衆議院

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第9号 平成14年4月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年四月十七日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岩倉 博文君    岡下 信子君
      上川 陽子君    木村 義雄君
      北村 誠吾君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    自見庄三郎君
      田村 憲久君    竹下  亘君
      竹本 直一君    棚橋 泰文君
      西川 京子君    林 省之介君
      松島みどり君    三ッ林隆志君
      宮澤 洋一君    谷津 義男君
      吉野 正芳君    大島  敦君
      加藤 公一君    鍵田 節哉君
      金田 誠一君    五島 正規君
      今野  東君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    桝屋 敬悟君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      木島日出夫君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   法務副大臣        横内 正明君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   高橋 健文君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議官)           清水  潔君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保健部長)         尾嵜 新平君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長)            日比  徹君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長)            澤田陽太郎君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発局長)          酒井 英幸君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局長)           真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  堤  修三君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   政府参考人
   (厚生労働省政策統括官) 坂本 哲也君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十七日
 辞任         補欠選任
  竹下  亘君     岩倉 博文君
  家西  悟君     今野  東君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     竹下  亘君
  今野  東君     家西  悟君
    ―――――――――――――
四月十五日
 あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第十九条の改正に関する請願(津川祥吾君紹介)(第一七三七号)
 同(小林守君紹介)(第一八四五号)
 同(佐藤公治君紹介)(第一八九〇号)
 同(牧野聖修君紹介)(第一八九一号)
 患者負担引き上げ中止に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一七三八号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一七三九号)
 同(小沢和秋君紹介)(第一七九五号)
 同(大森猛君紹介)(第一七九六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第一七九七号)
 同(児玉健次君紹介)(第一七九八号)
 同(塩川鉄也君紹介)(第一七九九号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第一八〇〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第一八〇一号)
 同(春名直章君紹介)(第一八〇二号)
 同(不破哲三君紹介)(第一八〇三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一八〇四号)
 同(松本善明君紹介)(第一八〇五号)
 同(石井郁子君紹介)(第一八五八号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一八五九号)
 同(穀田恵二君紹介)(第一八六〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一八六一号)
 同(松本善明君紹介)(第一八六二号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一八六三号)
 社会保障を拡充し、将来への安心と生活の安定に関する請願(首藤信彦君紹介)(第一七四〇号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一七四一号)
 同(柿澤弘治君紹介)(第一八〇六号)
 同(中野寛成君紹介)(第一八〇七号)
 同(柿澤弘治君紹介)(第一八六四号)
 同(城島正光君紹介)(第一八六五号)
 同(長妻昭君紹介)(第一八六六号)
 社会保障拡充に関する請願(熊代昭彦君紹介)(第一七四二号)
 同(鴨下一郎君紹介)(第一八六七号)
 児童扶養手当の抑制案撤回に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第一七四三号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一八〇九号)
 同(中川智子君紹介)(第一八六九号)
 同(山花郁夫君紹介)(第一八七〇号)
 児童扶養手当抑制案の撤回に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第一七四四号)
 パーキンソン病患者・家族の療養生活の質向上に関する請願(松本善明君紹介)(第一七四五号)
 同(中野寛成君紹介)(第一八二〇号)
 移行教育の早期実現と看護制度一本化に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一七四六号)
 安全で行き届いた看護実現に関する請願(金子哲夫君紹介)(第一七四七号)
 国民の医療と国立病院・療養所の充実・強化に関する請願(川内博史君紹介)(第一七四八号)
 腎疾患総合対策の早期確立に関する請願(相沢英之君紹介)(第一七四九号)
 同(石破茂君紹介)(第一七五〇号)
 同(岩屋毅君紹介)(第一七五一号)
 同(江藤隆美君紹介)(第一七五二号)
 同(大畠章宏君紹介)(第一七五三号)
 同(鎌田さゆり君紹介)(第一七五四号)
 同(北村誠吾君紹介)(第一七五五号)
 同(熊代昭彦君紹介)(第一七五六号)
 同(栗原博久君紹介)(第一七五七号)
 同(志位和夫君紹介)(第一七五八号)
 同(土屋品子君紹介)(第一七五九号)
 同(中西績介君紹介)(第一七六〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第一七六一号)
 同(二階俊博君紹介)(第一七六二号)
 同(西川京子君紹介)(第一七六三号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第一七六四号)
 同(前原誠司君紹介)(第一七六五号)
 同(松崎公昭君紹介)(第一七六六号)
 同(宮腰光寛君紹介)(第一七六七号)
 同(山口俊一君紹介)(第一七六八号)
 同(吉田幸弘君紹介)(第一七六九号)
 同(伊藤英成君紹介)(第一八二七号)
 同(稲葉大和君紹介)(第一八二八号)
 同(岩永峯一君紹介)(第一八二九号)
 同(川端達夫君紹介)(第一八三〇号)
 同(佐々木秀典君紹介)(第一八三一号)
 同(重野安正君紹介)(第一八三二号)
 同(中野寛成君紹介)(第一八三三号)
 同(中山成彬君紹介)(第一八三四号)
 同(日野市朗君紹介)(第一八三五号)
 同(古川元久君紹介)(第一八三六号)
 同(松島みどり君紹介)(第一八三七号)
 同(吉田六左エ門君紹介)(第一八三八号)
 同(釘宮磐君紹介)(第一八八六号)
 同(堀之内久男君紹介)(第一八八七号)
 国民医療及び建設国保組合の改善に関する請願(石井紘基君紹介)(第一七七〇号)
 同(生方幸夫君紹介)(第一七七一号)
 同(大畠章宏君紹介)(第一七七二号)
 同(海江田万里君紹介)(第一七七三号)
 同(金子哲夫君紹介)(第一七七四号)
 同(釘宮磐君紹介)(第一七七五号)
 同(末松義規君紹介)(第一七七六号)
 同(平岡秀夫君紹介)(第一七七七号)
 同(小林守君紹介)(第一八三九号)
 同(近藤昭一君紹介)(第一八四〇号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第一八四一号)
 同(武正公一君紹介)(第一八四二号)
 同(肥田美代子君紹介)(第一八四三号)
 同(山内惠子君紹介)(第一八四四号)
 同(鍵田節哉君紹介)(第一八八八号)
 同(小泉俊明君紹介)(第一八八九号)
 公的年金制度を改革し最低保障年金制度創設に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一七九四号)
 医療費負担引き上げの中止に関する請願(中林よし子君紹介)(第一八〇八号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一八六八号)
 公的年金制度を改革し最低保障年金制度の創設に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一八一〇号)
 同(中林よし子君紹介)(第一八一一号)
 同(松本善明君紹介)(第一八一二号)
 年金制度の改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一八一三号)
 健保・共済本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八一四号)
 同(児玉健次君紹介)(第一八一五号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八一六号)
 同(志位和夫君紹介)(第一八一七号)
 同(春名直章君紹介)(第一八一八号)
 同(松本善明君紹介)(第一八一九号)
 国立病院・療養所の院内保育所の存続・拡充に関する請願(日野市朗君紹介)(第一八二一号)
 同(中川智子君紹介)(第一八七二号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げ中止に関する請願(木島日出夫君紹介)(第一八二二号)
 同(中林よし子君紹介)(第一八二三号)
 同(山口富男君紹介)(第一八二四号)
 同(石井郁子君紹介)(第一八七三号)
 同(大出彰君紹介)(第一八七四号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一八七五号)
 同(不破哲三君紹介)(第一八七六号)
 同(藤木洋子君紹介)(第一八七七号)
 同(松沢成文君紹介)(第一八七八号)
 同(吉井英勝君紹介)(第一八七九号)
 健保本人三割負担等の患者負担引き上げ中止に関する請願(不破哲三君紹介)(第一八二五号)
 同(大幡基夫君紹介)(第一八八〇号)
 年金制度改善、安心して暮らせる老後の保障に関する請願(小沢和秋君紹介)(第一八二六号)
 介護保険の改善、医療保険改悪計画の中止に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一八七一号)
 介護・医療・年金制度の拡充に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一八八一号)
 健保三割負担・高齢者窓口負担の大幅引き上げなどの中止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一八八二号)
 同(島聡君紹介)(第一八八三号)
 同(春名直章君紹介)(第一八八四号)
 同(山井和則君紹介)(第一八八五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)
 厚生労働関係の基本施策に関する件

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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 ほかに質疑の申し出がありませんので、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
木島委員 私は、日本共産党を代表して、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
 反対の第一の理由は、中小企業退職金共済制度加入者が受け取る退職金額の算定の基礎となる予定運用利回りを、法律事項から政令事項へと変更し、現行の運用利回り三%を一気に一%にしようとしていることです。この変更が実施されると、退職金額は、掛金一万円の場合、十年で十三万円、三十年で百五十七万円もの減額となり、中小企業が労働者に約束した退職金額を守ろうとすれば、月々千円から二千円の増額をしなければなりません。中退共制度への国の補助金も、掛金収入に対する比率は一九八八年度の八・八%から後退を続け、二〇〇〇年度には四・八%へと半分近くにまで削減され、今回の改定ではその復活すらなされていないのです。政府の経済失政によるツケを労働者と中小企業にだけ押しつける本改悪を認めるわけにはいきません。
 第二の理由は、運用方法の範囲を拡大し、信託会社への包括信託を認め、勤労者退職金共済機構が特定の投資顧問業者との契約締結についての厚生労働大臣の承認を廃止することであります。これにより、機構はリスクの多い運用の場合でも事前承認なしで契約ができるようになります。役員の忠実義務や禁止行為の規定等が新設されてはいますが、投機の危険性が大きくなることは避けられません。理事長らが数千億円の資産についての責任を果たせるものではなく、安全性の確保からも賛成できるものではありません。
 第三の理由は、本制度には現在三百七十四の地方自治体が独自の補助を行っており、この方向を一層広げることが求められていますが、本改定により、中退金制度に対する魅力が大きく後退することによって、自治体の援助意欲に対して水をかけることになるからであります。
 退職金の役割は公的年金とともに退職後の生活を支えるためますます重要なものとなっており、国が定めた退職金制度を超低金利を理由として一方的に改悪することは容認できません。長期にわたる景気低迷は国の経済政策の責任であり、国の補助金を復活させること等、財源を確保し、真に中小企業労働者の福祉の増進と中小企業の基盤を強化するための制度として充実を図ることにこそ国の役割があることを強調し、反対討論を終わります。(拍手)
森委員長 以上で討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
森委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 この際、本案に対し、鴨下一郎君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。福島豊君。
福島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、退職金制度が高齢社会において労働者の老後の生活保障としての機能を持つものとして今後一層重要な役割を果たすことに十分留意しつつ、本法の施行に当たり、次の事項について適切な処置を講ずるべきである。
 一 勤労者退職金共済機構の役員について、資産運用等制度運営に係る責任を明確化するとともに、加入者が制度の運営状況を的確に把握できるよう、機構における情報公開を更に進めるとともに、外部評価システムの導入など機構の事業運営の一層の透明化に努めること。また、機構は、基本ポートフォリオの作成に当たって外部の専門家の意見を聞くなど、資産運用管理体制の充実強化を図ること。
 二 退職金水準を向上させるよう、加入企業に対して掛金の引上げに努めることを求めるとともに、運用状況が良好に推移した場合には、総合的に判断の上、予定運用利回りの引上げを検討すること。
 三 地方公共団体や関係諸団体の協力を得つつ、本制度の普及促進を図るとともに、増大するパートタイム労働者等に対しても加入促進策を積極的に進めること。また、特定業種退職金共済制度において、引き続き共済手帳の交付及び共済証紙の貼付の履行確保に努めること。
 四 適格退職年金制度の廃止が予定されていることに鑑み、中小企業退職金共済制度への移行について遺漏なきようにすること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
森委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
森委員長 次に、厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官高橋健文君、警察庁警備局長漆間巌君、文部科学省大臣官房審議官清水潔君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、医薬局長宮島彰君、医薬局食品保健部長尾嵜新平君、労働基準局長日比徹君、職業安定局長澤田陽太郎君、職業能力開発局長酒井英幸君、雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、社会・援護局長真野章君、社会・援護局障害保健福祉部長高原亮治君、老健局長堤修三君、保険局長大塚義治君及び政策統括官坂本哲也君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
西川(京)委員 おはようございます。自由民主党の西川京子でございます。
 きょうは、坂口大臣も、狩野副大臣、両副大臣以下、大変長い御質疑で一日大変だと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今、大変厳しい経済状況、その他さまざまな要因がありますが、私ども政治家の、今マスコミをにぎわしておりますいろいろな秘書問題の影響などもあるかと思いますが、特に、日本の国民が自分たちの生活の将来に対して大変大きな不安を今抱えていると思いますけれども、その不安材料の大きな一つが、年金制度に対する信頼感が薄れている、そのことが大きく作用していると思いますけれども、将来の安定した生活を約束する社会保障制度、これの確立が今一番の課題でございます。
 この老後の安心にとって不可欠な年金制度、この年金制度の改正が、今、ここ二、三日のうちにまた党の部会などでも論議が始まっておりますけれども、この年金制度の改正に向けて常に一つの根拠となるのが、財政再計算の根拠となっているのが人口の将来推計、これが五年ごとに行われているわけですけれども、常に下方修正をする、大変見通しが甘いという批判をよく受けております。きのうの党の部会でも、この人口の将来推計をもとにした年金改正というのが都度都度繰り返されることが、むしろそのこと自体がミスリードで、年金制度の信頼感を損なっている、そういう意見まで出ているような状況がございます。
 そういう中で、今回、この年金制度の改正に向けては本当に抜本的な改正論議がなされなければいけないと思いますが、この点に関して、厚生大臣の御意見をちょうだいしたいと思います。
坂口国務大臣 おはようございます。
 確かに、御指摘をいただきますように、今までの人口推計を見ますと、その人口推計の結論と現実の人口動態を比較しましたときに、合ったためしがないと言うと言い過ぎになるかもしれませんけれども、いつもそのとおりにいっていなかったというのが現状でございます。
 私も、なぜそういつも合わないのかなというふうに思うわけですが、人口統計をとりますときに、これまでの諸条件を見て、その延長線上で将来どうなるかということを決めるのが中位。高位、低位、中位というふうに三つに分けて出しておりますが、その中位というのは、今までの延長線上をとっているのが中位であったわけです。大体それで、中位の値を次の、今後の人口統計の値というふうに出していたわけでありますが、しかし、その中位にいつも行かなかった、いつも低位の方に行っているというふうになっているわけでございまして、常にそこが違っていた。いつも低位をとっておればそれで大体合ってきたんだろうと思うんですが、そうではなくて、中位をとってきたためにそこが合っていない、そういう状況にあるというふうに思っております。
 ことしの一月に公表されました新しい人口推計を見ますと、一層少子化が進んでおりますし、今までは晩婚化というのが一つの少子化の原因というふうに言われておりましたけれども、それだけではなくて、結婚している皆さん方のところからのお子さんも少なくなってきているということがわかってまいりましたので、非常に厳しい状況になってきたというふうに思っております。欧米先進国並みということがよく言われておりましたけれども、欧米先進国よりもさらに日本の方が厳しくなってきたという感じをいたしております。
 さて、そうしたことを踏まえて、次の年金をどういうふうにつくっていくかということは大変重要な課題になるというふうに思います。
 一つは、今度こそ、推計でいわゆる低位の方にこのままで行くということになれば、年金制度に非常に大きな影響を与えるわけであります。それをそういうふうにしていくのか。それとも、そうではなくて、もう少し、この少子化対策というものを本格的にひとつ取り上げて、そして対策を打って、将来、少なくともこういう線までは持っていきますということを明確にする、そしてそこに年金の額も合わせていくというのも、一つの方法としてはあり得るというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、厚生労働省の中にも新しくこの少子化対策の検討会もつくりまして、そしてそこで議論を始めさせていただいたところでございます。そうした中で、今後の少子化対策のことも十分に踏まえながら、次の年金対策、年金でどうするかということの決断をしなければならないというふうに思っているところでございます。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 私の次の質問もまとめて答えていただいたような気もいたします。まさに、この年金制度の一つの根拠となる人口推計の、実態に即した人口推計というものが大事だという御意見でございますけれども、この少子化対策というのが、いわゆる平成二年の一・五七ショック、要するに、昭和四十一年のひのえうまの一・五八を下回った、その大きなショックのときから一気に少子化対策というものが本格的に動き出した経緯があると思います。さまざまな少子化対策というのが現実にとられた割には、どうもその効果が余り見えてこない、数字としてはどんどんどんどん減っているというような気がいたします。
 そういう中で、一つに、これは新聞記事ですが、年間七十八兆円の社会保障給付費のうち、高齢者関係には六六%が配分されて世界のトップクラスであるが、水準がトップであるが、子供関係の予算はわずか三%、他の先進国は一〇%だというような記事もあります。そういう意味での今までの少子化対策が正しかったかどうかというのはなかなか一概には言えないことで、では、やらなかったらどれだけの数字になっていたかという御異論もあるかと思いますが、今までのような延長線でやるのか、あるいはもっと少子化の方に予算を振り向けていくのか、その辺の御意見をちょっと聞かせていただきたいと思います。
岩田政府参考人 これまでは、少子化の原因や背景に対応して、安心して子育てができる、そういう環境整備をしたいということで、委員もお話しになりましたエンゼルプラン、あるいはその後の平成十二年度からの新エンゼルプランに基づきまして、幅広い総合的な子育て支援策、少子化対策を推進してまいりました。
 これらの政策の評価ですが、これが具体的な出生率の数値とどういう関係であったかということは、やはり一概には申し上げられないというふうに思います。しかしながら、これらのプランに基づきまして、保育所の低年齢児の受け入れや延長保育や放課後児童クラブなどの仕事と子育ての両立支援の分野ですとか、あるいは地域子育て支援センター、一時保育などの地域における子育て支援策、こういう分野については相当の充実強化をしてきておるというふうに思いまして、子育て家庭への支援という意味では大きな効果を上げてきたのではないかというふうに思っております。
 また、現在は、その新エンゼルプランとあわせまして、例えば、子育て不安の解消や児童虐待防止対策などの地域における子育て支援策もさらに推進いたしておりますし、待機児童ゼロ作戦の推進、放課後児童の受け入れ体制の整備など、いわば新エンゼルプランの枠を超えるようなことも積極的に取り組ませていただいているところでございます。また、昨年の臨時国会では育児・介護休業法と児童福祉法の改正もやっていただいた、こういうようなことで、前向きの対策を講じているところでございます。
 雇用均等・児童家庭局といたしましては、従来以上に子育て支援に一生懸命邁進してまいりたいというふうに思っているわけですが、その中で、やはり子供を持つこと、育てることということが、いかにそのこと自体が大事で価値があるかということを国民としっかり共有しながら、子育て家庭を社会全体で支援するということが大事ではないかというふうに思っております。
西川(京)委員 今岩田局長が最後におっしゃったことが一つのキーワードだと思います。
 結局、今までの子育て支援というのが、要するに、子供を持った後の、子供に対する支援というのにほとんど偏っていたと思うんですね。要は、どうしたら若い人たちが結婚して子供を持つ喜びを経験できる社会にするか、むしろ、結婚して子供を持つ、家庭を持つという喜びを若者たちがどう評価するのか、そういう社会に持っていくような、ある意味では精神的なものに対する働きかけ、そういう支援策が必要ではないか、私はそういう思いを持っております。
 その中で、今、パラサイトシングルなどと言われているように、親の住まいにずっと一緒にいて、いつまでも自立しない、青年期が非常に長い男女、若い人たちがいる。生活レベルを落としたくないというような、いろいろな、そういう人たちがいらっしゃるわけですが、そういう今のパラサイトシングルと言われているような人たちの現状をちょっとお知らせいただいて、そのことに関しての御意見を副大臣、そしてまた、後、補足があれば局長からも一言お願いしたいと思います。
坂口国務大臣 パラサイトシングルのデータでございますが、平成二年には約千三百六十万人というふうに言われておりましたけれども、平成十二年、この十年間の間に千五百七十万人というふうに増加をしている。そして、未婚のまま親と同居し続ける人がふえてきているということだけは事実のようでございます。
 一面におきましては、一人一人の個人が多様なライフスタイルを享受できるということにもなるんだろうというふうに思いますけれども、しかし、一定の年齢に達しながらやはり親の加護のもとにいたい、そういう思いが大きくなってきているということも見逃すことのできないことだというふうに思います。
 少子化社会を考える懇談会を先月二十七日に開催いたしまして、有識者の皆さん方からもいろいろと御議論を今いただいている真っ最中でございますが、中には、もう議論するときじゃなくて実施するときだという御意見もあるわけでございますけれども、しかし、新しい角度から少し少子化対策というのを考えていかなければならない。パラサイトシングルというのも、これもやはり少子化にかなり影響を与えているというふうに思っておりまして、そうしたことも含めて、少子化対策というのはこれから幅広く考えていかなければならないんだろうというふうに思っております。
 私もいろいろ本を読んだり最近いたしておりますけれども、いろいろの検討課題の例を見ましても、子供を産んで得なことはない、こう答えている人がおりまして、損か得かといったら、私もそんなに、損得勘定というのでいけば、それはなかなか答えは難しいんじゃないかという気もいたしますが。もう少し、御指摘いただきましたような幅広いところから取り組んでいかなければならないと私も思っている次第でございます。
西川(京)委員 時間が大変迫ってまいりまして、まだ質問が二問ほど残っておりますけれども、申しわけありません、あと二、三分ちょうだいしたいと思います。
 いわゆる結婚をためらう若い女性のいろいろな要因というのがあると思いますが、きょう、文部科学省の方から来ていただいておりますので、一言で結構でございますので。
 要するに、教育費が非常にかさむという問題がよく取り上げられますけれども、実際に、幼稚園から高校までの教育費で、公立と私立をまぜた場合七百万ぐらい、そして大学が四年間で私立で下宿した場合というと、二百五十万の四で約一千万、約二千万近くかかるというような統計もあります。
 今、日本の奨学金制度が困窮家庭とか親を亡くした家庭の子供たちをどちらかと言えばターゲットにしているわけですけれども、私は、やはり欧米のように、十八歳から先は自分で、奨学金とバイトで、自分で勉強するんだ、そういうくらいの、子供たちの意識というのを一つの自立、このパラサイト症候群の解消のためにも、そういう奨学金制度に対する方向というのがあると思うんですが、これについて一言、済みません、時間がありませんので短くお願いいたします。
清水政府参考人 先生御指摘のように、保護者の経済的負担の軽減という観点のみならず、十八歳になった場合に、学生がみずから自立していく、いわばそういう観点から、平成十一年度に奨学金事業の抜本的な改革を行いまして、いわば、原則的に、所得水準というものにかかわらず、希望する者に希望する額を貸与する、そういう仕組みで制度改正を行い、本年度においても奨学金事業の充実を図ってきている、こういう状況でございます。
西川(京)委員 ありがとうございました。
 今後さらに検討して、私たちも党の部会の方でこういう問題を考えてまいりたいと思っております。
 実は最後に大臣に一言お願いしたいんですが、少子化対策というのが、子育て支援の、文部科学省と一緒になって保育園の充実その他、いろいろやられておりますけれども、県別の出生率というのを見ますと、どうしても大都会が非常に少ない。一生懸命、大都会が現実に保育所などが少ないので、集中してそちらに行くということはわかるんですが、現実に田舎の方が出生率が高いという現実がはっきりあるわけですね。ですから、やはり国土の均衡ある発展という意味でも、子育て支援の予算というのがもう少し、むしろ地方の方が産みやすいわけですから、なるべくIターン、Uターンその他の政策も踏まえて、地方で子供を産んで育てる、そういう方向への支援策というのも必要かなと私は思いますけれども、最後に大臣のその一言を聞かせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 御指摘の意見はもうそのとおりだというふうに私も思いますので、そのことを肝に銘じてやりたいと思います。
西川(京)委員 大変時間が過ぎまして申しわけございませんでした。
 若い人たちが、本当に子育てがしたい、結婚して、日本の将来のために子供を産んで育てたい、そういう意識を育てるような政策、一緒に考えてまいりたいと思います。
 以上で質問を終わります。
森委員長 次に、後藤田正純君。
後藤田委員 自民党の後藤田でございます。
 まず最初に大臣、最近、閣僚の皆様方、そしてまた過去にわたっての行政の不作為、そして政と官の問題におけるいわゆる不当な政治的圧力ということが問題になっております。やはりそれに対して、事が起こったときに、大臣というのは在任中のお仕事ももちろんですが、責任をとって、けじめをつけてやめるというのも大臣の大きな仕事の一つだと私は思っています。
 坂口大臣におかれましては、日ごろ、大変厚生労働行政に奮闘されていることは承知しております。それゆえにお伺いしますが、過去の不作為ということで、大臣も最近、ヤコブ病の問題から始まって、また厚生労働省全体では薬害エイズの問題、そしてBSEにつきましても、これは農林水産省だけの問題じゃありませんね。この問題について今後もし不作為があったら、もしくは不当な政治家の圧力があった場合には、大臣はそれなりの責任を、けじめをとらなきゃいけないと私は思っています。
 しかし、それをとらないためには、過去の不作為、過去の政治家の不当な介入について当然すべて検証されていると思っています。不作為のリスト、そしてまた政治家の不当な介入のリスト、それをすべて過去にさかのぼって検証する必要があると思っています。それを当然やっていると思っています。
 そのことについて、やっているかやっていないか、明確に答弁ください。
坂口国務大臣 なかなか難しい御質問でございまして、一つは過去の問題にどう責任をとるかという問題があるわけでございまして、私も、ハンセン病あるいはヤコブ病あるいはまたその前の旧労働省の問題等々、過去の問題を引きずりながら今日を迎えたわけでございますが、過去の問題につきましてのけじめをつけていかなければならないというふうに思っております。
 それで、過去の問題とはいいますものの、それに対して、しかし重大な責任があるというときには、それは過去の問題だから責任を免れるというわけにはいかない、私もそう思っております。責任を明確にしなければならないというふうに思っております。
 ただ、過去の問題にどういうふうな政治家の介入があったかということについて、どこまで調べられるのかということでございますが、自分が就任をいたしましてから後のことは十分わかっているわけでございますけれども、過去の問題というのはなかなかわかりにくいことも事実でございます。
 しかし、何か事がありますときに、あるいはまた予想されますときに、その問題につきまして、明確にそこは一つ一つ調査をし、けじめをつけて前に進むという姿勢を崩してはならないというふうに思っております。
後藤田委員 行政というのは継続しているわけでありまして、私が大臣だったら、大臣に就任したら、過去にさかのぼってすべて検証したいと思っておりますし、当然、副大臣の方々や政務官の方々がいらっしゃるわけですから、一人では私はできないと思う。その検証をする指示なりは、副大臣のお二方は大臣からございましたか。どなたか、お二人どちらかで結構です。イエス、ノーで結構です。
宮路副大臣 私の就任に当たりまして、厚生労働行政、これは国民の生命、生活に直結するセーフティーネットとして大変大切なので、心を引き締めてしっかりとやっていくようにというお話をいただいておるところでありまして、私もそういう気持ちで日夜取り組んでおる次第であります。
後藤田委員 何か具体的なそういった話が、今の御答弁を聞くと、ないようでございますので、ぜひそこら辺はきちんとやっていただきたいと思います。
 その中で、今、我が県のことを言いますと、大変恥ずかしいんですけれども、参議院の方で野党の方が老健施設の質問をされたということでございます。私も、あれはちょっといかがなものかなと。一人の経営者によって五十以上の老健施設をやられているということでございます。
 これは、大臣、恐らく御答弁されるときには、何ら問題ない、ちゃんとした手続を踏んだという御答弁をされると思いますが、今、徳島県は県知事が前回捕まりまして、知事さんとそしてまた県庁の内部、そして皆様方の厚生労働省内部からそれなりの情報開示があって、もし仮に不当な政治的な介入があった場合には、大臣、その点について責任をおとりになりますか。これも先ほど冒頭申し上げた不作為に対しての責任のとり方、これについてお聞かせください。
坂口国務大臣 厚生労働省の中におきましてそういうことが起こっているとすれば、それは私は責任をとらなければならないというふうに思いますが、県の段階のところでどうなっているか、国の段階でも過去のことを明確に検証することはなかなか難しいぐらいでございますから、県の段階、徳島県でどういうことがあったかというところまで私も承知しかねますし、私もそこまで自信がございません。
