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第12号 平成14年5月8日(水曜日)

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平成十四年五月八日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 森  英介君
   理事 鴨下 一郎君 理事 鈴木 俊一君
   理事 長勢 甚遠君 理事 野田 聖子君
   理事 釘宮  磐君 理事 山井 和則君
   理事 福島  豊君 理事 佐藤 公治君
      岡下 信子君    木村 義雄君
      北村 誠吾君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    田村 憲久君
      竹下  亘君    竹本 直一君
      棚橋 泰文君    林 省之介君
      福井  照君    増原 義剛君
      松島みどり君    松野 博一君
      三ッ林隆志君    宮澤 洋一君
      谷津 義男君    吉野 正芳君
      渡辺 具能君    家西  悟君
      大島  敦君    加藤 公一君
      鍵田 節哉君    金田 誠一君
      五島 正規君    土肥 隆一君
      三井 辨雄君    水島 広子君
      江田 康幸君    西  博義君
      樋高  剛君    小沢 和秋君
      瀬古由起子君    阿部 知子君
      中川 智子君    野田  毅君
      川田 悦子君
    …………………………………
   議員           五島 正規君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   財務大臣政務官      砂田 圭佑君
   厚生労働大臣政務官    田村 憲久君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  宮島  彰君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            日比  徹君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  大塚 義治君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     福井  照君
  自見庄三郎君     渡辺 具能君
  西川 京子君     増原 義剛君
  松島みどり君     松野 博一君
  桝屋 敬悟君     西  博義君
同日
 辞任         補欠選任
  福井  照君     上川 陽子君
  増原 義剛君     西川 京子君
  松野 博一君     松島みどり君
  渡辺 具能君     自見庄三郎君
  西  博義君     桝屋 敬悟君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)
 健康増進法案(内閣提出第四七号)
 医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出、衆法第一一号)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(五島正規君外三名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
森委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案、健康増進法案、山井和則君外三名提出、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案及び五島正規君外三名提出、健康保険法等の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長篠崎英夫君、健康局長下田智久君、医薬局長宮島彰君、労働基準局長日比徹君及び保険局長大塚義治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田誠一君。
金田(誠)委員 おはようございます。民主党の金田誠一でございます。
 私は、今回は、医療保険制度の抜本改革とは何か、小泉さん流に言わせますと医療保険制度の構造改革とは何か、こういう観点で質問をさせていただきたいと思います。
 まず第一点目は、我が国における構造改革の方向についてでございます。小泉総理は、聖域なき構造改革とか、改革なくして成長なしというようなことをいつも言っておられるわけでございますが、改革には二つの方向がある、私なりにそう考えております。一つは、アメリカ型とでも申しましょうか、市場原理最優先の成長志向、結果として経済大国あるいは軍事大国という形にアメリカはなっていると思います。いま一つはヨーロッパ型、これは生活の質に重点を置いた安定志向とでも申しますか、結果的にヨーロッパはアメリカに比べて生活大国である、私はこう考えてございます。
 こうした中で、私は、我が国の歴史や文化、日本人の国民性からしても、アメリカ型はふさわしくない、目指すべきはヨーロッパ型であると考えておりますが、小泉総理は全く逆でございます。それも、日本型の密室談合、こういうものや、官僚主導といった体質を残したままでのアメリカ型志向であって、特定の業界団体に都合のいいアンフェアな制度改革に向かっていると思います。キリスト教的な奉仕や寄附の文化がない我が国では、市場原理最優先ではアメリカ以上に厳しい結果を生む、こう危惧をいたしております。
 そこで、大臣に伺いますけれども、小泉さんのこのような構造改革についてどうお考えでしょうか。
坂口国務大臣 おはようございます。
 最初から難しい御質問でございますが、改革なくして成長なしという総理のお言葉はそのとおりだというふうに私は思っております。改革につきましては、その進め方の問題と、そしてその内容と申しますか、質の問題と、両方あるんだろうというふうに思っておりますが、改革なくして成長なしというのは、その進め方のことを総理は御指摘になっているんだというふうに私は思います。
 そういう意味で、規制改革等を行っていかなければ経済成長は望めない、やはり規制改革等は必要条件であるということを述べられているというふうに私は思います。それじゃ、それだけで経済が成長するのかといえばそうではなくて、やはり他の条件も必要になってくる。十分条件ではないということは十分に御存じの上で、そして、これは必要条件であるということを言っておみえになるんだろうというふうに思っています。
 今御指摘のその中身、質の話でございますが、それでは質を一体どうしていくのかということになるというふうに思いますが、それは今お話しになりましたように、アメリカ型もあれば、ヨーロッパ型、ヨーロッパの中もドイツとフランスではかなり違うし、また北欧の方はさらに違う、さまざまであろうというふうに思いますが、やはり日本は日本型の改革を行っていく以外にないというふうに思っております。
 今御指摘になりましたように、日本の今までの改革のあり方というのには、プラスの面もあれば、やはりマイナスの面もある。そのマイナスの面はできるだけ極力直しながら、そして、この日本にふさわしい改革ができる限り進められていくのが望ましいというふうに思っておりますが、医療改革もその中の一つでございまして、この医療改革も日本にふさわしい形でやはり進めていかなければならない。とりわけ、超高齢化社会が来るわけでございますから、その超高齢化社会にたえ得る制度にしていかなければならない、そんなふうに思っている次第でございます。
金田(誠)委員 その日本にふさわしい改革というものが、今の小泉さんが進めているアメリカ型なのか、それとももっと生活の質を重視したヨーロッパ型なのか、その辺のお考えを伺いたかったんですが、お答えいただけなかったのは残念でございます。
 角度を変えてそれではお尋ねをしたいと思いますが、小泉総理の改革は公明党の考え方と同じなのかどうなのかということでございます。
 小泉さんや竹中平蔵さんの改革は、特殊日本型の新保守主義、私はこう思うんですけれども、あるいは特殊日本型の新自由主義というふうに言えるだろうと思います。いずれにしても、ヨーロッパでは既に清算された時代おくれの路線である、こう思います。新保守主義あるいは新自由主義と言われるものは既にヨーロッパにおいては清算されている、こう思います。
 私は、公明党に対するイメージとしては、いわゆる新保守主義と異なる、機会の平等のみならず結果の平等をも重視する政党だと思ってまいりました。ところが、このたびは、その新保守主義の象徴的な改革が、医療保険のみならず、児童扶養手当の削減、こういう形で打ち出されているわけでございます。
 私は、率直に申し上げまして、坂口大臣のもとでこそ、ハンセン病の全面解決があり、ヤコブ病の全面解決があった、かねてこのように評価をしておりました。それだけに、今回、残念でならないわけでございます。また、ここに至るまでに坂口大臣は、経済財政諮問会議などとの間でも大変な御苦労をされてきたということも仄聞をいたしております。それだけに、結果は実に残念だというふうに思っております。
 小泉総理のこのような改革は、公明党の考え方と同じなのかどうなのか、違うとすればどこがどう違っているのか、大臣に伺いたいと思います。
坂口国務大臣 機会の平等というのは、裏側から見ればこれは違う言葉で表現できるというふうに思いますが、何といいますか、機会の平等というのは、別な言葉でいえば結果の不平等を容認するということだと思うんですね。私は、それはそれでいいと思っておりますし、我が党の考え方もそれを容認しているというふうに思っております。ただ、そこに結果の不平等が生じましたときに、じゃ、その結果の不平等を一体どうするのかということだろうと思うんです。
 その中には、自分で自立できる人もあるし、自分ではい上がることのできる企業もある。しかし、中には、自立できない人や企業が存在をする。また、その自立できない人や企業の中にも、支援をすれば自立できる人や企業もあるし、支援をしてもなおかつ自立できない人もあるいは企業もある。支援をしてもだめな人は、これはもう社会保障の対象でございますけれども、支援をすれば自立のできるグループが私は多いんだろうと思う。
 だから、支援をして自立のできる人たちあるいはできる企業に対して手を差し伸べるというのは、これは、その人たちにもう一度挑戦の機会を与えるわけでありますから、そこまでを含めて私は機会の平等だろうと思うんですね。だから、そういう意味では、この機会の平等というのは、一つの大きな考え方であり、正しいと私は思っております。
 そうした意味で、総理とそこまでお話をしたことはございませんけれども、私はそのことについて総理との間で差があるとは思っておりません。いろいろのお話を伺っている中で、やはり自由競争の社会でありますから勝者と敗者が生まれることは事実でございますから、その敗者に対してもう一度、これは挑戦のチャンスを与える社会ということを言っておみえになりますから、そこは私は違いがないんだろうというふうに思っております。機会の平等、それは再挑戦の機会を含めた機会の平等ということであるならば別に変わりはないし、私はそれでいいのではないかというふうに思っています。
 ですから、これからの社会保障というのは、どちらかといえば自立ということをどう支援していくかということに力点を置いていかなければならないのではないかというふうに思っている次第でございます。
金田(誠)委員 英国などでもそうですが、サッチャー主義が清算をされて、ブレア首相による第三の道、これは明確な路線の違いであるというふうに私は受け取っておりますし、ヨーロッパ全体でも、センターレフトとか中道左派、旧来の社会主義とは異なる、そして新保守、新自由主義とも異なる路線がほとんど主流を今占めている、こう思うわけでございますが、小泉総理は、そうした世界状況の中で、実に特異な、機会の平等のみ、あるいは競争原理至上主義という路線をとっておられる。竹中平蔵さんなどがその急先鋒なんでしょうけれども。私は、今まで経済財政諮問会議と坂口大臣との関係などを拝見していて、考え方は異にするのだなというふうに受けとめてきたわけでございますが、その辺、おっしゃりにくいんでしょうか、明確なお答えがなかったのは残念でございますけれども、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 二点目に入りますが、医療保険制度の構造改革の方向。どういう方向に向かって医療保険制度を構造改革するかという観点からお尋ねをしたいと思います。
 これについても、先進諸国の潮流は大きく分けて二つ、アメリカ型とヨーロッパ型がある、こう思います。私なりの認識では、アメリカは自己責任プラス救貧政策型。自己責任部分は民間保険ということでしょうし、保険に入れない者は放置されるということでしょうし、救貧政策というのはメディケード、あるいはメディケアもその部類だと思います。これに対してヨーロッパは普遍的なセーフティーネット型と言えると思います。
 アメリカ型では、現役世代は民間保険、高齢者は社会保障税、目的税ですから保険料的な要素もかなりあるのかもしれませんけれども、社会保障税によるメディケア、低所得者は同じく税によるメディケードがあるわけでございますが、医療費総額は対GDP比で一四%近くに達していながら、無保険者は四千万人、いろいろな説がありますけれども人口の一五%程度、こういうことも言われているわけでございます。私は、アメリカ型は決して成功しているとは言えず、我が国がこれから目指すべき方向ではないというふうに断言して構わないと思います。
 これに対してヨーロッパ型では、税方式と社会保険方式がございます。前者の代表は、NHSで行っているイギリスあるいはスウェーデンが代表格でございます。後者は、ドイツ、フランスでございます。
 税方式では、人口も少なく国民負担率も非常に高いスウェーデンなど、これは別格として考えれば、イギリスの税方式は成功しているとは言いがたい、中身は省きますが、大臣御承知のとおりだと思います。これに対して社会保険方式のドイツなどは、曲折を経ながらも一定の成功をおさめている。したがって、我が国の医療保険制度改革に当たりモデルとなり得るのは、ヨーロッパ型の、それも社会保険方式だ、こう考えているわけでございますが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 そこは御指摘のとおり、日本におきましても、これからこの医療保険制度というものは堅持をしていかなければならないんだろうというふうに思います。やはり、医療保険制度を堅持するという立場からすべてのことを考えていくということでなければならないというふうに思いますが、御承知のとおり、日本の場合には、医療保険制度とは申しましてもすべてが保険でやっているわけではございませんで、国庫負担もその中に行っている。そして、一部自己負担もお願いをしているということでございます。
 この医療保険制度を、皆保険制度を中心にしながらも、このいわゆる国庫負担というものとそしてまた自己負担というものも一部お願いをするといったことで、それをどう組み合わせていくかというところにこれからの一番大事なところがあるわけでございます。しかし、何度か繰り返しますけれども、中心になりますものは医療保険制度である、皆保険制度であるというふうに思っております。
金田(誠)委員 おおむね共通認識に立てたと思うわけでございます。国庫負担あるいは自己負担をどうするか、これは後段でまた触れさせていただきたいと思います。
 次の質問に入りますが、我が国の医療保険制度改革に当たっては、ドイツを初めヨーロッパの社会保険方式がモデルとなり得る、こういうことで認識が一致したと思いますが、そうした立場から、我が国の制度とドイツの制度を比較してみたいと思います。
 私は、次の六項目にまとめて比較をしてみました。
 一つは、いわゆる突き抜け方式がとられております。継続加入方式とも言うようでございます。これにより、高齢者や失業者が我が国の国保に相当する保険集団に集中するということがなく、老人医療問題という問題自体が存在しない、こういうレポートを拝見しております。二、三年前だと思いますが、健保連が調査団を出して詳細なレポートが出ているわけでございますが、健保連でさえ、でさえというと、きょういらしているかもしれませんが、ヨーロッパの突き抜け方式の国々には老人医療問題という問題自体が存在しない、行く先々で老人医療の問題はどうですかと聞くとぽかんとされるという報告でございました。これが一点目の比較でございます。
 二点目、保険者間のリスク構造調整が行われている。これによって被保険者の負担が公平になり、同時に保険者間の競争条件が公平になるという状況でございます。
 三点目、社会保険という管理された制度の中での保険者間の競争原理、これはマネージドコンペティションなどと言う学者の方もいらっしゃいますが、この管理された中での競争原理が機能して、医療の質の向上、医療費の適正化に寄与している。さらに、被保険者による保険者の選択制が導入されて競争を促進しているというのが三点目でございます。
 四点目ですが、保険者が社会的な存在として自立をしている。一つは、我が国のような政府管掌保険や自治体管掌の国保というものが存在しません。保険者というのは民間でやる、これが大原則になっております。そして、その民間は、企業内の福利厚生団体というレベルを超えて、社会的な存在として自立をしているということでございます。また、保険者の数が数百というレベルであって、我が国は五千数百と言われておりますから、一けた少ないレベルであるということでございます。これが四点目。
 五点目は、患者の自己負担でございますが、医療費総額の六%程度に設定されて、保険によるリスクシェアに重点を置いた制度設計になっているということでございます。また、高齢者に対しては、年齢を理由とした負担の軽減は行われておらない。高齢者も現役世代も同一の負担、同一所得であれば同一の負担という原則、これはエージズム、何と訳すのでしょうか、年齢による差別化というのでしょうか、エージズムを採用しない、エージズムを排除した考え方になっているというのが五点目でございます。
 六点目は、特徴的には、医療保険制度は労使折半の保険料のみで運営という原則が貫徹をされていて、税は投入されていない。
 以上六点、我が国の制度とドイツの制度を比較いたしてみました。このほかにもいろいろあるかと思いますが、特徴的にはこの六点だと思うわけでございます。こういう認識、大枠として厚生労働省の認識と私は一致できるのではないかなと思いますが、政府参考人、いかがでしょう。
大塚政府参考人 歴史的な経緯から申しますと、我が国の医療保険制度がドイツの事例をかなり参考にしながら組み立てられてきたという経緯もございますけれども、ただいまお示しの六点にわたる違いといいますのは、おおむねおっしゃるとおりだろうと思います。
 ただ、一、二点つけ加えさせていただきますと、もう一つ大きな違いとしてつけ加えるべきだという気がいたしますのは、ドイツにおきましては、日本のような国民皆保険という仕組みをとっておりませんで、高所得者あるいは自営業者のかなりの部分の方は任意加入という仕組み、これもやはり大きな違いの一つに、基本的な違いの一つに加えるべきだろうと考えております。
 また、もちろん社会経済構造の違いがその背景にあるということと、ドイツにおきましても、非常に頻繁に制度改正が行われている国の一つだろうと思いますけれども、今お示しの六つの中の重要な点でございますリスク構造調整あるいは被保険者による保険者の選択制、こういった非常に特徴的な相違という点も比較的近年に導入された制度でございまして、ドイツにおきましても、さまざまな経過をとりながら今日の仕組みに至っているということがございます。
 少し長くなって恐縮でございましたが、御指摘の点が我が国の制度と異なる特徴的な点であるということについては、おっしゃるとおりだろうと考えております。
金田(誠)委員 国民皆保険ではないという点を御指摘いただいて、ありがとうございます。
 もちろん承知はしておりましたのですが、そこが、これから取り上げる重点にはなかなかならないのかな、これは我が国がモデルにすべき方向では現時点ではないのかなというようなことが念頭にあったものですから、これは、違いとしてはもちろん大きな違いでございまして、当然挙げておくべきだった、こう思っております。御指摘ありがとうございました。
 あるいは、リスク構造調整等、比較的近年ということでございますが、まさにそのとおりだと思うわけでございまして、我が国が抜本改革という中で行ったり来たり、行ったりはしませんでしたが、来たり来たりしている間に、向こうはこの十年くらいの間に制度としてかなり進んできたという観点からこの辺はとらえるべきではないかな、私はこう思っているところでございます。
 いずれにしても、おおむねこの違いの認識では一致できた、こう思うわけで、次の質問に入らせていただきます。
 この比較から、ヨーロッパなかんずくドイツの社会保険方式を貫く基本的な理念というものを読み取ることができるのではないかな、こう思っております。この理念もまた挙げるといろいろあると思うのですが、私なりにこれから各論で我が国の社会保険の構造改革ということを具体的に問題提起をしていきたいと思っておりまして、その上で必要な基本的理念ということになろうかと思いますが、その理念を私なりに読み取ってみました。
 一つは、先ほども申し上げましたが、いわゆるエージズムを排除しているということでございます。高齢者を特別な保険集団とせず、まあ我が国は国保が実質的にはそうなっていると思うのですが、高齢者を特別な保険集団とせず、年齢を理由とした負担の軽減も負担の増も行っていないというのが一つの理念だと思います。
 二つ目は、社会保険方式である以上、当然のことながら、保険者の役割が重視され、医療提供側と対等の関係にある。私は、これは非常に大きな特徴的な理念だと思っております。
 三点目。そのために、保険者は、労使の自治を原則として、企業内の福利厚生団体から脱して、社会保障制度の一翼を担う社会的に自立した存在として機能している。
 多くの貫く理念があるのですが、私は、この三点を基本にしながらこれから我が国の制度も組み立てるべきだということで、これをあえて挙げさせていただきました。
 私は、我が国の医療保険制度改革が迷走を続けているのは、こうした基本理念の欠如、ここに原因があるというふうに考えております。今こそ、エージズムの排除、保険者機能の重視、保険者の自立、こういう基本理念を打ち立てなければ、医療提供側、保険者あるいは財政当局、こういうそれぞれの利害ばかりが前面に出て、いつまでも迷走は続く。
 今回、検討課題として幾つか挙げられましたけれども、これは今までも言い尽くされた課題ですよね、課題としては。それが結実してこなかったのは、それぞれの当事者、医療提供側、保険者あるいは被保険者、あるいは財政当局、それぞれの利害ばかりが前面に出てきたところに原因がある。それを貫く基本的な理念というものを、これは本来政治主導が私は必要だと思って、与党に期待をかけて、本来かけたいところなんですが、今までの経緯を見ると、これは不可能だなという思いをますます強くしているところでございます。
 いずれにしても、この基本理念を打ち立てて問題に対処しなければ、この迷走はいつまでも続く、こう思いますが、大臣、いかがでございましょう。
坂口国務大臣 今お挙げをいただきました一つのエージズムの排除、それから保険者機能の重視、そして保険者の自立、三点をお挙げいただいたわけですが、保険者機能の重視や保険者の自立というのは、これは私も賛成でございます。それはやはりそのようにしていかなければならないというふうに思っておりますが、最初のエージズムの排除というのはどうなんでしょう。
 私も、そのエージズムという考え方の概念というものが余り頭の中に入っていないものですから、十分に理解しているかどうかわからないのですが、やはり、日本のように余りにも高齢者が多くなってくる、超高齢化社会になってくるという中で、高齢者も、そして若い人たちも同じように考えて、そして現在の医療保険制度をやっていくというのは、私は少し無理があるのではないかというふうに思います。
 保険制度でありますから、これはリスクの分散であることには間違いがないわけで、そういう意味からいくと、高齢者になったときのリスクというものを、若いときに、若い人たちがしょってもらうということでのリスクの分散というのは、当然それは中心理念であることは私もよくわかるのですけれども、人口構成が余りにも偏ってきた、これからさらに若い人たちがより少なくなり、そして高齢者がさらに多くなっていくという、その状況の中で、高齢者も若い人たちも同じようにというのは少し無理があるし、保険のリスクの分散という意味からしましても、私は、少しそこに無理がかかり過ぎるのではないかという気がいたします。
 したがいまして、現在考えておりますように、高齢者、それが、七十歳に今までしておりましたが、将来は七十五歳にそれを引き上げていって、少なくともその後期高齢者のところにつきましては国庫負担を増額していって、そしてこのリスクの分散というものがより行いやすい形に人口構成が少しうまくいくようにしていく、そうしたことが大事ではないかというふうに私は思います。
 したがいまして、三つお挙げになりました後の二つは、御指摘のとおり、私もそのとおりというふうに思っている次第でございます。
金田(誠)委員 保険者に係る分については認識が一致したということで、感謝をいたします。
 一点目のエージズムの関係でございますが、今までの制度企画部会、この中でとりわけ、一橋と言っていいんでしょうか、国立人口問題研究所、当時所長さんだったと思いますが、その塩野谷祐一先生が、このエージズムの排除ということを強く主張されておりました。報告書自体にもその観点が整理されておりますし、先生が制度企画部会に提出したペーパー、これはA4でたしか四、五枚だったと思います。非常に簡潔にまとめられておりますが、示唆に富んだ内容だと思っております。大臣、もしお目通しでなければ、ぜひお目通しをいただきたい。このエージズムの排除というのが私は一つの大きなポイントになる。ここで結論には、合意には至らないようでございますけれども、今後これが大きなポイントになる、こう私は理解をしておるものですから、ぜひひとつ、この塩野谷説など、もしお読みでなければ目を通していただければありがたいなと思うわけでございます。
 このエージズムとは、大臣おっしゃるように高齢者に無理をかけるということではございません。高齢者が非常に急激にふえてきているという中で、高齢者だけを別枠にしてしまうと、一時は無料化という時代もありましたね、それは経済情勢なり高齢者の数で財政的に無料化ができるときに無料化をやった。これは、もう恐らくその弊害を含めて総括されている事項だと思いますけれども、できるからやる。これから高齢者がどんどんふえてくる、所得はそう多くはない。したがって、負担がふえていって、あるいは給付の面でも、アメリカのメディケアなどは非常に給付が劣悪でございます。そういうことにしてはならないというのがエージズムを排除するという考え方でございます。
