衆議院

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第9号 平成13年11月20日(火曜日)

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平成十三年十一月二十日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 棚橋 泰文君 理事 谷畑  孝君

   理事 森  英介君 理事 吉田 幸弘君

   理事 鍵田 節哉君 理事 釘宮  磐君

   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君

      奥山 茂彦君    上川 陽子君

      鴨下 一郎君    木村 義雄君

      北村 誠吾君    熊代 昭彦君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      西川 京子君    野田 聖子君

      林 省之介君    原田 義昭君

      松島みどり君    三ッ林隆志君

      宮腰 光寛君    宮澤 洋一君

      吉野 正芳君    大島  敦君

      加藤 公一君    金田 誠一君

      土肥 隆一君    古川 元久君

      三井 辨雄君    水島 広子君

      山井 和則君    青山 二三君

      江田 康幸君    樋高  剛君

      小沢 和秋君    木島日出夫君

      阿部 知子君    金子 哲夫君

      中川 智子君    井上 喜一君

      川田 悦子君

    …………………………………

   議員           城島 正光君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   厚生労働副大臣      南野知惠子君

   厚生労働大臣政務官    佐藤  勉君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長

   )            日比  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長

   )            澤田陽太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発

   局長)          酒井 英幸君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君

   参考人

   (日本経営者団体連盟常務

   理事)          矢野 弘典君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総

   合労働局長)       龍井 葉二君

   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十日

 辞任         補欠選任

  宮澤 洋一君     左藤  章君

  中川 智子君     金子 哲夫君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     宮澤 洋一君

  金子 哲夫君     中川 智子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案(内閣提出第二五号)

 雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案(城島正光君外四名提出、衆法第一〇号)




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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律案及び城島正光君外四名提出、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省労働基準局長日比徹君、職業安定局長澤田陽太郎君、職業能力開発局長酒井英幸君及び政策統括官坂本哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松島みどり君。

松島委員 自民党の松島みどりでございます。

 雇用対策臨時特例法案及びこの国会で決まりました補正予算に絡む雇用対策について質問をさせていただきたいと思っております。

 最初は訓練の問題でございます。

 副大臣にお伺いしたいのでございますけれども、四十五歳から五十九歳までの方が公共職業訓練、これは民間に委託する職業訓練も含みますけれども、これを受講する場合には、失業保険の給付期間を過ぎても失業保険を給付し続ける、さらにその講座の受講料も国が面倒を見てくれる、こういう非常にありがたいというか、これを新しく法律で決めたわけでございます。この運用上の問題なんですが、失業給付期間、これがぎりぎりまで来て、それをさらに延長したいために新しく学校へ通い始めるとか、不正と言ってはなんでございますけれども、そういったいいかげんな使われ方がしないだろうか。ちょっと気がかりなところがありますが、いかがでございましょうか。

南野副大臣 先生のお問い合わせでございますけれども、訓練延長給付の拡充を実施するに当たりましては、失業者の停滞を招くことなく、真に受給者の早期再就職を実現するための施策として十分にその効果を発揮できるように、訓練受講対象者の選定基準、そういったものも明確にしながら、訓練受講により再就職性が高まる場合に限定するというようなところでございます。

 また、訓練を必要とする者につきましては、極力早期の受講指示に努めるとともに、特に複数回数受講の場合には、労働市場の求める能力、または一回目の訓練への取り組みの状況、また能力習得状況、そういったものの把握を通じながら、複数回数受講によりまして就職可能性が高まると見込まれる者に対してこれらのものを予定するところでございます。

 こうした運用によりまして、中高年齢者の早期再就職、そういったものの促進につながるように努めてまいりたいと思っております。

松島委員 ただいまの南野副大臣のお答えによりますと、就職、再就職に役立つ科目をしっかり選んでもらって、早くそれを受講していただくということでございます。しかし現実には、今例えば英会話学校などで、授業料は八割国から出ます、それを売り文句にいたしまして、そうやって国の政策を宣伝していただくのはありがたいのですけれども、非常に生徒さんを集めている。たしか、今までのところによりますと英語検定の準二級以上の資格を取るのでしたらこういう対象になるのですけれども、今どき英語準二級程度では就職に役立つ状況ではございません。こういった科目も非常にたくさん含まれております。

 そして、都道府県立の公共職業訓練所で訓練を受けた方は、平均しますと六割、それによって再就職に成功されている。ところが、民間に委託している民間の講座、これを受けたらどうだということで受けられた方は、四割ぐらいしか再就職に成功されていない。公共の方の六割でも低いと思うのですけれども、国が失業給付を出しながらなおかつその受講料まで面倒を見ているわけですから、この六割でも低いのに、四割しか役立たないような民間の講座、これは点検していって、この講座を受けたらこれぐらい再就職に役立ったということを一つずつ追跡調査して、レベルの低い、余り直結しないものについては、単なるおけいこごとか趣味みたいなものですから切っていく、そういう評価基準みたいなものをきちっと決めておられるのかどうか、その点を伺いたいと思います。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 二つ先生から御指摘がございました。

 教育訓練給付の方から申し上げますと、確かにこれまで、自発的に本人の能力を伸ばすということで講座を指定してまいったわけでございますが、職業の安定あるいは就職の促進ということをもっと厳しく見る必要がございますものですから、御指摘のような、いわば高等教育水準以下の内容であったりあるいは趣味的なもの、そんなものにつきましては、もっと講座を重点的に運営していくといったことでやりたいということで、見直しを行っておるところでございますし、もう既に行ったものもあるわけでございます。先生御指摘の英検の準二級というものもございましたが、これはもうやめるという措置をとりました。

 もう一点、先生、公共訓練のことをおっしゃいました。公共訓練につきましては、確かに委託訓練の方は四割強という程度の状況でございます。私ども、これにつきまして、もっともっと訓練終了時に再就職率を高める努力をしなきゃいかぬということで、これまでは委託訓練先に任せておったものを、我々がもっと、打率といいますか、それをしっかり見る体制をとるべきであろうということで、巡回指導員を配置するとか、あるいは訓練を受けられた方にアンケート調査をするとかいったさまざまな手法をとることによりまして訓練の打率を高めたいと思っています。それで、調べた結果、レベルが低ければ再委託はしないというような方向で、厳しくその重点化を進めていきたいというふうに思っております。

松島委員 ぜひ厳しく点検していただきまして、失業対策の国のお金で英語塾ばかりがもうかるとかパソコン塾ばかりがもうかるということがないように、しっかりと目を光らせていただきたいと思っております。

 次に、私、この国会でこの秋から決まりました新しい政策として非常に高く評価していることが一つございます。それは、これまで失業対策の中で目を向けられなかった自営業者の方々が、今もう仕事がやっていけなくて廃業に追い込まれた、そして新しく失業者となって就職戦線に出る。ところが、なかなか仕事が見つかるものじゃない。この方々は、今までですと、雇用保険料を今まで納めていないから失業対策の範囲ではなかったですけれども、私もせんだっての通常国会で、今非常にふえている、自営業者の方々が廃業して、後どうしようかと途方に暮れている方がたくさんいらっしゃるのですから、これまで雇用保険料を納めていなくても何とか手を差し伸べていただきたいということをさきの春の国会でもしっかり申し上げさせていただきまして、今度新しい制度ができました。毎月二十万円ずつ金利三%で貸し出して、一年間貸す、その後半年間は据え置きして、それから五年間で返してもらうということでございます。

 ここで、二点、質問と要望と申しますか、この画期的な政策を拡充するためのお願いがございます。

 一つは、半年据え置いてその後返していくことになるのですけれども、現実には、五十歳前後あるいは五十代の自営業の方々が仕事を廃業されて、後就職しようと思っても、一年たってもなかなか就職先が決まらないというケースがございます。二十万円ずつ毎月借りていた。これを一年借りて、半年据え置いてその後返すといっても、まだ就職先が決まっていないようなケースの場合、これは据置期間の延長その他で対応していただくことができるのかどうか、それの確認をひとつさせていただきたいと思います。

坂口国務大臣 松島先生がこの委員会でも今までに御指摘をいただきましたし、多くの皆さんからのそういう御要望がございまして、今回この予算化をさせていただいたところでございます。

 統計を見ましても、自営業者の皆さん方というのは、この二年間ぐらい前年同月比でだんだんだんだんと減ってきておりまして、いかに自営業者の皆さん方が日本の国の中から少なくなってきているかということを、本当に何か背筋が寒くなるような思いで、私いつもその数字を見せていただくわけでございます。

 この皆さん方に対しまして、もう一度この皆さん方が事業を開始していただけるか、あるいはまた、この皆さん方がどこかに雇用されて、そしてどこかに就職をされるのか、そうした皆さん方に対しましても御支援を申し上げなければならないというふうに思うわけでございます。今お話がございましたように、今回、生活資金でございますから、いわゆる企業を立ち上げるための資金ではなくて生活資金という形で二十万ということでございますので、そんなに多い額ではないというふうに思います。

 しかし、そうはいいますものの、この期間、職のない、事業がうまくいかないという期間のことでございますから、これはお返しをいただかなければならないものでございますだけに、早急にということにいかない事情のありますことも我々もよく理解しなければならないというふうに私は思っております。一応五年間の償還期間ということで、できるだけ無理のない形で御返還をいただくということを私たちは考えているわけでございます。

 それから、借り受けをしていただきました世帯のいろいろの御事情もあるだろうと思います。例えば、御家族に御病気の方がありますとか、あるいはまた何か大変な事情があるとか、そうした御事情がありますときに、それはその事情としてお聞きをしながら、償還金の支払いの猶予につきましても御相談に乗らせていただきたいと思っているところでございます。

松島委員 非常に温かい、実情に沿ったお答えで、ありがとうございます。自営業を廃業された方々に対する配慮というもの、生活資金の貸し出しということ、画期的な制度でございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 つけ加えて申し上げさせていただきますと、今おっしゃいましたように、生活資金ということで月々二十万円なんですが、私思いますのに、サラリーマンというものは、私もかつてサラリーマンをやっておりましたが、サラリーマンというのは、会社をやめたときに、次はゼロからの出発でございます。

 しかしながら、自営業者の場合は、大体におきまして連帯保証、個人保証をしておりますから、借金を背負ってマイナスからの再出発でございます。もちろん、生活資金で今、月々二十万円貸し出すというのは、失業保険の平均給付額が十七万円であることを考えますと妥当な額だとは思いますけれども、連帯保証で住むところまで失って、会社を廃業するあるいは倒産させてしまって住むところまで、もう身ぐるみはがれる形で再スタートを切る方々の場合に、もしできるならばもう少し上乗せをするとか、また今後検討をしていただければなと思っているところでございます。よろしくお願いします。

 次のことに移ります。今回のテーマは臨時緊急の雇用対策ということでございます。この中で質問がございます。

 緊急地域雇用創出特別交付金、こういうのがございます。これなんですけれども、例えば、私、地元の方からの要請があるのですけれども、これまでですと駅前の自転車の整備をやってもらった、緊急地域雇用創出金、こういうのも、これまでやっていてなかなかいい評価を得ているような事業はまた今度の交付金でも申請することができるのでしょうか。確認でございます。

澤田政府参考人 新しい交付金事業につきましても、現在の交付金事業と同じような考え方で、地方公共団体がさまざまな創意工夫をして企画、実施するものは対象になるわけでございまして、御指摘の駅前の駐輪場整備等々も、関係する自治体が雇用創出効果の高い事業であるというふうにお考えになって実施することは当然できます。

松島委員 ありがとうございます。

 次に、私、きょう一番問題にしたいと思っていたことがございまして、お伺いさせていただきます。ぜひ政治家としての大臣にお答えいただきたいと思っております。

 今おっしゃいましたこの緊急地域雇用創出特別交付金ですけれども、今回、例えばこういうテーマで新しくどうかと掲げられている中に、教育の分野そしてまた警察の分野というのがございます。教育の分野、確かに今、学校の教育の中で足りない部分を補うという形で、社会人というか、教員以外の一般の方々に来ていただく、こういうのが進められております。これの拡充としてぜひ使っていただきたいと私も思うものでございます。

 そしてまた、緊急雇用対策でございますから、優秀なまじめな人で、会社がつぶれてしまった、あるいは会社の都合でリストラされてしまった、こういった方々が、例えば、商社マンでしたら英語が並の学校の先生よりもしっかりしゃべれるとか、あるいはIT技術についても非常に進んだ方がいらっしゃる、あるいは生きた経済のことを社会科の授業の中で物語ることができる、そういう方々は大勢いらっしゃると思います。あるいは、会社といってもちょっと違うかもしれませんけれども、スポーツクラブが倒産してしまった、そこのインストラクターの方々が体育のある部分を教えるとか、こういうことが緊急雇用対策の中での学校の分野に進められるべきことではないかと思っております。

 ところが、いろいろなところで聞いておりますと、学校の先生あるいは校長先生、そういった方々のOBにもう一遍教育の場に来てもらう、こういうことにお金を出す。何となく教員OBの方々も、新聞の中で教育の場に緊急雇用対策でお金が出るということを見ますと、自分も元気だからまた雇ってください、そういう方々がいるようでございます。私自身はこれには絶対反対でございます。

 理由は何かと申しますと、緊急雇用対策というのは、今失業状態で困っておられる方々を救うためにやるのがこの事業でございます。学校の先生で定年退職されて退職金をもらった、しかも、場合によっては年齢によって年金をもらっている、この方々というのは一番恵まれた層でございます。

 今の失業の問題、そしてさっき申しました、失業以外にも、一般の会社を首になる以外にも、自営業の方が廃業された、あるいは自営業の方の場合、廃業まで追い込まれないまでも、十年前に比べて仕事が十分の一に減っている、あるいは工賃が十年前に比べて五分の一に減っている。廃業はしていないけれども、何とかやりくりして従業員には給料を払うけれども、自分たちは、社長夫婦は年金暮らしができるからもう給料を取らないとか、あるいは従業員の方にもボーナスは悪いけれどもあきらめてくれと泣く泣く頼むとか、そういったことが町では横行しております。このときに、退職公務員、学校の先生もそうです、警察官もそうです、それ以外の方も、退職公務員というのは一番恵まれた層であると思います。

 この方々を雇うことは、教育現場にもう一度入れるということは、私は、雇用対策として絶対にあってはいけないことであり、これは自治体が判断するとかいう問題でなしに、厚生労働省が労働対策として、失業対策として行う事業である以上、これは除くと自治体に対して指示書の中にはっきり明記していただきたい。公務員の退職者、退職金をもらったような人は入れてはいけない。

 そして、ついでに申しますと、退職金をもらっていないかもしれませんけれども、そういう段階じゃないですけれども、若い方で教員採用試験におっこちてしまった人、おっこちた人を間口を広げて入れようなんて、これはだめな人間をまたそれで採用しようということですから、教育のためによくない。

 さっき申し上げましたように、ほかの分野にいらした方が不幸にも、この長い、七十一文字もあって大変な法律ですけれども、経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者、つまり緊急なんです。そして経済状況の変化に対応して行うわけですから、若い人で教員採用試験をおっこちてしまった人とか、あるいは教職のOBで悠々自適の人をもう一遍教育の場に戻すようなことは禁じるということを、これは再三役所の方に申し上げたのですけれども、いや、地元で、自治体が考えることだとか、いろいろなことを言われましたので、あるいは適材適所ならいいとか言われて、適材適所かどうかというようなことは別問題として、雇用対策としてあってはならないということを申し上げたいと思って、実態をよく御存じの政治家である坂口厚生大臣にお話を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 松島先生がおっしゃるそのことは、私も全くそのとおりだと思っています。

 今回のこの特別交付金、これは、今失業をしておみえになります人をどう救うかということの発想、そして、この方々が本当の継続した雇用におつきになりますまでの間の一つのつなぎの役割をしてもらう。そこで、相なるべくならばと申しますか、できることならば、半年間なりあるいは一年間なりお勤めをいただいた、その延長線上でずっと続いて雇用していただくようなケースが生まれればこれにこしたことはない、こんなふうに思っているわけでございます。

 ですから、そういう人たちを中心にしてお選びをいただきたいというふうに思うわけでございますが、それは大前提だというふうに思っておりますが、市町村もいろいろございまして、町村に行きまして、町村でそんなに人の選択というのがないような場合に一体どうするかというような話も、現実問題としては、町村に行けば起こってくる可能性もそれはあるだろうというふうに私は思います。しかし、大原則は、今おっしゃったことを私は賛成でございます。

 ただ、それをどういうふうに皆さん方の方にお伝えするかのお伝えの仕方だと思うのですね。余り、あれあきません、これあきませんというふうにこちらの方が事細かく具体的に言うということになりますと、市町村の自主性を尊重していないじゃないか、市町村にゆだねるのならばおれたちにもう少し任せ、余分なことは国が言うな、こういう御意見も一方ではあるわけでございますが、そこのところを、そういう意見もあることを踏まえながらも、しかし国としてはこういう考え方でいるということをやはりお伝えすることは明確にお伝えしなければならないと私は思っています。

 ただしかし、それが法律で縛られるとかなんとかということではないですけれども、できましたこの趣旨からいえば、趣旨はこういうことだということをやはりしっかりと市町村で御理解をいただいて、そしてこの交付金によって雇用というものを考えていただきたい、そんなふうに思っております。

松島委員 ありがとうございました。

 大臣のおっしゃる大前提がしっかりと地域地域に行き届きますように、役所の方にもお願い申し上げたいと思っております。

 あとお伺いしたいのが、就職支援アドバイザー、この問題でございます。

 今、職安、ハローワークに行きますと、大変ごった返しておりまして、なかなか個々の相談事などできない状況でございます。失業保険の給付の仕組みだとか受け取り方、申請の仕方、こういうことを説明していただくのが関の山という状況で、お一人お一人に対して就職の相談というのに応じられない状況です。そこで、就職支援アドバイザーというのを置くということが決まりまして、私非常に喜んでおりましたら、全国でわずか九十四人ということでございまして、これではお話にならないんじゃないか。

 なぜこれが必要かと申し上げますと、さっき申しましたように、例えばこれまで自営業をやっていた人が初めて就職するときとか、あるいは、そうでなくても、若いときに、高校を出るとき、大学を出るときに就職活動をやった経験のある方でも、実際問題、高校や大学を出るときに非常に景気がよかったときなんかは楽々就職しているような方、初めて本気で就職戦線に、今厳しい中、立ち向かうわけでございます。

 そしてまた、今高校とか大学、特に私立の高校や大学におきましては、とにかくちゃんと就職させるためにといって、就職指導室、進路指導室と物すごく充実して、例えば銀行の人事課長のOBみたいな人をヘッドハンティングしてきて据えつけて、全国の会社に求職に回らせるとか、そして学生さん、高校生でも大学生でもそうですけれども、履歴書の書き方、面接の受け方、例えば女性だったらメークの仕方まで教えて、こういうふうに手とり足とりで、就職できるようにと学校が必死になっているわけですね。

 それに比べて中途で、三十、四十、五十、そういった年齢で就職戦線に出る人というのはわからないんですよね。だれも指導してくれる人がいない。ただでさえ不利な状況の年齢になりまして、そして、履歴書の書き方だとか面接のアポイントのとり方、面接の受け方、どういうふうに自分をアピールしたらいいか、あるいは、どの会社だったらどういう業種が自分に向いているか、さらには、四十五歳以下と書いていても、まあこの辺は頑張って四十九歳でも受けに行けばうまくいくかもしらぬ、そういうことを教えてくれる方をもっと充実させなければいけないんじゃないかと思っています。

 そして、今度、この就職支援アドバイザーが全国でわずか九十四人に対しまして、能力開発支援アドバイザーというのは全国に今年度中に千七人採用されるというのですね。この能力開発支援アドバイザーというのは、さっき申しました講座、新しい授業を受けたりする、再訓練を受けるときにどんな講座がいいか、そういうことを教えてくれる場らしいのですけれども、それよりも、さっき言いました、直接就職に結びつく就職支援アドバイザーの方を充実させるべきじゃないか。これは人数が十倍ぐらい違うのですけれども、逆転しなければいけないんじゃないか、私はかように思っておりますが、いかがでございましょうか。

坂口国務大臣 そこは、いわゆるカウンセラーという名前をつけましたりアドバイザーという名前をつけましたり、ややこしいのですね、私も見ておりまして。これは一体どちらがどう違うのと。それは、局が違うと名前が違うということになっておりまして、中身は一緒だと私は思っています。

 それで、今一番大事なことは何かといえば、私もずっとハローワークを回ったりしておりまして感じておりますのは、一番大事なことは、お一人お一人にかなり懇切丁寧に相談に乗るということだと思うのです。中には、現在の時代の流れというものが十分におわかりになっていない皆さんもおありになるわけで、二次産業にお勤めになったら、どうしても二次産業でなければ嫌だとおっしゃる方もある。どこかでも申し上げたのですけれども、部長をしておみえになった人は部長でなければ困るという方も中にはあるわけでありまして、時代の流れというものを見ながら、その人に本当に合った、その人その人の、本当にいい面をお持ちになっている、あなたのこのいい面を生かしたらどうですかという一言を言ってくれる人がやはり必要だというふうに思っています。

 しかし、現在のハローワークは、だんだんだんだん多くなってきています。私もかつて医者をしておりましたときに、人気が出てたくさん患者さんが来てくれればくれるほど、一人に対する時間が短くなってくるわけですね。これは申しわけないなと思いながらそうせざるを得ない、二十四時間は二十四時間でございますから。だから、ハローワークの中でも一生懸命やってくれてはいるのですけれども、しかし、だんだんだんだん多くなれば、一人の方に短くなってしまう。ここをどう解消するかということは、このアドバイザーをつくって、そしてこの皆さん方にお願いをする以外にない。

 ここは民間もしっかり今やろうとしていただいておりますので、民間のお力も十分にお手伝いをしていただきながら、そして早くやりたい、早く五万人つくりたい。早く五万人つくれば、一人六十人ずつ持っていただきましたら、それで三百万でございますから、私は、一人にそのぐらいは抱えてお仕事をしていただけるのではないかというふうに思っておりまして、ぜひ早くこれを到達したい、そういうことで、一生懸命、来年度予算にもお願いをしたいと思っているところでございます。

松島委員 どうもありがとうございます。

 おっしゃるとおりでございまして、ハローワークが人気が出るという、今非常に困った事態になっておりまして、今いらっしゃる方々がいかに頑張っていただいても、これは対応し切れない。

 今大臣おっしゃった中に、キャリアカウンセラーというのを五年間で五万人にふやそう。ただ、これは、こういう資格なりこういうジャンルの人を育てていこうという発想はとてもすばらしいんですけれども、必ずしも国が雇う、そういうかちっと決まったものじゃない。ぜひ民間の力も活用して、やはり雇用対策という中にしっかりと組み込んでいただきたい。

 そして、今、本当に大臣もいみじくもおっしゃいましたように、厚生労働省の中の旧労働省の分野に限りましても、局ごとにいろいろなことをお考えいただいて、何とかアドバイザー、何とかアドバイザー。ぜひ局の壁などというものは取っ払って、私さっき申しました、就職支援アドバイザーは全国で今年度わずか九十四人だけれども、一方で、能力開発支援アドバイザーという、隣の局の方がつくっているアドバイザーは千人を超す採用をするそうですから、一体となって、どんな質問にもこれはちょっと違うとか言わないで、現場現場で、困った方の、本当に懇切丁寧に、一人一人の方に就職というのはこういうことだと、もう部長にこだわっていられない、あるいは、今はソフト、サービス、サービス産業の警備だとか清掃だというところはふえているんだから、もうそっちの方にシフトしてもらわなきゃ困るとか、そういったことも含めてしっかりと指導をしていただきたいと思っております。

 きょうはどうもありがとうございました。

鈴木委員長 江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、雇用対策臨時特例法案に関する質問をさせていただきます。

 現下の雇用失業情勢につきましては、九月の完全失業率が五・三%と過去最高を記録し、坂口厚生労働大臣もこれは緊急事態であるとおっしゃられておりますように、大変厳しい状況になっております。景気も一段と悪化しておりまして、米国における同時多発テロの影響等も考慮すれば、雇用情勢は今後さらに厳しい状況になることが懸念されると思われます。

 このような中で経済の再生を図るには、構造改革をより強く、迅速に進めて、新たな発展の基盤となる新産業の育成も進めながら、民需主導の経済成長を目指すことが必要かと思います。

 しかしながら、不良債権処理を初めとする改革断行に際しましては、改革に伴う雇用への不安を解消することが不可欠であります。適切な雇用対策を欠けば、企業の倒産や失業の増大など社会不安が広がり、構造改革のブレーキにもなりかねないのであります。

 こうした状況に対して、私たち公明党は、構造改革に伴う失業などの痛みに対応するため雇用のセーフティーネットの整備が急務との視点から、本年四月、二兆円規模の緊急雇用対策基金の創設、二十一世紀型産業の育成による二年間で百万人の雇用創出などを中心とする独自の緊急雇用対策を提言し、九月には与党三党の緊急雇用対策を決定いたしました。