 国としましては、県の方にも、そういうことがなかったかということを問い合わせて、当然のことながら、そこは、ありませんという答えが来ているそうでございますけれども、しかし、現在の段階のところで、私は、県の段階でそうしたことが本当になかったかどうかということの明確な答弁をする自信はございません。
後藤田委員 ちょっと話をかえますが、私、ちょっと質問したいのは診療報酬問題なんですね。いわゆる医療制度全般の、三方一両損だとか大づかみの議論は国会の中でするのですが、いわゆる診療報酬改定について、国会並びに政治家が、その意思決定プロセスにおいて、私はいま一つ関与していないんじゃないかと思うんですね。
 皆様方の諮問機関、その場でお医者さんだとか専門家の方の意見を聞いているようですが、予算に関してはここ、また法律に関してはここでやる。私は、診療報酬改定というのも大変重要なテーマだと思っているんですね。これをここで、委員会で、国会の場で、ちゃんとした意思決定プロセスにおいてこれから私は決めていただきたいし、そうあるべきだと思っておりますけれども、いかが考えていますか、大臣。
坂口国務大臣 この問題も、昨日よく似た御質問がございました。
 それで、診療報酬の決め方の大枠というのは、やはり私も国会の中でもう少し活発に議論をしていただくべきだと思っております。ただ、どの病気のどういう治療に対して何点つけるかという細かな話まで国会の中でなかなかおやりいただくわけにいきませんから、その大枠の方向性、これから方向をどうすべきかということを明確に私はしてもらうべきだと思っております。
 そういう意味で、今回、医療制度改革の中の一つの大きな柱として、診療報酬体系の基本的な見直しというのを掲げさせていただいております。それはそういう趣旨でございます。
 と申しますのは、何を基準にして診療報酬を決めていくのかという基準が、だれにもわかるような、もっと簡潔明瞭な基準というものがあってしかるべきというふうに思っておりまして、そうしたことを御議論いただきたいというふうに思っている次第でございます。
後藤田委員 一つ例を挙げますと、外科手術でしたか、五十例以上をやっている病院は一〇〇%お金が出て、それ以下の場合は七割ぐらいしか出ないというような中身があったと思うんですね。これは病院単位でやっているというんですよ。執刀しているのは医者なんですね。しかし、その医者がもしその病院からいなくなったら、その病院はその五十例以上やっているという実績には当たらないんですか、当たるんですか、どっちですか。教えてください。
大塚政府参考人 ただいまお話しの、今回の診療報酬改定に関する、俗に手術に関する施設基準の話でございますが、施設ごと、つまり医療機関ごとの実績、現在、要件といたしましては、一定経験年数以上の担当医がいることと、それからその施設における症例数が一定以上であること、この二つの要件で整理をしております。
 今回対象にいたします手術は、例えば手術の難度が高いようなケース約百十例でございますが、こうした手術につきましては、もちろん、執刀担当医師の技術は当然でございますが、言ってみればチームで担当するわけでございますから、やはり医療機関全体としての力、能力、技術というものを集積していきたい、こういう考え方でございます。
後藤田委員 ちょっとまた答えをはぐらかしちゃったんだけれども、要は、だから、病院に医者がいなくなったらどうなるかと聞いているんです。
大塚政府参考人 経験年数の積んだ医師の存在が必要でございます。(発言する者あり)失礼いたしました。経験年数及び症例数でございます。この二つの要件が必要でございます。
後藤田委員 これは、いずれにしろ、またこの委員の方々が質問してくれるだろうと思いますので、もう時間がないので、最後、コーデックス委員会、今度はまた話ががらっとかわります。遺伝子組み換え。これも不作為の典型的な例なんですよ。これは、不当な圧力でも何でもないんですよ。遺伝子組み換えの問題というのはG8でコミュニケにも出ている、そして日本が初めて議長国をやったんですよ。厚生労働省が主管、しかし、その人数たるや、少なくてしようがないわけですね。
 いわゆるコーデックス委員会の議長を、今、国立感染研究所の所長がやっているけれども、彼が、自分が三年間やってきたけれども、厚生労働省の担当はかわってかわって、かわってばかりだというんですね。最初から知っているやつはだれもいない。僕は、いろいろ先輩やいろいろな方にお願いしてようやく一人ついたというけれども、本当にそんなやり方でいいんですか。G8のコミュニケにも出た、そして日本が議長国である、そして、遺伝子組み換えという、これから国益に非常に関係があって、なおかつ環境に関係があるものについて、厚生労働省が主管でやっているようだけれども、人数が全然足りない。BSEの問題でみんな行かれているじゃないですか。
 そのことについての危機意識が全然この前なかった。部会でも官房長は答えたけれども、いや、ちゃんとやっています、連携してやっていますと。みんな、連携してやっているというのはもう聞き飽きているんですよ。
 実際、今、人数をふやして、どういうふうにやるか、やっているか、大臣、教えてください。
尾嵜政府参考人 コーデックスのバイオテクノロジー応用食品特別部会の議長国として我が国が対応しているわけでございますが、御指摘ございましたサポート体制につきましては、担当が一名というお話でございますが、部として、全体として対応しているというところがございますし、それと、今年度、十月からは二名の増員をしていただくということで、サポート体制を充実する方向で考えているというところでございます。
後藤田委員 この問題は本当に大変重要なテーマなんです。ですから、厚生労働省主管ではありますが、農林水産省にも非常に立派な研究員の方がいらっしゃいます。これもまた言葉だけじゃなくて、連携してというのも言葉だけじゃなくて、真剣にお取り組みをいただきたいと思います。二〇〇三年に国際基準を出すんです、日本が議長国になって。このことをちゃんと、大臣、認識していただきたいと思います。
 そして、もう一つなんですが、ちょっと細かい話ですけれども、医局員制度、よくいろいろ話を聞きますと、各地方の、全国そうだと思いますが、民間病院が国立大学の医局に寄附をして、そして病院に先生を呼んでもらう、何かこんなことをよく聞くんですけれども、これは果たしてちゃんとした医療制度のあり方なんですかというふうに思っております。寄附をされて、それによって医者をもらう、こういうやり方。そして、大学病院の医学部長とか、こんな鼻が高くなっちゃうわけですね。そして、もっと言うと、東京なんかでも聞きますのは、そのお金を、バイト代ですよ、そのバイト代の給料を召し上げられて、それで無給医師として若い人が働かされているというような話も聞きます。
 つまり、私は何が言いたいか。医者の卒後教育について、この前も新たな方向性をお出しになりましたけれども、特にそれについて、冒頭申し上げました寄附の問題、その認識はあるか、あったとしたら、それがおかしいと思うか、おかしいと思っていたら、それをどう変えるべきか、大臣、教えてください。
坂口国務大臣 大学病院のあり方というのは大変日本の医療に大きな影響を与えることは事実でございまして、この大学病院の医局制度というものが現在の医療をゆがめているというふうに指摘する人も正直言ってあるわけでございまして、私も、ここは改革をしていかなければならないというふうに思っています。
 というのは、医局の中でも、正式に給料をもらっている人もおれば、何ら給料をもらわずにそこに在職をしている人もいるわけでありまして、混然一体となっている。そうしたところをこれから整理をしていかないといけないというふうに思いますし、それから、大学が人を派遣いたしますときに、何らかのそこの見返りを要求するということがあるとすれば、それは私は絶対にあってはならないことだと思うんですね。それは人にもよると私は思います。すべての大学で行われているとは思いませんけれども、そういうことがあるとするならば、それは私は、改革を断行していかなければならない分野の一つだというふうに思っております。
後藤田委員 そういう事実は、大学が要求するというよりも、医者が寄附を出して医者を派遣してもらうというようなことも聞きますので、これは私、力ありませんけれども、何か後藤田が言っていたなということで、これは不作為にならないように、もしこれで不作為でまた問題になったら、これは大変なことになりますから、これは大臣、ぜひ明確に調べて、私に対してじゃなくて、きょう聞いていらっしゃる先生方にちゃんと報告していただきたい、そう思っておりますので、時間が来ましたので終わります。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、桝屋敬悟君。
桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。三十分ほど議論をさせていただきたいと思います。
 本日のテーマは介護保険の内容、いつもこの分野は山井先生に持っていかれるものですから、民主党だけの専売特許ではない、私ども公明党も頑張っているということで、三十分ほど議論をさせていただきたいと思います。
 私もずっと現場を、今現場は、第二期の介護保険事業計画を策定するということで、全国三千以上の市町村、みんな汗を流しているわけであります。施設等の現場でも同じであります。
 最近、こうした現場で、特別養護老人ホームの個室化、ユニット化という言葉が盛んに使われております。私は、そんなにまだ徹底していないんだろうと思っておりましたら、どこへ行ってもユニット、ユニットといって大変にぎやかになっておりますから、この問題についてきょうは議論をさせていただきたいと思います。
 厚生労働省では、特別養護老人ホームの居住環境を抜本的に改革をする、改善をするということで、入居者の尊厳を重視したケアの実現のために、個室化、ユニット化ということを言われております。そして、全室個室あるいはユニット化、ユニットケアを特徴とする新型特養という言葉が今現場で言われております。新型特養ということがどれぐらい皆さんに御理解されているか気になるところでありますが、平成十四年度において、この新型特養というのはどんなふうな整備、今後どういう整備を十四年度以降されようとされているのか、あるいはその十四年度、年間一万三千床ぐらい新規の施設があると思いますが、どの程度の割合でユニットケア、個室化が実現をされるのか、その辺の見通しを最初にお伺いしたいと思います。
堤政府参考人 特別養護老人ホームは、入居者にとりましては生活の場、ついの住みかでございますので、質のいいサービスを提供するということで、平成十四年度予算から、全室個室、ユニットケアの新型特養の整備の補助を創設して、開始したわけでございます。
 ただ、この新型特養の意義、役割について十分理解をしていただくというために一定の期間が必要かと思いますので、当面は、この新型特養のタイプで整備をするか、あるいは従来型の四人部屋主体の特養で整備をするか、これは整備をする設置者が選択をできるようにしたいと思っておりますけれども、基本的には新型特養の整備を推進するという観点から、国庫補助を行う場合には、従来型よりも新型を優先するという方針で臨みたいと考えております。
 現時点では、十四年度の整備について各都道府県から協議を受けている段階でありますけれども、定員ベースで見ますと、十四年度新規着工分の特養整備のうち約四分の一が新型特養で整備をしたいということで協議が来ております。
桝屋委員 ありがとうございます。
 今局長の方からもお話がありましたが、一番大事な点は、いわゆる新型特養という新しい施設整備補助制度を設けられた。今、四分の一程度協議が来ておるということでありましたが、局長の御説明の中で、施設整備補助をする上で優先的に採択をする、こういう御説明がありました。これは、優先的に採択をするということは、とりもなおさず、現場では大変な施設整備の、ある意味では今は競争のようなところもありますから、みんなこのユニットケアといいますか新型特養に目が行くわけであります。ここが非常に大事な点だと思っておりまして、私が思っている以上に、現場では新型特養あるいはユニットケアという言葉が大変に言われ始めている、相当浸透しているというふうに思います。
 私は、ハードの持つ力というものはもちろん十分理解をしているつもりでありますけれども、しかし、特養がそうであったように、あるいは我が国の福祉施設がそうでありましたように、まさに金太郎あめといいますか、北から南まで同じような施設が全部できてしまうというのが我が国の施設整備の特徴でありまして、私は、形から入るということにいささか抵抗を感じております。それほど徹底されている、優先採択ということで徹底をされているんだろうと思うんでありますが、私は、余り形から入ると本当に大丈夫かなと心配をします。ユニット、ユニットといって、きょうはこれだけ委員がいらっしゃいますけれども、ユニットケアの本質といいますか、本当に目指すものは何なのかということはなかなか理解をできないんじゃないかと思うんですね。
 ユニット、ユニットと、ユニットキッチンじゃありませんけれども、まとまった調理台の上で管理だけされるような、そんなイメージさえ受けるわけでありますから、どなたがネーミングをされたかわかりませんが、私は、大事なことは介護職員の意識改革ということではないか、今までの施設整備の反省の上から、恐らく現場から出てきたアイデアではないかというように思っております。
 そういうことであれば、特に、最初から新しい施設整備でユニットケア、新型特養ということになりますと、果たして今までの反省、介護職員が長く苦しんできた反省の上から生まれてきたユニットケアという考え方が、果たして新しい新型の特養の中で、職員お一人お一人あるいは理事者や管理者の中に定着するのかということが、形を整えれば、新型特養のあの形を見れば、これでユニットケアでき上がりということになるのではないかということを一番心配をいたします。
 今申し上げましたように、これは、ユニットケアの考え方をどう進めていくのかということが極めて大事だろうと思います。そもそもユニットケアとは何なのかということから始めて、これをどう進めるか、その辺のところを、きょうここに委員もいますので、副大臣、副大臣の認識を確認する意味でも、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。
宮路副大臣 桝屋委員御指摘のとおり、まさに、特養の個室化そしてユニットケア、それをハードの面で整備をするということは、これは一つの手段であるわけでありまして、そのこと自体が目的ではないわけであります。
 目的は、いかにして入居者、介護を受ける人にとってふさわしい適切な介護が施されていくかどうか、そこがまさに目的であるわけでありますから、ハード面をもって事足れりというのではなくて、そうした新しい体制に対応したソフトの面での対応、これがしっかりと車の両輪として構築されていかないと所期の目的は達成しない、こういうことになるわけであります。
 ですから、厚生労働省としても、個室化、ユニットケアに対応してそれなりの、これまでも、介護に従事する皆さんの意識改革を目指して講習会をやったり、あるいはまた、そのための研究開発に対する補助を行って、そしてその成果をまたPRするといったようなことをやっておるわけでありますが、さらに一段とその取り組みを強化して、おっしゃるようなそうしたハード、ソフト、両々相まって、入居者に対するしっかりとした介護サービスが展開できるようにしていかなきゃならない、おっしゃるとおりであるわけでありまして、今の御指摘を踏まえて一層の努力をしていかなきゃならない、かように思っておるところであります。
桝屋委員 ありがとうございました。
 今副大臣おっしゃったように、私は、ユニットケアという考え方は、本当にハードとソフト両面から、これから相当、ある意味では施設処遇の改革だ、革命だというふうに思っておりまして、ぜひとも両面からのアプローチをお願いしておきたいと思います。
 副大臣、副大臣は鹿児島でいらっしゃいますけれども、ひとつ理想的な、よく現場の情報も聞いていただいて、本当に、頑張ってきている、その過去の反省の上に立って、これはやはり処遇を変えなきゃいかぬと。
 ユニットケア、僕もまだ理解できていないんです。まだ理解できていません。山井さんは理解しているかもしれませんが、僕は理解できていないんで、私が一番すとっと自分の心に落ちたのはどういう説明かといいますと、ユニットケアというのは、特養の施設の方々が、地域にグループホームや宅老所はたくさんできてきた、そこの運営を見ていて、これは自分たちとは違うなと。確かに介護のサービスだけれども、介護サービスも、グループホームやそれからグループリビングのいろいろな宅老所のような施設の中に確かに介護の部分もあって、そこはやはり我々とは全然違うな、五十名や八十名、百名の自分たちの施設と比べると確かに違う。そして、入っておられる方も本当に家庭的な雰囲気でやっておられる。これは、私たちのような大きな八十名、百名の施設でもああいうやり方ができるんではないかというようなことを、反省して取り入れられて始まったものではないかというのを私は聞いて、すとっと胸に落ちたんですね。
 ぜひとも副大臣、現場へ行って見てきていただきたいなと山井さんが言うようなことを言いますが、大臣、ごらんになりましたか。ぜひ副大臣、行っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
宮路副大臣 私も、率直に申し上げて、今まで個室化、ユニットケアの施設を見たことはございません。それで、直ちに、見聞を深めてこの問題に取り組んでいくように、現場へ行ってみたいと思っております。
桝屋委員 力強いお話をいただきましたので、見られた後、もう一度この委員会の舞台で議論をしたいというふうに思います。
 見ていただくときの論点といいますか、視点を今からもう一度点検をしたいと思っておりますので、ぜひ聞いていただきたいと思います。
 そこで、ユニットケア、新型特養をこれからどう進めるかということでありますが、まずは施設整備という観点で議論いたしますと、これからの施設は全部新型特養にするのか、先ほどの局長のお話では優先採択という話がありましたけれども、では既存施設はどうするのかという問題もあるわけであります。それから、既存の施設については、改築などのように、増改築のような形で進めていくのか。
 気になるのは、私も新型特養を見て目からうろこが落ちたような気がしましたけれども、例えば、四年前ぐらいにつくった施設、それで今になってみんな猫もしゃくしもユニット、ユニットと言い出すものですから、理事者や施設長は、いや、うちは四年前に大変な金をかけてつくった、借金もまだ今から二十年返さなきゃいかぬ、そこで全室個室と言われても、そこはなかなか大変だなと。せっかくここ十年ぐらいに建てた新しい施設を全部つぶして新しい新型特養にするのかというと、これは費用対効果の観点からいくといかがなものかというふうに思うわけで、特にその辺は大変気になるところであります。
 したがいまして、今後の施設整備、新型特養をどういう方向で整備をするのか、現時点の基本的な考え方を局長の方から伺いたいと思います。
堤政府参考人 特養については、将来的にはやはり全部新型特養の整備に限定をしたいと思っております。当面は従来型と新型のどちらでも選択できるというふうにはしておりますけれども、できるだけその意識の浸透を待って新型特養に一本化をするというふうにしたいと思っております。
 それから、問題になりますのは既存の施設、これもそういう意味では個室、ユニット化に向けて整備をしていかなきゃいけない。今先生おっしゃいましたように、建てたばかりというのもありますので、いろいろなやり方で、例えば相当古くなっておりますものについては全面改築をして新型特養に転換をする場合、それからそうでない場合には、増改築あるいは大規模修繕で計画的に個室化、ユニット化を進めていくという場合にも、平成十四年度から国庫補助の対象にしたいと考えております。
 それからまた、既存施設の中には従来、言ってみれば繰越金を持っている、この繰越金を有効に使っていろいろ修繕をして個室、ユニット化を進めたいという声もありましたので、そういう取り扱いは可能であるということを昨年明確にお示しをして、各施設がみずから取り組むということもできるようにしたところでございます。
桝屋委員 ありがとうございます。
 さっき、私が事例として申し上げたここ四、五年整備した施設あたりが特にそうでしょうが、ユニットケアというのがずっと全国的に話が広まると、そういう施設の施設長さんで、特に役所からOBで来られたような方で、非常に頭がかたい方が多い、それは語弊がありますね、中にはそういう方もいらっしゃるということで、そういう方々は、ユニットケアという言葉を聞かないようにする、耳をふさいで、いやいや、ユニットケアといったら個室、個室はまずいよ、そういう一律的な反応に陥るということもあるわけであります。
 今、繰越金を使ってでもできるということの説明がありましたけれども、やはりできることから、何も大きなハードをやらなくて、ユニットケア、個室化へ向けての施設運営のあり方ということは、私は、既存施設でも十分できるだろうと思っておりまして、そういう配慮をぜひお願いをしたいと思っております。
 そこで、方向性の話になります。施設整備だけではなくて、今後の方向の話に移りたいと思います。今局長は、将来は全部新型の特養の形にしたい、こうおっしゃったけれども、そこはそういうふうに確認していいですか。将来というのはどのぐらい将来なのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
堤政府参考人 今まさに先生お話ありましたように、既存の特養ホームの施設長とか管理者の意識をそちらの方向に変えるというのは、私ども、打ち出してからいろいろな反響を見ておりますと、相当難しい部分があるな、なかなか意識はそう簡単に変わらないなということも感じております。
 そういう意味で、当面は、今までの計画をつくっているところもありましょうから、従来型の整備も併存して認めたいと思っております。では、いつごろまでに意識が完全に変わるのかというのは、私どものいろいろな努力と相まつというところもございますので、できるだけ早くしたいという気持ちは持っておりますが、何年で完全に切りかえるというところまで今十分詰め切っておりません。
桝屋委員 局長はもう少し突っ込んだ御発言をされるかと思いましたが。
 将来的にという、先ほど局長は小さい声でおっしゃったけれども、私は、スパンとしては、やはり介護保険事業計画、三年単位ですか、これもやはり三年単位ぐらいで考えていくのだろう。したがって、二期かけるということは、かかるかもしれませんね、かかるかもしれませんが、一期の中で、今ちょうど現場では第二期の介護保険事業計画を市町村がつくっているわけでありますから、その中で、ユニットケアを将来どうするか、我が地域の介護保険事業計画の中で、施設処遇については、これぐらいまでに個室化、ユニット化を図ろうではないかという議論がどんどん出てくるようなことが望ましいな。したがって、一期目はホップ、二期目はステップで三期目は完成というぐらいが、堤局長、今うなずいておられますが、そんな心かなというふうに聞かせていただきながら、次の話に行きたいと思います。
 そこで、例えば既存施設で、特に物理的な制約がある中でユニット化、個室化を図ろうとした場合に、例えば百名定員の施設がまだありますね、百名定員の物理的な環境の中で、もう一回図面を引き直して、個室化、ユニット化を図る、こういうふうにしましたところ、やはりスペースが、大分余裕が要りますから、百名定員の施設、その物理的なキャパシティーの中で図面を引き直すと、八十名定員になる、あるいは七十名定員になる。その差、二十人とか三十人はどうするのかという問題が早晩出てくるだろうと思うのですね。それは、無理に狭い空間を利用して建て増しをするという、あるいは、無理をしてユニットケアをぎりぎりでつくるよりも、私は、ぜひその部分は、二十、三十の部分は、地域へ出ていく、いわゆる地域分散型といいますか、そうした方向をお考えになるべきではないか。
 先ほど私が申し上げたように、今回のユニットケアという考え方は、特別養護老人ホームや老健施設の周辺にあるグループホームやあるいは宅老所のような、いわゆるグループハウジング、グループリビングの取り組みといいますか、そういうものを横目で見ながら、これは特養も考えなきゃならぬというふうな経緯もあったのではないかと私は思うのですね。
 そういう意味では、既存施設が新しくそういうユニット化、個室化を図る、そのときにあふれ出る数字はぜひとも地域に、特養の中でということもそれはあるのでありましょうが、ぜひ地域の中にグループホームのような形で出ていく。場合によっては、その出ていくところで新たな地域ができる、地域創造型のユニットケアということも考えられるのじゃないかというのが現場の声でありまして、こうした方向性については、厚生労働省として、どのようにこれからの先をお考えなのか、伺わせていただきたいと思います。
堤政府参考人 今御指摘のような、既存の施設で全面的に個室、ユニット化にしたい、しかし敷地の面積とかあるいは容積率とか、そういう物理的な問題から、完全には従来の定員を維持することはできないという場合にどうするか。
 私ども、いろいろ議論しておりますし、この個室、ユニットケアについて理論的にいろいろ御指導いただいている京都大学の外山教授なんかとも議論しておりますけれども、そういう中で出てきますのは、今まさに先生がおっしゃったようなサテライト型のユニットを、特養から少し外に出した形で、サテライトとして特養の一部を出していく、そういう、地域に出ていくというのもあり得るのではないかということを議論いたしております。そういう形で、問題は、建てかえたときどうするかということから、サテライトのユニットというのは大いに考えられると思います。
 さらに、そこを切り口として、地域における施設、あるいは在宅も含めた基盤のあり方というところまで、私ども、だんだん問題を、視野を広げていけるのではないかという気がしておりますけれども、とりあえず、切り口的には、サテライト型のユニットというのは今後十分検討に値する考え方だと思っております。
桝屋委員 そういう方向だというふうに理解をいたしました。
 そこで、ぜひお願いしたいのは、かつて、特別養護老人ホームと老健施設を合築するとかといったときに、開口部をつくっちゃいけないとか、昔は随分厳しい施設整備上の、あるいは補助金の適化法の絡みとか随分ありまして、そんな規制のために処遇が向上できなかったという思い出がありますね。随分前の話じゃなくて、つい最近であります。私は、その難しい規制の壁を取っ払っていただいたのは老健局だというふうに思っておりまして、老健局の先走りはその部分では大いに結構でありますから、私は、これから、さまざまな難しい規制の中で現場の取り組みができないということがないように、ちょっと先を見通して、制度の柔軟的な対応ということをぜひとも御検討いただきたいと思っております。
 副大臣、ここは、私が言っていることは極めて大事な話でありまして、副大臣もお役所出身でありますから、どうぞ、現場は、今申し上げたように施設が地域に向けて、まさに最前線は液状化の状況であります。いいことであります。私は、そこで、制度の制約で、そうした現場の創造的な取り組みを抑えてしまうということがないように、副大臣、常に目を光らせていただきたい。今までの御経験を十分生かしてお取り組みをお願いしたいと思いますが、突然の質問で恐縮ですが、いかがでしょうか。
宮路副大臣 介護にかける桝屋委員の本当に熱烈なお気持ちを今拝聴いたしまして、大変私も感銘を新たにいたしておるところであります。
 おっしゃるように、制度の枠にはまって物事が動かないというようなことがあったのでは、これはこれからの柔軟な行政の対応という面から見て足かせになっていくわけでありますから、その点はよくよく、重々心して、そして、おっしゃるように、本当に介護を受ける方々にとって何が幸せであるか、いい介護サービスの展開ということで貢献できるかという面から、一生懸命私も意を用い、また努力をしていきたいと思っております。
桝屋委員 そういう意味でも、副大臣、ぜひ現場に足を運んでいただきたい、重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
 そこで、もう一点。ユニットケアを実践しておられる、数年かけて、職員の暗中模索の中で、職員が大変なストレスを感じながら、今まで五十人単位、百人単位ぐらいで、集団のマスでの処遇ということばかり経験された方が本当に小単位で入居者と面と向かい合うということは、これは職員にとっても大変ストレスがたまる。それぐらい、実は処遇論の改革、革命だというふうに私は思っているのです。
 そうした中で、そこまでやるとどういう現象が起きるかというと、特に痴呆性あたりは、非常に要介護性について著しい改善が見られるという事例が出ているようであります。現に、私もそういう事例を何度か見させていただきましたけれども、そうすると、特別養護老人ホームでユニットケアを実践すると、何年かかけてやるといい成果が出てくる。こうなると、やはり一生懸命処遇をしますと、そういう家庭的な雰囲気で個に着目をして処遇を向上しますと要介護度が改善される、要介護三、四であった者が要介護二になったりする。そうすると、収入が減るわけですね。
 これはやはりつらいなという話がありまして、実は介護報酬の成功報酬の話でありますが、ここはやはり、介護保険を仕込むときに、成功報酬というのは福祉の世界にはあるいは医療の世界あたりではなじまないという整理が私はあったと思いますが、今、第二期の介護保険事業計画を検討する上において、やはり再びそういう声が出ている。処遇を向上すればするほど結果が出るものですから、その結果が、最終的に介護報酬が下がる、収入が減るということにつながっている。
 私は、これはまだ結論は持っておりませんが、やはり成功報酬というのは改めて考えなきゃいかぬ。あるいは、施設の評価というもの、例えば、この施設は形だけのユニットケアですよという、まあそれはなかなか言いにくいけれども、理想的なユニットケアをされておられる施設あるいは処遇力が非常に高い施設だというような、やはり第三者の評価というものを導入し、何らかの成功報酬ということもこれから考えなきゃならぬなというふうにも思っているのでありますが、この辺は局長、いかがでしょうか。何かありますでしょうか。
堤政府参考人 今先生御指摘の成功報酬、要介護度が改善した場合の成功報酬というのは、この介護保険法を審議する国会の審議の過程でも議論があったということで、今の介護報酬を設定する際にも審議会で大いに議論をいたしました。
 その中で、医療関係の委員の方からは、自分たちは医療のプロである、プロである以上、病気を治したからといって特段のお代をいただくというのは要らない、感謝の花束で結構ですという御意見があり、福祉の関係者からも、私たちも花束で結構ですという御意見もありました。
 当事者の方からそういう御意見が出てきて、私どもも、それはそれとしておいておいて、どういう形であればそういう努力を評価することが、報いることができるのかということで、いろいろ検討もしてみたわけでございます。
 例えば、要介護五だった方がいろいろ頑張って要介護四、三に下がったという場合に報酬が下がってしまう。では、それを一定期間、要介護五のままで置いておくというふうなことも考えられるのかな、こういうふうなこともいろいろ検討、議論いたしました。
 ただ、そうしますと、施設の報酬は減りませんけれども、本来減るべき利用者の一割負担の金額は減らないといったようなことの問題もあって、なかなかすっきりしたいい仕組みがないなということで、現行の介護報酬では、そういう仕組みを制度として取り入れるということには至らなかったわけでございます。
 ただ、今桝屋先生からお話ございましたように、利用者の選択を通じて、やはりそういう一生懸命やって要介護度が改善されるような施設が選ばれるということをもっと促していくということが必要だろうと思いますので、情報の開示、それの評価といったようなところをこれから力を入れてまずいきたいというふうに考えております。
桝屋委員 ぜひとも、施設の評価という観点で引き続き検討をお願いしたいというふうに思います。
 最後になりました。これはもう要望でありますが、ユニットケア、個室化、新型特養、私のきょうの議論を聞いていただくと、大臣はとてもいい制度というふうにお考えかもしれませんが、心配なところもあるわけでありまして、裏には、影の部分としては、やはりホテルコストの、いただくという問題があるわけであります。負担増というところが横たわっておりまして、ここはやはり施設、在宅、このサービスをどう考えるかという本質的な議論もあると思いますが、私はやはり、低所得者の方がこの新型特養といいますかあるいは個室化、ユニット化という、その恩恵にあずかれないということがあってはならないと思いますので、ただいま検討されていると思いますが、ぜひとも現実的な、まだまだ施設入所者の年金というのは決して成熟している状況ではありません。将来は大分変わると思いますが、現状においては相当困難な事例もありますので、よく現場の御意見も聞いていただいて、適切な制度設計をお願いしておきたいと思います。
 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
森委員長 次に、鍵田節哉君。
鍵田委員 大変現場に足をつけた、非常に具体的な介護の問題の質問に聞きほれておりましたけれども、一転して、雇用問題についての御議論をさせていただきたいと思っております。きょうは一般質疑でございますので、話題がころっと変わりますこと、お許しをいただきたいと思います。
 本年度のいわゆる春闘と言われる闘争、私も、昭和三十年にこの春闘という言葉ができまして以来、これに参加をしてまいりました。好不況いろいろありましたけれども、ことしほど厳しい内容の春闘というものは経験したことがございません。大変厳しい環境下でございますが、こういう形になりましたのも、現在の大変厳しい雇用状況がそういうふうにさせておるのではなかろうかと思っております。そして、今もまだ未解決のままで、この大型連休を越して五月までなだれ込もうというようなところもたくさんあるわけでございます。
 ただ、二月の失業率が若干改善されたというふうな数字の発表がございました。五・三%ということ。三月危機も乗り越えた、そして五・三%と失業率も若干改善されたという見方もできるわけでありますが、中身を見ますと、そんなに甘くないのではないかなというふうに今思っておるわけでございます。
 中身を見ますと、自発的失業というのがやはり減ってきておりまして、いわゆる求職者が減ってきておる。そしてその反面、非自発的失業というのは相変わらずやはり対前年比、大幅に伸びておるということは、もう仕事を探そうとしてもない、だからもう仕事を探すのはあきらめようという人が随分ふえてきた、しかし企業のリストラなどによりまして失業するという人は随分ふえてきておる、こういう状況が相変わらず続いておるわけであります。また、非常に経済の状況が悪い地域、従来から失業率の非常に高い地域では、やはり同じような推移を現在も続けておる、こういう状況でございまして、雇用者数そのものが連続して減少をしてきておる、こういう状況でございます。
 実は、私が住んでおります奈良県奈良市という中核的な都市があるわけでございますが、大体その市の人口に匹敵するぐらいの人が毎月失業者の群に入ってくる。そういう状況にあるわけでありますから、大変これは深刻でございまして、そういう中でも、世帯を持ってその一家の生活を支えておる人たちというものが非常に多いわけでありますし、失業そのものも長期化しておる、こういう状況が続いておるわけでございます。
 しかし、そこで質問なんですけれども、政府の方針、特に小泉内閣になりましてからは、骨太の方針というものが出てまいりました。本当は骨太なんというのは、形容詞は第三者がつけるので、自分から言うのはちょっと私はおかしいんではないかという気もしないでもないんですが、どうも小泉内閣では、骨太、こう言っておるんですが、これの中に、サービス分野での雇用機会の創出ということで、五百三十万人の雇用の創出ということを言われておるわけでございます。
 しかし、この中心は、ほとんどがサービスということで、例えば、個人向け・家庭向けサービスの増で百九十五万人とか、社会人向け教育サービスが二十万人とか、企業・団体向けサービスが九十万人、中古住宅関連サービスが五十五万人、こういうものをずっと足してきますと五百三十万人ということになっておるわけでございます。政府としましては、五年後にこれだけの雇用が創出されるという推定をされておるんですが、単なる推定や願望のような気がしてならないわけでございます。