 高齢者であろうが現役世代であろうが、負担は所得に応じて対等に負担をする、こういう考え方。給付は、それぞれの医療給付の現物給付の方は、必要に応じて現物給付をしていく。患者一部負担なども、これはもう所得が対等であれば現役世代と対等に負担をしていただく。これがエージズム排除の考え方でございまして、大臣のおっしゃるように高齢者に無理がかかるんではないかということは当たらない、逆に無理をかけないようにする制度であり、あるいは、特別の優遇もしない、若い者に特別無理もかけないという基本的な考え方でございまして、これからこれをポイントとして意見交換させていただきたいと思うものですから、ぜひひとつ御検討をお願いしたいと思うわけでございます。
 次に、各論にわたって、それぞれ柱立てに従って質問させていただきたいと思います。
 一つは、突き抜け方式の採用ということでございます。
 我が国の医療保険制度の最大の問題点の一つは、拠出金方式による老人保健制度でございます。抜本改革あるいは聖域なき構造改革といった場合、こうした制度自体を改革することであって、現行制度を微調整することではない、これは当然のことでございます。
 現行の老人保健制度の問題点は、老人加入率のみに着目しているところ、二つ目は、事後調整方式であること、三点目は、この高齢者医療の部分には保険者機能が働かないというところが特徴的な問題点だろうと思います。各保険者は、事後に、自分の責めによらない、いわば老人医療拠出金、割り勘分の請求書ですよ、これが来れば、言われたとおり右から左に払わされる。ここに一番大きな問題があると思うわけです。したがって、抜本改革とはこうした欠陥を排除するものでなければならないと思います。
 ところが、提出されている法案は、この意味での抜本改革でも何でもないと言わざるを得ません。
 朝三暮四という中国の故事があります。猿にえさを与えるのに、朝三つ夕方四つ与えようと思ったら怒ったので、その逆の朝四つ夕方三つにしたら喜んだという話でございますが、今回のこの老人医療、七十歳から七十五歳にして負担割合を多少いじっていくというのは、朝三つ夕方四つのものを朝四つ夕方三つにするということと同じことじゃないですか。朝三暮四であると私は言わざるを得ないわけですが、いかがでしょう。
坂口国務大臣 このお答えに入ります前に、先ほどのエージズムのお話、大分聞かせていただきまして、わかりました。高齢者といえどもいわゆる所得のある人に対してはそれなりの負担をしていただく、それは私も全くそのとおりだと思います。そういう考え方であるならば、エージズムというものは大変大事な考え方であるというふうに私も思いますし、これはよく検討をさせていただきたいと思います。
 さて、老人保健制度のことに今お触れをいただきまして、そして、いわゆる老人の加入者数のみに着目をしている、あるいは事後調整方式である、保険者機能が働かない、こうした点、これらが問題点であるというふうに述べられたわけでございます。
 確かに問題点のところもあるというふうに思います。老人の場合にもいわゆる加入者数のみで果たしていいのかどうかということもありますが、しかし、加入者数を基礎にしまして調整することによりまして、いわゆる財政調整機能を果たすということもやっているわけでございますから、一つの考え方だというふうに思っている次第でございます。
 いずれにいたしましても、老人医療の問題は、今後、保険と国庫負担と自己負担、この三つの調整を一体どうするか、高齢者の医療の場合には特にそれが重要になってくるというふうに思っておりますが、それをどこから負担してもらうかということをどう決めるかがまず先ではないかと私は思っています。
 ですから、それは保険から御負担をいただくということを中心にして考えるのか、それとも、国庫負担をそこに半分なら半分導入をして、その残りの三割なり四割を保険から御負担をいただくということにして、そして一部はそれぞれ、高額所得者もお見えでございますから、自己負担も入れていくといったことにするのか。私は、そこをどうするのかということを決めることによって、その後、制度をどうするかということはおのずから決まってくるのではないかという気がいたします。
 抜本改革、私たちもやらなければならないというふうに思っておりますし、ことしじゅうにはその結論を出さなければならないと思っておりますが、その中心はやはり高齢者医療、高齢者の医療をどうするかという問題と、そして現在行っております保険制度、この制度をどう変えていくかという、これはセットの話だろうというふうに思いますが、それが一つの大きな柱であることは間違いがございません。いつも言っておりますように、そのことが一つ。それから、診療報酬体系の基本にかかわる部分をどうするかということが二番目である。
 この二つがやはり最も重要な点であるというふうに思っておりますし、そのほか、いわゆる国民から見ました医療の質をどう向上させるかといった問題もあるわけでございますが、大きな、構造にかかわりますものは、やはり初めに挙げました二つではないかというふうに思います。
 そうしたことを中心にしてこれから考えていかなければならないというふうに思っておりますが、今お述べになりましたこの老人保健制度というものも、今後どういう形にしていくかということ、そこには、何を基準にして考えていくかということをやはり明確にしていかなければならないだろうというふうに思います。
 突き抜け方式もあれば独立方式もあるし、それぞれ一長一短そこにあるわけでございますけれども、どういう形にするにしろ、先ほど申しましたように、いずれにしても、その財政的な負担をどういう形にするかということをどう決めるかが一番の根っこの問題ではないか。それを決めるのにはやはり一つの考え方、一つの哲学が必要だという御指摘であるならば、それは御指摘のとおりというふうに思います。
金田(誠)委員 大臣、エージズムについて御理解をいただきまして、感謝をいたしております。この考え方に立つ、立たないということが、大臣がおっしゃった負担割合の問題にも、あるいは全体としての制度設計の問題にも大きくかかわってくる、こう思っておりますので、今後の御検討、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 そこで、今大臣が挙げられた今回の医療制度あるいは医療保険制度の改革に当たっての大きな問題、一つは保険制度をどう設計するかということ、診療報酬をどうするか、医療の質をどうするか、この三つの問題点を挙げられましたが、私は、今回はそのうちの第一点目の医療保険制度をどうするかという問題で質問をさせていただき、その中で、突き抜け方式の採用ということが一つの大きなポイントになるという立場で今お尋ねをいたしているところでございます。
 この突き抜け方式の採用を決断することは、大臣がおっしゃった、保険と国庫負担と自己負担、この負担割合をどうするか、大臣はこれが先決だというふうにおっしゃったわけですが、私は、それ以前に、この負担割合は国民合意の形成の仕方で多少のバリエーションというのは出てくると思います。あるいは国家財政等も横にらみをしながら、バリエーションはあると思うんですけれども、突き抜け方式を採用するかどうかという制度の枠組み、これは負担割合以前の問題。この辺が大臣の認識と違うのかなと思いながら今お聞きをしたわけですが、私は、負担割合以前に、どう制度設計をするか、これが最大の問題だと思います。そして今、イの一番に突き抜け方式の採用ということでお尋ねをしたところでございます。
 朝三暮四であるという指摘に対しては余り明確なコメントはいただけなかったようでございますが、次に入らせていただきます。
 そこで、老人保健制度の抜本改革あるいは構造改革に当たって、この制度、老人保健制度というものがなぜ成立をしてきたのか、この成立の原因にまでさかのぼって、その原因を除去する必要があるという観点なんです。これが突き抜け方式を主張する一つの根拠なわけです。その原因とは、言うまでもなく現行の国保制度の欠陥にある、私はこう理解をいたしております。
 現行の国保制度においては、被用者保険をリタイアした高齢者は、原則として国保の被保険者となる仕組みになっております。結果として、高齢者を国保という保険集団に集中させるエージズムということになっていると思います。これはもう、大臣、今御認識を新たにしていただいたことでございます。さらに、現行の国保制度においては、失業者や一定の基準に達しない被用者なども国保の被保険者とされるわけでございます。
 つまり、国保のみが国民皆保険の最終的受け皿とされ、高齢者を初めとするいわゆる医療弱者の方々が集中する仕組みとなっていることが現行の国保制度の最大の問題であり、老人保健制度が成立せざるを得なかった大きな原因である、これが私の理解でございます。
 このような我が国の国保に相当する制度はヨーロッパの社会保険には存在いたしません。地域を単位とした保険集団の被保険者は、自営業者などが原則でございます。高齢者や失業者の受け皿としては、被用者保険もその役割を分担して社会的責任を負っているということでございます。
 この考え方、以上申し上げたことを整理すれば、改革の方向はおのずと次のようになると思います。
 一つは、エージズムを排除して、被用者保険からリタイアする高齢者を国保に集中させないこと。二点目として、失業者や低所得者を国保に集中させない。三点目として、被用者保険は、企業内の福利厚生団体から脱して、社会保障制度の一翼を担うという立場から、国民皆保険の最終的受け皿としての機能を分担する。私は、この三つの方向が改革の方向である、こう考えます。
 結論としては、国保においても被用者保険においてもいわゆる突き抜け方式、国保も突き抜け方式、被用者保険も突き抜け方式、継続加入方式ともいいますけれども、これを採用するということでございます。老人保健制度の抜本改革、これは、老人保健制度、今のような矛盾に満ちたやり方を廃止するということでございます。そのためにはこの突き抜け方式の採用以外にない。
 ぜひ大臣、突き抜け方式について御理解をいただき、御所見を賜りたいと思います。
坂口国務大臣 高齢者医療を今後どのようにしていくかということを考えました場合に、選択肢はもうそんなに多くはありません。今御指摘になりましたように、保険としては、突き抜け方式あるいは独立方式、その折衷案等々、そうした三つか四つ考えられることがあるというふうに思います。その中で最も大きいものがやはり独立方式とこの突き抜け方式の二つだというふうに思います。
 それは、先ほども少し触れましたとおり、突き抜け方式であれば、その長所もありますけれども、やはりそこには欠点もある、しかし、独立方式にしたらすべていいかといえば、独立方式も長短あわせ持っているといったことでございまして、それらをどう考えていくかというのが今後の一番大事な問題であることは私もよく理解をしているつもりでございます。
 その中で、国保の存在というものを今お挙げいただきまして、確かに、国保の存在というものが、いわゆる保険的に見れば非常に厳しい状況にあることは御指摘のとおりでございます。
 ただ、今まで企業にお勤めの皆さん方が定年退職後この国保にお入りになるから国保が厳しくなってきたというよりも、それ以前からこの国保は厳しくなる要件というものを持っているということでございまして、このお勤めの皆さん方が、その定年退職後、今までの保険の中にお入りをいただければ国保が楽になるかといえば、国保はそれでもなおかつ楽にならないわけでありまして、そうすると、そこをどうしていくかという問題もそこに存在するというふうに私は思っている次第でございます。
 そうしたことをやはり考えましたときに、先ほど申しましたように、どういう割合でお互いにこの負担をしていくかということをまず決めるということが、決めれば、その後はどういう方式でいくかということは自然とそこに決まってくる。突き抜け方式であるということを先に決めておいていくというのも、それは一つの方法としてはあるかもしれません。しかし、そうするとその突き抜け方式に合った財政負担のあり方というふうに今度は考えていかなければなりませんし、そこは少し無理も生ずるのではないかというふうに思います。
 ですから、どういう方式ということを決めなきゃならぬわけですけれども、どういう方式かということを先に決めるんではなくて、財政をどうするかということを先に決めることの方が私は先ではないかというふうに思っております。そこは若干意見を異にするようでございますけれども、しかし、突き抜け方式が大きな一本である、選択肢の一つであるということは私もよくわかっているつもりでおります。
金田(誠)委員 大臣の、先に財政的な負担割合を決めるべきだということに対して、私は、先に制度設計ありきと。制度設計には、それを貫く理念が必要であるという主張をしてきました。その辺の違いが浮き彫りになってきたなと改めて認識を深めさせていただきました。一つの成果だったと思います。今後どうやって認識を一致させていけるのか、私なりにまた考えてまいりたい、こう思います。
 それと大臣、今の答弁の中で、国保の存在は高齢者、失業者が入らなくても厳しいという御認識、私もそのとおりでございまして、それを否定するつもりはございません。ではそれをどうするのかというのは、次の項目になりますリスク構造調整というところでまた考え方を述べてまいりたい、こう思うわけでございます。あるいはまた、独立方式ということについて、これがなぜ採用できないか、これについてもまた改めて述べさせていただきたい。
 いずれにしても、今の項目では突き抜け方式を私は主張しました。その考え方、三点、申しわけございません、再度繰り返します。
 一つは、エージズムを排除して、被用者保険をリタイアした高齢者を国保に集中させないということ、この理念が一つ。
 二つ目は、失業者や低所得者、これの最終的な受け皿を国保に求めない。今は国保が国民皆保険のただ一つの最終的受け皿になっている、これを被用者保険もすべて国民皆保険のそれぞれの受け皿として責任を分担していく、これが二つ目。
 三点目は、被用者保険は、企業内の福利厚生団体から脱して、社会保障制度の一翼を担うという立場から、これは二点目とセットといいますか関連はしますけれども、こういう受け皿として機能させていく。
 これは理念の問題だと思います。筋論だと私は思っているわけです。これで被用者保険が損するとか得するとか、国保が人数が減って損だ得だとか、そういう話をし出すと迷走を続ける。損得ではなくて、本来さまざまな紆余曲折を経て今日の状況があって、それが今行き詰まっていて、どう打開をするか。モデルになるのはヨーロッパ型の社会保険方式だ、これは認識が一致していると思うんですが、それを貫く理念というものを私は抽出してきたつもりです。それを我が国制度改革に生かすという筋を通す。一気にいくか時間がかかるかは別問題、いろいろあると思いますが、筋を曲げてしまうと利害の対立だけになる、損か得かの話になるとぐちゃぐちゃになるということをこの項では申し上げたかったわけでございます。
 今、突き抜け方式のことで申し上げましたけれども、次に、リスク構造調整の導入というテーマで質問をしたいと思います。
 このような、今申し上げたような突き抜け方式を採用した場合はもちろんでございますが、そうでない場合であっても、社会保険方式を採用し保険者が分立している場合においては、保険者間のリスク構造調整が必要になるということでございます。
 今私は、保険者が分立している場合、こう申し上げましたけれども、分立していることが社会保険の重要な要素になる。これは一元化しようという説もあるようでございますが、私は、分立しているところが社会保険方式の社会保険方式たるゆえんである、こう思いまして、このことはまた後で話をさせていただきたいと思います。
 いずれにしても、保険者が分立している場合には保険者間のリスク構造調整が必要となります。これはもう当然のことでございまして、例えばドイツにおいては、所得、年齢、扶養家族の数、性別、この四項目に着目した保険者間のリスク構造調整が行われております。社会保険方式をとる他のヨーロッパの国々でも何らかの形でこのリスク構造調整が行われている。社会保険方式である以上、当然のこととされているわけでございます。最初はそういう調整はありませんでした、局長おっしゃったとおりでございます。しかし、成熟するにつれて、今ではそれはもう当たり前ということになっていると思います。
 ところが、我が国においては、審議会等の意見として紹介されているものを除けば、例えば塩野谷祐一先生などがこれを非常に強く主張されておったわけでございますが、こういうものはそれぞれの委員の意見あるいは一つの提案として紹介はされておりますけれども、政府自身がこのリスク構造調整の必要を訴えるということは、私は寡聞にして聞いたことがないわけです。勉強不足かもしれません。
 しかし、政府として、リスク構造調整、保険者が分立してそれぞれ所得も違えば年齢も性別もいろいろ違う、リスク要素が違う、これを調整しなければ、力の強い、若い人だけ集まった保険集団は、いわばいいとこ取りになってしまうわけで、たまたま低所得者ばかり集まらざるを得なかった、高齢者ばかりが集まらざるを得なかったところに入らざるを得なかった被保険者は、これはもう大変な負担を強いられるわけで、そういうことは社会保険の構造としてはおかしいんだ、したがって、社会保険方式をとる諸外国では、形はともかく、必ずリスク構造調整という考え方が導入されていて、これが常識なんだ、こういう政府の見解というのは私は聞いたことがないんです。
 したがって、国民の多くはその言葉さえ知らない。新聞などでも、このリスク構造調整というのが非常に大きな要素なんだということが報道されたのは、余り私は目にしておりません。これは私が悪いのかどうか御指摘いただきたいと思うんですが、こんな状況のもとで国民的議論を必要とするこの医療保険の制度改革がされているということは、私は非常に残念でならないわけでございます。
 どうでしょう、政府参考人。今までこの非常に重要なポイントになる問題が政府の立場から情報提供されてこなかった。少なくとも私は結構一般の国民よりは関心持っていると思うんですが、それでさえも知らない。たまたま私が悪かったのか、その辺、どうでしょう。
大塚政府参考人 我が国における、これも歴史的な経緯になりますけれども、一種の制度間のアンバランスと申しますか不均衡につきまして、一つには、少し長い話になりますけれども、財政基盤の脆弱なところに公費を投入するという形で広い意味での調整が行われてきたというのが一点でございます。それからまた、老人保健制度なり退職者医療制度も、性格的には財政調整、リスク構造調整の要素を持った仕組みでございます。
 こうした経緯から今日の制度ができているわけでございますが、お話のように、ドイツが九〇年代の前半にリスク構造調整を導入いたしまして、一つの大きなインパクトを諸外国に与えたというのはおっしゃるとおりでございまして、これにつきましては、先ほどお示しのございました医療保険福祉審議会でもかなり時間をとった議論がございました。その審議会の報告書の中でも、その点が問題提起として触れられておるわけでございます。
 最近、政府といいますか、私どもの作成いたしました資料に関連していいますと、昨年三月に、今回の制度改革に関する議論を国民的に幅広くしていただこうという観点で冊子を取りまとめたわけでございますが、その中で、高齢者医療制度改革の見直し、「医療制度改革の課題と視点」という、大小二冊の本でございますが、この中でも、年齢リスク構造調整という形で、四案の一つ、そのメリットとデメリット、論点などは紹介をさせていただきました。
 その必要性について触れたものはという意味では、もっと客観的にといいましょうか、さまざまな論調の一つという形でそれに御紹介させていただいておりますけれども、論点の一つだということについては私どもも認識しておりましたし、今申し上げたような形で関係者にも知っていただくという努力をしてきたつもりでございます。
金田(誠)委員 局長、おっしゃるとおりだと思います。我が国では、公費の投入ということと老健制度、これも財政調整の一種、一つの方法であるということだと思います。
 しかし、今問題になっているのは、旧来のこうした制度が限界に達した。老人保健制度はもちろんでございますけれども、公費だってそうではないですか。こういう非常に複雑な、公費の投入も、国保には給付の五〇%ですか、政府管掌は一三ですか、一五でしたか、という形でのやり方、これが必ずしもそれじゃ低所得者の負担軽減として機能しているかというと、これはもう、そこにまとめて入れるわけですから、例えば国保の中でも、国保同士の保険料負担を比較しても、もう十倍とかなんとかの差まで出ているという国保連の報告なども伺っているところでございまして、公費による調整も、あるいは老人保健制度というものによる調整も、もう限界に達しているということだと思います。
 そういう中で、突き抜けか独立かという議論がされている、その土台になる基本認識として、保険者が分立している場合はリスク構造調整が必要なんだ、諸外国は、いろいろな変遷を経ながらもそれが常識というところまでたどり着いて、さまざまな形でそれが行われている、そういう情報が議論の前提として提供されなければならない、これが私の主張でございます。
 確かに、制度企画部会の中で出された一つの考え方としての紹介はあります。しかし、それはそういう紹介でしかないということを指摘したかったわけでございまして、ぜひこれから、社会保険方式でやる以上は、このリスク構造調整の考え方というものが必須の要件である、国保連が言うような全的一本化みたいなことは私は反対ですけれども、そういうことをしない限りはリスク構造調整というのは常識なんだという情報をぜひ発信していただきたい。そういう上で議論をしなければ、議論は間違った方向に誘導されると思います。
 その議論を避けてきたという結果でもあるんですよ、税による調整だとか、老人保健制度なんというのは。最初は、老健制度は五年もつか十年もつかみたいなことをやって、その場しのぎをやったという結果なんですよ。貫く理念をきちっと打ち立て得なかった、それぞれの利害がふくそうする問題ですから打ち立て得なかった。それで、三年もつか五年もつかというようなものをやってきた。今の改革もそうでしょう、改革とは言えないものではありますけれども。そういうことじゃだめなんですという共通認識に立っていただいて、リスク構造調整というのは必須の要件だ、こういう議論をこれからさせていただきたいと思います。
 このリスク構造調整の質問を続けます。
 今日までの経過の中でも、制度企画部会では、塩野谷祐一先生がリスク構造調整を重点的に主張され、被用者保険側がこれに反論するという局面がございました。しかし、私は、説得力ある反論にはなっていなかったというふうに思います。何らかの形のリスク構造調整は必要だということは、被用者保険側ももうとうに承知をしているのではないかなということを、あのやりとりの中から私なりに感じたところでございます。
 そこで、このリスク構造調整、導入するとすればいろいろな条件が必要だと思います。
 一つは、老人保健制度の拠出金の事後調整方式に対して、リスク構造調整をやるとすれば、事前の調整方式、最初にもう調整してしまう。後は、保険者の努力によっていかに負担を削減できるかというインセンティブをこれによって与える必要があると思います。
 二つ目は、まず年齢リスクの構造調整から始めるということが必要だと思います。ドイツなどは所得リスクの構造調整もやっているわけでございますけれども、日本の場合、いきなりそこまでいくのは非常に難しいのではなかろうか。老人保健制度を廃止するとすれば、これは、老人保健制度自体が年齢リスクのある意味での調整方式でございますから、年齢から始めていくというのが至当ではないか。順を追ってということでございます。
 三点目は、所得リスクの調整まで向かうとすれば、被用者保険の間でまずやる、被用者保険の中でリスク構造調整をやる、あるいは、国保の間で、国保の保険者間でリスク構造調整をやるということが必要だろう。
 国保と被用者保険との間でどこまで構造調整がやれるかというのは非常に難しい問題で、ドイツなどでは原則やっていないというような情報も伺っておりますけれども、私は、今の形、突き抜け方式でない状態で、国保に高齢者が非常に多い状態では、年齢リスクの構造調整を国保を抜かしてやれば、これはほとんど意味のないものになってしまうだろうと思いますし、これから突き抜け方式に移ったとしても、年齢については、国保も被用者も、年齢詐称ということは疑えば切りないですが、年齢を特定する客観的な基準というのはできると思いますから、これは国保と被用者保険の間にも可能だろう、こう思います。
 しかし、所得リスクに着目した調整などは、国保なら国保の間で、被用者保険なら被用者保険の間でやっていく。こういうさまざまな経過措置とかさまざまな配慮が、導入する場合は必要だというふうには思います。
 いずれにせよ、リスク構造調整の導入は、保険者間の競争の公平、被保険者間の負担の公平という観点から、諸外国では常識とされているものであり、抜本改革あるいは構造改革の最重点の一つになるべきものである、こう考えますけれども、大臣、これはいかがでしょうか。
坂口国務大臣 保険制度の改革をいたしますときに、我々の方はいわゆる統合化ということを先に掲げているわけでございますが、統合化をしたといたしましても、その後にどういう保険者間の調整をするかという問題は起こってくることは間違いないというふうに私も思います。
 今お話のございましたように、所得、年齢、性別、それからもう一つ、家族とおっしゃったんですかね……(金田(誠)委員「ドイツではそうです」と呼ぶ)この四点について一つの調整を行うというのは、どういう尺度で調整をするかということでありますから、一つのこれは非常に参考になる方法だというふうに思いますが、この尺度が多くなれば多くなるほどなかなか調整する手間がかかる、なかなか大変だという気はいたしますけれども、しかし、こういうことをやっている国もあるということは、できるということでありますから、また、コンピューターが非常に進んでまいりました今日でありますから、決してできないことではないというふうに私も思います。
 そうした調整を行いますときに、その前段階で、現在ございます組合健保、政管健保、そして国保と大きく分かれましたこれらの問題をどういうふうに今後整合性を図っていくかということの一つの目安をつけて、三年なら三年、五年なら五年の間に統合すべきものは統合をしていくというような一つの計画を立てながら、そして、その中でこの調整をどうしていくかということを、同時進行かあるいはまたそうした計画に続いて行うか、そこはいろいろやり方はあるというふうに思いますけれども、私は、これは現在の保険制度のあり方の問題とあわせて考えるべき問題だというふうに思っています。
金田(誠)委員 十分に理解し切れなくて伺っておりました。保険制度のあり方の問題、あるいは地域ごとに統合していく問題などとこのリスク構造調整というものの考え方は、必ずしもセットで考えられるべきものではないのではないかなと。私の聞き取り方がちょっとまずかったのかもしれませんけれども。
 いずれにしても、保険者が分立している場合、今は五千幾つに分立しております、これが幾つにこれから統合されていくかはわかりませんが、一つになることは不可能なわけですから、すべきでもないことですから、後でどのように保険者を再編成すればいいかということについては触れさせていただきますけれども、いずれにしても分立した保険者間のリスク構造調整は必要である。それは、年齢であったり所得であったり、さまざまな、国によってやり方も違いますけれども、物の考え方として必要であるんだ。これは抜本改革の基本的な柱になる。こういうふうに受けとめさせていただいてよろしいんでしょうか、今の御答弁は。
