衆議院

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第6号 平成13年11月7日(水曜日)

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平成十三年十一月七日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 鍵田 節哉君 理事 釘宮  磐君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      佐藤  勉君    田村 憲久君

      西川 京子君    野田 聖子君

      林 省之介君    原田 義昭君

      松島みどり君    松野 博一君

      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君

      宮澤 洋一君    吉野 正芳君

      家西  悟君    大島  敦君

      加藤 公一君    金田 誠一君

      五島 正規君    土肥 隆一君

      古川 元久君    三井 辨雄君

      水島 広子君    山井 和則君

      青山 二三君    江田 康幸君

      樋高  剛君    小沢 和秋君

      木島日出夫君    阿部 知子君

      中川 智子君    井上 喜一君

      川田 悦子君

    …………………………………

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   会計検査院事務総局第二局

   長            増田 峯明君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            増井喜一郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 木村  功君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局国立病

   院部長)         河村 博江君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長

   )            澤田陽太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児

   童家庭局長)       岩田喜美枝君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部

   長)           永村 武美君

   政府参考人

   (農林水産省農林水産技術

   会議事務局研究総務官)  西尾  健君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     岡下 信子君

  林 省之介君     松野 博一君

  土肥 隆一君     五島 正規君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     小渕 優子君

  松野 博一君     林 省之介君

  五島 正規君     土肥 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     竹下  亘君

十一月二日

 子供たちが国内で移植を受けられる臓器移植法の改正に関する請願(井上義久君紹介)(第一五七号)

 同(太田昭宏君紹介)(第一五八号)

 同(鍵田節哉君紹介)(第一五九号)

 同(小坂憲次君紹介)(第一六〇号)

 同(中山太郎君紹介)(第一六一号)

 同(二階俊博君紹介)(第一六二号)

 同(野田聖子君紹介)(第一六三号)

 同(伴野豊君紹介)(第一六四号)

 同(樋高剛君紹介)(第一六五号)

 同(三ッ林隆志君紹介)(第一六六号)

 同(宮腰光寛君紹介)(第一六七号)

 同(持永和見君紹介)(第一六八号)

 同(山井和則君紹介)(第一六九号)

 同(武山百合子君紹介)(第一七九号)

 同(津島雄二君紹介)(第一八〇号)

 同(中村哲治君紹介)(第一八一号)

 同(松岡利勝君紹介)(第一八二号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一八三号)

 同(甘利明君紹介)(第二二三号)

 同(奥谷通君紹介)(第二二四号)

 同(川端達夫君紹介)(第二二五号)

 同(木下厚君紹介)(第二二六号)

 同(小池百合子君紹介)(第二二七号)

 同(新藤義孝君紹介)(第二二八号)

 同(田村憲久君紹介)(第二二九号)

 同(武山百合子君紹介)(第二三〇号)

 同(町村信孝君紹介)(第二三一号)

 同(阪上善秀君紹介)(第二三五号)

 同(自見庄三郎君紹介)(第二三六号)

 同(福島豊君紹介)(第二三七号)

 同(横光克彦君紹介)(第二三八号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二六三号)

 同(岩屋毅君紹介)(第二六六号)

 同(奥山茂彦君紹介)(第二六七号)

 同(佐田玄一郎君紹介)(第三一九号)

 食品衛生法の改正・運用強化等に関する請願(古川元久君紹介)(第一七〇号)

 同(棚橋泰文君紹介)(第一八四号)

 同(北橋健治君紹介)(第三二〇号)

 同(仙谷由人君紹介)(第三二一号)

 小規模作業所等成人期障害者施策の拡充に関する請願(若松謙維君紹介)(第一七一号)

 野宿生活者自立支援法制定に関する請願(古川元久君紹介)(第一七二号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二六二号)

 同(金田誠一君紹介)(第三一八号)

 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(北橋健治君紹介)(第一七八号)

 同(東門美津子君紹介)(第二六五号)

 同(熊谷弘君紹介)(第三〇六号)

 同(鈴木康友君紹介)(第三〇七号)

 年金制度の改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(大森猛君紹介)(第一九七号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一九八号)

 同(児玉健次君紹介)(第一九九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇〇号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二〇一号)

 同(中林よし子君紹介)(第二〇二号)

 同(松本善明君紹介)(第二〇三号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二〇四号)

 同(山口富男君紹介)(第二〇五号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三二二号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三二三号)

 医療費負担引き上げの中止に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二〇六号)

 同(大森猛君紹介)(第二〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二〇九号)

 同(中林よし子君紹介)(第二一〇号)

 同(不破哲三君紹介)(第二一一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一二号)

 同(大森猛君紹介)(第二八四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二八六号)

 同(不破哲三君紹介)(第二八七号)

 介護、医療、年金制度の拡充に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一四号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二一五号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二一六号)

 同(大森猛君紹介)(第二一七号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二一八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二〇号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二二一号)

 同(山口富男君紹介)(第二二二号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三一三号)

 同(大幡基夫君紹介)(第三一四号)

 同(児玉健次君紹介)(第三一五号)

 同(中林よし子君紹介)(第三一六号)

 同(春名直章君紹介)(第三一七号)

 薬害ライ症候群後遺症に係る医薬品機構障害年金者認定に関する請願(福島豊君紹介)(第二三四号)

 国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願(大幡基夫君紹介)(第二五九号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二六〇号)

 介護保険制度の緊急改善に関する請願(土肥隆一君紹介)(第二六一号)

 同(小沢和秋君紹介)(第二九七号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二九八号)

 同(大森猛君紹介)(第二九九号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三〇〇号)

 同(児玉健次君紹介)(第三〇一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三〇二号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第三〇三号)

 同(松本善明君紹介)(第三〇四号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第三〇五号)

 医療保険制度の拡充に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二七五号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二七六号)

 介護、医療、年金制度拡充に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二七七号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二七八号)

 同(中林よし子君紹介)(第二七九号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二八〇号)

 介護、医療、年金の拡充に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二八一号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二八二号)

 患者負担引き上げ中止に関する請願(桑原豊君紹介)(第二八三号)

 乳幼児医療費無料制度の創設に関する請願(石井郁子君紹介)(第二八八号)

 同(桑原豊君紹介)(第二八九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二九〇号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二九一号)

 同(中津川博郷君紹介)(第二九二号)

 同(葉山峻君紹介)(第二九三号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二九四号)

 同(前原誠司君紹介)(第二九五号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第二九六号)

 介護保険の改善、高齢者の医療費負担増の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三〇八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三〇九号)

 同(松本善明君紹介)(第三一〇号)

 同(山口富男君紹介)(第三一一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局参事官増井喜一郎君、総務省大臣官房審議官木村功君、法務省民事局長山崎潮君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、健康局国立病院部長河村博江君、医薬局長宮島彰君、医薬局食品保健部長尾嵜新平君、労働基準局長日比徹君、職業安定局長澤田陽太郎君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、老健局長堤修三君、保険局長大塚義治君、年金局長辻哲夫君、農林水産省生産局畜産部長永村武美君及び農林水産技術会議事務局研究総務官西尾健君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。棚橋泰文君。

棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文でございます。

 まずもって、坂口厚生労働大臣、そして桝屋、南野両副大臣を初めとする厚生労働省の皆様方に、大変お忙しい中、また、大変厳しい我が国の難局を打開するために本当に日夜必死になって御精励いただいておりますことに心から敬意を表させていただく次第でございます。

 今、厚生労働省が抱えている問題点というのは、まさに日本の一番大事な問題ばかりを御所管されていらっしゃいまして、年金、医療、介護はもとより、緊急のあるいは抜本的な雇用対策、さらには、後ほど御質問させていただきますが、BSE等のやはり食品を中心とした健康問題等、本当に多岐にわたる分野、そしてまた国民の一番関心の高い分野でございます。ぜひこの分野におかれまして、厚生労働大臣を初めとする厚生労働省の皆様方の最大限の御健闘をまずもって心からお祈り申し上げ、また、お願い申し上げる次第でございます。

 私の方は、限られた時間の中で、きょうは、雇用問題それからBSEに対して質問をさせていただきたいと思います。

 まず、厚生労働大臣の御所見と御決意を伺いたいのは、先般、坂口厚生労働大臣が、解雇四原則の法制化についても検討していくというような報道等も拝聴させていただきましたが、多分この大臣のお考えの背景には、今までの終身雇用制の中での我が国の雇用システム、また雇用の安定性という枠組みが好むと好まざると崩れつつある中で、ある程度の雇用の流動化あるいはある程度のまさに失業の常態化という前提の中で、いかに円滑に、失業なきとまでは言わないにしても、失業が可能な限り少ない形での雇用の流動化、労働の移動が図れるかということを日夜お考えになった中での御発言だと思っております。

 今般、とりあえず五・三%まで上がったこの厳しい失業情勢に対しての緊急的な御施策もお考えだと思いますが、一方で、今の失業の情勢というのは、短期的なものが原因だけではなくて、例えば我が国の産業構造のあり方、特に中国を初めとする東南アジア諸国との関係での空洞化の問題、あるいはそもそも我が国の勤労に対する意識の変化等々、さまざまな要因を抱えているというふうに私は考えております。

 そこで、厚生労働大臣として、十年、二十年という観点から見たときの今後の雇用情勢の予測をもとに、我が国の雇用情勢、雇用政策として抜本的にいかなる政策を考えていき、また、抜本的に何を変えていくことが必要か、どのようにお考えかということについて、まず御所見を伺いたいと思います。

 どうぞよろしくお願いいたします。

坂口国務大臣 おはようございます。

 大変大きな問題をちょうだいいたしましたが、御承知のように、日本の人口動態でございますが、一つの変わり目を迎えているというふうに思います。今までは、日本の人口もどんどんとふえていく一方でございましたけれども、ちょうど富士山の頂上のようなときを今迎えておりまして、平成五年ぐらいからぼつぼつ労働力人口も減り始めるわけでございます。統計によりますと、二〇〇五年から二〇一〇年まで、この間の五年間の間に日本の労働力人口は百二十万ぐらい減少するというふうに言われております。また、この後はもっとまた減っていくわけでございますから、非常に労働力人口が減り始める、そうした過渡期に今私たちは立っているというふうに理解をいたしております。

 しかし、そうした十年先、十五年先はともかくといたしまして、現在におきまして雇用が非常に厳しい状況にあることもまた事実でございます。現在のこのグローバル化の中、大変国際化をいたします中で、日本の第一次産業そして第二次産業が非常に厳しい状況に立っておりますし、この国際化が続きます限り、これからもまだこの第一次産業、第二次産業が非常に厳しい立場に立たされることは間違いないというふうに思っております。

 それを考えますと、先進諸国の例を見るとわかりますとおり、欧米におきましても第三次産業を非常に大きな分野にとっているわけでございますので、日本もまだまだ第三次産業の分野の方に大きく転換をしていかなければならないだろうというふうに思います。現在大体六〇%少々でございますけれども、これを七〇%ぐらいに第三次産業を持っていく必要があるだろう、それが一つでございます。

 現在、いろいろなミスマッチがございますけれども、その中で、比較的言われませんけれども、今まで二次産業に従事をしておみえになりました皆さん方がやはり三次産業の方に行きにくいということがあるわけでございまして、その辺の整備をこれからしていく必要があるだろう。

 そして、もう一つは、何と申しましても、新しい雇用の創出を考えますときに、創造的な新しい産業の育成ということが大事であることは論をまたないというふうに思います。

 そうした大きな流れの中で日本のこの雇用状況というのは動いていくだろうというふうに思っておりますが、当面の課題といたしましては、さまざまな形のミスマッチの解消を初めといたしまして、そして、現在お勤めになっているところから次にお勤めになるところへの円滑な労働の移動というのが行われるように十分な配慮をしていかなければならないと考えているところでございます。

棚橋委員 どうもありがとうございました。大臣の抜本的な視野からとそれから当面の問題、大変複雑な状況であるにもかかわらず、明確に御認識をされ、また、雇用問題に抜本的にお取り組みいただく姿勢を御所見として述べていただきまして、心から御礼申し上げます。

 それでは、雇用のミスマッチの問題、今大臣からお話がございましたので、少しこれを具体的にお伺いしたいと思っております。

 雇用のミスマッチと一般には言われておりますが、これはいろいろな角度から分析しなければいけませんし、また、ミスマッチと言われても、職業能力だけの問題ではなくて、例えば、必要な生活費から見たときの年収とのミスマッチ、あるいは、よく言われますのは、前の職場では幾らもらっていたから今度はその職場の何割以上欲しいという形でのミスマッチ等、いろいろな形で考えていかなければいけないと思います。

 私は、これは、自発的失業と非自発的失業で分けて考える、あるいは男性と女性でどうなっているのか、あるいは前の職種がホワイトカラーかブルーカラーか、そういった観点からの分析や、それに基づくミスマッチ対策も必要だと思っておりますが、きょうは、時間の関係で、年齢別に見た具体的なミスマッチ対策について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、年齢で見ると、雇用の問題、一番深刻なのが、三つの山があると考えておりまして、第一が二十四歳以下、第二がいわゆる中高年、特に中年層でございますが、四十五歳から五十四歳、簡単に言うと五十歳を中心とする世代、そして第三が六十歳を超える世代だと思っております。

 そこで、私は、本日は時間の関係で、若年層とそれから五十歳前後の方の雇用のミスマッチ対策、これも、当面の問題もそうでございますが、中長期的な視野からどうするかということについてお伺いをしたいと思います。

 と申しますのは、九月の最新の失業率、五・三%ということになっておりますが、御承知のように、一番失業率が高い世代は二十四歳以下で、一一%でございます。ところが、一一%の失業率の中で、いわゆる有効求人倍率は〇・九六。つまり、実は、職種に不満あるいは収入に不満を言わなければ、基本的に、二十四歳以下の方に関しては、有効求人倍率という数字だけから見た限りにおいては職業がある。もちろん、収入の問題、あるいは自分が好む職業ではない、あるいは自分がさらに高いキャリアを求めているという部分もあると思うのですが、一方で、我が国において、あるいは我が国の強みとされた勤労は美徳であるという分野、そういった意識が若年層に失われつつあるのではないか。こういったものも含めて、厚生労働省として、場合によっては他省庁と連携して、どういうことをこれから考えていくかということについて第一点はお伺いしたいと思います。

 第二点は、いわゆる四十五歳から五十四歳。この世代は、失業率でいうと平均よりも低うございまして、九月の失業率の統計でも、決して低いとは言いませんが、それでも三・六でございます。ところが、有効求人倍率は〇・三九、職に一切文句を言わなくてもほぼ三人に一人強しか再就職ができないという非常に厳しい情勢にある。

 そして、何よりも、この御世代の厳しいのは、例えば、お子さんが大学等に行っておりますと非常に生活費がかかる、あるいは住宅ローン等に追われている。自分自身にぜいたくをしようと思わないけれども、そういった要因があって生活費がかかる世代の中で再就職を余儀なくされても、なかなか新しい職場も見つからない、あるいは、運よく見つかっても収入が下がってしまう。こういった問題に対して、厚生労働省としては、例えば年収が下がってもやっていけるようなシステムを考えるということも含めて、私は抜本的に考えていかなければいけないと思いますが、その点についてどうお考えかということをお伺いしたいと思っております。

 それから、大変恐縮ですが、時間の関係もございますので、今の点は安定局長に、それから保健部長に一問だけ質問をさせていただいて質問を終わらせていただきたいと思いますが、BSE対策でございます。

 いわゆる狂牛病、そもそも狂牛病と言われること自体が大変大きな不安を呼ぶ問題でございますけれども、厚生労働省として今までどういう施策をとってきたのか、そして、何よりも今、消費者の皆様方は非常にBSEに関してはいまだに多くの心配と不安を抱えております。政府の方で幾ら安全宣言を出しても、残念ながらそれが信用できないという声もございます。きちんとした対策を組んでいくこと、これはまず第一でございますし、今取り組んでいる施策、それから今後行うべき施策について簡単に御答弁をいただきたいと同時に、何よりも、そういった消費者の心配あるいは不信に対して、政府として今後どのような努力をしてこれを払拭していくか、その点について、食品保健部長から御答弁をいただければと思います。

澤田政府参考人 棚橋委員から二点ございました。

 まず第一点、二十四歳以下の若い方々の高失業率の問題でございますが、いろいろ理由はございますが、まず基本的には、若い方々の職業意識が不十分であるという点があろうかと思います。そういうことで、自発的に安易に離職をしてしまったり、あるいは早期に離職をしてしまうというような失業が多いというのもまず事実でございます。

 また、そうした近年の基本的な傾向に加えまして、雇用情勢が大変厳しいという中で、自分の希望する内容の仕事がなかなかないということで、いわば妥協して就職をするということで、結果的に早期に離職につながってしまうという面もございます。

 それから、企業の、求人サイドの問題といたしまして、即戦力志向ということで、学卒者に対してもできるだけ専門的な能力、高い知識等々を求めますので、そうした面でなかなか合わないという方も多いということで、学卒未就職者が相当出てくるという状況にございます。

 これにつきまして、私ども、まず基本的には、文部科学省と連携いたしまして、学校教育の段階から、職業観、職業意識というものの啓発について、従来は若干足りなかったという反省を踏まえて、教育といいますか指導といいますか、そういうことをしていくということをやっております。そうした意味で、高校生のインターンシップ制度だとか大学生のインターンシップというものを、文部科学省、経済産業省等とも連携をとりながら進めておりますが、今国会でお願いいたします補正予算でもそうした面の充実をお願いしております。

 それから、実際、現場で若い方々が職業体験を積むということが大事でございますので、現在仕事についていない方々で就労意欲の比較的ある方、こういう者を企業の方に三カ月ほどお預けして、実際現場で使っていただく、いわゆるトライアル雇用ということで、体験を積みながら実践的な能力開発を積み重ねるということも新しく試みたいと思っております。

 それから、中高年齢者、四十五から五十四歳の問題でございますが、これは大変難しい問題でございます。

 基本的には、住宅の問題、教育の問題等々、中高年期に生活コストが高いという問題がございます。この辺についての構造をどう直していくかという点がございまして、それと裏腹で、生活費が高くなるので年功的な賃金制度であるというものがございますので、両々相まって、賃金制度もだんだん、いわば業績、能力反映ということで、年功カーブが緩くなり、若年期に能力発揮に比較的見合った賃金がペイされるということになってまいりますので、例えば、住宅の問題もなるべく早いうちから取得するとか、あるいは教育の問題でいえば、全部親がかりじゃなくて、本人が稼得を得てから返済するとか、いろいろ、全体制度を直していこうと思いますが、特に住宅でいえば、棚橋先生前々から御指摘のように、家の流通市場の問題等々もございますので、そうした根本的な問題も、厚生労働省として関係各省ともよく相談しながら、また、いろいろお願いしながらやっていきたいと思います。

 不十分かもしれませんが、以上でございます。

尾嵜政府参考人 BSEの件につきましての御質問にお答えを申し上げます。

 今般の国内におきますBSEの発生を受けまして、緊急対策といたしまして、十月十八日より、BSEの全頭検査を実施いたしますとともに、食肉処理時におきます特定危険部位の除去、焼却を法令上義務化したところでございます。これらによりまして、同日以降、BSEに罹患した牛由来の食肉等が流通することはなくなったというふうに考えているところでございます。今後、こういった検査体制の充実に努めていく考えでございます。

 さらに、加工食品につきましても、牛の特定危険部位を含みます可能性のあります加工食品の製造加工業者に対しまして、自主点検、販売の自粛等の措置を講じたところでございます。こういった内容につきましても、今後、立入調査等を行いますことも含めて、フォローアップをしていきたいというふうに考えているところでございます。

 御指摘の、国民に対します情報提供も含めましたところでございますが、厚生労働省といたしましては、これまでもホームページ等によりまして、御説明申し上げました対策等につきまして適切な情報の提供に努めてきたところでございますが、引き続き、農林水産省とも連携を図りながら、テレビ、ラジオ、新聞あるいは広報誌などによります政府広報を活用いたしまして、国民に対しまして正確でわかりやすい情報の提供を行っていくこととしておりまして、国民の不安解消に努めてまいりたいという考えでございます。

 以上でございます。

棚橋委員 ありがとうございました。さらに厚生労働行政に御精励されますことを心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 上川陽子君。

上川委員 おはようございます。自由民主党の上川陽子でございます。

 坂口厚生労働大臣の日ごろの御姿勢に対しましては、本当に深く敬意を表しておるものでございます。多くの難問を抱えられまして、御心労も大きいかと存じますけれども、大臣らしい御決断をこれまで以上によろしくお願いを申し上げまして、時間が大変短いので質問に入らせていただきます。

 きょうは、二つテーマということで盛り込ませていただきます。一つは骨髄バンクの問題、そしてもう一つは外国人労働者の問題ということでお願いをいたしたいと思っております。

 まず、骨髄バンクのことでございますけれども、白血病あるいは血液難病の患者さんにとりまして、骨髄あるいは臍帯血によります造血細胞移植、これは命の根幹にかかわる大変重要な治療方法ということで、最近は大変患者さんの数もふえてまいりまして、また、移植によって健康を回復された方々が大変多くなっているということでございます。ところが、骨髄液とかバンク利用に関しましては、費用が保険対象になっていないということもございまして、移植件数がふえればふえるほど骨髄移植推進財団さんの方の負担がふえている。それに伴いまして、患者さんの側の協力費という形での負担もふえているということでございます。骨髄の推進財団の基本財源を取り崩すというような事態にも陥っているということも承っております。

 この問題につきましては、平成十一年の二月に、既に患者さんの会とかいろいろな団体が、厚生労働大臣に対しまして、骨髄移植にかかわる医療保険適用についての要望あるいは嘆願という形で活動をされておりますが、なかなか状況の改善が見られないということで、ことしに入りまして、改めて坂口厚生労働大臣初め皆様に要望を出されているというところでございます。政府といたしまして、こうした御要望、具体的な御要望に対しまして現在どのように取り組まれる方針なのかということにつきまして、また、予算の折ということもございますので、平成十四年度の予算ということも絡めてお答えいただきたいと思います。

坂口国務大臣 上川議員の御指摘になりました問題は、大変大事な問題だというふうに私も思っております。これは、特に白血病の皆さん方にとりましては、骨髄移植でございますとか、そうしたことは命綱でありますので、ここはやはりひとつ国の方も何とかできるだけのことはしなければならないというふうに思っている次第でございますが、しかし、財団でございますので、財団は財団として、非常に厳しいこの状況ではございますけれども、ひとつ御努力をいただきたいというふうに思っております。

 平成十四年度の予算につきましては、やはりこうした補助金の問題は全体に抑制をしていくという方向にあるものですから、大体平均いたしまして三%ぐらい補助金を減額する方向になっているわけでございます。そういたしますと、この財団におきましても七百万円ぐらい減額になる予定になるわけでございますが、こういう事態でございます。大変大事なことでございますから、何とかそこをひとつ政府の方も頑張って、そして、そうならないようにしていかなければならないと今努力をしているところでございます。

 それから、あわせまして、もう一つは、先ほども少しお触れになりましたけれども、骨髄移植にかかわります医療保険の保険適用の、保険の問題がございます。骨髄移植の場合には、平成十二年度四月におきましては、二万一千点から二万二千六百点へ引き上げる、あるいは、移植骨髄穿刺におきましては、一万五千点から一万六千六百点へと引き上げにしたわけでございますが、ことしはまた改正の年に当たっておりますので、まだ額を決定しているわけではございませんけれども、何とか引き上げをしたいというふうに思っております。そうしたことで、ぜひ、皆さん方の御期待に一〇〇%おこたえすることはなかなか難しいのだろうというふうには思いますけれども、我々といたしましても最大限の努力をしていきたいと思っているところでございます。

上川委員 先ほど大臣もおっしゃいました命綱ということでございますので、ぜひともその方向に向かいまして、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

 次に、外国人労働者ということで御質問を移らせていただきます。

 平成二年に入管法が改正されまして十年になります。この間、私の地元静岡県でも、製造業が大変多い浜松市を中心に、日系のブラジル人及びその家族の方々が働きになっていらっしゃるということでございまして、浜松市の場合には人口の大体三・四%、日系ブラジル人及びその家族の皆さんが生活していらっしゃる、こういう状態でございます。

 日系ブラジル人の多くというのは中小零細企業の工場に雇用されているということでございますが、その多くは生産ラインの一部を請け負う形の請負業者の皆さんのところで働いていらっしゃる、こういう間接雇用という形態をとっています。この間接雇用が、なかなか実態が見えにくいということでございまして、社会保険の加入ということにつきましても十分ではないというようなことも御指摘ございますし、また一部に、違法派遣に近い雇用がなされているのじゃないか、こういう御意見も見られるということでございます。

 そこで、まず外国人労働者に対しまして、間接雇用の実態はどうなっているのか、人材派遣業法に抵触するという形での、何らかの形で違法な雇用が行われていないかどうか、また、もしいるとするならば、政府としてどのような対応をとるおつもりであるのかということにつきまして、お願いをいたします。

澤田政府参考人 まず、外国人労働者の間接雇用の実態でございますが、これは私ども、年一回、六月一日現在で、外国人を直接間接に雇用しておりますといいますか、使っております事業場から報告書をいただいております。昨年、六月一日現在で申し上げますと、いわゆる先生御指摘の間接雇用につきましては、三千八百五十四事業場で間接雇用の外国人労働者三万六千六百九人ということで、私どもの調査によります外国人労働者の中に占めます間接雇用の割合、これは四一・八%になっております。年々ふえております。

 それで、私どもの対応でございますが、御指摘のように、製造業の生産ラインに請負と称して行われております事業の中には、いわば注文主の事業場の従業員と混在いたしまして、かつ直接注文主の指揮命令を受けて業務に従事するなど、実態として労働者派遣となっている疑いのある事例も確かに存在いたします。こうした違法な労働者派遣事業につきましては、厚生労働省の告示で、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示というのがございまして、この告示等に照らして、公共職業安定所の方で事業場の情報収集を行い、臨検指導を行っております。その結果、いわゆる偽装請負だというように考えられるところにつきましては、是正の指導文書を交付して、法違反があれば直してもらうということをやっております。

 今後とも、そうした対応をしてまいりたいと思いますが、御指摘の社会保険の問題でございますが、そうした事業場の情報を関係機関に伝達するということで、この社会保険適用問題につきましても適切に対応していきたい、こう思っております。

上川委員 特に、景気が大変状況が悪いということでございまして、外国人労働者の側からの相談につきましても大変ふえているということでございますので、ぜひとも適正な形での雇用がきちっと成り立つように御指導いただきたいというふうに改めて申し上げたいと思います。