 これを受けて政府は、総合雇用対策を決定され、直ちに取り組むべき施策を改革先行プログラムに盛り込み、先週成立した補正予算では、改革先行プログラム関係費一兆円のうち半分以上に相当する五千五百一億円が雇用対策に計上された次第でございます。この補正予算にあわせて、今般の雇用対策臨時特例法案も早期の成立と適正な施行を図るべきものと考えます。

 そこで、本法案の内容を論ずるに当たりまして、まず、その基礎となる総合雇用対策についてお伺いいたします。

 この総合雇用対策は、九月十九日に取りまとめられた与党三党の緊急雇用対策を受けて策定されたものでございますが、雇用の受け皿整備、雇用のミスマッチ解消、そしてセーフティーネット整備の三つを総合的に実施するとの考え方が明確に示されております。今般の雇用対策臨時特例法案によるものを含め、今回の総合対策による雇用創出等の施策をどのように実施して、どのような雇用創出効果を見込んでおられるのか、坂口厚生労働大臣の所見をお伺いいたします。

坂口国務大臣 江田議員から、今、中身につきましては全部言っていただきましたので、私が申し上げることはなくなってしまったわけでございますが、今回の大きな柱は、御指摘のように三つあると思っております。

 一つは、やはり何と申しましても新しい産業の中から雇用をつくり出さなければなりませんから、ベンチャー企業の育成を初めといたしまして、新しい雇用の創出にどう取り組むかということが一つ。それからもう一つは、現在失業をしておみえになる、あるいはこれからされる可能性のある人たちに対してどう手を差し伸べ、そしてミスマッチ等をどうなくしていくか、いわゆるスムーズに次の職業に移行をしていただけるようにするかという問題であります。三番目は、既にこれは失業しておみえになる皆さん方に対しましてどのようなひとつ手を差し伸べて、そして御支援を申し上げるかということだろうというふうに思っています。

 この三本柱を中心にしてこれからいくわけでございますけれども、いずれにいたしましても、この雇用というのは経済の中のどちらかといえば最後の出口のところでございます。ですから、経済の入り口のところで新しい雇用がたくさん生まれるようなことが一方でなければ、これはなかなか出口だけのところでどうするかといいましても、これは全部おさまるものでないことも事実でございますから、もう少し入り口のところのしっかりとした経済対策というものも必要だということを主張しているところでございます。

 そして、しかし、その最終のところの、それでもなおかつ出てまいりますところの失業者というものを私たちは対応していかなければならないわけでありまして、また、現在の五・三%の失業率がこれでおさまるかどうかということを考えましたときに、テロの影響でありますとかあるいは狂牛病の影響でありますとか、そうしたことが九月にそれほど出たかといえば、全部出ていない、まだ十月になってからの方が厳しくなった面が私はあるように思っております。したがいまして、非常に十月の完全失業率あるいは有効求人倍率というものがどうなるかということを大変心配をいたしているわけでございますが、そうしたことも含めまして私たちは取り組んでいかなければなりません。

 今補正予算で取り組んでいただきましたことを、最大限これを効率的にやはり運用するということが大事でございますが、それでもし足らないときには、さらに加えて、新しい対応をこれは検討しなければなりません。それは来年の予算まで待てる問題なのか、待てないということになれば、そのつなぎをもう一遍どうしてもらうかという話になってくるだろうというふうに思っておりまして、そうした中には、今話が始まっておりますワークシェアリングの問題等につきましても、より積極果敢にひとつ取り組んで、早く対応できるようにしていきたいと思っているところでございます。

江田委員 今、総合雇用対策における大臣の基本的なビジョンをお聞きいたしました。

 今回のこの総合雇用対策の最大の目玉というのは、先ほども松島委員の方からありましたように、新たな緊急地域雇用創出特別交付金の創設による新公共サービス雇用の創設であると思います。補正予算として総額三千五百億円が計上されて、先週の十六日には交付金の都道府県別の配分見込み額が通知されました。

 この交付金事業は、地方分権の大きな流れの中で、地域のニーズと自主性を生かした雇用対策として高く評価すべきものと考えております。日経連や連合からもその早期実施が強く求められるなど、国民的に大きな期待がかかっております。

 この制度は、平成十一年度から今年度まで実施されている現行の緊急地域雇用創出特別交付金を真に雇用創出効果の高い事業に重点化するものとされていますが、現行の制度と新たな制度との違いはどこにあるのか、また、どこが改善されているのかについてお伺いしたいと思います。

 例えば、現行の交付金の運用状況につきましては、マスコミ等で、失業者でない人が多数雇われていたり、地域のニーズに応じた事業内容になっていない等の指摘もなされております。また、本制度は雇用の一時しのぎにすぎないのではないかという指摘もありますが、安定雇用の確保のために、新たな制度においてはどのような改善策を講じられているのかについてお伺いいたします。

澤田政府参考人 新しい交付金事業につきましては、今委員御指摘のような、現行交付金事業につきましてのいろいろな問題といいますか改善すべき点が指摘されておりますので、そうした実態等を踏まえまして、違いが大きく三点ございます。

 いずれも雇用効果を高めるという観点からの違いでありますが、一つは、交付金事業に従事する全労働者に占める新規の失業者の割合を、四分の三以上ということを基準として示します。

 それから、交付金の事業費に占めます人件費割合、これをおおむね八割以上ということも基準として示したいと思います。

 そして、事業計画を策定した段階、そして事業を実施した後の実績、この計画と実績を公表するということで透明性を高める中で、いろいろな皆さんの御意見を踏まえて、雇用効果が高まるように、事業を企画する段階で一定の緊張感が出るだろうという観点でありますが、そうした三点のことを新たに明示したい、こう思っております。

 そして、この交付金事業で雇われた失業者の方々につきましては、この事業に就業している間に培いました経験とか知識等々を活用して、交付金事業が終わっても、一番ハッピーな形としては、その事業に引き続き雇われるということも一定程度あるかもしれませんが、そうではなくても、他の安定した雇用につくというようなことをできるだけ見込めるような形でこの交付金事業を企画し、運営してほしいということを、都道府県、市町村にこの交付要綱を出し、通達を出す段階で指導していきたい、こう思っております。

江田委員 私、きょうも朝、県の行政の方と打ち合わせをやってまいりましたが、その中でも、緊急地域雇用創出特別交付金の運用について話題となりました。いい事業だからこちら側は相当期待しているんですが、やはり、県、地元の方としては、従来のものよりも縛りが入っている。今言われましたように、三点というのは、県の行政からすれば縛りというような感じでも受けとめられております。

 私も、今の三点というのは、現行制度の欠点をなくして、真に雇用創出効果を高めるものとしては非常に大事な観点だと思いますが、その実際の運用、また計画書の段階は、これは十一月中には計画を出さなくてはならない、練らなくてはならない時期だとは思いますけれども、やはり国の相談体制を、そういう県の行政からの相談を受ける、そういうきめ細かい配慮をぜひとも、この一カ月という短い間ですけれども、やっていただければなと実感いたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、本法案につきまして幾つかお伺いさせていただきます。

 今回の法案における第一の柱は、四十五歳以上の中高年齢者について、訓練の受講後も必要に応じて、失業保険の延長給付を受けながら再度の受講ができるようになっているという点でございます。

 技術革新が進展する今日の労働市場におきましては、有能な中高年齢者であっても、その職業能力が陳腐化していては、能力のミスマッチによってなかなか就職することはできません。その意味で、最大二年間まで給付を受けながら訓練を受けることができる制度は大変時宜を得たものと考えます。

 ただ、制度は充実されても、それを運用する受け皿である職業訓練の内容がこれに伴わなければならない。先ほども松島委員がおっしゃっておりましたが、職業訓練はこれまで都道府県や雇用能力開発機構の公共施設が主として担ってきましたが、平成十年度の緊急経済対策以来、専門学校などへの委託訓練が急増して、今年度は職業訓練対象者三十八万人の約八割を占めるに至っていると聞いております。そういう中で、必ずしも失業者のやる気や適性を見きわめることなく訓練を受講させる例もあり、受講生と訓練のミスマッチが見られるとの指摘がございます。

 公的部門の拡大には制約があることからも、今後ますます、こういった委託訓練は拡充していく必要があるかと思いますが、訓練延長給付の拡充を実効あるものとするためには、受け皿となる委託訓練について、失業者のやる気や適性をしっかりと見きわめ、再就職に直結する訓練を受講させるとともに、訓練の内容を適宜検証しながら、本人の早期再就職に向けた手厚い職業指導を行っていくべきと考えますが、この点について副大臣の御所見をお伺いいたします。

南野副大臣 ただいま先生の御質問でございます早期就職に向けた手厚い職業指導を行っていくべきじゃないか、これにつきましては訓練コースということについてのお答えを差し上げますが、これまでの地域の労働市場、それらのニーズを把握した上で設定してきたところでございます。

 今後は、官民のあらゆる教育訓練資源、そういったものを活用しながら多様な訓練コースを設定する中で、職業訓練機関とハローワークの連携を強化しながら、求人のニーズまたは実際の職業就職実績などによりましても訓練科目を機動的に見直してまいりたいというふうに思っております。

 さらに、訓練受講者の早期就職に向けた職業指導につきましては、訓練機関とハローワークの密接な連携によりまして、まず一段目は、求職者に対するきめ細かな職業相談、キャリアコンサルティングの実施により再就職に必要な訓練を選定していくと。さらに、訓練コースによりまして、リアルタイムで情報を提供しよう。それから、委託訓練先への就職支援指導。さらには、訓練受講中からの求人情報の提供、職業相談の実施。さらには、訓練終了後の就職面接などを開催していこうとしているものでございます。

 これらの、求職受理時から職業相談、訓練受講、職業紹介、就職までの一貫した支援をしてまいりたいと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。

江田委員 ありがとうございます。

 それに関連することでございますが、これも先ほど松島委員から話題に上ったところですが、キャリアカウンセラーについて、厚生労働大臣にもう一度お伺いしたいと思っております。

 労働力のミスマッチ、特に職業能力のミスマッチを解消して早期の再就職を促進するためには、求人側の求める能力と求職者の有する能力、それを見きわめながら、その能力をきめ細やかな相談等により十分にすり合わせて、その結果、能力が不足する場合には早期に適切な職業訓練を受講させるなど、求職申し込みから相談、訓練、職業紹介に至るまでの一貫した支援システムの整備が重要である。今南野副大臣が申されたとおりでございます。その際、重要な要素となるのがキャリアカウンセリングであると考えております。

 特に中高年齢者については、長年にわたって培ってきた能力を最大限に生かすことのできる再就職先の確保が重要でございまして、そのためには、きめ細やかなカウンセリングを通じて、これまでの職業訓練や能力の棚卸しを行い、今後のキャリアプラン、能力開発プランを明確化していくことが極めて重要であると考えられます。

 大臣は、予算委員会でもキャリアカウンセラーの養成について熱っぽく言及されておられましたが、厳しい雇用失業情勢のもとで、こうしたキャリアカウンセラーの果たす役割の重要性を再度、どのように認識されて、またその養成に向けた方策についてどのようにお考えなのか。その点、お伺いさせていただきます。

坂口国務大臣 先ほども松島議員にもお答えを申し上げたところですが、全国のハローワークをあちこち回らせていただきまして、痛切に感じますことは、やはり、お一人お一人に対してもう少しきめ細かく相談に乗る人が必要だということでございます。

 だんだんと失業者がふえてくるものでございますから、ハローワークではお一人に対して十分な時間をとって説明ができない。先日もどなたかおっしゃいましたけれども、一人の方に長く時間をかけていると後ろの席からいつまでやっているんだという声が出るようなこともある、そんなお話がございましたが、事実、現場ではそういうことではないかというふうに思っています。

 それで、まあミスマッチ、いろいろございます。例えば賃金が合わないというのもこれは非常に大きなミスマッチでございますが、その場合に、ただ書類の上で見ました場合に、確かにそこに書かれている賃金は低くても、その企業あるいは中小企業としましても、例えば一年なら一年働いてもらって、そしてその後はもう少し我々は賃金を上げてもいい、もっと上げてもいい、だけれども最初から上げるわけにはいかないという意味で書いているところもございますし、何年働いてもこれはこれ以上は上げられないというところも私はあると思うんです。

 事実、そうしたところを、企業の側にもいろいろとその辺のところを聞いていただき、話もしていただき、そして失業者の皆さん方にも、実はこういう企業があって、あなただったらここはどうですかということをしますときに、最初の一年はこういうことだけれども、本当にこの企業の片腕になってくるような人であるならばもう金に糸目はつけませんというふうに、そこまで言うてくれるかどうかわかりませんけれども、言ってくれるところも私はあると思うんです。やはり、その辺の双方の橋渡しというのをちゃんとやってくれる人がどれだけいるかによって私は決まってくる、もう一にも二にもそこで決まるという気がいたしております。

 それだけに、この五年で五万人ということを打ち出しましたけれども、できるだけ早く前倒しをしてでもやらなければならないというふうに思っておりますし、そして、これは国でこれだけやるということはなかなかできにくいことでございますから、民間でも養成をしていただく。民間の皆さん方と御一緒になってこの研究会をもう既に発足させまして、このキャリアカウンセラーはどういうふうに養成をしていったらいいかということの意思統一を今しているところでございます。

 民間の皆さん方の経験もいろいろ今お聞きをいたしておりますが、それで、どのぐらいこの養成期間をとったらいいのか、どんなことをそこで勉強したらいいのか、そして、その人たちには社会的にどういう立場を与えるのかといったようなことを決めていかないといけない。皆さん方が独立をしてそういう職業としておやりいただけるようにぜひ私はしなければならないというふうに思っているところでございます。

 民間の皆さん方も含めまして、その資格認定の仕組みの整備、それからその養成に当たっての民間に対する支援をどうするかといったことも含めて、早急に結論を出したいというふうに思っている次第でございます。

江田委員 ありがとうございます。

 私も企業に、民間の研究所でございましたが、長年勤めて、その管理職をやっておりました。幾つもの面接をしながらその適正な方を選別するという仕事をやってきた中で、やはり大臣のおっしゃるように、企業との橋渡しをやる人がおればその企業の望む方があらわれるということで、キャリアカウンセラーというのは私は非常に重要だと思います。

 五年間で五万人、この目標、これが多いのか少ないのか私にはわかりませんが、とにかく今のそういうキャリアカウンセリングの流れを、確固としたものをつくり上げるという意味においては非常に大事な施策の一つであろうかと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後の質問になるかと思いますが、中高年齢者にかかわる派遣期間の特例についてお伺いいたします。

 労働者派遣事業は昭和六十年に我が国に導入されて以来次第に拡大してきましたが、平成十一年の改正によりそれまでの原則禁止から原則自由に移行し、今や我が国の労働市場において重要な位置を占めるに至っております。

 この労働者派遣事業というのは長らく労使間で意見が対立してきた存在であり、今日でも労働組合側は不安定な雇用の拡大であるとして派遣事業の拡大に対して必ずしも望ましいとは考えていない面もあるようでございますが、他方、現実に失業の憂き目に遭っている失業者の立場からすれば、派遣労働者として就職することができるのであれば望ましいこととも考えられます。

 実際、変動きわまりない経済状況のこのような状況の中では、企業の立場からすると、一時的に労働力ニーズが発生したとき、将来にわたってずっと責任を負わなければならない正社員として雇い入れることには二の足を踏むとしても、派遣労働者としてであれば積極的に利用しようという形で需要が増大してくることも考えられます。その意味で、労働者派遣事業の規制を一部緩和することによって雇用を創出するという総合雇用対策の方向は適正なものだと考えます。

 しかし、一方で、派遣労働者については社会保険の適用が不十分であるなど権利の保護という面で問題があるという指摘もございます。今後拡大していく雇用形態であるとすれば、こういった問題をきちんと解決していく必要があります。

 今回は中高年齢者に限った派遣期間の特例という形でございますが、今後の派遣事業全体についてどのように規制を緩和して雇用の創出につなげていこうとするのか、また、派遣労働者の権利保護、特に社会保険の適用問題についてどのように取り組んでいこうとされているのか、お伺いいたします。

澤田政府参考人 委員御指摘の労働者派遣制度全体の見直しにつきましては、派遣期間だとか派遣対象業務などの見直しがあるわけですが、去る八月三十一日から労働政策審議会で調査検討に入ったところであります。

 審議会におきます調査検討に当たりましては、雇用就業形態の多様化に対応した雇用の場の確保という観点、さらには、雇用就業形態の多様化に対応した労働者保護のあり方という観点が非常に大事だと思っておりまして、そうした点に留意しながら、労働市場の需給調整機能を図るという点でこの派遣事業制度の見直しを進めていくことが大事だろうと思っております。

 平成十一年に改正派遣法が施行されて以来の法施行状況の確実な検証を行いまして、また、今回、臨時特例措置をお願いしております中高年齢者にかかわる特例の実施に移行した場合の状況等々もきっちり検証した上で、労使関係者の意見等も十分伺いながら、早急に検討を進めていきたいと思っております。

 そして、社会保険の問題でございますが、現在の仕組みを申しますと、派遣労働者であっても常用労働者としての要件を満たせば社会保険が適用されることになっておりますので、この点につきましては、派遣元事業主あるいは派遣先に対する必要な指導をやっておりますし、今後とも適正に運用されるよう努力していきたいと思います。

 なお、問題となっております登録型の派遣労働者につきましては、社会保険と国民健康保険、国民年金との制度間の行き来に伴います適用漏れだとか、届け出事務の煩雑さ等が指摘されているところは、御指摘のとおりであります。

 したがいまして、先般公表されました医療制度改革試案の中でも明らかにしておりますが、派遣労働者の就労実態等を踏まえた健康保険組合の設立を認めるという方向、そして、適用基準の明確化等を行うということにしておりまして、この方向をできるだけ早く実現するということで派遣労働者の社会保険加入の促進が図られ、また進んでいくものと思っております。

江田委員 時間が参りました。ありがとうございました。

 我が国の最大の政治課題は景気、雇用対策であります。今後、構造改革を進めていく中で、最も力を入れていくのはこの総合的な雇用対策であるかと思いますので、どうぞ、今後も的確な施策を実施していただきますようによろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 井上喜一君。

井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。

 私は、雇用政策につきまして厚生労働省に質問をさせていただきます。

 最近、失業者が多い、あるいは失業率が結果として高くなってきているということは御承知のとおりでございます。どうしてこんなに失業率が高いのか、失業者が多いのかというのは、言うまでもなく、大きな経済構造の変化の中にあるということでありまして、言ってみれば、構造的な摩擦の失業と言えるのではないかと思います。

 経済構造の変化といいますと、産業構造が変わるということですね。主たる産業が入れかわってくる、産業構造が変わってくるとか、あるいは、IT化によりまして企業がリストラを行う、その結果として失業の問題が出てくる、あるいは離職の問題が出てくる、こういうことだと思うんですね。この点につきましては政府の方と見解の相違はない、私はこんなふうに思うんです。

 私が申し上げたいのは、今日の失業というのはそういう構造的な問題であるということでありまして、恐らく、今後かなりの期間、そのような中で離職者、さらには失業者が出てくるのじゃないかと思うんですね。だから、そういうことを前提にして雇用政策を考えていく必要がある、こんなふうに思うんです。

 まずお尋ねしたいのは、今後ともそういう構造変化が進むとすれば、どの程度の離職者が見込まれるのか、あるいは、その数が難しければ、やはり今よりももっとふえていくだろう、ふえていくのか、あるいはそうでないのか、その辺の見通しについて、まずお伺いをいたしたいと思うんです。

 私が質問いたしますのは、つまり、雇用政策の前提といいますか、それをまずきっちりと把握しておく必要がある、そういう趣旨から申し上げているわけであります。

坂口国務大臣 井上議員の御主張は、私もそのとおりだというふうに思っています。単なる景気の後退ということだけで起こっている失業ではなくて、産業構造がこれだけ急速に起こってきているわけでありますから、やはりそれに対する対応がなかなか進んでいないということだろうというふうに思います。

 企業の側と申しますか、国の側の対応、企業の側の対応もありますが、個人の側の対応も、新しい時代に対しましてどのように自分たちも変化をしていったらいいかということがなかなか把握をしにくいところもございますし、それから、わかっていても変わりにくいという点もあるだろうというふうに思っています。

 したがいまして、そうした点を、国も、それから企業におかれても、あるいはまた労働者全体におかれても、そうした大きな転換期を迎えているということをどう認識をしていただいて、意識改革をしていただけるかということに尽きてくるんだろうというふうに思いますので、やはりそうした観点に立った対策、政策というものを立案していかなければならないというふうに思っております。

 これから先どれぐらいふえてくるかというのは、これはなかなか難しい問題で、何%ぐらいになるでしょうなんというようなことは軽々に申し上げることはできないわけでございますが、現在の五%台の完全失業率、この五%台の失業率はしばらく続かざるを得ない。さらに六%台にはね上がってくるかどうかというようなことまでは私は言うことはできませんけれども、まず、五%台の失業率というのは今後もしばらく続く可能性があるということを覚悟して、やはり対策を立てなければならないんだろうというふうに思っている次第でございます。

井上(喜)委員 産業構造の変化と関連した一番顕著な現象というのは、いわゆる産業の空洞化と言われる現象だと思うんですね。特に、製造業が海外へ出てくるということであります。

 従来、製造業といいますと、日本の産業の中では一番生産性の高い分野だったのでありますけれども、最近、中国なんかが賃金が安いというようなことで、どんどん中国へ進出していく、こういうことになっておりまして、製造業の海外生産比率が高まってきておりますし、また、製造業といいますのは、日本の製品あるいはサービス輸出の大体八割を占めておったんです、八割強だったのでありますが、ことしなんかはどうもそういう貿易・サービス収支が赤字になるんじゃないか、こんな懸念すらあるわけですね。これはまさに産業の空洞化ということと非常に関連があるわけでございます。

 また、これは経済産業省の問題でありまして、これは別にしまして、厚生労働省と関係ありますのは、雇用の問題なんですね。これは雇用に少なからざる影響を与えていると私は思うんです。製造業の雇用者が減少してきておりますのも、こういうこととの関連というのはかなりあるんじゃないかと私は見ているのであります。

 そういう点から、ここ五年間ぐらいで結構ですから、どういうような業種の産業が海外に出ていったのか。その規模はどれぐらいで、それが雇用にどんな影響を与えているのか。あるいは、今後何年間か、どの程度のそういう、空洞化というんですか、海外移転が見込まれ、それが雇用にどの程度影響するのか。これは大変難しい問題だと思うのでありますけれども、見通しをお聞かせいただきたいと思います。

澤田政府参考人 近年、製造業の海外進出、移転が進んでおりまして、業種別で見ますと、石油製品・石炭製品製造業、あるいは精密機械、電気機器、輸送用機器、こうしたところで海外の現地生産比率が相当高くなっております。

 こうした海外現地生産比率が高い業種の就業者数が、平成七年から平成十二年の五年間でどう動いたかを見ますと、石油製品・石炭製品製造業で約一万人の減、それから精密機械では〇・八万人増という格好になっています。それから、電気機械では非常に影響が大きく出ておりまして、約八万人減という形であります。それから輸送用機械でも約七万人の減少ということで、必ずしもすべて就業者が減少しているというわけではありませんが、製造業就業者全体で見ますと、平成七年から平成十二年の間に約百万人程度減少しております。これがすべて空洞化ということではありませんが、このかなりの部分が空洞化によってもたらされていると思います。

 こうした状況につきまして今後どうなるかという御質問でございますが、定量的に申し上げることは極めて困難でありますが、定性的にあえて申し上げますと、産業政策の面におきまして、我が国の製造業がいかにあるべきかという産業政策のビジョン、それに基づく政策が確立されるということが急務でありまして、そうしたことがなかなか進まないということになりますと、この空洞化現象はまだまだ進むだろう、こう思っております。

 そうした中で、雇用の影響がどうかという点でございますが、端的には、そうした製造業が立地している地域におきまして、雇用機会の減少という形で典型的にあらわれております。そうした点につきまして、私どもは、できるだけ雇用の維持を図っていただくという政策をこれまでとってまいりましたが、そうしたものもある程度限界がありますので、むしろ高付加価値、新分野等々への転換、進出を促進する意味での円滑な労働移動ということについて政策の重点を置き、多少時間はかかるかもしれませんが、基本的にはそういう方向で労働力の資源配分を適正化するという方向を追求していきたいと思いますし、その間のいわば痛みを和らげる雇用対策につきましては、今回の補正でも組みましたようなことをさらに知恵を出してやっていきたい、こう思っております。

井上(喜)委員 海外進出があるといいますのは、中国なんかの場合を例にとりますと、もちろん技術水準なんかがある程度高くなってきたこともありますけれども、賃金の要素というのは非常に大きいんですね。二十分の一とか三十分の一ぐらいの賃金であるから、どうしたって賃金の方で競争すると日本の方がコストが高くついて、商品の競争性においても劣ってくると言われるんでありますが、私は雇用問題も、賃金というのは非常に大事な問題だと思うんですね。現に、いろいろな対策が考えられておりますが、例えば、職種のミスマッチだとか、あるいは年齢のミスマッチが言われますが、賃金のミスマッチもかなりあると思うんですね。あると思うんですよ。