 そうであるならば、それがわかるような、法律の中には、リスク構造調整のリの字も、実は提案されておる中にはないのですよ。そういうものがこれから何らかの形で、この法案が廃案になれば別ですが、廃案にならないとすれば書き込まれてくるのかというようなあたりも含めて、とにかく非常に抜本的な柱の一つだ、保険者間の調整というものはと。その辺のところをひとつお聞かせいただけませんか。
坂口国務大臣 先ほど申しましたのは、私は、いわゆる保険というものの枠組みをどうしていくかということと、そしてそのでき上がりました保険者間の調整をどうするかということとは、セットで考えないといけないということを申し上げたわけでございます。
 それは、五千なら五千あります保険者間で調整を先に行うということを決めるのではなくて、もう少し、政管健保なら政管健保につきましても一つではなくてもう少し割った方がいいのではないかとか、あるいはまた余りにもたくさん分かれ過ぎております市町村の国保はもう少し合併をしたらいいのではないか、そうした一つの方向性を、将来を眺めながら、それとあわせてその間の調整をどうしていくかということをやはり考えなければ、現状の五千なら五千以上に分立をしておりますこの保険者をそのままに考えた上でのいわゆる調整というのは、少し、そうすると将来すぐにまた考え方を変えなきゃならないということにもなる可能性がある。
 何も私はリスク調整を否定しておるわけじゃなくて、それはいずれにしてもやらなければならない大事な柱だということは私もよくわかっているわけでありますが、その進め方の手順の問題としてはそういうことではないかということを私は申し上げたわけであります。
 そのリスク調整を、四項目がいいのか、あるいは五項目にするのか、三項目の方がいいのか、日本は日本のなかなか難しいこともあると思うのですね。先ほどもお触れになりましたように、所得なら所得の問題を調整しようというふうに思いますと、サラリーマンの皆さん方の場合には調整できますけれども、自営業者の皆さん方との間でやろうと思うと、やはりそこには捕捉の問題が出てまいりますから、そこをどうするかというような問題にもなってくるわけでありますから、そこは四つがいいのか三つがいいのかあるいは五つがいいのかということはもう少し議論をさせていただく必要がありますが、そういう調整をやらなければならないということは、これはもう私も御指摘のとおりだと思っております。
金田(誠)委員 とにかく調整が必要だということでは認識は一致させていただいたというふうに思いますが、保険全体の枠組みをどうするかということと調整というものはセットで考えなきゃならないという大臣のお話でございましたけれども、私は、枠組みがどうなろうとも、今のままであろうとも、調整というものは必要だ。
 今は非常に不完全な形で、税による投入の仕方を多少変えるとか、老人保健の分にはまた税を入れるとか、あるいは老人保健制度という拠出金方式自体もある意味での財政調整だということでやってきたのですが、これが限界に達した。そこで今問題が生じているわけで、その場合、原点に立ち返る。さまざまな、暫定措置といいますか、そういうもので今までつないできて、ここまでもったらよしとしなきゃいけない。したがって、原点とは何だというと、分立する保険者間のリスクの構造を調整していく、これがヨーロッパ型社会保険の到達した一つの結論です。
 僕は、これは後戻りすることはないと思います、方法は多少変わることはあったとしても。その原点に立ち返って、社会保険の保険者の枠組みなどがどうなろうとも、これはセットでないです、セットでなくてリスク構造調整というものは基本的な理念の一つとして必要だ。ぜひこういう立場で――御答弁いただけますか。よろしくお願いします。
坂口国務大臣 私が保険者の統合の話をいたしましたのは、統合をいたしていきますときに、これは統合、一元化と言っていますが、なかなか一元化は難しいと思いますが、統合化をしていきますのもなかなか大変な作業なんだろうというふうに思うのですね。
 ですから、統合をしていきますときに、それは統合ではなくて財政調整でいかないかという話は必ず出てくるだろうというふうに私は思うのです。そこをどこで折り合いをつけるかということが非常に大きな問題に将来なってくることだけは事実だというふうに思っています。だから、統合か、それとも財政調整でいくのかという話に多分なってくるだろうと思うのですね。そこは私もよくわかるのです。
 ただし、初めからもう統合の問題を排除してしまって、そして調整の問題だけをいきますと、五千のままでなかなか動かないということになりますから、それではこれからの超高齢社会の中でやっていけない保険者がたくさん出てくる。そこを私は、やはりセットでもう少し考えながら、調整の問題もそこにあわせて考えていくということでなければならないのではないかということを主張した次第でございます。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
金田(誠)委員 大臣のお考えはわかりました。
 統合の問題というのはまた後で触れさせていただきますが、統合というものは社会保険方式のよさをそいでしまうということになりかねない、私はこう思っております。
 社会保険は、保険者が分立してその間に競争があってこそ社会保険として一番のメリットを発揮する、こう思うものですから、余り私の頭には、統合によってリスク構造調整にかわるような形になるというようなものは念頭にございませんでした。そういう中でのちょっとしたすれ違いがあったのかなと思いますが、リスク構造調整自体の必要性については御理解をいただいた、こう受けとめさせていただきます。
 そこで、次の項目でございます。今まで、突き抜け方式、リスク構造調整、二つ申し上げてきましたが、三つ目は、社会保険という枠の中での競争原理の導入についてでございます。
 再三主張しておりますけれども、保険者が分立していることが重要、これが私の基本的な立場でございます。その意味は、社会保険という管理された制度の枠内であっても、競争原理を機能させるためには保険者が分立していることが要件になるということでございます。
 この管理された社会保険の枠の中での競争ということを、千葉大学の広井良典先生は、マネージドコンペティションというような横文字で言っておられるようでございます。元厚生省にいらした方でございますから、かなり信頼できる方ではないかなと私は思っているわけでございます。
 そこで、ヨーロッパでは、アメリカのHMOなどとは異なる形で、社会保険の枠内において競争原理が取り入れられ、保険者間の競争が医療提供側との適度の緊張関係を生じさせることによって、医療費の適正化や医療の質の向上に成果を上げている、こう聞いております。ドイツなどでは、リスク構造調整によって保険者間の競争条件を公平にした上で、さらに被保険者による保険者の選択制を導入しております。これにより、保険者は競争に敗れれば加入者を失うことから、保険者間の統廃合も加速をしている、こういう状況でございます。
 医療というサービスの特徴は情報の非対称性にあり、市場原理は十分に機能し得ない、そもそもそういうものでございます。情報の非対称性というものが大きなネックになっております。ここに保険者の重要性があり、マネージドコンペティションの必要性があると言われております。
 これに対して我が国の現状はといえば、保険者は医療提供側と直接契約することができない。被保険者は保険者を選択することができない。したがって、保険者間に競争は存在しない。医療提供側にもそれぞれの保険者にアピールするというようなインセンティブは働かない。マネージドコンペティションだというような状態以前の状態に我が国はある、こう思います。
 ところが、今回提出されている法案、あるいは取りざたされているさまざまな情報をお聞きしますと、こうした現状を改善する要素といいますか考え方は全く見えてまいりません。質問の冒頭で指摘したとおりの、日本型の談合や官僚主導を残したままでのアメリカ型志向というふうになっていると思います。
 例えば、社会保険の守備範囲の縮小。経済財政諮問会議などは、こんなことばかり言っているわけでございます。自己負担の増、特定療養費の拡大、混合診療の導入、株式会社の参入の解禁、こういうことばかり取りざたされているわけでございます。失敗したアメリカ型のつまみ食いであり、社会保険制度の中での改革とはなっていない。社会保険というものを維持した上で、その中で競争原理が働く仕組みというのが私は大事だと思います。
 必要なマネージドコンペティションの考え方は排除して、民間保険のアメリカ型の考え方を導入しようとすることは私は理解できませんが、この辺の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
宮路副大臣 御指摘のありましたような現在の公的医療保険制度、その中において、そのもとで保険者機能をどうすべきかということにつきましては、各方面からこれまでもさまざま御意見、御提言を賜っているところでもあるわけでありまして、医療費の適正化やあるいは医療の質の向上という面から保険者の機能を重視していく、保険者の機能を強化していくということが大切であることは論をまたないわけであります。
 そこで、厚生労働省といたしましても、これまで、国民皆保険制度というもの、それからフリーアクセスであるという、私ども、世界に冠たる医療保険制度だというふうに思っておるわけでありますが、その根幹となりますものを堅持しながら、その中で、保険者の機能強化や情報提供に基づく患者の選択等を通じて、医療費の適正化や医療の質の向上を図っていくことが必要であるというふうに考えていることは、先ほど申し上げたとおりであります。
 今、アメリカ型の考え方を導入しようとしているのではないかというお話でありましたけれども、私どもは決してそういう方向を目指しておるわけではないわけでありまして、先ほど、株式会社の参入の解禁の問題、あるいは混合診療の導入についてのお話も御指摘あったわけでありますが、今度の総合規制改革三カ年計画の中においてもこの問題は大変議論をされたところでありますが、私どもとしては、そういう方向はとらないということで、その三カ年計画の中でもしっかりとした対処をさせていただいた次第でございます。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
金田(誠)委員 私の指摘が違うということなんですが、やっておられることを見ますと、まさに私が指摘したとおりのことをやっておられるわけで、どうも答弁の趣旨が私には十分理解できません。いずれにしても、もう時間がなくなってまいりまして、次の質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、政府は、社会保険方式を堅持して我が国の改革を進めるということを明確にする必要がある。民間保険のアメリカの制度をつまみ食いするなんということは、もうやめていただきたい。社会保険という制度をきちっと堅持した上で、それでもヨーロッパではその中での競争原理というのが働く仕組みをつくっているわけですから、そういう観点から考えていただきたいということでございます。
 そうであるとすれば、副大臣とは今そういうことで一致したんだなと思っているわけなんですけれども、考え方としては。やっていることは別にして。一致したとすれば、まずやれることは、中医協を改組して、保険者側と医療提供側が対等の立場で公開の場で協議決定する仕組みをつくる、これが第一歩でないでしょうか。
 その第一は、すべての会議を公開して、氏名の入った完璧な議事録を作成することでございます。一つ一つ聞くことになっていたのですが、時間がないもので、まとめて聞かせていただきます。これが一つ。
 もう一つは、保険者側の委員として、医療関係のNGO。これは、被保険者の立場を今反映する部分がないわけですよ。したがって、患者団体などのNGO、結構あります、このNGOを入れること。あるいは、保険者によっては、さまざまな創意工夫で成果を上げている保険者、個々の小さな保険者でも結構あります。そういう現場の声を代表する保険者も考えるべきではないか、こう思います。これが二つ目。
 さらに、医療提供側の委員としては、病院経営者の代表、看護師など医療従事者の代表を加える。これについてどうか。
 さらに、公益委員の役割ですが、これは議論があるかもしれませんけれども、今ほとんど発言もされておらない公益委員ですから、きちんとした仕事の場をつくるべきだと思います。保険者側と医療提供側がまずがっぷり四つでがんがんやる。どうしても話がつかない。そのときに、公益委員が第三者として公開の場で協議をして、これはこうだという軍配を上げるような、そういう公益委員の制度にしたらどうか。これが一つ。
 さらに、社会保険という制度の枠内において競争原理を機能させるには、保険者と医療提供側の直接交渉、直接契約がポイントになる。中医協の改組、今申し上げましたけれども、これと並行して、この直接交渉、直接契約を順次進めるべきだと思いますが、いかがか。
 最後。以上の改革の進行を見ながら、被保険者による保険者の選択制についても視野に入れて検討すべきである、こう思うわけです。
 この管理された中での競争原理の導入、まだまだたくさんあるのですが、通告していた分、一つ一つ聞くことになっていた分を今まとめてお尋ねいたしました。順次御回答いただければありがたいと思います。以上でございます。
坂口国務大臣 すべてうまいぐあいに御答弁できるかどうかわかりませんが、いわゆる診療報酬体系の基本の見直しを今主張いたしておりますけれども、この中医協のあり方とは非常に大きなかかわりのある話でございます。
 この診療報酬体系のいわゆる基本となります尺度、物差し、何を基準にして診療報酬を決めるのかということ、これをもう少し見直さなければならないというふうに思っております。現在余りにも複雑になり過ぎまして、そして、診療報酬の結果はもう東京都の電話帳ぐらいある。これはなかなか、どれがどれなのか調べよと言われたって、なかなか我々にはわからないような状況になっている。それはやはりもう少し明確に、だれが見ても、なるほどこういう物差しでこれは高いのか低いのかというのがわかるようにしなければならないというふうに思っています。
 その辺を行いますと同時に、中医協のあり方ということにつきましても、私はあわせて議論をする必要があるのではないかというふうに思っています。これは関係者、そんなことを言いますと耳をそばだてまして、何事ぞ、こういうふうに言われる可能性があるわけでございますけれども、私は、この診療報酬体系の見直しというのは、やはり中医協のあり方とも大きくかかわってくるというふうに思っている次第でございまして、そこもあわせて議論をさせていただきたいというふうに思っておりますことを、まず申し上げておきたいと思います。
 そして、その後、その中身を一体どうしていくかということは、今いろいろなことをお挙げいただきましたが、今八対八対四で成っているわけでございますから、これはそれなりに一つの議論の場というものができているわけでありまして、いわゆる医療側、そして今度はそれを受ける側のそれぞれ代表、これも選び方というのはなかなか難しいと思うんですね。中には、労働組合というのが本当に利用者側の代表だと言えるかというふうに言う人もおれば、NPOも本当にそこまで成長しているかと言う人もおりますし、これはなかなか私は難しい話だと思うんですが、しかし、現在までの状況を踏まえて、八名八名、出席をしていただいているわけでございます。
 そして、それは公開にしているわけであります。公開にいたしておりますので、でき上がりました文書は、概要を示すということにいたしております。しかし、それはもう公開にしているんだから、私はそれでお許しいただけるのではないかというふうに思いますけれども、もっとそこは、公開にしてもなおかつちゃんとやれという話であれば、それはできない話ではないというふうに思っている次第でございます。
 まだまだほかにたくさんのことを御指摘いただきましたけれども、基本的な問題としてはそういうことだろうというふうに思っておりますので、そうした基本を踏まえながら、これから議論を進ませていただきたいと思っております。
宮路副大臣 御指摘のありました、現在の社会保険制度の枠内で競争原理を高めるという観点から、保険者と医療提供側との直接交渉あるいは直接契約といったものを進めるべきではないかというお話があったわけでありますが、そのことにつきましては、御案内のように本年三月末に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画、その際にも大いに議論がされたところでありまして、その結果、先ほど申し上げたフリーアクセスの堅持、そういう大前提のもとで、そのことに十分配慮しながら保険者機能を高めていく、保険者機能の自主的な発揮という観点から、保険者と医療機関との合意のもとで保険者みずからが審査支払いを行うこと、あるいは診療報酬について医療機関と個別に契約をするといったことについての道を開くことが必要であるというふうに考えておるわけでありまして、今後これを実行に移してまいりたい、こう思っておるところであります。
大塚政府参考人 最後に被保険者による保険者の選択制についてのドイツの例のお話がございましたので、簡単に御答弁をいたします。
 被保険者による保険者の選択制という制度、これは理念的に考えますと大変興味深いテーマであると私どもも思っておりますけれども、ドイツにおきましても、比較的新しい制度であるということと、最近私どもの承知しておる範囲では、やはり一種のモラルハザードと申しましょうか、疾病リスクが低い者を中心に移動が起きる。保険者の方も、疾病リスクの高い人につきましては事実上、これを排除まではいたしませんけれども、アプローチしにくいというような問題も提起されておるようでございます。
 さらに、我が国の事情に即して考えますと、現在のさまざまな保険者の状況、あるいは国民皆保険という強制適用、強制徴収の仕組みにこうした制度がなじむかどうかという点も相当幅広く議論をしませんと、直ちに今結論を得るというような問題ではないとは存じますけれども、冒頭に申しましたように、理念的には大変興味深い一種のドイツにおける試みと考えておりますので、よく研究をさせていただきたいと思っております。
金田(誠)委員 最後、欲張りまして、時間がちょっと過ぎまして申しわけございません。
 以上で終わります。ありがとうございました。
森委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十一分開議
森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。五島正規君。
五島委員 健康保険法の審議、二日目に入ったわけですが、大変大きな問題のある法案でございますが、この中身の全体的な問題について議論する前に、厚生労働大臣にお伺いしておかなければいけないことが幾つかございます。
 一つは、前回の一般質疑においても指摘したわけでございますが、今回の診療報酬の改定に関する問題でございます。
 今回、診療報酬の改定に際しまして、六カ月を超える長期療養患者、社会的入院であるということでもって、六カ月を超えた入院患者に対しては、いわゆる診療報酬上での入院基本料を三カ年で一五%カットしていく。そして、その患者については、これは特定療養費として患者の自己負担を医療機関の方で自由に取ってよろしい。もっとも、標準額としては、できるだけ差額に相当する分にしてもらいたいという願望は述べておられますが、法的には全く青天井のままでそういうふうなものをやるということになりました。
 そして、これについてさまざまな批判がある中で、さらに今回厚生労働省は新たに通達を出して、長期にわたって、六カ月を超えて入院している患者に対して、三カ月の間介護保険に移行するならば、改めて、いわゆるリフレッシュ、新規の入院として取り扱ってよろしい。三カ月間在宅で介護あるいは療養される、あるいは三カ月間介護施設に入所される、さらには、念の入ったことに、同一医療機関において介護療養型病床に三月間転床しておれば、その場合は新規のものとして、特定療養費扱いじゃなく、医療費についてはいわゆる削減ないままに給付するという通達をお出しになりました。
 これは一体どういうことなのか。病院の中で、介護療養型と医療療養型との間で患者の転床をやっていけば、今回の診療報酬改定の中におけるいわゆる入院基本料の削減の対象にはしないということで、言いかえれば、病院の中での、患者を転床させて、たらい回しにすることを暗に勧めておられる。
 何の問題として、一体、介護保険というものをどう考えているのか。もし介護保険の対象であるならば、新たに医療が必要であるという根拠なしに、なぜ介護から医療の方へ移していくのか。介護に移すのであれば、当然介護判定を行い、その上で、介護度判定をした上で、介護の保険の適用になっていく。その際に、医療ではなく、介護が必要であるという判定がされるはずです。それが、三月介護保険の方に行けば、また新たにリフレッシュする。厚生省は、今回のこの診療報酬の改定の中で、この部分、一体何をしようとしておられるのか、明確にお答えください。
田村大臣政務官 お答え申し上げます。
 先生おっしゃられますとおり、今回、長期入院に関しまして特定療養費化ということで話の方を議論していただいておるわけでありますけれども、これは、おっしゃられるとおり、たらい回しといいますか、それを病院間で、まあ一定の病院、そしてまたそこを移って次の病院に行ったときにそれを通算することによって、たらい回しを減らそうということで、通算することを今回内容として盛り込ませていただいております。
 同時に、先生がおっしゃられましたとおり、三カ月介護の世界等々に行った場合に関しては、一たんそこで病院といいますか、医療の方の世界での治療が済んで介護の方に行かれた。介護で、三カ月以上介護を受けられているということは、一たんそこでもう医療としての治療が終わって介護の世界に行ったわけでありますから、仮にそれからまた新しい病気でありますとか、また以前の病気が再発をした場合に戻ってくる場合には通算をしないという話でございまして、もちろん、同一医療機関といいますか、同じ中での管理者等々が運営をしております病院と介護施設等々を行ったり来たりすれば、それはたらい回しじゃないのかと言われればそのような形にもなるのかもわかりませんが、あくまでも、医療機関、そして社会福祉法人にいたしましても、もとは善意といいますか、患者の方々の命を考えたりとか、また福祉を考えたりとか、そういう世界の方々でございますので、基本的には悪用をされないであろうというふうな考えのもとで、今回、介護の方に三カ月以上行った場合には、介護の世界に一回入られたのであろうと。ですから、再発すれば、またそれは通算はせずに、他の病院、医療機関をたらい回ししたのとは区別をいたしましょうという内容でございます。
五島委員 政務官が今大変おもしろいことを言われた。医療は必要なくて介護に行った、その上において、また新たに病状が発症した、あるいは医療が必要になった、その場合は通算せずにやっていくんだというふうにおっしゃっている。そうであるならば当たり前のことなんです。ところが、通達はそうではない。そこで新規入院として取り扱うということだけが記載されている。
 もし政務官が言われるのであれば、同一病名でもって、同一症状でもって介護から医療へ移すことは認めないということが何らかの通達その他において示されない限り、あの通達の内容は、六カ月間入院しておりました、医療療養型に入院していました、医療費は自己負担でお願いしなければいけない、では、介護に移りましょう、そこでは当然介護の判定をやらなければいけないんです。それは非常に問題がありますが、介護判定した上で、要介護となった、三月たった、同じ病名でまた医療に戻してもよろしいという内容になっている。
 もし政務官が言われるようにするのならば、どういうケースにおいて戻すのか。通達も何もないわけですが、本当に、政務官言われたように、そのようにこの通達は読めるとおっしゃるんですか。再度お伺いします。
田村大臣政務官 三月十八日の通達でありますけれども、退院の日から起算して三カ月以上の期間、同一傷病について、いずれの保険医療機関に入院することなく経過した後に、当該保険医療機関またはその他の保険医療機関に入院した場合には、(2)の2ですから、現に入院している保険医療機関において通算する算定期間、つまり期間を算定するということでありますけれども、該当するものである入院期間の計算方法は、現に入院している保険医療機関において通算対象入院料を算定していた期間を通算するものであることということでございます。
五島委員 だから、それはおかしいと言っているんですよ。
 いいですか。これはどう読んでも、例えば脳卒中の後遺症で六カ月以上入院している、その方が六カ月たった場合に、介護へ移って三月たってまたその状態において施設の利用が必要であった場合に、医療療養型へ移した場合、六カ月経過しているにもかかわらず再度新規の入院として、すなわち診療報酬で入院基本料が削減されることなく六カ月間は入院させてよろしいよという内容じゃないですか。これをあなたがおっしゃっているように、新たに病気が発生した、新たに病状が再発したということとは全然読めないですよ。そうは書いてないじゃないですか。
坂口国務大臣 病院に入院をしておみえになって、そして六カ月間入院をされてある程度よくなられる、老健施設なら老健施設にかわられる、そして老健施設に行って、それでもうよくなられて家庭に帰られるものというふうに思っていたけれども、再びそれが悪化する場合がある。その悪化しますときに、それは別な新しい病気で悪化するかもしれないし、もとの病気と同じ病名で悪化するかもしれない。だからそこは、この病気はだめ、この病気はいいということは言えませんから、一度三カ月間老健なら老健に行っておみえになった皆さんであったとしても、病名のいかんを問わず、そこに新しい病気が発生するとすれば、それは新しい病気としてもとへ返ってもよろしい、こういうことではないかと思います。
五島委員 大臣は、大臣のお名前で告示された内容ですから、そのようにおっしゃらざるを得ないんだろうと思います。しかし、現実問題として、ここに書かれている内容は、では一たん介護に移った患者さんが、要介護度が高まったからといって医療に移るんじゃなくて、要介護度が変わってくるだけのはずです。そこに新たな疾病が発生した、新たな、介護ではだめな医療の状況が発生した場合に医療の側に移ってくることは、こんなこと、言わなくたって当たり前なんです。それがこの前の建前のはずです。
 どうも厚生省は介護保険と医療との区別を全然つけていない。社会的入院はだめだと言いながら、今の大臣の御意見を敷衍するならば、六カ月たったって医療が必要で介護に移せないやつがいるかもしれない、その患者さんを無理に三月間よそへ出そうというだけじゃないですか。一体ここのところは、介護保険という問題と医療保険との関係、どのように整理しておられるのか。今の御説明では、恐らくここにおられる議員全部にお聞きになっても理解できないと思う。恐らくこれが実際された場合、病床を転床するというだけでの社会的入院を新しい形で温存させるだけじゃないですか。それについては大臣、どうお考えですか。
坂口国務大臣 それは少し違うと私は思いますね。私、申し上げていることは、この場にお見えの皆さん方、よくおわかりをいただけると思っておりますが、六カ月なら六カ月入院をしていて、もとの病気が治らない、まだそれは継続してそこに置いておかなければならないというときには、別に老健施設へ移さなくてもいいわけですよ。そこで入院していただいて、さらにその病気を治していただくように専念をしていただく、あるいは、医療の側から見ればそれを徹底的に治していく、こういうことですから。