 次に、社会保障の、地域社会とのかかわりということでもう少し質問をさせていただきますけれども、最近の外国人労働者の皆さんの姿勢というか生き方というのは、今までのように出稼ぎという形で来るのではなくて、家族を連れて、比較的長い時間定住するという形に変わってきています。それに伴いまして、子供さんの教育の問題、それから病気になったときの医療保険の問題、さらに、日本のシステムでいけば年金の問題という形で社会保障面での問題も出ておりますし、また、地域社会の中の一市民として暮らしているということで、犯罪というか、地域住民の皆さんとのトラブルにつきましてもふえている、こういうふうな実態でございます。

 医療現場というところで見てみますと、実際医療保険への加入者が大変少ないということでございますし、また、高額医療費の未払いということも発生している。さらには、自治体の方から通訳という形で専門の方を雇って現場の方に派遣しているということで、自治体の負担も非常に大きくなっているという声も聞かれております。

 先月の十八日、十九日に浜松市で、外国人が多数居住していらっしゃる市町村の皆さん、十三都市の市町の皆さんがお集まりになりまして、これは浜松市なんですけれども、浜松市で集まりまして、第二回外国人集住都市会議というのが開催されました。そのときにも、自治体、一自治体でなかなか対応できない状況を踏まえて、国あるいは県に要望していくという形で、幾つかの提案、要望が出されています。

 例えば、健康保険と年金、介護保険のセットという形で今日本の中ではシステムがあるわけでありますが、この加入条件、セット加入の条件の緩和をするというような御要望でありますとか、あるいは、母国に帰国する際に、これまで払いました保険の年賦額をその時点で返還するというような形での制度ということにつきましても要望が出されています。

 政府として、こうした外国人労働者定住に伴い発生する自治体の負担ということに対しまして、国としてどのような対応を考えていらっしゃるのか。また、こうした要望の具体的な項目につきまして、よろしく考えていらっしゃることを教えていただきたいと思います。

 ちょっと時間がないのでもう一つ加えますと、年金の場合につきましては、この集住会議におきましても、相手の国と通算協定というような形で締結すべきではないか、こういう御指摘もございまして、年金保険関係の二国間協定ということにつきまして、現状及び今後ということで、どのように取り組まれていらっしゃるのか。あわせてお願いを申し上げます。

桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 上川先生から、先般行われました外国人集住都市会議の御紹介もいただきまして、特にブラジル、日系ブラジル人の皆さん方が最近は大変定住という形でこちらに来られている、こういう状況も御紹介いただき、地域との関連、特に社会保障を中心にさまざまな要望が出ておる、こういう御紹介をいただいたわけであります。おっしゃるとおりでありまして、最近のそういう状況に対応した政府の取り組みが必要だというふうに私どもも考えております。

 御案内のとおり、外国人については、昭和五十六年の難民条約の批准以降さまざまに国籍要件の撤廃等手当てがされまして、ただいまではほとんど日本人と同じ、同様の制度の適用が行われているという状況でございます。ただ、今先生からお話がありましたように、セット加入の問題であるとか、保険料返還の問題であるとか、さまざまな要望を持っておられるということも聞いております。

 厚生労働省といたしましても、社会保障制度の分野では、医療保険の未加入の御指摘がありましたけれども、ともかくこの加入をしていただくということが極めて大事でありまして、この加入促進に対する取り組み。それから、高額医療費のお話がございました。恐らく委員も御承知だろうと思いますが、未収金の一部について補助を行うなどの取り組みを今日までしておりますけれども、さらに、今先生からもお話ありました外国人集住都市会議の皆さん方からも近々陳情をいただく予定と聞いております。

 さまざまな要望について改めて承りまして、我が省として取り組めることをしっかりと検討していきたいというように考えております。さまざまな運用でできることもあると思っております。取り組みを進めたいと思います。

 それから、年金について、お尋ねをいただきました二国間協定について順次取り組んでいるということも御承知おきだろうと思いますが、恐らくブラジルの問題が念頭にあろうかと思います。

 年金の問題については、相手国の年金制度の仕組みとか人的交流の状況とか、さまざまな問題を勘案しながら優先順位の高いものから取り組んでいるわけでありますが、直ちにブラジルとの協定交渉というのはなかなか難しい問題もございますが、委員の御指摘を踏まえて取り組みを進めたいと思います。

上川委員 時間が来ましたけれども、浜松を中心に、また東海三県ということで、平成二年の改正から大変いろいろ問題が地域社会の中で起きているということで、大きなキーワードとしては、地域で共生していくという形での社会のインフラを整備することが非常に大事になってくる。これから、日本の雇用状況というのも、外国人の雇用というのも一部取り組まなければいけないのではないかということで、国としても取り組みを始めていると思いますけれども、十年の経験が自治体の方にもあるということでありまして、大変悩みながら、また、前向きに共生に向けての地域社会づくりをしていらっしゃる。こうした実態を踏まえながら、教訓にして、ぜひともこれから日本の、大きな国の方針ということに対して取り組んでいただきたいということでお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 青山二三君。

青山(二)委員 皆様、おはようございます。公明党の青山二三でございます。

 坂口厚生労働大臣には、本当に連日連夜の激闘、大変ありがとうございます。きょうも質問をさせていただきますが、よろしくお願いいたします。

 まず初めに、雇用問題についてお伺いをしたいと思います。

 世界的なIT不況に伴いまして大変な不況が全世界を覆っている。アメリカの同時多発テロも重なった。我が国では、狂牛問題とかいろいろなことが出てまいりまして、日本全国、不況に覆われている、景気が大変悪いという昨今でございます。

 先ごろ発表されました九月の完全失業率は五・三%を記録いたしまして、過去最高でありました七月、八月を一気に〇・三%上回ってしまいました。完全失業者の数も三百五十七万人、これも過去最高でございます。

 坂口厚生労働大臣は、雇用情勢は緊急事態を迎えたという御認識を示されておりますけれども、まことにそのとおりだと私も思っております。雇用情勢は今後さらに悪化するおそれがあるとも言われておりますが、本当に今後、これからの雇用対策に誤りは許されない、こういう状況でございます。このように緊迫いたしました局面に臨まれる坂口厚生労働大臣の御心労も大変なものと思いますけれども、政府全体として、強い危機意識を持って実効ある雇用対策を打つべきであると思います。初めに、この難局を克服するための坂口大臣の強い御決意をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 今お話しいただきましたとおり、雇用情勢は非常に厳しさを増しているわけでございまして、この九月の値が完全失業率が五・三%と一度に〇・三%上がりましたことは、近年なかったことでありますだけに、我々も非常に大きな衝撃を受けたわけでございます。

 九月、十月の状況を考えてみますと、確かに、九月にはアメリカのテロ事件があり、そして日本におきましては牛海綿状脳症の発生といったこともあったわけでございます。

 これらのことが、それじゃ九月にどれだけの影響を与えたのかということを考えますと、九月、確かに旅行会社の問題でございますとか、それから航空会社に与えました影響でございますとか、すぐにテロの影響が出たもの、それから牛海綿状脳症の影響の出たもの、そうしたものもございますけれども、まだ九月には全部そんなには出なかった。むしろ十月の方がその影響は大きいのではないかという気がいたしまして、そういたしますと、十月にはさらに厳しい結果が出るのではないかという心配をいたしているところでございます。

 そして、小泉内閣が掲げております不良債権の処理につきましては、まだ十一月からでございますから、九月、十月はまだ不良債権のそうした本格的な影響というのは受けていない時期でございますので、これまた大変心配な種の一つでございます。こうしたことを考えていきますと、まさしく緊急事態でありまして、今までの雇用対策だけではなかなか乗り切ることができないのではないかという気がいたしております。

 そうした意味で、今までの雇用対策に加えまして、もう少し大きな動きが必要になってくる。その大きな動きの一つといたしましては、これは労使によりますところのワークシェアリングの話がかなり煮詰まってきて、煮詰まるというところまでいっていないかもしれませんけれども、話し合いがある程度進んできている。そういうことを考えますと、こうしたこともこれから大きく取り上げていかなければならないことの一つではないかというふうに思います。

 それから、我々、雇用問題ということを考えますと、どういたしましてもいわゆる終身雇用の正社員の皆さん方のことだけが頭にありますけれども、最近ではパートタイムの皆さん方も非常にふえてきておりますし、あるいはまた自営業の皆さん方が職をやめられると申しますか、自営業を廃業される皆さん方もこれまた非常にふえてきているわけでございますので、そうした皆さんもそういたしますと失業者に加わっておみえになるわけでございますから、もう少し大きな枠で、自営業の皆さん方に対してどうするか。あるいはまた、広い雇用の中で、パートタイムやあるいは派遣業の皆さん方も含めまして、もう少し広い意味で雇用問題をどう考えるか、そうしたことを念頭に置きながら対策を立て直さなければならない時期に来ておるのではないか、そんなふうに今考えている次第でございます。

青山(二)委員 いろいろと大臣から御決意なり今後の状況などお伺いいたしましたが、御答弁の中にもありましたワークシェアリングなんですけれども、十月の三十日の記者会見の折でございましたでしょうか、いよいよワークシェアリングの導入に向けた労使間の調整に乗り出すような意向を示されたように私はお聞きいたしましたけれども、また日経連あるいは連合も雇用情勢を改善するために共同宣言なども発表しているようでございます。いよいよ我が国もワークシェアリングに向けた本格的な取り組みをするときが来たように思うわけでございますけれども、この点につきましては、大臣、いかがお考えでしょうか。

坂口国務大臣 ワークシェアリングは、先ほど申しましたように、労使の間でも話し合いがかなり進んできているというふうに承っております。九日には政労使の三者会談もございますので、そうした場をとらえまして、この問題を今後どうしていくかということのお話し合いをしたいというふうに思っております。

 このワークシェアリング導入の前提といたしましていろいろ考えておかなければならない問題がございますが、一つは、労働時間短縮に伴い賃金の取り扱いをどうするかという難しい問題がございます。これをどうするか。

 それから二番目には、時間当たりの賃金を明確化することができるかどうか。これも大変難しい問題でございますが、ワークシェアリングを実現いたしますときにはこれらのことも十分考えなければならないというふうに思います。

 そして三番目には、景気変動に対しまして所定外労働時間の調整で対応してきたという我が国の雇用慣行をどう考えるか。今までは景気が変動いたしますといわゆる所定外労働でそれをふやす、減らすということで調整をしてきたわけでございますが、こうした今までの雇用慣行をどのように整理するかといったような問題も含まれておりまして、こうしたことを一つ念頭に置きながら、非常に大事な問題だということを十分認識しながら、これからやっていかなければならないと考えているところでございます。

青山(二)委員 一九七〇年代には欧米でも大変失業率が深刻な問題になったときに導入されたということでございまして、また一九八三年にもオランダで一一・七%の失業率を、このワークシェアリングを導入して二〇〇〇年には二%に引き下げているという例があるようでございますので、諸外国の例なども参考にしながら進めていただきたいと思っております。

 では次に、雇用問題に対しまして大変必要な措置というのは近く提出されます今年度の補正予算案に盛り込まれておりまして、一刻も早い補正予算の成立が待たれるわけでございます。この予算案の中には、職業訓練つきの失業給付延長制度、また緊急地域雇用創出特別交付金の創設、自営業者等の失業に対する生活資金貸付制度の創設、また住宅金融公庫ローンの返済困難者への救済策など、私ども公明党が主張してまいりましたものが数多く反映されているようでございますけれども、これらの施策を一つ一つ実効あるものにしていかなければこの難局を打開することは到底できないと思っております。

 本格的な構造改革もいよいよこれからが本番でございまして、雇用情勢はさらに深刻化する、予断は許さない、このように思っております。ですから、今あらゆる状況を適切に判断しながら、迅速かつ果敢な対策が求められているわけでございますが、この万全の安全網、セーフティーネットに向けた構築にどのように取り組んでいかれるのか、お伺いをしたいと思います。

南野副大臣 狂牛病がございましたり、狂牛病じゃないですね、牛の海綿脳症がございましたり、またテロがございましたり、このたびの国会が雇用対策国会と言われながらも何かかすんでいるように見られているのではないかと思いますが、先生御激励いただきました厚生労働大臣とともに一生懸命頑張っているところでございます。

 先生がお尋ねの万全の安全網構築はいかがかということでございますが、今の厳しい雇用情勢の中では、今後の構造改革を実施する過程で予想される厳しい状況に的確に取り組んでいこうというふうに思い、その中でセーフティーネットの整備に取り組んでいく必要があるのではないか、そのように思っております。

 このための労働省の施策といたしましては、先生も少しお触れになられましたが、雇用保険の訓練延長給付の拡充、または、廃業した自営業者などへの一定の失業に対する生活資金貸付制度、これは雇用保険が切れた方も含めているわけでございますが、そういった制度を創設し、セーフティーネットの整備というところに向けていきたいと思っております。

 二番目には、新たな緊急地域雇用対策特別交付金、これを創設するということでございます。先生御存じのように、三千五百億を今お願いしているところでございますが、地域のニーズに沿った雇用機会の創出というところでございます。

 また、三つ目では、今後五年間で五万人程度を目標とするキャリアカウンセラーの養成、または募集、採用における年齢制限の緩和促進、それらによる能力、年齢のミスマッチの解消などが、失業者への就職支援、生活支援を盛り込んだ、先ほど先生おっしゃっていただきました九月二十日に取りまとめました総合雇用対策に盛り込んでいるところでございます。

 さらに、直ちに取り組むべき施策については、改革先行プログラムに盛り込ませていただいており、補正予算を活用しながら集中的に実施してまいる所存でございます。

 また、法律上の措置を要するものにつきましては、早急に法案を取りまとめ、今国会に提出させていただくなど、セーフティーネットの整備を初めとした雇用対策の推進に万全を期してまいりたいと思います。どうぞよろしく御支援をいただきたいと思います。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 それでは次に、児童扶養手当の問題についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 この児童扶養手当は、母子家庭等の生活の安定、また自立を促進するために、児童の福祉の増進を図ることを目的として成立された制度でございます。これまでも経済的に厳しい母子家庭の皆さんの自立と児童の健全育成に大きな役割を果たしてきたものと考えております。

 こうした母子家庭の子育てを助ける児童扶養手当の改革が今検討されているようでございますけれども、この新聞報道がなされてからというもの、私どものところに全国の母子世帯の方々から大きな不安の声が寄せられているわけでございます。

 そこで、今回、この児童扶養手当の見直しとして、子供の幸せを第一に考えた総合的な母子家庭の自立支援策ということで考えられているようでございますので、大変心配しておられる母子家庭の皆さんに、こういうことなんですよ、厚生省はこのように取り組むんですよというようなことをお答えいただきたいと思っております。

岩田政府参考人 母子家庭の対策でございますが、総合的に今回見直しをしたいというふうに思っておりますけれども、その目的は、母子家庭にいかに自立をしていただくか、それを私どもがいかに支援することができるかという観点から行いたいというふうに思っております。

 相談機能の強化、就労支援策の拡充、子育て支援策の拡充、これらとあわせまして、児童扶養手当などの経済的な支援のあり方も見直しをしたいということでございます。そして、これらの検討結果を踏まえまして、総合的な対策を講じることによりまして母子家庭のさらなる自立の促進を図ってまいりたいというふうに思っております。

青山(二)委員 実は、私は一九九八年三月の、その当時厚生委員会と申しましたけれども、その委員会で、未婚の母の家庭に子供の認知後も児童扶養手当が継続支給されるようにというようなことを訴えておりまして、厚生省も、認知を受けて二人で生きていこうとするその母子の自立を支援するためにも継続支給することが望ましい、そういうことで方針を転換されまして、認知された非嫡出子への継続支給がなされた経緯がございます。

 そこで、今回見直しを検討される際に、現在もこのように制度の不備が残っているところはやはりしっかりと見きわめて改善をすることが大切であろうと思っております。

 例えば、平成十一年、母子世帯の母が勤務先の倒産で失業いたしました。そこで、児童手当を受給したいと申し出ましたけれども、離婚後五年がたっているために断られてしまった、こういう相談がございまして、そういう相談を受けました総務庁行政監察局は、受取資格の認定請求期限を離婚後五年に制限している現行制度は期限撤廃を含めて改善すべきだとのあっせんをされております。この点につきまして厚生労働省としてはどのような対応を考えているのか、お伺いをしておきたいと思います。

岩田政府参考人 先生が御指摘されました児童扶養手当の申請の期間についてでございますが、これは六十年の法律改正によりまして、受給資格が発生しましてから五年以内に申請ができるということにいたしております。

 この五年間というふうに期間を設けましたのは、一つには、受給資格が発生しましてから長い時間経過いたしますと、資料などが整わないなどの理由から、事実関係を確定するというのが行政として難しいということがございまして、適正な認定を確実に行うという観点からは一定の期間が必要であろうというふうに考えたわけでございます。

 もう一つの理由は、手当の支給要件に該当しながら、長い期間児童扶養手当を受給せずにやってこられたということは、そのことはもう大変すばらしいことでございまして、児童扶養手当が、母子家庭が自立するまでの間、経済的に支援をするということを目的といたしております手当であるということを考えますと、長い期間受給を申請なさらずに済んだということは手当の支給の対象とすべき状況が終了しているというふうにも考えられるわけでございます。

 総務省の、当時、総務庁行政監察局から先生今御指摘のような問題提起がございましたが、それに対しましても、今私の方から御説明をさせていただいたような考え方でお答えをしたところでございます。

 一たん自立した後、今の例のように、その後もさまざまな困難に直面することはあろうかというふうに思いますけれども、それに対しましては、雇用失業対策など、母子家庭に限定されませんけれども、一般的な雇用失業対策などで支援をするということは当然でございますが、それに加えまして、例えば母子福祉貸付資金というのがございまして、そういう貸付制度も活用していただいて、支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 昨今、雇用失業情勢は厳しいものがございますので、今年度から、この貸付制度の中で失業中の生活資金を貸し付けするというプログラムも新たにつけ加えまして、そういうようなことも含めて支援をしていきたいというふうに思っております。

青山(二)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは次に、母子家庭の雇用情勢、大変悪化いたしておりますので、就労支援についてお伺いをしたいと思います。

 厚生労働省の五年ごとに行っている全国母子世帯調査によりますと、九八年の全国の母子世帯は九十五万四千九百世帯でございまして、前回の調査より二〇%もふえておりまして、二十年前と比べますと約一・五倍ということで大幅に増加をいたしております。理由といたしましては、死別は減っておりますけれども、離婚が二九%もふえている。そして、非婚が八五%で全体を押し上げている形になっております。

 こうした中で、母子世帯の母親の八五%が働いておりますが、これは二十年前とは全く変わっておりませんけれども、その中身が違っているわけですね。臨時雇用や日雇いといった不安定な雇用は、二十年前では一〇%もなかった。ところが、今回の調査では、臨時とかパートが三八・八%にふえております。そして、常用雇用というのが六〇・六%から五〇・七%に、また、自営業も一五・九%から五・七%に減っております。

 この不況の中、母子世帯の母は真っ先にリストラの対象になるわけでございまして、失業だ、転職だ、そして求職だ、これを繰り返しているのが現状でございますので、本当に実効性のある就労支援が今望まれているわけでございます。

 一昨日も東京都の母子寡婦協議会の会長さんからお話を聞きましたけれども、本当に働きたいんだ、自立したいんだ、生活保護なんかいただくよりも、しっかり働いて親子の関係を、お母さんが働いているその姿を見せて頑張っていきたい、ですから今本当に自立支援が必要なんですと切実な声を寄せていただいたわけでございますけれども、今本当に、再就職をしようとしても正社員にはなれない、そして年齢制限があるために働けない、こういうお母さんの声に対しまして、しっかり厚生労働省としても取り組んでいただきたい。

 このような状況に対して厚生労働省はどのような認識をしているのか、そして今後どのような就労支援をしていくのか、その辺をお伺いしたいと思います。

岩田政府参考人 先生今おっしゃいましたように、母子家庭のお母さんたちの多くは大変強い自立の意思を持っておられます。その中で、残念ながら、早く生活を立てないといけないということで、離死別しました直後に、早いペースで就業なさるわけですけれども、その就業の中身といいましょうか、必ずしも一家の生計を維持できるだけのしっかりした収入のある仕事につけているばかりではないというところが問題でございまして、そこをどういう形で支援するかということが大事かというふうに思います。

 時間が十分にないため、就業に際しまして、例えば教育訓練などを受けずに、パートタイマーとして手短な就業機会でとりあえずは就職するというような方たちに、いかに教育訓練の機会を付与して、さらにしっかりした収入に結びつくような仕事にステップアップしていただくか、そういうことの支援対策が中心になろうかというふうに思います。

 また、もう一方では、通常の労働者ではなくて臨時やパートタイマーの方の割合がふえているという御指摘でございましたけれども、これの背景の一つには、やはりお子さんを抱えておられるということで、そのお子さんが小さい場合に、子育てをしながらフルタイムで働くことが必ずしも容易ではないといったような状況が残念ながらまだございますので、そういうようなことから十分な収入を得られていないという面もございますので、就業支援対策とあわせて子育て支援対策、これも講じていくことが大変重要であるというふうに思っております。

青山(二)委員 では、よろしくお願いいたします。

 それで、児童扶養手当の件で、今回自立促進策として手当額と所得の関係の見直しが検討されているということでございますが、現行制度は就労により所得がふえると手当が減る、所得と手当の合計が実質的に減少する制度になっておりまして、これは本当に自立して働いていこうという母親の意欲をそぐものになっておりました。

 今考えられております見直しは、収入に応じて手当額をきめ細かく設定することになっておりまして、自立して働きたいという多くのお母さんからは、これはいいことだという声が上がっているわけでございますが、所得保障としての手当の支給も維持できるような見直しにしていくべきだと思いますので、今後どのような見直しをお考えになっているのか伺っておきたいと思います。

岩田政府参考人 現行の児童扶養手当制度は、先生今おっしゃいましたように、収入が増加するに伴いまして、ある時点で全額支給から一部支給に、その段差が相当なものがございます。またさらに収入がふえてまいりますと、支給が停止をされるということでございます。そういうことから、全部支給から一部支給に移行する時点、そして支給が最後に停止される時点、この時点をとってみますと、収入がふえても収入と児童扶養手当額を合わせたトータルの金額が逆に減少するという逆転現象が生じております。

 そういうことで、母親の就労意欲をそぐという面もあるわけでございますので、収入がふえるに従いまして児童扶養手当をきめ細かい階段をつくって逓減していく、その結果、収入と児童扶養手当を合計すれば、収入の増加に伴ってその合計額も増加をするような、そういう支給の仕組みができないかというようなことで、今勉強しているところでございます。

青山(二)委員 それでは、時間がだんだんなくなってまいりましたので、最後に厚生労働大臣の御所見を伺って終わりにしたいと思うわけでございます。

 今ずっとお話をしてまいりましたように、子育てと仕事を一人で抱えなければならない母子家庭にとりまして、子育て支援は大変に重要な問題でございます。私ども公明党も、総合的な母子家庭の自立支援に向けて検討を始めておりますけれども、厚生労働省、坂口大臣には、母子家庭の就労支援策とともに総合的な子育て支援策を強力に取り組んでいただきたい、このように思います。そして、弱い者いじめにならないような、困難な状況にある母子家庭の助けとなる支援体制が整備できることを期待しているわけでございますが、厚生労働大臣の御所見を伺って終わりにいたします。

坂口国務大臣 全体といたしまして、いろいろの支援の仕方を考えますときに、今までの救済するための補助金あるいは救済のための支援といったような形から、そうではなくてもう少し、自立をするための支援、自立をするための補助金、そうした方向に変えていくのが、私は、これからの社会保障を考えましたときに大事なことだというふうに思っている次第でございます。

 そうした意味で、母子家庭の皆さん方に対しましても、できる限り自立の支援を申し上げる、できるだけ自立をしていただける環境をつくり出すということに全精力を使うべきだというふうに思っている次第でございます。

 しかし、さりとて、一方におきまして、今までの支援策、これが生活の糧として使われていたことも事実でございますし、これが非常に急激になくなるというようなことになりましたら、これは生活に大変なマイナス点を生じるわけでございます。母子家庭の皆さんでございますから、お勤めになりましてもなかなか多くの支援、多くの給料を得ることはできにくい人たちが多いわけでございますので、その人たちのことを十分に配慮しながら、痛みが弱者にしわ寄せにならない、そういうことを念頭に置きながら、そして最後の決着をしたいと考えているところでございます。

青山(二)委員 厚生労働大臣のその温かいお気持ちを、地元の母子家庭の皆様にもお伝えしてまいりたいと思います。きょうは、大変にありがとうございました。

鈴木委員長 五島正規君。

五島委員 本日は、土肥隆一委員に時間をちょうだいいたしまして、久しぶりに厚生労働委員会で質問させていただきます。

 まず、医療制度の問題に限定して、きょう時間がございませんので、質問をさせていただきたいと思います。

 今、厚生大臣、この問題で大変お悩みになっているだろうというふうに思いますが、この間、医療制度の改革問題ということで、方々からさまざまな意見が出されています。

 考えてみれば、ちょうど四年前、九七年でございますが、小泉現総理が厚生大臣のときに医療制度改革が行われまして、抜本改革を二〇〇〇年の四月までにするという公約でございましたが、問題が先送りになって、ついに、このままいけば来年度、政管健保が財政的に破綻するという状況になってまいりましたので、さまざまなところでさまざまな御意見があるのは当然だろうというふうにも思っておりますが、それに対しましても少し具体的にお伺いしたいと思います。

 一つは、ことしの六月、経済財政諮問会議、あるいは七月、総合規制改革会議、そういうところにおきましても、医療制度につきましてさまざまな御意見が出されています。

 その御意見の中身に入る前に、こうした経済財政諮問会議など、小泉内閣にとって基本的に非常にその答申案を重視しておられる、しかも早々と閣議決定された、そういうふうな審議会の中で、医療制度の問題を議論するに当たって、経済関係の閣僚とあるいは財政学者、あるいは一部の企業の関係者だけでこのような意見が出されまして、主として財政という立場からの意見の取りまとめがなされたように思っております。この中には、社会保障、社会政策の学者も入っておらなければ、医療の担当者あるいは保険者、患者の代表というものも入っていない。

 そういうところから出された、こうした経済財政諮問会議や総合規制改革会議、あるいは産業構造審議会の新成長部門会議ですか、そういうようなところからも意見が出されておりますが、厚生省として、こうした御意見に対してどのようにお考えになり、どのような比重でこれを重視され、受け取っておられるのか。まず、そこのところをお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 五島委員から御指摘をいただきましたとおり、この医療改革につきましては、さまざまなところからいろいろの御意見が出ているわけでございます。議論は自由でございますから、どこでどういう議論をしていただくかは、それは私は構わないというふうに思っておりますが、ただ経済的な問題だけでこの医療問題を議論していただくのは、少し方向が違っているのではないかという気持ちを私は持っております。