 過去にも、緊急の雇用創出ということで、百万人とか百二十万人とかという目標を何回か立てられたことがあったわけでありますけれども、終わってみますと、ほとんど効果が上がらないままで、いや、さらに深刻な失業状況が出てきたから、それは結果として達成されなかったということなのかわかりませんけれども、現実には、余り、それの検証というものが十分されておらなかった、こういうことがあるわけでございます。
 この五百三十万人の雇用創出ということになりますと、やはり、自発的な能力開発の支援でありますとか、派遣や有期雇用、裁量労働、フレックス就業などの多様な就労形態を選択するとか、キャリアカウンセリングの充実や職業紹介の円滑化、性別や年齢にかかわらず働ける環境の整備というふうなことが列挙されておるわけでございますけれども、ぱらぱらといろいろなことは言われておりますけれども、では、五百三十万人の雇用をつくるんだ、そういう具体的な方針がどうも厚生労働省の方からも見えてこないし、また、こういうことをやっていこうとすると、厚生労働省だけではなかなかできない部分があるわけでありまして、他の省庁のいろいろな協力がなければいけないわけでございます。
 それを厚生労働省がまた取りまとめて、そして五百三十万人の雇用をつくっていくんだという取り組みが必要なわけでございますけれども、実際に、そういう取り組みをどのようにされておるのか、そして五年間でこれだけの人数の雇用が本当にできるのかどうか、その辺につきまして、大臣の方からひとつお答えをいただければというふうに思っております。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
坂口国務大臣 五百三十万という数字がかなりひとり歩きをしておりますが、経済財政諮問会議に設置をされました雇用拡大専門調査会というのが島田先生を中心にしてできまして、ここで示されたものでございますが、この五百三十万という数字は、サービス業を中心として、やろうと思えばこのぐらいの数字は出ますよ、可能性としてはありますよということを言っておみえなんだろうと思うんです。
 中身を拝見いたしますと、今までの傾向を延長線上で見れば、これをさらに進めていけば、将来はこのぐらいになるのではないかというのが一つ。それからもう一つは、政府がやっております政策、例えば、育児の問題でありますとか、介護の問題でありますとか、こういうものをやって、さらにこれを進めていけばこのぐらいになるのではないかというのもその中には含まれております。
 いろいろでございまして、もう少し例を挙げて言いますと、個人向け・家庭向けサービスというようなものもあるわけでありまして、これで百九十五万人ここで見ておるわけでありますが、例えば健康増進サービスというのがある。これなんかでも、旅行頻度の増加ですとか、消費額の増加などから、将来的潜在需要を仮定して推計。ですから、もう少し旅行なんかをふやしたら、健康にもなりますよ、そうするとサービス業ももっとふえますよ、そういう出し方になっている。
 それから、今度は、社会人向け教育サービス。生涯教育などで、我が国の過去の傾向、トレンド等を仮定して、そして、諸外国並みに伸ばしていったら、そう推計して、約二十万人ぐらいはふえますとかいうふうになっている。
 それから、厚生労働省の関係でありますと、子育てサービスでありますとか高齢者ケアサービス。これはもう既に予算化されておりまして、この予算額を伸ばしていけばこれだけになりますよ、こういう話でございますから、厚生労働省の場合のように、もう既に予算化をされておりますものにつきましては、将来まだふやしていかなきゃならぬわけですから、これは確かな数字だというふうに私は思っておりますが、必ずしもそうしたものばかりではなくて、将来この分野が伸びればその可能性はありますよというものもこの中には含まれているということでございます。
 さて、そうした数字のトータル五百三十万でございます。その中で、現実的にどこをふやしていけるかといったもの、これから我々も取捨選択をして、そして取り上げていかなきゃならないと思うんです。いわゆる個人向け・家庭向けサービスなんというのが、これがいわゆる雇用として本当に換算されるかどうかというような問題も実はあるわけでございますから、そうしたことではなくて、もう少し、第二次産業なり第三次産業なり、ここはサービス業ですから三次産業が中心でございますけれども、二次と三次との、二・五というふうに言われることもありますけれども、二次産業とサービス業とがくっついたというようなものもあるわけでございますから、そうしたところをこれからどうふやしていくかということが我々に課せられた任務だというふうに思っております。
 ここに挙がっております中で、我々がこれはもうどうしてもここを伸ばしていかなきゃならないというのは、それは規制緩和をやるということによってなし遂げることのできるところもございますし、あるいは財政的に裏づけをしなければならないところもございますし、そうしたことを込みで考えていくべきだというふうに思っておりまして、できる限り、我々のできる範囲、とりわけ厚生労働省として関係のあるところはより積極的にひとつやっていこうというふうに思っております。
 国土交通省でありますとか、他の省庁とのかかわりのありますところも、ぜひ、そこの省庁にお願いをしていきたいということを今やっておるところでございます。
鍵田委員 ありがとうございます。
 ただ、五年経過した結果、これは単なる大ぶろしきであったとか、アドバルーンだけであったというふうなことのないように、厚生労働省は雇用を主管する省庁でございますので、やはり他の省庁に働きかけて、必ずリーダーシップを発揮していただかないといけないわけでございまして、その辺をよろしくお願い申し上げたいと思いますし、この五百三十万人という数字が本当に実現したとしたら、三百五十六万人失業者があるといっても、もう十分数は充足するわけでありますが、質的な問題。
 というのは、失われるであろう雇用と、それから創出されるであろう雇用との間でどういうふうな関係になるのか。その辺のシミュレーションをどのように考えておられるのか。いや、まだそこまでは具体的に検討されていないということなのか。大体で結構ですが、どの程度の、例えば、物づくり産業を中心にして今の日本の経済を引っ張ってきたんですが、これがどんどん今中国だとか海外に出ていっておる。それで、どのぐらいいわゆる喪失する、そして新しい産業が五百何十万創出するという、その関係についてのシミュレーションがどのようにされておるのかということについて、もし御検討されておるのであれば、お答えをいただければと思います。
坂本政府参考人 ただいまのお尋ねの、五百三十万の雇用創出の分と、それから、今後物づくりを中心として製造業分野でだんだん減ってくるんではないか、その間の労働力の移動といいますか、それをどういうふうにシミュレーションしているかということにつきましては、個別具体的に即したシミュレーションというのは特にやっているわけではございませんけれども、近年のいろいろな趨勢を見ておりますと、サービス業を中心に雇用者数が非常にふえておる、それから、製造業は雇用者数が減少の傾向にあるわけでございまして、今後しばらくの間はこういった傾向が続くのかなと。
 それで、雇用政策研究会で、将来の産業別の雇用者数、就業者数を見通したものがあるわけですけれども、これは二〇一〇年を見通しておりますけれども、ここでは、製造業の就業者、大体千二百十一万人、これに対しましてサービス業が二千百八十七万人といったような数字も出ているわけでございます。
 こういった形で労働移動というものがこれからは避けられないということで、その移動を円滑化するために、労働市場システムをいろいろな形で整備していく、あるいは能力開発のシステムについても効率化を図っていく、こういった取り組みが非常に重要になっておるというふうに思っておりますので、さらなる施策の充実に向けていろいろな検討を重ねておるところでございます。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
鍵田委員 産業構造というのは時代の進展とともにいろいろ変わっていくということについては、私も認識はしております。しかし、やはり日本の国というのは、物づくり産業を中心にして、資源も何もないけれども、人的な資源だけはある。自然資源はないけれども、そういう人的資源をもって日本の経済を支えてきたわけでありますから、これからも物づくり産業は非常に大切であると私は認識をしておるわけでございまして、それらの産業構造をどう構築していくのか、そういう中でどういう産業を大切に育てていくのかというようなことにつきましては、さらにまたいろいろな段階で議論をしていきたいというふうに思っております。
 次に、緊急対応型のワークシェアリングについての支援策につきまして、御質問をしたいと思います。
 三月二十九日に、ワークシェアリングに関する政労使合意というものがまとまりました。昨年の十二月十四日に第一回の検討会議を開催されてから、急ピッチで六回にわたって開催をされたわけでございまして、大臣も大変御苦労いただいたということだと思います。そして、日経連、さらには連合、厚生労働省の間での基本的な考え方、五項目にわたる合意事項が発表をされたわけでありまして、これはやはり、一つの考え方としてまとめられたということについては一定の評価をしたいというふうに思っております。
 しかし、私は、昨年から議論をしておるわけでありますけれども、やはりワークシェアリングをやっていくのには、単に公労使のトップが集まって話し合っただけではなかなか前進をしないのではないか、そのためにいろいろな手を打っていかなくてはならぬのじゃないかということで申し上げてきたわけでありますけれども、案の定、実は非常に残念な結果ではないかな、単に申し合わせをしたというだけの内容になっておるのではなかろうか。
 先日も、民主党の中に雇用対策プロジェクトというのがありまして、実はこの合意内容についてヒアリングをさせていただきましたけれども、我が党の委員の皆さんからは、大変不十分な内容である、何とかもっと具体的なワークシェアリングの施策についての合意を形成できるようにできないのかというふうな意見が多かったわけでございます。
 どうも今回の内容を見ましても、労使の自主的な取り組みということが中心の考え方でありまして、これでは何か、厚生労働省、大臣に大変失礼でありますけれども、単に三者の会合に陪席をしただけというふうな結果になっているのではないか。確かに、労使、利害が違いますから、綱引きが起こります、その中へ割って入るのは非常に難しいことだということはわかりますけれども、今現在では、本当に陪席をしたというだけの結果に終わっているんじゃないかという評価しかできない。民主党としてもそういう考え方でございます。
 そこで、国会論議としましては、ワークシェアリングというのは一九七八年ごろに参議院で初めて議論になったというふうに聞いております。当時の社会党の福間知之参議院議員が質問で取り上げたということのようであります。七九年には衆議院で取り上げられて、藤井労働大臣がこのときに、日本が今後低成長に移行していくだろうから、それについてはワークシェアリングを進めていきます、こういうことで答弁をされておるわけでありますが、今日までほとんどその議論もなくて、初めて、ようやくこの三月の末に公労使の合意ができたということでございます。
 もちろん、今回の合意というのは第一段目でありまして、これからも実務者によります会合を定期的にやっていきましょうということにはなっておるのでありますけれども、しかし、具体的な内容がこれからということで、これでは、それを早く出さない限りはワークシェアリングの実はなかなか上がってこないということになるわけでございます。
 政府の役割として、法改正でどういうものを改正していくのかとか、それから、どんな助成ができるのか、また、社会保険制度などの見直しをどうしていくのか、税制上の優遇措置などもどうするのかというような、具体的な内容での合意とかそういうものがなければ、これは施策としては前進をしないのではないかというふうに思っておるわけでありまして、どう実効性を持たせていこうとしているのか。そして、それについては、やはり厚労省が前に出てリーダーシップをとっていく、国策としてこれを取り上げていくんだという意気込みがなければ、恐らく、少し景気がよくなってきたということになりますと立ち消えになってしまう。昔の、七八年ぐらいの話と同じようなことになってしまう可能性が多分にあるわけです。
 それが証拠に、一昨日でしたか、日立製作所の例が報告されておりました。三工場で半導体の不況のためにワークシェアリングをしておった、しかし、若干市況が回復してきた、そういうことで、これを解除しようというようなことになったということを聞いております。
 それから、確かに、雇用維持も難しいというふうなところでは何とかワークシェアリングをしたいという考え方があっても、そうではない、比較的順調な産業なり企業では、そんな煩わしいことはしたくないということになってきますと、社会的なワークシェアリングというのは全く前へ進まないということになってしまうわけであります。
 そういう意味では、やはり時間短縮でありますとか、いろいろな法改正でありますとか、そういうものを前面に出して、そして引っ張っていく、そういう厚労省の役割というのは大切なんじゃなかろうか。そういうことにつきましてどのようにお考えになっているのか、これはできたら大臣にひとつ御覚悟をお願いしたいなというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
狩野副大臣 ワークシェアリングの政労使合意は具体性に乏しいんじゃないかというお考えだと思いますけれども、御存じのように、今回の合意というものはワークシェアリングについての基本的な考え方に関するものでありまして、政労使で取り組むべき方向性については合意を得ることができたと考えております。
 これまでにもワークシェアリングについて議論がなされたことがありましたけれども、当事者である労使間で、労働時間当たりの賃金の取り扱いをめぐって合意を得るに至らなかったものであります。しかし、今回の議論においては、その実現に向けて労使が大きく歩み寄り、合意を得ることができたことは、大きな成果があると考えております。
 検討会議につきましては、政府といたしましても今後も存続させるということにしておりまして、それを、今回の合意を踏まえて、多様就業型ワークシェアリングについては、短時間労働者等の公正・均衡処遇のあり方及びその推進方策、社会保険の適用拡大についてさらに検討を深めていくとともに、緊急対応型ワークシェアリングに対する財政的支援の方策については、できるだけ速やかに取りまとめていきたいと考えております。
坂口国務大臣 今、副大臣から答弁のあったとおりでございまして、いわゆる基本的なことの合意というのは、今までこの基本的な合意がなかなかできなかったわけでございますので、まずそこは一つクリアをしたということだろうと思うんです。ただし、今度は、国が何をするのかということが問われるんだろうと思っています。陪席者というふうに、うまいことを言われるなと思いながら聞いていたわけでございますが、私もそこは全くそう思っておりまして、媒酌人も、頼まれ仲人みたいなものでございまして、座っていただけではいけない、私も率直にそう思っております。
 今後、これから先、今度は国の方がこれに対してどういう、制度改革も含めて、なしていくのかということが問われると思います。そうしなければ、これは前へなかなか進まないと思いますしいたしますから、労使の間では、ようやくこれはとにかく合意をしていただいた。これはなかなか、両方ともいろいろあって、もう御存じのとおりでございますけれども、この合意、なかなかできなかったんですけれども、ようやくここまで来た。さあ、この次はひとつ国の番ですよということになってくるというふうに思っておりますから、ここをそんなに時間をかけてもいけませんので、早くこの結論を出さないといけないというふうに思います。
 しかし、問題が非常にたくさんあることも事実でありまして、いわゆる短時間労働者の問題を一体どうするかという問題も、これを決めますときに一緒にやらなきゃいけない。そうしないと一方的になりますから、そこをやらなければならない。ですから、簡単ではないというふうに思っています。
 現在の、労使の方で合意をしていただいたその中で、ワークシェアリングをやっていただくところも出てくるだろうというふうに僕は思いますけれども、しかし、現在勤めておみえになる皆さん方がやめなくてもいいようにどうするかというところにとどまる可能性があるわけです。そういうことを申し上げて大変失礼ですけれども、労働組合の方も、現在勤めている人がやめなくてもいいということを最優先する。企業の方も、今勤めている人をどうするかということの方が大事になってくる。
 新しい人をそこへ採るという話にはなかなかなってこないわけでございますけれども、新しい人をそこへ加えていただくために一体国としたらどうするかというようなことを少しやらないと、本格的なワークシェアリングにならないんだろうというふうに思っておりまして、認識はもう委員と全く私も一致いたしておりますので、一生懸命ひとつやりたいと思っております。
鍵田委員 今大臣の御覚悟を聞かせていただきまして大変頼もしく思っておる次第でございますが、本当に多種多様にわたる検討なり法改正なり制度の改正なりということをやらなくてはなりませんし、そのたびに、それに対する労使の合意も取りつけなくてはならない。非常に難しい作業があると思いますけれども、これをクリアしない限り政策の前進はないわけであります、雇用の改善もないわけでありますから、ぜひともひとつ頑張っていただきたいと思っております。
 次に、今は緊急の雇用対策ということでありますが、多様な就業型のワークシェアリングにつきましても、早急に取り組まなくてはならない課題でございますし、また、場合によっては同時進行ということを今大臣もおっしゃられましたけれども、その中で、フランスでの三十五時間労働制についての報告が、JILの報告書に出ておるわけであります。フランスの報告ということではございませんけれども、ジェトロからの報告がこれに出ております。
 これを見ましても、その中で、フランスではワークシェアリングという言葉は使わないんだと。グローバル経済化の進展のもとで、時短を契機に、変形労働時間制の導入など企業の労務体制にダイナミズムをもたらすとか、組織の適応性を高める。一方、労働者には時短による生活の向上、社会に対しては雇用創出、失業の減少というふうな果実をもたらすんだ。したがって、ワークシェアリングという言葉は使わないというふうなことを言われておるわけでありまして、社会全体に新しい働き方という価値観を創出していくという考え方でやられる。
 確かに、高齢化社会における高齢者雇用の問題、男女共同参画社会の問題、育児や介護に適応した働き方、こういうふうなことも含めて今後検討を進めていただきたいというふうに思っておりますけれども、これらにつきましても各省庁の協力を得ながら進めていかなくてはならないわけでございまして、特に今、経済産業省や文部科学省などとの連携も大切なのではなかろうかというふうに思っております。
 旗振り役としての厚生労働省につきまして、今後具体的にどのような手順でこれを検討されていくのかということにつきまして、もう時間も余りありませんので、ひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
坂本政府参考人 いわゆる多様就業型ワークシェアリングについてのこれからの進め方ということでございますけれども、この多様就業型の方は、今後の少子高齢化ですとか経済産業構造の変化が急激に進む中で、人々の働き方あるいはライフスタイルを見直す重要な契機になるわけでございます。また一方で、企業にとっても、効率的な企業経営ができる、そういった大きな効果が期待できるというふうに思っております。
 多様就業型ワークシェアリング、この環境整備につきましては、今お話ございましたように、諸外国でいろいろな取り組みがございますけれども、かなり息の長い取り組みが必要であろうというふうに思っております。
 今回の制度施行によりまして、我が国のワークシェアリングはその取り組みの第一歩を踏み出したわけでございますけれども、今回の検討の成果を踏まえまして、今後とも、経済産業省を初めといたしまして関係府省と連携をとりながら、積極的な検討に取り組んでまいりたいと思っております。
鍵田委員 それでは、手短に質問をいたします。手短な答弁をひとつお願いしたいというふうに思います。
 既存の法律を活用する、これを徹底するだけでもかなりのワークシェアリングができるんじゃないか。特に、サービス残業をなくしたら九十万人の雇用が創出されるというふうな発表がございました。これらにつきましても、言われながら全くなかなかなくならないというふうなことがあります。これについてのチェックの仕方に問題があるんじゃないか。労働組合がしっかり機能しているところでは余りこういうことは起こらないんですが、労働組合があっても、もうひとつチェックがきかないような産業などもあるんじゃないか。そういうところについて、特にサービス残業の多いようなところについては、できるだけやはり臨検とか摘発などについて協力をしてもらいたい。
 それから、時間外割り増しも、二五%でまだ法律的には張りついておるわけでありますから、これを五〇%ぐらいの割り増し率にすることによって、やはり超過勤務についてはコストが高くつくんだという意識を植えつけるためにも、まだまだこの水準の改善が遅れておる、早急にこれらについても取り組まなくてはならないと思います。
 有給休暇の取得率も五〇%に張りついておるわけでありまして、これでは、ワークシェアリングでもしようか、賃金カットしてでも労働時間短縮をしようかというふうな時期にこういうことがあってはならないわけでありますから、これらにつきまして、どのような施策でもって充実を図っていきたいと考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
日比政府参考人 前後したお答えになるかもしれませんが、まず、法定割り増し率、賃金の問題でございます。これにつきましては、平成十二年十一月、当時の中央労働基準審議会から建議をいただいておりまして、当面現行の水準を維持する、それから、いろいろな状況を見て、一定期間経過後、見直しの必要性について検討することが適当ということが言われたところでございます。
 実は、サービス残業の問題と絡みますけれども、いずれにしても、割り増し率のことは、いずれ御議論が行われることになろうかと思いますけれども、その前提としまして、残業をしているけれども賃金を払っていない状態の解消、それから残業時間そのものを抑制していく、これにまずは取り組むことであろうと思っております。
 サービス残業の点、もうるる申し上げませんけれども、昨年四月以来、例えば自己申告制等の事業場などを中心としまして、適正な措置を講ずるようにということで指導といいますかそういうことをやってまいったわけでございまして、特に昨年十月からは、臨検監督という形で、やや細かい点もチェックしながらやってまいりました。十月と十一月の分しかまだ状況をまとめておりませんけれども、二千数百の事業場でかなりの違反があったり、あるいは指導をすべき事項がございました。今後におきましては、これを継続して行うとともに、従来実績をも踏まえまして、チェックの仕方等についても工夫を行ってまいりたいと思っております。
 なお、有給休暇の取得率につきましては、御指摘のように、確かに残念ながら伸び悩み、五〇%を切るというような状況でございまして、これにつきましては、計画年休の取得等による、例えば長期の休暇をとっていただくとか、そういうことにつきまして、これは指導という話じゃないかもしれませんけれども、そういうコンセンサスづくり、あるいはそういう機運を盛り上げるというようなことできめ細かくやっていきたいと考えております。
鍵田委員 もう時間が参ったようでございます、あと本当は三問ほどやりたいところですけれども。
 特に、学卒の未就職者が非常にことしは多い。これは大変深刻な問題でございまして、例の信州大学の高梨先生あたりが雇用審議会の会長さんもされておられるようでありますが、青少年の雇用促進法というのをつくって、一般財源でこれらの人たちに対する対策を立てたらどうかというふうな提案をされておりますが、これについてどうお考えか。
 それからもう一つは、雇用のミスマッチの解消というふうなことで、私のしごと館というのを京都につくられておりますが、これについて文部科学省などともどのような連携をとりながらやられているのかどうかというふうな問題。
 それから、フリーターが非常に多い。この問題につきましても、どのような施策を考えておられるのか。非常に、将来に禍根を残すということにもなりかねないわけでありまして、これらにつきましてどのようなお考えを持っておられるのかということを、できたらちょっとお答えをいただいて、終わりたいと思います。
澤田政府参考人 高梨信州大名誉教授の御提言につきましては、将来にわたって良質な人材を育成するために、青少年雇用促進法を制定いたしまして、必要な財源を確保しながら学校教育等と一体となって人材育成を強化すべきという趣旨と理解しております。
 私どもも、学校を卒業して社会に出ようとする若者が就職先が決まらなかったりフリーターになることは、本人にとってのみならず社会全体にとっても損失となるというふうに認識しております。したがいまして、学校とも連携しながら、新規学卒者の就職支援あるいは在学中の職業意識啓発に取り組んできておりますが、高梨名誉教授の御提言等々、各方面の御意見も参考にしながら、若年者の雇用安定に向けて一層の取り組みを進めたいと思います。
 なお、財源につきまして、現在でも若年雇用対策につきましては雇用保険特別会計と一般会計を効率的に組み合わせて確保しておりますので、今後ともそうしたことで両者を適切に活用しながらやっていきたいと思っております。
酒井政府参考人 しごと館のことについて手短に申し上げたいと思います。
 しごと館の果たす役割は、我々は大変大きいものと思っております。今先生もおっしゃいましたように、何分これは、学生生徒、こういう人たちの仕事意識を高める、醸成し、目覚めてもらう、こういうことでもありますし、そういう人たちのための総合的ないわば情報拠点でございます。そういう人たちが使えるようなことにするのが基本でございますので、これは文部科学省とも従来より連係プレーをやっております。地元の教育委員会とかあるいは学校関係者、そういう方々もでございますけれども、産業界とか自治体そのものもこういうところを十分活用していただけるようにいろいろやっていきたいと思います。
 十五年の三月スタートでございますが、スタートしてもそういう気持ちでやっていきたいというふうに思っております。
鍵田委員 ありがとうございました。
森委員長 次に、加藤公一君。
加藤委員 民主党の加藤公一でございます。
 お昼前、最後でございますので、空腹の皆さんも多いかと思いますが、もう二十分ほど集中して、御協力をいただきたいというふうに思います。
 昨今、ちょっとほかの委員会に大分時間をとられておりますので、坂口大臣と議論をさせていただく時間が若干少のうございまして寂しい思いをしておりましたから、きょうは二十分間集中してお話をさせていただきたいと思います。
 今、鍵田議員のお話にもありましたけれども、若年失業の問題、大変深刻でございます。就職内定率が極めて低いということだけではなくて、例えば大卒の方ですと二割以上、それから高卒の皆さんでもほぼ一割の方が進学も就職もしない、学校は出たけれども何にもしないという、いわゆる無業の状態に陥っているという問題もありまして、今局長の御答弁にもありましたとおり、社会全体で見ても、若年労働力の活用という観点、それから将来に向けてのその御当人の職業能力の育成とか、あるいは知的資本の蓄積という観点から見ても大変大きな問題、将来に対するツケになるんじゃないかと大変不安に思っているところでございます。
 そこで、この若年失業の問題につきまして、需要不足というのはもうわかっている話でありますから、この部分を除いてほかのところで最大の原因は一体何とお考えか、大臣にお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 ことしの状況を見ましても、とりわけ高校卒業の皆さん方に対する就職率、非常に落ちてきておりまして、約五万人ぐらいの皆さん方が職を得ないままで卒業を迎えられたというふうに聞いております。
 この人たちに対してどうするかということでございますが、その前に、どういうことによってこういうふうなことが起こっているのかということがあるわけでございますけれども、経済状況のことにつきましてはもう申し上げるまでもないというふうに思いますが、企業の方が即戦力の人たちを要求するようになってきた。そういったことから、大学の方は昨年に比べますと若干ではございますけれどもよくなってきておりますが、大学、短大はよくなっておりますけれども、高等学校のところが伸びないというのは、いわゆる即戦力要求というのが一つ影響をしているであろうというふうに思っております。
 それからもう一つは、若年者の能力でありますとかあるいは職業意識が前ほど十分でないといったこともございますので、働く意欲、そしてどういう能力をつけていただいたらいいかというようなことにつきましても、新しい時代にひとつ対応して決めていかなければいけないのではないかというふうに思います。
 約五万人の未就職卒業者に対しまして、これはなかなかマスで論じておりましてはいけませんので、この皆さん方に個々に接触をして、そしてどうするかということをお話をしていかなければいけないというふうに思っております。それぞれの学校にお問い合わせをして、この五万人の皆さん方の中で就職をしたいというふうにおみえになる方は本当にどういう方なのか、そして何人なのかということをそれぞれの学校でひとつ把握をしていただこうというふうに思っております。
 そして、この人たちは少なくとも就職をしたいというふうにおっしゃる、それが五万人、即もう全員なのかもしれません、その皆さん方に一人一人これは当たらせていただいて、ハローワークの方で接触をさせていただいて、そして皆さん方のお考えをひとつお聞きし、ミスマッチができるだけないようにしていきたい。それで、現在ハローワークで扱っております就職等の中で適当なものがないかどうかというようなこともごらんをいただきたいというふうに実は思っております。
 在学中の皆さん方にはインターンシップの問題がございますから、インターンシップ等をより積極的に行うような体制をつくっていきたいというふうに思っておりますが、当面、ことし卒業されましたことに全精力を挙げたいというふうに思っているところでございます。
加藤委員 直近では、もう既にそういう皆さんが出ているわけですから、今おっしゃられたとおりのことをどんどんやっていただければいいと思うんです。
 大臣も御存じだと思いますけれども、日経連の調査で、これは二〇〇〇年の調査ですけれども、高校新卒者の採用に関するアンケートというのがありまして、基礎学力とかコミュニケーション能力、一般常識、態度、マナーと四項目に分かれての調査ですが、高卒者を採用していた企業の評価が極めて低いわけですね。御存じのとおりだと思います。
 満足をしている企業が、項目によって一番低いものですと一・二%、高いものでも三・五%、これしかない。この御時世でどんどん人材の流動化が進むときに即戦力が欲しくなるというのは経済合理性からいって当然のことで、その中で高校を出た方を採用してもらわなきゃいかぬわけですから、この状態では、幾ら企業に頭を下げたって、それは勘弁してくれという話になるのは当然であります。
 同じように大卒者の評価についても、これは東京商工会議所のことしの調査でありますけれども、これだけ大学を卒業した方が就職環境が厳しいと言っている中、予定数まで採っていない企業が多いわけですね。なぜ予定数にまで達していないのか。この調査で、いい人材がいないというふうに答えている企業が四七%以上ある。
 つまり、今大臣がおっしゃったように、新卒の方に関して言えば、ほかの条件のミスマッチというのは極めて低くて、広い意味での能力、職業能力のミスマッチに限定して考えていいと思います。つまり、意識の部分であるとかあるいは職業観の問題とか、そういう部分だと思うんですね。
 ここについては、厚生労働省だけではなくて、まさに文部科学省とも一緒になって取り組んでいただかなければいけないところでありまして、今ここで具体論をということはなかなか難しいとは思いますが、ほうっておけばどんどんこの状態が厳しくなることは間違いありませんので、文部科学省と厚生労働省と共同でぜひここにメスを入れていただきたい。きょうは締め切りを設定しませんから、いずれかのタイミングでぜひ具体論を出していただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 大事な視点だというふうに思いますから、それはひとつ文部科学省とも連携を、もう既にとっておりますが、また一層そこを強化したいというふうに思っています。
 企業の方からも先般話がございました。とりわけ、中小企業の場合には、お勤めをいただいても半年もたないと言われるところが非常に多い。中小企業の方も、自分たちの企業のあり方に対する姿勢、これもやはり変えていかないといけないだろうというふうに認識をしている。非常に家族的な企業でありましたりいたしますと、新しく来ていただきましても違和感が強いといったようなこともあるようでございますので、そうしたことも、企業の側もひとつ変わっていかなければならないということを言っておりました。
 そんなこともあわせて、これは進めていかないといけないなというふうに思っている次第でございます。
加藤委員 おっしゃるとおりでございますのでもう申し上げませんけれども、七五三の問題なんかもあるわけで、離職が多過ぎて採用できないということも当然あるでしょうから、その部分も含めてですけれども、これまた引き続きどこかのタイミングで議論をさせていただきたいと思います。
 次のカテゴリーですが、長期失業の方、それから自営業を廃業されてしまった方というのがいわゆる失業給付の対象になっていない、あるいはもう終わってしまったという方、失業状態の中で今一番手を差し伸べなければいけない方々というのはそうした皆さんなんだろうというふうに思います。おおむね百万人とも百万人強とも言われておりますが、その方々に対して、現状ですと、雇用対策の議論は随分ここ数カ月あるいは何年も続いてまいりましたけれども、具体的に、その方々が救われるという状態にはまだ至っていないと思います。
 時間がありませんので、ぜひぜひ手短に、今後どういう対策を打たれるおつもりか、お答えいただきたいと思います。
狩野副大臣 委員御指摘のように、長期失業者や自営業廃業者の増加が認められることを踏まえまして、政府といたしましては、三つの施策を講じたところでございます。
 一つは、雇用保険の訓練延長給付の拡充や、雇用保険の受給終了者及び自営業廃業者など一定の失業者に対する生活資金貸付制度の創設。二つ目は、雇用保険が切れた失業者等の雇用に重点を置いた新たな緊急地域雇用創出特別交付金の創設。そして三つ目が、キャリアコンサルタントによる求職者の個々の状況に応じたきめ細かな相談の実施。これらの施策を適切に活用することにより、長期失業者や自営業廃業者なども含め、失業者の再就職の促進等に努めてまいりたいと思っております。
加藤委員 今の御答弁の中、まず冒頭にありました訓練延長給付の件なんですけれども、もちろん失業給付が切れてしまった方に対しては非常に助かる制度であろうと思います。ないよりはよほどいいとは思うんです。しかし一方で、現実のところを聞きますと、何にも目的を持たずに、とにかく何か訓練を受ければ延長給付が受けられる、とにかく駆け込みで、何でもいいから訓練を受けようじゃないかということがどうも、全員とは言いません、全員とは言いませんが、実態としてあるようであります。
 ある資格学校の先生に伺いますと、一生懸命自分でお金を払って勉強に来ている方がまじめに努力をされている横で、ハローワークから紹介で来た方がぐうぐう寝ている。それはなぜかというと、勉強する気が最初からないんですね。とにかく訓練を受けていれば延長給付が受けられるから、何でもいいから行こう、こういうことになってしまっている。つまり、後の議論にもつながりますが、キャリアカウンセリングを受けずに、とにかく苦し紛れで、わらをもつかむ気持ちで、ではそこへ行きます、こういうことになってしまっているんじゃないか。
 これではその教育費までむだになってしまうわけでありまして、ここはやはり制度自体を少し見直していただかなきゃいけないんじゃないかと思うんです。各論は聞きませんが、御意思としてどうでしょう、大臣、御検討いただけませんでしょうか。
坂口国務大臣 そこは問題点であることは、私も認識として持っております。せっかくの制度がそういうふうに意味のあるように使われないということは問題が多いというふうに思いますから、より効果的にそこを使っていただくようにどうするか、やはり少し知恵を絞らなければならないかもしれません。
