衆議院

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第19号 平成13年6月8日(金曜日)

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平成十三年六月八日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 大石 正光君 理事 鍵田 節哉君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      浅野 勝人君    奥山 茂彦君

      上川 陽子君    鴨下 一郎君

      木村 義雄君    北村 誠吾君

      熊代 昭彦君    佐藤  勉君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      西川 京子君    野田 聖子君

      蓮実  進君    林 省之介君

      松島みどり君    松野 博一君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    吉野 正芳君

      家西  悟君    大島  敦君

      金田 誠一君    永田 寿康君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      山花 郁夫君    青山 二三君

      石井 啓一君    江田 康幸君

      樋高  剛君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      中川 智子君    小池百合子君

      川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   坂  篤郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官

   )            渡辺 達郎君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    西川 和人君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           玉井日出夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計

   情報部長)        渡辺 泰男君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  冨岡  悟君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  林 省之介君     松野 博一君

  原田 義昭君     蓮実  進君

  宮腰 光寛君     浅野 勝人君

  加藤 公一君     永田 寿康君

  釘宮  磐君     山花 郁夫君

  江田 康幸君     石井 啓一君

同日

 辞任         補欠選任

  浅野 勝人君     宮腰 光寛君

  蓮実  進君     原田 義昭君

  松野 博一君     林 省之介君

  永田 寿康君     加藤 公一君

  山花 郁夫君     釘宮  磐君

  石井 啓一君     江田 康幸君

    ―――――――――――――

六月七日

 予防接種法の一部を改正する法律案(内閣提出第三五号)

 障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)(参議院送付)

 水道法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)(参議院送付)

同月八日

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案(山花郁夫君外五名提出、衆法第四一号)

 児童福祉法の一部を改正する法律案(金田誠一君外五名提出、衆法第四二号)

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

同日

 育児・介護休業制度を実効性のあるよりよい内容とすることに関する請願(小沢和秋君紹介)(第二四二三号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二四二四号)

 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(矢島恒夫君紹介)(第二四二五号)

 同(山口富男君紹介)(第二四二六号)

 社会保障の拡充に関する請願(保坂展人君紹介)(第二四二七号)

 同(谷畑孝君紹介)(第二四九五号)

 食品の安全を確保するための、食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(福島豊君紹介)(第二四二八号)

 同(松野博一君紹介)(第二四二九号)

 同(山口わか子君紹介)(第二四三〇号)

 同(佐藤観樹君紹介)(第二四七七号)

 同(塩崎恭久君紹介)(第二四七八号)

 同(亀井静香君紹介)(第二四九六号)

 同(松野頼久君紹介)(第二四九七号)

 同(水野賢一君紹介)(第二四九八号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第二五五〇号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二五五一号)

 同(三村申吾君紹介)(第二五五二号)

 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(福島豊君紹介)(第二四三一号)

 労働時間の男女共通規制の実現と育児・介護休業制度の改善に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二四三二号)

 障害者の介護・福祉制度の利用における親・家族負担の撤廃に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二四三三号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二四三四号)

 同(大森猛君紹介)(第二四三五号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二四三六号)

 同(児玉健次君紹介)(第二四三七号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二四三八号)

 同(中林よし子君紹介)(第二四三九号)

 同(春名直章君紹介)(第二四四〇号)

 同(松本善明君紹介)(第二四四一号)

 同(山口富男君紹介)(第二四四二号)

 中小自営業の家族従業者等に対する社会保障の充実等に関する請願(山口わか子君紹介)(第二四四三号)

 同(三村申吾君紹介)(第二五五五号)

 安全で行き届いた医療・看護実現のための国立病院・療養所の看護職員増員に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二四四四号)

 同(大森猛君紹介)(第二四四五号)

 同(加藤公一君紹介)(第二四四六号)

 同(金子哲夫君紹介)(第二四四七号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二四四八号)

 同(佐藤敬夫君紹介)(第二四四九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四五〇号)

 同(重野安正君紹介)(第二四五一号)

 同(土井たか子君紹介)(第二四五二号)

 同(中川正春君紹介)(第二四五三号)

 同(春名直章君紹介)(第二四五四号)

 同(細野豪志君紹介)(第二四五五号)

 同(水島広子君紹介)(第二四五六号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二四五七号)

 同(山内惠子君紹介)(第二四五八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二四五九号)

 同(石井郁子君紹介)(第二四八一号)

 同(今川正美君紹介)(第二四八二号)

 同(北橋健治君紹介)(第二四八三号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第二四八四号)

 同(土井たか子君紹介)(第二四八五号)

 同(中川智子君紹介)(第二四八六号)

 同(永田寿康君紹介)(第二四八七号)

 同(山元勉君紹介)(第二四八八号)

 同(今川正美君紹介)(第二五〇二号)

 同(川田悦子君紹介)(第二五〇三号)

 同(黄川田徹君紹介)(第二五〇四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五〇五号)

 同(中村哲治君紹介)(第二五〇六号)

 同(平岡秀夫君紹介)(第二五〇七号)

 同(今川正美君紹介)(第二五五六号)

 同(筒井信隆君紹介)(第二五五七号)

 同(中川智子君紹介)(第二五五八号)

 准看護婦等から看護婦等への移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(石井郁子君紹介)(第二四七九号)

 じん肺根絶に関する請願(中川智子君紹介)(第二四八〇号)

 同(中川智子君紹介)(第二五〇一号)

 食品の安全を確保するための食品衛生法の改正と充実強化に関する請願(川田悦子君紹介)(第二四九九号)

 同(松島みどり君紹介)(第二五五三号)

 マッサージ診療報酬(消炎鎮痛処置)の適正な引き上げに関する請願(川田悦子君紹介)(第二五〇〇号)

 肝がん撲滅と肝臓病の総合的な対策に関する請願(奥山茂彦君紹介)(第二五一八号)

 同(上川陽子君紹介)(第二五一九号)

 同(笹川堯君紹介)(第二五二〇号)

 同(中川智子君紹介)(第二五二一号)

 同(林省之介君紹介)(第二五二二号)

 同(福島豊君紹介)(第二五二三号)

 同(松島みどり君紹介)(第二五二四号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第二五二五号)

 同(水島広子君紹介)(第二五二六号)

 同(山井和則君紹介)(第二五二七号)

 同(吉野正芳君紹介)(第二五二八号)

 がん治療薬、特に肝がん再発予防薬の早期認可に関する請願(小池百合子君紹介)(第二五二九号)

 同(中山太郎君紹介)(第二五三〇号)

 同(福島豊君紹介)(第二五三一号)

 精神障害者保健福祉手帳のサービス拡大に関する請願(池田行彦君紹介)(第二五三二号)

 同(臼井日出男君紹介)(第二五三三号)

 同(奥山茂彦君紹介)(第二五三四号)

 同(河村建夫君紹介)(第二五三五号)

 同(岸本光造君紹介)(第二五三六号)

 同(河野洋平君紹介)(第二五三七号)

 同(鈴木恒夫君紹介)(第二五三八号)

 同(虎島和夫君紹介)(第二五三九号)

 同(中山太郎君紹介)(第二五四〇号)

 同(根本匠君紹介)(第二五四一号)

 同(林義郎君紹介)(第二五四二号)

 同(平沼赳夫君紹介)(第二五四三号)

 同(保利耕輔君紹介)(第二五四四号)

 同(細田博之君紹介)(第二五四五号)

 同(水島広子君紹介)(第二五四六号)

 同(持永和見君紹介)(第二五四七号)

 同(茂木敏充君紹介)(第二五四八号)

 同(保岡興治君紹介)(第二五四九号)

 中国帰国者の老後生活保障に関する請願(筒井信隆君紹介)(第二五五四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 確定拠出年金法案(内閣提出、第百五十回国会閣法第二一号)

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案(内閣提出第八三号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官坂篤郎君、金融庁総務企画局審議官渡辺達郎君、検査局長西川和人君、財務省大臣官房審議官木村幸俊君、文部科学省大臣官房審議官玉井日出夫君、厚生労働省大臣官房統計情報部長渡辺泰男君、健康局長篠崎英夫君、労働基準局長日比徹君、年金局長辻哲夫君、政策統括官坂本哲也君及び社会保険庁運営部長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川元久君。

古川委員 おはようございます。民主党の古川元久でございます。

 きょうは大臣、お忙しい中無理を言って申しわけございません。ただ、私は、この確定拠出型企業年金、こういう形の選択肢がふえるということは必要なことだというふうに思っています。大事なことだと思っています。ですから、きょうは最後の質疑になるわけですから、そこにはぜひ大臣にも参加をしていただきたい。

 これだけ大事な法案ということで、これまで数年来、いろいろな形で政府部内でも議論がされ、私どもも議論してきました。ところが、残念なことに、この法案の審議の中で余り大臣の顔が見られない。

 確かに、年金のいろいろな制度的なもので難しいということはあるのかもしれません。しかし、これが本当に特定の人だけに関係のするような、そうした非常に技術的な法案であれば、事務方の答弁が中心になるということも、それはいいのかもしれませんが、しかしこの確定拠出年金という形は、これまでの日本の社会の中になくて、初めて導入する、しかもこれは多くの人たちに影響を与えてくる、そしてまた効果がある。かつ、これはもうこれまでの審議の中で明らかになっておりますように、多くの人たちがよくこの制度というものを理解して、中身がどうなのか、そういうことがわかるようなものでなければいけないということは明らかになっているわけです。

 ですから、そういった意味では、仕組みが難しいからといって大臣がお答えできないような、そんなわからない制度では、とても一般の国民の皆さんが理解をしてこの制度をうまく使いこなせるかと、私は今までの審議を見ておりまして非常に心配になってまいりました。

 私は自分自身も役所にいて、それをやめたときに、それまで払っていた年金のあの掛金はどこに行ったんだろうなと。もらったものは、毎月毎月何万円か掛けていたはずなんですが、もらった一時返戻金なんというのは本当にわずかなもので、ああなると、本当に、やはりポータビリティーがないととても転職なんかできないなと、大きな組織をやめるのがいかに損かというのを身をもって実感したわけであります。そういった意味では、ちゃんと自分の取り分が決まっていて、それを持ち運びできる、こういう形ができるということは、私は個人的にも大変にありがたいと思いますし、そういう選択肢というのは入れるべきだというふうに思っております。

 しかし、それにしても、やはり、みんながこの制度というものを理解できるようにならなきゃいけない。そのためには、ぜひ大臣も、やはりここで国民の皆さんにしっかりと自分の言葉で伝えていただく。難しいからとかいうんじゃなくて、難しいのであれば、逆に、大臣が理解していただいて、それをだれでもわかるような形で国民の皆さんにこの国会審議の場を通じて伝えていただく、それが大臣の役目じゃないかと思いますので、ぜひきょうは大臣にも議論に参加していただいて、年金局長だけじゃなくて大臣のお考えも聞いて話を進めたいと思いますので、無理を言って大臣の御出席をお願いしました。どうかよろしくお願いいたします。

 さて、質問に入りたいと思うんですが、この確定拠出、先ほど申し上げましたように、こういった形の年金のタイプが必要だというふうに私は思っています。

 ただ、残念なことに、この確定拠出の年金制度というのが、どちらかといいますと、何か、株式市場の需給対策というようなところからこれを導入すべきだというような声が一般の人たちには広く伝わっているような気がするんですね。

 また、これは、政府が出している緊急経済対策の中にも、緊急経済対策というのは今まで何回も出されていて、そのうち、緊急は何が緊急なのかというのがだんだんわからなくなりつつあるんですけれども、もう何回も、緊急経済対策というのは必ず入ってくる文章ですから、本当にこれは緊急かどうかというのは議論の余地があるところです。しかし、必ずその緊急経済対策、早急に景気をよくするため、そして株式市場に活況を呈させるようにするため、その手段の一つとして、証券市場の構造改革の中でこの確定拠出年金の早期導入というのが盛り込まれているわけですね。

 私は、その緊急経済対策につながった、その前の経済財政諮問会議に本間議員から提出をされたレポート「株式市場の現状と改革の方策について」という中でも、個人投資家育成のための政策として、貯蓄優遇から投資優遇へということでこの確定拠出型年金を早期に導入すべきだという話が、緊急経済対策が出る前のところで、この経済財政諮問会議で出た、そういうことも聞いております。

 こういう形で、この確定拠出型企業年金が経済対策、景気対策として位置づけられている側面が、一般の国民の人たちから見ても大きく見えているんじゃないかと私は思いますが、その点については、大臣の率直な御感想はどうですか。

坂口国務大臣 確かに、緊急経済対策の中にこの四〇一kの言葉が入っておりますことも事実でございますが、やはり、人によりましてこの企業年金に対する見る目というのはかなり違うなというふうに私も思っております。

 我々は、どちらかといいますと、純然たる年金制度、公的年金があって、その上に企業年金があってという全体の年金の枠組みとしての中のいわゆる確定拠出年金というのを私たちはどうしても位置づけるわけですが、経済のことを中心におやりになっている皆さん方はそういうこともあるかもしれないけれども、それよりも、やはり経済を活性化していくというためにこの確定拠出年金というのは役に立つのではないかという見方をしておみえになる方もおみえになることは、私は事実だと思っております。

 そういう見方でごらんになっているそういう文章を私は見せていただいて、それはしかしそうだろうけれども、それだけでこの年金を見てもらっても困るなというふうに私自身は思いながら、そういう文章を見ているところでございます。

古川委員 それで、きょうは内閣府の方にもいらっしゃっていただいているわけですが、本当にこれは景気対策といいますか、証券市場を活性化するものとして、この緊急経済対策という項目に載せるような形の効果というのがあるというふうに思っているのか。そして、あると思っているんだったら、どういう試算をして、どのようなタイムスパンで、どういう効果が出てくるというふうに分析されているのか。それを御説明いただけますか。

坂政府参考人 私どもは、確定拠出年金法案につきましては、もちろん、もともとの制度をつくる理由というのは、もともとは年金制度の拡充と申しますか、今先生がおっしゃいましたように、個人にとって、あるいは転職や何かの場合に不利にならないようにする、いろいろ便利なようにするという趣旨であるということは当然理解しておるわけでございますけれども、ただ、私どもの方の目から見ますと、つまり経済的な目から見ますと、やはりそれはそれで意味のあることだというふうに思っているわけでございます。

 今先生御指摘の、ではどういうふうに思っているんだということでございますが、どれくらいの金額がどういうふうに使われていくかというのは、これは率直に申しまして、個人の方あるいはそれぞれの会社の方、いろいろな方々がどういう選択をされるかというところにかかっておりますので、金額で予測するというのは非常に難しくて、私どもは率直に言ってそういう試算をまだしておりません。

 ただ、こういう枠組みができるということは、個人から見ましても、年金というものが株で、証券市場一般、株や何かにつきまして運用できる。しかも、これは基本的には小口の世界の話でございますので、私どもから見ますと、先生先ほど御引用になりました本間レポートなんかもそういう発想でできておりますが、小口の個人のお金が証券市場に来るということは、経済の根幹をなすシステムの一つとして非常に合理的なことではないかというふうに考えておりまして、一般の投資家にとって証券市場が身近になるということは、証券市場自体にとって、さらには国全体にとって、国の経済全体にとって非常にいいことではないかというふうに思っているわけでございます。

古川委員 もちろん経済にとっていいことだ、そういう言い方で緊急経済対策の項目に入るんですか。

 では、それは今の坂さんのお言葉をおかりすれば、言ってみれば公定歩合と同じようにアナウンスメント効果だ。つまり、こういう制度が将来的に入りますよ、それによって気持ちだけは、ああ、これからそういう年金資金も入ってくるかな、そういうアナウンスメント効果程度の効果しかないと考えているというふうに理解してよろしいですか。

坂政府参考人 当然、この法案が成立しますれば、そういうスキームができて、もちろん会社や個人の選択にかかっているわけですが、実際にそういう運用が行われるということが期待されるわけでございまして、もちろんアナウンスメント効果だけではないと思います。

 ただ、先ほど申し上げましたのは、それがどれくらいの金額、どういうふうになるかということは、皆さんがどういう選択をされるか、あるいは先ほど先生おっしゃいましたように、世の中の方にどれくらいうまく浸透するというか、世の中の方がどれくらいうまく理解なさるかといったような、いろいろなことにかかっていると思いますので、金額はわかりませんが。

 ただ、緊急という意味でございますけれども、この間の緊急経済対策にも盛り込まれているものというのは、必ずしも短期的な効果だけをねらったものではなくて、比較的構造政策的なものもたくさん入っております。構造政策的であっても、やはりやるべきことは早くやっていただいた方がいいというのは当然なことではないかというふうに私ども理解をいたしております。

古川委員 これは財政金融委員会じゃありませんから、もうこれ以上突っ込みませんけれども、やはりこれは大臣、今聞いていただいてわかりますように、この問題についてもう少し具体的な精査というものが必要じゃないかと思うんですね。

 私のところにEメールや何かで証券関係者から、早くこの制度を導入してほしいというような証券界の声が聞こえませんかみたいなメールをもらったりもしています。

 しかし、私が考えるに、今、坂さんのお話でもあったんですけれども、一体これは本当にいつから始まるのか、そしてどれくらいの方が選択するのか、しかも、今回の非課税枠というのでどれほど本当に証券市場に入っていくのかというのは、それなりにやはり政府としても、普通であれば試算をして、そうした上でやらなければ、一方で妙な期待だけあって、実際に始まったけれども、それこそ、これは前の国会で通した定期借家権とか定期借地権でないですけれども、制度はできたけれども、何かやはり使い勝手が悪くて、関係者もがっかりしたみたいなふうでは意味がないわけであって、やはりそこのところをしっかりとこれは精査をしていただくのが本来のあるべきことじゃないのかなということをお願いして、次の質問に行きたいと思います。

 今までの審議を聞いておりますと、大臣も副大臣も、今までそういう投資とかしたことがない、株や債券なんかに手を出したことがない、堅実なことをやっておられたというようなお話がありました。この本間さんのレポートにも、「わが国の場合、七割の世帯が株式投資の経験を有しておらず、かつ、そのうちの四分の三が今後とも株式投資を行う意向はないという調査結果がでている。」ということが書いてありまして、その一方で、しかし、「株式市場がその魅力と透明性を増し、個人も果敢にリスクに挑戦できる環境が整備されると、個人の意識と行動も「貯蓄者」から「投資家」へと変わり、市場参加者が拡大・多様化する。」という記述もあるんですね。

 この二つの記述を見ていると、本間先生はやはり経済学者だから、合理的に行動する、常に市場を見てやれる人だから、市場環境さえ変われば貯蓄者から投資者にぽっと変われるというふうに見ているようなんですが、私は、これまでここでの審議を見ていますと、じゃ、大臣も副大臣も、この制度が入ったからといって、今まで貯蓄していたのをどんと投資に移すような、そういうふうに変わるかというと、多分、御性格的にもお変わりになれないんじゃないかと思うんですよね。そうしますと、そんな、経済学者の方が言うほど簡単に、環境さえよくすれば、今まで貯蓄していた人が投資をするというような方には変わらないんじゃないかと思うんです。

 例えば、大臣、自分がその立場だと思って考えてみてください。まあ大臣の場合、私も同じでしょうけれども、大臣は今政府に入っていますから違うかもしれませんが、議員という立場だと、これは、もし確定拠出をやるとすれば、個人拠出型になりますね。個人拠出という場合には、私も国民年金、保険料払っていますけれども、あと基金も入っていますが、基金に入るというのは、自分で生活費とか計算してみて、これくらいなら何とか払えそうだということならば払いますね、払い込みます。基金の場合は、これはまた確定給付ですから、置いておけば後で確実に返ってくるというものです。