 医療は、経済的効率を上げなければならないことは当然でございますが、しかし一方で、医療効率をいかに上げるかという、その大事な一点があるわけでございますから、そのことを抜きにして、ただ経済効率だけでこうすべきだ、ああすべきだという議論は、少し問題の一部しかごらんをいただいていないのではないかという反論を私は率直に申し上げたりしているところでございます。

 したがいまして、いろいろの御議論をちょうだいし、そのことを参考にはさせていただきますけれども、しかし、それですべてにするとは思っておりません。それらを拝聴しながら、皆さん方の御意見もお伺いをしながら、この委員会でのいろいろの御議論もお伺いをしながら、そして最終結論、大体今月の末には結論を出さなければならないだろうというふうに思っておりますが、その最終結論に向けて努力をしたいと考えているところでございます。

五島委員 また、厚生省のお出しになったその案そのものに対してやはり意見は当然あるわけでございますが、それに対しまして、予算編成当局である財務省の主計局が、この医療制度問題について意見を出されている。これは私は前代未聞ではないかというふうに思っています。予算を編成する当局が独自に医療制度あるいは医療保険制度について意見を出してきておられるということについて、厚生省としてはどのように受け取られているのか、そのこともお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 財務大臣からは、決して財務省としてこの医療制度を出していないというお話でございますから、私はそれを信頼いたしております。

 しかし、マスコミの紙面を見ますと、いわゆる財務省案なるものがいろいろと出ているわけでございますが、これは財務省案ではなくて、財務省の中の一部局がつくったものということだそうでございますので、私は、財務大臣がおっしゃいます、財務省としてのいわゆる医療制度案は決して出していない、つくっていないという、そのお言葉を信頼いたしているわけでございます。

五島委員 財務省の中の一部の人が言っているのは自由でしょうが、予算を編成する主計局としてこのような意見書を冊子の形でお配りになったということについて、私は強く抗議をされるべきだろうというふうに思っております。

 問題は、これは経済財政諮問会議や総合規制改革会議にも貫いている考えでございますし、それから財務省の主計局の意見の中には非常に明確に述べられておりますが、医療に要するコストと経済のバランス、これはバランスがあることが望ましいのは当然でございます。しかし、より積極的に、経済の成長率の枠の中に医療費を抑えるべきであるという意見が厚生省の中でも時々聞こえてくるわけでございます。経済が後退期、不況の状況になれば病気は減るのですか。そんなばかな質問をしてもしようがないから言いませんけれども、減るわけがない。

 問題は、医療費の中においていかに効率性を高める努力をするかということであって、結果において必要な医療というものを国民に提供する、そのシステムというのはゆるがせにしてはならない、これが大原則であると考えるわけですが、まず、その点についてどうお考えでしょうか。

坂口国務大臣 これも、各種、この委員会等の中で私の意見を言わせていただいております。どういたしましても、経済の動向と医療費の動向、これをできるだけ一致させてほしい、こういう御意見があちこちからあるわけでございます。

 しかし、とりわけ高齢者医療は、高齢者の人数がふえてくるわけでございますから、高齢者の医療がふえてまいります以上、その高齢者医療の増加に伴いますこの医療費というのは当然のことながらふえるわけでございますから、その分まで削れと言われましても削ることはできません、こう申し上げているわけでございます。

 ただ、そうはいいますものの、年々歳々、人口構造によります変化だけではなくて、その倍以上の医療費の増加が続いている。例えば、高齢者医療でございますと、最近でございますと大体年々八%ぐらい増加をいたしておりますが、その中のいわゆる高齢者がふえますところの分というのは約四%でございますから、残りの四%は一体何かということがあるわけでございます。そこにつきましては、極力やはり私たちもメスを入れ、そして医療のむだを抑えられるものならばそこは抑えなければならない、むだがあるものならばむだは省かなければならない、こう考えているわけでございます。

 そうした意味で、制度の改革と、そしていわゆる高齢者の増加の問題と、そこは明らかに峻別をしながら検討を進めていかなければならないものと考えているところでございます。

五島委員 医療費の増減という問題は、一つは、現在のシステムの中においてむだな医療費があるのかどうか、あるいは、より合理化できるような内容に変えていけるのかどうか、そこの検討をやはり重点に置いておくべきであって、そして、医療費の結果というものについて云々するとするならば、これはもう大臣よく御承知のように、インフルエンザが流行した年としない年とでは医療費に非常に大きな差が出てまいります。景気が悪くなって、インフルエンザがはやったからそれはだめなんだ、そんなばかなことが成り立つはずがない。

 そういう意味からいって、どうも審議会や委員会、あるいは財務省の主計局の皆さん方の御意見というのは、余りにも医療という実態を無視した内容で御論議になっているのではないかというふうに思われてなりません。

 そしてもう一つ重要な問題は、厚生省の立場と、それから経済財政審議会なり総合規制改革会議、あるいは財務省の主計局の意見、それぞれ同じような公民ミックス医療という言葉が時々出てまいります。

 厚生省の公民ミックス医療というのは、私は、特定療養費の問題を指してお使いになっているんだろうなというふうにお伺いしてきたわけでございますが、例えば総合規制改革会議なりあるいは財務省の主計局の御意見を見てみますと、どうもそうではなさそうだ。これは、医療費の中に自由に、それぞれの医療費について価格の自由化をしてしまう。その中で保険で負担する分を決めて、それ以外は自費にする。そうでない限りは、これは共通しておっしゃっているわけですが、民間保険の活性化というところにウエートが行くはずがない。現在ある差額ベッドとかそういうふうなものに対しての判断であれば、現在既にそういう保険はあるわけです。

 そういう点からいうと、この公民ミックス医療という内容について、厚生省は、価格の自由化ということを前提にして検討されているのか、それとも、あくまで特定療養費という一つの枠の中においての用語の統一でもって、経済財政諮問会議等々をだましておられるのか。その辺はどちらなのかということをはっきりおっしゃっていただきたいと思います。

坂口国務大臣 国民の医療に対しますニーズの多様化でありますとか、あるいは医療サービスの高度化など、医療を取り巻きます環境は大変変化をしてきております。このような変化に対しまして、特定療養費制度を活用いたしまして、その拡大を図ることによって対応をしていきたいと考えております。

 御指摘をいただきましたように、医療の本質的な部分について、いわゆる混合診療を大幅に導入するとの御意見があることも事実でございます。しかし、医療の標準化でありますとか、医療にかかわります情報提供等の環境整備が行われているということがやはりその大前提でございますし、これらの問題が十分に決着がついていない現状におきまして、不当な患者負担の増大を招くおそれのあることを導入することはいかがなものかというふうに我々は考えているところでございます。

五島委員 大臣のそのお考えに対しては、その点については、私も全く同意するわけでございます。

 問題は、盛んに、医療の中における競争原理の導入とかさまざまな発言がございます。医療のサービスの質を競争によって上げていくということについてはだれも否定しない。そのために必要な情報公開その他の措置をとっていくということは当然であると思うんですね。

 しかし、市場経済の中における競争原理ということになりますと、間違いなく、医療機関同士の中の競争だけではなくて、医療を消費される患者さんの中においても、その利用に対して勝ち負けが起こってくる。すなわち、いい医療を受けようと思った場合に、経済的な弱者はその医療を受けられないという問題が起こってくる。そういう意味においては、その他の産業における市場競争というものと同じような形で医療というものをとらえていくということは、これはとんでもない間違いである。

 何よりも、我が国の医療制度というのは、あるいは医療保険制度というものに支えられている日本の医療制度というのは、社会保障をその財源として、保険原理、税でもって賄っているのであって、その原則として、やはり国民だれもが必要な医療を受けられるという、この原則を曲げた市場競争というものは当然受け入れることはできないというふうに考えています。その点については、大臣も恐らく御同意いただけるものと思います。もし違えば、後ほど御意見をおっしゃっていただきたいと思います。

 そして今度は、厚生省がお出しになった案。結果的に私は、この問題を根本的に解決していない、現在の状況を解決していないというふうに考えています。

 幾つかの問題がございます。例えば、老人医療だけを取り離して老人医療をどうするかという議論、七十五歳からというふうな話もございます。老人医療の適用を七十五歳からにするとした場合に、私は、老人医療というところだけ見てやるとすれば一つの方法だと考えていますが、問題は、七十五歳以上の老人医療にした場合に、国保の方は約一千億ぐらいの負担増になっていく。国保の財源が非常に厳しい中において、その手当てはどうするのかという問題。

 あるいは、老人医療の問題を盛んに議論されているけれども、先ほどからも御議論がございますように大変失業者がふえてきている。大阪市あたりになりますと、もう失業者が男性でいえば十数%になってきている。そういう状況の中において、この方々の医療保障はどのようなシステムでやっていくのか。国保に加入してくれと言っても、そこのところで失業になった人たちが未保険者になっていくケースが非常に多い。そうした非常に不況の中で失業者がふえてきている中において、これをどういうふうに処理していくのか。

 例えばドイツやフランスのように、雇用保険の中から医療保険料を払うというシステムをとっている国もありますが、日本の場合にはそこまで踏み込んだ検討は加えられていません。そうしたことはどうするのかということをきちっと議論せずに、出てきた財源の処理のためにどうするか、老人医療が非常に伸びているから、その財源をどうするのかという議論だけではおさまらないのではないかというふうに思っています。

 とりわけ、老人に関して、介護保険制度が導入され、そして介護療養型病床というのが医療機関の中にも設けられたけれども、これの給付についても、例えば老健施設なんかとの間において非常に大きな格差が残されたまま。そういうふうな問題を整理していく気持ちがあるのかどうか。

 あるいは、医療の標準化ということをおっしゃっています。私も必要だと思います。医療の標準化をやっていく。あるいは、そういうふうなもの、DRGにそこはつながっていくという一つの方法はあるとしても、では、医療の標準化なり病名の統一といったようなものを、厚生省としてはいつまでにどのように整理するのか、それを学界に期限を切ってお任せするというふうな措置をおとりになるのかどうか。

 そういうふうなことが全然されないと、そういう基本になる部分が次々と後ずさりになって、結果的には財政上の処理でしか問題が処理できないということになってしまわないのかどうか。その辺について、大臣の率直なお考えをお聞きしたいと思います。

坂口国務大臣 先生からたくさんの御意見をいただきましたから、十分にお答えができるかどうかわかりませんが、現在、医療制度が抱えております問題は、さまざまな点がミックスされているというふうに思っております。

 一つは、私は、この医療保険制度、今のように五千を超える保険者のままで、このままで果たしていいだろうか。この問題につきましても議論をし、そして、これはある程度統合しなければいけないというふうに思っている次第でございます。

 また、もう一つ大きな点は、いわゆる診療報酬のあり方だというふうに思います。この診療報酬のあり方が、医師と患者との間の対話、そしてその話し合いということをもう少し重視して、そして、薬をたくさん使いますとか、あるいは高い検査をたくさんしますとかというようなことに余りウエートを置き過ぎない。

 そういう、もう少し根っこのところからの保険制度の見直しというものが、私はあってしかるべきだというふうに思っています。現在、その辺のところが、間違っていると言うとしかられますけれども、方向が少しずれておりますために、この医療費の問題もさまざまな問題になってきているように思われます。

 ですから、これらの点につきましては、そんなに長い時間をかけるわけにまいりません、一年か二年期間を限定して、そういう話し合いの場を一つ設定して、そこにそのことに詳しい皆さん方にお集まりをいただいて、そしてそこで一つの方向性というものを御議論いただいて結論をいただく、それをやはり省として十分尊重させていただくというような方向が大事ではないかというふうに思っております。

 今回の制度改革につきましては、当面の財政上の問題があることも事実でございまして、それをどうするかという問題も厚生労働省としては避けて通れない問題ではございますが、しかし、それだけをやっておりましたのでは、医療制度の改革をどうするのかという展望が見えてまいりません。したがいまして、医療制度そのものをどのように変えていきたいのかという方向性を、今すぐそれが実現できなかったとしても、こういう方向で議論を重ねていきたい、そして何年後にはこういう結論を出し、こういうふうな方向で議論をいただいて結論を出したい、その辺のところを明確にして、一緒に御提示を申し上げるということが大事ではないかというふうに考えている次第でございます。

五島委員 時間がありませんのであと二つまとめてお伺いしますが、今、当面の問題というお話でございますが、今回の厚生省の意見というのは、結果的に、九七年改定と同じように、患者に負担のツケ回しをしているだけというふうに受け取ります。

 そして、その中で、総額医療費抑制、これを、老人医療だけなのかどうなのか、これからの問題でしょうが、それを入れていくという総額抑制の御意見もあるようでございます。これは、医療費を逆に非常に増大化させるとともに、変な発言ですが、みそもくそも一緒にしてしまうというとんでもない内容だろうと私は思っています。やはりそこのところはきちっと、本当に必要な医療が効率よく提供されるかどうか。この制度を整備することによって抑制していくということでない限り、現在の医療の水準が均質で、そして患者さんにとって満足のできる、どこででも満足できる内容であるならばそういう議論も成り立つんでしょうが、現実に人員不足の医療機関もたくさんあるというふうな状況の中で、この総額抑制というようなものを導入するのは極めて問題があると考えています。

 それから、いま一つ、大臣も保険者の問題をおっしゃいました。私は、国保を中心に念頭に置いておられるかと思いますが、保険の統合とあわせて、とりわけ政管健保と老人保健、これは保険者がないに等しいですね。保険者機能の強化ということも言われるわけですが、確かに、その保険者機能が十分かどうかは別として、組合健保にしてもあるいは国保にしてもいろいろとある。しかし、政管健保あるいは老人保健に関していえば、保険者機能はないに等しい。そこのところで、とりわけ老人保健のところで非常に医療費の高騰が起こってきている。

 この点を考えた場合に、逆にこういう全国一律の保険制度というものには無理がある。むしろ、政管健保や老人保健に関していえば、せめて都道府県単位あるいは広域医療圏の範囲において、疑似的に保険者をつくってでも、そこできちっと管理できるシステムを考えるべきではないか、そのようにも考えるわけでございます。

 この二点についてお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

坂口国務大臣 最初の総量抑制、伸び率管理の問題でございますが、これは、私の方が出しました試案の中では、一番いろいろと御意見をちょうだいしている部分であることに間違いはございません。私は、皆さんにも申し上げておるわけでございますが、だめならこれにまさる案をひとつお示しいただきたい、こういうことを申し上げておるところでございます。

 しかし、高齢者医療が激しい勢いで伸びていく、そして、今回厚生労働省が示しました試案をもとにいたしましても、平成十九年、これを実施して五年後でございますけれども、そういたしますと今から六年先でございますが、一兆円ずつ増加をしていけば、このときに今のままでいけば六兆円増加をするわけでございますが、この厚生労働省の案をもってしても今よりも四兆円増加をするわけでございます。いかにこの増加が厳しいものかということを御理解いただけるというふうに思うわけでありまして、やはり何らかの手だてというものがここには必要であるというふうに我々思っているわけでございます。

 ここはいろいろの御意見をちょうだいしながら決めていかなければならないというふうに思っております。何もかもごった煮のように一緒にしてしまうじゃないかという御意見をいただきましたが、そこを私たちも冷静にひとつ判断をして決定をしたいと思っているところでございます。

 それから、もう一つの方の、むだな医療費の抑制につきましてのいろいろのお考えがございました。そして、その中では、いわゆる国保の問題で、いわゆる保険者としての機能、このお話をいただきまして、介護保険の問題とのセットのお話もいただいたわけでございます。

 こうしたところをこれからどのように整理をしていくか。もちろん介護保険との関係もあるというふうに思いますが、私は、その前に、国保そのものの整理統合というものがやはり大事ではないかというふうに思っているところでございます。もちろん、介護保険との関係も十分に配慮をして今後のことを考えなければならないというふうには思っておりますが。

 そのほかの、保険者機能の強化ということにつきましては、今回の試案におきましては、健康づくりでありますとか疾病予防の推進を重要な柱にして一つ取り上げておりますとか、あるいは、実施計画の策定などを通じました、現在も行っております健康日本21の推進でありますとか、健康教育の推進、あるいはまた保健事業の一体的な推進等々、これらのことも掲げながら、そして、保険者としての意義を高めていかなければならないというふうに思っております。しかし、委員が御指摘をいただきましたところの趣旨は私も十分に理解できるつもりでおりますので、その辺につきましては十分にこれから検討を進めていきたいと思っているところでございます。

五島委員 ありがとうございました。

 結果的に患者さんに対する負担のツケ回しだけで問題の解決がまたまた先延ばしされないように、大臣に頑張っていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、家西悟君。

家西委員 民主党・無所属クラブの家西悟です。

 まず最初に、私は、身体障害者のホームヘルプサービスについてお伺いしたいと思います。

 最初に、身体障害者に対するホームヘルプサービスについてですけれども、旧厚生省は、昭和五十七年九月八日付、身体障害者家庭奉仕員派遣事業運営要綱の改正点及び実施手続等の留意事項についてという通知を、各都道府県及び政令市に対して出しておられます。そしてまた、平成十二年七月七日には、身体障害者ホームヘルプサービス事業運営要綱の改正点及び実施手続等の留意事項についてという通知を、各都道府県、政令指定都市、中核市に対して出しておられます。

 この二つの通知の中で、サービスの対象者となる障害者の実態を掌握すること、ホームヘルパー派遣体制を整備することを各自治体に求めておられます。しかし実態は、ほとんどの自治体ではこうしたことはなされておらず、当然サービスを受けられる障害者が放置されたままになっている例も多いと私は聞いております。

 そこで、お尋ね申し上げますが、厚生労働省から通知された事務を各自治体が正確に行っているか、国の指導を受けとめているのか、調査を今までにされたことがおありになるのか、お伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 身体障害者のホームヘルプサービス事業の実施に当たりましては、対象者の実態把握が重要でありますことから、市町村に対しまして、通知にてその実施をお願いしますとともに、全国会議等の場におきまして指導をしているところでございます。したがいまして、実態把握が行われていないような事実があれば、まことに遺憾なことだというふうに思っております。

 今後、重度の障害者を含みます対象者の実態把握につきまして、これはプライバシーの問題もございますから、そこは気をつけなければいけないというふうに思いますが、十分に配慮をしました上で、各地域の実情に応じた方法によりまして確実に行われるように、改めて全国会議等の場を通じまして要請してまいりたいと思います。

家西委員 ぜひともそのように行っていただきたいと思います。

 私どもの方で調べた限りでは、私の地元である奈良市においてもそうなんですけれども、多くの市町、市において、その実態掌握をされていない。ましてや、担当者においては、その通知すら知らないという担当者もおいでであったというふうに聞いております。

 そして、私の方に情報をいただいた方なんですけれども、個人的に調べた方で、ここに書かれているだけで二十市あります。二十市だけでも、奈良市と同じような人口を有するような市において、個人的に調査をされた方、その方が電話調査をされても、担当者はそういった実態掌握をしていない、また、その通知すら知らないという実態があったようなこともお伺いします。

 私自身も、身体障害者手帳、二級を持っています。そして、こういうホームヘルプサービスの話というものは、確かにパンフレットで見たような記憶がありますけれども、あなたは必要ですか、要りますか、要りませんかというような実態掌握についてのアンケートなりそういった御要請は、またお尋ねというか、そういうものは受けたことがありません。ぜひともこういうことのないようにしていただきたい。

 なぜならば、せっかくある制度を、実際に障害者の権利として奪われているような、また使えないような状況があってはならないと思いますので、大臣、ぜひともこれは、いま一度、実態調査を決定するようにということを担当者また部長及び課長に対して通知をするなり、そういった旨の指導を、徹底を図っていただきますようお願い申し上げたいと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

坂口国務大臣 承知いたしました。そのようにいたします。

家西委員 ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 続いて、狂牛病について若干お尋ねしたいと思います。

 マスコミ報道によりますと、農林水産省は、鶏と豚を原料とした肉骨粉を鶏と豚の飼料として使用することを言われていますけれども、BSEについて正確な原因の究明と治療法が確立されていない今日、これまでの研究で、鶏が鶏の骨等を食べることによって、あるいは豚が豚の骨とかいろいろなものを食べることによって起き得るであろう可能性のある病気についての調査研究というものは、今までにされてこられたのでしょうか。お尋ね申し上げたいと思います。

西尾政府参考人 BSE関連の御質問にお答え申し上げます。

 BSEに汚染されました肉骨粉を豚及び鶏に摂取させてもプリオン病が発症しないことが、英国政府の見解として示されております。それからまた、これまでのところでございますが、豚及び鶏のプリオン病の発生も報告されておりません。

 こうしたことから、現在までの知見におきまして、豚及び鶏で肉骨粉給与による疾病はないものと考えておりますが、今後も、国際獣疫事務局、OIEでありますとか、FAOといった国際機関などを通じまして、最新の海外情報の収集分析を行うことなどによりまして、適切に対応してまいりたいと考えております。

家西委員 ぜひともそれは調査していただきたいと思いますし、あわせて研究をしていただきたい。

 なぜならば、鶏は何年飼うのですか、例えばブロイラーだったら一年か二年でしょう。そして、豚にしても数年単位も飼うかどうかというような状況の中で、プリオンが発生するとは私は思えない。感染してから数年、数十年という時間を経て、そのウイルス的な要素が、ウイルスではないにしても、発症するまでに相当の時間を要するものであるということは言われているわけですから。

 今確かに症状はない、しかし、プリオンに汚染されている可能性は否定はできないのではないかというところまでの調査をして、例えば鶏の寿命までの間には大丈夫だったのか、豚の寿命の間ではどうだったのかというような調査をした上で、安全というような宣言も一つは必要ではないかというふうに私は考えます。この点についてはいかがでしょうか。

西尾政府参考人 ただいまの御質問でございますが、今現在、私ども、動物衛生研究所で試験をしておりまして、今後とも、このプリオン病の研究につきましては、この研究所において研究を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

家西委員 ぜひともその研究は徹底してやっていただきたい。そして、国民に安心を与えていただきたい。そして、食の安全を確保していただくようにお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、九月二十日の参議院農水委員会で、農水大臣は、いろいろ不手際があり、国民に一層の不安を助長し、深く反省しているというような発言をされました。そしてまた、十月三十日の川田悦子議員の質問主意書に対する答弁で、農水、厚生両省の連絡体制が徹底せず、国民に不安を与えたと答弁されているわけです。

 しかし、十月十七日の私の本委員会の質問に対して、下田政府参考人は、一九九六年、イギリス政府の諮問委員会やWHOにより、BSEが変異型クロイツフェルト・ヤコブ病発症の関連を報告、発表し、農水を含めて関連省庁と情報を共有していますと答弁されています。

 川田悦子議員の答弁と私に対する答弁は、同じものと考えていいんでしょうか。私は違うように思えてならないんですけれども、その点について、農水を含めて両方に御答弁いただければと思います。

坂口国務大臣 申しわけありませんが、もう一度、その要点だけ整理をして御質問いただけませんか。

家西委員 まず、川田悦子議員が質問主意書で質問されたことについての、十月三十日の答弁書。

 武部農林水産大臣が本年九月二十日の参議院農水委員会で、いろいろ不手際があり、国民の間に一層の不安を助長したという状況に深く反省していると述べられております。そして、農林水産省と厚生労働省の連携が徹底していなかったこと、農林水産省として連絡体制が十分に機能しなかったことから、対応に混乱を来し、食肉等の安全性に対し国民に不安を与えたことを述べられておいでだそうです。そして、今後は、農林水産省においては報告、連絡、相談、点検、確認を徹底し、同省の連絡体制の強化を図るとともに、同省と関係省庁、都道府県との密接な連携をとりながら、食肉の安全に対する不安が解消されるよう、積極的な情報提供に努めつつ、速やかに必要な措置を講じてまいる所存である。これは質問主意書の答弁です。

 そして、私の方への答弁では、せんだっての十月十七日の本委員会の一般質疑の場で、下田政府参考人の方から、これは一九九六年、ヤコブ病の治療マニュアルができる一年前でございますがというようなところから、ちょっと省きますけれども、その後に言われているのが、当時、九六年の段階で、農林水産省を含めた関係省庁の間でこうした情報を共有していたというふうに考えておりますと。

 ということは、共有していたと言いつつ、片や農林水産では、連絡が密接にとれていなかったというようなことを答弁されていて、深く反省していると。これはおかしいんじゃないか。どちらが正しいんでしょうか。私の方に言われたことが正しいのか、川田悦子議員の質問主意書に言われた方が正しいのか、そこはどちらなんでしょうかというふうにお尋ね申し上げています。

永村政府参考人 お答えをさせていただきます。

 先生御指摘でございますが、少なくともまず基本的な認識といたしまして、私ども、一九九六年の英国におけるBSEの発生以降、厚生労働省と私どもの担当部局間での情報交換、これは連携を図ってきたという基本認識はまず持っておるところでございます。

 しかしながら、今回の日本におけるBSEの発生におきまして、武部大臣がお答えいたしましたとおり、BSEが疑われるとの結果が判明するまで大変時間を要した、あるいは初期段階で都道府県の農林部局と衛生部局の連携が不十分であった、こういうことで、初期段階において対応に混乱を来した、こういう事実があることも事実でございまして、したがいまして、武部大臣の答弁と下田政府委員の答弁、そごはないものと私は理解をしております。

家西委員 でも、ちょっと私は納得いかないのは、連絡体系がしっかりとれておいでであったら、どうして今回のこのような事態が起こったのか。ましてや、武部農水相は連絡体系をきっちり徹底しなかったことが今回の反省点であるというようなことをおっしゃっているわけですね。九六年からしっかりと連絡体系をとられていたというふうに認識されているのなら、どうしてこういうことがこういう質問主意書で答弁されるんですか。

 だったら、私と同じように、九六年の段階から密に連絡をとっていたけれども、我々農林水産としては、徹底したことを、厚生労働省からの助言をまともに受けなかった、そのために今回の混乱を生じたということを答弁書に書かれるべきじゃないでしょうか。

永村政府参考人 委員も今おっしゃいましたけれども、私どもも、今回の経緯にかんがみまして、大臣から、関係省庁ともより密接な連絡を図りながら、省内の報告、連絡、相談、点検、確認を徹底するように指示を受けております。

 さらに、今回の発生に際しまして、直ちに、副大臣を本部長とするBSE対策本部を設置いたしまして、省内の連絡体制を強化、整備したところでございます。

家西委員 今回の話じゃなくて、九六年の段階で厚生省は密に連絡をとっていたというふうに言われているわけですよ、それを農水はきっちりと受けとめていなかったということをお認めになるんですよね、それでは。違いますか。

永村政府参考人 お答えいたします。

 これは武部大臣がお答えをいたしましたとおり、今後は農林水産省において報告、連絡、相談、点検、確認を徹底し、省内の連絡体制の強化も図るとともに……(家西委員「そんな答弁はやめましょうよ、答えていないですよ」と呼ぶ)今のとおりであろうかと思っております。