 検討したいと思います。
加藤委員 それともう一つは、今の訓練延長給付とか生活資金の貸付制度とか、セーフティーネットとして給付をする部分というのは、もちろん制度を見直した上でぜひやってほしいと私も思いますが、最終的には何かしらお仕事についていただかなければいけないわけで、そこの機能が今の日本には決定的に欠けているんじゃないかというふうに思います。失業給付が切れてまだ失業中の方、あるいは自営業を廃業してしまってもうあしたから困っている方が、次、ではどうやったら仕事につけるのか。ハローワークに行ったらなかなか仕事が見つからない、ずるずるいく。これはやはり何とかしなきゃいけない。
 浅学ではございますが、私の知識の範囲でも、イギリスでは、ここの皆さんに対して、民間委託をして、職業教育、職業訓練から職業紹介、あっせんまで一貫して面倒を見ていただくという仕組みで大変な効果を上げている。長期失業の方のお二人にお一人がそれで就業に成功したという話も聞いておりまして、これはぜひ日本でも検討をした方がいいんではないか。
 もちろん、法制度がすべて一緒なわけではありませんから、そのままということはあり得ないかもしれません。イギリスでも、全地域じゃなくて、地域を割ってやっているようでありますから、そのままということではないかもしれませんが、せめて検討していただくに値するんではないかと思いますが、大臣の御意思を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 そこも問題点の一つであることをよく存じております。そこもなかなか思ったように正直言っていっていないんですね。
 諸外国の例も参考にしながら、一遍、我が国としてもどう対応するかということをやはりもう少し考えたいと思います。
加藤委員 きょうは時間がないので細かいお話をしなかったので、ちょっと失礼かとは思いますけれども、イギリスで成功している事例というのをぜひちょっと研究してください。非常に有効な方法だと思いますし、民間委託で、公費を使うのが成功報酬なんですね。
 これはちょっと日本だと財務省が何やかんや言うかもしれませんけれども、成功報酬ということは、委託した民間企業がサボっていればお金がむだにならない。うまく就業に成功したときだけ公費が使われるということですから、こんないい話はないはずでありまして、税金の有効活用という観点からいっても正しいと思いますし、また就職に成功していただくという意味でも非常にすばらしいことだと思いますので、ぜひ御検討をいただきたいと思います。これはまた次回以降お話をしたいと思います。
 それから、大分時間が迫っておりますので駆け足にしますが、昨年の秋の臨時国会で決まりました緊急地域雇用創出特別交付金の三千五百億円なんですが、この使い道について、現状でどの程度今把握をされているのか、簡潔に教えてください。ごくごく簡潔にお願いします。
狩野副大臣 簡単に申し上げます。本年度は全国で約一万四千事業が企画されております。
 具体的な問題としては、環境分野では、熊野古道周辺の良好な景観と快適な森林環境の確保を図る事業、和歌山県。教育・文化分野では、実社会での豊富な経験を有する社会人を教員補助者として学校に配置する事業、これは岩手県です。福祉・保育分野では、高齢者の介護サービス等についての利用意向や満足度を調査する事業など、これは東京都ですけれども、いろいろな事業が企画されております。
加藤委員 私もちょっと資料をいただいたり、あるいは今の副大臣のお答えを聞いておりますと、これは昨年議論させていただいたときに、大臣が、あくまでもつなぎだから、これをきっかけに常用雇用につながってもらわなければいかぬのだというお話をいただきました。私も全くそのとおりだということでお話をさせていただきましたし、三千五百億円も投じているんですから、これで六カ月間、臨時応急の仕事について、はい、つなぎですからもうおしまいですで、また失業者に戻ったんじゃ何にも意味がなくて、そのまま、これが訓練として、次の仕事についてもらわなきゃいけない。本当にその仕事に、次の常用雇用につながるかどうかというのは、六カ月しかないんですから、日々見ていっていただかなきゃいけないわけですよね。
 これは実はお役所の方に聞いたんですね、私が。どういうところにお金が使われていて、どの程度見込みがあるのかというのを聞きましたら、A4一枚、ぺらっともらって、四事業しか書いてないわけですよ。その中で、ひどいのになりますと、地域振興、ワールドカップの云々かんぬん作業員、新規雇用見込み五人、事業費三百万円。こんなもの絶対に常用雇用になんかつながるわけないです、六月三十日でワールドカップは終わっちゃうんですから。これを幾ら積み重ねたって、三千五百億円むだになるだけなんです。去年の臨時国会から言っているとおりですから。
 大臣、ぜひ厳しくチェックしていただいて、ちゃんと有効に使えば困っている方が助かるお金ですから、ぜひこれをチェックしていただきたい。そこをぜひお願いします。大臣の部下の皆さんが、うまくいっていますよと言っても、余り信用しないで、ちょっとこれ、チェックしてくださいね。大臣、一言だけお願いします。
坂口国務大臣 都道府県それから特別市等もございますけれども、その点、厳しくひとつ言ってほしいということを言っております。中には、例えば山林等の仕事をする人たちに対しましても、これを一つのスタートとして、その後は森林組合等で継続して雇用をするということを決めているところもあったりいたしまして、そうしたところもかなりあちこちで出てまいりました。そういうふうにしてもらうとこれは生きるわけでございますけれども、先ほどおっしゃるように、三カ月なり六カ月で、それで終わりというのではなかなかこれが生きないわけでございますから、そこをひとつ、できるだけ私たちもチェックしたいと思っております。
加藤委員 ぜひ今の点、お願いします。常用雇用につながれば本当にいい話でありまして、前回もそうでしたけれども、森林組合に限らず、ほかもお願いをしたいと思います。
 済みません、時間が限られておりますので、ちょっとはしょりますが、先日、研究会の報告書ということで、キャリアコンサルティングの実施に関する云々かんぬんということで調査研究書を発表されました。
 拝見をいたしまして、この中に、キャリアコンサルタントという職種の定義がされておりまして、これは今まで余り議論の中で出てきていない言葉なんですね。これまでは、皆さん、キャリアカウンセラーを五万人養成するということをおっしゃっていました。今回の報告書は、キャリアコンサルティングということ、それからキャリアコンサルタントという職名になっておりますが、これは同じなのか違うのか、一言だけ教えてください。
坂口国務大臣 これは同じと考えていただいて結構でございます。やっていただきました検討会の皆さん方からキャリアコンサルタントというふうにしてほしいという御要望があって、そういうふうにさせていただいたと聞いております。
加藤委員 では最後、一問だけ伺います。
 同じであるとすれば、このキャリアコンサルタントを今後五万人養成をする、ハローワークだの学校だのいろいろなところでいわゆるキャリアカウンセリングをしていただくということになるんだと思いますが、報告書を拝見しますとまだまだ非常に抽象論が多くて、これで本当に機能するんだろうかという思いが一つ。
 それからもう一方で、聞くところによりますと、別に名称独占でも業務独占でもない、単なる認定資格だということになりまして、これはファイナンシャルプランナーを技能士検定に加えたように、どうも行政改革の流れに逆行するような気もいたしておりまして、私が資格認定をしてくださいと言った魂とは全然違うような発想になっているように思えてならないわけであります。
 このキャリアコンサルタントという職種が、試験が認定をされて、その職種を名乗る方がこの秋から恐らく世に出てくるのでありましょう。ただ、その方々が本当にどれぐらいの仕事ができるのかということが非常に不安でありますので、ぜひ第一号の方を厚生労働省で採用していただいて、職員の皆さんがカウンセリングを受ける実験台になっていただいて、なるほど、こういうふうにカウンセリングを受けたら皆さん仕事を頑張って役所が活性化した、こういう実績を示していただくとこの資格も生きてくるんじゃないかと思います。
 大臣、いかがですか、ぜひ御検討いただきたいと思いますが、一言最後に御答弁ください。
坂口国務大臣 アイデアとしては抜群だと思いますが、一つの参考にさせていただきたいと思います。
加藤委員 ぜひ御検討をお願いします。
 済みません、少々延びまして。終わります。
森委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。金田誠一君。
金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。大臣、きょうは大変長丁場で、御苦労さまでございます。
 まず第一点でございますが、第三種郵便、第四種郵便、この廃止の問題についてお尋ねをいたします。
 総務省は第三種郵便と第四種郵便の割引制度を来年度から原則廃止する方針を固めた、このように一たんは伝えられておりました。きょうの報道では、第三種、第四種は一応存続ということになったようでございますが、新しく今度は公社に移行するわけでございますが、料金水準はこの公社が決められるようにしたいということも報道をされているところでございます。諸外国ではNPO法人にまで広く郵便料金の割引制度が存在している、こう伺っているわけでございまして、こうした中にあっては、総務省の方針は時代に逆行するんではないかな、私はそう考えております。
 そこで、とりわけ厚生労働大臣には、第三種のうち心身障害者団体発行の定期刊行物並びに第四種のうち視覚障害者用点字、テープなど、この現行制度を何としても存続させていただきたい、こう思うわけでございます。私の地元でも、各団体、バザーをやったり、夏にはビアパーティーをやったりということで、資金づくりに悪戦苦闘でございます。大臣もその辺の事情、よく御承知のことと思うわけでございます。
 こうした中では、この第三種、第四種の制度によって各団体辛うじて支えられているというのが実態でございまして、この現行制度の存続、これは何としても欠くことができないと思うわけでございます。それにつきまして、大臣の御決意を、何としても存続をさせるという決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 私もちょっと存じませんでしたが、けさ新聞を拝見いたしまして、こういうことでいろいろもめているんだなということを初めて知ったわけでございますが、今お話しいただきましたように、心身障害者団体発行の定期刊行物でありますとか、視覚障害者用の点字、録音物等に関する郵便料金の減免の取り扱い、これにつきましては、福祉の上からいきましても非常に大事なことだというふうに私も考えております。
 したがいまして、これは総務省の所管でございますので、総務省とよく相談をさせていただきたい、ぜひ残していただけるような方向で相談をさせていただきたいと考えております。
金田(誠)委員 どうもありがとうございます。
 料金水準を公社が決めるというようなことになりますと、現行制度と大きく変わってくるわけでございまして、ぜひひとつ、今の形で存続できるように大臣の御努力をお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
 次に、私ども民主党が先ごろ発表いたしました「歯科医療改革案」、こういう冊子なんでございますけれども、これにつきましてお尋ねをいたしたいと思います。
 これを発表したのは昨年の三月でございまして、民主党としての初めての試みでございます。この歯科医療改革案の中では、三つの視点ということで掲げてございまして、第一点目は「歯科重視の医療体制の確立」、二点目として「治療歯科から予防歯科への転換」、三点目として「患者が安心できる環境づくり」ということを掲げてございます。
 今後、与野党という枠にとらわれずに、国民のための良質な歯科医療の提供という観点から、機会があればまた大臣とも意見交換をさせていただきたい、こう思うわけでございますけれども、今回は、私ども初めての試みでこういうものを出したわけでございまして、これについての大臣の総括的な御感想などを承れればありがたいなと思うわけでございます。
坂口国務大臣 民主党さんの、この歯科医療改革案というもの、私も、正直なところは、全体を読ませていただいているわけではございません。きょう御質問をいただきます要点につきまして私も拝見をしている程度でございまして、申しわけないわけでございますが。
 歯科全体について申しますと、今まで考えられておりましたよりも、歯とかそしゃくという問題が体全体に大きな影響を与えているものであるということがだんだんと明らかになってまいりました。そうした意味で、歯科は今まで、医科の方から切り離されて、何か特別扱いにされていた感もございますけれども、非常に、今まで以上に重要視を今後していかなければならないというふうに、今総論として思っている次第でございます。
 民主党さんがお挙げになっています「歯科重視の医療体制の確立」ということにつきましては、そういう総論の上からいえば賛同のできることだというふうに思いますし、それから二番目の「治療歯科から予防歯科への転換」というのがございますが、この中身、ちょっとまだ詳しく読んでおりませんけれども、今まで、企業等の健康診断におきましても歯科の検診というのはなかったわけでございますけれども、まだ義務づけているわけではございませんが、できるだけ歯科の検診も行ってもらうように、ひとつ企業にも、今お願いをしているところでございます。それから「患者が安心できる環境づくり」、これも、このスローガン、反対するところは何らないわけでございますが、その中身につきましてのいろいろの問題点はあるのかもしれません。
 とにかく、総論といたしましては、そんなに考えておりますことと違った方向性のものではない、むしろ同じ方向性のものではないかというふうに認識をしている次第でございます。
金田(誠)委員 大変前向きに受けとめていただきまして、感謝をいたします。
 今回触れ切れなかった点も、例えば歯科医師数の適正化、需給ギャップなどもできておりまして、その他何項目かございます。こうした点も含めまして、今後、ぜひ機会を改めてまた意見交換をさせていただければと思うわけでございまして、よろしくお願いをしたいと思います。
 そこで、きょうは、歯科医療の中で一項目に絞りまして、歯科技工士をめぐる諸問題ということで質問をさせていただきます。
 まず、私どもの考え方としては、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士の相互の連携によるチーム医療の確立、このことが非常に重要であるというふうに考えているわけでございますが、そうした中で、先般、何名かの歯科技工士さんの方々が私どもの方に参られまして、嘆願書、四項目に及んでおりますが、既にきのうお渡しをしてございますけれども、その嘆願書を置いていかれました。それを裏づける「歯科技工士の現状」、こういう一枚紙もあわせていただいたわけでございます。
 その問題点、六項目指摘をいただいたわけでございますが、かいつまんで申し上げますと、第一に、長時間労働である。一日十二時間から十六時間は当たり前、朝までかかることも珍しくない、こういう状況だそうでございます。二点目として、女性歯科技工士が定着しない。原因は、一点目で申し上げた劣悪な労働環境と長時間労働。同じく、女性ばかりでなく、新人技工士、これがなかなかふえない、やめていく人が多い。これまた同じ理由でございます。四点目は、労働時間の割に賃金が低い。五点目として、一人ラボが多い、こういうことでございます。六点目は、これはちょっと大変なことだなと思って伺ったんですが、にせ技工士が多い。モラルの問題ではあるけれども、経営上の問題が大半を占めているんではないか、このような御指摘をいただきました。
 こういう指摘を踏まえながら、以下、順次質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 いただきました嘆願書には、第一番目に、いわゆる七、三問題、七対三問題というんでしょうか、これがまず載せられておりました。この七、三問題とは、昭和六十三年、厚生省告示第百六十五号により、歯冠修復及び欠損補綴の費用は、製作技工に要する費用がおおむね百分の七十、製作管理に要する費用がおおむね百分の三十である、七、三であると。このようにされたにもかかわらず実態としては空文化しているというのが七、三問題でございます。
 そこで、質問をいたしますけれども、厚生労働省は、七、三は技工と管理の標準的な割合、こうしているようでございますけれども、標準的な割合とはどのような根拠で算出されたものなのか、お示しいただきたいと思います。
大塚政府参考人 ただいま御指摘のありましたような昭和六十三年の告示がございます。この七、三という割合を告示で定めましたのは、当時でございますけれども、当時の厚生省が実施をいたしました歯科技工料金調査、この結果を踏まえまして、いわば当時の実態を勘案した割合ということで、標準的な割合としてお示しをしているものでございます。
金田(誠)委員 そこで、今日の実態としてはこの七、三が大きく崩れているという話を伺ったわけでございますけれども、実態はどうなのか。七、三から六、四。六、四から五、五。場合によっては逆の七、三まであるなんという話も仄聞しているわけでございますけれども、この実態の数字をお示しいただきたいと思います。
大塚政府参考人 製作技工に関するさまざまな種類がございますから、種類ごとにもちろん異なるわけでございますし、個別のケースごとに異なるわけでございますが、全体といたしまして、直近の数字で把握しておりますのは平成十一年度の数字でございますが、歯科技工料金調査をいたしまして、この結果によりますと、全体の平均で、いわゆる七に当たる部分、製作技工に要する費用の部分が六六・六%という数字を私ども把握いたしております。
金田(誠)委員 私どもが聞かされている実態とかなりこれは違うのかなという印象を受けます。
 ついては、その平成十一年の調査でございますけれども、その調査の集計表といいますか、恐らく地域格差だとか、あるいは補綴にしても、部分によってこの六六・六のところもあれば、もっと低いところもあれば、いろいろあるんだと思いますが、その辺も調査されているのかどうかも含めまして、調査結果表というんでしょうか、調査表というんでしょうか、それについて、資料として後ほど御提示いただけますでしょうか。
大塚政府参考人 これは、診療報酬の審議をいたします中医協での必要に応じて御提示する資料という性格のものであることが一点。それからもう一点は、なかなか難しい点が一点ございますので御了解を賜りたいんでございますが、実際上、それぞれの取引は、自由といいましょうか、当事者の合意で取引されるわけでございますが、そうした点に直接的な影響を与えるというのも避けなければならないという要素がございます。
 ただ、調査をいたしているわけでございますから、少し精査をいたしまして、整理をいたしまして、お示しできるものについてはお示しをいたしたいと考えております。
金田(誠)委員 私の聞く範囲では、今のような数字であれば、わざわざ私のところまでは恐らく来ないんだろうというふうに思います。聞いている実態は、これとはかなり違うものでございます。そのスタートラインといいますか、共通認識の上に立って議論をしなければ、かみ合わない議論になってくれば意味のないことでございますから、ぜひその議論の土台をそろえるという意味からも御提出を強くお願い申し上げておきたいというふうに思います。
 次の質問に入らせていただきますが、なぜこの七、三が空文化しているのか、その原因でございます。
 技工料の取り決めが、七、三という取り決めが守られないほど技工料の診療報酬が低いという指摘もございます。あるいは、この背景として、診療報酬の医歯格差というものがだんだん拡大をしていって、歯科としては厳しい状況に置かれている、あるいは、歯科医師の需給バランスが崩れて個々の診療所の経営が非常に困難になってきている、さまざまな背景があると伺ってはおりますけれども、厚生労働省として、この七、三に対して、実態は私は大きくかけ離れていると思っていますし、さっきの数字ですとそんなにかけ離れていないことになってかみ合わないことになるんですが、私の理解をしている、この大きく乖離している実態、この辺の原因、七、三が守られてこない原因を、どういう理解をされておりますでしょうか。
大塚政府参考人 さきにお話の中にございましたように、私どもとしては、もちろんどんぴしゃりという数字ではございませんけれども、基本的には、全体といたしましては、七、三にそう大きな乖離がない状態になっているというふうに見ておるわけでございます。
 先ほども申しましたように、当事者間の取引という性格がございますので、いろいろなケースがある、その七、三問題とは別に、全体として、例えば歯科医師の需給問題やら歯科医療に関します全体的な課題がさまざまあるということはよく私どもも認識をいたしておりますが、その問題が直接にこの七、三の問題にダイレクトに結びつく問題だとは、私どもは現時点においては認識しておりません。
 ただ、いずれにいたしましても、歯科医療の大半を占めるのが歯冠修復あるいは欠損補綴というものでございますから、その業務が関係者の間で、先生がおっしゃいました、チームワークという表現をとられましたけれども、関係者の連携で円滑に進むというのが患者にとりまして最大のメリットでございますから、そうした観点で、こうした両当事者間の関係が円滑に進みますように私どもとしても願ってもおりますし、また必要な努力を続けてまいりたいと考えております。
金田(誠)委員 やはり、実態がどうなのかというところの認識をそろえて議論をしないと今のような議論になりますので、厚生労働省として押さえているこの実態調査を何としてもお示しいただかないと議論がつながっていかないなと思うものですから、また重ねて御要請を申し上げておきたいと思います。
 次の質問でございますが、昭和六十三年十月二十日付で厚生省保険局長名の通知が日歯と日技の会長あてに出されております。その中では、この七、三の割合は良質な歯科医療の確保に資することを図ったものでありますとされているわけでございますが、この意味合いをちょっと解説していただきたい。
 といいますのは、良質な歯科医療の確保に資することを図ったということでございますから、一定の診療報酬が決まる、それを、技工の部分が七、管理の部分が三、こういう形で区分けをするということが適切な歯科医療をならしめるということでございますから、当然これは守るべきものであるんだという意味合いがこれに込められていると思うんですが、その辺の解説をお願いしたいと思います。
大塚政府参考人 七、三告示に合わせまして保険局長名の通知が出ておるわけでございまして、お話ございましたように、良質な歯科医療を確保するためという観点での通知でございますけれども、やはり、歯冠修復、欠損補綴といった業務が関係者、具体的には歯科医それから歯科技工士、歯科衛生士さんなどもおられますけれども、特に歯科医、歯科技工士の間で円滑に業務が進むということが、トータルとして、全体として、歯科医療の円滑な実施につながる、患者の福利に通ずるということで七、三を標準的な割合としてお示しをいたしましたので、その趣旨をお踏まえいただいて、チームワークのとれた歯科医療を実施していただきたい、こういう趣旨、思いを込めた通知というふうに考えております。
金田(誠)委員 さらにまた、同じ通知の中には、この厚生大臣告示の趣旨を踏まえ、関係団体との間で話し合いを行っていただくとともに、個々の当事者間で円滑な実施が図られるよう会員を御指導いただきたくお願いいたしますと、これが日歯と日技の両方に出ている文章なわけでございます。
 こういうことで、まず関係団体との間で話し合いを行う、さらに会員を指導していただくと。この七、三ということが問題にならないようにするという意味の通知だと思うわけでございますけれども、この辺の話し合いなり指導なりというものが適正に行われているという実態なのでしょうか。その辺のところ、どのように押さえておりますでしょうか。
大塚政府参考人 通知の中で触れられた内容でございますが、おっしゃったとおりでございまして、基本的には、繰り返しで恐縮でございますが、歯科医療機関と歯科技工所の間のいわば自由な取引、自由な契約で決まる、価格が設定されるということになりますけれども、標準的な割合をお示しして、その趣旨を会を通じて個々の会員にも十分周知していただくようにというお願いの文章でございます。
 関係者の間でいろいろ引き続き議論があることはもちろんでございます。これは、それぞれの事情もいろいろ変化もし、厳しい環境でもございますから、御意見はございますけれども、全体といたしましては、この六十三年通知、告示の趣旨を踏まえて適切に対応していただいているというのが基本的な認識でございます。
金田(誠)委員 根っこのところで、現状の数字が、私どものとらえている実態と厚生労働省の調査と一致をしておらないというところでの質問の継続なものですから、どうもかみ合ってこないわけでございますけれども。
 これは、例えば七、三が、仮に五、五というのが主流になってしまった、こうしたとします。先般、保険局からいただいた資料の中に、例として総義歯二千五十点という数字が載っておりました。二千五十点であれば、七、三に分ければ千四百三十五点と六百十五点ということになるわけでございますが、仮に五、五ということにしますと、千二十五点対千二十五点、こういうふうになります。
 そこで、技工士さん方が心配しておられることは、千二十五点でも技工が可能である、こういうことになるとすれば、千二十五点に七、三の三の六百十五点、これをプラスしますと、千六百四十点ということになり、現行二千五十点との差は四百十点、これが引き下げ可能ということになりはしないか。
 今でさえ低い診療報酬がこのように引き下げられるなんということは、現実問題としては考えられないことでありますけれども、こういう七、三というものが、六、四あるいは五、五という状態が続けば、保険者あるいは被保険者はもとよりでございますが、会計検査院あるいは総務省、さらに財務省というところからも、これは放置できないという声が起こりはしないかということも心配になってくるわけでございますけれども、この辺のところ、厚生労働省、どのようにお考えでしょうか。
大塚政府参考人 ただいま総義歯の例を引いて御質問でございますけれども、私ども、歯科医療において、さまざまな重点項目ございますけれども、歯あるいは補綴物の長期維持に資する技術などについては、やはり今後の歯科医療を考える上でも重点というふうに考えておりまして、今回、御案内のように、全体といたしましては、厳しい環境のもとで、歯科診療報酬につきましても、いわゆる技術料部分につきまして医療費ベースで一・三%、全体としては引き下げを行いました。これは医科、調剤も同様でございますけれども。この中で、有床義歯あるいはその他の歯の補綴物に関連する技術につきましては、厳しい環境の中で引き上げを行いました。例に出されました総義歯につきましては、これを据え置く、厳しい環境の中での据え置きという措置も講じました。
 こうしたことで、歯科医療の中でも特に重点を置くべき分野、今後歯科医療の質の向上という観点から必要な分野、御指摘の事項なんかも含まれると考えておりますが、こうした技術あるいは歯科医療につきましては必要な評価をきちんとしてまいりたいというのが基本的に我々考えているところでございます。
金田(誠)委員 今の御答弁も、七、三ということが守られていての話だと思うわけでございまして、それが崩れてくる。まあ、多少の崩れというのは、上に崩れる、下に崩れる、いろいろあるのかもしれませんが、いずれにしても、七、三というものを基本にしながら、多少の幅という程度のものだろうと思うわけでございます。
 それが、私どもが承知しているような形で七、三が崩れてくると、今のようなお話も保険者あるいは財政当局等の関連では面倒な問題になってくるんではないかなということを御指摘申し上げたいと思うわけでございます。
 最後に大臣、恐縮でございますが、お伺いをしたいと思います。
 七、三という割合が標準的な形ということで告示をされ、それについての円滑な実施ということでこれまた通知がされるという中で、厚生労働省の調査と私どもの把握と多少違うようではございますけれども、いずれにしても、かなり大きな問題として今提起をされている実態でございます。
 この七、三というものを本来の形に戻していくという立場から、努力をしていただく、具体的な方策を講じていただくということで、ぜひひとつ御尽力を賜りたいと思うわけでございますが、その辺のお考えを伺わせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 七、三問題といいますのは、私も随分前から実はお聞きをいたしておりまして、何とかならないのかというお話が随分前からありました。ここにきょう御出席の与野党の皆さん方の中にも、この問題何とかならないのかというふうにおっしゃる方はかなりおみえになると私思っております。
 これは、議論をいたしておりましても決着のなかなかつかない話なんですね。それで私は、やはりここは歯科医師会の皆さん方と一遍お話をする以外にないと実は思っております。そして、忌憚のないお話を申し上げて、この問題は前進させる以外にないというふうに考えております。
 前々から私も思っておりましたことの一つでございますので、時間を見まして一度率直にお話を申し上げたいと思っております。
金田(誠)委員 ありがとうございます。
 技工士会の方では、この問題について、独禁法の適用除外とかいろいろ具体的な提案もされているようでございますが、その前段として、大臣おっしゃる話し合いというのが出発点になると思うわけでございまして、ぜひひとつそれは実現をしていただきたい、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 局長、それにつけても数字が、相当理解が違うようでは話し合いの土台がきちんとしないわけでございますから、早急にこれは御検討いただいて、しかるべくお示しをいただきたい。重ねて御要請を申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
森委員長 次に、五島正規君。
五島委員 民主党の五島でございます。時間が、余り私はもらっておりませんので、二つの問題に限って御質問をさせていただきたいと思います。
 一つは、いわゆる労災隠しと言われている内容の問題でございます。
 一昨年の十一月、労働委員会におきまして、労災保険法の改正案の審議がございました。その中におきまして、私は、メリット制の拡大問題について、そのことによって労災隠しがふえるのではないかと指摘をいたしまして、当時の吉川労働大臣は、労災隠し対策について、行政、労使がともに検討を行う場を設けることを考えている、そのようにお答えになったわけでございます。
 その後、労災報告の適正化に関する懇談会なるものが設置されたと承知しているわけでございますが、この懇談会の性格、どのようなものなのか。また、既に三回の会議を終えたというふうに聞いております。三回の会議を終えてこの会が終わったというふうに聞いておりますが、その結論及びその報告書の作成について、どのようになっているのか。お伺いしたいと思います。
日比政府参考人 ただいま御指摘の懇談会でございますが、平成十二年十一月の労働委員会の経過につきましては、ただいま委員からお述べになられたとおりでございます。その行政と労使がともに検討を行う場ということで、この懇談会を昨年設けまして、ことし三月まで、三回会合を開いたところでございます。
 懇談会の性格というお尋ねがございましたが、行政と労使がまさに一緒に集まって検討を行うということ、そういうために関係労使とも御相談しまして、三者集まっていろいろと懇談をしたいということで集まったものでございます。
 三月二十九日に第三回の会合を開きまして、そこで、従来のいわゆる労災隠し対策に加えまして、今後講じていこうという対策について一定の取りまとめが行われました。
 項目で申し上げますと、ポスター、リーフレットによる事業者への周知啓発。二つ目には、厚生労働省のホームページに「労災かくしの排除について」と仮に題するようなページを設けること。三点目として、都道府県、市町村の広報誌の活用。四点目として、労災防止指導員の活用。
 これら、いずれもそれぞれお取りまとめいただきました中身ではもう少し具体的な内容等が盛り込まれておりますが、項目的に申し上げますと、以上のような点につきまして今後取り組むべきであるということで、取りまとめができたところでございます。
 その対策につきましては、今後通達という形でお出しするということで、その作業に現在入っているところでございます。
五島委員 今長々と御説明になったわけですが、この議論が始まったのは、一つは、マスコミにおいて労災隠しの問題が大変取り上げられた。
 そして、平成十一年度の報告を見せていただきますと、例えば、全産業と建設業と比べてみますと、全産業の方が労働災害の度数率が高い、建設業の方は度数率は低い。そしてその中において、一方で、災害の強度率といいますが、すなわち重大災害の発生率ですが、強度率については、建設業は高い、そして全産業の方ははるかに低い。なぜ、発生件数がこのように全産業の方が高くて建設産業は少ないのか、そして強度率が逆転しているのか、これは理屈に合わないよ、ここに労災隠しがあるのではないかということの議論であったと覚えております。
 そして、おつくりになった懇談会というのは、労災報告の適正化に関する懇談会と名づけられました。すなわち、労災報告をきちっとやらす、そのための適正化でございました。ところが、三回目の審議について結論が出された。今局長がお話しになったのですが、ポスター、リーフレットによる事業者への周知啓発、ホームページについての啓蒙、市町村の広報誌の活用。PRしか考えておられないのです。報告についてどのように適正化をするかという懇談会なら、そのことに関する結論をお出しになっていてしかるべきなのではないか。
 そういう意味においては、こういうふうな子供だましのような結果をもってこの懇談会の役割が終わったとお考えになるのであれば、例えば昨年度、全産業と建設業との間における度数率、強度率、本当に合理性のある数字に戻ったのかどうか。お答えください。
日比政府参考人 災害の発生状況の傾向は、大きくは変わっていないと思っております。
 なお、懇談会の名称の問題でございますが、御指摘のとおり、いわゆる労災隠しの対策のためということでこの懇談会が設けられたわけでございますけれども、これは、いわば報告といいますか、死傷病報告あるいは事故報告することになっておりますが、その報告をきちんとしてもらうということであろうということで、名称の上では、いわゆる労災隠し対策の懇談会だと私どもも思っておりますけれども、名称については、先ほど申し上げたような名称とさせていただいたところでございます。
 それから、いろいろな周知啓発等しか並んでいないではないかという御指摘でございますけれども、労災報告をきちんとしてもらうということで、例えば労災報告諸用紙の問題等どうするかという観点もあるわけでございますが、とにかくきちんと報告が出てこないことには何ともならない。したがいまして、例えば労災防止指導員の活用と言っておりますのは、現場にできるだけ入って見てこようというようなこと、そういう具体的内容等についても御議論をいただいたものでございます。
五島委員 時間がありませんので、この問題に長くは時間をとれないわけですが、もう一度、ぜひこの労災保険法の審議のときの論議を思い起こしていただきたい。
 例えば、平成十一年度においては、一般産業における、全産業における労災の発生率といいますか度数率は一・八、それに対して強度率は〇・一四である。ところが、建設業では、度数率は一・四四しかない、全産業の一・八に対して一・四四である。だけれども、強度率は〇・三〇、すなわち他の全産業の倍ある。その前年度をとってもそうであるということを議論したはずでございます。
 すなわち、なぜ建設業においてこんなに度数率が低いのか、そして、強度率はこんなに高いのか。そこにはやはり、もう既に不況の状況がある中において労災隠しという問題があるんじゃないか。そしてまた、この労災保険法の改正によってメリット制が拡大したことによって、企業として労災隠しに対するインセンティブがますます強まるんではないかという心配をして、こうした当時の大臣の御答弁があったと覚えています。
 そのような状況から考えてみますと、今おっしゃったように、事業主や一般に対する啓蒙活動も大事です。大事なのはわかっている。そんなもののために行政と労使の間で懇談会をつくる必要はない。問題は、そうした労災隠しがなぜ起こってくるのか。それをどのようにすればいいのかということをやっていただきたいということであったと思うわけですが、本当にこのような、これは恐らく性格も言われていないんですが、これは大臣の諮問機関でもなければいわゆる労災審議会の中の組織でもなかったんではないかと思うわけですが、こういうふうな中途半端なことでこの問題が終わるということに対しては、私は大変問題があると考えております。
