われましても、本当にそのことがさまざまな社会混乱や老後の不安を生むようであっては、自己責任という言葉の意味が生きてまいりません。この意味で、私は、きょう第一点目は、公的年金の充実ということを先回の質問の聞き残し分も含めて聞かせていただきます。

 それから二点目は、いわゆる確定給付型をめぐっての論議のときにも問題になりましたが、企業年金基本法と称されるような、企業年金、職域年金についてのきちんとした給付を保障するような法律をまず大前提でつくるべきでございます。このことも各委員が御指摘ありましたし、給付型の討議のときにも幾つも上がっておりましたが、この部分について明確なお答えが辻局長初めとして皆さんの側から提起されないということが、また論議をすれ違わせております。

 三つ目は、このような金融市場が不安定な時期に、何でこの時期かという認識でございます。だれも今の株価がいい動きをしているとは思っておりません。だれも、だれ一人、どの方も思っておりません。なのに今、こうした直接金融ということが組み入れられたこの法案をこの時期に提出することの意味でございます。私は、こんな時間があるなら、そもそも一番目の公的年金の論議をもっともっとしっかりして、国民にわかりやすく提示すべきであると思います。順番が本当に違うと思います。

 そうはいっても、設定された委員会ですので、順次質問に入らせていただきます。

 まず、一番目でございます。公的年金の現状の認識にかかわる部分でございます。

 きのうの私の質問に対していただきましたお答えが、要約いたしませば、七千万人の国民年金の加入者のうちでたかだか五%内外が未納という状態であるので、そのことは数値的には大きくはないというふうなまとめの御発言をいただきましたが、これは現状認識としてはやはり違うのではないか。何が違うのかといえば、国民年金が置かれている状況に危機を感じるか、それともそこそこの妥当なものであると感じるか、いや、安心なものであると感じるかというところで違ってまいるという指摘をしました。

 では、再度お伺いいたしますが、平成十一年度の国民年金被保険者実態調査から明らかになった国民年金の現状について、幾つかの特徴があると思いますが、その認識、特徴について担当部署からお答えください。

冨岡政府参考人 お尋ねの点につきまして申し上げますと、まず今回の調査結果による、考えております特徴といたしまして、未納者の中で、年齢階級別に見ますと、二十歳代それから三十歳代前半の層の未納の方の割合がふえているという点が一つでございます。それから、大都市部とその他の中小都市、それから町村といったところを比べますと、大都市部が低いという傾向がございます。

 それから、未納の理由としてのお答えで一番多いのは、保険料が高いというのが理由でございますが、それでは、その方たちの所得、世帯の所得を比較してみますと、実は、未納の世帯と納めている世帯の間に、納付している世帯の方が世帯の所得として若干高いという傾向はありますが、所得分布自体にはそれほど大きな格差はございません。一方、未納の世帯でも生命保険といったものに五〇%ぐらいの世帯が加入しておられまして、かなりの額の保険料を負担しておられます。こういった点から、未納の理由として、調査のお答えの中では保険料が高いというお答えが多いわけでございますが、ほかの、所得とか生命保険の加入等を見ますと、やはり公的年金に対する支払いのその方の意識の中での優先度と申しましょうか、理解がかなり差になってあらわれてくるのではないか。

 以上のような点が、今回の調査の特徴の主なものでございます。

 以上でございます。

阿部委員 今のような調査結果をお聞きになりまして、私であればまずどう思うかをお伝えいたしますが、若い人で、大都市部に未納率が高いということは、逆に、都市と農村を比べました場合に、いろいろなその地域の持っているセーフティーネット、人間関係、きずなも含めて、弱いのが都市であり、まだ旧来のものが機能しているのが農村部であるとも思います。

 となりますと、これから、一番人間のきずなが弱い、その意味で本来的な社会が持っているセーフティーネットが弱い部分で、さらに公的年金への信頼性が低まっているということは、先ほど私が申しました社会の安全弁ということについて極めて危うい状況があると認識されます。

 恐らく小泉総理も同じような認識を持たれましたのか、若い人に国民年金の、いわゆる公的年金の宣伝マンをしなくちゃいけないというふうにおっしゃったと、昨日でしたか朝日新聞には報道されておりましたが、かかる調査を聞かれまして、坂口厚生労働大臣の、国民年金、特に公的な年金への国民の信頼の部分について、そして政府のなすべき役割についての御認識をまずお教えください。