 六カ月たった時点において、病気の方は大体回復をして、あとは医療というよりも福祉ですよ、家庭へ帰るその前段階としてのことをそこでやらなければならないというような患者さんについて、病院の側も、いやもうこれはここまでよくなったら、あとは老健施設なり、それがケアハウスなのかわかりませんけれども、そうしたところでどうぞひとつ、しばらく御家庭でいつまでの間養生してくださいと言えるような人たちを、老健施設なりケアハウスなりに行っていただく。行っていただいたんだけれども、しかし人間の体というのはなかなか予測できませんから、もういいと思っていたらまた悪くなったというときには、どうぞまたもとへ戻ってくださいという話ですから、何らそこに矛盾はないと私は思っておりますが、五島先生、それはだめでしょうかね。
五島委員 無理して病院から介護の施設へ送り出した、あるいは在宅へ送り出した、その結果、とても介護では無理だということで医療に帰ってきたというケースがあり得ることは、私も理解します。そのことを指しておられるのであれば、そのことについてのきちっとした基準をおつくりになるべきだ。わざわざ念を入れて、同一の医療機関の中においても、介護療養型病床に三月間移せばリフレッシュしますよ。これは非常に介護保険の問題とも絡んでくるわけですが、医療型の長期療養病棟と介護療養型病棟の中における介護度判定の問題というのは、そうでなくてもこれまでもいろいろ問題があると言われている。
 そういうふうな通達が入ってくることによって何が起こるのか。間違いなく、同一医療機関の中において、三月間だけ介護へ移しました、また医療へ移しました、このたらい回しが起こるだけじゃないですか。一方で、お金を持っている人からは青天井の特定療養費だという形でお金を取ってやっていく。ここで老人の医療や介護という問題が新たに大きな別の二つに分かれてくる。たらい回しをされる患者さんと、お金を持っていてやっていく患者さんが出てくる。
 私は、この問題はそれでいいのかどうかという問題は健康保険法の本体の議論の中で真剣にやらなければいけない問題だと思っている。少なくともこういう問題が大臣告示ということでやられていい内容だと私には思えない。現実にそういうふうなことが起こり得る可能性を、大臣、大臣も医療関係者、医師としてもよく知っておられる、そういうふうな患者のたらい回しが起こるということを予想されませんか。もう一度お伺いします。
坂口国務大臣 現状におきましても逓減制がとられているものですから、三カ月、六カ月というふうになりますと、その医療費が逓減されていきますので、そしてたらい回しが現状でも起こっている。これを何とか方法を変えなきゃいけないというのが今回のこの診療報酬の改革の一つの考え方だったと思うんですね。それで、一部自己負担をしていただくというのであればもう少し、その人が御希望になるのであれば、病院におっていただいてもよろしいですよ、そのかわりに一部御負担をしてくださいよということでございます。
 いずれにいたしましても、病院というのは、ある程度入院をされて、そしてよくなればそこを、ほかに、御家庭にお帰りになるか、あるいは福祉の関係のところに行かれるか、あるいは中間的な老健施設に行かれるか、どこかには行っていただかなければならない人たちでありますから、今までのようにいつまでもいつまでも、もう病院に終生いるというようなことは、病院の性格上それは避けなければならないのではないか。これはもう五島議員もよくおわかりをいただけるというふうに思うんです。そうした考え方の中で、今回、その人たちをどうするかという話になったわけであります。
 今、たらい回しになるではないかというふうにおっしゃいますが、そこは、病む人たちが帰っていく家庭がちゃんとできているかどうかということにかかってくるわけでありまして、家庭が受け入れないといったときには、その人たちは、福祉施設なのか老健施設なのか病院なのか、そこを、どこかを選択していなければならない、こういうことになるわけですね。
 だから、病院から、それが老健なのかあるいは特養なのかそれはわかりませんけれども、そして、そこでまた悪くなればもとへ戻るということはそれは起こり得る話でありまして、本来ならば、それは御家庭にお帰りいただいて、そして在宅介護をお受けいただくのが一番いい。しかし、中にはそうはいかない方がある。その皆さん方は、そうすると、病院と、特養か老健施設かケアハウスか、その辺のところを選んでいただいて、行きつ戻りつをしていただく人生にならざるを得ないというのは、それは私も理解できるわけであります。症状に応じてそこは変わるということだというふうに私は思います。
五島委員 時間がございませんので、この問題で随分時間をとって、それではまずいわけですが。ただ、今の大臣の話を聞いていますと、大臣は、介護の基盤整備がまだ不十分だからこういうことをしたとおっしゃっているのか、それとも、社会的入院の中で、介護のいわゆる介護度判定の中で、施設に入れない程度の障害しかない、しかしながら在宅では対応できないという患者さんについては自費でもって医療療養型に置いておく、そうでない人については介護施設あるいは在宅との間においてたらい回しになったとしてもやむを得ないとおっしゃっているのか。
 いずれにしても、これは社会的入院をどうするかという対策にとっては全然何もない。社会的入院をなくするためにと言いながら、こういう制度をやっておきながら、何の足しにもなっていないということを大臣自身もよくお認めになっているというふうに今の御答弁から感じられます。
 時間がありませんので、もう一つ、今回の診療報酬改定の中で大きな問題がございます。腎透析の患者さんの取り扱いの問題です。
 今回の腎透析の患者さんの取り扱いにつきましては、二つ大きな問題があります。短時間透析に医療機関を大幅にシフトさせてしまう。果たしてそのことが、例えばアクシデントの発生率、三時間透析でやるのも、五時間透析でやるのも、治療効果あるいはアクシデントの発生率、同じと考えているのかどうか。また、何のために、いわゆるこれまでと違って短時間透析で一律の保険給付にすることにしたのか。これは、そのことによって医療費が削減されるからとお考えなら、私はそこは大きな間違いであると。
 現在、腎透析の患者は年間一万人ぐらいふえていっています。そして、その大半が糖尿病患者からの透析患者です。そして、今、腎の透析医療機関の中において、大変な努力をしながら、従来、一日に二クールぐらいの透析で、そしてそのキャパを超えて患者がいるものだから、少しでも透析開始をおくらすために多くの医療機関が努力している。もしこれが三時間透析になるとするならば、間違いなく、医学的には誤りであると言えない状態において、透析の開始が半年ぐらいは早まってくるだろうと私は考えております。結果的にいわゆる透析患者のパイが大きくなってしまうんです。これが例の自然増というものの一つの大きな原因です。
 今回のこの透析患者に対する診療報酬の、短時間にしてもよろしいよという、そしてそのかわり診療報酬の点数を、これまで三時間透析をやっていたところにしてみるとややふやし、四時間、五時間透析をやっていたところからは大幅に削減するというこの点数のつけ方というのは、医療費の抑制あるいは患者の安全、あらゆる面から見て、私はマイナスの効果しかないだろうというふうに思っています。
 あわせてもう一つ、この透析患者の取り扱いの問題で、私はとんでもないことをやっていると思うのは、透析患者の食事についてです。
 食事すべてをいわゆる患者負担にするよということで統一するんであれば、それはそれの議論があるとしても、まだ一貫性がございます。今回のこの通達、何ですか。仕出し屋から弁当をとって患者に飯を食べさせるときは、これは患者の自己負担でよろしい。しかし、透析食を患者に提供するならば、これは技術料として診療報酬に含まれているから、これは患者から取ってはいけませんよと。
 多くの透析患者が糖尿病やそういう合併症を持っています。各医療機関においては、透析患者の食事というのが、一番やはり栄養士が必死になってやっているところだと思います。それをやるならば診療報酬上は点数を出さない、仕出し屋弁当を食わすんなら、そのことによって患者にとっていかに悪い影響があろうと患者から自己負担を取ってもよろしいよ、これが厚生省が考えている医療サービスの混合医療なんですか。一体なぜこういうばかげた方針になったのか、お答えください。
田村大臣政務官 人工透析でありますけれども、透析時間が標準化をしていくというのは、実質的に、透析技術が進んでまいりまして、以前よりかは時間がかなり短縮してきておるという事実が一つあります。
 それともう一つは、四時間から五時間ぐらいのところにシフトがかなりしておりまして、大体八〇%ぐらいの方々がシフトされておられる。五時間未満ということを考えれば九一%ぐらいの方々がそこにシフトしてきておるということでありまして、そういう意味からいたしまして標準化を進めていこうと。
 ただ、診療報酬で、先生おっしゃられましたとおり四時間、三時間の方々よりかは診療報酬が上がって、五時間未満から比べると診療報酬が下がっている、そういう部分で集約を短時間にしていくんじゃないかというようなことをおっしゃられました。
 危惧されないことはございませんが、ただ一方で、診療報酬を下げるという見直しが一つの医療制度改革の流れの中であったということも事実でございまして、決して透析患者の方々に対して医療サービスというものを劣化させるという意味ではないんですけれども、今回、この四時間、五時間という、シフトするところに、集約するところに標準化すると同時に、診療報酬を全体として下げたということを今回提案させていただいておるわけであります。
 それと、食事の方でありますけれども、この食事も、以前から比べますと、今も言いましたとおり時間がかなり短くなってきておるということで、全員が全員食事をおとりになられない、つまり、食事をとらなくても済まれる方も出てこられるということもあります。
 ただ、九%とはいえ、やはり五時間、六時間、七時間、要するに六時間以上の方々がおられる。こういう方々は、すべてだとは申しませんけれども、やはり一定の他の病状といいますか、いろいろなものを抱えておられるということがありまして、そういう方々は今までも特別加算ということでやってきたわけでありますけれども、それを枠を広げまして、例えば妊婦の方でありますとか、また人工呼吸を実施中の患者の方でありますとか、またうっ血性心不全の方でありますとか、十二歳未満のお子さんでありますとか、こういう方々に枠を広げてこの特別加算というものをふやした。ですから、この特別加算の診療報酬の点数の部分で、ある意味では長時間かかって食事をとられる方々というものは、すべてとは言いませんけれども、食事療法部分を見ていただくというような考え方になってくるのであろう、このように思っております。
 混合診療だというお話がございましたけれども、これは、もちろん外からとるわけでありますから食事療法ではございませんでして、医療ではございませんので、混合診療という言い方は若干ちょっと違うのかなというふうに私は思います。
 以上でございます。
五島委員 恐らく、診療報酬の改定というのは、官僚がつくったのを大臣告示で出される。きょうは、政府委員の御答弁は御遠慮させていただいて、大臣、副大臣、政務官にお答え願っているので、田村政務官は非常に誠実な人だと知っていますから、大変苦労されているんだろうなと思いながら、今の御答弁はいただけない。これは、提案されているのではなくて、既に実施されている法案です。
 その中で、今の答えというのは、単純に言えば、本来なら、短時間透析ができる人というのは比較的お元気な方ですよ。ところが、短時間透析ができないような重症の患者さんも結構いる、だから幾つかに分けてきた、それをなくしてしまう、一律にしてしまう。医療の方としては、診療報酬が引き下げられるとしたら、膨大なパイがある中において、パイという言葉は悪いですけれども、透析を待っている患者さんがおられるという状況の中において、あえて大変な努力をして透析の開始をおくらすよりも、では三時間透析でやったらどうなんだという話にどうしてもなっていくというか、出てくるわけです。結局それは患者にとって透析開始が早まるだけ、医療費にとってはそのことによってより大きな支出になるという問題ではないですかというのが一つ。
 もう一つは、透析の患者に対して食事を食べさせなくてもいいというのであればそれでもいいです。なぜそこで、仕出し屋弁当には自己負担を取ってよろしいよ、透析食を食べさせる患者からは負担を取ってはいけないんです、こういう分け方ができるんですか。もし技術料に入っているのなら全患者に対して透析食を食べさせなさい、技術料に入っていると言えばいいじゃないですか。そこのところを、仕出し屋弁当をとってくるのなら取っても構わないけれども、そういう患者食を出すのなら取ってはいけない、一体どういう理屈なのか。この二点を聞いているわけなんです。
田村大臣政務官 診療報酬が標準化して一本になったということで、短くすればそれだけ患者を回せるじゃないかという医療機関の考え方が生じないとは限らないと思います。しかし、一方で、医療というものを国民に対して、患者の皆さんに対して適切に提供する医療機関といたしまして、本来時間のかかるものを無理に短くするということが、果たして医療従事者として適正なのかどうなのかという医療道徳に関するそれぞれの認識というものもあると思います。
 ですから、そこら辺のところで、我々といたしましては、そんなむちゃなことはしないであろうというふうに思いつつ、今回こういうふうな形にさせていただこうと思っておるわけでありますが、当然のごとく、いろいろな事例、問題点が出てくれば、早急にその点は考えなきゃならぬな、そんなふうに思います。
 それから、食事の件でありますけれども、これは私もいろいろと考えさせていただきますと、確かに、先生の御指摘の点、いろいろと中に全く矛盾がないわけではないと思います。考えていけば、どうも筋がおかしいなという部分もあるわけであります。
 しかしながら、例えば現に透析が長時間かかる方々、こういう方々が食事がないというのはやはり非常におつらい部分があるし、また、そういう重症患者の方々の食事というものに関しては非常に配慮をされるものでもあるのであろうというふうに思いますと、先ほど言いました、特に、すべてとは言いませんけれども、いろいろな症状また状況をお持ちの方々、特別加算等々で、百二十点でありますけれども見ておる方々、こういう方々をどうするかという問題では、この特別の加算部分で見ておるというような考え方もできなくはないんじゃないのかなと思うわけでありまして、そういうために、このような形で診療報酬で見ておるという部分での食事の出し方もあるというふうにどうか御理解をお願い申し上げます。
五島委員 特別加算のついている患者だけ云々とおっしゃるけれども、今回の通達の内容はそういうことを限定していないんですよね。ともかく指導食を出せばそれは技術料の中に含まれているというのがおたくが出した通達なんです。そんなばかなことはないでしょう。わかっておられてそういう答弁をされる与党の立場に民主党もなったらどうしようかなと今から恐ろしい思いもするわけですが。
 これはやはり、この診療報酬の改定の問題を含めて、こういうふうなその場しのぎ、先ほどの入院の問題にしても、介護と医療との間の患者のキャッチボールの中でこんなとんでもないものが出てきたんだろうし、この問題にしたって、いわゆる医療費の抑制というものを、医療費の抑制の根本はどこなのかというのがわかっていない、診療報酬を引き下げればそうできると思っている。
 今、田村さんが、医療機関が悪質なことをして導入を早めるようなお話をされたけれども、今の現状はそうではない。本当にその腎透析というのは今パイが足りません。もうパイがないというか、できる施設が足りません。大変な努力をしているんですよ。例えば透析を専門にやっている医療機関から、透析がまだ入れないので、ともかく可能な限り、この患者さんを透析をせずに診れるようにぎりぎりまで任されることも我々はよくあります。その患者さんが半年早く透析が入ったからとして、医学的に誤った医療だとは到底言えない患者がたくさんいる。そういう努力というものを全く評価せずにこうなれば、結果的に、医療費の自然増という形で、抑制したはずが医療費が暴騰する。これまでの厚生省がやっているのは全部そうなんですね。そうなるのではないですかということを申し上げているわけです。
 何かもう三十分を超えてしまいましたので、私はきょうは少なくても六問質問をする予定だったんですが、一問目でこれだけ時間をとったら、あと五時間ぐらい質問させてもらわなきゃいけませんけれども、こういうふうなばかげた方向が何で出てきたのかなということを考えると、やはり例の経済財政諮問会議や総合規制改革会議の答申というものにまで戻らざるを得ないのかな。
 午前中、金田議員の質問に対して大臣が答えておられましたけれども、現在の医療費が膨大化していっている、それはなぜ膨大化していっているのか、簡単に、お年寄りがふえるからというふうに言われています。本当にそうだろうか。
 日本は世界一の長寿国になりました。そして、今、厚生省も健康寿命を大幅にふやそうとしている。事実、国民も健康寿命を延ばしたいという要求をお持ちになっています。健康寿命を延ばしたいということはどういうことになるのか。そういう要求があるから、医療に対しても非常に多くの御批判が国民からございます。と同時に、健康寿命の延長というのが、フィジカルな意味において全く異状のない人が高齢期まで存在する、そんなことは考えられない。
 健康寿命というのは、これはもう大臣が御専門だったはずなんですが、さまざまなコントロールや社会システムを通じ、疾患、医学的には疾病を持っている人々が社会的には健康人として機能し得る、そういう状況をつくるということが健康寿命の延長のはずです。血圧が高い人もおられるでしょう、糖尿病の人もおられるでしょう、あるいはその他さまざまな疾患を持っておられる方もおられる、だけれども、生活のコントロール、あるいは医学の力、そういうものを通じて社会的には健康人として機能していける、そのことによって健康寿命が延びていく、そういう内容であると思います。
 このニーズが高くなれば高くなるほど医療に対する国民のニーズが強まり、結果的に医療費を押し上げてくることは当たり前です。その関係をどのように考えてこの市場主義というものを導入しようとしているのか、私には理解できません。
 ここのところをきちっと押さえないままに市場主義を導入して、医療機関の中におけるサービスの競争は私も結構だと思いますが、市場主義の中には消費者の方の敗者と勝ち組が生まれてまいります。負け組にとっては健康寿命の延長をあきらめなければならない、こんなばかげたことはないだろうと思います。そういう意味では、この市場主義の導入というのは皆保険制度というものを早晩崩壊させてしまうんじゃないかというふうに考えています。
 また、そうしたものの何か途中過程のような形で、混合医療というものも主張されています。健康寿命を延長したいという多くの国民の要求、その多くが医療とのかかわり抜きにしてはこの健康寿命の延長が難しい、そういう状況の中において、どういう部分を一体混合医療にするか、これは全くこの諮問会議も総合規制改革会議も触れていませんね。
 この話をしますと非常に長くなりますので、これについては私の意見を述べるにとどめておきます。
 もう一つ。この会議の中において、具体的な問題ですが、非常に強調されております。それは、IT化、医療のIT化という問題です。医療のIT化というものを非常に強調されて、厚生省もそれをそうだというふうに受け取っておられる。
 医療のIT化の中で、電子レセプトの問題などいろいろ議論はありますが、それほど今すべての医療機関に通用するような電子カルテのソフトが開発されているわけでもない。一番の目の前に見えている問題はレセプトの電算化。九〇%以上の医療機関が、レセプトの電算化は医療機関の中ではできています。だけれども、レセプトの電算化をすることの意味と目的が見えない。
 現在、レセプトをオンラインで結ぼうがあるいはフロッピーなりCDで支払基金に持っていこうが、それは構わないと思うんです。それを支払基金ではどうしているか。全部それをペーパーに打ち出して、その紙の上で従来どおりの審査をしているわけです。これ、IT化ですか。一体、そのことによってどういう省力化なりあるいはデータの収集なりができるんですか。全部従来どおり、手書きのときと同じように、紙で打ち出して、紙の上での審査しかしていない。
 IT化と言う以上は、医療の問題ですから人の目を通さないといけない部分はあるにしても、基本的に機械審査というものを前提にしてこのお話は厚生省も受け入れられたんだろうと思う。そうだとするならば、当然、このレセプトの審査についてのプログラムについても、厚生省は、具体的に省内で独自に開発されておられるのか、それとも民間の企業に発注されているのかは別として、このプログラムが現実に検討段階に入っていないとIT化なんて言えない。
 その辺はどうなっているか、お伺いします。
田村大臣政務官 レセプトの電算処理システム化でありますけれども、確かに、先生がおっしゃられる部分、よく指摘をいただくところであります。
 昨年の保健医療分野の情報化に向けたグランドデザインという策定において、具体的な計画としましては、平成十六年度までに病院レセプトの五割以上、それから十八年度までには七割以上を電算化していこう、レセプトの電算処理システム化をしていこうということでありますが、今まで、かけ声が非常に高くなりつつありますけれども、実質的には全医療機関で〇・七%ぐらいしかまだ電算化されていないというのが先生の御指摘のとおり事実であります。
 いろいろな問題点があるんですけれども、よくおっしゃられますのが、レセプトの電算処理に用いる傷病名、それから傷病コードといいますか、コード体系、こういうものをやはり統一しないと全体を一つにできないということで、傷病名マスターの見直しというものを今随時環境整備を進めてきておるところでありまして、それで、これから、おっしゃられるとおりペーパーレス化を図って、一々紙で出さなくても画面を見てそこでレセプトの審査ができるような形にしていくように鋭意努力をいたしております。
 十四年度といたしましては三・五億円ほど、わずかなものでありますけれども、一般病院に対して予算をつけて、そういう準備をしていただこうというふうにいたしておりますし、今全国で、実は十四年度の四月現在で三十五都道府県で審査の専用端末というものを用意していただいておる。でも、その三十五都道府県でどれぐらいなんだといいますと、パーセンテージは非常に少ないわけでありまして、まだ本当に実験段階でありますけれども、しかしながら、やはりペーパーレス化を図って、より効率的な審査事務というものを進めていかなきゃならぬという流れは御指摘のとおりでございまして、今その努力をいたさせていただいております。
 レセプトの電算処理に関して、審査体制自体に問題があるんじゃないかというふうに御指摘もあったと思うんですけれども、すべてがすべて審査体制が問題であるとは必ずしも思っておりませんで、もちろんそれはそれでありますけれども、ただ、御指摘の点、では、やはり全く問題がないかといいますと、それは問題がある点もあろうと思います。この点に関しては、さらに、どういう体制がいいのか、審査の手法でありますとか体制等々、引き続いて一番いいものを模索しながら、早急に、今言いましたとおり、もう計画の方では十八年度で病院レセプト七割以上という計画を立てておりますので、これが実行できますように誠心誠意努力をしてまいりたい、このように思っております。
五島委員 間違っても、レセプトの審査を画面審査なんていうようなばかなことをやらないように。結果的には、投入労働力ばかりふえて、職業病をたくさん出すだけと言っておきます。そんなばかなことをしてはいけない。
 レセプト病名の問題についてもおっしゃったわけですね。これは、私自身が与党にいたときも含めてですが、もう七年も八年も前からこの病名問題について、どうコード化していくかとさんざん議論してきた。やる気がないからまだできていないんです。DRGをどうするかという問題のときにも、その問題を含めてという話になったまま、できてきていない。そこのところをどうしていくのか。レセプト病名として書かれたものを標準病名に置きかえていくためのソフトなんていうのは、簡単につくろうと思えばつくれる。やる気になったらできる。やる気がないから、もう五年も十年も前と同じ答弁をお聞きしないといけない。
 だけれども、そこが進まない限りレセプトの電算化というのは進まないし、またレセプト審査というものも、いわゆる保険医療の中の健康情報の適切な抽出ということも、あるいはより適切な治療方法の確立ということもできない。こんな入り口のところで七年も八年も議論しているわけです。
 政務官にこれ以上この問題を言うのは気の毒のような気がしますので、申し上げません。ただ、大臣、お聞き願いたいんですが、大臣はわかっているはずです、どういうふうにコード化していって、どうすればいいかというのは。それがなぜ進まないのか。やる気になったらできるじゃないか。
 そのことについて、ここまで医療の電算化なんというようなことが、目的性、何を目的としているのかわからないままに、経済諮問会議や総合規制改革会議の中でも言われています。その中で、こうしたことについてやはりきちっとイニシアチブをとってくれということについて申し上げて、次の質問に移らないと到底済みませんので、進ませていただきます。
 次に、今年度の予算編成中に財務省の主計局は、主計局の医療改革についての意見を出されました。これは前国会においても、一般質疑の中でしたが、私は質問をさせていただきましたが、予算編成当局は、その編成の終了前に、医療制度について担当省庁の批判とみなし得るような意見を公表するということをしたわけです。そのことについて、財務大臣、厚生大臣、どうお考えになっているのかということが一点にございます。
 時間がありませんのでまとめてお聞きしますが、財務省の主計局は、その中で四つ挙げておられます。
 ここ数年間の医療制度の頻繁な手直しが国民の不安を増大させていることを踏まえ、十四年度の医療制度改革については、将来にわたって持続可能な制度を構築することを最大の課題として位置づけるべきとまず指摘しています。
 私もこれはそのとおりだろうと思う。先ほどもお聞きしたように、診療報酬の改定の中ででもわけのわからぬようなことが次から次に出てくるということでは、この場におけるやりとりでは余りすっきりしませんがで済むけれども、そのことによって、医療を受ける患者さん、負担をしなければいけない患者さんはたまったものではありません。それが医療制度に対する不信感を増長しています。
 二番目に、医療の質を確保しつつ、保険制度の持続可能性を担保するためには、公的医療保険でカバーすべき範囲を大幅に見直すとともに、増大する公的医療費の伸びを経済の伸びとバランスさせることが不可欠である。これはこれまでもさんざん言われてきたことです。本当に経済の伸びと医療費というものは、財政的にはバランスさせてもらえば非常に楽である。わかります。
 しかし、医療のニーズ、健康のニーズ、あるいはそういうふうなものというものが経済の伸びとバランスするということは、一体どういうふうな根拠でもってバランスできるとお考えなのか。そんなものは本来は関係ないんだけれども、財政上の理由でバランスさせろとおっしゃっているということで、次に混合医療の拡大あるいは情報、電算化の問題というものをおっしゃっているんだろうというふうに考えます。