 しかし、今度の確定拠出の場合には、まあぎりぎりやって何とか出せば、例えば一万円出てきそうだ。しかし、それがひょっとしたら元本割れて半分になってしまうかもしれない、そういうような状況だったら、これ、大臣考えて、今自分が自営業の立場で見たら、そういうときにもその一万円をかけますか、どうですか。自分がその立場になったと思って考えてみてください。

坂口国務大臣 それは、その人の性格に大分よると思いますが、私の性格ですと、ちょっと無理をしないでおこうかということになるだろうというふうに思っておりますが、現在まで、日本の社会の中で、預貯金が非常に多くて、株式等にそれがなかなか向かないという、それはそれなりの理由があってそうなっているんだと私は思うんですね。それが、この確定拠出年金ができたからといって、その傾向が一遍に変わるというようなことは、私はないだろうというふうに思っています。

 ただ、一部の方がおっしゃるように、そこで個々に、あるいは徐々に、そういう株式ということになれていくと申しますか、一遍、人のつき合いで自分も一緒にやってみようかという人がそれは出てくるかもしれないし、そういう意味では、教育をされている場に将来はなるかもしれないというふうに思っておりますが、今すぐに金融の分野が大きく変化をするとは私も思っておりません。

古川委員 大臣ももう行かなきゃいけないと思いますから、もしあれでしたら出ていただいて、あとのここの続きの部分はちょっと事務方に聞きますから結構でございます。

 今大臣おっしゃったように、多分、やはりすぐにはそんなに変わらないと思うんですね。よほど、リスクをとる、貯蓄者が投資者に変わるというためには、いろいろな意味の教育が必要だと思うんです。

 私自身、アメリカに行ったときに、大蔵省からの派遣でしたから、やはり少し金融を勉強しなきゃいけないと思って、わけわからない英語で、銀行へ行って、何か投資のがないかと言ったら、何かインベストメントマネジャーという人が出てきて、これはいい、セーフティーだと言われて、ミューチュアルファンドの、何かボンドのやつで、ボンドだったら安全かみたいなふうに思ったら、そしたら、ちょっと目を離していたら、いつの間にか債券市場が暴落してえらい自分で損をした。それで痛い目に遭いました。

 今大臣が言われた教育というのが、そういう、知らなくて、無知によって痛い目に遭うことによって、それで教育だというのであれば、これは確かにそれが一番の教育かもしれませんけれども、しかし、そうやって損すると、なかなか、では今また私なんかもミューチュアルファンドを買うかと言われても、よほど自分が日々リサーチできるとかそういう状況になければ、やはりリスクは高いなと思って買わないですよね。

 ですから、そういった意味では、これは相当な教育というものが、投資というものがどういうものなのか、そのリスクに対してどうやって対応すべきか、そういう教育というものを、こういう制度が入れば当然していかなきゃいけない。

 これまでの審議の中では、いろいろちゃんと情報は提供しますよというお話がありましたけれども、しかし、ただ資料を渡して、大人に読んでください、今度入りました制度はこうですと言うだけで、それで教育になると思いますか。やはりそうじゃなくて、もう一歩踏み込んだ教育というのは大人の分野でも必要じゃないかと思いますけれども、そこは年金局長、どのように考えていらっしゃいますか。

辻政府参考人 投資教育は、この制度が適正に運用される基本的なかなめだと思います。それで、私ども、実際問題としてこれがどのように進むか、現実を直視して考えますと、制度的には事業主が運営管理機関に投資教育を委託することができるというふうになっております。一方、運営管理機関は、この制度の位置づけは、忠実義務というものを厳格に課しておりまして、これはあくまでも加入者の立場に立って加入者にさまざまな情報提供をする、こういうことでございますし、それから、通常は金融や投資の専門家がここに参入してくると思います。

 したがいまして、私どもとしては、事業主にまず投資教育がいかに大切かということをこの制度の施行に当たりまして徹底したいわば伝達といいますか、お願いをするという、認識を深めることと、それからもう一つは、運営管理機関が委託を受けましたときにはいかに適正な、加入者の立場に立った投資教育を行ってくださるか、そのことを、私どもはいわば所管省として監督権を持っておりますので、厳正に、しかも適正に行われるように努力をしてまいりたいと思います。

古川委員 教育のところだけ、切りがつくところまでちょっと一言させていただきますけれども、投資教育というのは、もちろん今これから掛ける、すぐ掛ける私たちの世代、大人もありますけれども、これから将来大人になって投資をする子供たちの分野でも、学校教育の中でもそういうことというのは教育されていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 今まで、私の自分の記憶だと、昔小学校のころに、貯金箱を渡されて、これに貯金をするという、貯金のそういうような教育はそれなりにあったと思うんですが、投資というのは貯蓄と違ってリスクがあるよというようなことをどうやって教育していくか。これは学校教育の中でも、こういう制度を入れたのだったら当然、いや、それは文部科学省の話ですからという話じゃなくて、政府一体として考えておられるはずだと思いますが、その点については文部科学省の方ではどのように考えておられるんですか。

玉井政府参考人 学校教育についての御指摘でございます。

 今の学校教育、学習指導要領を大綱的な基準として具体的なカリキュラムが編成されているわけでございますけれども、その観点で申し上げますと、現在、児童生徒が国民生活の向上と経済活動のかかわりを理解する、それから、消費者として主体的に判断し行動できる、こういう観点から、それぞれ発達段階に応じて必要な教育が行われると考えております。

 現在の指導要領でいきますと、中学校の社会科でございます。それは、身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解させる、金融の働きを具体例を取り上げて理解させる。さらには、中学校の技術・家庭科で、今、割賦販売等々いろいろな問題がございますので、したがって、消費者保護などについて知り、そして、生活に必要な物資・サービスの適切な選択、購入、活用ができるように指導する、こういうような指導要領になっておりまして、教科書におきましては、教科書によってでございますけれども、株式のことが取り上げられて、実際にいろいろなことを知ってみようとか、行動してみようという扱い、あるいは割賦販売の問題を取り上げて、いわば消費者として正しい選択をきちんと主体的にやっていこうという教育が行われているところでございます。

古川委員 ここでちょっと休憩させていただきますけれども、今みたいな抽象的な話では、リスクというものが何かというものはやはり理解できないと思いますよ。

 これは厚生労働省の方もだし、文部科学省の方もですけれども、やはりリスクにちゃんと対応できるような教育というのはそれなりのカリキュラムをつくらないと、今みたいな抽象的な話では、とても今までの貯蓄者が投資家になるなんということはできないんじゃないか。もう少し具体的な中身、リスクというものがどういうものなのか、それをしっかり学校教育の中でも、そして社会教育の中でもしていただくようにお願いを申し上げまして、とりあえずここで中断をさせていただきたいと思います。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時十五分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古川元久君。

古川委員 引き続いて、限りある時間でございますので、御質問させていただきたいと思います。

 次に、運営管理機関のことについてちょっとお話を伺いたいと思います。

 まず、この制度が入りますと、当然これは資金を運営する、そしてまた資産を管理する、そこの機関が、そういうシステムができていないとワークしないわけでありますけれども、この運営管理機関の準備状況は今どうなっているんでしょうか。いつからこれは、この法案が通ったとすれば、どれくらい、その通った後の何カ月後ぐらいから制度の運用が可能で、そしてそのために、今まではこの確定拠出型というのはなかった制度ですから、そういった意味では、相当設備投資もそのシステム構築のためにかかっているんじゃないかと思うのですが、それについては、どれくらいお金が今までかかっているのか、その辺教えていただけますか。

桝屋副大臣 運営管理機関に関する準備が今どれぐらいできているか、こういうお尋ねでございます。

 これは委員も御承知のように、今日までこの法案、準備を水面下でされてきたわけでありまして、相当多くの金融機関、あるいは運営管理業務をぜひやりたいという声もあるわけでありまして、相当の体制があるのではないか、むしろ待っていていただいている、この委員会での審議をある意味では心待ちにしている、そういう現状ではないかというふうに私は思っております。

 委員お話しのとおり、運営管理機関、口座管理や運用商品の情報提供など、極めて大きな役割があるわけでありまして、これまでも、今申し上げましたように、各金融機関において、これらの業務に参入すべく、必要な人員とか資金を投入して準備をしてきた、されているというふうに承知をいたしております。

 ただ、それが具体的にどれぐらいの投資額になるのかということは、それぞれが、これはある意味では企業秘密でもありますし、何千という機関があるわけでありまして、なかなか投資額までこの場で申し上げることは難しいと思いますが、いずれにしても、そういう状況でございますから、法案を審議していただいて、成立をしていただければ、三カ月程度で実際に運用が開始できるというふうに私は考えているところでございます。

古川委員 では、ここで公表できなくても、どれぐらいかけているかということはもう把握はしているということですか。簡単に答えてください。

桝屋副大臣 今申し上げましたように、本来、委員が先ほどから、今回のこの確定拠出年金、この法案が我が国の経済にどういう影響を与えるのかという厳しい御指摘をいただいたわけでありまして、緊急経済対策の中にでも入れているわけだから、当然そのぐらいは把握しているだろうという厳しい御指摘かと思いますが、まさに企業秘密でもありまして、全体としてどれぐらいのものになるかという把握は、残念ながらいたしていないところでございます。

古川委員 これはちょっと大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、普通に考えて、どれくらい設備投資にかけているのか、そういうことをちゃんと把握していなかったら、どれくらいハンドリングコストがかかってくるんだろうか、つまりハンドリングコストというのは、今までかけた資金を何年ぐらいで償却するか、そういうところから逆にある意味で出てくるところもあるわけですから、それはランニングコストの部分もありますけれども、スタートアップの、最初のときにかかった費用というものをやはり把握をしていかないと、ハンドリングコストがどれくらいになるだろうかなということはなかなか出てこないんじゃないかと思うのですね。

 今までの審議を見ていますと、アメリカ程度の手数料になるんじゃないか、ハンドリングコストになるんじゃないか、アメリカではこれくらいだみたいな、そういう話があるんですが、しかし、アメリカの場合には、かなり長い間こういうような形での資産運用みたいなのをやられていて、その中にこういう年金型のが入った、つまりここの部分は、税制優遇のある投資の形態が入ったというところですから、そういった意味での最初の初期コストというのはそんなにかかっていないはずだと思います。

 ですから、そういうところから見ると、日本の場合のハンドリングコストを考える際には、設備投資にどれくらいかけているかとか、やはりそういうことも把握していなきゃいけないんじゃないかなと思いますけれども、大臣、どんなふうに思われますか。

坂口国務大臣 運営管理をやります、それが金融機関なのか証券会社なのかわかりませんが、そうしたところも、これから年金ができ上がりましたときに自分のところに大体どれぐらいの顧客があるのかということについては、なかなか捕捉しがたいんだろうと思うのですね。しかし、諸外国の例も見ながら、そして努力をしながら、自分のところはこれだけはどうしても達成しようというような目標も立てておやりになっているんではないかというふうに私は思っております。

 そういう意欲のありますところは、やはりそれなりの投資もしながらしっかりおやりになっているというふうに思いますが、しかし、そこまでもなかなかいっていない、若干様子を見ながらこれから徐々に進めていこうというふうに思っておみえになるところもあったりして、私は、そこは一律ではないんだろうというふうに思っております。

 そこにどれだけのハンドリングコストがかかるかというようなことにつきましても、今委員が御指摘になりましたように、アメリカ並みに初めからいくかといえば、それはやはり、最初からはそうはなかなかいきにくいのかなという気は私もいたしております。しかし、一年なり二年なり経過をしますと、アメリカあたりもそういうふうにやっておりますから、一つの、大体の、どれぐらいのコストでいけるかというところの目標を掲げて、それに合わせていただくようにこちらもお願いをする。余りそれにコストがかかり過ぎても困るわけでございますから、そこのところはこちらもお願いをしていくということになるんだろうと思うのです。

 その辺のところをどういうふうに構築していくかというのはこれからの課題でありますし、その辺のところは、あるいは事務局の方ではある程度準備してやっているのかもしれませんけれども、しかし、私の知る限りにおきましてはまだこれからというふうに思います。

古川委員 先ほどの副大臣の御答弁を伺っても、そういう数字を把握していないんだったら、ハンドリングコストが実際にどうなるかというのは多分想定がされていないんだろうなというふうに思いますから、これ以上は聞きませんけれども、やはりここは、ハンドリングコストの問題というのはよほど考えないと。

 特に、日本のこれまでの金融、特に株とかなんかの部分では、実は、証券会社とかなんかは手数料でもうけていたみたいなのがあるわけですね。それが手数料自由化とかなんかになって大きな影響を受けたりしているわけです。

 しかし、今、世界で強い金融機関なんというのは、そういう手数料商売というのはしていないわけですよ。むしろ、運用をよくすることによってその運用収益の一部をもらうみたいな形でやっているところが多いわけでありまして、気をつけないと、この確定拠出でも、そういう今まで、昔あった日本の手数料商売みたいな、そういうのにはまってしまうという危険性もありますから、やはりそこのところは監督機関としてしっかりとチェックをして、そういう手数料商売というような形で年金資産が結果として減るみたいな形にならないように、やはりそこはしっかりとチェックをしていただきたいというふうに思います。

 もう少し先に進んでいきたいと思いますけれども、その手数料との絡みで、これはちょっと確認、答弁としていただきたいと思うのですが、運用管理手数料をもし企業が、企業型の場合ですけれども、その手数料を企業が負担した場合には、その企業が負担した手数料費用については、掛金の中で上限の内枠扱いになるのか、それとも掛金とは別途の外枠扱いになるのか、どちらになるんですか。

辻政府参考人 運営管理手数料を企業が負担する場合、その額を個々人の掛金に含めて拠出することも、あるいは個々人の掛金とは別に拠出することもできます。

 このうち、個々人の掛金に運営手数料を含める場合には、運営管理手数料を含めた掛金額が拠出限度額を超えてはならないことになりますし、いわば外枠で事業主が負担する場合の税制の取り扱いにつきましては、税務当局と協議しているところでございます。

古川委員 最後、ちょっとよく聞こえなかった。税務当局と協議していると、まだそれは取り扱いは決まっていないということですか。

辻政府参考人 現時点で私ども認識しておりますのは、ほぼ損金算入でということで話は進んでおります。

古川委員 では、次にちょっとお伺いします。

 大臣、大臣といいますか、まず局長でも結構でございますけれども、今度のだと、運営管理機関と資産管理機関というのは、これは事実上兼ねるところというのが企業型の場合にはかなり多いだろうな、特に金融機関が兼ねる場合というのが多いだろうなと思うのです。ただ、その場合には、要は、その金融機関は運用する金融商品も提供しているわけでありますから、自分のところに都合がいいようなものを推奨するというような、利益相反ということが起きる危険性というものがないわけではない。にもかかわらず、ここは行為準則とかかけているからという御答弁になるかと思うのですが、兼ねさせることを認めているわけですね。この兼ねさせることを認めている最大のメリットというか、そこの利点とかはどういうふうに考えていらっしゃるのですか。

辻政府参考人 我が国の金融関係の実態というものが、運営管理機関としての役割を果たします最もその能力を持った者というふうに考えますと、どうしても金融機関と兼ねるということになってしまうという実態がまずあるわけでございます。

 私どもは、やはり金融機関、本当に能力のある方々がやってくださらなければよりよい運営になりませんので、やはり今の実態から見ると、それを認めないというのはむしろ不効率になるということで、いわば金融機関の実態というものを勘案しまして、より多くのプレーヤーが市場に参入しますようにということで、兼ねることを認めたわけでございます。

 一方、制度的なことをまた重ねて御説明して恐縮でございますけれども、そのかわり、法律的には、利益相反については厳格な枠組みを課しまして、自社のものを含めて特定の運用商品を推奨してはならない、これは、しますと、必ず処分につながります。私どもは厳正な運用をいたします。それからもう一つは、省令におきまして、運用商品の営業に係る事務を行う者が運営管理業務を兼務してはならない、この制限も課しますし、これも厳正に運用いたします。

 私どもといたしましては、運営管理機関というのは、あくまでも加入者の立場に立った、特化した部門であるという実態を法の施行の過程におきまして必ずつくり上げるように厳正に指導してまいりたいと考えております。

古川委員 局長、簡単に、簡潔に答弁いただきたいのですが、事実上これは、運営管理機関と資産管理機関、企業型の場合にはほとんど同じということになることが多いですよね。

辻政府参考人 まず実態関係を申しますと、資産管理機関、まずこれは資産を管理する資格が要りますので、これは生保、信託といった分野に限られますので、そこを兼ねるのはおのずから限定されます。しかしながら、運営管理機関は幅広く参入を認めますので、そういう意味では、それ以外の分野ということで、例えば投資顧問などは、これは最近非常に幅広い参入が行われておりますけれども、これはみずから商品を扱うところではありませんので。そういった形で、いわゆる商品を扱う金融機関以外に相当幅広い参入があると考えております。

古川委員 では、その分かれる場合と一緒の場合とでは、当然ハンドリングコストは変わってきますね。

辻政府参考人 それは異なります。しかし、逆に言えば、幅広く運営機関が参入するがゆえに、相当な競争が働いて、そして、規約で手数料を定めることになっておりますけれども、これは労使が話し合って、相当競争を経た上での適正な価格というものしか受け付けないという形で、おのずから市場的に均衡が生まれるものと考えております。

古川委員 そう考えると、普通は、当然やはり両方兼ねた方がコストが安いと考えるのがごくごく普通であって、幾ら競争するといっても、全く違うところと同じところでやるのとでは、じゃ、どちらがコストがかからないかといえば、それはおのずから明らかではないかと思うんです。

 今のは企業型の場合ですね。個人型の場合には、これは、必ず国民年金基金連合会が資産管理機関として入ってくることになるわけですよね。これを本当にかませる必要があるのか。ここについては非課税枠の取り扱いと、あと国民年金保険料を払っているかどうか、その確認をするためにそれをかませなきゃいけないんだというお話があるんです。

 しかし、今回の制度でやはり一番問題になる場合はハンドリングコスト、この連合会がかめば、当然ここには何らかの形で手数料が入るわけでしょうから、できるだけハンドリングコストを下げるということで考えれば、ここは国税庁などをうまく利用して、そこの部分というのはクリアできたんじゃないですか。どうしてもできない理由があるんですか、これは。

桝屋副大臣 まず私の方からお答えをしたいと思います。

 個人型の場合に、国民年金基金連合会、これをなぜ絡ませているのかということでありますが、むしろ国税といいますか、税の対応でというようなお話かと思うんです。

 まさに委員がお尋ねになったとおりでありまして、国民年金基金連合会、ここを個人型の場合に使うというのは、委員が御説明になりましたように、一つは、やはり拠出限度額、このチェックがある、それから、もちろん連合会として国民年金保険料の納付チェックをしなきゃならぬという意味では、この二点を考えますと、やはり現在の我が国の状況からいたしますと、国民年金基金連合会を活用するということが最も効率的ではないか、合理的ではないか、こう思っているわけであります。税で対応できる、果たしてインフラが整備されているとは、私どもまだ考えていないわけであります。

 そうしますと、国民年金基金連合会を使うとハンドリングコストが高くなるんではないかという話でありますが、当然ながら、国民年金基金連合会が行う業務というのは極めて限られた業務にいたしまして、できるだけ、みずから行う業務というのは、加入資格の確認あるいは拠出限度額の管理、今申し上げた点に限定をしまして、それ以外は金融機関あるいは運営管理機関に幅広く委託をする。その中で恐らく、私は、さまざまな運営管理機関がいろいろな形に特化した形で出てきて、結果的に、ハンドリングコストというのは企業型に比べて決して劣らない状況になるのではないか、そこを期待しているわけでございます。