 この点についてもう一度きちっとやられる気持ちがあるのかないのか。少なくとも前大臣は、吉川国務大臣のときは、このことについてお約束された。こんな中途半端なことではだめだということで、ぜひ大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 このお話は、私は申しわけないんですが、ちょっと勉強不足で余り詳しく実は知らないわけです。
 それで、今お話を聞いておりまして、大事な問題だということはよくわかるわけですが、具体的に私も少し勉強いたしておりませんので、一遍ひとつよく勉強させていただいて、そして、こういう事態がなくなるようにいずれにしてもしなきゃいけないわけですから、どうしたらいいかということを検討したいと思います。
五島委員 ぜひお願いいたします。
 とりわけ、今不況の中において、そういう健康弱者や経済弱者がどんどん産業からほうり出されていって、そして、一方において労災隠しが行われるということになりますと、日本のそうした制度というのは、まあ本当にとんでもないところまで昔に戻ってしまうという心配を持つものでございます。時間がございませんので、今の大臣の御答弁を期待して、次の質問に移りたいと思います。
 きょう午前中、後藤田委員からの御質問ございました。また、昨日参議院の厚生委員会におきまして齋藤議員の方からも御質問があったと思いますが、実は、徳島県の健祥会グループにかかわる問題について、お伺いしたいと思います。
 昨日、政府の方からの御答弁の中で、この健祥会の理事長の中村博彦氏が小渕内閣の当時に、例の有識者会議、たしか九九年の十二月の二十四日ですが、社会保障構造のあり方に関する有識者会議のメンバーになったのについては鈴木宗男議員の強い圧力があったんだというお答えがございました。
 あわせて聞いておきますが、同理事長は、九八年の四月十三日に医療保険福祉審議会の介護給付の分科会の委員、九八年の八月の二日には中央社会福祉審議会の委員、あるいは九九年の五月十八日は医療保険福祉審議会の老人保健福祉部会の委員を任命されています。これらの委員になるについても、そうした政治家の圧力、とりわけ鈴木宗男氏等の要請あるいは強い圧力というのがあったのかなかったのか、お伺いしたいと思います。
堤政府参考人 今幾つか審議会の名前が出てまいりました。例えば老人保健福祉審議会、今は合併されておりますが、そこの部会、二つ部会がございます、老人保健福祉部会、介護給付費部会というような部会等がございました。
 これらは、例えば介護給付費分科会につきましては、全国デイサービスセンター協議会の会長という立場に当時中村氏がついておりましたので、そういう会長というお立場、それから、もう一つ、老人保健福祉部会についても、それまでの老人福祉施設協議会の会長が、石井さんという方から中村さんにかわったわけであります。石井さんも前からメンバーでありました。そういう、言ってみれば業界の団体の会長というお立場で委員におなりいただいたわけでございまして、これらについて特定の先生方から何か圧力とかそういうものがあったということはございません。
五島委員 この社会福祉法人でございますが、これも昨日齋藤参議院議員の方でも御質問がされたようでございますが、昭和五十五年の十月三十一日、この法人の資産額は九千三百九十五万円でございます。そして、平成十三年三月三十一日、昨年の三月三十一日のこの法人の資産総額は百四十九億五千百二十一万円。昭和五十五年から約二十一年ぐらいの間に百四十九倍に資産をふやしておられる。これは他の産業であればなかなかやり手の経営者だなということで私も感服するわけでございますが、社会福祉で、とりわけ介護保険が実施されるまでの間措置として行われてきたこの制度の中で、なぜこのような膨大な資産がふえてきたのか、だれもが不思議に思うところでございます。
 そして、時間がございませんので、今回は簡単に行いますが、この間、この法人がつくってきた施設については、実に通常では考えられないペースでもって次々と老人施設をおつくりになってきた。
 例えば、近年の平成十年度に開設したところを見てみますと、特養ハイジ、老健施設シェーンブルン、特養ルネッサンス、デイセンターウィリアムテル、デイセンターモナ・リザ等々といったところができています。いずれも、これは徳島の県内です。
 平成十一年には、特養緑風会チロル、それからケアハウスモントゼー、ケアハウスアンダルシア、デイサービスセンター上勝、あるいはデイサービスセンターカルメンといったようなところがこの一年間にできています。
 また、平成十二年には、特養ピーターラビット、ケアハウス鳩の家、ケアハウスプロバンス、ケアハウスうだつ、デイサービスセンターアルル、デイサービスセンターうだつ、そしてさらに、特養清盛と特養頼朝というところもできているようです。
 さらに、平成十三年には、身体障害者療養施設としての健祥苑、特養モルダウ、特養バイエルン、ケアハウスのアムス、そしてデイセンターのザトペック、デイセンターのワーグナー、デイセンターのチューリップというふうなところができているようでございます。
 何か、先日は、家康という特養もできたそうでございます。
 一年間にこのようなスピードでもって次々と特老、特養が認可になっている。一体どういうことで、このような普通では考えられない、一福祉法人に対して、一つの県の中で、膨大な量の施設が認可になったのか。この認可について、先日やめた徳島県の知事とこの中村さんとの関係というのは前から非常に問題になっているわけでございますが、こうした施設の建設に関して、例えば、先ほど申し上げましたように、特定の政治家、あるいは、とりわけそうした鈴木さんとは非常に親しい関係、これは御本人がそうおっしゃっているわけですし、またお互いにそのようにおっしゃってきているわけですから、特別な仲だったんだと思います。そういう方々からのそういう強い要望というものはあったのかなかったのか、お伺いしたいと思います。
堤政府参考人 厚生労働省の特養等の整備を担当しております課におきまして、過去の担当者、十年ぐらいにさかのぼって全部聞いてみたわけでございますけれども、健祥会による施設整備の国庫補助について特定の議員から働きかけがあったということは確認できませんでした。なかったというふうに理解をしております。
五島委員 特定の議員からの関与を確認できなかったというお話ですが、本当にあったのかなかったのか。このような状況を見れば、例の彩グループのときと同じようなことが行われたんじゃないだろうかとだれもが心配するところですよね。
 それがなかったということであれば、本当になかったということをきちっと証明して、なぜこのような短期間で膨大な資産をつくり、そして一年間にこのように次々次々と老人施設が認可される。福祉施設としては今私が申し上げた分だけではないですよね。もう厚生省御承知だから、邪魔くさいから言わなかった。いっぱいあります。こんなことが非常に短い期間でこういうふうに次々実施される。それはなぜなんだろうか。そういう意味では、ぜひ厚生省はそこのところについてきちっと御調査をお願いしたいと思います。
 そして、あわせて、この問題についていえば、例えば国の補助金と県の補助金を合わせて、この三年間でも三十七億一千九百万のお金がここの施設には行っています。そして、国や県の補助金だけではなくて、徳島県内における市町村もまたかなりの補助を出しておる。
 それがまた、見てみますと、なぜこういうところでそこまでやるんだろうかと思われるぐらい、例えば鴨島町、川島町、山川町、いずれも健祥会の拠点のあるところで、自分の関連の職員を町長にしたりしているところですが、この川島町は、人口は八千四百九十二名、それから鴨島町が二万五千名、山川町は一万一千名ぐらいのところです。この川島町ですら、平成十二年度、十三年度で補助金を一億一千三百万、山川町で一億二千五百万、鴨島町で二億三千万、平成十二年度と十三年度で出しています。すなわち、かなり、そうした膨大な補助金をもらいながら、施設をふやし、その中で資産をふやしてこられたんだなということは容易に想像はつきます。
 しかも、厚生省からお出しいただいた用紙は、その日によって若干消えている部分があったり消えていない部分があったりしておもしろかったわけですが、実は、これを一体どこがおつくりになったんだろうかということから見てみますと、多田建設とか、あるいは佐藤工業とか、会社更生法の適用になったり、現在申請中であったりするところがこの建設の中心になっている。まさかまさか、彩グループのようなことがここで起こったんではないんだろうねと思わざるを得ない、そういう業者の選定になっています。
 局長にお伺いしますけれども、彩グループのときと同じようなことは絶対この問題についてないと言えるのかどうか。厚生省は前回のときは非常に深くかかわっていた。厚生省は今回余りかかわっていないからそれは違うという話はどうでもよろしい。構造として同じような状況はないのかどうか、お伺いしたいと思います。
堤政府参考人 確かに先生おっしゃるように、一年間に数カ所の整備というのが続いております。建設会社も、今言われたようないろいろな会社に頼んでいるようでございますけれども、こういう形で整備が各年続いているということが、直ちに彩グループのようなことをやっているのではないかということを疑わしめるということには、当然にはならないと思います。
 私どもの方に補助金の整備の実績報告が出ておりますけれども、実際に、契約が、補助金をつけたときの金額よりも安くなって、そしてそれを国に返還するといったような手続もしておりますので、そういうことからすると、恐らくそういうことはないのではないかというふうに推測はしております。
五島委員 基本的に、二十年間で資産が百四十九倍、百四十九億のお金が福祉の仕事の中でできるということ自身が異常なんではないか。そこの観点でもってそれをきちっと検討しない限りは、結果として、さまざまな人の名前が出てき、また福祉に対する国民の不信感を抱かせるだけではないかというように思います。
 きょうは一般質問でございます。ほかにも質問したいことはたくさんございましたから、この問題につきましてはまた状況を見て、具体的にお名前も挙げて御質問することもあるかと思うわけですが、いずれにいたしましても、こうした問題を持っている方が、何か政治団体をつくる、何となく、彩グループを一歩超えてKSDに近づいたのかなという感じまでしないではございません。
 やはり、今非常に厳しい経済状況の中において、そしてもう一方において、医療や福祉というものに対する国民のニーズが高いだけに、そこにおける透明性というものが求められるんだと思います。このことについて、大臣もあながち御存じのない人でもないと思いますので、御感想をいただいて、私の質問を終わります。
坂口国務大臣 昨日から徳島徳島と、徳島が大分続いてまいりまして、余りこれほど徳島の問題が話題になったことはないと思いますけれども、非常に多くの施設をおつくりになっている。こんなに多いのかな、それは私もこれを見てかなり驚いたわけでございますが、これだけ施設が多くなってまいりますと、資産というのもこれは当然のことながら多くなってくるだろう、ほとんどが建築物の資産でございますから、施設がふえればふえるほど資産もふえてくるということなんだろうというふうに思います。
 徳島の中でどういうふうになっているかということは全く私もわからないわけでございますが、いずれにしましても、県の方から要請のありましたものに対して国の方はそれに補助金を出しているということではありますけれども、しかし、国も出しております以上、県の方がこれはきちんとしているということを前提にした上での話でございますので、こうしたことが国会でも再三取り上げられるということはやはり大丈夫なのかなという思いが何か皆さんの中にあって取り上げられているのではないかというふうに私も思います。
 したがいまして、徳島の方にも問い合わせてはおりますけれども、しかし、念には念を入れて、本当にそこには問題はなかったのかということをよく問いただしたいと思っている次第でございます。
五島委員 終わります。
森委員長 次に、大島敦君。
大島(敦)委員 民主党の大島敦でございます。
 きょうは、午後の一時から五時までの四時間の長丁場でございますので、森英介委員長初め坂口厚生労働大臣、そして宮路副大臣、狩野副大臣、本当に四時間にわたりお疲れさまでございます。
 それでは、まず雇用保険の財政状況について何点か質問いたしたいと思います。
 特に雇用の問題につきましては、昨年の臨時国会から重要課題として取り上げられ、政府の方の法律も通り、そして、きょうの加藤公一委員の方からの何点かの、そのフォローアップの御質問もございました。
 ところで、雇用保険の財政、昨年そしてことし、私、質問させていただきまして、ますます厳しくなっているかと思います。それでお伺いしたいのは、まず、労働政策審議会の雇用保険部会、これは多分この雇用保険財政等について審議する審議会であると思います。これの議事録の最新版が十二月十八日までしか出ていないのですけれども、その後、審議は行われているでしょうか。
澤田政府参考人 労働政策審議会の中の職業安定分科会、その中の雇用保険部会というところで雇用保険制度の問題は議論をいたしております。
 今御指摘の昨年の十二月十八日に開きました後、四月の五日、今年度に入りまして第一回を開会いたしました。そこでは、雇用保険の制度全体の運営状況について資料を出して委員に御説明した上で、各委員から自由に御議論をいただいたというところでございます。
大島(敦)委員 ついこの間、本年度の予算が通ったばかりなんですけれども、国としてはそろそろ八月の概算請求ですか、に向けて御議論が始まったところと思います。四月、五月、六月、七月ぐらいには雇用保険についてある一定の方向は出さなければならない時期であると思います。
 今後の方針なんですけれども、ことしの秋の臨時国会に今回のこの雇用保険の法律、雇用保険法に関して、法案を提出するなんということはお考えでしょうか。
澤田政府参考人 雇用保険制度につきまして、単年度の赤字が、最近と申しますか、平成六年度以降ずっと続いているという状況がございます。委員も御承知のように、積立金が十四年度予算ベースで一千四百億強ということで、大分底をついてきたということで、支出といいますか、給付の方と支出の方、全体を今後いかにあるべきかという議論をしていくことになろうかと思います。
 その大前提として、経済情勢、とりわけ雇用保険受給者の動向がどうなるかというところをきっちり見きわめる必要がございますので、それはこれまで国会で大臣から御答弁申し上げておりますように、足元の数字、例えば新年度の四月の数字がはっきりした段階になれば、今後どうなるか、そして経済情勢がどうなるかも見て議論することになりますので、制度改正という話になるにしても、それがいつになるか、今後のそういう状況の変化と議論の詰まりぐあいによることになっていまして、今の段階で明確に申し上げることはできないと思います。
大島(敦)委員 なかなか触れづらいところであると理解いたします。しかしながら、制度設計の方針というのはあるかと思います。
 昨年の私たち民主党が出した法案というのは、一年プラス二年間は能力開発のために助成措置を設けようというのが私たちの思想でございました。
 国の思想というのは、例えば三百三十日、これが最長で基本手当の給付期間がございます。できるだけ短い期間にできるだけ多くの方が、就職してもらおう、再雇用してもらおうという、そういう発想でよろしいでしょうか。
澤田政府参考人 雇用保険受給者の方には、できるだけ早くその方にふさわしい再就職をしていただく、そのために政府も各種政策支援をするということでございます。
大島(敦)委員 そうしますと、早期の再就職の手段をできるだけ多く講じている、そのように理解しております。
 例えば、高年齢雇用継続給付という制度がございまして、この制度、六十歳を超えて就職した場合に一定の助成措置を行おうという制度でございますが、この制度について本当に有用であるかどうかというような検証というのは行われているでしょうか。
澤田政府参考人 御指摘の高年齢者雇用継続給付につきましては、支給対象人員、支給金額とも近年増加しております。これにつきましては、高年齢者の六十歳から六十五歳までの雇用を継続するということを支援するという目的でございまして、高年齢労働者の雇用の安定に役割は十分果たしている、こう考えております。
大島(敦)委員 例えば、非常に今雇用保険財政の方が逼迫しているわけでございます。そうしますと、その予算の配分として、今後国が方針、方向を考えるときに、高年齢者の雇用継続も非常に大切なんだけれども、今やはり現役で御家族を抱えられている方、そちらの方を重点配分しなければいけないな、そういうような思いもあるかと思うんですけれども、いかが考えればよろしいでしょうか。
坂口国務大臣 確かに、この高年齢雇用継続給付というのはいろいろの問題が含まれているんだろうというふうに思います。
 六十歳から六十五歳までの間の人たちを何とか就職させたいという気持ちがあってこの制度はできたんだろうというふうに思うんですが、時代がこういう経済状態の時代になってまいりましたから、そこばかりを見ておれないよ、もっと若い皆さん方のところにもっと着目をしてあげないといけないのではないかという意見が出ておりますことも十分に承知をいたしております。
 中央職業安定審議会の雇用保険部会の報告を見ましても、今委員が御指摘になりましたように、「今後検討すべき課題」としてやはりここにも挙がっております。「高齢者の継続雇用を促進する観点から当面は存続させることが適当であるが、将来的には、高齢者雇用の状況等も踏まえつつ、その在り方を検討する必要がある。」というふうに指摘をされております。
 ですから、やはりこの問題は、少し見直しをするときに来ていることだけはもう紛れもない事実だというふうに思っております。
 雇用保険制度についての御議論をいただきます際に、これも一つの大きな柱と申しますか、どこの年齢層により力点を置くかという、そうした議論の中でこれも決着をしなければならない問題の一つであるというふうに思っているわけでございます。
 したがいまして、先ほどから議論をしていただいておりますように、雇用保険の方の改正が成るのか成らないのか今定かではありませんけれども、これもいつかはやらなければならないわけでございますから、そのときにはこの問題も決着をつけるというふうにしたいと思っております。
大島(敦)委員 雇用保険の財政に関しては、戦後、御承知のとおり、失業率は二%から三%を超えなくて、ずっと安定的だったと思います。雇用保険の積立金も非常に多くの金額、兆円単位の金額が非常に積み上がってきたという事実がございまして、ですから、この雇用保険の制度設計も非常に豊かな制度設計が行われてきたと思います。例えば教育訓練給付にしても、非常に豊かな制度であると私は考えます。
 しかしながら、今非常に状況は変わって、中国もWTOに要は加盟して、私たち日本と同じルールで貿易をするようになってきているわけです。これはよくオランダ・モデルとか、あるいはイギリスの構造改革とか言われるんですけれども、ヨーロッパというところは非常に限られた、同じような価値観の人たちが住んでいるような経済圏内だと思います。私たち日本の置かれている状況というのは、WTOにも加入した中国、あるいは朝鮮半島、東南アジアと、非常にアグレッシブな経済発展を望んでいる国が多い。これが今の日本の状況であると思います。
 そうすると、この日本の経済というのが、これまでどおりの考え方、あるいはこれまでどおりの発展というのは非常に難しくなってきている。そうすると、今よく言われるように、五百三十万人、新しい職場をふやしますよと言っても、にわかには信じられない。非常に今、デフレスパイラルで物を買わなくなってしまっていて、皆さん縮こまっていますから、この状況はさらに続いていくと考えるわけなんです。
 そうすると、今の大臣の御答弁にもありました、ある一定の方向性というのは変わってくるのかなと思うんです。これまでの豊かな雇用保険制度のあり方から、ある程度重点的に配分していかないと、財源は一定ですから非常に難しくなってくる、そう思うわけなんです。
 その中で今、似たような制度として再就職手当というのがございますよね。失業されて、三百三十日の基本手当の給付期間があって、早く就職したら一定のお金を差し上げますよ、手当を差し上げますよという制度がございますけれども、この制度についても高年齢雇用継続給付と同じような考え方でいいのか。あるいは、そうじゃないよ、やはりある程度インセンティブをつけないとなかなかこの制度はうまくいかないんだよという考え方もあるんですけれども、その点、いかが考えればよろしいでしょうか。
    〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
澤田政府参考人 委員御指摘の再就職手当は、失業等給付の中の就職促進給付という形で位置づけられておりまして、その名のとおり、雇用保険受給者が受給期間中あるいは給付制限期間中に一刻も早く再就職していただく、そのインセンティブとして仕組まれております。これについては、近年若干実績が減っておりますが、再就職促進のインセンティブとしては一定の機能を果たしているだろう、こう思います。
 ただ、その効果が大きいのか小さいのかというところは、私ども、今政策評価ということで分析を一生懸命やっているところであります。
大島(敦)委員 今の再就職手当に関連する制度、手当の創設ということで、きょうの日経新聞に、失業された方がパート労働とかあるいは非常に低賃金の職業についた場合に、これまでですと、再就職手当は正職員、正社員として就職しないと、それも一年以上の雇用が見込まれないといただけなかった。しかしながら、今回の制度というのは、この趣旨としては、もう正社員でもなくてもいい、あるいは一年ではなくてもいい、就職していただければその一定割合の給与を一年間ですか補償するという制度の創設を厚労省は考えているよということなんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
澤田政府参考人 けさの日本経済新聞の記事は私も見てびっくりしたわけでありますが、私どもに対する取材ではありませんで、出どころがよくわかりません。
 ただ、私どもも、委員御指摘のように、保険受給者あるいは失業者の方が一刻も早く再就職してもらうためにはどういう仕組みがあり得るかという議論はいろいろやっております。そういう中で、いろいろな選択肢と申しますか、アイデアと申しますか、議論がありますので、そういうものの一つとしては、だれが言ったかわかりませんけれども、あれもなるほどなと読みましたが、私どもが考えているところでは全くありませんので、そこは御理解いただきたいと思います。
大島(敦)委員 安心いたしました。
 この日経新聞を読んで私も驚きまして、低賃金とか、要は、今まで例えば一千万もらっていた人が、四十歳代、五十歳代で失業するとなかなか、五百万ぐらいしかいただけない。さらにもっと低い職場しかない場合に、助成するということは、ややもすると、悪い言い方をすれば、安い賃金体系の方に労働市場を誘導するような制度でもあるのかなという危惧を抱いたものですから、そのようなお考えがないということですので、安心いたした次第でございます。
 それでよろしいでしょうか、そのような理解でよろしいでしょうか。
澤田政府参考人 日経新聞の記事を今委員御指摘のように解釈することもできますし、そういうふうに解釈していいんだなと言われても、私どもちょっと答えに困りますので、そこは御容赦願いたいと思いますが、低賃金に誘導するということを保険制度でやるかどうかという話は、これは大問題でありまして、これはいろいろな議論が、やれという人もいれば、やるべきじゃないという人もいるでしょうし、そこは全く、これから審議会で、別に日経新聞を念頭に置かずに、どういう制度がいいか、これは労使の方々、公益の委員の方々を入れて十分議論してもらいたいところであります。
大島(敦)委員 なかなかこのような制度設計というのは、非常に、人間の心理もございますから、微妙なところ、あるいはその本音を、失業されている方あるいは会社側の本音がわからないと制度設計は難しいのかなという思いがございます。
 そして、もう一つ質問に入りたいんですけれども、先ほど加藤公一委員の方からも質問がございました、私のところにも届いております、キャリアコンサルティングという今回のこの制度のあり方なんですけれども、今後このキャリアコンサルティングという制度をどのように発展させていくのか。資格制度をつくるのか、あるいは民間に任せてやっていくのか、そういう方向性というのはお話しできるでしょうか。
澤田政府参考人 職業能力開発局の研究会で報告書が出て、それを材料に午前中にも御議論ありましたが、キャリアコンサルティングということは、これからのいろいろな場面で必要だろうと。それは安定所での職業紹介にとって重要であるだけではなくて、企業内においても、社員をどうやってキャリア形成していくかという面でも企業の人事労務担当としても大事な問題であろうし、民間の職業紹介機関にとっても、まさに営業のノウハウの問題としても非常に大事だろう、こう思います。
 そういう意味で、キャリアコンサルタントという、一種の資格ではないけれども、一定の職務と申しますか、専門職域として養成していく。それについて、そういうものを必要とする社会のあらゆるセクターで、そういう資格なりを取ってそのセクターで活躍してもらうということは非常に大賛成でありまして、私どもも、一人一人に適した職業相談、職業紹介をやるという意味では、キャリアコンサルティングというものを安定所としても今後一層重要視していかなければならないということで、その努力をしているところであります。
大島(敦)委員 私も、キャリアコンサルティングというのは非常に難しい仕事だと思っております。失業した経験がないと、失業された方の気持ちはわからない。
 私が一緒に勤めていた友人も、会社をやめられて、なかなか就職できなくて非常に落ち込んで、にっちもさっちもいかなくなって、そしてたまたま、人事の御経験ございましたから、アウトプレースメント、再就職の支援の会社に就職されて、今非常に人事で頑張っていらっしゃる。彼の話を聞くと、大島、よかった、自分も失業していて、失業されている方の気持ちがわかるから、今、そこの会社の人事でキャリアコンサルタントの方といろいろなおつき合いをしていて、あるいはそこにいらっしゃる再就職を望まれている方とお話をしても非常にいいということをおっしゃるんです。
 ですから、このようなキャリアコンサルティングというのは非常に難しい仕事であって、私たち、地元に帰ったときにいろいろな陳情を受け付けるのも一つのコンサルティング業務ですから、それにも非常に似ているのかななんて思うときもあるんですけれども、そうすると、今回のこの報告書というのはまだまだプレのディスカッションなのかなと思います。問題点の抽出であると思います。
 ただ、気になるところがありまして、私の考えでは、余り政府の方は当初は介入しない方がいいなという思いもあるんです、これは。やはり民間の人たちが自分たちでその仕事を、アウトプレースメントの会社でもいいんですけれども、育てていった方が、業態としては、あるいはキャリアコンサルタントとしてはまだまだ伸びていくのかなと思いまして、この報告書ですと、「職業能力評価に係る助成制度等の活用に」ということで、また、助成制度をつくってキャリアコンサルティングを伸ばすような記述があるんですけれども、ここのところは本当にそういうことをお考えなのか、あるいは、これはあくまでこちらの方の検討会のまとめたものであるのか、そこのところを伺わせていただければ幸いでございます。
澤田政府参考人 この研究会では、関係の専門家、あるいは現にそういう業をやっておられる方、幅広く集まって議論していただきました。そこで、日本には、先生おっしゃるように、まだキャリアコンサルティングという、いわば仕事といいますか考えが定着していないといいますか、普及していないということで、キャリアコンサルティング、あるいはそれを体現するコンサルタントというものが非常に大事なのだということを社会にどうやって広めていくかということで、そうした方々を養成するためには、みんなが勝手なことをやってはいけないので、一定の標準的な教育課程みたいなものを決めようじゃないかと。それをみんなで、いろいろなチャンネルでキャリアコンサルタントを養成していこうということで合意ができているわけであります。国が決して一元的に縛ろうとかいう発想ではなくて、それぞれが養成していけばいいじゃないかと。
 その際に、今、職業能力開発局が労働者個人の生涯にわたるキャリア形成を支援するという助成制度がありますから、キャリアコンサルタント養成講習などを受ける場合にそういう助成が使えるようにしよう、そういう話がここでかなり出ていまして、いわば全体で、いろいろな、もちはもち屋で養成していくことを国が支援するという思想でまとまっておりますので、御理解いただきたいと思います。
大島(敦)委員 ついつい疑った目で見てしまって申しわけないんですけれども、私も、会社にいると、組織というのは膨張するというのを身をもって経験しているものですから、このような制度をつくると、ついつい、また担当の部局ができ、そして助成措置ができるとまた何とか協会とかできて、一元管理して、今の行政改革とか制度改革とは逆の方向に向かってしまうような危惧を持っているものですから、そこのところをちょっと御理解していただいて、私は、できるだけフリー、ある程度研究したり、こういう方向というのはいいんですけれども、やる人はフリーというのが、自由に民間の方にはさせていただいた方がいいと思っております。
 今、非常に業態として伸びている再就職の支援の事業についても、年々、倍々ぐらいで売り上げは伸びていると思います。その人たちの、一部の人なんですけれども、意見を聞きますと、全く法的に縛りがないからいいとおっしゃっているんです。
 例えば、大臣御存じないかもしれないので説明しますけれども、大会社が五百人リストラしたいといった場合、今までですと、そのまま要はやめていただいたんですけれども、一年間、会社が再就職の支援の会社に百二十万円ぐらいお支払いするんです。やめた五百人の方は、こちらの、再就職の支援の会社に行ってカウンセリングを受け、その支援の会社自身も営業活動でいろいろな再就職先を探してきてそこに当てはめていくというような、そういう業態が今非常に伸びているんです。この業態に関しての法的な縛りがないと伺っておりますので、非常に自由で、いい仕事ができるとおっしゃっている方もいらっしゃるんです。これは、いろいろな会社がありますから、いい会社もあれば悪い会社もありますから、たまたま私が行ったところが非常に整った会社なのでそういう印象を受けたのかもしれませんけれども。
 ですから、そのような中でのコンサルテーション、コンサルティングをやっている方とお話をすると、やはり非常にすばらしいと私も思うんです。非常にいい方が多い。その会社の、要は苦労された方ですか、私も民間企業にいて、最低の成績をつけられて左遷されたことがありますから、そういう経験がないと、なかなかサラリーマンの気持ちはわからないんですよ。
 ですから、そういうわかった方がそういうところでコンサルテーションをされていたり、やはり失業された方もやっていらっしゃいますから、そのように、できるだけ民間の力を引き出すような政策に転換、今でもしているかとは思うんですけれども、そちらの民間の力をできるだけ引き出すように誘導していただけると助かるところ、あるいは、ほったらかしにしていた方がいいかもしれませんので、ほったらかしにした方がいいのはほったらかし続けた方がいい場合もありますので、そういうところを御理解いただければ幸いでございます。
 それで、一番最後に伺いたいのは、やはり今回、狩野副大臣、新しく労働担当となりまして、これまで坂口大臣はずっと厚生労働大臣として労働行政にも携わっていらっしゃいまして、副大臣は坂口厚生労働大臣のもとで、私、三人目の労働行政担当の副大臣でいらっしゃいますので、今の雇用の問題について、どういう危機感とか、こうした方がいいとか、私としては政治家としてこういう意思を持っているんだというところをお聞かせいただければありがたいんですけれども。
狩野副大臣 御指名をいただきまして、私もこういう労働問題というのは初めての担当でございますけれども、雇用問題が大変厳しい状況になっております。特に、失業率が高くなって、これは何とかしなければいけないということは、私自身、個人でもそういう考えを持っておりますので、これは個人ばかりじゃなくて、雇用失業に対処することが本当に、雇用問題の不安を払拭することが私たちの一番の重要な課題だというふうに思っておりますので、私自身も、皆さん方に御指導いただきながら一生懸命取り組ませていただきたいと思っております。
大島(敦)委員 副大臣の今の御発言の中で、不安を取り除くというのが一番大切なわけでございまして、やはり経済というのは気持ちなものですから、例えば、これから出てくるだろう、これは宮路副大臣の担当であります医療制度改革の、負担割合をふやすということがやはり不安をあおるものですから、今のサラリーマンにとってはただでさえ不安を感じて小さくなっているものですから、できるだけそこのところを御理解いただいて、やはり労働行政としては、このような不安を喚起するような政策については反対だよというのを省内で御発言していただければ助かるんですけれども、お願いいたします。
 ありがとうございました。
野田(聖)委員長代理 次に、水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 臓器移植法が施行されてきのうでちょうど四年半が経過いたしました。この法律には、施行三年後の見直し規定が盛り込まれておりますけれども、まず、この規定に基づく見直しの現状を教えてください。
下田政府参考人 厚生労働省といたしましては、厚生科学審議会の中にございます臓器移植委員会というのがございますが、その場におきまして適正な臓器配分ルールの確立等、制度の運用面におきます改善に取り組んできたところでございます。
 また、臓器移植法につきましては、現在、いろいろな団体からいろいろな御要望がございます。例えば、十五歳未満の臓器提供を可能としてほしい、あるいは、脳死下での臓器提供に際しまして、本人の提供の意思をどこまで認めるのか、より活用する仕組みがとれないのか、そういった要望がなされているところでございます。
 臓器移植につきましては、生命倫理観に深くかかわる問題でございまして、十五歳未満の子供からの臓器提供の可否など、制度の根幹にかかわる問題につきましてはさまざまに見解が分かれているところでございます。今後、臓器移植に係りますこうした諸課題につきましては、広く国民的議論を行うことが必要であるというふうに考えているところでございます。
水島委員 今の御答弁にもございましたように、子供がドナーとなる移植については積み残された課題になっており、臓器移植推進連絡会を初め幾つもの団体から法改正の要望が出されています。脳死状態の人がドナーとなる臓器移植については、常に脳死は人の死か否かという問題がつきまとってきましたし、だからこそ、さまざまな方の生命観や価値観に抵触してきたのだと思います。
 お子さんが脳死になった方の実際の経験談からも、身近な人の脳死をどう受けとめるかは人それぞれであって、その受けとめ方は限りなく尊重されなければならないと私は思っております。その一方で、臓器提供を受けなければ生き延びることのできない子供たちの問題も切実でございます。
 脳死状態からの臓器提供を希望する人がいて、それを待っている人がいる場合に、法律がそれを阻むというのが、十五歳未満の子供たちにとっての今の法律の構造でございますけれども、脳死の受けとめ方の多様性を尊重するという観点から、これはやはり、あらゆる受けとめ方を尊重していることにはならないのではないかと考えております。そして、そんな状況の中、それぞれの人の生命観、価値観を侵害することなく、この問題をどう冷静に議論するかという姿勢が問われているのではないかと思っております。
 また、この臓器移植という問題に関しましては、臓器移植というその医療そのものの問題と、また日本における医療不信の問題と、この二つが複雑に絡み合って論じられてきたというような経過もございました。私は、医療不信は医療不信として、きちんとした手当てをして解決していかなければいけない問題であると思っておりますけれども、医療不信に引っ張られる形で、臓器移植がなるべく行われないようにというような枠組みをつくるというのは本来の趣旨とは反するのではないか。その二つをきちんと分けて、冷静に、どのようにすれば理想的な医療が実現するのかというようなことを考えていかなければいけないと思っております。