坂口国務大臣 調査の結果をどういうふうに読むかということ以外に、私は、年金に対する信頼がなくなってきたのは、年金を改正するごとにだんだんと変えていく、年金の改正時にいつも給付の額を下げて、そして今までの約束をだんだんたがえていくという、やはりここが一番問題なのではないか。

 ですから、信頼を得ようと思えば、年金などというのは、人口構成、ずっと先まで読むことのできる最も読みやすいものでありますから、もっと先までそれは読めるわけでありますので、先の先まで計算をして、そして、これから先の、十年先、二十年先の年金はこうなりますという本当のことをまず言うということがやはり一番大事ではないか。そこを徐々に徐々に言おうとするものですから、なかなか信頼がなくなっていくのではないかというふうに私は思っております。

阿部委員 いつも明確な御答弁をありがとうございます。

 本当におっしゃるとおりで、国民年金の本当の公的年金の部分をこんなにグレーにして、ファジーにして、あいまいにして、その次の確定拠出型年金の論議というのが国民に浸透するわけもなく、その意味では、自己責任ということを考えなさいと言っているその行政府側が、もっと国民年金についての基本的な選択肢をまず提起すべき時期であろうと私も思っております。

 そして、その件に関しまして、実は私は昨日、桝屋厚生労働副大臣からお返事もいただきましたが、御検討をいただきたいことがございます。

 これまでの年金論議の中では、特に自社さ時代の合意では、まず二分の一を税で確実にいたしましょうということが合意されましたが、果たして税源をどこに求めるかは一貫してあやふやでございます。こうした状態では、これはだれも何かを負担しないでお金がわいてくるわけではないので、どのような負担形式を論じていくかという際の選択肢が全くないのが現在でございます。

 今、政府側として考えている選択肢と、案でも結構でございます。そして私自身がきのうお尋ねいたしましたのは、私は、かなり年金ということに目的を限ってですが、所得累進的なもので税源を考えていく。例えば、これは消費税と違いまして、消費税は逆累進性が高い税制でございますが、やはり社会は相互扶助によって成り立つという人間の思いやりをもう一度この社会に惹起しなければいい時代が来ませんので、かなり所得に、年金ということに目的を定めたような累進的な税も検討の一つに上るのではないかと私自身は思っておりますが、厚生労働省としてお考えの幾つかのプランを、案をお示しいただければと思います。

坂口国務大臣 ほかの人は答えにくいと思いますから、私から申し上げたいと思いますが、それはもうかなり限られてきているというふうに思います。それは、一つは、これから先、消費税と申しますか間接税をどうするかという問題が一つ。それから、現在の直接税をどう改革するかという問題がもう一つ。この二つだ。

 直接税の中には、例えば課税最低限をどうするかといったような問題もあるでしょうし、あるいはまた、現在の税の中で、何と申しますか、税の捕捉が十分に行われていないというようなこともありますから、捕捉率を高めるといったようなことをどうするかといった問題も私は含まれていると思います。

 そうしたことを行う中でこれは行く以外にないわけでありますから、かなり税の問題にこれは限られてくるわけでありますし、税の中はそうしたことに限られてくるというふうに私は思っております。

阿部委員 私自身も、例えば今塩川財務大臣が一生懸命やっておられる特別会計の見直しとか、そういう是正すべき、あるいはむだ遣いというかむだ構図はもちろんメスを入れるべきと思います。その前提に立ったとしても、やはり大きな論軸が必要と思いますので、この点についてはもうきょうこれ以上詰めませんが、国民にわかりやすい幾つかの案を明示するような方向にぜひとも厚生労働省として歩を進めていただきたいと思います。

 引き続いて、企業年金基本法に関するお尋ねをいたします。

 今我が国はもちろん企業年金基本法等ございませんが、いわゆる確定拠出型年金においては、運用によるリスクは、先ほど来申しますように、受給者本人が負うというようになってございます。そのことは、自己責任という言葉で本当に語るためには、まず受給権の保護等々、他の本当にリスクをかけてやれるだけのベースの安定が必要と思いますが、これは辻局長にまずちょっとお伺いいたします。

 なぜ我が国では、企業年金基本法のような、いわゆる受給権の保護ないしは金融機関の預かった年金の取り扱いに対しての根本的な法案をおつくりになってこなかったのか。あるいは、これからはどうされるのか。お願いします。