古川委員 期待はいいんですけれども、しかし、普通考えれば、企業の場合にはそうやっていろいろな競争があったりして、要は一緒になったようなそういうところも企業型の場合には選べる。しかし、個人の場合には連合会がどうしてもかむ。だから、そこの部分のコストは、どことやったって必ずここに乗っかってくるということになるわけですね。そうすると、そこだけ見ると、何か個人の方が不利かなという感じがするわけですね。

 しかもまた、これは、大臣、よく聞いていてくださいね。自分がもしやられるとしたら個人型ですから、その立場になって考えると、やはりこれからの年金制度、僕は社会保障というのは基本的にそうだと思うんですが、企業の一員だろうと、あるいは個人だろうと、基本的に社会保障の部分の基礎的条件はイコールフッティングでなきゃいけない、私はそう思っています。

 そういう意味からしますと、これだと、そこのハンドリングコストの部分でも、若干個人の方が不利じゃないかというような感じも見えますし、また、先ほどの話で、もし企業が管理手数料を負担してくれた場合、ハンドリングコストを負担してくれた場合、それはまた別枠で、外枠で認めるかもしれない、まだそれは国税庁と話ができていない。外枠で認めるとなると、その分だけ、要は、事実上、非課税限度枠が広がるというのと同じことになるわけですよね。そうなると、その分だけ、これは企業型の方が有利になってしまうんじゃないかという感じもするわけですから、やはりここは個人と企業とが同じような状況になる、条件になるということを、今度のこれからの制度運営、そして設計の中ではしっかりと担保していただきたいと思いますけれども、大臣の御感想をお願いします。

坂口国務大臣 今御指摘のように、国民年金基金連合会、半官半民みたいなところでございますから、安くしてくれれば、それにこしたことはありませんが、なかなか、こういうところがかんでまいりますと、御指摘のように、そう一般のような調子にはいきにくい側面があることは、私もそのとおりかなというふうに思いながら今聞かせていただきました。

 ただしかし、それじゃそれ以外に方法があるかなと。ほかに、この国民年金基金連合会以外のところで何かいい方法があるかといえば、これもなかなか難しい気もいたしますから、ここのところは、かなり連合会に対しましていろいろと注文をつけていく以外にないのではないかという気がいたします。

古川委員 時間がなくなってまいりましたので、ちょっと急ぎたいと思うんですが、じゃ、ちょっと話を別に変えて、これは運営管理機関は三つ以上の商品を提示するということになります。

 例えば、大臣、イメージしてくださいね、今の日本の、例えば国債とかを買います。しかし、ハンドリングコストが一%ぐらいかかるとする。今国債なんというのは二%いっていないわけですから、運用利回りは、元本保証であっても一%そこそこかなというようなもの。もう一方で、アメリカ国債は三%、ただし為替リスクはありますというふうに書いてある。しかし、今の日本の膨大な財政赤字とかがあれば、これは将来的には円安に動くんでしょうという一文がある。その二つの商品があったら、大臣はどちらを選ばれますか。感覚的でいいですから。

坂口国務大臣 私は、円安に動く方を支持していきたいと思います。

古川委員 普通の人はそう考えると思うんですよね。

 それで、きょう金融庁も来ていただいていますからちょっとお伺いしたいんですが、これは、この運営管理機関のそういう商品提供とかいうものを、だれがどうチェックしていくのか。推奨はしてはいけないというふうに言われているんですけれども、ただ、事実をそうやって示すことが推奨になるかどうかというのは、これは非常に微妙な問題になってくるんですね。

 これを私きのうちょっと聞いてみましたら、基本的には厚生労働省の方がやられるという話だったんですが、事実上金融機関が多いであろう運営管理機関、しかも本当に商品の提示というものは、これが本当に推奨しているのか推奨していないのかわからないような、そこの微妙なところを、お行儀の問題というものをちゃんとチェックできるのかどうか。これは、よほどチェック体制というのをしっかりしていかなきゃいけないと思うんです。

 これは金融機関に対する検査をやるのと同じように、今度の年金についての、確定拠出をやる運営管理機関、資産管理機関については、しっかりしたチェック、検査体制というものがとられなきゃいけないと思うんですが、そこについては、ちゃんと金融庁と厚生労働省で、どのような話になっているのか、最後に御答弁いただけますでしょうか。

坂口国務大臣 ここは金融庁と共管になっておりますから、まず金融関係のところは金融庁にお願いをする、そして、それ以外のところは厚生労働省が受け持つということになるんだろうというふうに思います。

 その専門のところは金融庁にお願いしなければ、厚生労働省が先に出ていって、自分のところでやるといいましても、これはなかなか難しいだろうというふうに思いますから、金融庁にお願いをして、そして我々はそれ以外の一般の企業のところをどう見ていくかということになるんだと思います。

古川委員 時間が来ましたから終わりますけれども、今回のこの確定拠出型年金は、とにかく初めての制度です。日本で初めての制度というのは、介護保険というのが一年前にありましたけれども、これも一年たってもやはりいろいろな問題が出てきているわけです。やはりこの確定拠出型企業年金というものも、相当にいろいろな形でケアをして、フォローをしてということがなければ定着していくことはないと思います。

 そういった意味では、それぞれの担当部局の人、そして大臣も初め、先頭に立って、やはりこの制度の定着に向けて、そして国民が安心して、ある意味で、こういう制度に参加できるような、そういう環境づくりのために御尽力いただきますことを心よりお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時四十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。金田誠一君。

金田(誠)委員 大臣、本会議に引き続きまして、お疲れさまでございます。本題に入ります前に、去る六月一日の大阪地裁判決について質問をいたします。

 在外被爆者の援護法の適用を求める裁判ということでございますが、原告全面勝訴の極めて明確な判決が出されたわけでございます。これを受けて、ハンセン病訴訟と同様に、大阪法務局長から厚生労働省の健康局長あてに、本判決に対する上訴の要否及びその理由を本月六日までに回答願います、このような通知が来ているところでございます。

 これについて、坂口厚生大臣は、控訴しない旨を直ちに回答すべきものと考えるわけでございます。控訴期限は判決から二週間、来週金曜日というふうに伺っておりますけれども、大臣の明快な御所見をこの際伺いたいと思います。

坂口国務大臣 大阪地裁の判決が出まして約一週間でございますか、間もなくたとうとしているわけでございますが、まだ内部のあるいはまた各省庁との話し合いのところまで至っておりませんで、私の方もきょうのこの審議が終わってしまわないと体が自由にならないものでございますから、きょうまではもうどうにもこうにもならないという日々が続いておりました。

 これできょうこの審議を終わっていただくことがもしできましたならば、来週は本格的に取り組みをさせていただきたいと考えているところでございます。

金田(誠)委員 委員長のお許しをいただきまして、大臣にこの資料をお渡しいただきたいと思うわけでございます。五枚物になっております。この問題を支援しておりますNGOの方がまとめられた資料でございます。

 仄聞いたしますと、厚生労働省の事務方の方で、大阪地裁における判決に関して控訴すべき理由、これについて取りまとめたやに伺っております。その控訴すべき理由が三つのポイントがあるということでございまして、NGOでは厚生労働省の事務方の言い分、その一、その二、その三に対して、それぞれいかに事実と異なるか、認識に間違いがあるかということでまとめたのがこのペーパーでございます。

 例えば、その一の中では、一九九五年に広島地裁で下された広島三菱裁判の判決では在韓被爆者の訴えが却下され、国側が勝訴したということで、同じ在韓被爆者の裁判で二つの裁判所が全く異なる判決を下しているので控訴してはっきりさせるほかないんだ、こういう言い分をおっしゃっているそうでございます。

 これについて、NGOで広島地裁の判決などをつぶさに調査をしたわけでございますけれども、結果として、広島地裁の判決は、韓国にいる被爆者に手帳を取得することから丸ごと被爆者援護法を適用するように求めた裁判であった。これに対して大阪地裁では、日本に来て被爆者援護法の適用を受けた在外被爆者が日本を出国することによって被爆者でなくなることはおかしいという裁判である。この二つの裁判は全く中身の異なる裁判であるということが今回の大阪地裁の中でも認められているんだ。こういうことで、事務方の控訴すべき理由三点に対してそれぞれ論破しているのがこのペーパーでございます。

 大臣、これから御判断をされるということでございますけれども、ぜひひとつこれらNGOの声も十分踏まえていただいて、適切な、誤りのない御判断をいただきたいと強く申し上げたいと思います。

 さらに、もう一点申し上げますと、実はこれは、きのう私の宿舎に届いていた郵便物でございます。差出人は財団法人海外日系人協会ということで、何だろうなと思ってあけてみたところ、「在外被爆者に対する被爆者援護法適用の要望について」、こういう資料が入っておりました。見ますと、一九七六年、九八年、九九年、二〇〇〇年、過去四回要望をしていて、今回五回目です、こういう文書でございます。

 これについては、日本人の方が広島、長崎で被爆をされて、その後、海外移住ということが国策として奨励された時代がありまして、その中でアメリカ、ブラジル等々に移住をされた日系人一世の方でございます。大変現地で御苦労もされていらっしゃるわけでございますが、その方がもう晩年を迎えているわけでございます。その方々に、被爆者の方に援助の手をという趣旨でございまして、中には、その御苦労のほどを書きつづったものも同封をされておりました。

 今回の問題は、韓国人、外国人被爆者ももちろんでございますけれども、その方々だけではなくて、在外邦人の方も含めて、あるいは移民をされた方も含めての問題でございます。そうした点も十分踏まえて御判断をいただきたい、これがお願いの二点目でございます。

 そして、もう一つ申し上げたいのは、今回の裁判のもととなったのは、これは法律そのものに原因があったわけではない。私どもから言わせると、法律の枠を超えた厚生省の通知というものが事の原因になったわけでございます。そういう意味では、ハンセン病の問題よりも大臣の御判断というものが直接かかわるものでございます。

 そして、仄聞いたしますと、大臣、かつて、党名はあのころは公明党ではなかった時代かとも思いますけれども、在外被爆者にも法を適用するようにという趣旨の法律の提案まで当時はされておられたというお立場だと伺いました。今の法律でも、局長通知さえなければ、あるいは、この局長通知で在外被爆者にも適用するんだという一項が書き込まれてさえいれば、今の法律で十分適用できる法体系でございます。

 そういう意味合いからして、大臣ひとつ、これから、もうあと一週間でございますけれども、御検討されるに当たりましての決意のほど、恐縮でございますが、いま一度、今三項目申し上げましたが、そうしたことも念頭に置きながら、決意のほどをお示しいただければありがたいと思います。

坂口国務大臣 今回の判決文、それから広島におきます判決文、人から聞くのではなくて、自分で読み、理解をして、そして私の意見というものをまとめたい、こう思っておる次第でございます。

金田(誠)委員 この二、三日、きのうまで連日、私、原告の郭さんのお顔を拝見いたしてございます。きのうは御一緒させていただいて、大臣のところにも伺わせていただきました。まともにお顔を見るのが本当につらいというのが正直なところでございます。万々が一にもいい知らせを持たずにお国に帰られるようなことをしてはならないと、本当に痛切に今思っているところでございます。大臣はハンセン病問題でも大変な御尽力をいただいた、その大臣の誠意に期待をいたしたいと思います。重ねてお願いを申し上げまして、次の質問、本題の方に移らせていただきたいと思います。

 年金改革の基本的な考え方、これについてでございます。以前にも申し上げました。

 私、昨年十二月に、ドイツとスウェーデン、イギリスの年金改革を調査する機会を得たわけでございます。各国とも、賦課方式の公的年金は保険料率の引き上げがもう困難な状況、国民負担率も非常に高いというお国柄で、保険料引き上げが困難な状況で、高額の所得者を中心に、一定の給付の圧縮ということが行われておりました。そして、それにかわるものとして、確定拠出型の年金が自助努力の仕組みということで有効に組み込まれていたというのが実態でございます。その一方で、年金額の低い層に対しては、全額国庫負担の最低保障年金というものがそれぞれ制度化をされていました。

 特に驚いたのはイギリスでございまして、あのサッチャー改革、新自由主義というのでしょうか、新保守主義というのでしょうか、自己責任を中心とした大改革をやったわけでございまして、結果、年金の給付水準は相当低いレベルに切り下げられておりましたが、それにもかかわらず、あのサッチャー改革が行われたにもかかわらず、ペンションクレジットという名称で、全額国庫負担の最低保障年金が制度化されていた。正直、驚いたわけでございます。これは、実質的には生活保護でございます。しかし、年金という名称をつけて、プライドを傷つけずに受け取ってもらうんだ、こういうのが担当者の話でございました。

 イギリスでさえと言うと失礼に当たるかもしれませんが、こういう状況。いずれの国も、高齢化の中で悩みながらも、それを貫く一つの哲学があったと強く感じました。

 それに引きかえ、我が国の年金制度はどうかといいますと、月額五十万円超の受給者がいる一方で、いまだに無年金障害者が放置されている、中国帰国者の方々も極めて低い年金のままに置かれている、これが実態でございます。最低保障年金などは検討さえされたことがないと思うわけでございます。加えて、国民年金の空洞化は進むばかり。解決策は、全額税方式の導入以外にない、私どもはこう考えておりますけれども、政府の側は、何の手も打てず、放置の状態だと思います。

 こうした中で、今国会に提出された年金法案、先に審議したのは確定給付、それで今確定拠出でございますけれども、残念ながら、改革の理念、哲学が見えてこないと言わざるを得ません。確定給付の方は、厚生年金基金の破綻を回避するというものでございましょうし、確定拠出の方は、株価対策という側面が非常に強いのではないか、それが動機になっているのではないかというふうに見受けられてならないわけでございます。

 いずれにしても、我が国の年金制度全体をどう改革し、どういう方向に持っていくのか、このことが明らかになる必要が本来あると思うわけでございます。その中で、確定給付にしても確定拠出にしても、全体の中できちんと位置づけられるべきもの、私はこう思うのでございますけれども、大臣の御所見を承りたいと思います。

坂口国務大臣 ことしの初めでございましたか、委員から、ドイツにおきます年金制度をお勉強になりました結果をお話しいただきました。たしかそのときのお話は、給付を余り上げるのではなくて、そして皆が支えることのできる範囲での保険料と申しますか、保険料をある程度抑えて、みんなが払えるようにするということをまず考えなければならない、それで、その中でこの年金というものを組み立てていかなければならないという、何かそういう御趣旨のお話をされたように記憶をいたしておりますが、若干私の思い違いのところもあるかもしれません。

 今御指摘になりましたように、保険というよりも、いわゆる保険料ではなくて、それは税でこの基礎年金は行うべきだという従来からの御主張もございますし、そういう形で行うべきだということを、あるいはそのときにも御指摘になったのかもしれないというふうに思います。

 私も、全体で見ましたときには、やはりこの年金に対します情報開示というものをより積極的に行って、皆さんに現状がどうなっているかということをよく御理解いただくというところから始めないと、なかなか年金に対する信頼は深まっていかないのではないかというふうに思っている一人でございます。

 そして、その中で、できれば基礎年金のところをできるだけ充実していきたい。しかし、ここを余り充実しようと思いますと保険料が高くなるものですから、そこには限界はありますけれども、どこをということになれば、やはり基礎年金のところを充実させていく。ある程度の基礎年金で、生活全体を支えるとまではいかなくても、それに近いようなことができるような姿にしていくということが大事ではないか。多少理想でございますけれども、私もそう考えております一人でございます。そして、どちらかといえば、二階の方はそんなに手厚いものでなくてもいいのではないかというふうに私は思ってきたわけでございますが、この立場になりまして、なかなか物も言いにくくなってまいりましたけれども、そういう気持ちで今日まで来たことは事実でございます。

金田(誠)委員 恐らく、もっと突っ込んだ話を別の場でしますと相当意気投合するのかなと思いながら、受けとめさせていただきました。

 基礎年金を充実するという考え方からすれば、無年金障害者であるとか中国からの帰還者であるとか、あるいは若いころどういう事情があったにせよ六十五を過ぎて無年金に近いような状態の方々、こういう方々は救われるべきだ、その方々の最低保障をするぐらいの力は経済大国の日本にはあるはずだというふうに思うわけでございまして、これは辻年金局長とも話をしているのですが、なかなかかみ合いません。年金局長とはかみ合いませんが、大臣とはかみ合いそうだなと思いながら、今承ったところでございます。ぜひ今後の課題として、この最低保障年金、海外でいえばそういうところに該当するような方をどうすべきなのか、ぜひ大きなテーマの一つとしてお考えいただきたい。

 それと、もう一つは、これからもこの賦課方式、若年世代からの所得移転による所得保障がどこまでできるのかというと、非常に制約されるだろうと思います。制約されても、それにかわる個人年金、企業年金、積立方式の部分、これの仕組みを全体の中にきちんと位置づけられる形で持っていくべきだと思うわけでございます。

 ドイツなどでは、給付を多少下げた、下げた部分を確定拠出に切りかえた、高額所得者の方は税の優遇で誘導しよう、もっと所得の低い方は、税の優遇を受けても大したメリットはないわけでございますから、そういうところには連邦政府が補助金を出そう、補助金を出してまで自助努力を促す、こういう全体の構想ができているわけです。ぜひひとつ、そういう観点から今後の年金についてお考えをいただきたい。このことをまずは申し上げておきたいと思います。

 次に、各論に入って順次お尋ねをしたいと思いますが、私の前に質問した古川委員の方で積み残した二点をまず質問させていただきます。

 一点目は、ペイオフとの関係。これは金融庁にお聞きをすることになると思いますが、この確定拠出型では、個人別の口座をまとめて大口扱いとして運用するために、コストが通常よりも低くなる、運用利回りもよくなるメリットがある、こういう説明を受けてきたと思うわけでございます。

 それでは、金融機関の破綻等によるペイオフの場合、大口扱いとなりますと保証は一千万までということになりますから、このペイオフとの関係でどうなるのか、それが心配でございます。個人個人の預金勘定として経理をされて、それぞれが一千万円まで保証される、こう理解してよろしいのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

渡辺(達)政府参考人 今先生からペイオフのときにどういう扱いになるかというお尋ねがございました。

 金融機関が破綻した場合に、その預金者である資産管理機関等に対する預金保険金の限度額を、例えばといいますか、仮に元本一千万円及びその利息としますれば、これは預金保険法の原則でございますが、加入者持ち分はほとんど保護されないということになりまして、これは大変な問題になるわけでございます。

 したがいまして、今お出ししております確定拠出年金法案の附則第二十三条におきまして、資産管理機関等の保険金の計算につきましては特例を設けておりまして、加入者持ち分ごとに保険金を計算するという扱いになっているといいますか、そういう御提案をさせていただいているということでございます。

 この結果、加入者持ち分につきましては、加入者の当該金融機関に対するほかの預金と名寄せした上で、元本一千万円までとその利息が最低保証されることとなっているということで、先生先ほどおっしゃったとおりの扱いになっております。

金田(誠)委員 ありがとうこざいます。

 次に、もう一点、ハイブリッド型年金が可能かということでお聞きをいたします。

 さきに衆議院を通過した確定給付年金法のもとで、一定の運用利回りを保証し、それ以上は掛金建てといいますか確定拠出にする、いわゆるハイブリッド型、この企業年金が確定給付年金法と確定拠出年金法との関連で可能かどうか、これについてお聞かせをいただきたいと思います。