家西委員 しっかりと答えていただきたい。これは非常に重要な問題だと私は考えます。あいまいにしてはいけない問題じゃないでしょうか。

 今の状況を考えてくださいよ。精肉業界を初め、畜産農家を初め、多くの人々が苦しんでおいでなんですよ。この原因をつくったのは農水であり、しかも厚生省が仮に助言を与えていたとしたら、それを適切に判断し、適切に措置していれば今回の事態は生じていなかったはずなのに、やらなかったということは、農林水産に重大な責任があるということじゃないんでしょうか。しかも、ここで、答弁では、深く反省しているというふうに言われているじゃないですか。どうなんですか。

永村政府参考人 大臣の答弁の最後に、「積極的な情報の提供に努めつつ、速やかに必要な措置を講じてまいる所存である。」こういうふうにお答えをしております。

 私ども、大臣の指示を受けまして、今回厚生省と連携をいたしまして、厚生労働省は屠畜場における新たなBSEの検査体制を構築されましたし、私どもは生産段階におきましてサーベイランスをより強化をするということで、両省が一体となって、このBSEに感染していない安全な牛以外、食用としても、えさ用としても、市場に出回ることがない体制を整備したということでございます。

家西委員 いや、だから、九六年の段階でそういうものがあった、人畜共通の問題だということの指摘があったということだったら、その時点で対応をとるべきだったんじゃないですか。それを放置し、国内で発生するまで放置してきたことについての責任は逃れられないのじゃないでしょうかというふうに私はお尋ね申し上げています。

 そして、参議院の農林水産委員会では、武部農水大臣は、いろいろ不手際がありということ、不安を助長したこと、そして深く反省しているということを言われている。それは農水の怠慢としか言いようがないというふうに私は思えてなりません。この点はしっかりと受けとめていただきたいと思いますが、いかがですか。

永村政府参考人 委員御指摘のとおり、今回の初期段階においていろいろな対応に混乱を来したことについては、私ども深く反省をいたしております。

家西委員 そういうことが人への被害を出すんじゃないでしょうか、最終的に。人的被害を出して、それこそ訴訟されるとかいろいろなことが起こってきたときに、我々はやるだけのことをやりましたとかいうような、司法の場においてやられるのかもしれないけれども、それではおかしいんじゃないですか。とらざるを得なかったこと、なすべきときになさなかったことというものは罪になることは御理解いただけますでしょうか。

 薬害エイズの問題でもそうですよね。せんだって、厚生省ルートと言われる松村被告は有罪判決が出ました。これは、なすべきときになさなかったということが問われたはずです。農林水産も同じように私は責任はあるんだろうと。いずれこの問題というものが仮に人的被害を及ぼしたときには、あなたたちに大きな責任は及ぶんだろうし、今回の、不手際というふうに言われますけれども、この事態の収拾をつけるのならば、本来ならば武部農水大臣の更迭論が出てしかるべきだと私は思います。そういうことをやらざるを得ない状況ではないのかというふうに御指摘申し上げたいと思います。

 時間が余りありません。次に申し上げたいことがありますので、次の質問をさせていただきます。

 今般、北朝鮮が、ドイツ政府に対して、BSEの関連で廃棄処分になる牛の供与を無償提供されたいというような報道がマスコミで報道されました。北朝鮮の方から欲しいということで、食糧支援をしてほしい、その中で、狂牛病で処分を決定していたような牛を北朝鮮へ輸出してほしいというようなことを言われたと。それに対して、イタリアの農水相は猛反発しています。不道徳だということを言われている記事が載っています。

 国が違うわけですから、このことに関して私はどうこう言うつもりはありませんけれども、逆に、北朝鮮から第三国を経て日本へ食品という加工されたものとして輸入されるようなことはあり得ないんでしょうか。この点についてどうでしょうか。

尾嵜政府参考人 第三国経由の可能性についてのことでございますが、食品衛生法におきましては、販売等を目的とした輸入者に対しまして、使用原材料等の届け出を義務づけております。

 その中で、牛肉の加工品の輸入届け出がなされた場合には、牛由来の原材料について原産国の確認を行って、BSEの発生国からの牛由来原材料が含まれていないことを確認しておるということでございまして、BSE発生国からの牛由来原材料が含まれている場合には、衛生証明書の受け入れを拒否するということで輸入を禁止しているところでございます。この旨については、輸入業者についても周知を図っているところでございます。

永村政府参考人 私どもの立場からお答えをさせていただきます。

 口蹄疫という偶蹄類の病気がございまして、私ども、従来から北朝鮮からの牛肉等の輸入は禁止をいたしております。また仮に、口蹄疫が発生していない、いわゆる問題のない国を経由するケースを想定いたしましても、私ども、牛肉の輸入に当たりましては、原産国、食肉処理施設、それから汚染国を経由されたものでないということを輸出国の政府発行の証明書で確認をした上で輸入を認めておりますので、先生御指摘の第三国を経由して日本に入ってくる可能性はない、かように考えております。

家西委員 それでは、もう一点御指摘申し上げたいと思います。

 絶対にないというふうに今おっしゃるわけですけれども、例えばカナダで狂牛病が発生したその牛のもとというか、子牛の段階はどこから輸入されたんですか。カナダが原産国じゃないでしょう、あれは。EUから子牛の段階でカナダに入っていって、そしてカナダで狂牛病を発症した。しかし、原産国はこれはカナダになるんですよね。違いますか。そこまで調べられるんですか。その点についてお尋ね申し上げたい。

永村政府参考人 ちょっと今資料が手元にございませんので、申しわけありません。

家西委員 自信を持って先ほどからおっしゃるんならば、せめてそれぐらいのルックバックできるぐらいの情報は得てから御答弁いただきたい。なぜならば、今不安を助長するようなことを避けるためには、そういった問題をクリアにしていかなきゃならないということが大事じゃないか。

 そして、ひいては、牛というものは何もこの部分だけという、成体というか、牛肉になる段階のときに原産国がはっきりするわけですよね。しかし、その前の段階、子牛の段階はどうだったのか、精子の段階はどこの国だったのかというところまでの調査をすべきだ。そうしない限り、本当の意味での安全性確保というものはうたえないんじゃないかというふうに思えてなりません。その点を私は強く強調しておきたい。

 時間がありませんので、どうしてもやりたい質問もあるので、この問題は、資料もないそうですので御答弁いただけないので、次回の機会というふうにさせていただきたいと思います。

 十一月五日、C型肝炎の治療薬であるリバビリンが承認されたというふうにお伺いしております。ウイルスのサブタイプで規制を設けるのではなくて、高ウイルス量の患者を規定するということについては、私は本当に今回の厚生労働省の判断には感謝申し上げたい。我々、私もそうなんですけれども、C型肝炎の患者としては光明、治療を得る機会が一つまたふえたということでは非常にありがたい。しかし、これを逆の意味で絶望に変えていかないように、ぜひともその判断をしていただきたいというふうに思いますが、その点についてお伺い申し上げたいと思います。

宮島政府参考人 御指摘のリバビリンにつきましては、十一月五日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会で承認して差し支えないという答申が得られましたが、同時に、このリバビリンにつきましては、患者への投与に際して、赤血球減少等の血液毒性、非臨床試験で示された催奇形性等の副作用に対する十分な注意が必要であると指摘されております。

 したがいまして、このような副作用につきましては、添付文書の使用上の注意に警告を含めて詳細な記載を行いますとともに、医師等、医療従事者向け及び患者向けのパンフレットを特に作成いたしまして、適正使用情報の確実な伝達を徹底するよう、申請者に対して指導しているところでございます。

 また、市販後におきましても、有効性、安全性に関する情報を収集することが特に必要とされておりまして、臨床データの収集等、十分な市販後調査を行うことが申請者に承認条件として義務づけられております。

 こうした市販後調査などで得られました情報を適時適切に添付文書等の使用上の注意に反映する形によりまして、本剤の市販後の安全性の確保に細心の注意を払うことが必要であるというふうに考えております。

家西委員 それでは、もう時間がさほどありませんので、あわせてお尋ね申し上げたいと思います。

 これは私の提言でありますが、HIV診療拠点病院というものは、全国に三百以上の拠点病院が名乗りを上げているわけですけれども、こういったところを最大限に活用するのも一つの手ではないか。なぜならば、多くの血友病患者がそこへ通っているわけです。そして、当然、肝炎治療も行うわけです。こういった情報を、密に連携をとりながら、情報を満遍なく共有し合う。そして、より効果があるものを、より安全に使えるように体制を整えるためにも、HIV診療拠点を活用されてはいかがなものかということを御提言申し上げたい。

 それとあわせて、ようやくリバビリンで光が見えてきた、この上にペグインターフェロンの問題、そしてリバビリンとの併用投与、そして非環式レチノイドという問題があると思います。

 一度肝臓がんをなされて、手術で肝臓のがんの部位を摘出されたような方々に、再発を防止する意味で、非環式レチノイドへの期待というものが、私は多くの患者さんから声を寄せられておるわけですけれども、この点について、この見通しも含めて、ぜひともお伺いさせていただければと思います。

下田政府参考人 C型肝炎対策でございますけれども、肝炎対策に関する有識者会議、その意見を伺いまして、鋭意推進しているところでございます。

 ただ、百万とか二百万とか言われる非常に多くの患者さんあるいは既感染者がおられるといったこともございまして、地域のさまざまな医療機関がその役割を分担しながら地域全体として支えていく、そういった必要があるのではないかというふうに考えております。

 治療困難例等に対応するためには、国立病院・療養所におきまして肝疾患を政策医療分野の一つとして位置づけておりまして、国立病院長崎医療センターを中心に、肝疾患の診断、治療、そういったものの開発研究にも取り組んでおります。

 なお、先生御指摘のエイズウイルスあるいはC型肝炎ウイルスとの重複感染の方につきましては、エイズ拠点病院におきまして、今後、リバビリンによります副作用等への対応を含めましたより充実したケアを行うことができるよう、整備に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

宮島政府参考人 御指摘の非環式レチノイドにつきましては、これまでのところ、諸外国においても医薬品として承認された例はないものと認識しております。

 国内においては、まだ医薬品としての承認申請は行われておりませんが、肝がんを対象とする申請に向けて治験が行われているところであるというふうに承知しております。

 今後、承認申請が行われた際に、提出されました資料を精査した上で、できる限り早く審査してまいりたいというふうに考えております。

家西委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ぜひとも患者に対して生きる希望、光を絶えないように努力をいただきますよう心よりお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則でございます。よろしくお願い申し上げます。

 冒頭に、ヤコブ病訴訟の原告団のお一人であります患者の山村桂子さんが一昨日の晩にお亡くなりになりました。この場をおかりしまして、心より御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 まず最初に、このヤコブ病訴訟のことについてお伺い申し上げたいと思いますが、私も薬害ヤコブ病問題を考える議員の会の民主党の世話人をいたしております。御存じのように、今も、もう三日目に入りましたが、厚生労働省の前で、原告団の方々や支持者の方々、そして患者さんの御家族や御遺族の方が座り込みをされておられます。私も昨日も行かせていただきましたが、本当に一日も早く和解をしてほしいということが切なる思いであります。

 ヒトの組織を初めて使った乾燥硬膜のライオデュラ、十分な検査もなく承認され、その結果約八十名の方がヤコブ病を発症されまして、これからどんどんふえていこうとしております。

 そんな中で、十月五日に山村桂子さんのお見舞いに行かせていただきました。きょうの資料の中にもございますが、私がお見舞いしましたときの山村桂子さんのお姿でございます。この議連の会長でもあります中川昭一先生、中川智子議員、川田悦子議員、参議院の小池議員とともにお伺いをさせていただきました。

 この写真を見ていただきましたらわかりますように、五十五歳、そして平成十年に発病されました。三十九歳で脳の手術でライオデュラの移植を受けられたわけであります。楽しみにしておられた娘さんの結婚式を目前に控えてヤコブ病を発病され、そしてこの写真にもございますように、まくら元にはお母さんの写真を置き、そしてまたもう一方のまくら元には、残念ながら出られなかったその娘さんのお子さん、つまりお孫さんである方々の写真に見守られ、病床に伏しておられました。大臣に一日も早くお見舞いに来てほしいということを御主人の伊吹さんもおっしゃっておられました。しかし、待ち切れずに亡くなってしまわれたわけです。

 まず、最初にお伺いしたいと思います。

 昨日の参議院の厚生労働委員会の櫻井充議員の質問に対して坂口厚生労働大臣は、この患者さんに対して、お会いしたいとは思う、しかし、ただお見舞いには行けない、十一月中旬に裁判所の和解勧告条件の提示があってから心を決めて会わねばならないと答弁をされました。

 まず、最初に御確認させていただきたいのですが、坂口厚生労働大臣、生きておられる患者の方々に会って、お見舞いに行っていただけるんですね。御答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 昨日、参議院におきましても櫻井議員にお答えをさせていただきましたが、お一人お一人の御家庭をお邪魔させていただくことになるのか、それとも、まず患者の御家族の皆さん方にお会いをさせていただくことになるのか、その辺のところはこれからよく御相談を申し上げなければなりませんけれども、この問題が解決しました暁におきましては、お邪魔をさせていただき、そしてごあいさつを申し上げたいというふうに思っております。

 しかし、昨日も申し上げましたとおり、私は、個人としての立場でありますならば、それは単にお見舞いを申し上げる、それで済むわけでございますが、しかし、厚生労働大臣としての立場にあります以上、それはただ単に御病気のお見舞いを申し上げるということだけでは済まないだろうというふうに思っている次第でございます。

 したがいまして、裁判所の方から、この月半ばというふうにお聞きをいたしておりますけれども、和解の条件をお示しいただくということを聞いております。その段階で、それに対する一つの結論を出させていただいた後にそれはなるのではないかというふうに思っている次第でございます。

山井委員 中旬に和解の条件が提示されるとのことでありますが、間違ってもけるということではなく、柔軟に和解に早急に応じていただきたいと思います。

 そして、今、会っていただけるということですが、そこで非常に重要なのが、患者の方々は待てないということなんです。来年三月に判決が出ますが、それまでぎりぎりに引き延ばすようなことはあってはならないと思っております。裁判所の和解勧告でも早期の解決ということが勧告されているわけですけれども、この早期というのは、明らかに、今残っておられる患者の方々が生きておられる間にということだと思います。

 しかし、一昨日、山村桂子さんは亡くなってしまわれました。そして、きょうまた三人の方が新たに東京訴訟について追加提訴をされました。これで東京訴訟は合計二十八名、そしてきょう三人追加された中で、お二人は残念ながらもうお亡くなりになっておられますが、お一人まだ生きておいでになります。ですから、北海道の十八歳のヒロ君、そして東京の小畑さん、そして本日追加訴訟された方、この三人しか今原告の生存患者さんはいらっしゃらないわけであります。

 そして、もうお一人、八十数名のヤコブ病の患者さんの多くは残念ながら亡くなってしまわれましたが、もう一人生存しておられますのが三重の田川貞雄さんでございます。田川さんは現在七十歳で、三重の国立療養所に入院中です。一九八七年にライオデュラの移植を受け、二〇〇〇年、昨年発病、しかし、実は五年前の衆議院選挙の前に坂口大臣本人もこの田川さんの御自宅を訪問され、そのとき、当時元気であった御主人と奥さんと一緒に記念写真も撮られたと伺っております。そして、奥さんは、今でも坂口大臣と御主人と一緒に写した写真を宝物のようにして額に入れて、いつの日か必ず坂口大臣が来てくださるということで、一日千秋の思いで待っておられます。私は、その写真の実物も見せていただいたことがあります。

 このように、原告の生存患者のお三方、そしてこの田川さん、四人の方にお見舞いに行っていただく、このことを早急にお願いしたいと思います。改めて坂口大臣の御答弁をお願い申し上げます。

坂口国務大臣 この月半ばに出ます和解勧告、それに対しましては、やはり早くこの問題を解決しなければならないという裁判所の御意思によるものだというふうに思っておりますし、そのことにつきましては私たちも尊重をしなければならないというふうに思います。そしてまた、その出ました結果につきましても、その御趣旨を十分に尊重したいと考えているところでございます。

 その後におきまして、日を定めて、そしてその皆さん方にもお会いをさせていただくことがあるだろうというふうに思っている次第でございます。

山井委員 今、会っていただけるということですが、改めてお聞きしますが、生きているうちに会っていただけるということで確認させてもらってよろしいですか。

坂口国務大臣 できるだけ早くその機会が訪れればと私も思っております。

山井委員 私がなぜそのようなことを申し上げるかといいますと、十月五日に山村桂子さんのお見舞いに行かせていただいて、今度私も委員会で、一日も早く大臣にお見舞いに来てもらえるように取り上げさせてもらうということを御家族の方にもお約束をさせていただきました。しかし、実際、一昨日亡くなられてしまったわけです。

 そういう意味では、本当にこれはスピードが大切だと思います。本当なら、きょうの私のこの質問にも山村桂子さんの御主人が傍聴に来てくださる予定でした。しかし、きょうこの一時から山村桂子さんのお葬式が行われているわけです。山村桂子さんは待ち切れなかった。先ほども、私、御主人と話をさせていただきましたが、本当に悔しいということをおっしゃっておられました。御主人さんいわく、来てもらって謝罪してくれとかいうんじゃない、坂口大臣もお医者さんなんだから、桂子さんに触れてもらったら、きっと感じてくださることがあるだろうということを私も思っております。

 何の罪もない方が、ライオデュラを移植したばかりにヤコブ病に感染し、そして、ばたばたと亡くなってしまわれます。どうか、天国の桂子さんのためにも残りの四人の患者の方に一日も早く会いに行っていただきたい。それは、亡くなられた、既に亡くなられた七十数名の患者さんやその御遺族にお見舞いに行くということにもつながると思います。

 そこで、一つお願いをしたいんですが、十一月中旬に所見が裁判所から出されるということですが、ここは坂口大臣の政治決断で、何とか年内に会いに行くということをお約束していただけないでしょうか。そうしないと、亡くなってからお見舞いに行くということは無理なわけです。

 今まで五年間、この裁判も行われてきて、これからずるずる引き延ばしていって、一年、二年で亡くなるのがこのヤコブ病であるというふうに厚生労働省さんもおっしゃっているじゃないですか。第二、第三の山村桂子さんをつくらないためにも、きょう電話で話した山村桂子さんの御主人も、ヒロ君にもヒロ君の御家族にも同じ思いをさせたくないということをおっしゃっておられました。

 少なくとも厚生労働省が認可したライオデュラで、何の罪もない方が亡くなっていっているのですから、生きている間に大臣が会いに行くのはせめてもの誠意というものではないでしょうか。年内にどうかお見舞いに行っていただきたい。そういう政治決断を、坂口大臣、よろしくお願いいたします。答弁をお願いいたします。

坂口国務大臣 先ほどからお答えをいたしておりますように、十分に尊重させていただきたいと思っております。本日の委員の御発言、御趣旨も十分に踏まえながら、十分に対応させていただきたいと考えているところでございます。

山井委員 先ほどの大臣の、患者さんが生きている間にお見舞いに行きたいという言葉を信じております。中旬に出る裁判所の和解に関する所見に関しては、ぜひとも柔軟に、そして何よりも早急に和解につなげていただきますようにお願い申し上げます。

 では、続きまして、医療の問題に移らせていただきます。

 国公立病院の医師連盟費の公費支出についてであります。このことについては、資料の二枚目をおめくりいただけますでしょうか。ここにもございますように、「国費から日医連会費」「政治団体費に国費使う」ということが出ております。それでまた、次のページにございますように、「二十三県立病院が政治団体費」ということも新聞で先週報道されております。政治団体への会費を公費で支出するというのは言語道断なことだと思います。

 まず、総務省にお伺いしたいと思います。この件についての御見解をお聞かせください。

木村政府参考人 自治体病院におきます、いわゆる医師連盟などの政治団体に対する費用を公費で支出することの是非についてでございますけれども、基本的にはそれぞれの地方公共団体の判断によるものであると考えておりますけれども、総務省といたしましては、その性格上公費からの支出は適切を欠くものではないか、このように考えているところでございます。

山井委員 では、国立病院の方についてお聞きしたいと思います。

 二十二の国立病院が同様に公費で医師連盟の会費を支出しております。これについて厚生労働省の御見解をお願いいたします。

桝屋副大臣 国立病院についてお尋ねをいただきました。医師会費の公費支出につきましては、地域医療機関との連携を図る、協力体制を構築していくということで、必要性が場合によってはあるだろうということで、医師会費の公費支出については妥当性もあるのではないか。ただ、医師連盟費については、その性格上、公費からの支出は不適切というふうに考えております。

山井委員 それでは、改めて総務省さんと厚生労働省にお聞きしたいのですが、これは今までの違法支出分に関しては返還するということですか。総務省と厚生労働省、お願いいたします。

木村政府参考人 今御答弁ございましたように、医師会への会費負担につきましては、自治体病院におきます地域医療の連携等を進める等の観点から、従来から公費で負担している例があると聞いておりまして、具体的な経費支出の判断につきましてはそれぞれの実情を踏まえまして各地方公共団体で判断すべきものと考えております。

 また、医師連盟の会費負担につきましては、先ほど申し上げましたとおり、総務省として、その性格上、公費からの支出というものが適切を欠くのではないかと考えているところでございまして、その取り扱いにつきましては、国の対応等も踏まえまして地方公共団体の判断によって適切に対応されるもの、このように考えております。

桝屋副大臣 お答えをいたします。

 今回、一部の国立病院等におきまして支出をしておりました医師会費の中に、一部医師連盟費等が含まれていたということもありまして、是正措置を講じる必要があるということで今対応しているところであります。今後は、適正な支出が行われるよう厳正に指導していきたいというように思っております。

 そこで、今委員から、今まで支払われたものについてどういう対応をとるのかというお尋ねをいただいたわけであります。これまでの支出分につきましては、医師会費等の内訳を十分確認しないまま現場において支払われたということもあるようであります。実情はさまざまでありますけれども、今後各施設の実態を十分に把握した上で、委員からも御指摘ありました返還も視野に入れて適切に対処してまいりたい、このように考えております。

山井委員 桝屋副大臣に改めてお伺いしますが、返還も視野に入れてじゃなくて、これは返還でしょう。政治団体に公費が入るということでいいという論理が成り立つのですか。

桝屋副大臣 先ほども御答弁申し上げたように、医師連盟費、政治団体についての支出については適切ではないというふうに考えているわけであります。今回、会計検査院等から指摘も受けたところでございまして、実態を十分把握した上で、委員御指摘のように、不適切なものについては適正に処理をしなければならぬ、このように考えております。

山井委員 総務省さんに改めてお伺いしたいのですが、ということは、国が返還することになれば、都道府県の病院に関してもその方向ということでよろしいですか。

木村政府参考人 先ほどもお答えいたしましたように、各地方公共団体の判断において適切に対応されるもの、このように理解しております。

山井委員 でも、都道府県に任せるということでは非常に無責任だと思うのですが、もう一度お願いいたします。それはもう都道府県に任せてあって、都道府県がオーケーと言えば都道府県のお金で政治団体の会費を払っていいのですか。答弁をお願いします。これは公選法にも関係していることですから。

木村政府参考人 御案内のとおり、地方自治法の二百三十二の二というところにおきましては、普通地方公共団体は、公益上必要のある場合には補助することができるというふうなことでございまして、その判断につきましては地方公共団体がおやりになるということでございまして、先ほど来申し上げておりますように、この判断につきましては、国の対応も踏まえまして地方公共団体で適切な判断がされるものと考えているわけでございます。

山井委員 そもそもこれは政治連盟なわけですから、公益性というよりは、そういう政治連盟への公費負担というのは絶対に認められないと思います。

 それで、次、議論を分けて、医師会費について改めてお伺いしたいと思います。

 三月十七日の共同通信の報道でも、ここに資料がございます。もう一ページめくっていただきますと、「医師会費を公費で負担 東京、岩手など三十四都府県で」というこの資料にもありますように、多くの自治体が医師会費を公費で負担しております。

 そもそも医師会というのは個人の資格で入るものなのに、それを公費で出すというのはおかしいのではないでしょうか。総務省、いかがでしょうか。

木村政府参考人 今御指摘がございましたように、医師会は個人加入が原則であると聞いておりまして、このように個人で加入する会の会費につきましては、原則として個人が負担する性格のものと考えているわけでございます。

 ただ、地方公共団体におきまして、地域医療との連携を進める等の観点から、従来から公費で負担している例があると聞いておりまして、具体的な経費支出の判断は、基本的には、医師会への加入が病院の業務に関するものであるかどうかなど、それぞれの事情を踏まえまして各地方公共団体で御判断されるべき問題と考えております。

山井委員 同様のことを厚生労働省さんにもお伺いしたいのですが、冒頭の新聞記事にもありましたように、国費から、日医連の会費だけではなくて、都道府県の医師会の会費が支払われているということです。このことについても、同じく個人の資格で入る医師会の会費を公費で出すのはおかしいのではないかと思いますが、厚生労働省の見解をお伺いします。

桝屋副大臣 委員も恐らく御理解をされておられると思いますが、今回いろいろ問題になっておりますけれども、国立病院の院長、責任者が地域医師会に入られるということについては、先ほどから総務省からもお話がありますが、地域医療に対応するさまざまな連携ということもあるわけであります。そうした協力体制を確保するという観点で、院長というお立場で、責任者というお立場で地域の医師会に加入をしていくということは、もちろん委員がおっしゃるように医師会の入会そのものは任意でありますけれども、院長というお立場でそうした業務の一環として地域医療の連携体制をとっていくというようなこともあって、院長が地域医師会にお入りになるその医師会費について公費で負担をするということについては、これは以前から行われてきたようでありまして、あながち妥当性がないとは言えないというふうに考えております。

 もちろん、これは責任者のお立場でということでありまして、ただ委員御指摘のように、医師会費の支払いについて、政治団体等の会費と一緒に集められていたというようなこともあって、そこは皆様に誤解を与えるところもあったということでありまして、そうした点については、今改めて実態を把握の上適正に処理をしたいというふうに考えているところでございます。

山井委員 今地域医療との連携において必要ということでしたが、実際二百七ある公立病院のうち百七十七程度が公費支出しているわけですから、三十の国立の医療機関は公費支出していないわけですね。

 それで、このあたりに関して、医師会に加入しないことによって地域医療の連携に支障を来したという例はあるんでしょうか。

桝屋副大臣 お答えいたします。

 国立病院の運営に当たりましては、やはり私は、地域医療といいますか、地域との連携というのは極めて大事な観点だろうというふうに思っております。

 委員お尋ねのように、地域との連携に支障を生じているということがあるのかということでありますが、そういうことが現に、ただいまの国立病院であるとすればそれは問題であろうというふうに思います。したがって、そういうことはないというふうに思っているわけであります。