 このミスマッチについて、厚生労働省はどういうぐあいな受けとめ方なんですかね。それはミスマッチがあってもしようがないやというようなことなのか。そうすれば、賃金格差による場合は、全く雇用というのは拡大しないわけですよね。ミスマッチをほうっておいていいものなのか。これはこのまま置いておくのが一番自然なのか。この賃金のミスマッチについての厚生労働省のお考えは、どういうお考えですか。これをどういうぐあいに取り扱おうとしておられますか。

澤田政府参考人 労働力需給のミスマッチの中で、賃金のミスマッチというものもある程度ウエートがあるということは事実でございます。

 統計的にちょっとお話をしますと、求職者側の意識調査によりますと、再就職が大変だった理由として賃金や労働時間を挙げる者が五割を超えております。これを年齢別に見ますと、比較的若い層では、賃金や労働時間が再就職に当たってのいわば自分から見たミスマッチだというのが多いんですが、中高年以上になりますと、賃金、労働時間を一位に挙げるよりは、年齢制限が厳しいということを一位に挙げる割合の方が高いという事実がありますが、いずれにしても、賃金、労働時間のミスマッチの解消ということは、構造的失業の低減の上では大変重要だと思っております。

 厚生労働省といたしましては、そうした場合の求人賃金そのものについて直接的な影響力を行使するような手段、政策はなかなかとりがたいと思っておりますが、私どもが考えておりますのは、求人条件と求職者の希望条件あるいは意識と申しますか、これの乖離をできるだけ埋める努力が必要であろう、こう思っております。

 具体的に申しますと、求職者に対しまして、労働市場での相場賃金はこういうものであるというようなことを情報提供という形でしっかり提供する。あるいは、求人者に対しても、あなたのところで求人が充足しない理由はこうですという、いわば求人者に対する情報提供といいますか指導等々もやって、その乖離をなるべく縮めていくということを考えております。

 そのために、先ほどから議論になっておりますキャリアカウンセラーだとか就職支援アドバイザーだとか、こういういわば相談機能を強化するということで、そうした労働条件ミスマッチでなかなか就職に結びつかない求職者の方々にマンツーマンのきめ細かな指導等々をやっていきたい、こう思っております。

井上(喜)委員 日本の場合にはパート労働という、これは日本だけとは思いませんけれども、大変特徴的な慣習というんですか、制度だと私は思うんでありまして、これは結局、賃金と関係をしているわけですね。賃金の問題というのは、労使双方の問題であり、なかなかこれは第三者が言いにくい問題ではありますし、また難しい問題でありますので、時として触れたがらないんでありますけれども、この賃金問題については、もう少しやはり取り上げて、お互いの一致点を見出すような、そういう努力が必要ではないか、こんなふうに考えております。

 そこで、失業問題というのが構造的な問題であるとすれば、いろいろな対策があります。それは、受け皿対策がどうだとか、労働ミスマッチがどうだとか、セーフティーネットがどうだというのはありますが、いろいろなことを考えてもなかなかうまくいかないところがあるわけでありまして、そんなようなところから、最近、ワークシェアリングというようなことが言われてきている、これを導入してはどうかと言われているんじゃないかと私は想像するんであります。私も予算委員会で取り上げてみましたけれども、そのときの大臣の御答弁は、しばらく様子を見たいんだというような御答弁でありましたけれども、後の質疑では、もう少し前向きに取り上げていくんだというような御答弁もされているように思うんであります。

 このワークシェアリングの導入ということについて、今どうしようと、これをやはり進めていこうか、難しいけれども進めていこうか、あるいはちょっと模様眺め、様子眺めをしようか、労使が話し合いをするのを見守っていこうかということなのか。どんなようなお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

坂口国務大臣 これは労使の皆さん方のお話も十分に聞かなければいけませんが、どちらかといえば、我々、労使の皆さん方のお話し合いの結果を待つという姿勢で今まで来たわけでございますけれども、もう少し積極的に、ひとつお話し合いの話の輪の中に入らせていただいて、そして一緒にお話をして、そして早くこの問題を実現できるものならば実現をしたいというのが現在の心境でございます。あるいは前にお答えをしたときには少しまだそこまで至っていなかったかもしれませんけれども、最近、そういうふうに少し積極性を出してきているところでございます。

 ワークシェアリングの中もいろいろなタイプがございますから、少なくとも、どのタイプ、どういうタイプのワークシェアリングを、やるとするならばやるのか。例えば、今非常に景気が後退をしているから、臨時的に、一時期の間のためにやるのか。それとも、もう少しこれは継続的に、失業率というのはもう少し中期的に続く可能性がある、だからもう少し中期的な展望の中でこれに取り組むという姿勢でいくのか。その辺のところを見きわめてやっていかなきゃならないんだろうというふうに私は思っておりまして、そうしたところを、お話し合いの中に入らせていただきながら、ぜひその辺のところの結論を出したいと思っているところでございます。

井上(喜)委員 きょうは、日経連の方から矢野さん、それから連合の方から龍井さんにお越しをいただきまして、ワークシェアリングにつきましてちょっと御意見をお聞かせいただきたいということであります。本当にありがとうございます。

 まず、ワークシェアリングの導入につきまして、それぞれのお立場から基本的なお考え、基本的にこれに反対なのか、また、検討に値しないんだとか、いろいろなことがあると思うんでありますけれども、基本的にどうお考えなのか、具体の議論に入る前にそのことをそれぞれお聞きいたしたいと思います。

矢野参考人 日経連の矢野でございます。

 ワークシェアリングは、何とか社会合意の一つとしてつくり上げることができればというふうに前向きに考えております。

 先月の十八日に連合と私どもで社会合意推進宣言というのを発表したわけですが、その中で、考え方として、一つは当面の雇用の問題、もう一つは中長期的な問題というのを取り上げましたし、もう一つ違う角度からいいますと、労使でまず主体的にやろう、しかし、本当の社会合意は政府も入って政労使でないと本物にならないだろう、こういう二つの角度の考え方を持っております。

 短期的な雇用問題の解決という面から見ますと、どうしたら失業をふやさないで済むか、そういう意味でワークシェアリングの考え方を取り入れることはできないかというのが一つの考え方でありますが、中長期的にワークシェアリングというのを考えますと、もっとそれより大きな問題だというふうに思うんですね。

 私どもの考え方は、働く人の意識も変わってきているし、企業のニーズもあって、これまでのような長期雇用といいますか、その一つの典型的な姿が終身雇用と言われているものですけれども、そういうものだけではなくて、もっと専門性、専門知識を持った人たちの短期雇用というのもあってもいいだろうし、パートを含めた雇用柔軟型の雇用の形があっていいだろう。そういうふうにいろいろな働き方、就労形態というものがあって、そういうものの中から新しい形が生み出せないだろうかということを考えておるわけでございます。

 まだ連合さんとも話し合いが始まったばかりでございまして、これから何とか来年の春ぐらいまでに中間取りまとめでもいいからやりたいという非常に前向きに踏み出した姿勢で協議が始まったところでございますので、まだ具体的にどうこうということではございませんが、一応、基本的な考え方としては以上でございます。

龍井参考人 連合の龍井でございます。

 今御指摘のあった点でございますけれども、矢野さんの方から社会合意については御説明いただきましたので、重複部分は避けさせていただきますが、ワークシェアリングというふうに最近マスコミでも随分取り上げられるようになったんですけれども、何がという定義といいますかイメージは、それぞれ多分連合の中でもまだ詰め切っていない部分がございます。

 と申しますのは、結局、個別企業の段階でのさまざまな雇用維持の取り組み、これは例えば時間外労働の削減であったり、場合によっては一時休業でしのいだりということは、もう既に現状でも行われているわけですね。それで、厚生労働省の統計でも、それは雇用調整という項目でカウントをされております。問題は、そういう個別の取り組みだけではどうも今の事態は乗り切っていけないんじゃないか、そういう一種の危機感、これが、連合、日経連の社会合意に至ったものも、そういう現状の延長ではいけないんだという危機感の共有から今の事態になっていると思います。

 そういう意味では、今矢野さんから御指摘いただきましたように、当面の雇用のアンバランス、つまりこれは、私ども連合の立場では量と質、両方の面を考えているわけでございますけれども、片方で非常に高い失業率が生まれ、多くの失業者がいる一方で、じゃ、働いている人たちの働きぶりはどうかといえば、それは時間外が、最近、景気の動向で若干低下ぎみではありますけれども、依然として長時間労働というのは片方で続いている。いわゆる正規労働者というのが実数で減る一方で、私どもから見ればやはり不安定、あるいは正規労働者と比べれば低い労働条件に置かれているパートタイマーの方がふえている。これは私どもはワークシェアリングとは言わないわけで、やはり量、質、両方の面からきちんと安定的な雇用の機会をお互いにつくっていこう。

 当然、これは、シェアというのは仕事の分かち合いでございますから、本来ならば、私ども働く側あるいは労働組合が、職についている人とついていない人のシェアというのがまず出発点で、私どもから本来は提起をすべきことだと思うんですね。つまり、何か企業の交渉で使用者から言われて嫌々応じるというような性格のものではない。そのためには、雇っていただくということは、当然、雇用の方の、経営者の側が当事者になります。そこについて、じゃ、どういうふうに、そこでコスト負担について、労使だけではなくて社会的にその枠組みがつくっていけないかということで、労労からさらに日経連、連合レベルでは労使というところへ来ましたけれども、そこはやはり、我々の立場からも、社会的、あるいは政府もかんだ施策としてのバックアップをお願いしていく、そういう段取りがやはりどうしても必要だろう。

 中期と短期のことにつきましては、矢野さんと私どもは全く同じ認識でございますので、そういう当面の景気が一時的に回復したとしても、恐らく、将来の働き方を見据えた場合には、ワークシェアリング問題というのは考えていかなくちゃいけないだろうという認識で、少し息の長い取り組みと、直近、すぐ成果につなげなくちゃいけない取り組みと両面から積極的に私どもも考えていきたいと思っております。

井上(喜)委員 これから検討するんだということで、まだ明確に態度をどうだということを言える段階じゃないということのようでありますけれども。

 ですから、まず日経連にお伺いをしたいんですけれども、その場合に、その場合ということは、ワークシェアリングを導入する場合に、一番問題になるのはやはりコストの問題ですか。コストといいますか、賃金と言いかえてもいいと思うんです、そういうことですか。何が一番問題になるのか。あるいは、連合の方から見ましても、何が一番問題なのか、あるいは何が譲れない点なのか、その辺のところをちょっとお聞かせいただきたいんです。

矢野参考人 御承知のとおり、日本の企業は今国際競争の激しい波の中で生き残り戦略をとっているわけでございまして、そういう意味で、国際競争力をしっかりつくってやっていくということが長い目で見ても雇用のためにもいいということになります。国際競争力をつけるためにはいろいろな要素がございまして、技術とかあるいはロジスティックスとかいろいろなことがございますけれども、その中の一つにコストという問題が、これは絶対欠かせない要素としてございます。

 コストの問題については、先ほど申し上げました社会合意推進宣言の中でも、連合もこれについては十分認識して協力する、この春の賃上げは弾力的にやるんだということをこれは言明しているわけでありまして、そういう意味での認識は完全に一致しているというふうに思います。

 私は、多様な働き方が生まれてきているというこの現実の足場は何かというと、企業にとって、やはり競争力をつけて経営の体質を強くするような、そういういろいろな雇用形態に対する強い必要性がある。一方で、コストという問題ではなくて、働く側の人たちの意識が変わって、いろいろな働き方を求めていると思うんですね。今までのような終身雇用的な長期雇用、終身雇用というのはだんだんなくなっていくと思うんですけれども、長期雇用というものは核として残るにしても、もっと違う形でいろいろな働き方を求めているというその両方の必要性といいますか、ものが合致して初めて今こういう議論が起こっているんだというふうに思うんですね。

 足元で何といいましてもこれだけの大変な失業率の増大というのがありますので、何とか失業をふやさないようにしよう、合意推進宣言の中でも経営者側は失業をふやさないように全力投球するということをこれは宣言したわけですね。そういうことを考えますと、いろいろな要素が入っておりまして、御質問のコストも重要な要素でありますが、働く側、あるいは企業の持っている、本当に今のこの足場での、あるいは中長期的な意味での必要性といいますか、そういったものが実は基盤にある、このように考えております。

龍井参考人 お答え申し上げます。

 やはり、先ほどちょっと触れましたように、今起きている多様化というもののプラス面とマイナス面というのを私どもは重視をしておりまして、その働き方の選択肢というのが、ともすれば、統計上、アンケート結果で見れば、やはりコスト優先という方が今の段階では優先しているのかな。一時期は、それは働く側のニーズあるいは職務の需要に応じたニーズということがかなりウエートが高かったんですが、なかなか余裕がなくなってきてしまっている。そこが私どもが、我々働く側にとっての選択肢の拡大というふうになるためには、やはりこれは片方でルールの明確化というものがなくてはいけないだろうというふうに思っています。

 ですから、ルールを明確にした上でのコスト問題ということであれば、私どもは十分に論議に乗っていこうというふうに思っています。ただ、現状では、同じ仕事をしていて働き方の違いで歴然たる格差があるという現状がございますので、やはりそれとあわせてやっていくことが出発点だろう。

 それからもう一つは、これは時間管理の問題でございますけれども、やはり労働時間短縮から出発をするというふうに合意をしたいと思うんですけれども、現状は、いかんせん、いわゆるサービス残業も含めて、多分フランスのように所定時間を下げただけではなかなか実労働時間が下がっていかないという実情がございますので、そこは私ども労働組合側も含めて、ある種の覚悟、割り切りをきちんとしていかないと有効な施策に結びつかないだろうと思っています。

 いずれにしろ、これは日本の働き方、あるいは日本の雇用慣行、あるいは日本の賃金制度に即した見直しをしていかないといけませんので、どこかの国の先進例をただ直輸入すればいいわけではない、そういう大変な問題だと思っています。

 ですから、社会合意は、さらに皆さん方の御議論を大いにしていただいて、国民的合意というような、広げる中でお互いに解決をしていくべき問題だというふうに考えております。

井上(喜)委員 どうもありがとうございました。終わります。

鈴木委員長 鍵田節哉君。

鍵田委員 民主党・無所属クラブの鍵田でございます。

 本日は、矢野参考人さらには龍井参考人も大変貴重な時間を割いていただきまして、ありがとうございます。参考人のお時間の都合もございますので、若干質問の順序を変えさせていただくことにしましたので、御了承をいただきたいというふうに思っております。

 実は、先日来、今のお話にもございましたけれども、政労使の会談が行われまして、その中で、日経連と連合で雇用に関する社会合意の推進宣言というものが出されておるそのことに関して、政労使雇用対策会議においてもこれを評価し、政府もこれを側面から応援していくというふうな申し合わせをされたように仄聞をしておるところでございますが、そういう課題につきまして、若干前半で質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 私は、やはり今の日本の置かれております状況というのは、もう国難といいますか、国全体が病んでおって、本当に各界の皆さんが協力をしながらこれを乗り切っていかなくてはならない、こういう状況にあるというふうに思っております。まして、雇用問題というのは、働くことによって人間は生活をしておるわけでありますから、その働く場がないということは、これは決定的なダメージを受けるわけでございますから、そういう面では、労使と、さらには政治の分野も一緒になってこの雇用問題の解決に当たらなくてはならないわけでございます。

 実は、小渕内閣や森内閣のときには、政労会見などにつきましても、会議はすべて政府の方で拒否をされるというふうなことが続いておったわけでございまして、これは大変異常なことではないかなというふうに私どもは思っておったわけでございますが、小泉政権が誕生しましてからは、総理も積極的に連合の大会に出席をしたりメーデーに参加をされたり、また、坂口労働大臣のもとで政労使の雇用問題に対しての会議を持たれたりということで、そういう合意形成づくりに大変努力をしていただいておるということに関しましては高く評価をしておるところでございます。

 そこで、この社会合意というのは非常に重要なことでありますし、この合意そのものに私は評価をしておりますけれども、現実の今までの労使関係を見てまいりますと、特に日経連と連合といいますか労働団体というのは、常に対立をする状況にあったんじゃないか。日経連は財界の労務部だと言われたりしまして、総評、同盟時代から、連合とは常に対立をするというような状況がありましたけれども、今回、この雇用問題で社会合意をし、さらにそれを推進していくという宣言をされた、こういうことでございますが、今までのそういう労使間での対立というものもありましたけれども、しかし、そのほかで、それぞれの持っておる、日経連の持っておる性格、それから労働団体が持っておる性格、この両面からして、いろいろな例えば話し合いをされて合意されても、なかなか実効が上がってこなかったというふうなことはあるのではなかろうかと思うわけです。

 例えば、ワークシェアリングにかかわります問題としましては、やはり時間短縮というのも一つはあるでしょうし、また、それにかかわっての割り増し賃金の引き上げというふうなことにつきましても、常に問題になりながら、なかなかそれが解決をしない。いつまでも基準法の最低の水準に張りついておるというふうな状況がずっと長年続いてきたわけでございます。

 また、有給休暇の消化率にしましても、大体まだ五〇%前後でいっておるわけでございまして、これも一〇〇%休暇が消化をされるとかなりワークシェアリングになるんじゃないか。これを一〇〇%に消化されたとしたら、日経連としてはけしからぬと言えるのかどうかというと、そういう問題ではないはずでございまして、これは使わない方も悪いんじゃないか、こう言われることになるのかもわかりませんが、いろいろな企業内での労使の事情もあったりしましてそういう状況にあるわけでございます。

 そういうことを考えますと、今の社会合意、さらにそれに基づく推進宣言というものをされましても、それが実際に実効を上げるのにどうすればいいのかということで、先ほど井上議員の御質問にも若干触れられましたが、それらにつきまして、公労使三者の方からのひとつ御意見をちょうだいしたいなというふうに思っておるわけでございます。

 オランダのワッセナー合意のことにつきましては、よく引き合いに出されますのでよく御存じだというふうに思っておるわけでございますけれども、先ほど大臣のお言葉の中に、こういう課題につきましては労使の自主的な取り組みによってなされることが望ましいというお言葉がございました。私も、こういう課題というのはできるだけ労使の自治といいますかそういうものが大切で、それが基本であって、政治なりまたは他の団体からこれに対して横やりを入れるというふうなことについてはいかがなものかという考え方を持っております。できるだけなら労使の自治というものを大切にする、そういう考え方を基本にしながらも、今日のこの国難とも言うべき雇用の状況のときにはそうも言っておられないのじゃないか。

 オランダでワッセナー合意が取り入れられたのは、一九八二年でしたか、オイルショックのときでございます。したがって、オイルショックによる大変なインフレの中で、所得政策も各国で言われておった時期でありますから、賃金の高騰を抑制しなければ国際競争力にも負けていく、さらには社会保険料やそういうものに対する負担も非常にふえてくる、失業率は一〇%を超えておる、こういう中で、何とか公労使が協力し、国民もこれに協力する形で合意をしようというのがワッセナー合意であったのではないか。

 今の日本の置かれておる社会環境、背景は違います。どちらかというとデフレに近い状況でありますけれども、少子高齢化社会というのはもちろん現在置かれておる環境の中では大きな要因でもございますし、さらには失業率も五・三%と過去最高になってきておる。これも、見ようによっては、パートタイマーなどが今千三百七十七万人とも報道されておりまして、二七・七%にも達しておるわけでございます。

 日本のパートタイマーというのは、低賃金、低労働条件ということが一般的になっておるわけであります。こういうことが日本の労働者にとって必ずしもいい環境ではないのではないかというふうに私は思うわけでございますけれども、ワークシェアリングの一つの手法として、オランダでとられておるような短時間勤務というような手法も必要でありますが、しかし、それが低賃金、低労働条件ということにならないような、そういう仕組みも考えなくてはならないということを考えた場合に、やはり政府が積極的にこれらに関与をし、労使の自主的な合意形成にいかに協力をし、それを進めていくのか、こういうことで、政府としての責任といいますか、そういうものが出てくるのではなかろうかというふうに今思っておるわけでございまして、まず、坂口大臣の方から、それらのお考えについてお答えをいただきたいと思います。

坂口国務大臣 先ほど、矢野さんとそれから龍井さんの方からお話をしていただきまして、それを私お伺いいたしておりまして、お二人のお話とも、やはり短期的な問題ではなくて、もう少し中あるいは長期的な、そういう立場でこの問題は取り組んでいかなければならないという御趣旨であるのではないかというふうに拝聴させていただいたわけでございますが、私も、そういう立場でこれは取り組んでいかなければならない課題だというふうに思っております。

 そういうことになってまいりますと、長期的な問題として取り組むということになってまいりますと、今までやられた手本を見ますと、一つはフランスにおいて行われましたもの、それから先ほど御紹介をいただきましたオランダでやられたもの等があるわけでございますので、そうしたものも大変参考になるのではないかというふうに思いますが、先ほど龍井さんの方が御指摘になりましたように、やはりよその物まねではいけないので、日本は日本としてのものをつくり上げていかなければならないというお話がございましたが、私もそこはそのとおりというふうに思っておりまして、やはり日本型のものをつくり上げていかなければならないだろうというふうに思っております。

 財務大臣も、塩川大臣も大変御熱心でございまして、先般も、個人的見解というふうに断りながらも、ひとつ積極的に支援したいということを言っていただいたものでございますから、二人になりましたときにも、坂口さん、これは積極的にやろうや、出すべきものは出そうや、こういうお話でございますので、あなたがそう言っていただくんだったら、私は両手を挙げて、両手で受けて待っています、両手じゃなしに両手両足で受けて待つということを申し上げたわけでございます。これは個人的な見解というふうに断ってのお話でございましたから、大臣はそう言っていただきましても、またお役人の方から反対のことが出ることも間々ございますので、まだ安心はいたしておりませんけれども、そんなことも非常に期待しながら、私としては、その双方でお取り組みをいただくことに参加をさせていただいて、そして我々の役割は何かということも明確にしていかなければならないと思っているところでございます。

鍵田委員 現在の大臣の御答弁がございましたけれども、これらにつきまして、それぞれの参考人からも御意見がございましたらお願いいたします。

矢野参考人 日本的なというと何か非常に制限的な響きがありますけれども、そうじゃなくて、よく現場に乗っかった、そういう日本的な柔軟な制度というのを考えることがやはり現実的ではないかというふうに思っております。

 それから、ヨーロッパの方のワッセナー合意などについてのお話がございましたけれども、フランスの時短にいたしましても、あるいはドイツでもいろいろやっていますし、個別企業でもいろいろな例があるんですが、どれも百点満点という制度はないんですが、比較的うまくいっているやり方を見ておりますと、ワークシェアリングで時間を短縮しますとその分賃金も減らす、つまりワークシェアリングはウエージシェアリングである、こういう考え方をとっているところがうまくいっているというふうに思うんですね。

 そうでないと、これは、時短というのはすなわち直ちにコストの増でございまして、賃上げというのがとかく表に出ますけれども、賃上げがゼロでも時短だけすればその分だけ経営コストは高くなるわけでございまして、やはりそういう点についての配慮というのがないとなかなか現実的な答えが生まれてこないのじゃないかというふうに思っております。

 それから、進める上で留意しなくちゃならないことがもう一つあります。これは先生が御指摘になった、総論では一致するけれども各論でうまく実行できるかどうかということとの関連があるんですけれども、やはり各企業の労使、あるいは各産業の労使と言ってもいいと思いますが、その事情が随分違うわけですね。ですから、そういうものを尊重して、それぞれの産業、それぞれの企業に適したいろいろなスタイルがあってもいいのじゃないかということでございます。

 ですから、これからどういう話し合いを連合さんとやっていくかということはこれからでございますけれども、いろいろなパターンがあるということを示す方法もあるだろうし、あるいは何かちょっと別の取り組み方もあると思うんですが、結局は、個別の労使がそういう問題に深い関心を持ってやっていく、そうすることによって国際競争力もつくし、雇用も維持できるし、そしてその結果経済も社会も安定していくということになれば本当にこれ以上のことはないのですが、果たしてそういう道をつくり出せるのかということが今後の課題だと思いますけれども、個別の労使が本当にその気になってもらえるようにやっていく必要があるだろうというふうに考えております。

龍井参考人 御指摘の点はごもっともだと思います。

 それで、私どもも、先ほど申し上げましたように、個別労使の取り組みとして今まで御苦労されたり、あるいは既に取り組まれていることだけでは多分乗り切っていけないだろうということを冒頭に申し上げましたけれども、やはり今回、私どもと日経連さんと推進宣言の中で社会合意という一つのキーワードを使ったということと、それから、これは今までのこの種のものでは異例なわけですけれども、個別の企業労使に対してもアナウンスあるいは周知をしていこうということもあわせてその中で盛り込んでおります。一回の宣言でどうこうなるというわけではありませんけれども、そういうスタンスにまず立とうという確認をしたということです。

 つまり、どういうことかと申し上げますと、今矢野さんも御指摘のように、実情が違うだけではなくて、やはり地域は地域、産業は産業ごとの特性と、それから当然危機感の違いもございます。