 四点を挙げておられるわけですが、これについてまず財務大臣にお伺いしたいんですが、きょうは政務官がお見えです。政務官は、財務省の主計局のこの意見書がこの時期に出したことについてどうお考えなのか。そして四点の項目について、財務省として意見を展開しておられる。これは、その枠の中で医療とあるいは社会保障というものを考えるべきであるというお考えなのか、それとも予算編成にわたって財務省の苦心を述べたものなのか、それについてまずお答えください。
砂田大臣政務官 お答えいたします。
 御指摘の医療制度の論点について、昨年の九月、厚生労働省が医療制度改革試案を発表されておりますけれども、それを踏まえまして、厚生労働省試案をもとに議論を行う際に検討していただきたい論点として、昨年、主計局がその論点を公表したところであります。昨年の十月、主計局が財政制度審議会に報告をしたところであります。
 そういう意味では、このことが決して、担当省庁への批判を行う趣旨というものは全くありませんし、財務省としても独自の見解を示したということもございませんので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 以上でございます。
五島委員 財務省として独自の見解を示したものではないとおっしゃるわけですが、そうしますと、この内容は厚労省との間において合意されて出されたものなんですか。
宮路副大臣 厚生労働省との間においてその内容について合意されて出された、そういうことは承知いたしておりません。そういうことじゃなかったと思っております。
五島委員 その中では、混合医療の拡大や徹底した効率化策などの実施とあわせて、公的医療費の伸びとそれから経済の伸びをバランスさせるための枠組みを新たに構築する。それから、負担のあり方についても老若かかわらず能力に応じた公平な負担の観点から抜本的な見直しを行うべきだというふうに述べておられます。
 また、そういうふうなことを前提として、先ほども述べましたが、経済の伸び、すなわち保険料収入の伸びと公的医療費の伸びをバランスさせるというふうにおっしゃっています。
 これは厚生省としてはこのことについて全く異論がないのかどうなのか、お伺いします。
宮路副大臣 医療保険制度は、これはもう先ほど来御議論いただいておりますように、国民の生命、健康、それを支える基盤でありますから、それを構築するに当たって、いかにこれを持続的な制度として運営していくかということが最も大切であるというふうに思っておるわけでありますが、その際に、財政や経済を全く無視するということはできないことだと思いますけれども、しかし、かといって財政、経済に縛りつけられてしまうというものでもこれは決してない、そうあってはならないというふうに思っております。
 ですから、予算を預かる財務省として先ほど御指摘のあったそういう論点整理をされたことは私どもも承知しておりますが、あくまでも、今度の改革案をこうして国会へ提出するに当たりましても、厚生労働省の方で去年九月示させていただいた案、これをベースにして与党・政府の協議会でも御議論賜りましたし、また政府の社会保障審議会でもそれをベースとして議論をいただいて整理させていただき、今国会にこのような形で提案をさせていただいているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
五島委員 財務省の方は独自ではないとおっしゃいながら、ここまで担当局との間で意見が違うわけです。
 問題として大きな問題は、先ほども触れましたけれども、医療費の伸びというものの原因を財務省はどこまで理解しているのか、厚生省はどう理解しているのか。
 基本的に、高齢化が進めば医療費が高くなるとよく言われます。それはそうでしょう。では、なぜ高齢化が進めば医療費が高くなるのか。お年寄りがかつてのように、病気になったらもう年病ということで医者にかからなければ、高齢化しても医療費はかからないわけです。そうではなくて、今日、長寿化の成果というものを社会生活に生かしていく、これが健康寿命を延ばしていきたいという国民のニーズになっています。そのことによって、さまざまなコントロールあるいは医学的なケアを通じて、病気をお持ちの方が社会的には十分健康人としてやっていかれる体制に今入りつつある。この要望というものを認めるとするならば、医療費の増大の一番大きな要因としてある自然増というのはそこにあるんですね。この自然増というものをどういうふうに対応するか。
 先ほどの話じゃないですが、自然増の中にはさまざまな問題があります。例えば糖尿病の問題一つとりましても、先ほども申しましたが、先日、厚生省の方からもデータをもらいました。例えば糖尿病の受診率というものがこの間ずうっと一貫して低下しっ放しということについてもございました。糖尿病にかかっていながら、受診率はずっと落ちていっている。それで、この受診率の落ちた人たちが、生活改善なり運動療法によって医療は必要がない状態になっているのであればいいわけですが、その多くは受診中断になっている。その結果が、糖尿病からくるところの腎透析の増大であり、下肢の切断であり、網膜症の増加なんですね。しかも、その度合いは非常に大きいです。
 そういう中で、そういうふうな自然増と言われる部分、その部分をいかに合理的、経済的合理性と医学的合理性に基づいた対応をするかということを抜きにしては、この自然増というのは、診療報酬を少々やってみたり受診抑制をしてしまえば医療費が改善するなんというものじゃない。受診抑制をすれば、結果的にはより重度な障害となって医療費を圧迫するだけ。
 財務省は、ここまでおっしゃる以上は、この自然増の問題というのはどういうふうにすればいいと考えてこのような意見をお出しになったのか。
 同時に、もう一つ大事な問題があります。医療制度を含む社会保障制度というのは、財政合理主義の中だけで閉じ込めるということはいかがなものか。基本的に、社会保障制度、これは社会の安定装置、スタビライザーの役割を果たすと従来言われた。それはそうでしょう。今のように、失業者もふえ、日に百人の自殺者が出るこの状況の中で、このスタビライザーの羽根をへし折ってしまうことが、本当に財政合理主義の上からいっても、あるいは日本の社会保障制度の状態からいっても正しいのかどうか。これは、いわゆる市場主義、あるいは保険収入の伸びとバランスということを前提に置いた医療政策ということではどうしてもそうなってしまうと考えるわけですが、財務省の方はどう考えてこういうふうな意見を出されたのか、お伺いしたいと思います。
砂田大臣政務官 お答えをいたします。
 財務省としては、将来にわたって持続可能な医療制度の構築を最大の課題として位置づけております。したがいまして、そのようないろいろな検討を経ながら、今回の改革においては、国民皆保険制度を持続可能な形で守るために必要な施策を盛り込まれたものと考えている次第でございます。
 以上でございます。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
五島委員 どうも、政務官にお伺いしたのは間違いだったようですね。質問している内容にお答えいただいていません。
 今回の出されている法案、その直前に出された診療報酬の改定、ことごとく、医療費の合理化といいますか健全化ともかけ離れた内容だと私は思っています。
 時間がございませんので、財務省の方に対する御質問は改めてまたさせていただくことにいたしまして、本日は結構でございます。
 次に、今回の健康保険法の改正案の中で、いわゆる自己負担三割というのが出てきております。外来も入院も三割であるというふうな内容として出されております。
 ところで、入院を含めた三割ということですが、現在は高額療養費の償還払い制度が各保険法を通じてございます。従来ですと六万四千円ぐらい、今回、七万三千円プラスアルファという形で高額療養費が改められます。先般、一般質問の中で局長にもお伺いしまして、例えば、入院を三割負担にすることによって一体どういうケースが保険財政上の、保険給付の軽減になるのかというお話をいたしましたが、その当時、厚生省の方から出されてきたのは、何となく、千二百億円ぐらいが三割負担によって財政効果がトータルに出るんではなかろうかというお話でございました。しかし、現実に見てみますと、例えば六万四千円といたしまして、基本的に一月の入院費が三万二千円、七万二千円になって、三割負担といたしますと、入院医療費が二十五万ぐらいのところを超えてしまうと、これは全く、三割とかなんとかいうのは効果が出てこない。
 では、どういうふうな入院の場合に、こういうふうな三割負担ということによって財政上の効果が生まれてくるのか。かなり具体的に、自分なりに検討いたしました。先ほど問題になりました長期療養病床で社会的入院と言われている人でも、高額療養費の関係がございますので、二割であっても三割負担であっても変わりません。自己負担額は変わりません。では、どういうふうな人の場合に自己負担がふえるのかといいますと、大体一週間程度の入院の、急性期の入院、それも一月丸々入院するととてもかかります。例えば、月末の二十七、八日に入院して、月初めの四、五日に退院したというケースの場合に初めて、いわゆる保険の財政効果というものが生まれてくる。急性期、短期、しかも月をまたいだ場合だけは患者さん負担をたくさんしてもらいますよ、そうでないときは変わらないよ、こういうばかげたことにしかこれはならない。
 なぜこんなあほなこと、私は、はたと気がつくのは、高額療養費の償還払い制度、これは政令事項ですよね。だから、今の診療報酬と同じように、厚生省は、三割負担にしておけば、もう法律事項でない、国会の審議は必要ないということで、毎年のように高額療養費を引き上げていく、そのことを目的にして、こういうとんでもないごまかしのような制度をやろうとしているのではないかと思われるわけでございますが、その辺はどうお考えですか。
田村大臣政務官 先ほど来先生のいろいろなお話をお聞かせいただきまして、本当に感銘を受けるところも非常に多いわけであります。本当に意見の近いところもたくさんあるなというふうに感じさせていただきましたが、今回、この三割負担の問題は、ここに来るまでに各方面からいろいろな御意見も既にいただいております。最終的に三割ということで、すべてとは言いませんけれども、ほぼ、大体自己負担が統一をされてきたのかなというような感じはいたしますけれども、それに対していろいろな御意見をいただいておるのも事実でございます。
 今御指摘の点でありますけれども、医療費の問題を考えますと、先ほど来先生おっしゃられますとおり、自然増といいますか、ある意味では、診療報酬を下げただけでは、そういうものだけでは医療費というものは減らないであろう。一方で、自然増というものを防ぐといいますか、伸び率を減らすためには、多分、健康増進法等々にも含まれますような、いろいろな予防医療というものもやっていかなきゃならない。しかし、そうはいっても高齢化が進んでいけば医療費がやはりふえていくでありましょうから、それに対して財源を探さなきゃならない。今回の三割負担がすぐに必要であったかどうであったか、いろいろな議論はありますけれども、少なくとも、その財源というものをどこかから得るために上げたものであるということは事実であります。
 そういう意味からいたしますと、入院に関しての三割というものに対してはほとんど意味がないんじゃないかという御指摘でありますが、先ほど来先生がおっしゃられます一千二百億円、八千三百億円全体の中で一千二百億円が、実は入院で三割負担になりますと実入りがふえるんですよという話でありますが、この根拠がはっきりしていない。私が今ここに持っております資料でも、全体として、入院が二・一、外来がマイナス五・四、全体がマイナス四・三でありますから、寄与度を掛け合わせると、八千三百億円とみなされるうちの一千二百億という話でありますから、この点に関しては、厚労省の中に数字があろうと思いますので、先生御納得をいただける資料というものをまた出させるように努力をいたします。
 ただ、三割という象徴的な数字がどうなのかという議論はありますけれども、一方で、変わらないとするならば、三割に上げても、今ごくわずかな例を先生言われて、急性期で短期の入院者という話でありますが、その方々にも同じような三割の負担をいただこうという意味では意味があるのかな。逆に、実際問題、高額療養の世界で負担をされない方々は、実質上げても意味がないといいますか、関係ないわけでありますから、それほど負担がふえるということもないのかなというふうに思いますと、それは一つの考え方であるんであろうなと思うんです。
 一方で、高額療養、つまり、自己負担がこれからさらに上がっていくんじゃないか、そういうのを実は見越してこんなことをやっておるんじゃないか、特に政令だろうというお話であります。この制度は、もう先生に言うのは釈迦に説法でありますけれども、要は、余りにも医療費が高く、自己負担が高くなり過ぎますと生活等々に支障を来す、ですから、払える限度額は大体これぐらいですねということでこの金額というものを定めておるものでありまして、当然、その時代時代といいますか、時々の経済状況や収入状況等々によって変わってまいりますし、また、一般的な例だけではございませんでして、要は、貧富の格差が広がるという言い方がいいのかどうかわかりませんが、低所得者層の問題が非常に大きくなった場合にはこの中身の区分をどうするかという意味もあるわけでありまして、適切に対応するのには政令で対応した方が、法律でがんじがらめにするよりかは対応がしやすいのかなという形の中で、現在、政令で定めさせていただいておる。
 不当に上げていくなんということは、当然、厚生労働省、考えておるわけではございませんでして、ただ、流れの中において、ではこれから全く今回のままでとまるのかといいますと、それは経済、所得の状況、またもちろん医療の財政の問題も含めながら、どうであるかというのはこれからまたその適度適度において考えていくという方向になってこようと思います。
五島委員 田村政務官は正直な方だなと思います。田村さん自身が言われるように、こんなもの、根拠ないんです。根拠ないけれどもこういうふうにした、あとは、厚生省が三割にしてもうどんどん上げていくことはないだろうと期待をするかどうかということしかない。根拠なしにこんなもの、データを出してきて、患者さんに、現実問題として今回も一万円ぐらいの高額療養費、上がっていく、そういう状況の中で、厚生省がまさかそういうことしないだろう、そういうふうなことに期待するわけにいかない。
 私は、今回のこの診療報酬の改定問題あるいは今回出された健康保険法の改正問題の中で、大きな問題は後に残しておりますが、大臣、これはもう、ここまで来たら、この高額療養費の問題については政令から本法に戻して、健康保険を国保の中できちっと決めていくというふうにやるべきではないか。そうでない限りは、それは弾力性に欠けるとは一体どういう弾力性なんですかという話になってきます。いかがですか。
坂口国務大臣 今回三割に引き上げさせていただきましたのは、今政務官から話をいたしましたとおり、国保でありますとかあるいは健保におきましても、御家族の皆さん方は既に三割を御負担いただいているといったこともございまして、いよいよこれから健保、政管健保そして国保の保険制度の統合化を進めていくというときに、やはり条件としてひとつ一律にそろえさせていただくというのが一つでございます。
 もちろん財政的な問題があることも事実でございます。しかし、三割にいたしましても、今御指摘のように、やはり医療保険であります以上、保険としてこれは機能しなければいけないわけであります。外来で、例えば風邪でかかっていただきますときには、これは丸々三割になるでしょう。しかし、入院をしていただいて、例えば虫垂炎なら虫垂炎の手術をしていただくという場合には、虫垂炎の手術というのは、平均しますと大体三十万弱なんですね。三十万弱ということになりますと、割合でいったら大体二・五割なんですね。三割は行きません、二・五割になる。胃がんの手術をなさる方というのは、大体百八十五万から百九十万ぐらいかかっている。そうしますと、これは一割もいかない、〇・五割、五%ぐらいの負担になるわけであります。
 これは、そうなることによって、軽い病気のときにはこれは御負担をいただきますけれども、重い病気のときには少ない負担でひとつ医療が受けられるという、医療保険としての機能がそこに働いているというふうに私は思うわけでありまして、このことをやはり忘れてはならない。
 したがいまして、今御指摘になりますように、このいわゆる高額療養費の上限をどうするかという問題、厚生省が勝手気ままにこれを上げていくということは、この基本を崩すことになるわけでありますから、それは断じて許せないことだと思うんですね。
 ですから、それは、御指摘のようにここのところまでひとつこの法律の中に入れてしまえというのも一つの方法でしょう。しかし、法律というのは、御承知のとおり、すべてを法律の中に入れるわけではないものですから、こうした問題は政省令にゆだねているわけでございます。ゆだねておりますけれども、ここは、御指摘のとおり最も大事なところでありまして、ここは安易に広げてはならない、いわゆる保険としての機能を十分に果たすようにしなければならない。これは十分監視をしていかなきゃならないと思うのですね。
 そんな言い方をしますと厚生省のお役人は怒るかもわかりませんけれども、これは監視していなきゃならない。私もいつまでもおるわけじゃありませんから、それは私も監視をいたしておりますけれども、皆さんにも監視をしていただいていなければならない。厚生省の官僚の皆さん方もそこは十分にわかっている、そういう機能があるということをよく認識をしてやっているというふうに私は思っている次第でございます。
五島委員 大臣も、おわかりになってそういう御答弁になるので苦しいだろうと思いますが、まさにこの高額療養費の問題、これは保険を超えて、現在、各保険、家族ともに実施されている内容でございます。この高額療養費について、ここがずんずん上がっていくということになれば、この保険制度というものの持っている本来的なものが崩れてしまう、それほど重要な問題だということを考えた場合、これを法の外に置いて政令事項に任せるというところに大変問題があるだろうというふうに思います。
 大臣も必ずしも反対でないようでございますので、与党の皆さんも、ぜひこの点については御賛同いただいて、この法律の中にこれを取り込んでいくように、法律の改正に御協力をお願いしたいと思います。
 また、今、大臣の方から健保の統合のお話も若干触れられました。この問題で、私も考えるわけですが、健康保険が、例えば被用者保険、政管健保も組合健保も共済も、そして市町村国保も、一、二の三ですべて統合する、そのことは大臣もお考えになっていないと思います。また、現実問題として、それは可能ではないだろうというふうに思われます。恐らく、国保なら国保についてまずどう統合していくか、あるいは、健保なら健保をどう統合していくかというふうな段階をお踏みになるんだろうなというふうに考えております。
 その保険を、特に市町村国保なんかをもう少し、県レベルになるのかブロックレベルになるのか、大臣のお考えを聞いてみないといけませんが、統合するとしたときに、やはりこの統合の一番大きな障害になるのは、例えば、国保の未納率が二つの保険者において非常に大きく違うという状況があった場合は、保険の統合というのは非常に難しくなりますよね。今、私どもの方も、非自発的退職者の中において、この人たちに対する保険制度の問題について提案させていただいているわけでございますが、今、本当に非自発的退職者がふえている中で、無保険者の数というのが全国平均でも一五%を超えたと言われています。さらに、町村レベルで見ると、逆に、高齢者が多いところに比べて、都市部の方が未納者の数がふえているというふうにも言われております。
 そうなりますと、この無保険者といいますか、未納入者を含めて、この人たちに対する対策をどうするかという問題をクリアせずには、なかなか保険の統合というのは進まないんだろうと思います。
 また同時に、今、非自発的退職者がどんどん出ている中で、被用者保険の中で、経済弱者やあるいは健康弱者、その人たちがどんどんと国保に押し出されていっている。だから、現役世代が国保の中でふえていくことが国保の安定になるのならいいんだけれども、むしろ、その人たちが国保の中でふえることが、国保上では未納者をふやしてしまう、問題をこじらせている、こういう状態があるのであります。
 本当に、この医療保険の中で、健康弱者や経済弱者、そういうような人たちが国保に押し出されている、国保料は高い、未納者になる、こういう状況をどこかで歯どめしないと、それは、大臣がおっしゃっている保険の統合というのも何かかけ声倒れになりそうな気がするわけですが、この点について大臣はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
坂口国務大臣 国保のいわゆる保険料を払わない人たちがだんだんとふえてきているという事実は、これは今御指摘のとおりでありまして、大変ゆゆしき問題だというふうに私も思っております。これは、いわゆる国民年金の問題もあるわけでございますが、特に医療の問題は、いつ、その皆さん方も医療にかかっていただかなければならないかわからない問題でございますから、ぜひひとつ皆さん方も国保にはお入りをいただくように、これは全力を挙げていかなければならないというふうに思っておりますが、さりとて、このことに対しまして特効薬的な方法があるとは私も思っておりません。
 これはなかなかそう簡単ではないんだろう。それぞれの理由があってお入りになっていない。経済的な弱者がお入りになっていないのかといえば、必ずしもそうでもないといったようなこともあり得る。それだけに、国民年金にいたしましても国保にいたしましても、掛金をしていただくようにひとつぜひともお願いをするというのは、これはあらゆる機会を通じて、あらゆる方法を通じて行う以外にないんだろうというふうに思っております。
 しかし、今までのやり方だけでは、多くの皆さん方がそれで減っていかないということは、これは、今までのやり方だけでは十分でない、対策が十分でないということだけはよくわかっているつもりでございますので、そこは、あらゆる機会を通じて、あらゆる方法を通じて、これを皆さん方によく理解をしていただく。何につけても、お互い、一番大事なものは健康である、その健康を守っていくためのセーフティーネットとして、ぜひともこれだけはお掛けをいただきたいということをお願いし、また、自覚をしていただく以外にないだろうというふうに思っている次第でございます。
五島委員 その中で、非自発的退職者という方々が大変ふえてきている。今日、一日に一万人の失業者があると言われている中において、こうした失業者の医療保険問題というものは非常に重要だということで民主党としては提案をさせていただいておりますので、また、大臣の方にもぜひ御賛意をちょうだいしたいと思っております。
 時間がございませんが、最後に、今回出されている健康増進法の問題について、一言だけ述べて、また次回に具体的な質問をさせていただきたいと思います。
 確かに、オタワ会議の中で確認されたヘルスプロモーションの考え方を健康日本21ですかの中に取り込まれて、それに沿うて何かしたいというお考えになっておられるんだなということはわかります。しかし、ヘルスプロモートの問題というのは、基本的には、トップダウン方式でうまくいくものといかないものがある。伝染病の時代は逆にトップダウンが非常に効いた例だったと思います。生活習慣病の時代になってきて、これはトップダウンが効かない。まして、メンタルヘルスの問題なんかになってきますと、トップダウンでは対応のしようがありません。
 ところが、今回のこの法案は、依然としてトップダウン方式でつくられていると思われます。そして、産業との関係、産業保健との関係についても触れられています。確かに、産業保健と地域保健とを統合しなければと、そして、トータルな健康問題というものを考えていける体制というものは、もう何十年も前から公衆衛生学会その他でも議論されてきました。しかし、現実問題として、では、地域の中において産業職場というものを取り込んでいけるか、場合によっては中小企業はやれるかもしれないけれども、大企業のようにラインでやっているところはどうするのかとかさまざまな問題がございます。
 また、かつて職業病が中心であった産業衛生の時代から、今日のように、先ほどから繰り返しておりますが、さまざまな生活疾患を抱えながらも社会的に健康人として働いている、その労働者が就労を通じて病状を悪化させないというための産業保健はどうあるべきなのかという問題は産業保健としても大きな課題であると思います。
 そうした問題に対して、今の保健所を中心とした地域保健というものがそのノウハウを持っているとは思えません。そういう意味では、あのような何か栄養改善法の焼き直しのようなもので果たして役に立つのだろうかと思っております。
 細かな議論はまた次回させていただきますが、その点について大臣の御意見をちょうだいいたしまして、私の質問を終わります。
坂口国務大臣 そこは御指摘のとおり、病気の予防あるいはまた生活習慣病、そうしたものを克服していきますためには、これは息の長い対応が必要でありますし、トップダウン方式に、上から下にこういうふうにやれ、ああいうふうにやれと言ってできるわけではありません。
 一番大事なことは、それぞれ個人の意識改革をどう進めていくかということが一番大事でございまして、その意識改革を進めていく上で、地域の保健計画なるものを立てながら、それも今までのように無理やり押しつけて、そしてつくって、そこから下へ落とすというのではなくて、そこでそれぞれの地域、それぞれの職場において、健康を回復するときに一番何が大事かということをよく理解した上でお互いの健康管理を進めていくということがなければならないというふうに思っております。
 そうした意味で、今年も六百五十億円の予算をつけてもらっているところでございまして、その点を、今御指摘いただきましたことを決して忘れることなしにやはりやらなければいけないと私も思っております。
五島委員 終わります。
森委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 大臣、副大臣とこの大事な健康保険法の改正案についての議論をさせていただきたいと思いますが、私は本日は、先般行われました本会議場での代表質疑、そして二月二十五日に予算委員会でございました医療関係の集中審議、そして骨太の方針、この三点に関して大臣、副大臣とお話し合いをしながら、議論を深めさせていただければと思います。
 私は、お医者さんでもなければ医療従事者をしたこともなく、そしてそれを専門に勉強してきたわけでもございません。ただ、私がこの場に立って聞かせていただきたいことは、一国民として、やはり保険料を払い、そして医療を受け、またお金を払う、そういう立場で聞かせていただければありがたいと思います。
 そして前提は、これは前も議論が、いろいろとまた話し合いがありましたが、私ども自由党の主張すべき政策というこの根底をつくったのは、まさに坂口大臣だと私は思っています。同じDNAを持ち合わせた方が、今は政府・与党と野党に分かれている。ここの部分でのお話し合いも突っ込んでさせていただければと思いますので、お願いを申し上げたいと思います。
 先般の代表質疑におきまして、一応これだけは事前通告をさせていただいております、私も幾つかの点を聞かせていただいておりますが、総理に国家像が明確になっていないということを指摘させていただきました。ですが、総理の方は、御答弁の中に、国家像はしっかり持っているというようなお話があったように思える部分もありますが、お答えをいただいた内容では、私は全く国家像が見えないというふうに思ったわけです。