桝屋副大臣 今委員からハイブリッド型のお尋ねがございました。これはアメリカで導入をされているというふうに承知しておりますが、キャッシュバランスプランとかと言われているようでありますが、このキャッシュバランスプランは、個人ごとの年金原資、例えば、各時期における給与の総額の一定割合に対しまして一定の利回り、例えば十年物の国債の利回りとか、これを企業が約束をいたしまして、そして支給開始のときの年金原資、これをもとに年金給付を行うという企業年金ではないかと思いますけれども、このタイプの年金、私もにわかに聞かれて、ハイブリッドというのは一体何だろうか、こう思ったわけでありますが、整理をすると、今申し上げたように、確定給付に該当するのではないかというふうに考えます。

 そこで、委員の方から、さきに御審議をいただきました確定給付企業年金法、この中でどういう整理かというお尋ねかと思うのですが、委員御指摘のとおり、確定給付企業年金法におきまして、給付設計の一つとして導入できるようにしているところでございます。

金田(誠)委員 ありがとうございます。

 では、次の質問に移らせていただきます。特別法人税、この件でお尋ねをいたします。

 現在凍結されているわけでございますが、私は、今後この凍結解除ということは、実際問題としてあり得ないだろうというふうに思うわけでございます。もう一たん凍結してしまって、こういう状態の中でこれから凍結解除なんというのは、理屈の上ではあり得ても、実際問題としてはあり得ないと思っております。

 それで、その場合どうするかということですが、凍結解除が可能となる程度に金利の水準が上昇した場合、特別法人税の凍結解除ではなくて、拠出時、運用時、給付時、これを通した負担の適正化、年金課税の本来どうあるべきか。こういう検討の中で、もちろん国民的合意というものが前提になるのは当然でございますけれども、特法税なんというのは非常に変則的な、やむを得ずとっている措置だと私は思うものですから、本来の年金課税のあり方がどうあるべきかという検討の中で対応されるべきもの。特別法人税の復活などということは、考えるべきでもないし、あり得ないこと、こう思うわけでございますが、その辺の御見解を大臣に承りたいと思います。

辻政府参考人 御指摘のとおりに凍結されておるわけでございますが、この問題を含めまして年金課税のあり方につきまして、政府税制調査会等におきまして、世代間の公平や拠出、運用、給付を通じた負担の適正化の観点からこれを見直すことが必要であるという指摘をされているところでございまして、今後検討状況を踏まえながら、厚生労働省としても適切に対処してまいる方針でございます。

金田(誠)委員 これから税制調査会ということで舞台になるのだろうと思いますし、そういう意味では財務省所管ということが非常に大きなウエートを占めるだろうと思いますが、財務省としても、この特別法人税の凍結解除なんということはあり得ない。万が一そういうことをやれる時期になれば、金利の水準が回復をして、さあどうしようかということになれば、特別法人税の凍結解除ではなくて、年金課税の本来のあり方がどうあるべきか、この検討の中で物事が運ぶことになるのだというお考えを、この際どなたか明確におっしゃっていただければと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の今御意見を承っておりまして、結論につきましては必ずしも賛同をそのままできませんが、お考え方の筋というものについては理解できるところがございます。

 まさに御承知のとおり特別法人税は、現在の低金利の状況とか企業年金の財政状況を踏まえまして、臨時的な措置といたしまして、その課税を停止しているところでございますけれども、ただ、考え方といたしますと、現在の年金制度、年金課税につきまして見ますと、従業員の年金のために事業主が負担する掛金につきましては、これは何回も繰り返し御説明申し上げておりますように、支出時におきまして、企業段階では損金に算入されます。それから、従業員に対する所得課税は行っておりません。それで、年金受給時までその課税が繰り延べられているということで、その遅延利息相当分の負担を求めるために課税するということで、これは必要なものと考えているわけでございます。

 ただ、まさにこの説明にありますように、まさに拠出段階をこれからどういうふうに考えていくのか、そういったものとも当然関係してまいります。

 したがいまして、いずれにいたしましても、この年金税制というのは非常に重要な問題でございまして、高齢化の進展のもとで年金受給者が増加している。それから、高齢者の所得水準の上昇に伴いまして生活実態が多様化している。いろいろな要素を勘案しながら、世代間の公平を初めといたしまして、公平、中立、簡素、これは税制の原則でございますが、そういった観点から、今先生から御指摘がありましたように、拠出、運用、給付を通じた負担の適正化に向けて検討を行っていく必要があると考えております。特別法人税のあり方につきましても、その中で検討されるべきものと考えているところでございます。

金田(誠)委員 私も、こうは申し上げているのですけれども、結構難しい話なんだろうなというふうには思っております。しかし、難しいからといって特別法人税のようなものに逃げていくと、税制体系全体が今度はゆがんでくるということなんだろうと思います。まさに公平、中立、簡素ということからすると、本来の姿に戻すべきだ。

 しかし、その国民合意をどう形成するか。これはやはり、今までの役所は下手ですね。政治も下手だったのかもしれません。本当に国民との対話といいますか、そういう中で合意形成をしていく。もう五五年体制は終わったわけでございますから、そういうことが可能な時代状況に私はなっていると思います。

 その割には、例えばこの確定拠出年金なりの、あるいは確定給付年金なりの提案に至るまでの過程が五五年的だったなというふうな感想があるわけでございますけれども、そういう意味では、まだなれていないのかもしれません。労も使も、与党も野党もまだなれていないのかもしれません。しかし、もう一皮むける時期に来ている。本当に国民的な対話の中で、一定の方向に合意形成をしていく。必要なのは、情報公開そして対話の姿勢だと思うわけでございまして、これは大変な作業になるとは思いますけれども、ぜひひとつお互い努力をしたいものと思いますし、御要請申し上げておきたい、こう思います。

 次に、非課税拠出枠のあり方は、ちょっとこれは飛ばします。これは飛ばしまして、次のマッチング拠出の方に移らせていただきます。

 非課税枠の範囲であれば、いわゆるマッチング拠出を認めない理由はないのではないか。事業主も拠出する、それに対して被用者、従業員の方も拠出をする。上限枠は、これは一定の枠、その枠のあり方についてはまた後で質問をしますけれども、その枠の範囲であれば、マッチング拠出というのはあってもいい。

 何度説明を聞いてもすとんと落ちる説明が今までないのですが、なぜ認められないのか、改めてお聞きをいたします。

辻政府参考人 確定拠出年金の企業型、これは、現行の企業年金と同様に、事業主が拠出することが基本という考え方で立てられております。

 それで、企業型年金における企業の従業員本人の拠出がそれにできないのかということにつきましては、本人拠出は、その拠出が付加的と申しますか、事業主拠出に対して付加的であって、しかも拠出が任意で、運用もみずから選択するということになりますと、それは貯蓄そのものだというとらえ方になるということから、これは年金制度として位置づけるものとして、今回の法案では従業員の上乗せ拠出はできない。再度繰り返しますけれども、貯蓄そのものという位置づけになってしまうことが理由でございます。

金田(誠)委員 いつもそういうふうに説明を受けているのですが、これはのみ込みが悪くて申しわけないのですが、なるほど、そうだなというふうに思えないのです。

 それで、恐らく、厚生労働省と財務省主税局なんでしょうか、そちらとの今までの折衝の中でこうなった。恐らく判断した主体は財務省の方ではないかと思うのですが、同じ質問を財務省の方にいたします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 年金局長から御説明のあったとおりでございます。

金田(誠)委員 財務省、重ねて聞かせていただきたいと思いますが、個人型の方では拠出限度額が月額一万五千円と非常に低いわけでございますけれども、個人単独型というのがあるわけですね。この個人単独型でも、これは確定拠出年金として位置づけられている。一方で、企業型、月額三万六千円というのがある。例えば、三万六千円が限度なんだけれども、その企業は二万円しか出してくれなかった。あと枠が一万六千円あるうち、個人型が一万五千円枠があるのだから、自分はその一万五千円をそこに積んで老後に備えたい。こう考えて何か不都合はありますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 私の方からという御質問でございますので、答弁させていただきますけれども、基本的な考え方と申しましょうか、年金に対する課税のあり方の検討に当たりまして二つあると思っているのです。

 一つは、公的年金がその他の年金と比較して加入に強制性がある、企業年金それから個人年金は基本的に任意の制度だというのが一点あろうかと思います。それから、今貯蓄という話が出ましたけれども、貯蓄というのは、御承知のとおり、みずからの所得の処分でございますから、所得控除が認められておりません。一方、年金は経済的に貯蓄に類似している。したがって、こういった貯蓄課税との関係をどういうふうに考えたらいいのかということだろうと思っております。

 まず個人型の年金、従業員本人の拠出についてでございますけれども、これは個人型年金の従業員本人の拠出でございますから、いわゆる企業の支援がない。そういったところにつきましては、仮にこれを認めないという場合になりますと全く三階部分が利用できないということで、その加入の道を開いているということでございます。

 一方で、さっき質問がございましたように、企業の方でそういった企業年金があるという場合には、先ほど年金局長の御答弁にもありましたように、基本的には、企業年金というのは事業主負担が原則でございますし、この答弁が繰り返しになるかもしれませんが、従業員本人の拠出を認めることは、その拠出が付加的であり、また任意であり、それから運用をみずから選択できるということでございますので、貯蓄そのものと考えられてしまう。貯蓄じゃなくて年金制度として位置づけられるものとしては、上乗せに拠出はできないのじゃないか、私どもは、そういうふうに承知しているところでございます。

金田(誠)委員 また質問してもまた同じ回答であれば時間のむだということになりますが、正直申し上げまして、お二人の御答弁は非常に理解しかねます。なぜそこまで固執をしなければならないのか。強制性があるとか貯蓄はだめとか言ったところで、個人型というのもあるわけですから。

 そもそも、この確定拠出年金の目的が、老後に備える、端的に言えばそういうことなわけです。老後に備えるために、企業型で足りると思う方もいれば、そうではないと思う方もいらっしゃる。そのベースになる給与額そのもの、あるいは一階部分、二階部分がどうなるか、さまざまな事情がそれぞれ異なるわけですよ。それらを勘案して、自分で生活設計をする、その枠組みをつくるという話です。それは選択性があっていいわけですよ。しゃにむにそれを積まなきゃならないとかということではなくて、企業で十分やってくれるということであればそれはそれで結構だし、自助努力だけでやろうといえばそれはそれでいいし、それぞれ、企業の負担とみずからの拠出、両方合わせて老後の設計をしよう、これはこれでいいわけですよ。それを、あらかじめ、こういう規制をかけてどっちかにしろという話はないのではないか。

 やり合っても同じ結果だと思いますから、そういう考え方を申し上げて、これからの検討課題ということにしていただきたいと思います。附則では五年というふうになっていますが、一年でも二年でも、いいことは、善は急げということで、ぜひ、この際、今後の検討について意見申し上げておきたいと思います。こうした方がいいと思うのは早くやっていただきたいですし、こういう欠陥が見つかったということであれば、その欠陥も早く取り除くという基本姿勢でこれから臨んでいただきたい、これを御要望申し上げておきたいと思います。

 次に、ハンドリングコストについて伺います。先ほどの古川委員の質問ともちょっとダブるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 説明を再三いただいているわけでございますけれども、元本保証の商品、この場合は金利は非常に低いだろう、運用利回りは低いだろうと思うのですが、こういう低金利の商品であっても、ハンドリングコストが利子を上回っていわゆる逆ざやになることは考えられない、こういうことはないんだという説明を再三いただいてまいりました。このことを改めて、そうですということで、大臣の口から確認をしていただきたいと思うわけでございます。

坂口国務大臣 この議論もかなり多くの皆さん方からあったところでございます。確定拠出年金におきますところの元本保証の低金利商品、これに対しまして、加入者の資産が資産管理機関から一括して金融機関に預け入れられて、掛金を大口扱いで運用するというようなことで、一般預金に比べて有利な金利になる、こういうことは今まで御説明をしてきたというふうに思うのです。

 確かに、御心配になるのは私もよくわかるのです。しかし、この年金の場合には、いずれにしても大口で取り扱いをして、一括して金融機関なら金融機関に預けるということになりますから、そこは、わずかな額を個々人が預けておりますようなこととは大分違うというふうに思っています。資産管理機関から一括して金融機関に預け入れをしますので、掛金を大口扱いで運用しますから、一般の預金に比べてここはまさしく有利な展開になる、これはもう間違いないというふうに思っております。

 それから、控除されました運営管理機関の手数料につきましても、これは競争の促進によりまして適正な手数料となる、ここも、これは競争の促進ができるようにしないといけないというふうに思いますが、それによりまして適正な手数料になる。ここは、しかし強引に手数料を下げるというわけにはなかなかいかないと思うのです。これは民間ベースの話でございますから、公的な機関がそこに介入をして、そして上げる下げるというわけにはいかないだろうというふうに思います。ここは、しかし競争の原理、競争の促進ということを明確にさせるということを我々としては注意しなければならない、そう思っております。

金田(誠)委員 大臣からそういうお答えをいただいて、安心をしたいところでございますが、万が一これが逆ざやみたいなことになったら、これは私ども、責任を問われると思うわけでございます。

 最低でも三つの商品を組み込まなければならない、そのうちの一つは元本保証型でなければならない、したがってハイリスクのものに必ずしも手を出さなくてもいい、安全性も担保されているんです、こういう説明であったわけでございますけれども、その元本保証型の一つの商品が逆ざやになるのです、日にちがたてばだんだん目減りしてくるのです、こうなれば、そんな商品を買う人はいないわけです。ということは、三つの商品で、一つは元本保証型というそれ自体が崩れるわけでございます。

 ハイリスクなものしか実際は選択できない、こういうことになっては困るわけで、したがって、必ず元本が保証されるという商品が入るのですという説明ですから、それは必ずそうなるのですねということを今確認させていただいたわけなんですが、実際は、金融関係を監督するのは金融庁ということになりますので、金融庁にお尋ねをしたいと思うのです。

 例えば、イギリスのステークホルダー年金であれば、ハンドリングコストは必ず一%以下に抑えるという法的な規制か何かかけるらしいです。うちの方は、何か今手数料の自由化という方向で進んでいて、法律によって逆ざやはしてはならないとかいう規制は今のところはかけないと言っているのですが、そういうことをしなくても、必ず、並べられる三つの商品のうち一つは元本保証、逆ざやで目減りすることなんてありませんということが担保できるという、その辺の理由というか、からくりというか、これこれこういう理屈でこうなるんですというやつを説明していただきたいと思うのです。

渡辺(達)政府参考人 大臣の御答弁の後で私のような者が何か申し上げていいのかどうかわからないですし、それから、金融庁といいますのは御承知のように、金融機関の監督検査それから制度の立案等を行っておりますけれども、年金関係の事務といいますか、例えば本制度でいいますと加入者の記録管理や支給事務などの年金関係の事務費負担、その事務の中身、そういったことにつきましては所管しておりませんし、また我々、実際の知識も持っておりません。

 したがいまして、今のお尋ねにつきまして、金融庁として何かというお話でございましたけれども、私どもとしてはなかなかコメントをしかねる問題ではないかと考えております。

金田(誠)委員 こういうことになるんですよね。結局その所管が、これは年金という建前になっていますから。

 だけれども、実際問題、厚生労働省が、証券会社の手数料が高いとか低いとか、規制するとかしないとかということができるわけでもないわけですよ。税の方が、非課税枠を上げろとか下げろとかというのは、これは主税局、財務省のマターであって、厚生労働省としては要望なり要請はできるかもしれませんが、所得税法の改正とか法人税法の改正というのはできるわけでもない、提案できる立場ではないということだと思うのです。

 したがって、この三者がそれぞれうまくかみ合って、それぞれの能力を発揮しながらいい方向に回ればいいのですが、お役所というのはそうならないでしょう、大体、今までの例を見てくると。不都合が起きると、うちではない、うちではないという話になって、結局だれが責任をとるんだみたくなって、いろいろなことが起こるわけですよ。それを心配しておるわけです。

 そこで、大臣初め、大丈夫です、三つ商品があって必ず一つは元本保証です、その元本保証の商品を選択したところが目減りしてきましたなんてことはありませんと言っている。信用したいと思います。しかし、常識的にはそういうことはこれこれこういう理屈であり得ないと言っているのですが、もし何らかの形でそういうことが起こったとすれば、それを規制する法改正、法律以外の方法もあるのかもしれませんが、何らかのそういう措置がとられると。必ず元本保証の商品がこの三つの中に、まあ目減りするなんというのは商品のうちに入りませんから、それは論外ですが、必ず元本保証の商品というのがきちんとセットされる状況をさまざまな措置によって担保しますという答弁を、これはどなたがしていただけますか。

辻政府参考人 あくまでも、この確定拠出年金は私的年金でございまして、民間の制度でございます。

 それで、私ども、ひとつ徹底した競争環境をつくるということで、この制度を枠組みしておるわけですけれども、歴史的にも最も低いと言っていい、国際的にも大変珍しいそうでございますけれども、今この低金利状態、そういう中で、大口で個々の金融機関での口座管理等の手数料が要らないという運用をするということとの兼ね合いで、逆ざやを起こさないという、仕組み上の理由からもそのことが私ども十分想像はつきますし、それから民間金融機関もそうおっしゃっておるという中で、あえて、どのように御説明したらと思って考えたのですけれども、これはスタートするときに、規約で手数料の額を書かなければなりません。そのときに、率直に言いまして、もし元本割れするような手数料であれば、そもそも規約をつくらない、すなわち、この確定拠出年金をスタートさせられないと思います。

 それで、逆に、運営管理機関も、競争環境の中で、そのような商品を提示したら導入できないわけでございますから、そのような競争というのは厳かに働くと考えております。そのようなことから、元本割れはないというふうに見ております。

金田(誠)委員 私は今、主に低金利の方の質問をしましたが、この運用収益がずっと高くなった場合も、高いからということをいいことに、不当にまた手数料が高く取られかねないということもあるかもしれない。いろいろな場合が想定されるわけですけれども、その都度適切な対応をしていただきたい。万が一にも加入者の信用を損ねるような、その枠組みをつくった国会の、あるいは政府の権威が損なわれるようなことは何としても避けていただくということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に質問しますのは、六十歳に達する前の中途取り崩しについてでございます。

 法案では、六十歳前の中途取り崩しはできないということになっております。しかし、アメリカの四〇一kなどでは、ペナルティータックスを払うことによってそれが可能になっているということでございます。我が国の年金も、これは建前は年金ですから、それまで積んでおくということが、私はいいと思います。しかし、万々が一、例えば阪神・淡路みたいなことがあった、住むところもなくなった、年金資産は相当積まれている、これに手をつけることはできない。これじゃいかがなものかと。

 何らかの条件を設定しながら、これを解禁をするという方向で検討されてしかるべきでないかと思いますが、いかがでしょう。

辻政府参考人 いわゆる中途引き出しということはできないかということでございますけれども、この確定拠出年金のいわば本旨と言ってよいかと存じますけれども、老後の所得の確保のためである、この一線が制度の基本になっておりまして、結局、中途の引き出しを認めるということは、貯蓄そのものだったのではないかと。大変な税制上の優遇措置があるわけでございますけれども、そういうことになってしまうということで、これはもう制度の根幹にかかわるところでございます。

 米国の四〇一kで、いわゆるペナルティータックスつきで途中で出せるということがございますが、米国は、退職後の所得をという趣旨になっておりますけれども、実際はその背景には、私ども調べますと、やはり貯蓄奨励というものを行うという考え方があるという中でこういう仕組みができておりまして、その点、日本と米国は相当背景が違いますので、私ども、あくまでもこれは老後の所得保障のためであるということでそのような措置にしているということにつきまして御理解いただきたいと思います。