 先週、笹森会長と一緒に北海道を回ってきたのですけれども、そこでもやはり実は、道知事を含めて、北海道型といいますか、例えばワークシェアリングの研究会だけではなくて施策の検討も進められていたということでいいますと、連合、日経連、中央の本部だけでは環境づくりの一つの要素であって、個別の企業にそこからストレートに行く前に、地域なり産業あるいは業種、そこの労使あるいはそこの行政、関連する自治体も含めてとことん話し合っていく、やはりこれはそこの合意のプロセスがとても大事だと思っております。ですから、そこはかなり、時間をかけてはいけない緊急性があるんですけれども、プロセスはきちんと、積み上げは大事にしていきたい、私どももそう考えております。

 それからもう一つは、いわゆるコスト負担にかかわってくる問題なんですけれども、これが、仮にそうした時間比例のある種原則の上で、つまり時間当たり賃金というのが、いわゆる典型、非典型というのが、あるいは今職についている人とこれから雇う人も一律であるというルールが前提であった場合に、当然そこで新たに雇う場合に、働く側もある種痛みが出てまいりますし、それから、経営する側、雇う側も、これは賃金だけではなくて、一人雇うことに伴う社会保障負担分等々含めた関連の費用が出てまいります。そのときに、これを労労あるいは労使だけの分かち合いなのか、あるいはそこに何がしかの、先ほど坂口さんからは心強い御提案もございましたけれども、やはりそういうところでコストをカバーし合っていくという面もあるだろう。

 つまり、私どもも、ここは矢野さんと同じ考え方で、余り一律にすべて課していくというパターンよりは、その場合の日本的、あるいは日本的柔軟性というふうにも御指摘ございましたけれども、前向きのところについて何がしかのバックアップをしていく、バックアップすることについて合意形成をしていく、そういう道筋もあるのではないか。これはこれからの議論になりますので、余り先走りはいたしませんけれども、そういうことも含めて議論してまいりたいというふうに思っております。

鍵田委員 ありがとうございます。

 確かに、私は、産業別にも、また個々の企業別にもいろいろな格差もございますし、事実上持っておられますから、それを無視して何か全国一律に物事を進めていくとしても、それはかなり無理があると思うんです。

 むしろ私は、企業の中の労使関係というものは、できるだけ雇用は守ろうという働きは従来からしてきているわけですね。自分のところから失業者をできるだけ出したくない、そういう合意のもとにいろいろな交渉なりそういうものはなされてきておる。そういう信頼関係というのは非常に大事であったのですが、最近はそういうことを言っておられないと、恥も外聞もなくということでリストラをやられる。本来のリストラの言葉の意味とはかなり違って、本当に首切りという形でのリストラが横行しておるというふうな実情を考えるときに、やはりかなり思い切った雇用政策をとらないといけないのじゃないかというふうに思うわけです。

 それも、もちろん今言いました産業別とか業種別、さらには企業別にそれぞれの事情はあろうかと思いますけれども、私はむしろ、このワークシェアリングにつきましては、勝ち組の企業こそ積極的に協力しないと実効が上がらないのじゃないか。本当に企業が弱って、もうがたがたになっておる、そんなところが、いやワークシェアリングだからといっていろいろなことをやろうとすると、これは負担は上がる、それこそ経営者側からいろいろな懸念が出ております。生産性にも影響してくるとか、別のコストがかかるとかというふうなことが出てきて、なかなか取り組みにくい。もうそれどころじゃない、本当に事業を減らさざるを得ないというようなことになってくる可能性が大でありまして。

 むしろ、企業なり産業で比較的うまくいっているところもこの中にはあるわけですから、そういうところこそがワークシェアリングに積極的に協力をするということが大切だ。そういう意味では、産業界とかまた国を挙げてこのワークシェアリングに取り組まなくてはならないというふうに思うわけです。そういうことを考えますと、最低限このぐらいのことは全体で取り組もうではないかというような合意形成が必要なのじゃないか。そのためには、やはり中央の労使が話し合う、それに対して国もいろいろな援助をするということが必要なのではなかろうか。

 そういうことで、決して、オランダやフランスやドイツや、そういうところの物まねをしろということではございません。日本は日本なりのやり方があるわけですから、そういう合意形成をしていくということにつきまして、一言ずつ、ちょっとお三人からお答えをいただきたいと思います。大臣の方からひとつよろしくお願いします。

坂口国務大臣 いろいろな御意見をいただきましたが、私も先ほど申しましたように、労使のお考えを中心にしながら、そして政府としての役割も果たしていかなければならないという姿勢でこれからやらせていただきたいというふうに思いますし、そして、その内容につきましては、日本にやはり最もマッチしたものをどうつくり上げていくかということになるだろうというふうに思います。

 漠然と話ばかりをしておりましては、その中で一体政府の方は何を担当するのか、何をしたらいいのかということもなかなか浮かび上がってこないものでございますから、もう少しやはり具体的に話を俎上にのせさせていただいて、具体的なお話をさせていただくということがまず先決かなというふうに思っているわけでございます。

 そうした意味では、担当者間のお話し合い、あるいは政労使のお話し合いというものを今までよりも少し回数をふやして、そしてそうした中で議論をしていく以外にないのではないかというふうに思っている次第でございます。

矢野参考人 こうした取り組みが成功するかしないかというためには、いろいろな条件が私はあると思うんですが、その一つは、やはり労働市場の流動性だと思うんですね。

 今まで、先生が御指摘のとおり、各企業が必死になって雇用を維持してきました。それはそれでこれからも続けなくちゃいけない努力だと思いますけれども、どうしてもやはり、栄えていく産業、そうでないところがあって、構造変革というのは避けられないことでございますので、それがうまくいくためには本当に労働市場の流動性が高まっていく、そのためには一体条件は何だろうか。私どもは、そういう面での施策の面で政府のいろいろな政策が行われていくことを期待したいというふうに思っております。

 それから今度は、その環境が生まれたとしましても、本当にではみんな自由に、自由にという言葉は適当じゃないかもしれませんが、外部労働市場に会社をやめて新しい仕事を求めていくといったときの条件整備を考えますと、やはり各個人のエンプロイアビリティーとかそういったものも高めていかなくちゃいけないと思いますし、各企業単位でのいろいろな努力、例えば年功制ということが今までどうしても、職務給とかいろいろな制度があっても年功要素というのが非常に強かったのでございますね。そうしますとそれがなかなか、ある職種について、職務について、社会の相場といいますか職種単位の相場というのが日本ではできていないと私は思うんです。

 そういうものができていくためにはどうしたらいいかということになると、その年功要素をだんだん減らして、実力主義とか成果主義、そういった人事労務制度をつくっていって、そして、少し時間がかかりますけれども、そこに一つの社会横断性のある労働条件の水準というのが生まれてくるというようなことも大事なことではないかと思うんです。

 そういう意味では、各企業も個人もやることがいっぱいありますし、私どもも、日経連は全国の経営者の団体として、連合は労働組合の団体として、一応今度の推進宣言を合意しましたけれども、それだけで何ができたというふうには思っていないんですね。やはり、各産業、各企業の労使がその気になる、政府も一緒になる、みんなで本当にこれは大事なんだということになったときに、初めて社会合意というのが歩き出すと私は思うんですね。そういう意味では、いろいろなそれぞれの当事者の努力が必要だというふうに思っております。

龍井参考人 今、連合の中でもようやく議論をスタートしたところなんですけれども、そのときの課題整理というペーパーが今手元にあるんですが、基本的に整理すべき、解決すべき課題を列挙しただけでもう十数項目にわたります。ですから、賃金のシステム、時間当たりの賃金という考え方であるとか、あるいは社会保障制度とか、ここではるる申し上げませんけれども、恐らくこれは、こういう枠組みづくりというのは、何度も申し上げておりますように、企業別の労使の努力だけではいかんともしがたいものばかりでございます。

 そういう意味では、私どもはやはり、ワークシェアリングというのは、先ほど申し上げましたように、量的に、何とかアンバランスを解決していかなくちゃいけないという面と、質的に、働き方それからルールの面で解決すべき課題と、やはり両方の課題をバランスよく並行して進めていく必要があるだろう。

 特に質的な方で申し上げますと、キーワードを一言で申し上げさせていただくと、短時間正社員というような働き方が日本で当たり前になるかどうか。これは、ちょうど六十歳以降の働き方の問題の中でも、今そうしたことが企業の労使の中でもまさに現場の問題として話し合われているわけですけれども、やはりそういうものが全体のワークルールづくりへとつながるように、そうした働き方が当たり前になるというところを一つのキーワードに、私どもは中の議論も急ぎたいと思っています。

 それから、せっかく、こういう危機的な状況の中だからこそ逆にそういう中長期の課題についても舞台が設定されたと思っていますので、これは、まさに一喜一憂で何か状況の変化で対応するというよりは、腰を据えて、私どもの中だけではなくて、労使そして政労使という枠組みの中で、今、坂口大臣からもかなり前向きの場づくりの御提言もいただきましたので、積極的に議論してまいりたいと思っております。

 よろしくお願い申し上げます。

鍵田委員 矢野参考人が御都合で出られましたけれども、ぜひとも政労使のこういう会議を積極的に行っていただいて、さらに、トップ同士だけじゃなしに本当に専門家が集まって議論をする、そして、それで合意ができたものは即実行していくというふうなことをやる非常にいいチャンスじゃないかなというふうに思っておりますので、関係者の皆さんの一層の御努力を期待申し上げたいと思っております。

 本来なら、もっといろいろ議論をしたいところでございますけれども、話題を変えたいというふうに思います。

 一番最初に戻りまして、実は非常に労働大臣にはお答えにくい質問になろうかというふうに思いますが、現状のこの厚生労働省のあり方、それから、委員会もそうでありますけれども、大臣の姿を私も常々拝見しておりまして、本当に坂口大臣だからうまく回っていっているのかな、しかし、本当に大変御苦労だなというふうに思いながら見させていただいておるわけでございまして、たしか大臣は失礼ながら私より三つぐらいお兄さんではないかなというふうに思いますが、まだまだ政治家としてはお若いわけでございまして、精力的にやっていただいているんですが、しかし、本当に御苦労が多いんじゃないか。

 特に、厚生労働省ということで二つの省庁が合併したわけでございまして、ことしになりましてからでも次々と新しい課題が出てまいりまして、私なんか労働委員会に所属をしたりそのほかの委員会にも所属をしていたこともあるんですが、これだけ大きないろいろな課題が次から次に起こって、それに一つ一つ本当に丁寧に対処をされている大臣のお姿を見ていまして、これは大変だというふうに私自身も感じておるわけでございます。

 実際に、他の国のこういう省庁のあり方を見ておりまして、もともと私は厚生省と労働省が一つになるということには非常に危惧を持っておりまして、どちらも大きな課題を抱えた省庁でございますから、それが一つになるということは、その担当の人はそれぞれ別に同じことをやっているから関係ないのかもしれませんが、その省庁をまとめていかれる方々というのは両方の課題を消化しなくてはならないということで、これは大変じゃないかなというふうに思っておるわけでございます。

 ちなみに、調べておりますと、G8の参加国でも、アメリカは労働長官でございますし、カナダも労働大臣でございます、それからイタリアも労働大臣、ドイツは労働・社会大臣、それからフランスは雇用・連帯大臣、イギリスは、職業教育が入っているからというふうにもちょっとお聞きしたんですが、教育と雇用大臣、それからロシアは労働・社会発展大臣、オーストラリアは雇用・労使関係・中小企業大臣というふうなことになっておるんですが、おおむね労働にかかわる関連する仕事を所管する大臣であるということからいたしますと、ちょっと日本の厚生労働省というのは余りにも巨大過ぎて、実際にこれが消化していけるのかどうか。

 こういう意味で、昨年から大臣はお二つ兼務でされてきたわけでありますし、この一月の一日からは一つになったわけでございますけれども、そういうことに対しましてどのような御感想を持っておられるのか。最初に申しましたように、非常にお話はしにくいんじゃないかというふうに思いますが、実際の仕事の中身、今まで消化をされてきたその御感想なり、また今後の見通しについてお答えいただければというふうに思います。

坂口国務大臣 雨男というのがございまして、その人が参加をすると、どこかへ行くと必ず雨が降るということがございますけれども、どうも私がここへ、この厚生労働大臣をさせてもらったためにいろいろなことが起こってくるのではないかと最近錯覚に陥っているところでございますが、何となく次から次へといろいろなことが起こってくるものですから、心配をしながら毎日を送っているわけでございます。

 それで、昨年の十二月に厚生大臣と労働大臣の二枚看板をちょうだいしまして、ことしの一月六日から厚生労働大臣ということにさせていただいたわけでございます。率直に申しまして、前回労働大臣をやらせていただきましたときのことを思いますと、仕事量は三倍ぐらいにふえているのではないかという気がいたします。したがいまして、一人の人間の能力は限られておりますし、具体的にさまざまな問題に目を通して、そして誤りなきを期していくという意味では、これだけ大きいものになりますと、なかなかそこまで目が届きにくいということは正直なところあるというふうに思います。

 これは厚生労働省だけではなくて、ほかの省でも同じだというふうに思いますから、ここは、一つの組織でございますから、省の幹部の皆さん方にそれぞれ分担をしていただいて、それぞれに目を配っていただいてやっていく以外にないというふうに割り切ってはおりますけれども、やはりある程度はこれは責任がございますし、過去のことでありましても、大臣というのはなかなか、責任をとらなければならない立場でございますから、いつもさまざまな問題に緊張していなければならない。この緊張感というのは、いい意味でもありますけれども、しかし、なかなか能力に限界があるなと思うことも正直申しましてあるわけでございます。

 しかし、たまたま省庁再編をやっていただいたわけでございますし、こういう体制を組んでいただいたわけでございますから、この体制の中でやはりなれて、そして、この体制でやっていくという、体制をつくり上げていくのも一つの仕事ではないかと思っている次第でございます。

鍵田委員 大臣の御苦労をいつも横から見させていただいておりますから、ついつい私もこういうことを申し上げたのですが。省庁再編とか行政改革に対して私はさお差すつもりはございませんけれども、個別にしっかり取り組まなくてはならない課題というのは、それはそれなりにできる体制というものをつくったり、それから、本当に縦割り行政で弊害になっておる、これを一つにした方が効率が上がるというふうなものについてはそういう形にするのもいいけれども、分担をした方がいいのではないかということにつきましては、やはり、一定の期間こういう形をやった後見直しをするということも必要なのではないかなというふうに思います。

 決して私は、大臣のやっておられることにけちをつけたりというふうな考え方は毛頭ございませんので、誤解をいただきませんようによろしくお願いをいたしたいと思います。

 そこで、余りそんな話をしておりますと長くなりますので、若干、具体的なことで、緊急地域雇用特別交付金の問題で、実は先ほどからも議論がいろいろ出ておるわけでございます。予算委員会の中でもいろいろな質問がございました。ばらまきではないかとか、また、本当に失業者のところに行っておらないのではないかとかというふうなことがいろいろありましたけれども、それらにつきまして若干、具体的にお聞きをしていきたいというふうに思います。

 まず最初に、従来の特別交付金というのは三年間で二千億という予算で実行されてきたわけでございますが、その三年、もう間もなく経過をするわけでございますが、実際は、より状況は悪化をしてきておるというような環境の中で、今回は三千五百億、金額もふやされて三年間ということでやられるわけでございますが、この三年間で一体景気がどのようになるということをお考えになってこの予算を組まれておるのか。また、前回の二千億の金額で行われた特別交付金についての評価がどのようになされておるのか。こういうことにつきまして、まずお答えをいただきたいと思います。

澤田政府参考人 今回、三千五百億円で新しい地域特別雇用交付金事業がスタートするわけでございますが、これは平成十六年度末までのいわば臨時緊急の措置ということにしております。これは、構造改革の集中調整期間ということで三年間ということを考えておりますので、この交付金事業三千五百億を各都道府県、市町村が効果的にお使いいただくということによって、構造改革の進展と相まってかなりの効果を上げ、所期の目的を達するものと考えております。

 現行の二千億の交付金につきましては、今年度末まで若干、四、五カ月ございますが、当初目標といたしました三十万人の雇用機会の創出という目標は達成できるものと考えております。

鍵田委員 金額はふやされたわけでございますが、しかし、さらに地域の雇用の状況というのは悪化をしておるわけでございます。これはあくまでも緊急の対策であって、公的な雇用などで、言ってみれば一時しのぎの対策ではないのかなというふうに思うわけでございまして、それが実際の雇用の拡大、こういうものに使われておらないということになりますと、それこそばらまきと言われてもやむを得ないわけでございまして、これらに対してのチェック機能はどうなっておるのかということについてお聞きをしたいのですが、その前にちょっと、龍井参考人に来ていただいていますので。

 連合の方で、例えばハローワークなどで実際に出口の調査をされたとか、また電話で雇用問題についての相談窓口をつくられたりしておるわけでございますが、緊急雇用の特別交付金とそれからもう一つ、能力開発の方でいろいろな施策をされておるわけでありますが、それがどうもハローワークでの職業紹介と能力開発の関係がうまくマッチしていないというふうなこともいろいろ言われておるのですけれども、その辺の実態についてまず若干御報告をいただければありがたいと思います。

龍井参考人 今御指摘ありましたように、連合が十月を雇用対策月間ということに設定をいたしまして、全国で失業雇用の相談ダイヤルと、それから、職安の窓口に行きまして直接面接の調査をさせていただきました。

 その中で、特に職安で面接をされた方々に当面の施策のニーズというものをお聞きしたわけですけれども、雇用保険の期間の延長、それから今の募集、採用時の年齢制限、年齢の壁の厚さというものがとても多く御指摘されました。それとあわせて、やはり地域における公的な雇用の創出という声も非常に多うございました。

 今、当然ハローワークに通われ、職業訓練を受けている方もいらっしゃるわけですけれども、実際にそれがどういう雇用に結びつくかということがはっきりないまま、見通しが持てないままの訓練ということは、単なる延長だけでは職に結びつかない。やはりそこも、皆さん方のアンケートの中でも、再就職に結びつくような訓練の中身の御指摘もございました。

 そういう非常に幅広いニーズだったわけですけれども、その全体、アンケートに携わっている人たちの地方連合会の方々も、実はこの緊急雇用特別交付金に対する関心はとても強いわけですね。その中で、期待が多い分だけ、今御指摘されましたように、やはり市町村の立場からすれば、ひもつきではないか、あるいはばらまきではないかという御指摘も片方でとても強いわけです。これができて、うん、地域の雇用が少し改善したな、あるいは少し安心感が増したなという声は残念ながらまだないわけですね。ただ、依然として期待は大きい。特に、北海道を初め雇用情勢が大変なところこそニーズが強いわけです。

 先ほどチェックという御指摘がございましたけれども、私どもはやはり、大事な税金ですし、きちんとそれが雇用の創出という目的にかなったかどうかということはもとよりなんですが、今申し上げたことを踏まえますと、どういう計画、委託をするにしても、どういうところに使っていくのか、配分していくのか、その段階から、やはり地域のニーズ、そして地域の労使、特にNPOなんかも含めて、幅広く意見を聞く場の中で事業が具体化されていくことが望ましいのではないかと思っております。

 したがいまして、私どもがもし可能であればと思っておりますのは、中小労働力確保法のときに三者構成機関が設置をされまして、今でもそれは形は継続をしているわけでございますけれども、やはりこの事業を進めるに当たってそうした三者構成機関のような場を、既存のものを活用してでも結構ですから、事業の計画段階、そして計画の報告をそこでまた受ける、あるいは場合によったらそうした交付を途中で取り消すというようなことも含めて、その権限はもちろん県にあるわけでございますけれども、そうした情報の共有なりする場を設けていただいて、これが実効にまさに結びつくような手だて、仕組みをつくっていただければありがたいというふうに思っております。

鍵田委員 今の質問で、引き続いて澤田局長の方からお答えいただきたいわけでございますが、今の龍井参考人の御答弁にもありましたように、非常に失業率の高い地域ではこの交付金に対する期待度は強いわけでございますが、それは行政の段階でありまして、実際の失業者の皆さんからは、なかなか目に見えるように我々のところには届いてないじゃないかという批判もあるように聞いておりますので、そこらをどのように、事前の計画とかそういうものでのチェック、さらには事後にもチェックをされる何か仕組みがあるのかどうか。

 若干、大臣の方からも、地方でそれぞれ自主的に地方の実情に合わせて使っていただこう、余りああだこうだと注文をつけるのはいかがかというお考えもございました。確かにそのとおりだというふうに思います。

 私は、地方の実情に合わせて雇用対策に使っていただくということで雇用特別交付金をつくったわけですから、そういう意味ではそのとおりでございますけれども、やはり本当に役に立たなければ交付したって全然意味がないわけでありますから、どういうふうに役に立つのか、また、事前にも事後にもチェックできる体制をどうしているのかということについてのお答えを局長からお願いいたします。

澤田政府参考人 まず、この事業が、都道府県段階、市町村段階を含めて、失業者といいますか、この事業につきたいという人にどうやって周知されるか、わかるかという話でありますが、これは、公共職業安定所の紹介という形でこの事業につくケースもありますが、それがすべてではなくて、都道府県、市町村から事業を受託した事業者が直接募集するというケースもあるわけです。そうした場合に、個々の事業者がどういう形で募集しているかはなかなかわかりませんので、この事業はどういう形で自分は応募できるんだということの紹介を受ける、ちゃんとした窓口をつくるということを都道府県に求めたいと思っております。それが一つであります。

 あとはこの事業のチェックの話でありますが、大臣から御答弁を再三しておりますように、都道府県、市町村の自主性を最大限に生かすという大枠がございますので、国として求めるものは最小限にしたいということで、一つは、雇用効果を高めるという意味で、事業費に占める人件費割合をはっきりさせる。それから、当該事業につく労働者のうち、新規雇用の失業者の割合をはっきりさせる。加えて、計画の策定、計画の実施後の成果、これをそれぞれ公表するということを求めたいと思っております。

 そして、そうした中で住民あるいは関係者からのチェックが働くでありましょうし、先ほど龍井参考人が申された第三者機関がそこに関与するという仕組みにつきましても、都道府県、市町村のまさに御判断で、そういう仕組みが必要であるということであればつくられても結構ですし、既存の仕組みとしては、行政当局と県内あるいは市町村の産業界、労働界が意見交換をする場も都道府県によってはいろいろございますので、そういうものを活用することもまさに都道府県の御判断でやっていただいて結構だというふうに思っております。

鍵田委員 ちょっと具体的なことなんですが、失業率の非常に高い地域と、それからそうでない、まだ雇用が探せば幾らでもある、まだつくれるというような地域とが隣接しているようなケースがありますね。結局、この交付金というのは失業率の高い地域にやはり重点的に交付されるんじゃないか。いろいろな基準はありますけれども、それも一つの要素として支給されるわけですが。隣の県で新しい雇用があるとした場合に、こちらの県からこちらの県に仕事を求めて行かれるというふうなケースがある場合に、この交付金というのはどのように調整をされるのか。その辺についての何かお考えはあるんでしょうか。

澤田政府参考人 この交付金は四十七都道府県に交付するということで、各都道府県は、地域、いわば県民の雇用創出という意味で事業を起こすことになります。したがいまして、都道府県から事業を受けた事業者がどの範囲の失業者、求職者を雇うかは、おのずと当該都道府県の人が中心になると思います。

 ただ、御指摘のように、県境等で通勤可能であって、隣の県の事業に応募したいという失業者がいたとしても、そこでは交付金の調整ということは県間を越えてありません。渡し切りの委託費になりますので、そこにつく就労者が他県か自県かの比率等は一切関係なく、それぞれの属地主義でやっていただくということになります。

鍵田委員 なぜこんなことを聞くかといいますと、この緊急雇用の中の、公的雇用なり、こういう雇用がありますという例示の中で森林作業員というふうな例示がございますが、森林のない、ほとんどないところもあるわけですよね。公園程度の森林はあっても、作業員が働くような場はない。しかし、隣の県で非常にそういうふうな仕事はあるというふうな面もあるわけです。

 雇用というのは、何も狭い範囲で、その都道府県の範囲内だけでつくるものではなしに、国全体で雇用というのはつくっていったらいいわけでありまして、石炭からエネルギーの転換をするときなんかは、九州から大阪や東京やとこうして移動をされたりなんかしたケースもあるわけです。北海道からも随分関東地域にも来ましたけれども。

 そういうふうな労働移動というのが府県の枠を越えてあるということも考えていいのではなかろうか。そういうことについては全くこれは配慮をされておらないんだなというふうに思うわけでございますが。今のところはないということでありますが、今後そういうふうな仕組みも、今後こんな交付金が余り続いてほしくはないのですけれども、やられるとすれば、そういうことも考えてもう少し広域で考えたらいいのじゃないか。

 例えば、雇用の統計でも、ブロック単位でみんな統計を出しているわけでしょう。府県単位ではないはずなんですね、総理府がやっているのは。だから、そういうことから考えても、やはりこれからは広域でそういうものを考えるということが必要なんじゃないかなというふうに思いますので、御配慮をいただきたいと思います。