 きょう、これだけの傍聴者が厚生労働委員会でいらっしゃるなんということは非常に珍しいことだと思います。委員の皆さんだけではなくて、本当に傍聴に来られている方々が納得いくような御答弁をいただきたいと思います。
 まずは、小泉総理はきちんと国家像を明確にしているのか、していないのか。大臣と副大臣、お二人にお聞きいたします。
坂口国務大臣 私がここで小泉総理の国家像を語らせていただくというのはいささかおこがましい、僣越に過ぎるというふうに思っておりますが、小泉総理のそばでいろいろと総理のお話を聞きながら、そして総理がどういうお考えをしておみえになるのかということを拝聴しながら来ている者の一人といたしまして、当たってないかもしれませんけれども、私は総理のお考えはこういうことだというふうに思っております。
 現在の社会というのは余りにも規制が厳しくきき過ぎている。余りにも厳しく規制がきき過ぎていますために、日本の経済が十分に回らない。経済だけではなくて、医療でありますとかあるいは介護でありますとか、そうした分野においても厳しい規制がかかり過ぎている。もう少しここは自由に競争をして、そしてもう少しみんながそうした自由な環境の中で行動できるようにしなければならない。しかしそのことは、何と申しますか、それによってフリーハンドの自由な社会をつくり上げていくということでは決してない。やはりそこは、規制すべきところは規制が必要であるけれども、しかし規制がきき過ぎた社会というのはこれはよくない。そういう考え方のもとに現在改革に取り組んでおみえになるというふうに思っています。
 きょうも午前中にも少し議論をいたしましたけれども、改革なくして成長なしという言葉を使っておみえになりますが、改革なくして成長なしではありますけれども、しかし一方におきましては、一たび競争に敗れた人に対しましては再び立ち上がることのできる社会をつくっていかなければならない。敗れた人には立ち上がるチャンス、再挑戦の機会を与える社会をつくらなければならない、こういうことを言っておみえになるわけでありますから、非常に規制のきいた、しかし自由な社会である、こういうことを私は大枠として御主張になっているというふうに思っております。
 この医療の問題につきましても、小泉総理はもう三回も厚生大臣をおやりになったわけでありますから、厚生労働省のことは非常に細かく理解をしておみえになります。もちろん、医療のことにつきましても十分に理解をされているというふうに思っています。その中で、小泉総理が三割自己負担ということにこだわられましたのは、やはりそれなりの理由があったというふうに思います。
 三割の自己負担というのはまことに厳しいように思いますけれども、しかし、そのいわゆる自己負担額というのは限度額があるわけでありますから、簡単な病気におきましては三割の自己負担が必要ではありますけれども、しかし、大きな病気になればなるほどこの割合は小さくなっていくわけでありまして、ですから、大きな病気をなすった方にはより少ない割合で、そして、しかし軽い病気の皆さんは三割を自己負担してくださいよ、こういう話だろうというふうに思うわけです。そうした医療保険制度というものを十分に尊重して、これを守っていく。その守っていくということを中心にしながら、お願いをすべきものはお願いをしていく。
 ですから、小泉総理がお考えになっている社会保障制度というのは、やはり自立ということを中心にして、自立を支援するということが私は中心になっているというふうに思います。今まで、どちらかといえば、丸ごと保護をするという社会保障が叫ばれてきたわけでありますけれども、そうではなくて、やはり自立する人を支援するということこそ厚生労働省の仕事として最も重要な柱であるというお考えに基づいているというふうに思うわけでございます。
 お話しすれば切りがございませんけれども、そういうお考えのもとに進んでいるというふうに私は理解をいたしております。
佐藤(公)委員 副大臣にもお聞きしているんですけれども、副大臣、済みません、時間がないもので、国家像があるかないか、明確にお答えをお願いします。
宮路副大臣 小泉総理のおっしゃっておられることは、中央から地方へ、そして官から民へということが、今の日本のこの現況を打開するその大きな柱であり、そのことが二十一世紀における我が国の新しい姿というものをつくり上げていく、その基盤であるというふうにおっしゃっておられるんじゃないかと思うんです。
 これは、戦後の荒廃の中から、経済復興あるいは経済発展を遂げていかなきゃならない、そういう中にあっては、中央集権体制、あるいは国家というものが大車輪となって機関車の役割を果たして、中央政府が引っ張っていかなければならなかった。もうそういう時代では今はなくなってきたので、先ほど申し上げたような、中央から地方へ、そして官から民へ、そのことによって活力のある日本の地域社会あるいは国家というものができ上がっていく、そういうことを示唆しておられるんじゃないかなというふうに承知をいたしておる次第でございます。
佐藤(公)委員 ということは、あるということですか。
宮路副大臣 さようでございます。
佐藤(公)委員 さすがに、坂口大臣、同じDNAをお持ちになられているということで、今、副大臣、大臣のお答えを聞いていると、何で与野党が別々なのかなと思うぐらい近いもの、また同じものを持っているように私は思います。
 でも、今話を聞いていまして、私が言っていること、つまり、坂口大臣、副大臣がお答えになられていることは、やはり改革、目的、基本、こういうもののその下の段階を今話されたのであって、国家像という基本理念、考え方というものは今お話はなかったと思うんです。そういう部分で私は、今まで、そこのきちんとした大もとの基本理念、国家はどうあるべきかという姿は、何かその下のものを常に御説明されることによってごまかされている、そんな気がいたします。今お話を聞く限りでは、何で与野党対決しなきゃいけないのかなと思うような考え方です。でも、やっていることは全然別なことじゃないかなというふうに思うんですけれども。
 そういう中で、骨太の方針にも、いろいろな各所で、国民の抱くさまざまな不安を解消し、再挑戦できる、人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会。国民、国民、そして国民の理解を得る、国民の立場でと、国民という言葉を、それは当然だと思いますけれども、至るところで使います。
 今回のこの法案に関して、今こうやって審議に入ったわけですけれども、どういうところで国民の理解が得られたというふうに思うんでしょうか。また、そのシステム。また、どこで御判断をされるのか。その得た部分で物事を進めると僕は解釈をしておりますけれども、どこで一体全体国民の理解を得るんでしょうか。大臣、副大臣、どちらでも結構です、お答えくださいませ。
坂口国務大臣 今回のこの医療制度改革を提案させていただくに際しまして、我々もいろいろな角度から、いろいろ悩みながらここに出させていただいたわけであります。
 それは、現在医療を受けておみえいただいております国民の皆さん方からすれば、二割が三割になる方もあるわけでございますから、その皆さん方にとっては、三割よりも二割の方がいいというふうにおっしゃるに違いない。保険料におきましても、保険料は安い方がいいというふうに思われるに違いない。また、医療に従事をしておみえになる皆さん方からするならば、保険点数が高い方がいいと思われるに違いない。しかし、今我々は、医療に携わる皆さん方に対しても、あるいはまた医療を受けていただく皆さん方に対しましても、その思いとは逆の厳しいお願いを申し上げているわけであります。
 それはなぜかと言えば、現在だけを見るのではなくて、将来を見ましたときに、これから先の超少子高齢社会を見ましたときに、将来ともに現在のこの保険制度を維持していこうと思えば、現在の皆さん方にも厳しいことをお願い申し上げなければならない。
 見方を、短時間で物を見るか、長い目で物を見るかの違いだと私は思っておりますが、我々これを担当させていただく者として、長い目でこの医療制度というものを見ましたときに、お願いすべきことはお願いをするのが我々の務めであるというので、今般、非常に厳しい内容ではございますが、皆さん方にお願いをしたというふうに思っております。
 したがいまして、国民の皆さん方から十分にまだ御理解をいただいているとは私も思っておりませんけれども、国民の皆さん方にお願いをしたいことは、やはり今現在の、現在お住まいになっている皆さん方だけではなくて、皆さん方のお子さん、お孫さんの世代になっても今と同じような医療制度を続けていくためには、ひとつ御負担をいただくところはお願い申し上げたい。将来もこの医療保険制度を堅持していきますので、そのためにはこうせざるを得ないというところを御理解いただくことが我々の務めであると思っている次第でございます。
佐藤(公)委員 では、理解を得るというよりも、あくまでも、きれいごとを言えば、これは将来のためになるから、国民にとって、また国家にとっていいからという、悪く言えば押しつけでもあるということですよね、と私は思います。きれいなことばかり言っているのですよ。国民の理解を得るとか、国民の皆さんのため。でも、結局、自分たちの責任を国民に押しつけているのがこの法案だと私は思います。
 そういうことを考えると、今まさしく大臣はおっしゃいました。今の保険制度を維持し、堅持し、長い目で見てと言いました。
 その中で、ちょっとさかのぼらせていただくと、自自公連立というのがございました。いろいろなことがあったと思います。まさに平成十一年の十月四日。そして、私も、代表質疑において自由党の政策を強く主張いたしました。その中で、老人医療、介護、基礎年金等に関してはやはり目的税化をし、消費税を充てていくべきだ、こういう自分たちの政策を主張したわけでございます。そして、骨太の方針にも、今の保険制度はもう疲労を来している、もうこのままでは制度は行き詰まっているということを明確にうたっております。
 この自自公において、坂口大臣の御党とともに、また副大臣の党とともに、社会保障の関係の財政基盤を強化するとともに、負担の公平化を図るために、消費税を福祉目的税に改め、その金額を基礎年金、高齢者医療、介護を初めとする社会保障経費の財源に充てる、こういう政策合意がされたわけでございます。これが結局できなかったから我が党は政権から離れたわけでございますけれども、坂口厚生労働大臣も、五月三日の地方紙においては「私は目的税化に賛成だ。」ということを明確におっしゃられているんです。
 今の保険制度、これがいいと思われているような今の答弁、堅持をしなきゃいけない、そのまま続けるべきだ。こういうのに賛成、合意をした、国民との間での公約でもある。
 この数年間、矛盾するようなこと、また国民が混乱をするような政策の行き違いが非常にあると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 遺伝子が同じなのか違うのか、少しややこしくなってまいりましたが、今御指摘になりましたように、これからの後期高齢者医療、そして年金におきましては基礎年金、そして介護、この三つにつきましては、ただ単に保険制度だけではやっていけないだろうという考え方から、保険プラスそこに国庫負担、そして一部自己負担といった形でこれはやっていかなければならないというふうに我々は理解をしているわけでございます。
 この医療保険等につきましては、やはり保険制度というものがあって、そしてそこが中心であることには私は間違いないというふうに思いますが、医療保険だけでやれるのかどうかということは非常に私は、これだけでは難しい、これから高齢者が非常にふえてくるということを考えますと、これはなかなかやりにくいんだろう、やっていけないんだろうというふうに思っております。そうした意味で、過去におきましては、この三者、いわゆる七十五歳以上の後期高齢者医療、基礎年金、それに介護、これらの五〇%に国庫負担、こういう考え方を導入したと記憶をいたしております。
 この国庫負担というのは税からでありますけれども、それは消費税かどうかということは別にいたしまして税から、今介護におきましても、そして年金、基礎年金、そして医療制度、大体五〇%に向けて歩みつつあることだけは間違いがない。年金はまだ三分の一から二分の一になっておりません。二分の一にするということはすべての政党の合意事項でございますから、これは早くやらなければならないというふうに思っておりますが、その三点につきましては、やはり半分は、五〇%は国庫負担で賄っていくということをまずしなければならないだろう。医療の方は、もう四十数%国庫負担でございますから、あと少しで五〇%になるわけでございます。
 ですから、そういう約束ができなかったからというふうにおっしゃいましたけれども、やはりそれは、その方向に向かって歩み続けているというふうに私は理解をしているところでございます。
佐藤(公)委員 歩み続けているとはいうものの、その歩む速度が余りにも遅いのかなと。それがまさに、今回の、抜本改革ちゃんとせずして、提示なくして、ただ帳じり合わせに走っちゃう、そこと全く同じなのかなと思いますけれども。
 では一体全体、いつになったら、消費税の福祉目的税化、こういうものが実るというか、できる、もしくはやれるというふうに大臣はお考えになられるんでしょうか。もしくは、自自公連立のとき、その後も含めて、進んでいるとはいうものの、なぜなかなかできないのか。もしくは、今回も、抜本改革ということであれば、まさにこういったことを議論し、そして変えていくのが抜本改革の一つの大きな柱になると思いますが、なぜやらないのか、なぜできないのか。いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それがあるがゆえに、抜本改革というのはなかなか先に進みにくいわけでございます、逆に言えば。
 抜本改革であればあるほど、やはり厚生労働省の中の議論だけではなくて、全体に広がります議論になってまいります。今御指摘のような財政の問題になりますと、これは税という新しいそうした分野のこととの連携になってくる。それだけに、そうしたことが全体で決着がつかなければ先へ進まないわけでございますので、どうしても抜本改革というのがおくれてくるわけであります。
 しかし、全体の中で、もう税制改革というものは待ったなしの状況になってまいりましたから、どういう税制にしていくかということの結論は間もなく出るんだろうというふうに思いますが、御承知のとおりの現在の経済状況でありますから、この経済状況の中で消費税をさらに増加させるということはなかなか言えない環境にあることも、私が申し上げるまでもないことだというふうに思っております。中には消費税を下げるべきだというふうに御主張になるところもあるわけでございますから、今、ここを上げろということをなかなか言える段階にはない。
 それが消費税であるかどうかは別にいたしまして、しかし、後期高齢者医療と、そして基礎年金等々につきましては、これは国庫負担でまずそこまではひとつやっていくという一つの区切りというものはできているわけでございますから、それをどのようにこれから実現していくかということになるだろうというふうに思っております。
佐藤(公)委員 その経済的な状況というのは私も感じる部分があります。経済的というのは、経済状況、社会状況ですね。これによって、それをするかしないか、また今後これは議論の余地が十分あると思いますけれども、まさに大きな方向性としてそういうものを明確にすべきときだと私は思います。
 坂口大臣おっしゃられている、この五月三日の地方紙や何かにも出ておりますけれども、「完全な目的税化は財務省が非常に嫌がる」こう財務省のことをかなり気にされている、今もお話もちょっとございましたけれども。財務省と本当にけんかをしながら、将来の日本のあるべき社会保障制度に関してやる御決意はございますでしょうか。
坂口国務大臣 時あらば、やりたいと思います。
佐藤(公)委員 これは僕は笑えないと思います。本当にこの縦割り行政の中で、本当に日本の国にとって、どういう国家像でどうあるべきかということであれば、それは命がけで、財務省なんかけ散らして闘っていただきたい、そういう思いがあります。
 これはまた行く行く、今回の法案審議に関してはかなりの時間をかけて審議をするということですので、また後ほど審議をさせていただければありがたいと思います。
 国民の話に戻りますが、先ほど、国民の理解を得る、得たい、そういうことがお話として出ており、結果的に押しつけではないかという話をいたしましたが、実際問題、今、各メディアでもアンケート調査をしております。そういう中で、医療制度、将来に不安、まさに九割。そしてそこには、医療制度の将来に不安、将来像がなく不安、こういうような国民の皆さん方の声が出ていっているわけです。
 今回この法案を通すに際して、成立させるに際して、国民の皆さん方がやはり将来における不安を抱いている。まさに、さっきお話ししました社会保障制度、そして国家ビジョン、明確な、安心できるような姿が提示されていない、そこにおける信用、信頼関係が成り立っていないというのがこれでよくわかると思います。それなくして負担を強いるということは、私は、全然筋違い。国民を中心にと言いながら、今までの政治責任、そして責任説明もなく、まさに押しつけじゃないかと思います。
 この議論は今までもいろいろなところでされてきましたが、改めて、きょう、傍聴人の方々も多くいらっしゃいますので、大臣、やはり抜本改革、また将来の像をきちんと提示し、社会保障制度を含めてどうあるべきかということを提示してからこの法案が通るなら、また成立されるならまだしも、これだけを先に進めるというのはいささか虫がよ過ぎる話と思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 将来が不安ですからこの案をお示ししているわけでありまして、今御指摘のように、この現状をどう打開するかという案と、そして将来どうするかというこの抜本的な改革と、やはり両方やらなければいけない、これはもう私もそう思うわけでございます。そこが、抜本改革の方が少し出おくれになった、しかし、抜本改革としてやるべき方向性というものは既に出しておるわけでありまして、その煮詰めに今懸命に努力をしているところでございます。
 国民の皆さん方から見れば、保険料が上がる、あるいはまた自己負担が上がるということがあって、そしてしばらくするとまた全体の財政難に立ち至ってくる、そしてまた同じことを繰り返す、そこが一番私は不安の材料になっているというふうに思っております。したがいまして、今回こういう改革をいたします、今回の改革をするだけではなくて、皆さん方に御負担をさらにまたお願いをしますということを近い将来に言わなくてもいいようにするためにはどうしたらいいかということを考えておかなければならないというふうに思います。
 経済財政諮問会議におきましても、先ほどから御議論がありましたように、とにかく現在の経済成長率と符合するように医療費をしてもらわないと困る、こういう話があるわけでございますけれども、それは私は間違いだというふうに思っております。
 経済の成長率、GDPの伸び率と医療費の伸び率が一致できるということはなかなかできないことでありまして、景気は上がったり下がったりするわけでありますから、それに合わせて医療費の伸びを上げたり下げたりということは、当然のことながらそれはできません。そして、現在これだけ高齢化が進んできているわけでありますから、高齢者がふえる分につきましての医療費というのが上がることは、これは大前提の話であって、それまでこれを減らせということは、言われてもできる相談ではないということを私は経済財政諮問会議でも申し上げているわけでございます。
 もう少し具体的に言えば、八%ぐらい最近高齢者医療が伸びております。その中で、人口変化におきます、人口動態の変化によりますものは約四%でございます。しかし、四%でなく、それが八%になっている。それをそれでは四%までなぜできないのか、こういう議論になってくるわけでございますが、その残りの四%の中身というのは、一つは、非常に医療の内容が充実をして新しい医療機器が出てきたりいたしまして、そうするとそこに保険点数が高くなる、そうしたことが一つ影響していることも事実であります。日本の医療の特徴として、入院日数が非常に多いということもこれは影響をしておりますが、そうしたことが重なって残りの四%というものになっていることは事実でございます。
 ですから、この四%の人口動態の変化にやるところはお許しをいただくとして、しかし残りのところが年々歳々ふえていくという、そこのところについては、ひとつ医療機関の皆さん方に対しても御辛抱をいただけるようにしなければならないというふうに実は思っているわけでございます。
 そうしたことにつきましては、よく御相談をさせていただきながら、厚生労働省としても、的確に、間違いのない施策をしないといけない。私もそこは、もう一度その辺のところは見直しを行いながらやりたいというふうに思っているところでございます。
佐藤(公)委員 きょうは余り細かい議論をするつもりはございません。大きなところでやっていきたいと思っています。
 ちょっと整理をさせていただきたいんですけれども、本当に言葉じり、揚げ足をとるようで申しわけないかもしれませんが。
 改革を着実に進めてまいりましたということを大臣そして総理もおっしゃってきているわけですけれども、その基本方針は示している示しているとおっしゃられることもあります。でも、期限を区切って検討を進めることとした上であり、これにより改革の基本方向を示すことができると思いますと。基本方針があるのに、また基本方針を策定して、基本方針ができるから安心してくれと。その基本方針ということに関して、非常に混乱をしているような状況がある。何か話を聞いていると、正直言ってわけがわからなくなる部分があります。
 この基本方針というのは、実際問題、期間を区切って検討を進めて一つの基本方針を出すと言っている。でも、今や基本方針は出して進めている。一体全体、どういう分野でどういう基本方針があるのか。そこの違いをきちんと整理して、わかりやすく説明をしていただけないでしょうか。
坂口国務大臣 そこは、一言で言えば、皆保険制度を将来ともに存続させる、維持する、その一事を中心にして改革を進めていく、こういうことでございます。基本方針といえば、それが一番の基本だというふうに思っております。
 それを実施していきますためには、何をどう改革していったらいいのかということをあわせてそこに考えなければならない。国民の皆さん方にお願いをすることはひとつお願いをしなければならない。つらいところでございますけれども。基本が決まっているというのはそういうことでございまして、そうした基本のもとに、これから先の抜本改革はこれとこれとこれをいたします、いつも申し上げておりますように、保険の乱立をしておりますこの中でありますから、統合、一元化に向けた対策を立てます。ベクトルの方向性を明確にしていると思っております。
 そしてもう一つは、診療報酬体系の物差し、尺度というものを明確にして、どなたから見ていただいても、これはなぜ高いのか、低いのかということをおわかりいただけるようにしたいということを申し上げております。
 そしてもう一つは、やはり厚生労働省自身としても、十分に痛みを持たなければならない。そのためには、社会保険病院の統廃合でありますとか、あるいはレセプト整理につきましてももっと改革を進めていって、そしてむだをなくしていくということをやらなければならない。そうしたことも一方で、この項目の問題につきましてはこの八月までに結論を出しますということを申し上げているわけであります。
 さらにもう一つ挙げるといたしましたら、国民の皆さん方、あるいは医療を受けていただく皆さん方から見てどこがどういうふうに医療の内容がよくなっているのか、もう少し情報開示をして、国民の皆さん方が参加をしていただけるような医療制度をどう構築しているかということについて、もう一つそこに柱をつくっていこう。
 こうしたことを列挙しながら、しかしその根っこにあるところは何かといえば、それは、皆保険制度を維持し、国民の皆さん方への医療というものを現在だけではなくて将来も堅持できるようにしていきたい、そういうことでございます。
佐藤(公)委員 この基本的な話は、この先も委員会でずっとさせていただきますが、一つ、最後になりましたけれども、社会保障制度審議会から出した勧告について、ちょっとだけ読ませていただきます。
 健康保険の運営に関して、「運営上の欠陥」ということで、「加えるに、最近赤字対策に迫られるのあまり、制度の根本を改めて医療費の合理化をはかるだけの余裕なく、単に医療費総額の減少にのみあせる結果、その欠陥は一層増大の傾向すらみえる。そしてこのことは、一つには、政府自らが保険をいとなみ、同時にこれを監督するという二役を演じているためである。」
 ちょっとまだ読みたいのがたくさんあるんですけれども、「国民健康保険の経営主体」「国民健康保険の経営主体については議論がある。現行のごとく市町村のままでは保険経済の範囲がときには余りに狭いため、保険の運営が困難であるし、医療機関の充実をはかる上においても範囲が狭すぎるなどの欠陥があるから、この際これを都道府県の経営あるいは都道府県を範囲とする組合経営に移してはどうかという主張も見受ける。しかし現状からいえば、」こんなことも指摘があります。
 そして、各種診療報酬支払い制度における問題点。「診療報酬は、診療効果というよりは、薬品や注射の使用量など外形的な要素に依存して支払われるというような重大な欠陥をもたらしている。かくて、はなはだしい場合には技術よりも体力のまさる医師が多く報いられるがごとき結果ともなり」得る。こういう勧告。もっともっと読みたいところあるんですけれども。
 大臣、これは本当に、今論議されていることと、もうほとんどダブりがあると思いますけれども、これは一体全体いつの勧告だか御存じですか。昭和三十一年なんですよ。つまり、昭和三十一年から、それは、進展、改良、改革、いろいろとありました。しかし、指摘されている大もとは、もう私の生まれる前から出ていることなんです。
 長い目で見て、将来をと大臣おっしゃってくれましたけれども、もう長い目というか、時間ばかり経過している。これは僕は政治の本当に無責任さだと思いますよね。まさに私たちにツケを残している。同じように、今回の法律だって、国民に痛みを、ツケを押しつけている。こんな政府で僕はいいとは思いません。私たちの将来をめちゃくちゃにしないでください。
 この続きはまたさせていただきますが、きょうはこれにて終わらせていただきます。以上です。ありがとうございました。
森委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 この法案は、持続可能で安定的な医療保険制度の構築という名目で、被保険者、患者、医療機関などに一方的に重い負担を押しつけて医療保険財政の危機を打開しようとするものであります。ここにあるのはその場しのぎの財政的つじつま合わせだけで、日本の医療のあり方についての何の哲学も展望もありません。我が党は、このような案を断じて認めることはできません。まず、廃案にすることを強く要求しておきます。
 この法案の最大の問題は、国民全体に大変な医療費の新たな負担増を押しつけることであります。まず二点お尋ねしたいと思うんです。第一点は、七十歳未満の人々に病院窓口で三割負担させることなどによって生ずる負担増の総額は幾らか、それは一人平均で幾らになるか。第二点は、七十歳以上の人々への一割負担徹底などによる負担増は総額幾らか、一人平均で幾らになるか。お尋ねします。