 そうした前提に立って、委員御指摘のように、地域の医師会に院長が全部入っているのかというと、必ずしもそうでない。では入っていないがゆえに連携に問題が出ているのかというと、それはそうではない。地域医師会に入っておられること、入られていないことが地域の連携に問題が出ているということではもちろんない。医師会に入っておられるかどうかということがすべての条件ではないだろうというふうに思います。ただ、個人の御判断で、院長先生が地域医師会に私は職務として入った方がいいと御判断をされて入られて活動されるということは、それはあってしかるべきではないかというふうに考えております。

山井委員 個人の判断で必要と思ったら入ったらいいじゃないですかというんだったら、公費で出す必要がないじゃないですか。何でそれを公費で出すんですか。

 今、これほど財政が厳しくて、不況が深刻で、みんながどうやって財政を切り詰めようか、まさに医療制度改革で患者さんの自己負担をアップさせようというときなわけですよ。そういうときに、今みたいなあいまいな、支障が出るかどうかはわからないけれどもというようなことで公費支出するというのはやはりおかしいんじゃないでしょうか。具体的にどういう支障が出るということを想定されているんですか。お答えください。

桝屋副大臣 先ほども申し上げたように、具体的に現実の国立病院で地域医療との連携に問題があるということ、そういうことがもしあるとすればそれが問題でありまして、ただ、今お答えを申し上げているのは、地域の医療機関との連携を図り協力関係を構築する上で、国立病院等が地域において適切な医療を提供するために必要な医療情報などを容易に把握するということができる、そうしたことを踏まえて地域医師会に責任者がお入りになる、それをまさに公務の一環としておやりになるということ、これはあってもしかるべきだろうということでございまして、私は公費を充当することは妥当性はあるというふうに考えております。

山井委員 改めてお伺いしますが、この三十の施設は公費で出していないわけです。ここで支障が出ているんですか。

桝屋副大臣 先ほどから何度もお答えしておりますが、国立病院として地域の医療機関と地域の医療ということでもし連携に問題があるとすればそれは許されないことでありまして、それは医師会に入っている、入っていないは、私は直接、それだけが要素ではないだろうというふうに思っているところであります。十分連携はとれているということでございます。

山井委員 そうしたら今の論理が一貫していないじゃないですか。三十の施設は医師会に公費で入らなくても支障が出ていない、にもかかわらず公費で支出する必要があるというのと、全然論理が一貫していないじゃないですか。

 改めてお伺いしますが、三十の医療施設では何か問題があるんですか、公費で入っていないことによって。問題がないのに公費で支出せねばならないという理由をお願いします。根拠はないんですか。

坂口国務大臣 平成十三年の十月の十二日、厚生労働省の健康局の国立病院部が出しました文書がございます。この文書は一応、「当該代表者の医師会費に限り国費を以て充てることができることとする。」という文書を出しているわけですね。

 それで、この文書がいいか悪いかの問題は別途あるというふうに思いますが、それで、いわゆるこういう文書を出しているものですから、各個々の公的病院の方が院長の方はいいんだなという解釈を多分しているだろうと思うんですね。

 今までの病院の中で、院長だけではなくてほかの先生方の分を出していたというケースがあるのかどうか、ちょっと私はわかりませんけれども、院長に限ってはそれはいいということを認めているわけです。そのことが、院長も要らないじゃないかという御意見は、多分それはあるだろうというふうに思いますけれども、そういう意思決定を厚生労働省としては今までしてきたということだというふうに思います。

山井委員 これは県立病院の話ですが、例えば富山県立中央病院は一九九六年から医師会費の公費支出をやめましたが、支障は一切ないと言っております。また、沖縄県も同じように公費支出をしておりませんが、運営に全く支障はない、公費負担は筋違いと言っているわけですよね。

 やはりこのあたりのことをきっちりとしていただきたいと思いますし、今一人に限りということがありましたが、実はこの資料の次にも入っておりますが、「医師会加入及び会費支弁に関する件」で、昭和二十三年に実は通知が出ているんですね。

 その二として、「療養所運営上入会を必要とする施設に於いては所長が療養所を代表する意味に於いて国費を以つて入会することは差支えない。」このことを今回踏襲したんだと思いますが、今回のこの調査結果によると、一人以上国立病院から入会して医師会費が払われているわけですが、ということは、過去の一人以上の分はこの通知違反ということになるんですが、その部分に関しては当然公に返還するということになるんですね。

桝屋副大臣 先ほどもお答えしましたように、今まで不正に支出されていたものについては、改めて整理の上適正に処理をしたいというふうにお答えを申し上げました。その中で整理をしたいと思います。

山井委員 このことについて、会計検査院さんの現時点での御見解をお伺いしたいと思います。

 昭和二十三年に一人分しか医師会費は認めないということになっていながら、それ以上の医師会費もずっと長年出されていた。こういうことが放置されているようだったら、本当に税金や医療費の自己負担を上げていくという議論は成り立たなくなってくるわけなんです。

 会計検査院さん、この件に関して今の御見解をお聞かせください。

増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 私ども会計検査院といたしましては、現在本年の検査結果の取りまとめ中でございまして、今御指摘のありました件につきましては、私ども、合理的な必要性があるものに限って認められるべきものであろうと、かつまた、二十三年の通知も承知しております。

 そういう観点から検査を実施してきておりますけれども、現在その取りまとめ中だということで、最終的な本院としての判断はまだ出ていない段階でございますので、その点、内容につきましての御答弁は差し控えさせていただくということで御理解を賜りたいというふうに思います。

山井委員 十一月末ごろにこの結果が出るというようなことを聞いておるんですけれども、本来個人で支払うべきものを公費で支払っているというような不適切な結果報告が出ないことを望みます。何ら支障が出た事例もないのに個人で支払うべき一人分が公費で支払われるのはおかしいわけですし、返還についても厳しい結果を出していただきたい、それが会計検査院の任務だと思っております。

 今の答弁を聞いておりましても、いかに医師会費の公費支出というのが説得力のないものかというものを私は痛感いたしました。ぜひ今後、もうちょっとはっきりした理由というものを出していただけないと、繰り返しになりますが、やはりこういうことでは国民感情からしては許されないというふうに思います。

 次に、医師会と医師連盟とのつながり、政治活動についてお伺いしたいと思います。

 今も申し上げましたように、ただでさえ財政が厳しい今日、公費で医師会費を支払う必要は私はないと思います。しかし、医師会は、御存じのように公益法人でありまして、専門医療研修費や看護職員確保対策費などの公の補助金も受けております。また、母体保護法に基づいて、人工中絶できる医師の指定の役割も医師会が持っているというように、公的な役割を医師会は担っております。

 このような医師会が直接政治活動をすることは好ましくないというふうに思いますが、厚生労働省、見解いかがでしょうか。あるいは総務省でも結構です。

桝屋副大臣 委員がお話しになりましたように、公益法人であります医師会と、それから政治団体との関係ということについては、これは誤解があるようなことがあってはならないというふうに思っております。

山井委員 何かその、誤解があるようなことがあってはならないというのはどういうことですか。はっきり、公益法人である医師会の政治活動は私は好ましくないと思うんですが、そこのことについて明確な答弁をお願いいたします。何が誤解なんですか。

桝屋副大臣 公益法人である医師会と政治団体である医師連盟とが一体であるかのような、そうした誤解を与える行為ということが随分今まで国会でも指摘をされてきたところでありまして、そういう指摘を受けたこともありまして、そうしたことについては好ましくない、こうお答えをしたところでございます。

山井委員 この次の資料の中にありますが、これはことしの八月二十一日の事務連絡です。厚生労働省の医政局から各都道府県の衛生主管部局に出されております。「公益法人の活動と政治団体の活動の峻別について」

 この中で、「補助金等を受けた公益法人の活動と政治活動に関する寄付を行う政治団体」これは医師連盟などのことだと思いますが、「の活動が一体であるかのような誤解を与える行為は適切ではなく、政治団体の活動との峻別が図られることが望ましいと考えます。」というふうなことが書いてありまして、「公益法人と政治団体の活動が一体であるかのような誤解を与える別紙の事例等を参考に、不適切な事例の有無を調査し、」十二月二十八日までに回答するようにということで、別紙に不適切な事例が書いてあります。

 改めて桝屋副大臣にお伺いしますが、「政治団体の活動との峻別が図られることが望ましい」、これはなぜなんですか。医師会がそのまま政治活動をやったらだめということですか。なぜ峻別が必要なのか、なぜこういう通知を出したのか、お聞かせください。

桝屋副大臣 先ほど、これはまさに委員がお尋ねになりましたように、医師会については、公益法人としてさまざまな補助金等も支給を受けているということもあり、公金が支出をされているというようなこともあるわけでありますから、政治活動を行う政治団体である医師連盟と一体であるというようなことがあってはならないということでございます。

 こうしたことがあるわけでありまして、今委員がお示しになりました八月二十一日の文書につきましては、所管の医師会に対して適切な改善指導を行っていただくように、各都道府県に対してお願いをしたという資料でございます。

山井委員 まさに今桝屋副大臣おっしゃってくださいましたように、医師連盟と医師会が一体として政治活動をすることがあってはならないということですよね。先ほど、公費で一人分は支出するということになっておりましたが、その部分も政治活動をやっていないというような前提に基づいているんだろうと思います。

 それで、医師会と医師連盟を峻別するようにと指導しているわけですが、これについていろいろ資料を調べてみましたが、例えば日本医師連盟規約というものを見てみました。

 それで、「本連盟は、日本医師連盟と称し、日本医師会会員相互の全国的連絡協調の下に、日本医師会の目的を達成するために必要な政治活動を行うことを目的とする。」ということになっているんですが、私がおかしいと思ったのがこの役員なんですね。この政治連盟の委員長は、日本医師会会長をもってこれに当たる。それで、副委員長は次に挙げる者の中から委員長が委嘱する。一つ、日本医師会副会長、二つ、日本医師会代議員会議長、三つ、日本医師会代議員副議長、日本医学会会長というふうになっております。

 私は、またほかの地域の医師会の名簿もたくさん取り寄せたんですけれども、このように、医師会の役員名簿と医師連盟の役員名簿、これはほとんど一緒なんですね。ほとんど同じ人がやっている。これで、厚生労働省さんがおっしゃっているように峻別はできていると言えるんでしょうか、御見解をお聞かせください。

篠崎政府参考人 今先生の御指摘でございますが、公益法人である日本医師会につきましては、これは公益法人でありますから私どもの指導監督の対象でございますが、今御指摘の日本医師連盟につきましては、これは任意団体ということでございます。

 それで、人が同じだからその峻別ができるかどうかという御指摘だと思いますが、先ほどの事務連絡のときにも私ども都道府県にお願いをいたしましたのは、例えば、会費の徴収の仕方、事務所の問題、預金口座の問題、あるいは事務所の建物の賃貸の関係ですとか、そういうところで峻別をすべきなのではないかというふうに考えているわけでございます。

山井委員 人が同じだったらこれは活動も混同する、そして周りからも混同されるというのが普通じゃないかと思います。

 そして、この役員のことに次いで次にお伺いしたいのが、ホームページもいろいろと調べてみました。

 例えば、石川県医師会のホームページがここにございます。その一番大きなメーンテーマ、これは手持ちの資料、そちらには入っておりませんが、石川県医師連盟、こうなっているわけですね。石川県医師会のホームページの一番大きな見出しが石川県医師連盟というふうになっております。こういう事例は峻別されていると言うんですか。いかがですか。

桝屋副大臣 今初めてお示しをいただいた資料でありまして、私もホームページはよく見ますけれども、そのホームページはまだ見たことがありません。

 ちょっと私、目が悪いのでよく見えないのでありますが、先ほどお答えをしましたように、やはり峻別をするように取り組みをしていただかなければならぬだろうというふうに思いますが、誤解があるものについては、著しく誤解を与えるというものについては、それは是正をしていただく必要があろうかと思いますが、実際に内容を見ない限り、私も詳細にはお答えできません。

山井委員 八月二十一日にこういう通知が出てからも、まだまだホームページはこういうふうに全く峻別がされていないわけですね。

 そして、例えば山梨県の医師会では、医師会の事務局職員の分担業務として、総務課長、医師連盟、主事、医師連盟、こう出ているわけですね。これは許されることなんですか。いかがですか。医師会の事務局職員が医師連盟の仕事をする、これは許されるんですか。

篠崎政府参考人 今の事例で、公益法人の医師会の事務局員としてその時間内での作業であるということならば、不適切ということだと思います。

山井委員 時間内も何も、ホームページに正々堂々とその仕事内容が書いてあるわけですよね、公式に。

 次に、愛知県医師会では、医師会の副理事の分担業務に、医師連盟ニュースの発行となっているわけです。

 岩手県医師会のホームページ、開催行事のお知らせ、報告、これをちょっと読み上げさせていただきたいと思います。

 二〇〇〇年十月十四日、地域医療情報研究会、十一月二十五日、全国医療情報システム協議会、十二月二日、朝日医学セミナー、これは岩手県医師会の行事ですよ。そして、二〇〇一年一月二十六日、参議院議員選挙全国医師総決起大会、キャピトル東急ホテル、五月十三日、参議院選挙総決起集会、六月十七日、参議院選挙全国医師・支援団体総決起大会、八月十一日、岩手県医師連盟執行委員会、これが岩手県医師会のホームページの内容です。

 そして、別のページでは、平成十三年十月二十四日の岩手県医師会の第三回の監事会の報告として、岩手県医師会一般会計、医師連盟会計、自由民主党医療会支部会計につき監査を受けた結果、適正であったと報告されていますと出ているじゃないですか。これでも峻別されているんですか。答弁をお願いします。

坂口国務大臣 ことしの一月早々でございましたけれども、例のKSD問題がございまして、そして親会社とその出先との間が、もう場所も同じ、人も同じ、そして経理も同じで一体どうするんだと随分おしかりを受けたわけで、我々もそこは明確に峻別をしなければならないというので、そのようにしているところでございます。

 したがいまして、医師会の方も、これも前にも問題になったわけでございますが、住所等も医師会の住所と政治連盟の住所が全く同じであり、そして経理が全く同じであるというのは、それはおかしいではないかという御指摘が以前にもあったというふうに記憶をいたしております。そこはやはり明確に区別をしていかなければならないというふうに私も思います。

 医師会は、これは厚生労働省もかかわるわけでございますから、医師会に対しまして、政治連盟と医師会とはやはり明確に峻別をしてもらいたいということを申し上げなければならないというふうに思っておりますので、そこは責任を持ってそのように医師会に申し上げたいと思います。

山井委員 まさに今坂口大臣もおっしゃられましたように、これは明確に峻別しないとだめだと思います。

 お配りした資料の中で、どういう例が不適切な事例かということで、「公益法人が、政治団体の会費を特別会費の名目で、同法人の会費と一緒に徴収していた事例」「公益法人の事務所が政党の入党申し込み書の送付先となっていた事例」「公益法人の会費と政治団体の会費が同一の預金口座で管理されていた事例」、四つ目、「公益法人が地方公共団体から減額された賃料で借りた建物の一部に政治団体の事務所が置かれていた事例等」となっています。

 ここで提案したいんですが、これ以外に二つ、公益法人の会合で政治活動や選挙の話をすること、あるいは政治団体の活動の話をすることということを不適切な事例に加えるべきではないでしょうか。もう一点、公益法人の事務局が政治団体の仕事をすること、これも不適切な事例だと考えます。この四点の不適切事例だけでは、表向きのことで、実体の峻別にはならないと思います。

 繰り返しますが、公益法人の会合では政治や選挙活動の話や政治団体の活動の話を公式にはしないということと、公益法人の事務局が政治団体の仕事をしない、当たり前のことだと思いますが、この二点をここに加えるべきだと思うんですが、御見解をお聞かせください。

桝屋副大臣 委員も恐らくこの辺のきちっとした整理をされた上でお尋ねになっているんだろうと思います。

 一番悩ましいところでありまして、公益法人が政治活動をできないのかというと、これはなかなか議論があるところだと思います。ただ、やはり、先ほど大臣がお答えを申し上げましたように、公益法人である医師会、先ほどから委員がお挙げになったようなさまざまな、例えば公の補助金が出ているというようなこともこれあり、政治団体である医師連盟と一体であるような、そういう誤解を与えることは厳に慎まなきゃならぬ、峻別をしなきゃならぬということで、八月二十一日に文書を出しまして各都道府県に指導方をお願いしたところでございます。

 今、委員から、その事例の中で、四つの事例プラス、例えば公益法人の会合で政治活動の話を一切しない、あるいは公益法人の事務局、これが政治団体の仕事をしないと二つお挙げになりましたが、特に前者の、会合でどういう話をするか。特に政治活動、どこまでが政治活動かというのは、委員もバッジをつけている人間でありますから、非常に難しいお話だろうと思うんですね。峻別をしなきゃいかぬ、この考え方で私どもは指導をお願いしているわけで、今の政治活動等については、にわかに、それはそういたしますとはちょっと答えられない難しさもあるのではないか、こう感じております。

山井委員 もしそういうふうに明確に峻別できないんでしたら、さっきおっしゃった公費支出の、一人分の医師会費を公に出すというのは撤回すべきじゃないですか。峻別できてからの話でしょう。峻別できないんだったら、今みたいなうやむやな答弁しかできないんだったら、公費を入れるのはおかしいじゃないですか。答弁をお願いします。

桝屋副大臣 お答えを申し上げます。

 例えば、先ほどの医師会費の話は、国立病院の代表者、責任者が地域医師会に入られている、その場合は、地域医療との連携ということもあり、公費から支出することは妥当性があるのではないか、こう申し上げたわけであります。

 その根拠がないと盛んに先ほどから言われるわけでありますが、地域医師会のあり方、あるいは置かれた国立病院の経営実態といいますか、地域との状況ということを考えますときに、例えば病診連携であったり病病連携、あるいは地域医療研修センターの運営とか、あるいは医療機器等の共同利用というようなことを含めて地域医師会に参画をして、そして公務としてそういう活動をしなければならぬということも、これは私はあっておかしくはないというふうに感じておりまして、そこはぜひ御理解をいただきたい。

 では、それがなければ協力体制ができないのかといいますと、私は、それは地域によっては、医師会にお入りになっている、入っていないということは抜きにして連携は十分とれているというところもあるのだろうというふうに理解しております。

山井委員 私は全く納得できませんので、このあたり、会計検査院に厳密にチェックをしていただきたいと思います。

 最後に、医師連盟と政治献金と医療制度改革についてお伺いしたいと思うんですが、坂口大臣は、医師会の会員であって、医師連盟にも入っていられるというふうに聞いているんですが、医師連盟に入っておられますか。

坂口国務大臣 多分入っていると思います。

山井委員 ということは、医師連盟からの献金の多くは自民党に行っているわけですけれども、坂口大臣は今までから自民党も応援をしておられたんですか。

坂口国務大臣 医師連盟は一党を応援するというものではなくて、その地域地域、いろいろの人を応援していると思います。例えば、民主党の方でありましても、医師出身の人でありましたら、その地域の医師会は応援をしておみえになるのではないかと私は思います。私も自民党に所属はいたしておりませんけれども、私は医師出身ということもありまして地域の医療機関からは支援をしてもらっている、そういうことはあるわけでありますから、医師連盟の会費を払っているからそれはおかしいということにはならないというふうに思っております。

山井委員 日本医師連盟は、二〇〇〇年には十六億五千万円を集めて百五十人を超す政治家の団体に寄附しています。小泉首相の団体にも七百万円が献金されていますし、また、製薬産業政治連盟も二〇〇〇年にはトータル一億一千四百万円、健保政治連盟も一億三千万円を献金しています。

 私も、医師会の政治的主張が悪いと言っているわけではなく、営利企業の病院経営への参入の反対のこととか、あるいは、日本ではまだまだ十分に医療にお金がかけられていない、欧米先進諸国に比べて医療費の割合も少ないというような主張も非常に私は賛同するわけでありますが、しかし、この多額の政治献金を行う意図というのは何かというふうに思うわけです。

 例えば、二年前の診療報酬の議論のとき、十二月十九日に〇・二%診療報酬の引き上げが決着しましたが、その決定直前の一九九九年の十一月二十六日に自民党に日本医師連盟から三千万円、十二月一日に三千万円、十二月九日に一千万円、十五日に二百万円が献金されて、その後、十九日に〇・二%の診療報酬の引き上げが決着しました。

 医療制度改革というものがこのような政治献金に影響されることがあってはならないと思いますが、坂口大臣の御見解をお聞かせください。

坂口国務大臣 いろいろ政治連盟があるわけでありますけれども、政治連盟が、それぞれの自分の支援をするところに対しまして政治献金をするということは、それは多分あるんだろうというふうに思います。しかし、そのことはそのことでありまして、そして政策問題は政策問題、これはまた別の話でございます。

 一九九九年の十二月というふうにおっしゃったと思いますけれども、このときの医療費の改正につきましては、医師会はその額に対しまして大変な反対でございまして、それは非常に大きな衝撃を受けたというふうに記憶をいたしております。決して医師会の言うような結論にはなっていない結論であったというふうに思っております。

山井委員 だからこそ、この献金というのがその時期に多く行われたのではないか。今まさに自己負担アップという厳しい選択をある意味で国民にも迫ろうとしているときに、片や関係団体が多くの政治献金を政治家や政党に出すということは、これで本当に国民の目から見て納得できるものなのか。

 提案ですが、李下に冠を正さずという言葉もありますが、献金で医療制度改革がゆがめられたというふうな疑いを受けてはなりませんので、これから、医療制度改革に向かって一段落するまでの間、与党も野党も、関係議員は医師会からの政治献金の受け取りを自粛するというようなことについて、坂口大臣、いかが思われますか。

坂口国務大臣 これは私がなかなかお答えする話ではないというふうに思いますが、お気持ちとしては、それは私もそのとおりだというふうに思っております。

 ただ、これはそれぞれの議員の話でありまして、私がそれを一律にどうこうということはなかなか言いにくい話でございますけれども、御趣旨につきましては私個人は賛成でございます。

山井委員 政治献金そのものは合法だとしても、今回のまさにこれから議論が始まる医療制度改革というのは、非常に厳しいことを国民に強いるものであるわけですね。そのときに、議員や政党だけは多くの献金を受け取る、そのことが国民の目にどのように映るのか。

 公明党は、英語ではクリーンパーティーというふうに聞いております。そこで、ぜひとも私が心配するのは、これから診療報酬の改定も年末に向かってあります。それに向かって、多くの関係団体が、また国民の声とは違った次元で献金攻勢をかけるということがあっては、国民の人たちも自己負担アップに納得できないと思うのですね。

 そのあたり、これからあと一カ月、そのようなことが起こるやもしれません。そのような政治献金と医療制度改革ということに関して、先ほど政治家個人の問題とおっしゃいましたけれども、私は、これは個人の問題とは言い切れないと思います。医療制度改革が、みんなが痛みを分かち合う公平なものにする以上は、しっかりと政党や政治家が先頭を切って襟を正さねばならないのではないですか。そういうことができなかったら、出てきた政治改革の案も献金をたくさんに受け取った上であったら国民に納得されないのではないでしょうか。

 改めて最後に、坂口大臣の、このことに対する思い切った御意見をお伺いしたいと思います。

坂口国務大臣 それは、私個人はそのとおりというふうに思っております。

 今回の医療制度改革は、国民の皆さん方にもお願いするところはしなければなりませんが、医療機関に対しましても、ひとつ十分な御理解をいただいて、そしてお願いするところはしなければならないというふうに思っております。医療機関に対しましても、これはかなり痛みをやはり分かち合ってもらわなければならない問題だというふうに思っております。

 いわゆる政治連盟からの献金につきましては、少なくとも私は、この大臣に就任中はどんな形であれ受けないということを決定しているところでございます。

山井委員 私も、医師の方々の声が政策決定に生かされるということは非常に重要なことだとは思っております。しかし、そういう献金やお金というものであって公平な医療制度改革にえこひいきが起こるような、そんな疑いが持たれては決してならないと思いますので、私自身も含めて襟を正して、これから医療制度改革の議論にも突き進んでまいりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党・無所属クラブの大島敦です。

 きょうは、午前中より坂口厚生大臣には御答弁をいただきまして、まことにありがとうございます。そして、文部科学省からは、きょうは矢野局長においでいただいております。あわせて御礼申し上げます。

 きょう御質問させていただくのは、前回の通常国会に引き続き、保育所と幼稚園のすみ分けについて三十分ほど質問させていただきます。

 私、国会議員として予算あるいは国会の審議に立ち会うと、金額の多さにいつも驚いてしまいまして、大体百億、五百億、一千億という金額が当たり前のように予算措置されて出ていくのが私たちのこの国会で感じているところでございます。民間企業ですと、一億円を税金として納めるために、非常に努力をされてようやく一億円という金額を税金として納める。私たちの所得もそうでございます。

 したがいまして、私たちが予算措置されて使われたものについて後からフォローアップして、本当にその政策が有効だったのか有効ではなかったのか、あるいはこういうところが改善する余地があるのか、そういうところというのは、やはりこういう議論の場を通じて方針あるいは確認していった方がいいかと思っております。

 そして、一番最初に取り上げさせていただくのは、少子化対策臨時特例交付金というのが、ちょうど二年前に、平成十一年度の第一次補正予算で二千億円の交付金として市町村及び都道府県に交付されております。その交付金のあり方について伺いたいと思います。

 まず、交付金というのは、私の考え方ですと、ある程度リクエストがあって、困っている人がいて交付するのが交付金かなと思うのですけれども、今回のこの二千億円についてはどのような経緯で交付されたのか、お聞かせいただければ幸いでございます。

南野副大臣 先生、幼稚園で二十一世紀の子供たちを本当に大切にお育ていただいていることに敬意を表しているところでございますが、今お尋ねの、本当に高額な二千億円というものがどのようにして交付されたかということの御理由でございます。

 一番最初にイエス、ノーで答えればいいのでございましょうが、その前にちょっとだけ御説明させていただきたいと思います。

 少子化対策の臨時特例交付金、この事業は、与党三党の提案をまず踏まえながら、平成十一年度補正予算において、保育所の待機児童の解消など、少子化対策の呼び水として効果的に創意ある工夫をする事業、それを対象に実施されたものというふうに伺っております。

 さらに、少子化対策を進めてまいります上で市町村の役割が特に重要である。そのために、この交付金は、市町村が実情に応じて、少子化対策に資すると判断した事業を幅広く選定できる仕組みとなっている。そういう仕組みのもとに交付金の出資がなされたというふうに思っております。

 これは、各市町村におきましても、このことを十分理解していただいており、評価をいただいているものというふうに考えております。そういう意味では、新しい形の交付金ではないかな、そのように思っております。