 時間も余りもうなくなってまいりました。先日ちょっと予算委員会を聞いておりましたら、突然、総理の方からハローワークを民営化というふうなことが出てまいりまして、ちょっと私も驚いたのです。効率が上がるのであればその方がいいというお考えもありますが、効率も大切でしょうけれども、効率だけではないのですね。雇用をどうしてこういう公的な機関でやっておるのかということにつきましては、効率だけを考えてこれをやっているわけではない。やはり安心できる雇用、そして雇用に対してのいろいろなチェックが可能になる、こういうふうなことで公的なものも入れておる。

 もちろん、民間のそういう職業紹介というものもあわせて雇用問題というのは考えていくべきだというふうには思いますけれども、何か、すべて民間にしたらいいんだみたいなことは厚生労働省としてもお考えになっておらないのじゃないかというふうに思いますが、その辺について、どなたでも結構でございますが、最後にお答えをいただいて、終わりたいと思います。

南野副大臣 先生のお尋ねでございますが、すべての国民に対しまして雇用機会を提供するということとともに、事業に必要な労働力、そういったものを充足するためには、いかなる求人者または求職者に対しても公平な職業紹介を行うセーフティーネットの公共職業安定機関が必要であると考えておるわけでございます。

 我が国が批准しておりますILOの第八十八号条約では、職業安定組織は国の機関の指揮監督のもと、全国的体系かつ無料で維持しなければならないということがございます。また、OECDの諸国を見ましても、本条約を批准しているか否かを問わず、同様の職業安定機関が設置されているところであります。

 そういう意味では、先生が今お話しになられました問題につきましては、ハローワークといたしまして、民営化よりは、むしろ民間の職業事業紹介所のよい面を取り入れて、その機能の充実強化を図ることが必要ではないかというようなことも考えられるわけでございます。

 さらに、あわせまして、民間の職業紹介事業につきましても、その機能を有効に発揮できる条件整備を行うということを行いまして、民、官がそれぞれの特性を生かし、さらに競争的に機能強化をすることを通じまして現下の雇用情勢に対応していくことの方がより重要ではないかと考えております。このような重要問題でございます。

鍵田委員 安心をいたしました。ありがとうございました。

鈴木委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。金田誠一君。

金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。

 質問通告に従いまして、順次質問をさせていただきたいと思います。

 まず、基本的な考え方についてでございますが、今回の法改正、わずか三項目にとどまっているわけでございます。その三項目の中にも、非常に問題を含んだ一項目が含まれているということでございます。

 さきに成立をしました補正予算、これにつきましても、見るべきものがないというのが率直な私の感想でございます。失業率がかつての二倍に上昇する中で、政府の発想は、かつての低失業時代と全く変わっていない、こう考えざるを得ないわけでございます。

 まず、その中身としては、セーフティーネットの規模が余りにも小さ過ぎる、非常に規模が小さい、失業率二倍になったこの状況に対応できない、そんな規模だと思うわけでございます。例えて言うならば、かつても、戦時中、米軍のB29に対して竹やりで立ち向かおうとしたようなこともあったようでございますが、そんな感じを受けるわけでございます。さらにまた、とりわけ、雇い入れ助成などについては、雇用保険財政にゆとりがあった時代の、言葉は悪いですが、ばらまき的な発想ではないか、こう言わざるを得ないわけでございます。

 私は、本来今求められているのは雇用政策の構造改革、雇用政策そのものを構造改革していくことが求められていると思うわけでございます。例えばドイツの失業給付、三年有余に及ぶと伺っております。あるいは、スウェーデンの教育訓練制度、教育によって国を成り立たせるという発想に基づいた極めて本格的なものと聞いております。あるいは、オランダのワークシェアリング、オランダモデルでございます。イギリスでは、ブレアのニューディール、こう呼ばれる失業対策が進行していると伺っております。こうした先進諸国にも学びながら、雇用政策の構造改革、これを今打ち出すべきときにあると私は考えますが、この点について、まず大臣のお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 金田議員の御指摘をいただきましたように、今回のこの補正予算、そしてその中に組まれました雇用対策、これを見ますと、トータルとして実質的には一兆円の予算でございますが、その中で五千五百億、五五%が雇用対策に盛り込まれたわけでございますから、全体といたしまして、予算の中でこれだけ大きく、大きなパーセントで雇用の問題が取り上げられたのは今回が初めてではないかというふうに思っております。

 もともとのその一兆円が大きいか小さいかの議論は、これはあると私も思うわけでございますが、限られた財源の中で組んだものでございますから、まず、その中での五五%というのは、これは大きな額ではなかったかというふうに思っております。

 そして、その中身でございますけれども、その中で三千五百億は、今御指摘になりましたように、これは特別交付金としてのものでございまして、これは、雇用といたしましてはいわゆるつなぎの役割をするものでございます。

 このつなぎの役割をするものを今回出しましたのは、当初予算におきましてさまざまな雇用対策は既に打っているわけでありまして、その当初予算にプラスをいたしまして今何が必要か。急激にふえてまいりました失業者に対しまして、何はともあれ、一時期、たとえ半年であれ一年であれつなぎをしていただいて、その間に本格的な雇用をひとつ発見していただく、身につけていただく、探していただくというための財源が必要ではないかという声が非常に大きかったわけでございます。各市町村からも一番多かったのは、この特別交付金の延長というのが一番多かったわけでございますし、連合などからお聞きをいたしました場合にも、ひとつさらなる延長をというようなお話も実はございました。

 そうした問題を踏まえてここに組ませていただいたわけでございますが、ただ、今まで、前回の二千億円でやりましたときに、必ずしも十分に初めの趣旨が理解をされていなかったという面もあるものですから、そこは理解をしていただくように私たちももう少し汗を流さなければいけない、もう少し、こういうことで使ってください、使う趣旨はこういうことでございますから、趣旨に合ったようにひとつお願いをしたいということを今申し上げているわけでございます。

 トータルとして、お話としては、金田議員がおっしゃいますように、この雇用対策も質的転換をしていかなければならない時期に来ていることにつきましては、私も御指摘のとおりというふうに理解をいたしております。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

金田(誠)委員 ただいまの御答弁でございますが、私は、大臣の御答弁を否定するつもりは全くございません。そういうお立場で大変な御努力をされているということは、認めるには全くやぶさかではございません。

 しかし、私が申し上げたいことは、そういう旧来型の延長の努力であってはもはや全く足りないところまで事態は進行しているんではないかということでございます。私は、大臣を責めようとかという気は全くございません。旧来、ずっとそういう形で雇用対策が続いてきたわけでございますから、ここに来て急に発想の転換というのは、これは簡単なことではないということはよく承知をしているつもりでございます。従来の政策があり、枠組みがあり、にもかかわらず、その中から転換を図っていかなければならない、非常に困難な局面を今迎えているだろう、こう思っております。そういう中で御努力されていることも十分わかるわけでございますが、にもかかわらず、雇用政策はかつての低失業時代の発想の延長でしかないということを言わざるを得ないということでございます。

 大臣、最後の御答弁の中で、転換の時期に来ているということはお認めいただいて、ある意味では認識は一致するんだな、こう思いましたけれども、ぜひひとつ、困難な作業だとは思いますけれども、雇用政策そのものの発想の転換を図っていく、政策の構造改革を図っていくということをぜひ念頭に、どこかにお入れいただいて今後御努力いただければありがたい、こう思うところでございます。

 次に、私は今、雇用政策の構造改革ということを申し上げたわけでございますけれども、政策の構造改革により目指すべきは、雇用そのものの構造改革である、こう思うわけでございます。言葉をかえれば、働き方の構造改革、日本人の生活のあり方の構造改革、これを目指すべきであると私は考えております。

 我が国は、戦後の焼け跡から出発して、欧米諸国に追いつき追い越せとばかり、馬車馬のように今日までやってきて、一定の成果をおさめたわけでございます。しかし、そうしたいわば途上国型、この途上国型の体制から先進国型に脱皮できなかったところに今日のデフレの原因、つまり供給の過剰と消費の不足というものがあるわけでございます。

 私は、日本人の働き方、生き方の構造改革において目指すべきものは、日本人の気質からいっても、アメリカ型ではなくてドイツを初めとするヨーロッパ型、ヨーロッパモデルであろうと思います。双方の特徴は、これはもう申し上げるまでもないわけでございますが、アメリカの場合は競争至上主義といいますか、一獲千金型といいますか、こういうものだと思います。これに対して、セーフティーネットを完備して安定感のあるヨーロッパ型こそが二十一世紀における我が国の目指すべき姿であると思います。

 竹中平蔵大臣、経済財政担当大臣でしょうか、骨太の方針などを打ち出されているわけでございますけれども、竹中大臣を初めとして政府のやっていることを拝見いたしますと、どうもアメリカ型にかじを切っているように思えてなりません。ヨーロッパ型といいますか、旧来の日本型、安定感というものをどんどん切り捨てていく、こういう方向に行っているように思えてならないわけでございます。

 大臣は公明党でございますけれども、そういうお立場からこれはどのようにごらんになりますでしょうか。ぜひ、御所見を賜りたいと思います。

坂口国務大臣 経済でございますから競争原理というものがそこに導入されることは、これは一面ではやむを得ないことだというふうに私は思っておりますが、しかし、すべて競争原理だけで取り仕切ることができるかといえば、それはやはりそうはいかない。自由と連帯、一方においてやはり連帯という裏打ちがあって初めて競争原理も働くんだろうというふうに私は思っております。

 したがいまして、我々の所轄をいたしております雇用の問題を考えるにいたしましても、あるいはまた医療の問題を考えていくにいたしましても、その辺のところは、ただ単に自由競争が入り込めばいいというだけで済まない問題があり得るというふうに私は思っているわけでございます。

 きょうは雇用がテーマでございますから、医療がテーマではございませんけれども、医療の問題を考えますときにも、そこに自由競争の原理を導入するということは私も大事だというふうに思いますけれども、株式会社としてすべてそこに入り込んで、そしていわゆる営利を中心とした展開をするということは、これはやはりぐあいが悪いんだろうというふうに思っている次第でございます。

 したがいまして、経済全体を見ましても、そこには自由競争が必要ではございますけれども、その自由競争の裏には、やはり連帯の裏打ちのされた自由競争でなければ日本の国はうまくいかないだろうというのが私の基本的な考え方でございます。

 したがいまして、雇用の問題につきましても、企業が自由競争で、そしてグローバルな社会の中で国際的な立場でさまざまな展開をしていただくことは、それは大事なことだというふうに思っております。しかし、そうはいいましても、日本の中が空洞化もいいところで、空っぽになってしまうような形で企業だけが栄える、企業栄えて日本は沈むというようなことになってしまってはいけないわけでありますから、企業の方もおのずからの限界を持ってそこはおやりいただかなければならないし、そして、日本の中に住む人々のことも考えていただいてやはり企業というのはやっていただかなければならないというふうに思っている次第でございます。

金田(誠)委員 大臣の考え方とはかなり共通する部分があるのかな、こう思いながら受けとめさせていただきました。

 我が国の働き方、生活ぶりは、先ほども申し上げましたけれども、いわば長時間労働に代表される途上国型、あるいは正規社員と非正規社員の格差、身分差とも言えるような状況、現在も発展途上国型の状況であるというふうに思うわけでございます。これから、それを改革していかなければならない。そのために、雇用政策そのものも構造改革を求めたいと私は思うわけでございますけれども、その改革の行き着く先が、今不安ばかりをあおる状況になっていはしないかということを申し上げたかったわけでございます。

 日本人は非常に勤勉でございますから、アメリカ型のモデルにはなじまないと私は思います。同じように、古い歴史を持つヨーロッパモデルこそ目指すべき姿だと私は思うわけでございまして、ヨーロッパも、経済の面では自由主義経済、きちんとした自由競争が行われる社会でございます。だからといって、雇用や社会保障の分野でも、すべて市場原理に任せているわけでは全くありません。そこはそこで、きちんとセーフティーネットを完備して、安定感の中でこそ自由競争が確保されている、そういう形こそこれから目指すべき社会であると思うわけでございます。

 そんな観点から見ますと、後ほど触れますが、今回出されてきました法改正、中身は三項目でございますけれども、この三項目がそういう観点に立っているものなのかどうなのか、この点については後ほど各論で触れさせていただきたいと思います。

 次に、我が国のセーフティーネットの特徴、さらにまた、それをどうするのかという点について伺いたいと思います。

 私は、我が国におけるセーフティーネットは長い間会社がその重要な役割を果たしてきた、こう思います。それに先立ってあるいはそれと並行して、村とか家と呼ばれるものが大きな役割を担ってきたと思います。ところが、農村が力を失い、核家族化が進行する中で状況は変化をし、今日、グローバリゼーションと規制緩和によって会社もまたセーフティーネットとしての機能を急速に失っている、こう思うわけでございます。

 私は、規制緩和を否定しているわけでは全くございません。それどころか、談合社会がいまだに続いている我が国においては、独禁法を強化して自由な競争社会を目指すべきは当然だと思っております。そして、だからこそ、本来のセーフティーネットが必要であるということを訴え続けているわけでございます。

 ところが、政府のやっていることは、規制緩和も、独禁法の強化一つできない、公共事業の工事の一〇〇%はいまだ談合で落札業者が決まっている、こういう状況を一方でやっておきながら、雇用のみならず、大臣がさっきも触れましたが、医療の分野でも、セーフティーネットを縮小して自己責任原則を拡大しようとしている、こう言わざるを得ないわけでございます。

 日本人は勤勉でございますから、そうなればなったで倹約して自己防衛をする、消費は落ち込み景気は後退する、これが現在の姿ではないでしょうか。セーフティーネットを縮小するという政策は根本的に間違っていると私は思いますけれども、この点、大臣、再度お伺いをいたします。

坂口国務大臣 セーフティーネットのあり方も、また問われているんだろうというふうに思います。

 今まで、ややもいたしますと、このセーフティーネットは、いわゆる補助をする、助成をする、そうした形でセーフティーネットを形成しようというふうにしてまいりましたけれども、これからは、そういう助成でありますとか補助でありますとか、そうした形でこの安全ネットをつくるのではなくて、もう少し、やはり自立をするために何を国がするか、国民の皆さん方が自立をしていただくための支援ということが中心になった安全ネットでなければならないんだろうというふうに思っています。

 この辺のところの改革を行いながら、そして、皆さん方が公平な機会を持って働いていただけるように、したがって、していかなければならない。その辺のところで我々はもっと知恵を絞らなければならないというふうに思っております。

 そして、先ほどこの雇用政策の質のお話が出たわけですけれども、一つは、やはりそれぞれの地域、都道府県あるいは市町村に広げてもいいのではないかというふうに思いますが、それぞれの地域が雇用ならば雇用に対して一体何を必要としているのかということをもう少し見ていくということをやらないといけないだろう。国の方で一本やりで、国の方がこうする、ああするということを一律にやるという時代は過ぎている、雇用問題につきましても、やはりそれぞれの地域のニーズというものを重視した雇用政策というものをつくっていかなければならないというので、我々も少し地域のニーズに合った雇用対策という方向に軸足を移しつつあるわけでございます。これは我々、変わろうとしている一点だというふうに思っております。

 それからもう一つは、いつも言われることでございますが、これは、日本のどこにお住まいであっても、情報をどこでも同じように得ていただくことができるようにしなければならないというので情報のネットワーク化を今進めておりますが、そうしたことをもとにして、やはりこの改革を、ネットワークの質を変えていかなければならない、そんなふうに今思っている次第でございます。

金田(誠)委員 大臣は、私の最初の質問に対して、質的な転換をする時代に来ているということでおっしゃっていただきました。その後、引き続いて質問を続けているわけでございますけれども、ただいまの質問などは、本当に、雇用政策全般を時代状況に合わせて転換をしていくんだということを、まあ自立をしていただくための支援、地域が必要とする支援というおっしゃり方で、規模と質においてもう大転換をしなきゃならぬという、そういう意識がどうも伝わってこないわけでございます。そういう意味ではちょっと残念でございます。

 一昔前までは、会社が余剰人員を多少ぐらいは抱えていくこともできた。それが、規制緩和、競争原理、これはこれで私は必要だと思うんですけれども、そういう中で会社からはじき出されてくる。田舎に帰って実家に面倒を見てもらうという状況もなくなった。そういう中でこそ、例えば雇用保険にしても本当に大転換が必要だ、再就職支援にしても、今までのような、形だけ整えるようなことではもうやっていけないんだ、そういう切実なものなんではないでしょうか。

 自立支援であるとか地域のニーズであるとか、そういうきれいごとの話ではなくて、もっと質と量、具体的な大転換を図っていくという、そういう気迫ある御答弁を聞かせていただきたかったなと思うわけでございます。

 総論部分はおおむねこの程度になりましょうか。多少各論にわたるとすれば、私が今申し上げましたような雇用政策の構造改革を進めるとすれば、まず第一に考えられるのは、雇用保険の全国延長給付、これの発動要件も政省令で定まっているようでございますけれども、今日、五・三%と極めて深刻な事態の中ではこの延長給付を発動すべきではないか、こう考えておるわけでございます。

 この辺のお考えを伺いたいと同時に、現在、雇用保険が切れた状態で失業されている方は一体何名になっているのか、あわせてお聞かせをいただきたいと思います。

南野副大臣 先生のお尋ねであります雇用保険が切れた失業者数ということでございますが、本年八月の完全失業者数は三百三十六万人でございます。そのうち、平成十年九月以降に離職し、前職が役員を除く雇用者であった者は百六十八万人となっております。一方、本年八月の雇用保険の受給者実人員は百十七万人となっており、この差の約五十万人の方は現在雇用保険を受給していない方と考えられます。

 なお、これらは、パート、アルバイトのうち雇用保険の被保険者にならない人、または雇用保険の受給資格を満たす就労を行っていなかった方、または雇用保険を受給し終わった者と考えられますが、その詳細は明らかではございません。

 さらに、もう一つのお尋ねでございますが、雇用保険制度といいますのは、労働の意思と能力がありながら就職できない方に対し、できる限り早期に再就職をさせるための支援であります。単純な給付の延長はさらに失業者の停留を招くだけに終わるおそれがあるというふうに考えております立場から、離職理由や年齢などにかかわらず一律に給付日数が延長される、先生がおっしゃっておられる全国延長給付ということについては、要件を緩和して発動するということについては、今考えられていないということでございます。

 政府といたしましても、職業訓練の充実による再就職の促進が重要と考えておりまして、訓練延長給付制度、これを出していただきましたので、それの充実をすることにより、真に就職の意欲のある者に対する就職支援ということをまず講じていきたいというふうに思っております。

金田(誠)委員 そういう答弁を伺いますと、やはり事態の緊迫した状況を認識されておらないのかなと大変残念に思うわけでございます。それはもう失業率三%時代の発想ではなかったでしょうか。もう今日の状態では、そんな悠長なことを本当に言っていられるのかということをぜひお考えいただきたいなと思うわけでございます。

 そこで、民主党の提出しております法案についてお伺いをしたいと思います。

 民主党からは、雇用保険の給付拡大に対応し、あわせて給付が切れた方々の能力開発を支援するということで、従来の枠組みを大きく超えて新たな枠組みが提案されている、こう理解をするわけでございますが、その考え方、法案の骨子、その辺につきまして、提出者から御説明をいただきたいと思います。

城島議員 今金田委員おっしゃいましたように、今の雇用情勢、極めて深刻だということを踏まえた内容にしたというふうに思っております。

 九月の完全失業率五・三%ということでありますが、それ以降、この景気の世界的な低迷というのが加わっておりますし、さらには、不良債権の抜本処理というのがこれから進んでいくだろうということを見ても、この五・三%の失業率というのは、残念ながら、改善していくというよりは、もっと悪くなっていくという可能性の方が私は非常に高いというふうに思います。

 まして、今、完全失業率五・三%の中で、御案内のように、現実的に失業されている方ということでいけば、その倍の約一〇%を超している、すなわち働く人の約十人に一人は既に失業しているということからしても、この雇用情勢、そして失業情勢、本当に今深刻の度をますます増しているということだと思いまして、これに何らかの形で少しでも改善する方向をこの段階でとるべきじゃないかということが、実は我々の民主党案の背景にございます。

 大きく二点ございますが、まず第一点目は、五・三%の失業率といっても、よく言われますように、その大半はいろいろな意味でのミスマッチによる失業であるということであります。そのうちのまた非常に重要なところは、いわゆる能力の問題ということが一つ大きくあるんだろうと思います。したがいまして、私どもは、能力開発訓練の受講ということを要件といたしまして、雇用保険の失業等の給付が終了した非自発的失業者及び一年以上失業している自発的失業者、さらには一定の自営業の廃業者、この方々への最長二年間にわたる能力開発手当の給付制度を創設するというのが一点目でございます。

 もちろん、失業給付期間中から早期にこうした能力開発訓練を受講するということが極めて大事なことであるし、重要なことでありますが、現行の雇用保険制度のもとでは、いわゆる失業給付が終わってしまいますと、一般的には収入がゼロになってしまいます。したがいまして、実際には、こうした教育訓練を受ける意欲がありながらも必要な職業能力開発に専念できない多くの方がいらっしゃると考えているわけでありまして、こうした状況を考えますと、職業あるいは業種、そうした転換を前提とした長期、特に一年とか場合によっては二年といった能力開発訓練への需要が高まってきているのではないかというふうに思っております。

 こうしたことから、今最も深刻な状況にある非自発的失業者の方で、雇用保険の給付が終了していてもなおかつ能力開発訓練を受ける、そういう希望をされている方につきまして、今申し上げましたように、受講を要件として能力開発手当を支給すべきだというふうに考えました。

 また同時に、近年のこの経済状況の悪化に伴って、いろいろな方が問題指摘されておりますが、自営業の方々の廃業がふえているわけであります。現行の雇用政策においては、自営業を廃業した方は雇用保険の枠外に置かれておりまして、当然雇用保険給付の対象とならないわけでありますから、ここで有効な経済政策を打ち出せなかった我々政治の責任ということも考えまして、一定の基準のもとに、自営業を廃業せざるを得なかった方についてもこの制度の対象としたというわけでございます。

 さらに、自発的失業者の方につきましても、この方々、何らかの見通しを持った上で離職をしたというふうに考えられるわけでありますが、それでもなお一年の長期にわたって失業状態にあるということはやはりかなり深刻な状況でありますから、こうした方々にも、この訓練を受けるということを条件に受給資格を与えることといたしました。すなわち、今一年以上にわたる失業をされている方が九十万人以上いらっしゃるわけでありますから、そうした方々に対して、能力開発訓練を受けて新たな就職をできるようにしていくということをサポートしたいというふうに思っているところであります。

 さらにもう一つは、最初申し上げましたような失業情勢になっていきますと、ますます失業者がふえていくということが考えられるわけであります。そうしますと、今のいわゆる雇用保険財政、これが今年度の四月から新しい仕組みでスタートはしておりますけれども、政府見通しでも、今年度末の積立金残高が五千八百億円程度というふうに見込まれているわけであります。

 仮に現在の失業率が現状のまま推移したとしましても、平成十五年度末には底をつくということが明らかになっているわけでありまして、そうしますと、この雇用保険財政も大変大きな厳しい状況に陥っている。雇用保険に入っている方々も含めて、そうした皆さん方の不安感をきちっと払拭していくということがこの段階で極めて肝要なことではないかというふうに思いまして、我々としては、現在の雇用保険財政の悪化に対応して、雇用保険財政の安定化のために約二兆円規模を考えておりますが、一般会計から雇用保険の特別会計に基金を設けるという趣旨での、いわゆる雇用保険制度の安定化のための法案ということにさせていただいているわけであります。

 このことにつきましては、雇用保険財政が安定化するということが見込まれますと、その段階でこの法案につきましては廃止をするということも含めて、そういう内容で雇用保険財政の安定化を喫緊の課題として取り上げている。いずれにしても、セーフティーネットについて万全の体制をとるということが民主党案の背景でございます。

金田(誠)委員 ただいま、民主党案の趣旨、概要について御説明をいただきました。

 もとより、白地に絵をかくようなことはなかなかできないわけでございます。現在の制度が制度として動いているわけでございますから、それに関連をさせながら、連携を持たせながらの、にもかかわらず極めて画期的な新しい枠組みが提起をされた、こう思うわけでございます。

 大臣、そこで、今説明お聞きをいただいたと思うわけでございますけれども、ぜひこうした発想を我が国の雇用失業政策の中に組み込んでいくべきだ、こう思うわけでございますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

坂口国務大臣 民主党提出法案の内容は、大きく分けて二本の柱があって、一つは、雇用保険財政の安定化のための基金創設、こういうものだと思います。それからもう一つは、求職者等の能力開発支援制度の創設、この二本立てだというふうに思います。

 後の方の能力開発の方につきましては、これは我々が提案しておりますものとそれほど質的な違いがあるというものではない。ただ、我々の方は、できるだけ早くに能力開発にかかっていただいて、そして早く能力を身につけていただいて、そして次に結びつけていきたいという気持ちが、我々の方が非常に強い。それで、民主党さんの方は、これは、十分な時間をとってじっくり落ちついて、こういうことでございますから、構造改革をしなきゃならないとおっしゃっている割には構造改革になっていないな、こう実は思っているわけでございます。えらい本当のことを申し上げて申しわけありません。