宮路副大臣 まず最初に、七十歳未満の者への三割負担の導入に伴う負担増でありますが、私ども、平成十五年から十九年度の五年間ということで推定をいたしておるわけでありますが、それによりますと、五年間の平均でありますが、総額で四千億の増であります。そして、一人当たりに計算いたしますと年五千円の増というふうに見込んでおります。
 なお、委員御案内のように、薬剤費の別途負担の廃止が伴うということになっておりますので、これを考慮いたしますと、これは負担減に働いてまいりますので、総額ではさっきの四千億が二千二百億、それから一人当たりでは四千円の増というふうに見ております。
 次に、七十歳以上の者の負担増の影響額でありますが、これも同様の期間における推計でありますが、五年平均で総額では一千四百億、そして一人当たりでは八千円の増というふうに見込んでおるところでございます。
小沢(和)委員 七十歳未満の人の中でも、企業を定年などで退職した後、高齢者医療の適用を受けるまで二割負担でよかった退職者医療制度の受給者には、今の不況で退職後次の仕事につくこともなかなかできず、年金も減らされていく中で三割払わされることは本当に重い負担になると思いますが、これは年間総額でどれぐらいになるのか、一人平均で幾らぐらいになるでしょうか。
宮路副大臣 ただいまの退職者医療の対象者における負担増でありますけれども、退職被保険者及びその家族に係る三割負担の導入に伴いまして、患者負担の増は、先ほどと同じ期間における計算でありますけれども、平均で総額八百億円の増、それから加入者一人当たりでは年一万四千円の増というふうに見込んでおるところであります。
 なお、この場合も薬剤費の別途負担の廃止が伴いますので、これを考慮に入れますと、総額六百億円の増であり、一人当たりでは年一万円の増というふうに見込んでおるところであります。
小沢(和)委員 三割負担になれば、多くの労働者はお金のことが心配で病気になってもできるだけ病院に行くのを我慢するようになります。今回の負担増は、こういう受診抑制効果もねらっているのではないかと思うんです。
 実際、九七年の小泉厚生大臣の当時、一割負担が二割負担に引き上げられて患者ががた減りしております。九六年に二百八十二万人だった受診者が、九九年には二百四十七万人へと三十五万人も減っております。このとき、医療費をどれだけ減らしたのか。今回はそのとき以上の受診抑制になると思いますが、どの程度受診者数が落ち込み、医療費が幾ら減ると見ているのか、お尋ねします。
宮路副大臣 まず最初に、お尋ねの平成九年度の制度改正の場合の影響でありますけれども、実績に基づく平成九年度の推計額でありますが、それでは三千七百億円の減少と見込んでおります。一方、薬剤費の別途負担の導入がこのときございましたので、それによる影響を加えますと、それが五千八百億円でございまして、トータル九千六百億ということでございます。
 次に、今回の改正案によって七十歳未満の方の患者負担原則三割ということになるわけでありますが、それによる影響は五年間の平均で四千三百億円の減少というふうに見込んでおります。なお、薬剤費の別途負担の廃止による医療費の増、これは一千億円というふうに見込んでおりますが、それを考慮いたしますと、三千三百億円減少というふうに見ておるところであります。
 なお、受診者数がどういうふうに推計されるかということでありますが、制度改正によります影響は、いわゆる長瀬方式というもので私ども推定をいたしておるわけでありますが、従来これでやってきておりますけれども、この場合、一人当たりの延べ受診日数への影響ということを基礎として推計をいたしておりまして、受診者数の推計はいたしていない、困難であるということでございます。
小沢(和)委員 政府は、国保は今まででも三割負担で、今度は労働者の負担もこれに合わせただけだというような話もするんですが、私はとんでもない話だと思うんです。全商連の調査によりますと、受診してから二十四時間以内に死亡した人が四年前に比べると八〇%も増加した、こういうようなデータも出ております。商売が不振で、病院に支払う三割負担のお金のことを心配して手おくれになる人がふえたということではないのでしょうか。これまでも国保の人々には受診を控える傾向があったと思います。
 今回、労働者の負担を国保との均衡を図るという理由で三割負担にするということは、受診抑制で手おくれになるケースが労働者の中にも大きく広がる、こういうような結果になるのじゃないでしょうか。
坂口国務大臣 そこは私もいろいろのデータを見たわけでありますが、今まで、国保の場合は三割だったわけですね、そして健保の場合は二割だったわけです。その当時の両方を比較いたしますと、受診率には変化がありません。そういう結果でございます。
小沢(和)委員 受診率に変化がないといっても、さっき、医療費などでこういうふうに大きく減っているということはお認めになったでしょう。これだけ医療費が減っていて、受診率は何の変化もない、そんなばかな話ないじゃないですか。
坂口国務大臣 それは一時的な話でございまして、それがずっと続いているというわけではございません。やはり、自己負担がふえましても、一時的には下がりますけれども、またもとに戻ってまいります。そういうことがあるわけです。
小沢(和)委員 いや、そんなに簡単に戻るということはないんですよ。私がさっき読み上げたデータというのは、九六年に二百八十二万人だった受診者が、九九年には二百四十七万人へと三十五万人減っている、こういう数字を私は指摘しているんですよ。
宮路副大臣 先ほど確かに私の方から、委員の御指摘で最初の御質問のとき、医療費の減のことについてお話を申し上げましたけれども、今回の三割負担の導入に当たりましても、御案内のように、薬剤費の一部負担は廃止すると同時に、患者負担につきましても、高額療養費制度におきまして一定の歯どめというものを講じておるわけであります。特にその際、低所得者対策につきましては自己負担限度額の据え置きといった思い切った配慮もやっておるところでありまして、したがって、今大臣の方からお話ございましたように、これによって必要な医療が抑制されるということは、私どもはないものというふうに考えておるところでございます。
小沢(和)委員 考えていることはないといっても、実際にさっき言ったような数字が出ているんだということはもう一度申し上げておきたいと思うんです。
 大体、小泉首相は、窓口負担が低いと患者が病院に殺到するというようなことも言っているわけです。今回の窓口負担増による受診抑制を、だから当然というふうに考えているとしか思われません。治療の大原則は早期発見、早期治療であり、病院に行くのを我慢すれば病状が重くなってからの治療になって、結局手おくれになったり治るのに時間がかかり、長期的に見れば医療費はかえってかさむ、こういうことになりはしませんか。
坂口国務大臣 確かに疾病の問題は、最初、スタートのときにどうするかということが大事であることは私も理解をいたしております。したがいまして、先ほども申しましたとおり、軽い病気におきましてはどうぞ三割自己負担お願いをします、しかし、重い病気になればなるほど負担率は下がりますということを申し上げているわけでありまして、保険というのは私はそういうものだというふうに思います。
 軽い病気におきましては、ひとつ三割ですがお願いを申し上げたい。今まで健保も、御家族の皆さん方はもう外来等では三割をお願いしていたわけでありますから、その健保よりもまだ収入の少ない国保にお入りになっている皆さん方も、もうずっと三割をお願いしてきたわけでありますから、そこはひとつお願いを申し上げたいということを言っているわけでございます。
 しかし、全体として医療制度を、上げ続けるということはよくありません。保険制度があります以上、保険機能を維持するという以上は、やはりそこにはおのずから限度がある。そこは、我々としてもわきまえていかなければならないということでございます。
 ずっと過去からいろいろの経緯もありますから、一度になかなか改革できない面もありましたけれども、今回は思い切って改革をやらせていただきたい、そう思っておる次第でございます。
小沢(和)委員 今度の法案の附則第二条には、医療保険の給付率は将来にわたり七割を維持するものとするというふうに書かれております。今回の窓口負担増に対する国民の大きな怒りや反発を抑えるために書き込んだのだと思いますけれども、こういう規定がどれだけ実際的な意味を持つのか。これまでも、十割給付を破るときは、末永く九割給付を維持すると言い、八割に切り下げるときは、絶対にこれ以下にしないと言ってきたのじゃないんですか。私は、これは気休め程度以上の意味は持たない、保険財政がまた赤字になれば六割にでも五割にでも切り下げていくということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
坂口国務大臣 ここは、現内閣の決意をそこに表明したわけで、将来のことまですべてを現在でくくるというわけにはまいりません。将来の皆さん方には将来のお考えがあるでしょう。しかし、そこは、我々の決意としてそこに表明をしたわけでありまして、しかしこの決意をそこに表明したということは、そのことを中心にしてこれからの抜本的な医療改革の基礎をつくっていこうというわけでありますから、これは大きな決意だと私は思っております。これによって抜本改革の基礎を築いていくということでありますから、これは将来に対しましても大きい影響を与えると思っております。
小沢(和)委員 今のお話を伺っていると、将来はともかく、小泉内閣、坂口大臣の間は七割だという決意表明に聞こえるんですが、それじゃ、もうすぐにも変わってしまうということじゃないかと思うんです。その点、重ねてお尋ねしておきましょう。
坂口国務大臣 それは、私の命はそう長くはありません。それはもう小沢議員の御指摘のとおりだと私も思っておりますから、そこは一致いたしますけれども、しかし、そういう決意のもとに、将来の抜本改革の根っこのところ、あるいは骨格になるところをそういう考え方のもとにつくっていこうというのでありますから、現在の決意は将来ともに生き続ける、そういうふうに思っております。
 しかし、将来の人たちが、過去にそういうふうにつくってくれたけれども、しかしそれはぐあいが悪いということでまた改正をされるというなら、それは私はやむを得ないというふうに思うんですが、そうでない限り、現在三割という負担がこれ以上にならないようにするにはどうすればいいか。これは今まで、一割が二割、二割が三割、だんだんなってきたことは事実ですよ。しかしそれは、あわせて、それ以上にならないようにどうするかという手だてが一緒になかったからなってきたわけでありまして、これ以上にならないような手だてを一緒にやっていく。
 しかし、これはかなり厳しい話なんですよ。医療費の問題につきましては、医療機関はかなりこれに対して御辛抱いただかなきゃならないところも出てくるわけですよ。先般も、共産党さんの方からは、今回の医療費の、診療報酬の削減をしてけしからぬというお話をいただきましたけれども、むしろ私は、削減をしたらその分だけ、国民の皆さん方はそれだけ出費が少なくなるわけでありますから、これは喜んでもらわなきゃならないというふうに思ったんですけれども、やはりおしかりを受けました。参議院でもそういうふうに申し上げたわけでございますけれども、やはりそこは、お互いに辛抱していただかなきゃならないところは出てくる。それはそうですよ、保険制度でやっているわけですから。この保険制度で、どう全体で維持をするかということなんですから。
 ヨーロッパのように、保険料をもっとたくさん出すというのも一つの方法でしょう、これは。今度、総報酬制にして八・二にさせてもらいたいというふうに思っているわけですが、いわゆるドイツだとかフランスあたりは一四、五%払っているわけですよ。そういうふうに保険料を多くして自己負担を少なくするというのも一つの方法ではあるというふうに思います。
 しかし、今日本の経済の中でそこまで保険料を多くするということが果たしていい対策かどうかということを考えれば、私は、今以上に余りにも国民全体の保険料を上げていただくことは、やはり抑制をしなければならないというふうに思っています。そうすれば、御病気にかかられる皆さん方は、軽い病気だけはどうぞひとつ三割自己負担をしてくださいよということにお願いを申し上げなければならない、こういうことでございます。
小沢(和)委員 診療報酬の話なども触れられましたけれども、これはまた次回以後、私、やらせてもらいます。
 それで、国際的に見ても、日本のように重い窓口負担をかけて受診を抑制するような不合理な政策をとっている国は、先進国ではほかに例がないと思います。ドイツ、イギリス、フランス、これは窓口負担はどうなっているでしょうか。
宮路副大臣 委員御指摘のように、医療保険制度、各国それぞれもう区々でございますので、したがって、これを一概に比較するという、そういうデータにしてもなかなかこれは容易でないわけであります。
 そういう限界があるわけでありますけれども、それを承知で数字を一応とってみますと、各国の政府が公表した資料でありますが、医療費に占める患者負担の割合は、今委員の御指摘のあったドイツ、イギリス、フランスについて見てみますと、ドイツでは一九九七年には六・〇、イギリスでは一九九八年に二・〇、フランスでは一九九九年に二三・三というふうに数字は出ております。
小沢(和)委員 日本の窓口は、九九年で、平均すると一五・二%という数字になっております。
 ドイツ、イギリス、カナダ、イタリアなどは、入院費や薬剤費などでごく軽い負担はありますが、原則としては全額給付であります。だから、ドイツ、イギリスなどの窓口負担は、今の答弁どおり、日本の数分の一ということになっております。
 フランスは日本より高いようなお話だったわけです。確かに、入院三十日まで二割、外来三割ということになっておりますが、調べてみますと、この大部分は共済制度で返ってまいります。だから、窓口負担は、フランスも実質的には一一・一%ということになり、日本よりはるかに低いわけであります。
 しかも、ドイツ、イギリスなどは、窓口で直接お金を支払うということはありません。後から請求書が送られてくるという仕組みになっております。
 ただでも我が国の医療費負担は先進国で最も重い。少なくとも、さらに重い窓口負担を押しつけ、これ以上受診を抑制するようなことはやめるべきではないでしょうか。大臣はどうお思いでしょうか。
坂口国務大臣 ですから、先ほどから申し上げているとおりでありまして、先ほどのフランスの場合には、公的保険の自己負担分について民間保険からの給付で補てんをすることが一般的であって、それを加えると一一・一%になるということであります。これは民間の保険等の話でありますから、ちょっと別だというふうに思います。
 先ほど申しましたとおり、保険料をより高くして、今度は保険料で比較をしていただきたいと思います。これは、ドイツだとかイギリスだというのは制度がうんと違いますから何とも言えませんが、ドイツだとかいったところは保険料はうんと高いわけですよ、日本とは。だから、保険料を高くしてそして自己負担を少なくするか、それともその逆を、日本のようにある程度保険料を抑えながらいくかということなんですよ。
 現在ぐらいの保険料にしておきましても、これからまだ高齢化はさらに進むわけでありますから、日本の保険料は、まだ将来保険料を上げてもらわなきゃならないことになるだろうと私は思うんです、これからずっと先、高齢者がうんとふえてまいりますと。ですから、そのことを思いますと、これぐらいで抑えておかないといけないということでございます。
 ですから、お金はどこかから降ってくるわけではないんですから、保険料でお願いをするか、それとも国庫負担、税でお願いをするか、自己負担でお願いをするか、その三者構成の割合をどうするかということが今問われているわけで、一方におきましては、余分に医療の方でかからないようにするためにどうするか、そこをどう抑えるかということが一方にある、こういうことだというふうに思います。
    〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
小沢(和)委員 大臣の答弁を聞いていると私も財政論の話に入りたいんですけれども、きょうは窓口負担やあるいは保険料などどれほど負担がふえるかということを主に質問したいと思っているので、そっちはこらえて先に行きたいと思うんです。
 それで、窓口負担増の問題よりもさらに大きいのが保険料の負担増であります。労働者には窓口の三割負担と合わせてダブルパンチになります。これまでボーナスからは一%だったものを、総報酬制にして月々の保険料と同じ八・二%にしようとしているわけです。
 組合健保の方は数字で出せないというお話ですので、政管健保で総額どれぐらいの負担増になるか、平均的な労働者一人当たりでどれぐらいになるか、お示しいただきたいと思います。
宮路副大臣 今の御指摘の総報酬制の実施それから保険料率のアップ、これによります政管健保全体の保険料負担の増加額は、平成十五年度から十九年度までの五年間の平均でありますが、年五千七百億円の増であります。
 そして、これは被保険者一人当たりで見ますと年間約三万円という計算となります。
小沢(和)委員 組合健保の数字は示せないというお話だということを今言いましたけれども、ざっと考えてみると、組合健保の加入者数やその賃金水準、こういうようなものを考えれば、大体、政管健保のこの五千七百億とそう違わないぐらいの負担増が組合健保の人たちにも出てくるんじゃないですか。
宮路副大臣 組合健保につきましては、委員御案内のように、それぞれの組合の事情によりましていろいろあるわけでありまして、中には積立金など余裕のあるところもありますから、そういったところがどういうぐあいに対応するかよくわかりませんが、そういったものを捨象して考えますと、やはり同じような数字が出てくるんじゃないかなというふうに推測をいたしております。
小沢(和)委員 先ほどの窓口の負担増だけでも恐らく史上最大だろうと私は思うんですが、それに加えて両健保の保険料増、これを合わせると一兆円をはるかに超すということになる。そうすると、これは全部で二兆円近い負担増ということになってきやしないでしょうか。
宮路副大臣 今、先ほどの数字を足してきますと、二兆円までにはならないかと思いますが、一兆を超す数字になっていくものと思います。
小沢(和)委員 それから、保険料は労働者と事業主が折半して負担するわけです。これだけの大幅な引き上げだと、事業主側の負担増もかなり大きくなると思うんですが、今示された平均的賃金の労働者を百人雇用している中小企業の場合だと、年間どれぐらいの負担増になりますか。
宮路副大臣 先ほど一人当たり年間三万円ということを申し上げました。これは事業主分も含めての三万円でありますから、事業主がその二分の一として一万五千円、それ掛ける百人でございますので、百五十万というのが平均的な政管健保の場合の事業主負担の増ではないかというふうに推定されます。
小沢(和)委員 これだけ不況が長期化し、国民生活が深刻化しているときに、現役世代だけでも、窓口負担三割と保険料引き上げの両方で二兆円近い負担増を押しつける。さらに今後も両方の負担をどんどんふやしていく仕組みをつくっていく。これでは国民はやっていけないんじゃないでしょうか。先ほどからの説明を聞いていると、政府が検討してきたのは、保険財政をどう維持するかということだけのように聞こえてなりません。
 労働者の生活がどんなに苦しくなっているかは、健保の標準報酬月額の推移を見てもわかります。不況が十数年も続き、賃金はほとんど横ばいの状態が続いてまいりましたが、特に九七年からは、対前年度の伸びが一・一%、〇・四%、ついに九九年にはマイナス〇・五%と賃下げになっております。これは政管健保ですが、組合健保の傾向も同じだと思います。二〇〇〇年以降の数字はさらにマイナス幅が大きくなっているのではありませんか。四月三十日、政府が発表した二〇〇一年度の賃金調査の結果でも、総額で前年より一・六%減という数字になっております。
 こういう中で、負担増になっているのは医療費だけではありません。社会保障関係は軒並み次々に引き上げられております。年金保険料も二〇〇〇年から一七・三五%引き上げられた。介護保険料も昨年十月から二倍になった。雇用保険料も昨年四月から五〇%引き上げられた。これらの結果、社会保障負担率は、九九年以後を見るだけでも、一三・八%、一四・〇%、一四・九%、一五・五%と急上昇を続けております。
 国民の最低生活を保障する責任のある厚生労働省が、ぎりぎりの生活に追い込まれている労働者にこうやって次々に負担増をかぶせ、そして今回、まあ、さっき私、二兆円近い負担増と言いましたけれども、こういう大きな負担増を押しつける。これで国民が負担増に耐えられるというふうに、大臣、判断されているんでしょうか。
坂口国務大臣 なぜ最近この社会保障の保険料が高くなってきたかといえば、それは、これだけ急激な高齢化社会が訪れたからでありまして、この急激な高齢化社会にたえていくためには一体どうしたらいいのか、みんなが考えていかなければならないことであります。
 それは、国庫負担として、いわゆる税として皆さん方にお出しをいただくか、それとも保険料として皆さん方にお出しをいただくか、それとも自己負担をしていただくか、そして、一方においては、医療を行う側にいかに節減をしていただくか。それ以外にないわけでありまして、それらのことを総合的に考えて、現在だけではなくて将来も皆さん方に安心していただけるような制度をつくることが厚生労働省に課せられた仕事であると私は思っております。
 現在だけを見て、現在の人だけがいいということだけをやっていけば、将来は破綻するわけでありまして、それは無責任のそしりを免れないと私は思います。将来を見て、そして現在の施策を立てる、それは多少現在に苦しいことであったとしても御辛抱をいただかなければならないというのが我々の立場でございます。
小沢(和)委員 こういうような値上げが将来のことを考えているんだというようなお話、先ほどから持続可能で安定的な医療保険制度の構築ということを盛んに言われるわけですけれども、結局私は、こういうような制度を変えていくやり方をすれば、金の心配のない一部の人々には幾らでも医療を提供できるが、金を持っていない大部分の国民は、月々の保険料は値上げ分も確実に取られるようになるけれども、窓口負担が心配で、いざ病気になってもなかなか病院に行けないようになる。そうすれば保険制度としては財政的に安定する、こういうことにすぎないのではないかと思うんです。
 そして、万一の不安から国民が日常生活でもできるだけ消費を抑えようとするために、不況を一層深刻化、長期化するという結果にもなってしまうのではないか。今回のような負担増が景気を一層悪化させるという結果にもならないのか。この点は、大臣はどうお思いになりますか。
坂口国務大臣 もちろん、景気の問題もございます。その景気の問題に対しましては、やはり将来不安というものがより大きな影響を与えることは間違いございません。
 したがいまして、国民の皆さん方が、現在の保険料の上下、高い低いということを問題にされるか、それとも将来も安定していることを問題にされるか、私は国民の皆さん方のお考えだというふうに思っておりますが、多少の、現在よりも保険料等が値上がりになったといたしましても、将来ともにこの制度を維持するということができれば、私は安心をしていただけるものと確信をいたしております。
小沢(和)委員 あと若干時間があるようですから、もう一、二問させていただきたいんですが、大企業の中には、こういう医療費の負担増を嫌って、最近組合健保を次々に解散する動きがあるようですが、最近五年間の組合健保の解散数はどのように変化しているか。解散で企業はどういうメリットが出てくるか、労働者側にはどういうデメリットが出てくるか。お尋ねいたします。
宮路副大臣 御指摘の健保組合の増減状況でありますが、最近の解散する組合の数でありますけれども、平成十年度では十一組合、平成十一年度九組合、平成十二年度十六組合、そして平成十三年度で二十六組合が、現下の厳しい経済情勢のもとで保険収入が減少したり財政状況が悪化することが背景だと思いますが、そういった解散の組合が出ております。平成十四年度では二十一組合解散をいたしておるところであります。
 健保組合が解散した場合のメリットあるいはデメリット、どうなんだ、こういうお話でありますが、年によりそういった解散をしておるわけでありますが、その結果、一般的には、組合とすれば、保険料率が政管健保の場合ですと現在八・五でありますので、先ほど申し上げたような解散する組合の場合は、高いところはもっと、九・五ぐらいに張りついているというようなところが多いわけでありますので、政管健保に移行すれば保険料率が低くなって、その分、企業の負担は減少する。
 一方、労働者といいましょうか組合員の方から見ますと、保険料率が政管健保より高い場合には、先ほど申し上げたように保険料率が低くなりますので、その反面プラスが出るわけであります。一方では保険料率が下がるというのはメリットでありますけれども、一方、健保の組合では、付加給付をやっておったり、あるいは保健事業をきめ細かくやっているというような組合も見られますので、そういった組合については、政管健保に移行しますとそういう付加給付やあるいはきめ細かな保健事業が受けられなくなるといったようなデメリットが生ずるといったようなことだろうと思います。
小沢(和)委員 大体時間が来たようですから、きょうはとりわけ現役世代にどれだけ負担増があるかということだけをお尋ねしましたので、次回以降、引き続いて議論をさせていただきます。
鴨下委員長代理 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 本日は、午前十時から、金田委員を初めとして坂口厚生労働大臣ともどもに、二十一世紀、どのような医療保険体制であれば国民的な幸福につながるかというかなり本筋の論議がずっと行われてきたかと思います。私も、持ち時間が長ければそのような骨格的な質問をさせていただきたいのですが、限られた時間ということもあり、また他の委員の御発言も踏まえた上で、実務的なことにつき御質問をいたします。
 実は、各種健康保険組合、国民健保、政管健保おのおのに財政的な危機が言われておりますが、果たして、その財政的な危機ゆえに、すぐに国民負担あるいは患者負担を求めてよいものか否かということが私は論議の一番中心であろうと思います。高齢化社会ということもだれしも共通認識でございますし、だれがどのように負担していくかということにおける公平感、公正感がなければ社会保障はもたないというのも事実でございます。
 しかしながら、私がこの間拝見しておりますと、組合健保、政府管掌健保、そして国保おのおのに財政状況の報告がございますが、いわゆる単式簿記、単年度で幾ら保険料収入があり、幾ら支出が出たかという単式簿記という形での記載でございまして、例えば幾ら資産、財産をお持ちか、そしてその資産、財産の運用によってどのような利益や赤字が生じているか等々についての標準的な統一した報告がございません。
 いわゆる世の中の企業一般ですと、損益計算書及び貸借対照表というのを用いて資金調達の内容や資産の保有その他、公表がされておりますが、この健康保険組合、政府管掌健保並びに国保についての財務状況の公表状況について、まず関係部署にお伺い申し上げます。
    〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