辻政府参考人 いわゆる企業年金基本法あるいは企業年金の包括的な法律というものをどのように考えるかでございますけれども、関係審議会でこのようなものが必要だとされましたゆえんも、今の企業年金というものの権利保護、受給権保護制というものにまだまだ不十分な面があるからである。特にそれは、適格退職年金というものが税法上の根拠のみにありますことから、積み立て義務がない。そういったところから包括的な法体系というものが求められてきたと私ども認識しております。そのような観点から、基本的には企業年金というものに対して包括的に法制というものを持っていきたいということで、沿革的には議論されてまいりました。

 しかし、それを詰めていきますと、結局、今の御提案しております企業年金基金法といった法体系をつくりまして、それで具体的には、積み立て義務のなかったものについて積み立て義務を課するという形で、いやしくも確定給付型の企業年金については積み立て義務をきちっとかける。そしてまた、それにかかわる受託者につきましては受託者責任という運用責任を明確化する。そして、それらについて情報開示がなされる。それから、厚生年金基金との、あるいはこのたび御審査いただいております確定給付企業年金法との相互の移行規定を設ける。そうすると、全体として、結果として包括的に網羅的に法体系ができるということから今回の御提案に至りまして、基本法という名前を銘打ってはおりませんが、全体として今の企業年金に関する法体系がこれで整備されるという理解に立っております。

 ただ、一つ、ERISA法などと比較されますときに、支払い保証制度がその法体系にないではないかという御指摘、るるいただいているわけでございますが、それは今後引き続き検討という位置づけになったと理解いたしております。

阿部委員 私は、ずっとこの論議を承っておりまして、先ほど来申しますように、受給者の自己責任、自己責任ということをおっしゃる限りにおいては、やはりそのことがわかりやすくなるような基本の法体系というのは必要だと思います。

 どういうことかというと、これは受給者に提供される情報を初めとして、運用についてはかなり専門性が要求されるということがきょうも繰り返し言われておりました。専門性が要求されるのであれば、その専門性をつかさどる人々あるいは機関についてのきちんとした約束事が明示されるということ、共通して明示されることがやはり非常に重要になってくると思います。

 これは、医療の世界ではインフォームド・コンセントという言葉が今はやりでございますが、患者さんにいろいろ説明して選んでいただく。その場合に、医師はいろいろな説明義務を負いますし、医師という専門性において患者を傷つけてはいけない等々ございまして、いわゆるそれを医師法という形で私どもは、十分なものであるかどうかわかりませんが、みずからの専門性を律する法律を持っております。

 あわせてですが、この間審議されておりますのは、例えば患者の権利基本法をつくろうとか、いわゆる本当に選べる体制にするためには提供者と受給者の双方を本当におのおのきちんと律していく法体系が必要であるということが、これからの社会の大枠であると私は思います。

 今、辻局長のお答えは、この側面はここで、この側面はここで、全部合わせてどうにかなっているだろうということでございますが、金融市場等々の不安定性を考えれば、やはり基本になるような法律、これはアメリカではERISA法、ドイツでも、アルテル・レンテン・ゲゼッツというのだそうですが、こうした形で法体系が既に一九七四年時点で整備されているものでございます。逆に、あれこれ寄せ集めたらこうなるよというのではないところの基本法的、このごろは、林業、農業基本法という、基本法という形の制定が立法府でも多いように思います。

 それらの今の私の指摘を受けました上で、もう一度御答弁をお願いいたします。

辻政府参考人 このたび、この確定給付企業年金法案、確定拠出年金法案を提案する過程で、私どもも、法制的にそのあたりを全体としてどうするかという議論をいたしました。ただ、我が国の場合、沿革的に厚生年金基金というものは厚生年金法と一体として形成され、そこが位置づけられて既にあったというようなこと、そういうことから、あえて申せば立法技術的にそれぞれの法体系を生み出していく形をとったという経過がございます。

 ただ、御審査いただいておりますように、受託者責任とか情報開示とか、いわゆるそれぞれの責任を果たすという意味での法体系は私どもなりに相当緻密に詰めておりまして、ERISA法との対比におきましても決して劣ることがない、ましてや少し厳しいぐらい、そういった形で、一つ一つについて全体として体系として説明できるような法体系を御提案しているものと考えております。