 それから、一番最初の方は、雇用保険財政安定化のための基金の創設につきましては、これは現在この雇用保険制度の中に積立金等があるわけでございますので、足らなければこの積立金をまずは使うということで、その趣旨はこれで全うされるのではないかというふうに思っております。それでもなおかつ足らないときにどうするかという話は出てくるだろうというふうに思いますが、まずはその枠内でそれを活用するということが先ではないかというふうに思う次第でございます。

金田(誠)委員 先ほど副大臣の御答弁でも、既に雇用保険が切れた失業されている方々が、カウントできるだけでも五十万を超えるという状況でございます。極めて深刻な事態、そういう中で失業期間も長期にわたる、それにどう対応するのか。最低でも全国延長給付を発動して規制緩和を、発動基準の緩和をしなければならないわけでございますけれども、そうした中で、さらに能力開発のための支援措置をとっていく、その財源措置をするという私どもの考え方でございますが、御理解いただけないようでございまして、大変残念でございます。またあすの質疑もございますから、私どものメンバーからそれぞれまたお伺いをさせていただくことになろうかと思います。

 次に、各論に入らせていただきますが、訓練延長給付の延長ということについてでございます。

 ミスマッチ解消という観点からも、職業訓練の充実を図るということは極めて重要であると思います。しかし、現状は、せいぜい資格取得までいくのがいい方であって、再就職に結びつくものにはなっておらないと思うわけでございます。もともと再就職する気のない方々が受講しているとも言われており、そうであれば改善すべきであると考えます。

 具体的には、企業における実習あるいは採用が内定した場合の試用期間、これも訓練期間の一部に組み込むことを提案したいと思います。これによって、再就職する気のない方は初めから受講しなくなる、また求職者と事業主の双方に役立つプログラムを開発できる。イギリスなどでもこうした形で就職するまできちっとフォローをする体制をつくっているようでございますけれども、ぜひこうした方策を考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 再就職する気のない方が仮にいらっしゃるとすれば大変残念なことでございますので、関係者に指導を徹底いたしますとともに、もちろんそういう方々につきましても、私どもは、適切な訓練に入っていただくために、職歴であるとか御本人の適性であるとかといったことを十分踏まえて、訓練の指示あるいはあっせんをしているところでございますが、今後ともそういう点は一層徹底していきたいと思っているところでございます。

 先生おっしゃる趣旨は、雇用に結びつく、役に立つ訓練ということであろうかと思うわけでございまして、私ども、できるだけ求職者、それと人を求めている事業主さんのニードを踏まえて進めていくことが効果がより高いというふうな考え方でございまして、今次の補正予算におきましても、求人者のニーズを踏まえた委託訓練の新たな仕組みを設けさせていただいたわけでございます。

 一つは、職業能力について求人者とあらかじめすり合わせを行って、求職者を対象として、いわばOJT的に求人事業主に受託していただきまして実践的な職業訓練をしていただくといった具体的に役に立つものを一つ考えたところでございますし、さらには、もっと突っ込んで、求人者の具体的なニーズ、人材ニーズに合致して、どういう訓練がその方にいいのかということを個々具体的に、いわばオーダーメード型で訓練コースを設定するという方式も今回取り入れることにしておるところでございます。

 そんなこと以外もさまざまな努力をさせていただいておるところでございますが、先生おっしゃったような御指摘の出ないように、今後とも努力をしてまいりたいと思っているところでございます。

金田(誠)委員 あと、細かい点になりますけれども、三点まとめて質問をさせていただきます。

 委託訓練における委託料基準についてでございます。IT関連などは月九万円と聞いておりますが、住宅リフォームなどは月六万円程度、教材費、講師料などを見るともう赤字になる金額だそうでございますが、こうした点、適切に見直すべきと思いますが、これが一点でございます。

 次は、支払い方法。現行は、訓練期間終了後の一括払い、こうなっているようでありますが、これについても改善を図るべきであると思います。これが二点目。

 さらに、受講予定者に欠員が生じた場合、開講途中で欠員になった場合は補充は無理だとしても、スタート前の欠員は補充できるようにすべきではないか。募集からスタートまでの間、三カ月ぐらい何かあるそうでございまして、その間にいろいろな事情で欠員が生ずる、したがってその分が欠損になってくるということもあるようでございます。

 細かい問題で恐縮でございますが、三点まとめてお答えいただければと思います。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 一点目の委託費の関係でございます。

 実は、今、委託費、先生もおっしゃいました六万円あるいは九万円といったことでございますけれども、実態も私ども一応踏まえて、講師料であるとか材料費であるとか訓練経費等に応じてその額を決定しているつもりでございまして、その委託先の民間教育訓練機関が実際に我々の公共の委託以外の形でやっている授業料水準、そういうものも横にらみにしながら私どもやっているつもりでございまして、必ずしも乖離しているということはないのではないかというふうに思っているところでございまして、今後とも訓練内容に応じた委託費の支払いを行いたいというふうなことでございます。

 それから、支払いにつきまして、一括払いという御指摘がございました。

 訓練委託費でございますので、やはり訓練をやっていただいた上でという、実績を踏まえて支払わさせていただくという必要があるわけでございますけれども、長期にわたるような委託訓練の場合等、中間実績に応じて支払うといったようなことも今後工夫してまいりたいというふうに考えます。

 それから三点目、欠員が生じた場合、スタート前の欠員の補充をできるだけすべきではないかといった点でございます。

 この点につきましては、できるだけ、先生おっしゃるように、訓練開始前に欠員が出た場合の補充については、適合する求職者を確認して、積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。

金田(誠)委員 ぜひ実態に合わせて、よく事情などを聞いていただいて対処していただければと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、新たな雇い入れ助成につきましては時間が押しておりますので省かせていただいて、中高年齢者の派遣期間の延長について質問をさせていただきます。

 現行の臨時的、一時的派遣は、対象業務の制限がないところから、通常の労働者との競合を避けて常用代替を促進させないために厳格な期間制限を置いているわけでございます。期間制限の枠組みは、就業の場所ごとの同一の業務について継続して一年というもので、業務概念を基礎にしているわけでございます。

 このたびの法改正により、中高年労働者を現行期間制限の例外として、一年を超えて活用することを可能とすることは、この業務を単位とする規制の趣旨を根本から否定し、人単位の規制に変質させることになるわけでございます。このことは、労働者派遣法の常用代替を促進させないという基本的な趣旨をないがしろにするものになるのではないか、こう考えるわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 ここは、我々、そういうふうには思っていないんですね。業務概念というものは、そのまま私たちもこれは大事にしているというふうに思っています。とりわけ中高年につきましては、今回、非常に厳しいという現実があるものですから、特別にこの一年を三年にという期間の延長をいたしましたけれども、そこは、そうしたからといって業務概念を変えたというわけではございません。

 そして、本格的な派遣業のことにつきましては、今、労使の皆さん方にもお入りをいただいていろいろ議論をしていただいておりますしいたしますが、この議論をもう少し続けていただいて、そして、来年中ごろまでかかるでしょうか、いろいろと御議論をいただきまして、今後のあり方につきましては結論を出していただきたいというふうに、かように思っている次第でございます。

 したがいまして、今、御懸念のようなことでその考え方をがらりと変えるというようなつもりは毛頭ございません。一年が三年になった、こういうことでございます。

金田(誠)委員 大臣、そう思っていないとおっしゃいますけれども、実際やっていることはそういうことをやっていることになるのではないでしょうか。

 現行の臨時的、一時的派遣は、期間制限の枠組みは、就業の場所ごとの同一の業務について継続して一年、こういうことです。これは業務概念ということです。今度は、四十五歳以上という人を単位にする規制に変わる、こういうことですから、これは、大臣、どうなんですか、思っているとか思っていないという話ではなくて、今までの考え方を抜本的に転換するということになっているのではないでしょうか。したがって、常用代替を促進するということになるのではないでしょうか。その辺だけ、はっきりお答えいただきたいと思います。

澤田政府参考人 大臣が答弁したとおりでありますが、若干、事務的に補足させていただきますと、今回の特例措置は労働者派遣法そのものを改正するものではありません。派遣法それ自体は何ら変更なく、その外で特例措置を講じておるということでありまして、委員がおっしゃる業務を単位とする規制というものは、厳然として派遣法の中できっちりあるわけです。

 そして、今回の特例措置について申しますと、同一の業務について、派遣期間を一年を限度とするというものを、中高年に限って一年を三年にしますが、同一の業務についてというところは何らいじっておりません。そういう意味で、業務を基礎とする考え方はいささかも変更しておりませんし、大臣が申し上げたように、崩す構成にはなっておりません。

金田(誠)委員 常用代替を促進させることにつながる改正であるということははっきりしていると思います。派遣法の特例とはいいながら、派遣業務に特例を設けて、そこが一つの突破口になるということで、常用代替の促進につながっていくというものであるということを申し上げておきたいと思います。

 次に、法改正による実際上の効果として、コスト負担感の強い中高年労働者の解雇が促進され、その代替的に、同年代の労働者、あるいは、もしかすればその解雇された同一の労働者が派遣形態により活用される可能性が拡大するわけでございます。こうした雇用形態の転換は、企業側にとっては切実なニーズになっているということは言えるかもしれませんけれども、労働者側にとってはそれは大変厳しいことを意味するわけでございます。

 この法改正による実際上の効果について、厚生労働省、どのような認識をお持ちでしょうか。

澤田政府参考人 今回の特例措置の効果として、まず、若年者に比べまして就業機会に恵まれにくい中高年齢者につきまして、延長された派遣期間による雇用機会の確保、一層の雇用安定を図ることが可能になるものと考えております。

 また、今般の措置を講ずることによりまして、求人意欲が今大変盛り上がっております営業あるいは販売等におきまして、この中高年派遣の一年―三年が活用されることが見込まれておりますので、そうした点では、中高年齢者について、延長された派遣期間による新たな雇用機会の拡大等の効果が期待されるところであります。

 なお、我が国におきましては、企業がその雇用する労働者を解雇する場合には、委員御承知のように、いわゆる整理解雇の四要件とか、合理的な理由を必要とするという判例法理が確立されておりまして、そうしたルールで対処されておりますので、安易な解雇が横行するということはないものと考えております。

金田(誠)委員 大変楽観的な、甘い認識をされていると思います。中高年の正規雇用労働者が長期派遣に置きかわるという可能性が極めて強い、このことを指摘しておきたいと思います。

 さらに、各種の労働組合やNGOに寄せられる労働相談や苦情の状況から見ても、常用代替は限りなく促進される可能性が高いと私は思います。だとすれば、それを規制する措置を抱き合わせにしない限り、歯どめがきかなくなるのではないか、ただいまのような楽観的な思いだけでは役に立たないと思うわけでございます。

 規制する措置、具体的なお考えがありますでしょうか。

澤田政府参考人 今回の臨時特例措置に限って申しますと、派遣法の読みかえ後によります第四十条の三の規定、すなわち、一年以上派遣労働者を受け入れた企業が、引き続き労働者を必要とする場合には、その当該労働者を雇うようにしなければならないという、雇用義務規定でありますが、これにつきましても、今回、一年以上働き続けた中高年齢者である派遣労働者の方々についても適用されますので、現行のいわば保護措置、歯どめ措置が、そのまま同様の枠組みで機能するということでございます。

金田(誠)委員 正規雇用労働者が長期代替に置きかわる、長期派遣に置きかわるというものをどうやって規制するかということについては、それは歯どめにならないと思うわけでございます。

 本来、中高年齢者の雇用の拡大ということを考えるのであれば、年齢制限、年齢規制こそがミスマッチの最大の要因であることは、だれの目にも明らかであると思います。そこで、求人あるいは採用に関する年齢差別禁止法、実効力のある年齢差別禁止法を速やかに制定すべきと私どもは考えているわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 年齢につきまして、年齢制限、年齢を制限禁止法をつくるというのは、私はこれは、それはそれでプラスの面もあると私も率直にそう思っております。

 しかし、反面におきまして、年齢を制限禁止法ということになると、マイナス面も私はあるような気がいたします。それは、今の終身雇用制度を大きく崩壊させることになりはしないか。例えば、大学を卒業した人たちを企業はどんどんと今お採りいただいているわけですが、それが、そういう大学を卒業した、いわゆる卒業生をすぐに毎年毎年採るというような、こういう慣習が崩れていくことも考えられますし、そしてまた、終身雇用で一応定年制のような形になっておりますが、それも六十歳とか六十五歳というようなことも、それは取れていく。

 そうした中で、非常にそこが、今までの終身雇用制度とは違った形の雇用形態が生まれてくる可能性もあるというような気もいたしまして、私は、プラスの面もあれば、そうした面も十分に検討しながらこの問題はひとつ考えていかなければならないのではないかというふうに思っている次第でございます。

金田(誠)委員 大臣、プラスもあればマイナスもある、そういうお話では、この問題、前進はするわけがない。もうこれは諸外国の常識でございます。

 我が国は確かに、年功賃金等々異なる面はあるわけでございますけれども、にもかかわらず、今こういう雇用状況の中で、年齢によるミスマッチ解消、極めて重要な課題でありますから、派遣期間の延長などという手段ではなくて、本来の、本丸に切り込むような、きちんとした対応をぜひ検討していただきたい。そのことを申し上げまして、時間でございますので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

谷畑委員長代理 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 自由党、佐藤公治でございます。

 本日は、先日行われました、衆議院本会議場での代表質疑ということでさせていただいた内容に関しまして、総理の御答弁の内容、そしてまた同じ質問における大臣のお考えをお聞かせ願えればありがたいかということで、質問させていただきます。

 でも、始まる前に、一つちょっとお聞きしたいことがございまして、先般BSEの合同審査が行われました。大臣もその流れ全体をお聞きになられているかと思いますけれども、まず一点に関しては、私ども熊澤次官の要求をしましたところ、これに関しては呼んでいただくことができませんでした。農林水産省熊澤次官を呼んでいただくことができませんでした。いろいろな大臣の御答弁を聞かれて、大臣はどのようにそれに関してお感じになられたか。委員会が決めたことということではなくて、あのBSEの合同審査を、一応流れをお聞きになられて、熊澤次官が呼ばれなかったことにどう大臣はお思いになられるか。

 あの答弁を聞いていくと、当時のことがあいまいな状態の中で、無責任さの中で終わってしまったような、私はちょっと残念な気がしております。大臣のお考えを、またお気持ちを聞かせていただきたく、お願いをしたいと思います。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 先日のBSEの連合審査のお話でしょうか。連合審査のときにどういう人が出席するかは、これは理事会でお決めをいただくことでございますから、私がとやかく申し上げることではないというふうに思っております。

 ただ、BSEがなぜ日本の中で起こったかということの原因を明確にしていく必要があることは御指摘のとおりでありまして、そこはやはり、何と申しましても、日本の国内に肉骨粉という代物がなぜそんなにも多く入ってきたかというところに最大の原因があることだけは事実でございまして、それが抑制をされていればこの問題は起こらなかったというふうに私は思っております。

 したがいまして、そこは、厚生労働省としていささか距離を置いた話なものでございますから、これ以上私たちが申し上げるわけにはいきませんけれども、厚生労働省としては、もし仮に、外国から入ってくるものの中に、例えば薬でありますとか化粧品でありますとか、そうしたものが外国から入ってくるときに、BSEと関係をしたものの一部が入ってくることを抑制しなければならない、我々は。そのことに全神経を集中してきたわけでございます。

 一方、しかし、畜産の方からしてみれば、そちらの方はそちらの方で、えさの問題を一番真剣に考えてこなければならなかった。そこが思ったようにいかなかったということではなかったかというふうに思いますが、それ以上私が、あの委員会の、連合審査の、だれを呼ぶ、呼ばないということに対して発言するわけにはいきませんから、そういう感想を持ったということでございます。

佐藤(公)委員 なぜ私がこれを一番最初に言わせていただいたかといいますと、今回の雇用対策関係と関係がないかといったら、僕は大きく関係すると思います。せっかく皆さん方、そして国民の皆さん方の税金を使っているにもかかわらず、やはりBSE、ああいうような問題によって、かなり景気に、また経済に大きく影響をしているというのが現状だと思います。

 そういう中で、きょうの朝刊にも、きのうBSE問題に関する調査検討委員会というのが行われた、その中で、九一年当時、農水省幹部が圧力をかけた、余り大げさにしてほしくないというような記事が出ております。農水省に確認をしましたところ、これに関しては今確認中でお答えができない、その点に関してはお話が今はできないということで、内情はよくわかりませんが、この委員会に大臣は出席されておりましたでしょうか。

坂口国務大臣 私は、委員会がこちらであるものですから、出席をいたしておりません。

佐藤(公)委員 この話は、お聞きになられておりますでしょうか。

坂口国務大臣 けさ新聞で見出しだけをちらっと見ただけでございまして、それ以外は聞いておりません。

佐藤(公)委員 つまるところ、こういうことが一つ一つ出てくると、また不信感が生まれ、本当に景気に大きく影響してくる。せっかく今一生懸命やっていても、ここの部分での政府に対する不信感がまた募ることによって、国民のやはり狂牛病または経済に対する影響というのが非常に大きいと思いますので、こういう部分を、本当にないように、大臣の方からもよくよく厚生労働省内及び各省庁と連携をとって、お願いをしたいかと思います。

 さて、本題の方に移らせていただきますが、本会議場にて代表質疑をさせていただきましたが、大臣も雇用情勢は緊急事態を迎えたと述べられたような状況でございまして、雇用情勢は本当に緊急事態、まさにそのとおりだと思いますが、もう一度確認をさせていただきます。

 これは大変に漠然とした質問にもなるんですが、今の経済状況を、これは今までのほかの委員会でも大臣も多少御答弁になられておりますが、私は専門家じゃないからよくわからないというお答えをされた、私は記憶をしておりますが、もう一度御確認します。

 今の日本の経済状況、景気状況というのはどういうふうに御認識をされているのか。簡単にお願いをしたいかと思います。

坂口国務大臣 先生がお聞きになりたいのはどういうことなのか、十分にちょっと理解することはできませんけれども、現在、個人消費が非常に弱含みであるということ。あるいはまた、失業率が、先ほどからお話のございますように、五・三というふうに、急にはね上がったこと。それから、それだけではなくて、その中身を見ますと、新規の求人が減少をしていること、そして非自発的失業者がふえていること等々、ただ単に五・三に上がったというだけではなくて、その中身につきましても非常に厳しい状況になってきているというふうに思っております。

 そのほか、広い意味では、輸出につきましても、輸入につきましても、大幅に減少いたしまして、企業収益や設備投資というものも非常に減少をしてきている。こういう、全体に低下をしている状況が続いてきておりますので、全体として非常に悪化をしてきていると言わざるを得ないということではないかと思います。

佐藤(公)委員 もう既に、景気は、経済は、悪化したような状況というのは本当に御認識されていると私は思うんですが、先ほど金田先生の質問の中で、まさに正直なお気持ちが出たんだと思います。この経済状況、景気状況を変えていくためにはやはり構造改革をしていかなきゃいけない、でも、構造改革をしているようで、余り意味がない、していないのではないかというようなお話がございましたけれども、まさにそのとおりだと私は思います。

 では、本当にこの構造改革を進めていかなくてはいけないということ、これに関してもう一度、私は総理にもお聞きしましたけれども、本来の構造改革を進めるべきだということに関して、大臣、どのように思われるか、お答えを願いたいと思います。

坂口国務大臣 もうちょっと先生のお聞きになりたい御趣旨を聞かないことには私も答えにくいわけでございますが、構造改革をやらなければならないということは、これはもう紛れもない事実。そして、現状をどう変えていくかということが実は問題なんだろうというふうに思います。

 この現状をどう変えていくかということにつきましては、一つは、今内閣が進めておりますのは、非常に日本の国は規制の多い結果になってしまったので、規制改革というものを行って、そしてできるだけ自由に経済活動ができるような環境をつくり上げる、そこに新しい雇用もまたつくり出していこう、こういう考え方だと思います。五百三十万の雇用創出の案が出ましたときにも、これは金は使わずに雇用改革一本やりでできる案だというふうに言われて、僕もびっくりしたんですけれども、私はそんな調子にもいくまいと思っておりますけれども、日本の国の中がそういう改革を今進めようとしていることは事実でございますが、先生が本当にお知りになりたいのはそうしたことではなくて、もっと違うところにあるのかもしれませんし、ちょっともう少しお話しください。そうしたらお答えをしたいと思います。

佐藤(公)委員 実際は、大臣はもうよくわかられているはずなのでございます。あとはもう、やるかやらないかということになってくる。

 実際問題、過去の議事録、五年間分ぐらい僕も読みました。見ましたけれども、いつも同じ議論ばかりなんですよ。僕は本当に、あるときは答弁が全く一緒、行政のそういう答弁書の書き方。もう相変わらず、厳しい、一層の厳しさ、厳しさを増している、さらに厳しいとか、厳しい、厳しい、厳しい、もう順列組み合わせだけなんです。

 こういう議事録を読んでいて、僕は本当に何か情けないというか、でも、失業率はどんどん悪くなっているんですよ。なぜなるんですか。毎回毎回一緒なんですよ、ここ五年間ぐらい。構造改革の話も今までもずっと出てきています。出てきていますが、これはもう実際、やるかやらないか、やっているかやっていないか、そこに本当に尽きるという。

 これで私も同じような質問をしようかと思いましたけれども、本当に申しわけないので、余りするつもりもございません。これは質問者側にも問題があるのかもしれない。同じ問題をいつもいつも投げかける、同じような答弁が返ってくる。でも、今この行き詰まった状態、本当に危機的状況だったら、それこそ本当にやるかやらないか。

 大臣も御答弁されておりますよ、新しい産業を起こし、そして今後の雇用対策と構造改革の関係に関しては、新市場、新産業の育成によると。何を、新市場、新産業、そして新しい産業を、どうやって今の規制なりなんなりの撤廃なくしてやっていかれるのか、私は本当に考えてしまいます。

 こういう部分に関して、大臣が本当に、この過去の五年間分ぐらいの、これはもう大臣は重々御承知になられていると思いますが、本当にこの閉塞感をぶち破らなければ新たな雇用創出というのは生まれない、まさに厚生労働省の枠を超えている。確かにセーフティーネット、労働力の流動化、環境整備、やはりそれは必要です。必要ですが、大もとになるところが変わらなければ、いつまでたってもこの議論は永遠に続くのかな、こういう気がいたします。

 こういうことに関して、大臣、どう思われますでしょうか、お願いしたいと思います。

坂口国務大臣 経済の問題につきましては、同じようなことがずっと繰り返されてきたというのは、それはそうかもしれないというふうに思っています。きょうも午前中に井上先生が質問に立たれまして、そして、現在の失業状況等を見て、それは景気の後退というだけではなくて、産業構造そのものが大変大きく変化をしてきている、そのことによる失業が多いのではないかという御議論をされました。私もそれはそのとおりだというふうに思っております。

 最近のグローバル化の中で、日本の産業は大きく変化をしなければなりません。今までの二次産業を中心にしてまいりました日本の産業は、もうその二次産業を外国に、我々の周辺のアジア諸国に譲りながら、三次産業を中心にした産業を育成していかなければならない、そういう大きな環境変化があるわけでございます。もちろん、二次産業も大事でございますし、一次産業も大事でございますし、できる限り日本の中でできるような体制をつくるための努力を続けなければならないことは当然でございますけれども、大きな枠組みで言えば、日本はもっと大きな、三次産業への転換をしなければならない、そういう立場に立っているというふうに思います。

 そうした意味で、今までの枠組みを変化させなければならない。失業された皆さん方も、今まで二次産業の中で働いておみえになりました皆さんが、やはり自分は二次産業の中で働きたい、製造業の中で働きたいというふうに思われるのは当然だと私は思うんですが、しかし、なかなかそこがそういうふうにはいかないという現実があり得る。だから、そこを国民の皆さん方にも理解していただかなければなりませんし、また、国といたしましても、単なる三次産業というのではなくて、いわゆる二・五次産業という言葉がございますけれども、二次産業と三次産業とをミックスしたような、そうした新しい産業を構築していくというようなことも考えながら我々はやっていかなければならないんだろうというふうに思っております。

佐藤(公)委員 何となくわかるような、何となくわからないような、二次産業、三次産業をミックスしたようなということですが、いつも大臣、それで私ごまかされちゃうところがあります。

 僕は大臣に、大変僣越です、申しわけないですが、きょうの午前中の質問でもありました、大臣も本当にお考えが、そう思われる、私もそう思いますと言ったらそれで終わるのじゃなくて、思ったのであればそれをすぐさま厚生労働省の方に指示して、いついつまでにそれは変えます、ここまでの踏み込んだ答弁をいただければありがたいなと。何か、私も思っていますというふうに大臣に言われると、仲間に意識がなってしまって、一緒にそれで流されちゃう、そんな気がいつもいたします。

 私はまだ経験が不足しておりまして、何か煙に巻かれちゃうようなことがありますが、やはり大臣としてのリーダーシップ、そこのところは、同じように思うのであればすぐさま省内における指示を出していただけたらありがたいと思います。大変僣越かもしれませんが、大臣にそういう御答弁をこれから期待いたしたいと思いますので、お願いしたいかと思います。