 本日は、そのような観点から質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、脳死臓器移植は日本では新しい技術でありまして、まだ確立された医療とは言えないわけでございます。ですから、透明性が確保された中でデータを収集し、その結果を冷静に分析し、日本で行う医療技術として、どの程度、有効性、安全性があるものなのかを検証する必要があると思います。そういう意味では、まだ臨床研究の段階にあると思いますけれども、大臣は、どう思われますでしょうか。
坂口国務大臣 臓器移植の法律ができましてから、今お話ございましたように、四年半という日時がたったわけでございます。この法律ができますときに、本当に、議員の皆さんもさまざまな御意見をお持ちになっていたというふうに記憶いたしておりますし、それぞれが党議拘束を外して初めて投票をしたという経験を踏んだわけでございます。それから、十九名の方の臓器移植が行われまして、八十三名にそれが移植をされたということでございます。
 さて、この現在の段階をどう評価するか。一定の医療技術というものが確立をされて、そして今日を迎えているというふうに見るのか。それとも、今委員が御指摘になりましたように、これは医療研究の段階であるというふうに見るのか。これも人それぞれ見方によって違うのではないかというふうに思いますし、ここを断定的にこうだというのもなかなか難しいなというふうに思いながら、今聞かせていただいたわけでございます。しかし、水島委員がお話しになりますように、この医療に対する不信とそしてこの臓器移植という問題が一つに絡んで話がなっていることもまた事実でございまして、ここは私も分離をして考えていただきたいなというふうに思ってまいりました一人でございます。
 小児の臓器移植の問題につきましても、私個人は、いろいろの難しい問題はありますけれども、何とかここを乗り切ることができないかというふうに思っております一人でございます。これは、厚生労働大臣と申しますよりも、坂口個人としてそう思っているということでございまして、これからひとつ、この先どういうふうにこれを進めていくか、大変手順も大事だというふうに思いますが、次の段階にいよいよ議論を進めるべきときを迎えているというふうに思っておりますから、今、きょうこういう御質問をいただいたのは、タイミングとしても非常にいいタイミングで御質問をいただいたというふうに思っている次第でございます。
水島委員 では、質問をいたしました臨床研究の段階にあるかどうかということの御答弁は最初の方にいただきまして、大臣はそれは人それぞれの考え方によるのではないかとおっしゃいましたけれども、ただ、やはり日本でまだ二十例、この法律ができてから二十例でございます。それをもって日本で既にその効果、安全性とも確立された医療であると言うには、私は、まだ時期は早いのではないか、そのような意味ではまだ臨床研究の段階にある、少なくとも一般の医療技術に照らし合わせてみればそのような段階にあると思っております。
 さて、子供の臓器移植については主に二つの観点からの特殊性があり、そのために臓器移植法に積み残されたわけでございます。その一つがみずからの意思を表明する能力、もう一つが子供の脳死判定基準でございました。脳死判定基準については、その後、厚生科学研究で子供用の基準がつくられております。残された意思表示の問題ですけれども、例えば医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令では、子供の治験の場合、代諾者の同意によって参加が可能となると規定されております。
 脳死臓器移植を遺言と考えるか臨床研究と考えるかによって、扱いは変わってくると思います。私は、脳死臓器移植が新しい、日本ではまだ未確立な医療であることからも、また移植の議論の根底にある医療不信を払拭するためにも、臨床研究として位置づけて、透明性のある体制を確保する必要があると考えております。
 脳死臓器移植をドナーとレシピエントの双方の参加による臨床研究であると位置づければ、ドナーが子供の場合であっても親がその意思表示を代行できると考えられますでしょうか。
    〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
下田政府参考人 一般医療におきまして、十五歳未満の小児の臨床研究を行う場合、親権者などの代理権者の承諾のもとで臨床研究を実施することが可能であるという扱いがなされておりますことは承知をいたしております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、十五歳未満の小児の移植につきましては、法案審議の国会におきましても非常に大きな論点となった部分でございまして、その議論を踏まえて、民法上の遺言可能年齢、こうしたものも考慮し、これらの小児からの臓器提供は運用上認められないというふうな扱いになっているところでございます。
 大臣からも申し上げましたけれども、本質的に、移植医療はドナーの死亡を待って臓器を提供いただいて行われるといったことから、御指摘の臨床研究とは同列には考えにくいものというふうに考えておりますけれども、仮に御指摘のように臓器移植を臨床研究と位置づけたといたしましても、特段の規制がかからない一般医療とは異なっておるということでございますから、そのことをもって、代理権者の承認をもって十五歳未満の小児の臓器提供を可能とするということを認めることにはならないというふうに考えておるところでございます。
水島委員 もちろん、今は法律の見直しに向けての話をしているわけでございますので、臓器移植法の枠組みを変えるというような前提での質問というふうに御理解をいただいて、もう一度御答弁をいただきたいんですが。
 脳死臓器移植を臨床研究として位置づけ直す必要があると私は考えておりまして、法律そのものをそのような枠組みに変えるのであれば、子供の場合でも代諾によって臓器提供が可能になると思われますけれども、これについてちょっともう一度御答弁いただけますでしょうか。
下田政府参考人 臓器移植法につきましては、提供者の意思の扱い方、こういった問題につきましてさまざまな意見があるところでございます。委員御指摘の、脳死下での臓器移植を臨床研究と位置づけて、十五歳未満の小児の臓器提供を可能とするように改正すべきという御指摘も含めまして、幅広く国民的議論を行っていく必要があるというふうに考えております。
水島委員 今までお話ししてまいりましたような考え方に基づいて、臨床研究として脳死臓器移植を位置づけ直し、臨床研究としての透明性、手続をきちんと守ることを条件に、希望する人に限って子供もドナーとなれる道筋をつくるべきだと思いますけれども、先ほど大臣は個人としては何とかお子さんの臓器提供をということでおっしゃっておりましたけれども、このような考え方についてはどのようにお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 今水島委員が御指摘のように、臨床研究という立場に立ってやれればすべてがうまくこれでもう割り切れるかといえば、そこは、私は正直なところは、委員ほど心の中がすっきりと割り切れておりませんで、まだ何かそこには、そういう割り切り方をすれば本当にそれで、それだけで議論が尽くせるかなという気持ちが若干残っておりますことをひとつお許しいただきたいと思います。
 一つの考え方であろうというふうに思いますし、なるほどそういう考え方があるかというふうにも思った次第でありますけれども、今局長からも答弁いたしましたように、そういう考え方であるにいたしましても、なおそれらを中心にしていろいろの議論をひとつもう少し整理をしなければならないんだろうというふうに思いますから、貴重な御意見としながらも、しかしそれらを中心にしてもう少し議論をさせていただきたい、そういうふうに思います。
水島委員 ありがとうございます。
 臓器提供に関しては、家族への配慮が重要であるのは言うまでもございません。子供の場合には、特に子供を失う親の気持ちに対しては、慎重の上に慎重に配慮する必要があると思っております。
 臓器移植、特に脳死臓器移植は実際にはごくわずかの人にしかかかわりのない問題でございます。私は、先ほども申しましたけれども、人の死は脳死か心臓死かという生命観や価値観を押しつけ合うというような構造に陥ることなく、多様な価値観、多様な生命観が尊重されるようなそんな状況の中、また一般の医療不信が臓器移植という問題と複雑に絡み合うことなく、希望する人にはこの新しい技術に参加できる中立的なシステムをつくっておくことが今の日本においてとるべき道ではないかと思っております。
 自分自身も、子供がもしも脳死状態になったときに臓器提供を申し出る気持ちになれるかどうかはわかりません。でも、透明性がきちんと確保され、臓器提供を拒否しても不利益をこうむらない環境が保障されることを条件に、子供のドナーからの脳死臓器移植が可能になるよう法律の枠組みを変えることは必要なことであると考えております。脳死臓器移植にかかわるさまざまな人の気持ちに十分な配慮をした上で、ぜひこの問題を前向きに御検討されることを大臣に改めてお願いを申し上げたいと思います。
 次に、摂食障害について質問をさせていただきます。
 昨年の五月十八日の厚生労働委員会でも、私は摂食障害について質問をさせていただきました。また先日の新聞でも報道されましたけれども、中学卒業から高校三年まで、女子学生を追跡した昨年度の厚生科学研究の結果、神経性無食欲症に該当する極度の体重減少が見られたのは二十人に一人ということで、また四人に一人はその予備軍だったということでございます。この結果からも、摂食障害が極めて緊急で集中的な取り組みを必要とする問題であるということがおわかりになると思います。
 昨年の質問では、私は、専門的な治療機関をつくることの必要性、診療報酬面での配慮の必要性、メディアの問題、国際的な治療ガイドラインに基づいて日本でも検証することの必要性などについて取り上げさせていただきました。その後、約一年が経過しようとしておりますけれども、私が質問した項目について、特に摂食障害に対してということで、何か検討していただけましたでしょうか。
高原政府参考人 摂食障害につきましては、委員御指摘のとおり、早急に行政的にも手段を講ずるべき領域であると考えております。
 まず、専門家の養成でございますが、昨年度から医師、看護師、精神保健福祉士などを対象に思春期精神保健対策専門研修会を実施しておりまして、現在のところ合計四百三十一名が研修を終了しております。また、これを民間で担っていただいております日本児童青年精神医学会におかれましては、会員が二千三百九十八名というふうに承知しておりますし、特に児童、青年の精神科医療を担っていらっしゃいます通称全児研会員病院数、現在十七施設というふうに承知しております。
 それから、診療報酬についてでございますが、従来より摂食障害の患者に対する精神治療につきましては通院精神療法等として評価されているところでございまして、今回の診療報酬改定におきまして、精神科専門療法の質の向上を図る観点から、初診時における評価の充実及び児童、思春期の患者に対する評価の充実が行われた。また、入院医療につきましては、精神疾患患者への入院医療の提供の充実を図る観点から、児童・思春期精神科入院医療管理加算が新設されたわけでございます。
 それから、委員お尋ねの、国際的なガイドライン等をどういうふうに生かすかということでございますが、私ども、ちょっとインターネットで検索したところ、約二十四のイーティング・ディスオーダーに関するガイドラインが出されております。また、専門誌といたしましては、インターナショナル・ジャーナル・オブ・イーティング・ディスオーダーとか、イーティング・アンド・ウエート・ディスオーダーズなどというものが出ているということは承知しておりますが、ちょっと、私どもの力では完全にフォローはできておりません。しかしながら、MEDLINEとかMEDLINEプラス、あるいはイギリスのナショナル・エレクトロニック・ライブラリー・オブ・ヘルスなどのデータベースを適宜利用いたしまして、国際的な行政水準、そういったものにおくれないように摂食障害につきましても努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
水島委員 今の御答弁をまとめますと、つまり、思春期精神保健に関しては外に見える形で幾つか進歩をしていただいた、けれども、事摂食障害ということに限っていえば、これから努力されるところである、そのように理解をいたしました。
 また、私は先日、健康増進法案に関して厚生労働省から資料をいただいたわけでございますけれども、その資料の中にも含まれておりましたが、ボディー・マス・インデックスが一八・五未満のやせの人の割合は二十代、三十代の女性では二十年前からふえ続けており、それ以上の年代の女性また男性全般と比較してかなり異様な変化となっております。二十代の女性に至っては、四人に一人がやせということになっているわけでございます。
 こうやって見ますと、若い女性のやせというのは深刻な社会現象であると思います。なぜこのようにやせている若い女性がふえてきたと分析していらっしゃるでしょうか。
下田政府参考人 先生御指摘のように、国民栄養調査を見ていきますと、BMI、ボディー・マス・インデックスで分類をいたしておりますが、やせに該当する女性がこの二十年間で倍増しておるといったことで、四人に一人、二十代の場合はやせの方がおられるということは事実でございます。
 その背景でございますが、平成十年の栄養調査の結果を分析いたしてみますと、客観的な指標ではやせに該当する女性、これはBMIでは一八・五未満でございますが、こういうやせておられるにもかかわらず自分自身では普通ないし太っているというふうに自己認識をしておられる方が、二十歳代の女性では五〇・八%、三十代の女性では三三・三%というふうに、思っておられるわけでございます。
 また、なぜ体重コントロールを心がけているかと聞きましたところ、きれいでありたいからと回答した人が、二十歳代では五一%、三十歳代女性では二三・一%。つまり、やせイコールきれいというような認識がその背景にあるというふうに考えられるわけでございます。
 このような状況を踏まえまして、健康日本21、厚生労働省では実施しておるわけでございますが、適正体重の維持といった観点から、女性のやせの割合を減らすことを目標として種々の啓発活動を行っておるところでございます。
水島委員 今いろいろと御説明を伺ってまいりましたけれども、啓発活動という言葉も出てまいりました。
 そもそも厚生労働省としては、このやせ願望というもの、また摂食障害という病気をどのように理解されているのでしょうか。正しい理解がなければ、施策を講ずることもできませんし、啓発活動においてもピントの外れた啓発活動ということになってしまうと思います。
 昨年伺いましたときには、大臣にとってはかなり耳新しい話題であったようでございますけれども、その後一年近くが経過いたしました。現時点での御理解はどのようになっておりますでしょうか。
坂口国務大臣 昨年も御質問をいただいて、水島委員がお書きになりました本もちょうだいをいたしました。ちょうだいをいたしました割には勉強が進んでおりませんけれども、しかし、昨年よりは進んできたというふうに思っております。
 きょうは、何か口頭試問を受けているような感じでございますけれども、摂食障害、思春期でありますとか青年期に発症することの多い病気でありますから、代表的なものは、精神性無食欲症それから精神性大食症であるというふうに思います。これは先生の本にも書いてございました。特徴的な症状は、やはり拒食、大食という食行動の異常でありますが、問題は、その食行動の異常が何によって起こるかということの、その原因のところが一番大事なんだろうというふうに思っています。
 ですから、これを病気と言っていいのか異常行動と言っていいのかわかりませんが、このことがどういう病名で語られるかということよりも、その原因が何によって起こるかということに着目をしながらこういう状況を克服していくということが今大変大事になっているのではないかというふうに思っています。
 これは、単に身体的なもの、精神的なものという言葉では割り切れない、もう少し幅の広い、社会的なさまざまな環境もあるのでしょうし、あるいはまた社会、文化的な要素もそこにはあるのであろうというふうに思っておりまして、わかったようなわからぬような答弁でございますけれども、このぐらいで御勘弁をいただきたいと存じます。
水島委員 ありがとうございます。少なくともことしの大臣の御答弁からは、これは身体的な問題また精神的な問題だけではなく社会的な要因もあるのではないかと、いろいろな角度からお答えをいただいたわけでございます。
 私自身は、精神科医としてこの病気を一番の専門にしておりまして、そのときに、本当に行政が、このような病気の現状、このような病気で苦しんでいらっしゃる方たちの現状、そして、それを医療の中で特殊な扱いをしていくことの必要性というものを本当に理解していないな、そのようなことを強く感じたことも、私自身が政治の世界に参加をさせていただいた一つの動機であったわけでございます。
 昨年、ことしと、このように委員会で取り上げさせていただきまして、確かに今までなかなか御理解をいただいていなかったのではないかということをまた改めて感じているところでございますけれども、先ほどの御答弁で、思春期精神保健に関してはこの一年間で多少の進歩はあったけれども、摂食障害そのものについてはまだまだだということを、私自身が要求をしております、また求めております医療のレベルというものに比べますと、本当にまだまだおくれているのではないかと思っております。
 先ほど御答弁の中で、国際的な雑誌にも目を通されているというようなことでございましたけれども、それにしては、随分と施策がおくれているのではないかと思わざるを得ないところがございます。ぜひ、主要な雑誌に掲載されます論文に関してはしっかりとお目通しをいただきまして、それを行政の中に生かしていただきたいと思っております。
 また、昨年も申し上げましたけれども、イギリスの政府がボディーイメージサミットを二〇〇〇年に開き、多様な体型のモデルを起用するようメディアに自主的な取り組みを要求したりというようなことが行われておりまして、これは明らかに日本の政府よりは先を行っていると言えると思います。
 今の日本では、忙しい精神科臨床の片手間では、摂食障害の患者さんに十分な手間や時間を割けない。また、専門的なノウハウを持った治療者が少ない。患者側から見れば、どこに行ったら摂食障害の治療が受けられるかわからない。研究という観点から見ても、極めて貧困な環境でございます。例えばアメリカのコロンビア大学には、摂食障害の専門ユニットがあって、入院患者さんは、臨床研究に参加することを条件に治療費を免除される。また、同じような患者さんが集まるので、良質な研究を効率的に行うことができるというようなメリットがあるわけでございます。
 私は、日本にも摂食障害の専門センターをつくって、治療、研究、教育をするとともに、やせ願望全般についても啓発活動を行っていく必要があると思っております。昨年もそのように申し上げましたけれども、やはりこのたびの厚生科学研究の結果を見ましても、これはかなり緊急の課題ではないかと思っておりますので、思春期精神保健全般に取り組んでいただくことはありがたいことですけれども、事この病気に関して、やはり専門のセンターが必要ではないかと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 行動異常の人たちが非常にふえているということは先がた御指摘をいただいたとおりでございますが、それを真正面から受けて立つ、そうした医療機関というのはいまだないというふうに私も思っております。ただ、国立精神・神経センターにおきましてこの問題を取り上げておりますのと、それから、今回できました成育医療センター、ここにおきましても、こうした問題も取り上げていただくことにいたしております。
 一つの国立病院をそっくりそのまま、拒食症とかこうしたものだけを取り扱うようにするということは、あらゆることを考えますとなかなか難しいというふうに思いますが、しかし、どこかの国立病院に一つ、かなりそこを専門的に取り扱う分野というものをつくり上げていくということは十分可能なことだろうというふうに思っておりますので、例えば今まで精神・神経センター等でおやりをいただいているということになれば、そうした分野をもう少し今後拡充をしていくというのも一つの考え方でございましょうし、あるいはまた、他の分野でそういうところをつくるというのも恐らく不可能ではないというふうに思います。
 何かそうした形でどこかに、あそこを訪れたら相談に乗っていただけるという場所がやはり大事なんだろうというふうに思いますので、そこはもう少し心がけていきたいというふうに思います。
水島委員 ぜひ力を入れて御検討いただきたいと思います。
 やせが及ぼす影響というのは、実は想像を上回るものがあると思います。もちろん生命の危険性に直結することもございますし、また、それほどのものでなくても、骨に対して深刻なダメージを与えていく、それはもう限りなく長期に及ぶというような問題もございます。ぜひこの緊急性を御理解いただいて、きちんとした専門の分野をつくっていただけますようにお願いいたします。
 また、やせ願望の根底にございますのは、実は男女共同参画問題でございます。女性は中身よりも外見というような価値観がある限り、女性が容姿によって振り回されるというような構造は変わらないわけでございますので、施策をお講じになるときには、縦割り行政の枠組みにとらわれず、自分は男女共同参画担当ではないとおっしゃらずに、ぜひ本質的な議論をしていただけますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうもお時間をいただきましてありがとうございました。
 きょうはさまざまなテーマについて議論をしたいと思いますが、まずは、ワールドカップサッカー対策というところから入っていきたいというふうに思います。
 このワールドカップサッカーの大会は、いよいよ来月末から始まります。全世界から三十二チームが参加をいたしまして、日韓共同で開催をいたします。世界じゅうから注目が集まる大会であります。試合も国内で三十二試合、観客総数、これも数えましたけれども、百六十万人以上ということであります。
 また、テレビによります総視聴者数、いわゆるテレビを見る人数なんですけれども、オリンピックと比較をいたしますと、オリンピックよりも実は注目度が物すごい高いのだそうであります。例えば、延べ人数ですけれども、バルセロナ・オリンピックでは百六十六億人、あと、アトランタ大会では百九十六億人ということでありますが、ワールドカップサッカーの大会につきましては、アメリカ大会が三百二十一億人、また、前回のフランス大会では三百三十一億人と、実はオリンピック以上の注目を集める世界大会である。
 オリンピックをはるかにしのぐ、世界から注目されるスポーツイベントがいよいよ始まるということになるんですが、厚労省もこのワールドカップサッカーに際して重要な役割を果たさなくてはいけないというふうに思います。特に、救急医療体制であります。もちろん、救急医療が必要な事態があってはならないことであるのは言うまでもないのでありますけれども、十二分に対策を講じておかなくてはいけないのは当たり前のことであります。
 大臣に伺いますが、ワールドカップサッカー対策として、救急医療体制構築、不備はございませんでしょうか。
坂口国務大臣 いよいよワールドカップが近づいてまいりまして、選手の皆さんに対しましてはもちろんでございますけれども、やはり観客の皆さん方に対しましても、救急医療体制というのはもう欠かすことのできないものだというふうに思っております。また、非常に元気のいい方もたくさんお見えになるわけでございますから、そうした面からいたしましても、やはり万全には万全を期しておかなければならないというふうに思っております。
 厚生労働省といたしましても、前回の開催国でございましたフランスに職員を派遣いたしまして、当時の救急医療体制、どういうふうにおやりになっていたかということにつきましての勉強もしてきたところでございます。開催をしていただきます自治体に向けましては、こういうマニュアルでひとつ準備をしてくださいという、救急医療体制構築のためのマニュアルをつくりまして、お渡しをしたりもしているところでございます。フランスの救急・災害医療の専門家によるセミナーなども実は開催をいたしております。
 近づいてまいりましたので、さらにこれから開催日までの間に手抜かりのないようにひとつやっていきたいというふうに思っている次第でございます。
樋高委員 国内、一カ所ではなくて十会場で行われますので、どうか万全の体制をしいていただきたいと思います。
 関連といたしまして、このワールドカップサッカーと申しますと、先ほど大臣おっしゃったとおり、元気な方もいらっしゃるわけでありまして、まさしくフーリガン対策、また、去年は米国発の同時多発テロがありました。あってはならないことですけれども、ターゲットになるということも考えた上で対策をとっておかなくてはいけないというふうに思うのでありますが、このフーリガン対策、またテロ対策は万全であるかということが気になるわけであります。
 特に、観客、出場者の方は当然でありますけれども、大会に伴っての関係者、スタッフ、また、競技場周辺にもお住まいの方もたくさんいらっしゃるわけでありまして、そういった方々の安全、安心を確保するというのは、これは国が責任を持ってやらなくてはいけないというふうに思うわけでありまして、きょうは、お忙しい中、法務省さんと警察庁さんにお越しいただいておりますので、お伺いをしたいと思います。
漆間政府参考人 お答えいたします。
 ワールドカップサッカー大会の安全対策上、大変大きな問題は、テロ対策とフーリガン対策というふうに思っております。
 テロ対策につきましては、まさにテロリストを日本国内に入れない、それから日本国内に拠点をつくらせない、それから日本国内でテロを起こさせないというのが基本でありまして、この基本にのっとりまして、関係機関と連携をとりながら、水際対策等々いろいろな対策を講じて、日本国内で絶対テロが起きないように万全を期していきたいと思っております。
 他方、前回のフランス大会でもフーリガンが暴れたわけでございますが、フーリガンの対策の一番重要な点というのは、まずフーリガンをこの日本国内に入れないということでありまして、そのためには、関係の国の方でフーリガンを出国させない措置をとっていただく。それから、日本の方では、入管等とも協力いたしまして、フーリガンと思われる者が日本国内に入らないように、そういう措置を講じていくことが必要であるというふうに感じております。
 ただ、フーリガンが入ってきてしまったという場合にはどうするかという問題がございまして、これについては、欧州とかあるいは南米の方で、いわゆるフーリガンを見分ける警察官、スポッターと言っていますが、これがいるわけでございまして、スポッターにぜひ日本に来ていただきまして、日本の警察官と一緒になって、フーリガンを見分けて、そのフーリガンに暴動等の不法行為を起こさせないようにする。万一、暴動等の不法行為が起こった場合には、検察庁とも連携をとりながら、検挙する形で鎮圧を図るという形で対応したいと思います。
 委員の選挙区であります横浜というのが、まさに決勝戦が行われるところでありまして、果たしてどの国が決勝に残るかによってこのフーリガン対策等の対策の仕方も変わってまいりますが、ぜひ住民の皆さんが安心できるような対策を講じていきたいというふうに考えております。
横内副大臣 法務省は、入国管理の立場でございまして、フーリガンとかテロリストというような好ましからざる人物が我が国に入ってくるのを水際で阻止するということを、万全の対策をとっていきたいというふうに考えております。
 このため、昨年の臨時国会で入国管理法の一部を改正していただきまして、フーリガンが我が国へ上陸するのを拒否する、また、入国後のフーリガン行為を行った者を迅速に退去強制手続を行うというような法改正をしていただいて、本年三月一日から施行をしているわけでございます。
 この改正法を実効性あるものにする必要があるわけでありますけれども、具体的な措置として、まず第一点は、このフーリガン関係の情報の収集をするということが大変に大事でございますので、今警察の方からお話がありましたように、警察庁等の関係機関を通じまして、関係諸国からフーリガン関係の情報をできるだけ収集するということを今行っております。同時にまた、公安調査庁におきましても、テロ関係の関連情報の収集とか分析に当たっているところでございます。
 二点目として、人員とか機材を集中的に配置して、そして入国の審査を的確に行うということでございまして、この点は、昨年度、偽造パスポートの鑑識、最新鋭の監視装置というものを四十四台、全国主要空港に配置いたしました。加えて、平成十四年度の定員の増加で、新規に百二十名の入国審査官、入国警備官の増を図っていただきましたので、そういったものをワールドカップ関係の方々が使用する空港に集中的に配置いたしまして、入国の管理に万全を期していくということにしております。
 空港等における上陸審査を厳格に行うということを、今そんなことで一生懸命対応を検討しているということでございまして、この大会の成功に向けて万全の体制で取り組んでいきたいというふうに考えております。
樋高委員 どうもありがとうございました。
 ワールドカップサッカーを大成功させるためにも、警備保安対策、抜かりなきように、万全を期していただきますように重ねてお願いを申し上げます。
 いわゆる日本の危機管理体制につきましても、外国から甘いじゃないかという指摘もされるわけでありますけれども、むしろこの大会を通じて、いや、日本の危機管理体制も大したものじゃないか、むしろしっかりしているじゃないかと、外国に注目度が高い分、逆にそのことを知らしめるというか発信する、ある意味でいいチャンスでもあるというふうに私は考えますので、どうか日本の安全神話が崩壊しないように、まあ、しかかっているのかもしれませんけれども、むしろこれを機に、しっかり危機管理をやっているじゃないかということを、ぜひ緊張感を持って取り組んでいただきたいと思います。どうもありがとうございます。
 次に、食品の安全について伺いたいと思います。
 大臣とは本当に何度も議論をさせていただいて大変恐縮でございますが、やはり食べ物というのは毎日口にするものでありますので、これは私自身もライフワークとして取り組んでおります。きょうは取り上げたいと思います。
 食品行政についてでありますけれども、まず結論から申しますと、予防的な対応、つまり、消費者の安全を中心とした構造、仕組みに改める必要がある、私はこれが一番申し上げたいことなのであります。
 御存じのように、食品衛生法は、予防的な対応がとりにくい構造になっておりまして、人への健康被害の因果関係が明確、はっきりしていて、被害者が出てから対処する。被害者が出ない限り動かなくてもいい、またもしくは、被害が及ぶであろうことが明らかであるということでないと適用されない法律であります。
 このBSE発生以前、今から大体一年前でありましょうか、屠畜の検査の徹底などを厚労省に本当に多くの方々が申し入れをしたそうなんです。その時点では、BSEは国内で発生していないからそこまでやる必要はないよという回答だったようでありますけれども、昨年の十月から全頭検査を始める段階になって、検査の訓練や体制も急ごしらえで検査キットの認可もされていなかった、また、BSEの検査方法もそもそも確立をしていなくて、いわゆる確定診断は結局イギリスでやったというのが事実であります。そもそも、そういった検査体制、危機管理体制がなっていなかったんじゃないかというふうに思うわけであります。
 また、農水省さんの問題でありますけれども、九六年に牛などへのいわゆる肉骨粉の禁止の行政指導をした際に、飼料の記録管理等を生産者にその時点で義務づけていれば、感染牛が発見されたときの対応はもっと迅速にとれたのではないかというふうに考えるわけであります。
 そして、このBSE関連、食品の安全関連を思いますときに、アメリカでは、発見されていなかったのでありますけれども、九七年には、肉骨粉を法的に禁止した後に、飼料業者などがこの規則を守っているかどうか確認するために約九千九百の事業者に対して、州政府もしくはFDAが立入検査を行って、その結果を明らかにしている、情報公開はきちっとしているわけですよね。
 BSEが発生していないアメリカでもそのような実効性のある措置がとられているにもかかわらず、日本では、いわゆる生産者、事業者の負担になる措置は明確に被害が出た後でなければとられないというのが実情でありますから、先ほど冒頭申し上げましたとおり、予防的な対応、この概念がすっぽり、すっかり抜け落ちているというところが一番大きな問題なんじゃないかと私は思います。
 そこでお尋ねいたしますけれども、現行法では予防的な対応はとりにくいという法律になっておりますけれども、消費者の安全確保から被害を未然に防止する予防的な措置を積極的に図っていくというふうに、法体系の転換、また食品行政の転換が必要だと思いますけれども、いかがお考えでありますでしょうか。
坂口国務大臣 法律でそこは規制をすべきものなのか、それとも行政上の問題なのか、そこを少し吟味しなければいけないというふうに思いますが、委員が御指摘になりますように、予防的措置が大事だというのは、これはもう御指摘のとおりだと私も実は思っております。
 厚生労働省も、一昨年の十二月から、予防的な考え方によりまして、これは食品ではございませんけれども、薬でありますとかあるいは化粧品でありますとか、そうした医薬品、化粧品等につきましては、まだ日本の国の中でBSEが発生はしておりませんけれども、しかし、諸外国から危険部位というものの輸入は禁止をしよう、あるいはイギリスのような多発地帯からの肉も輸入を制限しよう、こうしたことをずっととってきたわけでございます。
 いかんせん、人間に対しましてはそうした薬の問題、食べるものの問題等々も含めて輸入禁止にしてきたわけでございますが、動物の方まで我々の目が向かっていなかった。そこはもう農水省にお任せをしたらいいというふうに思っておりましたのが我々も少し甘かったというふうに今思っているわけでございます。
 昨年、第一例が出まして以来、全頭検査を行うようにいたしましたのも、あるいはまた、危険部位と言われております部位は、たとえ危険のない動物からのものでありましても排除をするといったことにいたしておりますのも、これらはすべて予防的な物の考え方によって行っているというふうに思っております。
 これから先、あらゆる食品が外国から入ってくる、そういう時代になってまいりましたから、事が起こってからというのではなくて、ふだんから予防的にチェックをするという体制を強化していかなければならない。ここが限られた人間の中でどこまで一体できるのか、正直なところ、私も不安に思っているわけでございますけれども、しかしそこは、少ない人数の中ではありますが、どれだけやりくりをいたしましてもそこを強化していかなければならないというふうに思っている次第でございます。
樋高委員 食品の危機管理、そっくり欠如しているのではないかというふうに私は思います。
 危機管理ということにつきまして、私も政治を志したときの一番最初のきっかけになったんですけれども、危機管理というのは別に、食品の安全ももちろんであります、もちろん安全保障、災害の危機管理もありますけれども、いわゆる金融の危機管理もあれば、経済の危機管理、雇用の危機管理、教育の危機管理、さまざまな分野にわたるわけでありますけれども、特に衣食住の一つであります食べ物の危機管理、これは行政そして政治の本当に重大な役割の一つであるというふうに思うわけであります。
 今後ともぜひ、今検討なさっていると思いますけれども、未然防止の概念をはっきりと打ち出す形で、国民に、そして市民に安心感を与えていただきたいというふうに要望させていただきたいと思います。
 そして、この関連でありますけれども、いわゆる関連のさまざまの法律がありますけれども、法制度の運用を強化すべきではないかという視点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 恐らく答弁として、調査研究などによって入手した情報については適宜行政施策に反映させているとか、環境ホルモンについての試験などを実施している、もしくは、今後も、新たな知見が得られた場合には、食品衛生に係る国民の健康確保に支障を来すことのないよう適切な措置を講じていく、多分そういう答弁になると思うんです、先に申しておきますが。
 私はこう考えるんです。
 まず、食品から摂取する環境ホルモンやダイオキシンなどの健康影響につきましては、速い回転で新しい疑問が、新たな不安がどんどん出てきておりますので、やはり本当に一刻も早くこの解明を図られるように、より法の運用を強化することによって調査研究の充実を行うべきである。