阿部委員 私は、法というのは、その国の文化と歴史と国民性と、そして物事の考え方の大筋が見えるものであるべきだと思います。その意味で、先ほど来申しますように、ここではこの面が保障、ここではこの面が保障、ここではこの面が保障というふうになってきた経緯自身が、我が国が職域年金というものを考えるに当たって、あるいは老後の保障ということを考えるに当たって、基本的な姿勢ということを国民にメッセージできない大もとになっていると思います。

 どういうことかというと、ERISA法という法律においては、先ほど申しました受託金融機関の規律性、いわゆる責任、専門能力を持った人たちが受給者にベストベネフィットを与えるような仕組みを、そして義務を課したものでございます。ドイツの法体系では、むしろ受給権の保護ということを前面に出して、その受給権の保護から逆に受託者の金融機関のなすべきことを決めたり、労働組合のなすべきことを決めたりしております。

 やはり、法体系には歴史があると思います。かなり金融機関が発達し、それから、人が人に対してどのような信頼を持つべきかというところを法で定めなきゃいけないアメリカの場合と、逆に、相互連帯ということと共同責任という意識が非常に高いドイツで、まず受給権保護ということを法の中心に組み立てた体系。そして、これからの法律というものはすべからく、きょうの被爆者援護法でも申しましたが、筋が、理念がわかるものでなければ、何度も申しますが、国民のだれもにかかわる年金問題のようなものはメッセージが伝わりません。

 我が国はどういう姿勢で国民の老後を、特に企業年金、職域年金のこれからを考えておるのか、そのことを基本法でお示しになるべきだと思います。強く給付のことを保障するような理念を伝えなければ、やはりこれから国民にとっては不安定要素を増すと思います。

 きょうの確答はいただけなくても結構ですから、これは、法律というものの考え方をもっと大筋、大枠に立って考えていただきたいという要望としてお聞きおきいただければ結構でございます。

 そして、あわせてまた質問に移らせていただきます。

 そういう法律ができたとして、例えば医療でもそうですが、医者が一番この患者によかれかしとやったとて、そこで医療被害や医療ミスが起こることもございます。そのミスが起こったとき、被害が起こったとき、年金では受け取れなかったとき、あるいは、先ほど言いました、幾ら自己責任と申しましても、全部あなたがそこで選んだからよとやはり言うべきでない、言えない。年金を予定として考えていたけれどももらえなかった、あるいは自分に今ある選択をどういうふうにすればいいのだろうと考えた一人の国民が、どこに相談に行けばいいか。

 それはニッセイレディがいいのかという質問もけさございましたし、かなりの専門性を持って一人一人の国民に直に答えられる窓口を厚生労働省としてはお考えか否か、これをお教えください。

辻政府参考人 さまざまな分野におきまして、いわば消費者、国民お一人お一人を対象とする分野で必ず苦情といったものがあるわけでございまして、それぞれに対してどのような窓口を設けるかという問題にもつながるわけでございます。

 確定拠出年金制度に関しましては、この苦情というものは、究極的に、その処理というのは、運用指図を行います加入者と運営管理機関、この間に生じるいわゆるトラブルに起因するものと言えると思います。そのようなことから、この運営管理機関に関するトラブルをどのように処理するのかということでございます。

 そのことに関しましては、運営管理機関と相対峙するこの制度を実施する事業主、企業、それと、運営管理機関と事業主を監督する厚生労働省、この関係にあるわけで、私どもといたしましては、厚生労働省に、今申しましたようにあらゆる分野にあらゆる苦情がございますのでそれぞれの窓口というのは設けませんが、苦情というものが入ってきますれば運営管理機関と事業主に対してそれを処理するように伝えていく、そういった形でこの問題に対応してまいりたいと考えております。

阿部委員 今の辻局長の御答弁で、本当に個々に疑問を感じた個人の側がどうなるのかということが私には見えてまいりません。これからは自己責任で自己運用だと言われましたときに、何度も申しますが、医療でも、二つの治療法を提示されたときどちらがいいかということを選ぶのに、今、セカンドオピニオンがないということで患者さんたちはいろいろ言っているわけです。

 例えば、私が提案いたしますのは、社会保険庁の中に、あるいは各都道府県にございます社会保険事務所、そういう中に、この年金の相談窓口。あるいは、これは三カ月置きに市場を見ていなきゃいけないシステムだそうですから、読み方だってわかりません。そういうことについて、利用者側、いわゆる一人一人の国民がもっと自分の年金の知識を高めるための、そしてそれは受託機関から出される情報だけではやはり偏りがございます。そこの部分を理解されないと、ここは自己責任といっても、本当にどこにも相談できないあげくに選ぶということになりますから、もう一度御答弁をお願いいたします。