 その構造改革の中で、これは一つ、新聞、報道等でも今取り上げられている特殊法人のあり方ということで、先般のタウンミーティング、タウンミーティングは厚生労働大臣も出られていたんでしょうか。例の道路公団、四公団の今後のあり方について、小泉総理が、マスコミ等においてはぶち上げたということで、道路公団など四公団民営化の方法は第三者機関にゆだねるとか、石油公団とか住宅金融公庫、都市基盤整備公団も廃止するとか、国費の投入三千億円をやめる。ある意味でかなり大胆な発言であり、これは構造を変えていく一つの流れ、柱になってくると思います。

 内閣一致ということで私どもはとらえておりますが、一応念のため坂口大臣にお尋ねしたいんですが、こういう政策に対して、省庁関係は別とはいうものの、支持はされている、総理の言われていることを強く同じように思い、推し進めていくということを思われているのか、そのつもりでいらっしゃるのか。いかがでしょうか。

坂口国務大臣 担当ではございませんけれども、総枠としての総理のその御主張には支持をいたしております。

佐藤(公)委員 ぜひ、本当に改革をやっていく上で、もうあとはやるかやらないかということだと私は思います。どれをやっていくかということですけれども、そういうところに坂口大臣の強い後押しもありながらやはり物事が実行されていくと思いますので、よろしくお願いをいたしたいかと思います。

 聞きたいことはたくさんあるんですけれども、ちょっと順番を、本会議場で聞いたこと、順不同ということでお聞きしたいと思います。

 小泉総理が、国民に痛みを強いるようなことばかりをおっしゃる。そういう中で、国民に痛みを強いるのであれば、まず自分が何を痛みを感じるのか、また痛みを差し出すのか、その一番というものは何かということを質問させていただきましたが、総理は、その質問に対してきちんとした御答弁をしていただけなかった。

 簡単にざっと申しますと、「私は、改革しない場合、痛みがないのかというと、そうでもないと思います。このままがいい、今のままが、現状がいい、今までの制度を全部維持したいといったら、別の痛みが出てくる。そうではないでしょう。新しい時代にはやはり、改革すべきもの、既得権を壊さなきゃならないもの、どちらにも痛みは伴う。」こういうふうにお答えになっているんです。

 僕は今、はっきり申しますと、国民に痛みを強いるんであれば、国民に、血を流せ、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、血を流せと言うんであれば、自分たちがみずから血を流す。何を血をお流しになるんですか、その血を流す一番のものは何ですかということをお聞きしたつもりなんですが。

 坂口大臣が小泉総理のそばにいられて、また、坂口大臣が、国民に痛みを、厚生労働省の分野でも痛みを強いるということも、ちょっと御発言も前にありましたけれども、そういう部分で、では、その分、同じ痛みを分かち合うのであれば、同じように血を流すのであれば、それこそ小泉総理及び小泉内閣、厚生労働大臣、厚生労働省としては何を一番痛みを、そして血を流すのかということに関して、大臣、いかがお考えになられるか。また、小泉総理がいかがお考えになっているのか教えていただけたらありがたいと思いますが、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 総理がどういうふうにお考えになっているのかは、これはもう総理にお聞きいただきたいと思いますけれども、厚生労働大臣として、やはり痛みを先にやらなければならない、自分たちで痛みを感じるようにしなきゃならないということは、やはり、厚生労働省関係の中での節減できるところ、むだな部分があれば、そこを一番先に削減をすることをやるということが私は一番大事なことだというふうに思っています。

 だから、今、行政改革、特殊法人改革等がやられておりますが、我々も、たとえ痛みが伴ってもそこはやらなければならないというふうに思っている次第でございます。

佐藤(公)委員 私は、国民に痛みを強いるのであれば、やはりそれなりに、自分たちが何を痛みを伴うのか、また痛みを差し出すのかということを明確にしてから言うのが筋だと思いますが、私は、その痛みというものがほとんど感じられない、見えないというふうに思います。小泉総理も、私も代表質疑の中で申させていただきましたが、反対勢力との闘いとか給料の一部カットということが痛みであれば、僕はそれはとんでもない間違いだと思う。そういうことをよくよく考えて、できる限りわかりやすく国民に見せていただきたいと思います。

 そして、ちょっと具体的に中に入りたいと思います。

 新たな緊急地域雇用特別交付金の創設ということで予算組みをしているわけでございますけれども、これに関して代表質疑の中でも、実効性の伴うもの、効果性が、効果がいかがなものかというようなことでの質問をさせていただきましたけれども、やはりこれの効果というものに関して、きょうも午前中からいろいろと御答弁をされておりますけれども、現場というのは、私、地方で何カ所かで聞いてまいりました。聞いてきましたらば、こんなの、こんなのと言っちゃ言い方は失礼ですけれども、こういうのをやってもらっても、根本的なやはり景気対策、経済の立て直し、構造改革をやってくれなかったら、雇用対策じゃなくてまさに失業対策。そして、もらっても、お役所の顔色を見ながら、何か出さなきゃいけないといって無理やりひねり出してやっているのが現状です、実情ですというようなことの話が幾つも聞こえてまいっております。

 ですので、これは大臣に一つの提案でございますけれども、本当にこの交付金の創設ということ、まさにこれ、議事録を大臣もごらんになってみればわかると思いますけれども、常に臨時的応急措置とか調整的応急措置、こんなことでやっているんですけれども、こういうものがずっと、何か延々続いているような感じがいたします。つまり、根本的なことができずに、常にその場しのぎの、やはりパッチワーク作業でずっと今日まで来てしまった。この抜本的なことを、一番最初にお話ししたように、やはり変えていかなきゃいけない、実行していかなきゃいけない。

 そして、現場は、厚生労働省さんの方、政府の方から、国の方から聞かれたら、もう大変にいい事業です、これはもうありがたいですとしか言いようがないと言うんです。でも、現場は、こんなことをお金でやられるよりも、このお金を早く、それこそ九月補正や何かでいただいて、ほかにも使いたいものがある、そういうところに回させてもらった方がよっぽど地方は助かる。ただそれを雇用というその場しのぎ的な部分でやるんだったら意味ないんじゃないのという声がたくさん聞こえてまいります。

 しかし、それは厚生労働省さんの耳には入ってないかもしれない、大臣のところまでは届かないかもしれませんが、その辺の本当に声と意見を、実態をもう一度確認していただきたい。ただ、みんなは、厚生労働省さんが聞いたら、とてもいい、使い勝手のいい、大変いい事業だということを言わざるを得ないということの話がたくさん出てまいりますが、その辺、実態調査をきちんと願えればありがたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

坂口国務大臣 私も、地元に帰りましたりしましたときには、近隣の市町村長さんや役場の人たちにもいろいろな意見を聞くわけであります。必ずしも意見は一致いたしておりません。今御指摘になりましたように、ぜひこれはいいから早く欲しいとおっしゃるところもあるし、もらっても余りこれは役に立たないねというところも率直にある。もう、役に立たないで要らなければ、どうぞ御遠慮なくお返しください、無理に使っていただく必要はありません、こう申し上げているわけでございます。

 しかし、今回のこの案件は、これは午前中にも御答弁申し上げましたように、つなぎの政策であることには間違いがございません。

 それで、中長期的な展望に立ちました政策というのは当初予算の中に組まれているわけでありまして、そのことを我々は今一生懸命にこなしているわけでございますが、しかし、こなしながらも、その中で、これだけ急に失業者がふえてくるということになればそれだけでは足りない。したがって、やはり一時的であるにしろ何かの職におつきをいただいて、そうしてその間に次のことをお考えいただく、そういう使い方をしていただこうというので今回この案をつくったわけでございます。

 この案をつくったから、これで雇用が増大するということは私たちも考えておりません。ただ、使い方によっては、半年なり一年間の間のこの勤務ということがもう少し恒久的な雇用に結びつくような使い方を市町村がしていただければそれにこしたことはない、そう思っている次第でございます。

佐藤(公)委員 私も大臣秘書官を二回やらせていただきましたけれども、大臣のところには割といい話しか入ってこないのが多うございます。ですので、全部が全部疑うべきことじゃないと思いますけれども、常にその辺は疑いを持って、やはり直接の意見なり考えを聞けるような形をとっていただいて、本当に国民の大事な税金ですので効率よく効果的に使っていただきますことをお願い申し上げたいと思います。大変失礼な言い方かもしれませんが、くれぐれも裸の王様にならないように、現場の意見をできる限りいろいろな情報網を使って聞き上げて、実効性、効果性の高いものの政策をお願いしたいかと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 木島日出夫君。

木島委員 木島日出夫です。

 きょうは、雇用対策臨時特例法案の審議でありますが、先立って一点だけ、クロイツフェルト・ヤコブ病裁判について大臣の決断を求めたいと思います。

 十一月十四日に、東京地裁で、そして大津地裁で、和解に関する所見が出されました。国の責任を厳しく指摘し、被害者救済のため速やかに和解のテーブルに着くことを国に求めたものであります。二十二日が大津地裁の口頭弁論期日でありますし、東京地裁は二十七日までに回答を求めております。

 裁判所の所見を厳粛に受けとめて、国として直ちに責任を認め、薬害ヤコブ病問題の即時全面解決のために和解のテーブルに着くことを、その決断を厚生労働大臣に求めたいと思いますが、御所見を伺います。

坂口国務大臣 ただいま御指摘をいただきましたとおり、大津地裁の方は二十二日、そして東京地裁の方は二十七日までに回答をということになっておりますので、両地裁の日程が違いますけれども、両方とも二十二日には決定をしたいというふうに思っております。二十二日の日には決定をして、そして地方裁判所の方に御答弁を申し上げたいというふうに思っております。それは、東京もそして大津の方も、両方でございます。

 私、今申し上げておりますのは、今までから、両地裁の和解勧告につきましては、この和解勧告の御趣旨というものを十分に尊重させていただいて結論を出させていただきます、こういうふうに申し上げてきたわけでございます。そして、今回、その和解勧告の方向性、全部が出たわけではございませんけれども、大筋の方向性というものをお示しいただきました。それで、この趣旨を読ませていただいた上で、両地裁の御主張というものを十分に尊重させていただいて対処をさせていただきます、こうお答えを申し上げているわけでございます。

 そこの尊重申し上げるという言葉に変わりはございませんけれども、しかし、前に申し上げたときと現在申し上げましたときとは、それを読ませていただく前と後でございますから、内容は異なっていると思っております。

木島委員 本来の雇用対策について、質問を移らせていただきます。

 御案内のように、既に九月の完全失業率が五・三%、完全失業者が三百五十七万人、史上最悪の状況であります。潜在失業者を加えますと十人に一人が失業という大変深刻な現状にあります。

 失業率を押し上げた一つの大きな要因は、大企業の雇用削減だと私は思います。数字が物語っております。従業員数が四百九十九人以下の中小企業では、ことしに入っても雇用がふやされております。その一方、五百人以上の大企業は、ことし八月の数字でありますが、対前年比四十万人もの雇用が減っているわけであります。加えて、我が国の電機、通信、情報大企業は、いわゆるIT不況を理由にして今大規模なリストラ、人減らし計画を進めようとしております。電機大手十四社だけで削減規模は十万人を超えております。

 厚生労働大臣にお聞きしますが、こうした大企業による人減らしをとめることが政府の第一の雇用対策でなければならないと私は思います。そこで、政府の九月二十日の総合雇用対策や今審議をしておりますこの雇用対策臨時特例法案の中には、こうした大企業の人減らしに対する規制、歯どめをかけるものはあるんでしょうか。これは端的に、あるなしで答えていただきたい。

坂口国務大臣 そうした角度からのものはございません。

木島委員 政府はなぜこうした電機や通信大企業の人減らし計画を抑える政策をとろうとしないのか。雇用問題を考えるときに、バケツに大きな穴があいたまま、それを放置していささかの対策、水を入れても、バケツの水はふえないどころかますます減ってしまう、そういう理屈が成り立つのじゃないでしょうか。なぜそういう人減らし計画を抑える政策を政府としてとらないのでしょうか、厚生労働大臣。

坂口国務大臣 経済がこういうグローバル化いたしました中で、そして日本の企業はそれなりに生きていかなければなりません。したがいまして、このグローバル化の中で生き延びていくための対策というものをそれぞれの企業がおとりになっている、その企業の自主性というものをやはり私たちは尊重しなければならないというふうに思います。

 しかし、私は、総論としてはそういうことではございますけれども、大きい企業には大きい企業としての責任と申しますか、社会に果たすべき役割というものがあるというふうに思っています。中小企業とは異なりまして、大きな企業であればあるほど、やはり社会への責任というものは大きいというふうに思っているわけでございます。

 したがいまして、それぞれの企業が、自分たちの企業の将来をどうしていくかということを考えて、そしていろいろの対策を講じると同時に、やはり社会性というものも尊重しながら、雇用の問題につきましても最大限の努力をすることは当然の責務であるというふうに思っている次第でございます。

    〔委員長退席、谷畑委員長代理着席〕

木島委員 今大臣は、グローバルの中で企業は生きていかなければならないということと、一方、大手企業には社会への責任というものが大きいと、二つのことを述べられました。

 具体的に聞きますが、今、大手電機メーカーは一斉に、本当に大規模な、万単位のリストラ、人員削減を進めております。

 経済的な話での答弁がありましたが、それでは、これらの大規模な人員削減は、我が国の裁判所が確立し、厚生労働省もこれまでその啓発に努めてきたいわゆる整理解雇の四要件、これに照らして許されるものなんでしょうか。

 これらの人員整理には、その四要件の中でも根本要件と言われている整理解雇の必要性はあるんでしょうか。企業の維持、存続が困難であるほどの差し迫ったもの、あるいは高度の経営危機下のもとでなされるものという、この整理解雇の一番大事な必要性が、今目の前で繰り広げられている我が国の大手電機メーカーのリストラ、人員削減にはあるのか。こういう要件を満たしていると。

 厚生労働大臣はどうお考えですか。どうこれを認識して今のような答弁が出てくるんですか。

 これはもう大臣の基本ですよ、整理解雇の四要件は厚生労働省がこれまで啓発に努めてきたんですから。これに照らしてどうか、大臣はどうかということを聞いているんですよ。細かい話じゃないんですよ、基本ですよ。

日比政府参考人 委員お尋ねのように、整理解雇四要件というものがございます。

 現在、電機の業界で、おっしゃられるような意味のリストラクチャリング、これにつきましては、グループ内でいろいろ人を動かすとか、いろいろな形があるわけでございます。これがもし解雇という形をとった場合に、もちろんいろいろなケースがあろうかと思いますが、委員は転籍その他も含めておられるのかもしれませんけれども、これが解雇という形をとった場合に、もし争われていくとしたら、従来の整理解雇四要件というものがその場合適用される。

 ただ、今伝えられるところでは、私もすべてを隅々まで承知しておりませんが、いろいろな話し合いの中で一定の案をつくっていっているということではないかと思いますので、その場合、整理解雇四要件というものがそのままストレートに適用を見るということになるかどうかについては、いろいろあろうかと思います。

木島委員 大臣、答弁ありますか。

坂口国務大臣 企業におきます解雇というのはさまざまな状況の中で行われているわけでありますから、なかなか一律にどうこうということを論じることは私はできないというふうに思いますが、だから私はその解雇ルールというものをちゃんとしておかなきゃならないということを言っているわけでありまして、現在、四要件という高等裁判所の御主張はありますけれども、しかし、それはやはり特定の裁判に対する結論でありまして、私は、それですべてのことをいろいろ言っていくことはなかなか難しい面もあるのではないか。

 だから、これだけ雇用が多様化をされてくる、そうした中で、働く人たちが安心をして働いていただくためには、やはりそれ相応の国としての考え方というものを持たなければならないというふうに私は思っております。

木島委員 もちろん、裁判ですから特定の争いに対する判決であります。しかし、この整理解雇の要件に関しては、何十年という積み重ねの中で日本の司法、裁判所が確立をしてきたルールになってきているんですね。ですから、そのルールについてはこれまでも、旧労働省もみずからパンフレットをつくり、四要件があるんだよということを示して、企業に、これに反するような乱暴な人減らし、解雇はやるべきでないという趣旨の啓発をやってきたんじゃないでしょうか。厳然としたルールが、立法がないために、裁判所がつくってきた、そういう状況じゃないでしょうか。

 私は、今目の前で吹き荒れている大電機メーカーの人減らし、合理化がこの要件に合致するかどうかは、やはりそれは行政がしっかり目を光らせるべきだと思うんです。確たる根拠も持たないで、電機大企業の身勝手な人減らしをいささかも是認するような態度を政府や厚生労働省はとってはならぬと思うんです。

 実態は全く逆だと思うんですね。数字を挙げましょう。

 本年三月期の連結決算を見ますと、経常利益で、例えば日立は三千二百三十七億円であります、前期比二千四百四十四億円増であります。東芝も千八百八十億円の経常利益で、前年比二千三百二十億円増。富士通も千八百九十八億円の利益で、千百九十六億円増。NECも九百二十三億円で、六百二十億円増。ソニーも二千六百五十九億円の利益で、十六億円増。松下だけは対前年比減になっておりますが、それでも千七億円の経常利益を出しているわけであります。内部留保も、大体、電機大手メーカーで十兆円を超える大きなものがある。たまたま今IT不況で今期これが赤字決算であろうとも、企業の土台が揺らいで大量の人員整理をしなければならないような状況では全くないのではないでしょうか。

 そうすると、日本の司法部が確立をしてきた整理解雇の基本的なルール、厚生労働省もこれまでそれを啓発してきたこの基本的ルールに照らしても、今目の前で引き起こされている少なくとも大手電機メーカーの万単位の人減らし、これは根拠がないのではないか。そういう立場に立って、雇用を守る最高の行政府は厚生労働省ですよ、そういう立場に立って行政こそ進めるべきじゃないでしょうか。そこを聞いているんです、厚生労働大臣。

坂口国務大臣 それぞれの企業におきましては、それぞれの大きい労働組合もあるわけでありまして、そうしたお話し合いのもとにそれは決められていることでありますから、我々がそのことに対しましてとやかく言うべき話ではないというふうに思っています。

 しかし、国全体としてこれから雇用のあり方をどうしていくか、これは大変重要な問題でございますから、裁判所からの判例はあるかもしれませんけれども、しかし、それに頼っていていいのか、やはり立法府は立法府としての責任を果たさなければならないのではないか。そのためにはどうするか、何をつくるか、そういうことを真剣に、だからこそ明確にしていかなければならないと私は主張しているところでございます。

木島委員 司法の問題と立法の問題を挙げられましたが、私は、まさに行政こそ責任がある。今の答弁は、雇用を守る行政としての責任の放棄ではないかと思えてなりません。

 解雇に関するルールづくりの論議が今厚生労働省の審議会の小委員会でも進んでいるようでありますが、私は、断じて、きょうはその問題に深入りしませんが、解雇を促進するようなルールであってはならない。逆に今、日本の司法部が確立をしてきた整理解雇四要件のルールをしっかり雇用を守る方向で法律に固めていく、そういう方向こそがルールづくりに当たっては求められているということだけ指摘をして、具体的な問題に進んでいきたいと思うんです。

 私は昨日、我が国ITのトップ企業であり、大手電機メーカーの中でも最大規模の二万一千人の人員削減のリストラ計画を推進中の、富士通株式会社の長野工場のある長野地方を調査してきました。そこでは、地元の新聞、信濃毎日新聞が、出るも地獄、残るも地獄と表現した、すさまじいばかりの受注の激減、削減、失業、配転で苦しむ労働者や関連企業の姿がありました。ここでは個別的な労使関係の問題については後回しにして、最初に、この企業に関する集団的な労使関係の問題についてまずお尋ねをしたいと思います。

 長野県の佐久市に、株式会社高見澤電機製作所信州工場があります。これは、継電器、いわゆるリレーです、通信機器、制御機器のメーカーでありまして、東京証券取引所二部上場の会社でありました。

 富士通は、昭和三十七年にこの会社の株式三四%を取得して系列下に入れました。そして、平成七年にはこの会社の株式五三%を取得して子会社としたわけであります。そして同時に富士通は、この子会社とした株式会社高見澤電機と共同出資の富士通高見澤コンポーネントという会社を設立して、リレー、継電器部門は株式会社高見澤電機から富士通高見澤コンポーネントに営業譲渡させてしまったわけであります。おいしいところをまずとったわけです。

 さらに、平成十三年、富士通の意向を受けて、株式会社高見澤電機と富士通高見澤コンポーネントは、非常に複雑で、私は法務委員会ですからこの論議に携わりましたが、株式移転という新たな方法によって、持ち株会社富士通コンポーネント株式会社を設立しました。これを東京証券取引所二部上場させまして、そして一方、株式会社高見澤電機は上場廃止とされたわけであります。そして同時に富士通は、株式会社高見澤電機の技術開発、生産計画、製造技術等、まさに心臓部門である主要な部門はすべて株式会社富士通コンポーネントに移管してしまったのですね。恐るべき事態であります。

 これら本当に複雑きわまりない組織再編は、すべて富士通の意向によって行われ、高見澤電機の労働組合、JMIU高見澤電機支部、組合員百人でありますが、これに対する組合つぶしの目的も持ってなされたものであります。

 そして今、株式会社高見澤電機は、富士通の意向によって、受注が七割減らされていきました。そして、月八日、賃金六〇%の一時帰休を労働組合に押しつけようとして提起をしてきたわけであります。当然のことながら、労働組合はこれらに反発し、当面、直接の雇用主である高見澤電機会社に対して、会社の存続、発展のための今後の経営計画、事業計画、そしてそのもとでの労働者の雇用の確保等、労働条件の維持向上のための方策を求めて意見書を提出いたしましたが、実際、富士通の意向なしには何の意思の決定もできない、そういう状況になっている高見澤電機の経営陣からは、回答すら来ないという状況なのですね。

 そこで、やむなく労働組合は、今月十二日、つい最近でありますが、高見澤電機とその労働者、労働組合に対する人事労務はもとよりのこと、すべての支配権を持って、それを現実に行使してまさに高見澤電機をつぶそうとしている、そこで働く労働者全員解雇につながるような攻撃をかけてきている大もとの富士通株式会社、その下の富士通コンポーネント株式会社、そしてその下の、当然ですが株式会社高見澤電機に対して、さきに述べたような要求を持って団体交渉の申し入れをしている、こういう状況なのです。

 そこで、厚生労働省にお聞きしますが、こういう状況の場合に、大もとの富士通、またその下の富士通コンポーネント、これらは、高見澤電機の労働者から要求が出ている団体交渉に関して、労働組合法七条に基づく団交応諾義務があると私は考えますが、答弁願います。

坂本政府参考人 労働組合法上の団体交渉応諾義務の問題でございますけれども、労働組合法上、団体交渉応諾義務がある使用者といいますのは、一般的にいいますと、その労働者との間で雇用契約の当事者となっている者を指すというふうに解されているわけでございまして、ただ、これにつきましては、親会社の使用者性が争われました最高裁の判例におきまして、形式的には雇用主でない場合であっても、雇用主と同一視し得る程度に子会社の労働条件を実際に決定している者は、その限りにおいて使用者であるというふうにされているところでございます。

 団体交渉の応諾義務のある使用者であるかどうか、この判断につきましては、それぞれの個々具体的な事案に応じて判断されておりまして、一概にはなかなか言えないわけでございますけれども、今お話ございましたように、親会社ですとか持ち株会社、こういったところがグループの経営戦略に基づいて子会社の経営を行っているからということだけをもって使用者性を認めることは、なかなか難しいのではないかというふうに考えております。

木島委員 単なる経営戦略を持ってやっているだけではなくて、具体的に仕事の状況、労働者の雇用の状況、整理解雇のあり方、転籍のやらせ方、徹底的にそういう子会社、孫会社まで支配し指図しているのが現在の大手電機メーカーのあり方ですよ。

 九七年の通常国会におきまして、持ち株会社解禁のための独占禁止法改正法案が審議された衆議院商工委員会におきまして、九七年五月十四日、附帯決議がなされました。「持株会社の解禁に伴う労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。」こういう附帯決議であります。

 この履行状況はどうなっていますか。もう二年は過ぎましたが、どうなっていますか。

坂本政府参考人 平成九年の独占禁止法の一部改正でございますけれども、その附帯決議を踏まえまして、平成九年の八月に、労使及び学識経験者から成ります持株会社の解禁に伴う労使関係懇談会というものを設けまして、検討を開始いたしました。そして、平成十一年の十二月に中間報告が取りまとめられたところでございます。

 この中間報告の中では、持ち株会社の使用者性につきましては、子会社の具体的な労働条件の決定まで関与する場合には使用者性が問題となるケースがあるが、その場合にはこれまでの判例の積み重ね等を踏まえた現行法の解釈で対応を図ることが適当であると考えられる、こういうふうにされたところでございます。

 懇談会におきましてはこの附帯決議に基づいて二年間検討を行ったわけでございますけれども、その時点で持ち株会社の設立がほとんど進んでいないといったようなことを踏まえまして、中間報告として、この時点における検討結果の取りまとめを行ったところでございます。