 以上でございます。

大島(敦)委員 この二千億円について、市町村も、あるいは受け取る保育所も幼稚園も、受け取れるのですから不満はないはずなんです。不満はない。あくまで予期せぬものがいただけるわけですから、これはだれも文句を言わないと思うのです、二千億円が。あるいは、幼稚園にしても保育所にしても、百万円から五百万円の幅ぐらいでいただけるのであれば、ありがたいなと思うのは当然だと思うのです。ただ、その効果というのがあるかと思うのです。

 今回の十四年度の概算要求で、五万人分の待機児童を解消するために大体三百億円を超える予算要望を厚生労働省はされているわけです。五万人ふやすのに三百億円だとすれば、これは二千億円、そのうち一千億円が保育所に対する施設とか設備整備費として使われているわけです。そうすると、私、単純に考えると、一千億円使ったんだったら、もうとっくの昔に待機児童が解消しているのかなと思うのですけれども、その点はどうお考えすればよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 これは当時、三万二千人ぐらいが待機児童というふうに計算されていたというふうに思っています。それで、この二千億円の交付金が決まりまして、そして初年度どのぐらい使われましたか、これは三年間で使うことになっておりましたから、初年度どのぐらい使われることになったか、少し数字は私は具体的には覚えておりませんが、それで、この三万二千人の収容のできる待機児童の設備がやられたと思います。

 それで、三万二千人がそれでそこへ入れるようになりましたら、次にちゃんとまた三万二、三千人の新しい待機児童が生まれてきたということでございまして、これは、そういうことを行われますと、次々とまた新しく手を挙げてくる方がおみえになるんだなということが初めてそこでわかったわけでございます。

 今回も、この十四年度から十六年までの間に十五万人の待機児童のための用意をいたしておりますが、これも現在そんなにたくさんあるわけではなくて、三万数千人というふうにお聞きをいたしております。しかし、その皆さん方の新しいお入りいただく場所をつくりましても、多分、次にまた新しい人たちがそこから生まれてくるんだろう、そういうことで十五万人ということを今回したわけでございます。

 したがいまして、最初のいわゆる二千億円におきましても、恐らく三万数千人分の新しい場所ができたというふうに記憶をいたしております。

大島(敦)委員 細かい数字を政府参考人の岩田局長の方に伺いたいんですけれども、今回のこの二千億円を使ったことによって、保育所がどのくらいの人数がふえたのか、伺わせていただければ幸いです。

岩田政府参考人 二千億円の少子化対策臨時特例交付金の中で、保育所の整備、保育所関係に使われましたのが、その中で約一千二百六十億円でございます。まだ現在、この事業は継続中でございまして、十三年度いっぱい続くわけでございますけれども、交付決定をした時点での予定どおり事業が進んでいるとすれば、この三年間で三万九千人の受け入れの増大が図れるという事業の予定になっております。

大島(敦)委員 今、三万九千人というお話だったんですけれども、三万九千人をふやしたこのお金というのは、すべてこちらの交付金から支出されているもので三万九千人ふえたのか、それをちょっと伺わせてください。

 もう一つ、これは十一年度、十二年度、十三年度、三年度ですから、初年度についてどのぐらいの金額が使われたのか、そして、予算措置されてから使われるまでのリードタイムがどれだけだったのか、伺わせていただければ幸いです。

岩田政府参考人 まず、初年度は十一年度、実際に交付決定されましたのは十月でございまして、六カ月間の期間で、事業期間が六カ月間だったわけでございますが、その初年度に約一千億円弱でございまして、残りの一千億につきましては、十二年度、十三年度を通して使用できるように、それぞれの自治体で基金を設立し、その基金を使いながら今事業をやっているということでございます。

 したがいまして、保育所の整備についてもそういう形でやられておりますので、十一年度につきましては、今申し上げました三万九千人の受け入れ増の予定のうち、約一万二千人程度、これが十一年度の受け入れ増でございまして、残りは十二年度、十三年度の事業の結果、先ほど申し上げましたような規模が予定されているということでございます。

 そして、交付金の交付の決定から執行までの時期についてのお尋ねもあったかというふうに思いますけれども、補正予算が成立しましたのが十一年の七月二十一日でございまして、交付金を決定いたしましたのが先ほど申し上げましたような十月ということでございますので、具体的には、その間で各自治体に準備をしていただき、申請をしていただき、国として決定したということでございます。

大島(敦)委員 今国会は雇用対策国会と言われておりまして、これから雇用対策の審議が当委員会で始まることと思います。その予算というのは、今お話伺いますと、十月から六カ月間で一千億円という金額が要は交付されたということ。その一千億円が交付されるに当たって、今回これ、私が聞いたところだと、受け入れる方というのは、ある程度、どのくらい待機児童がいらっしゃるとか、そういう数値によって、どの自治体は幾らですよというふうに決めていったと伺っております。

 やはり、本当に必要なところに必要な金額を渡す、あるいはその渡す内容が正しいかどうかを僕は査定するべきだと思うんです。あるいはそれがフォローアップできるようなものが必要なのかなと今思っておりまして、今回は、一千億円を保育所の人数をふやすために使ったとしても、それによって三万九千人しかふえなかったというのは、投資対効果が悪いんではないのかなと私は考えるところなんです。

 ですから、そこのところを今後、こういう予算措置をされる場合にはきっちりやってほしいなと思うんですけれども、坂口大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 それはそのとおりと私も思います。

 この二千億の場合には、これは各都道府県それから市町村に、どういう基準だったかわかりませんけれども、全部分割したというふうに思います。ですから、必ずしもそこにお子さん、待機児童がおみえにならなくてもそのお金は行っているところもあったというふうに思います。

 ですから、そこでむだがあったではないかという、そこに反省があったわけでございますが、しかし、中には、学童保育ですとかそういうところにもこれを使っているわけでありまして、必ずしも保育所だけに使われているわけではございません。そうしたことに使われたりもいたしておりますから、決してむだがあったわけではありませんけれども、本当に必要なところに集中してそれが行ったかといえば、そうでない部分もあった。したがいまして、そこは反省点として私たちも考えているわけでございます。

大島(敦)委員 大臣の答弁、ありがとうございました。

 次に、先ほど坂口厚生労働大臣の方から、平成十六年度までに十五万人、保育所の待機児童、いわば保育所の受け入れ枠をふやすというお話がございました。

 私、前回の五月十八日の当委員会で、坂口厚生大臣に、保育所と幼稚園のすみ分けについて伺ったところ、御理解を示された答弁をいただきまして、そのすみ分けについてもう少し伺いたいんですけれども、十五万人、保育所の受け入れ枠がふえるということは、保育所と幼稚園の人数というのは大体百八十万人ずつなんです。大体、保育所が百八十万人、幼稚園が百八十万人預かっているわけです。保育所を十五万人ふやすということは、単純に、幼稚園の百八十万人のうちの十五万人が減るんじゃないのかなと思うんですけれども、そのところ、いかがお考えでしょうか。

坂口国務大臣 前回のこの二千億の場合にも、保育関連のところに千二百六十億円、そして幼稚園の施設整備などのところに四百八十四億円、これは出ているわけでございます。

 最近いろいろ拝見をいたしておりますと、もちろん、保育園の幼稚園化と申しますか、いろいろなことを教えたりというようなことも出てきておりますが、幼稚園の方も、大変御努力をいただいて、保育園化という言葉がいいかどうかはわかりませんけれども、一生懸命延長をしていただきましたり、さまざまなことをおやりいただいているというふうにお伺いをいたしております。私の孫なども、延長してもらって、そこへ入れていただいて大変喜んだりいたしておりましたから、幼稚園の中にもそういうところがたくさん出てきたというふうに思っています。

 したがいまして、今後の財源の分配等につきましても、そうした保育園の問題も私たち一応、厚生省でございますから、中心に考えてはおりますけれども、しかし、幼稚園のそうした保育園化ということも十分にこれは念頭に入れていかなければならないだろうというふうに思っている次第でございます。

 やはり、保育所に入る人がどんどんふえれば幼稚園に入るお子さんが減るのではないか、こういう懸念も率直に言って私はあるというふうに思っておりますが、しかし、そこはなかなかお母さん方のお考えもはっきりいたしておりまして、幼稚園は幼稚園にやはりやりたい、保育所が近くにあってもやはり幼稚園にやりたいとおっしゃるお母さん方も多いわけでございます。私の方のような田舎に行きましても、保育園の方が非常にあいておりまして、幼稚園が満杯というところも市町村によりましては実はございます。

 そうしたことも中にございますので、私は、一律にそういうことではないだろうというふうに考えている次第でございます。しかし、その辺のところは十分に配慮をしながら、私たちもやらなければならないと思っております。

大島(敦)委員 幼稚園の預かり保育、延長保育の予算規模というのが、昨年度が六億円、今年度が十二億円、来年度が十八億円で、金額規模が一けた違うのではないのかなと思うわけなんです。

 先ほど坂口厚生労働大臣の方からお話のありましたとおり、幼稚園の預かり保育、延長保育、非常にふえておりまして、今、幼稚園の半分ぐらいが預かり保育、延長保育をしております。そして、その半分ぐらいが、時間的には四割ぐらいが五時とか六時ぐらいまでは預かっておりますので、通常のニーズというのは、徐々に幼稚園でも保育所と同じようなニーズはカバーしている。最近は、今までは春休みとか夏休みも閉めていたんですけれども、そこもちゃんと対応するようになってきておりまして、幼稚園が、保育所に通っていらっしゃるようなニーズを受け入れる受け皿としても徐々に整備されてきておるところでございます。

 そこで、私が考えるのは、坂口労働大臣は幼稚園の方は大丈夫だよというお話かとは思うんですけれども、どうしても保育所が十五万人ふえると幼稚園が地域ですと減るんです。まだ幼稚園の経営者の方は、実態として痛みを感じていないものですからそんなに問題としていないんですけれども、三年から四年たって、十五万人ふえて徐々に入園する児童の方が減ってくると、ようやく気づいてちょっとまずいのではないかなと思ってしまうところなんですけれども、そこのところ、文部科学省さんとしてはどういうお考えなのか、お話を伺えれば幸いでございます。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

矢野政府参考人 幼稚園と保育所につきまして改めて申し上げますと、幼稚園は就学前の幼児教育を行う学校教育施設として、また保育所は保育に欠ける子供に対して公的な保育を行う児童福祉施設として、相互に連携を図りながら、それぞれの制度の中で整備が図られてまいっているところでございます。

 そうした中で、幼稚園は、近年の保護者の保育ニーズの多様化、また少子化の進行などを踏まえまして、通常の教育時間の前後などにいわゆる預かり保育を推進する幼稚園がふえてきておるわけでございますし、さらに幼稚園は、子育て支援活動など地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たしていくことがこれから大変大事になってまいるわけでございます。

 文部科学省といたしましては、これまで預かり保育を実施いたします私立幼稚園に対する助成などによりまして、これらの取り組みを支援してまいっているところでございますけれども、委員御指摘のような園児の減少ということが起こらないようにするためにも、今後とも、幼稚園の預かり保育あるいは子育て支援策、こうした事業を充実することによりまして、待機児童の解消、そして子育て支援に資することとしてまいりたい、かように考えているところでございます。

大島(敦)委員 今の御答弁ですと、十五万人減るとかふえるとかいうお話については余り答弁を直接的にはされていなくて、文部科学省さんとしては、預かり保育とか延長保育を充実させていきますよという御答弁だったかと思います。

 幼稚園の理事長さんあるいは園長さんの話を聞いても、人によって温度差はございます。今の幼稚園の園長先生は、第一世代の方は大体七十歳代前後でして、余り預かり保育、延長保育には積極的じゃない方が多いんです。第二世代の方たち、大体四十代のその御子息さんたち、この人たちは意外と危機感を持っていまして、このままいくと、自分のところに入園される児童の方が減ってしまうという危機感を持っています。ただし、幼稚園の園長さんとか理事長さんは、子供を預かるということのリスクをよくわかっているんです。私が話しますと、ゼロ、一、二を預かるのは嫌だなと言うんです、非常にリスクがあるから。子供のリスクをわかっているということは、逆に言えば、子供を預けても大丈夫な人なのかなと私は思うわけなんです。

 そして、認可保育所はミニマム二十人必要なわけです。今二十人。二十人集めようとなると、大体結構広範囲から囲い込まなければいけないんです。幼稚園の数としては三園分ぐらいの広範囲から集めないと二十人分は集まらない。今大体六十人集めようと思うと、七万人の町の半分ぐらいから集めないと集まらないわけです。

 そうすると、今厚生労働省さんでは、いろいろないい事業を考えられていまして、家庭的保育事業として、御家庭内に保育士さんがいらっしゃれば、子供を二、三人預かってもいいよという事業もこれから、今概算要求されていると聞いています。あるいは、認可移行促進事業として、今は無認可なんだけれどもこれからどんどん充実させて認可保育所にするんだったら、それに対しても助成しますよと。幾つかのいい制度を皆さん考えていらっしゃる。

 私が考えるには、ゼロ、一、二歳の子供たちを幼稚園が預かれないかということを考えるわけです、十人程度の規模で、空き教室を利用して。そうすると、国としての設備投資の金額もまずは非常にミニマイズされる。そして、預けるお母さんたちも非常に近いわけです。大体幼稚園というのは、小学校と幼稚園は大体並列的に対になってあるわけです。そうすると、小学校の学区内にある保育、ゼロ、一、二歳を幼稚園に預けるというと、預けやすいし、あるいは帰りもうまく御家庭の方にお迎えができるということになるかと思います。

 ですから、そのようなニーズがあると、非常に今の幼稚園のすみ分けを考えた場合に、ゼロ、一、二歳を幼稚園の空き教室を利用して、これは地域によって違います。坂口大臣がいらっしゃるような地域はそういうニーズはないかもしれません。

 ただ、この首都圏の今の住宅の多いところだと結構そういうニーズはあるものですから、そうすると、幼稚園は学校法人ですから国の帰属なわけですよ。寄附行為を行って、国が学校法人として持っている施設ですから、それを利用してやった方が、NPOとか株式会社とか、特に株式会社みたいに余り子供を預かることのリスクについてよくわかっていない、経験のない方がやられるよりも、幼稚園の経営者が、準認可保育所みたいな形で五人ぐらいの規模とか十人ぐらいで預けるようになると、非常に私としてはスムーズに、幼稚園も非常に、彼らが、子供たちが三歳以降になると囲い込みもできますし、国としての費用もミニマイズされますし、御父兄も預けやすく、あるいはお迎えしやすいというふうになると思うんですけれども、そういうことについて、どのように考えればよろしいでしょうか。

南野副大臣 ありがとうございます。

 先生のアイデアは本当にいいなというふうに思っておりますが、今ちょっと我々が当面していることについてお聞きいただきたいと思っております。

 多様な保育需要に対しまして細かく対応していい保育サービスを提供しよう、これは保育園も幼稚園も同じだと思いますが、この中に三つほどポイントがございます。一つは、平成十年に保育園の分園制度を創設いたしました。これは二十九人以下。二番目には、また平成十二年には、これまで三十人以上といたしておりました保育園の定員要件につきまして、二十人以上に引き下げたということも先生御案内だと思います。さらに、来年度の概算要求におきましても、家庭的保育事業、先生もおっしゃっておられました実施要件の緩和の対応ということについてもいたしているところでございます。

 先生今お尋ねの保育所の定員要件の一層の引き下げはいかがかというようなことでございますが、これには二つのポイントがございます。一つは、職員配置体制が少し弱くなるのではないのかな。これは、大体十人以下ですと、保育士さんが二人ぐらいはぜひ要るのではないかなというふうに思います。また、経営が非常に非効率的ではないかな。これは心配しなくてもいいことかもわかりませんが、そのような預かり手とそれから預かる方の数ということを考えた場合、そのように思っております。

 こういう問題点がございますために、まずは、昨年実施いたしました要件、数を減らしていくというようなところの効果を十分見きわめることが必要じゃないかなと思っております。私も看護婦であり助産婦であります。こういう乳幼児の方々のビヘービアもわかりますし、お母様方の要望ということもわかっているところでございますが、今はこのようなことでよろしくお願いしたいと思っております。

大島(敦)委員 今の副大臣の御答弁も非常によくわかるんですけれども、幼稚園の中に保育室を設けて、そこに保育士さんを配置するということなんです。

 今、幼稚園の先生というのは、御自身で子供を育てたい人が多いので、結婚されるとおおむねやめてしまうんです、幼稚園の先生は。子育てが終わった先生たちが非常に多くて、働きたいよというニーズが高いんです。ですから、幼稚園の経験もある、子育ての経験もある、非常にいい経験を持っているお母さんたちが近所に皆さん住んでいらっしゃるわけですよ。そういう人たちに来ていただいて、ゼロ、一、二を預かってもらう。家庭的保育についても、非常にコストの面を考えれば同じぐらい高コストなのかなと思うので、そこのところはぜひ御検討していただいて、私としては、国がまた保育所をつくる、そのために結構な金額、今回の予算でも百八十億円ぐらいのハードに対する投資の金額を見込んでいますけれども、本当に百八十億円使っていいのか、新しく立派な園舎というんですか、施設をつくっていいのか、もっと既存の施設を利用してやる方法があるのかなと一つ考えております。

谷畑委員長代理 まとめてください。

大島(敦)委員 以上でございます。

岩田政府参考人 先生がおっしゃいますように、待機児童解消のために、新しく保育所をつくるということばかりではなく、学校の空き教室、幼稚園の空き教室、その他の公共施設の有効活用などを進めるということは大事なことであるというふうに思っております。

 ことしの七月でございましたが、男女共同参画会議から仕事と子育ての両立支援のための建議が出されまして、それを受けて政府としても閣議決定をいたしましたが、その中でもそのような考え方を明らかにいたしておりまして、既存の社会施設を有効に使っていこうということはそのとおりでございます。

 先生がきょう具体的に御提言になりました、幼稚園の中で非常に少人数のゼロ歳から二歳までのお子さんを保育所として預かるという方式はどうかという具体的な御提言かというふうに思いますが、やはり幾つか検討しないといけない課題があるように思います。

 ゼロ歳から二歳までの子供に限って保育所をつくるということについては、制度上の障害はございません。また、幼稚園を経営しております学校法人が保育所をつくるということについても制度上の障害はございません。唯一私が今念頭にあります障害は、先生も御指摘なさいましたけれども、今、保育所としての最低規模が二十人ということにいたしております。これは、集合で責任のある体制で保育をし、それを公的な予算をつぎ込んで支援するという場合の最低規模としてどこまでが認められるかということで、長い間いろいろな議論があったわけでございます。そして、つい最近、それを、平成十二年度から三十人という最低規模を二十人まで下げたばかりでございますので、当面は、その状況をよく見ながら最低規模の議論のあり方を検討したいというふうに思っておりますが、先生のきょうのアイデアの中で、私が現状の仕組みの中で検討しないといけないかなというふうに思われるところはそこでございますので、今すぐ先生のアイデアを実現するというのは、なかなかそれなりに課題があるように思います。

 ありがとうございました。

大島(敦)委員 最後に一言だけ。

谷畑委員長代理 いや、もう時間。

大島(敦)委員 時間ですか、わかりました。ありがとうございます。

谷畑委員長代理 次にまたお願いします。

大島(敦)委員 はい。

 では、ありがとうございました。

谷畑委員長代理 次に、樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも発言の機会をいただきまして、委員の皆様方に感謝申し上げます。どうもありがとうございます。

 きょうは、食品の安全行政について議論をしてみたいと思っております。

 欧米の狂牛病対策と比較をいたしまして、一体問題はどこにあったのかということに着目をしてみたいと思うわけであります。

 今回の事態の背景には、日本の食品安全確保のための法制度、いわゆる社会システムの根本的な欠陥があるということを指摘せざるを得ないわけであります。今回の問題は、日本の食の安全、安心を保障するシステムがいかに弱いかということを改めて露呈したのではないか。弱いというよりも、むしろ機能不全に陥っているんではないかと思うわけであります。

 欧米では、狂牛病への個別対策とあわせまして、遺伝子組み換え食品やダイオキシンなどの対応へ批判を受けたことを背景にいたしまして、十数年前から、食品安全に関する法制度や行政組織の整備が抜本的に進められてまいりました。特に消費者の健康の確保、また、食品の安全を優先したシステムへの転換が図られてきたわけであります。

 そこでまず、情報公開、そして消費者の参画の重要性についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 行政は記者会見で何度も繰り返しております、風評被害を防ぐためには情報公開に努めるということでありますけれども、しかし、事態の推移をしっかりと見ておりますと、とても正しい情報を迅速に消費者に提供しているということには至らないわけであります。感染牛を焼却処分したと発表した後、肉骨粉になっていることが判明するなど、ちぐはぐな行政の情報でかえって混乱を拡大させている面があるんではないかと思うわけであります。

 行政は、例えばEUの報告書にありました、日本にもBSEの発生の可能性があるということに待ったをかけてしまったわけであります。日本でBSEが確認される三カ月前のことであります。そのときの待ったをかけた理由は、狂牛病が発生していないのにリスクがあると発表されるのは不本意だという趣旨でありました。

 消費者が混乱するからという口実によりまして、都合の悪い情報は隠すという今までの行政の情報の出し方は、余計に不信感を呼ぶということが明らかなわけであります。EUの報告書も真摯に受けとめまして、根拠を持った反論として公表すべきでありました。それが説明責任を果たすということにつながってくるんではないか、アカウンタビリティーを果たすということになってくるんではないかというふうに考えるわけであります。つまり、消費者に正しい情報を正確に知らせることが問題解決のために最も重要なことの一つであるというふうに私は認識をいたしております。

 こうした情報隠しが起こってしまうのは、行政の仕事の根拠であります法制度の問題にもその一端があるのではないか。食品衛生法は、いわゆる事業者取締法でありまして、消費者が位置づけられていないため、消費者への情報公開は明文化されていないわけであります。つまり、情報公開するかしないかは行政の裁量の範囲で、決して義務づけられていないわけであります。

 記憶に新しいわけでありますけれども、去年の雪印の食中毒の事件でも、消費者への情報提供のおくれが被害を拡大したと指摘されております。消費者の安全を最優先した情報公開が行われることが安心の確保のためには大変重要ではないか。しかし、その根拠となる条文が食品衛生法には欠如しているわけであります。

 今日の狂牛病への対処に見られる情報開示の不適切、そして情報隠しと指摘されるような事態にかんがみまして、行政と事業者のみの法律ではなくて、食品摂取の最大の利害関係者であります消費者の参加や情報公開が絶対に必要であると思うのでありますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 もう情報開示につきましては御指摘のとおりでございまして、我々も、情報開示をきちっとやっていきたいというふうに思っております。

 今回の牛海綿状脳症の一件を振り返ってみましたときに、最初の千葉で発見をされました第一例目につきまして、最初それが屠畜場に参りましたときに、その屠畜場に参りました牛は、敗血症という診断のもとに参りました。それで、そこで屠畜をいたしましたが、その内臓を見ましたときに、明らかに肉及び肝臓その他の部分が敗血症の様相を呈しておりまして、紛れもない敗血症でございました。したがいまして、肉その他は廃棄処分、焼却処分にしたわけでございます。

 ところが、敗血症であるということを信じてしまったものですから、そこでそれ以上の検査が行われませんでしたために、骨の方は肉骨粉として出されてしまうということになったわけでございます。

 これも、別に隠そうとかなんとかということではなかったわけでございますけれども、それが出ます時点の段階では、まだこれがBSEであるということが判明していなかったものでございますから、肉骨粉としてそこから出荷をされた。出荷をされた後になりましてから、よくよく調べてみたらこれはBSEだということがわかってきて、そして回収をしたということがあったわけでございます。

 そういう事実はございましたけれども、そこで何かを隠すことを企てたとかいったようなことでは決してなかったわけでございます。そういう経緯があったということだけ申し述べておきたいと存じます。

樋高委員 今回のいわゆる狂牛病問題だけを私は御指摘申し上げているわけではなくて、食品の安全行政全般の根本的な見直しが必要なのではないかということを申し上げているわけであります。

 次に、トレーサビリティーについて、いわゆるパスポート制度につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 八月六日に、狂牛病に感染している牛が一頭見つかりました。三カ月以上たった現在まで、原因が特定をされていない。その背景には、やはり、欧米では既に導入をされつつありますけれども、トレーサビリティー、いわゆるパスポート制度のシステムが日本にはないから、その原因を遡求していくことが現実問題として不可能なわけであります。

 イギリスでは、子牛が生まれましたらば、一週間以内に、耳タグをつけまして、国に登録することが義務づけられております。耳タグと一体となりましたパスポートには、牛の登録番号、種類、飼い主の番号などが記載されまして、これがないと取引ができないシステムになっております。牛が転売されるたびに、新しい持ち主の情報が小売段階までパスポートに追加されまして、政府のコンピューターが更新をされていくというシステムができ上がっているわけであります。

 欧米では、農場から食卓までが最新の食品安全行政のスローガンになっている。生産から消費者の口に入るまでの一貫した安全管理とともに、その情報が共有されることが重要ではないかと思うわけであります。いわゆる生産の現場から食卓まで、安心できる食品の新たな管理システムの確立が必要ではないか。EUの例に倣いまして、小売段階までつながる表示制度が必要だと考えるわけであります。

 現在の食品衛生法の表示制度は、あくまで食品危害の防止が目的であります。消費者の選択やトレーサビリティーの視点に基づく制度にすることが必要であると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

佐藤大臣政務官 食品衛生法の表示につきましては、一義的に飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するなど、公衆衛生の見地から行われるものであると認識をしております。

 先生がおっしゃられるように、小売段階において食肉に衛生上の問題が発見された場合に、その由来する牛を農場段階までさかのぼって追跡できるよう表示を行うことについては、食中毒等の迅速な原因究明を図るための有効な方法として大変期待されるものだというふうに思っております。

 農林水産省においては、既に、一頭の牛ごとに重複することのない生涯唯一の番号で識別管理することを目的としたシステムを北海道等において導入して、本年度にすべての牛を対象とした事業として開始される予定と承知をしております。

 したがいまして、厚生労働省といたしましても、本システムの構築に係る検討会に参加をするなど、農林水産省との連携を図ってきたところでありますが、今後、本システムを活用した、小売販売からさかのぼって食品の由来の追跡が可能となる表示制度の実現可能性について、具体的に早急に検討をしてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

樋高委員 つまり、小売段階までパスポート制度をきちっと整備をするというふうに、私は理解をさせていただきたいと思います。

 今回のような事態の再発を防ぐためには、やはり本質的な解決策を講じる必要があると思うわけであります。さまざまな教訓があります。

 例えば、縦割り行政についてであります。狂牛病の対応でも、農水と厚労の縦割り行政によりまして、結局対策が後手後手に回ってしまった。食品は農場から食卓まで一元的に管理なされる必要があり、縦割り行政の弊害をなくすために、最終消費者の食品の安全確保という視点から、運用や行政組織の見直しが必要であります。