 また、未認可の遺伝子組み換え食品、いわゆるトウモロコシのスターリンク。これはいわゆる消費者団体さんの方が先に発見をしたんですよね。これは記憶に新しいところでありますけれども、安全性確認を行なわれていない遺伝子組み換え食品というのは、十三年四月から食品衛生法違反となりますけれども、こういった遺伝子組み換え食品の検査方法を初めとする運用体制を再整備するということが必要ではないか、今大きく立ちおくれているのではないかと思うわけであります。
 また、これまで毎年のように、O157の問題、雪印さんの問題、食中毒の問題もあります。常に科学技術の新しい進展を取り入れて、予防策やまた検査方法の研究調査を推進することも求められているというふうに思いますし、また、平成十二年には、当時総務庁の行政監察結果報告におきましても、輸入食品の検査体制の充実強化を初め、いわゆる食中毒対応に関する不備とその強化の必要性が指摘されているというふうな背景があるわけでありますから、改めて伺います。
 いわゆる化学物質や新技術にかかわる食品、また新しい材質の容器なんかもどんどん出てきているわけですね。こういった新たな不安や疑問に対応した予防的な調査や研究の充実や、また検査体制の充実など、いわゆる法制度の運用を強化することが今必要なんではないかというふうに思うんですが、いかがお考えになりますでしょうか。
宮路副大臣 今委員が御指摘のように、私ども厚生労働省、食品の安全性という点で、厚生科学研究の一環として調査研究をし、そしてそこで得られた成果については、それを直ちに行政に反映していくというふうなことでやってきておるところであります。例えば、つい最近でも、化学物質であるフタル酸エステル、これは塩ビをやわらかくする物質でありますが、それにつきまして、食品用の器具、容器包装及び乳幼児用おもちゃに関する規格基準を制定すべく、現在審議会において審議を行っているところであります。
 そういった取り組みをやっているところでありますが、おっしゃるように、リスク管理の一層の徹底を図るべしということで、BSEの調査検討委員会からも、先般、四月の二日でありますが、報告、提言をいただき、その中で、リスク分析、リスクへの評価、リスクの管理、そしてリスクコミュニケーション、これをしっかりとこれから体制を構築して、それに基づいて、そういったことができるように新たな法制の整備をしなければならない、また行政組織の体制もきちっと新しいものをつくっていかなければならない、そういった御指摘をいただいているところでありますので、そのような新たな行政組織の整備や、あるいはまた食品衛生法を初めとする関連法の抜本改正といった中においても、御指摘のリスクの管理ということをしっかりと念頭に置いて、予防原則も含めて対処してまいりたい、このように思っておるところであります。
樋高委員 例えば、食品衛生法につきましては、いわゆる裁量権しか書かれていないんです。何々することができるということであります。そうではなくて、何々しなくてはいけないというふうに、責務規定にしなくてはいけないんじゃないかというふうに私は思うわけであります。
 改めて要望いたしたいのは三点あります。
 一つは、やはり縦割り行政。これはもう食品の安全だけの問題ではないんですけれども、また第二、第三の同じような問題を毎年毎年繰り返してしまう、ありとあらゆる分野で繰り返してしまうということでありますから、この縦割り行政の弊害を排していただいて、そして情報の共有化、施策の連携統一をしっかりと図っていただきたい。
 そして二点目が、いわゆるトレーサビリティーの仕組みを早期に導入していただきたい。食卓まで、いわゆる小売店のところまで、それがどこでつくられたものであるかということがきちっと、原因究明のためにも本当にそれは欠かせないと思うんです。ですから、きちっとトレーサビリティーの仕組みを早期に導入していただきたい。
 そして三点目は、先ほど副大臣に御答弁いただきました、リスクコミュニケーションの話でありますけれども、この確立。そして、食品安全行政への消費者の参画をやはり欧米並みに広げていく必要があるというふうに思います。
 さて、具体論に入りたいのでありますけれども、いわゆる中国産の野菜についてであります。
 今、日本国内で外国から入っております野菜、輸入量で見ますと、一位がタマネギ、二位がカボチャ、三位がブロッコリーであります。そして、輸入額、金額の方で見ますと、一位がマツタケなんだそうであります。マツタケが高いんですね。二位がブロッコリーであります。ですから、輸入量と輸入額、両方見ても、ブロッコリーというのは実は代表選手なんであります。私、何でブロッコリーに着目したかと申しますと、タマネギもカボチャも皮までは食べないんですけれども、ブロッコリーはそれごと食べるんですよね。実は、今中国からの輸入量が、近年のデータによりますと前年の三・五倍、物すごい勢いで伸びているということであります。
 前回の委員会でも私触れさせていただきましたけれども、中国政府が行った調査によりますと、中国国内流通野菜の五〇%近く、中国では今物すごい量の野菜がつくられていますけれども、そのうちの半分がいわゆる残留農薬基準を超えているということであります。正確には四七・五%という数字でありまして、安全基準値を超えて、その結果、中国国内では多数の中毒患者が発生している、呼吸困難で死亡した方もいらっしゃるという事実が判明をした。
 このことは厚労省でも把握をなさっているということでありますけれども、この話を聞いて厚労省さんは、ことしの一月に、いわゆる中国産野菜の検査強化月間として一〇〇%モニタリングを実施したということでありますけれども、その最新の状況報告と、それ以降も実は違反が発見されたということでありますけれども、まず御報告いただきたいと思います。
田村大臣政務官 先生おっしゃられましたとおり、少しばかり経緯を御説明いたしますと、昨年の十二月の十一日に、ある新聞社、産経新聞でありますけれども、報道がなされました。中国産野菜四七%に残留農薬というような記事でございまして、すぐに我が省といたしましても在北京の日本大使館出向者に確認いたしまして、どうもそういう記事が向こうでも出ておるということであります。すぐに外務省と連絡をとりながらいろいろと確認した結果、やはり向こうの検査局の方で検査した結果、四七・五%、どうも残留農薬が検出されたという話でありました。
 ただ、そのときに、輸出している野菜に関しては特別に管理しておるという話でございましたけれども、これは大変なことだということでございまして、我が省といたしまして、一月の四日からでありますけれども、中国産野菜の検査強化月間ということで検査を強化させていただきました。
 届け出の全ロットに対しましてモニタリングをさせていただいたわけでありますけれども、結果、二千五百十五件中、大葉、それからパクチョイ、これはチンゲンサイの一種でありますけれども、さらにニラ、サイシン、ケール、そして先生言われたブロッコリー、これから、九件、全体の〇・四%でありますけれども、食品衛生法違反が認められました。その旨は二月の十三日に公表させていただいたわけであります。
 同時に、この検査を二月十八日まで延長させていただきまして、今言われたその結果でありますけれども、実はこの結果自体、その後もいろいろ出てきておるんですが、踏まえまして、さらに十八日以降も検査をやはり強化しなきゃならぬということでありまして、複数の違反が認められた大葉でありますとかパクチョイ、ニラもそうなんですけれども、こういうものに関しましては、検査命令ということで、水際で検査をしてオーケーが出るまでは入れないというふうにいたしました。それから、複数ではありませんけれども、その他違反が認められたものに関しては、届け出ごとの一〇〇%のモニタリング検査をしております。
 さらには、違反が認められなかったものに関しましても、モニタリングの検査というのは大体平均で五%ぐらいの検査なんですけれども、一〇から五〇%ぐらい、物によってでありますけれども、検査の検体といいますか、それをふやしておりまして、総合的に検査を強化させていただいておるということでございます。
樋高委員 そのブロッコリーでありますけれども、検出された農薬がメタミドホスということで、アメリカの環境保護局ではクラス一にランクされているいわゆる猛毒でありまして、国際的にも使用が制限されている。しかも、今報告がありましたけれども、それらはすべて日本国内に上陸を前提に日本に持ち込まれたものであるということでありますから、大変恐ろしいことであります。
 そこでまたお尋ねいたしますけれども、残留違反の野菜はその後どのように処理されているのか、間違いなく廃棄されているのかという部分が気になるのであります。
 野菜といっても物すごくかさばるでしょうから、最初は港なり空港なりある程度囲いがされたところの中にあるんでしょうけれども、中にはそこから廃棄するために外に持ち出すよということもあるんだそうでありますし、また、用途変更によって、例えば食品によっては工業用ののり、食べ物じゃなくて工業用ののりに変えたりするということでそこから持ち出されちゃう。また、そこから知らないうちに、これもまた業者任せになってしまったときに、どこかでまた、例えば露天商で食品にもなりかねないわけであります、売り物にもなりかねないわけでありますけれども、ここのところ、きちっとなされていますでしょうか。
田村大臣政務官 委員言われましたとおり、食品衛生法の残留農薬の基準に適合しないものに関しましては、輸入食品監視指導業務基準ということに従いまして、検疫所の方から輸入者に対して、廃棄もしくは積み戻しといいますか、持って帰れというような指導をいたしております。
 違反が出た場合に関しましては、例えば廃棄に関しましては、廃棄をする施設の、廃棄をしたという証明書、これを添付して廃棄完了報告書を出せというふうにいたしておりますし、また、積み戻しの場合には、税関の輸出許可証を添えて、やはり同じように、廃棄証明といいますか積み戻し証明といいますか、そういうようなものを、完了報告書を出せというふうにいたしておりますので、基本的にはそのような形で流用されておるものはないというふうには思っております。
 しかしながら、一〇〇%そうなのかどうなのかといいますと、なかなか確信を持って言えない部分もありますので、さらに、そういうことがないように我が省といたしましても指導等強化をしてまいりたい、このように思っております。
樋高委員 政務官、どうもありがとうございました。
 決して一〇〇%ということはなかなかないわけでありまして、そこから運び出したときに、ちょっとトラックからおろして、この部分、露天で売って、路上でよく野菜を売っていますよね、それを食べたってわからないわけですよ。ちょっと小銭を稼ぐかということにも、まあそんなことあっちゃいけないんですけれども、きちっと監視をしていただきたい。そして、間違いがあってはならないわけでありまして、しっかりとその部分を監督していただきたいというふうに思います。
 そこで、この中国野菜について強化月間ということでやられたということでありますけれども、その検査をやるということがまさか事前に漏れているということはないと私は考えます。なぜならば、事前に漏れていたらば、そこでひっかかるのはわかっているわけですから、当然水揚げしないし、日本に輸入されないわけであります。まさか事前に、強化月間で一〇〇%モニタリング検査をするよということは漏れてはいらっしゃらないですよね。いかがでしょうか。
宮路副大臣 先ほどお話のありました、強化月間を設定して、それで、検査をスタートさせるに当たりましては、全数についてそうした検査を実施する旨の通知を、当然これは各検疫所長に厚生労働省として通知をいたしたわけであります。
 そして、通知を受けた各検疫所はどうするかといいますと、その検査のために保税倉庫へ立ち入ったり、あるいは検体を採取して検査をするということになるわけでありますので、それを黙って突然行うということはできない相談でありますので、当然、輸入業者に対してそうした検査の実施に関する情報提供というものを行って、そして検査に入る、こういうことになっておるわけであります。
 ですから、事前に漏らしたということではないわけでありますが、そうした情報提供を行って、その上で検査を実施した。また、常々そうやっているということでございます。
 しかしながら、生鮮食料品でありますから、これをどこか隠してしまったり、あるいは、日本に輸入すべく船に載せて航海中であったものをどこか別なところへまた持っていくとか、そういうことは通常はないんではないかなと。そのことによって、つまり、そういう情報を事前に知ったことによって輸入が意図的に削減される、ストップになるということはなかったんではないかなというふうに考えております。
樋高委員 大変な事実が明らかになりました。
 要するに、事前に検査をするということがわかっているんであれば入れないのは当然でありまして、それを、情報公開という言葉を使えば何か格好よく聞こえるけれども、事前に、検査を一〇〇%しますよということであれば、もしかしたら何か生産地ベースで今まではモニタリング検査をしていたわけですね、これが、しかも検査をするということがわかっているんであれば、一回ここで引っかかっちゃったら、その後、二月、三月、四月と仮にその野菜を入れるときは必ず目をつけられちゃうわけですから、相手方にとってみれば入れなくなっちゃうんですよ。ましてや、日にちを、仮に一月いっぱいということであるならば、そこを避けてしまう、もしくは日本に輸入しないで別の国に輸出してしまうということになりかねないのであります。
 内部文書があります。これは医薬局食品保健部監視安全課長さんから各検疫所長さんあての文書なんですね。ここには、一月四日付の日付で、一月三十一日までを「中国産野菜について、輸入届出毎、全ロットについて検査を実施することとしましたので」御了承の上、ということで、これが各検疫所の廊下に張ってあるんだそうです。そうすると、当然入れないのは当たり前ですよね。何でそんなことを。先ほど副大臣は、突然やったら失礼だとか、通常はないとか、生鮮食料品だからそんなことはないんだとか。おかしくないですか。
 ましてや、食品衛生監視員、人数が二百六十八名しか全国でいらっしゃらないんです。こんな中で日本の食品の安全が守れるのかというふうに思うんですね。そもそも、前回、私、大臣に伺いましたときには、人手が足りないと。人手が足りないのをどうにかするのが厚生労働省の役割じゃないでしょうか。やはり、この三百人弱の方々が、確かに食べたからといってすぐ危害が出るとは限りません、しかし蓄積していく、物すごく恐ろしいものなんです。すぐに結果が出ないものも、またある意味では恐ろしいんです。
 また例えば、さっきブロッコリーのことを話ししましたけれども、タマネギとかカボチャは皮がついていますけれども、有害な殺虫剤を振りかけても、ブロッコリーというのはそのまま食べますよね。しかも、野菜というのは生でも食べますよね。こういうことがあっていいのかというふうに言わざるを得ないのであります。
 まず、今、週刊誌の記事にもなっております。今何が不安かというと、食べ物が不安なんです。やはりここの部分を国が責任を持って、大体、こういう集中で検査をするということも事前に堂々と教えていたら、公に情報公開だ情報公開だと広めて、情報公開はそれはやるべきですけれども、しかしこの件に関しては、広めることによって業者さんも入れなくなるのは当たり前ですよ。またほとぼりが冷めたちょうど今ごろ入っているのかもしれません。しかも、そのモニタリングは五%。九五%は、毎日毎日、日本国内に今フリーパスで入ってきているんですよ。
 こういうことがあってはいけないというふうに思いますが、大臣、最後にちょっと御所見を伺いたいと思います。
宮路副大臣 検査所の体制問題、これは、おっしゃるように限られた人員でより効果的な検査をやっていくという観点から、いろいろな工夫をして、例えば横浜や神戸の検疫所に輸入食品・検疫検査センターを設置しまして、御指摘のような残留農薬等の高度な分析検査業務を行うについてはその横浜、神戸の検疫所に集中して業務を行うとか、あるいは届け出審査の電算化を積極的に進めるとかといったようなことで効率化に努めておるところでありますが、なお人員が現在をもって十分かと言われると、確かに、一〇〇%これこそ大丈夫でありますというわけにもいかないと思いますので、今後積極的に、御指摘の点も踏まえてこの拡充に努力をしていきたい、このように思っておるところであります。
 それから、御指摘のありました今のような検査で、モニタリング検査とかあるいは命令検査というようなことで現在の食品衛生法はやっておるわけでありますが、非常に危ないと思われるところからこれから輸入されてくるというものについては、例えば、我々も今ヨーロッパにおける検査の事例など勉強しているわけでありますが、一定の地域を特定して、そこからの輸入食品についてはしばし輸入を差しとめる、一々港まで持ってきて検査した上でチェックするというようなことだけではなくて、あらかじめそういう特定の地域について輸入をとめるといったようなことも考えられないかどうか。
 そういったことも含めて、検査の体制の強化に向けて努力をして、そして国民の食に対する不安の払拭ということに全力を傾けてまいりたいと思っております。
樋高委員 人手が足りないというのは言いわけにならないわけでありまして、これは事が起きてからではもう手おくれの事態になってしまうわけでありますから。時間でございますのできょうはこれでやめにしますけれども、私も、この問題、また引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 これはもう与党とか野党とかは関係ない話でありまして、食品の安全というのは、本当に自分たちの、国民の生命と財産を守る、そしてだれもが幸せに安心して暮らせる、そして健康を守る、最も基本的な部分、これは政治が責任を持ってやらなくてはいけないという部分でありますので、しっかりとお願いをしたいと思います。
 きょうはありがとうございました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 まず第一に、ますます深刻化する失業情勢と雇用保険についてお尋ねをいたします。
 二月の失業率は五・三%と、表向きは一月に比べて〇・二%改善されております。しかし、失業者数は一年前に比べれば三十八万人も増加し、十一カ月連続して増加し続けており、実質的には何ら改善されておりません。
 一部上場の大企業では、現在までに判明しただけでも約六十万人のリストラを計画しており、このうち、この三月末までに約二十四万人の人減らしを終わったと聞いております。このことは、別の角度からいえば、リストラ計画の六割はなお今後実施されるということであり、雇用失業情勢をさらに悪化させる大きな要因になると思います。
 大臣は、今後の失業の推移についてどういう見通しをお持ちでしょうか。
坂口国務大臣 先ほど数字を挙げていただきましたように、この二、三カ月、数字は横並びになっているわけでございますが、しかし、これは、言ってみれば、月々の統計の誤差範囲のようなところにあるというふうに思っておりまして、決して改善されてはいない。今後も、少なくとも半年ないし一年間はこのような状況がさらに続くものというふうに思っております。たとえ今後経済が若干回復をしたといたしましても、これは半年ないし一年間というのは後まで残るわけでございますから、半年ないし一年間はこういう状況が続くものというふうに思っておりますし、ましてや経済の回復がおくれましたらなおさらのこと、さらにこの厳しい状況は続くものというふうに自覚をいたしているところでございます。
 それから、先ほどのリストラのお話でございますが、これは、企業がその存続を図りますために、さまざまなリストラ等、対策を講じるということはやはりあり得ることなのだろうというふうに思っております。しかし、企業であります以上、そこに働く人たちのことをやはり一番考えなければならないわけでありますから、何が何でもリストラをやったらいいというわけでは決してない。やはりそこに働く人たちのことを一番中心に考えて、そして企業経営というものも考えるべきであると私も思っております一人でございます。
小沢(和)委員 電機大手六社の当初のリストラ計画は五万六千人規模だったのですが、早期退職優遇制度に予想外の応募者が殺到し、その結果、既に七万二千人の人員削減が行われております。特に日立製作所、松下電器、東芝などでは、応募者が予定の二倍前後に達し、三社の合計だけでも三万人を超えたと聞いております。このような大量の希望退職者が生まれるのは、会社は大幅な赤字で今やめないとこの次は退職金の上積みもできなくなるというような不況宣伝で、労働者の将来への不安をかき立てた結果だとも聞いております。
 しかし、この反面で、企業の一番中核になる技術や能力を持った人々が大量に職場を去ったため、目先のコスト削減にはなっても、長期的には、製品の品質の低下や新製品の開発力の後退など、新たな深刻な問題を引き起こしているとも指摘をされております。
 大臣は、労働者を削減しさえすればよいという最近の経営者の安易な風潮についてどう思われるか。こういうリストラのやり方こそ、我が国の経済を大もとから損なっているのではないでしょうか。
坂口国務大臣 先日も新聞を拝見いたしまして、日立の方の例でございましたか、四千人募集をしたら九千人という数字が出ておりまして、私も驚いたわけでございます。いろいろの事情があってそういうことになったのであろうというふうに思いますけれども、しかし、先ほども申しましたとおり、従業員の皆さん方というのは、長い間お勤めになった方でありますし、その企業にとりましては大事な従業員であったというふうに思います。
 先般、ワークシェアリングの問題でドイツにお邪魔をいたしまして、フォルクスワーゲンにお邪魔をいたしましたときに、ワークシェアリングを行うことによって多くの人たちを会社を去らないように残すということは、一見会社にとっては非常に重みの残ることのように思われるけれども、しかし、決してそうではない。長い目で見ると、そうした訓練をした人たちを、もう一度訓練をやり直す、もう一度そういう人たちを採用するということは、企業にとりまして大変な費用のかかることである。そうしたことを思うと、ワークシェアリングによって多くの人たちを企業の中に残すということは、これは大変プラスになることである、企業経営から見てもプラスになることであるという話をワークシェアリングの人がしてくれました。私は、それは大変大事な話だと思って、その話を聞いてきた次第であります。
 したがいまして、日本におきます企業も当然、目先の問題もございますけれども、中長期的展望に立ってぜひひとつ物事を考えていただきたいというふうに思いますし、私がそういうことを申し上げなくても考えてはいるというふうには思いますけれども、そうした考え方に立って、やはり働く人たちの問題にも対応してもらいたいと思っているところでございます。
小沢(和)委員 昨年改正された雇用対策法では、大量の雇用変動がある場合には再就職援助計画の作成が義務づけられております。
 何千人という希望退職者を出しているこれらの大企業で、この再就職援助計画がきちんと作成され、実施されているでしょうか。それぞれの管轄の職安所長にはあらかじめ提出されることになっているので、各職安では掌握されているはずですが、その提出状況、実施状況は全国的に見るとどうなっているか、実際にもこれが再就職に役に立っているのか、御説明をいただきたいと思います。
澤田政府参考人 再就職援助計画は、委員御指摘のように、事業規模の縮小等により、常時雇用する労働者を一カ月に三十人以上離職する場合に提出義務がかかっております。
 厚生労働省としては、こうした援助計画の提出を受けてリストラの状況を正確に把握するということになりますが、事前に提出義務のある事業所を把握した場合には、適正に対応するように指導しております。
 ところで、全国的に再就職援助計画の提出、認定状況でありますが、昨年の十月から本年二月まで、認定企業数、千七百九十事業所、対象労働者八万九千四百九十五人になっております。このうち、提出義務のある三十人以上のケースが八百八十七事業所、三十人未満の任意作成、申請のケースが九百三事業所となっております。
 今後とも、制度の周知徹底を図って、計画の作成、申請が適正になされるように努力してまいりたいと思います。
小沢(和)委員 昨年の四月から、労働者の自己都合による退職の場合には、それまでの雇用保険の受給日数が三百日から百八十日へと大幅に削減されました。しかし、純然たる労働者個人の自己都合による退職ではなく、企業が実施する人員削減の一つの方法である希望退職という名の会社都合で離職した労働者はどう扱われるのか。私は、こういう離職者が、雇用保険の受給に当たって自己都合退職扱いされ、給付日数が大きく削減されるようなことがあってはならないと思います。
 このことは前にも一度尋ねたことがあるのですが、職安の窓口で実際にどう取り扱うよう指導されているか、確認のため、お尋ねをいたします。
澤田政府参考人 昨年四月からの改正法の施行に伴いまして、倒産、解雇等により離職した方については特定受給資格者として所定給付日数を厚くしておりますが、御指摘の、希望退職の募集に応じて退職した場合でも、その希望退職が人員整理の一環として行われている場合には、離職した方々は特定受給資格者として取り扱っているところであります。
 人員整理の一環として行われる希望退職の募集とは何かと申しますと、三要件ございまして、名称のいかんを問わず人員整理を目的としていること、その希望退職の導入時期が離職者の離職前一年以内であること、それから、希望退職の募集期間が三カ月以内であることという要件がございます。
 この点につきましては、安定所の窓口におきましてリーフレット、あるいは事業主に対する説明会等で周知を図っているところであります。
小沢(和)委員 だから、私重ねてお尋ねしますけれども、本人は希望退職だと、私から希望したんですから自己都合だ、こういうふうに仮に窓口で言っても、あなた方がちゃんとその実態を掌握していて、いやあなたの会社のそれは、会社の都合で希望退職として募ったんだからこういう処置にしますよということで、ちゃんとやってくれるということになっている、こういうお話ですね。
澤田政府参考人 雇用保険の受給資格決定の際には、事業主からまず労働者が離職した離職証明書が安定所へ出ます。その場合に、離職の理由が記入されます。この事業主から出される離職証明書は複写式になっておりまして、そのうちの複写の一枚は事業主経由で離職者に手渡されます。離職者はそれを自分の管轄安定所に出しますが、そのときに、事業主が記載した離職理由が納得いかなければ、違うという異議を申し立てることができます。それを見て、安定所長が、事業主の離職理由と御本人の申し立てが違う場合には、客観的な資料をとって判断をするということになりますので、御本人が自分はいわば特定受給資格者に該当するということを言わないと、そのまま自発的離職者になってしまう場合もあり得ます。
小沢(和)委員 ここ数年、大量の失業の発生が続く中で、雇用保険の収支が急激に悪化しております。一番積立金が多かったのは平成五年で、四兆七千五百二十七億円に達しましたが、その後今日までの収支悪化の状況について説明を簡単に願いたいと思います。
澤田政府参考人 御指摘のように、雇用保険の積立金は平成五年度末に四兆七千億円とピークになりました。平成六年度以降、毎年単年度赤字になっておりまして、平成十年度及び十一年度には一兆円もの積立金の大幅な取り崩しを余儀なくされる事態になりました。このため、平成十二年の雇用保険法改正において、給付と負担の両面から見直しを行い、昨年四月から施行したところでありますが、その後も、雇用情勢の悪化により、十三年度補正予算及び今年度予算においても単年度で赤字となることを見込んでいるところでありまして、積立金は十四年度予算で一千四百三十七億円と見込んでおります。
小沢(和)委員 私は、これだけ不況が長期化、深刻化している中で、平成四年、五年にも雇用保険の保険料を引き下げ、特に平成十年に国庫負担率を二〇%から一四%に引き下げたことが、その後の雇用保険財政を危機的状況に陥れた大きな原因だと思います。もし平成十年に国庫負担率を据え置いていたら、年間千数百億円ずつふえていたはずであります。
 余りの急激な悪化に、平成十三年になって慌てて保険料と国庫負担率両方を大幅に引き上げましたが、厚生労働省の雇用保険運営が失業の深刻化を全く見通すことができず、場当たり的対応の連続だったというそしりは免れないんじゃないでしょうか。
狩野副大臣 委員御指摘のように、雇用保険は極めて厳しい財政状況に直面しておりますけれども、その要因というのは、根源的なものというのは、経済情勢の長引く低迷による企業の人員削減、産業構造の変化に伴う労働移動の増加、少子高齢化の進展等、雇用を取り巻く状況の構造的な変化にあると考えております。
 昨年四月に施行いたしました改正雇用保険法は、このような状況に対処するために、給付と負担の両面から必要な見直しを実施したところでございます。一般論として申し上げますれば、さらなる雇用情勢の悪化を踏まえ、雇用保険制度が今後とも雇用にかかわるセーフティーネットの中核として安定的な役割を十分果たしていけるように、制度全般にわたって継続的に点検を行い、見直しを行っていく必要があると考えております。
小沢(和)委員 昨年保険料を値上げしたばかりですが、今年度末には積立金がわずか千四百三十七億円になると先ほども答弁がありました。失業がもう少し深刻化したら、年度内にも失業手当の給付が継続できなくなってしまうのではないか。今から真剣にそれに備える必要があると思います。政府としてどういう検討をしているか。
 私は、失業者や雇用保険受給者を大量につくり出した大企業に、もっと雇用保険料の負担を求めるべきだと思います。内部留保をたっぷり持っているのに、もっともうけるために手っ取り早い方法として人減らしを行い、失業者をどんどんふやしている企業と、懸命に雇用を守るためぎりぎりの努力を続けている企業に、機械的に同率で保険料を負担させるのは公平ではないと思います。次の引き上げに当たってはこういう要因を考慮に入れるべきではないか。考え方をお尋ねします。
坂口国務大臣 全体から見ました場合に、雇用保険につきましては、ことしいっぱいはまあ何とかやっていけるだろうというふうに思いますが、現状を考えますと、来年からは非常に厳しい状況になるということだけは間違いがないというふうに思っています。したがいまして、ことしじゅうにいろいろの検討をしなければなりません。
 そのときに、今お話がございましたように、内部留保がある会社に対してはより厳しく、ぎりぎりのところでやっているところにはより優しくということが、そこは、内部留保等につきましても、あるときには内部留保をしっかりやり、あるときにはぎりぎりのところでやるという企業もあるわけでありますから、一概に御指摘のように二つに割ってというわけには、なかなか私はそこはそんなに簡単に割るわけにはいかないだろうというふうに思っております。
 しかし、これはお互いの助け合いの制度でありますから、各企業が応分の負担をしていただかなければならないことは当然でございます。
小沢(和)委員 第二に、銀行など金融産業におけるサービス残業の蔓延についてお尋ねをいたします。
 私は、去る二月二十七日の当委員会で、今銀行では五つのサービス残業が蔓延していると銀行労働者の声を紹介いたしました。
 すなわち、一、朝、始業時間前の四、五十分のただ働き、二、昼食時間の一時間が半分の三十分しかとれないという労働基準法三十四条違反のただ働き、三、法定の八時間労働が終わった後の残業時間に対し、その一部分しか残業手当が支払われていないというただ働き、四、土曜、日曜に休日出勤しているのに休日出勤手当が支払われないというただ働き、五、さらに、管理職が午後十時以降に働いているのに深夜労働手当が支払われないというただ働きの五つであります。
 私は、この五つのサービス残業を根絶するために、厚生労働省の調査、指導を強く要請いたしました。そのとき大臣は、銀行を重点的に調査し指導すべき分野の一つとして意識していることを答弁の中で示されたと思いますが、その後実際にどう取り組んでおられるか、お尋ねをします。
日比政府参考人 サービス残業の問題でございますが、もう委員御案内のとおりでございますが、昨年四月六日の通達、これに基づきまして昨年来やってきたところでございます。平成十四年におきましても、同通達というものに十分留意して指導監督を行うということにいたしております。
 なお、銀行という一つの分野についてどうするかの問題でございますが、この銀行というところが、いわゆるサービス残業の問題の際に十分留意すべき分野だということはそのとおりであろうと思いますが、そのほかのところと区別して銀行だけをということはいかがかなと思っております。
 なお、昨年十月、十一月に指導監督をしました事業場に関して申し上げますと、実は金融関係がそのうち一二%を占めておりまして、私ども、その労働時間の把握云々ということで、こういう特別の業種にねらいを当てるのは決していかがかと思いますけれども、結果としては、金融機関というところについて、どこまでも結果としてでございますが、重点を置いたことにはなっていようかと思っております。
小沢(和)委員 最近、昔の第二地銀を中心に組織されている銀行労連が、職場の実態調査を行いました。そのうち、サービス残業関係を見ますと、時間外労働は「係によって慢性的」「全体に慢性的」合わせて七八・一%に対し、残業手当の支払いは「一部にサービス残業がある」「ほとんどサービス残業になっている」を合わせると八〇・二%になっております。融資や渉外の人は、約四〇%が、毎日夜八時以降でなければ帰れないと言っております。
 ついでながら、始業前に会議や一般事務を行っている人は、毎日と時々を合わせて四〇%を超えていますが、ほとんどサービス残業になっている人が六〇%を超えております。昼休みも半分しかとれない、食事するだけがやっとという人が約五〇%、うち約八〇%はサービス残業になっております。
 こういう調査結果に基づいて、銀行労連、地銀連、全信連、日本信託銀行労組など四者が、一両日中に厚生労働省に対し改善の指導を要請すると聞いております。
 そこで、大臣に伺いたいんですが、銀行など金融産業でのこういう深刻なサービス残業を根絶するためには、それぞれの所轄の労働基準監督署任せでは進まないと思います。金融庁などとも協議した上で、十年ほど前にやっていただいたように、ぜひ全国一斉に重点的に監督指導を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
日比政府参考人 一斉監督を行ってはどうかという御指摘でございます。
 その前提といたしまして、私ども、現場の労働基準監督署の判断、監督計画等についての判断、これは尊重するということで、これを基本としておりますが、ただ、それは監督署に単純に任せっ放しにするということでやっておるつもりはございません。
 先ほども申し上げました、サービス残業問題、四月六日通達と言われているもの、これを十四年度においても十分留意してくれと、その結果としては先ほど申し上げたようなことになろうかと思いまして、そういう意味では、決して単純に任せっ放しではなくて、私どももその点は、特に銀行とわざわざ言っているわけではございませんけれども、十分念頭に置いておるつもりでございます。
小沢(和)委員 では、第三に、解雇ルールの法制化、ホワイトカラー労働者への労働時間規制の適用除外の動きについてお尋ねをいたします。
 昨年の総合規制改革会議の中間まとめ以来、労働政策審議会では、九月から、今後の労働条件にかかわる制度のあり方の検討を続けております。既にことしの二月末までに、有期労働契約の専門職及び専門業務型裁量労働制の対象業務の見直しが審議され、いずれも規制を緩和する大臣告示が行われました。
 今後は、一つは、労働契約にかかわる制度のあり方として、労働契約期間の問題、労働契約終了の手続、要件のあり方を審議するとのことでありますが、これは解雇ルールの法制化をどうするかという問題であります。
 もう一つは、労働時間に係る制度のあり方、裁量労働制のあり方等の問題とされております。これは、特にホワイトカラー労働者への労働時間規制の適用を除外する、いわゆるホワイトカラーイグザンプションの問題であり、労働基準法の労働時間法制を大きく変える根本的な問題であります。先ほどの質問で指摘した、銀行などのサービス残業を完全に合法化、野放しすることになりかねない問題だと思います。
 私は、昨年十一月二十七日の当委員会でも質問しましたが、総合規制改革会議の方向づけなどに追随して、十分な検討もせずに、解雇しやすいような法制化を打ち出したり、過労死をふやすような労働時間規制の緩和などは絶対に提案してはならないと思います。
 この機会に、労働政策審議会が今後どのようなスタンスで検討を進めるのか、また、いつまでに結論を得ようというのか、大臣から明確なお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 解雇ルールにつきましては、昨年来、何度かこの委員会におきましてもお答えをしているところでございます。