金田(誠)委員 老後の所得保障のためという原則を崩せと言っているわけではないのですが、それにしても、一定の条件のもとにという道を開いてもいいではないか。そのことが奨励策にもつながってくる。これからますます自助努力に期待をしなければならない状況が生まれる、そういう中でできた制度でございますから、ぜひひとつお考えをいただきたいものと思うわけでございます。

 次に、ポータビリティーの問題について質問をいたします。

 今回、確定拠出型の大きな利点、それがポータビリティーであるというふうに言われておりますから、できる限り、離職、転職に伴ってもこれを継続できるという枠組みを整えることが望ましい、こう思うわけでございます。

 例えばの話でございますが、確定給付型を実施している企業に転職した場合でも、今まで積んできた確定拠出型に、自己負担ということで負担しながら、また積み増ししながら運用できるという仕組みを認めれば、それも限度額は設定するにしても、そういう仕組みを認めておけば、いわゆる資産の塩漬けなどという状況は回避できると思うわけでございます。

 それが例えばの一つでございますけれども、物の考え方として、ポータビリティーを可能な限り広げていくという考え方にまずは立っていただきたいと思いますし、今申し上げたような具体的なものも検討課題に加えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

辻政府参考人 確定拠出年金の企業型、これは、現行の企業年金と同様に、事業主がまず拠出するということを基本に構成されております。

 そのような中で、個人型の年金の従業員本人の拠出の仕組みというのは、結局、確定給付型の企業年金や確定拠出年金の企業型、このいずれも事業主が実施しない場合に、その従業員にみずからの拠出を認めなければ年金制度の三階部分が全く利用できないということで、公平の観点から、あえて申しますと、こうしたものに限って加入者個人の拠出をあたかも事業主の拠出とみなして加入の道を開いたという、非常に限定的な仕組みになっております。

 もとより、御指摘の確定給付型の企業年金がある場合というのは、既に三階があるということでございまして、基本的に、この制度の体系から見まして、これ以上に広げることは困難であると考えております。

金田(誠)委員 先ほどの六十前の取り崩しにしても、非常にかたくなで、なぜだろうなと首をかしげているわけなんです。例えば、道路特定財源にしたって、本当は道路財源だ、しかし六百六十六兆も借金が重なれば、一般財源にしばらくしなければならないことだってあり得るわけですよ。人間でも国家でも、そういう場合というのはあるわけですから、ぜひひとつ、もう少し幅を持って、全体にお考えいただきたいなと要請を申し上げておきたいと思います。

 最後の質問になろうかと思いますが、いわゆる不利益変更についてお尋ねをいたします。

 確定給付型から確定拠出型に移行する場合などに、いわゆる不利益変更が行われることが懸念されるわけでございます。それも、全体が一律に給付が下がったみたいなときは、労働組合側でも対応しやすいということもあろうかと思いますが、特定の層、例えば退職間近な方々が不利益になるとかいうような、例えばの場合、加入者の一部が不利益をこうむるというようなときは、労働組合組織としてもかなり対応しにくいという状態も生まれるのではないか、権利の保護がされにくくなる場合があろうかと思います。

 そこで、何をもって不利益とするのかという定義などもきちんと明確にしておく必要がある。いろいろな場合を想定しながら、不利益とは何かと。したがって、原則こういうことはあり得べきではないという、まず考え方をガイドライン等でまとめるべきだと思いますが、これが一つ。

 それで、仮にこういう場合が行われた、それが不利益変更になると思うがどうなのかといった場合に、先日来の話では、厚生省が対応するとかいろいろおっしゃっていますが、実際問題、もっと相談しやすい窓口があっていいのではないかな、あるいは、救済を申し立てる機関があっていいのではないかなと思うわけでございます。

 例えば、労働基準監督署、今度は厚生労働省になりましたから、ございますでしょうし、あるいは、今度、これから法案が出てまいります個別的労働関係の調整に関する法律でしょうか、これでは、地方労働局あるいは地労委のスキームも考えられているということがありまして、この相談、救済、これについて、これは労働条件の一部という観点からすれば、厚生労働省になった利点をこの際発揮できるのではないかなと思いますが、この二点、最後にお願いいたします。

辻政府参考人 まず、不利益変更に関するところにつきまして御説明申し上げます。

 確定給付型から確定拠出型に移行いたします場合に、加入者によっては不利益になるというケースがあるという御指摘でございますが、どのような場合に不利益な変更になるのか。これは、例えば、ずっと雇用され続けたいということで勤めていらっしゃる方、あるいは、実は相当転職を前提にして勤めていらっしゃる方というような雇用の状況とか、それから、これから運用環境がどのように、金利とかそういったものが推移しているのかというような中長期的な見通し、こういった要素によりましてさまざまなケースが考えられますので、なかなか、定義づける、こういう場合はいい悪いと断定するということは、正直申しまして難しい感じがいたします。

 もし高年齢者などの一部を加入とするというのは、これはむしろたまたまの例でございますので、それをもってどうこうという意味じゃありませんけれども、どうも合理的理由がないことの方が多いと思いますので、その点はむしろ、この法体系では不当差別に当たる可能性もありまして、そのようなことは実際ではないと思います。

 いずれにいたしましても、この確定給付型からの移行につきましては、大変私ども、今この制度を望んでいらっしゃる方々は、企業内で労使がかんかんがくがくの議論をしていらっしゃるということをよく耳にしておりますけれども、すなわち、雇用の実情や運用環境などを踏まえまして、利害得失を十分に検討いただく、このことは本当に大切なことだと思っておりまして、そのような労使合意がきちんとなされていたという確認を私ども十分に規約の審査の過程でさせていただいて、本当に、こんなつもりじゃなかったというようなことがないように十分心がけてまいりたいと思います。

金田(誠)委員 救済機関は。

日比政府参考人 先生御指摘のように、退職手当の一部でございますので労働条件に関する事項ということで、この労働条件に関する事項につきまして、何事か困ったこと、あるいは紛争というようなことがございますと、現在でも、労働基準監督署で労働条件相談コーナーというものを設けて対応いたしておりますし、また都道府県労働局でも相談員等を置いて必要な御相談等に応じております。

 また、先生から御指摘ございましたように、別途、個別労働関係紛争の解決のための法案というものを御提案申し上げておりますが、それが仮に成立させていただきますと、今申し上げましたような相談というふうなことのほかに、一定のあっせん機能を持つ委員会というようなものもその法案の中では盛り込ませていただいております。

 なお、いずれにいたしましても、労働条件の変更等の問題につきましては、そういうことで相談窓口なり解決援助のための仕組みを設けておりますが、ただいま問題となっております確定拠出年金にかかわるものにつきましては、先ほど年金局長の御答弁にもございましたけれども、まずは労使できっちりしたものをつくっていただいて、それをベースにしていただけるだろうと思いますし、また新たな問題、年金というような問題でございますので、紛争解決で現実に問題が起こったときということを想定しますと、十分しかるべきところと連携等をとってまいらなければならないと思っております。

金田(誠)委員 これは、軌道に乗るまで大変だと思います。規約の審査をやっているだけでは恐らくだめなんだろう。個々具体の相談、これはある意味では情報収集ということにも役所にとってはなるわけでございまして、積極的に収集していただいて、具体的にかかわっていただいて、ガイドライン等、相談業務、救済機関等々を機能させていく中で軌道に乗せるという観点で、ぜひ努力していただきたいということを申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。また連日のように出てきました。三十分の間、最後のおつき合いになりますが、よろしくお願い申し上げます。

 水曜日の委員会において、投資教育ということの話を出させていただきました。これには大変な、もしかしたら莫大なコストがかかる、労力がかかるということで、こういうところをどうお考えになっているのか。また逆に、教育にコストをかけるということは、実際、全体のコストを上げることにもなる。では、ある程度全体のコストを下げるためには、教育もある程度のものにしておかなきゃいけない、こんなバランスの質問もさせていただいたかと思います。

 一生懸命やられているとは思いますけれども、そういう教育の中で、私は、本当に一番肝心なことは、もしかしたら加入者の教育じゃなくて経営者側への教育ということが言えるのかなという気がいたします。表向きは確かに受託者責任というか、企業における表向きの縛りはたくさんございますが、私が思うことは、やはり経営者の哲学であり、労働者のことをいかに考えるか、思うかということが今まだまだなってないのではないかという気がいたします。

 なぜこのようなことを言うかというと、思い出せばバブルのころ、私もこの永田町にいさせていただく中、経済は一流、政治は三流ということを言われておりました。経済界の方々から、会うと大変自画自賛するような話も幾つも聞かれました。ですが、結果的に、バブルが崩壊してから、その一流の経済界が三流の政治家を頼ってくるというのは、まさに一流じゃない、こんな思いがするわけでございます。

 そこで、やはり一番大切なことというのは、その経営される方々、私のようなこんな未熟者が言うことは大変失礼かもしれませんが、経営者の方々の、やはり本当に経営というものに関して、社員のことを思いという部分の哲学的なことがまだまだ足りないのかなという気がいたします。

 とある財界の人たちがおっしゃられたのは、政治の世界でも使われます政治家と政治屋という使い方、経営者の中でも経営屋というのと経営者という二種類がある、今は経営屋ばかりで本当の経営者がいないんじゃないか、こんなことを言われたのを私は非常に覚えております。そういう意味で、そこまでは入り過ぎとはいうものの、やはり経営者の方々への教育ということが非常に大切なのかな、もしくは企業側ということが大切かなという気がします。

 そういう中で、この法案をずっと読んでいきますと、第七条の「事業主は、政令で定めるところにより、運営管理業務の全部又は一部を確定拠出年金運営管理機関に委託することができる。」つまり、経営者の方または企業の方がそれを決めていくことができる。当然、労使合意ということはあったにしても、私もこうやって見させていただく中、大変厳しいスキームがあることも事実です。事実ですが、実際、運営をきちんとされていけるのか、大丈夫なのか。

 私は、一番最初の質問のときにも立ちましたが、受託者責任ということに関しても、アメリカよりも日本の方が確かに厳しいスキームというか、かなり厳しいものでの受託者責任というものを持っていることは、これは十分わかります。そして、ある意味ですごくはっきり限定した形にしている。でも、逆に言えば、厳しいことが限定されていることが、それ以外は全部オーケーなんではないか、いいんじゃないかと、逆に言えば抜け道をつくりやすい方向になるようにも心配するところがあります。

 アメリカのことは十分勉強されていると思いますけれども、アメリカの方は、どちらかといったら、やはりその場その場の、場合場合の解釈、いろいろな状況を見ながらその受託者責任というものを、悪く言えばあいまいかもしれませんが、よく言えばいろいろなケースにおいての受託者責任ということをとらせられるようになっているように私は感じるところもあります。

 そういう意味で、この七条の運営も含めて、受託者責任ということも含めて、いかに厚生労働省さんはお考えになっているのか、御答弁をお願いしたいと思います。

坂口国務大臣 御指摘になりますように、やはり教育というのが非常に大事ですし、その中でこの事業主に対する教育というのがやはり一番大事だと私も思っています。

 事業主が正確な情報を持っていないとこれはいけない。そうしませんと、従業員の皆さん方にもそれを伝えることができない。ですから、従業員の皆さん方に伝えられる、その事業主をどう教育していくかということが大事である。

 それでは、公的な機関がそれができるかといえば、私はある程度のことはできるというふうに思いますけれども、それにはしかし限度はあると思うんですね。現在の株式の動向を公のところがああだこうだというふうに言ってみたって、それはなかなか正確な情報を提供することはできないだろう。

 公のできることは、現在の経済の動向でありますとか、基礎的な経済のデータでありますとか、そうしたことを経営者の皆さん方に詳しくお示しをする。そして、この運用機関によって、株の動向でありますとか、現在のいわゆる金融界の動向といったようなことについては話題を提供してもらう。さまざまな方面からそういう提供を受けて、事業主が、そしてその中で働く人たちが勉強をしていただくということでなければならないんだろうというふうに思っております。

 だから、どこか一カ所がやればいいということではなくて、いろいろなところがそういうデータをお互いに出し合う。公のところが出せるものと、そして金融機関が出せるものとは、これはもう全然違うというふうに思いますから、それらを総合的に見てどう判断をされるのかは、それは事業主やそこに働く人たちがどう判断をされるかということだというふうに思います。その皆さん方にお役に立つようなものを我々は用意しなければならないのではないか、そんなふうに思っております。

佐藤(公)委員 大臣のお話はわかるんですが、ただ、非常に今、ある程度競争原理、いろいろなことを考えていけば、そういう考え方も私どもわからないでもない。ただ、やはり企業が、料金や利便性についての企業の負担が小さくなるという点を重視して、加入者、従業員にとってベストの運用管理機関を選任しない可能性もあるのではないか。また、おとといもお話ししました、自社株というものをうまく使いながら、自分たちの経営、企業にとって、それは最終的には社員にとっていいこともございますが、その社員の、加入者のことを考えた選択にならないのではないかということは十分可能性としてあり得ると私は思います。

 そういうことは、もう今までの経済、財界、いろいろな事件を見てもそれはわかることですが、私は局長の方にお聞きしたい。ここの部分で、そういう部分の忠実義務に沿った運用管理機関を選任するような仕組みが必要だということで規定はしているんですけれども、どのような点を具体的に工夫してやるべきだとお考えになるのか、また、あるのか、お答えを願えればありがたいと思います。

辻政府参考人 運営管理機関につきましては、自由な競争、幅広い参入ということで、登録制、登録の仕組みになっております。一定の基準を示しまして、その一定の基準のもとで登録をし、そして金融庁と共管でございますけれども定期的ないわゆる検査をいたしますし、業務の報告もしていただきます。

 そういったことから、どのような行動をとっていらっしゃるか、そういったことを調べるといった形で、入り口における基準、それから実際問題としての、チェックという言葉は適切かどうか、チェック、それから問題が入れば私ども直ちに指導に入らせていただきますし、そういった形で忠実義務といった受託者責任が担保できると考えております。

 もとより、この制度を施行するに当たりまして、御審議いただきましたこの御趣旨を体して、私ども、十分に関係者に広報、周知徹底するということをまずもってやりたいと思います。

佐藤(公)委員 ぜひその辺のことは、加入者の方々への投資教育もさることながら、やはり企業側、経営側に対するきちんとした指導ということ、もしくは、やはり教育ということも必ず心がけてというか、忘れないでいただきたいかと思います。

 続きまして、金田先生の方からも幾つかダブるような質問が先にございましたが、給付の取り崩しということでお尋ねをさせていただきたいと思います。

 先ほどからもお話がございますように、米国においては四〇一kの途中取り崩し、ペナルティータックスを支払うことにより認めておりますが、なぜ日本でできないのかという御答弁はさっき私も聞かせていただきました。根本的に違うものだというような考え方はわかりますが、水曜日もお話をしました、やはりこれを魅力的なものにしていく中で、取り崩すことができる、できないというのは、またこれを普及させるためには一つの大きな要素となってくるかと思います。

 特に、私もこれに関して若い人たちといろいろと意見聴取をする中、やはり取り崩しができないということに関しては不安を持ち、どうしても最悪な状況では出せる、そういう年金であってもらいたい。それこそ、単なるペナルティータックスだけではなくてもっと厳しい条件でもいい、厳しい条件でもいいから出せるような状況を必ずつくっておいてもらいたい。その場合失うものもかなりあるかもしれない、でもそうしておいてもらいたいという希望がかなりございました。

 そういう部分で、これの議論に当たって、より厳しい条件をつけることによっても最悪の場合取り崩せるような方法論の議論、もしくは方向性ということを考えていただくことは今後できませんでしょうか。もしもよろしければ副大臣にお願いします。

桝屋副大臣 私も先ほど金田委員と局長の議論を聞いておりました。今委員から、アメリカの四〇一kのお話も引かれながら、タックスペナルティーのもとでという話もありました、また委員の方から、どんな条件でもいい、そういうニーズがあるのではないか、こういうお話がありました。

 本当に傾聴に値するお話ではあるのですけれども、やはり、このたび私どもが御提案をさせていただいておりますこの確定拠出年金、あくまでも年金、私的年金といいますか企業年金といいますか、年金として設計をしているものでありまして、六十歳まで長い間拠出をしていただく、しかも、今お話がありましたけれども、途中の引き出しということはしないということでやるがゆえにできる年金としての設計というものが私はあると思うのですね。老後の所得の確保ということを年金という形で今回設計をしたものでございまして、やはりここはまさに制度の根幹にかかわる部分ではないかというふうに私は思います。

 アメリカの事例については、先ほど局長から、四〇一kというのは年金という位置づけではなくて、むしろ従業員の退職後の備えを支援するという観点でありまして、貯蓄を促すという面が強いという説明をさせていただきましたけれども、まさにそこは性格、制度の違いというふうに私は考えております。

 まずはこれでスタートいたしまして、我が国のこの企業年金制度が、これから、委員がおっしゃったようなニーズが、本当にこの制度をきちっと説明したときにどれほどの希望があるかということも、私も国民の皆さんとまだ余り議論したことがないわけでありますが、私は、やはり老後の保障ということで所得を確保するという意味で、年金としてとりあえずはスタートさせていただきたい、これが制度だというふうに考えております。

佐藤(公)委員 そういうニーズは実際私は聞いてございます。ございますので、今の副大臣の御答弁からすれば、例えばきちんとそういうアンケート、データ、調査があって、そういうニーズがある程度高いものが出てきているのであれば、それは十分検討に値するというふうに理解をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

桝屋副大臣 決してお言葉を返すわけではありませんが、途中解約をするという方がもしたくさんあって、では年金として、この年金資産を運用するということで、先ほど委員がまさにおっしゃったコストとのバランスをどう考えるかということもあわせて検討させていただかなければならないというふうに思います。

佐藤(公)委員 検討していただけるということなので、お願いしたいと思います。

 でも、ただ、私がずっと見ていくと、一体全体、このお金の流れで、どこからどこまで、どういう根拠において、だれが所有権なのか、非常に疑問を幾つか持ちました。

 そういう中で、例えば、会社側がお金を持っている、ではこのとき会社はだれのものなのか、ではそこから出たときにだれのものなのか、では運用段階はだれなのか。給付を受けたときには当然個人のものになります。でも、その間というのは、本来、個人年金というものがあれば当然個人であるはず、また、個人勘定というか、個人である程度口座を持っているのであれば、個人が権利というものを持っていてしかるべきだと思いますが、そのあたりがちょっと私もわかりませんが、いかがでしょうか。

辻政府参考人 確定拠出年金の仕組みといたしまして、企業の倒産などがありましても加入者が老後に確実に年金を受給できるよう、資産管理機関を制度上位置づけております。確定拠出年金の実施者たる事業主とこの資産管理機関の関係というのは、信託契約あるいは生命保険契約ということでございまして、そういう契約を結んで年金資産の管理などの業務を行わせております。

 そういうことから、その信託契約あるいは生命保険契約というのは、この制度独自のものではなくて、今現にさまざまなところで存するわけでございますけれども、そのような意味におけるその制度上の年金の所有権というのは、その契約に基づきまして、何といいますか、事業主から所有権が離れるわけでございます、事業主というか実施者から離れるわけですけれども。実施者あるいはその加入者から所有権は法律をもととして離れるわけでございますけれども、その間、この信託契約あるいは生命保険契約に基づきまして、年金を支給できるまでの間は、加入者や受給者は計算上の持ち分を有しておって、これはもうだれにも侵せないものでございまして、そういう形で保全されているという、繰り返しますけれども、信託契約あるいは生命保険契約に基づきまして権利関係が明確なものとなっております。

佐藤(公)委員 そういうルールがあるということはわかりますけれども、何かよくわからない、その場その場でごまかされているような感じもしないでもない部分があると思います。