 また、事業者の規制を主目的とした現在の食品衛生法の目的に、国民の健康、また食品の安全を明記した枠組みに改正をする必要があると私は考えます。また、現在の食品衛生法は政府の責務規定がない裁量行政となっておりまして、法の目的を達成するためには、やはり食品の安全行政における国の責務の規定を明記する必要があると思うわけであります。

 最後に、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 抜本的な法制度や行政組織の見直しにつきまして、やはり私も半年前に本委員会でも取り上げさせていただきました。EU諸国の間では、いわゆる食品のダイオキシン汚染、遺伝子組み換え食品、また狂牛病問題などを経まして、その反省がしっかりと生かされて、実は、狂牛病だけの個別の対策にとどまらないで、抜本的な法制度、行政機構の見直しが行われているわけであります。EU並みの安全、安心を執行する行政体制、法体制の整備が今何よりも望まれている、そして、消費者の安全をより確保するということが必要ではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 食品に起因します衛生上の問題等につきまして、法律を今後どのように検討をしていくかという問題は、確かに一つございます。それから、BSEの発生によりまして、今回いろいろ問題点になりましたところを整理もし、そして今後そういうことが二度と起こらないように、そして起こりましたときには一体どうするかといったことを、立て分けて整理をしておく必要があるというふうに思っている次第でございます。

 農林水産省と厚生省との分担の話があるわけでございますが、これもなかなか難しい問題で、例えば、牛なら牛の問題につきましては全部農林水産省にお任せをする、そして魚の方は水産庁にお任せをするということになりましても、これまた中で縦割りの問題が起こってくるわけでございますしいたしますので、そうしたことをどこで整理をするかということは大変大事なことだと思います。

 いずれにいたしましても、整理をすることによって、連絡が非常に密に行かないということが一番いけないわけでございますから、連絡が密に行くような体制をどうつくり上げていくかということが今回の教訓ではなかったかというふうに思っている次第でございます。

樋高委員 食品の安全というのは重要なテーマであります。我々の口に毎日入ってくるものであるからであります。今回の教訓も遅きに失したわけでありますけれども、今の食品行政をやはり抜本的に変えない限り、一元的に管理するなどの抜本的な改正を行わない限り、また同様の問題が起こってしまうと私は懸念せざるを得ないわけであります。

 いずれにいたしましても、対症療法ではなく、システム自体見直すということで、どうか大臣を初め皆様方の御理解と、そしてそういった方向になりますように御努力をお願い申し上げたい、心からお願いを申し上げたいと思います。きょうはありがとうございました。

谷畑委員長代理 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。きょうもよろしくお願い申し上げます。

 最初にまた一言、副大臣にお話だけさせていただければ、先ほどの大島議員からのお話の中での御答弁、私は大変に不満でございます。

 実際問題、先ほどのお話の中にございましたのは、幼保一元化論の一つだというふうに思いますが、やはり、それは行政の方でと言うのではなくて、副大臣や大臣、政治家がその枠を広げたり、今までの習慣、慣習、慣例をすべて壊して、新たな国家国民のためにどうあるべきかということ、大胆な御決断、そして行動が必要だと思います。先ほどの答弁は、僕は政治家としての答弁だとは思えないので、その辺はよろしくお願いを申し上げます。

 もう時間がないので、それだけを言わせていただいて。

 副大臣、どうか後押しをしてあげてください。役人の皆さん方、動けないんですよ。だからその辺を、縦割り行政を壊す、一元化論を進める、これは政治家の仕事です。政治しかできませんので、どうかよろしくお願いします。時間がないので、済みません、この次にさせていただきますので。お願いします。

 それで、大臣にお伺いしたいかと思います。

 また基本的なことの確認ということで、いつもいつも佐藤と自由党は基本のことばかりを聞くなあと言われるかもしれませんが、このたびの例のNBCテロ対策会議、テロに関しての厚生労働省の対応。

 私もいろいろと勉強させていただく中、その基本をもう一回考えた場合に、なぜこれだけ急に慌ただしく、テロ対策というか、化学兵器を含めたものに対する対応をとらなきゃいけないのか。ここの基本的な大臣の考え方、どうお考えになった上でこれを進められているのか、簡単簡潔にお願い申し上げます。

坂口国務大臣 このテロに対する問題は、平成七年に発生しました地下鉄サリン事件から起こったというふうに思っています。それまでは、そんなにこのテロの問題というのは、やかましく言われなかったわけでございますけれども、あのサリン事件が起こりましてから、早くこのテロ対策というものをやらなければならないということになりまして、慌ただしくさまざまなことが検討されたというふうに思っています。

 そして、ことしの四月十六日にも、これは「NBCテロその他大量殺傷型テロへの対処について」というので、いわゆる内閣危機管理監の決裁がございまして、NBCテロ対策会議というのが持たれているわけでございます。ここにおきましても、そういう化学兵器等の問題がもしも起こったときに一体どうするかというので、いろいろな角度から議論をされたところでございます。

 図らずも今回また、アメリカにおきましてこういう事件が起こったものでございますから、今度はいわゆる細菌におきます問題というのが非常にクローズアップされてまいりました。特に、炭疽菌等に対する問題が出てきたことも事実でございます。しかし、これは今回急に降ってわいた話ではなくて、私は、その根元はやはりサリン事件のところまでさかのぼる問題であるというふうに思っているところでございます。

佐藤(公)委員 だとするのであれば、サリン事件があれだけの大きな事件になったわけですけれども、それからの対応というか、体制の整備というのは、非常におくれた状態。だんだん時間とともに忘れられていく中、一応はいろいろなNBCテロ対策というか、対策会議ということで続いてやってきておりましたけれども、それは余り現実的な、現実的なというのは失礼かもしれませんけれども、対応が非常にいいものではないように思います。

 実際問題私が言いたいことは、急に何か慌てふためいてまた走り出した。結局のところ、二つあると思います。一つは、やはり危機管理体制を充実整備していくという、別に何があろうがなかろうが、それは当然な行為ということが一つの路線、これは当然だと思います。そしてもう一つは、やはりこのたびの九月十一日のアメリカ合衆国における同時多発テロ、これを受けて、やはりアメリカと行動をともにしていくということがあった上でこのテロ対策ということが当然あると思うのですが、大臣、それでよろしいでしょうか。

坂口国務大臣 先ほども申しましたように、日本がサリン事件を起こしましたときに、アメリカもヨーロッパも直ちにこのサリンに対する対応をとりました。今回、アメリカにおきますあのテロ事件がありましたときに、諸外国も、アメリカで起こりましたテロに対しまして、同じようなことがやはり起こったらどうするかというので、各国が対応をとったことは事実でございます。関係はやはりあるというふうに思っています。

佐藤(公)委員 それが実際正直なところだと思いますし、それが事実であると思います。

 こちらの方の国際テロリズム防止特別委員会の方でも、白保議員も、こういう事態があった、つまりサリンも含めていろいろなことの事態、まあ実際問題、アメリカ合衆国のテロ事件があった、そして、日本でこういう法律を、国際テロリズム対策法ですか、こういうものを今つくっている。こういう事態を含めてNBCが行われているということを委員会でもはっきりおっしゃっているわけでございますけれども、だとするのであれば私は、はっきり申しますと、アメリカと行動をともにしていることがテロにねらわれている危険性、こういう部分でこのNBC対策を含めたものが進んでいるというふうに思います。

 つまり、どういうことかといったらば、どういう相手かまだ明確になっていない部分もあるかもしれませんが、日本は敵とみなされるということですよね。敵とみなされるからテロによる攻撃も受けやすい、受ける可能性がある、その上で進んでいると私は思います。

 そういうことを考えていくと、これはまさに大臣、いろいろと国際テロリズムの防止の特別委員会でもお聞きになられていると思いますけれども、戦闘地域、戦闘区域、コンバットゾーンと言われる部分ですね。アメリカと日本の実際その地域、エリアは違うとは言われるものの、まさに今までの古典的な伝統的な戦闘地域という定義とは全くかけ離れた、極端なことを言ったらば日本にいても危険なものは危険だ。つまり、テロにおける攻撃、これも一つの戦闘的な地域というふうにみなすことは、僕はできると思うのです。

 ただ、今、国会の審議の中では、非常に伝統的な古典的なものにいつもいつも引きずられて、そこの部分での歯車がかみ合わない議論ばかりが行われているわけでございますけれども、私はこの辺を新たに本当に変えて、今までの矛盾が多くありましたこういった議論を、少しでもやはり大臣に変えていっていただきたいというのが私の思いとしてございます。

 この国際テロリズムの防止の特別委員会においても、岡田委員からの質問で大臣お答えになられていますよね。事前承認の件に関して、坂口大臣は、事前承認に関しての岡田委員に対する気持ちは、親近感を感じます、こんなようなお話をされております。議事録を見ていただければわかると思います。そういう意味で、大臣はそういう部分を非常によくわかっていらっしゃる。でも、今はしようがない、いたし方ないという部分が非常に私感じますので、そういう部分はやはり勇気を持って、変えるべきところは変えていっていただきたいなと思います。

 先ほどの、山井委員からの医師会連盟の件とか、まさに献金のこととか、それこそ話が大きくなれば靖国参拝のこと等々、与党、内閣、皆都合のいい使い分けをいつもいつもしています。こういうことでは矛盾が生じるのは当たり前であり、本当にこういう議論というのは国家国民のためにならないと思いますが、大臣、いかがお思いでいらっしゃいますでしょうか。

 与党とか、政党とか、内閣だとか、そういう使い分けはせずして、党の代表としてでもお話しを願えればありがたいと思います。

坂口国務大臣 いや、難しい御質問で、何を御答弁申し上げていいかよくわからないわけでございますが、最初の方におっしゃいました、テロ対策法、この法律ができたからテロに対して用意をしなきゃならぬのではないかというのは、それはやはり逆で、テロがありましたからテロ対策法をつくったわけでありまして、テロ対策法をつくったからテロに対して何らかの準備をしなきゃならないというのは、それは私は逆だというふうに思っています。

 それから、全体の中で、政治家たるものが態度を明確にしていかなければならないというようなお話でございましたら、それはそのとおりだろうというふうに思っておりますが、しかし、それぞれの政党の考え方もあれば、個々人の議員としての考え方もあるわけでございますから、押しなべて同じというわけにはいかない。そこは、違うところに妙味がある、こういうふうに感じているわけでございます。

佐藤(公)委員 私は、いつもいつも大臣に質問するのですけれども、はぐらかされるというか、かわされるというか、もう本当に大臣の御答弁のうまさというのは、非常に私も尊敬するところがございます。私もそれぐらいになれればいいなというふうに思いますが。

 ただ大臣、私、公明党さんの党大会等を全部読ませていただきました。ですが、今回のこのテロ対策に関する法案等に関して御党がとられたこと、とられた行動というのは、私は本当に納得がいかないことが多くございます。

 実際問題、こちらの方に公明党さんのいろいろと資料がございますけれども、今度これは国際貢献と言えるのかなとか、危機管理体制の整備で、ではなぜ自自公のときにできなかったのかなとか、戦争放棄をうたっているのになぜそれを超越したような法律に賛成、しかも事前承認なくして賛成しちゃったのかなとか、いろいろと納得いかない部分が多々あるのですけれども、特に今回のこの事前承認に関して、大臣が思われる部分で、なぜこれに関しては事前承認なしということで突っぱねたのかなというのが、私はどうも納得がいきません。

 これは私の政党の考え方とはまた違う部分がありますけれども、これを納得させる御答弁を簡単にいただけたらありがたく、お願いしたいかと思います。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 テロ対策の法案はもう終わりましたから、ひとつ御勘弁をいただきたいというふうに思いますが。

 今回のこの法律というのは、二年間でございますか、限定した法律でございましたし、そして、その中でもうこれだけ御審議をいただいて、決定していただくわけでございますから、改めてまたその内容について詳しく議論をして国会でお決めをいただくというのでは、少し、テロ対策という性質柄もございますし、二年間という期限切りの法律でもございますから、そこまでは言わなくてもいいだろうというのが我々の基本的な考え方でございました。そういうことでこの法律に賛成をさせていただいたというふうに承知をいたしております。

佐藤(公)委員 言いにくいこともたくさんあるのだと思います。いろいろなことがあるのだと思います。

 私、自分の支持者、そして公明党さんの方々からも、正直言って今回に関してはよくわからないという意見を聞いたのです。つまり、僕が言いたいことは、他党のことですから余りあれですけれども、そういった政党の一つの公約、信念、理念がきちんと納得、理解できずして変わっていくというのは、これは政治の不信感になっちゃうんです。

 だから、一緒にみんなが不信感を背負うことになりますので、どうかこれから、信念、理念を持って、公約を持つのであれば、それを、私は内閣の一員であり政党とはとかいう使い分けではなくて、一体となって、その公約、信念、理念を貫くために政治を行っていただきたい、大臣としてリーダーシップを発揮していただきたい、そう思いますので、よろしくお願いいたしたいかと思います。

 時間でございますので、きょうはこれぐらいにさせていただきます。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 きょう私は、会社経営破綻時における労働債権確保の問題についてお聞きをいたします。

 神奈川県川崎市に、株式会社池貝という東京証券取引市場一部上場の名門工作機械メーカーがあります。一八八九年創業で、国産初の旋盤を製造したメーカーとして大変知られた会社でありますが、本年二月二十八日、東京地方裁判所に、子会社二社とともに、民事再生法に基づく民事再生手続開始の申し立てをいたしました。三月十五日には東京地裁で民事再生開始決定がなされ、十月三日には再生計画案の認可決定がなされております。

 民事再生開始手続申し立てによりますと、昨年十月二日現在のこの会社の従業員総数は、正社員が五百四十三名、準社員が十一名、臨時、パート七名でありますが、会社は民事再生開始手続決定後の本年四月六日、従業員を全員解雇し、百二十名だけを一年契約で再雇用するとの提案を行いました。

 組合員四百三十名で組織するイケガイユニオンはこれを受け入れ、一方、組合員二十九名で組織する全日本金属情報機器労働組合池貝支部はこれを承服せず、解雇無効の裁判係争中ではありますが、会社は本年五月十五日、全員を解雇したわけであります。その結果、会社には解雇に伴う二十九億四百七万円余の退職金支払い債務が発生いたしましたが、今日に至るも、労働者に支払われた退職金は、適格退職年金契約解約に伴う返戻金三億二千五百六十万円と、賃確法による立てかえ金四億七千八百六十六万円のみであり、約二十一億円の退職金は未払い状態が現に続いております。

 そこで、厚生労働省にお聞きいたします。

 会社の退職金未払いは、労働基準法二十四条違反でありますか。

日比政府参考人 退職金につきましても、あらかじめ支給条件が明確に定められ、支給することが使用者の義務となっている場合には、これは賃金でございますので、所定の期日に至っても支払わないということは、労働基準法二十四条に違反するものと考えております。

木島委員 今回の場合、適用条件が全部満たされておりますから、違反だと確認いたします。

 問題は、未払い退職金の支払い確保であります。

 民事再生手続中の会社には、現在、支払い原資はありません。会社の主な資産としては、川崎市の本社工場、埼玉県川口市の川口工場、茨城県のツクバ工場の土地建物等がありますが、すべての物件が、メーンバンクである日本興業銀行などの金融機関の抵当権がついております。再生計画によりますと、川崎工場、川口工場は任意売却する計画でありますが、法律の建前では売却代金はすべて金融機関への返済に充当されてしまい、退職金までには回りません。

 このような財務状況のもとで、本年八月三日、再生手続の機関である、任命された監督委員であります清水建夫氏から、東京地方裁判所に対して「再生計画案に対する意見書」なるものが提出をされました。私はここに持ってきております。そこには、本件において抵当権者である金融機関のみが抵当物件の売却代金をすべて回収してしまうことは公平公正を欠く、売却代金の一定割合を退職金支払いに充てるべきだと書かれております。

 会社倒産時の労働債権の確保に関して、私は画期的な意見書だと高く評価しておりますが、厚生労働省はこれを知っておりますか。これをどう評価いたしますか。

日比政府参考人 賃金債権というのは非常に大切なものだと私どもも思っております。

 御指摘の意見書でございますが、この意見書は、今委員からもお話ございましたように、いわば裁判所の管理下におきまして再生手続が現に進んでいる事案に係るものであろうと存じますので、とかくのことは意見を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。

木島委員 大体、労働者の賃金確保の責務は厚生労働省がしょっているわけでしょう。現に民事再生手続の裁判中の裁判所の補助機関ですよ。監督委員から堂々と出され、天下周知の文書ですよ。評価できないなんというのは私は逃げだと思います。

 この意見書には、なぜ金融機関が売却代金を全額回収してしまうことが公平公正を欠くのか、詳細な理由が書き込まれております。全部読むと時間が足りませんから、ちょっとだけ読みますと、

  従業員の退職金債権は退職後、とりわけ老後の生活資金として重要なものであり、これが支払われないときは老後の生活に深刻な影響を及ぼすことは必然である。現に本件において多額の未払退職金を有する労働債権者は四十年前後再生債務者一筋に働き、退職金を退職後(老後)における最大の貯えとして生活設計を建ててきた。五十歳をすぎて突然解雇され、再就職もままならない状況である。再生債務者の再雇用の対象からも外されている。解雇された以後に死亡したり、病に倒れた労働債権者もあり、家族は途方に暮れている。

そして、よく聞いてください。「ある金融機関から、」これは興業銀行のことです、日本興銀のことであります。

  ある金融機関から、昭和三十年代より昭和五十九年六月まで、再生債務者に常務、専務、社長、会長として役員が派遣されている。多くの労働債権者は、これら役員の在任期間中にその指揮下で働いており、この時期に退職金債権の保全策が施されていれば、今日の事態は回避することが可能であった。また担保設定状況を見ると、別の金融機関(複数)については、追加担保の設定が、既存債務の保全策のため設定されていると思われる側面があり、設定時期から見て債権者間の公平を害する可能性があって、否認を検討する必要がある。主たる金融機関に限らず、一般に金融機関は再生債務者の財務状況を把握できる立場にあって、適宜担保設定を行い、保全策を講じることができたが、労働債権者は自らの退職金債権を保全するすべが全くなかった。

  以上のとおり、本件において再生債務者の資産売却代金を、競売ルールに従って金融機関のみに配分するのは衡平・公正ではない。

見事な意見書ですよ。

 金融監督庁。銀行法上の監督権を持っている金融監督庁は、この事実を知っておりますか。このような厳しい指摘をどう受けとめますか。

増井政府参考人 今お尋ねの件でございますけれども、これは個別金融機関の融資取引に関する事柄でございますので、基本的にコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。

 ただ、一般論として申し上げますれば、民事再生手続中におきまして、監督委員が、裁判所に対して再生計画案について意見書が提出されるといったことはあるというふうに考えておりますけれども、債務者でございます金融機関が監督委員の意見書をどのように受けとめるかという問題は、金融機関自身の経営判断にゆだねられるものというふうに理解しております。

木島委員 たわけたことを言っちゃ困るんですよ。金融監督庁は、金融機関に対して、銀行法二十四条から二十七条に基づいて監督権を持っているんです。興銀その他の金融機関の株式会社池貝に対する銀行取引のあり方に関して、権限があるんですよ。これまでどのような検査監督をしてきたんですか、答弁してください。

増井政府参考人 金融庁といたしましては、検査監督権限の適切な行使を通じまして、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に努めてきているところでございます。法令とかあるいは債務者との契約に違反するなどの悪質な事案がある場合には法令に則しまして適切な措置を行っているところでございますけれども、個別具体の融資対応につきましては基本的には当該金融機関の経営判断によるというふうに思っておりまして、その経営判断によって行われるべきものだというふうに思っております。この点、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。

木島委員 民事再生裁判所から任命された法律に基づく監督委員ですよ、裁判所の補助機関ですよ。ここまで指摘しているじゃないですか。抵当権の設定の仕方がおかしいとまで書かれているじゃないですか。否認も考えないかぬとまで書かれているじゃないですか。こんなものも個別的に検査しないで、一体金融監督庁は何を検査するんですか、金融に対して。

 先ほどの再生計画案に対する意見書には、こういう文言もあります。「いくつかの金融機関に当職が」監督委員の清水建夫氏であります「当職が労働再建確保のための協力の可能性を打診したところ、その可否についてすでに検討中であるとの金融機関もあり、協力が得られる可能性があると思われる。」ここまで書き込まれているんですよ。よう頑張っていますよ。

 そうしたら、銀行法に基づく監督権限がある金融庁が協力して、そういう問題があるんだから、抵当権売却代金を全部自分が懐に入れるんじゃなくて、労働債権、退職金債権の方に一部回したらどうかという指導をするぐらい当たり前じゃないですか。答弁を求めます。

増井政府参考人 繰り返しで大変恐縮でございますけれども、基本的に、先ほど申し上げましたように、私ども、法令や債務者との契約に違反するなどの悪質な事案がある場合には法令に則して適切な措置を行うということはございますけれども、個別具体的な融資対応につきましては、基本的に、金融機関がそれぞれ経済合理性等の観点を踏まえまして、自主的な経営判断が行われている、行われるべきものだというふうに思っておりまして、その点をぜひ御理解いただければというふうに思います。

木島委員 では、繰り返して言いましょう。

 追加担保の設定が、既存債務の保全策のため設定されていると思われる側面があり、設定時期から見て債権者間の公平を害する可能性がある。否認を検討する必要がある。また、ある金融機関は、昭和三十年代から昭和五十九年六月まで、常務、専務、社長、会長として役員を派遣してきた。しかし、その間全然労働者債権の保全の策をとらなかった。そして、今日の民事再生、倒産という事態に立ち至った。そして抵当権だけはちゃんととって売却代金は全部自分だけが懐へ入れる。これはいかぬぞと。

 個別事案だって、ここまで来ているんです。裁判所で明らかにされた事実ですから、指導すべきじゃないですか。どうですか、裁判所のこの方向に盾突くんですか。

増井政府参考人 たびたび同じような御答弁で大変恐縮でございますけれども、個別金融機関の融資取引に関する事柄でございますので、基本的に金融機関自身も、今申し上げましたように、経済合理性、あるいは預金者、株主の立場、そういったいろいろな観点から判断をするんだろうと思っております。そういった自主的な経営判断というものによって決定するということが大事だと思っておりますので、繰り返し御答弁申し上げますが、そういう観点から御理解をいただければというふうに思う次第でございます。

木島委員 それでは、問題性を感じて調査、検査しますか、金融庁。問題性を認識して調査しますか、これからでもいいや。答弁してください。

増井政府参考人 今申し上げましたように、具体的な法令等に違反をする、そういった悪質な事案といったような場合には、そういった法令に則して適切な措置を講ずるということはこれまでもしてございます。そういう観点から講じておりますけれども、今申し上げましたように、基本的に、個別の融資対応について、それぞれ金融機関の経営判断が重要だというふうに思っておりますので、そういった事態があればあれでございますけれども……(木島委員「これは悪質じゃないか、ここまで裁判所で指摘されているじゃないか」と呼ぶ)基本的にその点を御理解をいただければというふうに思います。

木島委員 調査する気がないというんですか、金融庁。一体金融庁はどこを向いているんだ。調査する気がないということか。はっきり答弁せい。(発言する者あり)これがどうかと聞いているんだよ、この事案が。逃げることは許されぬ。

増井政府参考人 今申し上げましたように、基本的にそういった法令違反等に関係するものでございますれば、そういった措置を講ずるということは当面考えられると思いますけれども、何回も申し上げますけれども、具体的な自主対応につきましては各金融機関の経営判断によるというふうに思っております。

木島委員 今の金融監督庁の姿勢がどちらを向いているか、もう明白になった。大変けしからぬ答弁だと思います。

 法務省に聞きます。

 民事再生開始決定後に発生した労働者の退職金債権は、民事再生法上、どのような方法で弁済を受ける権利関係に立ちますか。簡潔に答弁願います。

山崎政府参考人 退職金の関係につきましては、共益債権という分類がされておりまして、随時弁済を受けられるという権利関係にございます。

木島委員 十月三日、東京地方裁判所は再生計画案に対する認可決定をいたしました。

 再生計画案によると、確定再生債権者数は七百八十四件、確定再生債権額は八十四億四千四百四十七万円余であります。弁済は、債権額一億円を超えるものは何と九九%免除、一千万円を超え、一億円までのものは九八%免除、一千万円以下三百三十三万円以上のものは九七%免除、ほとんど配当なし、債権額三百三十三万円以下のものは十万円だけ弁済、こういうまことに厳しい再生計画案であります。これは、事業継続による弁済原資がわずかしか生まれないということを想定しているからではないでしょうか。

 この中には、二十一億円の退職金債権は別枠です、金融機関が握っている抵当権つきの債権も別枠です。それは、二十一億円の退職金債権が抵当権の売却代金の中から弁済を受けて基本的に解決できるということを、この再生計画認可決定の前提として想定されているんじゃないかと私は見ます。

 なぜかというと、労働者の権利は随時弁済を受けられる権利だと今答弁なさいました。現に弁済を受けていない。ですから、これから頑張って利益が出た場合に、労働者の退職債権が未払い状況が続いていますと、いつでもそれは優先的に取れるわけですね。そうすると、こういうわずかばかりの民事再生債権者に対する弁済計画が全く実現できないということになるわけです。

 ですから、この再生計画案は、当然二十一億円の退職金債権が抵当権の売却代金から金融機関の了承を得て弁済を受けられる、そうやって円満に解決できるということを基礎的事実として組み立てられている。だからこそ東京地裁が認可したんじゃないかと思えてならないんですが、法務省、どうでしょうか。

山崎政府参考人 個別の事件の内容でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今お聞きした数字を前提にすれば、通常の利益から払えるという形にはならないというふうに理解できます。

木島委員 何か事実上認めたような答弁でありますが、実際そうなんですよね。二十一億円の労働債権が存在している限り、民事再生債権者なんかに行く金はないんですよ、あり得ないんですよ。ですから、それはもう別途金融機関と解決できるということを思っているからこそ、こういう民事再生計画案が認可されたんだと思うんです。

 金融機関が抵当物件の売却代金を退職金の弁済原資にすることを基本的な前提としてこれが認可決定がなされたとすれば、私は、金融監督庁は、なおさらのこと、監督官庁として金融機関に対してそのような指導をすべきだと思います。

 もう一度、金融監督庁に基本的な方向についての答弁を求めます。これは逃げは許されないと思います。

増井政府参考人 たびたび同じような御答弁で大変恐縮ですけれども、先ほど申し上げましたように、個別金融機関の判断の問題でございます。

 個別の金融機関は、それぞれ、そういった再生債務者の従業員の労働債権の支払いに充てることについて、失礼しました、例えば別除対象物件の任意売却代金をそういった再生債務者の従業員の労働債権の支払いに充てることについて協力するかどうか、こういった観点について、やはり各取引金融機関が、経済合理性だとかそのほかいろいろな観点を踏まえて、自主的に経営判断によって決定をすべきものだというふうに私ども思っておりまして、その点ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