辻政府参考人 この確定拠出年金法案の構造でございますが、これは、十分に労使と話し合って、そして、さまざまな制度の枠組みのもとで、決められた枠のもとで、その運用結果について自己責任を持つ。まさしく、その自己責任を前提にして導入されようとしている制度でございます。

 したがいまして、個々の市場で、私どもはさまざまな選択をしながらさまざまな市場分野で行動いたしておりますけれども、そこで生じる自己責任と、位置づけとしては、制度論として恐縮でございますけれども、同じものでございます。したがいまして、これだけについて個々人の苦情を処理する機関を設けるといった形にはならないのではないか。

 しかしながら、私どもは、もしも本当に不条理なトラブルが起きたとき、大変大きな国民の不信につながり、この制度そのものが大変危ういものになるという深刻な認識は持っております。したがいまして、私どもは、運営管理機関と事業主を的確に指導し、また、個々人の方についてのトラブルがあれば、今言ったような前提の枠組みで、誠心誠意、処理できるように努力をいたしたいと思います。

阿部委員 誠心誠意やろうという意思が具体的に媒介できる制度や窓口がなければ、誠心誠意にならないのです。

 そして、例えば、今、辻局長もきっとお考えでしょうが、これは五人とか十人の中小企業の方々が利用される。労働組合だってないかもしれない、その中で、個々人の窓口がなければ機能しないということも当然あり得ます。そもそも、連合と日経連、経団連の合意すら不十分であること、私は昨日の参考人のお話の中で明らかに承りました。そして、それ以下の、中小の本当に組合のない方たちもこの年金を利用されるとした場合に、個別の、個々人に親切な仕組みがなければ、今幾ら辻局長がそのように、心しておりますとか意図しておりますとか言っても、例えば私が疑問を感じたときどこに行けばいいのということです。これにお答えください。

辻政府参考人 公といたしましては、私ども、所管官庁でございます。そのような意味で、そのような苦情を受け付けないとかそういうことはあり得ないことでございまして、そのようなつもりで御答弁申し上げております。

阿部委員 所管官庁に行くというのはどういうことですか。私が、一人が、私個人が厚生労働省に、お会いくださいと行くという意味ですか。

辻政府参考人 厚生労働省、それから地方厚生局、それから地方社会保険事務局、これら厚生省の社会保険に関連するところ、今申しましたような理由から、自己責任による制度についての市場における苦情というものの処理、これは、そのどれかのためだけの窓口を設けるといったことは体系上とりませんけれども、厚生省所管のそのような苦情については、今までもどの分野においても受け付けておりますが、社会保険の関係の窓口、開ける限りのもの、おいでになれば、それを究極的には私ども、この確定拠出年金を所管する部局に伝わるように、幅広く受け付けたいと思います。

阿部委員 では、少なくともそうした広報活動をもっとしっかりなさるべきです。この確定拠出型年金の御説明のときにも、その部分については、私にいただきましたリーフレットの中にも明示もされてございませんし、それから、きょうの先ほどの釘宮委員の御質問でもそうですが、児童相談所に行けばいい、しかし、そこに人員の手当てがなければ、現実には、行っても同じように処理できないことが生じます。個人単位に戻したときに、苦情や混乱や不満や疑問はふえてまいります。そのことを見越して、人的手当て、そして広報活動をなさらなければ、それは、何度も申します、意図はしていますが、個人には、国民には伝わらない形式になります。

 今後、厚生労働省として広報活動をなさるときに、必ず、疑問を生じたときの一般国民向け窓口の明示をお願いいたします。これはお約束をお願いいたします。

辻政府参考人 今申しましたように、例えば、厚生省は、確定拠出企業年金法を所管しておりますほか、確定給付企業年金法も、あるいはさまざまな法体系で消費者と相対峙する制度の所管をしております。各省もそうであります。そのような一般の国民個々人の自己責任に基づく問題についての処理という一環の問題でございますので、特にそれだけの窓口といったことは考えておりませんが、今後、幅広く必要な処理が対応できるように努力をいたしたいと思います。