 実際私が思うことは、これはこの次ちょっと税制の話にもなるのですけれども、特別法人税は現在凍結されているのですけれども、この個人年金やなんかのことに関しても、運用時の段階に個人で持っている、でもそういうルールが一応あるから、結局その間は特別法人税で法人税がまた取られるというのは、個人でありながら法人税を取られるというのは何か非常に不思議なような気がするのですけれども、その辺は、一つのルールの中では当然だというお考えでしょうか。

辻政府参考人 今申しましたように、信託契約、生命保険契約で資産管理機関の方に移っているわけですけれども、そこにかかる、それが法人であるということから特別法人税という名前になっておりまして、あくまでも拠出した者に所有権はございませんので、そこへかかるのではなくて、信託契約、生命保険契約で移ったところ、所有権を持っている法人にかかる。こういう構成になっております。

佐藤(公)委員 そうなってきますと、さきの話にまた戻るのですけれども、取り崩しということが私としてはやはり納得できない部分がちょっとまだあるのですけれども。

 僕が一番心配しているのは、取り崩しというものができないでこのまま来た場合に、やはりどうしてもお金が必要になったときはどうするかということです。ほかに何もない、売るものもない、お金もない、その場合に、でも確定拠出年金があるといった場合に、ではこのお金を使ってと。実際、受給権の譲渡等の禁止等というのは、これもわかります、いけないこと、担保としてもやってはいけないということですけれども。こういうところで、言い方は大変失礼かもしれませんが、裏の金融のマーケットができるのじゃないか。そういうものを担保にしてお金を借りるとか、それは法的には、表向きはやってはいけない。でも、どうしてもお金が必要になった。これを何とか、預けるからということをやりながら、そういう不法行為のようなものが横行してしまうような心配を私はしております。

 そういうことから考えれば、そういう可能性が、私が言いたいことは、そういう需要がある、やはりそういう希望が多いという中からこういうものがあったとしたらば、取り崩しができないとなったらば、そういう考えというものがやはり出てきてしまう。ではついでにそうやってもうけてしまおうという人たちも出てくる。そうすると、やっちゃいけないことですけれども、裏でそういうものがどんどん出てくるのじゃないかなという心配をしておりますが、こんなことを考えられたことは、局長、ございますでしょうか。

辻政府参考人 二点申し上げたいと思います。

 まず一点目は、もし御自身の所得になったものが預け入れられてという場合は、実は自分で使いたかったことが使えなくなったという考え方が出ようかと思いますが、これはあくまでもそういう、給与とは別に企業が拠出して、その前提としては労使が納得して、老後のために拠出してもらうのだ、あるいはするのだということのものでございますので、そういう、自分が使うつもりであったものがというような考え方を関係者がするかどうかという点では、そうではないか。

 それから二点目は、例えば、それで権利そのものは、これは六十歳に到達して発生いたします、受給権は。あるいは確定給付企業年金の例でいえば、それも受給資格を満たし一定の年齢要件に該当したときに発生します。そのような意味で、そのときに初めて権利が発生して担保に入れられるということでございますので、それまでに担保に入れようがないといいますか、では確定給付企業年金を将来もらえる予定だという方が今それを担保で金が借りられるかといえば、そういうことは行われ得ないと同じように、そういう実態は生じないものと考えております。

佐藤(公)委員 本当にそういう部分がないことを祈りますが、そういうことで結局とられちゃって、老後も何もかもだめになっちゃうみたいなこともあり得るかもしれませんので、そういうところにも十分目を光らせて、見ておいていただければありがたいかと思います。

 それで、私が思うことは、特別法人税、今現状は凍結されていますが、これに関して、やはり特別法人税は、個人勘定で運営される確定拠出年金の加入者にとって、とりわけ痛みが大きいのではないか。先ほどもお話がございましたが、低金利が続いている状況の中でというのは非常に感じるわけでございます。また、これが凍結解除は確定拠出年金の普及にとって足かせになるようにも思える部分があります。

 そういうところで、やはり私としてはこの特別法人税はこのまま凍結ということで、凍結というか撤廃というか、そういうことの方がいいのではないかなというふうに考えるのですけれども、これは一応、凍結になるに際して、先ほど金利ということが一つの基準ということでの話が出ていたようにも思いますけれども、まず一点目は、この法人税を凍結解除にする際に、やはり厚生労働省としてこの法人税をどう思うのかということが一点と、そして、もしも凍結解除をする場合に、どういう基準とどういう目安によって解除をすべきなのか、した方がいいのかということを御答弁願えればありがたいと思います。

 これの税制の話になるといつも財務省の方がいらっしゃいますが、私は、財務省の方ではなくて厚生労働省として、私たちの年金を守ってくれる、未来をつくってくれるやはり幹部の方々の意見を、そこの時点での気持ち、そういう方向性をきちんと明確にあらわしていただければありがたいです。大臣にお答えしていただければありがたいですが、副大臣、よろしくお願いします。

桝屋副大臣 この特別法人税の答弁はいつも財務省にお願いをしておりますから、そうしたいところでありますけれども、今委員の方から、たって厚生労働省としていかがか、こういうお話をいただきました。

 全く個人的な見解でありますが、税がなければないのが一番いいわけでありまして、そういうことを言いたいわけでありますが、いずれにしても、先ほどから出ているきょうの議論も、まさに年金か貯蓄かという議論、それから拠出限度額のお話。これは、まさに我が国の税制の中で、可能な限り国民の皆さんのニーズにおこたえをできる、そうした老後の設計ということで、この企業年金を私どもは提案させていただいているわけであります。

 ずっと委員会を通じて話が出ておりますが、拠出段階それから運用段階、さらには給付の段階。私は、特別法人税のみならず、やはりこの三つのパターンで、それぞれのパターンの中で、全体として年金に係る税制をどのように考えていくのかということは、厚生労働省としてもしっかりこれから来年度の制度改正に向けて議論をしていかなければならぬと思っております。全体の中で議論をすべき課題であるというふうに感じております。

佐藤(公)委員 ぜひ、税制になると財務省が答弁するのですが、私は、厚生労働省としての主義主張を持って、財務省とけんかをしてもらいたい、そのつもりでお願いをいたします。やはりそこの部分は、今後のことを考えたら特別法人税は凍結したままというか、撤廃をした方がいいのじゃないかなというふうに私は思いますので、お願いをしたいかと思います。

 もう時間も少ないのですけれども、マッチングのことに関してお聞きをさせていただきたいと思います。

 やはり私が思うことは、これは当然、先ほどから局長が御答弁していることは重々わかります。わかりますというよりも聞いています。聞いていますけれども、やはりあれだけ大臣も自立自立、皆さん自立をしている、自立をする。自立をするというのであれば、それはやはり企業からの拠出だけじゃなくて、個人からの拠出を考えるべきだ。当然だと思います。

 それなのに、口は自立、言葉は自立といいながら、そういう部分で企業からの拠出だけ。限度額なら、僕は当然、やはり個人の出した上での自立ということを促すべきだと思います。そういう部分で、これがどうして個人からの拠出というものがだめなのかというのが、全くと言っていいほど理解できない。根本的なことの先ほどお話もございましたけれども、どうかこれのことに関しては、個人からも出せるような拠出を検討願えればありがたいということが一点。

 そしてもう一点は、やはり水曜日もお話をしましたけれども、どうか若い人たちの限度額を上げてあげてください。やはり、若い人たちにおける限度額、こういうものを上げてもらいたい。

 そして、先ほど話していますペナルティーのこと、取り崩しのこと。

 この三つのことをやはり僕は、全体のことということもありますけれども、若い人たちのことを考え、取り崩しができる、そしてマッチングができて拠出限度額を上げていただける、そして若手における税の優遇措置をとってもらう、こういうことをこの確定拠出年金で今後ぜひ御検討を願いたく、私は大臣に改めてお願いをしたいと思います。

 全体だといいです、全部ができればいいです。でも、いろいろな御事情もあると思いますけれども、そういう部分をお考えになっていただきたいかと思いますが、大臣の御答弁とお考えを、御所見をお聞かせ願えればありがたいと思います。

桝屋副大臣 また後で大臣が申し上げるかもしれませんが、今委員の方から、やはり企業年金を魅力あるものにしてもらいたい、それから、委員の方から強い御指摘をいただきました、若い方がという観点であります。

 本当に、委員の気持ちは痛いほどわかるわけであります。御提案いただきました限度額の引き上げ、あるいは中途引き出しの制度化、あるいはマッチング拠出の制度化、これはもう私は一つ一つ申し上げません。委員は恐らく、私にかわりまして局長が答弁すれば、する内容は委員はもう十分御承知の上でおっしゃっておられるのだろうと思います。先ほども申し上げました。やはり年金か貯蓄かというその概念の中で、私ども厚生労働省は財務省と戦え、こう御指摘をいただきましたけれども、我が国の税制の中で、本当に委員御指摘の若い方が魅力を感じていただける、そういう制度になるように今後とも検討していかなければならぬと思っております。

 ただ、その前に、それをおっしゃるのであれば、もう私は企業年金よりもまず一階、二階、この基礎年金の部分を何としても若い方に御理解をいただきたい。そのことの方がと言っては語弊がありますが、そのことで今頭がいっぱいであるということも御理解いただきたいと思います。

坂口国務大臣 きょういろいろと御提案いただきましたことは、これから先、この年金ができ上がりました後、私は、何年か先、そんな先ではなくて、それが三年とか五年とかというふうにしましたときに、やはりかなり改正をされていくのだろうというふうに思います。そうしたときに、そういう重要な項目になる幾つかをきょうは御提案をいただいたというふうに思っております。

佐藤(公)委員 もう時間になりましたが、副大臣のおっしゃられること、まさにそのとおりで、私が各委員会のときに申してあります一階の部分というのを、本当に真剣に議論をいただきたい。そして、私どもの主張する消費税の福祉目的税化ということを十分御理解いただき、一緒になってやらせていただければと思います。そしてあとは、今この税制に関しても、抜本的な年金の税制議論というものを、先般も大臣がおっしゃいましたが、きちんとした議論を同時並行に進めることが大事だと思います。そういう部分ですぐさま早くそういうものを考えていただきたい。

 そして最後に、この法案が、十年後、二十年後、こんな法案をつくったから、おれらの老後は、おれらの生活はむちゃくちゃになったと言われないように、どうか厚生労働省の幹部の皆さん方は重々考えて、実行に移していただきたいと思います。

 長いこと御苦労さまでございました。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小沢和秋君。

小沢(和)委員 法案への質問に先立ちまして、一昨日に引き続いて、韓国人原爆被爆者の郭貴勲さんの問題をお伺いしたいと思うのです。

 一昨日の大臣答弁では、関係省庁との間で控訴するかどうかについて協議するということでした。ところが、先ほどの答弁では、まだやっていない、きょう終わったら取り組むというお話でした。忙しいのはわかりますけれども、いささかがっかりいたしました。

 それで、私が申し上げたいのは、昨晩私は判決の全文を読みました。私が改めて強調したいのは、第一に、三菱広島の韓国人元徴用工の人々の裁判と、郭さんの裁判は全く違うということであります。

 元徴用工の人々は、韓国にいて援護法の適用を求めたわけでありますが、これは今の援護法の手続には乗らないということは私でもわかります。それに対して、郭さんは、日本に来て援護法にのっとって手続をし、認定されて手当も受け始めました。それが、韓国に帰るたびに適用を打ち切られ、また日本に来て手続をするということを五、六回も繰り返しております。だから、彼の手元には、無効になった手帳が何冊もあるということであります。こんな不合理なことはないと思うのです。しかも、法律に書いてもいない、単なる通達でこれをやっております。

 同じ厚生省の所管でも、戦傷病者戦没者等援護法などの措置は海外に出ても継続しております。その点でも片手落ちではないでしょうか。このことを指摘した判決に潔く服するべきではないか。改めてお尋ねをします。

坂口国務大臣 私も、まだ忙しい中ではございますが、徐々にではございますけれども、先日の判決文を全文読みかけております。そして、その判決文は、入り口は違いますけれども、中に入ってみますと、やはり広島のときと同じような議論が繰り返されていることも事実でございます。これはもうごらんをいただければおわかりのとおりでございます。私も何度も何度も読み返しておるところでございます。

 そうした内容もじっくり読み、ただし私は広島の方をまだ十分に読んでおりませんので、広島の方も十分読ませていただきながら、そして私は、最終的にいろいろな皆さん方の御意見もお聞きをして、そして私の意見も申し上げて、そして決断をしたいと思っているところでございます。

 おしかりを受けまして大変申しわけないわけでございますが、本日までこの法案、そして参議院の方には確定給付の方がかかっておりまして、両方をやっておりましたために、なかなか体があきませんで、そのことに全面的に取り組む時間がなかったものでございますから、お許しをいただきたいと存じます。

小沢(和)委員 あと一言二言言いたいのですが、郭さんは、韓国から徴兵で広島に連れてこられて、日本軍の兵士として被爆しております。このことはこの間も申し上げたわけですが、彼を被爆者にしたのは、そういう意味では日本政府の直接の責任であり、これに対する償いをする責任があると思います。その責任を認めるなら、判決に従えないはずはないと思います。

 もう一言言いたいのは、郭さん一人が裁判をしているように見えますけれども、それは、被爆者たちが海外に居住しているために、ハンセン病患者たちのように集団で裁判を起こしたりすることができないだけでありまして、同じ気持ちでいる人々が、韓国、北朝鮮、中国、アメリカ、ブラジル等に数千人もおります。

 先ほども話が出ましたが、昨日私のところにも、海外日系人協会から、「在外被爆者に対する被爆者援護法適用の要望について」という文書が郵送されてまいりました。これを読むと、最近三年続けて海外日系人大会で、海外在住日本人の被爆者手帳所持者に健康管理手当をということが取り上げられております。郭さんの裁判は、これらの声を代表したものだと思います。ハンセン病患者たちと同じように、この人々も皆高齢化しております。そういう人道的な考慮も含めて、控訴を断念すべきではないか。重ねてお尋ねします。

坂口国務大臣 よく検討させていただきたいと思います。

小沢(和)委員 それでは、先に進みたいと思います。

 法案に関連して、ではお尋ねしたいのですが、二、三日前に、私のところに五月二十四日付の新聞報道が送られてまいりました。これには、国民年金、厚生年金の積立金から二十七の特殊法人、企業への貸付金残高約百四十四兆円の大半が不良債権化していると、ショッキングなことが書かれております。

 それによると、自力で借入金や利子の返済ができるところはゼロ。補助金があれば返済できるところが三カ所。増資すれば返済可能が二カ所。残る二十二は補助金など以外に新たな資金が必要という状態であります。これは日本医師会総合政策研究機構などの調査報告であります。

 これで本当に年金は大丈夫かと送り主が私に問い合わせてまいりました。この報道どおりなら、私もそれこそ大変だと思いますが、大臣に伺いたいのですが、これは事実でしょうか。政府の責任ある答弁をお願いしたいと思います。

辻政府参考人 私ども、まず事務局の事実認識を申し上げたいと思います。

 この新聞報道は、日本医師会総合政策研究機構の研究プロジェクト報告書ということでございますが、年金積立金を預託している資金運用の貸付先である財投借入機関の運営状況を、その財務諸表や資金計画などに基づきまして、この民間の機構が一定の評価をして、それをもって、その資金運用部に預け入れしている年金積立金が不良債権化しているというふうに結びつけているわけでございます。

 私ども、年金積立金の元本及び利息の支払いは、財投借入機関ではなくて、あくまでも資金運用部、現財政融資資金でございますけれども、そこは大きなお金を運用しておるわけでございまして、そことの関係でございますから、財投借入機関の財務状況の内容をもって直ちに年金積立金自体が不良債権化しているというとらえ方は適切ではありませんし、現に私ども、資金運用部との関係では、確実な支払いというものが行われてきておるわけでございます。

小沢(和)委員 だから、今のところは、もう今からつかえてしまっておったらそれこそ大変なわけなんですよ。

 私が言いたいのは、ここに書かれているように、自力で借入金や利子の返済ができるところはゼロで、補助金があれば返済できるところは三カ所しかなくて、増資すれば返済可能が二カ所、残る二十二は補助金など以外に新たな資金が必要、こういう状況になっているのかどうか。なっているとすれば、これはどう見たって不良債権化しつつあるということになるんじゃないですか。

辻政府参考人 私ども、この新聞報道を見た限りでございますけれども、これは一民間研究機構の評価であって、書いていることが事実かどうかということは、私ども、定かではないと思います。

小沢(和)委員 いや、だから、評価の問題じゃなくて、事実としてこういうふうな状況になっているのかどうかということを私は聞いているんです。だから、あなた方は、これは大蔵省の方が直接扱っているからあずかり知らぬというお話なんですか。

辻政府参考人 私どもは、資金運用部との法的関係で、これは国の、今はちょっと名前が今申しましたように財政融資資金と変わりましたけれども、この関係で、適正な法律関係を持ち、かつまた財政融資資金はそれぞれの融資につきまして適正な運用を行うという関係でございまして、その運用先につきまして私どもが安易な事実認識を論じるべきではないと考えます。

小沢(和)委員 この質問はこの程度にしておきましょう。

 私も心配になって、じゃ、年金福祉事業団が運用してきた厚生年金資金の方はどうなっているかと調べてみたわけであります。その結果、細かいことは省略いたしますけれども、昭和六十一年度からの累計で、平成十一年度には一・四兆円の赤字を出しておる。これでも前年度に比べて大幅な改善と言うんですが。

 既に平成十二年度分もおよそわかっていると思いますが、その見通しはどうでしょうか。

辻政府参考人 十二年度の年金福祉事業団の運用状況につきましては、現在、年金福祉事業団から資産を承継した年金資金運用基金において集計中でございます。したがいまして、まだ公表の段階になっておりません。

 ただ、平成十二年度の運用状況は、特に国内株式の下落が顕著でございますので、これを勘案すると大変厳しいものになるということは見込んでおります。

小沢(和)委員 大変厳しいと言われたんですが、だから、厳しいということは、恐らく私は、さらに一・四兆円の赤字が膨らむという結果になっているだろうと思うんです。どのぐらいの見通しですか。

辻政府参考人 十一年度末の年金福祉事業団の運用実績は、簿価ベースで一・四兆円の累積利差損があるのは事実でございます。これはすべて簿価ベースでございますけれども。この利差損の理由というのは、近年、大変低金利になって、クーポン収入や配当等の実現収益が減ってきておるわけですけれども、現在の負債というのは相当金利の高かったときに借りた負債でございまして、その差というものが簿価ベースで出ておるということでございます。(小沢(和)委員「そんなこと聞いていないですよ」と呼ぶ)

 一方、時価ベースの累積利差損はどうかと申しますと、十一年度は、これは公表させていただいていますけれども、約五千億円の黒字となっております。そういうことから、年金資金の運用としましては、他の機関投資家と比べて遜色ない実績を上げておりまして、時価の方でもごらんいただきたいと思います。

小沢(和)委員 いや、だから、聞いていないようなことを答えてはいかぬですよ。

 私が聞いているのは、十二年度の運用実績は。これは大体毎年六月に発表しているでしょう。だから、それだったら、もう六月も十日になろうとしているわけですから、およそ見通しはまとまっているでしょう。だから、それはおよそ幾らですか。

辻政府参考人 私ども自身、十二年度につきましては、いわば十三年度から年金資金運用基金が新設されまして、それまでの運用状況のいわば総括というものを集計しているというふうに聞いておりまして、これはディスクローズにはなお若干の時間を要するということでございます。