大塚政府参考人 医療保険制度は公的な制度でございますから、その運営主体はさまざまでございますけれども、それぞれがその財政状況をきちんと公開するということは御指摘のように極めて重要なことだと考えております。
 医療保険は、当然、企業あるいは収益を目的とした事業ということではございませんから、保険料で収入の大半を賄い、支出は医療費として支払うということでございますから、いわゆる経常的なキャッシュフローのバランスがとれているかどうかというのがやはり基本にならざるを得ないわけでございますけれども、お話しのように、そのほかに保有資産もございます。そうした状況は、キャッシュフローバランスの状況に加えてそれぞれの制度で公表しているわけでございます。
 ただ今日、御案内のように、企業会計の方式による貸借対照表なり損益計算書という形で会計処理をすることが、企業の場合でございますけれども、一般的でございますから、国民の方もそういう形になれておられるわけでございます。したがって、健保組合などにつきましてはそうした方法がとれないかということで、昨年、関係者、健保組合の主要団体でございます健康保険組合連合会で研究会を設置していただきまして、健保組合の会計基準、会計報告のあり方についての中間報告を取りまとめていただいています。
 現在、さらに検討、詰めを行っていただいておりますけれども、基本は、経常収支ベースの重要性は変わらぬけれども、企業会計の貸借対照表なり損益計算書に相当する会計情報を開示していく、そういう方向で検討を進めていただいているところでございます。
 政管健保あるいは国保、これは国の機関あるいは地方自治体でございまして、財政法あるいは地方自治法、地方財政法といった会計法関連の会計法規がございます。それに沿った処理を行うということが必要でございますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、それに加えまして、保有資産の状況などできるだけ明らかにしてまいりたいと考えております。
阿部委員 国民にやはりわかりやすく示していただく。それが今までは、保険料収入がこれだけで支出がこれだけというところにとどまっていて、真実が伝えられていないと私は思います。
 健康保険組合については、今の大塚局長のお話にあった資産状況とか保養所の運営状況、そこで出てきている赤字が負担になること、それから政府管掌保険では累積債務の、いわゆる国から借り入れたお金の利子を支払っていることが政府管掌保険に重くなっていること、あるいは国保についても未納金の状態等々、いろいろな要素が絡まっておのおのの健康保険組合が、政管健保、国保、組合健保と苦しくなっているやさきですから、一部だけを取り上げて、足りない足りない、だから国民負担だと言う前に、ぜひともおのおのの財務状況で改善していただきたいと思います。
 あわせて、坂口厚生労働大臣に今との関連事項でお伺いいたします。
 私は、坂口厚生労働大臣が中長期的な展望の中でお考えの、今の国保は市町村を保険者とするよりももう一歩安定した県単位に、あるいは組合健保は乱立して一千七百ですか、以上もある組合健保を、もう少し保険者機能を強めるために大ぐくりにしていこうというお考えは非常に評価しております。そして、そのためには逆に、先ほど申しましたが、組合健保のおのおのの中での事情はあるけれども、財政調整、ある程度調整して、さっき、二十六組合ですか、健康保険組合が解散したと言われましたが、なるべく解散を少なくできるように、各保険者の、強弱を取り合わせてでも健康保険組合としてのきちんとした財政基盤をむしろ行政サイドがリードしながら行っていくべきと考えておりますが、そのあたりのお考えをお願いします。
坂口国務大臣 保険者が五千を超えておりますことは今さら申し上げるまでもありませんが、その中で、国保、これは市町村、もうどんな小さな村におきましてもこれは一つあるわけでありますから、余り小さな村で一つの保険をやっていくということはこれは大変だろうというふうに思います。
 また、そういう村に限りまして高齢者がふえてきているものですから、高額の医療費の必要な人がまた多くあるといったことで、町村はそれでは難しくなりますから、単位としては県単位で統合するのがいいのか、あるいは東京などのように大きいところはもう少し分割するのがいいのか、その辺のところは考えなければならないというふうに思いますけれども、ここは、県単位かあるいはもう少し小さなブロックか、そのぐらいなところに統合化をしていかないと、これはやっていけないだろうというふうに思っております。
 そして、もう一方におきまして、組合健保の場合におきましても、子会社でありますとか孫会社がございますが、今、子会社まではいいというふうに思いますけれども、孫会社のときになりますと一緒にできないとか、あるいは県をまたぎまして他の県にありますときにはこれができないとかいったような規制がありますから、そうしたことをなくしていって、そして一つのグループならグループとしてやはりやっていけるようにするということになれば、そこは自然に財政調整もできるのではないかというふうに思っております。
 そうしたことを行いながら、きょう午前中にも御議論がございましたけれども、金田議員からもお話がございましたが、財政調整というものを、幾つかの指標をひとつつくりながら、そこでやっていくということは大変大事なことだというふうに思っている次第でございます。
 これからそうした議論を、皆さん方にも御意見をいただきながら、どういう大きさにまとめていったら、いわゆる保険者機能も十分に発揮ができるし、そしてまた余り小さくし過ぎるということによる弊害もなくなるし、その妥協点というのはどこかということを見つけ出していかなければならないというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 午前中の御答弁でもございましたことですので、私として本当に、まず国民負担ありきあるいは患者負担ありきというような、今の窓口負担増を先に行いますことは、やはり患者さんの医療へのアクセス制限につながってまいると思いますので、むしろ、国民皆保険制度の堅持に向けて保険者機能を十分に見直していくという点に今回の改革の重点を置いていただきたいと思います。
 そして、特に国民健康保険について午前中あるいは午後にもいろいろな論議がございましたが、これは民主党が提案されております、リストラ等々によって離職された場合に一年間の猶予を限って保険料の徴収をそれまでの保険料の六割となさるという案は、私はかなり現実的に受けとめられていいものではないかと思います。
 と申しますのは、それまでの前年度の収入に保険料がかかりますから、リストラされて、次の収入は少ない、ないしは失業保険で賄う中で、保険料の負担分はそれまでよりも倍になるという事態が来た場合に、失業された方の負担感が非常に重いと思います。
 この御発議というか提案に至った民主党の方からの御意見、五島先生にお願いいたします。
五島議員 私どもの提案しております健康保険法の改正案に対して御質問、ありがとうございます。
 今先生御指摘のように、失業状況は非常に深刻化している中において、非自発的に退職に追い込まれた労働者、この方々の医療保険の加入は、離職前の健康保険に継続加入するか、居住地の国民健康保険に加入するか、いずれかの選択を迫られるわけでございます。
 もし継続加入を選択した場合は、従前の事業主負担分も負担するため、おおむね二倍の保険料を払うことになります。
 また、国民健康保険に加入するということは、結果的にはやむなく多くなるわけで、四年間連続して増加しているわけでございますが、この場合ですと、例えば前年度、離職前一年間の年間所得が五百万円相当であった場合、その失業者は四人家族で、政管健保では十五万七千円を払っていた保険料が、国保に入ったことによりまして三十万円から五十万円ぐらいの国保料を払わなければならないというふうになってまいりまして、そうなりますと、先生御指摘のように、失業者の中には国民健康保険料が高い、払えないということで無保険者になられる方が相当いるものと考えています。
 私どもは、この方々の人数、効果の問題でございますが、一年間に退職する労働者の推計でございますが、一年間に二百四十二万人の労働者が新たに失業している。そういう中で、非自発的退職者の数を七十七万四千人というふうに推定いたしております。その中で、さらに丸一年間以上にわたって就職ができないという人の数が約二〇%、それ以外の人々は大体一年以内に再度就労ができているというのがこれまでの例でございました。こういうふうなものを計算いたしまして、現在、この制度ができることによって、丸々一年分の保険料として計算した場合、そのことによってその恩恵が受けられる労働者の数は約三十二万六千人というふうに考えております。
 したがって、この方々にとって恩恵があるというふうに考えておりまして、この軽減措置によって、現在の無保険者がふえていくということに対して一定大きな歯どめがかけられるものと期待しております。
 以上です。
阿部委員 私も五島先生の御提案のように理解しておりますが、この件に関して厚生労働省にも昨日お問い合わせをいたしましたところが、ある方が失業された後国保をお持ちになるかどうかについて、実は現状把握がなかなかできないというお答えでありました。
 そこで、私は厚生労働省に提案がございますが、失業なさいますと、失業保険の給付にかかわって一カ月に一回社会保険庁ですかにいらして就労状態のチェックをなさいますね。そのときに、その方が健康保険、国保にお入りになったかどうか、そういうことを、相手のお答えに、任意的にはなるわけですけれども、チェックしていただいてはどうかと思うのです。私は、これは非常に前向きないい提案だと思います。一体どれくらいの方が失業後国保にすらお入りにならないで無保険者になるかという実数をだれもが把握していない状況というのは、国民的不幸と思うのです。
 そこで、今私は具体的な提案をいたしましたが、失業保険を受給中で就労状況を確認する一カ月ごとの際に、その方の保険状況についてお問い合わせいただくないし御助言をいただく等々について、関係省庁の御意見を伺います。
大塚政府参考人 被用者保険から国保に移ります場合に、速やかな手続をとっていただくことが御本人の医療保険の加入権を確保するためにも重要なことでございますので、私どもとしては、一つには、事業主の御協力をできるだけいただきまして、いろいろなケースで退職される場合、その中にはいわゆるリストラも含まれますけれども、その後の助言指導、あるいは社会保障関係の手続などについても助言あるいは御指示をしていただけるような、そういうお願いもしておるところでございます。
 引き続きそうした努力をいたしますが、ただいまの御提案につきましても、これは関係部局の中で相談をできることでございますので、内部でよく相談をさせていただきたいと思います。
阿部委員 前向きな御答弁、ありがとうございます。
 次に、医師の研修の義務化についてお伺いをいたします。
 厚生労働省の医道審議会が、四月二十二日に、医師研修についての検討部会の中間取りまとめを提出してございます。この中には、臨床研修医のアルバイトを禁止するということとか、身分保障をきっちりすること、あるいは単独診療を行わせないためのさまざまな御提案があったと思います。
 私は、この中で特に、アルバイトをせずに研修に専念できる、いわゆる本当にこれは三十五年間の、いわば長年の夢でございますし、この機会にいい研修制度ができることを何よりも望むものですが、一点、坂口厚生労働大臣にお願いがございます。
 この答申の中では、この研修医を労働者とみなすか、あるいは学修途中にあるかというような論議が抽象的にございますが、私としてはぜひとも、労働者という用語を使うか否かという抽象論議以上に、決して抽象ではないのですが、なかなかいい御答弁がこれまで関係部局でいただけなかったので、逆に、社会保障制度、健康保険とか労災保険、年金、雇用保険を必ず研修医にはつけるように研修医を雇う側に義務づけるような方向性で、実際の身分保障をしていただきたいと存じますが、お考えをお聞かせください。
坂口国務大臣 現在の臨床研修医の実態動向を見ますと、これは一般的には、労働者というふうに言い切れるかどうかわかりませんが、労働者性が認められるということだろうというふうに思っております。したがいまして、労働者性が認められるということは、使用者には、労働基準法でありますとかあるいは労働安全衛生法、それから最低賃金法等の労働関係法令が、これは守られなければならないということになってくるというふうに思っております。
 なお、臨床研修医が労働基準法上の労働者であるか否かにつきましては、これは名前をどう言うかは別にいたしまして、個別に実態によって判断されるものであるというふうに思っています。
 先ほど申しましたように、一般的には労働者性が認められるというふうに思っておりますので、現状から申しまして。そういたしますと、労働時間管理の問題が一つはございます。これは労働者でありますから、原則一週四十時間、三十八時間でございますけれども、病院等は四十時間。それから、一日八時間の法定労働時間を超えて労働させてはならないということがここにかかってくる。それから、時間外ですとか休日労働を行います場合には、時間外ですとか休日労働に関する協定の締結でありますとか届け出を行うということがございます。それから、最低賃金額以上の賃金の支払いがもう一つございますが、最低賃金制もこれにかかってまいりますから、それ以下の賃金でございますとこれにかかってくるということになるわけでございます。
 そうしたことがございまして、いわゆる労働基準法の第九条にございます、この法律で労働者というのは、職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金が支払われる者というふうに定義されておりますから、そうした中でこれは考えていかなければならない問題だというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 非常に前向きな御答弁をありがとうございます。
 特に、私は本会議でも坂口厚生労働大臣にお伺い申し上げましたが、この労働基準法に基づく最低賃金の保障というところで、最近、これまでとりわけ賃金の低かった私学においても、せんだって日大、日本大学で十二万円という賃金の提示がやっと可能になった。ところが、二十も過ぎ三十近くもなって十二万円で暮らせと言われても、正直言ってなかなかきつうございます。
 そこで、研修期間にある医師の賃金をめぐっては、私は国としてある程度財政援助、それは教育にかかわります費用の部分もありますし、その身分保障にかかわります賃金保障の部分もございますが、何らかの手だてで研修医の賃金保障について国として積極的に関与していただくことを望んでおりますが、この点についてももう一点お願いいたします。
坂口国務大臣 アルバイトをしなくてもいい額というのが大体どれぐらいの額か、これは考え方によっても人によっても大分違うというふうに思いますけれども、アルバイトをしなくても研修医として生活ができる額というものは定めまして、そしてお示しをしたいというふうに思っております。
阿部委員 ありがとう存じました。
 次に、先般私が厚生省にお願いしました質問主意書、とりわけ、八十二特定機能病院における医療ミス実態でいただきました回答書に基づいて質問をさせていただきます。
 八十二の特定機能病院でこの約二年間で起こりました重篤事例あるいは新聞報道事例、アクシデント、インシデント等々の件数の総数をお伺いいたしましたところ、インシデントと言われるものが十八万六千件、アクシデントが一万五千件、二年間で八十二病院で一万五千件という数値はかなり膨大な数でございますし、そのうち重篤な事例が三百八十七件というふうに報道されております。
 特定機能病院といいますと、私どもの一般社会ではそれなりのスタッフをそろえ、それなりの診療レベルを持ったところで、なおかつ二年間で一万五千件という件数は、国民が見た、見せられたものとしては、かなり衝撃が大きかったと思いますが、坂口厚生労働大臣はこの報告についてどのようにお受けとめでいらっしゃいましょうか。
坂口国務大臣 先生から質問主意書をいただきまして、そして整理をしたものを私も拝見したわけでありますが、一万五千件というこの数字に衝撃を受けたわけでございます。八十二の特定機能病院におきます平成十二年四月から二年間のアクシデント事件という、二年間ではございますけれども、非常に大きな数字であるというふうに思っています。
 アクシデント事件として取り上げるか否かにつきましては、それぞれの病院によりまして、これを取り上げるかどうかということはかなり基準が違うんだろうというふうに思っておりますが、しかし、細かく取り上げられている病院は、それだけ起こしてはならないという体制が整っているところというふうにも受け取れるわけでありまして、少ないのが必ずしもいいとは言い切れない。むしろ、小さなものも拾い上げていただいているところの方が、これはいいのではないかという気もするわけでございます。院内の報告制度を充実していただいて、これからもひとつその対策を講じてもらいたいというふうに思っています。
 何が一番多いのかと聞きましたら、やはり一番多いのは薬の間違い。二番目には転倒というのですから、御本人が転倒されるのかというふうに思いましたら、車に乗せて運ぶ間に転倒させるというのがその次に多いということだそうでございまして、これらのことは気をつければかなりこれはできることでありますから、ひとつ十分に気をつけていかなければならないというふうに思っている次第でございます。
阿部委員 いい御答弁をありがとうございます。
 特に、私も大臣と思いを一にいたしますのは、例えば、この中で順天堂大学とか北里大学は重篤事例の報告件数も多うございます。一番多いのが順天堂で百二例だったかと思いますし、北里も八十数例。私は、逆に、こういうふうにきちんと報告が上げられる体制にある病院ほど、そのアクシデント、インシデント、重篤事例、患者さん側がどう受け取ったかということについて感度が高い病院だと思うのです。どことは申しませんが、ゼロ件というのも幾つか見受けられまして、私は、それはむしろ隠す体制にある傾向が強いということで、なお厚生労働省として安全対策の中では、やはりミスを隠さずに報告して過ちを繰り返さない体制を御指導いただくことをお願いしたいと思います。
 そして、それに先立って、やはり同じ事例を、ある病院はインシデントととり、ある病院はアクシデントととりと、やはりちょっと受けとめ方がさまざまでございますので、これからこういうことの報告に当たって、厚生労働省として、アクシデント、インシデント、重篤の、おのおのの事例なり、おのおのの区分け、定義づけをもう一度、さらに明確にしていただいて、集積をしていただきたいと思います。これはお願いですので、関係部署によろしくお願いいたします。
 そして、私は、先ほど大臣がおっしゃいました、転倒事故等々とか投薬ミスが多いということをお話しでございましたが、特に新聞に出ました六十七件を分析してみますと、これは二度に数えたものもございますが、人工呼吸器を中心とした医療機器事故、臨床工学的な問題をはらんだものが十一例、投薬ミスないしは看護婦さんの仕事範囲で起こったミスが十六例、医師の手術ミスが十六件、患者さんの取り違えは十一件、AとBを取り違えるあるいはお薬を間違って投薬する、それから、同じ医師のミスの中でも、ガーゼやピンセットや何かを置いてきてしまったもの十件となっております。
 これだけ聞くと背筋が寒くなって、どこの病院にも行けないかなと思う国民の皆さんも多いかと思いますが、私の目から見ますと、例えば医師の手術ミス十六件などは医師の研修指導体制も大きく関与しますでしょうし、患者さんの取り違えは、ダブルチェック、二人の方がその行為をチェックすればうんと減るのじゃないかと思うわけです。
 私は、きょうこの中で、これらを問題にするほかに、特に人工呼吸器に関連したミスを問題にしたいと思います。
 新聞の事例の中でも、チューブの接続ミスや、あるいは医療機器が、人工呼吸器が古くなっていて発火してしまったとか、いろいろな事例がございますが、特に医療現場におりますと、人工呼吸器の管理を実は大半の場合、看護婦さんないし医師がやっております。看護婦さんは、実は患者さんの方を見たいのだけれども、それ以前に、機械がちゃんと接続されているか、あるいは蒸留水というのを入れるところに入れる薬剤が間違っていないかとかさまざまな注意をこちら側にとられていて、患者さんの側がどうであるか、状態チェックが抜けるようなことも私の経験では多々ございます。
 そして、人工呼吸器管理につきましては、実は臨床工学士という専門の職種がございますが、日本ではこの方たちの配置が患者さん千人に対して五人、二百人に対して一人、非常に数が少のうございます。
 そして、御記憶にございますでしょうか、二カ月ほど前、我が党の中川智子が質問いたしましたが、女子医大で人工心肺というのを回して患者さんを手術しておりますときに、人工心肺というのは患者さんの心臓や肺の機能をいっときとめて人工的な機械にゆだねるわけですが、この人工心肺を管理する技士がおりませんで、十五分間機械がとまりました。すなわち患者さんは、心臓と肺が十五分間機能しない状態になり、亡くなられました。
 私は、この事例というのは非常に象徴的、今の我が国の医療の中で、医師、看護婦、そしてそれと一緒に仕事をしていただくコメディカルの方たちの数が極めて少ない実態が反映されたものと思いますが、いわゆる臨床工学士の配置について、国としての見解をまず一点、お伺いいたします。
宮島政府参考人 先生御指摘のとおり、今回の報告におきまして、特定機能病院での医療事故報道件数六十七件のうちに、御指摘の人工呼吸器に関する事故がありまして、ただ、その原因が臨床工学技士の配置数とどの程度かかわっているかということは明らかではございませんけれども、現在、医療法におきましては、臨床工学技士の配置基準は、診療放射線技師と同様に「病院の実状に応じた適当数」というふうに決まっておりまして、具体的な配置数は現在のところ決められておりません。したがいまして、個々の病院における配置数につきましては、基本的には各病院の判断に一応ゆだねられているというところが現在の状況でございます。
 しかしながら、先生御指摘のように、やはり人工呼吸器を初め医療機器における安全を確保するというのは重要な問題でございますので、私どもは、医療監視というものを通じまして、医療機器等が適切に管理運用されるというものについて、各病院において適切な体制が確保されているかどうかということについて今後とも指導してまいりたいというふうに考えております。
阿部委員 ぜひともそのようにお願いしたいのです。
 例えば、年間に百二十例の心臓の手術を行うところで、たった一人しか臨床工学士が配置されていないような病院もございます。そして、今おっしゃったように、医療監視の中では、臨床工学士の配置数というのは、これまでは、例えば患者さん一人当たりのベッドの広さとか看護婦さんの人員とか医師の配置数は決まっておりますが、これだけ呼吸器管理が普及し、特別な人工心肺を使ったりする高度な手術が日常化した中では、医療監視の項目に入れていただくべき重要な、患者の安全のための一つのメルクマール、指標だと私は思っております。
 ちなみに、読売新聞の調査等々でも、臨床工学士の配置がないために業者任せにしている病院が約一割ある。これはもちろん一つの新聞社の調査ではありますが、先ほど申しました女子医大での悲しい事例、あるいは私が日常経験します、看護婦さんたちにその負荷がしわ寄せされている実態、呼吸器がこれだけ普及するという状態は、実は三十年前にはほとんど考慮されなかった事態ではございますが、私は、医療監視というのも日進月歩でございますので、ぜひともこれらの教訓に学んで、臨床工学士の方たちの配置を医療監視に入れていただきたいとお願い申し上げます。
 それから、そのことと関連して、もう一つお願いがございます。
 実は、臨床工学士は、配置されても診療報酬の加算がございません。ということは、病院はその方を雇っても雇わなくても同じという体制の中で、診療報酬加算がないものはどうしても十分な配置がなされないという点もあります。この点についても、関係部局から御答弁をいただきたいと思います。
大塚政府参考人 現在の診療報酬におきまして、さまざまな基準に該当するものがございまして、その基準の定め方はそれぞれでございますけれども、現状におきまして、臨床工学士の配置を診療報酬支払い上の基準に設定をするというところまでは、医療の現場の状況、あるいは全体の医療保険の、診療報酬の置かれた現状からいっておりませんが、今後の関係審議会の議論なども勘案いたしますけれども、当面、慎重に研究をするという段階にとどまらざるを得ないというふうに考えております。
阿部委員 厚生労働省がそのような認識にある限り、広く人工呼吸器が使われている現状と、そのことに関連して、医療現場が重労働化し、そして看護婦さんたちの重労働化がミスにつながるという構造が断ち切れませんので、むしろ逆にどのぐらいの数の人工呼吸器が使われているかということも含めて検討いただきたいと思います。
 最後に一点だけお願い申し上げます。
 先般の福島委員並びに松島委員からの御質問のありました川崎協同病院の事例でございますが、この件では、実は患者さん自身は御自分で呼吸をしていた。そして、空気の道を確保するための気道のカニューレというものが入っていた。この状態で、家族は主治医から、患者さんは九分九厘脳死であると伝えられておると。私は、脳死臓器移植という法律が成立して以降、逆に患者さん家族をあきらめの心模様にさせるための一つの表現として脳死という言葉が乱用されているのではないかと非常に危惧を覚える次第ですが、坂口厚生労働大臣に、この点、一点、お願いいたします。
下田政府参考人 法令上、脳死という概念を規定しておりますのは、委員御指摘のように臓器移植法のみでございまして、法律で定めております脳死とは、必要な知識、経験を有する二名以上の医師によりまして、深昏睡あるいは瞳孔散大、脳幹反射の消失、平たん脳波、自発呼吸の消失の五点が確認され、かつ六時間後に再度同じ状況が確認されることにより判定されるということは御承知のとおりでございます。こうしたことにつきましては、具体的な判断についてはガイドラインでお示しをし、周知徹底を図っているところでございます。
 こうした臓器移植法で定めております脳死判定及びその基準は、あくまでも臓器移植を前提としておるわけでありまして、医療現場におきます一般的な治療方針、例えば積極的な治療をそのまま続けるかどうかといったような判断をするために行われておりますいわゆる一般的な脳死判定というものがございますけれども、この一般的な脳死判定につきましては、医療現場におきまして個々の医師の判断で行われている実態であるというふうに承知をいたしているところでございます。
阿部委員 もう時間がございませんので、概念のひとり歩きということと、この患者さんは実際には息をしておったと。その呼吸を確保するための本当の短い管を抜いたら、当然舌が落ちて窒息して亡くなられたという事件ですので、医療現場のこのようなあり方についても厚生労働省としては意識をきちんと持っていただきたいとお願い申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。
森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三分散会


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