 初めにも申しましたとおり、やはり働く人たちにとりまして、雇用というものは非常に大事なもの、一番大事なものでございますから、解雇ルールが明確でないということは、私は不幸なことだというふうに思っている次第でございます。しかし、この問題に対しまして、労使両方からそれは反対であるという御意見があったことも、前回御紹介を申し上げたところでございます。
 先ほどお触れをいただきましたとおり、労働政策審議会労働条件分科会におきまして、今日まで十一回にわたりまして御議論をいただいてまいりまして、間もなく十二回目の御議論をいただくことになっております。この中におきましては、先ほど御指摘がございましたとおり、労働契約に係る制度のあり方、労働時間に係る制度のあり方、それから、大臣告示で示されている有期労働契約の専門職及び専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲の見直し等々、今までも議論をしてきたところでございます。
 昨年、私がここで最初に申し上げましたときには、できれば結論を出して、ことしの国会にでも提出させていただくことができればというふうに言ってまいりましたが、やはりこうしていろいろの御審議をいただきますと、審議をしていただかなければならない範囲というのはかなり広くなってきていることも事実でございますし、労使の皆さん方初め、学者等の御意見も十分に拝聴をして結論を得たいというふうに思っております。
 したがいまして、最初、ことしのこの国会にもということを申しましたけれども、そこはこだわることなく、今後ももう少し議論を続けさせていただいて、そして御納得のいける結論を出したいと思っているところでございます。
小沢(和)委員 第四に、最近大問題になっております佐世保重工による雇用対策助成金の詐取の問題についてお尋ねをいたします。
 これは、会社ぐるみの助成金だまし取り事件であります。造船重機の有力企業の一つとして知られております佐世保重工は、社員を下請企業へ出向させたと見せかけて出向助成金をだまし取ったり、教育訓練給付金を不正に申請し受給したとして、下請企業の社長から告発されました。佐世保重工は、当初は否認しておりましたが、その後、一部の事実を認めております。現在、長崎県警の捜査を受けておりますが、事は厚生労働省の雇用対策三事業に基づく助成金であり、手口の悪質さからも全容の解明が必要であります。
 雇用・能力開発機構が直接の当事者ではありますが、厚生労働省としても、どのように調査を進めておられるのか。このような大規模な助成金の詐取事件がどうして起きたのか、どうして防げなかったのか、厚生労働省としてこの事件からどういう教訓を学んでおられるのか、お尋ねをいたします。
澤田政府参考人 佐世保重工業が詐取したことが現在確認されている雇用関係給付金は、平成十一年度に支給されました中高年労働移動支援特別助成金及び平成十二、十三年度に支給されました生涯能力開発給付金の二種類であります。
 このうち、生涯能力開発給付金につきましては、去る三月二十二日、支給を行っております長崎県より、佐世保警察署に告訴状を提出したという報告を受けたところであります。今後は、司法当局により、一層の実態解明が図られ、厳正な措置がとられるものと思われます。厚生労働省としては、支給をしております長崎県に対し、本事案について厳正に対処するよう指示してきたところでありますが、今後とも、長崎県と連絡を密にするとともに、警察とも十分協力してまいりたいと思います。
 一方、中高年労働移動支援特別助成金につきましては、これは、支給を行っております雇用・能力開発機構の長崎センターにおいて事実確認のための調査をしてきましたが、私どもも連携してやっておるところであります。全体としては八百八十一人分の支給を行っておりますが、そのうち佐世保重工業が不正を認めた二十一名分につきましては、虚偽による不正受給の疑いが強いということで、三月二十二日、警察当局に対し告訴をいたしました。
 そして現在、本助成金を使っていわば出向した下請関連会社十九社、八百八十一人のうち、二十一人を除いた残りの人全員について、不正受給の有無、その実態についての事実確認を行っております。一月ほどの間に個々の聞き取り調査を終わって結果をまとめたいと思っております。その中で不正が確認された場合には、警察とも連携しながら、厳格に対処してまいる所存であります。
 今回の不正がなぜ起きたかという点につきましては、助成金制度の浸透に伴いまして、不正につきましても手口が巧妙化し、一部には今回のようなケースが生じておりまして、私ども深刻に受けとめております。
 これまでも不正受給防止のために、審査の厳格な実施とか、不正受給が認められた場合には、当然ながら支給額の返還措置、そして悪質な事案には刑事事件として告発等を行ってまいりましたが、今回は書類のみの審査により支給事務を行っていたというところをつかれたという点がございますので、今後は、書類審査に加えまして、電話等を使って雇い入れの事実の確認とか、あるいは現地を実態調査するとかいうことを不正受給防止対策として新たに付加することを考えております。
 それから、労働保険のデータを活用することによりまして、申請書類との突合をきっちりやるというダブルチェックのことも強化しよう、あるいは、不正については、社会保険労務士や商工団体との情報交換ということで、事前の情報入手による防止ということもさらに徹底したい、このように考えております。
小沢(和)委員 最後に、過労死の労災認定問題でお尋ねをいたします。
 厚生労働省は、最近の最高裁での過労死事件の相次ぐ敗訴を受け、新しい過労死認定基準をつくりました。その主な内容は、第一に、慢性疲労の蓄積を認定要件に新しく加えたこと、第二に、評価対象期間を、発症前一週間程度から、発症前おおむね六カ月に改善したこと、第三に、いわゆる過労死ラインを明示したこと、すなわち残業を発症前一カ月に百時間、または発症前二カ月ないし六カ月にわたり月平均八十時間行っている場合は、業務は発症との関連性が強いと評価できるとしたこと等であります。
 そこでお尋ねしたいのは、この新しい認定基準に基づいて、今後、今係争中の事件についても、厚生労働省がみずから進んで全面的に見直すべきではないかということであります。具体的には、一九八七年十一月に過労死した、東京都文京区、永井製本の労働者、金井義治氏の事件であります。
 この事件は、一九九〇年三月三十一日に中央労働基準監督署が不支給を決定した後、裁判となり、東京地裁で原処分が取り消され、東京高裁でも控訴棄却されたにもかかわらず、当時の労働省が上告し、今なお係争中であります。金井さんの死亡直前一カ月の時間外労働時間は、裁判の中で百二十九時間二十四分と認定されており、一カ月百時間という新認定基準で言う強い関連性が認められる事例にそっくり該当するものであります。
 二月十五日に、請求人である故人の奥さん、金井フミコさんは、中央労働基準監督署に対し意見書を提出、不支給決定の見直しを求めております。今、どのような見直し作業を行っているのか、いつごろ結論を出すのか、お伺いいたします。
日比政府参考人 過労死の認定基準の改正に伴いまして、係争中の事案につきましては、それぞれ必要な見直しを行っております。
 なお、この見直しの場合でも、今御指摘の認定基準の改正というのは先ほど委員御指摘のような点でございまして、すべてのいわゆる脳・心臓疾患の事案がそれで変わるというものでないのはあえて申し上げるまでもないと思いますが、御指摘の事案につきましては、行政庁としての直前一カ月間の残業時間について把握しているものは、先ほどお挙げになった時間ではないというふうに考えておりまして、その他の点もございまして、地裁、高裁と確かに御指摘のように国側敗訴でございますけれども、なお司法の最終的な御判断を仰ぐべき点が行政庁としてはあるということで、上告をさせていただいておるということでございます。
小沢(和)委員 金井さんが亡くなってから既に十五年近くもたちます。一日も早く労災認定を行い、最高裁への上告を取り下げることを重ねて要求しておきます。
 問題は金井さんの事件にとどまりません。ほかにも、同じ中央労働基準監督署の管轄で過労死した酒井俊峰さんも業務上認定を却下され、奥さんの酒井かよさんが労働保険審査会に再審査請求を行っているケースもあります。全国を調べたら、この種のケースはあちこちにあるはずです。せっかくの新しい認定基準を生かし、これらの事案を全国を通じて全面的に見直してもらいたいが、どうでしょうか。お尋ねします。
日比政府参考人 認定基準の改正に伴いまして、係争中の事案については見直すということをやっておりまして、これはどの事件ということでなくて、やっております。
 それで、裁判上の係争中のものについては、できる限り、これは裁判の進行状況等の関係もございますけれども、できるだけ原処分庁の方で取り消すべきものは取り消していこうと。
 それから、今お挙げになりました労働保険審査会でやっております再審査請求事案、この点につきまして、これは労働保険審査会が、一つは行政内部機構でありつつ独立的だという特徴もお持ちなものですから、私どもできるだけ早期の処理をお願いするということでやってまいりまして、現在、鋭意処理を進めるということでやっていただいております。
 ただ、事案数が非常に多いこと、あるいは、当然のことでございますが、複雑な事案というようなこともございまして、私ども審査会の方にもお話しいたしまして、早期処理、早期救済といいますか、それが非常に大切だということで、場合によっては審査会係争事案であっても原処分庁の方で取り消すということがあってもいいのであろうということで、現在、実はその作業に入っております。
小沢(和)委員 できるだけ早い処理を要請して、終わります。
森委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 私も、いつもこの質問席に立ちますと、ついつい追及型で大臣を困らせたりいろいろしてきましたが、きょうは、何かいい知恵がないものかと、立法府と行政府で力を合わせてぜひとも考えていただきたい問題として、三宅村の住民の方々の、いわゆる今の避難生活への支援策、それを探っていきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 私も被災地の出身で、七年余り前、阪神・淡路大震災を体験いたしまして、私自身は、自分ができることと思いまして、テレビや洗濯機や冷蔵庫、そのような電化製品をリサイクルしたものを被災者の方々にお届けする活動を半年いたしました。そのときに、やはり、一生懸命まじめに税金を払ってきているのに、そして、天災で家も、また多くの方が家族を失っている中で、職を失い、再建のめどが立たない、この不安を目の当たりにいたしました。
 日本は災害列島でございますが、災害が繰り返されているにもかかわらず、アメリカのFEMAのような危機管理庁でありますとか、さまざまなきめ細やかな法律というのが、まだなかなか整備がされていないなということを実感いたします。
 ましてや、この三宅島の噴火に関しましては、離島であるということで強制的に避難命令が出され、そして、いつ帰れるかというめどが立たない。井田教授によりますと、大体一年から一年半後ぐらいには島に帰れるのではないかというお話もございますが、まだまだガスが出ていましたりして、復帰のめどが立たないというのが現実です。
 私は特に三宅のことを思いますと、強制的に避難命令が出て、そして今全国二十一の自治体にそれぞればらばらに暮らしていて、そして多くの方々は、もう一度三宅に帰って暮らしたいという思いがあって、その間の生活の支援というのが今一年半たって非常に深刻な状況になっております。
 三千八百人の全島の島民の島外避難から、ただいま申しましたように、一年半が過ぎました。この災害というのはいまだに継続中でありまして、異常な事態だという認識を私たちは持たなければいけないと思います。火山ガスの噴出に伴って帰島の見通しがたっていませんが、手入れができない島の家屋というのがどんどん朽ちる一方でありまして、避難生活も、預貯金の取り崩しということで生活をされている人が多いと伺っています。
 また、非常に不幸なことには、分散されて暮らしていらっしゃるので、私たちの目からなかなか島民の人の生活の実態が見えない。阪神・淡路のときは、元気な小田実さんというのがいらっしゃいまして、一年余りたったときに被災者との運動があって国会でのロビー活動などもたくさんおやりになりましたし、非常に被災者の数が多いということで生活再建支援法の成立に対して被災者の方々の頑張りというのがあったわけですが、やはり数が少ない、そしてばらばらに避難している、そこで声が一つにまとまらないという状況もあります。
 また、新聞などに投稿しましても、狭い三宅村という中で、あの人がああいうふうにちょっと行政を非難するような投稿をしていたねということで、だれがそれを言ったかよくわかってしまうとかということで、非常に物が言いにくいということを伺いました。
 村が何度かアンケートを実施しているわけですが、つい先日、三月にもアンケートを実施し、昨年の十月に実施したアンケートの中では、九割の世帯が帰島したいと答えております。しかし、このうちの四割は、生活のめどが立てば帰りたいというふうに答えていらっしゃいまして、やはり帰島に向けての環境整備が大きな課題として浮かび上がっています。
 アンケートの中では、約三割が、もはや生活が苦しいと答えていまして、今のままでは、仮に島に帰れる状態になったとしても、生活再建をそのときからしていくという余力がなくなってしまうというのが非常に心配されています。
 まず大事なのは、島に帰って再び復興するためには、避難期間中にその活力が失われないようにしなければならないと考えます。前例のない今回のこの災害を乗り切るために、三宅島のことに関して、ぜひとも厚生労働省、国民の生命財産を守る、特に厚生労働省に託されている期待も大きいと思いますが、坂口大臣、三宅村の現在の島民の皆さんの生活支援に対してどのようにお考えかということを、まず最初に質問いたします。
坂口国務大臣 三宅島の災害が起こりましてから、かなりもう歳月がたってまいりまして、非常に長くなってきたものですから、非常にお気の毒だと思うのですね。災害そのものも大変お気の毒でございましたが、これが長期化をしてきたということで、大変だろうというふうに思っております。
 先ほども三宅村のアンケート調査の結果を一部引用されましたけれども、私の方も拝見しておりますと、就業者、働いておみえになる人の数は、前回、平成十三年の三月、一年前に比較をいたしまして、三六%から五一%とふえてきております。しかし、収入が大きく減少した世帯というのは三五%に達しておりますし、生活が苦しいと回答された世帯は三二%、前回二九%でございましたから、むしろまだふえているという状況でございます。
 こうした皆さんに対しまして、一体何ができるのか。現在の法体系の中でできることというのは限られておりますし、厚生労働省におきましては、災害救助法によります被服でありますとか、寝具でありますとか調理器具、食器などの生活必需品の支給であるとか、あるいはまた生活福祉資金の特例貸し付けでありますとか、そうしたことをやってきているわけでございますけれども、これには限界がございます。
 昨日も村井大臣から、坂口さん、何かいい方法はないだろうかねという御相談をいただいたところでございまして、一遍ひとつ考えましょう、何とか対策がないものか考えましょうと申し上げたところでございまして、これはもう、一つの省庁の中ではなかなかおさまり切らない問題でございますし、そして内閣府が中心に取りまとめる問題でもございますけれども、それぞれの省庁の中で連携すべきところはできるだけ連携をして、そして対策を講じていかなければならないと今思っている最中でございます。
中川(智)委員 ただいまの大臣のお言葉を村民の方々に聞いていただきたいと思うほど、とても前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 私も、何か、被災地にいる女なんてうちの夫に言われたんですが、雲仙のあの島原のときはちょうど隣の熊本におりまして、ちょうど午後三時ごろに空が真っ黒になりまして、さまざまな土砂が入った降り物が降ってきまして、神戸の方に、宝塚に引っ越しましたらほどなく阪神・淡路大震災がございまして、限りなく七に近い震度六の被災地に居合わせました。
 雲仙にも、私は数年前に、議員になりましてから訪れました。雲仙のときの被災者の方々や復興住宅のありさま、また、そのときにかかわりましたさまざまな方にお会いして、特にそのときのことを思い出すと、あの雲仙、島原のときは、食事供与事業というのが被災者の方々に大層喜ばれました。
 これは、自治体の一つの、国そして長崎県なりが基金というのをつくっておりまして、その基金で、一日一人千円の食事代ということで、一世帯四人いらっしゃいましたら四千円で、今の状況ですと大体一年半ぐらい先には帰れるかもしれないとなりますと、半永久に続くわけでもありませんし、何か法体系の枠の中でと、その枠の中での知恵ということの一つに食事供与事業。現在は、秋川高校は生徒さんたちに食事の供与をしているわけですね。
 阪神・淡路のときに、避難所に入っていらっしゃるときは、食事は朝昼晩、避難所で出されるわけですが、仮設住宅に入ったら、その日から、もう全部自分でしなさいよということでありました。あのときは生活支援法ができていませんでしたので、冷蔵庫とか洗濯機とか、欲しいとおっしゃる方がとても多かったのでボランティアでそれをしたわけですが。私自身は、強制的に避難させられているので、そこの避難先においての生活の面倒というのは、やはりその食事供与事業のように、一人一日千円という形での生活支援策というのが有効ではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。
真野政府参考人 先生御指摘の雲仙におきます食事供与事業、これは、旧国土庁が長崎県を実施主体とする国庫補助事業として行われたと承知をいたしております。
 島から強制的に避難をしてきて、現在の住んでおられるところを避難所として扱えばこういう事業の対象にもなるのではないかという先生の御質問でございますが、私ども、災害救助法は、災害発生直後、そういう混乱が起きたところで、食べ物が確保できない、飲み水が確保できない、そういう状況に対して応急的に対応をするというのが災害救助法の基本的な性格ということでございまして、そういう意味では、避難所も、基本的な生活を確保していく上でどうしてもそういう状況に追い込まれている、したがって食べ物もみずから確保できないというような状況に着目して、食料、水、そういうものを供給しているわけでございます。
 現在、分散されて、都営住宅その他にお住みになっておられまして、いわばそこで生活の基盤をおつくりになっておられるわけでございますので、そういう方々に対しまして、応急救助法である災害救助法で食料やそういうものを確保するというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。
中川(智)委員 このような長期にわたる噴火災害で、一年半、二年という避難生活を余儀なくされた例というのは、かつてございますか。
真野政府参考人 災害全般を承知しているわけではございませんので的確なお答えになるかどうかわかりませんが、先生が先ほど御質問で挙げられました雲仙岳の噴火災害の場合には、今の食事供与事業は平成三年の十月から四年の十月まで一年間行われた。また、平成十二年の有珠山の噴火の災害の場合には、北海道が生活支援事業を単独事業として実施されましたが、これも、平成十二年の七月から平成十三年の三月までということで、一年ないし一年弱ということではないかというふうに思います。
中川(智)委員 これは厚生労働省の調べだと思いますが、生活保護世帯、当初は十七世帯二十人、それが現在は四十八世帯七十人。やはり、生活保護を弾力的にというように思いますが、生活保護というのはさまざまな縛りがありますし、特に、頑張り続けてしまって、結局、その前に悲惨な状況になったということも阪神・淡路ではたくさんございました。
 今の局長のお話では、食事供与事業というものに対しては、その適用はいかがなものかというふうなお話がございましたが、それでは、この三宅島のいわゆる財政出動で伺いますけれども、雲仙・普賢の場合は、災害救助費は四十三億円使われました。有珠山で四十五億円。三宅島は現在のところ幾ら税金を使っていますか。
真野政府参考人 申しわけございません。今調べております。すぐお答えいたします。
中川(智)委員 二億円弱ですね。そうだと思うんですが。
真野政府参考人 申しわけございません。二億三百万強ということでございます。
中川(智)委員 法律がない。それは、本当に立法府として一生懸命頑張っていても、なかなかこの災害救助のさまざまな法律というのはつくりにくい。
 と申しますのは、私は、阪神・淡路とかを経験して、あすは我が身だと思って、今後の災害のときに本当に理不尽な形で生活を困窮に陥れるということはないように、いつどんな災害があってもやはり守られているんだという安心感というのが国民にとても大事だと思いました。ですから、生活再建支援法は、一年半かかって自社さ連立政権のときにたくさんの議員の先生方、省庁のお力をかりましてつくることができましたが、これも百万円、既に三宅島の方々はそれさえも使い切ってしまっているというアンケートでのお話が出ていました。
 それならば、局長がさっきおっしゃったように、それぞれそれぞれの場所で生活を頑張っていらっしゃるからもうこれは当てはまらないのだというような形の切り捨て方ではなくて、特に高齢者や、そして自営業の方々はなかなか仕事が見つかりません。また、農業などを営んでいて自分の畑とかで食料をある程度自給していらっしゃった方は、都営住宅などにぱっと入れられて耕す畑もない。そういう生活困窮者が今三五%、本当に生活が大変だと。この方々はつつましくつつましく暮らしていらっしゃるんですよ。一円のお金だってむだにできない。島に帰ったらまた家の修理もしなきゃいけない、いろいろな形でお金がかかる。だから、つめに火をともすように、でも泣き言は言いたくない、だけれども、アンケートで三五%も生活が苦しいと訴えられているわけですね。
 そうしたら、全島民すべてとは言いません。この三五%、アンケートで苦しい方々に実態調査を施して、生活、いわゆる食事供与ができないか。それに対して、大臣が先ほど、村井大臣とお話しのときに、何かできないかとおっしゃったような、その知恵の一つにぜひとも加えていただきたいと思います。
 震災を経験した者として、今、市民生活というのは多様化していますので、例えば病院に行くときのバス代とか、そして、現在も、一時帰島は自費で行っているわけですね。四月一日から始まった一時帰島も、島民割引だけで、それはかつてずっとあったものがそのまま続いているだけ。島に帰って家を修復するのにも現金が要るわけです。そういう形で現金支給が何かできないかということをぜひとも考えていただきたいと思います。
 厚生労働省の方にもう一点伺いたいのですが、医療費がやはり厳しいという高齢者の方々の声が多いようなんですね。阪神・淡路のときも、一年間の医療費の免除というのがとても助かりました。一年たって医療費が打ち切られたときに、一番つらいという被災者の声でした。特に高齢者の方々の医療費の免除、それが前向きに考えられないか。ぜひともお答えをお願いいたします。
坂口国務大臣 医療費の面は、国民健康保険あるいは老人医療、当然ですが、これは市町村の判断によりまして、災害等によりまして一部負担金を支払うことが困難な方に対しましては、一部負担金の減免措置を講じることが可能となっております。
 それで、三宅村におきましては、昨年二月より、被保険者からの申請に基づきましてこの一部負担金の減免措置が講じられているところでございます。長くなってまいりましたけれども、これは半年半年で延ばしておりますけれども、現在つないでおります。
 国民健康保険でありますとか老人医療につきましては、先ほどからお話が出ました阪神・淡路大震災のときとほぼ同様の措置が講じられておるものというふうに思っております。したがいまして、この被保険者におかれましては、こうした措置を活用していただきたいというふうに今思っておりますので、ここは何とかなるのではないかというふうに思います。
 それ以外の分野をどうするかというのは、これは、現在あります法律の中だけで考えるとなかなか名案が浮かんでこないというのが現状だというふうに思います。厚生労働省の中で考えますと、現在の法律で当てはまるものがないからありません、こういう話になるわけでございますけれども、政治家はそんなわけにもまいりませんから、何かいい方法はないか、さまざまな角度から検討しなければならないのだろうというふうに思っております。他の大臣ともひとつ御相談をさせていただきたいと思っております。
中川(智)委員 大臣にもう一度ちょっと答弁をお願いしたいのですが、私も、ハンセンの元患者の方に会ってください、ヤコブの方に会ってください、在外被爆者の方に会ってくださいと、会ってください、会ってくださいのもう一つ。三宅島の島民の方々に、今すぐとは申しませんが、また大臣のお時間が許すときに、ぜひとも島民の方々の声を直接聞いていただく機会をつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 お会いをさせていただくのはいつでもお会いさせていただきますけれども、さて、そのときに何とお答えをするかということが全然なくしてお会いしておりましてもいけませんので、その前にいろいろ各省庁とひとつお話し合いをさせていただきたいというふうに思っております。
中川(智)委員 ありがとうございます。やはり、希望を持てるような実際の施策がある程度固まられたら、ぜひとも会っていただきたいと思います。
 続いて内閣府の方に伺いますが、二つございまして、一つには、生活再建支援法のときに、附則の第二条として、住宅再建に関しては検討するという一項がございました。これは、党を超えて議員連盟やさまざまなところで話し合いを続けてきておりますが、なかなか実りません。非常に生むのが苦しい法律でございますが、やはり三宅村の方々は、島に帰って再建するときに何百万も家屋の修理にかかるというのがとても不安だ、島に帰れたのはいいけれども、住む家がなければもう島では暮らせないという不安を抱えて生活していらっしゃいます。この附則の二条の住宅再建支援に関してぜひとも前向きに取り組んでいただきたいし、どのようにお考えかということが一点。
 もう一点は、今、一時帰島をされておりますが、先ほど申し上げましたように、その渡航費が個人負担、かなりきついものになっています。そして、向こうに行きましても、大体五、六時間だけ島にいて、そして少し修理してまた東京などに戻られるということで、できればクリーンハウスのようなものを三宅島に何カ所か建てるとかして、せめて一泊か二泊、できればもうちょっと長く滞在して修理をしたい、島に戻って何か帰るときに備えたいという声が強いのですが、この二点に対してどのようにお考えか。
高橋政府参考人 三宅島の現況でございますが、先生先ほど御指摘ございましたように、いまだにやはり火山ガスが日量一、二万トン出てございます。たまたま先週は四千トンから七千トンという、少し下がったのですが、これは、これまでも五千トンぐらいまで下がった後、また突如二、三万トン出るというような、そういう状況もございますので、まだ依然として帰島の見通しが立っていないというのが現実でございます。
 そういう中で、一昨年の九月に全島避難をしまして、もう一年七カ月以上たってございます。現実には一年半の間に泥流によりまして家屋が四十三戸被災しておりますし、また、二酸化硫黄を含みます火山ガスの影響によりまして、トタン屋根の腐食が発生しております。さらに、ドアやベランダなどの金属製の部分の腐食、さらにはシロアリによる被害なども発生しているところでございます。
 そういったことから、昨年の秋に村が実施しました実態調査でも、五割の方が、補修は必要であると回答されているわけでございます。
 この三宅村の住宅につきましては、補修につきましては、現在、島民の方の御希望によりまして、村が三宅島職工組合にお願いしまして、職工組合の方の作業賃であるとか物の実費は負担していただきますが、そういう屋根の修繕を今実施しているところでございます。
 あと、島民の方、なかなか復帰のめどが立たないということでございますが、まだまだちょっとガスの状況が今申し上げたような状況でございますので、復帰後にどうするかという段階には、まだ具体の状況には至っておりません。
 ただ、住宅再建のための施策としましては、既に住宅金融公庫によります長期低利の災害復興住宅融資、これが用意されております。ただ、これについては、まだ帰島のめどが立っていないために実績はございません。
 今後島民の方々の帰島が可能になった場合には、このような既存の制度を最大限に活用するほか、今後どのような対応が可能になるかどうか、こういったことも東京都、三宅村と協議して検討していきたいと思っております。
中川(智)委員 生活再建支援法は、法律の中に何回と回数は書いていないんですね、支援法の支援金は。一回は百万出したかもしれませんが、住宅再建のためのお金ですから、ぜひとももう一回か二回出していただくのを検討していただきたいと心から要望いたしますが、それは要望にとどめておきまして、また継続して質問をさせていただきたいと思います。
 大臣、ぜひとも村井大臣とお話し合いをしていただきまして、島に帰れる日が来たときに、帰りたい方が全員帰れるような、避難している間の支援策をぜひともよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
森委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 同じく社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 最後の貴重な十分をちょうだいいたしまして、臓器移植のことに関しまして御質問をさせていただきます。
 ちょうど昨日の新聞報道で、河野洋平前外務大臣が、御子息の河野太郎さんから生体肝移植を信州大学でお受けになる。河野洋平氏の方は二カ月、河野太郎氏の方は一カ月ほどかかるということで、この国会にとりましても貴重な二人の人材が今、生体肝移植の術後を経過されておられます。お二方の一日も早い回復を私からも祈りまして、私の質問に入らせていただきます。
 私の質問は、いわゆる生体移植ではございませんで、脳死臓器移植ということで、特に人権侵害が起こりやすい分野でございますので、このことに関してお伺い申し上げます。
 実は、ことしの三月二十五日、日本弁護士連合会が、既に一九九九年の六月二十四日に大阪府立の千里救命センターで行われました日本で四例目の脳死臓器移植のドナーの脳死判定において、特に、臨床的脳死、お医者様がこれは臨床的に脳死だと思われた時点で、無呼吸テストといって自発呼吸がないことを検査するテストを千里救命センターのマニュアルに基づいて実施されましたのですが、これは、既に我が国会で取り決めました臓器移植法のガイドラインにも違反しておりますし、施行規則にも反しておるということで、人権侵害の事例に当たるということで勧告書が出ております。
 まず、私がこのことをきょう御質問するということで、きのう臓器移植対策室の方にもあらかじめちょっと質問予告をいたしましたら、臓器移植対策室の方では、そのような日弁連の勧告書が出ているのはまだ御存じなかったようで、とても残念でもありますし、健康局長の方にちょっとこの事態について御答弁をいただきたいと思います。
下田政府参考人 委員御指摘の事例につきましては、日本弁護士連合会から担当部局に対しまして、平成十三年十一月十四日付で、人権侵害救済申し立て事件に係る照会ということでお尋ねがございました。担当部局から同月三十日付で回答を行った経緯がございます。
 しかしながら、今御指摘の本年三月二十五日に出されました勧告書につきましては、日本弁護士連合会あるいは臓器提供施設のいずれからも情報提供がなかったといったこともございまして、委員御指摘まで知らなかった、承知をしていなかったというのが実情でございます。
阿部委員 日本弁護士連合会というのは、日本の諸団体の中で人権ということについてそれなりのオーソリティーでございますし、何度も申しますが、特に脳死臓器移植というのは、ドナー側にとってもレシピエント側にとっても、この人権という問題において極めて重大な要素をはらんでおりますので、臓器移植対策室並びに健康局長でしょうか、担当部署にあってはアンテナを高くぜひとも今後お取り組みいただきたい。
 そして、もう一点お伺いしたいのですが、実は、このことの勧告を受けました千里救命センターの方では、その病院独自のマニュアルがあり、それに基づいて実施しておると。そして、このような勧告に対しての応答と申しますか反応においても、独自のマニュアルに基づくものであるのでということで、平行線をたどっておるわけですが、このような事態について担当局としてどのように対応なさるかについて、御見解を伺います。
下田政府参考人 臓器移植をめぐりましては、さまざまな御意見、御指摘があるところでございまして、当局においてこれらをきっちりと把握する、その収集に努めるといったことは極めて大事なことであり、国民の信頼を得る上で必要不可欠なものという認識でございます。
 今回の御指摘の勧告書が報告として担当部局に上がってこなかったといったことは、体制として十分に機能をしていなかったというふうに考えておりますので、臓器提供に係ります御意見、御指摘について、より幅広く的確に収集できるような仕組み、体制、こういったものを検討していきたいというふうに考えているところでございます。
阿部委員 ここで指摘したいのは、いわゆるガイドラインにも反し、施行規則にも反した行為が現実に行われていたという事実で、こういうことが積み重なりますと、すべてが無視されたまま臓器移植が進むということになります。
 そして、この事例について、実は厚生省の中でも検証会議を持たれて、この問題に気づいておられないわけです。日弁連という外の組織から指摘を受けて、改めて人権侵害の事実というふうな事態に至っているわけで、この検証会議のあり方、あるいは、せめて四例目についてやり直しをしていただくことについて、担当部局から御見解をお願いいたします。
下田政府参考人 日弁連の勧告書におきましては、第四例目の臨床的脳死診断を行う際のやり方が施行規則あるいはガイドラインに基づいていなかった、基づかないで無呼吸テストを行った、このことをもって人権侵害があるとしているところでございます。
 この件につきましては、厚生科学審議会の中にございます臓器移植専門委員会におきまして既に検証が行われているわけでありまして、その委員会の中では、施設が独自に定めた基準に基づいて臨床的脳死診断の際に無呼吸テストを行ったことについても、事実としては当然確認をしていたわけでございまして、その上で、本症例を法的に脳死と判定したことは妥当と言っております。しかしながら、結果として侵襲の多い無呼吸テストの回数が多くなったことは必ずしも適正とは言えないという指摘もあわせてやっているところでございます。
 こういったこともございますので、四例目の検証の目的は達成しているものと考えてはおりますけれども、今般の日弁連の勧告書につきましては、脳死下での臓器提供事例に関する一つの指摘といたしまして、検証会議にも報告をいたしまして、議論をしていただきたいというふうに考えておるところでございます。
阿部委員 ただいま担当部局から御答弁いただきましたが、坂口厚生労働大臣に最後に一言お願いいたします。
 やはり検証会議のあり方そのものが、他方から見れば人権侵害の事例をゴーにしてしまった。そして特に、国が決めているガイドライン、施行規則も全くルールどおりに運ばれないという事態でございますので、厚生労働省としてもこの件を重くお受けとめいただきまして、人権という観点から脳死臓器移植全般について問題のありかをさらに探っていくということで、厚生労働大臣のお取り組みについて御答弁をいただきます。
坂口国務大臣 五例目からはこの検証会議で検証をしていただきまして、そして後ほどそれはすべて公表をしているところでございますが、ちょうど五例目からでございましたので、その前の一例ということになって、少しそうしたところでぎくしゃくしたところがあったのかなというふうに思いながら、先ほどから聞かせていただいていたところでございます。
 いずれにいたしましても、今後、検証を明確にして、そして今後の臓器移植ということに誤りがないようにしていきたいと考えております。
阿部委員 五例目以降は、今度は逆に報道の情報量が非常に少なくて、外から検証できない体制にもなっております。
 問題は多岐にわたると思いますが、とりあえず、今いただきました人権的観点からの見直しということを前向きに受けとめまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十三分散会

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