阿部委員 何度も申しましたが、人的な補充が必要ですので、そこの部分をきちんと、人が配置されなければ窓口があっても機能しませんし、特に今般、市町村における年金相談窓口業務はほとんど社会保険事務所の方に移管されておりますので、混乱ないしは相談数の増加も当然起きてまいりますから、よろしく御検討のほどをお願いいたします。

 最後になりますが、三番目。いわゆる金融市場がかほどに不安定な時期、特に株価の安定ということが今非常に不安定、不透明な時期にあって、あえてこの確定拠出型年金を今この時期に導入しようとする御判断は、どのように立つものでしょうか。

辻政府参考人 この確定拠出年金は、基本的に、今の企業年金のあり方で新しい選択肢を提供しようとするものでございます。

 その新しい選択肢の提供はなぜ必要か。これにつきましては、企業年金のあり方を検討する中で、確定給付の企業年金は中小企業には導入しにくい、一方、中小企業にも三階といった多様な公的年金の上乗せというものが必要であろう。また、雇用が非常に流動化していく中で、長期の雇用を前提とした確定給付年金ではなくて、職場を比較的移動される方々にとっては、ポータビリティー、すなわち、職場を持ち歩けるような年金が必要だ、欲しい、こういうような構造的な状況があるという認識で、それにこたえるために選択肢として導入するものでございます。

 そして、そのときに、今確かに株価が大変低迷しておる状況、金利が低いという状況でございますが、これは必要性があり持ち込むことでございますことと、それから、今後の状況ということを見ますときに、長期的な運用を前提にいたしております。これが例えば一年、二年、三年、こういうような短期な環境を前提にして評価が問われるような法体系であれば別でございますが、加入後六十歳まで引き出せない、しかも原則十年を要する、このような仕組みのもとでこの制度を導入いたしますので、運用は長期的に見るという観点から考えるべきであります。それからもう一つ、株につきまして特に問題になっておりますが、株価の収益率は長期的に見れば債券を上回ります。

 そのようなことから、長期的に運用するという前提から株式の市場は見るべきであると考えておりますし、そのような観点から、この制度を現在導入することにつきましては、具体的に着手することについては十分検討をしてそれぞれでお取り組む必要がありますが、制度を導入する必要性としては現時点でも問題はないと考えております。

阿部委員 制度を導入する必要性については、私も、先ほど申しました三つの観点がクリアされればあり得る選択であるとは思っております。

 ただし、この一年間を見ましても、日経平均の株価三〇%の下落、そして、それは中長期的に見ましても、これまでのような高度経済成長の中で行われる株式市場ではないわけです。このことは、どなたも認識を一にしておるわけです。

 そして、収益性を含めて、この確定拠出ということが、ある程度、あなたの将来についての安心ですよ、安全ですよ、あるいはリスクをかけてもやってみるべき商品ですよというには、何度も申しますが、株価の安定ということも含めて、今非常に国民は金融市場についての信頼を失っている状態でございます。これは、銀行が倒産したり、あるいは本当に、税金が投入された後、安いお金で外国の金融資本に買い取られたりすることを見ているわけです。

 やはり、行政にある方は、一度普通の目、国民の目になって、今の株価の状況、私は昨日も財務金融委員会で個人の株式取引を増加させるための租税措置の法案を審議してまいりましたが、租税で優遇措置をされてすら、なおかつ個人が株式に信頼を抱くには、今の日本の金融状況ではかなり無理があろうと判断しております。

 そこで、この法案を導入するに当たりまして、さまざまな手数料、あるいは金融市場の動向等々も関与いたしますが、金融庁とはどのような点が検討され、合議されましたでしょうか。

辻政府参考人 この法律を実施していきます上で、運営管理機関というもの、それから資産管理機関というのは、これは金融行政といわば重複というか共通の場になるわけでございます。したがいまして、この運営管理機関等につきまして、共管関係でこの法案を担当するというかかわり合いになっております。

阿部委員 このことを伺いますのは、例えば金融機関におきまして、普通の金融機関で比べました場合に、米国と我が国で、いろいろな金融機関の手数料、このことだけにかかわりません、ここにおいては日米の差はあるのでしょうか。例えば、米国のものは全般に金融市場の手数料が安くハンドリングされていて、日本では手数料が高いという傾向は一般的にあるのでしょうか。お教えください。