 私ども、大体、六月ないし七月に例年公表されておりまして、率直に申しまして、相当運用状況は悪いと見ています。ですから、そのことを何ら私ども否定する考えはございませんが、そのように、いわば旧年金福祉事業団の総括を行うという作業を行っておりまして、その評価分析というものも非常に重要でございますので、例年どおり、少なくとも六、七月ということの例年のペースで出せると思いますけれども、いま少し時間がかかるというふうに考えております。

小沢(和)委員 これまでも、この厚生年金資金の運用はプロが一生懸命やってきたと思うんです。しかも、その運用方針を拝見すると、安全確実を掲げております。当然のことであります。今後の運用の資金構成については、国債六八%、国内株式一二%、外国債券七%、外国株式八%、短期資産五%を基準にするということになっております。こういうことで手がたく手がたくとやっても、なおかつ、プロがやってこういうような悪い結果になっている。

 そうすると、私が改めてお尋ねしたいのは、これだけプロが安全確実をモットーに運用しても赤字を出す長期不況のもとで、なぜ今、確定拠出型年金の導入をしなければならないのかということであります。しかも、日本の労働者はほとんどが資産の運用などは経験がありません。この人々をわざわざこんなリスクに直面させる政策のどこが企業年金の充実で、選択肢の拡大なのか。これは大臣にひとつお答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 今、非常に金利の状況も悪いときでございますから、御承知のように、低金利で状況が悪いことは御指摘のとおりでございます。しかし、こういう状況がいつまでも続くわけではなくて、またよくなるときもあることはもう当然でございます。

 現在、景気の状況は悪いときではございますけれども、しかし、年金の制度というのは、景気の状況のよしあしは別にいたしまして、こういう、景気が悪くなり、そして雇用が非常に流動化をするといったようなときでありますから、現在のような雇用によくマッチをした年金制度というのをつくっていかなければならない。そうしたところから、確定給付年金やそれから確定拠出年金ができ上がってきたわけでございます。それはもう委員よく御存じのとおりでございます。

 ですから、現在、低金利ではございますけれども、低金利だから現在の年金制度を導入するのが間違いだというのは、少しこれは言い過ぎではないかと私は思います。

小沢(和)委員 今の大臣のお答えというのは、今は悪い時期だけれども、長い目で見ればそのうちいい時期も来る、こういう考えだろうと思うんです。

 しかし、日本経済そのものをきょうは論じる場ではありませんけれども、私は、かつてのような高度成長、右肩上がりの時代というのを再現するということは、今の日本経済の状況からすると考えられないんじゃないか。しかも、今のような状況の中でいわゆる緊急経済対策をやるということになれば、もっと失業者がふえるんじゃないかというようなことも今大問題になっている。私は、今のこの不況局面を簡単に乗り切れるという見通しは開けてきていないんじゃないかと思うんです。そういうような中で、こういうようなリスクの非常に多いものを持ち込むのはいかがなものかということを言わざるを得ません。

 このことでもう一つお尋ねしたいのは、局長は、リスクの高い投資信託については労使の選択で除外すればよいというふうに言われました。それなら、私は法案全体に反対ですけれども、少なくとも、投機性の高い投資信託を法律でも運用商品から除外するというようにしたらいかがでしょうか。

坂口国務大臣 確かに、株式投資信託などはリスクも大きいと私も思います。しかし、この年金を受け入れていただきますためには、その前に、経営者の皆さんと労働者の皆さん方、労使で、どういう形でいわゆる確定拠出型の年金をつくり上げていくかということをお話し合いをいただくわけですから、そのときに、ではこういうリスクの高いものは除こうということならば、それは除いていただいておやりをいただくことも十分にできるわけでございますから、そこは広い選択肢の中にあるということを御理解いただきたいと思います。

小沢(和)委員 私は、そういう選択肢を掲げておくこと自身がリスクをまた引き起こすという立場から、いっそ削ったらどうだということを言っているわけであります。

 もう一つお尋ねしたいのは、例のポータビリティーの問題であります。

 拠出型はポータビリティーがあるから導入すべきだという意見については、四〇一k型の先進国であるアメリカでも二十年以上かけてもまだ労働者の半分まで普及していない、まして我が国では、この長期不況の中で、新たに拠出型を導入する中小企業が急速に広がることなど考えられないということを、一昨日の質問でも私は指摘をいたしました。

 今、零細企業で働く人、とりわけパートや派遣労働者の中には、本来厚生年金に加入する資格があるのに企業の事情などで加入していない人がかなりおります。拠出型の導入も、厚生年金に加入して初めて問題になり得るという説明でした。私もそれは当然だと思うのですが。だから、ポータビリティーというのなら、一番ポータビリティーがあるのは厚生年金であります。まず、この人たちを厚生年金に加入させるために全力を尽くすべきではないか、お尋ねをします。

辻政府参考人 今厚生年金に適用されておりません方々と申しますのは、特に五人未満の個人事業所の従業員あるいはパートといった方々でございますけれども、特に五人未満の個人事業所の従業員と申しますのは、六十年改正で相当拡大しましたけれども、強制適用の対象とすることを見送ったというような経過がございます。

 方向といたしまして、社会保障改革大綱におきましても、年金制度の基本的な今後の改革の方向として、「意欲に応じて働き、年金と組み合わせて豊かな生活ができるようにする」というようなことを掲げられていますように、できる限り支え手をふやすという方向を念頭に置いた方向が示されておりますので、厚生年金の被保険者の適用の拡大、これはその方向で議論していくという流れだと思いますので、より厚生年金の適用対象をふやしていくという方向は一つの課題であると考えております。

小沢(和)委員 拠出型という点では、中小企業退職金共済という制度があります。直接には、中小の退職金の原資を国も若干の援助をして積み立てる制度であります。月最高三万円まで拠出できますし、利回りは三%、分割払いで、十年間、年四回ずつという支払いも認められております。もっと年金化などの工夫をしたら、この法案の拠出型とは全く違う魅力ある制度になり得るのではないでしょうか。もっとこの制度の普及改善に努めたらどうか。このほかにも、建退共など類似のいろいろな制度があります。

 これらの制度をもっと改善したら、今回のような日本型四〇一k導入などの必要性もなくなるのではないか、お尋ねをします。

日比政府参考人 ただいま御指摘の中小企業退職金共済制度でございますが、これは、まず、現在各企業で退職金制度を設けている場合に、退職の一時金のもの、あるいは年金のもの、あるいはその併用のものといろいろございますが、中小企業退職金共済の場合には、まず、受け取りの年齢といいますか、一時金を受け取る年齢についてはもちろん規制をいたしておりません。どちらかといえば、一時金制度ということを念頭に置いております。

 御指摘のように、確かに分割払いというものも、十年ほど前だったと思いますが、五年タイプ、十年タイプ、年四回というので導入いたしておりますが、その基本は、やはり一時金というようなことでございます。

 そこで、世の中を見ますと、次第に、年金制度との併用あるいは年金化をする動き、その方向がむしろ強くなっておるような状況だろうと思います。そこで年金部分ということになりますと、これにつきましては、別途、老後保障ということで、必ずしも雇用関係にあるものだけにとどまらない全体の年金の問題もあり、今般御提案申し上げているような法案になったものと思っております。

 いずれにいたしましても、中小企業退職金共済制度につきましても、内容の改善等、運用の適正化等を図るとともに、今後とも、普及あるいは加入促進に努めてまいりたいと思っております。

小沢(和)委員 大臣にお尋ねしたいのですが、高齢化社会を本当に支える年金制度は、やはり公的年金であり、とりわけ基礎年金であります。ところが、その基礎年金の空洞化がますます進んでおります。

 平成八年三月と平成十一年三月とを比べますと、完納者は千三十八万人から九百四十九万人に減り、一部未納、未納、免除者の合計は五百二十八万人から七百三万人へと大きくふえております。今や、こういう人々が、国民年金加入者の三割どころか四割に達しておる。

 ところが、五月三十一日の坂口大臣の経済財政諮問会議への提出資料では、未納、未加入者の被保険者全体に占める割合は五%程度などと、この問題を大したことでないかのごとく描き出しております。公的年金加入者七千万人との比較で見ても、七百三万人ということになれば一〇%と、事実認識が違います。何よりも、将来、無年金者、極端な低年金者になる人が、わずか三年間で百数十万人もふえ、そのテンポも増大しているということが、どうして大した問題でないのでしょうか。

坂口国務大臣 御指摘のように、年金の中では公的年金、公的の中では基礎年金が最も重要であると私も思う一人でございます。ただ、今もお話がございましたように、この公的年金に一号被保険者として加入される方が非常に少なくなってきていると申しますか、未加入者、未納者がふえてきているという事実があることも承知をいたしております。

 免除者があります。この免除者は別だと思うのですが、問題は未納者と未加入者だというふうに思っております。

 この皆さん方に対して、私たちは、やはり手厚く、そして現状につきましてのいろいろの情報をお知らせをして、そしてこの年金というものがいかに将来にとって大事なものであるかということを御理解いただくようにしなければならないというふうに思っております。

 全体で見れば五%でございますけれども、だからいいということを言っておるわけではございませんで、未納者、未加入者の多いことを私たちも憂えていることは間違いございません。そして、この人たちを一人でも減らしていくように、今私たちも考えているところでございます。

小沢(和)委員 これで最後の質問にしたいと思うのですが、大臣は就任直後の記者会見で、二〇〇二年に基礎年金への公費二分の一負担を繰り上げて実現したいという趣旨の抱負を述べられたと記憶しております。私は、その発言に大いに注目いたしました。

 ところが、先ほども触れた大臣の提出資料の中では、二分の一負担については、具体化の検討という表現にとどまっておりまして、二〇〇二年への繰り上げという言葉は見当たりません。これは、大臣の姿勢の重大な後退ではないでしょうか。

 しかも、提案では、年金保険料の引き上げの凍結解除とセットになっております。これでは、二分の一負担の実現で年金保険料負担が軽減されることを期待した国民の願いと逆の結果になるのではないでしょうか。

坂口国務大臣 二〇〇四年までに基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げるというその問題を、できるだけ早く引き上げたいというふうに思っておりますのは、現在も変わっておりません。

 ただ、経済の状況がもう少し早くよくなるであろうというふうに予測をいたしておりましたが、予測以上に経済の停滞が続いているわけでございまして、そういたしますと、この財源をどう求めるかということが甚だ難しい状況になってきていることも事実でございます。

 ここのところを乗り越えますためには、極力今までのむだを省くということをどこまでできるか、これから来年度予算にかけてむだを省くということをどこまでできるか、そしてそれに対して、それを年金にどれだけ回すことができるか、そうしたことの努力にかかってきているというふうに思っているわけでございますが、そうしたこと全体を含めて、これからできる限り頑張っていきたいと思っているところでございます。

小沢(和)委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 坂口厚生労働大臣初め省庁の皆さん、連日御苦労さまです。

 とりわけ坂口厚生労働大臣には、私が一昨日お願いいたしました郭貴勲さんとの御面会も、昨日お忙しい時間の中お会いくださいまして、大変にありがとうございます。また、これも私がお願いいたしました、判決文の全文もぼちぼちお読みくださっているということで、極めて誠意ある対応に心からお礼申し上げます。

 また、きょうは私の方からもう一点、三つ目のお願いがございまして恐縮ですが、実はこの在外被爆者問題は一面において外交問題でもあろうかと思います。

 在外被爆者は、南北朝鮮、それからブラジル、アメリカ、世界各地におられます。我が国が唯一の被爆国であり、その被爆の対象者、被爆された方たちにどのように遇するかを世界じゅうが見ておりますと同時に、大きな外交問題でもあろうと思います。

 今、非常に残念なことに、外務委員会、田中眞紀子外相と外務官僚の皆さんのそごによりまして中断状態であると伺っておりますが、政府としてのこの在外被爆者の問題に態度を決定される以前に、ぜひとも外交問題としてもこの問題についてきちんとした論議がなされることを私も希望しております。

 そこで、坂口厚生労働大臣に、大変恐縮ですけれども、政府として、大臣も政府の一員と思いますけれども、外交問題としても、もちろん担当は坂口厚生労働大臣ではございません、しかしながら、大きな外交問題、今我が国は、外交的にさまざまな国とのあつれきを深めている問題、教科書問題もございます。そのことをかんがみた上で、外交問題としてもこのことを政府として検討されるように、お立場は違いますけれども御提言のほどお願いいたしたく、御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 外務大臣ともよく相談をさせていただきたいと思います。

阿部委員 いつもありがとう存じます。

 引き続いて、この年金の法案の審議に入る前に、いわゆる政治倫理問題で一点、この場で、質問通告ではございませんが、明らかにしたいことがございます。

 昨日の朝日新聞をごらんになった方は、日本医師政治連盟という政治団体に、半ば強制的に医師に対して献金と申しますかが要求されまして、所によっては自動引き落としというシステムをとられたということが一面でも出ておりました。

 KSD問題を初めとして、これから参議院選挙に臨むに当たって、この政治姿勢、政治倫理の問題はいま一つの大きな争点であろうかと思います。

 実は、私も医師会のメンバーであったこともございますし、私のおりました千葉では、この医師政治連盟のお金が自動引き落としされるということに反対をいたしました医師たちが銀行口座を差しとめるということもいたしました。私は、これは個々人の政治的信条の自由として当然のことと思います。

 ところが、もう一方、私の今選出区になっております神奈川で、神奈川ネットワーク運動という女性たちが一生懸命調べましたところ、例えば横浜市の医師会は、市の保健センター内にお部屋をお借りして、それは賃貸料を払っているのですが、やはり市の公共機関の中にお借りして、あわせてその中に医師政治連盟のお部屋を使わせているということが発覚しております。

 これに端緒を得ました女性たちは、女性たちはしつこいですから、徹底的に神奈川県の状況を調べましたところが、幾つかの自治体で、市の保健センター内に医師会の事務所を入れ、そこに医師政治連盟の事務所を入れ、もう一つ、自民党の政治連盟の支部を置きというところがございました。

 きょうは質問通告はございませんが、これは私の地元神奈川の女性たちからぜひともただしていただきたいという要請を受けておりますので、監督の厚生労働省にあって、特に医師会というのは社団法人で準公益的なものに従う公益法人でもございます。そして監督官庁としての厚生労働省がございますから、KSDにまさる政官業の癒着だと言われては困りますので、各地の医師政治連盟の実態、事務所がどこに置かれておるか、それが公的機関の中に間借りしておるようなことがないかどうか、全般にわたってお調べいただきたく、この件についても坂口大臣の御見解を伺います。

坂口国務大臣 私も、医師会のメンバーの一人でございまして、医師連盟にも入れていただいておるわけでございます。

 公益法人すべてにつきまして、現在、見直しと申しますか、全部やっているわけでございますので、そうした全体の見直しの中で、もしも公益法人としてふさわしくないような点がありましたら、それは改善を要求していきたい、そう思っております。

阿部委員 一点、御参考までに、例えば歯科医師関係では、神奈川県の歯科医師会が神奈川県の歯科保健総合センター内にありますが、その中にまた神奈川県の歯科医師政治連盟の事務局がございまして、またその中に自由民主党神奈川県歯科医師支部がございます。この神奈川県歯科保健総合センターはやはり県の施設でございますから、公私混同ということになってまいろうかと思います。これは一例でございまして、各所に調べればあると存じますので、ぜひとも、国民の求める清い政治ということで、御指導のほどよろしくお願いいたします。

 同じく社団法人にかかわる三つ目の質問をさせていただきます。これは、やはり同じように厚生労働省の監督下にございます臓器移植ネットワークの件でございます。

 実は、臓器移植ネットワークに対しまして、昨今、いわゆる右翼団体の方々が盛んにいろいろなお手紙やら攻撃文を送られているというふうに私の方まで漏れ伝わってきておりますが、この件について監督省庁の厚生労働省はお聞き及びでございましょうか。担当の部局で結構です。

篠崎政府参考人 本年三月の中旬でございましたが、社団法人日本臓器移植ネットワークに関する公開質問状が当省にも送付されてまいりました。

阿部委員 これも聞き及びますところ、並びに各方面にその文書と同じものが配付されておりますので内容を見聞いたしますと、この臓器移植ネットワークの代表になっておられる小紫氏への個人攻撃が非常に強い文面でございます。個人攻撃という形がとられるには、それなりの経緯があるように思います。

 実は、この臓器移植ネットワークは、小紫氏がもともと御自身の娘さんを腎臓病で亡くされたことをきっかけにつくっておられた移植関連の団体が、厚生省の指導のもとに、全国的な臓器移植の取り扱いについてセンター化された経緯がございますが、その中にあっても、実はつい昨年まで、小紫氏個人の寄附とか個人の所有する倉庫会社からの人員の配置等々、個人的結びつきが非常に強かったという事実もございます。例えば、小紫氏が会長をなさっておられました中央馬主社会福祉財団から年間三千万円程度の寄附金とか、このほか多々、小紫氏自身からの寄附もございます。

 公益性を重んじる社団法人でございますから、かかる事態についても、今後厚生労働省として、特に臓器移植というのは今国民の関心も強く、個々人のいろいろな影が差してはうまくいかなくなるものも多かろうと思いますから、お考えのほど、御指導の内容につき御答弁願います。

篠崎政府参考人 御指摘の点でございますけれども、厚生労働省といたしましては、平成九年十月に、社団法人腎臓移植ネットワークが社団法人日本臓器移植ネットワークに改組する際の定款変更の認可に当たりまして、今先生御指摘のように、その事業の高い公益性にかんがみまして、特定の個人や企業による寄附金に依存する財政構造を改善するよう指導をしてまいりました。

 その結果、同ネットワークにおきましては、適宜改善を図ってきておりまして、収入総額に占める特定の個人による寄附金の割合は、平成九年度で〇・六%が、平成十一年度で〇・二%というようになっておるような状況でございます。

 したがいまして、同ネットワークにおける特定の個人に依存する財政構造は改善されつつあるというふうには感じておりますけれども、さらに改善するよう指導してまいりたいと考えております。

阿部委員 もう一点、篠崎さんが御存じでしたらお教えください。理事が六十名おられますが、理事会は一体年に何回開かれておりましたでしょうか。

 もしおわかりでなければ、次回に延ばさせていただきます。現実に、六十名の理事で開くというのはかなり大変なことでございます。そして、運営を公正公明、オープンにしていくというためには、理事会の開催状況、そこでの論議の状況等々、次回御報告ください。

 なぜこういうことをお伺いいたしますかというと、実は、北海道ブロックでいわゆる使い込み事件がございました。一千一百万円、コーディネーターが使い込んでしまった。きょうは時間の関係でこの件はあえて追及いたしませんが、運営状況、特に理事会の開催のされ方等々、次回よろしくお願いいたします。

 引き続いて、本題の確定拠出型年金に入らせていただきます。

 きょうで私はお時間をいただきましたのが三回目で、かなりこれまでに論議を、問題提起させていただきましたけれども、先ほどの小沢委員の御質問にございました公的年金の部分にかかわって、きょうは第一問目をやらせていただきます。

 年金問題と申しますと、いわゆる御高齢な方たちの現状ということが強くクローズアップされますが、私はせんだっても、今、若い人たちがどのような働き方をして、どのような意識を持って、どのような賃金状況にあるかという、若い人たちの実態をつかまなければ、確定拠出型年金も、三十年、四十年後のお支払いのことも目指した長期のものであるという御答弁もいただきましたので、現実的にいいものか悪いものか判断できないと思いまして、きょうは若者像にスポットを当てていこうかと思います。