木島委員 それでは、逆の観点から聞きましょう。

 これで、労働者の皆さんが金融機関と折衝して、よし、わかった、ここは裁判所の意見書もある、では競売代金、売却代金の中から一部労働債権の方に振り当てよう、そういう決定をしたときに、金融監督庁はクレームをつけませんね。金融機関の自主的な判断に任せるということですね。

増井政府参考人 先ほど申し上げましたように、私ども、検査監督権限につきましては、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保を目的として、そういった適切な行使をしていきたいというふうに思っております。

 したがいまして、法令とかそういったものに違反をしているといったようなことがあればともかくといたしまして……(木島委員「質問に答えてください、逆の判断を金融機関がしたときにクレームをつけないか」と呼ぶ)基本的に金融機関の自主的な判断ということであればそういうことではないかというふうに思っております。

木島委員 答弁にまともに答えてくださいよ。

 金融機関が労働者と合意したってクレームをつけませんね。

増井政府参考人 基本的に金融機関の自主的な判断というのは、今申し上げましたように、法令とかあるいは契約違反だとかといった悪質な違反があるときには私どもは適切な措置を講じますけれども、そういったことでなければ、基本的に金融機関の自主的な判断ではないかというふうに思っております。

木島委員 厚生労働省は、労働基準法上の労働者の権利、とりわけ労働の対価であります賃金、退職金の支払い確保については特別の責務を持っている。裁判所の民事再生手続でもそのための努力が払われておりました。

 厚生労働省としても、関係金融機関に対して、退職金の支払い確保のため、私はこの件で特段の要請をするべきだと思いますが、これは、厚生労働大臣、答弁願います。

坂口国務大臣 賃金は労働条件の重要な要素でありますし、労働者とその家族の生活の糧でありますから、労働債権の保護の強化は大変重要な問題であると思っております。

 したがいまして、こうした観点から、倒産手続における各種債権の取り扱い等、倒産法制の見直しを行っております法制審議会、この法制審議会におきまして、労働債権の保護の重要性について今意見を申し上げているところでございます。

 今後とも、労働債権保護の観点から、十分な対応に努めてまいりたいと考えます。

木島委員 私はこの件について、ここまで裁判所で努力が進んだんだから、厚生労働省としても、金融機関に対して、そういう方向で配慮してくれと言うべきだと思う、言ってほしいという質問です。一般論はこれから聞きますよ。一言。

日比政府参考人 民事再生手続におきましても、労働債権について、関係する方々にこれから最大の尊重を払っていただくよう、そういう気持ちではおりますし、そういうことを周知いたしたいと思いますが、個別事案に関しまして個別金融機関にとかくのことを申し上げることについては、他のいろいろな行政のこともございますので差し控えたいと存じます。

木島委員 そんな弱腰で労働者の賃金守れますか、あなた。裁判所の手続の中で、監督委員ですらがここまで書き込んだんですよ。そんな弱腰で労働者の賃金守れないじゃないですか。

 昨年十二月十三日に、旧労働省に置かれた労働債権の保護に関する研究会から、労働債権の保護に関する研究会報告書が提出されました。私はここに持ってきております。労働債権の保護、とりわけ倒産の場合の労働債権と抵当権と租税関係との優先劣後関係、どっちが優先するかという根本問題について調査研究報告がなされております。もう時間が迫っておりますから、内容、答弁は求めません。

 株式会社池貝の例に見られますように、最近、倒産において解雇された労働者の退職金が確保されない事例がふえております。労働者の生活と権利を守るため、銀行等の抵当権者や租税債権よりも労働債権を優先させる、そのような法の根本的な改正が私は求められていると思います。

 厚生労働省は、内容ははしょりましたが、研究会報告書を受けて、今後これからどのように具体化していくつもりなのか、その答弁を求めます。

日比政府参考人 報告では、今御指摘のように、労働債権の保護のいわば順位を上げていくということを端的には求めております。同時に、他の債権との関係もこれあり、広範な観点からの議論が必要と。

 現在、私ども、先ほど大臣からも申し上げましたが、法制審議会の関係部会に、これは委員としてではございませんで、実は幹事という立場ですが、参加させていただいておりますし、その中で、私どもとしては、労働債権の、できるだけのというような言葉はちょっとあれでございますけれども、少しでもより高い順位になるようにということで参画する、姿勢としてはそういうことで臨んでおるところでございます。

木島委員 一九九二年、ILO第七十九回総会で採択されました第百七十三号条約、使用者の支払い不能の場合における労働者債権の保護に関する条約、採択をされております。

 ここの第八条では、国内法令により、労働者に対して、特権を与えられたその他の大部分の債権、特に国及び社会保障制度の債権よりも高位の特権を与える。明確に規定がされております。租税債権よりも労働債権の方に優先権を与える画期的なILO条約であります。

 日本政府は、この条約採択に当たってどのような態度をとったんですか。現在、これを批准しておりますか。

日比政府参考人 御指摘の条約の採択時における日本政府の態度でございますが、これにつきましては棄権をいたしております。

 棄権をした理由といたしまして、一つには、多くの国が批准しやすいように、規定される事項は基本的な内容に限られるべきという意見を持っていたこと。それからいま一つは、国内法制。今委員からも御指摘ございましたけれども、国が有している債権との優先順位など、国内法制を見たときに批准しがたいという事情があったので、棄権をしたと承知しております。

 現時点まで、まだこの条約は批准いたしておりません。

木島委員 労働債権の保護法制ではフランスが最も進んでおります。

 簡潔で結構です。フランスでは、労働債権と抵当債権、租税債権の優先関係、順位はどのようになっておりますか。簡単に答弁ください。

日比政府参考人 賃金債権につきまして、対象賃金等でいろいろな定めがございますが、端的に一つだけ申し上げますと、直前六十日分の賃金債権につきましては、公租公課等、他のいろいろな債権よりも優先するということになっていると聞いております。

木島委員 抵当債権よりもその場合の労働債権は優先する、公租公課だけじゃなくて抵当債権よりも労働債権の方が上だ、そう聞いていいですか、フランス。

日比政府参考人 そのとおりでございます。

木島委員 厚生労働大臣、お聞きのとおりであります。世界の労働債権確保のための法制度は前進しています。日本はおくれをとっているんです。

 ILO百七十三号条約を早期に批准して、そのための国内法体制の整備を急ぐべきだと考えますが、最後に大臣の御所見を伺って、質問を終わります。

坂口国務大臣 諸条件を勘案いたしまして検討させていただきます。

木島委員 終わります。

鈴木委員長 阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 きょうは、三十分のお時間をいただきまして一般質疑をやらせていただけること、大変にうれしく思います。そして、本来、私がずっと医者の時代にテーマとしておりました臓器移植の問題を取り上げる機会が回ってきたことを、大変私はうれしく思います。きょう、五点、全体五項目にわたって御質問いたしますが、一項目めがこの臓器移植関連でございます。

 実は、臓器移植問題、私は、小児のいわゆる脳死等々の治療に当たる専門医として、約十七年ほど前に脳死の患者さん、子供たちに出会って、その子たちが死体として扱われて、そこから臓器が取り出されていくということを、主治医として非常に耐えがたいという感覚に襲われまして、人間の体からの臓器の摘出ないし利用ということに関して、やはり、本当の意味でそうした行為が医療に当たるのか、あるいはまた人間としてなしてよいことかということをずっと疑問に思ってまいりました。

 しかしながら、国の全体の行政の中では、臓器移植法が通りまして、特に臓器移植に関して、人間から摘出した臓器について公明公正に取り扱うための臓器移植ネットワークというものが設置されまして、その監督を厚生省の移植対策室というところが行ってきたわけです。

 三回ほど前の私の質問のときに、臓器移植ネットワークのいわゆるトンネル寄附問題、あるいは親族運営問題に関しまして、私の方から移植対策室に立入検査を行うべきだという提言をいたしまして、六月二十七日でしたか、立入検査をしていただきました。

 迅速な対応に感謝いたしますとともに、やはり今、人由来のさまざまな、例えば卵子、受精卵なども含めて、人間から出たものをどのように取り扱っていくのかということには極めて倫理性を高く、また金銭の面でもクリアにしておかないといけないということが問われる時代ですので、そうした背景の中で早急な立入検査が行われたということを一点は評価したいと思います。

 立入検査、もうちょっと早くしてくれればよかったかなとは思いますが、でも、とりあえず評価いたしまして、立入検査の結果、三項目の指摘がなされております。

 大きく分けて三項目でございますが、さまざまな移植ネットワーク関連の理事あるいは会長の個人的なつてを通じての仕事が割り振られていた事態への適正化を指示されましたのが一点。

 二番目は、トンネル寄附。いわゆる臓器移植ネットワークが薬剤会社から寄附を受けて、いろいろな医療系の学会にお金を振り分けていくとき、手数料を取っていた。これはきょうの山井さんの御質問にもありましたが、公益法人でございますので、それが手数料を取って寄附の授受をするということは極めてあってならないことで、先ほどの医師会の問題と同じような公益法人のあり方にかかわりますので、こういうトンネル寄附を人間の臓器を扱う臓器移植ネットワークがしていたということは大変に問題が深いと思いますが、二点目がその件。

 そして三点目は、よりフェアな第三者を入れた監視機能を持ちなさい、という三点でございました。

 こういう臓器移植ネットワークに対する臓器移植対策室の立入調査を踏まえまして、この臓器移植ネットワークの運営責任者への運営責任ということを臓器移植対策室としてはどのようにお考えか。

 先ほど来申します公益法人の透明性、公益性が保持されるべき中にあって、さまざまに立入検査で発覚した不祥の事態に対しまして、例えば臓器移植ネットワークの会長、理事長、副理事長等々、運営にかかわる方たちの責任についての臓器移植対策室としてのお考えを一点目に伺います。

下田政府参考人 厚生労働省におきましては、社団法人臓器移植ネットワークに対しまして、本年六月の二十七日に立入検査を行いました。これに基づきまして二回にわたる改善勧告を行い、その改善勧告に対する改善状況、これを八月の三十一日に法人から受けたところでございます。

 今般の一連の指導は、民法の規定に基づきまして、公益法人に対する監督として行ったものでございますが、先生御指摘のいわゆる交付先指定寄附金等々の問題があったことから、これらの事項につきまして改善指導を行ったところでございます。

 これらに対しましては、法人から、指導に沿う改善を行うといったことを理事会で決定した旨の報告を受けておりまして、今後とも、指摘をいたしました改善勧告につきまして適正に改善されるよう、必要な指導を続けてまいりたいと考えております。

阿部委員 私は今、この厚生労働委員会以外に、ちょうど向かい側で行われています財務金融委員会にも所属しておりますが、金融行政の公正性ということをめぐって、例えば銀行が不祥事等々を起こした場合にはやはり経営責任を問う、これは当たり前の社会的な通念でございます。

 私が殊さらここで公益法人としての臓器移植ネットワークを問題にいたしますのは、特にこのトンネル寄附という行為は金銭授受にかかわるものでございます。公益法人がわざわざ寄附金の手数料を取り、製薬会社にも利を図り、そして自分たちで内々に決めたある幾つかの学会にお金を寄附していた。二重三重に不透明でございます。

 その改善勧告の中に、やはりこうしたことについての責任を問う。もちろん厚生労働省はそうした法的な権限をお持ちでないことは存じておりますが、公益法人がこのような形で運営されていることを、監督しておった監督省庁としての厚生労働省、なかんずく移植対策室、これはそれくらい厳しくしないと、先ほど来申しますように、これから受精卵が産業化されたとき、いろいろな問題が派生してまいります。厳し過ぎてやり過ぎということはないと私は思っておりますが、改善勧告等々お出しになった中で、なおさらに移植対策室としてはどうお考えか。

 そしてあわせて、実は、副理事長の野本氏は、この件と直に関連してかどうかは定かではございませんが、伝えられるところによると、この件とも関与して、日本移植学会の会長を辞任されております。

 実は、この日本臓器移植ネットワークの中にも数名の医療関係理事がおられて、その理事たちが学会の会長を務めておられる医療系の学会に寄附が渡っていた。そして、その寄附の交付については、きちんとした会議を経ずに行われていたということ。いわゆるお手盛り弁当と世では申します。そういうことが人から由来の臓器を扱う団体で行われていたということに、やはり私は非常に怒りも持っておりますし、あり得てならないことと思っております。

 この野本副理事長が移植学会の会頭を辞任された、このことを上回る、やはり臓器移植ネットワークでの役職上の責任のとり方があるやに思いますが、再度お考えをお聞かせください。

下田政府参考人 先生御指摘のように、いわゆる交付先指定寄附金、トンネル寄附でございますが、これを特定公益増進法人としてやっていたということにつきましては、自粛を求めておりますし、改善されるものというふうに考えております。

 役員の、特定の個人の進退の問題でございますが、これにつきましては、定款上、解任規定が十七条にございまして、「総会において三分の二以上の議決に基づいて解任することができる。」という規定がございますが、こういった規定等を含めまして、必要に応じ、法人の内部問題としてしかるべき対応がなされるものというふうに考えておるところでございます。

阿部委員 ただ、非常に残念なことに、複数の理事がこのことには関与しておられるわけです。自助努力ができるものか否かということでございます。みずからほとんど学会の、私も医者の世界におりますが、医師としてある学会に所属し、あるいはその学会で重要な位置を占め、なおかつ日本臓器移植ネットワークでも理事としているわけです。この方たちが、みずから三分の二の議決というのはほとんどあり得ない。

 そして、こうした選任をされた臓器移植ネットワーク体制というものが私たちの臓器を扱っているという事態ですから、本来その法的な枠組みは私は理解しているつもりですが、でも、それを上回る倫理性とか透明性とかがなくてはいけない中で、どういう指導を臓器移植ネットワークに対して移植対策室として行われるかということを伺っているわけです。

 十七条に三分の二以上の規定があるということは存じております。ただ、当事者たちが関与し、振り分けているわけです。その当事者たちが、自分たちが三分の二以上で自分たちの解任ということは、なかなかに現実的ではございません。現実をわきまえた御答弁をよろしくお願いいたします。

下田政府参考人 二回にわたります改善勧告を行ったというふうに申し上げました。現在はその改善状況について見守っておるところであり、臓器移植ネットワーク全体の運営状況につきましてもこれから十分に見守りつつ、必要があれば指導を重ねてまいりたい、このように考えております。

阿部委員 だれのために見守っておるかということが問題でございます。私は、いつも臓器移植対策室については、いろいろな要望書を持っていったり要請を出すことが多くて、その分しっかりしてほしいと思うゆえでありますから、原則、だれのために何を見守っておるかということをはっきりさせていただきたい。

 そして、例えばですが、この間、十八例の脳死判定、そして十七例は臓器提供に至ったわけですが、これまで厚生労働省内でも、臓器提供に至るドナーサイドの検証、例えば、治療はちゃんとされたか、脳死判定はよかったか、いろいろな検証会議が持たれております。この中で、臓器あっせん業務の検証というところは、実は日本臓器移植ネットワークの中央評価委員会であっせん業務に関する検証を行うとなっておりまして、そもそもこの日本臓器移植ネットワークの中央評価委員会が公明性、公正性に足るものかどうかということが今問題になっておるわけです。

 臓器移植対策室は、移植ネットワークに、いろいろな臓器の分配が公明で公正かの監視を任せる体制をとっておるわけです。でも、ここ自身が、先ほど申しましたトンネル寄附も含めて、不正なことがいっぱいだという中でございます。そうすると、この対策室からここにお願いしている、いわばお願いといいますか監督している業務自身の成り立ちが問われている中でございます。

 臓器移植対策室の室長も二年置きで皆さんおかわりになります。私がいつも追及してお答えをいただかないうちに、また新しい方が対策室長になります。しかしながら、何度も申しますように、事は非常にやはり人間の本当の意味での尊厳にかかわり、そのことをめぐって、公明で公正かどうか、倫理的に許されるかどうか自体もかかわっております。きょう、もしそれ以上の御答弁がいただけないのであれば、逆に、そういうところにいろいろな業務をゆだねている移殖対策室のあり方として私は大いに疑義を差し挟みたいと思いますので、その全体を監督しておられる、突然振って申しわけございませんが、坂口厚生労働大臣のお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 今、ずっとお話を伺っておりまして、やはり正すべきところは正していかなければならない、公益法人のあるべき姿というのは守っていかなければならない。とりわけ、この臓器移植という新しい分野、しかも、人の臓器を人に提供するというまことに神聖な公益法人でございますから、やはりその公益法人にふさわしい姿勢が必要であるというふうに思いながら聞かせていただいたところでございます。

阿部委員 では、ただいまの御答弁が現実にふさわしい形態をとりますように、さらに御指導をお願いいたします。

 そして、臓器移植ということに関しましては、もう一点お願いがございます。

 これまでは専らドナーサイドの、臓器をお出しになる方のことが論じられておりましたが、実は臓器移植においては、臓器をいただいて移植を受ける方の問題もございます。日本の臓器移植フォローアップ体制の中で、ともすればこのレシピエント側のフォローアップ体制というのは、これまで厚生労働省としても主たるテーマとして余り体系的にはお取り上げではなかったように思います。

 例えばでございますが、今般、この臓器移植、とりわけ心臓移植が、循環器病センターと阪大、大阪大学で高度先端医療の適用を受け、一部保険医療からもお金が出るようになりましたけれども、レシピエントの皆さんも、移植を受けてから、その後の状態にはいろいろございます。すっきり臓器がおさまって調子のいい方もおられれば、その後いろいろ感染症、合併症を反復して、ずっと苦しまれる方もおられる。

 臓器移植後のいわゆるレシピエントサイドのフォローアップ体制に関しまして、担当部局はどのようにお考えか。わけても費用の問題です。

 私がたまたま知り得た一例では、大人の方から臓器をいただいた子供さんですが、その後脳出血をされまして、長いこと入院され、意識障害が残っておられるケースも私の耳に届いており、その方は医療費も高くついて、それは一部いわゆる保険適用に今後なるとしても、そうであれば、その分だけ、日本の医療財政から見て、この臓器移植という医療行為が今後日本の保険医療全般にどの程度負担を及ぼすものかの目安も立てなければいけません。

 費用関連も含めて、あるいは、いただいた臓器に対していろいろな心理的葛藤が起きるのも人間の常でございますから、レシピエントサイドの気持ちの問題のフォローアップも含めて、どのようなお取り組みをお考えか、御答弁をお願いします。

大塚政府参考人 ただいま、費用に関連するお話もございましたので、確かに、医療保険制度におきまして特定療養費ということでお支払いができるような仕組みになっております。

 費用の観点からいたしますと、まだ数例にも満たないというような状況でございますから、全体の医療保険財政の中ではまことにわずかな金額ではございますけれども、個々の医療費の状況、特にレシピエントのフォローの経費などにつきましても、これは医療保険財政というよりも個別の問題になろうかと思いますが、できるだけ把握できるような姿勢で臨んでまいりたいと思います。

下田政府参考人 フォロー体制でございますが、これまでも、腎臓移植に関しましては、厚生科学研究等において、移植を受けた患者さんの予後調査を行ったわけでございます。ただ、心臓等その他の臓器の移植事例に関しましては、まだまだ症例数が少ないといったこともございまして、そうした実態調査を行う研究は行っていない状況にございます。

 今後、事例の集積を踏まえまして、関係学会等々の動きも見ながら検討してまいりたい、このように考えております。

阿部委員 前向きな御答弁をありがとうございます。と申しますのは、本当に、移植というのはうまくいって当たり前で、でも、現実には人間の生身の体、さまざまな副作用も持ち、精神的なものも含めて重い課題を背負うものでもございます。

 また、大塚保険局長は、費用の面では軽微であるとおっしゃいましたが、移植後にかかる投薬等々でも、あるいは移植にかかわる検査等々でも、個人当たり約一千万かかるものでございます。それを保険適用にした場合、個人は二割となって、ある額以上は高度先端医療から出るというふうに考えられますが、でも、普通、一人につきトータルで三千万から四千万かかるような莫大な費用のものでございます。

 今、高齢者医療では、いわゆる聖域なき構造改革と言われまして、大変無慈悲な政策が続いておる中でございます。いろいろな意味で、国民の合意と納得ですべてのことが進んでいかなければいけない、そのことは、こういう厚生行政の前提でございますから、この移植、現実に心臓移植はまだ十二例だと思いますが、おのおのの個々のケースの費用ということも含めて、レシピエント側のフォローアップ体制を重ねてお願いいたします。

 続いて、医薬品に関する行政評価についてお伺いいたします。

 総務省が本年六月に、医薬品に関して行政評価・監視を行った結果を提出しておられますが、今、国民的には、医薬品、薬に副作用があって、そのことが非常に不安でもあり、特に、きょう山井さんのお話にもありましたが、クロイツフェルト・ヤコブ病等も、私どもは中川議員ともどもに、これを医薬品等の副作用に含めてきちんと対処していただきたいということを議員立法で考えておるやさきですが、そのほかのことも含めて、医薬品副作用ということについては患者サイドも非常に敏感になっておるやさきかと思います。

 そのやさきに総務省から出された行政評価・監視でございますが、医薬品の副作用に関しまして、医療機関に対し、副作用情報の提供に関して、あるいは報告に関しての指導を厚生労働省に適宜行うようにということがございますが、これの進捗状況をお聞かせくださいませ。

宮島政府参考人 御指摘の、医療機関からの医薬品の副作用情報を収集いたしましてこれを適切に提供していくということは、医薬品の適正な使用を図っていく上に大変重要なことと私どもも受けとめております。

 医薬品の副作用等の報告件数につきましては、年々増加しておりまして、特に、平成九年に副作用及び感染症の報告を法律上義務化いたしますとともに、全医療機関からの報告を求めるという形に変えまして以後、毎年約二千件ずつずっとふえておりまして、平成十二年度では、全体で二万八千件の報告件数になっておるという状況にございます。

 私どもでは、受けました報告を適宜分析いたしまして、速やかに適切な提供を行って、適正な使用を図っていくということを行っております。

 ただ、今後IT等の時代に入りますので、こういった情報処理をさらに速やかに、適切に、効率的にやっていくというために、現在、厚生科学研究の中で、医薬品の適正使用に資する安全性情報の効果的な医療機関への提供及び医療機関での活用に関する研究というのを行っております。

 この研究成果を踏まえまして、御指摘の点も踏まえ、医療機関による副作用情報の提供に関し、その速急な取り組みなり指針というものについて積極的に取り組んでいきたいというふうに思っております。

阿部委員 医療にかかわります医師サイドも、個々のいろいろな薬品についての副作用を知らないうちに過ごしていることも多うございますから、まず、医療供給サイドへの情報の周知徹底方式について、今の、今後のITを活用した方法、あるいは、やはり医者が忙しいという状態も個々の薬品について自分が検証していくチャンスを奪いますから、多面的な検討をよろしくお願いしたいと思います。

 あわせて、患者サイドへの、例えば医薬品救済機構があるとかいうことも含めた、情報提供についての現時点での取り組みをお願いいたします。

宮島政府参考人 こういった医療に関します情報につきましては、先ほど医療情報の懇談会でも大変議論になりまして、その中でも、先生御指摘のように、医療機関については比較的情報が行っておりますけれども、いわゆる患者サイドへの情報がまだ不十分ではないかという御指摘もありました。したがいまして、私どもとしましては、医療機関への情報とともに、患者さんの皆さん方へも適切な情報を十分提供していくということをこれからの課題の一つというふうに考えております。

 医薬品機構におきましても、今いろいろな安全情報をホームページに載せたり、そういういろいろなメディアを駆使してやっておるところでございますけれども、今先生御指摘の問題点を踏まえまして、さらに改善を図っていきたいというふうに思っております。

阿部委員 続いて、雇用問題についてお伺いいたします。

 緊急地域雇用対策の特別交付金の使われ方に関しまして、この間、朝日新聞等々で報告がございましたが、非失業者の比率がかなり高い。失業対策としてのお金が給付されながら、半数以上が非失業者に使われていたということもあって、次期の緊急雇用対策等々の中では、この交付金というのは大変使い勝手も、いろいろな使い道もあるものなので、引き続いて緊急雇用対策三千五百億円、地域交付金という形でおりることが既に報じられておりますが、この中でちょっと問題があろうかと思う点がございますので、お答えをお願いいたします。

 一応、この緊急地域雇用特別交付金は、雇用期間が六カ月未満とされておりますが、例えば今、新宿の火事等にも見られました消火、消防隊員あるいは防災職員、あるいは地すべりや洪水等の森林の保全要員、あるいはまた今般の狂牛病等の検査体制の充実要員、さまざまに雇用の、六カ月間の間は保障されましても、それが今度継続的な雇用になかなかつながっていきづらい仕組みをとっております。

 この点について、きょうは、若年者の失業が普通の失業率の倍くらい高いという中で、朝の御答弁にも、若い人たちの労働意欲の問題かというような御指摘もございました。私は、むしろ、短期の雇用を常用雇用に結びつけていくような交付金の使い勝手の仕組み、あるいは、安全面を重視した、特に防災、緑計画、あるいはこの狂牛病問題等で、長きにわたる安全性を日本が築くための部分で、訓練をし常用雇用に変えていくような仕組みが必要かと思いますが、この緊急地域雇用特別交付金の現状と今後の課題について御答弁をお願いいたします。

澤田政府参考人 現在、平成十一年度から今年度末まで行うことになっております現行の交付金につきましては、御指摘のように、雇用期間六カ月ということで、例外なしでそこで打ち切りということになっております。

 ただし、六カ月間交付金事業につかれた方がその後どうしているかを調査いたしました。そうすると、四三%の方はその後雇用されていると出ております。そして、四三%の中で、交付金事業を受託した事業体、事業者のところで引き続き雇われている方が八人に一人ということに出ております。

 この交付金事業は、あくまでも臨時応急の雇用機会を創出するという目的でございますので、現在の制度も、また近々補正予算でお願いいたします三千五百億円の新交付金事業も、この原則は変わらないと思っております。

 ただ、新しい交付金事業におきましては、例えば、半年間の間に仕事をしていただくために事前に研修をしてついてもらう、そういう方々を六カ月で切って、また新たに研修して入れるということについて、かなり非効率であるというケースだとか、それから事業体をといいますか、交付金事業を一年間効果的にやっていく上で必要な人材については、一回更新を認めて一年間雇用するとか、そういう弾力性のある運用をしたいというふうに思っております。

 そういうことで、現在の交付金事業、二千億で三十万人の臨時応急雇用をつくるという目標をほぼ達成しておりますので、新しい事業でもさらに雇用効果が高まるような形でやっていきたいと思っております。

阿部委員 継続した雇用に結びつくような創意と工夫を今後もお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時六分散会




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