辻政府参考人 金融行政は私ども所管しておりませんので、関係して承知する限りのことを申し上げますと、この確定拠出年金の制度に関して言えば、アメリカの手数料、いわゆる四〇一k、これに相当する四〇一kの手数料というものは、平均的に一・三二%という情報を私ども得ております。

 そして、その中で、日本とアメリカの最も共通する部分である記録管理等の管理費用、管理手数料につきましては、アメリカが約〇・六%だと認識しておりまして、私ども、日本でこの制度の中での運営管理機関を担当しようとしている、準備している方々、関係者のお話、状況を総合いたしますと、大体その〇・六%というものを目安にして日本もできるというようなことで、事この点につきましては比較的にそのような認識を持っております。

阿部委員 認識ですから、それを客観的に保証するものがないといけませんが、その点については小沢委員が先ほど御質問でしたので、一点、認識をお聞かせください。

 イギリスでは、ステークホルダー年金において、ハンドリングチャージを積立金の一%以下に規制することになったというふうに伝えられておりますが、逆に、規制しなければそれ以上上がるということでもございますね。公的規制を入れたということは、ハンドリングコストというのは必ずしも、市場経済に任せたとしても上がり得るということでもございますね。

 辻局長にあっては、このイギリスのハンドリングコストの規制という事実をどのようにお考えでしょうか。

辻政府参考人 英国におきましては、ステークホルダー年金と呼ばれる確定拠出型の個人年金がございまして、この手数料の上限が一%で規制されているということを承知しております。

 このステークホルダー年金の性格でございますが、公的年金にかわって位置づける。もしステークホルダー年金に入れば、公的年金にかわる位置づけになって、公的年金に入らなくてもよいという代替制度でございますので、公的年金加入者と比べて不利益にならないように手数料が規制されておるというのがこの理由であると考えております。

 日本の場合、確定拠出年金は、英国のステークホルダー年金のように公的年金の代替ではなくて、あくまでも公的に年金があった上での上乗せの私的年金であるということで、基本的には、アメリカも同様と存じますが、民間の制度として、当事者同士で決定する、規制になじまないものだというふうに理解しております。

阿部委員 今の御答弁には必ずしも同意いたしませんけれども。どういうことかというと、公的年金と拠出型の年金の場合のハンドリングコストは、往々にして拠出型の方が上回ると言われております。これは、諸外国の統計でもそうでございますから、年金局長の〇・六%という見通しの客観的根拠について再度お伺いいたしますが、時間の関係でこれは次回に、また私の総括討論のときに送らせていただきまして、一点、最後にお伺いいたします。

 いわゆる同じ拠出年金の中で中小企業退職金共済というのがございましたが、これが、九三年以降、いわゆるバブルの崩壊後、破綻というか赤字運営になった時期がございます。この事例をどのように総括されて、今回の確定拠出法案の提出に至られたでしょうか。お願いいたします。

日比政府参考人 私の方から、客観的な事実関係等だけ申し上げます。

 中小企業退職金共済制度でございますが、これにつきましては、この十年間で、いわば予定運用利回りと言われているもの、給付額の基礎になりますが、法律改正によって予定運用利回りを下げたことがこの十年間ほどで三回ございます。平成二年度までは実は予定運用利回り六・六〇で設計されておりましたが、平成三年度から七年度までは五・五〇、その後、八年度から十年度までは四・五〇、十一年度以降、現在のところ、三・〇〇でございます。

 これにつきましては、背景事情といたしましては極めて単純でございまして、運用利回りの実績の方、これが下がってきた。これにつきましては、平成元年度、実績で六・〇四からほぼ一貫して下がっておりまして、十一年度では三・〇八というのが運用の実績でございます。

 先ほど、赤字の点をおっしゃられましたが、退職金共済制度におきましては、給付の額を決めるに当たって予定運用利回りを定め、結果としての実績の運用利回りとの差が、長い目で見ますと赤字になっていく。単年度ではでこぼこがございますけれども、そういう構造でございますので、運用利回りの実勢に予定運用利回りをいわば合わせるといいますか、それでもやっていけるような改正というふうなことで三回やったということでございます。

阿部委員 もう時間がございませんので、一言だけ。

 受給者側にとっては、何回も予定利率を下げられるというのはたまったものでもありませんし、それが拠出型の本質であるようにも思いますし、引き続いて明後日の総括討論のときにもお伺いいたしますが、いかにも不安定な制度ですので、セーフティーネットという観点から、もう一度何をなすべきかをお考えいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、来る八日金曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.