木島委員 平成十一年十一月二十九日に、今答弁された中間取りまとめが出されました。私、ここにあるのです。

 その中にはこういう記述もあるのですね。純粋持ち株会社が子会社の経営に関与するとしても、それは経営目標の提示や役員人事等にとどまるのであって、日常的な経営判断、事業活動については、子会社が決定権限を有し、子会社の裁量により事業活動が行われているものである。こう書かれているのです。今答弁のように、だから当面労働組合法の改正などは必要ないかのごとき中間取りまとめになっているわけであります。一昨年の現状認識なのでしょう。

 しかし、現在、我が国で行われている大手電機メーカー等の異常なリストラ、人減らしはそんなものでは全くありません。先ほど私、その一部を述べましたが、富士通なんかもその典型であります。ほかの大手電機メーカーも全部そうであります。持ち株会社、あるいは事業持ち株会社、あるいは純粋持ち株会社が、その統括しているすべての子会社、孫会社、関連グループ、その従業員に至るまで、徹底した解雇や転籍や出向会社などの采配を振るっているわけであります。それを執行させている、それを強行しているわけであります。子会社の経営陣に当事者能力など全くないのが実態ではないでしょうか。その典型の高見澤電機を私は見てきました。要求をしても答弁すらできない、そういう状況なのですね。

 中間取りまとめのこうした認識は、根本的に改める必要があるんじゃないか。この二年間、純粋持ち株会社も生まれてきました。商法改正によって会社分割法制もつくられていきました。さまざまな手を弄して大手企業は独占、集中を強めて、たくさんの子会社、孫会社を支配下に置き、そしてそれを自由自在にいじくり回して、今、労働者の乱暴な首切りや下請切り捨て、国内産業の空洞化を進めているのです。

 根本的にこの認識を変えて、その労働者のみずからの雇用、地位を守るためには、一番上の支配をしている持ち株会社に向かって物を言う、持ち株会社はその責任を受けて団交にも応諾をする、こういうルールをつくらなければ現状に合わないんじゃないか。

 これは、厚生大臣、どうでしょうか。さきの商工委員会の附帯決議には、時の通産大臣ですか、重く受けとめるという答弁を当然しているわけでありますから、当然、こういう現下の企業法制の中での問題に対しては、一番トップの企業、実質支配している企業、そして首切りなどを指令して指示させ実行させている企業も団交応諾義務があるような法制こそ求められているんじゃないでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。

坂本政府参考人 一般論で申し上げますと、持ち株会社といいますのは、企業グループの経営戦略というのと子会社の日常的な経営判断や事業活動というものを分離しまして、各子会社の日常的な経営判断から離れて中長期的な視点に立ってグループの経営戦略を親会社が決定する、そういったことを可能とすることによって効率的な企業経営を目指そうとするものであるというふうに考えておるわけでございます。

 企業がその組織再編を行うに当たりまして、どういった形でやるのか、持ち株会社の設立を含めてどういった手法を選択するかは、企業の自由な経営判断に基づいて選択をされるべきものであるというふうに承知をいたしております。

木島委員 大臣、そんな認識では違ってきているということを、私、今説明したはずです。そんな認識で今のリストラ、首切り、人減らしを見ていたら間違う。厚生労働省の責任は全うできない、働く皆さんの雇用を守る責任は全うできないから今問題を提起しているんです。労働大臣の認識を最後に伺って、時間ですから質問を終わりますが、答弁を求めます。

坂口国務大臣 具体的な例につきましては私もよく存じ上げておりませんし、今初めてお聞きをするわけでございますから、それに対して具体的にお答えをすることはでき得ませんけれども、しかし、初めに申しましたとおり、企業には企業戦略というものがあることは、これは認めなければならない。

 しかし、大きい企業であればあるほど、そして、その配下の企業に対して、あるいは子会社の企業に対して、それなりのやはり責任を持って対応しなければならないことは、それは私は事実だというふうに思っている次第であります。

谷畑委員長代理 時間が参りましたので。

木島委員 終わります。

谷畑委員長代理 はい、御苦労さまでした。

 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子でございます。

 雇用対策臨時特例法案にかかわって、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、先般の金曜日の本会議でも、私どもの代表が、小泉総理の七百万人求人発言の根拠について質問をしましたけれども、明快な答えが明らかになっておりません。

 今日の雇用状況を見たとき、小泉総理の言われるような七百万人の求人があって、それはバブル期に匹敵するような水準などということ、数字だけがひとり歩きしているように思えてなりませんけれども、この七百万人の求人というのは、厚生労働省の職業安定局が作成した職業安定業務統計にもその数字が載っておりますけれども、その算出の根拠の数字の立て方はどのような計算になって出てくるのですか。

澤田政府参考人 職業安定業務統計、私どものハローワークの窓口の業務計数を全国で集計するものでありますが、ここに掲上されております平成十二年の各月の新規求人数を十二カ月足し上げた数、これが七百三万一千強という数字でございます。

金子(哲)委員 その七百万という数字が、小泉総理がよく使われるわけですけれども、今お話があったように新規の求人ということであれば、一つの例ですが、職安に出して三カ月求職と応募がなかったという場合にはまた再度出すわけですから、積み立てていくということになって、実際上の今の雇用の状況の中で本当に七百万人もあれば、同じ数字の統計では求職者六百六十万ですから、むしろ求職活動の方が少ないわけですから、やらなきゃいけないのに、現実はもう深刻な雇用状況なわけでしょう。だからこそ、緊急雇用対策をやらなきゃいけない。

 大体、総理大臣の認識というのは、私はそういう数字を出して厚生労働省が説明していること自身がおかしいと思うんですよ。

 大事なことは、今の雇用状況の一番の問題は、やはり有効求人倍率とか完全失業率にあらわされている数字、まあ完全失業率というのはむしろ表面的にあらわれたもので、潜在的な失業者数を確実に把握していないと思うんですが、それでも、有効求人倍率自身を見ても、例えば厚生労働省の統計でも、平成十二年、〇・六二であったものが、今、十三年の九月は〇・五七と悪化しているんじゃないですか。

 その点について、今の雇用状況というのはそんな、七百万と声を大きくしているような雇用状況でないという認識に立っていると思うんですけれども、厚生労働省のお考えをお聞きしたいと思います。

澤田政府参考人 新規の求人は、委員御承知のように、当該月に出てきた求人、これが十二カ月積み上がって七百万になったわけですが、私どもは通常、ストックとしての求人と求職を比べて、有効求人倍率という指標を用いて情勢判断をしておりますが、実際にどれぐらいの求人があって、どれぐらいの求職があるかということをその時点で判断するには有効ベースの方が比較的実態に近いだろう、こう思っております。

 ただ、総理が七百万という数字を出したのは、景気の先行指標としての新規求人というものが位置づけられておりまして、下がっているとはいえ、まだかなりの求人が毎月毎月出てきているということを強調したいということで御使用になったものと思っております。

金子(哲)委員 この質問だけで時間をとるわけにいきませんけれども、そこのところの認識が、こういう七百万、今おっしゃったように新しい求人はもちろん出てきますよ、出てきますけれども、今の大事なことは、今の雇用状況、リストラによってこれだけの大量な失業者が出て、しかも求人数も減っているという状況をきっちりと把握してもらって、そこから出発して物事を考えていただかないと、七百万あってバブル期よりもまだ求人がたくさんあるほど調子がいいようなことを出発点にしてこの雇用問題をまず考える、総理がそういう意識で物事を考えて雇用政策をうたわれるんだったら、大きな間違いだということを指摘しておきたいと思います。

 二つ目に、そして総理は、もうしょっちゅう雇用のミスマッチということをおっしゃいます。私もミスマッチがあると思います。なかなか就職ができない。しかし、総理がおっしゃるときに、雇用のミスマッチの大きなことは、職業能力が求人側と求職側にアンマッチだからなかなか就職が可能でないという話が非常に重要に強調されております。しかし、実際のミスマッチというのは、そんな職業能力の問題ではなくて、労働条件に大きなミスマッチがあるために就職ができないというのが現状ではないでしょうか。

 例えば、年齢別の有効求人倍率を見ると、三十五歳から四十四歳は〇・九六ですけれども、四十五歳から五十四歳は〇・三九と低くなっております。五十五歳以上になると〇・一九倍です。四十五歳以上が急減している求人の状況、まずそれが第一にあると思います。

 実際上には、最近は改正雇用対策法によって年齢制限はしないことが努力義務とされておりますけれども、実際にそのような求人広告が出ておりますが、実際と建前とは違うわけで、行ってみれば、実際の受け手の側、求人を出した企業の側は、できれば四十歳以下の人が欲しかったのだという本音が実際には出てくるというのが現実のところですね。だから、情報検索のパソコンが今出されておりますが、私も現場を見ましたけれども、確かにそれを出せば、条件だけ見ればかなりの件数が出るように見えますけれども、実態上に会うときは、非常に自分たち求職をする側の条件と合わないことが多い。

 もう一つの例は、例えば中途採用者の初任給の問題です。非常に低い額になっております。私は、この賃金のミスマッチというのも実は雇用を創出する際に大きな条件になっていると思います。

 例えば、本年九月の常用労働者に対する新規求人に関する賃金を見てみますと、これは厚生労働省も調査されているのでよく御承知のとおりですけれども、上限の平均が二十四万です。求人の下限の平均は十七万五千です。これがまた年齢を問わず同じような状況になっていて、しかも、その金額のピークは実は三十五歳から四十四歳になっておりまして、四十五歳以上、今これから対象になろうとする四十五歳以上になると、通常我々が考えるときは賃金は右肩上がりだというふうに考えるのですけれども、これが下がっていくわけですね。

 そうすると、実際には、特に扶養家族など多数の家族を抱えている人たちにとって、月収、これは上限で二十四万、下限で十八万で今就職ができるのか、そして家族を養える賃金なのか、こういう問題が私は実はあると思うのですけれども、その点についてどうお考えですか。

    〔谷畑委員長代理退席、委員長着席〕

坂口国務大臣 各年齢別のミスマッチを見ました場合に、今お話ございましたように、三十四歳以下のところは、労働条件、すなわちその中で賃金が合わないというのが一番多いと思います。それから、四十歳以上ぐらいになりますとこれは年齢制限が出てくるわけでございますが、私は、この年齢制限というのも賃金というものが裏側にあると思っています。それは、若い人の方がいい、使いやすいということもあるいはあるかもしれません。しかし、それだけではなくて、年齢を制限するという裏には賃金を抑えたいという思いがあってこの年齢制限という形で出てきている人も私は多いと思っています。

 ですから、トータルで見ました場合に、ミスマッチと言われていろいろありますけれども、その中でやはりこの賃金の問題が最も大きいのではないかと私も考えております一人でございます。

 さて、ここを一体どうするかということだと思います。ハローワークの方にお邪魔をいたしまして、いろいろ私も具体的なケースも拝見をいたしておりますけれども、その中で、本当に低い、二十万なら二十万そこそこの賃金しか示していないような企業におきましても、そこをよく聞いてみると、この企業の中に来て一年なら一年仕事をしてもらって、そして片腕になってくれるような人であるならばこれはもっとうんと上げてもいい、だけれども初めから上げるわけにはいかないというようなところもありますし、何年いましてもそれは上げるわけにいかないというところもあったり、それは私は内容がいろいろだというふうに実は思っております。

 しかし、入り口のところでは非常に低い値になっていることだけは間違いないというふうに思っています。だから、ここが、これがこれからの最大の問題になるというふうに私は考えております。

 この問題は、長く話すと失礼でございますからこれだけにしておきますけれども、いつかも申しましたとおり、アメリカ型は、どちらかといえば、賃金を下げて、そのかわりに雇用の幅を広げて、広い雇用の幅の仕事をする、そのかわりに賃金は平均したら下がるということを認めてきた。ヨーロッパの方は、雇用の幅は圧縮をして、狭い、自分たちに合ったできるだけ高い内容の仕事の幅にして、そのかわりに賃金は保ってきた、賃金は保ったけれども、そのかわりに失業率が高くなった。

 このいずれを日本は選ぶのかということを外国は日本にずっと言い続けてきたわけでございますが、私は、いよいよ、このどちらを選ぶということでない、日本はその中間点にだんだんと来ているような気がするわけでございますが、ここのところをどう乗り切るかということをこれから考える、経済全体で考えるというのが一番私は重要な点だというふうに今認識しておる次第でございます。

金子(哲)委員 賃金の問題というのは、今ワークシェアリングの問題も論議になっておりますが、現実的な問題として、やはりこれまでの給与に対して余りにも低過ぎるところでの生活再建というのはできないというところでミスマッチがあるということになります。

 そしてまたもう一つは、これは質問に答えてもらわなくて結構ですけれども、もう一つ大きな問題は、やはり求人の中身だと思うのです。ほとんどの圧倒的な人が常用雇用を望んでいらっしゃる、当然のことですけれども。それに対して、実際の求人側の常用雇用というのは七割ぐらい、残りはパートの求人が多いという状況がありまして、この問題も大きな問題、ミスマッチの大きな原因になっているわけです。

 私があえてこのことをしつこく言っているのは、小泉総理にはもっとぜひ厚生労働省はこういう現実を、こういう雇用状況、求人状況という現実をもっとお話をしていただいて、それに基づいて、痛みを本当にわかっていただいて雇用政策を進めていただきたいという思いで、あえて強く申し上げておきたいと思います。

 そして、そうなってきますと、ハローワークとかそういったところの働きが現状では非常に重要になってくるということであれば、公的な職業紹介として、特に求人部門の開拓ということ。私もハローワークに行ったときに、職員の中で任務分担をしながら交代で外に出て求人活動をやっていらっしゃるということを聞いてまいりましたけれども、求人活動というものをもっと機能をアップする。そしてまた、相談事業自身が、数が多いということもあって、三分ないし五分で一人を処理しなきゃいけないという現場の機能というものを、もうちょっとレベルアップするというか、機能を強化していくということが必要だと思いますが、その点についてどうでしょうか。

坂口国務大臣 そこは私もそう思っております。

 一番大事なところは、今、一にかかりまして、ハローワークなり民間の職業紹介所なり、そうしたところの活躍にかかってきているわけでありまして、ハローワークは忙しいものですから、だんだんお一人お一人の時間が短くなってきている。だから、ここを何とかしないといけない。

 それで、各企業等で今まで人事のことをおやりになった、あるいはまたそういう職業の、就職等のことを今までおやりになってきたような皆さん方にぜひ来ていただいて、そして、その皆さん方をひとつ雇い入れることによって、新しい雇用の開拓でありますとか、それからミスマッチの解消等に当たらなければならないというふうに思っています。

 先日も、大阪にお邪魔いたしまして、大阪のハローワークにお邪魔しましたときに、いわゆる嘱託みたいな形で来ていただいている皆さん方だけで雇用を一万件、年間ですけれども、開拓をしたというお話を聞きまして、その活躍ぶり、大変なものだというふうに思ったわけです。

 その皆さん方というのは、会社で今までいろいろなことをおやりになっていた方だけに人脈も非常に広いわけでありまして、やはりそういう人にお願いをするのがいいというふうに思っておりまして、キャリアカウンセラーあるいはアドバイザーとも言ったりもいたしておりますけれども、そういう人を緊急にひとつ各ハローワークに配備をしていきたいというふうに思っている次第でございます。

金子(哲)委員 これは、ちょっと時間のこともありますので要望だけしておきますけれども、私もハローワークに行って、非常にたくさんの人がいらっしゃって、実はプライバシーの問題ですね。

 相談窓口の受付ということで、もうほとんど距離なしで、隣ともひっつく感じで相談を受けていらっしゃる。民間の紹介所でいえば、求人、求職者の個人的秘密を保持し得る構造であるというような基準があるにもかかわらず、公的なところだけはプライバシーの保護ということが非常におろそかになっていると思うんですよ。構造上、スペースの問題もあってなかなか難しいこととは思いますけれども、これからぜひ可能なところから相談スペースの確保など改善をしていただきたいということ、これは要望で申し上げておきたいと思います。

 次に、今回の法案の改正の中で職業訓練のことについて触れられておりますが、この点について質問したいと思います。

 現在の職業訓練の実態というのは、委託のものはほとんど一カ月もしくは三カ月、しかもほとんどがIT関連の状況になっておりまして、ポリテクセンターなどの長期訓練は六カ月コースがあって、しかし受講できる人数も限られている。例えば広島のポリテクセンターの募集要項を見ますと、八コースほど十月から始まる。十五人の八コースですから、わずかに百二十人です。これがまた一月から、同じ数ですから百二十人ということです。

 実際に長期的なことをやった方が、施設内でやった受講者の方が就職率が高いということも、厚生労働省も把握されているように六割で、委託の場合は四割ということになっていて、この中身を変えていくという、きちんとしたコースをもっと充実させていくということが非常に重要だと思いますけれども、その点についてどうですか。

酒井政府参考人 お答えを申し上げます。

 ITにつきまして先生最初におっしゃいました。ITにつきましては、御案内のように多くの職場がIT活用能力を求める傾向にあるといったことで、それを踏まえた対応をしているということでございますけれども、それ以外がむしろより力を入れなきゃいかぬというふうに思っておるところでございまして、ホワイトカラー系について、今おっしゃいましたような三カ月の委託訓練であるとか、あるいは技能系、確かに離職者につきまして六カ月の公共訓練をやっております。それぞれ、コースにつきましては、地域人材育成協議会ということで、地域の教育関連機関、あるいは雇用関係の機関、あるいは事業主団体の皆さんにお加わりをいただきまして、コースの開発を具体的にもうやってきております。そういう努力は今後ともやっていきたいと思っているところでございます。

 今、訓練の世界ではいろいろ工夫をしなきゃいかぬという御指摘であったかと思うわけでございます。訓練の機会あるいはレベル、そんなことも十分踏まえてやっていきたいと思っているわけでございますが、今先生、公共訓練はちょっと量が少ないという御指摘をいただきました。これにつきましては、実は離職者につきましては、六カ月コースを中心に、平成十一年度から四万、十二年度七万、今年度も八万ということでふやさせていただいておりますし、また、今度の補正で、公共訓練は土日、夜間も開放して頑張らなきゃいかぬだろうということで、さらに一万の人員が対応できますような工夫をさせていただくことにしておるところでございます。

 内容面は、先生おっしゃるとおり、我々も逐次、新規・成長分野といいますか、できるだけ仕事に結びつきやすいものにそういうコースが準備できるように、引き続き努力をしたいと思っているところでございます。

金子(哲)委員 例えば、今回、一年コースを考えようというようなことで、実際には再度利用できて最長二年間というようなことが言われておりますが、現実的にはまだ一年コースというのはないわけで、これから検討されることになると思います、時間がないので中身を聞きませんけれども。そういう際に、先ほど大臣もちょっと答弁の中でお話がありましたけれども、企業に対する実習、試用、職業訓練的なものをもっと拡大していくということが必要ではないかというふうに思います。

 十一月の一日までに中高年齢者緊急就業開発奨励金制度というようなものもつくられて、そういう努力をされているようでありますけれども、やはり雇用に結びつく職業訓練というもの、訓練制度というものを充実させていくということが非常に重要だと思います。例えば、同じようなプログラムでも英国の場合は、試用期間制度的に、その期間ちゃんと行けば雇用していくんだというような前提の中でそういうものが取り組まれているようですけれども、ぜひそういうコース、プログラムを考えていただきたいというふうに思います。これも、時間がありませんので答弁は除きます。

 次は、委託訓練の委託料の問題でちょっとお聞きをしたいんですけれども、今、委託料は基準に則して払われているということで、一人当たりIT九万とか、その他が六万とかいう数字になっておりますけれども、実際のところ、例えば建築関連コースなど、材料費などの問題もあって、さっきも言いましたが具体的にはそういうコースは委託されているのが今のところ非常に少ないわけですけれども、これから開拓していくとすると、必ずしも今までの委託料だけでいいのかという問題。

 それから、もう一つあわせて改善してもらいたいと思うんですが、三カ月委託のコースの場合には、委託料の支払いが、三カ月コースで終了時点で支払われるというようなシステムになっているというふうに伺っておりますけれども、ちょっと余りにも支払いが遅過ぎるんじゃないか。毎月毎月ということは難しいかもわからないけれども、それは公共事業だって前払い制度だってあるわけですから、やはりもっと受託を可能にして広げていくためにも、例えば半分の時期で払うとかいうような改善ができないのかどうか、ちょっとお伺いしたいんですけれども。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 委託の水準につきましては、今先生おっしゃったとおりの水準を設定してやっておるわけでございますが、私どもも実情をよくにらんでやっておるつもりでございまして、金額といたしましては必ずしも実態と乖離はしていないんじゃないかというふうに思ってはおるところでございます。

 それから、委託費につきましては、先生が今御指摘になりますように、やはり訓練をしていただいた実績を報告いただいてお支払いをするという体系はとっております。ただ、三カ月、ちょっと勉強したいと思いますけれども、実績が固まった、その調子で恐らく大丈夫だろうといったようなことの見きわめがどこまでできるかということだと思います。かなり長期の場合につきましてはその中間時点で対応をするということも可能であろうかと思いますけれども、まあ、三カ月の問題につきましても勉強したいというふうに思います。

金子(哲)委員 ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 次に、今、大企業のリストラも大変ですけれども、実際にもっと大変なのは中小に働いていらっしゃる皆さんだと思います。リストラ募集もない、突然として会社が倒産をするという状況の中で、例えば今回、融資制度の改善ということで、中小企業の売り掛け債権を担保にして金融機関から融資を受けられるような制度がつくられようとしておりますけれども、こうしたことができますと、金融機関は確かに債権を確保できるけれども、実際に、労働者の未払い賃金などの支払うべき資産というものがなくなっていくんではないか。現実には、中小の場合は、倒産にいく直前になりますと労働賃金すら場合によれば遅配、未払いという状況も出ているわけでありまして、その点では、先般、新聞報道では、法務省あたりも労働債権の順位を上げなきゃいけないというようなことで検討されているようでありますけれども、この点について厚生労働省の決意をぜひお伺いしたいと思います。

南野副大臣 賃金は労働条件の重要な要素であるということはもう十分承知でございますが、労働者とその家族の生活の糧でもあります。そういう意味では、労働債権の保護の強化、これは大変重要な問題であると認識いたしておりますが、こうした観点から、倒産手続というようなことにおける各種債権の取り扱いなど倒産法制の見直しを行っている法制審議会などにおきましても、この労働賃金の保護の重要性について意見を申し上げているというところでございます。

 今後とも、労働債権保護、そういった観点から適切に対応してまいりたいということを考えているところでございます。

金子(哲)委員 ぜひやはり、金融機関のような強いところだけが取り逃げをするというような、そして最後に労働者だけがもらうものももらえなくなるというようなことがないように、やはり一番困るのはその賃金のみで生活している労働者ですから、ぜひその点について、法制度の際に厚生労働省としてしっかりと意見を言っていただきたいと思います。

 最後に、その関係で、例えば退職積立金などの問題についてでありますけれども、いわば労働債権の保全ということで、これまでも、退職一時金の保全措置ということで、努力義務ということでそういう制度がつくられていると伺っております。しかし、平成九年度の資料を見ると、残念ながら努力義務のために、約二割の企業しかその保全措置をしていないようであります。実際上は、その企業内に担保をして、資金繰りに使われるのかわかりませんけれども、そういうことも含めてやられているようで、この努力義務のままですと、結果としては、さっき言いました退職金の問題にしても、ほとんど払えない、未払いのままという状況が出てくるわけで、少なくとも退職金等については、きちっとした、基金制度のように外部に積み立てていく、もしくは、それが困難であれば、今の保全措置を努力義務から義務化をする、きっちりとやはりそういう制度を確立して労働債権の保全というものに力を入れるべきだというふうに考えますが、どうでしょう。

南野副大臣 先生のお考え、本当にそのように思いたいところでございますが、退職金の保全措置につきましては現在努力義務になっている、おっしゃるとおりでございます。企業の資金の流動性への影響が経営にも支障を来していたりいたしまして、退職金制度そのものを後退させる企業が出てくるおそれがある、そういったことも勘案したものであるわけでございます。

 先生にとっては御不満かもわかりませんが、今やっております努力義務規定を、実効性を確保するためにも、これ、努めて指導してまいりたい、そのように思っております。

金子(哲)委員 全く不満ですけれども。義務化をしてくれというのに努力義務で、今までも指導されていたと思うんですけれども、実効はさっき言いましたようにたった二割という状況ですから。そして、今のような深刻な労働情勢になっただけに、今このことが余計重要になってきているわけで、景気のいいときはいいわけですよ。今のような、まさに中小の企業の皆さんもぎりぎりのところまで資金運用をしていらっしゃる状況にあるだけに、そういう意味でいうと、労働債権というものをきちっとした保全措置をしていくということを今やはり義務化していかなければ、それは努力義務ではますますやらないと思いますよ、強力な指導をしていただけるとは思いますけれども。

 それから、時間になりましたので終わりますけれども、国の立てかえ払い事業というのが行われて、今般、二倍まで拡大をするということになっておりますけれども、実際の数字でいえば三百七十万上限というような形になっていて、必ずしもそれでも十分ではないという思いがありますので、この問題についても拡充をしていただくことを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、明二十一日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会




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