 一点目。もし担当部局で御存じでしたら、この若い世代の所得状況、特に十五歳から三十四歳までで結構ですから、所得状況、失業状況、そして私がいただきましたお答えの中に、国民年金の未加入の方たちを分析いたしますと、どこかで私的な年金にお入りだという御答弁がございました。未納者と加入者を比べて経済力には差がないというふうなお話で、その一つの事例に、私的年金に入っておるよ、あるいは生命保険に入っているよという御答弁でしたが、若い層はいかがでございましょうか。賃金、失業状況、私的保険への加入状況の三つについてお答えください。

渡辺(泰)政府参考人 私からは賃金の状況について御説明いたします。

 平成十二年の賃金構造基本統計調査によりますと、平成十二年六月におきます十人以上常用労働者を雇用する事業所の若年者の賃金は、十五歳から二十四歳の労働者につきましては、平均で所定内賃金が十九万一千円。これを賃金額別に見た労働者構成割合にして見ますと、所定内賃金が二十万円未満は六五%、それから二十万円から三十万円未満が三四%、三十万円以上が一%となっております。

 それから、二十五から三十四歳の労働者につきましては、所定内賃金の平均額が二十五万四千円となっておりまして、同じく賃金額別の労働者構成を見ますと、二十万円未満が二〇%、二十万円以上三十万円未満が六〇%、三十万円以上が二〇%というふうになっております。

坂本政府参考人 私の方からは失業率の状況でございますけれども、総務省の労働力調査によりまして最新の完全失業率の状況を見ますと、十五歳から二十四歳までの層につきましては、平成十二年の年平均で九・二%となっております。ちなみに、五年前の平成七年を見ますと、この層は六・一%ということでございます。

 また、二十五歳から三十四歳までの層でございますけれども、平成十二年には五・六%ということでございまして、五年前の平成七年には三・八%でございました。

冨岡政府参考人 国民年金の未納者と生命保険の加入の関連についてお答え申し上げます。

 国民年金の未納者で生命保険に加入している方の割合は五三・九%となっております。なお、国民年金の納付者の生命保険の加入割合は七三・六%でありまして、そういう状況でございます。

 なお、少し詳しく見てみまして、それでは、この未納者の方で年齢階級別にどうかと見ますと、全体では今申し上げましたように五三・九%ですが、例えば、二十歳から二十四歳までの方は三八・五%、二十五歳から二十九歳までは五二・六%といったように、特に二十代前半の方は生命保険の加入率も低いという傾向がございます。

 以上でございます。

阿部委員 綿密な資料提供をありがとうございます。

 今御指摘をいただきましたような資料内容を、私の方でまたお願いして、グラフにしたものをきょうお手元に配らせていただいております。参考資料として上げてございますので、見ていただきたく存じます。

 まずもって、このグラフの見方でございますが、平成二年度と平成十二年度の二十歳から二十四歳の給与額の比較がございます。ちなみに、これは常用雇用、いわゆるフリーター等々は含んだものではございません。

 見ていただくとわかりますように、平成二年から平成十二年、この間にバブルがございますから、基本賃金はやや右肩にシフト、平均で十八万。平成二年当時は十三万等々でございますが、平成二年時の方が、いわゆるピークの前後に若者の賃金が固定しておる。平成十二年はすそが開いておる。どういうことかというと、所得格差は明らかに平成十二年度の方が広がっておるという実態を示すグラフでございます。

 若者たちの中にも、今所得間格差が明らかに広がっているという事実。これは、御高齢者の中にももちろん所得間格差が広がっておりますが、若い人たちに広がっているということを、もう少し緻密に国の政策に反映すべきことと私は考えます。それが年金問題でもございます。

 そして、失業者数でございます。先ほどはパーセンテージでお示しですが、二〇〇一年の四月で、十五歳から二十四歳で七十六万人、二十五歳から三十四歳で九十八万人と、百七十万人近くがこの年齢層で失業状態にございます。失業率ももちろん高まっております。そしてまた、先ほどの御提示のように、特に二十から二十四歳は、私的な生命保険等々にも加入している人は三分の一強である。ということは、賃金も低い、そして何らかの個人的セーフティーネットも持たない、失業率も高まっておる。これが普通にいわゆる勤務として登録されている方の実態で、プラス、フリーターが百五十万おられます。

 私は、きょう、いろいろ言いたいですが、時間との関係もありますので、ぜひ次年度の厚生労働省の白書に、ここには「働く女性の実情」というのが私の手元に来ておりますが、働く若者の実情二〇〇一でも結構です、ぜひともお示しください。これがなければ、二十年、三十年、四十年後の我が国のいわゆる年金制度をどうするか、今若者たちがどのように生きているか、暮らしているか、賃金をもらっているかが見えてまいりません。高齢者問題だけでなく、若者たちも貧富の格差が拡大し、不安定性を増していると私は思います。

 そうした点で、これも坂口厚生労働大臣に、若者像について、関係省庁の知恵を集めてプロフィールをおつくりいただくことについて、御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 検討いたしまして、各省庁とよく連携をとりながらやっていきたいと思います。

阿部委員 私は、これに関しまして御検討いただきまして、前向きに実現していただけるようお願いすると同時に、このように賃金格差が広がり、所得格差が広がっているからこそ、やはり税制のあり方、それは消費税のように間接税で逆累進性の高いものは向かないというふうに考えております。実像を見て税制の問題も検討いただきたく、私は福祉目的累進課税というのを考えておりますので、これもよろしく御検討のほどお願い申し上げます。

 引き続いて、次の質問に行きます。

 今の一言を付言いたしませば、若い人たちは、今、世代間格差ばかりをあおられております。あなたたちが高齢者の年金を保障するのだよ、そういう言い方で言われますと、自分の問題として見えてまいりません。アリとキリギリス。アリも勤勉に働き、将来に備える。キリギリスであっては困るのは若者たちですから、あわせてお願いいたします。

 次に、企業年金の件についてお尋ねいたします。

 昨日の参議院の厚生労働委員会で、いわゆる厚生年金基金の給付引き下げが百七十七基金に上るということを、共産党の井上議員の御質問に辻局長がお答えになったと思いますが、やはり企業年金そのものも揺らいでおる。いわゆる一階も揺らいでおる、国民年金も。二階も揺らいでおる。今三階の話をしておりますが、これではもう、地震、総崩れになってまいるような気がいたします。

 特に中小企業における年金実態、いわゆる年金は退職金ともなっております中小企業の実態におきまして、労使間合意でこれからはこの拠出型をやっていくんだという御答弁が何度もございましたが、果たして、中小企業における労働組合の組織率、特にこの拠出型が二十五人以下のところが対象になると言われておりますから、二十五人以下、中小企業における労働組合の存在、組織率、あるいは、先ほどもどなたかの質問にございました、金田議員でしたか、地労委等々もこれからは活躍しなきゃいけないだろうとおっしゃっておりましたが、まず、労働実態、組織率等々お教えください。

渡辺(泰)政府参考人 平成十二年の労働組合基礎調査によりますと、平成十二年六月末現在の民営企業の労働組合の組織率ですけれども、従業員五百人以上の企業は四八・〇%、それから、百から五百人未満では一五・六%、百人未満では一・四%となっております。それから、議員御指摘の二十九人以下では、推定組織率は〇・三%ということになっております。

阿部委員 いわゆる労働者の諸権利を代弁すべきというか代表すべき労働組合の組織率も、二十九人、三十人以下だと〇・三%というふうに今の御答弁でございました。こういう数値、実態を前にして、労使間合意というのは極めて空語でございます。このことをまず、今回の法案を提出なさった辻局長、よくよく御認識いただきまして、今後の運営に当たっていただきたい。これは今さら言っても、ここの組織率を上げてからといっても、なかなか大変でしょう。しかしながら、このような実態の中で拠出型が導入されていくという認識をお持ちいただきたいと思います。

 そして、あわせてその件で御答弁いただきたいのですが、私は、それであるがゆえに、個々の労働者がいろいろな、例えば自分の退職金と思っていたものがなくなってしまった等々、あるいはこれからの自分の年金として積み立てていた退職金はどうなってしまうのか、そういう疑問を感じましたときの相談窓口について、一昨日も伺いました。

 辻局長は、まず社会保険事務所、それから地方厚生局、それからもう一つくらいおっしゃいましたが、私は、この三つのいずれもが、いわゆるこうした企業型年金についての知識も、金融市場についての知識もない方たちが現在は布陣されていると思います。例えば、社会保険事務所は公的年金の相談だ、地方厚生局は、これは各個々人にお答えするものではないということになっております。

 では、辻局長のお考えの中で、本当に個々人の労働者の疑問に答えられる窓口、再度伺います。そして、そのことに答え得る人材の教育、保障、どのようにお考えか、お願いいたします。

辻政府参考人 まず、苦情そのものについてのあり方でございますけれども、この制度はいわば私的年金、特に加入者が自己責任において運用するというものでございますので、他のさまざまな商品やサービスと同じでございます。そういうような観点から、国民生活センターのような一般のさまざまな商品やサービスへの苦情窓口とは別に、この制度に係る特別の苦情処理体制を設けるということは考えておりません。

 ただ、やはり、そういうものが入ったときに処理をするという体制は当然のこととして必要でございます。それで、この間申しましたように、厚生労働省のこの制度に係るところに情報が入ってくれば、苦情が入ってくれば誠心誠意処理すると本当に申しましたけれども、この場合に、実は、実際問題としては、運営管理機関に指図を行って運用する、恐らくこの指図を行って運用するプロセスでさまざまなトラブルが起こることが考えられます。したがいまして、問題は、恐らく運営管理機関と加入者の関係であろうと思います。

 これにつきましては、金融庁と厚生労働省が監督を共管いたしておりまして、私どもとしましては、そういう情報が入りましたときに、もちろん本省に情報提供、地方庁がその商品については詳しくなくても本省に情報提供していただくとともに、共同所管庁である金融庁やその出先機関である財務局等に伝えることなどを含めまして、どのようにより専門的な知識を持ったところが対応するかということにつきまして、金融庁と相談してまいりたいと考えております。

阿部委員 もう三度目の御質問で三度目の御答弁で、ちっとも進歩がないのですが、向く向きが違うわけです。受託金融機関、あるいは企業がそこに預けている、そこの間のトラブルではなくて、一人の勤労者にこたえられる体制をつくらなければ、組合というセーフティーネットもない、金融についての知識もない個人が、このシステムをうまく自己責任でハンドルできるわけがない。何度も言いますが、自己責任が自己責任として成り立つ制度的保障をなすべきだと思っております。

 この件も、三度も伺いまして三度とも進展がございませんで、これがいわゆる厚生労働省の行政の本質かと思うと大変悲しく思います。

 どういうことか。ハンセン病でもしかり、在外被爆者でも同じ、本当に一人の人間の視点に立って、一人の国民の立場に立って、厚生労働行政がどんなにか人間に温かなものであるか、そのことが問われているときに、いつも企業とそこの間で、受託した金融機関の間のトラブル処理の問題しかお答えにならないところに、やはり今法案の根本的な欠陥があることを指摘して、私の質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、本案に対し、谷畑孝君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、保守党の五派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。小池百合子君。

    ―――――――――――――

 確定拠出年金法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小池委員 ただいま議題となりました確定拠出年金法案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 修正の要旨は、原案において「平成十三年三月一日」となっている施行期日を、「平成十三年十月一日」に改めるとともに、その他所要の規定の整理を行うものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。木島日出夫君。

木島委員 日本共産党を代表して、確定拠出年金法案に反対の討論を行います。

 本法案は、将来の年金収入を自己選択と自己責任で確保するものとして、新たに、企業の積み立て義務も運用責任もない確定拠出年金制度を導入しようとするものです。

 本法案に反対する第一の理由は、確定拠出年金では、企業が掛金を出した瞬間に企業の責任はなくなり、積み立て義務も運用責任も負わないという問題です。

 このような確定拠出年金の導入は、短期雇用や裁量労働の拡大、解雇規制の撤廃、有期雇用契約の拡大など、いわゆる労働移動の円滑化に対応した受け皿整備であり、企業の年金積み立て負担を回避するものであることは明白であります。企業が給付責任をとらないような年金制度の導入を認めることはできません。

 この制度が必要で、導入を急げというような声は、労働者のどこからも聞こえてこないことを付言しておきます。

 反対する第二の理由は、確定拠出年金では、運用の結果いかんでは将来の給付額が元本割れする危険があることです。その責任を労働者に押しつけるのでは、老後の生活設計に役立つものにならないということです。

 多くの労働者は、資産運用の経験や技術がないばかりか、サービス残業など厳しい労働環境のもとで運用に費やす余裕などないのが現実です。運用益が多少出た場合でも、個人勘定の運用手数料は高額で、年金資産に食い込む危険性もあります。参考人質疑の中でも、外国ではハンドリングコストが二〇%を超え資産の目減りが問題になっている、労働者に責任を押しつけて金融機関が運用コストを回収するのは不公平などの厳しい指摘がされたところであります。

 反対の第三の理由は、ポータビリティーの確保についても、必要とされる中小零細企業や自営業者の実態を見れば、企業型の掛金拠出などは困難で、導入の余地はごく限られているということです。

 再就職先に企業型年金がない場合には、労働者は個人型制度に移行せざるを得ず、自己資金で掛金の積み立てをしなければならない事態に陥ります。ポータビリティーの確保を言うなら、全国一律の公的年金制度の充実、国民年金の空洞化の解消など、国が責任を持って十全な対策をとることこそ優先されるべきであることを強く強調したいと思います。

 以上三点を指摘して、反対討論といたします。(拍手)

鈴木委員長 阿部知子君。

阿部委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、確定拠出年金法案に反対の立場から討論を行いたいと思います。

 まず、本法案は、何といっても、公的年金、とりわけ国民年金の揺らいでいる現状について全く認識を深くいたしていないということから始まります。まずなすべきことは公的年金の充実であり、確定拠出型年金制度は、公的年金を盤石なものにした上で、国民の信頼を回復させるべく取り組むべき課題であると思います。

 先ほども私が申し述べましたように、国民年金については、未納者問題も二百六十五万人、免除者四百万人といたしますと、大体、国民年金の一号だけの加入者二千万人のうち完納者は一千万、半分にしかすぎません。未納と統計されなくてもです。フルに、これは二十四カ月のうちで一カ月でも納めれば納付となっておりますから、実態をとると、完納者は二千万人のうち半分、一千万。

 そして、先ほども申し述べましたように、若者に失業がふえ、フリーターがふえ、何らセーフティーネットを持っていないという中でこれが論議されているということを、私たちは後世への責任としてきちんと自覚して、本法案への態度を決定すべきと思っております。

 さらに、女性の年金制度に至っては、生涯賃金を反映して、女性の年金は、男性平均二十万といたしませば、十万もございません。このことも、この世を支える半分の女性が本当にそういう状態に置かれているということをまず処方せずして、次の三階建ての部分もないと私は思います。

 二点目は、いわゆる企業年金の不確かさ、二階部分の不確かさでございます。

 これは、先ほども申しました厚生年金基金の利下げの問題もございますように、今、企業年金も、果たしてしっかりした給付があるのかどうか明らかではない時代です。何度も、この討論でも指摘いたしましたように、企業年金基本法の成立をまず急ぐべきです。

 三点目は、金融不安の現状でございます。

 きょう、あすにもまた銀行法が上程されますでしょうけれども、金融機関全般の安定性をどのように我が国が国際競争下にたえ得るものをつくるか。特に透明性の問題、情報公開の問題、ハンドリングコストの問題もかかわってまいりますでしょう。そうしたことをきちんとしなければ、我が国の金融資産を外国のえじきにするような、いわゆる国益に反する法案であると思います。

 私は、三つの点からこの法案には反対ですが、最後に、先ほど来自己責任のお化けのように言われます自己責任論についても、先ほどは怒りの余り辻局長に言い置きいたしましたが、やはり相談窓口についてきちんと御検討いただきたく、社会民主党・市民連合を代表しての反対の討論といたします。(拍手)

鈴木委員長 以上で討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 第百五十回国会、内閣提出、確定拠出年金法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、谷畑孝君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 この際、本案に対し、谷畑孝君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、保守党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。山井和則君。

山井委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    確定拠出年金法案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 確定拠出年金は、自己選択と自己責任に基づく初めての年金制度であることから、この制度に対する国民の理解が深まるよう制度内容の周知徹底を行うなど、制度の円滑な実施を図るために必要な環境整備に努めること。

 二 確定拠出年金は、公的年金の上乗せの年金制度の新たな選択肢として、労使合意に基づき導入される制度であり、企業型年金規約の承認に当たっては、労使合意がなされていることの確認を的確に行うこと。

 三 確定給付型の企業年金等から確定拠出年金への移行に当たっては、労使合意がなされていること、並びに従前の確定給付型の企業年金及び移行時における権利の保護が十分なされていることの確認を的確に行うこと。

 四 加入者が資産運用について適切な知識を持つことができるよう、事業主等から加入者に対し、個別の運用商品を含めた資産運用に関する必要な情報提供が行われるようにすること。

 五 受託者責任については、事業主や運営管理機関など確定拠出年金の管理・運営に関わる者は、その内容を十分理解し、受託者責任を踏まえて行動すること。また、政府は、受託者責任の理念が十分に浸透するように努めること。

 六 事業主、国民年金基金連合会や運営管理機関が確定拠出年金の実施に関し業務上保管・使用する個人情報について、その適正な保管・使用に万全を期すよう指導を行うこと。

 七 加入者の利益が図られるよう、運営管理機関(記録関連運営管理機関、運用関連運営管理機関)の幅広い参入とその競争を基本に、管理手数料がサービスに応じて適正な水準となるように配慮すること。また、手数料についての情報が、加入者に適切に提供されるようにすること。

 八 確定拠出年金の拠出限度額など拠出のあり方については、制度の実施状況などを踏まえ、今後とも検討すること。

 九 国民年金の第三号被保険者については、公的年金制度における第三号被保険者に係る取扱いに関する検討結果を踏まえ、確定拠出年金への加入のあり方について検討すること。

 十 年金課税のあり方について、確定給付型の企業年金などとのバランスに留意しつつ、拠出時・運用時・給付時を通じた負担の適正化に向けて検討を行うこと。

 十一 金融・証券市場に対する国民の信頼と安心を確立するため、市場の透明性を高める等の改革を進めるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。

坂口国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたします。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、内閣提出、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

坂口国務大臣 ただいま議題となりました厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 公的年金制度の一元化につきましては、就業構造の変化、制度の成熟化の進展等に対応し、公的年金制度の安定化と公平化を図るため、財政単位の拡大及び共通部分についての費用負担の平準化を図ることを基本として、統一的な枠組みの形成を推進することが必要であります。

 この法律案は、こうした状況を踏まえ、公的年金制度の一元化の一環として、農林漁業団体職員共済組合の年金給付等を厚生年金保険へ統合するとともに、当該共済組合の組合員であった期間を有する者に対する規定を整備する等所要の措置を講ずるものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、農林漁業団体職員共済組合法等を廃止し、旧農林共済組合の組合員を厚生年金保険の適用対象とするとともに、旧農林共済組合の年金給付等のうち、厚生年金相当部分については、厚生年金保険から支給することとしております。

 また、厚生年金相当部分の年金給付に要する費用に充てるため、旧農林共済組合は、厚生年金保険の管掌者たる政府に対して、当該費用に係る積立金に相当する額を納付するとともに、農林漁業団体の事業所等に係る被保険者については、特例保険料率を設定することとしております。

 第二に、旧農林共済組合の年金給付等のうち、旧農林共済組合員期間に係る職域年金相当部分について、統合後もなお経過的に存続する農林共済組合が支給することとしております。

 なお、この法律の施行期日は、平成十四年四月一日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

鈴木委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一日月曜日午後二時五十分理事会、午後三時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会




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